約 762 件
https://w.atwiki.jp/umvsc3/pages/66.html
ロケットラクーン + 目次 プロフィール ステータス コマンド表 技解説 コンボ 応用コンボ XFコンボ テクニック カラー、アレンジコスチューム トレーラー動画 編集・修正コメント欄 関連リンク ロケットラクーン/戦術指南 ロケットラクーン/チーム内考察 セリフ集/ロケットラクーン MISSION/ロケットラクーン キャラクター別対策/ロケットラクーン したらば掲示板/ロケットラクーンスレ 新キャラクター攻略(4Gamer.net) プロフィール [部分編集] 本名 ロケットラクーン UMVC3にて初登場。ハーフワールドと呼ばれる惑星で強化手術を受け、高い知能と戦闘能力を得たアライグマ。コロニーの平和を守る“レンジャー”としての実績を経て、現在は惑星調査隊として外宇宙へと戦いの場を移している。海外でもダレコレ?状態だったマニアックなキャラクターで参戦発表と同時にゲームサイトでは紹介記事が作られたりした。小さな体と各種トラップを使用して戦うトリッキーなキャラクター。 職業 インタープラネタリー・エクスプローラー 声優 Greg Ellis 専用BGM Rocket Racoon's Theme(Ultimate Marvel vs. Capcom 3) 初登場 Marvel Preview #7 (1976) ステータス [部分編集] 体力 750,000 imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 重さ 軽い 歩行速度 43/50位 ダッシュ スライド タイプ シューティング 最低クラスの体力とリーチ、そして癖のある通常技。とてもじゃないが錚々たるヒーロー・ヴィラン達と真っ向正面から殴り合う能力は持ち合わせない、一見キュート、性格は粗暴なアライグマ。そんな彼の持ち味は個性的な必殺技の数々で、攻撃範囲の広い「ペンデュラム」や各種設置技、そしてロケットスケートや低空中段といったすばしっこさと何より全キャラ中最小クラスの食らい判定は「強いと言うより鬱陶しい」独特の立ち回りを可能とする。やれる事自体は多いが一辺倒に頼りきれるような技・行動を持たず、コンボも火力を出そうとすると大量のゲージまたは高い操作技術を要求される。あらゆる局面で甘えの利かない上級者向けテクニカルキャラだが、救いはHCが総じて使いやすい事だろうか。アシスト性能やゲージ依存度が高く、またXF適性も充分なため大将での起用がポピュラー。しかしながら甘えの利かないキャラゆえにアシストに頼れない単独の立ち回りは敷居が高く、またXF中の操作の忙しさもかなりのもの。逆に言えばプレイヤー性能による伸びしろが大きいキャラなので、じっくりやり込めるキャラを求める人におすすめしたい。 Xファクター 攻撃力 速度 効果時間(F) Lv1 120% 120% 10秒間(600) Lv2 140% 130% 15秒間(900) Lv3 160% 140% 20秒間(1200) コマンド表 [部分編集] 分類 技名 コマンド 備考 特殊技 ワイルドリッパー +強 必殺技 スピットファイア +攻 空中可飛び道具L発生保障 [地上弱版]:ダウン拾い スピットファイア・トワイス └ 攻 オイルボム +弱 設置技 [爆発]:飛び道具M [発火]:ダウン拾い Mr.フラッパー +中 飛び道具Lダウン拾い空中復帰不可 ペンデュラム +強 飛び道具L壁バウンド空中復帰不可 エンジェルギフト +弱 中段設置技飛び道具L空中復帰不可 クレイモア +中 設置技飛び道具L ショッピングバッグ +強 設置技飛び道具L捕縛強制ダウン ロケットスケート 方向キー+攻+S 空中可移動技 プレイタグ +攻 ワープ ハイパーコンボ ロックンロール +攻攻 連打強化可飛び道具H浮かせ空中復帰不可[最終HIT]:ホーミング マッドホッパー +攻攻 設置技発生保障飛び道具H浮かせ空中復帰不可 Lv3ハイパーコンボ ロッキーラクーン +攻攻 連打強化可飛び道具Hロックダウン拾い強制ダウンダメージ補正無視 タイプ Vアシスト Vカウンター Vコンビネーション α スピットファイア・トワイス(M) ロックンロール β クレイモア γ ペンデュラム 技解説 [部分編集] 通常技 攻撃力 補正値 属性 解説 立ち弱 31,000 0.75 - 0.10 連打キャンセル可 短い手でパンチ。連打可能で発生も早い。かわいい。 立ち中 42,000 0.80 - 0.10 短い手でフック。連続技の繋ぎ以外では出番が無い。このときラクーンの牙がむき出しになっている。かわいい 立ち強 60,000 0.85 - 0.10 飛び道具L削りダメージ 地面に向かって細いレーザーを照射。リーチがあるので当てやすいしかわいい S 60,000 0.90 - 0.10 エリアル始動 しっぽフルスイングで打ち上げる。判定が小さい上にかわいいので対空には向かない しゃがみ弱 30,000 0.75 - 0.10 下段連打キャンセル可 ちっこい手でパンチ。下段判定で連打可能。やっぱりかわいい しゃがみ中 45,000 0.80 - 0.10 下段浮かせダウン しっぽで払う下段技。ダウン属性だが後のH系攻撃に繋げやすい。あとかわいい しゃがみ強 60,000 0.85 - 0.10 飛び道具L削りダメージ 約斜め上45度方向に向かって細いレーザーを撃つ。下段ではないが押し続けると画面端までレーザーが届くので、図体のでかいアシ狩り限定で牽制に使えないことも無い。かわいい ジャンプ弱 33,000 0.75 - 0.10 中段 発生の早いかわいいキック。連打で2発目に派生する。エリアルの貴重なコンボパーツ ジャンプ中 45,000 0.80 - 0.10 正面方向に対して短距離を突進する(頭突き)。連打で2回まで連続で出せる。中段ではないことに注意。エリアル中でも高度に関係なく真横に突進してしまうので、追いかけジャンプの昇りで出すとエリアルがアッサリ途切れてしまう。LLよりもダメージが伸びるうえにかわいい為使いたいところだが、肝心の使いどころが難しい技 ジャンプ強 60,000 0.85 - 0.10 中段 ナイフを振り上げる。発生が早くかわいいので低空中段にはコレが最適 ジャンプS 70,000 0.90 - 0.10 中段飛び道具L削りダメージ 爆弾を手前で炸裂させる。判定が広いが発生はJ強の方が早い。少し離れた位置から低空中段連発というかわいい嫌がらせも可能(地上技に繋げないと連続ヒットしないのであまり意味は無いが…) 地上投げ(前) 10,000 x 3HIT (80,000) 1.00 強制ダウン 画面端で決めればスピットファイアLでダウン追い討ち可能。中央付近でも最速でザ・ロッキーラクーンが入ることを確認。フラッパー直後ならロックンロールも入る。頑張る人は2369昇りスピットファイアL→6HSがかわいい。 地上投げ(後) 空中投げ(前) 10,000 x 3HIT (80,000) 1.00 強制ダウン かわいく回り込んで投げてくる。地上投げよりも猶予があるため、着地後に最速でMr.フラッパー→ペンデュラム→ロックンロールや、直接ロッキーラクーンでダウンを拾える。要練習 空中投げ(後) 特殊技 攻撃力 補正値 属性 ワイルドリッパー +強 65,000 0.85 - 0.10 ナイフを突き出して短距離突進。速度と移動距離は申し分なく、とにかくリーチの短いラクーンにとっては生命線。必殺技やSでキャンセルできる ホバリング(正式名称不明) 空中で(押しっぱなし可能) --- --- 移動技 しっぽをプロペラのようにくるくるさせつつ足のブースターで揺るやかに落下。レバー左右で動くことも出来る。実はジャンプ直後に出せる上、動作中はいつでも通常技が出せる(というよりを離した時点ですぐ動けるようになる)ので、これを応用して地上から+Hとやれば地上から最速中段が出来る。そのまま地上コンボにもっていけるので、近距離での択取り・ダメージソースとして重宝する。あとかわいい 必殺技 攻撃力 補正値 属性 スピットファイア +攻 40,000 0.90 - 0.15 空中可飛び道具L発生保障[地上弱版]:ダウン拾い 弱は斜め下、中は正面、強は斜め上に光弾を発射する。弾速が遅く、弾強度も低い(下記のトワイスまで当ててようやく波動拳を相殺するレベル)ため撃ち合いには適さない。弱はダウン追い撃ちが可能だが、これを使ったコンボは若干シビア。 スピットファイア・トワイス ∟攻 40,000 0.90 - 0.15 空中可飛び道具L発生保障[地上弱版]:ダウン拾い 追加でもう1発光弾を放つ。1発目と別のボタンを押す事で別の方向に撃つ事も可能。やっぱり弾強度は低い オイルボム +弱 [爆発]:70,000 [発火]:10,000 x 10HIT (64,700) 0.90 - 0.15 設置技[爆発]:飛び道具M [発火]:ダウン拾い オイル瓶を投げる。瓶が落ちた所にオイルが広がり、そこに強攻撃を当てると発火して多段ヒットする。置き攻めに使うと便利。ちなみに落ちる前に当てると爆発、当たった相手を吹き飛ばす。これもダウン拾い判定がついているので、エリアルからのコンボパーツに使えたりする。 Mr.フラッパー +中 70,000 0.90 - 0.15 飛び道具Lダウン拾い[空中ヒット時]:地面バウンド空中復帰不可 地面からベアトラップをせり出してぶつける。出が遅く普段はコンボの繋ぎ(※1)程度にしか出番がないが、ガードさせれば+22と言う驚異的な有利フレームが得られるので立ち回りにも混ぜていく価値はある。(※1)うまくダウン追い討ちに使うと地面バウンドを誘発するのだが、これは『ダウン拾い+空中ヒット時に地面バウンド』の性質が一度に起こる為。その為ダウン拾いの部分しか当てられないと地面バウンドにならず、カス当たりになってしまう点に注意。Mr.フラッパーのダウン拾い全般に言えることだが、この技は出が遅いために最速で繋がないとカス当たりになり、ロックンロールが繋がらなくなる。さらに相手が前転起き上がりすると真後ろに回られて確反なので、コンボミスは避けたい。ちなみに耳が動いていてかわいい ペンデュラム +強 90,000 0.90 - 0.15 飛び道具L浮かせ壁バウンド空中復帰不可 通称「丸太」。振り子の軌道を描く高速の丸太をぶち当てる。出はやや遅く持続も短いが、影響範囲が広く相手の出鼻をくじきやすい。単発で出した丸太がヒット時はもう一発連続でペンデュラムが連続ヒット、ここから更にHCで大ダメージが狙える エンジェルギフト +弱 80,000 0.90 - 0.15 中段設置技飛び道具L空中復帰不可 地面に罠を設置しつつ後ろにぴょんと跳ねる。相手が罠に触れると画面上から中段判定の岩石が高速落下。硬直も少なく、通常技で中下段の簡易2択が迫れる。罠系の必殺技では一番隙が少なくて使いやすい印象。画面端ではJCCを絡めたループコンボも出来る。※各種設置罠(HC含む)はそれぞれ画面に1個まで設置可能。ただしラクーンが攻撃を受けると罠の攻撃判定が消える(ガードはセーフ)ので注意 クレイモア +中 15,000 x 10HIT (97,300) 0.90 - 0.15 設置技飛び道具L 地面に赤い蛍光灯を設置しつつぴょんと後退する。罠に触れると多段ヒットの爆発を発生させる。最大10ヒット。拘束力は微妙で罠設置時の硬直もエンジェルギフトより若干大きめだが、攻め継続としては使える性能。相手が前に出るタイプのアシストを出したときに巻き込んでくれることがるので、ハピバした時はロックンロール×nで敵アシストを葬り去ろう ショッピングバッグ +強 56,000 0.90 - 0.214 設置技飛び道具L捕縛強制ダウン 地面に罠をry。相手が触れると投網で捕らえて無防備の宙吊り状態にする。硬直が罠系で一番大きいうえ、設置時間も短いのでかなり不憫。正直使い辛い部類に入るが、他の罠と併用して設置できるのがせめてもの救いだろう。相手が空中に逃げた時に設置してプレイタグで退避、ヒット時にペンデュラム×からの追撃という使い方が無難か。 ロケットスケート S+攻 --- --- 空中可移動技 レバー方向に対して高速移動する。地上で2回、空中では一回まで連続使用可能。プレイタグの存在に隠れがちな不憫な技。なお、モーション中に必殺技でキャンセルが可能。逃げ回りつつ罠を巻くか、逃げとみせかけペンデュラムで迎撃、プレイタグで奇襲するかといった芸当も可能。空中2,3方向の場合は各種空中攻撃でもキャンセルできる為、不意をついた中段攻撃で攻めるといった事も。 プレイタグ +攻 --- --- ワープ 弱は相手の前、中は後ろに出現。強は一定時間潜ってレバー左右で任意の方向へ移動出来る。潜っている間は完全無敵だが、潜り始めと出現時には若干の硬直がある。硬直は強<弱=中の順に大きい。通常技からそのままアシストや罠と絡めた表裏、奇襲に使えるので、1~2番手として活躍する場合は非常に重宝する。 ハイパーコンボ(Lv.) 攻撃力 補正値 属性 ロックンロール(Lv.1) +攻攻 12,000 x 34HIT + 100,000 (246,800)[連打時]:14,400 x 34HIT + 100,000 (288,800) 0.95 - 0.35 連打強化可飛び道具H[34HIT目]:浮かせ空中復帰不可[35HIT目]:ホーミング ダンテのミリオンダラーに構成が似た技。使用感もほぼ同じだが打点が低いことに注意。打点の低いガトリング砲連射→換装しホーミング弾(相手が真後ろにいても追尾してちゃんと当たる)で〆る。ガトリング部分さえヒットしていれば確定演出時間の長さやヒット数の性質上、ナルホドくんやフランク・ウェストがVCで使ことでも中々の効果を発揮する。また、相手のアシストにヒットした場合は更にロックンロールがヒットするので、地味にアシ狩り性能は高め。ただし、敵本体の割り込みには注意。そして、ガッツポーズがかわいい マッドホッパー(Lv.1) +攻攻 220,000 0.90 - 0.35 設置技発生保障飛び道具H浮かせ空中復帰不可 巨大なバネが飛び出すデケエ罠を正面に設置する。相手が罠に触れると攻撃判定発生。実は同時押しの組み合わせでバネが吹き飛ばす方向が変わる。置くだけで相手の動きを制限できる上に、他の罠と違って本体が殴られても消えない、最速でガードされても有利と完全な出し得技。バージルやダンテ等の厄介な急降下系ジャンプ攻撃に合わせて先読み気味に設置してガードを固めたり、ディレイド用の安全交代手段などに重宝する。ゲージに余裕がある時に適当に撒くだけでも強いが、ラクーンはゲージ依存度が高いので状況と相談の上で。ホッパー設置→生交代→ホッパーヒットという流れの場合は、生交代したキャラがそのままコンボを繋げることも出来るかなりレアなケース。チームの編成でコレが可能かどうか試してみる価値は十分にある。 ロッキーラクーン(Lv.3) +攻攻 40,000 + 10,000 x 13HIT + 80,000 + 120,000 (370,000)[連打時]:40,000 + 10,000 x 13HIT + 3,000 x 34HIT + 80,000 + 120,000 (472,000) 1.00 連打強化可飛び道具Hロックダウン拾い強制ダウンダメージ補正無視 相手を落とし穴にはめ、タコ殴りにしてから爆弾を落とす。ヒット後はさらにMr.フラッパー>ペンデュラム>ロックンロール等が繋がる。ロック判定は相手の座標をサーチするが、落とし穴なので地上にいないと当たらない。主にダウン拾いを生かしてコンボに組み込む。何気に飛び道具判定なので、ドクター・ストレンジのラガドールの七つの輪(暗転返し)に対してDHCでこれ出してしまったりすると痛い目に合う。 ヴァリアブルアシスト 攻撃力 補正値 属性 解説 α スピットファイア・トワイス(中) 50,000 + 50,000 (95,000) 0.90 - 0.15 飛び道具L 弾速の遅い飛び道具を2連射。その分どんなキャラでも動きは合わせやすいのは利点で、連続ガードでもないのでワープからの表裏を迫り、そのまま地上コンボに移行することも可能 β クレイモア 15,000 x 10HIT (97,300) 0.90 - 0.15 設置技飛び道具L 多段ヒットする設置系トラップ。接近が容易なキャラで組んだ場合の固めやコンボ伸ばし、行動妨害のお供に。 γ ペンデュラム 80,000 0.90 - 0.15 飛び道具L浮かせ壁バウンド空中復帰不可 おそらくラクーン使いの大半が選択するアシスト。丸太の弾速、広い攻撃範囲、ヒット時のリターンが他よりも群を抜いて優秀な為。しかし壁バウンドは追い討ちの難しさもキャラや状況によってまちまちになるため、真に有効活用するにはキャラ毎に使う間合いと丸太の軌道、何より追い討ち手段を用意しておく必要がある。ワープなど相手の裏にまわる技を持ってるキャラクターにすると表裏のドキドキ二択クイズが迫れる。スペンサーやバージル等、本人の基本コンボで壁バウンドを使用するキャラとの相性はやや劣る。 コンボ [部分編集] ※HC連打無しのダメージ表記 コンボ ダメージ 2L 2M 2H 6H S JL JL JH JS (着地)Mr.フラッパー ロックンロール 1ゲージ 471,500 かわいいラクーンに触りたてな初心者向けの基本コンボ。ラクーンの地上技は全体モーションが短いうえに仰け反り時間も短いため、結構素早い入力速度が必要になる。とりあえず地上のチェーンは「6H>S」と打ち上げること、エリアル中は「LLHS」の順でやることを覚えると楽。もしもゲージが無い場合はエンジェルギフトやオイルボムを重ねて起き攻めに移行したい。 コンボ ダメージ 2L 2M 2H 6H S JL JL JH JS (着地)ザ・ロッキー・ラクーン Mr.フラッパー ロックンロール 4ゲージ 809,700 4ゲージをふんだんに盛り込んだコンボ。どうしても倒し切りたい場合の選択肢に入る。ザ・ロッキーラクーンの直前(タイミングは着地と同時くらい)にXファクターを発動させると、比較的安全にかつ大幅にコンボダメージが伸ばせる。 応用コンボ [部分編集] ギフトループコンボ コンボ ダメージ JH>2M>5H>6H>S>JL>JH>JS>フラッパー>エンジェルギフト>(S>エンジェルギフト)×7>S>低空JS>ロッキーラクーン>ペンデュラム>ペンデュラム 3ゲージ画面端限定 947,900 画面端限定の高難易度コンボ。ただしゲージ回収率は1本半分に加えて大半の相手は倒しきれるという非常に見返りが高い内容なので、是非とも習得したい。アドバイスとしては、最初のエンジェルギフトは落ちてくる相手がギフトとの接触判定と重なるタイミングで出すことがまずひとつ。次にS>エンジェルギフトの繋ぎはSをJcc(ジャンプ移行4フレーム以内に必殺技でキャンセル)で強引にエンジェルギフトを設置することである。通常のキャンセルより気持ち遅めに入力する感じだが、結論としてはタイミング要練習とのこと。ループする部分の(S>ギフト)はコレの繰り返しだが、7回目以上はコンボ補正のおかげでマトモに追い討ちが入らくなるので注意。また、最後の低空JSは+Sで出すという点も忘れちゃだめ。 コンボ ダメージ 2L 5M 5H 6H S (頂点付近で)JL JH (1テンポおいて)JS オイルボム 微ダッシュ5H (最速で)丸太 (ロケットスケートから)S JM JS ロケットスケート Mr.フラッパー エンジェルギフト (S エンジェルギフト) S 低空JS Mr.フラッパー ロックンロール 1ゲージ 648,700 画面端背負いの状態からでも反対の画面端へ到達出来る運搬距離の長いコンボ。小足始動だが5Mを2Mにすると丸太後のJMJSが当たらなくなるので注意。運搬部分の補正が辛いので2~3ループが無難だろう。 コンボ ダメージ 2L 2M 6H (向き反転) S ペンデュラム 6H S JM JS Mr.フラッパー エンジェルギフト (S エンジェルギフト) S 低空JS Mr.フラッパー ロックンロール 1ゲージ画面端背負い限定 約745,000 画面端背負いからの位置入れ替えコンボ。2Mで浮いた相手を6Hで潜り、画面端側に丸太を撃つ。実戦で決めるのはなかなか難しいが、練習しておいて損は無い。 オイルボム拾いコンボ コンボ ダメージ 6H S JM JS オイルボム 最速2H S JM JS オイルボム 最速2H S JM JS フラッパ>ペンデュラム>ロックンロール1ゲージ画面端限定 629,100 画面端限定のコンボ。ダメージとゲージ回収率はギフトループコンボより劣るが、安定度は高い。エリアルのJMを落ち着いて当てれば上手に継続する。丸太で壁バウンドしたときに、マッドホッパーやもう一度丸太で火力を上げるのもいいかもしれない。6Hがガードされて刺さりにくい場合は、6H>エンジェルギフト ダッシュ 2Lで擬似ガー不を狙うのもいいだろう。 コンボ ダメージ 2M 5H 6H S JL JH JS オイルボム ダッシュ5H ダッシュS JM JS Mr.フラッパー ペンデュラム ペンデュラム ロックンロール1ゲージ 591,300 画面中央でも使えるオイルボム拾いコンボ。S後のJLJHはジャンプの頂点付近で出す、その後のJSに若干ディレイを意識すると繋がり易い。タイミングが若干シビアだが、運搬距離が長いという利点がある為 2回目のエリアルで画面端に到達すればギフトループへと移行する事が出来る。(運搬距離は画面3分の2程) ロッキーラクーン始動コンボ ロッキーラクーンコンボ ダメージ ロッキーラクーン 3ゲージ 370,000 ├ ロックンロール 4ゲージ 550,500 ├ Mr.フラッパー ペンデュラム ダッシュ6H S JL JL JH JS Mr.フラッパー ロックンロール 4ゲージ 620,400 ├ ペンデュラム 6H S JL JL JH JS Mr.フラッパー ペンデュラム ロックンロール 4ゲージ 623,500 └ ロケットスケート ├ オイルボム 2H S JL JL JH JS Mr.フラッパー |├ ペンデュラム (バックダッシュ)5H S JM JS Mr.フラッパー ロックンロール 4ゲージ 653,300 |└ エンジェルギフト (S エンジェルギフト)*6 S ペンデュラム バックジャンプJS | ├ Mr.フラッパー ロックンロール 4ゲージ 762,800 | └ ロッキーラクーン ペンデュラム 6ゲージ5ゲージ始動限定 958,000 └ マッドホッパー ダッシュ5H S JL JL JH JS Mr.フラッパー エンジェルギフト (S エンジェルギフト)*5 S ペンデュラム バックジャンプJS Mr.フラッパー ロックンロール 5ゲージ 826,900 ラクーンのLV3HCロッキーラクーンは、幻影剣等の一部HCへの確反として使う事が出来る。モーションもかわいい。拾い方が複数あるが、ギフトループ以外ならどのルートも大差無いのでやり易いもので良いだろう。因みにオイルボムで拾う場合は、小さいキャラには2Hでは届かないのでダッシュ5Hで起爆して当てよう。 投げからの追撃 投げからのコンボ ダメージ 地上投げ 80,000 ├ (ダッシュ)スピットファイアL ロックンロール 1ゲージ 302,600 ├ Mr.フラッパー ロックンロール 1ゲージ 316,600 ├ 2369スピットファイアL 6H S JL JH JS オイルボム 5H S JM JS Mr.フラッパー ペンデュラム ロックンロール 1ゲージ 362,500 └ ロッキーラクーン ロケットスケート Mr.フラッパー ペンデュラム 6H S JL JL JH JS Mr.フラッパー ロックンロール4ゲージ 694,400 地上投げからのコンボ。ダッシュスピットで拾うルートでは、即XFを使う事でXFコンボに移行できる。2369スピットの拾いは若干難しいが、ゲージ回収出来るので出来るだけ安定させたい。投げ⇒XF⇒ロッキーラクーンは大将をラクーンに据える場合是非覚えておこう。 投げからのコンボ ダメージ 空中投げ 80,000 ├ (着地)Mr.フラッパー ペンデュラム 6H S JM JS Mr.フラッパー ロックンロール 1ゲージ 376,200 ├ (低空限定)空中スピットファイアL 6H S JL JH JS オイルボム ダッシュ5H ダッシュS JM JS Mr.フラッパー ペンデュラム ロックンロール 1ゲージ 386,700 └ (着地)ロッキーラクーン ロケットスケート Mr.フラッパー ペンデュラム 6H S JM JS Mr.フラッパー ロックンロール4ゲージ 686,300 空中投げからのコンボ。フラッパーを使う時は着地後最速を意識すると良い。スピットはラクーンが相手から離れた瞬間に入力し、着地したら即6Hで拾いに行く。若干難易度が高い。空中投げからのロッキーラクーンは地上とルートが若干違うので注意。 XFコンボ [部分編集] XF3基本コンボ Lv3Xファクターコンボ ダメージ 2L2M2HS→J(LHS)→オイルボム→2HS→J(LHS)→オイルボム→2HS→J(HS)→フラッパ→S→J(HS) 画面中央限定 941,100 最後のフラッパをHCすると念願の1ゲージで100万越えダメージ。画面端の場合はエリアル2回をLLHSにしても良い。(24,000ほど伸びる) XF3丸太ループコンボ Lv3Xファクター全キャラ即死コンボ ダメージ ペンデュラム 2HS JM JS フラッパ ペンデュラム (S Jキャンセルペンデュラム×12) ロックンロール1ゲージ画面端限定 約1410000 俗に「丸太ループ」と呼ばれるコンボである。ループに入る前に一度壁バウンドをしておく必要があるので、丸太始動になる。コンボのコツは、SのJキャンセルを利用するので、気持ち長めにSを押し、キャンセルからの丸太を当てる。そして何より、落ち着いて入力することである。どのコンボにも言えることだが、丸太 Sは慣れると見てから十分安定してループさせることができるため、リズムというより目視で対処した方がより安定してループを継続できるだろう。なお、最後にロックンロールがあるが、HCを抜いても約121万のコンボなので、ソー以外はノーゲージで普通に即死できるコンボである。 Lv3Xファクターコンボ ダメージ ワイルドリッパー S JM JS オイルボム (地面に着弾後)H フラッパ(地面バウンド無効) ペンデュラム バックダッシュ S JM JS フラッパ (ペンデュラム S×3) ペンデュラム ロックンロール1ゲージ画面端限定 約1400000 「丸太ループ]通常技での始動版。やることが増えるが、こちらはさまざまな応用が利く。ダウン拾いはオイルボムを直接当てるのではなく、地面に着弾後の炎上で拾う。フラッパは地面バウンドだが、バウンドする前にオイルボムの炎上に当たるのでノーカンになる。ぶっちゃけループに入る前にHCでも大抵の相手が倒せるが、コンボ中に倒しきればXF時間とゲージが大幅に節約できるので、ぜひ安定させたい。 XF3運搬コンボ Lv3XF運搬コンボ ダメージ 2M 5H 6H S JL JH JS オイルボム 5H起爆 ペンデュラム 6H S JM JM JS ロケットスケート Mr.フラッパー 733,200 (7秒) └ (S ペンデュラム)*4 1,069,200 (11.5秒) 6H S JH JS オイルボム 2H S ペンデュラム 6H S JM JM JS ロケットスケート Mr.フラッパー 779,300 (6.6秒) └ (S ペンデュラム)*4 1,115,300 (11秒) 画面端背負いから反対側まで移動し、丸太ループに移行できるコンボ。高体力キャラには最後にロッキーラクーンかロックンロールを加える。2M始動と6H始動でエリアルパーツが違う理由は、6H始動でチビキャラ相手にJLJHをすると飛び越してしまう為。 XF3運搬コンボ2 Lv3XF運搬コンボ ダメージ 2M 5H 6H S JM JS ロケットスケートオイルボム 2H起爆 6H S JM JS ロケットスケート オイルボム 2H起爆>6H S JH JS Mr.フラッパー エンジェルギフト ロックンロール 1195700(連打なし) 画面端背負いから反対側まで運べるXF3中央基本コンボ。低体力キャラには〆をバネにして、出現攻めの時間を稼ごう XF3ペンデュラム始動コンボ Lv3XFループコンボ ダメージ ペンデュラム 6H S JM JM JS ロケットスケート Mr.フラッパー 5H S 576,800 (4.5秒) ├ (JM JH JS 2M S)*3 1,047,200 (8.6秒) |└ (ペンデュラム S)*3 1,265,600 (11秒) └ (JM JH JS エンジェルギフト 前ダッシュS)*2 929,600 (7.5秒) └ (ペンデュラム S)*5 1,265,600 (11.7秒) XF中ループパーツを組み込んだコンボ。丸太+エリアルで端に到達した場合限定。どちらもノーゲージ全キャラ即死、XF時間の節約になる。難易度は少々高いが是非。 テクニック [部分編集] 今日から始めるギフトループ ロケットラクーンの画面端コンボ、エンジェルギフトとSを組み合わせたギフトループ。高難易度だが単体火力とゲージ回収力が高く、ラクーンを動かすことに慣れたら挑戦してみてもいいだろう。 しかし忙しそうな見た目から「私には無理かな…」「どうやればいいか解らない…」といったプレイヤーも少なくないだろう。 確かにレシピや動画は探せば見つかるが、取っ付き難い印象は否定できない。 そこで、この項目では実際の画像を見ながら操作について説明していこうと思う。少しでもアルカプライフの助けになれば幸いである。 準備 初めて練習する場合、練習相手のキャラはDr.ドゥームが良いだろう。浮き時間や当たり判定が並なのでとてもやり易い。流石 万能博士は格が違った 一応、最初は避けた方が無難なキャラを列挙しておく。(アマテラス フランク ゼロ ハルク ネメシス センチネル トロン) 1ループ目 ギフトループの始動条件は画面端でMr.フラッパーを当て、地面バウンドをさせる事。フラッパを当てた後の操作から解説していく。 ←フラッパ直後からの動きをコマ送りしたもの 地面バウンドが始まったら、先行入力気味にエンジェルギフト ⇒ 前ダッシュ ⇒ ギフトが反応する高さでS の流れ。 ポイントはギフト後のダッシュ、Sのタイミング。 前者はいつでも練習出来るので体で覚えるのが良い。(一応の目安はバウンドした相手が頂点の高さにいる瞬間) 後者は前ダッシュを確認してから押すくらいでOK。気持ち早すぎるくらいが丁度良い。 この部分だけでもコンボに組み込む事が出来る上、これ以降のループに比べかなり安定するので是非習得しておきたい。 2~nループ ギフトループのメインとなる部分。永久ではないので、始動までのコンボ補正により回数を調整する必要がある。 まずは3ループを目標に練習していこう。 ←1ループ目最後のSから、次のSまでの動き Sヒット ⇒ (スーパージャンプキャンセル)ギフト ⇒ 前ダッシュ ⇒ S(以降ループ) の流れになる。 画像を見るとわかるが、ラクーンが画面外に出てしまい目視確認がし辛くなっている。タイミングは要練習。 (蛇足ですが、編集者はセリフでタイミングを覚えました。 Bould(ダッシュ)er t(S)rap! ) ○失敗しやすいポイント ①エンジェルギフトが出ない … スーパージャンプが出ていない。キーログが正しいならSを長めに押すか、2147Lで入力。 ②スーパージャンプが暴発 … 入力失敗か、ギフト入力が遅い。Sのヒットストップは長いのでその間に入力を。 ③回数を重ねると後退してしまう … 前ダッシュが遅いか、ギフト入力が早すぎる。(ダッシュを2キャンセルしてしまっている)ギフト入力はSヒット後に。 ④Sが当たらない、ギフトが反応しない … Sのタイミングが悪い。 ループ〆 ループを終了して、HC等に繋げる。 ←丸太〆。コマンドが雑な人はSを押した瞬間から早め早めに入力 スナバ ⇒ ギフト後、前ダッシュの代わりに組み込む。ギフトは反応しないのでそのまま出現攻めにどうぞ。 丸太 ⇒ 壁バウンド未使用ならバックジャンプJSで落とし、フラッパロックンを。使用済みの時は丸太後 即HCで。 低空S ⇒ 端に居ないとDHCが繋がらないならこちらを。丸太と合わせて使いやすい方を練習すると良い。 補足 当たり方が特殊なキャラについて ネメシス・センチネルといった体の大きなキャラは、フラッパ後にすぐギフトを置くとその場で反応してしまう。 画像の様に若干タイミングを遅らせて設置しよう。 トロンはフラッパギフトの後にダッシュすると、次以降のループが激難になる。前歩きで距離調節しよう。 カラー、アレンジコスチューム [部分編集] COLOR 1 COLOR 2 COLOR 3 imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 ※基本カラー COLOR 4 COLOR 5 COLOR 6 imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 COLOR DL imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 ※アレンジコスチューム トレーラー動画 編集・修正コメント欄 wiki編集がよくわからん人向け 編集や修正の要望に使用してください 内容を反映させ次第、削除していきます 編集や修正以外のコメントは削除することがありますのでご了承下さい 映画参戦オメw ハリウッドによるリアルラクーンw -- 2014-06-02 17 17 00 操作が非常にシビアだが、体の小ささから仲間の後ろに隠れたり様々な体制から技を繰り出したりとにかく初見殺しが多い。 -- 2018-08-25 02 02 46 ロケットランチャー -- 2024-02-11 22 40 45 舐塚隆二「テメエを撃ち殺してやるぞ!!」 -- 2024-02-12 22 16 43 この野郎 -- 2024-02-16 22 59 09 態度をでかくしやがって! -- 2024-02-16 23 20 10 ゴキブリを画鋲で刺した -- 2024-03-10 14 22 58 ミサイル -- 2024-04-20 23 11 55 田代砲無効 -- 2024-04-25 21 02 06 今泉加代のマンコ -- 2024-05-29 23 32 19 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/745.html
アルサランの基本戦術は非常に単純だ。サーヴァント同士の戦闘を傍観し、状況を見計らって背後から闇討ちする。アサシンのマスターとしては教科書通りの戦術だと言ってもよい。だが、アルサランのアサシンの持つ宝具は、それをやる上では非常に有効だ。 しかし、この戦術には限界もあるのだ。アサシンのクラスには、徹底的に決定的な攻撃能力が無い。 「まあ、それならそれで、戦略で補えばいい」 噴水を背にした公園のベンチに腰掛け、アルサランは一人ごちた。耳元のMDウォークマンが音楽を奏でている。曲はDschinghis Khanの“ジンギスカン”。テンポのいいドイツ語の歌詞が、アルサランの耳に不思議と馴染む。 アルサランの策略は今のところ順調に動いている。 最初にセイバーに対して手を出したのは、自らの駆るアサシンの存在が大きかったため。アサシンは気配遮断スキルを保有しているため、どこにいてもおかしくない、という物騒な弱点もある。 それは、逆にいえば“どこにいなくても恐ろしい”というアドバンテージでもあるのだ。こうやってアルサランが堂々と出歩いているというのに、アサシンによる背後からの強襲を警戒して誰も表に出てこない。もっとも、この体も、工房から遠隔操作している動死体なのだが。 ビルの合間に作られた公園には、ここが街中だというのが信じられないほどの静寂に満ちている。それも当然、ここは元々、市内にいくつか存在する、聖杯戦争のためのバトルフィールドだ。 内部で起きている事を外部から知覚できないようにする微弱な結界が張ってあるが、実の所、あまりあからさまに結界を張るわけにもいかなかったので、公園として快適に過ごせる程度の効力しかない。それでも菅代の風水魔術と組み合わせれば絶大な力を発揮するのだが。 「こちらの手札は暗兵と狂兵、対する敵手は剣兵、弓兵、槍兵、騎兵、術兵の五者。さて――――誰から利用させて貰おうか?」 アルサランの口元が吊り上がり、獣じみた凶暴な笑みが浮かぶ。聖杯戦争中、もっとも危険なマスターが新たな策動を始めようとしていた。 水佐波市近海、沿岸から視認できない程度には遠く、しかし戦闘機の速度ならいつでも辿りつけるほどには近く、巨大な影がうずくまっていた。 原子力空母ジェラルド・R・フォード級航空母艦、三番艦アリゾナ。ここ一週間に渡って沖合に停泊し、状況を監視し続けている。 その舷側で、当直を終えたデイビッドはポケットから取り出した煙草に火を付けた。そろそろ冬になろうというこの季節、野ざらしの甲板は冷え込む。そんな場所では、煙草の小さな火でも気分は落ち着く。 碌に上陸もできない任務に、買い置きのマルボロもそろそろ底を尽きかけている。いい加減、どこかに停泊して欲しいものだ。 そんな風に思いながらデイビッドは頬を撫でた生ぬるい風に、寒気を感じて頬に手をやった。その時、ふと、足元の海から波ではない奇妙な水音が立つのを聞き、デイビッドは思わず舷側の海を覗き込んだ。黒々とした海面に跳ねる影が一つ。 「……何だ、魚か」 ほっと溜息をつくデイビッドの視線の先で、魚がニタリと歪んだ嘲笑を浮かべた。 デイビッドが船室に戻ると、非番の仲間がポーカーに興じていた。 「ああ、デイビィか。当直終わったのか?」 「おう、ようやく終わったぜ。ってわけで、俺は寝るわ」 からからと笑い合い、デイビッドは二段になったパイプベッドの梯子を上り、横になる。 横になって仲間達から顔を背けたデイビッドの顔が、歪んだ嘲笑を浮かべた。 水佐波市の中心、水佐波駅、及び複合施設水佐波レイシティから少し離れて、少しばかり大きな建物が存在した。 ――――水佐波デパート。 少しばかり捻りが足りないが、分かりやすく呼びやすい、そんなネーミングセンスである。 陣地の構築はキャスターの使い魔達に任せ、エーベルトとキャスターの二人は街を出歩いていた。正確には、地形把握の名目でエーベルトがキャスターを連れ出した、というのが近い。 だが、いつの間にこんな雰囲気になっているのだろうか……。 女は苦手だ。トオサカと同じくらいに。 洋服売場は鬼門だ、とエーベルトは確信する。今度からは寄り付かないようにしよう。 「マスター……」 試着室のブースを隔てるカーテンが遠慮がちに開き、恥ずかしそうに顔を赤くしたキャスターがカーテンの隙間から顔を出している。 「マスター、その、私がこんな服を着るのは、少し変……」 「い、いや、変という事はないと思うが……何かあるのか? というか、この場でその呼び方は……」 マスター=御主人様、民主主義の進んだ現代社会において、ある種の特殊な趣味の持ち主以外は使用しない言語である。 「その、マスター……」 エーベルトの背中に、ざくざくと音を立てて嫌な視線が突き刺さってくる。軽蔑するような女性からの視線と、やっかみ混じりの男どもの視線。前者の方が多いのは、ここが婦人服売り場であるからか。 「ちょっ……ちょっと待てキャスター、頼むから……!」 キャスターの体を試着室のカーテンの奥に押し込むようにして懇願する。 「……頼むから、この場でマスター呼ばわりはやめてくれ」 御主人様呼ばわりさせている少女を更衣室=密室に押し込んでいる男――――今の自分が周りからどんな風に見えているのか思い至って、エーベルトの気分はさらに重くなる。 「……な、なら何て呼べばいい?」 「……エーベルトでいい」 キャスターは小動物のように顔を真っ赤にしながら頷いた。 「マス……いや、エーベルト……その……」 出来るだけ隣を意識しないようにしていたエーベルトは、隣を歩く少女の声に渋々そちらを向いた。 「やはり、私にはこういう服は……その、似合わないか?」 どくん、と心臓が飛び跳ねる。そんなハイスクールのような年齢はとうに卒業したとも思っていたが、私服に着替えたキャスターの姿は、そんな事もどうでもよくなるほどの破壊力を持っていた。 「い、いや……そんなこともない。すごく似合っている。その……綺麗だ」 「え!? その……ありがとう……」 キャスターは真っ赤になって恥ずかしげに笑顔を浮かべた。その笑顔から仕草から、エーベルトの心を動揺させる。 元々、神話になるほどの美女、というか美少女だ。サーヴァントとマスターという関係であるからこそ割り切る事も出来たが、こうやって普通の少女の格好をされると、本当にただの女の子にしか見えない。 まあいい、とエーベルトは思考。 別に、この少女の事は嫌いじゃない。むしろ――――。 そこまで考えて、エーベルトは考えるのをやめた。どうせ詮のない話だ。考えたって大して意味がある訳じゃない。 「行くぞ、キャスター。商店街にでも寄ってみるか」 「ん、分かった」 傍らの少女の腕を取り、足を早める。傍らの少女の浮かべた笑顔を見て、二人で、少しでも長く、こんな時間が続いてくれればいいと、エーベルトは少しだけそんな風に思い、しかしすぐに頭を振ってその考えを頭から追い出した。 どのみち、自分は魔術師、祈る神など持たないのだ。 夕暮れ時、水佐波市の外れにある寂れた古書店“蔵馬堂”の縁側にて、一人の男が動物たちと戯れていた。庭先には無数の小鳥や犬猫、あるいは他の野生動物などが集まり、ここ数日の水佐波市からすれば有り得ないほどに、存外に平和な雰囲気を漂わせていた。 「そうか、子供が生まれたのですか。それはいい事です」 「なるほど、つがいができたのですね、おめでとうございます」 「そうですか……三丁目のポチが……」 「縄張り争いですか……? 僕は、そういうのはあまり……」 その光景を見て、蔵馬鉄人は気まずそうに障子を閉めた。 「すまん。……邪魔したな」 「って、待ってください、これは違うんです!」 何が違うのかは知らないが、思わずそのように叫んでしまうランサー。鉄人は渋々、閉めたばかりの障子を開けた。 「で……俺が突っ込みたいのは何なのか分かるか……?」 「久しぶりに友人たちと……」 「違う。明らかに色々と一人称がおかしいだろうがよ。まさか、影でこっそりぽえむとやらでも書いている趣味か!?」 「失礼な! というか何ですかぽえむって」 「さあな。俺も知らん」 妹の孫が何か言っていただけであり、鉄人自身も意味が分かっているわけではない。 「……で、何なんだその口調は?」 「いろいろと事情があるんですよ……」 ランサーは何か泣きたくなってくる気分を抑えながら溜息をついた。 「それは……大変だな」 「ええ、大変で……大変だ」 咳払いして口調を元に戻す。無理して変えなくても、と鉄人は思うのだが。 そんな風に思っていると、ふと、ランサーが顔を上げた。 「これは……」 「どうした?」 不意に表情を引き締めたランサーの様子に、鉄人も少しだけ、かつてのような戦士の貌を覗かせた 「誰かが戦っているようだな。おそらくは、サーヴァント同士。そして魔術師が」 どうやら、平和な時間は、これで終わりらしい。 闇の中で、二人の少女が対峙していた。 遠坂桜と間桐真夜。 真夜が従える全身が糜爛した死体じみた弓兵は、アーチャーのクラスの定石に従い、小高い丘の頂上に陣取って魔獣殺しの毒矢を放つ。 桜の従者たるセイバーはレドームじみた盾を装備した腕で小脇にマスターの体を抱え、デスサイズにも似た月型の刃で飛来する毒矢を叩き落とすが―――― 「――――防戦は苦手だ」 舌打ちして毒を吐く。無論、どこぞの毒蛇のように嫌な液を吐いたわけではない。 セイバーの武器はハルペーと呼ばれる特異な形状をした刀。月型に曲がった刃は盾による防御を越えて斬撃を送ることを可能にするという、攻撃に特化した武装だが、その分、防御は苦手だ。 加えて、マスターというデッドウェイトを抱えた現状では、さすがに戦いづらい。だが、だからと言ってマスターを離すわけにもいかない。騎兵や槍兵ならともかく、敵は弓兵、マスターから離れれば、即座にマスターは毒矢の餌食だ。 桜にしても、それは理解している。それだけに不愉快だ。 『呵々、よく避ける……獲物は生きがいいに限るのう――――』 老人の声が浮かべる好々爺の笑みは悪意で出来た善意のイミテーション、不快極まりない。だが、次に聞こえてきた言葉は、不愉快どころの話では済まなかった。 『――――なるほど、真夜の姉というだけの事はある』 今、この爺はなんて言った? 「従姉妹の間違いじゃないの? 長く生き過ぎて老人ボケが進んだのかしら? それとも、脳味噌まで蟲に堕ちたのかしら?」 吐き捨てる桜、しかし、老人の声の告げる言葉は、桜の予想の最悪の斜め下を突き抜けていた。 『いいや、父親で合っておるよ。真夜の左腕、あれはお主の父親の死体から外したものだったのだがのお……腕以外は必要なかったのだが、何かの足しになるかと思って蟲蔵に放り込んでおいたら――――』 ヤメロヤメロ、その先を言うな……! 聞きたくないのは最低の真実。どうせ知らなくても困らないが、知ればこの上も無く不愉快な真実。 『――――こやつの母、まあ、お主にとっては叔母ということになるが、お主の父親に惚れておっていたらしくてのお……蟲蔵の死体に蟲を憑かせて動かして、こう、死体の上に乗っての、実に幸せそうな顔で腰を振っておったわい』 呵々、と実に楽しそうな老爺の声が響く。それと対照的に、桜の脳裏が冷たく燃え上がった。全身が冷たく冴え冴えと研ぎ澄まされ、同時に劫火のようなエネルギーが駆け回る感覚。 そう、これは魔術回路の起動だ。手元から特大のルビーが飛び、空中で砕け散った破片が月光を反射して煌めいた。 「――――こ、の、爺ぃ!! Das Schliesen ! /準備! Von einem bis sechs, Der Riese und brennt das ein Ende ! /一番より六番、終局、炎の剣、相乗!! 停止解凍、全投影連続層写/Freeze out ! Sword Barrel Full open ―――― !!」 空中に投影した黒鍵が劫火を纏って夜の大気を灼き、飛翔する。聖堂教会の礼装はそれだけで退魔の力を持ち、それが“浄化”“破壊”の概念を孕んだ火焔との相乗効果で破壊力を増大させる。 父から受け継いだ投影魔術の中で桜が特に力を入れたのが憑依経験の再現だ。宝具なんぞを投影しようとするのは相当に手間がかかって戦闘中に使うには足りないが、別に投影するのが宝具である必要はない。 そうやって再現した憑依経験によって放たれる鉄甲作用、一抱えもある巨大な甲虫の防護をブチ抜き、内側から業火が炸裂して爆散、そのまま真夜を囲うようにして地面に突き立った黒鍵の刀身から、赫々と燃える炎の壁が噴き上がる。 「Sieben,Acht,Die Hitze wird das Gefngnis !! /七番、八番、包囲、灼熱城壁!! Ein KOrper ist ein Korper !! /灰は灰に、塵は塵に―――――!!」 もう一個、特大のガーネットを放り投げて炎の結界の中に特大の魔弾を叩き込む。火炎の魔弾が火焔の結界と反応し、燃料気化爆弾にも匹敵する熱量が炸裂。必ず殺す、故の必殺――――だが、魔術師だけならともかく、最大の敵はサーヴァント、これで死んだとも思えない。 「Es erzahlt――――Mein Schatten nimmt Sie./声は遠くに、私の足は緑を覆う」 炎の中から、ガラス玉のように透き通った声が響く。 「Es befiehlt――――Meine Augen wollen alles./声は深くに、私の眼は世界を徹す」 炎を切り裂いて伸び上がるのは、薄っぺらな影の刃。全長三十メートルはあるそれが、まるで解剖刀か何かのように、すっぱりと炎の結界を両断する。 その内側から、耳障りな羽音を立てて飛翔してくる何か。 『ほお……血の繋がった実の妹相手に、躊躇いもせずに魔術を放つか。なるほど、さすがは遠坂、優れた魔術師の血が流れているようじゃ。どうじゃ、お主も間桐の家で胎盤になってみてはどうじゃ、きっと優秀な仔が生れてくるじゃろうて』 「誰がなるか、この変態ジジイが……!」 黒鍵を織り交ぜて牽制のガンドを放ちながら吐き捨てた口に血の味が混じる。 いつの間にか、唇の肉を噛み破っていたらしく、そんな事にも気付いていなかった事に舌打ち一つ、気付かれぬように呼吸を整えて冷静さを取り戻す。 別に、桜とて好き好んで真夜を叩き潰したいわけではない。出来れば、助けてやりたいとも思う。 だが、自分は魔術師で、今は聖杯戦争の真っ最中、聖杯を手にするのは遠坂の魔術師として当然の義務のようなもの、そして自分はセイギノミカタではなく遠坂の魔術師だ。 だから――――そんな風に、言い訳じみた思考を繰り返す。 嗚呼、本当に――――。 『お取り込み中のところ大変申し訳ありませんが……戦争とはこのように運用するものですよ、お嬢さん方』 空中から放たれた無数の爆炎が夜空を業火の輝きで彩った。 夜空を飛翔するのはF-117ナイトホーク、形状から装甲素材に至るまでのことごとくをステルス能力に特化し、赤外線探知やレーダー波を探知する事によるレーダー警戒などに対して戦闘機として不可欠なアフターバーナーやレーダーすら放棄した機体。 ライダーの宝具によって魔獣と化すことによって、漆黒の夜間迷彩を夜の闇に溶け込ませる“混濁”の概念により魔術的にもほぼ完璧なステルス能力を手に入れ、 近代兵器に特有の長射程でもってアウトレンジの空に潜む事で、セイバーやアーチャーの気配察知をも無効化していた。 そのコクピットは無人。無数の機体を統括する空母そのものを魔獣と化すことにより、無数の機体を丸ごと魔獣に変えて操るのは、ライダーの宝具の能力あってのこと。 ライダーとそのマスターたるファルデウスが座するのは戦場を睥睨する鋼鉄の塊――――AH64-Dアパッチ・ロングボウ。 頭上に突き出した四枚のローターブレードが凶暴な轟きを上げて回転し、あまりの重装甲・重武装に空飛ぶ戦車とすら呼ばれる武骨な鉄塊が闇夜の空に舞い上がる。 その姿は鳥というよりは分厚い甲殻を背負って飛翔する魔蟲、唸りを上げて弾丸を吐き出す機首の30mm機関砲はまさに肉食蟲の牙。 放たれる対戦車ミサイルAGM114Lロングボウ・ヘルファイアが轟音を上げて大地に炎の華を咲かせ、その後を追って飛来した四機の戦闘機が放つミサイルが周囲を薙ぎ払う。 『ぬぅ……これは…………どこぞの軍隊でも乗っ取ったか……』 老爺の声が呆れたような声を洩らす。超音速飛行によるレンジ外からの強襲と、大火力によるヒットアンドアウェイ。爆風に一掃された大地には残炎が燻り、木立から何から全てが薙ぎ払われている。 そして、その逃げ場のない広場の中に佇むのは、ライダーの乗騎たるアパッチ・ロングボウ。機関砲とミサイルによる大火力、軍用ヘリの機動性による回避性能により、攻防共に一切の隙が存在しない。背中を見せれば瞬く間に肉片以下のものに変えられるだろう。 戦場に、ライダーの圧倒的優位による膠着状態が落ちる。 その刹那。 血と埃と硝煙の薫る戦場に、そこだけ切り取ったかのように一人の少女が佇んでいた。それを場違いだというのなら、戦場の方こそ少女にとって場違いだった。 輝く月光をスポットライトに、銀糸の髪と血色のガーネットの瞳を煌めかせ、スカートを摘まみ上げて部隊の主演女優のように一礼。 「初めまして、私はウィクトリアスフィール・フォン・アインツベルン。アインツベルン二百年の歴史を閉じる者」 スポットライトを浴びてオペラの舞台に立つプリマドンナのように腕を振って指し示した先に立つ一人の男。ファルデウスはその男を識っている。 武器の一つすら持ち合わせず、纏うはあまりにも質素な貫頭衣のみ。 男とも女とも取れる端麗な顔立ちには、どこかマネキンや人形を思わせる作り物めいた雰囲気が宿っている。 携えた槍は柄から穂先までが水晶のように透き通った素材で作られた一体成型であり、あらゆる生命の源たる原初の海それ自体が構成素材。 その特徴のどれもが、ファルデウスの知っているその存在そのもの――――。 「そして私の最強のサーヴァント、ランサー。その力を以って今、この戦闘に幕を引かせて頂きます」 獣人。神造人間。英雄王の片翼。天の雄牛を討った罪人の片割れ。 ――――英霊、エルキドゥ。 「ライダーぁあああああああ! アイツを殺せ、今すぐ殺せ! 核を使っても構わん、あらゆる手段を用いてこの場から消滅させろ!」 その瞬間、ファルデウスの掌に刻まれていた、車輪と駿馬を組み合わせたデザインの令呪の一画が弾けて消えた。 主の命令であれば否やはない。ライダーは頷いて、令呪のバックアップを以て自らの保有する最大戦力を駆動させる。 F‐22Aラプターが機銃とミサイルを投射し、YF-23Aブラック・ウィドウが衝撃波の刃を叩きつけ、アパッチ・ロングボウが銃火を降り注がせる。 それはまさに圧倒的多数による圧倒的火力、その劫火と爆風の渦の前には、徒手の人間など生き残る方法は皆無――――人間であれば。しかし、数と力の暴力を、ただ一人の力によって覆す、その程度が出来ない者など、英雄の中には一人もいない。 ましてやその男、かつて最強にして頂点たる金色の英雄王の隣に唯一立つ事を許されたほどの男――――。 「『天の創造(ガイア・オブ・アルル)』――――巖嶺態(ウルリクムミ)」 無数の砲弾が到達する前にランサーの全身から噴き出した泥がランサーの肉体を包み込み、巨大な岩の塊へと変容させる。単なる岩石に非ず、あらゆる攻撃に対して、単純な防御力を上昇させる。 何となれば『天の創造(ガイア・オブ・アルル)』、創造の女神アルルの手によって作られたエルキドゥの肉体そのものこそ、ランサーの持つ第一の宝具。彼自身が一つの対神兵器としての性質を持ち、肉体を任意の対神兵装に変えることが可能。 そしてライダーの宝具『黄金の手綱(ポリュエイドス)』は元は女神アテナに授かった天馬の手綱、神々の武具である。対神兵装に対しては少しばかり分が悪い。 「『天の創造(ガイア・オブ・アルル)』――――嵐鷲態(ウム・ダブルチュ)」 魂を揺るがすような咆哮と共にランサーの肉体がさらに変容していく。獅子の体躯、翼と頭は鷲、その形態は端的に言ってしまえばグリフォン。かつて女神ティアマトが夫を殺した神々を滅ぼし尽くすために生み出した十一頭の怪物の一柱。 巨大な翼が大気を撃ち、神殺の神獣は病毒を孕んだ風を撒き散らしながら、空を埋め尽くす鋼の魔獣のどれよりも華麗に天を舞う。 その状態でも十全に槍を振るう事が出来るのは、ランサーの保有する創世の槍、元より母なる海の具現たる不定形の竜頭槍、形を持たないが故にその技量を発揮するための肉体の形状に縛られない。 自在に形状を変える不定の槍は、その先端を七つに分岐させ、自在に蠢いて魔獣の群れを貫いていく。 『黄金の手綱(ポリュエイドス)』によって魔獣の特性を得てしまった兵器たちは、生物であるが故にそのまま鷲獅子が撒き散らす病害に冒され、あるいはランサーの振るう不定形の槍に貫かれ、失速し、墜落していく。 「っ、ライダー!! 何を躊躇っている!? 今すぐ核を使え! 確かにこの都市は壊滅するだろうが、ヤツがもたらす被害よりはマシだ!! スノーフィールドの惨劇を再現させてはならん! 今すぐにだぁあああああああああああ!!」 ファルデウスによる再びの令呪使用。ランサーが新たな対神兵装を顕現させるより早く、ライダーはその致命の引鉄を引こうとして―――― 「っ――――セイバー、止めなさい!」 桜が自らの従者に命を下す。こんなところで、核など使わせるわけにはいかない。桜の手に刻まれていた令呪の一角も、後を追うように弾けて消える。 地面を駆けるかのように大気を踏んで空を駆けるセイバーの踵から、黄金に輝く光の翼が広がった。『天駆ける白鷲(タラリア)』、大気を足場として風に乗る、伝令神ヘルメスのサンダルである。 「邪魔をするな、セイバー! ――――『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』!!」 ライダーの手から放たれた金属球が瞬時に液状に融け、投網のように広がってセイバーの体を包み込む。その姿はさながら渦巻く重金属の繭。 かつて火山の魔獣キマイラを討つ時に、キマイラに対して投擲した鉛の塊、それがベレロフォンの第二の宝具『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』。 対象を包み込んで動きを封じ、内部から放たれた攻撃を再び内部に弾き返す捕縛結界。しかし、それこそセイバーに対しては最悪の一手。 「――――『翻転響界(キビシス)』」 セイバーの顔を覆う覆面、ゴルゴンの魔眼を封じるための迎撃礼装が裏返しになってセイバーを包み込む。 その実体は冥王ハーデスより授かった女怪殺しの革袋、結界に取り込まれると発動できる迎撃礼装。 裏返しでセイバーを包み込み、その結界の『内』と『外』の概念を反転させることで『翻転響界』の内部は『外』となり、裏返された力は結界の『内』に取り残された者、すなわち術者自身へと反射される。 流体金属の繭が内側から弾け飛び、アパッチ・ロングボウを駆るライダーの全身へと絡みつき、その繭を切り裂いて翻ったセイバーの偃月刀が、ライダーの心臓に突き刺さった。 まさにその時。 “核”という言葉の前に、その場にいたあらゆる者の注意がライダーに向けられていた。何となれば、それはこの世界における最強にして最悪の兵器――――。 周囲を包囲した米兵たちも唖然としてライダーを見つめていた。 何となれば、この国は同盟国だ。加えて確かに無数の最新鋭兵器を次々と撃墜してのけたランサーの能力は凄まじいが、核を落とすとなると話は違ってくる。何となれば、間違いなく自分自身をも巻き添えにする行為。 その兵士たちの中で、歪んだ嘲笑を浮かべる男が一人。気配遮断を用いてサーヴァントとしての気配のみを消し、デイビッドに変化して身を潜めていたアサシンである。 『畏怖されし魔獣(ラ・ベート・デュ・ジェヴォーダン)』――――アサシンの保有する唯一の宝具。 それは、視線を合わせた、あるいは接触した時にジェヴォーダンの獣が対象の脳内に転移し、内側から食い破る事が出来るが、自身及び対象が第三者に知覚されていてはならないという厄介な制限を持ち合わせている。 だが、この戦場においてファルデウスが全ての注意を集めた刹那――――ライダー以外の誰もが、誰にも知覚されていないという稀有な一瞬を見逃さず、アサシンはすぐさま宝具を発動、ファルデウスの頭部が、血と脳漿を飛び散らせて弾け飛んだ。 その中から現れるのは、紅白の巫女装束を纏った一人の少女。その姿、舞い散る血煙を浴びてなお妖艶。 ファルデウスの頭蓋を喰い破り、ライダーの頭上を飛び越えたアサシンは、ライダーに剣を突き立てていて身動きの取れないセイバーの頭蓋を一息に噛み砕いた。 呆然と一連の展開を見守っていた人々の前で、アサシンは残されたライダーの首を無造作に捩じり切ると、その頭蓋を噛み潰して止めを刺した。 アサシンが咆哮を上げると、その咆哮に呼ばれるように突風が発生し、アサシンはその風に乗って跳躍する。 「っ、いけない、ランサー……」 ウィクトリアは傍らの槍兵に逃走に入ったアサシンを追撃するように指示しようとして、悔しげにその指示を撤回する。 あの速度での飛翔には、肉体的にはただのホムンクルスに過ぎないウィクトリアでは耐え切れないので、ランサーが飛んでアサシンを追うには、ウィクトリアをこの場に置いていかねばならない。 一方でアーチャーは、こちらがアサシンに気を取られている内に、既に姿を消してしまっている。しかし、消えているとは言っても、長射程攻撃を持つアーチャーである以上、どこからこちらを狙っているか分からない。結果として、この状況下でランサーを外す訳にはいかない。 「一本取られたわね……撤退するわ、ランサー!」 悔しげなウィクトリアの指示と共に、ランサーは翼を広げ、空へと舞い上がった。 ――――死狂人先生のドキドキ ☆ 放課後個人授業 !! 死狂人:「さて、新番組『死狂人先生のドキドキ☆放課後個人授業』の時間の訳だが……」 ペル:「……喰われました、巫女さんに」 ベレ:「……喰われました、ワンちゃんに」 死狂人:「と、いう訳で、タダーノ以来の記念すべき初の戦死者が出たわけだが……」 ペル:「……喰われました、巫女さんに」 ベレ:「……喰われました、ワンちゃんに」 死狂人:「出たわけだが……」 ペル:「……喰われました、巫女さんに」 ベレ:「……喰われました、ワンちゃんに」 死狂人:「いいから、お前ら話を聞け……」 ペル:「……喰われました、巫女さんに」 ベレ:「……喰われました、ワンちゃんに」 死狂人:「……『運命られし破滅の剣(グラム)』」 ――――しばらくお待ちください。 破底魔:「あれ、何か妙な音が聞こえましたが……」 死狂人:「っ、いかん、ヤツがくる! せっかく今日は乗っ取れると思ったのに……!」 破底魔:「って、何ですかこの惨状は!?」 死狂人:「くそ、来たかファーティマ、ここで会ったが百年目! 我が宝具の威力をたっぷりと味わって……」 破底魔:「とりあえず、諸悪の根源は遠野さんのお宅からレンタルしたクルートー君を組み込んでパワーアップした新生タダーノさんが相手をします」 犬只野:「その肉塊、悉く食い砕こう――――!」 死狂人:「な、何か喋ってる、というか武装999――――!?」 破底魔:「さて、駄い英霊は放っておいて、ちゃんとした授業時間を始めましょうか。それでは皆さんご一緒に――――」 ――――おさえて、破底魔先生! 破底魔:「と、いう訳で皆さん、皆さんの今回の死因は何か分かりますか? はい、ファルデウスさん」 ファルデウス:「ぶっちゃけた話、相手が悪かったですね。アサシンクラスは直接的な戦闘能力が低い分、防戦には極端に脆いですが、 気配遮断スキルがある分、自分から仕掛ける戦い、特に遠坂嬢や間桐家の人々のように、自分から出歩いて敵を探すようなタイプのマスターには最悪の敵になります」 ファルデウス:「まあ、私自身は遮蔽物のない場所でライダーのアパッチに同乗して飛行する事で、気配遮断スキルを持つ相手の接近も察知しやすいように配慮してきたのですが、まさか敵が脳味噌の中に直にテレポートしてくるというのは予想外でした」 破底魔:「はい、正解です。では、次はライダーさん」 ベレ:「いや、今回はそれこそ純粋に相性が悪かったな。私の宝具は『黄金の手綱(ポリュエイドス)』ばかりがクローズアップされるが、『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』とて決して捨てたものではないのだが……」 破底魔:「対結界宝具が相手では、さすがにどうしようもありませんでしたね」 ペル:「はーい先生、質問です」 破底魔:「はい、セイバーさん、どうぞ」 ペル:「それでわ。ええと、ライダーの宝具『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』だが、実際の所、この宝具って強いのか?」 ベレ:「貴様、私以上にロクな見せ場も無くサックリ殺られた癖に、この私を愚弄するか!?」 ペル:「っ、お前こそ『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』並みの素敵兵器まで持ち出して暴れた癖に一度も勝った事なんてないだろうが!」 破底魔:「そこ、教室で喧嘩はやめなさい! タダーノさん」 犬只野:「契約しよう。おまえは生きたまま、少しずつ、高熱で熔かすように咀嚼すると」 ――――しばらくお待ちください。 破底魔:「と、いうわけで授業に戻ります。さて、ライダーさんの宝具『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』ですが、実際にはかなりの地味チートになります」 ベレ:「ほらみろ、強いと言っているだろうが」 破底魔:「エクスカリバーやゲートオブバビロンのような派手さには欠けますが、その能力は聖杯戦争においてかなり致命的な効果を発揮します。セイバーさん、アサシンクラスが聖杯戦争において弱いとされている理由を言ってみてください」 ペル:「マスターの殺害はサーヴァントの突破が絶対条件、だったか?」 破底魔:「はい、その通りです。しかし、実際の所、いくらマスター殺害に特化しているからと言って、対サーヴァント戦能力が無ければ、 マスターを殺す前にそのマスターを守るサーヴァントに殺られます。逆に言えば、サーヴァントさえいなければ、マスターを殺害するのは別にアサシンクラスである必要はありません」 ペル:「なるほど、『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』であれば一撃でマスターとサーヴァントを分断できる。それさえクリアしてしまえば、絨毯レベルの乗り物であっても悠々とマスターを轢き殺せるという訳だな」 破底魔:「はい、よくできました。Cランクとはいえ宝具ですから、A+の筋力を持つ大英雄か征服王でも持ち出さなければ、『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』の捕縛を力技で振りほどくのは不可能です」 ベレ:「難点を言うならば、ビームのような直接威力系の宝具を持っているサーヴァントが相手では案外あっさりと破られてしまうという訳だな」 ペル:「それって原作鯖のほとんどが該当するんじゃないか?」 ベレ:「……」 破底魔:「そんな事はありませんよ。その手の宝具を持っているのは原作本編のセイバー・アーチャー・ランサー・ライダーの四騎に、Zeroの騎士王・英雄王・征服王の計六騎だけですし。 残りのマスターは容赦なく絨毯の餌食に出来ますから、結構いい所まで行けると思いますよ。最終的には負けるでしょうが」 ベレ:「……」 破底魔:「というわけで、相性次第では実際には結構有用なのです」 死狂人:「しかし、まさかこれまで聖杯戦争中に撃破されたサーヴァント三騎中、三騎全てがアサシンによる殺害だとはな……」 ペル:「少なくともライダーを倒したのは俺のはずなんだが……見事なまでに見せ場を持っていかれたな……」 破底魔:「しかも、一度として正面から殴り合っていませんね。現状、あのサーヴァントは正面から殴り合っても相当に強いはずなのですが……」 死狂人:「本当に性質が悪いな、あのサーヴァントは。早いところ本拠地を割り出さなければ本当にまずい事になるぞ」 ファルデウス:「現状でも十分に手がつけられませんが。居場所が割れてないアサシンは凶悪過ぎますからね。その上で正面から戦っても強いとなると、正直、私の場合だと、本拠地が見つけ出せなければ水佐波市全域を空爆するくらいしか思いつきません」 ペル:「……過激だな」 ファルデウス:「ですが、それだけの価値はあります。FateASではアサシンクラスの代わりにファイターが召喚された事に遠坂家のマスターが胸を撫で下ろしているように、アサシンクラスはその能力の低さに比べて、充分に警戒する価値のある存在なのです」 死狂人:「しかも、ヤツらが先代ライダーを隠し持っている可能性は充分にあるからな。警戒しておく価値は充分にある」 破底魔:「ところで話題は変わりますが、RWの前話に出てきた『泰山・二号店』のセガ○ル似のコックですが、実際、彼がまとめWikiの住民リストに登録されていると気がついている読者はどれだけいるのでしょうね」 死狂人:「ヤツがキャスターのマスターにならなかった事は、マスターとサーヴァント達にとっては僥倖だったな。まあ、ここで授業を受けているヤツらにはあまり関係のないことではあるが、な」 破底魔:「と、いうわけで、今回の『おさえて、破底魔先生!』はここまでです。それでは皆さん、次回も『おさえて、破底魔先生!』をお楽しみに」 死狂人:「それでは、また会おう。元気でな」
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/886.html
「いいか、目標地点到達の七秒前に展開するんだぞ。コンマ一桁台のズレは融通が利くがそれ以上は無理だ。それと今回は魚雷の搭載数が多いが早め早めに使っておけ! 誘爆の危険もそうだが重量の調整に手間がかかる。それから……」 「わーってますってやっさん。ブリーフィングで耳タコの上に実戦でもうやってんだ、そうしくじりやせんよ」 計器類にまみれた狭苦しいコックピットで、ヘルメットを抱えながら男は返事を返す。 「気持ちは分かるがリョウト、俺ァいつだってだが心配なんだ。海、いや……潜水艦乗りってのはなあ、常に厳格に、畏れを持って臨まにゃあならんもんなんだよ。いつ何が起きるか分からねぇ、注意が足りないことはあってもやり過ぎる事はないんだ」 「わかりましたよ。……サッズワン・ウナズミ、準備オーケイです」 漁人は海で育ち生きてきた。故にその恐怖脅威は骨の髄まで染み渡っている。 矢沢もそれを知っているからこそ、“潜水艦乗り”なんて言い回しをしたのだろう。 「取っ組み合いをするような潜水艦がどこにあるか」と返してやろうかとも思ったが、それではただの揚げ足取りだなと留めておくことにした。 彼の言っている事は正しい。 伸びをしてヘルメットを装着すると、歯車が重くゆっくりとした音を立て、機体を傾けた。 それにあわせてシートを倒し、天井までにずらりと並ぶランプの色とりどりをチェック。 角度調整を終えるまでの余った時間で身体を固定する。 遅れて重なるのは前面ゲートの開閉音。 「それではサッズワン発進どうぞ」 一際大きい歯車の音。オレンジ色に光りながら鳴くコックピット。少し遅れてヘルメットの内側から、鼓膜を震わせるハスキーボイス。 オペレーター向きじゃないよな、などと顔も合わせたことのない相手の声質を品評しながら、パチパチと順にスイッチを上げていく。 それから手元より少し先のレバーを掴み、力を込めて引く。 「サッズワン、発進」 火を入れられた動力炉が唸りコックピットまでを揺らすと共に、後方――機体の外部からビィーっとけたたましい電子号笛。 ……三、二、一。 漁人が充てたカウントダウンより微妙に遅れながら、機体は飛び立った。深い、深い、奈落の世界へ。 身体をぐんと引く加速のエネルギーはサッズワンのコードをもつ自身の機体ではなく、外部の射出装置が与えたものであった。 計算された予測地点に真っ直ぐに、正確に撃ち込む。母艦インベルフォークは、まるで海のスナイパーだ。 とはいえその対象は、高度な計算結果を乗せた電波を遮る奈落の中、さらにそれが動き回るとなれば百発百中とは程遠い。撃ち込むのがただの弾丸ならば。 そう、この弾丸は意思がある。弾道御する人の意思が。 対立する水の流れに当初の勢いを削がれたサッズワンその内部。 漁人は先ずジャイロと加速度計という少々古典的な、しかし未だ信頼性のある計算結果から座標を確認する。 それと並行しアクティブソナーをオン。出力は最大。 潜水艦同士の戦いであればこのように大きな音を発し続けるなど自殺行為以外の何者でもない。しかしそんなものの相手をする事は最初から想定外だ。 反響した音と"消えた音"をコンピュータに計算させ、目標の現在位置を探る。 与えられた時間は僅か。これが軌道修正を行える最後のタイミングだ。 漁人はモニターに小さく表示された時間ギリギリまでにチェックと修正を繰り返した。 「さて、水中ジェットコースターといきますか」 呟きヘルメットの内側でマウスピースを噛締める。と、コックピットを揺らす振動の幅と数が爆発的に増加した。 程よく暖められた動力、機体が自らの力で推進を開始したのだ。 飲み込んだ水を押し出し、機体はぐんぐん加速する。 一定の速度を超えた時、さらにもう一段階。漁人はシートに磔にされたまま、ただ歯を食いしばる。 抵抗を最大限に減らすための流線型の外装。だが先端においてその形状を阻害する歪な突起が一つ。 これが機体を超高速の弾丸に仕立て上げていた。 突起にぶつかる水流が醜く泡を散らす。ところが速さに比例してそれが増加していくと、いつしか泡は集合し機体を覆う膜になっている。 水中にありながらその抵抗を打ち消す、空気の防壁。纏う機体の加速度計は時速三百キロメートルの突破を表示。 その速さを持って討つは一つ。 漁人は全神経を集中させ、グリップに手をかけた。 「単独潜航? 何のためにですか」 「彼らに黙ってもらうためだ」 未だ整理されていない艦内、その一角に仮設された作戦会議室。 一見営倉と見紛うような暗く無機質な部屋の中で、男は安い葉巻を燻らせながらデスクにバッジを叩き置く。 小鳥とローリエ、地球を象ったそのデザインは、国際軍事連合のエンブレム。 それ以上は語らずに不機嫌そうに腰掛けるインベルフォーク艦長・諌名田藤四郎の様を見て、漁人は「ああ成る程」と小さく頷く。 思えば最近、ドック内だけであったのが艦内でも見る数が増えていた。 巨大潜水艦とその艦載機。時代から頭一つ抜き出たややもすれば空想であると笑われるような技術が、現実に稼動していると証明されれば、彼らが躍起になるのは当然だ。 「いろいろと手を打ってはいたのですがね、どうやら彼ら少し"暇"ができたようで、その間に監視を強化しているらしいのです」 副官の李が独特の訛りの入った日本語で語る。 「まあこちらには条約という一応の盾がありますから、いきなり接収されるという事はないでしょうが、彼らも随分と焦っているようでして。薄っぺらい技術提供で話をつけましたが、それで納得させるにはこちらの手札をある程度見せてやらねばならないのです」 「この艦と艦載機が軍事兵器としてどれほど不向きかという所をだな。すぐにでも武力行使に出たくなる程に満足されたら困るが、そこら辺の偽装はさじ加減でどうにかなる範囲だ」 煙を噴きながら諌名田が続ける。 「此方の目的も通さねばならんが後々動きにくくなっても困る。それで落し所が今回の単独潜航というわけだ。他の機体は表面上のデータ取りに使うこともあってどの道出せん」 「サッズは直接転用できそうな部分が殆どないというのは素人でも分かりますからね、どうにか一機分の許可を頂いた次第で。まあ恐らく今回だけでしょう、直に彼らも忙しくなり構っていられなくなる」 彼らに対しての鬱憤でも溜まっているのだろうか。作戦の理由についてこうまで語ってくれるというのは、元軍人の二人にしては珍しい。 「奴らも星喰いの襲撃を受ければ事の重大さに気づくのでしょうが」 「まあ狭い陸でドンパチやっている間は、って感じでしょうなあ。星を守るのも難儀難儀と」 皮肉めいた言葉を吐くのは待機を命じられたサッズツー・スリーの二人。 蔵辺はともかくサモンドのほうは作戦に選ばれなかったことでピリピリしているのが、言葉の端からも伝わってくる。 狭い作戦会議室に集まる全員が揃いも揃って好き放題に言っているものの、"彼ら"とて信念と正義を持って平和のためにと戦っている。 それでもどこか見下しているような態度をとるのは、インベルフォーク属する独立軍事組織・GATEの特異な立ち位置が影響していた。 星喰いと名付けられた生物的異次元存在。カテゴリさえ便宜上のものであり、その殆どが解明されていない謎の塊は、有体に言えば地球への侵略者であった。 円盤にでも乗って空から攻めてくれればまだ現実味があり、対処も急かれたのだろうが、星喰いの侵略は非常に奇妙なものだ。 星喰いが漂う空間――次元海は、人類の観測外にある。 高次元空間、ワームホール、平行ブレーン。諸説あるが現時点で分かっているのは、三次元上で干渉し得ない位置関係にあるこの空間が、何らかの形で繋がった相似する空間と同化してこの世界を侵食しているという事である。 その相似空間こそが地球とそこに住む生命を生み育んできた海。星喰いは海より現れ万物を、捕食し繁殖し、海を己の物に塗り替え、この星を侵略するのだ。 初めからここまでの事実が判明していた訳ではない。それでもGATE創立者・澄之江は星喰いの危険性を早くから強く指摘し、対策としての海戦部隊設立を提唱していた。 だが非日常的な存在の証拠となるのは澄之江の記憶と、新型原潜の残骸のみ。 いずれも上面の条約のために秘匿抹消された存在、信憑性は地の底だ。 加えて国際軍事連合は拡大する中東の反連合組織に対し本格的な武力行使を行う準備段階、調査に割かれる予算などたかが知れていた。 澄之江はそれから様々な組織・国家に足を運んだが、調査まで漕ぎ着けても結果を残すことはできなかった。 そして数年が経過し、連合と反連合が未だ戦闘を繰り返す最中、彼の話の裏付けそのものが姿を現す。 ところが初めの一年、星喰いの侵略はなかった。いや、侵略は文字通り水面下で防がれていたのだ。 GATE――世界全域で「星喰い」殲滅一点だけを目的とする独立軍事組織、その活動によって。 澄之江が如何にして支援者を、資本を、技術を集め、これを設立したのかは伏せられている。 恐らく現在、中東戦争で疲弊した連合が圧力を掛けているこの事態を見越してのものだろう。背後を取られるのを防ぐためか。 捕虜、亡命者、戦犯。 時に非人道的な方法をも使って掻き集められたインベルフォークのクルーには設立者の顔も声も、臨む機会はない。 自分達が属する組織、その上に立つ者達がなんであるか、分からない。 自分達が戦う星喰い、それが一体どのような存在なのか、分からない。 不安そのものであるように周囲を闇で閉ざされた地に足つかぬ世界で、それでも生きて来られたのは「星を守る」という義があったからだ。 極めて単純で極めて崇高なこの目的はクルーの支えとなった。 いや、支えにすることで自己を保っていたと言うべきか。 世界から物理的にも社会的にも隔離され、明日も見えない戦いを強いられる日々。 使命に溺れることで少しでもそれを紛らわそうとしていた。 そんなクルーからすれば、地球規模の危機その訴えをまともに取り合わず、人類同士の争いにかまけ、挙句こちらに力があると分かれば掌を返す連合は非常に下劣な存在であった。 無論クルーとて多くが軍に携わっていた者、人類が一致団結することの難しさや苦労も分かる。 戦いを続ける人々の殆どが望まずして命を賭け、望まずして命を奪っていることも分かる。 だがそれを理解した上でも他者を蔑み自分の居場所を上に置かずにはいられない。 それ程にまで、クルーは無意識のうち追いやられていた。 「……とにかく作戦自体はいつも通りに雑魚を散らしてくるだけだ。初めの頃を思えばそう無理な部分もないだろう。以上だ」 「了解です」 サモンドとソリの合わない漁人は、待っていましたと言わんばかりに礼をして作戦会議室を後にする。 遅れて当のサモンドと蔵辺も去り、窮屈だった部屋にはインベルフォークのトップとして現場指揮執る二人が残る。 金属の床とで響く足音が遠くへ消える。ゆっくりと波に揺られ、重心移動の音を鳴らす艦、それに合わせるように体傾け、諌名田は一服。 「……彼らは忙しくなる、と言ったな」 唸る換気扇に紫煙を吸わせながら、口を開く。 「ええ」 瞼と前頭骨との窪みに中指を突っ込みながら李が返す。 「反連合が動くのか」 「ええ」 表情変えぬ機械的な返しに、しばし沈黙が流れる。 「噛んでいるのだな、澄之江が」再び口を開いたのは諌名田。 「愚問ですね。お陰で我々の自由が利く。手間が掛かったとはいえ資金も増えた。うまくやりましたよ」 呆れるように肯定する李の口調は非常に流暢。先の訛りは完全に身を潜めている。 「連中は賢い。此方に牙を剥くのは明日かもしれんのだぞ」 「真に賢ければ剣の納め時も知るはずですよ。今どちらかが倒れるほうが、余程危険だ」 「そうか……」 傲慢だなと諌名田は、煙交じりのため息をつく。 澄之江は事が自分の掌の上にあると思っているのか。人如きのそれにどれ程の嵩があるというのだ。 オートパイロットが舵を取り、艦を静かに揺らす。 テーブルの上のバッジが僅かに滑り、灰皿にぶつかった。 「今更誰も戻ることは出来ませんよ。種となる燻りなど其処彼処にあった。誰が焚き付けるでもなく争いは起こったでしょう」 「だが燃え広がった火の手は我々の後ろまで来ているのだ。油を注いで人類諸共星喰いを焼き殺すか?」 「人は火の中でも生きますよ。澄之江のやっている事は有り触れた先人の真似事です」 両手を後に組み、わざとらしく靴音を立てながら狭いその場歩き回る。 それから思い出したように、「かのサカモトリョーマ・カイエンタイと同じようなものでしょう?」と付け足した。 星喰いを討ち滅ぼしたとて未来が肯定するだろうか。だがたとえ非難されようと、一度起きた事を否定することは不可能だ。 インベルフォークとそのクルーはただ兵として現状を見、やれる事、命じられた事をやる。当たり前の選択しか初めから存在しない。 その事は艦を預かる身、百も承知だ。 しかし今現在ならば誰かがそれを否定する事は可能。諌名田は内側から来る崩壊を懸念していた。 「やはり人の最高の敵は、己を含む人そのものか」 二人きりの室内で独り言を響かせ、灰皿の上に置いた消える葉巻の火を見つめた。 海を裂く風、一体となるのは鋼の弾丸サッズワン。 その内にて舵柄握り締める漁人は、突入の瞬間を待つ。 超高速の世界にいながらも、いやいるからこそなのか、全身の筋肉と血管が打つ一つ一つの動きを拾い上げてしまえそうな程、その時間は長く感じられた。 超高速の世界まで高めた精神のままに、ゆっくりと流れる原子時間を眺める漁人、今の状況にウラシマタロウを重ねてみる。 ――まあ的外れだな。 視界を確保するための光届かぬ深淵奈落、そこで目前に迫る目的地を音と計算記録とで知り、そして今まで以上に己を奮わせた。 境海。地球と次元海とを隔てる薄皮。そこへ、いざ。モニター上で塗り分けられた緑に自身を指すマーカーが重なる。 物質的な壁があるわけではない。機体の駆動音とあわせ、突入の成功を確認する。 次元海は海と相似である。それが異空間である事を最も色濃く表すのは、次元海を包む領域ここにある。 水、空気。今まで纏わり付いていた物は今や混じりあい、薄く均一化され、境海の構成物質と成り果てている。 侵入する全てを取り込む貪欲な怪物。消えたソナーの振動波もすでにこの中で拡散しきっていた。 だがその胃袋は無限ではない。事象の地平線がここに存在するのならば、それは内と外とを喰らい尽くしているはずだ。 定刻よりマイナス七秒、ジャスト。握る舵柄の先端に、さっさと喰らえよと念じながら親指を押し込む。 空間時間をも引き延ばし、悠久を強制しようとする魔の領域。 その体内に一発、サッズワンの超高速から切り離された土産物が、激しく炸裂した。 光が世界を一瞬にして塗り替える。 放たれたそれと衝撃からなる波動がコーヒーに混じるミルクのように、渦巻きながら境海を覆っていく。 実際にこれがどういう物で、どういう原理を使っているのか。 民間上がりの漁人に対しその詳細は伏せられていたが、一時的に許容量以上の負荷を与えているのだろう。 後方の爆発を帆で受けたかのように速度を取り戻した機体内で、適当に見当を付ける。 目標到達予測からコンマ四秒遅れで、機体は境海を突破した。 なれば先に広がるのは海。似て非なる、侵略者の巣窟。 運も味方し計算通り、見事に巨大な球状空間その中心へ向かう角度で突入――するや否や。 「ぬん!」 一瞬たりと閉じるものかと、計器睨み続けていた目を、今まで以上に見開いてレバーを引く。 それにより引き起こされたカラクリが、機体に激しい衝撃を与える。 機体が持つ、抵抗を抑え境海突破に至るまでの超高速を得るためのシルエット。それが今形を変える。 正確に言えば、直進し続ける弾丸の外装は不変。変わったのは"機体が持つシルエット"だ。 進行方向と正反対に噴射を掛けながら、分離した外装を見送るサッズワン。 機体としての主導権を握る内臓機械が姿を現した瞬間であった。 人と動きを同じくする、四肢を備えた重装機械。 一連の動作に発生した僅かな光が照らし出す姿は、鎧に身を包む巨神が如く。海の秩序を守るもの、なればギリシャのポセイドーンか。 「ぬぐおあーッ!!」 超高速からのブレーキング、その代償とも言うべきか生まれた衝撃が全身を圧迫する。 初めの内は声も出たが、直にその余裕すら失われる。 血流を確保すべく下半身を圧迫するスーツの働きすら認識し難い。 しかし一瞬たりとも気を抜くことはできない。 増幅した自重を精神で支えきる。 「はあ……はあ……」 新たな外装となった機体の外にある制御装置、それが有効に使えるまでに速度が落ち着く。 減速時の挙動の違いから、改めて今回の重武装ぶりを確認。 ヘルメットと一体の酸素マスクを曇らせ、漁人は息を整えた。 さてようやくと取り戻した身体の自由で、計器に表示された遠く先行く脱け殻を見据える。 ベストと行かないがそれに近い。僅かにブレを生じながらもインベルフォークの狙撃がここにきて完了、群がる敵に巨大弾丸の先制攻撃を加えた。 散る、散る。モニター上を埋め尽くす反応。大量の星喰いだ。 これだけの数ならば、狙いを付ける意味すらない。 「生存競争なんだ、悪く思うなっ!」 自分の正義を口に出すことで神経伝達物質を呼び込みながら、外装の内に封じられていた全身を塞ぐほどの魚雷に火を点けた。 かつての外装を見てくれそのままに縮小したような弾丸が、白煙代わりに空気の線を引き、それぞれに直進する。 時間差をつけながら休む間もなく放たれる六本もの対潜兵器が、爆炎とバブルパルスを膨らませていく。 光の世界に引きずり出された星喰いは、収斂進化か魚類に似た姿を見せるが、限定的すぎる視覚情報を拾うための装置も、今は内部に収納されている。 撃ち尽くした取り付けと手持ちの発射装置を破棄しながら、漁人は圧力波の球に中心点を取り、外周をぐるり泳がせる。 ゆっくりと時間をかけ、巻き起こした大振動の治まりを待つと、二種のソナーをフルに使い残る星喰いを調べ上げる。 遠距離でアクティブが使えるのも緊急時を除けばこれが最後か。 人類の技術を凌ぐ暗視能力を持つとはいえ、海中の基本情報はやはり音。環境が近しいなら星喰いとてそれを利用する。 通常の深度に次元海用の係数を掛け、観測数値を修正した。 「いい感じじゃないか」 突入場所もそうだが、使い捨ての外装をぶちかませたことも、爆撃で大部分を潰せたことも、四散した残りの固まり具合も、なかなかに良い結果。 運気の波が来ているか。ならばそのまま乗らせてもらおう。 漁人視覚情報に代わり、観測数値と蓄積されたデータを合わせ、星喰いの大きさ速さを確認。 群単位でマーカーが割り当てられる。一つ一つの詳細を取れば、その数は百未満といった所か。 群れ同士が接近する箇所を捉え、誘導魚雷の発射と離脱。 しかし数が多ければ、それだけ隙を突かれやすい。機械と人とを併せても処理できる範囲には限りがある。 側面から突撃する振動源。あえて狙ったか此方が間に合ったか、装甲表面を掠め取った。 「ちい」と舌打ちし直ぐ様旋回する。同時にスラスタを使い分け、音源を誤魔化しながら三次元に位置をずらす。 その間一匹が標的を直接捉えたことで、その動きをヒントに幾らかの群れも集まってくる。 「なれば好都合!」 慣性だけを使って静かに標的見下ろしながら、投網装置から換装した肩部ハッチを開く。 その動きに星喰いが反応する前に、足裏の推進装置を派手に吹かし後方へ。 回りこもうと拡散する群れとの距離を離し、お見舞いするのは投射爆雷。 威力射程こそ魚雷に及ばないが、散弾銃のようにこちらも拡がる。 小型を潰すには打って付け、一があたれば全が誘爆する面制圧型の武装だ。 飛び込む星喰いを焼き尽くす。 だが当然、こちらの動ける面も減る。 背面から回り込むのは遠方にいた別のグループ。 次から次へと沸いて出るも、それに慌てる漁人ではない。「ほれ旨そうなエサだぜ」と大げさに動いて煽る。 数に物を言わせる、カミカゼ染みた突進を正面に迎え―― 再び投射。 一度全ての推進装置を切った上で、残る爆雷を出し尽くす。 出涸らしではたかが知れた威力、しかし投射が生み出す反動をわざとそのまま受けることで、サッズワン回転。 同時に姿勢制御装置のうち非固定のものを総動員して、一方向に推力を集める。 消費の大きい緊急時専用の離脱法だ。 空いた肩部に注水した、地球のそれと微妙に異なる液体の重量を調整しながら、残る魚雷だけで駆逐しきる算段を立てる。 有線式の精密爆撃魚雷が内蔵で二本。汎用の音響誘導式がランチャーで二本と、瞬発力の高い高速魚雷一本。 前者は後片付け用に取っておきたい所と、漁人はランチャーを展開した。 よくもまあこれだけの火力を搭載しきったものだとパイロットながらに感心する。その時。 探知。反応。警告。操作。回避運動。 そこに割り込む形で横殴りの衝撃が機体を揺らし軋ませる。 「何で今の今まで気付かん!」 自分に対しての怒号と損傷の警報が重なる。 機を伺っていたのは、音の影に隠れきれると思えない程の巨大な星喰いであった。 上から三番目、モサ級に該当するこの個体は、語源と異なるはずの猛者の当て字がしっくりくる程に荒く優れた力を持つ。 尾の一撃は直撃を免れてなお装甲を陥没させ、機体を深くに叩き落とした。 漁人は矢沢の言った通りになってしまったと、離れるランチャーを見送り墜ちる中で、自らの精神の綻びを省みる。 今回のおおよそ戦略と呼べない名前だけの作戦は、小型から中型の掃討。一方的な蹂躙を可能にする重火力装備もその目的に沿ったものだった。 星喰いの大きさは次元海の大きさに比例する。大型が発生する条件は次元海が相応の大きさに拡大していった時だ。 星喰いを生物として考えれば当然だが、だとすれば例外となる個体が発生するのも生物。 爆撃の中に自分から突っ込んだ上で固まっていたのか? そうだとしたら大した根性骨だ。それらを考慮していなかったのは、己の甘さ。 損傷とそのリカバリによって活動時間の半分以上を削り取られている。 危険色の赤で染まるコックピット内で漁人は静かに肝を据えた。渋ってなどいられん、目の前の敵をただ獲る。 激しい戦闘に次元海が渦巻く。その球状エリアから遠心力で弾き出される運動エネルギーが境海へ飲み込まれていく。 星喰いは流れを全身で読み取り、逆らわずして自在に泳ぐ。縄張りへの侵入者サッズワン。地球と同一方向に働く重力に引き摺られ、墜ちる金属塊を追う。 食物連鎖のピラミッドを持つ大小の星喰いだが、まるで一つの意志であるかのように今は一丸となり排除に急いた。 モサ級を中心に、生存者達が編隊を組む。 「ほうれこっちだ……」 先頭が水中を伝う振動に違和感を覚える。ゆらりと揺れたかと思えば、消える何か。 幻ではない。もう一つ。 振動源は墜ちる機体であるはず。しかし音はそれぞれ、三つ叉に分かれて消えた。 星喰いはすぐさま隊列を変え、ソナー同様の仕組みであるエコーロケーションを用いる。 完全に静止することがない限り、音を消し去ることなど出来ない。 空気中を遥に凌ぐ速度で到達する高周波は即座に小さな動きを感知した。 が、まるでそれを待っていたかのように、観測物の動きは急激に変化する。 それぞれがバラバラに高速運動を開始した。 大小の判別を付け、サッズワン本体のみに狙いを定める星喰い。 しかしそれを行う一瞬の間、反射的に移動した事がその首を絞める。 星喰いが合流する進路をさらに狭める形で迫る小さな二つの振動。サッズワンを追うはずの星喰いが左右より挟撃の形で追われる。 切り離されたワイヤーを引きジグザグに走る魚雷であった。一本が命中すればそれに二本目が引き寄せられ――「爆ぜろ雑魚共」――水中爆発再び。 格子上に並んだ隊列は衝撃を分散する防壁となっていた。奇跡的に成功したとはいえ、直撃には遠い。 言葉通りに落とせたのは周りの"雑魚"だけだろう。 轟音が静まる前から漁人は唇を噛む。 流線型を棄てたサッズワンの航行速度はそう速くない。 以前変わりなく驀進するモサとその他少数との距離は、どんどん縮まっていった。 だがこちらには二本の脚を始めとした可動スラスタによる運動性能で分がある。 漁人は側面からのGを受けながらクイックターンをきめた。 そこからさらに上下左右に振れながら星喰いを撹乱。 重心移動の連続が、パイロットの脳をシェイク。海が揺れる。 ――活動残時間危険領域。推進剤残量十五パーセント。 警告を受け計器をチェック。不味い。 機体が取る今の動きは明らかに効率が悪い。最大までに出力を上げられないとあれば、追いつかれるのも時間の問題。 そしてその時間も、一呼吸と間を置かず訪れた。 「クソッタレ!」 先陣を切る小型が噛み付きに掛かる所、他に術はないと腕でその口を塞ぐ。 即座に旋回しながら振りほどくが、後続が待ち受けている。 やむを得んと、漁人は空の肩部と共に激しく損傷した腕部装甲を切り離す。そんなに喰いたいなら喰わせてやると。 その思惑を汲んでか、有難くないことに後方より控える大型、モサが一撃で粉砕。 もっと喰わせろと言わんばかりに迫り続ける。 「……ッ!」 紙一重、重量の変動で水流の影響を大きく受けた機体が、闘牛士のようにその身翻し回避。 そのままの勢いで推進剤を消費し海中を飛翔する。これだけの速度が使えるのは恐らく後一度。そして残る魚雷もこの一本。 まさか全ての火薬を使い切る事になるとは。苦笑しながら、漁人はスイッチカバーを開いた。 「当たれぇぇ!!!」 星喰いを討つシルバーバレットとなる事を願い、言霊を込めて放つ。 曲線運動を行いながら撃つ弾道は、星喰いへ向かう。 曲線運動を追う星喰いは、機体へ向かい昇る。 刹那の遅れ。両者は擦れ違った。 星喰いに人語を理解する知能と、受け取る術があるのだろうか。 漁人は考える。もしそうであれば、こう言い放つだろう。 「お前は俺に、釣られたんだよ」と。 この場所に覚えがあるか。全方位を取り囲むのは水。指針となるのは音のみ。記憶する術も意味もないだろう。少なくともお前には。 一度受けた屈辱を忘れるものか。この場所は一撃を叩き込まれた忌まわしき場所だ。 猛獣と俺とを閉じ込めるこのコロッセウム、そのどこいつで貰ったのか。 座標は頭の中にある。時間も頭の中にある。 それを統合し、海流の動きと合わせシミュレートするのは機械の役目。 あとはジグザグに場所を変えながら、標的の位置をソナーで確定させる。 無駄な動きなどしていたと思うな。この場所を探り当て、この場所に引き寄せるために払った必要経費、今返してもらう。 後方で起こる最後の爆発が、従者を飲み込み、モサ級の巨体を弾き飛ばした。 漁人が狙撃したのは、奇襲により射手とはぐれ漂う、二本の弾こめた魚雷ランチャーであった。 近距離での爆発、余波に巻き込まれ損傷を引き金とする警告がけたたましく鳴り響く。 その音に包まれながら見つめる二点は、ソナーが拾う振動と、爆発のシミュレーション。 ただ流れに身を任せ揺れるコックピットにて、必死の形相で漁人は計器を見つめる。 そこに映るのは一つの可能性。 ――この場で潰した百を超える大量の星喰い、その全てをサッズワンのソナーが拾うことはない。 跡形もなく消し飛んだものもあるだろうが、死した星喰いは海月のように海に帰す。 研究が進まない要因の一つである。 つまり逆を言えば、ソナーが拾う限り星喰いは生存しているという事に他ならない。 再び海が静まり返った時、そこに残る振動源は、僅かに二つであった。 内一つ、機械の巨神を御する精神は冷静さを持ちながらも大きな昂りを見せた。 怒りでも憎しみでもない。絶望とは真逆。それは勝利ではなく勝負に対する感情。 満身創痍にあって掻き立てられる闘争本能は、漁人に快さを与えていた。 「だが……終わらせる」 対峙する巨大なもう一つの振動源、星喰いはモサ級も同じ思いだろうか、二つの座標が程なくして接近する。 手持ちの火薬は使い果たした。だがこの機体には二つ人の手がある。 何故か。 サッズワンの本領はそこにある。 背部に収納されていた装備を展開、損傷の激しい右を庇うようにして握りしめる。 近接戦闘兵装、マルチハープーン。 機械兵器の中にあって、対艦ミサイルから再び本来の意味を取り戻した長柄を構え、泳ぐ。 "取っ組み合いをするような潜水艦"なのだ、この機体は。 向かう星喰い、古代の爬虫類に喩えられた個体が猛進。 死の間際にあってなお、一切臆することなく排除に徹する。 鋼鉄を容易く砕く、必死の牙が襲い掛かる。 「もらってやれるかッ」 動きにあわせ回転、先のモーションの再現を試みる。 生きている推進装置の数が減れば当然、完全な回避は不可能。 だが致命的な損傷だけは確実にはずせる。 肉薄した距離のまま、損傷に反応する警告より速く、星喰いの背に刃を突き立てた。 激痛に悶えるのか、星喰いが巨体を大きくうねらせ、ハープーンを押さえる機体を振り回す。破損した装甲と片足がバラバラに弾ける。 そのまま突き進み、引き剥がさんとする星喰い。それを察知し離れる漁人。 ただしエモノまで手放すことはない。刃を残しワイヤーが伸びる。 暴れ怒り狂う星喰いは瞬く間に硬線を張り切り、サッズワンを引き摺りながら突き進む。 先を行く尾を境に、収束する激流。それを再び割りながら、漁人は情報を必死に拾い上げる。 機体の腕に巻きつけたワイヤー、そこからさらにマニュピレータ入出力装置を介し、伝わる星喰いの動きを探る。 感度最大。自らの腕に直接流れ込む痛覚を帯びた電気信号と、計測数値を合成。 人機さらには星喰いと一体となった漁人は、アドレナリンと共に駆け巡る大量の情報、その中の僅かな変化から、相手の"呼吸"を読む。 時に押し時に引く、正真正銘の、命の駆け引き。 残る僅かなエネルギーとワイヤーの巻上げを操り、自分の"呼吸"と重ね合わせる。 そして星喰いが旋回に入る、一瞬の予備動作に対し―― ぎゅるん。 ワイヤーが弛みを作り、星喰いに自由を与える。引き離そうとした力が余り、大回りの半径を描く。 横滑り気味に方向を変える星喰いが、曲線の終着点に着けば逆回転。 慣性を誘導され、高速で引き込まれる巨体。それに向かいオーバーシュートを故意にかけ矢の如く迫る巨神。 漁人は役目を終えたワイヤー切り離し、握りそのままに手首を回転させ、ハープーン第二の刃を震わせる。 そして、交差。 サッズワンの下半身を衝撃で飲みこみ、圧壊させたのは星喰い。だが。 「お前はとんだ大物だったよ」 流線型の先端を僅かに掠めた一筋。 小さな小さな切れこみが、自ら進むエネルギーの反作用――向かう水の抵抗により一瞬にして押し広げられる。 モニター上で光る点が、二つに両断され、そして消失した。 ――損傷率七十五パーセント超。活動残時間、マイナス十二秒。強制稼動モード解除、システムスリープ。 星喰いの殲滅、作戦完了。 外と同じに暗闇に包まれるコックピット。全てを終えた戦士は、まぶたをゆっくりと閉じた。 生物のいない海中を金属塊が、静かに沈んでいく。 楔を失った次元海は星喰いの亡骸と同じように薄らぎ、消えた。 周りにあるのはただの海。一時だが、守り抜いた、いつもの海。 ここが地球である証、生命の源泉。 今までの死闘など始めからなかったかのように、穏やかに揺れる。 漁人は生命維持に必要な酸素量その他を確認することも放って、しばし達成感に酔いしれた。 それは強敵とあいまみえた喜びであり、それを打ち倒し、今自分が生存している事への喜び。 侵略者、星の危機。 そんな大きすぎるものは、どうでもよいと感じた。 落ち続けて何分が経つただろうか、生命の源泉の中で、漁人は声を聞きふと現実にかえった。 骨伝導により鋼に響く信号。直接機体をノックする。 ――正義のヒーローを待たせんなよ、馬鹿。 腕を固定したままの装置で指の欠けたマニュピレータを動かし、漁人は奈落に垂らされた蜘蛛の糸を掴んだ。 のぼるにつれ差し込む光が装甲と海面とで反射する。 そんな中、彼が考えるのは矢沢に合わせる顔がない、という事だった。 ――――終 設定 【星喰い】 他所の宇宙に住んでいる謎の魚。ただしこっちの宇宙で言う生物の定義に当てはまらない可能性もある。 そもそも他所の宇宙という保証もない。放っておくとすぐに増えるので雑魚しかいない内に倒したいのだが、次元海を探すのが大変。 おまけ→http //dl8.getuploader.com/g/sousakurobo/872/TerraEater.jpg 【次元海・境海】 中の星喰いが増えると広がる。星喰いがいなくなると消える。深い海にポツポツと、不定期に発生する。 しかも微妙に動く。 境海は次元海のガワ。侵入するエネルギーを吸収してゆっくりと分散させる謎領域。 これのせいで外から直接星喰いを潰すのが大変。 強いエネルギーから分散させようとするので、ちょっとアレな爆発を起こしてやると他に対しての働きが弱くなる。 【GATE】 Global ado hoc "Terra eater" eliminator。いわゆる秘密組織。 軍事企業などに大きなパイプを持ち、黒い噂が絶えない。創立者澄之江が本当に存在するかすら謎。 人型で一人乗りの水中兵器をはじめとするトチ狂った技術を持つ。 【サッズ】 different dimension diving system。頭文字DDDSが3D-sとなり最終的にこの呼称で落ち着いた、つまり俗称。 例によって一番機は近接仕様だが、今回は重火力装備で出撃。 SSCと呼ばれる使い捨てユニットで次元海に突入する。大気圏突入装備みたいなモン。 これに核弾頭詰め込んで撃ちまくれば倒せなくもないが、さすがに各国が黙っていない。 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
https://w.atwiki.jp/minasava/pages/200.html
アルサランの基本戦術は非常に単純だ。サーヴァント同士の戦闘を傍観し、状況を見計らって背後から闇討ちする。アサシンのマスターとしては教科書通りの戦術だと言ってもよい。だが、アルサランのアサシンの持つ宝具は、それをやる上では非常に有効だ。 しかし、この戦術には限界もあるのだ。アサシンのクラスには、徹底的に決定的な攻撃能力が無い。 「まあ、それならそれで、戦略で補えばいい」 噴水を背にした公園のベンチに腰掛け、アルサランは一人ごちた。耳元のMDウォークマンが音楽を奏でている。曲はDschinghis Khanの“ジンギスカン”。テンポのいいドイツ語の歌詞が、アルサランの耳に不思議と馴染む。 アルサランの策略は今のところ順調に動いている。 最初にセイバーに対して手を出したのは、自らの駆るアサシンの存在が大きかったため。アサシンは気配遮断スキルを保有しているため、どこにいてもおかしくない、という物騒な弱点もある。 それは、逆にいえば“どこにいなくても恐ろしい”というアドバンテージでもあるのだ。こうやってアルサランが堂々と出歩いているというのに、アサシンによる背後からの強襲を警戒して誰も表に出てこない。もっとも、この体も、工房から遠隔操作している動死体なのだが。 ビルの合間に作られた公園には、ここが街中だというのが信じられないほどの静寂に満ちている。それも当然、ここは元々、市内にいくつか存在する、聖杯戦争のためのバトルフィールドだ。 内部で起きている事を外部から知覚できないようにする微弱な結界が張ってあるが、実の所、あまりあからさまに結界を張るわけにもいかなかったので、公園として快適に過ごせる程度の効力しかない。それでも菅代の風水魔術と組み合わせれば絶大な力を発揮するのだが。 「こちらの手札は暗兵と狂兵、対する敵手は剣兵、弓兵、槍兵、騎兵、術兵の五者。さて――――誰から利用させて貰おうか?」 アルサランの口元が吊り上がり、獣じみた凶暴な笑みが浮かぶ。聖杯戦争中、もっとも危険なマスターが新たな策動を始めようとしていた。 水佐波市近海、沿岸から視認できない程度には遠く、しかし戦闘機の速度ならいつでも辿りつけるほどには近く、巨大な影がうずくまっていた。 原子力空母ジェラルド・R・フォード級航空母艦、三番艦アリゾナ。ここ一週間に渡って沖合に停泊し、状況を監視し続けている。 その舷側で、当直を終えたデイビッドはポケットから取り出した煙草に火を付けた。そろそろ冬になろうというこの季節、野ざらしの甲板は冷え込む。そんな場所では、煙草の小さな火でも気分は落ち着く。 碌に上陸もできない任務に、買い置きのマルボロもそろそろ底を尽きかけている。いい加減、どこかに停泊して欲しいものだ。 そんな風に思いながらデイビッドは頬を撫でた生ぬるい風に、寒気を感じて頬に手をやった。その時、ふと、足元の海から波ではない奇妙な水音が立つのを聞き、デイビッドは思わず舷側の海を覗き込んだ。黒々とした海面に跳ねる影が一つ。 「……何だ、魚か」 ほっと溜息をつくデイビッドの視線の先で、魚がニタリと歪んだ嘲笑を浮かべた。 デイビッドが船室に戻ると、非番の仲間がポーカーに興じていた。 「ああ、デイビィか。当直終わったのか?」 「おう、ようやく終わったぜ。ってわけで、俺は寝るわ」 からからと笑い合い、デイビッドは二段になったパイプベッドの梯子を上り、横になる。 横になって仲間達から顔を背けたデイビッドの顔が、歪んだ嘲笑を浮かべた。 水佐波市の中心、水佐波駅、及び複合施設水佐波レイシティから少し離れて、少しばかり大きな建物が存在した。 ――――水佐波デパート。 少しばかり捻りが足りないが、分かりやすく呼びやすい、そんなネーミングセンスである。 陣地の構築はキャスターの使い魔達に任せ、エーベルトとキャスターの二人は街を出歩いていた。正確には、地形把握の名目でエーベルトがキャスターを連れ出した、というのが近い。 だが、いつの間にこんな雰囲気になっているのだろうか……。 女は苦手だ。トオサカと同じくらいに。 洋服売場は鬼門だ、とエーベルトは確信する。今度からは寄り付かないようにしよう。 「マスター……」 試着室のブースを隔てるカーテンが遠慮がちに開き、恥ずかしそうに顔を赤くしたキャスターがカーテンの隙間から顔を出している。 「マスター、その、私がこんな服を着るのは、少し変……」 「い、いや、変という事はないと思うが……何かあるのか? というか、この場でその呼び方は……」 マスター=御主人様、民主主義の進んだ現代社会において、ある種の特殊な趣味の持ち主以外は使用しない言語である。 「その、マスター……」 エーベルトの背中に、ざくざくと音を立てて嫌な視線が突き刺さってくる。軽蔑するような女性からの視線と、やっかみ混じりの男どもの視線。前者の方が多いのは、ここが婦人服売り場であるからか。 「ちょっ……ちょっと待てキャスター、頼むから……!」 キャスターの体を試着室のカーテンの奥に押し込むようにして懇願する。 「……頼むから、この場でマスター呼ばわりはやめてくれ」 御主人様呼ばわりさせている少女を更衣室=密室に押し込んでいる男――――今の自分が周りからどんな風に見えているのか思い至って、エーベルトの気分はさらに重くなる。 「……な、なら何て呼べばいい?」 「……エーベルトでいい」 キャスターは小動物のように顔を真っ赤にしながら頷いた。 「マス……いや、エーベルト……その……」 出来るだけ隣を意識しないようにしていたエーベルトは、隣を歩く少女の声に渋々そちらを向いた。 「やはり、私にはこういう服は……その、似合わないか?」 どくん、と心臓が飛び跳ねる。そんなハイスクールのような年齢はとうに卒業したとも思っていたが、私服に着替えたキャスターの姿は、そんな事もどうでもよくなるほどの破壊力を持っていた。 「い、いや……そんなこともない。すごく似合っている。その……綺麗だ」 「え!? その……ありがとう……」 キャスターは真っ赤になって恥ずかしげに笑顔を浮かべた。その笑顔から仕草から、エーベルトの心を動揺させる。 元々、神話になるほどの美女、というか美少女だ。サーヴァントとマスターという関係であるからこそ割り切る事も出来たが、こうやって普通の少女の格好をされると、本当にただの女の子にしか見えない。 まあいい、とエーベルトは思考。 別に、この少女の事は嫌いじゃない。むしろ――――。 そこまで考えて、エーベルトは考えるのをやめた。どうせ詮のない話だ。考えたって大して意味がある訳じゃない。 「行くぞ、キャスター。商店街にでも寄ってみるか」 「ん、分かった」 傍らの少女の腕を取り、足を早める。傍らの少女の浮かべた笑顔を見て、二人で、少しでも長く、こんな時間が続いてくれればいいと、エーベルトは少しだけそんな風に思い、しかしすぐに頭を振ってその考えを頭から追い出した。 どのみち、自分は魔術師、祈る神など持たないのだ。 夕暮れ時、水佐波市の外れにある寂れた古書店“蔵馬堂”の縁側にて、一人の男が動物たちと戯れていた。庭先には無数の小鳥や犬猫、あるいは他の野生動物などが集まり、ここ数日の水佐波市からすれば有り得ないほどに、存外に平和な雰囲気を漂わせていた。 「そうか、子供が生まれたのですか。それはいい事です」 「なるほど、つがいができたのですね、おめでとうございます」 「そうですか……三丁目のポチが……」 「縄張り争いですか……? 僕は、そういうのはあまり……」 その光景を見て、蔵馬鉄人は気まずそうに障子を閉めた。 「すまん。……邪魔したな」 「って、待ってください、これは違うんです!」 何が違うのかは知らないが、思わずそのように叫んでしまうランサー。鉄人は渋々、閉めたばかりの障子を開けた。 「で……俺が突っ込みたいのは何なのか分かるか……?」 「久しぶりに友人たちと……」 「違う。明らかに色々と一人称がおかしいだろうがよ。まさか、影でこっそりぽえむとやらでも書いている趣味か!?」 「失礼な! というか何ですかぽえむって」 「さあな。俺も知らん」 妹の孫が何か言っていただけであり、鉄人自身も意味が分かっているわけではない。 「……で、何なんだその口調は?」 「いろいろと事情があるんですよ……」 ランサーは何か泣きたくなってくる気分を抑えながら溜息をついた。 「それは……大変だな」 「ええ、大変で……大変だ」 咳払いして口調を元に戻す。無理して変えなくても、と鉄人は思うのだが。 そんな風に思っていると、ふと、ランサーが顔を上げた。 「これは……」 「どうした?」 不意に表情を引き締めたランサーの様子に、鉄人も少しだけ、かつてのような戦士の貌を覗かせた 「誰かが戦っているようだな。おそらくは、サーヴァント同士。そして魔術師が」 どうやら、平和な時間は、これで終わりらしい。 闇の中で、二人の少女が対峙していた。 遠坂桜と間桐真夜。 真夜が従える全身が糜爛した死体じみた弓兵は、アーチャーのクラスの定石に従い、小高い丘の頂上に陣取って魔獣殺しの毒矢を放つ。 桜の従者たるセイバーはレドームじみた盾を装備した腕で小脇にマスターの体を抱え、デスサイズにも似た月型の刃で飛来する毒矢を叩き落とすが―――― 「――――防戦は苦手だ」 舌打ちして毒を吐く。無論、どこぞの毒蛇のように嫌な液を吐いたわけではない。 セイバーの武器はハルペーと呼ばれる特異な形状をした刀。月型に曲がった刃は盾による防御を越えて斬撃を送ることを可能にするという、攻撃に特化した武装だが、その分、防御は苦手だ。 加えて、マスターというデッドウェイトを抱えた現状では、さすがに戦いづらい。だが、だからと言ってマスターを離すわけにもいかない。騎兵や槍兵ならともかく、敵は弓兵、マスターから離れれば、即座にマスターは毒矢の餌食だ。 桜にしても、それは理解している。それだけに不愉快だ。 『呵々、よく避ける……獲物は生きがいいに限るのう――――』 老人の声が浮かべる好々爺の笑みは悪意で出来た善意のイミテーション、不快極まりない。だが、次に聞こえてきた言葉は、不愉快どころの話では済まなかった。 『――――なるほど、真夜の姉というだけの事はある』 今、この爺はなんて言った? 「従姉妹の間違いじゃないの? 長く生き過ぎて老人ボケが進んだのかしら? それとも、脳味噌まで蟲に堕ちたのかしら?」 吐き捨てる桜、しかし、老人の声の告げる言葉は、桜の予想の最悪の斜め下を突き抜けていた。 『いいや、父親で合っておるよ。真夜の左腕、あれはお主の父親の死体から外したものだったのだがのお……腕以外は必要なかったのだが、何かの足しになるかと思って蟲蔵に放り込んでおいたら――――』 ヤメロヤメロ、その先を言うな……! 聞きたくないのは最低の真実。どうせ知らなくても困らないが、知ればこの上も無く不愉快な真実。 『――――こやつの母、まあ、お主にとっては叔母ということになるが、お主の父親に惚れておっていたらしくてのお……蟲蔵の死体に蟲を憑かせて動かして、こう、死体の上に乗っての、実に幸せそうな顔で腰を振っておったわい』 呵々、と実に楽しそうな老爺の声が響く。それと対照的に、桜の脳裏が冷たく燃え上がった。全身が冷たく冴え冴えと研ぎ澄まされ、同時に劫火のようなエネルギーが駆け回る感覚。 そう、これは魔術回路の起動だ。手元から特大のルビーが飛び、空中で砕け散った破片が月光を反射して煌めいた。 「――――こ、の、爺ぃ!! Das Schliesen ! /準備! Von einem bis sechs, Der Riese und brennt das ein Ende ! /一番より六番、終局、炎の剣、相乗!! 停止解凍、全投影連続層写/Freeze out ! Sword Barrel Full open ―――― !!」 空中に投影した黒鍵が劫火を纏って夜の大気を灼き、飛翔する。聖堂教会の礼装はそれだけで退魔の力を持ち、それが“浄化”“破壊”の概念を孕んだ火焔との相乗効果で破壊力を増大させる。 父から受け継いだ投影魔術の中で桜が特に力を入れたのが憑依経験の再現だ。宝具なんぞを投影しようとするのは相当に手間がかかって戦闘中に使うには足りないが、別に投影するのが宝具である必要はない。 そうやって再現した憑依経験によって放たれる鉄甲作用、一抱えもある巨大な甲虫の防護をブチ抜き、内側から業火が炸裂して爆散、そのまま真夜を囲うようにして地面に突き立った黒鍵の刀身から、赫々と燃える炎の壁が噴き上がる。 「Sieben,Acht,Die Hitze wird das Gefngnis !! /七番、八番、包囲、灼熱城壁!! Ein KOrper ist ein Korper !! /灰は灰に、塵は塵に―――――!!」 もう一個、特大のガーネットを放り投げて炎の結界の中に特大の魔弾を叩き込む。火炎の魔弾が火焔の結界と反応し、燃料気化爆弾にも匹敵する熱量が炸裂。必ず殺す、故の必殺――――だが、魔術師だけならともかく、最大の敵はサーヴァント、これで死んだとも思えない。 「Es erzahlt――――Mein Schatten nimmt Sie./声は遠くに、私の足は緑を覆う」 炎の中から、ガラス玉のように透き通った声が響く。 「Es befiehlt――――Meine Augen wollen alles./声は深くに、私の眼は世界を徹す」 炎を切り裂いて伸び上がるのは、薄っぺらな影の刃。全長三十メートルはあるそれが、まるで解剖刀か何かのように、すっぱりと炎の結界を両断する。 その内側から、耳障りな羽音を立てて飛翔してくる何か。 『ほお……血の繋がった実の妹相手に、躊躇いもせずに魔術を放つか。なるほど、さすがは遠坂、優れた魔術師の血が流れているようじゃ。どうじゃ、お主も間桐の家で胎盤になってみてはどうじゃ、きっと優秀な仔が生れてくるじゃろうて』 「誰がなるか、この変態ジジイが……!」 黒鍵を織り交ぜて牽制のガンドを放ちながら吐き捨てた口に血の味が混じる。 いつの間にか、唇の肉を噛み破っていたらしく、そんな事にも気付いていなかった事に舌打ち一つ、気付かれぬように呼吸を整えて冷静さを取り戻す。 別に、桜とて好き好んで真夜を叩き潰したいわけではない。出来れば、助けてやりたいとも思う。 だが、自分は魔術師で、今は聖杯戦争の真っ最中、聖杯を手にするのは遠坂の魔術師として当然の義務のようなもの、そして自分はセイギノミカタではなく遠坂の魔術師だ。 だから――――そんな風に、言い訳じみた思考を繰り返す。 嗚呼、本当に――――。 『お取り込み中のところ大変申し訳ありませんが……戦争とはこのように運用するものですよ、お嬢さん方』 空中から放たれた無数の爆炎が夜空を業火の輝きで彩った。 夜空を飛翔するのはF-117ナイトホーク、形状から装甲素材に至るまでのことごとくをステルス能力に特化し、赤外線探知やレーダー波を探知する事によるレーダー警戒などに対して戦闘機として不可欠なアフターバーナーやレーダーすら放棄した機体。 ライダーの宝具によって魔獣と化すことによって、漆黒の夜間迷彩を夜の闇に溶け込ませる“混濁”の概念により魔術的にもほぼ完璧なステルス能力を手に入れ、 近代兵器に特有の長射程でもってアウトレンジの空に潜む事で、セイバーやアーチャーの気配察知をも無効化していた。 そのコクピットは無人。無数の機体を統括する空母そのものを魔獣と化すことにより、無数の機体を丸ごと魔獣に変えて操るのは、ライダーの宝具の能力あってのこと。 ライダーとそのマスターたるファルデウスが座するのは戦場を睥睨する鋼鉄の塊――――AH64-Dアパッチ・ロングボウ。 頭上に突き出した四枚のローターブレードが凶暴な轟きを上げて回転し、あまりの重装甲・重武装に空飛ぶ戦車とすら呼ばれる武骨な鉄塊が闇夜の空に舞い上がる。 その姿は鳥というよりは分厚い甲殻を背負って飛翔する魔蟲、唸りを上げて弾丸を吐き出す機首の30mm機関砲はまさに肉食蟲の牙。 放たれる対戦車ミサイルAGM114Lロングボウ・ヘルファイアが轟音を上げて大地に炎の華を咲かせ、その後を追って飛来した四機の戦闘機が放つミサイルが周囲を薙ぎ払う。 『ぬぅ……これは…………どこぞの軍隊でも乗っ取ったか……』 老爺の声が呆れたような声を洩らす。超音速飛行によるレンジ外からの強襲と、大火力によるヒットアンドアウェイ。爆風に一掃された大地には残炎が燻り、木立から何から全てが薙ぎ払われている。 そして、その逃げ場のない広場の中に佇むのは、ライダーの乗騎たるアパッチ・ロングボウ。機関砲とミサイルによる大火力、軍用ヘリの機動性による回避性能により、攻防共に一切の隙が存在しない。背中を見せれば瞬く間に肉片以下のものに変えられるだろう。 戦場に、ライダーの圧倒的優位による膠着状態が落ちる。 その刹那。 血と埃と硝煙の薫る戦場に、そこだけ切り取ったかのように一人の少女が佇んでいた。それを場違いだというのなら、戦場の方こそ少女にとって場違いだった。 輝く月光をスポットライトに、銀糸の髪と血色のガーネットの瞳を煌めかせ、スカートを摘まみ上げて部隊の主演女優のように一礼。 「初めまして、私はウィクトリアスフィール・フォン・アインツベルン。アインツベルン二百年の歴史を閉じる者」 スポットライトを浴びてオペラの舞台に立つプリマドンナのように腕を振って指し示した先に立つ一人の男。ファルデウスはその男を識っている。 武器の一つすら持ち合わせず、纏うはあまりにも質素な貫頭衣のみ。 男とも女とも取れる端麗な顔立ちには、どこかマネキンや人形を思わせる作り物めいた雰囲気が宿っている。 携えた槍は柄から穂先までが水晶のように透き通った素材で作られた一体成型であり、あらゆる生命の源たる原初の海それ自体が構成素材。 その特徴のどれもが、ファルデウスの知っているその存在そのもの――――。 「そして私の最強のサーヴァント、ランサー。その力を以って今、この戦闘に幕を引かせて頂きます」 獣人。神造人間。英雄王の片翼。天の雄牛を討った罪人の片割れ。 ――――英霊、エルキドゥ。 「ライダーぁあああああああ! アイツを殺せ、今すぐ殺せ! 核を使っても構わん、あらゆる手段を用いてこの場から消滅させろ!」 その瞬間、ファルデウスの掌に刻まれていた、車輪と駿馬を組み合わせたデザインの令呪の一画が弾けて消えた。 主の命令であれば否やはない。ライダーは頷いて、令呪のバックアップを以て自らの保有する最大戦力を駆動させる。 F‐22Aラプターが機銃とミサイルを投射し、YF-23Aブラック・ウィドウが衝撃波の刃を叩きつけ、アパッチ・ロングボウが銃火を降り注がせる。 それはまさに圧倒的多数による圧倒的火力、その劫火と爆風の渦の前には、徒手の人間など生き残る方法は皆無――――人間であれば。しかし、数と力の暴力を、ただ一人の力によって覆す、その程度が出来ない者など、英雄の中には一人もいない。 ましてやその男、かつて最強にして頂点たる金色の英雄王の隣に唯一立つ事を許されたほどの男――――。 「『天の創造(ガイア・オブ・アルル)』――――巖嶺態(ウルリクムミ)」 無数の砲弾が到達する前にランサーの全身から噴き出した泥がランサーの肉体を包み込み、巨大な岩の塊へと変容させる。単なる岩石に非ず、あらゆる攻撃に対して、単純な防御力を上昇させる。 何となれば『天の創造(ガイア・オブ・アルル)』、創造の女神アルルの手によって作られたエルキドゥの肉体そのものこそ、ランサーの持つ第一の宝具。彼自身が一つの対神兵器としての性質を持ち、肉体を任意の対神兵装に変えることが可能。 そしてライダーの宝具『黄金の手綱(ポリュエイドス)』は元は女神アテナに授かった天馬の手綱、神々の武具である。対神兵装に対しては少しばかり分が悪い。 「『天の創造(ガイア・オブ・アルル)』――――嵐鷲態(ウム・ダブルチュ)」 魂を揺るがすような咆哮と共にランサーの肉体がさらに変容していく。獅子の体躯、翼と頭は鷲、その形態は端的に言ってしまえばグリフォン。かつて女神ティアマトが夫を殺した神々を滅ぼし尽くすために生み出した十一頭の怪物の一柱。 巨大な翼が大気を撃ち、神殺の神獣は病毒を孕んだ風を撒き散らしながら、空を埋め尽くす鋼の魔獣のどれよりも華麗に天を舞う。 その状態でも十全に槍を振るう事が出来るのは、ランサーの保有する創世の槍、元より母なる海の具現たる不定形の竜頭槍、形を持たないが故にその技量を発揮するための肉体の形状に縛られない。 自在に形状を変える不定の槍は、その先端を七つに分岐させ、自在に蠢いて魔獣の群れを貫いていく。 『黄金の手綱(ポリュエイドス)』によって魔獣の特性を得てしまった兵器たちは、生物であるが故にそのまま鷲獅子が撒き散らす病害に冒され、あるいはランサーの振るう不定形の槍に貫かれ、失速し、墜落していく。 「っ、ライダー!! 何を躊躇っている!? 今すぐ核を使え! 確かにこの都市は壊滅するだろうが、ヤツがもたらす被害よりはマシだ!! スノーフィールドの惨劇を再現させてはならん! 今すぐにだぁあああああああああああ!!」 ファルデウスによる再びの令呪使用。ランサーが新たな対神兵装を顕現させるより早く、ライダーはその致命の引鉄を引こうとして―――― 「っ――――セイバー、止めなさい!」 桜が自らの従者に命を下す。こんなところで、核など使わせるわけにはいかない。桜の手に刻まれていた令呪の一角も、後を追うように弾けて消える。 地面を駆けるかのように大気を踏んで空を駆けるセイバーの踵から、黄金に輝く光の翼が広がった。『天駆ける白鷲(タラリア)』、大気を足場として風に乗る、伝令神ヘルメスのサンダルである。 「邪魔をするな、セイバー! ――――『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』!!」 ライダーの手から放たれた金属球が瞬時に液状に融け、投網のように広がってセイバーの体を包み込む。その姿はさながら渦巻く重金属の繭。 かつて火山の魔獣キマイラを討つ時に、キマイラに対して投擲した鉛の塊、それがベレロフォンの第二の宝具『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』。 対象を包み込んで動きを封じ、内部から放たれた攻撃を再び内部に弾き返す捕縛結界。しかし、それこそセイバーに対しては最悪の一手。 「――――『翻転響界(キビシス)』」 セイバーの顔を覆う覆面、ゴルゴンの魔眼を封じるための迎撃礼装が裏返しになってセイバーを包み込む。 その実体は冥王ハーデスより授かった女怪殺しの革袋、結界に取り込まれると発動できる迎撃礼装。 裏返しでセイバーを包み込み、その結界の『内』と『外』の概念を反転させることで『翻転響界』の内部は『外』となり、裏返された力は結界の『内』に取り残された者、すなわち術者自身へと反射される。 流体金属の繭が内側から弾け飛び、アパッチ・ロングボウを駆るライダーの全身へと絡みつき、その繭を切り裂いて翻ったセイバーの偃月刀が、ライダーの心臓に突き刺さった。 まさにその時。 “核”という言葉の前に、その場にいたあらゆる者の注意がライダーに向けられていた。何となれば、それはこの世界における最強にして最悪の兵器――――。 周囲を包囲した米兵たちも唖然としてライダーを見つめていた。 何となれば、この国は同盟国だ。加えて確かに無数の最新鋭兵器を次々と撃墜してのけたランサーの能力は凄まじいが、核を落とすとなると話は違ってくる。何となれば、間違いなく自分自身をも巻き添えにする行為。 その兵士たちの中で、歪んだ嘲笑を浮かべる男が一人。気配遮断を用いてサーヴァントとしての気配のみを消し、デイビッドに変化して身を潜めていたアサシンである。 『畏怖されし魔獣(ラ・ベート・デュ・ジェヴォーダン)』――――アサシンの保有する唯一の宝具。 それは、視線を合わせた、あるいは接触した時にジェヴォーダンの獣が対象の脳内に転移し、内側から食い破る事が出来るが、自身及び対象が第三者に知覚されていてはならないという厄介な制限を持ち合わせている。 だが、この戦場においてファルデウスが全ての注意を集めた刹那――――ライダー以外の誰もが、誰にも知覚されていないという稀有な一瞬を見逃さず、アサシンはすぐさま宝具を発動、ファルデウスの頭部が、血と脳漿を飛び散らせて弾け飛んだ。 その中から現れるのは、紅白の巫女装束を纏った一人の少女。その姿、舞い散る血煙を浴びてなお妖艶。 ファルデウスの頭蓋を喰い破り、ライダーの頭上を飛び越えたアサシンは、ライダーに剣を突き立てていて身動きの取れないセイバーの頭蓋を一息に噛み砕いた。 呆然と一連の展開を見守っていた人々の前で、アサシンは残されたライダーの首を無造作に捩じり切ると、その頭蓋を噛み潰して止めを刺した。 アサシンが咆哮を上げると、その咆哮に呼ばれるように突風が発生し、アサシンはその風に乗って跳躍する。 「っ、いけない、ランサー……」 ウィクトリアは傍らの槍兵に逃走に入ったアサシンを追撃するように指示しようとして、悔しげにその指示を撤回する。 あの速度での飛翔には、肉体的にはただのホムンクルスに過ぎないウィクトリアでは耐え切れないので、ランサーが飛んでアサシンを追うには、ウィクトリアをこの場に置いていかねばならない。 一方でアーチャーは、こちらがアサシンに気を取られている内に、既に姿を消してしまっている。しかし、消えているとは言っても、長射程攻撃を持つアーチャーである以上、どこからこちらを狙っているか分からない。結果として、この状況下でランサーを外す訳にはいかない。 「一本取られたわね……撤退するわ、ランサー!」 悔しげなウィクトリアの指示と共に、ランサーは翼を広げ、空へと舞い上がった。 ――――死狂人先生のドキドキ ☆ 放課後個人授業 !! 死狂人:「さて、新番組『死狂人先生のドキドキ☆放課後個人授業』の時間の訳だが……」 ペル:「……喰われました、巫女さんに」 ベレ:「……喰われました、ワンちゃんに」 死狂人:「と、いう訳で、タダーノ以来の記念すべき初の戦死者が出たわけだが……」 ペル:「……喰われました、巫女さんに」 ベレ:「……喰われました、ワンちゃんに」 死狂人:「出たわけだが……」 ペル:「……喰われました、巫女さんに」 ベレ:「……喰われました、ワンちゃんに」 死狂人:「いいから、お前ら話を聞け……」 ペル:「……喰われました、巫女さんに」 ベレ:「……喰われました、ワンちゃんに」 死狂人:「……『運命られし破滅の剣(グラム)』」 ――――しばらくお待ちください。 破底魔:「あれ、何か妙な音が聞こえましたが……」 死狂人:「っ、いかん、ヤツがくる! せっかく今日は乗っ取れると思ったのに……!」 破底魔:「って、何ですかこの惨状は!?」 死狂人:「くそ、来たかファーティマ、ここで会ったが百年目! 我が宝具の威力をたっぷりと味わって……」 破底魔:「とりあえず、諸悪の根源は遠野さんのお宅からレンタルしたクルートー君を組み込んでパワーアップした新生タダーノさんが相手をします」 犬只野:「その肉塊、悉く食い砕こう――――!」 死狂人:「な、何か喋ってる、というか武装999――――!?」 破底魔:「さて、駄い英霊は放っておいて、ちゃんとした授業時間を始めましょうか。それでは皆さんご一緒に――――」 ――――おさえて、破底魔先生! 破底魔:「と、いう訳で皆さん、皆さんの今回の死因は何か分かりますか? はい、ファルデウスさん」 ファルデウス:「ぶっちゃけた話、相手が悪かったですね。アサシンクラスは直接的な戦闘能力が低い分、防戦には極端に脆いですが、 気配遮断スキルがある分、自分から仕掛ける戦い、特に遠坂嬢や間桐家の人々のように、自分から出歩いて敵を探すようなタイプのマスターには最悪の敵になります」 ファルデウス:「まあ、私自身は遮蔽物のない場所でライダーのアパッチに同乗して飛行する事で、気配遮断スキルを持つ相手の接近も察知しやすいように配慮してきたのですが、まさか敵が脳味噌の中に直にテレポートしてくるというのは予想外でした」 破底魔:「はい、正解です。では、次はライダーさん」 ベレ:「いや、今回はそれこそ純粋に相性が悪かったな。私の宝具は『黄金の手綱(ポリュエイドス)』ばかりがクローズアップされるが、『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』とて決して捨てたものではないのだが……」 破底魔:「対結界宝具が相手では、さすがにどうしようもありませんでしたね」 ペル:「はーい先生、質問です」 破底魔:「はい、セイバーさん、どうぞ」 ペル:「それでわ。ええと、ライダーの宝具『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』だが、実際の所、この宝具って強いのか?」 ベレ:「貴様、私以上にロクな見せ場も無くサックリ殺られた癖に、この私を愚弄するか!?」 ペル:「っ、お前こそ『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』並みの素敵兵器まで持ち出して暴れた癖に一度も勝った事なんてないだろうが!」 破底魔:「そこ、教室で喧嘩はやめなさい! タダーノさん」 犬只野:「契約しよう。おまえは生きたまま、少しずつ、高熱で熔かすように咀嚼すると」 ――――しばらくお待ちください。 破底魔:「と、いうわけで授業に戻ります。さて、ライダーさんの宝具『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』ですが、実際にはかなりの地味チートになります」 ベレ:「ほらみろ、強いと言っているだろうが」 破底魔:「エクスカリバーやゲートオブバビロンのような派手さには欠けますが、その能力は聖杯戦争においてかなり致命的な効果を発揮します。セイバーさん、アサシンクラスが聖杯戦争において弱いとされている理由を言ってみてください」 ペル:「マスターの殺害はサーヴァントの突破が絶対条件、だったか?」 破底魔:「はい、その通りです。しかし、実際の所、いくらマスター殺害に特化しているからと言って、対サーヴァント戦能力が無ければ、 マスターを殺す前にそのマスターを守るサーヴァントに殺られます。逆に言えば、サーヴァントさえいなければ、マスターを殺害するのは別にアサシンクラスである必要はありません」 ペル:「なるほど、『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』であれば一撃でマスターとサーヴァントを分断できる。それさえクリアしてしまえば、絨毯レベルの乗り物であっても悠々とマスターを轢き殺せるという訳だな」 破底魔:「はい、よくできました。Cランクとはいえ宝具ですから、A+の筋力を持つ大英雄か征服王でも持ち出さなければ、『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』の捕縛を力技で振りほどくのは不可能です」 ベレ:「難点を言うならば、ビームのような直接威力系の宝具を持っているサーヴァントが相手では案外あっさりと破られてしまうという訳だな」 ペル:「それって原作鯖のほとんどが該当するんじゃないか?」 ベレ:「……」 破底魔:「そんな事はありませんよ。その手の宝具を持っているのは原作本編のセイバー・アーチャー・ランサー・ライダーの四騎に、Zeroの騎士王・英雄王・征服王の計六騎だけですし。 残りのマスターは容赦なく絨毯の餌食に出来ますから、結構いい所まで行けると思いますよ。最終的には負けるでしょうが」 ベレ:「……」 破底魔:「というわけで、相性次第では実際には結構有用なのです」 死狂人:「しかし、まさかこれまで聖杯戦争中に撃破されたサーヴァント三騎中、三騎全てがアサシンによる殺害だとはな……」 ペル:「少なくともライダーを倒したのは俺のはずなんだが……見事なまでに見せ場を持っていかれたな……」 破底魔:「しかも、一度として正面から殴り合っていませんね。現状、あのサーヴァントは正面から殴り合っても相当に強いはずなのですが……」 死狂人:「本当に性質が悪いな、あのサーヴァントは。早いところ本拠地を割り出さなければ本当にまずい事になるぞ」 ファルデウス:「現状でも十分に手がつけられませんが。居場所が割れてないアサシンは凶悪過ぎますからね。その上で正面から戦っても強いとなると、正直、私の場合だと、本拠地が見つけ出せなければ水佐波市全域を空爆するくらいしか思いつきません」 ペル:「……過激だな」 ファルデウス:「ですが、それだけの価値はあります。FateASではアサシンクラスの代わりにファイターが召喚された事に遠坂家のマスターが胸を撫で下ろしているように、アサシンクラスはその能力の低さに比べて、充分に警戒する価値のある存在なのです」 死狂人:「しかも、ヤツらが先代ライダーを隠し持っている可能性は充分にあるからな。警戒しておく価値は充分にある」 破底魔:「ところで話題は変わりますが、RWの前話に出てきた『泰山・二号店』のセガ○ル似のコックですが、実際、彼がまとめWikiの住民リストに登録されていると気がついている読者はどれだけいるのでしょうね」 死狂人:「ヤツがキャスターのマスターにならなかった事は、マスターとサーヴァント達にとっては僥倖だったな。まあ、ここで授業を受けているヤツらにはあまり関係のないことではあるが、な」 破底魔:「と、いうわけで、今回の『おさえて、破底魔先生!』はここまでです。それでは皆さん、次回も『おさえて、破底魔先生!』をお楽しみに」 死狂人:「それでは、また会おう。元気でな」
https://w.atwiki.jp/ova-v/pages/460.html
ここは戦場でございます。 攻めるにせよ、守るにせよ、人が死ぬものでございます。 楽しむにせよ、悲しむにせよ、人が死ぬものでございます。 喜ぶにしろ、怒るにしろ、人が死ぬものでございます。 故意にしろ、そのつもりがなくとも、いずれにしろ人が死ぬものでございます。 爆炎に巻き込まれて死ぬか、射撃兵器に機体ごと撃ち抜かれて死ぬか、あるいはレーザーブレードといったもので、骨すら残らずに蒸発してしまうか。機体から脱出したところを狙われて死ぬこともあるでしょう。 どのような死に方であれ、人は死ぬものでございます。 悔いなく満足に死ぬものもあれば、悔いて絶望し、人は死ぬものでございます。 なら、どのように致せば人が死なぬものでございましょうか? 殺さなければ死にません。 殺されなければ死にません。 ですが、死ななければ生きていると言えるものでございましょうか? 長々と彷徨ってきましたが、あたしは生き抜いたのではなく、ただ死ななかっただけでございましょう。 あたしゃ、生き抜いてきたわけではございません。全てから目を背け、耳をふさぎ、口を閉ざし、心を無くし、背を向けて逃げてきただけでございます。死ななかっただけであれば、それは生者と言える物でございましょうか? 動く屍と揶揄されても何も言えぬでしょう。 もはや、何も変わることもないような歳でございます。 ただの老兵でございます。ただ、かろうじて動くだけの物に過ぎません。 正に動く屍に過ぎぬのかもしれません。 しかし、攻めたにしろ、守ったにしろ、戦場で人が死ななくなるとなれば、あたしにとっては悪くない話でございますが、それは本当に戦場でございましょうか? ここは戦場でございます。 人は死ぬものでございます。 どのような戦いになろうと、それだけは忘れたくないものでございます。 何もかも忘れて、忘れようとして流れてきても、それだけは忘れたくないものでございます。 □ ここは戦場でございます。 あたしは高台の上に陣取って、愛機のレールキャノンを構えておりました。 時刻は黄昏時でございました。 MBT所属となってからというもの、なかなかに忙しい日々が続いております。アンドルーと呼ばれるのも慣れてきたものです。傭兵としては、飯の種に困りませんが、襲撃の度にMBTには少なからず死者が出ております。大抵はあたしよりも若い者が死んでおります。そうとはいえ、あたしのような年の傭兵が、未だに戦場を彷徨っていることがおかしな話かもしれません。 パトリオット・チャリオットとジェノサイドジェニーはMT等を引き連れて、さらに前衛に出撃しております。さらに、別方面からせめて来ているMT部隊は今回だけ雇った傭兵達が迎撃しているようでございます。あたしはJNとともに戦場のやや後方におりました。 バッドカルマが、ショットガンでACを撃ち抜いて、一瞬だけ動きを止めました。そこに、あたしがレールキャノンを撃ち込むと、ヘッドパーツが吹き飛んでコアの内部を破壊したようでございます。また一機仕留めたまででございます。 『……クリア。アンドルー、あんたは……おっと』 なにか言いかけながら、JNと名乗る傭兵はその機体を反転させて破壊された大型砲台の後ろへと回り込みました。そこには、何十発という小さな榴弾が降り注いできました。 『ったく、モテてモテて辛いぜ』 「色男でございますな」 『はは、違いない』 JNは短く笑い声をあげました。 「では、そちらの淑女方は、如何でございますかな? 」 『アクセサリーは少なく、化粧っ気がないぜ。ブランドものにも興味がないようで、それでいて仕事熱心で倹約家とくれば、男は手間がかからないだろうさ」 「良妻賢母でございますかな? 」 「いや、頭は少しばかり弱いかもな。だが、ヒートハウザーで榴弾の雨なんて降らされると、こいつが厄介だな。少し片付けてくれんか? 流石に身動きがとれん』 「わかりました」 あたしはレールキャノンを向け直しました。何機もの暗い赤にカラーリングされた二脚ACがヒートハウザーをバッドカルマに向けて撃っております。ブリーフィングで聞いた話によりますと、バンガードやらのUNACであるそうでございます。それが、ヘリから十数機と降りてきて、マザーを攻めてきております。 一番前に出てきたUNACに標準をあわせて、タイミングよく引き金を引きました。チャージングの光に輝くレールキャノンから弾丸が撃ちだされました。軌跡を描きながら、今度はヒートハウザーを撃ち抜いてコアに当たりました。ですが、コアの正面となれば、耐久性は高く、動きを止めるまでには至りません。 矢張り、長距離狙撃には対応仕切れていない点を見ると、オペレーションカスタムそのものの質が低いのでしょうな。それとも一機一機の質よりも、ある程度の連携行動に重点が置かれているのでしょうか。もう少しばかり観察しませんと、そこまでは推察しきませんかな。 『当たったか? 』 「ええ。ですが、仕留めておりません」 『そうか。全く、相手が木偶人形じゃ挨拶もできんぜ。殺すわけにはならんから、気は楽だがな。それはそうと、マザーの反対側の若い連中は? 』 「一機が陽動し、もう一機が狙撃して仕留めているそうでございます。あちらはACが来ておりませんから、問題ないでしょうな」 『そうか。はは、死ぬのは年寄りの仕事だが、苦労まで背負い込まなくても良かったか 』 「どうでございましょうね。いずれにしろ、来れば撃てばよいだけでございますので」 『違いない。何をするのも結局飯の種だ。っと、前衛に出て行った二人もいまのところは、問題なしのようだ』 あの二人の腕を考えれば、それは間違いないことでございましょう。そして、さらにレールキャノンを撃ちだすと、今度は別のACの足に当たりました。左足が千切れ、移動手段を失ったACはその場にとどまって、ヒートハウザーの攻撃を止めることはありません。コアを狙ったのですが、あたしの腕ではこんなものでしょうな。 『今度は? 』 「動きを止めただけでございます。あの位置なら見えませんか? 」 『どれどれ、おう。足やりやがったか。それじゃあ、こっちも許可が出たんでね、今度はこっちの砲台をこっちのタイミングで撃ってくれ』 「砲台でございますか? 」 『ああ。何も隠れているだけじゃない。パトリオット・チャリオットの小僧に許可をもらっていた。修理できるかもしれないと、渋い顔されたがな。少しばかり、派手な花火さ』 「判りました」 『俺の尻の穴をふやすんじゃねーぞ? スナイパー』 「それはどうでしょうかね。ふふ、あたしは狙撃手というわけでもありませんので。ただの臆病者でございます。向こうの若いのが乗った四脚のほうが本分は狙撃手でございますので」 レールキャノンも前の戦闘で拾った物を修理して使っているだけでございます。拠点防衛なら狙撃できる代物が使えるだろうと判断して使っているだけでございますし、レールキャノンにこだわりがあるわけでもございません。正直、銃器は引き金を引いて、弾が出ればなんだろうと構いません。良い兵器であれば勝てるわけではございません。かといって、ジャンク品なら勝てるわけでもございませんが。単に、物資不足の状況でも戦い続けてきましたら、あまり強いこだわりを持ちすぎると柔軟な対応ができなくなることに気がつき、なんでも使えれば使うようになっただけでございます。 レールキャノンを砲台とバッドカルマに向けて構え、チャージングを開始しました。 『何だと? 』 「ブレードを装備している時点で、察してほしいものなんですがね」 『 おいおい、真剣に狙えよ。俺のチャーミングなヒップに惑わされるなよ? 掘られる趣味はねーんだぞ』 「あたしも、掘る趣味はありません。チャージング終了。いつでもいけます」 『おし。カウントするぜ』 3。 まだ、バッドカルマに動きはありません。 ただ、砲台の周りにはACの群れがライフルも撃ちだしながらヒートハウザーの雨を降らしてきております。それは、どこか甘い砂糖菓子に群がる蟻のようでございます。 2。 バッドカルマは、両手の銃を構えてから、砲台にブーストチャージを仕掛けました。 1。 ACの一機がとうとう砲台に張り付きました。 0。 撃てと短い合図を受けて、バッドカルマがハイブーストによって大きく左に飛びました。バッドカルマが飛ぶ前に砲弾は撃っております。砲弾は装甲の外れた砲台の内部へと吸い込まれるように当たりました。狙撃が本分では無いとはいえ、止まった物に当てる程度は問題ありません。 レールキャノンの弾丸は砲台ごと残っていた弾薬を撃ち抜いたようで、砲台は吹き飛んで、炎と装甲の破片がバンガードのACを巻き込んで行きます。炎に巻き込まれ、ACが黒こげになっていきます。破片に撃ち抜かれ、吹き飛んでいき、機能を停止していきます。 画一的な挙動に対応しているとはいえ、やはり、こういったイレギュラーには対応し切れていない点を見ますと、大量運用前提型とはいえ、質が低すぎるようにも思えます。バンガードとやらは、最近になってUNACを運用しだしたと言うことでございますので、運用のノウハウには欠けているのでございましょうか。あの程度の動きであれば、尻の青い新兵でも詰め込んでおいた方が、幾分かはましかもしれませぬ。 爆風から逃れたACにバッドカルマがブースチャージを仕掛け、吹き飛んだACが動きが緩慢となった別のACに突き当たって、二機はまとめて火花が散り、炎に包まれました。 ひとまずは、これほどACが破壊されたというのに、人が死んではおりません。 いかなる戦場であっても、人が死なぬ日などありませんでした。 ですが、最近は、UNACが主戦力として導入され、何の気兼ねも躊躇いもなくACを破壊できるようになりました。 これは幸か不幸か。 否、そのうちに、傭兵なんてものどころか、兵士すら不要となるかもしれません。 であれば、あたし達の飯の種すら無くなると言うことでございましょう。 最も、そんな日が来るまで、生き延びるとも思えませんが。 いえ、生きているのではなく、ただ、死にきれなかっただけでございましょうな。 さらなるレールキャノンの一撃が、一機のACをとらえ、さらにそこにバッドカルマがブーストチャージによって、大きくコアを変形させながらヘッドパーツを吹き飛ばしました。 『ふぅ。骨が折れる。だが、あらかた片付いたか? 』 「仕事終わりの一杯と行きたいところですが、少々早いようでございます」 高台の上で陣取っていたあたしには、空高くやってくるその姿が見えました。全く同じ構成のUNACが吊られたヘリが見えました。さらに後方のヘリには、コマンダーと呼ばれるバンガード標準機の一機の姿が見えました。 『マジかよ。荷が重いな。バンガードやらは、年寄りを虐めるのが好きなんだかな? 』 「あたしに言われてもしょうがないんですがね。どうやら、指揮官の性根は悪そうでございますな」 あたしは、レールキャノンの砲身を折りたたませて、機体を立ち上がらせました。左右の細い腕が持ち上がり、背負われたアーム部分が一対のブレードを取り出して、ブレードが装備されます。 「いい加減に、拙い狙撃をするのも飽きましたので、試し切りときますかね」 『おう。そろそろ、こっちばっかりに前衛やらせて楽するなよ? こっちこいよ、もってもてのハーレムが楽しいぜ? 天国が見えそうだ』 「あたしゃ、とうの昔に枯れているようなもんですがね。ふふ」 グライドブーストを起動し、愛機を駆けさせていきます。 □ ここは戦場でございます。 すでに何機ものUNACを破壊しておりました。 バッドカルマがブーストチャージを仕掛けたUNACが吹き飛んで、それはこちら側に合流したテンペストのオートキャノンに撃ち抜かれていきました。 さらに、巻き込まれるのから回避しようとしたUNACに飛びかかりました。ブースターと跳躍によって瞬時に加速し、右のブレードを大きく降ってコアが両断しました。コックピットは、ただの空席となっておりました。 「レーザーブレードとは少々勝手が違いますが、コツはわかってきましたね」 一人、そう呟きますと、バッドカルマのショットガンがACのヘッドパーツを吹き飛ばし、さらに上からあたしが両腕を切り落としました。回避をとろうとしたところで、さらにこちらに合流したジェノサイドジェニーがブーストチャージを仕掛け、機体はマザーの足とハチェット・ジョブが構えるシールドに挟まれてコアが潰れました。 『本当に数だけそろえて、こっちを落とせると思っているのか。はっ! 』 ジェノサイドジェニーの頼もしい言葉を聞きながら、あたしは大きく振りかぶって、フェイントを入れると、UNACが逃れていきますが、そこをちょうどよくバッドカルマが蹴りを入れてさらに、一機潰れました。 数だけは多いのですが、やはり先行してきたUNACと同様に、あまりにも拙いとしか言えません。最早、その単調な動きは見抜くことができ、少しばかりのフェイントを入れて行くだけで、面白いように予想通りの動きを見せていきます。経験の浅い兵士も、これほどわかりやすく動くことはありません。 木偶人形を斬るとは、随分と手応えのないものでございます。 こうして、斬っても殺さぬことになると全く手応えという物が感じ取られません。あたし自身は、殺し合いを望んでいるのでございましょうか。相手を殺すことを望んでいると。 いえ、最早、そのような気持ちすら捨ててしまったのでしょうな。 残るUNACは2機、その2機はテンペストへととりついておりますが。至近距離からのオートキャノンによって確実に損傷を受けております。 さらに残る敵には、コマンダーと呼ばれるバンガードの重量逆関節ACおりました。大きく跳躍し、頭上からライフルを撃ちだしてきております。 『甘っちょろいな。メイプルシロップたっぷりのハニートーストぐらいに甘いぜ? そんな腕なら、そろそろ引いたらどうだい? いい加減に分も悪いだろ? 』 『戯れ言を! 』 JNがライフル弾を回避しながら、敵パイロットに通信を入れております。どんな方かも存じませんが、威勢は良く、声の調子から見て若い方でしょうか。あのコマンダーとやらのACは、その名の通りに指揮官用ということですので、若くして指揮官となれば、優秀な方なのかもしれません。とはいえ、すでに引き際を見失った頭でございます、本当に戦いができるとも思えません。 『出来の悪い人形を、数だけは引き連れて来た程度で、こんなマザーを堕とそうとするのは巫山戯ていないのかい? あっちの人形も、あの小僧とおっかない女が次期に仕留める。機体も命も捨てろというのがバンガードか? やれやれ、そんな場所に雇われなくて良かったよ。雇われていたら、こんな馬鹿でかい代物を落としてこいなんて無茶言われているところだ』 『黙れと言っている! 』 コマンダーが着地したところで、バッドカルマからショットガンから散弾が浴びされました。大きな衝撃力によって動きを止めたところで、あたしは急接近し、両手のブレードを同時に振り下ろしました。武器を狙ったつもりでしたが、やや深く踏み込み過ぎて、コマンダーの両手首ごと切断されました。何の対応もできない隙が生じたところを、軽く蹴りを入れますとコマンダーは後方へと飛んでいきます。ワンテンポ遅れて体勢を立て直しながら、右肩の射出機構のカバーがせり上がり、ロケット弾が飛んできます。軸を見極め、横へと回避行動をとると、一発のロケット弾がアームをかすめていきます。 コマンダーは、後方へと飛びながらさらにロケット弾を撃っていきます。 バッドカルマがライフルを撃ち、やや距離の離れたコマンダーへとけん制を仕掛けました。 あたしは、ブレードを仕舞い込みます。武器腕のこの武装展開の時間は、どうしても隙が生じやすく、この点については一度再考しておくべきかもしれません。 コマンダーはロケット弾の射程範囲よりも離れていくと背を向けました。 『撃つか? 』 JDからの通信が聞こえます。照準に捕らえたコマンダーはグラインドブーストを起動し、大きく光を噴出しながら逃れていきます。ハンガー武器が残っていようと、両腕がなければ、ACの戦闘能力は半減以下というものでございます。 撤退は当然としても、状況としては遅い判断でございます。 『撃とうにも、弾切れでございました』 コマンダーは瓦礫の陰に隠れ、見えなくなりました。レールキャノンを折りたたみ、機体の射撃体勢をキャンセルさせました。 『斥候班から連絡、敵勢力の警戒ラインからの撤退を確認。引き続き警戒行動をとる』 最後のUNACを撃破したパトリオット・チャリオットからの連絡が入りました。 『やれやれ、もう戻ってこないことを祈るね』 これで、今日の仕事は仕舞いでしょう。半端な戦力ですぐさまに再襲撃するとも考えづらい物でございます。 しかしながら、長丁場となったわりには、さほど手応えのない仕事でございました。 今日は、一人も殺しておりません。珍しいことでございます。 そして、あたしゃ、生き延びてしましました。 □ ここは戦場でございました。 今は日は暮れて、夜でございます。空気は乾いておりまして、気温も随分と下がって、空気は冷たくなってきております。戦いの疲れが体に現れ、冷たさがその痛みを刺すように感じ取られ、歳というものを実感いたします。ですが、戦いのあとに、その過程の全てを思い起こすには寒空の下の方が静かで、落ち着けるものでございます。 マザーのデッキから見える眼下には、あちこちで防御機構の修理のために照明がつけられており、重機や電気工具の騒音が響いてきております。あたしらのような傭兵の仕事は終わりましたが、整備工の仕事はこれからでございます。またいつバンガードの侵攻があるかわかったものではございません。とはいっても、ここを落としたところで、拡大した前線を維持できるかどうかの問題もございますが。傭兵が、そういった勢力規模の出来事を考えることもないでしょうか。負けても生きていれば、ただ次へと流れていくだけでございましょう。あたしのような傭兵にとっては、負け戦も珍しいものではございませんが。 カンテラは小さな明かりで周りを照らしておりまして、傍らのラジオからは、ノイズ混じりに、なにやら若い女性司会者が話をしながらスティーブンなんとかやらの曲を流しております。こういった音楽を楽しむことができるだけ、この領域というのは余裕はあるのでございましょうか。食べるものもなく、休む暇もない弱小勢力に雇われた時には、何の余裕もございませんでした。 軍用ガスコンロにポットを火にかけられておりまして、あたしは、中に入ったインスタントコーヒーをマグカップへと注ぎました。そこにお砂糖を少々入れまして、ラム酒も少しばかり注ぎます。 苦く、甘く、熱い液体が、喉を通り越していきます。コーヒーとラムの入り交じった香りも鼻を抜けていきます。アルコールが体の中に染みこんでいきます。飲んだ分は、戦いの疲れが染み出していくようにも感じ取られます。体が火照り、顔に当たる冷たい風が心地よいものでございます。 もう少しばかりのリキュールやクリームがあれば、洒落たカクテルになるものでございますが、贅沢も何も、あたしはそこまでのものを望んでいるわけでもございません。最早、体が温まってアルコールが入っていれば、文句もありはしません。 仕事の後の一杯だけは昔から続けております。とはいっても、さほど飲む方でもございませんし、最近は、年のせいかさらに飲めないようになってきましたが。 この仕事の後の一杯ですが、あたしは、あとどれだけの仕事の一杯が残されている物でございましょうか。 戦って、失って、逃げて、忘れて、また戦ってを繰り返してきました。 よく仕事で組んでいた傭兵の名は忘れました。 死んだのかどうかさえも、はっきりと覚えておりません。 戦いを教え込んだルーキーの顔は忘れました。 危うい生き方の結末は覚えておりません。 幾度と戦った好敵手の声は忘れました。 決着がついたかどうかも覚えておりません。 何度かあたしを運んだヘリパイロットの口癖は忘れました。 最後に会ったのはいつだったのかも覚えておりません。 あたしは、臆病者でございます。 恐れがあれば、逃げて、忘れてきました。 忘れられぬ物があったとしても、人は忘れようとすれば、忘れられるのでしょう。 戦いたいために戦ってきたのではなく、全てを忘れたいがために戦ってきました。 全てを忘れようと戦い、偶然にも、何かつながりを得て、結局は失ってしまい、それを忘れるために、忘れてきました。 気がつけば、もう、このような歳でございます。任務を終える度に体の節々が痛み出し、敵も味方も依頼主も、殺した者も、死んだ者も自分よりも年若い者達だっただろうと黄昏れるばかりでございます。いずれ、戦うことすら出来なくなるのも目に見えております。 今日も生き延びてしまったではなく、死にきれなかっただけでございましょうか。 幾ばくかの後悔をやや温くなってきたコーヒーと一緒に飲み込みます。 マグカップの中身が無くなり、二杯目のコーヒーを注ぎ、今度はラム酒だけを一杯目の半分だけそそいでおりすますと、マザーの中から足音が聞こえてきました。 「あーったく、何がマザーのシャワー室が使えるようになっただ。水しかでてこねぇ」 薄汚れたタオルを頭に乗せたJNが悪態を付きながら歩いてきました。最近はなにやら『マザー』内部の施設も幾らかは修繕し、MBTの者達が使っております。 もっとも、マザーそのものが本来は兵器であることを考えれば、マザーそのものを要塞として使うようになるのでしょうか。できることといえば、流通している砲台を設置する程度でございましょうが。本来の姿であれば、どれほどまでの戦力となっていたことか。AC程度では落とせぬほどの代物であることでしょうが、それもまた見ることなど叶わぬことでしょう。 「それは災難でしたな」 「天使がいないと湯すら浴びられないと来たか。俺の業も深まっているのかね」 そう言いながら、JNはあたしの向かいに座りこみました。 「で、誰とも乾杯せずに、こんな場所で寂しく飲んでいるのか? 詰め所にでも行けば、ジェニーとパトリオットあたりが飲んでいるだろうに。シーナちゃんが何か暖かいもんでも作ってるかもしれんぞ」 「あまり騒げるほどの余力もございませんでしたので」 「そうかい。ちょっともらうぞ」 と開いていたマグカップをとり、砂糖は入れずにラム酒をコーヒーにドボドボと注いでいかれます。あたしはヤカンを手にとって、JNのカップへとコーヒーを注いでいきます。 「おっと、どうも。さて、今日の襲撃だが、どう思う? 」 「あたしのような老いぼれに聞いたところで、何もではしませんがね。第一、こちらの情勢にもよくわかっておりません。バンガードやらも、ただの飯の種に過ぎません」 ヤカンにインスタントコーヒーとボトルに入った水を注ぎ入れながら、応えました。タワーも無いところで何をもめているかも知りませんが、傭兵にとってはただの飯の種でございます。 「そうかい。そのバンガードだが、UNACを運用しだしたのはつい最近のようでね。そうなると、今日の襲撃はUNACの試用といったところじゃないかと睨んでいる。物量作戦型といっても、流石にあの動きは無いだろう? 」 「そうでございましょうね。連携はとれているように思えましたが、単に一つの標的に群がっていくだけでございましょう。集団による各個撃破であれば格好がつきましたがね」 「だろう? 」 「その話は、パトリオット・チャリオットには? 」 「もうした、渋い顔してたな。もう少しはましな性能になっていれば、被害がこんなもんで済む訳がない。次くるときは、その程度には調整がされているかもしれないな。ジェノサイドジェニーは、何が来たって潰すって頼もしいこと言ってたが、相変わらずおっかねえぇ女だ」 「そうでございましょうね」 一度前の襲撃では、今日よりも敵機の数は少なかったのですが、あたしは愛機を大きく破損しております。前よりも多くの数をさばいたというのに、眼前にはデッキに鎮座する愛機がおりますが、損傷は随分とおさえられました。とはいえ、今日の襲撃でも、歩兵やMT操縦士に死者は出ております。対してバンガード側はUNACを大量に失っただけで、死者はほとんど出ていませんでしょう。としても、どの陣営から見ても、あのような無謀な運用をするものでございましょうか。それとも、これほどの余力があるというアピールでございましょうか。 「そうなると、試用でも、あれだけの数の機体を使い捨てにできるほどの規模ということでございますか」 「そうらしいな。おかげでこっちは、ジャンク品の山が手に入った。あれのパーツでいいなら、当分は修理は困らないな。さて、何年か前に、クーデターがあったらしい。そのときにできたのがバンガードだそうだ。そのおまけに、この領域で各地の勢力に分かれて群雄割拠の紛争だとさ」 「革命がおきたとは小耳に挟んでおりましたが、どこも変わりませんな」 「ああ、俺もあっちこっち歩いてきたが、どこも同じだ。UNACなんて代物が出てきたが、当分は俺たちの飯の種は無くなりそうにない。先はわからん。戦争なんて全部人形がやるようになるかもな。そんな戦争なんてシャンパンのないパーティーみたいなもんで、する意味あるのかわからんがな」 そして、JNはコーヒーをすすろうとして、何かに気がついたのか小さくマグカップを掲げました。あたしも小さく持ち上げました。単なる小さな乾杯でございます。 しかし、UNACや他の無人機が全ての戦争を行い出すなら、兵士は不要となるのでしょう。人も死ななくなるかもしれません。人が決して死ぬことがない戦場が生まれ出すのでございましょう。 「冷えるときっは、やっぱり、燃料いれるのが一番だな。水まで浴びて凍えちまった」 「冷えるなら、このような場所まで来られる必要もありませんよ。老いぼれが燃料入りのコーヒー飲んでいるだけでございます」 「それだがな。人形の話はついでで、単に、兵士が乗っていた機体が撤退したときのことだ。弾切れっていうのは嘘だろ? 」 JNがこちらを水に、コーヒーの水面を覗き込むように視線を落としております。 「さて、どうでしたかね」 「ふーん。別に、責めるわけでない。俺も、要らん殺しはしたくない。ただ、殺すだけなら獣さ。そもそも、第二陣で指揮官が前に出てきたときは舌打ちしたほどさ。ただのUNAC試用で、戦果を求めて前に出てくるなってな。結果は見えていたし、両腕を破壊されてからようやくあきらめて撤退しだしたのも遅すぎる。名前も知らないが、あれはただの無謀ってもんだ。だから、あんたがバックスタブとばかりに構えたときは、少しばかり不満があったが……結局は撃たずじまいだろう? 」 そこまで言って、JNはコーヒーを一口すすりました。 「それに、弾薬だけ補給したそうだが、整備の連中は残弾があったと言っている。そもそも、弾切れの代物なんて置いていけばいいものを、わざわざ背負ってくるとも思えん。あんたが、そんな馬鹿するほど耄碌しても居ないだろう? 」 「はて。そういえば残りがあったかもしれませんな。なにぶん、この歳ですので、些細な間違いはあるものでございましょう」 「案外に、食えないじいさんだな。責めているわけでもないのに、何を渋っている? 無闇な殺しをしたくないのは同じかと思ったんだがな」 確かに、無闇な殺生は好まぬところでございます。ですが、JNとは少々勝手が異なりますかな。 「では、一つ聞きましょうか。あなたさんは何故、無闇に殺さないのです? 通信で語りかけていたのは挑発ではなく、あきらめさせて退かせようとしていたように見受けられますが? 」 「まぁな。死ぬのは年寄りの仕事だと思っている。ただ、まぁ、それだけだ。それに、無闇に殺し回ってばかりじゃ、最後には敵しかいなくなる。無敵のヒーローなら負けないが、あいにく、俺は天使が逃げちまったんでね」 「左様でございますか。あたしは、そんな大層なものではございません。あたしゃ、ただの臆病者でございます。いくら言葉を重ねようと、臆病者でございます。本当に退くまでは向かってきていると見ます。そぶり程度では信じられません。向かってくるなら斬る、退くなら追わない。それだけでございます」 そう、そんな臆病者が幾年も戦い続け、死にきれなかっただけでございます。 「そうか。ある意味、シンプルだよな。向かってくるなら『敵』。逃げるならそうじゃないか。一度でも引き金を引けば、敵を作らないなんて無理なのはわかっているが、それでも、ただ殺して、恨まれて、首が回らなくなるわけにもいかなくてね。いるだろ? そういう駆け引き」 「左様でございますか」 これは何事にも言えることでございますが、傭兵は立ち回りがうまくなければ飯にありつけぬものでございます。死ねば、ただの無駄死になるだけでございます。恨みや義憤を晴らすためならば、傭兵などにはならない方がよろしいでしょう。あたし達は、雇われて戦うだけでございます。正義もその都度に変わります。 「ま、それでも、弾がなかったなんて、いらん言い訳はいらんだろうよ」 「そこに戻りますか。そうですな、こちらで決めますか? JNが当たれば言いましょう。当たらなければ、コーヒーを飲んで仕舞いでございます」 とあたしは、道具が一式入っている工具箱から、一枚の古ぼけたコインを取り出しました。表には天使、裏には悪魔が描かれております。硬貨ではなさそうでございますが、どこで拾ったのかも忘れた代物でございます。もしかすると、なにかのゲームコインかもしれませぬが、何かもわからない代物でございます。よくわからない言うなら、あたしも似たようなものでございますが。 カンテラの明かりで照らし両面をJNへと見せ、握った拳の親指へと乗せました。 「当然、悪魔だ」 「では」 そう言いまして、あたしゃ、親指でコインを跳ね上げました。乾いて高い音が響いて、コインは暗闇へと吸い込まれるように飛んでいき、そのまま落ちてくる音などしませんでした。デッキの下へと落ちていったでしょう。 「……おい」 「おやおや、手元が狂ったようでございます。飲み過ぎましたかな? どちらかなのかもわかりませんね。当たりませんでしたので、コーヒーを飲んで仕舞いでございます」 「態とだろ? だからって、詐欺じゃねぇか。どっちが出たかもわからないから、当たらなかった? とんだ詭弁だ」 「まともに勝負したら、運のないあたしが負けますんで」 「俺にも運はないさ。たく、やっぱり天使なんていやしねぇ。ここにも居るわけなかったか。見つけたら教えてくれ、投網でも使って生け捕りにしてやるからよ」 とJNはコーヒーを一気に飲み干されて、立ち上がりました。 「今度の仕事の後の一杯は、俺がおごらせてもらう。あとな、JNじゃない。本当は、ジャイ・イェンだ。ま、昔、そう呼ばれていたのを思い出して名乗ったら、聞き間違えられてな」 「そうでございましたか。酒の席での話でございますが、覚えておきましょうか」 「そういえば、あんたは? あんたの名前も、借り物だってきいたが? 」 「さて、アンドルーと名乗らせていただいておりますが、元は何と名乗っていたのかも忘れました。どこの戦場に落としてきたのかも覚えがありません」 「そうか。やっぱり、案外に、くえねぇじいさんだ」 「ふふ」 そして、JN。いえ、ジャイ・イェンは寒い寒いとぼやきながら、マザーの中へと入っていきました。残りのコーヒーをマグカップに入れ、今度は何もいれぬまま口につけました。ガスコンロの火も落としました。今も、マザーの眼下では復旧作業が続いております。次の襲撃に備えてのことでございます。次の襲撃では、当然、あたしも戦うでしょう。 戦い初めて、戦い続けて、今度こそは戦い終わるかもしれません。 生き延びるために戦い続けたわけではなく、全てを忘れようと戦い続け、全てを忘れたままに命を閉ざしてしまいたいと願って戦い続けておりました。もはや、戦場に望むは勝利でも報酬でも感傷でもなく、ただ、自らの死だけでございましょう。戦場に足を踏み入れ、戦場で生き抜いてきたのだから、戦場で終わりたいと、ただ、そう願っております。殺されるなら人が乗った機体などと贅沢も願いません。心通わず、魂のない人形ですら構いません。 ですが、近いうちには、思うように動かなくなりつつ体では、もしかすると、それすらも叶わぬ願いかもしれません。欲したものは、全て例外なく失ってきましたので、その願いすら、あたしには叶わぬのかもしれません。何とも因果なものでございましょうか。人は、望む故に叶わぬものなのでございましょうか。 ここは戦場でございます。 人が死ぬものでございます。 あたしは、そう信じて戦ってきました。 それだけは忘れぬように戦ってきました。 ですが、そう信じている人間が、なかなか死なないのは、不思議なものでございます。 死すらない戦場に、あたしは何を求めていくのでございましょうか。 翌朝、何気なくマザーの足下を歩いておりますと、何かきらりと光るものがございまして、何かと思って眺めてみますと、悪魔が空を眺めておりました。 fin. 登場人物 アンドルー JN パトリオット・チャリオット ジェノサイドジェニー 投稿者:ug 登録タグ:ug 小説 読み切り
https://w.atwiki.jp/kitakoutarou/pages/70.html
マミ「大丈夫!? しっかりして!」 ???「あ……。うぁ……」 その日、キュゥべえと契約した魔法少女・巴マミは1人の少年を助けていた―― 魔女の呪いによって引き起こされた交通事故。それに、目の前にいる少年は巻き込まれた。 ――いや、正確に言うと巻き込まれたのは、彼とその家族だった。 マミが魔女の気配を察知し、現場へ駆けつけた頃には時すでに遅しという状況だったのである。 だから、マミは目の前にいる少年だけでも――助けられる者だけでも助けたかった。 すでに事故現場には多くの野次馬が集まってきている。 そのため、さすがのマミもこんな所で堂々と魔法を使うことはできない。 周囲の人目を気にしながら、周りにいる者達から気付かれぬよう少年に――本当に微々たるものだが――治癒魔法を施していくマミ。 すでに時が夜で辺りも暗かったため、マミの魔法少女としての姿及び彼女が少年に施している魔法に野次馬たちが誰1人気がつなかったことが幸いだった。 マミ「お願い……! 死なないで……!」 ???「……と……とも、え……」 マミ「!?」 突然、目の前にいる少年の口から自身の名が出たため、思わず一瞬手を止めてしまうマミ。 そして、その瞬間になって、やっと彼女は今自身が助けようとしている少年の顔を確認することができた。 マミ「ま、まさか……」 ???「お、俺……死に、たく……ない……!」 マミ「……葦川……くん……?」 マミ「…………」 朝の日差しに誘われるかのように巴マミは目を覚ました。 マミ「…………」 何も言わずベッドから起き上がる。 そして、自身の枕元に置かれていたソウルジェムにちらりと視線を向けた。 マミ「……そういえば、あれからもう一月くらいになるのね……」 魔法少女まどか☆マギカ AGITΩ ~最初で最後の約束~ 第2話「変身!」 OP http //www.youtube.com/watch?v=yEXxEny2BvY マミ「…………」 翔一「巴さん、おはようございます!」 マミ「…………」 翔一「……アレ? 巴さん?」 マミ「……あっ!? お、おはよう、沢野くん」 翔一「なんか調子悪そうですね……。寝不足ですか?」 マミ「ううん。違うの……。今朝のことなんだけど、ちょっと夢を見てね……」 翔一「夢……ですか?」 マミ「えぇ。それも、今から1ヶ月くらい前の出来事をね……」 そう言うと、マミは翔一に当時のことを語り始めた。 マミ「今沢野くんが座っている席に本来座っていた子――葦川涼くんっていうんだけどね……」 翔一「葦川さん……ですか?」 マミ「彼、今から一月ほど前に、ご両親と信号待ちをしていたところで自動車同士の衝突事故に巻き込まれたの……」 翔一「…………」 マミ「私は事故が起きた後にそこに居合わせたんだけど……。私が来た時には、すでに彼のご両親は亡くなってたわ……」 翔一「…………」 マミ「葦川くんは何とか一命は取り留めたけど、水泳部の最後の夏の大会にも結局出場できなくなって……」 翔一「わかりました! それじゃあ、今日の放課後、俺と巴さんでその葦川さんのお見舞いにいきましょう!」 マミ「えっ?」 いきなり席から立ち上がり、そのような提案を持ち出した翔一にマミは一瞬目を点にしてしまう。 そんなマミにはお構いなしで、翔一はマミの方にぐいっと顔を近づけ、話を続ける。 翔一「巴さんの話から察するに、葦川さんは今、病院に入院しているってことですよね?」 マミ「え、えぇ……」 翔一「それなら、なおさらお見舞いに行ってあげましょう! 葦川さん、きっとご両親が亡くなって毎日1人寂しい思いをしているに違いありません!」 マミ「あ……」 翔一「? 巴さん、どうしました?」 マミ「…………」 突然、マミは何かに気がついたような表情を浮かべると、そのまま黙りこくってしまう。 翔一「あの……。巴さん?」 マミ「あ……。そ、そうね。あまり大勢で行くと、かえって迷惑になっちゃうでしょうから、2人で行きましょうか?」 翔一「はい!」 マミ「…………」 街外れの病院。 葦川涼はそこに入院していた。 自身と両親が巻き込まれた自動車事故からすでに一月ほどの時が流れ、涼の身体は徐々に入院前の健康な状態へと戻りつつある。 ――だが、あの事故で涼は全てを失ったと言っても過言ではなかった。 外見こそ元に戻っても、中身の方は未だに多くの傷痕を残しているのだ。 ???「葦川先輩」 涼が廊下を歩いていると、不意に誰かに呼び止められる。 振り返ると、そこには車椅子に乗った自身と同年代の少年がいた。 涼「ん? ……あぁ、上條か。お前もこれからリハビリか?」 恭介「はい。先輩は今終わったところですか?」 上條恭介。涼が入院した数日後に事故で病院に搬送された少年だ。 見滝原中学の2年生で、涼からすれば1学年下の後輩ということになる。 ヴァイオリニストとして将来を有望視されていたらしいが、事故によって左手が不随になってしまった、と涼は彼の担当の看護師から聞いたことがあった。 涼「あぁ。……そういえば上條、今日はあの女の子は見舞いに来てないのか? 幼なじみっていう……」 恭介「さやかですか? いえ、残念ながら今日は……」 涼「そうか……」 恭介「……先輩、近いうちに退院できるかもしれないって聞きましたけど、本当ですか?」 涼「あぁ。ただ、退院できたとしても、当分の間は水泳をはじめとして激しい運動は出来そうにないけどな」 恭介「……正直、僕は先輩が羨ましいです」 涼「上條?」 突然、場の空気が一気に重くなったのを涼は感じた。 恭介「先輩は復帰すればまた水泳を続けられますけど、僕の左腕は……」 涼「…………」 自身の左手を見て暗い表情を浮かべる恭介。 そんな彼の姿を見た涼は、無意識的に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてしまう。 恭介「……あ。ごめんなさい。辛気臭いこと言ってしまって……」 涼「俺は……むしろ上條の方が羨ましいと思うよ……」 恭介「えっ!?」 涼「上條にはまだ心配してくれる家族や、見舞いに来てくれる奴がいる。それに比べて俺には……」 恭介「先輩……」 涼「……あ。スマン、俺の方こそ辛気臭いこと言っちまったな。忘れてくれ」 恭介「い、いえ! 元はといえば、先にあんなこと言った僕が悪かったんです」 涼「じゃあ……おあいこってことで、いいか?」 恭介「はい」 そう言って苦笑いを浮かべ合う両者。 ここ数日、この2人が偶然病院内で出会った際に交わす会話のやりとりは大体いつもこんな感じであった。 ――言ってしまえば、それだけ2人とも精神面に負った負担は外傷よりも大きいということである。 涼「……おっと、いつまでもこんな所で長話も何だな。それじゃあ上條、お前も頑張れよ」 上條「はい。先輩も」 涼「……ん?」 自身の病室の前まで戻ってきた涼は、扉越しに部屋の中から人の声を耳にした。 その声は、もう聞き慣れた自身の担当医や看護師の声とは明らかに違っていた。 ???「それじゃあ、沢野くん。花瓶にお水よろしくね」 ???「ハイ! 任せてください!」 涼「……誰か来ているのか?」 病室の引き扉に手をかけ、少し強目にそれを開く涼。 すると、扉の先には見慣れない同年代の少年の顔があった。 翔一「あ……!」 涼「ん……?」 視線を合わせたままその場でピタリと静止する2人。 数秒ほど病室がシンと静まり返るが、病室にいたもう1人の声で、その沈黙は破られることになる。 マミ「葦川くん……!」 涼「!? 巴……」 涼「そうか、転校生か。俺が休んでいる間もクラスではいろいろとあったみたいだな」 ベットに横になりながら、涼はお見舞いに来てくれたクラスメイト――巴マミと何日ぶりになるかもわからない談笑を楽しんでいた。 事故以来、涼がほんの一瞬でも笑顔を見せたのは本当に数えきれないほどしかない。 それだけに、今回のマミたちの突然の訪問は、彼にとって心の底から嬉しいといえるものであった。 マミ「えぇ。クラスの皆も、葦川くんがまた元気な姿を見せてくれる日を待っているわ」 涼「クラスの皆……か……」 だが、突然涼は再びどこか悲しそうな表情を浮かべる。 マミ「葦川くん?」 涼「巴、これ覚えてるか?」 マミ「これって……葦川くんが入院した次の日にクラスの皆で書いた寄せ書き……」 涼「そこに書かれている内容に一度ひと通り目を通してもらえるか?」 手渡された色紙に、言われたとおり目を通していくマミ。 そして、ある程度目を通したところで、彼女はあることに気づく。 マミ「……これって」 涼「そう……。ほとんどの奴が『早く良くなってください』とか『また一緒に勉強しましょう』とか綺麗事のように同じ内容の文ばっか書き並べてる……」 マミ「葦川くん……」 涼「最初、先生が見舞いも兼ねてそれを持って来てくれた時は嬉しかったよ。だけど、日が経つにつれて逆に虚しく感じるようになった……」 マミ「…………」 涼「結局は、俺の存在なんてその程度のもんだったってことさ……。現に、今までクラスの奴は誰1人として見舞いになんて来てくれなかった……!」 マミ「……ごめんなさい」 涼「あ……。いや、別に攻めているわけじゃないんだ。誤解させてしまったみたいで、スマン」 マミ「いえ……」 涼「……むしろ、巴には感謝しても足りないくらいだ」 マミ「えっ?」 涼「俺の勘違いかもしれないけど……。あの時、巴が俺を助けてくれていなかったら、今頃俺は死んでいたかもしれないって思うんだ」 マミ「…………」 涼の言っていることもあながち間違いではなかった。 事故当時、彼の身体は本当に酷い有様だった。 大量に出血し、手や足は見るからにあらぬ方向へとひん曲がり、まさに「瀕死」「死に体」などという言葉どおりの状況であった。 マミですら最初は無意識下で「こんな状態でよく生きていられるものだ」と思ってしまったほどである。 微々たるものとはいえ、マミが治癒魔法を施していなければ、涼の言うとおり今頃は彼もすでにこの世に存在していなかったかもしれない。 マミ「……そんなことないわ。葦川くんが今こうして生きているのは、葦川くんの生きたいって思いが誰よりも強かったからよ」 涼「……そうかな?」 マミ「うん」 涼「……巴が言うならそうなのかもな……」 涼がそう言い終わるのとほぼ同時に、病室の扉が再び開いた。 花瓶に水を入れに行った翔一が戻ってきたのだ。 翔一「は~い! 花瓶にお水入れて来ました~!」 マミ「あっ。ご苦労様」 翔一「いや~、この病院、想像以上に中も広いんですね。迷いそうになっちゃいましたよ。花瓶は窓のあたりに置いておけばいいですかね?」 涼「あ、あぁ……」 翔一「わかりました! ……あ、そうだ。葦川さんってリンゴはお好きですか?」 涼「は? い、いや、別に嫌いじゃないが……」 翔一「そうですか! 実は来る途中に買ってきたんです! 今皮を剥いて食べやすいサイズに切りますから待っていてください!」 涼「……元気な奴だな」 マミ「えぇ。むしろ元気というより純粋って言ったほうがいいのかしら……?」 翔一「やっぱり、お見舞いでリンゴといえばウサギさんの形に切ったやつですよね~」 ―――キィン! キィィィン! 翔一「!?」 涼「!?」 キィン! キィン! キィィィン! 翔一「…………」 急に頭の中で何か違和感のようなものを覚えた翔一は、リンゴの皮を剥いていた手をピタリと止めてしまう。 マミ「? 沢野くん、どうし……」 涼「ぐ……がぁあああああ!!」 マミ「!? 葦川くん!?」 翔一「だ、大丈夫ですか!?」 涼「う、ぐあああああ……!!」 突然苦しみ始め、ベッドの上でのたうち回る涼。 その時、マミはふと自身の左手中指にはめられていた指輪――正確には指輪に形を変えている彼女のソウルジェム――に目がいった。 マミ(強い魔力の反応!? まさか近くに魔女が……!?) マミは再び涼の方へと眼を向ける。 マミ(――『魔女の口づけ』がない!?) 魔女の呪いにかかった人間は、身体の目立つ部位――主に首もとなど――に『魔女の口づけ』と呼ばれるタトゥーのような紋章が浮かび上がる。 マミは当初、涼が苦しんでいる原因は魔女の呪いによるものと思ったが、見た限り彼の身体には『魔女の口づけ』は見られなかった。 マミ(魔女の呪いによるものじゃない? いったいどういうこと? いや、今はそれよりも……) 翔一「巴さん、俺先生や看護師さん呼びますね!」 マミ「えぇ、お願い!」 そう言い残すと、マミは病室の外へ出る。 マミ「間違いない……。近くに魔女がいる……!」 ソウルジェムを指輪から本来の形へと戻し、それを手にすると、マミは病院の廊下を駆け出した。 マミ「……見つけた!」 ソウルジェムが指し示す魔力の反応を頼りにマミが病院の外に出ると、人目の付きにくい物陰に空間の歪みのような現象が発生していた。 魔女の結界が侵食している証である。 マミ「――!」 周囲に人目がないことを確認すると、マミはソウルジェムをかざす。 すると、マミの身体はソウルジェムから発せられた黄色い光に包まれ、次の瞬間には彼女の服装は、制服から魔法少女の装束へと変わった。 空間の歪みに若干のブレが生まれる。 おそらく、結界内の魔女がマミの魔力を感じ取ったのだろう。 大抵の魔女は、この後、結界ごとその場から逃走を図るが―― マミ「逃しはしないわ!」 マミは早かった。 瞬時に歪みとの距離を詰めると、そこに向かって手を伸ばし、やがて触れる。 すると、マミのソウルジェムがほんの一瞬輝き、空間の歪みを大きな紋章のようなものに変えた。 魔女の結界へと繋がる、一種のゲートが出来上がったのだ。 マミ「――!」 何も言わず、その紋章へと飛び込むマミ。 紋章の先に広がっていたのは当然、魔女の結界――ファンシーともメルヘンとも神秘的とも感じられるが、どこか精神的に嫌悪感や不快感を催す世界だ。 翔一「…………」 翔一は今、病院の廊下で何もせず1人ただその場でつっ立っていた。 あの後、病室へとやって来た医者や看護師たちの邪魔にならないようにと自ら病室を出たはいいが、自身のやるべきことがなくなってしまったからだ。 翔一「う~ん、本当にどうしようかな……。巴さんも気がついたらどっか行っちゃってるし……」 ???「……こんな所で、本当に何もしないでいていいの?」 翔一「えっ?」 不意に声をかけられる翔一。 声のした方へ目を向けると、そこには翔一と同年代の女の子が1人立っていた。 その女の子を一言で言い表すならば『黒』―― 腰のあたりまでまっすぐ伸ばされた髪の色も、瞳の色も、そして彼女から感じる雰囲気も、まさに黒一色であった。 翔一「君は……」 ???「あなただって気づいているはず。あなたたちがさっき感じたものの原因が、人間にとって、そしてあなたたちにとって脅威であるということに――」 翔一「…………」 ???「すでに巴マミは動いている。あなたはどうするの? この世界のアギト」 翔一「!!」 ???「あなたが本当に人間を救いたいと願っているのなら、その力はあなた自身の手で完全に制御することができるはずよ」 翔一「…………!」 翔一は少女に何も言い返すことなく、その場から駆け出した。 そして、そこには少女だけが残る。 ???「……本当に彼で大丈夫なの、斗真?」 1人残された少女――暁美ほむらは、誰に語りかけるわけでもなく、そのような言葉を呟いた。 翔一「これか……?」 病院を出た翔一は、人目のつかない物陰にひっそりと浮かぶ巨大な紋章を見つけると、その前に立った。 翔一「すぅぅぅぅぅ……」 翔一「はぁぁぁぁぁ……」 一度大きく息を吸い、そして吐く。 自分でも珍しく緊張しているな、と翔一は思った。 翔一「…………」 チラリと自身の手や足に目を向けると、微かに震えていた。 すでに何度か経験していることだというのに、何故今回に限って――などとは思わない。 当然だ。 今まで『コレ』は無意識下でやっていたこと――自身にとっては眠っているときに見る夢のようなものだった。 ――だが、今回は違う。 初めて明確な自分の意志のもとで『コレ』を行うのだ。 誰のためでもなく、かといって自分のためでもない―― ただ、“自分はアギトだから”―― それだけのこと、ただそれだけのこと故に沢野翔一は―― 翔一「――!」 ――素早く動かされる翔一の腕が、文字どおり空を切る音が周囲に響き渡る。 まず最初に、左腕を腰の横に引き、同時に右腕を左脇腹の腰のあたりへと伸ばす―― 直後、今度は伸ばした右腕を曲げて、右手は親指と人差し指と中指のみ真っ直ぐ伸ばしている状態で顔の正面へ持っていく。 そして、一呼吸置いた後、その右手をゆっくり前に出しながら徐々に右腕を伸ばす。 その動作は、どことなく人間が神に対して祈りを捧げているかのようにも見える。 ――ちなみに、ここまでの動作にかかった時間は5秒にも満たない。 やがて、右腕を伸ばしきったところで、翔一は両目をかっと見開く。 そして、高らかに、まるでその世界にいる自身を含む全ての存在に対して神に変わって代弁するかのごとく『ソレ』を宣言した―― 翔一「変身!」 その言葉と同時に、最初に引いた状態のままだった左手も真っ直ぐ前へと伸ばされる。 その際、右手同様、指は親指と人差し指と中指のみ真っ直ぐ伸ばすのを忘れない。 やがて、伸ばされた両腕は、右腕が上、左腕が下になる形で交差する。 そして、交差した両腕はそのままの状態で下ろされ、腰のあたりの高さに来たところで止まる。 すると、丁度両腕が交差している場所の近く――翔一のへそから上のあたりに、光が渦を巻いて溢れ出した。 光に包まれる翔一。 その光は、ほんの一瞬で消えてしまうが、光が消えたとき、そこには翔一の姿はなかった。 あるのは、禍々しい姿でありながらも、どこか神々しさも併せ持った黄金の異形――『アギト』の姿だけだ。 ――『変身』は完了した。 アギト「…………!」 自身の変身が無事に完了したことを感じ取ると、アギトは右腕を曲げて肘を前にかざし、左腕を腰の横に引きながら両膝を僅かに曲げて重心をやや下に落とす。 それは、自身の変身を周囲の存在に知らしめると同時に、戦闘態勢に入ったことを宣言するかのようであった。 マミ「見つけた……」 その頃、魔女の結界内では、すでにマミが最深部へと到達していた。 彼女の目の前には、この結界の主である魔女がその姿を堂々と晒している。 ――その魔女の姿を、言葉で表現するならば、『星』だった。 よく絵などで書かれる、俗にいう“星型”と呼ばれる形をした巨大な存在が、現在マミの目の前にいる。 ただ、その色は、星のように神秘的で美しいものではなく、極彩色で禍々しいものだったが―― マミ「…………」 しかし、マミたち魔法少女にとって、相手の姿や色など関係ない。 魔女である以上、倒す――それだけだ。 マミはまず、スカートを若干たくし上げた。 すると、そこから数丁のマスケット銃が姿を現し、彼女の足元周辺に突き刺さった。 マミは突き刺さったマスケット銃のうちの1丁を手に取ると、すぐさまその銃口を魔女へと向け、引き金を引いた。 放たれたマミの魔力によって作られた銃弾は、魔女の身体のど真ん中を撃ち抜く。 ――手応えはあった。 だが、マミはこの程度で仕留めたとは思わない。 すぐに撃ち終わったマスケット銃を後方へ投げ捨てると、足元に突き刺さっている別の1丁をその手に取る。 マミ(さて、向こうはどんなアクションを起こしてくるか……) 再び銃口を魔女に向けるマミ。 ――それに対して、魔女は予想外な行動で応戦してきた。 マミ「えっ!?」 ――自らバラバラに砕けたのである。 正確に言うと、先ほどマミによって開けられた風穴を中心に、魔女の身体全体にいきなり亀裂がはしり、次の瞬間にはそうなったのだ。 一瞬、まさか本当に倒してしまったのか、とも思ってしまったマミだが、すぐにその考えは撤回する。 ――砕けた魔女の破片が、みるみるうちに形を変え、やがてそのひとつひとつが小型の星型魔女となったからだ。 マミ「……なるほど、星じゃなくてヒトデだったってワケね……」 表面上は未だ余裕しゃくしゃくとばかりに笑みを浮かべるマミであったが、内心では面倒なことになったわねと愚痴を漏らす。 無数の星型魔女もといヒトデ魔女たちが一斉にマミに襲いかかる。 しかし、マミはそれに対して焦りを見せることなく、右手をばっと前に突き出した。 すると、彼女の周辺から黄色い糸のようなものが大量に伸び、瞬時にそのひとつひとつが絡み合って、一枚の大きな黄色い布地となる。 それは、普段マミが相手の動きを封じるために用いている拘束魔法を応用して、突発的に編み出した簡易防御壁であった。 無数のヒトデ魔女たちは、次々とその防御壁に引っかかり動きを止めていくが、さすがに正面に壁を作るだけでは全てのヒトデ魔女の動きを止めることは出来ない。 すぐさま数十体ほどのヒトデ魔女が防御壁を迂回する形でマミの目の前に姿を現した。 それに対してマミは、その内の1体に対してマスケット銃を撃ち、その1体を撃ちぬくと、残りは撃ち終わったマスケット銃の銃身で叩き落とす。 時には己の足による蹴りや踏みつけもお見舞いした。 ――順調にヒトデ魔女たちを倒していくマミであったが、さすがに数の暴力の前では徐々に旗色が悪くなってくる。 マミ「いくら何でも、数が多すぎるっ……!」 ついには、そのような愚痴を思わず口からこぼしてしまった。 マミ(せめて、こいつらの行動パターンさえわかれば、何か糸口が掴めるかもしれないけど……!) ――彼女のその願いは、意外にもすぐに叶えられることになる。 ドオォォォォォン! ――突如、マミたちのいた最深部のフロアに轟音と共に土煙が巻き起こった。 命がけの戦闘中でありながらも、マミの目は思わず轟音の発信源へと向いてしまう。 だが、不思議なことに、その時は魔女たちの動きもピタリと止まっていた。 やがて、土煙が晴れていくと、そこには―― Believe Yourself ttp //www.youtube.com/watch?v=ANEt7s6bu6Q feature=related アギト「…………」 マミ「アギト!?」 思わずその名を叫んでしまうマミ。 アギト――キュゥべえ曰く『神から力を授けられた存在』。人間を遥かに超越した力を持つ黄金の異形―― それが三度目マミの前に姿を現したのである。 アギト「…………」 マミ「!?」 自身の名を呼ばれたアギトとマミの目が合う。 思わずビクリとしてしまうマミであったが、それに対してアギトは何の反応も示さず、ただマミの姿をじっと見つめていた。 しばしの間――といっても、厳密には数秒程度――お互いの視線を向け合っていた両者だったが、再びヒトデ魔女たちが一斉に活動を開始すると、マミとアギトはそれぞれヒトデ魔女へと目を向ける。 マミ「言葉が通じるか分からないけど、一応尋ねるわ! あなたは一体何者なの!? 敵なの!? それとも味方なの!?」 アギト「…………」 自分たちに襲いかかるヒトデ魔女たちをあしらいながら、マミはアギトに向かって叫ぶ。 が、やはりアギトはマミの問いかけに対して返答をするような仕草は見せない。 まるで、言葉が通じないというよりは、目の前の戦いに集中し切っている、もしくはマミと話す舌は持たないと言わんばかりに―― マミ「…………!」 そんなアギトに対して一瞬苛立ちを覚えるマミであったが、すぐさま目の前の敵に集中する。 マミは再びマスケット銃を構えると、群れの中の1体を撃とうとその銃口をヒトデ魔女たちに向ける。 ――だが、マミが引き金を引こうとするより前に、アギトが右手でマスケット銃の銃身をむんずと掴み無理やり銃を下ろさせてしまう。 マミ「!? な、何するの!?」 何故邪魔をするのかと思いながら、アギトの方へ目を向けると、アギトは左手である一点を指さしていた。 マミ「えっ?」 マミがアギトの指し示す方へと視線を向けていくと、そこには群れに紛れて1体だけ若干違う動きをしているヒトデ魔女の姿があった。 マミ「まさか……!」 瞬間、マミは悟った。 この魔女は、本体とそれを守護する無数の偽物たちで構成されている一種の『群体』であるということに。 偽物たちに襲いかからせることによって、相手の注意をそちらに向けさせ、本体はその存在を隠していたのだ。 そして、先程アギトが自身の呼びかけに何の反応も示していなかったのは、その本体を探すことに集中していたからであることも―― マミ「……なるほど、木を隠すなら森の中ということね!」 そう言いながら、マスケット銃を構え直すマミ。 手品のタネさえわかってしまえばこっちのものである。 対してヒトデ魔女――正確にはヒトデ魔女を護る偽物――たちは本体を護るために、一斉にマミに襲いかからんと迫る。 だが、そんな魔女モドキたちの前にアギトが立ちはだかった。 アギト「――!」 次々と魔女モドキたちに拳と蹴りを放つアギト。 その腕や足がひとつ振られる毎に、二桁近くの魔女モドキが叩き落とされたり、吹っ飛ばされていく。 ――マミがマスケット銃の引き金を引いた。 放たれた弾丸は、真っ直ぐ本体であるヒトデ魔女へと飛んでいく。 だが、本体を守ろうと、魔女モドキたちがその軌道上にわらわらと集まってくる。 ――しかし、それがマミの狙いだった。 マミ「残念だったわね」 不敵な笑みを浮かべるマミ。 それと同時に、放たれた魔力の弾丸はポンと音をたてて弾け、先ほどの防御壁を形成したものと同じ黄色い魔力の糸を周囲に飛び散らせた。 やがて、魔力の糸はそれぞれが絡みあうと、今度は黄色い巨大な網となり、ヒトデ魔女と魔女モドキたちをまとめて包み込んでしまう。 その光景は、さながら投網漁業のようであった。 敵の動きを完全に封じたことを確認すると、マミは自身の襟元に結ばれていたリボンを解いた。 そして、そのリボンに自身の魔力を流しこむ。 ――すると、リボンは一瞬にしてマミよりも一回りも二回りも大きい、巨大マスケット銃へと姿を変えた。 銃口をゆっくりと魔女たちの方に向け、しっかりと狙いを定めるマミ。 そして―― マミ「ティロ・フィナーレ!」 ティロ・フィナーレ――イタリア語で『最後の一撃』という意味の名を持つ射撃、否砲撃魔法が巨大マスケット銃から放たれた。 放たれた一撃は、まるでビームのように黄色い直線を描きながら、標的である魔女へと伸びていく。 やがて、それは魔女たちに直撃すると、フロア全体に轟音と振動を響き渡らせるほどの大爆発を巻き起こし、網の中の魔女たちをまとめて木っ端微塵に吹き飛ばした。 マミ「ふぅ……」 ほっと一息吐き、巨大マスケット銃へと姿が変わっていたリボンが元の姿に戻るのを確認すると、マミはそれを手早く襟元に結び直す。 そして、リボンを結び直すと、魔法少女としての姿から普段の制服姿へと戻る。 魔女の結界が消滅したのは、それとほぼ同時だった。 ポトリと、マミの近くに何かが落ちる音がした。 マミが目を向けると、そこには魔女の卵であるグリーフシードが転がっていた。 本来ならば危険な代物であるグリーフシードだが、魔法少女によって倒された魔女が落としたものはまだ完全には熟していない。 そのため、その熟していないことで生ずる空スペースを利用して、魔法少女たちは自身の魔力の回復を行うのだ。 魔法少女のソウルジェムは、魔法少女の証であると同時に、魔法に必要な魔力の源でもある。 そして、魔力が枯渇してくるとソウルジェムに濁りが生じる。この濁りをグリーフシードの空きスペースに移し替えるのが、魔力の回復だ。 その方法も、濁りがあるソウルジェムをグリーフシードに近づけるだけと至って簡単である。 早速、マミも自身の魔力の回復を行う。 そして、無事に濁りを移し終えた後グリーフシードの方を確認してみると、その色は濁りを移した影響から先程よりもドス黒く染まっていた。 マミ(さすがにこれ以上使うのは危険ね。今度キュゥべえに処分してもらいましょう……) そう思いながらソウルジェムを指輪の形へと変化させ自身の指にはめると、マミはここにきて重大なことを思い出した。 マミ「……あっ! そうだわ、アギトは!?」 マミは大慌てで周囲を見回すが、そこにはすでにアギトはおろか、自分以外誰の姿もなかった。 マミ「……もう……。何やっているのかしら、私……」 肝心なところでどこか抜けてしまっている自分自身に対して、マミははぁとため息を吐いた。 翔一「あっ! 巴さん、こんな所にいたんですか!」 マミ「!? あ……さ、沢野くん……」 翔一「もう。何も言わずに、いきなりいなくなるなんて酷いじゃないですか。いったい何処に行ってたんです?」 マミ「ご、ごめんなさい。……あの、葦川くんは?」 翔一「あぁ、葦川さんならもう大丈夫ですよ。あの後すぐに先生や看護師さんたちが来てくれましたから」 マミ「そう……」 それを聞いたマミはほっと胸をなで下ろした。 涼の様態が急変した原因は結局マミにはわからなかったが、それでも大事にはいたらなかったのは幸いである。 マミ(……でも、やっぱり魔女の呪いが関係していたのかしら?) 翔一「ささ、こんな所にいつまでもいるのも何ですから、早く葦川さんの病室に戻りましょう」 マミ「……えぇ」 病院内へと戻る途中、マミは一度足を止め、先ほどまで魔女の結界が存在していた場所にチラリと目を向けた。 マミ(……アギト、本当に何者なのかしら……?) とある家のとある一室―― そこには今、1人の少女がいた。 それは、先ほど病院で翔一に謎の言葉を投げかけ、かつ彼が『アギト』であることを知っていたあの『黒い少女』――暁美ほむらであった。 ほむらがいるその部屋は、広い反面、彼女が今座っている椅子とテーブル、そして、そのテーブルを挟む形で位置されている今は誰も座っていない椅子が1脚存在するのみという非常に質素な部屋であった。 また、部屋の床や壁、天井は一面白で統一されており、はっきり言って人間の視覚的にはあまりよろしくないデザインだ。 ???「…………」 ほむら「……来たわね」 自分以外の者の気配を感じたほむらは、ゆっくりと視線をもう1脚の椅子の方へ向ける。 すると、そこにはほむらに勝るとも劣らぬ黒一色な装いをした青年が椅子に腰掛けていた。 ほむら「……アギトに会ってきたわ」 ???「そうですか」 そう言いながら、その『黒い青年』はチラリとほむらの方を見やる。 青年のその黒く済んだ瞳は、「まだ何か言いたいことがあるはずでは?」と、ほむらに対して問いかけているようであった。 ――そんな青年の様子を見て、ほむらも再び口を開く。 ほむら「……でも、どういうこと? 沢野翔一以外の人間にも『アギト』の片鱗が見られたわ。あなたが“この世界”に授けてくれた『アギト』はひとつだけだったはず……」 ???「確かに、私があなた、そしてこの世界の人間のために授けた種はひとつ……。ですが、私も予期していなかった事実が判明してしまいました」 ほむら「……まさか……」 ???「はい。この世界には、“私の世界”に存在した『アギトであった者』の並行存在の他にも、『アギトとなってしまった者』の並行存在がいたということです」 ほむら「――!?」 ???「そして、その者が偶然にもこの世界のアギトと接触してしまったことによって、副産物的に秘められていた力を目覚めさせてしまった……」 ほむら「つまりそれって……」 ほむらが全てのことを口にするよりも先に、青年はゆっくりと頷く。 ほむら「……ギルス……!」 場所を再び病院へと戻す。 葦川涼の病室には現在、涼と巴マミ、そして沢野翔一の3人の姿があった。 マミ「……えっと……つまり、どういうこと?」 涼「先生が言うには、無理に身体を動かし過ぎたのが原因じゃないか、だそうだ。筋肉の発熱と痙攣が激しくなっているらしくて……」 翔一「それって、ただの筋肉痛とは違うんですか?」 涼「俺にも詳しくはわからない。ただ、俺の筋肉組織が今も膨張を続けていることだけは確からしい……」 マミ「…………」 涼「おかげで退院はもうしばらく先になりそうだが……。まぁ、過ぎてしまったことは仕方がないさ」 マミ「葦川くん……」 涼「そう心配そうな顔するなよ。別に命に関わる問題じゃないんだから。多分、俺の身体がもっと休みたがってるんだよ」 マミ「…………」 涼「巴、それと沢野、今日はありがとうな……。その、もしよかったら……すぐにとは言わないが、また見舞いに来てくれないか?」 翔一「はい! 俺なんかでよかったら!」 マミ「……えぇ」 翔一「それじゃあ、葦川さん、俺たち今日はこれで失礼します」 涼「あぁ」 涼「…………」 涼「……」 涼「……一体どうしちまったんだ、俺の身体は……?」 誰もいなくなった病室で、涼は自身の手をじっと見ながらポツリとそう呟いた。 次回予告 「俺、やっぱり魔法や超能力の存在信じることにしました」 「単刀直入にいうわ、沢野翔一。私に協力して欲しい」 「この世界にはね、人間に不幸をもたらす『魔女』と呼ばれる存在がいるの」 「ま、魔女……ですか?」 「な、何……? 誰なの、あなた……?」 「こんな所で死にたくなかったら、ソイツから離れなさい」 次回 第3話「私たちの相手は魔女じゃないわ」 目覚めろ、その魂! BACK 第1話 Next 第3話
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/11208.html
登録日:2010/12/12 Sun 01 09 04 更新日:2024/09/27 Fri 16 07 56NEW! 所要時間:約 8 分で読めます ▽タグ一覧 6 DR six アニメ化不可能 アニメ未登場 キューブリック ジェニュイン テラ テロリスト テロ組織 トラウマ ネタバレ ワカメざまあww ヴァイジャヤ 人類の敵 六 地震 定向進化 新しい血族 新人類 新種 最後の敵 水害 洪水 火災 犯罪者 犯罪集団 疫災 絶対悪 葛西善二郎 調教 魔人探偵脳噛ネウロ 「集え、『新しい血族』よ」 「新しい血族」とは、漫画『魔人探偵脳噛ネウロ』に登場する犯罪集団である。 ●目次 【概要】 【構成】◆首領 ◆五本指DR(ディーアール) テラ ヴァイジャヤ ジェニュイン 葛西善二郎 ◆その他 ◆協力者 【概要】 「シックス」を当主とする犯罪者の血族で、悪意を定向進化させた新種の生物たち。 ただし、自らが『血族』であることを自覚する者は少ない。 人間を遥かに超えた悪意と強靭な肉体を持っており、電子ドラッグの効果もほとんど受けない。 さらに一部の血族は悪意の定向進化の過程で人智を越えた特殊能力も備えており、この能力で普通の人間には不可能な大規模テロを行う。 シックス及び五本指の能力は五行+空気がモチーフとなっている。 「『新しい血族』なんて奴ら…本当に存在するのか?」 …というのは方便で、実際のところ本当に新種と言えるのはシックスただ一人で、それ以外の「新しい血族」は 突出して優れた才能故に他者や社会と隔たりがあるだけの人間たち。 シックスの悪意に魅了・洗脳され、自分たちはシックス同様に人間ではない悪意による新種だと思い込んでいる人間の集団に過ぎない。 アニメでは放送期間や尺の関係で登場しないまま終了。 やる事がエグすぎるのでアニメ化されても規制を喰らったかもしれない…。 【構成】 ◆首領 シックス 新しい血族の当主。個別項目参照。 対応属性は「金」 XI(イレブン) 怪盗Xの正体で「シックス」のクローン。女の子。17歳。 怪盗Xが持っていた類い稀な観察能力を究極レベルまで強化された。 これにより人の記憶を読み、ネウロでも見抜けないほど精巧な変身を行える。 弥子の記憶を読み、ネウロやアヤ、デイビッド、あの至郎田シェフにも変身した。 少年時代の「シックス」に外見が似ている。 名前の由来はXI(サイ)のローマ数字読みであり、「VI」と「ΛI」を上下に組み合わせたもの、つまりシックスの鏡写しという意味でもある。 ◆五本指 新しい血族の幹部達であり、大規模テロのスペシャリストにして人類抹殺を遂行する為のシックスの尖兵。 それぞれ定向進化で獲得した超能力を有しており、それを利用した大規模なテロ行為を行う。 また、顔にその人物の力を象徴するかのような生物の紋様が浮かび上がることが特徴で、単行本のプロフィールでも本名と共にこの紋様にも名前が付けられている。 劇中では「人類の虐殺」と「ネウロ抹殺」を主任務として暗躍する。 DR(ディーアール) 見かけで人を判断するな―――!! だからおまえらはッ…我々と比べて生物的に下等なんだ!! 地球に巣喰うダニ共がッ!! ダニッ!!ダニがッ!! 誕生日 3月2日 年 齢 27歳 身 長 187cm 体 重 94kg この世で最も尊い存在 「シックス」 その次に尊い存在 自分 好きな音楽 雅楽 五本指の小指を担当。 対応属性は「水」で、水の扱いに長けた血族。 一目見ただけでありとあらゆる水の流れ・動きを理解できる能力を持つ。 ルーツは遥か昔に治水を専門とし、治水を利用して裏から数多の中国の王朝を操り富を搾り取ってきた集団。 試験中の強化細胞を右手に移植しており、龍の爪を模した形状に変化させて痛烈なパンチを繰り出したり、水掻き状に変化させて大小無数の瓦礫が混じる鉄砲水の中を自在に泳ぐことができる。 一人称は「私(わたくし)」。 外見は黒人系でトランペットを持っているが「見かけで人を判断するな―――!!」ジャズが大嫌いな隅に置けない奴。雅楽好き。 他の血族たちが100人単位で殺すと言い出す中、10万の命をシックスに捧げると約束し、また葛西たちにも「シックスの隣に立つのは私」と宣言するほどの自信家。 一見礼儀正しく知的そうだが「見かけで人を判断するな―――!!」本性は短気にして残忍。 冷静そうな見た目とは裏腹に「見かけで人を判断するな―――!!」気性が荒く、他者に勝手に自分のことを決めつけられることを酷く毛嫌いしている。 己の才能と血族であることに異常なプライドを見せ、人間の存在を「ダニ」呼ばわりして虫けらとしか思っていない傲慢な差別意識の塊。 豪雨により貯水量が限界になったダム及び下流にある2つの河川の堤防を爆弾で決壊させて都内の街1つを水没させ、数千人の人間を溺死させるという人類史上類を見ない大規模なテロを発生させた。 その中には目覚める前の「謎」も多く、テロで人命を奪うだけではなくネウロの「食糧」も奪うことに成功。 さらに両腕に移植した強化細胞を使ってネウロにダメージを与えるが、「謎」を奪ったことがネウロの逆鱗に触れてしまい、 堤防の決壊を防がれ、777ツ能力「激痛の翼(イビルトーチャラー)」や魔力を使った凄まじい拷問に遭わされる。 形勢不利と見て逃走しようと試みるも、あっさりと捕獲された挙句滅多打ちにされ、 私はダニと言えば逃がしてやる わ、私はダn 川の音がうるさいな。聞こえん 精神まで完全に折られ濁流の中に沈められた。 その後葛西に投網で救出されるが、葛西曰く「脳に折れ目がついた(=敗北感を植え付けられた)」ことから見限られており、葛西の手で焼き殺され、消し炭になった彼の遺体は葛西によって濁流の中に「一蹴」された。 シックス曰く、「血族か否かを決定する条件は、DNAではない。決して折れない脳の強さだ。脳に折れ目がついた時点で、もはや人間。私の同族(なかま)たる資格はない」とのこと。 そもそもシックスやジェニュインは彼の敗北を半ば前提として動いていた。 DR自身は惨めな末路を辿ってしまったものの、彼一人でネウロの魔力を消費させつつ食糧源である「謎」すらも多く奪い取ったという点で、結果として「血族の大勝利」となったのだった。 本名は「ダニエル・ルソー」(Daniel Rousseau)。 顔の紋様はドラゴン(西洋龍)の「Flood of Book」で顔面右上に浮かび上がる。 テラ …ねぇネウロ 僕は美しくないものは嫌いだ キズのついた顔(アイコン)が大嫌いだ だから…人間たちの苦しむ顔を見るのは嫌なんだ 吐きそうになる 誕生日 8月24日 年 齢 25歳 身 長 186cm 体 重 70kg この世で最も美しい存在 「シックス」 その次に美しい存在 自分 簡単に見抜いた事 徳川埋蔵金が埋まっている場所 五本指の薬指を担当。 対応属性は「土」で、土中を読む事に長けた血族で、大地のあらゆる事象を見抜くことができる。 脆い地盤から頑強な地盤、土地に眠る未発見の活断層から様々な資源に至るまで一目で見抜いてしまう。 その昔アメリカ大陸の先住民達の文明を征服し、略奪と殺戮の果てに彼らの文明全てを埋めて破壊し尽くしたヨーロッパ人「征服者(コンキスタドール)」を先祖に持つ。 性格は典型的な目立ちたがり屋のナルシストで、他人から何度も身ぐるみを剥がされてもまったく気にしないポジティブメンタルの持ち主。 葛西曰く「バカ」。 道行くDQN女に簡単に騙され身ぐるみを剥がされパンツ一枚になるくらいのバカ。 その行動や言動から憎めないコメディキャラを思わせるが、表社会で働いていた時の経歴から見てもわかる通り本性は残虐非道。 大地の価値も碌に見抜けない人間という種そのものを、血族となる前から「醜い」と侮蔑しきっており、 人間の苦しむ顔を見たくないと語るのも無力な人間を傷つける事に対する罪の意識などではなく単純に嫌悪と嘲笑によるもの。嫌いな虫が苦しみのたうち回る姿を気持ち悪いと思う事と同じである。 身内からも「バカ」と評され、抜けている所が多すぎるため他者から侮られがちだが、後先考えないバカゆえに奇抜すぎる大胆な作戦を考え、バカゆえに後遺症など一切考慮せず顔以外の全身に強化細胞と武器を移植でき、バカゆえに一度決めた作戦を放棄して戦略を進めることに微塵の迷いもない。 その本性は葛西からも一目置かれる程。 使用武器は特殊合金製の巨大ハンマー。細かく無数の刃に分割することができ、分割した刃を全身に突き刺して自らの身体をドリルに見立てて戦うことができる。 唯一の自慢である顔だけは生身であり、「この顔でシックスの築く新しい世界を見ること」を目標としている。 かつてはその能力により不動産業で名をあげていた。 ただしその頃からもやり口は非常にえげつなく、所持者が土地を売り渡さない場合は脱法スレスレの脅しや恫喝行為で退去させ、土地に眠る資源を刈り取った後は用済みとゴルフ場開発から更地にする非道なやり口。 その手口はシックスが称賛するほどの無駄のなさと残忍さである。 【血族】として勧誘された際に、社員およびその親族・恋人・友人に至るまでの数百人単位の人間(*1)の顔の皮で出来た「箱」に魅入られ、以後は【血族】として活動している。 建設中の高層マンション2棟をハンマー代わりにして、地盤の亀裂を叩いて大規模な地盤崩壊を発生させるテロを目論みネウロを呼び出し殺そうとするが、本性を現したがためにネウロの怒りを買い、また失言から弱点が露呈したため隠れていた笹塚とコンビを組んだネウロに敗れる。 最期は機密保持のために体内に仕込んだ爆弾で全身を爆破しようとするも、777ツ能力「透け透けの鎧(イビルサーフェイサー)」で顔だけをコーティングされ、自慢の顔が絶望に歪みながら死にゆくという自業自得の末路を遂げる。 この顔を回収した事から警察は【血族】に対してさらなる一歩を踏み込むことができた。 本名は「ペドロ・コルテサロ・トレス」(Pedro Cortezarro Torres)。 顔の紋様は蛇の「Quezalcoatl Conquistadores」で、顔の左上に浮かび上がる。 ヴァイジャヤ …………十年早いとか言ってたけど 五千年早いんだよ。忍クン 誕生日 9月3日 年 齢 18歳 身 長 167cm 体 重 53kg 呪術士としての才能 生まれつき完全 呪うべきもの 力無き者全て 呪いで失敗した事 間違えて「誕生呪い」と書いて渡して葛西にどつかれた 五本指の中指を担当。 対応属性は「木」で、植物の特性を把握する事に長けた血族。 薬物の扱いに秀でるだけでなく、葉のざわめきや木の根や枝の音を瞬時に聞き取り相手の居場所さえもたやすく見破ることが可能。 武器は手首のブレスレットに仕込んだ多数の猛毒入りカプセル。 毒のカプセル人間に直接打ち込み身体を溶かしたり、植物に薬品を打ち込んで多量の麻酔ガスを放出させ森1つを巨大なガス室に変える芸当もできる。 その力は街一つを毒殺可能と葛西に太鼓判を押されている。 さらに強化細胞を全身に移植しているうえに胃に強化細胞を活性化させる植物を寄生させており、大樹を投擲し遥か遠くの相手をピンポイント狙撃するといった規格外の身体能力を見せつけた。 祖先は薬や薬草を利用した5000年続くインドの呪術師であり、彼とその母親は末裔。 生まれつき薬草の知識に秀でた母は父親に家畜のように働かされ(母の功績はすべて父親のものとされていた)、 その上、母が過労死した際には「まあいい代わりはいる」と、自身が母のバックアップデータとして吐き捨てられたことから父親を憎み、執拗なまでに「力」を求めていた。 また、父親の仕事の都合で日本に移住したものの、学校でも周囲の環境に馴染めずにいじめを受け、居場所を求めて地元の不良チームに加入。そこで強盗や車上荒らしなどの『火遊び』を繰り返していたところを、早乙女金融の面々に捕捉され「手入れ」をされてしまう。 そこで自身は首謀者の濡れ衣を着せられるという形で不良チームに裏切られ、体よくスケープゴートにされかけるも、吾代は即座に本物の首謀者を見抜き(*2)、結果的に救われる。 それ以来、吾代に対し舎弟にしてほしいと憧れ、付き慕うようになり、彼からは「チー坊」と呼ばれていた。 吾代からは悪態をつかれながらも舎弟として面倒を見てもらっており、「力」のくだらなさを説かれるが、父親に搾取され続けるだけの荒れた生活を送って来た自身に届くことはなかった。 シックスと出会ったのはその頃(作中から約5年前、当時13歳前後)であり、ジェニュインから『よいこのあたらしいけつぞく』という血族に関する内容が描かれた絵本(*3)を読み聞かされ、シックスから「君や君の母親は特別な存在だが、父親は君たちの力目当てですり寄ってきた寄生生物」と吹き込まれ、自らの手で憎むべき父を、母から教わった劇薬(混ぜてはいけない組み合わせで調合した薬草)で殺害。 以降はシックスと血族の「力」に魅入られ、【血族】として活動。 グリーンXにて自身の知識を放出し、血族から与えられた「力」を破壊のために使うよう促された。 一時は吾代を瀕死の重傷に追い込み、ネウロ不在の弥子たちを絶体絶命にまで追い込むが、吾代の挑発にかかり所持していた猛毒のカプセルを傷口から体内に注入され悶絶、それでも尚「力」への執着で自我を保ち、残った力で右目に鋭器と化した根を生やして吾代を刺し殺そうとするも、「例え地球や人類を滅ぼせるほどの強大な力を貰ったとしても、俺は嬉しくも何ともない。たった半年でもデキの悪い友人(ツレ)とつるんでた方が…俺はよっぽど楽しかったぜ(意訳)」という吾代の説得が通じたことと、重傷から任務続行不可能と判断。 機密保持の為に脳を破壊して自殺する。 強いって……疲れるね 忍クン ……今さら理解しやがって 回想シーンではジェニュインから直々に血族としての教育を受けており、 敗れた際に驚かれていることからも、彼女からは相当可愛がられていたことがわかる。 一方で、ジェニュインの言動から察するに、結局はシックスや【血族】の化学部門にとっては、自身の事は植物の知識を持つ母親のバックアップデータとしか見ていなかった事がうかがえる。 また、彼の最期の言葉は、吾代(ひいては読者)に対し「【血族】というのは本当に存在するのか」という疑問を植え付けた。 本名は「チャンドラ・アスカ・ルジュナワラ」(Chandra Aska Rjunawala)。 チー坊の由来は本名のチャンドラからだろう。 顔の紋様は彼岸花の「ARkadia ALkadia」で、顔の右下に浮かび上がる。 ジェニュイン 調教の覚悟はよくて脳噛ネウロ? 敗北(マゾ)の快楽を教えてあげる 誕生日 6月18日 年 齢 51歳 身 長 177cm 体 重 60kg 特技 煽動・調教・鞭検定1級 最終ご主人様 「シックス」 驚異的な若さの秘訣 無駄にエロい事 五本指の親指担当。 他の4人に指示を下す新しい血族の指揮官にしてリーダー格。 捻り過ぎてパッと見わかりにくいが、対応属性は「空気」。 場の空気を支配して人心を自在に掌握する事に長けた血族。 群衆の心理と行動を思うままに支配して、数々の戦争を引き起こしては上から眺めて楽しんだ「魔女」と呼ばれる一族を祖先に持つ扇動の天才。 祖先のイメージとしてジャンヌ・ダルク風の女性が描かれている。 その能力で死ぬまで自分に身を捧げる「ファン」を大量に抱えて私兵とするだけでなく、自らも強化細胞を移植した上で無数の刃を連結させた鋼鉄の鞭を武器とする。 更に、単純なトリックを用いるだけで集団を疑心暗鬼に陥らせて同士討ちを引き起こしたり、信頼できる相手であろうと自分の敵だと決めつけさせるなど、手を振るだけで都市一つを滅ぼせる女と葛西に評されている。 性格は生粋のサディストであり典型的な女王様。加えてご主人様限定M。 他人を奴隷扱いしてこき使う残忍な悪女であるが、同時にプライドも非常に高く、そのプライドの高さは自分だけでなく下僕のファンにも何だかんだで働いていた。 またただの残忍な悪女というわけではなく、態度こそ高圧的で分かりにくいが母性や仲間意識は高め。 葛西には口うるさく【血族】としての意識を持つように説教したり、ヴァイジャヤには上記の『よいこのあたらしいけつぞく』を読み聞かせるといった様々な教育を施し可愛がっていたことからも、割と面倒見の良いオカン気質だった模様。 使い捨ての下僕扱いしていたファンに対しても、実は「ファン」の名前を全員ちゃんと憶えている程度には愛着を持つなど、本質は誇り高い女傑である。 本人曰く「飼い主としての義務」。 元は「ジェニファー・ユーイング」(Jenifer=Euing)という、ハリウッドからブロードウェイまで圧倒的な演技力で観客を熱狂させて来た世界的大女優であり、その頃から映画監督やスポンサーを屈服させていた。 観劇に現れたシックスに「『本物』の舞台が見たい」と勧誘され、その場で『本物』の虐殺シーン(*4)を演じた後、【血族】の一員となる。 グリーンXでネウロを待ち構え、踏み込んだ警察を疑心暗鬼に陥れて同士討ちさせるも、ネウロに簡単にトリックを見破られ自ら姿を現す。 しかしある失言からうっかりネウロのS心に火を付けてしまい、魔力によって様々な自由を奪われ奴隷兼捕虜にされてしまう。 が、奴隷になった以後も知られて構わない程度の情報(*5)しか漏らさず、 核心に迫る質問をされると同時に「血族としてのプライド」を取り戻し、更に奪われた下僕からの信頼を自力でもぎ取ると、 それ以上余計なことを口走る前に下僕のアランを連れて、彼と共に自爆し果てた。 間違いなくネウロに一度屈服していたにも拘らず、己の精神力だけでシックスへの忠誠を貫き、最後は自爆する事で実質勝ち逃げした彼女の最期に対しては、 ネウロも「【血族】の中で唯一、もっとも鮮やかな方法で我が輩に勝ったのだ」と称賛した。 なお最初はぶっちゃけケバいおばさんだったが、ネウロに敗北した後からなぜか急激に若返り、若々しい美女になった。 血族としての名は英語で「本物」を意味する「Genuine」と人間としての本名を掛けたものであり、本物の世界で唯一の観客(シックス)を満足させるという意味もある。 顔の紋様は魔女の「Trial Fog」で、顔の右側に浮かび上がる。 葛西善二郎 悪は頭の中にある 五本指の人差し指を担当。 最古参の【血族】であり脱獄含め前科1000犯を超える伝説的放火魔。 飄々とした態度で傍観し、血族としての名も名乗らない異端の血族。 対応属性は「火」 個別項目参照。 ◆その他 リコ Xを捕まえる事ができなかった罰として「シックス」に拷問用ノコギリで割腹自殺させられる。 しかもその理由の本質はシックスの「罰とかどうでもよくて単純に君がそのノコギリで死ぬところを見てみたい」という超個人的なものだった。 しかもそう言っておきながらシックスは葛西とネウロに対する興味を語っており、リコの方には一切視線を向けていなかった。 サーシャ 誕生日 6月12日 年 齢 23歳 身 長 168cm 体 重 53kg 好きな食べ物 イクラ シューラとの関係 同姓同名の他人 いつか消したい奴 シューラ 好きなギャグ シュール 【血族】の工作部隊の1人。ポニーテールに髪をまとめた北欧美女。 五本指によるテロの下準備が役目だが、シックスの護衛も務める。 笹塚のトラップにやられた後、強化細胞の見せ場無しで「シックス」に“間違えて”殺される。 シューラ 誕生日 6月12日 年 齢 23歳 身 長 168cm 体 重 53kg 好きな食べ物 イクラ サーシャとの関係 同姓同名の他人 いつか消したい奴 サーシャ 好きな射撃法 掃射 【血族】の工作部隊の1人。ショートヘアの北欧美女。 葛西を警察から救出しようとするが、早坂の撃ったロケットランチャーの爆炎が命中して死亡する。 サーシャ、シューラ、共に本名は「アレクサンドラ・クズネツォワ」(Alexandra Kuznetsova) アンドリュー・シクソン 誕生日 6月29日 年 齢 28歳 身 長 184cm 体 重 73kg 特技 記憶能力 メガネのフレーム 記憶合金 嫌いな食べ物 ミョウガ 最近増えたモノ フケ 瞬間記憶能力をもつ【血族】の端くれの国際警察。 「シハシハ」という特徴的な笑い声を出す。 母語である英語にはきついスコットランド訛りがあるらしく、英語を喋っている時の台詞は東北弁で表現されている。 一方で日本語は非常に堪能で、極めて紳士的で礼儀正しい話し方で喋る(因みに笛吹によると5年前から日本語を勉強していたらしい)。 葛西が引く様な方法(曰くその最期の姿は、「生きているのが不思議・頭と内臓しか残っていない」状態との事らしい)で殺害され、頭皮は「シックス」が彼に変装する為の変装マスクとして利用され、残りは処分された。 部下A 単行本14巻のおまけ、「シックス」の無理難題シリーズ①で登場。 上述したリコの拷問用ノコギリで一発ギャグを作れという無理難題に対し、ノコギリを腹に当てて「あなたの子供よ」というギャグを披露したが、お気に召さなかったのか或いは「シックス」の子供であるXの件に関しての地雷に触れてしまったためか処刑された模様。 部下B 単行本16巻のおまけ、「シックス」の無理難題シリーズ②で名前だけ登場。 DRが惨殺したプールに浮かぶ三本(3人)の水死体を一本(1人)動かして正方形を作れという無理難題に対し、こちらは思わぬ発想で正解を作り出して見せた(*6)もののシックスの気紛れでなんとなく処刑された。ひでぇ。 ◆協力者 【血族】ではないものの、シックスや五本指に協力した者達。 ジェニュインのファン達 その名の如く、ジェニュインのファン。 特製金属(シックスのテクノロジー)で重武装しており、鉄の処女(アイアンメイデン)の様に敵を串刺しにしたりなど、物量を活かした連携攻撃を行う。 ジェニュインに貢献すべく鍛え上げており、ジェニュインは「電子ドラッグ兵などよりもよほど強力」と信頼を置いていたが、守勢という戦い方がドSのネウロと相性が悪く、ほんの1分で蹴散らされ、後に全員警察に逮捕される。 アラン ジェニュインの下僕であり、スキンヘッドの巨漢。 1万人の奴隷同士の殺し合いに勝利し、更にジェニュインが投与した大量の薬物によって車を片手で軽々と投げ飛ばしたり、頑丈な鉄製の扉をこじ開ける程のパワーを得たが、その代償として作中でネウロ達の前に現れた際には、既に肉体は強制的なドーピングの負担によってボロボロになっており、残りの寿命は1日となっている。 そこまでしてもネウロにあっさり返り討ちにされたことでジェニュインに見捨てられてしまい、逆に自分を気遣ってくれた弥子に協力し、グリーンXの自爆装置がセットされた部屋へ案内する(弥子曰く「もうそろそろ誰か(ジェニュイン)のファンを卒業したい」との事)。 ジェニュイン敗北後は暫く弥子の下僕として行動していたが、【血族】としてのプライドを自力で取り戻したジェニュインに「役立たずの上に裏切ったけど…それでも見捨てず仕える喜びを与えてやるのが主人の務めよ。お供しなさい、最後まで」と命じられ、彼女の下へ戻る。 最期はテラと同じく体内に仕込まれていた機密保持用の爆弾で自爆して主人と心中、機密を守り切った。 本城二三男 「シックス」の信奉者にして【血族】側のスパイ。 詳細はリンク先参照。 熊切 光彦(くまきり みつひこ) 警視総監。初登場時は怪盗Xが彼に成り済ましていた(殺されずに拘束されていただけだったため、生還して引き続き登場している)。 シックスの「友人」であり、彼に脅され【血族】に協力しており、自分の不正行為と共にシックスが犯した犯罪を揉み消していたが、笛吹に自身が今まで揉み消して来た犯罪行為(*7)を提示され、更に笛吹に必死に説得された事で折れて改心。シックスを裏切り、全国指名手配する。 これによりシックスは国際指名手配が確定となり、ネウロ達はシックスに対し王手をかける事となった。 政界進出を目指す野心家だったが、シックスを裏切るのと同時にその夢も断念し、笛吹たちに日本の未来を委ねる事を決めている。 「wiki篭りの脳に刻みこめ」 「自分達を蝕む病気(シック)の恐怖を」 「この項目を見ただけで…」 「wiki篭り全員が追記・修正するようにさせなさい」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 絶対的な悪というのがテーマだが、何故かヴァイジャヤだけは「悲しい過去があって悪の道へと走った」というこの中では珍しいパターン。何故例外を1人入れたんだろう -- 名無しさん (2013-09-21 13 03 34) ↑ 案外シックス以外は人間だっていうことの複線だったりしてな。 -- 名無しさん (2013-09-21 13 08 10) ヴァイジャヤ戦後に吾代が血族の存在を疑う発言してるし、実際そうなのかもね。あとはシックスという悪のカリスマがどれだけ人間を変貌させるかの描写とか -- 名無しさん (2013-09-21 17 44 29) というか葛西さんが真に別種なのはシックスただ一人、と言っていたような -- 名無しさん (2013-09-21 17 55 10) ↑それは既に項目に書いてあるから -- 名無しさん (2013-09-21 18 17 24) 51歳!? -- 名無しさん (2013-12-01 13 14 21) 古い遺跡は埋まってることが多い(実際は自然現象)だけでヨーロッパの征服者を地理に詳しい者という設定にしてたり、ジャンヌダルクは史実では兵士の前に立って鼓舞していたのを(群衆を高みの見物しながら先導していた)と誤解してたり… 悪意による人類進化を誇張するあまり歴史の誤訳してんのはいかがな物か、と連載時は思ってた -- 名無しさん (2014-02-08 16 23 55) ↑表向きにはそうなってるけど実は…ってスタンスだから問題なくね? -- 名無しさん (2014-02-08 16 43 47) ↑2 誤訳じゃなくて「そういうことにしてある」ってだけじゃないの? -- 名無しさん (2014-02-13 23 38 41) そもそもこれらの先祖の話が全部シックスに教えられたことなんだったら信ぴょう性はほとんどないに等しいと思うんだが -- 名無しさん (2014-02-13 23 48 31) 人間を超えた能力を得た代わりに常識や良心といった人間らしさを失い、「種族を繁栄させる」という本能のみで生きるようになった…むしろ人間より退化したんじゃあ… -- 名無しさん (2014-05-24 14 24 29) でも、人間性事態が人間が人間社会を維持する為に作った価値観だから退化とは言えない。まぁ、結局のところシックスという絶対者がいなけりゃ破滅しあう事しかできない連中だけど。 -- 名無しさん (2014-07-02 00 17 14) DRはぶっちゃけ小悪党、テラはおバカな悪役、ヴァイジャヤは哀しき悪役、ジェニュインは人を惑わす悪女、葛西は憎めない悪役と同じ悪でも五本指のそれぞれにキャラ付けがされていると思うな。 -- 名無しさん (2014-08-23 00 20 55) ヴァイヤジャヤを倒した後で吾代が新しい血族なんているのか?って言ってた辺りが、シックス以外は人間って伏線だったと思う。ヤコと違って、まだシックスって本物の血族を見てない吾代だから言えたんだろうな -- 名無しさん (2014-08-23 01 07 29) ヴァイジャヤがクズ親父からシックスに救われる過去を知って「何だ、シックスって意外と良いとこあるじゃん」って当時は思ったけど今考えたら結局支配者が親父からシックスに変わっただけで救われてなかったよな…… -- 名無しさん (2014-11-12 07 00 29) ↑多分だけど彼の母も似たような理由で夫に従ってたのかも -- 名無しさん (2014-11-12 07 04 31) ジェニュインはある意味作中最高ランクの強さだったな -- 名無しさん (2014-12-12 13 10 31) ジェニュインの散り際はかっこいい -- 名無しさん (2014-12-12 14 09 14) 致命傷は斬撃で爆弾は調教用 -- 名無しさん (2015-02-12 21 24 03) やっぱり鉄より火の方が歴史が古いから葛西のほうが大物感あったな6は仕掛け無しのガチだったけど -- 名無しさん (2015-02-12 22 02 40) グロンギとは別のベクトルで種の存続を度外視している種族。(種族が本当に存在するという前提の話。) -- 名無しさん (2015-02-12 22 26 01) やることのえげつなさでいえばこいつらと同等以上の悪の組織はそうはいない -- 名無しさん (2015-02-16 21 17 35) ↑アンブレラはこいつらに負けない屑。 -- 名無しさん (2015-05-05 20 37 09) DRの銃の腕前がさりげなく神懸ってる 雨の中片手にネウロ持ってビル屋上の人に全部命中させてる スナイパーかよ -- 名無しさん (2015-12-13 15 36 11) 超人的なスペックを身につけていたけど、吾代たちや笛吹率いる警察、早坂兄弟とただの人間に敗北してる奴も多いんだよね -- 名無しさん (2016-05-26 14 21 47) 人間を「ダニ」と見下すDRの本名が"ダニ"エルなのはある種の皮肉か -- 名無しさん (2016-05-26 14 31 01) 後の『暗殺教室』といい、松井先生の作品って、後に単行本のキャラクター紹介で明かされたプロフィールで、「思わず吹き出さずにはいられないような意外な一面」が公開された者が多いけど、「DRの本当に好きな音楽が雅楽だったこと」や「実はジェニュインの実年齢は51歳」に吹いたり驚いたりせずにいられなかった者はいなかったんじゃないだろうか。てか「好きな音楽のジャンル」を聞かれて「雅楽」と答える発想すらまず等の雅楽の生みの親である日本人ですら大半は浮かばねーよ!! -- 名無しさん (2017-05-31 15 22 56) かませ犬な所があるけど、タグにはないんだな -- 名無しさん (2017-06-02 18 39 01) ↑かませ犬って印象が薄いのかも。最弱とかいわれたDRが作中最多の犠牲者を出してるし -- 名無しさん (2017-06-02 18 49 53) ジェニュインの対応属性が「金」だったら、火水木金土と曜日が揃ったのに……まあ、そっちは魔帝七ツ兵器があるからいいのか -- トラトラ (2017-06-03 22 24 39) 五本指の中でテラの印象だけやたら薄い。と言うかよく忘れるんだがなんでだろ? -- 名無しさん (2017-06-04 02 12 19) ヴァイジャヤが車に投げた木って元々あそこに生えていたものだと思っていたんだが違うの? -- 名無しさん (2017-06-04 11 30 18) ジェニュインって「51歳」のインパクトに忘れられがちだけど、177cmってかなりの長身じゃね? -- 名無しさん (2017-06-04 12 41 33) 俺たちは選ばれた新人類だお前たちとは違う(キリッ)だったり自分が新しい血族だと思い込んでいる精神異常者ともいえる -- 名無しさん (2017-06-04 13 29 44) 土だけにテラの本名がペドロ(泥)なのが面白い。惜しいのは彼や6が徳川埋蔵金の場所を墓場まで持って行ってしまったこと -- 名無しさん (2017-07-04 17 51 25) ↑徳川の埋蔵金を見抜けるほどだから世界のあらゆる遺産とかみつけられたんじゃ……なんかもったいないよな。そう考えると -- 名無しさん (2017-07-15 11 24 08) そういった人間の非凡な才能を容赦なく蝕む病気がシックスだからな 薬物使いのヴァイジャヤならDCSに含まれる血液尿から検出されない強化剤を調合できるんだろうか -- 名無しさん (2017-07-20 14 20 48) 地中に埋めたまま何日間も放置とかアンドリューの変装準備に並ぶ血族トップレベルの拷問だと思う -- 名無しさん (2017-08-17 01 23 47) 真の意味での血族はシックス一人というようにシックス関わってなかったら能力がすごく高い以外は他の犯人どころか現実のサイコパスとも大差ないな。DRが大分大量殺人しているけど能力故にいくらでも完全犯罪で来たっていうのが大きいだろうし -- 名無しさん (2017-11-21 18 42 37) 逆に言うと、人間でもちょっとした切っ掛けで、とんでもない悪意が芽生えるってことか -- 名無しさん (2017-11-21 21 30 08) ↑まんま、ネウロの犯人達だな -- 名無しさん (2017-11-21 21 45 10) シックスに会ってなかったらネウロに美味い謎を喰われ心折られる→立ち直り再犯の流れか 当の6は天然モノの謎を産む気が無いしどこまでも魔人の天敵だな -- 名無しさん (2017-11-26 20 46 35) ジェニュインってそんな項目に書いてあるように調教前後で見た目変わったりしてたっけ そんな違いないと思うんだけど -- 名無しさん (2020-10-24 05 23 13) 『お前なんだか、ジャズとか好きそう顔してるよな』 -- 名無しさん (2021-03-16 13 47 56) 洪水に地震と御時世が御時世だけにもう再アニメ化も厳しくなってしまいそうだなあ……。 -- 名無しさん (2023-05-21 13 22 13) ご時世じゃなくてもシックス関係の描写の数々は深夜枠でも相当キツイもんがあるしな…何らかのぼかしは入りそう -- 名無しさん (2024-03-02 08 22 08) シックスや葛西達新しい血族は「決して折れない脳の強さこそ新しい血族の資格」と失敗したら死あるのみの信条で動いてたけど、敗北しても脳の折れ目を補強して再び立ち上がる人間達と戦って次々に数を減らして最終的にはシックスを守る者は誰もいなくなって滅んだから、負けるべくして負けたって事だな -- 名無しさん (2024-06-05 13 10 07) ヴァイジャヤ……もといチー坊の父親が本当に善良な人物で良好な家庭を築けていたとしても、チー坊やその母親が狙われる救いのない末路を迎えてしまっていたんだろうか…… -- 名無しさん (2024-07-02 20 54 22) 血族を仲間に引き入れるシーンのシックスの行為が好き。友人と恋人と家族全員とか演じなさいとか。 -- 名無しさん (2024-08-23 10 43 20) 『魔人探偵脳嚙ネウロ』と『暗殺教室』は同一世界みたいだけど、ひょっとして『逃げ上手の若君』に登場する人間離れした能力や当時の水準を大幅に上回る技術や知識の持ち主の一部は、実はシクソンのような「シックスの一族の分家の末裔」ってことになるかもしれないんだろうか……? -- 名無しさん (2024-08-24 23 27 47) 先祖からそうあれかしと望まれた中生まれてきた尊氏はちょっと血族みある。人間ダビスタしながら悪意を育ててきた血族と、先祖が吐いた呪詛から神力宿した足利家の違いはあるけど。 -- 名無しさん (2024-09-27 16 07 56) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/toaru-vo/pages/31.html
DORDRAY×土御門元春 目次 DORDRAY×土御門元春目次 概要キャラクター設定 バーチャロイド設定 ゲーム上の性能 カラーリングバリエーション スペック詳細 武装ライトウェポン[RW]/ターボRW/ダッシュRW/トランジションRW センターウェポン[CW]/ターボCW/ダッシュCW/トランジションCW レフトウェポン[LW]/ターボLW/ダッシュLW/トランジションLW 近接攻撃 ブーストウェポン[VW] 各モード攻略ストーリーモード チュートリアル 概要 キャラクター設定 土御門元春(CV:勝杏里) 上条当麻の親友にして青髪ピアスと合わせて「三バカトリオ」の一人。 小萌先生をからかったり重度のシスコンであることを隠そうとしないなど軽い印象を受けがちだが、その正体は魔術サイドと科学サイド、両方に顔の効く二重スパイ。 と言っても私利私欲のために動いているわけではなく、魔術サイドと科学サイドの全面衝突を防ぎ、学園都市(とそこに住む義妹)の平和を守るために奮闘する苦労人である。 バーチャロイド設定 ドルドレイ <電脳暦における基本設定> 機体コード及び名称は「超重装甲突撃型機体 RVR-68 ドルドレイ」。 第2プラント「トランスヴァール(TV-02)」が制作したVR。 全VR中最厚・最硬の装甲を誇る重戦闘VRで、多少の被弾はものともしないばかりか、ライデンの高出力レーザーの直撃にもいくらかは耐えられる。 その堅牢さを活かした防衛戦や、左腕のドリルを使った地中潜航からの奇襲などで活躍した。 <本作における基本設定> 機体コード及び名称は「RVR-68/VSL ドルドレイ」。 小説版では三バカトリオの片割れ、青髪ピアスが本機を萌え仕様にカスタマイズしたものを選択している描写があったが、戦闘シーンなどはなく少し触れられるだけに終わっていた。 ゲーム版では土御門が選択。彼が本機を偏愛する理由は定かになっていないが、公式サイトによれば、二重スパイを演じる彼ならではの秘められたものがあるらしい。 ゲーム上の性能 厳つい見た目でわかる通りの重装甲型VR。 HPとSTがきわめて高く、本作に登場するVRの中では、初期選択できないブルーストーカーに次いで二番目の装甲を持つ。このため多少の被弾ではダウンを奪われにくく、ポイント勝負には強い。 ただし機体の大きさや機動性の悪さ(特に空中)、歩きの遅さ、手軽な防御武装が乏しいことなどから、回避能力に関しては大きなハンディを抱えている。 旧作(オラタン)から武装の再編成(RWゲージ効率悪化、バーナー撤廃、リングレーザー仕様変更、特攻仕様変更)が行われたため牽制力が減り、ドリルと万力で追い込んでファランクス、もしくはファランクスで動かして万力で足止めしてドリルといった投網漁を強いられる。 どの武器も癖が強くむやみに弾をばらまくとすぐにゲージ枯渇が起き、遅い機動力と併せて的になりやすい。 重装甲は今まで同様だが、Vアーマー撤廃により当たればきちんと体力が削られる上にSTダウンを取られてポイント負けがありうる。そのため重装甲を盾にした耐久肉弾戦略は望ましくない。 総括すると、本作のドルドレイは旧作とは運用方法を総変更しなければならない機体になっている。 トランジションをうまく使い相手を追い込みながらとにかく万力を当てて足止め、そこからの反攻へ戦略をうまく組み立てる必要がある。 上記のような評価から、長い間最弱キャラ候補筆頭といわれてきたドルドレイだが、発売から1年経過すると、次第にドルドレイの使い手として一目置かれるプレイヤーも現れるようになり、「上手い人が使えば強いテクニカルキャラ」として認知されるようになったようである。 とは言え、癖が強くて使い勝手の良い攻撃手段に乏しい、扱いにくい機体なのは確かだろう。 本機の特徴的な攻撃である特攻(前ダッシュLW、前ダッシュCW)であるが、地上特攻中に自機の別の射撃がヒットすると特攻が中断してしまう現象(特攻を出してから一定時間内に射撃が当たってしまうと起きる模様)や、特攻中に相殺性能のある攻撃(ボム系武装など)を受けると攻撃判定が相殺され消失してしまう現象が確認されている。バグか仕様かは不明であるが、使用の際は注意されたし。 カラーリングバリエーション 名称 解放条件 解説 1 VSL-1 最初から 緑主体のVSL 2 VSL-2 最初から 赤主体のVSL 3 DNA DLC「DNA-style」の購入 オラタンの1Pカラー 4 RNA DLC「RNA-style」の購入 オラタンの2Pカラー 5 SHADOW 選択不可 モブ等が乗る灰色のカラー スペック詳細 地上での移動性能 歩き移動がとてつもなく遅い。 ただしスマート操作を選択する、あるいはベテラン操作でロックボタンを押しながら移動すると、前歩き、斜め前歩きが少し素早くなる。 前ダッシュ速度は全機体平均に近いが、ドルドレイより遅い機体のほとんどは空中戦を得意とする機体であるため、そう考えると遅め。 斜め後ろ、後ろダッシュはとても遅く、ワーストクラス。 横ダッシュは(横ダッシュが遅い機体が多い中では)比較的軽快で、テムジンより素早く全機体中平均程度の速度だが、トランジション移動が遅い。 普通に移動すると全機体中最低クラスの移動能力だが、いざという時には前DLW、前DCWの突進技で高速移動が可能。 ジャンプ性能 ジャンプ高度50、ジャンプ攻撃高度41~50。 ジャンプ高度はライデンと並んで全機体中最低クラス。 空中ダッシュも遅く、ほとんどの方向で全キャラ中下から2番目程度の順位。 いざという時には前JDLW、前JDCWの突進技で高速空中移動が可能。 地上と比べると空中突進技の移動速度は遅め。 同じく重量級機体であるライデンおよびブルーストーカーと同様、通常の機体ではできないジャンプ下降中の空中ダッシュが可能である。 装甲値 HP3300(14機中2位)/ST1200(14機中2位) ノックバック値…STダメージ500 他の重量級機体と異なり、STゲージ回復までのクールタイムはライデンやブルーストーカーよりも何故か遅く設定され、標準レベルとなっている。 謎のスライド移動 バーティカルターン入力時に「方向→ターボ」ではなく「ターボ→方向」とずらし入力することで通常のダッシュとは異なるスライド移動が発生する。バグか仕様かは不明。他にもエンジェランの斜め前バーティカルターンで同様の現象が確認されているが、ドルドレイの場合は全方向(前・斜め前・横)で発生してしまう模様。 これが発生すると機体が直立したまま滑るように移動し、移動中にトリガーを引くとダッシュ攻撃ではなく強制的にターボ攻撃が出るようになる。そのほかは通常のダッシュと同じように、ダッシュキャンセル、ジャンプ、トランジション、近接攻撃、旋回などが可能。 強制的にターボ攻撃が出ること以外、内部的にはダッシュ状態と同じと考えられる。 スライド移動の速度と移動量は入力した方向のダッシュの性質に依存する模様。スライド移動をそのまま終了させると大きな硬直が発生してしまうが、これはジャンプ、旋回、近接攻撃、ターボ攻撃などでキャンセル可能(トランジションとダッシュは不可)。 なお、巨大化中もこの現象は発生する。ブースト時のバーティカルターン制限撤廃が合わさるためか、この状態ではスライド中に方向+ターボでバーティカルターンが可能になる。巨大ドルドレイが直立したままカクカクとスライド移動する様は大変シュールである。 武装 兵装 名称 解説 ライトウェポン エジェクタブル・クロー・ランチャー 射出基部のECL/Aランチャー・アームと射出部のECL/Nクロー・ナックルで構成されるクロー型の着脱式ランチャー。基部には火炎弾発射機構が搭載されている他、クロー本体を射出して咬み付かせ相手の行動を制限することもできる。 センターウェポン Vハリケーン 背面に搭載された「Vコンバータ」から放たれる攻撃。リングレーザー&カッターを発射したり、Vコンバータ内部のディスクを展開してフィールドを張り突撃することも可能。 レフトウェポン ドラスティック・ドリル 射出基部のDSD-68ドリル・スクリュー・ドライバーと射出部のDDT-2ドラスティック・ドリル・ターミナルで構成される本機の代名詞。障害物を貫通するドリルを敵機に向けて射出したり、質量を生かした突撃に用いたりする。 ライトウェポン[RW] ゲージ回復速度…0から100%まで約7秒 「クローランチャー」火の玉を撃ちだすだけではなくクロー自体も撃ち出す。 旧作同様の大玉、中玉、小玉を状況によって打ち分ける多目的ランチャー。 ゲージ消費が激しく回復も遅いため迂闊にバラ撒くとあっという間にゲージ枯渇するので注意が必要。 【RW】消費18% 威力118~80 ST196~100 右手のクローランチャーから火炎弾を射出。 距離が離れるほど攻撃力が減少し、距離300以上で最低値(威力80/ST100)となる。歩き→立ちの相互キャンセルに対応。 牽制としては十分だが、威力面では距離減衰もあり物足りない。またドルドレイは歩きが遅いので、のんびり撃っていると中距離からでも手痛い被弾につながる危険性が高い。 【JRW】消費30%(合計) 威力80 ST90 3Wayの火炎弾を3セット、計9発射出。 攻撃範囲と誘導に優れ、多段ヒットすれば高威力。 ただし撃てば当たるというものでもなく、攻撃時の隙がかなり大きいので使う機会は難しいところ。当然着地時も狙われるタイミングなので注意。 ターボRW 【TRW】消費30% 威力120 ST170 通称 万力(ペンチ) 右手のクローランチャーを丸ごと射出する、今作の生命線。相手に当たると4秒間ほど噛みついて、離れるまで相手の移動速度を落とす。 弾速は遅く誘導はかなり強い。弾速とサイズ故にボム系やカッターで返されやすいが、相殺性能の低い攻撃なら一方的に打ち消すことができる。 ゲージがあってもクローが戻ってこない限り次の射出は不可能。戻り際のクローにも判定がある。 これをいかにして当てるかが行動の布石になる。 ダッシュ中に出すと、なぜか敵へ向き直る前に射出してしまう。これは常時ロックオンのスマート操作であれば角度によって色々な曲げ方ができる利点となるが、ベテラン操作で敵を視界に入れていない場合は自動捕捉が追い付かずノーロック状態で射出してしまうためクローが誘導しない。 LWと違い撃ち出した後も各種火炎弾は撃ちだせるが、地上近接攻撃の攻撃判定が無くなるので注意。 【JTRW】 消費33% 威力101 ST101 TRWの万力よりもかなり弾速が早い。威力は低いが拘束時間はほぼ同じ。 下方向への射角が狭く、高い地点から出すと敵の頭上を飛び越えてしまう(ジャンプ頂点から出すと220以内の敵に当たらない)。近距離で使う場合は低空ダッシュから出そう。 2on2で遠距離の相手をいきなりロック切り替えて打ち出すのもアリか。 万力が無くなる関係上着地後の選択肢が一つ減るのに注意すること。 ダッシュRW 【DRW】 前 消費30%×3 威力144~50 ST717~120 2つ並びの火炎弾を3セット、計6発射出。 ゲージ消費が大きく、3セット撃ち切るためにはゲージ8割ほど残っている必要がある。適当にばらまくと直ぐにガス欠を起こすので注意。 密着~至近距離では非常にSTダメージが高くダウンさせやすい特徴があるが、距離が少しでも離れると急激に減衰し、距離100以上では1発120まで減少してしまう。 これは、近距離でなければ6発フルヒットしても中量級から即ダウンを奪うことができないということを意味する。また、密着で当てると今度は1~2ヒットで相手がダウンしてしまうため、結果的にダメージが低くなってしまう。 とはいえ、たとえゲージが少なくても密着で当てさえすれば相手をダウンさせられるので、近距離では頼らざるを得ない部分もある。 他の機体の前DRWと比べると、多段しにくいためHPダメージは低いが、近距離でのダウン性能が高く、また比較的敵の攻撃に消されにくいといった特徴がある。 ポイント勝ちを狙っている時には積極的に狙いたいが、タイムアップ間際で逆転K.O.勝ちを狙っている時には撃たないようにしたい。 対戦では、中近距離でのトランジションCWから前ダッシュに転じ、前DRWに繋げるという連携が人気のようである。 判定が大きく多段し、相手を怯ませたり反撃を相殺したりできるトランジションCWを盾にしながら攻め込むことで、至近距離まで接近しないと有効打を与えられない前DRWの弱点を補い、中近距離での押しの強い攻めを展開できる。リングカッター3連+火炎弾6連という見た目も派手。 斜め前 消費25%×4 威力90 ST100 火炎弾を4発連射するが、前ダッシュ以上に燃費が悪くゲージをほぼ使い切る。 そして回頭が遅く当てにくい、至近距離で全弾当たっても中量級以上は転ばないと消費に見合わない性能なので、絶対に暴発させてはいけない。 横 消費22%×3 威力90 ST100 3Way火炎弾を3セット射出。 弾は誘導せず散らばり1発1発の威力も低いので、適当に撒いても効果がない。狙うなら密着してくる相手にまとめてヒットさせたい。 斜め後ろ 消費20%×3 威力80 ST80 3Way火炎弾を3セット射出。 横DRWに似ているが弾の発射間隔がやや短くなり、攻撃力が下がっている。 後ろ 消費20%×3 威力90 ST130 2つ並びの火炎弾を3セット射出。STダメージがやや高い。 やはり誘導はない。 【JDRW】 前 消費20%×2 威力350~180 ST1176~150 大型火炎弾を2セット射出。着弾時には小さな爆風が発生。 威力が高く省エネ性もまずまず、弾速はやや遅め、見た目よりは追尾もかかる。前DRWと同様、距離が離れるほど急激に威力とSTダメージが減少する。 近距離で当てればほぼ確実にダウンがとれる。微弱ながら爆風にも攻撃力があるようだ。 クロスレンジ低空ダッシュからのカウンターや万力 ドリルからの追撃が重要なダメージ ダウンソースになる。 当たらないと判断した場合はトランジションで仕切りなおすか斜め前DCWに切り替えよう。 高空で出すと落下時が見事な隙になるので主力で多用する場合は低空ダッシュからの運用必須。 斜め前 消費30%×3 威力150 ST210 火炎弾を3発射出する。 地上斜め前ダッシュによく似た見た目だが性能は別物、体力とSTゲージをゴリゴリ削る。 燃費は良くないので相手の状況に合わせて前と斜め前を使い分けよう。 横 消費20%×3 威力140 ST180 小型火炎弾を3発射出する。 STダメージは高いが使い道は・・・。 斜め後ろ 消費20%×3 威力120 ST160 小型火炎弾を3発射出する。 これもかなりSTゲージを削る。 散らばせるわけではないので逃げの手段には弱いか。 後ろ 消費18%×2 威力120 ST160 火炎弾を2発射出する。 STゲージは削るが威力も消費もカバー範囲も小さい、使いどころが見えない。 トランジションRW 【トランジションRW】消費30%×2 威力70 ST50 3Way火炎弾を2セット射出。 左右間隔が広い上に全弾とも誘導がかかるので、非常にひっかけやすい。 しかしゲージ消費が大きく、威力とSTダメージがかなり低い。こればかりバラ撒いていてもダメージ負けしてしまうため、他の武装とうまく連携させて使っていく必要がある。牽制に使う際は、なるべく1発止めキャンセルダッシュでゲージ節約したい。 ヒットクロックを維持するための攻撃としては優秀。 射程はおよそ380で、それ以上飛ぶと弾が消滅する。 センターウェポン[CW] ゲージ回復速度…0から100%まで約9秒 「Vハリケーン」2種類の違った射出形態を持つ武器。 通常時はリングレーザー(超音波)+ナパーム弾、ダッシュやターボを絡めると円形のリングカッターを撃ち出す。 【CW】消費77% (リング)威力10 ST180 (ナパーム)威力200 ST500 通称:ファランクス リングレーザー+ナパーム OMGドルカスとOTドルドレイのCWをミックスしたような装備。 中央にリングレーザーを2列並んで射出し、ディレイがかかってその左右に広がるようにナパームを射出する。 リングレーザーは当たるとスタンし、微妙ながら誘導性あり。ノーロックの場合はこれもV字型に飛んでいく。ナパーム部分の射程は約320で、見た目よりも上方向に強い当たり判定を持つ。 意外だがリングも地形を貫通するので、ドリルと併せて壁裏攻防の一手に。 歩き発射で設置幅を左右に広げられるので相手を動かしたい時や置きにも使って行ける 【JCW】 立ちとほぼ同一の性能。あえて使うことは無いであろう。 ターボCW 【TCW】消費66% 威力172~400 ST258~1000 通称 リングカッター 振りかぶって横幅のあるカッターを射出。発生は早くないがドルドレイの武装の中では弾速があり、誘導もそこそこで使いやすい。 距離が離れるほど威力とSTダメージが増加する。距離999以上ではなんとST1000まで上昇するが、遠距離では簡単に回避されてしまうので狙うものでもない。 一応、距離200以上で当たればST400でエンジェとサイファーが、距離350以上で当たればST500でスぺシネフとフェイイェンが確定ダウンすることは覚えておきたい。 また障害物との接触判定が中心に近い部分しかないので、壁に半身を隠しながら撃ち出すことが可能。 相殺力も比較的高く、テムジンの立ちカッターやライデンの立ちバズを一方的に打ち消すことができる。 【JTCW】消費60% 威力154~600 ST228~1000 カッターを射出。立ちと同様、距離が離れるほど攻撃力がアップする。 立ちと比べて、発生と弾速が少し向上。威力も上昇し、ゲージ消費も立ちより低いがSTダメージが少し低いという違いがある。 弾の性能はなかなか優秀だが着地の隙が大きいので、低空ダッシュから出す等してカバーする工夫が必要。 ダッシュCW 【DCW】 前 消費100% 威力600 ST1500 通称 CD特攻 背面のCDを機体前面に展開してダッシュ方向正面へと特攻する、ドルドレイの必殺技その1。当たれば確定ダウンと大ダメージ。 特攻中にスティック入力で左右への旋回が可能。ターボボタンを合わせるとさらに旋回するが、LWのドリル特攻と比較すると旋回速度は緩慢である。 ドリル特攻に比べて攻撃判定が横に広いが、判定は本体部分のみである(先端のCD部分や機体にまとったオーラには判定がない)ことに注意。なおドリルやクローを射出していても、攻撃判定には変わりがない模様。 敵機を掠めるように置きで当てたり、至近距離から出すことですれ違いざまに下半身の判定をぶつけるような使い方ができる。 判定が近接攻撃ではなく射撃攻撃扱いであるらしく、ボムの爆風に突入すると攻撃判定を失う。 突進方向はダッシュの方向に依存し、サイファーのSLCダイブと違ってスマート操作でも相手に向き直ることはなく、ベテラン操作でいわゆる八つ橋入力をしても(視界は変化するものの)通常と変わらず、鋭角ターンして出したりするようなことはできない。 また、発生から一定時間以内(機体が滑走モーションに完全に移行しきるまでの間?)に自機の他の射撃がヒットすると、なぜか特攻を中断してしまう現象が確認されている。このためクローのヒットやノックバックからのコンボに使うことが難しくなっている。 特攻旋回中に視点方向が変わらずスライド移動するバグは修正された(Ver1.02) 斜め前 消費37%×3 威力170~100 ST190~100 リングカッターを3連射。燃費が悪く、3連射するとゲージをほぼ100%使い切る。 距離が離れると攻撃力が減少。距離50以上で減衰を始め、300以上で最低値となる。 至近距離では回避されづらい攻撃だが、これ単体ではさほど敵の脅威にならない。ドリルや万力で捉えて、敵の機動力とSTゲージを削いでからの追撃に使おう。 横 消費37%×3 威力160~90 ST180~90 リングカッターを3連射。性質は斜め前とほぼ同じだが攻撃力が低い。 誘導性は一応あるが、あまり遠くで撃つ武器ではないので斜め前の方が良いだろう。 斜め後ろ 消費37%×3 威力145~75 ST165~75 リングカッターを3連射。性質は斜め前、横に準ずるが攻撃力がさらに下がり、連射速度が遅くなっている。 相殺性は健在なので、距離を離しながらの牽制に使える場面があるかもしれない。 後ろ 消費63% 威力180~110 ST200~110 大型カッタービームを射出。やはり距離が離れるほど攻撃力が下がる。 弾速は遅く威力は低い、相殺性と誘導はそこそこ。 【JDCW】 前 消費100% 威力800 ST1500 通称 空中CD特攻 背面のCDを機体前面に展開して特攻。ドルドレイの貴重な70pt攻撃。威力も地上より高い。 今作の空中特攻は地面に対しての高度を自動で補正してくれるため、高いところから出しても地上の敵機をひっかけることができる。 …のだが、平坦な姿勢が災いしてか攻撃判定が下方向に弱く、背の低い敵やダッシュ等で姿勢の低くなっている敵には非常に当たりにくい。ひどいときには特攻の当たり判定よりも機体の接触判定が優先され、敵機をヌルッとすり抜けてしまうことも。 特にフェイイェンやバル・ルルーンといった小柄な機体には多用を控えた方が良い。テムジンの前ダッシュなどでも正面から抜けることができてしまうので、現状では相手や地形をよく見ての使用が望ましい。 突進方向はダッシュの方向に依存するのは地上と同様で、サイファーのSLCダイブのようにスマート操作で向き直らせたり、いわゆる空中八つ橋入力で鋭角ターンさせたりすることはできない。 地上版と同じく、ボムの爆風に突入すると攻撃判定を失う仕様。ただしこちらは射撃ヒットで中断する現象は起こらない模様。 斜め前 消費37%×3 威力170~100 ST190~100 リングカッターを3連射。地上斜め前と性質・使い方はほぼ同じだが、発生と弾速がさらに向上しており至近距離ではかなり回避されにくい。 ただし空中から出す関係で、地上よりもさらに距離による減衰の影響を受けやすいのには注意。 まさかの下方修正が入りやや弾速が減少してしまった(Ver1.02)この技でドルドレイが一体何をしたというんだ 横 消費37%×3 威力165~95 ST185~95 リングカッターを3連射。機体が横向きなのでカッターが縦になる。 攻撃の横幅が狭くなり、射角も誘導もしょっぱいので使うことはないだろう。 斜め後ろ 消費50%×2 威力145~75 ST165~75 リングカッターを2連射。 燃費が悪く攻撃力も低い。ほぼ使い道がない。 後ろ 消費50%×2 威力135~65 ST155~65 リングカッターを2連射。 燃費が悪く攻撃力も低い。ほぼ使い道がない。 トランジションCW 【トランジションCW】消費25%×3 威力80~30 ST80~40 リングカッターを3連射。本機の数少ない牽制用武器。 威力と誘導性は低いが弾速が速く判定が横に広いので当てやすく、相殺性もある。 上下への斜角補正は浅く、空中の敵を狙うには不向き。 弾の性質は各種ダッシュCWに近く、同様に距離50以上で威力減衰を始める。 他のCWと比べれば燃費はいいものの、消費は少ないとは言えないのでやはり無駄撃ち厳禁。射出中はいつでもダッシュキャンセルできることを活かし、1~2発で止めて次の行動に繋ごう。 対戦では、トランジションCW→前DRWの連携が、中近距離での押しの強い連携として人気のようである。 レフトウェポン[LW] ゲージ回復速度…0から100%まで約7秒 「ドリル」ドルドレイを象徴する唯一無二の武器。 叩き付ける、飛ばす、ぶつける、刺してスリップダメージ、地形に埋め込む、自分自身がカッ飛んで行くと万能兵装ではあるが装填数は1つのみ。外したり相手に刺さったりすると帰ってくるまでゲージがあっても撃ちだせないので、ゲージ回復の速さのわりに回転率は悪い。 前DLWで発動するドリルスラム(ドリル特攻)はこの機体の花形ともいえる技である。 この機体では貴重な「距離減衰による影響を受けない武装」であり、射出した場合は多少の地形なら低速で掘り進んで貫通する。相殺性能もボム系以外にはそこそこ強い。 【LW】消費50% 威力200+削り ST350 ドリルを射出、これが無いと始まらない。 撃ち出した直後は低速でその後加速する。敵に当たると一定時間刺さってスリップダメージを与える 。 当たらなかったりノーロックで撃ったりすると地形や世界の壁に衝突しないと戻ってくるまでの時間が長い(4~8秒ほどかかる)ので注意 【JLW】消費60% 威力250+削り ST350 初速から最高速で相手に飛んでいく。距離40未満に敵機が居るとジャンプ頂点から発射した場合は当たらない。 敵に当たると一定時間刺さってスリップダメージを与える。 ターボLW 【TLW】消費70% 威力200 ST400 正面に山なり軌道のドリルを射出、170mほど進んだところで2秒ほど停止し敵を再ロック、方向転換して相手に向かう。 このとき、停止したドリルの前方180°の範囲に敵がいないと再ロックせず明後日の方向に飛んでいってしまうので注意。またノーロックで出すとドリルの再ロック範囲内に敵がいても再ロックしてくれず、地面に落ちて帰ってきてしまう。必ず敵をロックして撃つこと。 敵に当たると刺さらないですぐに戻ってくる。 地形に埋め込むと更にディレイがかかり戦略の幅が広がる。ノーマル同様に何かに当たらないと戻ってくるまで時間がかかる。 【JTLW】 消費50% 威力200 ST450 撃ち出した直後は低速でその後加速、敵に当たると刺さらないですぐに戻ってくる、と地上でのLWとTLWを足したような挙動。 距離35未満に敵機が居るとジャンプ頂点から発射した場合は当たらない。 初速が遅く補足が強いため敵機真上で撒いておくと逃げる相手がひっかかったりする。 ダッシュLW 【DLW】 前 消費100% 威力700 ST1500 ドリルスラム(通称:ドリル特攻) ドリルを機体前面に突き出して特攻する。ドルドレイの必殺技その2。 当たれば確定ダウンと大ダメージ。 特攻中にスティック入力で左右へ旋回が可能。CWのCD特攻と比較して突撃速度も旋回への反応もクイック。もちろんターボ旋回も可能、反応が異常に敏感になり制御は難しいが、慣れれば信じられないようなコースを狙える。 姿勢の関係で、こちらは前後に攻撃判定が長い。突き出したドリルだけでなく後ろに伸ばした足まで全身に判定があるが、横幅は広くないので動き回る敵機に当てるには精密な制御が求められる。 オラタンの時とは異なり、今作では発動時の無敵時間はない。また前DCW同様、こちらもボムの爆風に突入すると攻撃判定を失う仕様。 突進方向はダッシュの方向に依存するのは前DCWと同様で、サイファーのSLCダイブのようにスマート操作で向き直らせたり、いわゆる空中八つ橋入力で鋭角ターンさせたりすることはできない。 CD特攻と同じく、発生から一定時間以内に自機の他の射撃がヒットすると特攻を中断してしまう現象が確認されている。このためクローのヒットやノックバックからのコンボに使うことが難しくなっている。 こちらも特攻旋回中に視点方向が変わらずスライド移動するバグは修正された(Ver1.02) 斜め前 消費100% 威力175+削り ST350 初速から最高速で相手に飛んでいく。 敵に当たると一定時間刺さってスリップダメージを与える。 威力、当てやすさ共にそこそこの性能。 横 消費100% 威力160+削り ST350 初速から最高速で相手に飛んでいく。 敵に当たると一定時間刺さってスリップダメージを与える。 斜め前よりダメージは低いがSTダメージは据え置き。 横ダッシュ回避からのカウンターのほか、相手にまとわりつくように打ち込んだり、すれ違いざまに地形に埋めておいてもよし。 斜め後ろ 消費100% 威力150+削り ST350 初速から最高速で相手に飛んでいく。 敵に当たると一定時間刺さってスリップダメージを与える。 ダメージはさらに下がるがSTダメージはこちらも据え置き。 上空への誘導が高いので対空迎撃にも使用可能。 後ろ 消費100% 威力125+削り ST350 初速から最高速で相手に飛んでいく。 敵に当たると一定時間刺さってダメージを与える。 ダメージは最も低いがSTダメージは当然据え置き。 相殺性は残っているので緊急時の相殺用にも使える。 【JDLW】 前 消費100% 威力900 ST1600 ドリルスラム(通称:空中ドリル特攻) ドリルを機体前面に突き出して特攻する。地上よりも威力が高く、ドルドレイの単発攻撃としては最大威力。 遠距離から地形を飛び越えて狙うもよし、近接立ち合いの最中に絡めるもよし、逃走に使うもよし。 姿勢の関係で、下方向への攻撃判定はCD特攻よりも信頼できる(下半身というかヒザ部分で当てにいける)ので、どうしても70pt欲しい時以外はこちらを出すのが無難。とはいえ上半身およびドリル部分は打点が高いので、やはり背の低い相手や姿勢の低い相手には当たりにくい。 突進方向はダッシュの方向に依存するのは他の突進技と同様で、サイファーのSLCダイブのようにスマート操作で向き直らせたり、いわゆる空中八つ橋入力で鋭角ターンさせたりすることはできない。 こちらも無敵時間取り上げなので安易な軌道での対空撃墜や近接時のジャンプ近接カウンターには要注意。ボムで判定消されることも同様。 また空中CD特攻と同じく、射撃ヒットで中断することはない模様。 斜め前/横/斜め後ろ/後ろ 消費、威力、STダメージ、特性すべて地上DLWに準じる。 トランジションLW 【トランジションLW】 消費30% 威力100 ST100 初速から最高速で相手に飛んでいく。 当たると刺さらないですぐに帰ってくる。牽制や相殺にそこそこの使い勝手。 威力は低めだが至近距離で打つとすぐ戻ってくる上に低消費。その気になれば数回連射ができるので軽量級へのプレッシャーや最後の押し込みには有効。 近接攻撃 ダブルロックオン距離79(14機中9位タイ)。 【地上近接】(1段目)威力225 ST550 (二段目)威力275 ST1500 右手のクローランチャーで殴りつける、二段目はそのままクローランチャーで挟み潰し、火炎を噴き出しながら右後ろに引き抜く。 万力を発射した状態だとモーションは取るが攻撃判定はない。 一段目は正面へのリーチ自体は40程度と平均的だが、出が遅く、右側から大きく振りかぶるように見えて実は攻撃範囲は正面のみと、きわめて貧弱な性能。二段目の腕には一応ちゃんと後ろまで当たり判定があるので、運がいいと後ろから切りかかってきた相手の顔面を焼き払うことも。 アファームド一族にはこっちの近接を見てからの後出し近接で殴り負けるので、付き合ってはいけない。 近接一段目ヒット→キャンセル前ダッシュ→最速入力前DLW(ドリル特攻)で、大ダメージの轢き逃げ連携攻撃になる(合計HPダメージ925)。目の前で相手がジャンプ近接などの大業を空振りした時には狙ってみたい。 【空中近接】威力500 ST2000 空中から振りかぶってドリルを叩き付ける。空中CD特攻と並ぶ、ドルドレイの貴重な70pt攻撃。 空中近接としては他の機体と比べてHPダメージの高い部類で、地上近接2HITと同じ威力がある。 しかし左から殴りかかるモーションのため、低い高度から出してしまうと腕を振り切ることができず、敵を正面に捉えていても当たらないという難点がある。 また発生速度やドルドレイの図体の大きさが災いし、同じタイミングの空中近接や地上近接に切り負けることも多い。ゲージがあるなら特攻や空中前ビを使った方が確実かも知れない。 空中で前方に踏み込んで殴りかかるので、ジャンプ頂点から出すと実は地上近接よりも射程が長い(距離100)。 こちらもドリルを発射した状態だとモーションは取るが攻撃判定はない。 【ダウン近接】威力200 ST0 ダウンした相手にドリルを突き刺す。 実は空中近接を追い討ちに使った方が威力が高い。発動が遅く範囲も狭いので無理に狙う必要はない。 当然だがドリルを発射した状態だとモーションは取るが攻撃判定はない。 ブーストウェポン[VW] 「四獣ニ命ヲ(はたらけバカども)」 (衝撃波)威力144 ST2000 (踏みつけ)威力780 ST3600 ドリルを地面に突き刺し、その地点を中心に広範囲の衝撃波を同心円状に4回、約2秒間隔で巻き起こす。発動時には射出中のドリルと万力が自動的に回収される。 衝撃波は地形を貫通し、攻撃判定はちょうど円状に広がる土煙の下の地面部分(障害物や地形にかかっていればその上に攻撃判定が発生)である。なので、見た目は派手だが敵も土煙を目印にしながらジャンプや低空ダッシュでかわすことができるし、空中前ビや空中突進技などで衝撃波を飛び越えながら反撃される可能性さえある。 さらには敵が近距離にいる場合、1発目の衝撃波を飛び越えながらの空中近接が確定してしまう。攻撃中にドルドレイ本体がダウンすると後続の衝撃波が発生しなくなってしまう仕様のため、こうなると敵機は無傷で離脱できてしまう。敵機の状況やゲージ残量を把握して、反撃を受けないタイミングで出す必要がある。 衝撃波の半径はおよそ300。障害物の上など高い場所(ダートステージの塔の上など)から出すと、土煙のエフェクトはドルドレイの同高度から発生しているように見えるが、実際の判定は地表に発生する。 敵のSTゲージが30%以下の時に衝撃波をヒットさせると70pt+追撃可能ダウンとなる。追い打ちまできっちり入れれば、70×2+20×2=180ptと大量リードのチャンスなので是非狙いたい。 この技の流れは、カットインして巨大化→ドリル突き刺し→衝撃波発生→ブースト状態発動、というものである。そのため、敵が近距離にいる場合に最初のドリル突き刺しや衝撃波の出かかりを相手にヒットさせてしまうと、まだブースト状態に入っていないため威力120の30ポイントにしかならない。STゲージ回復目的で使う場合も、ブースト状態への移行が遅いことは考慮しなくてはならない。 さらにドリルを突き刺した先が上り坂や障害物の中だった場合、衝撃波の中心が地形に埋まってしまい攻撃判定も衝撃波も消えてしまう。使用場所にも要注意。 (固有バフ):ブースト状態終了まで機体が巨大化し、一部の攻撃が変化。さらにCWゲージの回復が目に見えて早くなる。ただし、通常時は可能だったジャンプ下降中の空中ダッシュが不可になってしまう。 巨大化中は近接攻撃が踏みつけになり、威力と踏み込み距離が強化される。 踏みつけは「ダブルロックオンしていなくても敵に踏み込んでいく」という近接攻撃としては例外的な性質があり、なんとノーロック状態で出しても自動的に敵の方へ振り向いて攻撃する。1回の踏み込み距離は約84、足のリーチも合わせると140ぐらいまでは届く。ただし機体のダブルロックオン距離自体は変わらないため、ガードは距離79以内のみでしかできない。 単発技だが踏みつけを踏みつけでキャンセルできるため、これで敵を延々追いかけ回すことが可能。そのかわり踏みつけはジャンプやダッシュでキャンセルすることができないので、動きがワンパターンになってしまいがち。 体験版では敵が近距離にいるなら踏みつけ連発だけでも相当なプレッシャーをかけられた…が、製品版になる際に大幅に弱体化。連打はできるものの判定が出るまでラグがあり、判定も甘いので通常近接で容易に潰されるようになってしまった。 巨大化後は当たり判定が大きくなるため、普段は当たりにくい攻撃にもガンガン当たって的になる。また自機が大きくなることで正面の敵機が見えなくなってしまうため、近接が得意な機体に張り付かれると自分自身が目隠しになって一方的タコ殴りにされるといった目も当てられない事態が起きてしまう。一応トランジションで姿勢を低くすれば多少前を見やすくなるが、トランジション状態ではさらに近接攻撃を狙われやすいのがネックである。 一応悪いことばかりでもなく、ドリルとクローランチャーも大きくなるため巨大化後に相手に刺すと対戦相手の視界を塞ぐことができ、対人戦では有用な妨害が可能。そして特攻の当たり判定も巨大化するため、空中CD特攻で140点のロマンもある。CWゲージの回復強化により射撃能力も強化されているので、敵機に与えるプレッシャーは確実に増している。 とはいえデカイ図体で闇雲に突進しても、敵の弾幕で蜂の巣にされるのがオチである。VW後は、まずは衝撃波に敵を追い込むように動きつつ射撃を出していくのが定石である。 各モード攻略 ストーリーモード 第3章「サード」のメインストーリーとして登場する。 チュートリアル チュートリアル1および2(いずれも移動系)に、土御門元春が登場し、当麻や小萌先生とやり取りを繰り広げる場面がある。
https://w.atwiki.jp/meteorit/pages/36.html
#これにあわせて、http //www20.atwiki.jp/porepole3/pages/13.htmlの政策を提出します 協力していただいた方 宰相府の皆様 ISSの皆様 越前藩国様(情報戦およびオペレート) 土場藩国様(気象操作装置) ISSを通して来て頂いた、有志の皆様(http //p.ag.etr.ac/cwtg.jp/bbs2/23578) 対策 基本構想 SS1閑話 SS2 対策 白亜宮の完成が先送りにされ、落成にあわせた披露宴日取りを少し遅らせてスケジュールを組んだのは、理由がある。 ペルセウス・絢爛・レムーリアの三正面作戦を前に、しかもその前に結婚式という要人が集まる場があるのだ。誰かが何かをするにはもってこい。そう、考えた。 想定したのは、爆殺・毒殺・狙撃、そして直接攻撃である。対する星鋼京のアプローチはこうであった。 仮に賊が現れるなら、手段を直接攻撃に限定させる。かつ、同時刻で別の場所で問題を起こすような、陽動の可能性を減らす。 まず取り掛かったのは、白亜宮製作の出入り業者のチェックである。何か妙なものを持ち込んではいないか、壁に爆弾でも埋め込もうとしてないか、照明に照らされた模様が何かの魔方陣になっていないか…。 白亜宮には、奇眼の血も取り入れるという事で、最小限ながら魔術的要素が組み込まれている。このバランスを破壊され、遠隔的に害を与えられる事は避けねばならなかった。 空港、駅、港などの交通網の要所と、藩国内の街灯周辺もチェック。街灯を利用したテロ行為はまだ記憶に残っており、それらが再利用される事も懸念された。同時に国内の橋を含む主要建造物の増築・改築に関してもチェックが入れられた。これは白亜宮と同じ理由でもあり、陽動テロの危険をつぶす面を持った。 また、トレーサビリティ関連のみならず、その他の荷物の出入りも幅広くチェックを行われ、兵器・核・その他危険物の持込を禁止した。後にこれらの荷物チェックは、公共事業として正式に発注・継続される事になる。 合法的なものかつ危険物については、在庫管理の徹底を義務とするに留まっている。当然、警備期間中の一定距離内への持ち込みも禁止された。 毒殺については、披露宴のスタッフに身元の確かなものを配置し、作業前の本人チェックと食材・飲み物の検分を行う事で対処した。これらの手間の侘びとして、少し彼らの賃金を足している。 給仕などはバトルメードの職を持つものから選抜し、何かあったときの護衛を兼ねる。これは同時に暗殺者足りえるので、身元の確認もしっかりと行われた。 爆殺に関しては、解体に人員をとられる危険性を考え、液体窒素を用意した。 過冷却によって、タイマーなどの部分ごと物理的に爆発しない状態にし、安全な場所まで運ぶ作戦である。噂に聞いた生物兵器を取り付けた爆弾に関しても、同じ対処をする予定であった。こちらは過冷却でケースが破損して中のものが流出するのを防ぐため、特殊な袋をかけて凍結する手順になっていた。 ちなみに何度かのテストの結果、幾人かの凍傷の労災認定と共に実用性が確認された。 これらは摂政・御鷹の元、臨時に雇用された10000人の設定国民(これも就業率に計上されている)の中から魔法使い系及び世界解析が使用可能な風の中心を探すものアイドレスを持つものが魔法の知識を担当し、整備士を中心としたものが科学技術分野を担当、三重のクロスチェックのもと一月かけて終了させた。勿論、初めの方にチェックしたものに細工されても困るので、あとからランダムに選出した箇所をチェックする事も忘れない。これらは一部当日の阿弥陀で決められ、情報漏れ対策に当てられたといわれているが、事実は不明である。 #月3000*一万人*一ヶ月=3000万 当日及び要人の移動が集中する日は、各移動ルート上の建造物に人員を配置。狙撃ポイントをつぶしにかかる。 加えて、表向きは披露宴の警護としてISSへの打診を行った。当然、事前に案を提出し、向こうの検分を受ける手はずである。 皇帝軍にも話を通した。信用されていないのは承知の上であるが、連絡不足による穴を突かれるのは避けたかった。 期間中は医師も詰めてくれる事になっていた。これに併せた訳ではないが、星鋼京の警察・病院・消防署をISSに管理して貰う事も打診している。消防署は陽動によって災害が発生した場合の備えである。問題発生時には街灯の停止も指示している。 裏では人員を星鋼京の兵器庫にも回した。宰相府から運ばれてくる絢爛向けの兵器に手を出される事は避けたかった。 酷い話を言えば、要人が何人死のうが(星鋼京としてみれば激烈に困るが)大勢に問題が出そうには無かった。 だが皇帝は別である。その後の混乱は計り知れず、亡くなってしまえば星鋼京と帝室との関係も困った事になりかねない、何よりまあ、新婦の縁者を死なせる訳には行かない。 語弊のある言い方をすれば、ここまでやっても本命には意味がないだろうと思っていた。 そう、短剣を操る白いサマーセーターの男である。奴は絶技で飛んでくる。そして皇帝が射撃無効なのを知っている。そして近場の人間と入れ替わる… 不安は尽きなかった。 /*/ 基本構想 ICG 白亜宮落成式の警備方法を記述する f:警備の大前提 = { 1:ペルセウス・絢爛・レムーリアの三方面の作戦を前に控えた時期である 2:結婚式という要人が集まる場であり、さらには皇帝も参列する 3:白いサマーセーターの男の目撃情報が出た。これは例の男の影を示唆する証拠である 1・2・3から、何らかの妨害が起こる可能性が高く、警備に尽力する必要がある } f:警備の事前準備 = { ISSに当日警備の依頼を出し、藩国内人員も可能な限り協力する 宰相府にも警護の協力依頼を出し、公式の招待状も手配する 皇帝軍にも話を通し、非常事態には出動要請を行い、また皇帝の星鋼京外への出立時の警備に穴が出ないよう、警備方法と手順について相互確認しておく よりVIPに近い場所の警備に当たる人員を身元、経歴などで選別し、魔法その他による異常状態になっているものがいないかチェックする TLOに関する、あるいは世界の問題にかかわる能力を持つ人には、それを封印してもらう(治癒師の特殊など) } f:警備の事前準備2 = { EV127事前偵察で使用した天候操作装置を土場から借りて蒼龍に配備、雲を利用した魔方陣などに対策しておく 越前藩国の協力の下、ISSに出向中の犬士の方たちによる、情報処理サポートを受ける 外交的に問題がある行動を取るとき、宰相府かISSを間に通して問題を解消・緩和できないか先方と協議し、手があればその解決案を採択する #土場はあさぎさんに、越前は黒埼さんに話を通しています 参列者の中でNWに好意的なACEには予め話を通し、有事のための協力を要請しておく(危険時のパニックの沈静化・覚悟を決めておいてくれなど) #星鋼の生活ゲームに以前同席したしらいしさんに、「何かあるかも知れません」と相談しました。当人が参列するかは判りません } f:対アンデッド基本作戦 = { 呼吸器系まで換装したフルボーグなどを除き、呼吸をしていないあらゆる人間を治安計画に組み込まず、かつチェックする。病院の霊安室などの常識的な場所に居る存在も、念のためチェックする(夫の故郷に埋葬したいのです、などといって、死体として入国されても困るので) ゾンビに対しては投網などで動きを封じる作戦に出る。銃を構えたり、腕をちぎって投げてくるような相手で無い限りは、動きを止めて遠距離から攻撃すればどうにかなる。屋台の焼きそば屋のプロパンガスのボンベを投げつけてふっ飛ばしてもいい スケルトンには放水を活用する。骨の比重は水より軽いため、消火用の放水ホースなどで転倒させれば一時的に無力化できる。この方法なら周囲の民間人への被害も少ない。流れ水(?)で風邪を引いたら見舞金を出す。転倒させて有利な修正を稼いでから処理する。可能ならば腰骨・背骨を優先して破壊し、人体として直立できない状態にするのを狙うと良い } f:宰相府への兵站システム使用要請 = { <f:警備の簡単な序列>で一位に書いてある御鷹は、PPGに名義がある。これを元に、可能であるならば本警備で発生する燃料消費に宰相府の海軍兵站システムを適用させてもらう 兵站システムが適用されれば燃料消費は楽になり、予算と言う縛りが一部緩和されるので、より景気良く行動できる(その分治安維持能力が上がる)。 f:警備の簡単な序列 = { 一位:御鷹摂政 二位:ISS(ISS内の序列は向こうにお任せする) 三位:星鋼京の人員(ポレポレ・キブルゥ他) 四位:警官・消防隊員 なお、なお、御鷹摂政は基本的にISSの要請に同意する } f:ISSに知恵を借りる = ISSはNWの治安を守っている実績がある。その知恵を借り、より効率的に警備シフトを作成できる。 f:建造物のチェック = { 主な建造物は、建築途中から可能な範囲でチェックしておく。困難な場合は、ISSと相談して適宜省略する。 f:建造物のチェック内容の例 = { 1:出入り業者のチェック(何か妙なもの・素材を持ち込んではいないか、など) 2:建築中のチェック(壁に爆弾でも埋め込もうとされてないか、など) 3:構造のチェック(照明に照らされた模様が何かの魔方陣になっていないか、など) 4:不振物のチェック(何か仕掛けが施されていないか) } f:建造物のチェック対象 = { 白亜宮{白亜宮は、奇眼の血も取り入れるという事で、最小限ながら魔術的要素が組み込まれている。このバランスを破壊され、遠隔的にTLO化を含む害を与えられる事は避けねばならなかった} 空港、駅、港などの交通の要所 街灯などの照明設備{街灯を利用したテロ行為はまだ記憶に残っており、同じ手口も懸念された} 増築・改築された国内のそれなりに大きな建造物 河川に掛かる大型の橋(爆破などで移動を制限されると困るので) 上下水道施設(毒物混入騒ぎを避ける) } } f:国内外の荷物の出入りチェック = { 商業港・空港・鉄道で荷物の持ち込み検査を開始する。 兵器 核 その他危険物(帝国法に準じる) 以上の、藩国の許可を伴わない藩国外からの持込を禁止する 合法的かつ危険物については、現存するものは管理者による在庫管理の徹底・情報提出を義務とする。披露宴期間中の一定距離内への持ち込みも禁止。やむをえないと判断された場合には、管理者の名義確認・用途・容量のチェックを行い、その上で監視つきで通す 追記:後に、公共事業として星鋼京内で継続される。 } f:殺害方法に対する対策 = { 毒殺対策{ 披露宴のスタッフに身元の確かなものを配置し、作業前の本人チェックと搬入資材・食材・飲み物の検分を行う事で対処する 給仕などはバトルメードに連なる職を持つものから選抜し、何かあったときの対処人員(医師の手配・応急処置など)を兼ねる 手間の侘びも兼ねて、少しスタッフの賃金を足す } 爆殺対策{ 毒殺対策の資材チェックと一緒に、危険物の持込をチェック, 爆弾を発見した場合、液体窒素(アイドレス工場などの工業筋から調達する)で冷却し、安全な場所での爆発処理を試みる, 生物兵器を併設するタイプの場合は、入れてある容器が破損しないように耐圧容器でくるみ、冷却する。なお、作業中の凍傷には、労災を認める } f:狙撃対策 = { 当日及び要人の移動が集中する日は、各移動ルート上の建造物に人員を配置。狙撃ポイントをつぶしにかかる。 } 呪術・魔法対策 = { (いれば)神殿の僧侶や、知識のある魔法使い系の人員に巡回をお願いし、それらに関係するようなものが無いかをチェックして回り、ある場合は解除を試みる。手に負えない場合は宰相府その他の魔法エキスパートに連絡し、情報を請う。連絡回線は越前藩協力のサポート部隊により保持する } } f:対策人員 = { <f:建造物のチェック>および<f:殺害方法に対する対策>は、摂政・御鷹の元(同調判定絶対成功の特殊により)、臨時に雇用された10000人の設定国民(これも就業率に計上されている)が、三重のクロスチェックのもと二月かけて終了させる, 勿論、初めの方にチェックしたものに細工されても困るので、あとからランダムに選出した箇所をチェックする事も忘れない。これらは一部当日の阿弥陀で決められ、情報漏れ対策に当てられたといわれているが、事実は不明である, #月5000*一万人*一ヶ月=5000万 整備士・舞踏子系アイドレス所持者が科学関連の視点から、魔法使い・精霊使い系アイドレス所持者が魔法関連の視点からチェックする } f:問題発生時の備えあれこれ = { 星鋼京の警察・病院・消防署をISSに管理して貰う事を打診しておき、正常機能を取り戻させる(その為の雇用拡大を藩国経済の許す範囲で行う), 大事になる場合は、星鋼京国軍非常事態時行動規則(http //www.awg-fsmd.jp/~machinpia/idress/etc/approach/02/02b.html)を適用する。非常事態宣言の発令は現地の藩王・摂政のどちらかが行う(判断は他の人でいい)。また、藩王や摂政が行動不能になる場合を考慮し、先の両者に連絡が取れない場合、現地での合議で決定するISS職員1名にこれの発動件を貸与する, 現在の星鋼京の治安維持能力37(ショップ調べ)・災害救助能力20(消防署15+市民病院5) } f:祭事中の設定国民の避難について = EV124前に初心者騎士団から頂いた避難訓練のデータを元に、避難場所を設定・告知しておく。また、避難場所にトラップなどを仕掛けられていないかあらかじめチェックする。 f:対策本部 = 藩国の真ん中に位置する警察署を間借りする。オペレート行為が出来る犬妖精や舞踏子などのアイドレスを持つ人員を配置し、各方面との連携を取る。連絡回線は越前藩協力のサポート部隊により保持する f:警護人員 = { シーズンオフで被害にあった3万人の補充と、さらに消防署の要員を含む3万の追加雇用を行い、これに当てる, ISSの管理下の施設に配置し、指示によって治安維持に当たる, 当日は無線を配備し、各所の伝達の即時性を高める。また、定期連絡を密とし、以上があった場合にすぐ判る様にする } f:警護人員のその後 = 本人の希望を尊重するが、特に異議が無ければ各種公共施設の人員として雇用する f:病院の機能回復 = { <f:警護人員>で雇用した方の中から、メード系などの応急手当の心得のある方や受付・事務処理能力のある方を病院に待機させ、贈られて来るであろう負傷者の対応に当てる。 生物資源3万トンを国庫からだし、軽症者への医薬品(包帯・傷薬など)を生産して病院に配置する #BK警備保障がしまっていたため、青十時の常備薬が購入できませんでした。 } f:星鋼京の兵器の貸し出し = 職務上で有用であれば、ピケ・ダックスなどの一部兵器を警備人員に貸し出す。無理な場合はISSへの寄付と言う形をとる。 f:医療スタッフの迅速移動 = 歩兵みなしを持つ医療可能なACEや、みなしにレーサーを持つ猫野和錆氏に、(断られなければ)ピケを貸与し、現場への移動に役立ててもらう f:本命 = 例のサマーセーターが現れる事を想定し、皇帝の身辺警護には限られた人員のみつける。絶対成功などの能力を持つものが居れば、他の警備に抵触しない範囲で優先して配置する。 f 孤児たちの面倒 = 白亜宮の一部に場所を用意し、衣・食・住の確保をする,ポレポレの持つ資産からチョコレートを送る。 IWG 以上 /*/ SS1 一通りの白亜宮でのイベントがつつがなく終了し、皇帝は帰る事になった。 無論自家用ジェットであるが、空港に行く事に変わりは無い。 数名の護衛を引きつれ、空港のV.I.P席で珈琲を飲んでいた所だった。 『ソレ』が現れたのは。 白いサマーセーターに短剣を持っている。 無造作に振るった、短剣が、ヒュンと、風斬り音を立てた瞬間。 ぼとり、と何かが落ちる音がした。 ついで、噴出す生暖かい紅い液体。 飛んだのは首、噴出したのは血と悟る僅か0.2Sec。 空港は狂乱の渦へと巻き込まれた。 ギィィィンキィィンギィン!!!! 響く剣戟。 皇帝の剣と白いサマーセーターの男の短剣が交差する。 実力は恐らく白いサマーセーターの方が上か。 しかし、短剣と通常の剣。そのリーチの差と皇帝としてのプライドだろうか、が状況を膠着させていた。 そして 「っち、GT!!弾丸が底を尽きそうだ、お前の方は幾つ残ってる!?」 「こっちも余裕は無いですって!!御鷹さんは!?」 「すいません、もうこれが最後です」 職務で離れられないフシミに変わって、皇帝を見送りに来た、LC、GT、御鷹の三人もそれぞれ奮闘を続けていた。 白いサマーセーターの男が現れると同時、無数のゾンビが現れた。 空港の警備隊も当初こそ応戦していたものの、ゆっくりとその数を減らしていた。 そしてこの三人は何とか皇帝にゾンビを近づけまいと、壁を作っていたのである。 「くっそ、阿鼻叫喚の地獄絵図だな……!!」 ドズン、とゾンビの頭を撃ち抜いたLCが吐き捨てる。 「そろそろヤバイですね……これが最後です」 最後のマガジンを銃に詰めながらGTが告げる。 「今、ポレポレさんに支援を求めています、あと少し、何とか持ちこたえてください」 兼ねてより、デリンジャーしか持ち合わせていなかった御鷹は何とか外部との連絡を取ろうと躍起になっていた。 ちらり、と皇帝の方を見やる。 流石は皇帝、といった所か、あの白いサマーセーターの男、クーリンガンを前にして一歩も引いては居ない。 しかし――……勝つ事は無いだろう、とも思う。いや略それは確信だった。 恐らく皇帝は勝てまい。このままでは、恐らく皇帝は死ぬ。 御鷹の脳に最悪の絶望が写った瞬間…… ガション GTとLCの銃が仲良く弾切れした。 此処まで銃弾で何とか皇帝の所へゾンビを足止めするのと共に、自分達の命を保ってきたのだが…… その命綱が断たれた。 「………くッ」 終わり、だと思った――次の瞬間。 スパン――…… ドズム………!! 斬撃の音と、打撃音が響いた。 LCが手に持った二本のククリで、GTが警棒で、それぞれゾンビを纏めて数体見事に蹴散らしたのである。 「え?」 御鷹が感嘆を漏らす程に、見事な手際であった。 「いやいや、こんな所で使う事になるとは……」 「密かに特訓していた甲斐がありました」 トン、トンとリズムを取る二人。 未だ希望はある。ほっと安堵を取ると同時、再び御鷹は外部との接触を試みた。 数分後。 「無理が、あったな……」 「ありましたねぇ……流石にこの数相手にククリと警棒じゃ……」 三人は見事に追い詰められた居た。 これ以上下がれば皇帝とクーリンガンとの戦闘圏内だ。 それは即ち、自分達の死と、皇帝の死さえ意味していた。 散発的な銃声や悲鳴、怒声を聞く限り、未だ生存者は居るのだろうが、救援に駆けつけてくれるとも思えない。 ぎり、と御鷹は唇を噛む。外部との連絡は未だ取れない。 「……アレがあれば……もう少しは保つんだが……」 「確かに……此処はアレ、しかありませんね……」 LCとGTが同時にうなずきあう。 「な、何ですか!?それはッッ!!」 御鷹が食いつく。後少しで外部との連絡は着く。それまで持たせられればあるいは――…… 「うむ、ツンデレだ」 「へ………?」 「ツンデレです」 「は………?」 大事な事なので二回言いましたッ面のGTとLC。 「いや、ええっと………」 言葉に詰まった御鷹だったが…… 「べ、別に好きで言ってる訳じゃないんだから……勘違いしないでよね!!………頑張って……」 ヒュィン―――、ドズムドズムドズム。 周りを既に包囲していたゾンビが倒れ伏す。 此処に来て、神業じみた動きで、LCとGTは立ち上がる。 「っふ、作戦通り………ッッ!!」 「一国の摂政のツンデレ……俺はもう死んでも良いです、LCさんッ!!」 おお、と何かに感動しながら高速で敵を薙ぎ倒す二人。 「あ、貴方達はッッ!!」 御鷹が流石にぶちキレた瞬間、 『此方ポレポレ、どうした?』 外部との連絡が通じた。 嘘のような、本当の逆転劇は、今、此処より始まる。 /*/ 閑話 一言で言うと、彼らはバカである。 今までもそうであったし、きっとこれからもそうだろう。 それが良い事か悪い事かは他人の判断に任せるとして。 彼らは今でも、良き隣人である。 /*/ “通気ダクトのチェックもお願いします。自分たちが息してないからと言って、ガスでも巻かれるとやってられない” “貯水槽に毒でも入れられ、医者を移動させられたら…一応河川と貯水槽のチェックもお願いします” ポレポレが本部に詰めていたのは、なんでもない。単に本人がびっくりするぐらい弱かったのと、あとはまあ、第七世界人も仕事はするというポーズのためである。いや、一応各所との折衝とかもやっている。 妄執と言えるまでのしつこさでチェックを要請するため、現場では煙たがられている。どうでもいいがこの男、仕事前に責任者全員の下を万屋の菓子折りつきで挨拶に回っている。 彼の主な仕事は、本部詰め所での雑務である。 空港での襲撃と通信回線切断の報が入ったのは、その雑務をこなしていたある日の事。 「現地との通信復旧と、応援の手配を。ダックス部隊もお願いします。あと陽動の警戒も」 ビビリはしたが、この程度でパニックになるほどでもない。想定してないはずも無い。 ISSに派遣されていた越前のハッカー犬士が、即座に対応する。復旧した通信を通じて、各所の情報が伝わり始めた。 「うちの流通のチェックの穴を利用して準備したかな。取り敢えず民間人の避難を最優先に。 蒼龍も飛ばして下さい。上空から友軍の支援と航空写真の送信。高弟とか居なきゃ良いけど」 「現場からの通信。御鷹摂政からです」 「お願いします」 『――俺はもう死んでも良いです、LCさんッ!!』 『あ、貴方達はッッ!!』 ? ? 切羽詰ってる割には喜びの色が見える。 「此方ポレポレ、どうした?」 /*/ ハッカー部隊が画面に空港内の地図を表示する。同時に現地までの信号を操作。ノンストップで急行する味方。情報戦マジスゲェ。 「横の防火シャッターを下ろしてください。南側のはそれで止まるはずです。それと、今救援が向かっていますので、もう少しの辛抱です」 通信を切って確認。他のポイントでの事件のチェック。 「屋外では必要なら式典に並べたI=Dも送って下さい。なるべく白兵優先で、流れ弾を出さないように。要救護者の搬送と救出には消防署にお願いしましょう。病院がパンクするかもしれないので、軽傷者はメードさんによる治療を」 「和錆さんにはピケで現地に行ってもらいましょう。レーサーみなしなら、たぶん」 「空港からアンデッドが溢れたら…蒼龍に精密爆撃を要請。市街に入る前に足を止めてください。それと、防火シャッターで良いから向こうの移動ルートを制限して」 矢継ぎ早に指示を出す俺カッコイイ、と言いたいが、単に打ち合わせ通りに指示を出しているだけである。 そもそも直接攻撃以外の手段を妨害する方策をとってきたのだから、後は直接しかない。そして、直接攻撃さえ防げば、どうにかなる。 /*/ SS2 響く剣戟の音は未だに続き。 この命は未だに鼓動を続ける。 それを、奇跡のようだ、と御鷹は思った。 背後では皇帝がクーリンガンと戦闘を。 前方ではLCとGTが無数のゾンビ相手に格闘戦を。 未だに続けている。 既に余裕は無く、皇帝も圧され、LCとGTは満身創痍だ。 そんな中、自分は祈る事しか出来ない。一刻も早く、救援が来るように、と。 キィィ―――ン、と言う一切甲高い音。 皇帝の剣が弾き飛ばされる。 無慈悲に、クーリンガンの短剣が皇帝の首を狙う。 「皇帝ッッ!!!」 御鷹のその声に応じてか、LCが咄嗟に一本のククリを投擲する。 投擲されたククリは円を描きながら、正確にクーリンガンの首を背後から狙う。 取るに足らぬ一撃だったろう。クーリンガンなら避けるにすら値しない。 しかし、皇帝の取った行動がクーリンガンの予測を覆す。 無慈悲に首を狙う短剣の切っ先を掠めるように、投擲されたククリに飛びつく。 一撃目を交わされたクーリンガンが返す刀で心臓を狙う。 ギィィィン――…… しかし、その一撃を皇帝は手に取ったククリで防いだ。 「中々の業物だ、使わせてもらう」 そうして、再びクーリンガンと皇帝は対峙する。 一方、ククリをかなり無理な体勢で投げたLCはその身をゾンビの群れに投げ出していた。 GTとの距離も遠い。 見えるゾンビをもう一本のククリで撫で斬りにし、何とか身を起こそうとするも、ゾンビの数は減らない。 両足を掴まれ、残る左腕で思いっきりゾンビの頭を打ち、それでも抵抗を続け――…… 「―――ッッ!?」 眼の前にゾンビの顎。 咄嗟に庇おうとする腕も上がらず――…… パンッと、ゾンビの頭が破裂した。 「ISSだッ!!」 タタンタタタンタン!!! 軽い音と共にサブマシンガンが火を噴く。 一斉に雪崩れ込んでくる人影。 次々にゾンビを撃ち殺していく。 その間にLCとGT、御鷹は集まる。 「全員無事か」 「何とか……」 「私は……戦ってすら居ませんし……」 そうしてISSがゾンビと戦っている最中、御鷹の元へ一人の青年が駆け寄ってくる。 「警官隊、消防士、到着しました」 ビシっと敬礼する青年、やや緊張しているようだ。 「あ、……解りました。では警察官は民間人の保護を最優先に。 消防士は二班に別れ、一斑はISSと共同でホースを使っての制圧、もう一斑は火災の起きた地域、あるいは起きた際に備えて下さい」 御鷹は即座に指示を飛ばす。 青年はサー、イエッサー、と返事をすると駆け出していった。 その後も御鷹は次々と指示を的確に飛ばしていく。 鎮圧用か窓を割ってダックスが突入し、ゾンビを踏み潰していく姿も見える。 「となると、ゾンビの方は任せて良いな」 「問題は此方、ですね」 LCとGTが皇帝とクーリンガンの戦闘を見やる。 「物量作戦、でも勝てはするんだろうが、な」 「嫌ですか」 「皇帝に貸しを作りたい、それに嫌がるだろう、そういうの」 「まぁ確かにいい気はしませんが……何か策が?」 口元を綻ばせる。 「今、猫野和錆って凄ェ医者が着てるらしい」 「………嫌な予感がします」 「大丈夫だ、死ななければ何とかしてくれる、それに皇帝に貸しは魅力的だ」 「あ”あ”あ”……やっぱりぃ……」 LCとGTはゆっくりと皇帝とクーリンガンの戦闘圏内へと入っていく。 皇帝とクーリンガンの戦闘は一進一退を極めていた。 推しては退く、退いては推す。 圧倒的な実力差を、埋めているものは…… ギィン……!!! 既に皇帝の手の中には自分の剣とLCのククリがあった。 異なる武器の二刀流。 相手のリーチに入ってはククリで捌き、退いては己の剣で攻撃。 皇帝が皇帝たるスキル/威厳だった。 しかし、それを以ってしてもクーリンガンを討つには一手、後一手足りない。 「ォォォォオオオオオオ!!!!!!」 其処に、咆哮を上げてGTが真横から走りこんでくる。 素手、しかし首と心臓を両手を交差させて護っている。 相手の武器は短剣、ならば自然と狙う箇所は限定される。 曰く、首、心臓、そして急所。 前のめりになった特攻状態では急所は極端に狙い辛い。ならば、首と心臓を護れば――…… ザク――、と。 クーリンガンが無造作に短剣をGTの腕に突き刺す。 そして、そのまま真横に振りぬく。 どれだけ力を込めた所で、所詮は凡人の足?き。取るに足らぬ。そう思った筈――…… 伏せる獅子。 その名を冠したLCがGTとは逆の方向から走りこむ。 「―――ッッ!?」 しかも此方は同じ体勢で突っ込んでいるが、口にククリを咥えている。 咄嗟にGTの腕に突き刺さったナイフを手放し、逆の手で腰から短剣を引き抜き、LCの腕に突き刺す。 そのまま、地面に縫い付ける、その心算だった――しかし。 「―――………ッッッッ!!!!」 GTがその体をクーリンガンにぶつける。 僅かに揺れるクーリンガンの体。 其処に、咥えたククリの切っ先を、LCがクーリンガンの心臓目掛けて突き刺す――…… 「――――ク」 それは誰の言葉だったか。 それぞれ片腕で弾き飛ばされるLCとGT。 万全を期した奇襲さえ一蹴。 「――――賦ッッ!!!!」 ・・ だが、この瞬間のみ、雑魚にクーリンガンは両手を使った。 一閃されるのは皇帝の剣。 そう、この場に置いて、最も何より警戒すべきは皇帝。 斬ッッ!!! 袈裟に体を両断されるクーリンガン。 フリーになった皇帝は、その断罪の剣をクーリンガンに振り下ろした。 「――――……クッ」 血煙と共に倒れこむクーリンガン。白いサマーセーターが真っ赤に染まる。 決着は今、此処に。 「―――……ご苦労」 ピッと、血を払い、己の剣を鞘に収めながら、皇帝が口を開く。 LCもGTもそれぞれ結構な重症ではあるが、致命傷では無い。 GTは慌てて、LCはやや面倒そうに、皇帝の前に畏まる。 「中々良い、意気であった」 一瞬GTはこの場で首討ちもありうるな、と思っていたが、少し安堵した。 何しろ皇帝の一騎打ちの邪魔をしたのだ。 「そして、この短剣は面白い形をしている。中々興味深い」 ククリを始めて見るのか、LCのククリを撫でる。 「皇帝に使って頂ければ、これ以上の幸福はありません」 あんまりそうは思って成さそうな――どちらかと言うとそれ結構高いんですけど的なオーラを出しつつ――答えるLC。 「では記念に頂いて置こう」 えーと抗議の声を上げるかと思いきやLCは微笑んだ。 内心、貸し2ゲットォォォォォッッと叫んでるんだろうとGTは思ったが口にしなかった。 「では、医者に見て貰うと良い。その腕の傷は浅く無い。それに私が診る限り、肋骨も折れているぞ ――――ふ、それにしても、フシミは部下に恵まれているようで何よりだ」 皇帝は既にクーリンガンに興味を無くしたのか、悠然とその場を去っていく。 何処から来たのか、ISSの連中がそれを護衛しようとしてうっとうしがられてるのが見える。 「ふーやれやれ、ようやく一段落か」 「いや、LCさん、肋骨折れてるらしいですし、そもそも未だISSとかメッチャ戦ってますけど」 とっとっと、と軽い音と共に、御鷹がやって来る。 「二人とも無事でしたか――って、血塗れ!?」 一通りあたふとした後、来た時より5割増しで医者を呼びに行く、御鷹。 「俺等の仕事はこれで終わりさ、後は他の連中が頑張るだろ」 「良いンでスか、それで」 「ククリと弾丸代だって安くぁねぇんだぜ」 「いや、出してくれますよ、国が」 「まぁとりあえず、だ」 「はい」 「医者に診て貰おう」 「はい……」 血塗れの二人はばったりとその場に倒れ伏した。 次の日、新聞にはこう記事が飾られる事になる。 『皇帝、クーリンガンを撃退』 其処に割と深く携わった、星鋼京の三人の記事は書かれていなかった。
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/44435.html
登録日:2020/03/24 Tue 15 28 56 更新日:2023/07/12 Wed 07 42 23 所要時間:約 27 分で読めます ▽タグ一覧 アニヲタ悪魔シリーズ アニヲタ神様シリーズ トロール ユミル ヨトゥン ヨトゥンヘイム 北欧神話 巨人 悪役 進撃の巨人 霜の巨人 『霜の巨人(jotun)』は北欧神話に於ける“巨人”の代表的な種族であり、神話内での主敵。 基本的に北欧神話で“巨人”と云えば“霜の巨人”を指すと云う位に出番や言及が多い。 英語では直訳されてFrost Giantと紹介されている。 神々と基本的には敵対しており、巨人という呼び名からも恐ろしい怪物としての姿をイメージされることが多いものの、実際には神々や人間と近しい姿や背丈をしていたり、神話内で神々との血縁が言及されたり、人間から神の類として信仰を受けている巨人も居たりと、実際の線引きは曖昧だったりもする。 古ノルド語に由来する英語化された呼び名として、エッダに倣ってヨトゥン(ヨツン、ヨートゥン)等と表記、紹介されている場合もある。 ヨトゥンとは原義的には“大食い”や“人食い”(*1)の意味があるとされる。 尚、この語は北欧神話で言う“巨人”全般にも使われる語ではあるものの、実際には種類こそ少ないものの霜の巨人(ヨトゥン)以外にも北欧神話には幾つかの別の巨人の種族が存在する。 霜の巨人の棲む世界(国)をヨトゥンヘイム(ヨーツン、ヨートゥン)と云う。 霜の巨人の他にも山(丘)の巨人(ベルグリシ)が棲むが、血統的にはあまり区別が無いようである。 ゲルズの母アウルボザや、グロッティと呼ばれる人間には回すことが不可能だが願ったものを再現無く生み出せる石臼を回すように命じられて応じるが、最後には主人を破滅させてしまう女奴隷のフェニヤとメニヤ等が山の巨人として分類されているが、彼女達の血縁は後述のフルングニルの様な高名な霜の巨人達であるという。 このように、山の巨人と明言された巨人は霜の巨人に比べてずっと少ないが、素性を隠してアースガルドの城壁を修復する見返りにフレイヤの身柄を要求したのも、名の判然としない山の巨人であったとされる。 北欧神話に題材を取ったファンタジー作品等では“霜の巨人”に相応しい極寒地獄の様なイメージを付けられている場合もあるのだが、実際の神話内では地獄の様な場所ということもなく(*2)、敵陣ではあるものの、神々の本拠地であるアースガルドと大して変わらない文明レベルの国として描かれており、名前や現在の二次創作のイメージで原典を探ると大きなギャップを感じるかもしれない。 【概説】 太古の混沌から生じた、荒々しい大地の力の象徴であり、大自然を人格化したという意味では神々とも共通しているが、巨人の名の通りに魁偉で巨大な怪物としてイメージされることも多い。 神々と巨人の戦いとは、北欧神話が信仰された地域に於ける厳しい大自然と、それに挑む文明の戦いの縮図であるとも解説されている。 創生神話に於いて原初の巨人ユミルを生んだのと同じく、霜の巨人は霜が溶けて立ち込めた毒気から生じたとされる。 その霜とは、ニヴルヘイムのフヴェルゲルミル(*3)という泉から伸びるエーリヴァーガルという11の大河により運ばれ、その水が末端で凍って積み重なり層となった毒気を含む氷であり、その層は遥か奈落まで届く……と『ギュルヴィたぶらかし』では記述されており、毒気より生まれているが故に巨人は獰猛なのだとも云う。 実際、そこまであからさまではなくとも勇猛さと共に賢さや美しさを讃えられまくっている神々に対し、巨人は醜悪な見た目で知性の欠けた存在として描写されるのが基本ではあった模様。 『エッダ』では子供の気性が複数回に渡り巨人に例えられているという。 北欧神話や北欧神話にインスパイアされた作品でも巨人を破壊的で知性の低い存在として描くのが基本となっている訳だが……その実、元ネタである北欧神話ではそうした“基本パターン”から外れた描写のされている巨人の方が多い。 固有の名前のある巨人の場合なんかでは、前述のロキの子供達やスリヴァルディの様な“怪物”として描かれる者は珍しい部類であり、見た目や背丈も普通で地位も神々に準じるか、神と同じと呼んでも差し支えのない“巨人”が存在している。 そもそも、敵対している神々からして巨人から妻を娶っている者が少なくない上に、実際にはロキに限らず巨人族の血を引いている者も多い。 ……そもそも、最高神であるオーディンからしてがそうなのだから、神々と巨人の違いとは“実際には殆ど無い”と言ってもいいのだろう。 そうした意味では、北欧神話に於ける“巨人”とは見た目の属性ではなく、日本神話の国津神やギリシャ神話でのティターンやインドでのアスラと同様の、メインの信仰対象である神々に敵対こそすれ、 元を辿れば敵対する神々とは近縁、同根の存在であり、場合によっては神々の席に加わることもあるという位の存在と言える。 こうした構図は古代オリエントに共通するインド-ヨーロッパ族の自然神信仰に共通している構図であるし、北欧神話もまた、その類型神話である証明の一つでもある。 尚、後述のスリヴァルディの様な見た目にも怪物的な“巨人”のイメージは、後に北欧各地で伝承を語られた魔物や妖怪、精霊の類であるトロールに引き継がれたと考察されている。 トロールというと、キモ可愛い小人の妖精というイメージも強いが、ああした平和的で牧歌的なトロール像はノルウェーやスカンジナビア半島での伝承に依る物で、アイスランドやフィンランドでは邪悪で破壊的な人食いの怪物としてのトロール像が伝えられており、そうしたイメージは正に神話内での“霜の巨人”を思わせるものとなっている。 実際、トロールは年を経て強力となると複数の頭を持つようになったり、単眼の邪鬼とも呼ぶべき種が居たりする。 これも、インドやギリシャ神話での同種の怪物からの影響であるかもしれない。 【巨人と神々の誕生】 ──北欧神話の創世神話より。 まだ、世界にニヴルヘイム(極寒の世界)とムスペルヘイム(灼熱の世界)しか無かった頃。 世界ば未だ形作られておらず、中央にはギンヌンガガプ(空虚)と呼ばれる裂け目しか存在していなかったが、そこで北方と南方より吹き込んだ極端な温度差の空気がぶつかった。 北からの冷気が運んできた霜が南からの熱気で溶かされて毒気が生じ、その毒気が凝り固まってユミルという途方も無く大きな原初の巨人となった。 ユミルは自分と同じく霜から生じた毒気が凝り固まって生まれた原初の雌牛アウズンブラが氷を舐めることで滴らせる乳を飲んで暮らし、その巨大な肉体の各所からはユミルの子である巨人達が生み出されて群れを成した。 そんな中、アウズンブラが餌としていた、周囲の塩分を含む氷より人の形が現れてきた。 アウズンブラが舐め続けることで外に出でた人の形は最初の神であり、ブーリと云った。 やがて、ブーリにはボルという息子が生まれた。 如何に生じたのかは判明していないが、ボルはユミルの子の一人であるボルソルンの娘のベストラと惹かれ合い夫婦となり、三人の息子が生まれた。 長男はオーディン、次男はヴィリ、三男がヴェーで、彼等がアース神族の始祖となった。 神であるオーディン達三兄弟は血縁関係がありながらも基本的に粗野な巨人達とは相容れず、対立の末に、遂には巨人達の始祖にして長となっていたユミルを殺害するに至った。 そして、オーディンに殺されたユミルから流れ出た血の奔流は大洪水となって、最初の世代の巨人達の殆どを飲み込んだ。 しかし、ユミルの孫のベルゲルミルと彼の妻だけは方舟を作って洪水から逃れた。 そうして、別天地(恐らくはヨトゥンヘイムとなる地に)へと漂着した夫婦は、新たなる世代の巨人の始祖となった。 一方、ユミルと共に巨人の殆どを滅ぼす形となったオーディン達はユミルの肉体を解体すると、血から大河と海を、肉体から大地を、骨から山を、歯と骨の残りから岩石を、髪から草木と花を、睫毛からミドガルズを覆う城壁を、頭蓋骨から天を生み出すと、ノルズリ(北)、スズリ(南)、アウストリ(東)、ヴェストリ(西)の名を持つ小人(ドヴェルグ)に支えさせ、更に脳髄より雲を作り出して天に浮かべた。 更に、余ったユミルの死骸に涌いた蛆に人の形と魂を与え、これが妖精になり……こうして世界が生み出された。 これが、北欧神話に於ける創世神話であるが、矢張り古代オリエントに共通する原人(巨人)伝説や洪水伝説が取り入れられているのが解る。 北欧神話の神は、発生こそ巨人達とは分けられているものの、独神であった原初の神ブーリを除いては次なるボルが早速巨人であるベストラを娶って子供を生み出していることからも、矢張り曖昧な関係にあると言っていいだろう。 尚、ブーリとボルに関する記述はこれのみであり、最高神オーディンの祖父と父であるとされている以上の存在理由は皆無である。 ……ひょっとすると、アース神族の神系譜が出来上がる頃には既に存在価値を無くしていた“閑な神”なのかもしれないが、それにしても、全く信仰の形跡が確認出来ないことからオーディン(や他の最高神格)から遡って生み出された“父”に過ぎないのかも知れない。 此れはオーディンの兄弟達にも言え、オーディンが主権を握った後は直ぐにオーディンの他にはトールを初めとした息子世代の神々の物語となってしまい、本来ならば重鎮となるべき筈の弟神達に言及されることは殆ど無くなってしまう(*4)。 何れにせよ、始祖の世代から血縁関係があるにも関わらず犬猿の仲であったのが北欧神話の神と巨人の関係である。 ……一方、上記の創生神話にてユミルが生み出されるきっかけとなったムスペルヘイムには、ユミルの血族とは別の巨人族=火山の人格化と考えられる炎の巨人ムスペルと、その王にして番人であるスルトが居たことが後々の伝承にて語られているのだが、彼等が登場するのは最終戦争ラグナロクという、最終盤のクライマックス部分になってから漸くである。 創生神話は勿論、平時を描いた神話で出てくるのは殆どが霜の巨人で、稀に丘の巨人が言及される程度で炎の巨人には殆ど記述が見られない。 こうした事実からも、ラグナロクの展開や、そこで世界をリセットさせる役割を果たすスルトとムスペルは、この神話を信仰していた人々が北欧地域に定住した後に、元々の信仰に付け足していった部分なのではないかとも想像される。 また、ニヴルヘイムにはフリームスルスと呼ばれる種族が住むともされており、研究家によっては彼等は海の人格化で、ユミルより生まれた第一世代の巨人である……と主張する意見もある。 【主な霜の巨人】 ユミル 原初の巨人であり、全ての巨人の始祖。 そして、世界の元となった材料。 同様の神話はシュメールを初めとして、古代オリエントの各地に残る。 ユミルの名はインド神話に於けるヤマと同じである。 最初の死者にして、それを踏まえても名前には“混成物”や“両性具有”の意味を含むと解せ、単独で雄も雌も生み出せた理由付けとなっていると受注され、ユミルは巨人は勿論、人間の始祖でもあるという。 他の異名にアウルゲルミル(耳障りにわめき叫ぶ者)がある。 普通は、ユミルから生まれたのは霜の巨人であり、ユミルはその第一世代の長であるとされるが、前述の様にユミルから生まれた第一世代はフリームスルス(霧氷の巨人)であるとして区別する研究家も居る。 ボルソルン オーディンの母ベストラの父。 名はベルソルとされている場合もある。 名前の意味は“災いの茨”である。 古エッダの『ハヴァマール』によれば、オーディンに九つの神秘的な呪い、或いは歌(galerar)=呪文を教えた無名の巨人の父とされている。 ベルゲルミル オーディン達による始祖ユミルの殺害により生じた血の洪水より、妻と共に方舟を作って逃れた新たなる世代の巨人の始祖。 前述の様にユミルから生まれた世代が霧氷の巨人とするのならば、ベルゲルミルから後の世代からが霜の巨人であるとして分けるべきとの意見もある。 この伝承に関して、研究家はユダヤ-キリスト教の洪水伝説=ノアの方舟の件から発想されたのだろうと見ている。 ベルゲルミルの父は、ユミルの子で六つもの頭を持つ巨人スルーズゲルミル(猛烈に叫ぶ者)とされているが、カッチョいい響きはともかく他の伝承に乏しく、名前の登場してくる『ヴァフスルーズニルの言葉』を残した詩人が考え出したものだろうと想像されている。 ミーミル オーディンの伯父に当たるとされる知恵の巨人であり、その名も“ミーミルの泉”と呼ばれる知恵の水の沸きだす泉の番人たる賢者。 知識を得る為に世界を旅したオーディンは泉に立ち寄った際に、自らの片眼を担保として差し出すことで泉の水を飲む権利を得たという。 また、泉には世界の終末を告げるヘイムダルの角笛ギャラルホルンが隠されており、普段はミーミルが杯として使っているという。 ……一方、ミーミルはアース神族とヴァン神族の戦争が終結した際にアース神族より送り出された人質の一人であったともされている。 伝承によれば、彼がヘーニルと共にヴァナヘイム(ヴァン神族の国)に送られて後、当初はヴァン神族は彼等の到来を喜びヘーニルを新しい王として迎えたのだが、ヘーニルは何を決めるにもミーミルを頼る情けない男であった。 此れに我慢のならなかったヴァン神族は自分達の決定の誤りを認めたくなかったのかミーミルの首をはねてアースガルドに送り返したという。 オーディンはミーミルの首が腐敗しないように薬草を刷り込んだ上に、魔術を用いて生き返らせると、以後は首を自分の相談役として側に置いた。 以上の様に、ミーミルの伝承は微妙に時系列が解り難く、巨人なんだか神なんだかもハッキリとしていない。 一説では、泉の番人であることから水に纏わる現象の人格化である「水の巨人」であり、泉その物が肉体で首だけが立ち現れていたと想像されたりもしている。 一方、首を相談役とする猟奇的な描写については、古代のアイスランドには死んだばかりの男や子供の頭(霊?)が様々な物事を教えてくれるという言い伝えがあり、オーディンが縊死者に語りかけて様々な事柄を知るという描写と同じく、その言い伝えが神話にも盛り込まれたものだろうと想像されている。 ヴァフスルーズニル オーディンと命を賭けて知恵比べをして敗れた巨人の賢者。 前述の『ヴァフスルーズニルの言葉』にて、オーディンにアウルゲルミル(ユミル)より始まる巨人の歴史を詳らかにした。創生神話では思いっきり当事者なんですが最高神はボケてたのだろうか? 最終的に「息子のバルドルの遺骸に私は何と声をかけるか?」とするオーディンの質問には答えられずに命を落とした。 息子の名はイームとされる。 グンロズ アース神族とヴァン神族の戦争後、休戦のシンボルとして神々が吐き集めた唾液よりも生み出された聡明なクヴァシルが世界に知識を広める為の旅の途中でドワーフのフィアラルとガラールに殺されてしまい、遺体から絞り出された血と蜂蜜を混ぜて“飲んだ者を詩人や学者にする”蜜酒を作り上げた。 後にこの性悪な二人組は霜の巨人のギリング夫妻も謀殺するが、その息子のスットゥングに悪事が暴かれ殺されそうになったのを蜜酒を差し出して命乞いした。 そして、グンロズはスットゥングの美しい娘で、父の手に入れた蜜酒の見張りを命じられていた。 後に、世界を旅していたオーディンは蜜酒を得る為にスットゥングの弟のバウギの奴隷達を殺し合わせると、ボルヴェルクを名乗って取り入り唯一の働き手として信用を勝ち取ったが、バウギの口添えがあっても蜜酒を飲むことは叶わなかった。 しかし、バウギがラチ(錐)で蜜酒を隠してあるフニットビョルグ山に穴を空けると蛇に変身したオーディンが潜り込み、そこでグンロズに出会った。 オーディンはグンロズを籠絡すると三夜を共にし、メロメロになったグンロズは三口を飲むことを許すが、オーディンはその三口で全ての蜜酒を飲み干すと鷲に化けて逃げ出すのだった。ヤリ捨てですかそうですか。 娘を傷物にされた蜜酒を奪われたスットゥングはオーディンを追いかけたが取り戻せなかった。 しかし、追跡に慌てたオーディンは幾らかの雫を溢してしまい、それは誰でも飲めたので“ヘボ詩人の分け前”として広まった。 しかし、後に最高神となったオーディンは神々や才能のある人間には公平に蜜酒を分け与えた。 尚、古エッダの『高き者の言葉』では、オーディンとグンロズの愛が、互いに結ばれないことを理解していながらも純粋な想いで結ばれていたことを示す物となっており、後の神話とは印象が違う。ヤリ捨てた側の勝手な思い込みかもだが。 スリヴァルディ 雷神トールにより殺されたとされる、九つもの頭を持つとされる巨人。 名前は“三倍強い(thrice mighty)”という語が名前として縮められたもの。 トールを讃える語、そしてトールを示すケニング(代称語)として“九つの頭を叩き潰した者”が使われていることから、相当な強者だったと想像されるが、上記の様に謂わば過去の武勇伝に名前が登場してくるのみで詳細は不明。 ヒュミル 隻腕の軍神テュールの父ともされる賢い巨人。 幾つかの異説があるが、トールと釣りに出かけた際にトールがヨルムンガンドを釣ってしまう話にてトールと釣りに出かけた巨人。 古エッダでは邪悪で粗暴な性のある巨人として、エッダではトールのハチャメチャに巻き込まれてしまう好人物と、人物造形に違いが見られる。 フルングニル “最強”を謳われる巨人。だが、微妙に人間味溢れて仕様の無い性格。 頭は石で、心臓は砥石で出来ており巨体。 無敵の盾と投擲武器として砥石、更には近接武器として槍を持つ。 自慢の駿馬グルファクシ(黄金のたてがみ)により、オーディンのスレイプニルと競争していたが、勢い余ってヴァルハラ宮に突入してしまう。 こうなったら勝負も無いと、オーディンは客人としてもてなすが、フレイヤの酌もあってか悪酔いして調子に乗ったフルングニルはフレイヤとシヴを国に連れ帰り、他は皆殺しにしてやると放言をかました。 タチの悪い客が居ると云うことで呼ばれてきたトールもこれを聞いて大激怒、いきなりミョルニルで叩き殺そうとするが、雷神の怒気に素面に戻ったフルングニルは、自慢の盾と槍の無い状況では勝ち目が無いと、何とかこの場を取り繕うと決着は後日の決闘で付けることに。 国境のグリョートトゥーナガルザルで行われた決闘では、神々も巨人も“おらほのじまんのせんし”を勝たせるべく知恵を絞ったが、巨人側がフルングニルの援軍として作った巨大な粘土人間のモックルカールヴィは、雌馬の心臓を使っていたことからトールを見るなり失禁するという役立たずで失敗。 対して神側は、トールの召使いシャールヴィの“トールは地下から攻める”というミスリークが功を奏し、フルングニルに防御の為に自慢の盾を地面に置かせることに成功。 武器同士の対決に絞ってしまえばミョルニルの前にフルングニルの砥石が勝てる筈も無く、空中で激突したミョルニルはあっさりと砥石を破壊したばかりか、勢いそのままにフルングニルの頭蓋骨を砕き、決闘はトールの勝利となったのであった。 ヤールンサクサ トールとフルングニルとの決闘に於いて、フルングニルの死体の下敷きとなった父トールを生後三日目にして助けたマグニの母親とされる。 トールの正妻はシヴなので、愛人や側室と思われるが詳細は不明。 ヘイムダルの母親とされる、後述のエーギルとラーンの九人姉妹の一人ともされるが矢張り詳細は不明である。 スリュム 霜の巨人の王の一人で、トールよりミョルニルを盗み出した。 ありとあらゆる宝を有しているが、唯一持っていない宝として、愛の女神フレイヤの身柄をミョルニルとの交換条件に出して神々を困らせた。 当のフレイヤも断固として拒否の意思を示した訳だが、ヘイムダルの提案でトール当人を女装させてロキと共に送り込むというイカれた作戦が決行され、超近眼とか何かだったのかすっかりと騙されたスリュムがミョルニルを女装したトールの膝に置いた瞬間に頭をカチ割られて殺害された。 特に名前は伝わっていないが、スリュムにはトール達に持参金を要求した姉が居たが、彼女も同じく頭をカチ割られて殺害されている。 スィアチ 莫大な黄金を持っていた巨人アルヴァルディの子で兄弟はイジとガング。 兄弟が、父の遺産の黄金を自らの口を秤にして正確に数えたとする伝承から黄金を“巨人の口数え”と呼ぶケニングが出来たという。 鷲に変身するのを得意としており、その姿で旅の途中のオーディン、ロキ、ヘーニルが昼食に牛を焼いて食おうとしていた所にちょっかいをかけ、魔法で牛が焼き上がらないようにしておき、止めるように抗議にやって来たロキをまんまと拉致した。 スィアチは解放の条件として神々の不死を保つ黄金の林檎と管理者である女神イズンの身柄を要求すると、突き落とされたくないロキは此れを承諾してしまい、哀れイズンは黄金の林檎と共にヨトゥンヘイムへ連れ去られてしまった。 すると、本当に神々は老い初め、原因であるイズン誘拐に関与していることが明らかになったロキが解決を命じられる。 ロキはフレイヤより借りた鷹の羽衣でスィアチの屋敷であるスリュムヘイムへと赴くと、運良くイズンのみが残されていた。 ロキはイズンを一個の胡桃に変えてからアースガルドへと飛び立つが、戻ってきたスィアチが鷲に変身してロキを追う。 もう追いつかれるという段でロキはアースガルドに入ると、待ち構えていた神々は用意していた鉋屑の火の粉で鷲の翼を焼き、スィアチは墜落して果てたという。 直接的に神々と戦ってはいないものの、以上の様にかなりの強者で、古エッダの『グロッティの歌』ではフルングニルとその父より強かったと謳われている。 また、古エッダの『ヒュンドラの歌』によれば、スィアチはオーディンやフレイの妻ゲルズの身内であるとする趣旨の記述がある。 スカジ またはスカディと呼ばれる美しい女巨人で、巨人とされているが、元来は山の女神だったと予想される。 スィアチの一人娘で、父が倒されたことを知ると武装して単身アースガルドに乗り込んでいくが、そこで神々の内の誰かを婿とりさせるという条件を出されると、それを飲んで和睦に応じた。 以前から懸想していたのか、スカジとしてはオーディンの息子で美少年のバルドルと結婚したかったのだが、婿選びの条件として布を被って誰だか解らなくした男神達の足だけを見て選ぶようにと言われ、スカジが選んだのは波で常に足を磨かれているので一番の美脚となっていた海神ニョルズであった。 ちょっと機嫌を損ねたスカジだったが、続いて出した“自分を笑わせよ”という課題を、ロキが身体を張った爆笑必至の宴会芸(*5)を披露してクリア。 更に、オーディンがスィアチの両眼を天に上げて星にしたことで彼女は機嫌を直しニョルズとの同居にも応じた。 ……しかし、海の神と山の女神では根本的な生活環境が違いすぎて互いにストレスを抱えることとなり、二人はそれでも、互いの元の生活圏内をローテーションで行き来する等の涙ぐましい努力を続けるも、自然と別れてしまったという。 その後のスカジについては幾つかの異説がある。 『ロキの口論』では、実はロキとも関係を持っていたことを当人からバラされて恥をかかされるが、後にロキがバルドルの謀殺の件で捕縛された時には報復だったのか、罰である蛇の毒がダイレクトに顔面に滴るようにした。 別の伝承では、後にトールの義理の息子で狩猟とスキーの神であるウルと出会い、同じく山を愛する者同士で、今度こそ幸せに暮らしたとされる。 『ユングリング家のサガ』では、ニョルズと別れた後はオーディンと結婚し、セーミングを初めとした多数の子を得たという。 一方、このセーミングが10世紀のノルウェーの統治者ハーコン大公の祖先とされていることから、為政者の氏神や血脈をオーディンに繋げる意図があった話なのでは、とも思われる。 尚、一時的とはいえニョルズの妻であったことから、フレイとフレイヤの母親と見られることもあるが異論が大きい。 フレイとフレイヤはニョルズがヴァナヘイムに居た頃に妹との間に生まれた子供とされ、アースガルドに来た時には既に成人=スカジがニョルズとの結婚を最初は嘆いたのも、美男子というより美丈夫というか、既に結構な年の子持ちのオッサンだったからだろうか。 ウートガルザ・ロキ ヨトゥンヘイムにある、巨大な城壁で守られた都市ウートガルズの王。 巨人の王であるのは確かなのだが、霜の巨人か否かについては微妙にハッキリとしていない。 幻術が得意で様々な策謀を巡らすのを好み、自分の領地や館にやって来たトールと御付きのシャールヴィとレスクヴァの兄妹(及びロキ)を散々に翻弄して敗北を味わわせた。 トールが最初に領地に入ってきた際に自ら出向いていくと、遠くの山を肉体に見せかけた超巨大な巨人スクリューミルに化けて翻弄。 トールは挑発されるままにスクリューミルの頭を叩くのだが、それは山であった。 そして、トール一行を自分の砦に迎えた際には、様々に趣向を凝らした競技に挑ませ対戦相手までも用意するが、それ等は何れもがウートガルザ・ロキが幻術で配下の巨人や老婆、猫の姿に見せかけた概念的存在達ばかりだった。 トール(またはロキ)は大食いでロギ(正体は全てを焼き付くす火)に敗れ、従者のシャールヴィはかけっこでフギ(正体はウートガルザ・ロキの思考)に敗れ、今度はトールはウートガルザ・ロキの愛用という杯で呑み比べに挑むが、実は杯が海に繋がっていて当然の如く海水全部は飲み干せず敗れ、続いて力試しとして飼い猫を持ち上げてみるように言われるが、猫の正体はヨルムンガンドで上半身を持ち上げるだけに留まった。 最後にトールはエリという老婆との力比べに挑まされるが、神々の中で一番の力持ちである筈のトールすらエリを揺るがせられない。 エリは神々ですら逃れられず、得意の(物理)ではどうすることも出来ない“老い”の化身であった。 ……こうして、散々にやり込められてしまったトール達であったが、今までのことが全て幻術だったと聞かされると、怒り心頭でミョルニルを投げつけるが、それも見越していたのかウートガルザ・ロキと彼の砦は跡形もなく霧の中に消えていったという。 『デンマーク人の事績』には、旅の途中で嵐に遭遇し多数の犠牲者を出してしまったゴルモ王が生け贄を捧げ生き延びさせて貰った相手、そして、年老いたゴルモ王が死後の魂の行く末を従者に聞きに行かせるが幽閉されていて期待していた答えを得られなかった相手……の、謂わば死や魂に纏わる存在としてウートガルザ・ロキの名前が登場している。 しかし、その印象は前述の一般的な北欧神話中の姿とは大きく違うものであり、これはラグナロクを前に幽閉されていたロキの姿をダブらせたものとも言われる。 実際、上記のロギ(火)共々、他の神話とは矛盾しているものの、名前の似ているロキと同一視されることがあったとのこと。 エーギル 霜の巨人ではあるが、同時に海(特に危険な外海)の神と呼んでも差し支えのない位の立ち位置にあり、神々の酒宴も催す等、アースガルドとの関係も良好でラグナロクでも神々と敵対しない。 しかし、時折は船に噛み付いて沈めてしまうとも言われ、海で死んだ魂はエーギルの元へと送られると言われた。 妻は投網で人間を捕まえてしまう女神ラーンで、夫婦揃って海の恐ろしさを象徴している。 夫婦の子供は波の乙女とも呼ばれる荒波の神格化された九人姉妹とされ、更にその子がヘイムダルである。 一説によれば、後にフレイの嫁となった絶世の美女ゲルズの父ギュミルとはエーギルの異名だと云う。 ゲルズ 豊穣神フレイに見初められた絶世の美女で、フレイの従者スキールニルは苦労して彼女とフレイのお見合いをセッティングした。 しかし、彼女を娶る為にフレイは様々な宝を手放すこととなってしまい、中でも“剣”を手放したことがラグナロクでの戦死に繋がってしまった。 父は海の巨人のギュミル、母は山の巨人のアウルボザとされ、彼女自身にも地母神としての属性がある。 フリュム 最終戦争ラグナロクに於いて、ヨルムンガンドの起こした高波を越えるナグルファル(*6)の舵を取っている=霜の巨人の指揮を執っていると『散文のエッダ』ではされている。 しかしながら『詩のエッダ』では、その役目はロキの物となっている。 フリュムの名の意味は定かでは無いが“老いた者”や“虚弱な者”とされ、これ迄の神話では主敵だったのに、ラグナロクでは炎の巨人(ムスペル)に出番を奪われている霜の巨人(ヨトゥン)を象徴しているかのようである。 フェンリル 巨人出身の悪神ロキが女巨人アングルボザと交わることで誕生した三兄妹の長兄。 名の意味は“フェン(沼地)に棲む者”で、有名な異名はヴァナルガンドで、意味は“ヴァン川のガンド(動物姿の精霊)”である。 成長したら、口を開いただけで天に届いたと言われる程の巨大狼で、北欧神話を代表する怪物の一つであるが、出自的に巨人族として数えられる。 ヨルムンガンド フェンリルの弟、ヘルの兄に当たる三兄妹の次兄で、途方もない大きさに成長した大蛇。 名の意味は“大いなるガンド”で、海に捨てられても死ななかったばかりかミドガルズ(人間界)の周囲を取り巻くように成長し続け、遂には自分の尾を咥えるまでになったことからミドガルズオルム(ミドガルズの大蛇、世界蛇)の異名を持つ。 フェンリル同様に全く人の形をしていないが巨人族に数えられる。 ヘル フェンリル、ヨルムンガンドの妹で、彼女のみは人間に近い姿をしているのでロキがアングルボザに生ませるのではなく、アングルボザの心臓を食べた後で自らが女体化して生んだとも言われる。 しかし、一見すると上半身は健康そうで普通の見た目だが下半身は死んで腐っている怪物である為にニヴルヘイムへと送られたが、オーディンは彼女にヴァルハラに迎えられないような病や老衰で死んだ者や悪人の魂を送るので管理をするように命じ、こうしてニヴルヘイムは冥界ヘルヘイムとなった。 出自的には巨人であるが、役割の大きさから死の女神と呼ばれ、エーリューズニルという館に住む。 アングルボザ ロキがフェンリル達三兄妹を生む時に交わったとされる女巨人で、兄妹達の高名から彼女の名前も良く知られているが伝承は極めて少ない。 異伝によれば、ロキは三兄妹を生み出す時にアングルボザの心臓を食べて自ら生み出したと言われてしまっている程である。 一方『バルドルの夢』で、オーディンがバルドルの見た予知夢からヘルヘイムにて死したる巫女(ヴォルヴァ)の魂を呼び起こしてバルドルの運命を訪ねるが、彼女はアングルボザであったとも予想されている。 ロキ 北欧神話を代表するトリックスターであり、キリスト教の影響か悪神とまで後世には言われてしまっているロキも巨人に数えられる。 ハーフとされることも多いが、父ファールバウティも母ラウフェイ(またはナール)も霜の巨人族である為、実際には生粋の巨人であり、繰り返すが原典では神々と巨人に殆ど差異が無いことの凡例の一つと言える。 オーディンと義兄弟の関係を結びアースガルドに住み、神々の一員として高い地位を得るが、神話では神々の助けになる以上に厄介事を持ち込んだり起こすことが多い。 最終的にはオーディンの子であるバルドルの死に大きく関わりラグナロクを起こすきっかけとなるが、その前後の行動からヨトゥンではなくムスペルの一員と考えられたりもしており、前述のロギ(火)との混同からも解るように、名前の由来からロキをムスペルの王スルトの正体とする説まである。 ファーフナー 通常の北欧神話では霜の巨人とはされていないファフニール(*7)だが、かの『ニーベルングの指輪』ではファーフナーの名で巨人として扱われている。 三兄弟の長兄で、旅の途中のオーディン、ロキ、ヘーニルにより誤ってカワウソに変身していた弟が殺されてしまったことから父と末弟と共謀し、運悪く宿泊を求めてやって来た彼等を捕らえて神々に賠償を要求。 しかし、逸早く解放されて賠償金を用意したロキが黄金の中にドワーフのアンドヴァリより盗み出した再現無く黄金を生み出すが破滅する呪いをかけられた指輪(または腕輪)を紛れ込ませていた。 指輪に魅せられたか、黄金の魅力に取りつかれたファフニールは父親を殺害し、末弟レギンにも黄金を分け与えず逃亡した末に毒を吐くワイアーム(邪龍)へと姿を変えてしまう。 その後、デンマーク王の元で加治屋として働いていたレギンはフラグランド王シグムントの遺児シグルズ(ジークフリート)の養父となってファフニールの打倒を依頼。 レギンが鍛え上げた愛剣グラムによりファフニールは殺害されるが、レギンもまたファフニールの血を得たことで鳥の声が聞こえるようになり、真実を知ったシグルズに邪な企みを見破られて殺害された。 追記・修正お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] >ロキが身体を張った爆笑必至の宴会芸 なんでこの神、邪神なのに面白いんだろう -- 名無しさん (2020-03-24 16 55 23) jotunweinになるんだよ、あくしろよ -- 名無しさん (2020-03-24 17 00 06) 斬撃のレギンレイヴで序盤から大量に登場したのが印象深い。 -- 名無しさん (2020-03-25 14 27 56) ウートガルザ・ロキの記述で、「なんで相手側に親子のロキがいるのにウートガルザロキの方にヨルムンガンドが協力してるの?」って疑問がわいた。ロキとウートガルザロキが同一視されるのはこの辺もあったりするのかなあ… -- 名無しさん (2020-10-27 03 06 49) 結構な割合でキレたトールに頭割られてて草 -- 名無しさん (2020-10-27 03 59 43) トールとウートガルザ・ロキの勝負で『神と悪しき者の力比べ』みたいな寓話の派生形かと思いきや、力比べに持ち上げるモノのチョイスが大岩ではなく飼い猫だったり、結果は「正体はヨルムンガンドなので上半身しか持ち上がらなかった」と予想の斜め上から「原初の伸びる猫」が奇襲してきたり、海底から大地に巻き付く大蛇をどうやって飼い猫で通せたのかという疑問がずっしり脳内に居座ったりして、あまりの情報量とシュールさに宇宙ネコのような表情にされた -- 名無しさん (2021-02-19 14 29 09) 名前 コメント