約 2,959 件
https://w.atwiki.jp/asuka-ch/pages/202.html
概要 結果 概要 無明地獄で対決.14時から17時までの3時間. 突発 無明対決 14:00~17:00 ※途中抜け可 ルールはいつも通り http //asuka--sen-nin.ddo.jp/checker/event/mumyou.txt 結果 プレイヤー 配信場所 スコア せんにん 自ch 46 しいな アスchユースト1 25 やっくん アスchジャス1 57 へいほう アスchユースト2 76 ざっつん アスchジャス2 48 ベア 自ch 93 ぶたまん 自ch 87 はっぱ 自ch 76 paul 自ch 53 (ポンコツ) 自ch 41
https://w.atwiki.jp/karanemi/pages/825.html
作品名:Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚、Fate/Grand Order 使用者:セイバー(= 沖田総司) 奈須きのこ作品のFateシリーズに登場する術技。 スキルの一つだが、ほぼ宝具扱いの術技。 同時同位置に三重の突きを発生させる対人魔剣。 +掛け声 一歩音越え 二歩無間 三歩絶刀 術技についての詳細魔剣技 元ネタ 関連項目 関連タグ リンク 術技についての詳細 魔剣技 同時かつ同位置に三つの刺突が発生する剣技一つ防いでも残り二つの刺突が〝防がれていない〟ことになりそのまま刺突が行われる。 事象崩壊が引き起こせるため対物破壊という面でも非常に優れる。 平晴眼の構えから“ほぼ同時”ではなく“全く同時”に放たれる平突き。 (中略) 三段突きの瞬間は壱の突き、弐の突き、参の突きが“同じ位置” に“同時に存在”する。壱の突きを防いでも、同じ位置に弐の突き、参の突きが貫いている という矛盾のため、剣先は局所的に事象崩壊を起こす。そのため三段突きは事実上防御 不能の剣戟となる。 元ネタ 沖田総司の三段突き 天然理心流の沖田総司が独自に編み出したとされる剣技。 一度の踏込、一拍子で三度の突きを行う。受ける相手は壱の突きを受けたと思ったら三度突かれていたという。 関連項目 関連タグ Fate 事象干渉 剣技 奈須きのこ作品 物質破壊 術技 防御貫通 リンク
https://w.atwiki.jp/z-oni/pages/14.html
『ルール1:子供は、鬼から逃げなければならない。』 道の脇に立っている掲示板に貼られているチラシに書いてあるのは、その一文から始まる文章だった。 何十何百というチラシが、そこかしこに貼られた町で。 今も空からひらひらと落ちてくるチラシにも、全て同じ文字がある。 『ルール2:鬼は、子供を捕まえなければならない。』 ……まさか、また、なのか……? 大場大翔は呆然とした顔であたりを見まわした。 見なれない町並みだった。 近くのショッピングモールに映画を見に、幼なじみ達との待ち合わせ場所に急ぐ途中で通った、普段は使わない近道。 そこから大通りに抜けたと思ったら、この光景だった。 後ろを振り返る。 当然あるはずの今来た道は、どこにも無かった。 『ルール3:きめられた範囲をこえて、逃げてはならない。』 代わりに見えたのは、霧だ。 見渡す限り一面に、うっすらと霧がかかっている。 遠くに見える海も、ある地点からは同じ、いやもっと濃い霧だ。 そしてもう一つ、おかしなところがある。 空が朱かった。 一機の飛行機がチラシをバラ撒く以外は雲もなく、昼か夜かもわからない空模様。 火花がぱらぱらと散っているそれは、絶対に現実にはないものだ。 ……一度だけ見たことがあるけれど。 『ルール4:時間いっぱい鬼から逃げきれれば、子供の勝ちとなる。』 文の違いに気づくことなく、大翔は息をひそめて隠れた。 以前の、あの事件のときと同じだ。 小学校に閉じ込められて、命懸けの鬼ごっこをさせられた、あの時と。 『ルール5:親は、子供を守らなければならない。』 なんの説明もなく。 なんの為かもわからず。 ただただ、追い立てられる。 あの時の鬼ごっこと。 大翔が前回の鬼ごっこ――ことりことりに巻き込まれたのは、一月以上は前のことだ。 あまり思い出したくない出来事だが、それでもあれについて考えると、出てくる感想は一つ。 理不尽、だ。 今回の鬼ごっこ――とまだ決まったわけではないけれど、だからこそこれが鬼ごっこだと大翔は思う。 ろくに説明もしないし、説明したとしても不安を煽るようなことばかり言う、あの鬼達なら今の状況にも説明がつくからだ。 ふと、大翔はポケットの中に異物感を感じた。 財布を入れているのとは逆の、何も入れていないはずのそこから感じる感覚に、恐る恐る手を差し入れる。 指先に布と紙の感触がした。 ……お守り? なんの変哲もない、ごくごく普通のお守りと、折りたたまれた紙。 それが掴んだものの正体だった。 『「お守り」……生きている参加者一人を対象に選んで発動する。対象が『鬼』だった場合、お守りを対象にぶつけると対象は死亡する。使用後自壊する。』 大翔が紙を開くと、そっけなくそれだけ書いてあった。 数秒考えて、大翔の顔は曇った。 鬼達が、わざわざ自分達への武器を用意する、ありえないことだ。 わざわざ捕まえる相手に武器をもたせるなんて、馬鹿げてる。 だからこのことの意味は一つ。 ナメられている。 こんなものでも用意しないと、鬼があっという間に子供を捕まえてしまうと、そう考えているのだろうと。 「悠と葵ももしかしたら……」 たぶん、今回は前回より危険だ。 前は大人もいたし子供ももっと多かった。 それが今は大翔一人。 他に同じように巻き込まれた人がいても、例えばそれが幼なじみ達でも、バラバラにされていては一人で戦うのと変わらない。 まずは誰かと合流しないと。 そう方針を決めると、一つ気合を入れて大翔は歩き出す。 視線は飛行機、がチラシと当時に落とし始めたパラシュートがついた何か。 遠目には人のようにも見えるそれは、このわけのわからない状況をなんとかするものであってほしいと、大翔は思った。 【I-7/00時01分】 【大場大翔@絶望鬼ごっこ】 [役]:子 [状態]:健康 [装備]:『お守り』 [道具]:若干のお小遣いなど [思考・行動] 基本方針:とにかく人と会う 1:鬼に警戒。 2:幼なじみが巻き込まれていたら合流したい。 ※その他 自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。 人物解説……当企画のパロディ元である『絶望鬼ごっこ』シリーズの主人公で小学六年生。二巻の『くらやみの地獄ショッピングモール』からの参戦。正義感が強く友達思い。運動会ではリレーの選手に選ばれるなど運動神経は全体的に良い方だが、ペース配分が下手なため長距離は苦手。投下時現在、唯一のリピーターである。なお、彼が本文中で言及したように、絶望鬼ごっこの鬼は理不尽で基本的には公正なデスゲームをする気はない。彼は出典時期的に知らないが、時として鬼はルールを容易にねじまげ、同族でも殺しにかかる。もちろん労働待遇もブラックだ。
https://w.atwiki.jp/mihoyowikiunofficial/pages/473.html
目次 性能ステータス スキル1 三足烏・破斬 スキル2 梁照君の榻・月 入手方法 説明 関連項目 性能 ステータス No. 名前 4654 三千鴉殺・無明 小分類 種類 ☆ 神格覚醒 近接・剣/刀 伝説 7 属性 攻撃力 射速 残弾数 物理 2556 3.3
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/1165.html
人類が万物の霊長の座から降りて、20年の歳月が経っていた 始まりは1999年7月、ノストラダムスの大予言で沸いていた時期 本当に、それは空からやって来た 明らかに、地球のそれとは違う象をした、全長数kmに及ぶ、妙に生物的なフォルムの宇宙船と呼ぶべき代物が数十隻 その船が甲虫の様な羽を広げたと思ったら、無数の物体が飛び出したのだ 飛び出した物体は1m位のモノから、全長数十mに至るモノ迄混在し、フォルムは複数種 それが文字通り、無数に湧いたのだ 最初に狙われたのは、人口密集地域 彼らにとって狩り易いのだろう 次々に降り立ったモノは、人を次々と捕食し都市は大混乱に陥った 当然警察や軍隊も出動したが、ミサイルは羽音による衝撃波で届かず 銃は硬い外骨格に阻まれ、効果が出ない そして、録な軍備が無いアフリカ、中東、東南アジア、範囲が広すぎてカバー出来ない、インド、中国、オーストラリア、南米大陸が相次いで陥落し、あらゆるラインが寸断され、人類の地図から消えた その中、NATO軍と英仏独軍とロシア軍、其に米軍と日本の自衛隊が辛うじて戦線を維持し、撤退の時間を稼いだ 逃げ出そうとした民衆は、逃げ出す先が無く綺麗に刈り取られ、邪魔な服を綺麗に剥がされてから肉団子にされた 戦闘機で戦闘してたパイロットに取り付き、コクピットを破壊したモノがそのまま引きずりだし、飛びながらパイロットを剥いて、地上に作り上げた巣に運んで言ったのを見た時、各国首脳は唖然としたのだ 話が通じないどうしようも無い敵 通常兵器が思った様に通用しないと確認されるとあっさり核を使う だが、相手は宇宙を旅して来た蟲である 一般種を駆逐出来たのだが、母艦型のモノを撃墜する所か、エネルギーとして吸収されてしまう 恐らく、宇宙を渡る際に、恒星からエネルギーを貰ってたのだろう そして脅威に気付いた蟲達の反撃 ロシアは全てのミサイル基地を侵食され、米本土は強力な軍事力が有るにも関わらず、巣の場所として使われ、人口4億の大部分が彼らの餌になり 僅か20万程度が、太平洋を渡って日本に避難し、半分が海中に迄進出した蟲に襲われ、10万に減った米国民を同盟国として日本は受け入れた そんなカタチで、地球に到達した地球外生命体との初めての接触は、そのまま人類の存亡に直結するハメに陥った 完全に防戦に徹してた日本やドイツ、亡命した米国の科学者を中心に研究され、彼らの名称が付けられた 宇蟲(Galaxy Bug)と命名され、行動様式はまんま蜂や蟻の社会性昆虫と酷似し、彼らは繁殖地として地球を見付けたと結論付けられた そして人間を越える反射神経と怪力、戦車を越える装甲を併せ持ち、ジェット戦闘機と並ぶ機動を行い、前肢は蟷螂の如く鋭く人間をスライスし、羽音は衝撃波を生み出してみせた 銃撃は全て弾かれ、砲弾は衝撃波や外骨格装甲で弾き、ミサイルや爆弾は衝撃波で返された そんな中、一番有効な攻撃手段が見つかったのである 原始的な刀剣による、関節に対する攻撃 関節だけはどんな生物も脆い その複眼すら、強化ガラスもかくやという装甲で覆われてた彼らの唯一の弱点 そこを精密に狙い、斬り落とし、内部組織が露出した時にそのまま突き刺す この戦術が確立されると、これを元に一気に兵器開発が行われた 戦闘機のエンジンに剣を精密に振るマニュピレーターを装備し、必要に応じて射撃武器に切り換え、人口知能による補助を伴う汎用機 兵器としては究極の役立たずが、事態打開の鍵と認識され、人間の身体を模した兵器が一気に開発された 産業がまだまだ生きてた日本と亡命米政府が共同で開発したその人型兵器は、剣突撃型汎用武器換装人口知能補助システム(Sword Assault MUltifunction all Range weapon A.I support system) その単語をもじって、人型兵器は侍(SAMURAI)と呼ばれる様になった 基本格子は全長10m位の機体に背中に一対の可変翼と脚に二基のジェットエンジンと可変補助翼 腰には、日本の鍛造技術で造られた高周波振動する巨大な日本刀と各種火器を備え、搭乗者に網膜投影ディスプレイによる補助と、全天視界モニター AIによる半自動制御を行い、パイロットを補助した 侍の投入により、戦線の押し戻しに成功した日本は、コア以外はそのまま英仏独露にも公開提供し、何とか人類は膠着状態にする事に成功したのである ※※※※※※※※※※
https://w.atwiki.jp/vipdetyuuni/pages/3305.html
リタイアしました. 削除待ちです。どなたかこのページの削除をお願いします。
https://w.atwiki.jp/mousouvs/pages/1559.html
作ろうとしたが、やっぱりやめた。削除。
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/1166.html
「あ~、糞。たりぃな」 練習機『陽炎』に乗った少年、武藤総作は欠伸をしながら呟いた 「ちょっとソウサク、きちんとやる。この課題クリア出来ないと、侍乗りになれないヨ?」 総作のモニターに金髪の亡命米国人二世クリス・バレットが映り、ソバカスに彩られた可愛らしい顔に、クリクリとした青い瞳をぷんすかさせている 二人は国立防衛高等学校、汎用機科一年の生徒だ 2019年の日本は、文化系に費やす人的資源の投入を極僅かに留め、大部分のリソースを一次産業と二次産業、研究開発と整備と兵士の教育に費やしている 普通科は廃止され、全ては生き残る為の教育に切り替わった 人類生存の危機に、誰も文句は言わなかった 言ってた者達は、初期に宇蟲に喰われてしまったのである 選択肢なぞ、人類には残されていない また、老人達は宇蟲に対する対抗手段が無かった時に食べられ、人類全体は非常に若い構成になっている 法律が改正され、女性の早婚多産が奨励された それで、一次期4000万迄減った人口を、6000万人に押し留めている 現在の平均寿命は各国共に25歳で、産業革命前に巻き戻ってしまった 「んな事言ってもなぁ。ふぁあ」 また欠伸を一つすると、クリスははぁとモニター越しに溜め息をついた 「全く、昨日はどんな夜更かししてたの?」 「んあ?知ってる癖に」 「ま~たエロゲか。此所に美少女居るでしょうが」 「冗談言うな。16なんておばさんじゃねぇか。ヒロインはやっぱり12だろ?」 「…降りた時覚えてなさい」 フッと画像が切れると、公開回線で指示が入って来た 「次、武藤,バレット組。来い」 「了解。祥子」 機体に搭載したAIの起動ワードたる名前を呼び、待機状態だったAIが目覚め、モニターに割烹着姿の女中の黒髪少女が割り込んだ 《はい、ご主人様。練習機陽炎総作ver.演習状況三、起動します》 ヒュイィィィィ 両脚のタービンに火が入り、甲高い音が機体外に鳴り響く 時を同じくして、パーソナル回線からクリスの声が聞こえて来た 「ギャルソン」 《YES.Type KAGEROH Christine ver. Wake UP. Practis 3 Run では参りましょう、お嬢様》 駐機場で、他の陽炎と共に待機していた二機のエンジン推力が上がり、一気に上空に跳び出した 垂直上昇を始めた二機が互いの正面を見せ、腕を組む お互いの余剰推力を合算して、更に加速度を上げる形態だ 《祥子です。ギャルソンさんとリンクしました。火器管制お任せします》 《祥子様、了解致しました。ゼロタイム範囲での、機体機動はお任せします》 《はい。ではお二方、現在成層圏に蜂型10m級が一体、斥候と思われます。確実に排除を。接触迄、後300秒》 モニターに接触時間迄の、カウントダウンが表示される 「60秒で狙撃する」 《了解です。お嬢様》「しくじんなよ?」 「誰に言ってんのよ?アンタこそ、しっかりやんなさいヨ」 そのままカウントダウンが継続され、90秒で二機が組んでた腕を離して個々に加速、クリス機が右手側のウェポンラックから88mmライフル アハトアハトを取り出し、上空に向けて構えた 基本的に銃撃は、関節を狙えないのであれば牽制程度でしかない だが、裏を返せば、精密に狙撃出来るなら有効な武器になる スコープサイトの情報を読みながらクリスは狙いを定め、60秒きっかりでトリガーを引いた ドン!! 模擬弾は機体速度を上乗せされ、超音速で目標を捉える 《命中。敵前腕一肢破壊。ご主人様》 「おうよ」 既に抜いた太刀を両手に持ち、敵の指向がこちらに向いたのを祥子が報告する 《敵、本機を指向。音波砲スタンバイ中》 《Missile Fire》 ギャルソンの声と共に、両機の可変翼に搭載されていたミサイルが撃ち出され、上空に攻撃しながらの目眩ましをかける そのまま総作は爆発の中を掻い潜り、一気に敵と交叉した ビーッ!ビーッ! コックピットにアラームが鳴り響き、機体損傷を指し示すグラフィックが、左脚を真っ赤に染めている 《音波砲左エンジン被弾。出力50%低下、燃料カット、敵羽根を破壊。音波砲無力化しました》 「だぁ、ついてねぇ!?」 そのまま反転して重力を利用して逆噴射してる総作に、敵が飛び出して来た 《敵、呼吸機動開始。本機を指向。格闘戦に移行します》 「機動差は?」 《敵のが上ですが、羽根を破壊した為、直進運動のみです。ブレイク可能》 「あいよ」 すかさずスロットルとペダルを操作し、可変翼を動かして急機動を行い、バックに付いた敵を回避すると、ウェポンラックから30mm回転機銃アヴェンジャーを取り出し、撃ち出した バラララララ モニター表示された残弾が一気に減っていき、30mm模擬弾が空中にばら蒔かれ、幾つかがヒットする 《命中12、有効弾無し。6時を取ったのになんて情けない。ご主人様にお仕えして早三年。祥子は悲しゅうございます》 モニターに表れている祥子のミニ画像が、ハンカチを取り出してさめざめと泣いている その時に残弾が0になりEMPTYが点滅、リロードを要求するが 《あぁ、しかもあっさり弾切れ。こんな事は予想出来たのに、マガジン持って来てないだなんて駄目すぎです》 「いちいちウルセー!!刀で仕留めりゃ良いだろうが」 そう言って、アヴェンジャーを仕舞うと太刀を構えてエンジンを回して加速した そんな時に、敵に下から狙撃で更に敵にダメージが入る 《流石はクリス様。何処かの刀万歳馬鹿とは大違いですわ》 「…何でこんな風に育っちまったんだ?」 総作が敵とシザースを展開する中、二回目の狙撃に成功したクリスは、被弾した総作を支援する為に加速を始めている パーソナル回線で、向こうの会話はダダ洩れである 祥子も総作も音声通話を切らないからだ 「全く、ショウコの言う通りよね。ギャルソン」 《…》 初老の男性執事の格好のギャルソンは、ミニモニター越しで紅茶を飲んでいる 「ギャルソン!」 《…My Lord お茶の時間は、優雅に過ごすのが紳士と云うものです》 「…アタシも設定間違えたっぽい」 補助AIは非常に優秀で戦闘をサポートするのだが、まともな性格になるのが殆ど無いのが珠に傷だ 11歳時に適性検査を全員受け、適性持ちが12歳で本人の意思でパイロットを選択し、中学生になると同時に、候補生にはパーソナルAIが支給される 支給されたAIは候補生達の癖に合わせて成長する為、全員唯一無二の相棒となっている その性格は本人達を映す鏡と説明されてるが、誰も信じてない そして、とうとう総作機が敵に取り付かれた 敵の四対の脚が、機体に悲鳴を上げさせる 《不味いです。胴体メインフレーム負荷増大。前肢鎌に太刀で競って、両腕モーター過負荷。このままじゃ、焼き切れます》 機体モニターの胴体にブルーの表示が加わり、両腕が黄色くなって点滅する 「振り落とせ」 《駄目です。完全に抱えられました》 すかさずクリス機の位置を確認した総作は指示を下した 「モーター焼き付き迄カウントダウン」 《了解、カウントダウン開始》 カウントダウンが開始されると脚を振って推力変更し、眼を回させる行為に出た 空中でぐるぐる回る敵と総作機 《ご主人様、効果有りません。中止を要求します》 胴体フレーム迄過負荷に軋みをあげ、機体モニターが黄色くなる 「まぁ、見てろ」 流石にシェイクされてるコクピット内で汗を垂らしながら、急に制動を掛けて回転を止めた 《焼き付き迄、5・4・3・2・1》 「ソウサク、ナイス」 回転を止めた時にクリス機が敵の後ろに丁度居たのである 背後から装甲の隙間の首関節への、致命的な一撃の刃が滑り込む 《ゼロ。両腕破損、敵沈黙》 「…状況終了だ」 公開回線から教官の声が入り、モニターの宇蟲が消え、同じ機体の教官機が表れた AIが映像を加工して、宇蟲に見せていたのである 「データを提出して帰って良し」 《了解です。ころにゃ様、データリンクお願いします》 《sir YES sir. ころにゃ様、データリンク宜しくお願いします》 二機のAIが教官機のAIに呼び掛け、二機のモニターに猫耳尻尾肉球でセーラー服に短パンのショタキャラが表れた 《はいニャ、はいニャ。二人共ちょっと待つニャ……データ貰ったニャ》 コミカルにくるくる動くころにゃに、二人して苦笑する 「毎回思うけど、リヒトホーフェン先生に全く合わないなぁ」 「あはは。無口な先生にぴったりじゃない」 二人はゆっくり降下して行くと、エマージェンシーが全ての機体に鳴り響いた 《こちら防衛学校相模原高等部統括。現在横田部隊が宇蟲の大部隊と交戦中。ドイツから来たお客さんの護衛要請。付近の候補生全員に出撃命令。総員実弾装填後、現場に急行せよ》 音声が途切れ、教官の声が届いた 「聞いたな?全員模擬弾廃棄。実弾装填。稼働可能時間を報告せよ」 その声に、祥子が反応する 《45分ですわ。教官様》 《55分ですな Commander》 「……武藤バレット組は後方に配置する。総員出撃」 「ヤー」 ドイツ人の教官に合わせる為に、皆でドイツ語で答える 画面の教官が珍しく口元を綻ばせて、命令を下す 「上級生に負けるなよ。撃墜数トップのペアには奢ってやる。出撃」 既に生徒達が、クリス達の所迄飛翔していた 《部隊リンク完了ニャ。それじゃ、一年一組部隊、出撃ニャ》 くるくると全員のモニターど真ん中で踊るころにゃがビシッと器用に指を差し、一年生部隊はリヒトホーフェンを筆頭に加速した ※※※※※※※※※※ 戦場では乱戦になっている 横田部隊は配備数400機を全力投入しているが、20m級が主力になってる宇蟲5000に対し、明らかに劣勢だ 他部隊への応援は、防空網に穴を開ける事に繋がる為に出来ない そういう時には、候補生達に動員がかかる 制式汎用機飛沫に乗る正規兵達でも、圧倒される数である 輸送機の編隊を辛うじて護衛するので精一杯だ 宇蟲には光,電気,熱,化学エネルギー兵器の効果は非常に乏しく、どうしても運動エネルギー兵器たる、実弾と刀剣に頼らざるを得ない 核は使えるが電波障害や放射能汚染も引き起こす為に有害と認定され、第二次大戦下の様に、航空機による物量で押す展開になっている 「リヒトホーフェン先生、坂井です。二年三年の部隊も集結しました。戦場指揮をお願いします」 《了解ニャ、火器管制こっちに寄越すニャ。一斉射後、突貫ニャ》リヒトホーフェンは普段は余り喋らない 代役は全てころにゃが請け負っている 相模原候補生部隊その数、教師含めて274 上級生になるほど数が少ない。実戦等で戦死、又は戦闘不能で退役したりしてるからだ 学生と言えども、中学生と違い、高校生は予備役扱いで非常呼集がかかる 《それじゃ行くニャ、ミサイル一斉射》 上空から降下機動に入りながら一斉にミサイルが放たれ、狙撃能力の高い生徒機がライフルを構えて狙撃を開始し、格闘能力が高い生徒達は太刀を抜いて爆発の中を突貫した 「ちょっと、ソウサク。アンタ後方なのに突っ込むな、馬鹿」 クリスは自分の相方の突撃馬鹿っぷりに頭痛を覚えつつ、アハトアハトを構えて、総作の進路上の宇蟲に対してぶっ放した 一発で羽根の根本を一気に撃ち抜き、バランスを崩した宇蟲に総作機が飛び付いて太刀を突き立て、次の目標に向かって一気に前に跳ぶ 《My Lord 無理で御座いましょう》 「あぁもう。ギャルソン、援護するわヨ。祥子、データ回して」 《はい、クリス様》 総作はその後も暴れ回り、それを的確に援護したクリスが後に続き、リヒトホーフェン機と並んでしまう 《陣形崩すの駄目ニャ。下がるニャ。制限掛けるニャ》 ころにゃの強制命令がかかり、総作が戻されそうとしたのだが、総作は別のモノを見ていたらしい 「先生あれ見ろ。行かせてくれ」 リヒトホーフェンが総作の目標を送られて認識すると、短く言い放った 「後で罰だ」 「了解。クリス」 「すいません先生」 二機が陣形から飛び出し 《あの二機を援護ニャ。総員突撃ニャ。輸送機がヤバいニャ》 ころにゃの命令により、学生達が一気に突撃する 一目散に輸送機に向かって突撃する総作をクリスが援護しつつ、とうとう並走を始める 「だぁ、もう数が多すぎる。アンタのアヴェンジャー渡しなさい」 総作が予備のマガジン事渡すと、クリスが驚いた 「何でこんなに持ってんのよ?」 《それが、模擬弾は最初からマガジン一個だけで、全部実弾だったんです》 「ったく、この馬鹿。今は褒めてやる!」 スコープサイトにギャルソンが次々に目標をセットし、クリスがトリガーを引く バラララララ 一斉に複数目標に正確に着弾し、確実に戦闘能力を削いでいく 「流石クリス。祥子」 《はい、行きます》 クリスも刀を抜きながら総作に続いて突撃し、弾切れになるとすかさずリロード、接近した宇蟲の首に刀を突き立て、更に進む 総作はクリスが付けた道筋に突撃し、戦闘能力が削がれた宇蟲を片っ端から斬り捨てた 《ご主人様、太刀は本当に正確なのに、何で射撃はからっきしなんでしょうね?》 「知るか」 そして、とうとう輸送機に辿り着き、取り付いた宇蟲の首に太刀を突き立てた 宇蟲は関節も簾の様に装甲が覆っているが、隙間は有るので、そこに剣を突き立てる つまり、飛びながら正確に狙うのは、AIの補助が有るとはいえ、非常に難しい作業だ 総作は格闘戦に特化したパイロットであり、逆にクリスは射撃戦に特化している どちらも汎用機たる侍乗りとしては非常に使い勝手が悪い、落ちこぼれコンビである 輸送機に取り付いた宇蟲を次々に仕留めると、祥子が警告する 《音波砲複数本機を指向。強制回避》 ドンドンドン 音を衝撃波に迄昇華する、宇蟲達の飛び道具 祥子が強制的にエンジンを回して跳躍、何も無い空間を音波砲が飛び、別の宇蟲が当たって吹き飛んだ 最も、吹き飛ぶだけで死なない 一度跳躍した総作機がクリスと並んで降下して、又輸送機に取り付いた宇蟲の排除に掛かると、本隊がやっと追い付いた 《大丈夫ニャ?大丈夫ニャ?二人共良くやったニャ。奴らに、横田部隊から引き離されたの、良く見付けたニャ。総員防衛ニャ》 輸送機の周りに、ころにゃの指示で半球陣が組まれ、更にころにゃがモニターに表れた 《見るニャ、他の学校からの増援ニャ。私達の勝ちニャ!》 更に増援部隊700機程が現れ、宇蟲を駆逐していく 基本的に殲滅戦であり、撤退して立て直すと言った概念は、宇蟲には余り見られない 最後の一体を仕留める迄、戦いは続くのである そして最後の一体迄増援部隊と横田部隊で駆逐し、戦闘が終わった 「良し、良くやった俺」 ピーッ 総作が呟いたら、ガス欠の表示が画面一杯に表示された 《やっぱり、ご主人様って馬鹿ですね。ガス欠です。墜落します》 モニター一杯に祥子が現れて肩を竦め 「え?おわぁぁぁぁぁぁ!!」 墜落していく総作機を、がしりと教官カラーの陽炎が掴んだ 肩口には1-02。一年二組の担任機である 「全く君は無茶をして。リヒトホーフェン先生が、心配してるのが良く解ります」 モニターにキリっとした黒髪の女性が現れ、心配と怒りをない交ぜにした表情を見せている リヒトホーフェンのペアである、坂井光子教諭だ 《そうねそうね、ダメダメじゃん。もっとクールに行かないとモテないぜ、兄ちゃん》 ゴスロリ衣装の水色髪のドール、坂井のAI琥珀も現れ、左手を腰に当て、右手でちっちっちっと指を振る ちんまい癖に、可愛らしく憎たらしい仕草が似合っている 「坂井先生に琥珀。有り難うございます」 「バレットさんもガス欠で、リヒトホーフェン先生に抱えて貰ってます」 「…すいません」 「では、護衛任務が有りますし、横田に行って、補給を受けましょう」 ※※※※※※※※※※ 横田基地は元々は米軍基地だったが、米軍が壊滅した後に現在は日本軍に改称された自衛隊がそのまま接収し、侍の航空基地として機能している 予備機とパーツ併せて1000機以上が駐機しているが、稼働可能なパイロットは400名しか居ない パイロットの養成が国家事業になっており、パイロットはそのままエリートコースである 横田に輸送機を護衛した後、全機補給を受けていると、学生と言えどもパイロット達には敬意が払われ、整備班の女性兵から頻繁に声がかかる 男女交際は奨励されており、パイロットの適性を次世代に継がせる為、特にパイロットはモテる 「はぁ、疲れたなっと」 与えられた部屋で総作はだらけていた 机の上にはパソコンがあり、祥子が画面に映っている 《今日は働きましたものね。撃墜数30、ペア40で一位ですよ?》 「へぇ、やっぱり突撃が効いたな。お陰でガタガタだ」 コキコキ首を鳴らしてベッドに横たわっていると、ノックもしないで扉が開いた 「あぁ?夜這いだったら、他の野郎に行ってくれ」 「…誰がアンタなんかに夜這いすんのヨ?」 「お前」 そう言って、総作はクリスを指差した 「誰がするもんか」 「そっ。歳上はどお?って10人位に声掛けられたから、多分何人か来るんでない?」 バタン、ガチャ 鍵迄閉められ、総作は別に気にしない 「…家族が一緒に居るのに、理由が必要?」 「…いんや」 総作とクリスは幼馴染みで、クリスの家族は宇蟲にやられて孤児になったのを、武藤家の両親が引き取った そして二人してパイロットの適性が有るのを知ると、総作はそのままパイロットを選択し、クリスは総作に反対されても、そのまま志願した パイロットの女性は子供を産める事より、戦力として要求される つまり、クリスは総作を振り、総作はクリスに振られた訳だ それでも、二人は中学生になったその時から、ずっとバディを組んでいる 通常は、バディはより良い相性を求めて、何回か交代する 実際に総作自体は結構バディの誘いが有るのだが、一度も首を縦に振らなかった クリスは銃撃特化と云う、非常に使い辛い特性の為に、誘いは一度も来た事はない クリスが自分以上の相手と組むならと、何度も進言したが、やっぱり総作は頑なに承知しなかった 「俺の相棒はクリスだよ。話は終わりだ」 そう言って、いつも終わる お互いに、家族なのか友人なのか、それとも……な、関係だ 総作が眼を閉じると、クリスが狭いベッドに横たわって来た 「私も疲れた。寝る」 「オヤスミ」 二人が寝ていると、扉がノックされた コンコン 「…」 コンコン 「…」 コンコン 「…しつっこいわね。私の声が聞こえる?他の野郎の所行きなさいよ!!」 「あの、此方にムトウソウサクが居ると伺って。お礼を言いたくて」 「ドイツ訛り?あんた、横田の兵士じゃないの?」 クリスは産まれた時から日本の為に、アメリカ訛りが殆ど無い そして現在も公用語は英語で有るにも関わらず、実際は日本語が必須科目になってしまった 日本との結び付き無しでは、どの国もやっていけないからだ 「アノ、さっきの輸送機に乗ってました。是非とも、お礼を言わせて下さい」 「…クリス」 「…わかったわよ」 クリスが立ち上がって扉を開けると、140cm位の赤い髪をした少女が立っていた 152cmのクリスより小さい 「ア、アノ、初めまして。ゾフィー・シャルロッテ・フォン・ヒンデンブルグです」 「入って」 「失礼シマス」 流石に客が来た為に、総作も起き出した 備えつけのインスタント珈琲を入れて三人にクリスが運び、舌戦を開始した 「…で、お礼を言ったら出てってくれる?見ての通り、アタシもソウサクも、昼間の戦闘で疲れてんの。冗談抜きで眠いのよ」 「アノ、貴女もパイロットなんですか?」 「そうよ。アタシはこの馬鹿の相棒」 「すいません。お二方が先行して突撃してくれたから助かったと聞いてマス。本当に有り難うございました」 深々とゾフィーが頭を下げると 「あぁ、気にしないでくれ。やれる事をやっただけさ」 総作が適当に答え、ゾフィーが目を輝かせた 「アァ、これが日本のサムライですね?素敵です。あの、子供作る固定の相手はいますか?」 直球ストレート、クリスがワナワナ震えている 「隣の方は違いますよね。だって、パイロットですし」 「クリスは家族だよ」 「家族ですか。妻や恋人で無いなら、問題有りませんネ。ワタシも13ですし、相手はやっぱりリッターが良いなって」 そう言って、ニコニコ笑っている 「いや、まぁお誘いは嬉しいけど」 「……け」 「……ヤバ」 クリスの言葉に、総作が真っ青になる 「出てけ~~~~!!二度と来るなぁ~~~~!!」 珈琲をゾフィーにぶちまけようとして、総作が慌てて手を被せて阻止する 「Ficken!!」 思わず立ち上がったゾフィーがクリスに吐き捨て、出て行った 「はぁ~~。クリス、パイロットはそれだけでモテんの知ってるだろ?」 そんな総作の右手を引っ張って行って、水で冷やすクリス クリスは無言だ 「そんなに嫌なら、何であん時……」 「煩い、黙れ馬鹿」 「…分かったよ」 ※※※※※※※※※※ 総作が朝食を食べに食堂に降りると、坂井とリヒトホーフェンが隣同士で座っており、思わず総作が前に席を取った 「お早うございます、丁度良かった。お二人に聞きたい事が」 「お早う。あら、何かしら?」 リヒトホーフェンは返事をしない、だが視線で挨拶を交わす この癖に気付くのに、ちょっと学生達は苦労している 「えぇ、男女ペアって、うちの学校じゃ先生達しか居ないじゃないですか?それで聞きたい事が」 「あらあら、バレットさんが拗ねたの?」 「えぇ、まぁ」 そう言って、深い深い溜め息を付くと、総作が語り出した 「俺、あいつの考えてる事が分かんないです」 「あら、私もこの無口馬鹿の考えてる事、分かんないわよ?」 そこで総作がかくんと崩れる 「単刀直入に聞きます。お二人は出来てますか?」 「えぇそうよ。昨晩も、美味しく食べられちゃいました」 坂井が艶やかに笑って、総作が赤面する 「何で、坂井先生パイロット辞めて無いんです?」 「クスッ。そういう関係も有るのよ?多分まだガチガチなのね、二人共。良いから、嫌がろうが何だろうが押し倒しちゃいなさい。先生が許可するわ」 「……いや、あのね。普通先生がそう言います?」 「宇蟲襲来前は言わなかったけど、今は言うわね~。そんなに大事なら、無理矢理孕ませて退役させるのも一つの手段よ?一緒になりたいんでしょう?」 「……バレバレですか」 「バレバレよ。そういう子達、何人も見てきたしね。男女ペアが極端に少ないのは、大抵相棒に惚れちゃって、女性が退役しちゃうからなの」 そこで総作がカマを掛けてみた 「…先生が後押ししてませんか?それ?」 「はい、当たりです」 そう言って、坂井がクスクス笑う 「だって貴方はそう言うペアの子よ?総作君」 「…嘘?知らなかった」 総作は父がパイロットで戦死した事は知ってたが、母もパイロットだった事は知らなかった クリスを引き取ったのがお互い2歳の時で、2年後に父が戦死し、総作の下には妹が居るだけだ しかも、この妹もパイロットの道を選択している 「本当よ。私達は侍パイロットの初期で、武藤君と梓ちゃんには、随分助けて貰ったっけ」 「…はぁ」 「でも、傑作よねぇ。まさか貴方までAIの名前を祥子にするなんて。武藤君生きてたら、何て言うかしらね?」 「ビジュアル迄一緒だ」 「はぁぁぁ!?本当ですかぁ?」 二人が携帯端末を取り出してAIが映ると、二人のAIが喋り出した 《本当だぜ兄ちゃん。また祥子に会えるたぁなぁ。本当に初期化されてんのか、あれ?瓜二つってか、前の祥子のまんまだぜ》 《そうニャ。祥子は祥子のままだったニャ。でも、憶えてないから別人ニャ。祥子には随分助けられたニャ。総作も英作の戦い方まんまニャ》 「親父と一緒……」 「そう、だから私達は心配してるの。貴方、非常に強いけど、穴が有りすぎるの。今のままじゃ、死ぬわよ」 「…そんなの、俺が一番知ってますよ」 「…そう」 坂井が頷き、総作は更に喋る 「だから俺は、クリスじゃないと駄目なんだ」 《良く分かってるニャ。データ検証したけど、クリスの狙撃が毎回的確にフォローしてるニャ。攻撃だけなら他の人と組んだ方が良いけど、生存率は今の状態が二人共に一番ニャ》 生存率が高い相手こそ、最高の相棒である 攻撃に偏重しがちな若い時に気付いてる時点で、総作はパイロットの適性が高いのだろう 「あらあら、一番大事な人が一番の相棒か。貴方も辛い道に来ちゃったわね」 そう言って、三人無言で食事をしてると、噂の人物がやって来た 「あっ、ソウサク。何で起こさなかったのよ?先生方お早うございます」 「お早う、バレットさん。今ね、恋バナしてたのよ?」 「え?嘘、誰の話?」 《英作と梓の話さ、姉ちゃん》 《総作の両親ニャ》 「やだ、お父さんとお母さんの話?聞きたい聞きたい聞きたい!」 すると総作が席を立った 「ご馳走様」 既にリヒトホーフェンも食べ終えてるのだが、女達のかしましい話に眉一つ動かさずに付き合った ※※※※※※※※※※ 横田から学校に帰る途中、総作はオートパイロットで飛行してる陽炎の上で、考え事をしている 「祥子」 《はい、ご主人様》 「お前産まれて幾つだ?」 《三年です。ご主人様》 「…だよな。俺が設定したんだもんよ」 《私にバグでも?》 「いや、バグってんのは俺だ」 《何時もの事じゃ無いですか》 「…お前、何気に酷いよな」 《お褒めに預かり光栄の至り。従順まっしぐらのAIなど、侍の端末としてはあり得ませんから》 「…開発者の悪意が垣間見えるぜ」 全くもって、その通りである ※※※※※※※※※※ そんなこんなで学校に戻って、試験途中の生徒達はそのまま続きを、終えた生徒達は、整備科に陽炎を預けて整備を観察している 「あいつらも大変だよなぁ。授業に24時間耐久整備とか有るんだぜ?多分今やってんのそれだろ?何せ、次にいつ出るか分からんからなぁ」 「アタシ達の24時間連続稼働実習と、どっちが嫌かしら?」 窓から邪魔にならない様に総作が観察していると、クリスが応じる 「さぁてね?差し入れ行こうぜ差し入れ。沢田、長井、付き合ってくれ。整備科の可愛い子ちゃん達に差し入れしようぜ」 「おう」「オッケー行く行く」「待て、俺も行く」 そう言って、汎用機科一年一組の生徒達が全員でぞろぞろ出て行くと、クリスが慌ててついて来た 「ちょっと待ってよ?アタシも行く!!」 整備科は、男女比では珍しく女性比率が高い 要はパイロット達と仲良くなりたいといった、ミーハーな理由からだ だが、最初の数週間でそういう女生徒の半分が脱落し、残りが男子生徒と一緒に頑張っている ちなみに、整備能力は平均的に男生徒の方が高いが、女生徒でもやれば出来る為に、結構必死だ これに脱落すると、陸戦科の陸軍兵士か生産科の工場工の道しかない 最も、どれも大切な職業である事には変わらないので、転属が咎められる事は無い 有るのは、自身に対する敗北感だけである 旧相模原補給廠を改造した、国立防衛高校相模原校 その広大な敷地に5000人の生徒が集まり、次世代を担う為の教育を受けている ちなみに、その内の汎用機科は、一学年たった100人しか居ない 彼らは花形なのだ 当然、他の科の女生徒達と良い関係にしょっちゅうなり、育児休学する女生徒も少なくない 次世代を育む事は奨励されてる為、一切お咎め無しである 5000人の生徒達の全員が、家族の内の誰かを失ってるのだ 油断すれば、次は自分の番である いくら防衛網を構築しても、全ては防げない 毎日何処かで誰かが襲われ、死んでいる だから、それ以上に増えねばならない 今は、死と隣合わせの時代である 「お~い、可愛い子ちゃん達。差し入れだ!」 そう言って、整備科の子達に栄養剤を、皆で大量に持って来た汎用機科の生徒達 陽炎のパーツで不備があった部分は腕,脚,翼事のブロックで交換され、その交換された物を、皆でバラしてオーバーホールを行っている 「え、本当に?皆ぁ、パイロット達から差し入れよぅ?」 「きゃあ!!有り難う」 汎用機科の生徒は、出撃した時に手当が付く 一回20万、撃墜スコア一に付き一万、出撃要請が来るのは月に1~2回 ペアの場合、ペアで割勘も出来る 高校生でも、学費分を差っ引いて、自分自身の命で稼いだ金としたら、随分安い報酬である そして総作は全て割勘で報酬を貰っている 最もクリスと報酬の押し付け合いをして、毎度喧嘩になるのも何時もの事だ 「全く、物で釣っちゃって」 クリスは、総作が他の女生徒達に笑顔で配るのが我慢出来ない クリス自体にも男子生徒のファンが居るのだが、全て無視している 一応、告白は何度もされている 「はぁ、つまんない」一人手摺に寄り掛かって見ている 女生徒達は男から貰う方が嬉しいのを知ってるし、自分は男子生徒に愛想を振り撒く気がしないからだ 今以上に、ファンが増えると困るといった理由も、上乗せされている 紅一点の悩みだろう ピトッ 「ひゃっこい!!」 「お前が一番お疲れだ。クリス」 「取って付けた様に言わないでよ?」 頬っぺたに栄養剤を当てられ、当てた当人に膨れ面をしてみせた こんな何気ない時が、何時までも続けば クリスはそう思いながら、隣で手摺に寄り掛かった総作に笑ってみせる そんな、真夏の前の一ページ ※※※※※※※※※※ 剣突撃型汎用武器換装人口知能補助システム(Sword Assault MUltifunction all Range weapon A.I support system) 通称侍(SAMURAI) 部品は全て規格で共通化され、どのメーカーのも使用可能 部品は頭部,胴体,両腕,翼,両脚とユニット化されている フレームと装甲は空陸機は全てチタン合金 陸海機は重厚なハイテン鋼 徹底的な軽量化を行う為に、マグネシウム合金もあちこちに使われている 心臓たるエンジンはジェットエンジンだが、水中換装も出来る様に、燃料電池ウォータージェット推進もあり、陸戦用ガスタービンホバーもある 宇宙対応する為に、核パルスイオン複合エンジンの研究も盛んである 脚の下腿がエンジンであり、上腿が燃料タンク 爆発の危険が出た場合、脚の付け根から放棄が可能で、増槽と増エンジンも、オプションで可能 胴体部分はコクピットを球体にして防御力を高めた上で、各種ジェネレータ、カメラ等が配置され、頭部はメインカメラと通信機器用のアンテナと各種センサーが配置され、腰部両サイドにハードポイントが設置され、武器を二種迄携行出来る 大抵は銃器一挺と剣装備のコンビだ 銃器自体は昔からの兵器の流用だ 88mmは第二次大戦下のティーガーにも流用された88mm高射砲、30mmはA-10の対地機銃アヴェンジャーだ 枯れた技術は信頼性の高さの現れである これが120mm以上になると、途端に役立たずになる どう足掻いても装甲に当たり、逆にダメージを与えられなくなるからだ 装甲無視でダメージ与える為には、最低46cm砲が必要で、そんなモノは携行出来ない 全く厄介な敵である 太刀や刀も巨大なプレスを用いて生産され、量産化している 更に塚に高周波発生装置を内蔵し、滑る様に装甲の隙間を走らせるのだ コクピット内は第一宇宙速度に必要なGにすら耐える対Gシステムと全面のモニター、シート下には排泄タンクを備え、長時間の任務における排泄行為にも対応し パイロットスーツはそうできる様、且つシートとの密着性を高める為に薄手になっている ヘルメットではなく、シートが防御を担ってるので、視界確保の関係上、バイザーだけだ バイザーにスコープが付属し、射撃時のターゲットを捕捉する 両腕のマニュピレーターは、トルクと稼動速度のバランスを変えた複数タイプを揃えており、本人の好みにチョイス出来る 各種ユニットも同様だ 同じなのは胴体だけであり、厳密にはシート形状が違う為に、同じではない だから、全ての機体がパイロット名+ver.で呼ばれるのである 予備機も有るが、全員一機ずつ、本機と同じ仕様で整備されている 何気に金の非常にかかる仕様型式だが、量産化により、非常に安くなっている 調整さえ無視すれば、予備部品だけで、本機と予備機合わせた同じ数の機体が組めるのだ 今や自動車産業に匹敵する一大産業である 鉄やチタン、原油等は、各鉱山を奪還した国が占有して賄っている為に、資源に付いては問題ない 宇蟲は、動物性蛋白質にしか興味を示さない 更にコアたるブラックボックスには、各種バランスを司るプログラムと進化型AIのコアが収まり、パイロット達が持ち運んでるメモリは、いわば表層部分のみである 表層部分だが、同じ時間を過ごしていく内に、パイロットの思考や癖を読み取り、最適化する為に必要な作業である そして稼動が激しい最前線の機体は一年位であっさり廃棄され、再生産の資源になる 常に最新の技術を投入し、効果が出れば直ぐ様ラインに乗せ、旧ユニットは古い順に処分される 全ては生き残る為であり、妥協は許されない そこには政治意図は一切介入されない 何故なら、性能の悪い機体は政治家自身の身辺をあっさり危機に陥らせ、代償を自分自身の命で支払う事になる 相手は人間の都合なぞ考えない、地球外生命体である デマもミスリードも通用しないし、弱い場所をあっさり狙う 実際に、政治家が国会開催中に地上から来た宇蟲に襲われる様が、生中継されたりしている 地球上に安全な場所は、一つも無いのだ 日本は、比較的マシなだけである 彼らは圧倒的物量で、陸海空何処からでもやって来る だから対抗手段を減じる事をする者には、絶対に支持が集まらない 既に失陥してる北海道と九州沖縄を取り戻すのは、反撃の狼煙になる為、現在の日本の大命題であり、その為に準備を10年以上掛けて行なってる現状である 次世代パイロットは下の年代に行く程、増えて来ている パイロット経験者が教師になる事で、更なる教練が可能になり、全体の死傷率も減じた 日本国民は、数字が示す成果に確実に手応えを感じているのだ パイロットが更に増えれば、牧畜も再開出来るかもしれない 肉や乳製品や魚貝は現在高級品で、おかげで平均身長が下がってしまった 男性で160cm、女性で145cmである 総作は165cm、クリスは152cmの為、お互いこの時代の人の中では長身である その前の世代のリヒトホーフェンは181cm、坂井は160cmだ リヒトホーフェンは無口な風体と名字の長さが合わさって、巨人先生と呼ばれている ちなみに、授業は喋らないリヒトホーフェンの代わりにころにゃがやって、大人気である AIとパイロットが長い年月を掛けて進化すると、こんな感じになるのだろう 坂井の琥珀も完全に坂井の代弁者になっていて、やはり人気が高い 理想のAIとの組み合わせを夢見て設定したAIが、滅茶苦茶腹立つ仕様になるのは、パイロット候補生達が通る道である ※※※※※※※※※※ 汎用機科の生徒の愚痴は、必ず自身のAIから始まる 今は、休み時間に椅子に座ったまま、仲間と一緒にダベっている光景だ 「俺のあかりがさぁ、俺の事ダサいって」 「まだ良いじゃねぇか。俺のフランなんか、戦闘中ボロクソだぜ?幾つ罵倒語知ってんだって位、あらゆる言語で言いやがる」 「うわぁ、ぼくの猛はしょっちゅう寝てるよ。あれ、本当に仕事してんの?」 「あれが俺らの鏡だなんて、ぜってぇ嘘だろ?なぁ武藤」 「……」 「武藤?」 「あぁ、スマン長井。ちょっと考え事してた」 「何だ?また嫁が拗ねたのか?さっさとやっちまえよ」 「長井と一緒にすんな。何人とやってんだよ?」 「まだ三人だ。少ない方だろ?パイロットは種撒くべしって言われてんだから、俺は命令通りしてるだけさ」 そう言って、長井は肩を竦める 「その内、女に刺されちまえ」 「お断りだね。俺は戦場で死ぬって決めてんだ。せいぜい今は好きにするさ」 あながち間違いではない 実際に正規パイロットになる迄に、高校生時代に一年で5人前後は死ぬ 正規パイロットになっても、35歳の引退迄前線に居る者はまだ出て居ない リヒトホーフェンが30、坂井が25で退いて、予備役編入後、教師になっている 他の教師も同様だ 戦場で死ぬのは、パイロットの規定路線である 事実、総作の父もそうだ 既に長井や他の生徒も、高校生になってから戦場を経験し、いつ死んでもおかしくないと悟ったのだろう だから、積極的に交際してると総作は理解し、口ほど悪く思ってない 「さてと、次は体育だな。整備科の女の子と合同か。く~楽しみ」 「言ってろ、着替えてくるわ」 総作は長井達の言動に付き合わず、先に立ち上がって更衣室に歩き出した ※※※※※※※※※※ ガチャ 「さてと、着替え着替えっと……何してんだクリス?」 バッと何かを後ろ手に隠し、男子更衣室に居るクリスに、怪訝な顔をする総作 「な、何でもないヨ」 「そうか」 クリスがそのままつかつか歩いていく姿を見咎め、ぐっと肩を掴んだ 「ちょっと待て、何でお前が俺の体操服を着ている?」 「な…何の事かナ~?」 「良いから吐け」 「ワタシニホンゴワカリマセン」 クリスがエセ外国人の真似をしてかわそうとするが、残念ながら外見だけで、中身は日本人だ 英語は全く話せないので、汎用機以外の航空機には乗れない 汎用機はAIが全て管制とのやり取りを代行してくれる為、英語が喋れなくても平気なのだ 「その手に釣られるか?何年の付き合いだと思ってる?」 「いやぁ、実は体操服忘れちゃってさ。ほらアタシ、バスト95のEじゃん?ウエスト58じゃん?ヒップ88で丸くてツンてしてる、ナイスバディじゃん?ソウサク位の大きさじゃないと不便でさ、予備持ってんだから良いでしょ?」 何気なく、スリーサイズを誇示して自慢している バストはともかく、肩幅とウエストが違う為に、男物を着ると非常に映える 「じゃあ、その手に持ってるのは何だ?」 「ぎくっ」 クリスは、自分の体操服を後ろ手に握りしめながらジリジリと後退し、更衣室の奥に奥に後退していく 「お前わざとだろ?脱げ!」 「いや」 「脱げ」 「い~や~!!」 体操服の裾を掴んで無理矢理持ち上げる総作と、必死に抵抗するクリス ガチャ 「さてと俺達も着替えっと……悪い、邪魔した。先生には適当に言っとく」 パタン 入って来ようとした長井が扉を閉め、総作は顔を青くする 「おま、完全に誤解されたぞ?どうすんだよ?」 「いやぁ~!」 何故か、嬉しい悲鳴に聴こえるのは何故だろう? 総作は深く考えるのは止めてしまった ※※※※※※※※※※ 結局体操服を取り返す事は諦め、総作はそのまま体育に出る為に校庭に出た クリスの格好を見た整備科の女子達が、ひそひそ話をしている 「ヒュ~、やるねぇ色男」 総作に長井が話かけてきた 「さっきのは誤解だ」 「誤解じゃねぇよ、馬鹿」 そう言って、長井は総作に腕を乗せて身体を預けてきた 何気に長身で、汎用機科一年一組では一番高い172cmだ 「誤解だって」 「ばっか、バレットの格好見ろ。あれ男の体操服じゃねぇか、しかもお前のネーム入り」 クリスは総作以外に名前を呼ばれると激怒する為、皆名字で呼んでいる 名前で呼ぶと教師だろうが関係なく、パンチラ付きで蹴りが飛んで来る 体操服は襟元に特徴があり、男はV字、女は丸首だ 当然今のクリスはV字の男モノ、しかも使い込んだ総作のモノである 「さっき、ぶん取られたんだよ。忘れたとか言って無理矢理」 「はぁ、お前知らないの?」 「何を?」 「あれ、この学校の女子生徒に流行ってる、恋人宣言だぜ?」 「………はっ?」 「ったく、使い込んだ男の物を身に付けるのが流行ってんだよ。俺もワイシャツとネクタイ持ってかれたわ」 「アイツがそんなタマかよ?」 「ま、お前はそう思ってて良いんじゃね?重要なのは、恐らく女共相手だろうし」 流石に混乱してきて、頭をぐしゃぐしゃとする総作 「訳分かんねぇ」 「いやいや、俺は面白いわ。あのバレットがねぇ。一体何があったやら」 どうやら、周りのクラスメイトも同意見らしい 皆でニヤニヤしながら総作を見ている 「ま、お前ら似合いの夫婦だし、式には呼べよ?」 そう言って、皆で連続して総作の頭を叩く 流石に48発は痛すぎる 「てめぇら、これ以上頭悪くなったらどうする?」 「嫁に介抱して貰え」 全員冷たい視線で総作を刺す 「悪いがアイツは俺達一組のアイドルだぜ?何人告白したと思ってんだ?」 「知らねぇよ」 「お前除いた全員だ、阿呆。バディとしてはあれだが、嫁にしたい連中は、そんだけ居るって事位知っとけ」 「だったらやろうか?」 寄っ掛かってた長井がムッとして離れると ドカッ!! 長井に殴られる総作 「ってぇな。何すんだよ?」 「…俺はもうちょい、お前が良い奴だと思ってたわ。ちょっと見損なった。バレットが可哀想だわ」 血が混じった唾を吐いて総作が一言 「てめ、格闘訓練の時覚えてろ?」 「あぁ良いぜ。そん時はボコボコにしてやらぁ」 ピーッ 体育教師の笛が鳴り響いて整列し点呼を始めると、クリスの格好を見咎めた教師が質問する 「バレット。その体操服はどうした?」 「はい、申し訳ありません。忘れてしまったので、ムトウソウサクの体操服を借りました!」 名前の所で、一際大きく声を出して宣誓するクリス そう、それは宣誓と呼ぶべきものだ 女子生徒のざわつきが起きるが、教師は無視してそのまま続ける 「そうか、まぁ武藤とは義兄妹だし、そう云う事情じゃ仕方あるまい。今度は忘れるなよ?」 「はい!」 ドヤ顔を整備科女子に見せ付けて、ふんと鼻息荒くする 何人かが、舌打ちするのが聞こえてきた だが教師はそのまま無感動に点呼を取って行き、その日の授業が始まったのである ※※※※※※※※※※ 現在汎用機科一年一組は授業に入る前のブリーフィング中である 教官は、陸戦科の斎早苗藤教諭(25歳 148cm 女性)である 「さて、諸君等は既に出撃5回以上行なった猛者達であり、私はその技量に於いて、疑問を差し挟む事は無い」 カッカッカッカッ 軍靴が床を蹴る音が部屋に響き、生徒達は黙って静聴している 「だが敢えて言おう。今から戦う敵は、宇蟲なんかより、遥かに手強い」 ごくり、息を飲む音が聞こえ、質問に手を挙げる生徒が出た 「加藤生徒」 「はい、そんなにですか?」 カッカッカッカッ 歩みを止めず、斎藤教諭はその質問に頷いた 「その通りだ。我ら魔王軍の侵攻を100回跳ね返し、1000回の戦いに勝利した。正に、世界最強の勇者の軍団である。我らが勝利した事は、一度も無いのだ」 全員額に汗を流し、更に挙手をする生徒 「佐藤生徒」 「私は名誉ある撤退を進言します」 カッカッカッカッ ぴたりと佐藤の前で止まる斎藤教諭 「名誉ある撤退か……モノは言い様だな。だが、敵前逃亡は銃殺だ。君ら候補生と言えども、例外は無い」 その言葉に全員俯き、震えて涙を流す生徒も出る 「先生、死にたくありません!」 「僕もです!」 カッカッカッカッ ホワイトボードの前に斎藤教諭が立ち、皆を見回し、涙を流した 「若い君達を、死地に向かわせる私を恨むが良い。命令だ、汎用機科一年一組、全軍一兵足りとも撤兵能わず。総員死力を尽くせ」 「了解であります」 全員立ち上がり、敬礼を返した 涙を全員流している そして、斎藤教諭を先頭にぞろぞろと歩いて行き、やたら頑丈な扉を開いたのである 入った瞬間に、軍服から保母さんの格好に一瞬で着替えた斎藤教諭 そして言ったのだ 「みんな~!今日もお兄さんとお姉さんが来てくれました。今日も思いっきり遊んでもらいましょう」 「きゃ~~~~~!」 ゆうしゃたちがあらわれた! 武藤総作 LIFE100 MP50 クリス・バレット LIFE80 MP30 長井裕也 LIFE150 MP300 沢田幸路 LIFE200 MP80 ゆうしゃA(おとこ 1さい6かげつ)のこうげき! ゆうしゃAは、はいはいしながらころんで、クリスにわらいかけた! クリスに300MP(萌えポイント)のダメージ! クリスはもえちった! ゆうしゃB(おんな 2さい3かげつ)のこうげき! ゆうしゃBは、もじもじしながらそうさくのズボンをつまんで、じゅもんをとなえた! 「…つれていって」 そうさくは65535MPのダメージ! そうさくはもえちり、しんでしまった! ゆうしゃC(おとこ 3さい)はなかまをよんだ! ゆうしゃE~Zがあらわれた! ゆうしゃCのれんぞくこうげき! 「きゃはははは!」 ゆうやは50のダメージをうけた! ゆうやは50×20のダメージをうけた! ゆうやはしんでしまった! ゆうしゃD(おんな 2さい)のこうげき! ゆうしゃDは笑顔で呪文をとなえた! 「あそんで」 こうじに4096MPのダメージ! こうじはもえしんだ! そうさくたちはぜんめつしてしまった! 「全滅迄30分か。情けないぞ、皆」 斎藤教諭が、死屍累々となった一年一組の生徒達を笑っている 萌え死んだ者と体力の限界迄幼児達にダメージを与えない振り回しをした生徒達が、ちび達の下に埋もれている 勇者軍は250で魔王軍は50、勇者の軍団の方が数が多いのだ ちなみに勇者達は、学生の子供達である 託児所は核シェルターもかくやと言われる頑丈さで、それを守るのは最凶のお母さん生徒達だ 母は異常に強く、学校創立以来、未だに突破された事がないのが自慢であり、近所のお母さん達が使わせろと要望が来たのだが、校長が1000人単位の赤ちゃんを世話して頂けるなら許可すると言って、近所のお母さん達は全員引き下がったのである 子供を作るだけじゃ無責任だから、きちんと皆で世話しようと決められ、情操教育に多大な効果が発揮されてる為、全校生徒が持ち回りで世話をしている ちなみにこども人気ランキングなるモノ迄、お母さん生徒達中心に出回っており、こどもに人気の生徒は良い父母になると、目を付けられていたりする 一年男子トップが総作なのは、女子(教師含)しか知らない 今も総作は大量の勇者達の下敷きになっており、身動きが取れない状態だ 「…誰か助けてくれ」 「…無理に決まってるだろうが。お前こそ俺を助けろ」 「無理だって…長井、クリスは?」 「さぁな。あっちでエロガキのおっぱい攻撃から、逃げてたのは見たが。赤ん坊の方じゃね?」 「…そのガキ教えろ、ぶっ飛ばしちゃる。俺でも触った事ないのに」 「…お前本当に子供じみてんな」 「じゃあ聞くが、長井の彼女のおっぱいを、ガキが揉んだらどうする?」 想像した途端、総作と同じ考えに至った長井 「………スマン、俺が悪かった」 「ふん、分かりゃ良い」 ちなみに、総作達が身体を動かすとキャッキャッと笑って次々に乗られ、今の状態になってしまっている 世界最強の勇者達の勝利記録は、本日も更新されたのである ※※※※※※※※※※ 警報が学園内に鳴り響いている、宇蟲の侵入だ 補給廠を改造して作った防衛高校相模原校は、周囲と違いコンクリートやアスファルトに包まれておらず、地中から来た彼らが手軽に出てこられる拠点になっていて、そこから周囲に散っていく 勿論土の地面なら何処でも出て来るが、人の臭いが強い場所に集まる習性があり、生徒達の数の集中が囮の役目を担っている パイロット候補生たる中学生と、生きられる力を身に付ける為に来た志願中学生、高校から入る生徒、働く人間合わせて7000人以上居る為に、ちょっとした都市である 《こちら学園統括。小型の地中侵攻に合わせて弾道軌道でブラジルから侵入して来る宇蟲確認。陸戦科出撃。汎用機科三年は土蜘蛛に搭乗、二年一年は陽炎に搭乗せよ。現在、厚木、横田、習志野の部隊が東京周辺にスクランブル、相模原は第二目標と思われる。応援も要請中》 授業を受けてた生徒達が、一斉に立ち上がって走り出す 汎用機科の学舎は機体格納庫のすぐ側であり、全員更衣室で60秒以内で着替えを済ませてハンガーに向かう クリスはパイロットスーツに身を包み、ブラすら外してその豊かな胸を揺らせて走り、機体肩のマーキング右が1-01、左が51と書かれたコックピットに入ると携帯端末をそのまま接続し、AIを呼び出した 「ギャルソン」 《YES.Type KAGEROH Christine ver. Wake UP. オプション選択をお願いします》 「管制情報寄越せ」 《……現在こちらに来るのは1000無いし2000、東京上空で分かれたら解りません》 「全く……整備」 機体出撃準備をしてる整備科の生徒が、ツナギと帽子の格好でインカムを取り出して応答した 画面に拡大表示される 「51担当の二年小池です。現在近接は小太刀とレイピア、太刀。銃器は88mmと30mmガトリング、50mmロングライフルが選択出来ます。ミサイルは換装済みです」 「小太刀とアヴェンジャーとロングライフル持っていく。弾は?」 「ロングライフルが30発。アヴェンジャーが3000です」 「全部寄越せ」 「了解……ハンガーラックロック解除。持って行って下さい。御武運を」 コンソールに取り付いて武器庫を開放した坂井に伴い、クリスがエンジンをアイドリングで回しながら、装備を受け取り、ハードポイントに小太刀とアヴェンジャーを吊り、マガジンを背部にぶら下げ、ロングライフルを両手に持って、ズシンズシンと歩いて格納庫から出た ヒュイィィィ 周りで次々に離陸していく陽炎に混じって、ジェットエンジンの回転が上がっていき、クリス機も一気に飛び立った 飛び立ってからオートでバディを誘導し、総作機が合流する 太刀を二振りしか持ってない 完全に機動性と近接戦選択だ 「もう、ソウサク。何で銃器持って無いのヨ?」 「クリスに任せた。お前こそ随分重装備じゃねぇか。脇抱えるぞ?」 「了解。装備重量のお陰で加速鈍い」 画面にペアリンク完了の文字が出て、祥子が出て来た 《クリス様、ロングライフルは威力は有りますが、取り回しに難がございます。破棄を進言しますが?》 「その為のあんたらでしょうが。前衛頼むわよ」 《…承知しました》 部隊リンク完了の文字が入り、ころにゃが出てきた リヒトホーフェン機は、指揮をする為にセンサー機能が充実しているヘッドを装着している 《今カメラで追ってるニャ……不味いニャ、進化してるニャ。全員死重減らすニャ。ミサイル………撃つニャ》 「進化ですって?」 《My Lord 進言に従った方が宜しいかと》 ころにゃの指令で全員のミサイルが全弾撃たれ、弾道軌道から墜落してくる宇蟲をミサイルの爆発に巻き込む 宇蟲は超音速で抜けつつ、一部が爆発で弾き飛ばされた 今回飛来した型は脚関節が完全に引き込み脚になっており、葉巻型の胴体と彼らの能力である、呼吸でのジェットエンジン機能を発生させ、羽根を開いて減速しつつ旋回した 彼らの目の前に殻に包まれた肉が有る ならば彼らは狩るのみだ 脚を出し、翅が6対開き、羽ばたく翅と、獲物を指向する翅に分かれる 《全機回避ニャ!音波砲の一斉射撃ニャ!》砲予測地点が全機の軌道に示され、全機回避機動を取るが、遅れた機体が出た ドドドドン! 2機が巻き込まれ、燃料が漏れてエンジンに引火、消化と緊急分離を行うがそのまま爆発し、機体が飲み込まれた 火炎の中から脱出ポッドたる球体が現れ、落下していくとパラシュートが開き、そのポッドに向けて宇蟲が取り付き、2対のカマを振るい、中から人を取り出し、そのまま飛行の向きを巣の方向に切り返した 既にパイロットは首が変な風に曲がっており、身体も引き摺り出す際に千切れている 運び辛いのか、宇蟲は顎で器用に肉団子にしながら飛んで行った 「加藤、相川」 クリスは真っ青になりながら、ロングライフルを構える スコープは離脱した奴らの弱点、6時を取れた際のみ見れる、呼吸機動の噴出口を照準する 《お待ち下され My Lord 狙うのはこちらです》 前方10時、天頂2時方向にスコープを出現させて変更を要求するギャルソン 「五月蝿い!」 そのままトリガーを引くクリス ドン! 《My Lord!》 ガシャン レバーをコッキングし、薬莢を排出してチャンバーに次弾を装填 既に命中した宇蟲は墜落を始めている そして、もう一方の友達を肉団子にした宇蟲に狙いを定め 《My Lord!間に合いません!早く訂正を!》 「黙れギャルソン!アンタはパイロットの指示に従え!」 トリガーをまた引く ドン! そして墜落していった 《……なんて事を》 「黙れ黙れだまれ~~!友達が殺されたんだ!敵を取って何が悪いんだぁぁぁぁぁ!!!」 コックピットで、思い切り叫ぶクリス 《……佐藤様、撃墜されました。パイロット死亡。My Lordの場所からのみ、支援狙撃可能でした》 クリスは思わず身体が止まり、機体も応じて滞空する 「……今、何て……言ったの?」 「馬鹿クリス!止まるな!狙われるぞ!」 今は、一番声が届く、一番大切な相棒の声すら届かない 《My Lordが、佐藤様を見殺しにしたと言いました》 「……ワタシが?」 《YES My Lord 我々AIが反抗的なのは、マスターたるパイロットが感情的になった場合に、進路変更を促す為です。でなければ、マスターが死んでしまうからです……強制回避》そう言ってギャルソンが無理矢理機体を動かし、取り付こうとした宇蟲を回避する 《My Lord このスコープを拡大して下さい。何が見えますか?》 クリスが言われて拡大すると、総作機が苦戦している 「ソウサクだね」 《感想はそれだけですか?》 「…他に何が?」 《…My Lord 戦線離脱を進言します。今の貴女は、自分を含めて味方を皆殺しにしかねません》 「戦線?何を言ってるの?演習だよね、これ?ほら、いっつもリアルに、ギャルソンがグラフィックイジってくれるじゃない」 ギャルソンは、とうとうクリスがショックでおかしくなった事を認識し、指揮官機に指示を請う 《ころにゃ様、AI強制コード発令。クリス・バレットから操縦権剥奪。撤退を許可願います》 《こちらころにゃ、簡易情報……許可するニャ。武藤機、撤退を護衛するニャ》 「こちら総作、了解!だけど、もうちょい待ってくれよ!祥子、無茶するぞ!」 《了解です、ご主人様》 クリスには全てが遠い世界の出来事の様に聞こえ、モニターで繰り広げられる戦いに魅入られていた 総作は、何時まで待っても来ない支援狙撃で、クリスの異変を感じるが、目の前が優先だ 「何人殺られた?」 《三人です》 「俺が四人目になりそうだな、おい」 ギリギリギリギリ 四本の鎌を二刀流で受け止め、どう凌ごうか思案してると、祥子が警告して来た 《クリス様が止まってます》 「何だと?馬鹿クリス!止まるな!狙われるぞ!」 《…駄目です。応答有りません》 《総作様、祥子様》 モニターにポンとギャルソンが映る 「ギャルソン、クリスに何があった?」 《ショックを受けて自失中です》 「…俺が行くまで持たせろ。撃墜されたら、AIにも痛みが有る事教えてやる」 《私も同意見です》 祥子が言うと非常に凄みが出る 実際にAI用ペインプログラムの作成と注入位はしかねない 《これは恐ろしい。肝に命じましょう》 フッとギャルソンがモニターから消え、総作は鍔競り合いをしている宇蟲に膝蹴りをお見舞いしながらウィングを全開 隙間を作ると膝を逆関節に曲げながらアクセル全開、タービンが一気に回り、その場で一回転しながら空中前方回転蹴りで宇蟲の頭部に両踵を叩き付け、宇蟲が反動でぐるっと一回転した所を、首関節に刃を滑らせた 墜落していく宇蟲を尻目にクリス機に向かって飛ぶが、別の宇蟲の脇に補助翼装備の頭部を傾けて、機体をしならせながら交叉し、太刀を滑らせて5対有る脚の片方を一刀で斬り捨て、更にタービンを回す 《流石はご主人様。空戦機動A+》 「褒めるなんざ珍しいな、おい」 《恋しいクリス様の危機に、ご主人様が奮起してる様を見るのは、楽しゅうございます》 そう言って、画面で口元に手を当ててころころ笑う祥子 だが、機体ダメージは両腕両脚を青色に染めている 過負荷になり始めてるのだ 「言ってろ」 指揮回線が開き、そんな総作に指示が入って来た 《こちらころにゃ、簡易情報……許可するニャ。武藤機、撤退を護衛するニャ》 「こちら総作、了解!だけど、もうちょい待ってくれよ!祥子、無茶するぞ!」 《了解です、ご主人様》 降下していくクリス機に向かう為に、総作はエンジンをぶん回し、機体モニターが黄色を示す 《エンジン過負荷。回し過ぎです、ご主人様》 「タコメーターギリギリだ。良いからリミット一杯迄回せ」 《了解。限界時間カウントダウン》 ピッ タコメーター側にカウントダウンが表示され、全開出力の効果時間を示し、総作の陽炎は一気に加速していく クリス機の動きに気付いた宇蟲が何体か追って来た 「祥子、機体リンクで動かせ」 《了解。軌道予測表示》 モニターに観測出来る分の宇宙の軌道予測とクリス機の効果的な回避範囲を示され、総作が大まかに指定し、祥子が指示に沿いクリス機を動かす 《強制回避》 祥子の声と共にクリス機が回避し、宇蟲が狙いが外され降下して行く その際、ドンドンと射撃音が二回鳴り響いて、クリス機に取り付こうとしていた宇蟲の噴出口に着弾し、墜落していく 「坂井先生!」 《兄ちゃん、彼女を守るのは野郎の仕事だぜ?仕事きっちりやって来な》 アハトアハトを二挺構えた坂井機が拡大表示され、ミニモニターに表示された琥珀が右手を差し出し親指を立てると、ウィンクをしてきた 《スナイパーの称号は、坂井様こそ相応しいですわね》 「そりゃ、汎用機科一番人気の女傑だもんよ」 そんな総作機に宇蟲が二体、追随してきた 《ご主人様、6時に宇蟲二体呼吸機動。追い付かれます》 今迄は練習機とは言え、陽炎の全力加速に追い付ける宇蟲は居なかった 今回の敵は、確実に進化している 総作は全力で逃げるが機体背後に取り付かれる寸前、加速で後退させてたウィングを全開しながらエンジンをカットオフ それと同時に太刀を上に突き上げた 祥子の補助で理想的なタイミングで、タイミングを外して追いこした宇蟲の首関節に太刀が滑り込み、墜落していく途中、太刀が一本折れる 《太刀一本破損》 「ちっ、硬さも上がってんのか」 パイロットが機動させない侍は只の的だ 更にクリス機に取り付こうとした宇蟲に総作は体当たりして吹き飛ばし、更にクリス機も吹き飛ばした 総作機の機体ダメージは、両腕両脚が黄色の表示がずっと表示されている 先程の攻撃で過負荷になり、腕部も出力が出ない 《カウントダウン終了。強制冷却》 そのまま振り返ると総作は両腕を広げた 「ここまでか。悪いな、祥子」 《いえ、何も出来ずに申し訳ございません》 祥子が深々と総作に頭を下げ、総作はにやりと笑う そんな総作機に先程吹き飛ばした宇蟲が体勢を立て直し、鎌が振り下ろされた 《……My Lord!My Lord!しっかりして下さい!》 ギャルソンはずっとクリスに呼びかけていたのだが、全くクリスが反応せず、体当たりの衝撃から機体を立て直していた 「……痛たたた、一体何なのよ?もう」 《良かった。気を取り直されたのですな》 「何の事よ?」 《総作様が…》 「…え?」 機体が総作機を正面に捉えている 頭部に補助翼付きの二本角のヘッドは、クラスメイトには居ない形なので確実だ だが、その総作機が宇蟲の前に両手を広げ、クリスの盾になっていた そう、鎌がコックピットに直撃されていたのである 「何……これ?」 《総作様がMy Lordの保護を優先し、コックピットすら、両腕で守りませんでした》 「な、何やってんのヨ?この馬鹿!無事なの?返事しろ、このボケ茄子!!」 すると、音声のみが繋がった 「……ザザ……無事か……クリス……ザ」 「ちょっと、映像」 「……悪い、イカれた…ザ……」 《クリス様、正気に戻られたのなら、排除をお願いします。ご主人様が……ご主人様が!!》 ミニモニターに映った祥子が、真っ青になってガタガタ震えている はっとしたクリスはすかさず小太刀を抜き、総作機に取り付いた宇蟲に突撃を敢行する 「ソウサクからどけ~~~~~~!!この蟲野郎~~~~!!」 今までで一番の斬撃、綺麗に首を落とすと、ロングライフルを投げ捨てアヴェンジャーを持ち直し、一気に内部組織に叩き込んだ バラララララララ AI補助により、反動すら補正して全弾綺麗に着弾し、反射で動く部分すら完全に破壊する リロードが表示されるとすかさず交換し、ひたすら30mmを叩き込む そう、奴が完全に剥がれ落ちる迄、クリスは全弾撃ち込んだのだ 内部組織は外骨格装甲で跳ね返った弾が暴れ、完全にミンチになる そして、2000発を叩き込んだ時点で、ゆっくりと外骨格が剥がれて落ちて行った 「ソウサク、今すぐ病院行こう。大丈夫、ワタシが護るから。今迄、何もしてあげられなくてゴメンネ。行こ」 クリスは逸る心を抑えて、ゆっくりと附属病院に降下して行き、たまに襲って来た宇蟲を跳ね返してると、上空から剣突撃支援が来て、非常に綺麗に宇蟲を一合で撃墜してのける 無駄の無い、洗練された動きだ 「早く行け!」 《ワタクシが来たからには、撤退を邪魔させませんわ。下僕、おやりなさい!》 「てめ、いい加減にしろ、フラン」 長井と共に、金髪碧眼のフランス人形のAI、フランが高飛車に出てくる 「長井……」 ドン! 更に銃撃と共に、もう一機降下してきた 「俺達のペアで支援する。武藤迄死なせてたまるか。早く行け」 《あら、幸路もたまにはカッコイイじゃない》 「……そんなにダサいか?俺」 更にモニターに沢田と彼のAI、ドレスを着て日傘を差した貴婦人のあかりが、その豊かな黒髪を揺らしつつ、クリスに微笑んだ 《殿は任せなさい。私達のペアは、貴女達より強いわよ?》 客観的な事実だ。演習対戦成績も撃墜数も被弾率も、彼らの方が上である 「……ありがとう」 「ダチの背中を守んのは当たり前だ」 長井がそう言って、親指を立てて通信が切れ、沢田もすかさず親指を立てて消える そして二機は、弱った獲物を狩る為に飛来して来た宇蟲に向かって、一気に加速を始めた 撤退するクリス達の上空で、激しい戦いが開始されたのである クリス達が降下した後、リヒトホーフェンと坂井が長井達の支援に入り、戦闘空域を設定し直した 《こちらころにゃ。総員立て直しの為に、後退するニャ。ころにゃ達の所に防御面再構築ニャ。被弾して撤退する仲間を支援ニャ》 次々にリヒトホーフェン機に了解の返答が入り、防御面が再構築され、乱戦だった空域に秩序だった戦線が構築される 《こちら琥珀。東京に回ってた横田部隊、厚木部隊、厚木校部隊、習志野校部隊、府中校部隊、横須賀校部隊が増援に回っている。皆、後10分耐えたら勝ちだ。凌ぐぜ、兄ちゃん達》 次々に喚声が上がり、一気に士気が上がった ※※※※※※※※※※ 総作は今、手術中だ 引き摺り出す為に、総作機の中に入ろうとしたクリスを、頑なに祥子は拒み、医師達にクリスを引き剥がして貰ってから、わざわざシートで覆い隠してから運び出された クリスは全く見てないのだ やっと中身が出て行って、コックピットに入ったクリスである 「ちょっと、祥子。何でワタシに見せないのよ?」 《ご主人様の意思です。私はご主人様の意見に賛成です。止血は成功してたので、問題有りません》 「嘘付け、何この大量の血痕。失血死しても、おかしくないじゃない」 《ご主人様は絶対に死にません。私はそう確信してますから、大丈夫です》 「何で、そう断言出来るのよ?」 《分かりませんか?クリス様を置いて死ぬ様な、そんな潔いタマじゃ有りませんから、あれ》 その瞬間、クリスは真っ赤になる 《身体はかなり負傷しましたが、あれはダメージ負ってないので大丈夫です。私に、二人の子供を見せて下さいね》 「なっなっな、何を言って……」 《多分……もう、それしか出来ませんから》 祥子の物言いは、侍乗りに必要な両手両脚や眼、つまり五体の喪失を意味している 義手も義眼も、まだまだパイロットとして使える代物は出ていない 「…そうなの?」 《…はい。私と一緒に空を飛ぶ事は叶わないでしょう。後……2年パイロット続けられれば……》 クリスは血塗れの座席に座り込み、身体を抱き締めガタガタ震え始める 「ソウサクの居ない空……ソウサクの居ない部屋……ソウサクの居ない教室……ソウサクの……イヤ、イヤだイヤだイヤだ!私……ソウサクじゃないと、侍乗ってる意味が無い!」 完全に恐慌を来しているクリス 《クリス様》 祥子は、俯く事しか出来なかった AIの身では、温もりを与える事は出来ないのである ※※※※※※※※※※
https://w.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/531.html
Top 【シェア】みんなで世界を創るスレ【クロス】 地獄世界・「地獄百景」 第17話 「無明の岸辺へ」(後編) ◆ 『…では、大帝陛下の健康を祝して、乾杯!!』 複雑な視線を注ぐ地獄界首脳に囲まれ、ジョーイ・ベリアルはグラスを高々と掲げた。この急遽準備された晩餐会が始まっても、敵将ジョーイ・ベリアル来訪の意図を看破できる者はいない。 閣僚の中にはあらゆる憶測を一蹴し、彼の即時逮捕を主張する者も少なくなかった。だがしかし、みすみす討ち取られる為に単身、しかも全裸で敵地を訪問する馬鹿が果たして大宇宙に存在するだろうか? とりあえずは離宮へ賓客として迎え、各界の情報を収集しつつ様子を見る。これが御前会議の末、閻魔庁が下した最終的な結論だった。 『…ベリアル殿下、人間界で御社のタンカーが座礁したとの知らせが…』 ぎこちない会食の間じゅう、ひっきりなしに飛び込むベリアル・コンツェルン受難の知らせ。敏感に首領の失踪を嗅ぎつけた数多い敵対勢力が、泣き面に蜂とばかり攻勢に出たのは明らかだ。 『…おお、ご心配なく。閻魔大帝陛下への拝謁は全てに優先します。下らない雑事は弟たちが…上手く処理するでしょう。』 大帝の鋭い眼光の前では、流石の魔王子も弟たちが致命的な失策を犯さぬよう祈るしかなかった。どうやら恐るべき召還術の正体が、閻魔庁の秘密兵器ではないらしいことがせめてもの救いだ。生きて帰れさえすれば捲土重来の機会はきっとある… 『…我々魔族は、みな兄弟です。私は、不毛な敵対心をまず自ら正したい…』 …後に地獄の住人たちが伝え聞いたところによるとベリアルは、自分の愛情不足が義妹リリベルにひねくれた妄想を抱かせた原因だった、と涙ながらに語り、閻魔庁に全面的な賠償を自ら申し出たという。 ともかく、魔王子ベリアルの土壇場勝負は効を奏した。結局閻魔庁は彼の提示した調停案を受け入れ、不可解で大幅な譲歩に首を傾げつつも、それなりの敬意を払いこの招かれざる客をゲヘナゲートから母国へ送り返したのだった。 ◆ 「…ズシッ!! いるっ!?」 「…ああ、ユキちゃん。お饅頭を食べないか?」 血相を変えて駆け込んできた由希を呑気に迎えたズシは、彼女の尋常ではない様子にも動じることなく、相変わらずの機械いじりを続けていた。 「…お饅頭どころじゃないよっ!! これっ!!」 由希が突きつけたまだインク薫る新聞には、『号外』の迫力ある黒文字とともに局部修正入りで白人男性のヌードが大きく踊っている。『ジョーイ・ベリアル投降』。隠せぬ喜びを湛えた紙面には、一昨日の顛末が詳細に記されている。 だがそんなことよりも由希を激しく動転させているのは、他ならぬ…自分の言葉がこの大事件を引き起こしたかもしれない、という事実だった。 「…あ、上手く行ってたのか…何らかの計算ミスで到着点がズレたんだな…」 …やはりベリアルの地獄堕ちはズシと彼の装置、そして自分の軽率な言葉のせいなのだ…改めて膝を震わせた由希は、当たり前のように頷くズシを茫然と見つめた。 「…やっぱり…」 「…良かった。今から召喚式に不備が無いか再検証するところだったんだ。これで『本番』に取りかかれるよ…」 強張った表情で唸りを漏らす装置を見つめていた由希は、ズシの呟きにびくりと小さな身体を竦ませた。この異世界の魔道士は、昨夜由希が一睡も出来ない程苦しんだ恐ろしい行為を、再び繰り返すつもりなのだ。 「だ、駄目だよっ!! 『本番』って、一体今度は誰を…」 精一杯の大声を上げても振り払えない、目眩がするような戦慄。由希を縛り上げるその感情の中心には天命を冒涜した恐怖よりも…死んでから片時も心を離れない、恋しい両親の姿があった。 試運転で強力な悪魔を容易く呼び寄せた装置だ。もし、由希がズシに頼めば… 「…アンジュを呼ぶんだ…」 「…アンジュ…さん?」 聞き慣れぬ名前と差し出された一枚の絵が、由希の思考を現実に引き戻した。しかしズシが描いたと思しき『彼女』の肖像は、ほとんど顔を背けた妙な構図だった。そのうえ全く不必要に緻密な背景がいかにもズシらしい。 「…幼なじみさ。ガミガミ怒るし恐いけど…本当は優しいんだ。」 柔らかくなだらかな肩の線と、意思の強そうなしっかりとした顎…由希を産み、育てた母にどことなく似た女性だった。かつてのズシと同じ世界、すなわち生者の世界に『アンジュ』はいるのだろう。 「駄目だよズシ!! ここは地獄なんだよ!? ここに来る、っていうことは…」 「…なぜ? ここはみんな優しいし、異形も人間も仲良く暮らしている。今アンジュがいるところよりずっと楽しい…」 激しい動悸のなか、突然由希の眼には作業に没頭するズシの横顔が、まるで厳かな神のように見えた。離別の苦しみや悲しみを越えられる、彼の素晴らしい力。一緒に三途の川を渡った幼い弟たちは、母との再会をどんなに喜ぶだろうか? (…でも…それは…間違ってる…) 「…駄目っ!!」 由希は知っている。同じ地獄の小学校に通う幼くして召された友達はみな、毎日屈託なく遊び、学びながらも、眠りに就く前に必ず枕を濡らしている事を。 もし全ての亡者が未練のままに生と死の厳粛な掟を破り、愛する生者たちを地獄に呼び寄せてしまえば… 「…やっぱりいけない!! アンジュさんを呼んじゃいけないっ!!」 毅然と顔を上げた由希はもう一度叫んだ。しかし、カラカラに渇ききった彼女の喉からは、不思議そうに首を傾げるズシを説得する言葉は滑らかに出て来ない。 「…ア、アンジュさんだって…地上に家族がいるでしょ!? もしこっちに来ちゃったら…」 「…彼女は孤児だ。僕と同じように。」 にべもない答え。しかしズシは確かに由希の言葉に耳を傾けていた。彼は類いまれな頭脳の代償に少し…想像力が欠けているのだ。由希は拳を握りしめ、彼の心に届く言葉を必死に探し続けた。 「で…でもアンジュさんは…もしかしたら好きな人がいるかも知れない!!そう、いつか結婚したいなぁ…って思ってる人が!!」 思いつくまま叫ぶ由希の脳裏で、見知らぬアンジュは母の姿をしていた。父と出逢い、結ばれる前のうら若き母の姿。『クラス一の美人だった』という父の言葉は、はたして本当だったのだろうか? 「…もしかしたらもう結婚してて、そう…赤ちゃんがいるかもしれない!!」 虚弱な赤ん坊だった由希。しかし両親は惜しみない愛で、彼女を腕白な小学生へと育てた。始めは泣きながら通ったスイミングスクール。そう、いくら溺れても、決して母に飛び込んでもらう訳にはいかない渾身の力泳を、由希は今なお続けているのだ。 「…それで、それで…また赤ちゃんが産まれて…忙しくて、忙しくて…」 …その弟たちも今は、自分と一緒に『こちら側』の住人だ。由希はもう自分でもなにを言っているのかよく判らなかったが、静かに装置から離れたズシの手は、彼女の震える肩に伸びていた。 「…ちょっぴり家計が苦しくなっちゃって…お仕事へ出るために車を買って、弟たちを保育園に入れて…それ…で…」 ズシの白衣をギュッと握りしめた由希の唇から、絞り出すような涙声が途切れる。…もしかしたら最後の朝、自分たちが車内で兄弟喧嘩など始めなければ、まだ車に慣れない母は運転を誤ることなどなかったかもしれない…もしか…したら… 短くても光溢れていた十年の生涯。涙しか呼び覚まさぬ『もしも』を積み重ねても、あの眩しい日々は決して戻らない。 それならば、父母が与えてくれた不滅の魂を遥か再会の日まで磨き、誇らしく輝かせ続けよう… 「…ユキちゃん、僕の想定は、かなり甘かったようだ。視野に入れるべき可能性をたくさん教えてくれてありがとう…この装置は…壊すことにするよ…」 ズシは神ではない。しかし幼い魂の慟哭をしっかりとその心で聴きとった若い魔道士の姿は、あらゆる者が心に描く全能の存在に、とてもよく似ていた。 「…さ、ユキちゃん。危ないから…」 由希を優しく宥めながら、ズシは傍らのハンマーに手を伸ばす。そのとき泣き続けていた由希が、白衣の裾に顔を埋めたまま、小さな囁きを洩らした。 「…ね…ズシ、機械を壊す前にひとつだけ…私のお願いを聞いて…」 ◆ …カタカタ… 子供部屋の不審な物音に、佳世子はぼんやりと蒼白い顔を上げた。由希たちとの思い出が詰まったあの部屋に入るのは、この悪夢のような日々で最も辛いことの一つだ。 だが、ひょっとしたら慈悲深い侵入者が、抜け殻のような自分の生を終わらせてくれるかも知れない。 子供たちを失って以来、ずっと続いている耐え難い耳鳴りのなかそう思った佳世子は、雨戸を閉め切ったリビングを亡霊のように横切って、ふらふらと二階にある子供部屋へと向かった。 …カタカタ…カタ… 物音は、軋む階段の音に混じって続く。しかし佳世子の浅い眠りは何度、残酷な幻聴に破られただろう。…由希の、真の、拓の明るい笑い声。 しかし狂ったように彼女が駆け込む薄暗い子供部屋には、いつも寂しげな玩具たちがあの日のまま転がっているだけだった。 ドアを開けると佳世子を包み込む、子供たちの甘い匂い。胸を締め上げる、暖かい日差しのような残り香だ。そして彼女の落ち窪んだ目に映る玩具は遠い遠い倖せの化石。その中に、カタカタと震える見慣れた木箱があった。 (…ネズミ?) 由希が幼い頃に買い与え、そのあと弟たちが受け継いだ四角い積み木のセットだ。色鮮やかに五十音が印刷されたこの積み木で、由希はよく弟たちに平仮名を教えていたものだ。 箱の隙間からうっすら洩れる光に佳世子が驚いていると、木箱の振動は唐突に止んだ。 …几帳面だった由希は、いつもちゃんと順番に平仮名を並べ、積み木を片付けていた…膝をついた佳世子がそんな回想と共に手にした木箱は、なぜか驚くほど軽い。 (…由希…) 懐かしい箱の手触り。佳世子はそのとき確かに娘の息遣いを感じた。すぐそこに…由希が微笑んでいるような… コトリ、と木箱の蓋を開いてみる。するとぴったりと詰まっていた筈の積み木は、たった五つを残して、箱の中から消え失せていた。 『あ』『い』『し』『て』『る』 何処かで、くふふっ、と由希が笑った。日々佳世子も知らぬ新しい世界を切り拓いてきた彼女が、驚く家族によく見せた得意げな微笑み。 子供たちは暗く冷たい世界にいるのではない。少しだけ遠い場所にいて、こうして変わらぬ愛を胸に、佳世子の愛し子であり続けているのだ… やがて、茫然と積み木の文字をじっと見つめる佳世子の喉から、澱んだ闇を振り払い、冥府にまで轟くような嗚咽が迸る。 …この涙が涸れたとき、由希が残していった五つの積み木が心の穴をぴったり塞いでくれる。そうしたらもう一度立ち上がって、家じゅうのカーテンを全部開けよう…そう佳世子は思った。 おわり 上へ
https://w.atwiki.jp/asuka-ch/pages/269.html
概要 ルール 参加者と結果 リンク 概要 企画 へいほう 日時 2011年1月20日(木)昼過ぎ ダンジョン 無明地獄 制限時間 3時間 チャット会場 #asuka-ch 階層報告先 #asuka-ch2 裏方 ルール ルール 到達フロアポイント制 AsukaTools おおむね可.故意でない強制終了での AsukaRestart は可.AsukaHack は不可.乱数値固定/非固定は自由 バグ利用 換金・変化バグ可.店主焼き可 Asukagrid 可 エビマヨツール 可 Koppa 可(使い方) 参加者と結果 順位 プレイヤー スコア 1 へいほう 75 2 やくまる 43 3 Paul 33 リンク アスカch 風来ch アスカチェッカー画像うpロダ 階層報告所 AsukaPlayers じゃわてぃーの多窓 Ustream/Jusin同時視聴ページ 獄卒ch獄卒チェッカー