約 996,221 件
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1940.html
妖精のいたずらと少女たち――【Kagami side】 私、柊かがみは今大変な問題を抱えている。 それは妹のつかさ、友人のこなたと日下部の三人のことである。 最近、この三人が一緒にいるときの空気が異様に重い。 そして、その原因となっているのが私である。 この三人は、みんな私のことを好きになってしまったのだ。 好きといっても、友達とかそんな関係などではない。 謂わば、性的な意味で『好き』になってしまったというのだ。 そして、その三人が互いの気持ちを知っているというのが問題となっている。 表面上はいつも通りの間柄なのだが、どこか空気が重くて辛い。 私に甘えっぱなしのつかさに、私にぺたぺたとひっつくこなたと日下部。 もし私が三人の気持ちを知らないでいられたなら、今よりもずっと気楽にいられただろう。 しかし、私は三人の気持ちに気付いているのだ。 この前つかさと一緒に寝た時も、つかさは布団の中でどこか切なそうな顔をして私を見つめていた。 こなたや日下部も、日々元気を失っていくのが分かる。 私はそれに気付いていながら、何もできないでいるのだ。 以前と同じように接し、以前と同じように振舞おうとしていた。 三人の気持ちなど、気付いていないかのように。 それから少し経ったころ。 私が何もできないでいるうちに、また問題が出てきてしまった。 あの三人が私のことで苦しむ一方で、また別に苦しむ者がでてきたのだ。 みゆき、峰岸、それから一年のゆたかちゃんである。 みゆきは、つかさが私しか見ていないのに苦しんでいる。 峰岸は、日下部が。 ゆたかちゃんは、こなたが。 三人とも、自分の想いを寄せる相手が私しか見ていないのに苦しんでいるのだ。 そのせいで私たち七人の間柄は今、とても不安定な状態にある。 七人を安定した人数へと揃えるならば、一人が余計となる。 みゆきたちにとって、それは当然私。 そして、三人は苦しみや怒りを私にぶつけるようになった。 閻魔のような業火を纏って私にあたるみゆき。 鬼神のような気迫を私に向ける峰岸。 悪魔のように暗闇へと私を追い込むゆたかちゃん。 私たちの関係は、もう崩れてしまったかのようだった。 そして、全ての原因は私なのだという事実。 それが私にとって非常に辛いものだった。 私のもとに救いがやってきたのは、ある日のお昼休みのことである。 午前の授業が終わったころに『それ』はやってきた。 キラキラと光を振りまく小さな体に、透きとおるような薄い羽根。 それは、幼い頃に絵本で見た妖精だった。 私も初めは目を疑ったが、それは確かに存在している。 そして、いかにも妖精らしい可愛い声で私に話しかけてきた。 「はじめまして、柊かがみ。私は見ての通り、いわゆる妖精よ。よろしくね」 そう自己紹介する妖精。 妖精というと、さまざまなイメージがある。 人間に好意的で、願いを叶えてくれるもの。悪戯好きで、人間をからかおうとするもの。 しかし、実際はどうなのかは私も知らない。 そもそも本当に妖精がいるなんて、考えたこともないし。 しかし、どうしても期待せずにはいられなかった。 この妖精が私の悩みを解決してくれることを。みんなの関係を元のようにしてくれることを。 そして、 「妖精さん、あなたはどうしてここへ現れたの?」 と、そう尋ねてみた。 そして、帰ってきた答えは 「それはね、貴女の悩みを解決するためよ。どうする?貴女の友達との関係を良くすることならできるけど」 というものだった。その答えに、私は喜びを感じたのだ。。 そして、私は妖精にお願いをした。 「それじゃ、いくわよ。そーれっ! か が ☆ ふ ぇ ち 発動!!」 次の瞬間、どたばたとこちらへ向かうみんなの足音が聞こえてきた。 「かがみだぁ~」「おねえちゃ~ん」「ひいらぎぃ~」 と、私を取り囲む三人。 三人ともかなり元気にはなっているが、これじゃ本質的に変わってないんじゃないか? そう思っていると、周りにはみゆきたちもいた。 一瞬恐怖を感じたが、みゆきたちも同様に私に飛びついてきた。 大勢を相手に逃げることもできず、私はみんなの餌食となったのだ。 放課後。私は追いかけてくるみんなを撒いて、家へと向かっていた。 妖精はまだ私についてきていたので、文句をぶちまけた。 「どういうことよ!アンタ、何してくれてんのよ!!」 「いや、その……みんなの争いを止めるには、こうするのが良いかと思って……」 「良くないっ!!もっと他の方法があるでしょうが!!」 「だって、私にはこれしか能力がないんだもの。少なくともこの状態でいる限りはみんな元気でいられるし、 お互いに苦しむこともないんだから良いんじゃないの?」 「ふざけるなっ!!毎日あんなんじゃ、身体が持たないわよ!!」 まったく、こんな妖精、信じた私がバカだったわ。 「……あ、そうだ。言い忘れてたけど、これってね、貴女の体にかかる魔法なの。 つまりね、みんなが貴女を好きになるんじゃなくて、貴女がみんなに好かれるってことね」 私は妖精の言いたいことが良く分からなかった。 しかし、家に着くとすぐに分かった。 姉さんたち、それにお母さんまでもが同じ状態だったのだ。 これから先に起こることを考えると、私は頭が痛くなるのだった。 妖精のいたずらと少女たち――【Fairy side】 先に言っておくわ。私は非常に疲れた、と。 私はあの後、かがみにさんざん怒られてちゃったの。 もう、せっかく助けてあげたのにね! そして長い説教の後、かがみがある提案をしたの。 「ねえ、私以外の誰かをさっきみたいにすれば良いんじゃない?」 つまり、みんなの気を誰か一人に向けさせるのなら、自分でなくても良いんじゃないかと思ったみたいね。 「そうするとかがみ、貴女もその子に対してはみんなみたいになっちゃうのよ?」 と一応言ったんだけど、かがみは別にいいって答えたの。 まったく、勝手なものね。 で、その候補になったのがクラスメイトの泉こなたという子なの。 私ね、この子が対象者になるのは何回も見てるんだけど。 「そしたら私、その子のところにつくことになるけど、いいの?」 「いいわよ、別に。それじゃ、あとよろしく」 そして私は、泉こなたのところへ行き―― 「こ な ☆ ふ ぇ ち 発動!!」 次の日。こなたちゃんはしっかりと役目を果たしていたわ。 先日までのドロドロとした雰囲気は消えて、みんな元気にこなたちゃんを追いかけていたの。 かがみも、先日のことなど忘れたかのように追いかけてたわ。 でもね、この子はいつもこうなっているし、少し不憫に思えたの。 そして、提案してあげたわ。 「ねえ、他の誰かに移しても良いのよ」 って。 そしたらね、こなたちゃんはすこし考えて言ったの。 「うーん、みんなに追いかけまわされるなら、みゆきさんかなぁ……? あの人、『歩く萌え要素』だし。とにかく、私はもう疲れたよ。 ところで何だったんだろ、あの感じ?以前も感じたような……デジャヴかな?」 それは、きっと他の話のせいね。 でも、みんな立ち直れてよかったわ。私が来るまではあんなに元気がなかったのに、もう元気になってるみたいだし。 この子だけじゃなくて、つかさちゃんやみさおちゃんも。 うん、やっぱりふぇちの力は素晴らしく平和的よね。 自分の仕事にやりがいを感じたところで、私はその高良みゆきって子のところへ行ったの。 翌日。今度はみんな、みゆきちゃんを一日中追いかけまわしていたわ。 「み、みなさん、どうしたのでしょうか……?」 「戸惑うゆきちゃん、かわい~」 「ほんとにな~」 「みゆきさん、昨日はさんざん私を追いかけまわしたんだから、今日は覚悟してね」 まったくね。この子、他の子よりも壊れかたが激しいんだから。 それはいいんだけどね。 その夜。私はその子に言われたの。対象を変えろってね。 できない、って言ったんだけど 「それ、嘘ですよね?一昨日はかがみさん、昨日が泉さんだったのですから、 変えるのができないなんてことはないはずです」 と答えてきて。 凄いわね。あそこまで壊れておいて、しっかり記憶があるなんて。 「イヤだと言ったら?」 そう言ったら、あの子はものすごい怒りのオーラを纏って…… 言えないっ!!これ以上は思い出すだけで恐ろしいっ!! それでね、誰のところへ行けばいいって聞いたら、峰岸あやのちゃんっていう子のところに行けっていうの。 その子なら、また自分のところへ送り返したりしないだろうからって。 そして私は、逃げるようにしてそのあやのちゃんの家へ向かったの。 でもね、そのあやのちゃんもすぐに私を追い出そうとしたの。 みんなして、ひどいわね。普通みんな妖精が来ると喜んでくれるのに。 やだっていったら、この子もみゆきちゃんと同じくらい怖い表情をして…… やだっ!!この先、言いたくないっ!! でね、その子は岩崎みなみちゃんっていう子のところへ行ってって言うの。 なんでも、少し知ってるぐらいの子だから自分に送り返すはずがないってね。 まったく、ずるいわね。 それで今度は、みなみちゃんのところへ。 みなみちゃんは、優しくて良い子だったなぁ。 私の知る限り、いつもゆたかちゃんのことを心配しているし。 それで、私はつい言っちゃったの。 「他の人のところに行ってもいいのよ」 って。 「え……いいの?それじゃ……ゆたかはあんなの、絶対に無理だし……パティかな?」 なんか私、いろんなところを回ってるなぁ。最初の目的とだいぶズレてきてるし。 と、そんなことは気にせずにパティちゃんのところへ。 パティちゃんは、ふぇち状態をかなり楽しんでくれたわ。 なんでも、最近のみんなの様子から、今度は自分にも回ってくるんじゃないかと期待してたんだって。 「ワタシ、ホカのハナシではキホンテキに『受け』をタイケンしたことがナイですから、とてもオモシロかったデス」 ってさ。 今度はしばらく落ち着けるかと思ったけど、 「それじゃツギはもちろん、ヒヨリのところデスね!!」 って言われちゃって。 ……なにか勘違いしてるわね、絶対。 私は別に毎日ふぇち対象者を探してるわけじゃないのに。 まあ面白そうだし、とその子のところへ行って。 「うう……ヒドイ目にあったッス……恨むッスよ、みんな…… 特に今回、日下部先輩とかって基本的につらい思いをしてないじゃないッスか…… 妖精さん、次はまだこれをくらってない人のところにでも行ってくださいッス……」 って、また他所へ行かされて。 そして、いろいろと回ってきて。 「……で、また私のところへ来た、と」 「そ。もう、疲れたわ……」 そう。私の目の前にいるのは、柊かがみ。 かがみってば、私のことなんか忘れてたみたい。 まあ、それもそうか。毎日いろんな人を追いかけ回してたもの。 というか、最初に私が来たときの理由なんかも忘れてるみたい。 みんなもう、誰ひとり暗い表情なんかしてないし。 自分の扱えるふぇちパワーのすごさを改めて知る。 「でね、もう次の人で最後にしたいと思うの」 「ふーん、それじゃ……一年生はかわいそうだし……みゆきだと何か悪いし……」 で、結局。 「なんでいつもこうなるのさ」 いつもの通りというかなんというか。かがみが向かわせたのは、こなたちゃんのところ。 なんか、このふぇち状態が一番しっくりくるんだってさ。 ごめんね、こなたちゃん。でもね私、もうそろそろ帰るから。 それじゃまた、今度会う時までね。 コメントフォーム 名前 コメント フェチのパワーは素晴らしいですね。 -- 無垢無垢 (2008-12-09 21 25 49)
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/13493.html
このページはこちらに移転しました まらいあ 作詞/project-G(625スレ331) No sun delight me by my thorn of hate cause on side me lie day porn on face crazy about a strange idea for a fate myth lost in a strange action for a fate myth crush 'em fade away hide in the shadow of my groin fetch her cold piss frozen cold take me by my thorn of sight hold on safely die tight penis on crazy about a strange idea for a fate myth lost in a strange action for a fate myth cloud 'em fine day hide in the shadow of my groin fetch her cold piss fetch my liar... fetch myriad... エキサイト翻訳/625スレ339 いいえは太陽が私の刺による憎しみの原因の私が喜ぶ私のために表面の偽りの日のポルノに面があります。 運命のための奇妙な動きで失われて、神話がそれらをつぶすという運命神話に関して、遠くのフェードが私の鼠蹊部吹送距離におびえて彼女の冷たい小便を隠すという奇妙な考えに夢中です。 凍っている寒さが私の光景の刺による私のために安全に保持を取る、きつい陰茎で、死にます。 運命のための運命神話が晴れた日の間、それらを曇らせるので、奇妙な動きで失われた神話が、私の鼠蹊部吹送距離におびえて彼女の冷たい小便を隠すという奇妙な考えに夢中です。 私のうそつきをとって来てください… 吹送距離無数…
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/7025.html
さらい屋 五葉 登場人物 コメント オノ・ナツメによる日本の漫画。『月刊IKKI』(小学館)にて2006年1月号から2010年9月号まで連載された。単行本は全8巻。2010年1月号でアニメ化が発表され、2010年4月から7月にかけてフジテレビ『ノイタミナ』枠で放送された。 江戸時代の江戸が舞台の時代劇。単行本にも巻末に「※本作は時代劇という特性上、当時の表現を使用しております。ご了承下さい」との表記がある。 登場人物 ルカリオ:秋津政之助 声繋がり コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/lwetoho/pages/147.html
食らいボム 東プロ用語 用語集トップへ戻る 本家東方Projectでは、敵の攻撃に当たった瞬間にボムを発動することでミスを無効化するテクニック。 東プロでは、フランケンシュタイナーなど足で頭に組み付いて仕掛ける攻撃に対して行う、 パワーボムのように前方に叩きつけて固める切り返し技の事。 ボムで相手の攻撃を無効化する、ということで共通している。 今のところ食らいボムが決め手になった試合はない。 このページを編集
https://w.atwiki.jp/x6dng/pages/32.html
あらいぐま ■よみ あらいぐま ■性別 女性 ■学年 その他 どうぶつ ■所持武器 つめ ■ステータス(攻撃/防御/体力/精神/FS(FS名) 攻撃力 5/防御力 5/体力 5/精神力 5/FS(野生) 5 けものはいてものけものはいない 範囲:同マス 発動率??% 成功率??% キャラクター説明 希望崎学園に迷い込んだあらいぐまなのだ。なにかかばんを背負った人間を追っかけているとかそんなことはまったくないのだ。フェネック?知らない動物なのだ。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/340.html
https://w.atwiki.jp/tsundereidayon/pages/705.html
1 いわゆる自給自足に憧れて、この春から田舎暮らしを始めた。 地元の不動産屋に紹介してもらった農地付き物件は、年季の入った廃屋っぷり。 だが、そのリフォーム作業も含めて充実した毎日だった。 その部屋だけは、何故か他より保存状態が良かった。床も壁もしっかりしていて、雨も隙間風も虫も入り込まない。 だから、その部屋を寝泊りするための場所に使っていた。 気が付いたのは暮らし始めて二週間ぐらいしてから。前兆はもっと前からあったのだろうけど。 人魂、と言うのか。 目の前数センチのところで、ゆらゆらと光の玉が泳いでいる。 寝起きのぼんやりした頭で、それを眺める俺。 暫くそのままだったが、目覚まし代わりの携帯電話が鳴り出した途端、光の玉は驚いたように明滅してから消えた。 2 この屋敷は、どうやら先住者憑きらしい。 色々世話になっている一番近い隣人に何とか聞きだした結果だ。 どうも近所の人から敬遠と言うか奇異の目というか、新入りと言うのとはまたちょっと違う感じで見られているとは思っていたのだが。 過去に住人が首をくくっただの、おかしくなってしまっただの、話す人によって内容は違う。 何処まで本当なのかはよくわからないが、十数年前に越してきた家族が一月も経たず出て行ったのだけは確からしい。 誰もいなくなったこの家の中で彷徨う人魂を見た人もいる。 秘密が暴露されたと知るや、気兼ねなく噂話を聞かせてくれた近所の人は皆『取り殺される前に』と口を揃えるが、そういうのはもっと早くに。。。 財産の殆どをここの購入資金に充てた俺は、後には引けないという殆ど意地で、ここで暮らし続ける事を選択した。 庭にテントを張り、そこを拠点にして屋敷のリフォームと畑作業に精を出す日々。 何か微妙に間違っている。 季節はそろそろ夏になろうとしていた。 3 子供の頃、何とかって怪談を図書館で読んだ。 気の強い男を脅かそうと日替わりでお化けが現れるという話。 今まさにそんな状況だ。 あれから毎日、家の中限定、特にあの部屋を中心に、何かしら怪異は起こっていた。 お経や枯れ木を叩くような音が一晩中続いたり、火の玉が飛び回ったり、誰かが歩き回ったり。 障子や天井一杯の顔が出た事もあるし、屋敷が火事になった幻を見せられた事もある。 客観的に見ていられるのは、慣れ、なんだろう。 建物から一歩出れば、それらが外まで憑いてくる事もなかったし、 殆どが幻で構成されている、要は命に関わるような大事が起きていないという事もある。 むしろ日中の労働後にテント泊という生活の方が体に堪えていた。 ある時、雨がテントを叩く音で目を覚ました。 結構激しい。 畑の様子や修繕道具を確認する必要があるだろう。 起き上がろうとしたが、体中が酷くだるくて、結局断念した。 頭も体も激しく痛む。 転がったままぼんやりしていたが、視界がふぅっと暗転するのを感じた。 次に目を開けた時も、テントを叩く激しい雨は続いていた。 それ程時間は経っていないようだ。 いい加減起き上がらないといけないのだが、いかんせん体は石のように重いまま。 再び意識を失いかけた時、ふわっと湿った風が入り込むのを感じた。 三度目の覚醒は、今までと違う音のせいだった。 てん、とん、てん、ててん。 断続的に床を叩く音。雨漏りだ。慌てて起き上がった。 そしてあたりを見回して、そこがテントの中ではない事に漸く気付いた。 「…あれ?」 何時の間にか、リフォーム真っ最中の屋敷の、例の部屋へと移動していた。 だるさはまだ残っていたがとにかく畑の様子を見ようと歩き出し、ふと口元に手をやって驚いた。 髭が、随分伸びていた。 翌朝「最近姿を見ないから」と心配した隣人が様子見に来た。 どうも体調を崩してそのまま四日程昏倒していたようだ。 どうしようか迷ったが、その日から再び屋敷の中で寝泊りする事にした。 4 盛夏を迎え、猛暑が続く。 俺はというと、畑仕事と屋敷のリフォームと言う相変わらずの生活を送っていた。 病気で倒れた日以来何故か、見えない同居人の仕業と思われる怪現象のうち、睡眠に響く騒音は随分と落ち着いた。 その代わり。 精気を付けろと隣人から頂いた鰻丼を、空にされた。 隣人から頂いた晩飯のてんぷらを盗られた。 頂いた焼肉(略 若いからと肉系を中心におかずをしょっちゅう頂いているのだが、ことごとく奪われていた。 この夏の俺の体は野菜で出来ているといっても過言ではない。 まぁ、同居を認めてもらえる代償と思えば、悔しいけれど安いものだろう、多分。 …悔しいけど。 おかずを奪われるようになって一月ほどした頃。 物音にふと目を覚ました。 周りは真っ暗になっている。 土間の修繕作業中だったのだが、ちょっと一休みと寝転がっているうちに寝入ってしまったらしい。 携帯の明かり片手に、外に置いたランタンを探そうと土間から出ると、縁側の片隅に白いものが見えた。 隣人が夕飯のおすそ分けに来てくれたらしい。布巾の掛けられたお盆が置かれていた。 動物性たんぱく質のおかずは諦めながら布巾をめくる。 案の定、三つ並べられた皿のうち一つは完全に空になっていた。 好みじゃない葉物は相変わらず手付かず。 残る一つの皿を見て、おや、と思った。 卯巻き卵が一切れと、『満腹ダカラ、偶ニハ分ケテヤル』と書かれた緑の葉っぱが一枚。 「はは、ありがと」 苦笑しつつも珍しい事もあるものだと思い、声に出して礼を言った。 縁側の障子の向こうで微かに気配がした。 それ以来、肉類もほんの一口分だけ残してくれる事がある。 5 気が付くと日没が早くなり、朝晩が涼しくなってきた頃。 「ほら、住むならやっぱり一度ちゃんと御祓いとかしてもらわないと」 「はぁ」 隣人が、伝手を頼って紹介してもらったという霊能者を連れてきた。 五十過ぎの胡散臭そうな男性だ。 正直な所、最近はそこまでする必要も感じていなかったのだが、近所に住んでいる人たちも不安なんだろうと思い、形だけ見てもらうことにした。 まずは一通り屋内を見、その後紹介してくれた隣人の家で対応を話し合うことになった。 部屋から部屋へ見て回る男は、見た目通りかなり胡散臭い。 時折妙な方向に視線を飛ばしてみたり、立ち止まったり。 で、俺が寝泊りしている例の部屋では全くの無反応。 そんなこんなで一時間ほど見て回った。 その間怪しげな事は全く起きなかった。 「いや、確かにあそこには悪霊が棲み付いておりますな」 隣人の家に戻るや否や、待ち構えていた近所の人たちに対し早速深刻そうに口を開く男。 「霊道の上に後から家を建てたのでしょう。そのために色々と障害が起きている。このままでは命に関わります」 ざわめきたつ近所の人たち。 「そうなんですか?どうすれば!?」 「対応は早ければ早いほど良い。明日、早速御払いを行いましょう」 「わ、わかりました。あんたもそれでいいね?」 「あ、はい」 当人そっちのけの感があるのだが、それで皆の気が済むならいいか。 そう軽く考えていた。 「明日、御払いするんだってさ」 その夜はそのまま隣人宅に泊めて貰う事になったのだが、同居人には一応報告しておかねばなるまいと思い、忘れ物を取りに帰るフリをして家に戻った。 「あれでも何か効き目があったら大変だから、どっかに隠れているといいよ」 特に反応は無かったから、納得したんだろうと勝手に思い込んでいた。 6 二人の助手と共に着々と準備を進める男。 場所は一番足場の良い、例の寝泊りしている部屋。集中の邪魔になるという理由で近所の人達は締め出され、紹介者の隣人だけが立ち会っていた。 滞りなく作業は進み、やがて除霊が始まった。 一応取り憑かれているということになっている俺を囲い、呪文を唱える男達。 最初は何も起きなかった。 だが、突然、祭壇に灯されていたろうそくが勢いよく燃え上がり中空で一塊になると、そのまま助手の一人に飛び移った。 悲鳴を上げながら燃え移った炎を叩き消す助手。 俺も助けようと立ち上がろうとしたのだが、急に悪寒が走り、同時に体が動かなくなった。 自分の体なのに、自分のものではないような。熱で浮かされた時のあのだるさに似た感覚。 同時に、後ろから生臭い臭いと嫌な含み笑いが聞こえた。 そのまま倒れ込んだ。 男の呪文が続いている。俺に近づき、頭の横に膝を着いて、怒鳴りつけるように呪文を唱えている。 それと呼応するように、だるさと不快感が体中を支配する。 指の先すら動かせないまま、視線だけで男を見上げた。 そうしているとふと、床の下から、かり、かり、と何かが引っかく音がしているのに気が付いた。 『アイツ』がいらいらしながら爪で引っかいている。 そう思った次の瞬間。 下から突き上げてきた衝撃に、天井まで吹き飛ばされた。 黒い毛皮の生き物だった。 犬のようにも見えた。でもあの尻尾は狐のものだ。 俺の体は床に倒れたまま、黒いもやのような大蛇に巻きつかれていた。 黒狐はその蛇に襲い掛かると頭を噛み砕き、俺の体から引き剥がし、呪文を唱える男の方へ放り投げた。 よく見ると男の体にも、大小無数の蛇が絡み付いている。それらの蛇がいっせいに鎌首をもたげ、狐に向かって鋭い威嚇音を発しながら牙を剥いた。 『アイツ』は意に介した様子もなく、口から真っ赤な炎を吐き、男ともども蛇へ浴びせかけた。 白昼夢、だったのだろうか。 気が付くと、俺の視線は倒れたときのまま床に近い所にあった。 あのだるさは無い。急いで起き上がる。 自称霊能者の男は、どこか呆けたような顔をしていた。 立ち会っていた隣人に恐る恐る状況を問われると、慌てて体裁を取り繕い「無事に祓えたようだ」などとのたまっていた。 7 『アイツ』は当分の間荒れていた。 近所の人たちには当然内緒にしていたが。 昼夜構わず家中を走り回ったかと思うと、柱や梁を片っ端から揺さぶってみたり。 紙の類を手当たり次第破ったり、木屑や枯葉を家中にばらまいたり。 俺はあの霊能者を勝手に家に入れてしまったことを毎日謝った。 『アイツ』にとってこの家は『アイツ』の棲家で、俺は間借り人なのだから。 『アイツ』はなかなか許してはくれなかった。 秋祭りの日。 祭りを手伝ったお礼にご近所の皆さんから一人では食べきれないほどの稲荷寿司を貰った。 「一緒に食べてくれる人がいないと困るなぁ」 がたがたと揺れる暗い家に戻り、呟く。 稲荷寿司はそのまま台所に置き、俺は庭に再び設置した寝床――テントにもぐりこんだ。 『――二度と、勝手な真似をするでないぞ?』 夢うつつに、声が聞こえた。大人びた口調の、でも確かに子供の声だ。 『この地に住む以上、おまえは我の使用人なのだからな』 怒っているが、不安げに、寂しげに響く。 思わず頬を緩めつつ、頷いてみせると、声音は一転して明るくなった。 『わかればよい。今回は、供え物に免じて許してやる』 目を覚ます直前、僅かに頭をかしげて艶やかな黒髪を肩に流す、愛らしい笑顔が、見えた気がした。 稲荷寿司の三分の一を一人で食べたらしい。 残りは油揚げ無しの状態で、台所に残されていた。 8 点検で床下を探っていると、例の部屋の下で、拳大の狐らしき素焼きの人形が出てきた。 どうしようか迷ったが、暗い所に戻すのもなんだし、ふかふかの座布団を買って来て上に人形を据え、家の中で一番良い場所に置いた。 相変わらずおかずを奪われるが、それ以外には特におかしなこともないから、問題は無いようだ。
https://w.atwiki.jp/nolnol/pages/10130.html
トライアルダンジョン 婆娑羅の巣窟 富豪ぎらい 制限時間 90分 概要 輸送中の高級品が奪われてしまった。 館の主が、高級品のありかを知っているらしい。 高級品を取り返すこと。 達成条件 生漉奉書紙を入手する 雅な香道具を入手する 砂糖菓子を入手する 高級絹帛を入手する 敵NPC 名前 富豪ぎらい 数 備考 ドロップ 盗人女 LV40〜42 1〜3 霊視 野次馬町人 LV42 2 偽武芸者 LV42 1〜3 すす色虫 LV42 1〜3 強欲商人 LV43 1〜3 霊視 招き猫【家具】 横柄医学者 L44〜46 3〜5 吸血大蛾 L44〜46 1〜3 新グラ 怠け番犬 Lv46 2 でたらめ職人 Lv45〜47 3〜5 落ちぶれ貴族 Lv46〜47 3〜5 護摩の灰 L49 3〜5 報酬 条件3つクリアで修得之書・八1冊と古びた銅銭7枚-全て達成で修得の書・八2冊と古びた銅銭(通常編成:10枚、自動編成:12枚) 宝物庫 抹消された格式帳 修得之書・七〜八 金剛石 備考 達成に必要なアイテムは葛篭箱の中にある。 鍵のかかっている箱は別の箱から入手できる瑪瑙色の小鍵、琥珀色の小鍵で開けられる。 当然ながら鍵のかかった箱の中に入っている試練達成アイテムもある。 その他情報 葛篭箱の置いてある部屋の壁に調べられる場所があるが、調べても「何も落ちていないようだ」としか表示されないので何の意味があるのか不明 -- ここでもネズミは出るの・ -- 富豪ぎらいのクエで、盗人から招き猫が出ました -- 落ちぶれ貴族、霊視あります -- TM 落ちぶれ貴族 Lv46〜47 3〜5 霊視なかったですよ〜 -- 上記表から落ちぶれ貴族の霊視を削除しました -- 自動編成完全達成で12枚 -- 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/amezo11337205107/pages/68.html
かきふらい(かきふらい) コメント一覧 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/tsgeneral/pages/133.html
07-239 :真理奈のいたずら・1 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/25(水) 00 20 41.09 ID 4ATUCn0y Part.01 三日ぶりに雨が上がった日の朝、森田瑞希はいつもの時間に自宅を出た。 陽は出ているが気温は高くはなく、軽く手足を縮めて息を吸い込むと、 涼しい空気に混じって、湿ったアスファルトの匂いが鼻腔に入ってくる。 学校に向かう前に、道路を挟んで斜向かいの住宅に立ち寄る。 チャイムを鳴らすと、まるで瑞希が来るのを待っていたかのように (実際、待っていたのだろう)、すぐさまドアが開いて、学生服姿の祐介が姿を見せた。 「おはよう、祐ちゃん」 「ん、おはよう。今日はちょっと寒いな」 祐介は後ろを振り返り、玄関に立って微笑んでいる母親に短く「行ってくる」と告げると、 自然な仕草で瑞希の手をとり、足早に歩き始めた。 「祐ちゃん、足元に気をつけてね」 「ああ、わかってる」 通りのあちこちに水たまりができていて、注意して歩かないと靴を汚してしまいそうだ。 しかし、祐介と手を繋いで通学路を歩くのはとても気分がいい。 温かな太陽の光を浴びて、小鳥たちのさえずりに耳を傾けながら、 瑞希はさかんに祐介に話しかけた。 「今日のお弁当は卵焼きとハンバーグが入ってるんだよ。 祐ちゃんの好きなものを入れておいたから、楽しみにしててね」 「お、そうか。いつも瑞希に作ってもらってばかりで悪いな。 何か奢るから、放課後は寄り道して帰ろうぜ」 「え、いいの? じゃあ私、駅前のケーキ屋さんのケーキが食べたいなあ。 あそこのモンブラン、すっごく美味しいんだよ。大人気で、すぐ無くなっちゃうの」 瑞希はにこにこ笑って、祐介の大きな手をぎゅっと握り締めた。 子供の頃からつき合っている大好きな少年とこうしていると、 今日は何かいいことがありそうに思えてくる。 この幸せがずっと続きますようにと、瑞希は目を閉じて祈りを捧げた。 教室に着いた二人が目にしたのは、大声でわめき散らして クラスメイトに迷惑がられている加藤真理奈の姿だった。 「瑞希、見て見て! 今日のあたし、すごいのよ!」 「ど、どうしたの、真理奈ちゃん? そんな大きな声を出して……皆がびっくりしてるよ」 瑞希は自分の机の上にカバンを置き、親しい友人である真理奈の顔を見上げた。 真理奈は女子にしてはかなりの長身で、また明るい色の茶髪と 濃いメイクをしていることもあり、実年齢よりも年上に見られることが多い。 それに対して瑞希は小柄で童顔、さらに長い黒髪を頭の左右で束ねている、 いわゆるツインテールの髪型をしているため、とても真理奈と同い年には見えない。 二人が並んで歩くと、知らない人間からは大学生の姉が小学生の妹を連れているように 見えるようで、瑞希にとっては甚だ不本意な思いをさせられることもしばしばあった。 だが、真理奈は明るく友達思いで、引っ込み思案の瑞希にとっては 自分をリードして世話を焼いてくれる、かけがえのない親友だった。 07-240 :真理奈のいたずら・1 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/25(水) 00 21 35.52 ID 4ATUCn0y その真理奈が、瑞希の前で奇声をあげたり、 腕をぶんぶん振り回したりして何やら大騒ぎをしている。 一体何があったのか問うと、真理奈は得意気に胸を張って豊かなバストを強調した。 「実はね、ついにあたし、人間を超えちゃったの。 魔法の力を手に入れて、人類を超越した至高の存在にのぼりつめたのよ!」 「え、魔法? 朝からいったい何の話をしてるの。頭の中は大丈夫?」 「ふっふっふ、ひとをバカにするのもそこまでよ。 ほら、見なさい! あたしが人間を超えた証を見せてあげるわ!」 言われて真理奈の顔をよく見ると、額に黒い線で丸い文様が描かれている。 マジックにしては線が細いので、ボールペンで書いたのだろうか。 ひょっとするとタトゥーシールを使ったのかもしれないと瑞希は思った。 「へえ、おでこにそんなのつけて学校に来たの? 何だか罰ゲームみたい。恥ずかしかったでしょう。 早くトイレに行って洗い落としてきたら? もうすぐ授業が始まっちゃうよ」 「ちょっと! 全然信じてないわね、あんた! もうちょっと大げさに驚くとか 恐怖にガタガタ震えるとか、誠意のある反応を見せなさいよ!」 真理奈は悔しげに地団駄を踏んだが、瑞希は白けた顔で授業の用意を始める。 加藤真理奈はとても友達思いの娘なのだが、大柄な体格のわりに子供っぽい部分があり、 今のように些細なことで大騒ぎしたり、目上の人間を茶化したりして 周囲の顰蹙を買うことが時折ある。 そういうときは瑞希がブレーキ役となって真理奈を制止するのが常であるが、 いつまでも子供ではないのだから、もう少し落ち着きを身に着けてほしいというのが 瑞希の正直な願いでもあった。 そうして適当に真理奈を構っていると、祐介が瑞希のもとにやってきた。 「どうしたんだ、瑞希。また加藤のやつに絡まれてるのか? 相変わらず迷惑なやつだな、お前は」 祐介は目を細くして、真理奈に非友好的な視線を向けた。 「何よ、中川。あんたなんて呼んでないわ。大人しく自分の席に座ってなさい」 真理奈も祐介を鋭い眼差しで見やり、刺々しい口調で追い払おうとする。 間に挟まれる形となった瑞希は慌てて二人をとりなしたが、 祐介と真理奈は視線で火花を散らして、激しくにらみ合った。 瑞希の恋人である中川祐介と、瑞希の親友である加藤真理奈は、あまり仲がよくない。 むしろ犬猿の仲といってもいい。 どちらかと言えば真面目で物静かな祐介にとって、口数が多くお調子乗りの真理奈は 近くにいるだけで不愉快な存在なのだろう。逆もまた然りだ。 加えて、二人ともが瑞希と親しく、瑞希を取り合いして争うことも多い。 顔を合わせれば喧嘩をして罵り合う二人を何とかしようと瑞希は思っているが、 生来気弱な性格のため、なかなか二人の仲を取り持つことができずにいた。 「瑞希、こんな女と口をきくんじゃないぞ。馬鹿がうつるからな」 と、真理奈を指差してこき下ろす祐介。 いつもならば、ここで真理奈がふたことみこと言い返して 口喧嘩になるはずだったが、今日はいつもと少し様子が違った。 「ふふん、せいぜい吠えてなさい。今のあたしは人間を超えちゃったんだから。 あんたなんかじゃかないっこない、神様みたいなすっごい力を手に入れたのよ。えっへん」 真理奈は腕組みをして、余裕しゃくしゃくの顔で額の文様を見せつけたが、 もちろんそのような戯言、祐介がまともに取り合うはずがない。 「何だよそれ、くだらないこと言いやがって。ゲームのしすぎじゃないのか? 悪いことは言わんから、たまには勉強もした方がいいぞ。もう手遅れだろうけど」 「ふっふっふ……そんなに疑うのなら、あたしに秘められた力を見せてあげるわ。 あんたが記念すべき実験台一号よ。喜びなさい、中川」 そういうと、真理奈は右手を祐介に向けて突き出し、 まるで彼の首をはねるような動作で宙をすっと薙ぎ払った。 もちろん、細い女の手で人間の首を切断できるはずはない。単なる悪ふざけだろう。 07-241 :真理奈のいたずら・1 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/25(水) 00 22 38.09 ID 4ATUCn0y (もう。また真理奈ちゃんは、あんなことをして祐ちゃんを挑発して……。 もっと仲良くできないのかな。私は二人に仲良くしてほしいのに) 心配そうに成行きを見守る瑞希の机の上に、何か丸いものが落ちてきた。 体育で使うバレーボールくらいの大きさの球状の物体だが、 ボールとは違い、表面には黒い毛のようなものが生えていて、妙にふさふさしている。 「何だろ、これ。こんなもの、どこから落ちて──えっ?」 その物体に手を伸ばした瑞希の顔から、一切の感情が消え失せた。 それは瑞希の目の前に立っている少年、祐介の頭部だった。 「きゃあああっ !? ゆ、祐ちゃんっ !?」 悲鳴があがるのとほぼ同時に、首のない男子高校生の体がどさりと床に崩れ落ちる。 真っ青になる瑞希の手の中で、祐介の顔は目を見開いて硬直していた。 どう見ても即死だった。瑞希が愛していた祐介は、 たった今、首をはねられて短い人生の幕を下ろしたのだ。 (ゆ、祐ちゃんの首が千切れちゃった。祐ちゃんが死んじゃった……) あまりに衝撃的な事態に、どうしていいかわからない。 ショックでぽろぽろと涙をこぼして、瑞希は祐介の頭を胸にかき抱いた。 しかし、嘆き悲しむ瑞希を新たな驚きが襲う。 祐介の首が唐突に口を開いて、不機嫌な声で喋り始めたのだ。 「おい! 何だよ、これは! 一体どうなってんだよ !?」 「ゆ、祐ちゃん !? 祐ちゃん、生きてるの !?」 「勝手にひとを殺すんじゃねえっ! それよりも、加藤! これはお前の仕業なのか !? 一体俺に何をしやがった !?」 首が完全に切断されているにも関わらず、祐介は血の一滴も流すことなく、 瑞希の腕の中で唾を飛ばして元気にわめき散らしている。 とてつもなく奇妙な光景だ。悪い夢を見ているのかとさえ思った。 周りで大騒ぎをしている級友たちの声が、遠いところから聞こえた。 「おーっほっほっほ、これがあたしがゲットした能力の一つよ! ひとの命を支配して、自由自在に操る力! どう? すごいでしょ。 生きたまま首をはねられるなんて体験、よそじゃ味わえないわよ」 事態についていけずに呆然とする瑞希の手から祐介の頭をひょいと取り上げて、 真理奈は高笑いをあげる。額に描かれた円形の文様が、妖しげな緑色の光を放っていた。 「こら、加藤っ! 早く俺の体を元に戻せ! 気持ち悪いじゃねえか! ひとが死んだらどうしてくれるんだっ!」 「ふふふ……普段はムカつく中川も、こうなっちゃったら可愛いものね。 さーて、どうやってこらしめてやろうかしら」 抗議の声をあげる祐介を面白そうに眺める真理奈。 祐介の頬をつねったり、耳を引っ張ったりして好き勝手に遊んでいるが、 首だけになってしまった祐介に抵抗するすべはない。 今の彼は、手足をもがれた虫も同然の無力な存在だった。 07-242 :真理奈のいたずら・1 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/25(水) 00 23 52.03 ID 4ATUCn0y 「やめてよ、真理奈ちゃん。祐ちゃんの体を元に戻してあげて」 瑞希はようやく我に返って、真理奈に懇願した。 瑞希の切実な訴えに、真理奈も祐介をもてあそぶ手を止める。 「はいはい、わかったわ。いくらムカつく中川でも、さすがにこのままにしておくのは ちょっぴり可哀想だもんね。止めてくれた瑞希に感謝しなさいよ?」 「う、うるせえ。とっとと俺を元に戻せっ」 「あら、そう。まだそういう態度をとるんだ……ふーん」 なおも反発する祐介の首を、真理奈は机の上に無造作に置いた。 そして床に倒れている祐介の体に寄り添い、「よいしょ」と抱き起こす。 首の切断面はハムのようなピンク色で、やけにつるつるしていて不気味だった。 一体何をどうすればこうなるのか皆目見当もつかなかったが、 今の真理奈にはこういうことができるという。本当に魔法のようだと、瑞希は驚嘆した。 「中川はあたしの凄さがまだ理解できないみたいだから、 もうちょっと楽しませてあげるわ。いい? よく見てなさいよ」 「な、何をするつもりだよ……」 固唾をのんで見守る二人の前で、真理奈は自分の首に両の手のひらを当てた。 細く長い指を軽く握り込んで腕を上げると、今度は真理奈の首が体から外れてしまう。 自らの頭部を胴体から十数センチ上に持ち上げ、真理奈はにやにや笑っている。 「ま、真理奈ちゃんの首まで……一体どうなってるの」 瑞希の声は震えていた。やはり祐介と同じく、真理奈にも出血は見られない。 だが祐介とは違って、首無しになってしまった彼女の体は問題なく動かせるようだ。 「驚くのはこれからよ。あたしの頭をこうして……よいしょっと」 真理奈は自分の頭を移動させて、祐介の胴体に載せた。 何のつもりかと訝しがる瑞希と祐介の表情に、見る見るうちに驚愕が広がっていく。 わずかに異なる色をしていた切断面が合わさり、肉と肉が融合してしまったのだ。 「ゆ、祐ちゃんの体と真理奈ちゃんの頭が、くっついちゃった……」 愕然とする瑞希の声に応えるかのように、おもむろに真理奈が立ち上がった。 華やかな茶髪の美少女の顔の下に、学生服を着た少年の体が繋がっているのがわかる。 ありえないことだが、確かに真理奈の頭と祐介の体が一つになっているようだ。 驚きの連続に瑞希は開いた口が塞がらず、金魚のように口をぱくぱくさせるしかない。 「ふふふ、どう? 中川。あんたの体、ちょっと借りてるわよ」 「ちょっと待て、何だよそれは! 勝手にひとの体を使うな! 返せ!」 当然のように祐介は声を荒げたが、真理奈は涼しい顔で自分の手足を振り回し、 彼から奪った肉体の調子を確かめている。 「やっぱり男の体はたくましいわねー。なんか暴れたくなってきちゃったわ。 ちょっくらその辺を走り回ってこようかしら」 「やめろ! 俺の体をおもちゃにするんじゃねえっ!」 「まあまあ、そんなに怒らないの。ちょっと借りてるだけじゃない。 お返しに、あんたにもあたしの体を貸したげるからさあ」 と、再び祐介の首を手にとる真理奈。楽しくて仕方がないといった様子だ。 07-243 :真理奈のいたずら・1 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/25(水) 00 24 49.46 ID 4ATUCn0y 「お、おい、待て。お前の体を俺に貸すって、どういうことだよ !?」 「そんなの、そのまんまの意味じゃない。あんたの頭をあたしの体にくっつけるのよ。 ありがたく思いなさい。スタイル抜群のあたしの体を貸したげるって言ってるんだから」 「い、嫌だ! そんなの、俺は絶対に嫌だからな!」 祐介の顔から血の気が引いて青ざめる。しかし真理奈は容赦せず、 微動だにできない彼の頭部を、首のない自分の体に無理やりくっつけてしまった。 先ほどと同じようにして切断面がすうっと消え去り、祐介の頭と真理奈の身体が合体する。 「な、何だよこれ。本当に俺、加藤の体になっちまったのか……」 ようやく動けるようになった祐介はその場に立ち上がり、 すらりと長い自分の脚とセーラー服の胸元で揺れる二つの膨らみを見下ろし、 打ちのめされたようにがっくりと肩を落とした。 「そ、そんな……祐ちゃんが女の子になっちゃった」 「み、見るな! 瑞希、俺を見るなっ!」 スカートをはいているのが恥ずかしくて座り込んでしまう祐介に、 周囲のクラスメイトたちも好奇の視線を注いでいる。 「おい、見ろよ。中川のやつ、女子の制服を着てるぞ。あんな趣味があったのか」 「でも、中川ってあんな体型だったっけ? なんか、本物の女みたいだな」 「驚いた。すげえ巨乳だ。あいつ、実は女だったのか」 ひそひそ囁き合う男子の声が、祐介の羞恥をますます煽る。 耳まで赤くしてうずくまる祐介の姿は、本当に見ていて気の毒だった。 「おーっほっほ! あたしがその気になればこのくらい、ちょろいもんよ! 中川はしばらく、その格好で皆の晒し者になるといいわ! おーっほっほっほ!」 「ま、真理奈ちゃん、こんなの困るよ。祐ちゃんに体を返してあげて」 瑞希はまたも頼み込んだが、今度は真理奈は承知しない。 祐介の制服のポケットの中をあさって、彼の財布やら携帯やらを勝手にもてあそぶだけだ。 「いやよ。だって中川をいじめるのが楽しいんだもん。今さらやめられないわ」 「そ、そんなこと言わないで。お願いだよお、祐ちゃんを元に戻してえ……」 べそをかきながら額を机にこすりつけて拝み倒すと、 やっと真理奈も聞き届ける気になったらしく、しぶしぶながらうなずいた。 「しょうがないわねえ。でも、せっかく入れ替わったんだから、 ただ元に戻るだけじゃつまらないわねえ……そうだ、いいこと思いついたわ」 「え? な、何? まだ何かするつもりなの?」 不穏な気配に戸惑っていると、真理奈は口元に手を当てて、不敵な笑みを浮かべた。 「元に戻せって言うけど、実際に元に戻らなくても、皆が『元に戻った』って 錯覚すれば、元に戻るのと同じことなのよね。わかる? 瑞希」 「ううん、ごめん……よくわかんない」 瑞希は首を振った。真理奈の意図がさっぱりわからず、困り果てた。 「わかんなくてもいいのよ。すぐにわかるようになるから。ふっふっふ。 あたしの力は、ただ他人の体を操るだけじゃないわ。心まで思いのままなのよ」 真理奈は瑞希の頬を優しく撫でると、彼女の瞳を食い入るようにのぞき込んできた。 「ま、真理奈ちゃん? 何をするつもり?」 「いいから、じっとあたしの目を見なさい。何も考えなくていいから」 「う、うん……」 嫌な予感がしたが、なぜか真理奈の言葉に逆らうことができない。 言われるままにじっと見つめ合っていると、 まるで真理奈の瞳に吸い込まれるような気がした。 07-244 :真理奈のいたずら・1 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/25(水) 00 25 44.20 ID 4ATUCn0y (なんか、頭がぼーっとしてきた……でも、ちょっと気持ちいいかも) 祐介を襲った異変も、周囲の喧騒も、何もかもが気にならなくなって心が安らいでくる。 子守唄を聴いて眠りにつく幼児のような気分だった。 「瑞希、瑞希、あたしの声が聞こえる?」 「うん。聞こえるよ、真理奈ちゃん」 心地よいまどろみに身を委ねて、瑞希はうなずく。 視界の中央で、きらびやかな美貌を持った少年が彼女を見下ろしていた。 「違うわ、瑞希。あたしは真理奈じゃない。真理奈はこっちの女の子よ」 と、少年が指差したのは床にうずくまっているセーラー服の少女だ。 (あれ? あの子は真理奈ちゃんだったっけ……) 瑞希の心にかすかな疑問が浮かぶが、それもすぐに泡となって消滅する。 (うん、そうだよね。あれは真理奈ちゃん。あたしの大事なお友達じゃない) 「わかる、瑞希? この子は真理奈。そしてあたしは祐介。あんたの彼氏よ」 「え、祐ちゃん? 祐ちゃんなの?」 瑞希はぼんやりした表情で、茶髪の少年に訊ねた。少年は笑顔でうなずく。 「そうよ、瑞希。あたしは祐介。あんたの彼氏の中川祐介よ」 「祐ちゃん……そうだ、祐ちゃんだ」 はっとした気分になって目を見開く。瑞希の目の前に立っている女顔の美少年は、 彼女が幼い頃から大事に想っている祐介だった。 「ごめんね、祐ちゃん。あたし、ちょっとぼーっとしちゃってたみたい。 よりによって、大好きな祐ちゃんのことがわからなくなるなんて、ひどいよね」 詫びる瑞希の頭を、祐介は慰めるように優しく撫でてくれる。 「気にしなくていいのよ。あたしと瑞希は幼馴染みのラブラブカップルじゃない。 そんなことくらい気にしないわよ。ほら、ほっぺた出して。キスしてあげる」 「うん、嬉しい。祐ちゃん大好き」 頬に祐介のキスを受けると、とろけるような夢心地にさせられる。 瑞希は熱に浮かされたような顔で、リップグロスが塗られた 祐介の柔らかな唇の感触を堪能した。 「こ、こらっ! お前、瑞希に何をしてるんだっ !?」 突然の大声に振り向くと、少年のような凛々しい顔立ちをした長身の女子が 怒った顔でこちらをにらんでいた。 クラス一のセクシーなプロポーションを誇る少女、加藤真理奈だ。 07-245 :真理奈のいたずら・1 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/25(水) 00 26 38.21 ID 4ATUCn0y 「どうしたの、真理奈ちゃん? そんなに変な顔して」 瑞希が問うと、真理奈はあからさまにショックを受けた様子だ。 「ど、どうしたんだ、瑞希。俺のことがわからないのか? いくら体を交換させられたからって、俺が加藤だなんて冗談じゃないぞ……」 何やらぶつぶつぼやいているが、瑞希には彼女が何を言っているのかよくわからない。 不審に思っていると、祐介が瑞希から離れて真理奈に歩み寄った。 「ふふふ、面白いでしょ。体だけじゃなくて、立場も入れ替えてあげたの。 瑞希も皆も、今はあんたのことをあたし──加藤真理奈だと思ってるのよ。 よかったじゃない。これで女装趣味の変態扱いされなくて済むわよ」 「ふ、ふざけるなっ! わけわかんねえこと言ってないで、今すぐ元に戻せっ!」 「あら、暴れちゃ駄目よ。ほら、あたしの目を見て落ち着きなさい」 つっかかる真理奈の腕を祐介が押さえ込んで、瑞希と同じように目と目を合わせる。 途端に真理奈の瞳から意思の光が消え失せ、虚ろな表情になった。 「な、なんだ。頭がぼーっとする……」 「ねえ、あんた。一つ確認しておくけど、あんたは加藤真理奈だよね?」 「俺が加藤真理奈? あれ、そうだったっけか……」 「うん、そうそう。あんたは加藤真理奈。あたしたちのクラスメイトの女の子じゃない」 「俺は女の子……俺の名前は加藤真理奈……」 抑揚のない声で、祐介の言葉をぶつぶつと繰り返す真理奈。 催眠術でもかけられたような彼女の姿に瑞希は驚いたが、 真理奈は急に何かを思い出したかのように目を見開いて、にっこり微笑んだ。 「ああ、そうだった、そうだった。俺は加藤真理奈じゃないか。 自分の名前がとっさに出てこないなんて、びっくりしたよ。ボケてんのかな」 恥ずかしそうに頭をかいて、照れ笑いを浮かべる真理奈。 「駄目よ、真理奈。女の子がそんな乱暴な言葉遣いをしちゃいけないわ」 「そういえばそうね。あたしは女の子なんだから、俺なんて言ったらおかしいわよね」 真理奈は納得した表情でこくんとうなずき、瑞希の机に腰かけた。 「ねえ、瑞希。あたしの格好におかしいところはないよね? 大丈夫だよね」 「うん、大丈夫。真理奈ちゃんは今日も可愛くてかっこいいよ」 「えへへ、ありがと。瑞希もとっても可愛いわよ。あたしが男だったらほっとかないくらい」 嬉しそうに笑う真理奈は、自分と同じ女子高生とは思えないくらいに格好よくて男前だ。 今日は何かいいことがあるかもしれない。瑞希は祐介と真理奈の顔を見比べ、 浮き立つような快い気分に自然と頬を緩ませた。 07-252 :真理奈のいたずら・2 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/31(火) 20 17 57.68 ID Y+BX/ztu Part.02 その日、加藤真理奈は朝から上機嫌だった。 (ふふふ……中川のやつ、あたしのカッコで授業を受けてる。まあ、自分のことを あたしだと思い込んでるから、本人にとっちゃ当たり前のことなんだけどね) 教室の最後列の席に着いてシャープペンシルをもてあそんでいる 真理奈の視線の先に、奇妙な外見の生徒が座っていた。 顔立ちや髪型はまぎれもなく男──なかなかに凛々しい少年のものなのだが、 彼はなぜか女子の制服を身に着け、特に恥ずかしがるでもなく 平然と教師の話に耳を傾けている。 一見すると女装しているようにも思えるが、紺色のプリーツスカートの裾から伸びる 柔らかな脚線や、セーラー服の胸元を押し上げている豊かな二つの膨らみは 明らかに男性のものではなかった。 彼の名は中川祐介。真理奈と同じクラスの男子生徒だ。 そして、現在の彼の首から下は、真理奈の肉体である。 先ほど真理奈が面白がって自分と祐介の首を挿げ替え、体を交換してしまったのだ。 そのため、逆に真理奈の首には学生服を着た祐介の体が繋がっていた。 「じゃあ、百八ページの冒頭から読んでもらおう。加藤真理奈、やってくれるか」 教壇に立つ初老の国語教師が真理奈の名前を呼んで、教科書の音読を命じた。 しかし、返事をして立ち上がったのは真理奈ではなく、真理奈の体を持った祐介だった。 「ん、お前は加藤か? はて、いつもと少し雰囲気が違うような……」 「どうしたんですか、先生。あたし、どこかおかしいですか?」 普段は無愛想な祐介が、教師の前で内股になって もじもじと恥ずかしがっているのは、かなり不気味な光景だ。 (うわあ、面白すぎる。あの中川が『あたし』とか言ってなよなよしてる。ありえねー) そばで見ていた真理奈は吹き出しそうになったが、 真理奈以外のクラスメイトも、そして音読を命じた国語教師も、 セーラー服を着て恥じらう祐介の姿に驚いた様子はない。 祐介自身でさえ、変わり果てた自分の体を特に気にするでもなく、 自分が「加藤真理奈」本人であるかのように、ごく自然に振る舞っていた。 実は、この場で二人の体と立場が入れ替わったことを認識しているのは真理奈だけである。 それ以外の人間は、祐介も含めて全員が真理奈に暗示をかけられ、 思考と記憶とを彼女に都合のいいように操作されているのだ。 これも、真理奈が悪魔に魂を売って得た力の為せるわざだ。 他人の肉体と精神を自在に操り、思いのままにコントロールする魔法の力。 その最初の実験台になっているのが祐介と、この場にいるクラスメイトたちだった。 チャイムが鳴って休み時間になると、真理奈は席を立って祐介のもとに向かった。 「ねえ、真理奈。ちょっといい?」 「あ、中川君。何か用?」 祐介は座ったまま真理奈を見上げて、愛想よく笑い返した。 「自分は女子生徒の加藤真理奈」と思い込んでいる彼は、 己の肉体が真理奈に奪われてしまったことを完全に忘却して、 自分ではなく真理奈のことを祐介だと認識している。 (ふっふっふ、暗示はばっちり効いてるみたいね。でも、これだけじゃ物足りないわ。 いつもムカつく中川のやつを、この機会にとことん貶めてやる) 真理奈は邪悪な思惑を隠し、話したいことがあるといって祐介を廊下に連れ出した。 普段は真理奈の怪しい誘いになど決して乗らない彼だが、今は違う。 ひとのいい笑顔を浮かべて自分についてくる祐介を、真理奈は内心であざ笑った。 07-253 :真理奈のいたずら・2 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/31(火) 20 19 29.13 ID Y+BX/ztu 「それで、話っていったい何? 中川君」 「ああ、うん。今から真理奈とエッチしようと思って。ねえ、いいでしょ?」 悪びれずに告げた言葉に、祐介は飛び上がる。 「エ、エッチ !? あたしが中川君と !? なんでそんなことをしなきゃいけないのよ! 第一、中川君には瑞希っていう彼女がいるじゃない! そんなのおかしいよ!」 「おかしくないわよ。だって、真理奈はあたしのセックスフレンドでしょ。 あたしがエッチしたくなったら、いつでも相手をしてくれるって約束したじゃん。 ひょっとして忘れちゃったの?」 と言いながら、真理奈は祐介の目をのぞき込み、強力な催眠術をかける。 見る間に祐介の顔から表情が消えていき、放心状態となった。 「あたしは中川君のセックスフレンド……」 それが唯一の真実であるかのように、祐介は自分の記憶を改竄していく。 間もなく我に返った祐介は、 「ごめんね、中川君。そういえばあたし、中川君のセックスフレンドだったよね。 すっかり忘れてたわ。本当にごめんなさい」 と、真理奈が望んだ通りの回答を口にした。洗脳成功だ。 「別にいいわ。こうして思い出してくれたんだから問題なしよ」 真理奈はにやりと笑って祐介を抱き寄せ、自分のものだった女体の柔らかさを楽しんだ。 「あ、中川君のがあたしの脚に当たってる……」 真理奈の股間では、祐介から奪った男性器が見事に盛り上がり、 赤面する彼の脚に押し当てられていた。 「ふふふ、真理奈とエッチすることを考えてたら、こんなになっちゃった。 あんたのせいだから、責任とってあんたの体で慰めてよ」 「う、うん。中川君がしたいのなら、いいよ……」 「いいも何も、それはあたしの体なんだけどね。まあ、とにかくついて来なさい」 真理奈は処女のように恥じらう祐介を男子トイレに連れ込み、二人で奥の個室に入った。 休み時間は短いが、次の授業には出席する気がないので時間はたっぷりある。 完全に調子に乗った真理奈は、まずは自分が便座に腰かけると、 その膝の上に祐介を座らせ、制服の上から彼の胸を丹念に揉んでやった。 「ふふっ、真理奈の胸、すごいデカパイね。たぷんたぷんじゃない」 元は自分の胸についていた乳房であるが、こうして他人のものとして触れると やはり気分が違うものだ。真理奈は鼻息荒く、祐介の乳を揉みしだく。 「ああん、駄目っ。こんないやらしい揉み方、変になっちゃう……」 (うひいっ、あの中川がクネクネして悶えてる。なんておぞましいの) 自分のやったこととはいえ、クラスメイトの男子生徒が胸を揉まれて喘ぐ姿に 思わず鳥肌が立ってしまう。自分まで変態になったような錯覚を覚えた。 だが、真理奈は祐介を嬲るのをやめない。 彼の制服の中に右手を差し入れ、ブラジャー越しに乳房を愛撫しつつ、 もう片方の手をスカートの中に忍ばせてショーツを撫で回した。 「ああっ、そ、そんなところ──あんっ、はあんっ」 女体の性感帯を刺激され、祐介は甘い声をあげ続ける。 (しっかし中川のやつ、マジで女の子みたいな声を出すわねー。 瑞希にこの声を聞かせたらどうなるかしら? ふふふっ、面白そう) あとで試してみてもいいかもしれない。 真理奈は祐介を両手の指で執拗に責めたて、十七歳の少女の体を高ぶらせた。 何しろ、本来は自分の肉体だ。どうすれば感じるかは熟知している。 乳房と女性器を中心に体じゅうを隅々まで愛撫し、少年の心に女の官能を植えつけた。 07-254 :真理奈のいたずら・2 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/31(火) 20 20 59.87 ID Y+BX/ztu 「ああっ、すごいっ。あたし、どうにかなっちゃいそう。ああっ、あんっ、ああんっ」 「あらあら、あんまり大きな声を出すと、外に聞こえちゃうわよ。 それとも皆に聞いてほしいのかしら? 変態さんね、真理奈ちゃんは」 嘲るように言って首筋に舌を這わせると、祐介の体がびくんと震える。 「だ、駄目っ。そんな意地悪、言わないで……」 発情してよだれを垂らす少年の顔は、まるで本物の女のように艶かしい。 (ふふっ、あのムカつく中川が、こんないやらしい顔をするんだ。 何だかあたしまで興奮してきちゃったわ。あー、こいつを犯してやりたいっ) 首から下が男性の体になっているからか、こうして柔らかい女体を抱いていると、 早く合体したいという本能的な衝動が湧きあがってきて、下腹部が熱を帯びる。 既に真理奈の股間では、いきりたった一物がテントのように盛り上がっていた。 生々しい牡の欲望に理性を奪われ、真理奈の呼吸はますます荒くなっていく。 「もう我慢できない。ねえ、真理奈の中にチンポ入れさせてよ。 あたし、あんたとセックスしたくてしょうがないのよ」 真理奈は便座から腰を浮かせて、丸みを帯びた祐介のヒップを男性器の先端で小突いた。 「う、うん、わかった。中川君がしたいんだったら、いいよ……」 祐介は壁に手をつき、後ろの真理奈に見せつけるような姿勢で尻を突き出す。 蜜にまみれたショーツを乱暴にずり下ろすと、ひくひく蠢く女の秘所が露になった。 真理奈にとっては見慣れた自分の体だが、今はひどく欲情をそそられる。 ファスナーを開く手つきももどかしく、真理奈はズボンの中から 勃起したペニスを引っ張り出し、祐介の女性器にあてがった。 (あたし、今から自分の体とエッチするんだ。考えてみたらすごい話よね。 クラスメイトの男子と体を取り替えてセックスするなんて、ドキドキする……) 倒錯した興奮が真理奈を高揚させる。粘膜の触れ合う感触に、背筋がゾクゾクと震えた。 「中川君、いいよ。きて……」 祐介は肩越しに真理奈を見つめて、自分のものだった陰茎を乞い願う。 首から下を入れ替えた状態での奇怪極まりない性行為だが、今の祐介にとって、 これは仲のいい友人とのありふれたスキンシップの一環でしかない。 真理奈は己の操り人形に成り下がった哀れな少年をせせら笑うと、 腰を一気に押し出し、濡れそぼった祐介の肉壷を貫いた。 「ああっ、中川君のが入ってくる……あんっ、熱いっ、ああんっ」 祐介の口から淫らな喘ぎ声が漏れ出し、トイレの個室を妖しい空気で包み込む。 (ふん、よく言うわ。これはあんたのチンポでしょうに) 真理奈は呆れながらも体を祐介にぐりぐりと押しつけ、自らの膣内の感触を味わった。 潤んだ肉ひだがぎっちりとペニスを挟み込み、腰を動かすたびに 粘膜同士がこすれ合って、とろけるような快楽をもたらしてくれる。 これが男の体でするセックス──獣のような格好で女を犯す今の自分に、 真理奈は言いようのない興奮を覚えた。 「すごい。あんたのおまんこ、あたしのチンポに吸いついてくるみたい。 ああ、なんて気持ちがいいの。ホントにいやらしい体だわ」 「あんっ、や、やめて。そんなこと言わないで。いやっ、いやあっ」 言葉と体の両方で嬲られ、祐介は泣きながら首を振った。 いつも自分と口喧嘩をしている冷淡な少年とは思えない女々しい態度に、 真理奈は自分が手に入れた魔力の恐ろしさを改めて実感する。 (最高ね。この力があれば、何でもあたしの思いのままよ) 悪魔に魂を売ってよかったと、つくづく思う。 07-255 :真理奈のいたずら・2 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/31(火) 20 23 28.75 ID Y+BX/ztu 真理奈が黒魔術に手を染めたのは、今から少し前のことだ。 それまで悪魔や魔術、神仏、魂といった非科学的な概念には まったく縁が無く、信じてもいなかった真理奈だが、 ひょんなことから偶然、悪魔を名乗る存在に出会い、 科学的な論理では絶対に説明不可能な現象の数々を見せつけられ、宗旨替えをした。 「今まで神様も悪魔も、ただの迷信でくだらないものだって思ってた。 でも、ホントはそうじゃない。あたしたちの住んでる世の中には 神様がいて、悪魔がいて、他にも仏様とか精霊とかがいっぱいいて、 あたしたち人間もその気になれば魔法や神通力が使えるようになっちゃう。 世の中には、まだあたしが知らない面白いことがいっぱい隠れてるんだ!」 まさしく、目から鱗が落ちる思いだった。 生来、好奇心が旺盛で退屈を嫌い、他人の厄介ごとを喜ぶ性格の真理奈である。 悪魔の力を借りて自分も黒魔術を使えるようになりたい、と思うのは当然のことだった。 「もしも魔法が使えるようになったら、毎日がすっごく楽しくなりそうね。 こっそりイタズラしまくったり、ひとをパシらせたりしてやりたい放題できるじゃない。 よーし、あたしはこれから魔法使いになって、いい思いをしまくるぞー!」 と決意し、悪魔に魂を売って魔術を行使する力を授かるという契約を交わした。 こうして真理奈は、他人の肉体と精神を自由自在に操る力を獲得したのである。 とはいえ、まだ力を身につけて間もない真理奈には、自分がどれだけのことをできるのか、 どんなことをすれば面白いか、あまりよくわかっていない。全てが手探り状態だ。 とりあえず、今は周りの人間を片っ端から実験台にすることで 手に入れた魔力の使い方に慣れるのがいいように思える。 その記念すべき第一号となるのが、ここにいるクラスメイトの祐介だった。 真理奈と首から下の肉体を無理やり交換させられ、 さらに自分が加藤真理奈だと誤った認識を与えられ、 そのうえ真理奈のセックスフレンドとしてトイレで自ら股を開かされる。 救いようがないほどの屈辱を受けても、嘆くことさえできずに嬉しがる 哀れな少年を勝手気ままにもてあそび、真理奈はひたすら腰を振り続けた。 「ひいっ。そ、そんなに激しくしないで……ひいいっ、だめぇっ」 膣内を深々とえぐられ、ぽろぽろ涙を流して許しを乞う祐介。 だが、その柔弱な態度がかえって真理奈の嗜虐心をそそる。 「ふふっ、いい締めつけだわ。エッチなお汁が溢れ出して、お股がびちゃびちゃに なってるじゃない。あんたって、ホントにスケベな女の子よねえ」 真理奈はぱん、ぱんと叩きつけるように腰を押しつけ、祐介の中を激しく往復した。 苛めれば苛めるほど、祐介の膣はきゅんと締まって真理奈のペニスを放そうとしない。 彼が自分の代わりに牝として感じている確かな証拠に、真理奈は笑いを抑えられなくなる。 「あーあ、がっかりしたわ。加藤真理奈さんはもっと真面目な女の子だと 思ってたのに、こんな風に犯されて喜ぶマゾのセックスジャンキーだったなんて」 「ち、違う。あたしはそんな変態じゃない……」 「何が違うの? あんた、ホントはすごいドMなんでしょう。 授業中に男子トイレで乱暴に犯されて、気持ちいいんでしょう。 いい加減に認めなさいよ。自分が変態のM女だってことを」 真理奈は祐介の片脚を持ち上げ、不安定な姿勢で局部をきつく密着させた。 祐介はさらに声を高くして喘ぎ、真理奈のペニスをいっそう強く締めつける。 日ごろ不仲な男女の性器が、今は恋人同士のようにぴったり結合して、 肉体を取り替えた真理奈と祐介とを、じわじわ絶頂へと押し上げていく。 07-256 :真理奈のいたずら・2 ◆cW8I9jdrzY :2011/05/31(火) 20 25 14.58 ID Y+BX/ztu 「だ、駄目ぇっ。あたし、イっちゃう。イ、イクっ、うおおおっ」 祐介が叫ぶと同時に膣内が一気に収縮し、射精を求めてきた。 陰茎が搾り取られる心地よい感覚に、真理奈も我慢の限界を迎える。 「ああっ、あたしもイクわ。祐介っ、出るっ!」 熱い塊が尿道口から噴き出し、祐介の胎内へとぶちまけられた。 小便にも似て異なる解放感が真理奈の背筋を駆け抜け、 至上の快楽となって十七歳の少女の心をとりこにする。 (ああっ、あたし、射精してるんだ。それも自分の体の中に。 あたしの体、中川の体に犯されて中出しされてるんだ……) 異性の肉体で迎える絶頂の余韻と、自らの体を汚す背徳の興奮。あまりの愉悦に、 真理奈は熱に浮かされたようにぼうっとして、しばらく何も考えられなかった。 祐介も彼女と同じような表情を浮かべて床にへたり込み、 肩で息をしながら、無言で膣内射精の感触を噛み締めている。 女体のオーガズムを心ゆくまで味わって、少年の火照った横顔はとても満足げに見えた。 「ふう……すっごく気持ちよかったわ。あんたはどう?」 萎えたペニスを引き抜くと、祐介の陰部から白みを帯びた液体がとろりとこぼれる。 牡と牝の臭いが混じり合って、むせ返るような臭気が辺りにたちこめた。 「う、うん。その……とっても気持ちよかった。意識が飛んじゃうくらい」 「そう、それはよかったわねー。ところであんた、 実は自分の体があたしと入れ替わってるってこと、思い出せない?」 「え、何の話?」 きょとんとする祐介の顔をのぞき込んで、真理奈は彼にかけた暗示を唐突に解除した。 たちまち祐介の表情に驚きが満ち、プロポーション抜群の肢体がわなわなと震えだす。 自分が今まで真理奈を何をされていたのか、ようやく全てを思い出したのだ。 落ち武者のように首を斬り落とされ、その首を真理奈のものとすげ替えられたこと。 女の肉体でいることに違和感を覚えないよう、強烈な暗示をかけられたこと。 そして入れ替わった状態のまま真理奈に犯され、心も体も辱められたこと。 「ど、どうして俺はあんなことを……お、俺、どうなっちまったんだよおっ !?」 今まで晒した醜態を思い起こして赤くなったり青くなったりする祐介の顔を 横目で見やり、真理奈は腹をかかえて笑い出す。 「うひゃひゃひゃっ! やっと今の状況が飲み込めたみたいね。あー、お腹が痛いわ。 男のくせに、チンポでおまんこぐりぐりされて、 『気持ちよすぎて意識が飛んじゃうっ』だってさ。あんた、マジで変態じゃん。 おー、恥ずかしいこと。あとで瑞希に教えてやろうっと」 「お、お前っ、よくも俺にあんなことをさせやがって……うげえっ、気持ち悪い。 と、とにかく俺の体を返せっ! 元に戻せ! 今すぐっ!」 祐介は血の涙を流して真理奈を怒鳴りつけたが、真理奈はその場で立ち上がると、 「いやよ。あんたには、このままもうしばらくあたしの体で 恥ずかしい思いをしてもらわないといけないんだから。 この体はもうちょっと借りとくわ。それじゃあね」 といって、祐介を置いてトイレをあとにした。 「こ、こら、待てぇっ! お、俺の体を返せぇっ!」 背後から祐介の叫び声が聞こえてきたが、追いかけてくる気配はない。 おそらく、激しいセックスのあとで腰が抜けてしまい、立てないのだろう。 真理奈にとっては肉体的にも精神的にも満たされる、最高のひとときだった。 (あー、楽しい。中川をオモチャにするのがこんなに面白いなんて思わなかったわ。 さーてっと、次は誰をもてあそんでやろうかしら……) 授業中の静かな廊下を鼻唄をうたって歩きながら、真理奈は自分が手に入れた 魔法の力でもっと面白いことはできないだろうかと、新たな標的を探すのだった。 07-261 :真理奈のいたずら・3 ◆cW8I9jdrzY :2011/06/15(水) 00 44 19.95 ID BWnvDMSq Part.03 次の獲物を探して廊下を徘徊する真理奈の視界を、ひとりの女が横切った。 生徒ではない。スーツを身につけた若い教師だ。 (あっ、升田じゃない。あいつ、こんなところで何やってんのかしら) 真理奈は廊下の角に隠れて、顔見知りの女教師の背中を観察した。 彼女は世界史を担当している升田という教師だ。 厳しい授業をすることで知られ、出来の悪い学生を容赦なく怒鳴りつけることから、 真理奈のような不真面目な生徒にとっては煙たい存在だった。 見たところ、升田は職員室へと向かっているようだ。 今はまだ授業中だが、この時間は受け持ちの授業がないのだろう。 ぴんと背筋を伸ばして急ぎ足で歩を進める姿は、仕事一筋のキャリアウーマンを思わせる。 真理奈はにやけ笑いを浮かべると、急いで彼女のあとをついていった。 日頃から疎ましく思っている女教師を、次の標的に定めたのだ。 (ふふっ、ちょうどいいわ。いつもあいつに怒られてばっかりでムカつくのよね。 中川の次は、あのオバサンに一泡吹かせてやる) 「升田先生!」 升田は真理奈の声に振り返り、細い眼鏡の奥から冷ややかな視線を投げかけてきた。 「私に何か用? あなたは……たしか、二年の中川君だったかしら」 「はい、中川祐介です」 真理奈は神妙な面持ちでうなずいた。今の彼女は首から下の体こそ 祐介のものと入れ替わっているが、顔や髪型は一切変わっていない。 本来ならば祐介に見えるはずはないのだが、 魔法の力で周囲の人間の認識を操作しているため、 目の前の女教師も真理奈のことを祐介と信じて疑わなかった。 「呼び止めてすいません。折り入って、升田先生に相談したいことがあるんです」 「相談? 私が担当してる世界史の勉強についてかしら」 「いいえ、違います」真理奈は首を振った。 「実は私生活の悩みを、先生に聞いてもらいたくて」 升田の眉がぴくりと跳ねる。 「どういうこと? そういうお話は、まず担任の先生に すべきじゃないかと思うんだけど」 升田の表情には、唐突な話に対する警戒とわずらわしさが見てとれた。 ろくに話をしたこともない男子生徒に突然こんな相談を 持ちかけられれば、身構えるのも無理はない。 真理奈はそんな升田の目をのぞき込んで、魔法の力を行使した。 見る間に女教師の瞳が濁り、表情から意思が失われる。 呆然として唇を半開きにする升田の肩を、 真理奈は馴れ馴れしく両手でつかんで笑いかけた。 「やだなあ。升田先生は普段から、生徒の相談には気軽に乗ってくれるじゃないですか。 どこのクラスの生徒でも、それがどんな内容でもね。そうでしょう?」 「え? そ、そうね……そういえば、そうだったわね。 それで、中川君は私に何を相談したいの?」 升田はぼんやりした顔で真理奈に訊ねた。 全てが自分の思い通りになっていることに、真理奈は心の中でほくそ笑む。 「こんなところじゃ話せません。どこか二人っきりになれる場所はないですか? 内緒の話なんです」 「そう、じゃあ生徒指導室に行きましょうか。 多分、今の時間は誰も使ってないと思うわ」 升田は真理奈を先導して歩きだした。この時点で既に自分が 真理奈の玩具にされつつあることに、愚かな女教師はまったく気づいていない。 07-262 :真理奈のいたずら・3 ◆cW8I9jdrzY :2011/06/15(水) 00 45 08.94 ID BWnvDMSq 真理奈は生徒指導室に足を踏み入れ、机を挟んで升田と向かい合う形で椅子に座った。 ただでさえ狭い部屋なのに加えて、壁際に進学資料の詰まった棚が並んでいるので、 ますますスペースに余裕がない。息の詰まりそうな場所だ。 「さあ、中川君。先生に相談したいことがあるんでしょう。聞かせてくれるかしら」 升田は眼鏡のフレームを指で押し上げ、真理奈に質問を促した。 「ああ、うん。まあ、大したことじゃないんだけどね。 先生、ちょっとの間、目をつぶっててくれる?」 真理奈は急にくだけた口調で言った。普段の升田ならば生徒の失礼な物言いに 激怒したかもしれないが、無意識のうちに真理奈に服従させられている今の彼女は、 特に気分を害するでもなく言われた通りに目を閉じ、真理奈の次の指示を待つ。 「ええ、目をつぶったわ。これでいい?」 「オッケー、オッケー。それじゃあ、あんたの体をもらうわね」 真理奈は身を乗り出し、女教師のショートヘアの髪を無礼にもわしづかみにすると、 おもむろに彼女の頭部を胴体から引きちぎった。 手の中に収まった升田の生首の、ぽかんとした表情が愉快だ。 「ふん、ちょろいもんね。それじゃあ、今度はあたしの頭をこいつの体にくっつけて……」 祐介のときと同じようにして自分の首を引っこ抜き、首の無い升田の体にすげかえる。 たちまち頭と体がくっついて、真理奈は女教師の肉体を我が物としていた。 真理奈は普段から年上に見られがちな顔立ちをしているため、 首から下が濃紺のスーツを着た大人の女性の体になっても、さほど違和感はない。 「ふふっ、うまくいったわ。代わりにあんたには、中川の体をあげるわね」 真理奈はどす黒い邪悪な笑みを浮かべると、 今度は机の上で唖然としている升田の首を、祐介の首無しの体に接着した。 これで女教師の顔を持つ、奇妙な男子生徒のできあがりだ。 「な、何? 一体、何が起きたの」 升田は変貌した自分の姿にまじまじと見入り、すくみあがった。 男子高校生の制服を着た、たくましい男の体。 祐介はそれほど筋肉質というわけではないが、それでも升田の体と比べると 腕も脚もがっしりしていて、骨格がまるで違う。 それでいて、首から上にあるのは二十代女性の細面なのだから、ひどく異様な姿だった。 「何なのこれは……どうして私がこんな格好をしているの」 「面白いでしょ、升田先生。あんたの首から下は、男の体になっちゃったのよ」 真理奈は悠然と机に肘をついて、取り乱す升田をあざ笑った。 実に気分がいい。日頃の憂さが晴れるようだった。 「男の体? どういうこと。一体何がどうなっているの。 私と同じ格好をしてるあなたは誰なの? 今まで中川君がここにいたはずなのに……」 首をすげ替えたのと同時に、升田にかけていた魔術は解除したため、 今の彼女は真理奈の姿をありのままに認識しているはずだ。 祐介だと思っていた相手がまったく別人の女生徒だったこと、 そして制服のセーラー服ではなく、自分が着ていたはずの スーツを身につけている真理奈に、升田は戸惑いを隠せない。 「あら。あたしの顔、忘れちゃったの? あたしは二年の加藤真理奈。 あんたの授業でいっつもいびられてばかりだから、ストレスたまってんのよねー」 「か、加藤さんなの? どうしてあなたが私の服を着ているの。 それに、私はどうしてこんな格好を……」 升田は自分の服装と真理奈の格好を見比べ、目を白黒させている。 まだ状況を把握していないのかと、真理奈は呆れ果てた。 07-263 :真理奈のいたずら・3 ◆cW8I9jdrzY :2011/06/15(水) 00 46 19.53 ID BWnvDMSq 「まだわかんないの? 先生のくせに、結構頭が鈍いのね。 あんたもあたしも、ただ服を着替えただけじゃないわ。 あんたの体の首から下だけを、このあたしがいただいたのよ。 そんであんたの首から下は、うちのクラスの男子生徒の体になっちゃってるわけ。 試しにズボンの中を確かめてみなさいよ。ちゃんとチンポがついてるから」 真理奈に言われて、升田は不審げな表情で自らの下半身に触れる。 狭い生徒指導室にかん高い悲鳴が響きわたった。 「きゃあああっ !? な、何かついてる。何なのこれはっ !?」 「やっとわかった? 自分の体が男になってるって」 「私が男? そんな……信じられないわ」 真っ青になって震える升田の姿からは、もはや日頃の冷徹さも教師の威厳も感じられない。 子供のように怯えて、惨めなありさまだった。 それとは対照的に、真理奈はうきうきした気分で自分が着ている服をもてあそび、 彼女から奪った新たな肉体を点検している。 十七歳の自分の体に比べると、多少年をとっているのは否めないが、決して悪くはない。 「信じる、信じないじゃなくて、目の前の現実を受け入れなさいよ。 ほら、これはあんたの体でしょ?」 真理奈は自分が着ているスーツの前をはだけて、自分の体を本来の持ち主に見せつけた。 白いシャツのボタンを外すと、飾り気のないベージュのブラジャーが顔を出した。 胸の大きさは真理奈自身のものと同じぐらいだろうか。 両手で包み込むように握ると、吸いつくような感触が返ってくる。 「そ、それが私の体? 確かに服も下着も、今日私が着てきたものだけれど…… 冗談よね。体を取り替えるなんて、できるわけがないわ」 「それができちゃうのよねー。 今のあたしは魔法使いみたいなもんだからさ。何だってできちゃうのよ。 あら、地味なパンツをはいてるのね。さすが、お堅い升田先生だわ」 真理奈はスカートも脱ぎ捨て、ブラジャーと同じ色のショーツを指して笑う。 肌色のストッキングに覆われた艶かしい脚も、それに触れる細長い指も、 いずれも目の前の女教師から無理やり奪い取ったものだった。 升田もようやく何が起こっているのか、おぼろげながら理解しはじめたようで、 「や、やめてっ。よくわからないけど、それは私の体なんでしょう? 早く元に戻してちょうだいっ」 と声を荒げて、真理奈を押さえつけようとする。 「えー? だって、今はあたしの体なんだから、何をしたっていいじゃない。 代わりにあんたには中川の体をあげたでしょ。せっかく男になれたんだから、 もうちょっと喜びなさいよ。こんな体験、滅多にできないわよ」 「だ、駄目よ! 私の体を返して!」 「うるさいわねえ……じっとしててくれない?」 真理奈は面倒くさそうに言って、升田を鋭い視線でにらみつけた。 ひきつるような悲鳴があがり、升田の体はその場に縫いつけられたように 固まってしまう。魔術で動きを封じたのだ。 07-264 :真理奈のいたずら・3 ◆cW8I9jdrzY :2011/06/15(水) 00 47 18.87 ID BWnvDMSq 「う、動けない。どうして? 私の体、どうなってしまったの……」 「しばらくの間、大人しくしてて。今のあんたは男の体なんだから、 取っ組み合いなんてしたらあたしが負けるに決まってるじゃない。じっとしててよ」 つっ立ったまま動けないでいる升田の頬を、真理奈が指でつうっと撫でる。 激しい屈辱と怒りに女教師の顔が歪んだが、もはやどうすることもできなかった。 「あなた、どうしてこんなことをするの。私に何か恨みでもあるの」 「恨み? まあ、あんたには前からムカついてたけどさ。 こないだのテストで、あたしに赤点をつけたわよね。ひどい先生だと思ったわ」 「そ、それは、あなたがそんな点数をとったからじゃない。とんだ逆恨みよ」 「はいはい。お説教はどうでもいいから、ちょっと黙ってて」 真理奈はぴしゃりと言って升田の言葉を遮り、彼女のズボンのファスナーに手をかけた。 はっと息をのむ気配がしたが、いささかも気にせずファスナーを下ろす。 「でもね、あたしがこういうことをしてるのは、別にあんたに仕返ししたいからじゃないの。 単に面白いからよ。魔法の力でこうやって他人をオモチャにするのって、 すっごく楽しいの。あんたみたいな堅物は、特にいじりがいがありそうだわ。ふふふ」 真理奈は唇の端をにいっと吊り上げると、 升田のズボンの中に手を突っ込んで、中をごそごそかき回した。 だらりと萎えた肉の管──黒い陰毛を生やした牡の生殖器が姿を見せた。 「ほーら、これがあんたのおちんちんよ。今のあんたは男の子だから、 ここにはこういうものがついてるの。ほらほら、しっかり見なさいよ」 真理奈に命令され、升田はおそるおそる自らの股間を見下ろした。 ズボンの中から生えているのは、まぎれもなく女の体には存在しないはずの器官だ。 先端部が横に張り出した茸のような形の、赤黒い肉の塊。 それがペニスと呼ばれるものだと、升田も理解したのだろう。 怒りで赤くなっていた顔から、さあっと血の気が引いていった。 「ひいっ。な、何なのこれはっ」 升田は恐怖に震えて、哀れなほどのうろたえようだ。 「あはは、いい顔してるじゃない。どう? あんたの首から下が男の体になってるって、これで実感してもらえたかしら」 真理奈は陰茎の中ほどを指でつまみ、これが作り物ではなく 血の通った人体の一部であることを升田に思い知らせた。 「ど、どうして。どうして私の体にこんなものがついているのっ」 「どうしてって、そりゃあ、今のあんたが男だからに決まってるじゃない。 ねえ、男子生徒の升田君。こんないやらしいものを丸出しにして、どうしたのかしら。 ひょっとして、先生にしごいてほしいの? いけない子ね、まったく」 おどけた調子で言いながら、真理奈は手の中の男性器を揉みしだいた。 淫らな手つきに触発されて、たちどころに若い牡の勃起が始まる。 「な、何なの、この感触は……ああっ、や、やめて。触らないでっ」 「あらあら、立っちゃった。いやらしいわねー、あんた。 自分の手にいじくられてチンポを勃起させちゃうなんて、変態なんじゃない?」 「いやあっ、こんなのいやあっ」 未知の感覚に升田は悶えたが、今の彼女には指一本動かすことさえ叶わない。 悲鳴をあげて嫌悪をあらわにする升田の意思とは裏腹に、男子高校生のペニスは 女教師の指づかいに魅了されて、ますます硬度を増していく。 07-265 :真理奈のいたずら・3 ◆cW8I9jdrzY :2011/06/15(水) 00 48 02.75 ID BWnvDMSq 「ふふふ、なかなかご立派じゃない。見なさいよ、ほら。これがあんたのチンポよ。 このいやらしいブツが、あんたのアソコから生えてるのよ」 「あ、あああ……嘘、こんなの嘘よ……」 目尻に涙を浮かべた升田の瞳に、今や彼女のものとなった男性器が映っていた。 腹側にそり返った幹が凶悪なまでの威容を誇る、若々しいペニスだ。 指でその先端を軽く撫でると、先走りの液体が糸を引いてねっとり絡みついてくる。 物言わぬ肉の塊が、更なる刺激を欲しているように真理奈には思えた。 「あんたは嫌がってるみたいだけど、チンポは正直ね。ぴくぴく脈打って喜んでるわ」 幹をぐっと握り、指先で亀頭のエラをひっかくようにこすりたてると、 尿道口から新たな蜜が湧き出し、とろりと床にしたたり落ちた。 「いやっ。や、やめてぇっ。ああっ、あああっ」 升田の青ざめた顔に暗い絶望が広がり、真理奈は笑いを抑えることができない。 (ざまあ見ろ。先生だからって、偉そうに威張り散らしてるからよ) 日頃から生徒たちを怒鳴りつけている尊大な女教師が、 今は声をあげて泣きながら、迫りくる射精の欲求に耐えかねている。 なんて素晴らしいのだろう。最高の気分だった。 「あはははっ! 射精したいのなら、いつでも出していいのよ。 今のあんたは男の体なんだから、ここからドピュって白いのが出てくるの。 くっさいザーメンをまき散らす女教師っていうのも、結構そそるわよねー」 「いやあああ……お願い、やめてぇ……」 升田はぽろぽろ涙をこぼして、真理奈に許しを乞う。 完全に教師と生徒の立場が逆転していた。 無論、そのような懇願を真理奈が聞き入れるはずもなく、 彼女は手中の肉の棒をしゅっ、しゅっとリズミカルにしごき続ける。 真理奈の細い指が蠢くたび、升田のペニスはぴくぴくと痙攣して膨張し、 着実に射精の準備を整えていった。 「とってもいい反応だわ。あんた、よっぽど中川の体が気に入ったみたいね。 お望みなら、ずっとその体のままでも構わないのよ? 身も心もスケベな男子高校生になって、同級生の女の子とか女の先生の体を見て チンポを勃起させちゃうような生活を送るのも、面白いと思わない?」 「い、いやっ、いやあっ。元に、元に戻してぇ……」 泣きわめく升田の腰が小刻みに振動する。射精は間もなくだ。 そり返った陰茎の先端から粘つく液体が漏れ出し、真理奈の指を汚した。 07-266 :真理奈のいたずら・3 ◆cW8I9jdrzY :2011/06/15(水) 00 48 41.80 ID BWnvDMSq 「そら、遠慮しないで出しちゃいなさい。 あんたがドロドロのザーメンを噴き出すところ、じっくり見ててあげるから」 「だ、駄目っ、あああっ。な、何か出る。いやあああっ!」 執拗な手淫の刺激に、ついに升田のペニスから熱い精がほとばしった。 先ほど射精したばかりだというのに、若くたくましい肉棒は勢いよく樹液を噴き出し、 ストイックな女教師の心に強烈な牡の快感を刻みつける。 精を放った満足感に升田の頬が緩むのを、真理奈は見逃さなかった。 異性の肉体で絶頂を迎える喜びを、この女は知ってしまったのだ。 「ふふふ、いっぱい出たわね。いやらしい顔をしちゃって、困った子だわ」 「あ、あああ……で、出た。いっぱい出ちゃった……」 うわごとのようにつぶやいて、升田はその場に倒れ込む。 あまりの体験に理性が耐え切れず、気絶してしまったのだろう。 なんと情けないことかと、真理奈は嘲笑せずにはいられなかった。 「うふふふ……これであたしのオモチャになったのは二人ね。楽しい、楽しすぎる。 他人を好き勝手にもてあそぶって、なんて素晴らしいのかしら。もうやめられないわ!」 無力な人間を辱めて悦に入っていると、まるで本物の悪魔になったような気がする。 いや、強大な力を手にした自分は、既に人類の範疇を確実に超えつつある。 この魔力の扱い方を理解して、自在に行使するすべを会得すれば、 じきに本物の悪魔の仲間入りをすることだってできるかもしれない。 そのためには、もっと経験を積んで黒魔術に熟達する必要があった。 「見てなさい。どいつもこいつも、皆あたしのオモチャにしてやるわ。 あたしの視界に入った人間は、全てあたしのお人形さんになるのよ。 おーっほっほっほ! おほほほほっ、うひゃひゃひゃひゃっ!」 真理奈は床に横たわっているショートヘアの男子生徒を見下ろして、 不気味な高笑いをあげ続けた。 07-281 :真理奈のいたずら・4 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/09(土) 18 12 06.66 ID upp8jhur Part.04 祐介は暗澹たる思いで、ひとり廊下をさまよっていた。 「ううう……くそ、なんで俺がこんな目に遭わないといけないんだ。くそ、くそぉ……」 泣き言を口にしながら、下を向いて現在の自分の姿をもう一度確かめる。 視線の先には夏物の白いセーラー服を着た、長身の女の体があった。 わずかに日焼けした細い腕と、形の整った繊細な手、長く綺麗な楕円形の爪。 ファッション誌のモデルでも通用しそうな、すらりとした魅惑的な両脚。 腰の位置はあくまで高く、短い丈のプリーツスカートの裾からのぞく 太腿の美しさを、よりいっそう強調している。 そして上半身には、細身の体格にはやや不釣り合いに思えるくらいに大きな乳房。 その全てが今の祐介の体の一部だった。 そう、祐介は女性の体になっていた。顔や髪型こそまったく変わっていないが、 首から下に繋がっている身体は、クラスメイトの女子である加藤真理奈のものなのだ。 こんなことになってしまったのも、真理奈によって強制的に首をすげ替えられたからだ。 「畜生……加藤のやつ、とんでもないことをしやがって。絶対に許さねえ。 早くあいつを見つけて、俺の体を取り返してやる」 祐介は硬く拳を握りしめた。 こうでもして自分に活を入れないと、参ってしまいそうだった。 まるで悪夢を見ているようだが、これはまぎれもなく現実に起きていることだ。 真理奈が自慢げに語っていたところによると、今の彼女には 人間の体のパーツを人形のように外したり取り替えたり、さらには 他人の思考や記憶を思い通りに操作したりすることができるらしい。 なんでも、悪魔から教わった黒魔術の力だそうだ。 この科学万能の時代に悪魔だの黒魔術だの、にわかには信じがたい話だが、 祐介自身がその効果を身をもって体験させられているのだから、 否定しても今の状況が好転するわけではない。 真理奈が怪しげな魔法を使えるらしいということは、祐介も認めざるをえなかった。 とにかく、全ての元凶である彼女を急いで見つけて、 元の体に戻してもらわなくてはならない。 いくら真理奈の体が魅力的なスタイルを誇っていようと、 このまま女の姿でいるのはまっぴらだ。早く自分の体を取り戻さなくては。 真理奈は祐介と自分の首をすげ替えたあと、 彼を放置して逃走してしまい、以後の行方はようとしてしれない。 おそらく学校の外には出ていないはずだが、それも確信があるわけではなかった。 祐介は当てもなく校舎内をうろついて、必死で真理奈を捜した。 07-282 :真理奈のいたずら・4 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/09(土) 18 12 38.66 ID upp8jhur そのうちに、祐介は不審な人影を見つけた。 人の姿がほとんどない授業中の廊下に、誰かがじっと立っているのだ。 服装から察するに男子生徒のようだ。 ひょっとして真理奈だろうか。期待と不安を胸に近づくと、 その人物も祐介の方を振り返り、驚いた様子で目を見開いた。 「あら、あなたは……あなたは誰? 男の子なの、それとも女の子なの」 「ま、升田先生?」 祐介の前に現れたのは意外な人物だった。世界史担当の女教師、升田美佐。 まだ二十代後半と若いが厳格で、生真面目を絵に描いたような存在である。 祐介は日頃、升田が堅苦しいスーツを着ているところしか見たことがなかったが、 どういうわけか、今の彼女はいつものスーツ姿ではなく、 平素祐介が着ているものと同じ、男子生徒の制服を着ていた。 ショートヘアの黒髪に細い眼鏡をかけた知的な風貌と、 白い長袖シャツと黒のズボンという男物の格好が、非常にアンバランスだ。 しかも、升田の手足も胸板も、明らかにきゃしゃな女の体格ではない。 まるで男のようにたくましい体つきだった。 「升田先生、ど、どうしたんですか、その格好は……」 祐介はそう訊ねたが、胸の内は嫌な予感で一杯だった。 「こ、これは、その……」 升田は口ごもって質問に答えようとしない。 平生、はっきり物を言う彼女にしてはおかしな態度だ。 これは自分の予想が当たっていると、祐介は直感した。 「先生、ひょっとして……体、盗られちゃったんですか? 加藤真理奈のやつに首をすげ替えられて、体を持ち逃げされたんじゃ……」 「え? ど、どうしてそれを知っているの?」 慌てふためく升田。この女教師も、真理奈の犠牲になってしまったようだ。 升田の首が載っている男子生徒の体は、多分、祐介のものだろう。 真理奈は祐介の体を奪ったあと、それを升田の体と交換してしまったのだ。 「はあ……あいつ、なんてことをしやがったんだ。 俺だけじゃなくて先生まで巻き込むなんて。くそっ、信じられねえ!」 祐介は吐き捨て、手のひらを強く壁に叩きつけた。 借り物の細い手が痛みを訴えてきたが、今はそれどころではない。 ますます事態を複雑にする真理奈の行動に、激しい怒りを覚えた。 「ねえ、あなたは誰なの。女の子みたいに見えるけど、男の子なの?」 「俺は二年の中川です。先生が今使ってる体は、実は俺の体なんですよ。 ズボンのポケットの中に、俺の財布や携帯が入ってるでしょう?」 祐介の言葉に、升田は戸惑いつつもうなずく。 「え、ええ……確かにポケットの中には中川君の持ち物が入っていたわ。 でも、いったい何がどうなっているの? さっきまで中川君と一緒だったのに、 気がついたら中川君は加藤さんになっていて、しかも加藤さんは私の服を着ていて、 代わりに私がこの格好をしていたのよ。加藤さんは体を取り替えたって言っていたけど、 何がどうなっているのか、本当にさっぱりわからないわ。悪い夢でも見てるみたい……」 「そうですね。俺もよくわかってませんけど、とりあえず夢じゃないみたいですよ」 祐介は嘆息し、升田に知っている限りの事情を説明した。 これまでのいきさつと、今、自分が真理奈を探していること。 そして真理奈は升田の肉体を奪い、彼女になりすましているはずだということ。 07-283 :真理奈のいたずら・4 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/09(土) 18 13 31.74 ID upp8jhur 祐介が話している間、升田は黙って耳を傾けていたが、 説明が終わると不意に顔をしかめて、不快感と怒りをあらわにした。 「そうだったの。加藤さんったら、なんてことをしてくれたのかしら。 黒魔術だなんて言われても、まだ信じられないけど……」 「でも、全部本当のことです。俺があいつの体になって、あいつが先生の体になって、 先生が俺の体になってるんです。早くあいつを見つけて、元に戻らないと」 「そうね。中川君には悪いけど、やっぱりこんな体じゃ困るわ。 急いで加藤さんを見つけて、元に戻してもらいましょう」 二人はうなずきあって、一緒に真理奈を捜すことにした。 (それにしても……俺と加藤と升田先生が入れ替わってるなんて、複雑な状況だなあ) 今までろくに会話したことがなかった女教師と肩を並べて歩きながら、 祐介は自分の体が彼女に使われていることに、不思議な思いを抱いた。 「先生、俺の体になって違和感はないですか?」 ふと、気になったことを小声で質問してみる。 「もちろんあるわよ。男子の制服なんて着たことがないし、体つきも全然違うし…… でも、女の子になった中川君に比べたら、まだましじゃないかしら。 あなた、スカートなんてはいたことないでしょう?」 「そうですね。こんな格好、恥ずかしくて死にそうですよ……」 祐介は自分が着ている半袖のセーラー服を見下ろした。 異性の肉体になっているのがこの上なく恥ずかしく、自然と顔が赤くなる。 そんな祐介の態度が面白いのか、升田は表情を緩めて笑った。 「そんなに恥ずかしがることはないわ。結構可愛いわよ、今の中川君も。 元に戻らなくても、充分女の子としてやっていけそうね」 「先生……それ、シャレになってませんよ。マジで勘弁して下さい」 祐介はすねた顔で言い返した。日頃、生徒に厳しく口うるさい升田も、 ときには冗談を口にすることがあるのだと知って意外に思った。 「それにしても、加藤さんはどこに行ったのかしら。ちっとも姿を見かけないけれど」 「どこにいるんでしょうね。図書室か食堂か、それとも体育館か……」 「もしも学校の外だったら困るわね。もう捕まえられなくなるわ」 祐介も同感だった。このまま真理奈が学校を離れて 街に出ていってしまえば、もはや追いつくことは不可能だろう。 何としても、真理奈が校内にいる間に確保しなくてはならなかった。 捜索を急ぐ二人だが、真理奈はいっこうに姿を見せない。 「この辺りにはいないみたいです。体育館の方に行ってみましょうか」 「え、ええ……そうね」 升田はうなずいたが、少し様子がおかしい。 妙にもじもじして落ち着きがないように思えた。 「先生、どうかしましたか?」 「ええっと……実はその、お手洗いに行きたくなってきちゃったの。どうしようかしら……」 「ええっ、トイレ?」 祐介は面食らった。 「トイレか……そりゃ困ったな。大きい方ですか、それとも小さい方ですか」 「ち、小さい方……さっきから我慢してたんだけど、そろそろ駄目みたい」 内股になってそわそわする升田。祐介はどうしたものかと迷う。これが平常であれば、 「いってらっしゃい。どうぞごゆっくり」 とでも言えば済む話だが、今はそういうわけにもいかなかった。 というのも、升田の首から下は祐介の体である。この状態でトイレに行くとなれば、 自分の体の大事なところを余さず見られてしまう。 大して親しくもない女教師にそんなことをさせて 恥ずかしくないのか──祐介は自問したが、 だからといって升田にずっと小便を我慢させておくわけにもいかない。 07-284 :真理奈のいたずら・4 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/09(土) 18 14 06.87 ID upp8jhur わずかな逡巡のあと、祐介は諦めて升田を便所に行かせることにした。 「しょうがない。ここで待ってますから行ってきて下さい。 大丈夫ですよ。男の小便なんて簡単ですから。つまんで、出して、しまうだけです」 と説明したが、升田はまだ踏ん切りがつかないようで躊躇している。 「で、でも私、そんなことできないわ。 実はね、さっき体が入れ替わったとき、加藤さんにアソコを触られたの。 こんな風に言ったら中川君には悪いけど、本当に気持ち悪かったわ。 私の体に男の人のあれがついてるんだもの。こんな状態でお手洗いなんて……」 「ええっ? あいつ、そんなことまでしたんですか。くそ。加藤のやつ、最低だ」 祐介は怒りに肩を震わせた。真理奈のことだから、単に体を入れ替えただけではないと 思っていたが、やはり男の体になった升田を相手に、いかがわしい行為をしていたのだ。 升田はあえてそれ以上語らなかったが、真理奈に何をされたのかはだいたい察しがつく。 自分の体を奪ってもてあそぶ真理奈が本当に憎たらしかった。 「あいつめ、絶対に許さねえ。あとでボコボコにしてやる。 とにかく先生は、早くトイレに行ってきて下さい。そのあとで加藤を捜しましょう」 「で、でも……」 「今はあまり悠長なこと言ってられないでしょう。 トイレに行かないと、漏らしちゃうじゃないですか。 その体の持ち主の俺がいいって言ってるんですから、気にせずに行ってきて下さい」 祐介は升田の両肩に手を置き、前に押しやる。便所はすぐ近くにあった。 しかし、升田はなおも躊躇し、途方に暮れた顔でまごついている。 祐介はだんだん苛々しはじめ、繰り返して彼女を急かした。 すると、升田は彼の方を振り返り、意外なことを言い出した。 「じゃあ、中川君も一緒に来てくれない? 一緒にお手洗いに行って、 私が、その……おしっこするのを手伝ってくれないかしら」 「な、何だって !?」 祐介の驚愕の声が静かな廊下に響き渡った。 慌てて自分の口を押さえたが、幸いにも近くの教室から教師が顔を出すことはなかった。 「なんで俺がそこまでしないといけないんですか。 子供じゃないんだから、トイレくらいひとりで行ってきて下さいよ」 困惑して言い返すと、升田は訴えかけるような仕草で、自らの股間を指し示す。 「だ、だって、これに触りたくないんだもの。でも、中川君にとっては 自分のものだから、気持ち悪いなんて思わずに触れるでしょう? できたら私の代わりにこれを取り出して、 おしっこのあとパンツの中にしまうところまでやってくれない?」 「そりゃあ、確かに元は俺の体ですけど……でも、それはおかしいというか 妖しいというか、なんかいろんな意味で嫌なんですけど……」 升田の小便の世話をする自分の姿を想像して、祐介はげんなりした顔になった。 (俺が先生の股間からチンポを取り出して、小便させろっていうのか? 介護が必要な爺さんじゃあるまいし、そんなことできるかよ) 「ねえ、お願い。一緒にトイレまで来てよ」 「いやです。そんなことできません」 祐介は拒絶したが、升田の尿意はごく間近に迫っている。 手伝え、一人で行けの言い争いの末、根負けしたのは祐介の方だった。 「わかった、わかりましたよ。こんなところで漏らしても困るし、 俺が手伝えばいいんでしょう、手伝えば。くそっ」 しぶしぶ祐介は升田を男子トイレに連れていき、個室の洋式便器の前に立たせた。 座ったままで用を足すことも考えたが、それでは手伝うのが難しくなる。 祐介は升田の隣で中腰になり、羞恥で赤くなった彼女の顔を見上げた。 07-285 :真理奈のいたずら・4 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/09(土) 18 14 35.79 ID upp8jhur 「じゃあ、お願いするわ。あれを出してちょうだい……」 「はいはい、了解しました」 (ああ……なんで俺、こんなことをしてるんだろう) 祐介は今の自分の行動に大いに疑問を感じながらも、 升田がはいているズボンのベルトを外してやった。 ボクサーパンツの中を探ると、指先に陰毛の絡むさわさわした刺激を感じる。 元は自分の体なのに、こうしていると誰か他の男の陰部に触れているようで不快だった。 (くそ、気持ち悪い。これも全部加藤のせいだ。 元の体に戻ったら、絶対にあいつをぶちのめしてやる) 苦虫を噛み潰したような顔をして、祐介は升田の下着の中から 自分のものだった牡の象徴を取り出した。 小便を我慢しているからか、普段よりも少し大きくなっている。 慣れ親しんだ黒い肉の塊を、今はグロテスクだと思わずにはいられなかった。 「ああ、触られてる。私のおちんちんに中川君の手が……ああっ」 太い幹をつまんだ瞬間、升田が大きく身をよじった。 その艶やかな喘ぎ声に、祐介はますますやきもきさせられる。 「先生、じっとしてて下さい。早くおしっこしたいんでしょう?」 「ご、ごめんなさい。わかってるんだけど、つい……うう、ムズムズする」 情けない顔で弱音を吐く彼女からは、教師の威厳はいささかも感じられない。 さらに硬度を増した肉の棒を握りしめ、祐介はため息をついた。 (はあ、なんで興奮してるんだよ。升田先生も子供じゃないんだから、 小便くらい自分で何とかしてくれ。これじゃあ俺たち、完全に変態じゃないか) 便器の前で勃起したペニスをさらけ出した男子高校生と、 そのペニスをつかんで小便の手伝いをする女子高生。 こんな姿をもし誰かに見られたら、変態のそしりを免れまい。 とにかく今は何も考えず、一秒でも早くこの疎ましい行為を終わらせるべきだ。 祐介は陰茎の先端を白い便器に向けて、升田に排泄を促す。 「はい、どうぞ。準備ができましたから、小便を出して下さい」 「わ、わかったわ。このまますればいいのよね。ううっ、ううん……」 色っぽい声と共にぴくぴくと陰茎が痙攣して、黄色がかった液体を垂れ流しはじめた。 指でつまんだ幹の内部を生温かい液体が流れていくのを、祐介ははっきりと感じた。 「ああ、出てる。これが男の子のおしっこなの……」 升田のつぶやきは現状を嘆いているのか、 それとも感心しているのか、祐介には判別がつかなかった。 だが、異性の肉体になった女教師の気持ちが高ぶっているのは確かだった。 やがて小便は収まり、祐介は升田の陰茎を軽く振って雫を切ってやった。 ここまでしてやるお人好しな自分に呆れてしまう。 「はい、これで終わりです。あとは自分でしまって下さい」 「えっ、もう終わり?」 「当たり前です。小便は終わったんでしょう? なら、しまわないと」 「で、でもこれ、収まらないわよ。どうしたらいいの」 勃起したままの一物をどうすればいいかわからず、困り果てる升田。 そんなことはどうでもいいから、とっととしまえと言ってやりたかった。 「そんなもん、ほっとけば勝手に縮みますよ。早くしまって下さい。 こんなところで一発抜くわけにもいかないんですから」 「一発? それってどういう意味なの」 「ああ、もう、イライラする! 射精するってことですよ! 出すものを出しきったら収まりますけど、先生はそんなことしたいんですか !?」 祐介は声を荒げた。ひとに何を言わせるのか、この女は。 無性に腹が立って仕方がなかった。 07-286 :真理奈のいたずら・4 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/09(土) 18 15 06.00 ID upp8jhur 「そ、そうだったの。ごめんなさい、気がつかなくて。そう、射精すれば収まるの……」 升田は詫びたが、その表情には奇妙な自得の念が見てとれた。 いったい何を納得したのか──彼女の口調に、祐介は疑念を抱く。 「先生……もしかして、その……まさか、一発抜きたいなんて言いませんよね」 「え? ええ、そんなことは考えていない……わ」 「本当ですか? 怒りませんから、正直に言って下さい」 祐介は目を細め、鋭い視線で升田をにらみつけた。 女教師の知的な美貌を羞恥の紅が彩り、ペニスがもどかしそうに揺れ動く。 数秒間の沈黙のあと、升田は消え入りそうな声で言った。 「ご、ごめんなさい。その……やっぱり出すものを出しておきたいんだけど、 手伝ってもらえないかしら。本当にごめんなさい……」 「はあ、やっぱり……わかりました。ここまできたら乗りかかった船です。 ちゃんと抜いてすっきりさせてあげますよ」 祐介は成りゆきに逆らうことを諦め、再び升田の男性器に触れた。 表面に血管の浮き出た陰茎を、たおやかな手が撫で上げる。女教師がびくりと震えた。 「ああっ、私のおちんちんが……あっ、ああっ」 艶めいた声をあげて身をくねらせる升田を、祐介は呆れた顔で眺めやった。 (まったく、こんなに硬くしやがって。これは俺の体なのに……) 現在の二人は、首から下の肉体が他人のものと入れ替わっている状態だ。 祐介の頭には真理奈の体が、そして升田には祐介の体が融合している。 大切な自分の体が他人に奪われ、性器を勃起させていることに、 祐介は平静を保てなかった。 ともかく、可及的すみやかに升田を満足させて、 目の前の痴態を終わらせなければならない。 亀頭の中央にある割れ目を爪で引っかき、強い刺激を加えた。 「な、何これ。ああんっ、こんなのダメぇっ」 升田ははしたない声をあげて手淫の快感に酔いしれる。 普段のストイックな態度からはあまりにもかけ離れた姿だ。 祐介の指が竿を摩擦するたび、升田の膝が笑って腰が揺れた。 「先生、静かにして下さい。誰か来たらどうするんですか」 「ご、ごめんなさい。でも、勝手に声が出ちゃうの。 いけないのはわかってるんだけど──ああっ、んっ、んんっ」 升田は指を口元に運び、爪を噛んで声を押し殺そうとしたが、それも無駄な努力だった。 細い眼鏡の奥の黒い瞳には真っ赤な淫欲の炎がともり、 鮮やかな紅色の唇からは浅ましい嬌声が溢れ出す。 初めて目にする彼女の淫猥な表情に、祐介は困惑を隠せない。 (早くイってくれよ。こっちまで変な気分になってきたじゃないか……) いくら顔が女とはいえ、男が喘ぐ光景──それも、自分自身のものだった肉体が 陰茎を愛撫されて悶える姿に興奮するなど、本来あってはならないことだ。 しかし、こうして升田の肉棒をしごいて色っぽいよがり声を聞いていると、 頭に血がのぼって思考がまともに働かなくなる。 自らの体内で熱いものがドクドクと脈動しているのを感じた。 興奮と共に、少しずつ摩擦のペースも上がっていく。 指を雁首に巻きつけ、幾度も上下に往復させた。 尿道口から漏れ出した先走りの汁が細い指を汚し、音をたてて泡立つ。 濃厚な牡の臭いが鼻をつき、祐介は小さなうめき声をあげた。 理性を維持するため、これはただの自慰行為だと何度も自分に言い聞かせた。 そう、これはあくまで自分で自分のものを処理しているに過ぎない。 何もやましいことはないのだと、胸の内で正当性を訴えた。 07-287 :真理奈のいたずら・4 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/09(土) 18 21 21.99 ID upp8jhur だが升田はそんな彼の苦労も知らず、 初めて自慰を覚えた少年のように切ない声色で喘いでいる。 「や、やだ……お腹の下の辺りがウズウズして、何かがせり上がってくるみたい。 ううんっ、もうすぐ出るのかしら」 升田の独白を無視して、祐介は無言で肉の柱をしごき続ける。 下手に口を開けば自分も高揚していることを悟られてしまいそうで、 喋ることができなかった。下腹部が熱を帯びて疼いているのは彼も同じだった。 必死で抑制しているにも関わらず、祐介の体の火照りは収まらない。 呼吸は荒く、脈は速く。真理奈から借りた十七歳の少女の肉体は、 目の前のたくましいペニスに奉仕することで、祐介の意思とは無関係に高ぶってしまう。 (畜生、体が熱い。この体はどうなってるんだ。 加藤のやつ、こんな体を俺に押しつけやがって……) 女として発情していることが、祐介のプライドを傷つける。 全ての元凶である真理奈を憎んだが、 肝心の彼女がこの場にいない以上、どうすることもできなかった。 (くそ、早くイけよ。俺までおかしくなっちまう) 焦るあまり、手つきが乱暴になる。 升田は体をくねらせて男の快楽を貪っているが、いまだ達する気配はない。 口の端からよだれを垂らして、熱っぽい眼差しを祐介の手元に注いでいた。 きっと、自分も彼女と同じような顔をしているのだろう。 異性の肉体で味わう未知の官能が、祐介の理性を少しずつ希薄にする。 中腰でいるのが辛くなり、祐介は升田の隣にしゃがみ込んだ。 その拍子に股間から生ぬるい液体が漏れ出し、ショーツの内側を汚す。 祐介は思わず顔をしかめた。先ほど真理奈と交わったときに注ぎ込まれた精液だった。 (ううっ、気持ち悪い……拭かないと。 くそ、なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ) ひたすら嘆いてトイレットペーパーを千切り、股の間に差し入れた。 必死で女陰の周りを拭き取る己の姿が、途方もなく恥ずかしい。 「ど、どうしたの、中川君。まさかアソコをいじくっているの?」 「違いますよ! 汚れたから拭いてるだけです。頼むからほっといて下さい。うう……」 そんなやり取りも腹立たしく、情けなくも半泣きになってしまう。 鼻をすすって股間の汚れを落としていると、面前に手が差し伸べられた。 「中川君、立って」 という声に従い、祐介は升田と向かい合う。互いの顔がごく間近にあった。 長身の真理奈の体のため、男の身体を持つ升田と目線の高さがほとんど変わらないのだ。 「先生、どうしたんですか?」 祐介は怪訝な顔で訊ねた。升田はまだ精を放っていない。 すぐに手淫を再開するつもりだったが、升田は勃起した男性器を 剥き出しにしたまま、祐介の腰や背中を撫で回してくる。 なぜ彼女がこんなことをするのかわからず、困惑した。 「ごめんね、中川君。先生だけあなたに気持ちよくしてもらって。これじゃ不公平よね」 「先生、何を言って──や、やめて下さい。そんなとこ触らないで……」 スカートの中に升田の手が侵入してきて、下着の上から臀部をわしづかみにした。 柔らかな尻の肉を揉みしだかれて身の毛だった。 「ふふっ、恥ずかしがらなくていいのよ。ここには私たちしかいない。 中川君が女の子の体で気持ちよくなっても、誰にもわからないわ。だから隠さないで」 「何の話をしてるんですか。俺はただ、先生が一発抜きたいって言うから……」 「それ以上は言っちゃ駄目。先生、ちゃんとわかってるから。 おちんちんをいじって、中川君も興奮しちゃったんでしょう? それなら、先生と一緒に気持ちよくなりましょうよ」 「ち、違います! 俺はそんな変態じゃない!」 07-288 :真理奈のいたずら・4 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/09(土) 18 22 10.25 ID upp8jhur 祐介は否定したが、升田は彼の体をきつく抱きしめ、尻や乳房をまさぐってくる。 顔だけは妙齢の美女であっても、升田の手足は祐介のものだ。 たくましい男の腕に押さえつけられ、女になった祐介は逃れることができない。 「やめて下さい、先生。こんないやらしい真似──ひいっ、や、やめろっ」 ショーツをずらされ、自分のものだった指が陰部を這い回った。 膣内からこぼれた精液が指に絡んで潤滑剤に変わる。 「ほら、やっぱり濡れてるじゃない。 言い訳なんてしなくていいから、もっと正直になりなさい。 そうしたら、先生が中川君に女の子の気持ちよさを教えてあげる」 「い、いやだ。こんなのいやだぁ……」 首を振って嫌がる祐介。しかし、既に充分ほぐれていた女性器は、 升田の指をスムーズに内へと受け入れてしまう。 膣の入口をかき回され、祐介の腰が小刻みに震えた。 借り物の身体は、先ほど受けた淫らな仕打ちを覚えていた。 首こそすげ替えられてしまったが、この体は眼前の少年の体と交わり、 たっぷりと精を注ぎ込まれたのだ。 再び性器に加えられる刺激に、火照った女体は否応なく燃え盛る。 (ううっ、腹の奥がムズムズする。何だよこれは。やめてくれ……) 祐介は恐怖を覚えた。自己の意思とは無関係に高ぶってしまう女の本能が恨めしい。 股間で蠢く升田の指に、精液とは別の液体が絡みついた。 「素敵よ、中川君。あなたの首から下は加藤さんの体なのよね。不思議だわ。 あの憎らしい子の体に、中川君の顔がくっついてるなんて……」 升田は呼吸を荒くして祐介を責めたてる。彼女の言う通りだ。 祐介の手足や胴体は、そっくり真理奈のものと置き換わっているのだ。 もしかすると、これは己の肉体を奪われた升田の、 真理奈に対する仕返しなのかもしれない。 だが、そんな理由で自分が真理奈の身代わりにされては、たまったものではなかった。 「や、やめて──ああっ、やめてくれっ」 「一緒に気持ちよくなりましょうよ、中川君。 さあ、先生のおちんちんを握って、さっきみたいにしてちょうだい」 升田は喘ぐ祐介の手をつかんで、自分の股間にいざなう。 そこには熱を帯びた肉の槍がそそりたっていた。 祐介は逆らうことができず、それを引っ張るようにしごき始める。 (体が熱い。頭がぼうっとする。なんで俺、こんなことをしてるんだ……) 嫌っていた女子と強制的に身体を交換させられ、 自分の代わりに男になった女教師と抱き合い、互いの性器を愛撫している。 あまりにも倒錯した状況に、祐介は現実感を喪失しつつあった。 これは夢ではないかという疑いが胸の内にわき起こり、 少女になった少年から背徳の念を奪い去る。 07-289 :真理奈のいたずら・4 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/09(土) 18 23 06.29 ID upp8jhur いつしか祐介は嫌がることをやめ、積極的に升田の男根を慰めていた。 自分のものだと思えば、このグロテスクな肉の棒にも恐れを抱くことはない。 手のひらで袋を優しく包み込み、すくい上げるようにして熱心に揉みほぐした。 「ああ、いいわ、中川君。先生、とっても気持ちいい」 升田は嬉しそうな笑みを浮かべ、指を立てて祐介の女陰を穿つ。 下腹の裏側を引っかかれると、とろけるようなエクスタシーがもたらされる。 「うあっ、ああっ。せ、先生っ」 祐介は升田の体にしがみつき、豊満な乳房を押しつけた。 子宮の疼きが心地よい痺れとなって、手足の先まで伝染していく。 理性のたがが外れてしまい、もはや自分が何をしているのかもわからなくなった。 二人はひしと抱き合い、共に絶頂へとのぼりつめる。 首から上は女教師と男子生徒、そして首から下はいがみ合う高校生の男女。 真理奈に陥れられた二人の犠牲者がお互いを慰め合い、異性の肉体で法悦にひたった。 「ああっ、イ、イクっ。イっちゃうっ」 升田の金切り声があがった。 若いペニスから熱い樹液が噴き出し、祐介の白い手のひらを汚した。 それとほとんど同時に、彼も女としてのアクメを迎えていた。 股の間から強烈な電流がほとばしり、脳髄を焼いて視界を赤く染めあげる。 膣内がきゅうきゅうと収縮し、升田の指を締めつけた。 「はあっ、はあっ、はあああ……」 たまらずその場に崩れ落ちる祐介。 今まで経験したことのない忘我の境地に、全身の力が抜けて壁にもたれかかってしまう。 女陰から溢れた蜜で、太ももの内側がしっとり濡れていた。 「ふう……中川君、大丈夫?」 気がつくと、鼻先に升田の顔があった。 日頃の厳しい女教師の表情ではない。 どこか満ち足りた様子で口元を緩めた、だらしのない笑顔だった。 「あ……は、はい。大丈夫です……」 答える声にも力がない。祐介の身体はすっかり萎えてしまい、 満足に立ち上がることすらできそうになかった。 「ごめんなさい。ちょっとやりすぎたかもしれないわね。 でも、とっても気持ちよかったわ。ありがとう。ふふふ……」 升田は祐介の肩を抱き寄せ、髪をそっと撫でてくれた。 祐介はなんと言えばいいかわからず、床にへたり込んで呆然としていた。 もたれかかった壁には白い粘液がこびりつき、生ぐさい異臭を放っていた。 07-297 :真理奈のいたずら・5 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/23(土) 21 52 33.01 ID 4t0GezpQ Part.05 教室に鳴り響いたチャイムの音に、森田瑞希は顔を上げた。 黒板には、授業中に教師が熱心に説明していた内容の板書が残っていたが、 瑞希のノートは真っ白のままだ。ちっとも授業に身が入らず、 自分が何を聞いていたのかも満足に思い出せないありさまだった。 教室の後ろの方を向くと、誰も座っていない椅子と机が二つずつ目に入る。 片方の座席は、瑞希の彼氏である中川祐介のものだ。 もう一方は親友の加藤真理奈の席である。二人とも教室にはいない。 (本当に、祐ちゃんも真理奈ちゃんもどこに行っちゃったんだろう。 真理奈ちゃんはともかく、祐ちゃんは授業をサボるなんて真似、絶対にしないのに) 一番親しくしている同性と異性の不在を、瑞希は怪訝に思った。 今朝、授業が始まる前はどちらも教室にいて、瑞希と一緒だった。 休み時間に二人ともふらりといなくなったとしか考えられないが、 あの二人が自分に黙ってそんなことをする理由が、瑞希には思いつかなかった。 (もしかして、こっそり二人で抜け出して、どこかでいちゃいちゃしてるんじゃ……) 不意に脳裏に浮かんだ想像を、首を振って打ち消す。 あの二人の相性の悪さを考えれば、まずありえない話だった。 (祐ちゃんと真理奈ちゃん、めちゃくちゃ仲が悪いもんね。 私はあの二人に仲良くしてほしいんだけどなあ……) 祐介も真理奈も、瑞希に対してはすこぶる好意的だが、 間に彼女がいないとすぐに喧嘩を始めてしまう。 どちらも瑞希にとっては大切な存在なので、仲良くしてほしいと 常々願っているのだが、現実はなかなか思うようにいかない。 今朝のようにくだらないことで言い争う二人を見るのは、 温厚で気弱な瑞希には甚だ辛いことだった。 「瑞希、先生が呼んでるよ」 「え?」 突然クラスメイトからかけられた声に、瑞希は振り向く。 教室の入り口にスーツ姿の若い女教師の姿があった。 クラスの担任ではなく、世界史を教えている升田という教師だった。 「なんで升田先生が私に……いったい何の話?」 「さあ? とにかく呼ばれてるんだから行ってきなさいよ。 あの先生はすぐ怒るから、機嫌を損ねちゃったら大変だよ」 「う、うん……」 瑞希は首をかしげたまま、席を立って教室を出た。 「あの、升田先生。私に何かご用ですか?」 「うん。ちょっと瑞希──じゃない、森田さんに手伝ってほしいことがあるのよ。 すぐに済むから、先生と一緒に来てくれないかしら」 升田はいつになく親しげな笑みを浮かべて、瑞希を誘う。 「はい、それは構いませんけど……」 うなずきながら、瑞希の表情はますます混迷の度合いを深めた。 生徒を手伝わせるのはいいが、なぜわざわざ地味で目立たない自分を選んだのか。 この教諭とは授業以外でほとんど会話を交わしたことがなく、 顔と名前を覚えられていること自体が瑞希には驚きだった。 升田はにこにこ笑って、弾むような足取りで瑞希を先導する。 日頃から生徒に厳しく、些細なことで激昂する升田にしてはやけに上機嫌だ。 (何かいいことでもあったのかな、升田先生──あれ?) ふと奇妙な違和感を覚えて、瑞希は女教師の背中を眺める。 どこがどうとははっきり指摘できないが、何かが普段の彼女と違っているような気がした。 07-298 :真理奈のいたずら・5 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/23(土) 21 54 34.68 ID 4t0GezpQ (おかしいなあ。升田先生、いつもと雰囲気が違うような……気のせいかな?) 「あの、先生……」 「なーに? 森田さん」 振り向いた升田の顔を瑞希は凝視する。やはり違和感は消えない。 明るい茶色に染まった女教師の髪を眺めて訝しがる。 (あれ、升田先生って茶髪だっけ? たしか髪の色は黒だったような。 それに、いつも眼鏡をかけてたような気がする。でも、今はかけてない。 変だな……どうして私、こんなことを考えちゃうんだろう) 理由はわからないが、今の升田を見ていると今ひとつぴんと来ない。 つね日頃、見慣れているはずの教師が、なぜか別人のように思えた。 「どうしたの、森田さん。先生の顔に何かついてる?」 「あっ、い、いいえ……何でもないです」 内心の動揺を気づかれまいと、瑞希は視線をそらした。 再び歩き出した升田についていくと、やがて校舎を出て裏庭に着いた。 ここには物置や園芸部の花壇があるだけで、この時間はまったく人の気配がない。 「先生、こんなところで何をするつもりですか?」 辺りを見回して訊ねると、升田は唇を歪めて不敵な笑みを形作った。 普段の厳格で生真面目な姿とはまったく異なる表情に、瑞希は目を見張る。 「ごめんね、瑞希。痛くはしないから、ちょっと我慢して」 と言って、升田はいきなり瑞希の顔を押さえつけた。 「せ、先生っ、何をするんですかっ」 突然の女教師の乱行に、瑞希は動転した。 そんな瑞希の顔を升田は両手で挟み込み、力一杯ねじり上げてくる。 首が折れるかと思った瞬間、瑞希の三半規管が悲鳴をあげた。 ありえない角度で視界が傾き、気が遠くなった。 (な、何? いったい何が起きたの?) 我に返ると、瑞希の手足は一切動かなくなっていた。指の一本すら動かすことができない。 動かせないだけでなく、四肢の感覚が綺麗さっぱり消失していた。 自分は今、間違いなくこの場に直立しているはずなのに、 脚にかかる体の重みや、足の裏で地面を踏みしめる感触が無い。 あたかも足のつかない深い水に浮かんでいるような、奇妙な感覚だった。 唯一残っているのは、自分の頬を押さえている女教師の手の触感だけだ。 (か、体が動かない。私の体、どうなっちゃったの……) 首さえも曲げられず、瑞希は眼球だけを下に向け、必死で事態を把握しようとする。 見下ろした先には、セーラー服を着た小柄な少女が横たわっていた。 ここには自分たちの他は誰もいなかったというのに、 この女生徒はいつの間に現れ、地面に倒れたのだろうか。 それを考える前に、瑞希の目はその少女の体に首がついていないのを捉えた。 驚くべきことに、首無しの女子生徒が倒れているのだった。 「きゃあああっ !? な、何なのこれぇっ!」 「ほーっほっほ! 驚いた、瑞希? そこに倒れてるのはあんたの体よ。 自分の背中を観察する機会なんて滅多にないんだから、じっくり見ておきなさい」 すぐ後ろから聞こえてきた升田の声に、瑞希はぎくりとする。 振り向くことができずに難儀していると、 升田は瑞希の首をくるりと回して自分と向かい合わせた。 不気味に笑う升田の表情に、瑞希は恐怖を感じた。 「先生、これはどういう……」 「ふふっ、まだあたしのことがわかんないの? 仕方ないわねー。 術を解いてあげるから、あたしの顔をよく見なさい」 升田は瑞希の額に手を当てて、指先で小さな円を描いた。 何をしているのか瑞希には見当もつかなかったが、その行為が終わった途端、 瑞希は自分が大きな思い違いをしていたことを悟った。 07-299 :真理奈のいたずら・5 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/23(土) 21 55 34.17 ID 4t0GezpQ 「ま、真理奈ちゃん? 升田先生じゃなくて真理奈ちゃんなの……?」 「ふふん、やっとわかったみたいね。そうよ、あたしは真理奈。 今まで魔法の力で升田のふりをしてたのよ。全然気づかなかったでしょ? まあ、首から下はホントにあのオバサンの体になってるんだけどさ」 けらけらと楽しげに笑う女。彼女は世界史の教師などではなかった。 その正体は瑞希の友人の少女、加藤真理奈だったのだ。 (ま、升田先生が真理奈ちゃん? 一体どうなってるの……) 瑞希は真理奈の腕の中で、目を白黒させた。 どのような仕組みになっているのか瑞希には理解できないが、 今の自分は首だけが体から切り離された状態になっているようだ。 その瑞希の生首を持ち上げているのは升田ではなく真理奈だった。 高校生にしてはややけばけばしい化粧に、光沢のある茶色の髪。 実年齢よりも年上に見られがちな、華のある美貌。 決して他の誰かと見間違うはずのない親友の顔を、 なぜまったく別人の女教師のものだと思い込んでいたのだろうか。 混乱する瑞希の黒髪を、真理奈の手が優しく撫でた。 「さっきも言ったけど、今のあたしは魔法使いなの。 升田と身体を交換したり、瑞希の頭の中をちょっと操作して勘違いさせたり、 その気になれば何でもあたしの思い通りにできるのよ。おーっほっほっほっ!」 「よくわからないけど、こんなの困るよ……早く私を元に戻して、真理奈ちゃん」 べそをかいて懇願する瑞希に、真理奈は不遜な態度でちっちっと指を振ってみせる。 額に円形の文様が描かれ、うっすらと緑色に輝いているのが不思議だった。 「ダメダメ、あたしはもっと楽しみたいの。そのために ちょっとの間、あんたの体を貸してもらうわよ。瑞希」 「え? ど、どういうこと?」 困惑していると、真理奈は瑞希の頭を小脇に抱え、 もう片方の手を自らの顔の方に移動させた。「よいしょ」と短いかけ声が聞こえる。 何をしているのか瑞希の位置からはよく見えなかったが、 しゃがみ込んだ真理奈の腕が抱えているものが視界に入り、思わず息を呑んだ。 それは真理奈の生首だった。瑞希と同じように、真理奈も自分の首を取り外したのだ。 「ま、真理奈ちゃんの首が取れちゃった !?」 肝をつぶす瑞希の目の前で、首無しの真理奈は取り外した自分の頭部を、 地面に倒れている女生徒の体にそっとあてがう。 頭部のない小柄な女子高生の身体。それはまぎれもなく瑞希のものだった。 だが、その肩に真理奈の頭が載せられた途端、ぴくりとも動かなかった身体が起き上がり、 瑞希に見せつけるようにして己の手足を動かし始めた。 「わ、私の体に真理奈ちゃんの頭がくっついてる……」 自分の肢体と真理奈の首が結合している。 そんな奇妙な光景に、首だけの瑞希は吃驚せずにはいられなかった。 07-300 :真理奈のいたずら・5 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/23(土) 22 01 15.41 ID 4t0GezpQ 「ふふふ、大成功。瑞希の体だから、やっぱり目線が低いわね。 あんたの身長、たしか百五十ないんじゃなかったっけ?」 瑞希の肉体を乗っ取った真理奈は、腕組みをして顔に喜色を浮かべた。 腕白な子供が悪戯を成功させたときに見せるものと同じ にやりとした表情に、瑞希は激しい胸騒ぎを覚えた。 「真理奈ちゃん、こんなのやめて。私の体を返してよ」 「はいはい、わかってるって。あんたの首もちゃんと体にくっつけてあげるから」 真理奈は瑞希の頭をひょいと持ち上げて、嬉しそうに頬擦りしてくるが、 彼女の不安は消えるどころか、ますます大きくなるばかりだ。 「うーん……でも、あんたの体はあたしが使用中だし、どうしようかしら。 おやっ? こんなところに升田先生の首無しボディが転がってるわねー。 ちょうどいいわ、瑞希。あんた、この体を使わせてもらいなさいよ」 わざとらしい口調でべらべらと喋り続けたかと思うと、 真理奈は足元にへたり込んでいるスーツ姿の女性の体を指差した。女教師の升田の体だ。 「ええっ !? そんなのダメだよ。先生の体なんて──ああっ、ダ、ダメぇっ」 思いがけない発言に目を剥く瑞希の頭を、真理奈は無理やり升田の体に載せてしまう。 消失していた手足の感覚が唐突に蘇り、瑞希は視線を下におろした。 目に飛び込んでくるのはセーラー服を着た小柄な女子高生の体ではなく、 肉感的なボディラインをぴっちりしたスーツで包んだ、妙齢の女教師の肉体だった。 「い、いやあっ。私の体が……」 あまりに変わり果てた自分の姿に、瑞希は失神してしまいそうになる。 これが自分の体だと、にわかには信じられなかった。 「なーに暗い顔をしてんの。もっと喜びなさいよ。 ちょっと年増だけど、ムチムチしててなかなかセクシーな体じゃない。 胸だって、ほら。あんたの洗濯板とは大違い。得したわねー、瑞希」 「そんなあ、こんなのやだよう……」 早熟の真理奈とは違って、童顔の瑞希は日頃から年少に見られやすい。 俗にツインテールと呼ばれる二つ結びの髪型もそれの一因となっており、 私服で街を歩いていると、小学生に間違えられることさえある。 そんな瑞希の顔に、女教師の艶かしい身体が合体しているのは非常にアンバランスだった。 (どうしよう。こんな体になっちゃったら、祐ちゃんに嫌われちゃうよ……) 面妖な自分の外見を脳裏に思い浮かべて、瑞希はうつむき涙ぐむ。 もしもこんな姿を思い人の祐介に見られたらと思うと、背筋が寒くなった。 「大丈夫、大丈夫。結構似合ってるわよ。もっと自信を持ちなさいって」 瑞希とは反対に背の低い女生徒の体になった真理奈が、そう言って慰める。 こちらも真理奈の大人びた顔立ちに瑞希の小さな身体が合わさっているので、 随分と違和感のある容姿だったが、それでも今の瑞希ほどではない。 「ひどいよ、真理奈ちゃん。私の体を返してよう。ううう……」 瑞希は地面に膝をついて、子供のように泣き崩れた。 自分の体を奪っておきながら、気楽に振る舞う真理奈を恨めしく思った。 07-301 :真理奈のいたずら・5 ◆cW8I9jdrzY :2011/07/23(土) 22 02 31.86 ID 4t0GezpQ 「瑞希、そんなに泣かないでよ。悪いようにはしないからさ」 真理奈は瑞希の首に腕を回して抱きしめた。 妖しい光を放つ瞳が、瑞希の目を至近からまじまじとのぞき込んだ。 心臓の鼓動が速まる。心がざわめいて、穏やかではいられなかった。 「な、何するの? 真理奈ちゃんの目、なんだか怖いよ……」 「ううん、大丈夫よ。あたしの目をじっと見て。だんだん落ち着いてくるはずだから」 真理奈の高い声が瑞希の聴覚に染み渡った。彼女の言う通り、 こうして大事な親友と目を合わせていると、胸中の不安が少しずつ和らいでいく。 (あれ、どうしたんだろう。なんだかとってもいい気分……) 赤子が母親に抱かれているのと同種の安らぎが瑞希を包み込んだ。 とろんとした彼女の眼差しに、真理奈はさらに笑みを深くする。 ひざまずいた瑞希を抱きしめて、耳元に口を寄せた。 「ふふふ、うまくいったわ。これであんたはあたしの言いなりよ。いいわね、瑞希?」 「うん、わかった。私は真理奈ちゃんの言いなりになる……」 真理奈の尊大な物言いにも、瑞希はあっさりうなずいてしまう。 抗う意思も戸惑いも失せて、眼前の娘に服従する喜びだけが瑞希を支配していた。 「よしよし、いい子ね。じゃあ、今からあたしの言うことをよく聞きなさいよ。 まず、あんたの首から下についてる体は誰のものかわかる?」 「えーっと……たしかこれ、升田先生の体だよね」 瑞希はぼんやりとつぶやき、自らの身体を撫で回した。 真理奈によって首をすげ替えられてしまったため、瑞希は他人の体になっている。 今はこの熟れた女体が自分の所有物なのだと、改めて思い知らされた。 「その通り、あんたの首から下は升田の体よ。 瑞希の体はあたしがもらったわ。あんたは今から升田になるの。 二年C組の森田瑞希はあんたじゃなくて、このあたし。いいわね?」 「私が升田先生? あれ、そうだっけ。ホントにそれでいいのかな……」 「そうそう、それでいいの。だって手足も胴体も、服だって交換しちゃったんだもん。 今のあんたはどこから見ても升田先生よ。誰も瑞希だなんて思いはしないわ。 あたしが森田瑞希で、あんたは世界史教師の升田先生。OK?」 真理奈の言葉が鼓膜を揺さぶり、瑞希に新たな認識を植えつける。 自分は生徒ではなく教師なのだという思いが、瞬く間に心を塗り替えていった。 「うん、いいよ。私は升田先生で、あなたは生徒の森田さんね……」 瑞希は従順に同意し、女教師となった己の立場を受け入れた。 真理奈の話によると、今の自分には魔法がかけられ、 他の人間からも升田だと認識されるようになっているらしい。 他人の心を操る黒魔術の力が遺憾なく発揮されていた。 「私は升田先生──そうだ、私は先生なんだ」 目から鱗が落ちたように納得する瑞希を見て、真理奈はにやにや笑っている。 「そうですよ、先生。やっと目が覚めたみたいですね。 でも、こんなところでぼーっとしてていいんですか? そろそろ休み時間が終わっちゃいますけども」 その指摘に彼女ははっとさせられ、慌てて立ち上がる。 ちょうど次の授業の開始を告げるチャイムが聞こえた。 「いけない、早く職員室に戻らなくちゃ。 森田さんも次の授業に遅れないように急いでね」 「はいはい、わかってますって。先生も授業、頑張って下さいね。ふふふ……」 不気味に笑う女生徒と別れ、瑞希は豊満な肢体を躍らせて廊下を急ぐ。 (ああ、早く教室に行って授業を始めないと。 先生なのに遅刻なんてしたら、生徒たちに笑われちゃう……) 教師の肉体と立場を与えられた瑞希の頭の中からは、 自分の体が真理奈に奪われた記憶は綺麗さっぱり無くなっていた。