約 488 件
https://w.atwiki.jp/99772200/pages/109.html
# 能力者連中のパイロット技能に超能力をつけるべきか否か。 # とりあえず超能力付加。全超能力者SPを一律-10 # ユニットクラスを『とある魔術の禁書目録』で統一 # 2006/5/23 各キャラ反応低下 # 2006/10/09 魔力所有対応・11巻よりビアージオ追加 # 2006/10/12 格闘が 上条>土御門 なのは主人公補正込みでも変じゃないかなぁと思ったので 上条の格闘-3。覚悟あるのでこれでも十分でしょう。 土御門が技量168ってのも弱いような気がしたので+3。 # 2006/10/13 ステイル、魔女狩りの王追加 # 2006/11/09 上条微修正、色々なキャラに総合命中回避追記 # 2007/12/21 左方のテッラ追加 ## 1巻 上条当麻 当麻, とうま, 男性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 160 特殊能力 覚悟, 1 超能力Lv0, 1 切り払いLv1, 1, Lv2, 14, Lv3, 25, Lv4, 41 148, 120, 151, 146, 166, 163, 超強気 SP, 50, ひらめき, 1, 加速, 4, 根性, 9, 熱血, 13, 挑発, 23, みがわり, 28 INDEX_KamijouTouma.bmp, Index.mid # 384/379M # ユニット1に対応するデータです。 # ユニット2との組み合わせは想定外。 # 愛称は慣例に従い名前にしましたが、なんか違和感を覚えないでもない # 超能力は雰囲気付けで付けるには強すぎるので付けてません。 # ↑と思ってたのですが付けました、ということで。 # 2006/02/18 こいつに付けないで誰に付けるの? # という訳で底力を付けました。ついでに火力補助に覚悟も。 #2006/5/23 #切り払いレベル修正 # 2006/09/03 # 瀕死になっても回避力が上がった事は無いので底力削除 # 覚悟と超能力で十分、というか強すぎ # そのかわり命中と回避に+5 # 2006/11/09 # 切り払いLv4の習得レベルが4になってたので41に戻す 禁書目録(自動書記) インデックス, 女性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 140 特殊能力 術Lv1=(イギリス清教), 1 魔力所有, 1 魔術師=非表示, 1 140, 140, 150, 130, 160, 160, 機械 SPなし INDEX_Index(John #039;sPen).bmp, Index.mid # 360/340S # 性格=機械 # ユニット1に対応するデータです。 # ユニット2との組み合わせは想定外。 # 表情無くなってる時のインデックス。 # パイロットデータはこちらがあれば十分でしょう。 # 術Lv10はやりすぎでしょう。確かにユニットの武装の中間武装がないせいで燃費が悪そうに見えますが火力2100でEN消費90は割りと普通っぽく # というわけで魔術Lvを1に戻し。原作的にボスランク付くでしょうし、それでも不安な場合はエネルギータンクの上に配置すれば問題はないはず。 # ↑ちょっと訂正 # どうもユニット2の方の問題のようでしたね。ユニット2のデータであればむしろユニット側にEN回復をつけた方がらしいでしょう。 # パイロットデータ的にはあまり関係ない話ですが、ちょっと。 # 原作的にはあまり高いボスランクをかけてしまうと、 # 上条さんの活躍する余地がなくなるので、 # データデザイン的にはボスランクはあまり計算に入ってません。 # ユニット1の上条さんは火力が極度に低いので # 低装甲低HP+超絶バリア相手でもないとボス戦で前に出す理由がないのです。 # ユニット1の自動書記はそういうコンセプトで作ってましたよ、ということで。 # (まあ、修正されちゃったので超バリアぐらいに弱体化してますが) ステイル=マグヌス ステイル, 男性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 140 特殊能力 切り払いLv1, 1, Lv2, 14, Lv3, 33 術Lv1=(イギリス清教), 1 魔力所有, 1 チーム=魔女狩りの王, 1 魔術師=非表示, 1 137, 153, 147, 143, 171, 156, 強気 SP, 50, 偵察, 1, 気合, 8, 根性, 11, 集中, 16, 熱血, 25, 友情, 28 INDEX_StailMagnus.bmp, Index.mid # 368/364+陽炎+集中 # ユニット1に対応するデータです。 # ユニット2との組み合わせは想定外。 魔女狩りの王(汎用) イノケンテイウス, -, とある魔術の禁書目録, AADA, 100 特殊能力 援護防御Lv1, 1, Lv2, 25 チーム=魔女狩りの王, 1 魔力所有, 1 150, 150, 150, 130, 140, 150, 機械 SPなし INDEX_Inocencio.bmp, Index.mid # 360/340L # ユニット1に対応するデータです。 # ユニット2との組み合わせは想定外。 御坂美琴 美琴, みこと, 女性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 140 特殊能力 超能力Lv5, 1 136, 143, 144, 151, 162, 158, 強気 SP, 45, 努力, 1, 気合, 4, 根性, 6, ひらめき, 12, 熱血, 23, 激励, 34 INDEX_MisakaMikoto.bmp, Index.mid # 382/389S # ユニット1に対応するデータです。 # ユニット2との組み合わせは想定外。 # 元々はレベル1能力者だったが、 # 頑張って頑張って頑張ってレベル5に到達したとのことなので # 超能力技能をそんな感じに成長するようにしてみた。 # 2006/02/12 ↑他との統一性に甚だ問題がある為、5レベル固定に変更 # 一応、元データも残しておく # 超能力Lv1, 1, Lv2, 4, Lv3, 10, Lv4, 19, Lv5, 31 # SP値をヒロイン扱いしてみる。 ## 3巻 一方通行 アクセラレータ, 男性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 150 特殊能力 超能力Lv5, 1 127, 132, 134, 131, 140, 155, 超強気 SP, 40, 加速, 1, 威圧, 8, 熱血, 12, 挑発, 18, 戦慄, 26, 激怒, 35 INDEX_Accelerator.bmp, Index.mid # 339/336M # ユニット1に対応するデータです。 # ユニット2との組み合わせは想定外。 # ユニット能力が高いせいでパイロット能力が育たなかった人。 # なので、全体的に能力が異様に低いです。 # 超能力レベルの成長は面倒なのでカット。 御坂妹 ミサカ, 女性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 120 特殊能力 超能力Lv2, 1 126, 138, 139, 146, 162, 157, 普通 SP, 40, 偵察, 1, 信頼, 4, 献身, 6, 集中, 12, 狙撃, 23, 絆, 34 INDEX_MisakaSisters.bmp, Index.mid # No10032。 # 一応、この個体を御坂妹と呼ぶ。筈。 量産異能者『妹達』(ザコ) シスターズ, 女性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 100 特殊能力 超能力Lv2, 1 126, 138, 139, 146, 162, 157, 普通 SP, 40, 偵察, 1, 信頼, 4, 献身, 6, 集中, 12, 狙撃, 23, 絆, 34 INDEX_MisakaSisters.bmp, Index.mid # 366/373S+集中 # ユニット1に対応するデータです。 # ユニット2との組み合わせは想定外。 # ユニット側で細工したので、ユニット愛称も連動して変わります # 能力的には一緒ですがミサカはザコ補正を受けない分だけ若干強いです。 # 美琴のDNAマップから作られたクローン。 # 投薬で成長速度を加速されているので超能力Lvは成長なしで。 ## 4巻 土御門元春 土御門, つちみかど, 男性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 120 特殊能力 超能力Lv0, 1 術Lv1=(陰陽道風水), 1 魔力所有, 1 魔術師=非表示, 1 切り払いLv1, 1 150, 142, 149, 143, 171, 161, 強気 SP, 45, 偵察, 1, 加速, 5, 集中, 11, かく乱, 18, 隠れ身, 24, 狙撃, 32 INDEX_TsuchimikadoMotoharu.bmp, Index.mid # # 能力者で魔術師なのでこんなややこしいことに。 # 素手の切り払いをバンバンやられても気味悪いので1で打ち止め。 # SPは各々の判断で40か45か決めて下さい。 ## 5巻 アステカの魔術師 海原, うなばら, 男性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 100 特殊能力 術Lv1=(アステカ魔術), 1 魔力所有, 1 魔術師=非表示, 1 132, 144, 146, 139, 168, 159, 弱気 SP, 50, 忍耐, 1, 加速, 5, 隠れ身, 13, 直撃, 18, 狙撃, 22, 愛, 31 INDEX_UnabaraMitsuki.bmp, Index.mid # 370/363M # ユニット1に対応するデータです。 闇咲逢魔 闇咲, やみさか, 男性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 100 特殊能力 術Lv1=(神道), 1 魔力所有, 1 魔術師=非表示, 1 138, 151, 153, 135, 171, 158, 強気 SP, 50, 偵察, 1, 根性, 4, 気合, 7, 鉄壁, 15, 必中, 28, 熱血, 35 INDEX_YamisakaOuma.bmp, Index.mid # 371/353M # ユニット1に対応するデータです。 ## 7巻 アニェーゼ=サンクティス アニェーゼ, 女性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 150 特殊能力 術Lv1=(ローマ正教), 1 魔力所有, 1 131, 149, 138, 143, 179, 160, 超強気 SP, 50, 努力, 1, ひらめき, 4, 集中, 12, 熱血, 15, 根性, 23, 必中, 29 INDEX_AnyezeSanctis.bmp, Index.mid # 358/363S+集中 # ユニット1に対応するデータです。 建宮斎字 建宮, たてみや, 男性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 140 特殊能力 切り払いLv1, 1, Lv2, 4, Lv3, 11, Lv4, 21, Lv5, 38 S防御Lv1, 1, Lv2, 8, Lv3, 24 カウンターLv1, 1, Lv2, 13 術Lv1=(天草式十字凄教), 1 魔力所有, 1 魔術師=非表示, 1 153, 148, 151, 146, 176, 159, 強気 SP, 50, 加速, 1, 信頼, 7, 集中, 11, 隠れ身, 18, かく乱, 24, 奇襲, 35 INDEX_TatemiyaSaiji.bmp, Index.mid # 385/380M+集中 # ユニット1に対応するデータです。 ## 8巻 結標淡希 結標, むすじめ, 女性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 130 特殊能力 超能力Lv4, 1 127, 148, 154, 131, 156, 158, 強気 SP, 40, 挑発,1, 集中,5, ひらめき,8, 隠れ身,15, 幸運,24, 脱力,33 INDEX_MusuzimeAwaki.bmp, Index.mid #自分でよけようとしないため、回避値を低めに。 # SPを45から40に。 # 超能力持ちのSP45は55に相当する。これはヒロインレベルなんでよくないかと。 #55は美琴ぐらい出番のあるキャラじゃないとー。 #ふりがなは愛称だけでいいのですよー。つうわけで修正。 ## 9巻 オリアナ=トムソン オリアナ, 女性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 150 特殊能力 術Lv1=(ローマ正教), 1 魔力所有, 1 魔術師=非表示, 1 カウンターLv1, 1, Lv2, 4, Lv3, 15 切り払いLv1, 1, Lv2, 7 137, 141, 157, 143, 162, 159, 強気 SP, 50, 隠れ身, 1, 幸運, 1, 集中, 6, 鉄壁, 15, 熱血, 20, 見極め, 28 INDEX_OrianaTomson.bmp, Index.mid ## 11巻 ビアージオ=ブゾーニ ビアージオ, 男性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 150 特殊能力 迎撃Lv1, 1, Lv2, 9, Lv3, 26 S防御Lv2, 1, Lv3, 7, Lv4, 16, Lv5, 27, Lv6, 43 術Lv1=(ローマ正教), 1 魔力所有, 1 128, 152, 151, 139, 172, 158, 超強気 SP, 50, ひらめき, 1, 鉄壁, 4, 足かせ, 10, 集中, 15, 激怒, 23, 気合, 34 INDEX_BeergeoBzorni.bmp, Index.mid # 374/362+集中 # ユニット1に対応するデータです。 # ローマ正教の司教 # 足かせは巨大化させた十字架による足止め効果の再現です。 ## 14巻 左方のテッラ テッラ, 男性, とある魔術の禁書目録, AAAA, 160 特殊能力 迎撃Lv1, 1, Lv2, 6, Lv3, 28 S防御Lv3, 1, Lv4, 13, Lv5, 21, Lv6, 32, Lv7, 45 術Lv1=(ローマ正教), 1 魔力所有, 1 131, 159, 146, 135, 174, 160, 超強気 SP, 50, 堅牢, 1, 直撃, 8, 必中, 17, 狙撃, 23, 気合, 29, 痛撃, 34 INDEX_Tella.bmp, Index.mid # 371/360 # ユニット1に対応するデータです。
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/477.html
第7学区のとある病院 とある病室 いら立ちを隠そうともせず、白い『最強』がカエル顔の医者を睨みつけた。 「なんだかんだ言っても来てくれる辺り、キミも相当甘いね?」 「うるせェよ。…こっちの事情は知ってンだろうが。手短に話せ」 「やれやれ、じゃあ単刀直入に言おう」 カエル顔の医者は一瞬だけフルチューニングを見ると、きっぱりと告げた。 「そこにいる試作型妹達……いや、レイの肉体を元の状態に戻す。その手助けをしてほしい」 「…なンだと?」 カエル顔の医者はこう説明する。 「彼女の体は無理な改造でボロボロだった」 「それでも、これまでの調整で2日程度なら問題なく体は動かせるまでに回復させた」 「残る問題は脳だ」 カエル顔の医者が流れるように説明を続けた。 「彼女の脳は、得体のしれないノイズで極めて危険な状態になっている」 「万全を期す為に、キミの能力でそれを整えて欲しいんだ」 「…おい、いきなり無茶を言うンじゃねェよ」 黙って話を聞いていた一方通行が、思わず口をはさんだ。 「テメェは、俺が打ち止めから『ウイルスコード』を除去したっていう事実に期待しているみてェだが」 「……そう簡単にいく訳ねェンだよ」 だが、カエル顔の医者は自信ありげに答える。 「安心すると良い、手伝ってくれるのはキミだけじゃないからね」 「あァ?」 「キミの演算能力をサポートしている1万人の『妹達』が、レイの為に協力してくれる」 「……」 「やり方はこうだ」 「まず『妹達』が、レイの正しい脳波パターンをキミの脳に直接教える」 「その情報を基に、キミが能力を使ってノイズを整えるという作戦だ」 「待て待て、そンな事したらコイツの記憶は全て吹っ飛ぶぞ」 「あのガキと違って、コイツは『量産型能力者計画』の試作型。ミサカネットワークに繋がって無いンだろうが!」 「記憶をネットワークに保管しないまま脳波を戻したら、2度と戻らねェンだぞ」 掴みかかりそうな勢いで否定する一方通行に、カエル顔の医者はやれやれと首を振った。 「大丈夫だ。何しろこの事例はウイルスコードとは違う」 「僕がお願いしたのは、確認されたノイズを“整える”ことであって除去する事じゃない」 (そう、レイの頭にチップがある以上、ノイズの完全な除去は不可能なのだから) 「ノイズが脳の活動を邪魔しない程度に抑え込むだけで良いんだ」 わずか2日間の退院。 一方通行が依頼されたのは、その期間中フルチューニングが問題無く動けるための一時的な処置だった。 「…解せなェな」 「完全な治療を信条とするくせに、今回はえらく無様な妥協をしてンじゃねェかよ」 まるで咎めるような一方通行のセリフに、横からフルチューニングが弁明した。 「それは彼の責任ではありません。無理に退院を願ったレイの所為です」 「本来ならば後半年は調整が必要なはずなのに、今すぐ退院したいと我儘を言いました」 フルチューニングからの思わぬ言葉に、一方通行は彼女へと振りかえった。 その紅い目から一瞬も視線を外さず、フルチューニングは懇願する。 「お願いします、一方通行。レイに2日間だけ動ける時間を下さい」 「…チッ」 結局一方通行は、…本気でどうなっても知らねェぞ、と呟いて了承した。 午後5時00分、第7学区のとある大通り 一方通行とフルチューニングは、日の沈みかけた道を並んで歩いていた。 一方通行が一緒に居るのは、“治療”を終えたフルチューニングに異常が無いか確認するためである。 そのフルチューニングは、笑みを浮かべて軽快に歩く。 杖をついた一方通行を置き去りにする勢いで。 「かなりイイ調子です。この感じなら走ることも出来ますよ」 「止めろバカ」 「ム…ただの冗談です」 「テメェらの冗談は、ちっとも冗談に聞こえねェのが難点だなァ」 何か心当たりでもあるのか、げんなりとした様子で一方通行が吐き捨てた。 やがて2人は、天草式が学園都市で滞在している場所の近くへ到着する。 「ここまでで結構です、本当にありがとうございました」 「……」 「あの、一方通行?」 「1つ聞きてェンだが」 「はい?」 「…お前、死ぬ気か?」 すでに人通りも無くなった小道で、2人の能力者は無言で向き合った。 「どういう意味ですか?」 「そのまンまだよ、ここまでして退院したのは死ぬ為かって聞いてンだ」 「…いいえ」 「そうかァ、ならハッキリ教えてやる」 「テメェのノイズも、ミサカネットワークに接続出来ない理由も、全て原因は頭のチップだ」 「…チップ?」 「ああ、間違いねェ。脳波を弄った時に確認した」 この時になって初めて、フルチューニングは自分の頭にチップが埋め込まれている事を知った。 (つまり、レイが他の『妹達』と異なっている理由はそのチップ…!?) (オルソラ教会や培養器の中で、意識を失った理由も…) (レイが能力者なのに魔術を使える理由も全て…!) 「本当に死にたくないって言うンなら、病院に戻ってそのチップを取り除くべきだな」 「そ、れは…」 「そのチップが動けば、今度こそ脳がイカレルかもしれないンだぜ?」 一方通行の脅かすような言葉に、フルチューニングは黙りこくった。 とは言え、それは病院へ戻るか迷ったからではない。 (このチップが、レイを殺すかもしれない…それはどうでもいい事です) (能力の低下したレイが天草式のみんなの役に立つには、このチップ…魔術が必要) (ましてや、アックアという最強の魔術師相手ならば絶対に!) (そもそも天草式のみんなを、建宮さんを助ける事が出来るのなら、この体がどうなろうと構わない) (問題は、ただ1つ) 目の前に居る『最強』をどう誤魔化すか、と言う事に悩んだからだった。 「…レイは、死ぬつもりはありません」 「約束します」 「……」 「2日後までには、“必ず”あの病院へ戻りますから!」 その拙い説得に、一方通行はこう問い返した。 「…そこまでする理由はあンのか?」 「はい!…どうしても会いたい人たちがいます」 「どうしても助けたい人たちがいます」 「どうしても守りたい人たちがいます」 「…どうしても、失いたくない人がいます」 そこまで言って、フルチューニングはハッと気づく。 (これでは、レイが危ない事をしにいくと言ってるようなものでは…!) 恐る恐る相手の様子を窺うが、一方通行の表情は読み取れない。 そして一方通行は、そのままゆっくりと来た道を戻っていく。 だが去り際に、一方通行の言葉がフルチューニングへ届いた。 「…お前にも、自分の事を『1人の人間』として認めてくれた人間がいるンなら…」 「そいつのためにも、死ぬ事は許されねェって事を胸に刻ンでおけ」 その言葉の残滓が残っているうちに。 かつて孤独だった『最強』は夜の闇へ姿を消した。 第7学区、とある天草式の隠れ家 後方のアックアから、上条当麻を守れ。 天草式のメンバーは、その極めて難しい指示を果たすため現在打ち合わせをしている。 だがこの場に居る彼らの表情は、どことなくぼんやりとしたものだった。 その理由は1つ。 仲間になってわずかに2か月ほどの、とある少女を気にしているからだ。 「レイが戻るまで半年、か…やれやれ」 「…お見舞いには行けるけど、結構キツイわね」 教皇代理建宮の呟きに、対馬が寂しげな笑みを浮かべて同意する。 天草式の誰もが、今ではすっかり家族の一員のように感じていた。 ――極めて特殊な出会い方をしたあの少女の事を。 「アックアとの戦いに集中しよう。…こんな我らの姿を、レイに見せる訳にはいかないのよな」 「それは、分かるんすけど…」 「香焼、しっかりしなきゃ駄目です。レイちゃんに笑われちゃいますよ」 あの海戦以降、傍目に分かるほど落ち込んでいる香焼を五和が励ます。 その優しさで、香焼が立ち直るよりも早く。 「――では、期待通り笑ってあげます」 無表情を装いながらも、その声に隠しきれない喜びを含んで。 件の少女、フルチューニングがその場に現れた。 突然姿を見せたフルチューニングに、建宮たちは当然驚いた。 「レイ! どうしてお前さんがここにいるのよ!?」 「そ、そうっすよ!入院はどうなったんすか!」 一体どこで覚えたのか、フォッフォッフォッフォッフォ…と手をチョキにして笑う(?)フルチューニングに、2人が詰め寄る。 「退院した訳じゃありません、これは一時帰宅です」 「一時帰宅? 認められたの?」 疑わしい、という目で見てくる対馬に、フルチューニングは帰宅許可証を差し出す。 それをゆっくりと確認すると、対馬はホッと安堵しながら頷いた。 「確かに、お医者さんの許可は貰ってる…」 「当然です」 「本当に良かったねレイちゃん。それで、どれぐらい外泊できるの?」 「ちょっと待ってね五和。…この書類を見ると、明後日までは大丈夫みたいよ」 対馬の答えにみんなが喜ぶ中で、1人だけ難しい顔をしている人物がいた。 「レイ、まさか今回の作戦に参加するつもりじゃないだろうな?」 「!」 今この学園都市に天草式が滞在している理由を、誰よりも理解している建宮斎字である。 「分かっちゃいると思うが…重症のお前さんを、戦わせるつもりはないのよ」 「建宮さん…」 「レイ、これだけは“絶対”だ」 「言われなくても、当然レイは分かっています」 フルチューニングの思いがけない言葉に、建宮が沈黙した。 「そもそも能力が使えないレイでは、戦っても足手纏いになるだけです」 「ですが、せめて連絡役ぐらいはさせて下さい」 周りにいる仲間たちが、建宮の判断を無言で待つ。 10秒ほど黙考した後、建宮は特大の溜息をついた。 「絶対に能力は使うな。それだけは守ってほしいのよな」 「…はい!」 こうして、およそ2週間ぶりに天草式十字凄教は全員揃うことになった。 翌日の夕方、第7学区のとある映画館近く 久しぶりに布団で眠ったり、五和たちとお喋りを楽しんだり。 フルチューニングが天草式とのコミュニケーションを楽しんだ日の夕方の事。 ――ちなみに建宮は、対馬たちから「アックアのことをばらしたのはお前か!」ときつい折檻を受けた。 現在彼女は建宮の隣に立っていた。 その建宮は、物陰から護衛対象である上条当麻…ではなく五和を観察している。 学校帰りの上条当麻と、直接の護衛を担当する五和が話しているところだ。 その様子を見ている建宮は、いつかの引越しの時に発見した、双眼鏡まで持ち出していた。 「…つまらんのよ」 「何がですか?」 渋い顔をする建宮に、フルチューニングが理由を問い尋ねる。 「五和のアピールの話よな」 「あぴいる?」 「わざわざ上条当麻にゼロ距離攻撃できるチャンスを与えてやったというのに…」 「?」 「あいつは自分の武器にも気づいていないと見えるのよ」 「五和さんの武器?『海軍用船上槍(フリウリスピア)』がどうかしましたか?」 見当違いの武器を思い浮かべるフルチューニングを無視して、香焼が続けて質問する。 「で、なんすか五和の武器って?」 その言葉を受けて、建宮はとあるものを取り出した。 やはりあの引越しの時に見つけたモノ…フリップボードである。 そして流れるようにマジックを走らせると、建宮は堂々と宣言した。 「――そう、それは『五和隠れ巨乳説』ッッッ!!」 食いつきの良い男性陣に対し、教皇代理(今一番偉い人)が声高らかに自説を披露する。 対馬とフルチューニングは、そんな彼らをジト目で睨んだ。 「くだらないわね」 「…胸がそんなに大事なのですか…すると、オリジナルを素体にしたレイに可能性は…?」 そんな女性陣へ、容赦ない“口撃”が開始された。 「対馬先輩って、どっちつかずで需要が少なそうすよね」 「なっ!?」 香焼に続いて、貧乳好きの野母崎(既婚)がフルチューニングへそっと一言。 「あ、俺的にはレイぐらいのサイズが一番好みだよ」 「ううう…」 いろんな意味でショックを受ける2人に、建宮がすかさず助太刀(?)をした。 新たなフリップボードを取り出すと、再びマジックを走らせる。 「お前さんたちにはこれが分からんのよ」 「――『対馬・レイ脚線美説』!!」 直後にその2人が、建宮の股間を蹴り上げて強制的に黙らせたのは言うまでも無い。 「で、結局五和の奥手をどうしたものか…」 諫早の言葉に反応したのは、涙目となった建宮だった。 「ふっ、心配はいらないのよな。ここに秘策を用意したってのよ」 そうして建宮がいそいそとバックから取り出したのは。 「あれ?…あの時のサッカーボールじゃないですか」 「その通りなのよレイ…フッフッフ」 「…何だか不安なのですが」 「このフィールドの狙撃手・建宮斎字がフリーキック大作戦を提案するのよな」 ちなみに。 このフリーキック大作戦が、フルチューニングにとって大きな出会いの切っ掛けになる事を、今は誰も知らなかった。 第7学区のとある映画館近く 事態は流れるように進行した。 建宮は地面にサッカーボールを置くと、周りの男性陣と頷き合う。 そしてポカンとするフルチューニングの横合いから、軽く助走を付けてボールを蹴り上げた。 上手く横回転が掛かったボールは、ギュルギュルと音を立てて標的である上条当麻の頭部に直撃する。 当然、一撃を喰らった上条は正面に居た五和の胸に倒れ込む事になった。 「いえーい!」 見事に目的を達成した建宮は、牛深や香焼とハイタッチして喜びを分かち合う。 …喜びもつかの間、突如雷撃の槍が自分たちに降り注ぐまでは。 御坂美琴は悩んでいた。 1週間ほど前、とある人物が『記憶喪失』である事を偶然知ってしまったからだ。 しかもその人物が、最近いろんな意味で気になっている上条当麻なのだからなおさらである。 それがいつからなのか、適切な治療を受けているのか、…自分との思い出の事はどうなっているのか。 (…“あいつ”に相談するっていう手もあるにはあるんだけど…) (どうも最近おかしな行動が目立つし、何か私に隠し事をしているカンジがするのよねぇ) 御坂は、この類の問題で最も頼りになる能力者の顔を思い浮かべて、すぐに否定した。 ――常盤台中学で女王として君臨している、精神系能力者としては史上最強の『心理掌握』。 元々ウマの合わない2人だったが、常盤台校舎の改築工事以後特にそれが顕著になった。 何しろ、今まではすれ違った時に挨拶ぐらいはしていたのに、最近は一言も話しかけてこなくなっている。 (あの時期の記憶って、ボンヤリしてる部分もあるし…まさか、私に能力を使った訳じゃないでしょうけど) (とにかくあいつを信用できない以上、相談は止めておいた方が良さそうね) だが、他に具体的な解決策をすぐに思いつく事など出来るはずも無く。 思わず御坂が重い溜息を吐いたその瞬間。 「……?」 何故か街中で、サッカーボールをセットしている一団が目に飛び込んできた。 誰かが止める間もなく、その中心に居るクワガタみたいな髪色をした男が勢いよくフリーキック。 そのボールがバゴン!!と音を立てて上条当麻の側頭部に直撃し、彼は隣にいた少女へ倒れ込む。 いや、より正確に言えば…少女の胸の谷間へ顔を埋め込ませたというべきか。 (……) さらに。 どことなく気持ちよさそうに気を失っている上条を、少女が心配そうに撫でている。 錯覚だとは思うが、まるで上条の頭を自分の胸に押しつけているように見えた。 (…………) 「いえーい!」 こんな事態の原因となったクワガタたちが、歓声を上げてハイタッチをする。 その楽しげな声が、只でさえ混乱中の御坂を爆発させた。 「人が色々抱えて困ってるってのに…変なモンを追加でゴロゴロ押し付けてんじゃないわよアンタらーっ!!」 御坂が、怒りのまま雷撃の槍を連続射出する。 そして――。 突然降り注いだ雷撃の槍に、建宮たちは慌てて逃走を開始する。 彼らが機敏に反応出来たのは、フルチューニングを通じて発電能力を身近に知っていたからだった。 天草式はあっという間に人混みに紛れ込み、自分たちの存在を消してしまう。 だが、当のフルチューニング自身は驚きのあまり動けなくなっていた。 (どうしてオリジナルがここに!?) (み、見つかるのはマズイです) 気持ちは焦るものの、フルチューニングの体は1歩たりとも逃げられない。 今にも噛み付きそうな表情を浮かべた御坂が、ついに目の前に来た。 「一体、どういう…つもり…で……?」 「あ、あの」 「…どういうこと?」 「えっと、その」 「…答えなさい。アンタも『妹達』なわけ?」 中学生という容姿からは、想像も出来ないほど厳しい詰問。 これが、オリジナルとの最初の会話だった。 「…『量産型能力者計画』の試作型?」 「はい。実験が失敗し不要になったレイは、研究者によって売却されるところでした」 「全く…人のDNAマップを騙し取ったくせに、ホント研究者は碌な事をしないわね!」 「ですが引き渡し直後に、レイは助けてもらいました」 「さっき一緒に居たアイツらが、助けてくれたって事?」 「はい。今は彼らと一緒にイギリスで生活しています」 「じゃあ、何で今アンタは学園都市にいるのよ?」 「身体管理の為、学園都市の病院による検査を受けに来ました」 真実ではないが、全くの嘘でもない。 そのあまりに滑らかな回答を、御坂は疑いもしなかった。 「ああ、なるほどね」 納得したように頷く御坂が、重要な点に気が付いた。 「そう言えば私のクローンのはずなのに、どうしてアンタ…レイだっけ?…は私より成長している訳?」 「身体年齢を上げることで、計画の目的であるレベル5へ近づけると判断されたからです」 「…けど、レベル5には届かなかった」 「はい。他にも様々な調整を施されましたが…オリジナルの言う通り、レイは頑張ってもレベル4が精々、と言ったトコロでしょうか」 「……」 何でもない事であるかのように、フルチューニングが淡々と答えた。 それに引き換え御坂の方は、まるで物理的な重さがある言葉を投げつけられたかのように苦しげな顔をする。 一方通行に虐殺される為の『妹達』だけではない。 自分が生み出してしまったクローンが他にも存在するという事実は、御坂に衝撃を与えていた。 「もしかして、レイの事を気にしているのですか?」 「当然でしょ…」 さっきまでとは違い、弱々しい声で御坂が肯定した。 他の『妹達』を相手にする時のような、軽口交じりの雰囲気はどこにもない。 むしろ、あの非道な実験を初めて知ったころに逆戻りしたかのようだった。 「私が騙されなければ、こんな計画は存在しなかった!」 「だから、私はいくら恨まれても……!」 「いいえ、それは違います」 御坂の言葉を遮り、フルチューニングがきっぱりと断言した。 「…え?」 「あなたのおかげで、レイはこうして存在しています」 「しかも、こんなレイを気遣ってくれる仲間まで出来ました」 「建宮さんたちと出会えた事に、レイはとっても感謝しています」 「……」 「その全ては、あなたがいてくれたからこそなんです」 そう言って、フルチューニングは御坂の手を握りしめた。 その感触が御坂の悪夢を打ち消していく。 「正直な話、レイはあなたと会うつもりはありませんでした」 「……」 「あなたの重荷になりたくは無かったからです」 「ですが…今日こうしてあなたにお礼が言えた事は、勝手ながら嬉しく思っています」 その言葉を受けて、御坂はようやくフルチューニングの手を握り返した。 「あ、ははは…まさか私の方が励まされるなんて、思ってなかったわ…」 「私こそ、ありがとう。レイのおかげで、少しは自分を許せそうよ」 ようやく安堵した御坂が、ふと辺りをキョロキョロと見回す。 「っていうか、あの馬鹿どこ行ったのよ!?」 「?」 2人が話をしている間に、上条と五和はすでにその場を後にしていた。 「しょうがないわね…一旦寮に戻ろうかしら」 その時、悔しげに呟いた御坂のはるか後方で。 「お姉さまー!」 「!!」 今一番会ってはいけない後輩が、自分を探す声が聞こえてきた。 「ヤバイ黒子だわ!」 「クロコ?」 「ルームメイトの後輩よ!あんたが見つかったら面倒なことになるわ!…どっかに隠れて!」 「わ、分かりました」 フルチューニングは、急いで映画館の中に逃げ込んだ。 扉の向こうから、賑やかな声が聞こえてくる。 「お姉さまー!こんなところにお出ででしたのねー!」 「だー!ひっつくな!」 「…はて…変ですわね…やけにお姉さまの気配が強いですわ」 「は?」 「まるでお姉さまが2人いらっしゃったかのような…」 「ば、馬鹿なこと言ってないで帰るわよ!」 その後何かをズルズルと引きずるような音がして、ようやく周りが静かになった。 (レイの気配まで感じとるとは、只者ではなさそうですね…) 後輩のクロコという人物には警戒しなければいけない、とフルチューニングが冷や汗を流す。 しばらくここで時間を潰そう、とフルチューニングが映画館の奥へ入ろうとして。 「…は、初めまして」 何故か自分以上に冷や汗を流している、巨大な日本刀を持った女性と目があった。 「神裂火織…と申します」 「えっと、レイと言います…ひょっとしてあなたは…?」 こっそりと映画館の中から天草式の様子を窺っていた元女教皇。 世界に20人といない本物の『聖人』神裂火織と、科学の申し子フルチューニングが初めて言葉を交わした瞬間だった。 第7学区のとある映画館 神裂と名乗った女性(少女…?)は、極めて特徴的な格好をしていた。 大きな胸を強調したTシャツに、片方の裾を根元までぶった切ったジーンズ。 おまけに腰のベルトには巨大な刀を携えている。 だがそれ以上にフルチューニングが驚いたのは、その格好にどこか天草式の“匂い”を感じた事だ。 (それに加えてこの気配は…オルソラ教会で感じた…) 「…ひょっとしてあなたは、建宮さんたちが言っていた天草式の女教皇さんですか?」 フルチューニングの躊躇ない質問に、神裂は一瞬たじろぐ。 それでも動揺を完璧に隠すと、やがて寂しげな笑顔で肯定した。 「正確に言えば……“元”女教皇です。今の私は、天草式の人間ではありません」 「確か…今の所属は『ねせさりうす』だって五和さんから聞きました」 「ええ、その通りですよ。だから私は…」 「その“天草式と関係ない”神裂さんは、一体どうして学園都市にいるのですか?」 基本的に無表情のフルチューニングが、今は憤りの色を浮かべている。 その思わぬ鋭い切り返しに、今度こそ神裂は動揺を露わにした。 「…それは…」 「建宮さんから、あなたが天草式を離れた理由を聞きました」 「なのに何故、今さら!」 フルチューニングは、鮮明に覚えている。 かつてパラレルスウィーツパークで建宮が語った、天草式の苦い思い出を。 ――自分たちの未熟さ、弱さ。それこそが女教皇を苦しめた、と自分たちを責めた。 ――故に彼らは決意した。 ――誰も傷つかず、誰も悲しまず、誰かの笑顔の為に戦い、その幸せを守るために迷わず全員が立ちあがれる居場所。 ――自分たちの女教皇が戻るに相応しい、そんな居場所を必ず取り戻して見せると。 「建宮は教えたのですか…」 「かつて私の力が足りなかったが故に、天草式の仲間を傷つけ、失わせてしまった事を」 その悔いるような言い方が、フルチューニングの心をより一層苛立たせた。 「……レイは、天草式十字凄教の一員です」 「?…ええ、聞いています」 「では、そのレイが今あなたに“ムカついてる”事は気づいていますか?」 「もちろん、それは当然でしょう」 「……」 「私の所為で、かつて天草式は傷ついたのです。あなたが怒るのも――」 「分かってませんね」 神裂の言葉を、フルチューニングが遮った。 「過去の天草式について、レイが何か言えるはずもありません」 「レイがムカついているのはもっとシンプルな理由です」 「?」 「建宮さんがこの事を話してくれた時、とても悔しそうな表情をしていました」 「自分たちが弱いから、あなたを苦しめたと」 「自分たちが未熟だから、あなたの居場所を奪ったと」 「……そ、んな」 「それでも…いずれあなたを再び迎え入れる為に、みんなは戦っています」 「あなたに相応しい場所である為に!…レイを救い、オルソラを助け、アニェーゼを守りました!」 「そのみんなを、あなたは侮辱したんです!」 ――私の力が足りなかった ――私の所為で、かつて天草式は傷ついた この元女教皇は、一体何様なのだろう。 天草式を離れたのは、全て自分が彼らを守れなかったから。 (つまり簡単に言えば、天草式のみんなは弱くて危ないから付いてくるなという意味では無いですか!) (一生懸命にあなたを迎えようとしているみんなの努力を、ちっとも期待してないという事ですか!) フルチューニングの怒声に、神裂は困惑して宥めようとした。 「私は、決して彼らを侮辱など…」 「もう結構です!」 「無関係のあなたがここにいるのは、天草式のみんなを信頼していないからですね」 神裂は答えなかった。 「私はもう…これ以上仲間を失いたくはありません」 「…今度の敵であるアックアは、ローマ正教が誇る最強の魔術師で、しかも聖人です」 だが、それこそが何よりもハッキリとした答えになる。 「そうですか」 たった一言だけそう言い残すと、フルチューニングは映画館を飛び出した。 通りを歩きながら、フルチューニングは自己嫌悪に陥っていた。 (…あの人が女教皇…) (圧倒的な力を持つ聖人…確かに凄まじい力を感じました) (そんなすごい人が、みんなを助けに来てくれたというのに…) (あんな言い方で責め立てるなんて…レイこそ一体何様なのでしょうね…?) 建宮たちの努力を欠片も当てにしていない態度に、フルチューニングは激怒してしまった。 だが、そもそも役立たずの自分が彼女を責めるのはお門違いである。 (ですが、ここで女教皇が全てを解決しまったら、みんなは…) (もう二度と、建宮さんのあんな顔は見たくないのに) ならば、取るべき道は決まっている。 フルチューニングは、オイルパステルをしっかりと握りしめて駆け出した。 第22学区のとある鉄橋 駆け出したは良いものの、すぐに体力が無くなったフルチューニングは、結局タクシーで移動した。 「たった5分も走れないとは…本当にポンコツじゃないですか」 彼女は自嘲気味にそう言うと、手にしたオイルパステルを一閃する。 傍目には気づかれないが、この付近には巨大な魔法陣が形成されつつあった。 目的は1つ。 あらかじめゴーレムを造りやすくするためだ。 師であるシェリーと違い、フルチューニングは未だ術式に不慣れである。 そんな彼女が強力なゴーレムを扱うには、こうした事前準備が必要不可欠だった。 (タクシーから連絡した時、五和さんは言っていました) (この学区のスパリゾートに、上条当麻と一緒に来る予定だと) (彼が一緒ならば、もしかするとここがアックアとの戦場になるかもしれない) (……“ここ”ならばレイも戦える) どこかぎこちないながらも、天草式から教わった“目立たない仕草”で術式を構成していくフルチューニング。 だが、そんな彼女に背後から声を掛ける者がいた。 「あなたは、一体何をしようと言うのですか…?」 「!」 タクシーの速度に易々と追いついていた『聖人』神裂火織が、気遣うようにそこに立っている。 「…どうしてここに?」 「あなたの様子が気になったので、少し後を付けさせてもらいました」 「…レイはタクシーで移動したのですが…」 「? あの程度のスピードなら、追いつくのは造作もありませんよ」 「ちくしょう」 あっさりと力の差を思い知らされて、フルチューニングは軽く落ち込んだ。 「それで、あなたはここで一体何をしているのですか?」 「念の為の準備です。…ここがアックアと戦う場所になるかもしれないので」 「ついでに言うならここは地下市街。レイの使える術式が最も効果的な区画なんです」 その言葉を聞いた神裂が、注意深く辺りを観察し…一拍置いて驚いた。 「準備…これは、カバラの魔法陣?…まさか、ゴーレム術式!?」 用意していた術式を正確に当てられた事に、今度はフルチューニングが驚いた。 「この大きさの陣を、良く読み解けますね」 「たまたまですよ。私の知り合いに、この術式を得意とする魔術師がいるので」 「そうか、師匠も『ねせさりうす』でした」 「『必要悪の教会』? まさか、この術式を教えたのはシェリーですか?」 「はい。シェリーさんは私の師匠です」 とんでもないことを宣言された神裂は、動揺して口をパクパクと動かしている。 それで彼女は謹慎中にも関わらず女王艦隊へ乗り込んでいたのですか!とか、 土御門はどうしてこういう大事な事を報告しないのですか!とか、 建宮たちはこの事を知っているのですか!?とか。 が、やがて大事なのはそんなことではないと気が付くと、再びフルチューニングに質問した。 「シェリーについては今は置いておきましょう。…それよりも、何故あなたが戦う準備を?」 「……」 「土御門からの報告によれば、あなたは半年ほどの入院が必要なはずです」 「(土御門?)……それは…」 「そのあなたが、アックアと戦う気でいるのですか?」 「幾らなんでも、建宮がそんな事を認めるとは思えませんが」 確かに神裂の言う通り、フルチューニングは作戦への参加を認められていない。 「確かに、レイは戦うなと言われました」 「では」 「ですが…それが何だというのでしょう」 平坦な口調なのに、しかし反論を許さないような強さがその言葉には含まれていた。 唖然とする神裂に対し、フルチューニングは自分の頭をトントンと指で叩いた。 「すでにレイの体は、いつ停止してもおかしくありません」 「何しろこの体は、実験に失敗した試作品ですから」 絶句する神裂を無視して、フルチューニングは自分の思いを打ち明ける。 「名前すら存在しない検体番号00000号を、レイと名付けてくれたのは天草式のみんなです」 「本来廃棄されるはずだったレイがまだ動いているのは、天草式のみんなのおかげです」 「何の目的も無かったレイに、生きる理由をくれたのは天草式のみんなです」 「その天草式のみんなが強大な敵と戦うというのに、何故レイ1人が戦わないでいられると思うのですか!?」 「このまま安静にしていれば、レイは延命が出来るかもしれませんが…」 「それはもう、天草式のレイではありません」 「無様に呼吸するだけのガラクタです」 そこまで言って、ようやくフルチューニングは目の前にいる元女教皇の顔を見た。 (……?) 意外な事に、神裂は優しげな表情を浮かべている。 それだけではない。そっとフルチューニングに近づくと、彼女の頭を撫で始めた。 「それが、あなたの生き方だというのなら…私に止める権利はありません」 「ただ…1つだけ言わせてください」 「え?」 「あなたはきっと、自分の命は大して価値が無いと思っているのでしょう」 「それは間違いです」 「ですが、そもそもレイはクローンで…」 「そんな事を言ったら、きっと彼らは悲しみますよ」 「少なくとも私の知る天草式十字凄教の仲間たちは、あなたをクローンではなく1人の人間として大切に思っているはずです」 神裂の優しい一言が、フルチューニングの過去の記憶を呼び起こした。 そう。確かあの時も、同じ事を言ったはずだ。 自分は存在意義の無いクローンだ、居場所など無いと。 ――「助けたいのは、クローンじゃなくてここにいるお前さんという1人の人間なのよな」 そう言ってくれたのは誰か。 売却される寸前の自分を救いだし、オルソラ教会や女王艦隊で命懸けで助けてくれたのは誰だったか。 今までフルチューニングは、彼を助けるため自分の命を亡くすことを当然のように受け入れていた。 それなのに。 今は彼の顔を思い出すと、急に怖くなった。 これからも一緒にいたい。 ――死にたくない。 (あ、れ?) (――どうして?) 思いがそこに至った瞬間、フルチューニングから涙が流れた。 自分に起きた現象を把握できないまま。 涙は止まらずに溢れだす。 「ヒック……、うあああああぁぁぁぁぁ!」 「良かった。あなたはこんなにも、素直に泣けるじゃないですか」 どこかホッとしたようにそう言うと、神裂はフルチューニングを強く抱きしめた。 その腕の中で、フルチューニングはしゃくり上げながら訴える。 「…みんなを…建宮さんを、失いたくないんです!」 「はい」 「なのに、レイは…突然恐ろしくなりました」 「はい」 「明日をも知らぬこの身で、それでも諦めたくない…死にたくない…!」 「当然です」 「い、いつからレイは…こんな我儘になったのでしょうか」 「“人間”ならば、我儘なのは仕方ない事ですよ」 「レイは、これからも天草式のみんなと一緒にいたいです!」 ここにきてようやく、フルチューニングは他の『妹達』と同じ思いを手に入れた。 すなわち。 「こんな風に思った以上、レイはもはや簡単には死ねなくなりました」 「そうです。アックアがどれだけ強かろうと、誰1人として死ぬのはまっぴらです!」 (認めましょう、レイはとっても我儘になりました) (戦わずにいるのはイヤ、戦って負けるのもイヤです) (ならば、戦ってその上で勝つしかありません) 今までの明日を捨てた覚悟ではない。 明日を望むからこその覚悟。 それを見てとった神裂は、フルチューニングの涙をそっと拭ってこう尋ねた。 「もう、大丈夫ですね?」 「はい」 「では、私は行くことにします。…その所為でしばらくは動けそうにありませんが…」 『聖人』はその力故に、自由な行動をとる事は出来ない。否、許されていない。 これから神裂は、上からの指示に従って幾つもの任務をこなさなければならなかった。 それが、彼女が今学園都市への滞在を許されている理由なのだ。 「…女教皇、あなたの仲間を信じてください」 「そうですね。ちなみに…“元”女教皇です」 その会話を最後に、神裂はその場を後にした。 (…あの様子では、信用はしても信頼はしていないってところでしょうか) (実際に力が遠く及ばない以上、仕方ないのかもしれませんが…) (このままでは、いつまでも建宮さんたちとすれ違ったままです) (女教皇がレイに大事な事を気づかせてくれたように、あの方にもそんな人がいれば良いのですが) きっとそれは、無力な自分では無理な事だから。 フルチューニングはそう誰かに祈るしかなかった。 「…今は自分の事に集中しましょう」 それから1時間ほどかけて“場”を整えたフルチューニングは、天草式のみんなの元へ向かった。 第22学区のとあるカラオケボックス近く フルチューニングが建宮を見つけた時、たまたま彼は1人だった。 正確には周りにちらほら仲間がいるが、並んで歩く人はいなかった。 「…レイ?」 「お願いがあります、建宮さん」 あまりに唐突な出来事に、建宮は目を丸くする。 ただそれも、フルチューニングの言葉を聞くまでだった。 「レイを上条当麻の護衛に参加させてください」 「…何だと…!」 厳しい顔で睨む建宮に、フルチューニングは怯まずに続けてこう述べた。 「レイはダメと言われても絶対に参加します」 「レイ!」 「正直に言うと、レイは建宮さんたちの為に死んでも構いませんでした」 「…それは何となく気が付いていたのよな」 「そうなんですか?」 「だからお前さんを、“絶対”に戦わせる訳にはいかねえって言ったのよ」 「少しばかり特殊な境遇で生まれたお前さんは、あまりにも自分を大切にし無さ過ぎる」 「…はい」 「それぐらい仲間を大切に思っているのは悪い事じゃない」 「だがな。そんな一方的な思いで救われた方は、堪ったもんじゃねえのよ」 「救った相手の重荷になるような真似を、我らは決して良しとしないのよな」 「…はいっ」 建宮にとって、予想できない返事。 良く見ると、フルチューニングは潤んだ目でしっかりとこちらを見つめていた。 その泣き顔に建宮が反応する前に。 「レイはある人のおかげで気づきました」 「?」 「レイはとっても我儘です」 「このまま何もしないなんて、レイは絶対我慢できません」 「ですが、戦って死ぬのも絶対に嫌です」 「だからみんなでアックアに勝ちます。こんな下らない戦いで、誰1人死なせません」 「もう一度お願いします。その為に、レイを上条当麻の護衛に参加させてください」 そう一気に言うと、フルチューニングは頭を下げた。 そして。 「――くっ」 建宮から、笑いを含んだ声が漏れた。 フルチューニングがちらりと目を向けると、建宮が目を覆って笑っている。 「やれやれ、全く困ったものよなあ!」 「…建宮さん?」 「そんなふうに言われちゃあ、嫌とは言えないだろうよ?」 「じゃあ…!」 「一緒に戦うぞレイ」 「はい!」 ひときわ嬉しそうな笑顔を浮かべて、フルチューニングが喜んだ。 その顔を見て、建宮の呼吸が一瞬止まった事に彼女は気づかない。 「では色々作業をして汚れたので、五和さんのいる銭湯に行ってきます」 「おう。…自分が万全ではない事を忘れるなよ?」 「分かりました!」 スキップしそうな勢いで、フルチューニングは近くのビル『スパリゾート安泰泉』へ入って行く。 それを姿が消えるまで見送った建宮は、やがてヘナヘナと地面に座り込んだ。 「…あれは反則だろうよ」 僅かに赤い顔で、それだけ言うのが精一杯。 (あの泣き顔もヤバかったが、最後の笑顔は強烈過ぎる) (大体、あんなに懐かれたらそりゃあ悪い気するはずがねえのよな) (…どうするんだ俺?) (とりあえずは、まあ…) (この戦いを乗り切らない事には始まらねえ) (気合を入れろ建宮斎字) (本来戦えるはずのないレイを、参加させると決めた以上…全ての責任は俺にある) (惚れた女の1人ぐらい、守って見せなければ男が廃るってもんよ!) 内心カッコイイ決意をしている教皇代理のすぐそばで。 対馬たち女性陣が「オちた!?」「わお!」「でもこれって年齢的に良いんでしょうか…?」と盛り上がっていた。 第22学区の『スパリゾート安泰泉』 様々な種類のお風呂がある中で、フルチューニングは学園都市特製の入浴剤を使ったお風呂を選択した。 選んだ理由は『ただいま“試作品”のアンケート中なう』の看板があったからである。 フルチューニングが髪と体を洗い、どの浴槽に入ろうかと辺りを見回した時。 見覚えのある人影を見つけたので、彼女はその人物へ近付いた。 「…奇遇ですね、オリジナル」 「へ!?……あ、レイ」 微妙に疲れ気味の顔をした、御坂美琴がそこにいた。 ちなみにお疲れの理由は、溺れたと勘違いされてさっきまで女医の診察を受けていた為である。 だがフルチューニングの格好を見た御坂は、疲れも忘れて絶叫した。 「ちょ、アンタ!少しは隠しなさいよ!歩く時ぐらいタオルを使えー!」 「?」 フルチューニングが、文字通り何1つ隠すことなく堂々と立っていたからだ。 「ア、ア、アンタの体は私の体でもあるんだから、気を使いなさいよね!?」 「言ってる意味がよく分かりませんが、結局レイはどうしたら良いのでしょうか?」 「とりあえず早く湯船に入れ!体を隠しなさい!!」 このままだとお風呂が電気風呂になりそうな雰囲気だったので、とりあえずフルチューニングはその指示に従う。 「少しぬるい気がします…」 「ええ?これぐらいがちょうど良いでしょーが!」 「…何というお子様体質」 「なにおう!?」 喧嘩売ってるのかコラァ!と御坂が怒鳴ろうとするが、そこでようやく周りの冷たい目線に気が付いた。 慌てて自分の口を塞ぐと、彼女は小声でブツブツと文句を言い始める。 「っていうか、何でアンタがここにいるのよ?」 「当然、お風呂に入るためですが」 「…もういいわ」 これ以上悩み事を増やしたくないし、と御坂は追及を諦めた。 上条当麻の記憶喪失や、突如現れた隠れ巨乳の女の子のことなどで、すでに頭は一杯一杯である。 この上クローンの事で悩むのは流石にうんざりだった。 (隠れ巨乳…クローン……クローン?) ふと大事な事に気が付いた御坂は、さきほどの光景を思い描く。 (レイは私の身体年齢を上げたクローン) (…つまり私の数年後の状態と一緒…) (お、思ったよりも成長していない…!) (い、いやいや…これから…きっと大器晩成型なのよ!) 乙女心に傷が付いたものの、必死に自分で慰める御坂。 「それに、あ、あいつがおっぱい好きとは限らないじゃない」 「あいつとは誰ですか?」 「ひにゃあ!?」 心の内を声に出していた事に気づいていなかった御坂は、フルチューニングの質問に劇的な反応を示した。 「大丈夫ですかオリジナル?」 「あはははは!当たり前でしょ!全然問題ないわ!」 「…そうでしょうか」 「そうよ!」 「分かりました。では、1つレイからアドバイスを」 「なによ?」 「おっぱいが嫌いな男の人はいないそうです」 悪意のない一言に、今度こそ御坂は撃沈した。 「な、な、何を言ってるのか意味が分からないんですけど!?」 「…これはとある筋からの確かな情報です」 ちなみに。 情報源は天草式の男性陣とカエル顔の医者である。 「ただしおっぱいの大きさの好みは、人によって様々だ、とも聞きました」 「アンタは一体何を教わってんのよ!」 「世の中には貧乳好きも存在しているのです」 「だからレイは。…オリジナルのDNAマジで役立たずだなオイ、とか決して思っていません」 「ぐはぁ」 「可能性はごくわずかですが、これからの成長に期待だって…」 「もうやめて!すごく悲しくなるから!」 その後の2人は、二度とこの話題に触れようとしなかった。 (全然関係ないけど…あ、あいつはどうなのかしら…?) (そういえば、建宮さんはどうなのでしょう…?) 決して答えの出ない問いを残して、同じDNA(運命)を持つ者同士の邂逅は終わりを告げた。 第22学区のとある通り 一足先に風呂を出ている上条と五和を、建宮たちは気づかれぬように護衛している。 そんな中。 作戦を指揮している建宮は、異様な雰囲気を感じ取っていた。 しかもそれは外部からもたらされるモノではない。 ――今まで生死を共にしてきた天草式の仲間たち。 他ならぬ彼らからこそ、異様な重圧感を感じていたのだ。 (…何だ? この妙なプレッシャーは…?) 教皇代理(今一番偉い人)の建宮は知らなかった。 例のシーンを女性陣に一部始終目撃されており、すでに全天草式構成員に情報が伝達されている事を。 建宮は、五和の事から分かるように基本的には“おちょくる側”の人間だ。 今まで浮いた噂――つまりは格好のネタ――も無かったので、自分が標的になることは無かった。 だが今は。 (ついに教皇代理をからかうチャンス…もとい応援する時が!)と野母崎。 (レイを嫁がせても良いかは、しかとこの目で判断させてもらうぞ!)と諫早。 (まさか教皇代理に春が!ちっとも予想していなかったのに!)と牛深。 (さあ、これからが男を見せる時!あの子を泣かせたら殺すわよ!)と対馬。 (嘘だ…何で教皇代理が…レイなんかのどこが良いんだよ…!)と香焼。 今回初めて美味しいネタを提供した建宮は、すでに全員からマークされている。 「教皇代理」 「ん、どうしたのよ?」 全員が注目している中、野母崎が声をかけた。 「レイちゃんって、法律上は何歳だと思いますか?」 「は?」 「いやホラ、考えようによってはあの子0歳ですよ」 「……?」 「やっぱ手ぇ出したら犯罪だと思いませんか?」 「ブフォ!?」 予想外の口撃に、建宮は飲んでいたシェイクを噴き出した。 「野母崎!一体お前さんは何を言っている!?」 「…えー。まさか結構マジでその気…?」 「馬鹿な事を言うんじゃないってのよ!」 「けど、噂によると既にキスまで…」 「あれは違う!…じゃなくて誰がそんな事を!?」 「レイちゃんが対馬にメール相談したそうですが?」 「ノー!!!」 結局相談したのかよ!と建宮が嘆く。 しかも悲劇はそれだけでは終わらなかった。 「それにカラオケボックス近くで、教皇代理が『…あれは反則だろうよ』って顔を赤くして呟いていたって」 「だから誰がそんな情報を!?」 「対馬が目撃しました」 「またか!」 「『人を散々からかった罰。甘んじて受け入れなさいよ』という伝言を預かっています」 「あいつ昼間の美脚説をまだ根に持っているのよな!?」 「あ、後『レイを泣かせたら本気で後悔させるから』とも言ってました」 次々に悪化していく状況に、ついに建宮は頭を抱えた。 (この妙な感覚はそれか!) (すでに全員に情報が行き渡っているとみて間違いないのよな) (状況はほとんど詰んでいる……マジでどうするんだ俺?) 今度ばかりは気合が入らない教皇代理であった 第22学区のとある鉄橋 お風呂上がりのフルチューニングが、上条と五和を探し始めて10分ほど。 2人を発見したその時、ちょうど上条が五和に質問をしているのが聞こえてくる。 「そういや、他の天草式の連中は?」 「ええとですね」 「…とりあえずここに1人」 フルチューニングが背後から解答すると、2人は面白いように飛び上がった。 「おわあ!? …ってレイじゃねえか!」 「ど、どうしてレイちゃんがここに…?」 顔色を変えて心配する2人に、一時帰宅の許可を受けた事を説明する。 ちなみに五和だけは“教皇代理ニ春到来ス”の情報を受け取っていない。 「…だから建宮さんの許可も得ていますし、作戦に合流する事にしました」 「そっか……でも絶対にムリしちゃダメですよ!」 五和は心配しながらも、フルチューニングを追い返すようなことはしなかった。 「大丈夫です。全員揃って帰る為にも、こんなところで無茶したりしません」 彼女の表情が、今までと異なっているのが見て取れたから。 今まで感じていた、殉職者のような“諦め”の雰囲気が消えている。 「…そうですよね。レイちゃん、一緒に頑張りましょう!」 「おー!」 護衛対象を置き去りにして盛り上がる2人に、上条が突っ込みを入れようとしたその瞬間。 「――“頑張る”か。……のんきなものである」 「――が、宣告は与えた」 前方に広がる闇から、フルチューニングが今まで一度も感じた事のない圧倒的な力を感じ取った。 あの最強と謳われた『一方通行』や、天草式の女教皇にして聖人の『神裂火織』よりも、なお強く。 「――率直に言おう。もう少しまともな選択はなかったのかね」 そう嗤う声と同時に、後方のアックアが姿を見せる。 (これが、『後方のアックア』…!) (戦う前から、戦意を根こそぎ奪われそうです) そして戦慄するフルチューニングを無視して、標的である上条当麻に端的に告げた。 「――その右腕を差し出せ。そいつをここで切断するなら、命だけは助けてやる」 「テメェ…!」 睨みあう両者の隣で、五和が小さな声で確認する。 「天草式の本隊は……」 「無駄である」 だが合図を送っても、援護が来る様子は無い。 最悪の可能性を思い浮かべたフルチューニングが、アックアに噛みついた。 「レイの仲間に、何をしたのですか!?」 「殺してはいない」 「…死ななきゃいいって訳じゃないんですよ。ナメてんですか?」 フルチューニングの心が怒りで染まり――。 直後、戦闘が始まった。 相手は聖人。当然、3人は最大限の警戒をしていたはずだった。 だが。 人の判断力を遥かに超える速度で移動したアックアに、付いていくことなど不可能である。 「ッ!?」 “姿が消えた”と思った時には、すでに五和は攻撃を受けた後で。 まるで冗談のように、彼女の姿が車道まで吹っ飛んでいった。 「この…!」 「遅い」 ましてや、走ることすら不可能なフルチューニングが反応できるはずも無く。 何一つ攻撃しないまま、肘打ちを喰らって倒れ伏した。 「五和!? レイ!?」 あまりの光景に上条が叫ぶ。 だが、それを遮ってアックアが冷たく警告した。 「人の心配をしている場合であるか」 ここにきて、ようやくアックアは自身の武器を取り出した。 全長5メートルの金属棍棒(メイス)。その用途は撲殺。 「行くぞ。わが標的」 上条が逃げようとするよりも早く、メイスが振り下ろされる。 だが、その攻撃が当たる事は無かった。 視界の外から飛んできた五和のバッグが、ぶつかった彼の体を予想外の方向へ飛ばし。 馬鹿げた質量のメイスは、突如浮き上がったアスファルトが激突することでさらに方向を狂わされた。 それでも鉄橋に叩きつけられたメイスの威力は凄まじく、橋のあちこちで鉄骨を留めるボルトが破断する音が響く。 隕石のような一撃の余波に、上条は何メートルも転がった。 (これは…?) 今起きた現象に、アックアが怪訝な顔をする。 だが彼は、分析を中断せざるを得なかった。 五和がゆっくりと起き上がり、海軍用船上槍の切っ先を向けていたからである。 (まだ立ち上がるのであるか) 尤も、彼女を脅威に感じている訳ではない。 すでに深刻なダメージを受けていた五和は、満足に武器を構えることすら出来ていないのだ。 「一組織の全体が束になっても敵わなかった相手に、その一員が挑んで勝てるとでも思っているのであるか」 「……私にも……意地があります」 その答えに込められた、強い感情と決意をアックアはしっかりと感じていた。 それでも。 「そうか」 ここが戦場である以上、アックアが手を止める理由は無い。 再び一瞬で距離を詰めると、巨大なメイスの一撃を五和に叩きこもうとする。 ――ズリュ… 「!」 だがアックアは、残り一歩の地点を“踏んだ瞬間”に違和感に気が付いた。 (なんだこれは……“地面が腐っている?”) 彼は、そのまま体重を掛けるのは危険だと判断して慌てて下がる。 その異様な地面を見て、攻撃を受ける直前だった五和も驚愕の表情を浮かべた。 (様子からすると、この少女による術式ではない?) (では、誰が…) アックアがこの場で打ち倒した護衛は2人。 槍を構える五和と、今も倒れているフルチューニングだ。 (待て) (あの倒れている少女が“手に持っているモノ”は何だ?) これ以上はごまかせないと気づいたのか、気絶したふりをしていたフルチューニングが悔しそうに声を上げた。 「まさか…一度は踏んだにも関わらず、あの罠を回避できるなんて…反則です」 「やはり、オイルパステルか」 「今のレイには、これ以外出来ませんから」 その言葉通り、フルチューニングの今の体では、発電能力はおろか天草式の戦闘体術すら扱えない。 (複数のゴーレム術式の同時発動による崩壊術は失敗) (それならば、もうこれしかありません) 正真正銘、唯一の戦闘手段。 「だから、これで片を付けます」 「なに…!?」 起き上がったフルチューニングが、その手をパン!と打ち鳴らす。 崩壊した鉄橋が轟音と共に集結し、瞬く間に巨大なゴーレムへと変貌した。 「今度はこちらが、叩き潰す番です!」 「天草式の人間に、ゴーレム使いがいたとは……面白い、相手になるのである!」 フルチューニングの指示を受けた巨大ゴーレムが、聖人アックアに襲いかかる。 完全に予想外の状況に、上条が信じられねえ…と漏らした。 「アレは、シェリーが使ってたゴーレムじゃねえか!」 「…残念ですが、師匠のゴーレムとはモノが違います」 悔しそうに言うフルチューニングだが、それに五和は気づかなかった。 「そっか、建宮さんが女王艦隊で見た術式って…レイちゃん…いつの間にあんな魔術を?」 「今は説明している暇がありません。早く、今のうちに逃げないと!」 その言葉は真実だった。 アックアの前では虚勢を張っていたが、あのゴーレムに勝ち目はない。 そもそもゴーレム術式を学んで日が浅いフルチューニングが、シェリーと同じように出来るはずがないのだ。 現在ゴーレムを行使出来ているのは、 ここが大地の力を利用しやすい地下市街だという事 あらかじめ、付近に魔法陣を構築していた事 記憶には無くとも、歴史上最大の魔術師が同じ魔法陣を描いた時の事を体が覚えていた事 そういった様々な“幸運”による、まぐれでしかない。 しかもシェリーのエリスと異なり、四大天使を模していない為パワー不足だ。 辛うじて修復・再生能力は備えているものの、これでアックアを倒せるとは思えなかった。 (…本当にここで戦う事になるとはラッキーです) (戦力が無い今は、何としても逃げなければ…!) ゴーレムがアックアを抑え込んでいるうちに、3人で逃走する。 それがフルチューニングが今出来る、最善の策だった。 だが――。 「こんなものか」 「そ、んな」 抑え込んでいたはずのゴーレムが、気づけば完全に崩壊していた。 そう。アックアは、逃走すら許さなかった。 再生していくゴーレムの肉体の90%を、2秒以内に吹き飛ばす。 それがゴーレムの無力化法である。 つまり。およそ常人には不可能な方法で、フルチューニングの術式は叩きのめされたのだ。 (……これほどまでに、差が…!) (もう、レイには他に手がありません) 慄く3人に、アックアは一言告げた。 「右腕だ。差し出せば、命の方は見逃すのである」 「「嫌です!」」 五和とフルチューニングが、声を張り上げる。 「そうか。それならば、もう少し現実を知ってもらうのである」 そして――無慈悲な一撃が、フルチューニングに振り下ろされた。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1003.html
そして全ての準備を終えた土白から『第一回 世界最強決定戦!! 上条当麻に挑戦しよう』の開会宣言がなされることに。 セットにあるとある司会席に、二人の司会が座っていた。 「さあ、テレビの前の皆さん!!これより、『第一回 世界最強決定戦!! 上条当麻に挑戦しよう』が、始まるぜい!!」 「司会、解説はわたくし白雪月夜アーンド!!」 「世界一の色男、土御門元春がお送りするぜい!!」 「このDVDを買ったあなたはすっごくラッキー☆」 「世界の最強の猛者達が、真の最強を決めるぜい!!」 「では、今回のゲストと、そのチャンピョンを紹介してもらうぜい!!」 するとカメラマン(浜面)がクルッと動き、一方通行を前の画面に映す。 「一方通行(アクセラレータ)、この学園都市最強で、我が学園が誇る超能力者(レベル5)!!」 「一方通行とは能力名で、本名は誰も知らない。どういう能力かというと、あらゆるベクトルを操る能力だにゃー!!」 「しかし、夏休みにとある事件で計算能力や言語能力をつかさどる脳を失い、今では能力が使える制限があり、能力使用時間は、『90分』だそうです」 土御門はいつの間にか一方通行の隣まで移動していて、マイクを一方通行に差し出す。 「では一方通行さん、今の心境をどうぞですにゃー」 「アンナのに90分使うなンバッテリーの無駄だなよなァ?すぐに片付けてやる」 「はーい、一方通行さんありがとうございましたー」 そういうと土御門はダッシュで司会席まで戻る。 「……にゃー、次はローマ正教からの能力者、右方のフィアンマさんの紹介だぜい」 今度はフィアンマの方にカメラが向き、前の大きな画面にフィアンマの顔が映る。 「フィアンマさんは噂の、学園都市とローマ正教の戦争の火種をまいた、恐ろしいローマ正教の最強の能力者らしいです」 「能力は第三の右手を操り、さまざまな能力を使ってくる強敵だにゃー」 「しかし、フィアンマさんの能力は謎に包まれていて、どんなものが飛び出すかはわれわれにも計り知れません」 白雪はいい終わるとと同時に、氷で滑ってフィアンマの方まで移動し、マイクをフィアンマに傾ける。 「フィアンマさん、今の心境をどうぞ」 「俺様は最強無敵、あのようなセロリっ娘には負けやしない」 「ありがとうございます。ちなみにセロリっ娘は一方通行さんの事で、一方通行さんは男なのでご注意を」 そういうと白雪は氷で滑って、司会席まで戻った。 「さて、この二人だけども、ものすごい能力者でしたねー」 「そうだにゃー、しかし、この二人を超える人物がいるんだにゃー」 「ええー!!そんな人が本当にいるの!?」 「本当だにゃー、その人物は……なんと!!今紹介した能力者二人を右手ひとつでぶっ飛ばした、わが学園の誇るレベル0!!」 「おおー!!その名は?」 「「上条当麻さんです、どうぞー!!」」 カメラは上条のほうに向き、前の画面に上条が映し出される。 「上条当麻、通称旗男。我が学園のレベル0」 「上条当麻は、あらゆる女性にフラグを立てることでも有名だけど、本命は違うにゃー」 「そう、上条当麻の真の能力……それは」 「「幻想殺し(イマジンブレーカー)!!」」」 ドドーン!!と、上条の右手をカメラがアップにする(右手だけ映してどうする!!)。 「彼の右手には、異能の力なら何でも打ち消す不思議な右手」 「それが異能の力ならば、神の奇跡だろうがなんだろうが、問答無用で打ち消すぜい!!」 「しかもそれだけでは上条当麻さんのすごさはわかりません」 「では、上条当麻の武勇伝を、聞いてもらうぜい!!」 「上条当麻……我々が調査した所、様々な武勇伝がありました……」 「(調査といっても、たいしたもんじゃないけどにゃー)まずは、上条当麻の身体能力について説明するにゃー」 「上条当麻……身体能力は平均高校生並みのものって言われてるけど、実は一方通行さんの、風速120m―――つまり自動車すら簡単に舞い上げる烈風の槍をと化して、上条当麻を襲いました……」 「がしかーし!!我らの上条当麻は見事学園年最強を打ち負かし!!学園都市最強の冠は上条当麻に引き継がれる事になったにゃー!!」 「つまり、一方通行さんは学園都市の最強の冠を奪い返しに来たって事だねー?」 カメラが一方通行に向き、一方通行の顔がアップになる。どうやら一方通行に何か答えろとのことらしい。 「アァン?殺ルからには殺ってヤルに決まってんだろォが」 「あれー?一方通行さーん?『ヤル』が『殺ル』になってますよー?」 上条が突っ込むが一方通行はスルーをする(決してこれはダジャレではない)。 そしてそのまま話は進んでいく。 「それに、上条当麻はローマ正教最強のフィアンマも打ち負かしたんだにゃー!!」 「つまりフィアンマさんもローマ正教最強の冠を奪い返しに来たって事だねー?」 一方通行同様、カメラがフィアンマに向き、フィアンマの顔がアップされた。 これも一方通行同様、何か答えろとのことらしい。 「ん?俺様も殺ルに決まっているが。」 「なんか俺、この後生きているかな…」 当麻は二人の『殺ル』という言葉にこの二人の戦いが終わった後、自分が無事でいられるのか心配になった。 「それでは一方通行さん、フィアンマさん、スタンバイしてください!」 「「わかった(よォ)。殺ればいいの(ン)だろう(ォ)?」」 「イエース、オフコース!!その方が絵になるにゃーっ!!」 「っ!!土御門!?そんなこと言ったら上条さん死んでしまいますよ!」 「にゃー、上条さん。あなたは今まで常人だったら死んで当然のところなのに怪我で済んでるから説得力ないぜい。」 「くっ、否定できねえ!不幸だ…」 ちなみに前半の『否定できない』はその場にいる誰もがそう思ったという事を追記しておこう。 そして。 上条当麻最大の危機が訪れる。 ……ギャラ付きで。 そんな二人の『殺ル』発言を注意したのはこの場にいる誰よりも常識人な、この戦いの審判こと騎士団長で、当麻は心の中でかなり感謝した。 もっとも、真昼に言わせれば二人の『殺ル』発言に殺意なんてものは存在しないのだが。 「二人とも、本当に殺すのはよすんだぞ。キャーリサ様の御前でもあるわけだし、何よりそれは上条当麻が望まないだろうからな」 「チッ、分かってンよォ」 「お前に言われずとも承知している。だがそんなことよりも俺様は一つ気になっていることがある。おい、陰陽師」 フィアンマに陰陽師と呼ばれて、最初は自分のことだと気付かなかった土御門が不思議そうにフィアンマを見る。 土御門の察しの悪い表情に呆れながらも、フィアンマは冷静に質問をした。 「俺様はこのセロリっ娘がどれ程強いのか良く分からん。街中では俺様と互角に渡り合えたから相当なものだろう。だが具体的な指針が無いのだ、教えろ」 フィアンマの質問に土御門は焦った、科学側の人間なら納得できる相手ばかりで彼が納得できる相手との戦歴は知らないのだ。 つまり黒き悪魔の右腕の顕現した切っ掛けのウィリアムとの戦いも知らないのだが、そこに救いのメールが入る。 「(メール? 一体誰から……へぇ、なるほどにゃー)実はそこの一方通行、あの後方のアックアと満身創痍ながらも引き分けたことがあるんだぜい!」 目の前の少年が自分も認める『後方のアックア』と満身創痍状態で引き分けたと知ると、フィアンマのテンションは静かに燃え上がり、愉悦の笑みを浮かべる。 ちなみに土御門にメールを送った主はというと、ホッとした様子でキャーリサの膝の上に座りつつもくすぐったそうに弄られていた。 「そうかお前、あのアックアと引き分けたことがあるのか。成程、セロリっ娘と呼ぶのは失礼に値するな。アクタよ、当麻への挑戦権を賭けた相手に相応しいとみなし俺様が全力で相手してやろう」 「ケッ、そンなことてめェに言われるまでもなくこっちは最初っから全力のつもりなンだ……おい、アクタって俺のことか?」 「そうだ。アクセラレータでは趣に欠けるからな、俺様が素敵なニックネームを付けてやった、光栄に思うがいい」 一方通行はフィアンマ命名の『アクタ』に抗議しようとしたが、それよりも今はフィアンマから放たれる闘気に心が躍っていたので後回しにすることに。 二人の間にピリッと張り詰めた空気を感じ取ったその場に居た全ての者が息を呑む。 「始めっ!!」 当麻への挑戦権、そしてライバルと言う名の親友の座を巡る男と男の激闘の火蓋が切って落とされた。 一方通行VSフィアンマ戦が始まった頃、まったく平和なバレンタインを過ごして居た者達もいるわけで。 まずは上琴義妹の絹旗と佐天、二人は現在上琴新居二号でくつろいでいた。 「あ~、早くお兄ちゃんとお姉ちゃんが超帰ってきて欲しいですよ~。せっかく三人で作ったチョコを超食べて欲しかったのに~」 「ホントだよねー。当麻兄さんも美琴姉さんも、でもって飾利にも連絡付かないのにはホント参ったよ……」 どうして二人が上琴新居二号に上がり込めてるかというと答えは簡単、上琴から信頼出来る義妹トリオに合鍵が行き渡っていたからである。 上琴と初春が居ないことで暇を持て余していた佐天があることを閃いてしまう。 「この際だからさ、先に建宮さんに作ったチョコを渡さない? もちろんあたし達が出向くんじゃなくて呼び出す形でさ」 「それは超悪くないアイディアです。建宮が私特製の『火薬チョコ』を食べてどんなリアクションするか超楽しみですよ♪」 (……かやくチョコ? 炊き込みご飯のように色んなものが詰まってるってことかな? 最愛にしてはまともなんだ) 「どうかしました? 涙子。善は急げです、早速建宮を超呼び出しましょう」 佐天は自分が作った『99.9999992%カカオチョコ』よりもまともなものを絹旗が作った、そう思っていた。 しかしそれは大きな間違いで絹旗が作ったのはあくまで『火薬』を入れたチョコなのだ。 そんなことを知らない佐天は建宮を呼び出す為に電話をかけるのだった。 ―――――――――― その建宮はというと第一三学区の争乱の事後処理後、一方通行とフィアンマがやらかした惨劇の後始末に追われていた。 アンチスキルとして活動してる分にはイラつかない建宮だったが、別のファクターからもの凄くイラついていた(他のアンチスキルも含めて)。 「黒子はん、ほらボクが作ったチョコで元気出しぃな」 「ああっ! ○○様の愛の詰まったチョコを食べながらジャッジメントとして活動する、なんと幸せなバレンタインなのでしょう♪」 第一三学区の争乱の事後処理後もジャッジメントとして手伝ってくれてる黒子に最初は感謝したが、青ピが合流したことで激変する。 仕事中にバカップルのいちゃつきを見ることほどムカつくことは無いわけで、建宮だけでなく参加してる全アンチスキルも限界に達していた。 そこへ佐天からの電話が入り、建宮は不機嫌を隠して電話に出た。 「もしもし佐天か? 悪いが今は忙しいのよ。仕事がまだ終わらんくてな、少ししてからこちらから掛け直すから」 『そんなこと言っていいんですかー? せっかく建宮さんの為にあたし達三人がチョコ作ってあげたのに建宮さんは欲しくないんですねー♪』 佐天の『あたし達三人』から初春がチョコを作ってくれたという事実だけをピックアップした建宮の動きが止まった。 しかしそれは一瞬のこと、青黒のいちゃつきで溜まっていたフラストレーションは霧散、一気にハイになる。 「分かったよな! この建宮斎字、今から猛ダッシュで仕事を終わらせて飾利姫のチョコを受け取りに向かうのよ!」 『あの~あたしと最愛のチョコも……ま、いいですけど。じゃあ当麻兄さん達の新居二号で待ってますから』 建宮は佐天からの電話を切った後も初春が自分の為に作ってくれたチョコがあるという事実に無上の喜びを感じていた。 そして早く初春のチョコを食べたい建宮はさっきまでのローテンションはどこへやら、もの凄いハイテンションで後始末に精を出し始める。 「なんやなんや? どないしたんや建宮はん? えらいテンション上がってもうてるけど……」 「いいではありませんの、これで黒子たちの仕事が楽になるのですから」 「ペーペーの建宮が頑張ってんだ、私らももうひとふん張りするじゃんよ!」 建宮の頑張りにつられ、他の面々も第二十二学区の惨劇の後始末の追い込みに入った。 頑張ってる建宮は知らない、この後で貰う佐天と絹旗の悪戯心全開のチョコにこの上ない苦しみを味わうことになることなど。 その後で初春から『お父さんチョコ』を貰い、天にも昇るような思いを体験することになろうとは。 ―――――――――― 舞台は再び兵器試験場、まずは小手調べの意味を込めてフィアンマが閃光を放ち、それを一方通行が反射で迎え撃とうとする。 その時、不思議な現象が起こった。 一方通行にぶつかった閃光は七色に変わり周りに弾け飛んだ。 その七色の閃光は距離5㎞のセットまでとどいた。 そしてその七色の閃光は、上条すばやい行動で粉砕された。もちろんそれは浜面が撮っていた。 ちなみに話しておくが、一方通行とフィアンマの戦いは距離10kmのあらゆる角度から撮影しているのを追記しておく。 「にゃ、にゃー……。さすが挑戦者、距離5㎞のセットまで攻撃の余波らしきものが飛んできたにゃー」 「は、はうー……。この事について上条当麻さん、感想をどうぞ」 浜面のカメラが上条の顔を映す。 「テメェら!!もうちょっと周りの配慮を考えろ!!」 もっともである。 二人には聞こえてはいるはずがないと思うのだが、すべてのベクトルを操る一方通行には聞こえていたらしい。 「うっせェ!!こいつのベクトルメチャクチャで、逆算がまだ完了してねェンだよォ!!」 その声が聞こえたのかフィアンマは一方通行に言い返す。 「つまり俺様の力はアクタにはまだ早いらしいな?」 「ヨシ、小手調べはこの程度でさっさとブチコロス」 一方通行は町で暴れた力をまたもや解放する。 もうよけいな詮索はやめにして、二人は本気でぶつかる。 戦場から5キロ離れて見ていた人々はその瞬間を目撃した。 まがまがしい第三の手が巨大化して上空千メートル付近を飛んでいたヘリを吹き飛ばしたのと、 黒い翼がそれとほぼ同じ大きさで展開したのを。 そしてその2つが文字通り殴り合いを始めたのを。 そんなとんでもないものがバッチんバッチんぶつかっている状態では5キロという安全ラインは安全のあの字も満たさない。 人々をすさまじい突風やら何かの破片が襲う。 「にゃーっ!!5キロでも足りないのかよっ!!」 「土御門マズイ!!カメラが全部吹っ飛ばされた!!!」浜面が言う。 「つまりカメラはその一つしか残っていないのかにゃー!?」 「そういうことだ!!」 「「「「よし浜面!死んでもカメラ離すな!!!」」」」 「えーっ!?土御門はまだしも何でイギリスの人まで!?」 単純なことだ。土御門は金のため、イギリスの面々はデータ収集のためである。 しかし皆さんお気づきだろうか? 土御門は『セット全体』に『くまなく』『大量の』カメラをセットしていた。 それらの破片が飛んでくるのは自明の結果であり。 「元春そんなこと言ってる場合じゃないよ!!美琴ちゃんが防いでるけどここも危ない!!」 「にゃーっ!!そんな…」 「まあなんか車も飛んでるしなー。」 「私の力をもってしても不可能です。」 「ゼロにできないのか!?」 「数が多すぎる。」騎士団長は言う。「それにあの二人の『アレ』には我々の常識は通用しない。無効化なんて不可能だ。」 全員押し黙る。 その間も車やら何やらが彼らのほうに向かい、それを防いでいる少女の横顔が時々スパークで照らされる。 そして。 土御門は決断する。 「総員退避ーっ!!!」 「「「「「ラジャーっ!!!」」」」」」
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/873.html
イギリスのウォータールー駅から徒歩五分の所にある日本食街。 その一角の中にある、とあるスシレストラン 『AMAKUSA』 は、開店してから日が浅いものの、従業員の接客や、 メニューの豊富さ、さらにイギリス人好みの味付けなどにより、すっかり地域に住む人の人気スポットとなった店である。 時刻はまだ朝を迎えたばかりであるため、人通りは少ないが、ランチ時や夜などにはお客の絶えないところでもある。 そのレストランからさらに10分ほど離れたところには、そこで働く従業員一同が住めるよう、アパートメントひとつを 丸々借り切った建物がある。 そのアパートメントの一室で、一人の少女が一心不乱に作業をしていた。 「ふんふふんふんふーん♪」 鼻歌交じりに作業を続ける彼女。ともすれば簡単そうな作業に見えるかもしれないが、意外に手先の器用さが求められる それを、しかし、鮮やかな手捌きでこなしていく。 そうして、彼女がなおも作業を続けていると、 『トントン』 と、ノックの音が響いた。 「はいはーい。どうぞー」 手元の作業を止めずに、返事だけを返す少女。 部屋の主の返事を聞いて、キィ、という音とともに扉が開けられる。 「五和ー、準備できたー? もう朝ごはんだよー………って、うわっ、何これ?!」 半分ほど開いた扉から顔を覗かせながら少女に呼びかけた女性はしかし、部屋の中のありさまを見て思わず声を出した。 「これって、アイリス………? こんなに沢山、いったいどうしたのよ………って、あんた何やってんのよ?!」 慌てて問いかける女性の目を追えば、五和と呼ばれた少女が傍らに挿してあった花瓶の中からアイリスの花をまとめて 何本か引き抜き、その茎から葉っぱをむしっているところだった。 「何って、見ての通りですけどー?」 問いかけられた五和の方にはしかし、慌てた様子は無い。 おもむろに全ての葉っぱをむしり終えると、葉っぱを手元に取り置き、残りの花を別の花瓶に挿し替えていく。 そして、何枚かの葉っぱをまとめると、違う葉っぱでそれを器用に縛っていく。それが済むと違う葉っぱをまとめ上げ、 また葉っぱで縛っていく。そうして手元の葉っぱが無くなれば、また花瓶からアイリスを引き抜いて葉っぱをむしっていく。 彼女は先ほどからこの作業を繰り返していたようである。 「…………いやまったく分かんないんだけど?」 部屋に入ってきた女性がその光景を見ながらなおも問いかける。まあ、うら若き少女が部屋にこもって一心不乱にむしった 葉っぱを束ねているのを見て一発で何をしているかなんてまず分からないだろう。これが花を束ねているのならばまだ理解も しやすいというものだが、葉っぱの方をとなると、首を捻るしかないというものである。 そんな女性の様子に、五和は手元の作業をやめて向き直り、説明をする。 「もう、今日は五月五日ですよ。端午の節句じゃないですか。だから、その準備をしてたんですよー」 そう言われても、女性の方は今ひとつ理解しかねている様子である。 「いや、今日が五月五日で端午の節句だってのは分かるけどさ、何でアイリスの葉っぱをむしってんの?」 もっともな意見である。端午の節句にアイリスは関係ないはずである。……いや、直接的な関係は無かった、筈? それに対して、 「あ、それはですねー、本当は菖蒲(しょうぶ)を用意したかったんですけど、ここじゃ用意できなかったんでアイリスで代用して みたんですよー。やっぱりこういうのは形が無いと盛り上がりませんからねー」 どうやら菖蒲の代わりにアイリスの葉っぱを使って何やらやっているのか、と答えを聞いた女性は再び作業を再開した五和と その周りにある幾つかの出来上がった品物を見て、ようやく合点がいったように呟いた。 「ああ、なるほど、薬球(くすだま)か………」 端午の節句。 古代中国にその起源を持つとされるそれは、中国においては邪気を払い健康を祈願する日とされ、野に出て薬草を摘んだり、 蓬で作った人形を飾ったり、菖蒲(しょうぶ)酒を飲んだりする風習があった。蓬や菖蒲は邪気を払う作用があると考えられていた。 現代の日本においても菖蒲や蓬を軒に吊るし、菖蒲湯(菖蒲の束を浮かべた風呂)に入る風習が残っている。 日本においては、男性が戸外に出払い、女性だけが家の中に閉じこもって、田植えの前に穢れを祓い身を清める儀式を行う 五月忌み(さつきいみ)という風習があり、これが中国から伝わった端午と結び付けられた。 宮中では菖蒲を髪飾りにした人々が武徳殿に集い天皇から薬玉(くすだま 薬草を丸く固めて飾りを付けたもの)を賜った。 かつての貴族社会では薬玉を作りお互いに贈りあう習慣もあったという。(現代電子演算相互互助辞典:Wikiより引用) 「で、こっちのやつは何なの?」 そう問いかけられた先には、薬球と呼ばれた品物よりも幾らか作りの甘いようにも見受けられる物があった。 「そっちのは、菖蒲湯に使うためのものですよー」 言われてみれば、確かに菖蒲湯に使うものはあまりガチガチに固めておいては上手くいかないだろう。 しかし、 「菖蒲湯をアイリスで、ねぇ………」 「えー、良いじゃないですか。手に入らないのならあるもので代用すればいいんですし。私たち天草式はその土地その風土に 溶け込んで発展していくものですよー。菖蒲もアイリスも似たようなものですし、大丈夫ですよー」 対する五和は実に楽観的に話している。 しかし、五和の部屋にあるアイリスの花から作られたもの、いや、現在進行形で増え続けているものは明らかにその量が 多いように思える。この部屋全体を埋め尽くすほどのアイリス、まあ、そこから葉っぱだけを取ったとしてもその数は今現在 このアパートメントに住んでいる住人全てと照らし合わせてもいささか多いように見受けられる。 それについて尋ねられると、五和は、えへへ、と照れたように笑いながら、 「あの人にも、あげたくて……」 と体をもじもじとさせながら言った。 ふむ、と女性は軽く息を吐きながら考える。 彼女が言う 『あの人』 とは、故郷である日本の学園都市と呼ばれるところに住んでいるある学生のことだろう。 以前起こったとある事件の折に知り合って以来、どうも五和はあの少年のことを想っているようである。 彼女と歳の近い者たちは何かと五和のことを応援? していたようだが……。 そんな彼女の耳に五和のさらなる声が聞こえてくる。 「それに、この前の上巳のときに送ってもらった内裏雛は上手くいかなかったみたいですから、今度は霊装自体が失敗しても 菖蒲湯にしてもらえば大丈夫ですし………」 五和の視線の先には、一体の人形が机の上に置かれていた。 どことなく五和の姿に似せて作られたそれの隣には、何か、似た大きさの物が納まるような空間が空いている。 『内裏雛(だいりびな)』 内裏が代理に繋がる霊的意味を持つこの人形には、本来もう一つ男の形をした人形が存在する。 いや、存在した、と言った方が正しいか。 過ぎる三月三日の上巳の節句の折、内裏雛の片割の、ある少年の姿を模した人形はやはり海を越えて学園都市に送られた。 そして、少年の身の回りで起こる災厄をその身を挺して少年を守るという使命を立派に果たしたのだが、あらゆる異能の力を 打ち消す少年の持つ右手によりその存在を終えた。 そのことを同じ霊装である女雛たる人形を通して知った五和は、今度は霊装自体が壊れても大丈夫なようにと、次善の策まで 用意しているようである。 「なるほどねぇ……」 想いを持つ少女の行動に対し、いささかの呆れと感心のこもった言葉をついた女性は、もうしばらく好きにさせていようとそのまま 部屋を出ようとする。 「ま、何はともあれ早くしなさいよ間に合わないわよ?………」 「それに、菖蒲湯で朝風呂に入ると気持ち良いですし………」 二人の声が重なる。 「え?」 「え?」 ぽかんとした五和に対して、慌てたように女性は尋ねる。 「あ、あんた、これ、朝風呂に使ってもらえるように渡すつもりだったの?!」 そのただならぬ様子に不安げに顔を曇らせながら五和が 『は、はい、』 と返事をすると、 「ば、馬鹿! あんた時差のこと考えてなかったでしょ! “イギリスのこっちが朝だったら日本のあっちはもう夜じゃないのさ!!”」 その、言葉に、 「あ………ああああああーーーーーーっ!! しまったーーーーーっ!!」 アパートメント中に響き渡るほどの声を上げて五和は頭を抱えていた。 「なになに、今の声?」 「なんかあったの?」 「ちょっとー、昨日遅かったんだからこんな朝から大声出さないでよー」 部屋という部屋から彼女たちと同じ天草式の面々が飛び出して五和の部屋の前に集まってくる。 彼らが恐る恐る部屋の中を覗き込むと、床にへたり込んでがっくりとうなだれている五和の姿があった。 というか、かなり尋常じゃない位の落ち込みっぷりである。 何かを呟いているようなので耳をすませてみれば、 「うう………、わたしのわたしの馬鹿ばかバカ………!! ちょっとした思い付きでいい気になってるもんだからこんな単純な事に 気付かないのよ………っ!! こ、こんなことだからいつまでたってもあの人に伝わらないのよ………っ!! ………!!」 見ていて哀れを通り越して不憫である。 最初に五和を呼びにきた女性から訳を聞いた面々もさすがに居た堪れなくなったのか、 「ド、ドンマイだぞ五和。これくらいの失敗は誰にだってあることだ!!」 「馬鹿! そんなありきたりの励ましなんかじゃ駄目だろ!」 「そ、そうです五和、今回は駄目でしたが、今度頑張れば良いじゃないですか!!」 「今度っていつだよ!?」 「えーっと、そう、次は七夕です七夕!! 次の節句の時にはこの教訓を生かせばいいだけのことです!!」 「そ、そうだぞまだ次の節句があるじゃないか落ち込むのはまだ早いぞ!!」 そんな励まし? の言葉に、うずくまっていた五和がようやく顔を上げる。 やがて、言われた言葉を反芻してようやく理解し終わると 「そうですよね! これくらいであきらめたり落ち込んでいたりしてちゃ駄目ですよね!? 分かりました! 次の七夕の時には この教訓をちゃんと生かします!!」 えらく立ち直りの早いもんである。 「ようし、次の七夕に向けて早速準備するぞ!」 「今度の節句には天草式が全面的に協力するからな!!」 「どうせなら今度だけじゃなくて節句ごとにするってのはどう?」 「いいなそれ!」 「じゃあこれから節句ごとに五和がプレゼントするのを応援するって事で!」 「「おーー!!」」 とたんに沸き立つ天草式の面々。揃いも揃ってノリノリの様子である。 だから当然、 「え? ちょっと? これから節句ごとにこういうことするの? 本気なの? ちょっと?!」 という女性の意見があったことは誰の記憶にも残らなかったのである。 「で、盛り上がってんのはいいけどよ。こんだけの量の薬玉と湯種をどうするつもりなのよ?」 皆に遅れてやってきた一人の男、天草式十字凄教教皇代理、建宮斎字は呆れながら尋ねた。 それに対して一同が固まっていると、質問をした建宮はガリガリと頭をかきながら 『しょうがねえなぁ』 と呟くと、集まっていた 面々に指示を出す。 「あーっと、あれだ、薬玉の方は一人一個ずつもらっとけ。こんだけいりゃなんとかなるってもんよな。あと、残った湯種の方は どうすっかなあ……。ま、いいか。なんとかなるのよ。あてもいくつかあるもんだしのよ」 その夜、イギリスのランベス区において少なからぬ浴槽に奇妙なものが入っていたという。 「はあ、何やら今日のお風呂は不思議な物でございますね。何か変わった趣向なのでございますか?」 「趣向なんてたいしたもんじゃねえだろうよ。ただの草が放り込んであるだけじゃないのかしら?」 「ええっ! これ、ただの草なんですか?! なんだか汚そうですよぅ!」 「あらあら、でもなんだかいい香りもしますですよ」 「む、そういわれてみればかすかにいい香りがしないでもないでやすね」 「貴女は本当にそう思っているのですか? なら何故さりげなく葉っぱを遠ざけようと波を送っているのですか?」 「とっ、遠ざけようとなんかしちゃいやせんよ……!!」 「ご心配なく。これは日本に伝わる風習で薬湯浴のようなものです」 「ふーん。相変わらず日本ってのはおかしな風習があるもんなんだな極東宗派」 「(しかし、菖蒲の代わりにアイリスを使うとはいったい何を考えているのやら………)」 「ん? なんか言ったか?」 「いえ別に。とにかく、害があるわけでも無し、ゆっくりと湯につかったらどうですか?」 「へいへい」 「なっ、なんでありうるのよこれは!? 湯船という湯船に怪かしげな草が放り込んであるとは、一体どういうつもりでありうるのか!? さてはこれは一日の激務で疲れた体を癒すための私のささやかたる楽しみを奪わんがための陰謀に違いなきのことね!! くっ、イギリス清教のために身を粉(こ)にして励みたる私に対して何たる仕打ちたるのか!! されど、かかる仕打ちに対して いまさら湯を交換している時間もなし……。ええい、やむを得んのよ。今宵はこのままで湯に浸かりたるしかなしにつきなのよ。 ううっ………………あら? 何だかかすかにいい香りがするのことよ。ふむ……、意外にそれほど悪しきものでもないのかも しれなきね………。ふむふむ………」
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2178.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Love is blind 第4話 突然の幸福 土御門より説明を受けること15分、上条は一通り話を聞き終わっていた。 土御門が上条に説明したのは『増強剤について』と『増強剤によって上条にどんな効果が生まれるのか』の2つである。 その内容とは… 【増強剤について】 飲むことにより、飲んだ人の性質がランダムに1つ強化される 飲む量により増強剤の効き始めるまでの時間は変化する 効き始めるまでは体調不良になる 増強剤の持続時間は飲む量、又は個人によって異なる 【上条への効果】 上条は『フラグ体質』が強化された よって女性ならば年齢、国籍関係なく上条を好きになる(女性といっても人間のみ) ただし、上条と『直接会話』をしたことがある人限定 男、オカマ、は上条を好きにならない その他、上条のことを好きにならない女の子は ⇒『普段から上条を好きな人(ただし“好きかも”、ではなく“上条が大好き”と言い切れるくらいではないとダメ)』 ⇒『上条以外に好きな人がいる場合(同じく“好きかも”、ではなく“この人が大好き”と言い切れるくらいではないとダメ)』 例を挙げると、郭は半蔵のことを好きなので対象外となり、雲川ははっきりと『好き』と言えないため影響を受けた 増強剤の影響を受け上条のことを好きになった女の子は、上条に振られると凶暴化する 上条が治ると同時に、影響を受けていた女の子たちの『上条に惚れていた』という記憶は消える 以上が土御門の説明だった。 「……怖いなー…」 上条は呟いた。 『凶暴化する』というところも怖いが、何より『好きな人がいない女性なら、上条を好きになる』というところが怖い。 とにかくこの状況を解決するには、自分の体内に入ってしまった増強剤をなんとかしなくてはならないらしい。 「薬の効果はわかったからさ、どうやったら元に戻るんだよ。まさか一生このままって言うんじゃ…」 『それはないから大丈夫ぜよ。けど治し方は今調べてるから、もう少し待つんだにゃー。』 「もう少しか……わかった。じゃあ俺はみs…青ピを探しに行って来るよ。」 『あ、ちょっと待つんだにゃー。もう一つ話があるぜよ。」 「話?なんだ?大事な話なのか?」 『ああ。上やんにとってはかなり重大な話ぜよ。実はだな…』 「実は?」 以外にも土御門の声は、真剣そうにものに変わった。 今までのおちゃらけた雰囲気からの急な変わりように、上条にも緊張が走る。 そして、電話の土御門は上条に真剣な口調で言った。 『イギリスからステイルたちが来てるらしい。さっき“今学園都市に来ているんだがインデックスに会えないかい?”って電話がかかってきたんだにゃー。』 「ステイルが?…インデックスに会いたいって…もしかしてまた事件か何かなのか!?」 『観光だそうだ。』 上条は携帯を思い切り地面に叩き付けそうになった。 「……勝手に会えって言っといてくれ。ていうか、それのどこが重大な話……ん?“たち”?お前今“ステイルたち”って言ったか?」 『ああ。言ったぜい。』 「まさか…」 尋常じゃないくらい嫌な予感がする。 正直これ以上聞きたくなかったが、聞かなければもっと面倒なことになりそうなので、上条は仕方が無く尋ねる。 「それは…他にも来てるってことだな?その、魔術サイドの女の子たちが…」 『ああそういうことぜよ。結構多くの魔術師が来てるみたいだにゃー。しかもほとんど上やんと知り合いだったような…』 「や、やっぱりか…で、誰が来てるんだ?」 『えーと今回学園都市に来てたのは、確か…』 上条は願った。 頼むから穏便な人で、魔術とかろくに使えない人が来ていてくれと。 もしバリバリ攻撃系の魔術が使える人が来てしまっていて、その女の子に会えば多分死ぬ。 好きだと言われても、美琴以外の女の子と付き合うなど考えられない。 また偽のデートでさえも美琴以外としたくはないので断ることは間違いないのだか、その際逆上した女の子に抹殺されるだろう。 「誰だ?一体誰なn」 そこまで言って、上条は携帯電話を耳から離した。 土御門と話すのがめんどくさくなったからではない。 (今…確かに聞こえたよな。土御門の声じゃなくて…御坂の声が…俺の耳に間違いはないはず。) かなり小さい声だったが間違いないはずだ。 美琴のことを好きになってからの上条の耳は、美琴の声が他の人の声より断然よく聞こえるように特殊に進化していた。 美琴が近くにいると確信した上条は、声が聞こえた方向へと急いで走る。 「確かこっちのほうから……」 声がしたと思われる場所できょろきょろ辺りを見回し、真剣に美琴を探す。 すると、その先の木の陰からひょこっと顔を出したのは 「わわっ…」 「おお!!やっぱり御坂!!」 本日2度目の遭遇。 上条が探し求めていた少女、御坂美琴だ。 ようやく会えた。 これで青ピの魔の手から守ることができる上、結標と付き合っているという誤解が解けると思い、上条は歓喜したが 「ん……どうした御坂?具合悪いのか?」 美琴の様子がおかしい。 普段のように元気が無く、もじもじしているし、顔も少し紅く染まっている。 上条は美琴が重大な病気にかかっているのでは、と思ったがすぐに別のことを考えついた。 (そ、そうか!よく考えたら御坂も薬の影響を受けるんじゃないか!!) ここにきて、上条はようやくそのことに気がついた。 もっと早く気づけと言いたい。 もし美琴が影響を受けているのならば、今にも告白してくるだろう。 (……それはそれで嬉しいような…そういえばさっき会った時は…いつも通りだったっけ?いや、でもちょっとしか話してないしわかんねーな…) 果たしていつも通りなのか、それとも増強剤の影響で告白してくるのか。 もし、美琴がいつも通りなら、それは美琴に誰か好きな人がいるということ。 もし、美琴が上条に惚れているような反応を見せれば、それは普段美琴は上条のことを何とも思っていないということ。 ここで上条は重大なことに気づいた。 (……あれ?これって、御坂がどんな反応してもダメなんじゃ…?) 相変わらず鈍感な上条は『美琴が自分のことを好きで、いつも通りの反応をする』という選択肢が抜けていた。 なんでだ、どうして自分にチャンスがないんだ、俺が不幸だからか、などといろいろ考えていると、目の前の美琴が 「あの…えと………と、とぅまぁ…」 『みことのこうげき。みことははずかしそうに、かみじょうをなまえでよんだ。 かみじょうに1000000000のダメージ。かみじょうはみことからめをはなせなくなった』 上目遣いで繰り出された美琴の攻撃は、上条の鉄壁の理性を簡単に崩壊させるほどの圧倒的破壊力を持っていた。 今、上条のハートには美琴から放たれた矢が100本くらい刺さっている。 (……だ、抱きしめてもいいだろうか…) もう胸が苦し過ぎる。 美琴が可愛過ぎて抱きしめたい衝動にかられたのだが、付き合ってもいないのに女の子を抱きしめるのはどうかと思い、上条の両手は宙をさまよっていた。 端から見ればただの変人だ。 目の前の美琴も『え…何コイツ?』みたいな表情をしている。 (…ていうか名前で呼ばれたし、いつもと反応が違うってことは、増強剤の影響を受けてるってことか…それって普段俺のことなんとも思ってないってことだよな…) それを考えると上条は急に悲しくなってきた。 宙をさまよっていた手も下がり、これからどうしようかと思った時だった。 「ッ!!?え、ちょ、お、おい御坂!!」 上条は美琴に抱きつかれていた。 美琴の腕は上条の背中に回され、密着した状態だ。 「み、御坂さん!?あの、ここ人前なんですけど、ああでも離れてほしくない。ちょ、これどうするべき、なあ土御門……って電話切れてるし!!」 抱きつかれたことにより、上条の幸せメーターは一気に上昇。 どうしていいかわからず、電話の向こうの土御門に意見を求めようにも切られていた。 大好きな女の子に抱きつかれているのだ、当然上条は盛大にパニクる。 (こ、こここっこここっこここれはマジでどうするべきだ!?だ、だだだ抱きしめていいのか!?いいよな!?いいんだよな!?) 美琴の感触や匂いにより、上条は我慢の限界が近づいていた。 このまま抱きしめてさらってしまおうか、とか危ない思考にまで達してしまっている。 本当にどうすればいいのか。 上条は一旦美琴から視線を外し、周囲を見回す。 (周りにかなり人がいるけど…上条さんはもうこれ以上我慢できません!!!) 本当に限界だった。 思い切り抱きしめてしまおうと思い、抱きついている美琴に視線を移したのだが、美琴は顔を上条の胸に埋めているため表情がわからなかった。 だが、それが逆に上条を冷静にした。 (……だよな。俺のことなんて…普段はなんとも思ってないよな…) 冷静になった上条は今、美琴に抱きつかれているのは『増強剤』の影響だと再認識した。 もし幸せそうな美琴の顔を見てしまっていたら、そのまま意味もなく美琴を抱きしめ、上条は青ピのように暴走してしまっていたかもしれない。 そして上条は抱きついている美琴を自分から引き離した…かと思いきや、逆にギュッと抱きしめていた。 その状態で、上条は美琴に告げる。 「こうしたことも記憶からなくなるんだよな……でもな、みさ…いや美琴。言っとくぞ。俺はお前が大好きだ。だから俺は絶対にお前を好きにさせてみせるぞ。」 こう言っても増強剤の影響を受けているのだから、意味がないことくらいわかっている。 薬の効果が無くなれば、美琴からは『上条に惚れていた』、という記憶も無くなるのだ。 それでも上条は言っておきたかった。 これは上条の決意だ。今の騒動が解決したら振られることなど恐れずに、想いを伝えるということだ。 「……ん?」 と、腕の中の美琴が何やらもぞもぞと動いている。 なんだ?と思い、抱きしめる力を少し弱めると、上条の胸に埋まっていた美琴が真っ赤になった顔を見せ、下から見上げていた。 (う…可愛い…) せっかく落ち着いたはずの理性が削り取られるほどの可愛さだった。 そんな上条に、美琴は震えるような声で言った。 「あ、あのね、わ、わた、私も!ア、アア、アンタのことが、だ、だだ、大好き、だよ?」 「ッッッ!!??!?…………お、おう。」 美琴が可愛過ぎる。 顔を真っ赤にして、上目遣いでこちらを見てくる彼女とまともに目を合わすことができない。 上条は美琴の顔が見えなくなるように、美琴を自分の胸に押し付けギュッと抱きしめた。 (ち、違うぞ上条当麻。御坂は薬の影響を受けてるだけなんだ。だから意識すんな俺!!) その通り。 意識してはならない。 美琴の言葉は本心ではなく、薬に影響されたまやかしの言葉なのだから。 (よし、落ち着いたしそろそろ離そうかな……い、いやもうちょっとだけ…) 自分の決意を言うだけ言ってすぐに離すつもりだったが、あまりに美琴の抱きしめ心地がよかったので誘惑に負けてしまった。 さらに抱きしめる力を強めたのだが、その際美琴の様子が何やらおかしいことに気づいた。 「……御坂?どうした?力が抜けてきてるみたいだけど…」 「…ふにゃー」 「ええええええええええ!!??!?ど、どうした急に!?だ、だだだ大丈夫か!!?」 美琴は急に全身の力が抜けたように崩れ落ちかけ、上条が慌てて抱きかかえる。 美琴は上条の腕の中で、気絶してしまっていたのだ。 その顔はとても幸せそうだった――――― ♢ ♢ ♢ 上条達がいる場所から数キロ離れた地点に、とある集団が街を徘徊していた。 目立つ服装や格好の者が多く、通行人からなかり視線を浴びていたのだが、集団は特に気にする様子を見せない。 そんな集団の先頭に立っているのは、長身で赤髪の神父。 「全く…あのバカはなんで迎えにこないんだよ。」 そうため息まじりに言うのはイギリス清教の魔術師、ステイル=マグヌスだ。 “あのバカ”とは土御門のことであり、ステイルはタバコをふかしながら、ぶつぶつと愚痴を呟く。 「まあそう言うなよ。自由に動ける分、楽でいいじゃないのよ。」 と、ステイルに後ろから声をかけるのは、天草式十字正教の一員である、建宮斎字だ。 今回はアックアもいないし、思う存分学園都市を観光できるということで、かなりテンションが高い。 そんな建宮にステイルが振り返って言う。 「まあ…そう言われると気も楽になるけど…………一つ聞いていいかい?」 「ん?何なのよ?俺の答えられる範囲ならなんでも答えるのよな。」 「じゃあ遠慮なく質問させてもらうよ。さっきまでここにいた、女性陣はどこへ行ったのだい?」 「へ?」 そう言って建宮の後ろを指差すステイルに、建宮は後ろを振り返る。 ……いない。 女性が誰もいない。 神裂も、五和も、レッサーも、オルソラも、アニェーゼも、その他の女性も、とにかく一緒に来たはずの女性は消え去っていた。 残っているのは、野郎だけである。 建宮の顔から血の気が引いていった。 「浦上と対馬もいない!?う、牛深、香焼、野母崎、諫早!お前ら何が起こったか見てなかったのか!?」 残っている天草式十字正教のメンバーに尋ねると 「い、言いづらいんすけど……全員街中へ行っちゃったっす。」 「それもかなりの勢いで…」 「俺の考えだと、みんな上条当麻に会いに行ったんじゃないか?」 「いや浦上とか対馬とかシェリーは違うだろ。買い物に行った人もいるのでは?」 彼女達の目的はともかく、全員が勝手にどこかへ行ってしまったらしい。 「………い、一大事なのよーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Love is blind
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/115.html
イギリスのウォータールー駅から徒歩五分の所にある日本食街。 その一角の中にある、とあるスシレストラン 『AMAKUSA』 は、開店してから日が浅いものの、従業員の接客や、 メニューの豊富さ、さらにイギリス人好みの味付けなどにより、すっかり地域に住む人の人気スポットとなった店である。 時刻はまだ朝を迎えたばかりであるため、人通りは少ないが、ランチ時や夜などにはお客の絶えないところでもある。 そのレストランからさらに10分ほど離れたところには、そこで働く従業員一同が住めるよう、アパートメントひとつを 丸々借り切った建物がある。 そのアパートメントの一室で、一人の少女が一心不乱に作業をしていた。 「ふんふふんふんふーん♪」 鼻歌交じりに作業を続ける彼女。ともすれば簡単そうな作業に見えるかもしれないが、意外に手先の器用さが求められる それを、しかし、鮮やかな手捌きでこなしていく。 そうして、彼女がなおも作業を続けていると、 『トントン』 と、ノックの音が響いた。 「はいはーい。どうぞー」 手元の作業を止めずに、返事だけを返す少女。 部屋の主の返事を聞いて、キィ、という音とともに扉が開けられる。 「五和ー、準備できたー? もう朝ごはんだよー………って、うわっ、何これ?!」 半分ほど開いた扉から顔を覗かせながら少女に呼びかけた女性はしかし、部屋の中のありさまを見て思わず声を出した。 「これって、アイリス………? こんなに沢山、いったいどうしたのよ………って、あんた何やってんのよ?!」 慌てて問いかける女性の目を追えば、五和と呼ばれた少女が傍らに挿してあった花瓶の中からアイリスの花をまとめて 何本か引き抜き、その茎から葉っぱをむしっているところだった。 「何って、見ての通りですけどー?」 問いかけられた五和の方にはしかし、慌てた様子は無い。 おもむろに全ての葉っぱをむしり終えると、葉っぱを手元に取り置き、残りの花を別の花瓶に挿し替えていく。 そして、何枚かの葉っぱをまとめると、違う葉っぱでそれを器用に縛っていく。それが済むと違う葉っぱをまとめ上げ、 また葉っぱで縛っていく。そうして手元の葉っぱが無くなれば、また花瓶からアイリスを引き抜いて葉っぱをむしっていく。 彼女は先ほどからこの作業を繰り返していたようである。 「…………いやまったく分かんないんだけど?」 部屋に入ってきた女性がその光景を見ながらなおも問いかける。まあ、うら若き少女が部屋にこもって一心不乱にむしった 葉っぱを束ねているのを見て一発で何をしているかなんてまず分からないだろう。これが花を束ねているのならばまだ理解も しやすいというものだが、葉っぱの方をとなると、首を捻るしかないというものである。 そんな女性の様子に、五和は手元の作業をやめて向き直り、説明をする。 「もう、今日は五月五日ですよ。端午の節句じゃないですか。だから、その準備をしてたんですよー」 そう言われても、女性の方は今ひとつ理解しかねている様子である。 「いや、今日が五月五日で端午の節句だってのは分かるけどさ、何でアイリスの葉っぱをむしってんの?」 もっともな意見である。端午の節句にアイリスは関係ないはずである。……いや、直接的な関係は無かった、筈? それに対して、 「あ、それはですねー、本当は菖蒲(しょうぶ)を用意したかったんですけど、ここじゃ用意できなかったんでアイリスで代用して みたんですよー。やっぱりこういうのは形が無いと盛り上がりませんからねー」 どうやら菖蒲の代わりにアイリスの葉っぱを使って何やらやっているのか、と答えを聞いた女性は再び作業を再開した五和と その周りにある幾つかの出来上がった品物を見て、ようやく合点がいったように呟いた。 「ああ、なるほど、薬球(くすだま)か………」 端午の節句。 古代中国にその起源を持つとされるそれは、中国においては邪気を払い健康を祈願する日とされ、野に出て薬草を摘んだり、 蓬で作った人形を飾ったり、菖蒲(しょうぶ)酒を飲んだりする風習があった。蓬や菖蒲は邪気を払う作用があると考えられていた。 現代の日本においても菖蒲や蓬を軒に吊るし、菖蒲湯(菖蒲の束を浮かべた風呂)に入る風習が残っている。 日本においては、男性が戸外に出払い、女性だけが家の中に閉じこもって、田植えの前に穢れを祓い身を清める儀式を行う 五月忌み(さつきいみ)という風習があり、これが中国から伝わった端午と結び付けられた。 宮中では菖蒲を髪飾りにした人々が武徳殿に集い天皇から薬玉(くすだま 薬草を丸く固めて飾りを付けたもの)を賜った。 かつての貴族社会では薬玉を作りお互いに贈りあう習慣もあったという。(現代電子演算相互互助辞典:Wikiより引用) 「で、こっちのやつは何なの?」 そう問いかけられた先には、薬球と呼ばれた品物よりも幾らか作りの甘いようにも見受けられる物があった。 「そっちのは、菖蒲湯に使うためのものですよー」 言われてみれば、確かに菖蒲湯に使うものはあまりガチガチに固めておいては上手くいかないだろう。 しかし、 「菖蒲湯をアイリスで、ねぇ………」 「えー、良いじゃないですか。手に入らないのならあるもので代用すればいいんですし。私たち天草式はその土地その風土に 溶け込んで発展していくものですよー。菖蒲もアイリスも似たようなものですし、大丈夫ですよー」 対する五和は実に楽観的に話している。 しかし、五和の部屋にあるアイリスの花から作られたもの、いや、現在進行形で増え続けているものは明らかにその量が 多いように思える。この部屋全体を埋め尽くすほどのアイリス、まあ、そこから葉っぱだけを取ったとしてもその数は今現在 このアパートメントに住んでいる住人全てと照らし合わせてもいささか多いように見受けられる。 それについて尋ねられると、五和は、えへへ、と照れたように笑いながら、 「あの人にも、あげたくて……」 と体をもじもじとさせながら言った。 ふむ、と女性は軽く息を吐きながら考える。 彼女が言う 『あの人』 とは、故郷である日本の学園都市と呼ばれるところに住んでいるある学生のことだろう。 以前起こったとある事件の折に知り合って以来、どうも五和はあの少年のことを想っているようである。 彼女と歳の近い者たちは何かと五和のことを応援? していたようだが……。 そんな彼女の耳に五和のさらなる声が聞こえてくる。 「それに、この前の上巳のときに送ってもらった内裏雛は上手くいかなかったみたいですから、今度は霊装自体が失敗しても 菖蒲湯にしてもらえば大丈夫ですし………」 五和の視線の先には、一体の人形が机の上に置かれていた。 どことなく五和の姿に似せて作られたそれの隣には、何か、似た大きさの物が納まるような空間が空いている。 『内裏雛(だいりびな)』 内裏が代理に繋がる霊的意味を持つこの人形には、本来もう一つ男の形をした人形が存在する。 いや、存在した、と言った方が正しいか。 過ぎる三月三日の上巳の節句の折、内裏雛の片割の、ある少年の姿を模した人形はやはり海を越えて学園都市に送られた。 そして、少年の身の回りで起こる災厄をその身を挺して少年を守るという使命を立派に果たしたのだが、あらゆる異能の力を 打ち消す少年の持つ右手によりその存在を終えた。 そのことを同じ霊装である女雛たる人形を通して知った五和は、今度は霊装自体が壊れても大丈夫なようにと、次善の策まで 用意しているようである。 「なるほどねぇ……」 想いを持つ少女の行動に対し、いささかの呆れと感心のこもった言葉をついた女性は、もうしばらく好きにさせていようとそのまま 部屋を出ようとする。 「ま、何はともあれ早くしなさいよ間に合わないわよ?………」 「それに、菖蒲湯で朝風呂に入ると気持ち良いですし………」 二人の声が重なる。 「え?」 「え?」 ぽかんとした五和に対して、慌てたように女性は尋ねる。 「あ、あんた、これ、朝風呂に使ってもらえるように渡すつもりだったの?!」 そのただならぬ様子に不安げに顔を曇らせながら五和が 『は、はい、』 と返事をすると、 「ば、馬鹿! あんた時差のこと考えてなかったでしょ! “イギリスのこっちが朝だったら日本のあっちはもう夜じゃないのさ!!”」 その、言葉に、 「あ………ああああああーーーーーーっ!! しまったーーーーーっ!!」 アパートメント中に響き渡るほどの声を上げて五和は頭を抱えていた。 「なになに、今の声?」 「なんかあったの?」 「ちょっとー、昨日遅かったんだからこんな朝から大声出さないでよー」 部屋という部屋から彼女たちと同じ天草式の面々が飛び出して五和の部屋の前に集まってくる。 彼らが恐る恐る部屋の中を覗き込むと、床にへたり込んでがっくりとうなだれている五和の姿があった。 というか、かなり尋常じゃない位の落ち込みっぷりである。 何かを呟いているようなので耳をすませてみれば、 「うう………、わたしのわたしの馬鹿ばかバカ………!! ちょっとした思い付きでいい気になってるもんだからこんな単純な事に 気付かないのよ………っ!! こ、こんなことだからいつまでたってもあの人に伝わらないのよ………っ!! ………!!」 見ていて哀れを通り越して不憫である。 最初に五和を呼びにきた女性から訳を聞いた面々もさすがに居た堪れなくなったのか、 「ド、ドンマイだぞ五和。これくらいの失敗は誰にだってあることだ!!」 「馬鹿! そんなありきたりの励ましなんかじゃ駄目だろ!」 「そ、そうです五和、今回は駄目でしたが、今度頑張れば良いじゃないですか!!」 「今度っていつだよ!?」 「えーっと、そう、次は七夕です七夕!! 次の節句の時にはこの教訓を生かせばいいだけのことです!!」 「そ、そうだぞまだ次の節句があるじゃないか落ち込むのはまだ早いぞ!!」 そんな励まし? の言葉に、うずくまっていた五和がようやく顔を上げる。 やがて、言われた言葉を反芻してようやく理解し終わると 「そうですよね! これくらいであきらめたり落ち込んでいたりしてちゃ駄目ですよね!? 分かりました! 次の七夕の時には この教訓をちゃんと生かします!!」 えらく立ち直りの早いもんである。 「ようし、次の七夕に向けて早速準備するぞ!」 「今度の節句には天草式が全面的に協力するからな!!」 「どうせなら今度だけじゃなくて節句ごとにするってのはどう?」 「いいなそれ!」 「じゃあこれから節句ごとに五和がプレゼントするのを応援するって事で!」 「「おーー!!」」 とたんに沸き立つ天草式の面々。揃いも揃ってノリノリの様子である。 だから当然、 「え? ちょっと? これから節句ごとにこういうことするの? 本気なの? ちょっと?!」 という女性の意見があったことは誰の記憶にも残らなかったのである。 「で、盛り上がってんのはいいけどよ。こんだけの量の薬玉と湯種をどうするつもりなのよ?」 皆に遅れてやってきた一人の男、天草式十字凄教教皇代理、建宮斎字は呆れながら尋ねた。 それに対して一同が固まっていると、質問をした建宮はガリガリと頭をかきながら 『しょうがねえなぁ』 と呟くと、集まっていた 面々に指示を出す。 「あーっと、あれだ、薬玉の方は一人一個ずつもらっとけ。こんだけいりゃなんとかなるってもんよな。あと、残った湯種の方は どうすっかなあ……。ま、いいか。なんとかなるのよ。あてもいくつかあるもんだしのよ」 その夜、イギリスのランベス区において少なからぬ浴槽に奇妙なものが入っていたという。 「はあ、何やら今日のお風呂は不思議な物でございますね。何か変わった趣向なのでございますか?」 「趣向なんてたいしたもんじゃねえだろうよ。ただの草が放り込んであるだけじゃないのかしら?」 「ええっ! これ、ただの草なんですか?! なんだか汚そうですよぅ!」 「あらあら、でもなんだかいい香りもしますですよ」 「む、そういわれてみればかすかにいい香りがしないでもないでやすね」 「貴女は本当にそう思っているのですか? なら何故さりげなく葉っぱを遠ざけようと波を送っているのですか?」 「とっ、遠ざけようとなんかしちゃいやせんよ……!!」 「ご心配なく。これは日本に伝わる風習で薬湯浴のようなものです」 「ふーん。相変わらず日本ってのはおかしな風習があるもんなんだな極東宗派」 「(しかし、菖蒲の代わりにアイリスを使うとはいったい何を考えているのやら………)」 「ん? なんか言ったか?」 「いえ別に。とにかく、害があるわけでも無し、ゆっくりと湯につかったらどうですか?」 「へいへい」 「なっ、なんでありうるのよこれは!? 湯船という湯船に怪かしげな草が放り込んであるとは、一体どういうつもりでありうるのか!? さてはこれは一日の激務で疲れた体を癒すための私のささやかたる楽しみを奪わんがための陰謀に違いなきのことね!! くっ、イギリス清教のために身を粉(こ)にして励みたる私に対して何たる仕打ちたるのか!! されど、かかる仕打ちに対して いまさら湯を交換している時間もなし……。ええい、やむを得んのよ。今宵はこのままで湯に浸かりたるしかなしにつきなのよ。 ううっ………………あら? 何だかかすかにいい香りがするのことよ。ふむ……、意外にそれほど悪しきものでもないのかも しれなきね………。ふむふむ………」
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2728.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者 第5章 ②恋と少女と生き方 美琴が目を覚ますと、何となく肌寒く心細い感情に襲われた。 いつも上条の寮で目を覚ます時は大好きな上条を抱きしめ、その温もりを心行くまで堪能していた。 しかし昨日オルソラの暮らしていた家で上条に裸を見られ、そして綺麗だと言われた瞬間に美琴の中で何かが変わってしまっていた。 悪いことでないのは分かっている。 だがその変化が上条と美琴の今の関係を壊してしまいそうで、美琴は何処か恐怖を感じていた。 美琴はベッドから出るとまだ毛布に包まりながら眠っている上条の横に立つ。 「…当麻、私達はずっと今の関係でいていいんだよね?」 しかし美琴の期待を裏切るような行動に上条は出るのだった。 上条は美琴の独白を聞いていたのか、美琴に答えるように上条は呟いた。 「いいわけねえだろ!!」 「えっ、当麻!?」 上条は素早くベッドから立ち上がると美琴を抱き寄せ、荒々しく自分の唇を美琴に押し付けた。 「んっ!?」 いつもの優しいキスとは違い、まるで蹂躙するかのような一方的なキス… 美琴は一体何が起こっているのか理解できなかった。 唇を重ねたまま、美琴は自分が眠っていたベッドの上に押し倒される。 「当麻、やめ…っん」 美琴は上条に抗議しようとするが、再び上条によって唇を塞がれる。 (これって大人の!?) 初めてのディープキスに美琴は頭が蕩けそうになりながらも、激しい恐怖に襲われる。 このまま男女の一線を越えてしまうのだろうか? 別に上条とそういう関係になるのが嫌なわけではない。 しかし上条が初めて見せた男としての性に美琴の頭はついていけなかった。 そしてそれと同時に美琴は自覚した。 自分は上条にとって少女ではなく一人の女だったということを… すると今まで自分が上条にしてきたことが凄く浅はかなことだったような気持ちになる。 悪戯に上条のことを刺激し、上条のことを苦しめていたのだ。 だが上条に申し訳なく思う以上に、今は美琴の心を恐怖が支配していた。 (恐い…恐いよ、当麻) そんな美琴の気持ちを察したように、上条は美琴から自分の唇を離す。 「当麻?」 「…分かったか、自分が俺にとってもう一人前の女だってこと」 「…うん」 申し訳なさそうにしている美琴のことを上条は優しく抱きしめる。 それはいつもと同じ上条の優しさが伝わってくる抱擁だった。 すると先ほどまで美琴が感じていた上条への恐怖はすっかり治まっているのだった。 「上条さんも男子高校生ですから、こういったことに興味が全くないわけじゃないんですよ」 「ごめんね」 「謝らなくていい。 俺は何があっても美琴のことを大切にするって誓ってる。 にも拘らず、経緯はどうであれ美琴を恐がらせるような真似をしたんだ。 …悪かった」 「ううん、私が当麻のことを苦しめていたから…」 「いやいや、美琴に甘えてもらって上条さんも嬉しかったんですよ。 ただ美琴が俺のことを恋人として信頼してるんじゃなくて、信頼できる只の知り合いって見られてる気がしてな。 ちょっと悔しかったから、男としての俺の一面も見せておきたかったわけです」 「…そうだね。 私が当麻のことを大好きなことには変わりないけど、少し卑怯な関係を押し付けてたかもしれない」 「分かっていただければ、上条さんも幸いです。 別に今から俺たちの関係を無理に変える必要はないけど、恋人だって色んな段階を踏んで次のステージに進んでいくんだ。 だから変わることを恐がるんじゃなくて、寧ろ喜んでその変化を受け入れなきゃな」 「うん」 そして上条は美琴ともう一度唇を重ねる。 それは先ほどと違い、互いの気持ちが通じ合った優しいものだった。 こうしてちょっと荒々しい朝を終えてイタリア旅行の二日目が幕を開ける。 二日目になってもやはりガイドは現われず、他のツアー客もホテルに宿泊している様子はなかった。 それならそれで構わないと上条と美琴はオルソラから貰ったメモを持ってヴェネツィアに向かうのだった。 「で、何でお前らがいるんだ?」 せっかく水の都・ヴェネツィアに行くのだ。 少し遠回りになるが上条と美琴は水上バスでキオッジアからヴェネツィアに向かうことにした。 そしてその水上バスに奴らはいた。 「いやー、奇遇なのよな。 お前さんたちもヴェネツィアに?」 上条の問いに答えたのは建宮斎字。 他に五和を初めとする数人の見知った天草式の面々が同じ水上バスに乗り込んでいた 「いや、白々しいにも程があるだろ!? このバスに乗ってる段階でヴェネツィアに行くのは明らかだろうに…」 「一緒に行動するのに、異論はないな?」 「決定事項なの!?」 「いくら恋人同士とはいえ二人きりで旅行とは些か見過ごすには大きすぎる案件なのよな。 まあ、お前さんに限ってふしだらなことはせんと思うけど…」 しかし建宮がそう言った瞬間、上条も美琴も外から見て分かるほど顔を真っ赤にした。 「なっ、まさかお前さんたち、男女の一線を越えてしまったんじゃ!?」 顔を赤くする上条と美琴とは対照的に天草式の面々の顔は蒼くなる。 「ま、拙いですよ、教皇代理。 このままじゃ我々の計画が水の泡に…」 実際に情事に至った訳ではなく先ほどのことを少し思い出して顔を赤くしているだけなのだが、天草式がそのことを知る由もない。 天草式にとって仲間は家族同然のものであり、各メンバーの幸せを願っている。 そしてそれは上条に想いを寄せる五和に対しても同様だ。 特に五和は先の戦いで深く傷ついており、上条とのメールを支えに何とか無事に回復していた。 だから上条に恋人がいて鉄板だと分かっていても、どうしても五和の恋が叶うことを願わずにはいられない。 それ故に今の天草式は半ば暴走状態にあった。 「上条当麻!!」 「ど、どうしたんだよ、いきなり大声出して?」 「覚悟しておくのよな!!」 「何を!?」 こうしてヴェネツィア本島での空回りな騒動が巻き起こるのだった。 上条たち一行がまず初めに向かったのは、ヴェネツィアの中心であり玄関口でもあるサン・マルコ広場だった。 サン・マルコ寺院、ドゥカーレ宮殿、コッレール博物館、新政庁、時計塔に囲まれて広場は賑わいを見せている。 そして広場には音楽の生演奏が流れており、何処か気分が浮き足立つのだった。 だが天草式の面々はここで早くも計画の先行きに暗雲が立ちこめているのを痛感することになる。 「美琴、逸れるといけないから…」 「うん」// 今朝のようなことがあったばかりなので何処か上条に甘えることを躊躇っていた美琴だが、 上条が差し出してくれた腕に抱きつくようにして上条に並んで歩き始める。 「当麻」 「どうした?」 「えへへ、何でもない」 そんな二人の様子を見て天草式は呆然としていた。 「フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ…」 「ちょっと、五和しっかりしなさい!!」 生気のない顔で微笑みながら不気味な笑い声を漏らす五和を、姉貴分である対馬は正気に戻るよう揺さぶっている。 「あのー、教皇代理。 五和に深刻なダメージが残らない内にあの方から離れたほうがいいと思うんですけど」 天草式の最年少のメンバーである香焼は建宮のそう進言するものの… 「いや、まだなのよな!! 過ごした時間が圧倒的に違うのだから好感度に現段階で劣るのは必定。 これから向かうサン・マルコ寺院で好感度の飛躍的上昇を狙うよな!!」 暴走している教皇代理に届くことはなかった。 「そしてここには9世紀にエジプトから運ばれた聖マルコの遺体が納められてるんです」 「へー、じゃあこの建物自体が大きなお墓みたいなもんなのか」 「はい、そういうことになりますね」 「あと気になってたんだけど、あの羽のついたライオンには何か意味があるの?」 「あれはヴェネツィアの守護聖人であるサン・マルコのシンボルで、ヴェネツィアで行われる映画祭のデザインにも…」 上条と自然と会話を交わしている五和の様子を見ながら天草式は作戦が上手くいっていることに安堵していた。 観光スポットを丁寧に案内することによって自然と会話を弾ませ、二人の仲を縮める作戦だった。 思った通り上条も食いつくように五和に質問を続けている。 「ふふ、これで上条当麻の五和への高感度は鰻上りなのよな。 美琴嬢には悪いが、我々は何としても五和に幸せになって…」 「そう上手くいくかしら?」 「ど、どういう意味なのよな!?」 対馬は無言で上条たちのいる方向を指差す。 「サンキューな。 五和のお陰でただ見て回るだけじゃなくて勉強になったよ」 「い、いえ、そんなことは」// 「いや、本当に感謝してるって。 なっ、美琴?」 「ええ。 建築物の歴史的背景を知って見学すると、また違った見方が出来るものね。 ありがとう、五和さん」 「…どういたしまして」 ハッキリいって周りから見ると、カップルに専属で付いているガイドにしか見えなかった。 「…」 「…ねえ、建宮。 五和に幸せになってもらいたいのは、ここにいる皆の願いよ。 でも五和や美琴さんを傷つけてまで無理やり手に入れても…」 「じゃあ、どうするのよな!? またあの憔悴しきった五和に戻れっていうのか!? あの事件が終わった直後の五和は酷い状態だった。 体の傷だけでなく心が現実に負けちまっていたのよな。 それが上条当麻とメールを繰り返していく中でみるみる元気を取り戻していった。 俺がお前らに全てを託したことが原因ってことは分かってるのよな。 だとしたら俺はどうやって責任を取ればいい!?」 建宮の悲痛な叫びにその場にいた天草式のメンバーは押し黙る。 「これもあの時、女教皇様が助けに来てくださってれば…」 誰かがポツリと呟くように言った。 女教皇が掲げた理想に則って天草式はいつも行動の指針を決めていた。 しかし先日の大敗北を受け、天草式の女教皇への信頼は揺らぎ始めていた。 同じ組織に所属するようになっても殆ど顔を合わせることもない。 実際は天草式を出て行った聖人を未だに女教皇と慕っているだけなのだが、 彼女にとって天草式はその程度のものだったのだろうか? 誰も言葉に出しはしないが、今となっては女教皇を逆恨みしてるメンバーも確かに存在するのだった。 その後も博物館やヴェネツィアを流れる運河を渡るゴンドラに乗るなど観光を進めるものの、天草式の作戦は上手くいかなかった。 やがて日は傾き始め、街全体に西日が差し始める。 天草式もタイムリミットを悟り五和の恋が残念な結果に終わることを受け入れ始めていた。 しかし五和自身だけがまだ勝負を諦めきれないでいた。 そしてヴェネツィアにおいて一つの恋が終わりを告げようとしていたのだった。 「美琴さん、二人きりで話したいことがあるんですがよろしいですか?」 「…分かった。 当麻はここで待ってて、すぐに済むと思うから」 美琴に言われて、上条はその場に静止する。 理由は分からないが美琴からも五和からも強い決意のようなものを感じた。 上条は何処かに移動しようとする美琴と五和の背中を見守るのだった。 「それで話って何かしら?」 美琴と五和の二人は運河を見渡せる橋の上にいた。 五和は美琴ではなく、運河を見つめながら言った。 「上条さんを私に譲っていただけませんか?」 「…譲るも何も当麻は私の所有物じゃないから」 「いいえ、あなたと上条さんはお互いの心をそれぞれ預けあってる。 私には分かるんです。 あなたは上条さんの心を、上条さんはあなたの心を、それざれ胸の内に抱えてることを…」 「…」 「私は上条さんがいないと駄目なんです。 上条さんのことを心に描いてないと、あの一方的な暴力に蹂躙された記憶に殺されてしまうんです!!」 「…あなたと私はよく似ている。 当麻に絶望の淵から救い出されたことも、そして当麻がいなければ生きていけない点も」 「…」 「でも一つだけ決定的に違う点があるわ」 「違う点ですか?」 「あなたは過去の絶望に囚われて後ろしか見ていない。 でも私は前を見て現実と戦う決断をした。 当麻はあなたが後ろを見ている限り、あなたに振り向いてくれることはない」 「でも上条さんは私にも優しくしてくれてますよ!!」 「それはあなたが前を向いて歩き出すのを手伝おうとしてるだけ…」 「いくら上条さんの彼女だからって少し傲慢すぎませんか!?」 「傲慢なんかで言ってるんじゃない。 さっきも言ったでしょ、私とあなたはよく似ている。 もし私とあなたが当麻に出会った順番が逆であなたが一歩踏み出す決断をしてたなら、 当麻は私の隣じゃなくて、あなたの隣にいたはずよ」 「…ずるいですよ、知ったような口を利いて。 そんなのを聞かされたら、あなたと上条さんが本当に深い場所で繋がってるのが全部分かっちゃうじゃないですか!! そうしたら私は諦めるしか…」 「ほら、そうやってすぐに後ろを向く。 言ったでしょ、後ろを見てる限り当麻があなたに振り向いてくれることはないって」 「うっ」 「私とあなたの違う点をもう一つ発見したわ。 例え何があっても私は欲しいものを諦めたりしない!!」 「!!」 「まあ私は大切なものを決して手放したりもしないけどね」 「…どうなっても知りませんよ?」 「前を向く覚悟は出来た?」 「ええ!!」 初めは運河を眺めていた五和も今は美琴のことを正面から見据えている。 その目には強い光が宿っているのだった。 「今日のところは帰ります。 残りの旅行も楽しんでくださいね」 「ありがとう」 五和はその場から走り出す。 しかし少し離れた場所で足を止めると美琴の方に振り返って叫んだ。 「でも美琴さんはまだ中学生なんですから、一線を越えるようなことだけはしちゃ駄目ですよ!!」 そして今度こそ五和は走り去るのだった。 やがて五和の姿が見えなくなると美琴は呟くように言った。 「いるんでしょ?」 すると建物の影から上条が顔を覗かせた。 美琴の発する電磁波によるレーダーで上条がいることは筒抜けだったのだ。 「女の子同士の会話を盗み聞きなんて性質が悪いんじゃない?」 「…悪い」 上条は罰が悪そうな顔をして美琴の隣に並ぶ。 「五和の奴、最後に凄いこと叫びながら走って行ったな」 「ふふ、そうね」 上条は自然と美琴の肩を抱き寄せ、二人は密着するように並ぶ。 「なあ、さっきの話の一部分だけ修正させてもらっていいか?」 「どの部分?」 「五和には悪いけど、例え出会う順番が逆だったとしても俺は美琴のことを好きになったよ」 「…馬鹿」 そして夕焼けに染まるヴェネツィアの街を上条と美琴は歩き始める。 こうしてイタリア旅行の二日目は幕を閉じる。 それから残りの日程も過ぎ去り、旅行最終日になった。 だが旅の終わりを締めるその日に上条はある大きな決断を迫られることになるのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/316.html
「じゃあそろそろパーティーの開会の挨拶をしましょうか。というわけで飾利ちゃん、よろしく!」 「ええええええっ! そ、そんな、私なんかが……」 「パーティー立案者にして一番頑張ってた飾利さんが私的には一番相応しいと思うけどみんなは~?」 パーティー主催者達は詩菜の言葉に力強く頷く。 それを見た初春は嬉しくて涙が出そうになったが何とか堪え、深呼吸をしてから開会の挨拶を始めた。 しかしこの時、初春の裏モード(恋愛や幸せに妥協無し状態)が入ってることには本人も気付いていなかった。 「みなさん、今日は私達主催のパーティーにお集まりいただき、本当にありがとうございます。このクリスマスにこうして巡り会ったのも運命だと思います」 「そしてこれだけの皆様に祝福を受ける5組のラブラブカップルの皆さんに数多くの幸運が舞い降りることを切に願います。その祝福を受けるラブラブカップル、それは彼らです!」 そして初春が右手をかざすと5組のラブラブカップルにスポットライトが当てられる。 いきなりの紹介に5組とも何も言えなかったが、少しして揃って絶叫する。 「「「「「「「「「「な、なんだってーーーーーーーーーーーー!!!」」」」」」」」」」 「あらら、土御門のそのようなお相手がいたことに驚きを隠せずなのよ。いとめでたきことなるな♪」 「ほう、あれが上条当麻の想い人の美琴か。成程、良き相手を見つけたのである」 (いいなぁ、私だってウィリアムとラブラブなのに……) 「これはこれは。祝うべき相手がこれだけいると盛り上げる甲斐があるというものだな」 驚く主賓五組の気持ちなど知らずに招待客は暢気に、しかし楽しげに彼らを見ていた。 主賓五組の気持ちが落ち着いた(初春視点で)のを確認すると、初春が笑顔で挨拶を続ける。 「今宵この時、五組の皆さんがこのパーティーを良い思い出としてくれるなら私を含む主催者一同、それはとても喜ばしいことです」 「五組の絆がこの先もずっと強くあって欲しい。そう思い、私達はこのパーティーを企画しました」 「ふむ、あの花飾りのメイド、なかなかだな。うちで働かせてみたいものだ。連れて帰ろうか」 「母上、それは立派な誘拐だから止めといた方がいいんじゃねーの?」 「なら了解を取ればいいだけでしょ。それなら母上が誘拐したことにはならないんだから」 英国王室の面々の無茶な発言に突っ込みを入れたい騎士団長だが、初春の挨拶が終わっていないので黙ることにした。 「ではそろそろ最期の言葉をと言いたい所ですがここで私達、というより私から注意事項があります。よーく聞いて下さいね♪」 初春の雰囲気が変わった瞬間、とてつもないプレッシャーを主賓達と招待客は肌で感じ取った。 そんな初春から今までの挨拶を台無しにしかねない注意事項が告げられる。 「招待客の皆様はこの主賓の五組のカップルを祝福してくれる、そう信じてます。というか絶対ですね」 (な、何なのであるかこのプレッシャーは! これがあの幼き女子から発せられたものだというのか!) 「で・す・か・ら♪ パーティーを台無しにするのは勿論、カップルの仲をこじれさせる、最悪、この日を以って破局なんてことはタブーですよ?」 (こ、怖いな……。持ち帰りは保留とした方が良さそうだ……) 淡々と発せられる初春の言葉に招待客、ひいては主賓達は得体の知れない恐怖を感じていた。 そんな雰囲気を発してるとはこれっぽっちも思っていない初春は無邪気に、しかし残酷な言葉を告げる。 「もしそんなことをしたら社会的に抹殺……というのは冗談ですけど、こちら側からのお仕置きをプレゼントします♪」 (何ですの、初春の冗談が冗談に聞こえませんの……) 「でも安心して下さい。お仕置きといっても軽いもので『メッ!』程度ですから♪」 そう言って初春が紹介したのは戦闘態勢を取っている(服はメイドと執事)神裂、建宮、そして絹旗だった。 ちなみに3人が3人とも、意外とノリノリだということは秘密だ。 「七閃か唯閃、どちらかは選ばせてあげましょう(もし最大主教がやらかしたら迷わず唯閃です)」 「飾利姫の邪魔をするってんなら仕方ねぇ、今日がお前さん方の命日だ(見てるのよね飾利姫! この建宮斎字の雄姿を!)」 「相手が誰でも病院送りは超覚悟してもらいます(どさくさに超紛れて浜面と建宮を……)」 この三人なら全員で抑えれば大丈夫だと普段ならそう思えるのだが、それが出来ない何かを主賓達と招待客は感じ取っていた。 そんな重苦しい雰囲気を壊したのは、この雰囲気を作り出した初春だった。 「ですがっ! それ以外なら何をやっても構いません! カップルを弄るも良し! いちゃつくのも良し! のろけまくるのは大歓迎です!」 「「「「「「「「「「おいっ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」 「最期に私の乾杯の音頭をもちまして挨拶と代えさせていただきます。今宵、皆様に最高の祝福と幸せな時間があらんことを。カンパーーーーイッ!!!」 「カンパーーーーーーーーイッ!!!」×全員 そして世界で一番騒々しいクリスマスパーティーの幕が上がる! 数分後 「さあって、美琴ちゃんと当麻くんの歴史を語ってもらいましょう♪」 「ん?それは是非とも聞きたい物だ♪」 「私も聞くにつき~!!」 「私も気になるしー!!」 「こう言うのは聞いた方が面白いのよね」 「一応聞いておくか…」 ウィリアムはただ単に、このいちゃいちゃ空間に馴染めないから逃げたいだけである。 「…ウィリアムが聞くなら私も聞きます。」 「ちょっと待てい!!話す前提になっているのは何故でせう!?」 「「「「「気になるから♪ただそれだけ♪」」」」」 英国女王もいるので下手に答えられない。 「「不幸だーーーー!!」」 上条は記憶喪失なので結局は美琴がこの間と同じ 『5秒で終わる上琴史』 の講義にして終わらせようとしたのだが。 「なんか足りないわね~。そうは思わない皆さん?」 「あらあら美鈴さん的にはこういう話題はじっくりとっくりと?」 「私もそう思う。のう騎士団長。」 「たしかに。英国女王陛下の諮問に対する回答としては不十分かと。」 「騎士団長!?なんでそこでノるの!?」 「上条当麻。騎士たるもの正々堂々とだな…」 「俺は騎士じゃねぇっ!」 すると英国女王が怪しげな細長い包みを手にして言った。 「英国女王の名に於いて命ずる。包み隠さず話せ♪さもなくばこの包みを解かねばならぬ。」 「「「「「「ちょっと待てぃ!!!」」」」」」 上条と3王女、騎士団長に神裂が叫ぶ。 「女王陛下!!まさかのカーテナですかっ!!??」 「いやなに、この国の刀工になオリジナルとの戦闘で出来たひびを直せるものがいると聞いてな。」 「言い訳にしか聞こえませんのことよ!!だってさっき楽しんでたから!!」 ちなみに男性陣は(特に青ピの)格好がすさまじ過ぎるということで普通の服に戻っている。 上条達がぎゃあぎゃあ騒ぎおわると。 「あれ?美琴何処行った?」 「月夜もいないぜい。」 「黒子はん??」 「滝壺?………っ!!絹旗!!貴様何か知ってるだろっ!!!」 「超何を言ってるんですか?超知りませんよ。」 「嘘つけ!!今笑ってただろっ!!」 「まさか最期に着てもらおうと思ったウエディングドレスと白無垢を見つけられるとは……」 「仕方ないですよ神裂さん。アホ毛ちゃんのような小さな子の行動力を侮っていたのが悪いんですから」 ウエディングドレスと白無垢を隠していた部屋に、上琴新居を探検していた打ち止めが偶然入って今に至っている。 打ち止めは自分のサイズのウエディングドレスを見て目を輝かせている、それはもう盛大に。 「ウチの子が何やら迷惑をかけてしまって申し訳ないじゃんよ」 「いいえ、謝ることじゃないですから。アホ毛ちゃんは悪いことは何もしてないんですから。ね? アホ毛ちゃん」 「ヨミカワは気にしなくていいんだよってミサカはミサカはむしろこんな素敵なものを隠してた初春おねーちゃんをジト目で見つめてみたり」 打ち止めの横ではアンチスキルの緊急出動に駆り出されて遅れた黄泉川が打ち止めの頭を抑えていた(芳川は抜け出した一方通行の相手)。 そこへ打ち止めだけ先取りは不公平だと思った初春が残る主賓の女性陣を呼んでもらうように頼んだ佐天が戻ってきた。 「あ、お疲れ様です佐天さん。美琴お姉ちゃん達は?」 「うん、ちゃんと連れて来たよ。でもいいの初春? ここでそれのお披露目をしちゃってさ」 「まあこの程度のズレなら大丈夫ですよ。それにこうゆうのもパーティーの楽しみと思えばいいんですから♪」 「初春、わたくし達に見せたいものとは一体何ですの? まさかさっきのようなコスプレでは無いでしょうね?」 「やだなー白井さんったら。私がそんなことするわけないじゃないですかー。それに皆さん、昨日でさんざん恥ずかしい格好してましたし♪」 昨日の自分達のコスプレを思い出した美琴、黒子、月夜は顔を真っ赤にして恥ずかしがる。 そんな3人の反応を楽しみながら、初春はウエディングドレスと白無垢が置いてある部屋へと通す。 「うわぁ、すっごく綺麗……」 「初春、もしかしてこれをわたくし達に?」 「うそ、夢みたい……」 「すごいでしょーってミサカはミサカはとっても喜んでみる!」 「この白無垢、とっても素敵」 主賓の女性陣の予想以上の反応に初春、佐天、神裂は心の底から喜びを感じていた。 感動してる5人を見た初春は意を決して佐天と神裂に指示を出す。 「佐天さんは詩菜さんと美鈴さんを呼んで来て下さい。神裂さんは白雪さんのお色直しをお願いします」 「りょーかいっ! 絹旗も呼んでこよっか?」 「そうですね。それに男性陣も着替えてもらう必要がありますし。絹旗さんには○○さんと浜面さんをあの部屋に運ぶように言っておいて下さい」 「しかし初春。奥方お二人と私を入れても3人です。二人足りませんが?」 「そうゆうことなら私も手伝う。それに桔梗も呼べば5人じゃんよ。打ち止めは桔梗で浜面の彼女はあたしに任せてもらえるじゃん?」 その場にいた黄泉川が芳川と一緒に手伝ってくれると言ってくれたことに初春達は感謝した。 いきなりのことに頭がついていけない主賓の女性陣の代表として美琴が初春に尋ねる。 「あの、初春さん、一体何を?」 「大したことじゃありませんよ美琴お姉ちゃん♪ 今から皆さんにそれぞれが選んだ衣装を着てもらうんです♪」 「(否定してもらいたいけど……無理よね)き、着てもらうってそれってつまり私がこのウエディングドレスを着てと、当麻の前に……?」 「その通りです! 皆さんの最高に綺麗な花嫁姿を皆さんに見てもらうんです!」 初春の宣告に打ち止めと滝壺以外の面々は顔を真っ赤にさせて嫌がったが、初春はそれが心のからの嫌悪ではないと見抜いていた。 当然、彼女達をその気にさせる言葉も用意済みだ。 「でも皆さん。それを着た皆さんを見て、男性陣がより一層惚れてくれたら嬉しいですよね?」 「「「うんうん!!!」」」 「そして皆さんと同じくお色直しをして素敵になった男性陣の雄姿、見てみたくないですか?」 「「「見てみたい!!!」」」 「なら決まりです♪ 最高に可愛い花嫁さんになって皆さんの前でお披露目ですよー!」 「「「「「オーーーーーーーーッ!!」」」」」 数分後 「初春さん、ちょっときついかも…」 「美琴お姉ちゃん、私のことは飾利ちゃんって呼んでください。」 「え、ああ…えーっとさすがにちゃんづけは恥ずかしいから飾利さんじゃダメ?」 「う~ん…まあ良いですけど。じゃあ美琴お姉さんって呼びますね。」 「うん、そっちの方がいいわ。ってウグ!!キツイって言ったのに何でさらに締める?」 「あっ、ゴメンナサーイ。」 「きぬはた、何悩んでるの?」 「いや~、超悩んでるんじゃなくてですね。超意外に滝壺さんってスタイルいいなーって思いまして。」 「…ありがとう。」 「こら打ち止め!!動いちゃだめじゃんよ!!」 「だって早く見せたいんだものーってミサカはミサカは膨れて動こうとしてみたり。」 「動いたら逆に時間かかるじゃん。」 「はーいってミサカはミサカは落ち着いてみる。」 「黒子さん似合ってるー」 「そういう月夜さんだって。」 確認のため。 ウェディングドレス:美琴/月夜/打ち止め 白無垢:黒子/滝壺 女性陣が着替えているころ男性陣はというと…… 「なあ土御門、一方通行。青ピと浜面は?」 「ありゃりゃ? あの二人もいつの間にか居なくなってるぜよ」 「どうせトイレだろ。……ったく、こっちは予想外のことで疲れてンだから下ンねェことで呼ぶンじゃねェよ」 青ピと浜面はすでに絹旗に気絶させられ(『窒素装甲』での手刀で)、お色直し部屋へと運ばれていた。 ちなみに一方通行はさっきまで芳川に勝手に抜け出したことで色々と問い詰め&からかわれ、疲労状態である。 「あー、3人とも。ちょっと話を聞いて欲しいのよな」 「建宮……。まさかさっきのコスプレをもう一度しろって言わねえよな?」 「違うのよな。実はみんなに着替えて欲しい服があるのよね」 「もう騙されないにゃー! そうやってまた俺らを玩ぶつもりだろ!」 初春から残る三人の説得を任された建宮だったが、早速難航していた。 絹旗一人でこの三人を相手にするのは無理だと判断した初春の人選だった。 しかし先程、もの凄い恥ずかしいコスプレをさせられた彼らの不信感は相当なもので心を開いてくれない。 「信じて欲しいなら証拠を見せてくれ! 証拠を!」 「そうだそうだー。服がまともなモンならこの場で見せてくれてもいいはずだぜい」 「そ、それは出来ないのよな……。飾利姫の頼みで、ちゃんとしたお披露目をしたいという願いなのよ」 「ハッ、何だそりゃ下ンねェ。だったら俺達は協力しねェ。大体、頭に花が生えてるバカっぽいガキの考えてることなンざ……っ!」 一方通行の初春に対する暴言にさすがに当麻も土御門も止めようとしたが、その前に一方通行が言葉を詰まらせた。 三人はフランベルジェを一方通行の喉元に突きつけ、殺気を纏った建宮に身を竦ませた。 ちなみに残りのパーティー参加者はアックア以外、そんな彼らの様子を特に気にも留めていなかった。 「調子こいてんなよクソ餓鬼共。飾利姫たっての願いだ黙って従え。特に白いの、貴様は後で飾利姫に詫び入れろ」 (建宮、口調忘れてるけど、突っ込んだら俺達、間違いなく殺されるな……) (ここまで怒ってる建宮は初めてだな。今は下手に動かない方が良さそうだ。ま、後で弄れそうなネタはゲット出来たし♪) 「だ、誰がテメエなンぞの言うこと聞くかよォ! いいぜ、こうなったらこの家もろともテメエをグッ!」 建宮の殺気に恐怖しながらも一方通行は怒りに任せてチョーカーの電源を入れようとしたが、その前に崩れ落ちた。 そのことで我を取り戻した建宮が見たものは、騎士団長が当麻と土御門を気絶させている場面だった。 「自分を取り戻したようだな建宮。気持ちは分かるがまだまだ修練が足りないぞ。私一人で3人は重いからお前は土御門を運んでくれ」 「申し訳ないのよ騎士団長。ところで二人を運んでるということは騎士団長、まさか……」 「ああ、パーティーの為だ、私も手伝おう。安心しろ、下手な真似はしないさ。そうしたらお前の姫君が悲しむだろう?」 騎士団長にからかわれながら、建宮は騎士団長と一緒に男性陣のお色直し部屋へと向かった。 その際、パーティー会場のことは建宮は対馬を筆頭にした天草式メンバーに、騎士団長は何故かアックアに任せた。 その頃、気絶から回復した青ピと浜面の前には刀夜と旅掛が立っていて…… 「はっ!!カミやん父!!ここはどこや!!」 「絹旗め…」 「まあまあ、落ち着いて落ち着いて…」 「で、その衣装はどうかな?」 そういって鏡をとりだす旅掛 「「おお!!」」 「なんでボクはさっきの蝶エレガントなスーツじゃないんや!!」 「つっこむ所違うだろ!!」 「君達の彼女は白無垢だからそれに合わせたんだが…」 「「…」」 己の彼女の白無垢の姿妄想中… そして、鼻からどろっとしたものが流れた。 「うさみみ付けるとさらにグット!!」 「同感や!!」 この子達を育てた親の顔が見たいとおもった刀夜と旅掛だった。 と、そこに健宮と騎士団長に担がれた上条、土御門、一方通行の姿が…。 「なっ!!??カミやんが負けたぁ!?」 「学園都市最強まで!!??」 「いやなに峰打ちをくらわせただけだよ。なあ建宮?」 「そうなのよな。それと上条達を着替えさせるのを手伝って欲しいのよ。」 「「了解(でんがな)♪」」 数分後。 「あァ?なんで俺はぶっ倒れてンだァ?」 「あれ?なんか建宮に着替えろと脅されて…」 「にゃー。どうも夢を見てるみたいだぜい。なぜかというと青ピ達が似合わぬ和服姿だにゃー。」 「夢やあらへんで!!」バゴッ 「似合わねえとかひどくないか!!」ボコッ 和服2人が3人をたたき起し、 旅掛と刀夜がにやりと鏡を3人に見せる。 その鏡にうつっていたものとは… 「「「だあああああああああああああああああ!?」」」 「グラサンがないにゃー!!」 「「そっちかよ!?」」 「何をいう!?グラサンは俺のチャームポイントだぜい!?」 にゃーにゃーギャーギャー言ってるとドアが開いた。 「「「「「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」」」」 ドアから入って来たものたちを見ると、十六歳の純粋少年達は迂闊にも鼻血がでてしまった。 そこには嫁入り衣装を着た己の彼女の姿があった。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2216.html
色んな方に「上琴SS」頼んでみたらドイヒーだった 色んな人に「上琴SS」書いてもらったらカオスだった の続編 インデックス 作 「お店で短髪と会ったんだよ」より抜粋とうまと入ったそのお店の中で、短髪を発見したんだよ。うさぎさんのイラストがいっぱい描かれたそのパジャマを、握り締めて唸ったんだよ。……私から見ても子供っぽすぎるかも。 けど、それはいいんだよ。問題はそこからかも!そしたらさ!とうまが短髪に声をかけたんだよ!私と一緒にお買い物中なのにさ! 「ようビリビリ。それ買うのか?」 「にゃ~~~!!!な、なんでアンタがこんなところに ―――――――作者から一言 「これは本当にあったことなんだよ。全くとうまは!」 神裂火織 作 「私と貴方と洗濯機」より抜粋トクン、と自分の心臓が動く音をはっきりと耳にしたのです。「俺は美琴のことが……好きなんだ」それは、彼の口からフッと自然に出た言葉でした。言うつもりの無い言葉でした。自分で自分の発したその一言に驚きを隠せない彼は、ただ顔を赤くしたまま呆然と立ち尽くしていたのです。一瞬、彼女には何が起こっているのか分かりませんでした。春の風がふわりと頬を撫でて、ハタハタと靡く洗濯物の音だけが聞こえてきます。洗い立てのシーツの香りが鼻をくすぐり、同時に脳裏に ―――――――作者から一言 「これを読んで頂いた皆さんに、少しでも楽しんでもらえたのなら幸いです」 建宮斎字 作 「激エロメイドのご奉仕タイム」より抜粋その、ある種、裸の方がまだ恥ずかしくないようなメイド服に、流石の上条当麻もタジタジなのよ。「な、な、何なんだその格好!!?」「こ、こ、これを着ればアンタが喜ぶって聞いたから……い、いいからとっととご奉仕受けなさいよ!!」確かに、こんなシチュエーション、男なら誰だって喜ぶのよな。代われるもんなら代わりたいのよ。ただし、そこはやはり上条当麻なのよ。こんな誰もが羨む状況の中、事も有ろうこんなことを言いやが ―――――――作者から一言 「初めてだけど面白かったのよ。今度は女教皇様や五和をモデルに書きたいのよな」 アニェーゼ=サンクティス 作 「女子寮パニック」より抜粋「全く、急に来やがるもんですから、女子寮内はてんやわんやですよ」「わ、悪いアニェーゼ……」そう、つい先程まで、私達イギリス清教女子寮で暮らすメンバーは、大掃除に追われてたのです。そんな破目になっちまってたのは、コイツからの急な一本の電話が原因でした。なんでも上条当麻・美琴夫妻は、お世話になった人たちに結婚報告するために、世界中を回ってるらしいのです。ですが彼の不幸がそうさせたのか、ここイギリスで、予約していたホテルが全焼しちまったって訳ですね。で、困った彼等は泊まれるところを探し、ここイギリス清教女子寮に ―――――――作者から一言 「結構しんどかったです」 ステイル=マグヌス 作 「無題」「愛してるぞー美琴ー」「嬉しいわー当麻ー」 THE END作者から一言 「……二回もこんなくだらない事、させないでくれるかな」 ローラ=スチュアート 作 「若者たるは恋に悩みし生き物なりけり」上条当麻には悩みがありける。「はぁ~…どうしたれば美琴を気持ちが伝わりたもうか……」そう、かの少年の悩みたるは、想ひ人、御坂美琴のことなりけるのよ。なれど、自分に自信なき少年は、その気持ちたるを※ 途中で飽きたため未完作者から一言 「めんどき事は嫌なのよ! こんな事しても一銭の得にもならなしにつき!」 佐天涙子 作 「フォークダンスをもう一度」より抜粋その様子に、周りからは拍手が喝采しました。こうして、お二人は大覇星祭の伝説となったのです。 ↑ここで回想終わりです。↑「美琴。これからも俺と一緒にいてくれ」「うん……」お二人は夕日をバックに踊り続けました。あの時と同じように ―――――――作者から一言 「こういうのって面白いですよね!また機会があったら呼んでくださいね~」 初春飾利 作 「一人のためのコンサート」より抜粋御坂さんは、今にも震えてしまいそうなその手を押さえるのに必死でした。それでも演奏は続きます。ふと見ると、御坂さんの目には上条さんの姿が映りました。(アイツが聞いてる…ちゃんと伝わってるのかな。この曲に込めた私の気持ち……)バイオリンの音色がコンサートホールに響き渡ります。たった一人のお客さんのために演奏されたその曲は ―――――――作者から一言 「これが本当のことだったらいいんですけどね……」 食蜂操祈 作 「操り恋人形」より抜粋「美琴、俺ハオ前ヲ愛シテイル。付キ合ッテクレナイカ?」「なっ!?なっ!!?な~~~~!!!?」上条さんが私に操られてるともしらず、顔を真っ赤にする御坂さんには爆笑力がこみ上げて来るわねぇ。もっとも、その反応力が見たくてこんな事してるんだけどぉ。(そろそろネタばらしして、御坂さんの絶望した顔でも見ようかしらぁ)なぁんて思ってた時に事件は起こ ―――――――作者から一言 「御坂さんが主役ってのは不快力があるけどぉ…それなりに楽しめたから特別に許しちゃうゾ☆」 寮監 作 「逢引相手は幻想殺し」より抜粋その男は、噂に聞くあの幻想殺しだった。いや、今はその事はいい。問題はこの女子寮に男を連れ込んだことだ。私は御坂に喉輪を決めるとその場に捨て、この少年を私の部屋に呼び出した。「さて、君は何をしたのか分かっているのか?」「す、すみません…これには訳がありまして……」「例えどんな訳があろうと、この常盤台女子寮に ―――――――作者から一言 「というか、だ。何故私が御坂の恋の話を書かねばならないのだ」 白井黒子 作 「お姉様 嗚呼お姉様 お姉様」より抜粋お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉 ―――――――作者から一言 「お姉様は誰にも渡しませんわよ!!!」 風斬氷華 作 「プリクラの魔法」より抜粋「ほら、アンタ顔が引きつってるわよ!」「し、仕方ないだろ!? こういうの初めてなんだよ」「あっ、ちょっ、何勝手に変なボタン押してんのよ!」「えっ!? わわ悪い!!」初めてのプリクラに、上条さんは勝手が分からないらしく、狭いボックスの中で二人はワタワタとしていました。仕方なく御坂さんは ―――――――作者から一言 「前回は重い話でしたので、今回は明るめにしたんですけど……お、面白かったですか…?」 結標淡希 作 「ショタ条くん、はじめてのおつかい」より抜粋「じゃあ、お肉と牛乳をお願いね?」「わあったー!!」ショタ条くんは元気よく返事をすると、ちっちゃいお財布を持って歩き出したわ。目指すはスーパー。果たしてお買い物は無事できるのかしら。(大丈夫かしら……)心配になった御坂は、こっそりショタ条くんの後をついて行く。結局あの後、彼の体は元には戻らなかったけど、最近はこのままでもいいかな、なんて ―――――――作者から一言 「ショ、ショタ条くんは、需要があるから書いただけで、別に私の趣味とかじゃないからね!?」 絹旗最愛 作 「私を映画の世界に超連れてって」より抜粋喫茶店に入った二人は、今観てきた映画の話で超盛り上がってました。「超面白かったわね!特にラスト5分の超どんでん返しには超驚いたしね!」「だな! それとヒロインの女優さんが超泣くシーン!あそこで俺も、もらい泣き超しちまったよ!」あまり期待しないで観た映画だったのですが、意外と超面白かったらしく ―――――――作者から一言 「…もしかしたら私には、超脚本家の才能があるのかもしれません」 番外個体 作 「お相手は…?」より抜粋それは聞きたくない言葉だった。「いままで黙ってたけど……俺、美琴の他に付き合ってるヤツがいるんだ」「……誰…なの……?」けどこの後おねーたまは、更なる衝撃を受ける事になる。「相手はその……ア、一方通行なん ―――――――作者から一言 「ギャハハハハハ!!マジ傑作!! ミサカ天才かも!!」 削板軍覇 作 「根性列伝」より抜粋その時!ズガーンゴドーンとなった!男はバゴーンとなり、「うおおおおおお!!!」となった!女もドバーンとなり、「でりゃああああ!!!」となった!根性と根性がぶつかり合い二人ともババババババーーと ―――――――作者から一言 「なかなかの出来だ!根性を入れて書いた甲斐がある!!」 オリアナ=トムソン 作 「欲情の果てに」より抜粋「美琴…もう、我慢できないよ……」「だ…めぇ……と…ま、はぁ…あ……」当麻は、美琴のそのてらてらと艶めかしく光る××に××させ、×××××××× ―――――――※ 一部不適切な表現がございましたことを、深くお詫び申し上げます。作者から一言 「また規制されちったわね……お姉さん、濡れ場がないと盛り上がらないんだけどな~?」 アレイスター=クロウリー 作 「ミッションK」より抜粋プランEからFに移行。幻想殺しが超電磁砲に接触。二名の監視を続行。二名は女性用小物店に入店。ハプニング発生。背後より浜面仕上接近。プランFから急遽Hへ移行。猟犬部隊を使い、邪魔者【はまづら】を速やかに排除。二人の監視を続 ―――――――作者から一言 「ふむ。たまにはこんな戯言に付き合うのも悪くは無い」 浜面仕上 作 「二度目の罰ゲームと第一次暗部抗争 アイテムサイド」より抜粋麦野の機嫌が悪いせいで、俺とフレンダはガクブルだ。まぁ、麦野の気持ちも分からなくはないけどな。なにしろ、いくら大金のためとはいえ、「上条当麻と御坂美琴のデートを邪魔しろ」なんてくだらない仕事、麦野じゃなくても嫌になる。電話の向こうのあの女も、なんでこんな仕事を俺達に ――――――― 一方通行 作 「二度目の罰ゲームと第一次暗部抗争 グループサイド」より抜粋土御門は言いにくそォにポリポリ頭を掻き、黙り込ンだ。「ちょっと!何黙ってンの!? 早く説明しなさいよ!」結標の言う事ももっともだ。今回はよほど面倒な仕事らしィが、それは今に始まった事じゃねェ。今までの仕事だってクソみたいなもンだったはずだ。海原の野郎も同じ意見らしく、三人に睨まれ土御門は、やっと重い口を開いた。「え、えっと…だにゃァ……今回の仕事は、『幻想殺しと超電磁砲のデートが成功するよォに、全力でサポートする事』……らしいぜィ……」その場の空気が凍りつ ――――――― 浜面仕上 作 「二度目の罰ゲームと第一次暗部抗争 アイテムサイド」より抜粋突如消えた絹旗については、滝壺に任せればいい。麦野の特殊メイクの技術力にもツッコミたいところだが、今はそれどころじゃない。なにしろ俺の目の前にいたのは……「こ、駒場のリーダー!!?」そう、そこには死んだはすの駒 ――――――― 一方通行 作 「二度目の罰ゲームと第一次暗部抗争 グループサイド」より抜粋「こっちは成功。結標が邪魔な女【きぬはた】を排除したしたぜィ。そっちはどうかにゃァ?」「海原の野郎がドジ踏みやがった。 まさか知り合いがいたとはなァ……駒場の姿【へンそう】が仇となったか」「チッ…仕方ないぜィ。ここはお前の出番だにゃァ」「だがどォやって接触すンだ。俺は三下共に面が割れてンだぞ?」「こンな事もあろォかと、用意はしておいたぜィ!!」そォ言って土御門が取り出したのは、まぎれもなくセーラー服だった。意味は分からないが、嫌な予感ははっきりする。「これを着て、お前は今から百合子ちゃんに ―――――――作者から一言 「今回は一方通行との合作っつーんで、暗部時代を題材にしてみたぜ」 「言っとくがコイツはフィクションだ。俺はセーラー服なンざ一度も着た事ねェからな」 御坂美琴 作 「私とアイツのラブらb※ 前回の続きから書こうとしたが、やはり途中で気絶したため未完作者から一言 「ふにゃー」 上条当麻 作 「上琴を買うために」より抜粋楽器専門店を何軒も回ってはみたものの、やはりどこに行っても上琴、つまり「上質な琴」はお値段が高すぎる。そこで俺は、上琴を買うためにバイトすることを決意したのだ!まずは基本、コンビニのバイトを ―――――――作者から一言 「で、結局上琴ってなんなのでせう…?」
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/1246.html
登録日:2012/06/12 Tue 16 15 17 更新日:2024/07/14 Sun 12 26 15 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 P・K・O アオキ アーツビジョン クロダ グイード・ミスタ ストライダー飛竜 フェロ☆メン ユーリ・ローウェル 今泉俊輔 凜雪鴉 名瀬・タービン 声優 声優項目 帽子 愛島セシル 犬塚キバ 犬声優 玉壺 石丸清多夏 神奈川県 胡散臭い役が似合う人 茅ヶ崎市 謎の新ユニットSTA☆MEN 鳥さん 鳥海浩輔 鳥海浩輔(とりうみこうすけ)とは、アーツビジョン所属の男性声優である。 神奈川県茅ヶ崎市出身で1973年5月16日生まれのO型、おうし座。 概要 声優業だけでなく、歌を歌ったり、実写出演していたりと幅広く活躍している。 先割れさんとは、声質が似ているが、関係は不明である。 まあ、ぶっちゃけ本人そのものだが。 鈴木千尋とは『デ・ジ・キャラット』の頃から交流があり、よく弄ったりしている。 ……が行き過ぎて滅多に怒らない彼を怒らせてしまったとか。 テイルズのおまけDVDにて『ぶらり途中下車の旅』のパロディをさせられたことがある。 しかも実写出演である。 他にも小野坂昌也と番組で絡んだりもしている。 テイルズオブフェスティバルでは何度も出演しており、ほぼ常連と化している。 アニメ咎狗の血出演者とは比較的仲が良いようである。 『謎の新ユニットSTA☆MEN』のメンバーであり、そこから諏訪部順一とデュオ『フェロ☆メン』を組んでもいる。 性格はマイペースで天然。 杉田智和氏は自身のラジオなどで鳥海氏の天然エピソードを披露している他、 他人から「天然」と言われると「天然じゃない」と否定する鳥海氏を「本物の天然」と称している。 事務所のプロフィールの趣味・特技のところに料理と書いているが、むしろ息抜きに近いらしい。 料理の腕は和洋中、何でも作れるらしい。 また帽子、特に中折れ帽が好きらしく、顔出しの際は被ったまま登場する事が多い。 一説にはそのデコの広sうわなにするやめ 休みや時間が空いた時は家でぼんやりしてることが多く、ゲームなどはあまりしないという。 「死ね」と直接言うのは嫌らしく、最近は「くるぶし爆発しないかな?」と言っているらしい。 【声優として】 主に青年役やオッサン役が多い。 また、BL系CDへの出演が多い声優でもある。 『テイルズ オブ ヴェスペリア』のユーリや『NARUTO‐ナルト‐』の犬塚キバなど、犬を飼っているキャラクターが多いので、「犬声優」と呼ばれている時期もあった。 【主な出演作品】 〇アニメ・ドラマCD ユーリ・ローウェル(劇場版テイルズオブヴェスペリア) 犬塚キバ(NARUTO‐ナルト‐) キャプテン・アッシュ/アセム・アスノ ※第3部以降(機動戦士ガンダムAGE) 名瀬・タービン(機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ) 三蔵ストライクフリーダムガンダム(SDガンダムワールド ヒーローズ) グイード・ミスタ(ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風) 東晃一(アニメ 君と僕。) アキラ(アニメ 咎狗の血) リク=ハイゼンベルク(デ・ジ・キャラット) アンディ・W・ホール(アクエリオンEVOL) ゴレイヌ(OVA版HUNTER×HUNTER) ジルグ・ジ・レド・レ・アルヴァトロス(ブレイク ブレイド) 建宮斎字(とある魔術の禁書目録) 黒田坊(ぬらりひょんの孫) 冴木氷室(ハヤテのごとく!) ホットショット(トランスフォーマースーパーリンク) オレルド(PUMPKIN SCISSORS) ザエルアポロ・グランツ(BLEACH) 真中要(ダイヤのA) 逆巻シュウ(DIABOLIK LOVERS) カズサ=シン(熱風海陸ブシロード) 朝日奈梓(BROTHERS CONFLICT) 今泉俊輔(弱虫ペダル) カウンセラー(PSYCHO-PASS サイコパス) うろこ様(凪のあすから) 甲賀弦之助(バジリスク~甲賀忍法帖~) ヤス(世界征服~謀略のズヴィズダー~) 椴松鷲(龍ヶ嬢七々々の埋蔵金) 菜月賢一(Re ゼロから始める異世界生活) 陽炎のシヴァ(セイントビースト) 安倍蒼世(曇天に笑う) ジルグ(ブレイクブレイド) 逆巻シュウ(DIABOLIK LOVERS MORE,BLOOD) サニー(アイカツ!) 望月識(枕男子) レイ(北斗の拳 イチゴ味) 閃光のフラッシュ(ワンパンマン) ランスロット(ディバインゲート) アクノロギア(FAIRY TAIL) エルジュイア(エンドライド) 夜叉丸朔太郎(B-PROJECT ~鼓動*アンビシャス~) 協会さん(アクティヴレイド -機動強襲室第八係-) 烏頭(鬼灯の冷徹) 申公豹(覇穹 封神演義) 宇奈月大樹(美男高校地球防衛部HAPPY KISS!) 針生六四郎(アイカツフレンズ!) 林通具(胡蝶綺 ~若き信長~) 井口工(斉木楠雄のΨ難) キバナ(薄明の翼) ソラ(乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X) 玉壺(鬼滅の刃) アオキ(ポケットモンスター(アニメ第8シリーズ)) アークルーラー(シャドウバースF) ジルク・フィア・マーモリア(乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です) 石川啄木(ゴールデンカムイ) 鞍馬春秋(AYAKA -あやか-) 鈴木(変人のサラダボウル) ナレーション(しかのこのこのここしたんたん) ……etc. 〇ゲーム ユーリ・ローウェル(テイルズ オブ ヴェスペリア) アーチャー(EXTRA)(緑)(Fate/EXTRA) カーチス(ディスガイアシリーズ) カラス(バテン・カイトス) 三科栄吉(ペルソナ2) 伊織順平(ペルソナ3) 向坂雄二(ToHeart2) 石丸清多夏(ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生) ストライダー飛竜(ストライダー飛竜2、NAMCO×CAPCOM、PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD) ストライダー飛燕(NAMCO×CAPCOM) 藤井蓮/カール・クラフト=メルクリウス(Dies irae ~Amantes amentes~) 天魔・夜刀(神咒神威神楽 曙之光) 斎藤一(薄桜鬼) ブラッキー(ポケモン不思議のダンジョン マグナゲートと∞迷宮)※PV ゴルドー(UNDER NIGHT IN-BIRTH) ドゥバン・オーグ(第2次スーパーロボット大戦OG) リトル・マック(大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS/Wii U、大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL) 愛島セシル(うたの☆プリンスさまっ♪) 李典(真三國無双シリーズ(7~)) ヘクトル、ナーシェン(ファイアーエムブレム ヒーローズ) 三日月宗近(刀剣乱舞ONLINE) タケシ、キバナ(ポケモンマスターズ) ティエン・ザオ(Call of Duty Black Ops 2) ガイア・アルベリヒ(原神) ……etc. 〇その他 バッファローロード(仮面ライダーディケイド) エイサイヤミー(仮面ライダーOOO) 傷害犯ボーグ(未来戦隊タイムレンジャー) ヴァンナイン(海賊戦隊ゴーカイジャー) ライノダブラー(特命戦隊ゴーバスターズ) ナレーション、レインボーライン総裁(烈車戦隊トッキュウジャー) ヒドケイワルド(機界戦隊ゼンカイジャー) クロダ(王様戦隊キングオージャー) 凜雪鴉(Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀) 夢水清志郎(夢水清志郎) 追記修正は縦だか横だかわからないステーキを完食してからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 鳥海さんが悪いわけじゃないけどバッファローロードはキャスティングミスだと思う -- 名無しさん (2013-09-20 09 35 54) 鳥海さん嫌いじゃないけどメルクリウスはやり過ぎだと思う -- 名無しさん (2013-09-20 09 43 20) けど声カッコよかったよバッファロー。その他好きなキャラと言えばトリコのマッチ -- 名無しさん (2013-09-20 12 20 25) 先割r……いや何でもない -- 名無しさん (2013-09-20 12 32 24) 凸の後退が… -- 名無しさん (2013-11-09 22 58 31) やはり夜刀様の演技が素敵。 -- 名無しさん (2013-11-24 18 48 50) そろそろ戦隊でレギュラーとして出て欲しい -- 名無しさん (2013-11-24 18 51 18) ↑の続き それもカッコいい系の敵幹部で -- 名無しさん (2013-11-25 00 49 56) ↑の続き 無理かもしれんがトッキュウジャーに追加幹部役で -- 名無しさん (2014-02-14 19 12 43) 意識して知ったのがそうだからっていうのもあるが、ユーリかな。見た目で一瞬男女のどっちか迷ったのに答えをくれた声だった -- 名無しさん (2014-02-14 19 47 47) ↑2ナレーションになりました -- 名無しさん (2014-02-16 17 47 01) ↑まさかホントに出るとは思わなかった(汗) -- 名無しさん (2014-02-16 18 44 16) 凪のあすからのうろこ様と、弱虫ペダルの今泉も同じだね。薄桜鬼の斎藤もだ。ゴーバスのEDや悪役から、トッキュウのナレーションで一気に出世したと思った。 -- 名無しさん (2014-02-20 03 32 27) もしかして15美少女漂流なんとかにも出てた? -- 名無しさん (2014-03-24 21 30 54) 確か電王にも出てなかったっけ? -- 名無しさん (2014-06-09 01 32 53) 確かに青年役はよくやってるけどオッサン役なんてめったになくないか? -- 名無しさん (2014-06-11 10 23 11) 自分のキャラと出たシリーズには愛着湧く人なんだろうな、いい声優さんだ -- 名無しさん (2014-06-11 12 46 21) ラジオで、ガオガイガーでエキストラ出演したのがデビューだそうだ。 -- 名無しさん (2014-06-15 18 59 38) この人のナルホドくん好きなんだけどイマイチ評判悪いね -- 名無しさん (2014-06-15 19 21 34) この人は声優で成娯味トいなかったら、どうなっていたことやら -- 名無しさん (2014-06-15 21 26 48) 何気にガンダムパイロットもやってるや味謔ネ -- 名無しさん (2014-06-15 21 31 58) 最近穏やかになったよなこの人 -- 名無しさん (2014-06-29 15 31 32) 絶対トッキュウジャーでレギュラー化しそう。謎の声=レインボーライン上層部のメンバーとして。 -- 名無しさん (2014-07-12 01 32 08) イグゾーション=サンやってたな -- 名無しさん (2014-10-12 17 32 43) ↑10アントホッパーイマジンのアリの方だな。俺は結構好きだった -- 名無しさん (2014-10-12 21 15 17) 居合い・竜王一刀両断!! -- 名無しさん (2014-11-19 01 23 19) もしかして、テニプリの千石はこの人? -- 名無しさん (2014-11-19 07 06 27) ↑5大当たり!! -- 名無しさん (2014-11-19 09 51 35) たまにゴツ目のキャラやるけど、元々の声質が軽いせいか無理に押し殺してるように聞こえる -- 名無しさん (2015-07-20 08 38 37) 帽子を取りなさい -- 名無しさん (2016-02-07 13 32 30) ↑2スマブラのマックとか? -- 名無しさん (2016-02-10 14 46 01) この人が上手いせいだからなのか、声あててるキャラが嫌味いう時はなんか真剣に腹立たしくなる時がある。ユーリ然り千石さん叱りジュリオ兄様然り…逆にカッコいい時はイケメンすぎてやばい。個人的にストライダー飛竜がナンバー1! -- 名無しさん (2016-07-12 18 14 36) フロムの某鬼畜ゲーシリーズから生まれた「騙してわるいが…」の元ネタとなったキャラの声を担当してたりもする -- 名無しさん (2016-07-27 12 34 02) この人、声優になった動機が凄かった記憶が・・・。 -- 名無しさん (2016-07-27 21 30 25) てーか実写出演って何出てるの⁇ -- 名無しさん (2017-02-03 19 01 44) ちなみにデビュー作は家なき子レミだそうな -- 名無しさん (2017-02-09 14 00 44) 去年サラリーマンやラノベの編集者役だけど、色っぽい声でこんなサラリーマンいないだろうと -- 名無しさん (2018-03-02 20 54 32) 遊佐さん石田さんとともに一緒に胡散臭い声やらせたら右に出るものはいないのではないかな -- 名無しさん (2019-11-08 09 23 51) 凜雪鴉はハマリ役だった -- 名無しさん (2020-08-14 21 20 55) 名瀬タービンで惚れた -- 名無しさん (2021-09-24 01 11 17) ガッ………ガイアッッッ!!(人違い) -- 名無しさん (2022-01-27 05 58 12) 久々にジョジョ5部見直してたらミスタとトリッシュが入れ替わったところで爆笑したわ -- 名無しさん (2022-12-02 15 38 10) 本家wikiの情報がどんどん減っているからこっち見てほっとした!何があったんだあっちは -- 名無しさん (2022-12-31 21 47 59) 変な役しかこないとイジられてて今回もそんなキャラを担当する事に。 -- 名無しさん (2023-02-03 22 06 52) 情けない役に色っぽい役、オネエ系もやれて格好良い役もやれる方、凄いと思うんだけれど…しかも中々締まる役やられるから結構印象にも残るのになぁ -- 名無しさん (2023-02-03 22 52 13) 名前 コメント