約 1,306,129 件
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/7032.html
むねのいたみにきみのにおい【登録タグ KAITO む メロネード(仮) 曲】 作詞:メロネード(仮) 作曲:メロネード(仮) 編曲:メロネード(仮) 唄:KAITO 歌詞 通り過がる雨の温度が 無駄に熱もったこころの ボタン付きのポッケ 開いた隙間から染み込むよ 心地いいなぁ まだ泣いちゃないけど でも それ以上に 瞼に映る落書きが増えていく… 虚しいなぁ "まだ髪は切ってないんだ" たまに見る友人ごしの写真には 変わらないと思う その笑顔に癒されて 残された胸の痛みに 細切れになる昔(とき)の記憶 染み付いた君の匂いも 寝た後にまた思い出すよ 考えごとみたいに 二人してごまかした あの頃に気付いてたはずさ 僕も君も全て あぁ 酷だなぁ まだ何も知ってなかった 手のぬくもりも歩く歩幅合わせも 何気なくても鼓動は高まる もう一度… 戻されない時計の針も 鏡ごしじゃ僕も逆さま 二、三時間が今 同じ感じじゃないけれど 隣に居たい 遠い記憶に 雨の音が 不安定な心の鼓動に重なる 残された胸の痛みに 細切れになる昔(とき)の記憶 染み付いた君の匂いを 寝た後にまた思い出しても… 戻されない時計の針も 鏡ごしじゃ僕も逆さま 目を閉じるだけの不安に 何故か涙がこぼれてくよ さようなら コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/girlwithlolipop/pages/60.html
我が命の光、我が罪、我が魂。 ◆PatdvIjTFg ◆ その中学校に存在する特異なクラブ活動の一つに、善人クラブというものがある。 いわゆるボランティア系のクラブの一つであるが、 運動部室の清掃、遺失物の捜索、いじめの仲介、生徒の悩み相談と、その活動は幅広く、皆に信頼され、重宝されているクラブである。 部内を見てみよう。 一人、椅子に腰掛けて冊子を読む少女がいる。 肩にかかる程の黒髪、平均より少し高い身長、中学三年生ながらにしとやかな美しさ、見るものを安心させる微笑み、 彼女こそ善人クラブの部長、一色である。下の名前はわからない、誰もが彼女を善人クラブの人、善人クラブの部長として認識している。 故に下の名前は重要ではない、ただ重要な事は彼女のイデアが善人クラブであるということである。 「ジェノサイダーさん」 しっとりと落ち着いた声音、一色の言葉が誰もいない部室内に響く。 独り言か、否。この言葉は、部室内にいるもう一人への呼びかけである。 「何?」 読者の皆様も第三の眼を開いていただければ、部室内にはっきりとその姿を見ることが出来るだろう。 霊体化しているが、部室の片隅に佇むは間違いなく英霊。 その、英霊の姿を見よ。蛮人じみて上半身は裸、しかし一転して下に着るは文明的なハーフジーンズ。 しかし何よりもだ、おお、虎よ、虎よ!その全身には虎めいて文様が入っている、 その上、その虎のような文様は、その英霊の感情に呼応して、薄ぼんやりと光るのだ。 そして、首後ろを見よ。 まるで角のように、その部分から黒く尖った物体が隆起している。 人間の近存在であるが故に、なんたる異形であるだろうか。 その姿はまるで、酔っ払った神が作った人の似姿の様である。 しかし、その英霊は神のつくりたもうた創造物ではない、 元は神の創造物でありながら、魔王の思惑によって人の身ながらに悪魔の力を植え付けられた魔人――人修羅なのだ。 「体の調子はいかが?」 「何をしたかは知らないけど、一回ぐらいなら十分に戦えて、君が死なないぐらいのマガツヒが集まってるよ。 まるで……マガツヒ農場だ、絶望、悲哀、憤怒、この学校には何もかもがある……それでいて、君はそんな平然とした顔をしている、全く驚くよ」 「……その感情が」 「え?」 歪む。空気が歪む。少女の表情が歪む。 人を狂気に至らせる青白い月――その三日月のような微笑。 「私たちを必要としてくれる」 だから、私たちは人のために働くのだと、少女は言った。 言葉の意味を考えあぐねて、人修羅は首を捻る。 と、同時に扉が開く。 少女が二人、一人は善人クラブの部員、人のためにこそ働く、素晴らしき奉仕者。 そして、もう一人は。 「部長、悩みを相談したいって女の子が来てますけど」 ◆ 「えっと……ですね、その善人クラブだったら、どんな悩みでも聞いてくれるっていうから…………」」 「ええ、私たちにできることなら、何だって」 人の喜びこそ、少女の喜び。感謝されることこそ、自分の存在価値。故に、彼女は善人クラブを創った。 だから、何度目だろうと、人に悩みを相談される瞬間というのはたまらない。 何としてでも目の前の少女の悩みを解決してやろうと、一色は思う。 その行為こそが、自身の存在価値を肯定してくれる。 多人数に聞いて欲しい悩みもあれば、たった一人、信頼できる人間に聞いて欲しい悩みというものもある。 この少女の場合は後者だったらしい、故に一色は部室に立入禁止の札を掲げ、懺悔室のように秘密の暴かれることのない空間を創る。 人修羅も同室しているが、その姿は相手の少女には見えないのだから許してもらいたい。 「友達に彼氏が出来て……」 「うん」 「それで、それで…………」 「大丈夫、落ち着いて話せばいいの。話し辛いのなら、話せるようになるまで待ってあげるし、日を改めたっていいのよ」 「……はい」 少女は深く息を吸い込み、吐く。もう一度、繰り返す。 「それで……あの子、彼氏と遊ぶからって、私と遊んでくれなくなって……それで、わたし……友達がいなくって」 「善人クラブに入部したいの?」 「いえ、違うんです……わたし、もう一度、あの子と遊びたいんです……だって、わたしにはあの子しか友達がいないから」 「うん……」 「あの子と彼氏を別れさせたいんですけど」 「それは間違っているわ」 「え?」 「そうまでしてその子を思っているのなら、直接相手と話すべきよ。そんな手段を使っちゃダメよ」 「でも……善人クラブは」 少女が言葉と共に取り出したのは、写真であった。 1枚、2枚、3枚、いずれも善人クラブのメンバーが写っている。 善人クラブがサッカー部の部室を荒らしている様子――サッカー部は部室が汚くなる度に、善人クラブに掃除を依頼していた。 善人クラブがクラスメイトから、こっそりと物を盗む様子――善人クラブは落し物の捜索が上手い 善人クラブがいじめの首謀者に金を渡している様子――善人クラブはいじめの仲介を行っていた。 善人クラブが人を助けるには、誰かが困らなければならない。 その種を蒔く様子。 「こういうことしちゃいますよね?」 「…………」 少女は嗤う、一色は凍りついた様にその微笑を崩さない。 「あの子は私の大切な友達なんです、あの子が、あの子だけが、あの子こそが、だから……助けてくれますよね、一色センパイ」 「……いつか、こんな日が来るんじゃないかと思っていたわ」 他人に感謝されること、それこそが彼女たちの存在意義。 故に、存在証明のために走り続けなければならない、何もかもを燃料として燃やしてしまいながら。 「……明日、屋上で会いましょう」 ◆ 空は不気味なほどに赤かった。 屋上で一色を待つ少女の感情は異常な程に昂ぶっている。 愛――それこそが、感情の名前だ。 少女は、友人を愛していた。 友人こそが彼女にとって世界に一人だけの存在だった。 だから、その愛を取り戻せることが喜ばしくてたまらない。 いや、この愛は今まで以上に燃え上がることだろう。 傷ついた時こそがチャンスなのだ。 「うん、楽しみ……だなぁ」 屋上の扉が開く。 「あっ、センパ……」 「アンタだったのね……」 「えっ……」 扉を開いたのは、一色ではなかった。 扉を開くと同時に、全力で少女の下に距離を詰め、少女の華奢な体をフェンスに押し付けるのは、誰だ。 ああ、少女の青ざめた顔を見よ、今にも泣きださんとするその顔を見よ。 屋上への来訪者こそが、少女が恋い焦がれた少女。 愛おしくてたまらない、世界にただ一人の彼女の友人。 「アンタのせいでッ!先輩がッ!」 「待って、どういうこと!?」 「先輩に嫌がらせするだけじゃ足りなくなったの!?この人殺しッ!!先輩を返せッ!!!」 「どういうこと……私、そんなことしない!!絶対しないよ!!」 「善人クラブの人が教えてくれたんだ!アンタが先輩に嫌がらせをしているのを見たって!!」 瞬間、少女は悟った。 善人クラブに罪を押し付けられたのだと。 善人クラブは種を蒔く、善人クラブに救いを求めることとなるように。 ならば、自分の知らないところで、善人クラブはあの子の彼氏に種を蒔いていたのか。 いや、それだけではない――罪を押し付けられた。 あの子が正常な判断が出来なくなるほどのことが、あの子の彼氏に起こったらしい。 それに乗じて――いや、その事象こそ、善人クラブが起こしたものなのかもしれない。 言わなければ、あの子に疑われるなんて絶対に嫌だ。 「違う……善人クラブが!善人クラブがやったんだ!!!私はやってない!何も悪くない!!」 「嘘を付くなあああああッ!!!アンタのこと一番の友だちだと思ってたのにイイイイ!!!」 「私じゃない!!私じゃないよ!!!」 少女はふたりとも泣いていた、互いが互いに心が絶望の底に沈み込んでいる。 愛しい人に髪の毛を引っ張られ、押し倒され、殴られ、憎しみの目で以て見られる少女の感情よ。 「私だって、あなたの事が好きだったのにイイイイイイイイ!!!!!」 少女が殴る。 少女が殴る。 少女が殴る。 少女が殴る。 少女が殴る。 少女が殴る。 「ジェノサイダーさん」 「ああ、まるで……マガツヒのシャワーみたいだ。別に殺さなくていいんじゃないかな?」 「私は人の憎しみも、絶望も、悲しみも、いらないわ。 ただ、喜びと感謝、信頼が欲しいだけなの……だから」 彼女たちは気づかない、屋上の扉から彼女たちを観察する一色達の姿に。 そして、彼女たちは気づけない。 「殺しなさい、善人クラブのために」 サーヴァントの真の速さは少女達には色付きの風が吹いたようにしか見えなかった。 ◆ 「違う……アタシは殺そうとしたんじゃない」 「そうね」 「わかって欲しかったの、アタシがどれだけ辛かったのか。 あの子はいい子だから、ほんとはとってもとってもいい子だから、だから……きっとわかってくれると思ったの」 「ええ」 「だって……あの子はアタシの親友だから……親友なのに……」 「…………」 「アタシ、あの子を殺したの……?アタシが……」 「大丈夫、大丈夫……ね?」 「死体は隠しましょう、貴方はあの子とは会わなかった」 「貴方には先輩が待っているのよ、大事な人が待っているのだから、捕まってはいけない」 「それに、あの子だって貴方が幸せになることを願っているはずよ、例え死んでも」 「大丈夫、きっと全ては上手くいくわ……だから、私を信じてくれる?」 「…………はイ、オねがイします。イっしきぶちょウ。アたしをたすけてくださイ」 善人クラブは、他人に必要とされることで存続している。 【クラス】ジェノサイダー 【真名】人修羅@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE 【属性】中立・悪 【パラメーター】 筋力A+ 耐久B 敏捷A 魔力A+ 幸運E- 宝具A 【クラススキル】 虐殺者:A- 世界は二度生まれなかった。 ジェノサイダーによって創世の可能性は摘まれ、そのために60億の人間とそれ以上の生命体に新たなる命は与えられなかった。 そのために、人修羅は虐殺者として最高ランクの虐殺者スキルを持つ。 間接的な虐殺であるため、この聖杯戦争においては聖杯の破壊あるいはルーラーとの戦闘において有利な補正を得るに留まる。 【保有スキル】 自己改造:A 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。 話術:E 言論にて人を動かせる才。 詐術や詭弁で共感を得て契約を取り付けるが、 往々に手痛い失敗もする。 神の加護:E- 創世の可能性を破壊した者に与えられた罰。 人修羅は神の恩恵をうけることはない、そのために神の下僕が敵となった場合、自身の全行動に対して不利な補正が加えられる。 また、彼は聖杯に何かを願うことはできない。 【宝具】 『始まりの禍魂(マロガレ)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人 常時発動型の宝具、人修羅という存在の根幹を成す宝具であるため魔力消費はほとんど発生しない。 人に悪魔としての第二の生を与える。 禍魂の最高位、マサカドゥスはこの聖杯戦争が東京ではないため持ち込むことは出来なかった。 『地母の晩餐(ガイア・レイジ)』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大補足:1000人 仮に何の準備もなく使用した場合、マスターは死ぬ。 準備していても死ぬかもしれない。 広範囲に渡って、自身の魔力の衝撃を大地に伝わせ天を割る。 万能属性ではないので、物理反射ならば跳ね返せるかもしれない。 超威力なのでクリティカルが出ても出なくても死ぬ。 『魔の軍勢』 ランク:- 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大補足:3匹 ジェノサイダーの仲魔を召喚するスキル。 ライダーのクラスで無いため使用不可。 【Weapon】 人修羅が生前扱った地母の晩餐を除く7つのスキル 至高の魔弾:敵単体に対し万能ダメージ(大) 真空刃:敵に対して1~4回の特大の衝撃ダメージ マグマ・アクシス:敵単体に特大の火炎ダメージ 絶対零度:敵に対して1~4回の氷結ダメージ(大)+氷結 ショックウェーブ:敵に対して1~4回の電撃ダメージ(大)+感電 吸魔:敵単体から魔力吸収(小) チャクラの具足:一日に1割の魔力回復 【人物背景】 世界を創成するために、東京を球状にして世界を崩壊させる東京受胎を、 偶然発生の中心である病院にいた事から他数名と共に生き残った少年。 ルシファーに魅入られ「マガタマ」を体内に寄生させられる事で悪魔へと変貌する。 悪魔が巣食うボルテクス界となった東京をさ迷い、世界の在り方を示す様々なコトワリに触れ、 そして、全てのコトワリを拒み、世界創世の可能性を無くした。 【サーヴァントとしての願い】 無し 【マスター】 一色@絶叫学級7巻(善人クラブ) 【マスターとしての願い】 世界中に善人クラブの善意を広げたい 【weapon】 善人クラブ:聖杯戦争に直接用いることは出来ないが、校内での工作に関して協力を要請することが出来る自身が部長を務めるクラブ。 【人物背景】 メサイアコンプレックスの少女、人間の知恵とは偉大なもので助けを求めている人間がいないのならば助けを求めるように仕向ければよい。 善人ではあるので、助けを求められたら助ける。ただし、そんな邪悪な誘いには勧誘禁止しないかもしれない。 【方針】 善人クラブとして活動することで人修羅にマガツヒ(人情の感情エネルギー)を献上しつつ、その内地母の晩餐ブッパ。
https://w.atwiki.jp/girlwithlolipop/pages/45.html
天本玲泉&アーチャー ◆lHaWUMA7LM ――――幸せになりたい、と。 生まれて初めて、少女は涙を零した。 ◆ 日の沈む街の中で、家が赤く染まっていた。 夕日の赤だと思っていたものに、黒が混ざり始めた。 背負ったランドセルと同色の赤から、家を染まっていた赤は黒く濁りだし、やがて、それが赤でないことに気づいた。 それは火だった。 パチパチと、空気を弾く音が耳に届き始めた。 意味が分からなかった。 母は、母は無事なのだろうか。 父の顔も知らぬ少女にとって、母は唯一の家族だった。 燃え盛る家へと駆け出すが、すぐに駆けつけていた消防団のおじさんに止められた。 必死で叫んだ。 蒸発した父親と頭のおかしな祖母を持つためか、普段は寡黙と言ってもいいほどの少女。 その少女の叫びに、周囲が意外そうな表情を形作った。 母の名を叫び、叫び、叫び。 その叫びも、少女の声量では空気を弾き木を燃やし尽くす火炎音に掻き消された。 ガタン、と。 大きな音が響き、屋根が崩れ落ちた。 少女が首を大きく曲げてようやく見えていた屋根は、崩れ落ち、少女の目線と同じ高さに瓦を落とした。 少女は消防団員に問いかけた。 『母は?』 母は暗い女性だった。 仕事以外では他人と関わることもなく、少女と短く語り合うだけで生きている人間だった。 今日、仕事は休みだ。 ならば、まず間違いなく室内に居る。 だからこそ、少女はここまで取り乱したのだ。 まず、間違いなく、居る、はず――――だが。 それでも、ひょっとしたら、自宅に居なかったかもしれない。 可能性は0ではない。 少女は縋るように、消防団員にもう一度問いかけた。 『母は……どこですか?』 万が一はなかった。 母の遺体が見つかった。 少女には、最初はその遺体が母だと分からなかった。 黒く炭焦げた体は、しかし、わずかに肉を残していた。 肉は皮膚を食い破り、露出している。 沸騰した血が血管を破ったのか、露出した肉は歪な形をしていた。 人ではなく肉に見えたそれは、母の遺体だった。 それが母だとわかったのは、母が残していたロケットだった。 ロケットの中身を一度だけ盗み見たことがある。 蒸発して少女と母を残して消えた父と、少女を残して肉となった母と、何も分からずに眠る赤子の少女の写真だ。 『……』 それは、つまらないほどの日常の中に起こった、一つの異変に過ぎなかった。 ただ、その異変は偶然じゃなかった。 焼身自殺だった。 心神を侵した母は、少女を残して一人だけ消えていった。 母にとって、少女とは残しても良いものだったのだ。 少なくとも、少女は幼心にそう感じた。 残された少女は祖父母に引き取られた。 島では、少女の両親の話は禁忌となった。 少女は、泣くことを辞めた。 母と少女を残して勝手に消えた父と、少女を遺して勝手に消えた母に、屈しているようだった。 泣くことでは、幸せになど来ない。 だから、絶対に泣いてなどやらないと決めた。 泣くことを辞め、いつか晴らすことだけを夢に見て。 少女、天本玲泉は笑みを顔に貼り付け続けた。 ◆ 「呪いですね」 ニコニコ、と。 少女、天本玲泉は笑いながら言った。 少年、小波四郎は間の抜けた顔で玲泉を眺める。 呪い。 本土から、海の向こうからやってきた少年を契機にして起こった異変。 日ノ出高校が甲子園に出場しなければ、日ノ出高校野球部の部員は『神隠し』に遭う。 神隠しに遭った者は、人々の記憶から消え去る。 呪いをかけられた当人である四郎と、呪いをかけている者以外は。 誰も覚えていないのだ。 「つまり……甲子園に行けってこと?」 曰く、戦後生き残ってやっと帰ってくるところを船が難破して死亡した若者達の呪い。 曰く、戦争が終わってようやく野球が出来ると喜んでいたのに急にその喜びを奪われたものの呪い。 曰く、自分たちが出来ない野球をやれるのに腑抜けて真面目にやらないものへの怒りによる呪い。 曰く、その呪いを解くためには、真面目に野球へと取り組んで、甲子園に出場すること。 「お祖母様の言うとおりだとすると、そうなります」 「無茶だ!」 四郎は叫んだ。 甲子園とはそんな簡単なものではない。 実力だけではなく、運も必要なものだ。 今の四郎には、今の日の出高校野球部には実力も特別な運もない。 行こうと思ったから行けるものではないのだ。 「でも、行こうと思わなければ行けないもの。 そうではないですか?」 「……そ、そうだけど」 四郎は困ったように眉を寄せた。 玲泉は笑った。 悪意というものを、四郎は感じなかった。 釣られるように、困ったように、四郎は笑った。 笑顔に釣られて笑顔になり、仕方ないから、これから頑張れるだけ頑張っていこうと思った。 愚痴を言ってもしょうがないと、そう思った。 ――――翌朝、玲泉は日の出高校の部室に火を付けた。 部室も用具もなくなった日の出高校野球部は、四郎を除いて部員が居なくなった。 ◆ 玲泉は、祖母が嫌いだった。 優しかった祖父とちがって、祖母は厳しかった。 いや、厳しいだけならばよかった。 ただ、優しかった祖父を御座なりにして、若いころのロマンスばかり夢に見ていた。 ロマンス――――戦争に帰ってこようとしていた恋人が、難破によって死んでしまった事実。 いい年をして、いや、いい年になってまで悲劇のヒロインを気取っているのか。 あれだけ優しい祖父が居て、何が不満なのか。 玲泉は、祖母が嫌いだった。 祖父が亡くなってからは、それがさらに強くなった。 だから、『邪魔』をした。 『日の出高校野球部に呪いをかける』ことで、『日の出高校野球部を野球へと真剣に取り組まそう』としている祖母を。 玲泉は『邪魔』をした。 日の出高校野球部が甲子園に出たら、亡くなった恋人が喜ぶというのだろうか。 後輩が野球に対して真剣に楽しんでいれば、亡くなった恋人が喜ぶというのだろうか。 不快な感情が、玲泉を襲った。 ――――まずは、部室に火を付けた。 そもそもとして、四郎以外の呪いを認識していない人物は必死ではない。 部室も用具もなくなれば、野球を辞めてしまうだろう。 玲泉はそう考えた。 だが、野球部は再建した。 四郎が部員集めに奔走したからだ。 問題はなかった。 練習の期間を短くすることが出来た、後は一年と半年もない。 四郎の言ったとおり、『出ようと思って出れる』ようなものではないだから。 ――――次は、一回戦を勝ち抜いた野球部に笑いが止まらなくなるきのこを匿名で差し入れた。 試合当日、部員は病院に運び込まれ、不戦敗となった。 二年目の秋のことだ。 これで、残りは三年目の夏しか残されていない。 祖母は、日に日に弱っていた。 神隠しの呪いをかけることから生まれる負担が、祖母の身体を襲いかかっているのだ。 恐らく、近いうちに死ぬだろう。 ◆ ある日の事だった。 「俺は、天本さん好きだからさ」 何の気もなしに、玲泉は四郎から告げられた。 相変わらず困ったように笑う四郎を前にして、いつもの笑顔を作ることも忘れた。 「だから、付き合ってください」 呆けた顔を崩すことが出来ず、ただ、時が流れた。 四郎の笑みが崩れてきた。 断られた、と思ったのだろうか。 「……あっ」 その時、玲泉の目に、一つの生き物が映った。 死にかけの猫だった。 四郎の告白を一度置いておいて、玲泉は猫を抱えた。 「……車に、惹かれたんですね。 まだ、生きてはいますけど、このケガでは…… 家に、連れて帰りますね」 か弱く震えていた。 震えが止まるのも近いことだと、玲泉は分かった。 玲泉は、困ったように四郎へと顔を向けた。 「ああ、うん、一緒に行くよ」 逃げたと、思われたかもしれない。 事実、逃げはあった。 それでも、この死にかけの孤独な猫を放っておくことが出来なかった。 なるべく、揺らさないように抱えて神社へと向かう。 「なんじゃ? 死にかけの猫なんぞ持って帰ってきて。 さっさと殺してやったほうがそいつのためじゃぞ」 その様子を見た玲泉の祖母、不吉ババアは冷たく言い放った。 瞬間、四郎の頭に血が上る。 「なっ……! そんな言い方――――!」 「気まぐれです」 「えっ?」 ただ、その怒りをぶつける前に、玲泉の言葉が被さった。 不思議そうに、四郎は玲泉を見た。 普段の笑顔が張り付いている。 仮面のようだった。 「この猫の生きている残りの時間は、苦しみだけ。 ですから、これは優しさではなく気まぐれです」 四郎は、玲泉を眺めた。 本気で言っているようだった。 「……フン。勝手にせい」 不吉ババアはいつもの調子で背を向けた。 海の見える場所へと向かう。 四郎は、死にかけの猫を抱える玲泉に隣り合って座った。 「………そろそろ、ですね……お休みなさい」 眉を寄せて、哀しみの表情を作った。 笑みのままでも、玲泉は悲しんでいた。 四郎は、言葉が零れた。 「本当に、気まぐれなの?」 聞いてはいけないことだったのかもしれない。 それは、玲泉の自分でも自覚していない部分に触る言葉だから。 「はい。 こうして死ぬときに、誰かがそばに居てくれるのは良いものかと。 そう思ったものですから」 玲泉は本気でそう言っていた。 これは優しさではない、と。 自分にそう言った感情はないのだ、と。 四郎は、耐え切れずに聞いた。 「それが、優しさじゃないのかな」 玲泉は、一瞬笑みが止まった。 「……小波さん、この猫を埋めるの、手伝ってもらえませんか」 四郎は頷いた。 小さな穴を作り、その猫を埋めた。 やがて猫の遺体は栄養となり、他の植物の一部となる。 土に帰るの生命は、決して一人にはならない。 「……その、さっきの答えですが」 ぴくり、と。 四郎が震えた。 玲泉も震えた。 少年と少女は震え、顔を動かした。 震える瞳と瞳が交錯した。 玲泉の唇が、ゆっくりと動いた。 「よろしく、お願いします……四郎さん」 ◆ 「いやだ、俺は……俺は……! 天本さんと、幸せに――――!!!」 . ◆ 「ハァ……ハァ……」 表情は作れなかった。 テレビは、慈悲もなく結果を発表するだけであった。 「所詮、ここまでか」 玲泉の祖母、不吉ババアと島民から嫌煙されている老婆は倒れ込みながら呟いた。 玲泉は側で同じくテレビを眺めている。 笑顔の仮面が、わずかに崩れていた。 甲子園の出場を決めたのは、日の出高校はなかった。 日の出高校は、甲子園に出場できなかった。 つまり。 小波四郎は。 神隠しに――――。 「ゲフッ、クッ、フォ!!」 その思考を止めるように、祖母が苦しそうに呻いた。 呪いをかけすぎたことが原因で、ただでさえ弱っていた身体に限界が訪れたのだ。 このままでは、死んでしまうだろう。 玲泉は無意識に電話を手にとった。 「すまんなぁ……廉也さん、すまんなぁ……日の出高校の名前を……甲子園に連れて行けず……」 祖母は苦しそうに呻きながら、誰かに謝り続けている。 その言葉を聞いて、電話を取る手が止まった。 憎しみではない感情があった。 哀れみにも似た、それでいて哀れみとも違う感情だった。 苦しそうでありながら、申し訳なさそうでありながら、どこか、満たされた顔だった。 「…………」 祖母は、最後に夢を見れたのだ。 かつて愛した恋人と『酷似した少年』が野球をやっている姿を見れて。 小波四郎の姿に、かつての恋人を重ねた。 その少年が必死に野球をすることで、どこか、理不尽で醜悪な満足を覚えていた。 ただ、玲泉は不思議とその姿を憎いと思わなかった。 ようやく、救われたのだとすら思った。 そもそも、自分の妨害がなければ、少年はもっと練習が出来た。 『少年』から『あと一歩』を埋めるための練習を奪ったのは、『少女』なのだ。 四郎が消えたことで、祖母を恨むのは見当違いなのだ。 祖母は、死んだ。 玲泉は、医者に電話をかけた。 葬儀をすました翌日。 神社は無人となっていた。 島民の間では、可哀想な少女の話は禁句となっていた。 島民の間では、日の出高校野球部はとうの昔に廃部になっていた。 神隠しは、人の記憶から少年の事実を奪っていった。 神隠しは、人の歴史から少女の事実を奪っていった。 少女には、何も残されていなかった。 だから、何も残さないことに決めた。 蒸発した父は、すぐに見つかった。 少女は、何も残さないために動き出した。 ◆ 「おじ様は、ご家庭をお持ちなんでしょう?」 『嫌なことを聞く』と言った意味合いの言葉を返してきた。 誘ってきたのはソッチのほうだ、という意味合いを持った言葉でもある。 玲泉は笑った。 泣いているようにも見える笑みだった。 何時頃からか、そんな笑みしか出来なくなっていた。 男にとっては、そんな笑みが妙にエロティックで、劣情をそそった。 「悪い人ですね」 ハハっと、男は笑った。 男は妻と子供を愛していたが、どうしようもないほどのセックス依存症だった。 女性を孕ませることに偏執的なまでの執着を持った男だった。 虚言癖の、セックス依存症。 今回の家庭でようやく落ち着いたように思っていたが、それは消えていなかった。 「本当に……悪い人」 そもそもとして、誘ってきたのは少女のほうだ。 セックスに対する興味を口にして、セックスパートナーとしての関係を求めてきた。 男は断らなかった。 妻に対する負い目も感じはしたが、セックスは死ぬほど好きだったからだ。 現に、今も玲泉の手首を掴んで、ベットに押し倒して顔を近づけた。 だから、玲泉のその言葉を聞くまでは、何の反省もしていなかったのだ。 「血を別けた娘の処女を奪って、まだ性交を続けようるだなんて」 さっと、男の顔が青ざめた。 男の唇が動いた。 『あ、ま、』まで動いたところで、封じるように玲泉は口づけを行った。 中年特有の臭気が漂う息が口内に入っても、玲泉は笑っていた。 そして、泣いてるようにも見える笑みを浮かべたまま言葉を奪った。 「覚えていませんか、『天本玲泉』って名前?」 男の唇が震えていた。 玲泉はまだ嘲笑っていた。 「お母様からは、貴方が名づけてくれたと聴きましたよ」 トン、と胸を軽く押した。 男は大げさなほどに尻もちを付いた。 玲泉は、まだ嘲笑えていた。 「私は古臭くて大っ嫌いだから、『天本ちゃん』のままでいいですけど、まあ、それはそれとしてですね」 その瞬間、玲泉の笑みが消えた。 母を亡くしてから、ずっと貼り付けていた仮面が取れた。 不自然なほどに、のっぺりとした顔だった。 懐から、コンドームを取り出す。 同時に、ピンを取り出し、コンドームを貫いた。 ◆ 「私、赤ちゃんが出来ました」 「もちろん、堕ろしますので手術代をお願いしますね……お父様」 ◆ わー、わー、と。 少年の声が響き渡る。 なんてことはない、河川敷。 当然のように少年たちが白球を追いかけている。 懐古の念が湧き上がる。 もう、覚えても居ない、覚えることが出来なくなった少年への想いが、理解も出来ず蘇る。 カキン、と。 金属バットがボールを叩く音が響く。 視界が、揺れた。 破滅へと向かうことに、どこか憧憬を抱いていた。 破滅することでしか、自分は救われないのではないかと、本気で思っていた。 ただ。 『本当に、気まぐれなの?』 少年が遺したあの一言だけが、少女の中で生きている。 覚えているはずのない言葉なのに。 神隠しの『共犯』であって、『主犯』ではない少女は、神隠しに遭った人間のことを覚えていない。 なのに。 『それが、優しさなんじゃないのかな?』 少女が忘れてしまったはずの言葉が、それでも消えずに胸のうちに残っている。 誰かに優しくされたことを、誰かを好きになったことを。 少女は忘れてなどいなかった。 ひょっとすると、別の形で幸せになれたのではないだろうか。 満たされないのは、こんな復讐を望んでいたわけではないからではないだろうか。 本当は、祖母のことを好きだったのではないだろうか。 本当は、父を不幸になどしたくなかったのではないだろうか。 本当は、幸せな人を妬んでいただけなのではないだろうか。 少女は、涙が零れていることに気づいた。 腹部に、大きな穴が空いたような気がしている。 初めから何も無いと思っていたのに、何を失くしたのだろうか。 初めから何も無いと思っていたのに、なんでこんなにも喪失感が襲い掛かってくるのだろうか。 涙は止まらなかった。 少女は、涙を止めなかった。 もう、生きている残りの時間は苦しいだけだ。 なのに、自分の側には誰もいない。 他のだれでもない。 側に居てくれたかもしれない誰かを、自分が消したのだ。 18の誕生日だった。 側には、誰も居なかった。 少女は、泣いた。 ――――幸せになりたい、と。 生まれて初めて、少女は涙を零した。 ◆ 「ヤマダくん、実はね、俺は別の世界から来たんだ」 「別の世界……海の向こうでやんすか?」 「空の向こうさ……太陽の昇る島なのさ」 カラカラと。 笑いながら勇者は友人に語りかけた。 勇者、と言っても、彼には劇的な力はない。 時には龍の潜む山から魔宝を見つけ出し。 時には呪法に満ちた砂漠の遺跡から魔宝を見つけ出し。 時には魔王の棲む城に足を運んで交渉の末に魔宝を手にした。 彼は怪物のような強さを持っているわけではなかった。 国の誰よりも頼りになり、間違いなく指折りの戦士であった。 それでも、彼はあくまで人間の範疇にあった。 そんな彼が勇者で在り続けたのは、生存に長けていたからだ。 ただ、生き延び続けた。 戦争もないこの国で、平和を守るために生き延び続けた。 「いろんなことを残してきたからさ」 空を眺めながら。 太陽の昇る朝空を眺めながら。 その先に、辿りつけない故郷を見ながら。 勇者は呟いた。 「いつか帰りたいな…… 俺じゃないと出来ない、なんて言わないけど……それでも、幸せにしてあげたかったんだ。 もう、名前も顔も覚えてないけど……ね」 それは目標ではなく夢。 辿りつけないことを認識した上で見る、理想の話。 勇者は諦めている。 この異世界で生きると、諦めたのだ。 故に、もはや故郷に遺した父の顔も名前も覚えていない。 故に、もはや故郷で出会った初恋の少女の顔も名前も覚えていない。 勇者は目の前のゴーレムを撫でた。 それでも、忘れていないものがあった。 「キャッチボールしようよ、ヤマダくん」 「えー……なんでオイラが野球人形のまね事なんか……」 口ではそう言いながらも、ヤマダは立ち上がった。 勇者の秀でた箇所。 それは投石とも呼ばれる、『投げる』という動作にあった。 これで爆弾を投げて、投げて、投げて。 時には爆弾魔の異名をもらいながらも、モンスターを倒し続けた。 そうだ、野球だ。 かつてあったもの。 かつて『少年』であった勇者と、もはや名前を覚えていない『少女』を繋ぐもの。 みっともないほどに、今の勇者とかつての少年を『繋ぐもの<野球>』に縋り付いている。 野球人形を、優しく撫でた。 これは勇者伝記の、その一文。 キングダム王国の危機を幾度もなく救った、勇者の出生の謎。 曰く、勇者は日出づる島より訪れたとのこと。 その一端を察することが出来る、なんてこともないお話。 ◆ 「此度の聖杯戦争において、アーチャーのクラスにて現界した」 「まずは、問おう――――君が、俺のマスターかい?」 . ◆ 斯くして。 仮面の少女は聖杯に導かれ。 異界の勇者は少女に誘われた。 少女と勇者の視線が交錯する。 お互いに、懐かしい感情が蘇った。 だけど、それだけ。 少女は自らの意思で少年の存在を消して。 勇者は自らの諦観で少女の存在を忘れた。 それでも、残ったものがある。 勇者は、ふと、視界が潤んでいることに気づいた。 少女は、ふと、頬が濡れていることに気づいた。 失ったものは取り戻せないかもしれないけど。 ――――忘れてしまったものならば、いつか思いだせるだろう。 【クラス】 アーチャー 【真名】 勇者シロウ(小波四郎)@パワプロクンポケット4 RPG風ファンタジー編 【パラメーター】 筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:D 幸運:D 宝具:C+ 【属性】 中立・中庸 【クラススキル】 単独行動:C マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。 対魔力:C 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。 【保有スキル】 心眼(真):E 修行・鍛錬によって培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。 異世界に放り出された勇者が、生存のために行った冒険の末に身につけた生存技術。 仕切り直し:A+ 窮地から脱出する能力。 不利な状況であっても逃走に専念するのならば、相手がAランク以上の追撃能力を有さない限り逃走は判定なしで成功する。 勇者が勇者となり得た原因は、ひとえに『生存』に長けていたためである。 被呪体質:D あらゆる呪いに対して不利な判定が働くバッドスキル、呪いと名の付く物には対魔力スキルを発動することが出来ない。 神隠しによって(便宜上)『異世界』と呼べる世界へと飛ばされたことで、勇者は被呪体質を持っている。 【宝具】 『日出づる島より訪れし勇者(ザ・ブレイブ)』 ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人 勇者として成した伝承において、必ず異なった武装と機転を以って伝説を作り上げた逸話が幻想と化した宝具。 勇者は特別な神剣・魔槍・聖弓のいずれも所持しておらず、また、特殊な戦車を駆ったこともない。 己の肉体と唯一常備する無銘の剣、使い捨てを前提した爆薬、そして、己の機転と経験を以って伝説を成した。 その逸話が転じて、彼が所持する武装は全てEランク相当の神秘が施される。 『炸裂する幻想(ブレイブ・ファンタズム)』 ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:5人 ドラゴンを爆弾によって打ち払った逸話が幻想と化した宝具。 勇者は武装を意思によって『爆発』させることが出来る。 『神秘を爆発させる』というよりも、『物体をEランク相当の爆弾に変える』という能力。 つまり、どれだけ神秘の込められた物体を爆破させても、『Eランク相当』の神秘へと劣化する。 そのため、場合によっては魔具を用いて行う通常の魔術よりも大きく劣る威力になり得る。 『野球人形(キングダム王立野球軍) 』 ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:100 最大補足:9 野球をするための、人型ロボット。 上記宝具で四肢・胴体・頭部の野球人形のパーツを集め、組み上げることで完成する。 野球以外の目的で動くことはなく、戦闘の役には立たない。 勇者が遂にはその生涯で帰還することが出来なかった、『日出づる島』に残してきた未練の塊のような宝具。 この聖杯戦争を戦う上でも、全く役に立たない代物である。 【weapon】 『無銘・剣』 『勇者』の肩書が『冒険者』であった頃から使っている剣。 携帯に優れ、戦闘に限らずサバイバル生活における様々な局面で扱う。 『手投げ式爆弾』 龍が棲む山の主や王国を襲った巨大ゴーレムを撃退した際に使用した手投げ式の爆弾。 【人物背景】 キングダム王国を幾度となく救ってきた勇者。 秀でた戦士ではあるが、特殊な武装や技術は持たない。 それでも英雄となれたのは運か、それとも目には見えない技術によるものか。 装甲車バトルディッガー編では伝話として代々彼の活躍が語り継がれていることが確認できる。 その正体は、別世界で神隠しに遭ってファンタジー世界に飛ばされた野球少年である。 本土の都会から日の出島に引っ越してきた野球少年。 誕生日は6月の第1週。 高校は元々大安高校に通っていたが、父親の都合で日の出高校に転校してきた。 引っ越してきて早々にあけぼの丸の慰霊碑を倒してしまい、そのせいで「甲子園で出場しないと解けない神隠しの『呪い』」を受けることになる。 その呪いの結果、一時は日の出高校野球部解散の危機にまで陥ってしまうが、一から部を立て直すことに成功する。 満を持して、最後の夏に挑むが敗北し、神隠しに遭う。 この世界から『小波四郎』という人物は消え去ってしまった。 【サーヴァントとしての願い】 元の世界を見たい。 【基本戦術、方針、運用法】 あらゆる武器を爆弾に変えて投擲することが出来る。 また、トップクラスの仕切り直しスキルを所持しているため、ヒット・アンド・アウェイの戦法が主となる。 【マスター】 天本玲泉@パワプロクンポケット4 日の出高校編 【マスターとしての願い】 幸せになりたい。 【weapon】 なし。 【能力・技能】 特別な技能は持たない。 【人物背景】 主人公の同級生、いつも笑顔で物静かな優等生タイプの女の子。 日の出神社で巫女として手伝いながらセツと二人暮らしをしている。 二人暮しの理由は、まず最初に父親が玲泉が生まれる前に蒸発。 その後、玲泉が9歳のときに母親が焼身自殺をしたことにより、両親を失う。 このせいか、彼女の両親の話は日の出島で禁忌とされており、周囲の人物も中々話そうとしない。 実はこの『父親』はメガネ一族の父親と一緒、つまり彼女もメガネ一族の一人である。 そして、矢部明雄や、同作に登場する山田平吉とは異母兄妹にあたる。 山田が教室で矢部明雄の話をした時に、玲泉が反応を示すイベントがあるが、 これは「『父親』の苗字は『矢部』であると、生前の母親から聞かされていた」故の反応である。 なお、この時点では自身と山田の関係については知らなかったようである。 いつも笑顔でいる理由は「表情が不器用だから」「笑っていれば幸せがくるかもしれない」とは本人の弁。 ただし主人公(4)は彼女にした場合のアルバムで、「あの笑顔は他人から自分を守る為の盾だった」と回想している。 また、パワポケダッシュのキャラクター図鑑においても「いつも、わらっているのは、自己防衛(じこぼうえい)のため」と明記されており、 主人公の見方は正しかったと示唆されている。 祖母のことを憎んでいると口にはするが、心の奥では嫌ってはいない。 歪んでしまった『良い子』であり、幸せは自分から失ってしまっただけ。 【方針】 幸せになりたい。
https://w.atwiki.jp/girlwithlolipop/pages/43.html
シルクちゃん ランサー ◆ACfa2i33Dc 表紙をもう一度よく眺めてみると、二匹の蛇が描かれているのに気がついた。 一匹は明るく、一匹は暗く描かれ、それぞれ相手の尾を咬んで、楕円につながっていた。 そしてその円の中に、一風変わった飾り文字で題名が記されていた。 はてしない物語 と。 ――ミヒャエル・エンデ作『はてしない物語』 ‡ 【1】 この街の端。絶対領域の境界線、隣街との境目に、一人の少女が住んでいる。 少女の名前は誰も知らない。家の前には「奉野」という表札がかかっていたが、それが少女の本当の苗字なのか、そうだとしても下の名前は何なのかわかる者はいなかった。だからいつも被っているシルクハットから、周囲からは「シルクちゃん」と呼ばれていた。 少女は一人だった。 何故一人なのかは誰も知らない。もうずっと前からこの街に住んでいる――と思われていて、誰もその理由について無理解だった。 他ならぬ、少女自身でさえ。 【2】 ある日のこと。 部屋の掃除をしていた少女は、本棚に見覚えのない本があることに気がついた。 「……『旅は続く 世界の謎その全てを解き明かすまで!』?」 表紙にはそう印字されているだけ。装丁はあかがね色で布張り、中央に尾をくわえた蛇の紋章が捺されている。 ただそれだけの、見知らぬはずの一冊。――だというのに、少女はその本に心を奪われていた。 (いや……違う。私はこの本を知っている) 表紙を開く。 熱に浮かされたように、少女は頁を一心に捲る。 【3】 星の川。 【4】 魔法使いの月の国。 【5】 勇者と忘却の軍勢の戦いの記録。 【6】 本の中で、少女の心は旅をした。 長い長い旅をして、そうして、全てを思い出したのだ。 ……けれどもこれは別の物語、いつかまた、別の時に話すことにしよう。 【7】 その日から、少女の家の住人は二人――いや、三人になった。 ◆ ――忘却に抗う者は、愛する者を失う。 だから少女が二度目の忘却に抗った時、少女はまた、それを「思い出す」という形で愛する者を失った。 ◆ 日が落ちる。 30度傾いた夕日が街を照らして、黄昏た橙色へと染めていく。 無機質なビルディング、乾いたアスファルト、点き始めた街灯。 そしてそれらを一望する鉄塔。 その上に一人、少女は佇んでいた。 「この街は知らない街だけど――私が憎んだあの国に、よく似ているよ」 そう呟いて、少女は街を見下す(みおろす)。 立ち並ぶビル。 行き交うスーツ姿の灰色の人々。 何処(いずこ)か知れない、忘却された街。 その全てが、少女が生まれ育った国とよく似ていた。 「だから、聖杯戦争に勝ったなら……まずはこの街を焼いてしまおうと思う。あの国の奴らへの復讐の踏ん切りに」 ――だから、少女は街を見下して(みくだして)いた。 何もかもを忘却し、少女の愛する祖父を殺した『忘却の国』。 その似姿であるこの街は、少女にとって憎しみを煽る対象でしかない。 憎しみ。悲しみ。怒り。 少女の瞳の構成要素はつまり、そういったマイナス要素の感情の塊である。 どこにも行き場のない――それ故に、暴走するより他にない。 「私は聖杯を手に入れて、忘却王と忘却の国に復讐する」 呟くような言葉と同時。 少女の隣に、像が形となって結実した。 「――こんな所に居たか。探したぜ、マスターよ」 現れたのは、額に鉢金、胴に数珠を巻いた、比較的軽装な東洋の武者姿の男。 髪は白く、髭を生やした体格のいい初老だ。 「あまり我から離れるな。しつこく命令しても鹿角がうるさいんだが、あまり離れててもアイツ此度の主は我をないがしろにしてるのかって不機嫌になるからなあ」 「ランサー」 ぼやくような初老の男――ランサーに、少女は、しかし目も向けずに告げる。 「そろそろ始めよう。時期から考えても、そろそろ本格的に聖杯戦争の始まる頃だ。 久々に家族がいるような気分を味わえたから、感謝はするけれど」 「別にそういうつもりじゃなかったんだがなあ、我」 ともかく、とランサーは少女を見て言った。 「我にも、鹿角にも願いのようなものはない。故にマスターの望みに異論はないが――いいのか、願いは『復讐』で」 少女の願いが、祖父を奪われた復讐ならば――逆に祖父を生き返らせ、もう一度やり直すという願いは持たないのか。 そう言外に問うたランサーに、しかし少女は首を振る。 「もうやり直せない。爺ちゃんはあの街にはいないし――私の居場所もあの街にはなかった」 空想を忘れた忘却の国に、空想の世界に生きる少女の居場所はない。 それは祖父が生き返ったところで明らかなことで、何より少女には、今更――祖父と出会う、という想像/創造ができなかった。 居場所がなく、過去も、未来も想像できない少女の願い。それは最早、破滅しかない。 「そうかよ。……まあ、二君ではあるが、主の命だ。三河の武士としちゃ、従うしかないわな」 それを聞いたランサーは嘆息。そして、こう言った。 「本多・忠勝……その名の通り、主の命に従い、忠、勝つ。それが我の仕事だ」 【クラス】ランサー 【真名】本多・忠勝@境界線上のホライゾン 【パラメーター】 筋力B 耐久E 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A 【属性】 秩序・中庸 【クラススキル】 対魔力:D 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。 【保有スキル】 心眼(真):B 修行・鍛錬によって培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。 見切り:B 敵の攻撃に対する学習能力。 相手が同ランク以上の『宗和の心得』・あるいはそれに類するスキルまたは宝具を持たない限り、同じ敵の一回見た技に対して追加の回避判定を行う。 但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃はこれに該当しない。 本多・忠勝が生涯において参加した合戦は大小合わせて57回に及んだが、いずれの戦いにおいてもかすり傷一つ負わなかったと伝えられている。 また、動きやすさを重視し軽装を好んだという。 無窮の武練:B 東国無双。 ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。 心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。 【宝具】 『蜻蛉切』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:30人 本多・忠勝が有する神格武装。穂先に乗ったトンボが両断されたことが名前の由来となっている。 全長3.6メートル、40センチの刃を持ち、伸縮機構により最大6メートル~最短1メートルにまで長さを調節可能。 神格武装としての能力は「穂先に映した対象の名前を結び、割断する」。 能力を起動する際には「結べ、蜻蛉切」という掛け声を必要とする。 通常駆動では30m射程内の物体や術式を結び割り、上位駆動では事象さえも結び割ることが可能。 作中では上位駆動で「警備」や「方角」を割断している。 非常に強力ではあるが、割断する物体が大きく、そして遠い対象であればあるほど魔力を消費する。 上位駆動(規模の大きな割断の他、事象の割断を含む)に至っては、魔力が万全な状態であっても2、3回が限度だろう。 更に、『クラスにより己の真名を隠している』存在であるサーヴァントに対しては、真名を知っている相手でない限り割断するのは『クラス名』に過ぎず、そのダメージは浅いものとなる。 『最早、分事無(もはや、わかたれることはなく)』 ランク:E 種別:対忠勝宝具 レンジ:- 最大補足:- 本多家付き自動人形・三河自動人形統括――そして、本多・忠勝の亡くなった妻の指輪を魂の核に使用した自動人形である鹿角(かづの)が常に(勝手に)宝具でありサーヴァントとして現界している。 自動人形である鹿角(ランサーの世界では、自動人形にも魂は存在するが)が一種のサーヴァントとして現界し、更にランサーの宝具と化している理由。 それはランサーが生前、鹿角の魂の核である指輪をその死の直前に呑み込んだ事により、英霊としての情報に鹿角の情報が混入したこと。 そしてマスターであるシルクちゃんが、『家族』に対して強い執着を持っていたことである。 本来ならば少数ならば訓練された戦闘員の部隊に対しても時間稼ぎを行えるレベルの戦闘力を持つが、主である忠勝がランサーという従者の召喚には縁遠いクラスである事、あくまでランサーについてきた魂の一部でしかない事などから、その戦闘力は戦闘員としては期待できないレベルにまで低下している。 自動人形の常として重力制御のスキルを持つが、戦闘に応用できるレベルではない。 またこの宝具が破壊された場合、魂の繋がった存在であるランサーも大きなダメージを受ける。 【weapon】 『蜻蛉切』 【人物背景】 『境界線上のホライゾン』における、本多・忠勝の襲名者。 妻は既に故人であり、本多・二代という娘を持つ。 東国無双であり、その名にふさわしく豪放快活な性格だが非常に子どもっぽいところもある。 しかし老いて尚その実力は健在で、聖連ですらその力を認め特殊予備役副長として認可している。 松平・元信の命を受け鹿角と共に新・名古屋城内の地脈炉を暴走させ、三征西班牙から派遣されてきた八大竜王・立花・宗茂と相対し、これを退ける。 その後鹿角の魂を宿した青珠と共に元信の元へ行き、妻の幻影と共にオーバーロードした地脈炉から放出される流体光に飲み込まれて消滅した。 ――サーヴァントとしての願いは特に持たない英霊だが、それでもシルクちゃんに呼び出されたのは、愛する家族を失った(ランサーの場合は妻、シルクちゃんの場合は祖父)こと、そしてその存在が擬似的に蘇った事があるという縁に関係していると思われる。 【サーヴァントとしての願い】 特にはない。 【マスター】 シルクちゃん@四月馬鹿達の宴 【マスターとしての願い】 復讐。 【weapon】 『魔法の羽ペン』 物語世界をそうぞうした賢者マツリヤの羽ペン。 物語に結末を付けるという力を持つ――が、物語の世界の外であるこの聖杯戦争ではある程度の神秘を持つだけの触媒でしかない。 【能力・技能】 『魔法』『そうぞう』 頭の中に思い描くこと。 既知の事柄をもとにして推し量ったり、現実にはありえないことを頭の中だけで思ったりすること。 『―していたよりずっと立派だ』『―がつく』 それまでなかったものを初めてつくり出すこと。 『―力』 神が万物をつくること。 『天地―』『―物』 かつて賢者マツリヤは、一握りの砂から時と宇宙と星を創ったという。 そのそうぞう領域から外れたこの聖杯戦争で、彼女が『魔法』を使えるかは定かではない。 【人物背景】 愛する祖父を殺された、どこにも行き場所のない少女。 【方針】 聖杯を手に入れる。 BACK NEXT -017 シュガー・カルト 投下順 -015 フェイト・テスタロッサ&ランサー -017 シュガー・カルト 時系列順 -015 フェイト・テスタロッサ&ランサー BACK 登場キャラ NEXT Happy Birthday! シルクちゃん&ランサー(本多・忠勝) 000 前夜祭 003 【>願う 何を? >幸せ 何が君の幸せ?】
https://w.atwiki.jp/teraumare/pages/44.html
【少女の呪い】 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします(新潟県)[] 投稿日:2008/09/13(土) 22 53 03.58 ID zDJ/U/Q10 これは、私が小学生の頃の話です。学校からの帰り道、真っ黒な髪を腰まで のばした女の子が、公衆電話の前に立っていました。その子が振り向いて 話かけて来た時に、その目が白く濁っていた事から、私は彼女が盲目である事 を知ったのです。その子は透き通った声で言いました「美加ちゃん、お葬式の 最中に悪いんだけど、私の代わりに電話をかけてくれる?」わたしは(何か 誤解されてるな)と思い乍らも、そこは突っ込まずに、それよりも彼女が何故 まよう事なく私の名前を言い当てたのか、知りたいと思いました。「どこか で、会ったかしら?」すると彼女はクスクスと可笑しそうに笑い、本を 読むように饒舌に語り始めたのです。「クラスが違うから、知らなくても 無理はないけど、アナタの同級生よ。貴方は一組で私は六組。廊下の端 と端ですものね。でも私は、ずっと前からアナタを知っていた…。 目の悪い人間ほど、声には敏感なものよ。アナタはとても綺麗な声で、クラス の人望も厚くて、よく皆の話題になってた・・・。だってアナタは優等生の 見本のような人ですものね。きっと私の頼みを聞いてくれると思ったの。 エゴイスティックな他の人たちとは大違い……」 なにかが狂ってるような気がしました。それでも私は、その少女の いう通りに、ダイヤルを回し(当時はまだダイヤル式の公衆電話でした)、 少女のいう通りに、受話器を渡したのです。 女の子は、電話の向こうの誰かと声を潜めて話しては、時々こちらを見て、 にっこりと笑いました。その電話が終り、少女が去った直後でした。私が、 途方も無くおそろしいものに取り憑かれていた事に気付いたのは。 理由を詳しく説明する事はできません。私の つまらない文章の意味を理解した者だけが、とり かれる。そ れが、この少女の呪いの 「破ぁ!!」ールなのですから。 【元ネタ】 これは、私が小学生の頃の話です。学校からの帰り道、真っ黒な髪を腰まで のばした女の子が、公衆電話の前に立っていました。その子が振り向いて 話かけて来た時に、その目が白く濁っていた事から、私は彼女が盲目である事 を知ったのです。その子は透き通った声で言いました「美加ちゃん、お葬式の 最中に悪いんだけど、私の代わりに電話をかけてくれる?」わたしは(何か 誤解されてるな)と思い乍らも、そこは突っ込まずに、それよりも彼女が何故 まよう事なく私の名前を言い当てたのか、知りたいと思いました。「どこか で、会ったかしら?」すると彼女はクスクスと可笑しそうに笑い、本を 読むように饒舌に語り始めたのです。「クラスが違うから、知らなくても 無理はないけど、アナタの同級生よ。貴方は一組で私は六組。廊下の端 と端ですものね。でも私は、ずっと前からアナタを知っていた・・・。 目の悪い人間ほど、声には敏感なものよ。アナタはとても綺麗な声で、クラス の人望も厚くて、よく皆の話題になってた・・・。だってアナタは優等生の 見本のような人ですものね。きっと私の頼みを聞いてくれると思ったの。 エゴイスティックな他の人たちとは大違い・・・・・・」 なにかが狂ってるような気がしました。それでも私は、その少女の いう通りに、ダイヤルを回し(当時はまだダイヤル式の公衆電話でした)、 少女のいう通りに、受話器を渡したのです。 女の子は、電話の向こうの誰かと声を潜めて話しては、時々こちらを見て、 にっこりと笑いました。その電話が終り、少女が去った直後でした。私が、 途方も無くおそろしいものに取り憑かれていた事に気付いたのは。 理由を詳しく説明する事はできません。私の つまらない文章の意味を理解した者だけが、とり かれる。そ れが、この少女の呪いの ルールなのですから。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/30644.html
こぼれたじゅんけつのにおい【登録タグ As'257G こ 曲 楢崎このみ 神威がくぽ】 作詞:楢崎このみ 作曲:As 257G 編曲:As 257G 唄:がくっぽいどPower 曲紹介 『不確定性ディストピア』収録曲。 歌詞 暗闇の向こうに埋もれた 儚い寝顔は清らかな 仮面を瑕付けたのは誰? 零れた純潔の匂い 科せられた咎の色 呪われた夢 微かに残る君 塗りつぶされた記憶辿り 流れ流れる雲に願う想いだけ 愛し愛され君に届け すれ違う幻の向こう側へ 届け届かぬ愛の果てまで 憎き憎しみの色めき立つ 記憶は遠く流れる 絡んだ群青の蜘蛛の糸 囚われの姫君 虜にし 吐息を熱く交じり合わせ 滴る愛欲の雫 立ち上る欲望の彩 酔いしれる夜 微かに香る星 秘められた想い染め上げ 幾幾重にも折り重なる欲望が 恋に恋焦がれ君を縛る 忘られぬ秘め事 二人を融かす 届け届かぬ愛の果てまで 憎き憎しみの色めき立つ 記憶は遠く流れる 科せられた咎が今 悪夢を彩り 微かな想い 夢 失くした純潔の誓い 遠く遠くに遠ざかる幸福憂い 満ちる満たされた欲望が 戻らない現実 ただ流されて 揺れる揺らめく心の叫び 愛し愛された時間はもう 記憶は遠く流れる コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/995.html
284 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/10(水) 02 52 01 ID qa1yn+0V 私が兄貴への思いを告げられずに、鬱屈した日々を送り続けて何年がたっただろうか。 窓の外を見れば、マンションの真下から藻岩山のてっぺんまで、この北の街は一面の雪景色に染まっている。 もうすぐ冬の街で始まるであろう恋人たちの季節。朝のニュース番組が盛んに喧伝するそれに私は一抹の嫉妬と侮蔑を込める。 「何がクリスマスイブのデートスポット情報だっつの、お台場ごと吹っ飛べ。畜生」 兄貴はカリカリになるまで焼いたベーコンを口に含みながら毒を吐く。 「モテないからって変な嫉妬しないの」私はトーストに白桃のジャムを塗る。 父さんは何も言わずに、黙々とバターを塗ったトーストを齧っていた。 やがて父さんはトーストとベーコンエッグの朝食をすべて食べきると、椅子にかけてあったコートを羽織りはじめる。 「今日、少し遅くなる」父さんはそう言って鞄を取ると、食堂の外へと出て行った。 どうせまた、母さんのところだろう。 本人曰く「終業時刻になると仕事が残っていても強制的に終わらせられる」職場に務めている父さんが遅くなると言うときは、決まって母さんのお墓に行く時だ。 父さんはよく母さんのお墓に行く。 なのに、それでもたまに母さんがそこにいるのように振舞う。 兄貴は父さんが静かに狂ってると言っているが、私はちがうとおもっている。 父さんはきっと、今もずっと母さんのことを愛しているんだと思う。 だから、母さんを忘れたくないがために、いつまでも母さんを感じれるように振舞って、母さんを愛していると言う事実を深く刻んでいるのだろう。 まるで手首を切って生きている証を刻みつけるように、そうやって生々しく母さんを刻みつけて、絶対に母さんを忘れないようにしているんだ。 私にはうっすらとだが、父さんの考えていることはわかった。 決して叶うことの無い、切なすぎる片想い。父さんは、私なんかよりもずっと深い悲恋を抱えているのだ。 「そら、俺たちも行くべ」 兄貴は私の分の食器も軽く流しで洗うと、食器洗浄機の中に突っ込む。 そして私たちはコートを羽織って家を出ると、すっかり冬の様相を呈した、雪の街へと踏み出した。 今日は十二月二十四日。世間ではクリスマスイヴとカップルたちが大手を振って闊歩するためのような日だが、私たちにとっては終業式と言う嬉しいイベントを兼ねた日でもあった。 夜のうちに積もった新雪を踏みながら、私たちは電停にたどり着く。 「兄貴」私は裸のまんまの兄貴の手を、きゅっと強く握った。「手ぇ、寒いでしょ」 「ん、ありがと」兄貴は頬を染めながら答える。 ここ数カ月で、兄貴は完全に私のことを異性としてみてくれるようにまでなっていた。 私の裏工作の賜物なのか、それとも元から私を異性として受け止めていてくれたのかは分からないが、私にとっては嬉しい半面、なぜか、どこか寂しい感じもしたのだった。 やがて、眩しいほどに朝陽を受ける雪を舞い上げて、深緑色のの連接車が滑り込んでくる。 私は兄貴の握った手を離すこと無く、連接車へと乗り込んだ。 285 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/10(水) 02 53 17 ID qa1yn+0V 「冴えない顔だな、千歳」 今年最後の放課後、まだ賑やかな教室の俺の席の付近の蒸気暖房に寄りかかっていた健史が言う。 「ああ」俺はふるふると手を振った。「センター試験が近いのが憂鬱でな」 「……それでもお前は第一志望C判定だろうが」 「C判定だからこそどう転ぶか怪しいんだよ……」 健史はぐっと伸びをして、蒸気暖房から体を離すと千歳の席の前を離れていった。 「……はぁ」俺は深くため息をつく。 センター試験、受験、そしてそらの事。俺の中での問題は山積みだ。 特に深刻なのはそら。 あいつはきっと完全に俺を異性としてみているのだろう。ここ数カ月の態度が、何よりの証拠だ。 そして、俺自身もそらを女として見始めている……。 『人を裏切るのは妹とセックスするようなものだ』 少し前にテレビの洋画劇場でやっていた、コメディ映画の主人公が確かそう言っていた。 有名洋画のパクリとバカらしい演出だらけの映画の中で、俺は主人公が真剣な様子で言ったそのセリフだけが何故か印象に残っていた。 直訳すれば、妹に恋愛感情を抱くようなヤツは人間の屑だ。と言うこと。 俺は果たして屑なのだろうか。それとも人間として踏みとどまっているのだろうか。 窓の外を見ると、白に染まった校門と電車通りがあった。ああ。深緑色のボギー車が今電停についた。 俺は配られたプリントを全て鞄に突っ込むと、席を立った。 無性にどこかに行って、静かに考えたい。そんな気分だった。 昇降口と校門を抜け、電停の前の赤信号で立ち止まる。 まるでタイミングを合わせたように、道路の端の方から路面電車が雪の電停めがけてゆったりと走ってくるのが見えた。 やがて信号が青に変わり、電停へとたどり着いた俺の目の前に深緑色の丸っこいボギー車が止まった。 俺は電車に乗り込み、まるで屍肉を見つけたハイエナのごとく我先に空席へと群がる生徒を横目に、つり革へと手を伸ばした。 電車はいくつもの電停に停車を繰り返し、ふと俺が気がつけば既に終着であるすすきのの電停に停車していた。 「全線定期券でよかった」 俺は電車を降りると、当てもなく、単に小腹がすいたと言う理由でそのまま近くのマクドナルドに足を運んだ。 どこかの動画サイトでさんざっぱらネタにされ続けてるピエロのポップに出迎えられると、俺はそのままカウンターの前へと進む。 「ホットアップルパイとフィレオフィッシュ。あと水ください」 俺はそれらを抱えて二階の客席へと上がっていく。 客席は多くの席がうまっており、中には同じ制服の連中も何人か混じっていた。俺は適当な席につくと、チーズバーガーの黄色い包みを開けて、噛り付く。 少し安っぽい味が口の中に残った。 「やっぱこんなんじゃそらの作る昼飯にはかなわんか……」 もしかすれば今頃そらは家で俺の分の昼食も作ってるかもしれない。 何も言わないでふらっと出歩くなんて、悪いことをしたな。そう思いながら俺はチーズバーガーを食べ切り、そのまま次のフィレオフィッシュへと手を伸ばす。 「あれ?千歳さん?」 フィレオフィッシュを半分ほど食べたところで、俺は突然声をかけられる。 見上げると、同じようにトレイを持った眼鏡の少女、里野藍がそこにいた。 286 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/10(水) 02 53 43 ID qa1yn+0V 「ふぅ……」 路面電車から降ろされた俺は、電車通りから裏通りへと入ってゆき、古ぼけたマンションの玄関をくぐる。 西日のせいで仄暗い共用のホールを過ぎると、いつも通り重苦しい雰囲気の、密かに俺が『囚人護送用』と呼んでいるエレベーターに乗り込んだ。 階数ボタンを押して扉を閉めると、エレベーターはゆっくりとした速度で、本当に死刑台に囚人を送り出すかのように昇っていった。 「せつないよぉっ……! あにきぃっ……もっと……っ!」 私のエッチな声が昼下がりの居間にわんわんと響いている。 指は次々に私の弱点を攻め上げて、時には酷く乱暴に引っ掻き回す。 だが、そんな痛みも、私の快楽と切なさにふやけた頭が、妄想の中の兄貴が与える快感に変えてしまう。 「もっと……もっとはげしくしてぇっ……!」 私の言葉通り、私の指の動きは激しくなる。 「ああっ! いいよぉっ!!」 もう私は、まるでシチューにつけた食パンのように、オナニーの作り出した妄想にじっとりと浸っていた。 それと同時に私の頭はこの虚しくも素晴らしい世界を維持すべく、触覚と快楽神経以外の外の世界へ通じる全ての感覚器官をシャットアウトしてしまっていた。 『囚人護送用』エレベーターはすぐに我が家の階に到着した。 窓の一つも無いために、真昼でも酷く薄暗い廊下を革靴を鳴らして歩いてゆく。 そして我が家の、これも刑務所のごとき重い鉄扉を開ける。 いつもならばそらがゲームでもやっていて、その音が玄関の方にまで漏れてくるのだが、今日だけはそれは違った。 「あにきぃっ……おにいちゃん、おにいちゃぁんっ! わたし、もうだめ、もうだめだよぉぉっ!!」 ラストスパート。指はこれでもかと言うまでに私の女の子の部分を磨り上げ、指が食い込むほどに胸を鷲掴みにする。 ぐちゅ、ぶちゅとひどくえっちな音が耳元で何度も鳴り渡る。 「おにいちゃぁぁんっ! すきっ! すきぃっ! だいすきぃっ!」 そう叫んだ矢先に、私は声にならない絶叫を上げながら、自分でも驚くほどに激しく悶えながら果てた。 最終区間を走りきった駅伝ランナーのごとくはぁ。はぁ。と肩で息を切りながら、私はソファに横たわったまま天井を仰ぐ。 そこにはいつもと変わらない、ヤニのせいで薄黄色く変色した天井と、プラスチックカバーの黄ばんだ照明があるだけだった。 どさ。 廊下の方から聞こえた突然の物音に、私は勢いの付いたワンタッチ傘の如く飛び上がった。 私の視線の先にあったのは、何が起こったのかわからない。いや、何が起こっていたのかは理解できたが信じられない。と言わんばかりの、呆気に取られた顔で立ちすくむ兄貴の姿と、どうやら音の主らしい、床に落ちた兄貴の鞄。 オナニーのあとの、虚しさを伴う余韻もあってか、私の頭は混乱することも、戸惑うことも無く、ただ酷く冷めていた。 「いや、見るつもりは無かったんだが、どうも凄い声がしたんで来てみたら……」 兄貴が必死の弁解を手を振って遮ると、私ははだけ気味だったブラウスをそのまま脱ぎ捨てる。 「兄貴、全部聞いてたでしょ」 ぱさり。とブラウスの落ちる音。 そして私はそのまま無防備な兄貴に抱きついた。 「そうだよ。兄貴も絶対気づいてたと思うけど、私ね、兄貴のことが男の子として好きなの」 兄貴は嫌悪感が混じる顔をそっとそらす。対する私は兄貴の顔をじっと見つめていた。 「もちろん兄妹で好きあったりエッチしたりするのはのはいけないことだってわかってるし、私のこと気持ち悪い妹だって思ってるかもしれない。だけど私は兄貴が、お兄ちゃんが大好きなの! お兄ちゃんがいいの! お兄ちゃん以外じゃダメなの!」 次々に私の口から吐き出される、包み隠すものも無い率直なまでの本音。 「そら……」 「お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃんっ!」ぎゅうっ、とお兄ちゃんの背中に私の指が食い込んでゆく。 口火を切ったように、私の中で感情がのたうち回って暴れてゆく。 もうその激流は私にも止められなかった。 「お兄ちゃん、もう私の気持ちはわかったと思うんだ。だから、ずっと思ってたこと……していいよね」 私はお兄ちゃんの耳元でささやく。 「エッチ……しよ」 287 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/10(水) 02 54 36 ID qa1yn+0V そこから先はまるで全自動だった。 俺はそらの言葉のとおりにそらの体を包む制服のスカートと下着を剥ぎとる。 何年かぶりに見たそらの体は、あまり肉付きは良くない、小ぶりで、乱暴にしてしまえば壊れそうな印象を受けた。 俺はそらのつつましい胸に手を当てる。 俺の頭の中に罪悪感とか、道徳観念とか、そういうものは不思議と浮かばなかった。 このとき北見千歳と言う男の中は、先程俺に「好き」を連呼させてみせた妹を受け止めてやろうとする父性と保護欲、そして少しばかりの好奇心と性欲の混じった、よくわからない感情でいっぱいだった。 「ぁっ……」そらがかすかな嬌声を上げる。 俺はその生めかしいとは程遠い、切ない声をあげる林檎色の唇を自身のそれでふさいだ。 お互いに舌を入れたり、とかそういう技巧なんてなく、ただひたすらにちゅう、ちゅう、とお互いの口内を貪ることだけに夢中になっていた。 「はじめてのキスはレモンの味っていうけど」そらは、混ざり合ってどちらのものか分からない唾液のたれた唇を開く。「お兄ちゃんのキス、りんごの味がした」 「そりゃさっき食ったホットアップルパイの味だ、バカ」 「お兄ちゃんは私のキス、どんな味がした?」 「……ケチャップっぽい味だった」 「それ、お昼のチキンライス味だよぉ」 そらは、俺も今までに何度かしか見たことの無いような、最高の笑顔で、俺に笑ってみせた。 「キスって、癖になっちゃうかも」 そして、そらは唯一そらの体を守っていたショーツに手をかけた。 「うわ、ぐっちょり……」 脱ぎ捨てたショーツがフローリングの床に、ぺしょ。と水っぽい音を立てて落ちる。 目の前のそらは、産まれたままの格好で、はにかむように上目遣いで俺のことを見上げてきた。 「どう……私のハダカ、きれいかな」 俺は、ああ……としか答えられない俺自身に正直ムカついた。 「じゃ……するね」 そらは俺のスラックスのジッパーに手をかけると、それを一気におろして、中に手を入れる。 やがてお目当てのものを見つけて手を引き抜くと、ひんやりとしたそらの手に収まった少しばかり大きくなり始めた俺のものが顔を出す。 「これがお兄ちゃんの……」 手のひらで包み込まれながらも肥大化するそれを、しげしげと眺める。 さっきまではちょっとだけかわいいかも。と思ってたお兄ちゃんのおちんちんはむくむくと膨れ上がり、私の手に収まりきらなくなるほどまでになった。 「こんなのが私の中にはいるんだ……」 そう考えただけで、下腹部がきゅぅっ。と反応する。 ちょっとしたコンプレックスになってる、ぷっくりと膨らんだ股間の裂け目からは、お兄ちゃんが欲しい、欲しいとだらしなく涎を垂らして待ち焦がれている。 いつの間にこんなえっちな体になったんだろうか……正直すぎる体に私は自嘲する。 ちょっと調子にのって、私は猫なで声でお兄ちゃんに言った。 288 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/10(水) 02 56 09 ID qa1yn+0V 「お兄ちゃん、ほら。いつでも大丈夫だよ」 「大丈夫……って」戸惑うお兄ちゃん。その仕草も、全部が可愛く見えてしまう。 私はお兄ちゃんを更にからかってみる。 「お兄ちゃんは普通に私の上になってしたい?それとも私が上になった方がいい?」 お兄ちゃんは赤面しながらああ、とかうう、とかしどろもどろになっている。 「私は、私が下になった方がいいなぁ」 そう言って私はごろんとソファに寝っ転がる。 そして手を軽く握って前に出し、足を広げて、足の付根の小高い丘を見せつけるようにした。 「えっへへ、ふくじゅーのポーズ……」 犬が自分より格上の相手に服従の意を持ってみせるポーズ。 もし私に犬の尻尾があるなら、千切れるくらいにぶんぶん振ってるに違いない。 お兄ちゃんは顔を真赤にして視線をそらしたが、おちんちんだけは正直にびくん、びくんと私の痴態に痙攣する。 「……本当にいいんだよな」 「全然大丈夫だよ」 「避妊とか大丈夫なのか?」 お兄ちゃんはまだ心配そうに聞いてくる。 「今日危なくない日だもん、全然大丈夫だよ」 大体、お兄ちゃんの赤ちゃんなら妊娠したいくらいだよ。と私は心のなかで付け足す。 「じゃ……いくぞ」 その宣言とともに、お兄ちゃんは私に覆いかぶさり、おちんちんが私の入り口にあてがわれた。 ずぷずぷ、とおちんちんは吸い込まれるように私のお腹の中に吸い込まれて行く。 だが、お腹の中の引っかかる感触と共に、途中でおちんちんは動きを止めた。 「これが……処女膜ってヤツか?」 「うん……たぶん」 破っていいよ。と私はお兄ちゃんに告げる。自分で誘っといてここでやめちゃうのも卑怯だし、なにより私の初めてはお兄ちゃんに破って欲しかった。 ずんっ! と付き入れられる感触。 そして、おなかが千切れそうなほどの激痛。 「―――――――――ッッ!!」 余りの痛みに私は声にならない声で叫んでいた。 「大丈夫か?」 「ものすっごい痛い」私はものすごい涙目で、呼吸を荒らげながらお兄ちゃんを睨んでいた。 マンガとか体験談だと処女でもそんなに痛そうな感じも無くイチャイチャエッチしてたのに、やっぱりすごく痛い。嘘つき。と叫んでやりたかった。 「でも……続けてくれなきゃやだ」 「本当に大丈夫なのか?」本当に心配そうなお兄ちゃんの声。 「痛くても……我慢するから……!」 こくり、と心配そうな顔を立てに振るお兄ちゃん。 そして腰の抽送がスタートされる。 破けた膜にいちいちおちんちんが引っかかり、お兄ちゃんが動く度に顔をしかめてしまう。 (私から誘ったのに、気を悪くしたらやだな……) ゆるやかなピストン運動は徐々に激しくなってゆき、そのうちに痛みもだんだんと薄らいでゆく。 正直、結構時間が経過してもまだ痛かった。それでも下腹部からじんじんと伝わってくる熱が、私に一匙の幸福感を投げかける。 「ぁっ……っ……」 ぐちゅ、ぐちゅ、とはしたない水音。ぱんぱんと腰のぶつかり合う音。そして私とお兄ちゃんの押し殺したような吐息。静寂に満ちたリビングは、私たちのエッチな音で占領されてしまっていた。 289 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/10(水) 02 56 35 ID qa1yn+0V 「く……」 ごつごつとおちんちんは私の一番深いところをノックし、そのたびに子宮が熱を帯びてきゅうきゅうと震える。 「……そら、もう限界……」兄貴はばつの悪そうな顔で、私の中からおちんちんを引き抜こうとする。すかさず私はお兄ちゃんの上で足を交差させ、ぎゅっとお兄ちゃんを足の間で挟んだ。 「おい、そら!」 「……いいよ……出してもいい!」 お兄ちゃんの背中に手を回して、お兄ちゃんを抱きしめる。 「お兄ちゃん! 好き! 好き! 大好き!」 その瞬間、じゅわっ、と熱くなった下腹部が震え、きゅぅっとお腹が震えた。 「そら、そらっ、そらぁっ!」 「お兄ちゃん! お兄ちゃぁぁんっ!」 そして、お腹が震えたと同時に、私の一番深いところにお兄ちゃんのおちんちんから放たれた熱い迸りが降り注いだ。 「おにぃ……ちゃん……えへ……」 下腹部に感じる多幸感とお兄ちゃんの温かさ、そして行為の疲れの気だるさは、ゆるやかに私を包んでゆく。 今はずっと、このままでいて欲しかった。 290 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/10(水) 02 57 13 ID qa1yn+0V 窓の外では茜色の陽が名残惜しそうに夜の世界へとかき消されてゆく。 そらはいつの間にか普段着に着替えて、台所に立っていた。 俺はといえば、リビングの真ん中で、ぼおっと夕方のワイドショーを何の気なしに眺めていた。 内容なんて全然頭に入ってない。 ただ、怖かったのだ。 流されるがまま、そらと結ばれてしまったと言う事実が。 もしそらが俺の子を妊娠していたらと言う仮定が。 今更俺にそらを拒絶することなどできない。いや、する資格がないし、できたとしても絶対にできやしない。 俺に拒絶されたそらがどうなるかなんて、絶対に俺は見たくない。 だが、俺にそらをこの世界の正義とそれに便乗した悪意から守れるだけの強さがあるかといえば、そんな強さも無い。 むしろ俺の方が逃げ出したいぐらいだ。 『人を裏切るのは妹とセックスするようなものだ』 ああ、そうさ。俺は裏切り者さ。 妹とヤっておきながら、その責任も取れないような最低の裏切り者さ。 だからなんだよ畜生。どうすればいいんだよ。 そらを捨てて逃げろってか? 「兄貴?」そらが顔をのぞき込む。「どうかしたの?」 どうかしたって?お前のせいだよ!そう叫びたかった。 「いや、何でもない」俺は立ち上がると廊下へと続く扉の方へと向かう。「ちょっと部屋戻ってる」 「うん……」 鋭い針を突き刺すように冷え込んだ廊下を早足で抜け、自室の扉を開くと、俺はそのまま電気も付けずに自分のベッドに潜り込んだ。 何も思わずにベッド脇に眼を移すと、愛用のDSが枕元に放り出されている。 「そういや、ちょっと前までよく協力プレイとかしてたっけ……」 つい何ヶ月か前、そらと俺がまだ普通の兄妹だった時期。まだそれほど経っていないはずなのに、酷く遠く、懐かしい時期。 「いったい、どこで間違ったんだろうな」 俺は枕に突っ伏す。 何分経っただろうか、外の明かりだけに照らされた薄暗い部屋の中に、くぐもった振動音が響く。 携帯のバイブ。俺はベッドから降りると、机の脇に放り出されたバッグを開ける。案の定音の発信源は俺の携帯だった。 すぐさま携帯を開くと、痛いほど明るい液晶画面に記された「着信 里野藍」の文字。 俺はすぐさま電話を取った。 291 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/10(水) 02 59 22 ID qa1yn+0V 「兄貴ー」私は一通り料理を作り終えると、兄貴を呼びに行く。 兄貴と結ばれた。ようやく兄貴に思いを伝えられた。私はもう上機嫌だった。 寒い廊下もものともせずに、一路部屋まで足取りも軽く歩いてゆく。 部屋のドアは閉まっていた。 「あー……」ドアをノックしようとしたその時、ドアの向こうから聞こえる話し声。 電話してるんだ。私はノックしようとした手を収めた。 「ああ……やっぱそうか……うん。じゃあ、そらには黙っておいてくれよ」 私のこと?兄貴は誰と話してるの? 「それじゃ、色々とありがとう。里野」 もしかして、電話の相手って藍? いったい何の話をしてたの? 私ははやる心を抑えながら、数秒ほどおいて、ドアをノックした。 「兄貴、ご飯だよ」 おー、今行く。と兄貴の声。 何の電話だったんだろうか……と私の心の中は、少しだけ、ざわついていた。 292 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/10(水) 02 59 51 ID qa1yn+0V ご飯の後、兄貴がお風呂に入ってる間を見計らって私は携帯を取り出す。 リビングの時計はもう九時を少しばかり回っていた。 電話帳の「里野藍」の文字を押し、通話コールを聞かされること数十秒。 『はい、里野です』 「私、北見そら」 ああ、そらちゃん。といつもの調子で電話の向こうから帰ってくる藍の声。 「ちょっと聞きたいことがあったんだけど」私は少し声を強めた。 『何?』 「さっき兄貴と何電話してたの?」 『え?千歳さんに借りてた本の話……』 「嘘」 ぎり、と歯ぎしり。電話を持つ手にも力が入る。 「私に内緒って言ってたの、聴いたんだから」 え?と藍は戸惑ったように電話口でうそぶいていたが、すぐに声が帰ってくる。 『なぁんだ、わかっちゃってたんだ』 「いったい何の話してたの! 答えて!」 『べつに?』楽しそうな藍の声が電話口ので踊る。『ただ、ちょっとかわいそうな千歳さんを慰めてあげただけですよ』 「かわいそう?」 『うん。実のお兄さんのことが大好きな気持ちの悪い妹に初めて奪われた挙句既成事実まで作られたって困ってたから、それを慰めてあげてたんです』 私は言葉を失った。 全身から血が引いてゆく、貧血の時に体が冷える嫌な感じが私の全身を包む。 その間にも電話口の藍の声は嬉々として残酷な言葉を綴る。 『千歳さんのこと思ってお兄ちゃん、お兄ちゃんってオナニーしてたんでしょ?千歳さん本当にそらちゃんの事嫌がってましたよ。 だからわたしが言ってあげたんです。千歳さんを慰めてあげて、そらちゃんの事なんか忘れさせてあげますよって言ったら、千歳さんすっごい喜んでましたよ』 うるさい。 うるさいんだよ。 『まぁ、千歳さんはそんなワケで私がいただきますから、そらちゃんはひとり寂しく泣きながらでもオナニーに勤しんでて下さいよ』 うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい 「……るさい」 『へ?』 「うるさい! 黙れ畜生!」 私は人生で一番の大声を出したんじゃないかと思うような叫び声を通話口に叩きつけ、乱暴に電源ボタンを押して、通話を切る。 そしてそのまま私は携帯電話をソファに叩きつけた。 ホワイトパールの携帯電話はぽうんとソファの上をバウンドすると、そのまま軽い音を立てて床に落ちる。 荒い息を立てながら、私はやり場の無い怒りを抱えて、その場に立ち尽くしていた。 「おい! どうしたんだそら!」 叫び声を聞いて、パジャマ姿で慌てて飛んでくる兄貴。 私は兄貴をこれ以上無いまでに敵意を込めて睨みつける。 「……どうしたんだ?」 「……何でもない」 「何でもないって……あんな大声出してて何でもない訳ないだろ」 「関係ないでしょ! 兄貴には!」 私は兄貴の側にまで詰め寄って、パジャマの襟を引っつかんで、引き寄せた。 「こんな気持ち悪い妹、嫌なら構わなきゃいいじゃない! 私なんか消えればいいんでしょ! 消えればすむんでしょ!」 は?ととぼけたふりをする兄貴。 白々しい。余計に怒りが湧いてくる。 「もういい! 兄貴の望みどおり私は消えてやりますから! どうぞ後はご勝手に藍にでも慰めてもらえばいいじゃない!」 一通り叫び終えると、私は落っこちていた携帯を持って部屋に帰っていった。
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/1017.html
94 ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI sage 2010/03/13(土) 05 00 15 ID rv2D23M1 「はーっ」手袋をはめてても、ほつれた毛糸の隙間から刺し込んでくる冷気で手がかじかんでくる。だからこうやって定期的に息を送り込んでいるのだが、それでもすぐにまた冷たさが戻ってくる。 結局終点でバスを降りたのは私一人だけだった。バスの運転手も乗り過ごしたのかい?とかすぐに折り返すからそのまま乗ってなさい。とか何度も何度も言ってきた。 しかし私はここでいいんです。とバスを降り、真冬の、シャッターの閉まった水族館にたどり着いたのだった。 もちろん、休業中の水族館なんかに誰が来るはずも無く、私は小高くなった水族館の前の階段の途中で、もう何時間もただひたすら座り込んでいた。 「寒い……」 そうは言うもののあたたかい飲み物を売る自販機など近くにはなく、ただ目の前には雪原と化した駐車場と、その奥にぽつんと場違いのように立ったバス停だけが写る。 「なんでこんなとこ来ちゃったんだろ」 冬の、こんな灰色の空の下、魚も見れない水族館にやってきた馬鹿な少女はつぶやく。 ここは夏に、兄貴と一緒にきてこそ楽しいのに、なんでこんなことやってるんだろ……。 「兄貴……」 あんなに酷いこと言っちゃったのに。私はもう兄貴と関わっちゃいけないって決めたはずなのに。なんで兄貴のことを思い出しちゃうんだろ。 ついさっきまでは、兄貴のこと大嫌いだったのに……。 ああ。やっぱ私、兄貴とは離れられないんだ。 兄貴のことが大好きで、兄貴に甘えるのが幸せで、兄貴と一緒にいないと、まるであの雪原の駐車場みたいに、心の中が真っ白になって、それがすっごい寂しくて…… 「やっぱ兄貴がいないとダメだよ……私」 うさぎは寂しいと死ぬ。っていうのは嘘だって聞いたことがある。逆にうさぎは孤独に強くて、血縁じゃないうさぎと一緒に飼えば、縄張り意識が強すぎて殺し合いになるらしい。 きっといまの私はうさぎより手間のかかる動物なんだろうな。 兄貴がいないと寂しくてダメになる。でも兄貴が他の女の子に取られるのは絶対に嫌だ。 寂しがりで、嫉妬深くて、甘えたがりで……。 「なんだ」私は自虐たっぷりに笑ってみせた。「これじゃ犬じゃん」 雪はいつの間にか酷くなり、階段に座り込んでいた私の上にも、まるで帽子のような雪が降り積もっていた。 「寒い……」 寒い。 寂しい。 兄貴、会いたいよ。 95 ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI sage 2010/03/13(土) 05 00 39 ID rv2D23M1 「ったく、手間かけさせやがって」 寒くなりすぎて遠くなった感覚の向こうで、誰かが言う。 私はゆっくりと閉じていた目をあける。 そこには真っ白な雪原といは正反対の黒いコート。それを羽織ったよく見知った癖っ毛の男の人が立っていた。 「兄貴……」私は不意に歓喜の言葉が溢れそうになる、が、私の中の変な意地は、そこで私に素直になるのを許そうとはさせなかった。 「……なんで来たのよ」 「心配だったからに決まってるだろ」いつもと同じようなつっけんどんな口調で兄貴は言う。 「心配なんかしなくていいじゃない、こんな気持ちの悪い妹」 「……いいわけねーだろが」 「嘘つき、藍には私のこと気持ち悪い妹とか散々言ったって……!」 兄貴は手を額に付いて、やれやれと言う顔でもう片方の手をポケットに突っ込み、携帯電話を取り出した。 慣れた手つきでボタンを幾つか押して行くと、それを顔に近づける。 「北見だ。……うん、お前から説明しろ」繋がったらしき電話の向こうの人物にそう手短に告げると、電話を私に手渡す。 「俺が話すのも面倒だしややこしいから、とりあえず本人に聞いてみろ」 私は電話を受け取った。 「替りました、そらです」 『あ、そらちゃん?』 あっけらかんとした藍の子絵が受話器の向こうから響いてくる。 「……昨日の電話」私は低く、重い声で電話口の藍を問い詰める。「あれはなんだったの?」 『ああ、あれ……あれね』そして電話口からは罰が悪そうな声が帰ってくる。『あの電話の内容、全部ウソなの』 まさか、とは思っていたが、真面目そうで、絶対に変な冗談なんかつかないと思ってたそんな冗談言うはずがないと思ったのだが。 『いや、あんまりにも千歳さんとそらちゃんのレンアイが見てられなくて、ついひと押しのつもりで調子に乗って嘘ついたんだけど、どうも逆効果になっちゃったのかもって…………』 「…………か」 『はい?』 「馬鹿! 私全部信じちゃったでしょ! ただでさえ兄貴の将来奪っちゃたかもって思ってたときに変な嘘つかないでよ!」 私はいつの間にか叫んでいた。 いつの間にか声も鼻声になり、冷えた頬には暖かい滴がこぼれおちて、きっともう、私の顔はくしゃくしゃだったのかもしれない。 余計なことをしてくれた藍への怒りと、それと兄貴が私を遠ざけてくれてなかったと言う喜びが一気に涙と、叫びとなってやってくる。 96 ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI sage 2010/03/13(土) 05 01 01 ID rv2D23M1 『本当にごめんね。でも、千歳さんからはホントの事絶対に言うな! って言われてて……』 「……ぇぐ、ほんとの、こと……?」 藍はうん。と落ち着いた声で、流れるように話し出した。 『昨日のお昼ね、千歳さんに偶然会って、で、そのまま千歳さんの相談に乗ってたのよ』 私は鼻声でうん。うん。と頷く。 『千歳さん、そらちゃんのことでちょっと迷ってて、で、ウチのお兄ちゃんの話してあげたらその話聞かせろって。 うちのお兄ちゃん。お姉ちゃんに襲われて、お姉ちゃんから逃げるために自衛隊入ったら、結局それがお姉ちゃんと一緒に暮らすのに都合よくなっちゃったんだって話したら、俺もなろうかなって言い始めて……』 「うん……」 『で、自衛隊の試験受けるからお兄ちゃんに詳しいこと聞いてくれないかって言われたの。それでそらにあんま迷惑かけたくないから。って千歳さんに口止めされてて……』 「ありがと、藍」 『うん……でもちょっと私はお邪魔みたいだから電話切るね』 「うん……切ってもいいよね、兄貴」 兄貴はこくりと頷いた。 「じゃあね、ありがと。藍」 私は通話を切ると、兄貴に携帯電話を返した。 「兄貴……」 「バス待たせてるんだ、すぐ行くぞ」 そう言って兄貴は私の手を握る。 不思議と、冷たくなったはずの手がそこから温まっていく感じがした。 97 ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI sage 2010/03/13(土) 05 01 24 ID rv2D23M1 ほとんど貸切状態の古びたバスが、私たちを乗せたままかたかたと揺れる。 もうすっかり暗くなった外の景色が変わるたびに、車内アナウンスが次から次へと呪文のように知らない土地の名前を連呼してゆく。 「ね、兄貴」 「なんだ?」 そらははにかんだ笑みを浮かべてこっちを向く。 「兄貴さ、私とエッチする前から私のために将来投げだす覚悟だったんだね」 俺ははぁ。と溜め息をついた。 「藍がしゃべったのか」 「うん」 俺はそらをじっと見つめ直した。 ふわふわと跳ねたくせっ毛のロングヘア。 くりっとした目と小さめの鼻と口。 あまり成長していないが、ほっそりとしたしなやかな肢体。 いつからこう思っていたのかは分からないが、俺もそらのすべてが愛らしいと思っていた。 だからこそ俺は、そらを幸せにしてやろうと思ってきた。 そらに愛する人が見つかれば全力で応援してやろうとも思った。 その対象が自分だと知ると、襲いかかる不安と闘いながらも将来のためにもと藍にかけあって陸自の曹試験の話を聞き出したりもした。 「兄貴」そらの顔が突然迫ってくる。「大好き。愛してる」 そして、俺はそらに唇を奪われた。 柔らかいそらの唇と、恥ずかしげに頬を赤らめた顔に似合わない、ひどく情熱的な舌の動きに俺は最初戸惑ったが、すぐに俺も応戦を始めた。 んちゅ、ちゅぅ。と淫靡な音がバスのエンジン音にかき消されてゆく。 やがてそらが唇を離すと、そらはこれ以上にないほどの笑顔で、俺に言った。 「結婚はできないけどお嫁さんとして兄貴の赤ちゃんいっぱい産んで、兄貴が死ぬまでずっと一緒にいてあげる」 そして、そらは俺の手を固く握った。 これ以上ないほどに強く、痛いくらいに握られた手を俺に見せつける。 「もう絶対に離さないから」 「そりゃこっちのセリフだ」 「やっぱり兄貴、だいすき」 バスはやがて市街地に入った。もうすぐ他のお客も乗ってくるころだろう。 だがそれまで、俺はこうしてそらとの時間を味わっていたかった。 98 ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI sage 2010/03/13(土) 05 13 40 ID rv2D23M1 おまけの小ネタ 「千歳さん、そらちゃんって犬っぽいですよねー」 「ん、まーなー」 「兄貴ー兄貴ー。ってワンちゃんみたいになついてますし、千歳さん二期のあり草案人が寄ると威嚇しますし」 「その上結構嫉妬深いからなー」 「誰が嫉妬深いのよ」 「うわそら! いつの間に!」 「さっきから居たから……確かに犬っぽいのは自分でも認めてるけどさー」 「あ、認めてたんだ……」 「うん。だから今夜は兄貴をいーっぱいマーキングして、私の臭いを体中に付けてあげるね」 「はぁ……」 「なんなら首輪つけてワンワンプレイとか裸でお散歩プレイしてもいいんだよ♪兄貴ならどんな恥ずかしいこともしてあげれるし♪」 「それはちょっと考えておく」
https://w.atwiki.jp/daikon/pages/112.html
いただき魔ッスルブラザー ◆YQHPSCjCu. 向日葵の匂いの剣士 ◆YQHPSCjCu. 1月頃の大根スレにいたが、いつの間にかいなくなってしまった。 SFCが発売されたとき柔道をしていた 建国スレで戦国時代を満喫してくるなど 良く分からない人物である このような画像を貼って去っていった 彼が初代鯖なのかもしれない
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1022.html
768 :ワイヤード 幕間 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/05(月) 13 28 50 ID TDyDTYz3 幕間『少女の祈り』 神様――。 月夜。 光がステンドグラスを超えて差し込み、少女を照らしていた。天使のごとき輝き。 翼のないその姿が、むしろ神秘だった。 闇の中の教会で唯一輝ける少女は、独り神に祈りをささげていた。 「神様」 目を閉じる。 少女はその瞼の裏に、世界でたった一人、愛し、全てをささげるべき存在を想い浮かべる。 そして、それは神ではない。ただの、一人の少年の姿だった。 「神様、どうか……」 少女は、神など信じてはいなかった。信じているのは、ひとつだけ。 未来。 少女と、少年の、二人の未来。たったひとつ、それだけがあれば、それは彼女の幸せだった。 「どうか、ちーちゃんと私の生きる、未来を……!」 ただひたすらに、純粋で、しかし利己的な願い。 信じてなどいない神にまですがる。 それは、彼女がプライドよりも大切なもののために生きているという証拠だった。 それほどまでに、少女はあの少年を愛していた。 「神様……」 教会の奥にひっそりと佇む、神を模した像は、ただ、少女を見つめるだけだった。 ――この世界に、神なんていない。 少女には、そんなことは既に分かっていた。 神なんていない。人は、狂おしいまでに平等だ。 だから、強いものが勝ち、弱いものが負ける。平等だからこそ、違いがある。 だから、少女は力を願った。 769 :ワイヤード 幕間 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/05(月) 13 30 28 ID TDyDTYz3 かたん。 突然後ろから聞こえたその音に、少女は振り向く。 教会の扉が開いていた。差し込む光に、浮かび上がる影。 人影。 「待ってたよ、アリエス」 少女は、確信をもって人影に声をかけた。 アリエスと呼ばれた少女も、落ち着いた声で返答する。――まるで、こうなるのがはじめからわかっていたかのように。 「逃げないとは、たいした自信だな」 「けじめをつけるためだよ。一人でも逃がしたら、ちーちゃんに迷惑がかかっちゃうから」 「お前は……!」 アリエスが激昂する。 「お前は、悪魔だ。神に祈る資格など、ない!」 「……そう」 少女は神にひざまずいていた姿勢から、立ち上がり、アリエスと向かい合う。 「自らの目的のために、何人を義性にした! 何人を殺してきた! お前の殺した者には、帰りを待つ家族がいて、恋人がいて、友がいて……ともに、笑い、泣き、怒り……。全て同じ、人間だ! それを、お前は簡単に……! そして、遂には、お前はおまえ自身の両親までも……!」 「なら、逆に聞かせてもらうよ」 「……何だ」 「あなたたち統合教団は、私にどういう仕打ちをした? 度重なる、過酷な能力テスト。人体実験。兵器開発。薬物投与。攻撃力の調査のために、大型動物と素手で戦わされたこともあったよ。 そして、死刑囚を連れてこられて、人体への攻撃を試すとか言って、私にその人を殺させたのも、あなたたち統合教団」 「……っ」 「もともと人間扱いされなかった私に、私の両親は何をしてくれた? もともと統合教団に私を売ったのもお父さんとお母さんだよ。そして、そのためにちーちゃんと私を引き離したのもあの二人。あの二人だって……あいつらだって! 私を人間扱いしてくれなかった!」 「それでもっ」 「それでも、何だっていうの!? 私を助けてくれたのは、心の中にあったちーちゃんとの記憶だけなんたよ……? あの人と結ばれる未来だけが。その夢だけが、私を守ってくれたんだよ? そんな、小さいけど幸せな未来への願いさえ、統合教団は許さなかった」 「だから、全て破壊したというのか!」 「そうだよ! それのどこが間違ってるって言うの? アリエス、あなたに私が裁ける? ちーちゃんが好きだっていうだけで、それだけで良かった私を、ここまで変えてしまったのは、あなたたちなんだよ……?」 「違う……。お前は、お前のエゴを押し通しているだけだ! お前一人の願いのために、多くの――お前と同じ、小さな願いを持った人間を、何人も殺したんだ。それは、許されるものではない」 770 :ワイヤード 幕間 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/05(月) 13 31 03 ID TDyDTYz3 「……なら、その力は誰が私に与えたものなの?」 少女は、手にもった剣を握り締めた。 「それは、お前が元から持っていた力だろう。だから我々統合教団は、お前を保護し……」 「違う! 私は、ちーちゃんと一緒にいたいだけなの! 本当は、こんなちから、いらない!」 「血塗られたお前が言うことか……!」 暗闇で隠されていたが、徐々に光で浮き上がる少女の姿。 アリエスには、しっかりと見えていた。少女の、血塗られた身体。 少女のものではない。返り血。少女が虐殺した、統合教団の構成員達のものだ。 そして、それだけではない。少女は、奇怪な鎧を身に着けていた。 やけに近未来的な――今は血塗られて赤いが――白い鎧である。手には、長剣が握られている。 「その剣は、確かに我々が与えたものだ。だが、お前の剣を振るうのはお前自身だ。お前の心だ」 「……そう、そうなんだ。アリエス、あなたは、分かってくれないんだね……」 「別の形で出会っていれば、お前とは友でいられただろう。だが、私は全てを奪われた。だから、もう戻れない。戦うことでしか、私たちは分かり合えない」 アリエスは、マントに隠していた武器を取り出した。 「『ヴァイスクロイツ』。エクスターミネート」 十字架のような形をした武器。『ヴァイスクロイツ』。中心にある宝石がアリエスの闘気に反応するように光る。 「本当に、やるんだ。さっき、私の力は見たでしょう? この『ネクサス』がある限り、私は無敵だよ。そして……」 少女は、剣を構え、突進した。真っ直ぐ、アリエスに向かって。 「この剣を振るわせるのは、あなた!」 「だとしても!」 全くゆがみのない攻撃。ひたすら真っ直ぐに、迷いなく、最速で剣を振り下ろす少女。その一撃を、アリエスは『ヴァイスクロイツ』で正面から受け止める。 互いの強大なエネルギーの衝突に爆音が轟き、教会全体が強く揺れる。ステンドグラスが吹き飛ぶほどの衝撃。 「『ネクサス』! ブーストアップ!」 "ブースト・アップ"。少女が身に付けている鎧のベルト部分から、機械音声が発せられる。 同時に、少女の持つ剣が強い光に包まれる。 「っ!?」 アリエスはとっさに少女とのつばぜり合いを中断して、ヴァイスクロイツを引き、少女の左隣に飛び込み、床を転がって距離をとった。 次の瞬間、少女の剣から発せられた強い光が剣から一気に溢れ出し、少女の前方の物体全てを切り裂いていた。 教会にあった椅子、カーペットはもちろん、教会の壁、地面でさえも、少女の前方のものは、全て。 「……」 アリエスは驚愕する。これほどの威力の攻撃は、かつて見たことがなかった。 少女が、本気だということだ。アリエスが見たことのない領域の力を行使するまでに。 771 :ワイヤード 幕間 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/05(月) 13 31 33 ID TDyDTYz3 「どう? これが、あなたたち統合教団が恐れ、制御しようとした『ワイヤード』の力。『WE粒子』のもたらす、世界を変える力」 「……この力は、人が手に入れていいものではない」 「あはっ! 同意見だよ、私もね。でも、末端のアリエスは知らなかったかもしれないけど、本当にこれを手に入れたがっていたのは、統合教団……つまり、人なんだよ」 「そんな、ばかな……」 「いいよ、今なら許すよ、アリエスのこと。だって、知らなかったんだもんね。アリエスは、ワイヤードに家族を殺された恨みを晴らすために、統合教団に協力してたんでしょう?」 「……」 確かに、その言葉は正しい。 アリエスは、ワイヤードという存在に教われ、全てを失った。自身も、一生消えない傷を負った。 そして、ワイヤードたちと闘っている組織、統合教団に拾われ、その中でずっと戦ってきた。 知らなかった。 アリエスは、統合教団の行動は、全てワイヤードの殲滅のために行われていると、信じていた。 「統合教団は、人類のためにワイヤードを滅ぼすなんていう、正義の組織じゃなかったんだよ。教団の目的は、『WE粒子』の軍事転用。それをもって世界を統一する。つまり、本当のエゴの塊は、統合教団のほうなんだよ。私じゃない。あんなやつら、殺されてとうぜんでしょ?」 「そんな……そんなことが……」 「アリエス、今なら、私の仲間になれるよ。一緒に行こう、アリエス」 「……それでも」 「?」 「それでも、私は、神を信じている」 「……あきれた。どうしてそんなに頑固なの?」 「統合教団の神ではない。お前の神でもない。私の神は、ここにいる」 アリエスは、勢いよく立ち上がり、自らの胸を強く叩く。 まるで、心臓の――命の存在を確かめるように。魂を確かめるように。 「この魂が、叫んでいる。お前は歪んでいると! 私は、私の信じる全てを――神への祈りを、全て……!」 ヴァイスクロイツを強く握り締めるアリエス。 その腕には、瞳には、もはや何の迷いもない。 「……分かった。私がちーちゃんを想うのと同じ。アリエスも、本当に大切なものがあるんだね」 「その通りだ。もはや、どちらが善、どちらが悪なのか。そんな問題は超越した。私とお前の、運命は。……全て、神の導くままに。そして、私自身の意思で、ここで断ち切る。この祈りを、全て、この一撃に懸ける……!」 「いいね。一撃、たった一撃の勝負……」 少女も、剣を握り締める。ベルトが"エクステンション・ドライブ"とコールしたと同時に、少女の剣が強い光に包まれる。 「もう、言葉はいらない! いくよ、アリエス!!」 「西又イロリ……いや、ワイヤード! 私が、お前の運命を断つ!!!」 二人が同時に駆け出す。 「いっけええええええええええええええ!!!」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 772 :ワイヤード 幕間 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/05(月) 13 32 04 ID TDyDTYz3 ある朝、京都近郊の、町外れの教会が、全焼、倒壊状態で見つかった。 近隣住民に寄れば、その前の晩、なにか大きなゆれと、音と、そして、天まで届く光が教会から発声していたらしい。 調査隊の活動虚しく、焼け跡からは死骸もなにも見つかっておらず、おそらく被害者はゼロと思われる。 警察は原因究明に乗り出したが、結局全てが不明であり、調査はすぐに打ち切られた。 西又イロリが東京に現れる、数週間前の出来事である。