約 173,352 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/861.html
私、ニビルは無事だった あれだけ悲劇風味の展開を重ねておいてそれかい!とか突っ込まないで欲しい 認めたくない事だが、結局機械の体である以上、破損した箇所は取り替えてしまえば良いのもまた事実だった 特に、私のオーバーロードは、「オーバーロードの使用」それ自体には何のペナルティも無い 単に、ストラーフの主力武装の殆ど、武装神姫の素体直付けパーツの使用に制限があるだけである 無論、もしかしたら他にも何か見えないペナルティがあるのかも知れないが 顕現しないものの事まで考えていても仕方が無いというのが私の結論だった ズタズタになった神経系を修復し、新しい四肢に慣れるのに数日を要したが、あとはいつも通り。決勝リーグに向けての調整を重ねるのだった 「Somewhere Nowhere」 「・・・じゃぁ、姉さまが今迄強化パーツを使わなかったのは?」 「そうだよ、ニビルの体に宿ったオーバーロードが拡張端子の使用を困難にしてるのさ」 逆さまにひっくり返った状態で、ヌルはキャロの話を聞いていた 場所は槙縞玩具店の地下にあつらえられたリアルバトル用演習場である・・・本来はここも、槙縞ランキングの主要舞台の一つとして使用される予定だったらしいが、何故か皆川はバーチャルバトルに拘りを持っていた 愛玩派オーナーの参入も促しやすい事と、別にバーチャルバトルだからといって不平不満を述べる神姫も特に居なかったので、この演習場は放置され、時折ヌルやクイントス等が練習に使っているだけの施設に成り下がっていた 本来なら電動薬動の様々なギミックが盛り込まれていたのだが、天井の照明すら入っておらず、手入れも全くされていない様子であり、その種のギミックも全くの稼動不能状態である 「何で今迄言ってくれなかったんだろう・・・」 体を起こし、明確に不満を顔中に表すヌル 「あんたに話す必要がないと考えた理由ってんなら判らないでもないがね」 ヌルの肩にタオルをかけつつ、呟くキャロ 「拡張装備を使わずに・・・つまり普通に考えたら圧倒的に不利な状態で勝つ。そういう格好良い所をあんたに見せたかったんだよ。多分ね」 「いっつもそうだ・・・姉さまは・・・私は別に、姉さまの欠点だって含めて姉さまの事を愛せる自信があるのに・・・」 タオルで顔まで隠して蹲る 「惚気は良いけどさ・・・あんただってあるだろ?そういうの」 「どだいからして、準決勝でニビルと互角以上に戦う為に秘密特訓ってのも充分過ぎる程格好付けだと思うけどね、あたしゃ」 「・・・・・・」 確かに、並み居る強豪を押しのけて、準決勝でニビルとヌルが当たるというのは、両者の実力から考えて相当無理がある事を、ヌルはやはり知覚していた ニビルはまだオーバーロードがあるから良いが、ヌルは実戦経験という観点に於いて華墨とほぼ同等の新人であり、コネによる恵まれたトレーニング環境と、華墨のものほどまだ明白ではないが、ゆらぎ由来の密着格闘戦における天性のカンの良さで、幸運の女神に拾われたに過ぎない いざ戦闘になったら、どう考えても『ズィータ』や『ウインダム』には勝てないし、『ストリクス』『タスラム』相手では戦闘と呼べるものになるかすら怪しく、『仁竜』には得意距離における戦闘経験値に差がありすぎた (結局私は・・・あいつに勝つので精一杯なのか・・・) 『ジルベノウ』に勝った事実を、実感として明確に受け入れる事が彼女には出来ていなかった と、いうよりも、あの瞬間のヌルの戦力というのは実は相当な強運に恵まれた上での物に過ぎない事に、彼女自身が何よりも気付いていた (姉さまへの愛で私の心が満たされていたって、空を飛んでいる相手は降りてきてくれないし、長距離砲撃が出来る相手は近づいてはくれないよなぁ) 結局それまでの戦闘プランそのものが脆弱過ぎるのだ・・・だからここ数日、ヌルは新しいスタイルの模索を始めていた 憧れた銃撃戦のみでの戦闘スタイルを諦め、重装甲と白兵戦闘能力をより重視したスタイルへの転換・・・ 徐々に自分が嫌っている「あいつ」・・・つまりは華墨のスタイルに近付いていくのが厭だった 「体のほうは、もう良いのか?」 トレーニングを再開したニビルに話しかけるクイントス 「ええ、大丈夫よ・・・それにしても流石は、『私に挑む為にこの一連の闘いを経て君達がさらに強くなってくれるなら』なんて真顔で言うだけの事はあって余裕ね。別に貴女に心配される謂れは無いわ」 「・・・自分を偽っても仕方あるまい。どんなに繕おうと、自分は自分以外の誰かになどなれはしないのだからな・・・」 「・・・・・・っ!説教がましく言わないで・・・遅れを取り戻すのにこっちは必死なのよ」 「・・・済まない、邪魔をしたな・・・」 クイントスにとっては自分自身を含めて、あらゆる武装神姫の価値基準はただひとつ、「どれくらい強いか」なのであろう 自分自身もそう思われ、そういう風に値踏みされているであろう そういう考えは半ば被害妄想的ですらあったが、「どれだけ頑張っても武装神姫は武装神姫」という強固なクイントスの信念が、彼女の立ち振る舞いに現れ、貫かれるべき根幹を成しているのもまた事実であった そして、その点がまさしくクイントスを嫌う最大の理由なのではないかと、最近ニビルは気付き始めていた 彼女の誇る「完璧さ」は自分の目指そうとしている世界の扉を閉じてしまう・・・そういう厭な予感 彼女のあり方が武装神姫のあるべき姿なのではないかと思ってしまう強迫観念 本人にとっては全く謂れ無き嫌悪であったが、クイントスはニビルにとって、打ち破るべき磐石な、頭の固い常識の象徴であった 『自分の目指すものを否定する存在を嫌悪する』 そう書けば普通かも知れないが、だからといってクイントスの一言一句に食って掛かり、同じ部屋に居る事すら避けようとするニビルの態度はヌルならずとも相当鼻に付いただろう 「・・・やはり、相当嫌われてるのだな・・・」 自分の強さを妬まれ、憎悪される分には却って戦士を自称するクイントスにとって賞賛であったかも知れない だが、ニビルがそういう人格でない事を彼女は知っていた・・・だからこそ余計に、嫌われる理由に思い当たらないあたり、このふたりの関係はやはり良好と言えないものだろう 「やっぱり問題になるのは空中戦だって!装備をもちっと充実させて備えるべきだろ」 「何いってんのよ!むしろ今更慣れない戦術の練習をするよりは長所を伸ばすべきに決まってんじゃない!ばっかじゃないの!?」 「・・・仲良いというか・・・なんだかとても分かり合っているのだな、エルギール、マスター・・・」 「お前の為だろうが!!」(←同時→)「べ・・・っ別にアンタの為じゃないんだからね!!」 「・・・・・・」 エルギールが来た事によって、華墨は決勝リーグ開催迄の間練習相手に困る事は無かった ここで初めて、華墨はエルギールの『まだ誰にも見せていない』公式武装形態を見た訳だが、何故彼女が其処までしてくれたのかについて思いを馳せる事はついぞ無かったあたり、エルギールもかなり報われない神姫である 因みに、琥珀は普通の料理に関してはチョコレート程危険な腕前では無かった事が武士にとって幸運であった事もここに併記しておく 「何にせよ、僕らがここまでしてあげたんだ、そこそこ善戦してくれないと怒るよ」 「わ・・・判りました琥珀嬢!この華墨、この・・・」 丁度太刀を持っていなかったので、手近にあったフィギュアの剣を胸前に構える 「このまどろみの剣(注1)にかけて!無様な闘いはいたしません!!」 「うむ、頑張って来るが良い」 「勝手に俺のフィギュアの剣をかけてんじゃねえ」 決勝リーグは、もうすぐ始まろうとしていた 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ 注1 2030年発売の、「ドラゴンクエストⅩⅤアクションフィギュア」No.12「遊び人ポルメ」の付属品
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2344.html
第一章 深み填りと這上姫 あらすじ: 大学のレポートに追われる毎日を送る俺がトイレに行って戻ってくると目の前に蒼髪の人形がいた。 それは武器と鎧を装い、人という神のために戦う姫という謳い文句の人形 武装神姫であり、乱暴なオーナーに捨てられたといって駆け込んできたらしい。 さて、どうしたものやら…… 第一話:潜入姫 第二話:金無姫 第三話:入城姫 第四話:盗賊姫 第五話:反省姫 第六話:逆襲姫 第七話:決別姫 総合トップに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/173.html
ネオン煌めく繁華街、その禍々しい光の届かない片隅、雑踏の一角にソレはいた。 いや、それらと言うべきだろう。ソレは何体となく群集している。 それらは武装神姫なのだが、其のどれもに表情が無く、虚ろな目で佇んでいる。 ある者は完全武装、ある者は私服姿、またある者は……半壊していて。 腕が無かったり、頭部外装が剥げていたり、それは見るものに嫌悪感を与える。 ソレは神姫であるという以外に統一感のない群集。 その姿は墓場から蘇ったゾンビの群れを連想させる。 そしてソレをビルの屋上から見下ろす二つの影。 「大量ですね……報酬タップリと貰えそうです」 それは少女と、武装神姫。 「お気楽だね。アレ全部相手にしなきゃいけないんだよ?」 少女は髪型をツインテールにしており、それが月明かりの下、夜風に流される姿は神秘的とも言える。 キリっと美しい顔立ちと相まって、ソレが少女に幻想的なイメージを浮かび上がらせる。 「マルコなら出来ます。私が保証しますから」 肩に座る神姫にそう言われた少女が切り返す。 「ふぅ、これもお仕事だもんね。……それじゃいきますかっ!」 そう言うが早いか、少女の肩よりマルコと呼ばれた神姫が跳躍する。 アーンヴァル型だが身に付けているのは通常のウィングではなく、4枚の真っ白な翼。 不浄なる穢れを滅するため、天使が舞い降りる…… ねここの飼い方・劇場版 ~二章~ 「……と云う訳で各地で続発している武装神姫暴走事件についてお伝えしました」 居間のTVから映し出されるワイドショーが、淡々と例の出来事を伝えている。 「いや大変ですね、花野さん。 しかしまだ事故が発生しているのは電脳空間だけで、直接暴走していないのは幸いと申しましょうか」 コメンテーターがいかにもとって付けたような知識で語ってる……ああいうのみてると無性にツッコミたくてたまらなく。 「そうですね、武装神姫は15cmサイズとはいえ武装した場合は大変強力です。 特にリアルリーグ用などはその際たる物でしょう。万一そのような事があった場合、死傷者が出る可能性がありますからね。 電脳空間だけで事故が発生するのは、ある意味不幸中の幸いと言えるでしょう」 私はリモコンでピッとTVの電源を落とす。 「何が不幸中の幸いなのよ……」 この間のエルゴの一件でも一歩間違えば二人の神姫の意識が消えていたところなのに。 各地で発生している暴走事件の中には筐体の電源を抜いて強制リセットを掛けた結果、 神姫のデータが破損し修復不能になった例もある、と聞いている。 所詮玩具だから壊れても……などという考え方があるのが私には苛立たしい。 「みさにゃん、なでなで」 と、いつの間にかねここが私の目の前にいて私の頭をナデナデしてくれている。 「ん、ありがとねここ。でもどうしたの急に?」 ねここは珍しく目線をキョロキョロさせると、きゅっと口を噤むようにして 「だって……みさにゃん怖い顔してるの、それに悲しそう……」 「大丈夫よねここ、ねここが居れば私は幸せだから、ね?」 ねここの髪をくしゃっと撫で返してあげる。ねここはほにゃ~っと柔らかい笑顔を作ってくれて。 「姉さん、ねここ、話が付きました。直ぐに迎えが来るそうです……って何してるんですかっ」 「いや、あはははは……」 雪乃ちゃんに話をつけてもらったと言うのは、彼女の実家の黒姫家との間の事。 曲がりなりにも当事者の端くれになってしまっている私たち。 そのためこのまま見知らぬフリを決め込むのは三人にとって不本意だった。 でも私たち自身で出来ることはあまりに少ない、それで雪乃ちゃんの実家である黒姫家の助力を乞おうと思ったのだ。 と言う訳で、現在彦左衛門のおじいさんと、孫娘の鈴乃さんと対面中、と言う事に。 「それで、我々にも真相究明のための助力をして欲しい、という訳か」 重々しく彦左衛門氏が語る。 「はい、このまま放置しておく事なんて出来ません。私達に出来ることは微々たる物かもしれませんが、それでも」 しばしの沈黙の後 「……一部情報筋から流れてきた話なんじゃがな、鶴畑家で爆発事故があったらしいんじゃ」 「? それと何の関係が……まさか」 貫禄たっぷりに頷き 「そうじゃ、事故があったと言うのは武装神姫専用棟。何やら試験を行っていたらしいが、暴走の原因はいまだ不明。 機体が跡形も無くなっているのでな、真相究明は困難らしい。」 「でも偶然の可能性というのは……?」 「そうかもしれん。だが時期を考えると何らかの関係がある可能性も高かろう。 それに鶴畑が己のメンツのために実機の暴走事故を隠蔽しているのだとすれば、マスコミの報道にも筋が通る」 その言葉に私は違和感を覚える。 マスコミの報道では、現実空間では暴走事故は起きていないんじゃ……まさか。 「そう、そのまさかじゃよ。他にも現実空間での暴走事故や、命令不服従になっての失踪が出ておる。 特に失踪は多いらしいがな。ユーザー側の勝手なプログラム改造が原因になっての行方不明、と処理しておるから殆ど表立たん。 それらを隠蔽してるのはイメージダウンを防ぎたいのと、芋蔓式に自己の醜態を暴かれるのを避けたいためじゃろう」 「そんな事が……」 そこまで事情が深いとは思いもしなかった訳で。 「いずれにせよ他ならぬ貴方たちの頼みだ。無碍には出来まい、全力で協力させて頂く。 其れに我々の事業にも少なからぬ影響があるようでな、どの道避けられんよ。 ……鈴乃、お前が指揮を執って真相究明に当たれ。月組を使って構わん」 「御意に……それでは」 一礼すると流れるような動きで退室していく鈴乃さん。軽く微笑んでいた気もするけれど、トラブル好きなのかしらね…… そして家に戻ったわけなのだけれども、家のPCには引っ切り無しに鈴乃さんからの最新情報が送られてくる。 被害者の神姫の種類から暴走時の装備、マスターの住所録なんかまで……相変わらず凄いと言うかなんというか。 ざっと流し読みしていく私だけれども、解析は向こうの方でやってくれているらしいので私は助言程度の事しか現状やることがない。 ねここたちの方は、何かあった場合の実戦要員として待機してて欲しいとの事。 二人の実力はファーストの下位ランカー辺りならば比べても然程見劣りしないし、 黒姫家は切り札的な武装神姫が鈴乃さんのアガサ位しかいないらしく、強い神姫の助力は必須だとの事らしい。 でも現実で暴走する神姫をどうやって止めるかが問題よね。 電脳空間の時は頭を粉砕すればよかった。でも現実の場合そんな事をしたらその神姫を『殺して』しまう。 バックアップから復元は出来るかもしれないが、それは同じようで違う。 データを丸ごと新規ボディに移設するだけならともかく、バックアップはデータを取った時点での人格であり、それ以上でもそれ以下でもない。 其れは確かに、他人から見れば同じと言えるかもしれない。でも神姫自身にとっては? そう思いつつ、私も二人のバックアップはきっちり取っているわけだけど……そこまで完全に割り切れるほど私は達観していない。 と、思考が逸れちゃったね。とにかくそっちは何かしらの対処法を考えておく事にしよう。 「……そういえば、エルゴの方はどうなってるかしら」 ふと思い出す。現状も気になるし、あそこはセカンド級の常連も数多く、何か面白い情報が掴めるかもしれない。 まだ時間もあるし、行ってみる事にしてみようかな。 「………うわぁ」 思わず声を出してしまう私。 エルゴはすっかり寂れていた。 事件があった場所だから当然なのかもしれないが、対戦筐体は全て封印され、2Fの人影はあまり無い。 1Fの方もそれに影響されてか、週末の午後だと言うのにガラガラで、ジェニーが何時ものクレードル姿で暇そうにしていました。 「こんにちわ、ジェニーちゃん。マスターは?」 「あ、こんにちはです風見さん。店長は今奥に……呼びます?」 「うん、お願い。ちょっと話したい事もあるし……」 私が少し申し訳なさそうに言うと、察してくれたのかな。直ぐ来てもらうよう連絡していた。 やがて奥から店長さんが姿を現す。 「やぁ風見さん、いらっしゃい」 ……無精髭が伸びて、しかも見るからに憔悴気味で。目にもクマが出来てて……ま、しょうがないよね。 「こんにちわマスター。早速なんですが、ちょっとお時間頂けますか?」 と私が切り出すと、店長さんも察した様で 「……わかった、それじゃ奥で話を聞こうか。コーヒー位ご馳走するよ」 「それで、アレから何か判りましたか?」 私たちは店の奥で向かい合って話していた。私の頭と肩でねここと雪乃ちゃんが静かに話を傍聴している。 「うん、まぁ多少はね……でもこれを聞いたら君達は後戻りできなくなるかもしれないよ、それでもいいのかい?」 店長の声は優しく、説得というより教え子を心配する教師の雰囲気を思わせて。 「えぇ……既に覚悟は出来ています。それに知った以上何もせず傍観なんてしてられません」 私の言葉に同調して頷く、ねここと雪乃ちゃん。その瞳は真っ直ぐ前を見据えていて。 「……それに、幾つか独自のルートで掴んだ話があります。聞いて貰えますか?」 その言葉に反応するかのように、眼つきが鋭くなる店長。何時もの人当たりの良い笑顔ではなく、猛禽類を思わせる鋭い目だ。 「わかった、情報交換と行こう。じゃあ風見さんの話を聞こうか」 私は彦左衛門氏から聞いた鶴畑家に纏わる顛末を、店長さんに公開した。 店長さんは熱心に聞き入っていて、私の話が終わると 「そうか、そんな裏の理由が。だから一般には伏せられてたのか……」 「知ってたんですか、神姫の現実空間での暴走事故?」 店長さんは、話すかどうか迷う感じでちょっと困った表情をした後 「まぁね。詳細は企業秘密だけど、こっちも何かと色々顔が利くものでね。ある程度は知ってたよ。 それに、異常を起こした神姫を運び込んでくるお客さんも結構いるからね。でもそうか、メーカーに報告しても揉み消されてたのか」 「えぇ……私の今掴んでいる情報はこんな所です。マスターの方はどんな感じですか?」 店長は指をアゴにかけるようにして少し考えた後 「そうだね、俺の掴んでる情報も似たようなモンだったな。マスコミの方はアレだったが……」 そうですか、とちょっとがっくりする私、と更に 「いや、これは俺の予測なんだが……HOSが一枚絡んでるんじゃないかと思う」 「HOSがですか?」 「ああ、少なくとも俺の所に運び込まれた神姫は全員がHOSを使用していた。 今じゃ使ってるユーザーは膨大だからな、偶然の可能性もあるが。 それにHOSの発売と、暴走が報告されるようになった時期が符合している。状況証拠としては悪くないじゃないか?」 「……そうですね、それについては参考データがあるので、後で調査してみます。でもHOSからはウィルスは検出されてませんよね?」 「確かに今の所はな。だが従来のスキャンに引っ掛からないタイプのかもしれないし、トロイ型で一定条件下でのみ発生するタイプかもしれん。 両者の混合型だった場合コイツは厄介だぞ。例えHOSをデリートしても残ってる可能性が高い」 そこまで話して思い当たった。 「ちょっと待って下さい。もしHOSがそうだった場合、開発元が絡んでる可能性はありませんか?」 「そりゃそうだ。偶然未知のウィルスが混入した可能性も捨てきれないが、可能性は五分五分だろうな」 私はかぶりを振って 「だから開発元が絡んでいた場合、その開発の大元である鶴畑まで被害に遭うというのはどういう事なのか、という事です」 店長さんはあぁ、と思わず声を荒げて。 「つまりその場合、開発者自らの利益のためにソレを仕掛けた、ってことになるか。鶴畑の為ではなく。 でもわからんなぁ、何で傘下の者が自分トコの首を絞めるんだ?」 「何らかの怨み……でしょうかね? 何にせよ其処を当たってみる価値はありそうですね。私の方で探ってみます」 「わかった、俺の方でも出来る限り調べておくよ……何にせよ無理しちゃだめだからな。か弱い女の子なんだし」 ポリポリと鼻をかきながらそう心配してくれる店長さん。結構シャイなのかな。 「大丈夫ですよ。私空手やってますから」 店長さんは冗談と受け取ったようで 「でもほら、通信教育だろ?」 「一応、段持ってますよ?」 「……へー……」 ……なんですかその目は。 続く トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2563.html
ここには「美咲さんと先生」のいろいろな設定などを書きたいと思います。 人物 「先生」 :名字は竹田。齢四十に近い男性。常に敬語で話すために真面目な人間かと思いきや、中身は変人である。だが、オリジナル装備製作やプログラムの組み立て、神姫のメンテナンス等をこなせることからかなりの知識人であると思われる。株式会社「カサハラテクニカル」の神姫用玩具開発部門の主任。結果重視の会社であるため、特定の拘束時間はないが出勤日数は二十日間以上と決められている。まれに一日五分しか会社にいないこともあるらしい。フブキタイプ・美咲のマスター。メガネはかけていない。 「カエデ」 :本名・一条 楓(いちじょう かえで)。どこにでもいる普通のOL。薄給から何とかやりくりして神姫を楽しんでいる。会社の休日は火曜、日曜。アーンヴァルタイプ・エルスのマスター。幸薄感に溢れている。 「ケイゴ」 :本名・柏木 圭吾(かしわぎ けいご)。ニートに近いフリーター。親が甘いので神姫もほぼ親の金で楽しんでいる。ただ、嫌味のないさわやかな性格であるため、あまり疎まれてはいない。触手好き。マリーセレスタイプ・ステルヴィアのマスター。ぽっちゃり系。 「エンドウ」 :本名・遠藤 健太郎(えんどう けんたろう)。大学生。先生を師として仰ぎ、尊敬している。アルバイトをしながら大学生活と神姫を満喫している。セカンドリーグのトップクラスに在籍してるので、金銭的に余裕がある。大学生特有の自由時間を生かして全国各地を回り武者修行をしている。ウェルクストラタイプ・『弾丸』のフェフィーのマスター。精神面は幼め。 「ケイイチ」 :本名・東雲 慶一(しののめ けいいち)。高校生。四人の神姫を維持するための電気代や経費を稼ぐため、言うことをあまり聞かない姉妹を引き連れ日々放課後バトルに明け暮れる。バトルセンスはピカイチであり、特に多対多でのチーム戦や混戦においてその真価を発揮するタクティカルコマンダー。今現在は親元を離れて一人暮らしであるが、騒がしい毎日を送っている。アルトレーネタイプ・イール、マオチャオタイプ・アルマ、アークタイプ・マリネ、アルトアイネスタイプ・ネムのマスター。女難の相ならぬ神姫難の相が出ている。 「タチバナ」 :本名・立花 菊子(たちばな きくこ)。先生と同じ「カサハラテクニカル」の社員。神姫武装開発部門の若き主任(年齢は二十代中盤らしい)。立花財閥のお嬢様だが神姫に没頭するあまりに勘当される。彼女が開発する武装はどれも派手さや見た目に重点を置いたものであるが、それに詰め込めるだけの性能を詰め込んだ、高性能だがピーキーなものがほとんど。故にカサハラ製の武装は目立ちたがりの玄人が好む傾向にある。苦いものが大嫌いで、タバコは吸えないがくわえるのは好き。ジュビジータイプ・ホムンクルス、他「カサハラテクニカル」の社員神姫のマスター。残念美人。 「ムースのマスター」 :本名・柊 麻昼(ひいらぎ まひる)。女子高生。明るく元気な女子高生だが、時々ブツブツと独り言を呟いてはニヤリと笑うちょっとアレな子。ゲームの類が大好きで、それが高じて武装神姫に手を出した。友人に機械に強い人が居り、武装の製作を委託している。 神姫 「美咲さん」 フブキタイプ。初期に販売された神姫。比較的角ばった作りの初期素体のままなことをちょっと気にしている。より人間の少女らしい丸みを帯びた新型に換装することを先生に申し出たが、「今のままがいいです」と却下された。どんな武装も使いこなし、どんな間合いにも対応するオールラウンダー。比較的高次元な戦いにも対応できるが、並列処理能力は低いので臨機応変には戦えない。先生の的確な指示が勝利の鍵。 「エルス」 アーンヴァルMk-2タイプ。美咲のギターの副作用の媚薬プログラムのせいでおかしくなったと皆は思っているが、実は初めから百合属性。今までは抑えていたが、プログラムによって解放されただけ。アーンヴァルの標準通り飛行特化の射撃重視装備を施されている。回避以外特に目立った性能はないバランス型。マスターであるカエデ自身があまりいいセンスではないため、実力はサードリーグクラス。だが本人達は気にしていない。 「ステルヴィア」 マリーセレスタイプ。自称地区一の触手使い。マリーセレスの標準装備の触手をカスタマイズし長くしている。触手マイスターになるのが夢。装備はマリーセレスの標準装備にカスタマイズした触手のみの近接格闘型である為、飛行型の敵には弱い。が、地上戦ならばかなりの戦闘力を見せる。マスターであるケイゴはステルヴィアに指示を与えるより、ステルヴィアに敗北しチョメチョメされる相手を見ることに力を注いでいるらしい。 「フェフィー」 ウェルクストラタイプ。『弾丸』の二つ名をもつ。一度CSCを破損し交換されているため、今のフェフィーは記憶を継承した二代目である。コアとCSCの相性が悪かったようで、知らぬ相手には無愛想になり、BL好きになってしまった。さらに、全ての神姫がBL好きだと思い込んでいる為、知り合った神姫に普通にBL話を持ち掛け、どん引きされるのだそうだ。故に友好関係はあまりよろしくない。格闘特化のCSCに合わせて、装備も格闘特化型である。足に備えたバッタの足のようなシリンダーは瞬発力を増加させるための装置で、バネのように足を弾くため高機動用モーターよりもバッテリーの消耗は低い。が、素体への反動は大きい為、こまめに整備をしないと素体自体が破損する恐れがある代物。手足に装備している武装は、エネルギーを内部にて圧縮し、攻撃時に解放させることにより威力を数十倍させることができる。冷却装置は付いているが、すぐに熱を持つので一度の解放ごとに表面を開き熱を逃がさなければならない。スカートバーニアは加速力増加と空中での姿勢制御を兼ねている高出力低持続性の小型バーニアである。内部には小型のエネルギータンクを備え、戦闘時の稼働時間を僅かに延長させている。ちなみにこれは本戦仕様であり、軽い手合わせ等の手加減用装備も別に存在している。 「イール」 アルトレーネタイプ。仲良し四姉妹(笑)の長女。標準のアルトレーネの性格であり、マスターであるケイイチに従順である。が、熱しやすい性格で「牛丼」と呼ばれることを何よりも嫌い、頭に血が上ると冷静さを欠く。武装は近接特化で、紅黒のダークカラーに塗装されたアルトレーネの標準アーマーに七つの細剣を装備するのみ。一対一では勝率はあまり高くないが、多対多の混戦時には無類の強さを誇る。その強さの秘密はアーマーにあるらしい。待て次回!(←未定)末妹であるネムが可愛くてしょうがない。 「アルマ」 マオチャオタイプ。仲良し四姉妹(笑)の次女。性格は捻じ曲がっており、常に他人に突っかかる。ケイイチに起動させられたわけではなく、色々あって人の手から手に渡り歩き、最終的にケイイチのところにたどり着いた。武装は紅黒のダークカラーな標準装甲にカスタマイズされたドリルとレーザー刃の切れ味抜群なレーザーソー。攻撃力はとても高く、さらにマオチャオ特有の機動力の高さで地元神姫センターのトップに君臨する。特に妹のマリネとのコンビは強力で、一部ではそのカラーリングと強さに『夕闇の旋風』と呼ばれている。普通のマオチャオと違って辛いものを好む。末妹であるネムにデレデレである。 アルマ語講座。 「~無い」という否定形は「~にゃー」となる。例「馬鹿じゃないよ」→「馬鹿じゃにゃーよ」 一人称・二人称・三人称。「おまえ」は「おみゃー」。「私」は「あちし」。「あいつ」は「きゃつ」。「こいつ」は「こやつ」 語尾ににゃーをつけるかどうかは気分らしい。「な」を「にゃ」にするかどうかも気分らしい。 「マリネ」 アークタイプ。仲良し四姉妹(笑)の三女。性格は粗暴。一人称は俺。恐ろしく口が汚く、言語矯正プログラムによって規制音が鳴り響く。普段マスターであるケイイチの言うことには馬耳東風だが、バトルの時には忠実である。武装は紅黒のダークカラーなイーダのトライクのカスタム品である。走行可能ギリギリまで積載した火器による砲撃が得意で、地元神姫センターで二位の実力を誇る。アルマとのタッグでは負け知らずで五十連勝以上はしているらしい。末妹であるネムにゾッコンである。 「ネム」 アルトアイネスタイプ。仲良し四姉妹(笑)の四女。仲良し四姉妹(笑)が仲良しでいられるのは彼女のおかげ。性格はかなり幼く甘えん坊で泣き虫ではあるが、芯は強い。武装は紅黒のダークカラーで姉妹たちとおそろいになるように塗りなおされているが、彼女はバトルすること自体は嫌なので装備したことは無い。強いて言うなら、相手の母性や保護欲を掻き立てるその性格が最大の武器。実質一家の支配者だが自他ともに自覚はない。 「ムース」 ストラーフタイプ。クールな印象をあたえるしゃべり方をするが、頭の足りない子。普段から黒いロングコートを愛用している。武装はストラーフの標準装備である強化脚とサブアームに、昔のゲームの主人公が使用していたケルベロスと呼ばれる大型二丁拳銃とデスホーラーという火器満載の棺桶を装備する。それらの火器を自在に使いこなし、セカンドリーグの上位に在籍しているが、そんな装備よりも歌のほうがより強力で凶悪である。 「ホムンクルス」 ジュビジータイプ。派手好きで自意識過剰で自信過剰で自己中心的でポジティブでハッタリ屋。ファーストリーグランカーだが順位は高くないらしい。詳しい記述は未登場なので避ける。 その他 「ギタにゃん」(CV若本規夫 推奨) 『ニャンたるロック』ギター担当にしてリーダー。音楽に対して固有の価値観を持ち、それにそぐわないものには容赦がない。 「にゃんベース」(CV千葉繁 推奨) 『ニャンたるロック』ベース担当。ノリがいいともっぱらの評判。 「ぬこドラム」(CV大塚明夫 推奨) 『ニャンたるロック』ドラム担当。性欲はもてあましてない。 「にゃんセイザー」(CV子安武人 推奨) 『ニャンたるロック』シンセサイザー担当。超クール。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/25.html
武装神姫のリン 第2話「初めてのプレゼント」 今日はリンがウチにやってきてからちょうど3週間だ。 起動直後はプリセットの礼儀正しい口調、素直な性格であったが、武装神姫の学習機能はかなり優秀らしくこの頃は素直な性格はそのままに、だが時には俺に甘えたり、文句を言ったりもする。こういった変化もほほえましかった。 「マスター、おかえりなさい。」 「ただいま。」 俺は靴箱に上って俺を迎えてくれたリンの頭を指でなでてやる。 リンはうれしそうだ。 「そうだ、お土産だぞ。」 「えっ、何かあったんですか?」 今日は同僚の気まぐれで以前共同購入したロトくじが当選。とは言ってもせいぜい10万なのだが。 4人で1組購入したので1/4の配当だ。 仕事が終わってからは件の同僚3人と飲んでいたがリンのことが気になり早めに抜けることにした。 そうして予想外の収入を手にした俺が帰りに向かったのはリンを手に入れた家電量販店だ。 とりあえずは自分の仕事で必要なセキュリティ機能つきのフラッシュメディアのお得なパックと今まで使ってきたモノとはランクの違うちょっと高めのインナーイヤホンを購入。それでも分け前の半分以上が残っていたの何かリンに買ってやろうと思った。 最初に向かったので玩具コーナー、とは言っても武装神姫が置いてあるコーナーではなく8歳~のこども向けの製品のあるフロアだ。 そこで俺が吟味するのは今でも絶大な人気を誇り、続編も次々開発されているポ○モンのフィギュアだ。 その中でもリンが好むピ○チューは初期の作品のキャラクターの中でも特に人気がある。 海外でもその名を知っている子供はとても多い。 ゆえに人気商品なのではあるが、幸いブラインドボックスの製品ではないので余計な買い物をする心配が無い。 次は本命、武装神姫のコーナーに行く。 最近は需要に供給が追いついたようで以前のような混雑は感じられない。 リンを購入した時は人が多くてじっくり見ることが出来なかったほかのモデルも一応目を通してみる。 確かにほかのモデルも魅力的で購買意欲をそそられるが、いまは我慢する。 まだリンでさえウチに来てから1ヶ月たっていない。そんな状況で2体目を買うのは少し早い気がした。 ということで武器セットの「ヴェッフェバニー」と他社製品なのでもちろんメーカー側は組み換えを推奨してはいないが、サイズ的に互換性のある武器や雑貨のパックを買ってみた。 それでもまだまだお金は余るので俺は思い切って路線は少し違うが、各種フィギュア、アニメ・ゲームグッズを扱う店の揃う電気街に行ってみた。 で俺が足を運んだのは本物のドールや可動フィギュアのパーツ、衣装などを販売する専門店だ。 以前友人がここなら武装神姫に会うサイズの服が簡単に手に入ると言っていたのだ。 で店内にはいるが俺は少し身震いしてしまった。 美少女フィギュアぐらいなら量販店でも多少は目にするがここはそういったコーナーよりももっと重い、というか濃い空気が漂っている。 閉店時間が近いためか客の数はまばらだが、俺とは違った雰囲気をかもし出している。 そんな中を俺は急いで衣装コーナーへ。 そこにはありとあらゆる衣装が10~20cmサイズで並んでいる。セーターやブラウスといった制服系からマニアックなモノまで網羅されていた。 さすがにリンに過激な衣装を着せるわけにはいかないのでおれはブラウスと黒いスカート、そしてソックス。 ここまで着たらトコトンまでといった感じでリボンと靴をカゴに入れる。 まあ武装神姫を着飾るのも流行っているそうなので、この程度ならだいじょうぶだろう。 そうして選んだ製品をレジに持っていくとキャンペーンを行っていたらしく、同スケールのクローゼットとハンガーのセットを半額で提供していると聞いて思わず買ってしまった。少し高価ではあったが新品の服を適当に置いておくことは忍びなかった。 残金はというと、4000円。まあこんなものかと納得して家路についたがその店を出てからというもの電気街のストリートを歩いているとなんとなく視線を感じた。 やはりスーツ姿でああいう見せから出てきたからであろうか、目立つ店名の入った紙袋をもっているからだったのかもしれない。 こんな感じで無事、リンへのプレゼントを持って帰ってきたわけだ。 自分より二周りも大きい袋にリンは目を丸くする。 「こんなに大きなモノを・・・どうかされたんですか?」 オレはリンに事情を説明する。 「そんなことが…それは良いのですが、いつもの時間に帰ってこないので少し心配しました。」 「ごめんな、次からはメールとかするから。PCでメールの見方は分かってるよな?」 「はい、次からはちゃんと連絡してくださいね。」 「ああ、分かったよ。」 こんな会話をしているとなんだかへんな気分になってくる。 そう、たとえるなら新婚の夫婦なのだ。夫が気を利かせてプレゼントを買って帰ったが、連絡がないままいつもの時間に帰ってこないので心配する嫁。想像したらとても恥ずかしくなった。 恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じた俺は話題をそらす。 「なっ、プレゼント見てみろよ。びっくりするぞ~」 「マスターがそんなに言うなら、見ちゃいますね。」 そうして自分の目の前に置かれた、人間にたとえれば6・7人向けのテントぐらいのスケールであろう紙袋の中の中を覗き込むレン。 次の瞬間にリンの顔が沸騰したかのように赤くなった。 「なっ、マスター!! これは何ですか??! 白いヒラヒラの服・スカート、リボン、、、、、ソックスまでぇ~~」 なにやら想像したものとかなり違った物体が入っていたため相当混乱しているようだ。 「……大丈夫か? ただな・・・リンもオシャレとかしてみたら良いんじゃないかな??と思ったから。」 「はぁ、確かに先週テレビでやってたコンテストはすごく綺麗な娘がいましたけど……」 「心配ない、お前は十二分に可愛いよ。絶対に似合う。そうじゃないと万札をはたいてまで買ってこないぞ」 と素直な気持ちを言葉にしてみたが、言った俺の方が恥ずかしくなってくる。 リンもそんなことを唐突に言われたため、普通に戻りかけてた顔がまた真っ赤になる。そうして2人して顔を赤らめたまま数分が過ぎた。 「リン、とにかく一回着てみてくれるか?」 こんなことをしていても仕方がないので俺の方から話を切り出す。 「は、はひ。 分かりました。」 リンはまだ恥ずかしいらしく呂律が回っていなかった。 買ってきた服のパッケージを開けて、サイズを確認する。 「武○神姫にも完全対応」と歌われている製品だけにサイズはぴったりだった 「これの着方は分かるか?いちおう説明書に書いてるんだけど。」 「えっと、大丈夫です。分かります」 「じゃあ自分で着てくれ。俺がやったら着せ替え人形みたいになっちまうから。」 「わかりました。少し待っててくださいね」 てきぱきとプレゼントの服を身にまとうリン。 ブラウスに腕を通し、スカートを身に着け、ニーソックスに足を通す。そこでレンは違和感に気が付いた。 「マスター、あの……下着は??」 !!!!!!!!!!!!!!! 俺は飲みかけていたお茶を一気に噴出しそうになり、それを我慢したのはよいが飲み込んだお茶が気管に少し入ったらしく激しくむせる。 「大丈夫ですか! マスター!!」 なんとか生き地獄から脱出した俺だったが、リンは何もできなかたのが悔しいみたいだ。 「マスター。ご無事でなによりです。」 顔のすぐ横にリンが座って俺を心配してくれる。 「ああ、もう大丈夫。 ごめんな、店の雰囲気に圧されて下着まで頭が回らなかった。」 「いえ、気にしてません、元はといえば私は最初からスーツをきているんですよね。私もうっかりしてました」 俺が起き上がるとリンは最後にお願いをしてきた。 「あの、リボンなんですが自分では結べないので、お願いします。」 快く俺は引き受ける。 モデル「ストラーフ」はツインテールがデフォ状態だが、オーナーの好みでショートカットにすることが可能だがリンは俺の好みでツインテールのままにしている。 その薄い蒼の髪を留めている黒いリボン(とはいえコレは樹脂パーツで髪を通すだけで固定されるようになっている他、ショートカットの状態で使えば武装をマウントするためのサポートパーツにもなる)をはずして、純白の綿100%のリボンを結んでやる。とても小さなサイズなので少し苦労したが以前からプラモデルを弄ることで細かい作業に慣れていたのでちゃんと結んでやれた。 「よし、コレで良いぞ。 鏡見てみろ。」 俺はいつも使っている手鏡(コンタクトレンズの洗浄剤についてきたオマケだがレンのサイズにはぴったりだ)をリンの前に置く。 リンは鏡に映る自分のいつもとは違う姿をまじまじと見つめ、急に振り返ったかと思うと俺に聞いてきた。 「あの……似合いますか?」 控えめな表情で、上目遣いでたずねてくる。 白いブラウスに黒いミニスカート、そしてまた白のニーソックスとリボン、そしてアクセントとしての赤い靴。 極力シンプルにと選んだのが、予想した以上に似合っていたので俺は声が出ない。 「あの?マスター?」 「ああ、似合ってうぞ、想像以上だ。」 「ありがとうございます。なんだか私じゃないみたいですよ、コレなら街に着ていきたい位です。」 「気に入ったんだな~ 最初は着てくれないかと思ってヒヤヒヤしたぞ。」 「そんな、マスターに貰ったものを着ないなんて考えられません。でも変なのは嫌ですからね。」 「わかってる、って言うかそんな服を買うような冒険はしたくない。」 「でも…可愛い服があったらまた買ってくださいね。」 「ああ、もちろんだ。」 その晩、リンはずっと俺が買った服を着ていた。 そして寝る前にクローゼットを寝床の横に置いてやった。リンはせっせと服をハンガーにかけて収納していく。 俺の机の上はリンの『お部屋』になっいるようだ。 そうしてお片づけがわってすぐに就寝。 夜は更けていった。 翌日、寝坊したので朝食を抜き、急いでスーツに身を通してかばんを持って家を出る(リンへの挨拶は忘れていない)。 そうして何とか会社に定刻より10分遅れ(遅刻ギリギリ)で着いたのだが…… かばんに入っていたのは必要な書類、これはだいじょうぶだ、だが肝心のフラッシュメモリーが見当たらない。 寝る前にデータを古いモノから全て転送し、スーツのポケットに入れておいたのだが…… 改めて己の姿を見ると昨夜と違うスーツを着ている。 やってしまった!!と気づいても時すでに遅し。 そうして大切なデータを忘れたため部長に叱られたが、たまにはこんなのもいいと思う俺であった。 ~燐の3 「イベントへ」
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/950.html
神姫の構造材をプラスチックでないものにする そういう案は最初からあった 当然、現状の人工皮膚も純粋な意味でのプラスチックではないが 様々な試行錯誤の末現在の形に纏まったのだ 例えばそれはこんな試行錯誤である 「無題を冠した未完の彫刻」 「駄目です、制御失敗。自壊しました」 若い白衣の男が、淡々と告げた 報告を受け取る男は、若くも見えるし老けても見えた 渋い表情で画面を見る 無残な姿になった神姫が映っていた 構造材に自己修復能力と自己増殖能力を付与し、人体と同じように振舞わせる そういうプランだった だが、そのシステムの制御は困難を極めた それでも何とか作り出したそのシステム、『G』は バトルに臨み得る神姫にとって、非常に有用だった 当時、既に神姫に武装を施してバトルに従事させるということは行なわれていた だが、その度に破損箇所を買い換えるのは面倒だったし、素材で解決出来るのならしてみようとしたのが彼らのグループだった 折りしも『武装神姫』のプランが本格的に始動していた バトル向きに調整された武装神姫に、メンテナンスフリーの自己修復ボディ まさにうってつけと言えた 副作用として、有機物的な特徴を持つ『システムG』は、神姫により人間に近い皮膚を与える事を可能たらしめた だが、傷ついた体を修復しようとした時、どうしても必要以上に増殖し、宿主である神姫を破壊してしまう 既に十数体の神姫が犠牲になっていた 大手のスポンサーであった鶴畑コンツェルンも、そろそろ資金援助をやめようと動いていた 「短絡的に過ぎる・・・このシステムが完成すれば、神姫ばかりではない、人間にも大きな利益があるというのに」 実の所、男の真の狙いはそこにあった 「神姫と人間の境界は脳だけ」にしてしまう事 それ自体は、神姫の開発当初から目指されていた一種の目標地点ではあった 神姫は身長15センチの人間であるべく 遥か古代からの人類の夢、人造人間の完成を目指して 様々な倫理的、技術的問題から身長15センチに決定されたが、男はどちらかというとそれには反対だった 完成した人造人間に人間の脳を移植する それによってより良い肉体を手に入れ、人類それ自体がより進化する 少なくとも男はそう信じていたし、『システムG』を装備した神姫はその試金石になる筈だった 男は自分自身が人間を越えたかったのかもしれない いずれにしても、現状の『システムG』のままでは、少なくとも人間に使用する事などとても出来なかった 開発チームも解体される時が近付き、資金援助の減少、チームの縮小等から、徐々にスタッフの士気も無くなり、気も緩みつつあった そんな時期だった 暴走し、異常増殖した『G』の組織に、生物が触れると融合する性質が明らかになった 否、厳密に言えば、過失から、人間と『G』の強制接触が行なわれたのだ 結果は、恐るべきものだった 『G』と融合した人間は、禍々しい「なにか」に変貌し、暴れ狂ったのだ しかも、そのスタッフは自らの意識を保ったまま、超細胞に取り込まれたのだ 結果そのスタッフは恐慌から暴挙に出たのだ その事実を示すデータは残っていない その日スタッフの一人の始末し損ねたぼやで、研究所は火に包まれたからだ 誰一人、生きている者の居る筈が無い程徹底的に、一切合財が炎の中に消えた スタッフの遺体は、殆どが原形も留めず、パーツも足りなかった為、正確な人数を確認する事も適わなかった 研究所で使われていた、旧式の動力炉が、危険な可燃物質を含んでいたか何かだったのだろう 調査は深く為される事は無かった だが、僅かに残ったものがある 部署が縮小されるに際して、他部署へ異動になった者の発言だ 曰く、「原型となる細胞質からクローン培養して、それを宿主神姫のAIの不随意領域で制御させていたんです・・・原型細胞がどこから入手されたのか、少なくとも私は知らないですね」 いずれにせよ、神姫に人間を越える肉の器を与えようとしたこの研究は頓挫し、神への道は遠ざかった TOPへ 「剣は紅い花の誇り 第貳部」へ?
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/355.html
前へ 先頭ページへ 例えるなら、それは羊水の中を漂うようで。 それは春の木漏れ日の中で日光浴をするようで。 それは絶景を肴に露天風呂に漬かる様で。 ひどく心が休まり、心地が良く、そのまま永遠に過ごしたくなる様な。 それはまるで麻薬の用に五臓六腑に染み渡り、無意識の海にそのまま沈んでいたくなる。 この世で最も過酷な事は、睡眠をとらない事だろうと俺こと倉内 恵太郎は混濁した意識の中でぼんやりと考えていた。 「……ス…………だ…が…………お………」 誰かが俺に話しかけてくる気がしないでもないが、人間の根本に存在する三大欲求の一つに抗って応えられるほど俺は人間が出来ちゃいない。 そんなこんなで狭いシングルベッドの上で毛布に包まり、再び惰眠を貪ろうと身体を捩らせた。 その瞬間、俺の毎日のささやかな幸福の時間は非情にもすっ飛んでった。 頭部に奔る鈍い激痛、頭蓋骨の中で轟音が響き渡るような錯覚。 そのお陰で、俺の意識は一気に覚醒してしまった。 「おはようございます、マスター。今日も清々しい朝ですね」 俺の相棒であるストラーフ型神姫のナルが専用装備である対神姫用実体剣「刃鋼」を小脇に携えて朝の挨拶をしてきた。 「ああ……おはよう」 俺は痛む頭を抑えながら、手厳しい目覚ましで起こしてくれた相棒に挨拶で反す。 朝が弱い俺をナルが刃鋼の腹で俺の頭をブッ叩く。 いつもと同じ清々しい朝だ。 「マスター、お目覚め早々ですが、一限目の講義まで後20分しかありません」 全く、鬱陶しくなるくらいにいつもと同じ清々しい朝だった。 俺は県内の大学に通っている。 工業系、主にロボット工学がメインの大学で、そこそこ名が知られているらしく時折テレビの取材がくるらしい。 もっとも、三十余年前までは余り人気が無くて経営はやばかったらしいが、今は何処吹く風と言うほどの盛況ぶりだ。 情報技術が発達し終えたと言われた202X年、世界は低迷していた。 医学・物理学・天文学・情報工学、人類の主要な技術の殆どが発展を終え、進化の袋小路に追い込まれていた。 世間では世紀末だのノストラダムスの予言だの騒いだらしく、暗黒時代とも呼ばれたらしい。 そこに救世主の如く現れたのが、ロボット工学と情報工学そして人間心理学それら全てを終結させた全長15cm、心と感情を持つMMSと呼ばれる機械仕掛けのお姫様である。 大手玩具メーカーから発売されたMMSは瞬く間に普及し、ありとあらゆる分野に応用され始めた。 大抵のMMSは有効利用されたが、中にはあくどい事に利用する輩も多くいた様で、一介の玩具のために多くの法律が制定されたらしい。 他にも色々と問題があったらしいが、今や過去の話。 MMSは、我々人類の新たな友人として必要不可欠の存在となっている。 そんなこんなで我が大学のロボット工学部の主な内容は殆どがMMSについてである。 我が大学にある学科は四つあり、俺はその内の一つである「MMS環境心理学科」に所属している。 何だかご大層な学科名だが、やっていることは単純明快。神姫バトル、である。 一応は「MMSと人間との心理作用による行動ロジックの云々」とかいう大層な理念が掲げられているが、要は将来有望なランカーを育成し、大学を宣伝しようという口である。 もっとも、設備においては国内随一を誇るので競争率は非常に激しいので大学としてはウハウハだろうが。 まあ、この大学はそういった専門的な設備だけでなく、その他のレジャー的設備も整っているのも人気の一つだと思う。 現に今、俺が食っている食堂のネギトロ丼も毎朝築地から活きの良いのを仕入れてくるらしく、そんじょそこらの寿司屋よりよっぽど上手い。 その上、値段も3桁と採算がとれるのかどうか心配になるほどのコストパフォーマンスを発揮している。 学生の身分故、常時金欠な事を考えるとこの食堂は正に天国だった。 「よう、恵太郎!」 俺が数少ない幸福を噛み締めていると頭部に鈍い痛みが奔り、むさ苦しい声も聞こえてきた。 思わずネギトロを吹き出しそうになるが歯を食いしばって堪える。 「……裕也先輩、人が飯喰ってる時に頭小突くのやめてもらえませんか?」 「おう? 男が細かい事気にすんなっての!!」 この図体がでかい筋肉ダルマは一応俺の先輩に当たる人で、名前は佐伯 裕也。 毎度毎度人の頭を小突くかなり傍迷惑な筋肉ダルマだ。 「こんにちは、佐伯さん」 しかし、俺の相棒は筋肉ダルマにも嫌な顔せずに挨拶を交わす。 いやはや、良い娘に育ったものだ。 「こんにちはなのだ~!」 筋肉ダルマの代わりにナルの挨拶に応えたのは筋肉ダルマの武装神姫、マオチャオ型の蒼蓮華だ。 今まで何処に居たのか知らないが、今はテーブルの上でナルに向かって骨法の構えを取っている。 「いざ、尋常に勝負なのだ~!」 「おう、そうだ! 今日こそ俺らが祝杯を挙げる日だ!!」 そう言うなり筋肉ダルマはテーブルに拳を叩きつけた。 「っと、冗談は筋肉だけにしてくださいよ」 まだ食べかけのネギトロ丼が激しく揺れたので、両手に抱えて空中に避難させる。 「裕子先輩ならまだしも、何度も何度も同じ相手と戦っても意味無いでしょう。」 「ふっふっふっふっふ……」 筋肉ダルマと蒼蓮華が揃って腕組をしながら怪しく笑った。 「何ですか、不気味ですね」 「コイツが何だか、解るか?」 そして懐から一枚の紙切れを取り出した。 どうせまたプロレスやら何やらのチケットだろう。 以前にも同じパターンは何度もあったし、二年も同じ事をやっていれば嫌でも学習する。 とりあえずはネギトロ丼を腹に注ぎ込んで、適当にあしらって午後の講義に備えよう。 確か午後は一般科目だった筈だ。 「マスターの姉上、裕子様の夏祭りでの浴衣ブロマイドなのだ~!」 「どうだ、恵太郎。これを賭けると言ってもまだ首を縦に振らないか?」 「放課後、第四バーチャルマシーンセンターの前で待ってます」 ナルの視線が痛かった。 時刻は午後5時過ぎ。 確か筋肉ダルマも今日の講義は全て終わっている筈なのだが……。 「遅い」 思わず声に出してしまった。 ナルはとっくの昔からトレーニングマシーンで模擬戦闘を繰り返している。 それを横目に俺は三本目の缶コーヒーを飲み干し、ゴミ箱に投げ入れた。 思えば、あの人に『放課後』と言って講義終了後直ぐに来るとは思えないのも確かだが。 ほんのり嫌気が刺してきて、ぼちぼち帰ろうかと思い出したその瞬間に聞きなれてしまった大声が聞こえてきた。 「よぉ、待たせたな!」 余りの能天気振りに怒る気力も消え失せた。 「……先輩、とっととやりましょう」 溜息の一つもついてやりたかったが、一応堪えておいた。 「尋常に勝負なのだ~!」 蒼蓮華は今まで何処に居たのか、何時の間にかバーチャル・バトルマシーンのクレイドルの上で仁王立ちしていた。 「ナル、準備は良いかい?」 「何時でも」 トレーニングンマシーンから出てきたナルに一応確認を取り、蓮と筋肉ダルマが待つバーチャル・バトルマシーンへと向かう。 「先輩、例のブツはちゃんと持ってきていますよね?」 「おう、男に二言は無ぇ!」 バーチャル・バトルマシーンのディスプレイを挟んで筋肉ダルマに今回の最優先事項を確認する。 「なら結構。では、始めましょうか」 「応ッ!」 バーチャル・バトルマシーンに備え付けられたクレイドル。 私はその上に横たわり、無線通信回路を開く。 頭部コアユニットからバーチャル・バトルマシーンへと、自身のあらゆるデータが転送されているのを感じる。 まるで頭の内側を何かが這い回るような奇妙な感覚。 それに伴い、私の身体の感覚が少しずつ消えていく。 最初に触覚。 背中に当たっていたクレイドルの感覚が感じられなくなる、というより重さを感じられなくなる。 次に嗅覚。 少し油臭いバーチャルマシーンセンターに充満する空気が感じられなくなる。 そして聴覚。 ごぅ、という空気の流れる音や、モーターの駆動音が一切聞こえなくなる。 最後に、視覚。 視界に映る高い天井がまるで夜の闇に溶け込む様に黒く塗り潰されていく。 身体の感覚が全て消えたその瞬間、意識が飛んだ。 今のこの身体には何も感じない。 モノに触る事も、モノの匂いを嗅ぐ事も、モノの音を聞く事も、モノを視る事も叶わない。 ただ一つ感じる事。 私の精神を司る電子の魂が、本来の機械の身体を離れて異なる場所に向かっていると言う事。 ソレを感じている時間は、実際には数秒程度だろうか。 その奇妙な感覚が薄れるのと逆に、身体の感覚が甦ってくる。 最初に触覚。 足の裏側から地面の反力。頬を撫ぜる湿っぽい風。いつもと違う重さを感じる。 次に嗅覚。 噎せ返るような木の匂い。生ぬるい風の匂い。現実は異なる匂いを感じる。 そして聴覚。 野鳥などの羽音や鳴き声。草と草が擦れ合う音。そして聞きなれた駆動音を感じる。 最後に、視覚。 まるで夜が明ける様に視界がクリアになっていく。 全身の感覚が元に戻る。 一つ違う事、それはこの身体が0と1との信号によって作られた仮想現実の身体であること。 そして普段の非武装形態ではない事。 今の私は戦闘形態。 右腕は高出力粒子砲と化し、左腕は巨大な腕と剣を持つ。 そして腰には追加アーマー。 我が主が自ら作って下さった、私の一番の宝物たち。 クリアな視界に映るのは、青々と生い茂る木々が立ち並ぶ熱帯雨林。 視界は生い茂る木々と立ち込める靄によって10sm先も確認できない程に悪い。 蒼蓮華も同じタイミングでログインしてきているのだろう。 ドップラーセンサを最大限稼動させ、動体を探るが……。 「ナル、このフィールドじゃセンサ類は恐らく役に立たない」 マスターの言うとおりだった。 動体を検出するドップラーセンサは検出する対象を制限できない。 よって、再現された野鳥や虫などの動体すらも検出してしまうので、センサには異常な検出結果がはじき出されている。 超音波センサはどうかと思ったがこちらも役に立ちそうに無い。 超音波センサは、超音波を照射して跳ね返ってくるまでの時間などの結果から対象の大きさや距離を検出するものだ。 だが、検出されるのは直ぐ近くの木々ばかり、肉視確認の方が余程視野が広い。 「この状況で最も有利なセンサ、それは……」 マスターの声にはっとする。 五感の中で視覚の次に重要視される感覚、それは聴覚。音、である。 密室かよほど入り組んだ地形で無い限り、音は関係なしに進んでいく。 それはこの仮想現実でも同様だ。 そして、聴覚センサがデフォルトで強化されているのは、ヴォッフェバニー、ハウリン、マオチャオ。 蒼蓮華はマオチャオ型。 ヴォッフェバニーより数段劣るとしても、私とは比べ物にならない。 それこそ、小さな駆動音からこの場所を探り当ててくるだろう。 この状況で最も有利な戦法、それは奇襲。 蒼蓮華は脚部に追加武装「紅蓮脚」を搭載している。 大出力のスラスターとショックアブソーバー、そして至射炸裂型榴弾。 簡単に言えば一撃必殺型装備。 当たれば大ダメージを受ける事は間違いない。 当たればだが。 「にゃんだぁぁ~~~きぃぃぃぃぃぃぃぃっくぅぅぅぅぅぅ!!」 大声を上げ、右方向から水平に蹴り込んで来た蒼蓮華を軽いバックステップで避ける。 「にゃ!? にゃにゃにゃにゃにゃ~~~~~~」 勢いを殺しきれず、進路にある木々を蹴り倒しながら突き進んでいく蒼蓮華を見送る。 「またか……」 マスターの溜息混じりの声が聞こえてきた。 私も溜息をつきたくなった。 大人しく黙って奇襲すれば良いものを、何でわざわざ大声なんか出して自分の居場所を知らせるのか。 以前聞いたときは「そこにロマンがあるからなのだ~」としか言わなかった。 私には理解できないが、当人にとっては大事な事なのだろう。 もうやる気が八割くらい無くなって気が緩んだ、その瞬間。 「隙ありなのだ~!」 何時の間に近づいていたのか、顔面目掛けて回し蹴りをかまそうとする蒼蓮華の姿があった。 マオチャオの消音機能はMMSの中でも随一であり、蒼蓮華も健在のようだ。 「……っ」 刃鋼で何とかガードしたものの、足の踏ん張りが効かずに吹き飛ばされた。 すぐさま体勢を立て直そうとするが。 「まだまだなのだ!」 宙を舞う私目掛けて、蒼蓮華が一気に飛び込んできた。 一瞬。ほんの一瞬で蒼蓮華の顔が間近に迫っていた。 瞬発力だけで言えば、神姫の中でも随一だろう。 何時もは「なのだ~」とか言いながら能天気な顔をしているが、今の顔つき、そして目つきは真剣そのものだ。 その真剣な眼は確かに私の頭部を見つめている。 まるで野生のライオンが得物に飛び掛る瞬間、そんな眼だ。 蒼蓮華の右足が頭部目掛けて迫ってくるのを視界の隅で捕らえた。 萎んだやる気が膨らんできた。 頭を切り替える。 戦う事だけを考える。 勝つ事だけを考える。 それが武装神姫たる私の存在意義であり、マスターもそれを望んでいる……今回は微妙だが。 全身に備え付けられた推進装置の全てをフル稼働させる。 ただし、右側だけ。 均衡を崩した私の身体は独楽の様に回転した。 回転のエネルギーを乗せる様に、右腕の銃鋼をバックハンドブローの要領で錬の右足に叩き込む。 蒼蓮華の至射炸裂型榴弾のエネルギーと私の遠心力と質量を合わせたエネルギーがぶつかり合う。 そのエネルギーは衝撃となって蒼蓮華と私に等しく分布され、お互いに弾かれあった。 私は地面に刃鋼を突きたてて着地、衝撃を無理やりに殺す。 そして右腕を確認。 残っていたのは腕と銃鋼を繋ぐコネクタ部分のみ。 ぞっとする。 三又の粒子加速装置と一本の砲身は跡形も無く吹き飛んでいた。 対する蒼蓮華はおよそ10sm先で至射炸裂型榴弾を撃った際に生じたガスの中、仁王立ちしていた。 等しく分布された筈のエネルギーは、蒼蓮華の右足に傷一つ付けてはいなかった。 本当に、ぞっとする。 最初に声を潜めて奇襲していたら。 後ろ回し蹴りの時黙っていたら。 私は、多分負けていた。 銃鋼の接続設定を変更し、銃鋼をパージする。 地面を覆う腐葉土の中にドスっという音と共に沈んでいく。 そして左手の刃鋼を逆手に持ち替える。 インファイター相手には、この剣は長すぎる。 この間、数秒の隙があったが蓮は先程と同じく仁王立ちしたままだった。 私の準備が整うのを待っているつもりか……。 内心首を捻りながら、私は左手を前に半身の構えを取る。 「いくのだ~!」 それを見た蒼蓮華は掛け声と共に駆ける。 やっぱり、速い。 10smの距離をぐんぐん縮めてくる。 私と蒼蓮華との距離が3smを切った時、跳んだ。 私目掛けて両足を揃えて飛んでくる。 私の顔目掛けてその紅蓮脚を叩き込もうと飛んでくる。 しかし、蒼蓮華の紅蓮脚には欠点がある。 車は急に止まれないように。 弾丸が途中で曲がれないように。 その速度は時に欠点となりえる。 だから私は、身体を右に逸らして蒼蓮華の紅蓮脚をやり過ごす。 背中の補助スラスターやらセンサ類が蹴り飛ばされたが気にしない。 蒼蓮華と目が合った。 その眼に映るのは私だけ。 その眼に灯るのは戦意だけ。 その表情は、まさに戦士。 その顔に、私は振り上げた左手を叩き込んだ。 この左腕は殴る為のものでは無いが、元の神姫の腕より一回りも二回りも太いく大きい。 その上、刃鋼を持ったままなので更に質量が上乗せされる。 その一撃をもろに顔面に貰った蒼蓮華は、その衝撃で地面に叩きつけられた。 蒼蓮華は目をぐるぐる回し、頭上にはヒヨコがピヨピヨ飛んでいる……様に見えた。 「ぬぁぁぁぁ~!!」 「さぁて……先輩、出すモン出して貰いましょうか」 バーチャル・バトルマシーンのクレイドルから起き上がったら佐伯さんが頭を抱えて吠えていた。 それにしても、マスターの裕子さんフリークはどうしたものか。 現に目付きとか言葉遣いとか随分違う。 「……男の約束だ」 そういうと佐伯さんはマスターに一枚の写真を手渡した。 それを受け取ったマスターは一瞬、誰にも、私にも見せたことのない優しい表情になった。 「……確かに。ナル、帰ろう」 マスターはそう言うと私を抱えて胸ポケットの中に入れてくれた。 その前に蒼蓮華に挨拶しておこうと思ったが、それは出来なかった。 「あらあら、裕也。神姫バトルも良いけれど、モノを賭けるのは禁止してた筈でしょう?」 人影まばらなセンターに女性の声が響く。 その声を聞いた瞬間、マスターと佐伯さんは石像のように硬直した。 「約束を破る子には、オシオキが必要よね?」 その刹那、身体に急激な衝撃が加わった。 マスターが全速力で走り出したのだ。 その顔を見ると、まるで警察から逃れる銀行強盗のような切羽詰った表情をしている。 「恵太郎くんも……ダメじゃない」 「ゆ、裕子先輩……」 もう慣れたが、佐伯さんの姉上である裕子さんが何時の間にか目の前に立っていた。 私はとばっちりを受けないようにマスターの胸ポケットから飛び降りた。 「これは違うんです…」 「何も、違わないわ」 裕子さんはとても綺麗な方で、神姫の私から見てもとても魅力的な女性だと思う。 誰にでも、神姫にでも優しい裕子さんを嫌う人を私は見たことが無い。 ……もっとも、裕子さんを恐れる人なら幾らでもいるのだが。 「神姫は賭け事の道具じゃないとあれほど言ったのに……」 裕子さんは哀しそうな表情で一歩一歩マスターへと近づいてくる。 私は佐伯さんの事を思い出し、遥か後方を振り返った。 しかして、そこにいたのは佐伯さんだったモノだった。 その物体は真っ白くなり口から煙を吐いている……ように見えた。 余程恐ろしい目にあったのだろう。 ……そして、マスターも。 「も、もうしませんから許してくださいぃぃぃぃ~~~~」 「ダメ、絶対」 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/2chbattlerondo/
「武装神姫BATTLE RONDO」スレ まとめwiki 概要 オンライン育成・対戦ゲーム「武装神姫BATTLE RONDO」の攻略wikiです。 自由に閲覧・編集してください。 スペシャルサンクス:2ちゃんねるネットゲーム板「武装神姫BATTLE RONDO」スレッドのオーナーの皆さん 主、あの……ゆっくりしていってくださいますか……?
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/782.html
Gene Less じ:ジーンと来る・・ワケねえよ! い:いいのかよ!? いいんだよ!! ツッコんだら負けだよ!!! ん:ん? とか深く考えてもしょーがないよ! れ:冷静になったら負けだよ! す:すいませんやりたい放題っす(爆) Gene Lessは、つまりは右脳で楽しむラジカル神姫オムニバスです♪ 注意?:お読みの際は用法要領を守ってるといいのかなぁ?(聞くな) 書いたの/うさぎなひと 目次 Gene1 解体屋 →→→Gene1おまけ Gene2 花屋 →→→Gene2おまけ Gene3 床屋 →→→Gene3おまけ Gene4 本屋 →→→Gene4おまけ Gene5 地上げ屋 →→→Gene5おまけ Gene6 靴屋 →→→Gene6おまけ Gene7 とうふ屋 →→→Gene7おまけ Gene8 ノミ屋 鳳凰杯とリンク →→→Gene8おまけ Gene9 餅屋 →→→Gene9おまけ Gene10 オケ屋 →サビ抜き版 →→→Gene10おまけ Gene11 テキ屋 →ようこそ黒葉学園へ!とリンクしてる気もする〈笑) →→→Gene11おまけ Gene12 服屋 →→→Gene12おまけ Gene13 お好み焼き屋 →→→Gene13おまけ Gene14 護り屋 →→→Gene14おまけ Gene15 殺し屋 →→→Gene15おまけ Gene16 浜茶屋 →→→Gene16おまけ Gene17 犬小屋 →→→Gene17おまけ Gene18 隣部屋 →→→Gene18おまけ Gene19 母屋 →→→Gene19おまけ Gene20 楽屋 →→→Gene20おまけ Gene21 特撮屋 →→→Gene21おまけ Gene22 田ミ屋 →→→Gene22おまけ Gene23 エチゴ屋 →→→Gene23おまけ Gene24 酒屋 →→→Gene24おまけ Gene25 風呂屋 →→→Gene25おまけ Gene26 当たり屋 →→→Gene26おまけ Gene27 たま屋 *えろいのかもしれぬ(え) →→→Gene27おまけ Gene28 鍛冶屋 →ホワイトファング・ハウリングソウルからあのヒトが! →→→Gene28おまけ Gene29 空き部屋 →→→Gene29おまけ 各所で小ネタに以下の作品の名前が使われております事をここでお詫びしておきます。 Mighty Magic、神姫狩人、ねここの飼い方、HOBBY LIFE,HOBBY SHOP、岡島士郎と愉快な神姫達、妄想神姫、戦うことを忘れた武装神姫、剣は紅い花の誇り、神姫ちゃんは何歳ですか? せつなの武装神姫 2036の風 橘明人とかしまし神姫たちの日常日記 神姫長屋の住人達。 ホワイトファング・ハウリングソウル Gene Less本編 G・L《Gender Less》 コメントがありましたらこちらに。アンコール、ネタリク等も受け付けております 名前 コメント お気に召した奴らの登場話に投票でもしてやってください 選択肢 投票 Gene1解体屋 (5) Gene2花屋 (0) Gene3床屋 (2) Gene4本屋 (1) Gene5地上げ屋 (0) Gene6靴屋 (0) Gene7とうふ屋 (1) Gene8ノミ屋 (3) Gene9餅屋 (3) Gene10オケ屋 (0) Gene11テキ屋 (0) Gene12服屋 (0) Gene13お好み焼き屋 (1) Gene14護り屋 (0) Gene15殺し屋 (0) Gene16浜茶屋 (0) Gene17犬小屋 (0) Gene18隣部屋 (2) Gene19母屋 (0) Gene20楽屋 (1) Gene21特撮屋 (0) Gene22田ミ屋 (1) Gene23エチゴ屋 (0) Gene24酒屋 (5) Gene25風呂屋 (2) Gene26当たり屋 (1) Gene27たま屋 (0) Gene28鍛冶屋 (3) Gene29空き部屋 (1) - -
https://w.atwiki.jp/quarter/pages/33.html
第46回クランVSクランみんなの力をひとつに^^ 第2試合 ◆対戦カード:RubatoVSくぉ~た・む~ん ◆ワールド:ジュエル ◆チャンネル:ダイアモンド ◆集合時間:2009年2月1日(日)19 10 ◆集合場所:七仙の街(座標 -15・-30付近) 集合写真&結果 姫の友だちがいるクランさんです~^^v らせらせさんがかなりつよかったのを覚えてします~^v^ やっぱりつよかったな~;; -- 姫 (2009-04-16 16 53 50) 名前 コメント 以下のスポンサー広告に、 RMTやBOTツールの広告がありますが、絶対に使用しないでください。