約 1,877 件
https://w.atwiki.jp/jhs-rowa/pages/99.html
Next Life ◆7VvSZc3DiQ 放送で、日野日向の名前が呼ばれた。 彼――秋瀬或と日野日向の関係は、クラスメイトであり、友達であり、仲間であり。 或が日向を頼ることこそ少なかったものの、日向に支えられていた部分というのは、少なからずあった。 故に、或の胸に去来するのは疼痛に似た悲しみだ。 涙を流すことはない。しかし日向の死によって生まれた空白は、確かに或の中に存在していた。 「――君も、この痛みを抱えているんだろうね」 或は、この会場の何処かに居るであろう想い人の身を案じて呟いた。 天野雪輝の名前が呼ばれなかったことは、或にとって幸いだった。 しかし、今の雪輝は――日野日向の死を、どう受け止めているだろうか。 天野雪輝にとっての日野日向は、秋瀬或にとっての日野日向のそれよりも深い意味を持っていた。 日向は、当時の雪輝にとって、最初の友達だったのだから。 今でこそ或をはじめとして雪輝の周りに人が増えたものの、日向というきっかけがなければ、今でも雪輝の傍にいたのは我妻由乃一人きりだっただろう。 そして我妻由乃は、天野雪輝にとっての『友人』には成り得ない存在だ。 だから、日野日向という少女は――雪輝が求めてやまなかった、『他愛もない日常』の象徴そのものであったと言えるかもしれない。 「それは、僕には出来ない役割だった」 中学生探偵という役割を担っていた或だ。 雪輝にしてみれば日常を共に過ごす学友というよりも、未来日記関係の騒動におけるアドバイザーという印象のほうが強かっただろう。 少なくとも、ごく一般的な友人という括りで見れば、或よりも日向のほうが雪輝の支えになっていたことは間違いなかった。 その支えを失ってしまった雪輝が――今、何を感じているのか。何を思っているのか。 「僕が今、君を助けに行く。だから少しだけ待っててくれ、雪輝君」 或はハンドルを握る手に力を込めると、更に加速すべくセグウェイの車体を前方へと傾けた。 逸る気持ちを諫めながら、周囲への警戒は怠らず舗装された道路上を進んでいく。 そういえば――或が何人かに投げかけた質問。 『君は、自分がこの殺し合いに呼ばれた意味は何だと思う?』 問われた彼女、彼らは、放送を経た今、何を思っているのだろうか。 そう、たとえば―― ◇ 「アタシは――」 ◇ 放送が始まる前。或が、月岡と真田の二人と別れる前。 月岡は或の問いにはっきりとした声音で答え、自らの意思を示した。 「アタシは――新しいアタシになるわ」 「新しい月岡君? へぇ、それはいったいどういう意味なのかな?」 月岡の答えに対して、或は興味深そうに更に問いを重ねていく。 しかしそれは、純粋な疑問から来る問いではない。 これまでの月岡との会話から、或は月岡側の事情についてはある程度理解している。 それらから推測される『新しい月岡』というワードの意味は、おそらく或の考えるそれで殆ど当たっているだろう。 だからこの重ねた問いは或のための問いではない。月岡に具体的なビジョンを持たせる、そのための問いだ。 「アタシはね、既に二回、死んでたわ。一度目は大東亜共和国でプログラムに参加させられたとき。 そして二度目は、手塚クンを殺したあの少年に襲われたとき。 今こうしてここにいることそれ自体が、奇跡に奇跡を重ねたようなモノよ」 本来ならば無かったはずの生。 それはこの殺し合いを開いた主催者と、手塚国光という男によって生まれたものだ。 「『死ぬ』前のアタシの人生といえば、そりゃもう他人様に対して胸を張れるような人生じゃなかったわ。 勿論アタシにはアタシなりのプライドがあって、アタシの中で決めたルールに反するような汚い真似はしなかった。 でもやっぱり、心の何処かに引け目のようなものを感じていて―― たとえば、三村クンや七原クンみたいな人たちとは違う人生を歩んでいくんだと、そう考えていたの」 自分はこうして、この腐った国で、日陰に身を寄せて暮らしていくだろう。 月岡は諦めにも似た納得をして、日々を過ごしていた。 「だけど、手塚クンはそんなアタシに、柱になれって、サムライになれって言ってくれた」 手塚国光がどこまで考えてその言葉を月岡にくれたのか、手塚が逝ってしまった今では想像することしか出来ない。 だが、手塚は――『託す』と、月岡に言ったのだ。 そして月岡は、『託された』。 「……初めてだったわ。他人からそんなことを頼まれるのは。 あれだけのイイ男に、最期を、その後を託されるだなんて――それこそ、オンナ冥利に尽きるわよね。 ――いいわ。既に無くなってたはずのこの生命――手塚国光という男のために、使ってあげようじゃないの。 昨日までのアタシは、もう死んだ。生まれ変わった新しいアタシは、柱だのサムライだの、そんな胡散臭い言葉に躍らされるアタシになるの」 そう言って、月岡は微笑む。つられて真田と或の二人も、笑う。 「フ……手塚の意思を継ぎ、柱の男を目指すか」 「ちょっとちょっと、柱の男っていったい何よ! アタシは身体こそ男だけど、心はオンナなんだからね!」 「それ以前に、柱の男というネーミング自体があんまりだと思うけどね…… でも、これでよく分かったよ。君たちがこの殺し合いの中で、どんな役割を果たすつもりなのかを。 『反逆者』に、『意思を継ぐ者』か――悪くない、ね」 じゃあ、僕はここでさよならだ、と或は言葉を継いだ。 じきに放送も始まるだろう、それによって行動の方針が変わる可能性もあるかもしれないと真田が引き止めるも、 「生憎だけど、その放送で僕の『友人』が呼ばれるようなことがあってはならないからね。少しでも先を急がせてもらうよ」 と、或は二人に背を向け支給品のセグウェイに乗る。 「君たちは、もう自分の道を見つけたようだけど――時には、立ち止まって後ろを振り返ることも大事かもしれないよ。 前に進むだけが正しい道とは限らない。退化は、進化の対義語ではない。覚えていてくれ」 最後に助言めいた言葉を月岡と真田に残し、中学生探偵は朝の日に照らされ始めた道を走り始めた。 ◇ もしかすると、何か奇跡が起きて、あの状況から手塚クンが生き残った可能性だってあるんじゃないかしらと、そう思っていた。 だが携帯電話から聞こえてきた男の声は、そのかすかな希望を粉々に打ち砕いた。 そして、やはり、というべきか、秋瀬或からも知らされていたマリの死も、確定した。 (分かっていたことだけど……改めて二人が死んだと思うと、センチな気持ちになっちゃうわ……) 桐山ファミリーがボスの桐山本人の手で壊滅したときは、なんとも思わなかったはずなのに―― それだけ手塚と過ごした数時間が濃密で、彼との出会いが月岡の価値観をも変えてしまったということだろうか。 いや、違う。確かに手塚に感化され変化した部分もあるが――今の月岡の胸中に到来しているそれは、彼が元々持ち合わせていた感情だ。 アウトローの皮を被り隠していたそれが、この数時間の出来事で露わになったというだけの話だ。 「……真田クンのお友達の名前は、手塚クン以外には呼ばれなかったみたいね。 アタシのクラスメイトたちもみんな無事だったみたい」 幸いと言っていいのか。手塚とマリの他には、月岡と真田の知人は放送で呼ばれることもなかった。 だがそれは、必ずしも良い報せというわけではない。 桐山和雄――月岡たちのボスとして君臨していたあの男もまた、生き残っているということだからだ。 何を隠そう、月岡に一度目の死をもたらした男こそ、桐山和雄なのだ。 ――もっとも、月岡の死は半ば月岡の自爆のようなもので、桐山が直接手を下したというわけではないのだが。 しかし、月岡が知るだけでも桐山は六人もの人間を顔色ひとつ変えずに殺している。 彼がかつてのプログラムにおいて殺し合いに乗った理由は定かではないが、この殺し合いにおいても強大な脅威になる可能性は非常に高い。 放送で呼ばれた者の中には、桐山に屠られた者もいるかもしれないのだ。 (もしかすると……アタシと桐山クンが対決することもあるかもしれないわねぇ……) 憂鬱な気分だ。たとえ、一度自分を殺した相手だったとしても――やはり、かつての仲間と殺し合うという状況はぞっとしない。 若干沈んだ気持ちを回復すべく、月岡は制服の胸ポケットに手を突っ込むと、そこから煙草を取り出した。 トントンと手慣れた様子で一本抜き取り、咥える。火をつけようとライターを構えたそのとき―― 「月岡ァ……たるんどる!」 真田の怒声が月岡の鼓膜をビリビリと鳴らした。 そういえば最初に会った時も一服ついていたときだった。あのときも、未成年のくせに喫煙などと怒鳴られたのだ。 月岡の好みの男性のタイプといえばスポーツマンタイプだが、それは三村や手塚のようにクールなタイプの場合。 カタブツ、熱血、泥臭いといった言葉がよく似合う真田は月岡の好みから外れていたし、いかにもな優等生的価値観は月岡のそれとはそぐわない。 「そんなに怒鳴らなくても聞こえてるわよ……まったく、ゆっくり一服することすら許してくれないだなんて」 「当たり前だ。未成年の喫煙は法で禁じられている。それでなくとも喫煙による身体への悪影響はだな……」 「はいはい、そんなの耳にタコが出来るくらい聞かされてるわよ。それでも吸うと決めたのはアタシなんだから、他人にとやかく言われたくないものだけどねぇ」 「……喫煙時に発生する副流煙は喫煙者の周囲の人間にも害を与える上に、その有毒性は主流煙の数倍だという話を聞いたことはないのか? お前がお前の権利を主張するようならば、俺には俺の言い分がある。少なくとも俺の目に入る範囲内では吸うのはやめておけ」 「……そこまで言うんじゃ仕方ないわね。んじゃこの一本はまた後のお楽しみってことにしときましょうか」 「だが、未成年者の喫煙をみすみす見逃す真似など俺には出来ん。この俺の目の黒いうちは、お前から目を離すことはないと思っておけ」 「ちょ、ちょっと……! それってオーボー過ぎないかしら!?」 何気ない真田との会話――だがそれが、喫煙によって誤魔化そうとしていた憂鬱や不安を消していた。 まぁ、これなら吸わなくてもいいかもしれないわねぇと、渋々と仕方なしに納得する。 同じスポーツマンでも三村などは隠れて喫煙していたようであるが、全国優勝を目指すような選手と比べると、やはり意識が違うのだろう。 「そういえば、真田クンたちの学校が三連覇がどうとか言ってたのは達成できたの?」 確か、三連覇のためにテニス部の後輩が悪魔化するのを黙認していたというような話だったはず。 全国優勝という大願のためには多少の犠牲もやむなしと考えていた彼らがその目標を達成できたのかどうかは気になるところだった。 悪魔化という言葉も気になりはするが、おそらく集中したスポーツ選手が人が変わったようなプレーをする様を悪魔化と表現しているに違いない。 「結果から言うと……我が立海は、三連覇を成し遂げられなかった。俺たちを阻んだのは、手塚率いる青春学園だ」 「え、それじゃあ優勝したのは……」 「ああ、手塚たちだ」 ――凄い男だと思ってはいたが、まさか全国優勝してしまうような選手だったとは。 やはり手塚国光という男は大した奴だと頷く。 「でも、それならテニスはもうおしまい? 真田クンだってもう三年生でしょう?」 「確かに大会こそ終わったが……俺たちのテニス人生が終わったわけではない。現に、次なる戦いの舞台――U-17選抜合宿も始まっている」 「ふーん……」 真田は、テニスという競技にひたすら懸命に打ち込んでいる。 そのひたむきさが希望や夢となり、彼らテニスプレイヤーたちの原動力となっているのだろう。 「アタシも……帰れたら、何か打ち込めるもの探してみようかしらね」 生きて帰ったあとのことなど、前回は考える余裕もなかった。 考えたところで、どうせまた何も変わりはしない日陰者の生活が続くのだから何の意味もないものだと思っていた。 だというのに、まさか自分が打ち込める趣味を探してみようだなんて――ちゃんちゃらおかしいわ、と月岡は笑った。 (夢――か。新しい、生まれ変わったアタシの――新しい夢。そんなもの、見つかるのかしらね。フフ) 【D-6/民家/一日目 朝】 【真田弦一郎@テニスの王子様】 [状態]:健康 [装備]:木刀@GTO [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1、赤外線暗視スコープ@テニスの王子様 基本行動方針:殺し合いには乗らない。皆で這いあがる道を探す 1:知り合いと合流する。特に赤也に関しては不安。 2:秋瀬或の『友人』に会えたら、伝言を伝える。 [備考] 手塚の遺言を受け取りました。 秋瀬或からデウスをめぐる殺し合いのことを聞きました。(ただし未来日記の存在や、天野雪輝をはじめ知人の具体的情報は教えられていません) 【月岡彰@バトルロワイアル】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2、 警備ロボット@とある科学の超電磁砲、タバコ×3箱(1本消費)@現地調達 基本行動方針:アタシは――手塚クンの意思を継ぐわ 1:手塚の意思を汲み、越前リョーマ、跡部景吾、遠山金太郎、切原赤也と合流する。 2:桐山クンにはあんまり会いたくないわ…。 3:ところで、柱の男っていったい何なのかしら? [備考] 秋瀬或からデウスをめぐる殺し合いのことを聞きました。(ただし未来日記の存在や、天野雪輝をはじめ知人の具体的情報は教えられていません) 【D-5/道路/一日目 朝】 【秋瀬或@未来日記】 [状態]:健康 [装備]:未来日記(詳細不明、薄らと映る未確定エンド表記)、セグウェイ@テニスの王子様 [道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~1) 基本行動方針:この世界の謎を解く。 1:天野雪輝に会いに行く(真田の忠告に、思うところあり)。 2:越前リョーマ、跡部景吾、切原赤也、遠山金太郎に会ったら、手塚の最期と遺言を伝える。 [備考] 参戦時期は『本人の認識している限りでは』47話でデウスに謁見し、死人が生き返るかを尋ねた直後です。 Back Driving Myself(前編) 投下順 Next 対象a Back Driving Myself(前編) 時系列順 Next 対象a 皇帝と探偵のパラドックス 月岡彰 しあわせギフト(前編) 皇帝と探偵のパラドックス 真田弦一郎 しあわせギフト(前編) 皇帝と探偵のパラドックス 秋瀬或 私が疑心暗鬼なのはどう考えてもお前らテニスプレイヤーが悪い!
https://w.atwiki.jp/witaka/pages/14.html
浮気の果て ○ 貞夫の住宅付近(未明) 字幕〈平成二十一年一月七日〉 午前五時半頃、新聞配達員が自転車で通る。鈴木貞夫宅の近くで、女の死体を見つける。 ○ 同所・現場検証(朝) 警察の車がサイレンを鳴らして来る。捜査員が、うつぶせに倒れてる死体の検視をする。 刑事一「首に絞められた紐の跡がある。死亡の推定時刻は、一時間強です」 刑事二「免許証があり、鈴木敦子、25歳。住所は、市川市青葉町二六の五で、すぐそこの家と分かりました」 刑事三「部長、傍に落ちていた財布からは、現金が抜き取られておりますよ」 被害者の夫の貞夫(25)が、現場に駆けつけ、遺体にすがって泣く。 刑事二「鈴木貞夫さんですね。職業は?」 貞夫「はい。房総大付属病院の研修医です」 刑事二「奥さんのお仕事は、何をなさってたのかね?」 貞夫「同大医学部の病理学教室研究員をしておりました」 刑事部長「ほう、医者同士ですな。昨夜の様子を話してください」 貞夫「前日は一緒に外出し、十時半頃帰宅。一旦就寝しましたが、午前二時半頃、敦子は、勉強があると言って研究室に出かけたのです。私は、外に出て家から十メートルの所まで見送りました。その時には、誰も辺りにいませんでした」 ○ 警察署・刑事部室 刑事一「遺体には、抵抗した跡が見られず、顔見知りの犯行と思われる」 刑事二「夫の掌に赤い条痕が付いておった」 部長「見送った時に誰も辺りにいなかったと、付け加えたのも、引っかかる。貞夫が疑わしいぞ」 刑事一「出頭してもらい、二度目の事情聴取をさせてください」 部長「うん。辻褄(つじつま)の合わぬ事を、言い出すかも知れない」 ○ 同署・取調室 字幕〈事件の四日後〉 刑事一が聴取し、刑事二は記帳する。 刑事一「事情を詳しく知りたいので、お招きしました」 貞夫「私が第一発見者です。あの日の午前四時頃、妻の事が心配になって、私は外へ出た。そして、現場で彼女が倒れているのを見つけました」 刑事一「この前の聴取では、二時半頃、家から十メートルの所まで見送ったと言いましたよ」 貞夫「あ、あれは、頭が混乱していて、勘違いです。発見した時、すでに脈は無く、呼吸も停止しておりました。上着が上までたくし上げられていたので、衣服の乱れを直しました。しばらく呆然とたたずんでいると、アベックが何やら話しながら近づいて来たのです」 刑事一「この前は、誰もいませんでしたと言っておったが、わざとらしいぞ」 貞夫「いいえ、作り話ではありません。追いかけようとしたが、つまづいてしまい、アベックは逃げて行ったのでした。私が第一発見者ですよ」 ○ 貞夫の住宅・寝室(朝) 字幕〈それから五日後〉 貞夫は、自宅のベッドの上で、注射針を腕に刺し、横たわって動かない。 語り手「採血針で腕から血を抜き、自殺をはかったようです。朝七時頃に、秋田から来ていた母親が発見し、救急車で大学病院に搬送されました。命はとり止め、しばらく入院していたのです。」 ○ 病院・貞夫の病室(個室内) ベッドに上体を起こしている貞夫。刑事二人が入室する。 刑事一「助かったようだね。どうして疑われる自殺なんかを、しようとしたのかね?」 貞夫「寂しくて、敦子のいる天国に行くつもりでした」 刑事一「入院五日目になるが、主治医から退院の許可が出たぞ」 刑事二「ちょっと、君の右の掌をみせてくれたまえ(ぐいと手を握る)」 貞夫「何をするんですか?!」 刑事が電気コードを出し、彼の掌に当てがう。 刑事二「こら、掌の皮下出血の条痕が、お前の家の電気コードとぴったりだ。敦子さんの首の絞め跡と一致したのだ。観念しろ。殺人容疑で逮捕する」 ○ 署内・取調室 刑事一「注射針を立てたのは、罪逃れの偽装じゃなかったのか?」 貞夫「いいえ、私が第一発見者です」 刑事一「医者が自己採血して眠りこけ、半端な死に方を謀るとは、嘘、ごまかしと受け取れる。真面目に反省してない証だよ」 貞夫「妻は、レイプされた事を気に病んで自殺したのです」 刑事一「そうかなあ? 電気コードの二筋の幅と溝が、首の絞殺の皮膚紋と一致し、お前の手の皮下出血の筋幅が合致した。掌の皮下出血は、相当強い力で紐を摩擦しないと、起こらないのだ」 貞夫「妻が倒れているのを見つけた時、既に呼吸が停止していました。暗闇の中にコードなんか持って出ていません」 刑事一「犯人という確証を加えると、台所の棚に置いてあった電気コードの差込口の指紋が、お前の物だけ出ている事だ」 貞夫「私は第一発見者です。妻の体に触れておりません」 刑事一「もう、聞き飽きた。嘘発見器に掛けたいところだが、身柄を検察庁に回す事にする」 語り手「逮捕されてから、取調室での犯人の供述は、二転、三転しました。」 ○ 平成医科大学・図書室 字幕〈平成十四年〉 図書室の片隅で面談する一年次生の斉藤貞夫(19)と鈴木敦子(19)。人目を気にしながら話している。 敦子「斉藤さんに、わたし一目惚れしましたのよ」 貞夫「僕も見つめておりました。山形高校の出身です。不動産が家業で、こんな田舎っぺでも良いですか?」 敦子「私、香取高校からです。同市内にある若桜病院の一人娘ですのよ。家業を継ぐために、この平成医大に進みました」 貞夫「兄がいて、僕は次男なので、自由が利けます。そのうちアパートに案内します」 敦子「そう、嬉しい。あなたが大好きです」 ○ 貞子のマンション(夜) 字幕〈四年次生の時〉 添い寝をしている貞夫と敦子。上半身裸で布団をかぶっている。 敦子「二年次生の時、香取市の実家に、お連れして行ったわね。お父さんが一目で気に入ったのでした」 貞夫「うん。そうだったようね」 敦子「親に認められたわけで、三年次生で、私があなたのアパートに通い、この四年次生からは、私のマンションで一緒に暮らしているのね」 貞夫「いわゆる同棲生活を始めたわけだ」 敦子「卒業したら結婚式を挙げましょう。それまでは、避妊法で辛抱してちょうだい」 貞夫「うん。眠くなったよ・・・・・」 ○ 平成大学・学門前 字幕〈平成二十年〉 大学の門前に、卒業証書を携え、喜び合う貞夫と敦子。 貞夫「この三月、医師の国家試験に二人とも合格、今また平成大のの医学部を共に卒業できた。おめでとう!」 敦子「おめでとうございます!」 握手する。 敦子「父が勧めた房総大の大学院の受験には共倒れしたけど、四月から同大医学部の研究員へ進みます」 貞夫「僕は、房総大医学部付属病院の研修医になる。同じ学部内で働くのだから、今までと変わりなく頼むよ」 敦子「(うなずいて)お互い離れていても近くにいるのね。安心して働けますわ」 ○ 料亭みその・奥座敷 斉藤家の益男夫妻と鈴木家の正志夫妻、並びに貞夫と敦子が、両家あい対して、ご馳走のテーブルに座している。 語り手「両家が寄り合い、四月二十日、斉藤貞夫と鈴木敦子は、正式に婚約しました。卒業祝いを兼ねて酒宴を開いたのです。」 益男「お陰様で子供同士が無事卒業できました。房総大への就職と婚約を祝し、鈴木院長先生に、乾杯の音頭をお願いします」 正志「僭越ながら、ご指名により音頭をとらせていただきます。乾杯っ!」 一同、乾杯をする。 料亭の女将「お日柄もよろしく、お祝い申し上げます。どうぞ会席料理を召し上がり、ごゆっくり御くつろぎくださいまし」 皆、料理に箸をつけ食事をする。院長が立ち上がり、 正志「婚約の前に、両家の間で話し合い、貞夫様を鈴木家に婿入りさせる事が決まりました。これからは、鈴木貞夫くん、それでよろしいですね」 貞夫「はい。承知いたしました」 語り手「鈴木院長は、市川市内に、二人のための新居を建て、七月から入居させました。乗用車ブルーバードを買い与え、月々二十万円の生活援助もしたのです。」 ○ 帝国ホテル・富士の間 字幕〈十月十日〉 結婚の披露宴の会場に、来賓・同僚・友人・親戚の三百人が座席に着いている。 正面に新郎新婦と媒酌人が登場する。 語り手「事件の三ヶ月前の事です。貞夫と敦子の結婚披露宴が開催されました。媒酌人は、房総大の学長夫妻が務めたのです。地元新聞は、名士が多数出席の挙式を大々的に報道しました。お開きの後、二人は沖縄へ新婚旅行に出発したのでした。」 ○ 鈴木貞夫と敦子の住宅(朝) 食卓に貞夫の朝食のパンにハムエッグと牛乳を出して、先に出勤する敦子。 敦子「行って参ります」 後から起きて来る貞夫。洗面を済ませ、朝食を取る。 貞夫「(独白)味気ないな。すれ違いばかりでスキンシップなどありはしない」 食事しながら寝室を眺めて、 貞夫「(心の声)ソープ嬢のマミと寝るのが楽しいや。敦子が居ない夜には、マミを連れて来ようっと」 語り手「貞夫は、新宅に移る前、千葉のアパートに敦子と住み着いてから、ソープ嬢と半同棲のように暮らしをし、入り婿の事など全く忘れていました。」 ○ キャバレー・夢路(夜) 貞夫が、ダンサーのキャサリンと抱き合ってダンスをしている。 語り手「貞夫は、ソープ嬢と八月に別れ、キャバレーに毎晩通い、フィリピン人ダンサーのキャサリンと踊り、モーションをかけたのです。新婚旅行から帰った後には、キャサリンの家に上がりこみ、交際を始めました。」 音楽がやみ、ソファーに腰を下ろして二人は酒をのんでいる。 語り手「十二月下旬に、彼女が契約切れのため、愛媛県松山市のキャバレーに移ると、貞夫は会いに出かけ、大晦日まで滞在して帰宅したのです。」 ○ 貞夫と敦子の住宅・応接間(夜) 字幕〈平成二十一年〉 貞夫が電話している。 貞夫「もしもし、キャバレーの経営者さんですか。鈴木と申す者です。キャサリンを市川市に戻してください。もしもし、二百万を用意して出しますから・・・」 応答がないので、受話器を下ろす。その時、敦子が帰宅して部屋に入る。 敦子「ただいま。あら、イービジネス・ダイレクトからの郵便物が来ている。取引明細書だわ。おや、覚えが無い百二十万円が引き出されてる。あなた、どうしたのよ」 貞夫「それ、親友の松野が女の事で団員に責められて、僕に命の助けを求めたからだ。預金引き出しの明細書で打ち明けようと、封筒を隠さずここに置いといたのさ」 敦子「さっきの電話で二百万とか言っていましたね。あと八十万円のお金は?」 貞夫「足りないので、サラ金から借りた」 敦子「父の毎月の仕送りを、暮らしの補助用に預金し、七月から年末まで百二十万円。それがゼロにされたのよ。許せないわ。その上、八十万も借金しては、生活に行き詰まってしまう。どうしてくれるのよ」 と、いきなりヒステリックになり、貞夫につかみかかる。 貞夫「(妻の手を押さえて)よせよ。交渉して半額になったというのだ。それで、百万円は現金で返すよ。残り百万の負債となり、お小遣いの三万円を無しにして、三年以内で返済するから、それで良いだろう」 敦子「この正月から給料日に毎月差し引きますからね。貸した分、少しずつでも取り立ててくださいよ」 真面目を装い、うなずく貞夫。 語り手「一月四日夜の事で、使い込みを穴埋めする約束で、喧嘩はおさまりました。例のフィリピンダンサーは、後日、歌手にデビューしたというのです。」 ○ 同住宅・台所(夜) 語り手「翌一月五日の事です。妻が邪魔になった貞夫は、ガス爆発事故に見せかけて殺害する計画を立てました。敦子のいない間に、台所のガスを漏らし、電灯スイッチを入れると引火するように、電球にひび入れを作ったのです。敦子の帰宅が遅くなり、ガスの匂いが充満していました。敦子は、電灯は点けずにガス栓をひねり、窓を開けて風を入れたため、大事に至らなかったのでした。」 敦子「あなた、ガスが漏れていました。気を付けないと危ないですよ」 貞夫「お湯を沸かした時、締め忘れた。気を付けるよ」 と、平然としている。彼は、敦子が寝室に行くと、電灯に接続してある電気コードをはずした。 (同所での時間経過) × × × 台所でガスと電球をセットする貞夫。 語り手「明くる六日の夕方。貞夫は、またもガスと電源の装置を設定しました。今度は、妻の帰宅時間を確認し、計画に自信を抱いていたのです。夜には、親友の松野家で、宴会を開いておりました。ところが、計画が失敗に終わる事になるのです。」 ○ 医学部・病理学研究室 字幕〈一月六日〉 顕微鏡をのぞいている敦子。女事務員が電話を知らせる。 女事務員「医局からのお電話です」 電話口に立つ敦子。 敦子「はい、鈴木敦子です」 語り手「貞夫が、十二月二十日から無断欠勤した事、フィリピンダンサーにキャバレーで夢中だった事が知らされたのです。昨日と今日も欠勤していると分かり、帰宅後に問い詰めたのでした。」 ○ 貞夫と敦子の住宅(夜) 敦子が夕方帰宅して、応接間の電灯を点け、台所を見ると、電球からガスこん炉にコードがつながり、ガスの匂いが鼻をつく。とっさに爆発装置だと直感し、コードをはずし、ガス栓を締める。 敦子「(独白)ああ、危ないところだった。またも仕掛けたのね。今夜こそ悪意の皮をはがしてやる。彼の帰宅まで寝ずに待とう」 字幕〈一月七日〉 語り手「午前三時半、貞夫が帰宅し、部屋明かりの様子を眺め失敗に落胆しました。」 応接間で問い詰める敦子。 敦子「午前様で、ダンサーと寝て来たのでしょう? 医局からの告知で、年末からの無断欠勤がバレたのよ。フィリピンダンサーに付きまとい、お金を注ぎこんだ事も分かったわ。それに、私をガス爆発で殺そうとした証拠を握ったのよ」 貞夫「(苦笑いして)ああ、その通り。面白くない夫婦生活に飽きが来たんだよ」 敦子「入り婿として鈴木家に泥を塗り、妻の私を見離し、浮気して殺す計画を実行するとは、怖い! もう一緒に住めないわ。実家に帰るっ」 と、着の身、着のまま、家を出る。 貞夫「(心の声)実家にバレると、人間としても医師としても、社会から抹殺されてしまう。とっちめないと、ヤバい!」 妻が取り外していた電気コードを持ち、手袋をはめて急ぎ家を出る貞夫。 ○ 自宅近辺・路上(未明) 敦子の後ろを追いかける貞夫。街灯のともる道路を行く敦子。貞夫が追いつき、首にコードをひと巻きして、力いっぱいに締め付ける。息絶えた死体を前に倒して、自宅の方向に上向きの姿勢に直し、上着のボタンをはずし、パンツを下方にずらす。ハンドバッグの中から全額二万円を抜き取り、空の財布を傍に捨てる。 ○ 千葉地裁・法廷 字幕〈公判一日目〉 語り手「千葉地検は平成二十一年二月五日、配偶者殺人事件を起訴しました。五月二十一日に始まった新裁判員制度における裁判員裁判の初公判が、五月二十八日から千葉地裁で開かれたのです。」 法廷の正面から登場し、裁判長と男女の裁判官、その両側に裁判員の男女六名が分かれて着席する。向かって左側に検察官、右側に弁護人が着席している。傍聴席の前の中央に、被告人を伴い刑務官二名が入り着座する。 裁判長「裁判員裁判の第一日目を開催いたします。検察官は起訴状を朗読して下さい」 検察官「刑法一九九条の規定により、ここに告訴する。被告人の鈴木貞夫は、本年一月七日午前四時ごろ、自宅近くの路地で、妻の敦子さんの首を電気コードで締め付け、殺害した者である。」 裁判長「人定質問をします。被告人、前へ。氏名・生年月日・職業を言いなさい」 中央の証人台に進み、 貞夫「鈴木貞夫、昭和五十九年四月二十日生まれ、研修医です」 裁判長「被告人は、宣誓をしなさい」 貞夫「私の発言に嘘・偽りの無い事を宣誓いたします」 裁判長「起訴状に対して、被告人からの言い分があれば、述べなさい」 貞夫「殺意を持ってやったのでは有りません。妻は、生きる望みを失い天国へ参ります、家をけがさず路上で死にます、お願いと言って戸外に出て、持っていた細いひもを自ら首に巻き、手を合わせたからです」 裁判長「被告人、もとの席へ」 弁護人「帰宅途中に強姦され、悲観し自棄的になった敦子さんから殺してくれと頼まれたというのです。嘱託殺人である事を主張します」 検察官「取り調べの過程において、容疑者の自供が二転、三転しているので、言い分は信用できない。実は、女遊びを妻に知られ、実家に帰ると自宅を出たので、実家にバレると、人間としても医師としても社会から抹殺されると思い、追いかけて殺したものである。故意罪を主張いたします」 弁護人「異議有り」 裁判長「却下します。続けてください」 検察官「反抗の前々日と前日、台所のガスを漏らし、帰宅した敦子さんが電灯スイッチを入れると、引火爆発するように、電球にひび割れを作ったが、ガスの匂いに感付かれ、二日目は引火の仕掛けが発覚して失敗した。この計画は、殺害行為と連関しており、殺人予備罪ないしは未遂罪をも考慮に入れるべきものと付言いたします」 ○ 千葉地裁・評議室 裁判官三名と裁判員六名が座席に対座している。 裁判長「一日目の公判について、話し合いをします。まず、お互いに自己紹介をしましょう。私は裁判長の柏木実男です。」 増岡「裁判官の増岡秀人と申します」 今川「裁判官の今川良子です」 野村「裁判員の野村卓三。木更津市役所の吏員です」 松井「裁判員の松井民代。女性マガジンのライターです」 村岡「裁判員の村岡ミサ子と申します。ライオン株支店のOLです」 青野「青野健作です。房総トラックの運転手をしておる」 有田「裁判員の有田雄介。鈴木バイク販売の店主です」 村野「裁判員村野タミ。主婦六十歳です」 裁判長「本日の公判について、意見や感想を述べてください」 野村「浮気をして奥さんを殺すとは、どうしてなのかな?」 増岡「調書によると、旧姓の斉藤貞夫が、若桜病院の婿養子となり、敦子と結婚して鈴木貞夫になった。鈴木院長にバレると大変なので、咄嗟の犯行に及んだのでしょう」 松井「とっさではありませんよ。ガス・電気コードなどを用いた計画的殺意の延長線上の犯行ですわ」 青野「妻が強姦されたの、夫が女遊びだの、どっちでもええや。早く終わってくれ。夜間運送の仕事が待ってるんだ」 ○ 千葉地裁・法廷 字幕〈公判二日目〉 裁判長「まず、検察側の証人尋問です。松野さん、証言台にお立ちください」 証言台に出た友人の松野雅夫に聞く。 検察官「被告人が夜の女に入り浸っていた事実を述べてください」 松野「ソープ嬢が、半同棲のように夜を過ごした貞夫君は、昨年夏に別れたと、不満を言ってました」 検察官「それから後、どうしたのですか?」 松野「毎夜、キャバレーに通い詰め、フィリピン人ダンサーを相手とし、十月の結婚式後には交際を始めていました。歳の暮れに四国にダンサーが移ると、追いかけて渡り、オーナーに戻してくれと告げて帰り、身請け金二百万を出すからと申しても、応じられなかったというのです」 検察官「二百万の大金について、あなたに交渉しませんでしたか?」 松野「八十万円を私に貸し付けたように口あわせをして、サラ金から借り、百二十万円は、奥さんの積み立て預金通帳から引き出すと話していました。ところが、バレたらしく、私への貸付は無かった事にしてくれと、電話がありました」 検察官「以上で終わります」 裁判長「松野さん、退室してください。ご苦労様でした」 裁判長「弁護側の証人尋問です。村野さん、証言台にお立ちください」 新聞配達員の村野富雄が現れる。 弁護人「死体を発見した時、被害者の倒れている顔の向きについて、具体的に述べてください」 村野「新聞配達の自転車を停めて、見ましたところ、南の方向に仰向けの姿でした」 弁護人「衣服は乱れていませんでしたか?」 村野「分かりません。街灯の明かりでは、洋服の面が砂で汚れていたようでした」 弁護人「尋問を終わります」 裁判長「村野さん、退室してください。ご苦労様でした」 弁護人「今の証言で、殺人は、向かい合った行為であると分かるのです。ゆえに、嘱託殺人であったと証明できます」 検察官「反証します。コードによる首の絞め具合と跡形からして、後方からの行為と断定できる。被疑者は、殺した後、被害者の体を起こし、自宅の方向に向けており、他人が殺害したように工作したのです。ハンドバッグを手からはずし、財布を出して中身を抜き取り、傍に捨てたのも、他人の殺害に見せかけたものと言える。以上」 ○ 同、地裁・評議室 裁判長「今日の証人尋問について、裁判員の意見をお聞かせください} 有田「婚約後と新婚で、ソープ嬢やダンサーと遊び関係するとは、驚きましたね!」 村野「ダンサーの身請け金まで出そうとしたのね、たまげちゃう」 村岡「サラ金から八十万円借りたり、奥さんの通帳から百二十万を盗みとったり、これも犯罪だよねえ」 野村「女と金の問題は置いといて、現場の死体についての弁護人と検察官の主張の違いを考えようよ」 松井「被害者の倒れ方が問題点でしたね」 青野「検察の言い分は賛成だ。死刑にしてもいいよ」 村岡「証拠品の電気コードと首の絞め跡、それに指紋の一致という点から、殺人の罪は逃れられないわ」 村野「死体を動かして、自宅の方向に向けたり、抜いた財布を傍に置いたりして、アリバイ工作をするずるさが明らかですわ」 裁判長「他に、ご意見はありませんか。それでは、評議会を終わります」 ○ 千葉地裁・法廷 字幕〈公判三日目〉 語り手「証人尋問の二回目です。証人は、被告人の実父の斉藤益男さんです。」 弁護人「椅子に掛けても結構です。では、お尋ねします。貞夫さんの育て方について述べてください」 斉藤「三人の子供のうち、上は姉・兄で、末っ子として生まれましたが、甘えさせる事なく、勉学面では、為せば成る、徳育面では、人の振り見てわが振り直せ、つまり自己反省して身を改めよと、厳しくしつけました。人殺しなどするはずがありません。もし、そうなら、私を身代わりに罰してください」 検察官「証人の発言について、質疑を要求します」 裁判長「質疑を許可します」 検察官「人殺しをするはずがないという事について、立証してください」 斉藤「小さい時から小動物を可愛がり、昆虫など捕らえても放してやる子供でした。また、真面目な態度で、人から後ろ指を指される事もありません」 弁護人「尋問を終わります」 裁判長「斉藤さん、退室してください。ご苦労様でした。・・・引き続いて、検察側証人の鈴木正志さん、証言台にお着きください」」 検察官「椅子に掛けても良いです。鈴木家の一員として、婿入り養子とし、お嬢さんと結婚させた被告人について、意見を述べてください」 鈴木「大学時代に相思相愛となり、面接した際は、誠実そうな青年で、気に入り、一人娘との婚約を認めました。医学の同じ道を進む者同士なので、若桜病院の後継者として入り婿婚を願い、両家合意の上で縁組をさせたのです。市川市内に二人のための新居を建ててやり、ブルーバードの新車も買い与えました。生活資金の補助として、月々二十万円の仕送りをしていたのです。信頼したのに、娘を殺害し、鈴木家に泥を塗り恥をさらし、憤懣やる方無い。若桜病院の御家断絶という悲愴の思いの毎日でございます。刑を終えて世に出ても、医者の資格は無いわけで、無縁の者として対処します。お先真っ暗の心境なのですから・・」 検察官「誠実そうな青年と言われましたが、素行調査を依頼されましたか?」 鈴木「いいえ、ただ信用し、それは致しませんでした」 検察官「同窓の学生の話によると、被告人は大学時代、敦子さんの他に、十数人と関係していた事が判明しています。以上で、質問を終わります」 裁判長「鈴木さん、退室してください。ご苦労様でした・・・・・次に、裁判員からの被告人への質問があれば、発言しなさい。被告人、前へ」 青野「実の親と義理の親の証言を聞いて、どう思いましたか?」 貞夫「実の親は、バツ一であり、末っ子の私に厳し過ぎました。養父には接する機会が少なく、恩を感じません。また、何も反省する事などありません」 松井「医師として夫婦力を合わせ、将来、病院を経営する意欲は無かったのですか?」 貞夫「妻が死ぬ前まではそう思ってました。広く病弱者や老人を救うため、医学を修めたわけです」 松井「あなたは、真の博愛者じゃない。親や家族を愛さない自己中心欲の強い人だと思います」 裁判長「意見は評議の際に述べなさい。・・ では論告の段階に入ります。判決の参考になるように、簡単に論述しなさい」 検察官「殺人ならびに死体遺棄により、被告人に懲役十五年を求刑します」 弁護人「前に刑罰に処せられていない事、更生の余地がある事により、猶予付きを希望いたします」 裁判長「被告人、前へ。・・・最後に何か言いたい事はありませんか?」 貞夫「ありません」 裁判長「被告人、元の席へ。これで結審とします。判決は、明日の公判四日目、午前十時、当法廷で言い渡します」 ○ 同、地裁・評議室 裁判長「結審しましたが、意見を述べてください」 野村「被告人は、真面目を装い、陰では淫欲に豹変する二重人格者だ。私は、彼に長期の罰を望みます」 村野「大病院に入り婿し、申し分のない人生を与えられたのに、恩も反省も感じない人ね。あきれたわ。検察の求刑に加えて、五年を加増したい」 青野「妻を殺した主人。死刑にしたいくらいです」 裁判長「無期と有期と死刑と、三つに意見が分かれています。量刑を相談し、処断刑の範囲内で、言い渡すべき刑の程度を決めましょう」 有田「検察官の十五年求刑に従います」 松井「私は、猶予無しの二十年以上を希望するわ。刑務所に入れば、厚労省からの行政処分で医師免許取り消しもあるにしても、重い刑を望みます」 青野「いや、死刑ができないなら無期刑だ」 村野「十五年じゃ少ないわ。懲役二十年はどうでしょう」 村岡「猶予の刑無しにして、少し減刑するのは、どうかしら。殺人予備行為の失敗直後は、殺そうとしなかった点からして、二年減にし、懲役十三年としては・・・」 野村「猶予刑無しの二十年が良いと思う」 裁判長「裁判官の意見は、どうですか?」 増岡「二十年の懲役を量定します」 今川「私も右の裁量に同じですわ」 裁判長「では、票決に移ります。無期か、有期の二十年、十五年、もしくは十三年かを無記名で投票するのです。なお、猶予付きは、猶予と付記してください」 投票のカードが配布され、各人記入して投票する。裁判官二人が得票を数える。 裁判長「開票の結果、私を除く八名中、二十年刑が四票、無期刑が二名、十五年刑が一名、十三年刑が一名となりました。猶予付きは無しで、実刑です。無期の分は、有期最高の二十年刑に準ずると見なして合計六票とし、多数決により、懲役二十年と決定します。裁判員裁判は、明日までです。よろしくお願いいたします」 ○ 千葉地裁・法廷 字幕〈公判四日目〉 裁判長「配偶者殺害事件の判決宣告をいたしします。主文、被告人の鈴木貞夫を、懲役二十年に処する。」 求刑よりも重い刑で、検事席・裁判官席と傍聴席に、どよめきと悲喜の表情が広がる。 裁判長「理由、罪となるべき事実、・・・」 理由書の要旨の朗読が続く。 語り手「罪の事実、証拠、法令の適用、検察官及び弁護人の主張に対する判断など、簡潔に説明され、よって主文の通り判決するの言葉で結びとされました。五月末日の判決でした。」 被告人は、無表情で、刑務官に連行されて法廷を去る。 ○ 同、地裁・評議室 裁判官と裁判員の九名が着席している。 裁判長「判決の宣告をもって、同時に裁判員の任務は終了です。ご苦労様でした。手当金を受領してお帰りください。では、散会します」 ○ 東京拘置所・面会所 貞夫と春日弁護士が、すかしの仕切りに相対している。留置担当官がメモを取りながら立ち会う。 春日「最高裁に上告の手続きをしたよ。少しでも減刑を望んでいる」 貞夫「刑を終えて刑務所を出てから、家に戻れず、親にも顔向けできず、職に就けず、罪も一生消えない。どうすりゃ良いのですか?」 春日「世の顰蹙(ひんしゅく)を買う事になるが、真人間に生まれ変わり、残る人生の命を大事にするのさ。きっと道が開けるよ」 ○ 同、拘置所・独房 独房の畳に黙想する貞夫。・・・姿が消えて、布団だけが敷かれている。小窓から夕日が差し込んでいる。 語り手「二○○九年八月十日、最高裁に上告棄却され、刑が確定しました。その九日後、鈴木貞夫は、拘置所内の個室で、畳の糸を抜いて、自ら首を絞め自殺したのです。室内には、生まれ故郷の家族宛の遺書がありました。」 貞夫の声「僕は、敦子さんの傍に行きます。皆さん色々お世話になって有難う。お母さん、一生懸命育ててくれて有難う。僕は生まれ変わっても、またお母さんの子供でいたい。もう一度、再審を受けたかった」 〈字幕。縦書き、右へスクロール〉 「この自殺により、事件は被告人死亡で公訴棄却となり、鈴木貞夫の医師資格も剥奪されていない。」 終わり
https://w.atwiki.jp/jhs-rowa/pages/77.html
Lonsome Diamond ◆7VvSZc3DiQ マリと別れた手塚と月岡は、その足を地図の中央部へと向けていた。 目下の目的は、この殺人ゲームからの脱出計画に協力してくれる人間との合流だ。 基本的には手塚の知り合いであるテニスプレイヤー達が、捜索の対象となっている。 マリと月岡には、知り合いと呼べるような人間が少なく――まして、この殺し合いで互いを欺くことなく協力出来るだけの信頼関係を築いている相手ともなれば、皆無といっていいレベルだったからだ。 月岡は手塚とその友人たちの関係を、素直に羨ましいと思った。 聞けば、手塚と日常的に親交を持っているのは同じ学校のテニス部の後輩である越前リョーマくらいなもので、他の人物たちは普段はむしろ敵――互いに競いあう、ライバルたちだったという。 もちろんテニスと殺し合いを同軸に見ることはできない。テニスで敵だったからといって、殺し合いでも敵になるだなんて考えはあまりにナンセンスな考え方だ。 しかしそれでも、テニスの試合を通じてでしか互いを知らないだろうに、手塚は彼らは信頼できると言い切った。 月岡の見たところ、手塚は一時の感情に流され理知的な判断を歪ませるような人間ではない。 楽観でも何でもない。手塚は彼らのことを、そういう人間なのだと――デスゲームの最中においても、確固たる自分を貫くことが出来る人間なのだと評価しているのだ。 (……アタシもスポーツやってれば、そんな友達も出来たのかしらねぇ?) スポーツマンは月岡のタイプだった。 月岡たち不良グループを束ねていた桐山のワイルドさも好みではあったが、クラスメートの中で一番のタイプを挙げろと言われれば、バスケットマンだった三村信史の名前が出てくるだろう。 三村のように爽やかで、おちゃらけてて、甘いマスクを持った人たちとそんな関係になれるなら――と夢想したところで。 おそらく自分の世界では――その夢は、そのまま夢物語で終わってしまっていただろうということに気付く。 三人で情報の交換をしたときに現れた、常識の齟齬――手塚の世界は大東亜共和国政府なんて頭のおかしい(きゃっ、やだ。こんなことあの国じゃゼッタイ口に出せないわ)支配者もいなければ、使徒という怪獣も襲ってこない、おおよそ平和な世界だという。 それならテニスなんて球遊びに精を出してても誰からも咎められることなんてなかったでしょうねぇ……と、やさぐれた調子で月岡は呟く。 手塚と自分とは、根本的に違う人種なのだ。同じ日の本の国の生まれのようで、まったく別の国に育った人間。 ――これ以上夢物語にうつつを抜かしても、虚しくなるだけだわ。 考えを、切り替える。今考えるべきは、よりリアルに即した事例であるべきだ。 例えば、そう。前回と今回の殺人ゲームは、一見同じようであって、そのディティールは異なる部分が多いだとか――そういうことを。 まず月岡が不気味に感じるのは、今回のプログラムには主催者である大人の影が見えてこないことだ。 前回のプログラムは大東亜共和国が国を挙げて遂行する、いわば国家行事レベルの催しだった。 その模様はテレビなどを通して、全国民に知らされていた。 だからあの国の中学生たちは、心の何処かで、殺し合いに対する覚悟というか――諦めのようなものを抱えていた。 自分たちでは到底敵わない権力が、自分たちを殺すシステムを作っている。ならば自分たちは、それに従わなくてはならない。 (キラキラ輝いてる手塚くんたちには、ちょっと分からない感覚かもしれないわねぇ、これって) だからこそ、このプログラムに反逆しようという気概があるのだろうが。 もちろん、その気持ちそれ自体を非難しようという気があるわけではない。 しかし――敵の姿が見えないまま闇雲に戦ったところで、その先に光はあるのだろうか。 月岡は、今回のプログラムの仕掛け人は、前回のそれ――大東亜共和国政府よりも強大なものだろうと考えている。 手塚たちの言が真実ならばという前置きがつくものの、まったくの別世界からこれだけの人間を集め、自分のような死人まで生き返らせている。 これではまるでファンタジーやメルヘンの世界だ。超能力者や魔法使いでもいなければ、このような異常事態は引き起こせないに違いない。 いくら参加者が手を組んだところで、まともな手段で主催者に打ち勝つことが出来るとは到底思えない。 (やっぱり……最後の一人を目指すのが確実よねぇ。 本当に生きて帰らせてくれるのか――既に死んでたアタシが、『いつ』からやり直すことになるのか、ちょっと分からないことも多いけれど) そこで月岡の思考は、一旦停止する。前を歩いていた手塚にぶつかったのだ。 手塚の背中に、顔が当たる。きゃっ、役得役得――と、喜んでいる場合でないということは、手塚の背中が強張っていることですぐに気付いた。 誰かが自分たちの前に立っている。手塚の脇の下からそっと相手を眺めてみるも、その姿に見覚えはない。 手塚の知り合いというわけでもないのだろう。相手の挙動を制する声が、手塚から発せられた。 「止まってくれ。こちらに、そちらと争う意思はない」 茶色の髪をした少年が、手塚の声を受けて立ち止まる。 顔の半分を隠すほど伸びた茶髪の間から、少年の眼がまるで品定めをするように手塚と月岡の二人を向いた。 まずは手塚。そして月岡へ。二人を見定める目に、しかし光はない。その瞳に映る色。その正体を、月岡は知っていた。 それは、絶望――だ。クソッタレの世界からさらに見放された人間が、ドブ川のほとりでぼんやりと浮かべる色だ。 しかし少年の目に映るのは、絶望だけではない。確かな、強靭な意思を感じさせる色も含まれていた。 絶望の意思――それが意味するのは何か。月岡が知るかぎり、そんなものを懐に抱え込んだ人間が望むものは――もろとも巻き込んだ、世界の破滅しかない! 「手塚くん、避けてっ!」 少年の右手に、突如として大筒が現れた。瞬間――鉄球が、二人に向かって射出される。 月岡が手塚を押し倒す形で、無様に地を転びながらも少年の不意打ちをなんとか回避する。 有無を言わさない問答無用の一撃が意味するのは、手塚たちとの絶対的な敵対だ。 少年は続く二撃目を放とうと、転がる二人に再び照準を合わせる。 「キミたちにはここで死んでもらうよ……ボクの、目的のために!」 再び放たれる鉄球が、今度こそ二人を襲う。 少年――バロウの放った鉄球の正体は、『神器』と呼ばれる天界人特有の能力の一つ、“鉄”(くろがね)だ。 高速で射出される鉄球の大きさは、おおよそ1メートル強。 圧倒的な速度と質量を以って破壊力とする鉄の塊が直撃すれば、並の人間ならば一撃で昏倒――どころか、命さえ落としかねない。 鉄塊が二人に迫る。地べたを這う形になった二人に、避けるだけの猶予は残されていない。ならば、どうする? どうすれば、この危地から脱することが出来る? ――良い考えが、何も浮かばない。月岡の脳裏に、これまでの記憶が次々と映し出される。 初めて親の経営するゲイバーに立ち入った日のこと――自分の性癖を自覚したあの日のこと――桐山がボスをやっていた、あのグループで遊んでいた時のこと―― ――いやだわ、もしかしてこれが走馬灯ってやつなの? 一回目に死んだ時はこんなこと思い出す暇もなく死んじゃったってのに―― 二回目の生は、まったく短いものだった。こんなにあっけなく死ぬことになるだなんて―― ああ、どうしようかしら。球が、どんどん近づいてくる。頭の中ではこんなに色んなコトを考えてるってのに、肝心の身体のほうが動いちゃくれない。 ああ、ああ――! “鉄”が、二人の身体を圧し潰す――はずだった。 「……え?」 覚悟を決めて閉じた目を再び開いたその時、月岡の視界に入ってきたのは、自身の眼前で停止した鉄球の姿だった。 止まっている。あれだけの勢いで迫ってきていた鉄球が、ぴくりとも動いていない。 いきなり鉄球を撃ってきた少年も十分に不可解な存在だったが、この状況は更にそれを上回っている。 何故なら――鉄球を止め、支えていたのは手塚の左腕一本だけだったのだから。 いつの間にか手塚の左腕には、一本のテニスラケットが握られていた。 信じられないことに、彼はそれを使い、鉄球の勢いを殺し、受け止めた――らしい。 「……問答無用というわけか。ならばこちらも――」 手塚はバロウを敵対者とみなした。相手が無作為に殺人を行う殺戮者であるならば――情け容赦は不要だ。 殺しはしない。だが、自身の行いがどういう意味を持つのか、その身体に教え込んでやろう。 気迫と共に、手塚の周囲にとある力が顕在化する。 己の限界を超えた者だけが至ることが出来る境地――無我。 無我の境地に至った者だけが扱えるオーラが、手塚の身体を包んでいた。 視覚化するまでの濃度に練りこまれたオーラが、姿形を変えて手塚の左腕へと集まっていく。 「……倍返しだ!」 手塚のラケットに受け止められ、静止していた鉄球に力が加わる。 先の攻撃――バロウから手塚たちへと向けられたものとは、逆のベクトル。 そして込められた力は、先の倍に膨れ上がる。 無我のオーラを右手に集めることで、相手の攻撃の種類に関わらず威力を倍返しにする――それこそが無我の境地第一の扉、百錬自得の極み! 「――くっ!」 たまらずバロウは防御の神器である“威風堂堂”(フード)を現出させ防御を図ろうとするが、このタイミングでは“威風堂堂”は間に合わない。 バロウたち天界人が持つ神器は一つ一つが強力な武器であるが、原則として複数の神器を同時に使用することは出来ないのだ。 つまり、バロウが撃った“鉄”がまだ消えていないこのタイミングでは、バロウは他の神器を使用することが出来ない。 この一瞬の判断ミスが、回避の遅れを招いた。 次の瞬間、打ち返された“鉄”を横飛びに回避することで直撃は避けたものの、バロウは半身に決して軽くないダメージを負うことになる。 「……お前が今感じている痛みが、分かるか? それが――お前が撒き散らそうとしていたものだ」 手塚は静かに告げる。手塚に打ち返され、バロウが受けた痛みこそ、彼が殺戮者となり撒き散らそうとしていたもの。 彼自身がその痛みを知れば――殺戮を繰り返すことの愚かさを知れば――考えを改めてくれると、そう考えての言葉だ。 だが、バロウは手塚の言葉に何も返さない。言葉も、視線も。走り、場所を変え、再び“鉄”を手塚たちへと放つ。 自分の言葉が届かないならば、何度だろうと打ち返すだけだと、手塚は百錬自得の極みを駆使し“鉄”を打つ。 しかしその行動はバロウも予測していたのか、打ち返された“鉄”が向かう先に既にバロウの姿はない。 「……無駄よ、手塚クン。アナタには分からないかもしれないけど――アタシには分かるわ。 あの子が抱えてる闇は、温室育ちのアナタには分からないほど深いのよ。アナタの言葉じゃ届きっこないわ」 バロウへの説得を続ける手塚を諭すように、月岡が言葉を発した。 ゲイバーという、社会の裏の部分に身を寄せてきた月岡には分かる。 敵対する少年が抱える絶望は――世界の闇の部分に喰らい尽くされた者が持つ闇だ。 こう言っては悪いが、常人では考えられない高みに至れるほどテニスなどという遊戯に専念し、時間も労力もかけることが出来る手塚のような人間には、想像することさえ難しいだろう。 「月岡……お前はそうやって、あいつを切り捨てるのか?」 「……切り捨てるだなんて、人聞きが悪いわね。アタシはただ、そこまでしてあの子を助けてやる義理はないって言ってるのよ」 まさか手塚がこれほどまでの手練とは思っていなかったが、彼ならばこのまま少年を一方的に倒してしまうことも難しくないだろう。 わざわざ手加減して、説得する必要などない。これだけの危険人物ならば、説得するよりも殺してしまったほうが遥かに楽だ。 「……確かに、お前の言うことも正しいのかもしれない」 「でしょう? ほら、分かったならさっさとあの子を倒しちゃって……」 「だが――だからこそ俺はあいつを助けたいと思う。 あいつが闇に心を囚われているというのなら、誰かがそれを救ってやらなくてはならない。 見捨てることは簡単だ。ならば――俺は、敢えて困難な道を――しかし、俺が納得できる道を選ぼう」 ……真性だ。本物だ。このお坊ちゃんは、本物の温室育ちだ。そう思う一方で、月岡は手塚の言葉に言い表せない感情を抱いていた。 愚直といっていい真っ直ぐさが、月岡には眩しかった。本来なら、自分とは決して交わらないタイプの人間だ。 だが、もしも……もしもこんな男と、もう少し早く出会っていたなら……自分は何か変わっていたんじゃないのか? 救われていた。そう、自分がどこか感じていた引け目や敗北感など気にせず生きていけるように―― 「“鉄”!」 バロウの声を聞き、妄言に集中しかけていた意識を現実のそれへとピントを合わせ直す。 “鉄”――鉄球ならば、手塚が全て打ち返してくれている。自分はただ、手塚の後ろについて流れ弾に当たらないよう注意していればいい。 しかし、次の瞬間。月岡は、手塚に押し倒される形で地面に倒れていた。 「えっ、ちょっと、手塚クン……そういうの嬉しいんだけど、もうちょっと後にしてくれないかなァ……」 「ぐっ……!」 軽口を叩けたのは、少しの間だけ。手塚のうめき声が、彼の負傷を教えてくれる。 手塚が月岡をかばって負傷したのだということは分かる。しかし、何故? 月岡が見る限り、バロウの放った鉄球は手塚には当たっていないはず。 いったい手塚は、どの攻撃を受けたのだ――!? 「月岡……後ろだ!」 手塚の声に、月岡は振り返ることすらせずにごろりと手塚ごと横転し、飛来してきた“鉄”をかわした。 後方からの攻撃――しかし、バロウは前方にいるはず……!? それまでの直線的な攻撃とは違う多方向からの攻撃が、手塚と月岡の二人を襲っていた。 「ちょっと……どうなってるのよコレ!?」 「分からん……だが!」 百錬自得――! 手塚は、月岡をかばいながら襲い来る“鉄”のことごとくを打ち返していた。 しかし、飛来するペースは先の倍以上。それら全てを完全に対処することは出来ず―― 「手塚クン! しっかりして!」 勢いを殺し切れなかった“鉄”によるダメージが、手塚へと蓄積していく。 痛みにうめく暇もなく“鉄”は飛び続け、じわりじわりと手塚と月岡の体力を削っていった。 同時に飛来する“鉄”の数も、どんどん増えていく。 三個、四個の鉄球が同時に襲い来れば、いかな超中学生級のテニスプレイヤーである手塚国光であろうとも捌き切ることは不可能だ。 「いったいどうなってるのよ……!? なんでこんな……色んなところから攻撃が飛んでくるのォ!?」 「いや……分かったぞ。この能力の正体が」 幾多の鉄球をその身に受け続け、手塚はバロウの攻撃の正体を悟った。 バロウの能力――それは、 「過去に行った攻撃を、再び発生させる能力……!」 少年の攻撃を見て、気付いたことがある。バロウ自身から発射される“鉄”以外の軌道は、既に一度見たことがあるものばかりだった。 言うなれば、同時に飛来する複数の“鉄”のうちバロウ自身が撃ったもの以外は過去の攻撃と同一、焼き直し。 バロウが初撃のあと走りまわり、場所を変えながら攻撃していたのは全てこの攻撃のための布石だったのだ。 「さすがね手塚クン! それが分かるんだったら、あとは……」 「いや、月岡……俺たちは、『詰んだ』」 ……気付くのが、あまりに遅すぎたのだ。手塚はバロウの攻撃から月岡を守るために、殆どその場から動くことなく“鉄”に対処していた。 その間にバロウは手塚たちの周りを動き回り、各所から“鉄”を放っていた。今や360度、あらゆる角度から“鉄”は手塚たちを狙っている状態だ。 「そう、キミたちは今、完全に包囲されている。……もう、命乞いをしたところで、どうしようもないけれどね。 次の“鉄”一斉攻撃で、キミたちは確実に死ぬんだよ」 今までに放たれた“鉄”の総数は、軽く数十を数える。 手塚の記憶によれば、その半数は手塚たちを直接狙う軌道を、そして残りの半数は二人の退路を断つように配置されているはずだ。 手塚とて、それだけの数の“鉄”を、月岡を守りながら突破することは出来ない。 「だが、月岡……お前だけなら、まだ逃げ切れるはずだ。ここは俺が引き受ける」 「ちょっと、何言ってるのよ手塚クン! アタシだけ逃がすだなんて、その気持ちはありがたいけど……アナタも一緒じゃなきゃ、意味が無いでしょう!? それに完全に囲まれてるんだったら、片方だけでも逃げ切るなんてこと、本当に出来るのか……」 「月岡。俺はお前に、託す。あの少年……このままだと、他の人間にも危害を加えるだろう。 だが、過去を繰り返す能力は、あいつが攻撃を重ねる前ならば対処は容易い……この情報を持って、彼に対抗できる戦力を作り上げてくれ。 俺たちがここで二人とも倒れてしまえば、それすら出来なくなるんだ。それに……俺のこの腕は、もう持たない」 手塚は、己の左腕を弱々しく持ち上げた。そこで月岡は初めて気付く。 月岡をかばって負傷したあの時、手塚は左腕をも痛めていたということを。 それでもなお懸命に、月岡をかばい敵の攻撃をはねのけ続けていたということを。 「手塚クン……!」 「……お前を逃がす算段はつけてある。だが、チャンスは一度きりだ。……行ってくれ。 そして、俺の名を知る人間たちに、伝えて欲しい。……お前たちが、柱になれ、と。 月岡……お前も、柱になれ。この殺し合いに反逆する、サムライになるんだ」 「手塚、クン……」 手塚の意思は固い――悟った月岡は、手塚に背を向けた。 「さよなら、手塚クン……少しの間だったけど、アナタのこと、大好きだったわ」 「……頼んだぞ、月岡」 バロウの右腕に“鉄”の砲身が創製される。 これで、終わりだ――バロウがそう呟いた瞬間、全方向から一斉に“鉄”が発射された。 絶対回避不可の一斉射撃――その狙いの中心にいた手塚は、身に纏うオーラをより一層増幅させた。 「今だ! 行け、月岡!」 月岡は無数の“鉄”が飛来する空間を、駆ける。走り抜けられるのか? いや、行けるはずだ。何故なら、手塚は――言ってくれた。月岡を助ける術はあると。 ならば、間違いない。行けるはずだ。震える足がなんだ。ここで行かなきゃ――オンナがすたる! 最も速く自身へ届いた鉄球を、手塚は握ったラケットに力とオーラを込め打ち返す。 インパクトの瞬間、鉄の重みと速度が衝撃となり、痛めた手塚の左腕を更に苛んだ。 しかし、対象が巨大な鉄球であろうとも――相手が球の形をしているならば、なんであろうと関係ない。 まして今の自分の左腕には、月岡の命も懸かっているのだ。たとえこの左腕が壊れようとも――振り抜いてみせる! 無我――我を忘れ、ただひたすらに、自らが愛したテニスに対する感謝を込め、一打した。 百錬自得――増幅されたオーラが、打ち返す“鉄”に特殊な回転を加える。 才気煥発――これまでに放たれた“鉄”の軌道と、相互干渉の計算は既に終わっている。 手塚国光、人生最後の、そして渾身の一打が放たれた。 「なんだって……!?」 バロウは、眼前の光景が現実のものだと信じられなかった。 手塚の放った一打が、全ての“鉄”に干渉し、そのコースを微妙に変えていた。 一つ一つの軌道の違いは、誤差のレベル――しかしそれらが跳ね、弾け、ぶつかり合うことによって、誤差は次々と巨大なものになっていく。 逃走ルートさえ残さないほどの密度で放たれたはずの“鉄”に、一つの抜け道が出来ていた。 そこを駆けて行く男が、一人。月岡彰が、“鉄”の包囲を抜けていく。 「くそっ!」 一人仕留め損なったことに歯噛みするも、まずは残った敵を殺すことが先決だ。 バロウは、再び“鉄”を構え、手塚へと照準を合わせた。 既に手塚は――瀕死の状態だった。 手塚と月岡、二人とも無傷ですませるように“鉄”の軌道を変えることは不可能だと判断した手塚は、自身の安全を度外視し、“鉄”へと干渉したのだ。 故に、手塚は“鉄”の直撃を幾度も受けている。限界を超えて放った一打のせいで左腕の握力もとうに無くなっていた。 手塚の手からこぼれ落ちたラケットは“鉄”を幾度も打ち返した代償として、フレームは歪み、ガットも破れ、テニスラケットとして既に機能しない。 だが手塚は、まだ立っていた。中学生離れした眼力が、バロウを見据える。 「お前は……何故、人を傷つける……?」 「そんなことを聞いて何になるっていうの? もう、キミは死ぬのに。 でも……そうだね、最後に教えてもいいか。ボクは……人間になりたいんだ。こんな力なんかない、ただの人間にね」 「そのために……その力を、使うのか」 「そうだよ。『目的』のためなら……ボクは、なんだって利用する。この忌々しい力だって、なんだって……!」 「俺は……そんな力があろうとなかろうと、人は、人として生きていけると思っている」 「――嘘だ。こんな力があるから……ボクは、人間になれないんだ。母さんと一緒にいることが……出来ないんだ……!」 バロウ・エシャロットの願い――それは、天界人としての力を捨て、ただの人間になること。 彼は天界人としての自覚がないまま幼少期を過ごしてきた。 絵描きだった養母に拾われ、貧しいながらも不足のない、ささやかな幸せを享受する日々――しかし、日常の終わりは、突然だった。 バロウが天界人としての自覚と共に“鉄”の能力を得たのは――養母を強盗と間違い、発現したばかりの能力で彼女を傷つけてしまったその時だった。 以来、母はバロウに対して何の反応も示さなくなった。声と音をなくし、廃人同然となった母を謝罪の気持ちと共に看護し続けても、彼女はバロウの気持ちに気付いてくれない。 そしてバロウは、こう思ったのだ。 『ボクが母さんに気持ちを伝えられないのは……ボクが、化け物だからなんだ』 ボクがただの人間だったら、母さんは傷つかずにすんだ。 色んな音や景色、言葉を、母さんと共有することが出来たはずなんだ。 ボクは……こんな忌々しい力はいらない。だけど……もしも、ボクがただの人間になれるんだとしたら。 この力に頼ってでも……『目的』を、成し遂げてみせると、そう決めた。 「ならば……もしも『ただの人間』が、お前を倒すことが出来れば……力は、『ただの人間』として生きるためには何の関係もないという証明が出来るな」 「……ッ! 無理だ! そんなの……無理に決まってる!」 「出来る。お前は、ただの人間として生きていくことが出来る。……そのことを、俺の仲間が証明してくれる。 だから、その時は……お前も、俺の仲間たちに協力してやってくれ」 「出来っこない……! そんなこと!」 バロウは、半ば衝動的に“鉄”を放った。 手塚は避けもせず、防御姿勢も取らず、ただそのまま、バロウの力を受け止めた。 「ぐっ……!」 「お前の言葉は……ボクに伝わらない! ボクの言葉も、お前に伝わらないっ!」 「伝わらないなら、何度でも言ってやろう……お前は『ただの人間』になれる。その力があろうとなかろうと……お前は、なれるんだ……」 お前がなりたい、『ただの人間』に。 最後の言葉はか細くかすれ、バロウには届かない。 そして手塚国光は――静かに倒れこみ、呼吸を止めた。 【手塚国光@テニスの王子様 死亡】 【D-5/市街地/一日目・黎明】 【バロウ・エシャロット@うえきの法則】 [状態]:左半身に負傷 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~3)、 死出の羽衣(4時間使用不可)@幽遊白書 基本行動方針: 優勝して生還。『神の力』によって、『願い』を叶える 1:他参加者と出会えば無差別に殺害。『ただの人間』になど絶対に負けない。 2:ロベルト・ハイドンを探して指示を仰ぐ。ただし、機を見て裏切る。 3:皆殺し。ロベルト・ハイドンも最後には殺す。 [備考] ※ロベルト・ハイドンをアノン(に吸収されたロベルト)だと思っています。 ※手塚のデイパック(基本支給品一式、不明支給品0~2)が近くに落ちています。 【月岡彰@バトルロワイアル】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2、 警備ロボット@とある科学の超電磁砲、タバコ×3箱@現地調達 基本行動方針:生き残る。 1:手塚の意思を汲み、彼の知り合いと合流する。 2:海洋研究所以南を探索。 3:桐山クンにはあんまり会いたくないわ…。 [備考] ※手塚国光、真希波・マリと、簡単な情報交換を行いました。互いの世界と知り合いを、おおざっぱに把握しています。 【テニスラケット@現実】 手塚国光に支給。 何の変哲もないただのラケット。 Back 情報交換という名の、何か 投下順 World Embryo Back 情報交換という名の、何か 時系列順 World Embryo 友情の法則 バロウ・エシャロット 化物語 ―あかやデビル― Boy meets Girl and Gay 手塚国光 GAME OVER Boy meets Girl and Gay 月岡彰 皇帝と探偵のパラドックス
https://w.atwiki.jp/gosyutan/pages/522.html
富山県富山市月岡町の高野山真言宗 月岡山円城院(えんじょういん)をお訪ねしました。 呉東新西国三十三所の第30番札所です。 所在地 富山県富山市月岡町5-181
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/201.html
呼ばれし者の末路 ようするに死亡者リストです。 死亡者の名前をクリックすると、そのキャラの死亡話へ飛びます。 殺害者の赤文字はクリーチャーです。 序章~サイレン一周目まで(3人・47/50人) 死亡者 殺害者 死亡時刻 死亡エリア 死亡状況 ジェイムス・サンダーランド レッドピラミッドシング 一日目夕刻 D-5 / 駅構内 頭から真っ二つにされる ヨーコ・スズキ ゾンビ 一日目夕刻 D-6 / 住宅街 咽喉を食いちぎられる ブラッド・ヴィッカーズ タイラント NEMESIS-T型 一日目夕刻 E-2 / 路上 触手に顔面を貫かれる + 最期の言葉 死亡者 最期の言葉 ジェイムス・サンダーランド ※無し ヨーコ・スズキ 「デイライトを、どうか」 ブラッド・ヴィッカーズ 「助けて…助けて…助けてっ!」 サイレン一周目~サイレン二周目まで(19人±6・26/50人) 死亡者 殺害者 死亡時刻 死亡エリア 死亡状況 岩下明美 エドワード(シザーマン) 一日目夜 B-6 / アルケミラ病院一階エレベーター内 身体の内側から真っ二つに千切り飛ばされる 逸島チサト 美浜奈保子 一日目夜 A-3 / 雛城高校 後頭部を拳銃で撃ち抜かれる マイケル・カウフマン エディ・ドンブラウスキー 一日目夜 B-5 / ボウリング場 頭を拳銃で撃ち抜かれる シェリー・バーキン デルラゴ 一日目夜 D-4 / トルーカ湖 一呑みにされる 藤田茂 ハンターγ 一日目夜 D-4 / トルーカ湖 丸呑みにされる 竜宮レナ タイラント NEMESIS-T型 一日目夜 E-2 / ショッピングモール 頭から踏み潰される カルロス・オリヴェイラ タイラント NEMESIS-T型 一日目夜 E-2 / ショッピングモール 顔を触手で貫かれる 園崎魅音 ブラッド・ヴィッカーズ(闇人) 一日目夜 E-2 / 路上 腹部や胸部を拳銃で撃ち抜かれる 日野貞夫(1回目) 北条悟史(ガナード) 一日目夜 C-3 / 雑貨屋付近 首ごと脊柱を引っこ抜かれる 美浜奈保子 風間望 一日目夜 A-3 / 雛城高校付近民家 顔面を蹴られまくり撲殺される 神代美耶子 園崎詩音 一日目夜中 A-2 / 路上 腹部や胸部を銃で撃ち抜かれる 日野貞夫(2回目) 闇人 一日目夜中 C-4 /氷室邸内 散弾で腹部をズタズタにされる 園崎詩音 ケルブ(闇人) 一日目夜中 ?-? / 路地裏 喉笛を食い千切られる ダグラス・カートランド 闇人 一日目夜中 C-5 / 公園前の通り 銃で撃ち殺される 日野貞夫(3回目) ケルベロス 一日目夜中 C-4 /氷室邸付近 頸動脈を噛み千切られる 風間望 レッドピラミッドシング 一日目真夜中 A-3 / 雛城高校 首を切断される 日野貞夫(4回目) ゾンビ 一日目真夜中 C-3 /民家 生きたまま喰われる 日野貞夫(5回目) ラージ・ローチ 一日目真夜中 C-3 /側溝 生きたままじっくり食われる 福沢玲子 エディー・ドンブラウスキー 一日目真夜中 C-6 /カッツ通り 素手で解体される 前原圭一 タナトス 一日目真夜中 D-3 /研究所 爪で串刺しにされた後、引き裂かれる 雛咲深紅 タナトス 一日目真夜中 D-3 /研究所 爪で切り裂かれる 新堂誠 床 一日目真夜中 D-3 /研究所 タナトスに突き飛ばされて、50mを自由落下して床に激突 八尾比沙子 天井う……新堂誠(怨霊) 一日目真夜中 D-3 /研究所 怨霊に憑依されて転落死 牧野慶 ケルブ(闇人) 一日目深夜 D-2 / 警察署付近 咬み殺される 日野貞夫(6回目) ヨーン 一日目深夜 D-2 /警察署付近 半身の骨を砕かれ窒息させられた上で食われる クローディア・ウルフ エドワード(シザーマン) 一日目深夜 A-3 / 雛城高校・裏山(四鳴山) 身体を引き裂かれ、神を奪われる + 最期の言葉 死亡者 最期の言葉 岩下明美 (……な…………ん………………) 逸島チサト 「ユカリちゃん……ユカリちゃん……!」 マイケル・カウフマン 「電話?これがかね?」 シェリー・バーキン ※無し 藤田茂 「行くんだ。あんたが下らねえことを迷っている間に、あの女の子が怪我でもして見ろ。俺は絶対に赦しゃしねえぞ! 行け!」 竜宮レナ 「カルロスさん、はやく!」 カルロス・オリヴェイラ 「ガン、飛ばしてんじゃねえよ……」 園崎魅音 「ちくしょう……。絶対仇取ってやるからね。絶対だよ……!」 日野貞夫(一回目) 「ぐ、が……」 美浜奈保子 あぁ・・・・きれい・・・・ 神代美耶子 「……儀式なんて!そんなの関係ない!お前が勝手にそう思っているだけだ!そうに決まってる!」 日野貞夫(二回目) ※無し 園崎詩音 「…………――――!?」 ダグラス・カートランド 「異論はないよ……」 日野貞夫(三回目) ※無し 風間望 (た、助かった) 日野貞夫(四回目) ※無し 日野貞夫(五回目) ※無し 福沢玲子 「やめてごめんなさいすいませんもうしませんやめてやめてやめてや――!」 前原圭一 「あれ――?」 雛咲深紅 「じ、ジェニファー、さんは!?」 新堂誠 ※無し 八尾比沙子 どうして私がこんな目に…… 牧野慶 「よかっ……った……!」 日野貞夫(六回目) 「蛆虫ッ! 蛆虫ィィィイイ! さっさと土に還れ、下等生ぶ――」 クローディア・ウルフ 「――――ぐっ…………!?」 サイレン二周目~脱出まで(9人/50人) 死亡者 殺害者 死亡時刻 死亡エリア 死亡状況 ケビン・ライマン ヨーン 二日目深夜 D-2 / 警察署敷地内・東側 咬み殺される 日野貞夫(7回目) ヨーン 二日目黎明 D-2 /警察署付近 全身を押し潰される 雛咲真冬 エディー・ドンブラウスキー 二日目早朝 B-6 /レンデル通り 四肢を引き裂かれる エディー・ドンブラウスキー ゾンビの群れ 二日目早朝 B-6 /レンデル通り 群がられ全身を貪られる エドワード(シザーマン) アレッサ・ギレスピー 二日目早朝 A-3 /雛城高校・裏山(四鳴山) 魔力を吸い尽くされ干乾びる 長谷川ユカリ タイラント NEMESISーT型 二日目早朝 B-6 /アルケミラ病院 鉄パイプの一振りで肉塊にされる 岸井ミカ タイラント NEMESISーT型 二日目早朝 B-6 /アルケミラ病院 鉄パイプの一振りで肉塊にされる 式部人見 タイラント NEMESISーT型 二日目早朝 B-6 /アルケミラ病院 鉄パイプで頭を潰される 氷室霧絵 リッカー 二日目早朝 B-3/路上 リッカーの舌により顔が爆ぜる 小暮宗一郎 リッカー 二日目早朝 B-3/路上 リッカーの群れと戦うも脊椎や内蔵が潰れ死亡 古手梨花 リッカー 二日目早朝 B-3/路上 リッカーの舌に貫かれる? 霧崎水明 タイラント NEMESISーT型 二日目早朝 B-3/路上 植付けられた生物に腹を食い破られる 風海純也 タイラント NEMESISーT型 二日目早朝 B-3/路上 水明の腹を食い破り出てきた生物に首を食い千切られる ジェニファー・シンプソン タナトス 二日目早朝 D-3/研究所 鷹野三四に盾にされ、爪で切り裂かれる 鷹野三四 ジム・チャップマン(ゾンビ) 二日目早朝 D-3/研究所 ゾンビ化したジム・チャップマンに食い殺される ジム・チャップマン 三沢岳明 二日目早朝 D-3/研究所 ゾンビ化し頭を撃ち抜かれる ハンク H.C.F. 二日目早朝 B-4/灯台 G殲滅の為のヘリ機銃掃射に巻き込まれる 宮田司郎 宮田司郎 二日目早朝 場所 サイレントヒルの浄化の為宇理炎に命を捧げる + 最期の言葉 死亡者 最期の言葉 ケビン・ライマン 「てめえのスペシャルミールは、ケビン・ライマンシェフ特製ダイエットフードってことだ……!」 日野貞夫(七回目) ※無し 雛咲真冬 ※無し エディー・ドンブラウスキー 『ァァアァアァアアァァッァアァ』 エドワード(シザーマン) 「があっ――――」 長谷川ユカリ 「うっさいバカ。バカァ……」 岸井ミカ 「センパイ、こーいうのはあたしの役目じゃ……らしくないですよ」 式部人見 「こんなこと……信じない」 氷室霧絵 「ありがとうございます」 小暮宗一郎 「う…………うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 古手梨花 「風海……!」 霧崎水明 「逃げろ!」 風海純也 「なんだ兄さん。そのおまじない、役に立たないじゃないか」 ジェニファー・シンプソン 「…………ミヨ?」 鷹野三四 「助け……」 ジム・チャップマン 「ない。ただ、黒くてでかい海パン野郎の血ってだけだ。そいつがどこにいるかわからないと」 ハンク ※無し 宮田司郎 「今、お前たちを楽にしてやる」 キルスコア・ランキング 順位 殺害者 キルカウント 被害者 1位 タイラント NEMESIS-T型 8人 ブラッド・ヴィッカーズ、竜宮レナ、カルロス・オリヴェイラ、長谷川ユカリ、岸井ミカ、式部人見、霧崎水明、風海純也 2位 ヨーン のべ3人 日野貞夫×2、ケビン・ライマン 闇人シリーズ(闇ブラッド、闇人零式、闇USS) 3人 園崎魅音、日野貞夫、ダグラス・カートランド エディー・ドンブラウスキー 3人 マイケル・カウフマン、福沢玲子、雛咲真冬 ゾンビシリーズ 3人 ヨーコ・スズキ、日野貞夫、エディー・ドンブラウスキー リッカー 3人 氷室霧絵、小暮宗一郎、古手梨花 タナトス 2人 前原圭一、雛咲深紅、ジェニファー・シンプソン 8位 レッドピラミッドシング 2人 ジェイムス・サンダーランド、風間望 闇犬(ケルブ) 2人 園崎詩音、牧野慶 エドワード(シザーマン) 2人 岩下明美、クローディア・ウルフ 11位 美浜奈保子 1人 逸島チサト デルラゴ 1人 シェリー・バーキン ハンターシリーズ(ハンターγ) 1人 藤田茂 風間望 1人 美浜奈保子 園崎詩音 1人 神代美耶子 床 1人 新堂誠 ガナードシリーズ(支配種) 1人 日野貞夫 ケルベロス 1人 日野貞夫 ラージ・ローチ 1人 日野貞夫 怨霊(新堂誠) 1人 八尾比沙子 アレッサ・ギレスピー 1人 エドワード(シザーマン) ジム・チャップマン(ゾンビ) 1人 鷹野三四 三沢岳明 1人 ジム・チャップマン H.C.F. 1人 ハンク 宮田司郎 1人 宮田司郎
https://w.atwiki.jp/lovelycation/pages/36.html
CD お財布 25cmスタンド缶バッジ 月岡三朝 ビジュアルプリントTシャツ アクリルキュートチャーム CD メディア CD ジャンル LOVELY×CATIONイチャラブボイスCD 販売元 ARIEL WAVE 発売日 2012年3月23日(金) 価格 通常版:3,150円(税込)B2タペストリー付き限定盤:5,250円(税込) ※特設サイトで試聴可 お財布 名前 デザイン 価格 七沢 由仁 テニスウェア 3150円(税込) 天ヶ瀬 優希 チアリーダー 犬吠崎 綾 私服 月岡 三朝 ジャージの女神様 黒川 瀬良 私服 25cmスタンド缶バッジ 月岡三朝 ビジュアルプリントTシャツ アクリルキュートチャーム
https://w.atwiki.jp/niigatabus/pages/37.html
津川営業所(つがわえいぎょうしょ) 津川駅前(つがわえきまえ) 月岡旧湯(つきおかきゅうゆ) 月岡新湯(つきおかしんゆ) 月岡仲町(つきおかなかまち) 月潟(つきがた) 月潟上(つきがたかみ) 月潟中(つきがたなか) 月見橋(つきみばし) 附船町一丁目(つけふねちょういっちょうめ) 津島屋(つしまや) 津島屋三丁目(つしまやさんちょうめ) 津島屋七丁目(つしまやななちょうめ) 津島屋七丁目南(つしまやななちょうめみなみ) 土堀(つちぼり) 角島(つのしま)
https://w.atwiki.jp/masayoshizard/pages/95.html
Case 06 ムーンヒル伝説 「洋二……世界で一番好きだよ」 耳元で俺の名を囁くさくら……ああ、何と可愛いやつなんだ。 「さくらぁ!! そんなヤツから離れろぉ!!」 いきなり何処からともなく現れたクラスメイトの山何とか君が棍棒を片手に襲い掛かってきた。 俺は無言で、山何とか君に向かい、拳銃の引き金をひいた。 デコを弾丸で貫かれた山何とか君は、俺たちに近づくことすら出来ずに倒れた。 まったく、山モテナイ君の嫉妬は見苦しいものだ。 「……洋二、今、何か聞こえなかった?」 「問題ない。大丈夫だ」 そう言って、俺は、さくらの唇を塞いだ。 だが、次の瞬間、俺とさくらは、何者かに殴られてしまった。 さくらは、意識を失ってしまったが、俺は、何とか意識を保つことができた。 「うふふ、女のコと甘いひとときを過ごすのもいいけど、男と強烈なイッパツをするのも良いわよぅ……ヨ・ウ・ジ・クン♪」 野太い声で、俺を背後から異様な腕力で羽交い絞めにしたのは、ゲイバーの一人息子で有名な月岡だった。 やばい……俺たちは、このまま、コイツに殺されるのか……? だが、せめて、さくらだけでも逃がしてやらないと……! 「うふ、アタシね……ちょっと日本人離れしてて、彫りの深い顔立ち――ラテン系っていうのかしら? それでいて、逞しい肉体――どこか、ただれた性格のヨウジクン、割とタイプなのヨ?」 羽交い絞めから、抱擁にと変わる月岡。 あっという間に、俺はパンツを剥ぎ取られた。 「ヨウジクンが桐山クン達をやっちゃった辺りから、ずっと貴方の事見てたのよ? だけど、もう我慢できなくなっちゃった……最後に味見させてもらうけど、大丈夫よね?」 息を荒げながら、すぱぱーんと、全裸になる月岡に俺は驚愕した。 コイツは、俺を別な意味でやる気なのだと。 「大丈夫じゃない。問題がある」 だが、月岡は言う事すら聞かずに俺のバックをとった。 そして……俺の意識は、現実逃避の為に……断たれたのだった。 薄れゆく意識の中、再びあの声が聞こえた。 『神は言っている。お前はまだ死ぬべきではないと――』 『神は言っている。全てを救えと――』 だが、月岡、おまえだけは別だ。 気が付くと、俺は後頭部に柔らかい感触と強烈な尻の痛みで目覚めた。 目を開けると、泣きそうな顔をしたさくらと目が合う。 何気に横を見ると、全裸で倒れる血塗れの月岡が倒れていた。 そうか……さくらが俺を助けてくれたのか……。 「ごめんね……洋二、あたし、何があっても洋二の事好きだから……! あたしが洋二を守るから……!」 必死に、涙を溢れさせながら、さくらは叫ぶ。 そんなさくらを優しく撫でながら、俺は微笑んだ。 「大丈夫だ。問題ない」 男子14番 月岡彰 男子21番 山本和彦 死亡 残り 23人 to be continued
https://w.atwiki.jp/2159/pages/15.html
画像 写真の紹介。 中浦駅(なかうらえき)は、新潟県新発田市下飯塚にある、JR東日本・羽越本線の駅。 最寄りの停留所 (利用可能路線・時刻表・運賃は各停留所ページに掲載) 下飯塚 駅から北へ200m、国道460号線上にある。徒歩5分程。 月岡駅・月岡温泉経由、または切梅経由の新発田行が利用できる。 乙次 国道460号線を新発田方面へ約700m進む。徒歩15分程。 中ノ目・乗廻方面へのバスは、この停留所から利用できる。 隣の駅 (←村上方面) 新発田 - 中浦 - 月岡 (新津方面→) 関連項目
https://w.atwiki.jp/shinyweis/pages/252.html
デッキ_アンティーカTD+(絆型) カード番号 カード名 種類 色 レベル コスト パワー ソウル トリガー レアリティ 備考 枚数 ISC/S81-T016 白いツバサ_月岡恋鐘 キャラ 赤 0 0 500 1 TD 絆,クロック加速 3 ISC/S81-T018 283プロのヒナ_幽谷霧子 0 0 1000 1 TD 500応援,身代わり 3 ISC/S81-T020 白いツバサ_白瀬咲耶 0 0 3500 1 TD サイド制限 4 ISC/S81-T023 283プロのヒナ_月岡恋鐘 1 0 4500 1 TD CXコンボ 4 ISC/S81-T025 283プロのヒナ_白瀬咲耶 2 1 5500 1 ソウル TD バニラ 4 ISC/S81-T026 これ、なんの話~? クライマックス カムバック TD 4 ISC/S81-T027 シンフォニックスチーム_幽谷霧子 キャラ 青 0 0 500 1 TD アンコール,レベル0相殺 4 ISC/S81-T029 シンフォニックスチーム_月岡恋鐘 0 0 1500 1 TD クロック,3ルック,シフト,手札交換 2 ISC/S81-T031 シンフォニックスチーム_白瀬咲耶 1 0 500 1 TD カウンター,ヒール,助太刀1500 2 ISC/S81-T032 ビヨンドザブルースカイ_田中摩美々 2 1 3500 1 ソウル TD レベル応援 4 ISC/S81-T033 ビヨンドザブルースカイ_白瀬咲耶 2 2 7000 2 ソウル TD アンコール 4 ISC/S81-T035 ビヨンドザブルースカイ_月岡恋鐘 3 2 10000 2 ソウル TD ヒール,CXコンボ,クロック加速,バーン 4 ISC/S81-T036 ビヨンドザブルースカイ_幽谷霧子 3 2 10000 2 ソウル TD ヒール,クロック,シフト 4 ISC/S81-T091 アンティーカ クライマックス ドロー TD 4 枚数一覧 レベル 0 1 2 3 EV CX 合計 赤 10 8 0 0 0 4 22 青 6 2 8 8 0 4 28 合計 16 10 8 8 0 8 50 コンセプト 絆採用型のデッキ。 Lv0帯は防御、Lv1以降は攻撃に特化したデッキ。 スロースタートをしてLv1体は反撃に転じる。 Lv0とLv2にコスト1アンコールがあり、場持ちが期待できる。 長所 シンフォニックスチーム_幽谷霧子によりLv0帯では相手の攻撃を抑制できる。 Lv1は高火力を出せる。 Lv1助太刀があるので、ある程度場持ちが期待できる。 短所 Lv2層が薄く、コスト2キャラなのでやや重い。 通常なら4積みするべき、シンフォニックスチーム_月岡恋鐘が2枚しか入っていない。(入れる枠がないため) 動かし方 引き直し レベル0以外のカードは捨てていい。クライマックスも捨ててしまって構わない。 これ、なんの話~?は1枚だけ残してもよい。 レベル0 先行はシンフォニックスチーム_幽谷霧子を最優先で出して場をけん制する。 後攻も同じでもよい。 キャラを並べるとシンフォニックスチーム_幽谷霧子のアンコールを阻害するのであまり並べない方がよい。 白いツバサ_月岡恋鐘は回収札の283プロのヒナ_白瀬咲耶が控え室に落ちるまで舞台に出すのを待ちたい。 レベル1 選択肢が少なく、283プロのヒナ_月岡恋鐘か283プロのヒナ_白瀬咲耶を出していく。 どちらも維持しにくいカードなので、カウンターは気にせずどんどん攻撃していく。 レベル2 ここも選択肢が少なく、前衛にビヨンドザブルースカイ_白瀬咲耶、後衛にビヨンドザブルースカイ_田中摩美々を出す。 レベル3 ビヨンドザブルースカイ_月岡恋鐘、ビヨンドザブルースカイ_幽谷霧子で攻める。 CXコンボを狙っていきたい。 CXについて Lv1クライマックスコンボ対応のこれ、なんの話~?はCXコンボとして温存して使っていく。 アンティーカが最終盤に1枚あればいいのでどんどん使っていく。 入れ替え候補 総評