約 54,042 件
https://w.atwiki.jp/2chgijin/pages/68.html
「お姉ちゃん!」 勉強をしていたラウンジは後ろから飛びついてきたクラウンに不思議そうな視線を向けた クラウンはラウンジの胸に手を当てるとゆっくりと手のひらを動かす 「ちょ、やめなさいって」 「んー・・・?」 柔らかい感触はあるが、ぎゅっと掴んだりすることはできない ただ、張りのある柔らかい肌を触っているような感触だった 「クラウン!この!」 「ひゃ、あはは!」 二人で向き合って胸を触りあう くすぐったくてクラウンは思わず笑い出したが、クラウンの胸はラウンジよりも小さい というよりも、触っても撫でる程度しかできないような感じがラウンジに伝わる それよりも相手の鼓動が手を通して聞こえてくるのが何とも心地がよかった 「お前ら、何してんの?」 トイレに行っていたVIPは二人を見下ろしながらため息をついた 俺のことを男だと思ってないんじゃねぇの? VIPは欠伸をすると自分の勉強道具の前に座った 「もっとやらないの?」 VIPの言葉に二人は顔を赤くして手を離した 「やるわけないじゃない」 「お姉ちゃんの胸、揉んでも楽しくないもん」 「な ん だ っ て ?」 クラウンとラウンジの戦いはこうして幕を開けた
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/1996.html
https://w.atwiki.jp/vipgijin/pages/32.html
虫の声が煩い・・・VIPはまた夏の暑さに耐え切れずに家を出た 散歩をしていれば涼しくなるかもしれない そう思いながらふらふらと街の中を徘徊する そうしていると街の中で結構大きい方の神社を見つけた ここはたしか同級生の神社仏閣が住んでいる神社だったような・・・ 木々の陰が涼しくて、VIPはのんびりと神社の奥へと入った 「こんにちわ・・・あっ・・・VIP君?」 「お、神社仏閣だ」 箒を持って巫女のような着物を着た神社仏閣はVIPの姿を見つけてお辞儀をする VIPも釣られてお辞儀を返した 「どうしたんですか?」 「いや、散歩散歩w」 苦笑いをするVIPに神社仏閣はクスクスと笑いながら手を洗う場所を指差した 「あそこ、涼しいですよ」 「おお、ありがと」 VIPが笑顔でそういうと神社仏閣は驚いたような顔をしてVIPを見つめる その神社仏閣の表情にVIPも驚き苦笑いを零した 「VIPさんがお礼をいうなんて・・・まさか!?」 神社仏閣は走って家に帰っていき、VIPは首を傾げながら手洗い場に行き手をパシャパシャと付けた そのVIPの頭の上でバッサバッサと何か白い紙切れが行ったり来たりしている ・・・バサバサという音が勢いを増しているのにVIPはイライラを募らせる 「うっるさい!!俺は呪われてねぇよ!」 「ひぃぃごめんなさいぃ」 ガクガクと震えながら下がる神社仏閣にVIPは溜息をついた ほんと、クラスには変なやつしかいないなぁ・・・ 虫が近くの木で大きな声で鳴いていた
https://w.atwiki.jp/vipgijin/pages/43.html
学校の小さな研究室で、ロボットと未来技術は二人で向き合っていた 「・・・ほ、ほんとにこれするの・・・?」 「ああ、お前は今日から立派なロボットだ」 未来技術はロボットの頭にダンボールで作ったヘルメットをつけるとにやりと笑う 一方ロボットはおどおどしながら新しい頭のパーツを少し気にしているらしい 「えっとえっと・・・このボタンは?」 「それはロケットパンチだ」 えっ!?手がちぎれるの!?本気で言っているのかロボットはガクガク震えている そのロボットの様子に未来技術は嬉しそうにクスクス笑い続けている 「むぅ・・・えいっ」 ボタンを押して手を未来技術の方に向けると翳した右手からいきなり光の様な物が飛び出し、未来技術の目の前を通過した 次の瞬間、部屋の壁が巨大な爆発音と共に吹き飛ぶ 「・・・ちょ・・・押しちゃだめじゃん・・・」 「えっ!?えっ!?本物!!!???!」 「とにかく逃げよう!」 学校壊したんじゃその場に居られる訳がない、未来技術はロボットの腕を引っ張る 走り出した二人に警備員が立ち塞がった 「お前達か!?学校を破壊したのは!」 「ロボット!ガトリング砲だ!!」 未来技術がロボットの腕にあるボタンを勝手に押すと、いきなり腕のダンボールの形が少し変わった 腕から手がなくなり、何か腕がバスターでも撃てそうな形になる 「いっけぇ!!」 キュイーン・・・ガガガガガガガガガガガ!!! 警備員が蜂の巣になる光景にロボットは泣きそうな顔をして未来技術を見上げる 「こわいよぉ・・・」 「大丈夫、僕がいるからね」 未来技術はロボットを強く抱きしめた・・・・・・ 「起きて!未来技術!」 「ん・・・?」 目を開けると目の前にダンボール装備を身に付けたロボットがいた 「もう、夕方だよ?」 「あ・・・早く帰らなきゃ!」 ロボットがダンボールを脱ぐのを見ながら未来技術は夢を思い出した あんなカッコイイロボットがいいんだけどなぁ・・・
https://w.atwiki.jp/2chgijin/pages/71.html
「今日はお団子の日じゃない!?」 車を運転していたVIPに向かってラウンジは自分の手帳を見ながら言う お団子の日というのは近くに結構有名な和菓子屋があり、そこの安売りの日のことだ 和菓子が好きなVIPはいつも歩いてその和菓子屋に行っていたのだが、今日はラウンジの車を運転していた ラウンジとVIPは産まれた病院も同じで、そこから大学まで同じ学校に通っていた 腐れ縁というやつだろうか 「今日何曜日だよ」 VIPはいつものように言うとラウンジは「水曜日だよね」と言った おかしい・・・昨日は確かにトリビアの泉と言う番組がやっていた筈だ 「今日木曜日だろ」 「違うよ!水曜日だって!VIPは本当に曜日感覚がないなぁ」 「じゃあもし水曜日じゃなかったらお前なんかくれるんか?」 VIPの言葉にラウンジは慌てて確認するとニヤリと笑って頷いた 「じゃあもし水曜日じゃなかったらお前、団子奢れよ」 「いいよ」 ゴチになりますた
https://w.atwiki.jp/vipgijin/pages/42.html
「あ!VIPさんにラウンジさん!こんにちわ」 「おいすー」 「こんにちわぁ」 神社仏閣は箒をぶんぶん振り回しながら挨拶をすると、隣にいた心と宗教も挨拶をする 「よ」 「おいすー」 VIPはいつもと変わらないように見えるが・・・と心と宗教は真剣な顔になり霊視を始めた 何か悪いものが付いているわけでもないようだが、何か嫌な空気が漂っている 二人ともの未来に黒い霧のようなものが立ち込めていて酷く乱れている 「・・・!?VIPさんの近くに不吉な影が・・・」 神社仏閣はそう言いながらラウンジの顔を見つめている VIPは不思議そうな顔をしているが、神社仏閣とラウンジの目がガッチリと合うのが心と宗教には見えた ラウンジは何も言わずに神社仏閣に近寄ると笑顔で胸倉を掴む 「ちょっと詳しく、聞かせてもらおうかしら?」 「え、いや・・・その・・・」 涙を見せる神社仏閣にVIPは苦笑いのような顔をしながらラウンジを引き離し心と宗教は神社仏閣をなだめる まだ少し納得のいっていないラウンジにVIPがなにやら耳元で呟くとラウンジは大人しくなった 「あー・・・いや、そうね・・・ちょっと厄介ごとがあったから」 「ごめんごめん、あはは」 そういうラウンジとVIPに神社仏閣はまたしても驚いた顔をしながら走って家に帰ってしまった 残された3人は引き攣った顔をしながら固まる・・・数十秒後に神社仏閣は走って戻ってくるとVIP達の前で地面に躓いて転ぶ 「悪霊たいさぁぁっぎゃ!!」 「「・・・・」」 塩が掛かったVIPとラウンジは何も言わずに立ち去っていった・・・ 「ああ・・・悪霊って二人のことじゃないのにぃ・・・」 「いや・・・お前は頑張ったと思うよ」 流石に引き攣った顔をしている心と宗教に神社仏閣は照れたような顔をする 「そ、そんなに褒めても何も撫でないよ!」 「・・・まぁいいけど・・・」 そろそろ帰るわ、っと言って立ち上がる心と宗教に神社仏閣はうん、とちょっと寂しそうな顔を作る また明日も一緒に遊ぶというのに本当に感受性が豊かな奴だ・・・ 心と宗教は玄関で靴を履いた 「じゃあじゃあ!電話するね!」 「いやいや、明日話せばいいよ」 「じゃあ伝書鳩にする・・・」 「わかった」 伝書鳩に食いついた心と宗教に神社仏閣はやったぁっと喜ぶ ほんとにこいつ、頭大丈夫か?と心と宗教は思いつついつもの事に態々突っ込みを入れるのも面倒だ 「おい!後ろに!!」 帰り様に驚いた顔をわざと作って叫ぶと神社仏閣は反射的に靴べらを掴むと一気に振り下ろした 「悪霊退散ぁぁぁぁ!!!」 「ARYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」 「あ・・・おとうs・・・」 神社仏閣の家から神社仏閣の泣く声がしばらく響いていたそうです
https://w.atwiki.jp/2chgijin/pages/33.html
虫の声が煩い・・・VIPはまた夏の暑さに耐え切れずに家を出た 散歩をしていれば涼しくなるかもしれない そう思いながらふらふらと街の中を徘徊する そうしていると街の中で結構大きい方の神社を見つけた ここはたしか同級生の神社仏閣が住んでいる神社だったような・・・ 木々の陰が涼しくて、VIPはのんびりと神社の奥へと入った 「こんにちわ・・・あっ・・・VIP君?」 「お、神社仏閣だ」 箒を持って巫女のような着物を着た神社仏閣はVIPの姿を見つけてお辞儀をする VIPも釣られてお辞儀を返した 「どうしたんですか?」 「いや、散歩散歩w」 苦笑いをするVIPに神社仏閣はクスクスと笑いながら手を洗う場所を指差した 「あそこ、涼しいですよ」 「おお、ありがと」 VIPが笑顔でそういうと神社仏閣は驚いたような顔をしてVIPを見つめる その神社仏閣の表情にVIPも驚き苦笑いを零した 「VIPさんがお礼をいうなんて・・・まさか!?」 神社仏閣は走って家に帰っていき、VIPは首を傾げながら手洗い場に行き手をパシャパシャと付けた そのVIPの頭の上でバッサバッサと何か白い紙切れが行ったり来たりしている バサバサという音が勢いを増しているのにVIPはイライラを募らせる 「うっるさい!!俺は呪われてねぇよ!」 「ひぃぃごめんなさいぃ」 ガクガクと震えながら下がる神社仏閣にVIPは溜息をついた ほんと、クラスには変なやつしかいないなぁ・・・ 虫が近くの木で大きな声で鳴いていた
https://w.atwiki.jp/2chgijin/pages/56.html
「僕が生きている価値はある」 眼前のパソコンに視線を注いだまま、ヒッキーは呟いた。 「何も生み出さず、ただ資源を消費する。それだけでも十分、僕は生を満喫しているよ」 部屋の中を、パソコンが駆動する音だけが満たしていた。見渡すと、大小様々なHDDが、室内のあちらこちらで電源ランプを灯しているのが見える。ヒッキーの部屋にパソコンがたくさんあるというよりも、パソコンの倉庫に、メガネをかけはちきれんばかりにぶくぶくと太った、油のにおいのする青年が、スナック菓子片手にちょこんと居座っていると表現したほうが正しいかもしれない。これら全てを駆使して、彼はいったい何を行おうというのか。皆目検討もつかなかった。 「お前はここで、ずっと生きているのか」 削除人が、重たい口を開いた。ローブの下でぎらりと光るまなこが、その背中に注がれる。ヒッキーは目を向けずとも、その男のただならない気配を感じたのか、乾いた笑いを漏らし、「怖いね」とまず小さく呟いた。 「五年になるかな」そして飄然と、そう答える。「恥ずかしながら、高校も卒業出来ずじまいだった」 「よく生きてこれたものだ」感心に皮肉を交え、削除人は目を細める。「何も聞かず、何も見ず、何も感じずに」 「僕もそう思う」 言われなれているのか、青年は微塵の動揺も見せずに肯定の意を示した。 「でもねえ、それが成立する世の中に、今はなったんだと思うよ。大抵のものは、こいつで手に入るしね。食材も、本も、トイレットペーパーだって格安で売ってる」 愛しそうに、眼前に広がる液晶ディスプレイの枠を撫でさする。本とかを読む時も、蛍光灯が要らないんだ。こいつだけで十分明るいから。彼にそう言わしめた、二十インチほどの薄型TFT液晶が放つ青白い光線は、不摂生極まりない生活をしているであろうヒッキーの顔色を、さらに不健康的なものにさせていた。 「金はどうしている」 「アフィリエイトで充分稼げるよ。僕が運営しているブログ、見るかい?」 削除人からの返事はない。あ、そう、興味ないのね。と、ヒッキーは軽口を叩いたが、それ以前にアフィリエイトという言葉を、削除人が理解していたかどうかは定かではない。 「友人にもこと欠かないし、ね。会ったことはないけど、イタリアにフィアンセもいる」 「フィアンセだと?」 「ごめん、これ自慢」 ヒッキーは初めて削除人に面と向かい、しし、と歯の間から息を漏らした。彼の顔のパーツを、頬についた脂肪で隠すような満面の笑みだ。少しも可愛らしくない。 「お互い、顔も知らないんだけどね。相談に載ってあげてたら、ある日突然求婚された」 「理解し切れん世界だ」 「だろうね」 「お前のやっていることは、なんというか、詐欺に近いんじゃないか」 「なんとでも言ってくれていいよ」 ヒッキーの、眼鏡の奥にかすかに見える瞳が、ディスプレイが放つものとはまた別の、優しく温かい光をたたえている。「そういう世界なんだ」 「わからんな。それだけの社会性があってなぜ、このような小さな世界に閉じこもる必要がある?」 削除人がその無垢とも言える疑問を口にしている間に、ヒッキーは再びパソコンに向き直りキーボードの操作を再開し始めた。んー。と間延びした返事を一つおいたあとに、ゆっくりと喋り始める。 「その答えになるのは三つ」マウスを操作していたソーセージのような右手が三本、立てられた。 「一つは指摘。あんたの言っているのは『プールでは大丈夫なのにどうして海だと溺れるの』と言っているのと同じだ」薬指が一つ、不器用に折りたたまれる。 「二つめ。時代は、生活全てをリモートで行う方向に進んでいる。僕が行っている生活は、これからの社会が指標としているものに近い。この点を、僕は自負する」 ヒッキーの声に、誇らしさが混じる。社会が、お前を目標に?笑わせてくれる。自らの正統性をとうとうと語る、不純物をたっぷり含有した肉の塊を目の前にして、削除人はそう感じたが、黙っていた。 その男に、えもいわれぬ自信と、説得力を感じていたのも事実だ。 「三つめ。…これが一番大きい」 ヒッキーは、最後に一本残った人差し指を、そのままパソコンのディスプレイに、指を差すように向け、削除人に笑いかけた。 「わざわざ外に出なくとも、ここには無限の広がりがある」 プラスチックを爪で引っかくようなせわしない音が、示し合わせるかのように部屋中のハードディスクドライブから流れてくる。下手糞な鼻歌を混じらせ、ヒッキーはキーボードを叩き続けた。削除人にはどう耳を澄ましてもノイズにしか聞こえない雑音でも、彼にとってはまさに、世界が息づく、心臓の鼓動のようなものであるに違いない。 「うちに僕以外の人間が入るのは、三年ぶりだよ。親は僕が金を仕送り始めてから、すっかり連絡も寄越さなくなった」 立ち竦む削除人に、ヒッキーが改めて声をかけた。 「だからね、勝手に思ってた。次にこの部屋に入ってくる奴は、きっと僕を救いに来るか、殺しに来るか、どちらかなんだろうって」 こう見えてもロマンチストなんだ。と、己がたたく軽口にしししと笑ってみせる。まるで感情を見せない削除人に、いいかい笑うっていうのはこうやってやるんだぜ、とレクチャーしているかのように見える。実に不愉快だ。 「さて、あんたは、どっち?」 ヒッキーはそれきり、口をつぐんだ。部屋は再び、パソコンがうなる音で染まる。削除人は何も答えず、黒いローブで隠された顔からは一切の感情も汲み取ることができない。 数分のあいだ、二人の中に、不思議な時間が流れた。
https://w.atwiki.jp/2chgijin/pages/70.html
「鬼っていると思う?」 クラウンの不思議そうに首をかしげる仕草を見ながらVIPは考えた振りをする 鬼なんかいるわけないとは言い切れないが、今のところ鬼は見た事がない あの戦っている相手が鬼だというなら見た事があると言えるが 「鬼ってどんなのだろ?」 お菓子を食べながらクラウンは足をバタバタさせる 真夏の太陽のせいで焼けた細い足がバタバタとVIPの頭の後ろで暴れてる VIPはクラウンの寝ているソファーを背にして机の上の宿題を片付けていた 「バタバタすんな」 バチンと音を立ててクラウンの尻を叩いたVIPは溜め息を付くとまた宿題にとりかかる クラウンは拗ねた顔をして寝転んでいたが急に起き上がって 「VIPお兄ちゃん、ゲームしよ」 「んー」 「スマブラしよ」 「やるやる」 勉強を投げ出してゲームの電源を入れた時だった 床がどすんと音を立てて揺れる 「 勉 強 は ? 」 ラウンジが仁王立ちをしながら腕を組んで二人を見下ろしながら言い放つ 「「ひぃ・・・ごめんなさい」」 鬼は近くにいた・・・
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/4197.html
四月馬鹿。つまり、エイプリルフール。 僕はこの日が大嫌いだ。 というのも全て、ここ数年のアイツらに原因がある。 本当なら引き篭もってしまいたいけれど……始業式の日でもあるし、僕は仕方なく学校へと向かっていた。 その道中。 「あらぁ?相変わらず冴えない顔で歩いてるわねぇ?」 幼馴染の一人、水銀燈に朝から出くわしてしまった。 「……うるさいな……」 僕は彼女に不機嫌さを隠さない表情でそう告げ、これ以上関わらないように早足で歩く。 背後から「つまんないわねぇ」という声が聞こえてきたが、無視して歩く。 僕と、それから数メートル離れて水銀燈が、通学路を歩く。 嫌な予感が背中からひしひしと伝わってくるのが、何とも最悪な気分だ。 工事中と書かれた看板で封鎖された道を横目に、僕はいつもと同じ通学路を歩く。 途端に、足元が崩れ……僕は大きな落とし穴にはまってしまった。 泥だらけになりながらも、何とか落とし穴から這いだすと…… 「あはははは!実は工事中なのはそっちよぉ!」 水銀燈が大爆笑しながら、看板を横道から移動させていた。 ―※―※―※―※― 泥だらけのまま教室に着くと、金糸雀が慌てた表情で僕に駆け寄ってきた。 「ど…泥だらけかしら!!一体何がどうしたのかしら!?」 僕はそんな金糸雀に、今朝方の事を説明する。 すると彼女は「それは酷いかしら!水銀燈はやりすぎかしら!」と小さな体から大きな声を上げていた。 「そういう事なら、カナから用務員室の洗濯機を使えるよう頼んであげるかしら!」 金糸雀はそう言ってくれるが……これも嘘かもしれない。 そう怪訝な表情を浮べる僕を尻目に、彼女は返事も聞かずに教室から飛び出していった。 そして数分後。 金糸雀はキラッキラの笑顔で帰ってきた。 「乾燥機まで使わしてもらえる事になったかしら!これも才女・金糸雀の交渉力あっての賜物かしら!?」 屈託の無い笑顔でそう告げてくる金糸雀。 その表情を見てると少しでも嘘かもと疑った自分が恥ずかしくなってくる。 僕は体操服に着替え、泥だらけの制服を彼女にお願いする事にした。 泥まみれの服を持って教室から駆け出す金糸雀。 その背中はまるで、お母さんのお手伝いをしている子供を彷彿させ、とても可愛らしい。 でも、金糸雀はそれっきり帰ってこない。 ―※―※―※―※― 「……で、何でそんな格好をしてるですか?」 昼休み。 体操服のまま始業式を終えた僕に、翠星石と蒼星石がそう声をかけてきた。 僕は二人に、金糸雀に騙された事を素直に話し……見る見る内に、二人からの視線は同情的なものになっていった。 「それにしてもチビカナ!純情なジュンを騙すとは許せん奴ですぅ!」 「そうだね。いくら暖かくなったとは言え、体操服だけだと寒いだろうしね」 やっぱり、僕の味方はこいつらだけだ。 感動すら覚える程の優しさに触れ、僕は心からそう確信する。 「体操服だけで風邪でもひいたらどう責任とるつもりですか!?」 翠星石は怒り収まらぬといった表情で、地面をジタバタと踏みつけている。 さらに…… 「大丈夫ですか?寒かったりしないですか?」 そう言いながら、僕の額に手を当てたりしてくれた。 「……ちょっと熱っぽいですね……」 そう言われてみれば、少し寒気がする気がする。 「それなら確か…鞄の中に風邪薬が入ってたと思うけど……」 蒼星石がすかさず、鞄から白い小さな錠剤を取り出す。 本当に、この二人の『気配り・目配り・心配り』には心から癒される。 僕は蒼星石が手渡してくれた薬の錠剤を、お礼を言いながら口に入れた。 フリスクだった。 ―※―※―※―※― 「ジュン…ずっと伝えたかったの……私は…貴方が……」 放課後の教室。 真紅は僕にそう言うと、静かに瞳を閉じた。 何故に告白。 流石にコレは、都合が良すぎる。嘘だろう。 嘘だ。そうに違いない。 そうは思うけれど…… 目の前の真紅は目を閉じ、顎を少し持ち上げて来ているし、その肩だって緊張の為か少し震えていた。 きっとこれは……今日という日を選んだのは、万が一、僕から良い反応が得られなかった時には 「嘘にきまってるでしょ」とか言って、プライドと体裁を保つための……真紅なりの意地なのだろう。 きっとそうだ。そうに違いない。 僕は自分にそう言い聞かせて、それからゴクリと唾を飲んだ。 「……真紅……僕も……」 そう言い、彼女の小さな肩に触れた瞬間。 僕の頭にタライが降ってきた。 ―※―※―※―※― そういった、今日一日の一部始終を見ていた雛苺が、僕の傍に駆け寄ってきた。 よく見ると彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいる。 「ジュン…可哀想なの…… ヒナもね、よく皆に騙されるから……」 そう言うと雛苺は、悲しそうに視線を伏せた。 何だかその仕草は子供みたいで……それに雛苺は、ずいぶんと背も低い。 庇護欲のような感情が沸々と湧き上がるのが、自分でもよく分かる。 僕は雛苺の頭を、そっと、撫でてあげた。 「ジュンは…優しいのね……」 まだ目の端に涙の跡を残したままの雛苺は、それでも精一杯に明るい笑顔を僕に向けてくれる。 「今度はヒナが、ジュンの頭にいい子いい子してあげるのー!」 雛苺がそう言い、僕の頭に手を伸ばす。 だけれど、背の低い彼女では、どんなに手を伸ばしても僕の頭には届かない。 僕は身を屈め、雛苺でも届く位置まで自分の頭を下げた。 「かかったなアホが!なのー!!」 声と同時に、タライで出来たタンコブの上にチョップが突き刺さった。 ―※―※―※―※― 「もう嫌だ!お前ら全員、大ッ嫌いだ!」 感動のフィナーレと言わんばかりの表情で僕の前に登場した水銀燈に金糸雀に翠星石に蒼星石に真紅に雛苺に…… 僕はあらん限りの声で、そう叫んだ。 途端に、大爆笑していた彼女達の表情が氷のように硬く、冷たいものになる。 だがそれも……すぐに悲しそうなものへと変わっていった。 「……エイプリルフールだからって、無理して嘘つく必要は無いのよぉ?」 滑ったジョークを慰めるように、水銀燈がフォローを入れてくる。 「その程度の嘘が見抜けない金糸雀ではないかしら!オーッホッホー!」 金糸雀は得意げな表情で高笑いしてる。 「チビ人間のチビチビ脳みそじゃあ、その程度の嘘しか思いつかないですぅ」 「そうだね。実際に、すぐに嘘だって見抜かれてるしね」 翠星石と蒼星石が何か納得したかのように頷いている。 「無様な下僕ね。エイプリルフールだというのに気を利かせた言葉も言えないの?」 真紅がとっても残念そうにため息をつく。 「嘘を嘘だと見抜けないと難しいのー!」 雛苺が大爆笑しながら、転げまわっている。 ……チクショウ!!どチクショウ!! ああ!嘘だよ!!本当は今日一日、騙され続けでとっても嬉しかったさ!! フヒヒ!!