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「古泉一樹は私のもの。誰にも渡さない」 これは長門。 「そ、それはこっちのセリフです!古泉君は私のです!」 これは朝比奈さん。 「ちょっと待て。古泉は俺のものだぞ」 これは俺。 今日の部室にはハルヒと古泉の姿は無く、俺と長門と朝比奈さんだけである。 ハルヒは担任からの呼び出し、古泉はそれが原因で発生した神人狩り。 なぜ俺たち3人が喧嘩してるのかというと、朝比奈さんのある一言が発端だった。 「古泉君がいないと寂しいです~、死んでしまいそうです~」 「ちょっと待ってくださいよ朝比奈さん。ひょっとして古泉の野郎のことが好きなんですか?」 「そうですけどぉ、、何か問題があるんですか?」 「この時間では恋人とか作るの禁止じゃなかったんですか!?」 「そうですけどぉ、、我慢できなくて・・・古泉君がいないと私・・・」 「なんで古泉の野郎なんですか!!」 朝比奈さんが半泣き状態になりながら 「あの・・キョン君ごめんなさい・・・私・・・キョン君に気持ちには応えられない」 「早く古泉のことは諦めてくださいよ。未来人はこの時代では恋愛禁止ですよ」 「ごめんなさい・・・私、キョン君にこと好きじゃないの。」 「はぁ?何を言ってるんですか?」 「え?何って・・・?キョン君わたしのこと好きなんじゃ・・・」 「違いますよ。俺も古泉のことが好きなんですよ」 その言葉を聞いた朝比奈さんは急に挙動不審になった。 「きょ、きょ、きょ、きょ、キョン君・・・・・・ウホッ?」 昨日の友は今日の敵。 まさに今の俺にとって朝比奈さんは敵である。 たとえ上級生だとしても敬語で話す必要は無い。 「そうだけど、何か問題でもあるのか?」 急に乱暴な口調になった俺に対して朝比奈みくるは更に挙動不審になった。 「あの、、キョン君、、そういうのは止めといた方がいいと思います。 やっぱり、、その、、ウホッ!はまずいと思います・・世間体とか・・・」 朝比奈ミクルは慎重に言葉を選びながらそう言った。 「ならお前はどうなんだ?未来人なのに、この時間で恋愛をしてもいいのか?」 「ダメですが、、でも、、もう我慢できないのです!」 「なんだと!自分のときだけ都合いいこと言って!」 そして俺と朝比奈ミクルは取っ組み合いの喧嘩になった。 もちろん俺が優勢である。 どうせ未来人だし、やってしまっても法は適応されないし、何かあったら長門に頼めばいい。 そして俺は調理場においてあった包丁を手に取り、朝比奈ミクルを刺そうとしたその時 誰かの手が俺を止めた。 その手の主は長門だった。 そして、「私も古泉一樹のことが好き」と言った。 「争いはしない方がいい。もしSOS団の1人でも欠けたら世界が崩壊する。 そうなれば古泉一樹にも会えなくなる」 さすが長門だぜ・・・ 俺はちょっと熱くなりすぎてたな。 朝比奈さんはオシッコを漏らしながらヒイヒイ泣いていた。 「もう大丈夫だぞ朝比奈ミクル。もう変なことはしない」 「ウゥ・・本当ですか・・・?」 「とりあえずトイレに行ってパンツを脱いでこい。ここで脱がれると吐き気がする。 女の着替えほど気持ち悪いものは無いぜまったく」 数分後、朝比奈ミクルはトイレから帰ってきた。 その直後、長門が口を開いた。 「私にいい考えがある。ここは公平に勝負で決めるべき」 その後、俺の教室で何やら勝負をしようといった長門は1人で 俺の教室に向かって歩いていった。 教室には谷口と国木田がいた。 「あれ?キョン、何やってんだ?」 「朝比奈さん、長門さん、こんにちは」 2人はそう言った。 長門はそんな2人を無視して 「我々3人は今から勝負をするから出てって」と言った。 そして朝比奈ミクルが 「私と長門さんとキョン君とで古泉一樹君を賭けて勝負するんです」 開いた口がふさがらない谷口と国木田 「キョン、、お前、、古泉のことが好きなのか? でもお前、、男だよな?実は女だったというオチはないよな?」 「今まで黙っててスマなかった。実は俺、ウホッ!なんだ」 「キョン・・・お前、、なんで今まで黙ってたんだよ」 「そうだよキョン。別に隠し事しなくてもいいのに」 「でも、、いろいろまずいだろ・・」 そして谷口と国木田が2人同時にこう言った。 「気にするなって、俺らもそうだから!」 話をまとめると、こういうことだ。 谷口と国木田は入学式当日から付き合ってたらしい。 そしてそれを俺に隠してたと。 「キョン、お前、古泉を狙ってるのか?あれは俺のランキングではAAAだぞ」 「そうなんだ、、でも・・・」 「ならさ、3人で小泉君にいたづらしない?」 国木田は3人で分け合おうという考えを提案した。 しかしその直後、俺と谷口と国木田と朝比奈ミクルは 何かの力によって黒板へ叩きつけられた。 「・・・」 その力を放ったのは長門だった。 結局、古泉は長門の物となった。 しかし肝心なのは古泉自身の気持ちである。 いくら長門が強くてもそんなのは関係ない、古泉の気持ちが第一である。 そして俺たちは文芸部室へ戻ることにした。 部室の扉を開こうとしたとき、中から変な声が聴こえてきた。 「あぁぁぁ!もっと激しくぅぅぅ!」 俺は扉を開けた。 なんと部室の中でハルヒと古泉がセックスをしていたのである。 「あんた達なんの用?じゃまだからさっさと帰ってよ」 「これはこれは、、恥ずかしいところを見られてしまいましたね」 古泉の裸を見た俺と谷口と国木田は理性を抑えることが出来ず、 服を脱いで全裸になって古泉のほうへ走っていった。 朝比奈ミクルと長門も我慢できずに服を脱いで全裸になって古泉の方へ走っていった。 俺は古泉を押し倒し、古泉の顔の上にまたがった。 「さぁ舐めろ」 谷口は古泉の両足を持ち上げ尻の穴に挿入しようとしている。 「力を抜け」 国木田は古泉の棒を嘗め回している。 「気持ちいいだろ?」 その次の瞬間である。 国木田の体が中に浮き上がり、窓の外へ飛んでいってしまった。 そして庭にゆっくりと着地した。これも長門の仕業だろう。 長門は今度は谷口の方を睨んだ。 谷口はガクガクと震えていたが、なかなか長門は力を使おうとしない。 古泉の裸を見たせいで&部室が不思議なパワーで溢れ返って 長門の力を減退させてしまっているようだった。
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対訳【朝比奈隆 訳】 ActⅠ-1 ActⅠ-2 ActⅡ-1 ActⅡ-2 日本語訳異版はこちら アリアへジャンプ! カタログの歌 お手をどうぞ もう判ったでしょう あの人の心の安らぎこそ シャンパンの歌 ぶってよマゼット セレナード 薬屋の歌 私の恋人を慰めて あの人でなしは私を欺き むごい女ですって カタログの歌 (動画対訳) rakuten_design= slide ;rakuten_affiliateId= 04a91095.52a5fed9.099b93b6.2566fa26 ;rakuten_items= ctsmatch ;rakuten_genreId= 0 ;rakuten_size= 200x350 ;rakuten_target= _blank ;rakuten_theme= gray ;rakuten_border= off ;rakuten_auto_mode= off ;rakuten_genre_title= off ;rakuten_recommend= on ;rakuten_ts= 1649371200100 ; 編集者より 朝比奈隆は1949年に関西オペラグループ(現関西歌劇団)を結成し、以来、「椿姫」(1949)、「カルメン」(1950)、「お蝶夫人」(1951)、「ラ・ボエーム」(1952)、「カヴァレリア・ルスチカーナ」「パリアッチ(道化師)」(共に1953)と、毎年次から次へとオペラを上演しています。「ドン・ジョヴァンニ」は1963年の第16回公演で、モーツァルトのオペラとしては」「魔笛」「フィガロの結婚」に次いで上演されています。 朝比奈隆訳で参考にしたのが、大フィルに保管されている、ボーカルスコアです。朝比奈と書かれた,EDITION PETERS の Klavierauszug に全訳が書き込まれています。そこでWEBでダウンロードしたイタリア語のテキストと朝比奈訳をできるだけ楽譜に合わせて並べました。 朝比奈隆は上演の度ごとに訳詞に手を入れていたとオペラ歌手の方々からは聞いています。実際、書き直されていたり、訳詞が2種類あったりする箇所があります。そこで、もとの訳詞の上に更に書かれている場合は、(別訳:)という形で併記しました。 「ドン・ジョヴァンニ」はノーカットで上演すると結構時間がかかるので、レチタティーヴォを部分的にカットしたりはよくします。そこでダウウンロードしたテキストにはあるけれど、朝比奈隆が訳していない箇所はカットしました。朝比奈訳が書いてあるけれど、楽譜に×としてあって、上演の時にカットされた思われる箇所もカットしてあります。またト書きで、朝比奈訳には載っていませんが、あるほうがいいと思われるものは、追記しました。第〇場というのも、ダウンロードしたテキストと楽譜で一致していませんでしたので、楽譜に合わせました。 朝比奈隆は基本的にはイタリア語のテキストに忠実に訳しています。ただ、音楽に合わせるために訳語変えているところもあります。対訳で難しいのは、繰り返しの場面です。繰り返しが同じ訳の場合は、省略してありますが、同じテキストで訳語が異なるときは、訳をつけておきました。ヴォーカルスコアにはたまに訳語が書かれていない箇所があります。前後から類推して分かる範囲は訳を入れました。 → 編集者より 管理人より 指揮者の朝比奈隆(1908年7月9日 - 2001年12月29日)が翻訳した「歌える日本語訳」を使用しています。日本語訳は左のイタリア語の意味とは必ずしも一致しません。 朝比奈のテキストは遺族の許可をいただいて掲載しています。複製・転載・転用は固くお断りいたします。 Blogs on ドン・ジョヴァンニ 朝比奈隆訳《ドン・ジョヴァンニ》対訳完成と「カタログの歌」YouTube動画公開 ドン・ジョヴァンニとは ドン・ジョヴァンニの47%は歌で出来ています。ドン・ジョヴァンニの42%は砂糖で出来ています。ドン・ジョヴァンニの6%は覚悟で出来ています。ドン・ジョヴァンニの3%はカテキンで出来ています。ドン・ジョヴァンニの2%は税金で出来ています。
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7月20日 練習試合:VS 大阪学院大学 場所:灘崎町総合公園多目的広場 時間:13 00 ファジアーノ岡山 4-1 大阪学院大学 (45分×3本) (1本目 1-1 2本目 0-0 3本目 3-0) 1本目 メンバー GK 堤 DF 重光、大島、木村、丸谷 MF 藤定、山口、玉林、金光 FW 武田、朝比奈 得点 15分 朝比奈 23分 失点 2本目 メンバー GK 堤 DF 重光、大島、練習生、練習生 MF 関口、三原、玉林、金光 FW 武田、朝比奈 交代 20分 武田 → 岩田 朝比奈 → 鴨川 3本目 メンバー GK 滝 DF 練習生、大島、木村、丸谷 MF 関口、山口、三原、藤定 FW 岩田、鴨川 得点 2分 藤定 10分 山口 35分 岩田
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収穫 ハルヒは自分の農地を見に行かねばならないので鶴屋さんと交代した さて麦畑が黄金色に輝くイングランドの夏はそろそろ収穫の季節である。伯爵の直営畑では、朝比奈さんの主張により、今年からは執事さんをはじめ騎士さんに兵隊さんの城の住人が総出で麦刈りを手伝わされることになった。身重にも関わらず朝比奈さんは自らも刈り入れに出ると言い出し、伯爵がハラハラしつつ侍女を何人もお供させようとしたが本人が怖い顔をして断り、俺だけが畑についていった。 夜明け前の朝早くからマナーハウスの前で机を並べ、日雇い労働者を受け付ける。俺がここに落ちてきた頃に修道院の領地でもやってたやつな。 俺は鎌をにぎり農夫にまじって小麦の茎を刈り取りに参加した。ハルヒが何本もの鎌を同時に操りオリャーと奇声を発しながら刈り取っている後ろで、朝比奈さんがヨタヨタと地面のデコボコに足を取られながら刈穂を束ねていた。 「朝比奈さん、大丈夫ですか。あんまり無理しないほうが」 「だ、大丈夫だけど、ちょっと体のバランスが……」 といいつつガニ股で歩いている。胎児が成長するにつれて重心が移動するのでどうも勝手が悪いのらしい。 遠くの教会で九時の鐘が鳴り、休憩と軽く揚げパンのおやつが配られたが、エールも牛乳も飲めない朝比奈さんは冷ましたお湯を飲むしかないようだった。 休憩が終わって作業が再開したとき、朝比奈さんが急にお腹を抑えて座り込んだ。 「す、涼宮さんちょっと……」 「ど、どうしたのよみくるちゃん! ひょっとして産気づいたの?」 ハルヒが鎌を放り出して走り寄ってきた。 「キョン救急車! 救急車呼んで!」 アフォかお前はと突っ込むのを忘れていた俺も慌てて修道服のポケットをまさぐった。 「ち、違うの涼宮さん」 手招きする朝比奈さんは頭を寄せるハルヒの耳元でゴニョゴニョとナイショ話をし、ハルヒは大きくうなずいて麦の束をかき集めに走った。 「まさかここでお産なのか」 いくらなんでも早すぎじゃないだろうか。ハルヒは朝比奈さんの周りに三匹の子豚みたいな、吹けば飛びそうな麦わらの垣根を作った。ドクター長門を呼ぼうかと思ったが今日は大工ギルドにでかけていて一緒に来ていない。鶴屋さんを呼んだほうがいいんじゃないかと言おうとすると、 「しーしー。いいのよ、さっさと作業に戻りなさい。こっち見んな」 しーしーって、ああなるほど。おしっこか。胎児が膀胱を圧迫するので妊婦さんはおしっこが近いらしい。
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【みくる視点→ハルヒ視点】 ピンポーンとインターホンの音が鳴ってまもなく、キョンの妹ちゃんの声がした。 『はーい』 「あ、妹ちゃん?あたしだけど。」 『ハルにゃん!今開けるね~』 中からドッタッタと木製の床を走る音が聞こえた。 「わあ、みくるちゃんに有希ちゃん、古泉くんも! どうしたのー?」 「あのね妹ちゃん、キョン、居る?」 「キョンくん? 居るけど……部屋から出てきてくれないのー。」 あたしたちは顔を見合わせた。やっぱりキョンが部屋で…… 「ちょっと上がらせてちょうだい。」 「どうぞー!」 「じゃあちょっとお邪魔するわね。」 「お、お邪魔します……」 「お邪魔します。」 「………」 キョンの部屋に案内してくれた妹ちゃんは実はね、と前置きして 「キョンくん、なんか冷たいの……。今はお母さんもお父さんも居ないから、一人で寂しかったとこなんだよ。」 「まったくキョンったら……根性から叩きなおさなきゃいけないようね!」 キョンの部屋のドアからはなんとなくどんよりとした雰囲気が漂ってた。この名交渉人涼宮ハルヒがキョンを救い出してみせるんだから! 「キョン? あたしよ。」 中からの反応はなし。シカトとはいい度胸ね。 「聞こえてるんでしょ? とりあえず、出てきなさいよ。」 「……なんで来たんだ」 聞こえてきたのは、明らかにいつもより暗くて湿った感じのキョンの声だった。 「あんた、無断で学校休んでどーするのよ。SOS団部室には必ず一日一回は来ること――」 「――くだらないんだよ、そんなの!」 「えっ……」 「SOS団なんてもうやってられっか。」 「な、何よそれ!! あんたは団員第一号なのよ!? そんな事、もう言わないで!」 「……もう俺には関係ない。」 「キョン……」 「……他の奴らも居るのか。」 「ええ、みんなあんたを心配して来てくれたの。」 「よくお前らも付き合ってられるよなぁ。あんなくだらない活動に。」 「……あなたはこのSOS団の活動を少なからずは楽しんでいた……違いますか?」 「古泉か……それは違うな。俺はただ付き合いまわらされていただけだ。」 「僕は、あなたと一緒に活動していた頃は楽しいと思っていましたがね。」 「……」 「5人揃ってこそSOS団なのです。あなたが居なければ……」 「……よく言うよな。本当の目的は違うくせによ。」 「キョンくん! あなたはそんな事言う人じゃありませんよ……一体、どうしちゃったんですかぁ?」 「朝比奈さん、俺はあなたが思っているようなお人好しじゃなかった、ってことですよ。」 「キョンくん……そのっ、えと、うぅ……」 みくるちゃんは今にも泣きそうな顔で拳を震わせていた。 「ちょっとキョン! あんた、いつからそんな生意気になったわけ!?」 「ハルヒ、俺はもううんざりしてるんだよ。お前の面倒事にな。」 「はあ……!?」 「その団の目的はもう果たしてんだからもういいだろ。」 「……え?」 「ああ、知らなかったんだよな。そこにいる朝比奈さんや古泉は実は…!!」 突如、あたしの目の前が真っ暗になる。意識を無くした。 【ハルヒ視点→古泉視点】 「未来人と超能力者なんだよ!!」 ……言ってしまいましたね。もう僕はどうすればいいか…… 恐る恐る涼宮さんの反応を見ようとした僕ですが、涼宮さんは本を片手に持っている長門さんに抱きかかえられていました。 「……これは一体?」 「涼宮ハルヒを一時的に気絶させた。彼の言葉を聞かせない為。」 さすが長門さん。判断と行動の速さが天下一品です。 「今の言葉は度が過ぎている。これからは注意するべき。」 「やっぱり長門も居たのか……お前らも大変だな。」 「涼宮ハルヒの観測はわたしの義務。別に大変でもない。」 「ああ、そうかい。でもその自己中女にはうんざりしてるんだろ?」 「そんなことは、ない。」 「もうやめましょう長門さん。涼宮さんも気絶してしまいましたし……ここはもう帰ったほうがいいかと。」 まあ長門さんが気絶させたのですがね。 長門さんがゆっくりと首を縦に振って涼宮さんの体を僕へ差し出しました。 それを僕が受け取るとまた読書に移り……って、やはり僕が運び役ですか…。 「きっとあなたが考えを直さないかぎり、涼宮さんは何度でも来ると思いますよ。では、僕たちはこれで。」 「………」 涼宮さんが泣きながら気絶していたことを、彼には伝えないことにしておきます。 次の日。やはり彼は学校には来なかったようです。 いつもの顔が1つなくなったSOS団に、更に暗くなるニュースが届きます。 「今日、涼宮ハルヒは学校を休んだ。」 それは長門さんの口から発せられたもので、僕にはその顔に困ったような表情が微かにあったように見えました。 「困った状況になりましたね……」 「今日はどうしますかあ……?」 その時、予想はしていたいつもの携帯の着信音が鳴り、僕は「すいません、バイドです」と言い残して閉鎖空間へ行くことに。 「な、長門さん……どうします?」 「………」 「……か、帰りましょうか。」 【古泉視点→みくる視点】 何もできなかったその日の夜、わたしは重大な事に気付いて、思わず一人言を口走ってしまいました。 「キョンくんが死んでしまう三日後って……明日の事!?」 どうしよう、未来のわたしが言ったことだから……このままじゃ本当にキョンくんは……自殺でもしてしまうんでしょうか。 わたしはずっと考えていました。夜が明ける頃まで、ずうっと。でもようやく結論が出て、わたしは覚悟を決めました。 だって、キョンくんが死んじゃうのは嫌だから。 翌日、キョンくんと涼宮さんはごく普通に登校して放課後に部室に集まりました。 何故かって?そもそもわたしが、キョンくんが引き篭もる事自体を無くしたんだもの。そう、今日から4日後にまで戻って…。 もちろん許されることじゃないというのは分かってました。でも、わたしにはこれしかできなくて……。 【みくる視点→キョン視点】 放課後の活動中、尿意に襲われた俺はトイレに向かった。その途中に、予測もしてなかった人物と出会った。 未来の朝比奈さんである。聞くと、俺が一人で部室から出てくるのを伺っていたという。 「今回はなんですか、朝比奈さん。」 何度か会ってるせいか、俺には最初に未来の朝比奈さんと出会った時に感じた緊張感というものが無くなっていた。 「実は……わたし自身のことについてなんです。」 「朝比奈さん自身のこと?」 「ええ、キョンくん、あなたには自覚がないかもしれませんが……キョンくんの死を阻止しようとして過去のわたしがやってはいけないことをしてしまったんです。」 ん、なんだなんだ? 俺の死? それを今の朝比奈さんが阻止してくれたって? それは有難いことだが…やってはいけないこととは? 「事の発端が起こる前の過去まで戻って、その後の未来を変えてしまったんです。」 「は、はあ……」 「あまり理解してませんね。これからわたしが話すこと、集中して聞いてください。」 俺は全てを話された……らしい。俺が引き篭もろうとした(まったく、俺は何をしようとしてたんだ)事からハルヒたちとの口論までの話や、朝比奈さん(小)が過去に戻ってした事。 まあ結局全細胞を集中させたが2割程度理解できなかった部分もあったが、まあいいだろう。 「過去のわたしには、これから未来へ戻って厳重な処罰が与えられると思います。」 「厳重な処罰とは?」 「禁則事項です。」 「もう一度ここへ戻って来られるんですか?」 「禁則事項です。」 「……もしかして、死刑の可能性も。」 「……ありますね。かなりの確率で。」 「禁則事項です。」という言葉が帰ってくると予想していたが、朝比奈さん(大)は素直に答えてくれた。 「でも、未来のあなたが存在するということは、今の朝比奈さんは死んではいない……ということですよね?」 「そうとも限らないんです。」 「へ?」 「予期されぬ過去の言動は、未来に繋がる可能性があるんです。つまり、未来が変わってしまう可能性が。現に、わたしの過去にはこんな事はありませんでしたから。」 ……ええと、つまりもし朝比奈さん(小)が死刑にされてしまえば、朝比奈さん(大)も消えてしまう可能性がある、と。 「その通りです。」 『可能性』というフレーズが随分多かった会話だったが、だいたい理解できた。……じゃあこれはかなり危険な状況なんじゃ。 「ええ、そうですね……過去のわたしのことだから、絶対みんなに言わずに未来に帰っちゃうと思うから……。」 「それはもう阻止できないんですか?」 「……過去にでも戻らない限り、絶対。」 「……そうですか……。」 頭が不安がよぎった。いや、さっきから充満しているのかもしれない。 朝比奈さん(小)が未来へ帰って死んでしまう……?そんな事、俺は考えたくなかった。 朝比奈さん(大)が未来へ帰っていく。今回はヒントくれなかったな……もしかして、この情報自体がヒントだったのだろうか。 俺一人の力でどうにかするなんてこと、できやしない。それは前々から分かっていた事だ。 頼れるのは一人しかいまい。 俺はトイレを済まし、活動終了の時刻まで部室で待つことにした。 「随分長いトイレね。」 「ちょっとな。」 「ちゃんと手洗ってきたでしょうね!」 「あ……ああ。」 忘れてた。ま、まぁ……いいだろ。 この時はまだ朝比奈さんはメイド姿で部室に居た。いつ帰るんだろう? という疑問が頭の中で渦を巻いていた時、小声で朝比奈さんの声が聞こえた。 「あっ、そろそろ時間……」 確かに聞こえたその言葉。未来に帰る時間とみて間違いはないだろう。 「ごめんなさい、今日は用事があってこれで失礼します……」 「みくるちゃん、用事って?」 「禁則事こ……あ、えっと、家の用事で。」 「っそ、なら仕方ないわね……今日の分、明日ちゃんと働くのよ! いい?」 「……は、はい。」 朝比奈さんは頭をガクッと下ろしてそう言った。だが、どうせ途中で帰ってしまうなら今日部室には来ないはず……朝比奈さんはそういう人だ。 きっと名残惜しかったのだろう。朝比奈さんは制服を手に持って「じゃあ、トイレで着替えてきますね。」と言い残して部室を出て行った。 ……朝比奈さんが帰ってしまう。 条件反射で俺は部室を出た。もちろん朝比奈さんを追うためさ。 「キョン、何処いくの!?」 「トイレだ!」 「さっき行ったじゃない!」 「手を洗い忘れた!!」 「はあ?」 上手く口実を作ってハルヒの制止攻撃を受け流す。部室を出ると栗色の髪を揺らして歩く朝比奈さんが目に入った。 「朝比奈さん!!」 「ひぇっ……!」 可愛らしい顔がこちらを振り向く。両肩を掴もうとしたが、手洗ってなかったんだっけ。 「今から……帰ってしまうんですか。」 「……!どうしてそれを……?」 「俺には朝比奈さんの事はなんでもお見通しですよ。」 少し言ってみたかった言葉だ。俺の脳内ではこの後に朝比奈さんが照れ出すというシナリオが組み立てられていたのだが、朝比奈さんはしょんぼりと顎を引いた。 「ごめんなさい。勝手にこんな事を……。でも、わたしが居なくても全然大丈夫、でしょう?わたしなんか、別に……」 「何を言ってるんですか! あなたはSOS団に必要不可欠ですよ!」 たとえそれが違ったとしても少なくとも俺にはそうであることは間違いない。 「嘘です! わたしはただ、皆さんにお茶を出すくらいしか……。必要とされていない存在なんです……!」 朝比奈さんがこんな事を考えていたとは……予想外だ。 「皆朝比奈さんを必要としてますよ。ハルヒも長門も古泉だって、もちろん俺も!」 「……ごめんなさい!!」 突如腹部あたりに痛みが染み渡る。ああ、また朝比奈さんに殴られる事になるとは… 少し腹を抱える俺をよそに、朝比奈さんは時間移動を始めた(のだろう)。 「待ってくださ……朝比奈さん……!」 くそ、さっきのパンチが効いたぜ。あの細い腕であんな剛拳を放つ事ができるなんて… 「さようなら、皆さんによろしくね。」 「朝比奈さん!!」 朝比奈さんは音も無く光の中に消えていった。…残る手段は絞られた、か。 「手を洗うのにそんなに時間がかかったのかしら?」 ああ、すっかり忘れてた。もう一度本当に手を洗いに行くのは不自然か? 「何してたのよ!」 「別に大したことじゃねえよ。」 「そんな答えが許されるとでも思ってるの?だいたいあんたは……」 ハルヒは俺の無責任さに説教を始めた。俺は簡単にそんな話は聞き流したね。 部室の時計が活動終了の時刻を指した。ハルヒを先頭に、古泉と長門が部室を出て行き、その後に俺が続く。 が、ここで何もしなかったら何の意味もない。俺は小声で長門を引き止めた。 「なに?」 「あのさ、お前も…知ってたりするのか?」 「なにを」 「朝比奈さんの事だよ。」 「知っている」 なら話が早い。お前になんとかできないものなのか? 「できないこともない。けれど、この時空の流れの歴史を書き換えてしまうことになる。」 「やっぱりそれってまずいのか?」 「まずい」 「でも……お前も朝比奈さんの事が心配だろ?」 ここで長門が首を横に振ればもう終わりだと思ったけどな。長門はそんな非情な奴じゃない。 「心配」 「今度美味しいカレーでも奢ってやるよ。行ってくれるか?」 「いく」 「そうか、ちなみにどこ――まあ、この場合過去と未来とカレー屋という選択肢があるわけだ――に?」 「未来に。」 俺はてっきり過去かカレー屋へ移動するのかと思っていた。未来ってことはやっぱり…… 「朝比奈みくるがいる未来。」 だよな。俺がここで行かないわけがない。 「じゃあ目を閉じて」 「ちょっと待て。」 「なに?」 「またこの空間ごと凍結とかしたりするんじゃないだろうな。」 「しない。ここを凍結するのはあまりにも無理矢理。」 「そうか、なら続けてくれ。」 ふっ、と体が浮いたような感じ。何回も味わっている時間移動の感覚だ。これに慣れてしまっている俺はある意味――でなくともか――凄いのだろうな。すっかり未来人気分だ。 そんなに長い時間がかかったようには思えなかった。数分くらいかな? 俺は足で地面に立っている感触を掴んだ。 五感の内のひとつに異常に反応する匂い。まろやかなような、香ばしいような、それでいて辛そうな匂い…… 俺は目を開けて呆然とした。 「……あれ?」 「……間違えた」 頼むぜ長門、ここは明らかにカレー屋の厨房だ。しかもいつの時代かさえ分からん。 そしてまたさっきの感覚が俺を包む。さっきの移動時間が短かった理由が分かったね。今回は何十分もかかったような感覚だ。 着いて目を開けた先には、いつも見ている光景が広がっていた。そう、文芸部室。 「また間違えたんじゃないだろうな」 「違う。間違いなく未来。」 じゃあここは何年か後の文芸部室なのか? 長門、説明してもらわないと分からん。 「朝比奈みくるが行った未来と同じ時間平面にわたし達はいる。ターゲットを朝比奈みくるだけに揃えたから、何年後なのかは分からない。」 「朝比奈さんは何処なんだ?」 「探すしかない。」 また随分と難易度の高いミッションだな。まぁ長門が傍に居るなら何でもできそうな気分になってくる。俺は暗くなりかけていた気分を一掃し、明るい声を放った。 「じゃ、行くか!」 未来からのメッセージ 後篇へ
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人の口に戸は立てられないとはよく言ったもんだ。 膝枕事件の翌日には既に俺とハルヒは学校公式に付き合っている扱いになっていた。 新聞部にはインタビューされるわ、クラスからは祝福を受けるわ。 仕舞いには見ず知らずの上級生からまで、 「ほら…あの人が…」「あぁ…あの涼宮の…」「普通そうなのに…すげぇよな…」 などとヒソヒソ囁かれる始末。 俺はその噂を沈静化するのを諦めていた。 どーせすぐ飽きるだろう。 …いたたまれないのは確かだが。 そんな俺だったが…最近、ハルヒの夢をよく見る。…むやみやたらと。 …その意味はあまり深く考えないようにしていた。 膝枕事件の事は耳に入っているハズだろうに、古泉と長門は何も言わなかった。 長門はともかくとして、古泉は何か言ってくるかと思ったがそれも無し。 ただ朝比奈さんには「頑張ってくださいねっ」と極上笑顔で言われてしまった。 …何を頑張れってんだ? 当のハルヒはと言えば、新聞部のインタビュアーをぶっ飛ばした後はおとなしくしている。 というか、最近の故障っぷりから考えればおとなしくしすぎだった。 俺が話し掛けても心ここに在らずといった様子。 部室でもいつもの席に座り、パソコンをイジっているだけだ。 たまにチラチラと俺の方を伺っているのが激しく気になるが、俺が目を合わせると慌てて視線を逸らしてしまう。 …何がしたいんだかね。 † 10月23日、くもり † なんなの? なんだってのよ! なんであたしがこんなにキョンごときを意識しなきゃなんないワケ!? …でも、しょーがないじゃない。 …キョンが側に居ると、落ち着かなくてしょうがないんだから。 どうしてもアイツの事が気になってしまう。 …キョンの事ばかり考えてしまう。 キョンが散々キャラじゃないって言ってたけど、あたしだってそう思うわよ。バカ。 …あたしらしく、しなきゃね。 …キョンはあの時、あたしのコト、トクベツな存在だって言った。 たぶん、そういう意味。 だったら、あたしはあたしでいたい。 キョンがトクベツと言ってくれた、あたしで在りたい。 …って、こんな事考えてる時点であたしらしくないじゃない! もっとこう、ガーッていって、バーンッてすればいいのよ! どーせキョンだってあたしの事が好きなんだろうし。 うん、明日っからまたキョンをユーワクしてやるんだから。 ハルヒの故障はもはや末期的なものになっていた。 おとなしいと思ったのはここ数日だけで。 ある日の朝、家を出てすぐの通学路でハルヒを見かけた。 「キョ、キョンじゃない。久しぶり、奇遇ねっ!」 久しぶりと言ったが、おもっくそ前日も会っていた。 それに奇遇と言うがハルヒの家は、全然別の方向だったハズだ。 「なんなら…一緒に学校行く?」 流石に断る理由も無かったので、並んで歩いていると、 「…あんたが繋ぎたいっていうなら手、繋いであげてもいいわよ?」 との言葉。 …そっぽを向いていたが照れてるのがバレバレだった。 …そんな事言われたら、握らない訳にはいかないだろうが。 俺が黙ってその手を握ってやれば嬉しそうな横顔。 …なんなんだろうね、これは。 別の日の昼飯時。 「…ねぇ。キョン。これ、ちょっと作り過ぎちゃったんだけど。良かったら食べる?」 …差し出された弁当箱は前の時と全然量が変わっていなかった。 ちょっと作り過ぎてあの量が出来上がるなら、この世に貧困なんて言葉は存在しないだろう。 クラスからは相変わらずのひやかし。…谷口が挙動不審なのも相変わらず。 だが、違った事がひとつだけ。 「う、うるさいわね! あんた達!」 …ハルヒがクラスメイトに反応した。 クラスの連中はそんなハルヒに一瞬だけ静かになったが、その後は更にひやかされていた。 …火に油を注ぐようなもんだ。 しかしハルヒも、クラスの目を気にするようになったんだなと感心した。 先日、俺の机に弁当を叩き付けたハルヒとはまるで別人だ。 …正直に言えば。 …あえて言えば。強いて言えば。どっちかと言えば。 最近、そんなハルヒの事が可愛いんじゃないかと錯覚する時がある。 ……俺もずいぶん病んで来ているのかも知れない。 そんな、ある日の事。 ガチャ 部室の扉を開けるとそこには朝比奈さんと長門、古泉が居た。 …ハルヒはまだ来ていないらしい。 「あ、キョンくん。今日は遅かったんですね」 「えぇ…ちょっとホームルームが長引いたもので」 編み物をしていた朝比奈さんが立ち上がり、コートを脱ごうとしていた俺を手伝ってくれた。 …あぁ、やっぱり朝比奈さんは気の付くいい奥さんになるだろうな。 毎日帰ってくると、おいしい料理とあったかい風呂と朝比奈さんが待っていてくれる。 朝比奈さんと結婚する奴からは良妻税を取るべきだ。 それにしてもハルヒは部室に居ると思ったがな。 ハルヒの指定席は空だった。 アイツが部室に居る時は大体起動しているパソコンも電源が落とされたまま。 「あ…。…ふふっ」 俺のコートを椅子にかけながら、朝比奈さんが急に微笑んだ。 …俺の顔に何か付いてるってのか? 「どうしたんですか? 急に」 「…今、キョンくん、涼宮さんの事考えてたでしょ?」 朝比奈さんの指が軽快に揺れる。 …えーと、だな。なんで分かったんだろう。 まさか朝比奈さんにも隠された新たな能力が!? …って、そんなにホイホイ隠された能力が出て来てたまるか。 蟲寄市じゃあるまいし。 「図星、ですか?」 俺が黙っていると朝比奈さんがイタズラっぽく言う。 …隠すのもアレか。 「えぇ…まぁ。ハルヒはホームルームが終わると同時に扉を蹴破る勢いで出て行きましたから。 てっきり先に部室に来てると思ったんですが。というか、何で分かったんですか?」 「えへへっ。それはね? キョンくんが涼宮さんの席をあっつーい視線で見てたからですっ」 …熱い視線て。 「でも…、わたし達が居るのに、やっぱり涼宮さんが居ないと寂しいんですね…」 朝比奈さんが悲しそうに眉をひそませる。 「って何でそうなるんで―――」 「ねぇ、古泉くん、聞きました? 涼宮さんが居ないとキョンくんは寂しいんだそうですよっ?」 かと思えば楽しそうに朝比奈さんが古泉に話を振る。 なんだか今日の朝比奈はヤケにテンションが高いな。 その表情が変声期のカメレオンみたいに変化する。 …つーか、俺はドン無視ですか。そうですか、そうですね。 「嗚呼…それは悲嘆すべき事態ですね…。ですが、やはり学校公認のお二方。片時も離れて居たくは無いのでしょう」 古泉も古泉でニヤニヤしながら、大袈裟に芝居がかった口調でホザく。 その目の前の机にはチェスの板が広げられていた。 …お前はゲームの相手が欲しかっただけじゃないのかと。 「…あつあつ」 …あまつさえ、あの長門までもが本に視線を落としたままポソッと呟いたが、ありがたく聞き流す事にした。 「あの、何か誤解してるようですけど。俺とハルヒはそんなんじゃありませんから」 朝比奈さんに向けて。ひいては長門と古泉にも向けての言葉。 「そんな、隠さなくてもいいじゃないですかっ!」 えーと。俺が何を隠してるっていうんでしょうか。 「えぇ。もう事は学校全体にまで知れ渡っているのですから。 あなた方は……いえ。特にあなたは、もう少し自分に素直になられた方が良いのでは?」 したり顔の古泉の援護射撃。 …聞いた所によると、やたら爽やかなイケメンがその噂をせっせと助長してるって話もあるらしいんだがな。 「…俺のどこが素直じゃないっていうんだ」 椅子に座りながら憮然と答える。 「それです。あなたが素直で無いという事をあなた自身が認識していない。これはいけません」 古泉が間髪入れず反論してきた。 …まるで答えが用意してあったかのようだ。 俺はかなりの勢いで自分の気持ちに素直に生きていると思っていたがな。 平々凡々、日々平穏。それが俺のモットーで。 …そのモットーは最近、全くと言っていいほど役に立っちゃいないが。 「いいじゃないですか、涼宮さんにあなたの本当の気持ちを伝えてあげれば。 きっと彼女も喜ぶと思いますよ?」 …俺の本当の気持ちって何だそりゃ。 「…お前はよっぽど俺とハルヒをくっ付けたいらしいな」 「いえいえ、僕個人がではありません。学園全体の総意として、ですよ」 サラッと髪を払う古泉。 …余計タチが悪いわ。 「…あ」 俺と古泉の会話を立ったまま聞いていた朝比奈さんが俺の顔を見て、何かに気付いたように呟いた。 いや、正確には俺の胸辺りを見て言った。 なんだ? 胸毛でも漏れてるか? …ってどんな剛毛だ。俺はミスターサタンか。 「朝比奈さん、どうしました?」 「ほら、ここ…、ボタンがほつれちゃってます」 朝比奈さんが俺の制服のブレザー、そのボタンの一つを指差す。 見ればそのボタンは確かに外れかけ、ブラブラしていた。 「あぁ…」 「えへへっ、ちゃっちゃと直しちゃいますねっ」 朝比奈さんは、部室に備えられた朝比奈さん専用裁縫道具箱をカチャカチャと鳴らし出す。 「いえ、いいですよ、これぐらい。外れてる訳じゃないし」 「いいえ、だーめですっ!」 俺は軽い気持ちで言ったのだが、パッと振り返った朝比奈さんに強い口調で返されてしまった。 「やっぱり身だしなみというのは大切だと思うんですっ。 涼宮さんも彼氏さんがだらしない格好してたら、げんなりしちゃうと思いますし」 ……誰が、誰の彼氏ですって? 今、俺の耳がおかしくなっていなければとんでもない発言が聞こえたような気がするんですが。 しかし朝比奈さんはそんな俺に構わず、道具箱から針と糸を取り出すと、椅子を引き寄せ俺の隣に腰掛けた。 「あのー…朝比奈さん?」 「じっとしてて下さいね? すぐに済みますから」 朝比奈さんは俺の制服を手に取り、有無を言わさずスッとボタンに針を通した。 …あー…なんだこれは。 …なんというか。マジで新婚さん気分だ。 朝比奈さんのきめ細かい指が踊り、リズミカルに表へ裏へと針を通す。 その度にボタンはしっかりと留められていく。 「…えーと、すみません。こんな事して頂いて」 「ふふっ、いいんですよー。キョンくんにはかっこいいキョンくんで居て欲しいですからっ」 …近距離みくるビームが眩しいっす。 それにしても、かっこいい俺とはどういった意味なんでしょうか。 何やら深読みしてしまうんですが。 というか。ボタンをちゃんと付けてるとかっこよさが上がるのでしょうか。 まほうのじゅうたんとかもらえちゃうんでしょうか。 むしろ、俺のかっこよさはボタン一つで左右されるものなのでしょうか。 それって微妙じゃないっすか? ソイツってホントにかっこいいんすか? …つか。そんな事よりも。近い。 繊細な仕事をしているのだから、その距離が近いのは当然なのだが、朝比奈さんの睫毛の数まで数えられそうだった。 しかも朝比奈さんは多少前傾姿勢になっているので、そのメイド服と相まって朝比奈さんの身体的特徴が暴力的なまでに強調されている。 …パ、パイレーツ・オブ・カリビアンッ! …海賊がどうしたってんだ。 ガチャッ! 「みんな、遅れてゴッメー…! ………ン」 俺が朝比奈さんの体の一部に目を奪われていると、部室の扉が勢いよく乱暴に開かれた。 この扉をそんな開け方をする人間を俺は一人しか知らない。 ハルヒだ。 マズイ。 ………って何がマズイんだ? ……別に何もマズくない…ハズだ。 …なんで俺は今、マズイだなんて思ったんだ? だが、すぐ側に居た朝比奈さんは目に見えてうろたえていた。 「す、涼宮さんっ、これはその、ち、違うんですっ!」 朝比奈さんが慌てて俺から体を離す。通されたままの糸が俺の制服を引っ張った。 「…みくるちゃん。何が違うの?」 ハルヒが扉に手をかけたまま、そう言った。 …なんというか、その顔が恐ろしく無表情だった。 …あまり見ないな。ハルヒのこんな顔は。 「あのっ、これは、ボタン、そうっ、ボタンをっ!」 「…それぐらい見れば分かるわよ。キョンのボタン、付けてあげてたんでしょ?」 あたふたする朝比奈さんとは正反対にハルヒが淡々と答える。 …その声にもあまりにも抑揚が無かった。声に感情が無い。 まるで長門のような喋り方をする。 コイツの中ではものまねでもブームなのか。 ぶっちゃけ似てないぞ。 「ハルヒ、遅かったな。てっきり俺より先に来てるもんだと思ってたが」 俺がそう言うとハルヒは「…ちょっとね」とだけ答え自分の席に着き、パソコンの電源を入れた。 CPUファンが低い唸り声をあげる。 「えと、あの、そのっ」 朝比奈さんはそんなハルヒと俺を交互に見やり、ずいぶんと慌てている。 「…朝比奈さん? どうしたんですか?」 俺が声をかけると朝比奈さんは、 「えぇと…そうだっ、あの、涼宮さん、か、代わりますかっ?」 ハルヒの方に針を差し出しそう言った。 というか朝比奈さん、伸びてる、伸びてるんですが。 …つか、代わるって何をだ? …ボタン付けか? …どうしてだ? 「…いい。あたしよりみくるちゃんの方が上手いと思うし」 しかしハルヒは、朝比奈さんの方を見もせずにパソコンの画面を凝視したまま、その提案をあっさりと断った。 …たぶん、まだ立ち上がってないと思うんだがな。 「…朝比奈、さん」 それまで黙って俺達の様子を伺っていた古泉が声を発した。 先程までと違い、その表情が険しい。 朝比奈さんが弾かれたように古泉の方を見ると、古泉は「早く」とでも言うかのように彼女の手元に視線を移した。 「じゃ、じゃあ、すぐ付けちゃいますねっ」 古泉の視線に触発されるように朝比奈さんがボタン付けを再開する。 「あ、あれ? えと、えっと…」 だが、先程引っ張ったせいか糸が絡まり、その作業は、はかどらないようだった。 カチカチカチカチカチカチカチカチ …静かな部室にハルヒのクリック音だけが響く。 …というか。 なんだってこんなに静かなんだ。 長門はいつもの事としても、古泉も何も言わずにチェスの駒をなぶっていた。 朝比奈さんはあぁでもないこうでもないと必死になってボタンを付けてくれている。…そんなに慌てなくても良かろうに。 そうして。 部室で常に騒がしくしているハルヒが今日は異常におとなしい。 ハルヒが部室に来てから恐らく15分程度。入ってきた時に喋ったっきり黙りこくったまま、パソコン画面と睨めっこをしている。 …状態異常(黙)にでもかかってんのか? 「なぁ、ハル―――」 カチッ! …沈黙に耐え切れず俺がハルヒに話しかけようとした時、叩くようなクリック音が響いた。 「…ハ―――」 カチッッッ!!! …打てば響く。まるで返事のようにタイミングよくクリックが返って来る。しかも左クリックがぶち壊れそうな勢いだ。 恐らく、そのクリックの意味は「話し掛けるな」か「黙れ」。 …どっちも似たようなもんだが。 …やれやれ。何をそんなに苛立ってるんだか。 その内、ESCキーどこいった!? なんて言い出すんじゃねぇだろうな。 つか、空気が重い。 …いや、重いんじゃないか。 やたらと乾いている。 指先がチリチリする。 口の中はカラカラだ。 目の奥が熱いんだ。 クックックッ……黒マテリア。 「…帰る」 あまりの居たたまれなさに脳内ソルジャーごっこで遊んでいると、ハルヒが来たばかりだというのにスクッと立ち上がった。 「…古泉君。電源、落としといて」 ハルヒが伝える。 …やはりその声にはまるで感情が見えない。 「…御意に」 古泉も短く端的に返す。 その内ハルヒが荷物をまとめ、カバンを手に取り、扉を開けた。 「…ハルヒ」 その背中は明らかに話し掛けるなと言っていたが、俺は思わず話し掛けてしまっていた。 「…何?」 ハルヒが振り返らないまま機械的に返事をする。 …ってちょっと待て。 俺は、なんで引き止めたんだ? …帰るっていうなら帰らせればいい。 …帰らせればいいハズだ。 ……何も、おかしい所なんか、無い。 「…いや、何でもない」 「…そ」 ハルヒは短くそう言い、結局振り返らないまま部室を出て行った。 …なんだこの後味の悪さは。 「ひぇぇぇん! ど、どうしましょう!?」 ハルヒが扉を閉めた途端、朝比奈さんがヤケに慌て出した。 顔の回りに汗マークが出るほどの焦りっぷりだ。 「あ、朝比奈さん?」 「ご、ごめんなさいっ、キョンくん! わ、わたし…わたしぃ…」 …なんで俺が謝られてるんだ? 朝比奈さんの目には涙が浮かんでいた。 「と、とにかく落ち着いてください、朝比奈さん」 …ヴーッ…ヴーッ…ヴーッ… 俺が朝比奈さんを慰めようとした時、携帯の震える音が聞こえた。 振動しているのはどうやら古泉の携帯らしい。 しかし古泉は鳴りっ放しの携帯を見ようともしないまま「ふぅー…」と大きく溜息を吐き、天井を仰いだ。 「…これは…参りましたね」 …そこに先程のニヤけ面は欠片も残っちゃいなかった。 あるのは苦悩。 ……何が参ったっていうんだ? …何もおかしい所なんて無い。 ……無い、ハズだろ? なのに。 …なんだってんだこの焦燥感は。 パタン …長門が、本を閉じた。 ◆ 10月31日、曇天 ◆ 気付いた。 部室の扉を開けた時、その時のキョンとみくるちゃんを見たら気付いてしまった。 キョンはあたしと居る時にあんな顔をしない。 …だからってベツにキョンはみくるちゃんが好きってワケでも無いと思う。 そんなに短絡的なおめでたい頭は持ち合わせてない。 ユキと一緒に居る時にしか見せない顔もあるんだと思う。 あの時キョンが言った、トクベツって言葉。 でもそれはたぶん、みんながトクベツって意味。 あたしも、みくるちゃんも、ユキも、古泉君も、鶴屋さんも、妹ちゃんも、あたしの知らない誰かも。 キョンにとってはそれぞれが、それぞれのトクベツ。 …イヤになるほどアイツらしい。 だから、気付いてしまった。 キョンは…あたしのコトが好きってワケじゃないのかも知れない。 …自惚れじゃなく、良くは思ってくれてると思う。 けれどそれは、きっと恋愛って感情じゃない。 舞い上がってたのは、あたしだけ。 …つまんない。 あの日からハルヒの故障は更に進化したようだった。 …いや、むしろ修理されたのかも知れない。 俺や、他の誰かが話し掛けてもひどく淡々とした態度。 ハルヒの方から話し掛けてくる事は皆無。 …その様子はハルヒと出会ったばかりの頃と似ていた。 あの頃と違う所があるとすれば一つ。ハルヒは俺の目を見なくなった。 あの頃のハルヒはそりゃ不躾に、まるで射殺すかのように俺の目をガッツリ睨んで来たが、今ではその目を合わせようとしない。 ただの一度たりとも。 …その横顔からは何も読み取れなかった。 部室でも重たい空気。 長門は普段と変わりなかったが、朝比奈さんも何やらいたたまれないようだった。 …俺だってそうだ。 あれだけ騒がしかったハルヒが終始無言なんだからな。 古泉はと言えば、その出席率が異常なまでに低下していた。 一週間に一度、姿を見ればいい方だ。 だが古泉は古泉で様子がおかしい。 たまに学校に来て、部室に顔を出したかと思えば、何も言わずにただじっとそこに居る。 その視線がヤケに鋭い。そうしてそれは時に俺を射抜いた。 …何か、言いたい事でもあるのだろうか。 古泉はひどく疲れた顔をしていた。 …あのハルヒの様子を見れば古泉が何をしてるのかは簡単に予想がついたが。 …なぁ、ハルヒ。お前は何をそんなに苛立ってるんだ。 …俺に、何か出来る事は無いのか。 ■ 11月10日、たぶん雨 ■ キョンの目が見れない。 キョンはあたしのコトが好きって思ってた時は何も考えずにどんどん突っ込んでいけたのに。 ブレーキが掛かる。 何だかうまく話せない。 肌の裏側がザラザラする。 キョンと話したい。 最近よくキョンからもらったペンダントを触っている自分に気付く。 …絆。 …あたしらしさって、なんだっけ。 よく分からなくなって来ている。 キョンと、話がしたい。 後編4
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Close Ties(クロース・タイズ) 第一話 時刻は午前6時。 通常の有機生命体-人間である朝比奈みくるにとってはまだ睡眠中、または起床時間だろうか。 私が彼女だけを家に呼び出したのは理由があった。 朝比奈みくるはすでに制服へと着替えていたので話はある程度長くできるが、覚醒しきっていない表情は見ていて申し訳がない。急いで伝えることを伝えて登校前に仮眠をとってもらうのが良いだろう。 私はテーブルの前に座った朝比奈みくるにお茶を出してから、テーブルの上に二つ折りのやや無骨なデザインの黒い携帯電話を置いた。 「…えと、携帯電話買ったんですね、長門さん」 残念ながら携帯電話を自慢するために呼び出したわけではない。 「これは統合思念体からもたらされた通信機」 「通信機を必要とするんですか?」 朝比奈みくるは訝(いぶか)しげに携帯電話を眺めた。彼女の疑問はもっともだ。統合思念体と常にリンクしている私に通信機など必要ない。きっと彼女自身がやっていた未来もだ。 「その通信機が必要となる状態に、私はなる事が先ほど決定した。つまり私は有機生命体、人間として涼宮ハルヒの観察を続ける事となった。既に私の体内で置換プロセスが開始されている」 朝比奈みくるの瞳孔が大きく広がった。驚愕するのも当然だ。 きっと私に人並の感情があれば、当事者である私は眼球がこぼれ落ちるくらいに目をむいてしまっていただろう。 朝比奈みくるが押し黙ってしまったので、私は先を続ける。 「統合思念体は危惧を抱いている。原因ははっきりと究明できていないが、現在の涼宮ハルヒ最大の関心事は私自身。私から通常の人間から得られるべき反応を得られないため。知っての通り、閉鎖空間が頻発している。あなたがまともに休めていないのは解っている。昨今の涼宮ハルヒの動向を把握するために多大な労力を必要としている時に、ごめんなさい」 私は座ったまま、両手を床について頭を垂れた。 「や、やめてください長門さん!わたしの事なんて気にしなくていいんですよ!」 朝比奈みくるは慌てて私の頭を上げさせたが、私はまだ言葉を尽くし切れていない。 「本来この報告は本日午後十時までであればいつでも良かった事。にも関わらず私はあなたをこんな時間に呼び出してしまった。私は…」 恐らくこの事を誰かに話したかったから。自分自身の一個体にはエラーが処理しきれなかった。つまり私の利己的判断で迷惑をかけたという事だ。 「そ、そんな!だって長門さんはこれから人間になれるんですよ?そんな素敵な事を教えてもらえなかったら、私拗ねちゃう所でしたよ」 朝比奈みくるの言う意味が良く解らない。素敵な事なのだろうか。私にはそう思えなかった。 「ええと、つまり午後十時に人間になるという事なんですね?そんな顔しないで下さい!わたしちゃんとサポートしますから」 朝比奈みくるの声はリビングルームに響きわたるほど大きくなっていた。少々興奮しているのだろうか。 「もう!そんな大事な事ならキョン君と古泉君にも教えてあげないといけないじゃないですか!」 彼女の疑問は尤もである。しかし私は彼等を呼び出さなかった。 「彼は私の能力に依存して己を保っている面が垣間見える。私が有機生命体となる事で今の状況を解決できる事が確約されるまで彼には話さない方が良いと判断した」 彼も昨今の涼宮ハルヒの精神不安定ぶりを知ってはいるが、理由までは解っていない。 「それは…一理ありますね」 じっと朝比奈みくるは私の次の言葉を待っていた。 彼女が聞きたがっているのは、何故古泉一樹をこの場に呼ばなかったかという事だ。 「古泉一樹については…ごめんなさい」 「あ…いえ、いいんですよ!それはいい判断ですから!誰よりもずっと疲れてるんですし!」 急に朝比奈みくるの顔を直視できなくなってしまった。後ろめたい、という感覚。それに加えて、私を見つめるあの笑いっぱなしの顔が浮かんでくる。まるで目の前にいるかのようだ。 私の顔の前で、銀塩フィルム式カメラのシャッター音を模した電子音が響いた。 「ほら、今こんな顔してたんですよ?すっごく可愛いと思いません?」 私の前に差し出されたのは、ややうつむき加減で視線を斜め下に逸らしたヒューマノイドインターフェースの顔が映る携帯電話だった。 「分からない」 私は素直に認めた。本当に分からない。 朝比奈みくるは小さく含み笑いを浮かべていた。 彼にこんな顔見せたら一発なのにな、などという暗号めいた表現の独り言が気になるが、きっと私が知る必要のある事柄では無いだろう。 「そうだ長門さん、もう今から自分を変えちゃいましょう!さ、わたしの事をみくるちゃんって呼んで下さい!」 何故急に親しい呼び方を求めるのか。朝比奈みくるは私の事を嫌っているとばかり思っていた。それとも彼女自身これを契機に変えようとしているのか。 どちらにしろ、私自身いつまでもフルネームで相手を呼ぶ気は毛頭無かった。 「…朝比奈さん」 私は一学年上の先輩に失礼の無い呼称を採用する事にした。 「もう!みくるちゃんでいいのに。じゃあ、キョン君」 「キョン君」 彼女の推奨する呼び方を採用すれば良いと言うことだろうか。とりあえず合わせるしかないだろう。 「じゃあ次は、ハルヒ」 何故急に下の名前で呼び捨てなのだろうか。 「ハルヒ…あなたは彼女を涼宮さんと呼んでいるはず」 「他人は他人、自分は自分!私と一緒じゃ個性が光りませんよ」 想像以上に人間とは難儀だ。人間には個性が必要なのか。 「じゃあ、次は、一樹君」 「………」 口が正しく発音しようとしないのはどうした事か。朝比奈みく…朝比奈さんの満面の笑みを浮かべた顔が近づいてくる。 朝比奈みく…朝比奈さんは古泉一樹をそんな風に呼べと私に強要したいらしい。瞳の中に脅迫めいた光が宿っているのは気のせいではないだろう。 「…一樹君」 事務的な口調になってしまった。再びシャッター音がする。 どうやらまた私は彼女の心の琴線に触れる顔つきをしていたようだ。 「可愛い…!さ、もう一回古泉君の事呼んで見ましょう!」 結局二人で朝食を取り、登校時間になるまで何度『一樹君』と呼ばされた事か分からないが、嫌な気はしなかった。むしろ一樹君と呼ぶのが普通なのではないかという気持ちになってくる。 登校中、朝比奈さんは携帯電話から煙が出るのではないかと思うほどメールを打っていたが、それは各々が所属する組織への報告活動なのかもしれない。 指の動きを見てしまえばどんなメールを書いているかは解読できるが、それはプライバシーを侵す行動だ。慎むべきだろう。 それにしても、なぜ携帯電話を持っていない方の手で私の手を握ったまま歩いているのだろうか。 第二話 インデックス
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基本情報表紙 タイトル色 その他 目次 裏表紙のあらすじ 出版社からのあらすじ 内容 あらすじ「プロローグ」 「第一章」 「第二章」 「第三章」 「第四章」 「第五章」 「第六章」 「第七章」 「エピローグ」 挿絵口絵 挿絵 登場人物 後に繋がる伏線「第五章・第六章」(伏線) 「第七章」(伏線) 「エピローグ」(伏線) この巻にて回収した伏線「プロローグ」(回収した伏線) 刊行順 基本情報 涼宮ハルヒシリーズ第7巻。2005年9月1日初版発行。 表紙 通常カバー…朝比奈みくる 期間限定パノラマカバー…橘京子、谷口 タイトル色 通常カバー…青 期間限定パノラマカバー…紫 その他 本編…422ページ 形式…長編 目次 プロローグ…P.5 第一章…P.58 第二章…P.112 第三章…P.162 第四章…P.224 第五章…P.265 第六章…P.319 第七章…P.265 エピローグ…P.401 あとがき…P.428 裏表紙のあらすじ 年末から気にしていた懸案イベントも無事こなし、残りわずかな高一生活をのんびりと楽しめるかと思いきや、 ハルヒがやけにおとなしいのが気に入らない。 こんなときには必ず何かが起こる予感のそのままに、俺の前に現れたのは8日後の未来から来たという朝比奈さんだった。 しかも、事情を全く知らない彼女をこの時間に送り出したのは、なんと俺だというのだ。 未来の俺よ、いったい何を企んでいるんだ!?大人気シリーズ怒涛の第7弾! 出版社からのあらすじ 残りわずかな高一生活をのんびりと過ごすはずだった俺の前に現れたのは、8日後の未来から来た朝比奈さん!? しかもこの時間へ行くように指示したのは俺だというのだ。8日後の俺よ、いったい何を企んでるんだ!? 内容 シリーズ中最長編の巻。この巻では、朝比奈みくるメインでストーリーが進んでいく。 時系列では、第6巻『動揺』収録の「朝比奈みくるの憂鬱」の直後となり、冒頭では『消失』での伏線を回収する回想シーンが挿入されている。 新たな伏線が多く張られる巻でもある。 あらすじ 章ごとに記載。また、ネタバレ記述があるので、原作未読の場合は注意。 「プロローグ」 +... 時は2月3日。キョンの回想から始まる。 1月2日、キョンは長門、みくるとともに12月18日へと時間遡行する。長門の行為によって変わってしまった世界を再改変するためだった…… 「第一章」 +... 節分から数日が経過した日の夕方、キョンは部室へ向かうと、掃除用具入れの中から音がする 不審に思ったキョンは中を確かめてみると、そこには朝比奈みくるがいた。みくるはキョンも一緒に隠れるようにと言い、2人で掃除用具入れに入る。 しばらくして、部室に入ってきたのはまぎれもなく朝比奈みくるであった。 みくるが2人。掃除用具入れから現れた自分は、8日後から時間遡行した未来のみくるであり、時間遡行をするように言ったのはキョンだというが…… 「第二章」 +... 学校に登校したキョンは、いつものように自分の下駄箱を開けて靴を履き替える。 だが、そこには朝比奈さん(大)からの指令書(#1)が入っていた。放課後、キョンは指令書に書かれていた道具を取りに家に帰り、 自転車で長門のマンションへと向かう。 8日後から時間遡行したみくるとともに、指令書に書かれている場所に向かう。 その後、鶴屋邸へと向かい、キョンは8日後から時間遡行してきたみくるを預かってもらえるよう頼む。 「第三章」 +... 翌日、学校に登校したキョンは、自分の下駄箱を開けて靴を履き替える。そこにはまたしても朝比奈さん(大)からの指令書(#2)が。 指令書(#2)をクリアするため、みくる(みちる)とともに鶴屋家の私有山へと向かうが…… 「第四章」 +... 翌朝、キョンは目覚まし時計を止めに来た妹によって起こされ、SOS団一行で鶴屋山へと向かう。土、日曜日の件について話すハルヒ。 解散後、キョンは帰宅し鶴屋邸に電話をすると、みくる(みちる)が電話に出て、明日の件についての話をするのだが…… 「第五章」 +... 土曜日の朝、キョンは自転車で駅前へと向かい、SOS団のメンバーでいつもの喫茶店へ。 12時に再び集合した際に再びクジを引くと、今度は長門と一緒になり、長門とともに市内図書館に行く。 中で待っていたみくる(みちる)はキョン達の元へと駆け寄る。キョンとみくる(みちる)は指令書(#3)をクリアするため目的地へと向かい、 指令書(#3)に書いてある物を探すが、なぜか見つからない…… 「第六章」 +... 日曜日の朝、キョンは自転車で駅前へと向かい、SOS団のメンバーでいつもの喫茶店に入る。ハルヒの作ったクジを引き、長門と一緒になる。 キョンは長門とともに市内図書館に行く。指令書(#4)をクリアするため、その場所へと向かう。後にみくる(みちる)と合流する。 だが、朝比奈みちる誘拐事件が起こる。みくるを誘拐した犯人を追うため、キョンは新川の運転するタクシーに乗車し、古泉、森園生とともに みくるを誘拐した車を追うが…… 「第七章」 +... キョンは長門とともに駅前に戻り、ハルヒは総員解散を告げる。 翌日、キョンは駅前に向かい、鶴屋山を登り、指令書(#2)で行った場所を掘ると、箱のようなものが出てくる。その中身は… 日没後、キョンは自転車で長門のマンション近くの例のベンチに向かう。そこには朝比奈さん(大)がいた。 だが、彼女の言っていることは、これから起こる出来事らしいが…… 「エピローグ」 +... 次の日の昼休み、鶴屋さんが1年5組の教室に来る。キョンに用事があるらしく、薄暗い踊り場にキョンを連れて話を始める。 鶴屋山にて、本物の鶴屋家の宝が出てきたらしい。 その日の放課後、ハルヒはSOS団プレゼンツをする。それは、当たりのクジを引くと、みくるから手渡しでチョコがもらえるというものだった。 だが、参加者が多かったため、いつ終わるのかも分からない。長門に情報操作をしてもらったキョンは、みくるの手を引っ張ってを部室に連れて行き、 時間遡行をするように頼む。 8日前に時間遡行したみくる。少ししてから再び、掃除用具入れの中から音が聞こえる。そこに登場したのは…… 挿絵 口絵 涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希、古泉一樹(プロローグ) ⇒ 朝比奈みくる(みちる)(第一章) ⇒ キョン、長門有希(第一章)、朝比奈みくる(みちる) ⇒ 長門有希、朝比奈みくる ⇒ 挿絵 「プロローグ」 P.57…SOS団 ⇒ 「第一章」 挿絵なし 「第二章」 P.143…朝比奈みくる(みちる)、鶴屋さん ⇒ 「第三章」 P.197…涼宮ハルヒ、キョン ⇒ 「第四章」 挿絵なし 「第五章」 P.291…未来人 ⇒ 「第六章」 挿絵なし 「第七章」 P.381…涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希 ⇒ エピローグ 挿絵なし 登場人物 涼宮ハルヒ キョン 長門有希 朝比奈みくる(=朝比奈みちる) 古泉一樹 鶴屋さん 朝比奈さん(大) 谷口 国木田 キョンの妹 森園生 新川 多丸圭一 多丸裕 シャミセン ハカセくん 未来人 誘拐少女 後に繋がる伏線 「第五章・第六章」(伏線) 対立組織の登場・目的 ⇒第9巻『分裂』にて半分回収 「第七章」(伏線) 朝比奈さん(大)の言う「とても強力な未来」 ⇒未回収 「エピローグ」(伏線) 鶴屋山で発掘された謎のオーパーツ ⇒未回収 この巻にて回収した伏線 「プロローグ」(回収した伏線) 第4巻『消失』にて、もう一度12月18日に時間遡行しなければならないこと ⇒長門の行った時空改変を元通りに戻す 第4巻『消失』にて、ハルヒの見た謎の少女の正体 ⇒長門有希 刊行順 <第6巻『涼宮ハルヒの動揺』|第8巻『涼宮ハルヒの憤慨』>
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俺だけ一般人 キョン「考えてみたら、俺だけ一般人なんだな。」 今日は、あたし、いないけど、 ちゃんと団活しておく事! ハルヒはそういうと、いきよいよく教室から出て行った、 掃除当番を俺に押し付けて。 掃除当番の仕事を終え、文芸部室に行った俺を、 宇宙人・未来人・超能力者が迎えてくれた。 部室に俺が入ると、微妙な感じで雰囲気が変わった。 少し前から気付いてはいたんだが。 まあ、そうだよな、 ハルヒ以外の俺達四人が、ハルヒの起こす騒動の火消しに、 躍起になっているとき、当のハルヒは蚊帳の外。 それと、同じなんだろうな。 たしかに俺は、宇宙人・未来人・超能力者と一緒に、 ハルヒ騒動の対応に追われてはいたが、 あくまで俺は、一般人。 俺がいない時には、三人で難しい話でもしてんだろうね。 メイド衣装でおいしいお茶を淹れてくれる朝比奈さん、 にやけスマイルでボードゲームを用意する古泉、 そして、いつもの定位置で本を読む長門。 ハルヒが今日来ない事を伝えて、いつもの席に座る俺。 あれ?ちょっと普段と違うな、 いつもならハルヒは、自分自身が団活に出れない日は、 今日は団活無しって宣言してたよな? 今日に限って、 『今日は、あたし、いないけど、ちゃんと団活しておく事!』 って変じゃないか? まあ、よくわからんが、 ハルヒいないのなら、帰るか。 そう思って腰を上げかけた俺だが、 朝比奈さんのお茶と、古泉からのゲームの誘いを受けて、 席に座りなおした。 ちゃんと団活しろって、団長さんが言ってたしな。 朝比奈さんは編み物をしていて、長門はいつもの読書。 この頃の長門は、感情らしきものが芽生えてきたようで、 口数も増え、よく話すようになってはいるが、 今日は、無口なままだ。 古泉は、ゲームの盤面をみながら唸っている。 スマイル顔のままなのは恐れ入るが… 悪いがもう詰みなんだがね。 いつも通りの時間を過ごす。 いや、いつも通りじゃないな、 ハルヒのいない平和なひと時、こんなのも悪くないな。 長門が本を閉じる音、団活終了の合図だ。 いつもよりやけに早いが、こんな日は早く帰って、 家でのんびりしたいと、宇宙人でも考えるんだろ。 帰り支度を済ませ、4人で帰る。 俺と古泉の後を、朝比奈さんと長門がついて歩く。 ハルヒがいる時は、女性陣が先頭だから、いつもと逆だな。 なんて事を考えていると、古泉が話しかけてきた。 「たまには。こんな日もいいかもしれませんね。」 おいおい、いいのか、そんな事言って。 「た ま に は ですよ、たまには。 僕にも、心の洗濯が必要です。」 そんなもんかね。 まあ、俺も、今日みたいな日は悪くないと思うな。 「彼女達も、そうみたいですよ。」 振り向いて見てみると、 朝比奈さんと長門が、楽しそうに談笑している。 あの長門が、楽しそうなのにも驚いたが、 朝比奈さんもめずらしく、長門に積極的に話かけている。 まるで仲の良い姉妹みたいだ。 こんな姿はめったに見られない、 カメラで撮っておきたいくらいだ。 そんな俺の視線に気付いたのか、朝比奈さんと目が合う。 いえ、朝比奈さん、楽しそうだったので、 ついつい見とれてしまいました。 「キョンくん、そんな事言ってると、涼宮さんにおこられますよー」 「その意見に賛同する。涼宮ハルヒは、重度の焼餅焼き。」 え、朝比奈さん、なんで俺がハルヒに怒られなきゃならないんです。 ってか、長門、お前そんな言葉どうして知ってる? 「本で読んだ。意味は朝比奈みくるに教えてもらった。」 朝比奈さん、最近の長門は、良く話すようになったとは言え、 まだまだ普通に無口なんですから… もっと美しい言葉から教えてやってください、 あんまり、変な言葉を教えないでください。 「そんなー、あたしは、長門さんに聞かれて、 団長席を指差しただけですよー でも、さすが長門さん、それだけでわかっちゃうなんてー」 やれやれ そういえば、俺がいない時、三人はどんな雰囲気なんだ? なにしろ宇宙人と未来人と超能力者だからな、 一般人の俺の前では話せない事もあろうし、 なにか難しい事でも話しているのか? それとも、ハルヒや俺がいない時は、 まったりモードで楽しくやってたりするのか? いまの、朝比奈さんや長門みたいにさ。 「うーん、 涼宮さんが居るか居ないかでは、 確かに、あなたを含めた僕達4人の雰囲気は違いますが、 あなたが居るか居ないかでは…」 そう言って、古泉は言葉を濁した。 おいおい、そんな重い返事をするなよ。 気になるじゃないか。 「腹の探り合い」 長門がぼそっと言うと、 朝比奈さんと古泉の表情が一瞬引きつった。 「そうかもしれませんねー キョン君がいた方が、わたしは楽しいですね。」 「それには、僕も同意しますよ。 長門さんとなら、なんら問題もありませんが、 彼無しで、朝比奈先輩《先輩に傍点》と一緒だと、、」 そう言い合ってから、二人は吹き出して笑った。 「しかし、まあ、 あの藤原氏の方が、まだましだと思う事がありますよ。」 「えー、それは、それは、 わたしも橘さんの方が、まだ話が通じるって思っちゃってますよー」 「まあ、お互い、仕事の事ではいろいろありますからね。」 「ですねー」 そしてまた、二人は吹き出した。 なんか笑えないなぁと思っていると、 朝比奈さんと古泉から、説明があった。 仕事上で、いろいろ意見の違いもあるけれど、 個人的に対立しているわけではないそうだ。 まあ、ほんとに仲が悪いわけでもなさそうだ。 『同じSOS団員としての仲間意識もあるし、』 と言っていたしね。 Fin
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【みくる視点→ハルヒ視点】 ピンポーンとインターホンの音が鳴ってまもなく、キョンの妹ちゃんの声がした。 『はーい』 「あ、妹ちゃん?あたしだけど。」 『ハルにゃん!今開けるね~』 中からドッタッタと木製の床を走る音が聞こえた。 「わあ、みくるちゃんに有希ちゃん、古泉くんも! どうしたのー?」 「あのね妹ちゃん、キョン、居る?」 「キョンくん? 居るけど……部屋から出てきてくれないのー。」 あたしたちは顔を見合わせた。やっぱりキョンが部屋で…… 「ちょっと上がらせてちょうだい。」 「どうぞー!」 「じゃあちょっとお邪魔するわね。」 「お、お邪魔します……」 「お邪魔します。」 「………」 キョンの部屋に案内してくれた妹ちゃんは実はね、と前置きして 「キョンくん、なんか冷たいの……。今はお母さんもお父さんも居ないから、一人で寂しかったとこなんだよ。」 「まったくキョンったら……根性から叩きなおさなきゃいけないようね!」 キョンの部屋のドアからはなんとなくどんよりとした雰囲気が漂ってた。この名交渉人涼宮ハルヒがキョンを救い出してみせるんだから! 「キョン? あたしよ。」 中からの反応はなし。シカトとはいい度胸ね。 「聞こえてるんでしょ? とりあえず、出てきなさいよ。」 「……なんで来たんだ」 聞こえてきたのは、明らかにいつもより暗くて湿った感じのキョンの声だった。 「あんた、無断で学校休んでどーするのよ。SOS団部室には必ず一日一回は来ること――」 「――くだらないんだよ、そんなの!」 「えっ……」 「SOS団なんてもうやってられっか。」 「な、何よそれ!! あんたは団員第一号なのよ!? そんな事、もう言わないで!」 「……もう俺には関係ない。」 「キョン……」 「……他の奴らも居るのか。」 「ええ、みんなあんたを心配して来てくれたの。」 「よくお前らも付き合ってられるよなぁ。あんなくだらない活動に。」 「……あなたはこのSOS団の活動を少なからずは楽しんでいた……違いますか?」 「古泉か……それは違うな。俺はただ付き合いまわらされていただけだ。」 「僕は、あなたと一緒に活動していた頃は楽しいと思っていましたがね。」 「……」 「5人揃ってこそSOS団なのです。あなたが居なければ……」 「……よく言うよな。本当の目的は違うくせによ。」 「キョンくん! あなたはそんな事言う人じゃありませんよ……一体、どうしちゃったんですかぁ?」 「朝比奈さん、俺はあなたが思っているようなお人好しじゃなかった、ってことですよ。」 「キョンくん……そのっ、えと、うぅ……」 みくるちゃんは今にも泣きそうな顔で拳を震わせていた。 「ちょっとキョン! あんた、いつからそんな生意気になったわけ!?」 「ハルヒ、俺はもううんざりしてるんだよ。お前の面倒事にな。」 「はあ……!?」 「その団の目的はもう果たしてんだからもういいだろ。」 「……え?」 「ああ、知らなかったんだよな。そこにいる朝比奈さんや古泉は実は…!!」 突如、あたしの目の前が真っ暗になる。意識を無くした。 【ハルヒ視点→古泉視点】 「未来人と超能力者なんだよ!!」 ……言ってしまいましたね。もう僕はどうすればいいか…… 恐る恐る涼宮さんの反応を見ようとした僕ですが、涼宮さんは本を片手に持っている長門さんに抱きかかえられていました。 「……これは一体?」 「涼宮ハルヒを一時的に気絶させた。彼の言葉を聞かせない為。」 さすが長門さん。判断と行動の速さが天下一品です。 「今の言葉は度が過ぎている。これからは注意するべき。」 「やっぱり長門も居たのか……お前らも大変だな。」 「涼宮ハルヒの観測はわたしの義務。別に大変でもない。」 「ああ、そうかい。でもその自己中女にはうんざりしてるんだろ?」 「そんなことは、ない。」 「もうやめましょう長門さん。涼宮さんも気絶してしまいましたし……ここはもう帰ったほうがいいかと。」 まあ長門さんが気絶させたのですがね。 長門さんがゆっくりと首を縦に振って涼宮さんの体を僕へ差し出しました。 それを僕が受け取るとまた読書に移り……って、やはり僕が運び役ですか…。 「きっとあなたが考えを直さないかぎり、涼宮さんは何度でも来ると思いますよ。では、僕たちはこれで。」 「………」 涼宮さんが泣きながら気絶していたことを、彼には伝えないことにしておきます。 次の日。やはり彼は学校には来なかったようです。 いつもの顔が1つなくなったSOS団に、更に暗くなるニュースが届きます。 「今日、涼宮ハルヒは学校を休んだ。」 それは長門さんの口から発せられたもので、僕にはその顔に困ったような表情が微かにあったように見えました。 「困った状況になりましたね……」 「今日はどうしますかあ……?」 その時、予想はしていたいつもの携帯の着信音が鳴り、僕は「すいません、バイドです」と言い残して閉鎖空間へ行くことに。 「な、長門さん……どうします?」 「………」 「……か、帰りましょうか。」 【古泉視点→みくる視点】 何もできなかったその日の夜、わたしは重大な事に気付いて、思わず一人言を口走ってしまいました。 「キョンくんが死んでしまう三日後って……明日の事!?」 どうしよう、未来のわたしが言ったことだから……このままじゃ本当にキョンくんは……自殺でもしてしまうんでしょうか。 わたしはずっと考えていました。夜が明ける頃まで、ずうっと。でもようやく結論が出て、わたしは覚悟を決めました。 だって、キョンくんが死んじゃうのは嫌だから。 翌日、キョンくんと涼宮さんはごく普通に登校して放課後に部室に集まりました。 何故かって?そもそもわたしが、キョンくんが引き篭もる事自体を無くしたんだもの。そう、今日から4日後にまで戻って…。 もちろん許されることじゃないというのは分かってました。でも、わたしにはこれしかできなくて……。 【みくる視点→キョン視点】 放課後の活動中、尿意に襲われた俺はトイレに向かった。その途中に、予測もしてなかった人物と出会った。 未来の朝比奈さんである。聞くと、俺が一人で部室から出てくるのを伺っていたという。 「今回はなんですか、朝比奈さん。」 何度か会ってるせいか、俺には最初に未来の朝比奈さんと出会った時に感じた緊張感というものが無くなっていた。 「実は……わたし自身のことについてなんです。」 「朝比奈さん自身のこと?」 「ええ、キョンくん、あなたには自覚がないかもしれませんが……キョンくんの死を阻止しようとして過去のわたしがやってはいけないことをしてしまったんです。」 ん、なんだなんだ? 俺の死? それを今の朝比奈さんが阻止してくれたって? それは有難いことだが…やってはいけないこととは? 「事の発端が起こる前の過去まで戻って、その後の未来を変えてしまったんです。」 「は、はあ……」 「あまり理解してませんね。これからわたしが話すこと、集中して聞いてください。」 俺は全てを話された……らしい。俺が引き篭もろうとした(まったく、俺は何をしようとしてたんだ)事からハルヒたちとの口論までの話や、朝比奈さん(小)が過去に戻ってした事。 まあ結局全細胞を集中させたが2割程度理解できなかった部分もあったが、まあいいだろう。 「過去のわたしには、これから未来へ戻って厳重な処罰が与えられると思います。」 「厳重な処罰とは?」 「禁則事項です。」 「もう一度ここへ戻って来られるんですか?」 「禁則事項です。」 「……もしかして、死刑の可能性も。」 「……ありますね。かなりの確率で。」 「禁則事項です。」という言葉が帰ってくると予想していたが、朝比奈さん(大)は素直に答えてくれた。 「でも、未来のあなたが存在するということは、今の朝比奈さんは死んではいない……ということですよね?」 「そうとも限らないんです。」 「へ?」 「予期されぬ過去の言動は、未来に繋がる可能性があるんです。つまり、未来が変わってしまう可能性が。現に、わたしの過去にはこんな事はありませんでしたから。」 ……ええと、つまりもし朝比奈さん(小)が死刑にされてしまえば、朝比奈さん(大)も消えてしまう可能性がある、と。 「その通りです。」 『可能性』というフレーズが随分多かった会話だったが、だいたい理解できた。……じゃあこれはかなり危険な状況なんじゃ。 「ええ、そうですね……過去のわたしのことだから、絶対みんなに言わずに未来に帰っちゃうと思うから……。」 「それはもう阻止できないんですか?」 「……過去にでも戻らない限り、絶対。」 「……そうですか……。」 頭が不安がよぎった。いや、さっきから充満しているのかもしれない。 朝比奈さん(小)が未来へ帰って死んでしまう……?そんな事、俺は考えたくなかった。 朝比奈さん(大)が未来へ帰っていく。今回はヒントくれなかったな……もしかして、この情報自体がヒントだったのだろうか。 俺一人の力でどうにかするなんてこと、できやしない。それは前々から分かっていた事だ。 頼れるのは一人しかいまい。 俺はトイレを済まし、活動終了の時刻まで部室で待つことにした。 「随分長いトイレね。」 「ちょっとな。」 「ちゃんと手洗ってきたでしょうね!」 「あ……ああ。」 忘れてた。ま、まぁ……いいだろ。 この時はまだ朝比奈さんはメイド姿で部室に居た。いつ帰るんだろう? という疑問が頭の中で渦を巻いていた時、小声で朝比奈さんの声が聞こえた。 「あっ、そろそろ時間……」 確かに聞こえたその言葉。未来に帰る時間とみて間違いはないだろう。 「ごめんなさい、今日は用事があってこれで失礼します……」 「みくるちゃん、用事って?」 「禁則事こ……あ、えっと、家の用事で。」 「っそ、なら仕方ないわね……今日の分、明日ちゃんと働くのよ! いい?」 「……は、はい。」 朝比奈さんは頭をガクッと下ろしてそう言った。だが、どうせ途中で帰ってしまうなら今日部室には来ないはず……朝比奈さんはそういう人だ。 きっと名残惜しかったのだろう。朝比奈さんは制服を手に持って「じゃあ、トイレで着替えてきますね。」と言い残して部室を出て行った。 ……朝比奈さんが帰ってしまう。 条件反射で俺は部室を出た。もちろん朝比奈さんを追うためさ。 「キョン、何処いくの!?」 「トイレだ!」 「さっき行ったじゃない!」 「手を洗い忘れた!!」 「はあ?」 上手く口実を作ってハルヒの制止攻撃を受け流す。部室を出ると栗色の髪を揺らして歩く朝比奈さんが目に入った。 「朝比奈さん!!」 「ひぇっ……!」 可愛らしい顔がこちらを振り向く。両肩を掴もうとしたが、手洗ってなかったんだっけ。 「今から……帰ってしまうんですか。」 「……!どうしてそれを……?」 「俺には朝比奈さんの事はなんでもお見通しですよ。」 少し言ってみたかった言葉だ。俺の脳内ではこの後に朝比奈さんが照れ出すというシナリオが組み立てられていたのだが、朝比奈さんはしょんぼりと顎を引いた。 「ごめんなさい。勝手にこんな事を……。でも、わたしが居なくても全然大丈夫、でしょう?わたしなんか、別に……」 「何を言ってるんですか! あなたはSOS団に必要不可欠ですよ!」 たとえそれが違ったとしても少なくとも俺にはそうであることは間違いない。 「嘘です! わたしはただ、皆さんにお茶を出すくらいしか……。必要とされていない存在なんです……!」 朝比奈さんがこんな事を考えていたとは……予想外だ。 「皆朝比奈さんを必要としてますよ。ハルヒも長門も古泉だって、もちろん俺も!」 「……ごめんなさい!!」 突如腹部あたりに痛みが染み渡る。ああ、また朝比奈さんに殴られる事になるとは… 少し腹を抱える俺をよそに、朝比奈さんは時間移動を始めた(のだろう)。 「待ってくださ……朝比奈さん……!」 くそ、さっきのパンチが効いたぜ。あの細い腕であんな剛拳を放つ事ができるなんて… 「さようなら、皆さんによろしくね。」 「朝比奈さん!!」 朝比奈さんは音も無く光の中に消えていった。…残る手段は絞られた、か。 「手を洗うのにそんなに時間がかかったのかしら?」 ああ、すっかり忘れてた。もう一度本当に手を洗いに行くのは不自然か? 「何してたのよ!」 「別に大したことじゃねえよ。」 「そんな答えが許されるとでも思ってるの?だいたいあんたは……」 ハルヒは俺の無責任さに説教を始めた。俺は簡単にそんな話は聞き流したね。 部室の時計が活動終了の時刻を指した。ハルヒを先頭に、古泉と長門が部室を出て行き、その後に俺が続く。 が、ここで何もしなかったら何の意味もない。俺は小声で長門を引き止めた。 「なに?」 「あのさ、お前も…知ってたりするのか?」 「なにを」 「朝比奈さんの事だよ。」 「知っている」 なら話が早い。お前になんとかできないものなのか? 「できないこともない。けれど、この時空の流れの歴史を書き換えてしまうことになる。」 「やっぱりそれってまずいのか?」 「まずい」 「でも……お前も朝比奈さんの事が心配だろ?」 ここで長門が首を横に振ればもう終わりだと思ったけどな。長門はそんな非情な奴じゃない。 「心配」 「今度美味しいカレーでも奢ってやるよ。行ってくれるか?」 「いく」 「そうか、ちなみにどこ――まあ、この場合過去と未来とカレー屋という選択肢があるわけだ――に?」 「未来に。」 俺はてっきり過去かカレー屋へ移動するのかと思っていた。未来ってことはやっぱり…… 「朝比奈みくるがいる未来。」 だよな。俺がここで行かないわけがない。 「じゃあ目を閉じて」 「ちょっと待て。」 「なに?」 「またこの空間ごと凍結とかしたりするんじゃないだろうな。」 「しない。ここを凍結するのはあまりにも無理矢理。」 「そうか、なら続けてくれ。」 ふっ、と体が浮いたような感じ。何回も味わっている時間移動の感覚だ。これに慣れてしまっている俺はある意味――でなくともか――凄いのだろうな。すっかり未来人気分だ。 そんなに長い時間がかかったようには思えなかった。数分くらいかな? 俺は足で地面に立っている感触を掴んだ。 五感の内のひとつに異常に反応する匂い。まろやかなような、香ばしいような、それでいて辛そうな匂い…… 俺は目を開けて呆然とした。 「……あれ?」 「……間違えた」 頼むぜ長門、ここは明らかにカレー屋の厨房だ。しかもいつの時代かさえ分からん。 そしてまたさっきの感覚が俺を包む。さっきの移動時間が短かった理由が分かったね。今回は何十分もかかったような感覚だ。 着いて目を開けた先には、いつも見ている光景が広がっていた。そう、文芸部室。 「また間違えたんじゃないだろうな」 「違う。間違いなく未来。」 じゃあここは何年か後の文芸部室なのか? 長門、説明してもらわないと分からん。 「朝比奈みくるが行った未来と同じ時間平面にわたし達はいる。ターゲットを朝比奈みくるだけに揃えたから、何年後なのかは分からない。」 「朝比奈さんは何処なんだ?」 「探すしかない。」 また随分と難易度の高いミッションだな。まぁ長門が傍に居るなら何でもできそうな気分になってくる。俺は暗くなりかけていた気分を一掃し、明るい声を放った。 「じゃ、行くか!」 未来からのメッセージ 後篇へ