約 258,864 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/538.html
身体中の脂肪が自然発火して人体蝋燭化現象が起きそうな太陽を受けつつ俺は緩やかに急勾配を登っている 俺とはもちろんキョン(本名不明)の事であり何故登っているかと言うとそれはもちろん学校へ行く為だ 多量の汗を吸収し最早不快感しか与えない制服を上だけでも思いっきり脱ぎ捨てたい所だが、生憎他にも生徒が居る中でそんな事をする度胸は無い 大体何故こんなにも暑い。地球温暖化の影響ですかコノヤロー 「よお、キョン………」 今の俺には肩に置かれた手にすら殺意を覚えるな 谷口、その手を離せ。触られるだけで俺の体温が上がる 俺はチャック魔神のお前とは違って股間から熱を放出する事ができないんだ 「大変そうだねぇ?キョン」 くそっ、国木田、何故お前は汗一つかかないんだ。笑顔キャラは殆どが完璧な設定か 「まぁ、聞いてくれたまえキョン。」 知るか。俺にはお前のナンパが失敗した話など外国で誰かが転んだという報告よりどうでもいい それよりはその身体中を汗に塗れた姿を俺の眼中から消せ 谷口による『海に出会いを求めに来る奴は大抵モテない』説を聞きたくも無いのに聞いている途中で校舎へ着く事が出来た BGMが有ると多少は疲れが軽減できるのかもな。今度調べて見よう それはそうと谷口、その節はピッタリお前に当てはまるんじゃないのか? 所変わって一年五組 人は目標物だけを視界に入れることは出来ず少なくとも周囲の景色は多少なりとも入る訳で つまり自分の席に行くためには前後の席も目に入る訳だ 俺の後ろの席の奴は頬杖をして窓の外を睨んでいる それで微笑み、少なくとも無表情でも浮かべていれば絵画と見紛うほどの美しさがあるが、いかんせんその顔は眉間に皺を寄せるほど不機嫌オーラを振りまいている そう、その後ろの席の奴こそ我等が『世界を大いに盛り上げる為の涼宮ハルヒの団』通称SOS団団長にして涼宮ハルヒ 不機嫌な理由は暑さゆえだろう。時折鬱陶しそうに顔につく髪をはらっている 俺としてはポニーテール萌えなんだがな 「あたしも扇いでよ」 俺が下敷きで扇ぎだした途端それか。もうちょっと人に物を頼む態度ってもんを考えて貰いたいもんだな 「断る。今は人に尽くしてやるほどのエネルギーも惜しいんでな」 「ふん」 また不機嫌そうに頬杖をつき、時折髪を払っている 担任の岡部が入ってきた所で下敷き団扇はしばし中断を余儀なくされる 大体この暑いのに何もするなってのは拷問だよな こうして見ているだけでも暑苦しい岡部による暑さに負けるなという意味の主張は5分の刻に渡った 眼を覚ませば夕方だった 服が汗を吸って濡れている まぁ、あれだ。暑さで体力を殺がれている所に世界史だぞ?眠くならない訳が無いよな? 「…………」 誰に対するか分からない言い訳を打ち切って下校の準備をする 「やっと起きたのね」 思わずゾっとしたね 感情を憎悪だけ含めたような声だ。しかも偉く不機嫌な 声だけで人を殺せそうな者はコイツの他有るまい 涼宮ハルヒ 我等が(以下略)は俺の目の前で腕組みをしながら俺を見下ろしてる 感情で人を殺せたら俺は既に死んでいるだろうな。そんな感じだ 「SOS団の活動にも来ないと思ったらのんきに寝てるとはね……」 静かに言いはなつ うん、怒られるよりはるかに怖いな、コレは 「………同じクラスなんだから起こせばよかったじゃないくぅあ!?」 無言で脛に蹴りを入れられた お前、それは反則だろう 「………!」 抗議の声を上げようとした所を、思わず飲み込んだ だってそうだろ?普通怒っているだろう状況で今にも泣き出しそうな表情をされていたら呆気にとられるよな? まぁ、そんな一瞬の躊躇が不味かったのかハルヒは既に走り去っていた 抗議の為上げようとしていた手が虚しく宙を掴んでいる 「ヤレヤレ……貴方にも困った物ですねぇ」 教壇からいつもの如くニヤケ面を携えた古泉が現れる ―――――――いつから其処に居たんだよ、お前は 「大規模な閉鎖空間が発生していましてね。それも今日はコレで4回目です。流石に疲れてきました」 そうかい、それはご苦労なこった。で、俺に何の様だ 「何の様だ、は無いでしょう?原因は貴方にあるんですよ?」 何でだ 「前にも言ったでしょう?涼宮ハルヒさんが不機嫌になると閉鎖空間が発生すると」 そういや言ってたな。あの灰色の空間には良い思い出が無い。思い出したくも無かったよ で、何で原因が俺にあるんだ 「心当たりは無いんですか?」 全くな 「……SOS団の活動に来なかったり、乙女心を理解しない発言をしたりと色々と思いつくんですけどねぇ」 乙女心って何の話だ 「物の例えです。とりあえず、今すぐ涼宮さんに謝って来て下さい」 何故俺が謝るんだ むしろ危害を加えられた俺が謝って貰いたいんだが 「………鈍感ですねぇ。いいから行って下さい。それが無理なら実力行使しかありませんが…………」 実力行使ね。お前が俺より力が有る様には見えないがな 「お忘れですか?僕には機関の仲間だって居ます。」 含みを聞かせたようだがどうにも演技に見えるな。なんつーか胡散臭い 「そうですね、例えば………」 どうやら実力行使の内容を考えているようだが絶対に謝らんぞ、俺は 「貴方の生爪を一枚一枚剥いで指に一本ずつ針を刺し、じわじわと痛みを強めていきながら精神を弱らせ 発狂寸前の所を僕の言う事を聞く奴隷同然に仕立てあげる事だって出k「キョンッ!いっきまーす!!」 いや、本能がそうしろって伝えていたもんでね 俺は今ならカール・ルイスを越える自信すらある 背後から聞こえてくる物騒な言葉は完全無視だ、無視 でもコレは逃亡じゃないぞ?小泉の意見に耳を貸してやっただけだ。うん、そうだ 誰だって高校生で廃人にはなりたくないんでな 教室から走り出して下駄箱に来るまでに既に汗が吹き出ている。かなり不快だ でもそんな事を言っている場合じゃないな、俺の人生が掛かっているんだ。 まぁ、焦りの所為かね。俺は一つ重大な事を見落としていた 校門まで走ってようやく気付いたよ 俺はハルヒの家を知らないってことにな こんな当たり前の事に今更気付くとは俺もどうかしているな。暑さの所為か ってそんな場合ではない!このままじゃ俺廃人フラグ一直線ktkr!!! ………焦っているな。かなり焦っている 冷静になれ俺。小泉に………じゃない、古泉に聞けばいい話じゃないか! 「涼宮さんの家ならあちらですよ」 「………いつから其処にいた」 「そんな事気にしてて良いんですか? 早くしないと組織の筋肉質の猛者たちが数人やって来て毎夜毎夜の肉欲の宴、 ムッキムキ黒人男性とうh「キョンッ!発進する!」 またこのパターンか と言うか古泉、実力行使がグレードアップして無いか……? 走る、走る、走る 廃人となるのを防ぐ為!平穏な老後を過ごすため!俺は走るぞ!古泉ィィィィ!!! ………うん、暑いね 思考が現実逃避を初めつつ、やっとハルヒに追いつく事が出来た 体に纏わりつく制服は不快指数上昇すること現在進行形なわけだが、そんな事も言ってられない 「おいっ!」 叫びにも近い声で腕を掴んだ所為か、ハルヒは驚愕の二文字を浮かべている。少々罪悪感にかられるな、これは 「!?………な、何よ」 何ってそりゃあ…………うん、何だろうね とりあえず謝れといわれたが………… プライドと貞操………まぁ、天秤にかけるまでも無いよな 「………スマン」 とりあえず深々と頭を下げた 黒人マッチョとうほっ、よりはこっちの方が遙かにマシだ 呆気にとられていたハルヒの顔にいつも通りの表情が戻ってくる あぁ、コレで良かったんだよな とまぁ、今後の心配が一つ無くなった 「はいっ!活動をサボった罰ね!」 途端にコレは無いだろう ハルヒが俺に渡した紙には町内の地図と、巡回経路と書かれていた。俺の目がおかしくなければな 「………なんだ、コレは」 「だぁーかぁーらぁー、サボった罰。其処に書かれている経路を今から三周して来なさい」 マジか 「大マジ」 …………今に至って、この選択肢も間違いだった気がするな そうそう、こーいうやつだったよ、涼宮ハルヒって奴は 「いやぁ、お疲れ様です」 ▼ニヤケ面が現れた!▼ →殴る 蹴る 暴行 うほっ ………とかやってる場合じゃないな。そんな事する気力もない。最後のはやるつもりもない 「どうやら閉鎖空間の拡大も止まったようです」 それは良かったな。所で俺も今非常に不機嫌なんだが、一度殴らせてもらって良いか? 「それは困りますね。今はMPも尽きかけな仲間の援護に行かなければ行けませんから」 そうかそうか、とっとと行け。お前の姿は見たくない 「そうですか。それでは………おっと、くれぐれも涼宮さんの機嫌を損ねないで下さいね?」 言われなくともさ 俺だってマッチョに貞操を捧げたり廃人にはなりたくない。将来やりたい事もあるんでな とりあえず今は、この巡回経路とやらを回るのがベストなんだろうな………… まぁ、思いっきり後悔する羽目になったけどな ただ座っているだけでも汗が吹き出る暑さの中、町内を回っていると少々自殺願望すら出てくる もし体型に困っている人にはお勧めだ。精神を削る代わりにやせる事が出来るぞ …………なんてな すっかり暗くなったが別段涼しくなる訳でもなく昼間と同じく暑い。嫌がらせか 目前にその姿を見せる我が家。中では妹がアイスを貪っている事が容易に想像できるな。殺意を覚える そんな事に気を取られていた所為か、街灯で照らされる我が家の戸の前に人影が有った事には暫く気付かんかったがな どうやら私服に着替えたらしいその人物……… 「………ハルヒ?」 そう、我等が(中略)団長涼宮ハルヒ そういえばハルヒってだけ聞くとホスト部も思い出すな。どうでもいいが それより、そのハルヒが何でうちの前にいるかっ、てのが問題なんだよな 「!?キョ、キョン!?なんでここに!?」 「いや、なんでも何も此処は俺の家なんだが」 「そ、それもそうよね…………」 何だ?夢遊病の症状でも出たのか?……いや、夢遊病ってのは子供とかに発祥するんだっけか 「あ、あたしはアンタがサボらずやってるかと思ってきただけよ」 いや、何もきいて無いですけど 「うるさい!それより、ちゃんと回ったんでしょうね!三回!」 それは俺の状態から察してくれ。後、声を小さくしてくれ。 「フ、フン………!まぁ、いいわ。ちゃんと回ってきたみたいだし」 ご理解いただけて光栄ですな 「とりあえず、あたしはこれで帰るk「あれ?キョンくん、お友達?」 妹よ、いつの間に出てきた ってかハルヒ、見る見るうちに顔色が悪くなっていくんだが……… 「キョン………」 何だ 「こんな小さい子を連れ込むなんて、アンタまさかロリコn「妹だ」 「……何でこうなってんの?」 「さぁな」 今俺はハルヒと向かい合って正座している状態にある。何故かって?ほら、元凶がやってきたぞ 「さ、どうぞ~粗茶ですが~」 あぁそうだ。俺の妹(本名やっぱ不明)が元凶だとも 帰ろうとしたハルヒを引きとめなし崩しに家に上げた妹は好奇の眼差しでハルヒを眺めている ハルヒの方というとこれまた不思議な事に妙にしおらしい いつもの如く城の明かりを一人で補えそうな輝きを放つ太陽の様な歓喜ではなく美しく咲いた花のように見るものを幸せにさせる微笑である う~ん、詩人だねぇ ハルヒのこんな様子を見たのは何時だっけな………そうだ、朝倉の転校の理由を探りに行った時だったな こいつもこんなにしてりゃ可愛いのにな。谷口曰くAランクプラスは伊達じゃない…………か 「………何見てんの?変な事考えてたらブッ飛ばすわよ」 感情が顔に出てたか?ソリャ行かんな、どうやら俺はポーカーフェイスが苦手らしい にしても何時にも増して怪訝な目つきだな。其処まで信用無いのか、俺 「まぁいいわ、あんたに何か出来る度胸があるとはおもわな」 い、と続けようとしたんだろうな。まぁ、どの道聴こえなかったが 唐突に、雷が鳴った 「……嘘」 ハルヒが小さく呟いている。ソリャそうだろう 先程まで快晴―――夜でも快晴って言うのか?―――だった空には台風でも来たかのように雨雲が敷かれ、雨に交えて雷まで降り注いでいる 多分この雨の中帰る事は不可能だろう。俺の目で見ても明らかだ 「ねー、ハルにゃん泊まっていきなよ」 「え、」 何か色んな感情をごちゃ混ぜにしたような声だったな。其処まで嫌か 所で妹よ、いつの間にそんな略称で呼べるほど仲が良くなったんだ? ハルヒが成すがままに引っ張られていくと、俺の携帯が鳴った 液晶画面に表示された文字には嫌な予感を覚えざるを得なかったがな 「………古泉」 『はい、何でしょう』 「また閉鎖空間がどうとか言うんじゃないだろうな」 『いえ、寧ろその逆……でしょうか』 逆? 『ええ、この転校は恐らく涼宮さんの望んだ事でしょう。恐らく彼女は何かこうまでしてしたい事が有るのではないでしょうか』 大雨を呼んでまでしたい事って何だ。結果といえば家に帰れなくなったぐらいだぞ しかもそのお陰で俺の家に泊まる事になってしまってるしな。悪い方にしか転がってないように思えるが 『………ホンット鈍感ですね。貴方は』 知るか。大体溜息混じりにそんな事を言われる筋合いは無いぞ 『まぁいいです。とりあえず涼宮さんの機嫌を損ねないように気をつけて下さい もしそんな事になったら貴方のこれからの人生を黒人6白人4の割合で密着されて過ごしてもらいブツッ!!』 最後に雑音が混ざったのは少々強くボタンを押しすぎた所為だな 風呂場のほうから、妹の楽しそうな声とハルヒの悲鳴が聞こえた 「天空×字拳!!!」 ボスッと言う音と共に俺の体は多少の熱気を帯びたベットへと沈む。なぁに、やってみただけさ それにしても今日は疲れたな、精神的にも肉体的にも。ぐっすりと眠ることができそうだ 「………」 背中に違和感を感じるな。別に霊感の類が俺に有るとは思っちゃいないんだが………… 「ねぇ、キョン………」 扉を少し開けてハルヒが目だけを覗かせている。目目連か、お前は しかし見ようによっちゃ体を隠してるようにも見えるな 「笑ったら死刑だからね」 そう言ってハルヒは扉を開けた。俺はお前の姿を見て笑う要素があるのかが疑問だがな とまぁ、そんな疑問は一瞬で解決された その姿は見慣れてはいるんだが見慣れていないというかソイツが着る事がありえないと言うか 解説が面倒だから今起こったことを有りのままに話すぜ ハルヒがメイド服を着ていた き、気の迷いとか夢オチとかじゃねぇ……もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ……… 「…………」 「…………」 両者、当然の如く絶句。何だこれは?なんか言った方がいいのか? その思案をどう取ったのか、先に口を開いたのはハルヒの方だった 「あんたの妹に服剥かれたから仕方なく来てるのよ。これしか持ってなかったし……」 剥くって。というか常時メイド服を携帯してるのか、お前は 「うるっさいわねー………クリーニングに出そうとしてただけよ」 ああそう。じゃあその格好にはつっこまないでやるよ。これ以上いじったらまたニヤケ面から脅しが入るかもしれんからな 「で、何か用か」 「…………!」 おや。何気ない発言のつもりだったが何かが癪に障ったんだろうか。ハルヒの顔がゆっくりと紅潮していく。謝った方がいいのか? 「わ、私はただあんたが眠れてるかどうか確かめに……団員の健康管理も団長の役目なのよ!」 そうかい、それは初耳だよ。生憎雷で眠れなくなるような精神はして無いし、あんたの無茶な罰ゲームのお陰でぐっすりと眠れそうだとも ピシャァンといった感じに、雷が鳴った 「!」 「うおっ!?」 いやぁ、心臓が止まるかと思いましたね ハルヒが、俺に抱きついていた 「げふぅ!?」 この奇声は俺の物だ。だって仕方ないだろう?運動部で普通にレギュラー取れる奴が腹に思いっきりタックルして来たんだ。 いや、抱きつきなんだけどな 握力×スピード=破壊力らしいしな。後一つ何か有ったっけか まぁとりあえず俺はハルヒから加えられた運動エネルギーで後方のベットへと倒れこんだ訳だ。頭が痛い 「………ハル、ヒ?」 自分の腹部辺りに顔を埋めているハルヒに目を向けてみた。少し肩が震えている こんな女の子らしい面を普段も出せば可愛いもんなのにな それはさておき………どうするかねこの状況 「………悪かったわ」 ハルヒが顔を上げた。いやぁ、俺としてはもうちょっとこうして居たかった………いや、変な意味じゃないぞ。か弱い女の子を慰める為だ、ウン 「………雷、怖いのか?」 どうやら逆鱗に触れてしまったらしい。俺の顔の横からボスッ、と拳をベットに叩き付ける音がした ハルヒが顔を近づける。このままキスで来てしまいそうなほどに………変態みたいだな、俺 「…………悪い?」 怖いんですが、ハルヒさん なるほど、ハルヒは雷が嫌いなのか。また一つ知識が増えたな。それはそうとやっぱりホスト部を(以下略) それじゃあどの道この天候じゃ帰る事が出来なかった訳ね。GJ、GJだ妹よ ………止めた、現実逃避しても何にもならん。とりあえず俺の目前で今すぐ俺を殺しそうなこの団長様を落ち着かせねばな もし殺気だけで人が殺せるのならば俺は既に死んで………あれ、コレ前にも言ったな 「まぁ、落ち着け、ハルヒ」 と言うわけで説得を試みる。コイツをこのままにしておくとあのニヤケ面から黒人マッチョを召還されかねない 「雷が怖い事なんか気にするな、うん、その方が女の子らしくて可愛いと思うぞ、俺は」 ふっ、こんな事もあろうかと………思っていたわけではないが、谷口の話す『女性のおだて方』を伊達に聞き流してた訳じゃないぜ いや、駄目だよな聞き流してちゃ しかしどうやらハルヒも段々落ち着いてくれてる様子。谷口、お前案外役立つな。チャックさえちゃんと閉めればもてるかもよ 「まぁ、いいわ………」 ミッションコンプリート!トラトラトラ!我奇襲に成功セリ!!!我奇襲に成功セリ!! ・・・・・・・よし、落ち着け俺。素数を数えて落ち着くんだ しかし世の中そんな訳にも行かないんだな 「その代わり………一緒に寝なさい!」 「はぁ?」 いつもの如く、ビシィっと指を刺す 「団長を守るのは団員の役目でしょ!」 いやぁ、それも初耳だわ てか一緒に寝るって添い寝か?健全な女子高生にしては危機感が足りないのではないかね? もしかして人が混乱する状況が続くのにはなんかの因果関係があるのか? 今度長門にでも聞いてみるか。俺が理解できるとも思えないがな などと一般論を組み立ててみた物の ………正直、たまりません まぁそんなこんながあって俺は今ハルヒと添い寝中なわけだ 添い寝といってもハルヒは布団を頭まで被って俺の胸の辺りに顔を埋めているがな 雷の音が何処かでする度に肩が震えるのは愛おしさを感じずには居られない ………………とは言ってみたものの、このままでは俺の理性が持つかどうかが疑わしい 落ち着け俺。素数を数えて落ちつ……ける訳がない 生憎俺は同級生が成り行き上宿泊する事になり挙句の果てに一緒のベットで寝るというそれなんて(ry な展開には免疫が無い 谷口なら何か対策を練れそうだな。まぁプラスに転がる事は十中八九とは言わず十ありえないだろうが 「…う……うぅ………」 ふとハルヒの声が聞こえた。声といっても出来るだけ声を抑えようとした泣き声だってのは俺でも分かる 其処まで怖いのか、雷が 「えーと、ハルヒ、大丈夫だ。俺が付いてるから」 言った後に思ったが何が大丈夫なんだろうな 年頃の少年少女が一緒に寝ているというのは雷よりはるかに危ないと言うのが一般論という物だろうに それはそうと今俺が言ったセリフは思い返してみるとかなり恥ずかしい事を言った気がする。まぁ、仕方が無いよな。状況が状況だ。不可抗力と言う奴だよ 「…………ずるい」 ハルヒが顔を上げると同時に俺の胸ぐらを引っ張った あ、そんな勢い良くすると頭ぶつかr ゴンッ ………ほらな 「ずるい!不公平よ!」 ハルヒの言う事が一回で理解する事ができないのは既に規定事項と言った所か。ハルヒの目に溜まってる涙が痛さの為か怖さの為かは区別できんな で、何が不公平なんだ 「私はっ……!いつも……!あんたの事……!かんがえ…!のに……!」 泣くのを我慢しながら無理矢理声を出している事は俺にだって解る。その前に今驚くべきは内容のはずだ 考えている?ハルヒが?俺の事を? 「…………いつの間にかっ……あたしは………あんたの事ばっか想ってるのに…………なのにっ!」 ハルヒの瞳から涙が一粒、流れる ―――ああ、そういうことか これがどういう事かは馬鹿でも解る。俺が解るくらいだからな 「なんで………あんたはっ、落ち着いていられるのよ……!今だって………私は………!」 声を無理矢理出そうとするハルヒの様子は―――不謹慎かもしれんが―――反則的なまでに可愛い。ポニーテールだったら襲ってたかもしれないな でも今は、この消えてしまいそうに儚げな………折れてしまいそうなほどにか弱い団長様を包んでやる 俺は、ハルヒを抱きしめた 「!?」 「…………平気な訳、無いだろ」 聴こえるかどうかも微妙だったが、精一杯絞り出した声だ。それでも伝わったと思える そう、平気な訳が無かった。コレでもさっきから煩悩を消す為に余計な事を考えるのに集中していたんだからな 「俺だって、ハルヒが好きだ」 我ながら芸の無い告白だとは思ったがな。シンプルイズベストって言葉もあることだ、問題は無いだろうよ 俺の腕の中でハルヒは微動だにもしなかった。 ……………妙に沈黙が怖い しかし、以心伝心と言う奴だろうか。ハルヒのやらんとする事が解り、抱いている腕の力を緩めた ハルヒは横になった状態で器用に上へと登ってくる 俺の唇に、ハルヒの唇が重なった 「……ん…………」 ハルヒの口から小さく声が漏れる 唇を重ねたまま、数秒か、数十秒か、数分か………時間の感覚が無かった 唇を離すと、いつもの様なハルヒの笑顔が其処にはあった その笑顔に惹かれる自分を自覚し、自分がやはりこのお方に惚れている事を自覚する それでも照れ隠しにと、俺は声を発する 「…………これで俺はお前の彼氏、って事か?」 ハルヒの笑顔に合わすように少し笑いを含んだ声で聞いてみた。今はコレでいいはずだ 案の定、ハルヒは笑顔を崩すことなく…… それも何処か嬉しそうな声で答えた 「そう、ね………そう名乗る事を………許可してあげ、る………」 そう言った後、ハルヒがベットへ崩れる 緊張が解けたのやら安心感やらが要因か、直ぐに寝息を立て始めていた。その寝顔が何処か嬉しそうに見えたのは気のせいじゃないだろう、多分 その寝顔を見ていると何か悪戯をしてやりたくなったが……どうやら俺も限界な様だ 精神的にも肉体的にも疲れたしな。寧ろ今まで良くもったものだ それでも襲ってきた睡魔に軽く抵抗した 「………オヤスミ」 俺は小さくそういって、ハルヒの頬に唇を当てた。何故唇にじゃないかって?俺もそれなりに恥ずかしいのさ その行為が活動限界点だったか、俺は睡魔に身を任せて瞼を閉じた 「ってきまーす」 そういって家を出る。昨日の天候が嘘だったかのように快晴だ しかし降り注ぐ太陽光線は熱気を届け熱気はいまだ残る湿気に熱を蓄えその熱をゆっくりと放出せいでじめじめとした暑さが続いている 回りくどく言ったが兎に角暑い 早くも玉のような汗をかきつつ、俺は太陽への呪いの言葉を呟き続けた。傍から見れば変な奴だな、こりゃ 「キョーンッ!」 制服を取りに帰っていた団長殿がやってくる その表情は湿気も吹き飛ばすように溌溂としたものだった。見る者を安心させる笑顔、と言った所か。性格さえ知らなけりゃな 因みに迎えに来てもらったのは俺の要望ではない。そこん所勘違いしないように そんな事を考えて居ると、ハルヒが俺の腕に抱き着く。オイ待て、何処のバカップルだ、これは 「いいじゃない、恋人になったんだし。問題は無いでしょ」 視線が痛いな。それだけで精神に大ダメージだ と、言おうとしたがハルヒの笑顔を見ているとその気力を削がれる いや、別に無気力になるわけじゃないぞ?何となく認めてしまうといった感じの方だぞ? とりあえず今は暑さに負けない様、胸を張って歩かせてもらうよ なんてたって、この団長様の彼氏な訳だしな――― end
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/638.html
涼宮ハルヒの誤解 第一章 涼宮ハルヒの誤解 第二章 涼宮ハルヒの誤解 終章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6557.html
Ⅲ 寂しい灯りが照らす下、朝比奈さんと俺はお互いベンチに座っていた。何か話した方がいいかと思うのだが、朝比奈さんから呼び出されたのに俺が関係ない話をグダグダ話すのもいかがなものかと思い、今の膠着状態に至るわけだ。制服姿のままの朝比奈さんは、膝の上に乗せた自分の手の甲を眺めたまま動かない。そんな深刻そうにされると、一体どんな話が飛び込んでくるのかと俺は不安倍増になる。これがもし俺と朝比奈さんが向かい合っていたのなら、伝説の木の下ならぬいつものベンチ横で告白されるのではないかと思わず妄想を繰り広げてしまうのだが、今現在の事情が事情だけにそれはないな。さて、何が朝比奈さんの口から飛び出してくるか。鬼か?蛇か? 「キョン君は‥‥」 ようやく、ハムスターが精一杯に振り絞って出たかのような言葉は、何やらいやぁな予感しかさせなかった。結果的に、今すぐ告白しろみたいな話になるんじゃないか?この出だしは。 「今の涼宮さんをどう思いますか‥‥?」 「今のハルヒですか‥‥」 ……なんと答えればいいのやら。少し、いやかなり変わった気がするが、口では具体的にどう変わったのか言えないこともあり、これは言えそうにない。しかしいつも通りだと思いますよ、なんて本心と真逆なことをあの朝比奈さんの目の前で言うわけにもいかん。こうして呼んでくれたからには、ちゃんと理由があってのことだからに違いないからな。例え話の終結点が告白しろでも、嘘はいけない。嘘はいけないと、ふしだらな俺でも小学生の時に習ったことを覚えている。 「朝比奈さんはどう思いますか?」 しかし結局俺は、会話では禁じ手に値する質問を質問で返すという暴挙に出た。すまん、朝比奈さん。ハルヒが変わったのではなく、俺がハルヒを見る目が変わったかもしれないという点を無視したかったのさ。だって認めたくないだろ? 「‥‥私は古泉君の話を聞きました」 そう朝比奈さんは一呼吸おいて、小鹿のような瞳に決意を露に浮かべてから俺の目を直視して言葉を顔面にぶつけてきた。 「わたし、古泉君の言葉が間違っているような気がするんです」 俺は思わず目を見開いたね。ということは、告白云々は関係ないということだからだ。 「古泉くんの話はとても的を得ているし、話にもズレがないことは分かっているんです。でもわたしは、それでも本当のことはそうではないと思います」 「というと‥‥?」 「今の涼宮さん自身が、読書大会を開く前の涼宮さんと何か違う気がするんです‥‥‥」 なんと! 朝比奈さんも同じことを考えていたとは。しかもわざわざここに呼び出してまで言うからには、何か根拠があると思っても良いんですね、朝比奈さん。 しかし朝比奈さんは、わたしは話ベタだし、どうしてそう思うのか具体的には言えないのだけれどと前置きを重ねて言葉を区切っていた。変に思うかもしれない、とまで言っていたが、貴方のことを変だと思ったのは自分が未来人ですと告白された時以来はありませんよ。 「ただ涼宮さんが部室でしばらく寝て起きた時、ちょっとした時空震を感じました。おそらく長門さんも気付いたと思います」 「古泉は気が付かなかったのでしょうか?」 「‥‥そこ、なんです。キョンくんはどう思いますか? 気が付いたかと思いますか?」 たしか夏休み、ハルヒの勝手な行動で俺らは野球に参加させられるはめになった。その時クジで俺が4番に選ばれたんだが、野球経験も乏しく相手が相手ということもありエースのような活躍が出来なかったことにハルヒは理不尽な苛立ちを溜め、閉鎖空間を発生させた。あの時専門分野である古泉は除いても、朝比奈さんと長門は2人とも気づいたようだったな。長門はなんでも出来そうだが、朝比奈さんは未来人であるのだからそういったものには感知できないものかと勝手に思考していたが、そうではないようだ。ということは、朝比奈さんの専門分野である時空の揺れを古泉が感知出来てもまぁ不思議ではない。 無論俺にはさっぱり分からない。 「わたしは、具体的にはないにしろ、古泉くんも何か感じ取ったかなと思いました。なので、ここからする話は古泉くんが感知したということを前提に話していきますね」 「古泉くんは、あの日涼宮さんに何か異変があったと察知した。でも、貴方には涼宮さんにこ、告白をするように言っていますよね?」 「ええ」 「わたし思うんです。古泉くんがそう貴方に迫るのは涼宮さん自身がそう望んでいるからじゃないかな、って」 「‥‥え」 つまり朝比奈さんが言うには、古泉が俺にああ言うのは古泉自身の意思ではないということになる。またしてもハルヒの能力。いよいよ神らしくなってきたなハルヒ。 「あの噂‥‥わたしが誰かから聞いたわけじゃありません。朝起きて目が覚めた時にはもう、ああそうなんだって勝手に思ってたんです。鶴屋さんもキョンくんと涼宮さんのこと話していました。一緒に話してて、鶴屋さんに 「みくるも気づいてたのかい?」 と聞かれて、その時に初めて疑問に思いました。そういえば、なんでキョンくんと涼宮さんは一緒に帰ってるんだろう‥‥って」 なんということだ。噂を植え付ける? 洗脳の間違いじゃないか。事情を知ってる朝比奈さんでさえ記憶を曖昧にしてしまうとは、ハルヒの能力もさなぎから成虫になるみたいに羽化してるということか。 「わたし、長門さんが本を閉じて着替えのために貴方たちが一旦外へ出た時ようやく気付いたんです。2人で読書を進めるために残ってるんだったって‥‥」 朝比奈さんはうるんだ瞳をこちらに向け、まさにこのことを言いたかったのだと言わんばかりに声を上げた。 「キョンくんを今日呼び出すつもりになったのは、あの部室で思い起こしたんです。それまで、わたしもキョンくんが涼宮さんに告白するように勧めるつもりでした。でも、それはわたしの意思じゃなかったの。 どうしてかは分からない。告白するようにキョンくんに言うことがわたしの意思じゃないと証明は出来ないけれど、でも信じて。わたしは涼宮さんが、能」 「ちぃーすキョン‥‥‥って、うおっ!?」 ええい、どうしてこのタイミングでお前は出てくるんだ。朝比奈さんが何を言わんとしてるのが、やっとその一言で分かりそうだったのによ。 「あさ、あさ、朝比奈先輩じゃないですかあ! おいキョン。お前新月の夜にマジで気をつけとけよ。じゃないと」 「あっキョンくん‥‥この話はまた今度にしましょ」 「えっ!」 そう言うと朝比奈さんはスクッと立ち上がり、小走りで夜の闇に溶けていった。まだ一番大事なこと聞いてないですよ! 「朝比奈先輩、送りますよ!」 と谷口が追いかけていきそうになったが、こいつがついて行ったら間違いなくストーカーになる。だから俺は無理矢理谷口を止め、もう二度と邪魔するなと釘を打っておいた。 しかし朝比奈さんもあんな中途半端なところで帰らなくてもいいのに。 ‥‥‥。 しかし気になることばかりが残った。結局朝比奈さんは何が言いたかったんだろうか。 古泉はハルヒの方に何らかの異常が発生したのを感知した。それで奴はどう考えたんだ。ハルヒが今までと違う変化があるかを機関の力頼りに調べてみたが、何も発見出来ず、強いて言うならば閉鎖空間の規模が大きくなってきていること。そこでこれまでの読書の経緯を考慮し、ハルヒは俺の告白を待っていると解釈した。 じゃあハルヒを中心に起きた時空震はなんだ。古泉は考えた。ハルヒが夢か何かを見て、俺のことが好きになったスイッチだったのではないかと。 そして朝比奈さんはこう言う。古泉はハルヒの異変をキャッチした。変だな変だなと思いながらも何の変化は分からずじまい。そして、その時偶然か意図的なのかは分からないがハルヒが古泉を通じて、俺がハルヒに告白するよう仕向けることを願った。 古泉はハルヒがまさか自分に能力を使ってるとは思わず、自分の推理を考えてハルヒが告白を待っているという結論に達する。そして俺に迫る。ハルヒの異変のことを疑問に思いながらも‥‥‥。 つまりどっちの解釈でも、ハルヒは告白を待ってるということにならないかこれ。 考えれば考えるほど俺の頭の中は混乱状態に陥って行き、結局その日は明日当てられるかもしれない英語のリーダーの問題も解かずに眠ることを選択した。これ以上人間の持つ素晴らしき能力、思考というものを続けると、俺の頭は銃弾が直撃したタイヤよろしくパンクしそうだ。朝比奈さんの言わんことをまだ最後まで聞いたわけじゃないこともあってか、無心になることは無理そうだった。がそこは強引になんとかするしかない。 ……だが眠れない。 「はぁ‥‥」 なんで俺がこんな目にあうのだろうかね? 地球滅亡まであと6日。 ゲームならこんな感じにテロップが現れるかもしれない朝、俺は妹が来てシャミの歌を歌いながら起こすのに応じ、素直に一発で起きた。もちろん快眠故の起床ではない。眠れなかったのだ。 親が作ったトーストをゴムかなんだかを食ってるような感じを嫌とういうほど口の中で味わったあと俺は学校へゆっくりとした歩調で向かった。ハルヒの顔をまともに見れるような気がしない。 どんよりとした雰囲気を半径50㎝に漂わせながらのろりのろりと坂を上っていると、後ろから聞きなれた声音が後ろから聞こえてきた。なんだ、お前か。 「なんだとはなんだキョン。お前最近なんか見る度にやつれててるよな。また涼宮に振り回されてるのか?」 「いろいろとな。それより谷口、昨日はよく邪魔をしてくれたな」 「邪魔ぁ? 俺はお前と涼宮とのことで邪魔したことはないぞ」 涼宮との間は、か。確かに。でもな、 「せっかく朝比奈さんと話してたのに何も妨害することないだろう。友達なら黙って見ておくまでに留めておいて、その後は静かにいさぎよく立ち去るもんじゃないか?」 はぁ、とあからさまに溜息を吐いてやったところ、谷口の反応は俺の予想の斜め上をいくようなものだった。 「何言ってんだ? お前と朝比奈さんなんて昨日見てないぞ」 俺はあまりの谷口の素の反応に思わず目を丸くしたが、それは一体どういうことだ。 「それよりキョン。お前朝比奈さんと何だって? 話してたって? 2人きりで。おいキョン。マジで新月の夜に気を付けとけよ。俺はともかく朝比奈さんのファンでなおかつ上級生の人達からはとんでもな‥‥‥」 「待て谷口。お前は昨日夕方、公園にあるベンチ前通ったろ?」 しかし谷口はいよいよ俺を憐れむを見るような目で見て 「そうかキョン。お前もとうとう涼宮の毒牙にかかっちまったか。あいつの毒はハブをも上回るからな、まぁヘンテコな団を作った時にはもう既に毒は体内に回っていたんだと思うが‥‥‥。涼宮のように好き勝手やるのもアレだが、俺にクローン説をもちかけるなんてもっとアレだぞ」 谷口はいぶかしむような目でこちらを見ているが、もちろん俺がクローン説を本気でテスト平均点以下仲間に説こうとしているのではないのは明白だ。そして谷口のこの顔を見る限り、本当に俺と朝比奈さんが話していたのを知らないようだ。 ‥‥もう、本当に何が起こってるんだ。俺の寝不足が精神にまで影響を及ぼし始めたとか言わないでくれよ、頼むから。 ともかく、何かいやぁな予感しかしない。谷口にクローン説が当てはまらないならば、未来から谷口が来てわざわざ俺と朝比奈さんの秘密のカンバセーションを邪魔しに来たか、あるいは俺にも想像出来ない異常事態が発生しているかということだ。ハルヒのハルヒによるハルヒの身勝手さのための地球滅亡の前兆として、現れてはいけない時間軸が4次元と共に生まれてしまったか、谷口の記憶を半強制的にいじったか、あるいは谷口がボケたかかもしれない。俺としては谷口がボケているという可能性を是非推薦したい。というよりそうであって欲しい。 しかし念のために朝比奈さんの確認も取っておかなければ。昨日の話のクライマックスもまだ耳に入れてないこともあるから、俺は今長門よりも朝比奈さんに会いたかった。ハルヒになんとか不審に思われないよういつも通りの自分を全力で演じ、放課後になるや否や俺は文芸部室に駆け込んだ。 だがこういう日に限って誰もいなかったりする。癖になっているノックを2回して、返事がない時点で脱力感が襲ってきたがまあ仕方ないだろう。少し急ぎ過ぎたようだ。 俺の直感では真っ先に長門が来て、その後続いて朝比奈さん、3位にニヤケハンサム面の古泉、ラストにハルヒ。 しかし俺の期待を見事裏切るか如く、次に文芸部室のドアを開けたのは古泉だった。古泉の微笑もいつもに比べてどことなくぎこちなく、よく見れば目の下にはクマがある。 「それはお互い様と言ったところでしょう。貴方もいろいろと悩みを抱えておられているようですね。もし良かったら、僕がその悩みの相談に乗りましょうか?」 さも俺が何に悩んでいるのか知らないといった雰囲気でそう聞いてきやがる。原因はお前があんなことを言い出すからなんだがな。 「貴方も朝目覚めたら世界中が閉鎖空間に飲み込まれていたら嫌だろうと思ったので、僕なりの配慮と受け取ってください。本当はそのようなことを貴方に言うのは心苦しかったのです。閉鎖空間については、僕たちの専門ですからね」 地球が滅亡してたら起きるなんてこと出来ねーよ。少なくとも何の悔やみも迷いも生じずに消えていたさ。 古泉はいつもの微笑をフフと自然に作り上げたあと、ニヤケスマイルを崩してまるで近所のお兄さんがガキに向けるような朗らかな笑みを作った。 「でも、良かった」 「貴方がもし今回の涼宮さんの件について、それこそクマも作りもせずに軽率に行動をしていたらそれこそ僕は疑問視してしまうところです。世界がかかっているとはいえ、この問題については1週間ギリギリまで悩んでもらっても僕は構いません。少なくとも、僕が苦労してる分と同等ぐらいまでの苦労は‥‥‥してもらった方がいいかと」 結局自分も苦労してるんだから俺も苦労しろってことかよ。まあ喜べ。俺は巣の入り口が角砂糖で塞がれたアリぐらい苦しんでいるぞ。 「というより、いつの間にか話の流れが告白するみたいになってるがな、俺はそんなことする気サラサラないぞ」 「目の下にクマがある人が言うことではないですね。1週間後、また貴方とはさみ将棋が出来ることを期待しておきます」 古泉がそこまで言うと、ハルヒ達がまるでタイミングを見計らったか如く扉を勢いよく開けた。まさか聞いてなかっただろうな。 「さあ、今日もガンガン活動するわよ!! みくるちゃんお茶ね」 朝比奈さんの着替えのため俺らは一旦部屋から出て、メイド服に早々と衣装チェンジをした朝比奈さんのお茶を渋い音を立てながら各々の行動に戻った。 古泉は1人詰め将棋、俺は無論読書だ。 朝比奈さんになんとか話を聞こうと隙をあれこれと伺ってみるものの、どういうわけだかハルヒが相手チームのキャプテンをマークするバスケット選手並みのディフェンスを朝比奈さんに張り巡らしているような気がしたので声をかけることが出来なかった。仕方ない。今日の夜に電話をして話を聞いておこう。ついでに谷口のことについても。 まぁ、それも‥‥ 「さあキョン、残り4冊よ!」 「では、お先に失礼します」 「‥‥‥」 「あ‥‥キョン君、頑張ってね」 ‥‥この俺とハルヒオンリーな空間を1時間耐えきれたらの話だがな。耐えるって何を? 何だろうね。 睡眠不足プラスアルファ神経を約半日張り詰めていたこともあってか、6冊目の哲学書の表紙が嫌に重く感じる。タイトルから察するに、人間の言葉の意味についてボヤボヤと語り継がれているようだ。 「‥‥ねえ」 俺の頭がボヤボヤとして来始めた頃、不意にハルヒが声をかけてきた。なんだ。 「最近、アンタ何かあったの?」 何かってなんだ。 「何かよ!」 そう訳も分からず叫ばれても困る。しかしハルヒは俺の目をまっすぐ見つめ、俺が一体何を考えているのかを見通そうとしているようだった。ということは勿論、俺もハルヒの顔を見つめていることになり、ハルヒの瞳に反射して映る俺の間の抜けた顔はハルヒが何故こんなことを言い出したのかを思惑しているものだった。 その原因は分からないが、どうやら怒っているのではないらしい。ハルヒは俺から顔を背け、自分の目の前にある本へと強引に視線を変えた。机の上には長門が好みそうなハードカバーのSFが置いてあったが、おそらく今のハルヒの目には何も写っていないだろう。 「今日だってそうよ。徹夜でもしたみたいなクマがあるのに無理に元気出してるし、あたしが後ろからシャーペンでつっついても気づかないし、それに‥‥‥」 ハルヒがハルヒらしからぬことを言い出したので俺はこの上なく戸惑っていた。いや、マジで混乱していた。一体何故こんなことに。 ハルヒが一瞬空気を置いてから、またこちらに視線を翻し俺に向かってツバがかかる勢いでこう言った。 「なんであたしにそんなに気を使ってるのよ!!!」 ‥‥へ?Ⅲ と思わず呟いてしまうところだった。気を使っているだと。俺が? ハルヒに? 「あたしに対する態度がなんかよそよそしいわよ! あんた何か隠してるでしょ!?」 ハルヒはそう言い、俺のうろたえた表情を見るなり我が意を得たと確信したらしく、対ハブ戦で主導権を握ったマングースの如くニヤリと笑った。パイプ椅子から立ち上がるなり俺の胸ぐらをひっ掴み、「言いなさい」と下僕にカツアゲする姿は女王陛下そのものと言ってもいい。なんてめんどくさいことになってしまったんだ。 俺がハルヒに気を使ってるなんて天地がひっくり返って人間が空に落ちるような事態が発生したとしても常識的に考えてありえないだろ。俺はハルヒに気など使っていない。 ‥‥‥ってのは嘘ぴょんで、 正直に言うならば確かに神経を張り詰めさせている。そりゃそうだ。俺がハルヒに告白しないと地球が滅ぶ。まさに天地がひっくり返る状況の真っ只中にいるというのに気を使わん奴がいるというのか。いるなら手を上げてくれ。最優秀脳天気賞を俺が直々にくれてやるよ。別に嬉しくないだろうがな。 「ハ、ハルヒ。とりあえず手をどけてくれ」 苦しくなってきた、と言うより先にハルヒは「駄目よ」と返事した。目が爛々と輝いていやがる。さっきまでの物鬱げな表情はどこいった。NASAのロケットと共に宇宙の彼方へと消えたか? 「あんたが何を隠しているのか言うまでも絶対離さないわ」 ハルヒに隠し事だと。Oh no! 隠し事しかないぞ。 俺はどうにかして状況を打開しようと立ち上がってみたが、首は苦しいままだった。この脚本を書いたの誰だ。もし俺が主人公ならここで死んじまうぜ。何故なら選択肢が告白するか、今ここで現世に別れを告げるかの2つに1つしかないからな。 だがそんなシナリオに従うほど俺はまだ自分の運命に悲観していない。運命よ、そこをどけ。俺が通る。 「あー‥‥あー、実はだなハルヒ」 「いっとくけど、あたしに誤魔化しは通用しないわよ」 通用しないわよと言われて、はいそうですかと本当のことをベラベラ喋るわけにはいかないことぐらい俺にでも分かる。ここは俺の天性のアドリブ能力でなんとか場をしのぐしかない。 と思案していた矢先だ。 「分かってるわよ‥‥みくるちゃんのことでしょ!?」 「は?」 何故ここで朝比奈さんが出てくる。 「最近妙に仲良いわねと思ってたのよ。そして昨日確信したわ。あんたが公園でみくるちゃんと密会してるの見たんだから!」 なんと! あの場にまさかハルヒがいただと!? しかも密会なんて誤解されるような表現を使いやがって。俺たちは何もいかがわしいことしてないぞ。 「というよりなんでお前が公園に‥‥」 「誰だって別れた後に小走りでどこか向かっていたら気になるでしょ!?」 別に気にならん。俺なら急いで家に帰ったんだなとしか思わないぞ。 というよりも尾行されていたとは。我ながら迂闊だったか。 「ハルヒ。尾行なんてあまり好ましくない行動だぞ。そんなことやっていいのは本物の探偵かドラマの警察だけだ。一般人がやってしまうとストーカーに‥‥」 「そうやって話を逸らそうなんてことさせないわよ! あんたとみくるちゃんがあんなとこで一体何を話してたのか言いなさい!!」 尾行したという話をし始めたのはお前なんだがな、ハルヒ。 しかしなんとか話を騙し騙し変更しようと思ったのがバレたみたいだ。これは思いの他厄介なことになった。 「そう‥‥何も言わないのね。いいわ、言ってあげる。あんたみくるちゃんを恋愛対象として見てるでしょ!?」 ハルヒの表情はひくひくと痙攣しながらも無理矢理笑顔を浮かべており、こういうときどういう顔をしていいか分からないようだった。にしても俺が朝比奈さんを恋人対象として見るねえ‥‥。確かに朝比奈さんは小柄で可憐かつ庇護欲をそそるような素晴らしい体型と性格の持ち主で、その上禁則事項まみれではあるが未来から来たというオプション付き。そりゃ付き合えたら俺の学園生活もそこら辺に生えてる名も知らない雑草からバラ色のそれへと移り変わるだろうが、しかしなぁ‥‥。 そんなことを脳が酸素不足になりながらも考えていると、ふっと窒息感が和らいだ。ハルヒが力を抜いたらしく、顔を俯かせながらも手だけは俺の胸ぐらを弱々しく掴んでいた。 「‥‥そうよね」 静かにそう、確かに呟いた。 「女のあたしも思うわ‥‥みくるちゃんは可愛いってね。彼女に出来るものならしてみたいわ」 「俺もそう思うぞ」と言えるような状況ではなかった。さっきまであんなに勢いがあったハルヒが急にしおれてしまい、このなんとも言えぬまるで恋する乙女のような情緒不安定さがハルヒにもあったということは、とても筆舌しつくしがたい困惑を俺の中で渦を巻かせている。 「‥‥なあハルヒ。仮にそうだとしよう。だとしてもなんで俺がハルヒに気を使わなくちゃならないんだ?」 「やっぱりみくるちゃんが好きなのね‥‥」 「仮の話だ」 「だって‥‥あんた忘れたの? 団内の恋愛は禁止じゃない」 知らなかった。そうだったか? 「そうよ‥‥」 ハルヒは俺から手を離し、相変わらず俯いたまま重い足取りで窓へと歩みよった。外から室内へと夕暮れの光が差し込んでいたが、ハルヒの窓の向こうを見る様はまるで雨を眺めているかのようだ。そして窓に反射して見えるハルヒの顔は切なさが垣間見えた。 「いいわよ、別に。特別に許可してあげる。他の誰が何と言おうとあたしが許してあげるわ‥‥」 ‥‥と、ハルヒは言ったきりこちらに振り返りもせず黙ったまま景色を眺めていた。おい、こんな展開になるなんて誰も考えちゃいなかったぞ。何故二言三言の会話の間に俺が朝比奈さんを好きということになっている。そりゃまあ好きに違いないが、そう、俗に言うラブではなくライクというやつだ。それに例えラブでもお前が認めたところで朝比奈さんが認めないだろうよ。なんつったて未来人だしな。まあ他にも要因はあるが。 「一体お前が何の勘違いをしてるかは分からないが、俺は別に朝比奈さんにそういった感情を持ち合わせてないぞ」 「嘘よ。あんたいつもみくるちゃんからお茶貰う時デレデレするじゃない」 あんな校内一と言っていいほど可愛い人からお茶貰ってニヤけない奴はいないだろうよ。 「それに! 現に昨日もあってたじゃない! あれは何よ!!」 まるで浮気現場を目撃した新妻との会話みたいになっているのは気のせいか? 「ごちゃごちゃ言わずにその理由を言いなさいよ!!」 「あれはだな‥‥そう。朝比奈さんから相談を受けたんだよ。最近ハルヒの元気が無いような気がする、とか言ってたぞ。俺はそんなことないと否定しといたが、朝比奈さんは自分の出したお茶がまずいんじゃないかと杞憂しておられた。だから色々と話してたわけだ」 「なんであんたに相談するのよ!? 有希や古泉君がいるじゃない!!」 ハルヒはずかずかとこちらに歩を進め、俺は思わず後退りしているうちにいつの間にか背が壁と触れ合っていた。こいつも怒ったような表情したり捨てられたら子犬のような寂しげな表情したりと忙しい奴だ。ガムを噛んだ息でも嗅いで「いいじゃない!」と言って笑ってればいいものを。 「長門は‥‥えー、ほら、あいつ文芸部に所属してるぐらい本が好きだろ? 部室内でもひたすら本読んでるし、あんまり他のことに関心を向けてない‥‥かもしれない! って朝比奈さんは思ったのかもな」 「有希はそんな薄情な子じゃないわよ!」 分かってるさ。多分長門が一番皆の状態を把握してる。 「古泉は単純に‥‥家が遠かったんじゃないか?」 「‥‥‥‥」 けれどこれだと、それだったら3人が一緒に帰ってる時に話せば良かったじゃない! と突っ込まれたら終わりだ。言ってから気づいたが、トゥーレイト。 「要は、ハルヒ本人に知られなきゃ誰でも良かったのさ。朝比奈さんは陰ながらハルヒに元気を出してもらおうと頑張ってたというわけだ」 「そうだったのね‥‥全く。みくるちゃんったら、そんなこと気にしてたのかしら! 団長本人に聞かなかった罰よ。今度お返しに新しい衣装着せるんだから‥‥」 しかしハルヒが肝心なところで単純なのは助かった。それにしても朝比奈さんに新しい衣装か。そろそろ冬になるんだし、サンタの衣装にして欲しい。朝比奈さんがサンタコスチュームを身に纏えば、本物サンタクロースでさえ恐れ多いことだ。有無を言わず退散するだろう。ただしプレゼントは置いていってくれよな。 そうやって、漸く俺が一難去った喜びを朝比奈サンタを想像して噛み締めていると、ハルヒが第二の核爆弾を追加直撃をさせてきた。 「じゃあ、あんたは何であたしに気を使うの?」 しまった、っという言葉を寸でのところで飲み込んだのは我ながら勲章ものだ。誰でもいいから俺に賞をくれ。 「ねえ、なんでよ‥‥?」 だが賞は誰からも授かることはなかった。俺の耳に届いた言葉は授与式の司会者の声ではなく、不安そうなハルヒの声。 まるで、自分が俺に何か気に障るようなことをしたか気にかけるような、そんな声音だった。 「あの、そのだな‥‥‥」 ‥‥ここで少し考えてみてほしい。放課後、それも下校間際の時間帯だ。部活や居残りさせられていた生徒達はようやく帰宅時間かと安堵やら残念な思いをしながら長い長い坂道を下る頃であろう時間。そんな学校には誰もいない時間帯。強いて言うなら残っているのがほとんど教師しかいないような時に、ただでさえ人気のない旧館の2階でそれなりに‥‥というよりも黙っていさえいれば朝比奈さんと双璧をなすほど容姿を持つ、お偉く気の強い団長様が1人の一般男子生徒を壁へ追い詰め、こんな不安そうな触れたらその繊細なガラス細工が壊れるような表情をしていてだ。君は何も感じないか? 夕暮れの明かりも消えかけて、残るはそろそろ取り替えた方が無難な電灯の心許ない明かりがあるだけで、状況だけで言うならばこれほどドキドキする場面はそうそうないような事態で何も思わない奴がいるのか? だとしたら、そいつは鈍感ってレベルじゃねーぞ。 まるで今までのハルヒとの会話はこの時のためにあったんじゃなかろうか。今がそうなのか。今が言うべき時か? これほど、誰かがお膳立てでもしたんじゃないかと疑うようなベストコンディションはもう残り6日間の内には必ずといっていいほど無いだろう。 今、逃したらもう言うチャンスがきっとない。地球が滅ぶか滅ばないかは今まさにこの瞬間にかかっている。俺の手のひらの中にある。 ゴクリ、と唾を飲む。 言うしかない。いいか、俺。逃げはなしだ。ここで「俺はお前に気なんか使ってないぞ」なんてのは御法度だぞ、OK? 地球がどうにかなるかならないかの瀬戸際なんだ。地球が太陽系の惑星から消えるなんて嫌だろ、どっかの星みたいに。さあ言え。言えったら。 言え!! 「‥‥‥‥」 「‥‥キョン?」 問いに答えない俺を見て、ハルヒは首を傾げながら俺の顔を覗きこんだ。可愛い仕草も出来るんだな、ハルヒ。 ってのはどうでもいい。俺は骨の髄までチキンらしい。しかしこの際チキンでも構わない。俺の中である疑問が生まれたのだ。俺は今、猛烈に自分自身が告白するようにせがんでいる。何故だ? 地球が滅びるからか? でもそれって本当か? 本当に地球のためを思って告白云々を考えていたのか? 我ながら自分の思想さえコントロール出来ないのかと世間の人から罵詈雑言が飛んできそうだが、まさにそうかもしれない。 つまりだ。 俺の思想さえもをハルヒが操っていたとしたら、どうする? わけ分からんことを言うな。まさにその通りだ。そんな哲学書みたいな思想、俺なら5秒で飽きる。しかし今回ばかりは匙を投げっぱなしというわけにはいかない。そうだ。 『古泉君の考えは、涼宮さんの意志によるもの‥‥』 『涼宮さんは能‥‥』 朝比奈さんの言葉が途切れ途切れに思い出される。ハルヒが能力を使い、他人の思考さえも我が手の物に出来るかもしれないという可能性があるのだ。今切に告白したがっているのは俺の意志ではなく、ハルヒがそう命じているから‥‥‥? ‥‥‥あほらし。哲学書を読み過ぎたか。 俺の意志にしろハルヒが告白されたがっているにしろ、どちらにせよ閉鎖空間を抑えるための方法はただ一つ。言うしかないのだ。 言った後の結果が怖いとか、今までの関係が良いとかそういう深層心理から生み出された逃げだろ。その点については安心しろ。ハルヒは告白されて断った試しがないらしい。もしかしたら5分後に振られたという最高記録を抜かして5秒で振られるという最新記録を生み出すかもしれないが、何はともあれ言わなきゃ始まらない。 ‥‥‥言うぞ。どうせならカッコ良く言えよ。 「ハルヒ」 「‥‥何よ?」 人生経験上、女性と付き合った試しがない。強いて言うならば妹の友達と映画を見に行ったが、あれは別だ。ともかく、告白の時に一体どんな前振りをすればいいか分からない。古泉ならそういうのがホイホイと出てくるだろうが、生憎今だけはあいつには頼りたくない。というより誰にも知られたくない。 俺はハルヒがまるで逃げないようにするがために肩を掴み、じっとハルヒの視線を捉えた。ハルヒも今が一体どういう空気なのか読んだ‥‥かは知らんが、何も言わず俺の眼を見つめ返す。5月の俺すげーな。よくあの唇にキスしたもんだ。 ‥‥‥他の言葉はいらない。なんで気を使ってるのか聞かれて告白するというデタラメな順序もこの際無視だ。胸が高鳴ってくる。意志では抑えれそうにない。だが、たったその一言で、この不可解な動きをする鼓動も地球も処方箋いらずで助かるというのなら、‥‥‥ 「ハルヒ、」 もう一度呼んだ。 返事はない。構わん。 「」 気のせいだろうか。声が聞こえた。もちろん俺のではないし、ハルヒのうろたえた声でもなかった。 ふと隣を見るといつの間にかドアが開いており、まるで最初からそこにいたと言わんばかりにそいつは立ったままこちらを見ていた。 見覚えのある瞳だ。無機質と無感動を貫いた闇色に染まる確かな水晶体。 「長門‥‥‥」 そう、そこには長門がいた。 「忘れ物をした」 言い訳を言うかのようにそう付け加えると、長門は足音もなしに定位置へと進んでいった。いつも長門が座っているパイプ椅子の上には分厚いハードカバーの本が置いてある。さっきまでそんなものあったか? 長門がもう一度こちらを見つめ、今し方の光景が何を意味するか観察兼分析しているように見えた。まあ長門なら最初から分かっていそうだが。 それでも人間ってのは不思議なもので、そんなに見つめられるとつい条件反射でお互い体を離し距離を置く。恥ずかしくてあまりハルヒの方が見れないが、ちらっとだけ見ると肩のところにシワが寄っていた。どうやら相当強く掴んでいたようだ。 「下校時刻」 そうポツリと呟くと、俺たちの視線を促すよう長門は時計を見つめた。 「あ‥‥ああ。そうだな‥‥‥」 ‥‥‥‥何故、邪魔をしたんだ長門。 これまでの経験から分かる。長門は意味のないことなどしない。確かに、夏の合宿で部屋に入る入らないの際に意味なし問答を繰り広げたさ。だがあれは長門なりのジョークともとれないことはない。 じゃあ、聞くが。今回は何故だ。なんで長門は邪魔をした。地球が消えるか消えないか、俺が死ぬような思いで悩んできてようやく決心が出た答えを何故×にした。何故なんだ。教えてくれ長門。 「そ、そうよ!! もう下校時刻じゃない!? キョン、有希。帰るわよ!!」 ハルヒはそう言い、自分の鞄をひっ掴むとまるで俺から離れるように先に部室を出た。その行動は何故だか分からないが意味もなく俺を傷つけた。 そんな感傷に浸るか浸らないかの刹那だ。長門が瞬間的に俺のブレザーポケットの中に何かを突っ込ませた。一瞬だけ見えたが、あれはしおり‥‥? 「ほら、有希もキョンも。早く帰るわよ!!」 ハルヒがひょこっと顔を覗かせ、俺たちにそう呼びかける。長門は何も答えず部室を出て行き、俺は長門の背を追いながらもポケットの中の物の感覚を弄っていた。 意味があるんだな、長門。信じてるぜ。 俺も鞄を背負った後、明かりを消して部屋の外へと足を進めた。 →涼宮ハルヒの分身 Ⅳへ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/746.html
少女達の放課後 A Jewel Snow (ハルヒVer) ダーク・サイド 繋ぎとめる想い 涼宮ハルヒの演技 涼宮ハルヒと生徒会 HOME…SWEET HOME 神様とサンタクロース Ibelieve... ゆずれない 『大ッキライ』の真意 あたしのものよっ!(微鬱・BadEnd注意) ハルヒが消失 キョウノムラ(微グロ・BadEnd注意) シスターパニック! 酔いどれクリスマス 【涼宮ハルヒの選択】 内なるハルヒの応援 赤い絲 束の間の休息(×ローゼンメイデン) ブレイクスルー倦怠期 涼宮ハルヒの相談 お悩みハルヒ 絡まった糸、繋がっている想い 恋は盲目(捉え方によっては微鬱End注意) 涼宮ハルヒの回想 小春日和 春の宴、幸せな日々 春の息吹 おうちへかえろう あなたのメイドさん Day of February ハルヒと長門の呼称 Drunk Angel ふたり バランス感覚 Swing,Swing,Sing a Song! クラス会 従順なハルヒ~君と僕の間~ B級ドラマ~涼宮ハルヒの別れ~ ハルヒがニート略してハルヒニート 涼宮ハルヒの本心 涼宮ハルヒのDEATH NOTE 思い込みと勘違い 束の間の休息・二日目 束の間の休息・三日目 涼宮ハルヒの追想 涼宮ハルヒの自覚 永遠を誓うまで 涼宮ハルヒの夢現 Love Memory 友達以上。恋人未満 恋人以上……? 涼宮ハルヒの補習 涼宮ハルヒの感染 雨がすべてを 涼宮ハルヒの天気予報 キョンに扇子を貰った日 涼宮ハルヒの幽霊 隠喩と悪夢と……(注意:微グロ) Close Ties(クロース・タイズ) の少し後で セカンド・キス DEAR. 涼宮ハルヒの独白 寝苦しさ 涼宮ハルヒの忘却 涼宮ハルヒの決心 ティアマト(ハルヒ×銀河英雄伝説) 式日アフターグロウ 微睡の試練 涼宮ハルヒの大騒動シリーズ young 神の末路(微グロ注意) 涼宮ハルヒの奇妙な憂鬱 夕日の落ちる場所 涼宮ハルヒの抹消 トラウマ演劇 涼宮ハルヒは夜しか泳げない ハルヒ「釈迦はイイ人だったから!」 (グロ ナンセンス) ハルヒとボカロオリジナル曲の歌詞をあわせてみた 涼宮ハルヒの共学目次 word of thanks 赤色エピローグ 夏の日より 朝比奈さんの妊娠 疑惑のファーストキス 機関の推測(微エロ注意) 涼宮ハルヒの切望―side H― 憂鬱な金曜日 それでもコイツは涼宮ハルヒなんだ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1618.html
影時間。 いつからそれが訪れるようになったのか――っていうか、ついこの間からなんだがな。 まったく訳の分からんことには慣れきったと思っていたが、まさかこんなアホな事態になるとはな。 いま俺はハルヒ以外のSOS団メンバーと共に、シャドウ退治ってのをやってるところだ。 シャドウってのは影時間にだけ現れるキモイ化け物のことで――って、影時間が何なのかの説明もまだか。 仕方ない、俺がこの事件に巻き込まれたところから話すとしよう。 あれは1週間くらい前のことだったかな、俺は夜中にのどが渇いて、しかし冷蔵庫には何もなく、 水で我慢するのも癪だったので、缶ジュースを買いに外に出かけたんだ。 そうしたら―― 「……?」 家を出て、近くの自販機に向かおうとあくびをしながら一歩踏み出したところで、 俺は自分の目を疑ったね。 なにしろ自販機の隣に棺桶が立ってたんだから。 なんだこりゃ。新手のヤンキーのいたずらか? 少しビビリつつも、俺はその棺桶に近づいていった。 でかい。あたりまえか、人を入れるためのもんだもんな。俺より頭ふたつぶんくらいはでかいね。 中に誰か入ってるんだろうか。 吸血鬼……なんてのは、いくらなんでも時代錯誤だろう。 しかしもしこれがハルヒがらみだったら、あながち無いともいいきれないのが怖いところだ。 さすがに中身を覗いてみようって気にはならんが。 夜の街にぽつんと立っている棺桶か。不気味なことこのうえないな。 とにかくジュースを買おう。そして何も見なかったふりをして、家に戻ればいい。 明日長門あたりに聞けば、万事解決するだろうさ。 我ながら達観してるな。それもこれも、涼宮ハルヒなんてアホにつきあってるからなんだろうが。 俺は百円を自販機に入れて――うんともすんともいわねぇ。 なんだ。飲まれたのか? つり銭レバーをまわしても戻ってきやしねぇ。ウソだろ、俺の百円。 自販機を蹴り飛ばそうかどうか一瞬迷い、結局蹴り飛ばしてしまったところで、 「きゃあ!」 悲鳴が聞こえた。女の子のだ。まさか俺が自販機を蹴ったから、なわけはないだろうが、 しかしこの声には聞き覚えがある。そう、いつも部室で耳にしている可憐な悲鳴、これは、 「朝比奈さん!」 俺は悲鳴のほうに走ったね。迷うわけ無いだろう。朝比奈さんの危機に駆けつけないヤツは男じゃない。 通りの角を曲がり、こっちは長門のマンションの方だっけか、なんて思ったところで、俺は朝比奈さんを見つけた。 街路樹を背に立つ小柄な美少女、我らが朝比奈さん。 だがなんだ、あの化け物は。朝比奈さんの前方10メートルに立ってる、腕が4本生えた黒い塊みたいなのは。 「き、キョンくん!?」 朝比奈さんが俺の方を見て目を丸くした。まるでいるはずのない人がいたって感じだな。それはこっちも似たようなもんか。 「シャアア!」 朝比奈さんが俺に気を取られた瞬間を好機と捉えたか、怪物が四本の手で這うように走り出した。 早い、このままじゃ朝比奈さんが、と思う間もあらば、 「ぺっ、ぺるそな~っ!」 朝比奈さんが銃を――本物かあれ?――自分の眉間に当てて、引き金を引いた。 ぱぁん、と銃声がして、一瞬俺は朝比奈さんが本当に自分の頭を撃ったのだと思った。 だって頭の後ろから何かが吹き出したんだから。脳漿をぶちまけたと思ったのは当然だろう。 だがそれは青い色で、液体とか固体ってよりは気体って感じで、しかもそいつはもやもやとした塊から、 あっというまにはっきりとしたカタチに変化しやがって、この間1秒もかかってなかっただろうよ。 とにかく朝比奈さんから飛び出したそいつは、一匹のゾウに変化した。 ゾウといっても普通の四足のアレじゃない、人間みたいに二足歩行しているゾウだ。 しかも生意気に手には剣なんかもってる。ただリアルさは皆無で、ぬいぐるみみたいな外見なのが朝比奈さんらしいというか。 「い、いってくださいガネーシャさんっ!」 「ぱおーん」 ゾウが剣を振り下ろし、その一撃で黒い化け物は真っ二つ、どろどろに溶けて消えてしまった。 ……おいおい。なんだこりゃ。 俺に内緒で、また何かアホな映画の撮影でもしてるのかね? あたりを伺ってみるが、カメラをもったハルヒが隠れている様子も無い。 いったいどういうことだ―― 「朝比奈さん!」 きょろきょろしていたせいで気づいた。化け物が街路樹の上に隠れている。 そいつはさっきの化け物を倒してほっとしている朝比奈さんを狙って、飛び降りた。 「え――?」 間に合うか――俺は走った。 果たして怪物の手が朝比奈さんの小さな身体を潰すより早く、俺は彼女を突き飛ばし、さらに押し倒していた。 「き、キョンくん!?」 うお、柔らかっ。胸に手があたってる! 目の前には朝比奈さんのつぶらな瞳が……って、言ってる場合か。 「シャアアアア!」 狙いをはずした怪物が、忌々しげに俺を睨んでる――といいたいが、なんだあの顔は。まるでお面だな。 ハニワみたいな空ろな顔がマヌケだが、かえってそのマヌケ面が不気味かもしれない。 「き、キョンくん逃げて!」 逃げてって、朝比奈さんを置いて逃げられるわけないじゃないですか。 「あ、あたしは大丈夫だから――」 「シャアアア!」 怪物が俺たちに向かって飛び掛ってきた。やばい! 俺はとっさに朝比奈さんを庇おうとしたが、逆に前に出た朝比奈さんに庇われて―― 「きゃああ!」 怪物の腕が朝比奈さんを吹っ飛ばした。からんからん、と銃がアスファルトを滑って俺の脚に当たる。 「朝比奈さんっ!」 駆け寄ろうとした俺の前に怪物が立ちふさがる。このまま前に進めば俺が犠牲に、 かといって逃げれば朝比奈さんが殺される! 「く……」 足元に目を落とす。銃。すばやく拾い上げて怪物に向ける。怪物は一瞬怯んだように見えたが、 飛び跳ねるように俺に向かって来た―― 「キョンくん、自分を撃って!」 朝比奈さん!? 確かにさっき、朝比奈さんは自分に向かって銃を撃っていたが―― ええい、朝比奈さんを疑ってどうする。これでもし自分の頭を吹っ飛ばす結果になったら、それまでってことだろ。 俺は銃口を自分のこめかみに押し当てて、ごくり、つばを飲み込む、しゃれにならないぜこれは、し、死ぬのか? 「――ぺ、る、そ、な」 なんで俺はそんなことを呟いちまったんだろうね。わからん。わからんが、不思議な感じだった。 自分の中から、何かが弾け出すような感覚だ。一種のトランス状態と言ってもいい。ともかく、俺は、 引き金を引いた。 ぱぁん―― 乾いた音と共に、俺の中から何かが飛び出した。 それは――なんだろうねこいつは。 黒い雪だるまとしかいいようがない。 ジャアクフロスト? なんでかしらんが、そんなアホな名前が頭に浮かんだ。 まあなんでもいい、あの化け物を倒せ―― 思うが早いか、ジャアクフロストは口から炎を吐き出し、黒い怪物を一瞬で消し炭にしてしまった。 強いじゃねえか。だが雪だるまが火を噴くってのはどうなんだ。 とにかく俺は朝比奈さんの方へ走った。 「大丈夫ですか?」 「あ、あたしは大丈夫です。キョンくんこそ……」 「おかげさまで無傷ですよ。それより、一体なんなんですこれは? またハルヒのお遊びですか?」 「それは……」 朝比奈さんが口ごもる。まさかここまで来て禁則事項はないだろうが、話し辛いのだろうか。 「あの、長門さんの部屋まで来てください。そこで……」 長門? やっぱりあいつも噛んでるのか。 ああ、なんとなく見えてきたぜ。どうせそこには古泉もいて、いつもみたいに迂遠な解説をしてくれるんだろう。 俺は擦り傷ですんだらしい朝比奈さんを念の為におぶって、長門のマンションを目指した。 長門の部屋には案の定古泉がいて、さらに見覚えのある上級生……喜緑さんまで揃っていた。 「すみません朝比奈さん。救援に向かおうと思ったのですが、長門さんが不要だと」 古泉がニヤケ面でそんなことを言った。 「どういうことだ?」 「あなたが覚醒するのは分かっていた。状況は喜緑江美里が監視していた。問題は無い」 「監視? 覚醒? すまん、最初から説明してくれるか?」 「いいでしょう。まず……棺桶は見ましたか?」 ああ、自販機の隣にあったな。 「あれは象徴化した人間です――」 古泉の胡散臭い、もって回ったいつもの説明を出来るだけ簡潔にすませると、つまりこういうことらしい。 先月あたりから、深夜0時になると影時間とかいうのが始まるようになった。 影時間の間は普通の人間は棺桶になってしまう。 影時間の間は全ての機械が停止する。 棺桶になっている人間はぶっちゃけ時間が止まる。その間のことは感知しないし記憶されない。 ある程度影時間が過ぎると、元の時間に戻る。棺桶も人間に戻る。 影時間の間、シャドウという化け物が現れる。 たまに影時間に棺桶にならない人間がいて、そいつがシャドウに襲われると廃人になる。 棺桶にならない人間の中にはペルソナ使いの才能があるものがいる。 ペルソナ使いは自分の心を実体化させて攻撃できる。 シャドウを倒せるのはペルソナ使いだけ。 「わけがわからん」 とにかく今は影時間で、人を襲う化け物がいて、長門たちはペルソナを使って戦ってるってことか。 「まあ、かいつまめばそういうことです」 「それはわかった。しかし……こうも見事に知り合いだらけだとな」 やっぱりハルヒの仕業なんだろうな、これは。 「そういやハルヒの姿が無いようだが」 「彼女はいま眠っています」 喜緑さんが偵察用らしい丸っこい乙女型のペルソナを使い、ハルヒの寝室を空中に映し出した。 ……へそ出して寝てやがる。人の苦労も知らんで、気楽なもんだな。 「これが涼宮さんの望みかどうかは分かりませんが、少なくとも彼女は棺桶にはなっていない」 おい古泉、ハルヒのへそなんか見ても楽しくないだろう。こっちを見て話せ。 「失礼」 なに微笑ましいものを見るような目つきをしてやがる。俺が何か言ったか? 「しかしどうするんだ? 毎晩こんな化け物退治を続ける気か?」 「勝利条件は分かっています。次の満月に出現するボスを倒せば影時間は消えます」 「なぜ分かる」 「分かるのですから仕方在りません。これは僕だけでなく、長門さんや朝比奈さんも同意しています」 長門と朝比奈さんが頷いている。どうやら本当らしいが、まったく、なんのゲームだこれは。 「どうでしょう。戦力は大いに越したことはありません。あなたにも是非、我々と共に戦って欲しいのですが」 どうしてこう、訳の分からん事態に巻き込まれるのかね俺は。 いや、んなことはハルヒの事をこいつらから聞いた時にわかっていたはずじゃないか。 これからどんどんバカな話になりますよ、ってな。 それが嫌だったら、とっくにSOS団なんてやめてりゃよかったのさ。 だってのにいまだにずるずると続けてるのは、なんでなんだろうね。 一つだけいえることは、俺には選択権なぞとっくになくなってるってことさ。 「やれやれ」 そんなわけで、俺と長門、朝比奈さん、古泉の四人パーティで連日シャドウ狩りをやってるってわけだ。 シャドウに襲われた人間は廃人になるっていうが、実際に襲われてるヤツを見たことが無い。 どうやらこれも設定だけのようで、ま、ハルヒがそんなアホなことを望むわけもなし、その辺は心配はしてないんだがな。 だが俺たちはハルヒの本気ってのも分かってる。SOS団に手抜きは許されない。 俺たちが本気で戦ってやらなきゃ、恐らくハルヒも満足はしないだろう。 なので、俺は割りと一生懸命化け物退治にせいをだしていた。 おかげで毎日眠くてしょうがない。 他の連中には影時間なんてものは存在しないも同然だろうが、 俺たちは真夜中に数時間にわたって街中を疾走しなきゃならんわけで、 疲れるなというほうが無理がある。 「キョンってば眠そう。まさか夜遊びでもしてるんじゃないでしょうね」 「んなわけあるかい」 ハルヒめ、自分はぐーすか寝てるだけだからって勝手なことを言いやがって。 「ふーん。ならいいけどさ。勉強? 試験も近いしね」 ぐっ……忘れてた。もうすぐ試験じゃねーか。ぜんぜんやってねぇぞ、勉強なんて。 宇宙人組は余裕だろうが、朝比奈さんは大丈夫なんだろうか。古泉の心配はする必要もないだろうが。 「言っておくけど、SOS団の活動にそんなフラフラの状態で来たら張り倒すからね」 無茶言うな。いまから治せってか? 授業全て居眠りでこなせば、不可能じゃないだろうがな。 「なので、しばらくSOS団は休止。有希もみくるちゃんも古泉くんも辛そうだしさ」 ……まあ、ハルヒがいいなら別に構わんけどな。 「多少なりとも自覚があるのかもしれませんね」 ハルヒからSOS団休止宣言を聞いた古泉が、そんな分析をくれた。 「あのハルヒがそんなタマかよ。気まぐれだろ」 「そうかもしれませんね」 だから微笑ましい顔で見るな。気持ち悪い。 ともかくSOS団の活動が無いだけでも体力の消耗は抑えられる。 満月は明日だ、万全の調子で挑みたい。 「安心してください。満月前は疲労にはなりません。ここでレベル上げをしましょう」 なんだ疲労とかレベル上げってのは。そんな概念があったことに驚きだ。俺は何レベルなんだ。 「現在あなたのレベルは42。朝比奈みくるが44、古泉一樹が51。わたしは92」 一人だけ高っ!? 長門、何時の間にお前。 「メサイアが使える。さっきベルベッドルームに行って作ってきた」 もう何が何だか。 というわけで満月がやってきた。ボスとかいうのが出てくるはずだが―― 「まだ反応ありません」 喜緑さんはペルソナの力で街中にレーダー網を敷いている。シャドウの反応があれば即分かるはずだ。 俺たちはボスの出現に素早く対応できるよう、長門の部屋に集まって待機していた。 「いったいボスってのはどんなやつなんだ」 「分かりません」 想像してみる。今まで戦ってきたシャドウはみんな化け物じみていた。 とすると、ボスっていうくらいなんだから、とんでもない巨大な怪物とかだろうか。 「シャドウ反応――」 喜緑さんが微笑にやや緊張の色を浮かべて呟いた。 「ボスと思われる巨大なシャドウが出現しました」 「どこだ?」 「学校です――周囲にも多数のシャドウ反応。脅威度は低~中クラスですが、物凄い数です」 取り巻き付きかよ。まずいな。ボスにたどり着く前に消耗するのは避けたいところだが―― ハルヒは許しちゃくれないだろうな。しょうがねぇ、行くか。 「正面突破。だろ? ハルヒ」 学校の周りは凄まじい様相を呈していた。 とにかくザコシャドウの群れ、群れ、群れってやつだ。真っ黒い海にしか見えないね。 一つ一つを潰していたんじゃキリがない。 広範囲に影響を及ぼす魔法で片っ端から蹴散らして進むが、それでも気を抜くと押しつぶされそうになる。 「メギドラオン」 長門の魔法がシャドウの群れ300匹くらいを一気に吹き飛ばして、道を作る。 だがその道も少し進んだところで、他のシャドウに覆われてしまう。 そうやって少しずつ進んで、ようやく校舎の入り口に取り付いたところで、 「校舎の中はそれほど多くない」 喜緑さんからテレパシー通信を受け取った長門がそういった。 「外からの進入を防ぐ役が必要」 長門が玄関に仁王立ちになり、校舎に向かって進軍してくる津波のようなシャドウの群れを見据える。 「お、おい長門、そいつは……」 なんか死にキャラっぽい台詞だぞ。長門に限ってそんなことはないのだろうが。 「安心して」 長門が振り返らずに、 「わたしは死なない」 まあ――分かってるさ。死にはしない。絶対に。 だから長門、しんがりはまかせた。 ありがたくいかせてもらうぜ! 長門がほんのわずか頷いたことを確認し、俺と朝比奈さん、古泉は校舎の奥に向かった。 俺の愚者、朝比奈さんの星、古泉の魔術師のペルソナが、現れる敵を次々に吹き飛ばしていく。 「ボスの反応は部室棟の方から出ています。恐らく――文芸部」 喜緑さんのナビが頭の中に響く。 なるほどね、らしいじゃないか。 「ですが気をつけてください。その手前に強力なシャドウの反応が――」 言い終わる前に、そいつは目の前に現れていた。 巨大なダルマみたいなシャドウだ。かっこつけて剣なんかもってやがる。似合わないぜ、化け物め。 「キョンくん」 朝比奈さんが俺の前に出る。 「ここは僕たちに任せて、先に行ってください」 古泉まで。おいおい、なんだそれは。 「このシャドウには物理攻撃が通じません」 喜緑さんの分析に古泉が「だそうです」と頷く。 くそ。確かに俺のペルソナは物理攻撃主体だ。こいつ相手には役立たずもいいところだが。 「行ってください。すぐに追いつきます」 まったく、なんでこいつらはかっこつけなんだろうね。 これで俺一人でボスと対峙して、一方的にボコられてたらどうする気だろう。 とにかく古泉に言うことは一つだけだ。 朝比奈さんに傷一つつけてみろ、俺の怒りの鉄拳が飛ぶからな。 「努力しますよ」 古泉と朝比奈さんがペルソナを召喚し、激しい炎と風でシャドウを攻撃し始めた。 シャドウが二人がかりの魔法に身動きがとれずにいる隙を縫って、廊下の向こう側に駆け抜ける。 あの二人が負けるはずは無い。 俺は一路、ボスが待つであろうSOS団の部室に向かって走った。 部室棟の廊下にシャドウの姿は無かった。 どうやら俺が一人で来ることを見透かされていたというか、まるで誘われているみたいだな。 いいさ。乗ってやるとも。 俺は慎重な足取りで文芸部の前まで進み、中に確かに何者かの気配があることを感じながら、 思い切って扉を開けた。 さて、ボスってのはどんな化け物だ――と飛び込んで、 俺は呆然としてしまった。 後姿だ。だが見間違えるわけは無い。 そいつは窓から外を眺めて、一人、震えていた。 何が見える――って決まってる。シャドウの群れだ。もしかしたら派手に暴れている長門の姿が見えてるかもな。 そいつは俺が入ってきたことに驚いたのか、びくっと肩を震わせ、恐る恐る、ふり返った。 「……キョン?」 おい、なんで泣いてやがる。なんなんだこれは。なんのジョークだ。 シャドウのボスなんじゃないのか? なんでこいつがここにいる? それとも別人か? シャドウが化けてるのか? だが、俺がそいつを見間違えるなんてことはありえない。 いつも見ている。この部屋で、毎日顔を突き合わせてるんだ。別人と間違えるなどあろうはずがない。 だから俺には分かる。そいつは真性、まじりっけなしの本物だ。 「なにやってんだ――ハルヒ」 「わかんない……気づいたらここにいた」 ふるふると震えていたハルヒが、俺の胸に飛び込んできた。 ……おかしい。おかしいぞ。ハルヒがこんな乙女ちっくなことをするか? 「なんなのここ? あの黒いのは何? どうして有希が戦ってるの?」 「いや、それは……」 お前が望んだんじゃないのか? 口にでかかった言葉を飲み込む。ハルヒ自身は知らないことだ。 「前にも同じようなことあったよね。灰色の学校に二人で迷い込んでさ……」 ……閉鎖空間のことか。確かにあれはそう簡単に忘れられる経験じゃなかったな。 「でも、よかった。いつだってキョンはそばにいてくれるんだよね」 ぎゅ、と俺の服を掴んで、潤んだ瞳を俺を見上げてきやがった。 おいおい、これこそ冗談だろう。なんでハルヒがこんなことをしてるんだ? やっぱりこいつは偽者なんじゃないのか? 俺はシャドウの精神攻撃を受けているんだ、そうに違いない。 ……なんてな。 んなわけあるか。何度も言わせるなよ。俺にハルヒの本物と偽者の区別がつかないと思ってるのか? ああ、そうさ、こいつは間違いなく本物だ。理屈じゃないぜ。こちとら伊達でハルヒの暴挙に付き合ってるわけじゃないんでね。 「キョンがいてくれたら、あたしは平気よ。どんなことでも耐えられるわ」 そう訴えるハルヒの視線は、どこまでも無垢だ。 いや、いつものハルヒも無垢といえば無垢なんだろうが、その辺のニュアンスの違いは読み取ってくれ。 とにかくこのハルヒはヤバイな。 何がやばいって、今俺がなに考えてるか分かるか? とても文章にはできないぜ? しかし本当、どうしたもんだろうな。 シャドウのボスを倒せば終わりとかいう話だったのに、実際にいたのは大人しいハルヒでさ。 まさかハルヒを倒せなんて無茶なことを言うんじゃないだろうな。 いっておくが、俺はSOS団なんぞで下克上なんか狙っちゃいないぜ。ハルヒはいつまでも団長でいればいいのさ。 だからこのハルヒを倒せなんてことは言わないでくれよ。マジで頼むぜ。 「――それはそれで面白いかもね」 声は背後から聞こえてきた。 「……なぜお前がここにいる」 俺は怯えているハルヒを背後に庇い、そいつを睨みつけた。 いるはずのない人間だ。現実世界にも、ましてやこの影時間にも、だ。 だがそいつは――楽しそうに笑って俺たちを眺めている。自分の存在に何の疑問も抱いちゃいないようだ。 「なぜかしらね? 恐らく――涼宮ハルヒがいまだ解き明かせない謎だからじゃない? 心にわだかまっていたのかも」 カナダへ転校したって話か。ハルヒ的にはもうすっかり忘れちまったことだと思ってたがな。 「まあ、それはトリガーでしかないんだけどね。普通ならその程度であたしが現れることも無かったんだけど……」 朝倉が視線を窓の外に向ける。振り返らないぜ、そんなことをした瞬間に刺されるかもしれないからな。 「解説役をまかされちゃったみたいね。いいわ、請け負ってあげる」 誰に向かって言ってるのか、朝倉が肩をすくめた。 「人の心は一様ではないわ。必ず内側に相反する資質を備えている。一方では人を愛し、一方では憎む。それは人それぞれがもつ仮面」 ハルヒが俺の服の裾をきつく握り締めるのがわかった。 安心しろハルヒ、朝倉が何をしようが、俺が守ってやる。 「涼宮ハルヒとて例外ではないわ。外に向ける顔、内に抑えた顔、自分でも意識しない顔、いろいろな顔の涼宮ハルヒが存在する。 人はそのときの都合に合わせて顔を使い分けていける生き物だけど、それが不器用な人間もいる。そういった人が抱えていくものは、 とりあえず今はどうでもいいけれど――涼宮ハルヒだけは例外だった。なにしろ彼女には世界を作り変える力がある」 くすくす。何がおかしいのか、朝倉が笑ってやがる。 「その顕著な例が閉鎖空間。あれは――ダメね。統合思念体ですら介入が困難。けれどその発生も最近は抑えられている。 原因はあなた、でしょう?」 知るか。ハルヒが大人になってきただけだろ。それはそれで、いいことじゃないか。 「まあ、そういうことにしよっか。だけどね、さっきもいったけど心は一様じゃない。それでは抑えられない不満もあるのよ」 だろうな。だいたい閉鎖空間の発生は抑えられてるたって、こいつが暴走しっぱなしなのは変わってないんだから。 「涼宮さんが不満を持っても閉鎖空間が発生しないのは、信じるに足るものがひとつあるからね」 なんだそりゃ。 「でも彼女の中には、それを少し疑ってる彼女が存在する。彼女は無意識のうちに一つの擬似的な閉鎖空間を作り出してしまった」 ――ったく。もういい、朝倉。それ以上の説明は聞きたくない。 「答えが分かった?」 この影時間がハルヒの作った世界だってのはまあ、そんなもんだろうとは思っていたさ。 原因がハルヒの欲求不満だってのも、な。 その不満ってのが何に起因するのか――それだけが謎だったが――いや、本当は分かってたのかもな。 いまさら気づいたってわけでもないんだ。 ただそいつを認めるのは、ちょっと気恥ずかしいというかな、微妙な心理があるわけだ。 「ふふ。どうやら本当に分かったみたいね。意外と、朴念仁ってわけでもないんだ?」 そりゃあな。いくら俺でもわかるさ。自信過剰とか言うなよ? 「言わないわよ。でもま、そうね。あたしがボスの役を買ってあげてもいいわ」 そりゃどういう意味だよ。 「この世界を生み出したのはそこの女――涼宮ハルヒの仮面のひとつよ。 彼女を殺せば世界は元に戻る。ただし彼女の心の内の何かが壊れてしまうかもしれないわね。 けれどこのまま生かし続ければ、シャドウを無限に生み出し続けるのは間違いないわ。 ――さ、どうする?」 まったく、演出過剰なこったな。ごくろうさんだ。 無駄にもほどがあるがな。選べる選択肢が俺には一つしかないんだから。 俺は背中に隠していたハルヒの肩を掴んだ。 「ハルヒ、その、なんだ……」 ハルヒは――朝倉の話を理解したのだろうか、不安と期待の入り混じった複雑な顔で俺を見上げている。 「キョン……」 「不安だったか? お互いなんつーか、不器用だからな」 こくり、とハルヒは頷いた。素直、なんだろうなこういう反応も。 しょうがないな、俺も素直になってやるよ。光栄に思えよ、まったく。 「悪かったよ、ハルヒ。でもな、安心しろ。俺はいつだって、お前のこと好きで好きでしょうがないんだから」 ああ、いっちまったぜ。クールな俺さようなら。きっと後で後悔するのさ。いいさ、後悔してやる。 だからハルヒ、泣いてんだか笑ってんだかわかんない顔はやめてくれ。怖い。 「うん……あたしも、キョンが好き。ずっと好き。いつだって、キョンのことばっかり考えてる」 「そうかよ」 「相思相愛よね」 「ああ」 「じゃあ……」 ハルヒが目を閉じる。結局なんだ、これなんだろうな。いつだって白雪姫なのさ、この女は。 むろん――俺に不満などあるはずもない。 ハルヒに習い、俺も作法に則ってやったさ。 目を閉じて、柔らかくて暖かな感触を、前よりもずっと長い時間、俺は受け止め続けた。 で、気が付けば俺はいつかと同じようにベッドで寝転がっていたわけだ。 夢だったのか――って、んなわけはないか。今更過ぎる。 もっともハルヒは夢だと思ってんだろうな。そいつがちょっと残念な気もするが―― ああ、まあいいや。あんなこっ恥ずかしい思いは、ぜひハルヒ的には夢だったと思っててほしいね。 それじゃあ何も変わらんような気もするが……ま、そのうちな。 告白ぐらいは、俺のほうからしてやるから、もうちょっとだけ待ってろ。 とりあえず心宇宙人だなんだっつーキテレツな話の整理がつくくらいの余裕は、与えてくれよな。 「人間、やはり素直が一番のようですね」 その日の昼休み、古泉がにやにや笑いながら近づいてきた。 「ぜひともこちらの世界でも、素直でいてくれるとありがたいのですが」 俺はお前に素直になってもらいたいね。俺の見たところ、相当な数の仮面を隠してるようだがな。 「さて、どうでしょうね。案外僕が一番仮面をかぶっていないのかもしれませんよ?」 信じるわけは無いだろう。 「キョンく~んっ」 と、こちらは仮面など使い分けられようがない朝比奈さんがタックルを。 「心配しましたっ。シャドウを倒して、急いでキョンくんのところにいこうとしたんですけど、なぜか文芸部の部室が消えてたんです!」 朝倉の仕業か。いちおう感謝はするぜ。さすがに俺もハルヒとのキスシーンを見られるのは恥ずかしすぎるからな。 「……」 長門はいつもどおり、読書中だった。 夕べのことに関しては、特に感想は無いのだろう。 全て分かってたみたいだしな。あの朝倉は長門の仕込みもあったんだろうさ。 だが、こいつも仮面を隠してるってことがあるんだろうかね。俺も知らない長門の顔ってのをさ。 無表情を見てると、そんな誰にも教えない秘密の長門ってのがあってもいいような気がしてきたな。 いつか見せてくれる日がくるのやら。 それでハルヒだが、まあいつも通りの傍若無人で、本当に昨日のアレはハルヒだったのかとも疑ったものだが、 「しばらくSOS団活動を休んでたんだから、今日からバリバリ再開するわよ! 土日はもちろん市内の探索だからね!」 こうして振り回されてるほうがハルヒって感じでいいだろうさ。 だからま、ずっと笑っててくれ。泣いてるハルヒなんて胸に痛いだけだしな。 そうだな。 俺は初めて願うぜ、次の市内探索は是非ともハルヒと二人っきりのペアになれますように、ってな。 相思相愛なんだったら、きっちりかなえてくれよ、ハルヒ。そのとびっきりの笑顔で、さ。 「今度こそ世界の不思議を見つけるんだから! ――ねっ、キョン!」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/848.html
ここは文芸部部室こと我らがSOS団の溜まり場だ 朝比奈さんは今日もあられもない姿で奉仕活動に励み、長門は窓際の特等席で人を殺せそうな厚さのハードカバーを読んでいる。 俺はというと古泉と最近お気に入りのMTGを楽しんでいた――ちなみに俺のデッキは緑単の煙突主軸のコントロール、古泉は青単のリシャーダの海賊を主軸にしたコントロールだ――ここ最近は特に目立った動きもなく静かな毎日を送っていた。 ……少なくとも表面上は。だがな。 何故こんな言い回しをするかって?正直に言おう。オレ達は疲れていたんだ。ハルヒの我が侭に振り回される毎日に。 そりゃ最初のうちは楽しかったさ。宇宙人、未来人、超能力者と一緒になって事件を解決する。そんな夢物語のような日常になんだかんだ言いながらも俺は胸を踊らせたりもした。 だって、そうだろ?宇宙人と友達になれるだけでもすごいのに未来人や超能力者までもが現実に目の前に現れて俺を非現実な世界に連れていってくれるのだ。まさに子供の頃の夢を一辺に叶えたようなものだ。 これをつまらないと言う奴はよほど覚めた奴か本当の意味での大人くらいなものだろう。 そして俺は本当の意味での大人ではなかった。だからなんだかんだと文句を言いながらも心の底から楽しむことができたのだ。 では何故冒頭で否定的とも取れる意見述べたか?理由は単純、ハルヒの我が侭がオレ達のキャパシティを大きく上回ったことにある。 例えば閉鎖空間。SOS団を結成してからというものその発生回数は減ったもののその規模が通常のそれより遥かに大きくなったのだそうだ。 しかもその原因のほとんどが俺にあるというから責任を感じずにはいられないね。 そして俺に最も精神的苦痛を負わせた事件がある。それはこんな内容だった。 それは些細なことで始まったケンカだった。あの時は俺が折れるべきだったのだ。 悪いのはハルヒだからハルヒが謝るべき。 なんてつまらない意地を張らずにハルヒに土下座をして許しを請うべきだった。 しかしあの時の俺は強気だったしバカだった。 あろうことか俺はハルヒにお前が長門や朝比奈さんを少しは見習って女らしさというもをうんたらかんたらと説教を始めてしまった。 それがいけなかった。 前々から俺と長門の関係を怪しんでいたハルヒは激昂し、「なんでそこで有希が出てくるのよ!!」と怒鳴ると怒って帰ってしまったのである。 朝比奈さんはおろおろと怯え、長門は無表情だがどこか責めるような目線を送ってきた。 そしてこの件について一番の被害者になるであろう古泉はいつもの0円スマイルではなくまっこと珍しいことに真顔だった。 真顔の古泉が怖くて仕方なかった俺は古泉に平謝りしその日は解散となった。 明日ハルヒに謝ろう。そうすればまたいつも通りのSOS団が帰ってくるさ。俺はそんなことを考えていた。 だから翌日昼休みに消耗しきった古泉に呼び出されたことに少なからずも俺は動揺していた。古泉のあんな顔を見るのは始めてだった 「昨夜閉鎖空間が発生しました」 「そうだろうなあ…いや本当にお前には迷惑をかけた。すまんこの通りだ許しくれ!」 古泉は気にしてないと言わんばかりに微笑し淡々と話しを続けた。 「僕よりも涼宮さんに謝ってあげてください。なんせ昨夜の閉鎖空間の規模は今までの比ではなく我々《機関》だけでは対処できずに長門さんの勢力に協力してもらいやっとのことで鎮めることができたのですから」 古泉は淡々と話す――本当にすまん 「そして我々《機関》の中から始めての犠牲者もでました。あなたもご存知の新川さんが森さんをかばいが殉職しました。その森さんも背骨を折られ車椅子生活を余儀なくされました」 俺は絶句した。そりゃ人はいつか死ぬのだ。その事実は受け止めなければならない。 しかしこんなかたちで知人の不幸を知らされるとは夢にも思っていなかったからである。 真夏だというのに小刻みに震え、冗談だよなと言う俺を見て古泉は首を左右に振り否定。 また微笑し淡々と話し始める――なんでそんなにあっけらかんとしているんだよ…いっそのこと罵利雑言を浴びせ思いっきり殴ってくれ… 「僕は、僕達は別に貴方を責めているわけではありません。貴方はただ巻き込まれただけの一般人ですからね。ですが貴方の軽率な行動が簡単に僕達の命を刈り取ってしまう…この事実を忘れないでください。 では、後ほど」 そういって古泉は教室に戻っていった。 俺はというと食堂で昼食をとっていたハルヒに詰め寄り恥じも外聞も捨て泣きながら土下座した。 この時ばかりは周りの視線が気にならなかった。それくらい俺は焦っていたんだ。 とまあ、こんなことがありしばらく俺は古泉よろしくハルヒのイエスマンに成り下がっていたのだがこれにもちょっとしたエピソードがある。 なんでもかんでもはいはい肯定する俺にハルヒが不満を持ったのである。本当に難儀なあ、奴だこいつは… 古泉曰く俺は否定的立場を取りつつも最後にはハルヒを受け入れる性格でないといけないらしい。つまり新川事変(朝比奈さん命名)以前の俺だな。 新川事変以来ハルヒにビビっていた俺には無茶な注文だったがまた下手に刺激して閉鎖空間を発生されても困るので努めて俺は昔の俺を演じることにした。 おかげで自分を欺く術に異様にたけてしまった。全く嬉しくないネガティブな特技である。 ついでなので俺の肉体に最も苦痛を与えたエピソードもお話ししよう。 その日はいつものように文芸部部室で暇を持て余していた俺は古泉指導のもと演技力に磨きをかけていた。 そこに無遠慮なまでにバッスィィィィィン!!とドアを蹴破り現れたのは我らが団長涼宮ハルヒその人である。 ハルヒは何か悪巧みを思いついた時に見せる向日葵の様な笑顔――俺にはラフレシアの様な笑顔に見えたのは秘密だ――で開口一番 「アメフト大会に出るわよ!」 と、宣った。せめてビーチフットにしていただきたかったぜ。 大会はいつなんだ?という問いに満面の笑みで 「明後日よ!!」 と答えるハルヒ。まったくこいつは…… 「無理だ。アメフトのルールは野球とは違って複雑だぜ?」最初は否定的立場にいながら―― 「大丈夫よ!図書室でルールブック借りてきたしいざとなったらあんたの友達の中川くんに助っ人になってもらえばいいわ!!」 俺はハルヒの持ってきたルールブックにいちべつし、軽いため息を吐くと 「“中河”だ。わかった…中河には俺から連絡しておくさ」 ――最終的にハルヒの我が侭を受け入れる。どうだ?完璧な演技だろ?アハハハハっ、よし、今日も古泉にレキソタンわけてもらおう。 以外と効くんだ。アレ。 中河にアポを取り、快く承諾してくれた中河に感謝しつつ決戦当日である。 ちなみにハルヒが借りてきたルールブックとはアイシールド●1である。 いっそ事故かなんかで死んでくんないかなあ、あいつ。 試合内容は散々たるものだった。 相手チームが原因不明の腹痛を訴え棄権したり交通事故で棄権したり実家が燃えて人数が足りないチームと戦い、とうとう決勝戦である。 彼らには悪いがこちとら世界の命運がかかっている。多少の犠牲はつきものと割り切って試合に挑もと思う。 ここでとりあえず我がチームの選手とポジションを紹介する。 まずはラインの谷口、国木田、コンピ研部長、ランの俺とハルヒ、クォーターバックの長門、なんでも屋の古泉、その他雑用の鶴屋さん、朝比奈さんに妹 そしてリードバッグ(ボール持った奴を守るポジションらしい)の経験者中河だ。 これで優勝を狙ってるんだから正気の沙汰じゃない。本当に志しなかばで散っていった方々のご冥福を祈る。 いい加減まともに試合が出来ていないことにハルヒがイライラしてきたのでこの試合は小細工無しの真っ向勝負だ。 オレ達は経験者中河の指示にしたがい順調に点差を広げられていった。 ちなみに中河の提出した作戦は「いのちをだいじに」だ。 さすがの中河もまさか女子供と混じってアメフトをするとは夢にも思わなかったのであろう。 いろんな意味でアップアップだ。 そんな時に限って古泉の携帯が鳴り、長門は空を睨み、朝比奈さんは耳を澄ましてやがる。あぁ、忌々しい…
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/525.html
俺は、ハルヒの事が好きだが、告白するなんぞ出来ない…… 何故なら、俺はツンデレだと自覚している。 それなのに、いつものように生活している…… 「涼宮ハルヒの憂鬱キョンとハルヒの絆」 今の季節は夏、俺は今、学校へ行ってる所である。 谷口「よぅ!キョン!」 声掛けるな、暑苦しい 谷口「何言ってんだ?クールな口調になってるぞ」 なってない、なってない 場所変わって、教室 入ると、ハルヒがいる かなり暇なようだ 「よぅ」 ハルヒ「あ、キョン、放課後ミーティングあるからね、遅れないように!」 「はいはい」 と、言う時に岡部が来た 放課後、俺はいそいそとSOS団部室へ行った。 入る前にノックして入るのが俺のルールだ みくる「は~い、どうぞ」 我らアイドル、朝比奈みくるの声である。 う~ん、可愛い声ですね! 入ると、朝比奈さんと古泉と長門……そして、ハルヒがいた。 古泉「こんにちは」 長門「……(ゴクリ」 みくる「こんにちは、キョン君」 ハルヒ「遅い!ミーティングするわよ!」 やれやれ……挨拶無しですか、ハルヒさん いつものようにミーティングをやり、終わった。 そして、長門が本閉じた時が帰る時間になるのだ。 帰ろうと思ったのだが…… ハルヒによって呼び出された。 ハルヒ「キョン、あんたは残って……話したい事あるの」と言われた。 このまま、帰ったら死刑にされるから仕方なく了解した。 今、部室には俺とハルヒだけだ 「……」 ハルヒ「……」 「……」 ハルヒ「…ねぇ、キョン」 「何だよ」 ハルヒ「…あたしの事どう思ってるの?」 「?俺がハルヒの事どう思ってるかってか?」 ハルヒ「…うん」 唐突過ぎて呆然してしまった。 俺が、ハルヒの事どう思ってるのかって? ハルヒ「……」 「……」 ハルヒ「……」 長い沈黙である。何分経ったが分からないぐらいだった……そして、俺は沈黙を破った 「…最初は変な奴かと思った」 ハルヒ「!?」 「しかし、俺は、お前と一緒にいると楽しいと分かった」 ハルヒ「……キョン」仕方ない、ここで告白しようか……言うんだ!俺よ! 「……ハルヒ、俺はお前の事……」 キィィィィ…… な、何だ!?この耳鳴りは!? ???「やっと、見つけたね」 この声……まさか!? ???「やっと、見つけたね」 「お前はまさか……」そう、俺を2回襲い、殺そうとした………それが 「朝倉涼子!」 朝倉「当たり、流石、キョン君ね…私の事を覚えてるなんで」 「何で…何でこんな所にいるんだ!」 朝倉「私は、キョン君と涼宮さんに会いたかったの」 ハルヒ「朝倉さん、あんた、カナダへ行ったんじゃあ……」 朝倉「お久しぶり、涼宮さん……残念だけど、カナダ行ってないし……それに」 と、部室が異空間に変わった。 朝倉「私は普通の人じゃないわ」 「!?」 おぃおぃ、マジか? 朝倉がナイフ取り出したぞ…… ハルヒ「あ、朝倉さん……」 ハルヒは、呆然してるな… ま、仕方ないだろ?誰でも信じたくない出来事で呆然するのは当たり前… じゃなくで、こういう状況はどうすんだ……気付いてくれよ、長門! 朝倉「ふふふ……どうするの?」 くっ、逃げるしかないか…… おぃ、ハル…… ハルヒ「これは、どういう事?ねぇ、キョン!」 ちっ、ハルヒが混乱に陥ってるな… 「ハルヒ!逃げるぞ!」 ハルヒ「キョン!」 俺は、ハルヒの手を捕まって部室から逃げた。 とにかく、稼ぐんだ!時間を稼ぐんだ!長門! 朝倉「逃がしはしないわ」 逃げる、逃げる、とにかく逃げる…… …おかしい、階段が見当たらんぞ……これがエンドレス廊下かぃ! 笑えないな 朝倉「そう、笑えないわ」 いつの間に!? 朝倉「今度こそ、あなたを殺して、ハルヒを目覚めて貰うわ」 くっ、ここでゲームオーバーか! 朝倉「死になさい」 朝倉のナイフを俺の方へ投げる… ???「……させはしない」 この声は! 「長門!」 長門「…遅れてゴメン」 朝倉「ふふふ、まだ現れたね、有希」 長門「あなたは、私が消したはず」 朝倉「私は諦めない主義なんでね」 長門「あなたは、前より強くなった」 前より強くなった!?と言う事は、前のようには出来ないって事か!? 長門「…そう」 冗談じゃねぇ!と言う事は、この異世界から脱出するしかないのかよ! 長門「…そう」 朝倉「脱出しても無駄、私が追っかけるわ」 長門「…一つ出来る事ある」 「それは、何だ?」 長門が言ったのは、次の事である。 朝倉を無へ帰る事 つまり朝倉と闇に包まれた世界へ行けってか…… 「で、それはまだなのか?」 長門「……もう完了した」 なるほど、長門ってなかなかの策士だ。 長門「出口を開ける」 と、長門が呪文を唱えて、何も無い空間から出口が現れた。 「行くぞ、ハルヒ」 ハルヒ「う、うん」 ハルヒを出口まで連れて行く時に、突然、キョンは腕を捕まれた 朝倉「させない」 キョン「な、放せ!」朝倉「暴れても無駄よ」 ハルヒ「キョン!」 くっ…………仕方ない… 「ハルヒ!長門!出口まで走れ!行くんだ!」 ハルヒ「で、でも!」「行くんだ!」 ハルヒ「……分かった、行こ、有希!」 と、ハルヒは、長門を連れて走った… そう、それでいい… 朝倉「何をする気?」「お前を、道連れしてやる!」 朝倉「ま、まさか!?」 周りの空間が闇に染まって来る ハルヒ「キョン!何してるの、早く!」 ハルヒ、長門…脱出したな… 長門「…キョン」 寂しがるな、長門… ハルヒ「キョン!ねぇ!」 ハルヒ…今までありがとな… 「っ!ハルヒ!お前は、俺の……」 ハルヒ「キョーンッ!」 ――恋人だ 異世界の扉が閉ざされ、元の部屋に変わった。 そして、キョンは行方不明に… キョンが消えた… あたしが好きだったキョンが消えた… 「有希!キョン救えるでしょ!」 長門「…救える確率は低い」 「そ、そんな!?」 長門「彼の事は、病気という理由しておく」 「……」 長門「…ゴメン、ゴメンなさい」 「!ゆ、有希…」 泣いてる…あんな無感情だった有希が無いてる 「あ、あんたは悪くないのよ…有希、いいの、自分で責めないで…」 長門「うん…でも、ゴメンなさい」 「いいの!二人で救う事だけ考えようよ……うっ、ううっ…」 長門「……」 お互い、抱き合って泣いた…神はあたし達を見守ってるだろうか… 次の日 岡部「えー、●●●は病気で欠席だ」 クラス一同「エェーーッ!?」 ……キョン キョンの机… キョンの置き勉… …キョン 「よぉ!」 「映画、成功しよう!」 「やれやれ…」 「SOS団の事頼むぜ」 「俺、実は…ポニーテール萌えなんだ」 「ハルヒ、それ似合ってるぞ」 「ハルヒ、ハルヒ、ハルヒ……」 会いたい、キョンに会いたい… 阪中「どうしたの?ハルヒさん……泣いてるの?」 え、泣いてる? あたしが泣いてる…… 会いたい、キョンに… 授業が終わり、放課後になり ハルヒは部室へ行き、古泉やみくるに昨日の事を伝えた。 みくる「そ、そんな…キョン君が…」 古泉「キョンさんが行方不明に…」 二人も驚いてた。仕方ない事だったのよね…いえ、仕方なくない! 長門「ゴメンなさい」 「有希は悪くないのよ、全て…あの子が悪いのよ」 長門「……」 あたしは、信じてる…キョンは今どこにいるかを! それに… 「古泉君、みくるちゃん…あんた達は、やっぱり…」 古泉「…気付いてたのですか?」 みくる「そうです、私は未来人です」 そっか…有希が宇宙人だとすれば、この人達は…と思ってたけど… あの時、キョンが必死に言ってたのはこれだったのね… 「…古泉君、みくるちゃん、有希、あたしは何者なの?」 みくる「あなたは…時間を変える能力あります」 長門「こっちは、三年前…情報を爆発させたのは…あなた」 古泉「しかし、我々…『機関』では、あなたの事を「神」だと思ってる者がいます」 つまり、あたしは何者がはっきりしてないって事ね 古泉「恐らく、そうなります」 ん?と、言う事は 「あの時…そう、キョンとあたしがいた空間はもしかして?」 古泉「空間?巨人がいっぱい出て来た空間の方ですか?」 「うん、そう」 古泉「あれは、「閉鎖空間」と言われる空間なんですよ。あなたのイライラで発生した空間です… あの巨人は「神人」と呼ばれる者なのです。アレは、あなたの不機嫌で出来た者達…あなたは夢だと思ってますが、違います。」 「え!?じゃあ…アレは…夢じゃないって事?」 古泉「えぇ、そうなります」 な、ちょ…え!?うそ!?あのキスはゆ、夢じゃないの!? 古泉「何があったか知りませんか、夢ではなく現実です。あなたの不機嫌が爆発したら…ここは無くなる可能性あります」 え?あたしの不機嫌で世界が無くなる? 「それは、世界崩壊って事なの?」 古泉「…はい」 そんな!あたしは知らないまま生きてたと言う事なの… みくる「涼宮さん、あなたは知らないまま生きて欲しいと望んで来ました…まさか、この時に告白するとは思いませんでした …すみません」 「みくるちゃん…いいの、あたしは気にしてないわ」 長門「私はあなたを守る」 「ありがとう、有希…ありがとね…」 と言いながら、あたしは、ふと、窓の方へ見た… 橙色で染まってて美しかった。 キョン、今どこにいるの… ???「うっ…こは、ど…だ…さ…い…みん…会い…い…ハ……ハル……ルヒーっ!!」 ハッ!? …ゆ、夢か… あれから、一ヵ月後…あたしは元気になって通っている。 でも、家では元気じゃない… 泣いた日だってある… 「んー?何だったのかしら?あの夢…」 時々、声が途切れて、何で言ってるのか分からなかった… なのに、どこが…懐かしい感じがしたわ… 何だったのかしら? SOS団室 「やっほー、みくるちゃん!お茶!」 みくる「は、はい…ちょっと待って下さいね」 みくるちゃんのメイド姿を見ると、嫌な夢忘れられるわ… 古泉「こんにちはー、おや?ハルヒさん、今日も大丈夫ですね」 「あったり前よ!それに比べて、キョンなんか…あ…」 古泉「…すみません」 みくる「…お茶置いときますね」 「あ、うん…」 そっか、今はキョンいないんだ…あたしって、まだ思ってるんだな… 「……キョン…」 まだだ、あたしって弱くなったな…キョンがいたら、きっと笑ってしまうよね 長門「……」 古泉「おや?長門さん、顔色が悪いですよ…大丈夫ですか?」 長門「う、うん…」 みくる「本当に大丈夫なんですか?」 長門「大丈夫」 と言って、立ち上がった。 古泉「おや、帰るんですか?」 長門「…(ゴクリ」 と、有希は歩き出した途端 「…ぁ…」 ドサッ! 有希が倒れた… 「!…有希っ!有希!有希!」 みくる「有希さん!」 古泉「保険室へ行きましょう!」 保険室 「有希、どうしたのかしら?」 みくる「そうですね…」 シャッ カーテンを開く音だ。 古泉「先生から聞きましたが…長門さんは、寝不足に疲労が溜まってたんですよ」 「寝不足と…」 みくる「疲労?」 古泉「えぇ、そうです」 「な、何で…有希が?」 古泉「…ハルヒさん、心当たりありますか?」 心当たり?……まさか… 「ずっと、キョンを探してたの?」 古泉「……」 みくる「……」 有希…有希も、まだキョンの事を… 「有希…何で、何で…あたし達と相談しなかったのよ…ズルイわよ!あたしは、団長なんだからね!…うっ、うっううっ…」 みくる「ハルヒさん…」 古泉「……」 有希は、今も寝てる…優しい天使の様に …よし、決めた! 「皆!よく聞いて!」 古泉「はい?」 みくる「何ですか?」 「あたし達と一緒にキョンを探そう!きっと、どこかにいるわ!」 みくる「涼宮さん…」 古泉「これは、良い決心ですね…僕も探しましょう」 「皆、頑張ろうね!」 長門「私は…まだ諦めてない…私も探す」 と、有希は起きてた 「有希!ちゃんと寝ないとダメよ!」 長門「大丈夫…時間を早くした…もう平気」 有希… みくる「行きましょ!」 みくるちゃん… 古泉「僕も一生懸命、探しますよ」 古泉君… ???「ハルヒっ!」 「!…え?」 周りを見ると誰もいない… どういう事?あ! (???「ここは、どこだ…寒い…皆に会いたい…ハルヒ、ハルヒ、ハルヒーっ!」) あの夢、まさか…キョン!? 皆に、夢の事を話すと 古泉「夢の中にキョンさんか?」 みくる「まさか、キョン君は…今、そこにさ迷ってるって事?」 「かもしれないわ…キョンは多分…」 長門「その可能性ある」 古泉「……」 みくる「……」 「…有希、何とか出来ないの?」 長門「ある」 古泉「え?それは…まさか?」 みくる「どういう事ですか?」 「古泉君、何か分かったの?」 古泉「…閉鎖空間へ行き、欠けた場所あれば…そこが異空間の入り口です」 欠けた場所? 「はい、例えば…そこに壁があるとすれば、閉鎖空間では壁では無くなってる…と言う事です」 つまり、あった物が無いとすれば、そこが異空間への入り口って事ね 「で、どうやって行けるの?」 古泉「ご安心を、僕の出番ですから」 古泉「ここでいいでしょう」 ここは、校庭…何でこんな所に? 「って、ここで何か出来るの?」 古泉「はい…その前に、あなたに言いたい事あります」 「何?」 古泉「僕とみくるさんに、長門さんは行けません…何故なら、あの空間はあなたの物ですからね」 「……」 古泉「一人で探せますか?」 「探せるに決まってるでしょ!」 古泉「そう聞いて、安心しましたよ…さぁ、目を瞑ってください」 目を瞑る?取りあえず、言われた通りにやるしかないわね… 古泉「失礼ですか、手を貸しますよ?」 「うん」 一歩、二歩、三歩… 古泉「目を開けて下さい」 ……ここは、閉鎖空間ね 古泉「後は、頑張って下さいね」 と言い、古泉君は消えた… …さて、キョンはどこにいるのかしら 一年五組の教室… 保健室… 食堂… トイレ… 屋上… 体育館… 色々、探したけど…見つからなかった… 「ふー…ここにも無いわね…と言う事は…SOS団室だけか…」 SOS団室のある校舎へ行き、階段に登り、到着した。 ここなら…見つかるはず…お願い! と、あたしは思いながら開けた… 何にも無い… 「う、うそでしょ…どこにも無いわよ…」 ん?何か…何か変ね… ロッカー…コスプレ服…盤ゲーム…お茶入れ…ヤカン… あ、PCが無い… 「どういう事?」 よく調べると…PCがあった机の向こうに入り口あった… 「入り口から見れば無かったのに…後ろにあったなんで…」 そう、そこが異空間への入り口… 何だが、怖い…怖くで行けないよ…キョン…あたしは本当は気が弱いのよ…キョン… 「うっ…ううっ、ひっ…怖いよぉ…」 カダンッ! 「ひっ!……な、何?」 周りを見ると、床に何か落ちてた… 「…これは…」 よく見れば、キョンの鞄だった… キョンが行方不明になって以来、鞄をおばさんや妹ちゃんに返してなかったっけ… キョン… 「ん?鞄の下に何かある…」 と、鞄の下にある物を取って見ると… 一冊のノートだった… 「何で、こんな物か?…日記?」 ノートの表面にデカデカと「日記」と書かれてあった… とにかく、開いて見る ○月○日 変わった女がクラスにいた。そいつの名は涼宮ハルヒ。 しかし、可愛かったな…ポニーテールすれば物凄く可愛いよな ○月○日 ちょっと話し掛けてみた…すぐに終わっちまった… まったくよ、こんな可愛い子がいるのに勿体無くね? ○月○日 ハルヒを観察したら、分かった…こいつ、曜日ごとに髪型を変えてるな…うむ、面白い ○月○日 SOS団か…まぁ、仕方ないか… 間違った方向へ行かなきゃいいんだがね… キョン…こんな事を日記書いてたの? ○月○日 夢を見た…ハルヒとキスする夢を…うわぁ、恥ずかしい!フロイト先生が笑ってしまうぐらい恥ずかしい… でも、味が良かったな… キョン…嬉しかったの? キョン… 最後まで読もう… ふー…次のページへ行くかな… ベラ・・・ 「ん?これは…最近の」 ふと、手が止まった… ○月○日 ハルヒを見て思った…ハルヒは確かに可愛い。 怒る顔も可愛かった…だけど、ハルヒと一緒にいるだけで楽しい… だから、俺はつい嬉しくなる…ハルヒはハルヒらしく行動してくれると俺は安心する… めちゃくちゃな行動をするハルヒが好きだ。気が強いハルヒも好きだ。 俺は、素直に「好きだ」と言えない…それでも、愛してる… ハルヒ、気付いてくれるのだろうか… キョン…あたしの事をそう思ってたの!? 「キ、キョン…あぁ、会いたい!会いたいよ!…気が強いハルヒが好き?…でも、あたしは…本当は、気が弱いのよ!」 あたしは、泣いた…物凄く泣いた…会いたくでも気が弱いまま… (キョン「ハルヒ、お前は!俺の……」) !? (――恋人だ) キョンは、こう言ってたわ…あたしを恋人してくれたんだ…あたしは、頑張るよ!いつまでも気が弱いままじゃダメだよね…キョン、待ってて!) と、あたしは異空間へ入った。 暗い… 上と下が分からない… 寒い… キョン…どこにいるの… フワッ! あたしがいた暗かった異空間が、いきなり明るくなった。 「な、何なの?」 ここは、あたしが通ってた東中… そして、今いるのは、校門の辺り… 「…!!」 「……!」 校庭の辺りに声が聞こえる… あたしは、そこへ行って見た 「あ、あれは」 そう、あたしが見たのは…中学校頃のあたしと…ジョン・スミスだった。 どうやら、線引きをやってる最中だった。 どうやら、線引きが終わったようだ 「ねぇ、あんた。宇宙人、いると思う?」 「いるんじゃねーの」 「じゃあ、未来人は?」 「まあ、いてもおかしくはないな」 「超能力者なら?」 「配り歩くほどいるだろうよ」 「異世界人は?」 「それはまだ知り合ってないな」 「ふーん」 あの男…確か… 「ま、いっか」 「それ北高の制服だよね」 「まあな」 「あんた、名前は?」 「ジョン・スミス」 ジョン・スミス!?ジョン・スミス…まさか…キョン? そうか、キョンは3年前へ行ったんだ… キョン…あたしの知ってるジョン・スミスだったんだ… その後、昔のあたしとジョン・スミスが去った後、校庭へ行った。 そっか、これを書いたのは…キョンだったんだ… ありがとう、キョン… と、その時にあたしの後ろから光が放った。 「え?」 あたしは、振り向いた その光が人の姿に変わった…そして、光が消えた。 「え?あ…」 目の前にいた…あたしの会いたい人がいた… キョン「久しぶりだな、ハルヒ」 ハルヒ「キョン!」 あたしは思わずキョンへ駆け寄り、抱き付いた… 「会いたかったよ!キョン!」 キョン「スマンな、心配掛けて…」 いいの…キョンがいたから、謝らなくでいいの! 「キョン…」 キョン「…ここは、3年前の七夕だな」 「うん」 キョン「さっき、気付いたんだろ」 「うん!」 キョン「……」 ハルヒ「……」 お互い見つめ合ったまま、動かない… キョン「ハルヒ、ただいま」 ハルヒ「おかえり、キョン」 ???「あら?いい雰囲気ね」 !?あの人が来た!?学校の屋上? と、二人は学校の屋上を見る キョン「いい加減しろ…朝倉涼子!」 朝倉「あら、張り切ってるね?キョン君」 いきなり、キョンサイドへ切り替わりまーす! 朝倉「ふふふふ…どうするの?」 ハルヒ「キョン…」 あぁ、大丈夫だ!ハルヒ、俺が守ってやるさ 「朝倉!俺は思い出したぞ」 朝倉「何を?」 「長門から聞いた事ある。この異空間は自分の意思で物を変えれると聞いた! だが、それも条件あるんだろ?」 朝倉「あら、有希ってお喋りね」 「その条件はここの異空間とはピッタリらしいな?しかも、この異空間はコンピュータ世界だろ?」 朝倉「で、それがどうしたの?まさか、物を出すとか?」 「大当たりだ。普通の人でも出せるらしいよな?だったら!」 俺がイメージした通りに物が現れた…それは銃だった。 それを取って、素早く構えた。 「もぅ、お前の思い通りはさせねぇ!そして、お前を撃つ!」 朝倉「!?」 「……」 朝倉「ふふふふ、あーっはははは…この私に何か出来るというの?」 朝倉「ふふふふ…行くよ!」 と、朝倉の手からナイフが出て来た。 「くっ!」 銃で防御する俺 ハルヒ「キョン!」 「ハルヒ!お前は隠れてろ!」 ハルヒ「う、うん」 キン! 朝倉「ハルヒを逃してどうするのよ?キョン君!」 キン! 「ハルヒは俺が守る!朝倉、お前がやってる事は間違ってる!」 キンキン! 朝倉「それがどうしたのよ!私が間違ってる?それは無いわ」 キンッ! 鍔迫り合いする両者 「それは、お前のエゴだって…分かってるのか?」 朝倉「さぁ?分からないわ」 「ふざけんな!」 と、俺は弾き返した 朝倉「私は、ふざけてないわよ?」 朝倉「あなたがいる世界はつまんないでしょ?」 「つまらくはない、むしろ、楽しいさ」 朝倉「あら?我慢してるの?」 「…俺は、ハルヒがいる世界が好きだ…だが、お前が思うような世界は欲しくない」 朝倉「あら、ハルヒ、ハルヒって言うけど、そんなに好きなの?」 と、朝倉は「やれやれ」のボースをしてる。 「確かに、好きだ…あいつは気が強くでも、本当は気が弱いところがある…それでも守りたい…」 朝倉「ふーん…」 「ハルヒはハルヒだ、お前の思うようにはさせない!」 朝倉「でも、もう遅いよね…どの道、あなたが死ぬのだから」 「それはどうかな?」 朝倉「え?影?まさか!?」 朝倉は、月の方へ振り向いた 「遅かったな……長門!」 そう、月を背景して現れた 長門「情報結合の解除を申請する」 と長門が言うと、朝倉のナイフが消えた 朝倉「そ、そんなバカな…」 説明しよう!キョンは戦略を考えていたのである! 銃を出した後、長門の事を思い浮びながら戦ったと言う事だ! 時が来たら、それを実行したのがキョンの策…流石、策士は伊達じゃないぜ! 朝倉「くっ…」 朝倉は、少しよろめく 「朝倉!お前の負けだ!」 と、銃を構えた 朝倉「くっ!これが私の負けなのね…」 「朝倉!これで…終わりだぁっ!」 と、銃の引き金を引く バァン… 朝倉「あぁ…私の…ま…けね…」 朝倉は涙の泣かしながら、結晶化になり…消えた。 「…長門、ありがとな」 長門「…(ゴクリ」 …さて、ハルヒの所へ行くか… キョン…あんたの想いは分かったよ… あたしの想い…キョンの想いは繋がってたんだね… キョン「ハルヒ!」 「キョン!…戦いは終わったの?」 キョン「あぁ、終わったよ」 「……」 あれ?何で有希がここに? 長門「私は、ここから出る…後は、あなた期待」 と言って、消えた。 あぁ、CGが何かのプログラムかな? キョン「…ハルヒ、ここで言わせて貰う」 「何?キョン」 俺の想い…まだ変わってない…今なら言える! 「ハルヒ、お前の事好きだ!付き合ってくれ!」 キョンの想い…確かに受け取ったよ…あたしの想い受け取って… 「あたしも好きだよ!あんたじゃないと…ダメなんだからね…」 ハルヒ、確かにお前の想いは受け取ったよ… 「ありがとう、ハルヒ」 ハルヒ「こっちもありがとう、キョン」 「ねぇ、キョン」 「ん?何だ?ハルヒ」 「キ、キスしてくれない?」 「…あぁ、するよ」 と、お互いの唇が重なる ハルヒは可愛い。 キョンは優しい。 何かあろうと守ってみせる。 何かあっても守りたい。 そして、俺は…それぞれの想いを今、一つになる。 そして、あたしは…それぞれの想いを今、一つになるよ。 俺は、あたしは、愛されるより愛したい。 そして、生きて行きたい。 ――永遠に エピローグ あれから、一週間後…あたしは元気に通ってる。 キョンに会いたいから楽しみに通ってる。 俺は、ハルヒに会うため楽しみに通ってる。 色々あったけど…これで、恋人同士になるな… 「おぅ、ハルヒ」 「あ、キョン」 俺は守りたい奴がいるから… あたしは会いたい人がいるから… 「おはよう!」 「おはよう!」 俺たちは あたしたちは 強い絆を結ばれているから 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1429.html
ハルヒVS朝倉 激突 1話 ハルヒVS朝倉 激突 2話
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6531.html
涼宮ハルヒの遡及Ⅷ 「あの波動に飲み込まれる前にテレポテーションを発動させて難を逃れたってこと。さっきも言ったけど、あたしの防御結界術を全部、打ち破ってきたわ。なら避けるしかないじゃない」 場所はあの巨人竜から距離を置き、茂みと木々に囲まれた、昼間だったはずなのだがやけに薄暗い森の中だ。 「今は冷静に振り返っていますけど、あの場面では随分、焦った顔をしておられたようですが?」 「はいはい。気まずくて強がるしかできない気持ちは分からないでもないけど、あたしに当たらないように」 む…… 「くすっ、それにしてもあなたの取り乱す姿というものはなかなか見ものでしたよ。僕が落ち着いているということは、涼宮さんの感知ができていた、という意味であるのに、それにまったく気付かなかったんですから」 「ですよね。あたしと長門さんも前から見てましたけど、あんなキョンくんは初めて見ました」 「興味深い」 「……」 こらハルヒ! 何でお前まで黙り込むんだよ! 「う、うるさい!」 叫んでそっぽを向くハルヒ。ううむ。なんとも場の空気が辛い。 などと思うのは勿論俺とハルヒだけなのだろうが、これ何て羞恥プレイ? 「とまあ、いつまでも悠長に話しているわけにはいきませんので、とりあえずあの巨人竜を何とかしなくてはなりません」 先ほどまでの温かいものを見る微笑みから、きりっとしまった、しかし場の雰囲気をあまり重いものにしないために浮かべる笑顔の古泉が切り出して、 「対策は一つしかない。あの巨大爬虫類の回復速度以上のエネルギーを炸裂させて屠ること」 長門があっさりと結論を言ってくる。 「あのぉ……このまま、ここに隠れてやり過ごす、という手は……?」 いいですね、それ。俺もその方が、 「何言ってんの。あいつを倒さないとラスボスに辿り着けない設定だとしたら避けて通れるわけないじゃない。とと、で、実際のところはどうなの? ハルヒさん」 朝比奈さんと俺の意見をあっさり切り捨てるアクリルさんがハルヒに問いかける。 「あ、うん。そりゃ、ラスボス前に中ボスを全部倒さなきゃいけないのは当然の展開だしね。あいつも例外じゃないわ」 「だ、そうよ」 「はぅ……」 だろうと思ったけどさ。だが、どうやって? アクリルさんに全長二十メートルを呑み込むような攻撃魔法ってあるんですか? 「ん~~~無いこともないけど……今は使えないし……あたしにはあいつの攻撃を防ぐくらいしかできないような……」 うわ、あのアクリルさんが珍しく困った顔してるし。 「『今は使えない』とはどういう意味でしょうか?」 問いかけてきたのは古泉だ。 「いえ、『今は使えない』ということは、条件さえ満たせば使用できるということですよね? その条件は?」 「あたしと同じ原理で魔法を使える人がもう一人ほしいってこと。ナガトさんの設定は魔法使いみたいだけど、彼女が使う魔法とあたしが使う魔法は性質が違う。だから今は使えない」 なるほどな。俺を元の世界に戻してくれた時に使用した融合させることで相乗効果を生み出す、確か『フュージョンマジック』ってやつを発動させれば、って意味か。 「よく覚えていたわね」 俺の答えにアクリルさんが目を丸くしていらっしゃる。 ふっ、俺はこう見えても勉学に関すること以外の記憶力なら、誰にも負けるつもりはないからな。 「それ、自慢になんないから」 呆れた声でハルヒがツッコミを入れた。 ズシィ……ン―― もちろん幻聴な訳がない。まだ結構遠いが、巨大な足音は確実に的確に俺たちに近づきつつある状況だ。 ん? 「融合させることで相乗効果を生み出す」? 「なあハルヒ」 それは俺の思いつきだった。 この世界はハルヒは自分が作り上げたことを知っている。 そして、俺が妙な力を振るったところを、あの時の鏡の中から見ていたはずだ。 「お前にはこの世界がお前が作り上げたものだ、ってことは言ったよな」 俺のその一言に、古泉と朝比奈さんの表情に緊張が走ったように見えたのは、とりあえず無視。 「聞いたわよ。でも、別に他の世界を存亡の危機に立たせている訳じゃないから気にするな、だったわよね?」 「ああ、そうだ。で、『お前が創り上げた』ってどういう意味かは理解できるか?」 「分からないわよ。何が言いたいの?」 「ああ、なるほど」 気づいたのは古泉だ。というか随分と白々しい気がするが。 「つまり、あなたはこの世界が涼宮さんの願望を現実化している世界だと言いたいのですね」 「えっ?」 「そういうことになりますよ。なぜなら世界を創り上げる、ということは思いのままにできる、ということになりますから。誰しも『自分の世界観』は持っているでしょうけど、それを具現化できるのは、正真正銘『世界を創造する』存在にしかできません」 おいおい古泉、なんかこれ幸いに、お前は今まで黙っていたことを吐きだすように喋ってないか? 「そして、この世界は涼宮さんが望むすべての存在が既に登場しています。『未来から来た』戦うウエイトレス・ミクル、『宇宙から地球を侵略に来た』悪の魔法使い・ユキ、そしてミクルをサポートし手助けする『超能力者』のイツキ、しかも、文化祭の映画の時は登場してませんが『異世界人』でありますさくらさんがいます」 「あ……!」 ああ、そうだな。確かにハルヒが望んだ宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がここにいる。つか、もうハルヒは知ってることなんだが、何で今更、そんなに驚く必要があるんだ? 「そういう意味ではありません。『実際にいたではなく』、この世界では涼宮さんが『創り上げたからいる』のです。おっと、さくらさんは違いますが」 ズシィィ……ン―― ……あんまり長く話している余裕はないぞ? 「では手短に」 どこか名残惜しそうな苦笑を浮かべる古泉。 「要するに、この世界では涼宮さんが考えたことが具現化している、ということです。そもそも我々の置かれた状況が退屈な日常ではありません。涼宮さんの望む非現実世界です」 「てことはさ! ひょっとして、ゲーム作りした時のアレが発動するってこと!? 確かキョンはゲームの時の力が使えたしね!」 お? どうやらハルヒも気づいたようだ。 そうさ。エンドレスゲームクリエイトの中で完成したゲームの中の一つに『SOS大戦』というものがあって、最後の大技は……まあどんな姿をしていたかはとりあえず触れずに……HP65535でしかも1ターンごとに完全回復するラスボスを一撃で倒せたんだ。 アレなら、あの巨人竜を倒せるかもしれん。いや倒せるのだろう。 ……って! な、なんだ!? いきなり古泉が俺を掴んで、アクリルさんがハルヒを抱えて、長門が朝比奈さんを背負って三方に飛び退くって! ――!! と同時に、今の今まで俺たちが居た場所を漆黒の火柱が空気を震わせ地響きを立てながら薙いでゆく! ……射程距離に入った!? 「そのようですね。見てください」 「んな!?」 古泉が手を差し伸べる方向を見てみれば、森の木々が吹き飛び完全に開けてしまっている。漆黒の波動にやられた黒焦げの地面が幅広くやけに痛々しい。 そして、その眼前にはもうはっきりと見えるし、向こうからも俺たちが見えたことだろう。 明らかにその視線は俺たちを捉えて離さない。 どうやら逃げも隠れもできなくなったようだな……つか、逃げるわけにもいかんらしいが…… 「あたしがあいつの攻撃を抑えるわ。その間にやっちゃってちょうだい」 アクリルさんが静かに呟いて、唯一人、歩みを進め、俺たちと、巨人竜のちょうど中間に佇んだ。 ……俺たちを、というかハルヒの言葉を信じた……? などと俺が思っていると、 「さあキョン、行くわよ! この世界ならあんたにもたった一つだけ特殊能力が発動するから!」 ハルヒが弾けんばかりの笑顔で俺を呼ぶ。 そうだな、ハルヒが創り出した世界で、ハルヒの想像が現実化するんだ。 俺はハルヒの右横、間に長門を挟む形の場所に移動する。 そして、 「世界の平和を守るため」と俺から見て一番向こうの古泉が切り出して、 「この世界に住むみんなのため」とその隣の朝比奈さんが続き、 「まだ見ぬ未来をつかむため」と俺の隣にいる長門が呟く。 あーひょっとして、これはあの時の決め台詞ってやつか? となれば、俺も言わなきゃならんだろう。恥ずかしいなんて言ってる場合じゃない。 ……言わないとハルヒのやる気が削がれる可能性があるし、それは絶対にやばい。 「お前を倒して俺たちが勝つ!」 俺が叫ぶと同時に、眼前のアクリルさんが紅蓮の炎に包まれて、両手を頭上で組んでいる。そして、その組んだ手を中心に彼女を取り巻く炎が竜巻となってうねりを上げる! が、アクリルさんはアクリルさんのやることをやってもらおう! 「よおし! みんな、あたしに力を貸して!」 ハルヒもお構いなしに、しかし好戦的で勝利を確信した笑みを浮かべて声を張り上げた! 刹那、ハルヒも含めた俺たち四人から色とりどりのオーラが溢れ返ってくる! 「了解した」 「アレをやりますか」 「はい、やりましょう!」 「ああ、ぶちかましてやれ!」 「行くわよ! SOS団の最終奥儀! 真! 超級グレートカイザーイナヅマジャイアントSOSアタック!」 俺たちの原色オーラがハルヒの手のひらを翳す右手に一つの光輝く球体となって形を成してゆく! それを見定めた巨人竜が俺たちに脅威を感じたのか! 凶悪な牙をぎらつかせすべてを飲み込むかのような口を開け、その奥には漆黒の渦巻きが時折雷鳴を纏わりつかせて見えている! だが、それがどうした! 「あんたの相手はこのあたしよ!」 そうさ! 俺たちには異世界からの最強の助っ人がいるんだ! アクリルさんが組んだ両手を勢いよく振り下ろし、その拳を巨人竜へと向けた! ほぼ同時に巨人竜の漆黒の炎が発射! 「メギドドラゴニックブレス!」 しかし、アクリルさんからも彼女を覆っていた炎の竜巻が、まるで野獣の雄叫びをあげるか如く、紅蓮の竜となって漆黒の炎を迎撃する! 一人と一匹の、ちょうど中間で激突し、周り中に余波を振り乱しながら互角のぶつかり合いを演じてやがる! 今――! おそらく俺たち五人の考えたことは同じのはずだ! 「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 気合一閃! ハルヒが吼えて、足を高くあげ、つま先が光の効果を放った時、かなりの勢いでエネルギー球を巨人竜に向けて投げつける! もちろん、巨竜はアクリルさんの紅蓮竜とせめぎ合っているので、こっちの球にまで迎撃の手段がとれるわけがない! 結果、球が着弾すると同時に一瞬にして巨竜を光が覆い、その光がそのまま巨竜を飲み込んで、収縮と供に巨竜は断末魔の雄叫びすら上げることなく消失したのであった! 勝利の余韻に浸ることしばし。 「……で、何やってんの?」 へ? 「えと……決めポーズ?」 アクリルさんが左手を腰に当てて、俺たちを苦笑交じりに見つめながら聞いてくる。 はっ! 俺はようやく、自分がどんなポーズでいるのかに気づいたのである。 何と言うか…… おお、そうだ。ハレ晴れダンスの締めのポーズ、と言えば一番分かりやすいかもな。 涼宮ハルヒの遡及Ⅸ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5164.html
「涼宮ハルヒの歓喜~サンタが町にやって来た~」の続編です。 12月25日。今日が本当のクリスマスだ。 しかし、町は気の早いもので華やかな装飾は剥がされ始め、 次は正月へと向けて彩りを変えている。 学校も明日から冬休みに入る為、終業式という事で学校に来たのだが、 「う~…」 どうやら俺はサンタのトナカイ探しやらパーティーの後の一件で 雪の降る真冬に外をウロウロ歩き回ったせいで 少し風邪を引いてしまったらしい。 しんどい…咳が止まらない…休めば良かったかも。 しかし、熱っぽいのはそれだけが理由ではないだろう。 クリスマスが終わったというのに俺は未だに浮かれ気分が抜けない。 昨日の夜は結局、眠れずじまいだった。 一晩中、落ち着かなくてモソモソと動いていた。 とうとうやっちまった…俺はとうとうやっちまったのだ…あのハルヒに… いきなりあんな事やるなんてあの時の俺はどうかしちまってたのか!? いきなりハルヒに抱きついて、今でも思い出すと 恥ずかしくて顔が真っ赤になりそうな台詞吐いて、 手を繋いで…やばい、また熱が出てきた。 その後、結局ハルヒを家に送り届けるまでの道で 2人共、照れと恥ずかしさでお互いまともに顔を見る事も 言葉を交わす事さえも出来なかった。 別れ際の「おやすみ」が精一杯だった。 俺はどんな顔してりゃ良いんだ? ハルヒはどんな顔して後ろの席に座るのだろうか? 緊張してきた…やっぱり今日は学校休めば良かったかも。 昨日の夜は全っ然、眠れなかったわ…。 どんな顔して学校行けば良いのよ? 普通に「おはよう」とか言って席に着けば良いかしら? でも、それだと何にもなかったみたいに受け流す冷たい嫌な女だわ… かと言って今更、可愛い子ぶりっ子なんて出来ないし!したくもないし! あぁ!!もう!!こんなの中学までで散々慣れてたはずなのに! なんでキョン如きにこの私がここまで悩まなされきゃいけないのよ! 雑用係のくせにいきなり団長様を抱き締めてくるとか反則よ! キャラ崩壊の危機だわ! とりあえず、今日は早めに学校行って絶対、キョンより先に席に着かなきゃ。 やっぱり何事も最初が肝心なのよ! イニシアチブは常に私が握っておかないと! 「あいつ…なんでもう教室にいるのよ!!」 早いわ!早過ぎるわよ!だってまだ7時半前よ! 全校生徒のほとんどがまだ来てないし、絶対に私が一番乗りだと思ってたのに! 教室に二人っきりなんて余っ計に気まずい空間じゃないのよ! 仕方が無いわ、とりあえず時間稼ぎに部室棟に…あっ…… 突然、教室の扉が開き、キョンと目が合った。目の前に立っている。 「おぅ…」 2人共、突然の事に驚いて固まっていたかと思うと咄嗟に視線を逸らした。 「あの、その、何だ……」 「……な、何よ?」 黙ってないで何か言いなさいよ! 「い、いや…お、おはよう…」 「おはよう…」 「…ちょっとトイレに行ってくる!」 キョンは廊下に出てトイレの方へと歩いて行った。 びっくりしたぁ~…何でいきなり出てくんのよ!?バカキョン!! びっくりしたぁ~…何で突然目の前に現れるんだよ!?ハルヒ!! でも、これで予想外とはいえ何とか挨拶は出来た。 これで少しは落ち着いて行ける!(はず…) 教室に戻るとハルヒはこちらに背を向けて窓の外の遠くの方を眺めている。 配置から考えるに俺の方から声を掛けないと行けない状況のようだ。 くそっ、やられた…せっかく朝に弱い俺が頑張って早くから学校に来て ポジションを先取してたのにトイレに行ったせいで攻守交代だ…。 席に座って待っているとキョンが戻ってきた。 やっぱりまだ恥ずかしくて顔を見る事が出来ない。 わざとらしいかなと思いつつ、頬杖をつきながら 窓の外の空から降ってくる雪を見ていた。 「今日は早いんだな」 あんたのせいよ! 「ま、まぁね…終業式だし、一年の最後くらいはきっちり締めたいじゃない!? あんたこそ、早いわね!」 「あぁ、そうだな…」 なんて可愛くない返事しか出来ないのよ!私! 2人しかいない朝の静かな教室に気まずい沈黙が流れる…… 突然、キョンが咳き込んだ。 「あんた、風邪引いてんの?」 「あぁ、ちょっとな」 「うつさないでよね、別に今日くらい家で寝ときなさいよ! どうなっても知らないわよ!」 違うわよ!私の馬鹿!そんな言い方無いでしょうが! 「いや、今日だけは何があってもちゃんと学校来たかったから」 え? 「いや、その…あの…昨日のあれ、な……」 そこまで言ってキョンは顔を逸らし、会話が途切れた。 「まさか、あんた、あんな事しといて冗談でしたとか言うつもり!?」 そんなのマジ、許さないわよ…。 「いや!違う!あれだ…それは何というか…逆だ…」 「逆?」 「昨日のあれな…あれ、本気だから。 それだけはメールや電話じゃなくて今日、ちゃんと直接会って言いたかったんだ。 そうしないとお前に怒られそうだからな」 「あ、ありがと…」 と、言うハルヒの俯きながら見せた、はにかんだ笑顔はすこぶる可愛く 熱に浮かれた頭と理性は吹っ飛びそうだった。 「なぁ、ハルヒ…」 「な、何?」 ハルヒは顔を上げ見開いた目をこちらへ向けている。 「今日、終業式出るか?」 「え?」 「いや、通知表も貰ったし、今日やる事って終業式くらいだろ? 学校サボって抜け出さないか?」 ハルヒが俺を無理矢理連れ出す事は何回もあったが、 俺からハルヒを引っ張り出すのは初めてのような気がする。 「サボってどうすんのよ?」 「なんか今日はハルヒと2人だけでいたい気分なんだ」 昨日の夜から何度もシミュレーションしてきたとは言え、 実際、口に出すと我ながらなんてキザな台詞だ… 「私は別に良いけど…でも、あんた風邪引いてるんでしょ!? こんな寒いのに外に出るなんて無茶したら…」 そういうハルヒの手と鞄を俺は有無を言わさず取り上げ、歩き出した。 「ちょっとキョン!どこ行くのよ!?」 そんなの決めちゃいない。 「今日は…デ、デートだ!!」 やっぱり今日の俺は相当、熱がある。暴走気味だ。 俺達は2人で何回、この坂道を行き来したのであろう? まだ生徒の数も片手で数えられるほどにしかいない坂道は雪で凍っていた。 足を滑らせないよう一歩ずつ踏みしめながら歩く。 ハルヒと2人で歩くなんて散々慣れていた事なのに今日はいつもと違う。 俺が前を歩き、ハルヒの手を引いている。 心臓が脈打ち、ただ一緒に歩いているだけで素直に嬉しい。 坂を下った所でハルヒが足を止めた。 「キョン!これからどうするのよ!?」 確かにここまで来ちまったが、さて、どうしよっかな? 「まだ何も決めてないが…」 そういうとハルヒは溜息をついて呆れたような顔をしている。 「あんた、本当に計画性のかけらも無いわね!」 お前にだけは言われたくない! ハルヒは鞄から昨日、俺があげた手袋を取り出し、はめていた。 「ほら!あんた、風邪引いてるんでしょうが!」 と、ハルヒは俺の鞄を無理矢理あさり、 昨日ハルヒから貰ったマフラーを取り出して俺の首を思いっきり締めてきた。 「く、苦しい、息が出来ないって!」 「いい気味よ!キョン如きが私に命令するなんて100万年早いの!だから罰よ!」 と、言うハルヒは俺に太陽のような笑顔を向けていた。 2人でこの道を横に並んで歩いていこう。 どっちが前でも後でもなく、2人並んで手を繋ぎ。 横を向けばあなたの顔が見える場所。 ここは他の誰にも譲りたくない指定席。 あなたの目が、鼻が、耳が、頬が、髪の毛が誰より近く見える場所――― ただ、雪の中を2人で手を繋いで歩いていた。 どこへ行くか、とか何をどうするかなんて目的がある訳じゃない。 ただ、俺はハルヒと一緒にいたかっただけ。誰にも邪魔されずに。 「ねぇ、キョン」 ハルヒはボーッとした顔で訊ねてきた。 「ん?なんだ?」 「あんたバスって乗った事ある?」 なんだそりゃ? 「そりゃあるに決まってんだろ」 「じゃあ、あのバスってどこまで行くか知ってる?」 ハルヒが指差す先には停留所に白いバスが止まっていた。 「さぁ?マニアじゃないから知らんな」 「じゃあ、乗ってみましょう!どこに向かうか探検よ!」 そんなハルヒの子供じみた思いつきはいつもの事だから驚きはしない。 むしろ、外は寒いからバスで移動するっていうのは悪い手じゃないな。 バスに乗ると朝にも関わらず誰も乗っていなかった。 人が集まる場所とは反対方向に走っているからだろう。 「空いてるな」 どこに座るかと考える間もなく、ハルヒは一番奥へとズンズン進んで行く。 「やっぱりバスは一番奥の席に限るわね!」 と、やたら嬉しそうな笑顔をしてドカッと座り込んだ。 「まぁ、奥は席が広いからな」 「あと、乗ってる人間全部が見渡せるのが良いのよね! この世の支配者~!って感じで!」 いや、それは意味が分からん…。 バスはゆっくりと音を立て雪の中を走り始めた。 揺れる度に隣に座るハルヒの細い肩がぶつかる。 バスが静かに動きを緩めて止まった。 停留所で誰かを乗せるようだ。 「さぁ、どんな面白い人が乗ってくるかしら?」 別に普通の利用客だと思うがな。 バスに乗ってきたのは老夫婦だった。ゆっくりと歩を進めている。 二人とも身体のどこかが悪いのだろうか? お互いがお互いを支え合うよう、補い合うようにこちらへと歩いてくる。 おじいさんの方が俺達に話し掛けてきた。 「おや?珍しい。この時間に人が乗ってるとはの」 「こちらどうぞ」 ハルヒは立ち上がって席を譲ろうとした。 「ありがとう。どう?一緒に座りましょうよ」 おばあさんは柔和な笑顔で俺達に促してきた。 「うちのばあさん、一番後ろの席が好きでな。 広いから夫婦で座っても誰か他の人とも一緒に座れるからって。 それが好きなんじゃよ」 俺達は席を詰め、おじいさんは優しく笑いながらおばあさんをそっと座らせた。 バスは再び、ゆっくりと走り始めた。 「君らのその制服、北高じゃろ?」 おじいさんは俺達に視線を向けている。 「はい」 礼儀正しいハルヒは久し振りに見た気がする。 おばあさんが笑いかけてきた。 「と言う事は終業式をサボって2人でデートね?」 「これ、ばあさん!」 見事にバレた…色々言われたら面倒だな。と考えた俺を見透かしたようだ。 「ふふ…大丈夫よ。私達も高校生の時にお互い授業や式を抜け出ししたものよ、 昔は見つかると大変だったけど」 おばあさんは昔を懐かしむように笑っている。 「このバスに乗っておるという事は港に行くんじゃな?」 港? 「終点じゃよ。最近は港にデートへ行くのが増えておるらしいからの。 よくある、そこで結ばれたら一生結ばれるだなんだの言う話じゃよ」 「私達の頃は何もなかったから2人でいるのに都合が良くて 港へ行ってたけど、時代は変わってるのね」 2人は笑っている。 「あそこで初めて結ばれた2人っちゅうのは恐らく儂らの事じゃよ」 「またその話ですか、おじいさん。いつも言ってるんですよ、この人」 恐らく、その噂や伝説を広めたのがこの2人なんだろう。 まぁ、生き証人が目の前にいる訳で嘘はついてないから文句も言えないが。 「喧嘩もいっぱいしたし、一生結ばれるなんてそんな可愛いものじゃないけど それはそれで悪くはない、楽しいものよ」 2人の幸せそうな笑顔を見ていると納得せざるを得ない。 「じゃあ、儂らはここで。席を譲ってくれてありがとう」 おじいさんは俺に意味ありげな視線を投げ掛けてきた。なんだ? 2人はバスを降りて行った。 「ああいう夫婦って良いよな…」 俺は何気なくぽつりと思った事を口に出しただけだったのだが… 「なっ、何言ってんのよ!?バッカじゃないの!?」 何故かハルヒは真っ赤になって怒り出した。 「でも、まぁ面白そうね!キョン!港に行きましょう!」 おいおい、まさかあんな伝説を信じた訳じゃないだろな? 「そういう伝説は見過ごせないわ!何かあるかもしれないじゃない! 不思議探索よ!ねっ!」 まぁ、時間を潰すには最適か、俺が引っ張り出した事もあるしな。 ハルヒがこんなにご機嫌になるなら断る理由も無い。 メールが来た。ハルヒと2人同時に終業式をサボったから また谷口あたりがからかいのメールでも寄越したんだろう。 無視だ、無視。 バスは静かに終点へ滑り込んで行った。 終業式も終わり、部室に足を運んでみると長門有紀の姿しか見えなかった。 「おや?長門さんだけですか?皆さんはどうされました?」 「朝比菜みくるは先程来室し、すぐに立ち去って行った。あとの2人は不明」 そうですか…彼と昨日サンタクロースに貰ったゲームをやりたいと 思っていたのですが、いないのでは仕方がありませんね。 「では、僕もここでしばらく時間でも潰しましょう」 港に着いて歩いてみると綺麗に舗装はされてあるが平日と言う事もあり、 誰も人がいないようだった。 きっと夜景が綺麗になる時間に人が集まって来るのだろう。 時折吹く強い潮風がハルヒの髪を巻き上げる。 「うぅ~…寒いわね!!」 何に対して怒ってるんだ? 雪が海に散りばめられる宝石のように落ちては消えていく。 「まぁ、景色としてはなかなかのものね!とりあえず合格にしといたげるわ!」 またハルヒは訳の分からない事を言っている。 寒さのせいで鼻水が出てきた…。 「汚いわね!!ほら、これ使いなさいよ!!」 ハルヒは鞄の中からポケットティッシュを出してきた。 「ありがと、これ貰って良いか?」 「好きにしなさい!!」 さっきから笑ったり怒ったり忙しい奴だ。 そういうハルヒを見てるのは面白いんだけどな。 「何、ニヤニヤしてんのよ!?気持ち悪いわね!!」 「ん~?いや、コロコロと表情が変わるから面白い奴だなぁ~と思って」 俺は今、意地悪な笑い顔になってるに違いない。 「う、うるさいわね!!」 ハハ…今度は真っ赤になって照れてる。本当に面白い、そして… 「…可愛いな」 お、今度は驚いて目を見開いている。 「バ、バ、バッカじゃないの!?あんた何!? さっきから私の事、馬鹿にしてんの!?あんまり調子に乗ってると…」 ―――!!! ハルヒのよく動く唇を塞いだ。 町の喧噪は消え、静かに降る雪も動きを止めた。 風の音だけが遠くで聴こえる。 時間が止まったかのようだった。 「……ちょっと調子に乗り過ぎたからまた罰金かな?」 「本当に調子に乗り過ぎよ…馬鹿…」 ハルヒは俺の手を握り締めたまま俯いている。 「もうちょっと雰囲気とかタイミングってもんがあるでしょうが… 本当にデリカシー無いわね、バカキョン…」 「ハハ…すまん。あと俺、風邪引いてるのすっかり忘れてた…ハルヒにうつるかもな」 ハルヒが抱きついてきた。 「もし風邪引いたら責任取りなさいよね…」 「そうだな、分かった。」 この笑顔をずっと守っていこう…俺はそう誓って 昨日よりも、もっと強くハルヒを抱き締めた。 「あと、ハルヒ……」 「……何よ?」 「お前の唇って柔らかくて暖かいな」 鞄で思いっきり殴られた。 新しく手に入れたボードゲームの説明書を読みながらゲームの研究をしていた。 彼にはかなり大きく負け越してしまってますからどうにかして 勝ちを積み重ねていかないと卒業までに逆転するのは難しそうです。 彼は僕の予想ではきっと人類史上、類い稀なるゲームの達人、 恐らく天才なのではないかと考えています。 まぁ、彼以外とはあまりゲームをやる事はないのですが…。 そういう意味では彼も涼宮さんに選ばれた特異なる人間の一人なのでしょうか? そんな事を考えていると携帯が鳴った。どうやらメールが来たようです。 機関から?閉鎖空間発生?彼らはどこへ行ったのでしょうか? また彼は凉宮さんに何かしでかしたのでしょうか? 「長門さん」 長門有紀は何かを察知しているのか、もうすでに僕の方へ視線を向けていた。 「もし彼らが来たら伝えておいて下さい。急なバイトが入ってしまいました、と」 「…了解した」 ハルヒは照れているのか俺の顔を全く見てくれない。 と言う俺も心臓が破裂しそうなのだが…。 気が付いたらお昼を過ぎていた。どおりで腹が減る訳だ。 どこかで昼飯でもと思ったが、終業式も終わってる時間だろうし、 途中で何か買って部室で食べようと言う事になった。 学校へ戻る為、バスが来るのを待つ停留所は寒い。 缶コーヒーを買って2人で手を暖め合った。 バスに乗るとハルヒはまた一番奥の席へとズンズン進んで行った。 よっぽど一番奥の席が好きなんだな…。 この時間帯は乗客もまばらで俺達の他には数人しか乗っていない。 ハルヒは俺の手の上に細く長い指を絡ませている。 車内は暖房が効いていて暖かい。 エンジンの心地良いリズムと揺れも相まってハルヒは眠気が襲ってきたのであろう。 俺の肩に頭を乗っけて眠りこけている。 子供のような寝顔だ。 かくいう俺も少し眠くなってきた…。 俺も少し居眠りしようかと考えた、その矢先だった。 大きな音と衝撃と共に目の前が雪化粧に包まれたように真っ白になった――― 大きな音と衝撃で目を覚ますとどっちが上か下か分からくなっていた。 キョンが私に覆い被さってきている。 「ちょっとキョン!いくら何でも調子に乗り過ぎよ! バスの中で私の寝込みを襲うなんて変態にもほどがあるわよ、エロキョン!」 キョンの体を突き飛ばそうとした。しかし、キョンからの返事はなかった。 「キョン……キョン?」 私の肩にキョンの腕がただ力なくぶらりと垂れ下がっていた。 ふと手に暖かい感触が残る。 血だった。 キョンが頭から血を流していた。 「嘘…いや…」 私はキョンにしがみついていた。 「嘘でしょ…冗談でしょ…やめてよ、キョン…ねぇ、キョン…」 自然と涙が込み上げてきた。人前でなんか泣いた事ないのに…。 「キョン!!!キョン!!!いやぁぁああ!!!!!!!!!!!」 私はありったけの大声で彼に向かって叫んだ――― 長門さんからのメールを見てズキンと胸に何かが刺さるような感触がして重くなった。 私が病院に向かうと彼らの家族、そして彼らのクラスメイトの何人かがいた。 キョン君の妹さんはキョン君の名前を呼びながら泣いている。 その中に長門さんと鶴家さんが静かに立っていた。 「みくる…」 鶴家さんは目を赤く腫らしていた。 事の詳細を訊ねると雪道でスリップした大型トレーラーが 彼らの乗っていたバスに突っ込み、バスが横転してしまったらしい。 その時にキョン君は頭をぶつけ、意識が無く現在、手術中だと言う事だ。 凉宮さんは精密検査を受けているらしい。 凉宮さんはキョン君が咄嗟に体を投げ出し、覆い被さったお陰で ほとんど無傷だったようだ。 精密検査を終えて出てきた凉宮さんはずっと 泣きながらキョン君の名前を叫んでいた。 凉宮さんの叫びが責められているようで胸に強く深く突き刺さる。 キョン君の手術は長引いた末に終わったようだ。 まだ意識は戻らず予断を許さない状態で集中治療室にいる。 私は…私には… 「ねぇ、キョンは…キョンはどうなったの?ねぇ、教えて!!」 私はひたすらに病院の廊下でそればかり叫んでいた。 それ以外に何も関心は無かった。 手術は終わったとは聞いた。でも、その後は誰も何も言わない。 キョンのご両親と医者がこちらへと歩いてきた。 お母さんの方が声を掛けてきた。 「あなたがハルヒさん?」 「はい、彼に……一目だけでも良いので彼に会わせて下さい!!」 キョンのご両親は医者の方へちらりと視線をやり、医者が頷いた。 「あなたも事故にあったのにこんな事頼むのもあれなんだけど 行ってあげてくれないかしら?」 キョンは眠っていた。 顔に傷も無いせいだろう、本当に眠っているようにしか見えなかった。 私は彼の手をそっと握った。 きっと私が無傷だったのはキョンが体を張って守ってくれたからだろう。 「ありがとう、キョン」 涙が溢れてきた――― その時だった。私の手をキョンの手がそっと包んできた。 キョンの目が静かに開く。 「キョン…キョン!!」 状況が掴めてないのかキョンは虚ろな目をしている。 「キョン!!」 こちらに視線を向けてきた。 「ハルヒ……」 私の涙がキョンの手に落ちた。 「ハルヒ、無事だったんだな……」 「…馬鹿。なんでこんな時まであんたは…人の心配する前に自分の心配しなさいよね」 私は無理して笑った。 「だ、団長命令よ…早く元気になりなさい… SOS団の活動はまだまだいっぱいあるんだから… それに…これからは…一緒に…2人で…」 私は声を出そうと思ったが、涙に遮られた。 「ハルヒ…」 「…何よ?」 「実は昨日の夜の…ドキドキであまり寝てないんだ……」 「…うん」 「だから、ちょっと寝かせくれないか…」 「…うん」 「…そんなに泣くなよ、笑ってるハルヒの方が俺は好きだぞ」 「…うん」 「おやすみ……ハルヒ…」 「おやすみ……キョン…」 2人は柔らかく、暖かく、そっと唇を重ねた……。 それは永遠よりも遥かに長い長い…一瞬の出来事だった―――― 私は…私には…止められなかった…。 分かっていても止める事は出来ないし、 止めてはいけない事だとも十分、承知していた…。 覚悟はしていた。でも…我慢出来ず、最後に一目だけでも会いたくて キョン君にメールをした…返事は来なかった…後悔だけが残る…。 自分の無力さに…そして皆で過ごした日々に…。 あれから三日後。 キョン君の葬儀を終えた私と長門さんは彼女の、凉宮さんの元へと向かった。 小泉君はあれ以来、姿を見せていない。 凉宮さんはキョン君の死が受け入れられず、まだ病院にいる。 治療室から運び出される時も彼の手を離すまいとしがみついていた。 凉宮さんの病室の前まで辿り着いたものの、なんと声を掛けようかなどと 入るのを躊躇っていると、声を掛けられた。 彼にいつもの笑顔はなく、暗く沈んだ顔をしている。 「小泉君……」 「先程、彼に会いに行ってきました。何というか…まだ実感が湧きませんね…」 「…私もです、小泉君はもう大丈夫なんですか…」 彼は寂しそうに首を横に振った。 「もはや世界は僕らの手の届かない状態になりつつあります。 大きく改変される事になるかもしれません。 機関の人間も様子を見守るしか出来なくなってしまいました…」 彼は彼なりにここ数日、大変だったのだろう。 キョン君や凉宮さんの事に思いを馳せつつ…。 「先程、彼のご両親からこれを預かってきました」 と、小泉君は封筒を取り出した。 「凉宮さんへの預かり物です。彼のノートに挟んであったようです」 僕ら3人で病室に入ると凉宮さんは重く暗く沈み、 ベッドの脇にある椅子に座って空を虚ろな目で眺めていた。 どうやら僕らの声は届かないらしい。 「これは彼から凉宮さんにあてた手紙のようです。ここに置いておきます」 窓際に封筒を置いて僕らは立ち去った。 凉宮さんに掛ける言葉も思い付かなかったからだ…。 凉宮さんの病室の前のベンチに座ると朝比菜みくるが静かに泣き出した。 「朝比菜さんは…」 誰もいない暗い病院の廊下に僕らの声が響き渡る。 「…この事実についてご存知だったんですか?」 朝比菜みくるは何も答えずにただ黙って頷いた。 「そうですか…だからクリスマスにサンタクロースが空を飛んでいる姿を 皆で見ようと提案なさったんですね…」 「…せめてこんな形になるとは言え、最後に皆で想い出を残したかったんです。 …私はこの出来事を見届ける為だけにこの時代に送られたと言っても 過言ではありません。それほど今回の事は未来においても重大な事なんです」 「…彼を助ける事は出来なかったんですか?」 言葉に出して酷い事を聞いてしまったと後悔した…。 助けられるものなら助けていただろう。その時、長門有紀が口を開いた。 「…これは彼の寿命。どういう形であれ、今年12月25日時点での彼の死は 確定していた。変更する事は不可能。例え、それは凉宮ハルヒの力をもってしても。 それはあなた達が一番よく理解しているはず」 これは長門有紀なりの僕らへの慰めの言葉なのだろう…。 「はい…今回の事は…未来では……き、規定……」 「朝比菜さん…」 僕は首を横に振り、彼女の言葉を遮った。 「少なくとも、僕らSOS団の人間にとって…… 彼の死は……決して、規定事項なんかじゃありません。決して……」 「……そう」 長門有紀は静かに頷いた。 12.24 ハルヒへ いきなり柄にも無く、手紙を書いてみようと思う。 何故なら、興奮して眠れないからだ! お前はどうなんだろうか?ハルヒ。 全く気にもせずに涎垂らしたアホ面で眠っているのだろうか? しかし自分自身でも不思議なんだ。 正直、お前に初めて出会った時は見た目はまぁ、悪くはないが、 頭の中身がぶっ飛んだおかしな女だとしか思っていなかった! 髪型も短くする前は時々、変だったしな。 それが新しく部活作るから手伝えってネクタイ引っ張られて階段の踊り場に 連れて行かれた時はカツアゲでもされてるような気分だった。 しかもSOS団なんて世の中の不思議を探す為とかいう妙な目的の元、 珍奇な集団を作って、俺は巻き込まれた感たっぷり。 でも、今は楽しい! 長門や朝比菜さん(まぁ、仕方が無いから小泉も入れといてやろう)、そしてハルヒ。 団長のお前がいてこそのSOS団だ。 お前がいるから楽しいし、面白いから俺もついつい部室に足を運んじまう。 最初は朝比菜さんと一緒にバニーガールの衣装で SOS団の勧誘ビラ配りしたり、(まぁ、あれはあれで悪くはなかったが…) コンピュータ研から無理矢理パソコン取り上げたり、 何の知識も無い俺にHPを立ち上げろと命令してきたり、 なんて無茶苦茶な奴なんだと呆れてばかりいた。 でも、考えたらハルヒと一緒にいる時はいつも笑える楽しい事ばかりだ。 皆で不思議探索をするのもなかなか見つからないが悪くはないし、 七夕に一緒に短冊作ったり 夏休みに孤島に合宿行ったり(夏休みは結局、ほとんどSOS団の皆で遊んでたし) 学園祭の為にSOS団の皆で映画作ったり(大喧嘩もしたが…) クリスマスには何故か鍋パーティーが恒例になったり、 雪山で遭難なんて事もあったな。 サンタが空を飛ぶなんていう不思議な事にもようやく巡り会えたし、 お前と過ごしているうちに俺のハルヒへの想いも少しずつ変わってきたんだろうな。 次は初詣か?俺の願い事はもう決まってるが教えないぞ。 人に教えたら願いが叶わないからな。 とにかく、これからももっと楽しいイベントが盛りだくさんだな! で、結局、俺は一体、ハルヒに何が伝えたいのかと言うとだな、 いきなり結論だが、昨日の夜、お前を抱き締めて言った事。 あれは本気だ。結構、緊張したがな。 そういや、ハルヒからのちゃんとした返事は貰ってないが、 何となく流れ的にOKだったのかな、と勝手に解釈しとくぞ。 だから、次のバレンタインチョコは義理じゃなくて本命でくれよな。 それともう一つ、ハルヒに頼み事があるんだ。 俺達、来年は受験生だろ? ハルヒがどこの大学に進むのか知らないけど、 きっと今の俺じゃ手も届かないような所だと思う。 だから頼む。俺に勉強を教えてくれ。 俺も頑張って1年でどうにかしてお前の成績に追いつくから。 だからハルヒ、一緒に同じ大学に行こう! そしてな、大学でまた俺達で新しいサークルを作ろう! その名も『SOS団』!!!! 悪くないアイデアだろ?問題は俺の成績なんだがな…。 これからまだまだたくさん楽しい事、笑える面白い事があるだろうし、 喧嘩をする事もきっとあるかもしれん。 だけど、これからもずっと宜しくな、ハルヒ!! SOS団・団員その一、兼雑用係のキョンより SOS団・団長様、そして世界で一番大切な恋人、ハルヒへ p.s.不思議探索の時の遅刻罰金制だけどな。 あれ、俺、一回も遅刻した事ないぞ。 皆、来るのが早過ぎるだけだ。あれだけは考え直してみてくれ。 枯れたと思っていた涙が溢れ出してきた…。 彼の深く、優しい想いが胸の中に流れ込んでくるようだった。 私も昨日の夜、眠れずに考えていた。 初詣のお願い事を…バレンタインにキョンにあげるチョコレートを…。 SOS団の皆でお花見行って…七夕には笹の葉飾って… 夏休みには合宿行って…海で泳いで… 学園祭では出し物やって… クリスマスには鍋パーティーやってプレゼント交換して… まだまだやりたい事がいっぱいあった…… なんでもっとあなたに優しく出来なかったのか… なんでもっとあなたの前で素直になれなかったのか… 後悔と寂しさの涙ばかりが頬を伝っていく…。 なんでもっとあなたと過ごす時間をかけがえの無いものだと大切に出来なかったのか… なんで…… ごめんね、キョン……そして、ありがとう、キョン…… 溢れる想いはもう言葉にならなくなった…… ただ、あなたと、もっと…ずっと…ずっと一緒にいたかった―――― The End 涼宮ハルヒの嫉妬へ続く