約 86,559 件
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/12283.html
【TOP】【←prev】【PlayStation】【next→】 BLUE BREAKER BURST 微笑を貴方と タイトル BLUE BREAKER BURST 微笑を貴方と ブルーブレイカーバースト 機種 プレイステーション 型番 SLPS-01502 ジャンル 対戦格闘アクション 発売元 ヒューマン 発売日 1998-7-23 価格 5800円(税別) タイトル BLUE BREAKER BURST 微笑を貴方と 特製CDシングル付 初回限定版 機種 プレイステーション 型番 SLPS-01469 ジャンル 対戦格闘アクション 発売元 ヒューマン 発売日 1998-7-23 価格 5800円(税別) タイトル BLUE BREAKER BURST 微笑を貴方と Major wave シリーズ 機種 プレイステーション 型番 SLPM-86647 ジャンル 対戦格闘アクション 発売元 ハムスター 発売日 2000-11-30 価格 1500円(税別) ブルーブレイカー 関連 PCFX BLUE BREAKER 剣よりも微笑みを SS BLUE BREAKER 剣よりも微笑みを PS BLUE BREAKER 笑顔の約束 BLUE BREAKER BURST 微笑を貴方と BLUE BREAKER BURST 笑顔の明日に 駿河屋で購入 プレイステーション
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1929.html
穏やかな、だが安定を欠いた生活が長引き、幸村は女として成熟していった。 施される愛撫は貪るようなものから優しく慈しむようなものへと変じ、幸村もまた、 小十郎を迎えるようになった。 鏡を置き、髪をくしけずる。随分と伸びた。黙って道を歩けば、誰も「真田幸村」だと気づかないだろう。 奥州や甲斐の情勢は、小十郎がもたらす情報しか知らない。武田は駿河を飲み込んだものの 徳川の猛攻にあい、奥州は関東を攻めあぐねているという。 どうでもいいことのように思えるし、大事なことのようにも思える。小十郎が嘘を言って いる可能性を考えるが、それはないと首を振った。 小十郎の顔を見ていない。もう十日になるだろうか。戦に出たのだろうか。 それとも他国に使者として赴いているのだろうか。何も知らされていないため、想像するしかない。 髪を括り、鏡を伏せた。あまり高いものではないが、これで十分だった。元々、着飾ることに興味はない。 格子越しの日差しに目を細め、机に身体を伏せた。ため息をつく。 ――ただ、待つことしかできない。 今日は帰ってくるだろうか。明日は。明後日は。 会っていない日を指を折って数え、次はいつ会えるのかと指を折って数える。 (……何を……) 何を、しているのだろう。 これでは、まるで会うことを待ち望んでいるかのようだ。 首を振り、自嘲の笑みを浮かべる。囚われて以来、幸村は心の底から笑っていない。 己を嘲り、小十郎を蔑む。そうやって狂わぬように心を保ってきた。 鏡を持ち上げ、顔を映した。あまりよく映らない鏡だが、ぼんやりとしているのは分かる。 唇を持ち上げてみる。うそ臭い。 誰だこれは、と苦笑して鏡を伏せた。 ごろりと床に転がった。上田にいた頃なら、女中や下男が「だらしないですよ」と叱っただろうが、 この離れにはせわしなく立ち回る女中も、力仕事を請け負う下男もいない。無口な女中が床を磨き、 着替えを用意し、膳を運んでくるだけだ。見張られている気配も、ここ最近は絶えている。 もう見張りを置くつもりはないのだろうか。 「槍……」 随分握っていない。刀も取っていない。拳は柔らかくなり、爪は綺麗な色に戻った。 今度、小十郎に手合わせを頼んでみようか。刀でも槍でも体術でも、なんでもいい。身体を動かしたいと思った。 「――無理だな」 あほか、と言われ、抱きすくめられて耳元で「貴様に武器など持たせるか」と囁き、 そして抱くだろう。一部始終、簡単に予測ができてしまう。 手合わせ、と声を出さずにつぶやいた。 小十郎と、手合わせ。 なんでそんなことを考えたのだろう。幸村は身体を起こし、格子の入った廊下に近づいた。 気配を感じる。床下だ。見張りのものとは違う。 ――懐かしい、待ち望んだはずのもの。 「佐助……?」 し、と小さな声が聞こえた。幸村は息を飲み、床に耳を当てた。 「佐助」 「旦那。よかった、生きてた……」 闇を集めたような気配が床下からせり上がり、佐助の形になった。一瞬のことだが、いつも驚いてしまう。 「佐助、どうしてここが分かった」 「ずっと、網を張ってたんだよ。物売りのふりして奥州に忍び込んで、情報集めて、 こうやって、探り出したって訳」 「そうか」 言われれば納得するしかない。幸村は床に視線をやった。 「……酷いこと、されてるんじゃないの」 「酷い……か。そう、だろうな」 「逃げるよ。旦那、俺に捕まって」 長居は無用、とばかりに佐助が手を差し出してくる。佐助の忍術は、幸村一人くらいならなんとか運べる。 ――逃げる。 佐助に言われて、はっとした。 そうだ。佐助がここにいるのだ。幸村ではできないことも、佐助ならできる。 上田に戻って、そして――。 ――どうなる。 炎の微笑10
https://w.atwiki.jp/sakots/pages/319.html
【メグッポイド】 とあるお堂の仏像微笑 (オリジナル) 【GUMI】 曲名:とあるお堂の仏像微笑 作詞:サ骨 作曲:サ骨 編曲:サ骨 唄:GUMI 歌詞: 軋む廊下を走り抜け 暗い部屋の中 香木煙る年月は 那由多の彼岸まで遠く 三千世界の愛 薄明かりを灯せばそこには あなたの口もと アルカイックスマイル 佇む歴史の微笑みに 撃ち抜かれたら 半跏思惟のスタイル 傍にいて誰よりも 心開いて欲しいから 切なさは清浄に消え 瞬息の刻も 不可思議のまま流れ 輪廻を解いてあなたのもとに 涅槃寂静の哀 月は十六夜映るは水面 その手に触れたら アルカイックスマイル 極楽浄土にビートを 刻んで奏でる 半跏思惟のスタイル 今夜こそ繙いて 悟り開いてみたい 夢見てあなたに会い わかるよ明かりを灯さずとも 優しい口もと アルカイックスマイル 極楽浄土にビートを 刻んで奏でる 半跏思惟のスタイル 今夜こそ繙いて 悟り開きたくて アルカイックスマイル 佇む歴史の微笑みに 撃ち抜かれたら 半跏思惟のスタイル 傍にいて誰よりも 心開いて欲しいから
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1922.html
遅い夕餉を取って湯浴みを済ませると、小十郎は屋敷の隅にある離れに向かった。 離れといっても、作りは牢獄のようになっている。戸には鍵がついており、縁側には 格子が入っている。格子は太く、幅も腕が通る程度だ。 以前この屋敷に住んでいた伊達の家臣が、誰かを閉じ込めるために作ったもののようだ。 壊すのも面倒なので、物置として使っていた。 今、この離れには女が住んでいる。そのことを知っているのは、小十郎が選んだ口の堅い 下働きだけだが、やはりどこかで噂は漏れているらしい。 戸の鍵を開け、小十郎は奥の部屋に向かう。女はそこを閨にしている。 もう眠っていると思ったが、女は起きていた。 夜着を纏い褥の傍に正座している姿は夫を待つ妻のようだが、女の周囲には 殺気としか思えない気配が満ちている。 闇の中、目が光っていた。刃を思わせる輝きに、小十郎は薄く笑う。 「俺を待っていたのか?」 揶揄すれば、女は眉をひそめて顔を背ける。 小十郎は腰を下ろし、女を後ろから抱きすくめた。女の身体は強張り、嫌悪に耐えている。 髪を前に流させ、現れたうなじに唇を当てる。女は唇をかみ締め、身体を震わせていた。 「……殺せば、よいだろう」 絞り出された声は、憎悪に満ちていた。小十郎は目を細め、白い夜着の懐に手を入れた。 「お前は、生かす。政宗様と、もう一度やり合いてぇんだろ?」 「政宗殿は……俺を、どうしろと」 「どうも? お前は行方知れずということになってるからな。俺の気の済むまで、ここで 生きててもらうぜ。――真田幸村」 女――幸村はぐっと拳を握った。肌をまさぐる小十郎の手を払うことはしないが、身を預けるような真似もしない。 帯を解いて夜着を肩から落とすと、幸村の喉がひゅうっと鳴った。 血色のいい肌をしている。眩いような白さはないが、指でなぞれば吸い付くようだった。 胸を揉めば、がちがちと歯が鳴る。とんと軽く肩を押して褥に押し倒す。うつ伏せに倒れた 幸村は敷布を握り、小十郎を睨んだ。 「殺せ」 「「真田幸村」は、もう死んだんだよ。屍は丁重に扱うのが、もののふの礼儀ってもんだろう?」 背に圧し掛かり、耳元で囁く。幸村は目を硬く閉じて敷布に顔を埋めた。髪の間から見えるうなじを 甘く噛めば、幸村は息を飲んで刺激をやり過ごす。 小十郎は優しく幸村の身体を愛撫する。最愛の女や生娘に対するような愛撫だった。 甘く濡れたところで、幸村は嬌声や喘ぎ声どころか、声一つ漏らさない。暴れることもしないが、恭順もしない。 腰を持ち上げ貫くと、幸村は敷布に顔を埋めて羞恥と辱めに耐えている。 小十郎は幸村の髪を掴んで持ち上げた。首が反り返り、顔が持ち上がる。無理やり 振り向かせると、涙に濡れた目で睨みつけられる。 「――このような扱いの、どこが丁重だ! 殺し、屍を捨てれば――ああっ!!」 罵倒は突き上げによってかき消される。 幸村は膝を曲げて腹這いになり、顔を敷布に押し付けた。すすり泣くような、呻くような 声が低く漏れる。小十郎は薄く笑いながら幸村の背を愛撫し、時々跡をつけた。 精を放てば、ぴくりと肩が動いた。耳元で孕めと囁けば、幸村は耳を塞いで首を振った。 指に優しく口付けを落とし、男根を引き抜く。 茶を帯びた髪を梳く仕草は、慈しみに似たものを感じさせた。 炎の微笑3
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/8345.html
【TOP】【←prev】【Dreamcast】【next→】 七つの秘館 戦慄の微笑 タイトル 七つの秘館 戦慄の微笑 機種 ドリームキャスト 型番 T-7604M ジャンル アドベンチャー 発売元 コーエー 発売日 2000-1-20 価格 5800円(税別) 七つの秘館 関連 SS 七つの秘館 アドベンチャーパック 七つの秘館 MYST PS 七つの秘館 DC 七つの秘館 戦慄の微笑 駿河屋で購入 ドリームキャスト
https://w.atwiki.jp/mayferia/pages/52.html
<Prev|Back|Next> 2008/02/07 彼と私と金の色 初めて2人きりで会うことになりました。この日の目標は「ベルカインのペンダントにチェーンを付けること」。Tagamiさんが拾ったときはペンダントヘッドだけになっていたので、気になってたんです。 日本家屋を訪れて、ベルカインと挨拶。……やっぱり覚えててもらえなかったなあ。改めて名乗り、チェーン購入を切り出したら驚かれました。そりゃそうだ。初対面に近い相手からそんなこと言われて驚かない人はいない。でもOKしてくれてありがとう。 ベルカインを支えつつ商店街へ。貴金属店でチェーンを選びました。色も長さも彼に選んで貰って購入。帰りは自分で頑張って歩くベルカインに着いていく形になりましたが…… ベルカイン:「山吹は、金色に使う名前、ですよね?」 ベルカインが選んだチェーンの色は金。いやつまりそういうことなんですかああああ!? と、ともかく2人でお買い物、はのんびりと終了しました。というかなれそめ、だそうで。 評価 +2・+2→+1・+1(時間経過)→+3・+3 2008/02/14・バレンタイン大作戦 バレンタイン御礼企画 チョコありがとうございます4 バレンタイン。チョコに込められた加護がACEたちへと無限に降り注ぐ日。 その加護を利用し、セプテントリオンや(自主規制)との大戦が繰り広げられた。 そんな中、ベルカインは僅かな加護を使うために立ち上がる。 2008/02/27 彼と私が病院で エースゲームコールだなんだと周囲がどたばたしてる中、2度目の2人きり小笠原へ出発。のんびりお茶でも……と思っていたのでどこが安全か芝村さんに尋ねたところ、ベルカインは宰相府にいるとのこと。何でさと思いつつ、私も宰相府に行くことにしました。 到着したのは宰相府の病院。慌てて病室を聞いてレッツゴー、どうやらバレンタイン侵攻の折りに加護を使用し無茶したようで、病院のお世話になっているようでした。心配かけさせないでよねーorz その後は、2人でのんびりというか何というか……な会話。ものすごく平和に終わった今回でした。 弓美、って呼ばれちゃった。嬉しい。 評価 +3・+3→+4・+4 2008/04/08 彼と私と砂の罠 試練ということで、マイルを貯めて2時間ゲームにチャレンジ。試練は場所選べないのでどこだ、と思っていたらるしにゃん。わあい。 人影が無く荒涼とした大地を探すもののミハダイスのツン期に遮られ、大人げないとは思いつつ太陽号を使用。やっと見つけたベルカインは、毎日無理してはサーラ先生のお世話になっていたとのことorz ちなみにISSに参加しているそうです。皆さんお手間取らせてしまってたら済みませんorz その後は2人で話をして……試練は突破しました。が、太陽号を使ったのが仇となりました。 ベルカインはるしにゃんを覆う砂漠の『死の砂』を吸い込んでしまい、あと100日の生命とのこと。 治癒師は効果がないとのことです。 まけてたまるか。 評価 +4・+4→+5・+5 微笑青空勲章獲得 改名 ベルカイン→ベルカイン・Y <Prev|Back|Next>
https://w.atwiki.jp/sdora/pages/2934.html
[神父の微笑]エルホワート Quest194 ※pages 2449 - チョリ (2019-12-22 23 18 55) [微笑]エルホワートに訂正 Quest194 ※pages 2449 - チョリ (2019-12-22 23 22 21) 進化前:[神父の微笑]エルホワート→[微笑]エルホワートへ訂正しました。 - 名無しさん (2019-12-25 20 38 48)
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1950.html
寒い寒い、と政宗が身体を震わせながらあぜに座り込んでいた。小十郎は大根を抜いて籠に入れ、 もう少し温かい格好をすればいいのにと思いながら主君を見る。 「真田幸村が、上田に戻ったそうだ」 「……左様にございますか」 「お前が、匿ってたんだって?」 匿うか、と小十郎は自嘲気味に笑った。 政宗の持つ情報網は、小十郎ですら知らない。忍びを使っているようだが、 どんな規模なのか、どれ程の忍びを使っているのかすら知らなかった。 だが、政宗は事実を知っている。一つしかない目は、まっすぐ咎めるような目で小十郎を見つめていた。 「……俺を、処罰しますか」 「そうだなぁ……」 袂に手を入れ、政宗は背を丸めた。小十郎は大根を次々と抜いて籠を一杯にする。 いい漬物ができそうだ、と自画自賛をしてから籠を背負った。 「……もし、幸村が立ち直れねぇようなことをしていたら――お前を殺す」 ならば、己の命はそう永くないなと目を伏せた。 自由を奪い、破瓜を奪い、貞操を踏み躙った。恨まれて当然だろう。 幸村のいなくなった離れは、寂しいものだった。女一人おとなしくしていただけなのに、 いなくなった途端寂しくてしょうがない。 女中に命じてすべて片付けさせると、幸村に与えたものは行李一つに収まってしまった。 与えたものすべてを覚えているわけではないが、着物が数枚と、小箱に溢れるほどの 小間物と鏡が一つ。こんなものだっただろうか、と首を傾げた。 あとは、小十郎の持ち物だった。孫子が数冊と、二人で思いつくままに描いた要塞の案が 二つ。幸村の考える要塞は、空でも飛びそうな形をしていた。 阿呆、とからかえば、俺の勝手だ、と幸村は唇を尖らして拗ねた。 ふ、と薄く笑う。 いつ終わりが来てもおかしくない奇妙な日々だったが、失ってしまえばひどく虚しい。 「何笑ってるんだよ」 「いえ、なんでもありません――」 小十郎は顔を上げた。荒々しい馬蹄が近づいてくる。 馬から人が転がるように降りた。もやを切り裂き、人が姿を表す。 全身から湯気が立ち昇っている。戦に臨むような気配。小十郎は咄嗟に政宗を庇うが、 政宗は鬱陶しげに小十郎を押しのけて前に出た。 「真田……」 政宗が眉を寄せる。幸村は身体を曲げて息を落ち着かせ、顔を上げた。 まっすぐ見つめてくる瞳に息を飲む。 つ、と一筋涙が伝う。小十郎は幸村を見守った。 二人を見比べ、政宗は小十郎から大根の詰まった籠を奪う。「漬物にするぞー」と 言い置き、その場から立ち去る。 幸村が近づいてくる。腕を取れる距離まで近づかれ、小十郎は腕を伸ばした。 小さな頭を両手で包んだ。 「帰ったんじゃ、なかったのか……?」 「上田には、もう戻りませぬ」 「何?」 「……お傍にいとう存じます」 咄嗟に、頬を叩いた。 黙らせるためにいつもやっていた。まっすぐ見つめる目が時として腹立たしく、 見るなと叩けば叩くほど、殺気と憎悪に満ちた目を向けてきた。 もうあの時とは立場が違う。小十郎は咎められる立場に落ち、幸村は糾弾する立場に上った。 幸村は顔を上げた。腕が伸びる。 ぱん、と頬が鳴った。平手を打たれたと知覚すると、また頬を叩かれ、突き飛ばされた。 土の上に転がされる。 何をする、と体を起こそうとすると、幸村は小十郎の腹の上に乗った。ぐ、と臓腑が圧迫される。 「このような目に、いつも遭わされもうした」 「ああ」 頬がじくじくと痛む。 髪の間からのぞく涙と充血した瞳。まっすぐぶつけられる感情。 いつそれらを愛しく想うようになったのだろう。 「……他の女子にも、このような事を?」 胸倉を掴んで上体を引き起こされる。この細い腕のどこにそんな力があるのか。 いや、主君も大概細腕で、六爪という小十郎でも無理な荒業を平然と成し遂げるのだから、 女とはそういう生き物なのかもしれない。 「……いや」 閉じ込めて、捕らえた女は幸村だけだった。 「……もう二度と、俺は片倉殿に捕らえられぬ」 もやが少しずつ晴れてくる。この分だと昼には晴れるだろう。ああ鯨の値段を検分せねば、と 思考を飛ばす。 「俺が、片倉殿を捕らえる」 「――お前、」 幸村は笑った。不敵な笑みに、思わず息を飲む。 ――焦がれる。 顔が迫ってきた。冷えた唇が重ねられる。小十郎は幸村の背に腕を伸ばし、唇をわずかに 開けた。舌が入ってくるようなことはなかったが、呼吸を分け合うように唇が動いた。 長いような短いような接吻を終え、幸村はようやく小十郎を解放した。 「……もし、俺を傍に置けぬというのなら、俺は片倉殿を――殺す」 ぞく、と背筋が震えた。 炯々と光る目。何度も見た、刃を思わせる眼差し。 薄く微笑む幸村に、小十郎は政宗の影を見た。 炎の微笑18
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/5080.html
autolink() MK/SE11-11 カード名:不敵な微笑 平乃 カテゴリ:キャラクター 色:緑 レベル:2 コスト:1 トリガー:1 ● パワー:2500 ソウル:1 特徴:《警察》?・《水着》? 【起】●助太刀3000 レベル2[① 手札のこのカードを控え室に置く](あなたは自分のフロントアタックされているキャラを1枚選び、そのターン中、パワーを+3000) ノーマル:急所ははずしておきました♪ ホロ:トドメ刺します? レアリティ:C illust. 特徴:《警察》?を持った助太刀3000。 《警察》?には“出席番号G-4”小衣 理想の部屋 小林のライバル 神津とこのカードを手札に加える手段が豊富である。 赤色ではあるが既に才能の集合 Genius4が存在するが、あちらはPRカード。入手難易度が違いすぎる。
https://w.atwiki.jp/harukaze_lab/pages/275.html
微笑の渦 徳田秋声 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)氏《し》 |:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)一|度《ど》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#5字下げ] /\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号) (例)一|々《/\》 濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」 [#5字下げ](一)[#「(一)」は中見出し] K氏《し》を介《かい》しての、R大使館《たいしかん》からの招待日《せうたいび》だつたので、その日《ひ》彼《かれ》は袴《はかま》などつけて、時刻《じこく》がまだ早《はや》かつたところから、I子《こ》の下宿《げしゆく》へ寄《よ》つて一と話《はなし》してから出《で》かけた。 R大使館《たいしかん》の所在《しよざい》を、彼《かれ》は明白《めいはく》には知《し》らなかつた。勿論《もちろん》招待《せうたい》の意味《いみ》についても、明確《めいかく》なことはわからなかつた。しかし大凡《おゝよ》その見当《けんたう》はわかつてゐた。気《き》のきいた運転士《うんてんし》が車《くるま》をつけたところが、果《はた》してそれであつた、彼《かれ》は門前《もんぜん》で車《くるま》をおりて、右側《みぎがわ》の坂道《さかみち》を爪先上《つまさきあが》りに登《のぼ》つて行《い》つた。左《ひだり》へ折《お》れたところに応接室《おうせつしつ》か喫煙室《きつえんしつ》かといふやうな部屋《へや》の窓《まど》の戸《と》が少《すこ》しあいてゐて人影《ひとかげ》が差《さ》してゐたが、そこを過《す》ぎると玄関《げんかん》があつた。 名刺《めいし》を通《つう》じてゐるところへ、大入道《おうにうどう》のA氏《し》が奥《おく》から出《で》て来《き》て、彼《かれ》を迎《むか》へてくれた。A氏《し》は一|度《ど》R国《こく》へ行《ゆ》く友人《ゆうじん》の送別会席上《そうべつかいせきぜう》で見知《みし》りになつたR国人《こくじん》であつたので、私《わたし》はいさゝか心強《こゝろつよ》く感《かん》じて、導《みちび》かるゝまゝに奥《おく》へ通《とほ》つた。卓子掛《てーぶるかけ》や椅子《いす》の緋色《ひいろ》づくめな部屋《へや》には数人《すうにん》のR国《こく》の男女《だんじよ》がゐて、私《わたし》の仲間《なかま》は案外《あんがい》にも極《きわ》めて小数《せうすう》であつた。その多《おう》くは夫人帯同《ふじんたいどう》であつたことも、私《わたし》には意外《いがい》であつた。 私《わたし》は数人《すうにん》の男女《だんじよ》のR国人《こくじん》に紹介《せうかい》されて、それらの人達《ひとたち》の力強《ちからつよ》い手《て》と一|々《/\》握手《あくしゆ》をした。しかし誰《たれ》が誰《たれ》だか覚《おぼ》えてもゐられなかつた。 「キヤンニユスピイキイングリシユ?」 「アイ、キヤントスピイク。」 「キヤンユゲルマン。」 「ノー。」 こんなやうな簡短《かんたん》な応答《おうとう》が、私《わたし》と彼等《かれら》のあいだに失望的《しつぼうてき》な笑《わら》ひと共《とも》に取《と》り交《かわ》された。しかし話《はな》せないのは私《わたし》ばかりではなかつた。大抵《たいてい》は話《はな》せないのであつた。 私《わたし》は当代《とうだい》の花形作家《はながたさくか》で且《かつ》詩人《しじん》であるところのS氏《し》の側《そば》へ寄《よ》つて行《い》つた。 「今夜《こんや》はどんな人《ひと》が来《く》るんですか。」 「あとMさんが来《く》るだけでせう」 「さう!」 すると又《また》そこへ質素《しつそ》な黒《くろ》い服装《ふくそう》をつけた、断髪《だんはつ》のぎよろりとした目《め》をした若《わか》いR国婦人《こくふじん》がやつて来《き》て、やゝ熟達《じゆくたつ》した日本語《にほんご》で話《はな》しかけた。最《もつと》も大抵《たいてい》の婦人《ふじん》は黒《くろ》い服装《ふくそう》した断髪《だんはつ》であつた。 M氏《し》夫婦《ふうふ》がやつて来《き》て、型《かた》どほり各人《かくじん》に紹介《せうかい》されたが彼《かれ》も御多分《ごたぶん》に洩《も》れず唖《おし》であつた。しかし中《なか》には一|度《ど》や二|度《ど》は洋行《ようこう》したことのあるN氏《し》やM、S氏《し》のやうな劇団《げきだん》の人々《ひと/″\》もあつたし、アメリカに長《なが》くゐたM、K氏《し》などもゐた。その上《うえ》紹介者《せうかいしや》のK氏《し》は巧《たくみ》にR国語《こくご》を操《あやつ》るのであつた。殊《こと》に書《か》いたものに敬服《けいふく》してゐたM、K氏《し》は名前《なまえ》を知《し》つてゐるだけで、私《わたし》には、初対面《しよたいめん》であつたが、少《すこ》しも気取《きど》らない、ヒユモリストであるので、席《せき》が白《しら》けるなぞといふやうなことは先《ま》づなかつたと言《い》つてもよかつた。勿論《もちろん》私《わたし》などはどこへ行《い》つても唖《おし》の方《ほう》であつた。日本人《にほんじん》の会合《かいごう》でも話題《わだい》の極《きわ》めて貧弱《ひんじやく》な方《ほう》といはなければならなかつた。しかし照《て》れるやうなこともなかつた。 「洋行《ようこう》しても我々《われ/\》は駄目《だめ》だね。」 [#5字下げ](二)[#「(二)」は中見出し] やがて食堂《しよくどう》へ入《はい》つて行《い》つた。目《め》のぱつちりした美《うつく》しい一|人《り》の女《おんな》が私《わたし》を食卓《しよくたく》の向側《むこうかわ》へ「どうぞ」と言《い》つて案内《あんない》してくれたが、誰《たれ》もまだ入《はい》つてこないので躊躇《ちうちよ》してゐるうちに、此方側《こつちかわ》の左手《ひだりて》の椅子《いす》を取《と》ることになつて、先刻《さつき》美《うつく》しい人《ひと》が脇《わき》へ来《き》て席《せき》を取《と》つたが、言葉《ことば》が通《つう》じないことがわかつたところで、今《いま》一|人《り》の日本語《にほんご》のよく話《はな》せるお転婆《てんば》さんらしい女《おんな》と入替《いれかわ》つた。 彼女《かのじよ》は比較的《ひかくてき》自由《じゆう》な日本語《にほんご》で色色《いろいろ》のことを話《はな》しかけた。 「私《わたし》今《いま》ゐるところ日本《にほん》の家《いえ》でございます。私《わたし》日本《にほん》の家《うち》が好《す》きでございます。日本《にほん》の西洋家屋《せいようかおく》はお粗末《そまつ》で却《かへつ》て感《かん》じが悪《わる》うございます。」 そんな風《ふう》の話《はなし》を、どうかするとたどたどしい舌《した》の弁《しや》べつた。 私《わたし》には別《べつ》に話題《わだい》がなかつたけれど、何《なに》か彼《か》にか罰《ばつ》を合《あわ》せることが出来《でき》た。 「MHさんは何《ど》の方《かた》でございますか。」彼女《かのじよ》はきいた。 MH氏《し》は反対《はんたい》の側《かわ》の右《みぎ》の端《はし》にゐたので、私《わたし》はその方《ほう》を指《ゆび》さし示《しめ》した。 「私《わたし》あの方《かた》のもの読《よ》みました。」 「面白《おもしろ》いですか。」 「面白《おもしろ》いのもございました。」 しかし別《べつ》にそれ以上《いぜう》の文学談《ぶんがくだん》も出《で》なかつた。 「私《わたし》お正月部屋《せうがつへや》へかけておきたいですか、何《なに》か書《か》いて下《くだ》さい。」 「何《なに》をです。」 「何《なん》でもよろしうございます。書《か》いて送《おく》つて下《くだ》さい。きつとですよ。ようございますか。」 「書《か》きませう。」 MK氏《し》が私達《わたしたち》の前《まえ》に、先《さき》の美《うつく》しい人《ひと》と並《なら》んでゐて、元気《げんき》よく連《しきり》に茶目振《ちやめふり》を発揮《はつき》してゐた。私《わたし》は彼《かれ》の書《か》くものに敬意《けいい》をもつてゐたが逢《あ》つてみると又《また》書《か》くものとは違《ちが》つた、別《べつ》の意味《いみ》の親《した》しさが感《かん》じられた。 向《むか》ふ側《かわ》ではSH氏《し》の夫人《ふじん》らしい、ちら/\動《うご》く星《ほし》のやうな目《め》の極《きわ》めて涼《すゞ》しい人《ひと》が、無邪気《むじやき》な表情《へうぜう》をしてゐるのが目《め》についた。私《わたくし》の脇《わき》にゐるお転婆《てんば》さんが彼女《かのじよ》を讚《ほ》めてゐた。この夫人《ふじん》も美《うつく》しいが、LI子《こ》がゐたら、これも一|際《きわ》目《め》に立《た》つであらうことを想像《そうぞう》したりしたが、しかし今夜《こんや》LI《こ》のゐないこと反《かへ》つて自由《じゆう》であつた。 私《わたくし》は話《はなし》に気《き》を取《と》られてゐたので、お料理《れうり》を大抵《たいてい》食《た》べはぐしてしまつた。おいしさうなスープも、香《か》んばしい饅頭風《まんじうふう》のお菓子《かし》も、それに時々《とき/″\》機械的《きかいてき》に口《くち》にするウオツカの酔《よい》も出《で》て来《き》た。 これといふ事《こと》もなかつた。みんなはやがて椅子《いす》を離《はな》れた。そして以前《いぜん》の部屋《へや》へ帰《かえ》つて来《き》た。 [#5字下げ](三)[#「(三)」は中見出し] 食事後《しよくじご》の気分《きぶん》は前《まえ》よりも一|層《そう》打寛《うちくつろ》いだものであつたが、彼等《かれら》の或者《あるもの》は尚《なお》も未練《みれん》がましく私達《わたしたち》の傍《そば》へ寄《よ》つて来《き》て、揉手《もみて》をしながら「キヤンニユスピイク、イングリシユ?」を繰返《くりかえ》した。水菓子《みずかし》が婦人達《ふじんたち》によつて持《も》ちまはられたり、飲料《のみもの》か注《つ》がれたりした。話《はな》せると思《おも》つたSH氏《し》なども、ちようど私《わたし》の傍《そば》にいて「読《よ》むには読《よ》むが話《はなし》はできない」と断《ことわ》りを言《い》つていた。 そのSH氏《し》がしばらくすると、立《た》つて彼方《あなた》の卓《たく》の前《まえ》に立《た》つて、和服姿《わふくすがた》の東洋人《とうようじん》らしい憂鬱《ゆううつ》な恥《はじ》らひの表情《へうぜう》で、自作《じさく》の詩《し》を謳《うた》ひだした。皆《みな》が之《こ》れに耳傾《みゝかたむ》けた。そして謳《うた》ひをはつて席《せき》についたときに、拍手《はくしゆ》とゝもに「モア、モア!」と云《い》ふ声《こえ》が若《わか》いR国《こく》の紳士《しんし》によつてかけられた。 SH氏《し》はこのアンコールに応《おう》じて、再《ふたゝ》び立《た》つて行《い》つた。そして前《まえ》よりも安易《あんい》な調子《てうし》で謳《うた》つた。 拍手《はくしゆ》が四|方《ほう》から起《おこ》つた。 少《すこ》し間《ま》をおいてから、R国婦人《こくふじん》が一|人《り》起《た》つて、やゝ長《なが》い叙事的歌詞《じよじてきかし》のやうなものを、多少《たせう》の科《しぐさ》を交《まじ》へて演《えん》じ出《だ》した。それが了《おわ》ると、例《れい》の大入道《おうにうどう》の紳士《しんし》が、吃《ども》りのやうな覚束《おぼつか》ない日本語《にほんご》で翻訳《ほんやく》してくれた。 座興《ざきよう》が加《くは》はつて来《き》た。 「MMさんに仮声《こわいろ》を願《ねが》はうぢやないか。」誰《たれ》かゞ劇界《げきかい》の長老《てうろう》たるMM氏《し》を目《め》ざして促《うなが》した。 「さうだ。何《なに》か一つ何《ど》うです。我我《われわれ》は皆な芸《げい》なしだからな。」 肥《ふと》つたMM氏《し》は容易《ようい》に起《た》たなかつたが、勿論《もちろん》彼《かれ》にも若々《わか/\》しい愛矯《あいけう》と酒落気《しやれけ》は失《う》せてゐなかつた。 彼《かれ》は椅子《いす》を離《はな》れた。 「ハムレツトをやりませう。白《せりふ》なしのハムレツトを。」彼《かれ》はさう言《い》つて真中《まんなか》に立《た》ちながら、 「服装《ふくそう》はモダーンでいきませう。」 巧妙《こうめう》なハムレツトの一|節《ふし》の黙劇《もくげき》がはじまつた。それは素人《しろうと》とはおもはれないしつかりした型《かた》にはまつたものらしかつた。多分《たぶん》英国《えいこく》あたりのハムレツト役者《やくしや》のそれを取《と》つたものだらうと私《わたし》は想像《そうぞう》した。 「あゝ、腹《はら》がへつた!」MM氏《し》は演《えん》じをはると傍《かた》への卓子《たくし》の上《うえ》から、ビスケツトか何《なに》かをつまんで口《くち》へ投《ほう》りこんだ。 拍手《はくしゆ》がおこつた。 [#5字下げ](四)[#「(四)」は中見出し] 私《わたし》は再《ふたゝ》びS、H氏《し》と肩《かた》を並《なら》べてゐた時《とき》、これといふ話題《わだい》もなかつたので、ふとI子《こ》のことを話《はな》した。それは最近《さいきん》S、H氏《し》の詩《し》や小説《せうせつ》の好《す》きなI子《こ》が、一|度《ど》遊《あそ》びにつれて行《い》つてくれと言《い》つてゐたので、私《わたし》もこの機会《きかい》にS、H氏《し》を訪問《ほうもん》して敬意《けいい》を表《へう》しておくのも無意義《むいぎ》ではなからうと思《おも》つてゐたのであつた。 S、H氏《し》だけは「彼是《かれこれ》言《い》ふべきものぢやない。羨望《せんぼう》すべきものぢやないか」と言《い》つたといふことを、二三|度《ど》或青年《あるせいねん》から、私《わたし》は聞《き》かされてゐた。それは事実《じじつ》か否《いな》かは知《し》らなかつたが、誰《たれ》からも好感《こうかん》をもたれない私《わたし》とI子《こ》との事《こと》に関《かん》して、さう言《い》つたとすれば、それはS、H氏《し》の言《い》ひさうなことだとは思《おも》はれた。勿論《もちろん》I子《こ》の意味《いみ》は文芸上《ぶんげいぜう》のことであつた。S、H氏《し》が女性《じよせい》に対《たい》して、I子《こ》のやうな婦人《ふじん》が望《のぞ》んでゐるやうに優《やさ》しい親切《しんせつ》な異性《いせい》でないことはI子《こ》も知《し》つてゐた。そしてそれを口《くち》にしてゐた。 「それは普通《ふつう》無智《むち》な女《おんな》に対《たい》してのことさ。I子《こ》ならS、H君《くん》でもきつとおとなしくするよ。」私《わたし》は自家《じか》謙《けん》遜の意味《いみ》で言《い》つたが、いくらかの皮肉《ひにく》もないとは言《い》へなかつた。それは無邪気《むじやき》なI子《こ》が、殊《こと》にもさう云《い》ふことを嬉《うれ》しがる人《ひと》の好《よ》さをもつてゐるからであつた。私《わたし》は危険区域《きけんくいき》の線《せん》をこえない範囲《はんい》でよくさう云《い》ふ風《ふう》な悪戯《あくぎ》な試《ため》しをするのであつたが、しかし又《また》事実《じじつ》さうかも知《し》れないと思《おも》はれないこともなかつた。 I子《こ》もそれには答《こた》へなかつた。 或《ある》ときも無聊《ぶれう》に苦《くる》しんでゐた折《おり》、誰《たれ》かを訪問《ほうもん》しようかと言《い》ひ合《あ》つてゐるときS、H氏《し》の名《な》が出《で》た。 「さうね、行《い》つてもいゝね。」 「行《い》きませう。」 しかし私《わたし》は決定的《けつていてき》でなかつた。行《い》くなら一|人《り》やつた方《ほう》がいゝと私《わらし》は密《ひそ》かに思《おも》つてゐた。I子《こ》を番《ばん》してついて行《い》くやうなことは私《わたし》には出来《でき》なかつた。何《なに》かおこつたら起《おこ》つたときのことだし、S、H氏《し》がまたそんな隙《すき》をもつてゐるとも思《おも》へなかつた。I子《こ》にしたところで、この際《さい》新《あたら》しい事件《じけん》を持《も》ちあげることは、慵いことだと思《おも》はれた。 私《わたし》は一|度《ど》は新築《しんちく》のS、H氏《し》の家《うち》を見《み》たい旁《かた/″\》、いつかは行《い》てもいゝと思《おも》つたが、忙《せわ》しいときだし少《すこ》し心《こゝろ》の準備《じゆんび》をとゝのへたをりのことにしようと思《おも》つた。 「一|人《り》でおいで。その方《ほう》が話《はなし》も自由《じゆう》でいゝよ。」 「一|人《り》なら行《い》きたくないのよ。先生《せんせい》のものとして、連《つ》れてつてほしいのよ。」I子《こ》は答《こた》へた。 [#5字下げ](五)[#「(五)」は中見出し] それでS、H氏《し》とこゝで逢《あ》つたのを幸《さいわ》ひに私《わたし》は手軽《てがる》にその事《こと》を話《はな》したのであつた。するとS、H氏《し》は「危険《きけん》だな――」といふやうな口吻《こうふん》を卒然《そつぜん》洩《も》らしたものであつた。 「そんな事《こと》はない。」私《わたし》は笑《わら》ひながら否定《ひてい》した。すると又《また》S、H氏《し》が訂正《ていせい》でもするやうに、「いや、私《わたし》の方《ほう》が……。」と答《こた》へた。 私《わたし》は勿論《もちろん》どつちが危険《きけん》だかといふ明白《めいはく》な意識《いしき》なくして、たゞ漠然《ばくぜん》と半《なかば》謙遜《けんそん》の気持《きもち》で言《い》つたのであつたが、S、H氏《し》がまたさう云《い》ふ風《ふう》の謙遜《けんそん》な意味《いみ》で答《こた》へたのに出会《であ》つて、それを又《また》押返《おしかへ》して何《なに》か附加《つけくわ》へるのも変《へん》だつたので其《そ》れには黙《だま》つてゐたが、 「若《わか》い人《ひと》がづいぶん行《い》くでせう」ときいた。 「しかしさう云《い》ふ人《ひと》はさう云《い》ふ人《ひと》だちで話《はな》してゐますから。」 それからS、H氏《し》は家《うち》の所在《しよざい》などを教《おし》へて、 「どうぞ入《い》らして下《くだ》さい」と言《い》つたが、それは私《わたし》に対《たい》する言葉《ことば》だと見《み》てよかつた。 やがて奥《おく》のダンスホールへ人々《ひと/″\》は流《なが》れこんで行《い》つた頃《ころ》にはMR氏《し》の姿《すがた》がどこへ行《い》つたか見《み》えなかつた。S、H氏《し》も京都《けうと》から来《き》たT氏《し》の連中《れんちう》が、どこかで待《ま》つてゐるといふので、夫人《ふじん》と何《なに》か打合《うちあわ》せをして、少《すこ》し前《まえ》に帰《かえ》つて行《い》つた。そこには未《ま》だ懸《か》けない大《おう》きな油絵《あぶらえ》などが、窓《まど》ぎわに立《た》てかけてあつたりして、大入道《おうにうどう》のR国人《こくじん》が、この作者《さくしや》について、絵《え》の意味《いみ》について説明《せつめい》してくれたりしたが、間《ま》もなくピアノの伴奏《ばんそう》でマンドリン演奏《えんそう》がはじまつた。そして其《そ》れがすむと間《ま》もなく一|人《り》の婦人《ふじん》が、R氏《し》と打合《うちあは》せをしたあとでR氏《し》の通訳《つうやく》説明《せつめい》につれて舞台《ぶたい》に上《のぼ》つた。そしてピアノの伴奏《ばんそう》で独唱《どくせう》をはじめた。代理大使《だいりたいし》がつい私《わたし》の横《よこ》の方《ほう》にゐたが、彼《かれ》はまだ残《のこ》りをしさうに「キヤニユスピークイングリシユ?」を繰返《くりかえ》してゐた。私《わたし》はまた笑《わら》ひながら、前《まえ》と同《おな》じことを繰返《くりかへ》すより外《ほか》なかつた。若《もし》も「エヽリツトル」とでも言《い》はうものなら何《ど》んなむつかしい質問《しつもん》が始《はじ》まらないとも限《かぎ》らないからであつた。 調子《てうし》づいた独唱《どくせう》が二つばかりつづいた。そして前《まえ》に叙事詩《じよじし》のやうなものを朗読《らうどく》した多分《たぶん》代理大使《だいりたいし》の夫人《ふじん》だとおもはるゝ婦人《ふじん》が其後《そのあと》で又|舞台《ぶたい》のうへで朗読《らうどく》をはじめた。 多分《たぶん》彼等《かれら》に取《と》つては楽《たの》しい一|夜《や》であるべき筈《はず》だつたのであらうが唖《おし》のやうに黙《だま》りこくつた我々《われ/\》の苦《にが》い表情《へうぜう》と無愛相《ぶあいそう》な態度《たいど》とが、如何《いか》に彼等《かれら》を失望《しつぼう》させたかは、想像《そうぞう》に余《あま》りあるものであつた。 私《わたし》たちは帰《かえ》りがけに画帖《がてふ》を書《か》かせられた。 [#5字下げ](六)[#「(六)」は中見出し] 乗物《のりもの》の支度《したく》もなかつたので、私達《わたくしたち》はそろ/\打揃《うちそろ》うて外《そと》へ出《で》た。そして円《えん》タクでも通《とお》りかゝつたらばと思《おも》つて、寂《さび》しいN町《まち》の通《とお》りを、Tホテルの方《ほう》へと歩《ある》いた。 「あれは皆《みん》な立派《りつぱ》な紳士《しんし》なんだらうが、何《なん》だか安《やす》つぽいね。」M、H氏《し》か言《い》つた。 この疑問《ぎもん》は私《わたし》などにも兎角《とかく》起《おこ》りやすい疑問《ぎもん》である。歌舞伎俳優《かぶきはいゆう》が近代的《きんだいてき》になるに従《したが》つて、以前《いぜん》のやうな荘重《そうてう》典雅《てんが》の風貌《ふうばう》がなくなつて、そこいらの若《わか》い衆《しう》と大《たい》した違《ちが》ひがなくなると同《おな》じことである。議場《ぎぜう》へ出《で》る政治家《せいぢか》でも、両国《れうこく》の土俵《どへう》で見《み》る力士《りきし》でも、伝統的《でんとうてき》なものが亡《ほろ》びて、段々《だん/″\》小粒《こつぶ》になつて来《く》るのにも不思議《ふしぎ》はない。 「今度《こんど》はもつとしんみり話《はなし》のできるやうにしたいと言《い》つてゐました。」K氏《し》が言《い》つた。 多分《たぶん》S、H氏《し》の夫人《ふじん》が、ホテルでS、H氏《し》とT氏《し》の連中《れんちう》を待合《まちあわ》せることになつてゐたのでもあらうがM、H氏夫妻《しふさい》が其処《そこ》に宿泊《しゆくはく》してゐたために、一|同《どう》は知《し》らず識《し》らずホテルへ寄《よ》ることになつた。ホテル前《まえ》の電車《でんしや》を突切《つき》る頃《ころ》、私《わたし》はM、H夫人《ふじん》と話《はな》しながら歩《ある》いてゐたが、彼女《かのじよ》は私《わたし》が自動車《じどうしや》にでも轢《ひ》かれはしないかと気遣《きつか》つて、どうかすると袖《そで》を引《ひ》つ張《ぱ》つたりして、手《て》を取《と》らないばかりに劬《いた》はつてくれるのであつた。私《わたし》がI子《こ》との事件《じけん》でM、H氏《し》に攻撃《こうげき》されたことを、私《わたし》が悲観《ひかん》してゐるやうなことを、私《わたし》は私《わたし》の最近《さいきん》の作品《さくひん》で書《か》いたりしたので、一|層《そう》彼女《かのじよ》は私《わたし》の心《こゝろ》の痛《いた》みをさすつてくれようとしてゐるらしいのであつた。 「お危《あぶな》うございますわ。お大事《だいじ》のお体《からだ》ですからね。」 「大丈夫《だいぜうぶ》ですよ。」 「段々《だん/″\》お友達《ともたち》が亡《な》くなつて、ほんとに寂《さび》しいんですものね。お体《からだ》を大事《だいじ》にして下《くだ》さいね。」 「大丈夫《だいぜうぶ》です。私《わたし》はそんなに……。」 「どうかして、思《おも》ひ切《き》つてお別《わか》れになれないものですかね。」 ホテル前《まえ》へ差《さ》しかゝつたとき、夫人《ふじん》は衷心《ちうしん》からそれを切望《せつぼう》するやうに言《い》つた。 「どうもね、ちよつとさうも行《い》かないんですよ。」 「いけないんですの。」夫人《ふじん》は絶望的《ぜつぼうてき》に呟《つぶや》いた。 ぞろ/\とホテルへ入《はい》つて行《い》つた。ちやうどクリスマスの翌夜《よくや》でパイントリイか物々《もの/\》しく飾《かざ》られ、食堂《しよくどう》に舞踊《ぶよう》があつたりして、まるでお祭《まつり》のやうな騒《さわ》ぎであつた。私《わたし》たちはサロンルームの片隅《かたすみ》に、辛《から》うじて座席《ざせき》を占《し》めることが出来《でき》た。 [#5字下げ](七)[#「(七)」は中見出し] 社交家《しやこうか》のM、H氏夫人《しふじん》が、私達《わたしたち》のために何《なに》か飲料《のみもの》でも斡旋《あつせん》しやうとして、ボオイに謀《はか》つてみたけれど、今夜《こんや》の騒《さわ》ぎなので、これといふものもなかつた。たゞ曹達水《そうだすい》があるばかりであつた。私達《わたしたち》は卓子《てーぶる》を囲《かこ》んで、莨《たばこ》をふかしながら漫談《まんだん》に時《とき》を移《うつ》した。軽《かる》い瀟洒《せうしや》な夜会服《やかいふく》を着《き》たのや、裾模様《すそもよう》の盛装《せいそう》をしたのや、その中《なか》にはまたタキシイドの若《わか》い紳士《しんし》に、制服《せいふく》をつけた学生《がくせい》、それに子供《こども》たちも少《すくな》くなかつた。軍服姿《ぐんぷくすがた》もちらほら見《み》えた。それらの人達《ひとたち》が目間苦《めまくる》しく往《い》つたり来《き》たりしてゐたが、ダンス場《ば》は人《ひと》がぎつちり鮨詰《すしつめ》になつてゐた。音楽《おんがく》につれて、浮《う》いたり沈《しず》んだりする男女《だんじよ》の顔《かお》が、私達《わたしたち》の目《め》にも見《み》えるのであつた。 「どう云《い》ふ連中《れんちう》だらう。」R国《こく》に長《なが》くゐたK氏《し》がきいた。 「色《いろん》々な人間《にんげん》がゐるのさ。」M、H氏《し》が微笑《びせう》してゐた。 「我々《われ/\》の仲間《なかま》でも、かう云《い》ふところへ来《く》る人《ひと》もあるのさ。KだのTだの。」私《わたし》も附加《つけくわ》へた。 「まるで船着場《ふなつきば》のホテルのやうだね。いつでも恁《か》うかしら。」 「いや、いつもは至《いた》つて寂《さび》しい」東京《とうけう》へくればいつでも此処《ここ》へ宿泊《しゆくはく》することにしてゐるM、H氏《し》が答《こた》へた。 星《ほし》のやうな目《め》をうろ/\させてS、H氏《し》の夫人《ふじん》が、頼《たよ》りなさゝうにしてゐるので、M、H氏夫人《しふじん》と、N氏夫人《しふじん》が気《き》をもんで電話《でんわ》でもかゝつて来《こ》ないか否《いな》かをボオイに訊《き》いたりしたが、何《なん》の消息《せうそく》もないらしかつた。勿論《もちろん》S、H氏夫人《しふじん》はS、H氏《し》と其《そ》の友人《ゆうじん》を此処《ここ》で待合《まちあわ》せることになつてゐた。 「さあ、僕《ぼく》は失敬《しつけい》しよう!」私《わたし》は興《けう》がなさゝうに椅子《いす》を離《はな》れた。 「まあ、お宣《よろ》しいぢやございませんか。」 「いや、もう遅《おそ》いですから。」 「I子《こ》さんがお待《ま》ちになつていらつしやいますの。お呼《よ》びになつたら可《い》いぢやございませんか。」 「そんな訳《わけ》でもないんです。では失礼《しつれい》。」 M、H氏《し》夫人《ふじん》が出口《でくち》まで送《おく》つてくれて、自動車《じどうしや》に載《の》せてくれたりした。 私《わたし》は途中《とちう》I子《こ》の宿《やど》の近《ちか》くで自動車《じどうしや》を乗棄《のりす》てた。そしてI子《こ》の宿《やど》へ寄《よ》つた。I子《こ》は洋服姿《ようふくすかた》で独《ひと》りでゐた。 「お帰《かえ》んなさい。づいぶん遅《おそ》かつたぢやありませんか。」 「ちよつとホテルへ寄《よ》つたものだから。ホテルは今夜《こんや》も大変《たいへん》な騒《さわ》ぎさ。」 「さう。今夜《こんや》の会合《かいごう》は何《ど》んな人達《ひとたち》でしたの。」 私《わたし》はその事《こと》について、少《すこ》し話《はな》した。そして其《そ》のついでにS、H氏《し》の言《い》つたことをも話《はな》した。 「あゝ言《い》つておいたから、一|人《り》で行《ゆ》くといゝ。何《なん》ならS青年《せいねん》でもつれてね、S、H氏《し》は君《きみ》に興味《けうみ》をもつてゐるかも知《し》れないから、話《はな》してくれるだらう。」私《わたし》は少《すこ》し誇張《こてう》して言《い》つた。 「そんなことないわ。貴方《あなた》の言《い》ひ方《かた》がいけないのよ。どう言《い》つたのよ?」 「どうつて、行《い》きたがつてゐると……」 「それだから可《い》けないのさ。」 寝床《ねとこ》についてからも、また其《そ》の話《はなし》が出《で》た。 「君《きみ》ならきつと、興味《けうみ》をもたれると思《おも》ふね。」 「そんな事《こと》ないわ。私《わたし》は奥《おく》さんと話《はな》してこようとおもふ。」I子《こ》は言《い》つてたが、私《わたし》の胸《むね》にうづまつた彼女《かのじよ》の顔《かお》には、自然《ひとりで》に善良《ぜんれう》な微笑《びせう》が浮《う》かんでゐるのを、私《わたし》は感《かん》じない訳《わけ》に行《い》かなかつた。[#地付き](昭和3年1月19[#「19」は縦中横]日~25[#「25」は縦中横]日「時事新報」) 底本:「徳田秋聲全集第16巻」八木書店 1999(平成11)年5月18日初版発行 底本の親本:「時事新報」 1928(昭和3)年1月19日~25日 初出:「時事新報」 1928(昭和3)年1月19日~25日 入力:特定非営利活動法人はるかぜ