約 10,149 件
https://w.atwiki.jp/comedian/pages/1566.html
前田政二をお気に入りに追加 リンク1 <前田政二> #blogsearch2 キャッシュ <前田政二> 使い方 サイト名 URL リンク2 <前田政二> #technorati 報道 <前田政二> 各賞受賞者一覧 ベストゴールは柿谷のオーバーヘッド弾!《2021Jリーグアウォーズ》(超WORLDサッカー!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 資生堂ジャパン、組織の一部改正および人事異動を発表/2022年1月1日付 - 国際商業オンライン 村上ショージ、明石家さんまらとの若き日のレアすぎる1枚「良き時代」「別人」と話題(ENCOUNT) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「ラブユー貧乏」の印税がいまさら増えてきた謎 - BLOGOS M1審査の前田氏企画、関西で新人お笑いコンクール - ニッカンスポーツ “勘違い粘着の人無理” 明石家さんま、浜田雅功とも親交の深い放送作家がAV女優にストーカー? - ニコニコニュース NSC1期生、前田政二が芸人の世界描く「ノーブランド」舞台化、チーモンら出演 - ナタリー オカルトと笑いの融合トークライブにシンプレ渡辺、松原タニシ、前田政二 - お笑いナタリー 明石家さんま「オモロいことが起こるかもわからんのに、寝てられるかいっ!」――若き日の仰天エピソード - 日刊SPA! 前田政二 “心の師匠”明石家さんまの知られざるエピソードを激白 - リアルライブ NSC伝説の1期生・前田政二インタビュー(下) 今も生徒の8割が憧れる最強コンビ - ORICON STYLE NSC 1期生の日々を綴った小説「ノーブランド」発売 - お笑いナタリー 成分解析 <前田政二> 前田政二の40%は小麦粉で出来ています。前田政二の40%は野望で出来ています。前田政二の17%は嘘で出来ています。前田政二の2%は見栄で出来ています。前田政二の1%は勇気で出来ています。 ウィキペディア <前田政二> 前田政二 掲示板 <前田政二> 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ 前田政二 このページについて このページは前田政二のインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される前田政二に関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
https://w.atwiki.jp/comedians/pages/1599.html
前田政二をお気に入りに追加 前田政二とは 前田政二の40%は小麦粉で出来ています。前田政二の40%は野望で出来ています。前田政二の17%は嘘で出来ています。前田政二の2%は見栄で出来ています。前田政二の1%は勇気で出来ています。 前田政二の報道 各賞受賞者一覧 ベストゴールは柿谷のオーバーヘッド弾!《2021Jリーグアウォーズ》(超WORLDサッカー!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 資生堂ジャパン、組織の一部改正および人事異動を発表/2022年1月1日付 - 国際商業オンライン 村上ショージ、明石家さんまらとの若き日のレアすぎる1枚「良き時代」「別人」と話題(ENCOUNT) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「ラブユー貧乏」の印税がいまさら増えてきた謎 - BLOGOS M1審査の前田氏企画、関西で新人お笑いコンクール - ニッカンスポーツ “勘違い粘着の人無理” 明石家さんま、浜田雅功とも親交の深い放送作家がAV女優にストーカー? - ニコニコニュース NSC1期生、前田政二が芸人の世界描く「ノーブランド」舞台化、チーモンら出演 - ナタリー オカルトと笑いの融合トークライブにシンプレ渡辺、松原タニシ、前田政二 - お笑いナタリー 明石家さんま「オモロいことが起こるかもわからんのに、寝てられるかいっ!」――若き日の仰天エピソード - 日刊SPA! 前田政二 “心の師匠”明石家さんまの知られざるエピソードを激白 - リアルライブ NSC伝説の1期生・前田政二インタビュー(下) 今も生徒の8割が憧れる最強コンビ - ORICON STYLE NSC 1期生の日々を綴った小説「ノーブランド」発売 - お笑いナタリー 前田政二のウィキペディア 前田政二 Amazon.co.jp ウィジェット 前田政二の掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る 前田政二のリンク #blogsearch2 ページ先頭へ 前田政二 このページについて このページは前田政二のインターネット上の情報を時系列に網羅したリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される前田政二に関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2414.html
14 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 43 03 ID vXnZtfxw 4年前 「ヒーローに、なりたかった」 「はぁ?」 「昔の話だ、九重。だから、そんな汚物を見るような目を向けること無いだろ」 「ああ、そう。でも、キミが今も年甲斐も無く子供向け特撮ヒーロー番組のオタクやってるのって……」 「うん。その想いがあったからだと思う」 「ボクは女子だから分かりかねるのだけれど、ヒーローってそんなに良い物なのかな?」 「ヒーローは、1人だけど、1人じゃないから」 「どーゆーこと?」 「ヒーローって、戦ってるのはヒーロー1人でも、彼らの守っているたくさんの人と、応援で、声援で、支援で、繋がってるから。絆があるから。だから、俺も少しでもそんな風になれたらって」 「そう。良く分からないけどね、ボクには」 「うん、そうかも」 「しかし、キミに英雄願望なんて大それた代物があったなんて知らなかったよ」 「英雄なんて大それたものじゃない。大それたものでなくていい。ただ、少しでも誰かの助けになって、誰かを笑顔にして―――」 「誰かに恩を売って?」 「恩って……。まぁ、感謝はされたいかな。それで、誰かと繋がれれば」 「そっか。まぁ、幼少時代のエピソードとしては中々微笑ましいものだったね、戯れに耳を傾ける意義はあった」 「それは重畳」 「ウン、興味深かったよ。千里は昔から千里だったんだなって」 「どう言う意味、それ?」 「言葉通りの意味」 「うぐぅ……」 「でも、その英雄願望。現実問題として、実現するのは無理だろうけど」 「そっか、無理か」 「そう、無理。どれだけ頑張っても、どれだけ時間をかけても、キミはヒーローやら、正義の味方やらにはなれない」 「……うん」 「キミになれるのは、せいぜいヒーローの真逆の引き立て役。英雄に否定され、主人公の踏み台にされ、騎士から斬り捨てられ、他者から拒絶され、誰からも忌み嫌われる―――敵役だけ、だ」 15 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 43 37 ID vXnZtfxw 現在 「・・・・・・う、うう」 俺は呻き声をあげながら、重い眼を開けた。 窓の無い、殺風景な部屋の中だった。 体が痛い。 まだ痺れる。 酷い気分だ。 って言うか、酷い目にあった。 いや、実際どういう目にあったのか、俺もいまいち把握していないのだが。 「あら、あらあらあら。気がついちゃったみたいね」 うわぁ・・・・・・ 最初に目が合ったのは、嗜虐的な表情を浮かべた明石だった。 正直、寝起きに見るにはかなり刺激が強かった。 ましてや、自分を昏倒させた相手となればなおさらだ。 「おはよう、明石」 けれども、俺はいつも通りの笑みを作り、余裕な振りをしてそう呼びかけた。 「それに、三日も」 三日は、明石の後ろ、部屋の隅に立っていた。 ここからでは表情は窺い知れない。 けれども、俺の言葉に何も反応しない。 どうやら俺は、この2人に呆気なく捕えられてしまったらしい。 「しかしまぁ、明石。随分と見事な手際というか見事な出来栄えだねぇ。三日を囮役にして、スタンガンで不意打ったってワケね。」 「余裕ね、こうしてなすすべも無く閉じ込められたって言うのに」 明石の言う通り、俺は見覚えの無い、室外から施錠されたドアのある無機質な部屋の中、椅子に縛られていた。 それも、よくよく見れば両手足に胴体を縛る縄にプラスして手錠まで。 念の入った話だった。 「まぁ、こうなると初台詞が『お前も仲良くするのだ~!』だった奴とは思えないけどね」 「そんな台詞、覚えてる人も信じてる人もいないでしょ」 「いや、信じてる人はいると思うけど……。それにしてもそれを差し引いても、いやはや、見事な連携だよ、2人とも。これが友情パワーって奴なのかな」 単なる軽口でもなく、これが2人の友情の成果だと言うなら、自分の状況を棚上げにして素直に称賛したかった。 これが明石と三日の絆の証だと言うなら、三日のためならば、一応、何とか、許せる。 しかし、 「友情?」 養豚場のブタでも見るような眼をして、明石は言った。 「勘違いしてもらっちゃ困るわね、緋月三日はただの私の駒よ」 ………は? 「明石、今のもう一度言ってくれないかな?どうも、酷い聞き違いをしちゃったみたいでね」 「聞きたいなら何度だって言ってあげるわ。友情なんてくだんない。ソコのソレはただの駒よ」 その言葉、昨日の憔悴した三日、そして今の無言の三日、俺の今の状況。 一瞬、頭が真っ白になってから――――それでも全てが繋がった。 「………お前、今、三日のこと、自分の親友のことなんて言った?」 「駒」 俺の言葉に、明石は冷たく答えた。 即答した。 言い放った。 言い放ち、やがった……! 16 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 43 56 ID vXnZtfxw 「………り消せ」 全身が沸騰しそうになるほどの激情を全力で抑え込み、俺は言った。 「はぁ?」 侮蔑に満ちた顔をする明石。 「取り消せと言ったァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 直後、怒轟と共に俺は明石に飛びかかっていた。 椅子に体を拘束されたまま、腹の筋肉だけで、椅子を前方に倒れこませ、奴の喉笛に噛みつかんとする! 「ヒッ!?」 しかし、すんでのところで避けられてしまう。 俺は、椅子に座った姿勢のまま、フローリングの床の上に転がる。 今、もう少しでアイツの喉笛を噛み千切れたのに。 畜生。 ど畜生。 「あは、あはははは……」 がくん、と床の上に尻を突き、強がるように笑う明石。 「強がっちゃって、無茶をするわね無駄をするわね。アンタは所詮単なる餌。どうこうしてもどうしようもできない、どうでも良いモブでしかない。そこで大人しくしているが良いわ」 「……」 明石が何か言っているが、その言葉は怒りでほとんど聞こえない。 誰かを殴ったことは何度もあるが――――誰かを殺したいと思ったのは、これが初めてだった。 ……ズ……ズ……と。 床の上をもがき、尻もちをついた明石の元に這い寄っていく。 「動かないで!」 悲鳴のように、明石が叫ぶ。 三日を指差して。 「さっきも言ったでしょう!緋月三日は私の駒!私の意のままに動かせる!どんなに酷いことだってさせられる!殺せと言えば殺す!死ねと言えば死ぬ!そうさせるだけ脅迫して屈伏させたんだから!」 屈伏させた……? 脅迫して、だって……? 「私に危害を加えれば、この部屋から出ようとすれば、私がどんな命令をするか、このコがどんな目に会うか。分からないアンタじゃない―――わよね?」 つまり三日は明石の仲間でも無く、協力者でもなく、囮役でも無く――――人質、か? おい。 おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい。 俺は知らない。 俺は聞いてない。 こんな展開なんて。 こんなことになっているなんて。 「そう言うことだから、大人しくしてなさい、餌役さん!」 そう言って、俺の頭をゴッと蹴り飛ばす明石。 「……っつ!」 さすが水泳部、良い脚(力)してるよ、へたりこんだままでも。 忌々しい。 「…!?」 三日が息をのむ声が聞こえる。 「だい……じょうぶだから、俺は」 何とかそう言ったが、半ばうめき声のような声でどこまで安心させられたか分からない。 そうこうしている内に、明石がフラリと立ち上がった。 「じゃあ、緋月三日。約束の日までこの餌頼むわよ、良いわね」 明石の言葉に「…はい」と消え入るような声で答える三日。 約束の日?何の話だ? 「じゃぁ、また。もっとも、次に会う時が最後でしょうけど」 そう言って、部屋のカギを開けて(部屋の中にも鍵があるのだ、ココは)出て行こうとする明石。 「待て、どこへ……」 「どこ、ですって?」 不思議そうな顔をする明石。 「決まってるでしょ?学校に、行くのよ」 17 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 44 44 ID vXnZtfxw 御神千里と緋月三日が失踪した。 その事実は瞬く間に学校中に伝播した。 本人たちは否定しているものの、2人は校内でちょっとした有名人であり、恋人同士だったからだ。 姿を消した理由ははっきりしないが、駆け落ちをしたとも、事件に巻き込まれたとも、様々な憶測が飛び交った。 とは言え、この事件に対する反応は千差万別だった。 その行方を、面白半分で話題にする者、心配する者、探す者、気にする者、気にしない者。 そして、何の進展も無いままに、千里と三日が不在の夜照学園高等部の学校生活は、今日も何事も無く過ぎて行き……。 事件の情報を最も早く掴んだのは、前期生徒会役員たちだった。 「御神後輩と、あの不愉快な男の妹が失踪?」 ある空き教室の中で、氷室雨氷は怪訝そうな顔で相手に聞き返した。 「その通りなのでござる」 情報を伝えたのは、李忍。 いつも通りの奇妙な口調だが、心配そうな色が滲んでいる。 その場には、一原百合子の恋人たちが集っていた。 但し、百合子本人はいない。 「とにかく、その話を一原会長……もとい前会長の耳に入れないよう尽力しなくてはなりませんね」 「氷室殿!?」 冷たく言い放った氷室に、李は抗議の声をあげる。 それも当然だった。 千里と三日は彼女のクラスメートで、生徒会の活動も手伝ってもらったこともある友達なのだから。 面と向かって友達だと言ったことは無かったが、少なくとも李自身はそうだと感じている。 「李前書記も、一原前会長の性格を知っているでしょう。彼女のことです。話を聞いたら、喜々津……もとい嬉々としてこのトラブルに首を突っ込むに違いありません」 「でござるから……!」 「自分の受験勉強を放り出した上で、ね。それは、避けるべき事態です」 冷静に語る氷室。 「友の安否より受験の方が大事と言うのでござるか!!」 「李、気持ちは分かるけど……」 「イマはcool downにcalm downです」 喰ってかかろうとする李を、周りにいる霧崎涼子やエリス・リーランドが押しとどめる。 「今は、彼女にとって大事な時期。一原前会長は、これまで学園の為、一般生徒たちの為―――つまり、他人の為に尽力してきました。だから、もう良いでしょう。彼女が自分の為に尽力しても」 冷たい声音の氷室だったが、その言葉には百合子への気遣いが感じられる。 そして、それは氷室達全員の統一見解でもあったはずだった。 生徒会長で無い百合子が、他人の為に身を削ることはもう必要ない、と。 一方で、元生徒会メンバー達はヒトとしての能力こそ規格外ではあっても、百合子という中心人物が無ければその能力を十分に発揮できないことも確かだった。 いくら規格外と言った所で、所詮は個人レベルに過ぎないのだ。 言わば、彼女たちは百合子と言う剣士に振るわれる刀のような存在だ。 扱う剣士がいなければ、どんな名刀も単なる棒きれでしか無い。 「今のお姉は生徒会長じゃないしね。あんま無茶もさせらんないし」 一原愛華が言うように、この学園の生徒会長は絶大な権限を与えられている。 人事権を始め、様々な権利を与えられている。(愛華が1年生にも関わらず生徒会に所属できたのはこの権利の濫用である) それに、多少の無茶も学園側からのフォローがある。もっとも、これは顧問であるエリスによる部分も多分にあったが。 「私達の時のように、『終わっても何事も無かったように』とはいかないかもしれませんわ」 と、鬼児宮左奈は言った。 「だからと言って、今御神氏たちがどのような目にあっているのかも分からぬというのに……!」 「どのような目に会っているとしても、御神後輩が切り抜けられないかも分かりませんがね」 もどかしげな李に向かって、氷室は静かに言った。 「御神後輩も、私や一原前会長と中等部時代から行動を共にしてきた者。多少のことでどうにかなる道理は――――ありません」 18 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 45 38 ID vXnZtfxw 「直子ちゃ~ん、直子ちゃ~ん?」 料理部の活動中、河合直子は部長の由良優良里(ユラユラリ)先輩に呼びかけられて我に返った。 「あ、部長」 「はい~部長です~」 相変わらずおっとりとした、しかし温かな笑顔を浮かべる由良部長。 「それよりも~、直子ちゃん~?」 「何でしょう?」 「あなたの~そのお鍋~、噴きこぼれてないかしら~?」 「うわ、マジっすか!?って言うかマジだ!?」 慌ててコンロの火を止める河合。 「何で早く言ってくれなかったんですかー!って、ゆらゆらな由良部長に言っても仕方無いですね」 「ごめんなさいね~。でも、珍しいわね~」 「何がですか?」 「直子ちゃんが~、料理しててボーっとしてるなんて~」 言われてみればそうだった。 今までは、横に御神千里先輩がいたので、談笑で手元がおざなりになることはあっても(それでよく千里に注意されたものだ)、上の空になることなど、一度も無かった。 けれども、今は…… 「先輩が、いないですから……」 「やっぱり~、心配に~なるわよね~」 でもね~、と気遣わしげに直子の肩に手を置く部長。 「大丈夫よ~、絶対。私達の助っ人くんは~そう簡単にどうにかなるような子じゃないもの~」 「そう、ですよね……」 自分に言い聞かせるように呟くと、両の頬をパンと叩く直子。 「ぃよし!御神先輩が帰ってきた時の為に、エンジン全開ガンバルオー!」 空元気の声を上げる直子。 それを、穏やかな笑みで見つめる部長。 その部長の頭に、ポンと手が置かれる。 「あんまり気ィ張りすぎないで下さいよ、部長も」 「あら~、三九夜ちゃん~」 部長の後ろに立っていたのは、女子制服の美少女、天野三九夜。 「ちゃんって言わないで下さい。何かこそばゆいンですよ」 「ごめんね~。でも大丈夫よ~。私はいつもど~り~」 「塩と砂糖を間違えない、水と料理酒を間違えない、大根とにんじんを間違えない。そんなアナタのどこがいつも通りですか」 「あら~、そう言えばそうね~。今日は一回も間違えてないわ~」 「……ったく、心配で来てみればご覧の有様かよ」 「何か言った~?」 「何でも無ぇッス」 そっぽを向きながら言う三九夜。 『御神、あんまりコイツらに心配かけないで緋月と早く戻ってこい。オレだって―――』 三九夜は、どこにいるとも知れぬ友に向かって、心の中でそう呼びかけた。 19 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 46 26 ID vXnZtfxw 「みかみん……」 午後の授業を片手間に受けながら、葉山正樹は虚ろに呟いた。 教師がチョークを振るう音を聞き流し、正樹はちらと隣の席に目をやった。 いつも見慣れた、本来あるべき御神千里の姿が無く、まるで大穴がぽっかりと空いたようだった。 ――――お前は、それで良いの……!?――― 千里の席を見るたびに、彼が言い残した言葉が繰り返し思い出される。 本人は平静を装っているつもりでも、もどかしさや気遣いが隠しきれない、優しくも激しい言葉。 (しっかたねーじゃんよ) 聞く者の無い答えを、正樹はひねり出す。 (何もかもが異常で異形で非常事態なンだよ。こんなンなっちまったのに、何か出来るってンだよ。何が出来るってンだよ。俺が聞きてぇっての) 言い訳だ。 それは、正樹自身が一番良く分かっている。 自分がすべきなのは、自分が想うべきなのは、自分が、決めるべきなのは――― そんなことを想っている内に、授業終了のチャイムが鳴る。 「やほー、まーちゃん!!」 授業が終わるのとほぼ同時に、明石朱里が彼に声をかけてくる。 「う……あ、ああ……」 明石の登場に、今までの思考が胡散霧消する。 「さっきの授業、ノート取ってたー?いやー、アタシ途中で寝ちゃってさー」 そう言いながら、当り前のように千里の席に座る朱里。 ―――何も言えず、何も言わず、ただ唯々諾々と流されて。それを恐れるばかりで何もしないで――― その後、千里は何と言いたかったのだろうか。 分からない。 けれども、正樹は何か言わなくてはいけない気がした。 強く。 「朱里……そこ、みかみんの席だ」 振り絞るように、正樹は何とか、朱里に向かってそう言った。 「え、ああ。そうだっけ?」 とぼけた風に言う朱里。 気のせいか、その声音にはどこか意地の悪い響きがあるように聞こえた。 「……そーだよ。だから……お前が我が物顔で我が物みたく座るのは、その……どーなンだよ?」 「意外と細かいコト気にするんだねー!」 そう、朱里は正樹の言葉を笑い飛ばした。 「良く分かんないけど、緋月三日と御神千里はまだ見つかって無いんでしょ?」 「……ああ、万里さんが探してる。……『心当たりはあるから心配しないで』って言ってた」 「あー、万里さんからの電話!?アタシん家にも来たよー!なんかー、あの人クラス全員に電話かけて御神千里と緋月三日が来てるか確認したみたいだねー!すごいよねー!こう言うの、『親の鑑』って言うのかな!?」 「かも、な。……まぁ、こればっかは大人のヒトに任せるっきゃねーんだろーな。……みかみん達を探したくても、アイツらがどこにいるのかなんて、見当もつかねーし」 「なら、遠慮なく座ってもそんな問題無いじゃん!」 本格的に背もたれに体重を預け、朱里は笑う。 「高校生のアタシらにはどーしよーも無いし!それに、万里さん『心配しないで』って言ってたんでしょ!?だったら……」 「……わ、悪い、朱里……」 ハイテンションに台詞を捲し立てる朱里を何とか遮る正樹。 「……悪いけど、ホント、今、お前と話したい気分じゃ無いんだ。後にして……くれねーか?」 「へぇ……」 戦々恐々としながらも言葉を発した葉山に、朱里はコールタールのようにドロリとした視線を向ける。 「イヤなんだ。私と話すの私と話すのに恋人(わたし)と話すの、イヤなんだ」 詰め寄る明石にたじろぎそうになる葉山。 「うぅ……キ、キブンの問題だよ。こう言っちゃなんだが、心配するなと言われて心配しないほど、俺も割り切った性格しちゃいねーし」 「じゃあ、最近緋月三日と御神千里を見た――っていう情報を私が持っていても?」 「本当か!?」 朱里の言葉に、思わず身を乗り出す葉山。 その姿を見た明石が、心の中で歪な笑みを浮かべていたことなど、親友の身を案じる葉山に分かるはずも無かった。 20 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 47 07 ID vXnZtfxw そうして、世間様に嘆きや心配や寂しい思いや迷惑や期待をさせている最中の数日間、俺がどうしていたかと言うと、何もしていなかった。 と、言うより何かする気も起きなかった。 俺の心は、御神千里の心は、これ以上無く折れていた。 ポッキリと折れきっていた。 最初は、明石に対する怒りや殺意しか無かった。 けれども、冷静になるにつれ、そうした感情は自分自身に向けられた。 自己嫌悪になった。 俺は、どうして誰も救えなかったのか。 俺は、どうして親友に伝えるべきことを伝えるのが遅れてしまったのか。 俺は、どうして親友に想いを寄せる少女の暴走と破綻を止めなかったのか。 俺は、どうして大切な人を守れず、それどころか、彼女の危機を気付くことさえできなかったのか。 俺は、本当に、何も学んでいない。 俺は、正しくあることができなかった。 俺は、主人公(ヒーロー)でも英雄(ヒーロー)でも騎士(ヒーロー)でも無い。 俺は、無力だ。 そんな人間に、明石を恨む道理は無い。 「…千里くん」 縛られた俺の膝の上で、三日が俺の首に白い手を回す。 「…千里くんは何も気にしなくて良いんです。…何も考えなくて良いんです。…何も心配しなくて良いんです。…全てが、上手くいきますから」 無表情に言葉を紡ぐ三日。 三日のその言葉は、毎日のように繰り返されていた。 まるで、壊れたレコードのように。 それは、俺にと言うよりも、三日自身に言い聞かせているようにも聞こえた。 三日は明らかに無理をしていた。 精神的な負担を強いられていた。 それに対して、俺は何も言わない、しない、出来ない。 俺のような、人間失格には。 誰かマトモな奴なら、それこそ一原先輩みたいな人なら、今の三日の危うさなんて、一言で解消してくれるのだろうけれど。 ここには、その一原先輩はいない。 一原先輩のみならず、俺と三日の2人しか人間がいない。 明石は俺を閉じ込めたあの日以来、電話越しでしか連絡を寄越さないし。 そんな有様だから、俺の想いは沈んでいく一方だった。 沈みに沈み、自分のキャラクターすら保てないでいた。 元々、俺の緩いキャラクターは、ここ数年でようやく関わりを持てた、家族や友人と言った、俺に好感を持ってくれているみんなとの人間関係の中で、無我夢中で構築し、維持してきたものだ。 誰かがいなければ、保てない、急ごしらえで薄っぺらなものだ。 だから、みんながいなければ、俺のキャラクターは崩れていくほかない。 これが本当のキャラ崩壊。 全然上手く無い。 全てが上手くいかない。 21 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 47 33 ID vXnZtfxw 放課後 「……本当に、こっちなのか。その……みかみん達を見たっていうのは」 人の少ないビル街を、葉山正樹は明石朱里に案内されるままに歩いていた。 「ウン、大体この辺りでチラッとだけ2人の姿を見たんだってー!」 キョロキョロと近くを見回し、いかにも辺りを探してますと言う風を装いながら朱里は答えた。 「見たって言うと?」 「アタシの友達の友達の、そのまた友達!大体、2日前くらいだって!」 「2日か……。……じゃあ、今居るかどうかは微妙なラインだし、見間違えかもしれねーよな」 「どーするー!?このまま帰るのもアリだと思うけど!その後ついでにここら辺デートしたり!!」 「こんな雑居ビルが集まったトコにデートスポットがあるとも思えないけどな……」 久々のツッコミを入れながら、逡巡する正樹。 「……とりあえず、近くを探して良いか?……正直、みかみんが心配で藁にもすがりたい思いだし」 「アイアイサー!」 そうして、近くのビルの中に入る2人。 「?……ひょっとしてココがらんどうか?」 「そうそう。元々はマンションとして建設されたんだけど、建物が完成したって時に大元の会社が潰れちゃったんだってー!いやー、不景気はイヤだよねー!」 「く、詳しいんだな……」 「アタシが情報通なのは、学園内だけじゃないんだよ!」 えへん虫、と胸を張りながら、中を探索する。 「でも、ちょーっと分かんないかな!」 「……な、何がだ?」 「何でそんなに御神千里を心配するのかな!噂じゃ、前期の生徒会の無茶にも付き合ってたらしいし、大抵のことは1人で何とかなるんじゃない、アレ」 放っておこうよ、という意味を暗に込めて朱里は言う。 「……確かに、アイツはトラブルに場慣れしちゃいる。けど、それだけだ」 「それだけってー!?」 「……意外と危ういンだよ、メンタル的に。普通にしてればなんてこと無いんだけどよ。一度沈むとトコトン沈む。一度キレるとメチャクチャ性質が悪い。初めてアイツと会った時なんて、九重以外のありとあらゆる人間にガン飛ばしてた位だったんだぜ」 「普段温厚な人ほど怒ると怖いってコトー?」 「……まぁ、な。だから、アイツは心配なんだ。生死とかフィジカルなトコだけじゃなくて、メンタルの部分もな」 22 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 47 58 ID vXnZtfxw その廃ビルの一室に、俺達は居た。 「…はむ、ンちゅ…ふにゅ…あむ…」 三日の口の中で丁寧に細かく刻まれたコンビニ弁当の唐揚げが、マウストゥマウスで俺の喉の奥に押し込まれる。 所謂口移しと言う奴だ。 俺は手足を拘束されているため、この数日恒例になっていた食事風景だった。 いつものように、俺に口移しで食事を与えていた三日が、 食事や下の処理など、おはようからおやすみまで俺の生命維持のために尽力したここ数日の三日の献身ぶりは語り尽くせないほどだ。 語れば語るほど、俺の無力さが浮き彫りにされるだけとも言うが。 三日の献身に対して、俺は何も応えることが出来ないのだから。 「…そんな顔しないで下さい、千里くん。…全てが上手く終われば終われば、千里くんだって幸せな気持ちになれますから」 唐揚げペーストを俺に嚥下させ、弁当が空になったところで、三日は俺から唇を離し、俺に向かってそう囁きかけた。 俺は、どんな顔をしているのだろうか。 どんな顔でも、もうどうでも良い。 「…全てが上手く終われば、千里くんだって幸せな気持ちになります。なってくれます。なってくれるに決まっています。…だから、私も頑張ります」 三日が繰り返す。 喜ぶ。 幸せ。 それは、俺の望みがかなう、ということだろうか。 俺の、望みは――― 「みんなが、おれのすきなみんなが、わらっていてほしい」 「…」 俺の言葉に顔を曇らせる三日。 彼女は、今笑ってはいないから。 ああ、俺は本当に無力だよなぁ。 みんなの笑顔のために、なんてテレビの中のヒーローみたくなりたかったけどなぁ。 所詮人は人、ヒーローはヒーローか。 俺には、何もできないか。 どれだけ、やりたいと思っても。 あーあ。 やっぱり俺は、『意味ある人』じゃなくて『ある意味人』だよな。 ヒーローどころか、人としてあまりに脆弱だ。 九重、お前はいつだって正しいよ。 けれど。 ―――やりたいなら四の五の言わずにやりなさいよ――― 唐突に、親の言葉が思い出された。 そうか。 どれだけ無力感に苛まれていても、俺の想いだけは、まだこんなにも燻っている。 燻って、消えていない。 キャラはブレても、想いはブレてない。 だったら。 例え、無力でも。 例え、ヒーローにはなれなくても。 例え、『ある意味人』でしかない、人間失格でも。 「おしえて―――教えてくれ、三日」 「…え?」 数日ぶりに力を込めて、想いを込めて発せられた俺の言葉に、驚いた顔をする三日。 「俺は、お前の、お前達の笑顔の為に何ができる?」 「…え、でも」 「どんな小さなことでも良い。お前の望みを言え。それさえ分かれば―――どんな願いも叶えてやる」 「…千里くん」 何となく、三日の表情に元気が戻ってきたような気がした。 「…このタイミングでネタに走らなくても」 「あ、分かった?」 詳しくは『告白の巻』参照。あるいは平成ライダー8作目。 「…くすくすくす」 「あっは、ははははは!」 場違いなネタに、その場違いさ加減がどうにもツボにはまり思わず2人して笑ってしまう。 「…フフ、何だか、1億と2千年ぶりに笑った気分です」 「対抗したね?」 「…はい、対抗させていただきました」 「お前の冗談、マジで今から36万…いや、1万4千年振りに聞いた気分だ」 「…何で言い直すと短くなるんですか」 そう言って、互いに笑いあう。 今までの、沈み続けるような気分が、笑い合ううちに少しずつ薄れて行くのを感じる。 いや、まだ何も何一つ良い方向に向かっちゃいないんだけどね。 ……よし、少しずついつものキャラが戻ってきたぞ。 23 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 48 46 ID vXnZtfxw 「…真面目な話、この先千里くんに何かしてもらう予定はほとんど無いんですよね、朱里ちゃんの計画には。…元々、ほとんど朱里ちゃん1人でやってるようなものですし」 笑みを消し、キリっとした顔で三日が言った。 「計画って言うと?俺、その内容全然知らないんで教えて欲しいんだけど」 と、言うより教えられる前に監禁されたからな。 実は誘拐犯に向かって悠長に自分が攫われた理由を聞いているようなものだったりするこの状況。 わお、デンジャー、デンジャー、デンジャラス。 「…話せば、長くなるんですけど」 「3行でお願い」 「…千里くんがいなくなると、葉山くんが心配します。 …それを餌にして、朱里ちゃんが葉山くんをこの家におびき寄せます。 …そしたら、そのまま2人きりでずーっと一緒。 …みんなハッピー」 「3行と言いつつ4行って……」 「…え、そう言うお約束じゃないんですか?」 「まぁ、そうだけど」 それで素で4行にする辺り、すごいというか何と言うか。 「って言うか、思いのほか杜撰な計画だな」 「…杜撰、ですか?」 「詰めが甘い、って言った方が良いけど。大体、警察が動き出したら、居場所なんて一発だぜ。何せ、そして4人もいなくなるんだし。」 俺に関しては、明石に脅されて「ちょっと自分探しの旅に出るから」と家の留守電に入れてるけど、それを信じるような人ばっかりでも無いだろう。(大体、ウチの親が信じたのかも分からないし) 葉山や明石までいなくなったら、ほぼ確実に捜索願が出されると見て良い。 ウン、だんだんと頭が働いてきたぞ。 「…確かに、国家権力が動き出したら面倒ですけど」 「って言うか、警察動くだろ、絶対」 「…でも、お母さんたちだって大丈夫ですし」 「お前の両親とは、状況は違うだろ。少なくとも、月日さんは今の状況にある程度納得しているし」 誘拐と同居では天と地ほどの差がある。 「…いえ、今はそうした大人の事情はお母さんがどうにかしているらしいですし」 「あの人一枚噛んでるのかよ!?」 俺の驚きにコクンと頷く三日。 学生ばかりで計画された誘拐計画だと思っていたのに、超展開だ。 「一体全体どうしてンなことに」 「…何でも、雨の日に偶然会ったとかで」 「捨て猫を拾ったみたいな話だな……」 それにしても、零日さんが絡んだ件は、俺の迂闊さがあからさまに露呈することが多い気がする。 その上、三日を窮地に追いやるし。 いや、まだ2回だけだけど。 「そうは言っても、警察を誤魔化すにしても、あの人が出来ることにも限界があるでしょ。何のかんの言っても、一介の女優さんでしかないでしょ?」 「…それはそうですね」 って言うか、あの人はヤバくなったらさっさと逃げそう。 大体、零日さんは人助けなんて殊勝な理由で動くタイプの人じゃ無いし。 「零日さんの助けは、長期的にはあんまり期待できないと思う。だから、大事になる前に、はやまんを攫うなんて止めた方が良いかもしれない。本当に、葉山と明石の行く末を思うなら」 「…でも、朱里ちゃんは2人きりで、時間をかけて、ここで想いを伝えたいって言ってました」 「あー、ゴメン」 「…はい?」 「それ、多分ムリ」 「無理!?」 「今まで割かし言葉濁してたけど、はやまん明石に本気でビビッてるからなぁ。こんなところに閉じ込められた日には、明石の言うことなんて聞く耳持たないよ」 「…そう、なんですか」 「ぶっちゃけ、葉山は漫画のヘタレ主人公みたいなモンだ」 「…ヘタレ主人公そのものですね」 「だから、今の葉山に押せ押せで行くのは逆に下策だと思う」 「…押して、上手く行くと思ったんですけど」 「こればっかりは、巡り合わせが悪かったとしか言えないなぁ。ただ単に明石が自分の想いを明かすだけならこうはならなかったんだろうけど、はやまんは明石の狂烈な部分まで知っちゃったから」 今の冷酷非情な恋愛暴走特急状態が明石の本質だとは思わないが。 そいつを明石の本性だと思ってるのが今のはやまん、といったところか。 いや、まぁ、明石の一部ではあるんだろうけれど。 それだけじゃ無いと思うんだよなぁ。 葉山にとっても。 はっきりとは分からないけれど。 うーみゅ。 「みんな幸せ、って言うのは難しいのかなぁ」 「ええー!?」 三日からのブーイングが聞こえる。 24 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 49 10 ID vXnZtfxw 「そう言うのも分かるけど、葉山と明石っていう二項対立が完全に出来ちゃったからなぁ」 逃げるはやまん、追う明石、みたいな。 「…それなら、私は明石軍に入ります」 「あー、そこはブレないんだ」 「…親友ですから。………朱里ちゃんは、そうは思ってくれてないようですけど」 「ンなことは無いと思うんだけどなぁ」 「…ありがとうございます。…慰めでも、気が楽になりました」 「いや、マジでマジで」 あの時はブチ切れたけど、改めて思うと明石の『駒』発言が本当の本心だとは思えないんだよな、何となく。 明石自身が自分の想いをないがしろにしているだけで。 極めて感情的な理由で動いている癖に、感情を一番後回しにしているという矛盾。 ヤンデレてる明石は気付いて無いんだろうなぁ。いや、もしかしたら気付いていて気付かないふりをしてるのか。 「…それで、千里くんはどちらの味方になるんですか?」 三日がそう問いかけた。 問いかけに躊躇が無い辺り、俺が三日と同じ側に立つことを期待&確信しているのだろうけれど…… 「俺は、2人のどちらとも味方で居たかったんだよなぁ」 ため息交じりに俺は答えた。 「今となっては難しいけれど」 「…葉山くんが朱里ちゃんのモノになってくれれば、万事解決なんですけど」 「それが二項対立なんだよなぁ」 「…対立してると思うのに、両方の味方になりたい、ですか。…何だか、頭がこんがらがってきました」 三日がそう言うのも無理無いだろう。 現在の状況を二項対立として捉えながら、対立する2人の両方の味方でいたい。 そんなものは虫の良い考え方だし、矛盾した考え方だ。 「それもそうだけど……」 ……二項対立 ……叱咤激励 ……葉山の恐怖 ……明石の狂愛 ……人間関係 ……友情 ……愛情 ……感情 ……矛盾 ……虚偽 ……真実 ……覚悟 ……決意 ……構築 ……崩壊 ……絆 ……ヤンデレ 今までの状況と、今まで俺が感じてきた物が、俺の頭の中で集束していく。 「二項対立、ね」 そう呟いた俺は、どんな顔をしているのだろうか? 「あは……」 少なくとも、笑顔の形はしていたのだろうけれど。 「あはははは……」 「…千里くん?」 三日が心配そうに声をかけてくるが―――『そんなものはどうでも良い』。 25 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 54 11 ID vXnZtfxw 「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは 「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは 「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 26 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 54 44 ID vXnZtfxw 狂ったように、狂気その物の哄笑を一しきり上げると、俺は口元に鮫のように獰猛な笑みを作る。 「覚悟を決めたぜ、三日」 そう嗤った俺の顔は、間違い無く獣のようだっただろう。 え、俺のキャラ?何それおいしいの? 「俺は、二項対立の三項目になる」 「…はい?」 俺の滅茶苦茶な発言に、当然困惑したような顔を浮かべる。 「葉山と明石。あの2人に否定され、2人の踏み台にされ、2人から斬り捨てられ、2人から拒絶され、2人から忌み嫌われる奴に―――2人の敵になってやる」 拳を握り込み、言葉に力を込めて言い放つ。 「協力してくれるよなぁ、三日?」 そうは言った物の、俺は拒否権なんて認めるつもりはさらさらなかった。 こうして、物語に無理矢理エンドマークを打つための、主役を無理矢理に表舞台に引き上げるための、乱雑で乱暴で粗暴で蛮行その物の戦いが始まろうとしていた。 27 :ヤンデレの娘さん 朱里の巻 part.4 ◆yepl2GEIow:2011/10/12(水) 22 55 09 ID vXnZtfxw おまけ バー『ラックラック』 都内某所にある小さなバー。 英語での綴りは"Luck Lack"(幸運欠如) 看板は四つ葉のクローバー、ただし一枚だけ葉が落ちている。 うす暗く、ジャズのレコードがささやかな音楽を奏でるだけだが、店内は隅々まで清潔にされている。 静かで穏やかな雰囲気、美味なカクテル、内密な話をするには最適な席の配置。 何より、分煙が行き届いている。 職業柄、役者の至近距離まで近づくことも多い『彼』は、煙草を含めたあらゆる臭いに対して気を使っていた。 役者の中には喫煙者も多いが、少なからず嫌煙家も少なくない。 衣服に煙草の臭いをつけたりして、仕事中相手に不快な思いをさせてくないという、『彼』の当り前のプロ意識だった。 そんな訳で、バー『ラックラック』は『彼』―――御神万里の行きつけのバーとなっていた。 「来たわね、レイちゃん」 いつもの席で、普段通りグラスを二つ並べた万里は、店内に入ってきた相手に言った。 「フフ…待たせちゃった…かな?」 そして、いつも通りどこか虚ろな笑みで万里に応じる相手、緋月零日。 「久し振り…だね。万里ちゃんにこのお店に誘われ…たの」 「そぉ?」 「前の時は、ご用事だった…ね?」 「そんな昔のこと、忘れたわ」 零日の言葉に恍ける万里。 「7月のこと…だよ?」 「歳を取ると物忘れがひどくてね」 「もう…」 そんな雑談をしながら、席に着く零日。 「だったら、忘れちゃった…かな?私に搦め手は…無意味」 「そうだったわね」 「何事もストレートなのが好み…なんだよ?」 コクリ、と首をかしげる零日。 「そうね」 「だから、ウィスキーもストレート」 「それは初耳」 どうやら、零日は飲まないだけで、飲めない訳では無いらしい。 本当に彼女のキャラクターは掴めない、と万里は思った。 「じゃ、ストレートに」 「ストレート…に」 「ウチのセンと三日ちゃんが居なくなってるから、居場所教えてもらう」 万里の言葉に、零日はスッと目を細める。 「どうして、私に聞くの…かな」 「アナタしかいないからよ。センはともかく、三日ちゃんの行方をレイちゃんが把握してないとかあり得ないでしょ?さぁ―――教えて?」 御神万里と緋月零日。 ここでもまた、深く、静かに、戦いが始まろうとしていた。
https://w.atwiki.jp/sentairowa/pages/205.html
【名前/本名】伊能真墨(いのうますみ) 【登場作品】轟轟戦隊ボウケンジャー 【愛称・コードネーム・二つ名】真墨(ほぼみんな) 【名乗り】迅(はや)き冒険者 ボウケンブラック! 【年齢】21歳 【性別】男 【人称】自分⇒俺 さくら⇒さくら姐さん 他人⇒呼び捨て 【所属・立場】サージェス団員 元トレジャーハンター ゲキレンVSボウケンのときにはボウケンジャーのチーフ 【外見】イケメン。サラサラヘアーでゲキレンVSボウケンのときは髪がロングになっている。 中の人の身長は173cm。 【技術・特殊技能・仕事】ボウケンブラックに変身できる。 【性格】クールに振舞う。 【紹介】轟轟戦隊ボウケンジャーのブラック。 菜月と行動していたが、明石に薦められ、ボウケンジャーとなる。 なぜ菜月を仲間にしたかというと、「可愛かったから」。 それぞれボウケンジャーはライバル的な敵キャラがいるが、彼のライバルは闇のヤイバ。 終盤で心の闇を見つけられ、一時的に敵に回った。 オカルトやグリンピースが苦手。 また、闇のヤイバではなく、明石も初期はライバルだったが、少しずつ仲間として認め合っていく。 終盤では自身が明石に対するライバル心を書いた日記をやや恥ずかしがっているように読んでいた。 【アイテム】アクセルラー ラジアルハンマー 闇の三つ首竜
https://w.atwiki.jp/eisaku/pages/4.html
【兵庫2の軍事力】 ・東方軍300000人(伊丹) ・西方軍237000人(明石) ・中央軍200000人(豊岡) ・K1A1戦車1286両 ・F-35A型戦闘機1166機 ・ハリアー戦闘機337機 ・B-2爆撃機467機 ・F-117攻撃機467機 ・輸送用ヘリ262機 ・イージス艦19隻 ・空母16隻 ・戦艦46隻 ・ミサイル艇10隻 ・原子力潜水艦5隻 ・給兵艦6隻 【兵庫4の軍事力】 ・歩兵 773900人 ・戦闘機 167機 ・爆撃機 80機 ・哨戒機 80機 ・戦闘ヘリ 70機 ・戦艦 19隻 ・イージス艦 2隻 ・戦車 1467両 ・潜水艦 6隻 ・空母 30隻 ・補給車 7台 ・エチゼンヤマクラゲカプセル 3個 ・V2ミサイル(六甲山の発射台より発射) 219発 ・ヴィマーナ(空中戦車) 3機 資産・・・三田牛6578匹 【神戸の軍事力】 ・陸軍70000人 ・海軍43000人 ・空軍10000人 ・戦車3203台 ・戦闘機61機 ・イージス艦3 ・空母2 ・上陸用小型艇3600 【神戸の資産】 ・神戸牛95700頭 ・神戸ワイン79000リットル 【主な拠点】 <空軍> ・神戸空港(空軍本部) ・伊丹空港(大阪と共有) ・但馬空港 <海軍> ・神戸港(海軍本部) ・尼崎港 ・姫路港 <陸軍> ・伊丹駐屯所(陸軍本部) ・明石駐屯所 ・豊岡駐屯所 <その他> ・明石対空砲台 ・舞鶴港(軍事転用不可) ・ミサイル発射台(六甲、青森) ・大食料基地(金沢) ・巨大要塞(陸、海、空使用可)(佐渡) 【西日本連合国】 ・大阪 ・滋賀 ・京都 ・和歌山 ・徳島 ・香川 ・愛媛 ・高知 ・鳥取 ・島根 ・山口 ・広島 ・沖縄 ・宮崎 ・大分 ・福岡 【不可侵条約】 ・三重 ・奈良 【中立】 ・京都 ・岡山 【兵庫の領有地】 ・淡路島以外の兵庫県全土
https://w.atwiki.jp/syakolinerhirohiro/pages/21.html
姫阪本線 概要 広鉄の大阪進出を目論んで工事された路線である。 路線データ 最高時速:160km/h 電化方式:直流1500V 軌間:1067mm(狭軌) 閉塞方式:自動閉塞式 複線区間 全線複々線 保安装置:ATS-HS 車両基地:岡山車両センター(山オカ)・明石車両センター(山アカ)・大阪車両センター(山ミハ) 駅名 読み 普通 快速 新快速 特快 特急 備考 ↑一部列車は名京本線に乗り入れ 京都駅 きょうと ● ● ● ● ● 広鉄西大路駅 ひろてつにしおおじ ● 広鉄向日町駅 ひろてつむこうまち ● ● 東長岡京駅 ひがしながおかきょう ● 八幡駅 やわた ● 樟葉駅 くずは ● ● 河内小倉駅 かわちおぐら ● 枚方駅 ひらかた ● ● ● ▲ 宮ノ下駅 みやのした ● 寝屋川北駅 ねやがわきた ● 忍ヶ丘駅 しのぶがおか ● 四條畷駅 しじょうなわて ● ● 住道駅 すみのどう ● ● ● ▲ 広鉄荒本駅 ひろてつあらもと ● 高井田中央駅 たかいだちゅうおう ● 深江橋駅 ふかえばし ● 玉造駅 たまづくり ● ● 法円坂駅 ほうえんざか ● 淀屋橋駅 よどやばし ● ● ● 広鉄梅田駅 ひろてつうめだ ● ● ● ● ● 広鉄中津駅 ひろてつなかつ ● ● 新十三駅 しんじゅうそう ● ● ● 新尼崎駅 しんあまがさき ● ● ● 広鉄立花駅 ひろてつたちばな ● 武庫之荘駅 むこのそう ● 北西宮駅 きたにしのみや ● ● ● 広鉄夙川駅 ひろてつしゅくがわ ● ● 北芦屋駅 きたあしや ● ● ● 岡本本山駅 あかもともとやま ● 住吉御影駅 すみよしみかげ ● ● 新六甲駅 しんろっこう ● 王子公園駅 おうじこうえん ● 広鉄三宮駅 ひろてつさんのみや ● ● ● ● ● 広鉄元町駅 ひろてつもとまち ● ● 広鉄神戸駅 ひろてつこうべ ● ● ● ● 南大開駅 みなみだいかい ● 広鉄長田駅 ひろてつながた ● ● 板宿鷹取駅 いたやどたかとり ● 新須磨駅 しんすま ● ● 新塩屋駅 しんしおや ● 広鉄垂水駅 ひろてつたるみ ● 舞子公園駅 まいここうえん ● 新朝霧駅 しんあさぎり ● 明石駅 あかし ● ● ● ● ● 西明石駅 にしあかし ● ● 播磨大久保駅 はりまおおくぼ ● 新魚住駅 しんうおすみ ● 播磨土山駅 はりまつちやま ● 北加古川駅 きたかこがわ ● 加古川駅 かこがわ ● ● ● 宝殿駅 ほうどの ● 別所駅 べっしょ ● 東姫路駅 ひがしひめじ ● 姫路駅 ひめじ ● ● ● ● ● ↓一部列車は広鉄本線福山まで乗り入れ
https://w.atwiki.jp/kobe9c/pages/28.html
福泉敬大(Keita Fukuizumi) 1988年9月2日生まれ、兵庫県西宮市出身 右投右打の投手 2009年、明石レッドソルジャーズ入団、背番号「19」 2009年12月3日、9クルーズへ移籍、背番号は同じく「19」 145km/hの速球、ナックルやフォークなどを操る 2010年10月28日のNPBドラフト会議で読売ジャイアンツから育成3位指名される関西独立リーグからは明石RSの深江真登(同年、オリックス5位指名)に続き2人目の指名、背番号「019」
https://w.atwiki.jp/dreamnine/pages/1215.html
番号 ★ 名前 番号 ★ 名前 番号 ★ 名前 番号 ★ 名前 3743 P 武田 翔太(GP/8月・F) 3744 P 内川 聖一(GP/8月・G) 3745 P 武田 翔太(SP/8月・F) 3746 P 内川 聖一(SP/8月・G) 3758 6 内川 聖一(DS) 3781 4 小久保 裕紀(セレクション) 3782 4 新垣 渚(セレクション) 3794 3 本多 雄一(招待/スピードスター) 3972 5 大隣 憲司(S4+・限定) 3973 5 大隣 憲司(S4+) 3974 4 長谷川 勇也(S4+) 3975 4 明石 健志(S4+) 3976 4 陽耀勲(S4+) 3977 4 柳瀬 明宏(S4+) 3978 3 城所 龍磨(S4+) 3979 3 中村 晃(S4+) 3980 3 髙谷 裕亮(S4+) 3981 1 大隣 憲司(S4+) 3982 1 長谷川 勇也(S4+) 3983 1 明石 健志(S4+)
https://w.atwiki.jp/sentai-kaijin/pages/1830.html
さくら「虫は嫌、嫌なんです~!」 【名前】 巨大昆虫 【読み方】 きょだいこんちゅう 【登場作品】 轟轟戦隊ボウケンジャー THE MOVIE 最強のプレシャス 【分類】 昆虫 【詳細】 岩山に生息する謎の昆虫。明石虹一曰く「恐竜を絶滅させた生物」。 鎌状の前足は樹木を容易に切断する程の威力を誇り、口からの糸で獲物を絡み取る。 劇中で大型の個体が無数に出現し、他にもサッカーボール大の小型の個体が登場している。 4人(明石、真墨、さくら、虹一)が迷い込んだ密林(の映像)に出現し、口からの糸で真墨とさくらを連れ去った。
https://w.atwiki.jp/25438/pages/4344.html
しかし明石さんは別段なんともないように話を続けた。 「流石に一日で五、六缶も飲み干せば具合も悪くなります。それほどあのお酒は強力なのです」 「私もそれくらい飲んだんだけどなぁ」 「……それは紬さんがぽわぽわしているからでしょう」 「そうなのかな~?」 ぽわぽわしていることと冷え性をこじらせないことに何の因果関係があるのか分からなかったが、 琴吹さんが体調を崩す姿が想像できないことから妙に納得してしまった。 「そういえばさっき小津が私の所に訊ねてきたぞ。極寒麦酒を返せだの言っていたが……」 私は布団からもぞもぞと顔を出すと、思い出したように会話に割って入った。 「きっと余った麦酒を売りさばいて資金にするつもりなのでしょう。 小津さんならやりかねません」 「資金とはなんだ?」 「自虐的代理代理戦争の軍資金だと思います」 訳の分からない単語を聞いた途端、私は考えるのを止めた。 小津の意味不明な日常的非日常生活に触れたら大やけどするに決まっている。 私はなるべく首を突っ込まないように再び布団に首を引っ込め、話題を絶とうとした。 「なんだか面白そう!」 布団を隔てた向こう側で琴吹さんの楽しそうな声を聞いた。 私は嫌な予感がした。 そして琴吹さんが何に期待しているか察すると、心臓が飛び出るほど危機感を感じた。 「駄目だッ」 私は跳ねるように飛び起きると、その場にいた二人を一喝した。 急に私が大声をあげたので、驚いた琴吹さんはビクッと体を強張らせた。 「な、何がですか?」 「琴吹さん、絶対に小津と関わってはいけない。そんなのは言語道断だ」 ぼさぼさの髪で喚き散らす私を琴吹さんは困ったように見つめ、 明石さんは呆れたようにため息をついた。 「先輩、まだ紬さんは何も言っていません」 あいつは人の皮を被った悪魔だの妖怪だの悪態をつきまくる私を、 琴吹さんは「まあまあまあ」となだめるように床に押し返した。 興奮しすぎたせいか吐き気と頭痛が再び私を痛めつけ、うーんうーんと唸りながら横になった。 「気にしないで下さい」 明石さんは憐れみを含んだ言い方をすると、琴吹さんの方へ向き直った。 「先輩は恐らく誰よりも小津さんの影響力を知っているのでしょう。確かに小津さんは 底抜けの阿呆ですが、腰が据わっています。生半可に関わるのは止した方がいいと思います」 いよいよ明石さんにまで真剣に忠告されたとなれば琴吹さんも考えを改めるに違いない。 私は明石さんグッジョブと心の中で親指を突き立てた。 「とは言っても小津さんがこだわっているのはあくまで先輩に対してだけです。 つまり先輩に関わることは間接的に小津さんとも関わるということにもなります」 明石さんはさりげなくとんでもない事を言ってのけた。 まるで私が小津に執拗にストーカー行為を受けているかのような言い草である。 運命の黒い糸でボンレスハムのようにぐるぐる巻きにされて暗い水底に沈んでいく男二匹の 恐るべき幻影が脳裏に浮かび、私は戦慄した。 「そうですか……」 琴吹さんは憮然とした表情で呟いた。 違うぞ琴吹さん。いや、小津が危険な事は違わないが、私は至って清廉潔白なのだ。 むやみにアナタを腐れへっぽこ妖怪に近づけるような真似はしない。 私がそのような塩梅で紳士的説得を試みようと再び亀のように顔を覗かせたところ、先に琴吹さんが 口を開いた。 「でも私、今学期を終えたら海外に留学してしまうので、 今の内に出来ることをやっておこうかなと思ったんです。 英会話教室で先輩のお話を聞く限りでは、小津さんという方は非常に愉快で面白い人だと……。 せっかくなら会ってみたいな、なんて思ってたんですけど」 琴吹さんはしょんぼりしたように言う。 そして私はというと、喉まで出かかっていた説得を思わず呑み込み、ぽかんとしていた。 何か今、とても大事なことを聞いたような気がする。 小津が愉快で面白い人間だという事だろうか? しかし私は英会話教室であいつの都合のいいようにスピーチした記憶はない。 出来る限り憎しみと卑下を込めたつもりだったが伝わっていなかったのだろうか。 そうではない。 私が琴吹さんの台詞で強烈な違和感を垣間見たのは、小津の人間性の解釈の相違ではない。 彼女は「今学期を終えたら海外に留学」すると言った。 海外に留学とはどういうことだ? 「そういえばそうでしたね」 明石さんは表情一つ変えず言葉を添えた。 「か、海外に……留学……?」 つっかえながら琴吹さんに聞き返す。 彼女は微笑みながら首をかしげると、残酷な事実を私に告げた。 「あれ?先輩にはまだ言ってませんでしたか? 私、前期終了後にアメリカに留学するんです。ついこの間決定したんですけど……」 アメリカに留学。 前期終了後。 私は返す言葉を失い、舞台が暗転するような感覚に包まれた。 もし本当に海外に発ってしまうなら、私が琴吹さんと会えるのもあと数週間である。 まずもって喪失感。 そして認めたくないものの、失恋の情。 人によってはこう言うだろう。 あと数週間でもチャンスはあると。諦めるには早すぎると。 あるいは私を情けない奴と罵るであろう。 断言しよう。 私は生来の腰ぬけであり、諦めの早さにおいて並ぶ者はいないと自負している人間である。 あと一ヶ月と少しで居なくなる人に思いだけでも伝えよ、と甘ったるい思想の持ち主なら 闇雲に駆け出し玉砕を良しとするかもしれない。 しかし現実主義かつ小心者の私にとってそんな色恋劇場の役者のような真似が出来るはずもない。 クララの馬鹿、いくじなしとでも罵倒されてもなお石橋を叩き壊す勢いでリスクを回避する この性格だけは治せず、だからこそ堅実な道を何よりも求めたのである。 私は新たな人生へと踏み込む琴吹さんを前に、もはや何も求めることは叶わなかった。 始まってもない恋の行方を案じた私がただ一人、道化を演じていたようなものだ。 私の心はその場で真っ二つに折れてしまった。 後悔する暇もなく、私は失意のどん底に勝手に落ちて行った。 じつに、生き方に工夫が足りなかった。 私はなんて不器用だったのであろう。 ―――――― ―――― ―― それから先のことは良く覚えていない。 いつの間にか琴吹さんは帰っていて、明石さんが私の看病をしてくれたことはなんとなく記憶に残っている。 次に意識がはっきりとしたのは翌日の朝だった。 気だるい体をむりやり起こし、何も考えずにトイレへ向かった。 昨日の琴吹さんの言葉は幻だったのではないか。 この期に及んでそんな妄想にすがるほど私は狼狽していた。 しかし次第に昨日の記憶は鮮明に思い出され、同時に絶望感で全身の力が抜けていく。 頼りない足取りで我が四畳半に戻ると、 この二週間足らずの出来事がまるごと夢だったのではないかと錯覚する。 私はそれっきり英会話教室には行かなくなった。 琴吹さんと顔を合わせる勇気がない。 私は再び、大学と家を往復する生活に戻った。 ○ ○ ○ 海外留学の話を持ちだしたのは他ならぬお父様でした。 それは私が先輩を部屋に招いた少しあとのことです。 お父様から直接電話をいただくことは珍しい事ではありませんでしたが、 まるで週末の予定を聞くような調子で海外留学の話をし始めた時は驚きました。 琴吹財閥の跡取りとして様々な経験を積んで欲しいと大学に行かせてもらい、 事実私はお父様のサポートだけでなく自らの意志でも色々と積極的に活動してきました。 そこにお父様の意志が無かったとも言い切れませんが、、 少なくとも私の自由をそれなりに尊重してもらい余計な指示や口出しは一切しませんでした。 その代わりプライベートには斎藤を介して何度もお節介を焼かれましたが……。 お父様の口から直接、具体的な提案が持ちだされることは今までなかったのです。 私は海外留学の提言に驚くと共に、複雑な心境に至りました。 まず、これは願ってもいないチャンスだという希望のような思いがにわかに浮かんだのです。 以前から私は海外留学に大いに興味がありました。 旅行で何度も海外へ飛ぶことはありましたが、本格的に日本を離れて勉学に勤しむことに憧れていたのです。 しかし私は、きっとお父様は許して下さらないだろうと思っていたのです。 自由を許された言っても、お父様は基本的に親馬鹿といいますか、私のことを大事にし過ぎる節がありました。 友達の家でお泊りするというだけでもお叱りを受けるのです。 ましてや私が留学したいなどと言ったら猛反対されるに決まっているのです。 それが何の心変わりかは存じませんが、 まさかお父様から話を持ちだされるなんて思ってもいなかったのです。 私は二つ返事で進言を受け入れようとしましたが、ふと別の考えが浮かびました。 何故お父様はこの時期にそんな話を持ちかけたのでしょうか? 私は何か裏があるのではないかと勘繰りました。 そして思い至ったのは、私の部屋に先輩を招いたことがばれてしまったのではないかということでした。 斎藤が言及したのかも知れません。例えそうでなくても、タイミングとしては十分考え得ることです。 もしかしてお父様は私がこの大学での交友関係をあまり快く思っていないのではないかしら。 それで海外に住まわせ、更に私の行動を制限するつもりなのでは……。 一概に先輩が原因とは言えませんが、何か裏があるのではと感じ取った私は、 お父様の意見に素直に賛同するわけにもいかず、しばらく返事を待ってもらうことにしたのです。 ところが一週間ほど考え抜いた結果、結局私は海外留学することに決めました。 理由は単純でした。 留学という未知の体験を想像し、その未来像が私の興味を余すところなく刺激したからです。 いつしか私は、自分の中に目覚めつつある好奇心への抗えない欲求に呑まれていました。 こうやって書くとまるで快楽に溺れる狂人の風に皆さんの目に映るかも知れませんが、 私はそれこそ無我夢中で大学生活を過ごして来たのです。 すでに私は顧みることを忘れ、ただただ現在と、その先にある未来を見ることしか出来なくなっていたのです。 あるいは視野が狭いと思う方もいらっしゃるかもしれません。 どこまでわがままな娘なのだと責める方だって居ると思います。 過去、私は自分本位になることを否定し続けていました。 身勝手な振る舞いで他人を傷つけることを極端に恐れていたのです。 けれども私は、桜ケ丘高校の軽音部を経て自らの意志の価値を知りました。 私はその意志でもって、海外留学することを肯定したのです。 心残りなのは今まで私と知り合ってきた友人たちでした。 私が留学を決意した時、お世話になった人たちにまず知らせました。 その中には明石さんも居ました。 そして先輩にも、あの日、先輩の部屋にお邪魔した時に話をしようと思ったのです。 思いがけずお酒を飲むことになり、その場では留学の話などつい忘れて楽しんでしまいましたが、 しばらく経ったあと私は思い切って打ち明けたのです。 ところが先輩は直後に意識を失い眠ってしまったのでどうやら覚えていない様子でした。 わずか数回会って話をしただけですが、先輩には家まで送り届けてもらったという恩があります。 それに私の知らない色々なことも教えてもらいました。 先輩にはきちんとお話したかったのですが、 なんだか中途半端に告げる形になってしまったのは悔やまれるところです。 そして何故か先輩はあの日以来、英会話教室に来なくなってしまいました。 メールによる連絡も何もありません。 私の方から連絡することも考えましたが、 何か事情があるのかもしれないと思い、迂闊にお節介を焼くのが躊躇われたのです。 先輩のことも気になりましたが、私はかつての軽音部のメンバーと連絡を取ることを考えました。 唯ちゃん、りっちゃん、澪ちゃん、梓ちゃん……今となってはあまり会うこともなくなっていましたが、 私にとっての大事な転機を知らせない理由にはなりません。 久しぶり、と挨拶を添えて、 この度海外に留学することにしましたと4人にメールを送ると、返信はすぐでした。 本当に!?すごいじゃん!と驚きと感嘆を素直に言ってくれたりっちゃん。 久しぶりだな、おめでとう、と感慨深げに私を祝ってくれた澪ちゃん。 おめでとうございます、と丁寧に称賛してくれた梓ちゃん。 そっかぁ、寂しくなるね、と別れを惜しんでくれた唯ちゃん。 そして誰もが言ってくれたのは、旅立つ前に会えないかという言葉でした。 私はみんなのメールを読みながら、高校を卒業して離ればなれになっても会いたいと思える友人がいることに 心の奥から暖かいものが込み上げてくるような気がしました。 これが最後というわけではありませんが、日本を出発する前に放課後ティータイムのみんなと会うことが 色々な意味で人生に区切りをつけるために大事なことだと、私は感じました。 かくして私たちは再会することにしたのです。 それは7月に入る前、日差しが眩しく照らす休日の、桜ケ丘高校の音楽室でした。 ○ ○ ○ 私の心に負った傷はかつてないほど深刻を極めた。 たかだか数日、それも熱烈な恋に身を焦がしていたわけでもないのに、 琴吹さんとのわずかな想い出が時と場所を選ばず甦るのだ。 私はその度に盛大なため息をつき、肩を落とし、頭を垂れ、 そのまま地面に埋もれてしまうほど気分を落ち込ませた。 あの日から私は無気力に一層磨きがかかり、何をするにしても上の空、虚ろな目線は定まらず 意識は体から解き放たれたように宙をさまよっていた。 荒涼たる四畳半を精神的にさまよい続け、時はいつしか7月の終わりに差し掛かっていた。 もうすぐ大学も前期の修学期間を終えようとしている。 このまま夏休みに突入すれば、琴吹さんはすぐにでも海外へ旅立ってしまうだろう。 心の傷は時間が癒してくれるという人生の真理も、今の私には当てはまらない。 時間が経てば経つほど私は目の前の好機から逃げている自分自身を客観的に見えてしまう。 なんと情けない人間なのだろうと自己嫌悪に陥る。 乙女のように恋焦がれるむさ苦しい男の姿を想像してぞっとしたりもした。 しかしそんな私の傷心の日々にも救いの手は差し伸べられた。 まことにやるせないことながら、それは小津を伝わって私の元に舞い降りてきたのである。 小津は相変わらず良からぬ妄念を腹に溜めながら、常に周りに災厄をまき散らすという 不毛なキャンパスライフに憂き身をやつしていた。 まさにホモサピエンスの面汚しである。 私が失意の波動に目覚め静謐な四畳半に籠るようになってから小津は以前ほど頻繁に訪れなくなった。 私としても自分の魂が彼によって汚染されることを危惧していたので願ったり叶ったりである。 ところが彼は私の部屋に顔を出さないものの、 二階の師匠と呼ばれる人物の元には毎日のように訪問しているようだった。 たまにドタバタと天井を揺らし、私の部屋を埃まみれにしたが、 私はその師匠とやらに関わりたくなかったので騒ぎが収まるまで縮こまっていたりした。 そんな孤高の生活も長くは続かず、いい加減琴吹さんとの淡い思い出、 しかるに苦い思い出を忘却の彼方へ押しやらなければならぬと思う。 でなければ人として生きる術すら見失いかねない。 しかしそう簡単にも忘れられるほど小回りの利く私の性格でもない。 悶々と袋小路に嵌りかける私に、時を見計らったかのように小津が訊ねて来たのは 八月に入ろうかという暑い夏の日だった。 「おや、顔色がすぐれませんな。いまだに籠って無駄な水分を垂れ流しているんですか? こんなに天気がいいんだから外で気持ちよく汗を流せばいいのに」 「黙れ。心頭滅却すれば火もまた涼しいのだ。だいたい外に出て日向ぼっこでもしてみろ。 水分をあらかた吸い取られてカラカラに干からびるのがオチではないか」 「せっかく健全な生活習慣を提案してあげたのに」 「そもそも何の用だ」 どうせ冷やかしにでも来たのだろうと思ったが、 小津は何やら神妙な顔つきで「ちょっと」と口を手元で覆い隠した。 その仕草が彼をより一層邪悪な人相たらしめていた。 「あなた琴吹紬と顔見知りなんですか?」 その名を聞いたとき、全身に電流が走ったような衝撃に見舞われた。 何故小津が琴吹さんを? もし琴吹さんに小津の魔の手が忍び寄ったら由々しき事態である。 「何故きさまが彼女の名を知っている!?」 「あら、ということはお知り合いなんですね」 「彼女に手を出すことは私が許さん!」 「あなた琴吹紬の何なんですか。そんなにはりきっちゃって」 ぐうの音も出ない。 私と琴吹さんはもはや何の関係もないのだ。 「まさかあなたがあの琴吹紬とお知り合いだとは思いもよりませんでした。 てっきりあのメールアドレスも妄想かと」 「貴様、彼女をどうするつもりだ!」 「別にどうもしません」 小津がにやにやと悪魔のような笑みを浮かべた。 私は直感した。 小津は何かを企んでいると。 「……それで、私が彼女を知っているから何だというのだ」 私は努めて冷静に小津と対面した。 「いえ、なんでも彼女、今学期いっぱいで大学から去るらしいじゃないですか。 それにつけて友人を招いて盛大に門出を祝うなんて噂を耳にしたもんで、 あなたなら知ってるんじゃないかなぁと」 私は小津の情報収集能力に改めて驚愕し、戦慄した。 小津の閻魔帳には様々な人物のあらゆる秘密が 平凡社世界大百科事典のようにみっちりと書き込まれているらしい。 私はそのことを考えるたび、こんな歪んだ人物とは 一刻もはやく袂を分かたねばならぬという焦燥に駆られるのだった。 「そんな話は知らん。そもそもお前がそれを知ってどうしようというんだ」 「秘密です」 不敵に笑う小津を廊下の外へ蹴りだし、私は再び四畳半に閉じこもり思案した。 とうとう小津が琴吹さんに目をつけた。 非常に危険な状況に刻一刻と近づいていくようで気が気でない。 私は一人作戦会議を開いた。 まず考えたのは小津が具体的に何をやらかそうとしているのかということである。 しかし小津の行動原理を自分の物差しで測るなど愚行も甚だしい。 今までもいったいあの男は何がしたかったのか、解き難い謎であるが強いて解く必要もなかった。 そしてもう一つ、小津の話の中で留意すべき言葉があったはずだ。 どうやら琴吹さんは最後のお祝いをするつもりらしい。 一体何をどのようにしてそのパーティが行われるのか私は知る由もない。 だが小津の口ぶりからして、その場で良からぬことを働くのは容易に想像できた。 もし琴吹さんが小津の毒牙にかかり清らかな魂を汚されでもしたら世紀の大事件である。 私と小津をまとめて珈琲挽きにかけて粉々にしても神は決してお許しになられないだろう。 これは私一個人の問題ではない。琴吹さんの将来に関わることだ。 決断は思いのほか早かった。 私は念には念を入れて、まず明石さんに連絡をとることにした。 もしかしたら彼女もそのお祝い行事に呼ばれているかもしれない。 明石さんに電話をかけると、しばらく待った後に凛とした声が聞こえた。 『はい』 「明石さんか?」 『そうですが、どうかされたのですか?』 私の突然のコールにも彼女は落ち着き払った態度を維持していた。 携帯越しに明石さんの端然とした表情を想像する。 「小津から聞いたのだが、琴吹さんが日本を発つ前に友人を招いてパーティをすると」 『パーティではありません。紬さんがライブハウスで演奏するので、チケットを友人に配っているのです』 「ライブハウス?」 『京音堂という割と大きめのハコです。私も何度か行ったことがあります。 先輩は呼ばれなかったのですか?』 明石さんのさりげない言葉がぐさりと私の心を突き刺した。 私はなんとか平静を保ちながらライブの詳細を質問した。 『日時は八月○日、放課後ティータイムという紬さんの高校時代のバンドの単独ライブだそうです。 紬さんはライブの直後に日本を旅立つようですね『 「そうか……ちなみに明石さんは小津がそのライブに関心があるということを知っているか?」 『小津さんがですか?』 「あの腐れ変態妖怪は私に琴吹さんの事情を聞いてきたのだ。 絶対に何か企んでいる様子だった」 『それは初耳です』 「私は何としてもそれを阻止せねばならない。しかし琴吹さんにそんな事を洩らして 余計な不安を与えたくはない。明石さんよ、せめて小津の動機に心当たりはないか?」 私は自分ですら計りしれなかった小津の目的が明石さんに分かるだろうかと聞いておきながら思った。 しかし明石さんはしばし黙った後、ぽつりとつぶやいた。 『もしかしたら……』 「もしかしたら?」 『いえ、根拠はないのですが、小津さんは単純に紬さんの財力が目当てなのではないでしょうか』 「誘拐して身代金でも要求するつもりか」 犯罪者になるつもりであろうか。落ちるところまで落ちてしまったと言わざるを得ない。 『小津さんは最近取り憑かれたようにお金に執着しています。 今では師匠の貢物とは無関係にどこからともなく紙幣を溜めこんでいるらしいのです』 「そこで琴吹さんに目を付けたのか……しかしなぜ琴吹さんなのだ?」 『先輩御存じないのですか?紬さんは旧日本財閥琴吹商社の御娘です。紬さん自身ならいざ知らず、 実家の規模を考えれば彼女にすり寄るメリットは想像に難くありません』 明石さんはあくまであっさりと答えた。 なるほど、手段を選ばない小津のことだ。 ライブにかこつけて琴吹さんと彼女の背後にある巨大な財源に急接近するつもりであろう。 「ならば尚更、小津を琴吹さんに近づけるわけにはいかない」 私は意気込んだ。 しかし意気込んだはいいものの、どうすればいいのか皆目見当もつかない。 『何か策があるのですか?』 「……今のところ考えられるのは、私もそのライブ会場に行き小津の動向を見張ることくらいだ。 しかしチケットは持ってないし、もし見張ったとして、未然に防げるとも限らない」 私は自信なく言った。 『チケットなら丁度一枚、私の手元に残っていますが』 「私にくれるのか?」 『相応の金額を支払ってもらえば別にかまいません』 なんと都合の良いことだろうか。 電話の向こう側の明石さんに敬意を払い、ありがたくチケットを売ってもらうことにした。 「明石さんも手伝ってくれないか?」 『遠慮します』 明石さんはにべにもなく言った。 「明石さんは小津と兄弟弟子だろう。奴を更生させたいとは思わないのか?」 『小津さんは私たちが何をしたところで 改心するような融通のきく人間ではありません。横槍を入れたところで無駄でしょう』 「師匠とやらは何もしてくれないのか?」 『師匠は弟子の素行を正そうとするほど配慮の足りる人でもないですし、 そんなことに動じないところが師匠が師匠たるゆえんなのです』 つまり何もしていないに等しいではないか。 師匠と名乗るだけの説得力が微塵もない。 或いは、このあまりにも説得力のない感じが、逆に説得力があると言っても、説得力に欠けるのだろうか。 「……分かった。小津は私のほうで何とかしよう」 明石さんには明日チケットを持って来てもらうと約束して電話を切った。 今にして思えば、何故そんな師匠の元に明石さんまでもが師事しているのか甚だ疑問である。 ○ ○ ○ 先輩の語りの途中ですが失礼します。 補足説明も兼ねて、このイベントに至るまでのいきさつを少しばかりお話させてもらえば幸いです。 さて、私たち放課後ティータイムが京音堂にて単独ライブをすることになったのは明石さんの説明で 既にご存知かと思いますが、一つ付け加えたい事があります。 私は先輩を誘うつもりが無かったわけではありませんでした。 単に先輩に対して負い目といいますか、 私が先輩の重荷になっているのではないかと……そのように思えたのです。 言い訳がましく聞こえるかもしれませんが、 先輩にチケットを渡す踏ん切りがつかなかったことは事実でした。 あの日――私が先輩の部屋に遊びに行った日から、先輩は英会話教室に来なくなりました。 初めは先輩も何か事情があるのだと余計な詮索はしませんでしたが、 いよいよ一ヶ月も姿を見せないとなると私も心配を隠せませんでした。 そして最後に先輩にお会いした日まで記憶を辿ると、私はまさか、という焦燥にも似た胸騒ぎがしたのです。 5