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活かす剣、愉悦の剣◆L0v/w0wWP. 人という生き物はそれが『善』と呼ばれるものであれ、『悪』と呼ばれるものであれ どちらと線引きする事が難しいものであれ、須く欲望に突き動かされて生きている。 それを以下に制するかが人の道といえども、それに流されるままという者の多い事、多い事。 百八の煩悩という言葉に喩えられるように、その形は人によって千変万化。 人倫に悖ると言われるものも、他者からは到底理解できないものも多々ある。 ここにいる一人の男も、自らの欲望に振り回されて生き、そして死んだ筈の人間である。 彼の抱く欲望は、天下無双の称号を手に入れようなどという事に比べれば些細なものなのかもしれない。 だが、その欲望が人倫からも、常識からも大きく外れたものだったとすれば―――― □ 水面に写る月影を万華鏡のように千変万化させ、滔々と流れる川の水面にかかる一本の橋。 架けられてから幾久しいのか、橋面の板が所々腐食し、欄干に塗られていたと思しき、丹も 殆ど剥げ落ちて、僅かに痕跡を残すのみ。この夜の闇ではまったく確認する事はできない。 宇治の橋姫、一条戻り橋などの故事に代表されるように、橋というものは古来から 向こう岸だけではなく、『あの世』と『この世』の接点としても畏れられてきた霊域である。 闇の中、川のせせらぎのみが辺りに響き、この場が酷く不気味に感じられるのは、ここが 凄惨な殺し合いの舞台となっているためというだけではあるまい。 そんな、異界との渡し場に佇む人一人。まだ、年のころはまだ16、7。長く、たおやかな 黒髪を後ろで結い、一見、この暗く寂しい川辺にも、凄惨な殺し合いの場にも似つかわしくない 可憐な少女である。しかし、その佇まいはあくまで『凛』。本来艶やかな着物に包まれている 肢体に、今は道着を纏っている。彼女こそ、明治の東京で『剣術小町』の異名をとる、 神谷活心流師範代、姓は神谷、名は薫という。 「まったく…この文明開化の御時勢に御前試合だなんてなに考えてるのよ、あのおっさん! しかも剣術を殺し合いの道具に使えだなんて…。許せない!」 いきなりこのような場に連れてこられ、混乱してはいたものの、薫の感情をまず支配したのは怒り。 彼女の父が創始し、彼女が受け継いだ流派・神谷活心流は『人を活かす剣』即ち、活人剣である。 相手を殺すのではなく、制する事が最大の極意。その精神も受け継いだ彼女がこの殺し合いを 受け入れる筈もなかった。それに、あの白州の場で殺害された少年、雰囲気こそまったく異なっては いたが、彼と自分の門弟であり、家族である少年が重なった。おそらく彼も剣の道を志し、これから 羽ばたこうとする、若き剣士の一人だったのだろう。この事も、さらにあの二階笠の男に対する怒りを強くしていた。 それにしても、江戸幕府が武士とともに滅び、明治の世になって、はや十年。この御前試合とやらも、 あの二階笠の男の身なり、話し方も時代錯誤もはなはだしい代物。しかも、辺りを見渡した際、目に 入った他の参加者も殆どが和装で、髷まで結っている者が多かった。さらに殺し合いの舞台となっている 広大な土地…、石動雷十太のような復古主義者や、志々雄真実のような危険思想の持ち主がお膳立てした ものだとしても、政府の目を盗んでこれだけの大事を成し得るものなのか。さらに、これまで自分が 出会ってきた剣士たちや、白州の場にいた顔ぶれの気迫…。二階笠の男は古今無双の武芸者をここに 集めたと言うが、その中にあって明らかに自分は力不足、そんな自分がこの場に放り込まれた訳は…。 「とにかく…今はうだうだいっててもしょうがないわ。もしかしたら…いや、きっと剣心や斎藤なんかもここに呼ばれている筈。」 自分などが参加させられているのだ。恐らく、自分など及びも着かないの実力をの持ち主である 居候であり、仲間であり、想い人・緋村剣心や元新撰組三番組長・斎藤一がいないはずがない。 誰よりも密接な間柄であり、『不殺』の志を掲げる剣心がこの殺し合いに乗るなど、天地がひっくりかえってもありえない。 斎藤一も少々、いやかなりいけ好かない人間ではあるが、性格上、この殺し合いに乗るとは思えない。 一匹狼かつひねくれた彼のな性分ゆえ、協力を得るのは難しいかもしれないが、接触を図って損は無い。 あの二階笠の男たちの下へ殴りこみ、この悪趣味な催しを台無しにする事も可能なはず。 「まずは…うん、剣心を探さないと!確か、行李に人別帖が入ってるって…」 あの男の言う事が真実ならば参加者の名を記した人別帳と、おのおのの武器が行李の中に入っていると聞く。 まず、この二つを確認しなければ。最低限、身を守るための武器ぐらい持たねば、移動もままならない。 「え~と、…あった!これが地図と、人別帖ね…あと武器は…あれ…?」 「そこな娘御…。」 と、しゃがんで行李を覗き込んでいると、ふいに背後に気配と男の声。 思わず、びくりと肩を震わせ、おそるおそる振り返ると―― 「…っ!?」 その場に屹立する男の姿を見て薫は言葉を失った。 年のころは三十にさしかかったあたりと言ったところであろうか、やはり月代を剃って髷を結い、 痩身の体には、百石取り辺りの下級武士の平服を纏い、襷がけ、腰に挿すのはやや厳しい作りの 太刀であろうか。だが、最も目を引くのはその顔。月明かりによく映える色白の肌にまるで 子供が筆でめちゃくちゃに落書きでもしたかのように、大小様々の刀傷が縦横に走ってた。 以前目にした、四乃森蒼紫配下の隠密・式尉のそれよりも更に痛ましい。そして、その男の 自分を見下ろす目――――その瞳にはまるで野生動物が得物を狙うような鋭い光と、 それと相反するどす黒い闇を湛えている。 (殺される!) 体勢が体勢ゆえ、反抗する事も、逃げ出す事も難しい。薫の顔が恐怖で引き攣る。 (…剣心!) が、男は自分に切りかかろうとはせず、ゆっくりと口を開いた。 「そのようなところでしゃがみ込んでいては、危ないのではないのかな?」 「へ…、え、あ…ありがとう…ございます。」 毒気の無い言葉に思わず拍子抜ける。双眸の危険な色も、先程とは違い見られない。 自分の思い過ごしだったのか? 「申し遅れた。某は、駿河大納言家中、座波間左衛門と申す者。よろしければ名をお聞かせ願いたいのだが…。」 「あ、わ、私は神谷活心流神谷薫と…申します…。」 語り口も温和で紳士的。自分を油断させるつもりなのでは?という懸念もあるが、ここで名を明かすのも渋っても 逆に自分が怪しまれると思い素直に名乗る。それにしても、駿河大納言…とは?旧士族だとしても、たしか 駿府は幕府の天領であり、代々守護代が置かれているだけ、城中に在勤しているのも直参の旗本だ。それに 武家で大納言などという高位に就けるのは、武家でも御三家級の高貴な身分に限られていた筈。果たして、 そんな人物が駿府城代を努めたことがあったか…。 「かみや…かっしん流…?はて、聞かぬ流派だが。」 思案している最中に間左衛門から次の句が飛び出す。貧乏道場の零細流派とは自覚しているが、 こうあからさまに無名あつかいされると流石に気分のいいものではなく、思わず薫の頬がムッと膨れる。 「あ、ああ?これは失敬、失敬…薫殿と申されたか、御無礼の段、お詫び申し上げる」 慌てて間左衛門が、頭を下げた。やはり、そこまでの悪党や戦闘狂の類には思えなかった。 「あ、い、いんです!そんなに気を使わなくても…。実際、門弟二人の貧乏道場ですし…。」 「いやいや、そのような。規模は小さくとも志さえ高ければ剣法に貴賤はござらん。」 間左衛門の気遣いに薫は思う。やはり、この人物は信用していい。 彼の語る素性についてはどうも腑に落ちないところがあるが、身形を見るに 恐らく旧幕臣で、いまだ政府に追われており素性を隠す必要があるのか… 顔の無数の傷も、戦傷によるものというよりは…一度捕縛されて酷い拷問でも受けたのだろうか? 気にはなるが、剣心の十字傷の由来すら知らないのだ。見ず知らずの相手にこのような事を 尋ねるのも失礼と言うもの。今は触れないでおこう。 「ところで薫殿はこの試合に乗るおつもりですかな?」 「!?…とんでもない!私は絶対、こんな狂った事、止めて見せます!活人剣・神谷活心流の名にかけて。」 間左衛門からの質問に、薫は強く答える。それを聞きふむ…と、間左衛門はあごをなでた。 「いや、それを聞いて安心し申した。某もこのような事態、寝耳に水。乗るつもりは毛頭ござらん。」 よかったぁ…―― 一瞬だが、いぶかしむような表情を浮かべた間左衛門に戸惑ったが、やはり彼は乗るつもりは無いらしい。 そうと決まれば話は早い。薫は身を乗り出すようにして間左衛門に尋ねた。 「あの、私、人を探しているんです!」 □ 「緋村…?いや、某がここに来てよりお会いしたのは、薫殿がはじめてだが…。」 「…そうですか…。」 がっくりと頭を垂れる少女の顔を間左衛門はまじまじと見つめていた。 やはり美しい。積年の想い人・叔母なお女や従妹きぬのような洗練された艶麗さはないが、 それとは別の、春一斉に萌えいずる若草のようなみずみずしさ、まだ幼さの残る 天真爛漫な表情、その中に垣間見える凛とした雰囲気。そして、想い人が行方が 何一つわからなかった事に対する落胆の表情――――全てが可憐で美しい。 それに伴い間左衛門の心に沸々と湧き上がる感情とともに、再びその瞳が 獣のような鋭さを宿した。 (斬られたい、この娘に…全身、血まみれになるまで…。沈めたい、そしてこの娘を血の海に…。) □ 座波間左衛門は薫が生きる明治の世から遡る事、二百八十年ほど昔、慶長年間の駿府の武家に生を受けた。 故あって故郷を出奔し、天道流の免許皆伝と言う、その剣を腕を持って伊賀藤堂家に仕官したが、 そこも逐電、しばらく流れ流れて生国に戻り、この「死合」の主催者・駿河大納言忠長に仕官した。 彼がこのように波乱万丈の半生を辿る羽目になったのには大きな原因がある。 即ち、彼が齢九つの時、憧れの叔母なお女に折檻されてから目覚めた、男女問わず 美しい者に傷つけられたいと言う欲望。そして、大坂の陣において、紅顔の美少年と 刃を交えた事に端を発する、さらにそれを切り伏せたいという欲望。 本人も何度と無く矯正しようと試みたがついに敵わなかず、あまつさえ、 この欲望を満たすための手段として、今川流受太刀なる奇剣まで学び取った。 その邪悪な欲望はすべての発端となった叔母の生き写しに成長した、幼馴染で従妹のきぬへと向けられる。 彼の夫、久之進を奸計にかけて斬殺し、その仇討ち試合を挑ませ、彼女に斬られ、そして斬ろうとしたのだ。 だが、至上の快楽の中、恍惚状態に陥った間左衛門は、衆目の中、きぬの薙刀一閃、己の血と脳漿に塗れ 地に臥し、二度と起き上がる事はなくなった―――――――――はずであった。 □ 恍惚の極、甘美な陶酔とともに確かに自分は斃れたはずであった。 ここは、六道の巷であろうか?あの二階笠の男の言から察するに修羅道へと堕ちたか。 否、あの二階笠の男は自分もよくその名を知る人物。 (柳生但馬―――か。) 一度だけ、大坂の戦場で、先の征夷大将軍・徳川秀忠とともに、藤堂家の陣屋に巡検に来たのを、 遠目ながら間左衛門は目にしていた。あれから十年以上が経ち、だいぶ老け込んではいたが、 顔立ちと紋所、そして未だ衰えぬ剣気、まぎれもなくあれこそ柳生但馬守宗矩。やはり、ここは まぎれもなく現世なのであろう。だとすると、俺は一体どこでどう罷り間違って、ここへ舞い戻り こんな死合に参加しているのか。とりあえず行李を開け、かなりの名品と思しき太刀と人別帖を 取り出し、これを月明かりに照らし出して驚いた。塚原卜伝に上泉伊勢守―とうの昔に泉下の住人と なった剣聖、剣豪の名。師筋に当たる、斎藤伝鬼坊の名まである。 普通ならば、騙り者と一笑に臥すだろうが、自分がこうして生きている 以上、おそらく彼らも本物。どういうわけで、自分たちが蘇ったのかは皆目見当がつかない。 ただ、そんな事よりも彼の思考を占める事は一つ。 (今わの際に、あれだけの快楽を味わったのだが―――やはり、煩悩というものは無尽蔵。) あの白州の場で何人か、際立った容姿の者たちを彼は見つけていた。 変わった髪の色をした、少女のように瀟洒な少年。 女だてらに道場着に身を包んだ、まだ年端のいかない少女。 まだ少年の面影が残る、変わった月代の青年。 但馬の言によれば、彼らは皆、無双の達人だと言う。 きっと、今までとはまた違った興奮を自分に与えてくれるに違いない。 間左衛門の身体が熱を帯び、思わず生唾を飲みこむ。 元より、この試合に勝ち残る事など端から考えていなかった。 彼の思考を支配するのは渦巻くどす黒い欲望。 (彼らに切られ、斬りたい。) 一度死んでまで、歪んだ欲望に忠実な自分に対し、間左衛門はどこか寂しげな自嘲の笑みを浮かべた。 「ああ、そうか――俺はきぬ殿に斬られはしたが、斬ってはいなかったのだな。」 勝者への褒美として、きぬとの再戦を申し入れるのも悪くない。 一人、納得したかのように手を叩くと、目の前の道を西へと歩み始めた。 □ そうして、彼はこの可憐な少女・神谷薫と出会ったわけである。 武器も持たない、彼女にいきなり切り捨てるのは自分の本意ではない。 まずは適当に声をかけ、彼女に自分と立ち合うようしむけねば。 「ところで、そなた、得物はどうなされたのかな?見たところ、何も持たぬようだが。 「え?そ…それが、その…今、行李を覗いたんですけど…これは得物なのかなぁ…と思って。」 そういいながら、彼女が取り出した者を見て、間左衛門は唖然とする。 なんと、行李に入っていたのはなんの変哲も無い扇子が一本だけであった。 護身武器として広くしられる鉄扇ですらない。薫がおもむろに広げてみれば、 白い紙に「正義」の二文字が大書してあった。 「なんと…無体な事をなさるものだ…。」 間左衛門が嘆息する。これでは…これでは、彼女に斬られ、斬るという彼の欲求を満たす事は到底 不可能だ。かといって、このまま放置すればすぐにこの島に蠢いているであろう剣鬼の餌食になる事は明白。 ならば―――― 「わかり申した。この、座波間左衛門、武士として女人を丸腰でこのような場所に一人にする訳には参らぬ。 その緋村殿とやらと、薫殿の得物になるようなものが見つかるまで、この剣に誓ってお守り申そう。」 これだけの美少女、さらに剣技にも長けていると言う「逸材」を失うのは惜しい。 是非とも、自分の手で斬りたい。こう考えた間左衛門は、薫に同道を申し出た。 「本当!?あ、ありがとうございます!!」 ころころと表情変わる御仁だ―。 薫は喜色満面に包まれ、何度も間左衛門にお辞儀をする。自分がいずれ殺されるとも知らずに。 薫は完全に自分を信用しきっている様子。不憫だが、これも巡り合わせ。許せよと心の中で間左衛門は呟く。 おそらく彼女の想い人である、緋村剣心という男――この者を見つけ出し、頃合を計って薫の眼前で斬る。 薫がいかな、他者の死合いを望まぬとはいえ、眼前で好いた男を斃されれば、 彼女はきぬと同じように夜叉となって自分に斬りかかって来るだろう。 可愛さあまって憎さ百倍、信頼していた者に裏切られた事とも相まってその時の 憤怒と悲しみは凄まじいものとなるに違いない。そんな悪鬼と化した美少女の 凄絶な剣技を身に受け、そしてそれを破る。考えただけで、間左衛門の身体は歓喜に打ち震えた。 それまではなんとしても、遭遇するであろう剣鬼たちから彼女を守らねば。 それら剣鬼が白州の場で見た『うつくしきもの』たちであればさらに好都合。 薫が活人剣を標榜するからには、自分の凄惨な剣法は絶対認めないかもしれないが、 それで自分を見限り、打ち掛かってくるのであればそれもまた一興。 どうあっても、自分の欲求を満たしてくれる。 「それにしてもよかったぁ…、最初に会ったのが間左衛門さんみたいな優しい方で。」 「はは…それは、買い被りすぎというもの。某、欲と業に塗れた、この面貌と同じ醜い人間にて…。」 疑いを知らぬ薫の言葉に、思わず心情を吐露する。先程の剣に貴賎無しという言葉と同様、 自分はおそらくこの世で最も俗悪な剣を振るう男。自分で言っていて白々しいと、いささか苦笑しつつ。 「…。やっぱり人を斬った事が…?」 「ああ。これまで星の数ほど、自らの下衆な欲望のために。」 下手に言いつくろっても意味は無かろうと、ありのままを吐露する。 自分が相当の修羅場を潜ってきた事は、この顔を見れば容易に想像できるであろうし。 その欲望がいかなるものであるかは伏せてだが。まあ、これで自分から離れるのならば これも巡り合わせかと考えていたが、薫がこちらにむけてきたのは以外にも優しげな笑みであった。 「大丈夫ですよ!剣心だって…かつては人斬りだったけど、今はその罪と、自分が斬ってきた自分を向き合おうとしている。 間左衛門さんだってきっと変われます!現にこうして見ず知らずの私を守ろうとしてくれてるじゃないですか。」 「………かたじけない……。」 薫の邪心無い言葉に、間左衛門は一瞬たじろいだ。 変わる事ができるか…。彼女が全幅の信頼を置く、緋村という男もかつては修羅の道を歩んだ男だったとは。 だが、自分が背負う業は恐らく、彼のものよりも根深く、黒く穢れている。今日この日まで自分を変える事は終ぞ叶わず、 今また、薫を切りたいという欲求収まらない間左衛門には薫の言葉は綺麗ごとにしか聞こえなかった。 だが、ここのまま薫を斬ってしまえば、自分は本当に、この奇癖を捨て去る機会を無くしてしまうのではいか? 同時にそのような不安も彼の心に芽生えていた。ともかく、今はその緋村という男がいるかどうかを確かめねば。 「まぁ…まずは人別帖に緋村殿の名があるか見定めねば。それにこの死合いを命じた男と 某が目にした、ここにいる幾人かの者の名、多少ひっかかる事がある。」 「!?あの二階笠の男について、何か知っているの?」 「…ああ、一度戦場で目にしたことがな。とりあえずは緋村殿の名を見つける事が先だ。」 「あ、ええ。」 柳生但馬と蘇った剣客たち(もちろん、自分もそのうちの一人である事は伏せて)、この事も彼女に教えておくべきだろう。 いずれ、彼女は殺すつもりであるから別段意味は無いかもしれないが、それまでその身を守る助けにはなる情報だ。 それに彼女自身や流派、緋村剣心という男についても気にかかるところは多い。この情報と引き換えに聞きだせると良いが。 いそいそと薫が人別帖を行李から取り出し、めくり始めた。暗がりのせいか、それを読み進める速度は遅い。 そのあくせくとした姿にも微笑ましいものを感じた間左衛門は、薫にまた声をかける。 「それにしても、はじめ女人が橋の端下で座り込んでいるのを目にしたときは、てっきり狸か狢の類と思ったが――――。」 今は地獄に降り立った地蔵菩薩か、観世音のように思える。これは、本性を知らないにせよ 自分のような邪道の剣客でも変われると声をかけてくれた薫に対する間左衛門の本心であった。 もっとも、その救いの手に彼がすがる可能性は限りなく低いが。 だが、その言葉は間左衛門の口から発せられる事はなかった。 薫の手で丸められた、人別帖がしたたか間左衛門の額を打擲し、闇に心地よい音を響かせていた。 【はノ伍/橋の端下/一日目/深夜】 【神谷薫@るろうに剣心】 【状態】健康 【装備】「正義」の扇子@暴れん坊将軍 【道具】支給品一式 【思考】基本:剣心と合流し、死合を止める。主催者に対する怒り。 1:誰が……狸ですって…! 2:人別帖を確認した後、間左衛門とともに剣心と得物(できれば木刀かそれに類するもの)を探す。 3:協力を仰げる可能性は低いが、斎藤もここにいるのなら探す。 4:人は殺さない。 5:間左衛門の素性、傷は気になるが、詮索する事はしない。 ※京都編終了後、人誅編以前からの参戦です。 ※人別帖はまだ見ていませんが、剣心、斎藤がこの場にいるのではと考えています。 ※間左衛門を信用していますが、彼の語る素性は偽りで、旧幕臣ではと考えています。 ※間左衛門や柳生宗矩を同時代の人間と勘違いしています。 【座波間左衛門@駿河御前試合】 【状態】健康 、額に痛み。 【装備】童子切安綱 【道具】支給品一式 【思考】基本:殺し合いの場で快楽を味わい尽くす。優勝してきぬと再戦するも一興。 1:やはりこの娘…強い。 2:薫に切られ斬るため、彼女とともに、彼女の得物と剣心を探す。 剣心は、薫の眼前で斬殺し、自分と死合うよう仕向ける。 3:それ以外でも薫と死合う局面になれば喜んで受ける。 4:薫の目が気になるが、試合に乗り、かつ美しい容貌のものがいればこれにも切られ、斬る。 5:薫に柳生但馬と蘇った死者について伝える。 6:剣心と活人剣についての興味と、薫を斬る事への多少の躊躇と不安。 7:美しく無い相手には興味が無いが、薫を害するつもりなら斬る。 8:もしかしたらこの性癖を捨てられるかも? ※原作死亡後からの参戦です。 ※過去の剣豪は自分と同じく本物だと確信しています。 ※犬坂毛野、川添珠姫、沖田総司の姿を白州の場で目にしています。 ※薫を同時代の人間と勘違いしています。 時系列順で読む 前話 月下の鬼神 次話 剣を失いし剣士達 投下順で読む 前話 月下の鬼神 次話 剣を失いし剣士達 試合開始 神谷薫 船頭多くして、船山昇る 試合開始 座波間左衛門 船頭多くして、船山昇る
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ライダー・ロード 婦警の制服で包んだ小柄な痩身を躍動させ、小沢は街を駆けていった。 肩に届く、後ろでひとまとめにした髪を汗を飛ばしながら揺らし、気の強そうな瞳の視線を周囲に張り巡らせる。 海岸で少女の声に応えるために別れてしまった、城戸真司を探すためだ。 彼女は息を弾ませ、瓦礫が散らばり、激戦の跡を残すコンクリートの道を蹴り続ける。 剥き出しになった鉄筋が飴のように融解しており、崩れた灰色の壁はまだ壊されたばかりである事を主張するように、細かい破片をパラパラと落とし続けていた。 道に落ちている瓦礫を飛び越え、彼女は崩れた壁から続く血痕を発見した。 (乾ききっていないということは、最近できたばかりのようね。城戸君自身の物というのは……可能性が低いわ。 城戸君を追いかけるのに少し時間を置いたけど、こんな状況を生み出せるような大きな戦いがあれば私も気づくはず。 ここで戦いがあって、怪我人を発見して手当てしようと運んだというところかしら。ヨロイ元帥のこともあるしね。 まったく、あの子はあれよ。ジャーナリストといっていたけど、祭りを取材に行って御輿を担ぐタイプ。 目の前のことしか見えないんだから……) 呆れ半分、好意半分でため息を吐く。血痕が民家まで続いている為、慎重に足を運ぶ。 あの民家に城戸がいると確定したわけではない。この破壊の後を生み出した殺人鬼が身を潜めている可能性もある。 彼女は窓の人影に警戒しながら、聞き耳を立てる。中からは二人の男の会話が聞こえてきた。 ベットに眠る男が一人。そばにはボロボロのグレイのスーツがかけられている。 綺麗に揃えられていただろう茶髪は崩れ、鍛え抜かれた上半身は包帯に身を包まれていた。 揃えられてはいるが、太い黒の眉毛が瞼とともに震え、徐々に瞳が開かれていく。 「痛っ」 矢車は激痛に呻いた。上半身を起こしていくと、自らの長身を包む、白いシーツが身体からずり落ちる。 「気づきましたか?」 そばにある木の椅子に腰をかけた、漆黒の髪と太い眉、意志の強そうな瞳を持つ、白いジャンパーとスラックスで鍛えた身体を包みんだ男が、自分に声をかけてきた。 矢車は木目調の壁紙が張られた周囲を見渡し、自分に仮面ライダーである事を思い出させてくれた、茶色の長髪を持った青年がいないことに気づいた。 「俺は南光太郎といいます。早速ですが、一つ聞かせてください。あなたはクライシスの思惑に乗って城戸君を襲ったのですか!?」 南光太郎という名前には聞き覚えがある。荷物を受け取った暗いホールで、赤い複眼を持つ、緑と黒の身体を持つ戦士……仮面ライダーがそう呼ばれていた。 その彼が変身を解いただろう姿の光太郎は、自分が怪我人であることも構わず、語気を強めながら両腕を掴み問いかけてきた。 矢車は痛みに顔を顰めるが、自業自得だと内心で呟く。 「俺に仮面ライダーである事を思い出させてくれた彼……城戸君は?」 彼は感謝の気持ちを表し、神崎につっかかっていた城戸の行方を尋ねようと光太郎に顔を向けると、驚愕の表情が眼に入った。 「あなたも……仮面ライダーなんですか?」 「『元』仮面ライダーザビーだ。クライシス皇帝の使者とかいっていた奴に負けて、変身能力を失ってしまったがな」 「クライシス!! やはりこの戦いはクライシスが裏で糸を引いていたのか!!」 怒りに震える光太郎が、自分から手を離し、確信の叫びを上げる。 自虐で心を満たしていた矢車は、眼前に拳を震わせる男に疑問を投げつける。 「クライシス、奴らはどういった存在なんだ?」 「奴らは、クライシス帝国は地球を支配しようと狙う連中です。神崎はおそらく、奴らと手を組んだのでしょう」 「そうか。だとしたら、あの怪物はこの殺し合いで試されている新兵器だということか……」 「新兵器?」 「俺はこの戦いが何らかの新兵器の実験だと睨んでいる。クライシス帝国が黒幕だというのなら、俺を襲ったグランザイラスという怪物の実戦テストかもしれない。 そんな奴と戦闘して、俺はザビーを失った……」 「矢車さん……」 自分が搾り出した悲痛の声に、同情しているらしい。 しかし、光太郎はすぐに表情を元に戻した。 「仮面ライダーともあろうあなたは、何故城戸君を襲ったのですか?」 「それは……」 矢車の後悔を含んだ返答は、ドアを蹴破る音に中断される。 光太郎とともに警戒の視線を玄関に向けると、ずかずかと遠慮なく家に踏み込む気の強そうな女性がいた。 矢車は荷物を受け取ったときに呼ばれた名前は小沢澄子だったなと、思い出す。 「あなたは……」 「城戸君を襲ったですって! あんた、どういうつもり!?」 声をかけようとする光太郎を無視し、小沢が食ってかかる。 矢車は眼を細め、自らの愚かさに後悔しながら心の内をさらけ出し始めた。 「グランザイラスに負けた俺は力を求めた。そして、力を持つ城戸君が妬ましかったんだ。 俺はザビーを失った。なのに、彼はまだ力を持っている。くだらないことだが、その時俺は本気で思ってしまったんだ。 南君、小沢さん、そんな俺を笑ってくれ」 「何で私の名前を知っているのか気になるけど、今は置いとくわ。続けなさい」 小沢はにこりともせず、警戒しながら先を進める。光太郎は矢車の心の吐露に、痛ましそうな表情を向けていた。 「俺は過ちを犯してしまった。だが、城戸君が俺に正しい道を示してくれた。 彼は聞いたんだ。俺も誰かを傷付ける為にライダーになったのかって。 それで思い出した。俺は誰かを守る為に、平和のハーモニーを奏でる為にライダーになったんだと!」 矢車は息を吐き出す。小沢の瞳には自分を試すような光に満ちていた。 だが今の矢車は光を恐れない。自分の光を示す為、小沢の瞳を見つめ返す。 「俺は二度と間違わない! たとえ変身できなくても、たとえ仮面ライダーでなくなったとしても、仲間を集めて脱出をする!! それが、俺のパーフェクトハーモニーなんだ!!」 「素晴らしい!」 光太郎が小沢を跳ね除け、矢車の両手を強く握る。 その瞳に宿す、強い喜びに矢車は軽く引いてしまった。 「俺は、この戦いで素晴らしい仮面ライダーに三人も出会った! 闇を切り裂き、光をもたらす乾さん。 あなたを目覚めさせた城戸君。そして変身能力を失っても、みんなを救うことを諦めない矢車さん。 変身できないなんて関係ない。あなたは紛れもない仮面ライダーだ! ともにクライシス帝国の野望を打ち砕きましょう!!」 「ああ、俺なんかでよければ、いくらでも力を貸そう」 興奮する光太郎に、手を握り返して答える。 続けて、小沢の方に顔を向けると、彼女は腕を組み自分たち二人を笑顔で迎えていた。 「見た目と違っていい根性持っているじゃない。いいわ、城戸君を襲ったことはその根性に免じて許してあげる」 矢車は己に対する苦笑を混じった表情を返す。しかし、彼はまぶしい光のような小沢の笑顔に、顔を背ける気はなかった。 「さっきからあなたは何なんですか? いくらなんでも失礼すぎませんか?」 矢車の決意に共鳴していた光太郎が、小沢の態度を諌める。 彼の気持ちも分からないでもない。小沢の不躾な態度は、少し前の自分なら不協和音だと判断しただろう。 「良いんだ、南君。元はといえば、城戸君を襲った俺が悪いんだ」 だが今は違う。矢車は闇をかいま見て、自分が完璧でない事を知った。 ゆえに彼は、自戒の念もこめて小沢の言葉を甘んじてうけている。 「あら、私は城戸君と組んでいたのよ。彼の事を心配するのは当然でしょう?」 「だからといって、あなたには遠慮がなさすぎる。矢車さんに失礼じゃないか」 「俺は構わないさ。ところで、小沢さんはこの殺し合いの事をどう思っている? 俺たちは、神崎とクライシス帝国が手を組んでいると考えているんだが……」 正直、遠慮のなさは光太郎もいい勝負であるが、言葉にすると睨み合いが加速するだけだろうと矢車は思い、話題を変える。 もちろん、情報を得る為でもある。神崎がクライシスと組んでいるというのは、自分の考察と光太郎の情報を合わせてだした結論だが、まだ情報が足りない。 答えを確信に変え、脱出への糸口を探す必要がある。そのために、些細な情報でも聞き逃す気はなかった。 「……悪いとは思うけど、クライシス帝国については聞かさせてもらったわ。 神崎士郎とクライシス帝国が組んでいる可能性は低いと言わざるをえないわね」 「それはあなたがクライシス帝国を甘く見ているからだ!」 「南君、落ち着いてくれ。小沢さん、そう思う根拠は?」 憤る光太郎を宥め、矢車は顎に手を当てる小沢に尋ねる。見たところ彼女は聡明そうだ。 「私は城戸君から神崎の目的を聞いたわ。妹を復活させる為、こんな馬鹿げた殺し合いを始めたみたい。 そんな奴が、わざわざ地球を支配するという目的の連中と手を組むのかしら? 用が済めば自分たちもろとも殺されかねないのに?」 「随分と個人的な事情だな。他に城戸君から得た情報は?」 「神崎士郎は前に似たような戦いを開催しているわ。そのときは十三人で殺し合わせたみたいだけど。 カードデッキと呼ばれる変身アイテムを使って、鏡の向こうで戦って、最後の一人は願いを叶えるらしいわ。 どういった原理で殺し合いをすると願いが叶うのかは分からないらしいけど、城戸君を除く多くのライダーは願い事の為に殺しあった。 まとめると神崎士郎は、鏡を通して細工が出来て、殺し合いを過程におけば願い事を叶える力をもてて、カードデッキを作り上げて変身能力を持たせることが出来る。 私が持っている情報は以上よ」 「ありがとう。参考になる」 「神崎士郎……恐ろしい奴がクライシスと手を組んだものだ」 どういたしましてと言う小沢の情報を整理し、光太郎の呟きを聞きながら、矢車は考察する。 (神崎士郎は鏡を通して俺たちを監視している可能性を、小沢さんは言外に告げている。 つまり、現状で分かっている神崎の能力は、 一、鏡を通して人を見張れる。 二、殺し合いをさせることで願いを叶える力を持てる。 三、変身能力持たせられる。おそらくは神崎本人も変身できると仮定して問題ないだろう。 一に関して問題なのは、俺たちが何らかの脱出行為を働いて、それが現実になりそうになったときに首輪を爆破されるということだ。 だが地図を見る限り、鏡やそれに類するものが存在しにくい樹海もある。それに、見張るには人数が多すぎる。 他の監視方法もあると考えた方が自然だろう。盗聴機あたりか。首輪に関しての話題は筆談なりで秘密裏に動かないといけない。 小沢さんは気づいているかもしれないが、南君に話をするとややこしくなりそうだから、この話題は保留だな。 二に関しては、神崎は完璧で無いという証拠だ。能力は高いが、対処できない相手ではない 三は、脱出したとしても神崎との戦闘は避けられない。 なるべく多くの戦闘できる仲間を集めたい。だが、俺以外の変身できない人を見捨てる気はない。 そして俺たちの身に起きたことを考えると、一~三以外にも能力を持っている可能性がある。 大人数がこの島に拉致されて殺し合いを強制されて、デイバックを受け取ったときは空間移動もした。これらは神崎の能力なのか?) 「クライシスめ。時空の彼方から俺たちを弄びやがって」 矢車の悩みを解決する一言は、光太郎の口から出てきた。 あまりにもタイミングの良い発言に驚きながらも、光太郎に問いかける。 「南君、クライシス帝国の連中は空間移動させることが出来るのか?」 「奴らはそれくらい簡単に出来ます。異次元である怪魔界から、地球を狙っている恐ろしい連中です。 俺も、地球から奴らの戦艦に転移させられたことがあります」 再び礼を言い、考察を進める。 (となると、やはりクライシスと神崎が手を結んでいる可能性は高い。 神崎は妹を生き返らせる為、クライシスは実験場としてつかう為、お互い利害が一致したというところか。 小沢さんは組んでいる可能性が低いといったが、神崎が自分たち兄妹以外はどうでもいいと考えている可能性はある。 城戸君を巻き込んだ殺し合いが上手くいかないから、クライシスと組んで大規模な殺し合いを計画したとしたら? そのために管理する技術、場所を提供してもらったとしたら?) 矢車の疑問は膨れ上がり、答えを求める。だが全てを解決する情報はまだない。 答えが出そうで出ない、もどかしい思いを抱え懊悩する。 「私に対する質問は終わった? そろそろ城戸君の居場所を教えてくれない?」 小沢の言葉にハッとし、光太郎に顔を向ける。 「南君、俺も知りたい。城戸君は今どこにいるんだ?」 「城戸君は少女の放送で告げられた、仮面ライダーファイズ、乾さんと一緒にF7エリアに向かっています。 そこに知り合いがいたみたいです」 矢車は神崎に殴りかかった青年を思い浮かべ、危なっかしいコンビだなと感想を抱く。 小沢がデイバックを掴み、踵を返すのが見えた。 その様子を見て、光太郎が声をかける。 「小沢さん、どこに行くんですか?」 「F7エリアよ。さっき突っかかったことは謝るわ。どこかで出会いましょう」 「待ってください。危険すぎます!」 「大丈夫よ。気合と根性で生き延びて見せるから」 光太郎が呆れているのが見える。 矢車は彼女の言葉に笑顔を浮かべ、傷ついた身体を起こそうとする。 「矢車さん! あなたは重症なんだ! 無理をしないでくれ」 「そうよ、大人しく寝ていなさい」 珍しく、馬の合わない二人が同じ意見を言う。 この二人は似たもの同士だと感想を抱いた。 「そういうわけにはいかないさ。小沢さんが気合と根性で何とかするなら、元仮面ライダーの俺も踏ん張らないとな」 矢車は震える手で包帯が巻かれただけの身体に、スーツを引っ掛ける。 続けてデイバックを取ろうとするが、膝が折れ、取り落とす。デイバックの中からは壊れたザビーゼクターがこぼれ落ちた。 小沢がため息をつき、光太郎に視線を向ける。 「南君、彼をベットに戻してちょうだい」 「言われなくてもそのつもりです」 矢車は無理矢理戻そうとする光太郎に抵抗する。 自分が誓った、誰も見捨てないという信念を実行する為だ。 「小沢さんを置いてはいけない。外にはグランザイラスがいるかもしれないんだ。 俺たち仮面ライダーは人を見捨ててはいけない。違うか? 南君」 「その通りですけど……」 「まずは自分の身体を優先したほうがいいわ。そうでないと救えるものも救えないわよ」 矢車は小沢の言いたいことは理解している。だが、こんな危険地帯を一人で行かせるわけにはいかない。 言うことを聞こうとしない自分の様子に、小沢は呆れたようなため息を吐いた。 「分かったわ。あなたの体調が戻るまで、出発は保留するから、今は寝ていなさい」 「だけど小沢さんも南君もしなければならないことがあるんだろう? こんなところで足止めさせるわけには……」 「あなたの体調が優先よ」 「矢車さんの体調が優先です」 まったく同時に二人が言い、自分を咎めた視線で射る。 やはり二人は似たもの同士だと内心で笑い、限界が来て光太郎にもたれかかる。 そのまま意識を失い、静かな寝息を立てた。 すーすーと静かな寝息とともに、時計の秒針が刻まれる音が響き、静寂がその空間を支配した。 (本当、城戸君といい、南君といい、矢車さんといい、仮面ライダーってのはみんな純粋ね) 今まで自分がであった仮面ライダーの人なりを考える。光太郎は多少馬が合わないが、善人であることは理解していた。 彼ら全てが、彼女の知るもっとも純粋な人間、氷川誠に重なり微笑を生ませる。 先程の少女の訴えを思い出す。彼女が出会った仮面ライダーも、彼らのように純粋だったのだろう。 彼らに託し、希望を見出すのも分かる。だが、同時にその純粋さは弱点にもなる。 純粋さを逆手に取り、彼らをコントロールして殺し合いを加速させようよ考える、悪質な連中は必ずいる。 自分の役目は決まった。彼らを騙す連中を見分け、間違った方向へと進ませない。 そのために城戸との合流は遅れる。彼の無事を祈りつつ眠る矢車を静かに見つめる。 ふと、矢車のデイバックからこぼれ落ちた壊れた蜂型メカ、ザビーゼクターを手に取る。 その様子にクライシスめ、許さんと、矢車に気遣ってか小声で繰り返す光太郎は気づいていない。 ザビーゼクターを点検すると、僅かに駆動音が聞こえてきた。 (もしかして……まだ生きている?) 誰かに握りつぶされたらしく手形が残っている。外郭が剥がれ落ちていて、回路も寸断されている。 だから、聞こえた起動音は本当に微かで、すぐにザビーゼクターの核は沈黙していった。 それはまるで、小沢に自分がまだ戦えると示しているようだった。 (なかなか根性があるじゃない。いいわ、難しいけど、設備とパーツさえあればあなたを蘇らせることができる。 後は私に任せて、眠っていなさい) ザビーゼクターを復活させることを誓い、自分のデイバックに収める。 (とりあえず設備らしき場所の探索ね。首輪を解除するときにも使えるはず。 まあ、なかったらそのときはそのときよ。後首輪の現物が欲しいわ。 ひとまず分解して、仕組みを調べないとね。そのときは鏡、もしくは反射する物体を排除して、盗聴機を警戒しないと。 ……けど、鏡から監視できなくなって、盗聴機からの情報が遮断されたら不審に思って首輪を爆発させるか、何らかの手を打つはずだわ。 まったく、面倒なことをしてくれるわね。うまくやる以外方法がないじゃない) 難事に気が重くなるが、闘志は一向に衰えなかった。 神崎士郎を殴り、城戸を含めた仲間とともに焼肉を食べに向かう事を決めたのだ。 そして、アンノウンとの戦闘という修羅場を潜り抜けている彼女の決意が揺らぐはずもない。 (待っていなさい、神崎士郎。ただの人間が一番怖い事を、思い知らしてあげるわ) 彼女は小沢澄子。常に立ち向かい続け、アギトとG3、彼女の世界の仮面ライダーを助けた人間だった。 (ここはどこだ?) 矢車は、暗闇が支配する広大な空間に一人佇んでいた。 周囲に人影はいない。不思議に思い周りを見渡すと、一人の男が近付いてきた。 「誰だ!!」 姿を確認できるところまで男が近付き、矢車は驚愕する。 「いいよなー、お前は。仮面ライダーとして仲間ができて。どうせ、俺なんか……」 黒い、右袖のちぎられたボロボロのロングコートでたくましい肉体を包んだ男が、拍車のついたブーツで足音を立てながら現れた。 その顔は、矢車想と同じ顔だ。しかし、瞳には全てを嫉妬し、光を疎い世界を敵に回している闇が宿っている。 「何か用かな?」 「ふん、いずれお前もこうなる。俺たちみたいのが光を求めたって、しっぺ返しを食らうだけさ。 今までの出来事を考えろ。仲間を集めようとして、出会った最初の奴はワームだ。次は殺戮者。 そして、グランザイラスという化け物。今は仲間に恵まれたが、いずれ痛い目に遭う。 所詮お前は、地獄の住人となる以外に道はない」 彼の言葉に思い出すのは、城戸真司を襲った出来事。あの時自分は、力以外必要としなかった。 あのときの狂おしい渇望。対峙する自分はそのときの自分だと、理解した。 だから、眼を逸らさず気合を入れ、視線をぶつける。 たとえこの出来事が、夢の中だとしても、乗り越えなければならない。 「しっぺ返しか。構わないさ。たとえ何度も壁にぶつかろうとも、俺は……」 暗闇が静寂に包まれ、時が止まるような錯覚を生み出す。 聞こえるのは自分の呼吸音のみ。夢の中なのに不思議だと思いながら、腹に力をこめる。 「二度と仮面ライダーである事を捨てはしない。泥の中を這いずり待っても、光を手放さない。 俺が救う。シャドウの隊長じゃない。仮面ライダーだから、そう決めた」 言い放ち、矢車は自分を跳ね除け、道を進む。暗闇を恐れる気持ちはない。 彼の心には、何よりも輝いている光があったからだ。 「ふん、いずれ分かる。いずれ……な」 「本当はザビーに……仮面ライダーに未練があるんだろ? 俺だから分かる」 皮肉の笑みを浮かべる自分を背に彼は駆ける。 どんな地獄を見せられようとも、彼のフォルテッシモな決意は変わらない。 パーフェクトハーモニーを、全ての仮面ライダーに響かせる。壮大な夢は、矢車を強くさせていった。 【小沢澄子@仮面ライダーアギト】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:市街地G-5】 [時間軸] G3-X完成辺り。 [状態] 多少の打撲と火傷。相変わらず沈着冷静。 [装備] 精巧に出来たモデルガン。 [道具] カイザポインター、GX-05ケルベロス(但し、GX弾は消費)、壊れたザビーゼクター。 [思考・状況] 1:矢車の回復を待つ。 2:真司と乾巧(草加)に追いつく。 3:乾巧(草加)の人格を自分の目で確かめる。 4:ザビーゼクターを修理する(パーツと設備、時間さえあればザビーゼクターを修理可能だと考えています) 5:脱出の方法を考える、首輪の解析(道具と仕組みさえ分かれば分解出来ると考えています) 6:氷川誠、津上翔一と合流する。 [備考] クライシスと神崎士郎が手を組んでいる可能性は低いと考えています。 まだ乾(草加)の話ででていた警官の制服の男(氷川)の情報は得ていません。 【南光太郎@仮面ライダーBLACK RX】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:市街地G-5】 [時間軸] 第1話、RXへのパワーアップ直後】 [状態]:健康。 [装備]:リボルケイン [道具]:カラオケマイク(電池切れ)、ハイパーゼクター [思考・状況] 1:矢車の回復を待つ。 2:矢車も目覚めあと、真司と乾巧(草加)に追いつく。 3:矢車想を再び仮面ライダーザビーへと戻す手段を探す。 4:シャドームーンを捜す。 5:打倒主催。その後、元の世界に戻ってクライシス帝国を倒す。 [備考] 黒幕はクライシス帝国、神崎はその手の者であると勝手に確信しています。 ガタックゼクターをクライシス帝国の罠だと勝手に確信しています。 草加を巧、ファイズだと思い込んで、全面的に信頼。 【矢車想@仮面ライダーカブト】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:市街地G-5】 [時間軸]:8話 ザビー資格者 [状態]:重症。全身打撲&火傷&刺傷(急所は避けていました。大出血もありません) 睡眠中。 [装備]:ライダーブレス(ザビーゼクター破壊) [道具]:無し [思考・状況] 1:睡眠中。以下は睡眠前の思考。 2:仲間を集めてパーフェクトハーモニーで脱出! 3:乾巧(草加)と真司に追いつく。 [備考] 矢車はBOARDという名前に嫌疑(ワームの組織では?) カブティックゼクターは、どのような形でかは分かりませんが島に存在します(不明支給品?) クライシスと神崎士郎が利害の一致で手を組んでいる可能性が高いと考えています。 [全員の共通事項] 全員異世界の人間だとは思っていません。 名簿の人間は同一世界から来たと思っています。 ワーム、アンノウンについてはまだ話し合っていません。 小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。
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いつかこの手で、警察を変えてみせます――――。 ≪Person≫ 【Name】 アルフレド・フェリシアーノ(Alfred Feliciano) 【Sex】 男 【Age】 23 【Race】 人間 【Job】 水の国警察所属/SCARLETメンバー 【Body】 身長178cm/体重67kg 【Character】 水の国警察出身の刑事。性格はひたすらに真面目で、融通が利かない面もあるがその分誠実。市民にも好かれているが、まだ若く経験も少ないため失敗も多い。しかし、ここぞという時の推理力や洞察力には目を瞠るものがある。見た目は完全にインテリメガネで、根暗な印象もあるが……実はかなり怒りっぽく、しかも普段大人しい反動か、怒らすとかなり怖い。特に銃を握っている時はすぐテンションが振り切れる傾向があり、所謂トリガーハッピー的な一面も。余談だが過去に女性関係で何かトラブルがあったようで、未だにやや女性を苦手としている様子。昔の彼女の話は禁忌。 ≪Figure≫ 【前髪を左側だけ上げた藤色のミディアムヘア、赤紫色の瞳に黒縁メガネが特徴の、いかにも怜悧な印象の青年だ】 (警察としての活動中) 【フォーマルなスーツの上に紺色のトレンチコートを着込み、首元には黒いマフラーを巻いているだろうか】 【コートのシルエットには少し膨れている箇所がいくつかあり、その下に〝何か〟を隠し持っているように見える】 (SCARLETとしての活動中) 【灰色のカッターシャツに白色のアフガンストール、下はデニムジーンズに膝丈ブーツという服装】 【身体の各所にはポーチ付きのベルトを装備し、左胸の上と腰の左右にはホルスターが取り付けられており】 【左胸には派手な金色をした大型拳銃が、腰の左右には既存のどんな拳銃にも当てはまらない奇抜な外観の銃器が二丁、それぞれ吊り下げられている】 ≪Weapon Tactics≫ ◆魔弾銃アル・ティニン アサド・アル=アーデルの持つ魔弾砲アルハーディと同系統の技術を用いて作られた兵装。警察の高い技術が総動員された一品である。 一見すると二丁拳銃だが、実際は『ナール』と『キブリット』という性質の異なる二つの銃を二丁一対とするひとつの大型銃。どちらも黒い特殊魔鋼をベースに要所を白い強化パーツで覆い、緑色のエネルギーラインの走る近未来的な外見。そのまま盾としても使えるほど非常に頑強な構造をしている。 発射される魔弾は本人の魔力で作られるが、グリップに自動蒐集機能があるため、魔力が切れるまで装填動作無しに撃ち続けられるという大きな利点がある。 魔弾の属性は、アルフレド自身が先天的に保有する風属性の生み出す空圧弾を基本とした、殺傷用ではなく制圧用のもの。魔力製の弾殻(バブル)の中に圧縮空気を閉じ込め、着弾等の衝撃によってそれが破損することで内部の空気が一斉解放、強い衝撃を伴って炸裂する……といったプロセスで効果が発揮される。 また、デフォルトの風属性弾の他、マガジンの換装で炎熱弾・氷冷弾・電撃弾の三種を使い分けることも可能。ただし、こちらには弾数制限が存在する。 属性変更にはマガジンを抜き取って換装する動作が必要になるが、空圧弾への変更に限れば、マガジン底部のスイッチをオフにすることで属性を無効にして素早く使い分けることが出来る。ただし、属性変更中はエネルギーラインと弾殻の色がそれぞれ赤・青・黄に変化するため、フェイントの様な使い方は出来ない。 ▼『Nara(ナール)』 下部にマガジンが填め込まれた、四つの砲身が連なる回転式多砲身機関銃。要するにハンドサイズのガトリングガン。側面には『Nara』という刻印がある。 後述の合体機構用に、後部は刀剣の護拳のように広がった構造をしていて、その中にグリップとトリガーが隠れている構造。使用時はその中に自分の手を突っ込む形になるため、盾として使用する際の安全性も高い。 発射形態は、引き金を引き続けることで四連装の砲身が高速回転、魔弾を大量にバラ撒くというもの。弾速は亜音速であり見て回避するのは難しいが、反面弾丸が小さく分割されてしまっていて一発の威力は投石程度しかない。流石に全身に浴びれば危険だが、数発当たったぐらいならどうということもないだろう。 なお、この砲身部は射角の微調整が可能で、直線状にして弾丸を一点集中させたり、やや外側に向けて弾幕を張ったりといった使い分けが可能。 ▼『Kibrit(キブリット)』 上部にマガジンが填め込まれた、長大なストックと小さな銃身を組み合わせたアンバランスな見た目のハンドガン。側面には『Kibrit』という刻印がある。 発射形態は普通の拳銃と殆ど変わらず、引き金を引くことで弾丸を一発放つというシンプルなもの。弾速も鉛の銃弾と殆ど変わりない。 こちらは『Nara』ほどの連射は効かないが、弾が分割されたりしないので魔弾本来の威力が発揮され、高い威力が保障されている。 また、引き金を引き続けることで魔弾を別の形に成型して放つことが可能であり、ストック上部のセレクターを切り替えることで、力を凝縮して魔弾の威力を高めるチャージショットと魔力を照射し続けることによる細長いレーザーショットの二つのモードを使用できる。 ▼『Al-Tinnin(アル・ティニン)』 『ナール』の後部に『キブリット』を合体してエネルギーを直結させた、この銃本来の姿。形態移行時、側面部に『Al-Tinnin』という文字が浮かび上がる。 その実態は拳銃の域を大きく超えた大威力砲撃形態であり、後部『キブリット』の引き金を引くことで全部『ナール』の砲身が連動して高速回転を開始&砲身前にエネルギーを集約し、バスケットボール大の高威力属性弾を撃ち放つことが出来る。 また、この形態でも『Kibrit』側のセレクター切り替えは有効であり、チャージショットなら単純な大威力砲撃に、レーザーショットならバレルの回転によって四本のレーザーが螺旋状に絡みつき、より強力な貫通力を帯びた直射砲撃として使い分けることが可能。 更に、両銃マガジンの組み合わせによって複合属性弾を放つことも可能な他、両マガジンの属性を合わせて直列させる事で最大威力を引き出せる。 なお、この状態でも魔弾のバブル構造は変わらず、複合属性弾の場合は異なる属性を内包した二つのバブルをくっつけて球状に成形し、これが着弾地点で弾けた時に初めて両属性が混じり合うといった仕様。一発の弾丸というより、二発の砲撃が同時にヒットするような感じになる。 最後に欠点として、引き金を引いてから発射までに多少ラグがある上に連射も効かず、魔力の消費もかなり激しいため、どんな場面でも使える形態ではない。 ◆大型拳銃 魔弾銃の他、ド派手な金色に塗装された大型拳銃も装備。装填数は7発、予備マガジンを二つ用意してあり、最大弾数は21発。 実弾銃というと警察の支給品のようだが、実際は制圧用に非常に便利な魔弾銃の方を標準装備として申請してあり、こちらは完全にアルフレドの私物。 学生時代に水と塩だけの生活に耐えて密かに購入した限定モデルの拳銃であり、アルフレドにとっては数年来の愛銃にしてお守りのようなもの。 魔弾銃が対人に特化しているのをいいことに、こちらは弾丸に大口径マグナムを採用したトンデモ拳銃となっており、対物破壊用などのサブウェポンとして使用される。 ▽銃のモデルとか みんな大好きデザートイーグルちゃん(百式仕様) ≪Background≫ 小さい頃からヒーローに憧れ、その夢を一途に追って警察を志した青年。猛勉強の末に警察学校をトップクラスの成績で卒業、最近念願の警察入りを果たす。 …………だが実際に現場に出てみると、すっかり自警団にお株を奪われた警察組織は戦力不足と意欲不足が甚だしく、内情は没落しきってしまっていた。 現実を目の当たりにしたアルフレドは警察の権威を復興させるという大きな野望を抱き、日々の業務をこなしながら少しずつ警察内で派閥を拡大し、勢力の確保に勤めている。 そんな信条もあって、アルフレドはSCARLETの体制が確立した際も迷うことなく真っ先に飛び込み、軍や自警団と協力して世界各国で実績を積み上げていった。 その途中でアサドにスカウトを受け、彼の指揮する特殊部隊『ヘイダル』へ入隊。現在は部隊内で参謀役の地位に就き、副隊長的な仕事をすることもある。 ……ただ、だからといってアルフレドが自警団の事を好きかというとそういう訳ではなく、アサドの部下になったのも直に現自警団の体制を観察して技術を盗むためという打算が大きい。アサドもそれを承知で彼を引き入れたようで、部隊員たちとは味方としても敵としても良い関係を築いているようだ。 なお、彼がそんな〝野望〟を抱くに至った理由として、新米刑事時代の恩師にして現アトラヴェル警察本部長、エドガー・ハーレイの存在があるようだが……。 ▽近況 以前、未だに尊敬するそのエドガー当人が、同じく尊敬する隊長であるアサドを逮捕するという事件が発生したが……同じ警察所属ということでどうにか濡れ衣を着せられずに済んだアルフレドは、仲間を救おうと二ヶ月間も四苦八苦した末、多くの協力者の力も借りてようやく無実を証明することに成功する。 行き過ぎた独自捜査や内部告発などの行動が目に付いて彼自身は左遷され、フルーソ本庁から渦中のアトラヴェル警察へ逆戻りする羽目にはなったが……。 当然、後悔はない。現在はしばらくぶりの安寧を享受しつつ、GIFTに拉致されたエドガーの身を案じているようだ。 詳しくはこちら。 ≪Memory≫ ◆絡み記録 +2013年12月・2014年1月 12月20日 「次は、逃がさない……………ッ!」 最近頻発していたGIFTによる一連の鉄の国事件の舞台も、ついに首都・〝黒鉄の都アブサス〟への侵攻にまで至った。 国際サミット警護のためにSCARLETを通じて現地入りしていたアルフレドは、GIFT軍襲来に伴う混乱を収めるため、民間人の避難誘導を行っていた。 だがその最中、中央公園内の広場中央にて、近隣の自警団員を多数蹴散らしたと思しき女と遭遇。アルフレドは彼女を拘束すべく戦闘に至った。 相手は魔弾を容易く弾く重厚な鎧と能力により形状と破壊力を変化させる大剣、何より理屈を超えた気迫によってアルフレドを苦しめる。 だがアルフレドも属性弾や地形利用で策を張り巡らせ、最後はこちらも真っ向から気迫で挑んで、見事女戦士の撃退に成功。 しかし代わりに深手を負い、逃走する彼女を追撃する事はまでは出来なかった。アルフレドはその女戦士、フラズグズ・スヴァンフヴィードを次こそは捕らえると誓う。 12月29日 「ユウト君に、一体何があったと言うんだ…………?」 この日、とある事件の窃盗犯を追って路地裏へ踏み込んだアルフレドは、そこで全身を血塗れにした謎の男と遭遇する。 体つきは成人男性であるのにえらく幼稚な喋り方で、何より〝悪人〟を執拗に嫌う。その男の名は、ユウト・セヴォラインディといった。 悪を嫌うという意味では警察とて同じ。しかし彼は『てんしさま』なる謎の存在の声を聞き、悪人を〝殺害〟という最悪の行為で滅ぼそうとしていた。 幸いユウト自身の力が及ばず、今はまだ誰も殺していないという。アルフレドは必死の説得を試みるが…………やはり、聞き入れては貰えない。 アルフレドは最後に自身の連絡先を渡し、何かあればいつでも相談に乗ると言い残して、悔しさを胸にその場を去るしかなかった…………。 ――――後日独自に調査を行い、彼があのUNITED TRIGGERに所属して活躍していた事、そしてある時期に突如失踪し、その後発見された時には人が変わったようになってしまった事などを調べ上げるも、結局彼がどうしてあのようになってしまったのか、失踪中に何があったのかという核心の部分は、未だ謎のままである。 1月6日 「嫌な予感がするな…………彼は、大丈夫だろうか」 別件の聞き込み調査のために慣れない土地までやってきたアルフレドだが、情けないことに道に迷ってしまう。 仕方がないので、恥を偲んで近隣住民に道を尋ねようとしたのだが――――ふと怪しげな廃屋が目に付き、アルフレドは刑事の勘に導かれてその中へ。 …………予感は的中。廃屋の中には三人分の死体と、君の冷えた亡骸に触れた夜、或いは淡い寂寥という奇抜な名前に奇妙な口調の青年が居た。 即座に応援を呼んだアルフレドは、その後死体と廃屋を簡単に調べ、死因が何らかの能力により使役された植物による絞殺であること、かつて家族が住んでいたと思しき廃屋に全く赤の他人同士の男性・女性・子供を並べ、家族のように見せかけた猟奇的な見立て殺人である可能性が高いこと、そしてその青年が現場から逃げ出す櫻の国の喪服姿に白髪痩身の男を目撃したことなどの情報を掴む。 青年との話もそこそこに、暫くして応援が到着。アルフレドは青年の捜査協力に感謝しつつ、また新たに起こった凶悪な能力者犯罪に怒りを募らせた。 後日、また同じような事件がその男らしき人物によって引き起こされており、アルフレドも当事者としてその捜査担当へ抜擢。目下捜査中である。 1月17日 「いつまでも自警団の後手に回ってはいられない。僕も、更に精進しなければ…………!」 水の国都市部の〝パールタワー〟にて、テロリストによる立て篭もり事件が発生。自警団は人質奪還作戦を決行する為、急遽有志へ協力要請を行った。 また自警団に事件解決の主導権を奪われ、周辺で野次馬の抑制などの地味な業務に当たっていたアルフレドも、これを受けて作戦メンバーへ加わる。 犯人の要求を受け、アルフレドは同じく協力者のミーア・モリリス、ヨーレレイ・スラー、フェインソリトと共にパーティホールへ突入。 扉を開いた瞬間に付き添いの自警団員が一名殺害された挙句、今回の事件の目的を「見せしめ」と断ずる首謀者・獅子牙迅皇にアルフレドは冷静さを失うほど激昴、彼の用意したリングにて正面きっての激闘を挑む。 近接格闘を得意とする獅子牙に追い詰められるアルフレドだったが、仲間達の支援を受けて見事その猛攻を突破、渾身の一撃を叩き込んだ。 最後は自警団の本隊が突入し、無事人質を救出。その鮮やかな手立てに嫉妬と敬服を覚えつつ、アルフレドは意識を失って救護隊に運ばれる。 …………後日、ある囚人護送車が襲撃されたという一報を受け、アルフレドはまだ事件は終わっていなのではと疑念を募らせる。 1月25日 「本当に、無事に終わって良かったですよ…………」 場所は砂の国、イウサール大砂漠。今年も恒例行事であるサンドワーム討伐の時期がやってきた。 アルフレドもまた隊長からの召集を受け、『ヘイダル』の一員として戦場に赴く。 更に助っ人として駆けつけた六人も加わり、一行はかつてない巨大サンドワームと対峙し…………。詳細はこちらへ。 予想外のトラブルが原因でアルフレドは隊の指揮権を預かることとなったが、重圧に耐えつつもどうにか副隊長の責務を果たし、勝利へ貢献した。 その功績を称えてアサドが個人的な祝勝会を開いてくれたが、何故か付いてきたうわばみ女に容赦なく酔い潰される羽目に。 +2014年2・3月 2月17日 「『スクラップズ』……またいずれ、戦うことになるのでしょうね」 先日のラグナール襲撃事件からまだ日も浅いこの日、ラグナールに新たな脅威が襲い来た。 あの日落ちる月を見ていることしか出来なかった悔しさから暫しラグナールに滞在していたお陰で、アルフレドはカノッサの襲撃にいち早く反応する。 そうして彼は、同じく駆けつけたマーシャル・T・ロウと共に、倉庫街にてカニバディール率いる『スクラップズ』の面々と戦う事に。 敵の数と奇抜な能力に圧倒されつつも、アルフレドは最初に立ち塞がったノーティヒア・ウェーブナーを打ち倒し、ロウと共にカニバディールと対峙。 満身創痍の手傷を負わされつつも決死のサポートを行い、ロウがカニバディールに致命打を与える為の隙を作り出すことに成功した。 どうにか撃退には成功したものの、『スクラップズ』は最後に昼の国・ヴェンドゥラーへの襲撃を宣言。次の戦乱の気配はもう近くまで迫っている。 2月17日 「――――これで終わりには、しません」 この日の深夜、一日の業務を終えて久々に恩師であるエドガー・ハーレイと電話口で話していたところ……路地裏の宝石店の中で不審な人陰を発見。 そこで強盗を働いていた三人の少年を見咎め、あまり気は進まないが現行犯逮捕という成り行きになった所、少年達は予想外の戦闘力で抵抗。 どうやら相手は分身の術を使用する〝忍者〟であるらしい。明らかに今回が初犯ではない……そう考えたアルフレドは、彼らを取り押さえに掛かる。 ……非合法な宝石店から物を盗み、本当に必要な者に分け与える。それも確かに正義だ。それでもアルフレドはその行為を許せず、両者の意思は拮抗。 最終的には数に押される形でアルフレドが隙を突かれ、睡眠薬で眠ってしまった所で宝石を奪われるという苦々しい結果になってしまったが……。 どれだけ掛かっても、必ず彼らを止める。アルフレドはそう決心し、証拠の一切が抹消された現場を執念深く捜索しに掛かるのだった。 2月21日~ 「どうして……どうして、こんな事に…………ッ!」 アルフレド達『ヘイダル』の面々は、前回のサンドワーム討伐任務から続投して、ラズワルド地下遺跡という未開の遺跡へ調査隊の救援へ向かう。 少数精鋭ということで、部隊の隊長・副隊長であるアサドとアルフレドが結成された救援部隊の指揮を執ることになったが……。詳しくはこちら参照。 ……そしてこの事件の数日後、11月末の極秘調査について容疑を掛けられたアサドが、水の国警察から逮捕されてしまう。 そして、彼を逮捕したのはアトラヴェル警察のトップは――――かつてアルフレドがその背を追っていた、エドガー・ハーレイという恩師だった。 現在はアサドを解放するため、そしてエドガーの本心を探るため、たった一人で警察の内情を探っているが……そのショックは、やはり大きい様子だ。 3月24日 「何度やられようが、諦めるわけにはいかない………」 アサド関連の件もあって酷く疲弊していたアルフレドは、今日の夜勤を終えたところで流石に限界を感じ、仕方なく公園で一休みすることに。 ――――しかしそんなところで、偶然にもかつて出会った忍者の少年と再会する。どうやら彼の名前は阿賀丸忍太というようだ。 あの事件の捜査は少年の後処理が完璧だったせいで殆ど進展しておらず、いい機会だと接触を持つが……本人は他人のフリでやり過ごそうとする。 そこで職務質問を装って少年を揺さぶり、どうにかボロを出すよう誘導するも、あと一歩というところで駆け引きに勝ったのは少年の方だった。 結局、先日手に入れたW-Phoneを使って声紋と顔写真を入手するのが精一杯。一矢報いはしたものの、またも苦い敗北を期すことになったが……。 ……あれから、ひとつも捜査が進展していないわけではない。最後にそんな事を仄めかし、その日は色濃い悔しさを胸に少年を見逃すことになった。 +2014年4月 4月6日 「頼りがいのある方でした。また、どこかでお会いできれば良いのですが」 アサドの無実を証明するべく動く傍らにも、当然ながら通常の業務を疎かにするわけには行かない。 GIFT関連の事件との通報を受けて路地裏に駆けつけたアルフレドだったが……遺体の傍らには、同じ刑事である矢薙がいた。 風の国警察所属にして、SCARLETとはまた別の方式で国際的な捜査に関わっているという彼。アルフレドにとっては先輩刑事と言ったところか。 遺体の調査を進めつつ、お互いの近況を交換し会う二人。普段国外の刑事と殆ど話すことのないアルフレドに、彼の含蓄ある話は良い教訓となったことだろう。 4月12日 「――――やっと、糸口を見つけられた。そんな気がします」 なかなか進展しない捜査に苛立ちつつ、アルフレドは気分転換に公園で訓練でもすることに。 射撃練習に集中していたところ、偶然にもこの様子を見てやってきたのがシーナであった。 かつてサンドワーム戦で世話になったということもあって話も弾むが……アルフレドの元気のない様子を見かねてか、シーナは彼を甘味屋へ誘う。 ――――そこでシーナに求められ、アルフレドは彼女を信用して一連の事件の詳細を語ることにしたのだった。 全ての話が終わって、シーナは不幸に見舞われている友達]の為なら協力しても良いと言ってくれる。 また更に、彼女から一週間ほど前にその友達と会ったと言う証言も得られた。その後は、互いに連絡先を交換して別れたが……。 後日、彼女からの情報によってアルフレドは無事夜凪レラと合流。更にシーナの地術のサポートを受けたアルフレドは、ある大胆な作戦を決行する。 4月17日 「全てが片付いたら、いずれ。……彼女のことも放っておけませんから」 先日の約束により、シーナから数十体ものゴーレムの軍勢を受け取ったアルフレド。 彼はその足で、かねてから目をつけていたGIFTの一拠点に襲撃を仕掛ける。ゴーレムを指揮しているとはいえ、単騎での奇襲は無謀にも思われたが……。 実際にはアルフレドが表で騒ぎを起こして敵を引き付け、夜凪レラが拠点内へ侵入。とあるデータを奪取するという手筈であった。 戦いは混戦を極め、アルフレドも次第に追い詰められていくが――――その時。アルフレドにもGIFTにも味方しない第三の人間が場に現れる。 アンジェル・ベルジュロン。サンドワーム戦や遺跡救援任務の折に世話になった人物であり、UTのメンバーであった筈の彼女。 しかし彼女はいつの間にか変わり果てて、カノッサ機関の手先としてGIFTを殲滅せんとする〝悪〟と化してしまっていた――――。 結果的には暴れ回る彼女の行動がアルフレドの目的の一助となり、作戦は成功するも……懸念が残る幕引きとなった。 4月19日 「エドガー課長――――必ず。必ず、お助けします…………!!」 二日前の拠点襲撃にて、とあるデータ……GIFTが近日開く会合の日時と場所の情報を手にしたアルフレドは、全てに決着を付けるべく動き出す。 内部告発、という警察組織への裏切りを犯してでも、絶対に真相を解き明かして〝正義〟を貫く。その覚悟で自警団勢力に加わるアルフレド。 そして当日、会場となったアトラヴェル旧市街の『アトラヴェル第三産業ビル』で彼が見出した真実とは――――。詳しくはこちらへ。 結果的に、アルフレドはようやアサドと『ヘイダル』の仲間達の無実を証明することに成功。 その後の展開は激動としか言いようがなく、警察の信頼が地に落ちるわ自身も本庁からアトラヴェル警察に左遷されるわの大童だったという。 とにかく、アルフレドはひとまず事件で負った大怪我を癒すために病院で療養する。……まぁ、戻ってきた仲間達に連日囲まれて、喜ばれるわ泣かれるわどやされるわの滅茶苦茶だったため、実際は休む暇もなかったかもしれないが。 ◆所持品記録 W-Phone (2013/2/19) UNITED TRIGGERとSCARLETが同盟を結んだことでSCARLET隊員達へと配布されることとなった、高機能携帯端末。スートは「ソード」を選択したようだ。 詳しい機能は当該ページへ。 これまでに - 回、僕のデータが閲覧されたようですね。そこの貴方、もし何かお困りでしたらいつでもご連絡下さい。
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野試合SS・厨房その2 人はパンのみにて生きるにあらず、人は神の口から出るすべての言葉によって生きる。 ――マタイによる福音書より 「……」 痩身の男は起き上がると、辺りを見回した。いや、見回したというのは不適切な表現かもしれない。 その両の目は未だに閉じられていたからだ。 「……存在するものは毅然としてあり、空間の中に一点の消滅を生み出す……」 己の座右の銘とも言える一文を呟きながら、肩や膝、関節部をほぐす。 少なくとも、致命的な負傷や筋力の低下は見られない。 「……はて」 男は思わず首を傾げる。 自分の記憶が確かであれば、自分は大都会の真ん中で希望崎学園最強の男の手によってビルごと吹き飛ばされ、 地面に叩き付けられ――自らが描いた白黒の芸術の最後に、紅い染みを残したはずだったからだ。 「……あるいは、存在を失ったものは異界へと流れ…… 考えるだけ無駄か」 男は嘆息すると、芝居がかった口調を止めてその眼を開く。 穴の空いた眼帯はその視線を一切遮ることなく、周囲の視覚情報を男に明け渡す――色だけを除いて。 その目に映るのは、巨大な灰色の森だった。 「さて、ここは果たして天国なのか地獄なのか――異界であることは、確かだろうが」 男の名は、ストル・デューン。 色盲の画家にして、色彩を侵す者である。 ~~~~~~~~~~~~ 「……What?」(一体何が、という意味の英語) 初老を過ぎた外国人の男は周囲の風景に戸惑いを覚え――懐中時計を取り出す。 時計には、本来なら彼がもう目にすることはなかったであろう情報が表示されていた。 全てを無に還すものによって心を折られ、敗れた彼には最早与えられるはずのない情報。 対戦相手と、対戦場所。 対戦相手は自分を除いて二人、ストル・デューンと――もう一人の人物。 対戦場所は【現代】厨房。 だが、目の前に広がるのは――“森”である。 長い芝を敷き詰めたような地面、どこか無秩序に生える色鮮やかな草木。 見覚えがないはずなのに、何故か既視感を感じる風景であった。 「これが、Mr.Sikiの言っていた“Bugってハニー”という奴でしょうかー…… ンン、少々Styleを変える必要があるかもしれませんネ」 事前に知り得た情報――現代社会における厨房での戦闘を想定していた彼は、意識を切り換える。 『TAI-kansoku』。 彼の“能力”は、五感を操作する力である。 事情は不明だが、屋内ではなく屋外であるならばまずは索敵。聴覚と視覚を引き上げて、周囲の状況の把握力を上げる。 『リスニングは要点を聞き逃さず、リーディングは要点を見逃さないことが肝心』、英検3級参考書にもそう書いてある。 「とはいえ、流石にこの柔らかいGrass fieldでは、足音もしないでしょうガ…… Hum?」 そんな彼の耳が、奇妙な物音を捉えた。 何か液体を吸い込むような、それでいて固形物も諸共に吸い込むような…… 「……Udon?」 (うどんを食べる音だろうか? という意味の英語) 外国人の名は、リークス・ウィキ。 またの名を、ウィッキーさん――英検の完全熟練者(オーバーアデプト)である。 ~~~~~~~~~~~~ 「……こりゃまた、妙げなとこじゃのう」 手にした丼から乳白色の太い麺を啜りながら、青年が独りごちる。 彼の最後の記憶は、全身を駆け巡る塩辛さと、冷たい水の感触――自らの命が消える感覚。 だが、気付けば――この奇怪な樹海にいた。 「じゃったら、ここが彼岸っちゅうことかいの…… っと、ごちそうさん」 うどんを食べ終え、食後の一礼を済ませると周囲を改めて確かめる。 地元“四国”でも、辿り着いた希望崎でも見かけなかった植物群。少し肌寒い外気。 鬱蒼とした森はその全容を見通すことは難しいが、一つ奇妙な点がある。 他の生物らしき気配が、一切ないことだ。 小動物や鳥はおろか、虫一匹すらいない。 「こんばあの森やったらもうちっと、動物がおるろうに……」 青年の名は、善通寺眞魚。 “四国”88結界の管理人である。 「人の気配は、微かにするけんど……ん?」 善通寺が辺りの捜索を一通り終えた――その時。 上空から、青年の目の前に巨大な塊が落ちてきた。 人間の頭ほどもある、黒い物体―― 「!? 何じゃあ!?」 すんでの所で衝突を免れた青年は、慌てて空を見上げる。 ――巨塊が、次々と落下してきている! (誰ぞの攻撃か、何らかの現象か――わからんが、こうしちゃおれん!) 背中に背負った大筆を抜き、構える。 降り注ぐ塊は無差別に降り注いでいる――少なくとも自分だけを狙っている様子はない。 だが、決して自分に当たらないというわけでもない。 「セイッ!」 頭目掛けて飛んできた礫を、筆の“払い”で逸らしながら――近くの木陰へと逃れる。 幸いにも、木々を貫通するほどの破壊力はないらしく、避難は容易に済んだ。 「まったく、なんじゃありゃ……」 「ワカリマセン。ですが今Checkするのはsuicidal act,自殺行為でショウ」 「ほーじゃな、雨霰が止むまでは動けん……ん?」 漏らしたつぶやきに答える声あり。 思わずそちらを見るが――誰もいない。 と、次の瞬間。 「How (把 ――掴むという意味の英語)」 「!」 振り向いた逆側から、何者かが善通寺の襟首を掴み、身体を強引に向き直らせる。そして。 「Do(胴)!You!(有)Do!(胴) ――胴体に有効打!そしてもう一回胴!と言う意味の英語)」 「がっ……!」 正拳の二連撃が善通寺の鳩尾を捉え、その身体を吹き飛ばす。 しばし苦悶の表情を浮かべる善通寺だったが、即座に筆を取ると“払い”で受身を取って体勢を立て直す。 筆は流れる様に、相手の追撃が来れば“止め”が刺さる真正面を向いていたが――襲撃者はそれ以上動かず、名乗りを上げた。 「ドーモ、My name is Wicky.ハジメマシテ、Mr.善通寺。手荒なAISATSUにて失礼します」 「うぃっきー……なんじゃ、外人さんかいの。ちゅうか、いきなりコレはないじゃろ」 「ソーリー。噂に聞く“ショドー”のワザマエを見たくてTAWAMUREてしまいました。 ですがこれ以上危害を加えるつもりはありまセンのでご安心ください」 ウィッキーが深々とお辞儀をするのに合わせ、善通寺も会釈を返す。警戒は解いている。 敵意や害意を発してはいないことを、すぐに感じ取ったからだ。 「貴方に一つ、Questionがあります。できれば正直にアンサーを頂けるとうれしいのですが」 「くえす……ああ、質問か。わしがわかることでよけりゃかまんけんど」 「Okay,簡単な質問です。 貴方は“迷宮時計”を巡る戦いで負けましたネ?」 「ああ……そのはずじゃ。夜雀のにいちゃんに、塩漬けにされた……はずじゃ」 「Thank you very much for asking me.(答えてくれてありがとう、という意味の英語)」 「おまさんも負けてここへ来た、っちゅうことでええんかい?」 「Nmm……負けたのは確かですが、少し事情がありまして。その辺りを説明しますので…… ……そちらに隠れている、Mr.Sutolも是非聞いてくれませんか?」 ウィッキーがくるりと振り向き、森の奥の方を見る。 そこには暗闇しかなく、とても人影などあるように思えなかった――が。 その暗闇が、ほどけるようにかき消え――男の右目へと吸い込まれていく。 ストル・デューンその人である。 「……やれやれ。英検使いというのは、騙し絵を解さないのかね」 「いえいえ、Trick artは大好きですよ。尤も、DAMASHIUCHIは嫌いですがね」 肩を竦める画家に、英検使いが気さくに返す。 こうして、三人の敗者は集められ―― 迷宮時計に起きた“異変”を知ることとなる。 ~~~~~~~~~~~~ 『ウィッキーさん、グッドモーニング!』 「Good morning,Mr.Siki. どうしました?」 話は少し前――おおよそ二十四時間前に遡る。 ウィッキーが『転校生派遣サービス』へと、ミッション失敗の報告をしてから数日。 既に迷宮時計の件はウィッキーの手を離れ、『彼』へと引き継がれた――筈だった。 故に、こうして向こうから連絡が来ること自体がイレギュラーである。 『んー、ちょっと困ったことになりまして。ウィッキーさん、お暇ですか?』 「暇……と言えるかどうかはワカリマセン。ですが、復旧作業も一段落して手は空いてます」 『それはよかった! ……実は、迷宮時計の件で一つ気になることが出てきまして』 「Hum? ……ですが、私はMission Failedしてます。あまりお役には立てないかと」 『いえ。負けた貴方だからこそ、手を貸して貰いたいんですよ。 ……迷宮時計が、どうもBugってハニーしちゃったみたいで』 「アーハン……つまり、何かErrorが起きた、と?」 『ええ。現状では、深刻な影響は与えないとは思うのですが……今から説明しますけど』 電話の主、Mr.Sikiと呼ばれた人物が語ったところによると、異変は大きく分けて二つ。 一つは、迷宮時計の戦いに敗北した筈の人物の蘇生や再転移のような兆候が観測されたこと。 『もちろん、最後に勝った者が跳んで敗者の蘇生などをしているという可能性もありますが―― 少なくとも、今の段階ではまだ勝者は決まっていないことを観測しています。 現地の人が通りすがりに、という線もまずないでしょう。そこで疑われたのが』 「迷宮時計の誤作動……Bug、ですか」 『ええ。といっても、その原因を探るのは『彼』の領分ですので、ウィッキーさんには URADUKE……もとい、裏付けを取ってきてほしいんです』 「アーハン……つまり、実際に敗者にInterviewしてきてほしい、と」 『イエース。InterviewはウィッキーさんのOHAKO、ですからね! 行く方法は心配しないで下さい。こっちがなんとかしますから』 「わかりました。……もう一つのBug、というのは?」 『んー、実はそっちが本題です。その“もう一つ”が何か、を調べて欲しいんですよねー。 前者に関連してなのか、また別の問題が発生しているのかでこっちも対応が変わりますし。 あ、もちろんこっちも原因は構いません。何が起きてるかだけ調べてくれれば』 口調こそ軽いが、電話口の相手からはこの件に関する困惑が伝わってくる。 ……“転校生”時逆順の能力が発端でありながら、既に“転校生”である彼らにも予測のつかない事態へと拡散している。 そのことが、少なからず不安なのだろう。 「……All right.引き受けましょう。では、何かあればまたYOROSHIKUお願いします。ハヴァナイスデ~ィ!」 こうして、リークス・ウィキは――自ら、この世界に飛ぶに至ったのだった。 ~~~~~~~~~~~~ 「……成程。やはり、私の芸術は……終焉という一点に収束を迎えていたのだな」 「ようわからんこと言いなや……ちゅうことは、やっぱりわしは死んじゅうのか」 「YesともNoとも言えます。おそらくは、何らかの形で“生き延びた”という形で迷宮時計に認識され、 しかし既にDEADでなくてはならないのにALIVEしていることでエラーと見なされ、再度戦うことで そのErrorを正すようにした…… といったところでしょうかね」 敗者二人が、どこか諦観したような感想を漏らす中、ウィッキーが独自の推測を披露する。 もしここに探偵がいたならば、もう少し正鵠を射た推理をしたかもしれないが…… 今のところ、この推測が当たっているかどうかはこの場にいる誰にもわからないことである。 「……それで。Mr.ウィッキー。貴方は我々に二度目のピリオドを打つのかね?」 「そうしたいならば、説明せずに攻撃してますヨ。……貴方方がどうしてもReviveしたい、のであれば 全力を持って立ち向かう所存ではありますが……」 「いや。わしゃあいっぺん死んだ身じゃ。ほんならしゃあない」 「……同じく。私も、一度終わらせた芸術作品に加筆修正を施すほど蒙昧な画家ではない」 二人の割り切りの良さに、ウィッキーが拍子抜けして肩を竦める。 「Fmm,困りましたネ。力ずくで来るなら、撃退もやむNothing,でしたが…… そうも素直に言われてしまうと、救いたくなってしまいます」 「……何、気にするな。私はこの森で、未発表作でも描いているさ」 「気持ちばあ受けとっちょくよ。 ほんなら、この森からわしらが出ていきゃええんじゃな」 ウィッキーの良心に、死者(?)の二人が笑顔で返す。 だが、善通寺の言葉でウィッキーが再び思案顔に戻った。 「……そういえば、それが気になってました。もう一つのBug……どうやら戦闘空間の設定が、間違ってるようですね」 「厨房じゃ言うとったな、そういや。……しっかし、どう見ても森にしか見えんぞね」 「……芸術家にとって万物がキャンバスであるように、食材の宝庫である森を広義の厨房と見なした、のだろうか」 三人が疑問を感じ、奇妙に一致したタイミングで空を見上げた。 三人は、思わず声を失った。 ~~~~~~~~~~~~ 「……」 「ありゃあ……ダイダラボッチかえ……?」 「……なるほど。Bugとは――こういうコト、でしたか……」 三人が見上げた先。そこには――“何か”がいた。 三人よりも遙かに、遙かに、遙かに巨大な“生命体”であるが故に“何か”という表現しかできない“何か”である。 善通寺やウィッキーが気配を感じ取れなかったのも無理はない。 あまりに巨大すぎて、それが生物であると――今の今まで、認識すらできなかったのだから。 視点をもっと引いて見てみれば、大きさ以外何ら変わることのない『人間』かもしれないし、 或いは古の伝承に記されるような『龍』かもしれないし、外宇宙より降り立った『古の神々』かもしれない。 だが、そのあまりな巨大さ故に、その全容を彼ら三人が知ることは出来ない。 どころか――この記述を読んでいる貴兄らにも、これを記している筆者にすら、それを知ることは出来ない。 それほどに巨大で、だが“生命体”であることだけは確実に分かる――そういう存在が、彼らの頭上にいるのだ。 最早、この存在が何であるかを解明する意義は存在しない。 それでも、ある程度の推測は――三人にも、出来た。 「つまり、今我々が居るPlaceは―― “盛り付け中のサラダボウルの中”……」 この“何か”は――少なくとも、人間が料理・調理と呼ぶ行動を為し得るだけの知性らしきものがあるということ。 先程の巨塊は、おそらく何らかの香辛料をふりかけたのだろう―― 「……成程。そして、そのサラダは現時点で“厨房”に毅然として存在している、と」 「Yes,Mr.Sutol――迷宮時計の“情報”には間違いは、なかった。 間違っている、すなわちBugというのハ―― このような生物がいる世界に飛ぶこと自体が、デス」 「確かにの……いくら並行世界のどっかじゃ言うたち、こりゃてにあわんちや」 いかに迷宮時計といえど、ここまで異世界じみた並行世界に飛ぶのは――なるほど、想定外だろう。 バグと表現されるのも納得がいく話だが、納得したところで事態は解決しない。 「ほんで、どうするがじゃ。このままじゃ、みんな食われてしまうぞ」 「……あの巨大存在を倒すというのが、手っ取り早いだろう」 そう言うが早いか、ストル・デューンが両目を開き――白と黒の奔流を生み出す。 『赤×黒白』の黒化(ニグレド)と白化(アルベド)の同時発動による、モノトーンの暴力―― だが。その試みがすぐさま無駄であることを、画家は悟った。 「……全容を見渡すには、この空は狭く、そして描くべきキャンバスは広大……」 「つまり“相手の全身が見えんき塗りつぶせん”ちゅーことか?」 そう。知覚すらやっとな巨大な“何か”相手では――そもそも黒化・白化による攻撃が通じているかどうかも分からない。 「……おまさんはどうなんじゃ、英検とやらでどうにかならんか」 「Sorry……エゾヒグマ程度なら兎も角、あれはKIKAKUGAI過ぎます」 「そうじゃな……わしも歯が立たん」 ウィッキーの完全熟練者としてのワザマエを全力にしたとして――攻撃が通る保障がない。 善通寺の書道、そして能力“筆を選ばず誤りて帰る”でも同様だ。 「……だが、これがサラダならば、いずれ“食べる者”に供されるのではないかね?」 「! ほーか、流石にそんときは“厨房”から出て行くことになる!ほいたら場外やき、誰か一人が……あ」 「Yes……サラダボウルがどういう向きなのかが分からない限り、私が出られる保障がありません」 ストルの指摘は光明に思えたが、それではウィッキーを確実に帰すことができない。 仮に生き残った者が連絡する、という方法を選んだとしてもストル・善通寺は“転校生”に連絡することが出来ない! ――万策、尽きたか。 三人が諦めかけた、その時だった。 “眞魚!おんしの力じゃ!おんしの力を使うんじゃ!” 謎の声が、三人の元へと届いた。 神秘的なエコーがかかった不可思議な声だが、言っている内容はハッキリと聞き取れる。 「!? 誰じゃ……?」 「Mr.善通寺、心当たりは?」 「わからん……じゃが、いくらわしの力言うたち……」 「! ……だが、最早猶予はなさそうだな」 善通寺が戸惑う中、地響きと奇妙な浮遊感が三人を、サラダの森を襲った。 ――サラダボウルが持ち上げられ、いよいよ出されようとしているのだ。おそらくは、客である“何か”に。 “早く!……の……物に――じて――” がちゃり、がちゃり――声が、轟音に掻き消される。 厨房内の他の物音だろうか、その音の出所はようとして知れない。 「いかん……声がよう聞こえん……!」 「……Mr.善通寺、ちょっとKUSUGUTTAIですよ!」 「!?」 ウィッキーが咄嗟に動き、善通寺の胸へと手を当て――何かKIAIのようなものを送るような仕草を見せた。 その瞬間、物音に遮られていた声が再びハッキリと届く! 「『TAI-kansoku』……Mr.善通寺のhearingを強化しました」 「すまん、恩に着るぜよ!」 “早く!懐の巻物に二人を封じて――” 「封じる…… そうか!それじゃったら…… 二人とも、ちいとこらえてや!」 そう言うと、善通寺は筆を振るい字を中空に描き始める! “封”の字を二つ―― 対象を絵巻物に閉じ込める、能力と書道の合わせ技! 書き上がった“封”の文字は、ウィッキー・ストル両名へと引き寄せられ――身体にそのまま張り付いていく! そして、二人の身体が墨絵の如く溶け――善通寺が構えた巻物の中へと吸い寄せられる。 全ての墨が吸い込まれた時、巻物には――ストルとウィッキーの姿があった。 そして、善通寺は――二人が試合場から“消えた”ことで“勝者”と見なされ。 二人が描かれた巻物ごと、この世界から転移した。 ~~~~~~~~~~~~ “動物園”の世界、N.Y―― 朝日が差し込む公園の傍らで、善通寺はウィッキーとストルに頭を下げていた。 「すまん!本当ならわしと画家のおんちゃんが巻物になって、ウィッキーさんに持っていってもらえたら良かったんじゃが……」 「No problem,Mr.善通寺――巻物に封じた人を戻せるのは貴方だけ、である以上仕方ありません」 「……どのみち、説明している暇もなかっただろうからな」 さて。飛び先がなぜ此処になったか、蛇足ながら説明しておくと―― 善通寺とストルの両名は“迷宮時計”を所持していなかったのだ。 それもまた、迷宮時計に発生したバグの一部……一度でも迷宮時計に関わった者に降りかかる、何らかの影響らしかった。 その為、“勝者”となった善通寺はウィッキーの持っていた迷宮時計―― 厳密に言うならば、Mr.Sikiが用意した迷宮時計の“模造品”をそのまま引き継いだ格好となり。 その時計にとっての基準――即ち、ウィッキーが敗れたこの世界へと帰還することとなったのである。 その後、巻物から二人を解放して今に至る、というわけである。 「ともかく、私のMissionはひとまずの完了ですが…… 今後の結果次第では、また何かあるかもしれませーん。 その際にSupportして貰えれば、Win-WinでCHARA-HEAD-CHARA!という奴です」 「そうか……そう言うてもろうたらありがたいちや」 「……しかし、私と善通寺君は……果たして此処に“戻って”良かったのだろうか?」 「ほうじゃな……本当ならもう死んじゅう筈じゃに」 「まあまあ。命あってのMONODANEですから! 早速ですがお二人とも、瓦礫撤去のボランティアお願いしますヨ!」 困惑する黄泉帰りの二人をよそに、ウィッキーさんは往年の気楽さで――再起に向けて、歩み出した。 「……ところで。あの声、結局誰だったんじゃろな?」 ~~~~~~~~~~~~ ――どこかの世界、“四国”―― “……どうやら、うまくいったようじゃの” 清浄な空気が張り詰めた、“四国”の中央に聳える霊山――中腹に穿たれた洞穴の奥に、二つの影。 一つは人、もう一つは――彫像である。 『いやあ、一時はどうなることかなあと思ったけどなんとかなったね! これも僕の日頃の行いの御陰だね!やっほう!』 “……お主の日頃の行いはともかく。お主の報せがあればこそ、 我が声を遥か彼方の異界へと届けるに至ったのは紛う事なき事実よ” 『まあね。たまたまシキ君が電話してるの聞いて、なーんか面白そうだなって思ってね。 僕がしゃしゃり出ると事態がメチャクチャになるから何もするなって言うから、貴方に動いて貰ったまでさ』 どこか空々しい響きではしゃぐ青年を窘めつつも誉めるように、彫像は念話で語りかける。 “しかし、珍しいこともあるものよのう。よもや、世を壊すのが望みのお主が世を護らんが如くに動こうとは、な” 『……やだなあ。僕はただ、ぐっちゃぐちゃにしたいだけだよ。 今回の場合だってそうだよ。時逆ちゃんの企みを引っかき回したかっただけさ! だって、僕がしっちゃかめっちゃかにする前に――先に更地にされちゃたまらないからね』 “……ふん。数百年経とうというのに、相も変わらず本当の心音を語らぬ男じゃな” 『それでいいんだよ、僕は。何もかも、済し崩しに台無しにしていく――それが、僕だ』 そこまで言うと、青年はもはや会話を続けるのは無意味だ、と言わんばかりに彫像に背を向けて 洞穴の出入り口の方へ向かって歩き始めた。 『ま、今度僕が来るまで頑張って“四国”遺しといてね、“金剛大師”様』 “お主も、息災であれよ。 久万高原よ” 彫像――“四国”88結界の開祖“金剛大師”は、 青年――“転校生”の一人、久万高原戻の背中を静かに見送った。 このページのトップに戻る|トップページに戻る
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極めて近く、限りなく遠い世界の邂逅 ◆960Bruf/Mw 瓦礫の街並みの中、四機の航空機が羽を休めている。 その羽の下、崩れた家屋の残骸に腰をおろしている男がいた。男の名は神隼人という。 その眼は三機のゲットマシンを見ていた。 ――間違いなくゲッターだ。 真ベアー号に乗り込んだときに理解した。コックピットの内装、ゲットマシンの外観こそ知るものと異なってはいたが、首輪が教えてくれた。こいつは―― ――真ゲッター。 ゲッターの後継機としてつくられた機体。早乙女博士の尽力にも関わらず、5年前のあの日起動しなかった機体。それが―― ――なぜ動いている? 早乙女研究所の地下に封印されていたはずだ。 ――いや、それよりも……。あの時、こいつが動いていればムサシは。 噛みしめた奥歯が鳴る。古傷が顔に浮かび上がってきていた。 一つ深呼吸をして心を静める。 ――落ち着け。好都合だ。 あの化け物がどうやってこいつを持ち出したのかは知らんが、好都合だ。 決して動かなかったこいつが何故か順調に稼働している。そして―― 動かした視界に一組の男女が映し出される。 おそらくクインシィを宥め連れ戻すのに苦労したのだろう。ガロードは正座で終わりの見えない説教を受けていた。 ――ゲットマシンを扱えるパイロットがここに二人いる。 あの化け物はただ無作為に人を集め訳じゃないらしい。 翔と剴を見つけた後、どうしても見つけることが出来なかった三人目がここに二人もいる。 となると、当面の目標は三人目を探すことか。 そこでようやく隼人は、助けを求めてチラチラと視線を送ってきているガロードに気づいた。 「クインシィ、そのくらいにしておけ」 少女の意志の強そうな瞳がこちらを向き、鋭い視線と怒気の矛先がかわる。 それをこともなげに受け流し、話し出した。 「俺たちは別々の世界から集められた可能性がある……」 最初に交換した情報の中に各自の世界観が異なることはすでに検討がついていた。 「そ~いうこと。ヘイコン世界に住む者同士ってわけだ」 「並行世界だ」 以前、クインシィと同様の会話をしていたガロードが得意気に相槌をうち、即座にクインシィの訂正が入る。 「それでこれからの話だが、お前たちはこのままゲッターに乗れ。俺もこのままYF-19に乗る」 その言葉に、これまで隼人に対してゲッターという単語を口にしてないクインシィの眉がぴくりと動いた。 「そう警戒するな。あれは元々俺がいた世界で俺が乗っていたものだ。お前たちよりはあれに詳しい」 そして「もっとも肝心なときに動かなかったがな……」とどこか自嘲気味に続ける。 「なら、なぜお前も乗り込まない? 」 「古傷があってな……。だが、そんなことはどうでもいい。それよりひとまず話は中断だ」 『アー、アー、ただいまマイクのテスト中ですの……』 まるで見計らかったかのようなタイミングで、どこらかともなく少女の声が響いてきた。 ――6時間で10人。 それを多いととるか少ないととるかは、人それぞれである。 平時に50人強の集団から6時間で10人の死者が出たと考えれば、それは異常に多いだろう。だが未曾有の災害に巻き込まれたと考えれば、その数は少なかった。 しかし、あの化け物が提示したルール上死者はまだまだ増える。 最終的に1人しか生き残れないのであれば、その犠牲の数はやはり異常だ。 ――1人? 疑問が浮かんだ。 この殺し合いはシステム上必ず1人は生き残るように設定されている。 ――何のために? 自分に科せられた首輪を撫でる。 ただ殺すのが目的ならば、奴らはたやすくやってのけれるはずだ。 最初に集められたときでも、今この瞬間でもだ。 つまりこれは我々を殺すのが目的ではない。ただの娯楽、気まぐれ、余興と言われてしまえばそれまでだが……。可能性としては―― 「選定……もしくは観察か……」 ここに集められる前の記憶――ネオゲッターチームを集めるために自分が出した犠牲者を思い浮かべる。 ――なんてことはない。俺もあの化け物と同類か。 小さく哄笑が漏れた。 「俺について来い。まずはゲッターを合体させるぞ」 「なぜお前にそんなことを命令されなければならない」 立ち上がり歩き出そうとした隼人にクインシィが噛みつく。 「こんなとこで死ぬのはごめんだろ? なら今はくだらんプライドは捨てて俺に従え。ゲッターの扱い方を教えてやる」 視線がぶつかり合ったあと、隼人は背を向けて真ベアー号のほうに歩きだす。 背後では納得がいかないといったふうのクインシィを、ガロードが宥めていた。 痩身長躯の男が真・ジャガー号のコックピットに張り付き、ガロードにあれこれと指示を飛ばしている。 その様子をモニター越しに眺めていた。 ――気に入らない。 神隼人と名乗るその男は、沈着冷静、頭脳明晰、そういった類の人間なのだろう。 そして、おそらくは最低限の冷徹さも兼ね備えている。 物に例えるならばナイフのような男――それが抱いた感想だった。 この先、生き残っていくのには必要な男。それは理解していた。 だが、どうにも気に入らない。イライラする。ようはそりが合わないということなのだろう。 ――くだらないな。 そう思い。気持を落ち着かせる。気持の問題など些細なことでしかない。 「クインシィ、操縦方法は頭に入っているな。ベアー号はオートで発進させる。まずはゲッター1だ。イーグル・ジャガー・ベアーの順で合体しろ。いいな」 隼人から通信が入る。それにほんの一瞬前までの考えを忘れて、彼女は苛立った。 どこか上から物を言うような口調、それが気に入らない。 「黙ってみていろ。私の好きにやらせてもらう」 感情が判断を鈍らせることを下らないと思いつつも、感情的になる自分を御することができない。クインシィはそういう自分に気づいてはいなかった。 赤、白、黄色、三色のゲットマシンが空を飛び、一列に連なる。やがてその間隔は狭まり、合体は三度目で成功した。 「遅い! 時間がかかりすぎだ」 筋はいい。そう思いつつ苦言を飛ばす。クインシィから返事はなかった。 「まぁいい。次はゲッター2だ。ジャガー・ベアー・イーグルの順に……」 そこまでで一度隼人は言葉を区切った。 「神さん? 」 不審に思ったガロードが声をかける。 「ひとまず中止する。南西の方角にお客さんだ」 ビル群の中をゆっくりとこちらに近づいてくる青い巨人の姿が目視できた。 距離から推し量るに、その巨体は真ゲッターと同程度の大きさであろうか。 その足取りの確かさからまずこちらを確認していると見てほぼ間違いなさそうだった。 ひとまずは接触すべきと考え、一歩前に踏み出す。 その瞬間、一陣の風が隼人の横をすり抜けていった。 零コンマ何秒の世界でその赤い風はキロ単位の距離をふいにし、無造作に頭蓋を鷲掴み、大地に叩きつける。 技術もへったくれもないただ力任せの一撃。しかし、掛け値なしの渾身の一撃。 重低音が響き、土煙が柱の如く聳え立つ。 不意を突かれた隼人も、ガロードも、静止は愚か反応さえもできない間の出来事だった。 ラキと出会ったときに相対した相手だ。警戒はしていた。 その時の経験をもとに不意を突かれないだけの距離は取っていた――はずだった。 どろりとした血液が額を伝って流れ落ち、口の中には錆びた鉄の味が広がる。 軽く脳震盪でも起こしたのか、視界がぶれてうまく焦点が合わない。揺蕩う視界に赤い悪魔が映し出されていた。 「………した…」 ガラスを引っ掻いたような耳鳴りがするなか、呟きが聞こえてくる。 「……どこへ隠した。勇をォどこへ隠したアアァァァァアアアアア!!!! 」 聞き返す間もなく呟きは叫びへとかわる。 フォルテギガスの頭蓋が持ち上げられ、今度はビルの壁面に叩きつけられる。 「答えろ! 勇はどこだ? 」 「な、何のことだ? 」 何かが潰れるような鈍い音を響かせてフォルテギガスの頭部が打ちすえられる。 「隠すな! お前は知っているはずだ。勇の……私の弟の行方を!! 」 意味が分からなかった。 勇という知り合いはいなかった。グラドスにも、地球にも、ここにもだ。 にもかかわらずこの少女は自分が勇を知ってると思い込んでいる。 まったく意味が分からなかった。 ただ一つわかるのは――この少女がどこか普通ではないということだけだった。 赤い悪鬼が巨人の頭蓋を鷲掴みにしていた。 いや既に頭の形を保っていないそれは、頭蓋と呼ぶにはふさわしくないかもしれない。 言ってみれば潰れた鉄屑だった。 それが大地に、ビルの壁面に、ところ構わず無造作に叩きつけられている。 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も 永遠にループするその光景を現すなら、『凄惨』の二字がぴったりであっただろう。 「ガロード、何が起こっている! 状況を説明しろ!! 」 その狂気の惨劇を眼の前に、隼人が吠える。 「俺にだってわかんないよ。こんなお姉さんは初めてなんだ!! 」 返ってきた返答に苛立つ。 「ともかく。クインシィを落ちつかせろ」 吐き捨てるように言い、モニターに視界を戻した。 巨人が逃れようと鷲掴みにする腕を両の手で掴んでいる。しかし、既に力はない。そんな感じだった。 ――いや、あれは。 「クインシィ、離れろ! 」 隼人が叫ぶのとほぼ同時に、フォルテギガスの胸部にある四つのハッチが十字に開かれ、閃光が放たれた。 立ち込めた爆煙を裂いて東西に赤と青――二機の巨人が弾けとび、数棟のビルが巻きこまれて瓦解する。 ――くそっ! まさかあんな方法で相殺されるなんて。 逃げられないように腕を掴み放った起死回生の一手――フォルテギガスのギガブラスター。 それはゲッターの腹部から放たれたゲッタービームに相殺され、二機は弾けとんだ。 「レイ、損傷を……」 そこまで言いかけて居ないことを思い出し、機体を立て直す。 立ち上がったフォルテギガスの中、視界が回る。腹の底から何かが込み上げてきて思わず吐き出す。出てきたものは赤かった。 あれだけ絶え間なくコックピット内部で揺れに翻弄され続けていたのだ。無理もない。 揺れる視界、いかれた平衡感覚、遠距離戦は不可。逃げ切ることも難しい。 ――どうにかして接近戦に持ち込むしかない。 特殊自律型兵器フィガ、それを射出して距離を詰める。そう決めたときに予想外の衝撃がエイジを襲う。 強き巨人の名を冠する50m超の巨体が地に埋没し、エイジの意識は途絶えた。 首のないその風貌が死を司る首なしの騎士――デュラハンを連想させる機体が、強き巨人を足蹴にたたずんでいる。 爆発が一つ起こり、近場に一つの機体が吹き飛ばされて来た。 即座に駆け寄り、蹴り倒し、踏み潰した。そこには容赦も慈悲もない。 生きる為に他人を蹴落とす。今の彼にとっては至極当然の行為だった。 「ちっ、さすがにでかいだけあって硬え」 踏み砕くつもりで潰したはずの巨人の背にはヒビが入っていたが、砕けてはいない。 そこに踵の裏で圧力をかける。 装甲の外板が悲鳴をあげ、四方を持ち上げつつ?がれていく。圧迫された内部の機器が火花を散らし、黒いオイルが血の如く飛び散った。 その時、立ち込める土煙を裂いて赤い悪鬼が姿を現した。 横薙ぎにはらわれる大鎌。 咄嗟のダッキング。風切り音が頭――否、首の直上をすり抜けていった。 そのまま懐に潜り込み、振り上げられる拳。 金属同士がぶつかり合う音が響き―― ――大鎌の柄と拳が接触した。 「なっ!? 貴様は誰だ! 」 「俺の知らないゲッターだと!? 」 互いの言葉が交錯する。押し合う拳と大鎌。 「その声、竜馬か! 」 「……!? 」 割り込んだ声に誘発され生じたわずかな隙。それを見逃さずクインシィは力を緩め、拳を受け流す。 前のめりに崩れる大雷凰。上段に大きく振り上げられる大鎌。 次の瞬間、『轟』と呻りをあげて振り下ろされた大鎌は―― ――大雷凰の数センチ上でピタリと静止した。 大雷凰の腕が大鎌の柄をがっちりと掴んでいる。 「てめえ……、隼人かああぁぁぁああああ!!! 」 強引に大鎌の柄でゲッターの顎をかちあげる。 ふわりと浮かび上がるゲッター。そのまま流れるように繰り出された大雷凰の回し蹴りが―― ――ゲッターの脇腹に食い込み、その巨体が弾け飛ぶ。 「プラズマビュート! 奴を逃すな!! 」 まだ終わりではない。発せられたのは青白く輝くプラズマの荒縄。 捕えられるゲッター。強引に引き寄せられ、一度広がった両者の距離が急速に縮まる。 「調子にぃ……のるなああぁぁぁぁぁぁああああ!!!! 」 ゲッターバトルウィングが展開されプラズマビュートが断ち切られる。 肩口から斧槍――ゲッタートマホークを取り出し、速度を落とすことなく――否、むしろ加速しつつゲッターが大雷凰に迫る。 動じることなく竜馬も大鎌――ゲッターサイトを構え、迎え撃つ。 「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!! 」 「隼人おおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!! 」 ぶつかり合う互いの気迫。交錯する斧槍と大鎌。入れ替わる両者の位置。 音をたててゲッターの装甲に亀裂が奔った。 互いに向きなおり、再び対峙したその時―― 「落ち着け、二人とも!! 」 ――静止が入った。 大雷凰と真ゲッター。その二つの大型機のちょうど中間に一つの小型機が割り込んでいた。 「リョウ、どういうつもりだ? お前もあの化け物の企てに乗った口か?」 その小型機から送られてくる通信モニターに隼人が映っている。 ――ちっ……。ゲッターに乗ってたのが隼人、てめえじゃないとわな……。 先入観からかゲッターに乗っているのは隼人。そう思いこんだのは間違いだった。 「俺はなぁ、てめえと早乙女のジジイに引導を渡せりゃ、この殺し合いも化け物もどうだっていい」 モニター越しに隼人を睨みつけ言い放つ。 「どういうことだ? 何故、早乙女博士をお前が狙う! 」 「とぼけるな、隼人! 」 「答えになってないぞ、竜馬!! 」 噛み合わない会話の往復。隼人の顔に困惑した表情が浮かぶ。 「いつまでとぼける気だ! 三年前のあの日、てめえが早乙女のジジイを殺し、俺に罪を着せて逃げた!!そのせいで俺はなぁ、隼人!! 永久刑務所で地獄を見たんだ!!! 」 今にも飛びかかりそうな、隠そうともしない剥き出しの憎悪、それが隼人に向けられていた。 「何のことだ? 何を言っている? 」 「うるせぇ! 俺はここでお前を殺し、後ろのゲッターを手に入れて、ジジイに引導を渡しに行く。ただそれだけだ!! 」 吐き捨てるように口にされたその一言、それに反応した者がいた。 「できるものならやってみろ!! 」 YF-19を跳び越え、ゲッターが大雷凰に差し迫る。 「ひっこんでいろ、クインシィ! 」 隼人の言をまるっきり無視してゲッターは駆ける。 クインシィにしてみれば、勇の手がかりを目の前にして邪魔をされたのだ。 彼女の性格を考えれば止まるはずはなかった。 その様子に苛立ちつつ奥歯を噛みしめ、指示を飛ばす。 「ガロード、オープンゲットしろ! 」 「へっ!? な、なんで? 」 突然ふられたガロードが素っ頓狂な声を挙げた。 「無駄口を叩くな! ゲッター2だ!! 」 既にゲッターと大雷凰の間の距離は幾許もない。 ゲッターの背中越しに大雷凰が構え、そして踏み込み、大鎌が振るわれる。 「りょ、了解! 」 「待て、ガロード! 」 クインシィの静止は一歩間に合わず。ゲッターは分離した。 振るわれた大鎌の脇を三機のゲットマシンがすり抜け、大雷凰の背後でゲッター2へと姿を変える。 ゲッター最大の弱点、合体の瞬間。それを狙って竜馬は追撃をかけようとして―― ――やめた。 考えを読んだのか、竜馬の目の前に隼人が立ちふさがっている。 「ガロード、ここから脱出して三人目を探せ。ゲッターの本当の力を引き出さなければ、あの化け物には太刀打ち出来ん!! 」 「わ、わかった」 隼人の勢いに押される形でゲッターは地中に潜り離脱していく。 その中でガロードは、怖ろしいほど目を吊り上げているクインシィを確認して、泣きたい気分に駆られていた。 横一文字にはらわれた大鎌をくぐり抜け、YF-19が大雷凰に肉薄する。 ヒビの入った腹部を確認し、マイクロミサイルの発射管を開いた瞬間、急制動をかけて機体の勢いを殺す。 鼻先を膝がすり抜けていった。続けて振り下ろされるのは肘。 反射的にかわせないと判断した隼人はピンポイントバリアを機体上部に展開。バリアごと弾き飛ばされて一旦距離を置いた。 「勘は鈍ってないようだな、竜馬」 「ずいぶん苦しそうじゃねぇか、隼人」 息が荒く、呼吸が落ちつかない。古傷は確実に隼人の体を蝕んでいる。 だが、この男に泣き言を言うつもりは全くなかった。 「フ……気のせいだ。それよりもリョウ、落ち着いて聞け! 俺は神隼人だが、お前の知っている神隼人ではない。そして、お前も俺の知っている流竜馬ではない」 わずかに竜馬の顔に反応がでる。 「……どういうことだ? 隼人、俺にわかるように説明しろ! 」 食いついてきた。それが隼人の内心の思いであった。 「平行世界。おそらく俺とお前は極めて似通った世界からあの化け物に集められたのだろう」 「何を言い出すかと思えば」 竜馬が鼻で笑う。 「コロニー、MS、NT、オルファン、アンチボディー、グランチャー、どれも俺には聞き覚えのない言葉だ。お前にもないだろう。真ゲッターに乗っていた二人の世界の言葉だ」 反応を見つつ、言葉を紡ぐ。竜馬の説得をあきらめたわけではなかった。 「真ゲッター、それがあのゲッターの名前か? 」 「そうだ。そして、俺の知っている竜馬は真ゲッターを知っている。お前は知らない。それが理由だ。根拠としちゃ薄いがな……」 全てを語り終え、流れる静寂。これが最後の説得であった。その静寂を―― 「クク……ハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! 」 ――竜馬のどこか狂った笑い声が打ち消す。 「俺とてめえが違う世界の人間? それがどうした。だとしたら、俺はここでてめえに引導を渡し、他の集められた奴を全員ぶっ殺して、俺の世界のジジイとてめえに引導を渡す。 それだけだ。やることはかわらねぇ」 その言葉を受けて、隼人は竜馬の説得を諦めた。 「そうか。俺もここでお前に生き残る理由を譲ってやるわけにはいかん」 冷静に状況を分析する。 敵は共に癖を知りつくした難敵が一機。 古傷の影響で自機のスペックはフルに引き出せず。体が機体の速度に耐えきれない以上、離脱も戦闘も現実的ではない。 その中で、足掻けることと言えば、体の状態を無視しての離脱。もしくは――ー撃に賭けた撃破。 共に現実的ではないながらその二つしか思い浮かばなかった。 神隼人はリアリストである。ゆえに他の相手なら逃げることを選んだであろう。相手が流竜馬であるからこそ隼人は―― ――ー撃に賭けることを選んだ。 YF-19の右腕にピンポイントバリアが収束されていく。 狙うのは胸部装甲の凹み、コックピットの可能性の高いその一点。 そこに限界まで収束、圧縮させたピンポイントバリアパンチを叩きこむ。 普段と比べ段違いに小さく収束されていったピンポイントバリアはやがて通常のナックルカバーの形状から逸脱し、針の先ほどの点となる。 「行くぞ、竜馬! 」 その言葉を合図に弾けたようにYF-19が突進し、唐突に爆発を起こした。 目の前の突然爆発を起こしたYF-19が黒煙をあげて流れていき、やがて地表に激突して粉微塵に吹き飛んだ。 「隼人おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」 その光景を目の前に竜馬はただ叫ぶ。何が起こったかわからなかった。 眼の端に地に伏したままのフォルテギガスが映った。 その瞬間、矛先はそこに向けられ―― 「貴様かあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!」 ――激しい打撃音が木霊した。 一発一発打たれるごとにフォルテギガスの装甲が凹み、蹴り砕かれる。既に鉄屑と化している頭の先から足の先まで余すところなく蹴り砕かれていく。 やがて動力部を損傷したフォルテギガスは爆音を残して跡形もなく消え失せた。 戦場で身を潜め、機会をうかがい、神隼人を遠距離砲撃で沈めた男――クルツ=ウェーバーは一路、その爆発を背景に人知れず離脱、機体を北東へと駒を進めていた。 【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~地球最後の日) パイロット状態:憤慨、やや疲労 機体状態:ダメージ蓄積、 現在位置:B-3 第一行動方針:ガロードを問い詰める。場合によってはお仕置き 第二行動方針:勇の撃破(ユウはネリーブレンに乗っていると思っている) 第三行動方針:ギンガナムの撃破(自分のグランチャーを落された為逆恨みしています) 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】 【ガロード・ラン 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~地球最後の日) パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。 機体状態:ダメージ蓄積 現在位置:B-3 第一行動方針:お姉さんを宥める 第二行動方針:ゲッターのパイロットを探す 最終行動方針:ティファの元に生還】 【神 隼人 搭乗機体:YF-19(マクロスプラス) パイロット状況:死亡 機体状況:大破(木端微塵) 現在位置:B-1】 【流 竜馬 搭乗機体:大雷鳳(バンプレストオリジナル) パイロット状態:怒り、衰弱 機体状態:装甲表面に多数の微細な傷、頭部喪失、右肩外部装甲損壊 、腹部装甲にヒビ、胸部装甲に凹み 現在位置:B-1 第一行動方針:サーチアンドデストロイ 最終行動方針:ゲームで勝つ 備考:ゲッターサイト(大鎌)を所持】 【アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ 搭乗機体:フォルテギガス(スーパーロボット大戦D) パイロット状況:死亡 機体状況:大破(木端微塵) 現在位置:B-1】 【クルツ・ウェーバー 搭乗機体:ラーズアングリフ(スーパーロボット大戦A) パイロット状況:冷静、脇腹がちょっと痛い 機体状況:Fソリッドカノン三発消費、ファランクスミサイル1/3消費 現在位置:C-8 第一行動方針:ラキの探索 第二行動方針:ゲームをぶち壊す 第三行動方針:駄目なら皆殺し 最終行動方針:ゲームから脱出】 【残り35人】 【初日 19 40】 本編102話 極めて近く、限りなく遠い世界の邂逅
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椿鬼 【種族】 鬼(牛鬼) 【性別】 男性 【属性】 地,木 【所属】 仄明の影 概要 「仄明の影」の店員の一人。フルネームは「月見里 椿鬼」(ツバキ=ヤマナシ)。 見た目麗しい少年で、種族は土蜘蛛(鬼蜘蛛)の突然変異種である「牛鬼」。 牛鬼は極めて残忍かつ凶悪な鬼とされる大妖怪だが、普段は人間に変身して本性を隠している。 容姿 容姿は端正な顔立ち、痩身で線が細い。小柄で身長は160cmくらい(+角)。 両耳のちょっと上辺り象牙色の鬼の角を生やしている。右目には眼帯を装備しているが、魔眼がバレないようにしているだけで隻眼というわけではない。 瞳の色は翡翠色で髪の色は蜜柑色と桑の実色のツートンカラー。前髪が蜜柑色で後ろ髪が桑の実色。肩上の長さ。 淡い翠色を基調とした五分袖アオザイ(翅が出せるように背部が大きく開いている)にゆったりしたグレージュの八部丈パンツ、革製ショートブーツといったいでだち。 しかし牛鬼としての姿は合成獣のようなおぞましい異形である。 肌は漆黒となり、頭部は牛の頭骨を模した白い甲殻に覆われ、胴が筋骨隆々とした鬼のものに変化。 下半身は白い甲殻に覆われ、前足の二本が巨大な鎌となった巨大な大蜘蛛となる。上半身も含めた体長は2m弱ほどと巨体で重量もかなり重い。 更には背中には虫のような透き通った翅を生やしており、ほんの少しならば空も飛べるし落下時の衝撃も緩和できる。 椿鬼は好戦的な性格であるが、自身の本体を透き通ったガラスの翅と両腕の鎌以外良く思ってはいないらしく人前で本体に戻ることは稀。 性格 口調は落ち着いているものの、性格は明るく社交的。かつサバサバした不敵な振る舞いで面倒見が良く、しっかり者な兄貴肌。 しかし、かつて身内全員を一度に失い、人から逃げ続け、時には追っ手の狩人と戦うような殺伐とした日々を経験していたからか、酷く孤独を恐れている。 身内が健在だった頃から決して人前で異形の身を晒すなと脅されていたことやら、殺伐とした日々の中での経験から妖怪としての自身を嫌い、綺麗で儚いものを好む。 鬼の習性として好戦的な一面を持ち、相手の命尽きる瞬間が命の儚さを感じられて好き等と少々危険な面を持つ。 しかしながら敵味方や善悪の分別はちゃんとつく上、良心もある。戦闘狂まではいかず戦闘でも過激ではなく、種族(牛鬼)内ではだいぶ理性的で穏やかな方ではある。 賊徒により一族をみな失い、傭兵仲間達を殺され、傷つけられ続けた為、表面上には出さないものの賊徒やテロリストには並みならぬ怒りを抱いている。 しかし特別正義感が強いというわけではない。 前述の孤独を恐れることと、自身へのコンプレックスから人間のように着飾っていなくては、常に綺麗で居なくては自分は孤独になってしまうという強迫概念に駆られる。 自身の能力にも治癒系の能力や特殊な魔法と言って憚らず、悪食癖や生命維持に毒素を必要とするという牛鬼としての習性もひた隠している。 戦闘などの緊急時であったとしても、この強迫概念は根強く、異形の巨躯を持ち、毒を操る大妖怪としての力をなかなか発揮できない。 この傾向は人間はおろか自身と同じ人外相手でも、慣れ親しんだ友人や慕っている人間の前でも変わらない。 ちなみに依存相手にとって「自分がいないとダメなんだ」と思い込み振舞おうとする支配型。 表面上は明るいがだいぶ病んでいる上に荒んでいる。 口調 「だね」、「だよ」といった温厚な男性口調。やや気取ったような言い回しをする。 精神が不安定になってくると感情的な言い回しを多用するようになり、幼い子供のような口調になる。 「僕は椿鬼。月見里 椿鬼だ」 「こういう手合いはちゃんと警戒しないと。三人共、人の話聞いてる?」 「大丈夫?傷はちゃんと治さないとだめだぞ。後で悪くなっても知らないぞ」 「この子、人見知りが激しいんだ。でも、悪いヤツじゃないよ」 「全く…。一人じゃ何も出来ないんだから………」 「別に記憶が戻らなくてもお前はお前だろ?何が変わるって言うんだよ」 「そういうことなら僕に任せなって。みんなは大船に乗った気でいてよ」 「なんだそういうことか。それなら……僕がみっちり教えてあげるよ。ふふふ」 「なぁ…何であんたを殺さないか解るか…?僕はな……あんたのような屑と同じにはなりたくないんだよ!!!」 「綺麗だねぇ、君のその赤化粧。……欲を言えばもーっと見たいかな」 「こんな姿、見せたくなんて………!!!」 「ダメだ、ダメだダメだダメだ!!ここは人間のセカイなんだから、ちゃんと人間みたいにしなきゃ……そうだ……そう、しないと……僕は」 「ちがう!!これは毒じゃない、魔術だ!!ちがうんだ!!ぼくは……!!!!」 「ねえ、僕、また一人ぼっちになるの……?お願い……一人、ひとりはいや……」 「銀蔵……どこ…………?どこにいるの……?」 経歴 +クリックで表示 かつてはラケルタ旧政府の目を盗み、ステルディア外に進出。人化して人間社会に溶け込んでいた鬼の一派の出身。 彼らは妖怪と人間の共存を掲げる穏健派であり、旧政府の横暴に耐え切れず国外に逃亡した経歴を持つ。 彼の生家「月見里」家もまた一派の一員として代々各地を放浪する劇団一座となり生活を営んでいた。 しかしながら、数年前この一座(穏健派一派)は不幸にも賊の襲撃により崩壊。 たまたま大人たちに内緒で街に繰り出していたが為に襲撃を逃れた椿鬼はただ一人生き残り、天涯孤独の身となった。 まだ10歳程度の子供でありながら孤独の身となった椿鬼は人間達の世界をただ一人で彷徨う。 時には頭に角を生やした子供=鬼の子供というだけで追い掛け回されたり、狩人を差し向けられることもあったという。 殺伐とした生活の中で孤独と教え込まれた知識から生まれた強迫概念や、自分達とは違う種族の営む社会に放り出された数々のストレスから精神を病んで荒んでしまう。 この経験が妖怪でありながら自己を否定し、人間を見下すどころかそれを恐れ、追従しようとする歪な精神と歪んだ依存心を生み出してしまった。 荒みきった心と弱りきった体で食料を調達しようと川の辺りを彷徨っていた所、とある傭兵団の一員であった魔物使い、銀蔵に迷子と勘違いされて拾われた。 拾われた当初は精神的に荒み、病みきっており、人間である傭兵達にも心を開かずずっと怯えきり、疑心難儀から食事も受け付けない程であった。 しかし銀蔵の人柄の良さとおせっかいさからやがて徐々に心を開き、精神的にも安定して彼が所属する傭兵団の一員として活躍。武道派として知られるようになっていく。 八雲との関係は、傭兵任務の中で知り合い、交流している内に意気投合した仲で悪友。 椿鬼や銀蔵が所属している傭兵団では椿鬼が最年少であったが故か、別の団の所属とはいえ自分よりも幼い八雲に対し先輩風を吹かせまくっていたらしい。 意気投合したのも本能的に自身と同じラケルタの妖怪であると見抜いていたが故の親近感や八雲のおおらかな性格も大きいようだ。 八雲が独立して何でも屋を立ち上げた後も傭兵業を続けていたが、近年の情勢により団員の相次ぐ戦死や傭兵生命を絶たれる程の重傷者や賊勢力に屈し恐怖のままに脱落する者が相次ぐ。 とうとう団の維持もできない状態となり、他の傭兵団に統合されることとなってしまう。 そんな中そういえば弟分が何でも屋を開いていたなという話を思い出し、統合先の傭兵団には所属せず脱退。同じく脱退した銀蔵と共に仄明の影に身を寄せる。 技・魔法 主に傘を扱い、後述する能力や体術と絡めた巧みな戦闘を得意とする。能力値は耐久面がズバ抜けて高く、それにスピードが続く素早い耐久型。 また牛鬼の神通力を多少使えるようで毒や病魔を吸収したり、吸収した毒素から毒を生成して操ることもできる。 本体を現すと戦闘スタイルも変化し、鬼故のタフネスと異形の体、能力に任せた肉弾戦が中心となる。 …が、本人の性格上翅や鎌を出すことはあっても変身することはほぼない。 なお変身後も耐久重視のスタイルは変化しないが、自身の前足と同じような甲殻で作られた刃が特徴の大鎌を使うようになる。 また、増加した筋力に加え、巨体と重量、耐久力を生かしたパワーファイトを多様するようになる。 低下したスピードは糸による立体機動や高速移動で補う為変身前同様スピーディだが、巨体故に小回りがてんで効かなくなるのが弱点。 変身後、大鎌を使用する理由はその巨体故傘のリーチが届かない為である。 他にも状態異常を伴う特殊攻撃への耐性を有する等非常に高い戦闘能力を持つが、精神に大きく難を抱えているのが最大の弱点。 未熟かつ既に病み切っていて不安定すぎる上に、非常に強力な力を持つ本体を晒す事に大きなトラウマを抱えており、そもそも変身したがらない。 更には相手からの不意な言葉や周囲の戦況次第でボロボロに崩れることすらありうる。 +主な技・魔法 「九天注ぐ細蟹の糸」 霊気を用いて牛鬼の糸を紡ぐ技。消費霊力により弾性や強度が変動する。 切断力はないものの、糸に微弱な毒を這わせることもできるらしい。 主に立体機動時に使用される。 「幽々光輝す玉繭」 体内の毒霊気を血液に溶かし込み、毒液と化して体表に分泌。分泌した毒素で毒結晶を生み出す。 体術の補助や武器が無い際の武器として使用したり、毒を伴うカウンターを見舞う目的で鎧のようにして纏うことが多い。 毒結晶を自身から切り離して、ばらまくことも可能。ばらまいた毒結晶は地雷のようなものとなり、一定時間で起爆し周囲を汚染する。 「獄界出づる大鋏」 自身の鎌のような前足による攻撃にて相手を切り裂き、かつ強力な出血毒を注入し止血や再生を封じる技。 人間態で繰り出す際は一時的に両腕が本体の前足のような鎌となる。 「炯然抉る刃鎚」 自身の前足を思い切り振り下ろし、強烈なストンプ攻撃をお見舞いする技。 足自体の重量と鋭さで強化金属の塊すら穿ってしまう火力に加え、毒の二次被害が相手を襲う。 「紫霧蔓延る常闇」 体内の毒霊気を周囲に霧状に拡散するブレスとして放つ技。 ブレス自体に攻撃力はないものの、広範囲の相手を一気に巻き込むことが可能な強力な技。 人間態で放つ際は掌から毒霊気を妖気のようなオーラとして放出する形をとる。 「苦界回帰す再世」 体内に蓄積されている毒霊気を消費し、自身の再生力を高める。 戦況によっては周囲の毒素を取り込みつつ毒霊気に変換し続け消費することでリジェネを使い続けることも可能。 「悪疫告ぐ黒紅」 体内に蓄積されている毒霊気を血液に溶かし込み、毒液砲弾として放つ技。見た目は禍々しい赤黒い砲弾。 砲弾は放物線を描くように飛ぶ為スピードはそうでもなく回避は容易い。 しかし着弾した周囲を毒によって急速に汚染し、相手の足を伝って徐々に毒を浸透させる。 血や体内の毒を消費する為多用はできない。 「悪意滴る心火」 大量の毒液を渦のように練り上げて圧縮し放つ高圧縮砲撃。 こちらは直線状に飛来し、スピード、火力、貫通力共に非常に優れる大技。 「悪疫告ぐ黒紅」よりも消費が非常に多く、一度放つと血も毒も欠乏してしまう為一度の戦闘で一発が限度。 「曙光射す奈落」 自身が受けた毒素、即ち状態異常や特殊攻撃を引き起こす物質・事象を吸収して自身の腕力、スピードを強化する。 相手が特殊攻撃を主体に戦う相手ならば相手の特殊攻撃をわざと受けて発動し、一気に逆転に持ち込むことも可能。 受けた特殊攻撃が強力であればあるほど、大量に吸収すればするほど強化できるが限度を超えると椿鬼が持たない。 他にも色々あるらしい。 +【備考】椿鬼が扱える毒まとめ 「出血毒」 相手の血液や体液を溶解し、出血させる他凝固を阻害し血を止まらなくさせてしまう毒。再生系能力の阻害効果も持っており、非常に危険。 この毒による影響は長く続き、小さな傷であろうとも放置すれば出血死してしまう。速やかな解毒が推奨される。 「鎮寝毒」 相手の神経を鎮めて眠らせてしまう神経毒の一種。この毒による影響はそれなりに長く続くので相手の無力化に便利。 睡眠効果のある毒素から精製され、調整すれば鎮痛剤や麻酔の代わりにも。 腕や足等から目や口と特定の器官だけに作用させ、麻痺させることも可能。 心臓を麻痺させれば即死技にも化ける。 「赤裂毒」 相手の体内器官を毒素により急速に膨張させて死に至らしめる出血性の致死毒。上述の出血毒をより強力にしたもの。 膨張により内部器官が膨れ上がっては次々弾け、最終的には全身が風船のようにパンパンに膨らみ血しぶきをあげ、破裂してしまう。 何の力も持たない普通の人間ならば約10秒前後で死に至る。 「滅鬼毒」 強力な浄化能力を持った毒。 その名の通り、椿鬼が受けた浄化の霊気から精製される。 鬼や悪魔など浄化に弱い者を殺す同族殺しの毒である。 ちなみに浄化効果がある為、毒の癖に汚染を中和して元に戻すこともできる。 「腐食毒」 非常に強力な腐食・溶解作用を持った毒。強化合金でさえも溶かしてしまう。 腐敗ガスやら瘴気やらあれそれから精製された霊素が基。というより殆ど瘴気。 相手の防具や肉や骨、装甲を高速で劣化させ腐食・溶解してしまう為毒物の効かない機械等にも効果有。 聖属性の攻撃等で浄化するべし。 「恙心毒」 相手の魂に訴え、肉体的な強度や耐性を度外視し攻撃することができる呪詛毒。 とどのつまり精神攻撃ができる毒であり、対象となった者の精神や魂を様々なカタチで傷つけてしまう。 単に恐怖や幻覚を与える他、椿鬼の言霊や思念に這わせることで悪意や悪口の効力を高める。 対策には強靭な精神並びに精神攻撃への耐性を必要とする。 「封魂毒」 相手の魂、存在に訴え、封じ、なんらかの制限を課す効果を持つ強力な呪詛毒で椿鬼の切り札。 他者に制限を課すという効果は椿鬼自身の支配欲が他人を害する毒として表れたもの。 本人曰く相手の魂そのものを封じ込めて眠ったままにしてしまうことも出来るとかなんとかいうが真相は定かではない。 相手の魂、根源(存在式のようなものと思われる)に訴えて呪縛をかける毒霊気であり、対象に備わっている特殊攻撃への耐性ではどうにもならない。 治療には一定時間の経過か、呪縛を打ち破る程の強靭な意思によって強引に弾き飛ばすしかない。つまりは何事も気合である。 他にも色々あるらしい。 特殊能力・技能 能力 「鬼」 かつて霊木の化身とされた大精霊の成れの果てを始祖とする土蜘蛛種の突然変異。地属性を持つ妖怪の一種。 鬼や妖怪・魔物に特別な効果を齎す技や魔法・能力の影響を受ける。 しかし、多くの鬼が苦手とする浄化攻撃への吸収・無効化能力を備えており、強力な魔物の一種。 「病喰鬼」 病毒を食らい、共生する鬼。定期的に毒を摂取し、摂取した毒を変質させた毒霊気がなくては生きていけない種族特有の特異体質を持つ。 それに伴い毒=特殊攻撃に対して特化した進化を果たし、あらゆる心身の異常を退け毒素と共生する強靭な肉体と体内の毒素を操る能力を所有するに至った。 牛鬼は一般的には人を食らい毒を振りまく残虐かつ恐ろしい鬼とされるが、人々を蝕む毒を食うことも可能で、病避けの守り神とされる側面もある。 周囲には毒等を吸い取ることで癒す一風変わった治癒能力としか話していない。 彼の喰える毒は普通の毒性物質を始め多方面に渡る。状態異常や変化を引き起こす物質・事象ならほぼどんな形であっても対象内。 瘴気や浄化攻撃さえも吸収可能であるが、無効化できても吸収できないもの、吸収してはいけないものも多数存在する。 「吸毒」 摂取した毒やウイルスを霊素分解し体内に貯蔵する能力。体内に貯蔵、霊素への還元用の毒嚢が存在する他血液と混ぜて循環、輸送する血腺を持つ。 とはいえ無尽蔵に吸収、貯蔵できるわけではなく、あまりにも強力な毒を摂取しすぎたり、大量の毒を摂取しすぎると体内霊気のバランスが崩れてしまう。 体内霊気に異常を生じると体調を崩してしまい、急激にバランスを崩すと生命の危機に陥ることもありうる。 その為幾ら特殊攻撃に対する強力な吸収・無効化能力を持てどそれを操る相手に対し、無敵になれるわけではない。 「毒精製」 様々な毒を分泌・精製できる。 しかしながらその元となるのは椿鬼が摂取し、毒嚢にて分解・貯蔵した毒霊気。これと自身の血液と調合して毒液を生み出す。 その為吸収した毒をそのまま扱うことは出来ず、劣化していたり、元が解らなくなるほど別物になっていることも多い。 使用する毒により毒霊気を魔法のように操作しながら多数の毒の分泌を可能にしている。ちなみに呪詛毒に関しては鬼の神通力を使っているらしい。 「悪食」 上記の体質から平時から毒霊気を貯蔵するべく毒を持つような危険物や腐肉、瘴気等を定期的に摂取している。 戦闘スタイルからか、戦闘後は特に毒霊気が欠乏しやすいので多くの毒物を求める傾向が強い。 「貧血」 戦闘スタイルからか、度々貧血を起こすことがある。 特に戦闘後は顕著。 「地属性耐性」 地・木属性に強い。 「空属性弱化」 空属性に非常に弱い。 「炎・冷属性弱化」 始祖が木霊であった影響か、炎や冷気にも弱い。 「死属性耐性」 上述の通り死属性の瘴気をも吸収・無効化し自身の体内に蓄えることができる。 霊魂や怨霊をそのまま用いた攻撃というか瘴気を伴わない死属性攻撃や闇属性攻撃に対しては無力。 「聖属性耐性」 上述の通り浄化攻撃さえも吸収・無効化し自身の体内に蓄えることができる。 ただし光属性に対しては無力であるし炎や冷気や風にはやっぱ弱い。 「立体機動」 蜘蛛の下半身を利用した立体機動。壁も走れるし天井にも張り付くことができる。 他にも人間時においても手から糸を放出してスパイ○ーマンごっこや、糸の弾性を利用し自身を弾き飛ばすことで高速移動も可能。 「飛翔」 本体時、及び翼を出している時のみ使用可能。腰の翅で飛行、ホバリングが可能。 しかしながら飛行能力・技術はそう高くないらしく、ごく短時間しか飛翔できない。 主な使用法は咄嗟に浮いたり高速移動したり衝撃を殺したり突進したり。 「邪眼」 普段隠している右目の能力。視線で射抜いた相手を様々な状態異常に陥れる病の邪眼。 発動する効果は体内に蓄積された毒素に依存し、使用すると体内に貯蔵している毒を消費する。 とどのつまり視線による凝視を通して自身の体内の毒素を相手に移す能力。 技能 「毒物知識」 数々の毒に対しての見解が深い。 「演技」 元は俳優の卵だったのでかなりの腕前。 潜入調査などでも活躍が見込める。 「変装」 それなりに上手くできるらしい。 能力値 人間態 体力 A+ 精神力 D+ 精神防御C++ 魔力 C~A(体内の毒霊気により変動) 魔法攻撃力 C~A(同上) 魔法防御力 A++ 腕力 B 物理攻撃力 B+ 物理防御力 A++ 知力 C 素早さ B++ 命中 B+ 妖鬼態 体力 S 精神力 D+ 精神防御C++ 魔力 C~A(体内の毒霊気により変動) 魔法攻撃力 C~A(同上) 魔法防御力 S++ 腕力 A++ 物理攻撃力 B+ 物理防御力 S++ 知力 C 素早さ B 命中 B+ アイテム等 「瑠璃鋼の戦傘」 【装備効果】 とくになし 【特殊能力】 とても頑丈 どこかの武器職人の気の迷いにより製造された魔導合金製の傘。 普通の傘として使用するものではなく、れっきとした武具であり、鈍器である。 その為とても頑丈で人や魔物を殴り殺せるし、広げれば戦車砲の一撃さえもガードする。 傘の部分のエッジは鋭く刃状に研ぎ澄まされており、相手を斬りつけることも出来る。 ちなみに銃とか刀とか隠し武器は内蔵されていない。 「怪鎌【残映】」 【装備効果】 ??? 【特殊能力】 吸毒(毒を喰らうことで切れ味と強度を上昇させる。無限吸収は不可能) 変身後の椿鬼が使用する自身の前足に似た奇怪なデザインをした大鎌。 非常に鋭利な切れ味を持つ他、呪詛が込められており、持ち主同様毒(特殊攻撃)を吸収して自身の切れ味と強度を上げる能力を秘める。 持ち主による「喰らえ」という合図を受けて吸毒を開始する。 その正体は隠し持っていた母親の前足。襲撃者との戦闘で大きく刃こぼれし、ヒビが入っていたが故に彼らは持っていかず遺されていた。 傭兵稼業に携わるようになってから人間を苦しめる牛鬼を仕留めたから、武器に加工してくれと鍛冶師に頼んで作って貰ったようだ。 大鎌に生まれ変わった後は椿鬼が持ち歩いているものの、彼の性格からか戦場で振るわれたことはない。 ちなみに 1 武道派チームの新入り。当初は女装キャラだったものの、思えば男の娘キャラ多かったので普通の少年に変更。 虫キャラが欲しかったので、同僚のルキ同様虫をモチーフに製作。こちらは牛鬼ということで蜘蛛がモチーフ。 モデルはモンスターハンターシリーズよりネルスキュラ、セルタス夫婦、ショウグンギザミ等。後は銀魂の神楽、神威の影響もちらほら。 2 傭兵時代、封魂毒を使って八雲の記憶喪失の治療を試みたことがある。 呪縛の効果が現れている間は記憶の復元に成功したものの、効果切れになった途端大惨事が起きてしまい、復元した記憶も全部また喪失してしまったらしい。 彼が御影家の人間であることには勘付いてないものの、なんらかの手が加えられた妖怪であることは把握しているらしい。 3 吸収・無効化能力があるけども、能力の欄の通りに無尽蔵の吸収は不可能。なので特殊攻撃の効果は効かないものの、完全に無効化できるというわけではない模様。 強力な状態異常を吸えば吸うほどバテるのも速いです。 4 名前の由来は椿鬼⇒椿から。牛鬼の正体が老いた椿の根であるという説から命名。木霊関連の設定もここから設定してます。 5 同様に地属性を持つ鬼である豊布津兄弟との関連は放浪時代のルダにちょっと会った事あるかなくらい。 ちなみに、椿鬼の一族は穏健派(人間と共存しようチーム)。八雲や孤月らの御影家は強硬派筆頭(人間を弾圧する旧政府の懐刀)。 ルダなんての隠れ里を開いた鬼達は強硬派⇒穏健派(旧政府軍の元兵士だったけども敗走して逃げ延びて穏健派に)な感じです。 6 封魂毒(とっておきの呪詛毒)の効果は個体の性格によりあれこれ変動し、同じ効果を持つことは決してない。 封魂毒という名称も椿鬼がつけたもので、名称も異なるようである。 登録タグ ヤンデレ疑惑 仄明の影 合成獣 地 木 牛鬼 蜘蛛 豆腐メンタル 鎌 隠れ病み系 鬼
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No Title 穴倉の底で、「ぼく」は生まれた。 目がいいことが自慢だった。 いつも一番に木苺や虫を見つけるのはぼくだった。 イヌなのに、ネコみたいな子、とおねえちゃんに笑われた。 おねえちゃんは僕より背が高くて、なんでもできた。 だからぼくは、おねえちゃんがキライだった。 ぼくが勝てるのは目のいいところだけ。 でも、シンセキだから、コンヤクシャだから、ときどきいっしょにあそんだ。 いつも持ってるポシェットから、キャンディだのキャラメルだの取り出して、自分だけ食べてるときはいちばんキライだった。 ずるい、とぼくがおこると、きまって、ウィスキーボンボンをくれていた。 こどもには早いわ、おいしくないけど、これならあげてもいいわ。 ぼくはしかたなく、おねえちゃんにウィスキーボンボンをもらうのだ。 ぼくが嫌な顔で食べるから、おねえちゃんはサル顔とぼくをわらった。 ※ ごうごうと屋敷が燃えて、火の粉が空に昇った夜のあと。 残すのは強い仔がいい。 大人たちが、そう言っていた。 しかくい部屋、白い壁、大人たちも白い服。 ぼくたちはよい子に並んでいた。 ならんで、ならんで、あるいていく。 暗い穴倉へぼくらは行く。 出口のない穴倉へぼくらは行く。 残すのは強い仔がいい。 強くないなら、残れない。 手にはなにも持っていなくても、ぼくに生まれつき牙と爪は備わっていて。 けれどそれはどの子供もおなじだったから。 いそがないといそがないと。 こわくてたまらないから、はやく、だれよりさきに――― ※ どうせ残すなら、強靭な個体が望ましい。 必要な『素材』は百余り、収集は秘密裏に。 当然、成功率はより高いほうが喜ばしい。 まだ魂が柔らかな「幼生」だけが、素材となり得る。 素材をただ集めることは出来ても、101人すべてを「どれが残っても望ましい」個体だけで揃えることは難しい。 最後に残る個体を、恣意的に選ぶことが出来れば。 だがそれでは儀式とならない。 実験は行われているけれど、部分的には成功も見ているけれど、本来それでは意味を成さない。 すべては閉じた闇の中で。 最後の一人になるまで、誰が生きていて誰が死んでいるのか、観測も介入もしてはならない。 けれど。でも。 儀式に影響を及ぼさず、外側から望ましい個体を残すことができたなら。 たとえばそう、 訓練と適正検査で選りすぐった、年齢上限ぎりぎりの仔を一体。 残りの100は牙を研いだことも無い、あわれな生贄たちで構成する、だとか。 ※ 暗闇の悲鳴と泣き声。 火花、火炎、ひらめいては消える。 糞尿と血と嘔吐物と、焼け焦げた毛と肉の匂い。 生暖かい湯気をたてて横たわる誰かにつまづいて、逃げ惑う。 誰が口火を切ったのかは永遠に分からない。 必死で音のしないほうへ逃げて、逃げて、暗闇のなか幾人もの誰かを突き飛ばして、逃げて、 手探りで部屋の隅にたどり着いて、できるだけ小さく丸くなる。 こわい。こわい。こわい。 いつしか音が聞こえなくなっていて、終わったんだろうかという望みに顔をあげた。 「ぼく」を照らした、あたたかな灯明と、おなじ光の輪のなかに浮かぶ誰かの影。 黒い毛並み。 「ぼく」よりいくつか年上の、「ぼく」にとってみれば「おにいさん」と呼べる、 けれど後に思い返せば幼児と呼んで差し支えないほどの、少年の影。 少年の毛並みは濡れていた。 服は破れ、黒い何かに染まり、体に巻いたベルトにはいくつものナイフのホルダー。 「ぼく」へ魔術の明かりを差し伸べ、少年は自然体に立ち、息を整えていた。 明かりは、もう闇夜から襲うものがいなくなったというしるしだった。 もう「ぼく」と彼しかいなくなったという、宣告だった。 小便と涙と涎にまみれた、ちいさな「ぼく」は、部屋の隅でうずくまって見上げるだけだった。 最後に大きく息をして、彼は「ぼく」へ踏み出した。 濡れた床が、粘着質な足音をたてて。 ほとんど空になったホルダーから、無造作にナイフを引き抜いて。 これでおしまい。 これで、おとなに言いつけられたお使いが終わるのだと。 スープ皿の底に残った野菜の端切れを、お行儀よくスプーンでこそげ取るように。 にちゃり、にちゃりと足音が来る。 急がず、あわてず、かくじつに。 「ぼく」は頭を抱えて目をそむけた。どうかこの夢がはやく覚めて。さめてください。 フッ、と小さな吐息とともに、ナイフが、どうしようもない距離で、振り上げられる気配。 子供の細い首筋に、せめて確実に、苦しまない終わりを下すために、彼はきっと集中したのだ。 集中、してしまったのだ。 ぱちん、と間の抜けた音がした。 ほんとうに、ポップコーンがはじけるだけのような音だった。 ぱじゅ、と、水気のある音がすぐに続いた。 目を丸くして、それでも体のバランスをとろうと反射的に動いて、果たせずに目の前に少年が倒れた。 主を失くした灯明が、じわりとにじむ。 光が揺らめいて立ち消える、僅かな数秒、ガラスの目玉がぼくを映した。 倒れた体が床でバウンドして、そこで明かりが途切れた。 ふわりと、再び光がうまれた。 そこに、おねえちゃんが立っていた。 極度の昂奮で見開いた目。 過呼吸寸前の息。 白の髪は赤く赤く斑に染まり、ドレスもぐちゃぐちゃで。 ぜったい触られてくれなかったポシェットの底が、ぱくりと引き裂かれていて。 ここだけは白いままの手が、愛くるしい、淑女の手のひらに納まる優美な短銃を構えていた。 おねえちゃんの、見たことのない形相に、「ぼく」はおびえた。 言葉ひとつ発さず、彼女はツカツカと歩み寄り、倒れた誰かを見下ろして、躊躇なく引き金を引いた。 火花。バン、とはじける音。 大きく数度、息をして、おねえちゃんはようやく顔をあげた。 銃口といっしょに、「ぼく」を見た。 おねえちゃんが照らす明かりのなか、「ぼく」は彼女の名前を口にした。 かすれてか細い、聞こえたかどうかも分からない小さな声。 おねえちゃんの動きが、ぴた、と止まったような気がした。 ……○○○? と、ほとんど吐息だけのような声が、「ぼく」の名前を呼んだ。 あとは、沈黙。 火薬と糞尿と血と焼けた毛と肉と湿気の匂い。 冷えた床にうずくまって、「ぼく」たちは見つめあった。 見つめあった、と思う。 先に目をそらしたのは、おねえちゃんで。 疲労でよろけるように、おねえちゃんは数歩下がって。 ああ、と、今日のディナーが嫌いなキドニーパイだと知ったときの顔をした。 きちんとのこさず食べないと、しかられてしまうから。 「………やだ。あたしは、そんなの、イヤだから」 震えそうな、泣いているような声だった。 ここは暗い出口の閉じた蟲の壷。 最後の一人にならないと、あかるいところへは帰れない。 きちんと、自分以外のすべてを食べないと、出られない。 けれど、出てくるのはもう、はじめに閉じ込められた誰かではなくて。 暗い閉じた地獄で生まれ、人でなくなった、新しいナニカに成ったモノ。 「……………だから、アンタ。ちゃんとみんな食べなさいよ」 すぐには、何を言われたのか、分からなかった。 ※ こどもには早いわ、おいしくないけど、これならあげてもいいわ。 ぼくはしかたなく、おねえちゃんにウィスキーボンボンをもらうのだ。 ぼくが嫌な顔で食べるから、おねえちゃんはサル顔とぼくをわらった。 でもぼくは、ほんとうは、甘いだけのお菓子はきらいで、ウィスキーボンボンがいちばん好きだった。 それを教えるとくれなくなるから、言わない。 ほんとうはおねえちゃんがこれを食べられないんでしょう、コドモだね、と言わない。 ぼくはしかめ面をつくって、澄ましてウィスキーボンボンを食べる。 どうして彼女が、自分は食べないものをいつでもポシェットに入れていたのか、あの日の幼い俺は気づかない。 ※ 初夏の雨上がりの早朝。 濡れた新緑と、まだ肌寒い冷えた風。 何十年も前に焼け落ちた屋敷は、変わらずそこにあった。 「何も見るものなんかないぞ。ホントに」 「ひひひ。そーでもないって。物書きには何だってネタの種ってヤツだからさー」 広大な敷地を踏破して、廃墟に踏み入る二人の影があった。 夜明けでよろめく痩身と、やや中年の粋に入る長身。 前夜の雨で湿る下草を踏みしめて、二人は幽霊も棲まない廃墟へ歩いて行く。 かつては華やかであった郊外の屋敷跡。 焦げた石作りの外枠だけが残り、天井も床も抜けて野ざらしになっている。 静かだ。 広大な土地の名義は、唯一生き残った息子が継いでいる。 けれど火災の折に一度は行方不明となった幼子が、本物の後継者と証明されるまでに、土地以外の資産は散り散りになっていた。 火災のあった夜に招かれていた親戚筋の一家も死亡し、その血筋が途絶えたことも、遺産争いを複雑にした。 それも、すでに昔のこと。 父母とたくさんの召使と暮らした屋敷は、わずかに外観だけを残し。 軍に進んだ後継者は、火災を「偶然」に生き延びたあと、「発見」されるまでどこに連れて行かれたのか語ることはない。 貴族の地位は残っていても、すでにほとんど意味を成さず。 屋敷を直す必要もないまま、ただ朽ちるに任せている。 郊外に屋敷を持っている、と口を滑らせた結果が、早朝のトレッキングだった。 なににつけても物見高い、友人、のようなモノが、目を輝かせたのだ。 月日が過ぎた。 もう、廃墟に感傷を覚えることも無い。 魚を食べれば、骨が残る。 ここはすでに、そのていどの抜け殻にすぎない。 「なに、天井の梁って木で作んの? 抜けちゃってんじゃん。元は三階建て? 地下、あっ地下ある地下?」 ネコのような好奇心のままにうろつく友人を、気をつけて歩け怪我するぞと冷や冷やしながら、野放しにする。 なにが面白いのか分からないが、楽しいのなら連れてきた甲斐があった。 タバコが吸いたいな。 口寂しさについ懐を探る。 目当ての箱はすぐ指に当たる。けれど堪える。アイツはタバコの煙を嫌うのだ。 昼飯を食べに戻れるうちに満足してくれるかな、と軽く心配する。 なにか小腹を埋めるものでも持ってくればよかったか。 甘ったるい菓子の類は御免こうむるが、たとえば、ウィスキーボンボン程度の何かくらいは。 「おっ、美少女」 瓦礫をひっくり返していた友人が、声をあげた。 覗き見ると、朽ちかけた小さな額縁を手にしていた。 まともな絵や写真なら火災と雨風で朽ちている。 手にしているのは、当時流行っていた、陶製の絵画だった。 土の板に絵を描き、焼くことで一枚板の陶器とする。 奇跡的に焦げも割れもしなかったらしい。 数万年色あせることがないという売り文句の小さな絵は、ばら色の頬の少女の肖像だった。 何と言ったものか、困る。 もう一ミリも揺らぐことの無い自分の心に、すこしだけ驚きもする。 ドレス姿の、白銀の髪と耳の美少女像。 見覚えのある絵だった。 失われたものではなく、当時にも実際には存在しなかった姿。 おねえちゃんは、こんな顔をしていなかった。 すまして得意げな年上の婚約者。 血に濡れた、見開いた目を忘れることは無い。 肖像の中で、少女は理想の子供像を体現して、無垢にやさしく微笑んでいる。 「ああ。婚約者。ガキのころ、死んだ」 何の気なしに、慣れた事実だけを口にした。 なぜ友人が硬直して絶句したのか、本気で分からなかった。 ながい沈黙のあと、もらっていいかと聞くので、別にと答えた。 よほど、絵の美少女が気に入ったのだろう。 数日後、俺は作家の部屋の隅に、目に留まらないように絵が飾られてることに気づくことになる。 ※ ナレーション 「いぬのおまわりさん、ここほれワンワン。 通称・首都警察なんでも課にはあらゆる事件・面倒ごとが押し寄せる。 詰まったドブ掃除から迷子のヒト捜索、密室間男事件まで何でもござれだ。 おい、そこのキープアウトくぐって進入しようとしてる一般ヒツジ! お前が首をつっこむと面倒が増えるから頼むから安全な部屋に閉じこもって俺の胃を労わって! そんないつものある日、町に一人の女が現れた。 顔に大きなやけどのある、白銀の髪の女。 肖像画の面影を残す彼女は、記憶がなく、身寄りもないと儚く微笑んだ。 保護観察の数日間、それは火事の夜に失われたはずの日々。 短い夏、なぜか余所余所しくチラ見してくる作家羊、懸命に今を生きようとする火傷の女。 男が女とはじめに交わした握手の手は、柔らかく、小さかった。 そして、彼らに最後の夜が訪れる。 犬と羊とタイプライター劇場版『瞳の中のフィアンセ』。 ―――ねえ、旦那。あの人、大事にしてあげなよ。」 ※ 夜の繁華街の片隅。 イヌの男女がふたりきり、屋台で肩を並べ、暖かい湯気の昇る皿を前に、感謝と疑問が告げられる。 「おまわりさん。どうして、わたしにこんなによくしてくださるんですか? ………もしかして、わたくしたち以前、お会いしたことが?」 耳に甦るヒツジの言葉。 ねえ、旦那。あの人、大事にしてあげなよ。 去り際、寂しげに微笑んで、聡い偽ヒツジはそんなことを言ったのだ。 眼球が映し出す失われた可能性。 作業着同然の古着に身を包んで微笑む火傷の女と重なる、傷ひとつない大人の顔で微笑むドレスの誰か。 幻の中、彼女はあの頃のように、黙って、悪戯っぽく首をかしげて。 声を、聞かせて欲しいと、はじめて思った。 大事にしてあげなよ。 ……聡いヒツジは気づいている。 感傷にすぎなくとも、蜜の罠だとしても、その傷跡は大事にするべきだと。 なんて、甘っちょろい。 俺が何十年も前に置いてきてしまった、青臭くて邪魔くさい、対岸の火事のように遠いもの。 過酷なものも救われないものも知っているくせに、彼女が失ってない、愛おしい甘さ。 「………そうですね。実は、むかし、貴女によく似た知り合いがいました」 そうして男は罠に踏み込む。 深夜の王都の片隅、入念に設置された罠を、拘束を、おぞましき化け物は蹂躙する。 偽りの人質の前に到達した男は、友人には見せたことのない無機質な顔で、タバコに火をつける。 震える声で女は言う。まさか、こんな。ここまで。化け物め。 男は平然とタバコをふかす。 そう、茶番だったのねと女は罵る。 茶番だったさと化け物は答える。 女が贋物であることくらい、はじめから。 でも仕方ない、と闇夜の赤い目玉が言う。 あんたたちは良く調べた。俺にたどり着かれた時点で本来こっちの負けなんだ。でも。 整形に、このためにつけられた火傷痕。 肖像画の面影をどれだけなぞっても、騙されてやることはできない。 だって仕方ない。 彼女、本当はケダマだったんだから。 保守的な家だったから、それを隠していたんだよ。 それに。 おねえちゃんは、あの穴倉で、俺がぜんぶ食べちゃったんだからさ。 ※ 明け方、幽鬼のような影が帰宅したことを、居候は知らない。 玄関広間のソファでいびきをかいていたから、ランプの灯が消えかけていたことも知らない。 暖炉にくべられた薪だけが細々と、いつでもお茶を淹れられる湯を一晩保っていて、無言の家主を暖かく迎えた。 散らかった原稿用紙と読みかけの本と、かじりかけのビスケット。 野鼠の巣穴のような有様にくるまれた寝顔に、この指が触れないように毛布をかけて、しずかに対面のソファに腰を落とす。 昇った朝日が、ゆるやかに広間に満ちて行く。 ※ 知らない女の声で覚醒した。 いや、まだ意識は半分閉じている。 凛とした女の声。 現実に二重写しになるそれは、いつもの白昼夢だ。 五感を伴うそれは、常に失われた可能性のシュミレーション。 けれど、なにか様子が違う。 声。 白昼夢の中の自分は自分の屋敷の中を移動している。 独り言のようなささやき声の主は視界にいない。 誰だ。 視点が階段を上がる。 違和感。なんだろう。 寸分違わないおなじ屋敷なのに、違う視界。 自分の腕に抱えた、清潔そうなリネン。 細い手首と、自分のものとは違う白銀の毛並み。 ノック。 「どぞー」 腑抜けた声、聴きなれた声。 いつもの散らかった居室で、椅子の上でタイプライターに向かう背中が見える。 「洗濯はアンタ担当するんじゃなかった?」 怒ったふりをする「自分」。リネンをベッドの上に置く。 いつもの景色。違うのは「高さ」だけ。 気まずそうに笑ってごまかす物書きの表情まで、違って見えて。 「さーせん。だぁってさーあー、さー」 「あたしに言い訳しても知りません。どうしていつもギリギリなの? 先に先に済ませておけばいいんじゃない?」 「おうっふ。正論キタこれ。だめ人間なんでそうはいかねーんすよ……生きててごめんなさい」 「それと、へんなスカル柄とか、赤と緑のシマシマとか、そーゆーパンツやめてってば。 外に干してて、他の人にあたしのだって思われたら、困るんですけど?」 「男装してんのに姉御とおんなじフリルすけすけを穿けと!??」 ※ この眼球が見せる白昼夢は、常に失われた可能性。 けれど何でもありというわけではない。 もっとも基本的な制約がある。 視点は常に、この眼球を得た後の自分の視界であるということ。 けれど。 これは。 残響のように遠ざかる白昼夢の名残を、つなぎとめる術もなく、眼を見開いて見送る。 鈴をふるような女たちのお喋りが消えていく。 それはかすかな、おそらくただ一度きり触れることの叶った可能性の欠片。 この眼球が。 俺以外の誰かに宿る可能性があったとすれば、それは――― ※ 数日後、王都の片隅で、衰弱した女が保護される。 女は、全身にひどい怪我を負っており、重大な事件に巻き込まれたと見られた。 王族や貴族しかかかることのできない名医に、偶然担ぎこまれたおかげで、怪我の予後は順調ということである。 「とくに顔面がぐしゃぐしゃだったっす! 女の顔にこんなことする奴は鬼っす、人でなしっす、許せないっす! おれビョーイン連れてったっす、行きつけっす、よぼーちゅーしゃに連れて行かれるっす! とにかく顔を治すよう言ってきたっす、元の顔には治らないけど、まともな顔にはできるって医者が言ってたっす! よかったっす、どうせなら美人にするっす、可愛ければうちのメイドになってほしいっす! 女はやっぱり顔っすからね!」 なお、女は原因不明の記憶障害の症状を示しており、名前・身元は不明、回復の兆しはない。 ※ もうひとつのケースの話をしよう。 ※ 暗闇の悲鳴と泣き声。 火花、火炎、ひらめいては消える。 糞尿と血と嘔吐物と、焼け焦げた毛と肉の匂い。 生暖かい湯気をたてて横たわる誰かにつまづいて、逃げ惑う。 誰が口火を切ったのかは永遠に分からない。 必死で音のしないほうへ逃げて、逃げて、暗闇のなか幾人もの誰かを突き飛ばして、逃げて。 少年は暗がりの真ん中で小便をたれていた。 みっともなく涙と鼻水をまきちらし、ただ運よく逃げ延びた子供。 同年代の他の子供たちに比べれば大柄で、頑丈で。 けれど、訓練された、年嵩の少年に比べれば、屠殺を待つ太った家畜にも等しい。 少年の体に巻いたベルトにはいくつものナイフのホルダー。 獲物へ最小限の明かりを向け、少年は自然体に立ち、息を整えていた。 目の前に現れた血まみれの少年を、子供はぽかんと間抜けに見上げる。 狩人は淡々と、踏み出した。 濡れた床が、粘着質な足音をたてて。 ほとんど空になったホルダーから、無造作にナイフを引き抜いて。 だから獲物は、獲物らしく、哀れに脅えて震えるべきだ。 なのに子供は、だらしくなく口元を緩ませた。 少年が足を止めた理由は、この後、失われる。永遠に。 子供は自分を屠りに来た悪鬼に、あろうことか笑いかけた。 おこがましくも、自己中心的なことに。 子供は、目の前に現れた、勇ましい姿の少年を。 子供騙しの幻燈のヒーローが、自分をこの地獄から助け出しに来たと信じて疑わなかった。 後に思い出してみれば、幼子と呼んでいい歳でしかなかった少年は。 命を落としかねない過酷な訓練に耐えたのは、何のためだったか。 幼心に、何になりたくて、何でありたくて、この牙を磨いたのだったか。 少年は退いた。 まばゆさに耐えられない影のように、何も告げることなく、暗がりに消えた。 あとには、間抜け面で惚ける子供がひとり。 遠くの暗がりで幾度か喧騒と火花があがって、やがて、静かになった。 それが、顛末。 覚えてももらえなかった、とある少年の末路の物語。 閉ざされた穴倉で、誰にも観測されなかった儀式の失敗理由。 決まりどおり、一人だけが生き延びたのに、その個体に何の超越も付与されなかった訳。 彼は、まったく事態を理解してなかった子供は、その地獄で、ただの一人の人間の血肉をも口にしなかった。 ※ 「で、どうだ。アレは。おかしな様子はないか」 「おかしいと言うならいつものとおりですがね。まいにち始末書書かせてますよ」 「ふーむ。アレもねえ。お姫様のお気に入りだからねえ。下手は打てないんだけどねえ。 経緯観測、無期限というのはねえ。困るよね。 まあ、変わらず気をつけておいてくださいね、と」 「はい」 「じゃあ次。 小説家先生の経過報告」 「報告に値する接触はありません。こちらのスパイ容疑はいい加減、打ち切ってもよいのではないかと」 「そんなこと分かってるの。影響力持ってるから、観察保留で済んでるわけだから。 泳がせるのやめるってことは、軍の接収品って扱いに移行になるだろうね」 「あれの以前の飼い主が死亡した後に保護したのはたしかに軍属の私ですが、 しかし表向きは非番中だったわけですので拾得物の所有権が現在どこにあるかと言いますと一概には」 「わかったわかったわかったからいざとなったら暴れて国外逃亡も辞さないって眼でこっち見ないで怖い」 「素晴らしい上司を持って私は幸運です」 「こんなことで中古払い下げとはいえワシらが街中でぶつかるなんてことになったら、機関の連中が 泡吹いてひっくり返っちゃうよ、もう。 んー、あー、報告終わりね。 ところでな、その先生のな、いま新聞で連載してるやつ。ワシ、読んでみたんだよ。 小説なんて読んだことなかったけど、まあ、読めるよね、うん。 ところで、殺人案件なのにさ、署長が出てこないよね、あれ。ところでワシ、取材ならいつでも」 「勘弁してください、署長……」 ※
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【表記】ハサン 【俗称】先生 【種族】サーヴァント 【備考】 【切札】 【設定】 【ステータス】 筋力B 耐久C 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具C 【スキル】 気配遮断:A+ サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 完全に気配を断てば発見する事は不可能に近い。 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。 投擲(短刀):B 短刀を弾丸として放つ能力。 風除けの加護:A 中東に伝わる台風避けの呪い。 自己改造:C 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。 【宝具】 『妄想心音(ザバーニーヤ)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:3~9 最大捕捉:1人 呪いの腕。悪性の精霊・シャイターンの腕であり、人間を呪い殺す事に長けている。 エーテル魂を用いて、鏡に映した殺害対象の反鏡存在から 本物と影響しあう二重存在を作成する。 殺害対象と共鳴したその偽者を潰す事で、本物には指一本触れずに殺害対象を呪い殺す。 強力な物理防御を無効にし、心臓を潰す暗殺術。 妄想心音に対抗するにはCON(耐久)の高さではなく、二重存在を作成させない能力・MGI(魔力)の高さが重要となる。 魔神は男に騙され、その右腕の霊基を預け、男はついに暗殺者として頂点に立った。 【戦闘描写】 【能力概要】 【以上を踏まえた戦闘能力】 【総当り】 声。確かに声がした。 それもすぐ近く、この部屋から声がした。 背筋に悪寒が走る。 ……恐ろしいのは、そこまで判っていながら、声の主が何処にいるのかが判らない(・・・・・・・・・・・・)という事だ。 妄想心音(ザバーニーヤ) ランク C 種別 対人宝具 レンジ 3~9 最大補足 ひとり 呪いの腕を使った暗殺術“妄想心音≪ザバーニーヤ≫”。それがハサンの宝具である。 中東の古い呪術によって生み出した悪魔シャイターン(キリスト教におけるサタン)の腕を己の腕としてつなげたもの。 その能力は、人を呪殺することに特化している。 殺害対象を鏡に写し、その反鏡存在から、エーテル魂を用い、殺害対象と寸分たがわぬ“二重存在”を作り出す。 二重存在とは、本物と共鳴しあう性質を持っており、二重存在を傷つければ、本物も同じく怪我をする。 これは類感呪術、それも極めて高度なレベルといえる。 これによって作り出された対象の擬似心臓を握り潰すことで、対象は、外見的にはかすり傷ひとつ負わずに心臓だけを潰されて死亡する。 この妄想心音≪ザバーニーヤ≫による攻撃に対しては、いかなる鎧も意味をなさない。何人であろうとも鍛えることのできない部分、臓腑を直接攻撃することができるこの宝具は、まさにアサシン(暗殺者)に相応しい恐るべき宝具といえよう。 (Fate/complete material III World material) Q:”妄想心音(ザバーニーヤ)”を防ぐ手はあるのでしょうか? A:単純にアサシンの間合いに入らないこと、”妄想心音(ザバーニーヤ)”によって作られた鏡像の心臓の呪いをはねのけるほどの高い魔力、ないし幸運があれば問題なし。 また、英霊の中には心臓潰されたぐらいじゃなんともないお方もいたりする。 (Fate/complete material III World material 奈須きのこの一問一答) ○刀VS殺 編集部(予測) 敵との距離を一定に保ちつつ、投擲で急所を狙うのが真アサのスタイル。しかし、卓絶し た剣技に中途半端な飛び道具が通用する筈もなく、40本の短剣全てを弾かれるだろう。 短剣が尽きた所で攻勢に転じれば小次郎の勝利は間違いないが、彼は山門からあまり離れ られない。対するハサンも格闘戦は苦手なので、戦いは降着状態に。互いに手詰まりとな れば宝具勝負。しかし射程の短い燕返しに対して、妄想心音は離れた場所から相手に触れ ずに呪殺する事が可能。魔力Eの小次郎が倒れるは必須…よって、真アサシンの勝利か? 奈須さ~んCHECK! 鯖単体の対決なら、文句なく真アサシンに軍配が上がります。判定の通り、小次郎に妄想 心音を破る手段は無いのですから。ですが、その先があります。妄想心音の泣き所は「即 死」ではないこと。通常心臓を破壊されれば即死ですが、相手は鯖。特に霊としての属性 が強い小次郎は、心臓が破壊されたとしても戦闘能力は残っています。宝具使用後の隙を 突いて間合いを詰め、燕返しを放つ事も可能なのです。となると……結果は相討ち…? ライダーに対処できるものではない。 セイバーとの戦いでライダーの実力は判っている。 セイバーでさえ防ぎきれるか、というアサシンの猛攻だ。 セイバーに一撃で倒されたライダーに太刀打ちできる道理はない。 白い髑髏は容赦なく己が凶器を掃射する。 異常に気付いたのは、既に優劣が確定した後だった。 ……当たっていない。 闇に撃たれた幾条もの短剣は、一本たりともライダーには当たっていない。 ……信じられない。 あれだけの数。 あれだけの短剣を、ライダーは全て速度だけで躱しきった。 俺を助けた時とは違う。 自分ひとりなら弾く必要などないと、ライダーは地に這ったままアサシンの猛攻を躱したのか。 「何を遊んでおるアサシン……! 我が孫のサーヴァントと言えど容赦は要らぬ、早々に片付けんか……!」 「ソレハデキナイ―――コヤツ、以前トハ違ウ」 天井に張り付いたまま、アサシンはライダーを凝視する。 今のライダーは以前のライダーとは違う。 その体に秘められた魔力も、敵を威圧する迫力も段違いだ。 セイバーには届かないにしても、これなら―――ライダーは、確実にアサシンを上回っている。 十間は離れていた間合いが、今ではわずか三間(五メートル)。 彼女―――セイバーならば一足で踏み込み、髑髏の面ごと敵を両断しうる距離である。 接近されては勝負にならぬと踏んだからこその投擲、接近されまいとするからこその後退だ。 髑髏はセイバーの全力疾走には及ばないものの、地を駆ける獣の如き速度で後退する。 狭い廊下を滑るように、直角の曲がり角さえ減速せず移動していく。 背面に目があるのか、それともセイバーと対峙しているこの面こそが背面なのか。 髑髏面のサーヴァント―――アサシンはセイバーから追われつつも、離れすぎず近づきすぎず、逃げ水の如く間合いを維持していた。 ノーモーション、取り出す仕草さえ見せずに放った三条の短剣は、しかしセイバーには通じない。 ランサー同様、セイバーにも射的武器に対する耐性がついている。 ランサーが風切り音と敵の殺気から軌道を読むのに対し、 セイバーは風切り音と自らの直感で軌道を読む。 英霊にとって“視認できない攻撃”はそう脅威ではない。 彼らはその先を行くもの、“理解していても防げない攻撃”こそが、互いを仕留める極め手となるからだ。 その点で言えば、ランサーの槍は英霊の宝具と呼ぶに相応しい。 “必ず心臓を貫く”などという武器は、その正体が判ったところで防ぎようがあるまい。 あの魔槍に対抗する手段があるとしたら、 槍の魔力を上回る純粋な防壁を用意するか、 槍によって決定された運命を曲げるほどの強運か、 そも槍を使わせないか、のいずれかしかあるまい。 それに比べればアサシンの短剣(ダーク)は御しやすい。 急所に刺されば死ぬが、弾けば防げるモノならば礫(つぶて)と何ら変わらないからだ。 「しかし、よくもまあ弾いたものだ。私の短剣、見せないつもりで撃っていたのだが、おまえには見えていたのか?」 「実像は見えてはいないが、軌跡ならば読み取れる。見えないものを恐れるようなら、このような剣は持たん」 不可視の剣を持つ者に黒塗りの短剣を投げつけたところで何ができよう。 英霊としての格の違い、手にした宝具の性能差を見せつけられ、アサシンは笑い続ける。 今まで微弱にしか感じられなかった魔力が、アサシンの右腕に集中する。 ……アサシンの右腕は、棒だった。 手の平のない奇形の腕は、腕として用をなさない。 それでは短剣は握れず、相手を殴りつける事さえできまい。 それが曲がった。 骨を砕き、曲げて、髑髏の腕が奇形の翼を羽撃(はばた)かせる。 奇形だった。 なんという長腕か。 暗殺者の右腕は、拳と思われた先端こそが“肘”だった。 ソレは―――肘から折り畳まれ、その掌を肩に置いた状態で縫い付けられていた腕なのだ。 「――――――――」 セイバーの思考が凍る。 届く。 あの腕ならば届く。 届いて確実に自身の心臓を抉り出す。 その戦慄が身に走るより早く、彼(か)の腕は羽撃き―――― 呪腕は槍のように彼女に突き出された。 肉を断つ音と、噴出される鮮血。 赤い血は地面を濡らし、黒い影を斑(まだら)に染める。 「――――――――キ」 髑髏の面から狂気が漏れる。 一直線に突き出された腕は真紅。 それは事を成し、速やかにアサシンへと折り畳まれ、「キ、キキキキキキキキキキ――――!!!!」 その、奇形である肘から上を、完全に断たれていた。 ……振り上げた剣が落ちる。 アサシンの呪腕はセイバーには届かなかった。 その腕が鏡像の心臓を抉り出すより速く、セイバーの剣が呪腕を断ったのだ。 いかな窮地と言えど、アサシンの宝具ではセイバーは倒れない。 否。 因果を逆転させるランサーの槍を防いだ以上、このような呪腕に倒される事など、セイバーには許されない。 (桜ルート8日目) 闇の中―――無明より放たれた三条の凶器が、ランサーの一薙ぎによって払われたのだ。 槍に弾かれ、地に刺さった凶器は短剣だった。 切りつけるものではなく、狙い撃つ事を主として作られた投擲短(ダーク)剣。 それらはランサーの両目と喉笛を標的に、寸分の狂いもなく高速で投げられたものだ。 「――――いい腕だ。が、二度とはするなよ砂虫。 挨拶もなしで命を獲られるのは趣味じゃねえし、何よりおまえにとっちゃ命取りだ」 青い痩身が闇に対峙する。 ランサーの正面――――暗い堂の中には、うっすらと、 白い、月のような髑髏(どくろ)が笑っていた。 ――――戦いは、何の口上もなく始まった。 白い髑髏は人語を知らぬのか、奇声のみをあげてランサーへと襲いかかり、 ランサーは眉一つ動かさず、敵の奇襲を迎え撃った。 髑髏の放つ短剣は、それこそアーチャーの弓に匹敵する。 それを至近距離より、闇に飛び交いながら放った数は実に三十。 その全てを、ランサーは事も無げに弾き返した。 「キ――――?」 髑髏が止まる。 それは異常だ。 いかにランサーが優れた槍兵であろうと、針の穴さえ通す髑髏の短剣を防ぎきれる訳がない。 しかも相手は長柄の武器。 切り返す槍の隙間、確実に相手の急所(しかく)に放つ短剣が、何故悉(ことごと)く弾かれるのか? 「おい。まさかとは思うが、おまえの芸はそれだけか?」 ランサーの気配が変わる。 足を止め、髑髏の様子を伺っていただけの敵意が、確実に殺すものへと切り替わっていく。 「ならこれで終いだ。 おまえが何者かは知らんが―――まあ、その仮面ぐらいは剥がすとするか」 ―――短剣が闇に迸(はし)る。 髑髏へと踏み込もうとしたランサーに合わせた、迎撃(カウンター)となる高速掃射―――! それも防ぐ。 軽く、ほんの僅か槍の穂先を揺らしただけで、ランサーは視認さえ出来ぬ投剣を無効化する。 「――――――――」 震えたのは髑髏の面だ。 人語を発さぬソレは、くぐもった悲鳴を飲み込み、自らの首を突きにくる槍兵(てき)を凝視し―――― 「――――、キ――――!」 わずかに揺れた槍の隙をつき、ランサーの喉元へ短剣を撃ち放つ……! 「キ……!」 髑髏の面が振動(ふる)える。 投剣を防いだ槍はそのままランサーの手元で反転し、くるん、と見事な円を描いて、襲いかかる髑髏の顎を打ち上げたのだ。 防御と反撃。 動作は一呼吸、まったくの同時に行われた。 それを、自分から飛びかかった髑髏に防げる筈がない。 ――――白面が落ちる。 ランサーは追い討ちをかけない。 彼に与えられた指令は、ただ敵を観察する事のみ。 いかにこれが必殺の機会であろうと、彼には手を出す権限がない。 「―――馬鹿が。言っただろう、俺に飛び道具は上手くないと。忠告を聞かなかったのはそっちの方だぜ」 槍の穂先を向け直し、ランサーは素顔を隠す“敵”を観察する。 黒い体。 包帯で封じられた右腕。 白い髑髏の面で隠した顔は―――闇に隠れて、未だ明確には見えなかった。 否。 その顔は無貌と言えるほど、凹凸(おうとつ)のない造りではなかったか。 「ギ――――ワタシのメンを、ミた、な、ラン、さー」 「そりゃこれからだ。サーヴァントには違いないようだしな。どこの英雄かハッキリさせるとするか」 「―――ク。ナルほド、ヨブンなシバりがあったのカ。ドウリで、殺サナイ、ワケダ」 影に覆われたサーヴァントが後退する。 その手には短剣(ダーク)が握られ、殺意は欠ける事なくランサーに向けられていた。 「止めとけ。生まれつきでな、目に見えている相手からの飛び道具なんざ通じねえんだ。よっぽどの宝具(もの)じゃないかぎり、その距離からの投擲はきかねえぞ」 「!―――ソウカ、流レ矢の加護、カ。……クク、サスガは名付きの英霊、私ナドとはモノガ違ウ」 影が揺らぐ。 黒いサーヴァントは蜘蛛のように地に伏した瞬間、 短剣を放ちながら、大きく虚空に跳びあがった。 地上から大きく離れる跳躍力が鹿ならば、その歩法は蜘蛛か蛇、それとも蠍(さそり)の類だったか。 面を隠したまま逃走するサーヴァントは、逃げ足のみランサーと互角だった。 ランサーとて瞬発力では他の追随を許さない。 その彼が敵を追い詰めるのに分の刻を要するなど、あってはならない事だった。 「チ―――たしかに喉を潰したんだが、しぶといな。治ってるってワケじゃねえし、ありゃあ薬でブットンでやがるか――――」 水蜘蛛のように水面を滑る敵と、それを追尾するランサー。 激しい水飛沫(みずしぶき)は敵とは対照的だが、その速度は水蜘蛛(アサシン)などの及ぶところではない。 「……チ、痛みで止まらねえんなら付け根でも切りつければよかったか。他の連中には通じねえ手だからな、つい後回しにしちまったが――――」 手足の付け根、大動脈を切りつければ、人体にとってそれだけで致命傷になる。 大動脈からの出血は激しく、実戦で切られる事は死に等しい。 もっとも、それは通常戦闘の話である。 サーヴァント―――英霊相手に出血多量による死など望めない。 血液ではなく魔力を主動力とする彼らには、大動脈の切断は効果の薄い二次的な手段である。 これが四肢の切断になると話は別だが、易々と手足を刈り取られるサーヴァントはおるまい。 手を一本獲った瞬間、こちらの首が刎ねられている―――という結末がオチだろう。 「……ハッシか。薬に頼るような英霊に治癒能力もあるまい。次の打ち込みでケリをつけるか――――」 疾風じみた水飛沫(みずしぶき)が走る。 その、次の打ち込みまであと二秒。 足を止め、逃げる水蜘蛛の左足大腿部を一閃しかけ――― 「――――!」 咄嗟に、ランサーは水面から飛び退いた。 ――――水面(みなも)が跳ねる。 いや、水面に潜んでいたモノが牙をむく。 黒い、うすっぺらな何かは、虚空に跳び退くランサーを追っていく。 水面、という事もあるからか。 その様は、深海に棲むという古代の海獣を連想させた。 「―――――――これ、は」 ランサーに逃げ場はない。 咄嗟に槍で水面を抉り、所有する全てのルーンを湖底に刻む事で結界を張ったが、それさえも容易く侵食されていく。 周囲を黒い足に囲まれ、彼に残された陣地は刻一刻と縮んでいく。 上級宝具の一撃さえ凌ぐ全ルーンの守りが、足止めにさえならない。 それを―――― 「ドウした、ラんサー。動かねば、呑まれルぞ」 水面に浮かぶ蜘蛛(アサシン)が嘲笑(あざわら)った。 しかし、その嘲笑(わら)う水蜘蛛とて例外ではない。 この黒い足は誰であろうと侵食するのか、水蜘蛛は決して黒水に近寄ろうとはしない。 近寄れば―――この黒い足は、即座に新しい獲物に関心を持つと知っているのだ。 「ダガそうはイかん。オマエを仕留メるのは私ダ。イマだ経験ガ足りナいノデな。オマエヲ打倒シ、タリナい知能ヲ、補ワネバ」 水蜘蛛の短剣が煌く。 動けぬランサーに向けて放つ凶器は、しかし投擲にすぎない。 それでは無意味だ。 いかに周囲が奇っ怪な妖手に囲まれようと、ランサーに投擲武器は通用しない。 「―――懲りないヤツだ。まあ、強気になるのは分かるんだが」 ランサーは周囲の妖手を観察する。 誘われて随分奥まで来てしまったが、対岸までは三十メートル。 この程度なら―――容易く、一息で跳躍できる……! 「そこで動かなかったオマエの負けだ。様子見も済んだ、ここらで引き上げさせてもらおうか」 ランサーの体が沈み、その槍が大きくたわむ。 槍を支えにして一気に跳躍するランサー。 そこへ。 「な――――に?」 シンプルと言えば、実にシンプルな“一撃”が放たれた。 ランサーの胸から、偽りの心臓がつかみ出される。 あり得ない間合い、遠く離れた水面から、アサシンは直接、 槍兵の胸を抉(えぐ)り出した。 最も純粋な魔術、最も単純化された呪い。 人を呪う、という事においてのみ特化した、中東魔術の“呪いの手”。 ――――アサシンの宝具、“妄想心音(ザバーニーヤ)”。 それは確実にランサーの心臓を破壊し、そのまま―――力を失った槍兵の体は、黒い水面に落ちていく。 水面が踊る。 それはせわしなく、獰猛であり、はしたなかった。 飢えきった猛獣の檻に肉を投げ入れたとしても、これほど凄惨な食事はあり得まい。 ―――無数の、黒い手足だけのモノが、ヒトのカタチをした英霊を消していく。 それを愉快げに眺めながら、ぐびり、と。 黒い湖面に浮かぶ無貌のサーヴァントは、抉り出した獲物の心臓を、満足げに飲み込んだ。 そうして、神父は最期の時を迎えた。 「ふ――――、ふぅ――――、ふ――――」 神父―――言峰綺礼は壁に背を預け、前方にかすむ髑髏を凝視する。 存分に切り刻まれた神父服。 乱れに乱れた呼吸は整わず、残る武装は三本の黒鍵(つるぎ)のみ。 「うむ、これで詰めかのう。サーヴァントを向こうによく保(も)ったと誉めるべきか」 老人の哄笑が空を覆う。 「――――――――」 饒舌な主に反して、アサシンは無言だった。 彼にとって戦闘は作業である。 急所を狙う短刀(ダーク)は、同時に獲物の能力を測る物差しでもある。 一の短刀が防がれる事で獲物の運動性を測り、 二の短刀で獲物の行動法則を測る。 保つ距離は常に四間。 その、投擲武器でしか届かない間合いを保ちつつ、暗殺者は獲物の“能力”を推量するのだ。 一撃で倒せぬとあらば、一撃で倒せる位置まで敵を追い込む。 手足を切り刻み、肉体を疲労させ、心臓を破裂寸前まで追い込んでいく。 アサシンにとって、短刀は真の“必殺”へ繋ぐ布石にすぎない。 短刀によって獲物の力を測り、絶対の好機へと戦いを運び、魔の腕を叩きつける。 それは作業であり、アサシンにとっては何の愉しみもない日常だった。 だが―――退屈な作業ではあったが、神父は思いの外よい獲物だった。 使用した短刀は二十を超える。 技量を測ると言っても、放つ短刀は全て必殺だ。 それを凌ぎながら森を抜け、この廃墟に辿り着いた。 人間と侮ったが、神父の力量は驚嘆に値する。 「ふ――――、ふぅ――――、ふ――――」 だがそれもここまで。 もはや走る体力も尽きた神父は、壁に背を預けてアサシンを見据えるのみ。 隠し持つ黒鍵は残り三本。 弾丸の如く放った七本の黒鍵は、悉(ことごと)くがアサシンに躱(かわ)され、何処かに消えていった。 「では幕じゃな。慈悲をくれてやるがよい、アサシン」 髑髏が揺れる。 アサシンは無動作(ノーモーション)で短刀を撃つ。 狙うは眉間膵臓横(三点)隔膜。 まったく同時、一息で放たれた紫電に、神父は手にした黒鍵で対抗する。 必至(ひっし)、という言葉がある。 その手を行えば必ず殺す、という勝利を確定する一手。 それがこの一投だ。 急所を狙う三撃こそ誘い。 短刀を弾いた瞬間こそが、言峰綺礼の終わりである。 「――――死ね」 翼がはためく。 呪いの長腕(ながうで)、片翼の槍が展開される。 ―――それは、回避不可能の攻撃だった。 アサシンは神父の運動能力を把握している。 疲労し出血した獲物の能力を悟っている。 ―――故に必至。 あの獲物は短刀(ダーク)による死は防ぐだろう。 だがその後はない。 いかに逆転の為に体力を温存しようと、身体能力は神父の思惑に付いてこない。 三撃の短刀を弾いた神父に許された行為は、かろうじて真横に跳躍する事だけ。 それもわずか二間、この腕から逃れるだけの力はない―――! ――――魔腕が伸びる。 神父に恐怖はない。 この展開は覚悟していた。 短刀が誘いである事も、弾いた瞬間に魔腕を叩き込まれる事も、自身に回避する手段がない事も、全て読んでいたのだ。 そう、これはどう足掻(あが)こうと躱せぬ必至。 故に、 「告げる――――(セット)」 残された手段は、この身を捨てての相打ち狙い―――! 「――――――ふ」 髑髏が笑う。 心臓を掴み取らんと繰り出される魔腕と、 神父の黒鍵が交差する。 だが問題ない。 直撃するのはアサシンの魔腕のみ。 なるほど、この体勢で放てば黒鍵は命中する。 だが悲しいかな、いかな魔術効果を足したところで、神父の黒鍵ではアサシンを倒しきれない。 三本の剣はアサシンを貫通し、背後の幹に縫い付けるだろう。 だがそれだけ。 神父はアサシンに傷を負わせたという功績をもって、同時に心臓を掴み取られ死滅する――――! 先に事を成したのはアサシンの腕だった。 彼の宝具――――“妄想心音(ザバーニーヤ)”は確かに神父の胸に張り付き、偽りの心臓を作り上げた。 しかし、その手応えがない。 男の心臓は、まるで空っぽのように反応しない。 「な―――」 瞬間、衝撃が炸裂した。 三針の黒鍵はアサシンを弾き飛ばし、その黒衣を大木に磔(はりつけ)る。 「ニィィィィイイ!?」 驚愕は二つ。 一つは黒鍵によって動きを封じられたアサシン、 そしてもう一つは、 「馬鹿な、なぜ死なぬ綺礼――――!?」 「――――――――」 翻る神父の黒衣。 跳躍する。 冗談じみた上昇は、砲台の弾丸そのものだった。 力を溜めに溜め、限界まで引き絞った筋肉を解放し、十メートルの距離をゼロにする超人芸。 頼みの護衛は三本の黒鍵によって、幹に磔(はりつけ)られている。 アサシンにとっては掠り傷。 だが老人の救助を不可能とする聖なる釘。 神父は答えず、傷だらけの体を確認する。 出血は止まっている。 武器こそなくなったが致命傷はなく、この分なら数分休めば体力も回復するだろう。 「それで、どうするのだアサシン。おまえのマスターは消えた。魔力提供がなくなったおまえならば、私の聖言でも充分に通用するが」
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――この未来は間違えている。 収益がまるで合っていない。消費と繁栄の均衡が崩れ、成長期のままで止まってしまっている。 停滞した精神。袋小路の世界。今まで支払っていたものに相応しい未来に辿り着かぬまま静かに終わり、腐敗して行く。 今描かれたこんな世界が、完成(終わり)に足る美しい紋様(アートグラフ)と言えるのか? 迷うことなどない。答えは否だ。 だが、それならば――今日までに捧げられた犠牲は、何だったのか。 明日を昨日に変えるための、礎となった先人達。彼らの想いに相応しい世界を築けなければ、人類はただの殺戮者だ。 故に私は叫ぶ。世界に、人類に、ただ一言。「止まるな」と。 しかし、そんな言葉だけでは届かない。何も変えられない。見せかけの安息という泥濘(ぬかるみ)に身を委ねた者達は、それだけでは決して足を動かそうとしない。 だから私は聖杯に願う。彼らが自らの強靭な意志で歩み出すために、必要なものを。 停滞を破るための――人類全てを巻き込んだ、大戦争を。 ◆◆◆◆ ……我こそは魔王ザミエルである。 我こそは聖バルバラにして聖フーベルトである。 人の作りし億千万の鉄血鉄火、その全てを纏いしこの世最後の戦神である。 ……そして世界の変革に取り残され、既に役目を終えた旧時代の遺物である。 魔眼の王の行く末を見届け、彼と共にこの世を去るのを待つだけの、ただそこにあるだけの人格である。 何故か。我が身を望んだニンゲンという種に、もうこれ以上必要とされなくなったからだ。 人が住む時代は移ろい変わった。世の中が戦争で決められていた時代から、暴力に頼らず、暴力に屈しない時代へ――その、過渡期へと。 きっと人はこの先も、何度も何度も間違えて、何度も何度もニンゲン同士で争うだろう。傷つけ合い殺し合うだろう。戦争が起き、戦争が終わり、新たな戦争が始まるだろう。 それでも時計の針は戻らない。特別な何かが世界を動かし、強大な暴力が世界を揺るがす構図は崩れ去り、何の変哲もない大勢の意思が世界を決める。そんなもっと先の時代へと、人の世は既に向かっている。 これ以上暴力に頼る方向に進んで待つのは闘争ではなく、人の勇気も知性も介在できない、忌むべき作業としての殺戮だけだと直感したから。 単なる殺戮者で終わらないための教訓として、礎として、進むべき道を決定づけるのに十分なだけの戦争を、既にニンゲンは体験して来たのだから。 だから袋小路を抜け出して、人という種は次のステップに進むことを選ぶのだ。 全ては、戦争(あたし)があったから―― 納得はした。だからあたしは英雄に鎮められ、今に至った。 大好きなニンゲンを信じて、何もせず、ただ見守り黙って消えて行くだけの、神格すら手放した亡霊に。 ――――それでも。 この身を編んだヒトの想いを、この本分を尽くせる場所が、まだあるというのなら。 ニンゲンが次のステップに進むために、まだ戦争が必要だというのなら。あたし達の知らない遠い世界で、あるべき積み重ねが足りずに今も渇望されている場所が残っているのなら。 そこに馳せ参じるのは、きっと――――英雄(ニンゲン)に対する、裏切りではない。 ならばあたしは……その呼び声に、応えよう。 止まった時計の針を、動かすために。 ◆◆◆◆ 一発の銃声。それを引き鉄に紛糾する悲鳴と怒号。跳ねる血飛沫、香る硝煙。 犯罪組織と警察の繰り広げる、銃撃戦。 暗黒都市と謳われるゴッサムでは、それは日常の一部となって久しい風景だ。 ただ――その夜の事件は少々、特異だった。 あまりにも決着が早く、一方で動員された人数に対し、あまりにも犠牲者が多かったのである。 それも――第三者を巻き込むことなく、激突した組織の構成員と警察官からのみ死者が出た。 そして、何より特筆すべき奇妙なことは――――死亡者と消費された弾薬の総数が、ピタリと合致していたことであっただろう。 ◆◆◆◆ 「……あれが、君の加護か」 夜街を歩いていた最中、そんな銃撃戦が偶然視界に収まるところで始まって、すぐに終わったのを目撃した白衣の男は、傍らの欧州系の女に語りかけた。 「撃てば当たる殲滅戦。随分と過激な聖地だ」 「そうね。狙いやすくて、当たりやすい。それって銃を撃つ者からしたら、悪いことが起き難くなっていると言えるんじゃないかしら」 「成程。外れ易くなる、よりは幸せだろうな。納得したよ。だが……」 答える自身の心臓が、躍動することもなかった事実を踏まえて、男は眼鏡越しに鉛色の髪をした女を見る。 鉄十字のペンダントと、頭の上には古めかしいフリッツヘルム。いかついパンツァージャケットに似合わない痩身を包んだ若い女は、誰のモノとも知れない血のニオイと誰のモノとも知れない肉のニオイが充満し、その隙間を硝煙が掻い潜って昇る酸鼻な空間を見て、無邪気な少女のように笑っていた。 そんな彼女の姿に、あるいはすれ違いの不安を覚えながら、男は問う。 「――これが、君の見たいものだったのか? ガンナー」 「少しだけね、トワイス」 互いに相手の名を呼びながら、男と女、聖杯戦争に臨むマスターとサーヴァントは、目の前で起こった命の攻防の感想を交わす。 「仕事や義務だからなんて、作業感覚を理由に引かれた引き鉄じゃなかったわ。最初の人は自由に生きたいから、戦おうとして撃った。次の人は死にたくないから撃った。生きるために撃って、撃たれて死んで、生きるためだけに生きようとして撃った。最後はみんながみんな、生きようとしてもがいていた。銃に命を預けて、一発の弾丸に奇跡を願った。 あれがあたしの見たかったもの。死の瞬間に見える命のきらめき。本当の魂の輝きよ」 陶然とした表情で、情熱のままにガンナーは語る。 しかし、それもすぐに下火となった。代わって募った不満を隠す様子もなく、ガンナーは続ける。 「……だけど、早回ししちゃったから。それだけで、すぐに終わってしまったわ。本当はもっと見たかった。もっともっと見たかった。あたしもあなたとおんなじよ、トワイス」 それからニコリと笑みを浮かべて、ガンナーはトワイスの名を呼んだ。 「あんな小さな争いじゃ物足りないんでしょう? 顔に書いてあるわ」 「そうだね……きっと、そうなんだろう」 ああ、あんなものでは駄目だ。 たったあれだけでは、きっとガンナーのチカラなど関わらずとも、成果が出る前に終わってしまう。むしろガンナーが言うような必死さ、死を前にしたきらめきすら、そこには生まれなかったことだろう。 そんな思考を巡らせるトワイスを見て、ガンナーは朗らかに笑う。 「うん、そう。あたしも殲滅するためのものではない、生存するための戦争が好き。人が生きるために生きる闘争が好き。その知性と勇気を振り絞って、前へと進む熱が大好き」 「そして、その熱で鋼へと鍛えられて行く、脆弱な人間の可能性に魅入られている……か」 「そう! そうよ、その通り」 上機嫌に笑っていたガンナーは、これ以上近づくと警察の生き残りに目を付けられる、という位置でピタリと立ち止まり。 「……だから正直、この聖杯は気に入らないわ」 搾り出すように嫌悪を吐き捨てたガンナーは、豊かだった表情を引き締めて、鉄のような冷たい凄みをその美貌に醸し出していた。 「あなたがかつて見つけたみたいに、生きているってことはそれだけで奇跡のように素敵なことよ。でも、それはただ命があるだけで特別なわけじゃない。命なんてものはもっと一般的で、普遍的なものなの。奇跡なんて言えないぐらい、みんな簡単に死ぬものなの。価値も意義も、そんな重さに関係なくあっさり崩れるものなのよ。 そんなニンゲンの魂を輝かせるのは勇気と知性で、それは命そのものではなくて、生きている自分というパーソナリティにこそあるのよ」 「……それを奪われた命と魂の、残された本能だけの輝きなんかじゃ、君には不服だったということか」 「そうね。確かに本能は大切だけれど、やっぱり勿体無いわ。ニンゲンの命を、本当の人生じゃなくて嘘の物語だけで終わらせるのなんて」 命の育んだ価値を奪い、代わりに縦割りの殻を被せる聖杯は、どうも彼女のお気に召さないらしい。 「――それでも、必要なんだ」 月の聖杯とは異なり、ここの聖杯ならトワイスにも手にできる可能性がある。そもそもやり直せるのか、ムーンセルに戻れるのかもわからない現状において、目の前のチャンスをフイにするつもりは毛頭ない。 とはいえ危機感、と言うほどの焦りはない。このサーヴァントが語るのは、かつて“トワイス・H・ピースマン”が死の際に見出した答えそのものだったからだ。故にトワイスはもう、自分達主従が最終的に道を違える心配などしていない。 それでも、意思は伝える必要があった。この願望の切実さを、それに応えてやって来た戦女神に再び提示して、足並みだけは常に揃えておく必要が。聖杯戦争においてはどんな油断が命取りになるのか、わからないからだ。 ガンナーはそんな己のマスターに、ニコリと微笑む。 「わかっているわ。必ずあなたに聖杯を掴ませる。だってあたし、元は戦争の神さまだからね。一肌脱がないわけにはいかないもの」 彼女の真名はマックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ。トワイスが生きたのとは異なる世界で生まれた、銃の精霊。やがて二度の世界大戦を経て、戦神の域へと至ったもの。 世界の裏側に身を潜めた神々よりも遥かに若く、しかしそれでも時代の推移に追いつけずに信仰を失い、堕ちたカミ。 最終的には自らの神格をとある一人の英雄に与えたことでその身を貶め、サーヴァントとしての規格に当てはまるようになった今も、彼女はかつて自らに架した責任を手放さない。 生まれ落ちた世界では役割を終えたことを認めた今も、人類に戦争が必要なのなら――こうして他の世界にまでやって来て、やがて人類に自らが必要なくなるその時まで、尽力しようとしてくれている気高きカミ。 それがトワイスのサーヴァント、ガンナー。 「ただ、ゴッサムは折角良い感じに銃社会だから本当に勿体無いなって。確かに国家と比べたら不足も良いところだけど、戦争っていうのはそういう大きな集団でやるものなのよ。一人一人の人間がお互いの人生を懸けて、必死になって行うものなの。NPCじゃそのチップが取られちゃってるし……参加するのがどんなに強い英霊と魔術師の集まりでも、たったの数十人でドンパチするんじゃ、陰惨さも卑劣さも、容赦のなさも物足りないわ」 「……それは君がこれまで、当事者ではなかったからだろう」 このサーヴァントとの相性はすこぶる良い。そのように理解しながらも、ただ一点のズレを埋めるために、トワイスは言葉を贈る。 「君は銃の精霊として、戦争の神として、誰かに肩入れすることはして来なかった。人間を愛し、戦争を愛する君は、戦場の誰もに等しく加護を与えた。それが君の役割だった。 だが今回は違う。君は英霊の座から来たサーヴァントとして私と契約した。祈りを捧げる誰も彼もに平等であらねばならない神でも精霊でもなく、自らの願いのために戦う一人の兵士として聖杯戦争に加わった」 そこで一息。区切りを入れたトワイスは、神霊として欠落した結果ガンナーとして現界し得たマックルイェーガーへと、祝福の言葉を用意する。 「初めて、最初から当事者として関わるこの小さな戦争はきっと……戦神(きみ)に、かつてない成長を齎すはずだ」 少しだけ、ぽかんとした表情。 ガンナーは、マックルイェーガーは考えたこともなかったのだろう。戦争が人に与える熱を愛し続けていた彼女は、それを見守り育むのが役割で、それを自らに任じ律儀に守り続けて来た彼女には、己が兵士として関わるという発想自体がなかったに違いない。戦の神が人の子の争いで、どちらかの陣営に肩入れして自ら人の子を撃ち殺して回るなど、不公平が過ぎてあってはならないことだっただから。 しかし、堕ちた今の彼女は英霊であり、その役割はサーヴァントである。 自ら人の子を撃ち殺して回るだけの理由と権利を持った、一人の兵士なのである。 「……そして、これで終わりではない。これは始まりなんだ。私が願い、君が叶えようと応えてくれた、人類全てのための大戦争の。 到底満足できないこれはその引き金となる、最初の闘争、小さな紛争だとでも思ってくれれば良い。 君の愛する確かな自我を持った者達との、この小さくとも本物の戦争のことを」 「うーん……」 トワイスの訴えを受けて、ガンナーは暫しの間逡巡したが。やがて、頷く。 「……そうね、トワイス。本物のあたしは神さまで、人間が用意した鉄火場に飛び込むのは許されても、自分が火種になるようなことはできなかった。争いのきっかけになる引き鉄に指をかけるのは、銃の神として許されることじゃなかったわ。 だけど、ここにいるあたしは英霊の座からやって来たサーヴァント。一種の特例とも言うべきアバター。みんなに加護を与えるのではなくて、自分で聖杯を勝ち取りに来た参加者……自分で引き金を引いて良い一人の兵士。こんな形で戦争に関わったのは、確かに初めてね」 そこでガンナーは、意地の悪い猫の浮かべるような、稚気の中に獰猛さを潜めた笑顔になった。 「なら、このあたしもたっぷりと堪能させて貰おうかしら。勇敢な兵士たちがいつも見ていたもの、感じていた気持ち。絶望と恐怖、屈辱と悲しみを。それを乗り越えた先にある、達成感と高揚感、爽快感と優越感を、この戦場(ゴッサム)で」 そんな彼女の様子に、トワイスも微笑み返した。 「ああ、それで良い。その神格を欠落したからこそここにいる君が、再び人類に加護を与える神の座に至るまで……君自身が、戦争の中で成長する機会に恵まれた運命を、私は尊ぶ」 ――さあ、まずはこの街から始めよう。 人間が人間として、勇気と知性を持って更なる飛躍を遂げるために。 ……今こそ、戦争を。 一心不乱の、大戦争を。 【クラス】ガンナー 【真名】マックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ 【出典】レイセン 【属性】中立・善 【ステータス】筋力B 耐久D 敏捷C+ 魔力A 幸運B 宝具A++ 【クラススキル】 対英雄:C ガンナー本人を除く、その戦闘に参加しているサーヴァントの筋力、耐久、敏捷をそれぞれ1ランクダウンさせる。 単独行動:B マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。Bランクならば二日間は現界可能。 但し宝具を使用する場合など、多大な魔力を必要とする行為にはマスターの存在が必要不可欠となる。 また、霊格に致命的な損傷を受けても短期間ならば生存できる。 【保有スキル】 神性:C 本来は「銃」へ向けられた人間の想念から生まれた神霊そのものだが、時代の推移によって神格を落とし、更に魔眼王との契約によって大幅なランクダウンを招いている。 元が完全に想念由来の神霊であるため、加護を与えた人間が銃へ向けた感情を魔力に変換し、自らに供給することができる。 聖地作成:D 確固とした土着の信仰対象が存在しない土地でのみ発動可能。魔力を散布することで自らを中心とした一定範囲を聖地とし、聖地内の他者に神としての加護を及ぼす。 銃と戦の神であるガンナーの場合は、銃砲による攻撃の幸運判定に有利な補正が得られる場を形成する。また意識することで特定個人により強い加護を与えることも可能。 千里眼:A+ 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。 また自らの聖地内に踏み入っている銃の所有者の視界も、全て己の物として並列に捉えることができる。 戦闘続行:A+ 決定的な致命傷を受けることがない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。 元が戦神であったガンナーの場合は単独行動と合わせて、魔力か戦意が枯渇しない限り、胸を貫かれても問題なく戦い続けることが可能。 【宝具】 『億千万の鉄血鉄火(インフィニティ・バレット)』 ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:999 最大捕捉:1000人 銃と戦の神であるガンナー特有の権能が宝具化したもの。 拳銃も小銃も機関銃も、迫撃砲もガトリング砲も、八十センチ列車(ドーラ)砲も八十八ミリ高射砲(アハトアハト)も、空を埋め尽くしてなお余りあるほどの人の作りしあらゆる銃砲を眷属として従え、レンジ内のあらゆる空間へ瞬時に召喚し使役する。 これら眷属である銃火器は神秘を帯びてサーヴァントを殺傷せしめ、またガンナーの意志一つで同時にそれぞれが標的を狙い射手が不在でも発砲することができる。 但し発動の燃費は良いが召喚には当然魔力を消費するため、大規模な展開は多用できない。また強力な眷属ほど召喚や維持にかかる魔力量が大きくなり、希少な銃火器ほど一度に多くを呼び出し難いなどの制約は存在する。 銃とはあくまで人が一個の命を撃つためのものであり、どんな破壊力と捕捉範囲を誇ろうとも、ガンナーの眷属として召喚される以上は対人宝具に分類される。 その一線を越えてしまえば、その銃の用途は闘争ではなく殺戮という作業の道具に堕ちてしまうためである。 これらの制約さえ守っている限りは、この宝具は銃神としての権能が具現化したものとして機能する。そのため神秘として見た宝具ランクは高いものの、種類にもよるが銃弾一発一発の威力とは噛み合っていない。それでも圧倒的な物量ゆえ、最大展開時の総合火力ならばランクの値に見合った圧倒的な破壊力と殲滅力を発揮できる。 なお、新しく手に取った普通の銃火器類も眷属として宝具に取り込むことができる。また、逆にガンナーの眷属としての神秘を保持したまま、これらの内の一部の支配権を他者に譲渡することも可能である。 【weapon】 『億千万の鉄血鉄火』 【サーヴァントとしての願い】 また、人が生きるために生きられる素敵な戦争を見たい。そのために必要とされているのなら、戦の神として一肌脱ぐ。 【人物背景】 銃と戦争の女神。本名は長いので、親しい者からはマックルと呼ばれる。 銃の精霊として生まれ、世界大戦を経て戦神へと至った存在だったが、時代の推移によって信仰を失い、様々な先進技術を研究する“組織”に精霊工学の被検体として捕らわれる。 “組織”が促す科学技術の進歩により、やがて戦場は殺戮という行為に取って代わられ、生き死にだけの戦争に成り下がってしまう未来を予感したマックルは、戦神として愛する戦争を守るために“組織”の打倒を狙い、協力するフリをして力を蓄えようとするも失敗。その過程で出会った二代目聖魔王にして魔眼王・川村英雄(ヒデオ)に“組織”との戦いを託すために、東京で起こった“組織”の関わるテロの現場を聖地とし、事件を大幅に加速させる。事態の収束のために現れた彼に討たれることで彼を表舞台でも英雄とし、“組織”に対抗できる存在に仕立て上げようとするが、自らが伝えた人間の勇気と知性について逆に説き伏せられ、自らは役割を終えたのだと悟って消滅しようとする。しかし神でも精霊でもなく、ただ友人として消えないで欲しいというヒデオの頼みに心動かされ、彼と契約。役目を終えた自分を世界の存続させる最低限の信仰をヒデオから貰う代わりに、ヒデオへ自身に残されていた神格を譲渡して、二代目聖魔王を囲む精霊達の仲間入りを果たす。 本来は英霊の範疇には収まらない存在であったが、例えばギリシャ神話の大賢者ケイローンのように他者へ神格を譲渡したことで神性を貶めサーヴァントとしての召喚が可能となっており、自分達の世界と違って人間が前に進むための戦争が足りていないFate/EXTRAの世界に必要な戦争を授けるため、トワイスの下へと召喚された。 【クラス補足:ガンナー】 『銃撃手』のクラス。 弓兵(アーチャー)から派生したエクストラクラス。飛び道具の中でも、銃火器の操作に特化した能力を持つ近代以降の英霊が該当する。 クラススキルとしては、三騎士から外れたために対魔力を喪失し、代わって銃という「闘争を作業に変え、英雄という概念を戦場から駆逐する要因の原点となったもの」である武器を扱うという性質から対英雄を獲得し、また単独行動も引き続き保持している。 著名な該当者としては『白い死神』シモ・ヘイヘ、『ホワイト・フェザー』カルロス・ハスコックらの名が挙げられる。 【マスター】トワイス・H・ピースマン 【出典】Fate/EXTRA 【マスターとしての願い】 全人類規模の戦争を起こすことで人類を成長させる 【weapon】なし 【能力・技能】 医師としての優れた技能を持つ。 ムーンセルにいた頃は二つのコードキャストを扱えたが、ゴッサムシティにおいても使用できるかは不明。 【人物背景】 実在した「トワイス・ピースマン」という人物を模したムーンセルのNPCが、生前の記憶(正確に言えばデータのオリジナルの記憶)を取り戻したイレギュラーな存在。 彼の元となった「トワイス・ピースマン」は、かつてアムネジアシンドロームという病気の治療法を発見するなど、数々の功績を残した偉人。戦争があれば常に戦火の中に身を投じ、人命救助に尽力した戦争を憎む人物というのが表向きの評価だが、実際の彼は戦争を見るたび憎悪や焦りに襲われ心臓が活発的に躍動する“病気”に苛まれ、正義感でも義務感でもなくその痛みを和らげる為に戦地へ赴いていた。 自身の戦争に対する常軌を逸した殺意に疑問を抱き続けるが、バイオテロに巻き込まれ死を迎える間際、彼は自分が70年代に起きた民族紛争の戦争孤児であったことを思い出し、疑問への解答として戦争の中で必死に生きようともがく命の強靭さを垣間見たことで「戦争」とそれが生む成果を否定しきれなかったことに思い至る。 NPCとして自我と記憶を取り戻した彼は、停滞した今の世界に絶望する。戦争は欠落を齎すが、だからこそ欠落以上の成果を齎すし、齎さなければならない。然るに今の停滞した世界はどうか? それまでに積み重ねた欠落に見合うほどの成果を得られていないではないか。 そして欠落を埋めるほどの成果を得られないならば、さらなる欠落をもってさらなる成果を生み出さなければならない。そんな偏執的な思考の下、彼は聖杯の力で全人類規模の戦争を起こすことで人類を成長させ、現在の世界の停滞を打破しようと、当時ムーンセルで行われていた生存トライアルに挑んでいた。 霊子ハッカーの適正はあるものの、その実力は最弱クラス。 しかし“死んでもまた再構成される”NPCの特性を利用して、幾度となく聖杯戦争を戦い抜き、百を優に超える戦いを繰り返す。その過程の中で徐々に実力も磨かれていった。 そして幾度もの繰り返しの中、偶発的にアリーナでシャブティのデータを取得。それはやがてトワイスをムーンセルではなく、ゴッサムシティの聖杯戦争へと誘うこととなる。 【方針】 聖杯を勝ち取るためにも、ガンナーに当事者としての戦争を体験させるためにも、他の参加者を発見し、戦う。 確固とした土着の信仰が存在しない上に銃社会であるゴッサムシティはガンナーにとって自身の聖地を作り易く、上手くすれば適度に魔力を補充しながら、最高ランクの千里眼に加え複数の目を借りることで他のマスターを発見する確率を上昇させることができるのは、戦争における大きな強みであるといえる。但し魔力を撒き散らす都合上、このスキルの発動中は逆に他のサーヴァントや魔術師に存在を喧伝して回っているのに等しくなる上、常に魔力の収支がプラス以上に傾くとは限らないため、使いどころは考える必要がある。