約 2,872,915 件
https://w.atwiki.jp/fsproject/pages/29.html
殺人鬼から逃げる 改札を抜けて左へまっすぐ進むと殺人鬼が出るので逃げる。 商店街のブティック、食堂の二か所で殺人鬼が出現するのでそれぞれ撒く。 商店街 パン屋でITEM「トング」、コンビニでITEM「包帯」を入手。 ブティックの試着室からITEM「ダイヤの指輪」入手。 車いすのある交差路を左へ進んだ先でITEM「書店裏口の鍵」を入手。 書店の裏口から奥に進む。 つきあたりでFILE「式嶋四季の手帳4」を入手。 左の袋小路に行くとイベント発生。 魔除けの材料集め コンビニでITEM「塩」、食堂でITEM「ほしにく」を入手。 うどん屋のある通りを右へまっすぐ進み、その先の血だまりを調べてITEM「血の付いた包帯」 食堂から右に進み、シャッターの隙間から奥へ入る。 右の部屋にFILE「式嶋四季の手帳3」。 ダンボール箱の上からITEM「銀のナイフ」を入手。 食堂右のシャッター横にあるパネルを調べると、シャッターが開く。 そこから上へ進むとコインロッカーの前につながっている。 Aルートなら用具倉庫へ、Bルートなら左へ進んですぐの部屋に入る。
https://w.atwiki.jp/fsproject/pages/30.html
https://w.atwiki.jp/83452/pages/6803.html
【2010年08月16日 14 32/桜ヶ丘記念病院】 目が覚めて点滴を外し、一通りの検査を終えて問題なしと判断された私はすぐに唯先輩の病室に向かった。 着いたのはたしか十一時ぐらいだったと思う。 中に入ると既に憂と律先輩と澪先輩が待っていた。 私はまず危険な目にあわせてしまったこと、それから心配をかけたことを謝った。 謝って許されることじゃないとは思ってたけど。 でも律先輩は「新学期に自慢するネタが増えた」なんてふざけて喜んでいたし、 澪先輩からも「梓のおかげで成長できた」って、なぜか感謝してくれた。 でも、憂から「お姉ちゃんが助かったのは梓ちゃんのおかげ」って言ってくれたのはうれしかった。 とはいっても全力で謝るつもりだったのに感謝されてしまったから、なんだかむずがゆかった。 それから律先輩は得意げに武勇伝を語って聞かせてくれた。 といっても、MDプレイヤーのおかげで奇跡的に助かったってだけの話だけれど。 でもその壊れたプレイヤーも携帯も澪先輩との思い出の品で、やっぱり私はうらやましいなんて思ってしまう。 唯先輩は静かに目を閉じたままで、まだ目覚めない。 憂の話だと心配された熱中症の後遺症もなく順調に回復しているらしい。 だから今眠っているのは、昨日一日の疲れが大きいのだろう。 私たちは寝かせておいてあげることにした。 少し前に憂は唯先輩の着替えを取りに、律先輩と澪先輩は二人で家に帰ることになった。 残された私は唯先輩の手を握り締めて、いろいろなことを話した。 律先輩の生還談、澪先輩のうれしそうな顔。 卒業したら離れ離れになってしまって、本当はとてもさみしかったこと。 ステージ上で輝く唯先輩に憧れて入部して、最初はがっかりしながらもどんどん惹かれていったこと。 そして……今の私の気持ち。 梓「ゆいせんぱい」 静かに寝息を立てる唯先輩はもちろん答えてはくれない。 でも時々ほんの少しずつ表情を変えるから、もしかしたら私の言葉も伝わっているのかもしれない。 唯先輩、どんな夢見てるんだろう? はやくあなたに会いたいよ。 梓「・・・・・・あなたのことが、大好きです」 手を握り、夢の中に向けてそう伝える。 もし唯先輩の目が覚めたら……そのときは、ちゃんと直接伝えたいな。 受け入れてくれるかどうかは不安だけれど、せめて元気になった唯先輩が私の言葉を聞いてくれるだけでもいい。 でももし、今みたいに言葉だと届かないのなら――することは一つだ。 私は身を乗り出して、布団を少しだけ寄せて、唯先輩のやわらかい身体に腕を回した。 言葉が伝わらなくたって腕の感触なら伝わるかもしれない。 今まで唯先輩がしてくれたことのと、同じように――抱きしめた。 唯先輩の胸に頭をうずめる。 耳を澄ますと、心臓の鼓動が聞こえる。 呼吸に合わせて胸が少しだけ膨らんでは戻る。 ほのかな唯先輩の匂い。やわらかい皮膚の感触。 穏やかな気持ちになって、私まで眠ってしまいそうになったとき。 ――唯先輩の腕が、私の背中に回った。 驚いて、ぱっと顔を上げる。 すると唯先輩がねぼけ眼で、はっきりと笑顔を浮かべていた。 唯「あずにゃん……だきしめたよ?」 梓「ゆ…ゆい、せんぱい・・・・?」 唯先輩は今度こそ私を強く抱きしめた。 数時間ぶりに味わった腕の感触。 帰ってきたんだ。 みるみる瞼が熱くなって、涙があふれてくる。 唯「……あずにゃん、あずにゃんは、現実だよね?」 梓「あは・・・なにいってんですか、当たり前でしょ、ずっと…待ってたんですよ」 たまらなくなって、唯先輩に負けじと私も強く抱きしめる。 そしたらちゃんと目を覚ました唯先輩に、もっと強く抱きしめられた。 私たちは声を上げて泣いた。 心の奥まで抱きしめあえたのは、これがはじめてかもしれない。 唯「ねぇ…あずにゃん」 梓「なんですか?」 さっきね、夢の中のあずにゃんにしかられちゃったんだ。 泣き顔のまま、ちょっと困ったように唯先輩は言った。頬に流れた涙がきらめく。 梓「もう…しょうがないですね、唯先輩は」 唯「えへへ…ごめんね、今まで」 梓「いいんですよ。私だって……同じ気持ちだったから」 そっか、やっぱりか……うつむき、笑顔を隠そうとする唯先輩。 この人はいつもきゃらきゃら楽しそうに笑っているのに、本当にうれしいときは照れてしまうんだよね。 ……あは、以心伝心かも。 唯先輩はふっと笑顔を消して、真摯な眼差しをこちらに向けた。 唯「あずにゃん……聞いて。」 梓「……はい」 唯先輩はあふれてくる涙を抑えることもなく、 泣きはらして真っ赤な顔を隠しもせずに、 ちゃんと私に向けて気持ちを言葉にしてくれた。 ――私、あずにゃんのこと……世界で一番愛してる。 梓「……私もですよ」 唯「私も、って?」 とたんにこわばった表情がくずれて、にへっと笑う唯先輩。 あずにゃん。私も、どうなの? いたずらっ子みたいに私に気持ちを言わせようとする。 おかしくて、少しふき出してしまう。 この人は私が本当の気持ちをいえないとでも思っているのかな。 梓「私も、出会った時からずっと、唯先輩のことが好きでしたよ」 唯「うん。……ありがと」 梓「世界で一番。唯先輩のことを愛しています」 唯「なんか・・・・照れるね、その言葉」 まったく、もう。 私に言ってくれたことを、自分が言われたら恥ずかしがるんだから。 ――ねぇ。お互い好きなんだったら、付き合いませんか。 わざと冗談めかして言ってみる。 照れ隠しのつもりだったら、私も唯先輩と変わんないな。 唯「えへ…あずにゃんいいアイデアだね」 梓「私、ずっと付き合った時のこと、考えてたんですよ」 律先輩と話したこと。憂に相談したこと。 昨日の朝に屋上で言おうとして、言えなかった気持ち。 恋人として手を繋ぎ、恋人になって抱きしめる。 本当に何度も考えては消してきた、一番の願いだった。 唯「私だって……さっきも夢に出てきたよ、あずにゃん」 梓「あは…いっしょですね、私たち」 私は今度こそ、ちゃんと唯先輩に思いを打ち明けた。 梓「唯先輩。私と、付き合ってください」 唯「……ありがとう。付き合おうね、あずにゃん」 唯先輩は、今日一番の笑顔で応えてくれた。 気持ちが抑えきれなくてすぐに抱きしめ、顔をうずめる。 そんな私の頭を唯先輩はずっと撫でていてくれた。 そしてもう一方の手で、震える私の手をそっと握っていてくれた。 唯「ねぇあずにゃん。顔、みせて」 不意に唯先輩が呼びかける。 私の身体を少し引き離す唯先輩。どうしたんだろう? きょとんとしてる私のまぶたを、唯先輩は人差し指で優しく閉じた。 ああ、そういうことか。 私の頭は、自然と少しだけ上に向いた。 まぶたの裏に唯先輩の姿を浮かべ、何十秒にも思える一瞬を待った。 ――唇に、やわらかい感触がした。 溶けるような、温かいその感触に身をゆだねると、唯先輩は抱きしめてくれた。 抱きしめられた私もそれに応えて、強く唇を押し付ける。 自然と絡めた指と、抱きしめあった身体。 私たちは、ようやく確かなもので繋がれた気がした。 こうして、八月十六日は私たちにとって忘れられない日となった。 【2010年08月18日 11 27/桜ヶ丘記念病院】 今日は待ちに待った唯先輩の退院の日。 はやる気持ちを抑えて病室のドアを開けると、いきなり飛び出してきた唯先輩に抱きしめられちゃった。 唯「あずにゃぁん…! 待ってたよぉ、やっとあずにゃんと一緒になれる!」 梓「ちょ…いきなり抱きつかないでください! 誰か見てたらどうするんですかっ」 唯「ええー? おとといのファーストキスだって、憂とかりっちゃんたちに見られてたじゃん」 思い出して顔が熱くなる。 あのあとは散々からかわれたんだっけ……主に律先輩に。 梓「・・・・・もう。唯先輩はデリカシーってものをわかってください」 唯「いいじゃんさー、今だって誰も見てないよ?」 梓「……はぁ。しょうがないですね、唯先輩は」 そうやって唯先輩のせいにするけれど、私だって待ち望んでいた。 一日ぶりの口付け。 舌をほんの少し触れ合わせる。 そこから先は……まだ怖い。 でも、少しずつ進んでいきたいな。 病室を出て、唯先輩と手を繋いで廊下を歩く。 昨日はお見舞いに来たさわ子先生とムギ先輩に会って、迷惑をかけてしまったことを謝った。 なのに唯先輩と付き合うことにしたって言ったらムギ先輩は目を輝かせて祝福してくれた。 デートの話とかのろけ話とかたくさん聞かせてねって、手を握られて。 ……ムギ先輩がどういう人なのか、私はいまだによく分からない。 逆にさわ子先生はぶーぶーむくれていた。 こっちは出会いがないっていうのに、あんたたちは幸せそうでいいわね、なんて。 でも「受験生なんだから、唯ちゃんをちゃんと応援してあげなさいよ」って言ってくれた。 決まってますよ。 私とつきあったせいで大学に落ちたなんて、絶対許さないもん。 昨日のことを思い出していたら、いつの間にかエレベーターホールに着いた。 階数表示。ボタン。目の前の、個室に続くドア。 ――私は思わず、唯先輩の手を強く握ってしまう。 唯「ねーあずにゃん、エレベーター混んでそうだから階段で行ってもいいかな?」 唯先輩はそう言って、私の手を引っ張っていってくれた。 エレベーターがまだ怖いって、何も言わなくてもわかってくれた。 やっぱり……唯先輩はすごいな。 あれだけ知っていた唯先輩のことでも、恋人になってからまた違った面を見つけられた気がする。 一階のロビーに降りると律先輩と澪先輩が待っていた。 律「おぉー! 新婚さんがいらっしゃったぜっ」 梓「ほっといてください! ていうか先輩だって澪先輩と…」 律「なっ…いま私の話はしてないだろ?!」 澪「お前ら、元気だな…」 ふと見ると、澪先輩の持っている携帯が新品に変わっていた。 いいなあ、私も唯先輩に合わせてAUに乗り換えようかな? あっでもソフトバンクだと電話代がほぼ一日タダになるんだっけ……。 唯「あっ手続きおわったよー!」 気づいたら唯先輩が憂と連れ立って戻ってきていた。 憂「みなさん、お姉ちゃんのことでいろいろとありがとうございました」 憂は唯先輩の代わりに頭を下げた。できた妹だなあ、ほんとに。 憂「それから梓ちゃん。……がんばってね!」 にこにこと言われてしまって、返す言葉も浮かばずまた頬が熱くなる。 律「おっまた照れてんのか梓?」 澪「いいかげんにしろ馬鹿律!」 それから私たちは和さんとムギ先輩と落ち合って、ケーキバイキングのお店に向かった。 和さんも私たちの関係は聞いていたらしく、「唯を甘やかしちゃだめよ」と忠告してくれた。 ……憂といい、和さんといい。 唯先輩って、本当に保護者に恵まれてるなあ。 ケーキを食べながら、あの一日の話を交換し合った。 閉じ込められた私たちがどう過ごしていたのか。 私たちを探す先輩たちが、どんな思いで探してくれてたのか。 その話を聞いて、本当にこの軽音部に入ってよかったなって素直に思えた。 澪先輩たちも「梓は事故からなんか変わった」って言ってくれた。 ……自分では、変わったことなんて唯先輩の恋人になれたぐらいしか浮かばないけれど。 あと、唯先輩が人目もはばからずにケーキを「あーん」なんてしてくるのが恥ずかしかったな……。 まあ食べたんだけど。それに、私だって食べさせてあげてしまった。 なんだかどんどん唯先輩のペースに乗せられてってる気がして、いけない気もする。 帰り道。 憂は羽田空港に到着するご両親を迎えに行くので、私と唯先輩だけで家に帰ることになった。 唯「ねえ、あずにゃん」 梓「なんですか?」 唯「今度、どっか行こうよ。時間作るよ」 梓「勉強の方はいいんですか?」 唯「それもがんばるからぁ! あずにゃんおねがいだよぉ…」 梓「……はぁ、分かりました。約束ですよ?」 根負けした振りをしてしまう。 私も素直じゃないな、ほんとうに。 唯「やったあ! じゃあ二十二日の日曜、水族館とか行こうよ!」 唯先輩はいつもみたいにはしゃいでいた。 まるで今までと同じように、子供みたいに。 だけど……やっぱり、私たちは何か変われたんだと思う。 唯先輩はすぐに携帯で日曜日の天気をチェックする。 ――八月二十二日、天気は晴れ。 唯「よかった、デート日和だね! じゃあ日曜まであずにゃんのために勉強がんばるからねっ」 夕焼けで伸びていく繋がった二つの影を見つめながら、気づいた。 あの事故の後で変わったもう一つのこと。 話したら笑われそうなほどささいなことだけど、なんとなく大事な気がした。 それは……雨の日だけじゃなくて、晴れの日も好きになれたこと、だと思う。 梓「楽しみにしてますね。勉強、がんばってください」 唯「まかせてよ! 明日から取り戻すからねっ」 八月二十二日、天気は晴れ。 ――唯先輩の天気予報、当たるといいな。 おわり。 戻る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/6798.html
憂「お姉ちゃんどうしたんですか、何かあったんですか?!」 血相を変えた憂が詰め寄ってくるけどそれどころじゃない。 私は梓にリダイヤルする。 《お掛けになった電話番号は、現在電波の――》 もう一度。 《お掛けに――》 くそっ! なんでつながんねーんだよ! 澪「おい律、状況をまず説明して――」 律「今それどころじゃない!」 ああもう、澪に当たってどうするんだよ私。 梓へのリダイヤルをあきらめて、唯にも掛けてみる。 だが、唯への電話も自動音声に遮られた。 全身の力が抜けた。 携帯を机に放り出して、椅子に身体を投げ出した。 投げつけた衝撃で携帯が、倒れた人のように開く。……縁起でもない。 澪「律、落ち着けよ。何があったんだ?」 憂「お姉ちゃんは無事なんですか?」 顔をのぞき込む心配性二人。 だけど、さっきの私はそれ以上に動揺してたと思う。 こんなんじゃ私が落ち着かないでどうする。 深呼吸を一つ。 身体の奥から不安を吐き出すように、念入りなやつを。 そうして、私は二人に電話の内容を告げた。 律「澪、今日の勉強会は中止だ。二人がどっかのビルのエレベーターに閉じ込められてる。場所は分からない」 目を見開き、青ざめた顔が二つ。 みるみる血の気を失っていく。 律「みんな、落ち着こう。とりあえず先生たちに伝えて、唯たちの行きそうな場所探してみようぜ!」 投げ出した携帯電話を右側のポケットに入れて、無理やり明るい声で呼びかけた。 まだ動揺しっぱなしの澪を見たとき、窓の外が目に入る。 灰色の雲を見ているといやでも不安が膨らむから……私は思わず目をそらした。 【2010年08月15日 9 43/Nビル構内】 梓「これから場所を説明しますから、助けを呼んでください!」 言い切る間もなく、唯先輩の携帯の電池が切れた。 一瞬、電話が繋がったときには喜んだけれど結局たいしたことを伝えられずに切れてしまった。 もしかしたら、相手が律先輩だったからかもしれない。 あの話をしてから、心の底で先輩に引け目を感じていたから。 唯「どうだった、りっちゃんと話せた?」 梓「はい。でもすぐ切れちゃって、場所が伝えられなくて……」 唯「閉じ込められてるのは伝わったんだよね? じゃあ大丈夫だよ!」 梓「でも、場所がわかんなかったら助けに行きようが…」 唯「それでも、誰かが見つけてくれるよ。だって今日いて座が1位だったもん!」 梓「あはは……」 笑顔で根拠なく言い切ってしまって、思わず力が抜ける。 でも、気持ちが押し潰されそうな密室の中ではそんな唯先輩が頼もしく見えた。 唯「まああずにゃんも、のーんびり助けを待ってようよ」 梓「……そうですね」 私が言うなり教科書の入ったカバンを枕にして、床に寝っころがる唯先輩。 いや、それはさすがにリラックスしすぎなんじゃ…… 唯「そのぐらいの方がいいんだよ。ってかさっきのあずにゃん、めっちゃ慌ててたもん」 梓「私なりに落ち着いて伝えようとしましたよ!」 唯「地震起きたの、六時だよ?」 あ…そうだっけ。 唯「ほらぁ、あずにゃんパニクってるじゃん」 得意げな顔を向けられた。 この人、事態の深刻さ分かってるのかな……? 梓「ていうか唯先輩はなんでそんなに落ち着いてられるんですか!」 唯「だって、あずにゃんが一緒だもん」 えへへ、って愛くるしい笑顔を浮かべてそれとなく手を握る唯先輩。 こんな時、いつもどうしていいか分からなくなる。 私の心の奥底に、あまりにもすんなり入ってきてしまうから。 私が「練習しよう」とか「もっと真面目な部活に」って構えてる時だって、気づくといつも唯先輩のペースに乗せられてた。 アイデンティティをかけて必死で立てたバリケードなのに、唯先輩はたやすく隙間をぬって侵入してしまう。 そして気づくとぎゅってされてて―― ……いつしかバリケードの中で、唯先輩を待ちわびるようになってたんだと思う。 唯「私もね、一人だったら不安でたまんなかったと思うよ」 私の目をじっと見つめて、唯先輩が話す。なんか、どきどきする。 唯「でもあずにゃんが居るから、大丈夫そうな気がするよ」 私はギー太とアイスとあずにゃん分があれば生きていけるからね! そう、言い切られてしまって、居心地がわるくなって思わず目をそらす。 梓「……ギターより受験勉強をしてください」 あはは、そうだよね。私、忍耐力ないからさ……弱いもん、うん。 そう言って唯先輩は困ったように笑った。 本当は思ってもいないバリケードを立ててはまた逃げようとしてしまう自分は、確実に唯先輩よりも弱い。 五時――じゃなかった、六時の地震で閉じ込められた時は唯先輩もさすがに動揺してた。 ていうか唯先輩、自分を責めまくってた。 ごめんね、私が変なこと言い出したからだよね、ごめんねあずにゃん、って。 思わず私は「唯先輩のせいじゃないです、事故だからしょうがないですよ」なんてなだめていた。 『先輩をこんな危ないところに連れてきたのはあなたでしょ』 聞きたくない自分の声をかき消すために、つい唯先輩は悪くないなんて言い方をしてしまう。 その度に、声を上げるたびに、自分の中に変な熱が溜まっていくのを感じていた。 やがてその熱はこの部屋に充満し、唯先輩を押し潰してしまうのかもしれない。 私のせいで、唯先輩が。 唯『あずにゃん、どしたの? こわい顔してるよ』 そうやって一人で思いつめてたときも、唯先輩が引き戻してくれた。 唯『なんかこうしてると合宿みたいだよね!』 ふきだしてしまう。 いつの間にか、私が助けられる側に回ってた。……いや、最初からかな。 甘えてばっかだ。落ち着きなよ、梓。 自分の心に自分で言葉の刃を向けて、他人から傷つけられる前に先手を打つ。 これも昔からの癖だった。 しばらくして私も唯先輩も落ち着いた頃、唯先輩が突然言い出した。 唯『あずにゃん、あずにゃん! あの非常ボタン押してみてもいい?!』 梓『は……はぁ?』 唯『ほら、ああいうボタンってふだん押しちゃいけないじゃん? ねぇ私が押してもいいよね?!』 レストランで注文ボタンを押したがる子供みたいに唯先輩がはしゃぐ。 っていうか、そのものだった……。 梓『いいですよ、押してください』 なんだかほほえましくて自然と口元が緩んでしまう。 唯『終わったら次、あずにゃんの番だよ! 繋がるまで続けるからねっ』 なんていうか……軽音部入ってから私、こんな気持ちになること増えたかも。 はじめ唯先輩は非常ボタンを押し続けることを知らず、一回押しては私と交代しようとした。 梓『いや、ここに書いてあるじゃないですか。押し続けるんですよ』 唯『ええー…指疲れそうだなあ』 梓『ギタリストがそれ言いますか…』 それから唯先輩はしばらく押し続けた。 けれど……一向に管理会社に繋がらなかった。 私も心の底ではあの小さな黄色いボタンにすがっていた。 外界に私たちの存在を知らせてくれて、やがて助けを呼んでくれるはずだと。 でも実際は、七時ごろからずっとボタンを押し続けているのに何の音沙汰もなかった。 唯『私たち、見捨てられちゃったのかな…』 肩を落とす唯先輩。 私は心の中で管理会社に逆恨みと八つ当たりをぶつける。 そうして外の世界から完全に遮断された私たちは、エレベーターの床に座り込んだ。 ここのエレベーターには足元に赤の薄っぺらいカーペットが敷いてある。 それに気をよくした唯先輩はさっそくカバンを枕に床に寝転がった。 唯『なんかこうしてる家みたいだなぁ…ういー、あいすー。なんちゃって』 梓『憂の苦労がうかがい知れますね…』 言ってはみたものの、私だけ律儀に立ってるのもばからしく思えて、結局自分のカバンの上に座った。 唯『あーあずにゃんジベタリアンだー、お行儀わるーい!』 梓『床で寝てる人に言われたくありません!』 そんな、一瞬いま事故に遭ってるってことを忘れてしまうような。 一緒に居る相手が唯先輩じゃなかったら……こうはならなかったと思う。 結局私も根負けして、唯先輩と一緒に寝転がった。 カバンを枕にして、仰向けになる。 カーペットの縫い目を指でなぞったり、太ももに当たるカーペットの感触を押し当ててみたり。 見ると天井はやけに低く感じて、煤けた照明が私たちを押しつぶそうと迫ってくるようで……気持ち悪くなる。 そこで思わず目を逸らすと……唯先輩と目が合った。 唯『えへへ、二人っきりでお泊りみたいだね』 梓『……変なこといわないでください』 変な気分になるじゃないですか。手とかつながないでくださいよ、本当。 梓『そうだ、もう少しだけ携帯つながるか試してみましょうよ』 今にして思うと、自分の気持ちをそらすために言ったんだと思う。 結局、電話は律先輩に一瞬繋がったものの――振り出しに戻っただけだった。 いて座が一位だったら、私のさそり座は何位だったんだろう。 唯先輩と一緒にいれてるから五位ぐらいかな? っていうかその占い、絶対アテになんないな……。 唯「ねーあずにゃん、なんか楽しいことしよ?」 梓「じゃあ……音楽でも聴きますか?」 自分の腰掛けていたカバンからウォークマンを取り出す。 唯「うん! ……って、それって最新機種?」 梓「そうですそうです、ノイズキャンセリング機能もついてるんですよ!」 唯「へー、なにそれ」 梓「自分の聴きたくない騒音とかを消せるんです」 すると唯先輩はうなってしまう。 そこまでして消したい騒音ってどんなのだろう、なんて悩んでしまった。 梓「例えばほら、人の話し声とか電車の音とかいろいろあるじゃないですか」 ……言った後で、気づいた。 唯先輩は何でも楽しめるから、騒音なんてないのかもしれない。 雨音にあわせて歌っていたような人だったっけ。うらやましいな。 そう考えると、自分の聞きたくない音をシャットアウトする私が急にみすぼらしく感じた。 梓「適当にシャッフルして流れたのでも聞いてみましょうか」 唯「そだね。どんなのだろ」 目をつぶって適当にボタンを押して再生させる。 印象的なディストーションギター、後に入ってくるドラム、はじめは小さくやがてうなりを上げるベース。 ファルセットの利いたボーカルが歌いだす。 唯「おお……なんかカッコイイ! ねえなんて曲?」 しかしよりにもよって、こんなときにこんな曲だなんて。 苦い笑いがこみ上げる。なんて皮肉だろう。 梓「……ミューズの、ストックホルム・シンドロームって曲です」 シャッフル機能はたまにこういうことをしてくれるから困る。 唯「それってどういう意味?」 梓「ストックホルムで銀行強盗があって、人質がしばらく監禁されているうちに犯人のこと好きになっちゃった事件があったんです」 そんな風に、極限状態で人の気持ちが変わっちゃう、っていう心理学の用語をテーマにした歌だと思います。 唯先輩にそう説明した。 ……いまここでこの曲はないよ、やっぱ。 唯「あ、それって憂が同じこと言ってたよ! つり橋効果ってやつだよね?」 梓「似てるようで全然違います…」 ストックホルム症候群はもっと悪い意味で使うんですよ、たぶん。 わざと閉じ込めてたりとか、よくない関係だったりとか。 ……気持ちを変えることで、身を守ってるだけだから。 自分のことしか考えてないだけだから。 唯「ねぇ、私たちってストックホルム症候群なのかな」 梓「……そんなこと、聞かないでくださいよ」 唯「ごめん、なんでもない! でもこの曲かっこいいね、りっちゃんとか好きそう」 すぐに笑顔に戻った唯先輩。 だけど、その三秒前の表情は忘れられそうもなかった。 昨日まで憂や純のおかげでなんとなく決意できてたはずの気持ちが揺らいで、崩れ落ちそうになる。 せめてこのドアが開いてくれたら……病気じゃない、まっとうな気持ちだって、言い切れるのかもしれないのに。 『まっとうなの? あんたが先輩に向けてる気持ちって、傍から見たら相当気持ち悪いんじゃない?』 うるさいな。静かにしててよ。 律『――気持ちは分かる。けど、これから先に傷つくのは梓だし、唯だと思う。だから……やめといた方がいいって』 数日前に聞いた言葉が耳の奥で揺れる。 傷つけたくない。傷つきたくないから。 ……私は気づかれないように、唯先輩の身体に触れないように、そっと距離をとった。 【2010年08月15日 13 36/児童公園】 律『さっきムギと合流した。唯たち見つかったか?』 律からのメール。聞くぐらいだから、あっちも進展はないみたいだ。 返信して、ベンチの隣の憂ちゃんに現状を伝える。 憂「あれ、紬さんって避暑に出かけてましたよね?」 澪「それどころじゃないだろ、今は」 そうですよね、と憂ちゃんがか細い声で答える。 私はカバンからチョコレートを取り出して――憂ちゃんに差し出すのはやめた。 律からもらった個別包装のトリュフ、袋を開ける前から型くずれしてしまっていた。 澪「……えっと、食べる? ていうか、飲む?」 憂「もう溶けちゃってるじゃないですか」 少し笑ってくれて、安心する。……なんか律みたいなことしてるな、私。 午前中に窓の外を覆っていた分厚い雲は跡形もなく消え、抜けるような青空からは直射日光が遠慮なく降り注いでいる。 夏の日差しは私たちの影すらも奪おうとするほど強い。 憂ちゃんと唯の行きそうな場所を巡っていた私もさすがにダウンして、公園の木陰のベンチに逃げ込んできたところだった。 ふつう、「雨は悪い天気だ」と人は言うけれど。 けれど体中の水分を根こそぎ否定するようなこんな日差しに当たっては、少しぐらい雨が降ってほしいなんてことも思ってしまう。 憂「この公園、小さい頃にお姉ちゃんと和ちゃ……和さんとよく来てたんです」 ほら、あの水飲み場ありますよね? そう言って、公園の隅に設置されたものを憂ちゃんが指さす。 憂「あの蛇口を全開にして、数メートルぐらいの噴水にして水浴びするのが好きだったんですよ。お姉ちゃん」 澪「それって、後で怒られたりしないのか?」 憂「だからお姉ちゃん、公園に行くと怒られてばっかでした」 昨日のことのように語っては、くすくすと微笑む憂ちゃんがかわいらしかった。 ……唯、愛されてるなあ。 5
https://w.atwiki.jp/slift/pages/17.html
設置状況 http //mytown.asahi.com/niigata/news.php?k_id=16000001211020003 県内で確認された46台の同社製エレベーターのうち、28台が公共施設で使われている。 新潟市建築行政課によると、市内には18台があり、すべて公共施設。 新潟市 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター新潟県新潟市中央区万代島6-1 http //www.tokimesse.com/ ソース 朝日新聞デジタル 使用の県施設に注意を促す-マイタウン新潟 確認日 2012/11/02 山の下閘門排水機場新潟県新潟市東区沼垂6012-2 http //www.pref.niigata.lg.jp/niigata_seibi/1200934855708.html ソース 朝日新聞デジタル 使用の県施設に注意を促す-マイタウン新潟 確認日 2012/11/02 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/slift/pages/18.html
設置状況 http //www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20121104_2 県内にある同社製のエレベーターは5基で、うち金沢市の事故機と同型は1基。 一関市 一関工業高等専門学校岩手県一関市萩荘字高梨 http //www.ichinoseki.ac.jp/index-j.html 専攻科・教育棟にある1基 ソース シンドラー社製を一時使用停止 一関高専の1基 確認日 2012/11/04 奥州市 水沢郵便局岩手県奥州市水沢区寺脇1-5 http //map.japanpost.jp/pc/syousai.php?id=300183010000 ソース シンドラー社製を一時使用停止 一関高専の1基 確認日 2012/11/04 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kutakuta123/pages/7.html
アーカイブ @wikiのwikiモードでは #archive_log() と入力することで、特定のウェブページを保存しておくことができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/25_171_ja.html たとえば、#archive_log()と入力すると以下のように表示されます。 保存したいURLとサイト名を入力して"アーカイブログ"をクリックしてみよう サイト名 URL
https://w.atwiki.jp/kutakuta123/pages/6.html
更新履歴 @wikiのwikiモードでは #recent(数字) と入力することで、wikiのページ更新履歴を表示することができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_117_ja.html たとえば、#recent(20)と入力すると以下のように表示されます。 取得中です。
https://w.atwiki.jp/kutakuta123/pages/5.html
まとめサイト作成支援ツールについて @wikiにはまとめサイト作成を支援するツールがあります。 また、 #matome_list と入力することで、注目の掲示板が一覧表示されます。 利用例)#matome_listと入力すると下記のように表示されます #matome_list
https://w.atwiki.jp/kutakuta123/pages/10.html
関連ブログ @wikiのwikiモードでは #bf(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するブログ一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_161_ja.html たとえば、#bf(ゲーム)と入力すると以下のように表示されます。 #bf