約 48,671 件
https://w.atwiki.jp/orirowa2014/pages/339.html
「才能がない」 歴史を感じさせる六畳一間のボロアパートは夏の太陽に蒸され熱気に満ちていた。 空調などという気の利いた現代文明の利器などこの家には存在せず、開いた窓から不規則に温い風だけが一時の慰みとして通りぬけてゆく。 狭い部屋の中心で老人は行儀悪く畳の上に寝ころび、片手で筑前煮を摘まみながら大袈裟に嘆くように言う。 「才能がねぇよ拳正。お前には才能がない」 部屋の隅で固まる少年に辛辣な言葉を浴びせる。 そんな言葉に晒されながらも少年は微動だにしない。 というよりその体勢から動くわけにはいかなかった。 足を馬歩に開き両手を突出し中腰の体制のままの姿勢を保ち続ける。 これは站椿功と呼ばれる同じ姿勢を維持する修行である。 なみなみと水の注がれた茶碗を両肩と両膝、頭部に乗せて朝からすでに6時間ほどこうしていた。 本来、站椿功に水瓶を乗せる必要は全くないのだが、どうやら師匠が最近ハマっている映画鑑賞の影響らしくこんなことをさせられていた。 「なんだよいきなり……いや、そりゃ師匠から見りゃそうなのかもしれないけどよ」 それでもその体勢を維持したまま反論を試みる。 人間と怪物を比べるなと言う話だ。 普通の人間にしてはよくやっている方だと思う。 その反論に、何が楽しいのか老人はカカッと笑った。 傍らの酒瓶を傾け、透明なコップに注いだ安酒を煽る。 少年の苦悩は老人にとって酒の肴でしかないのだろう。 「その年にしてみりゃそれなりのモノだよお前は。オレのお前くらいの頃に比べればちぃとばかし物足りねぇがな。 けどまぁ今のうちからオレがみっちり仕込んでやりゃあ、山の頂が見える位置には届くだろうぜ」 武という山の頂は遠く厳しい。 少年は麓を踏み、ようやく1合目に差し掛かったに過ぎない。 魔拳士と謳われた師ですら未だ頂点に至らず、8合目に届くかどうか。 「そこまで至れりゃ、十分じゃねえかよ」 「まあ聞け。一口に才といってもいろんな要素があってな。 中には能と適ってのがある。こりゃどちらかが欠けても才能とは呼べねぇな。 能があっても適がなければ苦しいだけだし。適があっても能がなければ無様なもんだ」 そう師は弟子に説く。 能力的な向き不向きと、性格的な向き不向きがあるという話だろうか。 「俺はどっちだってんだよ?」 「お前はどっちでもねぇよ。能と適がかみ合ってる、オレと同類だな」 「ぅん……? じゃあ何が悪ぃんだ?」 能力的にも性格的も向いているというのなら、これ以上ないと言える。 少なくとも才能がないなどと罵られる謂れはない。 「別に悪かねぇよ。けどな、ここまで行くと生き方を縛られちまう」 「構わねぇだろ、むしろ上等じゃねぇか。師匠もそうだったんだろう?」 生き方を縛られると言われても、それを悪いとは思わない。 そう生きると決めているのだから、縛られたところで望むところだ。 そんな生き急ぐような少年の答えに老人は苦笑する。 「オレの場合とお前の場合は違うさ。そしてオレとお前のこれが一番の違いだ。 才にはな、もう一つ機ってのが絡む。 こりゃあ個人に宿る才じゃなくて、時代に適合するかという話だ。 詰まる所、今の時代お前の才は使いどころがない」 断言される。 才能がないのではなく才能の生かしどころがない。 弟子の道を示すはずの師に、その道の先はないと諭すようにそう言われた。 「こっちで数年過ごしただけの俺でもわかる、今の時代この国で武力でできる事なんざ限られてんぜ」 様々な情報に溢れた雑多な世界。 より多くが求められ、一つ一つの意味は稀薄となる。 そんな世界では比類なき武力をもつ魔拳士ですら、一介の老人として埋もれてしまう。 「武力が全くの無意味だとは言わねぇさ。自分と周囲の人間程度を護れる護身は必要だ。 けどな、オレの教えてるのは人間を効率的に破壊する技術だぜ? 護身の域なんてのはとうに過ぎてる。 強くなってどうする? 人と人が戦う時代でもあるまいし、武功を上げるって時代でもねぇだろう? テレビの中で見世物になるのが望みか? それとも嬢ちゃんの護衛してれば満足か?」 不良どもの喧嘩に使うには少し強くなり過ぎた。 幼馴染を付け狙う悪漢の撃退。拳正の武が必要とされる場面などそれくらいだ。 格闘家にでもなって、総合のリングにでも立てばいいのか。 それは果たして、少年が望むような生き方なのか。 「過ぎたるは猶及ばざるが如し。むしろ強すぎれば危険人物扱いだ。過ぎた力は足かせになる。 拳ならまだしも、槍術なんてのは完全に殺しの技術だからな。使いどころもねぇだろう」 「……急になんだよ師匠。俺に教えんのが嫌になったとか言うんじゃねぇだろうな」 史上最強と謳われた魔拳士。 これほどの傑物がただの学生に物を教えているというのも元より気まぐれのような物であり、いつ終わってもおかしくはない関係だ。 それが面倒になってしまったのだろうか。 そんな不安がよぎる。 「そうじゃねぇさ。俺なりにバカな弟子の将来を心配してやってんだよ。 今だって千万からの将棋の誘いも断って、こうしてお前の功夫に付き合ってやってんだろう?」 見てるだけじゃん、という言いかけたが飲み込む。 そんな少年を見て老人は筑前煮を一つまみしてカカと笑う。 「お前はどうにも世間様と折り合いが悪いみたいだからな。 お前にもちっと器用さがあれば、世間様に受け入れられる俺みたいな好々爺になれるだろうに」 「けっ。何が好々爺だよ。黑社會(中国マフィア)の首領にしか見えねぇよ師匠は」 師の纏う雰囲気はどう見ても堅気の物ではない。 こんなのが受け入れられてるんだから現代日本の度量は広く平和なものである。 だからこそ、使い道がないのか。 「どうにもお前は闘争を手段じゃなく目的として据えてる節があるからな。 そういう生き方しか選べないお前が、戦えなくなったらどうする?」 挫折か怪我か、あるいは死か。 戦っている以上、戦えなくなることなんてよくある話だ。 人生すべてともいえる価値を奪われた時どう生きるのか。 それが生き方を縛られることの危うさである。 「もしそうなったら、師匠はどうするんだよ?」 自らが歩む道のりの先駆者に問う。 「オレか? オレぁいい年だからなぁ、できなくなったら耄碌する前にくたばるだけさ」 それは老い先短い老人の意見だ。 これから先、人生の続く少年には参考にならない。 はぐらかされてしまったようだ。 答えは己で出せという事だろう。 「結局のところ、武道を極めて何がしてぇんだぁお前は? 何に為りてぇんだ手前は? それを見定めておきゃあ、ダメになっても意外と何とかなるもんだ。 逆に、それを見定めておかねぇと、碌な結果にならねぇぞ」 振りどころのない拳など虚しいだけだと、武を極めた達人は言う。 套路ではなく招法に重きをおいた実戦派だからこそ、極めた拳をどう振るうかに拘るのだろう。 「俺は…………」 少年が答えを言おうとしたところで、頭の上の水面が揺れて一筋の水がこぼれた。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 「…………寝る」 そう言って、少年はふらりと揺れると、完全にスイッチが切れたようにその場にバタリと倒れこんだ。 「え、ちょっと拳正!?」 「に、新田くん!?」 砂埃を上げ倒れた少年のもとへ、二人の少女が血相を変え駆け寄ってゆく。 真っ先に駆けつけたのはユキだったが、目の前まで来て突然戸惑うように足を止めた。 血塗れで倒れこむ拳正を見て、頭が真っ白になり、どうすればいいの分からなくなったのだ。 対して僅かに遅れて到達した九十九は倒れた拳正のもとに躊躇いなく駆け寄ると、すぐさま身を屈め呼吸を確かめる。 「大丈夫、息はしてる」 意識を失っているだけだ。本当に寝ているだけらしい。 とは言えその傷は深く、出血も止まっていない。 特に岩に打ち付けられた額の裂傷が酷く、銃弾をしこたま撃ち込まれた両腕にはまだ弾が残っている。 普段から生傷の絶えない男である。 傷ついた拳正など九十九にとっては見慣れたモノなのだが、ここまで重症なのは初めてだ。 いや違うと、否定の言葉が脳裏に浮かぶ。 初めてではない。 本気で死にかけた拳正を見るのはこれで2度目だ。 九十九にとっても心の疵となったあの出来事。 父親に刺された拳正を見つけたのは幼き日の九十九だった。 いつものように窓から直接拳正の部屋へと忍び込みそれを見つけた。 九十九は混乱して泣き喚くばかりで、何もすることができなかった。 異変に気付いた九十九の父が救急車を呼ばなければ、拳正もどうなっていたか分からない。 あの日のように何もできなかった後悔は繰り返さない。 キュっと唇を噛みしめる。 決意を口にするように呟く。 「傷を塞がないと」 「……どうやって?」 息を呑んでユキが問う。 その問いに答えるように九十九は支給品の中からソーイングセットを取り出した。 「……縫い合わせる」 「そんなことできるの?」 「大丈夫……私、縫い物得意だから」 そういう問題ではないのだろうが、ともかくそこは一二三九十九だ、クソ度胸の女である。 緊張した喉を潤すために唾を飲み込む。 ペットボトルのふたを開け、飲料水で傷口を洗い流してから針を宛がう。 そこで一拍。心を落ち着けるようふぅと息を吐く。 カッと目を開き、一気に力を籠め針を通した。 さすがに傷口を縫うのは初めての事だが、要領は雑巾と一緒だ。 そう言い自分に聞かせながら、止まらぬよう一気に裂傷を縫い合わせる。 チクチクと5針ほど塗ったところで糸をくくって切り離した。 続いて裂けた頬や欠けた耳へと針を移す。 一度手を止めれば二度と動かぬという覚悟で次々と縫い合わせてゆく。 これで大きな裂傷は粗方塞げた。 次はこちらに駆けつける際に受けた弾丸が腕の中に残っている腕だ。 傷を縫う前に腕の中の弾丸を抜き出さなければならない。 そのためにはナイフでいったん傷口を開く必要がある。 刀匠として刃物の扱いになれているとはいえ、手術まがいのことをするのはまた別の覚悟が必要だ。 脳裏に浮かべるのは鉄と炎。ミスの許されないひり付いた鉄火場の空気。 ナイフを握り震えそうになる手を、咽かえるような熱で塗りつぶす。 一つ息を吸い、刃を傷口に宛がうと吐くと同時に一気に引く。 そのまま血がにじみ出る前にナイフの先端で埋まった弾丸を抉り出した。 ピンと数滴の血と共に弾丸が宙に跳ねる。 「…………スゴい」 ユキが思わず呟いた。 傍から見ているだけで鳥肌が立つような凄まじい、鉄火場で鍛え上げられた職人の集中力だ。 一息のもとに作業を終わらせ、開いた傷口を縫い合わせると次の弾痕に取り掛かる。 ユキはダメだ。生々しい手術現場は見ているだけで貧血でも起こしそうである。 実戦の場に立ち凄惨な光景には慣れているはずなのに、ただですら白い顔を青白くさせ直視する事すらできない。 不甲斐なさに沈みそうになるが、このままではダメだとユキは自らを奮い立たせる。 そんな間に九十九は全ての弾抜きを終えてしまった。 息つく間もなく、九十九は何の躊躇もなく拳正の服をはだけさせ体をまさぐり次の傷を見始める。 「足は……ヒビってるっぽいなぁ。腫れてきてるし冷やしたいところだけど……」 靴を脱がせ、踏み抜かれた足の甲を見ながらそう呟く。 赤く腫れ始めているが、ここには湿布もコールドスプレーもない。 せめて添え木か何かで固定だけでもしておこうかと、辺りを見渡す九十九だったがちょうどよさげなものは見当たらない。 「これ、使って……!」 そこに、どこから取り出したのか、ユキが後方から氷を差し出した。 言うまでもなくユキが能力で産み出した氷である。 これがユキのせめて出来ることだ。 「ありがと、ユッキー!」 九十九はユキに礼を言って氷を受け取る。 直接では凍傷を起こす可能性があるので、ハンカチで包んで足に巻きつけた。 同じく炎症を起こしている傷にも氷を当てる。 ユキから追加で氷をもらい、ついでにハンカチも借りた。 それでも足りない部分は衣服を切り取り包帯変わりとした。 ひとまずこれで応急処置は終りである。 傷を縫い合わせて炎症を抑えるべく冷却しただけだが素人ができる範囲はここまでだ。 衛生面など気になるところはあるが、あとは拳正の生命力と回復力に任せるしかない。 「ふぅう」 一仕事終えた九十九が疲れを吐き出す様な呼吸と共に物陰に腰を下ろす。 渇いた喉を潤そうとしたところで、傷口の洗浄で飲料水を使い切った事に気付いた。 「お疲れ様」 そこにユキからペットボトルを差し出される。 ありがとうと言って受け取ると、まるで冷蔵庫で冷やされていたようなひんやりとした冷たい手応えがあった。 キンキンに冷えた水を喉を鳴らして一気に飲み込む。 「ぷっはぁーーー! 沁みるぅぅ!」 仕事帰りの一杯を呑んだ親父のような声を上げる乙女。 妙な集中力を使ったせいか、テンションがおかしなところに入っているらしい。 テンションを上げる九十九とは対照的にユキは表情を曇らせる。 「……すごいね一二三さん。私なんか全然ダメだ」 何もできなかった。 不甲斐なさに自分が嫌になる。 怪我人を前にしても何の治療もできず、殺し屋のような男を前にたときもそうだ。 ついでに言うなら裁縫もできないし、料理だってかき氷くらいしか作れない。 できる事と言えば冷たい水を差しだすだけの水汲み女だ。 だが九十九はそんなユキを見て何を言ってるんだろうという表情で首をかしげた。 「ダメなんてそんなことないよ。さっきだって私の事助けてくれたじゃん」 「え…………?」 襲われていた九十九を助けたのは拳正だ。 何の話かと思ったが、そういえば銃撃から氷の盾で九十九の後ろを守っていた事を思い出す。 ついでに言えば、蹴り飛ばされた九十九を受け止めたのもユキである。 「あれは、たまたまというか咄嗟に氷を」 拳正を追いかけて九十九に銃口が向けられる気付いて氷の盾を張っただけだ。 そこまで言ってふと疑問がよぎった。 「そういえば一二三さんは、私の力の事、不思議に思わない?」 「ん? そういえばいきなり氷が出てきてたような……そうでもないような……うーん、んんーー?」 言われて、今更になってどういう事なのかと首をかしげる。 必死で理解しようと脳内CPUが処理をはじめ、フリーズしたのかその動きが固まる。 しばらくの後、結論に達して答えを導き出した。 「えっとつまりは…………冷え症?」 「新田くんと同じボケしなくていいから」 まあそんな認識だろうと思ってはいたが。 はぁと溜息をついてユキは掌を差し出す。 「私ね氷を産み出すことができる超能力者なの」 拳正にもしたように、目の前で氷を産み出して見せる。 九十九はそれを見て、はぇ~と感心してるんだか、驚いているんだかよくわからない声を上げた。 「はぇ~すっごいねユッキー」 「驚かないの?」 「え、驚いてるよ? 割と」 「割ととかそういうレベルなんだ……」 拳正という前例があった以上今更、否定されるとも思っていないが。 こうもあっけらかんと受け入れられると、偏見の目を恐れて仲間内にもカミングアウトできなかった自分がバカみたいだ。 それができなかったのは、恵理子や半田から能力者に対する差別や迫害の話を怪談のように聞かされてきたからだろう。 せめて、舞歌や夏実に話せていれば、もっと別の可能性があったのかもしれない。 だがそれは今更考えても詮無き事だ。 「さて、それじゃ」 一息ついた九十九が休憩は終わりとばかりに尻を払いながら立ち上がる。 何をするつもりなのかと思ったが、その視線の先を見てユキも九十九が何をしようとしているのかを察した。 傍らで転がる夏目若菜の埋葬だ。 適当に掘りやすそうな地面を見つくろうと、腕を振り上げ袖をまくり上げる。 「よしっ」 掛け声で気合を入れる。 だが墓を掘るというのはなかなかに重労働だ。少女の細腕では道具があっても難しい作業である。 九十九の手元に穴を掘るに適した道具なんてないし、どうやって掘るのかなど方法など考えていないのだろう。 それでもやる。輝幸を埋葬したの時のようにいざとなれば素手で掘り進めるつもりだろう。 やるべきだと思ったからやる。彼女にとってはそれだけだ。 「手伝うわ、私も舞歌の供養をしたいし」 「舞ちゃん?」 突然出てきた名前に九十九が首を傾げる。 ユキは神妙な面持ちで頷き、そっと荷物の中から朝霧舞歌の亡骸を取り出した。 死体を持ち歩くなんて引かれても仕方ない行為だが、舞歌の弔いをするには状況の落ち着いた今しかない。 「そっか、舞ちゃん……」 九十九は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにしゅんとしょげた様に同情を示した。 友人の死体に忌諱や驚きよりも悲しみが上回ったようだ。 そっと近づきその頬に触れる。 その冷たさに思わず涙が出そうなったが、ぐっと気合で堪えた。 そして努めて元気よく声を出す。 「よーし! じゃあ始めようか」 「ええ、任せて」 そう言ってユキが地面へと手を向ける。 すると地中の水分が凝固され氷の華が狂い咲いた。 押し出されるように土塊が抉り出される。 わざわざ掘り返さずともこれを繰り返すことで穴を作れる。 「おぉ! すごい……ッ!」 目の前で繰り広げられる浮く強い超能力に手放しで歓声を上げるが、こうなると今度は九十九が手持無沙汰だ。 道具も能力もない九十九では手伝う余地がない。 仕方ないので、大人しく作業を進めるユキの背を見ていることにした。 だが、その姿に何か違和感を感じたのか、目を細めて凝視する。 「そういえばユッキー、なんで拳正の制服着てるの?」 九十九からすれば別に他意のない、なんでなんだろうくらいの疑問だったのだが。 ユキは驚いたネコのように跳ね、作業の手を止め慌てて手を振る。 「その、違うの! いや違わなくて、私の服が破けちゃって、それで」 興奮しているのかユキ白い肌が朱に染まる。 ユキ自身なんで言い訳みたいな事をしているのか自分でもよくわからなかった。 「そっか、大変だったね。そうだ……! ソーイングセットがあるから縫ってあげよっか?」 「いやッ。いい! 大ッ丈夫だから。気にしないで、うん」 「? そう? 気が変わったらいつでも言ってね」 乙女回路の欠落した女は首をかしげる。 ユキは胸に手を当てはーはーと荒げた息を整えながら、作業に戻った。 「これくらいでいいかしら」 数分後。 ユキの目の前には人一人収めるには十分な大きさの墓穴が二つ。 全く飾りのない簡易さだが、この状況ではこれが精いっぱいである。 「お疲れユッキー」 今度は九十九がユキをねぎらう番だ。 残念ながら九十九にはユキのように気の利いた差し入れを入れることは出来ないけれど。 それどころか申し訳なさそうにユキに向かって追加の要望を述べる。 「穴掘りなんだけど……あと一つ、お願いできないかな?」 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 勇者と元勇者。 聖剣に導かれし二人の少年が向き合いながら腰を下ろして食事をとっていた。 こうしていると魔王討伐の長い旅路を思い出す。 夜はカウレスが起こした火を囲ってこうして仲間たちと食事をとったものだ。 火起こしは得意だったけれど、殺し合いの最中では目立つような行為はできなかった。 パンをかじる。 カウレスの荷物はナイフの対価としてデイパックごと少女に譲り渡したため、このパンは勇二に分け与えられたものだ。 勇二は味気のないパンに不満気だが、カウレスからしてみれば十分に美味い。 食事や休息は勇者である勇二には必要ないのだろうが、今のカウレスには必要な行為である。 体力や気力のほかに僅かながらの魔力回復にもなる。 ただ、その行為に己がただの人間になったのだと実感してしまう。 勇二の精神状況は比較的落ち着いている。 死亡による強制リセットというのもあるだろうが、これまでの暴走は庇護者を失い孤独であったというのが大きいのだろう。 姉のように慕った魔法使いと妖怪の死、聖剣の干渉。 少年の心に収めるには大きすぎる負担だった。 分かち合える誰かがいるというのは、僅かながらその重さを軽くする。 既に勇二の食事は終わっていた。 小食というより、勇者にとって食事はこれまでの習慣や嗜好のようなものだ。 味気ないパンをこれ以上齧るのは嫌になったのだろう、それは勇者に残った子供らしい好き嫌いなのかもしれない。 勇二は少しだけ気恥しそうにもじもじと窺うような視線をカウレスへと送る。 その視線に気づいたカウレスが食事の手を止め視線を合わせた。 「どうしたんだい……?」 「あの……カウレスさん。ここでの愛お姉さんがどうしてたのか、教えて」 勇二にとって、真っ先に問うべきはこれである。 勇者の使命よりも喪ってしまった家族がどうしていたのか、その動向が気になってしまう。 「……ああそうだな」 せがむ様な目に根負けして、カウレスは口を開く。 正直、カウレスもその気持ちはよくわかる。 戻らないと知りながら戻らないモノに、喪われてしまったモノに固執する。 いつまでも取り返せない過去に囚われ続ける。それが復讐者だ。 それはある意味、未来を切り開く役割を持った勇者とは対極の存在なのかもしれない。 「と言っても、あまり語れることはないんだが」 カウレスと愛は互いにこの場で最初に出会った相手ではあるが、行動を共にしていた時間は短い。 語れと言われて語ることなどさしてないというのが正直なところだが。 「そうだな……彼女は君の事を心配していた。君の事を大事に思っていたよ」 戦力として評価していたがカウレスは愛の人間性など殆ど知らない。 復讐に囚われ愛を見ていなかった。 ただ、愛は事あるごとに勇二への心配を口にしていた事だけは覚えている。 常に勇二を想っていた、それだけは確かだった。 「それに僕が語らずとも、彼女がどういう人間だったかは君の方がよく知っているんじゃないかい?」 「うん……そうだね」 勇二の中に愛と共に過ごした思い出がある。 この状況においてもただ勇二を想っていた。 それだけでも知れたなら十分だろう。 「お兄ちゃんはどうなの?」 「どうとは?」 「いないの、大事な人? 巻き込まれたりしてない?」 それは自分のような思いをしていないかという、勇二の本来の優しさからの問いだった。 「……大事な人、か」 カウレスの脳裏にいくつもの顔が浮かんで消える。 家族、友人、故郷。魔族によって多くの大切な人が奪われた。 そんな自分に残った大事な人。 「ここには妹と、オデットという仲間が巻き込まれている。 そして妹は…………ミリアの名は呼ばれてしまった」 「……そうなんだ」 あの惨劇から生き残った、カウレスにとってたった一人の肉親もこのバカげた殺し合いで失われてしまった。 勇二が悲しげに目を細める。 家族を巻き込まれる痛みは嫌という程理解していた。 同じ痛みを抱えるものとして同情と憐憫の感情が向く。 「けれど、オデットはまだ生きている」 美しく心優しき魔法使いオデット。 全てを喪ったカウレスが新たに得た仲間だ。 彼女の名はまだ放送で呼ばれてはいない。 常に目深に被られたフードから時折覗く、憂いを帯びた儚げな表情の理由をカウレスは知らない。 彼女にも彼女なりの事情がある事は理解していたはずなのに、その過去を尋ねられなかった。 いや、復讐以外に囚われ、大切なはずの仲間にすら目を向けられていなかった。 「じゃあ、見つけないといけないね!」 勇二が元気のよい声でそういった。 勇二もカウレスも多くの物を失った。 多くを取りこぼした二人の手に、残った唯一残った希望だ。 「……うん。そうだね」 カウレスは少年を正しき方向に導くと決めた。 だが、道を示すつもりが逆に道を示されてしまった。 やはり、目の前の幼き勇者は純粋なまま、純真さ故に何にでも染まる白紙の器だ。 故に容易く黒い憎悪に満たされ復讐に走ることもある。 危うくも純粋。 だからこそ導き手が重要なのだ。 勇者という道を行く先導者として成すべきことを伝えなくてはならない。 空を見上げる。 そらはすっかり夜に染まっていた。 この空もどこかに繋がっているのだろうか。 オデット。 星ひとつないこの地獄で、あの心優しき少女は一体どうしているのだろうか? ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 新田拳正が微睡みから目を覚ます。 記憶が混濁し上手く思い出せないが、どうやら夢を見ていたようだ。 「…………どこだここ?」 倒れたまま見上げる空はすっかり夜に染まっていた。 暗闇に目を凝らす妙に視界が狭い。 身を起こした拍子にハンカチに包まれた氷嚢が膝の上に落ちた。 誰が置いたものだろうか。 「…………ぃッ!」 右目に痛みが走る。 思わず抑えた右目はひんやりとしており、どうやら氷袋はそこに当てられていたようだ。 ぶるりと身が震えた。 痛みとともに殺し屋のような男との戦いを思い出す。 この右目はその戦いで喪われたものである。 実力ならば師匠や黒い闘気を纏った魔人の方が上だったのかもしれない。 だが、あれほど敵を恐ろしいと感じたのは初めてだった。 これまで拳正が戦ってきた相手の中で、一番恐ろしい相手だった。 そして同時に武に生きるものとして、あれほどの高揚を感じたのもまた初めてのことである。 それほどの強敵だった。 数枚は上手の相手だ、相手の消耗もあったのだろうが、今の拳正が勝てたのが奇跡と言える。 そんな相手に命があるだけ幸運だと割り切る。 右目一つは安い犠牲だろう。 「あ、起きた」 聞きなれた声が耳に届く。 毎日聞いている声を聴いたからだろうか、そこでようやく意識がはっきりとしてきた。 視線を向けると見慣れた幼馴染の怒ったような顔と、心配そうに顔を曇らす白い少女の姿があった。 「もう、いきなり道端で寝ないでよね。風邪ひいても知らないんだから」 「あーそらすいませんでしたねぇ」 相変わらずズレたことを言う幼馴染を適当にあしらって立ち上がる。 傷の具合を確かめると応急処置はされているようだった。 額の裂傷も縫い合わされており、銃弾で穴だらけになった腕も糸で塞がれている。 若干雑ながら弾もしっかり抜かれているようだ。 踏み抜かれた足の甲にも炎症を抑えるため氷が巻かれている。 拳を握りしめる。痛みはあるが力は入る。 片足は庇いながらならでも歩行はできるが強く踏み込むのはやや辛い。 震脚を起点とする八極拳士にとっては致命的だ。 視界は僅かにぼやけ、片目では距離感が掴み辛い。 打撃戦は厳しいか。 だが、いざとなれば聴勁でもなんでも使って戦えばいい。 無理を利かせるしかない。 楽をするには早い。 まだ、戦える。 「氷、ありがとな」 氷を包んでいた花柄のハンカチを拾い上げ、佇むユキに礼を言う。 礼を言われたユキは申し訳なさ気に苦笑した。 「あ、うん。けど手当したのは殆ど一二三さんだから」 「そーだぞー。感謝しろよ」 「へーへー。ありがとうございました」 片方になった目で盛り上がった土俵を見下ろす。 目印のように並び立つ石の墓標は三つ。 一つは夏目若菜の墓、もう一つはユキが運んでいた朝霧舞歌の死体を弔ったものだろう。 となると、最後の一つは。 「……あのオッサンのも作ったのか」 「うん、一二三さんが必要だろうって」 名前も知らない殺し屋のような男。 彼らを殺そうとして、彼らに殺された男。 彼を弔おうと言い出したのは九十九である。 九十九自身、友人を殺され、自らも襲われて撃たれて死にかけた。 そんな相手の墓を作る義理などないはずなのに。 拳正は幼馴染の少女に向き直り、その心中を察して言う。 「別に、お前が背負う必要はねぇだろ。お前全然役に立ってなかったし、何よりとどめ刺したのは俺だ」 結局、男の死を一番気にしているのは九十九だった。 拳正一人に背負わせない、その言葉の通り重さを背負っている。 仇だろうと悪人だろうと関係ない。ただそう言うのは嫌だった。 拳正にとっても初めて手にかけた命である。 命を砕いた感触は胸に重い物を落とすが、武の道に生きるのならばいつか避けて通れない道だろう。 大地に根を張った大樹の様に心は揺らがずその結果を受け入れている。 ユキも裏で多くの怪人を手にかけてきた。 人を殺して全く気にしていないと言えば嘘になるが、動けなくなるほど心に影を落とすこともない。 身内でもなければ慣れてしまったというのが正直なところだ。 「……そうだよね気づかなくてごめん」 今でこそそれなりに慣れたとはいえ、ユキだって最初は何かの死に触れた時、両親の死を思い出して吐いた。 ましてや九十九は当たり前の世界を当たり前に生きてきた人間だ。 どれだけ平気な顔をしていても参ってないはずがない。 その心中を察することができなかったことユキは悔いる。 「みんながみんな新田くんみたいに無神経なわけじゃないもんね……」 「おい。流れ弾で俺をディスるのはやめろ」 男の死を気にしてだから弔いを言い出したのか。 九十九は否定するように力なく笑う。 「ただ、放っておくのも可哀そうだって思っただけで、別に背負うとか気負うとかそういうんじゃないよ。そういうんじゃないけど……」 男に対して怨みがないわけではない、怒りがないわけではない。 だが死なば皆等しく躯だ。 死後までも辱める必要はない、そう思っただけ。 それは本当だ。 本当だけど、それだけじゃないのかもしれない。 ったく、と拳正は呆れたように頭を掻く。 煮え切らない様子の幼馴染の元へと近づいてゆき頭を軽く叩いた。 「ま、無理すんなってこった」 「……うん。ありがと拳正、ユッキーも」 三人は墓標の前に並び立つ。 死者の冥福を祈るように九十九とユキは静かに手を合わせた。 拳正も何も言わず、三つ並んだ墓標を見つめた。 弔いとは区切りを己の中でつける作業である。 親友に感謝を。 同類に別れを。 強敵に敬意を。 それぞれ違う思いで見送り決別の言葉を口にする。 「――――――――あばよ」 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 「では改めて問おう勇者よ。君は何を成す者だ? 何のために生きる?」 導き手は、その意義を勇者に問うた。 突然の問いに勇者は困惑するようにたじろいだ。 「何をって、分からないよそんなの……」 明確な答えは返らなかった。 だが、これはある程度予測していたことである。 6歳の幼子に人生の意義を問うような質問を投げてもまともな答えなど返ってくるはずもない。 カウレスはそうかとだけ応え、質問を変える。 「君は正規の契約を結んでいないようだが、どうやって聖剣を扱えるようになったんだい?」 「どうって……邪神ってやつに襲われたから支給品から取り出して、後は普通に使えたけど……?」 それがどれほど恐ろしい言葉なのか、当の本人は理解していないようだが。 カウレスの世界の人間が聞けば気絶するか激怒するような発言である。 聖剣とは剣を持てば使える、などという生易しい物ではない。 「その際に、聖剣に理由を問われなかったかい?」 聖剣は所有者に問う。 自らを振るうに相応しい資格者であるかどうかを確かめるために。 偽りなど許されない。己が本質を曝け出す問答だ。 カウレスは己が目的を復讐と答え、魔王の首を必ず取ると約束した。 聖剣もまた魔族壊滅を約束させ、己が力を与える。 それが血の契約、己が魂を捧げる聖剣の試練。 「うーん。別に何もなかったけど……」 だが、これもなかったと現勇者は否定する。 ここに勇者は二人しかいないので他の勇者がどうだったかまでは分からないが。 さすがに異例なのは勇二の方だろう。 「なるほど。例外づくめという訳か」 そう言えば愛は異世界人だった。 その彼女の知り合いである勇二もまた異世界人という訳だ。 異界の勇者、例外的なのも当然と言う事だろうか。 「では改めて僕の口から説明しよう」 ともあれ現勇者がその使命を理解していない以上、言葉で説明する必要がある。 勇者の使命は契約時に聖剣より与えられる知識である。 正確には言葉ではなくもっと根本的な常識のようなものとして与えられるものだ。 余り口の立つ方ではないので、それを改めて言語化しなくてはならいというのは不安だが。 「聖剣から与えられる基本使命は魔族の壊滅だ、聖剣はその対価として使い手に多くの権能を与える」 聖剣から賦与される能力は多岐にわたるが、最初からその力全てを使える訳ではない。 聖剣との契約を果たせば果たすだけ、つまりは魔族を殺せば殺すだけ聖剣はその力を解放して行くのだ。 一定量の魔族を殺害し経験値が溜まれば段階的に解放される。 むろん所有者の才能によっては最初から一定数の権能が使える場合もあると聞くが、カウレスの場合はそうではなかった。 「どうして勇者は魔物を倒さないといけないの?」 勇二から上がったのは純粋な疑問だった。 カウレスは答えようとして言葉に詰まる。 そういえば何故なのだろう。 そんな理由は考えたこともなかった。 カウレスの理由は明確だ。 奪われた故郷の復讐。 ならば聖剣の理由は? 何故聖剣の絶対命令は『魔族の壊滅』なのだろう? それは人の側としての正義に依るものか、それとも聖剣を齎したとされる創造神の意志だろうか。 だとしたならば、神の意志とはいったいどこにあるのか。 人々を救うため、生活を脅かす魔族を滅ぼすという事なのか。 それともただ滅ぼしたいだけなのか。 いや、そもそも神とは…………? 「お兄ちゃん?」 「あ、ああ……すまない」 突然固まったカウレスを心配するような勇二の言葉に思考を打ち切る。 今考えるべきことではないし、人は神を試してはならない。 そうあるの言うならば、それが全てだろう。 「勇者が魔物を倒すのは、聖剣は人を救うものだからだよ」 適当な理由をでっちあげる。 いやどちらかと言えばそうあって欲しいと、願望を口にしただけなのかもしれない。 「そう、なんだ」 勇二は完全には納得できないようだ。 カウレスはその迷いを追求するように問いかける。 「君に魔族壊滅の意思はあるのか?」 「壊滅って…………そんなの、できないよ」 魔族への敵意。 明確に理解できていないだけで、これは勇二にも衝動として与えられている。 だが結局、魔の者である愛を敵視することはできなかったように、それらを無条件で敵視するだなんて不可能だ。 勇二にとって魔物や妖怪は倒すべき対象であると同時に、共に暮らす存在である。 良い奴もいれば悪い奴もいる。それこそ人と変わりない。 とするならば、勇二には勇者としての才能はあっても適正がないのかもしれない。 そんな人間が何故勇者になれたのか。 「勇者の力は強大だ。その力をどう扱うか、君は自覚しなければならない」 聖剣は勇者に人の域を超えた過剰なまでの力を与える。 たった一人で魔族全てを相手取る決戦兵器として完成するために。 カウレスは真の勇者などではなく勇者の力を利用しただけの復讐者だった。 それでも、その力に責任を負ってきたつもりだ。 それくらいの覚悟はあった。 自覚を持つこと、それは勇者以前に力を持つ者の責務だ。 復讐であってもなんであっても、目的と言う方向性は必要である。 目的を持たなければそれは勇者ではなく、ただの聖剣使いでしかない。 無自覚な方向性のない力など魔族のそれと変わりないだろう。 「自覚だなんて、急にそんなこと言われても……」 だが勇二の戸惑いも当然だ。 責任の自覚というのは大人でも難しい。 それをいきなりやれと言われても、簡単にやれるものではない。 その反応にカウレスはため息を漏らす。 余りにも話が性急すぎただろうか。 人を導くというのはなかなか難しい。 勇者カウレスの導き手であった光の賢者ジョーイのように老獪な話運びとはいかない。 誰かを導くには導くに値する裏打ちされた経験が必要である。 カウレスが人に自慢できるほど積んだ経験なんて戦闘経験くらいの物だ。 「すまない。話が性急すぎたようだ。いきなり全てを決めるというのも難しいよね」 自らの未熟を認め頭を下げる。 カウレスは勇二を一人の勇者として扱おうとしているが、勇二は勇者である前に子供だ。 その辺の気遣いがカウレスには足りない。 焦る必要はない。 そう自分に言い聞かせる。 魔王は既に朽ち果て、聖剣は異世界の勇者に渡った。 この訳のわからない異世界にて、数千年に及ぶ勇者と魔王の物語は終わったのだ。 「ひとまず目の前の目標を定めよう。さしあたってこの地で君はどうしたい?」 何をすべきなのかではなく、どうしたいのか。 少年の意見を促すように問う。 「僕は…………」 少年は考える。 何をしたいのか。 自分はどうしたいのか。 帰りたい。 愛や宮子と共に、当たり前の日常に帰りたかった。 それが願いだ。 けど、それはもう叶わない。 「やっぱり僕は、悪い奴を許せない」 勇二にとっては魔族も人間もない。 あの邪龍のように、他者に害成す存在ならば懲らしめる。 悪い奴ならば倒す事に躊躇いはない。 それが勇二の望む勇者の在り方だ。 そして何よりこの場において倒すべきその名を示す。 「だから、ワールドオーダーをやっつける!」 高らかに宣言する。 勇二を巻き込み勇二から宮子を奪い、愛を奪った全ての元凶。 子供でも分かる悪い奴だ。 ワールドオーダーの撃破。 それがこの場における勇二の目標だ。 「責任だとか難しいことは分からないけれど、僕にはその力があるんでしょう?」 「ああ。では、それを当面の目標としよう」 聖剣がどう思うのかは知らないが、それが勇者の望むことであるのならばカウレスは否定はしない。 そもそも勇者にとって魔族を殺すという行為は契約の履行であり、能力解放の手段に過ぎないのだ。 最初から最大の権能『絶対蘇生の権利』まで解放されている勇二にそれを無理強いする必要はない。 「では行こう」 先導するようにカウレスが歩を進めた。 勇二は小さな歩幅でてくてくとその後に続く。 「それにオデットさんも見つけないとね!」 「ああ、そうだね」 少年の元気よい声が響く。 青年は頷きそれに応じる。 二人の勇者が新たに歩むその道は正道か、邪道か。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 「……くそッ。バカ野郎が」 互いにこれまでの経緯を話し合う中。 九十九から輝幸の話を聞いて、苛立ちを吐き捨てるように拳正がそう呟いた。 「そんな言い方しないでよ、輝幸くんは私を助けるために……!」 「わってるよ」 別に輝幸が悪い訳じゃない、そんなことは分かっている。 理不尽に見舞われ、その中で彼なりに全力を尽くした結果だろう。 それで九十九が助かったのだ。感謝はすれど非難する理由もない。 ただ、逃げなかった選択を褒める気にはなれなかっただけだ。 同じ話を聞いたユキの反応は違った。 ユキは真剣な表情で何かを考えている。 「……それ。多分ミロさんを殺したのと同じ子供だ」 黄金の剣を持った子供。 そもそもこの地獄で生き残っている子供などそうはいない。 特徴から言って、輝幸とミロを殺害したのはまず間違いなく同一人物だろう。 「ンだそりゃ。よっぽど凶悪なガキだなそりゃ」 率直な拳正の言葉に、九十九の表情が僅かに曇る。 「けど、私の傷を治してくれたりしたし、根っから悪い子には思えなかったけど……」 「―――――一二三さん」 棘のある声。 ユキが九十九の言葉を遮る。 「友達を殺した相手なんでしょ? 自分を守ってくれた人を殺した相手なんて庇う必要なんてないんじゃないかしら」 「う、うん。ごめん」 氷のような冷たい声に僅かに気圧される。 その顔を見て冷静さを取り戻したユキが慌てて九十九に取り成す。 「あっ、少し言い過ぎたわ……ごめんなさい」 「いいよ本当の事だし。 ……なんか、守られてばっかりだね私」 そう言って沈むように視線を落とす。 実際のところ、ユキの言い分が正しいのだろう。 命を懸けて自分を守ってくれた相手を殺した相手を庇い立てする必要などない。 九十九を守るために輝幸も若菜も命を落とした。 拳正だって下手をすればどうなっていたかわからない。 「一二三さん…………」 沈んでしまった九十九にどう声をかけていいのか分からず。 助けを求める様に彼女をよく知る幼馴染へと視線を向ける。 「気にすんな。こいつ刃物でもやってれば元気出すから」 「ちょっと拳正。それじゃあ私が危ない人みたいじゃん」 「いや……危ない人だろお前」 「けが人じゃなかったら殴ってるよアンタ」 そんな冗談めかしたやり取りを行う傍ら。 拳正の言葉を本気にしたのか、ユキが自分の荷物から見繕った刃物を差し出した。 「えっと……じゃあ、はい」 「うわーい。西洋刀とナイフだぁ、やったぜ……!」 飴玉を与えられた子供みたいなリアクションで刃物を握った両手を上げてクルクル回る。 「正しくナントカにナントカだな」 それを見て幼馴染がシミジミと言う。 踊り狂う九十九をぽかんとした顔で見つめ、振り返って問う。 「これも無理してる?」 「いんや。これは素」 いつもの事と九十九を無視して拳正がユキに問いかける。 「んで、大体お互い何してたかは分かったとして。俺が寝てる間に三回のあれが流れたみてぇだが」 拳正が寝ている間に流れた放送の事だろう。 その内容、禁止エリア制限時間の更新について伝える。 そして死者についても。 「つまりは、学校の連中はここにいる三人で全員ってことか」 死者の確認をした第一声がこれだった。 放送で錬次郎と沙奈の脱落が告げられたという事は、神無学園の同級生で生き残ったのはここにいるので全てである。 「一応、音ノ宮先輩もいるけどね」 ユキが補足する。 だが殆ど面識のない上級生である。 残酷なようだが、命を懸けて合流するまでの縁はない。 手の届く範囲は限られている。 元も知り合いも、ここで出会った人間も大抵は死んでしまった。 彼らの手の届く範囲は良くも悪くもここにいる人間で全てだ。 それが揃って、ようやく次の段階へ進める。 「よし、じゃあ帰るか」 学校からでも帰るような当たり前さでそう言った。 「どうやって?」 それができれば苦労はしないと、呆れながらユキが問う。 「その辺はこれから考えりゃいいさ。まあどうとでもなんだろ、いざとなれば泳いできゃいい」 「流石にそれは無茶だと思うけど。っていうか、あんたどれくらい泳げたっけ?」 「測った事はねぇが万全なら伊豆大島くらいまで往復したことぁあるな、あーけど今の状態だとどうだろうな」 「そう言えば拳正、海とか行ってもバカみたいに遠泳ばっかしてるもんね」 「海にも入らず砂で日本の名城100選とか作ってるやつには言われたかねぇな」 どんどん話が逸れて行き無駄に火花を散らすバカ二人。 目の前で繰り広げられる頭の痛くなるようなやり取りにユキが冷静にツッコミを入れる。 「その前に首輪を何とかしなきゃ、どうしようもないでしょ」 首に巻き付いた鎖を解かなければ参加者はどこにも行けない。 命を握られたままでは脱出も何もないだろう。 おお、と二人同時に感心したような声を漏らす。 「それに私はまだ行けない、お父さんを探さないと」 「え、ユッキーのお父さんもいるの?」 九十九が驚きの声を上げる。 慌てて名簿を取り出し確認するが、その中にユキと同じ水芭という苗字は見当たらなかった。 「えっと、本当のお父さんじゃなくて私が勝手にそう呼んでるだけなんだけど」 自分のいた孤児院のオーナーで、今も世話になっている人だと自分とユキは森との関係を簡単に説明する。 「ふーん。どっちにせよ大事な人ってことだね」 「ええ、そうね……いろいろ確かめたいこともあるし」 それは必ずしも、この殺し合いの場で行わなくてはならない事ではないが。 ロバート・キャンベルに託された手前、調べないわけにもいかない。 ユキ自身としても真相は気になる。 それもこれも、森が死んではどうにもならない。 「それにすごく頼りになる人だから、首輪の解除方法だって帰る方法だってわかるかもしれないわよ!」 ユキは努めて明るく言う。 自らの中にある森に対する疑いを信頼で晴らすように。 実際、森ならばこんな事態はすでに解決していてもおかしくはない。 「じゃあ、ユッキーのお父さん探そう!」 「まーたおまえは考えなしに」 「拳正にだけは言われたかないよ!」 むかーと憤慨する九十九とは対照的にユキが申し訳なさ気に拳正の様子を窺う。 「ごめんね付き合せて」 「ん、いいさ。元からその辺は付き合うって話だったしな」 そう言って休憩は終わりと移動を開始する。 目標は首輪の解除と脱出の方法の模索、そしてユキの父親の捜索だ。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 「あなたは…………ッ!」 「お姉ちゃんたちは……!」 そうして歪んだ因果の糸に導かれるように、動き出した双方の運命が交わる様にして出会う。 夜の空気が一瞬でひり付く。 互いが互いに仇を睨むような目で見つめていた。 一番敵対心を露わにしたのはユキだった。 ユキにとっては勇二は目の前でミロを殺した仇だ。 目の前で友を殺され、その仇が現れたのだ、冷静でいろという方が無理がある。 そして九十九にとっても勇二は輝幸に襲い掛かった仇である。 同じ立場である九十九は予想外の邂逅に驚きの方が大きいのか、構えるでもなくその場で驚きの表情を上げていた。 勇二からしても、九十九もユキも魔族に与する悪逆だ。 特にユキは愛を殺した魔物の仲間である。 だが当の勇二は思いのほか落ち着いている。 激昂するでも戸惑うでもなく、平静のまま聖剣に手を添え目の前の三人の反応を見据えていた。 心配なのはユキの方だろう。 ユキは冷静なように見えて感情の制御が効かないところがある。 むしろその激情を凍りつかせるためにクールを気取っている節がある。 友の仇を前にしてギリギリの一線を保っていられるのは、戦えない九十九やボロボロの拳正を巻き込んでしまうという枷があるからだろう。 「よう。またあったか」 「そうだね。こうなると思っていたから、あまり出会いたくはなかったが」 不穏な空気に包まれる中、男たちは言葉を交わし合う。 拳正とカウレスはいつでも動き出せるように全体を見据える一歩引いた位置で半身に構えいた。 交戦に至ったものの、現時点では互いにそれほど悪印象は抱いていない。 他の連中はいつ爆発するとも知れない火薬庫のような状態であるため、口を開けるのはこの二人だけだろう。 「アンタ。なんでそのガキと一緒にいんだ?」 拳正の記憶では少年を止めに行ったはずだが。 その相手と仲良く連れ立ってるというのはどういう訳か。 「いろいろあったのさ」 「そうかい。まあそう言う事もあるか」 敵対していた相手と同行する。 そういえば拳正も輝幸とそんな感じだった。 そういう事もあるだろう。 「そちらも、いろいろあったようだね」 「まぁな。そう言う事もあるんだろ」 衝突からそれほど時間は立っていないが、 ボロボロの拳正を見れば、よほどの激戦を潜ったと窺える。 それに連れ合いも一人増えていた。 「で、聞くところによると俺のダチもそのガキにやられちまったって話だが」 拳正の気配が刃のように鋭く尖る。 黄金の剣を持った子供に輝幸が殺された事は聞いた。 カウレスに怨みはなくとも勇二には因縁がある。 「不幸なすれ違いがあったようだが。それに関してはこちらは悪いとは思ってはいない。 聞いた限りだと、君の友人は魔族だったんだろう?」 「あ゙ぁん?」 カウレスもまた勇二がこれまで何をしてきたかはある程度は聞いていた。 そして勇二が殺したのは二人とも魔族だったと聞いている。 強引で行き過ぎたところはあっただろうが、その行為はカウレスには悪とは言えない。 悪びれる様子もない当然のような物言いに拳正の額に青筋が立つ。 傷が再び開いてしまいそうだ。 「ンなこたぁ知らねぇよ。輝幸は俺の後輩でダチで、それだけだろうが。 魔族だか暴走族だがしらねぇが、だったらあんだってんだ? それなら殺してもいいってか?」 カウレスは答えない。 沈黙が答えだとばかりに口を噤む。 カウレスの個人的意見ではそうなのだろう。 「そうかい。なら、テメェらも俺の勝手でぶっ飛ばされても文句はねぇな」 「止めはしない。好きにすると良い。だがそちらに勝ち目はないぞ」 「へっ。戦う前から勝ったつもりか?」 「勝つだろうね。実際、君は立っているのがやっとだろう? むしろ勇者でもないただの人間がその傷で何故意識を保ってるのが不思議なくらいだ」 百選練魔のカウレスの目からしても拳正の傷は重傷だ。 平気な顔して立っているが、まともに戦えるとは思えない。 元より拳正が槍を装備した状態で互角、武器を失い手負いとなった今の状態では負ける理由がない。 少女二人も片方は見るからに素人、もう一人はそれなりにやるようだが、勇者の敵ではないだろう。 「それこそ知らねぇよ。テメェが気に喰わねぇ。だっからぶっとばす。 勝ち目だとかそう言うのは知った事か、だ……!」 「ちょっと、拳正…………!」 九十九が剣呑な空気を発し始めた拳正を咎める。 だが拳正は構わず包帯変わりのハンカチや布の切れ端を取り去ってゆく。 半弓半馬に足を開き、すっと拳を構えた。 カウレスがそれを迎え撃つように槍を構える。 男達はそのまま隙を窺うように睨み合いを始めた その様子を傍目に、少女と少年も睨み合いを続けていた。 彼らは揉みくちゃになった糸のように直接的な怨みの因果が絡まった関係だ。 どうあっても衝突は避けらず、下手に口を開けばそれが開戦の合図となりかねない。 「どうして……どうしてあなたはミロさんを殺したの?」 そんな中ついにユキが抑え切れない心中を吐露するように疑問を吐き出した。 「ミロさん?」 勇二が小さく首を傾げる。 その動作がユキの癪に障り、苦々しく奥歯を噛んだ。 「……あなたが、私の目の前で殺した龍の子供の事よ……ッ」 姿と名前が一致したのか、勇二がああと頷く。 なぜ殺したのかなど決まっている。 これに限っては勇者の使命などではない。 「あいつが…………愛お姉さんを殺したからだ……!」 ミロが愛を殺し、そのミロを勇二が殺した。 殺されたから殺しただけの話だ。 つまりは因果応報、ミロの自業自得と言える。 ミロの暴走にはユキにも責任の一端がある。 自分自身しか顧みる事の出来なかった自分の責任。 勇二を責める資格はユキにはないのかもしれない。 けれど、どうしてもそういう理屈と別のところで心がざわめく。 目の前の相手を許せないと奥底の己が叫んでいる。 「そんな事を聞くって事はやっぱり白いお姉ちゃんは、あの龍の魔物の仲間なの?」 ここで問答無用で襲い掛かるのではなく、問うだけの冷静さを得た。 ここには魔族がおらず聖剣の干渉が少ないというのも大きいだろうが。 聖剣の与える衝動に振り回されるのではなく勇二本人の倫理観で善悪の見極める。 悪意をまき散らし身勝手に他者を傷つけたミロは間違いなく悪だった。 それに与する悪ならば、この聖剣で切り捨てるまで。 「仲間? 仲間かですって…………?」 余りにも無神経な物言いにユキの握った拳がわなわなと震える。 他でもない、ミロに手を下した本人がそれを問うのか。 ユキはキッと勇二を睨み激情を吐き出すように答える。 「ええそうよ、私はミロさんの仲間だった! 友達だった! 決まってるでしょ!?」 そうでなくては怒りなど無い。 勇二はそう、と無感動に呟くだけだ。 「悪い魔物のお友達ってことはお姉ちゃんも悪い奴なんだね」 悪い奴の仲間は悪い奴。 子供らしい結論だった。 「ちがう! ミロさんは悪い魔物なんかじゃない……! そりゃあ確かに我儘な所もあったし、あの時は……ちょっと暴走してたけど、あれは……ッ! あれは………………私のせいで」 勇二がピクリと反応し目を細めた。 聖剣が抜刀される。 世界を救済する力が黄金の光となって解き放たれた。 「姉ちゃんはやっぱり悪い奴だったんだね。残念だよ」 あの邪龍を暴走させたのが目の前の女という事は、愛の死因を作ったのも目の前の女という事だ。 自分のせいだというのなら責任を取らせてやろう。 「何が残念よ……邪悪なのはそっちじゃない!」 周囲に霜が沸き立つ。 ユキも受けて立つように、冷気を解放した。 「ちょっと落ち着いてよユッキー!」 「私は落ち着ている、一二三さんは危ないから下がってて」 ユキは完全に戦闘態勢だ。 友の仇を前に冷静さを失っている。 復讐の連鎖は止めようもない。 「オラ来いよ、自信過剰野郎」 「拳正もやめなって!」 拳正も同じく頭に血が上っている。 カウレスもそれを止める意思はない。 来ると言うなら迎え撃つ構えだ。 「この…………」 誰もが怨みと怒りに囚われていた。 絡み合った怨みの糸を断ち切るには、片方を消し去るしかない。 津波のようなこの流れは最早止めようがなかった。 「――――バカ垂れどもがーーーぁ!」 だがそれを切り裂くような少女の叫びが響いた。 同時に勢いよく後頭部をはたかれた拳正がなすすべなくぱたりと倒れた。 「…………なんで、俺を殴る」 「それはゴメン! 殴りやすかったから」 位置的も習慣的にも。 けが人を殴れないという前言はどこへやらだ。 拳正はすっころびとんでもない隙を晒しているが、カウレスたちも突然の事態に目を丸くして驚いていた。 「みんなちょっと待ってよ! なんで喧嘩する流れになってるのよ!」 九十九は敵意渦巻く嵐の渦中へと進み、その中心で双方を窘める。 だが、その反応は冷ややかだ。 「一二三さん。どいて。そこにいたら危ないわ」 冷気を漂わせなあがらユキが冷たく言い放つ。 九十九の身を気遣うというより、邪魔だから退けという意思が強くこめられている。 その冷たさに怯まず、九十九はユキを見返した。 「もし私がどいたら、ユッキーはどうするつもりなの?」 「どうって、」 「――――勇二くんを殺すの?」 問われて息を呑む。 激情のまま戦ったとして、その結末はそうなるのだろう。 復讐とはそういうモノだ。 ユキはそれをよく知っている。 殺すのだろう、目の前の幼子を。 自分がそんな事をする光景を思い浮かべて少しだけ吐き気がした。 「ッ! けど! 一二三さんは彼のしたことを許せるの!?」 だからと言って止めるわけにはいかない。 目の前で友人を殺された、同じ痛みと怒りを抱えた同類に問う。 「許せないよ」 即答する。 一二三九十九は全てを許す聖人ではない。 勇二のしたことは九十九だって許せないと思う。 「許せない、けど」 けれど。 「だからって殺されたから殺すなんて結論を私は認められない」 許さないことと復讐することは違う。 殺されたら殺し返さなくてはならないのか。 それは違うと、九十九は思う。 復讐そのものを否定する言葉に復讐者たちは押し黙る。 「じゃあ、どうしろっていうの?」 ユキには分からない。 暴力(これ)以外の方法を知らなかった。 誰も教えてくれなかった、父も仲間も。 崩れそうな脆さを見せるユキを抱きしめる。 「悔しい思いは暴力じゃない方法で伝えよう。そうじゃないとユッキーにとっても良くないよ」 相手を落ち着けるような穏やかな声だったが、抱きしめる腕には痛いくらいに力が籠っていた。 九十九だって悔しくないはずがない、それでも堪えねばならない。 その気持ちが伝わってくるようで、ユキはその場に崩れ落ちる様にへたり込んだ。 ごめんねと小さく言ってユキから離れた九十九は今度は勇二へと向き直る。 「勇二くん」 「なに?」 何をしようとしているのかが掴めず、勇二は訝しそうな瞳を向ける。 構わず九十九は歩を進め勇二の目の前で少しだけ屈んで視線を合わせた。 聖剣を振るえば首が飛ぶ距離だ。 「君は輝幸君と、ユッキーの友達のミロさんを殺したんだね?」 「そうだよ、悪い魔物は倒さないと。 お姉ちゃんも、あの猫の魔物の仲間だったよね?」 事実を確認するだけの色のない問い。 九十九は哀しそうな色を瞳に宿らせながら、その視線を真正面から見つめ返す。 「そうだよ。けどあの子は魔物なんかじゃないし、輝幸くんっていう名前があるの。魔物なんて呼ばないで」 「魔物は魔物だ」 「違うよ。輝幸くんはどこにでもいるような普通の男の子だった」 むぅと勇二が押し込まれる。 確かに単純な魔物ではないく狐憑きのようであった事は、退魔の大家、田外の者として見抜いている。 人間だったというのは確かだろう。 「そうだとしても、どうせ自ら悪魔を呼ぶような人間だ、どうせ悪者でしょ」 憑り付かれたのか憑り付かせたか。 交戦した時に主導権を握っていたのは輝幸だった。 つまりは自ら憑り付かせたのだろう。 悪魔を呼ぶなんてどうせ碌な人間じゃない。 勇二の判断は間違ってなどいない。 輝幸の事情など九十九は知らない。 知っているのはここにいた輝幸だけだ。 もしかしたら、勇二の言う通り悪魔を読んだ悪人だったのかもしれない。 それは否定できない。 「そうかもしれない。けどそうだとしても、あなたはしたことはいけない事だった」 だが勇二の判断は間違いだったと断じられる。 「いけない事?」 「そう、人を殺してはいけないの」 優しく、だが厳しく諭すように。 人殺しはいけない事だと、誰も告げなかったそんな当たり前のことを言った。 子供だからと言って有耶無耶にしない。 むしろ子供だからこそちゃんと言い聞かせなければならない。 その状況を作った人間が悪いのかもしれない。 彼を止められなかった大人が悪かったのかもしれない。 彼のせいではないのかもしれない。 けれどそれは許される事ではない。 それをしてはいけない事だと知っていたから。 だからこそ自分たちが殺してしまった命を誰よりも気にしていた。 「僕が殺したのは悪い人だ! だからいいんだよ!」 勇二が喚くように吠える。 子供が自分の正当性を主張する様に。 勇二は勇者だ。 勇者の行いは正義であるはずである。 正義であるのだから間違いであるはずがない。 そっと両手を添える様にして剣を握っていない勇二の手を取る。 そして意思を伝えるためにはっきりと目を見る。 何故か居たたまれなくなって勇二は思わず目をそらした。 逃すまいとその視線を追う。 「それでもダメなの、いけない事なんだよ!」 「なんでだよ! やっつけた方がいいような悪い奴だっているだろ! そんな奴に襲われたとしても殺しちゃだめだって言うのか!?」 「そうだね……」 実際九十九たちも殺した。 殺さなければ殺される状況だったとはいえ自分の命を守るためにそうした。 「自分や誰かを護るためなら仕方ないのかもしれない。 けど仕方なかったとしても、仕方なかったなんて思いたくないの。 殺さないで済むならそっちの方がいいに決まってるもの」 九十九が唱えるのは綺麗事の理想論だ。 だからこそ幼い勇二には刺さった。 正義だなんて心地いい大義名分があるからこそ勇二は罪の意識を感じてこなかった。 だが、九十九の言葉にはそのメッキをはがす厳しさがある。 勇二の胸に自分のしてきたことがゆっくりと重くのしかかってゆく。 「勇二くん、君はしてはいけない事をした。 だから自分がしてしまったことを自覚して反省しなさい」 悪いことをしたのなら自覚して反省するしかない。 同じ間違いを繰り返されたら死んでいった者たちが本当に浮かばれない。 「でも! アイツは愛お姉ちゃんを殺したんだ、だから……!」 それは勇者ではない少年としての叫びだった。 愛するものを奪われた憎しみと悲しみ。 無性に泣き出したかったけれど、涙を流す機能(よわさ)など完成された勇者には存在せず。 そのことが余計に泣きたくるような衝動に駆られる。 そんな勇二を九十九が泣いた子供をあやすように抱きしめる。 勇二も抵抗しなかった。 ただ力を失った手から聖剣が落ちる。 「うん。そうだね。辛かったね」 九十九はそれ以上何も言わずポンポンと優しく背中を叩く。 聖剣を手放した手でしがみ付く様にして、悔しさを吐き出すようにして少女の胸で少年は哭いた。 すっかりユキも勇二も戦意を失っていた。 もう戦おうとはしないだろう。 「俺は納得してないんだが」 その空気を読まず、不満を漏らしたのは拳正だった。 拳正からすれば、復讐と言うよりも気に喰わないから殴りたいだけだ。 元より殺すつもりなど無いし、変わらず揺るがず、気に喰わないを殴り飛ばすいつも通りの行動原理だ。 「拳正」 「あんだよ」 どのような言い分が来るのかと身構える。 だが来たのはただ一言。 「我慢して」 はぁと大きく溜息をつき、バカらしくなったという風に肩の力を抜く。 「……俺の対応だけ雑すぎだろ」 ぼやく様にそう言ってカウレスへと視線を戻す。 「って事らしいが、あんたはどうする? もう闘争って空気じゃなさそうだが」 「そのようだね。こちらとしてはそちらが来ないというのなら戦う理由もないさ。 こちらの勇者も戦意を失っている以上、その判断に従うまでだ」 「おいおいガキの方が主導権握ってんのかよおたくら」 拳正が呆れながら言った。 苦笑しながら、互いに構えを解く。 少女たちと少年を結ぶ因縁の糸は、これにて決着と相成った。 「ま、仲良しこよしとはいかねぇみたいだけどな」 ユキと勇二は沈んだように視線を合わせようともせず地面を見ている。 怨みは残ったのままでは、当然ながら共に行くことはできない。 互いに手を出さない。 これが最大限の譲歩だろう。 遺恨をこのしたままの玉虫色の決着となった。 カウレスも何か思う所があるのか、悩む様に硬い表情をしている。 そして拳正へと話しかけた。 「僕にも譲れないモノがある、魔族を殺したという勇者の判断を僕は否定しない」 「あんだよ。喧嘩の続きがしてえのか?」 魔族を討伐を否定することはカウレスの人生の否定だ。 そこだけは譲れない。 「だが、君の友人を侮辱したのだけは謝罪しよう」 そう言って頭を下げる。 そう来るとは思ってなかったのか、拳正は対応に困っているようだ。 「詫びと言ってはなんだが、その傷少し診せてもらってもいいだろうか」 「あん? いらねーよ」 情けはいらんと、申し出をつれなく拒否するが。 カウレスは顔を近づけ周りに聞こえぬよう小さな声で耳打ちする。 「無理はするな、まあ女の子の手前強がる気持ちもわかるけど、痛いだろう傷(それ)」 カウレスの指摘を否定せず、ばつが悪そうに舌打ちする。 顔に出していないだけで正直死ぬほど痛い。 応急手当が応急過ぎたのか治療跡もずきずきと痛んでいた。 「治療と言っても、今の僕にできるのは痛み止め程度のものだけど」 失った目を直すなどと言う奇跡のような魔法は勇者ではないカウレスには使えない。 出来るのは少々痛み止めくらいだ。 「それでも正直助かる。悪いけど頼むわ」 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 拳正は少し離れた場所でカウレスの魔法治療を受けていた。 ユキと勇二を残しておくのは不安があるが、双方戦うような棋力はなさそうだし九十九が間に入っている分には大丈夫だろう。 カウレスは拳正の傷口に手をやりながら、遠くの九十九を見つめる。 「なかなか芯の通ったいい娘だな」 「そぅかぁあ? あいつの言ってる事なんざ大抵が爺様の受け売りだぜ? 曲がった事はするな、胸を誇れる生き方をしろってな。ガキの頃から耳にタコだぜ」 「それを実践しているだけでも大したものさ。 僕は余り両親の望む生き方を出来てはいないようだから、なおの事眩しく見える」 ただ穏やかにあればいいと、そう願われていたはずなのに。 カウレスの日常は休まることない魔族との戦闘の日々だった。 復讐という煉獄に踏み出したのは己自身である。 後先など考えなかった。 後先になってこんな事を考えている。 「ところで、君たちは兄妹なのか?」 「なんで思う? 似てねぇだろ」 「行動原理が似ている、表現の仕方は違えど君も先ほどの教えを実行しているように思える」 「あー。まあ腐れ縁の幼馴染って奴だよ。爺様のお小言は俺も聞いて育ったからなぁ」 他所のガキにも容赦なく拳骨をくれる昔気質のジジイである。 拳正も何度殴られたか知れない。 「元は母親同士が親友だったらしくてな。けど両方とも早くにくたばっちまってそのお蔭で……。 ってあんたに話す様な事でもねぇか、何言ってんだかな」 残念ながら彼らは身の上話をするような間柄ではない。 「けど、なんだよあんた。あんなのが好みか? 趣味が悪いぜ」 ハハと笑って、少しだけ遠くを見る様に哀し気に表情を緩める。 「そう言う訳じゃないさ。ただ……少しだけ妹を思い出した。 見た目が似ている訳じゃないんだけど、頑固そうなところがそっくりだ」 「……そうかい」 拳正は連れない相づちを打つだけで、それ以上追及はしなかった。 だから二人の会話はそこで終わりだ。 大きな所だけを治療したところで治療も中断された。 「すまないがこれで終わりだ。僕の魔力も限りがあるのでね。今後を考えると君に割り振れるのはここまでだ」 「十分だ。助かった」 具合を確かめる様に拳を軽く構え、目の前に向かって冲捶を打つ。 体のキレは悪くはない、幾分か調子はマシになった。 「それじゃあ僕らは行くとする。僕らはそうだな、ひとまず南に向かおうと思うが君たちはどうする?」 「また出会って同じこと繰り返してもしゃあないしなぁ、当てがある訳でもなし別の方向に行くさ」 勇二の下に向かうカウレス。 だが何かを思い出したように足を止めて振り返る。 「そう言えば、まだ名乗ってなかったね。僕はカウレス・ランファルトだ」 「新田拳正だ。ま、精々死なない様にな」 「そちらもね」 簡素な別れの言葉を残し男たちは別れた。 【D-5 草原/夜】 【新田拳正】 [状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、右目喪失(治療済み)、額に裂傷(治療済み)、両手に銃傷(治療済み)、右足甲にヒビ(治療済み)、肩に火傷(治療済み) [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム0~2(確認済み) [思考] 基本方針:帰る 1:帰る方法の模索 【水芭ユキ】 [状態]:疲労(小)、頭部にダメージ(大)、右足負傷、精神的疲労(中) [装備]:クロウのリボン、拳正の学ラン [道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム1~3(確認済み)、 ロバート・キャンベルのデイパック、ロバート・キャンベルのノート [思考] 基本方針:この痛みを抱えて生きていく 1:お父さん(森茂)に会って真実を確かめたい 2:首輪の解除方法と脱出方法を探す 【一二三九十九】 [状態]:ダメージ(中)、左の二の腕に銃痕 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式×3、、ランダムアイテム1~4(確認済み) サバイバルナイフ、サバイバルナイフ・裂(使用回数 残り2回)、風の剣、ソーイングセット、クリスの日記 [思考] 1:ユキの父親(森茂)を探す 1:帰る方法も探す 【カウレス・ランファルト】 [状態]:ダメージ(大)、魔力消費(大) [装備]:サバイバルナイフ、蒼天槍 [道具]:なし [思考] 基本方針 勇者を導く 1:オデットと合流したい [備考] ※完全に勇者化の影響がなくなり人間になりました 【田外勇二】 [状態]:勇者、消耗・中(回復中) [装備]:『聖剣』 [道具]:基本支給品一式 [思考] 基本方針:勇者として行動する 1:ワールドオーダーを倒す [備考] ※勇者として完成しました 144.悪党商会の社訓 投下順で読む 146.とある殺し屋の死について 時系列順で読む 夢の終り 新田拳正 悪党を継ぐ者 水芭ユキ 一二三九十九 導かれし者たち カウレス・ランファルト !緊急クエスト! ― 悪党をやっつけろ ― 田外勇二
https://w.atwiki.jp/suproy/pages/198.html
二人の復讐者 “…テンカワ・アキト” “…ホシノ・ルリ” 「ッ…………!」 午前六時。放送で告知される死亡者の名前を聞きながら、男は激しい怒りの眼差しを見せていた。 馬鹿げている。この狂った殺し合いを主催した仮面野郎も、その殺し合いに乗った奴らも。 そんな馬鹿げた奴等のおかげで、大切な仲間を失った。 ……守る事が、出来なかった。 支給された機体が戦闘向けでなかった事など、言い訳にしかなりはしない。 機体の特性を完全に引き出す事が出来ていたならば、怒りに駆られて判断を誤る事がなければ、仲間を守る事は出来ていたはずだ。 それを理解しているからこそ、イサム・ダイソンは怒りを抑える事が出来なかった。 他の誰でもない、自分自身に。 「……マギー、何か異常があればすぐ知らせてくれ」 『おまかせ』 もう二度と、仲間を死なせたりはしない。その決意を胸に抱き、イサムはD-3を進ませる。 駆逐艦級の情報収集能力を持つとまで言われるD-3である。 情報戦に限って言えば、それに匹敵する機体は極めて数が限られる。 確かに火力こそ高くはないが、この機体は決して弱い訳ではない。 機体の特性に合わせた運用を行えさえすれば、非常に強力な機体となりえるのだ。 「闇雲に突っ込むだけじゃ、こいつの力は引き出せねえ……」 アムロ・レイとの戦いは、確かに敗北に終わってしまった。 だが、だからこそ彼は感情に任せた突撃など無意味である事を知らされたのだ。 ……皮肉な事だが、仲間の死と無様な敗北は、イサム・ダイソンを精神的に成長させていた。 十二時間毎の死亡告知。それに知った名前が無い事を確認して、ヒイロ・ユイは安堵を覚える。 トウマ・カノウにクォヴレー・ゴードン。 機動兵器を用いた殺し合いが行われている中で、明らかな“はずれ”を掴まされた二人組。 再会を誓い合いはしたが、お互いに生きて再び会える可能性が低い事は理解していた。 二人が戦う力を持たないのであれば、それは尚の事である。 たとえ自分に戦う意思が無かったとしても、敵にとっては関係無い。格好の獲物として、一方的に倒されてしまうだけだ。 それが、戦い。この非情な世界で行われている、狂ったゲームのシステムであった。 ……怒りを覚える。 この狂った殺し合いを主催した仮面の男に、ヒイロは憤りを覚えていた。 何故、戦わせる――? 平和に生きたいと願う人間を、どうして殺し合いに巻き込もうとする――? 理解出来なかった。このような殺し合いを始めた連中の目的が、ヒイロには理解出来なかった。 だが、これだけは分かっている。 たとえどのような目的があったとしても、この狂った殺し合いを認める訳にはいかない。 意味無き殺戮に手を染める者を、そのままにしてはおけないのだと。 だからこそ、ヒイロは仇討ちを誓った。 この愚かな殺し合いに巻き込まれてしまった、多くの罪無き命たち。 彼らを守り抜く為にも、戦う事を彼は誓った。 ……だが、前途は険しいと言わざるを得ないだろう。 これまで倒れた二十四人を除いて、残る生存者は四十人以上。 その中に、どれだけの殺戮者が潜んでいるかは定かでないのだ。 これまでにも自分以外の参加者を何度か見掛けはした。 だが、それが殺し合いに乗っているかどうかは、機体を見ただけでは分からないのだ。 ならば、どのようにして……。 「そこの機体、動くな!」 「…………!」 やおら響き渡った男の声に、ヒイロ・ユイは驚愕する。 ECSによって不可視化を行い、完璧な隠業を遂げていたはずの自機。 それに銃の照準が合わされているのだと、ヒイロは自分の置かれている状況を理解した。 センサーに視線を移すと、背後に機体の反応が一つ。何らかの手段でレーダーを誤魔化し、接近を果たしていたらしい。 あの機体――電子戦用の機体か――! レドーム状の頭部から相手の機体特性を悟り、ヒイロは内心で舌打ちする。 ECSによる隠業は確かに優秀ではあるが、完全無欠とは言い難い。 情報収集能力に特化した機体ならば、機体の居場所を特定する事も不可能ではなかった。 「……何が望みだ」 「安心しな。お前に戦う気が無いんだったら、こっちも手出しする気は無い。ただ、聞きたい事があるだけだ」 「聞きたい事だと?」 「一つ目の、赤い機動兵器を捜している。心当たりがあれば教えてほしい」 男の言葉に思い浮かぶ、かつて出会った無差別攻撃を仕掛ける機体。 「赤い……そうか、奴の事か……」 その姿を思い出し、ヒイロは微かに呟きを洩らす。 自分の耳にさえ辛うじて届くような、本当に小さな呟き声。 「知っているのか!?」 だが、それすら相手の機体は拾っていた。 「……ああ。昨日、無差別攻撃を仕掛けてきた。俺は逃げ出す事が出来たが、何人かは奴に殺されたようだ。 場所はE-5、第一回放送後の出来事だ。交渉を行ってくる事も無く、一方的に攻撃を仕掛けてきた」 D-3の情報収集能力に改めて舌を巻きながらも、ヒイロは知り得る情報を話す。 隠す意味の無い情報だ。こちらの知っている事を話した所で、自分にデメリットは生じない。 「くっ……あの野郎、俺達を襲ってくる前にも同じような事を……」 その表情に苦渋を浮かべ、イサムは苦々しげに呟く。 その呟きを聞いて、ヒイロは男の目的を理解する。 自分と同じ、仇討ち。 「……仲間を、やられたのか」 「…………」 沈黙が問いに対する答えだった。 「……俺も、一つ聞きたい事がある」 重い沈黙の空気を破ったのはヒイロだった。 「聞きたい事?」 「アルマナ・ティクヴァーという女を殺した参加者だ。もし心当たりがあれば、教えてくれ」 「……知り合い、だったのか?」 「いや、顔も知らない」 「知らない……?」 「ああ。だが、俺は約束した。仇は、俺が討ってやると」 「……そう、か」 弱々しく、呟きを洩らす。 自分だけではない。 この愚かな殺し合いが行われる中、死者の為に戦おうとしている人間。 それが自分だけではないのだと知って、イサム・ダイソンはヒイロ・ユイに共感を覚えていた。 向こうの詳しい事情は知らない。だが、これだけは分かっている。 この男と殺し合う理由は無い。 「質問の答えだが、俺に心当たりは無い。ただ、あの赤い奴は相当な数の戦いをこなしてたみたいだからな。 その女を殺してたとしても、おかしくはないと思っている」 「…………」 その可能性は、ヒイロも考慮してはいた。 無差別な攻撃を受けた中に、アルマナ・ティクヴァーが含まれていた可能性は低くない。 だが、もしそうだったとするならば―― (今の俺に、奴を倒す事が出来るのか……?) 勝算は低いと言わざるを得ない。 彼本来の機体であるゼロを使う事が出来るならともかく、この機体――M9では分が悪過ぎる。 火力、機動力、射程距離、行動範囲、全ての面で奴は自分の上を行っている。 たった一つだけ勝っていると思われる点を挙げるなら、ECSによるステルス程度のものだろう。 正面からの突破は不可能。奇襲を仕掛けたとしても、こちらの装備で倒し切れる保障は無い。 空に逃げられる事まで考えれば、勝率は更に低くなる。 単独での撃破は困難と言って良いだろう。 ……相打ち覚悟の特攻を行う気は無い。自分は、生きなければならないのだ。 生きて、還らなければならないのだ。 だから戦うと言うのならば、必ず生き延びなければならない。 ならば、どうする――? どうすればいい――? 「悪かったな、引き止めたりして」 ……構えた銃を下ろしながら、イサムはヒイロにそう言った。 そして、もう用は済んだとばかりに、その場から機体を移動させ―― 「……待て。一つ、話しがある」 ようとしたのだが、それをヒイロは呼び止めた。 「……何だよ。まだ俺に何か用でも……」 「もし、その赤い機体を討つのなら、協力しても構わない」 「なんだと……?」 「お前の言うように、あの赤い機体が仇なら、俺は奴を倒さなければならない。 だが、奴は強い。俺だけの力では、倒し切れる保障は無い。そして、それはお前も同じ事のはずだ」 「くっ……」 ヒイロの言葉に、イサムは敗北の記憶を思い出す。 リフターを装備した状態のD-3でさえ、奴には力が及ばなかったのだ。 次に戦ったとしても、勝てる見込みなどありはしない。 「俺の見た所、お前の機体は情報戦仕様の機体だ。戦闘力は低い。違うか?」 「……いや、違わねえ」 「目的は同じだ。そして、奴相手には荷が重過ぎると思っているのもな。 なら、力を合わせた方が合理的なはずだ」 「それ、は……」 「会ったばかりの人間を信用出来ない事はわかる。だが、それでも奴に単独で戦いを挑むよりはマシなはずだ」 「…………」 ……わかって、いる。 悔しいが、この男の言う事は実に正しい。 ならば……。 「……オーケイ、手ぇ組もうじゃねぇか」 他の人間を私怨に巻き込みたくはなかった。だが、あの赤い機体を倒す為に、手段は選んでいられない。 そして、この男にもまた戦わなければならない理由がある。 「話は決まったな。なら行くぞ。こうしている間にも、奴がまた他の参加者を襲っているかもしれない」 「ああ……」 もう、奴に殺させはしない。 その誓いを無言の内に、二人の復讐者は歩き出す。 そう、悲しみの連鎖を止めるために……。 【イサム・ダイソン 搭乗機体:ドラグナー3型(機甲戦記ドラグナー) パイロット状況:健康(一晩経って冷静さを取り戻した) 機体状況:リフター大破 装甲に無数の傷(機体の運用には支障なし) 現在位置:G-4 第一行動方針:アムロ・レイ、ヴィンデル・マウザーの打倒 第二行動方針:アルマナ・ティクヴァー殺害犯の発見及び打倒 第三行動方針:アクセル・アルマー、木原マサキとの合流 最終行動方針:ユーゼス打倒】 【ヒイロ・ユイ 搭乗機体:M9<ガーンズバック> パイロット状態:健康 機体状況:装甲表面が一部融解 現在位置:G-4 第一行動方針:トウマの代わりにアルマナの仇打ち 第二行動方針:アムロ・レイの打倒 最終行動方針:トウマ、クォヴレーと合流。及び最後まで生き残る】 【二日目 10 25】 前回 第153話「二人の復讐者」 次回 第152話「決意」 投下順 第154話「Zの鼓動」 第163話「水面下の情景Ⅲ」 時系列順 第171話「涙、枯れ果てた後に」 前回 登場人物追跡 次回 第126話「噛み締める無力」 イサム・ダイソン 第167話「死力戦場」 第122話「仇の約束」 ヒイロ・ユイ 第177話「集う者たち~宴の準備~」
https://w.atwiki.jp/30seconds/pages/123.html
喪時は、昼過ぎにようやく目を覚ました。 喪時の隣には、すでに愛美の姿は無く、喪時は愛美の姿を探した。 リビングの扉を開けると、愛美が食事の用意をしていた。 喪時は安堵し、愛美に声を掛けた。 「おはよう・・・って、もう昼か」 愛美はフライパン片手に、卵と格闘していた。 どうやら、スクランブルエッグでも作ろうとしているようだが、 愛美はあまり料理をしたことがないのか、それとも不器用なのかは 判らないが、コンロの周りには大量の卵が散乱していた。 「お風呂沸かしてあるから」 「う、うん。ありがとう・・・」 冷蔵庫にある卵だけで、スクランブルエッグが完成するかな? 喪時はそんな事を考えながら、バスルームへと向った。 喪時がシャワーを浴び、さっぱりしてリビングに向うと、すっかり食事の 準備が整っていた。 パンにサラダ、スクランブルエッグと簡単なものだったが、両親が死んで から一人でしか食事をしていない喪時にとっては、愛美と食べる食事は 特別な味がした。 喪時は食事を済ますとソファに座り、テレビのリモコンを操作する。 テレビに昼ドラが映し出された。 昼ドラは、暇な主婦が観るようなドラマで、ドロドロした展開が多いのだが、 一度観ると病みつきになるらしく、すでに喪時も日課になり始めていた。 洗い物を終えた愛美が、喪時の横に座り一緒にドラマを観始めた。 テレビには、不倫相手とのラブシーンが映し出されていた。 やがて、どちらとも無く、二人はお互いの体を求め始めた。 二人は何度も求め合い、愛美が喪時の腕を腕枕にし、喪時の耳をイジっていた。 「ねぇ、昨日のお願いなんだけど・・・」 愛美は、喪時の上に覆い被さり言った。 「ん? あぁ、お願いって何?」 「喪時君に力を貸して欲しいんだ」 「俺に? 時間を止める力のことか?」 「うん」 「俺に出来ることなら、力を貸すけど、一体何をやるつもりだ?」 「復讐・・・」 そう言った愛美の顔は、何処か影が落ちていた。 「復讐? 愛美を苛めた連中へのか?」 喪時は起き上がり、愛美の顔を見つめる。 「そう。私を苛めた人たちに復讐したいの。手伝ってくれるよね?」 愛美も起き上がり、喪時にキスをする。 「う、うん。分かった・・・」 「ありがとう」 〜〜〜 男性教師 〜〜〜 最初のターゲットは、愛美の訴えを無視した学年主任の教師に決まった。 男性教師は35歳。性格は明るく、運動部の顧問をやるなど、活発な教師で 生徒から慕われている。 面倒見も良いほうで、普段からイジメがあったら相談に来いと、生徒に言って いたらしいが、実際に愛美が相談に行っても何もしてくれはくれなかった。 愛美が喪時と同居を始めて、すでに1週間が経過していた。 愛美が家出したことは、すでに学校側にも連絡が入っていることだろう。 ターゲットの教師は学年主任をやっているので、そのことは当然知っている はずである。 まして、イジメの相談を受け生徒のことだから、印象深いだろう。 ターゲットは、駅から歩いて15分程のワンルームに一人で住んでいる。 喪時と愛美は、ターゲットが駅から現れるのを待ち、車で先回りした。 愛美はターゲットの部屋の前で待機し、喪時は塀の影に隠れる。 ターゲットが愛美を見れば声を掛けてくるはずだ。 数分後、ターゲットが部屋の前で愛美を発見し、声を掛けてきた。 「岸田? おい、岸田じゃないか!」 「先生・・・」 「こんなところで何をやってるんだ? いや、それよりも家には帰ったのか?」 ターゲットは部屋の前に居る愛美を見たとき、困惑の表情を見せたが、教師と 言う職業柄か、すぐに気を取り直したようだった。 「先生に相談があって・・・」 「相談?」 男性教師の顔に、再び困惑の表情が浮かぶ。 ターゲットは部屋の鍵を開け、愛美の手を引きながら言った。 「ま、まぁ、こんな場所じゃ何だし、取りあえず部屋に入れ」 愛美はターゲットに促されるまま、ターゲットの部屋の中へと入った。 喪時は、手にしたカメラで、そのシーンを撮った。 「止まれ!」 喪時は時間を止め、ターゲットの部屋へと向う。 鍵はターゲットが外しているので、問題なくドアが開いた。 喪時がターゲットの部屋を見回し、隠れる場所を探す。 ワンルームらしく、あまり隠れるような場所はないが、クローゼットの中であれば 隠れていられるだろう。 喪時はクローゼットに隠れることにした。 ターゲットと愛美が部屋の中に入ると、ターゲットは愛美を奥のテーブルへと 案内した。 「それで、相談というのは、何だ?」 男性教師が、冷蔵庫を開きながら言った。 「先生は、どうして私が苛められているのに、何もしてくれなかったんですか?」 「あ、いや、それは、そう、イジメの問題はいろいろ複雑だからな。 調査なんかでいろいろと時間が掛かるんだ。 決して、何もしてなかった訳じゃないんだ」 ターゲットがジュースをお盆に乗せ、愛美の座るテーブルへとやってきた。 男性教師の視線が泳ぎ、表情には明らかに動揺の色が浮かんでいる。 愛美は、そんな男性教師の表情を見て、復讐を決行することに決めた。 愛美がシャツのボタンを外し始めた。 「き、岸田」 愛美がシャツを脱ぎ、上半身裸になった。 愛美の合図だ。喪時は愛美が服を脱いだのを確認すると、時間を止め、 クローゼットの外に出る。 喪時は男性教師のズボンをパンツもろとも脱がせると、部屋の外に出て、 カメラを準備した。 時が動き出きだす。 愛美は男性教師の下半身が裸なのを確認すると、悲鳴を上げ外に飛び出した。 「きゃぁ〜」 男性教師は上半身裸の愛美を追いかけ、ドアの外へ追いかける。 「お、おい、岸田!」 ドアがから出てくる二人を確認すると、喪時がその姿をカメラに収めた。 何人かの住人が、愛美の悲鳴を聞きつけ、ドアを開き、愛美と男性教師を目撃する。 喪時はそれらを確認し、住人に聞こえるように言った。 「中学生教師が、女生徒を襲ってるぞ!」 住人の視線が男性教師に集まり始めた。 「あ、いや、違うんです!」 男性教師は必死に言い訳をしているが、下半身裸ではまるで説得力が無い。 喪時は、住人の関心が愛美に向かないうちに、再び時を止めた。 「止まれ!」 喪時は愛美を抱え、車の中へと入った。 時が動き出し、喪時と愛美は車でその場を走り去った。 下半身裸の男性教師は、愛美を探しているようだが、愛美の姿を見つけることは 出来なかった。 「岸田、どこだ? まったく、岸田は何を考えて・・・」 「下半身裸で何やってるのかしら・・・」 住人のヒソヒソ話が、男性教師の耳に届く。 「え? あ、わ〜」 男性教師は、自分の下半身が裸なのに気付き、慌てて股間を押さえながら部屋に戻った。 喪時と愛美が車で走っている途中に、何台かパトカーとすれ違った。 住人の誰かが、警察を呼んだらしい。 今回、喪時は2枚の写真を撮った。 一枚目は、男性教師が愛美の腕を引き、部屋に入れるシーン。 もう一枚は上半身裸の愛美を、男性教師が追いかけているシーンだ。 どちらか1枚なら、それほど意味が無いが、2枚揃うと男性が少女を無理やり部屋に引き込み、 暴行されそうになった少女が逃げ出したように見える。 喪時は、2枚の写真と共に、男性教師の名前と住所、学校名などをマスコミ何社かにフリー メールで送信した。 翌日、学校の前にはたくさんの報道陣が訪れていた。 昼のワイドショーでは、男性教師の実名入りで報道され、男性教師はあの日から数日間 取調べを受けた。 警察側では少女の正体が不明ということで、不起訴処分とした。 しかし、学校側ではPTAの圧力により、男性教師を解雇処分に決定した。 数日の間ワイドショーで報道されていたこと事件も、今では他のニュースに切り替わっていた。 喪時は、裸の愛美を背後から抱き寄せた。 「次のターゲットは誰にする?」 愛美はテレビを観ながら答えた。 「まだ復讐は終わっていないわ。だって、彼はまだ生きているもの・・・」 愛美は空ろな目で、テレビを見続けながら言った。 「社会的に抹殺されただけじゃ、満足できないのか?」 愛美は無表情のまま答える。 「できないわ・・・。あの人に相談したときに助けてくれたら、私はこんな ことにならなかった・・・」 喪時は愛美の肩を両手で掴む。 「殺すつもりなのか?」 「やってくれるわよね?」 愛美が喪時の首に手を絡ませ、口付けをする。 「分かった・・・」 マスコミの報道が沈静化すると、学校からマスコミの姿が無くなっていた。 男性教師は、形式的には自主退職の形を取り、引継ぎや、ロッカー整理などで学校を 訪れ、憔悴しきった顔で駅のプラットホームに立っていた。 喪時と愛美は、駅のプラットホームで男性教師を待ち伏せていた。 「どうやら、着たようだ」 昼過ぎということもあり、プラットホームの上はまばらだった。 「三番線に上り電車が参ります。 危ないですから白線の内側に下がってお待ちください」 ホームのスピーカーから電車が来たことを知らせるアナウンスが流れる。 愛美は男性教師に気付かせるように、男性教師とすれ違った。 「岸田!」 男性教師が愛美に気付き、振り返った。 愛美がホームの先頭に向かい、走り始める。 「おい、岸田! 待て!」 男性教師が愛美を追いかけ、走り始めた。 「止まれ!」 喪時が時間を止め、男性教師に近づいた。 「あんたには恨みは無いが、愛美のご希望なんでな。悪く思わないでくれ」 喪時が男性教師を動かし、線路へと押し出した。 プワーン。 電車から、警告のホーンが鳴った。 「きゃ〜」 どこからとも無く、悲鳴が聞こえた。 男性教師は電車に轢かれ、息絶えた。 愛美は、男性教師が轢かれる様子を確認し、喪時の元へと歩いてきた。 その顔には、笑顔が浮かんでいるようであった。 喪時はそんな愛美の顔に、戦慄を覚えたのであった。 ぴるるる〜。 久しぶりに電源を入れた愛美の携帯から、メールの受信を知らせる音が聞こえた。 件名:やり直して欲しい 本文: 愛美、今どこに居るんだ? あの件で一番苦しんでいるのは愛美なのに、俺冷たく当たっちゃって悪かった。 出来れば、もう一度やり直したいんだ。連絡が欲しい。 差出人は、愛美の恋人だった達也からだった。 メールを読み終わった愛美の目に、喜びの色が浮かぶ。 愛美の様子に気付いた喪時が、ベッドから起き上がり愛美に問いかけた。 「誰からのメールだ?」 愛美は喪時の隣に座り、喪時にメールを見せた。 「達也君からメールが来たの」 メールを見せる愛美の表情は、いつもとは違い明るい少女に戻っていた。 「達也? あぁ、愛美の彼氏だったやつか」 喪時はメールの内容を読んだ。 「ふーん、やり直したいか・・・。で、愛美はどうする気なんだ?」 愛美が達也の元へ戻ってしまうと、今の関係は終わってしまうだろう。 しかし、これがきっかけで愛美が本来の生活に戻れるなら、それも良いのかもしれない。 喪時はそんな事を考えながら、愛美を見つめていた。 愛美は携帯を弄びながら、考えがまとまらないのか、小さく呟いた。 「どうしたらいいんだろう・・・」 喪時は、愛美の髪を優しく撫でつけながら言った。 「まだ達也ってやつのことが好きなんだろ? ここでの事はすべて忘れて、そいつとやり直せばいいさ。 何か辛いことがあったら、また俺のところへ来れば力になってやるし」 「う、うん」 そう答えた愛美の顔は、普通の中学生の顔に戻ったようであった。 喪時は、愛美をマンションの玄関まで見送りに出た。 「喪時君、今までありがとう」 愛美はそう言い、背伸びをして喪時の頬にキスをした。 喪時はそんな愛美の行動を愛おしく思い、別れる寂しさがこみ上げてくるのを抑え ながら愛美の手を握り言った。 「辛いことがあっても、頑張れよ、愛美」 「うん。喪時君もいつまでも引き篭もってちゃダメだよ!」 愛美は、手を振りながら土手の方へと走って行った。 喪時は愛美の姿が小さくなるまで、愛美を見送るのだった。 果たして中学生位の男子が、強姦された彼女を許すことが出来るのだろうか? 愛美を輪姦したヤンキーたちは、もうこの世には居ない。 しかし、その事で強姦された彼女とのわだかまりが、解けるとも思えない。 もし、喪時の彼女が強姦されたとしたら、喪時は許すことは出来るだろうか? 恐らく、すぐには許すことはできないだろう。 中学生の達也にそれが可能なのだろうか? 部屋に戻った喪時は不安に包まれ、愛美を追いかけるために駐車場へと向った。 「確か、今日の19時に土手で会うと言ってたな」 喪時は車で土手に向った。 河川敷の駐車場に車を止め、愛美たちの姿を探すが、薄暗い中で二人を探すのは困難だった。 鉄橋の下に愛美と達也が座っている。 鉄橋の上は車道になっており、橋の明かりで愛美と達也の居る場所は割と明るかった。 「愛美ちゃん、メールにも書いたけど、俺ともう一度やり直して欲しいんだ」 「でも、私・・・」 「愛美ちゃんを襲った連中はもう死んじゃったんだし、愛美ちゃんが 気にすることなんてないよ」 「達也君・・・。本当に私なんかでいいの?」 愛美と達也が無言で見つめ合い、愛美が目を閉ると達也が愛美に口付けをした。 愛美は幸福感に包まれた。 その顔は喪時の家に居るときとは違い、一人の少女そのものだった。 イジメられるようになり、愛美には辛い日々が続いていた。 愛美を強姦した連中が死んでも、男性教師に復讐しても、愛美の心が晴れることは なかった。 しかし、かつて恋人だった達也が、再び愛美の元へ戻ってきてくれた。 他の人から見れば、些細なことだったかも知れないが、今の愛美にとっては、 これほど大きな幸せはなかった。 「愛美ちゃん・・・」 口付けを交わしながら、達也が愛美の胸を触った。 発育途中の愛美の胸は、喪時のときでもそうだったが、触れるだけで痛みが走った。 「い、いや・・・」 幸福感に満ちていた愛美であったが、胸の痛みにより現実に引き戻され思わず、 達也を拒絶してしまう。 拒絶された達也の顔に怒りの色が浮かび、更に強引に愛美の胸を掴んだ。 「痛い、止めて!」 愛美は達也を突き放し、胸を手で守りながら達也の手から逃れた。 達也は立ち上がり、力任せに愛美の上に馬乗りになる。 「何で嫌がるんだよ! どうせやつらに犯されて処女じゃないんだし、 汚されてるんだから、今更嫌がるなよ!」 達也は一人の女性を見守るには、幼かった。いや、幼すぎた。 達也の欲望を剥き出しにした一言が、愛美の心の傷を大きくえぐった。 立ち直りかけていた愛美に、追い討ちを掛けたのだ。 愛美は達也の一言で、抵抗する気力を失った。 否、生きる気力そのものを失ってしまった。 愛美は夜空を見上げ、空ろな目で呟く。 「やっぱり、やり直せないんだ・・・。私、汚れちゃったから・・・」 抵抗を止めた愛美を見て、達也はすでに一匹の獣と化した。 「へ、へへ。これで俺が仲間内じゃ最初に童貞を捨てるぜ・・・」 達也が愛美の上着を脱がしにかかる。 愛美の上着がたくし上げられ、白いブラジャーが顕になる。 達也が荒々しく愛美のブラジャーをずらすと、愛美の胸が現れた。 達也は乱暴に、愛美の乳首を吸い、反対側の胸を揉んだ。 愛美の目には苦痛のためか、悲しみのためかなのか、一筋の涙が流れていた。 「この日のために、俺、いろいろな本で研究したんだぜ」 達也の手が愛美のスカートを捲くり上げ、パンツへと手を伸ばした。 「どうだ、愛美。濡れてるか?」 愛美は無表情のまま、達也のされるままにしていた。 達也が愛美のパンツを脱がし、秘部を覗き込む。 「これが、女の・・・」 悪い予感がする。この感じは、両親が事故に合う直前に感じた感覚だ。 喪時は必死に愛美を探し、土手を走り回るが二人の姿はなかなか見つからない。 「あいつら、どこに行ったんだよ」 喪時の顔に焦りの表情が浮かぶ。 「反対側の土手なのかも知れないな・・・」 喪時は、車に乗り込み、反対側の土手へと向う。 鉄橋を渡ろうとした喪時の耳に愛美の声が聞こえた。 「・・・止めて!」 喪時は車を止め、辺りの様子を探る。 「何で嫌がるんだよ! どうせやつらに犯されて処女じゃないんだし、 汚されてるんだから、今更嫌がるなよ!」 橋の下で、少年が叫んでいるのが聞こえた。 「愛美たちはこの下か!」 喪時は橋の下へと急いだ。 先ほど少年が発した台詞。それが愛美に対してだったら。 今の愛美があんなことを言われたなら・・・。 橋の下に2人の影が見える。一人は寝ており、もう一人がその上に覆いかぶさっている。 覆いかぶさったやつが立ち上がり、ズボンを脱ぎ始めるのが見えた。 時間が無い! 「止まれ!」 喪時が止まった時間の中を走る。いつもより、空気が重く感じられる。 喪時は必死に走り、二人に近づく。 寝ている方の顔が確認できた。愛美だ。 二人の所に辿り着いた喪時は、愛美の上に覆いかぶさっている達也に蹴りを入れ、 達也を愛美の上からどかした。 時が動き出し、喪時に蹴られた達也が吹き飛ぶ。 ズシャー。 「愛美、大丈夫か? 愛美!」 喪時が愛美の傍らしゃがみ、愛美の様子を伺った。 「私、汚されちゃったんだ・・・。もう、元には戻れないんだ・・・」 愛美は、涙を流しながら、小さな声で何度も呟いていた。 喪時に蹴り飛ばされた達也が立ち上がり、周りの様子を確認する。 何が起きたか、判らないといった様子だ。 達也が、愛美を助け起こす喪時に気付いた。 「あんた、誰だよ?」 達也が喪時に近づき、肩を掴みながら問い掛ける。 喪時は立ち上がり、振り向き様に達也の顔を殴った。 バキッ。 喪時は、生まれて初めて憎しみに身を任せ、人を殴った。 愛美を犯したヤンキーたちの時ですら、感じたことの無い感覚だった。 鈍い音が響き、達也が尻もちをつく。 「いきなり何するんだよ!」 達也が立ち上がりながら、喪時に殴りかかる。 「止まれ」 喪時が時を止めた。 喪時は達也を川まで引きずり、水面に投げ入れた。 時が動き出すと、川に投げ込まれた達也が、川の中で転倒する。 「ぶばべべぼば・・・」 達也がパニックになり、浅瀬で溺れる。 「お前、最低のやつだ」 喪時は川の中に入り、達也の頭を踏みつけた。 達也の顔は水没し、達也が手足をバタつかせ、もがき苦しむ。 喪時が足を離すと、達也が涙目で顔を上げた。 「な、なにするんだよ!」 喪時が達也の髪を掴み、再び水の中へと突っ込む。 「がぼぼ・・・」 喪時が手を離し、愛美の元へと向う。 ようやく息が吸えるようになった達也は、逃げるように川岸へと這い上がった。 愛美じっとこちらを見ていた。 「愛美・・・」 喪時が愛美に近づくと、達也が立ち上がった。 その両手には大きな石が握られており、喪時に向って大きく振りかぶる。 「うわぁぁぁぁ」 達也が渾身の力を込め、喪時に殴りかかった。 「止まれ!」 喪時は時を止め、達也の方を振り向く。 達也は大きな石を振りかぶったまま、止まっていた。 時を止められる喪時の前では、余程の不意打ち以外は無意味な行為だ。 喪時は達也の手から石を奪い取ると、その石を達也の頭上へと動かした。 これで、時が動き出せば石は運動力により達也の頭へと移動する。 そして時が動き出し、達也の石の無くなった手が空を切る。 石は達也の後頭部目掛けて一直線に移動した。 ごっ 「うごぱっ」 達也の握っていた石が、達也の後頭部に直撃し、達也の頭から赤く生暖かいものが 流れ始め、達也は前のめりに倒れ、達也は意識を失った。 喪時は、意識を失った達也に石を抱かせ、再び川へ投げ入れる。 達也はそのまま沈み込み、浮いてこなかった。 喪時が愛美の方を振り向くと、愛美は達也と喪時の行動をじっと見つめていた。 喪時が愛美を抱きかかえ、車に乗り込む。 愛美は喪時の家に向う間ずっと、独り言を呟いていた。 「私は汚れている・・・私は汚れている・・・私は汚れている・・・」 喪時の自宅に帰っても、愛美は独り言を繰り返していた。 「私は汚れている・・・私は汚れている・・・私は汚れている・・・」 喪時は、愛美を抱きしめた。 「愛美は汚れてなんていないよ。汚れてない! ちくしょう! こんなことになるなら、愛美を達也のとこになんて 行かせるんじゃなかった!」 「私、汚れてるよ・・・。ほら、体だって、こんなにドロだらけだし・・・」 愛美の目から涙が溢れ出した。 「愛美、愛美、愛美!」 喪時は愛美を抱く手に力を入れた。 「愛美は汚れてないよ。ドロなんて、お風呂に入ればすぐに落ちるよ。 愛美、お風呂に入ろう。お風呂に入って体を綺麗にしよう」 そう言うと、喪時は愛美の服を脱がせ、浴室へと連れて行った。 喪時は温めのお湯で、愛美の体を洗い流す。 愛美の白い胸には、達也が力強く握った手形が、赤く残っていた。 「愛美、痛かっただろ・・・」 喪時が赤く残っている手形の跡を、優しく舌を這わせる。 愛美の体が反応し、小さな蕾のような乳首が隆起し始めた。 「愛美・・・」 喪時が愛美の胸に顔を埋めると、愛美がそっと喪時の頭を抱いた。 「私、もう生きていたくない・・・。喪時君、私を殺して・・・」 喪時は頭を上げ、愛美の瞳を見つめながら言った。 「ダメだダメだダメだ。俺にはそんなことはできない! もう、愛美と離れ離れになりたくないんだ! 俺とずっと一緒にいよう!」 愛美の目から、涙が溢れ出した。 「一緒に・・・」 「あぁ、ずっと、ずっと、俺と一緒に居よう。な、愛美。 それに、まだ愛美にはやることが残っているんだろ?」 「やること・・・?」 「そう、まだ復讐する相手が居るんだろ? イジメたやつらに復讐するんだろ?」 喪時は愛美を力強く抱きしめた。 「ふくしゅう・・・ふくシュウ・・・」 「そうだ。復讐だよ。愛美をこんな目に合わせた連中全員に、復讐してやるんだよ!」 愛美が喪時を抱き返し、その目に生きる気力が戻ってきた。 「そうだね。復讐してやらなきゃ。私が死んで、あいつ等がのうのうと生きてるなんて、 我慢できない。あいつらにも、同じ苦しみを味合わせてやらなきゃ」 愛美は、生への執着を取り戻したように見えた。 喪時は安堵し、落ち着きを取り戻し始めるた。 今、喪時と愛美は裸で抱き合っている。 喪時の息子が急速に頭をもたげ始めた。 喪時は、そんな息子の様子に気付き、腰を引いて愛美から離れようとするが、 愛美はしっかりと、喪時を抱きしめていた。 喪時の息子が完全にいきり立ち、愛美のお腹をノックする。 喪時は更に腰を引いたが、愛美には気付かれてしまったようだった。 愛美が顔を上げ、笑顔を見せた。 「あ・・・」 愛美が、喪時のいきり立った息子を握り、喪時は声を上げてしまった。 愛美の手が上下に動き、喪時の息子を擦り上げる。 「う・・・」 そして愛美がしゃがみ込み、喪時の息子を口に含む。 ちゅぷ、ちゅぱ。 「あ・・・う・・・」 愛美の舌先が喪時の息子の先を刺激し、手で竿を擦り上げた。 「はぁはぁ・・・」 愛美の小さな口が開き、喪時の亀頭部分をすっぽりと咥え込む。 舌先で裏筋部分を刺激し、舐め上げる。 「あ、あぁ、もう出る。もうイっちゃうよ、愛美! うっ・・・」 喪時が限界を向え、愛美の口の中に白く熱い精子を発射させた。 喪時の精子は、愛美の喉の奥まで飛び散った。 ちゅぽっん 愛美が喪時の息子を口から引き抜くと、口に収まりきれなかった喪時の精子が 愛美の口元から流れ落ちる。 愛美は、流れ落ちる精子を手で拭い、口に含んだ精子を両手に吐き出した。 愛美の手が、胸からお腹へと移動し、愛美の体に喪時の精子が塗りつけられた。 「喪時君でいっぱいにして! 中も外も全部、喪時君で埋め尽くして!」 愛美がそう言って喪時に抱きつくと、喪時の息子が愛美の体に塗られた精液で滑る。 それはローションにも似た感覚で喪時の息子を刺激し、喪時の息子は再び力を取り 戻し始めた。 「愛美、愛美、愛美ぃ〜」 喪時は愛美のお尻を両手で鷲掴みし、愛美の体を持ち上げる。 後ろから愛美を見ると、可愛いお尻が広げられ、秘部や菊穴が丸見えになっている。 愛美の体が持ち上がり、喪時の息子が愛美の小さな膣口に宛がわれた。 喪時が一気に、愛美を串刺しにした。 「あぁ、感じる! 中で喪時君を感じるよぉ」 「愛美、愛美、愛してる」 喪時は、愛美を持ち上げ、激しく上下に揺する。 「熱い、熱いよ。喪時君の、熱いよ」 「あぁ、いいよ。愛美。イク。またイっちゃうよ」 「出して。私を喪時君のでいっぱいにして!」 「うっ・・・」 「あぁぁぁぁ」 こぷっこぷぷっ 喪時が2回目とは思えないような量の精子を、愛美の中にぶちまける。 愛美の膣内に納まりきれない精子が、足を伝い床に流れ落ちた。 かつての恋人だった達也と再会した愛美だったが、達也の欲望が愛美の心に大きな 傷跡を残した。 再び死を望んだ愛美であったが、イジメた連中への復讐により、生への執着を取り戻す。 しかし、喪時の行動が良かったのかどうかは、喪時には判らない。
https://w.atwiki.jp/ranoberowa/pages/484.html
第382話:存在を成す復讐の念 作:◆Sf10UnKI5A この殺伐とした島にそぐわぬ施設、海洋遊園地。 その一角、飲食店街の中に一軒のバーがあった。 外見はいたって普通なのだが、今その中は戦闘があったのかと思うほどに荒れ果てている。 その原因、マージョリー・ドーは、テーブルに突っ伏して寝息を立てていた。 「ったく、いつまで寝てやがるんだか……」 床に投げ出された巨大な本――グリモアから呟きが漏れるが、それを聞く人間はいない。 少し前に外から放送のような声が聞こえたが、マージョリーはそれにも反応せず寝こけていた。 そして、時計の針が十二時を指した。 「…………頭、痛ぁ……」 脳に直接響く声に起こされたマージョリーは、頭を抱えてそう呻いた。 「ヒヒヒ、やーっと起きたか。我が泥酔女王、マージョリー・ドー」 「うっさいわねバカマルコ。そんなに飲んじゃいないわよ……」 そう言い返すと、デイパックからペットボトルを引っ張り出し、直接口にあてがった。 豪快に水を流し込むと、改めて口を開く。 「どうやら、チビジャリもおまけのガキも元気にやってるみたいね」 酔ってはいるものの、放送を聞き逃さない程度には落ち着いていたらしい。 「元気かどうかはわかんねぇぜ? 半死半生でのたうち回ってるかもな、ヒヒッ」 「ま、そりゃそうよね……」 フレイムヘイズである炎髪灼眼はともかく、坂井とかいうあの少年まで生き延びているとは思っていなかった。 ――意外とあっさり合流出来たのかもしれないわね。 「ところでマージョリー・ドー」 思考に割り込む声は、マルコシアスのものだ。 「何よ?」 「ちょいと聞くがな。――これからどうするつもりだ?」 彼にしては珍しい曖昧な質問に、マージョリーはかすかに眉をしかめた。 「どうもこうもないわよ。酒はあるんだし、適当に時間潰せば……」 「そうじゃあねえさ。まだ一人も殺してないんだろ?」 その言葉に、マージョリーは眼を細めグリモアを睨む。 「殺すのか殺さないのか、そろそろ決めてくれってこった。 死ぬまで付き合う間柄っつっても、これ以上振り回されちゃたまんねえからな。ヒャッハッハ」 「…………」 ――確かに、今の私はおかしいわね。 つまらない挑発に乗って二人を相手に戦闘し、結果肋骨を負傷。 今度は戦う気の無い少女を追い回し、逆に向こうが逃げたなら追わない。 そして、殺人者がうろつく状況下で酒を飲んで居眠り。 「……まずは状況把握ね。どう動くかはその後決めりゃいいわ」 二人は話し合い、そしていくつかの異常を改めて確認した。 まず、マージョリーの身体能力全般の低下。 これは、ただの人間にすぎないはずの黒ずくめのパンチでダメージを負ったことが証拠になる。 次に、存在の力の感知能力の大幅な低下。 接近しないと他人の存在の力を感知出来ず、しかも同じフレイムヘイズである『炎髪灼眼』の位置すら特定出来ない。 これはマージョリーだけでなく、『王』であるマルコシアスすら同じだった。 聞けば、契約者であるマージョリーですらおおまかな位置を把握出来る程度だったそうだ。 そして最後に、 「封絶を張れねえってのは、こりゃどういう事情だろうな?」 「自在法が使えないってわけじゃないみたいね。炎は使えるし――――?」 そこまで言って、マージョリーは一つの推測を得た。 ――まさか、殺し合いを円滑に行わせるための制約!? 理屈は理解出来る。しかし、自在法自体ではなく封絶に限定して力を封じるというのは、 「どこのどいつよ、そんな馬鹿なこと考えるのは……」 数百年をフレイムヘイズとして生きてきたが、そんな自在法は見たことも聞いたこともない。 自在法・自在式には造詣の深いマージョリーだが、それは全く想像すら出来ぬことだった。 ――でも、 「それが可能かどうかってことより、現実にそういう対処がなされていることが問題ね」 「ヒヒッ、随分と頭が回るようにじゃねえか。やっぱアル中女はブヘッ!?」 「黙りなさいバカマルコ。今ちょっと考えてるんだから……」 ――この『ゲーム』の主催者ってのは、それを成すだけの力を持ってるっての? それに、どうやら人ならざる力を持っているのは自分や炎髪灼眼だけではないらしい。 光の刃を放った黒ずくめ。 謎の力で自分の攻撃をいなした眼鏡の少女。 腕の一振りで木を薙ぎ倒した奇妙な笑い声のガキ。 ――もし、全く異なる種類の力を持った参加者全員に、それぞれ異なる制約を掛けているとしたら……。 バーの中に、久しくなかった完全な沈黙が訪れる。 数十秒後。マージョリーは思考をまとめ、結論を出した。 「……このゲーム、乗るわよ。マルコシアス」 「そりゃあ、どういう風の吹き回しだ? 我が冷静な復讐者、マージョリー・ドー」 復讐者。そう、彼女の目的は、あくまで―― 「“銀”にもう一度会うまでは、くたばるわけにはいかないわ。 でも、この制約を受けた身で主催者に刃向かうのは、……『死』でしかありえない」 「それで、見ず知らずの人間を殺して回ろうってのか?」 その言葉に、マージョリーは軽く嘆息し、 「見ず知らずの人間と共に主催者と戦おうってよりは、よっぽど現実的よ。 敵になるのはせいぜい『炎髪灼眼』くらいだろうし、あのチビジャリはいくらでも対処のしようがある」 自らの力の源であるマルコシアスとともに在る今、苦杯を舐めたあの二人と再戦しても負けはしないだろう。 能力が落ちているといっても、フレイムヘイズは元々が人間を遥かに超越した存在だ。 それに、彼女を壮絶な戦いの中生き残らせてきた“頭脳”までが制約を受けたわけではない。 どれほどの強敵であろうと、どれほど大人数が集まってようと、騙し討ってしまえばそれで終りだ。 残り八十名強の中の、最後の一人になる。それは、彼女にとって決して不可能な話ではない。 準備をしようと立ち上がったマージョリーに、また声が掛けられた。 「だがよマージョリー・ドー。その選択に、抵抗も後悔もないのかい?」 心の隅の引っ掛かりを見透かすかのように、マルコシアスが問いかけた。 マージョリーはしかし、グリモアを叩くでもなく静かに口を開く。 「――人も徒も同じよ。“守るべきもの”なんてのは、この島には存在しない」 「守るべき人間は、あの二人だけってかブッ!?」 「お黙りバカマルコ」 なんでぇ図星じゃねえか、と呟く本を無視し、マージョリーは出立の準備を進める。 地図をしまい、水を戻し、適当に酒瓶を掴んで放り込む。 マージョリーの顔からほんの一瞬険が消えた。自分を慕う二人の少年を想ってだろうか。 しかし、その表情はすぐに元へと戻る。 そこにいるのは、『炎髪灼眼』と戦い、御崎市に留まり続ける選択をする前の彼女。 ただ復讐のために敵を討滅し続ける、冷酷な『弔詞の詠み手』だった。 【E-1/海洋遊園地/1日目・12:15】 【マージョリー・ドー】 [状態]:軽い頭痛(二日酔い)、怪我はほぼ完治 [装備]:神器『グリモア』 [道具]:デイバッグ(支給品)、酒瓶(数本) [思考]:人の集まりそうな所へ移動、ゲームに乗って最後の一人になる ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第381話 第382話 第383話 第376話 時系列順 第316話 第359話 マージョリー 第400話 第359話 マルコシアス 第400話
https://w.atwiki.jp/keikenchi/pages/488.html
第1部
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/2697.html
サーチャーのサーヴァント黒桐幹也とそのマスター射命丸文、そしてサーチャーの宝具である両儀式の三人は墜落した安土城跡に向かっていた。 もちろん彼らは迂闊に安土城跡に向かっているわけではない。 イチローとブロリー、今回の戦いの中でも最高峰の力を持つ彼らが目的地の近くで戦っているのだ。 幹也の探索能力と途中で手に入れた車を使い、最も安全で速く到着するルートを探し進んでいた。 ちなみに運転したのは幹也で、式と文はどっちが彼の隣に座るかで喧嘩になり、結局二人とも後ろの席に座ることになった。 移動中二人の間の空気がやばかったのは言うまでもない。 途中で何回か流れ弾が飛んできたが何とか無事に安土城まで到着することが出来た。 「よし、じゃあここら辺を中心に探してみようか。」 到着して幹也はまず近くの場所から探していた。 実際に三人いるのだから別々の場所を探した方が効率がいいのだろうが、現在は殺し合いの真っ只中である。 もちろんここの辺りは城が落下したことから全ての人間が非難していたし、幹也の能力で調べたが、ここ周辺に人はいない。 いるのは少し離れた場所で戦っているイチローとブロリーだけである。 もっとも彼らの近くに戦艦が向かってはいるが自分達にはあまり関係がないことだ。 だがそれでも彼は慎重に動くことにした。 式や文はともかく自分に戦える力はほとんどないからである。 幹也はこの殺し合いで楽観的な考えは危ないことは充分理解していた。 自分がいきなりサーヴァントにされるは、地球は滅び、いつの間にか別の惑星に移動しているは、例を挙げればきりがない。 「…あれ。これは…」 その時幹也はあるモノを見つけた。 「何か見つけたんですか、幹也さん?」 「うん、これなんだけど…」 それは一冊の古びた本だった。 誰の者かは書かれていないが、それが何年か前の物でありることは分かった。 ただその本には何も書かれておらず、この本が一体何を示すものかは分からない。 「うーん、やっぱりほとんどの物は一緒に転送されているみたいだね。この本以外は見当たらない。」 「そのようですね。やっぱり簡単には主催者も情報を渡す気はないようです。」 幹也が周りを見渡しながら言う。 そもそも安土城だったものは崩壊しているので中は探しようがない。 当たりを見渡してもあるのはこの古びた本だけだ。 だがここで一つ疑問が残る。 「なんでこの本だけを置いていったんだろう?」 信長がわざわざこの本だけを置いていった理由が分からない。 ただ、その本は幹也が調べても誰の者か分からなかった。 そう、まるで橙子と青子が召喚した孫悟空のように情報そのものがないのである。 ここで考えられるか可能性は一つ。 「この本は悟空さんみたいにこの戦いの最中に別の世界からこの世界に来た人のものかもしれないね。」 といっても今の情報ではこの可能性があるとしかいえない。 どうにかしてこの本を読むことが出来れば早いのだが、黒桐の能力を持ってしても詳細は分からない。 「とりあえず橙子さん達のもとに帰ろうか。ここは危ないしね。」 少年の提案に二人の少女は頷いた。 「今戻りました。」 あれから少し経ったあと、幹也たちがイナバ製作所に帰ってきた。 「黒桐、お前はなんで勝手に…」 「それより橙子さん。この本ですけど。」 キャスターのマスターである蒼崎橙子が小言を言おうとするのを幹也が遮り、自分が安土城で見つけた本を渡した。 「これ、安土城跡に落ちていたんですが、どうも変なんです。」 「…何も書かれていないな。で、何でこれが変なんだ?」 「実はそれ、悟空さんみたいに情報がないんです。」 「だったらそれはオラみたいに戦いの途中にこの世界に来たちゅうことか?」 「確証はありませんがその可能性があります。」 「でも、なんでわざわざこの本が安土城に残っていたのかしら?他の物は残っていなかったんでしょう?」 「…もしかしたらそれ、安土城が降ってきた後にこの世界に着たんじゃないのか?」 青子の疑問に式が自分の予想を言う。 幹也が調べられない以上、この本が別の世界の物の可能性は高い。 そして信長は自分の居場所を伝えるヒントは安土城には残していなかった。 また安土城が落ちてくる前なら誰かが回収しているだろう。 「…といっても一番肝心なところは分からないな…」 そう、正直この本が何でこの世界にあるかなどたいした問題ではない。 一番大切なことは『この本は誰の物であり、何が書かれているのか』である。 「どっちにしろ今そいつを調べることはできないな。今調べる事は信長の居場所だ。」 幹也にも分からない以上、今の橙子達にはその本を調べることはできない。 ならば機会が来るまでほかの事を調べるべきである。 その時幹也の下に一匹の鴉が帰ってきた。 「どうしたんだろう、こんなに急いで。」 幹也はカラスにエーテライトを刺す。 「な…」 「どうした幹也。」 「…みんな、落ち着いて聞いて下さい。02さんが…死にました。」 「…嘘…」 幹也の言葉に一番驚いたのはアーチャーのサーヴァントである八意永琳だった。 「嘘よ!じゃあ何で02は死んだの!?紅妹は何をしているの!?言いなさいサーチャー!」 「永琳さん落ち着いてください!」 彼女は一瞬唖然としていたが次の瞬間には声を張り上げていた。 永琳は幹也に詰め寄るがそれを文は必死に抑える。 「…02さんと紅妹さんはアサシンのマスターの空気王とバーサーカー、…それとユウスケさんに襲撃されたみたいです。紅妹さんは戦闘の途中でユウスケさんを追いかけました。02さんは 空気王とバーサーカー、あと途中で乱入してきたライダーキラーと戦っていました。」 「空気王達が02を…」 「いや、彼はあの後どうやら10/さんの能力で逃げれたようです。ただ、逃げた先で泉こなたという少女に殺されました。」 幹也の言葉を聞き、余りのショックで永琳は呆然としている。 「…空気王は今何処にいるの?」 「東京にいます。」 幹也に田尋ねたのは輝夜だった。 彼女もショックを受けていたが、永琳と違い呆然としてはいない。 その表情にあるものは純粋な怒りだ。 「永琳、空気王達の下に行くわよ。」 「…」 だが永琳は答えない。 まだ02のことでショックを受けているようだ。 「!?」 「何ぼけっとしているのよ、永琳!」 その時輝夜が永琳の頬を打った。 輝夜のいきなりの事で他の者は唖然としている。 「…ショックを受けるのはわかる。私だって本当はあなたみたいに呆然としているのかもしれない。けど、ただ立っていても02は戻ってこないわ。」 「…姫様。」 「私は02の敵を討ちたい。確かに彼は殺し合いを止めようとしていた。私が言っていることは彼の意思に背いていることになる。それでも私は奴等を殺すわ。」 「…私は…」 「選びなさい永琳。此処に居るか、私と一緒に来るか、どちらか選びなさい。はっきりって今のあなたがついて来ても邪魔なだけよ。」 「私は…」 「あれが空気王…02の敵。」 向こうはまだ気づいていないようだ。 もっとも此処からあそこまでは三里ほどはなれているけど。 私でも『千里眼』がないと確認できなかっただろう。 もちろん油断は出来ないが。 近くにはガチホモのサーヴァントとランサーのマスターがいる。 あちらも空気王の下に向かっているようだ。 近くに紅妹はいない。 サーチャーの話では戦いの最中に何者かに連れ去られたらしい。 「永琳、奴等は?」 「此処から約三里ほど先です。近くにはガチホモのサーヴァントとランサーのマスターがいます。どうやら彼らも奴等を狙っているようです。」 「紅妹は?」 「サーチャーが言っていた通り近くにはいません。」 サーチャーから奴の切り札の刀のことは聞いている。 奴の刀の名は鏡花水月。 「完全催眠」、早い話が催眠術のようなもの。 だったら私の調合した薬を使えば予防することはできる。 サーチャーから話を聞かなかったら危なかった。 だけど、これで奴の催眠は効かない。 「催眠は封じましたが、今はまだ戦うべきではありません。奴等の二里ほど先にサーチャーの言っていた空気王討伐隊がいます。このまま奴らと彼らがぶつかるのを待ち、隙を見て奴を殺しましょう。」 02、私達が聖杯を求めた理由、それは『死ぬことが出来る体になる』だった。 私達は永遠に大切な人が死ぬ悲しみを背負わないといけない。 私達はそれが嫌だった。逃げたかった。 だけど、今は違う。 私達は聖杯を手に入れたら02、貴方を生き返らせる。 だけど、きっと貴方は他人を殺してまで生き返りたくはないでしょうね。 だから、この戦いは私達の手で止める。 もし、聖杯が手に入ったときは貴方を生き返らせる。 ただ、今は貴方を殺した奴等を殺します。 例え貴方が言っても私達は奴等を殺します。 貴方を殺した、それも私達を苦しめる為に殺した奴を許す訳にはいかない。 「…私達を苦しめたいと言ったわよね。同感よ、私達もお前を苦しめたい、空気王。」 【二日目・15時00分/新惑星・東京都】 【八意永琳@東方Project】 (クラス・アーチャー) 【状態】健康 首輪なし、催眠・幻影の類は無効化 【装備】無し 【道具】支給品一式、不明支給品 【宝具】不明 【思考】 基本::マスター(輝夜)に絶対の忠誠 1:02の為にこの戦いを止める 2:空気王死ね 3:空気王達を殺した後は機会があればこなたという少女も殺す 4:アーチャー(エミヤ)に助けた理由を聞く 5:キャスター達と協力する 6:聖杯が手に入る機会があれば02を生き返らせる ※02と情報交換をしました。よって打者の存在を知りました ※ここが地球ではないことを知りました 【蓬莱山輝夜@東方Project】 (マスター) 【状態】健康 、首輪なし、催眠・幻影の類は無効化 【装備】ジャージ@現実 【道具】支給品一式、不明支給品 漫画たくさん 【思考】 1:02の為にこの戦いを止める 2:空気王死ね 3:空気王達を殺した後は機会があればこなたという少女も殺す 4:キャスター達と協力する 5:聖杯が手に入る機会があれば02を生き返らせる 6:妹紅とは幻想郷で殺しあう(ここでは殺し合わない) ※ここが地球ではないことを知りました 「いいのか橙子、あいつ等行かせても?」 「…言っても聞かないだろうよ。そもそも奴等と私達はあくまで同盟だ。奴等と協力はしても、命令はしないよ。」 永琳と輝夜は幹也から情報を受け取った後製作所から出て行った。 「さて、こちらは社長が帰ってくるまで待つか。」 そう橙子がぼやいた直後、レミリア達がいた場所から物凄い轟音とイナバ君(仮)の断末魔が聞こえてきた。 「…待つ必要はないようだな。さて、奴はこの本の事を知っているだろうか。」 「…というかオラは何があったのかが気になる。」 「気にしたら駄目よ。悟空、この世には知らない方がいいこともあるの。」 「それはそうと…」 そう言って橙子が後ろを向く。 「式さんそこは私が座る場所です!」 「はぁ!?幹也の隣に座るのは私だ!」 そこには幹也の隣を取り合う式と文がいた。 幹也は二人用のソファーの端に座っていた。 つまり幹也の隣に座れるのは一人なのである。 「えっと…僕が動くから二人とも落ち着いて…」 『幹也(さん)はそこに座っていろ(いてください)!』 「あ…ごめん…」 二人の手にはナイフと扇が握られている。 「…止めなくて良いのか?」 「知るか。」 喧嘩している二人の様子を見て三人は溜め息をついた。 【二日目・15時00分/新惑星・大田区】 【蒼崎橙子@空の境界】(マスター) 【状態】健康、首輪無し 【装備】無し 【道具】支給品一式、人形の入ったホイポイカプセル、人形創りの道具、煙草(この二つは支給品ではありません。) 【思考】 基本: 主催者を殺し、その後に青子を殺す(それまでは取り合えず協力し合う) 1:この聖杯戦争、主催者の意図について調べるがチャンスが来るまで動かない 2:アーチャー達と協力するがあくまで目的は聖杯戦争の破壊 3:協力者を集める。弱者は一応保護 4:うるさいぞそこのバカップル ※打者の存在を知りました 【蒼崎青子@月姫】(マスター) (クラス・キャスター) 【状態】健康、首輪無し 【装備】透明マント 【道具】支給品一式 【思考】 基本: 主催者を殺し、その後に橙子を殺す(それまでは取り合えず協力し合う) 1:この聖杯戦争について調べるがチャンスが来るまで動かない 2:アーチャー達と協力するがあくまで目的は聖杯戦争の破壊 3:とりあえず襲ってき奴は軽く蹴散らす 4:うるさいわよそこのバカップル ※橙子の令呪は効きません(意地)。 孫悟空のマスターです。 打者の存在を知りました 【孫悟空@ドラゴンボールZ】(クラス・ヒーロー) 【状態】健康、首輪無し 【装備】無し 【道具】無し 【思考】 基本: 主催者を倒し、元の世界に戻る。 1:青子と橙子を手伝う。 2:サーヴァントは腹へらねぇのかぁ。 3:監督役とも戦ってみたい ※主催者に存在を気づかれていないようです。そのため首輪と支給品はありません。 この世界の人間ではないので宝具は持っておりません。 参戦時期は本編終了後です。 打者の存在を知りました 【射命丸文@東方Project】(マスター) 【状態】健康、首輪無し 式と幹也の隣を取り合い中 【装備】手帳@現実 【道具】不明 【思考】 基本 真実を新聞にして客観的に皆に伝える 1 この聖杯戦争を生き延びる 2 元の世界に皆で帰る方法を探す 3 式には負けない(何についてかは自覚していない) 4 咲夜さんってあんな人だっけ… 5 式さんそこをどいてください! ※打者の存在を知りました 【黒桐幹也@空の境界】(クラス・サーチャー) 【状態】健康、首輪無し 【装備】エーテライト 【道具】謎の本、他は不明 【宝具】此の者想いし最愛の人(両儀式) 【思考】 1 鮮花やその他の知り合いを捜す 2 文を手伝う 3 橙子達も手伝う 4 式に会えて嬉しい 5 二人とも落ち着いて ※打者の存在を知りました 【両儀式@空の境界】 【状態】健康、首輪無し 文と幹也の隣を取り合い中 【装備】不明 【道具】支給品一式。 【思考】 1:幹也を許(はな)さない 2:何があっても幹也を守る 3:何故、あの男には線が視えないんだ? 4:カラス天狗そこをどけ! ※打者の存在を知りました
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/48927.html
【検索用 しかはねひめとふくしゅうのおう 登録タグ 2022年 VAVA VOCALOID し ひとしずくP やま△ 曲 曲さ 鈴ノ助 鏡音リン 鏡音レン】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:ひとしずくP・やま△ 作曲:ひとしずくP・やま△ 編曲:ひとしずくP・やま△ 絵:鈴ノ助 動画:VAVA 唄: 鏡音リン・鏡音レン 曲紹介 知られてはいけない未練は罪―― 曲名:『屍姫と復讐の王』(しかばねひめとふくしゅうのおう) アルバム「FantasiC」収録楽曲。 歌詞 (動画より書き起こし) 晴れ渡る空 祝福の鐘 弟と婚約者(ふたり)の幸せを 願いながら この人生(すべて)を終わらせよう 仄暗い≪真実(ひみつ)≫とともに 鮮やかに逝く― 逆さ三日月の夜 黒百合棺を開け 生き血を求めて彷徨える 屍の姫 年若き王が笑顔で尋ねる 「貴女を屍(そんな風)にしたのは、誰?」 この手で捕らえたなら あらゆる苦痛を 与え続け…… 永遠に壊してあげよう 弟(愛する者)を庇って逝った 姉(きみ)の罪深さを 何という罪状で 裁こうか? あり得もしない 罪を禊ぐ夢 自虐(マゾヒズム)の操り人形劇 その執着の鎖糸で 私を締め付け続けて ねえ 愛するほどに傷つけ合う その跡を絆と証すなら 気が済むまで踊ろうよ 語り合えぬ感情(ひみつ)を 永遠に隠して 愛するが故、犯された罪 『来テ……』 月夜の小径 幼き日の秘密基地(わすれもの) 残されていた 「真実(かのじょ)」の日記(てがかり) 『弟と西国の姫(ふたり)の婚約、狙いは呪殺。 西国の姫(かのひと)に謀られていた! 大切な弟(ひと)……私のすべて。 その呪い(さだめ)ごと、全部、私がもらうわ』 聡明なる姫は双生を庇い 卑劣な罠にかかったのか けがれ無き願い(みれん)は 魂を縛り ≪真実(もの)≫言えぬ屍となり 踊る…… 願い(うらみ)、晴れるまで……? 復讐の王 高らかに 開戦の御旗を振り上げた 愚かしきは 大義なき業 悪しき西国の姫(かのつみびと)を 討て 殺戮の王 厳かに 西国の姫(つみびと)を捕らえ壊せども 屍姫 その未練(ねがい)は 晴らされぬまま……? 踊り続ける 語られない≪真実(ひみつ)≫の夢 知られてはいけない未練(ねがい)は罪 気が済むまで 泣いたらいい 「知ってしまった罪」を 永遠に呪って…… コメント この曲ほんとにやばい。初めの方悲しい感じでゆったりしてんのかなって思ったらすっごい暗くてテンポもまあまあ早くてすごい好き -- 名無しの一コメ (2022-08-26 22 43 40) ヤバい…めちゃくちゃに良い… -- まるちゃん (2022-08-28 20 52 36) 鏡映しのオッドアイ最高です…。でもなんでミクちゃん(西国の姫?)は悲しそうなんだろう…。 -- まるちゃん (2022-08-28 22 38 51) 好きすぎる。が、相変わらずよくわからんのよな〜……。まぁそこが好きなんけど(なにこれツンデレ?←)ミクが一番の謎だ……。 -- 鳳梨 (2022-08-29 11 42 47) なんとなく『愛欲のプリズナー』のifのようにも感じられる・・・姉王女(リン)ではなく弟王子(レン)に恋人が出来たらみたいな・・・・・ -- 名無しさん (2024-03-03 00 08 29) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。 ※解釈等は削除されることがあります
https://w.atwiki.jp/naianakikaku/pages/2083.html
某所。 (アイツ…血相を変えて一体どうしたんだ?) 黒で埋め尽くされ、ただ目の中に白い瞳を持った少女、ヴェンデッタは先程別れた男の様子を思い出していた。 (誰かと話していたみたいだが) 指を顎に当て、唸る様に悩むヴェンデッタ。 「………」 (…ゲンブ) (何だ?) (お前には家族はいるか?) (………) (………) (…俺はお前と違って、赤の他人に自分の事を話すつもりなど無い) (…そうか、すまない) (アイツも家族を失ったのだろうか) 彼女の脳裏に一つの記憶が浮かんだ。 まだかつて、自らを裏切った主君につく前の記憶。 山奥の動物と遊ぶ妹と、それを微笑ましく見守る自分。 もう、永遠に戻る事の無い記憶。 「白羽…」 今は亡き妹の名前を呟く。 やがて声は風に溶けていった。 「……よし、行くか」 マントを翻し、目指すべき場所へ向かい出す。 目的地は―――”北”のいる場所。 復讐者、北へ向かう (気紛れなどではない) (我はただ) (心配なだけだ)
https://w.atwiki.jp/girlsroyale/pages/338.html
同名ドール [激動たる黒の復讐]マーゴリンデータ [激動たる黒の復讐]マーゴリン 限界突破データ 同名ドール [闇天使のドレス]マーゴリン [激動たる黒の復讐]マーゴリン [凍れる黒の束縛]マーゴリン [ドール]マーゴリン [激動たる黒の復讐]マーゴリン blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。 データ 属性 スピード レアリティ SR 最大Lv 60 コスト 16 攻撃 2800 HP 4400 MAX攻撃 4200 MAXHP 6600 リーダー効果 爆速熟練の極意スピードテクニックの攻撃とHPを9%アップ 秘技 ダークネスウィザードスピード属性の攻撃を3ターン45%アップ(4ターン目に発動可能) スキル スピードテクニックラッシュ改スピードテクニックの攻撃を中アップ セリフ この衣装は一体…?そう…ですか…マスター…試合が終わったら次はマスターですよ…きっちりと覚悟をしてくださいね… [激動たる黒の復讐]マーゴリン 限界突破 blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。 データ 属性 スピード レアリティ SRMAX 最大Lv 80 コスト 16 攻撃 2800 HP 4400 MAX攻撃 7000 MAXHP 11000 リーダー効果 爆速熟練の極意スピードテクニックの攻撃とHPを9%アップ 秘技 ダークネスウィザードスピード属性の攻撃を3ターン45%アップ(4ターン目に発動可能) スキル スピードテクニックラッシュ改スピードテクニックの攻撃を中アップ セリフ フフッ…♪痛いのですか?マスター私が味わった屈辱はこんなものではありませんよ…え?…楽しそうにしていた……フフフッ
https://w.atwiki.jp/japan_dorama/pages/5510.html
amazonで探す @楽天で #竜の道 二つの顔の復讐者 を探す! 火21フジ 2020.07.28~2020.09.15 7.0% 公式HP wikipedia 前 探偵由利麟太郎 次 DIVER-特殊潜入班- Hulu NETFLIX dTV PrimeVide U-NEXT TVer Paravi GYAO youtube検索 / dailymotion検索 / bilibili検索 1 破滅させてやる!! 死んだはずの双子の兄復讐のために顔を変え別人に! それを知るのは弟ただ一人 2020/07/28 9.1% 2 妹と予期せぬ再会…秘密知った男を消す?狂い始める復讐計画 2020/08/04 6.9% 3 悪女を落とす復讐の罠! 思わぬ敵の反撃 2020/08/11 7.2% 4 過去を暴かれ復讐に暗雲…妹に悪女の罠 2020/08/18 6.9% 5 兄の秘密明らかに…仇の社長追放へ始動 2020/08/25 5.9% 6 仇の妻に異変!弱みにつけ込む追放計画 2020/09/01 7.1% 7 復讐劇は最終章へ!ついに暴かれる秘密 2020/09/08 5.4% 8 正体暴かれ絶体絶命の兄が下す最後の決断とは 2020/09/15 7.6%