約 437,219 件
https://w.atwiki.jp/magoriatcg/pages/1675.html
相合い傘タイム(あいあいがさたいむ) 相合い傘タイム アイテムカード 使用代償:なし 常時このキャラは次の特殊能力を得る。 高鳴る鼓動 使用代償:[HP-200] このキャラのHPが300以上の間に使用する。 このアイテムを破棄する。破棄した場合、ターン終了時まで、このキャラを除く、このキャラと同じ作品のキャラ1体が次に受けるダメージに-200する。(1ターンに1回まで宣言可能) 「……あのー、千乃さん やっぱ代わってくれね?緊張しすぎて気絶しそうだ」 Version/カード番号 Ver.13.0/1141 レアリティ R コメント コメントの入力。必須ではない。
https://w.atwiki.jp/jewelry_maiden/pages/811.html
自宅前。 「先輩、ホントすみません」 「ううん、気にしないで」 そう言うのは、家が近所にある大学の後輩。 偶然駅前で雨宿りしている姿を見つけ、うちの傘を貸すためにここまで 来てもらった次第。 でも、僕より身長の大きい彼女に傘を持ってもらっている姿は、端からは 姉妹の相合い傘にでも見えたんだろうなぁ。 「今度ちゃんとお礼しますね。それじゃあ、また明日」 「うん、気をつけてね」 ビニール傘を差し、道路へ向かう彼女の後ろ姿を見送る。 ……さて、晩ご飯の用意しないと。改めてドアを開けて室内へ。 「ただい……うわっ!?」 靴を脱ぎ、自分の部屋の前を通り過ぎようとしたところで、突然そこに引きずり込まれる。 気付けばそのままの勢いで畳の上に押し倒され、何かが僕の上に馬乗りになる。 ……緊迫した面持ちの殺生石が、そこにいた。 「今の女は何者ですか?」 「え、いや、ただいま……」 「今の女は何者ですかっ?」 一度目より怒気のこもった声。 「あ、あの子は、うちの大学の後輩、だけど」 「相合い傘でしたね」 「え、それは……」 「相合い傘でしたねっ」 いつにも増して、有無を言わさぬ勢いがある殺生石。 こんなに怖い彼女は、いつぶりに見ただろうか……。 「ご主人様ー、ご飯の準備しましょうよー」 居間の方から聞こえる蛋白石の声。 「う、うん。ということだから殺生石、離して……」 「取り込み中です、我慢なさい!」 僕の声を遮る、殺生石の怒号。 さすがの蛋白石も、これには反応出来ない。 「さて、だんな様……相合い傘でしたね」 「……はい」 「わたくしは、まだ一度もだんな様と相合い傘をしたことがありませんね?」 「う、うん……」 妙な沈黙。 殺生石の目線に、僕の体は凍り付かされる。 と、その沈黙を破るかのように、インターホンが鳴り響く。 「先輩いますかぁー?」 ……あぁ、今一番来てはいけない子が来てしまった。 「……先の女狐っ。だんな様を奪いに来ましたか!」 「違うから、絶対違うから! 大体殺生石はホントに狐……いえなんでもありませんごめんなさい」 しかし、まずい。 僕は一応一人暮らしということになっている。 ここで蛋白石が気を利かせて出てきたりしたら大変だ。一気に噂が広がって……。 「……だぁれ?」 ……気を利かせたのは電気石みたいだ。 「え? 先輩……あれ?」 玄関の向こうでとまどう後輩の姿が目に浮かぶ。 「せ、殺生石、お願いだから離して。殺生石が思ってることは一切無いから!」 「では、それを今証明してもらいましょうか」 「え、証明……って、ちょ、そこ触らないで!!」 「だんな様とわたくしの絆が偽りでないか、確かめさせていただきます」 「いやいやいや、だからってそれはちょ!」 「へぇー、先輩のお兄さんは国際結婚なんですね」 「う、うん、そうなんだよ。で、この子が兄さん達の子供で、今うちに遊びに 来てるんだよ」 殺生石を何とか振り切り、蛋白石と一緒に僕の部屋に隠し、電気石と一緒に 居間で後輩をもてなす。 ……ダメだ、すっごい疲れた。 「可愛い子ですね。お名前は?」 「んー……でんっ?」 「ま、マリンちゃんっていうんだ、うん」 電気石なんて普通付ける親はいない。というわけでトルマリンからトルを引いて…… 安直だなぁ。 「そっか。よろしくねー」 「ん……」 違う名前で覚えられてるのが不満なのか、わずかにふくれっ面の電気石。 ごめんね、後でちゃんとお詫びはするから。 「で、これ。先輩のうちの合い鍵ですよね? 傘の中に引っかかってましたよ」 「あ、あぁ、ありがとう。忘れてたよ、合い鍵傘の中に隠してたの」 「あまり不用心な隠し方はしない方がいいですよ。ましてや外に置いてある傘の中なんて……」 「う、うん。気をつけるよ。ありがとう」 後輩から鍵を受け取る。 「……めー」 横にいる電気石からも、注意を受ける。 「めーだよねー。それじゃあ先輩、私はこれで」 立ち上がり、脇に置いてあった鞄を手に取る。 「う、うん。わざわざありがとね」 玄関先まで彼女を見送る。 ……僕の部屋から寒気がしたのは、気のせいということにしておく。 「それじゃあ先輩、また明日ー。マリンちゃんもばいばい」 「ん……ばいばい」 電気石に手を振り、うちを出て行く。 ……あー。 「マスター……お疲れ?」 「うん……すっごく疲れた」 「……よしよし」 電気石の小さな手が、僕の頭を撫でる。 疲れるのはこの後も続くんだけどね……。 「ご主人様ー、ごーはーんーっ」 「今の女っ、なぜうちに上がり込んだんですか!!」 ……もう嫌だ。泣きたい。 「……マスター?」
https://w.atwiki.jp/oyatu1/pages/540.html
ぽつり。 授業中に落ちてきたそれは、とても憂鬱な気分にさせてくれて。 「雨、か」 雨は正直好きにはなれない。 どうしたって嬉しくはならないし、濡れるのは欝陶しい。 傘はなぜああいう構造になっているんだろうか。 足元がどうしても濡れてしまうような欠陥品。 ……まあ、だからってないよりはずっとマシなんだけれど。 とりあえず私は、濡れるのが大がつくほど嫌いなのだ。 そういえば、私は傘を持ってきてるからまだ濡れずに済むけど、こなたはどうなんだろう。 忘れているかもしれないし、忘れていないかもしれない。 授業はもう六限目で、これさえ終われば放課後だ。 裏を返せば、この授業が終わったら帰らなくてはいけない、という意味で。 部活になんて入っていないから、雨が止むまで時間を潰すなんてことも出来ない。 本当に忘れていたらどうするのだろうか。 というか、こなたが傘を忘れている事を前提に話を進めているが、実際はどうなんだろう……。 あれ? 何だか思考がループしている気がする。 ううん、このままだとどんどん深みに嵌まりそうだ。 いっその事、聞いてしまえば楽になるのだが、授業中なのでそれも出来ない。 ――早く、放課後にならないかな。 ◆ 授業、ホームルームが終わって放課後。 「かがみ様ー」 鞄に荷物を入れていざ行かん、とした所でこなたが来た。 「びっくりした」 聞こえないように口の中だけで呟く。 「お願いがあって来たんだけどさー」 「ん? 何?」 変な予感がする。こいつ、まさか―― 「実は傘忘れちゃってさ」 「やっぱり忘れてるのかよ……」 そう呟くと会話を中断し、きょとん、とこちらを見上げてくるこなた。 「やっぱり?」 「あんたの事だから忘れてるかな、と思ってね」 と、言ってやるとさっきの顔とは一変、ふうん、とにやける。 「つまり、かがみは私の事が気になって仕方がなかったと」 「何でそうなるのよ!」 そしてこなたは、にやけたまま、そんなふざけた事を言い放った。 いや、気にしてたといえば気にしてたけれど、言われるとなると話は別だ。 「だって私、ホームルーム終わってから速攻で来たもんね」 考える暇なんてあった筈がないのだよ、と胸を張りながら続ける。 「だから、かがみが考えてたのは授業中かホームルーム中だけになるって事」 「それは、そうだけど……」 む、と睨みながら――と言っても恐らく赤くなっているので迫力は無いかもしれない――反論する。 と、こなたはにやついた笑いを止めて、 「まあ、冗談はここまでにして――傘、入れてくれない?」 なんて、提案をした。 「入れる?」 普通に貸して、と言えばいいのに? と聞き返す。 「そ。だってかがみ、今日折りたたみ傘持ってきて無いんでしょ?」 「そうだけど……何であんたが知ってんのよ」 「つかさに聞いたー」 「あ、そっか。つかさと私は今日持ってきてないんだっけ」 今日は鞄が重かったし、持って行かなくてもいいか、なんて言ってたんだ。 「みゆきは? みゆきは持ってきてそうだけど」 「それがさ、なんか、借りるのが心苦しくて……」 申し訳なさそうな顔をしながら頬を掻く。それを見て私は、 「私に入れてもらうのも心苦しいと思えよ」 つい、突っ込んでしまった。 言っている事は何となく分かるのだが――条件反射って恐ろしい。 「だってかがみは私の嫁じゃん? 頼み事なんて当たり前でしょー?」 わざとらしく語尾を延ばし、その一言を強調する。 しかし、その、わざとらしく強調されたその一言は、問題発言以外の何物でもなくて。 「誰があんたの嫁か!」 「かがみが私の嫁だ!」 「な、あ……!」 そこまではっきりと返されると、なんというか、言葉に詰まる。 こなたは真っ赤になっている私を見つめ、ほんの少しだけ考える素振りをして、体を翻した。 「じゃ、異議もなくなった所で、帰りましょうか」 「え、ああ、うん。帰ろっか」 もちろん、異議が無い訳じゃなくて――むしろ全身全霊をかけて唱えたい――けれど、 このまま話を続けても、私にとって不利な状況にしかならないと思うし、追求はしない。 ……よく考えたら教室の真ん中でなんて会話をしてたんだろう。 ああ、顔の温度がまた上がった気がする。 こなたが後ろを向いてくれていてよかった。 ◆ 昇降口に着くと、雨が地面を叩く音が一層強く聞こえた。 「うわー、すごい雨だねー」 「そうね。この中を帰ると思うと……」 考えるだけでも嫌だ、とため息を吐いて肩を落とす。 「だよね、相合い傘だと厳しいかもしんないよね」 「――――――――はい?」 硬直。思考が復帰しないまま言葉を紡ぐ。 「な、あ、相合い傘……っ!?」 「え? だって一緒の傘に入るんでしょ?」 それ以外の何になるの? とでも言いたそうな目で見つめられた。 「そ、それは、そう、だけど。その、えっと」 あわあわしながら反論しようとするが、何も言葉が浮かんでこない。 「あー……、落ち着いてかがみ。はい、深呼吸深呼吸」 吸って、吐いて。吸って、吐いてを繰り返す。 ――うん。少しだけど、落ち着いた。 「……何で、わざわざそんな言い方するのよ」 「他の言い方が思い付かないから、とか?」 「む、確かにそうだけど……」 そう言われると、他の言い方が見つからない。 いや、でも、恥ずかしいし、もっと別の言い方は無いものか……。 「んじゃ、相合い傘しよっか」 「今すぐみゆきに傘借りろ!」 びしい、と音がしそうな程に指を突き付けて言う――というより、それは、叫ぶに近かった。 「んー? みゆきさん達もう帰っちゃったよ?」 「なあっ!?」 予想外だ。というより今の今まで気付かなかった私に突っ込みたい。 「どっか寄る所があるんだって」 「つかさとみゆきが?」 こんな雨の日にあの二人で寄るところとは、どこだろうか。 「うん。多分、無駄話してるうちに帰っちゃったと思うよ」 「ふーん?」 疑問に首を傾げていると、こなたは私の右腕に巻き付くような形で抱き着いてきた。 温もりとか柔らかさが右腕いっぱいに広がってってこんな事を考えてる場合じゃ―― 「私達も帰ろう。雨足も強くなってきたしね」 「分かってるけど、離しなさいよ!」 軽く振るようにして、無理矢理離させようと試みる。 が、こなたは腕に合わせて揺れるだけで全く離そうとはしなかった。 「何するのさー」 「それはこっちのセリフよ」 いきなり抱き着いてきたのはこなたなのだから、こなたに否があるはずなのではないか。 「ほらほら、とりあえずもう傘ささないと濡れちゃうよ?」 「え、あ、ホントだ!」 意味のない問答をしてるうちに、昇降口を出かけていた。 急いで傘をさそうと試みるけれど、 「って、離れてくれなきゃ、させないじゃない」 ワンタッチで開くタイプだったらよかったのだろうけれど、これは違うのでそうもいかない。 むう、と不服そうな顔をして離れるこなた。 「傘さしたらすぐにさっきの体制だからね?」 離れたのはいいものの、そんな提案をするこなた。 「……異議は?」 「却下します!」 これはもう何を言っても駄目だな、と諦めて、 躊躇いつつも傘を広げ、抱き着きやすいように右腕を広げる。 「ほら、おいで」 その一言がどこか気になったのか一瞬目を見開いき、辺りを見回した。 「ねぇ、かがみ……無自覚?」 「え?」 何が? と視線で聞くけれどこなたは、はあ、とため息をついて俯くだけで。 「何よ。ため息吐くと幸せが逃げるわよ?」 その様子が何となく気に入らなかったので、皮肉っぽく言ってやった。 「現在進行系で逃げてる感じがするよ……」 はあ、とため息もう一つ。 さっきまでの妙なはしゃぎ様が一瞬で洗い流されてしまったような、そんな感じ。 「あーもう、何が何だか分かんないけど行くわよ」 さっきとは逆に、こなたの左腕を取るようにして昇降口を出る。 「――――――」 ぼそり、とこなたが何かを呟いたように聞こえたけれど、私の耳にその言葉は届かなかった。 ◆ 雨の中を歩く。いくらこなたが小さいからといっても、傘に収まりきる事は無くて。 「やっぱり、濡れちゃうね」 「そうね――もしかしたら、これってささなくても一緒なんじゃ……」 足元はもとより、肩までもぐっしょりと濡れてしまっていて、 これだったらいっその事無い方が……とも思ったけど、それには抵抗があるというか。 「まあ、いいじゃん。せっかくの相合い傘だし」 「まだ言うか!」 顔を背けながら突っ込む。 そのせいでこなたの顔は見えないが、にやにやしているのだろう声で、 「だってチャンスだしね」 と、意味不明な事を口にした。 「チャンス?」 その一言がなぜか気になって、背けていた顔をこなたに向け、尋ねる。 一瞬見えた顔は本当に嬉しそうで、しかし、私が見ていると分かった途端、 「うあ! ちょ、待って! 今の無し!」 顔を赤くしながらわあわあ騒ぎだした。 「…………何よ?」 「だから、今の無しだって!」 いや、そう言われても、気になるものはどうしても気になるというか。 「そんな反応されたら気になるに決まってるじゃない」 「それでも駄目! 記憶から消し去って!」 うああ、と唸りながら右手で自分の頭を抱えている。 「そこまで言うならいいけど……力、緩めてくれない?」 さっきからギリギリと締め付けられているせいで、右腕が痛い。 「わ! 知らないうちに力込めてた! ごめん!」 「別に、気にはしてないけど――少し落ち着きなさい」 さっきからの騒ぎ様はちょっと異常だとしか思えない。 「はい、深呼吸」 数回呼吸するものの、こなたの顔の赤みは増していくばかりで。 「駄目だ……余計落ち着けない」 「何でよ」 こなたは眉を寄せて思案顔をすると、赤い顔のまま呟いた。 「……秘密」 「あ、そう」 いつもとはあまりにも違う様子。 それをあまり追求するのは悪いかな、と思い、そのまま歩く事にした。 「――いつか、言うから」 「……そう」 ぽつり。 降りしきる雨の中でも、こなたの言葉は綺麗に響いて、私の耳に届いた。 うん。追求はしないけれど、絶対に忘れてはやらない。 心なしか弱くなった雨の中を歩きながら、たまには濡れるのも悪くはないかな、と思った。 異常、デート?へ続く コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-02-24 23 26 42) こうゆうの大好きです -- 名無しさん (2008-04-28 02 43 17)
https://w.atwiki.jp/nennouryoku/pages/164.html
投稿日: 02/07/19 20 42 00139 能力名 惹き寄せる相合い傘(アンブレラサイン) タイプ 念干渉・条件強制 能力系統 操作系 系統比率 未記載 能力の説明 対象者二人の胸元に、二人のフルネーム入りの相合い傘を記すことで(記した紙を張り付けるのも可)その二人の念を封じる。 これを解くには二人が熱い抱擁(サバ折り)をしなくてはいけない。 ただ、サバ折りするのは片方だけでよい。二人のうち一人を能力者本人にしてもよい。 制約\誓約 - 備考 - レスポンス 類似能力 発動条件に対してリターンがデカイ気がします。対象者の感情次第で能力者に対する何らかのマイナスなフィードバックが欲しいですね。 -- 2021-09-05 01 58 34 コメント すべてのコメントを見る 念干渉 操作系 条件強制
https://w.atwiki.jp/magoriatcg/pages/1352.html
https://w.atwiki.jp/viptndr/pages/295.html
430 名前:ツンデレと相合い傘[] 投稿日:2011/06/01(水) 21 35 25.83 ID u4MSjIHcP 『ふぅ・・・雨は憂鬱ね』 『あいつと一緒に帰れたらなー、でもタカシ部活あるとか言ってたし』 『最近あいつと一緒に帰ってないな・・・っていやいや何タカシのことを考えるんだ、私』 『別にあいつなんてどうでも・・・はぁ・・・』 「・・・・・・か・・・・・・なみ・・・・・・な・・・み」 『なんかあいつのこと考えてたら空耳まで聞こえるし・・・』 「・・・なみー・・・・・・かーなーみー・・・」 『空耳、空耳』 「おーい、聞こえてるんだったら振り向けよ!なに?無視しちゃうわけ!?」 『きゃあ!!ってあれ空耳じゃない?』 「空耳ってなんだ?っと傘の下、失礼」 『あんたびしょ濡れじゃない、傘どうしたのよ』 「持ってたらここまで濡れないし走ってこない。あともうちょっと傘をこっちに」 『たしかにそうだけど・・・、これ折りたたみ傘だしそっちにやったら私まで濡れるでしょ』 「いやいやもうちょっと密着してだな・・・」 『ふぇっ!?ちょっとちか、密着しすぎだからこれ!』 「仕方ないだろー、かなみ顔むちゃくちゃ赤いぞ」 『なっ気のせいよ気のせい!だいたいあんた部活あるって言ってなかった?』 「今日は休みになったんだよ、まっ久々にかなみと一緒に帰れるからいいけど」 『ななななに言ってるのよっ!そんなこと言われてもうれしくないから!』 「にやにやしながら言う台詞じゃないぞ。って濡れる!濡れる!」 『ぐぬぬ・・・ほら、もっと寄りなさいよ』 「さすがに折りたたみじゃ無理があるな。でももう着くから走るかな」 『いやちょっと待って!ここまで来たんだから最後まで一緒に』 「かなみが良いんだったらいいけど」 『良いから、うん別にそんな迷惑って訳じゃないし、むしろ歓迎って言うか・・・』 「うん?最後の方なんて言った?」 『っなんでもない!』
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1258.html
小綺麗な表現から掛け離れることになるが、汚れた床を拭いた雑巾、それを絞った際にバケツに溜る水のような色をした空だった。 重い雲が高層ビルの直ぐ上に伸し掛かり、仕事を終えて局を出た僕は一雨降りそうなご機嫌斜めな空模様を見て、 ああこの人と同じだなと思った。 「なんか直ぐに降りそうですね」 灰色の町並みを見渡す隣の彼女に声を掛ける。 「ほんとぱっとしない天気ね。さっきのあんたみたい」 「え? あー、ああ……」 収録でのトークが何時にも増してぐだぐだ一本調子だったので、彼女が言っているのはそのことだろう。 あそこでああ言えば良かった等と一人反省会を開いていると、彼女が歩き始めているのに気付くのが遅れてしまった。 慌てて開いた数歩分をなぞるが、小さな背中は並んで歩くのを拒んでいるように見えたので二歩程離れて続く。 彼女も僕も今日の仕事は済ませたし、帰り道は途中まで大体同じだ、態々違う道を選ぶことも無い。 そもそも、この和気藹々とは呼べそうに無い空気を作ったのは自分なのだから何とかしないと。 何時降ってもおかしくない空だなと見上げると、早速額に冷たい雫が落ちた。 「あーあ、降ってきちゃった。誰かさんのトークがぐっだぐだなせいでさー、お日様もご機嫌斜めになっちゃったんじゃないの?」 「やー、それは無いと思いますけど。すいません」 勿論彼女が言っているのは冗談だが、この雨は僕のせいなのだそうだ。 ぽつりぽつりと地面を叩く小さい雨音。 彼女は斑点模様が付き始めたコンクリートの上を、走るでも無く雨宿りが出来そうな所を探すでも無く歩き続ける。 開いた二歩分の距離を詰めて彼女と並ぶ。 「あきら様、傘持ってます?」 「ねーよ」 そりゃそうだ。馬鹿なことを聞いた。あったのなら差しているだろう。 「じゃ、ちょっとそこ寄りましょう」 そう離れていないコンビニを指差す。 先程まで元気良く跳ねていた明るい色の髪は雨と湿気にやられて垂れ下がっていた。 寂しがりな小動物の伏せられた耳に見えないことも無い。 やっぱり彼女の髪は溌剌と飛び跳ねていないと。勿論本人も。 「濡れたままだと風邪引きますから、ね?」 直ぐに辿り着いた店の銀の取っ手を握って扉を押し開く。 「へいへい」 店内は暖房が利いていて、暖かい筈なのに濡れた体には反って冷たく感じる。 背中をぞくりと悪寒が走り、これはさっさと帰って風呂に入るようにしないと、 と思って入口付近に立ててある新品のビニール傘に手を伸ばす。 傘を二本取り上げるのと殆ど同時に制服の裾が軽く引っ張られた。 顔だけで振り返ると、一歩引いた所に彼女がいて僕の上着の裾を遠慮勝ちに摘んでいた。 「あのさぁ」 「はい」 体ごと彼女の方を向いて、聞く姿勢を取る。 けれど彼女は続きを言わずに僕の手の中にある傘を見詰め、 何かを言おうか言うまいか迷っているような鼈甲飴の色をしていた目は暫くして伏せられた。 溜め息を吐くついでと言わん許りに彼女は仕方無しに口を開く。 「お菓子買っていい?」 「え?」 随分と真剣な表情だったので何が来るのかと思っていたら、お菓子。そこまで悩んで聞くことだろうか。 「あ、はい、どうぞ」 近くにあった買い物籠を手渡す。彼女は、ん、と短く喉から音を出して籠を受け取った。 チョコやクッキーが並んでいる棚やアイスには見向きもしないで、柿の種やかりんとうやするめを籠に突っ込む。 お菓子なんだかおつまみなんだか。 別の棚で苺みるくを手に取って、後ろで見ていた僕を振り返った。 「あんたは? コーヒー牛乳?」 お酒に手を伸ばさなかったことに内心ほっとしながら、首を左右に軽く振る。 「いえ、お構い無く」 「いーから」 彼女は聞き入れずに前に向き直ってコーヒー牛乳を掴んで籠に入れた。 最後にレジの前に置かれている台から苺大福を二つ選んで、彼女は財布を取り出した。 ここは代わりに払うべきなんだろう。レジの上、籠の横に傘を二本置いて財布を出す。 「ここは僕が払いますから、あきら様はいいですよ」 ぴっ、と店員が機械でバーコードを読み取る高い音を聞きながら彼女にそう言う。 「……あのさ」 彼女は真ん前を向いたまま、か細い声で呟いた。 「はい?」 「………あんたんち、ビニ傘なんてそんなにいっぱいあっても邪魔でしょ」 「え? 片方はあきら様に差し上げるつもりだったんですけど……って、あきら様?」 店員が籠の中の物を全て機械に通して片方の傘を手に取った瞬間、 彼女はもう片方を引っ掴んでレジから離れ、それを元の場所に戻してしまった。 何してんですか、と追い掛けて傘を再びレジに持って行こうとしたけれど、 店員が値段を告げる方が早かったので先にこちらを済ませる。 意図の読めないその行動に首を傾げながら、入口で待っていた彼女に傘を渡した。 袋は自分で持ったままにする。 「あきら様、一本じゃ帰れませんよ?」 ふいっ、と彼女は僕から顔を背けて、扉の取っ手を握る。 「なんでよ。一緒に入ればいいだけでしょ」 そういえば、いつになったらコンビニは自動ドアになるんだろう……じゃない。 余りにさらりと言われたので、ああそうですねと頷く所だった。 「あの、一緒って」 実際にそうしている訳でもないのに、早くも手の平が汗をかく。 寒いと感じていたのに急に体が熱くなって、袋を落としそうになった。 どこまで初なんだ。中学生日記の主人公か。 「それって、あ、相合い傘、になっちゃうんですけど……」 喉でつっかえそうになる言葉をどうにかして押し出すと、彼女は取っ手を握ったままの体勢でぴたりと止まった。 固まった僕達の間に流れた数秒間の沈黙は、果たして振り返り様に顔を真っ赤にして怒鳴った彼女によって破られた。 「一々言うなばか! わかってるっつーの!」 それに反応する一分の隙も与えずに、彼女は扉を開いて外に出る。 久々の喝に肩を竦めてびびっている場合では無い、慌てて店を出て隣に並ぶと、 彼女は僕と目線を合わせようとしないで傘をこちらに突き出した。 差せということらしい、受け取って開く。 余程緊張していたのか何なのか、そのまま差して隣のスペースに彼女を呼べばいいものを、 なかなか踏み出せずにその場に固まってしまった。何やってんだ。 「さっさと動きなさいよ。それともなに、あたしとじゃ嫌って訳?」 「いやっ違います違います! すいません」 ビニール袋を左手に持ち変えて、屋根の下から出る。 「ど、どうぞ」 傘を持ったままの右手で明らかに不審な動き、良くて変な踊りにしか見えない手振りで右隣に彼女を呼ぶ。 格好悪い。もっとこう、流れるように誘導出来無いのか。………出来ないな。 「ん」 何してんの馬鹿、等と言ってくれればまだ楽になったのだろうが、 生憎彼女もスムーズとは程遠い、ぎくしゃくとした足取りで傘の下に身を収めた。 また二人とも前を向き、お互いに目を合わせられないままで固まってしまう。 「ええと、す、進んでもいいですか……」 「一々聞くな、あほ」 「すいません……じゃ、動きますよ?」 「だから一々言うなっての。そだ、いちで右足? 左足?」 「そうですね、じゃあ、いちであきら様は左足で僕がみ………え? そんな、二人三脚でもないのに?」 「あ」 もう二人してボケボケだ。 ただ歩くだけなのに何故こうも覚悟が必要なんだ。とりあえず一歩踏み出してみると、彼女がワンテンポ遅れて付いて来た。 また足が固まって動けなくなりそうになったけれど、一歩進むごとに立ち止まっては切りがないのでなんとか続けて足を出す。 「もうちょっとこっち寄んなさいよ。あんた濡れてるわよ」 一本の傘の下に二人の人間が収まろうと思えば、当然その二人は引っ付くと言うか肩を寄せ合わなくてはならない。 けどそれをせずに傘を彼女の方へ彼女の方へとやって、それで自分の肩が濡れるのは構わないと思っていた所にこの好意的な言葉。 「え? ああほんとだ、濡鼠になっちゃうとこでした」 あははー、と気楽に笑うけれど、それでも距離を縮められない。 だって恥ずかしいし! 体の他の所は冷えてるのに、腕と腕が引っ付いた所だけ暖かいとか生々しいし! 依然として微妙な距離を開けたままで歩いていると、 「………けっ」 舌打ちされました。 おかしいな、あきら様が甘えて来たのならそれなりに応えるつもりでいたのに緊張して全然駄目だ。 これじゃ話にならないと悩んでいると、早いもので彼女と僕の帰路が分かれるいつもの箇所に着いた。 荷物もあるし、傘を彼女に渡してここで別れる訳にもいかない。 夜どころか夕方と呼ぶにもまだ早いけれど、雨雲のせいで薄暗いし、送って行こう。 彼女の家が建っている方向に曲がると、何故か彼女に正面からぶつかった。 「ふわっ!」 「へ!?」 ぼす、と漫画のような効果音付きで胸の中に突っ込んで来た桃色の頭に危うく袋を取り落としそうになる。 な、なんだろう唐突に。 「どう、どうしたんですか? あきら様」 僕の家に繋がる方の道に進むつもりだったのだろうか、でないと向き合って衝動なんてしないだろう。 こちらの道に彼女が寄りたがるような所なんてあったっけ。 傘の柄を握り直してそう聞くと、旋毛と額しか見えていなかったが彼女が顔を上げたので金色の目が現れた。 「どうって、どう……え、うー……んと」 目から下は上着に埋められたまま、顔はその位置から動かずに目線だけで見上げられる。 これって、ひょっとして上目遣いとかいうやつか。可愛い。 「ん……お菓子、こんなにいっぱい、あきらだけじゃ食べらんないし」 見上げるのを止めて、額を上着に擦り付けて彼女はごにょごにょと呟く。 「苺大福もふたつ買っちゃったし」 僕の黒と彼女の白の間に挟まれた耳が、赤いような気がしないでも無い。 「払ったの白石なのに、あたしが全部持って帰るの悪いし」 彼女と触れ合っている所だけが暖かくて、背中と胸の温度の違いが予想した通りに生々しい。 「あんたのコーヒー牛乳もあるしさ」 そうやって気を遣っても、今ここで僕の分を渡してさようならするつもりでも無いようだ。 いつもはジュース買って来い肩を揉め等とはっきりと要求してくるのに、彼女は何が言いたいのだろう。 今日に限って妙に歯切れが悪い。 「ほんとにもう、お前は……ここまで言ってんのにどーしてわかんない訳……」 「ええっ、いやいやいや、そんな! 解ってますよ当たり前じゃないですか」 呪いのように低音で呟かれ、口で誤魔化しながら必死にあれやこれやと考える。 この人が望んでいることで僕が出来ることなら成る丈叶えたい。 けれど、何を望んでいるのか解らないことにはどうしようも無い。 なんだ、どうすればいい。 帰り道、一本の傘に二人、向き合って、頭を預けられて。 解らん、誰かヒントくれ。 気持ちばかりが焦って具体的な何かをしようにも出来ないでいると、くちゅん、と随分と可愛らしいくしゃみが聞こえた。 「え、あきら様風邪ですか?」 「かもね。なんか寒いし」 たっぷり余った袖で彼女は鼻を擦る。 寒いのはずっとこの場で棒立ちにさせてしまったせいだ。 それで、こんな所で棒立ちにさせてしまったのは多分僕のせいなんだろう。 そう思うと申し訳無いのと自分の情け無さにうんざりするのとで気持ちがいっぱいになってしまう。 とりあえずここでこうしていても埒が明かないので、とりあえず、とりあえず駄目元で提案してみる。 「あの……良かったら、その、寄られますか?」 「どこによ」 「ええと、僕の家……と言うかアパートと言うか……いや目茶苦茶しょぼいんですけどね」 ここから彼女の自宅までは結構ある。 それと比べれば僕が今住んでいる所の方が近いので、まあ、早く暖を取りたければそちらの方が得策だ。 べ、別にあんたの体心配して言ってるんじゃないんだから! 勘違いしないでよね!! ………遊んでいる場合では無い。 じいっ、と半目で見据えられ、まずかったかと冷汗が垂れる。 「や、駄目でしたらいいんですけど、そんな無理にとは言いませんから。 あきら様さえ良かったら、です。ここにいても寒いだけですし」 沈黙が息苦しくて、つい早口で捲し立てる。 それを聞いた彼女は顔をずらして、僕の制服に頬を押し付けるようにした。 「……ふーんだ。やっと分かったって訳ね」 「は」 「さっさと行くわよ」 「ど、どちらに?」 「あんたんち。やっぱ駄目ですとか言うなよ、男に二言は無いんだからね」 体が離される。彼女の爪先は僕の家に繋がる道の方を向いていた。 触れていた、そこだけが暖かい。名残が体の奥に染み込んでいくような気がした。 この空とお揃いだった彼女の表情が少し明るくなったように見える、これで一安心だ。 自然と口振りが軽くなる。 「やだなー、あきら様ってば。言いませんよ二言なんて」 「どーだか」 小さな水溜まりを飛び越えた彼女の後に付いて、さり気なく隣に並んで、もう一度傘を掲げて、………………。 数歩も進まない内に、びしり、と音を立てて固まってしまった。 「んー? どしたの?」 いきなり立ち止まった僕に彼女は浮かしていた片足を地面に下ろして、結局半歩だけ進んだ位置で振り返る。 「や、何でも無いです」 強めに首を左右に振る。否定を示すのと、妙な感覚を振り払うために。 「? 変なの」 小首を傾げる彼女を視野に入れないように、ぎぎぎ、と錆び付いた機械のようなぎこちない動きで首と目を明後日の方角へやる。 今目を逸らそうとしているのは、彼女の今の有様と、それを目の当たりにした際の己の反応だった。 いつもは跳ねているサイドの髪が、雨に濡れたせいで頬に張り付いていた。 そこから零れた雫が、彼女のまだ幼い丸い輪郭をなぞり、 白い首筋を伝って大きく開いたセーラーの更にその奥に滑り落ちるのをたまたま見てしまって。 その時に、自分の喉が引きつるように揺れるのを感じた。 小さく溜め息を吐く。自然と視線が地面に落ちる。 あんまり、そういうことは。 以前のアイドルとそのアシスタントという立場なら、気のせいの一言で片付けることも出来ただろうけど、 今はその範囲から足の指一本はみ出しているかいないか、自分達のことなのに良く解らない状態だから、なんと言うか。 彼女のことは好きだけれど、そういう対象では無いと自信を持って言えていたから、この提案も出来たのに。 今の今まで、彼女相手にこんなこと考えたことも無かった。 こんな微妙な心境のまま家に呼んでしまったら、そういう展開に流れてしまうパターンだって、 有り得ないことも無い、と思わないことも無い、と思ってしまう。………日本語じゃないな。 「あんたんちって、あれ?」 袖に包まれた手が、古い小さなアパートを仰ぐ。 この仕事がしたくて、親元から離れて一人暮らし。両親の説得にどれだけ苦労したことか。 「……ああ、はい。あれです、けど」 「けど?」 二言は言わないと言ったけど、言ってしまいたい。 やっぱり今日は家には上げられません、だとか。 彼女だって僕が一人暮らしをしていることは知っている筈だ。以前にそんな話題になったのを覚えている。 だったら、彼女だって彼女自身が困るようなことは進んでしないだろう。 「いえ、何でも」 自分から提案したことだし、ここまで来て帰すというのも酷だ。そんなことをしたら本当に風邪を引かせてしまうだろう。 大丈夫、僕がしっかりしていれば何もない。 部屋の前に着いて、鍵を使って扉を開く。 「お邪魔しまーす」 「どーぞー。何も無い割には散らかってますけど」 暖房を起動させて、部屋をさっと見渡す。 整理整頓が出来ているとは言えないけれど、細々した物が散らかっているだけでごみを放置したりしている訳では無い。 「ふーん。もっとごちゃごちゃに散らかってるのかなって思ってたけど、そうでもないのね」 彼女はぐるりと一通り部屋を見渡す。 一先ず彼女も僕も冷えてしまった体を暖めないとならない。 てことはあれか、風呂か。風呂でいいのか。 躊躇することなんて何も無い筈なのに、それを自分から言うのは遠慮してしまう。 結局、僕が何か言う前に彼女が口を開いた。 「白石」 「はい」 「お風呂借して」 極自然な表情でそう言われ、かなりほっとした。 「あ、はい。こっちです、どうぞ使って下さい」 これが顔を赤らめてもじもじしながらだったらもう、ね、でも今この人もろに素だし。 それと同時に変に意識していたのはこちらだけだったのか、なんて少し残念に思ったり思わなかったり。 「使い方分かりますか?」 「たぶんね。どこの家だって大体同じでしょ」 脱衣所まで案内して、押し入れの中に新しいバスタオルがあった筈だよなと記憶を辿る。 早速それを取って来ようとすると、悪戯を閃いた子どものような表情を浮かべた彼女に、 「あのさぁ」 と呼び止められた。 僕が立ち止まると、彼女は余った袖ごと両手を口元に持って行く。 肩を窄めてくすくす笑っている。何か面白いものでも見つけたのだろうか。 「待ってる間、寒くない?」 「そりゃ少しは。でも」 「一緒に入ろっか?」 気にしないで先に入って下さい、と続けるつもりだったのだが、それもぶっ飛んだ。 この人今なんつった? でかでかと、これは冗談ですと書かれた満面の笑顔でそんなことを言われ、 からかわれているのは火を見るよりも明らかだけれど、それでも首の根本からじわじわと熱が顔に上ってしまう。 「けっ……結構です」 やっとのことでそれだけ言うと、彼女は多分真っ赤になっているだろう僕の顔をちらりと窺って、 見ていられない、おかしくて堪らないといった風に再び俯いて笑い声を漏らす。 笑われてしまう程情けない表情をしているのが、鏡を見なくても良く解る。 「あきら様ー………」 吹き出す彼女に非難めいた声を上げずにはいられなかった。 「ごめ……でもさ、だって。あんたのそれ……ふふっ、その顔、顔!」 遊ばれている、思いっ切り遊ばれている。 人が悪いとなじるには余りにも幼い、正に悪戯っ子と呼ぶに相応しい振る舞いを見ていると、どうにかして一矢報いたくなった。 だってそんな、ただ驚かされるなら未だしも、その手の、そういう照れを伴うのはずるい。 ここが一人暮らしの男の部屋であることと、その男とは微妙な関係にあることを自覚して欲しい。 彼女のアイドル生命に僕が傷を付けてはいけないんだ。 お腹で折り曲げられた体にくつくつと揺れる肩、 それから跳ねた一房の髪とつむじを見下ろして平気を装う。 「そうだ、あきら様。折角ですし」 普段の他愛無い会話の延長のように軽い口調で、ぽん、と手の平を合わせる。 すると手でお腹を押さえた体勢のまま、彼女は首だけ動かしてこちらを見た。 人差し指を立てて脳天気に笑って見せる。 そっちがそうなら、こっちはこうだ。 「御背中流しましょうか?」 時間が止まった。あきら様の。 そんな印象だった。 満足そうな笑顔が一瞬にして固まり、目が点になる。 次に弧を描いていた唇が薄く開いて、ぽかんとした表情になった。 「は? へっ?」 言葉の意味が直ぐに飲み込めなかったのか、きょとんとしている。 しかし一秒と経たずに折り曲げていた体を伸ばし、垂れ気味だった眉が跳ね上がり、更に眉間に控え目な皺が寄った。 まずい、怒らせた。 何時握り拳が飛んで来てもいいように反射的に身を固くするが、そこから明らかに彼女の様子が違った。 頬だけに止まらずに首筋から額に掛け、更には耳まで赤くして、 「んな、なに、なに言って………」 そう呟きながら後退りする。 が、何分狭いので直ぐに後ろの壁に背中が触れてしまった。 紅葉を散らしたようなという比喩は今の彼女にぴったりなんじゃないのか、それくらい鮮やかな赤色だ。 いや、それよりも。 そういう反応をされると、こっちの体温まで上がってしまう。 「なにが、なにが折角よ、なにが折角なのよ。い、いいい意味分かんない………白石のあほ、ぼけ、ばかじゃないの……」 ここまで効果覿面だとは。 あれ、ちょっとした反撃のつもりだったのに、なんでこんな。 一旦無理に押し下げた熱がまた湧き起こる。熱いなんておかしい、冷え切っていて寒い筈なのに。 紅葉を散らすどころか一面に打ち撒けたような顔で何故か目を逸らせずにお互い凝視して、 ってなんだこれ、睨めっこじゃないんだから。 「あ、あの」 駄目だ、この沈黙は耐えられない。 これ以上見詰めていてはどうにかなりそうなので視線を彼女から外す。 「冗談、だったんですけど……」 よーし言えた! このままあれな流れ、あれってどれだよこんにゃろう。 とにかく変な展開に持って行かずに良く頑張った。偉い。 誰も褒めてくれないだろうから自分で褒める。よしよしみのる偉い偉い。 「ふぇ……?」 弱々しい声が漏れて、思わずそちらを向いてしまった。 そこにはあきら様が壁に背中をくっ付けたままで、ぱちぱちと瞬きを繰り返していた。 「じょう、じょ……じょうだん………?」 そんな言葉は聞いたことが無いとでも言うように、小さな声を零す。 吊り上がっていた眉はへにゃりと垂れ下がり、形のいい唇が細かく震えていた。 次に頭が垂れ、肩が小さく震える。 よっぽど寒いのだろう、要らないことに時間を割き過ぎた。 早く風呂に入って貰うために僕が声を掛けるのより先に、彼女の頭が持ち上がった。 下がっていた眉は再び吊り上がっていて、鋭い目付きに似合わない赤い顔のままだ。 スカートの襞ごときつく握った拳を震わせながら、息を吸い込んで怒鳴り散らす。 「だぁれが、だーれが、いつ、何年何月何日何曜日何時何分何秒に本気にしたっつった!? 冗談に決まってる。あったりまえだろ、このぼけっ!」 「で、ですよね、そうですよね当たり前ですよね!」 「そーよこのあほ! 下んないこと言ってないでお前なんて箪笥の角に小指ぶつけてリアクション芸の練習でもしてりゃいいのよ!」 考えただけでも痛い。というか僕はリアクション芸人ではありません……。 でも良かった、本気にされていたらどうしようかと思ってた。いやどうもしないけど。 まあ、万が一ひょっとしてもしかして罷り間違って実は本気にされていたとしても、 キスなら未だしもちゅーなんて言うような人が、まさか背中を流してそこから先のことを考えている訳が無い、よな、無いと信じてる。 ………今日は良く日本語が崩壊する。 「で? いつまでそこにいる気、あたしなんかに用無いんでしょ。だったら……」 底冷えするような声が殆ど閉じられている唇の隙間から冷気のように流れ出す。 あたしなんか、という彼女らしくない自虐とも取れる台詞に思わず目を見張ってしまった。 しかし、表情を窺うよりも先に袖に包まれた両手がセーラーの裾を摘んで軽く持ち上げていたのが目に入る。 脱ぐのなら僕が出て行ってからにして下さい、気の早い。 それでフリーズしたのは驚いたからであって他意は無い。ないったらない。ないってば。 動かない僕を彼女は、あの白目の範囲が極端に広い目で見て、 「さっさと出てけ、白石の、白石の……」 セーラーから手を離して床に置かれていた液体洗剤のボトルを鷲掴みにする。 え、なんでそんな物持つんですか。まさか!? 「い・く・じ・な」 振り上げてー、 「しぃーっ!!」 投げたーっ! なみなみ入っているから結構な重さの筈だ。それを片手で。 冗談だとは言え、悪ふざけが過ぎたみたいだ。 「え、ちょっ待っ、すみまふげっ!!」 風呂で暖まったら早いこと帰って貰った方がいいんじゃないのか、でないと二つの意味で僕の身が保たない。 痛いのともやもやするのとで。 コメントフォーム 名前 コメント 今でも続き待ってます・・・! -- 名無しさん (2009-02-26 03 06 12) 最高です!萌え… -- 名無しさん (2008-02-06 02 31 34)
https://w.atwiki.jp/nennouryoku/pages/938.html
発動条件に対してリターンがデカイ気がします。対象者の感情次第で能力者に対する何らかのマイナスなフィードバックが欲しいですね。 -- 2021-09-05 01 58 34
https://w.atwiki.jp/viptndr/pages/1183.html
にかわりましてVIPがお送りします[]:2011/10/22(土) 15 47 39.59 ID p0qhO37LO 『(今日は…雨が降る…。これは…わざと傘を忘れて…相合い傘の…チャンス…)』 放課後 「ちなみー、悪いけど傘忘れたから一緒に入れてくんねー?」 『………』 バシッバシッ 「え、ちょ、ちなみ、なんで叩くの、ちょ、痛いから止めて!」 『……うるさい…馬鹿…もう知らない…』プイッ その後ちなみが空気の読める山田から傘を奪っtゲフンゲフン。貰って二人で相合い傘して帰りましたとさ
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/3584.html
このページはこちらに移転しました 6月 作詞/96スレ567 雨粒綺麗だね 側で微笑む君が 窓に吹きかけた息で 描いた相合い傘 紫陽花咲いた道 並んだ帰り道 東を見上げ、虹の在処を 探す午後5時 忘れるくらいなら 最初からいらない 君が残した思い出を ねぇ連れてってよ 2人の形は、いびつだけど何処か優しくて ドアに掛けてある大きめな傘、開く日はもう来ない 2人の形を、撫でれば其処からほつれ始めて 夏が来るよりも先に消えた恋花火 君と僕の境目を 遮断する雨 雨 2人の形は、いびつでいて何故か儚げで ドアに掛かったままの傘、開けばほら向日葵のよう 僕らの形は、合わさって完成じゃなかったんだね 夏が来るよりも先に散った恋花火 トントンと窓を叩く雨 雨 雨 描いた相合い傘 消えてしまった