約 8,564 件
https://w.atwiki.jp/easter630/pages/21.html
04 その日を境に、瀬野さんは店に来なくなった。…と言ったってまだ二、三日程度。 常連の客が二、三日来ないなんて、珍しい事でも何でもないけど…。 さゆりさんにしてみれば、結構な大問題みたいで。 さゆりさんはさっきから、店の入り口の扉ばかり見つめている。 仕事に身が入っていないし、笑顔も少ない。テーブル布巾を指で弄っては溜息ばかり吐いて、他の常連さんに心配されている。 …あの人が来ない事は、さゆりさんにとってそんなに大問題なんだろうか?あの人はただの客なんだ、他に美味しい食べ物屋でも見つけたら離れていく可能性だってあるのに。 「来ないなー…」 「…瀬野さん?」 扉を見つめては、溜息を吐いていたさゆりさんがついに洩らした本音。俺もついつい答えてしまう。 すると、さゆりさんは顔を真っ赤にしながら勢い良く俺に振り向いた。 「な、何で?何で瀬野さん…」 「バレバレですよ、さゆりさん…」 確かにさゆりさんとあの人の話をした事は今までにない。だけど、あれでバレてないつもりだったんだろうか…。 俺がさゆりさんをよく見てるから…っていうのもあるけど、そうでなくてもきっとバレバレだろう。 「う…、いや、だって最近瀬野さん来てなくない?」 「最近って…、一昨日は来てたじゃないですか」 「だって毎日来てたのに」 「この辺で美味しい定食屋でも見つけて、そっち行っちゃったんじゃないですか?」 「え、やだっ、そんなの!」 俺に言われてもな…。そういう事もあるかもしれない、というただの憶測だし。 でも、二日来てないっていうだけなのに気にし過ぎだと思う。 「やっぱりライブに来てって言ったの、拙かったかなー。いきなり過ぎたかな?」 「そんな事ないと思いますけど…。喜んでるように見えたし」 …本心は分からないけれど。だってあの人、いつも同じような顔してるし。 「ホント?そう見えた?私、なんか不自然な事言ったり、したりしてなかった?」 「いえ、別に気になりませんでしたよ」 変…と言えば変ではあった。つまり『恋』という字は『変』という字に似ているって事なんだろう。 あの人はそんなさゆりさんの様子に全く気が付いていない、多分。鈍感にもほどがある。 「じゃあ、何で来ないのー?」 「知らないですよ、そんな事。…でも」 一昨日、あの人が帰る直前目が合った気がする。いや、よく目が合うんだ。何でか知らないけど。 その直後に帰って行ったって事を考えると、あの人が来ないのは俺の所為かもしれない。 「でも?なになに!?」 「いや、何でもないです。風邪でも引いて寝込んでるのかもしれませんよ」 「え!?し、死んでるかもしれないって事!?」 …それは言い過ぎ。ていうか、風邪で死ぬなんて…滅多にないだろ、そんな事。 「ど、どうしよう、伊吹君っ」 「…本当に好きなんですね、瀬野さんが」 「は!?う…、あの………うん」 一瞬驚いたように目を見開いたさゆりさんは、しどろもどろに目を泳がせた後、しっかりと頷いた。健康的な肌色をした頬を真っ赤に染めながら。 あの人はさゆりさんの事を何とも思っていないのに。その事をさゆりさんに言うつもりはない。でも、きっとさゆりさんも気が付いている筈だ。 それでもあの人が好きなんだ、さゆりさんは。 「これ!あんたら何やってんだいっ。しっかり働いてくれないと時給から差し引くよ!」 ぺし、と大して力の篭っていない掌で叩かれる。振り向けば店長が眉を吊り上げて、俺達の前に立っていた。 「だって店長~っ」 「だってもあさってもないよっ。さっきから聞いてりゃ何だい。たったの二日でね、人が死ぬ訳ないだろうが」 「でも~っ」 「でも、じゃない!来ないもんは仕方がないだろ?瀬野ちゃんは客なんだよ。うちのラーメンを食うか食わないかは瀬野ちゃんが決める事だ。ほら、さゆりちゃん洗い物!」 「はぁ~い…」 さゆりさんは渋々というように洗い場に入っていった。 そんなさゆりさんの後姿を見つめる。 どうしてなんだ、と思わずにはいられない。俺はさゆりさんが好きなのに。 俺ならさゆりさんを幸せに出来る。俺に何が出来るかは分からないけれど、それでも一緒にいたいと思う。 だけど、さゆりさんが一緒にいたい人は俺じゃなくてあの人なんだ。 悔しいのか悲しいのか、よく分からない。だけど、あの人の事は憎いと思う。 このままもう二度と来なければ良いのに。さゆりさんは悲しむし、それでさゆりさんが俺を見てくれるとは限らないけれど。 でもだからこそ、俺にはあの人を憎む事しか出来なかった。 Pre | Next
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/124.html
次の日、ルイズは部屋に溢れる陽光の刺激で目を覚ました。 床で寝たせいか、体のあちこちが痛かった。 カーテンは閉めてあったものの、ルイズは部屋に溢れる穏やかな陽光が無性に気に喰わなかった。先にあの使い魔が起きて、カーテンを閉めたようだ。 だが……先に起きたのなら、何故主人である私を起こさないのか。 ルイズはムクリと起き上がり、辺りを見回し、命令不履行のムカつく使い魔を探した。 いた。 優雅に横になって本を読んでいる………私のベッドで。 異常に分厚い本だった。タイトルがチラと見えた。 『おかあさんがいない―――オコォース・アディサァ著』というタイトルだった。子供向けの本なのだろうが、タイトルが少々おかしい気もする。 その脇の机にはワインボトルが置かれていた。 グラスに注がれた液体がユラリと揺れる。 ベッドはもちろんルイズの物だったし、ワインに至っては、彼女がこれまで大切に大切にとってきた上物の逸品だった。 それにその本、どこから持ってきた。 ルイズは身なりを正して叫んだ。 「あああ、アンタ…!!つつつ使い魔のぶ、分際で…!!」 ルイズには怒り狂うと、どもる癖がある。 つまり、どういうことかというと、ルイズは怒り狂っていた。 杖を取り出して、ルイズはDIOに向けた。 般若の形相のルイズはそれはそれは恐ろしいものだったが、DIOはそれをチラとも見ずに、本を読み続けている。 ズカズカとルイズが近づくにつれて、視界の脇に、小さな山が映った。 横になっていたから分からなかったが、ベッドの 側にはこれでもかとばかりに様々な物がうず高く積み上げられていた。 金銀財宝、剣に絵画に壷に本に皿に甲冑に……etc. 石像までデンと置いてあった。 ルイズは目の前が真っ白になった。 ふらふらと後ずさる。 「んな、なななな…何よこれ!?どこから盗ってきたのよ!?」 「学院長室……だったかな。そこの下にある部屋だよ」 DIOは何でもない事のように答えた。 ―――バカやろう、そこは宝物庫だ…!! ルイズは思った。 トリステインの、幾人もの一流のスクウェア・メイジたちが力を合わせて『固定化』の魔法をかけ、一流の教師たちが管理しているはずの、我がトリステイン魔術学院が誇る宝物庫が………。 ルイズは驚くと同時に、恐怖した。 この使い魔に出来ないことなど、ないのではないだろうか。 言葉に詰まって、分けの分からぬうめき声を上げるルイズ。 そんなルイズを尻目に、DIOは続けた。 「図書室にも行ってみたんだが……生憎と文字が分からなくてね。」 言葉は分かるのだが、とそういうDIOだが、ルイズは全く聞いていなかった。 どうしようどうしようと、頭を抱えていた。 「それで、学院長室の下の部屋を覗いてみたんだ。 些か骨が折れたがね……そこで、この本を見つけたんだ。この本の文字は私にも読めるものだ」 あの堅固な封印を、その程度で済ますか…! ルイズはDIOをキッと睨んだ。 が、DIOはどこ吹く風だ。 暖簾に腕押し、ぬかに釘、キュルケに慎み…そんな言葉がルイズの頭に浮かんだ。 「心配するな。ドアはキチンと閉めて来たさ」どうでもよかった。 「それよりも『マスター』、この本は実に興味深いぞ」 さらにどうでもよかったが、エラくお気に召したのか、DIOは本の内容を指でなぞりながら朗読しだした。 形のよい唇が、聞く人を引き込むような声を紡ぎだし、ルイズは思わず耳を傾けた。 「チョコランタンで……ヘンテコピーマン……飛んで……」 ゾワッと、ルイズは鳥肌が立った。 なんだあの言葉は。 なんだ……あの言葉は。まるで一言一言が意味を持っているかのようだった。 なにかの呪文なのだろうか。 ルイズはそこまで考えて、その本が宝物庫にあった事を思い出した。 古今東西、あらゆる秘宝財宝を安置しているというトリステインの宝物庫 だが、中には余りに危険だからこそ、宝物庫に封印されてしまったいわくつきの代物もあると聞いたことがあった。 まさかあれは、その手の類の禁書なのではなかろうか。 ルイズはハッとして、DIOから本を取り上げた。 不思議なことに、その本はルイズでも読むことが出来た。 『地獄門のなかには…』そんなフレーズが目に入り、ルイズは慌てて本を閉じた。 この本は、危険だ。 ルイズは心で理解した。突然本を奪われて、肩をすくめるDIOに言った。 「これは読んじゃダメよ。返しておきなさい。本なら後でいくらでも都合してあげるから」 「『マスター』………」 「ダ メ よ!」 ルイズが力を込めて叫んだ瞬間、ルイズの魔力が再びDIOに流れた。 昨夜よりは流れる量が少なかったので、倒れることはなかったが、ルイズはその吸い取られるような感覚にフラついた。 DIOの左手の甲のルーンがぼぅっと光った。 うむ、とDIOは苦しそうに一言うなった。 その光が収まった後、DIOは渋々…本当に渋々といった感じのため息をついた。 「分かったよ……『マスター』、君の意見を尊重しようじゃあないか」 そう言って、DIOは本を受け取って、部屋を出ていった。 どうやら諦めてくれたようだ。 ホッと一息つくとともに、ルイズはさっきの現象を思い出した。 昨夜も、そんなことがあった気がする…よく覚えていないけど。 考え続けた挙げ句、ルイズは一つの可能性に行き着いた。 ………魔力を流せば、DIOに言うことを聞かせられる、ということなのだろうか…? 「………フ、フフフ…」 そこまで思い立ったルイズは、1人ニヤリと黒い笑顔を作った。 「……フフフフハフハフハフハハハ ハハハハハハハハハハハハハハーー!!!!」 ルイズの高笑いが、いつまでも部屋の中に響いていた。 ベッドの側にある小山の処理のことなど、もはや彼女の頭にはなかった。 数分笑ってから、後悔した。 to be continued…… 17へ
https://w.atwiki.jp/miyabi733/pages/62.html
もしも正義色があるとするならば、皆はどんな色をイメージする? 情熱の朱? 平和の蒼? それとも、もっと他の色? ごめん、少し変な質問をしたね。でも次はもっと変な質問になるかもしれない。 嘘色があるとするならば、どんな色だと思う? ケイオスにやってきて2年と少し。原因は相変わらずサッパリだが、驚くことにこちら生活が割と悪くない。 いくつかのバイトをぱぱーっとこなし、街をふらふらとうろつき、安いマンションに帰って寝る。 この循環過程をひたすら繰り返すだけのなんてことない、生活。 ―――ああ、なんて幸せなのだろう。 僕らの歳だと、話し相手は学校の友人がほとんどだと思う。こちらへ来て僕は学校に通っていないので、確かに友達は少ない。 しかし、バイト先で表面上だけの薄っぺらい交友だが話し相手には困りはしないし、なんなら街で適当な人に声をかけて話し相手を作ってもいい。 そんな幸せな生活を謳歌していた僕、清辿吟だが、最近 大きな変化が訪れたのだ。 従兄のアオ君との再会。 こちら側へ来てアオという青年がやれ世界を救っただの、やれ英雄になっただのとちらほら話は聞いていたのだが、特に気には留めていなかった。 僕が知る、従兄のアオという可能性を考えていなかったから。 彼は地球で事故に遭って意識が戻らず、植物状態であったはず。もちろん回復も見込めなかった。 どうしてそのアオ君がここに?――いや、僕もなぜここへ来たのかわからないのだが――謎は深まるばかりだ。 そんな劇的な変化を遂げた僕の生活が、またひと回り大きな変化を遂げようとしていた。 「いやいや、だからどうしてアナタがここに居るのか、私に分かるように説明してくれと言ってるんです!」 「何度も言うけど、UFOにキャトられたんだって!ほら、キャトルミューティレーションわかるで痛い!」 言葉を言い終わる前に何度目か分からぬ鋭いボディーブローを打たれた。とても痛いがなんとか笑顔はキープ。 「あーっと…ほら、その辺りにしておいたら?葵。ギンも少しやりすぎだよ」 アオ君が疲れたような、呆れたような何とも言えない表情で僕らの仲裁に入る。葵は不満を思い切り顔に出しながら渋々引き、僕はいつもの軽い調子でごめんねと言った。 そう、大きな変化とは清辿葵との出会い。信じられないことにこの女性、アオ君の妹なのだそうだ。 なぜ僕も知らないアオ君の妹が居て、尚且つ僕のことをアオ君と同等のレベルで知っているのか物凄く気になるところだが、説明すると少し長くなるそうなので遠慮しておこう。 「かーっ!やっぱり治らないんですねその嘘吐き症候群!!こう何十回も連発されてはさすがの超お淑やか系天才文学少女(自称)も頭にくるってんですよ!!」 「別いいじゃん?減るもんじゃないし!むしろ僕のユーモ痛い痛い!」 「アナタのユーモアでストレスがマッハですよ!どちくしょう!」 容赦なくがつがつと蹴られた。しかし今回も笑顔はキープ。周りの人から見れば、笑顔を絶やさないことに何かプライドか意地でもあるのかと疑うレベルだろう。 相当頭に血、のぼってるなあ。もう痛いのヤだしそろそろ引いておこう。 「まあまあ落ち着いてって!えーっと、これからよろしくね、葵!」 がるるる、と今にも唸り声が聞こえきそうな威嚇をされている。 そこまでされるとさすがにへこむが、まあ、見ていて少し楽しかったりもするので放置。 と、僕らのくだらないやりとりを傍観していたアオ君が隙をみて話題を差し込む。 「それで、どうなの?体質の方は」 「体質?あー、うーん残念ながら進展ナシ。これ何なんだろうね、本当」 肩を竦めてけらけらと笑う。いい加減、どうにかなって欲しいものだ。 僕の体質は少々特殊で、人の『目を欺く』能力を持っている。我ながら、ぱっと聞かされると結構解り難い能力だ。 具体的に説明すると、『錯覚、誤認識』させる能力。 例えば、周囲の人たちから見た僕はベンチに座っている。 けれどこの時僕が能力を使えば、周囲の人物を僕がベンチに座っていると錯覚、誤認識させたまま、本物の僕は動きまわる事ができるのだ。 また、現状の姿そのままだけではなく、僕が空想した姿に錯覚させることも可能。宇宙人とかね(笑)。 あーまったく、面倒な体質だ。 「……早くコントロール出来るようになるといいね、ギン」 「いやーそんな顔されて言われても困るって。割と楽しんでるし、僕!慣れると面白いんだよねーこの能力」 爽やかに笑いながら踵を返し、玄関へ歩いて行く。 「じゃあ、今日はありがとう!新しい友達、もとい従妹と会えてすっごい楽しかった!」 「その言葉に嘘偽りはないでしょーね!?もう来ないでいいですよバーカ!」 「こちらこそ、来てくれてありがとね。暗いし、気をつけて帰るんだよ」 二人分の別れの挨拶を背中で受け止め、履き難いブーツを履いて僕は夜の街へ繰り出した。 嘘色があるとするならば、どんな色だと思う? 朱でも蒼でもない。 僕はどんな色も淀み、鈍く反照する吟色だと思うんだ。 さあ、帰ろう。また始まるんだ。 今にも泣き叫びたくなるような、幸せな日常が――――。
https://w.atwiki.jp/chaosdrama2nd/pages/1540.html
もしも正義色があるとするならば、皆はどんな色をイメージする? 情熱の朱? 平和の蒼? それとも、もっと他の色? ごめん、少し変な質問をしたね。でも次はもっと変な質問になるかもしれない。 嘘色があるとするならば、どんな色だと思う? ケイオスにやってきて2年と少し。原因は相変わらずサッパリだが、驚くことにこちら生活が割と悪くない。 いくつかのバイトをぱぱーっとこなし、街をふらふらとうろつき、安いマンションに帰って寝る。 この循環過程をひたすら繰り返すだけのなんてことない、生活。 ―――ああ、なんて幸せなのだろう。 僕らの歳だと、話し相手は学校の友人がほとんどだと思う。こちらへ来て僕は学校に通っていないので、確かに友達は少ない。 しかし、バイト先で表面上だけの薄っぺらい交友だが話し相手には困りはしないし、なんなら街で適当な人に声をかけて話し相手を作ってもいい。 そんな幸せな生活を謳歌していた僕、清辿吟だが、最近 大きな変化が訪れたのだ。 従兄のアオ君との再会。 こちら側へ来てアオという青年がやれ世界を救っただの、やれ英雄になっただのとちらほら話は聞いていたのだが、特に気には留めていなかった。 僕が知る、従兄のアオという可能性を考えていなかったから。 彼は地球で事故に遭って意識が戻らず、植物状態であったはず。もちろん回復も見込めなかった。 どうしてそのアオ君がここに?――いや、僕もなぜここへ来たのかわからないのだが――謎は深まるばかりだ。 そんな劇的な変化を遂げた僕の生活が、またひと回り大きな変化を遂げようとしていた。 「いやいや、だからどうしてアナタがここに居るのか、私に分かるように説明してくれと言ってるんです!」 「何度も言うけど、UFOにキャトられたんだって!ほら、キャトルミューティレーションわかるで痛い!」 言葉を言い終わる前に何度目か分からぬ鋭いボディーブローを打たれた。とても痛いがなんとか笑顔はキープ。 「あーっと…ほら、その辺りにしておいたら?葵。ギンも少しやりすぎだよ」 アオ君が疲れたような、呆れたような何とも言えない表情で僕らの仲裁に入る。葵は不満を思い切り顔に出しながら渋々引き、僕はいつもの軽い調子でごめんねと言った。 そう、大きな変化とは清辿葵との出会い。信じられないことにこの女性、アオ君の妹なのだそうだ。 なぜ僕も知らないアオ君の妹が居て、尚且つ僕のことをアオ君と同等のレベルで知っているのか物凄く気になるところだが、説明すると少し長くなるそうなので遠慮しておこう。 「かーっ!やっぱり治らないんですねその嘘吐き症候群!!こう何十回も連発されてはさすがの超お淑やか系天才文学少女(自称)も頭にくるってんですよ!!」 「別いいじゃん?減るもんじゃないし!むしろ僕のユーモ痛い痛い!」 「アナタのユーモアでストレスがマッハですよ!どちくしょう!」 容赦なくがつがつと蹴られた。しかし今回も笑顔はキープ。周りの人から見れば、笑顔を絶やさないことに何かプライドか意地でもあるのかと疑うレベルだろう。 相当頭に血、のぼってるなあ。もう痛いのヤだしそろそろ引いておこう。 「まあまあ落ち着いてって!えーっと、これからよろしくね、葵!」 がるるる、と今にも唸り声が聞こえきそうな威嚇をされている。 そこまでされるとさすがにへこむが、まあ、見ていて少し楽しかったりもするので放置。 と、僕らのくだらないやりとりを傍観していたアオ君が隙をみて話題を差し込む。 「それで、どうなの?体質の方は」 「体質?あー、うーん残念ながら進展ナシ。これ何なんだろうね、本当」 肩を竦めてけらけらと笑う。いい加減、どうにかなって欲しいものだ。 僕の体質は少々特殊で、人の『目を欺く』能力を持っている。我ながら、ぱっと聞かされると結構解り難い能力だ。 具体的に説明すると、『錯覚、誤認識』させる能力。 例えば、周囲の人たちから見た僕はベンチに座っている。 けれどこの時僕が能力を使えば、周囲の人物を僕がベンチに座っていると錯覚、誤認識させたまま、本物の僕は動きまわる事ができるのだ。 また、現状の姿そのままだけではなく、僕が空想した姿に錯覚させることも可能。宇宙人とかね(笑)。 あーまったく、面倒な体質だ。 「……早くコントロール出来るようになるといいね、ギン」 「いやーそんな顔されて言われても困るって。割と楽しんでるし、僕!慣れると面白いんだよねーこの能力」 爽やかに笑いながら踵を返し、玄関へ歩いて行く。 「じゃあ、今日はありがとう!新しい友達、もとい従妹と会えてすっごい楽しかった!」 「その言葉に嘘偽りはないでしょーね!?もう来ないでいいですよバーカ!」 「こちらこそ、来てくれてありがとね。暗いし、気をつけて帰るんだよ」 二人分の別れの挨拶を背中で受け止め、履き難いブーツを履いて僕は夜の街へ繰り出した。 嘘色があるとするならば、どんな色だと思う? 朱でも蒼でもない。 僕はどんな色も淀み、鈍く反照する吟色だと思うんだ。 さあ、帰ろう。また始まるんだ。 今にも泣き叫びたくなるような、幸せな日常が――――。
https://w.atwiki.jp/chaosdrama/pages/3085.html
もしも正義色があるとするならば、皆はどんな色をイメージする? 情熱の朱? 平和の蒼? それとも、もっと他の色? ごめん、少し変な質問をしたね。でも次はもっと変な質問になるかもしれない。 嘘色があるとするならば、どんな色だと思う? ケイオスにやってきて2年と少し。原因は相変わらずサッパリだが、驚くことにこちら生活が割と悪くない。 いくつかのバイトをぱぱーっとこなし、街をふらふらとうろつき、安いマンションに帰って寝る。 この循環過程をひたすら繰り返すだけのなんてことない、生活。 ―――ああ、なんて幸せなのだろう。 僕らの歳だと、話し相手は学校の友人がほとんどだと思う。こちらへ来て僕は学校に通っていないので、確かに友達は少ない。 しかし、バイト先で表面上だけの薄っぺらい交友だが話し相手には困りはしないし、なんなら街で適当な人に声をかけて話し相手を作ってもいい。 そんな幸せな生活を謳歌していた僕、清辿吟だが、最近 大きな変化が訪れたのだ。 従兄のアオ君との再会。 こちら側へ来てアオという青年がやれ世界を救っただの、やれ英雄になっただのとちらほら話は聞いていたのだが、特に気には留めていなかった。 僕が知る、従兄のアオという可能性を考えていなかったから。 彼は地球で事故に遭って意識が戻らず、植物状態であったはず。もちろん回復も見込めなかった。 どうしてそのアオ君がここに?――いや、僕もなぜここへ来たのかわからないのだが――謎は深まるばかりだ。 そんな劇的な変化を遂げた僕の生活が、またひと回り大きな変化を遂げようとしていた。 「いやいや、だからどうしてアナタがここに居るのか、私に分かるように説明してくれと言ってるんです!」 「何度も言うけど、UFOにキャトられたんだって!ほら、キャトルミューティレーションわかるで痛い!」 言葉を言い終わる前に何度目か分からぬ鋭いボディーブローを打たれた。とても痛いがなんとか笑顔はキープ。 「あーっと…ほら、その辺りにしておいたら?葵。ギンも少しやりすぎだよ」 アオ君が疲れたような、呆れたような何とも言えない表情で僕らの仲裁に入る。葵は不満を思い切り顔に出しながら渋々引き、僕はいつもの軽い調子でごめんねと言った。 そう、大きな変化とは清辿葵との出会い。信じられないことにこの女性、アオ君の妹なのだそうだ。 なぜ僕も知らないアオ君の妹が居て、尚且つ僕のことをアオ君と同等のレベルで知っているのか物凄く気になるところだが、説明すると少し長くなるそうなので遠慮しておこう。 「かーっ!やっぱり治らないんですねその嘘吐き症候群!!こう何十回も連発されてはさすがの超お淑やか系天才文学少女(自称)も頭にくるってんですよ!!」 「別いいじゃん?減るもんじゃないし!むしろ僕のユーモ痛い痛い!」 「アナタのユーモアでストレスがマッハですよ!どちくしょう!」 容赦なくがつがつと蹴られた。しかし今回も笑顔はキープ。周りの人から見れば、笑顔を絶やさないことに何かプライドか意地でもあるのかと疑うレベルだろう。 相当頭に血、のぼってるなあ。もう痛いのヤだしそろそろ引いておこう。 「まあまあ落ち着いてって!えーっと、これからよろしくね、葵!」 がるるる、と今にも唸り声が聞こえきそうな威嚇をされている。 そこまでされるとさすがにへこむが、まあ、見ていて少し楽しかったりもするので放置。 と、僕らのくだらないやりとりを傍観していたアオ君が隙をみて話題を差し込む。 「それで、どうなの?体質の方は」 「体質?あー、うーん残念ながら進展ナシ。これ何なんだろうね、本当」 肩を竦めてけらけらと笑う。いい加減、どうにかなって欲しいものだ。 僕の体質は少々特殊で、人の『目を欺く』能力を持っている。我ながら、ぱっと聞かされると結構解り難い能力だ。 具体的に説明すると、『錯覚、誤認識』させる能力。 例えば、周囲の人たちから見た僕はベンチに座っている。 けれどこの時僕が能力を使えば、周囲の人物を僕がベンチに座っていると錯覚、誤認識させたまま、本物の僕は動きまわる事ができるのだ。 また、現状の姿そのままだけではなく、僕が空想した姿に錯覚させることも可能。宇宙人とかね(笑)。 あーまったく、面倒な体質だ。 「……早くコントロール出来るようになるといいね、ギン」 「いやーそんな顔されて言われても困るって。割と楽しんでるし、僕!慣れると面白いんだよねーこの能力」 爽やかに笑いながら踵を返し、玄関へ歩いて行く。 「じゃあ、今日はありがとう!新しい友達、もとい従妹と会えてすっごい楽しかった!」 「その言葉に嘘偽りはないでしょーね!?もう来ないでいいですよバーカ!」 「こちらこそ、来てくれてありがとね。暗いし、気をつけて帰るんだよ」 二人分の別れの挨拶を背中で受け止め、履き難いブーツを履いて僕は夜の街へ繰り出した。 嘘色があるとするならば、どんな色だと思う? 朱でも蒼でもない。 僕はどんな色も淀み、鈍く反照する吟色だと思うんだ。 さあ、帰ろう。また始まるんだ。 今にも泣き叫びたくなるような、幸せな日常が――――。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/3709.html
51 :霧の咆哮:2016/08/24(水) 22 56 23 ちょっと今回は長め何で分割に。 大日本企業連合が史実世界にログインしたようです支援ネタ 台詞集その2(霧の咆哮ver) 「まさか、貴様と盃を酌み交わす日が来るとは思わなんだ」 「儂も、そんな日が来るとは考えてなかったわい、王小龍」 「ふん、まぁ、ハレの日だ。細かいところは気にすまい」 「はっ、違いない」 ー第二次リンクス戦争後の慰安旅行にて。気まずい空気ながらも共に盃を傾ける、銀翁(テぺス・V)と王小龍。 最高齢のリンクスにしてオリジナル達の胸中はいかがなものか。 「タンクならばやはり我が有澤製が至高だな」 「それを言われたら戦争だろう。インテリオルのタンクだって負けていない」 「「……あ゛?」」 ー同旅行にて。有澤隆文とスティレット、タンク使い同士の譲れない戦いが始まった。 「そこら編突っ込むと、『どこの重二や軽二が至高なのか』とか、色々飛び火しそうで嫌ですねぇ」 ー困ったように笑うメノ・ルー。 「放っておけメノ。どこぞの目玉焼き戦争じゃないんだ、『何が最高か議論』なんて始めても不毛の極みだろうに」 ーその争いを冷めた目で一刀両断する霞スミカ。因みにスミカは目玉焼きに醤油派、メノはケチャップ派である。 「真改、一芸馳走する」 ー同じように第二次リンクス戦争後の、第一次リンクス戦争あがり組の宴会にて。 酒が入ると、真改は意外とユーモアが浮き出るらしい。 「この集まりでは、メノと離れ離れになるのが残念だ。オリジナル同士の虎鶫夫妻が羨ましい」 愛妻と離れてちょっと寂しそうなローディー。 「くくっ、オリジナル組に俺ら。こうまでリンクスが集まって仲良くやる話しなんて、ほのぼの系やギャグ系でもないと有りえないな。それに当事者として参加出来るなんて、ほんと、愉快愉快」 ー宴会の騒ぎに紛れ、誰にも聞かれないように小さく呟き、嗤うアンノウン。 「あのままアレサに乗っていれば、このような人生は有りえなかったと思うと、感慨深いな」 ーウィスキー片手に、現在と過去を見つめるように、遠い目をするジョシュア・オブライエン。 「温泉は心地良いし、日本のお酒もご飯も美味しー! 和食にも変わり種が結構有るんですね♪」 ーある意味最も純粋に楽しんでいるエイ=プール。 52 :霧の咆哮:2016/08/24(水) 22 59 01 「メノさんやローディーさん達がデビュー時期で分かれて宴会旅行やってるなら、私達もやろう!」 ーメイ・グリンフィールド。先輩リンクス達が集まって楽しんでる話を聞き、自分達もと提案(※1) 「良いね~、じゃあウィンさんやテルミドールさん達にも声かけて来るね~」 ー結構乗り気なルナスカイ(※2) 「意外だね。正直、君は忙しいとかで断ると思ってたよ」 ー渋々と言う表情を隠さないで飲んでいるテルミドールに、物怖じせず話しかけるダイスウーメン。 「失敬な、私とて空気は読む。それに、あの実力は無駄に有る癖に、ぽややんオーラが平時は未だ健在な奴を断るには、少し、な……」 ー最後は言い辛そうにしながらも、本音で語るマクシミリアン・テルミドール。 「あ~、なるほどね」 ー共に飲んでて、納得したように手をポンッと打つ大空流星。 「あの気難しいオッツダルヴァもといテルミドールすら動かす、ルナスカイの嬢ちゃん恐るべし、と言うべきかな」 ー黒ビール片手に素直に言うロイ・ザーランド 「にゃ、にゃんにゃん♪ にゃん、にゃにゃ~ん♪」 「わ、わんわん、わん、わんわわん……」 ー誰かが持ち込んだ宴会道具か。猫耳猫尻尾を付けて、ノリノリで猫真似をするルナスカイ。 一方、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらも、犬耳犬尻尾を付けて犬真似をするリリウム※2 「なるほど、これが萌えと言う文化か。素晴らしいな」 「そうだな」 ー2人に魅了され、鼻血を垂らすウィスとイェーイ。 「(良いなぁ……抱きしめて撫で撫でしたいなぁ。でも、あたしのキャラじゃないよなぁ)」 ー2人の可愛さから愛でたい気持ちを抱きながら、姉御系キャラの意地から言い出せないフランソワ=ネリス。 「ん~と……えい。どうぞ~」 「えと……どうぞ?」 「」 ーフランソワの物欲しそうな視線に気づいたルナスカイが、メイ達から離れリリウムを連れて、てててっと近づき、ちょこんと上目遣いで頭を寄せた。 リリウムもその行動に首を傾げながらも付き合う。 その愛らしい仕草にハートを貫かれ、言葉も出ないフランソワ。 「あー、もう、我慢出来ない! 2人とも可愛過ぎる! キャラ崩壊上等!」 「きゃ~♪」 「はわわわわわ」 ー周囲の視線も何のその。開き直って存分に愛でるフランソワ※3 わちゃわちゃされて楽しそうなルナスカイと、目を回すリリウム。 「……割と愉快なキャラしてたんだな、あの姉さん」 ー視線の当事者の一人。ダン・モロの独白。 ※1後日、オリジナル組やリンクス戦争あがり組から時期をずらして実施された模様。 ※2この後2人とも滅茶苦茶メイや桜子とかに可愛がられた。 ※3自室で正気に戻った後、それはもう羞恥心でのたうち回ったが、後悔はなかったらしい。 こういう台詞集じゃ、如何せんアナトリアの傭兵や首輪付きはキャラ付けが決まってないから加え辛いな。 パラレルつーことで、多少こちらで設定しても良いかな?どうしよう。 wiki転載は例の如くご自由に。
https://w.atwiki.jp/kuriari/pages/205.html
クリフトとアリーナの想いはPart7 564 :おてんば姫:2007/07/18(水) 14 52 34 ID 0S57Ldn00 「しかし、クリフト君が懸想しておることはみな知っているようだが、残念ながらお相手たる肝心の姫君だけが、トンと気づいておられぬようだ。彼に冷たい姫君の態度を見るにつけ、私などには彼が不憫に見えて仕方ありませんな」 派手なピンク色の甲冑を身に纏った戦士は杯を軽くあおると、苦笑しながらそう漏らした。 戦士の隣に座る丸々と太った優しげな男が肯き、口を開いた。 「若い、という事なのでしょう。想いを隠せない彼も、未だ異性に恋することを知らないアリーナさんもね」 ブライは、酒が注がれた杯から目を外すと、わずかに視線を彼らへと向けた。 ここはエンドールの酒場である。カウンターから少し離れたテーブルを囲って三人の男が酒を飲んでいた。 ライアン、トルネコ、そしてブライである。 彼らが一緒に酒をたしなむ機会は割に多い。 三人以外の仲間は若者たちばかりで、静かに酒を楽しもうとする者は自然と一所に集うことになるからだ。もっとも今日に限って言えば、騒ぐ者たちはすでにみな寝室に引っこんでしまっていたが。 一緒に飲むと言ってもブライが会話に加わる事はあまりない。今のようにライアンとトルネコが、二人で会話をする横で静かに酒を飲むのが常であり、ブライとしても別にそれに異存はなかった。 「我々にしてみれば、羨ましくももあるが、もどかしくもある話ですな」 トルネコが肯いた。 「しかし、そうした気持ちには、女性の方が先に目覚めるものだと妻が申しておりましたが、彼らの場合はどうやら逆だったようですね」 「ふむ、アリーナ姫の器量の良さは有名だが、それ以上に男勝りのおてんば姫という呼び名は、遠い他国、そう、我がバトランドになどにまで知れ渡っているほどですからな。クリフト君も難儀な方に惚れたものだ」 「いや、まったく」 ライアンとトルネコは声を合わせて笑った。 「姫様はおてんばではありませんぞ」 ブライは静かに告げた。 今まで黙っていたブライがとつぜん会話に入って来た事に驚き、ライアンとトルネコは顔を見合わせた。 「いや、これは失敬。言葉が過ぎたようだ」 「私もお詫びします。どうも慣れぬ酒を飲むといけませんね」 姫への非礼を窘める発言ととられた事に気づき、ブライは苦笑した。 「いや、お二方を咎めだてしようとしたわけではない。ワシは姫様が小さな頃から教育係を仰せつかっておったからの……単に事実を述べたまでじゃ」 「事実……というと、アリーナさんが変わったという事ですか?」 トルネコが興味深げに訊ねた。 ブライは首を横に振った。 「姫様は今も昔も変わっておられぬ。小さな頃からずっと芯が強くて真面目なお方じゃった。元々元気なお子であられたが、それ以上に利発で、ワシの見立てでは僧侶系呪文に対する高い才能に恵まれておいでじゃったな」 「僧侶系!? ……では、アリーナさんは呪文を学ばれていたのですか?」 ブライはゆっくりと首を縦に振った。 「素手で戦うのを基本とする武闘というものは、王家の者の学ぶものとしてはかなり異端じゃ。かててくわえて姫様は女性。学ばせるのが白兵戦の技術であるより、呪文であることは自然の流れじゃろう? バトランドの戦士団にいらしたライアン殿なら、ご存じであると思うが?」 「うむ。それは確かに。王家の者が武器を学ぶとすれば剣であるのが通例であるし、学ぶ者はほとんどが男だ。まして王家の淑女が素手による武闘を学ぶのは極めて稀であろうな」 「では、なぜ武闘家として?」 「武器を持たずとも、己の身一つで戦うことのできる武闘家というもののありように惹かれた。……そう姫様は仰っていたが」 ブライは杯へと目を落とした。 「王家に生まれた者に自由はない。女性ともなれば、幼いうちから結婚相手が決まっている事も多い。男勝り、おてんば、勉強嫌い。 そう振る舞う事は、少しでも婚姻を遠ざけるとお考えじゃった。無論、王や王妃様は、そうした姫様のお心をご存じであったし、それに心を痛めておいでであった。ゆえに渋々という体で武闘家になことや、しばらくの間、世界を見てまわる事をお許しくだされた。そして、姫様もそれを存じておられる」 「……なるほど、愛し、愛されていらしたのですね」 「ふむ。どうやら我々は少々姫君の事を見誤っていたようだ」 「見誤ってくださる事こそ姫様の望み。この話は酒の上での戯言と思ってくだされ」 ブライは微笑んで目を閉じた。 彼らに話すわけにいかない事もあるのだった。 彼の脳裏に、幼い頃の姫の姿が浮かぶ。 ――ブライ、大事な話があるの。 ――貴方の事だからもう知っているでしょうけど、私、好きな人ができたの。だから、呪文の勉強を止めて、これから武闘家を志すわ。 ――だって、私が拳を振るうことと冒険にしか興味のない、危なっかしいお姫様なら、彼が私の側にいる意味が出来るでしょう? ――私は王女よ。やさしく見守ってくださるお父様やお母様、それにサントハイムのみんなを裏切ることは出来ないわ。けれど、私を好いてくれる人に、報われない事を承知の上で側にいてとは言えない。だから、彼にこの想いを知られる訳にもいかないの。 ――だって、私の想いを彼に知られたら、きっとそれを強いる事になるわ。そうでしょう? 愛想をつかされても、嫌われても構わない。たとえ短い間でも彼の隣にいる事さえできれば……私はそれだけでいい。だから、ごめんねブライ。 ――今日から私は、サントハイムのおてんば姫よ。 (了)
https://w.atwiki.jp/place0to0stay/pages/111.html
【side Chal】 僕たちが正面にしていた大きな扉がゆっくりと開く。 その向こうには、遠目からだけ知っているフィリディアの王の姿。 王は左右に従者を伴い背後に兵士を従えて悠然とした足取りで部屋に足を踏み入れた。 しかしその表情はどこか険しく、やはりここに連れてこられたのはよっぽどのことなのだろうと思う。 周囲の兵が黙礼を捧げるのに、僕も風習に倣い足を一歩引き慇懃に礼の態度で頭を下げる。 別に彼に尊敬の念を抱いているわけでもなければ、敬意を払うわけでもないけれど、それがこの国の王に対する自然な態度だからそれに倣うに過ぎない。 少し離れて隣に立っていた青年も兵に促され渋々膝を折った。 その僕らの前を鷹揚な態度で通り過ぎ、王座に腰掛けると王はやっと口を開いた。 「……面を上げ、名を名乗れ」 王族特有の高慢な言葉に然したる抵抗も覚えずに、頭を垂れたまま僕は名乗る。 「…シャリス・マクレシアと申します。」 「…マクレシア?…そなた、リディア・マクレシアの…」 「はい。甥でございます」 「甥……。」 マクレシア家は魔力の強さで有名で、その当主である叔母の名は王にも残っているらしい。 いや、残っているのはもしかしたら両親の名前の方なのかもしれないけど。 すんなり答えた僕にふむとひとつ頷くとそれ以上言及することはなく、今度は視線を隣に移し青年を見る。 「そなたは?」 「……アッシュ・ディアンと申します。」 一応王だからなのか先ほど兵士に向けてた言葉とは違う丁寧な言葉遣いで答えるが、言外には不服の色が滲み出ている。 それを察してはいるだろうが王はそれにもそれ以上言及せずに、同じようにひとつ頷くと再び僕たち二人に視線を戻した。 「…ここまで呼んだのは他でもない。 そなた達の所有する『雪の結晶』を返還せよ。」 一方的に告げられた言葉に、僕は首を傾げた。 ……『雪の結晶』? 「『雪の結晶』…っていうのは…?」 僕の思考に被さるように、先ほどアッシュ・ディアンと名乗った青年が口を開いた。 「…惚けるではない。我が国を守るはずの魔石だ」 ……お伽話としては聞いたことがある、王族が代々守る魔石があると。 それは意志を持ち、この国を雪で閉ざしこの国を守っているのだ、と。 しかしそんな魔石が実在するなどとは聞いたこともない。 けれど、……もし。 それだけ強い魔石が本当に存在するのだとしたら。 それはあながちお伽話ではないのかもしれない。 しかし、どうしてそれを僕たちが持っている、ということになるのだろう…? 王家に伝わるものならば、常に城で厳重に管理されるはず…。 そう考えてふと袖に隠れて見えなくなっている白い石を思い出す。 …まさか、それが魔石だとでも…? まさか、ありえない。そんな偶然が起こるとは思えない。 そう思いつつも僕はどこかその想像が拭いきれなかった。 そう、偶然ではないのだとしたら…。 この石が現れる前の、光と魔力、そして声。 なんらかの要素や要因が僕と彼を選んでいたのなら。 「……何故、それを僕らが所持していると?」 想像や仮説の域を出ない思考を打ち切って、王へ確認するように口を開く。 「そなた達のおった教会から魔石の気配と魔力を感じた。 それは王族の持つべきもの、その波動を我が違えるわけはない。」 はっきりと言い切られた言葉。 それだけその魔石はこの国の王族と密接な関係があるということだろうか…。 力強く断言された言葉に、知りませんでは通らないことを知る。 この石が王家に伝わる魔石だとするのなら、王の言葉通り王家へと変換するのが筋だろう。 ―――しかし。 「……魔石を返還することは叶いません。」 「なんだと?」 静かに言った僕に、王の声が低くなる。 隠し立てして乗り切れる状況ではないかと諦め、右手を差し出すと周囲に見えるよう袖を捲って手の甲を晒す。 「…この通り、僕の体の一部になっているようなのです。」 「ああ、俺のも同じ状態だ。」 同調するように声を発したアッシュも、レザーグローブを外して手の甲に埋まった石を周囲へ見せる。 それを見た王の顔色は一気に青ざめた。 …否、憤慨に紅くなったのかもしれない。 「…砕けた魔石が人体に宿っただと!」 怒号といっても過言ではない声を張り上げた王は、思わずといった様子で立ち上がり僕たちを睨め付けた。 「そのようです。なので魔石の返還は…、」 「そのような問題ではない!」 叶いません、と重ねるようそう続けようとした僕の言葉を王は興奮した声で遮った。 「…どういう意味だ?」 王の尋常じゃない様子に、首を傾げたアッシュが声を漏らす。 状況が状況だからなのか、思わず漏らした言葉なのか、敬語はとうに消えている。 「…雪の結晶の欠片をその身に宿したものは、禁忌の力を使う! そんな者野放しには出来ん! …その者達を牢に!その者ら明日一番で処刑を命ず!」 憤慨に畏怖を微かに滲ませながら一気に捲くし立てた王の言葉に周囲で控えていた兵が手荒く僕の腕を取ると引き摺るように立ち上がらせた。 このまま牢にでも連れて行かれるのだろう。 事をまだ理解できないからか、尋常でない王の動揺ぶりに逆に冷静になったのか僕は掴まれる腕の痛みすら一瞬忘れた。 アッシュも流石に抵抗しているようだが、戸惑いが抜けないからなのか結局僕同様引き摺られるように引っ立てられた。 ……処刑。 改めて脳内で反芻したその宣告を、僕は不思議とどこか冷静な気持ちで受け止めていた。 next
https://w.atwiki.jp/dq_dictionary_2han/pages/7952.html
概要 漫画【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】に登場する敵キャラクターの1人。 【バーン】率いる魔王軍六団長の一人で、バーンの側近中の側近(魔王軍結成前から彼に仕えていた古参メンバー)である。 【ガスト】や【さまようよろい】等といったモンスターで構成される魔影軍団を任されていた。 だが後に超魔生物となり親衛騎団王になった【ハドラー】に委任される形で魔影参謀から魔軍司令の座に就くことになる。 アバンへの復讐に失敗して川に落ちた少年時代のヒュンケルを拾い、暗黒闘気の使い方を教えた闇の師匠でもある。 普段は自らの武器にも使う暗黒闘気を【闇の衣】として身に纏い、素顔と正体を隠している。 自分の素顔は頑なに隠しており、バレそうになると普段の冷静さを失って取り乱す場面も見られる。 「…大魔王さまのお言葉はすべてに優先する…」という作中の台詞からもわかるとおりバーンへの忠誠心は絶対。 彼の命令とあらば、かつての仲間であり強い敬意すら抱いているハドラーをも(渋々とはいえ)切り捨てている。 自身を鍛えて強くなった相手には敵味方を問わず敬意を払い尊敬する。 逆に他人の力を踏み台にする者、あるいは卑怯者(主に【ザボエラ】と【マキシマム】)には軽蔑を露わにする。 ただ、何事にもイレギュラーは存在するもので、卑怯者の代表格というべき【キルバーン】とはなぜか仲が良い。 本来の姿を見せるのに大魔王バーンの許可が必要、強大な力と威圧感、傷一つ負わない無敵の体など、圧倒的大物感を醸し出す人物。 何かバーンの重大な秘密を知っているようだが…? なお彼の素顔は美形の男性魔族である。 当初はほとんど喋らないキャラという設定だったが、キャラを動かしづらかったのか徐々に饒舌かつ感情的になっていっている。 喋らないキャラと言う設定は消えた訳ではなく、喋らなかった理由も最後に明らかになるのだが、後から見ると明らかに喋るシーンが多くなっている。 時系列ではもっと昔のはずの回想シーンでも、幼いヒュンケル相手にも普通に会話していた。 正体 その正体は意思を持った暗黒闘気の集合体「ミスト」。 魔界で飽くことなく繰り返される戦いの中で、死してもなお戦おうとする壮絶な意思(怨念?)から生まれたモンスターで、【あやしいかげ】や【シャドー】といったモンスター達の王とも呼ぶべき存在である。 実体を持たず、他者の肉体に憑依することで活動する。 憑依する相手の力量によっては相手の意思を無視して魂を封印し、無理やり憑依することも可能である。 実体を得たミストは、憑依した身体の痛みを感じないため、肉体のリミッターを外して驚異的な力を発揮でき、相性がよければ光の闘気を防ぐこともできる。 その半面憑依された肉体は無理な運動によって損傷し、暗黒闘気に蝕まれて黒く変色してしまう。 これらの反動に耐えられるのは後述する、時を止められたバーンの肉体のみである。 また、自身の分身としてシャドーを産み出す能力を持つ。 男性魔族の姿は、ミストが「バーンの若さと力のみを残した肉体」=バーンの抜け殻に纏わりつくようにして憑依したものであった。 ミストバーンという名前も「大魔王バーンを覆い隠す影(ミスト)のバーン」、つまりバーンの分身、代理人という意味である。 また、【キルバーン】の素性を周りに隠すための「主人と同じバーンの名前を貰った腹心の部下(幹部)」という表向きの理由を作るための名でもある。 普段はバーンの肉体を外側から操っているだけだが、緊急時には肉体に入り込み、それを操る事により超絶的パワーを発揮する。 前述の通り実体を持たず、自力で戦闘のできないミストは、他の生物に憑依して傀儡として操るという他人頼みな方法でしか強くなる事ができず、彼はそんな自分の力を忌み嫌っていた。 自らの力、鍛練により強くなる事に恋焦がれており、自身を鍛えて強くなった相手を尊敬するのはこのためである。 大魔王バーンはそんな彼の能力に着目し、彼にバーンの若い肉体を保持し守護する任務を与えた。 自分にしかできない任務と生きる理由を与えてくれたバーンには絶対的な忠誠を誓っており、魔王軍の中でも指折りの忠誠心を持つ。 素顔を見せることや会話することを極端に避けているのは、彼の正体がバーンの肉体であることを看過されないためである。 彼が素顔を見せたり不特定多数の者に自らの声を聞かせたりするのは、相手を絶対に生還させないと誓った時であり、言わば死刑宣告と同等の意味を持つ。 また、バーンの許可なく戦闘しないのも同じ理由。 並外れて強靭な肉体でこそ繰り出せるバーンの技の1つ【フェニックスウィング】を使うこともできるが、これの使用も勿論タブーである。 バーンから預かった肉体には彼によって【凍れる時間の秘法】と呼ばれる魔術が掛けられており、いわば常に【アストロン】が掛っている状態。 【メドローア】以外の攻撃は全て無効できるという作中有数の防御力を持つ。 作品終盤、ダイとレオナを除くダイパーティー一向との決戦が繰り広げられる中、バーンに肉体を返還した彼は新たな依代としてヒュンケルに憑依を試みる。 ミストバーンがヒュンケルを拾い上げ、彼の師を買って出たのは、肉体をバーンに返還した際に憑依するスペアボディを用意するためだったのだ。 そして完全に我が物にするため魂を砕こうとするも、事前にミストの目論見を察知していたヒュンケルが魂に収束し溜め込んでいた大量の光の闘気に呑み込まれて消滅。 ある意味、自らが鍛えぬいた肉体の中で最期を迎えるという自分の願い通りの散り様となった。 それはヒュンケルの忌まわしい因縁の終わりをも意味していた…。
https://w.atwiki.jp/anikaru/pages/76.html
鳥取県、渋々復興予算を返還へ 【まんが博】に使い込んだ予算は含まれていない 復興予算18億返還へ 県、別の財源措置求める http //www.nnn.co.jp/news/130706/20130706004.html 魚拓 http //www.peeep.us/6a5b8d16 東日本大震災の復興予算が被災地以外で使われていた問題で、鳥取県の平井伸治知事は5日の定例会見で、 国の返還要請に応じ、県に配分された復興予算のうち未執行分の約18億円を返還する考えを示した。 来年度予定していた森林整備事業に影響が出るため、県は国に対し別の財源措置を求める。 結局まんが博の復興予算流用は"使ってしまったから返さない"という考えなのだろうか。 逆ギレしながら会見するのは結構だが、障がい者補助金打ち切りのことも思い出していただきたいものである。 ・まんが王国とっとりで不要と判断された予算はたったの81万円 ・まんが事業に十数億、障害者補助金や子育て支援は打ち切りの現実 ・【まんが王国とっとり】アピールのために天皇陛下まで利用する平井知事 ・2016年もまんが王国とっとり予算継続 ・2017年のまんが王国とっとり予算額