約 1,954,162 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2236.html
ウサギのナミダ・番外編 少女と神姫と初恋と その4 ◆ 金曜日の放課後のことだ。 ノーザンクロスのバトルロンドコーナーで、美緒たち四人と安藤は対戦にいそしんでいる。 オルフェはまだ実戦というレベルでの対戦をしていない。 LAシスターズの神姫たちを相手に、いろいろと試している段階だ。 対戦用筐体を一台占拠しているが、常連たちは何も言わなかった。 LAシスターズはここでは顔が通っているし、話題の神姫・アルトレーネ・タイプの動きがじっくり見られるとあって、好きなようにさせていた。 そんな状況をありがたく思いながら、安藤とオルフェの戦い方について話している。 そのとき。 「よう、安藤。女にバトロン教わってるなんて、ずいぶん情けねーな」 「蜂須……」 筐体から顔を上げると、酷薄そうな笑みを浮かべた小男が、三人ほどの取り巻きを連れて立っていた。 その小男は蜂須英夫。ここ『ノーザンクロス』で『三強』の一人といわれる人物で、美緒たちと同じ高校の同級生でもある。 「お前に神姫のこと聞いても、教えてくれなかったじゃないか」 「……だいたい八重樫。オレの誘いを断っておきながら、なんでこんな男に付いてんだよ」 蜂須は安藤を無視して、美緒に視線を向けた。 美緒は身をすくめる。蜂須の視線はいつも、美緒の全身にからみつくように感じられた。 「そ、その話は……何度も断ったでしょう」 「何が不服だってんだよ。お前だって、バトロン強くなりてーんだろ。だったら、そんな初心者のお守りは他の連中に任せて、オレのチームに入れよ」 美緒は身を縮めて、蜂須の視線に耐える。 はっきり言って、美緒は蜂須が嫌いだった。 彼の、人を見下した態度が、どうしても好きになれない。 それに、あのとき。あの雑誌にティアの写真が載ったときだって、それをネタに大声でいやらしく笑っていた男なのだ。 好きになれるはずがない。 有紀が美緒の前に立ち、蜂須の視線を遮った。 「おい。美緒は断ったって言ってんだろ。しつこい男は嫌われるぞ」 「てめーとは話してねぇんだよ、このデカ女」 「んだと、このバカハチ!」 怒りを露わにした有紀を蜂須はせせら笑った。 「なんだよ、殴るのか? 殴るのかよ? バトロンじゃオレにかなわないからって、暴力に訴えるわけだ。 はははっ、まったくサイテーの女だよなあ!」 「くっ……」 有紀は拳を強く握り、震えを止めようとした。 蜂須の言うことは本当だ。 『玉虫色のエスパディア』とは、四人とも何度も対戦しているが、勝てた試しがなかった。 「強くなりてぇんなら、そんなオママゴトみたいな対戦してねぇで、オレのチーム『レインボー・ブレイカーズ』に来いよ。手取り足取り教えてやるからよぉ……」 蜂須は美緒をなめ回すように見ながら、舌なめずりした。 だが、 「うわ、厨臭いチーム名!」 の声に、視線を逸らさざるを得なくなる。 睨みつけたその先には、両手で口を押さえた梨々香がいた。 「江崎ぃ……バトルもまともにできねぇくせに、人のチームにケチ付けてるんじゃねーよ」 蜂須はここぞとばかりに、嫌みったらしい言葉を吐き出した。 「だいたい、見るに耐えねーんだよ。まともにバトルもできねー女どもが、キャッキャウフフとゲーセンでつるんでるのは。 ここはバトルで上にのし上がろうって野望がある連中のコロシアムなんだ。 いつまでもヌルいバトルしてたり、イロモノに走ったり、非武装派なんざお呼びじゃねーんだよ。 それとも何か。おまえら、武装神姫ネタにして、男漁りに来てんじゃねーのか?」 「てめっ……!」 さすがに頭にきた有紀だったが、涼子に腕を押さえられた。 暴力沙汰にするわけにもいかない。 有紀は憎悪すらこもった視線で、蜂須を睨みつけた。 「何怒ってんだよ。本当のことだろ。 お前たちのリーダーは、オレの誘いを断っておきながら、そんな初心者くわえ込んでやがるんだからよ」 「やめて……! もうやめてよ……」 美緒は悲痛な声で、蜂須の言葉を遮った。 これ以上は聞くに耐えない。 美緒は勇気を振り絞って、蜂須を見た。 視線が合う。 蜂須はニヤニヤといやらしく笑いながら、美緒に言う。 「やめてほしけりゃ、オレたちの仲間になれよ。そしたら、こんな連中、無視してやるからよ」 背後にいたチームメイトたちも低く笑い声を立てる。 その小さな笑い声さえもおぞましい。 美緒は思わず腕を抱いてうつむいた。 そのとき。 「おい、そのへんでやめとけよ」 そう言って、レインボー・ブレイカーズの笑いを止めたのは、安藤だった。 蜂須は眉を逆立てて、突っかかる。 「なんだよ、てめぇは関係ねーだろ」 「あるよ。彼女たちに俺の方からコーチを頼んだんだ。 俺を教えていて悪く言われるんなら、オレのせいだ。 それで彼女たちを侮辱されて、黙って聞いてられない」 「はっ……新型連れてるからって、調子こいてんじゃねーぞ、安藤。ここはゲームセンターだ。学校みたいにうまく行くと思ってたら、大間違いだぜ?」 「学校もゲーセンもあるもんか。女の子を侮辱して困らせたりして……それは人としてどうかって問題だろ?」 蜂須は安藤を睨みつけた。 その視線には殺意すらこもっているような気がする。 だが、安藤は一歩も引かず、その視線を受け止めた。 「だったら、バトロンで勝負だ」 「なに?」 「ここで言いたいことがあるなら、オレをバトルで負かしてみろよ。そしたら、お前の言うことに聞く耳もってやる」 「……俺が勝ったら、彼女たちにもうまとわりつかないって約束できるか?」 「ふん……賭けバトルってことか? いいだろ。そのかわり、オレが勝ったら、八重樫にはレインボー・ブレイカーズに入ってもらう」 その言葉に、安藤も思わず言葉を詰まらせた。 涼子が蜂須に言う。 「そんなの、無理に決まってるでしょう! 安藤のオルフェは、まだ起動して一週間なのよ!?」 「何言ってんだ、バーカ。先に言い出したのはそっちだろ」 「だからって、美緒の意志も聞かないで、そんなこと言い出すのはおかしいでしょう!」 さすがの涼子も大きな声を上げた。 しかし、蜂須は余裕の笑いを浮かべている。 「別に俺はバトルしなくたっていいんだぜ? そっちから言いだしたことなんだからな。 まあでも、念のため聞いてやるか。八重樫はどうだよ。この条件でオレと安藤のバトル受けるか?」 涼子はうつむいている美緒を見た。 彼女は蜂須の視線に耐えているようにも見える。 一瞬の間の後、美緒は絞り出すように言った。 「……いいわ」 「美緒!?」 涼子の声は悲鳴に近かった。 蜂須の後ろにいた誰かが、ヒュウ、と口笛を吹く。 「そのかわり、勝負は一週間後」 「なに?」 「まだちゃんとバトルもしたことのないオルフェに、あなたのクインビーが勝つなんて当たり前でしょう。……三強を名乗るなら、そのくらいの余裕を見せて」 「ふん……まあ、いいだろ」 クインビーは、蜂須の神姫であるエスパディア・タイプの名前である。 「それから、あなたが勝っても負けても、わたしたちと、わたしたちに関わる人たちを決して侮辱しないって約束して」 「いいとも……お前がチームに入れば、こいつらと関わる必要もないしな」 蜂須は鼻を鳴らして美緒を見る。 顔を上げた美緒は、今にも泣き出しそうな顔をして、蜂須を睨んでいる。 そう、この顔だ、と蜂須は思う。 嗜虐心をそそる美緒の顔が、蜂須はたまらなく気に入っていた。もっと泣かせてやりたい、悲鳴さえ上げさせたい。 その想いが、彼の嗜虐心をさらに煽る。 蜂須は、さらにいやらしく笑って、こう言った。 「八重樫に免じて、ハンデをやるよ。条件次第で、オレのクインビーをエスパディアのノーマル装備で戦わせてもいい」 「……条件?」 「八重樫が一日、オレに付き合うと約束できるならな」 蜂須が舌なめずりする。 これにはついに有紀が切れた。 「調子こいてんじゃねぇ! このエロチビ!! ずっと美緒にフられてきた憂さ晴らしのつもりかよ!」 「お呼びじゃねえんだよ、デカブツ。オレは八重樫と話してんだよ」 「ふざけんな! お前に付き合ったら、どんな目に遭うか分かったもんじゃ……」 激昂している有紀の腕に誰かがそっと触れた。 言葉を切り、その誰かを見る。 美緒だ。 彼女は泣きそうな顔をしながら、それでも言葉を絞り出した。 「……その条件を呑めば、ノーマル装備で対戦……絶対ね?」 「ああ。いいハンデだろ。どうよ?」 「……わかったわ」 「ちょ……美緒!!」 振り向きながら有紀は美緒をとがめる。 しかし、美緒の瞳には決意の色が宿っていた。 有紀はそれ以上何も言えず、腕の力を抜いた。 レインボー・ブレイカーズのメンバーのいやらしい笑いをバックに、 「ようし、決まりだ。一週間後、楽しみにしてるぜ、安藤。あーっはっはっは!」 蜂須はひときわ高く笑って、その場から立ち去った。 チームのメンバーもそれに続く。 LAシスターズは何も言えず、ただ彼らの背中を見送るばかりだった。 ◆ 蜂須英夫にしてみれば、安藤智哉は目の上のたんこぶだった。 蜂須は決して人気者ではない。むしろ学校では嫌われ者である。 それは彼の性格に因るところが大きい。 誰に対しても見下したような態度をとり、えらそうなのだ。特に成績がいいわけでも、スポーツができるわけでもないのに、である。 特に自分よりも立場の弱い者に対して態度が大きい。気の弱い男子生徒を顎でこき使っている。 女子に対しては、全員が自分の使用人と思っているのではないか。 背が低く、つり目で卑屈そうな顔立ちがいやらしい、と女子の間では噂され、評判はすこぶる悪い。 もちろん、そんな男が男子からも好かれるはずがなかった。 だが、ゲームセンターでは蜂須の天下だ。 ノーザンクロスでは三強の一角として君臨している。 『玉虫色のエスパディア』は、彼の神姫のファイトスタイルを揶揄した呼び名なのだが、蜂須は気にしていない。 蜂須は、実はとある中小企業の社長の息子で、小金持ちである。 その潤沢な資金を利用して、装備を買い込み、バトルロンドでふんだんに投入する。 何の装備で対戦するのか読めない、毎回サイドボードの中身が違う、だから対策も立てようがなく戦いにくい。 そして対戦相手を圧倒するバトルを展開する。 一定しない装備を『玉虫色』と揶揄しているのだった。 蜂須に言わせれば、そんなのは負け犬の遠吠えに過ぎない。 勝てないのは弱いからで、勝てる自分が強いのだ。 勝ちたければ、強い装備でも何でも持ってくればいい。 所詮、負けたヤツのいいわけに過ぎないのだ。 その点、負けても言い訳せず、自分と同程度の実力を持つ、三強の残り二人には一目置いている。 そんな調子であるから、ゲームセンターでも蜂須に好意を持つ者は多くない。 だが、装備に頼っているだけで三強の一角になれるほど、バトルロンドは甘くない。 ノーザンクロスの常連は誰しも、『玉虫色』の実力を認めている。 彼を認めたプレイヤーや、彼の装備の知識の深さに感心する者、気の合う友人たちが蜂須の仲間になっていた。 ゲームセンターは蜂須にとっての城と言っていい。 だがそこに、ヤツはやってきた。 学校でも人気者で通っている、蜂須が嫌いなあの男。 安藤智哉である。 安藤は学校の男子にも女子にも人気がある。 自分と何が違って、こうも人気の差があるのかさっぱり分からない。 だが、蜂須とて、自分とは接点のない男のことで愚痴を垂れるほど暇ではない。 蜂須にとって安藤を敵視せざるを得ない事態が起きたのだ。 理由の一つは、安藤が武装神姫を始めたこと。それも神姫がアルトレーネというのも気にくわない。 そしてもう一つの理由は、美緒が安藤を気にかけ、ゲーセンでそばにいるからだった。 蜂須は以前から、美緒に横恋慕していた。 ◆ 「美緒! なんであんなバカげた条件呑んだんだよ!」 「安藤も、なんであんなヤツに勝負ふっかけたりしたの。無茶もいいところよ」 ファミレスの六人席。 向かいに座る有紀と涼子に責め立てられて、美緒と安藤は並んで座ったまま、二人同時にしゅんとした。 「だってさ……あいつの言ってることがどうにも許せなくて……」 ぼそっと話した安藤を、涼子は激しく睨みつけた。 「今のあんたが、蜂須に勝てるわけないでしょうが!」 「……さっきから思ってたんだけど、蜂須ってそんなに強いのか?」 「あんたねえ……バトルロンドをなめるんじゃないわよ。 今の安藤と蜂須じゃ、合気道を習いに来て一週間の小学生と、道場で三番目に強い有段者くらい差があるわ。それで勝てると思う!?」 「……」 安藤はうつむいたまま押し黙った。 今度は有紀が口を開く。 「だいたい、美緒も美緒だ。なんであんなヤツの言うこと聞いてんだよ。あいつがアンタにずーっと横恋慕してることくらい、よくわかってんだろーが」 「……もう嫌だったの」 「なにが」 「嫌だったの。蜂須くんが、みんなのことを悪し様に言うのがもう耐えられなかったの! もうずっと……ティアや遠野さん、エトランゼさんたちのことを口汚く言ってるのが、聞くに耐えなかったの!」 「だからって、あんな条件呑むことねーだろが! アンディが負けて、あいつに一日付き合ったりしたら、何されるかわかんねーぞ!」 有紀は以前、蜂須とその取り巻きの会話を耳にしたことがある。 本人の前ではさすがに口にしないようだが、それでも大きな声で話していたから、嫌でも聞こえた。 つまり、蜂須は美緒の身体が目当てなのだ。あのグラビアアイドル顔負けの身体を弄び、あの美貌を羞恥に染め、泣き声を聞きたい。 そんなことを大声で言い放つ男なのだ。 最低の野郎だ。 有紀は心から美緒の心配をしていた。だからこそ、語気もつい荒くなってしまう。 「だって……ハンデがつくから……」 「はあ?」 「エスパディアのノーマル装備なら……安藤くんの……オルフェの勝率が少しは上がるでしょ……?」 うつむいた美緒から発せられた言葉に、有紀は深くため息を付いた。 美緒はLAシスターズきっての頭脳派プレイヤーだ。 だが、今回の判断はどうにもずれている。 美緒は感情に流されると、たまにこうした突拍子もない行動に出ることがあった。 それが今回でなくてもいいのに……と思っているのは有紀だけではないはずだった。 しばらくそこで話を続けたが、結局有効な案は浮かばなかった。 圧倒的実力差を覆す方法なんて、そうあるはずがない。 誰もが絶望的な思いで口を閉ざした、その時。 いままで黙っていた梨々香が口を開いた。 「それじゃあ……相談してみたら?」 「え? 誰に?」 「涼子ちゃんのお師匠さん」 そう言って、梨々香はストローに口を付ける。 彼女の澄まし顔を見つめながら、安藤は首を傾げた。 ◆ 「浅はかだな」 その一言で、彼女たちの相談は一刀両断に処せられた。 翌日土曜日の『ノーザンクロス』でのことだ。 遠野貴樹は、蓼科涼子にとって武装神姫の師匠である。遠野本人はそう思っていないようだが。 その遠野は、口をへの字に曲げ、いかにも機嫌が悪そうだった。 LAシスターズの四人は、その一言だけで恐縮しきってしまっている。 「浅はかって……」 かろうじて反論しようとした安藤の言葉を、遠野は遮った。 「そのとおりの意味だ。安藤くんと言ったか……君が玉虫色と賭けバトルををしようだなんて、無謀としか言いようがない。八重樫さんが不利な条件を受諾したのも間違っているし、蓼科さんたちがそれを止められなかったのも甘すぎる。 そもそも、バトルロンドにそういう賭を持ち込むこと自体、どうかしてる。自業自得、同情の余地もない」 遠野の言葉にはとりつく島もない。 だが、身を乗り出して助け船を出したのは、遠野の隣にいた二人だった。 「大丈夫! もしゲームに負けても、次にわたしが蹴散らしてやるわ!」 「聞き分けなかったら、俺に任せろ! ぶっ飛ばしてやるぜ!」 そう言って腕をまくってみせる菜々子と大城を、遠野は睨みつけた。 「君らがそんなことしてもその場しのぎにしかならない。意味ないだろ」 やはり一刀両断され、二人はしゅんと肩をすくめた。 今日の遠野は容赦がなかった。 それでも安藤は食い下がった。 「そ、それでも……ヤツに勝つ方法は……」 「ない」 「ないって……」 「バトルロンドを甘くみるな、安藤くん。 玉虫色だって伊達に三強を名乗っているわけじゃない。バトルロンド始めて二週間の初心者相手なら、一分とかからないだろう。 いいか。バトルロンドはただの対戦ゲームじゃない。 神姫の性能はもとより、その神姫の特性、性格を把握し、適正な装備と戦略を与える。相手の神姫の性能と戦略を試合の早い段階で解析し、自分の神姫でどう対応するか判断し、作戦を立て、指示を出す。 神姫の性能だけでも、マスターの戦略だけでも勝つことはできない。 すべての要素が噛み合って、はじめて勝利を手にすることができる」 意外にも熱っぽく語りはじめた遠野を、安藤は驚きながらも見つめていた。 目が真剣だった。 「それを可能にするのは、神姫とマスターの信頼だ。 君のオルフェは、起動してまだ一週間。すべての要素で玉虫色に劣る。それでどうやってヤツに勝つ? 無理だ」 「でも、マスターは間違ってません! 八重樫さんを、シスターズのみなさんを侮辱されて、何も言わないマスターなら、わたしはきっと軽蔑しています。 大切な者を守ろうとしたマスターを、わたしは尊敬しています! マスターへの信頼は、『玉虫色のエスパディア』に負けません!」 口を挟んだのはオルフェだった。 しかし、遠野は表情を変えずにオルフェを睨む。 「それで勝算があるならいい。だが、勝算もないのに、こんな条件で賭け試合に乗るなんて、愚かな蛮勇にすぎない」 「だったら、どうすればいいって言うんですか!?」 「謝ればいい」 遠野の一言に、その場にいた全員が顔を上げた。 「こんな試合は無謀でした、今回の試合はなしにしてください、と言って、謝ればいい。向こうも何か条件を付けてくるかも知れないが、そこは交渉次第だ。少なくとも、負けたときよりも状況が悪化することはない」 「た、戦う前から白旗揚げろって言うんですか……!?」 「それ以外に何がある。それができないのは、君たちのなけなしのプライドが邪魔をしているだけだ」 安藤は唇を噛んで、うつむいた。 遠野の言うことはもっともだった。 勝算がない限り、戦わないか、戦って負けるか、いずれかの選択でしかない。 しかし、感情が納得できない。 蜂須にあそこまで言われて、引き下がることはできなかった、あのときは。 安藤だけではなく、LAシスターズの四人もうつむいて、やはり悔しそうな顔をしていた。 ティアはみんなを見渡したあと、胸ポケットから自分のマスターの顔を見た。 相変わらずへの字口で、むっつりと押し黙っている。 しばしの沈黙。 ティアはマスターに何か言うべきだろうか、と考え、口を開こうとしたそのときだった。 「よお、安藤。みんなで来週末の作戦会議か?」 こんな普通の言葉でも、嫌みったらしく聞こえてしまうのは、本人の日頃の行いのせいか。 「蜂須……」 「結局、勝ち目がないことに気づいて、陸戦トリオに相談かよ。 は、みっともねえなぁ。 せいぜい、ない知恵絞って相談してろよ」 安藤も美緒たちも、反論できずにいる。 そして、蜂須は瞳に好色そうな色を浮かべ、 「八重樫、ちゃんと身体を磨いておけよ」 あーっはっは、と高笑いを残して去っていった。 これには菜々子も大城も色めき立った。 「なっ……あんなの、セクハラじゃない!!」 「みんなの前であんなこと言うなんて……サイテーな野郎だ!」 美緒は両腕を抱き、うつむいていて、表情は見えない。 だが、ティアは見た。 彼女の肩が小さく震えているのを。 と、そのとき。 ティアの背後の気配が変わった。 彼女の主の顔を見上げる。 いつもと変わらない、仏頂面。 だが、この雰囲気の激変は、いつもそばにいるティアだからこそ感じ取れたのかも知れない。 ティアのマスターは怒っていた。さっき、安藤をしかっていたときの比ではない。彼女にはそう感じられた。 遠野は壁から背を離すと、みんなに向かって言った。 「場所を変えるぞ。ファミレスに集合だ」 「え? な、なんで……?」 「気が変わった。……ヤツに勝つ方法、聞きたくないか」 安藤は目を白黒させて立ち尽くす。 大城はにやりと笑い、安藤の背中をたたく。 菜々子は苦笑を浮かべながら、シスターズに一緒に来るよう促した。 ティアは安藤の肩に乗っているオルフェを見る。 彼女もマスター同様、目を白黒させていた。 目が合う。 オルフェは困ったように小首を傾げた。 ティアは小さく微笑んで、頷いて見せた。 そう、きっと大丈夫。 ティアのマスターはこういう時、とても頼りになるのだから。 続く> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2285.html
キズナのキセキ ACT0-2 ひどい顔 ◆ 「神姫センターに行きましょう!」 「前から訊いてるけど、何しに行くのよ」 「前から言ってますが、もちろん、バトルをしに、です!」 「前から言ってるけど、イヤ」 「これも前から言ってますが、なぜマスターは神姫センターに行くのを嫌がるんですかっ」 ミスティは菜々子に、まなじりをつり上げて見せた。 菜々子はため息をつく。 ここのところ、同じ会話ばかりだった。 ミスティはどうしても神姫センターに行って、バトルロンドで対戦がしたいようだ。 それは武装神姫のAIにプログラムされた、闘争本能みたいなもの、なのだろうか。 一方、菜々子はバトルに興味がなかった。 頼子さんは対戦仲間に引きずり込みたいと思っているのだろうが、あいにく菜々子にその気はない。 菜々子はミスティが気に入り始めていた。小さな姿は可愛らしいし、性格も素直でいい子だ。 でも、だからこそ、なぜそんなに相手と戦ったり傷つけあったりする野蛮なことをしたがるのか、分からない。 「この間調べたら、最寄りの神姫センターでも結構遠いじゃない」 県下の神姫センターまでは、最寄り駅から電車で二〇分ほど。 中学生の菜々子にしてみれば、少ないお小遣いを電車賃に変えてまで行くのはきつい。 これがいつもの断り文句、だったのだが。 「じゃあ、近所のゲームセンターに行きましょう」 「……ゲームセンター?」 神姫のバトルは神姫センターだけではなく、ゲームセンターやホビーショップでもできるらしい。 そう言えば、最寄りのF駅前のゲームセンターで、武装神姫のポスターを見た気がする。 もっとも、菜々子がゲームセンターに入るのは、友人とプリクラを撮る時くらいだろうか。 ゲームセンターに一人で行くのは、かなり気が引ける。 しかし結局、ミスティの熱意に押され、渋々ゲームセンターに足を運ぶことになった。 ◆ F駅前のゲームセンター『ポーラスター』の二階に、武装神姫コーナーはあった。 フロアの半分以上をバトルロンドの筐体が占拠している。プレイヤーたちは大きな筐体を挟んで、バトルに熱中している。 天井から吊された大型ディスプレイには、現在進行中の激しいバトルが映し出されていた。 他の客たちは、筐体を取り巻き、あるいはディスプレイを見上げて、熱心に観戦している。しのぎを削る好勝負に、歓声が上がった。 「わあ! 対戦、すっごく盛り上がってますよ、マスター!」 はしゃぐミスティとは逆に、菜々子は気後れしてしまっていた。 なんだか場違いな場所に来たような気がする。 武装神姫の対戦ゲームがこんなに盛り上がっているものとは知らなかった。 しかも、この場にいる人は皆、神姫のオーナーなのだ。こんなにたくさんのオーナーと神姫が集まっているのも驚きだった。 こんな場所で、まったく初心者の菜々子とミスティが、見ず知らずの相手とバトルする。 まず間違いなく、無様に負ける。 そんな恥ずかしいことできるわけないじゃない。 菜々子は早くも回れ右して帰りたくなっていた。 知り合いの神姫マスターでもいれば、練習と言って対戦することも出来ただろう。 あるいは、神姫センターならば、対戦者のレベルに合わせた対戦相手のマッチングなども行ってくれるサービスもあるのだろう。 しかし、ここはゲームセンターで、菜々子に知り合いのマスターもいなければ、マッチングサービスもしてくれない。 レベルや相性も自分で判断して、対戦を申し込まなくてはならない。 初心者の菜々子に、そこまでの度胸があるはずもなかった。 菜々子は大型ディスプレイを見上げる。 今行われているバトルの一つが、演出重視のカメラアングルで、実況されている。 高速で飛び交う銃弾に、一瞬の隙を突いたクロスレンジでの攻防。 今繰り広げられている激しいバトルが、自分とミスティにできるなどとは、どうしても思えなかった。 菜々子はため息をつく。 少しは気が晴れるかと思ってきてみたけれど、憂鬱になるばかりではないか。 胸ポケットにいるミスティを見ると、大型ディスプレイの対戦に目を輝かせていた。 めちゃくちゃ嬉しそう。 そんな顔をされてしまっては、帰るとも言い出せないではないか。 菜々子は壁の花になり、所在なげに対戦の光景を見つめていた。 ディスプレイの中で戦っているのは、白い天使型と、花をモチーフにしたという神姫だった。 二人とも空中を舞うように飛び、華麗な空中戦を繰り広げている。 蒼い空を背景に、二機の機動によって引かれる飛行機雲をきらめくレーザーや爆炎が彩り、まるで万華鏡を見ているようだ。 やがて、その一戦も終わりを告げる。 天使型の大型ビームキヤノンが必殺の一撃を放ったのだ。 絶妙のタイミングで放たれたビームは、見事花を散らした。 バトルが終わり、マスターが筐体の前から立ち上がった。 先ほど勝利した、天使型のマスターの姿に、菜々子は目を見張る。 高校生だろうか。 ブレザーを着た、肩までかかるウェーブ髪が印象的な、女性だった。 「あんな人が、武装神姫なんてやるんだ……」 菜々子には意外だった。 バトルなんて、男の人が好んでやるものだと思っていたからだ。 しかも、天使型のマスターは、思わず見とれてしまいそうなほどの美少女だった。 常連のプレイヤーや、彼女のファンらしい人たちに取り囲まれている。 彼ら一人一人に微笑みかける彼女を、菜々子は見るともなしに見ていた。 すると不意に。 その視線に気が付いたかのように、彼女がこちらを向いた。 視線が合う。 菜々子はあわてて顔を伏せた。 自分の視線は不躾すぎただろうか。 下を向く菜々子に、人の気配が近づいてくるのが感じられた。 目の前で、誰かが立ち止まった。 菜々子の視界に、その人物が履いているローファーが映る。 声がした。 「ひどい顔ね」 さすがにカチンと来て、顔を跳ね上げる。 初対面の相手に対する、第一声がそれか。 目の前に、思わず見とれてしまいそうな美貌がある。先ほど勝利した神姫のマスターだった。 思わずにらみつけてしまったその女性は、しかし、言葉とは裏腹に邪気のない顔で、 「そんな表情じゃ、かわいい顔が台無し。ほら、笑って」 そう言って、にっこりと笑った。 女の菜々子でさえ、ドキリとするほど素敵な笑顔。 怒りが霧散するのも一瞬。菜々子は呆けた顔をするのが精一杯という有様だ。 その女性は、軽く一つ吐息をつくと、顔に微笑みを絶やさずに言った。 「あなた、見かけない顔だけど、ここは初めて?」 「え……はい」 「気をつけなさい。あっちの男ども、あなたに声をかけようと、さっきから狙ってるんだから」 視線を男性たちのグループに投げた後、彼女はいたずらっぽくウィンクした。 その表情がまた、やたらと様になる。 菜々子は内心、びっくりしたり、どきどきしたりしながら、彼女を見つめるほかない。 「見たところ、初心者みたいね。バトルしたことはある?」 「……ありません」 「バトルしに来たの?」 「あ、ええと……」 一瞬口ごもった菜々子の隙をついて、 「はい、そうです!」 ミスティが元気よく返事をしてしまっていた。 「ちょ、ミスティ!」 「なんだ、神姫を連れてるんじゃない」 「その、これはちが……」 違っていない。 イヤイヤではあったが、ミスティのためにバトルしに来たはずだ。 言うべき言葉が見つからない菜々子の手が取られた。 目の前の彼女だった。 「じゃあ、わたしが教えてあげる」 「ええと……わあ!」 菜々子は強引に引っ張られた なんという女性だろう。 菜々子の頑なな心に、無理矢理割り込んでくる。でもそれが全然嫌じゃない。ただ、展開の早さに戸惑っているだけ。 「わたし、桐島あおい。あなたは?」 「……久住菜々子、です」 「いい名前ね」 彼女が笑うたび、彼女のペースにどんどん引き込まれていってしまう。 戸惑いながらも、つながれた手を菜々子は握り返していた。 ◆ バトルロンドの筐体のまわりは、喧噪に包まれている。 そんな中、先ほどあおいと対戦していた花モチーフのジルダリア型のマスターがこちらに気付いて、顔を上げた。 「おお? また、あおいお姉さまの新人講習の始まりか?」 「うるさいわね」 苦笑しながら、あおいは菜々子を一番端の筐体まで連れて行く。 後で聞いた話だが、この桐島あおいという人物はかなりの実力の持ち主なのだが、『ポーラスター』にやってくるバトルロンド初心者にいつも世話を焼いているのだそうだ。 「バトルのプレイヤーを増やすのも、ベテランの仕事でしょ」 というのが当人の弁。 あまりにも世話を焼くので、常連たちからは「あおいお姉さまの新人講習会」呼ばれ、からかわれていた。 しかし、当のあおいは気にすることもなく、むしろそう言われて喜んでいる節さえあった。 菜々子にしてみれば、これは渡りに船だった。 あおいの行動に少し驚いたが、右も左も分からない自分に、向こうから教えてくれるのなら、こんなに都合のいいことはなかった。 初心者相手のお試しプレイなら手加減もしてもらえるだろうし、ミスティもちょこっとバトルの真似事さえできれば、しばらくは満足してくれるだろう。 おっかなびっくり筐体に座り、ふむふむとバトルのやり方を教わって、いよいよ菜々子とミスティの初めてのバトルが始まった。 この時、菜々子は大事なことを失念していた。 自分がとても負けず嫌いな性格だということを。 ◆ 「しまった……」 今日も菜々子は、『ポーラスター』への道を歩きながら、自己嫌悪に陥っている。 武装神姫によるバーチャルバトルゲーム……バトルロンドに、菜々子はすっかりハマってしまっていた。 実際にプレイしてみると、今まで触れたどんなゲームよりも奥が深くて面白い。 対戦ではそう簡単に勝てないことも、菜々子の負けん気に火を付けた。 今は友人達とも距離を置いているから、放課後にさしたる用事もなく、自らの闘争心の赴くまま、毎日のようにゲームセンターに足を運んでしまうのだった。 もちろん、ミスティは毎日ご機嫌である。 『ポーラスター』に通うのには、もう一つ理由がある。 桐島あおいに会うためだった。 「あら、今日も来たわね、久住ちゃん」 「……はい」 ふふん、と勝ち誇るように笑うあおいに、菜々子は少々むかつきながらも、返す言葉がない。 初めてバトルした日、もう一回、もう一回と何度も対戦を申し込んだのは、むしろ菜々子の方だった。 生来の負けず嫌いがこんなところで顔を出してしまった。 あまりにもムキになった様子がおかしかったのか、 「あらー、ここまで坂道を転げ落ちるようにバトルにハマるのも、ちょっと珍しいわー」 といいながら、あおいは爆笑していた。 それもまた悔しい。 自分から誘っておいて、何という言いぐさか。 いつかこの人に吠え面かかせてやる、と菜々子は密かに誓っていた。 だけど、桐島あおいが嫌いなわけではなく、むしろとても惹かれていた。 端正な顔に、いつも様々な表情を宿し、生き生きとしている。 明るく、社交的で、仲間達からは好かれ、慕われている。 こんな女性になりたいなぁ、と漠然と思う菜々子だった。 そんな憧れの女性は、なぜか、菜々子の面倒をよく見てくれる。 あおいを「お姉さま」などと呼んで慕う女子中高生は一人や二人ではなかった。 しかし、なぜかあおいは、新参者の菜々子が店に来ると、真っ先に声をかけてくれて、菜々子の練習相手を買って出るのだった。 そんな彼女の行動を不思議に思う。 なぜ、自分なのか? まだ出会って間もなく、いまだ悲しみに心捕らわれて、微笑むことすら出来ていない無愛想な女なのに。 それでもあおいは、 「さ、今日もやろっか」 と鮮やかに微笑んで、菜々子の相手をしてくれるのだった。 ◆ それから数日後のある日、『ポーラスター』からの帰り道。 「……何か悩んでる?」 「……え?」 「だって、久住ちゃん。あなた、全然笑わないじゃない?」 「……」 「久住ちゃんの笑顔は、絶対かわいいと思うんだけどなあ」 いつもは門限を気にして、あおいよりも早く帰る菜々子だったが、今日は菜々子に合わせて、あおいが一緒にゲームセンターを出た。 二人並んで歩く帰り道。 ……そういえば、桐島さんってどこに住んでるんだろう? 自分と同じ方向なのかな、などと考えてるときに、あおいから声をかけられたのだった。 二人は近くの公園に足を向けた。 噴水を望むベンチに並んで腰掛ける。 もう夕陽はビルの合間に落ちていき、空はオレンジ色から夕闇へと変わりつつあった。 「なにかあった?」 「……」 「まあ、言いたくなかったら言わなくてもいいけど」 口調はさりげなかったが、瞳の色は限りなく優しかった。 この人は、どうしてわたしのことを、こんなに気にかけてくれるんだろう。 不可解に思いながらも、心の中では少し嬉しく思ってしまっている。 心惹かれる憧れの人が、自分を気にしてくれているのだ。 だが、彼女の前でも、いまだ笑うことが出来ないでいる。 自分の心の内を話せば、彼女は理解してくれるだろうか。 わたしが笑顔を取り戻すきっかけになってくれるだろうか。 期待と不安が心に渦巻く。が、しかし。 「……ええと、その……実は……」 いつの間にかしゃべり出したことに、菜々子自身が驚いた。 意識しないうちに、桐島あおいを信頼してしまっていたのだった。 あおいは、話し始めた菜々子に微笑みかけながらも、真剣な様子で耳を傾けていた。 菜々子の話を聞き終えたあおいは、空に浮かぶ星を見つめ、言った。 「ふーん、そう」 それだけか。 自分のつらい胸の内を吐露したにもかかわらず、気のない一言で片付けられるなんて。 話さなければよかった、と菜々子は一瞬後悔する。 が、次の瞬間、菜々子はあおいに肩を抱き寄せられた。 そして、耳元で聞こえた一言。 「よくがんばったね」 その一言は、菜々子のかたくなな心を、一瞬でほどいてしまった。 菜々子が欲しかったのは、これだった。 同情でも気遣いでもなく、ただ、ただ、わたしが悲しみや不安や辛さに耐えていることを分かって欲しかった。 分かっていると言って欲しかったのだ。 菜々子のほどけた心から、ため込んでいた想いがどっと溢れてきた。 まるで洪水のように、菜々子の心を押し流す。 両親がもういないという実感。もう最愛の家族に会えないという事実。 祖母の気遣い。それは彼女自身の哀しみの裏返し。 友人たちの同情。それは心を許した友への精一杯の優しさ。 本当はみんな分かっていた。 心から菜々子を心配して気遣ってくれているということは。 それに素直に応えられなかったのは……自分に降りかかった不幸をいいわけにした、ただの甘えだった。 「ごめんなさい……」 菜々子の唇から、自然に言葉が転げ落ちてくる。 それは、いままで言いたかった言葉。言わなくてはならなかった言葉。 「ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい……」 菜々子の大きな瞳から、涙がこぼれ落ちていく。 優しくしてくれた人たちに謝りながら、泣いた。 やっと実感した胸を突き上げる悲しさと寂しさに、泣いた。 あおいの肩にすがりつき、菜々子は声を上げて泣きじゃくった。 やっと、心の底から泣くことを許された気がした。 桐島あおいは優しい表情で、号泣する菜々子の肩をそっと抱き続けていてくれた。 ◆ 「どうして……」 「うん?」 「どうして、わたしに声をかけてくれたんですか?」 あおいが声をかけてくれなければ、菜々子の心はまだ闇をさまよっていただろう。 あおいはちょっと上を向いて、うーん、と考えると、また菜々子の方を向き直って、言った。 「女の勘」 「え?」 「ゲーセンで、あなたと目が合った時、ビビッ!ときたのよねぇ……。 この子と仲良くなっておかなくちゃダメって思ったの。仲良くなっておけば、きっと素敵なことが起こるってね」 そう言って、いたずらっぽくウィンク。 相変わらず様になる。 限りない優しさと、太陽のような明るさと。 桐島あおいは、どこか祖母に似ている気がする。 「これからは、菜々子って呼ぶわ。いい?」 「はい、桐島さん」 「あおい」 「え?」 「あなたも下の名前で呼ばなくちゃ、不公平でしょ」 「……はい、あおいお姉さま」 あおいはあからさまに嫌そうな顔をした。 「あなたも、そう呼ぶわけ?」 「それが一番しっくりくるので」 それはささやかな反撃。 だけど、菜々子はこの呼び方がいいと思っていた。 お姉ちゃん、というほど馴れ馴れしくなく、憧れと尊敬を持った距離感のある呼び方。 親愛の情を込めて、その名を呼ぶ。 「お姉さまと呼ばれるのは嫌ですか、あおいお姉さま?」 あおいはその美貌を、心底嫌そうに歪めている。 後で聞いたところ、常連さんが「お姉さまキャラだから」という単純な理由で、あおいをお姉さまと呼び始めたらしい。 それがいつの間にか定着してしまったのだ。本人は自分がお姉さまキャラだなどとは微塵も思っていないから、迷惑この上ない、とのことだった。 それでも、眉をひそめながらも、あおいは頷いた。 「いいわ、もう好きにして」 他の人がそう呼ぶの禁止にしようかな、なんて言って、あおいは笑った。 つられて、菜々子も笑った。 もう真っ暗になった夜空に、二人の笑い声が響く。 両親が亡くなって以来はじめて、菜々子は心からの笑うことができたのだった。 ◆ こうして、桐島あおいは、菜々子にとって、特別な人になった。 憧れの女性であり、武装神姫の師匠であり、目標であり、ライバルであり、もっとも心許せる友人であり、一番の理解者で……本当の姉のように思っている。 今も。 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2315.html
西暦2041年 その世界ではロボットが日常的に存在し、さまざまな場面で活躍していた。 神姫、それは全高15センチほどのフィギュアロボットである。 :心と感情:を持ち、最も人々の近くにいる存在。 その神姫に人々は、思い思いの武器、装甲を装備させて、戦わせた。 名誉のために強さの証明のために・・・・・・・・・ 名も無き数多くの武装神姫たちの戦い 戦って戦い尽くした先には何があるのか バトルロンドは戦いの旋律 終わらない戦いの旋律 戦いの歴史は繰り返す いにしえの戦士のように 鉄と硝煙にまみれた戦場で 伊達衣装に身を包んだ神の姫たちの戦いが始まる。 著者 カタリナ・リナ ちなみにこのお話には公式の武装神姫以外にも私が製作したオリジナルの武装神姫が多々登場します。 登場する武装神姫は全て実際にフィギュアで立体化させた物を登場させるので、写真や画像を随時紹介していくつもりです。 不定期に気ままにやっていくのでよろしくお願いします。 カタリナ・リナ・武装神姫ブログ 武装神姫メインの私のブログです。武装神姫のイラスト、ジオラオスタジオ、フュギュア改造、小説、マンガを取り扱っています。 ブログでは武装神姫 「真零」というフィギュアを使ったSSを連載しています。世界観や登場する神姫、キャラクターなどはリンクしていますので、暇な人は合わせてお楽しみください。 コラボ大歓迎です。作品内のキャラクターやオリジナル武装神姫、設定、用語など、好きなようにご自由に使用してくださってかまいません。 第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 ・第1話 「飛兎」 ・第2話 「風兎」 ・第3話 「牙兎」 ・第4話 「戦兎」 ・第5話 「荒兎」 ・第6話 「重兎」 ・第7話 「轟兎」 ・第8話 「爆兎」 ・第9話 「嵐兎」 ・第10話 「射兎」 ・第11話 「火兎」 ・第12話 「焔兎」 ・第13話 「雷兎」 ・第14話 「燈兎」 ・第15話 「突兎」 第2部 「ミッドナイトブルー」 ・第1話 「night-1」 ・第2話 「night-2」 ・第3話 「night-3」 ・第4話 「night-4」 ・第5話 「night-5」 第6話 「night-6」 第7話 「night-7」 第8話 「night-8」 第9話 「night-9」 第10話 「night-10」 第11話 「night-11」 第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-1」 「ドラゴン-2」 「ドラゴン-3」 「ドラゴン-4」 「ドラゴン-5」 「ドラゴン-6」 MMS戦記 外伝 「敗北の代価」 注意 ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。 未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。 「敗北の代価 1」 「敗北の代価 2」 「敗北の代価 3」 「敗北の代価 4」 「敗北の代価 5」 「敗北の代価 6」 「敗北の代価 7」 「敗北の代価 8」 「敗北の代価 9」 「敗北の代価 10」 「敗北の代価 11」 MMS戦記・登場MMS紹介 その1 MMS戦記・登場MMS紹介 その2 MMS戦記・登場MMS紹介 その3 MMS戦記・登場MMS紹介 その4 MMS戦記 各種設定用語集 その1 お話に関するご感想は下記にてお願いします。 コメントログ 個人的に海原さんの外道っぷりに拍手喝采を送りたいですねwとても良い趣味ですwあの場で瑠璃さんにゲスな野次を飛ばしたいです。自分の欲の為ではなく賭けバトルを行う瑠璃さん…応援したいですが、こういう良い娘さんだからこそ堕ちて欲しいという邪な気分になりますw神代さんとの因縁も何かありそうですし今後も楽しみです!w -- ユキナリ (2011-05-31 18 09 54) >ユキナリさま ありがとうございます。外道というか下品というかww実際にアヴァロンに乗っているような感じとか雰囲気とか表現できたらいいなーと思います。この後の展開、お楽しみに!!! -- カタリナ (2011-06-01 22 27 37) 何か危ない集団みたいになっていますねw目の前で神姫の集団がこんな演説?をやっていたら怖いですねwしかし…アオイさんもこの戦争に参加するんですね、これは…心配です。不吉な最後の一文…今後の展開も気になります。どの物語も本当に引き込まれますね、すごいです。 -- ユキナリ (2011-06-05 10 54 10) >ユキナリさま たしかに神姫の集団が会合開いてこんな物騒な集会開いていたらいやですねwまた前回に引き続き登場のアオイさんですが・・・どうなることやら・・・不吉な最後の一文はまあ、あんまり気にしないでくださいww今後の展開、私も気になります。なんにも考えていないのでなりゆきでどうなるのか私も知りませんwww -- カタリナ (2011-06-12 14 31 05) 機械だからマスターの子供を産めないグロリアさんの健気さ…何故か心を打たれますね。あれほど金持ちの海原さんは別に瑠璃さんにこだわる必要ないと思いますがw海原さんに対しての侮辱で怒るグロリアさん、ありきたりな物語だとグロリアさんが心を揺さぶられ負けに繋がる所ですが…そこはマスターと強い絆と信頼に結ばれるSSS、逆に力となった彼女に惹かれます。くすぐったい家族愛を踏みにじって欲しいですね!wもし瑠璃さんに子供が出来ても認知も援助もせずにより絶望を与えるとかw -- ユキナリ (2011-06-14 14 53 28) 武装神姫がマスターの赤ちゃんを産みたい!!っていう設定はかなり萌えるというか禁断の世界だと思うのですが・・・・海原さんが瑠璃ちゃんにこだわっているのはまあ、おっさんの趣味でしょう・・・ここからどうなるのかお楽しみに! -- カタリナ (2011-06-19 12 03 43) 夜帝の長所を弱点に変える…私では何も思いつきませんねwしかし神姫使いのチンピラとはwまさかこの手のノリのキャラが出てくるとは予想外で楽しめましたw -- ユキナリ (2011-06-20 18 19 56) >ユキナリさま サーベルタイガーという動物を知っていますか?巨大で強力な牙を持った肉食動物ですが、滅んでしまいました・・・過剰すぎる長所は同時に欠点を生みます。神姫使いのチンピラwwwやっぱりこういうバカも必要でしょうww -- カタリナ (2011-06-25 21 00 49) 6000万円の小切手を持つ神姫…w海原さんの太っ腹加減はとんでもないですねw瑠璃さんは敗北しましたが、新たに麗さんがヴァルハラへ参加…グロリアさんがどんな遊びをするのか、興味深い事態がいっぱいですw -- ユキナリ (2011-06-30 18 28 11) 失礼しました、ヴァルハラはバトルマスターズの方ですね、アヴァロンですw -- 名無しさん (2011-06-30 18 29 41) >ユキナリさま 太っ腹ー6000万でグロリアさんがすることとは?贅沢な遊びをしますよーお楽しみにww -- カタリナ (2011-07-03 21 51 45) こ…このイラストは!!本編もイラストもここまで描写されるとは!w非公式バトルロンドの果てにある物を見れるなんて…感動ですw瑠璃さんへの陵辱…この状況でも強気な口調が残っているのが良いです!w彼女の悲痛な心情を想像すると…萌えますね…w -- ユキナリ (2011-07-07 21 03 00) >ユキナリさま なんかエロゲーぽいですが、気にしないでください。強気で生意気な女をこうやって***するのは*****ですねwまあ、この後、どうなるかは・・・お楽しみに・・・ -- カタリナ (2011-07-10 18 30 51) 暗闇で倒してはじめて倒した事になる…電源を落とした時、私も思いましたが当事者ではない自分がそうコメントするのは、はばかれた為に何も言えませんでしたが…。ナターリャさんの行動いいですね!さすがSSS!是非とも成功して欲しいですが、あの攻撃のなかほとんど披弾せず余裕があるシュヴァルさんの恐ろしさ…。不安ですね…。 -- ユキナリ (2011-08-18 18 21 27) ナターリャもシュヴァルも結局は同じ穴のムジナです。いかに相手に屈辱的な勝ち方をしようか考えていますね(ドS)SSSのSはドSのS・・・・・シュヴァルさんに勝ち目はあるのか?圧倒的な不利な状況の中でどーするんでしょうね。コレどう見ても詰んでると思うのですが・・・次回もお楽しみにwww -- カタリナ (2011-08-21 21 20 42) 瑠璃さんもスクルドさんもいつの間にかすっかり海原さん達と仲良く(?)なりましたねwグロリアさんとスクルドさんの百合要素が良いですねw新キャラの春日さんが出てきましたが…彼女もボロボロに汚して貶めて屈辱を与えたくなる良い女性ですね!海原さん…期待しています!…表舞台なら古参神姫であるドラッケン・メリッサさんを使うユカリ姫との古参対最新鋭の戦いとかも見たいですがw -- ユキナリ (2011-08-28 19 26 22) >ユキナリさま 仲良くなったというか慣れたというか・・・グロリアとスクルドはぶっちゃけていっちゃうと、マスターうんぬん関係なしに利害関係が一致していますね。ある意味ドライww春日さんですが、ここから大暴れします。重要な物語のキーポイントとなるキャラです。表舞台なら古参神姫であるドラッケン・メリッサさんとの戦いですか?ううん、今のとことメリッサさんは出番ないですが・・・他のSSSランカー神姫さんが登場するかも?お楽しみに!!! -- カタリナ (2011-09-01 22 37 12) ミッドナイトブルー完結お疲れ様です。ナターリャさん達は実質敗北に近い勝利でしたか…どちらの株も下げていない良い決着だと思います。…最後のクリスティーさんは面白いですねw縄張り争いに負けた野良猫みたいで…w超音速の死神を追い出したら次は白い冥王が…そして最後は存在していないと言われるあの死神が…。 -- ユキナリ (2011-10-02 14 26 16) >ユキナリさま ありがとうございます。戦いに勝って戦いに負けるのはよくあることですwwSSS級はめちゃくちゃ強力なので彼女らが移動するだけで大騒ぎになりますww超音速の死神を追い出したら次は・・・因果は廻り廻りますww次回もお楽しみに!! -- カタリナ (2011-10-02 23 50 55) 名前 コメント 長くなりましたのでコメントに書き込みを頂いた過去ログをこちらにまとめました。 たくさんのコメントありがとうございますね。 MMS戦記 コメントログ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2446.html
MMS戦記 コメントログ コメントに書き込みを頂いた過去ログをこちらにまとめました。 たくさんのコメントありがとうございますね。 コメントページ修正しました。お手数おかけして申し訳ございません -- カタリナ (2011-01-15 12 00 26) いつも良いところで墜ちるアオイさん。今度は頑張って!w -- 名無しさん (2011-01-23 20 04 02) チーム名w -- にゃー (2011-01-24 00 18 02) 面白く成ってまいりましたなぁ、艦の沈め方のセオリー通りですなぁ…それにしても、ナウシカを思い出した私は旧い地球人(笑) -- 触神 (2011-01-24 20 17 10) >名無しさま ありがとうございます。まあ、どうなるかはお楽しみに・・・ -- カタリナ (2011-01-25 00 25 23) > にゃーさま 名前が適当なのは仕様ですww -- カタリナ (2011-01-25 00 25 53) > 触神さま なんと脆い船じゃ・・・ はい、実はこのシーン、ナウシカのバカガラス襲撃シーンを参考にしています。大当たりですwww次回もお楽しみに!! -- カタリナ (2011-01-25 00 27 30) 定期便なんて言われて居るからしっかり対策立てられるんだな(笑)、風穴空いたからこその反抗だとしてもね、高度が有ったらアノシーンに成るんでしょうが、爆撃がメインじゃむりか、あぁ楽しきかな大規模戦闘、続きが楽しみです -- 触神 (2011-01-29 12 49 58) >触神 さま 定期便、対策は立てやすいですが、それは向こうも襲撃を予想しているので、なかなかハードな戦いになりますよー大規模戦闘、武装神姫は基本は1対1の戦いがメインですが・・・それだといろいろ縛りが出そうなんで、あえて私は大規模な戦闘を描いてみました。最近のゲーセンもオンラインで10体10とかの戦闘とか普通にあるので、ノリはそんな感じです。戦場の絆とかボーダーブレイクとかww武装神姫も多分、そんな感じで戦うと思うのでなるべくリアルに戦闘とか表現しようと思います。次回もお楽しみに!! -- コメント返し (2011-01-30 22 44 04) 確かにニーズに沿ったサービスですよね、戦艦武装はタイマンでは成立しませんから(笑)こう言った所から発生した需要と考えれば更にリアリティーが増しますねぇ〜、正に大戦略(爆)戦記の名に負けぬ様に頑張って下さい -- 触神 (2011-02-02 14 01 42) > 触神さま 大型の戦艦型神姫、もちろんタイマンでも倒すことは可能です。この戦艦型神姫を単体で倒せるかどうかが、強神姫かどうかの境目ですね。他所さまの神姫の世界観ではこういった大型の神姫は存在しないので、また違った楽しみ方があると思います。次回もお楽しみにww -- カタリナ (2011-02-02 22 34 11) 初めまして。夜虹というものです。話を最初から読ませていただきました。 序盤からコアの性格にとらわれない性格の神姫が多いですね。しかし、その実力は本物。 単純なブラフのために無駄な武器を持ったり、わずかな隙を突いたりと展開が面白いですね そしてチーム名はすごく適当だったり、ちゃんとしたものだったりカオス極まりないですね。それはそれでメンバーの性格が出ていていいものではあります。 それでもそれぞれチームの性格が分かれていていい勝負になっていてよかったと思います。今後が気になるところです -- 夜虹 (2011-02-03 05 39 23) >夜虹さま ありがとうございます。我が家では初期の性格はコアに忠実ですが・・・年月がたってくると変化してくるといった感じです。戦いの流れや戦闘シーンは実際にゲームとか喧嘩、日常のなにげない駆け引きとかそういうのを参考にしています。チーム名や神姫の名前は適当です。特に深い意味はなかったり・・・今後ですが、私はいいかげんであんまり考えていないので、成り行きで物語を進めるので、私も今後どうなるかは決めていませんし、知りません。どうなるんでしょうねーーー -- カタリナ (2011-02-04 23 32 07) にやーと冷たく笑う内野さんに惚れそうです。 この人達は神姫を使い捨てにしているようですが、複数所持していて用途別に使い分けしているのでしょうか。 冷酷に見えますが戦艦型相手ならこの作戦も仕方無いでしょうね。 -- 名無しさん (2011-02-13 01 17 26) >名無しさま 使い捨てではないですよー、我が家の神姫バトルはリアルバトルがメインですが、壊れたりした場合は修理して何年も大事に戦わせています。複数所持しているオーナーさんも多いですし、作戦や戦術によって神姫や武装はもちろん使い分けています。いろいろなオーナーや神姫が登場するので次回もお楽しみに!! -- カタリナ (2011-02-17 22 42 45) 海外の映画的なセリフ回しに痺れます。 -- 名無しさん (2011-02-20 01 03 22) >名無しさん アパーム!!弾を持ってこいーですけどねww -- カタリナ (2011-02-20 01 12 16) 軽白子隊の壮絶な戦いに興奮しました!w我が家の軽白子隊もこういう感じのバトルを想像しているので最高ですw -- ユキナリ (2011-03-24 17 36 51) >ユキナリさま ありがとうございますw結局、ドセットにトドメを刺したのは、名も無き軽白子でした!!そして次の瞬間バッラバラに・・・軽白子は群れるのが前提の設定なので多分、こういう使われ方するんじゃないかなーと思いました。 -- カタリナ (2011-03-26 19 54 27) バトル中にだべりだす…wデボラさん達のイメージが変わりましたwガーリオンの皆さんも普段は普通に可愛い娘さんなのかもしれませんねw -- ユキナリ (2011-04-24 12 14 55) >ユキナリさま まあゲームですし、みんななりきって遊んでいるといった感じですねー遊びゆえにいろいろと真剣ですがww我が家の神姫はみんな可愛いよ! -- カタリナ (2011-04-27 00 12 21) ウォースパイトさん…本当にいつもご苦労様です…。神姫界でヤムチャ的活躍が、すっかり板についているような気がしますw本当は凄い強いと思ってますがw -- ユキナリ (2011-05-05 12 28 29) >ユキナリさま 強いザコ!!強いけどやられるシーンが多いだけです。気にしないでくださいw -- カタリナ (2011-05-05 20 10 10) お疲れ様でした、楽しませて貰いました、時間切れと言うなんともリアルな終わり方でしたなぁ〜でも其処が又良い(笑)、しかしまぁ此処まで壊れたら修理不能な神姫も居るんじゃ無いですかねぇ? -- 触神 (2011-05-07 07 49 48) >触神さま まあ、よくあることですよねーさて、我が家のバトルは基本、リアルバトルで実弾や実剣を用いてガチンコバトルするのですが・・・めちゃめちゃに破壊されてもちゃんと元通りに直してあげるのが、マスターの勤めとたしなみでもなります。後、壊れてもしっかりと修理してくれるサービスや体制が整っているので修理不能で起動できない神姫はほとんどいません。所詮神姫は機械ですし、壊れたら直せばいいだけですし、記憶もコピーして残せますしー -- カタリナ (2011-05-08 12 00 53) 深夜0時に現れるステルス神姫…あの人ですねw今回も同時に大量破壊を示すテロップ列が…w同時破壊によるテロップ列は見ていて爽快ですwでもマスターの方は、いつかへこませたいと言う衝動がwイケメンは敵!w -- ユキナリ (2011-05-09 17 42 05) >ユキナリさま 同時破壊のテロップの元ネタはボーダーブレイクだったり!!!深夜0時に現れるステルス神姫・・・・さてさて・・・イケメンマスターというか、痛いマスターというか・・・とりあえずお楽しみに!! -- カタリナ (2011-05-09 23 35 46) 伊藤勝成さん、格好いいご老人ですね!私も2041年だと、この方と同じぐらいの年齢になっていますw少し下ですがwこんな老人になりたいものです。夜帝討伐隊第2陣と言った感じですが今度はとても優秀な軍師を交えての作戦、楽しみにしています! -- ユキナリ (2011-05-15 11 54 23) >ユキナリさま ありがとうございます。老若男女神姫を持っているという設定です。今回は将校型神姫が参戦です。他の神姫とは一味違う戦いをご覧ください。 -- カタリナ (2011-05-21 19 32 37) これは!w非常に興味を持っていた非公式バトルの話がついに作品化!行為の傍らに残骸となった神姫があると言うシチュエーションが最高ですwそして挿し絵付き!カタリナ様の描かれる女性キャラクターは本当に魅力的です。続編も楽しみにしていますw -- ユキナリ (2011-05-22 12 37 42) 駆逐艦型は無いのですか? -- げしもちゃん (2011-05-22 13 54 28) >ユキナリさま 禁断の非公式バトルロンド・・・実は前から構想は練っていたのですが、中途半端にするのはイヤなのでいろいろなゲームやマンガを見て構想を練り直し、かなりハードで危険な本当の意味での裏の非公式バトルロンドをやってみようと思います。戦いはよりハードに、敗北者には相応の代価を、ボリュームたっぷりのスケールで満足できるようなお話をしようと思っていますのでお楽しみに・・・・ -- カタリナ (2011-05-23 23 16 14) >げしもちゃんさま 語るとうるさくなるのですが・・・我が家には多種多様な艦艇タイプの神姫がいます。とりあえず主力と呼ばれる大型艦艇神姫。航空母艦型神姫・戦艦型がいます。そして補助艦艇、潜水艦型神姫や輸送艦型神姫などがいます。また現在新たにオンステージに、コルベット艦型神姫と強襲ホバークラフト型新規と呼ばれる。新型の艦艇タイプの神姫を製作・量産しました。詳しくはブログ等でチェックしてくださいwww -- カタリナ (2011-05-23 23 21 52) カタリナ信者の僕が来ました -- 名無しさん (2011-05-28 20 18 05) 参加する女性への品定め役が居るんですね、確かにこのシステムなら自然に美少女が集まってきますね!その品定め役の醜男さんいい味していますねw私はキモい男が美少女を無理やりとか悪臭で歪む表情とか大好きなので彼のような存在は嬉しいですねwキツい悪臭を嫌がっているルカさん可愛かったですwもし私が参加し勝ったなら、醜男さんと相手オーナーを絡ませじっくり見物したいですw自分は手を出さずにw -- ユキナリ (2011-05-29 11 19 39) >名無しさん様 信者ってwwwありがとうございますww -- カタリナ (2011-05-30 23 27 05) >ユキナリさま まあ、エロゲでもよくいますよねwwこういうキャラwwこおういう汚れ役はいたら便利ですww何かとwww -- カタリナ (2011-05-30 23 29 22) トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2052.html
深み填りと這上姫 初めまして。この小説を書く夜虹(やこう)と名乗る者です。以後よろしくお願いいたします。 この小説は『俺』という男が捨てられた神姫を一人前に育て上げる小説……だと思います。 話は全体的に時系列順に展開されていきますが、一章で完結する方式であり、 章単体で読み切れるようになっております。 コラボも歓迎です。こちらの物語に影響の無い程度であれば設定やキャラをお使いくださいませ。 登場キャラクター紹介 用語解説 作品集 第一章 深み填りと這上姫 あらすじ: 大学のレポートに追われる毎日を送る俺がトイレに行って戻ってくると目の前に蒼髪の人形がいた。 それは武器と鎧を装い、人という神のために戦う姫という謳い文句の人形 武装神姫であり、 乱暴なオーナーに捨てられたといって駆け込んできたらしい。 さて、どうしたものやら…… 第二章 深み填りと脱走姫 あらすじ: 神姫センターで知り合った友人 真那から賞金百万がかかった脱走神姫イーダの捕獲を持ちかけられ、 それの手伝いをする羽目に。しかし調べていく内に…… 第三章 深み填りと盲導姫 あらすじ: 夏のある日、俺達は神姫センターでサマーフェスタを楽しんでいた。 そんな時、ある人物と出会い、神姫の一つの可能性を垣間見る事に…… 外伝 少年と疾走姫 あらすじ: イリーガルマインド騒動から一ヶ月後、俺の家にとある少年がやってきた。 彼が連れていたのは……角の折れたアークプロトタイプ――百日だった。 その時、彼女から語られる二人の答えを俺は聞くことになる。 第四章:深み填りの徒旅記 あらすじ: ホビーショップエルゴ店長の日暮に頼まれ、イリーガルマインドを回収することになった俺は日暮の冗談で言った『異邦人(エトランゼ)』に倣い、その目的のために様々な場所へ行くことにした。 異なるセンターで異なる人や神姫と出会うことになるだろうが、それは俺たちになにをもたらすのやら…… バトルロンドにおける設定をMighty Magicより一部お借りしています。 第一部:店の中のせつな 第一話:模倣姫 第二話:擦違姫 第三話:篭城姫 第四話:総力姫 第五話:物語姫 (この話では武装食堂のネタバレが一部含まれます) (この話では武装食堂、せつなの武装神姫、武装神姫のリン、ウサギのナミダ、The Armed Princess―武装神姫―、鋼の心 ~Eisen Herz~、15cm程度の死闘より一部の設定、キャラクターをお借りしております) 第二部:15周程度の疾走 第一話:仮装姫 (この話ではキズナのキセキ、15cm程度の死闘より一部の設定、キャラクターをお借りしており、キズナのキセキのネタバレが一部含まれます) 第二話:面割姫 (この話ではキズナのキセキ、15cm程度の死闘、デュアル・マインドより一部の設定、キャラクターをお借りしており、15cm程度の死闘のネタバレが一部含まれます) 第三話:飛戦姫 (この話では15cm程度の死闘、デュアル・マインドより一部の設定、キャラクターをお借りしております) 第四話:宙走姫 (この話では15cm程度の死闘、デュアル・マインドより一部の設定、キャラクターをお借りしております) 第五話:隠道姫 (この話ではキズナのキセキ、15cm程度の死闘、デュアル・マインドより一部の設定、キャラクターをお借りしており、キズナのキセキのネタバレが一部含まれます) 総合カウント数35000を突破いたしました。 僕の小説を読んでくださっている読者の皆さん、どうもありがとうございます 本日 - 昨日 - 総合 - 感想がございましたらここへお願いいたします。 コメントログ -コメントログ2、-コメントログ3 譲れないこだわりがありまして、コタマ(狐)は鉄子のことを「鉄子ちゃん」と呼びます。 次に「鉄子」と呼んだ時はミコちゃんよ、大学の掲示板に例の写真張りまくるかんね! それはそれとして、いやはや、本当に同じ大学だったとは。 しかも精密機械いじりがプラスになる→機械の制御を勉強している鉄子達と学科が近いor同じだと推理します。 鉄子からコンタクトを取ったということは・・・ううむ、続きが待ち遠しいです。 -- にゃー (2012-05-31 01 09 38) にゃーさん> おお; これは失礼しました。取り急ぎ、修正をさせていただきました。 これで後は気を付ければ掲示板貼りは回避だね。ミコちゃん。 え? お前の研究不足が原因だろうって? それに関しては申し訳ございません……。 はい。同じ大学であるからこそのこの話となりました。そうである事で正体バレに関して、彼女が最も近い場所にいる事になると考えていたものでして。 学科はそう言う事になりますね。詳しく決めてはいないですが、だいたい同じかもしれません。 コンタクトの理由は次の話で展開されると思いますので、次回までお待ちいただければと思います。 -- 夜虹 (2012-05-31 17 50 06) 初めまして、読ませて頂いています白田黒乃です。 自分も先の名無しさんと同じ、尊に対して反感を抱いていましたが、段々と好きになってきました。 尊、性格イケメン過ぎだろ…正に武装神姫界のコブラ。 そして尊と鉄子が同じ大学…だと…(コラボが楽になるぜ。ラッキー!) -- 白田黒乃 (2012-06-01 17 09 42) 普通激しいバトルパートを書くと間に日常を挟みずらくなるのに お見事です。 これからもお体にお気をつけて下さい。 -- 焦げかぼちゃ (2012-06-02 23 00 47) 白田黒乃さん> こちらこそ初めまして。作者の夜虹です。 最初は典型的なオタ嫌いなので武装神姫をやっている人からするとちょっと近寄りがたい印象はありますよね。 でも、それが神姫を理解していく上で面白いかなと思ってやってみました。 後は深みに填まってくれれば、この性格であるといった感じです。 イケメンと言っていただけて何よりです。確かに軽口を叩いたり、意志がブレない所はヒューと言いたくなる奴ですね。 そしてコラボが楽に? いったい何が始まるのでしょうか……。楽しみにしています。 焦げかぼちゃさん> 恐縮です。この辺りは短編集の強みですね。切って次の話にすると話の状況をリセットできますので。 ええ。これからは本格的に暑くなってくるでしょうから、水分補給を欠かさずに頑張っていきたいと思います。 -- 夜虹 (2012-06-07 07 34 53) 待っていた・・・待っていたぞ夜虹殿!! ・・・すんません、テンションが暴発しました。 アニメ化でトランザムしてたら這い上がり姫の更新。 テンションが上がりまくりで色々とやヴぁい。 -- 燃え盛る焦げかぼちゃ (2012-09-18 20 55 06) 焦げかぼちゃさん> 三か月もお待たせして申し訳ありませんでした。 同人のサウンドノベルやらお仕事やらで結構、手間取ってしまいました。 それでもお待ちいただけてありがたい限りです。 それに応えられる様に続きをしっかり描いていこうと思います。 話に関しましてはこれからアクセルロンドという自分で作ったルールで戦っていくことになります。 (ちなみに元ネタは遊戯王5D sのライディングデュエルだったりします) それでどんな展開になるのか想像していただければ幸いです。 -- 夜虹 (2012-09-22 18 21 02) メルが勝った? ふむぅこれは予想を外してしまいました。 貞方もたまには役に立つものよのう。 しかしこれで、――フフッ、どうやらミコちゃんの学生生活はジ・エンドを迎えるようですなぁ。 なぜかと問われるまでもないでしょう。 最後に控える我がタマちゃんが負けるはずがない! せめて第2ラウンドで負けてくれるなよ双姫主ミコちゃん。 尋常外の傀儡師『ドールマスター』の真の恐怖を存分に堪能してもらおうぞ! フフフッ・・・。 フッフハハハッ・・・。 ハァーッハハハハハハハハァ!!!! -- 調子にのるにゃー (2012-10-12 02 05 04) 最新話読ませていただきましたー バトルロンドでのスキルがバンバン出てきて懐かしくなる…… >>二重人格だったり ……えっ? え、あの、はい 早く続き書きます はい -- 璽儡 (2012-10-17 20 52 06) にゃーさん> 勝ったのに作者からこの扱い。貞方ェ……(何 それは置いておきましてミコちゃんが追い詰められましたね。彼に後はありません。 そんな中、ミコちゃんと蒼貴は果たして難易度ルナティックなコタマを倒す事ができるのか……。 その前に第二ラウンドですね。壁となるのは姉妹機のアルトレーネの重装型とアステロイドという状況。 生半可な戦術ではイーダ一式の紫貴が覆すのは難しい。ミコちゃんはどう対抗するのやら……です。 璽儡さん> スキルは神姫の象徴の一つですからね。出来る限り使っていきたいと考えております。 ややや、何だか急かしてしまったような結果になって申し訳ないです。 イーダつながりと主人公ネタという事で二重人格を引き合いに出してみたのです。 次はリーヴェの戦いとなりますが、上手く彼女の性格、戦い方を引き出せるように頑張りたいと思います。 璽儡さんの作品も楽しみにしておりますのでお互い頑張りましょう -- 夜虹 (2012-10-19 00 06 07) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2113.html
ウサギのナミダ ACT 1-5 □ 週末、俺はティアとともにゲーセンの入り口をくぐる。 まっすぐに武装神姫のバトルロンドの筐体のあるコーナーに向かう。 バトルロンドのコーナーは今日も盛況だ。 大型の観戦用ディスプレイには、白熱の戦いを中継している。 「あっ、遠野くん!」 「来た来た」 壁際にいてディスプレイを見上げていた二人が、俺を見つけて手を振った。 久住菜々子さんと、大城大介。 俺も軽く手を挙げて、二人に歩み寄る。 「やあ。今日はどんな感じ?」 「絶好調~」 にっこりと笑って、久住さんは右手でVサインを作る。 「三強の二人相手に一勝ずつ」 「それは確かに絶好調だ」 このゲーセンでは、独自にバトルロンドのランキングバトルが定期的に行われている。 武装神姫の公式リーグにも三つのランキングと全国規模のポイント制度があるが、それとは別である。 神姫センターやゲームセンターなどで独自に行われるポイント制のランキングのことだ。 定期的に行われるトーナメントでポイントを取得し、その合計ポイント数で、ランキングを決める。 よりローカル色の強い武装神姫ランキングだ。 このゲーセンでは、現在の上位陣は三人で、三強と呼ばれている。 この三強に対しては、名の知れたエトランゼ=ミスティと久住さんのコンビと言えども苦戦しているようで、いまのところ負け越し気味らしい。 「でも、これで勝ち星もほぼ五分に戻ったし。これも、遠野くんに教えてもらった新戦術のおかげね」 「そうかな」 「遠野よ、あんまりミスティの肩を持つなよ。おかげで俺達まで勝てなくなっちまう」 大城が頭を掻きながらぼやく。 虎実はミスティと何度も対戦しているが、ミスティが大幅に勝ち越しているらしい。 「ああ……菜々子ちゃんとのデートがまた遠のく……」 「そんな賭、まだしてるの?」 「してません、してません」 俺が久住さんを横目で睨むと、彼女はあわてて首を振った。 ティアとミスティの二戦目も、ティアの辛勝だった。 そのときに、思い切って、デートを賭に使わないで欲しいと言ってみた。 なぜか、久住さんはあっさりOKし、二度としないと約束したのだった。 久住さんは約束を忘れずに、守ってくれているようだ。 だったら、いつもの、大城の妄言か。 「まあ、仮に賭があっても、わたしは虎実には負けないけどね?」 自信たっぷりの声はミスティ。 誰がどう聞いても、ミスティは虎実をからかっているのだが、 「あぁん!? だったらいますぐ、ここで決着つけてやろうか、テメェ!!」 虎実はあっさり挑発に乗った。 言葉遣いの悪さは、マスター譲りだろうか。 虎実は口汚くミスティを罵るが、当のミスティはどこ吹く風、とばかりに受け流している。 「やれやれ、やかましいこと。そんなに言うなら、今日は一勝くらい譲ってあげてもいいわ。 あんまり勝敗が開いてもかわいそうだし?」 「んだと!? なめんなよ! リアルバトルで白黒つけてもいいんだぜ、アタシは!!」 どこまでも白熱しそうな舌戦に、ティアがおそるおそる口を挟んだ。 「ふ、ふたりとも……ケンカはよくないとおも……」 「ティアは黙ってて!」 「アンタは黙ってろ!」 同時に怒鳴られて、ティアはびくっと身体を震えさせた。 半泣きになりながら、俺の胸ポケットの中で縮こまる。 二人とも、そうおどかしてくれるな。 二人のケンカは、止める者もなく、ますますエスカレートしていく。 肩の上で大きな声を出されて困っている久住さんと大城は、なぜか俺を見た。 やれやれ、結局こういう役回りか。 俺は小さく溜息を一つつく。 「だったらもう、普通にバトルして決着つけろよ、今日のところは」 とたんに、二人の怒鳴り声がぴたりとやんだ。 俺を見て、また互いににらみ合う。 「まあ、わたしの方は依存はないわ」 「……トオノに免じて、普通のバトルで勘弁してやる」 「あとで文句付けないでよね」 「そっちこそ!」 久住さんと大城は、苦笑しながら、俺の肩をぽん、と叩いた。 「ありがとう」 「いつも助かるぜ」 二人はお互いのパートナーを連れて、筐体の方に向かう。 俺は小さく肩をすくめた。 ミスティと虎実は、ウマが合わないのか、しょっちゅういがみ合って、そのままバトルになる。 お互いのマスターが何か言っても、火に油を注ぐようなものなので、仲裁は俺に回ってくるのだった。 ちなみに、ティアとミスティは仲がいいので、ケンカになった試しはない。 虎実はティアを毛嫌いしているというか、ほとんど無視して、話しかけてもそっぽを向かれる。バトルも、最初の一回以来、したことがない。なぜかティアを避けている。なぜだろう? マスター同士は、神姫たちとは関係なく、普通に話をする。 最近はなにかとこの三人一緒にいることが多くなった。 特にチームを組んでいるわけでもないのだが、他のプレイヤーからは三人組と見なされているようだ。 「あいかわらず、陸戦トリオは仲がいいな」 常連さんたちの間では、俺達三人はそんな風に呼ばれているらしい。 声をかけてきたのは、このゲーセンでも古参の常連プレイヤーである。 「お、ヘルハウンドの。……あれで仲がいいって言うのかな」 「ケンカするほど仲がいい……ってな、黒兎のマスター」 何度も手合わせをしているプレイヤーであるが、お互いに名前は知らない。 そのため、お互いの神姫の二つ名やあだ名で呼び合っている。 「で、よければ対戦しないか? 今日は陸戦トリオとやりたくてな」 「ふむ……いつも通り、ステージは廃墟か市街地。それでいいか?」 「もちろんだ。市街地ステージにしよう」 「わかった」 俺は頷くと、空いている筐体の方へ向かった。 俺がヘルハウンドと呼んだ神姫は、ハウリン・タイプのカスタムだ。 左右の肩に装着されたフレキシブルアームの銃火器が、神姫自信の頭と合わせて三頭に見えるので、「ヘルハウンド・ハウリング」という二つ名を持つ。 このゲーセンでバトルロンドの筐体が置かれた頃からの古参の常連だ。 もちろん実力もあり、ランバトでは三強の一角だ。 正直、ティアは苦手な相手である。 ティアは片手武器に頼っているため、火力が高くない。 そのため、重装甲を持ちながら機動力もある、ハウリンやマオチャオは分の悪い相手だ。 だが、苦手だからといって対戦しないでいては、苦手克服の突破口も見つけられないのだ。 三強ほどの実力者が相手なら、なおさら断る理由もない。 今日試すべき戦術や技を頭に思い浮かべながら、俺は筐体に座る アクセスポッドにティアを送り込んだ。 ヘッドセットを耳に装着して、準備を終える。 「行くぞ、ティア」 「はい、マスター」 今日もティアと共に戦う。 気の置けない仲間がいて、バトルを楽しむ相手がいる。 夢にまで見た武装神姫のマスターとしての日々は、とても楽しく、充実していた。 ……奴が来るまでは。 その日の夕方遅く。 何度かバトルをこなし、そろそろ帰ろうかと思い始めていた頃。 バトルを終え、アクセスポッドからティアが出てくる。 ティアは立ち上がり、俺の方を振り向いた。 いつものように、ちょっと不安そうな顔で俺を見る。 俺は安心させるように少しだけ笑って頷いた。 すると、ティアは花が開くように微笑んだ。 俺はティアに手を伸ばそうとしたその時、 「ねえ、アケミちゃん!? アケミちゃんじゃないか!! どこ行ってたんだよ!?」 と大きな声が聞こえてきた。 ……その時は、まさか俺達にかけられたとは思いもしなかった。 その声に、びくり、と体を震わせて、ティアが反応した。 ゆっくりと、首を回し、声の方向に顔を向ける。 相手の顔を認めた瞬間、ティアの愛らしい顔が、これ以上ない恐怖の表情を形作り、凍った。 さすがにティアの反応がおかしいと思い、俺も声の主を見る。 声の主は、やたら太った、大柄な男だった。 黒縁眼鏡をかけ、髪はぼさぼさに伸ばし放題、しわだらけのシャツとジーパンという、見るからに他者の嫌悪感を煽るような姿だった。 見たことのない男だった。……いや、どこかで見たような気もする。 あまりにステレオタイプといえば、そう見える人物ではある。 背後に二人の男を付き従えていた。仲間だろうか。 「ひゃはっ、やっぱりアケミちゃんだ。ボク、ボクだよ、井山淳一さ! 覚えてるだろ? さあ、ボクと一緒に帰ろうねぇ……」 男はアクセスポッドに手を伸ばそうとする。 俺はその手を払い、アクセスポッドを自分の手で塞いだ。 「おい、人の神姫に無断で触れるのはマナー違反じゃないのか」 自分の声が必要以上に厳しくなっていると自覚する。 見ず知らずの人物が、他人の神姫に無断で触れようとするのは、重大なマナー違反だ。 大切なパートナーに、知らない人間が触れたりしたら、誰だって怒るだろう。 神姫のマスターであれば、言われるまでもない常識である。 ましてや、ティアは男性に掴まれることをことのほか恐れている。 俺が過敏な反応を示すのも、むしろ当然だ。 だが、振り払われた手をさすりながら、いかにも心外、という表情で、その男は言った。 「人の神姫だって? 誰の神姫? 君の神姫ってこと? 違うだろ? その子はボクのアケミちゃんじゃないか!」 何を言ってるんだ、こいつは? 頭がおかしいのではないのか。 「こいつはティア。俺の武装神姫だ。あんたのアケミとかいう神姫とは人違い……いや神姫違いだ」 「何言ってるんだよ! 違ってるのはそっちだろ? その子は、『LOVEマスィーン』って店の、登録ナンバー23。僕が連れ出したアケミちゃんに間違いないよ!」 ……おかしくなかった。 あの夜の、ティアをゴミ捨て場に投げ捨てた、あの男か! 「『LOVEマスィーン』の神姫は、みんなカスタムヘッドで、あの店にしかいない娘ばっかりなんだ。 ボクはずっとアケミちゃんの常連だったんだ。いっつも可愛がってあげていたんだから、見間違うわけがないもんね」 「神姫違いだと言っているだろう。そんな店は知らない。変な言いがかりはよしてくれ」 「じゃあ、どうやってその娘を手に入れたんだよ? 製品じゃないヘッドの娘をさぁ!」 ……なかなか痛いところをついてくる。 だが、正直に言うわけにもいかない。そんなことをすれば、ますます増長してしまう。 「なぜ見ず知らずのあんたに、そんなこと話す必要がある? 確かにティアはマスプロダクトモデルじゃないが、カスタムの神姫を手に入れる方法はいくつもある」 「だから言ってるだろ! その子は間違いなく、『LOVEマスィーン』にいた神姫なんだよ!」 目の前の男は、とうとう見苦しく喚きはじめた。 「ボクは、あのヒドイ店から、必死でその娘を連れだしてあげたんだ! 仕方がない事情があって、手放さなくちゃいけなくなったけど……だから、アケミちゃんは、ボクの神姫なんだよ! ボクにオーナーの権利があるんだ! ヒドイ店から救い出してあげた恩を返す義務が、その子にはあるんだよっ!!」 ……風俗店から神姫を無断で盗んで、店のスタッフから逃げ切れなくなったことを神姫のせいにして投げ捨てたくせに……いまさらオーナー気取りかよ。 この井山とかいう男にそう言ってやりたかったが、言えるわけがない。 俺に出来るのは、関係ない、とシラを切り通すことだけだった。 「あくまで関係ないって言い張るつもり?」 「言い張るも何も、本当のことを言っているだけだ」 「……分かったよ。確かに、このままじゃ、君にも神姫がいなくなっちゃうわけだもんね。 だったら、その子を買い取ってあげるよ。それとも、新品の武装神姫と交換がいい? どっちでも、君が好きな方で取り引きしようよ」 こいつは結局何も分かっちゃいなかった。 俺は、いまだに身体を硬直させているティアをつまみ上げた。 「ひっ」 ティアが小さな悲鳴を上げる。 ごめんな。 俺は素早くシャツの胸ポケットにティアを納めた。 胸ポケットのあたりから、小さな震えが肌に伝わってくる。 俺は決意を新たにする。 右手で胸ポケットを包むようにして、そして井山を睨みつけた。 「あんたがどんな条件を出そうと、ティアを渡す気はない」 俺ははっきりと言い切った。 こんな奴に……こんな最低な野郎にティアを渡したりはしない。 ティアを性欲のはけ口にすることしか考えていない奴に触れさせたりしない。 絶対に。 俺の言葉を聞いて、井山は怒り心頭と言った様子だった。 「なんだとぅ! こっちが下手に出ていれば、つけあがって!」 「つけあがっているのはそっちの方だろう。人の神姫を突然よこせと言ってきて、しまいには逆ギレだ。常識知らずも甚だしい」 「……そこまで言うなら、仕方ない。君がアケミちゃんを持っていられなくなるようにしてやる!」 なんだと? 「……今のうちだぞ、その神姫をボクに渡さなければ、後悔することになるんだから!」 初対面のこの男が、一体何をしようというのか。 お互いのことなど何も知らないのに、なぜそんなことができるというのか。 「後悔なんて、するはずがない。あんたが何をしようとも、俺はティアを手放さない」 俺は高をくくっていた。 この井山という男に、俺達を害する真似などできるはずがない、と。 しかし、井山は薄気味悪い笑い顔を浮かべて、言った。 「ひゃはははは、知らないよ、後悔したって知らないよ。あとで君がどんな顔をするか楽しみだなぁ! また来るからね!」 井山はそう言い捨てて、ゲーセンの出入り口へときびすを返した。 奴の最後の態度は、異様に自信たっぷりだった。 それを不思議に思わないでもなかったが、不機嫌な気持ちの方が勝っていた。 「二度と来るな」 背を向けてゲーセンを出ていく井山一行の背中に、小さく吐き捨てた。 俺は筐体に残っていた装備を片づけ始める。 井山とのくだらない会話が、思ったよりも長くなった。 急いで席を立たねばならない。 「遠野くん……」 「遠野……」 忙しく手を動かしている俺を呼ぶ声がある。 久住さんと大城だった。 「さっきの会話、聞いちゃった……ごめんなさい」 あれだけ大きな声で話していれば、聞こえるだろう。 「さっきのデブの言ったこと……本当か?」 「何が?」 大城の問いに、俺は短く聞き返した。 自分でも、声が固くなっていることがわかる。 本当は、大城の問いなど、聞かなくてもわかっているのだ。 「ティアが、その……風俗にいたって……」 大城はらしくない、歯切れの悪い口調で言った。 久住さんも、居心地悪そうな表情で俺を見ている。 いや、武装神姫コーナーにいるプレイヤーたちも神姫も皆、俺達を見てひそひそと話をしている。 「関係ない」 俺は曖昧な言葉でそう言いきった。 ティアは確かに、神姫風俗にいたかも知れない。 でも、今は違う。俺の武装神姫だ。 だが、ティアの過去を詳しく話す必要はない。もう、関係のない話であり、俺の胸の奥深くに収めておけばいいだけのことなのだ。 「だけど、ティアの様子は尋常じゃなかった。あのデブのこと知ってたみたいだし、明らかに怖がっていたじゃないか。だったら、あのデブの言うことだって……」 「関係ない」 俺は大城のせりふをぶった切って、言い放った。 俺は二人を見た。戸惑っているような様子だった。 久住さんは、さっきから、何か言いかけては口をつぐむ。 女の子にはデリケートな話の内容ではある。 俺は大城を見据え、言った。 「さっきの奴とは初対面だ。確かにティアは中古の神姫をメンテナンスしたのだけど、俺がオーナーになる前の素性なんて何も関係ない。今のティアは武装神姫だ。それで十分じゃないのか」 自分でしゃべっていても、棒読みだと自覚した。 こんな口調でしゃべってたら、不信がられるのも当然だ。 でも、嘘はつきたくなかった。 だから、過去のことは「関係ない」という言葉で濁している。 それがさらに二人の不信を招いているのだとしても、仕方がない。 武装の片づけは終わった。 大城がまだ何か言い募ろうとする。 俺はそれを手で制した。 「すまない、今日は気分が悪い。先に帰る」 「あ、あぁ……」 「またね……」 ゲーセンではいまだに俺達を隠れ見ながらのひそひそ話が続いている。 こういう空気は嫌いだった。 俺は足早にゲーセンを後にする。 胸ポケットの中で、ティアはまだ震えていた。 このときはまだ、奴のことを侮っていた。 奴の話は噂にはなるかも知れないが、俺が無関係を装ってさえいれば、時間が解決してくれるだろう、と思っていた。 まさかあれほどまでに打ちのめされることになろうとは、夢にも思っていなかったのだ。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/battleconductor/pages/60.html
キャッチコピー ストーリー プロモーションムービーゲーム紹介 ゲームオープニング ゲーム概要育成型アクションゲーム バトルの種類は3種類 現物カードを使う(必須ではない) IC初回プレーはチュートリアル 公式ゲーム概要 武装神姫(ぶそうしんき)ってなに? 基本情報・料金情報 キャッチコピー 愛(め)でろ、そして戦(たたか)え ストーリー 西暦2036年。 第三次世界大戦もなく、宇宙人の襲来もなかった、現代からつながる当たり前の未来。 その世界ではロボットが日常的に存在し、様々な場面で活躍していた。 神姫、それは全高15cmのフィギュアロボである。 ”心と感情”を持ち、最も人々の近くにいる存在。 多様な道具・機構を換装し、オーナーを補佐するパートナー。 その神姫に人々は、思い思いの武器・装甲を装備させ、戦わせた。 名誉のため、強さの証明のため、あるいはただ勝利のために。 オーナーに従い、武装し戦いに赴く彼女らを、人は武装神姫と呼ぶ。 そして、2042年。 高度化した神姫コントロールを悪用した「神姫犯罪」が多発、バトルそのものが危険視され始めた。 それを危惧した「神姫バトル管理委員会」により、マスターと一体化したり相手を倒すことを目的としない、競技的な要素の強いものとして「ジェムバトル」が新たな舞台となった。 プロモーションムービー いずれも公式配信のプロモーションムービーです。 どんなゲームかを大まかに理解することが出来るかと思います。 ゲーム紹介 ゲームオープニング ゲーム概要 育成型アクションゲーム 美少女フィギュアロボ×武装。神姫を愛でて戦う。いちゃいちゃしたり、カスタムしたり、バトルしたり。親密度Lv、武装Lv、マスターLvなどのレベル要素あり。 バトルの種類は3種類 ジェムバトル ジェムと呼ばれる宝石を争奪する。マップは不定期に変更。昇降格のあるリーグジェムバトル、毎週火曜、木曜、土日に開催され、武装レベルが統一される日時限定ジェムバトル、COMと戦うオフライン戦がある。 レイドバトル 多数の敵を蹴散らす。マップは変更無しで固定。オンライン戦、オフライン戦、店内戦が選べる。 AIタッグバトル 一人で遊ぶモード。 現物カードを使う(必須ではない) 模範的に遊ぶなら「神姫カード」という現物カードを複数枚持ち、任意の3枚をカードリーダーに読み込ませて遊ぶ。現物カードを持たずデジタルのまま遊ぶことも可能(デジタルの場合は制限付き)。 「デジタル神姫」を別筐体「カードコネクト」で印刷すると「カード神姫(神姫カード)」になる。「デジタル神姫」は印刷したら消えるので以降は「カード神姫(神姫カード)」としてのみ使用可能になる。「カード神姫(神姫カード)」を「デジタル神姫」に戻すことは不可能。 「神姫カード」は自引きじゃなくても使える。フリマサイト等で購入したカードも問題無く使える。 「レンタル神姫」で遊ぶことも可能。嬉しい純正武装付き(「デジタル神姫」「カード神姫」は純正武装も自力で集める)。 IC初回プレーはチュートリアル e-amusement pass 初回プレーはチュートリアル。 チュートリアル最初に「マスター登録」をするので以下を予め決めておくことを推奨。「マスター名」「お誕生日」「性別」は後で再変更が不可能なので要注意(誕生日と性別はありのままが無難かと)。「職業」のみ後で再変更が可能。 マスター名 12文字まで(ひらがな カタカナ 英大文字 英小文字 数字 記号) お誕生日 1 or … or 12 / 1 or … or 31(2/31など有り得ない組み合わせはおそらく不可) 性別 武装紳士 or 武装淑女 職業 社会人 or 学生 or 武装貴族 ※マスター名のみ、他プレーヤーから見ることができます。(非公開設定可) チュートリアル最後に武装20個を無料で貰える(シーズン2前はデジタル神姫5体も貰えた)。 公式ゲーム概要 【公式】ゲーム概要(トップページ下部) 【公式】楽しみ方 【公式】操作説明書 【公式】神姫紹介 武装神姫(ぶそうしんき)ってなに? 「武装神姫」シリーズはコナミデジタルエンタテインメント(KDE)によるアクションフィギュアとして2006年に登場して以来、著名作家によるキャラクターデザインやロボットの少女(神姫)と、武器・鎧(武装)の組み合わせを自由自在に楽しめる点などがご好評を頂き、ゲームやアニメ化を始めとした様々な展開を行ってきました。 2007~2011年までの間、フィギュアとの連動ゲームとして「武装神姫BATTLE RONDO(通常バトロン)」がWindowsパソコン上で動作するオンラインネットゲームとして稼動。 2010年には「武装神姫BATTLE MASTERS(通称バトマス)」がPSP上で発売(翌年、ブラッシュアップ版として「Mk.2」が発売)し、ベストセラーになりました。 更に2011年、この年終了したバトロンの後を請ける形でソーシャルRPG「武装神姫BATTLE COMMUNICATION」がケータイSNSサイト「Mobage」にて配信され、間もなく終了。 そして、2012年秋にTBS/MBS系にてテレビアニメが放映されて以後、2020年初頭に本作「BATTLE CONDUCTOR」が発表されるまでの約7年強もの間、「武装神姫」の公式展開は事実上停止していました……。 なお本作の他、ソーシャルゲームとして「武装神姫R」のリリースが発表されており、今後の展開から目が離せません。 いろいろな意味で。 基本情報・料金情報 タイトル 武装神姫 アーマードプリンセス バトルコンダクター ジャンル 育成型アクションゲーム 機種 ビデオゲーム プレイ人数 1〜4人 メーカー KONAMI 稼働日 2020年12月24日 著作権表記 ©Konami Digital Entertainment©Konami Amusement 稼働施設 全国アミューズメント施設 アミューズメントICカード 対応 PASELI 対応 イヤホンジャック3.5mm 対応 キーコンフィグ 対応 ゲストスタート 対応 カードコネクト 対応 プレイ1回(購入自由) 100円 残時間追加150秒(購入自由) 100円 デジタル神姫1体(購入自由) 100円 デジタル神姫5体+親密度アップアイテム5個(購入自由) 500円 カード化1枚(購入自由) 100円
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2232.html
ウサギのナミダ・番外編 少女と神姫と初恋と その3 ◆ 翌朝。 昇降口で上履きに履き替えようとしたところで、呼び止められた。 「おはよう、八重樫!」 「あ……おはよう、安藤くん」 今日は普通に笑えているだろうか。 そんなことばかり気になってしまう美緒である。 昨日の今日で、安藤とはずいぶん距離が縮まった、ような気がする。 ほら、今も彼の顔がすぐ間近に…… 「……って、うわぁ!」 安藤の端正な顔がすぐ隣にあって、思わず飛び退いてしまった。 だが、安藤はいたって普段通りの様子で、不思議そうにこちらを見ている。 「どうかした?」 「え、えと……なんでも、ない……」 「そっか。昨日はありがとな。助かったよ」 「そんな……大したことしてないし」 「それでさ、よかったら今日の昼休みも付き合ってくれないか? 聞きたいことが山ほどあってさ」 「うん……」 当然、美緒に断ることができようはずもない。断る理由もない。 美緒が小さく頷くと、安藤はさわやかな笑みを浮かべた。 「じゃあ、昨日と同じ、屋上で。よろしくな!」 「うん」 安藤は颯爽と朝の廊下を歩いていく。 その背中が、なんだか美緒にはまぶしく感じられた。 美緒はしばらくその場に立ち尽くしてしまっていた。 頭がぼーっとしている。 これは何という夢の続きなのだろうか……。 「みーお」 そんな美緒を一瞬にして現実に引き戻したのは、背後から聞こえてきたハスキーな呼び声だった。 声に聞き覚えはありすぎる。 美緒はものすごい勢いで振り向く。 はたして、そこには、彼女の親友である三人、有紀、涼子、梨々香の姿があった。 三人とも、なんとも言えない笑みを口元に浮かべつつ、目を細めながら、なまあたたかーい視線で美緒を見つめていた。 「あ、あ、あなたたちっ……!?」 「ほほーう、昨日一日でずいぶん進展したようですなぁ、涼子さん」 「そうですねぇ。ゲーセンで待ちぼうけしていたかいもあった、というものでしょうか、梨々香さん?」 「もう、いやですわねぇ、お二人とも。それを口にすることこそ野暮と言うものですわよ?」 美緒は背中にいやな汗が流れていくのを感じた。 三人は、昨日美緒がゲーセンに顔を出さなかったことを怒っているのだろうか? いや、そうではない。 これはもっとたちの悪い何か。 そう、三人は面白がっているのだ。 だから、美緒は弁解する言葉さえ失ってしまう。 美緒がムキになって言葉を重ねるほど、泥沼に陥ってしまうだろう。 この親友たちは、たちが悪いことでは折り紙付きだ。 「なに落ち込んでるんだよ、美緒。あたしたちはアンタの味方だよ?」 「そうそう。あなたを応援してるわ。リーダーの美緒には、幸せになって欲しいから」 「大丈夫。わたしたちに任せて。安藤くんとうまくいくように、三人で全力でフォローするからね!」 激励が猛烈な不安と化して、重く肩にのしかかってくるのはなぜだろう。 美緒は重たいため息を一つついた。 そして、親友たちに教室まで連行された。 有紀たち三人が、朝から美緒を囲んだのは、何もからかうためだけではない。 学年女子のアイドル的存在の安藤には、過激派的な自称恋人候補が、少数ではあるが存在する。 朝の昇降口での、美緒と安藤の親密さを見れば、過激派が美緒を女子トイレあたりに拉致する危険性は確実にある。 そこで三人は先回りして、高校の最寄り駅から、登校中の美緒を尾行していたのだ。 四人揃っていれば、過激派たちもおいそれとは手が出せないはずだ。 面白がってからかってはいても、やはり美緒は彼女たちのリーダーであり、大事な親友であった。 ◆ 安藤を狙う女子連にとって、八重樫美緒はもはや最重要人物になっていた。 彼女たちは早朝より、情報収集と共有を行っていた。 そして、昨日の放課後に安藤と美緒の間になんらかの事象があり、二人の仲が深まったと結論づけられた。 今朝の安藤と美緒のランデブーとその会話の内容についても、朝のホームルームまでには情報共有が済まされていた。 一部の過激派が、八重樫拉致に動きかけたが、八重樫美緒には私設の護衛が張り付いており、強襲作戦は失敗に終わっている。 その結果を受け、女子連は休戦協定を無期延長。共通の仮想敵である八重樫美緒の動向を探り、可能であればこれ以上の侵攻阻止のために、団結することとなった。 情報によれば、ターゲット・八重樫は、今日もまた安藤と、屋上で昼食を共にするようだ。 昨日は会話が直接聞き取れなかったことが情報不足を招き、その後の対策が行えずじまいだった。 だが、今日の女子連の動きは迅速かつ的確だった。 昨日と同じ轍は踏まない。 二人が落ち合う屋上のベンチを同じ場所に想定、盗聴器を仕掛ける。 そして、安藤と美緒がそのベンチに座るように仕向けるため、手を打った。 ある者は友達と誘い合って屋上で昼食を取る。 ある者は部活の先輩に依頼して、カップルで屋上での昼食をするように仕向ける。 ある者は賄賂(パックの飲み物人数分)をクラスの男子生徒のグループに渡し、屋上での昼ご飯を依頼した。 いつの間にか設置されていた美緒のクラスの作戦本部には、屋上の見取り図が用意され、次々と空きのベンチが塗りつぶされてゆく。 そして午前の授業終了前に、作戦の準備が整った。 もちろん、安藤と美緒の二人は、そんなことを知る由もない。 ◆ 「おーい、八重樫、こっち!」 昨日と同じように五分後に教室を出て、昨日と同じように安藤がベンチから手を振っていて、昨日と同じようにジュースのパックを彼からもらった。 今座っているベンチも、昨日と同じだ。 今日も快晴。 屋上で昼食を取るには気持ちのいい日和である。 安藤と一緒にいることにも慣れてきたのか、昨日よりは幾分緊張しないですんでいる美緒だった。 今日も安藤は焼きそばパンをかじっている。 美緒はいつもどおり手作り弁当だ。 談笑しながらの昼食は、昨日よりも楽しく感じられた。 こんな昼食が毎日続けばいいのに、と思うのは贅沢だろうか。 いつも昼時を共にしていた三人の親友に、美緒は心の中で手を合わせて謝った。 ◆ その三人は、やはり昨日と同じ階段ホールの陰から、美緒たち二人を見守っている。 もちろん、周りには、クラスメイトの女子たちが陣取っていた。 有紀は小型のワイヤレスヘッドセットに耳を傾ける。 携帯端末の電波の受信域をあわせ、盗聴器からの音声を拾い、聞いているのだ。 感度は良好。 その場にいる誰もが、二人の会話を盗み聞いていた。 涼子が小さく呟く。 「スパイ大作戦も真っ青ね」 「なんだそりゃ?」 「古い海外ドラマ」 有紀は、涼子の意味不明の呟きに首を傾げたが、すぐに忘れてしまう。 今は二人の動向の方が重要だ。 有紀はヘッドセットに注意を傾けながらも、視線をベンチの方へと送った。 ◆ 「……それで、今日の相談は?」 美緒が水を向けると、パックを置いた安藤が、待ってましたとばかりに、傍らに置いた包みを取り上げた。 どこかの書店の紙袋のようである。 「昨日の帰りに、本屋に寄って、神姫関係の雑誌を買ってきたんだ」 「へえ」 「それで、書いてあることで分からないことが多くてさ……」 えてして、専門の雑誌というものは、初心者の読者に優しくない。 情報の鮮度を優先し、専門用語や知識を解説することはないからだ。 さもありなん、と美緒は頷いた。 「それで、帰ってから姉貴に思い切って雑誌見せてみたんだ」 安藤が取り出した雑誌は二冊。 今表紙が見えているのは、週刊バトルロンド・ダイジェストの最新号である。 「お姉さん?」 「そう。そしたら、この雑誌のバックナンバー押しつけられてさ。 『読め、そして泣け!』とか言って、わけわかんねー。 雑誌記事で泣くとか、なんだそりゃって感じだよな」 そして安藤は、そのバックナンバーを最新号の下から取り出す。 その表紙を見て。 美緒は今度こそイチゴミルクを吹き出した。 ◆ 「ああ、もう美緒ちゃんったら……ジュースを吹いたりしたら、台無しじゃない。ここまで上げてきた好感度が急降下よ、もう」 一部始終を見ていた梨々香の感想である。 梨々香たちがいる階段ホール裏からでは、くだんの雑誌の表紙は見えない。 「いったい、何の表紙だったのかしら……」 涼子が呟く視界の中で、美緒が猛烈にむせていた。 すると、隣にいる安藤が、美緒の背中に手を当てた。 周りにいる女子連中の、息を飲む気配。 有紀は小さくガッツポーズした。 ◆ 「ごほっ、ごほっ、えほっ」 「大丈夫か、八重樫」 さすがにみっともなくて、美緒は泣きたい気分だった。 でも、背中をさすってくれる安藤の手は優しい。 しばらくして、呼吸も元に戻ってくる。 もう大丈夫、と言って、安藤からバトルロンド・ダイジェストのバックナンバーを受け取った。 表紙に写る二人の神姫。 美緒はそのうちの一人を撫でるように、そっと指で触れた。 感慨は深い。 表紙の写真は、『ハイスピードバニー』ティアと『アーンヴァル・クイーン』雪華が抱き合っている様子だ。 「八重樫は、この神姫たちを知っているのか?」 「うん……よく知ってる」 この場面に、美緒は立ち会っていた。 神姫マスターとして、決して忘れられない大切な出来事だった。 「この二人は、わたしとパティが一番尊敬する神姫なの。 この時の出来事は、よく知ってるわ。この前のことも、その後のことも……」 「八重樫……泣いてる?」 「え……?」 いつの間にか、美緒の瞳から頬に涙の筋が通っていた。 「や、やだ……ごめんね……泣くつもりなんて……」 美緒はあわてて目をこする。 無意識のうちに涙がこぼれた。 美緒の中には、あの事件に対し、関わることができたことへの誇らしさと、自責の念がある。 表紙のティアを見て、そんな複雑な感情が溢れてきたのだった。 「その泣いてる方の神姫さ……姉貴が大ファンらしいんだよ」 「え、そうなの?」 「やっぱ、ウサギだからなのかな……ああ見えてウサギ好きでさー」 「へえ……」 「もしよかったら、この神姫のこと、教えてくれないか? 姉貴にも教えてやりたいし……オレも聞きたい」 安藤に見つめられて、美緒は胸に手を当てる。 大丈夫、感情の揺れはもう収まっている。 新たに神姫のマスターになった安藤には、是非聞いてもらいたい。 「うん。話すね。この神姫……ティアのこと、そのマスターのこと。 二人は……神姫とマスターの関係になるために、すべてを賭けて戦って……運命さえ覆したの」 「……大げさだなあ」 肩をすくめて笑った安藤に、美緒はただ微笑みを返した。 ◆ 美緒は語り上手だった。 彼女の記憶は再構成され、一つの物語として語られる。 その物語の内容については、拙作「ウサギのナミダ」を参照されたい。 彼女の口調はよどみなく、その柔らかな声に誘われ、物語世界に引き込まれていく。 安藤も聞き上手だった。 相づちを打ちながら、彼女の語りを止めないようなタイミングで質問したりする。 それは聴衆の多数が疑問に思ったことで、説明が補足されて、さらに物語は鮮明になるのだった。 いつしか、盗聴器に傾注していた女子連のほとんどが、美緒の語りに引き込まれていた。 「その男の出現に、ティアは動揺したと思う。 ティアの過去を知る……いいえ、ティアにずっとひどいことをし続けた人物だったから。 きっと、怖くて怖くて、仕方がなかったはず。 だけど、彼女は一人じゃなかった。 ティアのマスターは、その男に敢然と立ち向かったわ。 『ティアは決して渡さない』って言い切った。 ティアの過去をばらされても……ティアは自分の神姫だって主張し続けた。 彼にとってはもう、ティアはとても大切な存在になっていたの。 だけど……その後、とんでもないことが起こった。 その醜い男のせいで、二人は絶望の淵に追い込まれることになったのよ……」 安藤がごくり、とのどを鳴らす。 と、そのとき。 全校にチャイムの音が響きわたった。 午後の授業五分前の予鈴だ。 美緒は小さく吐息をつく。 「あ……途中だけど、そろそろ教室に戻らなくちゃ」 「そうだな……」 安藤と美緒はベンチから立ち上がった。 「なあ、八重樫」 「はい?」 「……今の話の続き、また明日にでも聞かせてくれないか」 「え?」 「だって、まだこの雪華とかいう神姫が出てきてないじゃんか。続きも気になるし」 「うん……いいよ」 「それじゃあ、また明日昼はここで!」 「うん」 美緒は頷きながら、ようやく心からの笑みを安藤に向けることができた。 ◆ 階段ホール裏では、女子連中が全員ずっこけていた。 「な、なんちゅーとこで話切るのよ、あの子!」 「美緒……恐ろしい子!」 あのゲーセンに通い詰めてでもいない限り、知る人ぞ知る話だ。 女子連の誰も、ティアの話を知らない。 続きがとても気になる。 しかし、その話の続きを聞くには、明日、また安藤と昼食を共にすることを容認しなくてはならなかった。 その場にいた、美緒の親友たちに話の続きを尋ねたが、三人ともニヨニヨと薄気味悪い微笑を浮かべるばかりだった。 美緒本人に話の続きを語らせるという手もあったが、しかしそれでは、安藤との会話を盗聴したことがばれてしまう。 彼女たちに選択肢はなかった。 美緒と安藤の逢い引きを監視するという名目で、美緒の語りを聞くほかには。 こうして、美緒がティアの物語を話し続ける限り、女子連は美緒に手出しできなくなったのだった。 ◆ 高い空に、終業の鐘が鳴り響く。 「おーい、やえが」 「あーおわったおわった美緒今日はゲーセン行くか?いくよなよーしそれじゃあ今日は存分に対戦だレッツゴー!」 し、と安藤が言い終えるよりも早く、有紀は美緒を抱えて、風のように教室を去った。 その後を、自分と美緒の分の荷物を抱えた梨々香が、これまた風のように教室を出て行く。 声をかけようとしていた安藤は、その場で硬直してしまっていた。 「残念だったわね、安藤」 固まっている彼に声をかけたのは、旧知の女子・蓼科涼子である。 二人が小学校からの知り合いで、お互いに気がないのは周知の事実だ。 だから、うるさい女子連も、涼子が話しかけるときは、全く警戒していない。 「蓼科……なんなんだ、園田のヤツ」 「あなたが美緒を独り占めしてるから、嫉妬して拉致したのよ」 安藤は思わず目を見開いていた。あの蓼科涼子が冗談を言っている。 「美緒に用があるなら、あとでT駅前のゲームセンター『ノーザンクロス』に来て」 「え?」 「あなたの神姫を連れてきなさい。武装も持ってね。美緒もわたしたちもそこにいるから」 「……なんで?」 煮え切らない安藤に、涼子は眉根を寄せた。 「安藤はバトルロンドがしたいんじゃないの? そうじゃなきゃフルセットの神姫なんか買わないでしょう」 フルセットの武装神姫とライトアーマーでは、マニュアルの大きさ、厚さが違う。 昨日の昼休み、安藤が持ってきたマニュアルは、明らかにフルセットのものだった。 「まあ……そう、だけどさ……」 「だったら、つべこべ言わずに来るといいわ。バトロンのことも神姫のことも教えて上げる。……主に美緒が」 最後の言葉だけ安藤に聞こえるように言って、涼子は踵を返した。 安藤は首を傾げつつ、彼女の背を見送った。 ◆ 「ちょ、ちょっと有紀……! いったい何なのよ!?」 美緒は自分を小脇に抱える親友に抗議する。 有紀は校門を出たところでようやく美緒を降ろした。 下校する生徒たちの視線が痛い。 「おー、わりいわりい」 有紀は悪びれる様子もない。 後ろから、梨々香がとてとてと付いてきた。 「はい、美緒ちゃん」 渡された荷物を仏頂面で受け取る。 いったいなんなのか。 親友二人の顔を睨むが、二人ともなま暖かいまなざしでニヨニヨと微笑するばかりで、何を考えているのかさっぱり分からない。 「まあ、そう睨むなよ。悪いようにはならないからさ」 「そうそう。とりあえず、ゲーセンいこ? そこで待ってれば分かるから」 親友たちの言葉に、不安が増大するのはなぜだろう。 ここに涼子がいないのも気にかかる。 まさか安藤くんに何かあることないこと吹き込んでいるのではあるまいか。 しかし、結局美緒は為すすべもなく、有紀と梨々香に連行された。 ゲームセンターに着くまでの道のり、女同士の友情について、ひたすら考えていた。 ◆ T駅前のゲームセンター『ノーザンクロス』は、安藤も知っている店だ。 何度か友人たちと遊びに行ったこともある。 バトルロンドが盛んで、美緒たち四人が入り浸っていることも知っていた。 だが、一人で入るのは初めてだった。 しかも神姫連れである。 少しばかり戸惑って、足を進めるのに躊躇するのも致し方のないところであろう。 安藤は、アルトレーネのパッケージを入れたスポーツバッグを手に、ゲーセンの前で立ち尽くしている。 だが、そうしていても意味はない。 意を決し、安藤はゲームセンターの自動ドアをくぐった。 扉が開き、独特の喧噪に包まれる。 入り口に配置されたプライズマシンやプリクラ機の筐体の陰から、大型ディスプレイの映像が見える。 武装神姫同士のバトル。 彼が目指すコーナーは一番奥にある。 安藤は緊張した面もちのまま、歩を進めていく。 バトルロンドのコーナーは予想以上に盛況だった。 対戦台はすべて埋まっている。 神姫連れで気後れしていた安藤であったが、そんな必要はどこにもないことがわかる。 このコーナーにいる客は皆、堂々と神姫を連れているからだ。 安藤はあたりをきょろきょろと見回した。 探す人物とその仲間たちはすぐに見つかった。 八重樫美緒と仲間たち。 彼女たちはバトルロンドコーナーの壁際に陣取って、何事か話している。 四人の視線は、すでにこちらを向いていた。 安藤は四人の方へと歩いていく。 「言われたとおり、来たぞ」 少し棘のある口調も仕方のないところだ。 充分な説明もされずに呼び出された上に、美緒以外の三人はなにやら不気味な微笑を浮かべている。 何か企んでいることは確実だ。 「ノーザンにようこそ」 真顔に戻って涼子が言う。 このゲームセンター『ノーザンクロス』は、客からノーザンと略される。 安藤は涼子と視線を合わせた。 「いったい何なんだ。確かにバトルロンドやるつもりではいたけど、何を企んで……」 「ばかね。あのまま学校であなたと美緒が話し続けてたら、それこそ学校中の噂になってるわよ。だからゲーセンに来てもらったの。ここでなら、クラスメイトの横やりも入らないでしょう」 「う……」 確かに、涼子の言うことは一理ある。 バトルロンドをプレイしにゲーセンに来ていることにすれば、美緒たちと話していても何の問題もないし、よけいな横やりも入らない。 「おまえらもバトルロンドをやるのか」 「ったりめーよ! あたしたちはここじゃ『LAシスターズ』で通ってるんだぜ?」 有紀は安藤に胸を張って見せた。 確かに、美緒たち四人は最近、『LAシスターズ』あるいは『シスターズ』と呼ばれている。 LAはライトアーマーの略だ。 ライトアーマー神姫を操る四人組の少女たちは、もともと目立つ存在だった。 最近は陸戦トリオと一緒にいることでさらに注目を集めているし、めきめきと実力を上げてきていて、一目置かれるようになってきている。 それで、いつの間にか誰かが、LAシスターズと呼ぶようになっていたのだった。 「そうか、それなら教えてくれよ、バトルロンド」 「いいとも。マンツーマンで教えてやるよ。……講師は美緒で」 「え……ええぇっ!?」 有紀の言葉に泡を食ったのは、美緒本人だった。 「あ、あの、な、なんでわたし!?」 「えー? だって、あたしたちん中じゃ、パティが一番強いしー」 「わたしの涼姫はオリジナル装備だから邪道だしー」 「ここはやっぱり、リーダーの美緒ちゃんの出番でしょ!」 もっともらしい解答を並べた有紀、涼子、梨々香は、一様になまあたたかーい視線で美緒を見ていた。 楽しんでる……絶対楽しんでる。 もはや女同士の友情を疑わざるを得ない美緒だった。 それでも、 「それじゃ……引き続きよろしくな、八重樫」 と安藤くんが笑顔で言ってくれたから。 美緒は頷いてしまうのだった。 ◆ それが火曜日の話で、それから毎日、安藤はノーザンクロスにやってきて、バトルロンドをプレイした。 安藤は最初から目立っていた。 彼の神姫・オルフェが、今話題のアルトレーネ・タイプだったこともある。 彼につきっきりでレクチャーしているのは、LAシスターズの面々だ。 実はシスターズは、このゲーセンでは密かに人気を集めている。美少女ぞろいなのだから、それも当然というものだろう。 ノーザンクロスの常連たちが、そんな安藤を放っておくはずもなかった。 新しいプレイヤーと知って、好意的に話しかけてくる常連もいた。 目立っている彼の鼻っ柱を折ってやろうと、強気に挑んでくるプレイヤーもいた。 しかし、いずれのプレイヤーたちとも、対戦後には仲良くなっている。 安藤は人がよく、謙虚な姿勢で、むしろ彼の方から教えて欲しいと頼んでくる。 彼の謙虚さと向上心溢れる姿勢に、常連たちは皆好感を持ち、すぐに打ち解けた。 こうして、週末前の金曜日には、安藤はすっかりノーザンクロスの常連たちの仲間に入っていた。 彼とシスターズを中心に、和やかな笑い声が聞こえてくる。 しかし、それを快く思わない者もいた。 「チッ……安藤のヤツ……ゲーセンでも調子に乗りやがって……」 そう呟いた少年の名は、蜂須英夫。 ノーザンクロスにおける『三強』の一人で、『玉虫色のエスパディア』の異名を取る神姫マスターである。 続く> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/246.html
特別設定 この設定を作品中に影響させていただけるなら大歓迎の所存でして、 「しょうがないので使ってやるか」と思っていただけるなら幸いです (レスティクラム系は本作以外では無き物とお考えいただいたほうが…) -神姫の父- 『鳳条院グループ』 情報化社会の波に乗り急成長を遂げた技術会社 神姫関連だけではなく、分野的には幅広く扱っている 都内某所に四十階建ての本社ビルを設けている 武装神姫開発においてもKONAMIと技術協力を結ぶなど メーカーに対して多少のコネクションがある 初代総帥は鳳条院 兼房、本社社長は鳳条院 伊織である 『鳳凰カップ』 2035年から始まった鳳条院グループ主催の武装神姫バトルカップ 春と秋の年二回開催される 各企業とも協定されており企業ごとのブースも設けられる 上位優勝者に送られる賞金と豪華副賞はさることながらメディアからの注目を受けることからランカーとして名声を受けることに憧れる者にとっては登龍門となっている 詳しくは鳳凰カップ編、プロローグを参照の事 『レスティクラム』 擬人体感戦闘プログラム、通称『レスティクラム』 人がネット世界とつながりを持てるまでに技術が発展した2024年ごろからの根強い人気を誇る、当時のネットゲームの新境地 ネットゲームなのだが、知識や経験だけでなく、実際の体力や戦術論を駆使しながら戦う競技で世界大会やオリンピック競技としても認定された世界初の二次元方公式スポーツである 現在は神姫とマスターが操るナノロット同士のタッグマッチN&S(ナノロット・神姫共同戦)なども広く行われ。ネット社会の貢献に大きな役割を果たしている しかし、ネット犯罪にも多く使われ社会問題になっていることから治安維持のため『レスティクラム特別治安部隊』も結成されている 武装神姫開発により現在の人気は以前に比べ少々下降気味だとか 『ナノロット』 レスティクラム競技で使われる擬人戦闘プログラムユニット、通称『ナノロット』 レスティクラムの発達と技術進歩と平行して開発されてきた 専用コンソールに座りアイマスク型のプレイビュアーから意識レベルでの操作を可能としたいわゆるネット世界の『もうひとりの自分』になれる『SAシステム』を導入しているなど近現代の技術の結晶ともいえる高性能プログラムである 基本的にカスタマイズは自由なのだが、2024年の初回公式サービス開始当初からガンダムファンのユーザーが多く、ナノロットも自然とガンダム関係の機体が増えている(暗黙の了解でガンダムとは言わず、〈Gタイプ〉と呼称されることが多い) 一流ハッカーでも国家機密の方がいくらかマシといわせるほどのデータ保管制度があるため、もしナノロットのデータ改竄などしようものなら違法行為で厳重な取調べと処罰の対象となる レスティクラムは公式な手続きと違法行為なきカスタマイズによって成り立っている 『八相』 かつてレスティクラム世界大会でアキース・ミッドナイトこと、死の恐怖-スケイス-を筆頭に、他のものを寄せ付けない力を示した上位ベスト8の異名 それぞれの戦闘パターンが数十年前の某RPGゲームのボスキャラに似ていることが由来となっている 『レスティクラム特別治安部隊』 公平なネット社会の手本となるべく組織された国家特別公式部隊 ネット社会の軍事力的存在 主に治安維持やイベント会場の警備、要人警護などにあたっている 最近では各所で相次ぐ武装神姫の犯罪問題に対処すべく違法神姫取締り部隊との連係も実施されている メインページへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1159.html
「相手の武装が解らないからここはアンジェラスで」 「ありがとうございます!ご主人様!!」 手の平でおおいに喜ぶアンジェラス。 まぁ喜んでくれるのは嬉しい。 だけど他の三人は少し残念そうな感じだ。 『後で他の奴等と戦うから、その時にな』と言うとパア~と明るい表情になる神姫達。 さて、そろそろ対戦するか。 装備…よし! 指示…よし! ステータス…よし! アンジェラスを筐体の中に入れ、残りの神姫達は俺の両肩で座ってアンジェラスの観戦をする。 「アンジェラス、頑張れよ!」 「はい!ご主人様!!」 「負けるんじゃないよ!一番最初の闘いなんだからな!!」 「お姉さま~頑張って~!」 「アンジェラスさんー!頑張ってください!!」 「うん!」 アンジェラスは元気な笑顔を俺に見せ、筐体の中へと入って行く。 そんな時だった。 気がつくと俺は両手で握り拳をつくっていたのだ。 いつになく俺の心は興奮している。 何故だろう? 多分、誰かを応援している事によって熱くなっているのかもしれない。 それとアンジェラスに勝ってほしい、という気持ちがある…かもなぁ。 俺は筐体の方に目を移すと中には空中を飛んでいる二人の武装神姫達が居た。 READY? 女性の電気信号の声が鳴り響き、一気に筐体内の中に緊張が走る。 勿論、外に居る俺達もだ。 FIGHT! 闘いの幕があがった。 お互いの距離150メートルからスタートして、まずは二人とも距離を縮め接近する。 アンジェラスは清龍刀を出し右手に持ち、敵のストラーフに斬りかかった。 「せいっ!」 ガキン! 振り下ろされた清龍刀はDTリアユニットplusGA4アームの右のチーグルで受け止められてしまった。 敵のストラーフはニヤリと笑い、もう片方のチーグルでアンジェラスの右わき腹を攻撃しようとする。 「ハァー!」 「ッ!?」 とっさにアンジェラスは清龍刀を自分から見て右側面に向けた。 自分のわき腹が狙われた事を察知し、清龍刀を盾にする事によりチーグルの攻撃を防ごうとしたのだ…だが。 グワシャンー! 清龍刀とチーグルがぶつかった瞬間、衝撃でアンジェラスは地上に向けて吹っ飛ばされてしまったのだ。 そのまま吹っ飛ばされたアンジェラスは、なんとか体勢を整えようとしたいたが、敵のストラーフはその時間帯も許さない。 何故ならば、シュラム・RvGNDランチャーを構えアンジェラスに狙いを定めていたからだ。 「オチローーーー!!!!」 ストラーフがシュラム・RvGNDランチャーを撃ち、弾がアンジェラスに目掛けて飛んでくる。 俺はこのままヤバイと思い、大声で叫んだ。 「アンジェラス!ポラーシュテルン・FATEシールドを使えー!!」 「あ、はい!」 装備していたリアウイングAAU7の翼に装着させていたポラーシュテルン・FATEシールドを左手に持ち、スキルのステディプロテクションを発動させる。 ボカーン! ステディプロテクションの発動と同時に弾が当たり、アンジェラスの周りは煙だらけになる。 大丈夫なのだろうか? 煙で何も解らない。 もしかしてステディプロテクションが間に合わなかった!? いや、それはないはずだ。 あの瞬間、ステディプロテクションの壁に弾が当たる所をこの目でしっかり見たのだから。 「大丈夫かー!?」 ヒューンィーン 俺が叫ぶと、なにやら静かに動く機械音が耳に入った。 まさか、この音は!? 「イッケーーーー!!!!」 アンジェラスの姿は見なくとも声だけで認識できた。 紛れも無くアンジェラスの声だ。 バシューーーーン!!!! 煙の中から一直線の青い光線が飛び出し、ストラーフ目掛けて飛んでいく。 「えぇー、そんなのアリ~!?」 ズバーーーーン!!!! 「アグッ!?」 ストラーフは直撃を回避したものの、DTリアユニットplusGA4アームの左翼部分に命中し、殆どもってイカレタ状態。 これで左翼が無いと同じ、相当なバランス体勢が悪くなちまったに違いない。 それにしても、やっぱりあの攻撃はアンジェラスだったかぁ。 使った武器はGEモデルLC3レーザーライフル。 準備250硬直300、とても時間を掛けないと撃てない武器だ。 本来ならアンジェラスが撃つ暇が無かったと思うが、煙の中に居たために敵のストラーフが攻撃出来なかった。 それにシュラム・RvGNDランチャーを撃った反動で時間が空いてしまった。 その空いた時間を使ってアンジェラスがGEモデルLC3レーザーライフルを使用したのだろう。 「今だ、アンジェラス!」 俺は右手の拳を左手の手の平に打ちつけ、パンッ、と音を鳴らせる。 アンジェラスは煙の中から勢い良く飛び出し、M4ライトセイバーを取り出す。 ビシューン、という音とともに柄から発する棒状の光の刃が飛び出す。 「決めます!」 アンジェラスが叫び、敵のストラーフに斬りかかった。 ズバズバズバズバズバズバズバー! M4ライトセイバーのスキル、ジャスティスラッシュが発動し敵のストラーフを斬り刻む。 丁度、10HITした時に敵のストラーフのHPが無くなり力尽き地上に転落していき、ゲーム終了。 俺の方の筐体に付いてるスピーカーから『WIN』と女性の電気信号の声が鳴り響く。 多分、相手の方では『LOSE』と言われてるだろう。 そりゃそうだ。 勝ちがあれば負けもある。 二つに一つ。 「ご主人様!勝ちましたー!!」 筐体の中で俺の事を見ながら喜ぶアンジェラス。 俺も自分の神姫が勝った事が嬉しくて微笑む。 両肩にいるクリナーレ達も喜びはしゃいでいる。 そうか…。 これが武装神姫の楽しみ方か。 確かにこれは楽しい。 おっと、アンジェラスを筐体から出さないといけないなぁ。 俺は筐体の神姫の出入り口の中に手を突っ込みアンジェラスを待つ。 数秒後、アンジェラスは満面の笑みをこぼしながら俺の右手の手の平に乗った。 「ご主人様、初戦は勝利です!」 「そうだな。よくやった、アンジェラス。これはご褒美だ」 「…あっ」 俺の右手の手の平に乗ってるアンジェラスの頭を左手の人差し指の腹の部分で撫でる。 本来なら手の平全体で撫でてあげたい所だが、彼女達の身体は15cmの大きさだ。 頭の大きさも小さいため撫でるのは難しい。 だから人差し指の腹の部分で優しく撫でる。 「気持ち良いです。ご主人様…」 頬を桃色に染めながら照れるアンジェラス。 可愛い奴だ。 「あー!いいなぁ~アンジェラスの奴~。よし!!次の試合はボクが出る!!!」 「ダーリンのご褒美を貰うために頑張らないといけませんわね」 「あの…私のバトルは最後でもいいので…もし勝ったら、お兄ちゃんのご褒美くれますか?」 両肩で何やらアンジェラスに嫉妬しているように見える三人の神姫達。 そんなにご褒美が欲しいのか? まぁ今日はトーブン、ここにいるつもりだから一応全員バトルさせてやるか。 俺はアンジェラスの頭を撫でるの止めて離すと。 「…え?もう、お終いですか………」 とても名残惜しそうに切ない顔で俺の事を上目づかいで見てくる。 うっ!? 可愛い過ぎてもっと撫でてあげたくなるシチュエーションだ。 だがもし、ここでまた再びアンジェラスの頭を撫でると両肩に乗っている三人に何されるか解らないので撫で撫ではお預け。 アンジェラスを右手から右肩に移動させ、俺は次の筐体に向かった。 闘いはまだ始まったばかりだ。 「さぁ行くぞ!俺達のバトルロンドの幕開けだー!!」 こうして俺達のバトルロンドがスタートした。 そしてこの日からアンジェラスの二つ名が出来た。 名は『全てを束ねる者』…。