約 61,872 件
https://w.atwiki.jp/arnghrt/pages/80.html
道路運送費用について 道路運送費用とは、今期に道路運送事業で使った資金の合計を表します。 道路運送費用には、2つの費用が混ざっています。 バスとトラックの運行費、トラックでの資材購入費が道路運送費用になります。 トラックで、隣町から買い入れると200万円/個で買います。 トラックで、資材置き場から買うと、160万円/個で買います。 しかし、資材置き場の場合は、鉄道売上が同時に上がるため、会社の資金としては変わりません。 トラックと資材については、次のページを参照に(トラックと資材?)
https://w.atwiki.jp/achdh/pages/65.html
第十話*②*③ Three years later... 細かい傷跡が残る古い銀製のオイルライターを擦過させ、点った火を紙巻煙草の先端に近づける。単に濃く苦い味ばかりが特徴の紫煙を肺腑へ流し込み、片手に持った電話子機の受話口に耳を当てながらノウラはワーキングチェアに腰を深く預けた。 「頃合いだと思っていたぞ、──シェルブ」 『その言草だと、既にコトは伝わっているらしいな。変らず、其方は業務熱心のようだ』 通信媒体を介しているとはいえ約二年振りに直接言葉を交わす、レイヴンズアーク時代からの古い知己の物言いに、軽くではあるが口許を歪めて見せる。とはいえ、特段互いの再会を懐かしむ間柄でもない為、一度紫煙を肺腑に含んでから吐き出した後、ノウラはそれに相応しい言葉を省略する事にした。 「其れは私達の要諦だ。この後に及んで気を害するモノでもあるまい」 『確かにな。だが、分水嶺には気をつけろよ。児戯の類でないとはいえ、私もお前も11年前に野に下った身だ。御上の庇護は受けられんのだから』 本人こそよく理解しているだろうその蛇足に相違ない忠告を適当に聞き受け、紙巻煙草を挟んだ指で眼鏡の位置を直す。 「知己の言葉、覚えておこう。支配企業とは言え、此方にとって大事な顧客だからな……」 社会的には【ターミナル・スフィア】の名称で通している独立企業体──遺失技術文化社団は創設時期こそ浅いもの、その業務内容と方針により支配企業グループを含む隷下企業とは堅密な利潤関係にある。 今から約11時間前、統一連邦領土付近の武装地帯でミラージュ社の差し向けた非公式戦力が何処ぞの独立系傭兵部隊を襲撃した。その始終を自社が秘匿保有している軍事衛星から、珈琲を片手に啜りながら丸々傍観していたなどという事が当事者達に知れれば、少なくない利益損失を招くのは想像に難くない話だ。 電話を介して話している当事者の一人のみは、例外だが……。 【ターミナル・スフィア】が非公式に一基保有している軍事監視衛星【エストラーダ】は、同組織が発足するより以前──今より11年前、レイヴンズアークに在籍していた当時に、ノウラが個人的に管轄権を引き継いだものである。故あって本人の管轄権から離れていた其れを、現役時代にレイヴンズアーク・アリーナのトップランカーを勤めていた電話相手と数人の有志達と共に、ある作戦の最中に奪取した。 その時の作戦を脳裏に思い出し、ノウラは軽く眼を細めた。レイヴンズアークが行ったそのアンオフィシャル・オペレーションを境に、古い知己──シェルブ・ハートネットはアリーナトップの称号とレイヴンズアークの社籍を返上し、組織から去った。 ──私は一線を退き、組織の暗部に留まった。 「……さて、和気藹藹と談笑に洒落込む間柄でもない。そろそろ、話を訊こうか……。こちらも気になる事柄が幾つかある」 『このホットライン、枝付きという事はないだろうな?』 その慎重な言葉にノウラは紫煙を強く吐き出し、はは、と短く笑った。豪胆の権化であったあの男が、そんな事を気にするようになったものだと、胸中で軽く驚嘆した。 「秘匿業務もウチの売りだ。統一政府の特別公安調査室にだって手は出させんさ」 半端に短くなった煙草を一気に吸い切って灰皿に押し付け、新しい紙巻煙草をデスク脇の専用ケースから一本抜き出す。ワーキングチェアから腰を上げ、執務室内の重層幹線道路に面した硝子貼りに歩み寄り、愛用オイルライターで紙巻煙草の先端に紅点を点す。 閉鎖型機械化都市【エデンⅣ】は商業区画の上空に、大規模なホログラム処理によって出力された未明の曇天が東の方角から、天外付随の日照設備の準備稼働によって俄かに明るくなりつつあった。幹線道路を早朝出勤の企業関係者を乗せた自動車が疎らに走り、周囲に密集して林立する摩天楼の群にも同様に灯が浮かび始めている。 『先日、ミラージュ社が実行した旧ナルバエス地方での古代遺跡制圧を知っているか?』 「……ああ」 ノウラはそれとなく言葉を濁し、その作戦に自らも半ば関与していた事実を伏せ置いた。知己のシェルブならば都合よく解釈してくれるだろうと、分かっていたからである。 先日、と言っても直接作戦にAC戦力を派遣したサンドゲイルにとっては、まだ消化不良の作戦であるだろう。旧ナルバエス地方で行われたその古代遺跡制圧作戦には、【ターミナル・スフィア】もミラージュ社からの直接の依頼で、二機のAC戦力を派遣していた。尤も、第一種制圧戦闘が依頼内容だった大多数のレイヴンとは異なる依頼に基づいて、だったが。 ──旧ナルバエス地方・施設識別コード:アスセナの施設調査及び不測事態における支援戦闘。 【ターミナル・スフィア】がミラージュ社から依頼された内容は第一種制圧戦闘ではなく、ミラージュ社が施設識別コード:アスセナと呼称する古代遺跡の内部調査であった。依頼内容(どこからそんな情報を仕入れてきたのかその詳細については訊かず──訊く気もなかったが)は、アスセナの最深度施設に保存されているとされる旧世代の重要凍結資材の確保とそれに伴う支援戦闘、及び公式作戦終了後の解析業務依頼の三本仕立てとなっていた。支援戦闘とはオマケのようなもので、実際の依頼は【ターミナル・スフィア】の主業務に則った非公式の依頼のみであった。 加えて第一種制圧戦闘についてはこの手の作戦に付き物のものという事で、フリーランスの同業者が一機、愉快な保険を兼ねた口封じ役として投入されたらしい。作戦の経過報告と事後処理から推測するに、そちらの依頼は作戦前か途中半ばで頓挫したようだが。依頼が達成できなかったという点については、戦力を派遣した此方も変わらなかったので、ノウラは胸中で密かに嘆息した。 元トップランカーが統率しているせいで密かに粛清対象となっていたサンドゲイルの事情については、その本人には黙っておくことにした。独立勢力となった時点で自らの経歴と含め、そのようなリスクを背負った上に、シェルブは独立系傭兵部隊を率いている。蛇足を言った所で何ら変わりはしないだろう。 【ターミナル・スフィア】としても結果的に緊急で舞い込んだ依頼に手間を取られ、アスセナ制圧作戦には関与できなかった。作戦終了後、ミラージュ社から送信されてきた事後報告には、施設識別コード:アスセナの最深度施設では、重要凍結資材に相当するものは発見されなかった──と、記載されていた。 本来なら【ターミナル・スフィア】への依頼はそれで終わりのはずだった。 それを能天気な面を下げて額面通りに信用してやれば、の話だが。 「有機体戦略支援機構──十一年前、お前は確かそう呼んでいたな」 『古い話だな。忘れているものとばかり思っていたが……。それがどうかしたか?』 燃え差しの紙巻煙草を口許で転がしながら、シェルブが今しがた口にした言葉を胸中で反芻する。返答に関しては、ただの振りに過ぎない。ノウラのその意図を何となく察知したらしく、電話向こうのシェルブは軽くため息をつき、 「始終を追跡したのなら、もう知っているのかもしれんが……。──"ソレ"の事だ」 ノウラは相手に気取られないよう、紙巻煙草を咥えた口許を大きく歪めて笑んだ。 「成程……、其方の置かれている事情は把握した。シェルブ、小僧にはよくよく言って聞かさんとな?」 『其れが出来るなら、こうはなっとらん。変らず厭な女じゃないか、ノウラ』 先日のアスセナ制圧作戦に置いてサンドゲイルが派遣したAC戦力──シェルブが手塩にかけて育て上げつつある新鋭の若年レイヴン。その少年が作戦行動を破棄し、途中で戦域離脱した事は既に本事務所の方で【エストラーダ】を扱い独自に把握していた。そのおかげで、ミラージュ社がサンドゲイルを強襲する場面に出くわすことができた訳だが。……とどのつまりは、そういう訳である。 ミラージュ社も施設識別コード:アスセナの周囲一帯に軍事衛星による広域警戒網を張り巡らせ、その最中でサンドゲイルが派遣したAC戦力の戦線離脱を捕捉したのだろう。前後状況と照会した結果、その戦力がアスセナ最深度施設で隔離保存されていた重要凍結資材を持ち去ったと推測、ミラージュ社は急遽非公式戦力をサンドゲイルの繋留するコロニーへ送り込んだ……。 旧グレイヴメイカーの一派が非公式戦力として派遣されていたあたり、別の要因がサンドゲイルにはあったようだが、それについては今思案すべき事案でもない。 支配企業の求める重要凍結資材に関してはそれが何なのか、そんなモノはノウラにとっては改めて調査するに及ばないモノであった。 兵器災害発生後、支配企業群が共同出資を行って運営していた、かの財団創設に関与していたノウラにとって、それは驚くべき種の話ではない。 「把握はしたが、それでどうする? 知己のよしみで気遣い程度はするがその先からはシェルブ、お前の判断次第だ……」 『ここから先は応交渉、独立勢力同士の商売という訳か』 「そう捉えてもらえると、コトが運びやすい。小僧には納得がいかんかもしれんが」 『……マイは俺が宥めよう。部隊解体の憂き目なんぞには変えられんからな』 アークを去った後間もなくして、シェルブがサンドゲイルを発足させた頃を薄く思い出す。マイという名前には聞き覚えがあった。確か、シェルブがその頃に孤児院から引き取った少年の名前だ。 「支配企業の一翼に啖呵を切ったんだ、穏やかな交渉の余地はないと思った方がいいだろう。──こちらに引き渡すか?」 『……それで安全の確度は?』 「此方が引き取った所で、せいぜいがとこ半々という所か。穏便に事を済ませるのなら、もう一つ手管が必要になってくる」 そう提言した時、電話の向こう側からシェルブの緊張を孕んだ無言の気配が流れ込んできた。商売相手──サンドゲイルにとってその進退がかかった交渉である。 「──是非に一度、調べてみたいモノだ」 『それだけか……?』 「焦るな。サンドゲイルの提供資材から得られた解析情報については、我社の業務方針に則り、それらが有価情報であると判断できた場合にのみ、相応の顧客へ売買する……」 【ターミナル・スフィア】は旧世代に関する史実や技術に関する情報収集・分析、加えて合法非合法を問わない依頼に基づく遺跡発掘、それらの長期保護などを主業務としている。創設経緯の特異性から、支配企業を含む隷下の系列組織などとは多く提携関係にあり、それはミラージュ社も例外ではない。 「色を付けた売却情報を判断材料に、此方から口利をして独立系傭兵部隊・サンドゲイルへの武力行使を無期限停止……こんな所でどうだ?」 『ふうむ……。少しばかり大きい貸しになりそうだが、仕方はあるまい……』 「いずれ何処かで返してもらう事とするさ」 本筋を辿れば、施設識別コード:アスセナの最深度施設で保管されていた重要凍結資材はミラージュ社の遺跡調査部隊によって発見、確保される予定だった。それが不測の事態によって回り巡りながら、結果的に【ターミナル・スフィア】の手に渡る。ミラージュ社にとっては保有権を放棄したうえに後塵を拝した形となる訳であり、サンドゲイルと【ターミナル・スフィア】の間に何らかの協定が繕われたと考えるのはおそらく当然の成り行きだろう。つまり、【ターミナル・スフィア】に対する顧客の点数も、ひとつ下がることになる。 まあ、それについてはサンドゲイルに追々貸しを返してもらう事にすれば済む話だとノウラは結論付けた。 (企業共も今すぐにでもという真似はすまい……) ──今回の件を含め、有機体戦略支援機構の確認は"四例目"。支配企業群にその所在が割れているのは、サンドゲイルの保有する一体のみ。【ターミナル・スフィア】にそれが渡ったと知れば、ミラージュ社を始めとする支配企業共がこぞってコンタクトを取りに来るだろう。 だが、単純な利潤関係と今後を考えるのなら、支配企業も喜び勇んで実力部隊を送り込むような愚行は犯さないはずである。有機体戦略支援機構の資材価値は、支配企業が考えているものと同様に【ターミナル・スフィア】にとっても業務遂行の要諦である。 『破壊された繋留コロニーの防衛ラインの復興支援をしなきゃならん。それに人目に付くような真似は避けたい。最低限の人員でエデンⅣまで送り届けるが、どうだ?』 「良いプランだと言いたい所だが、此方でも先日都市内部で問題があってな。ウチから人を送ろう。迅速且つ大胆に──引き渡しは20時間後、合流地点その他の詳細は追って送信する」 『いいだろう。最近奴さんの方じゃきな臭い噂をよく聞く。世の中もこんな情勢だ、何かが起き始めているのかもしれんな。11年前のように……』 過去を懐かしむようなシェルブのその言葉にノウラは一瞬だけ目を細め、咥えていた紙巻煙草を指にはさみ込んだ。肺腑に貯めこんだ紫煙を吐き出し、 「留意しろよ、シェルブ。お前達が思っている以上に、過去は私達を先回る……」 『ああ。ではまたな……』 短い別れの言葉を最後に、秘匿回線での古い知己との商談はあっさりと終わった。 スラックスのポケットから携帯灰皿を取り出して、短くなった吸殻を押し付ける。ソフトパックを縦に揺すって新しい紙巻煙草を抜き出す傍ら、ふと硝子貼りに映り込んだ自身の姿をノウラは見つめた。 「その通りだ、シェルブ。たったの五年で、この薄汚れた地上世界は大きく変容しつつある。……尤も、淘汰されてきた歴史から見れば、取るに足らん事物なのかもしれんがな……」 巨視的に見れば、前時代の【大戦】が終結して一世紀──そこから形式上統一政府を頂点に始まった人類再興より、何かしらの歪みは生まれ始めていたのかもしれない。半世紀近くを過ごした自身などは、その歪んだ波の一括りにすぎないのだ。 手首に嵌めていたゴムを手に取り、肩辺りまで伸びた墨色の髪を襟足から結え上げる。 生まれてから四十八年。兵器災害が人類を蹂躙してから、たったの五年だ── 硝子貼りに映り込む自身の双眸を強く捉える。切れ長の赤銅色の双眸は、鋭く研いできたノウラの意思を反映している。亡き父の跡を継ぐ考古学者として、またかつて一線の傭兵として戦場に在った者として、壮年期も暮れに入ろうとしているその肢体は、未だ衰えを見せぬ非常な頑健さを湛えている。 「囚われては逃れられん。ならば、その闇から闇へと渡っていくしかない、か……」 新たな技術概念の確立と共に現代に蘇ろうとしている、旧世代の人類から計画凍結を経て紡がれてきた次世代兵器開発要綱──【ARMORED CORE NEXT】。 兵器災害以降、かつて特別顧問として在籍していた旧世代技術解析財団【ジシス財団】が組織的解体を経てから、ネクスト開発計画は各支配企業へ分散した。支配企業達が血眼になって捜し求めている有機体戦略支援機構も──所謂生体CPUも、既に制御技術の根幹として深く関与している。 たったの五年だ。たったの五年で現代の人類は、旧世代が成し得なかった一つの兵器の極点に達しようとしている……。 (そろそろ時間か……) ノウラは窓硝子に映り込んだ自分の姿から視線を反らし、事務所内のオペレーターに当てて電話子機の内通ボタンを押し込んだ。接続中を知らせる軽い電子音楽のリズムが受話口から流れ、しばらくして不意に回線が開く。 「──聞いていたな、メイヴィス?」 『ええ、滞りなく。人員選定及び、ミラージュ社への書類作成は既に完了しました。派遣人員については指示に合わせて、随時動発可能です』 「重畳だ」 その言葉に対してメイヴィスは、過分な言葉です、と控目な言葉を返す。【ターミナル・スフィア】の通信技術部統括であり同時に独りの専属通信技官でもある彼女は、ノウラとは兵器災害以前から続く知己である。社団創設期にもノウラと共に常に動き、ノウラの知る限りでは、相当に優秀な通信技官の一人であった。 「作戦推移については?」 『【バラハ01】【バラハ02】【バラハ03】は、【エリアFr-06】にて第一種準備待機態勢を完結。準未確定勢力への通信傍受は0550時よりこれを継続、0630時より作戦態勢を第一種準備待機態勢から第三種戦闘態勢へ移行します』 「順調だな。現場は状況を維持。未確定勢力に変動ありの場合、現場判断により速やかにこれを排除しろ」 『了解。間もなく中継が始まりますが、あの子に──【レジェス57】に何か言われますか?』 銀製のオイルライターを片手で器用に擦過させ、種火を新しく咥えた紙巻煙草の先端に移す。 「……いや。あの娘には全て伝えてある。此処に及んで、私のような老兵が教える事は何もない。後は……、あの娘が自分で駆け上がるだけだ」 『相変わらずですね、ノウラ。──現場に現状維持を伝達、状況を更新します』 そこでメイヴィスとの通信が終了するかと思っていたが、回線の向こう側で何やら彼女がコンソールを操作する音が聞こえてきた。 『グローバル・コーテックス社の専用回線から通信です。発信主は──、前社所属レイヴン【スワロー】です』 「……スワローだと? ふん、珍しい顔が来たものだな」 ノウラは紙巻煙草を転がしながら口許を小さく釣り上げ、デスクに戻って備えつけのワーキングチェアに腰を下した。電話子機を台座に下ろし、外声音スイッチを押しこむ。 『回線番号:Ex-99821-Ad01に接続、ホログラム通信で出迎える。奴さんの事だ。下手を打つような真似はしないだろうが、一応記録しておいてくれ』 『了解しました。回線を接続します』 その言葉の直後、天井に敷設された出力装置から疑似映像が放射され、ノウラの座るワーキングチェアとデスクを残して執務室内は恣意的に作出されたデジタル空間の闇に呑まれた。 『回線接続完了。映像、出力します……』 突如闇に呑まれた室内、デスクから若干離れた場所に砂嵐のようなノイズが走り、発信主の佇まいが天井の出力装置から立体映像として構築されていく。軽い電子音が出力完了を知らせる。 『──久しぶりだね、ゼノビア?』 「開口一番にそう呼ぶとは、軽口は変わっとらんな」 情報映像として出力された"二十代の青年姿"の発信主は、ホワイトスーツに身を包み片手に嗜好品としては上物らしき葉巻を挟んでいた。しかし、反対側の左腕は包帯で首元から吊下げられ、適度に切り揃えられた濃紺色の前髪の間からのぞく額には、それでも随分と治癒したのだろう青あざが浮かんでいる。 まあ、形容するには一言で十分であり、つまり、レイヴンとしては珍しくない光景であるが、何とも痛ましい姿であった。 「中々様になってるじゃあないか、ええ?」 『変わらずキツイお言葉、嬉しいねえ。これでも大分マシになった方なんだ、明日には完治してるだろうさ』 「強化施術体の身体というのはつくづく便利なものだな。全身粉砕骨折を免れた上に、数日足らずで重傷を完治しきるか……」 『……やっぱり、あの戦域で二機のクレスト社陸軍所属ACを相手にしていたのは、君達だったのか』 演技じみた挙動で青年姿のスワローは、軽く肩をすくめて見せる。 今しがたスワローが指摘した通り、ノウラはつい先日にあったミラージュ社からの一連の依頼──外部依頼番号:061-3428──の際、近隣戦域においてグローバル・コーテックス社とクレスト社勢力が交戦していた事実について、【エストラーダ】の管理体制の一貫として既に作戦後の事後処理の段階で知り得ていた。 尤も、ミラージュ社からの緊急依頼がなければ、その光景を目にすることもなかっただろうが…… 「それで、七年振りのコンタクトの理由を訊こうか?」 『はあ、仕事熱心な所も変わらないね。ある意味で感嘆ものだよ……まあ、此方としても手間が省けて、有り難いけどさ……』 葉巻の濃い紫煙を周囲一帯に燻らせ、充分な時間の空きを取ってから言葉を紡いだ。 『他でもない。──【NEXT】についてだ。君なら、驚くほどのものでもないだろ。最初期の試験機開発要綱に携わっていた君なら……』 「何を知りたいのか知らんが、昨日の今日でソレを我々の方へ求めるか普通?」 『君が三十年来の、少ない知己だからだよ。それじゃあダメかい』 「つくづく男と言うのは、古い話を持ち出したがるのか? 呆れたものだ……」 スワローとの腐れ縁のような付き合いは、確かに長い。一線のレイヴンとしてノウラが戦場に在り始めたその頃から、スワローや彼の言う当時の少ない知己──シェルブ・ハートネットは既に共にいた。 結果的に、ノウラとシェルブはレイヴンズアークに、スワローは異なる大手企業へ渡っていったが。 ノウラはデスク内蔵のコンソールを叩き、投射型ディスプレイを起動させる。淡い灰青色の光源を放つ多分割ディスプレイが次々と浮かび上がり、ノウラの顔を青白く染める。 「有価情報なら商談に基づいて応提供しよう。だが、顧客情報については当然だが、売買できん」 『君の判断に任せる、僕はそれに従おう。──最近、裏の世論を騒がせてる【赤いAC】についてだ』 何を言い出すのかと思えば、スワローのその言葉はノウラが大よそ予測していたものとはかけ離れていたものだった。事実としてスワローは、口許に20代の好青年という風貌には不相応過ぎる奇怪な笑みを浮かべている。 『近頃、南方ミラージュ社領アンディオン地域を中心に、周辺の武装地帯で幾度か目撃されている。当該地帯は旧兵器遺跡の発見が相次ぎ、ミラージュ社軍事勢力による武力進行が著しい。近隣には統一連邦の軍事境界線が敷かれているが、当の本人らは静観を決め込んでいる模様だ。──【赤いAC】とされるシルエットは、その現場に積極的に武力介入を繰り返しているらしい。この事実関係に関する君の見解と、考古学者としての意見を是非とも聞かせてほしい?』 立体映像のスワローが向けている鋭い視線を受けながら、視界の隅でコンソールを操作し、【赤いAC】に関係するといわれる情報をディスプレイにいくつかピックアップしていく。 ──赤いAC。 いわくつきの所属不明機として世論では度々扱われているが、ノウラやスワローをはじめとするその手の業界に深く関わってきたものとしては、皮肉な言い方をすれば馴染みの深いものである。 「ナインボールか……。あんな怪奇話に興味を示すとは、コーテックスもよくよく暇を持て余しているようだな?」 『今回は至極個人的なモノだが、コーテックスにとっても近頃の事実関係は静観というものを超過している』 「個人的、ね……」 『其処を疑わないでほしいよ。僕や君にとってアレが、他人事でないのは過去が最もよく示している。コーテックスがのんびりとしているだけかもしれないが、何れ支配企業から正規の調査依頼が来てもおかしくないんじゃないのか? ナインボールに関与していた君相手に……』 首から吊るした右腕に持った葉巻をノウラの方へ差し向け、スワローは神妙な表情をつくってみせる。 スワローの察しは当たらずしも遠からずであった。 ノウラはかつて、兵器災害後の財団招聘時代に例の赤いACとやらに関与していた経歴がある。正確に言及すれば、財団が支配企群同士の内紛によって組織的解体に追い込まれた後に、再度。 「一学者である私が、容易に言及すべき物ではないな。だが……」 紙巻煙草を灰皿に押し付け、新しいものを咥えなおす。 「損得を抜きに"奴"を殺したい奴は、大勢いる。……お前を含めてな。どうだ?」 「……その返答次第かい?」 『私とてレイヴンだ。愚物が死地に自ら飛び込んで、敵味方の区別なく命を散らすのは何度も見てきた。昔のお前はどうだったか知らんが、今回は慎重に事を運ぶべきだ。奴を殺したいというのなら、尚更だろう』 ノウラのその言葉を聞き受け、スワローは普段の飄々とした態度をその身体の奥底に仕舞い込んだ。代わって彼の顔には、凄惨とも言える、いわば最古参のレイヴンのみが持つ鋭いまなざしが宿っている。 彼は慎重に言葉を選ぶように口を何度か動かし、それから、 『──ああ。僕も奴を殺したい。同業者として、一人のレイヴンとして。けれど、今の僕には昔以上の立場がある。奴を……ハスラーワンを殺したいのと、それとはまた別の話だ』 ──二十年前から青年の姿を維持する彼はその風貌とは裏腹に、研ぎ澄まされた老獪をのぞかせる言動をよこした。青年には表向きに与えられたレイヴンの地位以上に、グローバル・コーテックスから必要とされている才能がある。 ノウラは一時も彼の双眸から視線をずらさず、しばらくしてからコンソールを操作した。例の赤いACに関連した最も新しい情報を引き出す。 「──最近で確認されたのは、一週間前のミラージュ社領対統一連邦軍事境界線付近、ケレト大断崖の地下核部だ。ケレト地域は旧世代技術の発掘調査が一時は隆盛した場所でな。現在でも時折、凍結資材が発見される事がある。……一週間前も丁度そんな時期だった」 『そこへ、例の赤いACが?』 「今週行われた機構調整会議では、ミラージュ社はその事実関係を否定しているがな。だがウチの得た情報によると、ミラージュ社はその一連の武力衝突が行われた前後に、ケレト大断崖の地下核部資源地層で凍結資材を発見、確保している。……何だと思う?」 コンソールをたたん、と軽く叩き、その関連情報群をディスプレイに出力する。スワローと視線を交えつつ、ノウラの視界の隅に映っているのは、青白い肌を宿した一人の少女と思しきコールドスリープ設備に収められた凍結個体。ノウラは口許を歪めてみせ、スワローに自身の意図が伝わるよう表現する。 『──まさか、発見されたというのか』 ノウラは小さく首肯した。 『そうか……。赤いACの目的は、ソレだったと?』 「憶測の域を出んがな。これに踏まえいくつかの複合要素を吟味した所、現場に現れた"赤いAC"とやらは、オリジナルである可能性が濃厚だ……」 オリジナル──自らそう表現してみて、ノウラは改めて口許に自嘲のような笑みが浮かぶのを自覚した。 「その詳細については?」 『経営法規に則り、そこに関しては言及できん。悪いがな?』 そこばかりは仕方あるまいか、と彼は諦めの表情を作る。 経営法規に触れているかどうかは不鮮明だが、前後状況から考察したノウラ個人の推察では、ミラージュ社が先日、独立系傭兵部隊【サンドゲイル】に対して行った武力行使との関連性が疑われていた。ミラージュ社が先週に続いて凍結資材の確保を急務としていたのならその動機については不明だが、例の赤いACがケレトを強襲した動機としては筋道が立つ。そして、直前の客分とのやりとりより発する自社利益のためには、スワローに対してそれらを話すことは、現段階では経営法規に関わるのだ。 「巷の【赤いAC】に関して、今の私から言える事は以上だ」 『成程……』 互いに暫く無言を通し、それぞれ愛用の煙草に意識を傾ける。緊張感が張り詰めている訳でもない、ただただ静かに双方の意図を確かめあうような温い空気が仮想空間を満たす。 やがてノウラは短くなった紙巻煙草を指に挟み込み、 「──死を求めているように見えるのは、杞憂を抱いた老兵のソレか?」 片眉をつり上げ、スワローは心外だとでもいうような表情をつくってみせる。 『珍しいもんだね。君みたいな人間が、そんな事を言うなんて……』 ノウラは続ける。 「老いを過去に置き忘れて来た者の境地に、ちょっとした興味があるだけだ。貴様が心外だというのなら、それで構わん」 『まあ……。本来なら僕のような人間は、今のような表の地位でぶらぶらしているべきじゃないというのは、確かだろうね。でも、さっきの自分の言葉を正当化する訳じゃないけど、僕には僕の成すべき夢想がある。それを成さずして、表舞台から去る訳にはいかないんだ』 「それが、ナインボールか……?」 『それは、どうだろうね……』 例の年不相応な、含みを持たせた笑みを青年は浮かべる。 「兵器災害以降、この業界も随分と慌ただしい。新しい潮流が、そこまで来ているのかもしれん」 『ウチも最近、色々と新人の育成に力を入れてるみたいだしね。コーテックス・アリーナも押しつ押されつの状況さ』 「そういえば、Aランクにはまだ若手のレイヴンが二人も名を連ねているな。ソリテュードとやらも、確かその類だったはずだが……」 何か思いついたように、スワローはぱっと表情を上げた。表の地位の上での話だが、グローバル・コーテックスに在籍し、かつノウラが活動拠点としているこのエデン4に同じく居を構えているのが、コーテックス・アリーナでAランクという地位に君臨するレイヴン「ソリテュード」である。 『彼か。彼は若年だが、レイヴンとしては古参の域に入っているね』 そのスワローの言葉から、ノウラが隠した意図に彼が気づいている様子は見受けられなかった。 (奴さん、どうやら上手く隠しているようだな……) 『彼は本物の天才だよ』 興味の範疇から派生した記憶と照らし合わせ、ノウラはコンソールを操作してさらにソリテュードに関連した情報をピックアップする。彼のレイヴンとしての輝かしい戦歴から、パートナーの存在やコーテックス社内でのポスト、私生活に至るまでを。その中に、『ALICE』と銘打たれた西洋人形にでもありそうな整った造形をした少女の姿を見つけ、再度それとなくスワローの双眸を注視する。 「データベースによると、その男は兵器災害発生時に、旧兵器遺跡のひとつを沈黙させているようだな」 『兵士としての、僕にはない才覚を常に示し続けている』 「かもしれん。だが、死線の一つや二つを越えた程度で一流の先へ行けるかどうかは、また別の話だ。レイヴンが戦場で生き残るには、一流の先へ行くか、別の道を歩まねばならない。──私やお前、それにハスラーワンがそうであったように、な?」 それぞれの道を生きた。それが異なれど、そういった者達が迎える末路は、同じく歩んでいく線路のようなものなのかもしれない。 ノウラは腕時計に視線を落とし込んだ。アナログ時計の時刻は午前の0650時を指している。デスク脇に置いていたリモコンを手に取り、電源をONにする。正面に立つスワローの後方、恣意的に空間情景を削除されていたデジタル空間に、投射型TVの画面が出力された。チャンネルは事前に合わせていた通り、エデン4の統一政府運営下にある国営ニュース番組の始まりを告げていた。 「丁度頃合いだ。観ていくか?」 スワローの首肯に合わせて天井の出力装置が指向性を持って回転し、投射型TVの方向へ向く。 『お早うございます。GIN、午前7時、朝のニュースです』 テレビ向けに受けのいい顔立ちの整ったキャスターが原稿通りの挨拶を述べ、早速早朝のニュースがクローズアップされる。 『レイヴンズアーク社主催のアーク・アリーナにおいて0600時からトップクラス・マッチが開始され、新1stランカーが誕生しました。アーク・アリーナの最高峰、エクストリーム・アリーナにおける最高の地位を獲得したのは、同社所属の新鋭レイヴン・ロジオン──』 時を同じくしてレイヴンズアークで開催されていたアリーナの結果情報が速報で放送される様子をしばらく無言で見送る。2、3分ほど経ってようやく、キャスターの女性が次のトピックに目を向ける。原稿にちら、と視線を落として台詞を整える。 『続いてはエデンⅣ、グローバル・コーテックス社主催のアリーナ情報です。中央興行区コーテックス・アリーナで間もなく、0700時からアリーナ本戦出場予備大会、決勝が開始されます』 キャスターのその報道にスワローが目を瞠った。 『どういうことだい。国営とは言え、たかが予備大会の決勝がニュースに?』 ニュース番組を視界にとらえつつ、鳴り響いた内線通話の受話器を取る。 メイヴィスの落ち着いた声が届いた。 『作戦起動三分前です。現場、所定を完結。【エリアFr-06】にて、第三種戦闘態勢から第二種戦闘態勢へ移行します』 「わかった。予定通り、状況を開始しろ」 『了解しました』 内通電話を切り、スワローの問いに答える。 「新しい潮流という奴だよ。時間はあるんだろう? 観てみようじゃないか、その渦中を」 ノウラはニュース画面に映し出された二機のAC機体を、紙巻煙草を挟み込んだ指で指差した。 →Next… ③ コメントフォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/teno-group/pages/77.html
四国新幹線保有株式会社 四国新幹線保有株式会社は、手野鉄道、JR西日本、JR四国、岡山県、香川県、徳島県、愛媛県、高知県の共同出資によって設立された会社である。 四国新幹線の設備を保有し、手野鉄道、JR西日本及びJR四国に貸し出している。 本社が第三種鉄道事業者であり、手野鉄道、JR西日本及びJR四国が第二種鉄道事業者となる。 全線開通には25年前後かかる見通しであり、1996年に着工したため、2021年前後に全線開通する予定である。 目次 概要 本社、支社、営業所 手野鉄道四国新幹線計画 路線 駅一覧 車種 指令所 社史 組織図 概要 四国新幹線は、建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画に基づく昭和48年11月15日運輸省告示第466号によって追加された。 実際に計画が動き出したのは、1992年からであり、手野鉄道がその計画に基づく敷設計画を発表したことによる。 計画は別に記すが、それによって運輸省が手野鉄道及び手野グループに対してそのための地盤調査を行わせることを告示。 それに対して、JR四国が対抗することとなり、そこにJR西日本が合わさって対抗する計画を発表した。 これによって四国新幹線はJR連合と手野グループのどちらに行わせるかのための会議が設置され、折衷案として新社を設立させ、そこから施設を借り受ける方式となった。 その新社は1996年に設立され、関連県及び関連会社が出資する形をとる。 1996年時点の出資比率は以下のとおりである。 企業・県名 出資比率 手野鉄道 20% JR四国 20% JR西日本 20% 岡山県 8% 徳島県 8% 香川県 8% 愛媛県 8% 高知県 8% この割合に応じて、株券が発行された。 2001年時点の割合は以下の通りとなる。 企業・県名 出資比率 手野鉄道 15% JR四国 15% JR西日本 15% 日本鉄道建設公団 15% 岡山県 8% 徳島県 8% 香川県 8% 愛媛県 8% 高知県 8% 日本鉄道建設公団が解散した結果、鉄道建設・運輸施設整備支援機構がその割合を承継した。 その結果、2003年10月1日以降は、以下の割合となる。 企業・県名 出資比率 手野鉄道 15% JR四国 15% JR西日本 15% 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 15% 岡山県 8% 徳島県 8% 香川県 8% 愛媛県 8% 高知県 8% なお、県が出資しているため、四国新幹線保有は第三セクターとして扱われる。 また、企業である手野鉄道、JR四国、JR西日本及び鉄道建設・運輸施設整備支援機構のいずれも、親会社としての地位を有さない。 本社、支社、営業所 本社は、設置準備の際には岡山県岡山市にあったが、工事が開始された時点で香川県宇多津町に移設された。 現在は、以下のように設置されている。 本支社、営業所名 設置都府県名 設置市町村名 本社 香川県 宇多津町 高知支社 高知県 高知市 岡山営業所 岡山県 岡山市 徳島営業所 徳島県 徳島市 愛媛営業所 愛媛県 松山市 大阪営業所 大阪府 手野市 東京事務所 東京都 千代田区 本社はJR四国が保有するJR四国宇多津ビルディング内にある。 また、大阪営業所は手野鉄道手野駅前ビル内にある。 手野鉄道四国新幹線計画 手野鉄道は、岡山を起点とし、姫路、大阪、京都、高島、富山、新潟へと続く手野高速線を保有している。 新幹線と競合するこの線をもって、手野鉄道は新たな新幹線建設計画を発表する。 これが、手野鉄道四国新幹線計画である。 運輸省告示による四国新幹線計画は、明石海峡大橋に鉄道が付属してないために、大阪から淡路島を経由するルートが使えなくなった。 一方、昭和43年(1973年)に基本決定された四国横断新幹線は、瀬戸大橋経由で行えるようになっていた。 これは、瀬戸大橋線の横に用地がすでにあるためであり、そこに新幹線規格の新線を敷設することによって新幹線の運用が可能となるものである。 手野鉄道は、この路線を使うことにより四国横断新幹線を建設しようとした。 これが1992年のことである。 この計画では、さらに淡路島を経由して通ることとなっていたが、そちらについては、撤回されることとなる。 1985年にすでに明石海峡大橋が道路単独橋となることになっていたためである。 一方で、大鳴門橋は鉄道がとおるようになっているため、将来としては新幹線あるいは在来線として淡路島に鉄道を敷設する方針となっている。 四国新幹線は、四国各県の知事からたびたび要請がありながら、国が動かないために手野グループへと提言がなされたとされる。 この提言により、手野鉄道が主体となって四国新幹線を通す計画が立てられたとされる。 なお、当初の計画であれば、以下のように新線を敷設することとなっていた。 また、手野高速鉄道線で貨物輸送を行っていることから、四国新幹線においても貨物輸送を行う予定にしている。 線名(仮称) 起点 終点 主な経由地 本四連絡線 岡山 宇多津 児島 四国横断腺 宇多津 高知 阿波池田 北四国線 徳島 宇和島 高松、宇多津、観音寺、松山 南四国線 宇和島 徳島 宿毛、窪川、高知 四淡連絡線 徳島 岩屋 福良 1992年の発表直後から、JRグループが反対を行ったため、一部の計画を変更することとなった。 まず、四淡連絡線が計画撤回となった。 また、本四連絡線と四国横断腺、北四国線と南四国線が一緒となる。 そのため、以下のように新線計画がなされた。 線名(仮称) 起点 終点 主な経由地 四国横断腺 岡山 高知 児島、宇多津、阿波池田 四国循環線 徳島 徳島 高松、宇多津、観音寺、松山、宇和島、宿毛、久保川、高知 さらに四国新幹線について貨物新幹線としても用いることが決定された。 これは、手野鉄道からの強い働きかけがあったとされる。 1993年、運輸省告示が行われ、四国新幹線として大阪から岡山を経由し高知へ至るルートが、四国縦断新幹線として徳島から宇和島へ至るルートが2本、合計3本が提示された。 なお、四国縦断新幹線は、徳島から宇多津、観音寺を主要経路地として宇和島へ至る北ルート、徳島から高知、宿毛を主要経由地として宇和島へ至る南ルートの2つがある。 このため、合計3本が提示された。 1993年4月5日、手野鉄道、JR西日本、JR四国による三者協議の初会合が行われた。 この際JR側からの主に以下の提案がなされた。 山陽新幹線と直通運転を行うこと 運営主体をJRとすること(なお西日本あるいは四国のいずれかとする) 営業キロについては、JRの基準に従うこと(実キロと異なることを許容すること) 運行については手野鉄道との連絡を考慮すること これに対して、手野鉄道からJR2社への提案はその主なものでは、以下のようなものであった。 手野鉄道高速線と直通運転をすること 運営主体を手野鉄道あるいは新たに設立する会社に行わせること 運行については手野鉄道及び山陽新幹線、並びにJR在来線との連絡を考慮すること 新幹線を用いて貨物輸送をする際は、旅客運送の邪魔をしない程度の本数とすること これらを下地として、会合が数十回行われたとされる。 1994年、手野鉄道、JR西日本、JR四国の三者協議の結果、以下のことが合意された。 施設及び線路その他付属施設は原則として新社が保有すること 運行は手野鉄道高速線、JR西日本山陽新幹線との連絡を密とできるようにすること JR四国管内はJR四国の在来線との連絡が可能であること 岡山駅の始発は山陽新幹線岡山駅とし、例外としてJR西日本が管理すること 関連自治体の承認、協力及び協議によって線を決定すること 四国新幹線路線による貨物輸送は、四国新幹線による旅客輸送に障害とならないこと いずれの会社も親会社とならないこと 上記の他は運輸省告示に従うこと 上記の他は三者協議によって決定すること などである。 この合意をもって、1994年4月1日、合同四国新幹線建設・保有株式会社が設立された。 社名は後に変更され、線が建設終了した時点で、現在の社名となった。 なお、後は変更後の社名である『四国新幹線保有株式会社』と記す。 ちなみに、手野鉄道高速線は、岡山駅と児島駅の間に直通運転が可能なように路線が設置されることとなった。 1995年、手野鉄道、JR西日本、JR四国の3者協議、関連自治体として岡山県及び四国4県の知事会の拡大協議が行われる。 この時点で、大まかな建設計画は決定していた。 なお、1996年、さらに運輸省告示が行われ、大阪から岡山の間の指定は解除された。 以下の表は、1996年運輸省告示によって3者協議によって決定した線である。 線名 起点 終点 主な経由地 四国新幹線 岡山 高知 児島、宇多津、阿波池田 四国縦断新幹線北ルート 徳島 宇和島 高松、宇多津、観音寺、松山 四国縦断新幹線南ルート 徳島 宇和島 高知、宿毛 また、所有者が四国新幹線保有株式会社、運営者がJR西日本、JR四国、手野鉄道となることが正式に決定した。 大蔵省が国費投入に否定的であったため、また採算が取れないとして建設を延期してきたこともあり、主要出資者からできるだけ国の関与が除かれることとなった。 この結果、上記のように、四国新幹線保有の出資割合が決定された。 また、上記の運輸省告示に基づく路線名が3者会議及び拡大協議によって決定された。 それが、現在の路線名となる四国新幹線と四国循環新幹線である。 これらの理由から、四国循環新幹線は、正式には四国縦断新幹線の南北ルートと分裂しているが、運営上は循環路線として扱われることとなる。 出資は会社設立時点で3分の1ずつを手野鉄道、JR西日本及びJR四国が、1996年の年末までに、上記の出資比率となるように出資金額が調製された。 なお、全国新幹線鉄道整備法第6条による指名については以下のように行われた。 営業主体 JR西日本株式会社、JR四国株式会社、手野鉄道株式会社 建設主体 四国新幹線保有株式会社 また、同時に同法第7条による整備計画が決定され、上記四国新幹線、四国縦断新幹線南北ルートが一括して整備新幹線として整備計画が決定された。 このことにより、1996年から工事は着工した。 なお、建設はフル規格で行われることとなった。 これらに沿って、1996年4月1日に設立総会を実施し、四国新幹線保有が設立された。 同日、登記が行われ、事業が始まった。 資本金の払い込みは1か月後までにすべて完了した。 2001年、運輸省から国土交通省へと再編された際、四国新幹線保有へと参画することが決定された。 このため、各営業主体から一部の株を購入する形で日本鉄道建設公団が経営に参画することとなった。 日本鉄道建設公団は2003年に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構となったため、この株はそのまま引き継がれた。 路線 四国新幹線の路線は、狭義の四国新幹線と四国循環新幹線の2つに分かれる。 少なくとも四国各県の県庁所在地を経由することとなったため、新幹線の建設は、大きく4つのステージに分かれることとなった。 第1ステージは岡山と宇多津の間の建設である。 瀬戸大橋及びその他の土地がすでに予定地としてあったため、この建設は比較的容易に行われることが想定されていた。 現在ある施設を改修あるいは取り壊し、建設を行うため、7年を見込んだ。 第2ステージは、宇多津から高松及び松山への建設と、それと並行して行われる宇多津から高知へとつながるための建設である。 このステージ以降はほとんど用地がないため、その準備からとなる。 また、宇多津から高知の間は四国山地を通過することとなるので、そのための工事も難航が予想された。 一部の工事が第1ステージと並行して行われるものの、おおよそ10年を見込んだ。 第3ステージは高知から及び高松から徳島へと接続するための路線の着工である。 この時点で、第1ステージである岡山と宇多津間の運転は実施されることとなっており、それと継続して建設が行われることとなっていた。 計画では、先に高松と徳島間が完成し、次いで高知から徳島間が完成するものとされる。 そのため、徳島と海部の間の工事が第3.5ステージとして行われており、高松と徳島間が完成してから着工することとなっている。 第4ステージは松山と宇和島の間の工事である。 第4ステージ完成時点で四国縦断新幹線北ルートは完成する。 第3ステージと第4ステージは合わせて10年を予定している。 また、第4.5ステージとして高知と宇和島の間の工事が行われており、この工事が完了した時点で四国縦断新幹線南ルートが完成する。 そして、全体の完成をみるまでには、おおよそ25年前後かかるという計算であった。 2017年時点で、現在以下の線区が完成している。 大区分 路線名 記号 概要 高速線 四国新幹線 - 岡山-児島-宇多津-阿波池田-高知 四国縦断新幹線北ルート - 徳島-高松-宇多津-観音寺-松山 四国縦断新幹線南ルート - 窪川-高知-安芸 なお、四国新幹線中、児島駅から宇多津駅の間において、瀬戸大橋を通過する。 また、四国新幹線貨物輸送については、全量手野貨物による輸送となっている。 輸送主体は手野鉄道が行う。 駅一覧 以下の駅一覧は、四国新幹線、四国縦断新幹線の南北ルートに分けて表記する。 なお、駅名が灰色表示になっている駅は現在事業中の駅である。 四国新幹線駅一覧 四国縦断新幹線北ルート駅一覧 四国縦断新幹線南ルート駅一覧 四国新幹線貨物路線 四国新幹線 駅名 所在県 乗換駅 岡山駅 岡山県 JR岡山駅手野鉄道岡山駅山陽新幹線岡山駅(手野鉄道高速線岡山駅) 児島駅 JR児島駅 宇多津駅 香川県 JR宇多津駅四国縦断新幹線北ルート宇多津駅 琴平駅 JR琴平駅 阿波池田駅 徳島県 JR阿波池田駅 大歩危駅 JR大歩危駅 土佐山田駅 高知県 JR土佐山田駅 高知駅 JR高知駅(とさでん交通高知駅前停留場)四国縦断新幹線南ルート高知駅 四国縦断新幹線北ルート 駅名 所在県 乗換駅 徳島駅 徳島県 JR徳島駅手野鉄道徳島駅四国縦断新幹線南ルート徳島駅 板野駅 JR板野駅 三本松駅 香川県 JR三本松駅 志度駅 JR志度駅 高松駅 JR栗林駅 宇多津駅 JR宇多津駅四国新幹線宇多津駅 観音寺駅 JR観音寺駅 伊予三島駅 愛媛県 JR伊予三島駅 伊予西条駅 JR伊予西条駅 今治駅 JR今治駅 伊予北条駅 JR伊予北条駅 松山駅 JR松山駅(伊予鉄道JR松山駅前停留場) 伊予大洲駅 JR伊予大洲駅 八幡浜駅 JR八幡浜駅 卯之町駅 JR卯之町駅 宇和島駅 JR宇和島駅四国縦断新幹線南ルート宇和島駅 四国縦断新幹線南ルート 駅名 所在県 乗換駅 徳島駅 徳島県 JR徳島駅四国縦断新幹線北ルート徳島駅 阿南駅 JR阿南駅 牟岐駅 JR牟岐駅 甲浦駅 高知県 JR甲浦駅 室戸駅 なし 安芸駅 土佐くろしお鉄道安芸駅 高知駅 JR高知駅(とさでん交通高知駅前停留場)四国新幹線高知駅 佐川駅 JR佐川駅 須崎駅 JR須崎駅 窪川駅 JR窪川駅 黒潮駅 土佐くろしお鉄道土佐入野駅 土佐清水駅 なし 宿毛駅 土佐くろしお鉄道宿毛駅 愛南駅 愛媛県 なし 津島駅 なし 宇和島駅 JR宇和島駅四国縦断新幹線北ルート宇和島駅 四国新幹線貨物路線 駅名 所在県 分岐駅 岡山大型貨物駅 岡山県 岡山駅 宇多津貨物駅 香川県 宇多津駅 高知貨物駅 高知県 高知駅 今治大型貨物駅 愛媛県 今治駅 ここを編集 車種 車種としては、JR西日本及び手野鉄道が開発した車両を使用しているほか、JR四国が独自に開発した車両を使用する。 指令所 四国新幹線では、独自の指令所を設置し、山陽新幹線及び手野新幹線との相互運転を行っている。 指令所は2か所設置されているが、その位置は公表されていない。 社史 組織図 ここを編集
https://w.atwiki.jp/wiki6_piro/pages/739.html
位置指定道路 いちしていどうろ 建築基準法上の道路として、特定行政庁が位置の指定をした私道(建築基準法第42条第1項第5号)。 都市計画区域内にある建築物の敷地は、幅員4m以上の道路に2m以上接していなくてはならないと、建築基準法で定められているため、宅地の開発などでは道路を作り、位置の指定を受けなければならない。 道路位置の指定を受けるには、公道との交差部に有効な隅切りがあること、側溝を設けること、一定以上のこう配がないことなど、特定の技術的な基準に適合することが条件となる。 位置の指定を受けるまで建築確認は取れない。 関連項目 建築・都市辞典 タグ 「い」 建築基準法 建築用語
https://w.atwiki.jp/trimaniax/pages/136.html
鳥コン観戦ガイド> 持ち物 鳥人間コンテストの観戦に当たっての持ち物です。 観戦に当たっては、ずっと日差しの下にいることを頭に入れて対策をとってください。熱中症には万全の対策を! 帽子・日傘など、日焼け止め 炎天下注意。真夏の日差しは強烈です。熱中症対策にもなります。 飲み物 脱水注意。湖岸沿線道路の応援席よりにあるローソンがあります。所々に自販機もあります。 傘、レインコート 夕立対策など。 防寒具 明け方はに風が吹いたりすると寒かったり、実況のジョークが寒かったり。 双眼鏡、オペラグラス 遠くに飛んだ機体を追いかけましょう。 虫除けスプレー 鳥人間はアウトドアスポーツです。 ティッシュ 公衆トイレで紙がなかったことがあるので一応持っていると安心かもしれません。
https://w.atwiki.jp/asaahingaeaw/pages/237.html
芸備線・木次線の上にフル規格新幹線の計画が2020年から高陽町や三次市の若者から持ち上がった。理由は伯備線への怒りの声と共に広島駅からにも優等列車を出してほしいという。山陰新幹線が完成した事を前提に提唱し、主張し始めた。書類運動も始められ、芸備線・木次線を独立して芸備鉄道を復活させようという考えもあったらしいが真相は定かでない。また高陽新幹線の別名と共に広島-島根を高速バス無しで大学と実家を行きできる事やすぐに観光地行けれるというのも主張され始めた理由である。 駅一覧表 広島駅 安芸矢口駅(高陽駅) 福富駅 備後落合駅 木次駅 松江駅か出雲市駅
https://w.atwiki.jp/tokaiindex/pages/529.html
みきもとどうろ【御木本道路】 概要 三重県道32号伊勢磯部線の通称。
https://w.atwiki.jp/ensen/pages/100.html
JR - 東海道新幹線(とうかいどうしんかんせん) のぞみ 東京-品川-新横浜?-名古屋?-京都?-新大阪? ひかり 東京-品川-新横浜?-小田原?-熱海?-三島?-静岡?-浜松?-豊橋?-岐阜羽島?-米原? こだま 東京-品川-新横浜?-小田原?-熱海?-三島?-新富士?-静岡?-掛川?-浜松?-豊橋?-三河安城?-名古屋?-岐阜羽島?-米原?-京都?-新大阪?
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/766.html
時刻はちょうど七時を過ぎた頃だった。 フリオ・アンダースは時計をちらりと見て、すぐに興味を別の物へと移した。時刻にあまり意味が無かったからだ。 どうせ今日も家に帰れずここに缶詰だ。押し付けられた作業は一向にうまく行かなかった。フレックスで働く彼にとっては、定時や残業といった概念が欠如していた。 八話:【無価値な者共 ③】 「キースめ。一体どこへ行ったんだ……」 その場に居ない者へと悪態をついた。彼はモニターを注視し、自分が用意したナノマシン達が働く様子をつぶさに観察していた。 彼の専門はそれだった。 ナノマシンを用いて、遺伝子を物理的に操作する。それが彼の仕事だったのだ。 「……ああクソ。難解な書き方だな。もっと素人にも解りやすく書けないのかキースは」 また文句を垂れた。机の上にあった大量の資料は全て、遺伝子操作に関する物ばかりだった。彼は資料とモニターの両方に目を配りながら、両手はキーボードを叩き続けていた。 こんな事をもう何日も続けていた。会社のロッカールームにある簡単なシャワーと、食堂と研究室を行ったり来たりする生活のせいか、頬はどこかやつれた印象を得ていた。日の光を浴びる時間も激減し、食事もおよそ簡単な物ばかりだったので顔色も悪い。 稀に頼むデリバリーのピザだけが現在の唯一の楽しみと化していた。 彼はモニターを注視していた。 ところが、突然にその作業を中断した。キーボードのエンターキーを押し、モニターを見るのを止めた。 彼はキーボードを投げ捨てたい衝動に耐えながら、スクリーンセーバーが作動したのも気付かずにしばらくぼーっとしていた。また失敗したのだ。 「トライゼンの狸親父め……。俺一人でどうしろってんだ……」 彼は両手で顔を擦りながら言った。指先に目やにがついた。 元々は精悍な顔立ちで、体格も立派であったが、今の姿はそれに陰りが見えていた。すっかり「研究にのめり込む科学者」と言った容貌だった。 「キース……。どこに行ったんだ……」 彼は言った。彼もまた、キースの行方を知りたがっている一人だった。 彼はキースを求めている。彼のナノマシン達は指示通りに様々な仕事を忠実にやり遂げるが、指示の出し方を知らなければどうにもならなかった。 そして、あくまでそれの専門家である彼はキースが居なければどうにもならなと喘いでいる。 どうしても必要だったのだ。遺伝子工学の専門家の知識が。 「あの狸親父は何をやらせたいんだ。素人め……。それにこの遺伝子は一体何なんだ……?」 不満は積もりに積もっていた。一向に進まぬ作業。狭い室内での閉塞感。ビタミンミネラルが不足した食生活は、彼の思考を負の感情で埋め尽くさんと躍起になる。いわゆるストレスだ。 ここではろくにストレス解消も出来ない。それ自体もまた、さらなるストレスを呼び込んだ。 彼はキースの事を思い出していた。 自分ではいいコンビだと思っていた。老獪で実績を携えた科学者と、好奇心と活力に満ち溢れた若い科学者。お互い足りない物を補い合える関係だと思っていた。 そして皮肉にも、片方が欠けてそれが正しかった事を証明してくれた。 突然の失踪は彼に二人分の負担を与える結果となる。それだけならまだしも、自分の手に余る事まで押し付けられる。そこは完全に彼の領分では無かったのだ。 それを押し付けた者に憎しみさえ抱いた。素人め。商売人が知った面をするなと。 もはやあの探偵を語る男だけが頼りだった。 あの恐るべき技能を有する元兵士ならば、或は。そんな希望を抱いていた。何より、隠された経歴がその探偵への期待を増長させたのだ。 ただの兵士では無い。表に出せないような作戦をこなす秘密の存在だったはずだ。おそらくは、スパイやそれに近い者ではないか。そんな事を考えていた。 「俺も軍に入ってたほうが楽だったかもな」 そうは言ってみたが、すぐに改めた。一日中走り回り上官に怒鳴られ続ける生活を想像して嫌気がさしたのだ。 そして、アリサの事も思い出した。先日ここへ訪れた時に初めてその姿を確認したが、少なからず驚きだった。 アリサの事はキースから聞かされていたので存在はよく知っていた。 孫の事となるとキースは饒舌だったのだ。もういいと言いたくなるほどに語ってくれた。 だが、その時のキースが妙な雰囲気を持っていた事も印象に残っていた。 あれだけ溺愛していた孫の事を語るのに、その表情はどこか悲しさを携えていた。どこか、孫に対して後ろめたい何かがあるのかと思わせる顔だった。 そしていつも、語った後は恐るべき集中力で研究にのめり込むのだ。 「気持ち悪かったなあれは……」 そう言った。 最後にまた、アリサの事を思い出した。そして、沸き上がるストレスは彼を衝動的な行動に走らせようとする。 頭に雑念が沸き起こる。それは脳内を縦横無尽に駆け回り、彼は我慢が効かなくなって行く。 やがてそれは一つの行動への欲求となって彼を襲った。 我慢の限界だった。もはや彼の心はこのストレスを抱えるだけのキャパシティが残されていなかった。 そして彼は、数日ぶりにストレスを解消する事にした。 ※ ※ ※ 《……今どこだ?》 「倉庫だ。仕事道具を揃えないと……」 ほぼ同時刻。 ヘンヨはスラムにある自分の借りている倉庫へ来ていた。 「大丈夫なのか? あまり無理は……」 《大丈夫だ。気絶させられただけだ。それより、お前が言ってた連中、ある程度調べがついたぞ》 「聞かせてくれ。スレッジ」 ヘンヨは携帯電話を片手に倉庫の中を漁っていた。 中はおびただしい数の物々しい道具で溢れ反っていた。銃口を上に縦に並べられた小銃、壁にかけられた対物ライフル。やたらと大きい木箱には「M61」と書かれていた。これに関しては完全にコレクションだったが。 その中から、いくつかの道具を選び出す。 その中にはどう言い訳しても逃れられないような非合法な道具まであった。この場面を見たら、ここは軍の倉庫か、銃火器の博物館かと思わせる。 しかし、実態はすべて個人の所有物なのだ。いくつかの趣味を除き、それらはすべて個人が使う為にそこへ集められていた。ヘンヨは急がなければならないが、準備不足は避けたかった。 「……で、何が解った?」 《トライゼン・B&M・インダストリー。中小企業だが相当稼いでる。やはりキースの影響だろうな。 社長のトライゼンも相当なやり手だ。バイオ表皮の他にも金属製のアンドロイドのパーツを多数開発してる。生産は別の大手の下請に一任しているが、開発元としてはかなり幅を効かせている》 「そこは知ってる。あまり新しい情報は無いな」 《ああ。トライゼンはどこまでも商売人だ。多少はマフィア連中と付き合いがあるらしいが、別におかしくはねぇしな》 「この件は最初から金の臭いがする。どこまでも商売人というなら、やはりそいつが黒幕で間違いないだろうな。簡単な事だったんだ。」 《おそらくな。キースの失踪に関与しているのも多分……》 「直接聞くだけだ。まずはアリサだ」 《そうだな。ああ。アンダースについても調べたら、ちょいと面白い事が解ったぞ》 「なんだ?」 《一部のコミュニティじゃ有名人だ。 フリオ・アンダース。三十三歳。学生の頃は成績優秀。品行方正。勉学とスポーツに励む好青年。お前と真逆だ》 「どうでもいい。で?」 《社会に出てからも変わらなかった。が、逮捕歴が一度だけある》 「なんだ? ドラッグか何かか?」 《買春だ》 「買春? 登録すりゃ合法だろう? 未登録の女を買っても逮捕なんて聞いた事が……」 《普通はな。だが相手が未成年なら話は別だ。売春を合法化する代わりにそこら辺の線引きは厳しい。 奴はそういったサークルやコミュニティでは結構知られている。ティーンエイジャー専門だったんだよ》 「……なるほどね。アリサには二重の危機か」 《まぁ今回の件に絡んでいればな。それに真人間である事も間違いない。それ以外で悪い噂もない。アリサを連れ去ったのが奴とは考えられない》 「まぁいい。どちらにせよ今から殴り込むんだからな」 《死ぬなよ。KKをやった奴はハンパじゃねぇぞ》 「解ってる」 ヘンヨは電話を切る。選んだ道具を持ち、クーペのエンジンを回す。 爆音が響いた。急がなければならない。 ※ ※ ※ アンダースはまだぼーっとしていた。久々にストレスを解消してみたものの、おかげでやる気まで放出してしまった。 おかげで作業は中断されたままだった。 彼のナノマシン達は、ずっと指示を待ち続けていた。もっとも、急いだ所で成果が上がるとも思っていなかったので、アンダースはここぞとばかりに徹底して思考を止めていた。 その彼を叩き起こしたのは内線の呼び出し音だった。 緑色の発光と共に鳴るそれは外線音ようなの強烈な目覚まし効果は無く、むしろ不快な程に穏やかだった。 彼はそれを取るべきか迷ったが、頭の片隅にある仕事という概念が働き無意識にそれを取る。 そして、今一番聞きたくない声がそこから聞こえて来た。 《……調子はどうだ?》 「トライゼン……。電話してくるなんてどういう風の吹きまわしだ?」 《当然だ。出資しているのは私なんだ。で、どうなんだ》 「何度も言わせるな。俺じゃどうにもならない。ベリアルから聞いているはずだ」 《そうか。まぁいい。その仕事は止めだ》 「……何だって?」 アンダースはにわかに目が覚めた。 「どういう事だ? あれだけ無理難題を吹っかけて今更中止とは……」 《別の仕事が出来た。そっちを先にして貰いたい。もちろん、今の研究を続けたいなら構わんが、新しい仕事の方を優先して貰う》 「さすがの身勝手だな。人の苦労を何だと思ってやがる……」 《君は雇い主に敬意を払う事を覚えたほうがいいな》 「おかげさまでイライラしてるのさ。で、新しい仕事ってなんだ?」 《社長室に来てくれ。見せたい物がある》 「なんだ? 電話じゃダメなのか?」 《見たほうが早い。君も興味があるとは思う事だ》 「いいだろう。今からそっちに行く」 ※ ※ ※ ヘンヨのクーペは幹線道路をひた走っていた。 速度は裕に百キロは超えていたが、ネズミ取りは居ないはずだったので迷う事なくアクセルを踏み込んでいた。 もっとも、そのクーペは本来であれば最大で三百キロ以上まで加速出来る性能を有していたが、周りの車の流れがそれを押さえ付ける。百キロ前後で限界だった。 おかげでいらいらするハメになっていた。 急がなければと思う半面、ヘタに事故など起こそう物なら元も子もない。それもまた、車の加速を妨害している。ヘンヨはイラ立っている。 いざという場合、トライゼンを殺害する可能性をヘンヨは考えていた。また、最悪のケースとしてアリサが殺害される可能性もだ。 そうなればトライゼンを殺害しようが例のチタンコートを破壊しようが、例えキースを発見しようが意味が無くなってしまう。それだけは避けなければならない。 速く到達しなければ。 そう思っていたが、クーペは思うように進んではくれなかった。周りから見れば十分に暴走運転と呼べる物だったが、それでもまだ不十分。 ヘリコプターでもあればこんな煩わしい道路など無視出来るのだが。そんな事すら考えた。 もっとも、直線の最大速度ならヘンヨのクーペのほうが速いのだ。 集めた道具が助手席でがたがたと揺れていた。もし今、警察に止められたら一発で逮捕されるだろう。トランクの中身まで見られたらテロリストと思われかねない。実際、これから似たような事をするのだから。 たどり着いたら、まずは派手に挨拶をしなければならない。事前の情報が少な過ぎて細かいプランを立てられなかったのだ。 力で押し進むしかない。そして、うまくトライゼンを捕らえる事が出来ればキースの居場所もすぐに解るかも知れない。 あくまで可能性だが、期待は出来る。そして、逆にトライゼンを殺害する事になったら。 「もうウンザリだ」 そう漏らした。彼にとってはもう飽き飽きしていたのだ。あまりに多くの死を見てきたのだ。そして、自分がそれを振り撒く存在だと思い知った時、彼は自分の手が汚れ過ぎている事も知った。 それだけは避けなければ。そう思っていたが、必要ならば自分は躊躇なくそれを行うだろうとも思っていた。 自分の感情と行動はちぐはぐな関係だった。そして急ぐ思いとは裏腹に思うように進まないクーペもまた、ヘンヨとはちぐはぐな関係と化していた。 それでもなお、ヘンヨは目的地へと急いだ。 ※ ※ ※ アンダースはエレベーターに乗り、三階まで上がる。 ドアが開くと一直線に廊下が見えた。 その左右には透明な仕切りで区切られたオフィスが見えた。それが四部屋、正方形を作るように並んでいた。 その廊下のまっすぐ先には社長室の扉が見える。透明な仕切りではなく、きっちりと塗り固められた壁の向こうにそれはある。 いかにも重厚な造りのドアが、回りのオフィスとの差別化を成していた。おそらく上空から見れば、このフロアは長方形となっているはずだ。 アンダースはつかつかとそのドアの前まで進んだ。 この時間まで仕事をしている者は居なかった。おかげでこのフロアに似つかわしくない白衣姿のアンダースに目を止める者は居なかった。 ドアの前まで来ると、脇にあるカードリーダーに付け加えられたインターホンを押した。社長室の扉を開けるカードキーを持たないので、中から開けて貰わなければならないのだ。 「アンダースだ。開けてくれ」 《分かった。少し待て》 ドアからカチと音が鳴る。それを聞いたアンダースはドアノブに手をかけて中へと侵入していく。 中は、大きなデスクと棚があるだけの、広いオフィスだった。 「来てやったぞ。見せたい物って何だ?」 「急かすんじゃない。まずは楽にしろ。休んで居ないだろう」 トライゼンはそう言って大きな体格を椅子から離した。スーツ姿がよく映える風貌だった。五十を過ぎたはずだが、若々しいエネルギッシュなイメージがある。だが、それはすべて虚構だろうというのがアンダースの印象だった。 解りやすいまでの営業マンにしか見えていなかった。アンダースは立ったままそれを見ていた。 「例の研究はどうだ?」 「いまさら聞く事か? キースの指示が無ければ何もできやしない。そもそも、あの遺伝子は異常だ。キースですら手に負えなかった物を、俺にどうしろと?」 「そうか。仕方ないな。無理な要求だった事は謝ろう」 「一つ答えろ。あれはキースの開発した無個性遺伝子なのか?」 「そうだ。例の人種の特徴を再現する為の」 「ウソを付くな」 「どういう意味だ?」 「あれは無個性遺伝子ではないだろう。あれは……間違いなく何者かのクローンだ」 「ほう。君でも気付いたか」 「当たり前だ。無個性遺伝子だけなら山ほど見てきたんだ。あれは絶対に違う物だ。キースが開発したとは思えない。お前の差し金か?」 「確かに私が主導で開発を進めた物だ。だが、あれは間違いなくキースが開発した遺伝子だ」 「バカな……。キースはクローンなんて興味が無かった。ではあれは何処の誰の物なんだ」 「まず勘違いを正そう。あれはクローン遺伝子ではない。間違いなく、キースが無個性遺伝子から発展させた物だ。君は気付かなかったか? あれの異常性に」 「……寿命が異様に短い。その反面、すぐさま細胞をガン化してしまうという特性もある。すぐ死ぬ上に、そんな特性を持っていたら、生物として成り立たない。ましてや人間の細胞なら」 「その通りだ。そして、それの克服こそがキースが目指していた物だ。残念ながら途中で離脱してしまったがね。 君にやって貰おうとも思ったが、いくら遺伝子を自在に操れたとてどんな形にしていいか解らなければやはり無意味だった」 「あれは何だ。俺に何をさせていた? キースは何をしたんだ?」 「焦るな。順に説明してやろう……」 トライゼンはデスクの上にある真新しい電話のボタンを押した。そして一言、「連れて来い」と言う。 その直後、さらに奥の部屋へと続くドアが開かれ、同時に必死に息をする音が聞こえて来た。 そして、チタンの塊がゆっくり姿を表した。肩に担がれているのは、さるぐつわをされた―― 「アリサ!?」 アンダースは驚愕の声をあげる。 チタンの塊は縛り上げたアリサを椅子に座らせ、デスクの前までそれを押してきた。 「……あの遺伝子はアリサのだというのか?」 「半分は正解だ。このアリサとは少しバージョンが違うがね」 「何だと?」 「最新のバージョン、つまりこのアリサの設計図はキースが持ち去った。そして今はあの元兵士が持っているらしい。仕方なくだが、まずは手元に見本を置いておこうと思ってね」 「何を言っている? アリサのクローンでも作るつもりか?!」 「落ち着け。説明しよう。クローンではない」 「では一体……!? キースは何をした!?」 「驚くべき事だ。キースは、およそ究極と呼べるアンドロイドを開発したのだ。……人間を造ったんだ。」 続く―― ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
https://w.atwiki.jp/merail/pages/33.html
施設名 接続高速道路 大高IC 3号大高線 大府西IC 伊勢湾岸自動車道 大府PA 大府東海IC 知多東浦IC 阿久比IC 阿久比PA 半田中央IC/JCT 知多横断道路? 半田IC 南知多道路?