約 245,211 件
https://w.atwiki.jp/fadv/pages/812.html
眠りなき狙撃者 題名:眠りなき狙撃者 原題:La Position Du Tireur Couche (1981) 作者:ジャン=パトリック・マンシェット Jean-Patrick Manchette 訳者:中条省平 発行:学習研究社 1997.03.31 初版 価格:\2,000 引退を決意した殺し屋というのは、いかにもありきたりの題材だ。冒険小説の世界では特に。しかし、本書は冒険小説として読み解くには少々危険過ぎるきらいのある、マンシェットの作品だ。いかに多くの読者を引き込む活劇と死闘のシーンに満ち溢れていようとも、殺し屋も脇役の一人一人も、そうでない堅気の日常を営む男や女も、誰もが少しだけ狂っている。狂気が物語をあらぬ方向に紡いでゆく。それがマンシェット的暗さ、だと言える。 引退を決意した殺し屋とは言え、三十を過ぎたばかりだ。のっけから殺しのシーン。組織から、引退を気取られ、尾行がつき、暴力に晒され、殺し屋は逃げる。故郷にも戻る。故郷にはろくなことがなかった。殺し屋に身を投じた原因となった父の死にざま。殺し屋は故郷を出て、傭兵部隊に身を投じ、殺し屋を稼業とした。昔の恋人との再会。昔の仲間との再会。追跡者の魔の手が忍び寄り、殺し屋の後半生を思いもかけぬかたちでねじ曲げてゆく。 凄惨な死闘を繰り返した挙句、パリに戻り、森に篭る。世界から利用される腕前。政治の論理の渦の中で巻き込まれてゆく殺しの才能。『殺戮の天使』で描かれたような、ブルジョア殺しのプロフェッショナルであった女殺し屋エメとは、だいぶ色合いが違う。より強大な組織により、便宜的に利用される捨て駒のような殺し屋だ。個人的な静謐を得ることができず、常に追い求められる存在。 最後は政治的駆け引きで手に入れる限定され葬られた生活。不思議な終焉だ。受け続けるプレッシャーによって口がきけなくなってしまう殺し屋。銃弾を脳に受け、羊の泣くような声で泣くようになる殺し屋。死んでゆくすべての者たちの中で、累々と積まれた屍の時間が、殺し屋を内部から痛めつけているように見える。 この非情な文体。この皮肉な平和。殺し屋を描いてこれだけ屈折させることができる作家は、マンシェット以外にはおそらく一人もいないだろう。 (2004.02.29)
https://w.atwiki.jp/marcher/pages/895.html
一回目 二回目 三回目 四回目 一回目 「でもさ、まさは考え方しだいだと思うんだよ、世の中って」 怒りを露わにする遥に対し、優樹はやや的のはずれたことを無邪気に返してくる。 いつものことだった。 「何だよ、考え方次第って」 話逸らしてんじゃねーよと思いながらも、つい律儀に訊き返してしまう。 それもいつものことだった。 「どぅーどぅーはさ、いっつも自分の能力『うざい』って言うじゃん?」 「自分でほしいと思ったわけじゃないからな。うざいもんはうざいんだよ。で、それが何だよ」 「でもそのおかげでどぅーどぅーはまさと出会えたんだよ」 「それが何だよ」 「えーっ」 途端に優樹は悲しげな表情を作る。 「なんでそんなこと言うのー?どぅーどぅーはまさと会えてうれしくなかったの?」 「この状況でよくそんなことが言えんな。つーかだからそのどぅーどぅーってのやめろっての」 「なんでー?まさはこの呼び方好きなのに」 「だーかーらー、こっちが嫌だってんだよ。絶滅した鳥じゃねーんだから」 「鳥?ぜつめつ?あのおっきいダチョウみたいなやつ?」 「それはモアだろ」 「……ウルトラマン?」 「それはノアだ。っつーかそんなことどうでもいいんだよ!」 完全に話が脇道へと逸れていることに気づき、遥は再び声を荒らげる。 「シーッ!ダメだよどぅーどぅー、大きい声出したら。他のお客さんのめいわくになるって」 「誰のせいだと思ってんだよ」 苛立ちを込めてそう言い返しながらも、遥は声を低める。 他の客に迷惑がかかろうが知ったことではないが、それは結局自分たちの首を絞めることになる。 新幹線のぞみ205号N700系新大阪行。 平日ということもあってか、車内はさほど混んではいない。 というよりも空いている。 遥と優樹のいる7号車も、現状せいぜい4割程度しか埋まっていない。 他人の目が少ないのは都合がいいとも言えるが、その分目立ちやすいとも言える。 これからやろうとしていることを考えれば、誰かの印象に残るような行動は極力避けなければいけない。 やろうとしていたことが―――やらなければならないことが、この後予定通りに実行できるのならの話だが。 「消すか?普通。消さないだろ。っていうか消えないようにしとくだろ。っていうかしとけよ」 畳みかけるように言いながらも、それが明らかに暖簾に腕押しであることを途中で否応なく感じ、最後は完全にため息まじりになる。 今回の標的(ターゲット)の顔を、遥は知らない。 顔写真が優樹の携帯に送られ、遥はそれを落ち合った車内で確認する手筈になっていた。 だが。 「しょうがないじゃん、まちがって消しちゃったんだから。まちがいくらいだれにでもあるじゃん」 「だから間違って消さないようにしとけっつってんだよ。っていうか間違えんなよ。どう間違えんだよ」 「もー、どぅーどぅーおこってばっかりでやだ。もうやだ。きらい」 それはこっちのセリフだと言い返しかけ、遥はその言葉を飲み込む。 こうなったら、もう何を言っても無駄なことは嫌というほど分かっている。 子どものように膨れたまま、シカトを続けるだけだろう。 優樹と組んで―――すなわち「リゾナント」の構成員となって、もう2年以上が過ぎた。 優樹の性格は、十分に理解している。 遥がこの歳でこういった非合法な仕事を主とする組織でやっていけるのは、生まれ持った特殊な能力のおかげだ。 優樹が言うように「考え方次第」ということでいくと、その特殊な能力のせいでこういった非合法の仕事をする組織でしか生きていけない…ということになるのかもしれないが。 ただ、遥は自分のそのような現状について、そう悪いものでもないと思っていた。 「譜久村さんにもう一回画像データを送ってもらうわけにはいかないのか?」 無駄だと思いながら一応聞いてみる。 今回の依頼は、「上司」であるところの譜久村聖を介して遥と優樹に下りてきている。 依頼主が誰であるかも遥と優樹には知らされておらず、ただ「仕事」の内容が告げられているだけだった。 それそのものはよくあることで、だから遥もある意味では「油断」をしていたと言えるかもしれない。 「ふくぬらさんはもう別のおしごと中だからムーリー」 「あ、そう」 それが可能なら、いくら優樹でも既にやっているだろう。 ダメ元で一応訊いてみただけだったが、「そんなことも分かんないの?」という顔の優樹にまた腹が立つ。 誰のせいだと思ってるんだまったくテメーはよ。 「だったらどうすんだよ。顔が分かんねえじゃ殺りようもないだろ。何人いると思ってんだよこの車内に」 「だからー、どしたらいいか今かんがえてるとこじゃん!」 「考えてるように見えませんがね」 「かんがえてるもん!どぅーどぅーこそちゃんとかんがえてよ!まさ1人がかんがえるのとかふこうへいだよ!」 「ハァ?不公平とかそういう問題じゃないだろ」 「1人でかんがえるより2人でかんがえた方がいいに決まってるんだからどぅーどぅーもかんがえてよ!」 コ・ノ・ヤ・ロ・ウ…… いくつもの罵詈雑言が腹の底から湧き上がり、喉から出かけたが、ぐっと我慢する。 間もなく発車の時間だ。 本来であればできるだけ新横浜までに仕事を終え、すぐに下車したいところだった。 車内に長くいればその分目撃される恐れは増える。 だが、最早そうも言っていられない。 発車まではもうあと2分を切っている。新横浜に着くのは約20分後といったところだろう。 その間に顔も分からない標的を16両編成の車両の中から探し出し、騒ぎにならないよう始末して降りる…というのは実質難しい。 それに、「仕事」を終えたらできる限りすぐに降りなければまずい。 万が一、降りる前に異常に気付かれてしまえば、足止めをされる可能性がある。 首尾よく自然死に見せかけられればいいが、殺しを疑われてしまえば具合が悪い。 時速300㎞で走る密室の中で誰かが殺されれば、その密室の中に犯人がいるのは自明なのだから。 終点の新大阪までは約2時間半。 その150分の間に、標的を特定し、いいタイミングを見て始末し、終わればすぐさま降りなければならない。 それができなければ少々……いや、かなりまずい。 「データは消えたとしても標的の顔は見たんだろ?見たら分かるか?」 「う~ん…自信ないかも」 「マジかよ……」 「だってまだちゃんと見てなかったんだもんー。でもう~んとね……あ、女の人」 「それは知ってるっつーの。知らなきゃ『わーい一気に2分の1に絞れたぞ!』って喜ぶところだったんだけどな」 皮肉たっぷりに言ってみるが、無視される。 「あとね、まさたちより年上の人」 「そりゃそうだろうな。ハルたちより年下が標的だったらちょっとびっくりだ」 標的が今年14歳になったばかりの2人よりも年下……絶対にありえないことではないが、そうそうないだろう。 「でもふくぬらさんよりは年下かなあ。ちょっと大人でおばさんじゃないくらいの人」 「……ちなみにお前は譜久村さんをいくつだと思ってるんだ?」 「んー……25さいと9か月くらい?」 「なんだよその9か月って半端な数字は。っていうか16だよ。16歳。あ、もう17になったんだっけ?怒られるぞお前」 「うそー!どぅーどぅーとあんまり変わんないじゃん!でもおっぱいの大きさぜんぜんちがうよ?」 「ほっとけ!ってかだからそんな話してる場合じゃないんだよ!ほら、もう出んぞ新幹線」 間もなく発車する旨を告げるアナウンスが流れたことで我に返り、遥はまた脇に逸れた話を元へと戻す。 「譜久村さんからは他に何も聞いてないのか?つーか聞いてるだろ普通。特徴とか習慣とか癖とか…とにかくなんか参考になること」 その問いに、優樹は眉間にしわを寄せてしばらく考え込んだ。 やがて車体は動きだし、窓の外の景色がゆっくりと動き出したが、優樹の眉間のしわはそのままで変わらない。 いかにも頑張って思い出していますよといったその様子に、考えてるフリじゃないだろうなコイツと遥が思ったとき、ようやく“愁眉”が開かれた。 「そうだ!タバコめっちゃいっぱい吸う人だって言ってた。ふくぬらさんタバコ吸う人あんまり好きじゃないんだってー」 「タバコ……か」 それは案外大きな判断要素になるかもしれない。 N700系は全席禁煙になっている。 喫煙したければ、車内に数ヶ所設けられた喫煙ルームに行かねばならない。 「喫煙ルームは確か……」 プリントアウトしておいた車内図を確認する。 3号車、7号車、10号車、15号車にそれは設けられていた。 「標的は終点まで乗るって話だったよな?」 「うん」 「標的がヘビースモーカーだとしたら、長旅の間に途中で吸いたくなるだろうな」 長旅とは言ったものの、せいぜい2時間半ではある。 だが、ニコチン中毒者にとってそれはきっと長い時間だろう。 煙草を吸ったことのない遥には、完全に想像することは難しいが。 「ってことは、喫煙ルームがある車両の席を取るんじゃないか。この通り空いてるんだからどの車両の席でも好きに取れたろうし」 「おー!どぅーどぅーすごーい!さえてるね!」 能天気に拍手する優樹に真面目にやれと言いたくなったが、褒められて悪い気もしなかったのでそのまま話を続ける。 「問題は、さっき挙げた4つあるうちのどの車両かってことだけど」 再び手元の紙に目を落とす。 「…3号車はないな。1~3号車は自由席だ」 「なんで自由席だとちがうの?」 「標的がこの列車に乗るって分かってたってことは当然指定席だろ。自由席だったらこの時間だって確実には特定できない」 「おお!そっかー」 「7号車もないな。ハルたちがいるこの車両だからな。標的と同じ車両に乗せるなんてこと、譜久村さんはまずしない」 この席を手配したのは聖だ。 何も考えず(もしくは考えた上で敢えて?)同じ車両に乗せそうな人もいるが、聖はそういうタイプではない。 ちょうど真ん中あたりの車両を選んでいるのも、前後どちらにも行きやすいようにとの配慮だろう。 …逆に言えば、そのせいで特定が難しくなっているとも言えるが、そのことについては仕方がない。 そもそも標的を特定しないといけないというこの事態そのものがイレギュラーなのだから。 「じゃあ残りは10か15かー。ねえ、どぅーどぅーはどっちだと思う?」 「お前もちょっとは考えろよ」 「かんがえてるもん」 再び頬を膨らませる優樹にこれみよがしなため息を吐く。 それに対し、優樹は睨み返すことで不満を表した。 「10号車はグリーン車だな。それに関しては譜久村さんは何か言ってなかったか?」 「みどりがどうとかそういうことは何にも言ってなかったよ」 「緑じゃなくてグリーン車」 「それも言ってなかった」 「それもっていうか最初からそれしか聞いてねーよ」 例えば標的がいつもグリーン車に乗っているのだとすれば、聖はきっと一言添えただろう。 それがなかったのなら、普通車である15号車の可能性の方が高いのかもしれない。 だがそれは、あまりに多くの不確定要素の上に成り立つ推論でしかなく、自信は到底持てない。 むくれていた優樹が、そこでふと何かを思いついたというようにポンと手の平を拳で打つ。 「10号車と15号車の人ぜんぶ殺しちゃうのはダメ?」 「恐ろしいことを平気な顔して言うなよ。ハルたちは無差別大量殺人鬼じゃないんだぞ」 「ぜんぶって言っても女の人だけだよ。あと、ちょっと大人でおばさんじゃないくらいの人」 「…どこまで本気で言ってるんだ?」 「じょうだんに決まってるじゃん」 「冗談言ってる場合じゃないんだけどな」 「じゃ、とりあえずどっちも見に行ってみる?見たら思い出すかも」 「ほんとかよ。ま、どっちにしろ最後はそうするしかないけどな」 とはいえ、あまりに無計画に車内をウロウロし続けるわけにはいかないだろう。 大した理由もなさそうなのに動き回っていては、不審に思われかねない。 天を仰ぐ。 優樹と組んで仕事をするときに10中8、9は必ず漏らしてしまう言葉を、今回も遥は言わずにはいられなかった。 「やれやれだ」 投稿日:2013/10/28(月) 16 04 57 二回目 ◆ ◆ ◆ 「席番までは望まないからさ、せめて何号車かだけでも覚えてないのかよ。ってか覚えてるよな普通?」 品川駅に到着したことを告げるアナウンスが流れる中、遥は優樹に問いを向ける。 問いと言ったものの、実際のところそれは完全に「苦情」であり「愚痴」だった。 「おぼえてたら言ってるにきまってるじゃん。言ってないってことはおぼえてないってことだよ」 「何威張ってんだよ」 「まさはいばってないもん。いばりんぼはどぅーどぅーの方じゃん!」 言い返しかけたところで発車を告げるベルが鳴り、同時にバカバカしくなってやめる。 こんなガキ全開のやつと張り合っていても仕方ない。 ハルはオトナにならないとな、14歳になったんだから。 添付されていた標的の顔写真とともに、簡易情報の書かれた聖からのメールは優樹の手によって消去されていた。 そして、それを「てきとうにバババッてよんだだけだもん」な優樹の記憶領域からも、同じく消去されてしまっているらしい。 本来なら何のことはない簡単な仕事の難易度をえらく上げてくれるものだ。 「…お前が覚えてないだけで、メールに席番が書いてあったことはあったんだよな?」 列車が動き出し、外の景色の流れがだいぶ速くなった頃、まだ頬を膨らませたままの優樹に再び問う。 今度は純粋な問い掛けだった。 「書いてあった……きがする」 「気がするってお前なあ…。それによって前提条件が変わってくるんだよ。断言しろよ」 「だっててきとうにバババッてよんだだけだもん」 「それはもう最初に聞いた」 「じゃあきかなきゃいいじゃん」 「………っの野郎……」 ……オトナになれハル。 だが、標的の座席を聖が正確に把握していたかどうかは、推論を展開するにあたって重要なファクターになる。 おそらくはそうだろうという前提で、これまでも思考を重ねてきている。 自分たちと同じこの7号車には標的はいないはずというのも、その前提がなければ成り立たない。 「大切なことなんだよ。頼むから頑張って思い出してくれ」 下手に出て拝むようにすると、少しフフンという表情をした後、また眉間にしわを寄せ首を傾ける。 大したことでもないのにいちいちアクションが大げさなんだよテメーは。 苛立ちの波が我慢の堤防を壊しそうになるのを、オトナの度量でなんとか持ちこたえる。 やがて、眉間のしわと首の角度を元に戻した優樹は、自慢げな顔と共に言った。 「うん、書いてあった。でも何ばんかはわすれた」 「…そうか」 大きくため息を吐く。 何とか堤防を決壊させずに耐え切った自分を褒めたい。 「だってじぶんの席おぼえる方がだいじだもん」 遥の吐いたため息を自分への非難だと受け取ったのか、優樹は睨むようにしながらそう言ってくる。 もう一度吐きかけたため息を飲み込み、遥は努めて優しく返した。 「あのさ、自分のは切符に席番書いてあるからさ、次からは他の何かを犠牲にしてまで頑張って覚えなくていいからな」 「なるほどー」と素直に感心する優樹にはもう構わず、遥は再び思考を巡らせた。 まずは優樹からの情報を元に組み立てたこれまでの推論を再検証してみる。 ヘビースモーカーらしき人物像から、喫煙ルームのある車両が怪しい。 16両編成中4両あるその車両のうち、自由席である3号車、自分たちの乗る7号車の線は薄い。 残るはグリーン車である10号車、普通車である15号車のどちらか。 あくまで蓋然性が高いというだけに過ぎないが、大筋では間違っていないと思える。 この先はもう、行動で確認するしかないだろう。 「よし、じゃあとりあえず確認に行くか」 「おっけー」 親指と人差し指で作られた小さな輪っかが優樹の頬に押し当てられ、遥は再び心の中でため息を吐いた。 体を伸ばすような素振りとともに席を立ち、通路へと出る。 振り返った遥の目に、細長い半透明のガラスが嵌め込まれたドアが映った。 16両編成の車両にはそれぞれ1~16号の番号が振られており、東京発――すなわち下りの際には進行方向から順に数字が増えてゆく。 つまり、10号車や15号車を目指すのならば、「後方」へと向かって歩いていくことになる。 遥たちの乗る7号車は、先にも言ったように喫煙ルームと、そして奇数車両である故にトイレも設置されている。 そのため座席は15列までしかなく、そして遥たちが座っているのがその15列目、すなわち最後列だった。 そのことから考えても、標的は「後方」にいる公算が大きい。 優樹と視線を交わし、ドアを開けてデッキへと足を踏み入れた。 デッキに出てすぐが乗降口になっている。 ドアの外に覗く景色は、当たり前だがどんどんと流れている。 あまりゆっくり構えてもいられない。 視線を正面に戻すと、8号車へのドアが見えた。 喫煙ルームやトイレの前の廊下は想像したよりも長く、ドアはまだ小さく見えた。 無言で歩を進め、上部にグリーン車のマークが書かれたそのドアを目指す。 辿りついたそれを開くと、先ほどまでの普通車とは異なる色合いの内装が目に飛び込んできた。 (やっぱ標的のいる方向はこっちで合ってるな) それと同時に、座席が――すなわち乗客の顔がすべてこちらの方向を向いていることに改めて気付き、遥は内心で小さく頷く。 これであれば、移動しながらごく自然に顔がチェックできる。 いちいち振り返っていてはあからさまに怪しい。 聖ならばそのくらいの気遣いは当然のようにしているだろう。 「ねえ、どぅーどぅー」 「なんだ?」 標的の顔を発見したのかと、遥の体に僅かに緊張が走る。 だが、優樹の口からは緊張とはほど遠い言葉が飛び出した。 「このイスめっっちゃ座りごこちよさそうー。いいなー」 言葉とともに、手前の空いた席の座席を撫でまわしている。 「…そりゃグリーン車だからな」 「まさこっちがいい」 「ハルたちの切符は残念ながらグリーン席のじゃない」 「えーー。なんでみどりにしてくれなかったの?」 「ハルに言うな。っていうかどっちにしろゆっくり座ってる場合じゃないだろうが」 名残惜しそうに座席を見ている優樹の肩を小突き、先を促す。 多分怪しまれないように「車内探検を楽しんでいる無邪気な少女」を演じているのだ……と信じたい。 だが念のため、優樹にそっと耳打ちする。 「ちゃんと客の顔チェックしろよ。お前の記憶が頼りなんだからな」 「わかってるってば」 その割にはまだ客よりも車内の様子に気を取られているように見えなくもなかったが、それ以上言わずにおく。 必要以上にしつこく言って本格的にヘソを曲げられる方がよっぽど厄介だ。 その後は何事もないまま8号車を抜け、続けて9号車を抜けてゆく。 座っているのは多くが男性客や年配の客で、優樹が言っていたくらいの年代の女性客はほとんどいない。 もうグリーン車には飽きたのか、不必要なほどきょろきょろするのをやめた優樹からも特に合図はないまま、ドアに辿りついた。 公衆電話が置かれた9号車のデッキが目に映る。 無言のままそこを抜け、10号車のドアに手を掛けた。 「次は本命の一つだからな、より注意深く見とけよ」 「まかしとけ」 軽く答える優樹に何かを言うことはもうせず、ドアを引き開ける。 見慣れてきたグリーン車の内装と、まばらな客の顔が飛び込んでくる。 優樹は再び顔を輝かせてきょろきょろを始めた。 最初のはどうか怪しいが、優樹が一度飽きたものに再度興味を示すとは思えないので、今度のは間違いなく芝居だろう。 事実、ウキウキした様子や表情に反し、さりげないながらも鋭い目が次々座席へと注がれている。 「どうだ?」 ドアまであと少しというところでそっと訊いてみるが、小さく首が振り返される。 「…いないか。ならまだ先だな」 呟いたところでドアの前に着く。 開けると、ガラス張りの喫煙ルームがすぐそこにあった。 誰も使っている者はおらず、それを示すかのように空気は澄んでいる。 7号車の喫煙室より狭いんだなと、遥はそんなどうでもいいことを思った。 ◆ ◆ ◆ 「どぅーどぅーどぅーどぅー、まさちょっと思ったことがあるんだけど」 再び普通車となった11号車を縦断し、12号車との間のデッキへと出たところで優樹が遥の背中をつついてきた。 振り返った遥に、優樹は真剣な顔を向けてくる。 「なんだよ」 「トイレとかチェックしてなくない?」 「……してないな」 優樹の指摘に思わず舌打ちする。 ここまでの間にトイレは2回通過しているが、中に人がいたかどうかは確かめていない。 万が一、たまたま標的がトイレに行っていたとしたら、やり過ごしてしまっている可能性はある。 本来であれば見落としてはならない点だが、標的の特定にばかり気が行ってしまっていたことが腹立たしい。 「じゃあさ、一回まさがもどるよ。どぅーどぅーはここでまってて」 「そうだな……」 見落としていたとはいえ、実質的に運悪くやりすごしてしまった可能性は微々たるものだろう。 一度このまま最後尾まで行く方が効率的かもしれないが、万が一ということもある。 優樹の言うようにしておいた方がいいかもしれない。 …と考えたところでふと気付く。 「お前さ、まさかと思うけどジュース飲みたいだけとかないよな?」 11号車の前方側のデッキに設置された自動販売機をもの欲しそうに見ていた優樹の視線を思い出し、遥はそう訊いてみる。 「おかねもってきたらよかった…」と小さく呟いていたのを聞いているだけに、訊かずにはいられなかった。 「…そんなわけないじゃん」 「目を逸らすな」 自分の責任をまるで感じていない優樹に、怒りを越えて脱力が襲う。 それと同時に、チャイムが鳴り車内にアナウンスが流れた。 ――まもなく新横浜です。横浜線と地下鉄線は…… 「分かった。ハルはここで待ってる。ちゃんと確認して来いよ。トイレもだし、もちろん座席ももう一回な」 アナウンスが終わるのを待ち、半ば諦めの境地でそう言う。 新横浜を出れば、どうせ名古屋まで乗り降りは不可能になる。 長期戦が避けられなくなった今、どうせ同じことなら優樹が満足する選択肢を選んだ方がいいだろう。 「でしょ?それがいいよねぜったい」 嬉しそうにする優樹に、「ああそれがいいそれがいい」と気のない頷きを返す。 そして付け加えた。 「ただ、新横浜を出発して、ある程度客が落ち着いてからな」 乗り降りの前後でゴチャついている中では、移動もしづらいし何より確認が難しい。 降りる客はさほどいないだろうが、乗ってくる客はある程度いるかもしれない。 「わかったー」 素直に頷きながらも、優樹は既に退屈そうにあたりを見回している。 釣られたわけではないが、遥も視線を左右に動かしてみる。 デッキ部分は、近未来的…とでも言えばいいだろうか、メタリックなデザインになっている。 部屋を四角く区切るのではなく、円形にしてあるのも近未来感を感じさせた。 「おお…もくてきしつ?ここ何?」 「多目的室な」 目の前の円形の部屋を指差して首を傾げた優樹に、まずは訂正を入れる。 「体の不自由な人とか気分が悪くなった人が使うんだって。あと授乳のときとか」 「ふーん」 「ちなみに鍵かかってるらしいから勝手には入れないぞ、言っとくけど」 「ふーん」 訊いてみたものの特に関心はなかったらしく、あからさまにおざなりな声が返ってくる。 ちょうどそのとき、車両が新横浜駅に滑り込んだ。 「あーお客さんちょっとふえるね」 ちょこちょこと開いたドアに駆け寄り、外を覗いていた優樹が振り返ってそう言う。 「だろうな。だからできりゃここまでに終わらせたかったんだけどな」 言外にあからさまな非難を込めたが、今度は優樹には伝わらなかったようだった。 多分もうジュースを買いに行くことで頭が一杯なのだろう。 「ねえどぅーどぅー、もう行っていい?」 「どうぞ」 そわそわと言う優樹に、諦めたようにヒラヒラと手を振る。 どうせ優樹は一度自分の席まで戻る。 席まで戻るときはまだゴチャついているだろうが、再度こちらへ向かう頃には落ち着いているだろう。 許可を与えられた優樹は、いそいそと「前方」へと戻って行った。 その姿を見送り、遥は「後方」へと向かう。 先に進もうと思ったわけではもちろんない。 11号車には、多目的室とともに多目的トイレが設置されている。 「仕事」を行なうのに都合がいいかもしれないと目をつけていた場所の一つなので、下見をしておこうと思ってのことだった。 先ほどの多目的室同様に丸みを帯びたドアの前に立ち、その脇のスイッチを押す。 自動で開いてゆくドアの向こうに、トイレの空間が現れる。 「おおっ、広いな」 思わず感心の声が出た。 車いす対応になっているため、列車内のトイレとは思えないくらいのスペースが広がっている。 中に踏み込んで見回してみると清掃も行き届いていて綺麗で、「ここを血とかで汚したら悪いな」とちょっとだけ思った。 「――!?」 不意に背後に気配を感じ、遥は振り返った。 出入り口のところに、遥や優樹よりは年上と思しき少女の2人組が立っている。 「使うのか?こっちはちょっと覗いてただけだからすぐ出るよ。悪いな」 言いながら、外へと出ようとする。 だが、遥の体は逆にトイレの中へと引きずり込まれた。 「なっ……?」 「見えない力」に体を引っ張られ、そのまま奥の壁へと叩きつけられる。 壁に張り付けられたようになった体は、まったく動かせなかった。 「手間が省けたね」「だね」と笑い合う少女たちの背後で、トイレのドアが閉まる。 確かここは自動施錠方式だったなと思いながら、遥は小さく「やれやれだ」と呟いた。 投稿日:2013/11/02(土) 14 21 37.09 0 三回目 「ホールドアップ」の体勢のままで壁に抑え付けられた遥は、筋力では抗えそうにないと知ると、小さくため息を吐いた。 そして、不穏な笑みを浮かべる2人の少女へと、できる限り平和な声を向ける。 「なあ、これは一体何が起こってるんだ?オタクらは何なんだ?」 気安い表情を作りながら、少女たちを素早く観察する。 一人は、いかにも女の子らしい白を基調としたワンピースに、これまたかわいらしいロングカーディガンを羽織っている。 ゆるくウェーブのかかった髪をふわっとまとめ、左肩から前に持ってきてあるのも女の子らしい。 もう一人は、黒のトレーナーに白のフレアスカートを合わせるという少し変わった格好をしている。 それとも案外これが今の流行なのかもしれない。 髪の毛はいわゆるおかっぱに近い短めで、前髪パッツンになっている。 髪色は2人ともに黒で、モノトーンが主体の落ち着いた色彩の服装と相まって、どこか陰を感じさせた。 (ま、髪や服だけの話じゃないけどな) 今の2人からは、完全に遥にとって馴染みのある雰囲気が発散されている。 すなわち――― 「うちらは同業者だよ。あんたの」 おかっぱの方が、意味ありげな笑みとともにそう言う。 やっぱりなと遥は思った。 このような「仕事」に「業界」があるというのは冗談のような話だが、事実あるのだから仕方がない。 遥や優樹の属している「リゾナント」は、移り変わりの激しいこの「業界」の中でも割と「老舗」に当たると言えるだろう。 他の「店」の人間と直接顔を合わせることはほとんどないが、やはり「業界」内で有名な者の噂は自然と耳に入ってくる。 だが。 「同業者ねえ…。こっちはお前らのこと知らないけど。で?何の用だよ」 こんな2人組の噂は聞いたことがない。 言外に「つまりその程度のランクなんだろ?」というニュアンスを込め、遥はめんどくさそうに言った。 2人の顔色が分かりやすく変わる。 浮かべていた笑みも、すっと引いた。 カーディガンの方が右手を挙げる。 同時に、遥の喉が見えない力で締め上げられた。 「立場をわきまえた方がいいよ?あなた、私たちに捕まってるんだから」 「わ、わる…かった…。くる…しいって…」 素直に謝ると、締め上げる力が緩まる。 大げさに咳込んで「暴力反対」という表情を非難がましく示すと、2人の顔に余裕が戻った。 「……それで、同業者さんが何の用なんだよ」 先ほどの問いを再び向けると、2人の口元が揃ってどこか嬉しそうに歪んだ。 ああ、こいつらは心底楽しみながらこういうことやるタイプなんだなと遥は思う。 「あんたさ、仕事中だったんでしょ?」 「お前らんとこでは仕事のこと誰にでもペラペラ喋っていいって言われてんのか?」 「痛い思いする前に素直になった方がいいんじゃない?」 「何だよ、痛い思いって」 「とりあえず指、折っちゃうか」 「それは痛そうだな」と言おうとした瞬間、遥の左手の小指に見えない力が加わる。 そして、関節とは逆の方向に一気に折り曲げられた。 「……ッ!」 思わず睨み付けると、2つの嫌らしい笑顔が返される。 「えらーい、よく声出さずに我慢できたね。あと9回、我慢できる?」 「…一体何が聞きたいんだよ」 「あれ?もうギブアップなの?」 「苦手なんだよ、こういうの」 「なんだつまんないなー。ま、いっか」 “おかっぱ”が小さく肩を竦め、含み笑いをしながら何かを呟く。 そして楽しそうな顔を遥に向けた。 「あんたらの獲物なんてさ、最初からいないよ」 「は…?どういうことだよ」 「鈍いなー。嵌められたんだよ、あんた」 「はぁ?嵌められた?誰にだよ」 「ほんっとに鈍いなー。ちょっとは自分で考えてみたら?って無理か。頭悪そうだもんね」 余計なお世話だとムッとする。 そう言う“おかっぱ”もさほど頭が良さそうには見えなかったが、それを口に出すと面倒そうなので黙っておく。 指を折られるよりは、バカにされるのを我慢している方が多分マシだろう。 オトナにならなきゃな、オトナに、うん。 「しょうがないから教えてあげる。あんたのとこの譜久村だよ」 だが、その次に“おかっぱ”が口にしたその言葉に、遥は唖然となった。 「あはは、びっくりしてるよ」 「ねー、見た今の顔。超ウケる!」 顔を指差して笑ってくる2人にイラッときたが、それよりも別の感情の方がずっと大きかった。 「ありえねーよ」 その思いを一言で表す。 遥としては事実を事実のままに口にしただけだったが、2人にとってはまた違う意味を持ったらしい。 「なになになに?ありえないって?聞いた?ありえないんだってー」 「ありえるからこういうことになってるのにね。バカだね」 まさに喜びを爆発させる…といった感じの2人に、遥の苛立ちは募る。 「何でありえないの?ねえ、何で?」 「ありえねーからありえねーっつっただけだ」 「心から信じ切っちゃってるんだね、可哀想に」 「ま、なんか聞いたとこによると、この業界に入る前からの関係らしいからね。信じたい気持ちは分かるよ」 「…詳しいんだな」 「どっかの施設かなんかで一緒だったんだって?あの『店』で働くことになったのも譜久村の口利きで」 「そんな強い絆で結ばれてるのに裏切るなんてありえない……って言いたいんだ。うぶだね」 「………」 「あれー?黙っちゃった」 「ふふ、黙っちゃったね」 さすがに我慢の限界が近くなってきたために途切れさせた言葉も、2人にとっては楽しみのネタになるらしい。 「ってことでさ、あんたは裏切られて自分たちからノコノコ殺されに来たってわけ。あ、あんた“ら”か」 「ちょ、待て。お前らあいつにも手を出す気か?」 一瞬、苛立ちを忘れて思わず目を見張る。 話の流れからすれば当然にすぎることだったが、目の前のことに気を取られて、優樹の存在をすっかり忘れてしまっていた。 そんな遥に対し、2人はまた顔を指差してくる。 「ふふ、またあんな顔してるよ」 「ウケる!マジでウケるね。手を出す気かって当たり前じゃん。本物のバカだよこいつ」 再び苛立ちが戻ってくる。 無駄とは知りながら、一応言うだけ言ってみる。 「あいつには手を出すな」 「なになになに?なあに?手を出すな?聞いた?ねえ聞いた?手を出すなだって!」 「相棒愛かぁ。泣けるね」 「手を出すなっつってんだよ。いや、出さない方がいい」 「今度は『出さない方がいい』だって」 「固い絆があるんだねー。なんだか可哀想」 さすがにいい加減、付き合うのが苦痛になってきた。 なんでもかんでも我慢するだけがオトナじゃないよな、うん。 「なあ、さっきから絆とかどうとかバカなのか?お前らほんとに業界の人間?さすが能力者のくせに無名なだけはあるよな」 一瞬で2人の顔から笑みが消える。 自分たちがマイナーであることをよっぽど気にしているらしい。 その豹変ぶりはいっそコミカルなほどだ。 「…まだ自分の立場が分かってないの?」 「分かってないのはお前らだろ。あ、分かるわけねーか。頭悪そうだもんなお前ら。無名にはやっぱり理由があるってことか」 「黙れ!」 激した“カーディガン”が右手を挙げる。 遥の左手の薬指が、小指に続いておかしな方向に曲がった。 「あーあ、また折れちゃったじゃん。でさ、そもそもお前らさっき『ありえねー』って言った意味勘違いしてね?ってかしてるよな?」 「どういう意味だよ」 「答え教えてほしい?それか自分らで頑張って考えてみるか?」 「うるさい!うるさい!うるさいッ!!」 「おい、ちょっと、落ち着きなって」 “おかっぱ”の静止を聞かず、“カーディガン”は感情を暴走させ続ける。 外見に似合わず、えらく興奮しやすい性質らしい。 おかげで、遥の左手の指はすべて力を失いぶらさがった。 「あーあ、全部プラプラになっちまったじゃん」 他人事のように言う遥に、“おかっぱ”の方はさすがに不気味さを感じ始めたらしい表情を覗かせる。 だが、“カーディガン”の方はいまだ感情を昂らせ続けている。 興奮すると分別がつかなくなる傾向にあるようだ。 「うるさいしか言えないならもう答え言うぞ?」 「黙れ!黙れ!黙れぇ!」 今度は、右手の指が折られていく。 「はは、ちょうどカウントダウンみたいだな。3、2、1……じゃ、正解発表」 すべての指がバラバラの方向を向いたところで、遥はニヤリと笑った。 そして、ずっと言いたくて仕方なかった「正解」を口にする。 「『譜久村さんがよりによってお前らみたいなカスを差し向けるなんて死んでもありえねー』っつってんだよ、バーカ」 「だまれぇぇッッ!!!」 言い終わるとほぼ同時に、これまでで最大の力が遥を襲う。 何かが頭部に巻きつくような感覚の直後、目に映る景色が高速で動き、気付けば、頭の後ろにあったはずの壁が目の前に在る。 張り付けられた体はそのままに、遥の首は180度回転させられていた。 ◆ ◆ ◆ 「あーあ、殺っちゃったか。まあいいよ。どうせそう長くも遊んでられないし」 「拘束」が解け、首をぐにゃりとさせたまま床に尻をついた遥を見下ろした後、“おかっぱ”は“カーディガン”に向き直る。 まだ少し目を血走らせ、息を荒くしている“カーディガン”に、呆れたようにため息を吐く。 「だけどさ、そのすぐ興奮するくせ、いい加減直してってばもう」 「だってこいつムカつくんだもん」 「ま、確かに生意気なガキだったけどさ。もうちょっと冷静になってよ」 「ああいう口ばっかのやつ大っ嫌い」 「分かるけどさ。そうカリカリばっかりしてないで、絵画でもゆったり楽しむ心の余裕を持てっていつも言ってんじゃん。いいよ、芸術は」 「退屈だからイヤ。同じ絵ならアニメ見てる方がずっといい」 「分かってないなあ。漫画では絶対得られない一瞬を捉えた美しさをさ。動きがないのに確かにそこには動きがあって」 「漫画じゃなくてアニメ!そっちこそ分かってない!」 「あー分かった分かった。興奮すんなって話をしてんのに。それにまだ仕事は半分しか終わってな―――」 言いかけた“おかっぱ”の表情が一気に緊張する。 数人くらいは十分に立てるスペースがあるこの多目的トイレ。 その空間内――出入り口の扉すぐのところに、いつの間にか一人の少女が立っていた。 「……!おい!」 「分かってる!」 しかも、それが他ならぬもう一人の「獲物」だと知り、2人は戦闘態勢を取る。 “おかっぱ”の声に合わせ、“カーディガン”が素早く「触手―エア・テンタクルス―」で「獲物」を捉える。 捉えようとした。 「……ぇ?」 だがそれは叶わず、代わりに微かな声が“カーディガン”の口から洩れる。 何が起こったか理解できないといった表情を浮かべ、そのまま崩れ落ちる。 そして、おそらくは自分がどうなったか理解できないままに、カーディガンの少女の意識は永遠の闇に落ちた。 ◆ ◆ ◆ 「何こんなとこであそんでんのさ、どぅーどぅー」 「年がら年中遊んでるやつに言われたくないけどな」 「まさはあそんでないもん!」 「今もジュース買いに行ってたくせに」 「ジュースはあそびじゃない!」 「…何だよその迷言。つーかやっぱりか」 そう言いながら遥は立ち上がり、倒れた女のカーディガンの裾で、指先に付いた血を拭う。 「そん……ど、なんでだ!お前、何で生きてる!?こんな……おい!おいって!起きろよ!」 殺したと思った相手が生きていて、目の前で相棒が殺された――― その事実が、まだ完全に事実として受け入れられていないらしい。 “おかっぱ”は、明らかにパニックになっていた。 「何で生きてるかって、お前らがアマチュア以下のカスだからだろ」 特に聞き出すこともないのに、不必要にいたぶり殺すようなことをするなど、「同業者」が聞いて呆れる。 はっきりいって一緒にしてほしくはない。 殺すのならば、今の遥のように迷いなく一瞬で終わらせるのがプロの鉄則だ。 大体が「標的」を「獲物」などと呼んでいる時点で、完全に何かをはき違えている。 「だけど…首を…首が…」 「折れてたのに…ってか?漫画好きなのお前の方だっけ?ゴムゴムの実って知ってるよな。ハルあれ食べたんだよね」 言いながら、首を360度捻じってみせる。 絶句する“おかっぱ”に笑いかけながら、首を元通りにぐるんと戻す。 もちろん、本当に「悪魔の実」を食べたわけではない。 遥の持つ能力「物質変性―ディネイチャー―」によるものだった。 先刻、“カーディガン”の盆の窪を指で貫き通したのも同様だ。 「さて、お前には聞かなきゃいけないことがあるな」 言いながら、一歩踏み出す。 “おかっぱ”の顔が引き攣った。 「う、『動くな』!」 「……?」 上ずった声で“おかっぱ”がそう言った瞬間、遥の足が実際に止まる。 (これは…「催眠―ヒュプノシス―」系の能力者か?) “おかっぱ”の言葉通り、体が動かない。 その一瞬の隙に必死で横をすり抜け、“おかっぱ”は優樹へも言葉を向ける。 向けようとした。 「……んぐっ?」 だが、それは叶わず、代わりにくぐもった声が“おかっぱ”の口から洩れる。 “おかっぱ”の口には、いつの間にかゴムのボールがすっぽりと嵌まり込んでいた。 「にがすわけないじゃん」 目を白黒させる“おかっぱ”に、優樹がくしゃっと笑う。 “おかっぱ”は今はまだ知らない。 だが、この笑顔が何よりも恐ろしいことを、遥はよく知っていた。 投稿日:2013/11/11(月) 17 16 56.52 0 四回目 ※不快に感じる人がいるかもしれない描写を含みますのであらかじめご了承ください “おかっぱ”は必死で口内のゴムボールを吐き出そうとしている。 だが、文字通り死活問題となるそれはまるで達成できていない。 実際、顎でもはずさない限りはまず無理だろう。 もしくは歯を全部ぶち折るか。 どちらも痛そうだ。 「この人がちょうどいいものもってた。はい、どぅーどぅーこれ」 “カーディガン”のポーチを物色していた優樹が、そう言いざまに何かを投げてよこす。 「危ねっ!投げ方が雑なんだよ。もうちょい丁寧に渡せよ」 「めんごー。はいもういっこ」 「うおっ!だから!危ねーってのに!」 顔面に向かってきた2個目の手錠も何とかキャッチし、いまだ悪戦苦闘している“おかっぱ”の首根っこを無造作に掴む。 そして、便器の方へと思い切り突き飛ばした。 「ぐむっ…!」 背中から激突した“おかっぱ”は、声にならない声を上げた後、便座の上に腰を落とした。 その両手を、素早く左右の壁の手すりに2つの手錠で片手ずつ繋ぐ。 「さて」 “おかっぱ”を拘束し終えた遥は、優樹の方を振り返った。 こいつには色々と喋ってもらわなければならない。 誰に雇われたのか。 目的は遥と優樹を殺すことなのか、それ以外にもあるのか。 他に仲間はいるのか……等々。 とんだ時間ロスだが、こっちの「仕事」を滞りなく遂行するためと、自分たちの身を守るためにはやむを得ない。 もっとも、曲がりなりにも「プロ」の意識がある人間なら、いくら何でもこれらの内容を易々と漏らしてしまうとは思いにくい。 「尋問」に使える時間は十分とは言えない。 願わくば、覚悟までアマチュアレベルであってほしいものだ。 ともかく。 何にしろ、ゴムボールを咥えたままでは答えてほしいことにも答えてもらえない。 顎もはずさず、歯も折らずにボールを取り出すには、嵌め込んだ本人に頼むしかない。 だが、無言で促す遥に「まだだよ」と笑顔を返し、優樹はその表情をそのままに“おかっぱ”へと顔を向けた。 パニックも収まって腹を据えたのか、便器の上で拘束された“おかっぱ”は挑戦的に睨み返す。 もっとも、口はパンパンに膨らんでいるので、せっかくだがだいぶマヌケだ。 「まずは、まさの能力せつめいしとくね」 緊張感の欠片もないその第一声に、敵意に満たされていた“おかっぱ”の瞳が、僅かな拍子抜けと困惑の色を浮かべる。 敵に対してわざわざ自分自身の能力を説明することの意味が分からないのだろう。 そう、今はまだ。 「まさの能力はしょーとるーぷっていって…」 「ショート・リープな」 「…どっちでもいいの!とにかく自分とかものとかを……びゅんっってできるの」 擬音や擬態に頼る説明はやめろっつーのに。 「転送―ショート・リープ―」が優樹の持つ能力だ。 短距離間に限られるが、自分自身や物体を、空間を“跳び越え(リープ)”させて一瞬で任意の場所に転送することができる。 鍵のかかったこのトイレ内に入って来たように。 “おかっぱ”の口内に、ゴムボールを詰め込んだように。 「たとえばこのくぎでやってみるね」 優樹の手には、五寸釘…ほどではないが、太くて長い釘が乗せられている。 おそらくは、これも手錠とセットでこいつらが用意していたものだろう。 何にどう使うつもりだったかは分からないが、まあ大よそのところは想像がつく。 本当に趣味の悪いやつらだ。 「いくよー」 どうリアクションをすればいいのかいまだに分からないでいるらしい“おかっぱ”に構わず、優樹は自分のペースで話を進める。 敵ながら気の毒だなと少し思う。 「ぉご!?」 次の瞬間、“おかっぱ”は激しいリアクションを返した。 「こんなかんじー」 笑顔を絶やさないまま、優樹は無邪気な口調でマイペースを貫く。 対して、体内のどこかにバカでかい釘を刺し込まれたのだろう“おかっぱ”は、表情を一変させている。 同じ言葉の繰り返しになるが……敵ながら気の毒だ。 ま、同情する気にはなれないけどな。 「もういっぽんね」 笑顔で、優樹はまた釘を取り出す。 “おかっぱ”の目が恐怖を湛えて見開かれ、次の瞬間また声にならない絶叫が漏れる。 「もういっぽん」 笑顔。恐怖の表情。引き攣る体。くぐもった絶叫。 ……やっぱりちょっと同情するかもしれない。 こういうの苦手なんだよな。 まだ痛そうなとこが見えないだけだいぶマシだけどさ。 「もういっぽん」 優樹がそう言ったところで、“おかっぱ”が必死に首を横に振った。 直後にまた体を痙攣させ、悲痛でいて間抜けな声を漏らす。 あーあ、だから「あいつには手を出さない方がいい」って教えてやったのにさ。 「まさの能力わかった?」 最初からまったく変わらない笑顔のままそう訊く優樹に、“おかっぱ”は今度は必死に首を縦に振る。 「じゃ、いろいろきくからちゃんとこたえてね?はんこうしたら殺すから」 必死の頷き。 どうやら割と早く片付きそうだと心の中でほっと一息吐く。 それにしてもと遥は思う。 “カーディガン”にしろ“おかっぱ”にしろ、あの能力を持っているなら、上手く立ち回れば十分以上にこの「業界」で名を上げられていたはずだ。 彼女らが「殺人者」ではなく「殺し屋」として襲撃してきていたら、もしかすると結果は違っていたかもしれない。 もちろん、それは全く意味のない「たられば」だ。 それができないからこそ彼女らは「アマチュア」なのであり、「無名」だったのだから。 だが、遥自身、聖や今の「店」との出会いがなければ案外似たようなものだったのかもしれないと思うと、目の前の少女が少しだけ本気で哀れに思えた。 このあたり、自分でも「プロ」失格な甘い部分だと思っている。 「どぅーどぅー、ちょっともってて」 「は?何を……ってうおっ!汚ねえ!何すんだてめー!」 思わず放り投げたゴムボール――今しがたまで“おかっぱ”の口に嵌っていた――が、べちょりと床に落ちる。 それは唾液だけではなく赤いものにも塗れていて、生々しく痛みと苦しみを伝えてくる。 ほんと気の毒だわ。 だが、汚いものは汚いので、再度“カーディガン”のカーディガンで手を拭く。 よく考えりゃ、これまで散々他人にやってきただろうことが自分に返ってきてるだけだしな。 口が自由になったことで“おかっぱ”の能力は使用可能になっただろうが、おそらく過度の警戒は必要ない。 先ほどの使用場面から推測するに、能力は一度に複数の相手には使えないとみてまず間違いないだろう。 どのレベルまで相手の体もしくは意思を支配できるかは分からないが、完全に操れるなら同士討ちをさせるなりできたはずだ。 それをせず、動きを止めて逃走にかかったということは、せいぜいそれくらいしかできない程度ということなのだろう。 また、その効果はせいぜい数秒程度だった。 命のやり取りの中でのその数秒は致命的なものになるだろうが、この状況下ではまず生かしきれない。 ましてや「催眠―ヒュプノシス―」系の能力は、相手が警戒して構えていれば効果は薄れる。 そんなものをものともしないほど能力が強ければ別だが、まあまずそれはない。 そして……何よりそれ以前に、“おかっぱ”はほぼ戦意を喪失している。 「じゃ、最初の質問な」 手を拭き終えて立ち上がり、“おかっぱ”に視線を向けた。 最初は答えやすい質問にしておく。 「お前らの受けた『依頼』は、ハルたちを殺すことか?」 「……そう」 「その『依頼』を受けたのはお前ら2人だけか?」 「…知る限りはそう」 この程度の質問ならボールを口に押し込んだままでも答えさせることはできたが、それでは真偽の判断が難しくなる。 今の答え方からして、どちらも嘘は吐いていなさそうだ。 ただ……それがすべてでもなさそうだ。 「具体的にはどういう『依頼』を受けた?いつ、どこで、どうやって殺せとか、そういう指示はあったのか?」 「それは……」 言いよどむ。 当然だろう。 「依頼」の内容について詳しく漏らすなど、この「業界」に身を置くものとして最もやってはいけないことの一つだ。 そうなのだが。 「んむっ!?」 再び自分の口にゴムボールが「転送」されたことを知り、その表情が恐怖に歪む。 続けて、これまでで最大の痙攣と「絶叫」とともに、歪んでいた表情がさらに歪んだ。 手錠で傍らの手すりに繋がれた“おかっぱ”の左手親指から、太い釘の先が突き出ている。 おいおい、見えるとこやんなよこっちまで痛いっつーの。 「ゆったじゃん。だめだよ、はんこうしたら」 そうだぞ、ダメだぞマジでこいつに逆らったら。 「見える」恐怖とストレスは“おかっぱ”も同じだったらしく、完全にその表情が怯えに支配された。 必死で「分かった」というように何度も頷く姿からはもはや、抵抗の意志はまったく感じられない。 だが。 「もういっぽん」 鬼かこいつ。 ……いや、「プロ」だよな。 笑顔。恐慌。苦悶。絶叫。苦悶。恐慌。懇願。 もう、“おかっぱ”は完全に優樹の支配下に置かれている。 「拷問」はただ痛みを与えればそれでいいというものではない。 実際、単純な痛みだけで言えば、優樹が“おかっぱ”に与えたものはたかが知れている。 だが、きっとそれを遥かに越える恐怖が、“おかっぱ”を絡め取っている。 「生」を諦めさせたり、意志や思考を完全に剥ぎ取るほど痛めつけてしまっては、逆に尋問ができなくなる。 ただ痛みを与えるのではなく、何をすればそうされるのか、どうすればされないのかを、無意識レベルで相手に植えつけることが重要だ。 加えて、今ならまだ取り返しがつく、でもこれ以上逆らったら取り返しがつかないことになる…と、心から思わせることが。 痛めつけることを楽しんでも、躊躇してもそれはできない。 「やめて、もうやめて、お願い、何でも喋るから…!」 再びボールがはずされた口から、泣き声が漏れる。 身悶えしながら乞うその姿には、もはや一片のプライドも感じられない。 「じゃ、さっきの質問に答えろ」 「こ、この新幹線の中で殺せって。殺し方はあたしたちの好きなようにしていいって…。それだけ。本当にそれだけ」 「好きなように……ね」 やり方は任せるという「依頼」自体はごく普通だ。 というよりも、それがこの「業界」の暗黙の「マナー」だ。(マナー違反者も多いけどな) だが、この場合の「好きにしていい」からは、それとは違う感触を覚える。 こいつらは、ただ殺すのではなく、肉体的にも精神的にも相手を痛めつけながらゆっくり時間をかけて殺すのが趣味のようだった。 確証はないが、「依頼者」はそれを分かっていてこいつらを使ったのではないだろうか。 遥や優樹たちをそのように殺したかった……ということでは多分ない。 他の理由がありそうな気がしてならない。 「で、誰だよ、依頼者」 「業界」の人間にとって最大の禁忌(タブー)をぶつける。 重大な「契約違反」が「依頼者」側にあった場合は別として、これを漏らすことはこの「業界」での死を意味する。 最もやってはならないことの中でも最もやってはならないことだ。 だが、もう“おかっぱ”はその禁忌を破ることに躊躇したりはしないだろう。 「知らない。ほ、本当だよ!本当に知らないんだってば!『仲介業者(メディエーター)』を通して受けたから…」 「仲介業者?お前らフリーか?どっかの『店』には属してないのか」 「……今回は…『店』を通してない」 なるほど、そういうことか。 それは不幸中の幸いというか、面倒中の小さなラッキーだ。 「店」同士が揉めるのは、できることなら避けたい。 小金を稼ぎたかったのか名を上げたかったのか殺しそのものを楽しみたかったのかそれら全部だったのかは知らないが、単独行動なら揉める心配は少ない。 こいつらの「店」にとっては、こいつらの行動は明らかな「契約違反」だ。 「で、どこの仲介業者だ」 「五反田の『サン事務所』とかなんとかいう小さいところ。あたしらも初めてだったから詳しくは…」 「聞いたことねーな」 「う、嘘じゃないって!」 「携帯借りるぞ?」 “おかっぱ”の携帯を操作し、通話履歴を表示させる。 「番号これか?」 「そう」 直近の履歴を示すと、“おかっぱ”は即座に頷く。 黙秘や虚偽で対抗する気はもう完全にゼロになっているようだ。 再び携帯を操作し、その番号にかける。 耳に当て、反応を待つ。 やがて、平板な女性の声が耳を打った。 ――おかけになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめの上…… 「う、嘘だっ!そ、そんなはず…!嘘じゃない!本当だよ!本当にその番号なのっ!嘘じゃない!こんなはずない!こんなの嘘だ!」 受話口から漏れ出て聞こえたらしいそのアナウンスに、“おかっぱ”は真っ青な顔で必死に言い募る。 嘘なのか嘘じゃないのかはっきりしろよどっちだよ。 「別にお前が嘘吐いたとは思ってねーよ。通話履歴として残ってるんだから」 そう言うと、“おかっぱ”は安堵の表情を浮かべ、優樹の方をチラリと見遣る。 すると「イヒヒ」と笑い声を返され、大げさなぐらいビクリとなって遥の方へと視線を戻した。 「“嵌められた”のはお前らの方らしいな。多分、そんな仲介業者元々いなかったんだよ」 「いな…かった…?」 その五反田の事務所とやらは、とっくにもぬけの殻だろう。 こいつらに件の「依頼」をすることだけが目的だったに違いない。 「その仲介業者の風体は?」 聞いても無駄なことだろうとは思いつつ一応聞いておく。 「中身はどこにでもいる普通のオッサンで……ただ、とにかくピンクだった」 「……は?ピンク?」 聞き間違いかと思ったが、そうではなかった。 「そう、ピンク。髪の毛とかサングラスとかシャツとかスーツとかパンツとか革靴とか……とにかく全部ピンク色で固めてた」 「全身ピンクのオッサン……」 「業界」でそんなヤツの噂を聞いたことはない。というか当たり前だ。そんなヤツいるわけがない。 服や見た目のインパクトを強くすることで、それを纏う人間自身の印象を消そうとしたのだろう。 おそらく、「ピンクじゃなくなったオッサン」を、もう“おかっぱ”は認識できないに違いない。 たとえそこから辿れたとしても、きっとどこかで手がかりの糸は途切れ、大元に辿りつくのは難しいだろう。 そこまで考えたとき、遥の携帯が振動した。 画面を見ると、聖の名前が表示されている。 「はい」 「どぅー、もう終わっちゃった?」 「いえ、まだですすみません」 「よかった。『依頼』は取り消し」 「はぁ?何ですかそれ」 前置きもなくいきなり「仕事」の中止を告げた聖に、遥は憮然とした声を返す。 だが、正直なところ、どこかでそうなりそうな予感もしていた。 「ちなみに理由は教えてもらえますか?」 「『依頼者』が死んじゃったみたいなんだよね」 「死んだ?どういうことですか」 「殺されちゃったんだ」 「誰に。何でまた」 「どこかの『プロ』だろうね。何でかは思い当たることが多すぎて分かんない」 「まあ依頼者がいなくなったんじゃどうしようもないですけど。ってか死なせちゃダメじゃないですか。譜久村さんは何やってたんですか」 「別の『仕事』でどうしても抜け出せなくて。それは片付いたんだけど」 「あ、まーが言ってましたねそういえば。そっちは無事終わったんですね」 「うん、キンバク好きのおじさんだったのがちょっと…って感じだったけど、まあそのおかげで楽だったのもあるし」 「はぁ、金爆好きのおじさんすか」 遥もそのビジュアル系エアバンドは嫌いではなかったが、聖は否定派なのかもしれない。 どうしてそのおかげで「仕事」が楽だったのかはよく分からないけど。 あの人、ああ見えて天然なとこあるんだよな。 「それはいいんだけど、えらく遅いね?なんかあった?もう絶対終わっちゃったと思ってた」 「ええ、それなんですけど」 電話中はお静かにとばかりに再びゴムボールを口に嵌められている“おかっぱ”をチラリと見遣る。 “おかっぱ”は電話の内容も気になるようだったが、それ以上に退屈そうにしている優樹が気になるようだった。 退屈しのぎに「もういっぽん」をやられたりしないかと恐れているのだろう。 お前らじゃねーんだから目的もなくそんなことしたりしないっつーの。…多分。 「実は襲撃を受けたんですよね。誰かに『依頼』を受けたって2人組に」 起こったことを、順序立てて話す。 まず優樹がメールを消してしまったことを報告したら、聖は呆れ、優樹は膨れ、それを見て“おかっぱ”は怯えた。 そこでふと気づく。 優樹がメールを消したのも、もしかすると“おかっぱ”の能力によるものかもしれない。 例えば、近くで“カーディガン”としている何気ない会話の中で、「メールを消せ」という「命令」を乗せて、その部分だけを優樹に届けられれば。 メールを消す動作自体は簡単なことなので、他人の意志が介在していると気付かずに誤って消したと思ってしまうかもしれない。 …優樹なら。 後で確かめてもいいが、まずおそらくはそういうことだろう。 それによって「長期滞在」を余儀なくされ、今に至っているのだ。 ある意味、あの時点から「襲撃」は始まっていたのだと言える。 ただ、こいつらがそんな作戦を立てたと考えるのは違和感がある。 おそらくはそれも「仲介業者」を通じて与えられたものだろう。 遥と聖の関係をそれなりに知っていたことも同様である気がする。 そういった推測も含めた報告が、ようやく現時点の時系列に合流する。 “おかっぱ”の表情から見て、推測したことは大筋で合っていそうだった。 「なんだよー、おまえのせいだったのかよー」 優樹は舌っ足らずな口調で“おかっぱ”に絡んでいる。 ってか敵にいいようにやられてる時点でお前の失態だよバカまー。 怯えきった表情がデフォルトになった“おかっぱ”は、すっかり刻み込まれた恐怖に失神寸前になっている。 「襲撃は時間稼ぎ…だね」 「やっぱりそう思いますか、譜久村さんも」 少しの沈黙の後に返ってきた聖の言葉に、遥は2度3度と頷く。 遥や優樹を殺すための襲撃ではなく他に理由があるのではないかと考えていたところに、「仕事」中止の知らせ。 それはおそらく繋がっている。 2人組に遥たちの殺しを“依頼”した誰かは、同時に遥たちの「依頼者」への殺しも「依頼」していたとみてまず間違いはない。 後者は遥たちの「標的」を殺させないため、そして前者はその時間稼ぎだと考えるのが妥当だろう。 「そうなると…打ってあった手はこいつらだけじゃなさそうですね」 「多分ね。もう『標的』を殺す理由がなくなったことはあっちも分かってるだろうから大丈夫だと思うけど、一応気を付けてね」 「分かりました」 遥たちの「依頼者」を殺すまでの時間稼ぎが目的であったのなら、あの2人だけにそれが任されていたわけではまずないと見た方がいい。 結果的に役目は果たされたが、他にも複数“保険”をかけてあったと考える方が自然だ。 一体「標的」は何者で、またそれを守ろうとしたのが何者かということを知りたい気持ちもあるが、それは深入りしない方がいいだろう。 聖でさえ「標的」の特殊性に気付かなかったらしいくらいなのだから。 「それと」 「はい」 「分かってると思うけど、“後始末”はくれぐれもしっかりね」 「…はい」 電話を切る。 「っつーわけだ。『仕事』はお終いだってよ」 「なんだよなんだよむだ足かよー」 「お前がメールさえ消さず、とっとと終わらせときゃ無駄じゃなかったんだけどな」 言いつつ、まあそれはありえなかったろうなと思う。 漠然とした勘だが、それがなくともどのみち何らかの足止めを受けていた気がする。 もしかすると、こっちが無事なままなのは幸運でさえあるのかもしれない。 「まさのせいじゃなくてこいつのせいだもん」 優樹は頬を膨らませ、“おかっぱ”を指差す。 またビクリと体が震えた。 怯えきったその表情は変わらないが、その瞳には不安とともに微かな希望の色が浮かんでいる。 遥たちの「仕事」が終わりだと知り、もしかしたらこれで解放してもらえるかもしれないという期待が顕れたのだろう。 「やれやれだ」 いつもの呟きが漏れる。 優樹と一緒だから漏れるのだと思っていたが、案外そうでもないのかもしれない。 この因果な商売そのものへの嘆息なのかもな。 唐突に腕を伸ばす。文字通り、普通ではありえない長さに。 伸ばした腕の先の手を“おかっぱ”の頭に絡める。 そして一気に収縮させた。 首の骨が折れる音が、そして感触が伝わり、びっくりしたような表情を浮かべていた“おかっぱ”の頭がぐにゃりとなる。 「……まー、譜久村さんが『“後始末”はくれぐれもしっかり』ってさ」 「そうだよどぅーどぅー、あとで怒られないようにちゃんとやっとくんだよ」 「お前もだよバカ」 次の停車駅――名古屋まではまだ長い。 ◆ ◆ ◆ 「よくグースカ無防備に寝れるもんだ」 傍らで寝息を立てる優樹に、遥は呆れと感心が半々になった呟きを漏らす。 “カーディガン”と“おかっぱ”は、タイミングを見計らって優樹の能力で車外に「転送」した。 やつらは「標的」ではないので、わざわざ車内に残して面倒の元になるよりはその方がいいだろう。 死体が見つかったときには騒ぎになるだろうが、闇の世界の人間だと分かればいつものように最後はうやむやになる。 多目的トイレ内も、(微妙に血痕は残ったが…)可能な限り綺麗に掃除しておいた。 何が悲しくて新幹線のトイレ掃除なんてしなきゃいけないんだよまったく。 それでも時間は余ったので、席に帰ってきた。 そして帰ってくるなり、優樹は「まさつかれたからねる」と眠ってしまい今に至る。 もう襲撃される理由はないはずだが、必ずしもそうとは限らない。 まだ気を抜いていいわけではないことは優樹も分かっているだろうに、なんとも太平楽というか豪胆というか。 「ホットコーヒー、お茶はいかがでしょうか」 「あ、お茶ください。冷たいやつ」 通りかかった車内販売のお姉さんを呼び止め、ペットボトル入りのお茶を求める。 「まさもなんかほしい。こんどはしゅわっとしたやつ」 「なんだ起きたのかよ。あ、炭酸のやつって何かありますか」 「炭酸のお飲み物はコーラのみとなっております」 「えー、まさサイダーがいい」 「すみません、気にしないでください。コーラでいいです」 「大変申し訳ありません」 まとめてお金を払って品物を受け取り、コーラの缶を優樹に手渡す。 「あーあ、サイダーがよかったのにー」 「まだ言ってんのかよ。奢ってやってんのに文句言うとか何様だ」 「だってさやしすんがサイダーサイダーいっつも言うからのみたくなるんだよー」 「ああ、そういやよくサイダー飲んでるな、鞘師さん」 「リゾナント」の「同僚」である里保は、言われてみれば、見かける度にサイダーの瓶を持っている。 「ねーどぅーどぅー、まさ、ゆめ見てたんだけどどんなゆめか聞きたい?」 「どこまでお気楽なんだよお前は」 「ねえ聞きたい?どぅーどぅーも出てきたよ。ふくぬらさんもさやしすんも」 「勝手に喋れよ。聞きたくないっつってもどうせ喋るんだろうが」 「ゆめの中でね『リゾナント』ってきっさ店なんだよ、まさたちがいるとこ」 「は?喫茶店?なんだそりゃ」 「ゆめだよ。でね、まさやどぅーどぅーたちはせいぎのヒーロー」 「正義?ヒーロー?意味わかんねーよ。なんだよそれ」 「だーかーらー。ゆめっていってんじゃん。まさたちはせかいをすくうためにたたかってんの」 「世界を救うねえ……殺し屋にゃ多分無理なんじゃないか?」 「だからせいぎのヒーローなんだってば!」 「そうだったな。…でもよく考えりゃ似たようなもんじゃないのか?どっちも。ヒーローだって敵殺すときあるし」 「……かもしんない。にてるかも。だってゆめの中でもさやしすんサイダーのんでたし」 「それ関係あんのか?」 「ってことは殺しやもせかいをすくえるかもしれないね」 「多分無理なんじゃないか?」 「ぜったいむりだね」 「なあ、何の話だよこれ」 「だからゆめのはなしだってゆってんじゃん」 窓の外の景色は、勢いよく流れ続けている。 名古屋までは、あとまだもう少し。 「やれやれだ」と今日何度目かに呟きながら、遥はペットボトルの蓋を開けた。 ―― 完 ―― 投稿日:2013/11/18(月) 12 29 44.91 0 back 『リゾナント殺人請負事務所録』 Interlude.1~殺し屋たちの信念~
https://w.atwiki.jp/orirowa2014/pages/73.html
プロフィール 【名前】アザレア 【性別】女 【年齢】12 【職業】殺し屋 【特徴】金髪で紅眼の黒のゴスロリを着た人形のように可愛らしい少女 【好き】可愛い物、拷問 【嫌い】とくになし 【特技】暗殺、拷問、重火器の扱い 【趣味】人形やぬいぐるみの収集。拷問器具の手入れ 【詳細】 ヴァイザーと同じ組織に所属する少女の殺し屋。赤ん坊の頃に親にゴミ箱に捨てられて、偶然そこを通りかかった組織の一員に拾われ組織に殺し屋として育てられる まだ12歳の少女だが幼少の頃からの教育により殺し屋としての実力は一流で自身の外見で標的を油断させた後の暗殺を得意としている。腕力も見た目以上で重火器を扱う事ができる 自身を拾った組織の男の影響で拷問が好きで、彼から師事された拷問の技術で対象の悲鳴や苦痛で歪んだ顔を見るのが日課 可愛い物が好きという年頃の少女らしい一面もある 【備考】 ほぼ毎日アジト内で拷問や人形遊びに明け暮れており、外に出るのは仕事の時だけなので一般常識に疎い 他キャラとの関係 キャラ 呼称 関係 ヴァイザー ヴァイザーヴァイザー兄さん 『組織』の殺し屋 イヴァン・デ・ベルナルディ 『組織』の上司 バラッド バラッド姉さん 『組織』の殺し屋 サイパス・キルラ サイパスおじさん 『組織』の殺し屋。殺し屋として教育された。彼から「自身の後継者にしたい」と思われているが興味は無い ピーター・セヴェール ピーター 『組織』の殺し屋 亦紅 『組織』の元殺し屋 クリス 敵対組織の殺し屋 ※「オリロワ2014番外編スレ」にて投下された作品です。 あくまで番外編であり、ロワ本編とは設定が異なっている場合があります。 + 登場番外編 無題2 02.アサシン 参加者名簿 04.麻生時音
https://w.atwiki.jp/orirowa2014/pages/77.html
プロフィール 【名前】ピーター・セヴェール 【性別】男 【年齢】29 【職業】殺し屋 【特徴】顔の整ったハンサムな男。金髪で長身 【好き】殺人(主に女性を殺す事) 【嫌い】煙草の匂い 【特技】暗殺、話術 【趣味】死体の解体、食人 【詳細】 ヴァイザー達が所属する組織の殺し屋。 女性専門の殺し屋で紳士的な態度と巧みな話術で女性を誘惑しその気にさせ殺しやすい場所に連れ込んでの暗殺が常習手段 女性を殺す事に悦を感じ、殺した死体を解体するのが好きな変態。食人の嗜好も持っており死体の一部を持ち帰り料理して食べている。普通の性行為には興味はないが手段として用いる事がある 直接的な戦闘力は組織内でも低いが残忍で狡猾な性格と殺しの手際の良さからサイパス・キルラに気に入られている 【備考】 危険な性癖の持ち主なのでヴァイザーとは別の意味で組織内でも恐れられている(主に女性に) 他キャラとの関係 キャラ 呼称 関係 ヴァイザー 『組織』の殺し屋 アザレア 『組織』の殺し屋 イヴァン・デ・ベルナルディ イヴァンさん 『組織』の上司 バラッド バラッドさんバラッド 『組織』の殺し屋 サイパス・キルラ サイパス 『組織』の殺し屋。気に入られている 亦紅 ルカ 『組織』の元殺し屋 クリス 敵対組織の殺し屋 54.半田主水 参加者名簿 56.ピーリィ・ポール
https://w.atwiki.jp/compe/pages/337.html
「なあ、ちょっといいか?」 露伴が目の前の男性、ひろし? に話しかけられた時、得も言われぬ不快感を覚えた。 警戒こそしているものの、なぜ不快に思うのか分からなかった露伴だが、すぐ答えにたどり着く。 声が似ているのだ。 かつて杜王町の闇に潜み、十五年以上人を殺し続けた殺人鬼、吉良吉影と。 とはいえ、それは目の前の男とは何の関係もない話。 すぐに不快感を押さえ込み、露伴は話に応じる。 「分かった、構わない――と言いたいところだが、まずはその懐にしまった手を見せてもらおうか」 露伴はそう言ってひろし? を睨む。 事実、彼の右手はスーツの懐に収まっており、中でデザートイーグルを握り締めており、露伴の警戒は正しい。 向こうも露伴の警戒心に気付いたのか、やれやれとばかりに肩をすくめながら、右手を懐から抜き、そのまま両腕を上にあげる。 「これでいいか?」 「ああ、すまない」 「でも、俺だけがこんな体勢なのは不平等だよな〜」 そう言うと今度はひろし? が露伴を睨みつける。 何せ、露伴は未だ鉄の棒を握ったままなのだから。 その気になれば早撃ちで、露伴が近づくより先に銃を抜き、引き金を引く自信はあるが、一方的なのはいい気がしない。 そんな彼の言外に込めた感情を、露伴は理解し鉄の棒から手を離し、カランと音をさせながら落とす。 「……どうだ?」 「それでいいぜ。まずは自己紹介からだ。 俺は野原ひろし。そっちは?」 「岸辺露伴。漫画家だ」 お互い話し合う姿勢を見せ、最初は自己紹介とばかりに言葉を紡ぎ、それとなく互いに距離を詰めていく。 ただし、露伴は内心で驚愕していた。 (野原ひろしッ! まさかしんのすけ君と別れてすぐに出会うとは思わなかったぞッ!!) 「早速質問なんだが、しんのすけと佐藤マサオ君に会わなかったか? しんのすけは俺の息子で、マサオ君は息子の友達なんだ」 そしてひろし? はしんのすけとマサオ、二人の外見の説明を始める。 それを聞き流しながら、露伴は (ひとまず、単なる同姓同名ではなさそうだな) と考えていた。 輝子には可能性が薄いとは言ったが、やはりゼロではない。 一番何事もない可能性が潰れたが、ひとまずよしとする。 「どうだ、見てないか?」 露伴が思考を回している間に、ひろし? の説明は終わっていた。 不安げな様子を隠そうともせず、露伴を見つめる視線は、本当にただ息子を心配する父親そのものだ。 こうなると、ひろしを警戒していたことすら、ただの杞憂だったかもしれないとすら思ってしまう。 だからこれは念のためだ。 「ああ、マサオという少年は知らないが、実は少し前に僕はしんのすけ君と会って話している」 「本当か!? それは一体どこで――」 「ヘブンズ・ドアー!!」 息子を知っているという話を聞いて、喜びに満ち溢れたひろし? を露伴は不意討ちで本にした。 これはしんのすけのことを話した結果、万が一のことが起こったら後悔する、というのが二割。 そして残り八割が、しんのすけの時にはあまり読めなかった、超常的な出来事について詳しく読みたいというものである。 流石にじっくり読む気はないが、さっきよりは読み込めるだろうと考えてのことだ。 「まずは、こいつが本当に野原ひろしかどうかの確認だな」 そう言って露伴はひろし? の記憶を読み始めた。 年齢35歳。妻と子供が二人。双葉商事係長。 昼飯はいつも外食で済ませる、空気の読めない部下がいる。 その他どうでもいい情報を、露伴は読み飛ばしながら、この男が野原ひろしだと確信する。 そしていよいよ本題である、超常的な出来事について詳しく読もうとしたのだが、ここで露伴は異常に気付く。 「記憶がないぞッ! こいつにはハイグレ魔王、ヘンダーランドに戦国時代へとタイムスリップも! 名簿にある筈のロボの自分についてさえッ!!」 どういうことだ? と露伴は頭を捻る。 この男は野原しんのすけの父親、野原ひろしであることに間違いはない。 もし、あの出来事をしんのすけだけが経験しているなら分かる。 しかし、彼の記憶にある限り、過程はどうあれ野原ひろしもしんのすけと同じ出来事を経験しているはずなのだ。 にも関わらず、それがない。 「まさか、この野原ひろしはしんのすけ君とは別の世界の人間なのか?」 この状況に対する露伴の回答は、この状況でなければ荒唐無稽といえるものだった。 しかし、根拠なく言っているわけでは無い。根拠はしんのすけの記憶だ。 しっかり読む時間はなかったが、軽く目を通した限りハイグレ魔王と戦った際、野原家は平行世界を移動している。 ならば、このひろしがしんのすけと別の世界のひろしである可能性は、あってもおかしくはない、かもしれない。 「となるとこの名簿、どういう基準で分かれているのかと思っていたが、世界ごとに分けられているのか」 ならば佐々木哲平も異世界人か、と考えながらも、ひろし? の記憶を読み続ける露伴。 、すると、今までのものが全てどうでも良くなるほどの衝撃的な文章が飛び込んでくる。 『俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 「何だこれはッ!?」 スタンドも月までぶっ飛ぶこの衝撃! と言わんばかりに驚く露伴。 冴えないサラリーマンの筈の男にあるはずもない、自分が殺し屋だという記憶。 しかし、露伴が驚いたのはそこではない。 「なぜだ…… 本当に殺し屋として活動していたならある筈の、殺し屋としての記憶がない。 誰を殺したとか、誰に依頼されたとか、報酬はいくらだったとか、そういうものがあるはずなんだッ!!」 ある筈のものがない。その事実は露伴にある確信を抱かせる。 図らずも、彼が似たようなことができる故に。 「まさかいるのか? 僕の『ヘブンズ・ドアー』と同じタイプのスタンドの持ち主が、殺し合いの主催者の中に……!」 だとすれば、冴えないサラリーマンを殺し屋に仕立てて何の意味がある? 息子と殺しあわせて楽しむためか? などと露伴は考えていたが、試しに『野原ひろしは殺し屋ではない』と書き込んでみる。 すると後から『俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』という文章がポコポコと浮かび上がり、露伴の書いた文章を塗りつぶした。 ならばとばかりに今度は『野原ひろしは人を殺さない。殺そうとも思わない』と書き込んでみる。 しかしさっきと同じように、文章が浮かび上がり塗りつぶされてしまった。 「そう上手くはいかないか」 そうこうしていると、気づけば露伴はひろし? の殺し合いが始まってからの記憶を読んでいた。 そこには、既に二人の参加者を手に掛けたこと。スタンドDISCのこと。 そして、露伴を懐柔して情報を聞き出した後は殺してしまおうと考えていたことが書かれている。 「承太郎さんじゃないが、やれやれだな」 記憶を読んだ露伴はそう言いながら、ひろし? の懐からデザートイーグルを、デイバッグからポンプアクションショットガンを奪い、自身のデイバッグへ納める。 できればスタンドDISCも取り外したかったが、本になっている現状ではどうやってもできなかった。 単に本となったひろし? がつっかえているのか、別の理由があるのかそれは分からないが。 「そういえば、こいつはしんのすけ君と佐藤マサオを見つけてどうするつもりなんだ?」 殺し屋として参加者を殺すように主催者が調整した男は、息子とその友人を見つけてどうするつもりだったのか。 それに関する文章を探すと、幸いなことにすぐ見つかった。 『しんのすけとマサオ君を見つけたら、譛ェ遒コ螳なくちゃな』 「これは一体……?」 しかし、文章は読めるものになっていなかった。 色々見てきた露伴だったが、『ヘブンズ・ドアー』で本にしたものの中に、文字化けした文章を持った存在はなかった。 故に理解が及ばず、露伴は手がかりを求め更に記憶を漁る。 そして本のページをめくると、主催者が関与している決定的な証拠を見つけた。 『次のページからは『コンペ・ロワイアル』参加者による、ヘブンズ・ドアーを用いての情報閲覧は禁止されております。 禁止制限を解除する場合、『コンペ・ロワイアル』参加者の証を取り外してください。 解除方法は《『コンペ・ロワイアル』参加者には閲覧不可能》となっております。 なお、違反した場合はペナルティを科します。ペナルティの内容については、こちらが適宜判断いたします』 あからさまな情報封鎖。 これを犯せば、どんな罰が下るかは想像がつく。 だがしかし、露伴は一切怯むことなく、主催がひた隠しにするひろし? の記憶の深淵へと飛び込もうとページを手に掛ける。 『「コンペ・ロワイアル」参加者「岸辺露伴」に、禁止されている行動を確認しました。 三十秒以内に中止しない場合、「岸辺露伴」の首輪を爆破いたします』 「この岸辺露伴が、そんな脅しに屈服すると思っているのか―――――――――ッ!!」 めくろうとした瞬間、露伴の首輪から警告メッセージが流れ始めるが、彼は気にも留めない。 本のページはまるで糊付けされたかのように動かないが、スタンドと露伴本人の力を合わせて無理矢理めくる。 そこで彼が見たものとは―― 俺は殺し屋じゃない。 俺は殺し屋じゃない。 俺は殺し屋じゃない。 俺は殺し屋じゃない。 俺は殺し屋じゃない。 俺は殺し屋じゃない。『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺は殺し屋じゃない『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺は殺し屋じゃな『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺は殺し屋じゃ『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺は殺し屋じ『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺は殺し『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺は殺『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺は『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺『前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺『は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ俺。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何と言おはうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何螳カと言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺譌し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰上rが何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋螳だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ。 俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋な医kんだ。 俺は■■■■■ 「 」 声すら出なかった。 露伴がひろし? の、殺し屋でない彼を無理矢理侵した脳内は。 正視するには、露伴ですらあまりに異様な圧を感じさせるものだった。 『5、4、3……』 気づけば首輪が爆破されるまで残り五秒を切っており、露伴は慌てて本となったひろし? を閉じる。 それで首輪から発せられた音は消えたが、代わりに新たな異常が彼を襲う。 「どうも」 なんと、気づけば露伴はひろし? から数メートル離れた位置に移動させられていた。 おまけに周りの全てが止まっていた。 空の雲は動きを止め、星は瞬かず、ひろし? は本から解除されているにもかかわらず息一つしていない。 さらに目の前には見知らぬ第三者が現れていた。 第三者の外見は六十代かそれ以上の、紅いポロシャツを着た男性だ。 手には大きめの懐中時計らしきものを持ち、人のよさそうな笑みを浮かべ露伴を見つめている。 「貴様何者だァ――――――――――ッ!?」 「私は、そうですね……一般通過爺とでも読んで下さい。 主催者のメッセンジャーとしてやってきました」 最初はふざけているのかと思ったが、メッセンジャーと聞いて露伴は気を引き締める。 心当たりは、すぐに思い浮かんだ。 「ペナルティ……って奴か。首輪が爆破される前に、見るのはやめた筈だがな」 「はい。ですが僅かとはいえ、見たことに変わりません。 なのでこうさせてもらいましょう。なお、抵抗するようなことがあれば、今度は本当に首輪を爆破するとのことです」 そう言って一般通過爺は露伴のデイバッグに手を入れ、中からデザートイーグルとポンプアクションショットガンを取り出す。 そのままデザートイーグルはひろし? の懐へ、ポンプアクションショットガンはデイバッグへ戻す。 それで一般通過爺は終わりとばかりに、露伴へ向き直った。 「では私はこれで」 「……待て、一つ質問に応えろ」 「何か?」 一般通過爺の言葉遣いとは裏腹に、どこか見下したような態度に露伴は苛立ちつつ、一度周りを見渡してから問う。 「今起きているこれはなんだ?」 「……あなたは存じて……ああいや、いないのですね。 ならばお答えしますが、これは私が一時的に時間を止めています」 「時間を……!?」 「そして私の用は済みましたので、野原ひろし? 様の視界から移らない位置に移動してから、時間停止を解除いたします。 それまでの間なら岸辺露伴様の移動も許可いたします。ただし、移動だけですが」 言外に、それ以外の行動は許さないと釘をさす一般通過爺。 もっとも、露伴にその気はなかった。 この瞬間ならひろし? を殺せるかもしれないが、露伴の目線で彼は被害者だ。 もし、野原ひろしが自分の意志で殺し合いに乗っていたのなら、しんのすけには悪いが露伴は始末もいとわない。 だが事実は、ひろしは主催者に良いように操られているだけだ。 現状露伴にどうにかする手段がない以上、これ以上できることはないので逃げるだけだが。 「クソッ!!」 露伴は悪態をつきながら走り出した。 こうなると彼にできるのは、しんのすけと輝子に会い、ひろし? に何とか会わせないようにするのみ。 彼がしんのすけの知る野原ひろしとは違い、殺し合いに乗っている危険人物だと言えば、会おうとはしないだろう。 だから露伴はひた走る。 彼と別れた後、しんのすけ達が既にこの世を去っていることを知らないゆえに。 一般通過爺は露伴が走り去るのを尻目に、近くの茂みに隠れる。 それから手に持っている懐中時計のスイッチを押した。 すると、雲は再び動き出し、ひろし? は意識を取り戻した。 一般通過爺が持つ懐中時計の名前はウルトラストップウォッチ。 22世紀のひみつ道具の一つで、スイッチを押すことで時を止めるというもの。 彼はこれを使って時を止めた後、露伴のみをウルトラストップウォッチで動かして接触したのだ。 そして目的を終えた一般通過爺は会場から姿を消す。 だが彼はメッセンジャー。 今の行いの意味は理解できず、また殺し合いに思うところもない。 所詮、舞台の隅を歩き回る小間使いでしかない。 ◆ 「あの野郎どこ行きやがった!?」 そして何も知らないひろし? は激怒した。 しんのすけについて知っていると言ったとたんに、いきなり何か仕掛けてきた露伴。 別に物を取られたわけでも、命を奪われたわけでは無いのだが、何もされていないというのが逆に気味が悪い。 何よりも、自分がしんのすけの父親であり、探しているにもかかわらず教えずに去っていたのが腹立たしい。 最初から知らないのにからかっていたのか、それとも自分が他の参加者を殺しているのを知ったのか。 どちらにせよ、ひろし? に露伴を生かす理由はもう何もない。 次会えば殺す、と彼は決意した。 「こんなことなら、懐柔なんて方法選ばなきゃよかったぜ」 ひろし? が無差別に参加者を殺すのではなく懐柔を始めたのは、偏にしんのすけ達の情報を集める為に他ならない。 だがそれは最初の一歩で躓いてしまった。 ならばもう、懐柔なんて手ぬるいことはやめる。 次からは、多少手荒になっても速攻で情報を集めよう。 そう決意するひろし? の足元には、露伴が拾い忘れた鉄製の棒が転がっていた。 【I-5/早朝】 【岸辺露伴@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]:健康、佐々木哲平への不快感(大)、焦燥感(大) [装備]:スタンド『ヘブンズ・ドアー』 [道具]:基本支給品、Z750(燃料??%)@大番長、山盛りの炒飯@ウマ娘 シンデレラグレイ [思考・状況]基本行動方針:様々な参加者を取材しつつ、主催者の打倒を狙う。 1:一刻も早くしんのすけの元へ戻る。二人を会わせるのは危険 2:あの男は、しんのすけ君の知る野原ひろしじゃあないッ! 3:危険人物は取材のついでに無力化を狙う。ただし無理はしない。 4:奴(佐々木)は本当に漫画が描きたいのか? 5:藍野伊月に出会っても、僕からは何も言わない。知ってたら別だが。 6:空条徐倫、まさかとは思うが会っておきたい。 7:ロボひろしには一応警戒 [備考] ※参戦時期は四部終了後。 ※佐々木哲平を本にしたため、ホワイトナイトの盗作などを把握済みです。 ※佐々木哲平が別の世界の人間だと気づきました 参加者の一部は別々の時代から参加させられてると思ってます。 ※野原しんのすけの劇場版についての情報を複数持っていますが、全て同一の年の、露伴から見て未来の出来事として認識しています。 ※野原ひろし? を本にし、記憶を読みました。 ※別の世界について把握しました。 ※主催者の中にヘブンズ・ドアーと同じタイプのスタンドの持ち主がいると推測しています。 【野原ひろし?@野原ひろし 昼めしの流儀】 [状態] 健康、怒り(中) [装備] 懐にデザートイーグル、キング・クリムゾンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険 [道具] 基本支給品、ランダム支給品0〜2個、ポンプアクションショットガン@ゾット帝国 [思考・状況]基本方針:他参加者の殺害及びしんのすけとマサオの捜索 1 岸辺露伴は懐柔できない。殺す。 2 あの野郎(岸辺露伴)どこ行った!? 3 次他の参加者に会ったら、懐柔なんて悠長なことはしない 4 名簿への疑問 [備考] ※原作とは性格が大きく掛け離れてます。「自分を野原ひろしと思い込んでる一般人」「殺し屋ひろし」の両要素を含んでます。 ※CVは森川智之です。 ※主催者から『お前は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』と付け加えられています。理由は現状不明です。 ※ヘブンズ・ドアーで文章が書きこまれると、自動的に『俺は殺し屋だ。誰が何と言おうと殺し屋なんだ』という文章が湧き、書き込まれた文章を塗りつぶして無効化します。 これは仕様なのか、主催者でも計算外なのか現状不明です。 ※鉄製の棒@現実 がI-5に放置されています。 【ウルトラストップウォッチ@ドラえもん】 支給品ではなく、主催者が所持しているもの。 懐中時計型の道具で、スイッチを押すと使用者以外の時間を停止させることができる。 ただし、使用した際に使用者の周囲にいれば影響を受けず、ウルトラストップウォッチ本体を時間が止まっている対象に触れさせれば時間停止が解除できる。 また、これは22世紀の科学で作られたものなので、それ以上の科学力があれば時間停止の解除も可能らしい。 【NPC紹介】 【一般通過爺@真夏の夜の淫夢シリーズ】 正式な出展はBabylon Stage 42「少年犯罪」。 出展では、自転車に乗って撮影中のカメラの前を横切っただけの一般人。 本ロワでは、主催者が直接顔出しをせず、特定の参加者のみに伝えたいことがある場合現れるメッセンジャーのようなもの。自転車には乗っていない。 なお、出展では喋っていないので口調はオリジナル。 なお、今回はウルトラストップウォッチ@ドラえもん を持って登場したが、これは主催者が持たせたもので、彼自身の所有物ではない。 他の場面で登場することがあれば、必要がない限り持っていないだろう。 068 土方歳三は周辺に参加者がいない可能性を考慮していない 投下順 070 カニンガムの怪物(前編) 067 迫る影 野原ひろし? 090:二兎を追う者は一兎をも得ず 岸辺露伴
https://w.atwiki.jp/homunculus7/pages/37.html
▼▼▼営業課/作戦実行部▼▼▼ 【狼牙さん】 メリケンサック装備で殺害対象を殴り倒す殺し屋。 もちこさんとコンビで仕事をしており特攻担当で後先考えず衝動で殴りかかることがある。 血の匂いが好きで仕事を率先して請け負うが相棒が倒れるし物品管理に止められるのでほどほどにしようと思っている。 【舞茸 綺織(まいたけ きおる)】(きのこさん) 薙刀を得意とする殺し屋。 人好きのする明るい性格でよく笑うのでチームを組んで仕事した人間はその人柄に触れて笑顔も漏らす。 殺される者を憐れむ心を持っているが殺しを仕事と割り切っている面もありなるべく苦しませないよう確実に行うという信念を持つ。 【もちこさん】 リボルバー銃を使って仕事をする殺し屋。 狼牙とコンビを組んで仕事をしており、接近戦特化の相棒を射撃でサポートする。 常に穏やかな表情を崩さず落ち着いて仕事をするが時折鉄仮面の下でオーバーワークになり倒れる。そして相棒に怒られる。 【ロゼリー・ロマキジーゼ】(監督さん) 小さな刃物を大量に使って仕事をする殺し屋。 刃物の他にもワイヤーなどを使いトリッキーに対象を追いつめていく。 女装が趣味で可愛らしく化けては殺害対象をだまし落とし驚かせるのが楽しくて仕方がない。 【雨月 朔夜(うづき さくや)】(志貴さん) 日本刀を使って仕事をする殺し屋。 このやさんとコンビを組んで仕事をしており全幅の信頼を寄せているが翻弄されることも多い。 責任感が強い性格で徹底した仕事ぶりに定評がある。 普段は寡黙だが刀のことについて語りだすと止まらなくなる。 【関 飛鳥(せき あすか)】(はにゃさん) ナイフの二刀流と体術で戦う殺し屋。 小柄だが素早い動きで大きな体格の対象でもひとりで始末することができる。 殺し屋会社に所属していることを隠して高校に通っている。 殺しのセンスは非常に高く上層部の期待は大きいが、本人にはあまり気にする様子はない。 【八九六 白(やくろ しろ)】(雪屋さん) 拳銃を扱う殺し屋で、射撃の正確さで勝るものはおらずどんな対象も銃弾一発で始末してみせる。 ネコのような性格で、一見気まぐれに見えるが、気に入っている人中心に物を考えている。 殺しは無表情で行うが気を許した人には表情が柔らかくなる。 【あげはさん】 銃器全般を扱う殺し屋。 拳銃を使っての市街戦からライフルを使用しての狙撃など広い攻撃手段を持っており、仲間から信頼されている。 昔社員に家族を殺されており、会社に所属しながら犯人を捜している。 普段は優しいが犯人が見つかったら迷わず殺す覚悟。 【河さん】 ワイヤーや小さなナイフを扱う殺し屋。 殺しは芸術だと考えており、予測のつかない動きで仕事を遂行する。 協調性はあるが自分の芸術を表現するためには手段を選ばないところがある。 偏食で痩せているのでよく心配されるがお構いなし。 ▼▼▼営業課/作戦支援部/生活支援係▼▼▼ 【服部 シュネ(はっとり-)】(さつまさん) 殺しをサポートする社員で、遠方へ出張する際の交通手段を手配したり自ら送り届けたりしている。 車から船舶、ヘリコプターの類に至るまで運転できるが得意な普通自動車で目的地までぶっ飛ばすのが一番好き。 車の中から殺し屋たちが仕事するのを眺めて過ごす。 【のえるさん】 殺し屋のサポートを担当する社員。 主に殺しの時間までの待機場所の設定や待機中の食事などの世話を行っている。 仕事への姿勢はひたむきでできることを最大限に行う。 たまにするミスについては必死に誤魔化そうとするけど大体ばれる。 ▼▼▼営業課/作戦支援部/諜報係▼▼▼ 【東さん】 殺しのサポート行う社員で、殺しの事前準備が主な仕事。 殺害対象の特性や行動を綿密に調べ上げ、殺しに最適な日時や場所を決定して会社に伝えている。 仕事は丁寧でそつがなく、また要領がいいので会社全体から信頼を寄せられている。 【鳩ヶ谷 青(はとがや あお)】(このやさん) 殺害対象の動向を随時殺し屋に伝えるサポート要員。 志貴とコンビを組んでおり、人気のない廃ビルに潜んで建物や人を巧みに使って確実に対象を追いつめていく。 いつもにこやかだが笑顔でえげつないことも平気でするので恐れられている。 【小田切 那月(おだぎり なつき)】(織田さん) 殺し屋のサポートをする社員で、一般人に扮して対象の居場所や行動パターンを探り会社に情報を提供する。 どんな場所にも馴染めるが根底には揺るがない信念を持っている。 普段は明るいお姉ちゃんだが時折本気の表情を見せ、周囲を困惑させる。 【蒼前実咲(あおさき さねさき)】(蒼良さん) 殺し屋会社で殺し屋の仕事のサポートをする社員。 黙々と確実に仕事をこなすやり手で殺し屋からの信頼は厚いが、自分が認めた人間以外とは絶対に仕事をしない頑固な一面もある。 サポート社員だが仕事中は護身用に拳銃を持ち歩き容赦なくぶっぱなす。 ▼▼▼営業課/作戦支援部/事後処理係▼▼▼ 【ウエキチさん】 行われた殺しの後始末を行っている社員。 瞬間記憶能力をもっており殺害予定現場をあらかじめ見ておくことで掃除用具片手に殺害現場を殺害前とまったく同じ状態に戻していく。 ただし面倒は嫌いで現場を汚す殺し屋にあたった時はあからさまに顔をしかめる。 ▼▼▼広報課▼▼▼ 【草薙 聡太(くさなぎ そうた)】(如月さん) 殺し屋会社の広報を担当する社員。 爽やかな立ち居振る舞いと巧みな話術で独自のルートを積極的に開拓して会社をPRしている。 社員相手になると思ったことがぽろっと出てしまうところもある。 ▼▼▼事務課/顧客対応部/依頼受理係▼▼▼ 【荻野 春斗(おぎの はると)】(あきよしさん) 殺しの依頼を受理する仕事を行っている社員。 受付マニュアルを熟読暗記し仕事中は自身がマニュアルそのものと化している。 依頼主が人格的に経済的に依頼をするに値するかを見極めるプロ。 ワインが好きで給料のほとんどをつぎ込んでいる。 【あけびさん】 殺し屋会社で殺しの依頼窓口をしている。 報酬や始末方法の説明などそつなくこなす敏腕社員だがお酒が大好き飲兵衛さん。 職場のムードメーカーで場を和ませる達人だが、仕事の話のときは食えない表情で殺しを依頼する客の覚悟を試すようなことをするときもある。 ▼▼▼事務課/顧客対応部/報酬受理係▼▼▼ 【イーヴ・ル・ロワ(Yves=Le=Roy)】(べにちゃん) 殺しの報酬受理を仕事として行っている社員。 常に柔和な笑顔を浮かべとっつきやすい印象だが報酬の不払いや不足に対しては絶対に妥協せず依頼主を逃がさない執念を持つ。 殺し屋であるあげはの幼馴染で仇捜しに躍起になる彼を心配している。 ▼▼▼事務課/事務処理部▼▼▼ 【ろのさん】 殺し屋会社の事務処理担当社員。 真面目に黙々と仕事をするできる人だが仕事をしながらうわごとのように食べたい食べ物の名前を呟くので仕事中に声を掛ける人は限られている。 会社を利用して殺しを行ってもらった過去があり、殺し屋社員を苦しそうに見つめている。 【むっちゃん】 殺し屋会社で事務処理を担当する社員。 いつも柔らかに笑っていてお茶を入れるのが上手い職場の癒し担当。 危険な仕事に向かう殺し屋たちを心配しており、殺し屋が事務室に遊びに来たときに談笑しているのをよく上司に叱られている。 ▼▼▼経理課▼▼▼ ▼▼▼備品課/営業備品部▼▼▼ 【すらいむさん】 武器フェチな社員用武器管理担当の社員。 刃物から銃火器まで様々な武器に惜しみなく愛を注ぎながら品質を保つ。 勤務時間のほとんどを武器庫で過ごし勤務時間外も武器庫に入り浸っている。 貸し出した武器を破損して帰るとものすごく怒られる。 ▼▼▼備品課/社内備品部▼▼▼ 【あまたん】 殺し屋会社の物品管理を行っている社員。 常に書類や物品を運んで忙しく社内を動き回っており、会社のことををよく把握している。 社員への「おかえり」と「いってらっしゃい」を言うのも仕事のうちだと思っている。 ▼▼▼健康管理課▼▼▼ 【蝶呼さん】 会社の健康管理に従事する社員。医師免許を持っている。 物静かな人で普段は自分の椅子に座ってお茶を飲んでいるのだが、怪我人が運ばれてくると適切な処置をこなすやり手。 健康診断でひっかかった人には笑顔で一緒に正座してのお説教が待っている。 【スルヒトさん】 殺し屋会社で働く医者で、仕事や訓練で怪我をした社員の手当てをしている。 明るい性格で殺し屋たちの精神的健康にも一役買っている。 殺し屋を心配をしているが自分の力では仕事の内容をどうにもできないことも理解していて、悩みながらも所属し続けている。 【僧侶さん】 殺し屋会社で社員の健康管理をしている看護師。 無駄口は叩かない主義で怪我をしてきた社員などを黙々と手当てする。 多くは語らないがひどい怪我なほど眉間にしわが寄るのは心配しているから。 手当て後に放つ一言は厳しいながら愛にあふれているとか。 ▼▼▼総務課▼▼▼ 【うめのはなさん】 殺し屋の仕事をサポートする社員で、主に仕事の依頼とそれに適した社員の結び付けを行い仕事の割り当てをしている。 殺し屋たちの特徴をよく理解しており、確実に最も適した現場に社員を送り出している。 その観察眼は的確で、社員の信頼を集めている。 ▼▼▼秘書課▼▼▼ ▼▼▼人事課▼▼▼ 【吉良 嶺(きら たかね)】 ???
https://w.atwiki.jp/orirowa2014/pages/234.html
【名前】マイク・ルーサー 【性別】男 【年齢】29 【職業】組織の構成員 【特徴】ボサボサの黒髪に灰のスーツ。気だるそうな男 【好き】楽な仕事、休暇 【嫌い】組織の殺し屋(特にヴァイザー一派)、警察 【特技】交渉、取引き、情報収集、証拠の隠滅、車の運転 【趣味】飲酒、スポーツ 【詳細】 ヴァイザーらが所属する組織の構成員。主な仕事は殺し屋と顧客の仲介、証拠の処理、逃走経路の確保など殺し屋関連の面倒事。その役目上殺し屋達と関わる事が多い 組織の殺し屋達と比べて比較的まともな人物だが、裏世界の人間としての度胸は備わっており殺し屋相手にも気負いしない それでも殺し屋達には時折ついて行けず、よく同僚に愚痴っている 【追記】 組織きっての苦労人。給料が良いのが救い。常に3人の部下を連れている(時々増減する)
https://w.atwiki.jp/sn1982sn/pages/82.html
調査エンカ数:100 アルマジロン2 16 アルマジロン3 15 アルマジロン4 14 アルマジロン5 5 あるまじろん・アルマジロン5 10 殺し屋うさぎ2 11 殺し屋うさぎ3 13 殺し屋うさぎ4 0 殺し屋うさぎ5 11 殺し屋うさぎ6 5
https://w.atwiki.jp/abilityrowale/pages/64.html
【名前】小路瀬 間栖夜(ころせ ますよ) 【性別】男 【年齢】20台後半 【職業】三流殺し屋 【服装】黒いマント、黒スーツ、黒靴 【身体的特徴】黒目 黒髪 【好きなこと・もの】アクション映画鑑賞 ジャンクフードを山ほど食べること 【嫌いなこと・もの】堅苦しい食事 虫 夏 【特技】変装・指弾 【趣味】アクション映画鑑賞 【与えられた特殊能力】『ニュータイプ能力@機動戦士ガンダム/アムロ・レイ』 【詳細】 三流の殺し屋。子どもの頃にみた殺し屋の映画に憧れ、殺し屋になる。 殺し屋をする理由は一つ『カッコいいから』である。 腕前はそこそこある癖に、何故か現場でイレギュラーな事態に巻き込まれる事が多く、成功率は30%ほどしかない。 失敗の際は当然大騒ぎとなるが、悪運は強く何故かいつも姿はバレることなく逃げ切れてしまう。 その成功率の低さから彼を雇う者は少ない。そのため格安の報酬で依頼を請け負っており、基本貧乏。 大口の依頼はなく、個人的な怨恨の解決やヤクザの鉄砲玉替わり的な依頼が大半である。 とはいえ、彼自身殺し屋の仕事を死ぬほど気に入っており、どんな危険な目にあっても楽しんで仕事をしている。 人殺しに忌避はないが、殺し自体に快楽を覚えている訳ではなく、飽くまで『殺し屋している俺カッコいい』を地でいく、中二病患者である。 殺し屋のスキルとしては変装と指弾。映画で憧れた殺し屋の特技であり、幼少時より鍛錬し続けて身に着けた技。 依頼は基本この2つのスキル頼りで行われ、変装で潜入、ターゲットに接近し指弾で殺害していくパターンが常である。 スキル自体は一流で、指弾であれば急所に命中させれば人を殺せ、変装も(イレギュラーなことがなければ)そうバレることはない。 単純な戦闘力は低く、拳銃やナイフなど武器は扱えず、腕っぷしも空っきり。ただ逃げ足は速い。 【備考】 一人称は「僕」。 黒づくめの恰好も、映画で憧れた殺し屋を真似したもの。 依頼をこなす時も、依頼人と会う時も、普段も、この恰好。というか変装している時以外は一年中この恰好。 そのせいか夏場は苦手。
https://w.atwiki.jp/zenmainext/pages/418.html
Path of the Colossus Slayer 君は怒り狂うアウルベアから恐ろしいドラゴンまで、荒野に潜むあらゆる脅威と、文明との間に立っている者たちの1人である。君は1体のクリーチャーに注意を集中することができるときに戦闘で最善の力を発揮し、その相手の防御を容赦なく切り崩し、その恐るべき破壊力に対して揺るぎない姿勢を取る。 巨獣殺しの特徴 レベル 特徴 2 殺し屋の勢い 7 鋼の意志 11 よろめかせる攻撃 15 直感回避 殺し屋の勢い Slayer’s Momentum 君は自らの攻撃に集中し、強力な1体の敵を打ち倒すことができる。もし君が武器攻撃で1体のクリーチャーにダメージを与えたなら、君の次のターンの終了するまでに、その相手にダメージを与えた次のとき、そのクリーチャーに1d6の追加ダメージを与える。 鋼の意志 Steel Will 7レベル以降、君は恐怖状態になることに対抗するセーヴィング・スローに“優位”を得る。 よろめかせる攻撃 Staggering Attack 11レベル時、君が武器攻撃で1体のクリーチャーに攻撃を命中させたとき、君は同じターンの終了するまでに同じクリーチャーに対して行なう全ての攻撃に“優位”を得る。 直感回避 Uncanny Dodge 15レベル以降、君がある効果から受けるダメージを半減させるための【敏捷力】セーヴィング・スローを行なうとき、そのセーヴィング・スローに成功すると一切ダメージを受けずに済み、失敗しても半分のダメージを受けるだけで済む。