約 674,603 件
https://w.atwiki.jp/asiarai/pages/316.html
【用語名】 人間種 【読み方】 にんげんしゅ 【詳細】 大召喚によって悪魔、亜人種等様々な者たちが世界にあふれる以前から、その世界に住まう者たちのこと。 いわゆる我々地球人類を指す。 リザードマンやエルフ等様々な人種が爆発的に増えた影響と、大召喚に巻き込まれる形で多くの地球人が死亡したことで人工が激減しており、 作中でも純粋な人間種が登場するのは珍しい。 田村・福太郎やバロネス・オルツィも人間種ではあるがダブルマンだったり、第二視力の持ち主だったりで、 この混沌の世界を生き残るだけの能力は備えている。 ただやはり一般市民が生き残るには厳しい世界であるのは変わりなく、万魔殿学園でも人間種の雇用を進めているが定着しておらず悩みのタネとなっていた。
https://w.atwiki.jp/hawx2/pages/43.html
何機もの敵戦闘機と戦い、生き残るために最善を尽くせ! 何機もの敵戦闘機と戦い、生き残るために最善を尽くせ!・中東 ・カフカス ・モスクワ ・中東 攻略 第1波 第2波 第3波 第4波 第5波 第6波 第7波 第8波 第9波 第10波 ・カフカス 攻略 第1波 4 00 Mig-31 12機 左右にまとめて3機づつくるので、多目標があった方が楽。3発同時発射したらすぐ振り向いて、また3機撃墜。残った敵は追尾ミサイルで倒そう。たぶん多目標はロックオンできない距離になってしまう。 その後まとめて6機くるので、速度を落とし多目標4発同時発射。その後目標を替えて2発同時発射。もし敵機があまっても、時間内には倒せるだろう。 第2波 Mig-30 MKI Mig-23 第3波 第4波 第5波 第6波 第7波 第8波 第9波 第10波 ・モスクワ 攻略 第1波 第2波 第3波 第4波 第5波 第6波 第7波 第8波 第9波 第10波
https://w.atwiki.jp/m12br/pages/50.html
飯窪・佐藤・工藤 23 :名無し募集中。。。:2012/02/03(金) 20 28 32.39 0 【4周目 [[一日目]] 工藤遥 午後6時30分】 「離せ!離せよ!このやろー!!!」 「ほーらほら、暴れんなって」 「いやぁっ!やだぁー!」 「まぁちゃん!くそっ!離せ!っどけぇー!」 優樹がジープに押し込められる。 「くどぅー!くどぅー!助けて!」 「まぁちゃん!」 無情にもジープは走り去って行った。 「ちくしょう…ちくしょう!!!」 「ずいぶん威勢がいいのぅ。面倒やから縛り上げちまいな」 「やめろ!このっ!おまへふぁひゅふははひははっ!」 遥は目隠しをされた上に後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされるとジープに運び込まれた。 「この娘は厄介そうだから私が連れていくわ」 ―――走行中――― 「はぁへ!はぁへほー! 遥は暴れ続ける。 「危ないから大人しくしなさい。落ちるわよ」 「ふふはい!」 遥は縛られたままの恰好でジープから飛び出そうとする。 「ちょっ!バカ!」 同乗している女が慌てて引きずり戻した。 「…はぁ、仕方ないわね」 ぐぃっと遥の身体が引かれる。腕を持たれているようだ。 「はにひへふ!?」 ギシギシと何かがこすれる音がかすかに聞こえてくる。 すると今度はカチリと何かがはまる音が聞こえ「ごめんなさいね」という声が聞こえた次の瞬間。 遥の身体は大きく振りまわされた。 24 :名無し募集中。。。:2012/02/03(金) 20 29 52.65 0 「ふがぁー!!!」 まるでおおはしゃぎの巨漢の男の子とシーソー遊びをしているかのような感覚。 しかしすぐにふわりと何かに包まれる感覚。 そしてドカンという大きな衝撃音とともにジープは停止した。 ジープから転がり落ちる。 腕を動かすとハラリとロープが外れた。急いで目隠しと猿轡を外す。 そこには巨木に激突したジープがカラカラと車輪を浮かして止まっていた。 その光景に唖然とする。しかしすぐに我に返り、自分の身体を確かめる。 奇跡的に怪我はない。まずはすぐにここを離れるべきだと判断し、遥は駆け出す。 すると目の前には支給されたバッグが落ちていた。 (ラッキー!) 遥はバッグを拾うと走り去った。 しばらくしてジープの中から女が這い出してくる。 「さすがに堪えるわね」 遥を逃がしたというのに動揺は見てとれなかった。 遥に見えていないところで起こっていたこと。 ―――回想――― 女は遥の手を自分の方へ向けると縛っているロープにナイフで切れ目を入れる。 そして銃を取り出すとサイレンサーを取り付け、運転手の座席の後ろにあてた。 「ごめんなさいね」そう言って引鉄を引く。 運転手を失い、ジープは暴走する。 女は後部座席からハンドルを握り、無理やり方向を変えると脇道の巨木へと突っ込ませる。 衝突の瞬間。女は遥を抱きかかえた。 ―――現在――― 「そろそろいいかしらね」 女はジープからトランシーバーを取り出すと「裕ちゃん、ごめん、工藤って娘に逃げられた」 そう報告した。 49 :名無し募集中。。。:2012/02/04(土) 22 37 38.86 O [飯窪]【第一日目午後6時50分】 乱暴にジープから降ろされて、飯窪春菜は道端に倒れ込んだ。華奢な膝に擦り傷ができる。 倒れたせいで排気ガスを思いきり吸い込んだ。お構いなしにジープは走り去る。 咳き込みながらアイマスクを外すと、小規模なホテルの近くだった。 天地創造のおまけのような辺鄙な島には似つかわしくない。バブル期の名残だろうか。 だが使われなくなって久しい様子で、あちらこちらに修繕が必要な箇所が見てとれる。 廃墟とまではいかないが、どこか不気味な雰囲気を漂わす建物だった。 辺りには建物はなかった。春菜は迷った挙げ句、入ってみることにした。 金網の隙間から忍び込む。細身の春菜には容易いことだった。庭には手入れされていない木々。 裏側の通用口は鍵がかかっていなかった。「…お邪魔します…」 内部はそれほど荒れてはいなかった。しばらく潜伏するにはいい場所かもしれない。 しかし時間の余裕などない。明日の今頃には、確実に一名の死者。あるいはもっとたくさん死ぬだろう。 焦燥感と絶望。それでも春菜は頭を働かせて、脱出方法を模索した。 20 :名無し募集中。。。:2012/02/03(金) 15 57 48.87 O [佐藤]【第一日目午後6時50分】 民家が建ち並ぶ集落に、佐藤優樹はポツンと取り残された。アイマスクを外した優樹の目は赤く泣き腫らされていた。 走り去るジープを見送りながら、優樹は途方に暮れている。めちゃくちゃなゲームに参加することになってしまった。 人を殺すことなど考えたこともなかった。花を摘むことさえ命を奪うようで躊躇う優樹である。 誰かを傷つける…。想像しただけで優樹は目眩を覚えた。このまま時間切れで死ぬ方がいいのかもしれない…。 フラフラと民家の一軒に入る。身を隠していよう。誰かと遭遇することが何よりも怖かった。 住民たちは慌ただしく立ち退きを迫られたのであろう。そこかしこに生活臭が色濃く残されていた。 「…泥棒みたい…」優樹は呟いた。食卓も清潔なままだった。食材の備蓄もいくらかある。 テーブルには家族の人数分だろうか。パッチワークのランチョンマットがきちんと畳んで置いてある。 何気なく手に取る。誰だろう?私は誰かと強く強く手を握っていた。そして…。 優樹は椅子に座って、暮れていく夕陽が窓から差し込んでくるのを眺めていた。 風に逆らうように飛んでいく鳥の姿が見えたような気がした。 37 :名無し募集中。。。:2012/02/04(土) 14 14 57.51 O [佐藤]【第一日目午後7時】 支給されたデイパックをテーブルの上に置いて、優樹は中身を調べ始めた。 水やパン。最低限の食糧と懐中電灯、防水マッチなどが詰め込まれていた。 奥底に長方形の黒いケースがある。開けてみると出てきたのは拳銃だった。 レーザー・サイト付きのAMTハードボウラー。45口径のコルト・ガバメントのステンレス・コピーである。 銃身とスライドを可能なかぎり延長してある。長大なレーザー・ビーム照射式の照準器をマウントするためである。 使い方はいたって簡単。赤い光を目標に照らして引き金を絞れば確実に銃弾は命中する。 もちろん優樹は使うつもりはない。だが今はひとりだ。庇護してくれる者はいない。 護身のためだ。自分に言い聞かせながら拳銃を腰のベルトに差し込んだ。 とにかく動かない方が賢明だろう。優樹はちょっとだけパンをかじって、言語道断な味に閉口した。 115 :名無し募集中。。。:2012/02/07(火) 22 20 34.17 0 【4周目 一日目 飯窪春菜 午後8時30分】 みんなはどうしているだろうか。 ホテルの一室でベットに寝転がりながら考える。 新垣さんはまじめな人だからきっとこのゲームに反感を持ってくれているはず。 道重さんはやさしい人だからきっと私たちのことを心配してくれているんじゃないだろうか。 田中さんは強い人だからみんなを守ろうとしてくれているかもしれない。 光井さんはしっかりした人だからこのゲームを終わらせる方法を一緒に考えてくれるはず。 譜久村さんは… 春菜の脳裏に起こっていないはずの聖との出来事が鮮明に蘇る。 無理なのかもしれない。 春菜の心は深く沈む。 ずっと信じていた。ずっと疑わなかった。 それでも春菜の想いは報われなかった。 それならばきっと今回も… って、何妄想ごときに落ち込んでるの春菜! 頭をブンブンと思いっきり振って悪夢を振り払う。 これが妄想でも本当にあったことでも、今回も同じ結果になるとは限らない。 私は疑わない。 これからもずっと信じ抜くんだ。 ベットから飛び起きる。 気合いが入った。だったらこんなところでのんびりはしていられない。 すぐにでも出発だ。時間に余裕はないのだから。 …とその前におトイレへ。 117 :名無し募集中。。。:2012/02/07(火) 22 58 11.06 0 部屋の扉を開ける。 ギギギィーという音が廊下に響いた。 部屋に入れば小奇麗な内装と閉じた空間にほっとしたけど、部屋の外・無人のホテルはやっぱり気味が悪い。 あまり足音をたてないようにして廊下を歩く。 トイレの表示は廊下の奥を指していた。 途中、開きかけの扉を見かけ、ふと中をのぞいてみる。 するとそこはまるで漫画で見た大富豪の食卓のような部屋だった。 好奇心に負けて中へと入る。 部屋の真ん中にはなが~いテーブルが置かれ、向きあう形で椅子がいち、にぃ、さん…。 「すごい…」ここは本当にホテルなのだろうか? おしゃれな食堂…というにはあまりにも凝りすぎているように思う。 そんなことを考えながらテーブルに沿って歩いて行くと、一番奥の席の後ろに何かが飾られている。 春菜は“それ”を見て目を丸くした。 走って近づく。 “それ”が春菜の思う通りのものだったらとんでもない発見だ。 額から外して手に取ってみる。 かなりの重量。これはまぎれもない本物。 “それ”はまさに春菜の思った通りのものだった。 ほこりをかぶってはいるがちゃんと使えそうだ。 すると何かに気付いたのか春菜は突然近くの戸棚を片っ端からひっくり返しだす。 「あった!」 春菜が見つけたのは“それ”を使うのになくてはならないものだった。 すごいものを見つけてしまった。 春菜には少しだけ“それ”を使った経験がある。これがあれば… そこまで考えて春菜は我に返る。 ちがう。何をはしゃいでいたのか。これは今の私に必要なものじゃない。 そう思い直すと、春菜は“それ”を額に戻して食堂を出る。 そして「はぁ…」とため息をひとつついてすごすごと再びトイレへと向かった。 …ところで突然「きゃっ!」という声をあげて尻もちをついた。 119 :名無し募集中。。。:2012/02/07(火) 23 20 52.51 0 何が起こったのか春菜にもわからなかった。 食堂を出た瞬間何かに思いっきり手を引かれ、バランスを崩して倒れてしまったのだ。 それも尻もちをつくかたちで。 「いたたたた…ふむぐっ!」 今度は突然口をふさがれる。 もう完全にパニックだ。 「むーっ!むーっ!」 必死になって暴れる。 「ちょっ、静かにして!お願いだから暴れないでってば!」 「むーっ!むーっ!むーっ!」 パニック状態の春菜の耳にはそんな声はまったく届かなかった。 「この…暴れるなって言ってるだろ!」 ゴツンッという鈍い音とともに後頭部に激痛が走った。 「むぐぅっ!」 「いったー!!!」 どうやら後ろにいる相手も痛かったようだ。 その様子だと幽霊じゃないらしい。 「うー…どんな石頭してんだよ…」 そしてその声は聞き覚えがあった。 「むむぅー?」 「うんそう」 ちょっと不機嫌そうな声。 「だから黙って話を聞いてくんない?」 この状況ですぐに命を奪うようなことをしないということは遥にその気はないのだろう。 「むん」 コクコクと頷いて返してみる。 「良かった。じゃあ…」 遥がそのままの体勢で話し始める。 …せめて拘束を解いてほしいんだけど… 120 :名無し募集中。。。:2012/02/08(水) 00 26 56.93 0 【4周目 一日目 飯窪春菜 工藤遥 午後9時】 遥は車で運ばれている途中に暴れて事故にあい、そのまま逃げてきたのだという。 そしてこのホテルへ辿り着き、潜伏していたらあとから春菜が現れた。 そこからは隠れてしばらく様子を見ていたそうだ。 「じゃあ、なんで急に?」 「はるなんはこのゲームに参加する気がないことを確認できたからね」 「だったら驚かせないでよ」 本当にびっくりしたんだから。 「ごめん。でも突然目の前に現れて話を聞いてって言っても簡単じゃないだろ」 確かにそうかもしれない。 「だから強制的に聞くしかない状況にしたかったんだ」 この娘はまだ若いのになんてしっかり考えているんだろうか。 春菜は感心した。 「…ってことは、くどぅーもゲームに参加する気はないんだよね?」 「うん、当然。…それにハルは償わなきゃいけないから」 「えっ?」 「ううん、なんでもないよ」 すると遥はバッグから上着を取り出すと春菜に手渡してきた。 「これ着て」 「なぁに、これ?」 「たぶん防弾チョッキ」 「えっ!?ダメだよ!これはくどぅーのでしょ?くどぅーが使わなきゃ」 「いいからはるなんが着て!これははるなんが着なきゃダメなんだよきっと」 その言葉にはなぜか強い説得力があった。 「それとこれも」 次に取り出したのはハチマキだった。 「なんでハチマキ?」 「違うよ!たぶんこれは額当てだよ!」 なるほど。確かに鉄板が入っている。 「もうっ!年上なんだからしっかりしろよ!」 121 :名無し募集中。。。:2012/02/08(水) 00 30 44.17 0 遥の檄に苦笑いを浮かべる。 (でもまぁ、もっともだから言い返せないか…) ちょっとだけヘコんだ。 防弾チョッキに額当てを身につける。 中に着込んだのと髪を下ろすことでパッと見わからない。 それにしてもこれだけの装備をくどぅーはなぜ持っていたのだろうか。 ゲームの説明では武器防具の類は一人一個と伝えられていたはず。 そんなことを考えていると、春菜が着替えている間にどこかへ行っていた遥が戻ってきた。 「ちょっと、くどぅー“それ”!?」 遥が持ってきたのはさっき春菜が見つけた“それ”だった。 ―――レミントンM31RS―――ショットガンだ。 「うん、持ってく」 「…何で?くどぅーはゲームに参加しないんでしょ?だったら必要ないじゃない」 「…うん、参加しないよ。でも…今は詳しく言えないけど、たぶんこれが必要になる時がくるんだ」 遥の目は真剣だった。 「じゃあ行こう」 遥が歩き出す。 しかしショットガンの重みでフラついていた。 「待ってくどぅー。それは私が持つよ」 「えっ?でも…」 「大丈夫、私使った経験があるの。ちょっと種類は違うけどね」 そう言って遥からショットガンを受け取る。春菜にはちょっとだけクレー射撃の経験があったのだ。 遥と二人でホテルを後にする。 春菜には遥の胸の内をすべて見通すことはできなかった。 おそらく遥はまだ何かを隠している。 でも、それも含めて信じ抜こう。 私はそうすると決めたのだから。 108 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 14 29 53.58 0 【4周目 一日目 飯窪春菜 工藤遥 午後10時】 二人は黙々と歩く。 遥が先行し、春菜があとに続く。 もう結構歩いた。 出発して1時間は経つだろう。 さすがに疲れた。 「ね、ねぇくどぅー。…ちょっと休憩しない?」 恐る恐る提案してみる。 遥がぴたっと止まる。 (あっ、やばい、怒られるかな) 春菜はちょっと脅える。 「そうだね、そうしよう」 その返答にほっとする。 二人は木に寄りかかって座る。 ペットボトルの水を二人で回し飲みした。 (そういえば…) 「ねぇ、くどぅー。私たちってどこに向かってるの?」 考えてみればメンバーを探すといってもあてがあるわけじゃない。 それにしては遥の足取りはどこかへ向かっているかのようにしっかりしている。 今更となると間抜けな質問だが、ちゃんと聞いてみた。 「まぁちゃんのところ」 「えっ?」 遥はそう言って自分の口を手で覆った。 「くどぅー、今なんて?」 「…まぁちゃんの居そうなところって言ったの!」 「そ、そう」 遥のちょっと強めな口調に尻込みしてそれ以上追及するのはやめた。 109 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 14 53 40.83 0 それにしても遥の言動はおかしい。 さすがに動揺しているのか、遥もそわそわとしているようだ。 ふと視線を落とすと、遥が手の中で何かをいじっている。 「それなぁに?」 遥はハッとして隠した。 「な、なんでもないよ!」 いじっていたのは無意識だったのだろうか。 よくは見えなかったが携帯電話みたいだった。 自分のかな? 私のはゲーム開始前に私物のバッグに入れておいたからそのまま没収されてしまっていた。 「携帯電…」 そう言いかけたところで遥が勢い良く立ち上がる。 「さぁ、もう行くよ。時間ないんだから」 そう言ってさっさと歩き出してしまった。 「えぇっ!?」 春菜も立ち上がる。 「ほら、はやく来ないと置いてくぞ」 「わっ、ちょっと待ってよくどぅー」 急いで後に続く。 腑に落ちない。 携帯電話くらい持っていたって別に悪いわけじゃない。 何をそんなに焦っているのだろうか。 遥の隠しごとは深まるばかりだった。 110 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 15 24 52.33 0 【4周目 一日目 OG 午後10時15分】 「ねぇ、この工藤って娘おかしくない?」 モニターを見ながら矢口が口を開く。 「どないした矢口?」 「これ聞いてよ」 音声が再生される。 ―――「ねぇ、くどぅー。私たちってどこに向かってるの?」「まぁちゃんのところ」――― 「おかしくない?この娘なんで佐藤って娘がいる場所知ってるの?」 「確かに」 「でさぁ、これ見て」 遥の手元を拡大表示する。 「なんや?」 「これさぁ、携帯電話じゃない?」 「でもこの娘の携帯もゲーム開始前にちゃんと没収しておいたべさ」 「じゃあこれ見て」 今度はMAPが表示され、遥と春菜の現在地、そして優樹の現在地が示される。 「まっすぐ佐藤って娘のいるところに向かってるように見えるんだけど」 矢口の指摘に一同が納得する。 「どういうことや?」 「あの携帯みたいなのって、うちらが持ってるレーダーと同じようなものなんじゃない?」 「どうやってそんなの手に入れるべさ?」 「あの娘の持ってたバッグって圭ちゃんの車に積んであったやつでしょ。もしかして取り違えたんじゃないの?」 「おいらもそう思うんだよね。だから防弾チョッキに額当てなんてのも持ってたんじゃないかって」 「どうするべさ、裕ちゃん?」 「そうやなぁ…」 「あのバッグには他に何が入ってんの?」 「圭ちゃん知らない?」 「…私が知ってるわけないでしょ」 「へぇ…面白そうだな。俺が行って回収してこようか?」 (…まずいことになったわね…) 111 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 15 30 50.64 0 「そうやな、一人だけ特別扱いはあかんな。じゃあ、よっしーに…」 「ちょっと待って裕ちゃん」 保田が遮る。 「ん?なんや?」 「調度いい機会だから“あれ”を試してみない?」 「“あれ”ってなんや?」 「ジェノサイダーよ」 「あぁ、それね」 吉澤はつまらなそうに言い放つ 「でもそれって洗脳がうまくいってないんじゃなかったっけ?」 「それはもう調整済みよ」 「ほぉ、それは面白そうやなぁ」 「なら一回俺と闘ってみない?」 「ダメよ!あんたはまた壊すでしょ!」 「そうだよねぇー、よっしーって楽しくなるとやり過ぎちゃうもんねぇー」 矢口が楽しそうに嫌味を言う。 「ほんなら、決まりや。ジェノサイダーに回収させる。圭ちゃん、頼んだで」 「わかったわ」 「ちぇっ、つまんねぇの」 吉澤は部屋を出て行った。 「じゃあ、準備してくるわ」 保田も部屋を後にする。 「はぁ…」 扉にもたれかかって溜息をつく。 「…こうなったら仕方ないわね」 「何が仕方ないのかなぁ?」 吉澤が急に現れて保田の顔を覗き込む。 「な、なんでもないわよ!」 保田は吉澤を押しのけて、ジェノサイダーが眠る部屋へと去って行った。 113 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 16 17 24.21 0 【4周目 一日目 飯窪春菜 工藤遥 午後11時10分】 あれからまた1時間以上が経った。 未だに誰とも出会えていない。 …それはそうだ。 それというのも、ずっと獣道ですらない草木が生い茂る森の中を登ったり下りたり登ったり下りたり… その繰り返し。 遥はいったいどこを目指しているのか…。 「ねぇ、くどぅー。こんな森の中ばっかりじゃなくて、もっと開けた場所を探した方がいいんじゃないかな?」 「…」 「ねぇ、くどぅーってばぁ」 「…」 聞いてない。 ずっとこの調子である。 すると突然遥が走り出す。 「えぇっ!?今度は何!?」 春菜も後に続く。 ほどなくして森が切れ、一気に視界が広がる。 辿り着いたのは海を見下ろす崖だった。 「行き止まり…」 春菜はガクッと肩を落とす。 しかし遥は崖のすぐ側まで近づくと、その下を見下ろした。 「あそこだ…」 そしてそうつぶやいた。 114 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 16 32 48.86 0 春菜も恐る恐る崖に近づいて見下ろしてみる。 そこには小さな集落があった。 「くどぅー、あそこって」 「もしかしたら誰かいるかもしれない。行ってみよう!」 そう言って踵を返したその時。 草木がガサガサと揺れる。 ちょうど自分たちが来た道のあたり。 あきらかに人が草木をかき分ける音。 遥がバッグから何かを取り出す。 拳銃(ベレッタM92)だった。 「ちょっと、くどぅー!?」 春菜が慌てて遥の手を押さえる。 「離して!」 「もしかしたらメンバーかもしれないのにいきなり銃を向けるなんてダメだよ!」 「あれは違う!」 「どうしてわかるの?!」 「ハルにはわかるんだ!!!」 春菜の手を振りほどき、遥は銃を構える。 すると森の中から現れたのはパンダだった。 「パ…パンダ…?」 春菜は固まる。 なぜこんなところにパンダが? 「攻撃ノ意思確認。迎撃シマスダ」 パンダがそのかわいらしい手に機関銃(H&K MP5)を取り出した。 115 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 16 51 19.42 0 「避けて!」 遥が春菜を突き飛ばす。 それと同時に遥も反対側へ飛び退く。 直後に銃弾が炸裂する。 「はるなん、走って!」 遥はパンダに向かって拳銃を放つ。 パンダは銃弾を避けることもしない。 被弾した弾はガキンという音を立てて弾かれた。 「くっ!」 それでも遥はかまわず撃ちまくる。 春菜が逃げるまでの時間稼ぎ。 しかし春菜は状況が飲み込めず、倒れたままの姿で茫然としていた。 「はるなん!立って!逃げるんだよ!」 「何これ…」 「はるなん!…くっそー!」 遥は拳銃で牽制し、パンダが放つ銃弾を回避しながら春菜へと駆け寄る。 そして春菜の奥襟を掴むと、無理やり引きずった。 「い、痛っ!ちょっと何、何なのよこれ!」 「いいから逃げるんだよ!立って!はやく!」 春菜もようやく立ちあがって走り出す。 後ろは崖だ。 逃げるならばパンダの脇を通り抜けるしかない。 二人はパンダへと一直線に走る。 パンダはもう片方の手に鉤爪を取り出した。 116 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 17 03 26.50 0 二人を鉤爪が襲う。 遥は体を反転させるとそれを拳銃で受け止めた。 「くどぅー!」 「逃げて!」 「ダメだよ!」 「いいから早く!」 パンダはもう片方の手を機関銃から鉤爪に持ち替える。 遥の両手は片手の鉤爪を押さえることで塞がっている。 無防備の遥に向かってもう片方の鉤爪が薙ぎ払われる。 間一髪。 遥は押さえていた方の鉤爪を受け流すことで回避する。 しかし左腕にはしっかりと肉を削り取られた痕があった。 「くどぅー!」 春菜が遥に駆け寄る。 パンダが両手の鉤爪を大きく振り上げる。 その時、ヒューッパンという音とともに夜空が照らされた。 パンダがその音と光に反応する。 「今だ!」 遥は隠し持っていた発煙筒に火を点けるとパンダの眼前に振りかざす。 「アイヤー!?」 パンダは顔を押さえて悶え苦しむ。 「逃げるよ!」 遥は発煙筒を捨てると、春菜とともに森の中へと逃げ込んだ。 117 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 17 26 46.93 0 【4周目 二日目 飯窪春菜 工藤遥 午前0時】 春菜はやみくもに走り続けた。 パンダから逃げるために。 しかし遥の足取りは相変わらずしっかりとしている。 同じようにやみくもに走っているようで、やはりどこかを目指している。 それはもう春菜にもわかっている。 さっきの崖で見つけた集落。 遥はそこに向かっているのだろう。 そしておそらくそこには優樹がいる。 それだけじゃない。 さっきのパンダに襲われたこと。 あれもきっと遥に関係しているのだろう。 そんなことを考えていると、再び森が切れる。 目の前には集落が見えた。 「「はぁ…はぁ…はぁ…」」 遥と二人で肩で息をする。 さすがの遥も息が切れているようだ。 まだまだ私も負けてない。 春菜はちょっとだけそんなことを考えていた。 「ここにまぁちゃんがいるの?」 遥が春菜を見る。 「うん」 観念したかのように遥は素直に答えた。 「じゃあ迎えに行こうか」 しかし春菜は歩き出すが、遥は立ち止まったままだ。 「はるなんだけで行って。…ハルはここで待ってるから」 遥の目は何かを訴えていた。 春菜は何も聞かず「わかったよ」そう応えて集落へと入って行った。 119 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 18 12 09.01 0 【4周目 二日目 工藤遥 午前0時20分】 遥は一通りの準備を済ませて、森の中で息をひそめる。 パンダは自分を追ってくる。 おそらくイレギュラーとなってしまった自分を仕留めるために。 準備とはそれを迎撃する準備だった。 なぜ手っ取り早く首輪の爆弾を作動させないのか。 それはわからないが、そうならないなら自分にとって好都合だ。 少しでも長く。 少しでも多く。 メンバーを守る。 それが遥の決意。 自分の“過去”に対する償い。 ガサガサと草木が揺れる。 携帯電話のレーダーにその相手は映らない。 “敵”だ。 遥はマシンガン(グリースガン)を構える。 本来ならば隠れることに意味はない。 なぜなら自分の位置は相手に筒抜けであることはわかっているから。 それでも隠れないよりはマシだ。 “敵”が近づいてくる。 ただ遥には一つだけ迷いがある。 “敵”であるパンダ。 それは“味方”になってくれたあの人のはずだから。 遥の潜む草むらをかき分け、パンダがぬぅっと顔を出す。 遥は待ちかまえていたように銃口を突きつけると、躊躇なく銃弾を放った。 120 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 18 36 18.05 0 【4周目 二日目 佐藤優樹 午前0時10分】 優樹は目を覚ます。 普段ならこんな時間に目を覚ますことなんてない。 心臓がポクポクする。 変に高鳴る胸へと手を当てて一度大きく深呼吸。 そしてベランダに出る。 柵に手を置き、空を見上げる。 宇宙まで突き抜けるような澄んだ月夜だった。 嘘みたいなおそろしいゲームの真っただ中にいることを忘れてしまうくらいに。 サクッという足音が聞こえた。 優樹はしゃがんで隠れる。 サクサクと足音が近づいてくる。 柵からそぉっと顔を出して覗いてみた。 それは春菜だった。 「はる…」 と声を出しそうになって慌てて自分で口をふさぐ。 「まぁちゃん!?」 しかし時すでに遅し。 春菜にしっかりと聞かれていた。 「まぁちゃん、いるの?お返事して?」 春菜が襲ってくるなんて考えられない。 でも恐い。 優樹は迷ったあげく、返事をせずにドタバタと足音を立てて部屋へと逃げ込んだ。 「まぁちゃん、そこにいるのね」 春菜は足音のした家へと入っていった。 122 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 20 11 58.98 0 120の続き 優樹は部屋に入るとドアにカギをかける。 そしてバッグから拳銃を取り出し、それを持って布団の中でうずくまった。 ドタドタと階段を上がってくる足音。 そしてドアの前で止まる。 コンコンとドアをノックする音。 「まぁちゃん。春菜だよ」 優樹は返事をしない。 「…開けて…くれないよね」 春菜はノブを握ることなく沈黙した。 そしてドアに寄りかかって膝を抱えて座る。 「…恐い?…恐いよね。…私も恐い。…おかしいよね、こんなの」 ドア越しに話かける。 「モーニング娘。に加入したばっかりの時のこと憶えてる? まぁちゃんが突然自分のことまぁちゃんって呼んでさぁ、私たちビックリして笑っちゃって。 それからだよね。みんながまぁちゃんって呼ぶようになったの」 春菜は続ける。 「新垣さんってすごいよね。真面目でしっかりしてて、歌もダンスもうまくて。 モベキマスの時なんて、ハローみんなのことをちゃんとまとめてさぁ。 まぁちゃんがあこがれるのわかるなぁ。でも道重さんもすごいんだよ…」 「9期の先輩たちとさぁ…」 「亜佑美ちゃんとまぁちゃんって姉妹みたいだよね…」 「くどぅーってああ見えてすごいやさしいよね…」 それは思い出。 楽しかったこと、苦しかったこと。 春菜と優樹が短い期間だけどモーニング娘。で過ごした時間の思い出。 たくさんある。 たくさん出てくる。 春菜の目に涙があふれる。 「楽しかったよね…」 124 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 20 25 28.81 0 122の続き 春菜はこぼれそうになる涙を振り払う。 「楽しかった…じゃないよね」 スッと立ち上がる。 「まだまだこれからも楽しいことあるんだもん。“楽しかった”じゃないよね」 ドアの方に向き直る。 「私は帰るよ。みんなと一緒に。そのためにがんばる!そう決めたから! …まぁちゃんはどうする?…このままここに居る?それでもいいよ。 全部終わったらちゃんと迎えに来てあげる。それとも一緒に来る?」 春菜は優樹に選ばせる。 優樹はまだ幼い。 こんなことは酷だとわかっている。 でもこれは本人が選ばなきゃいけないこと。 今は本人が選ぶしかないことなのだ。 このままここで待ち続けることもできる。 それは優樹に許された権利でもある。 「…」 返事はない。 「まぁちゃん、待っててね。必ず迎えに来るから」 そう言って春菜はドアを背にして歩き出す。 すると背後からガチャっとドアが開く音がした。 そして背中から勢い良く抱きつかれる。 「はるなん!…まぁちゃんも行く!」 「うん!」 春菜は振り返って抱きしめ返した。 125 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 20 28 58.64 0 二人は手をつないで歩きだす。 突然…ぐぅっとお腹が鳴った。 「あっ…」 優樹のお腹の音だった。 笑みがこぼれる。 「あっ、そうだ!」 春菜が思い出したようにバッグをまさぐる。 そして取り出したのは武器と書かれた袋。 優樹はびくっとする。 「あぁ!違うの!…これ」 袋を開けると出てきたのはチョコバットだった。 「これが私の武器だって」 春菜が苦笑いを浮かべる。 「まぁちゃん食べていいよ、お腹すいてるでしょ」 優樹はそれを受け取るとしばらくじぃーっと眺め、パキッと二つに割る。 そして片方を春菜に差し出した。 「じゃあ、半分こ」 「…ふふっ、ありがと」 半分のチョコバットを持ちながら二人で笑い合った。 そして二人は微かに思い出す。前にもこんなことがあったと。 そこへ突然銃声が聞こえる。優樹が春菜の腕にしがみつく。 「くどぅーだ」 「くどぅー?」 「くどぅーも一緒に来てるの。…ううん、くどぅーに連れてきてもらったの。だから助けにいかないと! まぁちゃんはここで待ってて」 優樹は首を振る。 そして持っていたチョコバットをさらに半分に割ると 「くどぅーと一緒に食べる」 そう言って春菜を見つめ返した。 優樹のその強い瞳に春菜はうんと頷くと、二人で一緒に駆け出した。 128 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 22 19 31.85 0 【4周目 二日目 工藤遥 午前0時30分】 パンダは銃弾を避ける。 拳銃の弾丸を弾く装甲ならば避ける必要もなさそうだが、小銃とはいえ同じ個所に連続して衝撃を受け続けるのは危険だ。 遥は避けられることをわかっていながら弾幕を張り続ける。 するとパンダの足にワイヤーがかかる。 その瞬間、遥は飛び退いた。 大きな爆裂音。 仕掛けてあった手榴弾が爆発したのだ。 パラパラと木の欠片が舞う。 爆音の余韻が残る中、遥は素早くマシンガンの弾倉を補充し、構え直す。 その先には煙が立ち込めるなか平然と立つパンダの姿があった。 しかしさすがの装甲も手榴弾の直撃にはダメージを受けていた。 塗装は剥げ、ところどころから生身の身体が見えている。 遥はマシンガンを放つ。 生身の部分に当たれば勝てる。 しかしそこからのパンダの動きは異常だった。 弾丸を“さける”のではなく“よける”。 まるで軌道が見えているかのように。 そして近づいてくる。 遥は驚愕した。 遥の頭に警笛が鳴り響く。 本能が告げる。―この相手には勝てない―今すぐ逃げるべきだ― 「うわぁぁぁぁっ!」 遥は歯を食いしばって逃げ出しそうになる足を堪える。 しかし先に根をあげたのはマシンガンの弾倉だった。 パンダが目の前に立つ。 足は震え、身体が硬直する。 そしてパンダの鉤爪が振り上げられた。 129 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 22 23 35.97 0 遥は死を覚悟して目をつぶる。 …しかし鉤爪は振り下ろされてこなかった。 「…ぐっ…」 パンダから声が漏れる。 苦しそうな声だった。 遥が目を明け、パンダの顔を見上げる。 するとそこには喉元から顎にかけて大きな亀裂が走っていた。 「ガッ!」 とパンダが再び声をあげると、鉤爪をもう一度振り上げ直した。 今度こそ本当に振り下ろされる。 しかし今度は遥の足も動く。 しゃがみこんでパンダの足の間へ飛び込み、背後に出る。 そして弾倉を補充すると後頭部へ向けて放つ。 パンダもすぐに振り向くが、そこに遥はいない。 すでに背後にまわりこんでいる。 そしてまた後頭部に銃弾を放つ。 パンダはぐるぐると回る。 まるで自分の尻尾を追いかける犬のように。 「…あぅ…」 パンダの動きが鈍る。 (今だ!) 遥は腰から拳銃を抜くと、パンダの懐に飛び込む。 そして顎の亀裂に銃口を差し込む。 両者の動きが止まる。 「ハルの勝ちだね」 そう宣言して、遥は拳銃の引鉄を…引けなかった。 130 :名無し募集中。。。:2012/02/12(日) 22 29 45.98 0 拳銃を差し込んだ亀裂から少しだけ覗く顔。 それは紛れもない、あの時笑いかけてくれた顔。 遥の目から涙がこぼれる。 「撃てない…撃てないよ…」 遥は拳銃を抜くと力なくその場に膝をついた。 しかしパンダにはもう躊躇はない。 眼下に座り込む遥に対して容赦なく鉤爪を振り下ろした。 その瞬間。 パンダの顔面がバカンッと音を立ててのけ反った。 遥が振り向く。 そこにはショットガンを構えた春菜の姿があった。 「はるなん!」 春菜はそのままの姿勢でポンプをスライドさせる。 パンダはゆっくりと頭を起こしていた。 そしてその頭に向かってガオンッと凄まじい音を放って散弾を打ち込んだ。 2発目の散弾を食らったパンダの頭は粉々に弾け飛び、その身体もろとも吹き飛ばされた。 「くどぅー!」 優樹が遥へ駆け寄る。 「まぁちゃん…」 土埃をかぶった遥の身体を丁寧にはたいていく。 春菜もゆっくりと遥のところまで歩いてきた。 「大丈夫だった?」 「うん…」 遥は倒れているパンダへと目を向ける。春菜と優樹も遥の視線を追う。 倒れて動かなくなったパンダ…いや、装甲を砕かれ、あらわになった姿は一人の女性だった。 133 :名無し募集中。。。:2012/02/13(月) 00 04 39.23 0 【4周目 二日目 飯窪春菜 佐藤優樹 工藤遥 午前1時】 遥が女性へと近づき、顔を確認する。 弾け飛んだのはパンダの頭だけで、中の女性の頭は奇跡的に無事だった。 「…やっぱりジュンジュンさん」 「えっ!?」 「?」 その名前に春菜は驚くが、優樹は小首をかしげていた。 「じゃ、じゃあ私ジュンジュンさんを殺…」 「大丈夫」 春菜の言葉を遥が遮る。 遥はジュンジュンの胸に手を当て、まだ心音があることを確認した。 「よ…よかったぁ~」 安心してへろへろとうなだれる春菜。 しかしすぐに声をあげる。 「でも、それじゃまた!…」 目を覚ませば襲ってくる。 「…うん、だろうね」 二人の間に沈黙が流れる。 「はい」 いつの間にか遥の隣に来ていた優樹が持っていたチョコバットを差し出す。 「えっ…?」 「半分この半分こ」 優樹の言動に春菜が吹き出す。 「ふふっ、まぁちゃんくどぅーと一緒に食べたいんだってさ」 「はい」 優樹は遥の口に無理やり持っていく。 「ちょっ、なんだよこれ!」 「チョコバット」 134 :名無し募集中。。。:2012/02/13(月) 00 06 02.13 0 三人でチョコバットを食べる。 なんだかすごくおいしく感じた。 「これからどうする?」 その問いに少しだけ間をおいて遥が答えた。 「二人はみんなと合流して」 「えっ?」 遥は立ち上がる。 「ジュンジュンさんが目を覚ませばハルを追いかけてくる。ハルが一緒だとみんなと合流しても巻き込んじゃうから」 「そんなことできるわけないじゃない!」 春菜の言葉には怒気が含まれていた。 遥はその気持ちがうれしかった。 遥は携帯電話を取り出すと二人に見せる。 「これは?」 「レーダーだよ。みんなの居場所を教えてくれる」 画面には12個の色違いの点。 「これがハルたち」 遥が指差したのは画面の中央。 ブラウン、エメラルド、オレンジの3色の点が集まっていた。 「それで、ここを見て」 次に指差された場所には9色の点が一つに集まっていた。 「たぶん、ハルたち以外のみんなはここに集まってる。それもまだ一人も死んでない」 春菜と優樹は顔を見合わせて喜んだ。 「はい」 遥が携帯電話を春菜に手渡す。 「これでみんなと合流できるから」 そう言って後ろを向いて歩き出した。 しかしその手を優樹が掴む。 135 :名無し募集中。。。:2012/02/13(月) 00 09 03.09 0 「くどぅーも一緒じゃなきゃヤダ」 その手はしっかりと遥の袖を握り、優樹は絶対に離さないぞという顔をしていた。 「…まぁちゃん、それはできないんだ」 優樹の手に遥が手を添える。 「そんなことないよ、今みたいにみんなで協力して撃退すれば」 遥は首を振る。 「たぶん今はまだ協力はできないと思うんだ」 優樹の手をやさしくはずす。 「みんなが集まっていて誰も死んでいないなら、きっと協力しようとしてるんだと思う。でも…」 遥は首輪をさわる。 ハッとして春菜と優樹の二人も自分の首輪をさわる。 二人はその存在をすっかり忘れていた。 「これがある限り、協力は簡単じゃない」 誰も殺さなくても誰かが死ぬ。それが誰かはわからない。でも誰かを殺せば自分は死なない。 恐ろしいルール。 「…だから、だからさ。この首輪をなんとかする方法をみんなで考えてほしいんだ。 それには余計な混乱を招くわけにはいかないだろ。ジュンジュンさんのことだけじゃない…」 遥は自分のバッグを持ちあげる。 「この中には武器が詰まってる。こんなの持ってたらみんなも安心できないだろ」 確かに一人だけ大きな力を持っていてはどうしてもわだかまりができる。 「たぶんジュンジュンさんに追いかけられるのはこれが原因だと思う。本来ならハルが持ってちゃいけないものなんだ」 「だったら捨てちゃえば…」 「言ったろ。これは必要なものなんだ」 遥はバッグを背負う。 「だからお願いだよ。二人はみんなと合流して、協力して首輪をなんとかして。そしたらみんなで遥を迎えに来てよ、遥の居場所はそれでいつでもわかるでしょ」 遥は振り返り「ね」と言って笑った。 走り去る遥の背中を二人は姿が見えなくまで見送る。 そして見つめ合い、一度うんと頷くと携帯が指し示す9人のところへと走り出した。 二人は誓う。 絶対に全員で一緒に遥を迎えに来ると。
https://w.atwiki.jp/m12br/pages/43.html
95氏による三週目のもう一つのエンドルート 95 :名無し募集中。。。:2012/01/29(日) 02 44 14.94 0 51の続き【[[アナザー]]版】 【鞘師里保 工藤遥 二日目 午後2時45分 アナザー版】 「くどぅー!?」 里保が驚き、狼狽している間に遥はすぐに次の行動に移る。 マシンガンを握り直し、里保へと向ける。―ジャキッ― しかし里保も持ち前の身体能力でとっさにその銃口をはらう。―パシッ― さらに遥を取り押さえようと両手を伸ばすが、今度は遥が小柄な体躯を活かし、里保の手をすり抜ける。 かわされた里保は前のめりに倒れそうになった。 遥はその隙に立ち上がり、里保に向けて弾幕を張る。―ガガガガガガッ― 里保は横っ跳びで転がりながらかろうじて銃弾を避けた。 里保が階段前を明け渡し十分に距離が離れたのを見計らうと、遥は即座に銃撃を止め、階段へ向かう。 (…さっき壁が壊されたから上の階はダメかもしれない…) そう判断した遥は階段を駆け下りていった。 しばらくすると崩れた場所から漏れた外気によって煙が晴れていく。 残された里保はゆっくりと立ち上がると少し頭を整理した。 (わたしが戦ってたのはくどぅーだった…) 銃口を向ける遥の姿とその時の遥の顔がうかぶ。 (あの娘は殺る気だった…いや、わたしにはわかってたはず。あの娘そういう娘だって) 里保の脳裏に鮮明に焼きついた“ここではないどこか”“今ではないいつか”の遥に殺されるイメージ。 (わたしはくどぅーと決着をつけなきゃいけないんだ!) 発煙銃を拳銃に持ち替える。 それを少しの間見つめ、一度目を閉じると深々と深呼吸をする。 里保の心は決まる。 「待ちなさいよ!くどぅー!」 そう叫びながら、未だ暗闇が包む階下へと駆け出した。 96 :名無し募集中。。。:2012/01/29(日) 02 46 38.70 0 【生田衣梨奈 二日目 午後3時 アナザー版】 建物の中は暗く、衣梨奈は完全に道を見失っていた。 (何も見えないっちゃん…里保…どこにおると?…) ゴツンッ 壁に頭をぶつける。 「痛っ」 片手で額をさすりながらもう片方の手で周囲を探ってみると…どうやら行き止まりのようだった。 壁に額をつけてひとつ大きなタメ息をつく。 「里保…」 さっきの崩落。 里保の安否が心配でたまらなかった。 ―――…タタタタッ…パンッ…タタンッ…――― (この音は…!) 銃撃の音だ! 衣梨奈は音のする方へ走った…ガツッ…ズザザザザ-…しかしすぐに何かにつまずき、派手に転んでしまう。 ゴツッ ヘッドスライディングのように滑り込んだ衣梨奈の頭が行き止まりにぶち当たる。 それでも痛みをこらえ、すぐさま立ち上がろうと手をかけると、そこは段差になっていた。 …手探りで確かめる。 (ここは階段だ!) ―――…パンッ…――― 音はここの上から聞こえる。 衣梨奈は立ち上がると今度は慎重に、且つ急いで階段を上った。 97 :名無し募集中。。。:2012/01/29(日) 02 49 14.48 0 【鞘師里保 工藤遥 二日目 午後3時 アナザー版】 遥の思惑ははずれ、3階で起きた崩落によって2階の壁も大部分が崩れていた。 遥を隠してくれるはずだった闇はもうほとんどない。 こうなったら正攻法で行くしかない。 ザザッ 後方で砂を踏む音が聞こえる。 遥はすぐ横の部屋に飛び込んだ。 バンッ! 直後に銃声が鳴る。 考慮時間はわずかだ。 遥は部屋を見渡す…ダメだ、この部屋じゃ心許ない。 だが遥は考える。 (だったらこの部屋に呼び込んでこれを使えばいい) 取り出したのは火炎瓶だ。 部屋の外の様子を伺う…。 里保は反対側の扉で構えている。 心の中で数を数える。 (…1…2……3!) 遥は扉から廊下へ半身を出すとマシンガンを放つ。―ガガガガガガッ― 里保はすぐさま部屋へ転がり込むと遥がいた扉付近へ銃を放つ。―バンッ― しかしそこにはすでに遥の姿はない。 マシンガンを撃ってすぐに廊下側へ出ていた遥はマッチで火炎瓶に火をつけると里保がいた扉へ投げつける。―ガシャンッ― 一瞬で片方の入口が炎でふさがれる。 燃え上がる炎に里保の思考が停止する。 だがその時、遥はすでにもう一つの火炎瓶に火をつけていた。 そしてもう一つの入口。 自分の目の前に火炎瓶を投げる。 たった二つの入口はどちらも炎によってふさがれた。 98 :名無し募集中。。。:2012/01/29(日) 02 51 00.72 0 炎の勢いは凄まじく、あっと言う間に部屋を包みこんでいく。 逃れる方法はひとつしかない。 だけどそれにはとてつもない勇気がいる。 里保の足が竦む。 とはいえこのままここにいれば確実な死が待っている。 さらに時間が経てば炎の勢いはもっと増すだろう。 決断は一刻を争う。 「うわぁぁぁぁぁぁっ!」 大声を張り上げて自らの背中を自らで押す。 里保は勢い良く駆け出すと、炎の中へ飛び込んだ。 ブワッ…ザザァ---… 里保が部屋から飛び出してくる。 「ケホッ…ケホッ…」 部屋を見つめる。 ゴォォォォォォォ さっきまであの中に自分がいたのかと思うと… ジャキッ 里保の後頭部に銃口が突き付けられる。 「ハルの勝ちだね」 背後から高らかな勝利宣言が聞こえた。 「バイバイ、やっしー」 里保は自らの死を受け入れ、遥はゆっくりと引鉄を引い… 「やめるっちゃーーーーーーーん!!!」 「「えっ!?」」 99 :名無し募集中。。。:2012/01/29(日) 02 53 00.06 0 【生田衣梨奈 鞘師里保 工藤遥 二日目 午後3時10分 アナザー版】 衣梨奈が2階に着いた瞬間、辺りは急激に明るくなる。 廊下の先の部屋から炎が上がったのだ。 (何が起きてるっちゃん…) するとその部屋から何かが飛び出してくる。 …里保だった。 「里保!」…と喜んだのもつかの間。 その背後から遥が銃を突きつけた。 その光景に考えるよりも先に身体が動く。 「やめるっちゃーーーーーーーん!!!」 「「えっ!?」」 驚く二人に向かって衣梨奈はものすごい勢いで突進した。 遥は不覚にも混乱してしまう。 (くっ、迎撃!…いや、違う!まずはやっしーにとどめを!) その刹那の迷いが衣梨奈の到達を許し、衣梨奈の体当たりを食らうことになる。 ドカッ 遥は弾き飛ばされ、尻もちをつく。 里保と衣梨奈はもろに衝突し、里保に衣梨奈が覆いかぶさるように倒れこんだ。 「い…たたっ…」 「え、えりぽん!?」 「里保…無事?」 状況が飲み込めず、素直にコクコクとうなずく里保。 「よかった」 衣梨奈は心底安心した顔をする。 その顔を見た瞬間、里保は心につかえていた大きなわだかまりが溶けていくのを感じた。 100 :名無し募集中。。。:2012/01/29(日) 02 56 23.22 0 「こ…っの…」 遥がよろよろと立ち上がる。 それに気付いた衣梨奈と里保はすぐに立ち上がろうとするが、それよりも一瞬早く遥のマシンガンが火を噴いた。 「邪魔するなーーー!!!」―ガガガガガガッ― 衣梨奈は里保を抱きかかえて飛び退く。―ヒュンッヒュンッヒュンッパス「うっ」ヒュンッパスパスヒュンッ― 銃弾の雨が止む。弾切れだ。 里保はすぐさま遥に向かって拳銃を構える…が、その手を衣梨奈が制する。 「えっ…?」 驚いて衣梨奈の顔を見上げると、衣梨奈はゆっくりと首を横に振った。 そして「ここはえりなに任せるっちゃん」 そう里保に告げると遥に向き直る。 その背中には3つの銃創ができていた。 「え…えりぽん…」 震える里保の声を背に遥へ歩み寄る。 遥は慌てて弾倉を入れ替えようとするが、焦りのあまり手に付かず、床にぶちまけてしまう。 一歩ずつ…一歩ずつ近づいてゆく。 「あっ…あっ…」 カチカチ…空のマシンガンの引鉄を引く…当然弾は出てこない。 衣梨奈が遥の目の前に立つ。 遥は震えていた。 ゆっくりと衣梨奈が遥へ手を伸ばそうとしたその時。 「うわぁぁぁぁっ!」 グサッ… 遥が隠し持っていた鉈が衣梨奈の下腹部に刺さる。 それでも衣梨奈は動じずに遥の手を取るとゆっくりとその身体を包み込んだ。 「ひぅっ!?」 「もう怖がらんでいいとよ。衣梨奈たちが守るけん。一緒にがんばろう」 「えっ…」 「モーニング娘。は家族やけん…信じて」 遥の動きが止まる。 101 :名無し募集中。。。:2012/01/29(日) 02 59 30.64 0 しばらくの間、遥の瞳はただ一点、笑顔の衣梨奈を見つめていた。だが… 「ぅぅ…ぅぁ…ああぁあぁぁぁあぁ!」 いきなり叫び声をあげると遥は衣梨奈を振り払った。 衣梨奈はそのまま後ろに倒れこむ。 「えりぽん!」 里保が駆け寄る。 背中には3発の銃弾、そしてお腹には鉈によって大きな穴が開いている衣梨奈はその命の灯を失いかけていた。 「えりぽん!…えりぽん!」 里保が呼びかける。 衣梨奈はニコっと笑うと里保の頬を撫でた。 涙が溢れる。 どうしてわたしはあの時、えりぽんを信じることができなかったのだろうか。 あの時わたしが信じていればこんなことにはならなかったかもしれないのに。 そして聖ちゃんも…。 里保が拳銃を握り直す。 その手を衣梨奈が弱々しくも掴む。 「信じて…」 衣梨奈のその言葉に里保は拳銃を離す。 そして衣梨奈の手を力強く握りかえした。 ザッ… 「殺らなきゃ…殺られるんだ…」 里保の背後には遥が立っていた。 「だって…殺らなきゃ…殺られるんだもん…」 その手には鉈が握られている。 それでも里保は衣梨奈の手を握ったまま動かない。 信じると決めたから。 遥が鉈を大きく振り上げる。そして… 「うわぁぁぁぁっ!」 思いっきり里保を切りつけた。 102 :名無し募集中。。。:2012/01/29(日) 03 01 23.75 0 …里保はつぶってしまった目を開く。 どうやらまだ自分は生きているようだ。 後ろを見上げる。 鉈は里保の首の手前で止まっていた。 「…なんでだよ」 「…」 「…なんで抵抗しないんだよ!」 里保は衣梨奈の方を向く。 「…だって、仲間だもん」 「ぅ…」 もう一度遥の方を向く。 そして笑顔で 「ね♪」 そう語りかけた。 「ハルは…ぅ…ぐすっ…ハルは…ぅ…ぅわぁぁぁぁん」 遥は泣き出した。 大声をあげて。 里保はきょとんとしている。 思えば、遥の本当に子供らしい仕草を見るのは初めてだった。 「うわぁぁぁぁぁぁぁん」 しばらくの間、遥の鳴き声だけが辺りに響き続けた。 103 :名無し募集中。。。:2012/01/29(日) 03 04 10.37 0 【生田衣梨奈 鞘師里保 工藤遥 二日目 午後4時 アナザー版】 「ぐすっ…ぐすっ…」 「落ち着いた?」 里保が遥の頭に手を置いて問いかける。 「うん」 いつになく遥は素直だった。 遥の顔を覗き込む。 「よし」 ちょっと前までと違い、険が取れてかわいらしい顔に戻っていた。 衣梨奈の身体を起こす。 衣梨奈の傷は重傷だったが、まだ息はある。気休め程度ではあるが、簡単な止血も施してみた。 「ごめんね、えりぽん。痛いと思うけど、もう少し我慢しててね」 そう言って衣梨奈を背負う。 まずは衣梨奈をちゃんと休ませて手当しなければ。 「じゃあ、行こっか」 里保は遥の手を取って建物の出口へ歩き出した。 157 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 25 32.00 0 【アナザー版 二日目 午後4時5分】 「里保ちゃん!?」 建物の出口まで出てきたところで香音と出会う。 「香音…ちゃん」 香音の顔を見ただけで、里保の張りつめた心が緩む。自然と涙が込み上げてきた。 「無事だったんだね」 香音が近づいてくる。少しだけ身体がこわばる。 ベルトの拳銃に手をかけようとして、その手が遥と繋がれていることで我に返る。 (うん…信じるんだ) 香音が両手で里保の身体をペタペタと触る。 「怪我…してない?」 「わたしは大丈夫だよ」 笑顔で応える。 「あれ?」 香音が里保の後ろに隠れている遥に気付く。 「遥ちゃんも無事だったんだね。良かった」 遥は香音を警戒しているようだ。振りかえって“大丈夫”と笑顔で伝えたら、少し安心したようだ。 「えりちゃんどうしたの?」 香音は里保に背負われている衣梨奈を気にかける。 「…」 遥が不安そうにうつむいた。 「…えりぽんはわたし“たち”をかばって怪我をしてるの。早くどこかでちゃんと手当てしないと」 里保の言葉に驚いた顔で遥が見上げる。里保はコクッとうなずいて返す。 香音が後ろにまわって衣梨奈を診る。 「!」 血だらけの衣梨奈、身体には銃弾のあと…その姿は香音に“ここではないどこか”“今ではないいつか”の衣梨奈の姿を思い出させる。 それは香音にひとつの答えを与えた。 「…香音ちゃん」 「…ひどいね。ここに来るまでに診療所を見つけたの。そこに運ぼう」 158 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 26 44.41 0 【アナザー版 二日目 午後7時】 診療所に着いて衣梨奈の処置が終わるころには19時をまわっていた。 処置と言っても素人に大したことができるわけじゃない。 おそらく弾丸は体内に残ったままだし、傷は治せていない。 消毒と止血、それと市販の薬と同じもので痛み止めとして効きそうなものを処方したくらい。 あとはひたすら看病するしかない。 少しは痛み止めが効いたのか衣梨奈は今眠っている。3人は隣の部屋で食事を取っていた。 「…」 口を開くものは誰もいない。食べ物を口に運ぶ音だけが響いていた。 「…ねぇ、里保ちゃん、遥ちゃん」 遥は返事をせずに顔だけをあげる。 「…何?香音ちゃん」 「…変なこと聞くようだけどさ、二人は前世の記憶ってある?」 「「えっ?」」 「あっ…と、前世っていうか…デジャヴっていうのかな?…とにかく、経験してないはずなのに知ってるっていうか…えーっと…」 里保には香音の言いたいことがなんとなくわかった。 遥の方を見ると遥にも伝わっているようだった。 「…たぶん、あるよ。香音ちゃんと同じ感覚」 「…はい」 遥もうなずく。 「そっか」 それっきり、また3人は黙ってしまう。 本当はもっと聞きたいことはあるんだろうけど、お互いその“記憶”が決して気持ちのいいものではないことを察していたんだと思う。 時計の針が20時をまわった頃、香音が「えりちゃんの看病はあたしがやるから休んでいいよ。二人はいろいろあって疲れてるでしょ」 そう言ってくれたので甘えることにした。 実際に緊張の連続で身体は相当まいっていた。 遥と一緒に眠りにつく。 意識が落ちる前に、遥が「…やっしー…ありがとう」 そう言ってくれた声が聞こえた。 159 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 27 56.60 0 【アナザー版 二日目 午後9時】 香音が水を溜めた洗面器とタオルを持って衣梨奈の病室に入ってくる。 「香音…」 「…えりちゃん、起きてたんだ」 ベットの横に座る。 「タオル替えるね」 衣梨奈の耳元で水の音がする。心地よい音だった。 額に冷たい感覚。…気持ちいい。 香音の顔は悲しげだった。 「…そんな顔しないでよ」 「…ごめん…」 助けられなくて…。言葉は続かなかったけど、そう思ってくれた気持は伝わっていた。 「…気にしないでいいっちゃん。むしろ、来てくれてありがとう」 衣梨奈自身にもわかっている。 もう自分が助からないということは。 「…あたし、“また”ひどいことしようとしてる」 「え?」 衣梨奈は香音の言葉の意味がわからなかった。 カサリ…衣梨奈の手に紙のようなものが触れる。 「香音?」 香音は唇の前で人差し指を立てる。 すると枕元にヘルメットのようなものを置くと席を立つ。 「明り消すよ」 そう言うと電気を消して部屋を出て行った。 部屋は真っ暗になる。 枕元のヘルメットは暗視ゴーグル。 それをかぶって手渡された紙を見る。 それは香音の想いが綴られた手紙だった。 160 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 28 51.53 0 【アナザー版 二日目 午後9時30分】 香音の胸に去来する想い。 それは自分のわがままかもしれない。 でも、例えそうだったとしても叶えたい。 光井さんの残した首輪の構造の描かれた地図。 その最後の一文には“記憶をつなげ”そう書かれていた。 あの時のあたしにはさっぱりだったけど、今ならわかる。 えりちゃんの姿を見たときに感じたもの。 あれこそが答えだったんだと。 だったらあたしがすることはひとつ。 この命を…そして仲間の命をなげうってでも光井さんを…同期のみんなを… ―――モーニング娘。という家族を救いたい――― 161 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 29 29.02 0 【アナザー版 二日目 午後10時】 コンコン… 「…入っていいちゃよ」 衣梨奈の病室に入ってきたのは里保だった。 「痛みは?」 「…うん。里保たちのおかげでだいぶ楽になっとー」 「そっか」 それがただの強がりだということは里保にもわかっていた。 ベットの横に座る。 「えりぽん…わたし、えりぽんにちゃんと言っておかないといけないことがあるの」 「…何?」 里保はうつむき、唇を噛みしめる。 衣梨奈は里保の言葉を待った。 すっと顔をあげる。 「聖ちゃんのこと…」 「わかっとー」 里保の言葉を遮る。 「えりなにもわかっとーよ。…だから、自分を責めたらいかんと」 「…えりぽん…ごめん」 里保の目から涙がこぼれる。 衣梨奈は里保の頭を撫でると少しだけクスッと笑った。 「やっぱり里保と香音は仲良いよね。お互いをちゃんとわかりあってる気がする。それに…」 「…それに?」 「似てる。…似てないんだけど、似てる」 「なにそれ」 二人は笑い合った。 162 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 29 59.97 0 しばらくして里保が席を立つ。 「おやすみ、えりぽん」 「うん」 里保が扉を出る時 「里保」 「ん?」 衣梨奈が呼びとめる。 「…何があっても香音を信じてあげて」 「うん」 それが里保と衣梨奈が交わす最後の会話だった。 163 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 30 55.47 0 【アナザー版 [[三日目]] 午前3時】 「里保ちゃん、里保ちゃん、起きて」 「ぅん…」 「里保ちゃん」 「ん…」 里保が身体を起こす。 「…ふわぁ…なによもう…」 そしてもう一度寝ようとしたところを香音に阻止される。 「もうっ、ほんと寝起き悪いんだから」 香音のチョップが里保の脳天にヒットする。 「いてっ」 「遥ちゃんも起きて」 「…はい」 遥はすんなりと起きた。 しばらくして里保もすっかり目が覚め、3人は部屋で差向いに座る。 「これから腹を割って話そう」 そんな香音の切り出しで始まった。 里保も遥も後ろめたいことがたくさんある。 それでも二人は今に至るまでのすべてを話した。 「そっか…」 香音の反応はあっさりしたものだった。 「じゃあ次はあたしの番だね」 今度は香音が経緯を話す。 だがそれはすべてではなかった。 首輪の解体のこと。 それだけは一切“無かった”こととして話していた。 164 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 31 45.33 0 そして香音は続ける。 「それでね、二人には例のデジャヴのことを考えて欲しいの」 そう言うと愛佳から聞かされた話。そして自分の仮説を二人に話した。 傍から聞いていれば突拍子もない話だが、里保と遥には受け入れられるだけの経験があった。 一通り話し終わり、香音が二人の顔を見る。 自分の想いが全部でなくてもいい、少しでも伝わっていれば。 「…わかったよ」 里保が答える。 遥もうなずき、その瞳には強い意志が宿っていた。 ふぅっと大きく一息つく。 香音にとってはここからが本番だ。 決して失敗は許されない一発勝負。 165 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 32 52.93 0 すっ…と香音が立ち上がる。 「…二人とも、あたしのことを信じて絶対動かないでね」 そう言うと香音はいきなり里保の首を鷲掴みにする。 そして反対側の手には工具が握られていた。 「ちょっ!何するの香音ちゃん!」 「動かないで!私を信じて!」 とてつもない剣幕の制止に里保と遥の動きが止まる。 「さっきはわざと話さなかったけど、光井さんは首輪の解体に成功してたの」 「「えっ?」」 里保の首輪の解体作業を進めながら香音は続ける。 「光井さんはそれを知られて殺された…だけど、その解体方法をあたしに残してくれた。だからあたしは…」 香音は愛佳の構造図に従い、首輪の表面をこじ開けるとコンデンサーをむき出しにする。 「よし!」 そしてすぐにコンデンサーを引き抜いた。 しかし喜んでいる時間はない。 すぐに遥の首輪の解体作業へ取り掛かる。 すると―ピピピピッ―と電子音が鳴り始めた。 「何?この音?」 「首輪の爆弾が作動した音よ」 里保の問いに香音がすぐさま答える。 「えっ!?」 里保は驚きのあまり声をあげ、遥は目を見開いた。 「この首輪ね、盗聴器もついてるらしいの。だからこっちの行動は全部知られてて、ルールを破ると即爆弾を起動させられる」 その間も徐々に電子音は音量とリズムを上げ続ける。 それでも香音は動じずに冷静に作業を進める。 「大丈夫!遥ちゃんのはちゃんと間に合わせるから!」 「待って!香音ちゃんは!?」 「聞いて!…遥ちゃんの首輪の解除が終わったら二人はすぐにここを出て!荷物は外に全部まとめてある!」 「そんな!」 その時、遥の首輪の解除が完了する。 166 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 34 26.28 0 「やった!」 香音はすぐさま二人を部屋の外へ押しやると扉を閉めた。 「待って!待ってよ香音ちゃん!…ヤダ…わたしヤダよ!」 里保が扉にすがりつく。 「…ごめん、里保ちゃん」 香音が扉越しに応える 「…あとは任せるね。…最後に大変な役押しつけちゃってごめん。…またね」 「…香音…ちゃん」 香音は里保に別れを告げると、もう一つの扉の前に立つ。 「えりちゃん…」 「香音。お疲れ様。立派だったっちゃよ」 扉の向こうから衣梨奈が語りかける。 「えりちゃん…」 香音の目から涙がとめどなく流れてくる。 「大丈夫。えりなもすぐに行くから。…ありがとう香音。…またね」 「…うん。あたしこそありがとう。…またね」 首輪の警告音のリズムはなくなり、もう―ピーーーーーー ―という音しか聞こえない。 (光井さん…あたし、これで良かったんですよね…) 次の瞬間―ドンッ―という音と共に香音の身体は崩れ落ちた。 【残り3人】 167 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 36 03.76 0 【アナザー版 三日目 午前4時】 あたりは薄らと明るくなり始めていた。 扉にすがりついたままの里保の肩に遥が手を置く。 「やっしー…」 里保はその肩の手に自分の手を重ねると。 すっ…と立ち上がる。そして 「ごめん、行こう!」 そう言うと香音がまとめてくれていたバッグを背負う。 すると一枚の紙が落ちた。 それは―――香音より―――と書かれた手紙だった。 里保はその手紙を拾い、歩き出す。 遥は一度、扉の方を振り向くと―バッ―と勢い良くおじぎをする。 そして里保に続いて歩き出した。 彼女たちを縛るものはもう何もない。 168 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 36 48.42 0 【アナザー版 三日目 午前4時30分】 「“記憶をつなげ”…か」 ベットの上の衣梨奈は香音の手紙を読み返していた。 本当にまた繰り返すことができるかどうかはわからない。 でも“今回”の衣梨奈がこの先の“未来”の役に少しでも立てていたらいいなぁ。 そしていつまでも憶えていてほしい。 だって…“この衣梨奈”はやっぱり今しかいないのだから。 病室が少し明るくなる。 夜が明ける頃。 ―パサリ― 床に手紙が落ちる。 誰もいなくなった診療所で衣梨奈は静かに息を引き取った。 【残り2人】 169 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 37 42.24 0 【アナザー版 三日目 午前3時 OG】 鈴木香音に動きアリとの報告で中澤が指令室に現れる。 「ったく、こんな朝っぱらから動きよって」 叩き起こされた中澤は不機嫌だ。 「んで、どうなんや?」 「はっ!どうやら作戦会議と言いますか…」 「なんや、歯切れ悪いのぅ」 「はぁ…」 隊員が回線をオープンにする。 ―30分経過― 「…なんや…何を言うとるんやこいつら…」 「我々にもさっぱりでして…」 「ガキどもは夢見がちでええのぅ。人生やり直せるんやったらうちもそうしたいわ」 しかし、次の香音の行動に指令室は慌てた。 首輪の解体を始めたのである 「あのガキ!やりおったな!」 「いかがしますか?」 「決まっとるやないか!すぐに作動させぇ!」 「はっ!」 170 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 38 57.58 0 「工藤遥の首輪の反応ロストしました!」 中澤は憎々しげに爪を噛む。 時機に鈴木香音は死ぬだろう。 しかし、首輪を解除された鞘師と工藤は今度動向を追うことができない。 とはいえ次に奴らが起こす行動はひとつしかない。 ―――この島の脱出だ――― 「すぐに人員を総動員して海岸をしらみつぶすんや!」 「はっ!」 隊員たちが指令室を出ていく。 中澤はゆっくりと席に座った。 「まぁええ、そう簡単には脱出できんやろ。捕まるのは時間の問題や。 それに…こんなこともあろうかとこの島を許可なく“出ていく”船に自動で攻撃する砲台もある」 砲撃で死ぬのもいい。 二人とも捕まって自分の目の前で殺し合わせるのもいい。 どんな結果になっても楽しめる。 中澤はニヤリと笑った。 171 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 39 54.08 0 【アナザー版 三日目 午前7時】 「こちら南の海岸、見当たりません」 「こちら西の海岸、こちらも見当たりません」 「必ずいるはずだ、見つかるまで探せ」 「はっ」 隊員たちは四方の海岸を総力をあげて捜索していた。 しかし、里保と遥は一向に見つからなかった。 「まだ見つからないの?裕ちゃん」 「そうみたいやな」 「砲台のセンサーは?」 「反応ないね」 OGたちも何人か指令室に集まってきていた。 「どこ行ったんだろうね」 その頃、里保と遥は学校の前にいた。 お互いの武器を確認する。 里保は“愛佳の小刀”と“衣梨奈の発煙銃” 遥は“優樹のマシンガン”と“里保の拳銃”と“さゆみの鉈” そして遥こしらえの火炎瓶をお互いに持つ。 172 :名無し募集中。。。:2012/01/30(月) 07 41 49.06 0 二人が香音から引き継いだ想い。 それは―――モーニング娘。のメンバーみんなで帰る―――こと。 “今回”はもうそれは叶わない。 だったら少しでも多くの情報を―――未来へ記憶をつなげる―――。 そのために首輪の呪縛が無くなった二人にしかできないこと。 それは学校の情報を得ることだった。 「じゃあ、行くよ」 「はい」 「…くどぅー。…また会おうね」 「…はい、また会いましょう」 里保が発煙銃を構える。 「いっけぇーーーーーー!!!」 パウッパウッパウッパウッ 学校に向かって“黄緑”“水色”“ピンク”“紫”四つの線が弧を描く。 そして窓を突き破り、学校内を煙で埋め尽くした。
https://w.atwiki.jp/kakite3/pages/131.html
(なんで普通に書いていただけの自分が……) (大丈夫……俺は正気だ!) (何なんだよあの猫怖えーよ) (やらなきゃやられるのか……でも!) (手に入らないのなら、いっそ……) (何なんだよあの猫怖えーよ) その頃三人はお互いに離れて双眼鏡でちらちら気にしながら父島に潜伏していた。 【一日目/香川県/父島/深夜】 【◆hhzYiwxC1.@自作キャラでバトロワ】 【状態】:健康 【装備】:メガブラスター@動物ロワ、メイド服 【持物】:基本支給品、双眼鏡 【思考】 基本:生き残る 1:◆zmHe3wMKNgに警戒 【備考】 ※外見は吉良邑子@自作ロワ ※◆EGv2prCtI.に気付いていません 【◆EGv2prCtI.@自作キャラでバトロワ】 【状態】:健康 【装備】:マシンガン@任天堂ロワ 【持物】:基本支給品、双眼鏡 【思考】 基本:生き残る 1:◆hhzYiwxC1.に警戒 【備考】 ※外見はラト@自作ロワ ※◆zmHe3wMKNgに気付いていません 【◆zmHe3wMKNg@自作キャラでバトロワ】 【状態】:健康 【装備】:ブルーノCz・M75カスタムスピアハルバード(残り15発)@オリロワ、ブルーノCz・M75カスタムスピアハルバード(残り15発)@オリロワ 【持物】:基本支給品、双眼鏡、Cz・M75のマガジン×4 【思考】 基本:生き残る 1: ◆EGv2prCtI.に警戒 【備考】 ※外見は玉堤英人@自作ロワ ※◆hhzYiwxC1.に気付いていません 時系列順で読む Back Tales of Reverse ~君が鬱になるRPG Next 傲慢なガチホモ 投下順で読む Back Tales of Reverse ~君が鬱になるRPG Next 傲慢なガチホモ ◆hhzYiwxC1. 謎符「U.N.オーエンからの挑戦状」 ◆EGv2prCtI. 謎符「U.N.オーエンからの挑戦状」 ◆zmHe3wMKNg 謎符「U.N.オーエンからの挑戦状」
https://w.atwiki.jp/m12br/pages/24.html
石田佐藤 185 :名無し募集中。。。:2012/01/04(水) 12 24 23.84 O 150の続き 建物の正面玄関は太いチェーンと南京錠でしっかり施錠されていた。亜佑美は優樹を従えるような格好で裏口へと向かった。 立ち止まった亜佑美の背中に優樹がドンとぶつかる。優樹が不平の声をあげる。手をあげてそれを制する亜佑美。 通用口のドアが開け放されていた。まるで誰かが飛び出したかのように。いや、あるいは建物の中に誰かいるのだろうか…? 亜佑美は慎重にドアに近づいた。右手に拳銃を握る。思いきって大胆な行動に出た。 「石田と佐藤です!誰かいますか!」見渡せる限り、猫の子一匹いなかった。警戒しながら建物の中へと入る。 「まぁちゃん、私から離れないで」声をかけてから、拳銃を両手で腰の位置に構えた。 少し前屈みの姿勢で歩きながら、各部屋のチェックに取りかかった。 186 :名無し募集中。。。:2012/01/04(水) 12 45 56.73 O 185の続き 飲食スペースに痕跡が残されていた。どうやら固形燃料で湯を沸かしていたらしい。小型ケトルの中から湯気がほのかに出ている。 しかし他のどの部屋にも人影はなかった。隠れているような気配もなかった。やはり誰かが飛び出していったのか。いったいなぜ…? 亜佑美と優樹は飲食スペースに戻ってきた。簡易なキャンプ道具のような物が置かれている。 少し腹ごしらえができるかもしれない。亜佑美は優樹にそう告げてから、小さな冷蔵庫を見つけた。 廃墟なので食べ物があるとは思えないが、一応確認しておこう。カチャッと開けた瞬間、仕掛けられた罠が亜佑美を襲った。 187 :名無し募集中。。。:2012/01/04(水) 13 11 01.68 O 186の続き 直撃だった。プツンと糸が切れる音がしたかと思うと同時に優樹が悲鳴をあげた。 「きゃあっ!あゆみさん!」しかし遅かった。亜佑美めがけて落下してきた金属のタライはガコンと頭頂部に命中する。 「うっ!」亜佑美は往年のコントばりに見事なリアクションを披露する羽目になった。 沸かしたお湯で作ったホットチョコレートをカップに注ぎながら亜佑美は言った。 「あの罠を仕掛けたやつだけは必ず見つけだすわ。この手でホカホカの鉛玉をぶちこんでやる」 おどけるように肩をすくめた。茶目っ気たっぷりに優樹が返す。 「そうだね。そいつだけは絶対始末しなきゃね」2人は同時に吹き出した。部屋の中、ケラケラと笑い声が響く。 笑い声が止むとカップの中のチョコレートを見つめながら優樹が言った。 「はるなん、どこにいるのかなあ…」つい数日前まではこんな風にみんなで笑っていたのだ。 亜佑美はちょっとほろ苦いチョコレートを一口飲んでから、涙をこらえた。 新垣生田 281 :名無し募集中。。。:2012/01/07(土) 10 22 47.03 0 163 212-215の続き ( 243-245の前に生田到達ルート) 【二日目】【昼】 【生田】 道重さゆみから逃げるべく、集落を軽トラックで脱出し、走らせること数十分。 悪路ではあったが、目立たぬよう森の中をルートに組み込んだ。 次の目的地にした、港の近くにある母屋へ向かうための最短経路でもある。 理由はわからないが、聖の安否が気になるのだ。 ボウガンと、銀の矢。胸騒ぎというよりは、何か衝動に近い不安に掻き立てられていた。 聖に会いたい。聖。無事でいろよ。 アクセルを一段強く踏み込もうとしたときだ。 進行方向の外れ、およそ百メートルほどの距離に人が倒れているのが目に入った。 あれは、新垣さんだ! この島に連れて来られる前、何度も生写真を見た。 それが衣梨奈の日課だった。見紛うはずもない。 「新垣さん!しっかり!」 近くにトラックを停め、急いで駆け寄る。 「う…えりぽん…」 良かった、まだ息がある。衣梨奈はほっと胸を撫で下ろした。 283 :名無し募集中。。。:2012/01/07(土) 10 25 01.55 0 だが、ひどく衰弱している。 一体、何があったんだ? 「新垣さん!大丈夫ですか!?起きれますか!?」 「お水を…」 水なら、先ほど雑貨屋でミネラルウォーターのボトルを手に入れていた。 衣梨奈は車からデイパックを下ろし、中からボトルを取り出し、蓋を開け、里沙の口にあてがった。 と、里沙は一口目で口から噴き出した。 「えりぽん、これ…サイダーじゃない…?」 「あ、ごめんなさい!間違えました!」 里沙を両手で抱え、車両の助手席に座らせる。 水どころか、何も口にしていないのだろう。身体も冷え切っている。 休息が必要だ。 「ここから、港近くの母屋へ行きます」 里沙がゆっくりと口を開く。 「えりぽん、運転大丈夫なの?」 「はい!大丈夫です!」 里沙の不安を取り除くべく、衣梨奈は力強く頷いてみせた。 122 :名無し募集中。。。:2012/01/13(金) 01 36 41.17 0 【二日目昼(前スレ281-283心の内補完)】 ―――…ん……い……さん…いがきさん!…――― …んぅ… 「新垣さん!しっかり!」 突然耳に響く大音響に意識が覚醒する。誰かが迷惑なほど大きな声で私を呼んでいるようだ。 …考えるまでもなかった。この声は奴しかいない。 「う…生田…」 「新垣さん!大丈夫ですか!?起きれますか!?」 …う、うるさいなぁ…少し静かにしてくれないかなぁ…ほんとコイツKY… だが張り付いた喉からは満足なセリフを搾り出すことができなかった。…とりあえずは… 「お水を…」 生田がペットボトルを持って戻ってきてすぐさま口に入れてくれた。…ぶごほっ! こ、これは水じゃない…これは… 「生田、これ…サイダーじゃない…?」 「あ、ごめんなさい!間違えました!」 ク、クソ生田このやろう… 生田は里沙を両手で抱え、車両の助手席に座らせる。 どうやらこの娘は私を生かそうとしてくれているみたいだ…。それも必死に…。 私は死にたかったのに…ほんとコイツKY… クスッ 里沙の顔には自然と笑みがこぼれていた。 …そうだね…私は今“モーニング娘。”で…まだまだ危なっかしくてほぅっておけない後輩がいる… それにリーダーだもん…私が選ぶべきはひとつしかないよね… OG 192 :名無し募集中。。。:2012/01/04(水) 17 54 40.53 O 【OGルート】※本編には関係ありません 「おいおいおいおい!おい!どないやねん!殺し合う気配もないで!」中澤は怒声をあげながら椅子から立ち上がった。 飯田がなだめるように言った。「そうカリカリしないで。あれ使おうよ」 「なっちも賛成」安倍がモニタールームに入ってきた。安倍の後ろから大柄な人影がゆらりと続いた。 “ジェノサイダー投入”この奥の手を使わざるを得ないのか…? 「裕ちゃん、このままじゃ終われないでしょ?」飯田は振り向いて“ジェノサイダー”にも声をかけた。「準備はいい?」 「…ワカッタダカラ」人影は答えた。 「まあ、しゃーないかな」中澤は不満げに了承する。「おい!おまえバナナ食うな!」 鈴木工藤 195 :名無し募集中。。。:2012/01/04(水) 19 57 45.27 O 【鈴木香音ルート】 どれくらい眠っていたのだろうか。洞窟の入り口付近には光が射し込んできていた。夜が明けようとしている。 香音は自前のスポーツバッグを手繰り寄せ、中からしるこサンドを出してかじる。 糖分で頭脳が活性化したのか、状況分析を始めた。“仲間同士殺し合う…そんなことができるだろうか?” しばらく煩悶を繰り返しながら、香音は考えるのを止めた。進んでゲームに参加する気はないが、土壇場で人間がどう行動するかは理屈ではない。 もちろん自分にしても、いざ殺されるとなれば何をするかは分からない。「あたし神様じゃないしな…。復活もできないよ多分…」 とりあえず支給されたデイパックを調べてみた。「この黒い箱みたいなのが武器?」 イングラムM10。小型のマシンガン。なぜか手に馴染む感触が香音には不思議だった。 朝日が昇り始めていた。目を細めて太陽を眺めながら、香音は野営の準備から取りかかることにした。 196 :名無し募集中。。。:2012/01/04(水) 20 29 11.07 O 195の続き 夢中で逃げ込んだ防空壕だが、ロケーションとしては悪くない。“敵”に見つけられない限り絶好の隠れ場所だ。 見つかったとしてもこちらにはマシンガンがある。応戦は可能だ。ただし爆弾でも投げ込まれたらアウトだが…。 香音は頭の中で戦闘のシミュレーションをしながら不可解な既視感を覚えた。「…誰かを撃った…?」 まさかそんな経験をしたことがあるはずもない。香音は気を取り直して簡易トラップを仕掛ける作業を続けた。 周辺の木に切れ込みを入れて、たこ糸を引っかける。侵入者があれば洞窟の中にいても分かるよう工夫してある。 枝と葉でカモフラージュして慎重にセットした。「しばらくはここで立て籠り生活だ…」 199 :名無し募集中。。。:2012/01/04(水) 20 54 19.19 O 196の続き 「さて、みんなどうしてるんだろう…」薄暗い防空壕で香音は仲間のことを考えた。他にすることもないので。 自分より先に教室から出発した人たちは、どこかへ隠れたのだろうか。ここに辿り着くまで誰の姿も見なかった。 待機中、言葉を交わすことは禁じられていた。当然のことだが皆一様に不安を隠しきれていなかった。 団結か…。もし全員が協力できればここから脱出できるのか…?それとも中澤たちに殺される…? いくら考えても答えは出てこない。大きな欠伸が出るだけである。残り少ないしるこサンドを口に持っていった時である。 カラン。仕掛けたトラップの“鳴子”の音がした。誰か近くにいる!香音は全身を緊張させた。 200 :名無し募集中。。。:2012/01/04(水) 21 22 04.89 O 144 無我夢中で疾走した遥は、ようやくのことで足を止めた。鼓動が早鐘のように自分の耳の中に反響している。 自分が何処にいるのか分からなかったが、どうやら学校の北側にある小高い人工の山の付近にいるらしい。 呼吸も気持ちも徐々に落ち着いてきた。とりあえず地図で現在位置を確認する。思った通り、学校と海の位置からして山の付近だ。 武器を持たない自分が誰かに見つかるのは極めてまずい。隠れる場所がないか、辺りを見回した。 「あれは…洞窟?防空壕とかいうやつかな」じっちゃんの言葉を思い出す。 『爆弾から逃れるためにのう…穴に隠れたもんじゃ』遥は洞窟に向かって歩き始めた。 222 :名無し募集中。。。:2012/01/05(木) 12 09 08.41 O 200の続き 「動かないで!」洞窟の奥から威厳のある声が聞こえてきた。四方の壁に反響して誰の声なのか判別できない。しかしその疑問はすぐ解消された。 「鈴木香音です。誰ですか?」ズッキか…。遥は少しホッとした。“あいつ”ではなかったことに。 だが遥は考えた。香音は問答無用に殺す気はないようだが、果たして信じていいのだろうか。こちらは丸腰だ。反応次第でどうなることか…。 「ハロープロジェクト最年少モーニング娘。10期メンバーのくどぅーこと工藤遥です」習慣である。 この場面においてはいささか奇妙な自己紹介が口をついて出た。 偶然の効果か、張りつめていた空気が少し緩んだような気がした。 そこで遥は武器を持っていないこと、戦う気はないことを早口で一気に捲し立てた。 ちょっとの間はあったが「入って」という声が遥の耳に届いた。 223 :名無し募集中。。。:2012/01/05(木) 12 32 01.22 O 222の続き 両者は現在にいたるまでの経緯について語った。もちろん遥は“あいつ”を見て逃げてきたことは上手く誤魔化した。 「りほちゃん見なかった?」ギクリとしながらも遥は平静を装い、見てないと香音に答えた。 香音の武器はマシンガンか…。遥の頭脳は冷徹に計算した。しばらくは仲間として行動するのが得策だ。 チャンスがあれば武器を奪えばいい。そのあとで…。遥はまたしても胸のざわつきを感じた。 昨夜の悪夢、その声が聞こえたような気がした。“冗談じゃない。殺されるなんてまっぴらごめんだ” 遥は頭の中の声を追い出すように、自分自身に強く言い聞かせる。“殺されるわけにはいかない” そんな遥の葛藤とは無関係に香音は先程からの疑問をぶつけた。「ところでさ、そのハチマキなんなの?」 OG 235 :名無し募集中。。。:2012/01/05(木) 22 58 22.88 O 【ジェノサイダールート】※本編には関係ありません 「ナニスルダ!」突然、数人の男に囲まれて薬品を湿した布で口を塞がれる。数秒後、意識を失なった。 気がつくと一方が鏡になった狭い部屋に監禁されていた。マジックミラーの向こう側ではこんな会話が交わされている。 「ほんまに大丈夫かあ?」「素質は十分よ」「“ジェノサイダー”素敵な言葉だな」もちろん憐れな実験台には聞こえなかったが。 拷問は三日三晩ぶっ続けに行われた。食事も睡眠も許されない。マインドコントロール…。 ただひたすら狩猟と殺戮の本能を目覚めさせるために拷問は続いた。 自我と理性を無くした「機械」へと変貌を遂げる。次のステップに進んだ。 武器の扱い、サバイバル術、格闘技…。訓練は苛烈を極めたが「機械」は淡々とこなした。 そして、大人の男を相手にしても、素手で殺せる技術を体得していた。 光井石田佐藤 253 :名無し募集中。。。:2012/01/06(金) 12 07 45.41 O 187の続き 久しぶりの温かい食事が、ほんの一時であるにせよ、この異常な事態を忘れさせてくれていた。 亜佑美と優樹は、柔らかな陽射しの中、歓談していた。 そんな時、優樹が窓の外を指差して亜佑美に言った。「あゆみさん、パンダがいるよ」 ああ、なんということだ。無垢な魂はついに耐えられなかったのか。幼い心は狂気に蝕まれていたのだ。 深い悲しみに震えながらも亜佑美は優樹が指差す方向を見た。「え?」 二度見した。パンダがいた。二足歩行している。正確に表現するならばパンダの着ぐるみだ。 パンダはマウンド上のピッチャーよろしく大きく振りかぶった。 ガチャン!ガラス窓を割って飛び込んできたのはボールではなかった。 くすんだオリーブ色の小さなパイナップル。手榴弾だった。 254 :名無し募集中。。。:2012/01/06(金) 12 21 04.64 O 253の続き 亜佑美は優樹を庇うように横っ飛びにジャンプする。卓球台を倒して、その裏に逃げ込んだ。 凄まじい爆発音。台ごと吹き飛ばされたものの、爆発のタイミングが僅かに遅かったことが2人の命を救った。 鼓膜をやられたのか亜佑美には何も聞こえなかった。優樹が口をパクパクさせているのが見える。 煙とホコリが舞うその向こう、パンダがゆっくりと近づいてくる。 手にはショットガンが握られていた。レミントンM870コンバットショート。短く切り詰められた銃身が亜佑美と優樹に向けられた。 その時、パンダの側頭部に豆粒ほどの赤い光がポツリと灯った。 その赤色光は狙撃用ライフルのレーザー照準だった。 255 :名無し募集中。。。:2012/01/06(金) 12 36 24.27 O 254の続き スナイパーの気配を察知したパンダは驚異的な速さで反応した。発砲はほぼ同時だった。パンダが放った散弾は、愛佳の頭上の木の枝を吹き飛ばす。 ライフルの銃弾も正面を向いたパンダの頭を掠めた。白い毛が削り取られ逆モヒカンのパンダが誕生した。 亜佑美は優樹の手を握り、急いで部屋を飛び出す。廊下を思いきり走る。 パンダは、スナイパーを仕留めることにしたのか、木が植えられている庭園の方へ歩いていった。 西部劇のようにショットガンのポンプを引く。空の薬莢が足元に落ちて転がった。 「ドリムスサイコードリムスサイコー…」薄暗い部屋の中でジェノサイダーは解き放たれるのを待っていた。 261 :名無し募集中。。。:2012/01/06(金) 15 52 54.87 O 256の続き ショットガンが遮蔽物をどんどん削り取っていく。愛佳は手鏡を使ってパンダとの距離を確かめた。 飛び出すなら今しかない。覚悟を決めてライフルを構え直す。「短い人生やったなあ…」 バン!一発の銃声が響いた。パンダの頭がハンマーで殴られたようにガクンと前に折れた。 ワルサーを構えた亜佑美が立っていた。「光井さん!光井さん、無事ですか?」大声で呼びかける。 パンダは前のめりに倒れた。だがこの着ぐるみはケブラー繊維と強化プラスチックで作られている。 防弾防刃機能を備えていた。もちろんパンダヘルメットも同様である。至近距離のマグナムであれば、あるいは貫通したかもしれない。 亜佑美が持つスマートな小型銃ではそれはかなわなかった。おそらく衝撃で一時的に気絶しているだけであろう。 亜佑美はパンダの手からショットガンをなるべく遠くへ蹴り飛ばした。「あゆみちゃん!離れや!」愛佳が叫ぶ。 262 :名無し募集中。。。:2012/01/06(金) 16 14 04.18 O 261の続き パンダの左手首には奇妙なものが装着されていた。超小型クロスボウである。パンダは俯せのまま、まるでコブラが鎌首をもたげるように手をあげた。 今度は愛佳の援護射撃である。ライフル弾がパンダの背中に撃ち込まれた。放たれた矢は目標を逸れて空気を切り裂いた。 「あかん!逃げるで!こっちおいで!」愛佳は急いで2人を呼び寄せる。パンダは苦しそうに呻きながらもなお矢を放つ。 亜佑美と優樹は、愛佳のいる場所まで必死に走った。あのパンダは不死身なのか?なんなの、あのパンダ! 「逃げるで!走れ!」間一髪、3人はレジャー施設から飛び出すと港の方角へ走り出した。 256 :名無し募集中。。。:2012/01/06(金) 12 52 29.43 O 255の続き 「ジュンジュン…ウソやろ?」愛佳は木の影に身を隠しながら考えをまとめようとした。 スコープから見えたのは、懐かしい同期の顔だった。なぜジュンジュンがここにいるのか皆目見当がつかない。 しかしあのパンダがメンバーを殺そうとしていることだけは明白だ。亜佑美と優樹が部屋を飛び出すところは愛佳にも見えた。 ちゃんと逃げれたかいな…。そっと様子を窺う。パンダはこちらに向かって歩いてきていた。 接近されてはおそらく勝ち目はない。しかしいま飛び出せば蜂の巣にされるだろう。 銃弾の数は限りがある。こちらは無駄撃ちできない。ギリギリまで引き付けるか…。 「そうやジュンジュン、こっちにこい。ガキんちょには構うな、この愛佳が相手になるで!」 268 :名無し募集中。。。:2012/01/06(金) 20 22 31.57 O 262の続き 追跡してくる気配はなかった。思った以上にダメージを与えることができたのかもしれない。 息があがってきたこともあり、3人は歩きながら話した。「あんたらはジュンジュンに会うたことないんやったな」 愛佳は続けた。「武道館に来たのはリンリンだけやもんな。あんだけ世話んなった人の卒業やのに、薄情なこっちゃ」 忌々しそうに吐き捨てたが愛佳は幾分トーンを落としてまた続けた。「でも…ジュンジュンなりの考えもあったんかな…」 愛佳はもともと感受性が豊かだった。他者の気持ちに敏感だと言い換えてもいいだろう。 「ほんまに気の強い子でなあ。よう道重さんとも衝突しとったわ」なぜか懐かしむような、楽しそうな口調である。 いましがた死闘を繰り広げた相手に対する物言いにしては、どこか違和感があった。亜佑美と優樹は不審な眼差しで愛佳を見つめた。 「この人おかしなこと言うなあと思うてるやろ?顔に書いてあんで」やはり愛佳は鋭い。 「どうしても信じられへんのよ…それにジュンジュン…ごっつ哀しそうな目をしとってん、さっきな」愛佳は2人に言った。 「あんたらが理解し合えるように愛佳には分かるねん…同期やからな」 328 :名無し募集中。。。:2012/01/08(日) 14 01 04.81 O 268の続き 先頭を歩く光井愛佳の背中が泣いているように亜佑美には見えた。モーニング娘。の絆か…。 先刻の戦闘で汚れてしまった優樹の顔をちらりと見る。疲労とショックでやつれている。 この子だけはどんなことがあっても守ろうと、ここまで戦ってきた。優樹の存在が自分にとっても救いだった。 『あゆみさんがそんなことするわけないもん』拗ねたような口調で言っていた優樹を思い出す。 光井さんにしても同様だ。危険を省みずに自分たちを助けてくれたのだ。モーニング娘。の絆か…。 このまま全員が合流できれば…。道重さんだって…。亜佑美はボウガンを構え、狂気を宿した顔を思い描いた。 道重さんはひとりだった。きっと怖くて怖くて堪らないだろう。自分はずっと優樹と一緒にいた。 もし私がひとりきりだったら…。あまりの恐怖で誰かを襲ってしまうかもしれない。 もう一度、優樹の顔を見る。全員が合流できれば…。チャンスはそこにしかない気がした。 329 :名無し募集中。。。:2012/01/08(日) 14 22 48.78 O 328の続き 「それは違うで、あゆみちゃん」愛佳は亜佑美の話を聞き終えてから、亜佑美にとっては意外なことを答えた。 「あのパンダを止めるんが愛佳にとってそないに危険やったやろか?」少し皮肉っぽい口調だった。 「たんに仲間がいた方が有利やから、あんたらを助けたのかもしれへんで」言葉を続けた。 「まあ結果論やけどな」パンダの攻撃であちこち傷を負った自分がいくらか滑稽にも思えたが。 「とにかくや、このゲームではやたらと人を信用しんこと。悲しいけど、それが大原則」 明解な答えに亜佑美と優樹はちょっと戸惑ったが、それでもこう言った。 「光井さんのことは信じてます」「私もです」愛佳はプッと吹き出した。 「…あんたら、ええ子なんやな」ニッコリ笑いかける。「急ごか。出たとこ勝負や」 OG 269 :名無し募集中。。。:2012/01/06(金) 20 43 07.54 O 262の続き 「おいおい!いきなりしくじりよったで!どないなっとんねん!」中澤の怒りは収まらない。 「おまけに3人固まっとるやないかい!逆効果もええとこや!」椅子を蹴り倒す。 録画した襲撃シーンの荒い画像を見ながら飯田が言う。「なんかおかしいのよね…」 「どうしたの?」安倍が不思議そうに尋ねた。モニターに目を見据えたまま、飯田が答える。 「手榴弾もショットガンもさ、なんかこうわざと外してるように見えるのよね」飯田の顔に苛立ちの色が浮かぶ。 「…まさか洗脳が解けてるんじゃ…」そこで保田が割って入った。手にはコピー用紙のような物を持っている。 パンダはデータ分析のために様々な計測装置を着けている。脳波、呼吸、心拍数…。「データはウソをつかないわよ」 保田は続けた。「失敗したのは外的環境のせいね。洗脳が解けるなんてあり得ないわよ」 納得しかねる様子の飯田だったが、渋々保田の意見に賛同する。ある疑念は消し去りようがなかったのだが…。 ジュンジュン 270 :名無し募集中。。。:2012/01/06(金) 21 00 32.28 O 262の続き パンダは冷静に自分の身体を点検していた。骨折どころか出血もない。多少の脳震盪はあるものの、程無く回復するだろう。 パンダアーマーの防御力はやはり驚異的なものだった。反撃されてもこれなら安心と言えよう。 メンバーたちの首輪から発信される電波で島内の彼女たちの位置は簡単に把握できた。 ポケット電卓のような装置をパタリと閉じるとパンダは次のターゲットを決定した。 武器を詰め込んだゴルフバッグのような物を肩に担ぐと、パンダは与えられた[ミッション]を遂行するために歩き出した。
https://w.atwiki.jp/auksmn/pages/45.html
陣営/蝙蝠 自分が生き残ったら勝利、死んだら敗北となる特殊な陣営です。 他陣営の勝敗と競合しません。例) 生徒陣営 + 生き残った蝙蝠が勝利 自分以外の蝙蝠の生死と勝敗は無関係です。 他の蝙蝠がいても誰か分かりません。 生存カウントは生徒です。 精神鑑定士の判定は「正常」です。 無粋な保健委員の判定は「蝙蝠」です。 勝利条件 生き残れ。 所属役職 蝙蝠系:蝙蝠 毒蝙蝠 呪蝙蝠 大蝙蝠 古蝙蝠 紅蝙蝠 夢求愛者 妖精系:妖精 春妖精 夏妖精 秋妖精 冬妖精 花妖精 星妖精 日妖精 月妖精 草妖精 光妖精 闇妖精 影妖精 氷妖精 鏡妖精 PP(曲者陣営以外でも)ちらつかせながらのらりくらりと生き残るのが基本かもしれません。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/auksmn/pages/46.html
陣営/蝙蝠 自分が生き残ったら勝利、死んだら敗北となる特殊な陣営です。 他陣営の勝敗と競合しません。例) 生徒陣営 + 生き残った蝙蝠が勝利 自分以外の蝙蝠の生死と勝敗は無関係です。 他の蝙蝠がいても誰か分かりません。 生存カウントは生徒です。 精神鑑定士の判定は「正常」です。 無粋な保健委員の判定は「蝙蝠」です。 勝利条件 生き残れ。 所属役職 蝙蝠系:蝙蝠 毒蝙蝠 呪蝙蝠 大蝙蝠 古蝙蝠 紅蝙蝠 夢求愛者 妖精系:妖精 春妖精 夏妖精 秋妖精 冬妖精 花妖精 星妖精 日妖精 月妖精 草妖精 光妖精 闇妖精 影妖精 氷妖精 鏡妖精 PP(曲者陣営以外でも)ちらつかせながらのらりくらりと生き残るのが基本かもしれません。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/cerulidatafile/pages/415.html
ランク 標準→スーパー+ 戦闘力(MAX) 485 陣営 カマキリ クラス 格闘家 <スキル> ボディブローLv1(アクティブ) ランダムな敵単体に200%のダメージを与える。 ボディブローLv2(アクティブ) ランダムな敵単体に250%のダメージを与える。 最後に生き残る者Lv1(パッシブ1) 味方が倒れる度、攻撃力が10%増加する。効果は戦闘終了まで続く。 最後に生き残る者Lv2(パッシブ1) 味方が倒れる度、攻撃力が15%増加する。効果は戦闘終了まで続く。 <基本ステータス(MAX)> HP 11970 攻撃力 1521 防御力 500 速度 483 <上級ステータス(MAX)> 必殺技ダメージ - 命中率 - ブロック - クリティカル率 - クリティカルダメージ - アーマーブレイク - 純粋ダメージ - ダメージ減少 - 行動制限抵抗 - ステルス - <メモ>
https://w.atwiki.jp/mtgflavortext/pages/2373.html
村が狼男によって滅ぼされたとき、逃げた難民は自分たちにも素晴らしい生存本能があることに気付いた。 As their villages fell to werewolves, fleeing refugees discovered they too had remarkable survival instincts. 闇の隆盛 【M TG Wiki】 名前