約 4,723 件
https://w.atwiki.jp/hourai2020s/pages/488.html
【夢野光一】 では第6ラウンドへGO! 【秋葉巡】 「あ、自室でよろしいんですね?ありがとうございます」 【夢野光一】 「マップが隠れてて見づらいですが、第6ラウンドはみなと前駅です」 【夢野光一】 「おっとっと」 【GM】 光一が問題用紙の束を取り落としました 【GM】 通過者3名は機敏3で振ってください 【北大路鉄華】 「ほらほら、見てないから今のうちに拾っちゃいな」 【片桐三郎】 機敏:【3d6】を振りました。結果は「8」成功です。(成功値12以下)(各ダイス目:4,3,1) 【北大路鉄華】 機敏:【3d6】を振りました。結果は「12」失敗です。(成功値8以下)(各ダイス目:6,4,2) 【相馬左門】 機敏:【3d6】を振りました。結果は「10」成功です。(成功値17以下)(各ダイス目:5,4,1) 【GM】 成功した人にはある情報をお伝えしました 【夢野光一】 「わ、すみません!」(拾い集める) 【夢野光一】 では改めて問題です 【夢野光一】 「一家の主な働き手のことを、日本家屋で中心となるものになぞらえて何という?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「はい、会長!」 【相馬左門】 非常に後ろメタさを感じつつ「大黒柱」 【夢野光一】 「正解です!」 【相川悦子】 「最近では大黒柱のある家のほうが珍しいですよね」 【夢野光一】 では次行きましょう 【夢野光一】 「ショートパスタの種類でコンキリエとは貝殻のこと。ではファルファッレは?」 【片桐三郎】 「(わからん!)」 【北大路鉄華】 「はい!」 【相馬左門】 「(たとえ見えててもこれは無理だったろうな)」 【夢野光一】 「はい、鉄華さん!」 【北大路鉄華】 「蝶ネクタイ?」 【夢野光一】 「惜しい!ほんと惜しい!」 【北大路鉄華】 ああぅ 【片桐三郎】 「...おう」 【夢野光一】 「はい、三郎さん」 【片桐三郎】 「蝶?」 【夢野光一】 「正解です」 【北大路鉄華】 「(お料理研的に不覚だ…)」 【相馬左門】 「(あ、言語学研的にも不覚だったか)」 【相川悦子】 これがコンキリエ 【相川悦子】 ファルファッレはこれです。蝶ネクタイはほんとに惜しかったですね! 【片桐三郎】 「なるほど蝶ネクタイか」 【夢野光一】 ということで正解は「蝶」でした! 【夢野光一】 では次の問題です 【夢野光一】 「“米寿”って何歳のお祝い?」 【北大路鉄華】 はい 【相馬左門】 はい 【片桐三郎】 「はい」 【夢野光一】 「はい、鉄華さん!」 【北大路鉄華】 八十八歳! 【夢野光一】 「正解!」 【片桐三郎】 「先を越された! くやしいのう」 【相川悦子】 喜寿は77歳、白寿は99歳です 【夢野光一】 さて、ここで皆さん1ポイントずつで並びました。 【片桐三郎】 「米の字を分解すると八十八になるからのう」 【相馬左門】 「余計なこと考えてたからでオくれたな」 【夢野光一】 このラウンドでは3ポイント先取で通過をかけたクイズになります。頑張ってください! 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「秋田県の名産、杉や檜の薄板を曲げて作られる円筒形の木製の箱は何?」 【北大路鉄華】 「」 【夢野光一】 「鉄華さん!」 【北大路鉄華】 曲げわっぱ 【夢野光一】 「正解!鉄華さん、通過問題へリーチです!」 【北大路鉄華】 「よっし!」 【夢野光一】 次の問題! 【夢野光一】 「通称ホワイトハウスはアメリカ大統領官邸ですが、ピンクハウスはどこの大統領官邸?」 【片桐三郎】 「といや!」 【夢野光一】 「三郎さん!」 【片桐三郎】 「メキシコ?」 【北大路鉄華】 「はい」 【夢野光一】 「鉄華さん!」 【北大路鉄華】 「南アフリカ共和国?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「不正解です」 【夢野光一】 「会長!」 【相馬左門】 「古着?」 【夢野光一】 なんでやねんw 【夢野光一】 ということで、全員不正解ですので回答権復活して検索OKです! 【片桐三郎】 「はい」! 【夢野光一】 「三郎さん!」 【片桐三郎】 「アルゼンチン」 【夢野光一】 「正解です!」 【北大路鉄華】 ピンクだw 【片桐三郎】 「南米でおうとったか」 【相川悦子】 スペイン語で「カサ・ロサダ」というんですよ 【夢野光一】 三郎さんもリーチですね。では次の問題です 【夢野光一】 「ベートーベン、バッハ、ブラームス。どこの国の出身?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「はい、会長!」 【相馬左門】 「オーストリー?」 【北大路鉄華】 「はい」 【夢野光一】 「残念!」 【夢野光一】 「鉄華さん!」 【北大路鉄華】 ドイツ? 【夢野光一】 「正解!」 【相川悦子】 3人合わせて「3B」と呼ばれたりするんですよ 【北大路鉄華】 ほへー 【夢野光一】 では鉄華さん、次の問題に正解すると勝ち抜けです! 【北大路鉄華】 「うっし」 【夢野光一】 誤答したり、他の人が正解したりすると0ポイントに戻るので気をつけて! 【北大路鉄華】 おう… 【夢野光一】 では問題です 【夢野光一】 「“所謂”を読んでください」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「はい、会長」 【北大路鉄華】 カットインされた! 【相馬左門】 いわゆる 【夢野光一】 「鉄華さん阻止された!そして会長がリーチです!」 【夢野光一】 それでは次の問題 【夢野光一】 「着物を包む紙を何という?」 【片桐三郎】 「(あれに名前があるのか!)」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「はい、会長」 【相馬左門】 「型紙?w」 【相馬左門】 「ですよねー」 【夢野光一】 「ちなみに型紙を使うのは洋裁だけです。和裁では使いません」 【北大路鉄華】 「はい」 【夢野光一】 「鉄華さん」 【北大路鉄華】 「たたみ紙?」 【夢野光一】 「惜しい!」 【北大路鉄華】 おしいのかw 【片桐三郎】 「はい」 【夢野光一】 「三郎さん」 【片桐三郎】 「のし紙」 【片桐三郎】 「違うか」 【夢野光一】 「それは金封に貼ってあるやつですね」 【夢野光一】 正解は「畳紙」と書いて「たとうがみ」と読みます 【夢野光一】 鉄華さんほんとに惜しかった! 【相馬左門】 「次は包み紙と書こうとしてたw」 【片桐三郎】 「振り出しに戻ってしまった」 【夢野光一】 現在会長が2ポイント、鉄華さん0ポイント、三郎さん2ポイントです 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「太陽系の惑星のうち、もっとも密度が小さいのは何?」 【片桐三郎】 「はい!」 【相馬左門】 「はい」 【北大路鉄華】 はい 【夢野光一】 「三郎さん」 【片桐三郎】 「土星」 【夢野光一】 「正解!では次が通過問題になります!」 【相川悦子】 土星は水に浮かんでしまうぐらい密度が少ないんですね 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「先日皆既月食がありましたが、月を暗くしているのは何の影?」 【片桐三郎】 「はい!」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「三郎さん!」 【片桐三郎】 「地球」 【夢野光一】 「三郎さん勝ち抜け!!」 【片桐三郎】 「おっしゃあ!」 【北大路鉄華】 おめで! 【片桐三郎】 「お先に行かせてもらいます」 【夢野光一】 では会長と鉄華さん、一騎討ちになります。空席はあと1つ! 【北大路鉄華】 「こっから追い上げるよ!」 【夢野光一】 っと、ここで蓬莱問題です。ただし+3ポイントはなし。普通の早押し問題として扱います 【北大路鉄華】 りょ 【夢野光一】 ボードでもないので気をつけてください 【夢野光一】 「”蓬莱学園の冒険!”と”蓬莱学園の冒険!!”違いは何?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 はい、会長! 【相馬左門】 「!の数?」 【北大路鉄華】 「はい」 【夢野光一】 「鉄華さん」 【北大路鉄華】 「TRPGかメールゲームか、だっけ?」 【夢野光一】 「正解!」 【北大路鉄華】 あたりか! 【相川悦子】 「”!”はPBM、”!!”はTRPGです」 【夢野光一】 ささいな違いですが、ちゃんと意味があるんですね 【夢野光一】 では会長2ポイント、鉄華さん1ポイントで次の問題 【夢野光一】 「RGBと言えば赤・緑・青。ではCMYKのCは?」 【北大路鉄華】 はい 【夢野光一】 鉄華さん! 【北大路鉄華】 シアン! 【夢野光一】 「正解!」 【相馬左門】 「うん」 【相川悦子】 Mはマゼンタ、Yは黄色、Kは「黒」ではなく「キープレート」の略です 【北大路鉄華】 そうKが気になってたw 【夢野光一】 さあ、2人ともリーチです! 【夢野光一】 次の問題! 【夢野光一】 「日本海軍第五航空戦隊で基幹となった空母は何型?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「会長!」 【相馬左門】 「翔鶴?」 【夢野光一】 「正解!」 【相馬左門】 瑞鶴と迷ってた 【北大路鉄華】 うん、さっぱりわからんw 【相川悦子】 瑞鶴も五航戦ですけど、ネームシップは翔鶴なんです 【夢野光一】 これ、完全にスタッフの趣味ですねw 【北大路鉄華】 デスヨネー 【相川悦子】 では会長、通過問題です! 【相馬左門】 海洋冒険部のPCいるとねー 【夢野光一】 なるほどねw 【夢野光一】 次の問題! 【夢野光一】 「著作物などにおいて知的財産権が発生していない、または消滅した状態のことを何という?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「はい、会長!」 【相馬左門】 「著作権フリー?」 【夢野光一】 「残念!」 【北大路鉄華】 はい 【相馬左門】 「0pか」 【夢野光一】 「はい、鉄華さん」 【北大路鉄華】 権利者不明? 【夢野光一】 正解は「パブリックドメイン」でした 【北大路鉄華】 おおう 【夢野光一】 画像などでよくお世話になってますね 【北大路鉄華】 こないだきいた単語やんw 【相馬左門】 ああ 【夢野光一】 では会長が0ポイント、鉄華さんリーチで次の問題です 【夢野光一】 「スーツなどのポケットの蓋のことを何という?」 【北大路鉄華】 「はい」 【夢野光一】 「鉄華さん」 【北大路鉄華】 「ふ、蓋ベロ」 ※わからん 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「不正解ですねー」 【夢野光一】 「会長!」 【相馬左門】 「ターフ?」 【夢野光一】 「それは競馬場ですよね。ということで検索OKです!」 【相馬左門】 はい 【夢野光一】 「会長!」 【相馬左門】 「フラップ」 【夢野光一】 「正解!」 【北大路鉄華】 なるる! 【相川悦子】 雨やほこり除けなので、屋内に入ったらポケットの中に入れるのがマナーだと聞きますが、本当のところはどうなんでしょうね 【夢野光一】 では次の問題です 【夢野光一】 〇か×でお答えください。フリー百科事典ウィキペディアに“ウィキペディア”という項目がある? 【北大路鉄華】 はい 【夢野光一】 鉄華さん 【北大路鉄華】 × 【北大路鉄華】 逆張りしてしまったw 【夢野光一】 「残念!正解は〇でした」 【夢野光一】 それでは次の問題! 【夢野光一】 「ビールとジンジャーエールを合わせたカクテルを何という?」 【北大路鉄華】 「はい」 【夢野光一】 「鉄華さん!」 【北大路鉄華】 シャンディガフ!(好き💛 【夢野光一】 正解! 【夢野光一】 さあ、鉄華さん、通過問題です! 【夢野光一】 では問題! 【相馬左門】 「左門なら答えてほしかったなぁ」←中の人は下戸 【夢野光一】 「アニメなどでCMに入るときに流される数秒程度の映像を何という?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「会長!」 【相馬左門】 「アイキャッチ」 【夢野光一】 「阻止成功!」 【夢野光一】 そして会長リーチです! 【北大路鉄華】 一進一退 【夢野光一】 では次の問題です 【夢野光一】 「メロスは激怒した。この続きは?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 会長! 【相馬左門】 「かの暴君はのぞかれねばならぬ」 【夢野光一】 意味はあってるんですが‥‥ 【北大路鉄華】 はい 【夢野光一】 鉄華さん! 【北大路鉄華】 かの暴君はたおされれねばならぬ? 【夢野光一】 意味は合ってるんです、意味は 【夢野光一】 ということで、検索OK! 【北大路鉄華】 はい 【夢野光一】 鉄華さん 【北大路鉄華】 必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。 【夢野光一】 正解です! 【夢野光一】 会長2ポイント、鉄華さん1ポイント。一進一退が続きます 【夢野光一】 次の問題です 【夢野光一】 「蓬莱学園の冒険!!2020(同人版)、記念すべき第1話のタイトルは?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 会長! 【相馬左門】 「紅い、眼鏡」 【北大路鉄華】 ああ! 【相馬左門】 、か。か 【夢野光一】 「正解!ちゃんと「、」もついてましたね」 【夢野光一】 では会長、次は通過問題です 【夢野光一】 問題! 【夢野光一】 「『究極超人あ~る』Rたちが通う高校の校長のモデルになった落語家は?」 【相馬左門】 蓬莱の先生のモデルでもあるんだよな 【相馬左門】 そこは覚えてるんだ、そこは 【夢野光一】 実はゆうきまさみの友人のお父さんだったとかで登場したんですよ 【夢野光一】 では検索OK! 【相馬左門】 はい 【夢野光一】 「はい、会長!」 【相馬左門】 春風亭柳昇 【夢野光一】 「正解!勝ち抜けです!!」 【北大路鉄華】 ひとあしおそかったー 【相馬左門】 「あ、勝ち抜け?」 【夢野光一】 ということで、片桐三郎さん、相馬左門さん、決勝ラウンド進出です! 【北大路鉄華】 「ごめんねティアー!お母さんは弱すぎました!」 【夢野光一】 「鉄華さんへの罰ゲーム!」 【北大路鉄華】 「…ごくり」 【夢野光一】 「カオルくんが次に書く小説の主人公になっていただきます!」 【北大路鉄華】 「…………!!まさか!そんなwww」 【GM】 とは言っても実際に書くわけじゃないですから。そんな小説が発表されました、ということでw 【北大路鉄華】 「カオルくんてあのBLで有名なwwどうなっちゃうのw」 【相馬左門】 「へ?次はBLでなく逆ハーレムものなのか?? 【片桐三郎】 「びいえるとは何だ?」 【北大路鉄華】 「TSでBLの可能性も…」 ※余計な一言を言う 【GM】 あ、もちろんTSのBLでハーレムですよ? 【相馬左門】 「ビジュアル面が強化さっれた衆道小説だ」 【GM】 ということで、そんな小説が載った雑誌が発行されたのでした 【片桐三郎】 「しゅ、衆道だと! なんと恐ろしい」 【北大路鉄華】 「ティア…おかーさんはなにか色々な世界を越えてしまったようです(吐血)」 【相馬左門】 「意外に似合いそうだな」 【ティア】 「恋人もお母さんもBL小説の主人公なの‥‥?」 【相馬左門】 「……哀れな」 【片桐三郎】 「おそろしい、おそろしい」 【北大路鉄華】 「(返事がない…ただのしかばねのようだ)」 【夢野光一】 はい、それでは! 【夢野光一】 三郎さん、会長。用意はいいですか? 【片桐三郎】 「どんとこいだ」 【相馬左門】 「おう」 【夢野光一】 では、最終ラウンド、決勝戦。 【夢野光一】 開始します! 【夢野光一】 問題! 【夢野光一】 「『宇宙の戦士』『月は無慈悲な夜の女王』『夏への扉』などの作者は誰?」 【片桐三郎】 「ちぇすと!」 【相馬左門】 「はい」 【片桐三郎】 「ハインライン」 【夢野光一】 「三郎さん!」 【夢野光一】 「正解です!最終ラウンド1問めは三郎さんが制しました」 【片桐三郎】 「おっしゃあ!」 【夢野光一】 次の問題 【夢野光一】 「ロンドンのウェストミンスター宮殿に付属する時計塔は俗に何と呼ばれる?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「会長!」 【相馬左門】 「ビッグベン」 【夢野光一】 正解!学校のチャイムでお馴染みですね 【片桐三郎】 「(さすが強敵!)」 【夢野光一】 次の問題 【夢野光一】 「2006年第37回星雲賞日本長編部門受賞作は何?」 【夢野光一】 ある意味蓬莱問題と言えなくもないです 【相馬左門】 作者はわかるんだが 【夢野光一】 はい、検索OKです! 【相馬左門】 はい 【夢野光一】 会長! 【相馬左門】 「サマー/タイム/トラベラー」 【夢野光一】 新城カズマ先生の作品ですね 【相川悦子】 だからある意味蓬莱問題なわけです 【相馬左門】 ヒントでそこはわかった 【夢野光一】 現在会長が2ポイント、三郎さんが1ポイントです。まだまだ行方は分かりません 【夢野光一】 次の問題! 【夢野光一】 「“ニートに見た目が若返る薬を飲ませて1年間高校生活させることで社会復帰を目指す”この漫画のタイトルは?」 【夢野光一】 検索OKです! 【片桐三郎】 「といやっ!」 【夢野光一】 「はい、三郎さん!」 【片桐三郎】 「Re LIFE」 【夢野光一】 正解!全15巻で完結しています 【夢野光一】 1巻の表紙はこんなのです 【相馬左門】 映画化されてるだと…… 【夢野光一】 アニメ化もされてますよ 【夢野光一】 アニメと実写で主役が同じ役者さんというすごい作品です 【片桐三郎】 「はぁ、はぁ」 【夢野光一】 はい、双方2ポイントずつです。 【夢野光一】 次の問題! 【夢野光一】 「焼き鳥の部位で“さえずり”とはどこのこと?」 【片桐三郎】 「うぉーりゃぁっ!」 【夢野光一】 「三郎さん!」 【片桐三郎】 「舌」 【夢野光一】 「残念!」 【片桐三郎】 「おっと」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 「はい、会長」 【相馬左門】 「肝?」 【夢野光一】 正解は「食道」でした 【片桐三郎】 「そうだったかー!」 【夢野光一】 どちらも誤答ですので-1ポイント、双方1ポイントとなります 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「花札で12月の植物は何?」 【片桐三郎】 「うぉーりゃ!」 【夢野光一】 三郎さん 【片桐三郎】 「坊主」 【夢野光一】 「それは8月でした!」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 会長! 【相馬左門】 「桐?」 【夢野光一】 「正解です!」 【相川悦子】 1月:松、2月:梅、3月:桜、4月:藤、5月:菖蒲、6月:牡丹、 7月:萩、8月:芒、9月:菊、10月:紅葉、11月:柳、12月:青桐となります 【片桐三郎】 「ぬぬぬ!」 【相馬左門】 菖蒲と櫻ぐらいしか知らん 【相馬左門】 あ、柳もか 【夢野光一】 それでは会長2ポイント、三郎さん0ポイントで次の問題 【夢野光一】 「保育園は厚労省の管轄、では幼稚園は?」 【相馬左門】 はい 【夢野光一】 会長! 【相馬左門】 「文部科学省。教員免許と同等だったはず」 【夢野光一】 正解です! 【片桐三郎】 「うん、負けた!」 【夢野光一】 会長が3ポイントめを取りました 【夢野光一】 それでは次の問題! 【夢野光一】 「もともとは簡素化された教会音楽の様式を意味する、伴奏なしの合唱や重唱のことを何と呼ぶ?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 会長! 【相馬左門】 「アカペラ?」 【夢野光一】 「正解!」 【相川悦子】 イタリア語の発音では「ア・カペッラ」、英語の発音では「アーカペラ」が近いそうです 【相馬左門】 「あってたかーお師匠ありがとうございます」 【夢野光一】 それでは現在ポイントは4対0。 【夢野光一】 次の問題 【夢野光一】 「アジの尾びれ近くにある固いとげ状のうろこのようなものを何という?」 【片桐三郎】 「(なんじゃなんじゃ??)」 【夢野光一】 はい、検索OKです! 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 はい、会長 【相馬左門】 「ぜんご」 【夢野光一】 「ちょっと違う!」 【片桐三郎】 「おうさ!」 【夢野光一】 「はい、三郎さん!」 【片桐三郎】 「稜鱗」 【夢野光一】 「ごめんなさい、ひらがなで」 【夢野光一】 (読めんかった) 【片桐三郎】 「りょうりん」 【相馬左門】 え 【相馬左門】 ぜんご/ぜいご ぜんご/ぜいごとは、アジ(鯵)の尾に近い側面に一列に並ぶ刺(とげ)のような鱗のこと。 「ぜご」ということも。 魚類学では稜鱗(りょうりん)と呼びます。 【夢野光一】 ごめんなさい、「ぜんご」も「りょうりん」もけっして間違いではないんですが 【夢野光一】 一般的には「ぜいご」と呼ばれているのでここでは不正解とします 【夢野光一】 ただし決して間違いではないので、マイナスポイントはつけないことにします 【相馬左門】 なるほど。失礼いたしました 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「襟台にボタンが2つついているシャツをイタリア語で何という?」 【夢野光一】 検索OKです 【片桐三郎】 「とりゃー!」 【夢野光一】 三郎さん 【片桐三郎】 「ドゥエボットーニ」 【夢野光一】 正解! 【片桐三郎】 「ふう」 【相川悦子】 「ドゥエ」が「2個」、「ボットーニ」が「ボタン」です 【相馬左門】 おお、すごいすごい」 【夢野光一】 現在4対1です。 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「アメリカの10セント硬貨の別名は?」 【片桐三郎】 「おす!」 【夢野光一】 三郎さん 【片桐三郎】 「ダイム」 【夢野光一】 正解! 【片桐三郎】 「おっしゃー!」 【相馬左門】 「ああ、ダイムノベルの!」 【相川悦子】 コインの裏側に「ONE DIME」と刻まれています 【夢野光一】 「ten cents」とは言わないんですね 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「冠婚葬祭時に金封を包む風呂敷のようなものを何という?」 【相馬左門】 「いつか口にした覚えがあるんだが…思い出せない」 【夢野光一】 検索OKです 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 会長! 【相馬左門】 「ふくさ に包むんだよな、そう喋った気がする」 【夢野光一】 正解! 【片桐三郎】 「思いついていたのに!」 【相川悦子】 漢字では袱紗と書きます 【相川悦子】 最近は封筒型のものも出ています。ちなみに茶道で茶器を拭いたりする「帛紗」も「ふくさ」ですが別のものです 【夢野光一】 会長5ポイント。折り返しに達しました。 【夢野光一】 次の問題! 【夢野光一】 「日向荘の名前の由来になった軍艦“日向”。艦種は何?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 会長! 【相馬左門】 「戦艦」 【夢野光一】 正解! 【相川悦子】 後に飛行甲板を設けて航空戦艦となりましたが、正式には「航空戦艦」という艦種は存在しません。 【夢野光一】 「航空戦艦」はあくまでも俗称なんですね 【相馬左門】 「(ひっかかりそうだった)」 【夢野光一】 現在ポイントは6対1です。まだまだ逆転は可能ですよ! 【夢野光一】 問題! 【夢野光一】 「『枕草子』の出だしは“春はあけぼの”。それでは夏は?」 【片桐三郎】 「とう!」 【夢野光一】 「三郎さん!」 【片桐三郎】 「夏は夜」 【夢野光一】 正解! 【相馬左門】 「お見事」 【相川悦子】 秋は夕暮れ、冬はつとめて(早朝)です 【片桐三郎】 「悔い下がらせてもらいます」 【夢野光一】 それでは次の問題 【夢野光一】 「明かしたり打ったり折ったり欠いたり、高くしたり突き合わせたり。これ何だ?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 会長! 【相馬左門】 「はな?」 【夢野光一】 正解! 【片桐三郎】 「なるほど!」 【夢野光一】 いずれも慣用句ですね。 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「縦縞はストライプ、横縞はボーダー。では斜めの縞は?」 【片桐三郎】 「(なんじゃそりゃ)」 【夢野光一】 検索OKです 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 はい、会長 【相馬左門】 「ストライプ」 【夢野光一】 それは縦縞ですね 【夢野光一】 はい、タイムアウトです。 【夢野光一】 正解は「バイアス」でした 【片桐三郎】 「わかんかった!」 【夢野光一】 会長が誤答したので、現在のポイントは5対2です 【夢野光一】 それでは次の問題 【相馬左門】 なるほど。検索先を過信したな 【夢野光一】 「ラヴクラフトの死後、その作品を発表するためにオーガスト・ダーレスが創設した出版社は?」 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 はい、会長 【相馬左門】 「アーカムハウス」 【夢野光一】 正解です! 【片桐三郎】 「先を越された!」 【夢野光一】 ポイントは6対2に戻りました。 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「『機動警察パトレイバー』戦闘用レイバー“グリフォン”の操縦者の名前は?」 【相馬左門】 「はい 【夢野光一】 はい、会長 【相馬左門】 「バド」 【夢野光一】 正解です。 【相川悦子】 フルネームは「バドリナート・ハルチャンド」ですね 【相馬左門】 バドリナードまでは思い出せた。先があやふやだった 【相馬左門】 あ、ドになってる危うかった 【相川悦子】 はい、では現在ポイントは7対2です。 【夢野光一】 次の問題 【夢野光一】 「ずばり、2D6の期待値は?」 【片桐三郎】 「とりゃ!」 【夢野光一】 はい、三郎さん 【片桐三郎】 「7」 【夢野光一】 正解!ゲーマーには簡単な問題ですよね 【相馬左門】 「はい」3だと背後霊がさわいドルw 【片桐三郎】 「(笑)」 【夢野光一】 極端に偏ってる人は、何かあるんでしょうきっと(笑) 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「英語では“ドンキー”。この動物は何?」 【片桐三郎】 「おっしゃ!」 【片桐三郎】 「ろば」 【夢野光一】 はい、三郎さん 【夢野光一】 正解! 【片桐三郎】 「ふう」 【夢野光一】 7対4まで追い上げてきました 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「スマホ応石を開発したのはスティーブン教授ともう1人は誰?」 【夢野光一】 蓬莱問題ですが通常問題として扱います 【夢野光一】 検索OKです 【相馬左門】 「はい」 【夢野光一】 はい、会長 【相馬左門】 「マシュウ博士」 【夢野光一】 正解です。 【片桐三郎】 「そうだったか!」 【夢野光一】 セッションにも一度だけ登場してますね 【相馬左門】 「この人助けに行ったんだよなー、あの時のエステルの激怒はな―」 【夢野光一】 会長には印象強いですね、副会長の激怒は 【夢野光一】 では次の問題です 【相馬左門】 「大南帝国の話だしな」 【夢野光一】 「音楽用語です。D.C.の読み方は“ダ・カーポ”。では意味は?」 【片桐三郎】 「どりゃー!」 【夢野光一】 はい、三郎さん 【片桐三郎】 「最初から繰り返す」 【夢野光一】 正解! 【相川悦子】 記号のあるところまで戻るのは、D.S.(ダル・セーニョ)ですね 【片桐三郎】 「はあはあ、こりゃぁ手強いぞ」 【夢野光一】 8対5まで差が詰まってきました。 【夢野光一】 では次の問題! 【夢野光一】 「フランスの国民的イベント“ツール・ド・フランス”、何のレース?」 【片桐三郎】 「うぉー!」 【相馬左門】 「はい」 【片桐三郎】 「自転車」 【夢野光一】 はい、三郎さん! 【夢野光一】 正解! 【夢野光一】 8対6です。追い上げてきました! 【夢野光一】 では次の問題! 【夢野光一】 「芥川龍之介の短編を語源とする、関係者の発言が食い違っているため真実が分からなくなることを何という?」 【片桐三郎】 「といや!」 【夢野光一】 三郎さん! 【片桐三郎】 「藪の中」 【夢野光一】 正解! 【片桐三郎】 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」 【相馬左門】 「日本映画の栄光の始まりだな」 【片桐三郎】 「(余裕がなくなっている)」 【相川悦子】 強盗殺人事件なんですが、被害者の妻も盗賊も自分が犯人だと言い、口寄せで被害者自身までも自殺だと言っている、すごい事件ですね 【夢野光一】 現代だったらあっと言う間に解決するんでしょうけど‥‥って野暮ですね、はい。 【夢野光一】 では次の問題 【夢野光一】 「アメリカ横断ウルトラクイズのメインテーマ。もともとある映画のテーマ曲ですが、その映画とは?」 【片桐三郎】 「おりゃ!」 【夢野光一】 三郎さん! 【片桐三郎】 「スタートレック」 【夢野光一】 正解!並びました! 【相川悦子】 メイナード・ファーガソンの演奏はトランぺッターの憧れですね! 【夢野光一】 エリック・ミヤシロの演奏も聞き逃せませんよ! 【夢野光一】 「すいか、トマト、メロン、苺。ICカードはどれ?」 【片桐三郎】 「どっせい!」 【夢野光一】 三郎さん! 【片桐三郎】 「スイカ」 【夢野光一】 正解! 【夢野光一】 逆転しました!8対9、リーチです! 【夢野光一】 では次の問題! 【片桐三郎】 「こげに手強き戦いは初めてじゃ」 【夢野光一】 星占いで星の位置などを描いた図のことを何という? 【片桐三郎】 「おら!」 【夢野光一】 はい、三郎さん! 【片桐三郎】 「ホロスコープ」 【夢野光一】 優勝決定!!! 【片桐三郎】 「お、おお? おお!!!」 【相馬左門】 「おめでとう」 【片桐三郎】 「お、おわ、おわおわおわ」 【夢野光一】 素晴らしい追い上げでした! 【夢野光一】 優勝は片桐三郎さんです!おめでとうございます! 【片桐三郎】 「あ、ありがとうございます!(すごくうれしそう!!!)」 【夢野光一】 それでは、「勝てば天国、負ければ地獄!」 【相川悦子】 「知力・体力・時の運!」 【夢野光一】 「早くこいこい木曜日!」 【相馬左門】 「さて、どんな罰ゲームかなぁ」 【相川悦子】 ってもう日曜日ですよ光一くん! 【夢野光一】 はい、実際のウルトラクイズでも決勝戦での敗北には罰ゲームがありませんので、ここでもありません 【夢野光一】 皆さん、お疲れ様でした! 【片桐三郎】 「おつかれさまでした!」 【夢野光一】 ご参加ありがとうございました!! 【片桐三郎】 「(礼)」 【秋葉巡】 ありがとうございました~ 【北大路鉄華】 お疲れさまでした! 【相馬左門】 お疲れさまー 【夢野光一】 いやー、あと2問しか残ってないw 【北大路鉄華】 優勝者の商品という名の(罰ゲーム)は?wktk 【夢野光一】 それ考えてなかったなぁ>賞品 【片桐三郎】 「銀河への土産をもらえればいいよ」 【片桐三郎】 (銀河=故郷の幼馴染) 【夢野光一】 優勝の盾は出ると思います 【片桐三郎】 「(盾をもらってガッツポーズ)」 【夢野光一】 ちなみに残り2問は「チャイコフスキーの序曲『1812年』で効果音に使用されているものは何?」と「最終問題。これって何問め?」でした 【北大路鉄華】 あるんだww 【片桐三郎】 大砲? 【夢野光一】 答えは「大砲」と「80問め」でした 【夢野光一】 本当に楽譜に「canon」って書かれてるんですよ 【北大路鉄華】 「仕方ないね、狂科研から優勝プレゼントをチャットに貼っておこう」 【夢野光一】 ということで、お疲れ様でした! 【片桐三郎】 おつかれさまー! 【北大路鉄華】 さまでした! 【夢野光一】 こちらは閉じますねー 【片桐三郎】 新感覚の面白さでした 【相馬左門】 お疲れ様でした 【秋葉巡】 おつかれさまでした~ 【北大路鉄華】 おつさまでした
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/1327.html
「おい、まだ着かないのか?遅れちまうぞ」 がたがたと不整地の道路を進むトラックの助手席で片桐が運転席の浅木に声をかけた。 「はあ、それが行けども行けどもこんな感じでして・・・」 「まったく。おまえ何回、日出生台に通ってんだよ」 片桐は無線で後続のトラックに乗っている高崎を呼びだした。 「片桐三曹、かれこれ2時間、こんな山道をドライブしてるんですよ。コンビニどころか人家もないですな」 「高崎士長、携帯電話もだめか?」 スピーカからがさごそと雑音が聞こえた。高崎がポケットでも探っているのだろう。 「だめですな。圏外です。」 軽 くため息をついて片桐は無線のマイクを戻した。かれこれ2時間。こんな状況だ。片桐三曹以下、7名の隊員は日出生台演習場で使用する実弾の輸送に従事して いた。彼らの運転する2台の73式トラックには大量の小銃弾、手榴弾、84ミリのカールグスタフなどが搭載されて演習場では、本隊がその到着を待ちかまえ ているのだ。 片桐は今年27歳。一般曹候補士からたたき上げでやってきているいわば「職業軍人」だ。大昔に、流行した「コンバット」のサンダース 軍曹がイメージにぴったりだと上官からは言われている。部下にとっては部下思いだが雷が落ちるとおっかないことこの上ない。まさに理想的な三曹といえるだ ろう。 「コンビニでも見つけてさっさと到着しないとな・・・・」 こんな失態をマスコミや自衛隊に好意的でない市民団体にでも見つかったら大変だ。しかし片桐の希望とは裏腹に相変わらず、周囲は広葉樹の森と、目の前には轍のほとんど見えない道が続くばかりだ。 「三曹、どう考えてもおかしいですよ。」 荷台の後ろから須本が声をかけた。 「いくら大分の山奥っていっても2時間も未舗装の道路を走っても人家ひとつないなんて・・・」 「だったら何だ?狐にでも化かされて同じところをぐるぐる回ってるとでもいうのか?」 そうは言いつつも片桐もこの指摘には同意していた。いくら迷子とは言え、何度か通ったことのある道だ。いくらなんでも見覚えのある場所が見てみてもいいはずなんだが・・・ 「三曹、登り坂が終わります。街が見えるんじゃないですか?」 浅木がハンドルを握りながら報告した。片桐は双眼鏡をとりだした。やれやれ、こんなところで双眼鏡を使うなんて、隊の連中にばれたらいい笑いモノだ・・・ 「え?」 「あれ?」 車列は小高い丘を登り詰めたようだった。そしてそこで片桐たちが見たモノは、日本ではまずあり得ない地平線だった。延々と小高い丘が連なっている。 そしてその大地は豊かな広葉樹で一面覆い尽くされているのだ。 「日田は?由布岳は?久住連山はどこだ?」 片桐は思わずうろたえて双眼鏡であたりを見回した。太陽の向きを確認しつつ東方向を見ると、明らかに集落らしきモノが見て取れた。 「村だ・・・。でもどこだ?中津江まで出てきちまったのか・・・」 ひとりごちる片桐でもわかっていた。中津江なんかじゃない。そもそもその集落にはここから見る限り舗装された道路が通っていないのだ。 「とにかく、あそこまで行って道を聞くしかないな・・・・」 運転席でぽかんと口を開けている浅木に発信するよう命じかけたときだった。横の茂みから何者かが飛び出してトラックの前に立ちふさがった。 「なんだ?」 片桐は目の前の人物を凝視した。暗色の服と革製であろうブーツに身を包んだその人物は外国人に見えた。しかしその外見は世界のどの人種とも似通っていない。 ちょっと高い鼻。緑色の髪の毛・・・・。 そしてなにより、その身長の低さ・・・・。1メートルちょっとといったところだろうか。 「あ、あ、ああああ・・・・」 浅木は物語の7人のこびとにも似た人物との遭遇で顎がはずれんばかりに口を開いている。後ろでがちゃがちゃと金属音が聞こえて片桐は我に返った。後ろを見てみると須本と中垣が自分の小銃に実弾を装填している。 「おい、須本、中垣。なにやってんだ?」 「三曹、おわかりでしょう?こりゃあ尋常なことじゃないですよ。身を守るモノが多いに越したことはない」 普通だったら懲戒モノの規則違反だろうが、須本のこの言葉は少なくとも現在の状況を的確に表現しているに違いない。後続のトラックの高崎からも無線連絡が入る。 片桐は目の前のこびとが73式トラックの外観を好奇心にあふれた様子で(少なくとも片桐にはそう見えた)眺めているのを確認しながら高崎に答えた。 「高崎、斉藤と岡田に実弾を装填させろ。」 「え?」 マ イクの向こうで高崎は固まった。まさか、片桐三曹はなにを考えているんだ?いくらこんな状況だからといっても・・・。だが高崎の頭の中にはとてつもなくば かげてはいるが、今この状況を説明できる仮説が構築されていた。もしも、それが事実であったならば、この片桐の命令は妥当であると言えよう。 「いいな?」 再度の片桐の確認で高崎は考えることをやめた。自衛隊では上官の命令がまず優先される。高崎は斉藤と岡田にそれぞれの小銃に実弾を装填するよう命じた。2人は高崎と同じ反応を見せながらも訓練通りその動作を終えた。 「三曹、完了です」 全隊員の準備が完了したのを確認して片桐はトラックのドアノブに手をかけた。彼の意図を察した浅木が思わず声を上げた。 「三曹、やばいっすよ」 「心配するな、武器は持ってないようだ。いざとなったら援護しろよ」 それだけ言って片桐はドアを開け放って外に飛び降りた。ドアの開く音に驚いたのかこびとは少し肩をびくっとさせたようにも見えた。片桐はまず、とりあえず笑顔を作ってみることにした。人類皆兄弟。笑顔は敵意のないことを示す共通語だ。 「や、やあ・・・」 若干ひきつった笑顔でこびとに話しかける。数秒の間をおいてこびとも片桐に敵意がないことを悟ったらしい。その高い鼻を持つ顔をほころばせた。 「あんたたちの来るのを待っていたんだよ。俺はバストーっていうんだ。村では長老が待ってる。」 言葉が通じることがあまりに意外で片桐は少しうろたえた。 「ば、ばすとぉ?って君の名前か?」 2,3回生唾を飲み込んでからようやく片桐はバストーと名乗るこびとに言葉を返すことができた。 「そうさ、そんなに珍しい名前じゃないよ。あんたは?」 「自分は陸上自衛隊三等陸曹の片桐だ」 バストーはひょいと首を傾げた。 「あんた、りくじょうじえいたいさんとうりくそうって言うのか?長い名前だなぁ」 「あ、いやいやそれは肩書きみたいなモノで、名前は片桐だ」 「まあ、いいや。じゃあ、片桐、その大きなモノに俺も乗せてくれよ。村まで行こう」 そう言うとバストーはすたすたとトラックに歩み寄った。運転席ではびびりまくった浅木が89式小銃をバストーに向けていた。 「こ、これ以上近寄るな!」 震える声で浅木はバストーに叫んだ。バストーはそれに動じるわけでもなくけらけらと笑った。 「あんた、おもしろいモノ持ってるな、それどうやって使うんだ?」 「銃を見たことないのか?」 手で浅木を制しながら片桐がバストーに訪ねた。日本で銃を知らないやつなんていない。だったらここはいったいどこなんだ。もはやその自問が意味をなさないと知りつつも片桐はそう思わずにはいられなかった。 「ないね。パタトールならいくらでも見たことあるんだけど」 「パタトール?」 今度は片桐が聞き返す番だった。バストー曰く、どうやらそれは弓矢の一種のようだ。 「パタトールはすごい。特にアンバードの持つパタトールは強力なんだ。」 またわからない言葉が出てきた。アンバード、話の流れから人種や国名のようだが、当然世界地図にはそんな名前の国は存在しない。 「アンバードってのは森の悪魔なんだ。俺たちガントールとクーアードの村をいつも襲うんだ。」 バストーと会話するごとに片桐たちの知らない言葉が次々と飛び出してくる。浅木と片桐の間のシートでバストーは次々と語り始めた。 彼の話によると、バストーたちこびとはガンドールと呼ばれているようだ。そしてクーアードというのは、彼の話曰く、片桐たちに近い人種のようだった。そしてアンバードとは鬼のような外見で森に潜み非常にどう猛で、常に村を荒らしている連中のようだった。 この世界はヌーボルと呼ばれていて、バストーにもそれがどのくらいの大きさかは知らないそうだ。噂では歩いて100日の距離にクーアードが大勢住んでいる聖地があるそうだが、村の人間は誰も知らないそうだ。 村の周辺には転々と集落が存在し、そこではクーアードとガンドールが共存して生活しているようだ。村々は独立し、互いに交流はしてるそうだが、ここのところのアンバードの襲撃で村々の連絡は途絶えがちということだ。 「で、バストー、なんで君はそんな危険な森にいたんだ?」 がたがた道で徐行するトラックの中で片桐は問いかけた。バストーは少し考えてからこういった。 「長 老様がアンバードの襲撃に困って伝説のロサールの魔法を使ったんだ。あ、ロサールってのは伝説の古代王国でね。魔法でヌーボルを支配していたらしいんだけ ど、大昔に滅びちゃったんだって。でも、クーアードは彼らの魔法を少しずつ伝承していて、長老は村が受け継いだ魔法であんたたちを召還したらしいんだ。」 片桐は考えた。じゃあ、俺たちは元の日本からどこかわからない、彼らのいうヌーボルにワープでもしてきたというのか。 「バストー?なんで俺たちなんだ?俺たちはただ普通に演習に向かう途中だったんだぞ!どこの誰だかしらない山賊退治になんでおれたちが?」 矢継ぎ早にまくしたてる片桐にバストーは目を白黒させながら聞いていたが、ぶっきらぼうに答えるだけだった。 「そんなこと、俺があんたたちをよんだわけじゃないんだから・・・。長老に聞いてくれよ」 20分前後で車列は村の外壁に到着した。 「三曹、こいつは・・・・」 浅木がサイドブレーキを引きながら思わずこぼした。無理もないだろう。村は藁葺き、煉瓦や木で組み立てられた粗末な家々がならび、その周囲を外壁らしき土 壁のようなモノが覆っているのだ。その外壁にも投げ槍らしきモノや焦げた跡があちこちに見られた。アンバードとやらの襲撃の跡だろう。 「さあ、片桐、長老のところへ行こう」 バストーはトラックの到着にうろたえる村の人々に挨拶しながら片桐の手を引っ張った。トラックは村の外にひとまず留めて徒歩で村にはいる。 「なあ、俺の部下もいっしょにいいか?」 「ああ、いいんじゃないの」 村の中心に片桐たちはバストーの案内で進んだ。村人はバストーのようなこびとと、片桐たちと同じような人間たちで構成されていた。ガンドールとクーアード なんだろう。クーアードは人間と同じ背格好だが、髪の毛の色や目の色が人類にはない色をしている。たしかに黒髪や金髪もいるが、青、緑、赤・・・いろいろ な色の連中がいた。そしてみんな一様に美しい。男女問わず、まるで彫刻のようだ。 自衛隊員たちはヘルメットにチョッキのフル装備に実弾を装填した89式小銃で身を固めておずおずと村の道を歩いていった。村人に敵意はないようだが、不気味なことには変わりない。本来なら大分の山奥の演習場にいるはずが、どういうわけかこんな未知の世界にいるわけだ。 「長老とソリスが待ってる」 バストーが早足で歩きながら片桐に声をかけた。 「ソリスって?」 またしても聞いたことのない単語が出てきて多少うんざりしながらもバストーに聞き返す。 「クーアードの中で神聖な存在の女性さ。代々女性がソリスになって長老と一緒に村を治めていくんだ。そしてソリスは伝説の神々と話をして、村の将来について神様の指示を仰ぐんだよ」 巫女さんと王女様みたいなものだろう、と片桐は想像した。彼の頭には卑弥呼に近いイメージがうかんでいた。おそらく、この村は村人の衣服や建物の様式から して、現代日本とはかなりかけ離れた文化水準にあるようだ。卑弥呼のような存在で村を統括していてもさほどおかしくもなかろう。 「三曹、おれたちいったい・・・」 高崎がほかの部下に悟られないように片桐に尋ねた。 「きっと神隠しにあったのさ。油断するな。」 片桐はそれだけ言うとバストーに続いて村の通りを足早に歩を進めた。高崎は片桐の言葉を聞いて先ほど、バストーと出会ったときに考えた自分の仮説が彼の考 えと一致していることを知った。それを知ったところでどうにかなるわけではないが、とりあえず隊長の片桐と同じ考えであることが彼をほっとさせたのだ。 村の中心、ひときわ大きな邸宅へバストーは片桐たちを案内した。トラックには須本、浅木を残している。万が一、どかんとやられたらどうにもならない。都合片桐たち5名が長老とソリスという人物の待つ邸宅に赴いたのだ。 「長老、アービルから召還したクーアードをお連れしました。」 バストーが中庭とおぼしき場所で大きな声で報告した。邸宅は古代ローマを彷彿とさせる柱が強調された趣で片桐たちを迎えている。と、そこへ柱の間からぬっと老人が現れた。彼が長老のようだ。 「バストー、ご苦労だった。アービルから来た勇者よ。わしが長老のザンガンだ。」 「陸上自衛隊三等陸曹の片桐です。いろいろとおききしたいことがあります。」 ザンガンと名乗る長老は片桐の言葉を手で制した。ちょっとむったした表情を浮かべたが片桐は我慢してザンガンの言葉を待った。 「ロサールから代々伝わる魔法で、そなたたちを呼び寄せるのは初めてではない。アービルの戦士たちがこの村に来るのは90年ぶりだ。」 ザンガンの言葉に片桐は思わず聞き返す。 「90年前・・・。いったい連中はなにをしたんですか?」 「だ いたいのことはバストーから聞いているだろう・・・。この村を始め、ヌーボルはアンバードの襲撃に絶えずさらされておる。普段は我々で何とか撃退できるの だが、90年から100年に1度、奴らは決まって大規模な攻撃を仕掛けてくる。そのときに、我々はロサールから受け継いだ魔法を駆使してその苦難を乗り 切ってきたのだ。この村が受け継いだ魔法とは。パンサン。すなわち戦士の召還だった。90年前もアービルの戦士、すなわち、我々とは異なる世界の戦士の力 でこの村を守った。バストー、彼らの置きみやげをお見せしろ」 長老の命令でバストーは柱の陰へ消えた。そしてすぐに何か抱えて中庭に戻ってきた。彼の持ってきた品物は片桐たちを驚かせるに十分だった。 「これが90年前に呼び寄せたアービルの戦士の持ち物だ。」 「三曹!こ、これは・・・・」 高崎が思わず声を上げた。高崎に言われるまでもなく片桐もこれには間違いなく見覚えがあった、大昔の記録映画にたびたび登場する。英軍が第2次大戦まで使っていたシルクハットのようなあのヘルメットだった。 「90年前の記録によれば、そのとき召還されたアービルの戦士はおよそ200名。クーアードだったそうだが、そなたたちとは若干姿が違うようだ。彼らは自らがここに呼ばれた使命を果たすと、再びロサールの魔法でこの世界から消えたとされている。」 「使命ですか・・・?」 片桐は学生の頃読んだ雑誌の内容を思い出していた。第1次世界大戦中。トルコの戦線で丘に突撃した英軍の兵士が200名、霧の中に入ってそのまま消えてしまったという話だった。 「そう、使命だ。彼らのさらに100年前には赤い服を着たクーアードが煙の出る武器でアンバードを退治したという記録もある。さらに昔には銀色の鎧を着たクーアードが見たこともない大きな動物にまたがり、大きな槍でアンバードに突撃したという記録もある。」 長老の言葉に高崎が真っ青な顔をして片桐に耳打ちしてきた。 「三曹、赤い服ってまさか、イギリス兵じゃないですよね?19世紀にアフリカで行方不明になった英軍はいくらでもいますよ。それに銀の鎧に槍って十字軍ですか?行方しれずの十字軍の一団なんて話も聞いたことありますよ。」 高崎の疑問の言葉を引き継ぐようにザンガンは言葉を続けた。 「中には悲惨な最期を迎えたクーアードもいたようだ。丸腰で、食事の最中に召還された船乗りらしいクーアードはなすすべなくアンバードに殺されたとある。200年前の記録だがな・・・」 もはや、片桐には高崎の仮説をさらに発展させた仮説が頭で構築されつつあった。殺された無防備な連中はきっと船員だ。マリーセレスト号の船員だったんではないだろうか・・・。まさか、神隠しといわれる謎の事象は彼らの伝承の魔法によるものなんじゃないのか。 「長老、ここに召還されたクーアードたちはその使命を果たした後どうなったんですか?」 ここまで話を聞いて、片桐なりに推測した結果を分析すれば最大の疑問点はこれしかない。ザンガンは顎に蓄えた白いひげをなでながら片桐に返した。 「我々 に伝わるパンサンはとても不安定だった。パンサンは神々と交信してソリスの魔力を介在して戦士たちを召還する。戦士たちはソリスの望んだ使命を達成し、再 びソリスの儀式を受ける。そしてこの世界から消えていくのだ。アービルへ帰る儀式は村の裏の山にある神々の遺跡で行われるんだが、わしも帰りの儀式は見た ことがないんだ・・・・」 つまり片道切符の可能性も大いにあるってことか・・・。片桐は部下に悟られないようにだが軽く舌打ちした。実際、神隠しにあった多くの兵士たちは元の世界に帰ってきてはいない。 「で、我々に課せられた使命とは?」 片桐の質問にザンガンはうなずいた。そして柱の奥を振り返ると恭しくひざまづいた。 「スビア様、アービルの戦士たちに使命をお伝えください」 ザンガンの言葉に応えてソリスと呼ばれる神聖な女とやらが姿を現した。その姿は片桐たち自衛隊員を驚かせた。てっきり、年輩のおばさんか、ロリコン趣味の 連中の喜びそうな少女が出てくるのかと思いきや、彼女は村で見かけたごく普通のクーアードだった。年齢は20代前半。少し赤毛の髪の毛と古代ローマのよう なシルクっぽい衣服以外は。しかし、村で見かけたどの女性よりも気高く美しかった。日本人でも西洋人でもないが、純粋に美しいと思えるその姿は隊員たちを 釘付けにした。 「よく来てくださいました。私はスビア。この村のソリスです。まずはあなたがたを突然ヌーボルに召還した無礼をお詫びしたいと存じます。」 なるほど、外見はともかくその言動は神聖視されるにふさわしいものだ。片桐はこの世界の状況をしるために少しカマをかけてみることにした。 「スビア様、私は陸上自衛隊三等陸曹の片桐ともうします。こっちは高崎士長。副官みたいなモノですな」 「陸上自衛隊ですか・・・初めて聞きますね・・・」 スビアは片桐の自己紹介に明らかに嫌悪感を見せた。西洋系でもない東洋系でもない美しい顔を少ししかめている。 このやりとりを聞いたザンガンがあわてて片桐の前に立ちふさがった。 「待ちなさい。ソリスの前では自分から話してはいかん!」 「え?」 「ソリスとの会話はわしを介してのみ許されているのだ。彼女に話しかけてよいのは神々だけなんじゃ」 なんというめんどくささだろう・・・。思わず片桐がため息をついた。そのリアクションがさらに気にくわなかったのだろう。スビアはその顔にさらに嫌悪感をにじませた。 「今 日のところはかまいません。私が神々に祈ったあなた方の使命とは、まもなく襲ってくるアンバードを皆殺しにすることです。アンバードの大群はおよそ100 年に1度私たちを襲います。ゾードと呼ばれる赤い満月の出た次の日、彼らはやってきます。その攻撃から私の村を守ってほしいのです。」 「なるほど、よくわかりました。しかし、スビア様にひとつ申し上げねばならないことがございます。」 向こうの主張はわかりすぎるくらいわかった。要するに代理戦争の依頼だ。彼らは独力でアンバードの襲撃を防げないからわざわざ彼らの言うアービルから代わりに戦ってくれる連中を呼び寄せているわけだ。 片桐たちの前が、第1次大戦中のイギリス軍部隊、その前にはマスケット兵、十字軍・・・。 「私たちは武器は持っていますが、それを使用することは許されていません。」 片桐のその言葉にスビアは一瞬きょとんとした。 「それはどういう意味です?」 「言葉のままです。我々は武器を持っていますが、法律がそれを実際に使うことを許していないのです。残念ながらお力にはなれませんな」 彼女やザンガンに憲法9条や自衛隊のあり方なんかを言ってもわかるはずもないことだ。片桐はかいつまんでわかりやすく説明したつもりだった。しかしスビアはいっこうに理解できないようだった。嫌悪感に加えていらだちすらその表情に浮かべながら言った。 「では、あなた方はその武器をいつ使うのです?」 「内閣総理大臣、あなた方で言うところの長老の許可がないとたとえ、我々が殺されても使えません。」 自分で言っていてとても理解できないであろうことは片桐は承知していたが、現在の自衛隊ではこれが規則であるのだから仕方がない。 「そんな、馬鹿な話が・・・・」 ザンガンもあまりのショックに言葉が続かないようだ。無理もない。頼みの綱が戦えないと言うのだ。 「片桐三曹!」 トラックの浅木から無線が入った。 「どうした?」 「変な連中が近づいてきます!」 片桐と浅木の無線越しのやりとりを不思議そうに見ていたスビアが尋ねた。 「片桐三曹、いったい誰と話しているんです?」 「村の外においてあるトラックに残した部下とです。変な連中が近づいているそうですが、お心当たりは?」 片桐の皮肉めいた質問にスビアはさっと顔を曇らせた。素早くザンガンに向き直る。 「アンバードだ!アンバードが来たぞ!」 ザンガンはよろよろと邸宅の外に出て村人に大声で叫んだ。村人のうろたえ具合が邸宅の中の片桐にもよくわかった。 「片桐三曹、あなたとのおしゃべりはいったん打ちきりです。アンバードの襲撃です。村の外の部下を中に入れてあげなさい。彼らのパタトールは恐ろしい威力があります。」 「浅木、村の中にトラックを入れろ!」 「その後は?」 「待機だ」 片桐は浅木に短く指示を出すとスビアに向き直った。彼女は毅然とした表情で片桐を見返している。 「力は貸してくださらないのね」 「さきほど申し上げたとおりです・・・」 片桐の返答を聞くとスビアはきびすを返して柱の奥に消えた。会見は終わりだった。 「三曹、いいんですか?」 高崎が問いかけた。 「自衛隊は内閣の承認なしでは武力行使を禁止されている。ましてや海外での武力行使などもってのほかだ。トラックに戻って待機だ。」 自分でもこの返答には納得していないが、自衛官としては部下にこう指示するほかはなかった。 片桐たちがトラックの止めてある門の前に戻ってくるとその大きな扉は閉じられていた。外壁には奇妙な武器を抱えたガンドールやクーアードが男女問わず張り付いて襲撃に備えている。 「あれがパタトールか・・・」 パタトールは長さ80センチほどの棒が十字にくみ合わさったものだった。女たちは外壁の土にとがった棒を次々と刺していく。あれがどうやら矢のようだ。構造上大した飛距離も出ないだろう。 「高崎、トラックの陰に隠れて待機してろ」 片桐はトラックの助手席に乗り込んだ。バストーが中で頭を抱えてふるえている。彼は片桐を見ると彼にしがみついてきた。 「片桐!助けてくれないのか?このままじゃアンバードに皆殺しにされちゃうよ!」 彼らの武器を見ればその貧弱さは見て取れる。しかし・・・ 「三曹、憲法9条を破る気ですか?」 2人の話に割って入ったのは荷台にいた岡田だった。前々から憲法だの日米安保だのとうるさいやつだった。大学では世界人類研究会とかいううさんくさいサークルで平和運動をやっていたと言うが、なんでこんなヤツが自衛隊に入隊したのかは、片桐たちの間でも謎だった。 「破る気はない。だが、人としての最低限の道ははずさないつもりだ。」 「それは武力行使の準備があるということなんですか?」 岡田がかみついた。毎度のことだがこいつはこうなってからが長い。片桐はタバコをポケットから取り出して火をつけた。そういえば、ずいぶん吸っていなかったことに気がつく。 「積極的な武力行使はしない。だが、自衛のためならやむをえん。」 「三曹は公僕の自衛官でありながら、国民の総意によって決められた憲法に違反して武力行使を行うんですね。軍国主義の復活ですよ!」 岡田は根本的に認識が欠落してる。ここは憲法とかなんとかが通用しないであろう場所だ。今近づいているアンバードとやらが、日本の実状と憲法を尊重してく れるのか?あり得ないだろう。隣国の中国もそれを尊重するどころか、やりたい放題やっているというのに。こんな得体の知れない国の連中が「私たちは憲法で 戦闘行為はできません」で「はい、そうですか」と見逃すわけがない。やり合わないに越したことはないが、最悪の事態も想定しておくのは常識だ。 片桐の説明にも岡田は納得しない。 「どの世界の人間だろうと話し合いをすれば解決できるんです」 この議論もここまでだった。アンバードが村の外壁に到達したようだ。 「よし!発射!」 村人が原始的な弓矢=パタトールを次々と発射していく。外壁の外で聞いたこともない叫び声があがった。 「おいおい、なんだよ・・・」 「少なくとも人間じゃないな・・・」 トラックの陰で待機する中垣と斉藤が言葉を交わした。その瞬間、轟音とともに外壁に土煙が上がった。 「なんだ?」 「迫撃砲みたいな音です!」 須本がトラックの陰から外壁の様子をうかがう。2,3人のガンドールが倒れている。須本は初めて見る死体におもわず胃の奥からこみ上げてくるモノを我慢できなかった。 「来るぞ!」 外壁に次々と着弾する未知の兵器で後退した村人は物干し竿のような槍やRPGで出てくるようなロングソードを構えて横一列に並んだ。その中にスビアも混 じっているのを片桐は見逃さなかった。村を守るために男女問わず戦っている。その横隊に時々、例の炸裂する飛び道具が飛来してそのたびに数名が倒れた。 「奴らが外壁を越えたらパタトールの一斉射撃だ!」 剣や槍を構える村人の前に数名のパタトールを持ったクーアードが歩み出た。次の瞬間、外壁によじ登ってきた生物は片桐たちが未だかつて見たことのない生物だった。 「あれが・・・、アンバード・・・」 身長は2メートル近く。青みがかった肌にちりちりの黒髪が大きめの頭におまけのようにのっかっている。手には棍棒や斧らしき武器が握られ、衣服は腰巻きのようなモノだけ。その形相はまさに、鬼をイメージさせた。浅木が思わずその場にへたりこんだ。 「あ、あああ・・・」 トラックの中にこもっているバストーもシートにちぢこまっている。たしかに、迫力満点だ。 「三曹、やばくないですか?」 高崎に言われるまでもなかった。数こそ20匹もいないが、体格といい、その動きといい、クーアードもガンドールも白兵戦ではかなわないのは目に見えてい た。しかも、奴らの中に奇妙な三日月型の棒を持った連中がいた。そいつがその両端を持って、ちょうどベンチプレスのように前に突き出すと、目に見えない何 かが発射されて爆発が起こるのだ。バストーががたがた震えながらつぶやく。 「やばい・・・、パタトールを持ったアンバードが3人もいる・・・。もうだめだ・・・」 アンバードは自衛隊には目もくれずに村人の横隊に突撃した。目の前の獲物しか目に入っていないようだった。 片 桐は思わずトラックを降りて少し離れたところで繰り広げられる白兵戦に目をやった。明らかに村人が押されている。その中で勇敢に粗末なパタトールで応戦し ているスビアを見つけた。彼女は一瞬、片桐の方を振り返った。さっきまでのプライドにあふれた表情はない。片桐に向けられた視線は間違いなく、恐怖する普 通の女性の目だった。 「あっ!」 片桐が思わず声を上げた。彼女が目をそらした隙をついて1匹のアンバードが投げ槍を投げた。間一髪それはスビアをはずれたが右腕をかすったようだ。彼女はその場に腕を押さえて座り込んだ。 「三曹!」 たまりかねた高崎が再び声を荒げながら片桐を呼ぶ。必死に戦う村人の後ろでガンドールの子供やクーアードの老人がひとかたまりになって震えているのが目に入った。 それは片桐自身がびっくりするくらいだった。彼は半分無意識に腰からシグザウエルを抜くと安全装置を解除しながら駆け出していた。 「片桐三曹!」 高崎のすっとんきょうな声を無視して瞬く間にパタトールを操るアンバードの前に躍り出た。ここでアンバードは初めて片桐の存在に気がついたようだ。青い肌に醜い表情の顔を片桐に向けた。 ぱん!ぱん! 両手で構えて2発、片桐はアンバードの顔に向けて発砲した。9ミリ弾はその音と同時にアンバードの醜い顔に着弾してその顔をさらに醜くした。緑色の体液が 着弾した部分から吹き出す。そしてそのまま仰向けにアンバードは倒れた。 銃で殺せる!片桐は興奮しながらも分析した。 「ちくしょう!三曹を援護するんだ!」 高崎もトラックの陰に伏せていた須本と中垣を連れて突進した。89式のスリーバーストを確実にアンバードに撃ち込んでいく。弾薬を無駄に使うな、という片 桐の教えを忠実に守った正確な射撃だった。だが、胴体に次々と着弾する5・56ミリ弾を受けてもアンバードはなかなか倒れない。すでに10発近く命中して もまだたったままのヤツもいる。 「ちくしょう!!!」 浅木と斉藤もようやく覚悟を決めて射撃を開始した。 「おい、岡田!」 浅木はトラックの陰に隠れたままの岡田を呼んだ。岡田は無表情のまま動こうとしない。 「岡田!三曹たちを援護するんだ!」 再び浅木が岡田に声をかける。岡田はようやく浅木を見る。 「おまえたち、こんなことが許されると思ってるのか?」 「ばかやろう!目の前で人間が死んでるんだぞ!助けなくてどうする!」 撃ち尽くしたマガジンを交換しながら浅木が大声で叫ぶ。 「そんなこと問題じゃない!これは憲法違反だ!」 「勝手にしろ!」 浅木は岡田との議論をしている暇はないと判断して射撃に集中した。 「スビア様!あ。あれを!」 ザンガンが隊列の後ろに後退したスビアに指さした。片桐たち自衛隊員が見たこともない武器でアンバードと戦っている。彼らの武器から発せられる大きな音で彼女の耳は少し痛かった。 「高崎!須本!中垣!頭だ!頭をねらえ!」 片桐は追いついた高崎たちの後ろに下がってマガジンを交換した。すでに数体のアンバードが無惨な死体をさらしていた。目の前の敵にしか興味のないアンバー ドたちも仲間を一瞬にして肉塊にした新たな敵に闘志をむき出しにして突進するが、弾幕で動きを封じられ、弱点の頭部を撃たれて絶命していった。 最後の1匹が倒れたときには片桐はすでにマガジン4本を撃ち尽くしていた。 「やった!やったぞ!」 村人から歓声が上がった。 「アービルの戦士がやってくれた!!」 負傷者を家々に運ぶ村人たちは次々と隊員たちに感謝の言葉を贈りながら通り過ぎていった。片桐はトラックの弾薬箱から9ミリ弾のマガジンを取り出して装填した。 「高崎、やっちまったな・・・」 横で同じく89式のマガジンをチョッキのマガジンポーチに補給する高崎はにやっと笑った。 「これで連中を見捨てていたら俺はあなたを嫌いになるところでしたよ」 「片桐!すごいじゃないか!」 さっきまでトラックで震えていたバストーがぴょんぴょん飛び跳ねながらやってきた。この動作が彼らガンドールの喜びの表現らしい。 「90年前の記録だとアービルの戦士のパタトールはあんなにいっぱい発射できなかったそうだぞ!みんな横1列になって戦ったそうだ!こんな秘密兵器があるなんて・・・長老もソリスも知らなかったって!」 なるほど、90年前のエンフィールドライフルでやつらを止めるにはナポレオン時代の戦術しかあるまい。だが片桐たちには自動小銃がある。 「長老とスビア様に言ってくれ。人類の技術は常に進歩しているのですってな!」 その夜、村はお祭り騒ぎだった。アンバードの攻撃をくい止めたお祝いということだ。見たことのない酒や料理が振る舞われた。 「うわっ、きついな・・・。ウォッカ以上だ」 斉藤が村人から渡されたコップの酒を飲んで思わずぼやいた。それでも美人のクーアードの娘にお酌をされていい気になってぐいっと飲み干した。輪からはずれ て岡田が憮然とした表情を浮かべている。岡田からすれば片桐の行為は、憲法違反、規則違反以外の何者でもない。片桐たちに言わせれば、指揮命令系統から完 全に孤立し、未知の領域で出会った友好的な人種と、自分たちの危機を救った正当防衛なのだろうが。 「まったく岡田はしょうがないですな」 少し顔の赤くなった高崎が片桐に話しかける。 「あまり飲み過ぎるなよ」 片桐は高崎にそれだけ言うとお祭り騒ぎの村の広場から離れた外壁の上に登った。てっぺんに座り込んで、村人からもらった例の強い酒を少し飲んでみた。強烈だが悪くない。 「お祭りはお嫌いですか?」 不意に後ろから声をかけられて片桐は思わず腰のシグに手をかけた。が、すぐに声の主に察しがついてその手を離した。 「今はそんな気分ではありませんな」 声の主、スビアは片桐の横に座った。 「あなたはなにを後悔しているのです?」 スビアの問への答えを片桐は少し考えた。岡田の理屈で言えば、いかに村人が危険であれ、自衛隊が武力行使するのは違反であり、許されることではない。それ は片桐自身わかっている。しかし、その結果、死ぬはずだった村人は生き残り、こうして楽しく夜を迎えている現実もある。 「あなたが昼間言ったアービルの掟に違反したことですね・・・。私にはその掟が理解できません。目の前で抵抗もできずに殺される者がいるのに助けてはいけないなんて。」 「私は軍人です。軍人は最高司令官の命令なしに動いてはいけない。それがどんなに理不尽なことでも・・・。そう思ってきました。しかし、その最高司令官のいないこの世界では私が指揮官です。後悔はしていません。」 スビアにとっては意味の分からない単語もあっただろうが、彼女はうなずいた。 「あなたの事情はどうあれ、この村をアンバードから守ってくれたことはみんな感謝しています。」 片桐は初めてスビアの方を振り返った。彼女は初めて片桐に笑顔を見せていた。こうして土手のような外壁に座っているととても神聖な存在には見えない。しかし、彼女が片桐たちをこんな世界に呼び出した張本人なのだ。それを思うと自然に片桐の心に壁ができていった。 「今夜はよく話をされますな。神聖なご存在にもかかわらず。我々を歓待して懐柔するおつもりですか?その大事な使命のために」 スビアにとってこの言葉は最大限の侮辱に値した。本来、ソリスは長老を介して以外ほかの者と会話することはできないのだ。それを破ってまで片桐と会話しようとした彼女のプライドは傷ついたようだ。 「あなたには失望しました。たった7名の部下しかいなくて不安でしかたなかったんです。でも今日の戦いぶりで少し安心しましたが・・・、やっぱりあなたは信用できません!」 酒の勢いと今までの緊張から来る疲れといらだちも手伝って片桐もおもわず声を荒げた。 「信用?我々を勝手にこんなところに呼んでおいて、信用?あなたがどんな存在か知りませんが、直接話をしただけで我々に恩を着せるようなまねはやめていただきたい!来たくて来た訳じゃないんだ・・・」 ここまで言って片桐は少し後悔した。ちょっと感情的すぎたと自分でも自覚していた。 「わかっています。それは私もよくわかっています・・・」 片桐は彼女の言葉にあえて応えなかった。片桐自身、今の状態におかれていることの責任すべてを彼女に求めるのはためらわれた。こんなか弱い女性がこの村の全員の命を預かっていることのつらさは、7名の部下を預かる片桐としてもよく理解できたからだ。 「でも、でも、私はどうすれば・・・・、村を襲ってくるアンバードは私たちでは太刀打ちできない。アービルの戦士の力を借りるしか道はないのです!私だって怖いんです。でも村のみんなを守れるのは私だけなんです!私だけ・・・・」 昼間に見せていた気高さがまるで嘘のようだった。いや、むしろ今の彼女の方が年齢相応のようにすら思えた。 「あなたがたには本当に申し訳ないと思います。でも、私にはこれしかないのです。私だってソリスの家に生まれなかったらこんな苦しみは味あわなくてもよいのに・・・」 無理もないだろう、ソリスとして英才教育は受けているのだろうがまだ20そこそこの女の子だ。そのほっそりとした肩に村人たちの命が掛かっているのだ。 「す みませんでした。アービルから来たあなたにこんなことを言ってもしかたがありません。アンバードは1つだけこの村を救う条件を出しています。私です、私が 彼らのモノになれば村を助けてやると言っています。あなたがたの力が望めない以上、私はその要求に応えたいと思っています。」 片桐の中である種の感情がふつふつとわき上がっていた。決して酒のせいではない。初めてスビアを見たときからの感情だった。 「ばかな!それはいけません!その要求の意味は・・・・」 片桐の言葉をスビアが大声で制した。 「私も21です!その意味くらいわかっています!」 少しの間沈黙が2人を包んだ。片桐は、ふと決心した。こんなナンセンスでばかげた発想は自分でも笑いが出るくらいだったが、そう思う彼自身その感情は抑えることができそうになかった。 「スビア様、いえ、スビア・・・」 無礼なのは承知だったが片桐はそう言わずに入られなかった。生まれて初めてそう呼ばれたのであろう、スビアは少しとまどいながら片桐の方に顔を向けた。 「実を言うと、私の気持ちは決まっています。ここで戦います。戦いたいのです。」 「その理由は?」 スビアの真剣な表情が赤い月明かりに照らされている。そのせいか、彼女の元来の美しさにさらにみがきがかかり、ほとんど天使か女神のようだ。片桐は思わず正面を向き直った。 「個人的な理由です、それには部下をつきあわせられませんが、部下と明日相談します。時間を少しいただけますか?」 「それはけっこうですが、片桐三曹。私はあなたの心変わりの理由を聞いているのです。」 そこまで言わせるのか?と片桐はたじろいだ。気高く無邪気な聖女は片桐の答えを待っている。片桐はコップに残っていた酒を一気に飲み干した。 「理由はあなたです!」 「私?」 現代日本の女性ならすでにわかるはずの会話だったが、ここは残念ながら現代日本でも、会話の相手も都会の女性ではない。 「あなたがここにいるからです。それが理由ではいけませんか?」 片桐の言葉の意味がようやく理解できたようだ。スビアは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにうつむいた。そしてすぐに昼間の表情に戻った。 「私にはあなたの気持ちには答えられません・・・・」 「なぜ・・・・?」 「なぜって・・・」 スビアは今までになくとまどっている。 「こんなこと、許されていないのです」 「私の国では、自分の気持ちを伝える自由はあります。」 「でも・・・」 スビアはますますとまどいの表情を色濃くしながらそのまま、駆け出した。 「スビア!」 思わず、走り去る彼女に声をかけた片桐だったが、その言葉に彼女が振り返ることはなく邸宅に消えていった。 翌朝、片桐は隊員全員を集めた。今後の方針を話し合うためだ。命令すれば全員動く。しかし実践では役に立たないケースも多々あることが予想される。それに 片桐がもっとも気になるのは岡田の存在だった。現在のところ、岡田の反戦思想に染まっている隊員はいないが、状況が緊迫するにつれて感化される隊員も出て くる可能性がある。平時においては岡田の思想も一理あるかもしれない。だが、命がかかっているこの状況では彼の思想は隊員の命の危険を及ぼす可能性すら考 えられる。 「いいでしょう、三曹についていきましょう」 状況を説明すると高崎が一番に賛同した。それを見た須本と斉藤、浅木も後に続いた。 「士長も行くなら俺たちもいきますよ。それにあいつら、いい連中だ。」 「元の世界じゃ日陰者だった自衛隊だ。せめてこっちではヒーローになりたいですよ」 中垣は少し迷っていた。そこへクーアードの子供が笑顔で隊員たちのところへやってきた。 「はい、これ!」 子供は無邪気な笑顔で見たこともないがきれいな花を須本に手渡した。 「お守りの花!ミスタルっていうの!」 「ああ、ありがとう!」 「アービルの戦士はあたしたちの守り神なんだから!がんばって!」 子供はにっこり笑うと恥ずかしかったのか大急ぎで家に駆け込んでいった。それを見た中垣も決心を決めたようだ。今まで自衛官であることでこんな笑顔を子供 から向けられたことがあっただろうか・・・。中垣にとって片桐に賛同する理由はこれしかなかったし、これだけで十分だった。 「命は惜しいですがね。やりましょう!」 岡田はそれを見ると軽く舌打ちしてその場を立ち去った。止めようとした高崎を片桐が制した。 「いいんですか?」 「ヤツも悩んでるんだ。がちがちに封じ込められ、けなされた自衛隊とここの人々の俺たちに対する感情のギャップにな」 その夜は満月だった。赤い月明かりが片桐たちが村にやってきた道を照らしている。翌朝はアンバードがやってくる。しかもこの前よりももっと大勢。片桐は万全の体勢を考えていた。 外壁には門を挟んでカールグスタフにMINIMIを配備した。屋根の上には須本。彼は五輪候補にもなった狙撃手だ。そして片桐は門の外で村人を神々の住む 山に退避させる時間を稼ぐ。そのための仕掛けは万全だ。道路沿いに手榴弾をしかけた。安全ピンを抜いて石の下敷きにする。一気に大勢で外壁まで迫られると カールグスタフの効果も薄い。時間を稼ぐ必要があったのだ。 「いかにもうさんくさい感じだな・・・」 片桐はあらかた仕掛けを終えて道を見渡した。手榴弾を仕掛けた場所には明らかに怪しい石がおかれている。これでは怪しまれても仕方がない。せめてクレイモアでもあれば道の両端に仕掛けて吹っ飛ばせばおしまいなんだが・・・。 「準備は終わりましたか?」 いつのまにか、村の門を出て来たスビアが片桐に歩み寄ってきた。 「危ない!道から離れて!」 思わず彼女の手をつかんで道の外にひっぱりだした。万が一、仕掛けの石を蹴っ飛ばされでもしたら一大事だ。しかし、そんな事情を知るはずもないスビアは前夜の片桐の言葉に続く侮辱的な行為に怒りを露わにした。 あなたがアービルの人間でなかったら今頃は死刑になっているところです。」 「死刑?多いに結構。でもせっかくの仕掛けを台無しにされたらたまりませんからね・・・」 片桐は皮肉を込めて、道の石を指さした。スビアはそれを見て「あっ」とつぶやくと、 「ごめんなさい・・・・」 と、しおらしくなった。それをみた片桐は軽くほほえむと、彼女の手を取って安全な場所へ導いた。 「ところで・・」 村の門に近い道ばたの倒木に座ってタバコに火をつけた片桐がスビアに尋ねた。今考えたら一番最初に聞いておくべきことを聞き忘れていたことに気がついたのだ。 「この村の名前はなんというのです?」 「アムター・・・。豊かな森というロサール語だそうです。」 スビアもそういいながら片桐の横に腰を下ろしたが、片桐のタバコの煙に思わずせき込んだ。 「あ、火を消しましょう」 あわててタバコの火を消す片桐のあわてようにスビアは思わず笑顔がこぼれた。 「あなたは不思議な人です。片桐三曹。部下には厳しくも優しくもあり、戦うことにはとまどいながらも、勇敢に戦い・・・・・・、そして私に堂々と愛を語りながら今はとてもうろたえています」 「あなたこそ、不思議ですよ。スビア。気高く、誇り高いが村人に優しく、常に村人のことを考えている。そして、村人のために俺たちを呼び寄せたのに、俺たちのことも常に考えています。そのくせ、中身は年頃の女の子だ。残念ながら俺はあなたに一目惚れしてしまった。」 彼女のせりふをまねて返した片桐にスビアはけらけらと笑った。赤い満月が彼女の赤い髪をさらに神秘的に照らしているのが目に入った。ストレートヘアを時々かきあげながら話すスビアはとてもソリスとあがめられる存在には見えない。 「自由に愛を語る。あなたの国は不思議です。もしも身分の違う者同士が恋に落ちたらどうなるんですか?」「我々の国には身分はありません。誰もが自由に暮らし、仕事を選び、意見を述べ、愛すのも自由です。」 まあ、建前ではあるが片桐は日本の仕組みについて簡単に彼女に説明した。当然のことながら彼女の反応はとても信じられないといった感じだった。 「信じられません・・・、でも、戦うことだけはあなたはかたくなに拒みました。あなたの部下の、岡田もいまだに戦うことを拒んでいます。戦うことの自由はないのですか?愛する者や愛する土地を守るために戦う自由はあなたの国の人々には与えられていないのですか?」 片桐はこのスビアの自分自身の境遇を重ね合わせた質問に答えることができなかった。 翌朝、片桐は村の外の道に立っていた。手には89式小銃を構えてたった1人で。彼の周りにはアンバードの突進を止めるための仕掛けが用意されていた。これ は賭だった。アンバードはスビアを要求している。総攻撃の前になにかしらの交渉を求めてくるだろう。そのときにうまく、司令塔のアンバードを殺すことがで きれば、戦いはかなり有利に進むはずだ。 「三曹、大丈夫かなぁ」 外壁の上でカールグスタフを構える浅木が思わずつぶやいた。高崎は同じくカールグスタフを構えながら浅木に言い放った。 「三曹は大丈夫だ。打ち合わせ通りにやるんだぞ」 そのとき、屋根の上の須本から合図が入った。どうやら現れたようだ。 片桐の目にもはっきりと見えていた。轍のない細い道を長い列を作ってアンバードがやってくるのが。片桐は生唾を飲み込むと89式の安全装置を解除して「連 発」に切り替えた。アンバードの縦列は片桐に近づいてくるがやはり攻撃は仕掛けてこない。思った通りだ。後ろを振り返って高崎に合図する。 「第1段階は成功だ。」 双眼鏡で片桐の様子を見ていた高崎が叫んだ。しかし、高崎には疑問があった。村の入り口から片桐のところまでおよそ300メートル。仕掛けがうまくいった として片桐が戻って来るにはちょっと距離があるかもしれない。このことは片桐にも意見したが、「どうにかなるさ」で終わっていた。 岡田はトラックの中で頭を抱えていた。こんなこと許されるはずがない。こっちから喧嘩を売るなんてあっちゃいけない。本来なら話し合いで解決すべきなんだ。 ふと顔を上げた岡田の視線に何かが写った。それは一瞬で家の中に隠れたが、間違いない。ガンドールの姿だった。村人はスビアとザンガンと一緒に神々の遺跡に退避したはずなんだが。 たいして広くない道路に広がったアンバードが片桐のすぐそばまでやってきた。と、そこで彼らは進軍をやめた。1匹のアンバードが片桐に近寄ってきた。手に はひときわ大きなパタトールが握られている。弦や矢は見えない。相手は鬼だ。魔法のたぐいであろうことはなんとなく片桐にもわかっていた。 「この距離で食らったらばらばらだな・・・」 片桐とアンバードの距離はもう4,5メートルも離れていなかった。と、歩み出てきたアンバードがいきなり雄叫びをあげた。地球上のどの動物とも似ていない、しかし不快な音であることだけは間違いなかった。 「どうやらスビアを渡せと言ってるようだ・・・」 雄叫びの中に彼女の名前が聞き取れたのを片桐は逃さなかった。ということは今しゃべっているこいつが指揮をとっているなり、リーダーである可能性が高いわけだ。片桐は一呼吸おいて89式を構えなおした。 アンバードの雄叫び、おそらく彼らにとっては演説なんだろう、が終わった。いよいよ作戦開始だ。 アンバードたちは黙って片桐の反応を待っているようだ。緊張で額から汗が流れ落ちるが、それにかまうことなく片桐は89式をすばやくリーダー格のアンバー ドに向けた。そいつは一瞬、首を傾げたように思ったがそれを確認することは片桐にはできなかった。フルオートで発射された5・56ミリ弾が30発。アン バードの頭部はきれいに消し飛んだ。 「三曹がやったぞ!!」 双眼鏡で確認した高崎がカールグスタフを構え直す。いよいよ始まりだ。 村の後方にある小高い丘のてっぺんに神々の遺跡があった。神々の遺跡はストーンヘンジの様に巨石が円形のアーチを描いて築かれている。これがなにに使われ ていたのかはわからない。しかし、アービルから戦士を召還するときは必ずここで儀式が行われたという。今、この儀式の場は負傷した村人や、老人子供であふ れていた。スビアは村の方を見ながら考えていた。片桐たちはたった7名でアンバードと戦おうとしている。決して戦ってはならぬと言う、アービルの掟を破っ てまで。そして片桐はスビアのために戦うと言っていた。 「ソリス、あの者たちなら心配ないでしょう・・・」 ザンガンがひざまずいて彼女に言うが、彼女の耳には入っていない。そこへ、バストーが息を切らせながら丘をかけ登って来てザンガンに報告した。 「アンバードが現れたようです・・・」 その報告が終わらないうちに、片桐たちのパタトールが発するあの独特な大きな音が丘まで聞こえてきた。戦いが始まったのだ。スビアは自問していた。片桐た ちに任せたままでよいのか。彼らもまたとまどい、恐れながら、この村のために戦う決心をしてくれたのではないのか・・・。そして片桐はこの戦いに生き残っ て再び自分の前に姿を現すのだろうか・・・。 そう思ったとき、彼女は無意識に自分のパタトールを持って駆け出していた。 「ソリス!いったいどちらへ!?」 ザンガンの問いかけに走りながら振り返ったスビアは村人に直接呼びかけた。 「私たちの村のために戦うアービルの戦士たちを助けるのです!」 リーダー格のアンバードは89式の一連射であっさりと倒れた。ほかのアンバードたちはあまりのことに状況が理解できないようだ。これはチャンスだ。片桐は撃ち尽くした89式を放り出して村に向けて走り出した。 アンバードたちは走り出した片桐を見てようやく状況を認識した。口々に叫び声をあげて片桐めがけて走り出した。 「やっと動き出したか・・・」 片桐は走りながら後ろを振り返ると高崎たちに合図した。 「よし!発射!」 一斉にカールグスタフを発射した。次々と着弾した85ミリ弾はアンバードを次々と肉片に変えていく。それを切り抜けたアンバードが数匹、片桐を追いかけて トラップエリアに入った。石を蹴飛ばすと信管を短くした手榴弾が次々と炸裂した。後続のアンバードは突然の爆発にその動きを再び止めた。そこへ、カールグ スタフとMINIMIの連射がアンバードを襲った。片桐は道のすみっこにある倒木に隠した9ミリ機関拳銃を取り出すと、弾幕をくぐって彼に追いすがろうと するアンバードに連射を浴びせた。止まることはできない。撃ち尽くすとすぐさまそれを捨てて、また道ばたに隠した銃を拾って追いすがるアンバードを打ち倒 す。 4挺の9ミリを撃ち尽くしてやっと片桐は村の門をくぐってそれを閉じた。すでにアンバードは近くまで迫っている。かなりの数を奇襲で殺したがまだ7,80匹は残っているだろう。 「三曹、外壁に奴らが取っつきました!」 高崎が大声で片桐に叫んだ。 「よし!須本、援護しろ!散らばって各個撃破しろ!」 アンバードの魔法で繰り出される強力なパタトールは村の門を打ち破った。数体のアンバードが斧を持って村に乱入してくる。門に近い民家の屋根の上で須本がそのうちの1匹をスコープにとらえた。 「くらえ!」 1発でアンバードの眉間を撃ち抜くと須本は次々と村に入って来るアンバードを血祭りにあげていく。 「くそ!」 数匹撃ったところで須本が悪態をついた。送弾不良を起こしたのだ。あわててスライドを引くがなかなかうまくいかない。ふと、須本は外壁を見た。すでに高崎たちは後退していた。1匹のアンバードがパタトールを構えている。 「やべえ!!」 故障した89式を投げて屋根から飛び降りようとした。しかしそれよりもほんの一瞬早く、アンバードの放った見えない魔力のパタトールが須本に直撃した。 「須本がやられた!」 中垣は民家の陰でカールグスタフに装填した。外壁の上でパタトールを構えたアンバードが数体見えた。須本の敵だ。吹っ飛ばしてやる。そう思ったときだった。中垣は背中に痛みを感じると同時にせき込んだ。 「ぐふっ」 咳と同時に血を吹き出したのが彼自身からも見えた。思わず後ろを振り返る。いつの間にか、3匹のアンバードが彼の後ろに回って槍を背中に突き刺したのだ。アンバードはいったん槍を引き抜いた。中垣は民家を背中にしてアンバードに振り返った。 「ちっくしょおおおお!!」 中垣は血を吐きながら叫ぶと目の前に迫ったアンバードの腹めがけてカールグスタフを発射した。 アンバードの強力なパタトールの直撃をさけるため、トラックは民家の間に隠されていた。その中でさっきガンドールらしい影を見た岡田はまだ迷っていた。村のあちこちで銃声や爆発音が聞こえている。隊員たちは散会して民家を盾にアンバードを各個撃破しているようだ。 「さっきの陰はなんだったんだ・・・」 岡田は再び影が消えた民家を見て驚いた。岡田にはそれが何であるかはわかっていたが、自分自身でそれを認めたとき、果たして自分の信条である「不戦」を守れるか自信がなかったのだ。 「まさか・・・」 民家のドアのところに間違いない。ガンドールの子供が不安そうな顔をしてたたずんでいるのが見えたのだ。 片桐は後悔していた。確かに、奇襲攻撃でかなりの数のアンバードを倒したが、予想よりも村に乱入したアンバードの数が多い。幸い、民家は密集していて小柄なこっちは隠れながらやつらを襲うには有利だっが数が違いすぎる。 「浅木!後ろをとられるな!」 「はい!」 浅木と民家の窓から目に入ったアンバードを片っ端から撃っていく。後ろの窓から撃っている浅木が片桐に叫んだ。 「三曹!パタトールです!」 「退避しろ!」 間一髪、裏の窓から飛び出した瞬間。さっきまで2人がこもっていた民家がきれいに吹き飛んだ。 「浅木、無事か?」 ほこりまみれになりながら片桐は体を起こした。どうやら負傷はしていないようだ。あたりを見回す。と、さっきのアンバードと目があった。向こうも片桐を認識して再びパタトールを構えている。間に合うか・・・。 「くそっ!」 89式をフルオートでアンバードに浴びせて撃ち倒す。アンバードは頭を粉々にされてぶっ倒れた。それを確認してマガジンを交換する片桐の耳に浅木の声が聞こえた。 「三曹・・・」 民家のがれきの下に浅木がいた。どうにか引っぱり出す。 「足が折れたようです・・・」 痛みに顔をしかめながら浅木が報告する。片桐はその辺の木材で添え木を作って浅木を吹き飛ばされた隣の民家に運んだ。 「ここで待ってろ」 「で、でも・・・」 片桐の命令に浅木は納得しない。 「命令だ・・・」 そこへ高崎が民家に駆け込んできた。高崎もあちこち追い回されたようだ。 「高崎、浅木は見ての通りだ。ここにアンバードを近づけちゃまずい。派手に行くぞ!」 「了解!」 高崎は皆までいわずとも片桐の意図を察した。そして言うが早いか、民家の窓から目に付いたアンバードを連射で撃ち倒す。 「浅木!無理すんなよ!」 片桐と高崎は派手に発砲してアンバードを挑発しながら民家の外へ飛び出した。 だんだん銃声がトラックに近づいてくるのが岡田にもわかった。ガンドールの子供はそれに気がついて完全に足がすくんでしまっているようだ。そこへ民家の影 からアンバードが1匹、子供を見つけて叫び声をあげた。子供もそれに気がついたが足がすくんで動けないようだ。まだ、ヤツはトラックには気がついていな い。 「くそ!くそ!くそ!」 岡田は89式の薬室に弾丸を送り込むとトラックを飛び降りてアンバードの前に立ちふさがった。アンバードは子供と自分の間に立った岡田が、自分たちのリーダーを殺したヤツ(片桐)と同じ格好をしていることを確認すると怒りの矛先を岡田に向けた。何か叫び声をあげている。 「武器を捨てろ!下がれ!」 岡田も負けずとアンバードに叫ぶがそれが通じるはずもない。不意にアンバードが突進を始めた。 「来るなぁぁぁ!」 岡田は89式の引き金を引いた。心地いい振動とともに確実に弾丸が発射されてアンバードの顔面を打ち砕いた。全段撃ち尽くして岡田は撃ってしまった衝撃とフルオートで発砲した反動でその場にへたりこんでしまった。 「やっちまった・・・・」 そこへガンドールの子供が泣きながら岡田に抱きついてきた。 「・・・・ありがとう・・・」 泣きながらやっとお礼を言ったその子供を岡田は強く抱きしめた。命を救った実感が岡田の体に少しずつ広がっていく。だがその実感も長くは続かなかった。民家の影からさらに2匹のアンバードが現れたのだ。 「つかまってろ!!」 撃ち尽くした89式を片手で、子供を片手で抱えると岡田は安全な場所を探して猛ダッシュを開始した。この子だけは俺が救ってみせる。そう心に誓いながら。 斉藤は中垣とはぐれてしまっていた。周りは銃声と時折聞こえる爆発音、そしてアンバードの雄叫びばかりだった。密集した民家の通りで斉藤は完全に孤立してしまっているようだった。こんなことならMINIMIを持って来るんだった。激しく後悔した。 「早く三曹と合流しないとやばい・・・」 斉藤はいつ、民家の影から現れるかしれないアンバードを警戒しながら銃声のする方へ進んだ。少なくとも銃を撃っているのは自衛隊員だ。 「うっ」 いきなり後ろから口をふさがれて斉藤は恐怖で頭が真っ白になった。ズボンの股間あたりがなま暖かくなるのが自分でもわかった。 「落ち着け。味方だ・・・」 おそるおそる振り返ると、斉藤の口をふさいだのは見覚えのあるクーアードの青年だった。 「ど、どうして・・・」 「あんたたちを助けるためさ。」 見ると得意げにポーズを決めるバストーだった。 「さあ、斉藤。片桐たちのところに行こう!」 「ありゃあ、岡田じゃないですか?」 民家の影で89式のマガジンを交換している片桐に高崎が報告した。片桐が振り返ると、子供を抱えた岡田が2匹のアンバードに追われながらこっちに走ってくるのが見えた。 「岡田!急げ!」 高崎の言葉を耳にして岡田がさらにダッシュをかける。片桐は岡田を収容した後アンバードを迎え撃つために89式を構えた。だが、追いつけないと悟ったの か、アンバードの1匹が腰蓑に下げたトマホークのような斧を持って岡田に向かって投げつけた。斧は岡田のチョッキを貫通して彼の背中に突き刺さった。 「ぐえっっ!!」 前のめりに岡田は倒れた。子供は無事なようだ。もう1匹のアンバードが倒れた岡田に近づいてきた。片桐はそいつを慎重に標準を定めて撃った。精密な射撃にあまり自信のない片桐だったが、うまく1発でそいつを撃ち倒した。 「高崎士長!」 「わかってます!!」 片桐の言葉よりも早く高崎が岡田を助けに走り出した。片桐はもう1匹のアンバードに狙いを定めた。残ったアンバードは仲間が撃たれたことにひどく腹を立てているようだ。地団駄を踏んで今にも突進を開始しようとしている。 「来る!!」 片桐が引き金を絞ろうとしたそのとき、アンバードの目に深々と粗末な木の矢が突き刺さった。大声を上げてアンバードはその場に倒れた。いったい誰が?民家の屋根が連なる方へ高崎が目をやった。 「あっっ!!」 高崎の素っ頓狂な声で片桐も思わず屋根の方に目をやった。 「どうだ!片桐!やっつけたぞ!」 そこには得意げにパタトールを構えるバストーがいた。 「斉藤と村のみんなで生き残ったアンバードを追いつめたんだ!早く!」 バストーが片桐をせかす。しかし、片桐にはまだここでしなければいけないことがあった。 「高崎士長!斉藤の支援に急行しろ!」 「了解!バストー!案内してくれ!」 高崎とバストーは村の門に向かって走っていった。片桐は道に倒れている岡田に駆け寄った。 「岡田!しっかりしろ!」 声をかけると岡田が頭をゆっくりと上げた。彼の腕の中には怖がって震えているガンドールの子供がいた。 「三曹、ガンドール1名、救助完了です・・・・」 それだけ言うと岡田の体からがっくりと力が抜けた。子供が力のなくなった岡田の腕から這い出してきた。片桐はその子をぎゅっと抱きしめた。岡田が命を懸けて守った命だった。 「このおじさんが助けてくれたんだ・・・」 その言葉に片桐は岡田の亡骸に視線を走らせた。そうか・・・。子供を救ために撃ったのか。片桐はようやく落ち着いた子供に優しく話しかけた。 「ぼうや、このおじさんの名前は岡田だ。君が、大人になるまでその名前を、忘れちゃいけないぞ・・・」 最後は半分涙声になってうまく伝わらなかったかもしれない、と片桐は思った。だが、彼自身、自分の目からこぼれる涙を止めることができなかった。 「おい!斉藤!生きてたか?」 バストーと駆けつけた高崎が、村人と一緒にアンバードを追いつめている斉藤に声をかけた。斉藤はその声でようやく生きた心地を取り戻した。彼は、村人と一緒にその辺をうろつくアンバードを片っ端から襲い、どうにか外壁まで追いつめたのだ。 「高崎士長!こいつらが最後です!」 生き残った4匹のアンバードは外壁を背に追いつめられてもなお、村人を威嚇するように叫び声をあげている。すでにパタトールを持っている者は生き残っていないようだ。手には斧や槍が握られているだけだ。 高崎は、村人の中にスビアとザンガンを見つけた。 「長老、こいつらどうします?降伏させますか?」 高崎の質問をザンガンはスビアに取り次ぐ。スビアは少し考えてそれをザンガンに伝えた。その間、高崎は少しいらいらしながら待たされる羽目になった。 「ソリスはアンバードの降伏は受けないと言っておられる」 えっと言う感じで高崎はスビアを見た。彼女の表情は硬く、その決心は揺るぎないようだが、高崎はためらった。敵に降伏のチャンスを与えず殺してしまうことは・・・。 「俺がやろう!」 片桐だった。彼は外壁の近くに落ちていたカールグスタフを拾い上げながら言った。そのまま、弾薬が装填されていることを確認するといまだに叫び声をあげているアンバードに向けた。 「みんな!耳をふさげ!」 高崎が村人たちに叫んだ。村人たちがこれから起こるであろうことを素早く予想し、高崎の指示に従ったことを確認すると、片桐は迷うことなく無反動砲を発射した。 「ぎゃふっ!」 激しい爆発音と爆風で生き残ったアンバードは消し飛んだ。それを呆然と見ていた村人は再び奴らの叫びが聞こえなくなったことを確認すると歓声をあげた。 「勝った!」 「やったぞ!」 片桐はカールグスタフを力無く手放した。がしゃっという金属音が彼の耳に入った。高崎が近寄ってきた。 「三曹、岡田は・・・・?」 高崎は片桐の悲しげな表情を見てそれ以上なにもいわなかった。 「片桐三曹!高崎士長!」 クーアードに助けられた浅木が2人のところへやってきた。浅木はこの場に自衛官がこれだけしかいないことを見ると、残りの仲間の運命を悟ったようだ。 「でも、やったんですね。俺たち・・・」 「ああ、やった。この村と、村のみんなを救ったんだ・・・」 片桐は喜びにわく村人の中にいるスビアを見つめながらその言葉に応えた。スビアは片桐の視線に気がついて少しうつむくと、その場を離れて自分の邸宅に戻っていった。 夜、村は再びお祭り状態だった。隊員や村人の埋葬を終えた人々は再び広場で踊り、酒を飲み、歌った。彼らは戦いの勝利とその勝利に命を捧げた勇者に敬意を 表して、今までよりもいっそう激しく踊り歌った。高崎と斉藤は疲れからか早々にダウンしてしまった。浅木はけがをした村人と一緒に手当を受けている。 片桐はまた、輪の中を抜け出して1人で外壁に座り込んでいた。彼は死んだ仲間を思い返していた。射撃の得意だった須本・・・。臆病だが努力家の中垣、そして、岡田・・・。 彼らには認識票はない。あるのは生き残った者の中にある思い出だけだった。俺は果たして正しい選択をしたのだろうか。 「相変わらずにぎやかなところは苦手でいらっしゃるのね」 スビアだった。片桐はなにも言わずに自分の横に座ることを勧めた。彼女もそれに無言で答えるかのように片桐の横に腰を下ろした。 「明日、あなたがたを元の世界に帰す儀式を行います」 スビアは目の前に広がる暗い森を見つめたままで言った。 「でも、その前に言っておきたいことがあるのです」 今度はスビアは片桐の方を見つめた。片桐もスビアを見つめた。月明かりの下で2人視線が絡み合った。 「こ れは、ソリスとして適切な発言かどうかわかりません・・・。あなたは私のために、私の愛のために戦うと言われました。正直、それは私にとってとてもうれし いことです。でも、私はあなたの愛に応えることはできません。ソリスは愛を交わした伴侶と生涯いっしょにいなければいけないのです。つまり、明日もとの世 界に帰ってしまうあなたの愛を受け入れることはできないのです・・・」 ここまで一気にまくし立ててスビアは頭を抱えた。ここまで面と向かって自分に愛を語ってくれた片桐を裏切るようで、そして片桐の気持ちを知りながらお払い箱のように彼を元の世界に帰さなくてはいけない自分自身の立場がにくかった。 「俺も言っておきたいことがあります。俺は部下には戦えとは命令していません。彼らはみんな自分から志願したんです。彼らそれぞれに戦う理由はありました。そして俺自身にも。」 片桐はそれだけ言うと立ち上がってその場を立ち去ろうとした。これ以上未練がましい行動をすることが自分自身でもいやだったのだ。彼女はこの村のソリスだ。そしてその上で御法度である愛について見解を示してくれた。それで十分だ。 「待って!片桐三曹」 スビアが片桐を呼び止めた。彼女に背を向けたままで片桐は立ち止まった。 「あなたが私を愛したというあかしをください。私はあなたの愛に応えられない。でもあなたの気持ちは受け止め続けたいのです。」 昨日とはうって変わって美しい月明かりが照らす外壁の上でスビアは立ちすくんでいた。片桐は彼女に歩み寄った。 「目を閉じてください。」 彼女は言われるままに目を閉じた。続けて片桐は確認するように問いかける。 「俺の世界のやりかたでいいんですか?」 一瞬、躊躇するように顔をしかめたが、スビアは目を閉じたままうなずいた。月明かりが、不安と期待で微妙な表情を浮かべるスビアを照らしている。しかし、それでも彼女は彫刻のように美しかった。片桐はその彫刻のように美しく、あたたかい唇にそっと口づけした。 翌朝、神々の遺跡の前に村人、片桐、高崎、浅木が集まった。スビアは遺跡の端に置かれた大きな石の上に立って呼吸を整えた。そしてザンガンに無言で頷くと村に伝わる伝承の言葉を語り始めた。 村人は固唾をのんで見守っている。高崎も思わず片桐に語りかけた。 「ほんとに大丈夫なんすかねぇ・・・」 「彼女を信じろ・・・」 片桐はそれだけしか言う言葉がなかった。いや、たとえどんな結果になろうと彼女を信じる。その気持ちだけが片桐を支配していた。それに答えるかのようにスビアは呪文を唱え続けた。 「あっ」 バストーが思わず声を上げた。遺跡の巨石がちょうど神社の鳥居のような形状を作っている部分の空気が揺れた。まるで水面の波紋のように空間が揺れ始めた。その中心からまるでホログラムのようにこの世界とは別の光景が映り始めた。 「あ、あれは・・・・」 斉藤が思わず叫んだ。そこに映ったのは福岡ドームだった。ストーンヘンジの中心に福岡ドームや福岡タワーが見えているのだ。高さ2メートルほどの鳥居の内側の部分に大きく福岡市内の光景が映ったところでスビアが呪文を終えた。 「あそこに見えるのはあなた方の世界ですか?」 「これがアービルの世界・・・」 ザンガンが思わずつぶやいた。鳥居の向こうからは空港を離発着するジェット機の爆音も聞こえてくる。 「さあ、高崎、斉藤、浅木を抱えてやれ」 片桐は高崎の肩をぽんぽんと叩いた。バストーが高崎に大声で呼びかけた。 「ありがとう!」 次々と村人が声を上げる。「ありがとう!」「さよなら!」。高崎はザンガンを見た。ザンガンも笑顔で頷いている。 「斉藤、行くぞ」 3人がおずおずと鳥居に近づく。高崎が右手を差し出した。すうっとその手は福岡の映っている方へ消えた。再び彼はザンガンを振り返る。 「成功だ。さあ、行きなさい」 高崎は浅木を抱える斉藤と一緒に向こうへ飛び出した。一瞬、視界が真っ黒になったが次の瞬間彼がいたのはももち浜だった。博多湾を望む砂浜に3人は立っている。周りではサーファーや水着のギャルがきょとんとして高崎たちを見ている。 「帰ってきたんだ・・・」 高崎は後ろを振り返った。高さ2メートルほどの長方形の空間がまったく別の光景を映していた。さっきまで自分たちがいた世界だ。 その向こうには片桐や、バストー、ザンガンが見える。 「さあ、三曹も早く!」 高崎は片桐を呼んだ。 片桐は高崎に続いて元の世界へ踏みだそうとした。しかし、その足が止まった。思わず、スビアの方を振り返った。彼女は無表情でこっちを見ている。しかし、よく見るとその顔がひきつっているのがわかった。 「ああ、くそ・・・」 「どうしたんだよ、片桐。元の世界に帰れるんだぞ!」 バストーが様子のおかしい片桐に叫ぶ。片桐はバストーを手で制して、巨石の上のスビアに歩み寄った。片桐が近づくごとにスビアの顔に動揺が広がっていくのがわかった。 「片桐三曹、どうしたのです。元の世界への扉は開いたのですよ」 震える声でスビアが片桐に語りかける。スビアは早く終わらせたかった。自分への愛を命がけで示した男がこの場から消えてしまうことを。 「高崎士長!」 なかなかやってこない片桐に高崎は声をかけた。 「三曹!早く!」 高崎は自分たちのまわりに集まってきたサーファーや海水浴客に目もくれず片桐を呼んだ。片桐は向こうで少しとまどっていたが、高崎に呼びかけた。 「すまん!俺はこっちに残る!」 「え?ええええ!?」 浅木も斉藤も我が耳を疑った。今を逃せば元の世界に戻るチャンスはないかもしれない。それをわかった上で残ろうというのか? 「三曹、冗談はよしてください!」 「いや、冗談じゃない・・・・」 片桐は淡々と高崎に言った。ザンガンがうろたえている。村人もざわついている。しかしもっとも冷静に受け止めているであろう人物、ソリスであるスビアは 違っていた。片桐は自分のために残ろうとしている。彼女自身、片桐を愛していることはわかっていた。しかし、ソリスとしてこの結末を知っていたからこそ、 片桐の愛の告白は受けることができなかったのだ。 「片桐三曹、早く、行きなさい!」 動揺から彼女が発することができたのはそれだけだった。向こうの世界のうろたえるのを見た高崎はすべてを察した。三曹、あんたやっぱり・・・。 「三曹、うまくやってください!こっちもうまく処理しますから!」 高崎は向こうの片桐に敬礼した。片桐はそれを見て笑顔で敬礼を返す。高崎は最高の士長だ。高崎に続いて浅木も斉藤も片桐に敬礼を捧げる。 お互いの世界を隔てて敬礼を交わして数秒後、世界を隔てる境界が波打ち始めた。再び、二つの世界をつなげる境が閉じられるのだ。それを雰囲気で察した高崎も片桐も敬礼を交わしたままだった。 「片桐!」 ザンガンが叫んだ瞬間、石で作られた鳥居状の中で開かれた別世界への扉は閉じられた。高崎や浅木、斉藤の姿も、バックの福岡ドームも消えて、後は神々の遺跡しか見えなくなった。 「もう後戻りは出来ないぞ!この世界とアービルとの扉は完全に閉じられたんだぞ!」 ザンガンが片桐に大声で怒鳴るが、片桐は気にしない。彼はまっすぐに巨石の上で彼を見つめるスビアに歩み寄った。 「スビア、あなたを愛するには生涯、いっしょにいなければならないんでしたね?」 片桐は笑顔でスビアに問いかけた。スビアは片桐の行動のあまりの唐突さに固まっていたが、この言葉の意味を察すると今まで押し殺していた感情を一気に放出するかのように片桐に抱きついた、片桐もその彼女をしっかりと抱き留めた。 一部始終を見守った村人から新たに歓声があがった・・・
https://w.atwiki.jp/elekata/pages/21.html
エレ片podcastまとめ(2012~) タイトル コメント ◇2013年 2013/12/28 コントの人が意外に近い/ふつおた/春高PTA便り(09/21本放送参照)/彼女が出来たリスナー(09/21Podcast参照)/結婚前やつい占いを気にする(2012/11/03Podcast参照) 2013/12/21 サンタのいなかった谷井家/太朗のクリスマス/おもちゃと想像力/少年やついの遊び/ジャスコやつい 2013/12/14 本編は生放送SPW/本編の感想メール/本編回想/FMメール 2013/12/07 エレ片用語の基礎知識/本編回想/やついパワープッシュとは/フェス事情/8位先輩とは/生誕祭/泥酔今立/個展とは/好きな食べ物/やついとペット/シーザー・ミラン 2013/11/30 SPWは生放送/ふつおた/「ライクドロシー」感想/長澤まさみに嫌われた疑惑/粘土展@大阪 2013/11/23 本編はエレ片の結婚ト太郎/翌日に電話出演/ふつおた/今立はアイドルに/何かを持ってるレッスン/粘土展@大阪/人を呼ぶには 2013/11/16 本編でやつい結婚発表/発表別パターン/腑に落ちない片桐/台湾ツアープレゼン 2013/11/09 嫁のパンツの砦を落とす方法/カニになってみよう 2013/11/02 SPWの反響なし/長澤まさみの股間が見たい/ふつおた/片桐へのクレーム/去年一の怒りは犬が相手(2012/03/03参照)/嫁の股間が見たい 2013/10/26 本編はエロ都市伝説&かましスペシャル/若きラーメンズのかまし/KKのかまし/江古田かまし/大学時代のかまし体験/落研の先輩田中さん/ポリシーの子/やつい泥酔事件 2013/10/19 レッスン続報(謝罪、イイね(笑)ライブ、田んぼに興奮)/エロ都市伝説(風俗嬢と兼任、コンシェルジュ)/かまし 2013/10/12 SPWはエロ都市伝説/ふつおた/女のオナニー/アメリカのポルノ業界/レッスン祐輝登場 2013/10/05 片桐粘土ガチャ/Twitterで嫌われる/ふつおた/稲淳レポ/三国志フェス出展者/後輩惑星ボルヘスのネタ/レッスン祐輝 2013/09/28 ふつおた/「夏の終わりの妹」感想/片桐の焦り/やつい「クロコーチ」スピンオフ出演/やついCMオーディション/告知に絡む片桐 2013/09/21 ふつおた/やっつん頑張れ/女のオナニー情報/片桐札幌個展レポ/スタッフに嫌われる/耳すまにショックを受ける/ダンボール一杯ネタ書くよ/かまされ体験と尊敬くん 2013/09/14 ふつおた/今立はかっこいいのか/エレ片はオカマバーより面白い/エロ都市伝説:看護師/志村けんのラジオにナースが相談/各所に飛び火/上島がやりたかった事/ふつおたの流れでガチャガチャ告知/三国志フェスとは/神速/黄巾党 2013/09/07 ふつおた/「イイネ!(笑)ライブ」大阪大会/7人/カルロスたっくん/KOC後の「ゲームどうすか?」/KOC当日/飯尾の嫁/ロッテ戦/エレキは0点/告知が長すぎて邪魔される 2013/08/31 本編はおっぱいスペシャル/ふつおた/片桐ガチャガチャ報告/飲酒は認知症を早める?/エロ都市伝説/オリンピック選手村/興奮冷めやらぬ片桐/腕立てチャレンジ回想/片桐追求されて怒る 2013/08/24 ふつおたのコーナー/マネージャー立候補者から続々メール/ファンを失う片桐/SPW腕立て伏せ計画/ごほうびを設定 2013/08/17 腹筋イベント終了/ふつおたのコーナー/「風立ちぬ」と「聖家族 大和路」/「ゲームどうすか?」イベント/ドラゴンズレア/スーパーマルオ/笹を使ったおっぱい案 2013/08/10 【ゲスト:井原慶子】/トゥインクル所属の女子レーサーチャンピオン/耐久レース中/日産の電気自動車/おしっこ弄り/ふつおたのコーナー/ヴィレ蛮ツアーファイナル報告 2013/08/03 川尻は用意している/ふつおたのコーナー/大人を感じる時/リスナーが漫画化デビュー/腹筋経過報告/着替えを覗きたい/エレキ修学旅行発売/客観的に聞くと何それ? 2013/07/27 腹筋の現状/キスに貪欲な片桐/家族は来させない/ふつおたのコーナー/片桐への非難/罰ゲームに川尻/想像だけで涙目 2013/07/20 ヴィレ蛮征伐怒涛の連戦/ふつおたのコーナー/芭蕉扇 2013/07/13 暑い/スマホのゲームにハマる/蹴る片桐/ふつおたのコーナー/似顔絵企画/ヴィレバン潜入レポ/ハグ会/JAPAN TOUR告知 2013/07/06 Podcastダウンロード数が一時的に3位/UEVA歌いながら道を歩く/楊貴妃発言の真相/乗馬続報/怒る中川社長 2013/06/29 UEVA楊貴妃発言/エレ片を騙し続ける/大宮事件/ふつおたでフェス感想(ゴウさん緊張、片桐MC、青色鑑定) 2013/06/22 片桐あきらめムード/ふつおたのコーナー/居酒屋で今立と遭遇/新ダイエット法/やついサインお渡し会/20人で安定/逆パシャパシャ 2013/06/15 本編は武井壮/片桐断食再開?/ラタトゥイユ/驚愕の真相/終わらない逃げ道/「走れジンロス」リハーサル 2013/06/08 ダイエット情報/ふつおたのコーナー/片桐にはカウンセリングが必要?/合わせちゃう片桐/やついの悪口はサービス 2013/06/01 やついフェス近づく/片桐キケチャレに難色/エレ片劇団再結成/川自我肥大/新説・三匹の子豚オーディション 2013/05/25 ふつおたのコーナー/天才とは一体何か?/天才テスト/ゴウさんが満点?/ゴウさんテスト結果を知っていた疑惑/やついのテスト検査/片桐の予知夢/誰がやってる?/片桐一人にされて号泣 2013/05/18 ふつおたのコーナー/「ちゃんちゃんちゃんこ鍋」感想/脳内チップ研究の話/DJイベントでどうすれば?/CDの売り上げの話 2013/05/11 ふつおたのコーナー/「ちゃんちゃんちゃんこ鍋」感想/初日でのハプニング/今立ZIP!に出演/アルモニカの話/続・○○男子/片桐は太るべき/かたぎりぜいに君/川尻式ダイエット 2013/05/04 ふつおたのコーナー/「ちゃんちゃんちゃんこ鍋」開始日/「釣瓶のスジナシ」感想/蛇顔男子が流行?/○○男子/常連のいる居酒屋 2013/04/27 エレキ発表会&片桐個展終了/今立の舞台を苦悶の宣伝/ヤっている流れに川尻が誘導/ファン食い競争/「バブー!」/「かっこいいカラダ」で勃起?/リハビリスペシャル復習 2013/04/20 本編はお笑いリハビリスペシャル/児嶋を紹介するまで3分/片桐と児嶋がお互いのあいうえお作文/児嶋のお笑い論と思い出話/喜びの「おーい!」 2013/04/13 エレキ発表会東京公演終了/片桐の個展にKK/片桐仁のツッコミについて/ふつおたのコーナー/エレキ発表会感想/発表会での映像トラブル/映像の菊池のミス/眉筋盛り男/カタandギリの「なんでだよ」/「行かないです」/ 2013/04/06 エレキ発表会目前/ふつおたのコーナー/社会人は童貞喪失できるか/金持ちはモテる/片桐の若き頃のチャンス/「笑いは世界を救えるか」でのエレキ/若き日のエレ片/SPWは片桐リハビリスペシャル 2013/03/30 嘘をつくエレ片/エレキ発表会の水木金のチケットが売れてない/平日特典:ボツネタを貼る/ボツネタ紹介/ふつおたのコーナー/マネージャーになりたい/上田マネージャーの自信(カラオケ、PK対決)/「JUNK大集合」感想/片桐仁のお客になってまして 2013/03/23 喉大事にしろよ/テレフォンセックスでのブス/和姦グループの民「和民」/Ustreamでの今立/やついのエロ解釈/流星★バケーションPからのメール/「デキルカギリ」感想/カタップラー効果/片桐の振る舞い/あつろうる 2013/03/16 エレキ発表会間もなく/ふつおたのコーナー/「流星★バケーション」感想/ホワイトデー・キッス・ナイトでの泥酔今立/輝く今立と火種のやつい/やついと今立を例えると… 2013/03/09 ふつおたのコーナー/SKEの松井玲奈は片桐とヤりたい?/ゴウさん企画「石川くん」/モテるバーでのゴウ・今立・川尻/このストーリーはつまんない/ゴウさんのテクニック 2013/03/02 【ゲスト:Gパンパンダ】イイネ(笑)ライブでの出来事/星野、公認会計士の資格あり/Gパンパンダのラジオコント/お笑いサークルの内部紛争/ラーメンズの本公演はいつ?/片桐仁単独ライブ/ラーメンズの発想法/Gパンパンダの売り込み方/20年前の片桐/論外論外・論in論in/はじっこサーカス/岡部はできる 2013/02/23 やつい、いじめられていた?/イケてない自慢:あだ名/今立のイケてない自慢(あだ名・写楽・窓際)/やついのイケてない自慢(オランウータン)/イケてない自慢:おしゃれ/イケてない自慢:顔/殴られた今立の顔かやついの顔か/イケてない自慢:バレンタイン/片桐のイケてない自慢(ムース、ジャケット、タカキュー) 2013/02/16 来週のゲストはでんぱ組/20代聴取者が少ないエレ片/イケてない自慢/宇宙の医者チュンビ/サイKICK☆のTwitter/チュンビの呼び方・飛ばし方/チュンビを呼ぼう 2013/02/09 本編はタイツアートーク/ふつおたのコーナー/女の潰しあい/不登校は自由/ゴウさんのでんぱ組への思い/SPWはでんぱ組と喧嘩 2013/02/02 podcastは無事/ふつおたのコーナー/私の好きなだっちー/片桐「おなべじゃねぇかよ!」/今立のかっこよさ/食べてくれる時の川尻が可愛い/女の潰しあい/川尻ヤっている疑惑/楽屋ピョコン女/セクシーアーマー 2013/01/26 ふつおたのコーナー/遠距離恋愛の彼女とコントの人7へ/ゲイ向けのコント/やついは変わってる?/小学6年生からの投稿 2013/01/19 コントの人7開催中/ふつおたのコーナー/友人が片桐派から今立派に/原さんはブス盛り/不登校を直す相談 2013/01/12 コントの人7は売れている/やつい方言シリーズ/女子大生に会えなかった今立/原D泥酔事件/可愛くはないけどブスではない 2013/01/05 ふつおたのコーナー/福岡公演に嫁と行きたい/チケットを買ってくれるまで断食/ガンジー対ガンジー/悪口版ピノキオやつい ◇2012年 2012/12/29 農林水産Show(今立のボケ、おくまんのウザさ、上田の謎編集)/やつい飯屋への文句 2012/12/22 アネロススペシャル回顧/コントの人7はR-片桐 2012/12/15 2回目のアネロス挿入/アネロス挿入後の片桐 2012/12/08 本編はアネロスジャパンの桜井さん/片桐のメモでおさらい/準備日記決定/しょこたんとの食い合わせ/最近の上田(乗馬、愛読書) 2012/12/01 エネマグラへの期待と不安/リスナーからの情報 2012/11/24 エネマグラスペシャルに意外と乗り気の片桐/川尻モテてる疑惑をゴウさんが糾弾/そのままで死んでほしい/「どうしたいんだろう俺?」/エネマグラの話をする時格好いい/イく瞬間だけを編集したDVD 2012/11/17 片桐にエネマグラ(アネロス)を勧めるエレキコミック/アーティストにしてクリエイター/片桐ケツ人形/アネロス仁/ふつおたのコーナー/幸せになりたい(女)の新RN「アネロスの翼」 2012/11/10 クッションに盛る誕生日こぶし/ふつおたのコーナー/おっぱいへの興味/腕を舐めるとおいしいやつい/失礼なファンに「人間なんだよなぁ」/RN「幸せになりたい」がかぶる/BTTF話/高橋名人 2012/11/03 【ゲスト:ゲッターズ飯田】結婚話を聞きたがる片桐/初対面で「死にますよ」/上田の運気が最悪/ふつおたのコーナー/やついのイヤミ講座/悪口を飲まされちゃう/態度悪い片桐/ひどいファン 2012/10/27 ふつおたのコーナー/片桐恋愛相談/目元のエステ器具を買いたいゴウさん/エレキのエステ経験/唾で洗う/ゴウさんに騙されかける3人 2012/10/20 片桐ラブドールに夢中/キャンプで片桐ゴウさんを蹴飛ばす/上田の失態/片桐激怒/ふつおたのコーナー/父のオナニーしたであろう現場に遭遇/片桐似の太朗/次々飛び出す片桐の怒り/次のキャンプは片桐抜きで 2012/10/13 コントの人7地方公演/ふつおたのコーナー/ブスのかけちゃん/UEVAマジやべぇ/KKが特別講義/嫁のおっぱい触る学の弊害/レッドツェッペリン女と再会 2012/10/06 今立そういえば誕生日/おじさんは面白くない/下ネタだよ/37歳転機説/宮崎駿大喜利/農林水産Show完売にすねるやつい/コントの人7告知/やついベッドを買う 2012/09/29 始まっていきなりやついフェス宣伝/ふつおたのコーナー/エレ片カバーで不幸に/クサ国志を大幅に改造/やついフェスに向けてリハーサル 2012/09/22 本編はnegicco/『蒼き臭さと白き臭さ』リハーサル/チン臭ハーン/ブラッククッサーのテーマ/チンコクッサーのテーマ/チン臭ハーンのテーマ/クッサクッサーのテーマ 2012/09/15 エレ片キャンプ計画/東京カワイイTV/やついフェス企画/クッサ/出来上がっていく台本 2012/09/08 やつい教習所卒業/マキタスポーツがキャンプにハマる/エレ片キャンプ/誰が運転する? 2012/09/01 今立肉体改造開始/デッドがハムに効いている/脱法肉体改造/ふつおたのコーナー/リスナー悩み相談/おめーの方がガタガタだなはいお疲れ/新潟のラジオパーソナリティ/ルノージャポンのペット同乗型車両 2012/08/25 ふつおたのコーナー/エレ片パワプロ/エレキと片桐は別録りだった?/厳しいやついマネージャー/教習所で性格診断/自己中心的な奴/感動した/劇団ニコラスケイジ/ニコラスケイジVSデロリアン/片桐号泣 2012/08/18 ふつおたのコーナー/片桐青森で神扱い/「グッバイ・エイリアン」感想/やつい教習継続中/授業中にゲロが「ぼん!」/フェスでマキタスポーツ泥酔 2012/08/11 ふわふわお化けトーク/ふつおたのコーナー/OLまつり/OLの恋愛相談/化学者やついの粉/DJ HIDEBUイベント/調子に乗りまくる上田/やつい「粉かける/」/ブタブタブタとの化学者勝負 2012/08/04 【ゲスト:ゲッターズ飯田】執拗にデロリアンを勧める片桐/ゴウさんと今立の運がすごい/改名話/エロい食べ物 2012/07/28 やついサングラスを買う/美人の店員にほめられる/川尻の笛/水筒男子ゴウさん/DJ HIDEBUイベントはサングラスで 2012/07/21 「有様」終了/ふつおたのコーナー/カラオケでのUEVA/ますます調子に乗るUEVA/ふつおたのコーナー/今立に欲情する客/3割はオナニーしている/やついカード 2012/07/14 サプライズに乗れない片桐/終わったかと思いきやふつおたのコーナー/「ブスですか?」/上田の事務所内での位置取り/上田、衣装を発注していた事をバラす/トウバルくん/ポスターのズル/敏腕マネージャーとみづか 2012/07/07 「有様」アフタートーク/アグレッシブ/「ガタン!」/ふつおたのコーナー/「イイね(笑)ライブ」感想/「ガタン!無効!」/「スピリチュアルな1日」感想/アグレッシブの板 2012/06/30 「有様」アフタートークゲスト発表/片桐ゲスト決定/UEVAショー/ふつおた0/最後に再びゲスト発表 2012/06/23 ふつおたのコーナー/中学星のニコニコ生放送に片桐出演/やついの攻めすぎた笑い/面白くない事が面白い 2012/06/16 本編はエレ田原/本編に続いてふんわりアメリカ話/ビーチでの出来事/教えてほしい話/アメリカの日本食/E3での出来事/ロスで北島康介に遭遇 2012/06/09 ダイエットベルト実践/携帯クーラー情報/ドクター中松っつぁん/全員悶絶/ゴウさん悶絶 2012/06/02 ツタンカーメン展/ふつおたのコーナー/ボクササイズ/やついムエタイ体験/やついダイエットベルト購入/やついローラ 2012/05/26 ふつおたのコーナー/エレキ映像ライブで新潟へ/「片桐仕事しろよ!」/関ジャニ丸山君は凄い/片桐=キッズ・リターンのモロ師岡/丸ちゃんとやついは一緒/テーッテッテレー!/片桐=空気を吸って愚痴を吐き出す生き物/片桐舞台稽古中爆睡 2012/05/19 エレ片大好き太朗/キス会反響/帳消し理論/金玉一少年の名推理→取り調べ 2012/05/12 ふつおたのコーナー/リスナーがエレキコミックを蔑むツイートを調査/片桐BOBの宣伝でテレビ出演/やついのルンバが馬鹿になった/やつい家電うんちく/KODOMOナイトでの出来事/キス会 2012/05/05 ふつおたのコーナー/「イイネ(笑)」ライブ/やつい大学生への悪意/「BOB」の片桐が格好良かった/川尻のアドバイス/ゴウさんの意図を汲むやつい 2012/04/28 今立泥酔のその後/餃子が食べたい今立/途中からゴウさん参戦/ぐるぐるカーテン/結局今立はモテる 2012/04/21 【ゲスト:ゲッターズ飯田】本編はSPWモテクイズ/今立泥酔/モテは今年だけ、次は25年後/結局はリトルリーグ/オヨイさん/隠れてモテたい/「死ぬから」/「5回オナニーして寝ます」/星座占い 2012/04/14 今立ペッティング実況/ビショヌレラを探せ 2012/04/07 暴風雨の話/コントの人6地方公演終了/半端なくモテる今立(ゴウさんの意図)/ビショヌレラ 2012/03/31 コントの人6終了/公開イベントができない/今立のスター感/一万人集めてみたい/一番高いやつくださいの人/今立にホモから電話/うらやまし兄弟師匠 2012/03/24 エレ片はすごい/レッドショーでの上田マネ/「何だお前ら!」/親を使って逃げる/若きやついの無茶/上田には才能が付かない 2012/03/17 ふつおたのコーナー/今立泥酔事件(腕舐め、押し潰し、チークダンス、SEXY ZONE)/今立からの謝罪 2012/03/10 ペヤングレッド/ソース2倍の押し付け合い/片桐 ゴウ試食/片桐、やついに謎の激怒/やつい 今立も試食 2012/03/03 感涙の秘宝展に太朗来襲/わがままでずるい太朗/片桐犬にサンドイッチを食べられて犬を噛む 2012/02/25 ふつおたのコーナー/やついフェス終了/片桐がいなくてよかった/キングオブブスの息子/外で動かないこぶし/ペットグッズに金をかけるやつい 2012/02/18 コントの人6のチラシがしょぼい/片桐のイメージを崩してほしい/キングオブブス/こぶしのトレーニング/かくれんぼ 2012/02/11 香港マカオツアー終了/上田マネージャーの話(カジノで嘘、鍵紛失)/ディズニーランドで会った親子/調子に乗るおくまん(マッサージ店ではしゃぐ、飛行機で嘔吐) 2012/02/04 やつい馬鹿力に出演/伊集院光の思い出/ふつおたのコーナー/モンハンラジオでグダグダの片桐/AKB松井咲子がリスナー/コメント欄での悪口/片桐の青森サイン会が大盛/コントの人6が厳しい 2012/01/28 Podcast300回/Podcastを振り返る/小島あやめちゃんからメール/新コーナー紹介/片桐のよくわからないニュース/ 2012/01/21 本放送300回/酔っ払い片桐/氏神一番がすごかった/新コーナー紹介/片桐ヨガ体験/やついフェス告知 2012/01/14 ゴウさん、川尻が女優と付き合ったら絶交/ヨガがやってみたい/ノープランのやついフェス/企画決め(今立・武蔵のバドミンたん、ひできーぱみゅぱみゅ、ヨーガー仁、オクサレ様) 2012/01/07 ジグソーパズルトーク/今立父/忘年会で今立泥酔/合コンに行きたがる/上田のモテランキングに今立激怒/COUNTDOWN JAPANで酔って「死ね」連呼の川尻
https://w.atwiki.jp/elekata/pages/18.html
エレ片podcastまとめ(2008~2009) タイトル コメント ◇2009年 2009/12/30 龍馬ツアーに絶対行きたくない片桐、冷静沈着に龍馬ツアーをボロクソにけなす/「脱藩者の方が普通なんだよ?」/ノーリスク三万円じゃんけん/今立悪魔を封印 2009/12/23 龍馬の旅2人脱藩/「帰ってきてー!!」/片桐のスケジュールが空いた/片桐じゃんけんで二連敗 2009/12/16 本編ゲスト:臼田あさ美/生きてて嫌だった5個の事柄/やついサドルを盗まれたまま放置したら自転車ごと盗まれた/ゴウさんとやついがじゃんけん/「仁ちゃん、じゃんけんしようぜ」/片桐勝利/片桐の生きてて嫌だった5個の事柄 2009/12/09 龍馬の旅参加者27名/龍馬の旅を社長に心配される/「サービスあります!」/片桐にじゃんけんを迫るやつい 2009/12/02 先週のPodcast後は龍馬の旅参加者9名、僕飲み後は22名/リスナーからのメールについての片桐のマジレス/もし行けなかったら皆の足を引っ張ってやるというやついの呪詛/増田君情報/お母さんがやるべー 2009/11/25 やつい龍馬の旅/3週間で8枚/68,500円/やつい「安い」連呼で声帯痛める 2009/11/18 増田君とクロムハーツ/神がかった天才的ツッコミに定評があり現在人気爆上昇中/やつい生誕祭でトシちゃんが主役 2009/11/11 やついに谷村美月ちゃんを紹介しない片桐/二千万兆/やついさんもうちんこさわらないで/3と3の倍数でアナル/片桐メンズノンノ撮影秘話 2009/11/04 エレキ武蔵大学学園祭へ/川に豚が流れているやついの中学時代/レッドカーペット出演時のネタのせいで「肛門の人」と呼ばれるやつい/キンコメ今野出演の舞台にてパンツをなんとか見ようとするやつい 2009/10/28 片桐ゴキブリ怪人役で引かれる/岡山DJイベントで「豚!」の声援を無視するやつい/偽Perfumeとボンデージストリッパー/「豚もアートだろ」/武蔵大学の学生からメール 2009/10/21 本編はつっこみフィット/まだ飲み続けている今立/「死ぬか家に帰って下さい」/片桐演じるゴキブリ怪人についてのメール 2009/10/14 片桐ぎっくり腰/寒いと思ったら風邪だった/ピーターパン太朗とディズニーランド/ネット上での3人の呼び名が豚・砂利・トシちゃんに/先日の「女は面白くない」発言で怒られる片桐/ステッカー配布イベント時のトシちゃんを絶賛するメール 2009/10/07 すれ違い通信用ステッカー配布イベントの話/今立さん0分待ち/「片桐人気未だ冷めやらず」/やつ片選挙/エレ片をタノキンに例えると/今立進のツッコミフィットの説明 2009/09/30 今立誕生日ベラファーツアー/トゥインクル・コーポレーションのトシちゃん/野菜クイズ/エレキコミックの噂 2009/09/23 ゲスト:マキタスポーツ/やついのおばあちゃんの最期っ屁/マキタさん老化を感じる/永ちゃんの収録に潜入/何も感じない歌 2009/09/16 さまざまなガンダム/ジンダムのプラモ作りたい!/天才の振る舞い/やついはヤングコーンと腐った魚が嫌い/やつい画伯の天才の振る舞い 2009/09/09 ゲスト:カオポイント/KOC落ちたので03は応援しないやつい/高須光聖がエレキを褒めていたらしい/やついの発言により客にもボロクソ言われる片桐/石橋順番待ち/石橋モテ講座「カラオケ編」/オクマン「マエケンから寿司をおごってもらう方法」 2009/09/02 枯れた声は演出/すれ違い通信/ジンダム70P・1700円/「高い!」「安い!」/「食わず嫌い」に反応して暗くなるエレ片/今週の太朗君情報 2009/08/26 本編ゲスト:田中真弓/片桐はバカ/すれ違い通信/やつい「俺コント君だから」/片桐コントの練習をさぼる→やつい敬語に 2009/08/19 本編ゲスト:みうらじゅん/本編で放送できなかった、みうらじゅんの生きててよかった10個の事柄/やついに混浴情報が集まる/クリリンが言わなそうな一言/龍馬のコーナーが今流行ってる? 2009/08/12 相変わらずpodcastの順位が悪いのでもう終わりだ/やついと混浴した二人からのメール→痴漢訴訟?/女は胸を見てほしい?/勝ったほうが勝ち/やつい混浴論/やつい手を前に出して胸を待ってみる/リスナーとすれ違い通信をしたと思ったらゴウさんだった 2009/08/05 片桐家族旅行で与論島へ/片桐用のドラゴンボールスペシャルにゲスト・田中真弓さんが/片桐DB話/クリリン宇宙人説/DQ9のすれ違い通信でエレ片を宣伝してくれ 2009/07/29 エレキ修学旅行/とにかく混浴を狙うやつい/義経戦法/痴漢やつい「更衣室を見ろ!」 2009/07/22 エレ片フェス感想メール/異常に卑屈なやつい/おきゃんおきゃん/危険日チャレンジガールズ!の衣装&メイクについて/やついの日本語力崩壊 2009/07/15 やついの寝ない自慢/ゲームのやりすぎを嫁に怒られるのが怖い片桐/やついのドラクエを勝手にプレイする片桐&萩P/やついVジャンプ購入/やついはFFよりドラクエ派/片桐のファミコン話/やついの三国志検定&銭湯検定 2009/07/08 今立近況「基本的には家で酔っぱらってます」/大学生ノリのイエスマン越田とSTRONG呑み/オクマンと嵐会、ラップ前は今立に一礼/今立は酔うと兄貴になる/家庭栽培の話 2009/07/01 下半期突入/エレ片フェス衣装さん正式決定/ダンスが…/「片やねんポツやねん」/ヤング志村けん/ヤング小林賢太郎//「DJやついいちろう①」発売 2009/06/24 生とDVDは全然違うのでエレ片フェスに来て下さい/モノホンの人から衣装制作希望のメール/ヤッリー・ダッチー・セクシーJ/エレ片コントの人3の告知/イスゴルファー椅子デビュー戦の話/グリーン上で社長と大喧嘩 2009/06/17 占い師飯田による占いの結果「危険日チャレンジガールズ!」表記に/やついゴルフレッスン話/「プロゴルファー椅子vsトゥインクル社長」 2009/06/10 ゲスト:バカリズム/アイドルユニット名は「危険日チャレンジガールズ」/危険日チャレンジガールズの衣装/危険日チャレンジガールズの楽曲/握手会について/危険日チャレンジガールズのキャラ 2009/06/03 ガンダムバー酷評/各都道府県に1/1ガンダムを/片桐ガンダム関連店舗作れよ/片桐はプラモデル屋をやりたい 2009/05/27 太朗の生態/片桐友達の仏師の話/エレキ修学旅行プレゼン/ドラゴントレジャー2の話 2009/05/20 片桐復帰/片桐のオナニー挑戦/片桐夕方のニュース番組に出演/片桐ピタゴラスイッチのお父さんスイッチに出演/太朗、やついを尊敬/片桐姉の話/ゴウさんのお姉さん枕営業/エレ片アイドルデビュー 2009/05/13 ゲスト:キングオブコメディ/キングオブコント記者会見の話/今野は松坂大輔に似てる?/今野の顔エピソード/今野ドラマに引っ張りだこ/やついセコンド/いつもの今野/長澤まさみはあり?なし?/食いしん坊高橋/今野光浦とエレカシを見に行った話 2009/05/06 片桐欠席/ゲスト:THE GEESE(ザ・ギース)/声の特徴/尾関のダメ人間エピソード/尾関は人の話を聞かない/尾関小二からオナニーをしたら守護霊が見えるように?/尾関触らずに射精/「尾関は色々頑張った」 2009/04/29 「バナナ炎(ファイア)」にてエレキコミックが名前はカッコイイコンビ第2位/ラーメンズという名前/エレキコミックの名前の由来/ラーメンズの旧コンビ名「デブと金髪」/エレキがラーメンズだったらラーメン特集してた?/片桐はそこまでラーメン好きじゃない/エレキの新コンビ名、週間少年ジャンプーズ 2009/04/22 ゲスト:ザブングル加藤/加藤王様から国崩壊/加藤の壮絶な家族/加藤はモテていた?/加藤のモテ講座 2009/04/15 CBC本放送0時からに昇格/勇者のコーナー/冷凍ミカンを口に入れて「TOWER」をやり切る/片桐の挑戦/伝説の愚者片桐 2009/04/08 今立かなまら祭へ/「でっかいマーラーでっかいマーラー♪」/今立外国のカメラに映り込む/『ジンダム』反響 2009/04/01 『ジンダム』紹介/「悪ふざけじゃねぇか!!」/水槽に入れたいガンプラ/新しいジオラマ 2009/03/25 泥酔音響中村さん 泥酔原D/三国志の旅報告/やついの性的サービス/石井さんエロ度数180/凌統の墓/諸葛亮やつい三国城で大人気/中国でウケるギャグ/三国城の社長と知り合う/上海蟹事件/誰が叩いたかゲーム 2009/03/18 ゲスト:マキタスポーツ/明るいよ/マキタスポーツモノマネ歌/実写DBもしも配役 2009/03/11 止まらない片桐のドラゴンボール/休み時間の過ごし方/片桐授業に出なくなる/かなまら祭レポ決め/片桐の本3冊発売 2009/03/04 今立の人気メール/やつい顔がワキガ/やつい紙飛行機/石橋またモテてやがりやがって/ゴウさんエロ話をしたくて激怒 2009/02/25 ゴウさんの嫁のPodcast再生ランキング/「終わるんですよね?」 2009/02/18 ゲスト:カオポイント石橋/チャラペラ石橋の恋愛講座3/女性の褒め方/女子は全員なんでどこが病/男心がわかる女性//三国志の旅参加者25人到達/ 2009/02/11 エレ片地方公演終了/三国志の旅がなにしろ売れてない/三国志旅行応募への不安/エレ片福岡公演のチケット2枚が1710円で落札される/風俗店の待合室にエレ片のサイン色紙が飾られる 2009/02/04 片桐前回のpodcastを聴いて/片桐、腹下し中に舞台「冬の絵空」で異臭騒ぎ/三国志の旅が全く売れてない/三国志の旅の魅力/性的サービス/「安い!」/「……殺す」 2009/01/28 片桐ウイルス性腹痛で欠席/チャラペラ石橋への反響/石橋家族の話/チャラペラ石橋の恋愛講座2/清潔感が大事/ラーメン屋理論/国内留学作戦 2009/01/21 ゲスト:前田健とオクマン/オクマン前田健にタマキンジャグリングされる/オクマンパフェを食べさせられる/オクマンの手口/前田健とオクマンディズニーランドへ/オクマン前田健の舞台に出演 2009/01/14 ゲスト:カオポイント石橋/チャラペラ石橋のモテ秘話/チャラペラ石橋の恋愛講座/石橋の女の数/石橋のモテの起源/モテ英会話/可愛い男がモテる/男らしいクレープの頼み方/女の大丈夫は大丈夫じゃない/コンパは空調の下に座る 2009/01/07 やつい芸人仲間との旅行話/片桐一家花鳥園に行く/カウントダウンジャパンの話/エレカシ宮本、カウントダウンにギリギリ気付く ◇2008年 2008/12/24 片桐クリスマスを敵視/学生時代の片桐/やつい母校の話/鈴木拓の開き直り/ふつおたのコーナー/ミスチルのPVに片桐親子/子供はちっちゃくて気持ち悪い/今立のツッコミが卑猥/スローセックスの話/セックスしたいというメール 2008/12/17 先週は愚痴のみだったので反省/片桐へ励ましのお便り/夏は暑い仕草、冬は寒い仕草の片桐/飲み会時の下ネタに反応できなかった人からの悩み相談 2008/12/10 本編ゲスト:磯山さやか/電話出演の片桐/飲酒中萩P「エレ磯………磯エレ……」/冬の絵空二日目にしてナーバスな片桐 2008/12/03 片桐仁のおはよう定食/今回は本編前にpodcast収録、エレキ不在/ゴキブリの話/嫌な女性/ヤらせてくれない彼女/人間つっこみになったらお終い 2008/11/26 片桐の役「シロ」/perfume紅白出場/perfumeはエレ片ファミリー?/やついの才能はぶさいく/アーティスティックぶさいく/ボジョレーヌーボー風呂/ふつおたのコーナー/やついの優しさ/三重県のおすすめスポット/やつい筍をカツアゲされた話 2008/11/19 年齢の節目/やつい生誕祭の話/ハルンケアやつい/やつい生誕祭でグリーンティーを配るチャラペラ/石橋の話/やつ子先生 2008/11/12 ラーメンズ「ATSUATSUODEN」/明治学院大学舞台技術からのメール/熊本県立大学学園祭での話/熊本にはやらせることに長けた女が多い?/世界のエロ事情/パンモラーをはやらせたい/「パンツ見たいなぁ」選手権 2008/11/05 明治学院大学落研お笑いライブ/やつい財布がなくて学生に借金/片桐太朗出演 2008/10/29 コントの人2感想/やつい頑張れ/ハグしてください=セックスしてください/やらせることに長けた女/出待ちでの片桐/握手で肩を負傷?/やつい痴漢の免罪符/今立と原Dの殴り合い/加圧の効果/やつい小林に脅される/片桐軟式テニス部話 2008/10/22 本編ゲスト:板尾創路/板尾をエレ片に入れる?/片桐タクシーにキレる/悪口はネットに?/片桐のキレは正義感?/ふつおたのコーナー/ユーキャンの実態が知りたい/W挿入師匠/加圧効果はある?/加圧は詐欺説 2008/10/15 即勃起挿入/やついは錦織圭に似てる説/やつい、大泉洋ファンにキレられる/「ブス ブスだな。お疲れさまでした」 2008/10/08 スパトアイアスロンの話/スパトライアスロン感想メール/やついトライアスロンで負傷→訴訟?/やついに似てるよって悪口? 2008/10/01 junk0移動から初のpodcast/「話聞かせて」/片桐「悪夢のエレベーター」にてTシャツを投げる/「悪魔のエレベーター」感想/MOTHER3にて妻子死亡にショックを受ける片桐/スパトライアスロンの話/ふつおたのコーナー/合コン術/江戸合コンコント 2008/09/24 junk0に移動するに当たってのコーナー会議/コーナーに関するメール/コーナー会議結果発表/はじめてのコントは名誉コーナー 2008/09/17 エレキ学園バスツアーの話/やついの変な脱衣/おくまんのタマキン物真似/ラミレスと色んなスポーツをしよう/「shine…死ね、ですね」 2008/09/10 キングオブコント準決勝敗退の報告/ふつおたのコーナー/エレキ学園バスツアー申込者からのメール/やつい稲川淳二のライブへ 2008/09/03 今立ディズニー事件/今立彼女と別れる/やつい流卑屈交流法/エレ片podcast順位/太朗の話を全無視してドラクエをやる片桐/ドラクエ嫁選び/やついファイアーエムブレムへの愚痴/女にとって恋愛はゲーム/夫婦喧嘩で太朗をドッキリにかける/「ガンダムを壊すくらいなら嫁を殴る」 2008/08/27 ゲスト:しまおまほ/「やだ~、女わかってるね~」/宇多丸の話/今立、夏唄メンバーとTDLへ/彼女と破局寸前? 2008/08/20 「もう終わりだからな!」でおなじみの萩P/やつい中村獅童達と飲む/やつい中村獅童を語る 2008/08/13 由比ヶ浜にてグラビア撮影会/グラビア撮影会感想メール/鮭缶「あとで話がある!」/萩Pチェック/やつい電車での目撃情報/片桐家族金沢旅行/太朗スポーツ事情/声優について/やついジャイアンの声優に会う/エロ祭り情報/ペニスの仁 2008/08/06 ふつおたのコーナー/女の子の後輩におごってもらったら…/ヤりたいやつい/ハリー・ポッター最終巻発売/どりゃ読み/ファンタジー脳/片桐美大話:ファミコンが黒く塗られサターンに/マスターベータソン 2008/07/30 舞台共演者との親交/プロポーズ大作戦/やついの初対面=悪口&無視/かなまら祭/おんだ祭り 2008/07/23 色々ショックなやつ片/やつい私服で加圧片桐美術館の夢/片桐の作品について/ふつおたのコーナー/秘宝館の話/下ネタ祭り/男根飴 2008/07/16 コーナーのコーナー/チャイナクイックの話/ふつおたのコーナー/だち兄やん/加圧の話/キングオブコントに出たらどうですか 2008/07/09 ヤリヤリ16スペシャル/あなたの肉野菜と電話でトーク/エレ片の一番凄かったセックス/やつい念力 2008/07/02 エレキ発表会終了/「garlic」感想/エレキ新マネージャー石井さんの話/やつい念力 2008/06/25 エレキ発表会間近/当日券の話/ふつおたのコーナー/戸次さんをゲストに/片桐仁のガンダム講座/三国志展で三国志好きに/自分を三国志キャラで例えると/やついは張松/ブサイクでも役者ができるような世の中を 2008/06/18 ゲスト:山下真司(和ジェロニモ)/本編の未放送トーク/和ジェロニモについて/見える見えない占い感想/片桐下宿話/片桐びんびん物語/「あれ実在でしょ?」/俺の中のエロ本 2008/06/11 MVPの片桐/見たものツッコミ/「ペンペン!」/和ジェロニモ/十万石祭りでの和ジェロニモ/山下真司の初体験/片桐仁男を語る 2008/06/04 今日も今日とてモンハン中/やついの家のトイレが壊れた話/大雑把なやつい/やつい宇宙とリンク/「便的なものが詰まっています」/トイレが壊れダイエット/百万石祭りの話 2008/05/28 山下真司に対する片桐の紹介の仕方/山下真司はすべり知らず/モンスターハンターセカンド仁/ふつおたのコーナー/稲川淳二目撃情報/Tシャツメーカーの話/僕らの飲み会でのチャラペラ/再び見える見えない占い 2008/05/21 今立はIZAMとルーガちゃんと舞台/可能性自慢/見える見えない占い/ゴウさんは何も見えない 2008/05/14 可能性自慢/ジャッキーかもしれない可能性/山下真司の話/YUIがラーメンズファンらしい/氏神一番モツ屋失敗?/松茸マラソン/ランナーズハイの話/鈴鹿サーキットを使ったレース/AV好きな女の子 2008/05/08 ふつおたスペシャル/KODOMOナイト感想/おもらしをリアクション芸に/おもらし外交官/ドッグショーで犬に糞をさせる話/妹がおもらしした話/女性も下ネタとセクハラが凄い/やついが得たエロ情報/可能性自慢/やついの言い間違い/鮭缶恋愛相談 2008/04/30 今立犬の散歩中に見つけた光景/杉作J太郎の話/カブキングZの撮影秘話/やつ片はマラソンをやるべき/トライアスロンやるか?/3人トライアスロン/モンハンをやろう 2008/04/23 本編ゲスト:小島あやめ/片桐にとって芝居とは/片桐は演技をしている?/片桐深夜便/片桐深夜便二週目/片桐は脳にチップを埋め込みたい 2008/04/16 やつい不在で勝手に放送/エレ片フェスの話/片桐の人気/フェスでおしっこ画像を流される/ドッキられ損/ファンから小声で「ファンです」/「本当は大好きですと言いたかったんです」というメール/「やついさんどっか行ってください」 2008/04/09 やつい加圧で吐く/やついが整形するとしたら/やついのコンプレックスは耳の小ささ/ふつおたのコーナー/三重県勇者伝説/やついへの尊敬メール/やついのおもらし画像について/やついのおもらしが人を救った 2008/04/02 公開収録後日談/公開収録での片桐/公開収録感想メール/「どうしたら!」/おもらしについて/四日市の勇者・便水ファイブ/片桐のコンプレックス/ジュモクさん/「あ!ってなっちゃった」/コントの人DVDの取材が来ていない 2008/03/26 公開収録/ゲスト:大槻ケンヂ/ときめき大学卒業式/ハワイアンセンターの話/裁判の裏話/やつい、またおもらし 2008/03/19 ハワイアンセンター報告/フラガールの出待ち/リョウコさんを探せ/やついが泊まった4000円のホテル/翌日のハワイアンセンター/ディズニーランド報告/ミッキーの家/ハワイアンセンターで出会った人からのメール/片桐からの電話 2008/03/12 やついいちろう常磐ハワイアン裁判/今立犯人説/萩Pより最終判決/正式じゃんけん/再びやつい敗北 2008/03/05 ハワイアンセンターに行かなかったやつい/プレか否かで大喧嘩 2008/02/27 100回記念/片桐ほろ酔い/やつ片加圧の話/萩P登場/一人で行くと辛いところ/誰がハワイアンセンターに行く?/決死のプレじゃんけん/やつい敗北 2008/02/20 ゲスト:バカリズム/片桐盛岡から電話出演/エレ片=「ボケ・ツッコミ・素人」/バカペディア「東京ペロペロランド」/やついチョコレート風呂へ/面白いならゴー/やついユネッサンを回る/ベルサイ湯 2008/02/13 抱きしめたい/片桐自慰事情/片桐嫁は鼻が利く/ゴウ自慰事情/「チョコ好きなんだけど↑」の効果/やついチョコ風呂行き決定 2008/02/06 前回のPodcastが欠番回に/前回のPodcastのおさらい/チョコをもらう方法「チョコ好きなんだけど↑」 2008/01/30 ゲスト:Perfume ※現在はダウンロードできません 2008/01/23 片桐ルパン出演/声優の大変さ/片桐の芸大受験の話/三国志の店連環の刑廃止 2008/01/16 新コーナー紹介/乳首に関する情報/乳首を見たいやつい/混浴風呂でのやつい/バレエはハード/ガールズロック2発売/片桐肛門指事件続報/指入れ派募集/やついのウェアのカビがとれた/「加圧向いてないかもしれないですね」 2008/01/09 ゲスト:ゲッターズ飯田/飯田の占い/2008年おもらしするのは/やつい子供の星/乳首を見れるかどうか/乳首を見たいやつい/やつい乳首見たさに芸術に走る 2008/01/02 オリエント工業がエレ片のライブに/ゴウさんの奥さんはヘビーリスナー/片桐うんこもらし事件/フェス中に今立ゲロ発射/LaQuaにてレモンの風をおかわりするやつい
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/1334.html
前回までのあらすじ 未知の平原に乗り出した自衛官片桐と、聖女スビア。そこで初めて出会ったのは戦士トルンドだった。彼の話ではこの平原世界の名前はヨシーニア。出会った者同士いつ決闘が始まってもおかしくない。刺すか刺されるかという殺伐とした世界だった。 この殺伐とした世界に点在する村、ギルティで一躍注目を浴びてしまったスビアは殺人鬼トラボロに目を付けられてしまう。それを察知してトルンドは片桐たち を彼の隠れ家に案内するが、お世辞にもそこは快適とは言えなかった。しかも、トルンドはスビアを求めて彼女の寝込みを襲うが、彼女の機転でそのもくろみは 失敗に終わる。夜襲をかけてきたトラボロ一派をまいて、トルンドの言う「腑抜けの街」を目指す2人。 街にたどり着いたとき、追跡してきたトラボ ロ一派の強襲を受ける。片桐は門を開いてくれるように街の衛兵に頼むが時間がかかり、トルンドは射殺されてしまった。間一髪、門を開いてくれた警備隊長ド ロスの案内で片桐、スビアは街での在留資格を問う評議会に出頭する。都市の名前はリターマニア。片桐が召還された大陸、ヌーボルのさらに北にあるコロヌー ボルにある神聖ロサール王国の自治都市だった。 在留資格を得た2人はドロスと伴侶タローニャの親切な歓待を受け、街でつかの間のバカンスを楽しんだ。リターマニアは高度に洗練された魔法文明と自由な雰囲気、平和的で教養ある人々であふれる理想郷のように思われた。 翌日、殺人鬼トラボロの弾丸からドロスを救い、彼を射殺した片桐はドロスとの友情を確固たるものにして、その夜に行われた年に1度の「神の御心」の対象者 選考を迎えた。惜しくもはずれて残念がるドロスだったが、スビアが見事当選した。周囲の祝福ムードに流され彼らの言われるがままスビアと別れた片桐だが、 そこでドロスから「神の御心」について衝撃的な内容を教えられて血の気を失った。 ドロスのにこやかな表情とは正反対の宣告を聞いて片桐は愕然とした。それと同時にこの恐ろしい選考にはずれたことを心底残念がるドロスを理解できなかった。狼狽する片桐をドロスはタクシーに乗せた。すうっと走り出した車内で片桐はドロスにつかみかかった。 「ドロス!それはあくまで「権利」なんだろ?拒否することもできるんだろ?」」 慌てて片桐はドロスに尋ねた。彼は、少し驚いた表情をしたが、すぐにいつもの穏やかな顔に戻った。 「実質拒否はできないよ。それに今まで拒否した人を聞いたことがない。だって、不本意な死(彼らは戦死や殺人、病死などをそう呼ぶ)でなく、神の意志による死だよ。神に近づく最大の栄誉なんだ!拒否なんてしないよ。」 だが片桐にはその理屈は通用しなかった。死は同じだ。永遠に別れることを意味するにすぎない。 「ドロス、止めてくれ!」 片桐はドロスにタクシーを停車させた。そしてドアを開けて飛び出そうとしたが、ドロスがそれを止めた。彼の意図を察していたのだ。 「止 めておけ、ここに来て間もない君には理解できないだろうが、これも彼女の運命だ。そしてそれは不幸な運命ではないとわたしは信じている。それに、彼女を奪 い返すということはこの都市だけでなく、神聖ロサール王国の法律に違反することになる。わたしに君を逮捕させないでくれ・・・」 その言葉に片桐は反論しようとしたが、ドロスはそれを無視して言い含めるように彼に言った。 「それにもう遅い。スビアはわたしのタローニャの手伝いで支度を整え、首都ヴァシントに送られた頃だろう」 思わず片桐はシートにうずくまった。愛する聖女がもうここにはいないこと、そして自分ではどうにもできない状況に置かれたことを悟ったのだ。最後に彼女が残した笑顔で言った言葉が片桐の脳裏に繰り返し流れていた。 「片桐!よくわからないけど、楽しみにしていて!」 楽しみにできることなどあるはずもなかった。ポルを使った全国中継で彼女が心臓をえぐり出されたり、首を切られたりする断末魔のあえぎを中継されることな ど、楽しみのはずもない。そしてここは高度な魔法文明社会だ。今までみたいに無茶な冒険でどうにか道を切り開けるようにはとうてい思えなかった。 「さあ、片桐。着いたよ」 ドロスはそう言って片桐をタクシーから降ろした。彼の部下である士官の家のようだ。うなだれる片桐を出迎えたのはドロスの部下と彼の伴侶だった。 「おめでとう!」 「おめでとうございます!」 口々に祝福の言葉を捧げるドロスの友人に片桐はもはや反論する気力もなかった。形だけ乾杯につきあうと、早々に提供された部屋に入った。 ベッドに突っ伏すと片桐は大声で泣きたい心境に駆られた。こうなるとわかっていたら彼女をこんな危険な抽選から棄権させることもできたかもしれない。そも そもこんな恐ろしい都市に足を踏み入れることもなかったかもしれない。自責の念だけが彼を襲い続けた。つい1時間前まで片桐の腕の中にいた最愛の聖女は、 今はいずことも知れない地、すなわち彼女の生涯を強制終了させられる地、に送られているのだ。 「片桐・・・」 ドアが開いてドロスが顔をのぞかせた。 「お願いだから、変な気は起こさないでくれよ。そして最愛の友人に君を逮捕させるような悲劇は見せないでくれ・・・」 そう言ってドロスはドアを閉めた。今の彼の言葉は自己の保身のためではないことは片桐も承知していた。彼は片桐がショックのあまり暴走することを恐れてい たのだ。そうなれば、警備隊長であるドロスは片桐を逮捕して、この都市の最高刑である追放刑に処さねばならない・・・。それを心配しての言葉だった。それ と同時に、ドロスが片桐とスビアを友人として受け入れてくれていることも知っていたし、片桐も彼の教養や人柄以上に彼を友人と思っていた。 「変な気ね・・・」 ベッドにうつぶせて片桐は彼の言葉を反芻した。変な気・・・・ 「あっ」 思わず片桐は飛び起きた。そして意識的にか、無意識的にかわからないドロスの友情に感謝した。ドロスは「変な気を起こすな」と警告しつつも、片桐を1人に しているのだ。これを利用する手はなかった。片桐の心に自衛隊で鍛えた不屈の精神が再びよみがえっていた。そうと決まれば話は早い。電光石火。片桐はドア の外を確認して、本当にだれもいないことを確認すると窓にとりついた。 「けっこう高いな・・・」 2階の窓から地面まで4,5メートルあったが、片桐は窓枠に彼が着ている、この世界の着物の腰巻きを結んでぶら下がった。これで足腰に負担なく、悟られることなく屋外に出ることができる。だが、それを実行に移す前に、ドロスのおだやかな笑顔が片桐の脳裏によぎった。 「ドロス、すまない・・」 彼に聞こえるはずもないが、せめてもの気持ちでそうつぶやくと、ぶら下がったベルトから手を離して地面に降り立った。そしてタクシーを拾うと、タローニャしかいないドロスの家へ向かった。 警備兵はすでにドロスの家からはいなくなっていた。スビアを連れて首都ヴァシントに出発したのだろう。ここでの片桐の用事は決まっていた。彼の荷物と銃だった。玄関をさけ、ゲストルームに面した窓が開かれているのを確認した。中ではタローニャが宴会の片づけをしている。 用済みの革の靴を脱ぐと素足で窓を飛び越えた。キッチンに洗い物を運んだタローニャの口を後ろからふさいだ。 「んん!」 警戒の声を出そうとするタローニャの耳元で片桐はささやいた。 「タローニャ、俺です。片桐です」 その声を聞いて彼女は声を出すのをやめた。片桐はそれを見届けて彼女を拘束していた手を離した。 「タローニャ、スビアはどこです?」 片桐の意外な来訪に気がついてからすぐに彼の意図を察したであろうタローニャは悲しげに首を振った。 「もう手遅れです。彼女は先ほど首都ヴァシントへの船に乗りました。他の当選者と共に。片桐、今なら遅くない!ドロスのところへ帰って!わたくしをからかった悪ふざけということでなんとかなります!」 タローニャの言葉に片桐は無言で首を横に振った。半分悟っていたのだろう、タローニャは美しい顔に苦悶の表情を浮かべた。 「すまない・・・、タローニャ」 彼女をキッチンの手ぬぐいや布巾で後ろ手に軽く縛り、両足も同じように軽く縛った。 「痛くないですか?」 片桐の質問に彼女は無表情、無言で頷いた。それを確認すると、スビアと片桐に割り当てられた部屋に駆け込み、着慣れた迷彩服と防弾チョッキを身につけ、愛用の89式小銃を手に取った。と、机に向かうと大急ぎで一筆書いて懐にしまった。 「片桐・・・あなた、どうしても行かれるのですか」 キッチンに戻った片桐の姿を見てタローニャが小さく叫んだ。そんな彼女の元に片桐は歩み寄った。 「タローニャ、君とドロスの恩は忘れない。だが許してくれ。俺はスビアをこんな形で失いたくないんだ。」 そう言って片桐は先ほど書いた手紙をタローニャの懐にねじ込んだ。中には、この計画は片桐単独で謀ったこと、ドロスはそれを知らないし、タローニャも不意をつかれて拘束されたことを記していた。 「それじゃあ・・・」 「片桐、無事を祈ります・・・」 そう言うタローニャの口に猿ぐつわをかまして片桐はキッチンの窓から外に出た。そして再びタクシーを拾って今度は街の門に向かった。シートの中でドロスとタローニャへの罪悪感で思わず吐きそうになったが、最愛のスビアを失うことを考えたらそれもどうにか我慢できた。 門の前の衛兵は昼間、ドロスと共にいた衛兵だった。 「やあ、どうしました?」 衛兵は陽気に片桐に声をかけた。迷彩服姿の片桐を大して気にしていないようだった。 「昼間やっつけた男の確認にドロスと出かけるんだ、開けてくれ」 片桐の言葉を信用して衛兵は門の通用口を開けた。それをくぐって片桐は街と外界を隔てる第1の門へと向かおうとした。が、その前に、警備隊に預けてある彼の弾薬が必要だった。馬小屋は無人だった。 「いい子で待ってろよ・・・」 船に乗るのに愛馬を連れていくことはできない。片桐は賢い愛馬に別れを告げて第1の門へと向かった。 「異世界人片桐、こんな時間にどうしました?」 第1の門を守る門番は不思議がって片桐に質問してきた。無理もない、完全武装で夜中に外界に出るというのはちょっと考えられない。片桐は第2の門番へ言った嘘と同じ嘘を彼についた。 「ドロスと、昼間倒した男の確認に行くことになってるんだ」 だが、この門番はそれを鵜呑みにしなかった。 「だったら、2人だけで行くのは危険です。護衛の小隊が必要です・・。わたしからドロス様に言いましょう」 そう言って、門に備えられた伝声管にとりついた。ここで下手に連絡されてはすべてが露見してしまう。片桐は決心した。 「すまん・・・!」 背中をさらした衛兵に片桐は飛びつくと彼の右手の親指を締め上げて、背中に腕を持ってこさせた。彼のベルトをはずし後ろに回った右手を縛り、左手も素早く奪うと後ろ手に縛り上げ、ベルトのもう一方を門の柱に縛り付けた。 「すまん、俺は行かねばならんのだ」 「異世界人片桐!その通用口を開けてはだめだ!君はその瞬間、全土のお尋ね者になってしまう。わたしは君の人相書きを見たくはない!」 ここでも片桐への言葉はドロスやタローニャと同じ内容だった。しかし、それを気にしてはスビアを助けることはできない。片桐は通用門を開けて外界、ヨシーニアへ踏み出した。 ヨシーニアに出て、すぐに片桐は海沿いのギルティへ向かった。こんな殺伐とした世界に長くいる理由はなかった。目的は船だった。コロヌーボルにある首都 ヴァシトンへ向かうための船が必要だった。片桐は村にはいると一目散に、商店に入った。例によって愛想の良くないガンドールが窓口にいた。 「おい!船をくれ!」 そう言うが早いか、片桐は手持ちの金を全部、窓口のガンドールに差し出した。しかし、ガンドールは驚きながらも平静を保っている振りをして答えた。 「今すぐには無理だよ!」 面倒をいやがったのだろう。言い訳するガンドールに片桐は有無を言わさず89式を突きつけた。横柄なガンドールもさすがに息を飲むのがわかった。 「演説はいらない。今すぐ出航できる船はあるんだろうな?」 殺人鬼トラボロを射殺した彼の銃の評判を知っていたのだろう。ガンドールは怯えながら船の手配をはじめた。 「あるよ!1隻だけな。でもあんたが望んだんだ!後で文句は言うな!」 負け惜しみに近い感じでガンドールはそう言って、許可証を片桐に出した。 船着き場で指定された船を片桐は見つけた。長さ20メートルほどで漁船みたいな形をしている。帆が大きく張ってあり、船外機らしきものも船尾に見受けられた。大きな後部甲板に片桐は装備を乗せた。 「ええっと・・・、エンジンはどれだ?」 キャビンに入った片桐は操舵室らしきところでエンジンを動かそうとしたが、うまくいかない。そこへ1人のクーアードが通りかかって片桐に声をかけた。 「エンジンがかからないのか?」 「ああ、俺には操縦できないようだ」 片桐の言葉を聞いてその男は船に乗り込んでいとも簡単にエンジンを始動させた。聞けばこの男、遠洋漁業から戻って仕事がないということだった。 「よし、俺をヴァシントまで送ってくれ」 ミストと言う男は二つ返事でそれに応じた。コロヌーボルは目と鼻の先だ。片桐もポルを使ったエンジンを動かすことのできる船員を手に入れて満足だった。 「出航するぞ!」 ミストの得意げな大声が夜空を裂いた気がした。だが、その言葉と裏腹に、船のスピードはいまいちだった。 「片桐、エンジンの調子が悪いみたいだ」 ミストが片桐に操舵室から叫んだ。あのガンドールめ。思わず片桐は舌打ちした。当然、彼にこの世界の船の修理なぞ出来はしない。自然、ミストに任せること になった。数百メートル沖に出たところで、やくざな木造船は停止した。片桐は夜の海を見ていた。岸にはついさっき、飛び出したリターマニアがの夜景が見え る。ほんの数時間前まで理想郷のように思っていた大都市が今の片桐にはなにか、恐ろしい魔都のように見えた。 そこへ、1隻の木造船が接近してくるのが見えた。何者が潜んでいるかわからない。片桐は89式のセレクターを安全から「3」へ切り替えた。そうしているうちにも船はどんどん接近して片桐の船と横に並んだ。 「おい!ミスト!いいカモを捕まえたな!」 船には3人の男が乗っていた。どうやら海賊のようだ。片桐が89式を構えようとすると、彼の耳元をゲベールの弾丸かかすめた。 「変なまねするな!今度ははずさないぞ!」 そう言って男がゲベールに弾丸を込めようとした。その隙をついてマガジン1本分の5・56ミリ弾を海賊どもが乗る木造船の喫水線あたりに撃ち込んだ。 「うわああ!」 轟音と水柱で3人の海賊は尻もちをついてしまった。弾丸が命中した部分は見事に壊れ、恐ろしい量の水が船に流れ込んでいる。 「このやろう!」 ミストが後ろから飛びかかってきた。それをひょいっと交わして片桐はミストの背中を押してやった。哀れ、ミストは頭から海に落ち込んだ。 「おい!こっちに捕まるんじゃない!」 泳げないのだろう。ミストは沈みゆく海賊船にしがみついた。その重みで船はますます傾くのが見て取れた。 「た、助けてくれ!」 「お願いします!俺たち泳げないんです!」 口々に海賊たちが片桐に助けを求めた。あきれたことに海賊たちは4人とも泳げないと言う。片桐とて無益な殺生を望んでいるわけではない。それにポルを使っ た船の操縦は彼には難しすぎた。ザンガンは片桐のポルの量が多いと言っていたが、実践となるとからっきしだ。あまり才能がないように思えた。 「よし、こっちに乗れ」 片桐は油断することなく、哀れな海賊を船に乗せてやった。 海賊たちは嘘のように片桐に従順だった。そして彼がリターマニアの評議会から6000サマライの懸賞金付きでお尋ね者であることを知っていた。すでに全土 にそれは知れ渡っているようだ。たった数時間で異世界人片桐は、お尋ね者片桐になってしまったわけだ。だが、それがかえって海賊たちの尊敬を集めたよう だ。 聞けば彼らもリターマニアを追放刑で追い出された連中だった。陸の殺伐とした世界を逃れて海に出た連中だった。 「キャプテン・片桐!目的地はどこです?」 片桐にゲベールを撃ったトータが質問した。どうやら片桐はこのちんけな海賊団のボスになったようだ。もう1人のタリマはせっせと何か針仕事をしている。ミストは服を乾かし、もう1人、マルージが船を操縦している。 「ヴァシントだ。どこにあるかわかるか?」 その言葉にトータはうなずいた。首都ヴァシントは対岸に見える都市ではなかった。対岸の都市はつきだした半島の先端に位置していた。そこからコロヌーボル は北に向かって東西に広くなっていく。ヴァシントはその東岸に位置していた。この船で2日の距離だった。トータの話によると、コロヌーボルはヌーボルほど 大きな大陸ではない、みたいだった。というのも、ヴァシントから北は山脈が多く、寒冷で神聖ロサール王国の支配地域ではなく、あまり知られていないのだ。 異種族が住んでいるそうだが、神聖ロサールとは仲が悪く交流もないということだった。 「よし!できたぞ!」 タリマが大声をあげた。さっきから黙々と針仕事をしていたがそれが終わったようだ。 「おい、タリマ!何を作ったんだ?」 服をようやく乾かしたミストが尋ねた。タリマは自信満々に彼にその仕事の成果を見せた。 「キャプテン・片桐の旗だよ!」 そう言ってタリマはみんなにも旗を見せた。自衛隊の三等陸曹の階級章を模した見事な造りだった。口々に海賊が驚嘆の声をあげた。そして、「キャプテン」片 桐は思わずため息をついた。俺は自衛官なんだ。海賊の親分になった覚えはないぞ!と叫びたくなったが、彼らに自衛官とはなんたるかを説明する気にはなれな かった。 首都ヴァシントの港は壮観だった。大きな18世紀のコルベットに似た軍艦や、ガレオン船のような商船。それらと港を行き来する様々な小舟が無数に見えた。 「ヴァシントの自慢はその海軍だそうですよ。キャプテン、あれをご覧なさい。」 そう言ってトータは港の向こうを指した。港のさらに先に軍港が見えた。そこには100隻近いコルベットが停泊している。よく見てみようと片桐は双眼鏡を探した。だが、見つからない。 「あっ」 思い出した。リターマニアの城壁でドロスに貸したままにしておいたのだ。しかたなく、肉眼で見える範囲でそのコルベットを観察してみた。パサティアナで見 た大砲が数門装備され、船首には衝角がついている。片桐は海上自衛官でないが、船の構造でこの世界の海戦がおおよそ飲み込めた。 まず、大砲を互いに撃ち接近する。そして、チャンスがあれば衝角で敵船にぶつかり、甲板上のゲベール隊が水夫を減らし、接舷して突入するのだろう。 「キャ、キャプテン!」 操縦していたマルージが怯えた声をあげた。それを聞き、片桐は軍港の観察を止めた。振り返ると、さっきまでつぶさに観察していたコルベットが間近に接近している。その砲門は間違いなく、片桐たちを狙っていた。 「異世界人片桐と見受けた!こちらに乗船せよ!」 甲板で士官が叫んだ。港からはかなり離れていたつもりだったが、自分のうかつさに片桐は歯がみした。 「キャプテン、どうします?」 トータがゲベールを構えようとしたが、片桐はそれを止めた。今更1発撃ったところで大砲にこの船を木っ端みじんにされるのが落ちだ。片桐だけならいざとなれば泳いで港までたどり着けるだろうが、残念ながら彼の忠実な部下は全員がかなづちなのだ。 「心配はいらぬ!お尋ね者としてではなく、客人として迎える。グンク・シュブのお達しだ」 この国の王はシュブと言うらしい。抵抗も無駄。逃げることも難しいとなれば選択肢はなかった。運が良ければスビアを生け贄からはずすように王に直談判できるかもしれない、と思った。非常に楽観的だが、今の片桐にそれ以外の選択肢はなかった。 港に着いた時点では、グンク・シュブの約束は守られているようだった。片桐の部下は拘束されることなく、船に残された。そして片桐は海軍士官と共に王の待 つ城へと向かった。ヴァシント海軍の士官はドロスたち、リターマニア警備隊と似たり寄ったりの格好だった。そして首都ヴァシントの町並みも同じだった。高 度な魔法文明社会だった。だが、この高度な文明社会に「生け贄」という野蛮な習慣が存在しているのも確かであり、そのために片桐は愛するスビアを失う危機 に直面しているのだ。 王宮はまるでヴェルサイユ宮殿を思わせる造りだったが、その大きさはヴェルサイユほどでもなかった。しかし内部の豪華さは 引けを取っていなかった。豪奢な絨毯に、壁に描かれた美しい絵画の数々。そこを行き来する士官たちの出で立ちや淑女のドレスや装飾具の美しさは夢の世界の ようであった。 そして王座の間の前にある扉には警備隊の通常装備である革の装具と剣以外に様々な装飾具で飾った親衛隊が控え、恭しくその扉を開けた。高い天井に真っ赤な絨毯の先にある玉座にグンク・シュブは座っていた。その両側には彼の側近や閣僚がずらっと居並んでいる。 「さあ、私をまねて控えて・・・」 海軍士官が片桐にささやいた。彼は片膝をついて王に敬意を払った。とりあえず、片桐もそれに習った。 「異世界人片桐、よもやこんなに早く貴殿と会えるとは思っておらなんだ」 グンク・シュブは小柄な茶髪の中年で、一見すると王とは見えない。だが、彼の言葉と雰囲気から発されるオーラは間違いなく王のそれであった。 「この2日で君をとりまく状況が変化したことをまずは説明したい。君のリターマニア評議会での審査結果は聞いている。そして君がリターマニアから6000サマライの懸賞金で追われていることも」 グンク・シュブは淡々と片桐に話した。時折、そばの女性が彼にペーパーを見せている。あれに片桐に関する情報が書かれているのだろう。 「だ が、昨日余とリターマニア評議会を決裂させる決定的事件が起こった。それは以前からの古代ロサールの神々を巡る解釈の違いだったんだが、今の君には関わり ないことだ。その結果、ヴァシント評議会は全会一致でリターマニア評議会のこれまでの宗教的解釈を異端とし、その行為を反逆と見なした。」 そこで再びシュブはペーパーを見た。彼はあまりすらすらとしゃべることが得意でないように思えた。 「そ こで、この国における君の罪状は取り消しとなった。君を罪人とすることを評決した評議会自体が違法と判断されたからだ。したがって、その評議会が選考した 「神の御心」を行使する権利も無効となる。異世界人片桐、君の今回の行動の動機も聞き及んでいる。反逆者のしたこととは言え、君に多大な苦痛を与えたこと を国民に代わってお詫びしよう」 一瞬、片桐はグンク・シュブの言った意味を理解できなかった。が、数秒してその意味を知ると涙がこぼれそうになった。自分自身がお尋ね者でもなくなったと同時に、スビアも生け贄ではなくなったのだ。 「こ の国は古代ロサールの神々の恩恵で今日の繁栄を築いた。歴代の王は都市に、神への解釈、法律の制定など、ある程度自治と自由を与えてこの国をよりすばらし い国にしようと努力した。しかし、リターマニアの評議会はそれを軽んじ、越えてはならぬ一線を越えてしまった。フェルド、海上封鎖の準備はいいか?」 フェルドと呼ばれた将軍は王の前に進み出て報告した。 「はっ、目下50隻のコルベットを動員して海上封鎖の準備を行っております」 その答えに満足したグンク・シュブは今度はペーパーを持っていた女性に声をかけた。 「イラス、国民への呼びかけはどうだ?」 彼女は賢そうな表情をした女性だった。そしてその返答は彼女の外見通りだった。 「はい、国民に彼ら反逆者の悪行をわかりやすく、正義感をかき立てやすい内容にしております」 それを聞いてグンク・シュブは満足げに頷いた。そして片桐に向き直った。 「余は王であると同時に国民への奉仕者でもある。自由と神への敬意を第一に考えておる。そして余の敵は背教者どもだ。」 そこへ伝令が入ってきた。伝令はイラスに内容を伝えて立ち去った。彼女の表情から見てあまりいい知らせではないようだった。 「グンク、また今年も「神の御心」に選ばれた市民がさらわれました」 グンク・シュブの顔つきが先ほどまでの善良な王の顔から怒れる王の顔に変わった。 「またしてもウィンディーネの仕業か!」 王の言葉に居並ぶ閣僚の中でただ1人、無表情だが怒るグンクに軽蔑的な視線を向ける人物を片桐は見つけた。だが、その男は一瞬そのしぐさを見せただけで、その後は無表情のままだった。 「異世界人片桐、君の探す聖女を含めた「神の御心」当選者が北のウィンディーネにさらわれたそうだ。彼らは捕まえた捕虜を数ヶ月生かして太らせ、食料にすると聞いている。余はこの非人道的な事態を看過するわけにはいかない」 片桐は目の前が真っ暗になりそうだった。彼の愛する聖女は、心臓をえぐり出される危機から転じて、今度は食人種のメインディッシュにされるというのだ。怒りと絶望でふらふらしながら、片桐は目の前の王に尋ねた。 「で、俺・・・、いや自分は何かできることが?」 片桐のその言葉を待っていたのか、グンクは顔をあげた。その顔は今度は悲壮感にあふれていた。場合が場合でなければ、相当な役者だと片桐も思えたことだろう。 「我 が軍は現在再編成中で兵力不足だ。リターマニアへの海上封鎖と首都の防衛で手一杯なのだ。そこで君にお願いしたい。命令ではない。先発隊としてウィン ディーネに行ってはくれないだろうか?君のこの世界での功績や武勲は聞き及んでいる。今、この事態を打開できるのは君しかいない!」 片桐としては彼の願いは断る理由もない。せっかく、生け贄から解放されたスビアは今度は食料となる危険にさらされているのだ。 「わかりました。すぐにでも出発したいと思います。グンク、お心遣い感謝します」 「余とて、いかに百戦錬磨の君だけでは困難な話ということはわかっておる。パウリス!」 王に呼ばれて一歩前に進み出たのはさきほど、グンクに冷たい視線を投げた閣僚だった。 「パウリス、君は異世界人片桐と共にウィンディーネの状況を探ってくれ。しかる後、余が自ら軍を率い救出に向かおうぞ!」 「はっ!」 こうして、片桐には名君主に見えるグンク・シュブとの会談は終わった。 片桐に割り当てられた王宮の部屋は豪華絢爛だった。豪奢なツインベッドに美しい浴室。そしてその広さは下手なホテルのスウィート以上だった。だが、今の片 桐にはその豪華な寝室を堪能する気分ではなかった。グンク・シュブの話では数ヶ月あるスビアの生存期間だが、この世界の伝え聞く話はあまりあてにならな い。この手で彼女を抱きしめない限り、その無事を信じることはできなかった。思えば、片桐はこの世界でスビアと別れ別れになったのは、ガルマーニで拘束さ れた2日と、パサティアナでの2日だけだ。3日目、たった3日で片桐は身を削られるような気持ちになった。 この世界に召還されて数ヶ月、古代ロ サール滅亡の謎を解き、世界を安寧に導く秘術を求めて旅に出てから、片桐の支えは文字通り、スビアだけだった。今、翌日の旅立ちを控えている間でも片桐は 彼女を求めていた。彼女の美しい黒髪、彼女の柔らかい唇、暖かい指。その感触だけが心の支えだった。 「入るぞ・・・」 不意に声がしてドアが開かれた。入ってきたのは同行するパウリスだった。グンク曰く、彼はこの国の国務大臣で最高の剣士ということだそうだ。彼は手近なイスに座った。がっちりとした彼の身体は豪華なイスには若干窮屈のようだった。 「片桐、君に警告に来た。」 いきなり開かれたパウリスの言葉は意外なものだった。少し驚く片桐を無視して彼は言葉を続けた。 「出発前に言うのも何だが、グンクは我々をお払い箱にするためにこのような無茶な旅をご下命なさった。君は異世界人だ。妙な思想を国民にふれさせないため、そして、わたしが指名されたのはグンクやフェルドが進める軍国主義に反対する勢力を黙らせるためだ」 「え?この国は都市が自治しているんじゃないのか?」 その片桐の質問にパウリスは肩をすくめて笑った。無骨な剣士らしい笑いだった。 「わたしは剣士として常に戦場に立った男だ。その中でグンク自身の保身や利益のために戦った戦争も多かった。君の言う、都市の自治を認めた最大の原因は、ロサールの神々への解釈の違いで大規模な宗教戦争が起こりかけたからだ」 パウリスが言うには、10年ほど前、グンク・シュブたちの急進的な保守主義、すなわち神への帰心とその教えを全世界に広げようとする復古運動に反対する都 市が独立を宣言したことがあった。その論争は国を2つに分ける勢いであったという。それを納めるべく、グンクは宗教的解釈を各都市の評議会に任せることで 妥協したのだ。その見返りに、現在の軍拡、世界統一路線を容認させた。すべては正義の名の下に世界をその支配に治めるためだ。それに宗教的観点から唯一反 対していたのがリターマニアの評議会だという。 「彼らは無法地帯ヨシーニアだけでなく、君の来たヌーボルの西部地域の状況をふまえて、神聖ロサール独自の支配は不可能だと反対していたのだ。それが、先日のグンクとの会談で決裂に至った。」 そう言って、パウリスはポルを使った魔法ラジオのスイッチを入れた。 「親愛なる国民のみなさん、グンク・シュブです。今日はみなさんに悲しい発表をしなくてはいけない・・」 スピーカーから聞こえたのはグンク・シュブの声だった。 「か ねてより、意見の分かれていたロサールの神々についてのリターマニア評議会との交渉で、ヴァシント評議会はついに彼らとの決裂に至りました。彼らは神のご 意志である世界の統一を否定し、あつかましくも、ヌーボル西部の原住民との共存を訴えました。古代ロサールの聖地を抱くヴァシントの、そして神聖ロサール 王国のグンクとしてわたしは彼らのこの冒涜にこれ以上甘んじることはできません。」 次にグンクから放たれた言葉は片桐にも少なからず衝撃を与えた。 「わたしは、ロサールの神々のご意志を受け継ぐグンクとして、このような背教者に対し海上封鎖による制裁を発動することを決心しました。」 恐ろしい内容だった。一見民主的で合理的だが、その実気に入らない主張をする勢力は「神と正義の名」において罰するというのだ。 「神聖ロサールとその善良な国民に神のご加護があらんことを・・・」 ラジオはその言葉で終わった。パウリスはスイッチを切った。さっきまでの演説を聞いて片桐の脳裏に浮かんだのはドロスとタローニャのことだった。今や、グ ンク・シュブの庇護を受ける片桐はドロスとは敵になってしまったのだ。彼の屈託のない笑顔と、タローニャの美しい笑顔が脳裏をよぎった。 「こういうことだ。グンクは政治力に優れているが、敵を恐れている。命令が下った以上、わたしもグンクの命令に従う・・・。悲しいものだな」 パウリスの言葉を片桐もイヤと言うほど理解できた。元々の世界では彼も自衛官だ。上官や政治家の無茶な命令で死ぬとわかっている命令も受けなければならなかった身だ。 「で、この時期にここにいられちゃ都合の悪い我々が、野蛮なウィンディーネへの潜入を命じられた訳か・・・」 片桐はグンク・シュブの政治力に驚いた。彼が今までで会ってきたこの世界の王や指導者とはグンク・シュブは違っているように感じた。むしろ片桐の世界にいる政治家に近い。 「とにかく、お互い死出の旅だ。仲良くやろう」 そういってパウリスは部屋から出ていった。 数日後、片桐とパウリスは雪を抱く山々を見ながら高原地帯を北上していた。山と言っても木々はほとんどない。岩と、湖が所々にあり、森はその周辺にぽつぽ つある程度だ。気温は低く、温度計がないので正確にはわからないが、氷点下を下回っている感じだった。2人は毛皮のコート、と言えば豪華そうだがその実、 ただのオーバーコートにすぎないような代物だけで高原を歩いていた。 「俺は死なんぞ!生還して、評議会にグンクの政治責任を問うまではな!」 ここ数日のパウリスからの説明、半分愚痴のようなものだったが、によると、彼らは政権内で分裂しているようだ。 まず、強硬派のグンク・シュブとフェルド。穏健派のパウリス。そして中立のイラス、評議会は表面上中立だが立法権や宗教的解釈の裁量をグンクから与えられている手前、表だったグンク批判はしない。 「自由や正義は押しつけではない。君のいたアムターやガルマーニ、エルドガンたちに我々の宗教解釈と正義感を押しつけるつもりはない。共存していくうちに彼らが学んでいけばいいのだ」 片桐からすれば、強硬派でも穏健派でも、結局彼らの考えはヌーボル西部の人々に受け入れられるべきであると言うことに変わりはないようだったが、この寒さの中、歩く以外にすることもないのでパウリスの政治学講座を止めることはしなかった。 「なあ、ところで、グンク・シュブが言ってた「古代ロサール」の聖地ってなんだい?」 話の内容がパウリスの考える異民族との共存論に入ったところで片桐は鼻水をすすりながら尋ねた。 「言葉の通りだ、古代ロサールの神々が眠る聖地だ。もっとも、そこには歴代のグンクと評議委員しか入れないがね。我々が偉大な神から受け継いだ自由と正義の根元なのだよ。」 思わず片桐は歩を止めた。アムターから旅立って数ヶ月。おそらくそこがこの旅の最終目的地であろうことが予想できた。 「そこに何がある?この世界を平和に導く秘密の魔法でもあるのか?」 片桐の思わぬ食いつきように驚いたパウリスが答えた。 「わ からん。俺はそこには入ったことはない。だが、君も見てきただろう?古代ロサールから受け継いだ我が国の魔法文明の数々を。そしてアムターの聖女の他、少 数が受け継いだと言われる召還魔法。あれらはすべて古代ロサールの残された秘伝だ。その源があそこにあると言われている。」 パウリスの答えは片 桐の質問の答えとは違っていたが、それでも彼は確信を持ちつつあった。だが、直感的な疑問も発生した。もしも、その聖地にスビアの求めるものがあったとし て、なぜ、歴代のグンクはそれを修得することも、行使することもなかったのか?グンク・シュブのような野心あふれるグンクばかりだったわけではあるまい。 そして「神の聖地」を抱く神聖ロサールはなぜ、このような王制とも共和制ともつかない奇妙な政治体制で、各都市、異民族と政治的、宗教的な対立と融和を繰 り返しているのか・・・。 その疑問はふと聞こえてきた奇妙なもので中断された。 「おい、パウリス・・・。聞こえるか?」 自分の聞こえたものが幻聴でないことを確認すべく片桐は彼に声をかけた。パウリスも聞こえたのだろう。立ち止まって耳を澄ませている。それは歌だった。こ の世界ではあまり音楽は聴かないし演奏もされない。それがなぜかはわからないが、そうなのだ。片桐にとってこの世界の歌を聴くのはほとんど初めての経験 だった。 「こんな寒いところで演奏会か?」 今、片桐とパウリスがいるのは広大な高原のまっただ中だ。ところどころ雪が積もり、湖も凍り付きそうな寒さの中なのだ。 「あっちからのようだ・・・」 パウリスが示す方向には大きな湖とその周辺に雪をかぶった森が見えた。その向こうには数千メートル級の山々がはるか彼方まで連なっている。このあたりが世界の果てと言うのかもしれないな、と片桐は思った。 そして、その世界の果てで歌声は間違いなく2人の耳に聞こえていた。その歌声はソプラノ歌手のような声にも、アルトのような低音にも聞こえたが、思わず聞き惚れる美しさだ。 「行ってみよう・・・」 どちらからともなくそう提案して2人は湖の岸辺へと出た。高原の湖はきらびやかな水面と、吸い込まれそうになるほどの透明度で2人を出迎えた。歌声は今やすぐ近くから聞こえていた。湖につきだした大きな岩の上にその歌い手がいた。 「あれはいったい・・・」 半分呆然と片桐はつぶやいた。歌い手は女性だった。ほっそりとした体つき、美しい青みがかった髪、湖に負けないくらい透き通った白い肌・・・。そしてこの 寒さに関わらず彼女はしなやかなローブをまとっているにすぎなかった。その姿で岩場に腰掛け、足を伸ばして水面を蹴っている。白昼夢のようにすら思える光 景だった。パウリスとて同じ思いだったのだろう。この奇妙な光景に剣を持っていることを忘れているようだった。食人種の野蛮人の地に足を踏み入れて、この ような光景に出くわすとは夢にも思っていなかったようだ。 「ヴァシトンの貴族と異世界人・・・」 不意に女性が歌うのを止めて片桐たちに振り向いた。今や3人の距離はいくらもない。片桐もパウリスも歌声に導かれるように彼女のすぐ近くまで歩み寄っていたのだ。 「あなたが噂に聞く異世界人ですね・・・」 静かに女性が言った。その美しい顔にこぼれたほほえみに思わず片桐は見とれてしまった。それに気がついた女性は伸ばした足で湖の水面を軽く蹴った。 「わたくしはウィンディーネの女王、セイレースです。勇敢な異世界人、よくぞ世界の果てウィンディーネまで来られました」 その言葉にパウリスが夢から覚めたようにはっとして、即座に剣を抜いた。 「おのれ!ウィンディーネの女王、セイレース!我が国民を数年にわたって誘拐し、無惨に殺した罪をこの剣で償わせてやる!」 その言葉にセイレースは軽くほほえんだ。パウリスはひと飛びで彼女に飛びかかり斬るだけの間合いにいるのだ。 「ヴァシントの貴族パウリス。あなたほどの聡明な男がそのような世迷い言を信じているとは・・・」 「世迷い言だと?貴様がさらったのは我が国民でも「髪の御心」に選ばれ、その意志で神の国に旅立つ者たちだ!それを太らせて食うなどと、神を冒涜するにもほどがある!」 電光石火、剣を構えて飛びかかろうとしたパウリスの足下に音もなく、つららが数本刺さって彼の足を止めた。彼女のポルが作り出したつららだった。 「うっ・・・」 歴戦の剣士パウリスは、自分が再びセイレースに斬りかかろうとしたら間違いなくそのつららが自分を切り裂くであろうことを悟った。 「ついて来るがよい。わたくしが本当に食人をしているか・・・。それを確かめてからでもそなたの剣を振るうのは遅くはない・・・」 そう言ってセイレースは岩場から立つと森に向かって歩き出した。片桐とパウリスもそれに続いた。まるで彼女の優美な歩みに引き寄せられるように・・・。 山に面した岩の壁にセイレースの居城は造られていた。その麓の森の中に城下町があった。建物は木で作られ、その屋根には森の木と同じ葉で覆われていた。暖 房と、偵察の目を欺く2つの効果を期待してのことだった。村の人々は男はクーアードと見分けがつかないが、女性はみな、セイレースのように透き通る肌が印 象的だった。 セイレースの居城は岩の中、豪華な装飾にも関わらず底冷えするような雰囲気だった。その中に作られた玉座の間に置かれた氷のように輝くクリスタルの玉座に彼女は座った。周りには毛皮を着た幕僚が控えている。 「みな、席を外せ」 開口一番、女王が幕僚に告げた。幕僚たちはざわめいた。 「セイレース様、彼らの武装もまだ解除しておりません。どうかお考え直しを・・・」 そう言う幕僚にセイレースは優しさに満ちた目を向けた。 「彼らなら心配はいりません。さあ、言われたとおりになさい」 口調こそ優しかったが、彼女の言葉にはその場の者にこれ以上の異論を差し挟ませない空気があった。それを察して幕僚たちは次々と玉座の間を辞した。広い部屋には片桐とパウリス、そして美しい玉座に座る美しい女王だけになった。 「さて、ヴァシントの貴族パウリス。そなたはわたくしたちが、そなたたちから奪った捕虜を食べていると言いましたね?その証拠はどこにあるのです?」 玉座から身を乗り出すようにセイレースはパウリスに問いかけた。彼は少し口ごもった。 「我がグンク・シュブとフェルドの調査の結果である!」 それを聞くと女王はくすっと笑った。 「では。3年前に「神の御心」に選ばれたそなたの親族を覚えていますね?」 意外なセイレースの言葉に歴戦の剣士がうろたえた。そう言えば、数日にわたった彼の愚痴の中にそんなことを聞いた記憶が片桐にはあった。 「これへ!」 女王は玉座の横にある扉に声をかけた。1分も立たぬうちに1人のクーアードが玉座の間に入ってきた。それを見てパウリスが驚きのあまりその場に座り込んだ。 「パ、パロウス!?幻ではあるまいな・・・」 「パウリス様、夢ではありませんぞ」 パロウスは驚く剣士に駆け寄ってその手を取った。その手の温かさにパウリスもようやくこれが現実であると判断したようだ。男泣きに泣きながらパロウスを抱きしめた。 「おお!神のお慈悲だ!」 「神のお慈悲ではありません・・・・、その答えはセイレース様から聞くがよろしかろう・・・」 そう言って、パロウスは感涙むせび泣くパウリスから離れ、女王に跪いた。それを見てセイレースは玉座から立ち上がり、片桐とパウリスに歩み寄った。 「パウリス、そなたならこれからわたくしが見せることは評議会で使われる魔法と同じく、嘘偽りないこととわかるであろう・・・」 そう言ってセイレースは右手を片桐、左手をパウリスの額に近づけた。ひんやりと冷たい感触が片桐の額に伝わった。それと同時に彼女のポルを介して強力な映像が彼の脳に流れ込んできた。 そこは狭い一室だった。大勢の男女が恍惚に満ちた顔で座り込んでいる。そこへ、グンク・シュブの親衛隊がやってきた。丁重に室内の男女を連れだした。室内の人々も王の親衛隊の誘導に喜々として応じた。 「さあ、こちらへ」 親衛隊が人々を案内したのは暗い地下室だった。しかし、その広さはかなりの広さで、奥までは暗くて見通せない。「神の御心」当選者たちはそこに全員入場した。 「では、神のご加護を」 そう言って親衛隊は入ってきた扉を閉じてカギをかけた。数ヶ月待たされてようやく神に近づくことができる人々は暗い地下室で神の迎えを待った。だが、そこに現れたのは彼らの想像した神の使いではなかった。 「ぐるるるるる・・・・」 血に飢えたうなり声をあげて歩いてきたのは身長2メートルを超える醜い怪物だった。犬歯の発達した口からよだれを垂らして、延びっぱなしの爪で武装された指をくねくねさせている。想像しない「神の使い」に人々はざわめいた。 「おお!神よ!」 それでも、先頭の1人が化け物に向かって身体を差し出した。次の瞬間、化け物はその身体に噛みつき腹の一部を食い破った。 「わぁぁぁぁぁぁ!!!」 その男は絶叫しながら床を転げ回った。あまりの出来事と、化け物の目的を察した人々に動揺が広がった。一斉に閉じられた扉に飛びつく。 「開けてください!」 「我々はオーガに食われるために選ばれたんじゃない!」 「神の御心とはこれだったんですか?」 その直後、数匹の化け物は幸運な「神の御心」当選者に一斉に飛びかかった。 片桐は気がつくと玉座の間の床に座り込んでいた。身体には脂汗がびっしりと出ているのがわかった。そしてそれはパウリスも同じであった。 「あ、あれは伝説の魔人オーガ・・・・」 古代ロサールの聖地で儀式的な死を迎えることを希望していた幾多の人々の末路をかいま見てパウリスは驚愕していた。グンク・シュブが語ったウィンディーネの野蛮さは、そっくりそのままパウリスの祖国のことだったわけだ。 「これは哀れな生け贄と共に捕らえた親衛隊の兵士の記憶です・・・。」 セイレースの言葉にパウリスは真っ青になった。彼の中にあった神への自己犠牲の精神がぼろぼろに壊れていくのを感じていた、 「まさか、歴代のグンクはあいつらを飼育するために・・・、「神の御心」と称して市民を選んでいたのか・・・」 うろたえるパウリスの自問を聞いてセイレースはうなずいた。 「わたくしもこのことはつい数年前まで知りませんでした。ひょんなことからそれを知ってそれ以来、見つけられる範囲で彼らをさらって救っていたのです」 セイレース曰く、あの化け物はオーガと言い、不老でほとんど不死の食人鬼だ。神聖ロサール歴代のグンクは彼らを飼い慣らし、生け贄として餌を提供して飼育 していたのだ。それが、神聖ロサールの勢力拡大を助けていたわけだ。そして餌の安定供給のために「神の御心」と言う、半分自発的な生け贄選考を行っていた のだ。すべては「神の名において」自由と正義を世界に満ちさせるために。 「な、なんということだ・・。」 あまりの事実にパウリスは言葉を失った。それを見たセイレースは今度は片桐に向き直った。 「そなたが探し求める聖女もここにいます・・・」 そう言って女王は先ほどと同じく扉の向こうに声をかけた。そして現れたのは片桐の探し求めたその人物だった。 「片桐・・・?」 別れたときのローマ風の白いドレスと、ここに来て与えられたのだろう毛皮のコートをまとった女性は間違いなく、スビアだった。 「スビア!」 思わず駆け寄ろうとした片桐の首筋に冷たい感触の何かがふれて彼の足を止めた。 「待ちなさい・・・」 そう言ったのはセイレースだった。そして片桐の首筋に当たった冷たいものとは、鋭いつららだった。首筋から数センチのところで止まっている。そして同じものがスビアにも向けられていた。 「スビア、わたくしはこのような世界の果てまであなたを追い求める異世界人に感心しました。そしてその実物を見て、愛するに至りました」 意外な人物の意外な言葉を聞いてスビアは驚愕の表情を浮かべた。それを見てセイレースは冷たい微笑を浮かべた。 「わたくしの意志ひとつであなたたちの前のつららはどうにでもなります。」 セイレースの言葉を確認するつもりで片桐は真横に動いてみた。つららは片桐の喉元数センチの距離を保ちつつ、平行に動いた。 「片桐、あの聖女を捨てわたくしを受け入れなさい。そうすればあの聖女をアムターまで無事に帰しましょう」 その言葉にスビアは怒ったような、驚いたような表情を浮かべた。そしてセイレースに対抗するように1歩、前に進んだ。つららの鋭い先端は彼女の首ぎりぎりにまで迫る形となった。 「わたくしは片桐を捨てることはありません!」 きっぱりと言う彼女に従って片桐も1歩前に進んだ。これは推測だったが、セイレースは本気で2人を殺すつもりがないように思えた。それがなぜかはわからな いが、彼にはそう思えて仕方がなかった。それを見てセイレースは自嘲気味に笑うと首を横に振った。そのとたん、彼らに突きつけられていたつららは床に落ち て見る見る水になって溶けてしまった。 「私の負けです!異世界人片桐、聖女スビア!」 玉座で女王が宣言した。 「これはあなたがたの愛を試す、わたくしの芝居です。やはり、あなたがたは本気で愛し合っているのですね。わたくしの悪い癖です。どうか許してください。」 その言葉と同時に片桐とスビアは駆け出していた。そして互いの感触を確かめ合うようにきつく抱き合った。 「片桐!怖かった!まさか、わたくしが生け贄になるなんて夢にも思ってなかったから!」 底冷えのする最果ての玉座の間で2人は互いの体温を確かめ合うかのごとく抱き合った。突然の事態を見守っていたが、ようやく我に返ったパウリスが赤面するほどだった。 「片桐、スビア、これが愛なのですね・・・」 2人が落ち着いたところでセイレースがつぶやいた。その顔には安らかなほほえみが浮かんでいた。 「わたくしたちが、ヴァシントの哀れな生け贄を助けることにした動機があるのです」 女王は閑散とした玉座の間で話し始めた。3人はそれに聞き入った。 「わたくしたちウィンディーネは女系血族です。産まれる子供はすべて女子です。だから子孫を迎えるには男子を外から招くほかありませんでした。わたくしの王家に伝わる歌も、思えば太古、男をいざなうためのものだったのでしょう・・・」 女王は今度は少し悲しげな表情を浮かべて言葉を続けた。 「そ んな中でわたくしたちは、愛情を失いました。わたくしたちに備えられた美しい歌。美貌は子孫をもたらす手段としてしか見られなくなったのです。どういうわ けか、わたくしは少し違っていました。生け贄にされる神聖ロサールの民を哀れみ、今、あなたたちの愛し合う姿を見て心が動いています。異世界人片桐、そし て聖女スビア。あなたがたはわたくしたちウィンディーネが凍らせていた「心」を溶かしてくれたのかもしれません」 セイレースはパウリスに向き直った。 「パウリス、そなたは神聖ロサール王国の最高機密を知ってしまいました。おそらく、ヴァシントには帰れないでしょう。評議会も今、そなたが見た記憶と、パロウスの生存を見ればそなたがうそを言っているとは言えないはず。」 パウリスは女王の言葉にしばらく何か考えていたが、思いついたように手を叩いた。 「リターマニアへ向かいましょう。リターマニアの評議会で我々の記憶を見せて、生け贄の真実を全国民に知らしめれば、グンク・シュブの権威は地に落ちる!」 「だが、フェルドはリターマニアを封鎖しているぞ・・・」 片桐は玉座の間で交わされたフェルドとグンク・シュブの言葉を思い出していた。2人の話を聞いていたセイレースはポンポンと手を叩いた。玉座の間に1人の士官が入ってきた。 「クランガートを準備なさい。この者たちをリターマニアまで送り届けます」 「はっ・・・」 聞き慣れない言葉に片桐とパウリスが互いに顔を見合わせた。それを見てスビアが笑った。 「大きな鳥です。彼らはそれに乗って空を飛ぶのです。空から行けば、海にいくら艦隊がいても関係ないでしょう?」 それを聞いて片桐は少し考えた。パウリスから道すがら聞いた「神の聖地」のことを思い出していた。 「セイレース、俺1人だけでもヴァシントへ送ってもらえないでしょうか?」 その言葉にスビアが驚きの声をあげた。セイレースも驚きの表情を浮かべて片桐を見つめた。 「ヴァシントの「神の聖地」。その謎を解くことが、おそらく俺たちの旅の最終目的です。できれば、合図をしたら俺を収容してもらえたらありがたいのですが・・・・」 そう言って片桐は2台のトラックからはずしてきた発煙筒を取り出した。 「用事が済めばこれで合図します。」 「待って!わたくしも行きます」 予想しなかったわけではないが、その言葉に片桐はスビアを振り向いた。今度という今度はあまりに危険すぎる。 「今回はいくら何でもやばすぎる・・・。先にリターマニアに行くんだ」 「イヤです!それに、片桐。あなただけで古代ロサールの魔法が理解できて?」 彼女の言葉に片桐は反論の言葉を失った。確かに、片桐1人では、聖地を見てくるだけで大したこともわかりそうにない。 「わかった・・・。セイレース、彼女も一緒にお願いしたい・・・」 セイレースが頷いて、再び手を叩いた。先ほどの士官が再び入ってきた。 「ショーク、そなたもクランガートを出しなさい。そして異世界人と聖女をヴァシントまで送り、合図を待って彼らを収容し、リターマニアへ向かうのです。できますね?」 ショークと呼ばれた士官は膝をつき、王女に恭しく一礼した。 「仰せのままに・・・・」 危険な任務を引き受けたショークにセイレースは歩み寄ると、彼を抱きしめた。 「ショーク、生きて帰ってくるのですよ」 「もったいないお言葉に存じます」 かつては愛情もなく、氷のような世界で氷の心持っていたウィンディーネに生まれた、暖かい心を持った女王は忠実な部下の額に優しくキスをした。 王座の間から出てすぐの岩山を利用したバルコニーにクランガートが準備されていた。クランガートは体長5メートル近い、白鳥のような鳥で手綱のようなロープで操縦者が操るようであった。 「片桐、リターマニアで待っているぞ!」 パウリスと親戚のパロウスが先に飛び立った。巨大なクランガートは颯爽と大空に飛び立ち、かなりのスピードでリターマニアに向かった。 「セイレース、いろいろとお世話になりました。では・・・」 片桐もそう言ってショークが乗るクランガートに乗り込もうとした。しかし、それをセイレースが止めた。 「そなたたちの愛を試すようなまねをして、申し訳ないと思っています。きっと、わたくしに流れる祖先の血があんな行動をさせたのかも知れません。」 「あなたが我々を本気で殺すとは思っていませんでしたよ。」 その言葉にセイレースは少し微笑んで、スビアに向き直った。 「できることなら、片桐に感謝の気持ちを込めたキスをしたいのですが、許してくれますか?」 スビアは黙って頷いた。彼女にはそれが「感謝の意」だけではないことはわかっていたが、醜い嫉妬心で彼女の申し出を断る気持ちもなかった。同時にその気持 ちは哀れみでもなかった。自分でもよくわからない感情だった。セイレースは片桐の顔に自分の顔を近づけると、遠慮がちに少しだけ唇に触れた。冷たい感触が 片桐の唇に感じられた。 「さあ、お行きなさい。自らに課した旅の結末を確かめてくるのです・・・。そして、2人の愛を永遠のものにするのです・・・」 セイレースは後ろを振り返った。そのまま、玉座の間に入っていった。 「では出発します」 ショークが手に持った手綱を動かすと、巨鳥クランガートは2人を乗せて大空に飛び立った。 思ったよりもクランガートは乗り心地がよかった。ショークは怪鳥を操りながら片桐に質問した。 「しかし、先ほどの筒でどうやってわたしに合図を」 「派手に煙が出るし、炎も出る。上空からでもわかると思うよ」 片桐は彼の後ろ、怪鳥の背中の上でスビアの肩を抱きながら答えた。今、彼は迷っていた。ようやく、安全を取り戻したスビアを、最大の危機に立たせようとしているのではないだろうか、と。その不安を察したようにスビアは片桐の手を握った。 「片桐、後悔しないで。これはわたくしが望んだことです。それに、ショークが迎えに来てくれれば何も危ないことはありません」 その言葉を聞いて片桐は考えるのを止めた。もはやここまで来ては、彼女を止めることはできない。その考えを振り切るように、今度は片桐がショークに尋ねた。 「ショーク、君の女王は愛を知った初めての女王だそうだが・・・」 「ええ、彼女の両親は心の底から愛し合って、女王を産み、育てました。それまでのウィンディーネは、その美しい歌声で導いた男と交わるだけで、愛情はなかったのです。その瞬間からウィンディーネは変わりました。平和で友好的な民族に変身したのです」 なるほど、愛し合った末に生まれ育てられた彼女だからこそ、哀れな生け贄の末路を知って助け船を出したわけだ。ショークは言葉を続けた。 「しかし、セイレース様はお気の毒です。彼女は愛を知っている故、愛に飢えておられる。先ほど、玉座であなたたちにあんな行動をしたのも、愛を知っているが故・・・」 片桐とスビアは、最果ての女王に同情の心を抱いた。愛を知り、強く求めるが故の悲しさを抱く女王に将来、幸せが訪れることを祈らずにいられなかった。 「まもなくヴァシントです。「神の聖地」は郊外にありますので、そこまでお送りしましょう。そして上空で旋回してあなたの合図を待ちます」 ショークは郊外にそびえる神殿を指さして言った。3階建ての壮大な神殿には人影もなく、王宮のような豪華さもない。神殿と言うより、なにか巨大な墓地に見えた。 「ショーク、あなたはヴァシントにいたことがあるのですか?」 スビアの質問にショークは振り返ってにっこり笑って答えた。 「わたしもかつて「神の御心」当選者でした。セイレース様に助けられた1人なのです」 無人の神殿の屋上らしきところにクランガートは着陸した。ショークは発見されぬように素早く飛び立った。広い屋上には片桐とスビアだけだった。 「ホントに広いな・・・」 3階建てとはいえ、その屋上は遙か数百メートルから1キロ以上の幅を持っている。福岡ドームよりもはるかに多くの人間を収容できそうだった。 「さあ、片桐。行きましょう・・・」 手近な入り口を見つけて2人は階段を下った。片桐は89式を構えて慎重に進んだ。長い階段は薄暗く、直接1階までつながっているようだ。どうやら、この神 殿は巨大な吹き抜け構造であるようだ。しかし、見張りが誰もいないというのが、片桐には疑問だった。パウリスの話ではここは、グンクと評議会しか入れない と言うが、聖地ならもうちょっと警戒厳重でもいいものではないのか・・・・。 「どうやら、下に降りてきたようです・・・」 スビアの言葉に片桐は下を見下ろした。階段は終わって、薄明かりが外から漏れている。いよいよ古代ロサールの聖地のすべてを見ることができるかも知れない。2人は思わずつばを飲み込みながら階段を下りきった。 「な、なんだ・・・これは?」 思わず片桐は声をあげた。この建物が吹き抜け構造になっている理由がわかった。今、2人が降りてきた階段に沿った壁一面、びっしりと2メートルほどの大き さ、ガラスのような物質でできた「棺桶」が置かれている。その上にも、その上にも、15メートル近い天井の上までびっしりと・・・・。数列おきに梯子があ り、それを使って上の方にある棺桶まで行くことができるようだった。壁だけではない。幅4、5メートルの通路以外、巨大な神殿は一面、何十にも重なったガ ラスの棺桶で覆われているのだ。何万、何十万あるかわからない。 「これが、古代ロサールの聖地・・・」 スビアが予想とは全然違う「聖 地」を見て呆然としている。彼女の期待していた「聖地」は、古代ロサールの秘術を収めた数々の文献と、偉人たちの残した言葉だった。だが、それはこの「聖 地」のどこにも見あたらない。彼女の思いつく限りの言葉でこの「聖地」を表現するなら・・ 「まるで集団墓地だ・・・」 片桐の言葉の通りだった。片桐は「棺桶」のひとつを確かめてみた。中には今まで見たことのない人種の男が眠るように、ほほえみすら浮かべて死に顔を見せて いた。なぜ、死体が腐敗しないのかまではわからなかった。そして片桐が何より不思議だったのは、天井に近い「棺桶」までびっしりと入った死体の数々だっ た。そこまで行く手段は小さな梯子だけだ。この梯子を死体を担いで「棺桶」に収めたのか。それとも、死体を収めた「棺桶」を組み立てたのか。 「いや、違うな・・・」 「棺桶」は壁沿いのものは壁に埋め込まれている。まるで最初からこのように設計されていたようだ。とすれば、この中の人々は自らの意志で「棺桶」に入ったことになる。ふと、片桐は無人の「棺桶」を見つけた。 それを丹念に調べてみた。 「棺桶」は心地よい羽毛みたいな材質で包まれている。頭が収まる部分には枕のような、何かがついている。驚いたことに、「棺桶」の蓋は内側から閉まるようにできているのだ。 「スビア、ここの連中は自分からこの「棺桶」に入ったんだ・・・、こうやって・・・」 そう言って片桐はその「棺桶」に入った。 「片桐!何をするのです?」 スビアが片桐の行動を見て叫んだ。片桐の頭が、枕のような何かに触れた瞬間、彼の意識は飛んだ。 「片桐!どうしたんです?片桐!」 慌ててスビアが片桐を抱きあげた。その瞬間、片桐の意識が戻った。しかし、その顔は真っ青で脂汗が浮かんでいる。 「なんてことをしたんです!」 しばらくしてようやく片桐は我に返った。そして、静かにつぶやいた。 「・・・・彼らの意識が見えたんだ。ここは墓場じゃない。いや、墓場じゃなかった・・・」 水筒の水を飲んで一息ついた片桐は、一瞬の間にかいま見た古代ロサール人の末路を話し始めようとした。 「異世界人片桐!」 その時、巨大な神殿にグンク・シュブの声が響いた。どこにいるかはわからない。片桐は89式を構えて周りを警戒した。だがやはり姿は見えず、その不敵な声だけが響くばかりだった。 「まさか、ウィンディーネから生還してよもやこんなところにいるとは思わなかったぞ!しかも、古代ロサールの聖地まで侵すとはな!」 2人は身を隠すために駆け出した。だが、数歩走ったところで彼らは自分たちの足が床を踏んでいないことに気がついた。いつの間にか、落とし穴がその床に開いていたのだ。 「貴様らには、オーガの餌になってもらおう!最近腹を減らしておるのでな!聖女の村も、侍の村も、余が艦隊を率いて殲滅してくれるわ!」 グンク・シュブの恐ろしい声を聞きながら片桐とスビアは、真っ暗な穴にまっさかさまに転落していった。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------- アービル=別世界。この物語の場合日本を指す アクサリー=石。ポルを増幅させる。ゲベールなど魔法を使う道具に多く使われている。 アムター=聖女スビアの治める村。古代ロサール語で「豊かな森」と訳されるという。 アンバード=蛮人。アムターはじめヌーボル西部の森を荒らし回っていた。 イラス=神聖ロサール王国、グンク・シュブの補佐官 ウィンディーネ=コロヌーボル北方の山岳民族。女系社会で女王セイレースが支配する エルドガン=耳長人。エルフみたいな人種 エル・ハラ=片桐がエルドガンの都市パサティアナで出会った少女。ホントはエルドガンの王女 オーガ=伝説の魔人。不老でほとんど不死。神聖ロサール王国が生物兵器として密かに飼育していた ガルマーニ=ドイツ人が作った都市。元ナチ幹部ボルマンが支配していた。 ガンドール=人種。こびと ギルティ=平原世界ヨシーニアにある交易所。中立地帯 クーアード=人種、人間とほとんど同じ クブリル=海岸に住む、ワニに似たどう猛な生物 クランガート=ウィンディーネが使う大きな鳥 グンク=王の呼称、王女の呼称はグンクラート コロヌーボル=ヌーボル北方の大陸 ゲベール=この世界で広く使われる武器。ポルで弾丸を飛ばす。 サクート=ガルマーニのレジスタンスを率いるリーダー サニート=ヨシーニア戦士の階級。下級戦士。 中級戦士はボサニート、上級戦士はデボサニートという サマライ=この世界の通貨単位 ザンガン=アムターの長老。両親を失ったスビアを育てる ジャキータ=平原に住む肉食獣。食うとうまい シュブ=神聖ロサールのグンク。世界制覇をもくろむ。 シュミリ=海沿いの村。召還された馬を育てていた ショーク=ウィンディーネの士官。クランガートを操る ジョニーチ=ロサリストの指導者 神聖ロサール王国=強大な魔法文明国家。古代ロサールの聖地を抱く セイレース=ウィンディーネの女王 セピア=片桐の愛馬。スビアの愛馬はローズ ゾード=赤い満月。なぜそうなるかは不明 タボク=片桐に救われたシュミリの村人 タムロット=シュミリの長老。スビアを敬愛している タリマ=海賊 タロール=エルドガンの警備隊長。エル・ハラと結ばれた タローニャ=リターマニア警備隊ドロスの伴侶 トータ=海賊 富田竜之助才蔵=侍の末裔。片桐の盟友 富田弥太郎=才蔵のいとこ トラボロ=ヨシーニアの戦士。大勢を率いる殺人鬼 トルンド=ヨシーニアの戦士。片桐に助けられるがスビアを襲う ドロス=リターマニア警備隊長 ニル=エルドガンの王 ヴァシント=神聖ロサールの首都 バートス=才蔵の「草」忍者 パウリス=神聖ロサールの国務長官にして剣士 パサティアナ=エルドガンの要塞都市 バストー=アムターのガンドール。片桐と初めて出会った パタトール=アンバードなどが使う原始的な弓 ハルス=元Uボート艦長。ボルマン打倒後、リーダーの1人になる ハルスマン=ボルマンの副官 パロウス=パウリスの親族 パンサン=異世界の戦士を召還する魔法 フェルド=神聖ロサールの将軍。強硬派 フランツ=元親衛隊中尉。片桐の盟友 ヘラー=ボルマンの敬称。フューラーがなまった ボスポース=六本足の馬 ボルマン=元ナチス幹部。この世界にたどりつきガルマーニを支配した ポルンゴ・ロッサー=ロサリストの叫び「ロサールの神に栄光あれ」の意 ポル=魔法力の意味。さまざまな魔法の根元 マルージ=海賊 ミスト=海賊で片桐の船に乗り込む ミスタル=アムターに咲く花 ヨシーニア=殺伐とした刺すか、刺されるかの世界 リターマニア=神聖ロサールの自治都市 ロサール=古代に滅亡した王国 ロサリスト=エルドガンに発生した過激派
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/1333.html
前回までのあらすじ 耳長人の国をさけ、森の走破を計画した自衛官片桐と聖女スビアは、ガルマーニで別れた元親衛隊フランツ中尉と思わぬ再会を果たす。負傷した彼の話では、元 Uボート艦長ハルス大尉が耳長人に連れ去られたという。負傷したフランツを侍の末裔である才蔵の村に運ぶようスビアを説得し、片桐は単身で耳長人=エルド ガンの要塞都市パサティアナに乗り込んだ。エルドガンの他種族に心を開かぬ態度にとまどう中、占い師エル・ハラに出会った片桐は彼女にエルドガンの歴史と 現在の状況を聞く。パサティアナはロサリストと呼ばれる狂信者の集団に乗っ取られようとしていた。 エル・ハラのすすめで彼女の部屋に身を隠す片 桐だが彼女の無防備で誘惑的な言動に不審を抱く。そしてその疑惑は事実であった。ロサリストを自ら部屋に招いたエル・ハラを捕らえて尋問する片桐だが、彼 女の身の上、現在の状況が嘘だと知り愕然とする。エル・ハラはロサリストに捕らわれた王、グンク・ニルの娘だった。ロサリストに脅迫され、やむなくスパイ として占い師を装っていたのだ。 捕らえられたグンク・ニルとハルスを助けるため手を組んだ片桐とエル・ハラは警備隊長タロールと合流する。タ ロールとエル・ハラは愛し合っているが、お互い感情表現の未熟さでそれを伝えられない。王とハルスの救出劇のさなか、片桐を捜しに出たスビアもロサリスト の手に落ちていることを片桐は知った。 壮絶な救出、脱出のさなか、感情表現のできないエル・ハラは片桐に偽りの愛の告白をし、スビアはそれを見 て怒った。そして窮地に追い込まれた片桐を救ったのは、親友の才蔵だった。片桐はスビアに、エル・ハラの行為はタロールへのカマかけであると説得するが彼 女は納得しなかった。長すぎる純潔の掟が彼女を嫉妬の心で狂わせていたのだ。幸い、フランツと才蔵のフォローで2人は、本当の意味で結ばれた。 平和を取り戻すべく旅だったエルドガンたちと同時に、片桐とスビアも未知の平原へと旅だった。愛すべき友人たちの祝福を背中に・・・・。 才蔵の部下と森のはずれまで同行した。鎧武者の護衛は2人にとってありがたく、心強いものだった。森のはずれで一行は止まった。 「スビア様、片桐様、ここまでです。どうかご無事で」 騎馬武者が頭を下げた。片桐も才蔵と、彼の部下の心遣いに感謝した。 「才蔵殿によろしく伝えてください・・」 「はっ。では・・」 才蔵の部下たちはくるっときびすを返すと森の奥に向かって馬を走らせ、そのまま森の奥に消えた。今2人の目の前には森はなく、広大な平原が地平線まで続いている。この世界の人々も知らない、少なくとも数百年から1000年は誰も行って帰った者はない未知の世界だった。 「さあ、新しい世界に旅立ちだ・・・」 それから10日、2人は何もない平原を進んだ。正確にはいろいろとあったが、彼らの脅威と言えばどう猛な肉食獣であるジャキータと呼ばれる動物くらいだっ た。ジャキータは姿はライオンみたいだが動きはカバのように遅く、数も多くなかった。野生のボスポースやスビアも聞いたことのない草食動物がいる世界だっ た。 「こいつで最後か・・・」 小高い丘の上の野営地で片桐はつぶやいた。本来、現代戦術では見通しのよい丘の上に野営するなど非常識だったがこの世界では通用しない。極力、自分の目で敵が見えるところの方が安全だったのだ。 そして片桐はカセットコンロにかけた鍋に最後のインスタントラーメンを投下したのだった。だんだん、平成の物資がなくなっていく。そうやって俺はこの世界 に完全に同化していくのだろう、と片桐は思った。それ自体はなんの苦痛もなかったが、やはり平成の味を失うのは寂しかった。幸い、才蔵の村で米、みそ、醤 油などは入手したが、米以外、それを活かす材料がないのがつらかった。現代人の片桐は狩猟はできても、獲物を解体する術をしらないのだ。 「片桐、今日もラーメンなのですか・・・」 スビアが残念そうに彼の肩に抱きつきながらぼやいた。無理もない。森を脱して10日、彼らの食事はすべてラーメン、戦闘糧食のとり飯、ドライフーズの雑炊などだったのだ。米はあるがおかずがない。現代人の片桐と豊かな森で育ったスビアの胃袋は明らかに不満を訴えていた。 「川でもあれば魚を捕れるんだけどなぁ」 だが、片桐の言葉の通り、この10日、川らしい川も発見できていなかった。食料は当分問題ないが、飲料水が心許ない。 「たまには違う食べ物を食べてみたいと思いません?片桐、がんばって・・・」 1度愛を交わすと、どんな高貴な女性でもその男性の前では猫のようになるという本を読んだことがあった。高貴な聖女のスビアは今や猫のように片桐に甘えている。そんな彼女のためにもちょっとがんばってみようと思う片桐だった。 「片桐!起きてください!」 翌朝、スビアの声で片桐は丘の上で目を覚ました。彼女の声は久しぶりに緊張した声だった。 「クーアードが丘の下でジャキータに襲われています!」 その言葉を聞いて片桐は飛び起きた。森を出て以来、他人に遭遇するのは初めてだったのだ。この未知の平原はまさに、前人未踏の地に思えていた。今までの海 岸地域なら馬で数日の距離で集落に出くわしていたが、今回は違っていた。今、初めて片桐はこの平原の住人であるクーアードに遭遇したのだ。 「あそこです!」 スビアの指さす方向に双眼鏡を向ける。皮の鎧らしき装備を着たクーアードが猛獣のジャキータ相手に長剣を構えている。彼の腕には何本かの腕章が見えた。腰 には単発式らしきピストル。おそらく銃を撃つ間もなく襲われたのだろう。その姿は勇敢ではあったが、同時に無謀とも見えた。男は剣を構えてシャギータの突 進に備えているが、その姿はどう見ても蛇ににらまれた蛙のようだった。 「助けましょう!」 そう言ってスビアはゲベールを構えた。今や片桐以上の射撃の名手である彼女が放った弾丸は正確にジャキータの眉間を撃ち抜いた。それを確認して片桐とスビアは男の方へ近づいた。 「おい、だいじょうぶか?」 片桐が男に声をかけた。男はさっと腰のピストルを抜いた。 「なぜ助けた?目的は何だ?」 男は片桐に詰問するように言った。男の目は警戒と殺気でぎらぎらしている。 「そりゃ、襲われている人がいたら助けるに決まってるじゃないか」 片桐の答えを聞いて男は警戒姿勢を崩さないままいやらしく笑った。何か勝手に解釈したようだ。 「そうか・・・・、女連れでここをうろうろしてるってことは、あの腑抜けの街から追い出されたんだな」 「腑抜けとは失礼な!わたくしはアムターの聖女スビアです!腑抜けなんかではありません!」 怒ったスビアの言葉にも男は相変わらず笑ったままだ。そして上から下まで彼女をいやらしく見つめた。 「アムターなんてところはこのヨシーニアにはないぞ!あるのはギルディと腑抜けの街だけだ」 この男と話していても埒があかない。片桐はスビアを促してキャンプに戻ろうとした。すると男がまた声をかけた。 「おい!俺を倒さないのか?俺は腕章を6つ持ってるボサニートだぞ!」 「君がボサニートでもなんでも俺たちには関係ない。せっかく助かった命だ。大事にしろ」 片桐の言葉を聞いて男は何か悟ったようだ。いったん下げかけたピストルを再び立ち去ろうとする2人に向けた。 「おい!待て!」 男が大声をあげた。ピストルも同時にあげている。男の行動を予測していた片桐は振り向きざまに89式を3発ほど男の目前の地面に撃ち込んだ。轟音と土煙で男は後ろにひっくり返った。形勢を悟った男は手のひらを返したような態度になった。 「わかった!わかったよ!おまえらの望みは何だ?何でもくれてやる!」 男に銃を構えながら片桐はスビアを見た。彼女も男の行動が全く理解できない様子で肩をすくめるだけだった。と、ふと片桐の目にさっきスビアがしとめたジャキータが目に留まった。そういえばまだ朝食も食べていないことを思い出した。 「じゃあ・・・・、あの動物を解体する方法と料理法を教えてもらおうか」 ジャキータを解体方法を実演しながら男は話しかけてきた。 「こいつのさばき方を知らないところを見ると、やはりあんたらはヨシーニアの人間じゃないな・・・」 トルンドと名乗った男は納得したようにつぶやいた。そしてそばで見張りに立つスビアに振り返った。 「おい!しっかり見張ってくれよ。この辺は森に近いからな。エルドガンのデボサニートがうろついてんだ!」 トルンドの物言いにスビアは真っ赤になって怒って何か言おうとしたが、彼を手伝う片桐が目でそれを制した。そしてトルンドに向き直った。 「デボサニートってなんだい?」 「それも知らないのか・・・。俺はボサニートだ、奴らは俺よりもランクが上なんだ。それだけ大勢殺してるってことだ。俺より下の連中はサニートって言う。屁でもない連中だ。俺の親父もサニートだったが、実際大したことなかったもんな・・・」 トルンドの言葉に片桐は思わず手の動きが止まった。スビアも驚いて振り返った。 「なんだ?おかしなことか?男がまず最初に殺すのは父親に決まってるじゃないか?この焼き印をつけた本人の親父をな!」 そう言ってトルンドは腕につけられた焼き印を見せた。彼曰く、この焼き印で自分はその父親の子供かわかるそうだ。 「あなたは狩人じゃないのですか?」 思わずスビアがトルンドに質問した。それを聞いて彼は例のいやらしい視線をスビアに向けて答えた。 「そうさ。俺たちが狩るのはクーアードだ。男は殺し、女は自分のものにする。そして子供を産ませ、焼き印を押し、男はほっぽりだす。女は奴隷にするんだ。大昔からの決まりだよ」 なんという殺伐とした世界なのか。思わず片桐は身震いした。つまり、この土地では出会った者同士、いつ殺し合いが始まってもおかしくない。指すか刺される かの世界というわけだ。パサティアナの門で馬番をしていたガンドールの言葉を思い出した。「あんな恐ろしいところ」・・・。 「で、でも・・・。あなたのその装備はどうやって手に入れたのです?」 うろたえながらスビアが質問した。相変わらずトルンドの目線はスビアの四肢をいやらしくはい回っている。ここまであからさまだと、さすがに片桐も嫌悪感を覚えた。 「ギルティだ、あそこだけは昔から殺し合いはやっちゃいけない。そこで殺した敵の証を持っていくとそれと交換に武器が手にはいる。ちょうど、俺も行く用事がある。その後、家に帰るんだ。」 そういってトルンドは血塗れの腕章を2人に見せた。この腕章は自分の身分を示すと同時に通貨の価値も持っているようだ。これを持っていることこそ、多くの 人間を殺した証拠になり自分の名誉になると同時に、必要ない腕章はギルティで物資と交換するわけだ。そのギルティとは片桐が想像するに中立地帯の村落であ るはすだ。彼らは生産手段を持たず、その技能を殺し合いに極端に特化させているのだ。その理由はおそらく、食糧資源のないこの平原地帯での人口を押さえる ためだろう。理屈だけで言うととても合理的だが、片桐にも、森で育ったスビアにも理解し、受け入れられるシステムではない。 ト ルンドにジャキータの解体方法を教わった片桐とスビアは、彼の言うギルティに向かった。馬で数時間のところにギルティはあった。やはり、片桐の予想したと おり、村落だった。村人はほとんどガンドールだった。彼らは激しい戦闘には向かない。きっと大昔からこのような殺し合いが続く中、彼らが生き残るために作 り上げた中立地帯なのだろう。その中の一軒の建物にトルンドが入った。村の中のクーアードはやはり、トルンドと同じく、重武装であった。そして見慣れない 片桐とスビアを敵意に満ちた目でじろじろと見ている。彼らの腕には腕章がいくつも結ばれているのが見えた。その数プラス・アルファの人間を殺してきた証拠 だ。 「片桐、わたくしこんな恐ろしい世界は初めてです。信じられない、自分の親をまず殺すなんて・・・」 スビアは周囲の恐ろしい殺気立った雰囲気に思わず片桐にしがみつきながら言った。その意見に関して、片桐も全く同意だった。 「早いところこんな世界からおさらばしよう。トルンドは街があるって言っていたし、そこへ向かおう」 2人がそんな会話を交わしたとき、建物からトルンドが顔を出した。 「おい、片桐!中に入れよ。さっきのジャキータを殺した証拠を出してくれ!」 そう言われて2人は建物の中に入った。中は酒場も兼ねているようだ。大勢の重武装のクーアードが酒を飲んでいる。中には徒党を組んでいる連中もいた。 「ああやってグループを作って効率的に殺す連中も多いが、俺は一匹狼なんだ」 トルンドはそう言いながら、銀行の窓口のようなところに案内した。窓口にはガンドールがいた。彼はうさんくさそうな顔をして片桐とスビアを見た。そして不愛想に一言いった。 「ほお・・、この女ならいい値で引き取ってやる」 スビアを奴隷と思ったのだろう。ガンドールの第一声だった。思わず片桐はそのガンドールにつかみかかりそうになった。それを慌ててトルンドが止めた。 「いや、違うんだ。ジャキータをしとめた。これが証拠だ」 そういってトルンドはジャキータのたてがみと、骨を出した。ガンドールはそれを受け取って窓口の下をごそごそ探った。そして腕章を片桐に差し出した。 「下級戦士サニートの腕章だ。どうする?物資と交換するか?」 「俺がやったんじゃない。彼女がやったんだ。」 片桐の言葉にガンドールは仰天した。スビアは得意げにゲベールを構えた。その騒ぎに気がついたのか、酒場の連中も片桐たちに注目している。特に集団でたむろしていた連中は明らかな敵意の目を向けているのが片桐にもわかった。 「おい、よせ!」 トルンドがそれを見てスビアにゲベールを引っ込めさせた。この国で女がでしゃばることはかなりのタブーであるようだ。彼女の代わりに片桐が腕章と引き替えにゲベールの弾薬を購入した。 「まずいな・・・。トラボロに目を付けられたかもしれない。あいつらはこの辺じゃ一番大きな集団のボスだ」 「目を付けられたら何かまずいことでも?」 片桐の質問はトルンドにとっては愚問以外の何者でもなかった。 「俺とおまえは殺されて、スビアは奴隷にされるぞ。ヤツの子供を産ませられる」 それを聞いてスビアは身震いした。気高い聖女である彼女がそれを想像しただけで卒倒しそうになるであろうことは片桐にはわかっていた。 「心配するな、俺の家に行こう。俺も3日前に殺したデボサートの腕章でボスポースを買った。ボスポースならすぐに俺の家につく。」 さっきまでのトルンドの懐疑的な態度を忘れないように、片桐は彼と行動を共にすることにした。ともかく、今は少しでも安全と思える選択をしなければいけない。 トルンドの言う「家」とは平原に散らばる小高い岩山だった。ギルティからさらに数時間でそこに到着した。そこには10人近い女奴隷と、数名の男の奴隷もいた。 「男の奴隷もいるのか・・・」 片桐の独り言にトルンドが笑った。 「こいつらは北の腑抜けの街から追い出された連中だよ。腕章を持ってないから殺す価値もないんで奴隷にしてるんだ。それに、やたらと賢いヤツも混じってる。気にくわないが役に立つからな」 そう言ってトルンドは男奴隷に火の準備を命じた。もう1人には馬の世話を命じ、残った連中には岩山に登って周囲を見張るように命じた。トルンドの岩山は 4,50メートルの高さで一見すればその登り口は発見が困難だ。そしてその頂上付近の平地に3つの小屋があった。女奴隷の部屋。男の部屋。そしてトルンド の部屋だった。トルンドはその日の気分でいっしょに寝る奴隷を決めているようだった。子供たちも数人いたが、決して優遇されているわけではないようだ。女 奴隷の付属品という感じで扱われていた。 「こんな扱いを受けて、あんな平原に放り出されたら誰でも父親に殺意を持つわけだ」 片桐は銃を 手入れしながらスビアに言った。横で同じくゲベールを手入れするスビアも奴隷たちの生活ぶりを見て同意した。少し離れたところにいる2人に気を使うでもな くトルンドは食事の準備ができるまでの相手を女奴隷の中から捜していた。そして相手を見つけると無理矢理彼の小屋に連れ込んだ。それを見る女奴隷も男も、 一別すると各自の作業に戻るだけだった。 「なんて光景でしょう・・・。こんなところにいるだけでも寒気がします」 片桐は考えていた。このまま北にあるという「腑抜けの街」を目指すべきではないか、と。どんな街かは知らないが少なくともここよりは穏やかな街であることが想像に安い。 「さあ、準備ができた!片桐!スビア!ジャキータの串焼きは最高だぞ!」 トルンドが大声を上げて2人を呼んだ。 夜、片桐はトルンドの小屋で、スビアは女の部屋で休んだ。男2人の雑魚寝。少なくとも片桐には才蔵の屋敷や、アムターでの生活にはほど遠いここの設備をそ う呼ぶほかなかった。ジャキータの毛皮の毛布は暖かいが、粗末な小屋で2人で寝転がるのはどうも心地が悪い。寝袋を持ってくればよかったと後悔した。片桐 とスビアが使う寝袋は「寝具はある」というトルンドの言葉をあてにして、愛馬のバックパックの中だった。 確かに、ジャキータの串焼きは絶品だった。ギルティで手に入れた酒もおいしかったが、片桐はパサティアナで、エル・ハラに感じたのと同じ猜疑心をトルンドに持っていた。もちろん、王女のエル・ハラほど彼に教養があるわけではない。 「なあ、片桐・・・」 トルンドが口を開いた。 「あのスビアっておまえの何なんだ?」 ごく基本的な質問だった。片桐は眠りかけた振りをしたまま答えた。 「俺と彼女は生涯ずっと愛し合うんだ。そう決まっている」 「ばかな?確かに、彼女は美しいが、そのために男のおまえは命をかけるのか?」 片桐にはごく当たり前の行為でもトルンドにとってはカルチャーショックのようだ。そんな彼にすこし自慢げに片桐は答えた。 「そうさ、そうするだけの価値があるからな。彼女には・・・」 そう言うと片桐は寝返りを打ってトルンドに背を向けた。寝床の中でシグザウエルを抜いて安全装置をはずした。彼の狙いはおそらくスビアだ。昼間見せていた 彼のいやらしい目。さっきの質問と言い、わかりやすいくらいだった。少しでも起きあがる音がすればシグを突きつけホールドアップさせるつもりだった。 だが、いつまでたってもトルンドが動く音はしない。あきらめたのか・・・。そう思うと片桐は少しうとうとした。 女奴隷の小屋の中でスビアは今までにない悪臭に耐えて横たわっていた。水も満足にないこの岩山で彼女たちの衛生観念は期待できるものではなかったが、これ ほどとは彼女も考えていなかった。いつも片桐と使用する寝袋を使わなかったことを後悔していた。スビアはトルンドの妙に自分たちに親切な態度を怪しんでい た。 女奴隷たちは子供もいる者も含めて寝静まっている。彼女たちが哀れむべき対象であることはわかっていたが、それがイコールで有力な味方にな るとも思っていなかった。ため息をついてスビアは目を閉じて寝返りを打った。片桐の提案通り、腑抜けの街を目指した方がいいような気がしていた。 「あっ・・・・・」 その時、スビアの首筋に違和感のある感触が走った。ジャキータの毛皮の毛布の中でゲベールを握りしめた。目を閉じていてもわかる。彼女の首筋に感じるのは短剣の冷たい感触だった。 「声を出すな・・・」 彼女の背後でささやくその人物も目を閉じたままでもわかった。スビアは思わず毛布の中で身を堅くした。声の主はトルンドだった。彼はスビアの毛布の中に入ると背後から彼女を抱きしめながらささやいた。 「こんな世界に来た以上、あんな軟弱な男は捨ててしまえ。俺の女になれよ」 そう言ってトルンドは、彼なりに、やさしくスビアの髪の毛をなでた。それだけで彼女にとっては屈辱だったが首に突きつけられた短剣がその抵抗を妨害していた。 「片桐はどうしたのです・・・」 怒りを押し殺してスビアがトルンドに問いかけた。歯を磨く習慣がないのだろう。肉臭い息を吹きかけながら彼が答えた。 「あいつは殺さない。一応、命の恩人だ。それに、俺にやつを殺させるな。おまえが俺の女になればあいつを殺すことはしない・・・」 その答えを聞いてスビアは決心した。片桐はまだ死んでいない。おそらく、トルンドの小屋で寝ているだけだ。だとすれば、手はひとつしかなかった。 「そうですか・・・」 意を決してスビアは寝返りを打ってトルンドと向き合った。トルンドの興奮した臭い息が当たって思わず顔をしかめそうになるが我慢して笑顔を浮かべた。 「あなたがわたくしを見る目が昼間から熱いことはわかっていました・・・」 「そうだろ、そうだろ!」 トルンドは音を立てて鼻息を出しながらスビアを見つめている。もはや短剣も彼の手にはない。彼の両手はスビアの美しい黒髪をなで回すことでふさがっている。それを我慢しながら、スビアは右手で背中のゲベールを確認し、左手をゆっくりとトルンドの下半身に滑らせた。 「わたくしがあなたの情婦になればいいとおっしゃるのね?」 ひきつりそうになりながら笑顔を保ってスビアは尋ねた。もはや完全に欲望に支配されたトルンドは無言でうなずいた。それを合図にするようにスビアは左手でトルンドの股間のものを思いっきり握りしめた。 「ぎゃあああ!」 大声をあげてトルンドはスビアの毛布から飛び退いた。それと同時にスビアはゲベールを彼の額に突きつけた。トルンドは痛みで顔をひきつらせながら寝そべっている。お互い寝たままの状態でしばし、2人は無言だった。 「撃てるか?」 痛みが収まり、にやにやしながらトルンドが起きあがった。狙いをはずさないようにスビアも彼の動きに身体を合わせて起きあがった。彼の挑発に答えるようにゲベールの激鉄を起こした。 「おまえには撃てない。俺は無抵抗だ・・・」 そう言うと、トルンドは再びスビアににじり寄った。 「おまえが撃てないのはわかっている。ヨシーニアで生きていないからな。無防備な聖女様・・・」 と、トルンドの動きと言葉が止まった。スビアはトルンドの背後の影を見た。片桐がシグザウエルをトルンドの後頭部に押し当てているのが見えた。片桐は怒っ ていた。まさか、彼の気がつかないうちに小屋を抜け出し、スビアに迫っていようとは思わなかった。自分の軽率さを後悔していた。トルンドは人間を狩ってい るのだ。人間が気がつかないうちの行動することはできるはずだった。 「スビア、こっちへ」 片桐の言葉に、スビアはゲベールを手にしてトルンドにシグを突きつける片桐の背中にしがみついた。今まで気丈に振る舞った反動の恐怖が彼女を襲っていた。その震えを背中で感じた片桐は怒りにまかせて引き金を引こうとした。 「待って、片桐」 それを引き留めたのは他ならぬ、スビアだった。彼女は片桐の背中にしがみつきながら言った。 「彼に、彼の言う「腑抜けの街」まで案内させましょう。わたくし、こんな野蛮なところもう限界です」 彼女の意見に同意した片桐は銃を突きつけながらトルンドに支度をさせた。 「俺がすんなり言うことを聞くと思っているのか?おまえたちはこのヨシーニアを何も知らないんだぞ」 「旦那様!旦那様!」 その時、周囲を見張っていた男の奴隷が叫ぶのが聞こえた。 「トラボロたちがやってきます!」 その名前を聞いてトルンドの顔が青ざめるのがわかった。片桐もその名前を思い出していた。ギルティで見かけたあの集団のリーダーだ。トルンドにとっては絶望的だったが、片桐にとっては大して状況は変わりはしなかった。むしろ、少しだけ有利に働いたかもしれない。 「さあ、俺たちの道案内をするか、戦士らしく奴らに立ち向かうか決めるんだな。俺たちはどっちにしても北へ向かって出発するが・・・」 片桐の突きつけた選択はトルンドにとっては悲惨すぎたようだ。 「ヤツのゲベールは500メートル以上飛ぶ上に、狙いも正確なんだ。剣で斬りかかる前に殺されちまう!道案内すればいいんだろ!」 トルンドの「好意」を受け入れて片桐は安心した。その足で麓をよく見渡せるところまで来ると、人間の頭の大きさに近い石を土手に置いた。敵は5名。月明か りを背に岩山に向かってきている。絶好の夜間照明だ。片桐は石に頭を隠すように89式小銃を構えると、左端の戦士に狙いを定め、6発でそいつを仕留めた。 そして、すばやく移動した。間髪入れずに、さっき置いた石にゲベールの弾丸が命中した。 「まじかよ・・・」 敵は1人殺したと思って大声をあげた。89式のマズルフラッシュだけで目標の位置を判断して、スコープもなしでそれに命中させるとは・・・。自衛隊のA級射手以上の腕前だ。 「さあ、片桐!行きましょう」 スビアが馬にまたがってやってきた。トルンドは荷物をまとめて自分のボスポースに乗り込もうとしている。騒ぎを聞きつけた女奴隷が彼に連れていってくれるように迫っている。 「女子供はすっこんでろ!」 トルンドは馬上から手近な女奴隷を蹴飛ばして出発しようとした。思わず片桐がそれを止めて彼に詰め寄った。 「おい、置いていくのか?」 「どうせ殺されはしない。奴らにとっては主人が替わるだけだ。行くぞ!」 それだけ言うと彼は裏道に走り出した。仕方なく、2人も後に続いた。 500メートルも弾丸を飛ばす強力なポルを持つトラボロは脅威だったが、幸い彼らが徒歩だったのが功を奏した。片桐たちは彼らに1日近くの差をつけ北に向 かっていた。その間、スビアはトルンドに口を聞くこともなく、寝るときもゲベールから手を離さなかった。片桐とて、今すぐにでもトルンドを撃ち殺したい心 境だったが、今彼を殺して道に迷ってうろうろしているところをトラボロに追いつかれでもしたときのことを考えると、そうもいかなかった。 3日目に入ると、風にかすかな潮の香りが混じるようになった。北の果て、アムターから東北東の海岸が近いことを示唆していた。やがて、小高い丘を登ると都市がその大きな姿を見せた。 「あれが腑抜けの街だ」 馬上でトルンドが顎でしゃくった。都市は海岸線に幅数キロにわたって堅固な城壁を持っていた。その城壁も高さが30メートル近く、衛兵の詰め所が至る所に 見えた。そしてその外壁のさらに奥に同じような堅固な城壁が見えている。そこから数キロ離れた海岸に小さな村が見えた。ヨシーニアの制度で言うところのギ ルティだ。双眼鏡で覗くと、機帆船に似た船が数隻、砂浜に引き上げられているのが見えた。 「俺はあのギルティに身を隠す。早くしないとトラボロが追いついてくるからな・・・」 そう言うトルンドの言葉が後ろを振り返って止まった。片桐も思わず振り返った。 「やばい・・・!」 片桐たちの後方にトラボロと10人近い戦士がボスポースを駆ってまさに突撃を開始しようとしているのだ。 「早く街に逃げましょう!」 スビアの言葉に異論はなかった。3人はそれぞれの愛馬をギャロップさせて街の門目指して走った。敵も全力で追いかけている。500メートル。馬上という悪条件を考慮しても3,400メートル以内に追いつかれるとトラボロの射程内と思っていいだろう。 「きゃっ」 スビアが短く悲鳴をあげた。彼女のすぐ近くを敵の弾丸がかすめたのだ。城門まで数百メートルに迫った。城壁の上から衛兵らしき人々が片桐たちを見ているのが見えた。 「入れてくれ!」 大声で叫ぶが、衛兵たちは様子を見ているだけだ。3人は街の門までたどり着いた。片桐とスビアが下馬して門を叩きながら叫んだ。 「頼む!開けてくれ!」 そうしている間も流れ弾が門に命中して鋭い音を出していた。 「やばい!やばい!腑抜けの奴ら、見殺しを決め込んで・・・・・」 トルンドの言葉が止まった。口から血を吐き出すと、うつろな顔をしてそのままうつぶせに倒れた。彼の背中には親指ほどの穴が空いていた。トラボロの射程距 離に入ってしまったようだ。観念した片桐は門を背にして89式を構え、門と自分の間にスビアを割り込ませた。この距離だとまだ、彼の防弾チョッキで弾丸は 防げるはずだ。 「片桐!無茶しないで!」 「この距離ならまだヤツと差し違うことができる・・・」 89式のセレクターが「3」に合わせてあることを確認した。スビアは死ぬ気の片桐にすがりついた。 「片桐!やめて!あなたが死ぬだけです!」 彼女をふりほどこうと彼が構えを解いた瞬間、片桐の左脇腹にゲベールの弾丸が命中した。トラボロのポルが放った弾丸の圧力がチョッキを通じて片桐に伝わった。そしてそのまま後ろに吹き飛ばされた。 門にスビアごと激突してしまう!そう思って片桐は身構えた。 が、彼とスビアを待ちかまえていた堅い門扉はそこにはなかった。そのまま2人は土の地面に放り出された。間一髪、門の通用口が開かれたのだ。主人たちに 習って2人の愛馬も門をくぐるのがひっくり返った片桐も見えた。次の瞬間、門は閉じられ、トラボロたちの発射する弾丸はむなしく鋼鉄の門扉に当たるだけ だった。 「ごほっ!ごほっ!」 左脇腹の激痛で思わずせき込む片桐をスビアが抱きしめた。 「ああ・・。お願いだから死なないで・・・・」 門の中にいた警備隊が恐る恐る2人に近寄ってきた。みんなクーアードでローマ調の薄着の上に革の鎧や装飾具をつけ、ピストルやゲベール、長剣で武装している。 「だれか、早く手当を!撃たれたのです!」 スビアが悲壮な大声で警備隊に叫んだ。それを片桐は手で制した。気でも狂ったのか、という目で彼女は片桐を見た。彼女を安心させようと片桐はせき込みながら口を開いた。 「だいじょうぶだ・・・」 そう言う片桐の右手に、トラボロが放ったゲベールの弾丸があった。自衛隊員を砲弾の破片から守る防弾チョッキは強力なポルで発射された弾丸をどうにか弾いたのだ。 「まさか・・・、ゲベールの弾を防ぐとは・・・」 その様子に警備隊はざわめき、スビアは喜びのあまり片桐を抱きしめた。ざわめく警備隊をかき分けて1人の武装した指揮官らしき人物が、起きあがった片桐とスビアに近づいた。クーアードでやや茶色がかった黒髪に、兵士らしいがっちりとした肉体が美しい青年だった。 「お助けするのが遅れて申し訳ない。なにぶん、あなた方の素性がわからないものでして・・・。なにしろ、野蛮人とクーアードの女性、そして見たこともない服の3人が一目散にこっちに向かってきたのですからな」 ドロスと名乗った青年士官はそう言って救出の遅れを詫びた。一通り自己紹介が終わるとドロスが言った。 「この街は自治都市リターマニアといいます。神聖ロサール王国の都市のひとつです・・・」 スビアの目が輝いた。ついに、古代ロサールの名前を冠した都市に着いたのだ。ドロスは2人を第2の門に案内した。 「あなたがたのボスポースから必要な荷物をお取りください。ここから先は動物の持ち込みが禁止されます。彼らの管理は警備隊にお任せを・・・」 彼の言葉に従って荷物を背負った片桐は門の前に立った。ドロスは門の柱に備えられた伝声管のようなものに命令を発した。すると、巨大な門が音もなく開いた。 「さあ、リターマニアへようこそ・・・」 門の向こうは大きな通りだった。ガルマーニを彷彿とさせる街路だったが、兵士はいない。護身用の短剣程度の装備をした市民たちがにこやかに歩いている。片 桐には以前、NHKで見た。ポンペイの再現CGを見るような印象を与えた。だが、ポンペイにはないものがリターマニアには多くあった。 「あれは、電線だ・・・」 思わず片桐がつぶやいた。街路のあちこちに電線のような細い線が張り巡らされている。それに連結された車が街路を静かに走っていた。路面電車とタクシーを合わせたような乗り物だった。 「あの線でポルを調整して、中央の官制センターで交通整理をしているのです」 ドロスが片桐に説明した。見ると、彼の言うとおりだった。信号のない交差点でも事故もなく路面タクシーはスムーズに流れていった。その交差点の店ではスピーカーから大声でセールを知らせる文句が流れている。 「ポルを応用した放送設備です。全市で聞くことができます」 つまりはポルを使ったラジオだった。ドロスは市街をすいすい歩いて行く。片桐とスビアもそれに続くが、通行人は好奇心旺盛に彼らを見ている。 「いったん、わたしの家へ行きましょう。それから評議会に出頭しましょう」 ドロスの家は繁華街からさほど離れていない閑静な住宅街にあった。どの住宅も庭付き一戸建て。日本人なら誰もがうらやむ空間だ。だが、日本家屋とは違い、 温暖なこの世界の建築様式で中はとても開放的だった。それでいて、個人のプライバシーに配慮された造りだった。彼の家では彼の伴侶(妻ではない)が待って いた。(パートナーという方がいいのかもしれないが便宜上「伴侶」とする) 「タローニャ、お客様だ!」 彼女とキスしながらドロスが片桐たちを紹介した。タローニャは笑顔で2人を歓迎すると客間の一室を彼らに提供して荷物を置かせた。そしてドロスの待つ食堂に案内した。つい昨日までの殺伐とした世界とは正反対の環境に、片桐もスビアも少々戸惑った。 「まあ、ゆっくりしてください・・・」 ドロスは2人にイスを勧め、2人が座るとグラスに酒を注いで差し出した。 「さて、スビア。君はアムターの聖女と言うが、アムターとは西の森にある村のことかな?」 フレンドリーだが礼節をわきまえた口調でドロスはスビアに質問した。 「そうです。わたくしはその村の聖女です」 「ほお、すると。異世界人の召還魔法を代々受け継ぐ血筋なんですね・・・。とすると・・」 ドロスは今度は片桐に向き直った。だがその表情は威圧的でもなく穏やかな表情だった。 「片桐、君は彼女によって召還され、森の蛮人からアムターを救い、その後スビアと旅に出た異世界人だな」 片桐は驚きのあまり言葉を失った。こんな身の上話を彼が知っているはずがないからだ。 「まあ、落ち着いて。この都市にいる魔道師がこの大陸で起きるポルの動きを常に探知している。3ヶ月ほど前、アムターで2度にわたって召還魔法が行われたことも把握しています。その推理の結果を言っているだけです」 ドロスの言葉には嘘も偽りもないようだった。そして次に彼は2人に質問した。 「で、そのお2人がどうしてここへ?」 片桐とスビアは今までの話を嘘偽りなくドロスに話した。彼にはすべて話してもいいような雰囲気がただよっていた。そして彼も2人の話を疑うことなく聞いてくれた。 「わかりました。わたしが今からこの話を評議会に報告してきます。その上でこの都市に滞在できるか審査があります」 「審査?」 「そうです。この都市の周りはヨシーニアとかいう野蛮な連中が闊歩する地域です。だからこの都市は滞在を許す人材を常に審査するのです。この都市の平和と秩序を守るために。心配しなくてもいい。あなたたちならきっと大丈夫だ」 そう言ってドロスは部屋から退出した。それと同時にタローニャが入ってきた。 「さあ、彼は朝まで戻りません。彼の言いつけで休む準備はしてあります。ゆっくり休んでください」 2人に割り当てられた部屋は申し分ない広さと快適さだった。浴室も付属していた。スビアは久しぶりに湯で身体を洗って上機嫌だった。そして片桐もふかふか のベッドと旨い酒に上機嫌だった。少なくとも、ドロスとタローニャの言動から推測するに、ヨシーニアは論外として、ガルマーニ以上の快適さだった。 「片桐、わたくしたち、やっと人間らしい生活に戻ることができたようね」 上機嫌で風呂上がりのスビアがベッドの片桐に飛びついてきた。 「一応、習うことは習ったが、あんな動物も解体しなくてもいいようだしね・・・」 風呂上がりの彼女のいい匂いを楽しみながら片桐が答えた。そして枕元のグラスを取って酒を注ぐとスビアに差し出した。 「2人の幸運に!」 片桐もスビアも満足していた。才蔵の村を出て以来、久しかった文明人との再会を喜んでいたのだ。 翌朝、ドロスが2人を起こしに部屋を訪れた。枕元にシグザウエルだけを残して2人ともすっかり無防備な姿で寝ていたものだから、片桐が驚いて飛び起きた。 「申し訳ない。評議会から出頭命令が来ているんで・・・。さあ、準備して」 ドロスは街に出ると例の路面タクシーを止めた。中は無人で前に2,後部に3の座席があった。セダン車を想像させる造りだった。ドロスは前の右座席に乗って 彼のポルを正面のパネルに送った。するとタクシーはすっと発車した。彼のポルがパネルを通してセンターのオペレーターに伝わって行き先への最短ルートを割 り出すという。まさに、魔法を使ったコンピューターだった。 「これから評議会があなたがたの在留資格を審査しますが、昨日わたしに語ってくれたことを言えば大丈夫なはずです」 ドロスが笑顔で言った。彼が言うのだからまあ、信用する他はない。と、興味がわいて片桐は彼に質問した。 「万が一だめだったら?」 「この街にいることはできません。追放刑になります。この街に持ち込んだ荷物と共にヨシーニアに放たれるのです。追放刑はこの街の最高の刑です・・・」 ドロスが少し表情を暗くして言った。その言葉にさらにスビアが疑問を投げかけた。 「追放が最高刑なら死刑はないのですか?」 「わたしたちはロサールの神の元に行くことが人生の目的です。なぜ、それを他人の手で助ける必要があるのです?しかも罪人に・・・」 ドロスの考えはスビアにも片桐も新鮮だった。神聖ロサール王国において、ロサールの先人は神に等しい存在である。死は神に近づく唯一の手段である。その死 を迎えるまでクーアードもガンドールもエルドガンも現世の運命を受け入れ、耐えるのだ。神の手による死=すなわち、戦争による戦死、病死など以外は不本意 な死とされ忌み嫌われる。だからこの都市には死刑がないのだ。その代わり、殺伐とした世界ヨシーニアへの追放刑があるのだ。 「だから殺人もこの街 ではほとんどありません。過失的な殺人はごくまれにありますが、その被害者は救済すべき人物としてまつられ、加害者は外の世界に追放になります。でも、こ れはリターマニアだけの法律です。神聖ロサールの他の自治都市ではこの限りではありません。他の自治都市は評議会で議論した古代ロサールの教えを独自に解 釈して様々な法律を作っているのです」 その言葉に思わず片桐は質問をした。この街以外に都市があるならそれはどこにあるのか。当然といえば当然の質問だった。 「ここはヌーボル唯一の神聖ロサールの都市ですが、この北にはコロヌーボルと呼ばれる大陸があります。そこには多くの自治都市があり、それぞれロサールを神とあがめながら暮らしています」 片桐はもっと彼に質問したかったが、タクシーが評議会の建物の前で止まったのでその質問を断念した。 評議会は図書館のような大きな建物の中にあった。3階建てのビルに案内された片桐とスビアは大きな部屋に通された。そこには大きな長い机に座った5人のクーアード、2人のガンドール、1人のエルドガンがいた。彼らの正面のイスを勧められて2人は座った。 「では、まず、君たちの記憶を検査する・・・・」 中央のクーアードが宣言すると、エルドガンが歩み寄って片桐の額をさわった。パサティアナでエル・ハラに占ってもらった時のような暖かい感覚が片桐を包んだ。 「終わりです」 エルドガンは言うが早いか、スビアに同じ動作を施して数秒で同じ言葉を言った。 「では次の審査だ」 その審査は他分野にわたった。心理学、これはフロイトに似た心理実験だ。それに社会学、言語学、物理学、宗教学、比較文化学=この担当のガンドールは片桐 の答えにかなり興味を示した。などなど・・・。たっぷり5時間近く、片桐とスビアは質問責めにあった。そして最後にエルドガンが最初と同じように記憶を確 認して2人が嘘をついていないかを確かめて審査は終わった。 「やあ、ごくろうさま。結果が出るまで1時間ほどあるからこっちで休んで」 ドロスが2人を別室に案内してくれた。応接室のような部屋のソファーに2人がぐったりと座り込んだ。 「いったい、ありゃなんなんだい?」 片桐の質問にドロスは笑顔で答えた。 「あれが在留審査なんだ。この結果で君たちがこの街に在留できるか決まる。在留できれば、出て行くまで市民権が得られるんだ」 そう言う、ドロスに伝令の職員が部屋に入ってきて彼に告げた。どうやら審査の結果が出たようだ。 「アムターの聖女スビア、異世界人片桐・・・・」 片桐とスビアは、先ほどの圧迫面接の会場のような部屋に案内されていた。そこで中心のクーアードが2人の名前を呼んだ。別にどうだということはないが、ちょっと緊張する。 「まずは聖女スビア。君の血筋、継承しているロサールの奥義はこの都市の上級市民にももったいない肩書きである。しかし、この都市にはそれ以上の称号はない。よって本評議会は、聖女スビアを上級市民待遇の客人として迎え入れることを許可する」 それを聞いてスビアは誇り高く微笑むと評議委員に一礼した。委員は片桐の方を向いた。 「さ て、片桐。君の評決だが。はっきり申し上げて君の結果は聖女スビアに比べてかなりよくない。君のいた世界での君の軍人としての評価ができないのだ。君の言 う「憲法」とやらが君の軍人としての功績を評価不能にしている。しかし、この世界に来てからの君の功績は特筆に値する。次に、君の心理的傾向だが、これも 軍人らしからぬ個人主義的傾向が見受けられる。さらに、権力に対する常なる疑問。これらの感情は君の軍人としての資質に大きくマイナス要素となるが、目下 その結果は判断できない。」 かなり辛辣で失礼な物言いに片桐はちょっと怒りを覚えたが、それを口に出すほど粗野でもなかった。評議委員はさらに続けた。 「ま た、我々が最も注目したのは君の、信仰心の薄さだ。君の世界では少なくと複数の宗教が存在するが、君はそれらのどの宗教に関しても強い信仰心がない。ある 神の誕生を祝い、そのすぐ後に別の神にその年の幸福を祈り、さらに別の神で先祖の霊を弔うなど、我々には理解不能な感覚だ。」 無理もなかろう。クリスマスを祝ったと思ったら正月で初詣、家族の法事は仏式だ。現代日本人ではごく当たり前の行為でも、彼らには奇異に映るであろう。 「君 の信仰への帰依の低さは、君の世界の国民性として一定の理解を示してもこの都市においてはプラスにならない。以上の結果、君はこの都市での滞在に不的確で あると結論せざるを得ない。しかし、ドロスの報告にあった君のゲベールを跳ね返す鎧や、君の持っているゲベールの技術。そして君の世界におけるポルを一切 使わない科学知識に関しては我々は君から多くのことを学ぶことができる。」 評議委員のもったいぶった言い回しに片桐はいらいらし、スビアははらはらしている。 「異世界人片桐、君のリターマニア在留の条件として、君の持つ知識と技能をドロスに教授し、この都市の発展に寄与することを要求する。そして君にはそれを条件に上級市民待遇の在留資格を本評議会は約束する。以上だ」 そう言って評議委員たちはさっさと退出してしまった。 「やれやれ・・・」 思わぬ長々としたお説教に片桐はかなりいらいらしていた。しかし、当面2人はこの都市に在留できる資格を得たのは幸運だった。2人とも、もしくはどちらかが追放刑になったときのことを想像すると片桐は思わず背筋が寒くなった。 「さあ、窓口へ行こう・・・」 ドロスが2人を迎えに来て、部屋から連れ出した。 窓口への道すがら、ドロスはリターマニアにおける法律を片桐たちにざっと教えてくれた。そしてそれは片桐の知っている法律にごく近いものだった。一通り説明が終わる頃、ドロスは窓口にスビアと片桐を導いた。 「ここで市民登録番号と、年金を受け取ってください。これで君たちも立派なリターマニア市民だ!」 片桐が受け取ったカードには6桁のこの世界の数字が刻印されていた。そして年金として6000サマライが受給された。評議会の建物を出ると、ドロスが言った。 「当分はわたしの家にいてください。タローニャも承知しています。わたしはこれから仕事だ。君たちは期間在留者なので仕事はありません。今日はゆっくり市内観光でもしてください。では!」 そう言ってドロスは雑踏の中に消えていった。広い都市で片桐とスビアが残された。 「さて、どうしたものかな」 思案に暮れる片桐にスビアがとびっきりの提案を投げかけた。 「あなたの服です。軍服のままじゃ目立って仕方ありません。まず服を買いましょう」 名案だった。片桐は彼女の提案を受け入れ、手近なブティックに入った。愛想の良い、美しい店員が片桐の体格にあったぴったりの素材を選んでくれた。それを試着して鏡の前に立った片桐は驚いた。 「どうだい?」 片桐はローマ風のゆったりとした衣服に身を包んでいた。さっきまで存在した自衛官の面影はなかった。早速それを購入すると、通りを走っていたメッセンジャーのような人物に自衛隊の制服と防弾チョッキを預けるとドロスの家まで宅配するように依頼した。 そして2人で腕を組んでウインドウショッピングとしゃれこんだ。この世界でスビアと愛を交わして以来、こんなデートは初めてだったのでどちらもとてもは しゃいでいた。道行く市民はうわさで聞いた異世界人と聖女に会うと挨拶を交わし、自宅に招いた。それを丁重にお断りしながら2人は、こじゃれたレストラン を見つけた。 「久しぶりに俺の手料理以外のものも味わおう」 もっぱら料理は片桐の仕事だった。聖女として大事に育てられたスビアは料理の腕はいまいち、というよりからっきしだったのだ。 「いらっしゃいませ」 丁寧なお辞儀で出迎える店員に案内され、2人は奥の豪華なテーブルに通された。他のテーブルでは紳士淑女がおだやかに談笑しながら食事や酒を楽しんでいる。 「まさか、あなたとこんなところで食事を楽しめるなんて思ってもいませんでした」 スビアがうれしそうにグラスを傾けながら言った。洋の東西どころか、世界が違っても女性はロマンティックでエキサイティングなデートを欲するものなのだろうか。それは片桐とて同じだった。2人は料理と酒を存分に楽しみ、給仕のサービスに心から満足した。 夜も更けた頃に片桐たちは例のポルで動くタクシーでドロスの家に戻った。家ではドロスとタローニャが待ちかまえていた。彼らは片桐とスビアがリターマニアに在留することを許可されたお祝いをしようと待っていたのだ。 「やあ、すっかりごきげんのようですね」 笑顔でドロスが迎えてくれた。そして片桐たちを客間に通した。テーブルにはグラスと若干の料理が用意されていた。きっと外食して来るであろうとの配慮だった。 「片桐、評議委員会で話したあなたの世界の話を私たちにも聞かせてくださいな」 タローニャが酒を注ぎながらたのんできた。ドロスも興味を持っているようだ。片桐は才蔵に話した福岡の話をまず語った。ドロスは驚いている様子だった。 「なんと!この街の城壁の何倍もの高さに登るのにポルは使わないのですか?」 エレベーターの話を聞いてドロスは驚きの声をあげた。 「ええ、この建物です」 片桐は自分の部屋に置いた荷物から高崎士長が残した「福岡市ガイドマップ」を取り出してドロスとタローニャに説明した。彼らは写真に写ったタワーや福岡ドーム、天神のビル街を見て驚嘆した。 「すごいですわ・・・。なんて神秘的なんでしょう」 タローニャは市内の夜景が写った写真を見て感動の声をあげた。それを見てドロスがタローニャの手を取った。 「そうだ!片桐たちにも見せてあげよう!用意してくれないか?」 ドロスの言葉にタローニャは合点がいったようで、さっそく酒といくらかの料理を包み始めた。 「その絵ほどではないが、わたしの権限で見られる最高の場所にご案内しよう!」 ドロスは片桐とスビアの手を取ると家の外に連れ出した。タクシーを拾って外壁まで出ると衛兵に挨拶してドロスは3人を上に案内した。 「ほお!これはすごい!」 思わず片桐が声をあげた。外壁の上からは夜なおにぎわう、リターマニア市内の夜景が一望できた。そしてその先の海。さらに先にはコロヌーボルと彼らが呼ぶ 大陸に光る街の明かりが見えた。その上には美しい星空が広がっている。片桐の知っている星座はないが、それでも感動を呼ぶ美しさだった。思えば、この世界 に来て、星空を美しいと思って見たことがないことを思い出した。 4人はそこで乾杯し、夜景を肴に思い思いの会話を楽しんだ。まさに、片桐とスビアにとっては古代ロサールの名前を冠した理想郷の夜を心ゆくまで楽しんだ。 翌朝、片桐とドロスは仕事に出かけた。片桐には仕事はないのだが、何もしないというのではドロスとタローニャに申し訳ないと思ったのだ。ドロスの仕事であ る、外壁の哨戒任務に同行したのだ。高い城壁に登って外の世界、殺伐としたヨシーニアからの侵入者がないかを見張るのがドロスの仕事だった。この任務は昼 夜関係なく行われていた。過去、多くのヨシーニアの戦士がこの都市への侵入を試みたという。 「ドロス、君たちは双眼鏡は知ってるかな?」 片桐は自分の双眼鏡をドロスに貸した。彼はそれを覗いてみた。数百メートル先もはっきり見えるはずだ。 「いや、ぼやけてよく見えないよ」 笑いながらドロスは片桐にそれを返した。片桐はレンズの仕組みを彼に説明しながら双眼鏡の縮尺を調整した。外壁から100メートルほど先にある灌木を標準にして調整していると、何か光るものが片桐の目に入った。 「どうした?」 双眼鏡を見ながら固まっている片桐にドロスが話しかけたときだった。片桐はいきなりドロスの胸を突き飛ばした。それと同時に片桐も外壁の壁に身を隠した。 「いきなり何をするんだ!」 ドロスが抗議の声をあげた時だった。彼のすぐ近くの外壁にゲベールの弾丸が命中して鈍い音をたてた。 「みんな!伏せろ!」 片桐は周囲の衛兵にも叫んだ。兵士たちは片桐に習って胸壁に身を隠した。レンズの調整が終わった双眼鏡をドロスに渡して片桐は言った。 「俺たちを追ってきたトラボロだ。まだがんばってたんだ・・」 ドロスはそっと胸壁の間から双眼鏡で片桐の示した灌木を確認した。いつになくドロスが緊張した顔つきになっている。 「ヤツはこれまで何人も衛兵を殺している。まずいな・・」 片桐はちょっとした作戦を思いついた。ドロスに少し離れたところで双眼鏡を胸壁の上にあげ、太陽に反射させるように頼んだ。そしてその後は手を引っ込めておくようにと。彼は素早く移動すると片桐の合図を待った。 「さて・・・。まだいるかな」 片桐は胸壁からほんの少し頭を出して先ほどの灌木を見た。まだトラボロは灌木の影で獲物の衛兵を捜していた。それを確認して片桐はドロスに合図した。ドロスはそっと双眼鏡のレンズを太陽に反射させた。 「ドロス!手を引っ込めろ!」 片桐の声にドロスは慌てて手をひっこめた。それとほぼ同時にトラボロの放ったゲベールの銃弾がドロスの隠れる胸壁に命中した。それを確認して片桐は89式を構えて頭をあげた。トラボロはゲベールに弾丸を装填している。 「いまだ・・」 片桐はスリー・バースト・ショットを3回繰り返した。灌木ごとトラボロはずたずたになって倒れた。彼が動かなくなったのを確認して、片桐は外壁に立ち上 がった。500メートルの射程を持つトラボロの弾丸が飛んでこないことを確認した衛兵が歓声をあげた。そしてそれを最も感動したのはドロスだった。 「片桐!君は命の恩人であるばかりか、警備隊が最も手を焼いていた野蛮人まで葬るとは!」 ドロスは片桐に抱きついて喜んだ。衛兵の歓声も市民にまで聞こえ、外壁の周りには大手柄をあげた片桐を賞賛する声で隣の者の会話も聞こえないほどになった。 勤務時間を終えてドロスと家に帰った片桐とドロスをスビアとタローニャが出迎えた。それぞれキスを交わすと、客間に備えられたポルで動くラジオを示した。 「本 日、警備隊長ドロスと、異世界からの在留市民片桐の手により、ヨシーニアの大悪人トラボロが射殺されました。トラボロは衛兵6名を射殺し、リターマニアに 侵入を試みること数回。常習的な殺人者で市民を恐怖に陥れていましたが、今日、勇敢な人々の手でその殺戮を永遠に不可能にしたのです・・・」 タローニャはこのニュースを聞いてドロスと片桐に順に祝福の抱擁を捧げた。 「ドロス、あなたはこれで評議委員候補になれますわ!」 「いや、タローニャ。今日の手柄は片桐のアイデアあってなんだ・・・。今日の英雄は彼だよ」 ドロスは片桐の成果を自分のものにすることもなく、むしろ、自分のことであるかのように誇らしげにタローニャとスビアに語った。タローニャはますます興奮しているようだった。 「本当にすごいわ。今夜の「神の御心」の選抜を前にして幸運が続きますわね!」 聞き慣れない単語を耳にして不思議がる片桐とスビアに気がついてドロスが笑顔で言った。 「今日は年に1度、神の祝福を受ける市民が2名選ばれる日なんだ。もちろん、市民登録番号を交付された君たちも選ばれる権利がある!今日の幸運があればきっと選ばれるよ!」 そう言ってドロスは彼の部屋にタローニャを連れて入っていった。彼の言う「神の御心」まで市民はそれぞれ休むなり、愛し合う者と時を過ごすのだそうだ。どうやら、この都市最大の祭典らしい。片桐もスビアを連れて彼らに与えられた部屋に戻った。 「いったい何が始まるのでしょうか?」 仕事が終わってベッドに転がった片桐にくっつきながらスビアが言った。片桐はそんな彼女を抱きかかえながらぶっきらぼうに答えた。 「さあね。きっとあのレストランの無料券なんかが当たるんじゃないのかい?」 その片桐の冗談にくすっと笑うとスビアは彼の胸に身体を預けた。 日も暮れた頃、ドロスとタローニャ、片桐とスビアは客間のラジオの前にいた。今この瞬間、リターマニアの市民は当直の衛兵を除いてほとんど、同じようにラジオの声に聞き入っているという。 「それでは、評議会の厳正な抽選により、本年の「神の御心」対象者を選出します。市民登録番号をそれぞれ確認ください。」 どうやら、抽選は市民登録番号で行われるようだ。片桐も自分のカードの番号を確認した。ドロスは満面の笑みを浮かべて発表を待っている。 「では、最初の番号を発表します。099456・・・」 その瞬間、ドロスは天を仰ぎながら落胆のため息をついた。タローニャも笑顔でため息をつくと悲嘆にくれる恋人を抱きしめた。 「ああ、わたしの番号は099486なんだ。また今年もだめだったよ・・・」 ニアミスに苦笑して恋人に抱きしめられてドロスはぼやいた。タローニャも抱きしめながら答えた。 「わたくしは全然大はずれですわ。来年もありますから、元気を出して!」 ラジオは市民登録番号と市民の名前を発表した。そしてしばらくして再び放送が再開した。 「では、2人目。今年の最後の「神の御心」を得た人物を発表します・・・」 ドロスとタローニャは緊張の面もちで、片桐とスビアはとりあえず参加する権利が得られた幸運を喜ぶ程度で発表を待った。 「198223・・・・です。」 さっきとかなりかけ離れた番号を聞いてドロスが肩をすくめた。片桐も自分のカードを見た。彼の番号も全然違っていた。ドロスの落胆ぶりを見るに、「神の御心」とはこの都市の福祉やサービスの充実を見るに、相当な豪華な権利や賞品のようだった。 「わたしは今年もはずれたようだ・・・。タローニャ、君もかい?」 ドロスの言葉にタローニャも笑顔で肩をすくめた。 「ええ。だめだったわ。スビア、あなたはどう?」 タローニャがそう言ってスビアを振り返った。彼女は何度も自分のカードの番号を確認していた。 「片桐!どうやら、わたくしの番号みたいです!」 一同が仰天した。その時、ラジオから番号から判明した幸運な当選者の名前が読み上げられた。 「198223・・・。上級市民待遇の滞在者、聖女スビアが当選です!おめでとうございます!」 その瞬間、ドロスはスビアを祝福の抱擁で抱きしめた。続いてタローニャも同じく抱擁した。スビアは訳がわからないまま、彼らの行為を受け入れた。 「いったい、何がわたくしに当たったんでしょうね」 彼女が片桐に問いかけたとき、ドロスの家のドアを叩く音が聞こえた。彼が素早くそれに答えてドアを開けた。そこには大勢の警備隊が待ちかまえていた。 「聖女スビア、おめでとうございます」 警備隊は口々にスビアに祝福の言葉を投げかけた。敬意の込められた言葉にスビアも笑顔で彼らに応じていた。それを見届けてドロスが片桐の腕を取った。 「さあ、行こう」 そう言うドロスに片桐は思わず問いかけた。 「どこへ?」 「わたしの友人の家だよ。「神の御心」に選ばれた者はその権利を行使するまで異性との接触は原則できないんだ。あとは、タローニャに任せよう。さあ、彼女を祝福しよう!」 そう言ってドロスはスビアにフタタに祝福の抱擁をして、片桐にもそれをするように促した。愛する聖女を抱きしめながらも片桐は突然の出来事にとまどっていた。 「よくわからないが・・・、おめでとう」 「わたくしも、よくわかりませんが、ありがとう!」 笑顔でスビアは片桐の抱擁を受けた。それを見届けるとドロスは片桐を家の外に連れだした。外には警備兵が数名いて、ドロスの家を厳重に警備している。どうやら、当選したスビアはかなり重要な役割を負うことになるようだ。 「片桐!よくわからないけど、楽しみにしていて!」 上機嫌でスビアが叫んだ。片桐も釈然としないが、周囲の祝福ムードに安心してスビアに手を振った。そうしながら、自らの家を出たドロスに質問した。 「いったい、スビアは何に当選したんだい?」 その質問にドロスは満面の笑みで答えた。むしろ今の彼女の立場を代わりたいと言わんばかりの笑顔だった。 「神の御心さ。彼女は古代ロサールの神の心にふれることができるんだ!ああ、わたしができることなら代わりたかった!」 その答えでは理解できない片桐は再度同じ質問をドロスに投げかけた。興奮で片桐がこの都市の決まりを知らないことをようやく思い出したのか、ドロスはまるで、スビアの身の上がうらやましいと言わんばかりの笑顔で言った。 「彼女は幸運だ。数十万のリターマニア市民から選ばれたんだよ。「神の御心」に!彼女は次のゾードの夜に生け贄として神の世界に旅立つ権利を与えられたんだ!」 ドロスの幸福に満ちた言葉を聞いて片桐はその顔から血の気が失せるのを感じた・・・。
https://w.atwiki.jp/shareyari/pages/319.html
白夜に輝く堕天の月 No 作品名 登場キャラクター SS-038 白夜に輝く堕天の月/1 片桐真悟、ドクトルJ SS-044 白夜に輝く堕天の月/2 岬陽太、白夜 SS-052 白夜に輝く堕天の月/3 岬陽太、白夜 SS-063 白夜に輝く堕天の月/4 岬陽太、白夜、ドクトルJ SS-069 白夜に輝く堕天の月/5 岬陽太、白夜、ドクトルJ SS-075 白夜に輝く堕天の月/6 岬陽太、白夜、ドクトルJ SS-079 白夜に輝く堕天の月/7 ドクトルJ SS-085 白夜に輝く堕天の月/8 岬陽太、白夜 SS-087 白夜に輝く堕天の月/9 岬陽太、白夜 SS-088 白夜に輝く堕天の月/10 岬陽太、白夜、ドクトルJ 助手・片桐真悟の研究日誌 No 作品名 登場キャラクター SS-099 助手・片桐真悟の研究日誌/1 片桐真悟、ドクトルJ SS-102 助手・片桐真悟の研究日誌/2 片桐真悟、ドクトルJ SS-107 助手・片桐真悟の研究日誌/3 片桐真悟、尖崎鋭一郎 SS-110 助手・片桐真悟の研究日誌/4 片桐真悟、尖崎鋭一郎 SS-116 助手・片桐真悟の研究日誌/5 片桐真悟、ドクトルJ、白夜 SS-121 助手・片桐真悟の研究日誌/6 片桐真悟、ドクトルJ、碓氷透子、橘川薫 臆病者は、静かに願う No 作品名 登場キャラクター SS-119 臆病者は、静かに願う/1 ドクトルJ、片桐真悟 SS-124 臆病者は、静かに願う/2 ドクトルJ SS-129 臆病者は、静かに願う/3 ドクトルJ、牧島、シルスク SS-134 臆病者は、静かに願う/4 ドクトルJ、シルスク SS-138 臆病者は、静かに願う/5 ドクトルJ、片桐真悟 SS-144 臆病者は、静かに願う/6 ドクトルJ、牧島 SS-156 臆病者は、静かに願う/7 ドクトルJ SS-157 臆病者は、静かに願う/8 ドクトルJ、狭霧アヤメ SS-176 臆病者は、静かに願う/9 ドクトルJ、白夜、岬陽太、水野晶 SS-191 臆病者は、静かに願う/10 ドクトルJ、白夜、岬陽太、水野晶 SS-195 臆病者は、静かに願う/11 ドクトルJ、白夜、岬陽太、水野晶 SS-228 臆病者は、静かに願う/12 ドクトルJ、牧島、白夜、岬陽太、水野晶、比留間慎也 SS-244 臆病者は、静かに願う/13 ドクトルJ、比留間慎也 SS-248 臆病者は、静かに願う/14 ドクトルJ、比留間慎也 SS-249 臆病者は、静かに願う/15 ドクトルJ、比留間慎也 SS-255 臆病者は、静かに願う/16 ドクトルJ SS-256 臆病者は、静かに願う/17 ドクトルJ、狭霧アヤメ、シルスク、ラヴィヨン SS-257 臆病者は、静かに願う/18 ドクトルJ、狭霧アヤメ、シルスク、牧島勇希、尖崎鋭一郎 見つめ合うと砂になるからお喋りできない No 作品名 登場キャラクター SS-169 見つめ合うと砂になるからお喋りできない/1 伊達豪輝、寿々代夏海 SS-179 見つめ合うと砂になるからお喋りできない/2 伊達豪輝、赤髪(仮)、スキンヘッド(仮)、モヒカン(仮) SS-185 見つめ合うと砂になるからお喋りできない/3 伊達豪輝、伊達香澄、伊達魁斗 SS-193 見つめ合うと砂になるからお喋りできない/4 伊達豪輝、寿々代夏海 SS-261 見つめ合うと砂になるからお喋りできない/5 伊達豪輝、島津龍一 劇場版 No 作品名 登場キャラクター SS-211 劇場版/予兆編 シルスク、ラヴィヨン、シェイド、岬陽太、水野晶、加藤陸、八地月野、吉野小春 SS-214 劇場版/侵蝕編 Mr.ブラックスノー、シルスク、アルシーブ、ラヴィヨン、シェイド、マドンナ SS-215 劇場版/再生編 Mr.ブラックスノー、シルスク、クエレブレ、ラヴィヨン、シェイド、(アルシーブ) その他 No 作品名 登場キャラクター SS-137 神に叛く男の学校生活 岬陽太 IL-026 (避難所1スレ目539) 白夜 IL-027 (避難所1スレ目554) 狭霧アヤメ IL-029 (避難所1スレ目629) 白夜 IL-030 (避難所1スレ目647) ラツィーム SS-194 バフ課2班の平凡な一日 勅使河原亜里葉 SS-204 嘘予告編 IL-038 (5スレ目24) 狭霧アヤメ SS-236 春の朝 SS-237 チェンジリング・プ○キュア! 白夜、樹下楓 SS-238 チェンジリング・プ○キュア!/2 白夜、樹下楓、鎌田之博 SS-259 主人公、ドクトルJに代わりまして……白夜? 白夜、樹下楓、ドクトルJ SS-260 白夜ちゃんのあらすじ解説 白夜
https://w.atwiki.jp/elekata/pages/13.html
エレ片本放送(2006/04/07~2007/12/26)まとめ ◇2007年 放送日 コメント パワープッシュ 放送回数 2007/12/26 チャラペラドッキリ 91回 2007/12/19 悪口なら片桐へ/今晩はそうゆう気分じゃないんだ 何も言えなくて冬 90回 2007/12/12 ゲスト:宮本浩次/卑屈歌謡祭/Perfumeからのメッセージに今立いない 89回 2007/12/05 インフォバー2/ファミスタ評価/TMNへ/フォイ! 88回 2007/11/28 片桐誕生日/エンドレスプレゼント 87回 2007/11/21 やつい生誕祭/今立グデングデン 86回 2007/11/14 やついカビ装備/今立タライ物件紹介される 電気グルーヴ「少年ヤング」エレファントカシマシ「さよならパーティー」 85回 2007/11/07 やつい加圧入会/カッコイイ装備/シャケ缶警察/うろ覚えステーション「創世のアクエリオン」 エレファントカシマシ「俺たちの明日」 84回 2007/10/31 今立D物件紹介される 83回 2007/10/24 片桐98年ごろの思い出/ラーメンズの上下関係/やついは不細工ヤムチャ/やついヤリマンに「無理」と言われる/「心が顔になればいいのに」/卑屈サンバ/うろ覚えステーション「Lifetime Respect」/ムラムラむらさん/「男性器がっ来ーるぜ!」/孫イヤーン/ 82回 2007/10/17 ゲスト:小島よしお/誰とでもすぐヤッちゃう彼女話 81回 2007/10/10 ラジヲの人に会ってきた/稲淳通信07/心霊写真の定義 80回 2007/10/03 片桐頻尿先生/稲川淳二がライブに来たよ/片桐ウォシュレットの間違い 79回 2007/09/26 デュエルラブ 78回 2007/09/19 やつい泥酔嘔吐放尿 77回 2007/09/12 やついDJイベント/賢太郎「ゴキゲンなナンバーきちゃって」/うろ覚えステーション「夏色」 76回 2007/09/05 ビーシュート世界大会/大槻ケンヂ 「でも!」 75回 2007/08/29 ゲスト:宇多丸/卑屈祭り/やついクンニ顔 74回 2007/08/22 ゲスト:南波杏/エロ大喜利 73回 2007/08/15 プールでちんこ話/片桐修学旅行でミイラになる 72回 2007/08/08 陽水アー 71回 2007/08/01 片桐また舞台でダメダメ/やついヤクザ映画/太朗DVDに挿入 70回 2007/07/25 こんな夏休みの宿題はイヤだ 69回 2007/07/18 ホフディランアタック祭り 68回 2007/07/11 エレキバスツアー07/片桐いつも同じTシャツじゃねぇか!/片桐童貞の夢 67回 2007/07/04 片桐ガンダム大破/やつい、宇多丸さんにそそう 66回 2007/06/27 農林漁業事始め/片桐隣人オナニスト 65回 2007/06/20 スピードワゴンときめきSP 64回 2007/06/13 OPに宮迫/ムラさん エロ悲SP 63回 2007/06/06 片桐キレたら関西弁/片桐冷蔵庫でキレる件/やつい温泉話/ボンスミボーン 62回 2007/05/30 やついサウナ論/メロン記念日ゲストのエロ占い 61回 2007/05/23 『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』プレミア試写会/いがらしさぁん!/恋文ボクシング 60回 2007/05/16 太朗トイレトレーニング/ディズニーの魔女/うろ覚えステーション「純恋歌」/今立路上でDS盗まれる 59回 2007/05/09 やつい鶴巻温泉/今立放送中にDS/ムラさん暴走開始 58回 2007/05/02 やついガサガサ声/今立君にクオカードw 57回 2007/04/25 三国志メニュー連環の計/ムラさん ビートルズ 56回 2007/04/18 デリ片SP 55回 2007/04/11 ベリーズSP/トキ大入学式 54回 2007/04/04 トキ大解説 53回 2007/03/30 片桐in札幌/トキ大解説 52回 2007/03/23 片桐、青山墓地から生中継/ぽいこと選手権 51回 2007/03/16 居酒屋三国志 50回 2007/03/09 閣下コメント/やついタイのタクシーでぼったくられる/やついタイ人の漫画家と交流 49回 2007/03/02 片桐福岡へ/ゲスト:バカリズム升野くん/カブキ裁判長 48回 2007/02/23 エロ悲SPなのにメールを1通しか読めなかった/ゲスト 渡辺正行 47回 2007/02/16 世界三大美女おのまちこ/ゲスト ネコひろし 46回 2007/02/09 片桐ガンダムになる/世界三大珍味/片桐オナニーと間違えて部屋でオシッコ 45回 2007/02/02 ガールズロック選曲/懺悔しなさい 44回 2007/01/26 サッカー武田エロ悲しい 43回 2007/01/19 片桐、寝てたら売れました/やつい、木根尚登に呼ばれて仁志選手のホームパーティーへ 42回 2007/01/12 エレ片大感謝祭/稲川さんドン滑りしてオバケのせいにした。 41回 2007/01/05 片桐、ディズニーシーを満喫/やつい、バリウムが上手く飲めない/コーナーのコーナー 40回 ◇2006年 2006/12/29 今までのコーナーを振返る/賢太郎access大好きバラされる/年に一度の大オナニー 39回 2006/12/22 先週の放送、ラーメンズファンに大不評/片桐、舞台で泣けない/ミキミキミキティのねっとり解説 [ゲスト]原幹恵 38回 2006/12/15 ラーメンズSP&あらららやっちゃた占い[ゲスト]飯田延孝 37回 2006/12/08 阿部サダヲも聞いている/飯田延孝のあらららやっちゃた占い 36回 2006/12/01 片桐、舞台の打上げ結果/ラーメンズライブに味方を呼ぼう 35回 2006/11/24 Aの系譜・Bの系譜/二年ぶりにラーメンズライブ。 34回 2006/11/17 やつい、皆に誕生日を忘れられる/リスナーの告白をアドバイス 33回 2006/11/10 片桐汁男優/ゲスト:ゲビル 32回 2006/11/03 片桐、Love30初日の挨拶でしくじる 31回 2006/10/27 やつい、災難続き/三国志ヒジ 30回 2006/10/20 ゲスト:原幹恵/俺怒SP 29回 2006/10/13 正月に音楽イベントやります。 28回 2006/10/06 エレ片メンズノンノに取材を受ける 27回 2006/09/29 エレ片ライブ東京凱旋/やつい父と弟 26回 2006/09/22 やつい、リスナーにアップルパイを貰う/やつい父ミクシィでなりすまし 25回 2006/09/15 片桐、一人でぐずぐずのオープニング [ゲスト?]キャイ~ン 筋肉少女帯「踊るダメ人間」(片桐仁のPP) 24回 2006/09/08 片桐仁殺人事件/片桐バイトのビラを全部捨てる 23回 2006/09/01 キラキラいいにおいSP [ゲスト]峯田和伸・村井守(銀杏BOYZ) 22回 2006/08/25 片桐、交流戦でいっぱいいっぱい/タトゥーを帰らせようSP/[ゲスト]t.A.T.u. 21回 2006/08/18 エレ片OMOSHIROライブ福岡こぼれ話/パワープッシュ住所 20回 2006/08/11 DJやつい、ひたちなかのロックフェスへ 19回 2006/08/04 リスナーからじゃがポックルが届く/やついロックフェスへ、ユ◯Qも便乗 18回 2006/07/28 みんなのうた「夏の日の1993」/やついと片桐札幌満喫/片桐の携帯を客に教えよう/やついは教えても掛かってこなかった(家にはファン詰め寄る)/8月SPWゲストはt.A.T.u./ヤリチン/ねづっちからのネタ/コーナーのコーナー/ウソテク/太朗とうろこ/デブ高バレー/【コント】「三倍速の男」/第二回携帯ジャンケン/じゃがポックル超うめえから送って下さい Lantern Parade「甲州街道はもう夏なのさ」 17回 2006/07/21 北海道HBCから生放送/札幌OMOSHIROライブの感想/北海道マンのテーマ/占いの結果エレ片とTERUが相性抜群/TERU面白い事送ってこい!/キラキラ/イパネマの娘を訳すっしょ/【コント】「捜査一係」/TERUからのメール/やついロックフェス/YRFに場所提供のメール/今週のTERU決定 GLAY「誰かの為に生きる」・マキシマムザホルモン「恋のメガラバ」 16回 2006/07/14 【コント】「やっつんバーガー接客マニュアル」/片桐、ディズニーランド&シーで家族サービス/ビッグサンダー割礼マウンテン/デブ風林火山/コーナーのコーナー/太朗とうろこ/ウソテク/ヤリチン/ヤリチンなぞなぞ/【コント】「擬音くん第二話」/泥棒呼ばわりに怒る片桐/イパネマの娘を訳すのだ class「夏の日の1993」 15回 2006/07/07 【コント】「雑学王」/前回放送終了後ファンの星野さんにウスターソースを貰うエレ片/太朗「DV! DV!」/天パー甲子園準決勝/キラキラ/イパネマの娘を訳すのよ/【コント】「雑学王2・学校編」/天パー甲子園決勝戦/ユリア勝利 甲本ヒロト「真夏のストレート」 14回 2006/06/30 【コント】「名古屋ウーマン」/CBCラジオより生放送/名古屋の人はういろう嫌い/飯田占いの結果星野仙一とやついは同一人物/仙一来てくれ/ヤリチン/イパネマの娘を訳すみゃあ/【コント】「俺があいつであいつが俺で僕で」 キセル「サマタイム」 13回 2006/06/23 【コント】「ガンダム占い」/生収録疑惑/エレキタイへ行く/イパネマの娘を訳すよ/キラキラ/【コント】「擬音くん」/天パー甲子園県代表決定/地球深部探査船 12回 2006/06/16 ゲスト:児嶋/【コント】「最新流行語講座」/児嶋vsボージョボー/ウォイ!/サイパンタートル/ハニカミロンリー/ヤリチン/キラキラ/今立が電車で恋した女の子/【コント】「最新流行語講座・第二回」 11回 2006/06/09 ゲスト:稲川淳二・スピードワゴン/エロ川淳二/【コント】「片桐仁30秒クッキング」/イパネマの娘を訳そうよでスピワと対決、エレ片勝利/みんなのうた「イミテーション・ゴールド」 10回 2006/06/02 ゲスト:大槻ケンヂ/みんなのうた「セーラー服を脱がさないで」/ベープで蚊を退治するも、自分も調子悪くなるやつい/オーケンゲストでそわそわする片桐/エロ川淳二のエロ体験談/Fuck隊/スキャンティーとタンハイでオナニーはしないオーケン/キラキラいいにおい/みんなのうた「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ(ライブver.)」 9回 2006/05/26 【コント】「僕のお父さん」/低テンションやつい/蚊が多い/キラキラいいにおい/コント「エロ川淳二・第三夜」/稲淳ゲスト回について/スピードワゴンとの対決はイパネマの娘に決定/ヤリチンブーム/みんなのうた「この木なんの木」、「北酒場」/天パー甲子園 8回 2006/05/19 【コント】「レミオロメンのいる風景」/エレ片レイティング週の聴取率10・20代男子一位/10・20代女子誰も聞いてない/女リスナー獲得のためにキラキラいいにおいのコーナー発足/ヤリチン/みんなのうた「TRAIN-TRAIN」/コーナーのコーナー/天パー甲子園/初めてのコント/【コント】「エンドレス爪切り」/片桐大統領/片桐割られたバレンタインチョコの思い出/片桐おねしょしても風呂入らず 7回 2006/05/12 【コント】「エロ川淳二・第二夜」/エレキ単独(This is conte)終了、オーケンも絶賛/阿部サダヲも聴いているエレ片/ミュージシャンに顔が広いやつい/エンヤのコーナーパクリ疑惑/みんなのうた「魅せられて」/エンヤを訳そうよ/スピードワゴン乱入/【コント】「ギャル男面接」/ヤリチン/【コント】「卒業式」/リスナー作ジンジョボー人形 6回 2006/05/05 片桐UDONの呑みで大失敗/ヤリチンブーム/みんなのうた「もしもピアノが弾けたなら」/エンヤを訳そうよ/【コント】「実況席」/初めてのコント/ジンジョボー人形とキングマーラーのイラスト 5回 2006/04/28 みんなのうた「なごり雪(ライブver.)」/エレ片OMOSHIROライブの話/片桐ライブに1時間遅刻/片桐へのドッキリ/ビジネスホテルで寝るとおねしょする片桐/ジンジョボー/片桐髪の毛が抜けて仕事がなくなる夢/エンヤを訳そう/ヤリチンブーム/ガンダムvs三国志/【コント】「エロ川淳二」/みんなのうた「プレイバックPart2」 4回 2006/04/21 ゲスト:児嶋/【コント】「シルエットクイズ」/嫁にダメ出しされる片桐/やついボージョボーについて熱弁/ボージョボー体験談募集/初めてのコント/みんなのうた「ガンダムじゃない」/児嶋作コント「蛯原友里と押切もえ」・「亀田三兄弟」/児嶋の初めてのコント「犬レフリー」/みんなのうた「富士サファリパークのテーマ」 3回 2006/04/14 【コント】「視力検査」/小林と最近会っていない片桐/コーナーのコーナー/綺麗な石/綺麗な○/ヤリチンブーム/呂布見ました/ガンダムvs三国志/【コント】「苦情電話」/スピードワゴンのラジオとコーナーがダダ被り/エンヤを訳そう/みんなのうた「ジンギスジン」/呂布見ました/テム・レイ見ました/片桐大統領/小林電話出演/注釈が必要なラジオ 2回 2006/04/07 記念すべき第一回放送/【コント】「出席」/浦口さんのコント紹介/初めてのコント(須山作&作家嫁作)/【コント】「笑う放送作家」/やついのやってみたいコーナー発表/【コント】「エンドレス髭」/エンヤを訳そう/片桐大統領/みんなの歌「紅」 1回
https://w.atwiki.jp/wiki14_anime/pages/208.html
参考文献 <オープニング> ぱにぽにだっしゅ! OP1「黄色いバカンス」(片桐姫子) ぱにぽにだっしゅ! OP1「黄色いバカンス」(橘玲) ぱにぽにだっしゅ! OP1「黄色いバカンス」(桃瀬くるみ) ぱにぽにだっしゅ! OP1「黄色いバカンス」(6号さん) ぱにぽにだっしゅ! OP2「ルーレット☆ルーレット」 ぱにぽにだっしゅ! OP2「ルーレット☆ルーレット」#18ver. ぱにぽにだっしゅ! OP3「少女Q」(上原都) ぱにぽにだっしゅ! OP3「少女Q」(6号さん) <エンディング> ぱにぽにだっしゅ! # 1 ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! # 2 ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! # 3 ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! # 4 ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! # 5 ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! # 6 ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! # 7 ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! # 8 ED「癒し系魔法少女ベホイミ」 ぱにぽにだっしゅ! # 9 ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! #10ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! #11ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! #12ED「ガールッピ」 ぱにぽにだっしゅ! #13ED「遥かな夢」 ぱにぽにだっしゅ! #14ED「ムーンライト・ラブ」 ぱにぽにだっしゅ! #15ED「ムーンライト・ラブ」 ぱにぽにだっしゅ! #16ED「ムーンライト・ラブ」 ぱにぽにだっしゅ! #17ED「ムーンライト・ラブ」 ぱにぽにだっしゅ! #18ED「ムーンライト・ラブ」 ぱにぽにだっしゅ! #19ED「ムーンライト・ラブ」 ぱにぽにだっしゅ! #20ED「ムーンライト・ラブ」 ぱにぽにだっしゅ! #21ED「ムーンライト・ラブ」 ぱにぽにだっしゅ! #22ED「ムーンライト・ラブ」 ぱにぽにだっしゅ! #23ED「ムーンライト・ラブ」 ぱにぽにだっしゅ! #24ED「雪月花」 ぱにぽにだっしゅ! #25ED「遥かな夢」 ぱにぽにだっしゅ! #26ED「黄色いバカンス」(片桐姫子) ぱにぽにだっしゅ! OP TV版 DVD版 # 1 なし # 1 黄色いバカンス(片桐姫子) # 2 黄色いバカンス(片桐姫子) # 2 黄色いバカンス(片桐姫子) # 3 黄色いバカンス(片桐姫子) # 3 黄色いバカンス(片桐姫子) # 4 黄色いバカンス(片桐姫子) # 4 黄色いバカンス(片桐姫子) # 5 黄色いバカンス(片桐姫子) # 5 黄色いバカンス(片桐姫子) # 6 黄色いバカンス(片桐姫子) # 6 黄色いバカンス(片桐姫子) # 7 黄色いバカンス(片桐姫子) # 7 黄色いバカンス(片桐姫子) # 8 黄色いバカンス(片桐姫子) # 8 黄色いバカンス(片桐姫子) # 9 黄色いバカンス(片桐姫子) # 9 ルーレット☆ルーレット #10 ルーレット☆ルーレット ※1 #10 ルーレット☆ルーレット #11 黄色いバカンス(橘玲) #11 ルーレット☆ルーレット #12 ルーレット☆ルーレット #12 ルーレット☆ルーレット #13 黄色いバカンス(橘玲) #13 ルーレット☆ルーレット #14 黄色いバカンス(片桐姫子) #14 ルーレット☆ルーレット #15 ルーレット☆ルーレット ※2 #15 黄色いバカンス(桃瀬くるみ) #16 黄色いバカンス(橘玲) #16 ルーレット☆ルーレット #17 黄色いバカンス(桃瀬くるみ) #17 少女Q(上原都) #18 ルーレット☆ルーレット ※3 #18 少女Q(上原都) #19 黄色いバカンス(6号さん) #19 少女Q(上原都) #20 少女Q(上原都) #20 少女Q(上原都) #21 少女Q(上原都) #21 少女Q(上原都) #22 黄色いバカンス(6号さん) #22 少女Q(上原都) #23 少女Q(上原都) #23 少女Q(上原都) #24 少女Q(6号さん) #24 少女Q(6号さん) #25 なし #25 黄色いバカンス(片桐姫子) #26 なし #26 なし ※1 TV版もDVD版も使用されているのは一条さんver.のみ ※2 メソウサとレベッカのダンスの動きが修正 ※3 クレジットの「OPテーマ」のところで一瞬現れるのが一条望と犬神雅 マス目の6号さんの中でひとつだけ姫子 ぱにぽにだっしゅ! ED # 1 ガールッピ 傘と校章 # 2 ガールッピ 傘と校章 しゃがんでいる玲 妙子追加 # 3 ガールッピ 傘とメソウサ # 4 ガールッピ 月と星 エイリアン # 5 ガールッピ 月と星 カッパ # 6 ガールッピ 月と星 ジジイ始まり # 7 ガールッピ 太陽とスイカ # 8 癒し系魔法少女ベホイミ # 9 ガールッピ 太陽とティーカップ #10 ガールッピ 太陽とスイカ → 夕日と四つ葉のクローバー → 月と星 #11 ガールッピ ウサギの頭のシルエットと音符 #12 ガールッピ カニとアホ毛 #13 遥かな夢 #14 ムーンライト・ラブ タロットカードが XVII:The Star/レベッカ宮本 I:The Magician/橘玲 #15 ムーンライト・ラブ 〃 XII:The Hanged Man/メソウサ XVIII:The Moon/上原都 #16 ムーンライト・ラブ 〃 XVI:The Tower/桃瀬くるみ XXI:The World/一条さん #17 ムーンライト・ラブ 〃 X:Wheel of Fortune/白鳥鈴音 XIX:The Sun/片桐姫子 #18 ムーンライト・ラブ 〃 VII:The Chariot/秋山乙女 XX:Judgement/早乙女先生 #19 ムーンライト・ラブ 〃 XIII:Death/ジジイ VI:The Lovers/犬神つるぎ&南条操 #20 ムーンライト・ラブ 〃 XV:The Devil/綿貫響 O:The Fool/宮田晶 #21 ムーンライト・ラブ 〃 XIV:Temperance/来栖柚子 IV:The Emperor/芹沢茜 #22 ムーンライト・ラブ 〃 V:The Hierophant/6号さん III:The Empress/柏木姉妹 #23 ムーンライト・ラブ 〃 IX:The Hermit/桃瀬修 VIII:Strength/五十嵐先生 #24 雪月花 #25 遥かな夢 ハガキ #26 黄色いバカンス(片桐姫子)
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/1328.html
前回までのあらすじ 日出生台演習場に武器弾薬を移送中の片桐三曹以下6名の自衛官は、突如見知らぬ世界ヌーボルに召還された。 ア ムター村の聖女スビアが蛮人アンバードの襲撃から自分たちを救うために、古代ロサールの魔法で片桐たちを召還したのだ。そこはガンドールと呼ばれるこびと とクーアードと呼ばれる人間が混住している村だった。元の世界に帰る方法は、アンバードを倒し、ヌーボルに召還された目的を達成することだった。 聖女スビアに一目惚れした片桐は彼に同意した部下とともに戦いに望む。須本、中垣、岡田の3名は戦死するが目的は達成され、元の世界に帰ることができるようになった。しかし、片桐はスビアに愛を告白し、自らこの世界に残ることを決心した。 ゾードと呼ばれている赤い満月の夜が来ても、アンバードは襲撃してはこなかった。あの襲撃から半月たっていた。村人ともに粗末な外壁の上で見張りに立つ片桐はまっすぐ正面を見据えていた。 村人は手に89式小銃を持っている。高崎士長たちが元の世界に帰った後に残されたトラックには大量の武器弾薬が積まれていた。片桐は彼らに武器の使い方を教えてこの村を自衛できるようにしたのだ。 片桐は残り少なくなったタバコに火をつけた。もうすぐこの味ともお別れだ。 「俺・・・我ながら大胆なことをやったもんだ・・・」 片桐にとってスビアとの出会いは運命的であった。片桐とて女性との交際経験はないわけではない。しかし、彼が今までに出会ったどの女性よりもスビアは美し く、純粋だった。だからといって、彼女との生活のためにこの世界に残るということは高崎の言うとおり、「正気の沙汰ではない」ことだった。冷静な指揮官と して隊内での評価の高かった片桐らしくない行動だった。 だが片桐自身それは後悔していない。 「片桐・・・」 アムター村の聖女スビアが片桐に声をかけた。 「スビア、どうしたんです?こんな遅くに」 「あなたに相談があって来ました・・・」 村人たちの前で堂々と愛を語った片桐だったが、スビアとの関係は現代日本からしてみればかなりプラトニックなものだった。そもそもこの世界に結婚という概 念はなく、男女はいわば夫婦ではなく、パートナーとしてともに生活するのだ。そのかわり、カップルはお互いの愛を表明した後少なくとも3年は、その愛に偽 りがないことを証明するために純潔を守る。つまり、片桐はあと2年11ヶ月は彼女にいわゆる「手をつける」ことはできないわけだ。 「相談・・・ですか?」 「はい、あなたにしかできない相談です」 スビアはこの世界のことも含めた話を片桐に始めた。 「と、とんでもないです!」 村の長老ザンガンはスビアの申し出を聞いて仰天した。腰をぬかさんばかりの驚きとはこのときの彼を言うのだろう。 「危険すぎます!」 「いえ、わたくしは決めたのです」 スビアも一歩も譲らない。聖女と言われているがこんな時には、二十歳そこそこの女の子をかいま見せる。 「この世界に安寧をもたらすためにもわたくしは行くのです!」 片桐への彼女の相談とは、このことだった。 あの夜、片桐に語ったスビアはこの世界の歴史を教えてくれた。 この世界、ヌーボルはかつてロサールと呼ばれる国が支配し、平和に満ちていた。人々はロサールのもたらす魔法で繁栄を謳歌していた。しかし、突然謎の滅亡 を遂げたロサール。世界は一変した。それまで押さえ込んでいた、蛮人アンバードが森を支配し、人々は村落にこもって生活するようになった。時代が流れ、ロ サールの魔法の知識も徐々に失われると村落にまでアンバードが侵入してくるようになった。かろうじて保たれていた他の村々との交流も途絶えがちになり、こ のままではアンバードが完全にこの森を支配することになる。 「遙か遠くに、ロサールの都だった聖地があると聞きました。そこに行ってかつてこの世界に安寧をもたらした古代魔法を修得し、世界を再び平和にしたいのです。聖女として生まれてきたわたくしは、村人だけでなく、世界の人々の平和を望んでいるのです!」 片桐はスビアのこの純粋な気持ちに心打たれた。世界を支配できる魔法を会得しながら、それを支配ではなく平和共存のために使う。 単純だが純粋な気持ちだと思った。元の世界の大統領たちに聞かせてやりたいせりふだった。 「わかりました・・。そこまで言うならわしも止められますまい・・・・」 片桐が夕べのことを思い出している間に結論が出たようだ。ザンガンがとうとう折れた。 「片桐、スビア様のことをくれぐれも頼むぞ・・・。それから、スビア様の願いだ。おまえにひとつ力を授けよう・・・」 「力?」 ザンガンは片桐に歩み寄った。彼の額に手を当てる。 「今、話したい相手のことを想像しろ」 「誰でもいいのか?」 「よい・・・」 片桐は考えた。高崎は無事に帰ってどうしているだろう・・・。その瞬間、片桐の視界が真っ暗になった。 「話しかけてみろ」 ザンガンの声だけが聞こえた。とりあえず、言われたとおりに話しかけてみる。 「高崎、高崎!」 暗闇の中かから声が聞こえてくる。聞き覚えのある高崎の声だ。寝ていてベッドから飛び起きたということまでなぜかわかった。 「三曹?片桐三曹ですか?」 「そうだ、俺だ」 「夢じゃないですよね・・・・」 「たぶん夢じゃない・・・」 片桐はうろたえる高崎を落ち着かせてこれまでのいきさつを説明した。 「こっちも大変でしたよ。結局我々は土砂崩れに巻き込まれて、三曹を含め4名死亡ってことになりました。自衛隊が公式にこんな話を認めるわけにはいきませんからな。しかし、三曹も大変ですな。3年も蛇の生殺しとは・・・」 高崎がくすくすと笑うのがなぜかわかった。照れ隠しに軽く咳払いする。 「そうか、また何かあったら連絡する」 「了解、お元気で」 視界が戻った。ザンガンの顔が目の前に見えた。 「今のはいったい・・・・」 「古代ロサールの魔法のひとつだ。目を閉じ、話したい相手を想像するんだ。精神と精神がお互いにつながれば話ができる。つまり、初対面の人間には使えぬということだ。 おまえはポルの量が多い。いろいろ修得するとよい」 「ポル?」 ザンガンの話によれば、ポルとは簡単に言えば精神力だ。すべての魔法はポルを使い発生させる。魔法の種類に応じてポルを消費するが、消費されたポルは休息することで補うことができる。 「それから・・・」 ザンガンは1枚の紙を片桐に手渡した。紙には大きな大陸が描かれている。地図のようだった。 「大昔に命知らずが書いたとされるヌーボルの地図だ。どこまで正確かはわからんがね」 大陸はオーストラリア大陸を逆さまにしたような形だった。ちょうどキャンベラのあたりだろうか、この村の位置が記されている。そのまわりにいくつかの村があるようだが、他の地域は白紙だ。まったく頼りない地図だ。ザンガンはもう1つ、何か詰まった袋を片桐に手渡した。 「持っていけ。この村では使うことはないが、よその村で何か使うときに役に立つ。900サマライある」 「いけません!それはザンガンがこつこつ貯めていたものではありませんか!」 スビアが大声をあげる。どうやら通貨の一種らしいことが片桐にもわかった。 「よいのです、スビア様。どうぞお使いください」 スビアはザンガンを抱きしめた。 「ありがとう、ザンガン。わたくしを許して。でもこの世界でこれ以上、わたくしのような境遇の者を作ってはいけないのです・・・!」 スビアの両親はアンバードとの戦いで死んでいた。このために、若い彼女が村の聖女としてのプレッシャーに耐えながらこの村を率いてきたのだ。それ以来、ザンガンのところで彼女は育ったのだ。そのザンガンは彼女を優しく抱きしめた。 「さあ、スビア様、お行きなさい。村人一同、あなたと片桐の無事を神に祈っておりますぞ・・・」 翌朝、村の門の周りに村人たちが集まっていた。片桐とスビアを見送るためだ。みな、一様に寂しそうな顔をしている。 「片桐・・・・無事で帰ってこいよ」 ガンドールのバストーがいつになく神妙に片桐に話しかけた。片桐は笑って彼の肩を叩いた。 「おまえこそ、村を守るんだぞ!」 そう言って片桐は数名の村人に手を借りてトラックの奥から偵察用のオートバイをおろした。こいつがあったのは幸運だ。片桐は確かめるようにエンジンキーを回した。心地よいエンジン音があたりに響く。 「うわあ!!」 村人は初めて聞くバイクのエンジン音に驚いて後ずさった。これでどこまで走れるかわからないが、少なくとも荷物を担いて歩く手間は当分考えなくていいよう だ。荷物はざっと見積もってもかなりあった。水、食料はもちろん、89式小銃。護身用のシグザウエル。弾薬、手榴弾はバックパックに詰められるだけ詰め込 んだ。これらをバイクの両側にバランスよくつり下げた。 「さあ、でかけましょう」 片桐はバイクにまたがってスビアに声をかけた。彼女はおずおずと片桐の後ろに乗り込んだ。 「俺の腰に手を回して、で、これをかぶってください」 片桐は自分のヘルメットを彼女にかぶせた。バイクの腕には自信があるが、万が一のことを考えてだ。 「銃は教えたとおりに使うんだぞ!弾は今あるだけしかない。無駄につかっちゃいけないぞ!」 片桐に銃の操作を習った村人が手を挙げた。それを確認した片桐はバイクのエンジンを思いっきり吹かした。 「さあ、出発しますよ」 「はい・・・」 軽くうなずくスビアを見て片桐はバイクを発進させた。それを村人たちの後ろで見守っていたザンガンが小さくつぶやいた。 「いにしえの神よ、彼らを守りたまえ・・・・」 バイクは快調に不整地の道を走っている。スビアは片桐にぎゅっと捕まっていた。片桐は彼女の豊かな胸の感触が彼のベストのせいでほとんど感じられないのを少し残念に思った。 「スビア、大丈夫ですか?」 自分に浮かんだよこしまな感情を打ち消すように彼女に質問した。ヘルメットをかぶったスビアはそれからはみ出した長い黒髪を風でなびかせながら答えた。 「大丈夫、わたくしたち、風を追い抜いて走っていますわ!」 「とりあえず。海に出ましょう!」 「海?」 大声でスビアが質問を返した。確かに、地図上はこのまま左(すなわち地図上では東)に進めば50キロほどで海に達する。しかし彼女は村からほとんど出たことがない。海の存在を知らないわけだ。 「巨大な湖ですね。行ってください!そこにわたくしの村と友好関係のある村があるはずです!」 片桐はバイクのスピードを少し上げた。ヌーボルに来て初めてアムター村以外の集落を目にするのだ。好奇心が沸いてくるのを押さえられない。 「片桐!怖いわ!もっとゆっくり走ってください!」 とたんに後ろのスビアから抗議の声があがった。片桐は苦笑しながらスビアに答えた。 「免許は持ってますからご心配なく!」 3時間ほど走ると片桐たちは森を抜けた。土地はほとんど平坦で走るのにさほどの技術も要しなかった。だがそのかわり、周囲の状況を確認できないストレスもあった。今ようやく森を抜け、片桐はバイクを止めた。 「スビア!海ですよ!」 彼らの眼前には大きな広い砂浜が広がっていた。ゴミ一つない美しい砂浜だ。そしてその海は遙か水平線が見えた。これは同時に、少なくともこの大陸のこちら側には目に見える距離で島は存在しないことを意味していた。 「片桐!あそこ!」 スビアが指さした。片桐は首に下げた双眼鏡で彼女の指さした方向を見つめた。1人の男が見たこともない怪物に襲われている。大きさはおよそ3メートル。ワニのように見えるが、その頭には角が生えている。 「それはクブリルだわ!急がないと!」 スビアの言葉を聞いて片桐は素早くバイクを発進させた。男は砂に足を取られながら必死にクブリルから逃げているが、クブリルは4足歩行で着実に彼を追いつめているように見えた。そして、片桐のバイクの発する奇妙な音を聞きつけるとその注意を彼に向けた。 「気がついたようです!」 スビアの言葉を聞くまでもなかった。クブリルはその凶暴な顔を片桐たちに向けると、およそ心地よくない叫び声を発した。片桐はクブリルから20メートルほど離れたところでバイクを止めると89式を構えた。それと同時に驚くほどの早さでクブリルは片桐たちに突進した。 パパパン!!! 確実に89式の5・56ミリ弾はクブリルの脳を直撃したはずだった。しかしクブリルはその頭から青い血を吹き出し、大声を上げただけだ。怒りの雄叫びということは初めて見た片桐にもわかった。 「くそっ!」 もう一連射片桐はクブリルに浴びせた。それでもクブリルは青い血を流しながら片桐たちに突進を開始した。 「来るわ!」 スビアがバイクの後ろで大声をあげた。片桐は89式のセレクターをフルオートに切り替えた・・・。しかし、次の瞬間、クブリルはぴたっと動きを止めた。そしてそのままぐったりと倒れて動かなくなった。 「いったい、どういうことでしょう・・・」 スビアが不思議そうに言った。 「ヤツの脳が自分の死を体に伝達するのに時間がかかったんでしょう・・・・」 間一髪のところを救われた男は口をぽかんと開けて一部始終を見ていた。片桐はバイクを降りてその男の元へと歩み寄った。 「あ、あなたはいったい・・・・」 男の問いかけに片桐は少しとまどった。まさか、異世界の日本国から来たとは言っても信じてはくれまい。 「アムター村から来た。片桐だ」 聞き覚えのある言葉を聞いて男は顔を明るくした。男は30歳前後、やはり古代ローマ風の服装をして黒髪だ。 「アムター村から?よく来られましたな!さあ、村はこっちです」 男の案内で村に赴くことにした。片桐はバイクを押して男の後に続いた。 村は海沿いの岩場の上に作られていた。アムター村と同じく、周りを岩で作った外壁で囲んである。やはり外敵の脅威はここでも大きいようだ。 「ここはシュミリ村です」 タボクというあの男が説明してくれた。スビアは片桐にこの村はアムター村との友好関係がある村と教えてくれた。彼女が目指そうとしていた村のようだ。アムター村と同じく、長老がいた。タムロットという長老はスビアを見て感激の涙を流した。 「ようこそおいでくださいました。スビア様、こんなにご立派になられて・・・・」 スビアが言うには、子供の頃両親と訪れたことがあるらしい。どんな用事だったかまでは覚えていないと言うが・・・。タムロットの感激ぶりから推測するにかなり重要な訪問だったことは見て取れた。 「で、こちらの方は?」 タムロットがスビアに質問した。片桐の格好を見て不思議な顔をしている。無理もない、彼は迷彩服に防弾チョッキを着込んで、ゆったりとした古代ローマ風のこの世界の一般的な服装とはかけ離れているのだ。 「彼は片桐です。わたくしの村を救うために異世界から来ていただいたのです」 スビアの答えにタムロットは思い出したように目を大きく開いた。 「おおお!そういえばスビア様が以前来られたときにご両親が召還された異世界人の置きみやげがございます!」 長老は片桐たちを村のはずれに案内した。 「これは・・・」 その置きみやげを見せられてまず驚いたのは片桐だった。見覚えのある長い足、美しいたてがみ・・・。タムロットの言う「置きみやげ」とは2頭の美しい若い馬だった。 「15年前に召還した異世界人の乗っていた動物です。今はその子供たちが2頭います」 片桐は納得した。スビアの両親がこの村に赴いた理由は、異世界人の召還のためだったのだ。そして、この馬の親に当たる馬に乗った人物を召還し、元の世界か別の世界へ送り出した。そのとき残された馬が出産してこの馬たちがいるわけだ。 「長老、この馬を貸していただけないでしょうか?」 片桐は不意にタムロットにお願いした。バイクも捨てがたいが、残りの燃料を考えたらそう長く乗ることはできないだろう。 「それは結構ですが、これに乗れるのですか?」 「ええ、そのための道具さえあれば」 片桐の言葉にタムロットは世話をしている村人に何か命じた。村人は近くの小屋から鞍を持ってきた。 「異世界人がこれを使って乗っておりました。我々は使い方を知らないのでしまっておいたのです」 片桐はその言葉を聞くが速いか、スビアの手を取った。 「さあ、こいつの乗り方を教えましょう!」 スビアは要領がよかった。たった半日で乗馬のこつを修得した。片桐は自分の幸運に感謝した。学生の頃、両親に連れられて何度か乗馬スクールに通ったことがあったのだ。「人間、無駄に覚えておくことはない」と言っていた父親に改めて感謝した。 2頭の馬にはそれぞれ名前を付けることにした。スビアが気に入った馬にはローズ。片桐が乗る馬にはセピアと名付けた。 「ここから歩いて3日ほどのところに大きな都市があります。最近大きくなった都市です。あなたがたの旅の目的にかなうかわかりませんが、参考までにお教えします」 旅立ちの前に、タムロットが教えてくれた。 「感謝します。みなさんもお元気で」 スビアがタムロットに挨拶を返した。村人に見送られ片桐たちは出発した。長い長い砂浜を軽快に2頭の馬は進んでいく。 「まったく幸運でした」 「どうしてバイクをあそこに残したんです?」 「正直、ガソリンが心細かったのです」 片桐の言葉に馬上のスビアは首を傾げた。 「ガソリンとは・・・・、あれを動かすポルのようなものです。それがなくなるとあのバイクは動かなくなるのです」 「よくわかりました。それにしてもこの動物はかわいらしい・・。わたくしすっかり気に入りました」 スビアはローズの首を優しくなでた。彼女がご機嫌なのを見て片桐は一つ提案してみようと思った、 「これから我々は見たこともない世界に足を踏み入れます。そのためにはあなたを縛る掟が時に重大な危険を及ぼすこともあるでしょう・・・。」 スビアは片桐の言葉を誤解して顔を紅潮させた。 「わ、わたくしはそんなふしだらな女ではありません!まだあなたと愛を交わして一月もたっていないというのに・・・!」 「いえいえ。そのことではなく、長老格以外と話をしてはいけないという掟です。もし、俺に万一のことがあれば あなたは天涯孤独の身となる。今のうちに他人とコミュニケーションをとる練習をしておいた方がよいのではないのですか」 自分が片桐の言葉を多いに誤解していたことを気がつくと彼女はますます顔を紅潮させた。 「あ、そ、そのことですか・・・。努力はしてみましょう・・・」 それっきり彼女は黙ってしまった。片桐は軽く苦笑いするとしばらくスビアの機嫌が収まるまで黙っておくことにした。 シュミリ村を出て2日は海岸沿いに進んで平穏な旅路だった。幸い、あのどう猛なクブリルにも遭遇することなく、全くの平穏な旅路だった。3日目、スビアが永遠に続くと思われた砂浜の先に何かを見つけた。 「都市のようです!」 片桐は双眼鏡をのぞいた。なるほど、海沿いに大きな都市が見えた。周囲は煉瓦のような城壁で囲まれてその内側は今まで見た村の建物よりも大きい、2階3階建ての建物が見える。片桐がこの世界に来て初めて目にする巨大な都市だ。 「すごいわ・・・あんな大きな都市は初めて見ました」 スビアが感激したように言う。片桐は双眼鏡で都市の様子を眺めていた。そのときだった。 「何者だ!」 誰何の声で片桐は思わず肩に下げた89式に手をかけた。声を発したのは砂浜の切れ目の森から出てきた一団だった。今までのローマ風の衣服と違い、黒い革製 の鎧のようなものを身につけている。手にはパタトールではく、ボウガンそっくりの武器を持っていた。その武器を持った兵士が4名。指揮官はそれとは違って 黒いライフルのようなものを持っている。 「どこから来た」 指揮官が片桐に質問した。その威圧的な言い回しから明らかに敵かどうか疑っているのがわかった。 「アムター村から来た。こちらは聖女のスビア様だ」 片桐が代わりに答える。その言葉を聞いて一団は少しうろたえた。 「こ、これは失礼しました。てっきりガルマーニへ侵入するゲリラかと思い・・」 隊長らしき人物が丁重に頭を下げた。 「では、ガルマーニにご案内します。外部からの客人にはヘラー自らお会いになる決まりでして・・・」 一団は馬におっかなびっくりしながら片桐たちを先導し始めた。その先には巨大なローマ風の都市が見えている。 「スビア、油断してはいけません・・・」 片桐はスビアに近づいてそっと耳打ちした。片桐は警戒していた。明らかに今までの村とはその雰囲気が違ったからだ。 「わかっています・・」 ガルマーニは巨大な都市だった、まず門には片桐たちを誰何したのと同じ格好をした衛兵が詰めていた。外壁は高さ10メートル近く、その上には4,50メー トルおきに衛兵のいる詰め所が見て取れた。都市は今でも拡大しているようで、あちこちで工事が行われている。片桐とスビアは乗馬を門の外につなげた。 「日に2,3度草を食わせてやってくれ」 衛兵にそう頼むと、隊長に付き添われて都市の中に足を踏み入れた。ガルマーニ市内は片桐の想像以上に巨大だった。人々はせわしなく歩き、兵士たちの列が時 折行進していった。兵士は、ボウガンのような武器を持って、腰には長剣を下げている。指揮官はライフルのような武器を持ち、同じように長剣を下げている。 一糸乱れぬ行進で街を徘徊している。 「すばらしいですわ・・・」 スビアがその光景に感動したようにつぶやいた。たしかに、片桐もその光景にある種の関心はあった。だが、彼の直感に近い部分で警告を発している気がした。だがそれが何かは彼自身よくわからなかった。 「さあ、こちらです」 隊長が片桐たちを案内した。大きな通りで彼は歩くのをやめた。彼らの目の前には大きな通りが走っていて、その向こう側にも多くの市民が同じように止まっている。 「いったいこれは・・・」 スビアが隊長に質問しようとしたときだった。通りの向こうから巨大な箱が走ってきた。片桐にはそれがバスのようなものであるとわかった。しかし、彼の知っ ているバスとは違い、ディーゼルの臭いガスもうるさいエンジン音もなく、その窓には多くの市民が乗っているのが見えた。 「ポルを使った公共交通機関です。おかげで我々は街の端から端まで自由に動くことができます」 魔法を動力にした自動車だった。隊長はバスが通り過ぎると片桐たちを促した。 「さあ、ヘラーがお待ちです」 隊長が案内したのは街の中心にある巨大な神殿風の建物だった。その中は豪華な彫刻や絵画で彩られ、多くの黒い服の軍人が行き来している。宮殿と言うよりは軍の司令部のようだ。 「さあ、こちらです」 隊長はその宮殿の3階のドアをノックした。中から入るように促す声が聞こえて隊長はかしこまってドアを開けた。 「アムター村の聖女様ご一行をお連れしました!」 ドアの向こうはヨーロッパ風の広間だった。その中心に据えられた長テーブルで数名の人物が食事をとっているのが見えた。テーブルの中心に座った人物が口を開いた。 「ごくろう。彼らを残して下がれ」 「はっ!」 隊長はすばやく後ずさるとドアを閉めた。残されたのは片桐とスビアだけだった。 「さあ、遠慮しないでどうぞ・・・」 テーブルに座っていた1人が立ち上がって片桐たちに座るように促した。片桐はこの一見友好的な会談にも一抹の不安を抱いていた。しかし、今彼が持っているのは腰のシグザウエルだけだ。 促されて2人はテーブルの真ん中あたりのイスに腰掛けた。片桐の隣の人物は背が高く、端正な顔立ちをしている。そして彼の髪の毛を見て片桐は驚いた。この世界の住人ではありえない、見事な金髪だったのだ。 「ようこそ、アムターの聖女。さあ、とりあえずはどうぞ・・・」 中心に座っている人物が言うと、目の前のグラスになみなみとワインらしき赤い液体が注がれた。それを合図にして一斉に座っていた面々がグラスを手に立ち上がった。 「勝利のために・・・・・ジーク・ハイル!」 一同は一気にグラスを空けた。片桐は異世界で聞いた聞き覚えのあるフレーズに軽いショックを覚えた。間違いなく、今のはドイツ語だ。 「さて、聖女の付き添いの君の名前を聞いていなかったな」 中心の人物が問いかけた。片桐は答えた。 「自分は日本国陸上自衛隊の片桐三曹です」 質問者の目が驚いたように大きく見開かれた。その周りの人物も一様に驚いた表情を浮かべた。 「日本・・・・・、かつての同盟国だな。私はボルマン。マルティン・ボルマンだ」 片桐は驚愕した。目の前の初老の人物がボルマンと名乗っている。60年前に死んだとされるナチの幹部を名乗っているのだ。その動揺を見越したようにボルマンは笑った。 「無理もなかろう。ここにいるのはすべてドイツ人だ。君は何年生まれかね?」 「1977年です」 「ほお・・・あのときから32年後に生まれた訳か・・・」 ボルマンは感慨深げな表情をした。片桐は落ち着こうとグラスのワインを飲み干した。 「あなたがボルマンとしても、どうしてそんなに若いのです?本物のボルマンだったら100歳をとうに越えているはずだ」 片桐のとんちんかんな質問にボルマン以下、部下たちは大声で笑った。ドイツ人特有の低く大きな笑い声だった。 「それは君たちの飲んだワインだ。このワインはガンドールの住んでいた森で見つけたブドウみたいな実から作ったのだ。ドイツワインが恋しくなってね。ところが、その実には思わぬ効能があったのだ。さて、片桐君、ガンドールの寿命を知っているかね?」 「だいたい、100から150年と言われています」 ただならぬ片桐の様子に警戒しながらスビアが答えた。ボルマンは模範的な回答をした生徒をほめるような目でスビアを見た。 「そ の通り。だが、この実があった地域のガンドールの寿命を調べると、続々と300歳、600歳という連中が出て来るではないか。調査の結果、その原因がこの 実にあることがわかった。君たちが飲んだグラスで寿命は30年は延びたはずだ。その間の老化も遅くなるはずだ・・・。もっとも不老不死ではい。老化が遅く なるというだけのものだがね。」 「片桐、この人物を知っているんですか?」 スビアがそっと片桐に質問した。先ほどからの片桐の態度がおかしいことにスビアも気がついていたのだ。 彼女の声が聞こえたのだろう。ボルマンが高らかに笑った。 「アムターの聖女よ。私もこの片桐三曹と同じ世界から来たのだよ。もっとも私の方が遙か前にたどり着いたのだがね・・・」 ボルマンは語り始めた。1945年4月30日。ベルリンから脱出したボルマンは一握りの親衛隊員とまだドイツ軍が占領していたデンマークへ向かった。コペンハーゲンから2隻のUボートで大西洋に抜けた。目的地はアルゼンチンだった。 「Uボートには私の財産と、武器弾薬が満載されていた。しかし、大西洋に出てすぐに、英軍の駆逐艦に見つかったのだ」 爆雷が次々と投下されて2隻はほとんど沈没寸前だった。しかし、ソナー手が大西洋上ではあり得ない場所に陸地を発見し、ボルマンたちは生き残りをかけてそこに上陸した。 「それがこの都市、ゲルマニアのある場所だ。現地人は聞き違えてガルマーニと呼んでいるがね」 ボルマンたちは乗組員40名と親衛隊員50名だけだった。海の近くにあった村に食料を分けてもらいに訪ねると、そこはアンバードに襲撃されている最中だっ た。歴戦の親衛隊員はそれをあっという間に撃退し、村人は狂喜乱舞した。親衛隊の中には技術者や科学者も混じっていた。村人に城壁の建築や、ボウガンの作 り方を教え、アンバードを完全に村の周囲から追い払った。村人の求めでボルマンが村の指導者になったのは半年もたたないうちだった。 「私たちは、 このワインを飲み不老の体を手に入れた。その永遠にも近い時間を使ってこの都市を建築し、現地のクーアードたちに教育を施した。そして彼らにも扱える強力 な武器を開発し、彼らに与えた。噂を聞きつけた、周囲のクーアードたちが続々とゲルマニアに訪れ都市は大きくなった。その技術の結集がこれだ!」 ボルマンは衛兵を呼んだ。黒い服の衛兵がドイツ式敬礼をして入室してきた。手には例のライフルがある。 「客人にゲベールの威力をお見せしろ!」 「はっ!マイン・ヘラー!」 衛兵は窓を開けて指を指した。彼の指し示す方には30メートルほど先に塔が見えた。その先端に人間の頭ほどの丸い石が見えた。衛兵はライフルの要領でそれ を構えると引き金を引いた。「かしゅっ!」と、せき込むような音が聞こえた。そしてその音が聞こえると同時に、塔の上の石が砕けた。 「クーアード の持つポルを使ったライフルだ。ドイツ式でゲベールと呼ばせているがね。火薬の代わりにポルを推進薬にして鉄片を飛ばすのだ。銃よりは威力は落ちるがこの 世界では十分な破壊力だ。それからまもなく戦車も開発が完了する。君も見ただろう、公共交通機関を。あれの応用だ。」 「すごい・・・、なんて兵器なんでしょう」 スビアが素直に感嘆の表情を浮かべる。その彼女をボルマンがなめ回すような目で見ているのを片桐は見逃さなかった。 「で、こんな兵器をそろえる目的は?とても自衛のためとは思えませんな・・・」 ボルマンは再び席に着いた。片桐たちにも促す。席に着いた片桐はワインをすすった。今彼がこの都市に入る前に感じた違和感ともつかない警戒感の謎ははっきりしていた。 「我々はまもなく進撃を開始するのだ。かつて古代ロサールが支配していた土地を、蛮人どもから奪い返すのだ。クーアードの生存権を確立して平和な社会を作るのだよ。そうだ・・・」 ボルマンは視線をスビアに向けた。 「今夜、片桐君と一緒にコロセウムにおいでなさい。すばらしいものをお見せしよう・・・」 スビアは片桐に視線を向けた。判断に迷っているようだ。片桐もむげに彼の申し出を断る理由もなかった。ここに長居する気もなかったが、ボルマンの心証をあえて悪くする必要もないだろう。 「わかりました。」 スビアの答えにボルマンは満足げに頷いて、傍らのドイツ人を呼んだ。 「ハルスマン!この客人をゲストハウスにお送りしろ!」 「はっ、マイン・フューラー!」 ハルスマンと呼ばれた背の高いドイツ人は片桐たちに頭を下げた。 「それでは少し外でお待ちください。準備して参ります」 片桐とスビアはボルマンに食事の礼を述べると外に出た。ボルマンはハルスマンを近くに呼んで耳打ちした。 「あの女。聖女とか言っておったな」 「はっ、この世界では聖女はまさに聖なる存在と呼ばれております。」 ボルマンはワインを一気に飲み干していやらしい笑いをうかべた。 「わが世継ぎを産むにはうってつけの女だ・・・」 ハルスマンはちょっと顔をしかめた。あの美しい女とボルマンの取り合わせはさすがの彼にも違和感を感じたのだ。 「あの女が日本人を見る目は愛し合う者の目だ。いづれじゃまになる。」 「殺しますか・・・?」 「手に余れば拘禁してキャンプに送ってもよかろう」 今はもうハルスマンはさっまでの表情を浮かべてはいなかった。任務に忠実なドイツ人の顔に戻っていた。 「はっ!マイン・フューラー!」 ハルスマンに案内されて片桐たちは外に出た。近くの士官に命じて車を回すように言った。 「自動車まで開発したんですか?」 思わず片桐が質問した。ハルスマンは笑いながら指さした。 「はい、フォルクスワーゲンとまでは行きませんが・・・」 見ると、確かに自動車に近い形の物体がこっちに向かって来るのが見えた。木のホイールでタイヤは皮で覆われていた。ボディは薄い鉄板で簡単に装甲が施され ている。エンジン音は先ほどのバス同様ほとんどなかった。運転兵が後部のドアを開けて片桐とスビアを乗せた。ハルスマンは助手席に座った。静かに車は発進 した。 「いくらポルが強くてもこんな大きなものを動かすことは相当難しいはずです・・・」 スビアが車窓を興味深く見ながら言った。ハルスマンは助手席から後ろを振り返りながら言った。 「スビア様、アクサリーという石のことを聞かれたことはありませんか?」 「・・・あります。古代ロサールの神秘だった謎の石ですわ」 「左様、この都市の郊外の山からそれを産出することに成功しました。その場所と精錬方法は極秘なのでお教えはできませんが・・・」 アクサリーとは簡単に言えばポルを増幅させる媒体であるようだ。普通のクーアードのポルではあまり大きな物質を動かすことなどはできな。しかし、ポルをアクサリーに経由させて物質に働きかけることでその力は増大するのだ。 「それに、ここまで大勢のクーアードが同じようにポルを使いこなせるなんて・・・・」 「それは我がドイツの徴兵システムで教育可能でした」 ガルマーニでは多くのクーアードが2年ほどの兵役を課せられているのだそうだ。その間、ドイツ人の教官がみっちりとドイツ式訓練でポルの使い方を教え込む という。車はハルスマンの説明が終わる頃にちょうどゲストハウスに到着した。ゲストハウスは3階建ての木造。北欧建築の特徴が色濃い様式だった。 「片桐軍曹、拳銃はフロントに預けていただけますか?」 「三曹だ・・・」 片桐は不承不承拳銃をフロントに預けた。ハルスマンはそれを見届けると2人を3階のもっとも豪華であろう部屋に案内した。 「では7時にお迎えにあがります・・・」 うやうやしくスビアにお辞儀するとハルスマンはドアを閉めた。なるほど、部屋はたしかに豪華だった。ボルマンの趣味だろうか、完全なヨーロッパ様式のス イートだった。片桐はとりあえず、ふかふかのベッドに身を投げ出した。アムター村を出発してからほとんど野宿に等しい宿泊だったので、ベッドの心地は懐か しいものだった。片桐はさっきまでのボルマンとの会見を思い出していた。歴史の教科書に出てきていた人物との会談はおよそ奇妙だったが、彼の語りはこの都 市の繁栄ぶりを見るに間違いなく事実であろうことが想像に安かった。そして今夜、自分たちになにを見せるのか・・・、おおかたの想像はついた。 「片桐・・、夜までどうやって・・・」 スビアが片桐に歩み寄ってきた。彼はすばやく彼女を抱き寄せるとベッドに横たえて熱いキスを浴びせた。 「これは掟に違反していますか?」 抱き締めながら片桐が問いかけた。スビアはほほえみながら彼の肩に体を預けた。 「ここまでなら許容範囲ですわ」 「では、一緒に夜まで優雅にシェスタとしゃれこみましょう・・・」 「同感です。わたくしもくたくたですわ・・・」 2人はしばしの仮眠を楽しむことにした。 街に作られたコロセウムはローマのそれを彷彿とさせた。今、この客席には数万の市民が集まって、真っ暗な中心部を見つめている。そこへ一筋のサーチライト のような明かりがともされ、中心のステージ脇に立っているラッパ手に向けられた。ラッパ手は口にラッパをくわえると荘厳なソロを奏でた。それにかぶせるよ うにドラムの単調なリズムが聞こえてくる。 「ごらんください」 片桐とスビアに随行するハルスマンが暗闇を指さした。そこからはたいまつ を抱えた数百の黒服の兵士が一糸乱れぬ行進で中心部に向かって進んでくる。その後方には旗を手にした部隊が続く。無数のサーチライトがこの部隊を照らし出 した。彼ら兵士の持つ旗は見間違う事なき、ハーケンクロイツである。 「ジーク・ハイル!ジーク・ハイル!」 片桐とスビアの周りの市民がその旗を見るや大声で歓呼し始めた。ライトが中心部の舞台を照らした。壇上にはボルマンがナチ党の正装で彼ら兵士たちを敬礼で迎えている。ボルマンの姿が照らし出されるや、市民の歓呼は最高潮に達した。 「すごい・・・・」 初めて見る光景にスビアはただただ驚きの声を上げた。それを見てハルスマンは満足げな表情を浮かべている。行進は旗を持った部隊に続き、ゲベールと呼ばれるライフル部隊が続く。その後方にはボウガンを持った部隊がやはり一糸乱れぬ行進で入場してくる。 「いよいよ今夜の主役のおでましです」 ハルスマンが2人に耳打ちする。出てきたのは数台の戦車だった。 「まだ量産はできていませんがこれだけで相当な戦力になります。」 15両の戦車は、本場の戦車に比べて貧弱に見えた。木のホイールに皮のキャタピラ。薄い鉄板の装甲はオリジナルとはほど遠かったが、この世界の攻撃には十 分な防御力を持っているように見えた。そして、主砲も50ミリ砲くらいの大きさに見えたが、昼間見せられたゲベールの威力から考えると十分な脅威だった。 たいまつの部隊はボルマンを中心として左右に展開し、一糸乱れぬ動きで大きなハーケンクロイツを映し出していた。戦車がボルマンの正面に停車すると音楽 も、部隊の動きも止まった。とたんに市民の歓呼も収まり、数万の人々で埋まったコロセウムは水を打った静けさに包まれた。 「諸君!!」 ボルマンが第一声をあげた。 「我らクーアードのたゆみない努力が今日、ついに実を結んだ!ここにそろった15両の戦車がついに完成したのだ!!これはアンバードのいかなる野蛮な攻撃も通用しない!」 「ジーク・ハイル!!」 客席の市民が歓呼の声を上げた。その声が収まるのをボルマンは待った。 「古代ロサールが滅亡して長きにわたった、我々クーアードの苦境は今日この日を持って終結する!我々は生存権を確立し、この地に君臨する!古代ロサールの偉人に代わり、この世界に安寧と平和をもたらす偉大なる生存戦争に乗り出すのだ!」 「ジーク・ハイル!!」 ほとんど絶叫に近い市民たちの歓呼の声がコロセウムを包んだ。それを満足げに見たボルマンはさっと、別の方を指さした。サーチライトが彼の指の先のものを照らし出した。それに気がついたスビアは驚きの声を上げた。 「あ、あれは・・・」 ライトに照らされたのは柱に縛り付けられた数名のガンドールだった。それを見た市民が口々に罵声をあびせる。それをボルマンは余裕綽々と言った感じで制した。 「奴 らガンドールはその矮小な肉体を利用し、我ら勤勉なクーアードの生産した食料を無駄に消費し、あまつさえ、アンバードに荷担した。この劣等な人種さえいな ければ我らの苦境は半減したはずだ!諸君!!今こそのろしをあげるときだ!我らクーアードは民族の生存と繁栄のための戦いを開始するためののろしをだ!」 ボルマンが合図を送った。戦車の砲塔が彼ら無抵抗の哀れなガンドールに向けられた。彼らは足をばたつかせ悪態をついているのが見て取れた。ハルスマンは半笑いでそれを見ている。 「見ちゃいけません!」 片桐はこれから起こるであろう悲劇を推測してスビアを抱き寄せた。 「ファイア!!」 大きな咳払いのような音が立て続けに響いて、それと同時にガンドールたちは土煙で見えなくなった。それを見た観衆はよりいっそうの歓声をあげた。 「諸君!子を軍に送りだした母親よ!父を送り出した息子たちよ!夫を送り出した妻たちよ!今こそ、誇りに思うのだ!クーアードは最強の武器で劣等民族を駆除し、高等民族たる我々の手で真の理想郷を作り上げるのだ!我らの勇敢な兵士に輝ける勝利を!ジーク・ハイル!!」 観衆のボルテージは最高潮に達した。、口々に「ジーク・ハイル」と叫び、隣の者と抱き合い。感涙をこぼす者さえいる。ボルマンは行進する黒の兵士に敬礼を捧げて見送っている。その後ろには数十名の親衛隊の制服に身を包んだドイツ人が見えた。 ハルスマンに送られて2人はゲストハウスに戻った。片桐はもはやここに1分でもとどまりたくなかった。 「わたくしも同感です」 スビアと意見の一致を見た片桐はフロントに降りた。 「俺の銃を出してくれ」 フロントのクーアードは首を縦に振らなかった。 「それはハルスマン様の許可がないと・・・」 片桐はフロントの首根っこをつかんだ。指をのどに食い込ませて再び質問した。 「出してくれるかな?」 フロントは顔面蒼白になりながら首を縦に振った。シグザウエルを受け取って街に出た片桐は簡単にナチスのことをスビアに話した。それを聞いたスビアは明らかにショックを受けているようだった。 「まさか、クーアードをまとめるためにガンドールを敵にして殺すなんて・・・」 「やつらの常道手段です。俺もうかつでした。この街に入ったときに気がつくべきでした。ここにはガンドールが1人もいないことにね・・・」 片桐がこの都市に来て本能の部分で感じた警戒感はそこだったのだ。スビアはそれを聞いてはっとした。彼女も同じ様な疑問が引っかかっていたんだろう。片桐は街の入り口に向かって進んだ。街路には人がほとんどいない。まだコロセウムで熱狂しているのだろう。 「止まれ・・・」 人気のない街路の真ん中に人影が見えた。片桐は腰のホルスターに手を伸ばした。 「無駄だ、君は四方から狙われている。」 声の主はハルスマンだった。見るといつの間にか、長剣やボウガンを構えた兵士に囲まれている。片桐はスビアを自分の後ろにやって後退した。 「聖女スビア様、フューラーがお待ちです。ご同行願います」 ハルスマンが手にワルサーP38を構えながら言った。スビアは片桐にしがみついた。もはや2人の後ろには建物の壁が迫っていて逃げ場はない。 「片桐・・・、わたくしを撃ってください。あんな男にとらわれるくらいなら・・・」 片桐はその言葉にショックを受けた。そんなことできるわけがない。しかし、彼女の言うとおり、ボルマンの手に落ちるくらいなら、彼女の望み通り愛する者の手で運命を決めるのも彼女の権利だ。 「それはいよいよの時だけにしましょう」 そう言って振り返ったときだった。すでにスビアの姿は片桐の後方にはなかった。建物の陰に隠れていた兵士に口を押さえられてハルスマンのところへ引っ張られていく最中だった。 「スビア!」 思わず叫んだ片桐の後頭部に強烈な衝撃が走った。がっくりひざを突いてそのまま倒れ込む。片桐が意識を失う前に見たのは必死に抵抗するがハルスマンの手に落ちたスビアの姿だった。 どれくらい眠っただろうか・・・。片桐は目を覚ました。背中の感触でどうやら粗末だがベッドに横たわっているのはわかった。 「目が覚めたか、日本人・・・」 その言葉に頭をあげる。まだ少し痛みが走るがそれにかまわず片桐は起きあがった。周囲を見回すと、そこは巨大な牢獄だった。壁は大きな岩でびっしりと覆わ れ、わずかに数カ所の窓には格子がつけられている。中にいるのは皆クーアードだった。その中で片桐の一番近くにいた人物が声をかけた。 「私はハルス大尉、U-689の艦長だった」 金髪に白髪が混じりの男だった。少々汚れているがドイツ海軍の軍服を着ていることがわかった。 「自分は陸上自衛隊三等陸曹、片桐です。ここはいったい・・・」 改めて周囲を見回すと、そこには大勢のドイツ軍の軍服を着た兵士がいた。ほとんどは海軍の制服だが、2,3名親衛隊の制服の者も混じっていた。 「ここは政治犯の収容所だ。それと同時に絶滅収容所でもある・・・」 ハルスが力無くつぶやいた。そして窓の1つに片桐を見せた。彼はその光景に絶句した。大勢のガンドールが強制労働に従事している。しかもその労働内容と いったらまったく意味があるとは思えなかった。一団のガンドールはひたすら穴を掘るだけだ。別の一団は彼らが掘ったであろう穴を埋め戻している。時折、力 つきたガンドールは巡回する兵士のゲベールで容赦なく射殺されていった。 「なんてことだ・・・」 思わず片桐が目を背けた。ハルスは片桐の肩に手をやった。 「幸い我々は強制労働は課されていない。そのかわり、永遠に似た苦痛を与えられているのだ。」 そう言ってハルスはテーブルのポットを持った。コップを片桐に渡すとポットの中身を注いだ。それは赤い液体だった。片桐がボルマンとの会食で見たあのワインだった。 「水分はこれ以外与えられない。我々は不老の体を維持しながらここで思想を転向するまで閉じこめられるのだ。」 死よりもつらい拷問といえた。ある意味、あっさり殺すのではなく、極力生きながらえさせて洗脳する。その方が効果的に洗脳できるのだ。ドイツ人らしい効率的なオルグの方法だった。 「だが我々もじっと閉じこめられているだけではない」 ハルスは牢獄の中央にあるテーブルを動かすように命じた。数名の海軍兵士がそれをどかした。そこには2枚の板が敷かれている。 「中はトンネルだ。25年かけて掘り進めた。君は運がいい。明日、外のレジスタンスと呼応して脱走する計画があるのだ」 片桐はこのハルスの言葉に希望を見いだした。そして希望を持ったと同時に気になることもあった。 「自分と一緒にいた女性のことはなにか聞いていますか?」 ハルスはそれを聞くと悲しげな顔をして首を横に振った。 「君と一緒にいた聖女のことは知っている。しかし、彼女はボルマンのところに連行されたようだ。」 片桐は絶句した。あの会食で見せたボルマンのスビアに対するいやらしい視線を思い出した。ボルマンが彼女を獲得したならば、その目的はひとつしかない。し かし、ボルマンがその目的を達成する前に誇り高い聖女で、いとおしい片桐の恋人は自ら死を選ぶであろう。もはや一刻の猶予もないように思えた。それを察し たハルスは片桐をひとまずは安心させる情報を教えてくれた。 「ボルマンは新鋭の戦車隊と出征した。今、彼女はヤツの司令部に幽閉されているだけのはずだ。焦らずにまずはここから抜け出してレジスタンスと合流するんだ・・・」 ここでごねたところでどうにもならないとわかっている片桐はハルスの意見に従うことにした。それと同時に心に誓った。必ずスビアを助け出すと。 「まずは夜を待て。ここの警備は厳重だが親衛隊ほどじゃない。それまでゆっくり休むんだ」 片桐はハルスの忠告に従うことにした。ワインを飲んで粗末だがパンを食べて腹を満たした。その間、ハルスはここに幽閉されているドイツ兵の運命を話してくれた。 「ボ ルマンが指導者になり、ゲルマニアを建設してからしばらくしてからだ。彼は自らをフューラーであると宣言した。現地のクーアードがヘラーと言ってるのを聞 いただろ?そして、自らの権威を大きく確実なものにするためにボルマンは、ガンドールの弾圧を始めたのだ。共通の敵を作ってしまえばクーアードは団結し、 ボルマンの権力を支持するからな。我々海軍兵士の多くはその政策に反対して投獄された。ここにいる親衛隊員はボルマン自らがフューラーを名乗ることに反対 したため投獄されたのだ。ヒトラーの遺言では今でもフューラーはデーニッツだからな・・・。だが今は彼らも同じ志を持つに至った。フランツ中尉!」 ハルスは親衛隊の士官を呼んだ。フランツはこれまたがっしりした金髪のドイツ人だった。 「ボ ルマンはヒトラー総統の考えを受け継いだと言っているが、大嘘だ。ヤツは自分の利益だけのためにこの世界を混乱に陥れている。第3帝国なき今、我々はこの 世界の人々と共存していくしかない。外のレジスタンスと協力してクーデターを起こす計画がある。ぜひ、協力して欲しい。」 どのみち、スビアを救出するにはボルマンの本拠地に乗り込む他はない。それには味方も武器も必要だ。彼らの計画に乗ってみるのも一計だ。片桐は快諾した。 赤い満月、ゾードが南中した。格子の入った窓から片桐はその赤い月明かりを眺めていた。この月明かりの下で髪をなびかせていたスビアを思い出した。たった 2日離れているだけでこんなにも寂しく感じるとは・・・。ふと、片桐は出発前にザンガンに教えられたあの力を試してみる気になった。目を閉じてスビアのこ とを思い浮かべてみる。 「片桐?・・・片桐ですか?・・・・」 ごくかすかだが、彼女の声が聞こえる。まだまだ不慣れでポルの力が一定でないようだ。電波の悪い携帯電話のようだった。 「スビア・・・、必ずあなたを助けます。けっしてあきらめてはいけません」 「いけません・・・、わたくしのことは構わず逃げてください・・・・」 片桐は心揺らいだ。彼女の気持ちが痛いくらい伝わったからだ。それは自己犠牲の精神だった。そのせいか、ただでさえ不安定だったポルがますます不安定になったのか・・・、スビアの声がますます小さくなった。 「必ず!必ず、迎えに行きます!」 「・・・・・!」 最後の声は聞き取ることができなかった。片桐は目を開けた。少なくとも彼女が生きていることだけは確認できた。それだけで片桐は戦う気力が沸いてきた。こ の牢獄を脱し、レジスタンスと合流してできるだけ速くボルマンの司令部に潜入しスビアを救い出す。たったこれだけのことじゃないか、とすら思えた。 「さあ、時間だ・・・」 フランツが言った。広大な収容所の隅っこから鳥のような鳴き声が聞こえた。レジスタンスの迎えの合図だった。窓を見張っていた海軍兵士が合図した。歩哨がいないことを示す合図だった。 「行くぞ!」 ハルスが床板をはずしてトンネルに潜り込んだ。フランツに続いて片桐も潜り込む、その後ろに海軍兵士が続々と後に続いた。片桐はふと「大脱走」の一場面を 思い出した。あれは連合軍の兵士がドイツ軍の収容所から脱出する映画だったが、今はドイツ兵と自衛官が一緒に脱走をはかっているのだ。ちょっと笑いが出そ うになった。 トンネルはさすが25年かけて掘られたものだった。しっかりと天井にも板が張られ、崩壊の心配を感じさせる要素はなかった。四つん 這いになって数十メートル進むと突き当たりに出た。ハルスが土がむき出しになった天井に手をやった。そのまま素手で土をほじくり返す。すぐにハルスの手が 地上に出た。 「成功だ・・・!」 ハルスが周囲を警戒しながら外へ出た。フランツに続いて片桐も地上に飛び出した。 「こっちだ・・・」 少し先の茂みから声が聞こえた。トンネルの出口は収容所の柵のすぐそばだった。20メートルほど離れた場所でクーアードの歩哨がゲベールを提げて立っている。片桐は体を低くして声の聞こえた茂みに駆け込んだ。 「よく脱出できましたな」 片桐を迎えたのはガンドールの一団だった。手にはワルサーやボウガンがあり、よく訓練されていた。リーダーのサクートが片桐と握手を交わした。その間にも 続々とトンネルからはドイツ兵が踊りだしてくる。牢獄にいた20名ほどの兵士が全員脱走するのにそう時間は要しなかった。 「ではアジトに行きましょう・・・」 サクートの先導で脱走者たちはおぞましい収容所に別れを告げた。 アジトはガルマーニの外壁工事が行われているすぐそばの洞窟だった。そこはかなり大きな洞窟でガンドールだけでなく、クーアードも多く待機していた。皆手にはゲベールやボウガンがあった。ドイツ兵は洞窟の奥から大きな木箱をいくつか運び出してきた。 「片桐三曹、君にはこれを貸そう。使えるかね?」 フランツが片桐に手渡したのはサイレンサー付きのステンSMGだった。以前英軍の輸送船を拿捕したときに押収した武器だった。 「ボルマンは昼間に戦車と1000名の兵士を連れて出陣しました。目的は東の森にあるガンドールの村です。」 サクートがハルスに報告した。彼の報告では司令部には数十名の兵士と数人のドイツ人が残っているだけだ。完全に油断していることが見て取れた。 「よし、司令部を攻撃して市内を掌握しよう。できるだけ戦闘はさけて転向をうながせ。ドイツ人に指揮されている部隊は例外だ。容赦するな!」 今やガンドール、クーアード、ドイツ人の混成部隊は2手に分かれて市内に潜入を開始した。 「フランツ中尉、自分は司令部に潜入したいんですが・・・」 「片桐三曹、だったら俺と一緒に来るんだ」 フランツは数名の部下を連れて市内の裏道に入った。深夜の街路は静まり返っていて誰もいない。その中を片桐たちは素早く駆け抜けた。フランツが通りの角から次の通りを確認して動きを止めた。街路に警備の兵士が立っているのだ。 「まかせろ」 フランツは背後からそっと兵士に忍び寄るとMP-40の銃床で兵士の頭を殴りつけた。一撃で兵士は昏倒した。 「縛ってその辺に隠しとけ」 フランツは部下に命じた。片桐とフランツは安全を確認した角を曲がった。その先はボルマンの司令部がある。大きな司令部の周囲には歩哨はほとんどいないよ うだった。周りには2メートルに満たない塀があるだけだ。片桐たちは造作もなくそれを乗り越えると司令部内に侵入した。 「別働隊も反対側から侵入しているはずだ。片桐、君は目的を果たしてこい。集合場所は正面ロビーだ。聖女様によろしくな・・・」 フランツが片桐の肩をぽんと叩いた。片桐もフランツの肩を叩き返して行動を開始した。外壁の出っ張りを利用して2階のテラスに登った。テラスは端から端ま で続いていて窓の多くからは明かりがこぼれている。兵士たちが大勢いると言うことだ。その窓を一つ一つ確認しながら片桐は進んだ。一番端の開け放たれた窓 から女性の叫び声が聞こえた。 直感で片桐は確信した。間違いない、彼女だ。片桐は駆け出したい衝動を抑えながら窓の下にとりついた。そっと中を覗いてみる。 「やめなさい!」 「騒ぐんじゃない!」 背の高いドイツ人がソファーにスビアを押し倒している。必死に抵抗する彼女の細い腕が見えた。そのドイツ人がハルスマンということは一目でわかった。 「静かにしろ!」 ハルスマンはスビアを平手で叩いた。そしてぐったりしたスビアの上に覆い被さった。このドイツ人がこれからしようとしていることを瞬時に理解した片桐は怒 りで顔を紅潮させた。さっと、音も立てずに室内に侵入すると、ステンの銃床で思い切りハルスマンの後頭部を殴りつけた。 「あっ!」 怒りのあまり手元が狂ったのか、ハルスマンは間一髪でそれをかわして片桐に飛びかかった。手に持っていたステンが床に転がった。もつれ合って床を転がった後、片桐はハルスマンの腹を足で押して彼から離れた。2人のちょうど中間あたりにステンが転がっているのが見えた。 それに飛びついたのは2人同時のようだったが、一瞬ハルスマンが速かった。間に合わないと悟った片桐はブーツを彼の顎めがけて振り上げた。ハルスマンはそれを両手で受け止めて再び片桐を床に押し倒した。それと同時に太い腕を片桐ののどに押しつけた。 「片桐・・・、まさか強制収容所から抜け出してくるとはな・・・・。」 獲物にとどめを刺すような獣のように興奮で目をぎらぎらさせながらハルスマンは腕に力を込めた。片桐も必死で彼の脇腹にパンチを食らわせるがびくともしない。 「久しぶりに人間を絞め殺すんだ。楽しませて・・・」 がしゃん!という音ともにハルスマンの頭から血が流れ出た。腕の力がゆるんだ。片桐はそれを確認して一気に起きあがって、反対にハルスマンの首を締め上げた。ハルスマンはしばらくの間、足をばたつかせていたが、やがてぴくぴくと痙攣してそのまま動かなくなった。 スビアは割れたワインボトルを持ったまま立ちつくしていた。彼女の一撃の助けがないと片桐はハルスマンに絞め殺されていたのは確実だった。ハルスマンだった死体から手を離して、そばに落ちていたステンを拾い上げた。 「片桐・・・」 片桐の無事な姿を確認したスビアはその胸に飛び込んできた。片桐もまた彼女をしっかりと抱き留めた。肩が震えているのがわかった。無理して気丈に振る舞っていたのがすぐにわかった。 「どうしてもっと早くきてくださらなかったのです?本当に怖かったのですよ!」 「スビア、今こうしてきたではありませんか・・・」 片桐はきつく彼女を抱きしめた。しかし、その再開の余韻に長く浸っているわけにはいかなかった。すでに司令部のあちこちで銃声が響いていた。レジスタンスが戦闘を開始したことを意味していた。 「さあ、ここから逃げましょう!」 片桐がドアを開けようとしたとき、そのドアが外から開かれた。開けたのはボルマンとの会見でゲベールを撃った衛兵だった。そいつは片桐の持っているステンの一連射で後ろに吹っ飛んだ。スビアはその衛兵からゲベールとベルトに提げられた弾薬箱を持ち出した。 「わたくしになら使えるはずです」 片桐はスビアからゲベールを受け取って構造を調べてみた。ごく簡単な構造だった。弾丸は銃身の後ろから込め、ボルトを締める。激鉄の先にはアクサリーと呼 ばれるほんの小さな石がついている。トリガーを引くとその激鉄が下りて、増幅されたポルの力で弾丸が発射される構造だ。 「本当に大丈夫ですか?」 片桐の問いかけに答えずにスビアは、柱の向こうから現れた抜き身の長剣を持った兵士に向けてゲベールを発射した。せき込むような音と同時にその兵士は肩から血を吹き出してうずくまった。 「大丈夫なようですね」 新たな弾丸を込めながらスビアが笑顔で答えた。片桐は若干彼女の適応力に辟易しながらも彼女の手を取った。 「待ってください!」 さらにスビアはハルスマンの死体から小さなカギを取り出すと部屋の中にある書棚のような家具の扉を開けた。中には片桐の89式と防弾チョッキ、ホルスターがしまわれていた。 「他の装備はローズとセピアと一緒に外の小屋にあります。衛兵がよく調べていないようでまだ見つかってはいません」 「あなたは優秀な自衛官になれそうですよ」 使い慣れた装備を身につけながら片桐はただ感嘆するばかりだった。 正面ロビーに達するにはいくつかの難関を越えねばならなかった。ドイツ人に指揮された敵兵はいくつかの場所にバリケードを作って抵抗していた。多くの部隊 はレジスタンスに降伏したようだ。今片桐とスビアの目前にも、廊下一面にバリケードを作ってレジスタンスに応戦している一団がいた。 「突破するしかありませんな・・・」 連中の背後にある部屋から様子を見ながら片桐はつぶやいた。3名のドイツ人と数名のクーアードがバリケードに隠れてレジスタンスに発砲している。片桐たち には気がついていないようだ。89式のセレクターをフルオートにして片桐は深呼吸した。そして呼吸を整えると意を決して柱の影から飛び出した。 「日本人だ!」 ドイツ人の1人が気がついて振り向きざまにワルサーを発砲した。弾丸は片桐の耳元をかすめたが、それにかまわず彼はトリガーを引いた。そのドイツ人ごと敵 は全員撃ち倒された。本来ならスリーバーストショットで撃ち倒すべきだったのだろうが、残念ながらこの状況では難しい。 反撃の収まったバリケードにレジスタンスが突入してきた。ドイツ人は全員死亡。クーアードは3名が重傷だったが命は助かりそうだ。レジスタンスは生き残った敵兵を連行していった。 「片桐!生きていたか?」 フランツが駆け寄ってきた。彼はスビアを見つけると礼儀正しく一礼した。 「お目にかかれて光栄です。アムターの聖女スビア様。フランツと申します」 「片桐の脱出に力を貸していただいたことに御礼を申し上げます」 一通り挨拶の終わったフランツは片桐の方を向いた。すでに司令部の銃声は収まっている。ほぼ制圧したようだ。 「司令部は制圧した。ハルス大尉の別働隊が市内を回ってレジスタンスの参加を市民に呼びかけているところだ。残っていたSSは全員射殺した。君のやってくれた連中も含めてな。海軍の兵士はハルス大尉の名前を聞くとたちどころに武器を捨てたよ。まずは大勝利だ」 片桐はまずは安堵した。当面スビアの安全は確保できた。そして気になることがあり、外に出た。外には捕虜が整列させられている。その中で見覚えのある衛兵を見つけた。 「君は、門番をしていたな・・・」 片桐の質問に、これからの自分の将来を危惧していた衛兵が顔を上げた。 「俺たちの乗ってきた馬の世話を君にお願いしたと思うんだが・・・」 「はい!ヘラーの命令でこっちで休ませてあります!」 レジスタンスの許可をもらって片桐とスビアはその衛兵に案内役をまかせた。衛兵は司令部の裏手にある小屋に2人を案内した。 「あそこです。あの動物が抱えていた荷物もそのままにしてあります。」 片桐が扉を開けてみた。2頭の馬がのんきに草を食べているのが目に付いた。 「ローズ!無事だったのね!」 スビアがうれしそうにローズを抱きしめた。ちゃんと餌も水も与えられているようでどちらの馬の健康状態も良好に見えた。 「ちゃんと餌をやっていてくれたようだな」 「はい!そりゃあ、初めて見る動物ですからきちんと言われたとおりに・・・」 衛兵はここぞとばかりに自分の仕事をアピールしているようだった。片桐はその衛兵を見て肩をすくめると彼の肩を叩いた。 「俺たちが旅立つまでの間、馬の世話を君にお願いしたいが、引き受けてくれるか?レジスタンスには俺から言っておこう」 片桐の言葉に衛兵の表情がぱっと花が咲いたように明るくなった。当面自分の身の安全が保証されたのだ。無理もないだろう。 「捕虜が逃げたぞ!」 そのとき、銃声とともにレジスタンスの大声が聞こえた。フランツが小屋まで走ってくるのが見えた。 「門番が逃げた!まずい。ボルマンが戻ってくる・・・」 「戦うしかないようだな・・・」 フランツの表情が暗くなった。確かに、道はそれしかないことはわかっていたが、戦力差がありすぎる。 「司令部にパンツァーシュレッケがあるのが見つかった。しかし相手は15両の戦車を持っているんだ。それに歩兵だけでも1000人だぞ。こっちは寝返った捕虜を入れても300名にも満たない・・・」 「わたくしに考えがあります」 スビアが顔を上げて言った。フランツも片桐も怪訝そうな顔で彼女を見つめた。 「クーアードに語りかけるのです!」 翌朝、市内の広場にスビアの姿があった。その周りにはハルス、フランツ、片桐、サクートはじめガンドールのレジスタンスが集まった。ものものしい様子に市民は遠巻きにそれを見守っている。 「ガルマーニのクーアードよ、わたくしはアムター村の聖女スビアです!」 第一声は緊張のせいか、いささか震えているが、聖女自らの言葉にクーアードたちはざわめいているのがわかった。 「ボルマンはあなたがたに、強力な武器とすばらしい文明を授けました。これは疑い様のない事実です!しかし、あなたがたは大切なことを忘れていませんか?この世界はクーアードだけのものではありません。ガンドールの運命を忘れてはいませんか?」 彼女の声に引き寄せられるように市民たちは続々と広場に集まった。今や広場は埋めつくされんばかりの市民でいっぱいだった。その市民に向けてスビアは再び言葉をかけた。 「ここにいるクーアードでガンドールがどうなっているか本当に知っている者は?」 「遙か遠くに追放されたはずだ!」 「集団で遠くに移住したと聞きました」 「アンバードに荷担したガンドールは殺され、それ以外は西に移住したはずだ!」 口々にうわさで聞いた話を声にあげた。それを聞いたサクートが叫んだ。 「そ れはボルマンたちの嘘だ!奴らは俺たちを収容所に入れて強制労働させているんだ。しかもその労働も全く無意味なものだ!穴を掘っては埋める。それだけだ! 奴らは俺たちに反抗する気力をなくさせるためだけにこんなことをさせているんだ!それに耐えきれなくなったら、奴らのゲベールの的になるだけだ!」 サクートの言葉に市民たちは衝撃を受けているようだ。互いに顔を見合わせている。群衆から声があがった。 「嘘だ!スビア様はそこのガンドールにそそのかされているだけだ!」 市民がとたんにざわめき始めた。自分たちの信じていたことをいきなり否定されてもすんなり受け入れられないのだろう。 「本当だ!」 今度はハルスが声を上げた。 「俺 はボルマンと同じ異世界人だが、彼の政策に反対して30年、収容所で過ごした。その間、多くのガンドールが収容されて殺された。村ごと捕まって収容所送り になった連中も見てきた。ボルマンは独裁者だ。ヤツは諸君の力を利用してこの世界に自分の帝国を作ろうとしているにすぎない!」 群衆は静まり返った。もはや彼女の言葉に反論しようとする者はいなくなった。スビアはそれを確認して再び口を開いた。 「ボルマンはまもなく戻ってきます。あの男はこの街が占領されたことを知っているでしょう。レジスタンスを皆殺しにするために容赦ない攻撃をはじめるでしょう・・・。一緒に戦ってください!」 「ボルマンがひどいことを考えていることはわかりました。しかし、わかりません!何のために戦うのですか?何のためにですか?いったい何のために?」 市民から疑問の声があがった。その答えにスビアは少し考えているようだった。再び市民からどよめきが起ころうとしていた。しかし、それを素早くスビアは制して答えた。 「わ たくしたちの祖先も、わたくしたちも古代ロサールが滅亡後、苦しい日々を送ってきました。しかし、わたくしたちは誇りがありました。クーアードとガンドー ルと手を取り合ってこの苦境を乗り越えてきた誇りです。あなたがたにはその誇りは残っていないのですか?偽りの繁栄にあなたがたの誇りは奪い去られてし まったのですか?ボルマンの見せた幻の繁栄を買うために売ってしまったのですか?」 スビアは一気にまくし立てた。ボルマンの演説や演出には足元 にも及ばないと自分でもわかっていた。一か八かの賭だった。市民は再び静まり返っていた。片桐もスビアの言葉を聞いての市民の反応を手に汗を握って見守っ ていた。この市民の反応次第で、これから起こるであろう戦いの運命は決するのだ。そして、その賭はスビアの勝ちだった。 「我らクーアードの誇りのために!」 「ガンドールととも異世界の独裁者と戦おう!」 「スビア様の名のもとに戦うぞ!」 市民が完全にレジスタンスについたことを確信してハルスが叫んだ。 「みんなで武器を持って集まってくれ!持ってない者には支給する!」 フランツは片桐を見やった。片桐も我がことのように得意満面な表情になっているのが自分でもわかった。 「たいしたお嬢さんだ・・・・」 「お嬢さんではありません。聖女です・・・」 フランツの言葉を聞いてスビアが笑顔で2人に歩み寄った。そしてそのまま片桐に抱きついた。フランツが驚いた表情でそれを見ている。 「緊張しました。わたくし、こんな大勢の前で話なんてしたことないんですもの」 それを聞いてフランツが大声をあげて笑った。そしてスビアを抱き留めている片桐の肩をぽんぽんと叩くと言った。 「いやはや、たいした聖女様だよ!俺もできることならお仕えしたいくらいの度胸だ!」 脱走した衛兵の報告を聞いてボルマン軍はきびすを返してガルマーニ郊外まで迫っていた。自動車の上で双眼鏡を構えた副官がボルマンに報告した。 「やはり占領されているようですが・・・」 後部座席でボルマンが外に唾を吐き捨てた。かなりイライラしているようだ。 「砲撃を加えてうろたえたところを歩兵と戦車で一気に蹴散らせ。敵は少数だ。」 「市民に犠牲が出ます。まだ戦車の主砲は試作段階でまともな標準は遠距離では期待できません」 ボルマンは車のドアを激しく蹴った。そんなことは副官に言われなくても百も承知であった。 「だったらパンツァーシュレッケの有効射程ぎりぎりまで接近して砲撃しろ!」 副官はその言葉を聞いて無言で頷いた。そして伝令に命令を伝えた。 「戦車隊は横隊で散開。距離500で待機。歩兵隊もそれに続け」 伝令が各隊にただちに命令を伝える。各隊の指揮官のドイツ兵は命令を忠実に実行した。 「来るぞ・・・」 城壁の上でハルスは双眼鏡を片桐に渡した。片桐はかなり接近したボルマン軍の様子を見てみた。 「これはまた、フリードリヒ大王の時代だな」 彼の言うとおり、ボルマン軍は城壁から500メートルほどのところに展開している。戦車は最後尾。その前にドイツ兵に指揮された100名ほどの歩兵が10隊ほど、2段構えの横隊で整列している。片桐はボルマン軍の両翼を見てみたが、時折灌木がある程度だった。 「サクートの別働隊が見えないようですが」 「彼らはうまく隠れているはずだ。後は手はず通りにことが運べば完璧だ」 片桐は城壁の内側を見下ろした。市街のあちこちにはクーアードが潜んで油の入った壺にいつでも火をつけられるように準備している。それを指揮するスビアが片桐に手を振っているのが見えた。 一方、城壁にも仕掛けを施した。手榴弾をいくつか仕掛けてわざと爆発させる準備をフランツが終えて戻ってきた。 「あの戦車の砲はまだ試作でまっすぐ飛ばないって本当ですか?それが嘘ならこの仕掛けも全くむだになっちまう」 「捕虜の情報にかけるしかないですな・・・」 片桐がそう言ったときだった。いよいよボルマン軍の攻撃が始まった。戦車が砲撃を開始したのだ。 「やっぱり、警告もなく無差別砲撃だ」 ハルスがひとりごちた。これでスビアの言葉を疑っている市民も納得するだろう。しかし、多くの市民は彼女の言葉に応えて今では武器を持ち、いつでも戦える体勢を整えて、城壁に、建物の屋上に待機している。 最初の砲弾は城壁の手前に着弾した。しかも不発弾だった。 「これは・・・あの情報はホントなのか?」 第2弾は城壁の真ん中あたりに着弾したがこれも不発で城壁に少し大きな穴を開けただけだった。 「くそ!仰角をあげろ!市内に落ちれば不発でもダメージはでかいはずだ」 戦車隊を指揮するドイツ兵は砲身の角度を変更して一斉砲撃を命じた。 「来るぞ!伏せろ!」 片桐は市内に潜む市民に叫んだ。しかし、その声は弾着音にかき消された。市内のかなり奥まったところに着弾した。今度はちゃんと爆発したようで火の手が上 がるのが見えた。女や病人を街の外に避難させていて正解だった。そうしている間にも砲弾は次々と着弾したが爆発する砲弾は2割に満たなかった。 「そろそろだな・・・」 フランツは部下に命じて城壁の一部を爆破させた。砲弾で破壊されたと見せかけるようにタイミングをずらしての爆破だった。片桐もスビアに合図をおくった。 「さあ、火をつけるのです!」 市民たちは街のあちこちに仕掛けた油の壺に火をつけた。真っ赤な火と黒煙があがった。 「やった!燃えているぞ!」 ボルマンは双眼鏡で街の様子を見てはしゃいだ。そして全軍に前進を命じた。 「もう少し制圧砲撃を加えてもよいのでは・・・」 忠告する副官の進言をボルマンは無視した。もはやこの戦いは勝ったも同然だ。ハルスと片桐は最後まで生かしておいてこの手で八つ裂きにしてやろうと思っていた。あの女・・・。もったいないが火あぶりにでもしてやれば市民への警告になるだろう。 「城門に砲撃を集中しろ。戦車が門をくぐればこの戦いは勝ちだ!」 「前進して来るぞ!」 市民たちが城壁にとりついた。戦車は前進しながらは発砲してこない。弾込めができないようだ。戦車を盾に歩兵の横隊が一糸乱れぬ行進で前進してくる。ボル マンはなめてかかってきているのだ。こんなに大勢のレジスタンスと市民が手に手にゲベールとボウガンでボルマン軍を狙っているとは思っていないのだろう。 戦車がいったん前進をやめた。砲を城門に向けている。 「ファイア!」 一斉砲撃だった。砲弾は城門の周りに次々に炸裂して、大きな木の城門が吹き飛んだ。それを確認してボルマン軍は前進を始めた。ゲベール隊が歩きながら城壁を狙って発砲を開始した。銃弾が城壁の煉瓦に当たって砕ける音が聞こえた。 「よし!撃て!」 ハルスの合図で市民たちが一斉に射撃を開始した。次々と横隊の兵士たちが銃弾に、矢に倒れた。しかし指揮官の号令で後列の兵士が前に進んで隊列を維持して いる。片桐はセミオートでドイツ兵を狙って撃つが、まだ遠いためなかなか命中しない。フランツがパンツァーシュレッケを構えた。 「中尉、弾は5発です!狙ってください!」 ドイツ兵がフランツに念を押す。「わかってるさ」と笑顔で答えるとフランツは横隊の真ん中の戦車めがけて発射した。弾丸は見事に真ん中の戦車に命中して砲塔が吹き飛んだ。市民から歓声があがった。 それを合図にして両翼に隠れていたサクートの率いるガンドールがボルマン軍に突撃を開始した。彼らは地面に潜ってボルマン軍を待ち伏せていたのだ。奇襲にあわてたドイツ兵が横隊を両翼のガンドールに向けるべく横隊を動かした。 「今だ!撃て!」 ハルスの号令で城壁の市民が再び一斉射撃を行った。隊列が移動のため乱れたボルマン軍は次々と撃ち倒された。それでもうまく方向転換した横隊はガンドール に向けてゲベールを一斉射撃した。ぱたぱたとガンドールたちは倒れたが、それでも突撃をやめなかった。新たな弾を装填される前にガンドール隊はボルマン軍 の先頭の横隊に襲いかかり白兵戦を開始した。今や、ボルマン軍もボウガンやゲベールを捨て抜刀して迎え撃っている。ナイフを口にくわえたガンドールが戦車 の砲塔から内部に侵入して、動きのとれない戦車兵を血祭りにあげた。 「こんなショートレンジの戦闘じゃ撃てません!どうします?」 フランツはハルスに尋ねた。ガンドール隊は勇敢だが彼ら全軍で当たってもボルマン軍の第1線を白兵戦に巻き込んだにすぎなかった。 「よし!行くぞ!」 ハルスは市民とレジスタンスを城門に集めた。片桐はハルスに続いて城壁を下りた。 「ハルス大尉、いったいなにを・・?」 片桐の質問にハルスは「愚問だ」と言わんばかりの笑顔を向けた。そしてワルサーを抜くと片手に抜き身の剣を持った。 「ナポレオンは自ら先頭に立って部下の士気を鼓舞したそうだぞ!」 片桐はハルスの作戦を悟って89式に着剣した。訓練ではやっていたが、まさか実戦でやるとは夢にも思わなかった。武者震いが出るのを感じた。 城門から出たハルスとレジスタンスは横隊を組んだ。先頭はゲベールとボウガンの部隊だ。片桐も先頭の列に加わった。ハルスが剣を天に振り上げた。訓練もしていないレジスタンスと市民が一歩一歩前に進んだ。 ボルマン軍もそれに気がついて、戦闘に参加していない部隊が横隊を組んで迎え撃とうとしている。 「ファイア!」 ボルマン軍の指揮官が号令した。ゲベール隊が一斉射撃をおこなう。数名のレジスタンスが倒れたが前進は止まらない。レジスタンスと市民は第2射も受けたが 止まらず、ボルマン軍と黒目が見えんばかりの近さまで進んだ。そこで前進をやめてゲベールを構えた。ボルマン軍は後列の横隊はすでに抜刀して白兵戦に備え ている。片桐は89式のセレクターをフルオートにした。これで少しでも敵戦力を削っておきたいところだ。と、ふと横を見て片桐は銃を落とさんばかりに驚い た。片桐の横にはゲベールを構えたスビアがいたのだ。 「ど、どうしてこんなところに!?」 片桐の質問にスビアはゲベールを構えたまま答える。 「わたくしも戦います。聖女であるわたくしが逃げたら戦いは負けです!」 「ねらえ!」 ハルスの号令が聞こえた。ボルマン軍も標準を合わせるが2度の一斉射撃でも逃げないレジスタンスにかなり動揺しているようだ。銃口が上下左右に揺れている。 「それはわかりますが、なんでわざわざ一番前にいるんです?」 「わたくしは剣は苦手です。このゲベールの方が向いている、それだけです」 「ファイア!」 双方、ほとんど同時の一斉射撃だった。しかし、動揺の大きいボルマン軍の銃弾はほとんどが上方へそれた。反射的に恐怖を抱いて銃口を上に向けたためだ。一 方のレジスタンスはスビアが一緒にいるという心理効果も相まって正確に敵を撃った。戦闘の隊列を指揮していた親衛隊の士官は額をボウガンで射抜かれて倒れ た。慌てて下がった横隊に代わって無傷の抜刀した横隊が現れた。片桐はフルオートでその横隊をなぎ倒した。 「突撃!」 ハルスがワルサーを乱射しながら前進を開始した。彼の前にいた数名の抜刀した敵兵が倒れた。それに続いてレジスタンスたちも抜刀してボルマン軍に襲いかかった。片桐とスビアも後列に押されるようにして前進した。片桐は慌ててマガジンを交換する。 「スビア!俺の陰に隠れて!」 ゲベール以外武器を持たないスビアをかばうように片桐は先頭で剣を構えていた敵兵に銃剣を突き立てた。もはや戦場は黒服のボルマン軍とローマ調の白い服を着たレジスタンスが入り乱れる大混戦となった。 大 混乱の戦場で片桐はスビアをかばいながら撃破された戦車の影に隠れて、走り回るボルマン軍の兵士をセミオートで撃ち倒した。戦車の影からのぞくと、後方に ボルマンが無傷のゲベール隊に守られて自動車に乗っているのが見えた。副官と時折襲ってくるガンドールを拳銃で撃っているのが見えた。 狙撃しようにも遠 すぎる上、ゲベール隊の人垣で狙うことができない。 そこへサクート率いるガンドール隊が襲いかかった。ゲベール隊は隊の中でも精鋭のようだ。落ち着いて第1掃射で半数近くのガンドールを撃ち倒した。サクートもワルサーで数名のゲベール兵を撃った。弾を込めたゲベール隊は再び一斉射撃をおこなった。 「サクート!!」 片桐はサクートのガンドール隊が彼を含めてすべて撃ち倒されたのを見て戦車から駆け出していた。 「スビア!あなたはそこにいてください!」 彼女は彼の言葉を無視して後に続いた。片桐はそれに気がつかず、弾を込めている横隊にフルオートで5・56ミリ弾を浴びせた。全弾撃ち尽くすと神業的なス ピードでマガジンを交換し、指揮官の親衛隊大尉を蜂の巣にした。それを見たレジスタンスも剣を振りかざして片桐に続く。もはやボルマンと片桐の間には数十 メートルの距離と数名の兵士しかいない。 「ここは任せてください!」 片桐の後に続いたレジスタンスたちが残った兵士に斬りかかる。片桐は片膝をつくとまず、彼に気がついた副官を3発で撃ち倒した。自動車の座席の上に立って片桐を狙っていた副官は後ろにはじき飛ばされた。 ようやく片桐に気がついたボルマンがワルサーP38を片桐に向けようとした。しかし、それよりも早く片桐はトリガーを引いていた。 「なにっ?」 弾詰まりだった。慌ててコッキングレバーに手を伸ばすが、ボルマンは片桐に両手で構えてワルサーを向けた。 「八つ裂きにできないのは残念だが、わし自らの手で殺してくれるわ!」 間に合わない!そう思った片桐の頭上を何かが音を立てて通過した。そしてそれは、ボルマンの眉間を確実にとらえていた。ぼすっっ!という感じでそれはボルマンの頭を撃ち抜いた。 「あ・・ぐ・・・」 ボルマンは座席に崩れ落ちた。目はすでに生気を失っている。片桐は自分の命を救った何かが飛来した方を振り返った。スビアだった。彼女の放った銃弾が間一髪、片桐を救ったのだった。 「やった!スビア様がボルマンを倒したぞ!」 レジスタンスの1人が叫んだ。その声は、次々と戦場に伝わり、今だ抵抗を続けていたボルマン軍もそれを聞いて次々と降伏した。 「片桐・・・!」 ゲベールを放り出してスビアは駆け出した。片桐は自分の命が助かった安堵でその場に座り込んだ。そこへスビアが後ろから抱きついてきた。 「スビア、今度という今度はあなたの勇敢さに御礼を言わなければいけないようです・・・」 「そんなことより、あなたは怪我はないのですか?」 後ろから抱きつくスビアの顔を右手をあげてなでながら片桐は自分の傷の有無を確認した。 「どうやら無傷のようですな・・・」 ハルスとフランツが駆け寄ってきたときに、ようやく片桐は立ち上がることができた。このときになって初めて、スビアに対してかっこわるいと後悔する感情が生まれていた。だが、その自己嫌悪をスビアは一掃してくれた。 「片桐、あなたはなんて勇敢なの?たった1人で敵の30人以上を撃ち倒してしまったのですよ!」 「スビア様!ご無事でしたか?ボルマンを自ら撃ったとはおみごとです!」 ハルスがスビアに一礼しながら言った。フランツがサクートをおんぶしてやってきた。サクートは肩に銃弾を浴びているが生きていたのだ。サクートはフランツの背中で笑顔で叫んだ。 「これで戦いは終わった。スビア様、片桐、あなたたちのおかげだ!」 「スビア様万歳!」 彼らの周りに集まったレジスタンスと市民が口々に万歳を叫んだ。 「どうしても行くのですか?」 ガルマーニの広場には大勢の市民たち、ドイツ兵が集まっていた。その代表としてハルスがスビアに質問した。スビアは彼女のお気に入りのローズの上でうなずいた。 「わたくしは古代ロサールの謎を求めているのです。この世界全部がこの都市のように平和になるために・・」 「片桐、君も同じ考えなのか?」 ハルスの質問に片桐も馬上でうなずいた。彼らは嘆願に集まっていたのだ。新たなこの街の指導者として、スビアにここに残って欲しいと。残念そうにハルスはため息をついた。それに続いてフランツが質問した。 「何か必要なものはありませんか?何でも用意します!」 「この都市の人々の、わたくしたちの旅への祝福だけで結構です。・・・ありがとう、フランツ中尉」 スビアの言葉にフランツはいささか感激の涙をこぼしかけている。 「光栄です、スビア様。なにか困ったことがあればいつでもおいでください。我々評議会が全力で、スビア様と片桐三曹を助けます!」 この街は当面、ハルス、フランツ、治療中のサクートの3名の合議で運営することになった。いずれ全市民の選挙で指導者を決めることになる。民主主義がまもなく産声をあげるのだ。 「ところで、どちらに向かうご予定ですか?」 ハルスの質問にスビアが答えた。 「南です。当分は海沿いに進みたいと考えています。」 その答えにハルスは少し表情を曇らせた。そして率直に意見を述べた。 「南ですか。お気をつけください。南にはクーアードがいるのですが、連中はちょっと妙な連中でして。ボルマンですら手を焼いておりました。とにかくやっかいな連中です」 ハルスの話だけでは大した手がかりは得られずに片桐たちは巨大都市ガルマーニを旅立った。市民たちやドイツ兵の別れを惜しむ声がいつまでも耳について離れないようだった。 砂浜をのんびりと馬で進みながら片桐はスビアを見つめていた。その視線に気がついたスビアは少し頬を赤らめながら片桐を見つめ返した。 「あなたといると楽しい。新しいあなたを発見する楽しみが満ちているのですから・・・」 「あら、わたくしのどのような部分を新たに発見したとおっしゃりたいのです?」 片桐は愛馬のセピアをぐっとローズに近づけた。そしてスビアの腰に手を回した。 「なかなかあなたの戦いぶりは男勝りでしたよ。元の世界の自衛隊でもあなたみたいな男まさりの隊員はいませんな。」 スビアはその言葉に頬を膨らませた。 「失礼な人・・・」 「で、そんな今のあなたはとても女らしい・・・」 片桐の誘導尋問じみた言葉にすっかりやられたスビアは顔を真っ赤にした。これだけ見ると本当に、あの勇敢な聖女の面影はまるで感じない。そう思って片桐がより強くスビアを抱き寄せようとしたときだった。 「うっ」 片桐の左腕に激痛が走った。見ると1本の矢が左腕のチョッキのない部分に突き刺さっている。本能的にそれを抜こうとするが力が入らない。目の前がぐるぐる回り始めるのがわかった。 「片桐!片桐・・・しっかり!」 スビアの声が子守歌のように聞こえた。そのまま愛馬から落ちると片桐は意識を失った。 つづく 【異世界用語辞典】順不同 アンバード=蛮人 アービル=別世界。この場合、片桐たちの日本を指す アムター=スビアの村の名前。古代ロサール語で「豊かな森」の意 アクサリー=ロサールの伝説の石。これを使うことで魔法の力=ポルを増幅できる ガンドール=人種名。こびとの総称。 ガルマーニ=ボルマンの都市名。ゲルマニアのなまり クーアード=人種名。人間の総称。 クブリル=海に住むどう猛な生物。ワニに似ているが頭部に鋭い角を持つ ザンガン=アムター村の長老。両親を失ったスビアを育てた サマライ=通貨単位。 サクート=ガルマーニのレジスタンスを率いるガンドール シュミリ=村落名。海沿いの村。スビアの両親が訪れた。異世界から召還した馬を育てていた。 スビア=アムター村の聖女。自衛隊を召還する。片桐と恋に落ちる。世界を平和にするため古代ロサールの謎を求めて旅に出る。ヒロイン セピア=シュミリ村で育てられた馬に片桐がつけた名前 ゾード=赤い満月の夜。なぜそうなるかは不明 タボク=片桐に救われたシュミリ村の村人 タムロット=シュミリ村の尊重。スビアを敬愛している ヌーボル=異世界の総称。地形はオーストラリア大陸に似ているが詳細は不明 バストー=片桐が最初に出会った異世界人。ガンドール パタトール=武器。アンバードやアムター村の人々の武器。原始的な弓が原型 パンサン=異世界の戦士を別の世界に送る古代ロサールの魔法。高崎士長たちはこれで九州に帰った ハルス大尉=Uボートの艦長。ボルマンに反抗して強制収容所に30年服役した ハルスマン=ボルマンの副官。長身のドイツ人。 フランツ中尉=元親衛隊。ハルスの副官的存在 ヘラー=ドイツ語のフューラーがなまった。 ボルマン=ナチ党幹部。ヌーボルにたどり着き独裁政権を作った。 ポル=魔法力。人それぞれその力は違うがすべての魔法の原動力 ミスタル=アムター村周辺に咲く花。 ローズ=スビアの愛馬。 ロサール=遙か昔に滅亡した古代の国。民族名。