約 854,565 件
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/167.html
1/8 657 膝枕をするシロ(平行世界) 「京のお世話が大変」 「またまたー。須賀君に迷惑かけすぎちゃダメだよ?」 「……」 急に塞が電話をしてきたと思ったら、内容はお節介にも現状の確認。 やれだらけてないかだとか、やれ外に出ろだとか、やれ困ってないかだとか、まるでおばあちゃんみたい。 それを塞に言っても、『私はおばあちゃんかっ』と怒り出す。 挙句、京をお世話してあげていると言っても全く信じてもらえない。 別に、信じてもらう必要もないのだけれども、毎回こう言われると少しだるい。 「コタツ持って歩いてたシロが何言っても信用できないって」 ケタケタ笑いながらそう言われると、ぐうの音も出ない。 そんなこともあったなと、三年前を思い返す。 思えば、三年前から自分がこんなに変わるなんて思ってもみなかった。 あの時はみんなにダラダラしていると散々言われ、少し真面目に動くだけで驚愕されていた。 一人の時は前と変わらないけれども、今は少しだけ違う。 「京、ご飯できたよ」 「やたっ。シロ姉のご飯美味しいからなァ」 京が嬉しそうにトテトテとこちらに来る。 その大柄な体とアンマッチした動きに笑みがこぼれる。 でもそれが恥ずかしいから、すぐにその笑みを隠す。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2/8 「俺、シロ姉の味付け好きだよ」 「……」 恥ずかしげもなく言ってくれるその一言が嬉しい。 私は一人暮らしするまで料理なんてほとんどしていなかった。 こうして京と同棲するようになって、京の好みがわかっただけだ。 「変なことを言っていないでちゃんと噛んで食べる……」 「ひっでー。褒めたのに」 恥ずかしいだけだ。そんなこと言わなくてもわかってほしい。 「そうやって京が人を褒める時は、何かやましいことがある時」 「そ。そんなことねーし」 「何かあったの?」 小さい頃、人を褒め倒して自分のいたずらを誤魔化そうとしていたことは少なくない。 じっと京を見つめるが、本人はどこ吹く風のように目をそらす。 そんな対応をされれば何かあるのは丸わかりだけれども、ため息ひとつで許してしまう。 最近はそういう京の態度も許せるようになってきた。マフラーをプレゼントしてもらって以来、少しは私も成長できたのだろうか。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3/8 その日はそれからも京がソワソワしていた。 何かとこちらをチラチラと見ている。 ため息を一つ吐いて、エプロンを正して洗い物を終わらせる。 その間、先ほどの比ではない視線を感じる。 さっきまではこちらに気取られないようにチラチラと見ていたのが、今は後ろ姿だからじーっと見られているようだ。 __ /⌒ヽ ⌒\ ∨ ヽ___ _, ----` ∨ `ヽ、 /´ | \ / ____ / l| | . \ /// / | |l | ヽ / / // ,∧ / ,イ l| . . . / イ / // l | ' / ! 从 | . .'/ ' ' /-|-{ { | /}/ | / } } | . }' / |Ⅵ { 从 ' , }/ /イ } . / イ | l{ { ∨/ ' } ∧ . 「(家事してるシロ姉、いいなァ)」 ´ | {|从三三 / 三三三 / /--、| ∧{ {从 | , ムイ r 、 }} /} \ | ノ ' }/イ/ { _,ノ 人 _,.. ァ r }/ ` ゝ - ' イ |/ ` ーr ´ ___|_ ___| |//////| {|___ノ __|[_]//∧_ /// |____|///////////> 、 ///// | /////////////////> 、 /////// { //////////////////////} //////////∨///////////////////////| ___/ / / \ \ ⌒フ / , / l 〈 \\ \ / / / / /| \ ∨ \ \ / / / /-~/-| { \~ー 、' \ ) 〈 / | |八Ν__八{ | _\ ∨ l|′ / l| l ァ┼ ┬ \N┬‐┬ | | リ 〃 / l|\_从 乂゚_ノ 乂゚ノノ}∧l/} 八/ / ,八 入 、 ,,, ,′ ト、ノ. { / }\__ ′ |. 从 八{ 込、 ∠ . イ^| }八 ∨ \从_}> . __ イ 八jノ ) 「(もう……)」カチャカチャ / \__ Κj/ _/ //〉_∧ ‘, / .∨ ,/// ∨ } .. . . ´ ∨//\__//∨ `ト、 /∨ ∨\ i i i/ { . . | \ { ∨ \/ i∧\{ . . | ∧――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4/8 「なー、シロ姉ー」 「なに?」 「その、さー。 ちょっとー」 「もう」 なにやら要領を得ない京の手まねきに近づいていく。 「うりゃっ」 「……」 「シロ姉、無反応だとちょっと寂しい」 「いきなりどうしたの」 思いっきり引き寄せられて抱きしめられた。 びっくりして何かを感じる前に疑問が口から出る。 それに対して、京は一言返しただけで私を抱きしめたままだ。 ギューっと強めに抱きしめられて、ちょっと体が痛い。 同時に、京がその気になれば私は抵抗できないんだなと思い、ドキドキし始める。 「もう……」 結局、数分間そのまま抱きつかれていた。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5/8 「それで、どうしたの」 「いや、その……」 「答えて」 今度は有無を言わさない。 いきなり抱きついてきてそのままくっついているのだ。 満足したから離したよ、なんてされても納得がいかない。 「ちょっと辛くて」 「……」 ぽりぽりと頬を掻きながら言われてしまえば何も返せない。 京にだって何か辛いことがあったんだろう。 私だってそんなことにまで言及するほど空気が読めないわけじゃない。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6/8 「京」 「?」 「こっち」 そう言いながら自分の膝を見る。 積極的に膝に抱き寄せられないのは性分だ。仕方がない。 「いいの?」 「いらないなら……」 「いるいるいる!」 「はい……」 ポフンと、ゆっくり京の頭を膝に乗せる。 慣れない正座の上に京の頭の重みはちょっと痺れる。 その輝くような金髪に触ってみると髪質は固い。 こういうところは、やはり男の子なんだなぁと思わされる。 何も言わず、京の頭を撫で続ける。 京は気持ちよさそうに私になされるがまま。 先ほどとは打って変わって私が一方的に撫でられる環境に、笑みがこぼれる。 さっきとは違って京の角度から私の笑みは見られないから安心。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 7/8 「シロ姉ー」 「京は甘えん坊」 「太ももが気持ち良い」 「……おろすよ」 「あっ、待って……」 「もう」 「なんかシロ姉に甘えたくなって」 「京はいつだって甘えん坊でしょ」 「うっ。 し、シロ姉の前だからだし」 「……ダル」 普段みんなの前でしっかりしている京。 そんな京が自分の前だけでは甘えん坊になることに母性本能が刺激される。 自分自身も逆で、みんなの前ではだらけているのに京の前では頑張っている。 二人だけしか知らない事実に、胸がドキッとした。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 8/8 /\-――‐- 、 , --=7 丶 `ヽ /, ヽ ヽ ∠/ / 、 、 丶 i / i ! l. l i. i | / ,/ ! ! l|| ! |、 ll ! | ヽ、 /_ -7 , | l ト、| |ヽ! N , 斗 r ,'_ ト--`  ̄ //! ! Nヽ!\|,//l/ l/! N ,ハ !| ´ / ,i丶 {=== l/ == =l/ ' ノ リ // l i `i _/,、/ 「(シロ姉のおっぱいが顔に!)」 ´ {ハ!ヽ{ ′ /!}/ ′ 丶 ー ―‐ ' / |′ \ / | __ i ー ' ! __ , ィ'´ . /-‐ ´} / `Y´ . .\ , -‐'' ´ . ./ . . ./― - 、 ,/__ / . . . . . /`丶、 ハ . . .i ., . ,′ . i `  ̄ / . . . . ../ . . . . . . .丶、 / . . .i . . |,' . i . . . . ! ヽ / / . . . . . / . ., . . . . . . . . ,.ヽ ! . . . .ヽ .{ . .l . . . . l. i / . . . . . / . ./ . . . . . ./ . . .i //ア / / イ ト、 \ \ \ \. // / / / | | \ \ \ \ \. /′i / /i | │ \ `ヽ `ー- 、 Y⌒ヽ} { | , イ ハ`¨´`T´ | 、 \ト、 ヽ `ー- 、 \_ } | | | ト、ハ≫=zzz、 ! `¨´`¨´`¨´`¨´ | |\ ヽ`ヽノ\. 人 | | | 代 { __} \| ィ=- ..,,__\ト、 j │ \ } \ \! 〉、 ! . 乂_フ ´下¨¨“_卞ゝ jイ ノ ヽ ノ i / ヽ ハ 弋 `フ ノ j/`ヽ j/ |. / / / . , `¨¨´ ノ ト、 ト、 } i | i 从 / ト、 | ヽ. ; } / 「はいはい。 l 人 ト、 ト、 _ rー-イ イ ! \ ! } / j/ ∨ \! ∨V .> ` イ {ス人jヽノ jノ jノ j/ (京、ニヤけてる)」 /. . / . . ./‐/ >、 _ ... イ ゝ ヽ l. . ′ . .|‐| λ´ ` < _. 人 | . . / |‐| `ヽ ィ´ / 7 . . . ’, Y . . .'; . / . . |‐| / / . . . . . . . }. . . .Ⅳ. . . .|‐| , ' ソ . . . . . . . . . λ. . ´ /. . }‐{ ! / , ' . . . . . . . . . . } /. . .. ; ' . . . . . l‐l , ´ / , . . . . . . . . . . . . 从. /. . . . , . . . . . .ハ ', / ヽ V ';. . . . . . . . . . . . . .∧ , ' . . . . . , . . . . . .; ' . . . ./., , ' ゝ!. . V . . . . . . . . . . /. /. . . . . . / . . . . . / . . . . . ./.乂 ≦ x< . . . ';. . . . .Ⅶ . . . . . . . /. ′ . . . .′ . . . . .′ . . . . .圦 /ァ -=≦ } . < l . . . . . . . . l . . . . .Ⅶ . . . . . λ l . . . . . . .l . . . . . . .l . . . . . . . . .; ゞ==-≦ . . . . . . | . . . . . . . . | . . . . l . . . . . . . . . . ';. . . . . . | . . . . . . .! . . . . . . . | . . . . . . . . { . . . . . . . . .l . . . . . . . . l . . . . . | . . . . . . . . .从. 入 . . . . ';. . . . . . .; . . . . . . . .l . . . . . . . . ! . . . . . . . . | . . . . . . . | . . . . . l . . . . . . . / 丶 . .. V . . . . . ';. . . . . .二ニ=- . 〈 . . . . . . . . .| . . . . . . . .; . . . . ∧ . . . . . / >=- ≠=. . . ≦. . . ’, . . . . . .} . . . . . . . . l . . . . . . . ; . . . . ./ . . . . . . . ′ 入. ./ . . . . . . . 丶 . . . | . . . . . . . ;′ . . . . / . . / . . . . . . . { カン!
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/228.html
1/10 【お世話されたい】(平行世界) 体がだるい。 目がチカチカする。 節々が痛い。 「シロ姉、やっぱり熱あるよ」 「……」 知らない間に風邪をひいていたらしい。 半ば強制的に京によって押さえつけられ、布団の中に入れられてしまった。 自分は動けると言ったのだが聞いてくれず、熱を測ってみたら案の定というわけだ。 「38度ちょい。 シロ姉、辛いでしょ」 「別に、なんとも」 「嘘つけ。 すごく辛そうな顔してる」 そんなことはない。 自分はいつもの無表情顔のはずだ。 それを辛いと思えるなら、それは。 京が私のことをよく見てくれているのかもしれない。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2/10 「とりあえず、シロ姉が元気になるまではお世話するからさ」 「……大丈夫なの?」 「任せとけって。 これでも高校時代はぽんこつの世話を……」 何か、嫌な匂いがした。 それ以上言わないように掌を抓った。 「シロ姉?」 「……」 そんな小さな嫉妬も、思っていた以上に弱っていた。 結構強く抓ったはずなのに、全く力が出ていないようだ。 嫉妬してしまう自分と、そんな自分の気持ちを汲んでくれない京に苛立ちが募る。 調子が悪いせいもあるのだろうか。 やけにイライラしてしまう。 「とりあえずご飯食べてあったかくして寝ようぜ。 俺がご飯作ってくるよ」 「……」 そんな自分の心なんてどこ吹く風だ。 心配をしてくれているのはありがたいが、納得がいかない。 「シロ姉?」 「……」 だから彼の手を抓ったまま離さない。 このまま離したら何処かに行ってしまうような気がした。 京が困ったような表情を浮かべる。 もう少しだけ……。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3/10 「ほら、シロ姉。 ご飯食べないと良くならないから」 「……わかった」 まだまだ満足はしていないが、京の手を握っているのも辛くなってきた。 離れて欲しくはないけれど、手を離す。 京が離さないでくれればいいのに、なんて思ったけれど思いは伝わらない。 「俺、何か買ってくるよ」 「冷蔵庫の中にあるのは……」 「それくらい大丈夫だって。 ほら、風邪をひいている時くらい俺に任せて」 任せてというならば側にいてくれるだけでいいのに。 そう思っても京は私から離れて行ってしまった。 「……だる」 最近少なくなっていた口癖が出てくる。 心が締め付けられるようだ。 風邪をひいているから心細くなっているだけ? それとは少し違う気がする。 ダメだ。正常な判断ができそうにない。 少しだけ目を瞑ろう。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4/10 「わわっ!」 「……大丈夫かな」 目を瞑ったはいいが、台所から聞こえてくるのは京の慌ただしい音。 そういえば台所に立たせることはなかったかな。 「えっと、とりあえず濡れタオルを作って……。 冷えピタもないし、薬もないか」 「……」 「ごめんシロ姉。 冷蔵庫の中にあるやつじゃ俺には作れないや」 「いい、私が作る」 「動いちゃダメだって。 何か買ってくるから」 「それは……」 それは嫌だ。 少し側から離れるだけでも身が引き裂かれるようだったのに。 「すぐ帰ってくるから!」 「あっ……」 ……京の馬鹿。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5/10 バタン、と強く扉を閉めた音が聞こえたと同時に人の気配がなくなる。 先ほどまでは京の立てる生活音が聞こえてきたのに、今は聞こえない。 耳鳴りがする。 さっきまでは他の音でかき消されていたから気づかなかった。 心細い。 京がいないだけでこんなにも心が痛くなる。 まるで世界に私一人しかいなくなってしまったみたいだ。 今まで京と私の二人だった世界から一人がいなくなってしまった。 どうしようもない喪失感。 自分自身の片割れがいなくなってしまったような感覚。 「嫌だな」 何かよくないものが自分の中から湧いてくるのを感じた。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6/10 少し前、鏡写しの自分の夢を見たことがあった。 布団の中でそんなことを思い出す。 あの時は京が浮気しているんじゃないかと思って辛かった時だ。 今もまた、あの時のように辛い。 私を捨ててどこかに行ってしまうんじゃないか。 このまま帰ってこないんじゃないか。 そんなことばかり頭の中を過る。 「……」 二人共元気で、ずっと一緒に居られる。 そんな空間があればいいのに、なんて思った。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 7/10 …… … 次に起きた時には、体調も少しだけ楽になっていた。 いい匂いが部屋の中を充満して、くうとお腹が鳴っている。 そういえば朝から何も食べていない……。 「あっ、シロ姉起きた?」 「うん……」 もし犬の尻尾が付いていればはち切れんばかりに振っていただろうか。 京が私に気付いて急いで近寄ってくる。 「えーっと、普通に作る方法わからなくて、レトルトのおじや買ってきたから食べよう」 「……うん」 「家事は俺がやっちゃうから気にしないでよ」 胸を張る京だが、少し目線をそらすと洗濯物の山。 掃除機を取り出そうとして余計に荒れてしまっているのも見る。 私の部屋だけは綺麗になっている、というかものが減っている辺り、外に全部放り投げたのではないか。 そんな京の不器用さに呆れるも、苦手なりにこの部屋を綺麗にして私のために頑張ったと思うと、胸が温かくなる。 京がいるだけでこの心境の変化だ。 全く、京はズルい。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 8/10 「はい、あーん」 「……あむっ」 「へっへー。 今日のシロ姉は俺のいいなりだなー」 「……生意気」 いつもならお姉ちゃんとしてやり返すところだけれど、今日はそんな気力もない。 「ご飯食べた。 薬飲んだ。 あとは温かくして寝ていれば治るよ」 「京は風邪を引かないの?」 「健康優良児ですから!」 自信満々に言う。 確かに京が風邪をひいているところは見たことない。 その機会があったら仕返しをしてやろうと思っていたのに。 「洗濯物とかやっちゃうわ」 「いい。後で私がやる」 「たまには俺にやらせてくれよー」 「区別、つく?」 「あ、うう」 「ネットに入れるものと、色物。 洗濯物の干し方」 「ダイジョーブだって! たまにはシロ姉休んでて!」 京はそう言って洗濯物に取り掛かってしまう。 ああ、破れないだろうか。 干し方を間違えて伸びてしまわないか。 くしゃくしゃになったまま干してしまわないか。 そんな思考が頭をよぎるが、頭痛の前に考えることを放棄した。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 9/10 「ほら、全部終わったぜ!」 「明日採点する」 「うぐっ」 京が桃の缶詰を開けて、私の口に入れてくれる。 冷たくて甘くて美味しい。 なんだかんだ言いつつ、一日中京に甘えてしまった。 だるいだるい言っていた京に会う前の私なら享受していたであろう幸せ。 まるであの時に見た夢みたい。 私は何もしないで、京がずっとお世話をしてくれる、夢のような日常。 そして、『私』が言っていた世界。 「京」 「なんだー?」 「ちょっとこっちに来て」 「あいよー」 缶詰を片付けていた京を呼び出す。 いつも反抗的なことなんてないけれど、今日は特に言いなりだ。 姉の威厳、というものと違って新鮮な気持ちになる。 「……はい」 「?」 「今から、寝るから」 「うん」 「……もう」 「シロ姉?」 「手……」 「あっ、なるほどね」 こちらが『熱で』顔が真っ赤になりながら言っているというのに、察しが悪い。 察しが悪いし、気づいた時にもなんとも思っていない。 すぐに私の右手を両手で包むようにしてくれた。 「おやすみ、シロ姉」 「おやすみ、京」 手が触れているだけで何かに包まれたように安心できた。 まどろみに包まれて意識が落ちていく。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 10/10 「京」 「まだ寝てないの?」 「手を離さないで」 初めて、こんな甘えた声を出した気がする。 京は穏やかに笑った。 「わかったよ」 ああ、これならさっきよりゆっくり寝られそうだ。 このまま時間が止まってしまえばいいのに。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5474.html
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/209.html
1/8 273 京ちゃんの初恋(平行世界) 小さい頃におぼろげながら誰かのことを好きになった気がする。 その人は格好良いお姉さんで、ヤンチャだった俺の面倒を見てくれた。 年の割に大人びていて、言動も子供っぽくなかった気がする。 引っ越したと聞いて泣きはらした淡い思い出だ。 ただ、それは小さな男の子が持つ憧れのような感情だったのだろう。 もし、俺が『恋愛』という意味で誰かを好きになったのならば、それはきっと――― 『清澄高校、団体戦優勝―――!!』 目の前で成し遂げた全国制覇。 みんなが集まって喜んでいる。 大苦戦しつつも最後の一撃を決めたのは、俺の幼馴染の宮永咲だ。 「咲ちゃん、すごいじぇ!」 「本当によくやってくれたわ!」 「咲さん、ありがとうございます!」 「本当にようやったのう!」 みんなが咲に抱きついてはしゃぐ。 まだ出会って数ヶ月の咲たちだけれども、ここに伝説が生まれた。 かつては麻雀部としての存続ギリギリの状態からここまで来れたんだ。 それはきっと、咲のおかげだ。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2/8 「やったよ!」 「咲、おめでとう」 咲がみんなにもみくちゃにされながら喜んでいる。 そういえば咲は俺が連れてきたんだっけか。 普段だったら俺のおかげだなーなんて言えたのに、そう言って咲を一緒にもみくちゃに出来たのに、それが出来ない。 なんで 「京ちゃん?」 「あ、ああ」 自分の心の中にもやもやとした物が残る 素直に祝福できていない 「咲、おめでとう」 「おー! ってさっきも聞いたよ!」 「本当に嬉しいわ。 ずっと私の夢だった。 まこが来てくれて、和と優希と須賀君が入ってくれた。 そして咲が入ってくれて、ここまでこれた」 「部長、泣きすぎじゃぞ」 「な、泣いてないもん」 泣き腫らす部長を見て、胸に熱いものがこみ上げてくる。 そうか、俺たちは優勝したんだな。 俺は何もしていないけれど、雑用として頑張ったんだ。 素直に、喜ぼう。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3/8 「京ちゃん」 「なんだ?」 「私をここまで連れて来てくれてありがとう」 咲が純粋な目でこっちを見てくる。 「どう、いたしまして」 「なんでどもってるの?」 「うるせー、咲のくせに生意気だ」 「もう咲ちゃんドジなんて言えないなぁ。 咲ちゃんは名目ともに日本一の雀士と言っても過言じゃないじょ!」 「優希、個人戦がありますよ」 「のどちゃんはこういう時くらい羽目を外すべきだじぇ」 ああ そうか 「そんなことないよぉ」 「咲、それは対戦相手に失礼よ」 「そうじゃぞ。 胸を張っていいんじゃ」 「咲ちゃんに張る胸はないけどなー」 「優希、こちらをジロジロ見ないでください」 「す、少しはあるもん!」 もう、何もできない咲じゃないんだな。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4/8 …… … 懐かしい思い出 「須賀ー! お前また咲ちゃんに構ってるのか?」 「だってこいつ放っておくととんでもないことやらかしそうだし」 「そ、そんなことないもん!」 「だってさー。 すぐ転ぶし?」 「あー、この前も転んで須賀に引っかかって助かってたな」 「歩きながら本読むのがいけないんだよ」 「だって京ちゃん、いいところにいるし……」 「咲が危なっかしいから近くにいるんだよ……」 「ハッハッハ。 お似合いさんだ。咲ちゃんはいい嫁さんだなァ」 「嫁さん違います!」 「ハイハイ。 口ばっかでいつも変わらないじゃん」 「ぐぬぬ」 「おー。よく伸びるほっぺただ」 「やめてー!」 ―――そんなことも、あったな … ……――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5/8 …… … 「……嫌な夢見た」 懐かしく、苦い思い出だ。 みんなと一緒に全国制覇した思い出。 一般人には味わえない感覚。 それを味わえた俺は幸せ者、だと思う。 でもあの時に感じた感覚はそんな幸せな感覚じゃなくて。 「いつまで引きずってるんだか……」 もう数年前の出来事だと言うのに、未だに精細に思い出せる。 咲とはあれからそれとなく疎遠となった。 麻雀部を続け、頑張ったけれどもまったく芽が出ない。 別に女子三人組と仲が悪くなったなんてことはない。 ただ、女子三人だけで集まっているところに俺一人が行くなんて空気の読めないことをしなかっただけだ。 部活の時以外はあいつらはあいつらで遊んで、俺は俺の男友達と遊ぶ。 本当にそれだけだった。 もしこれが女子二人だとか、女子一人だったらちょっと違ったのかもしれない。 中学生時代の俺と咲が仲よかったのだって、咲に親しい友達がいなかったからだ。 女子三人、三人だ。 それだけ集まってしまえば、軽い気持ちで誘うことはできない。 それは誰が悪いわけでもない、普通の話。 強いて言うならば、勇気がなかった俺を責めるべきだ。 ……本当に勇気があったのは、俺なんかじゃない。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6/8 「さて、今日も頑張りますか」 苦い気持ちとはオサラバして、みんなと離れた大学生活。 そこそこ充実した毎日を送っている。 ふふふ、そんな俺の最近の楽しみが一つある。 「あの綺麗なお姉さんと仲良くなることだー!!」 入学式の日、すれ違って一目惚れをした綺麗なお姉さんとお知り合いになること! どことなく初恋の人に雰囲気が似ていた。 凛とした雰囲気、知的な眼差し、長く下ろした髪の毛、一目惚れとしか言いようがない! あれからどんなに探しても見つからない。 それでも、同じ大学内にいるってことはわかっているんだ。 俺は決して諦めないぞー! -‐──‐- . ´ `ヽ、 / / , / / /| ト、 ′ ∠._/ / i| i \ 〕 〔 |/ 八〔\ .' \ /. |∧ | ┯ ┯ V ┯ ┯∧ / j ' ∧| 乂ノ 乂ノ ∨、 |. / Ⅴ "" ノ | 「京ちゃん、お菓子」ヒョコっ / 入_ _ < / /| / /\ /∧ノ へ ̄ ̄/ \リイ/ / 〔′  ̄\\ r‐' \/ //\ / \ヽーヽ └─ー/─' \ 丶ー| 〉 〈 | 〈 | .〈∧/ !__/ | | |――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 7/8 「……照さん、何やってるんですか」 「京ちゃんに呼ばれた気がして」 「呼んでません。 と言うか朝からどうやって入ったんですか」 「京ちゃんの合鍵を借りた」 「なんで……? 俺はこれから憧れのお姉さんを捜しに行くんです!」 「私のことだね」 「ハハッ、照さんも冗談を言うんですね」 「ほんとなのに……」 ……なぜかうちに入り込んでいる彼女は照さん。 ドジでボケーッとしている様子はまるで中学時代の咲だ。 なにやら咲のお姉さんである『宮永照』さんと同名だし、よく似ているけど別人だ。うん、きっと、間違いない。 苗字を聞いても『わたしがてるです』としか言わないし、妹はいないらしいし……違うよね? だって咲と話していた宮永照さんは知的で、咲を諭すように喋っていた……気がする……。 こんな自活能力皆無な『妖怪おかしちょうだい』じゃないはずだ。うん。 まぁなんやかんやあって知り合いになって、よくわからないけれど俺に懐いてくれている、らしい。 「朝からおかし食べないでください」 「(´・ω・`)」 「朝食を食べたら少しだけならいいですから」 「(`・ω・´)!」 「俺、料理下手なんで目玉焼きくらいしか作れませんよ」 「私がつくる」 「指怪我しちゃうからダメです」 「(´・ω・`)」 本当、見ていて危なっかしい人だ。 この人の相手もそこそこにお姉さん探しをしなければ! このまま咲系女子に寄生される前に母性溢れるお姉さん系女子を彼女にするんだー!!――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 8/8 ~~ ~~ -―――- ~ ~ ..... . `丶 / \ } } . . { { / / . . │ |\ |\ | . } } / | / | | ト- |--∨\ | { { / /| |ノ| 八 | _..斗-=ミ\| | | / | /-匕-=ミ\|\| 〃⌒゙ヾⅥ | | }  ̄ ̄ | | イ /〃⌒ヾ {{ }} }|/| | | { { | 八ハ{ {{ }} ゞ==(⌒) | / | } |/| {. ハ (⌒)=='' /// |/} | | ヽ_| /// __,ノ | } 「京ちゃん……、お茶が熱い……」. { | 八 _.. ‐~‐-、 イ | {. } | 个 .._ (_,,.. ‐~~' イヘ | レヘ _≧=一ァ 〔/⌒T iT7ス / ∨\ /r ̄ ̄ ̄7____/ / ∧/ } { ∧ | / / / ∧ { } / {\/⌒)_∠__/| / ∧ / ゙T{ 二(__ `ヽ _ヽ / ∨ハ. {_ / \/ _〉. { /\ _ | ノ _) 人._ |_/|/ } } \_____,|/ /i i\  ̄ ̄`ヽ j { ∨ / /|i ハ i \ | / / i i i ハ i i i i 丶 ... ______丿 〈 i i i i/ i i i i i| | } 、___/ i i i i/ Ⅵ i/ | { ,. ⌒ヽ、/⌒ 、-- 、 /_,..- ヽ ` 、 / /´ / ∨ \ , ´ / ,' 、 ヽ / , , / /| | . | | | ∨ _/ / / |_|__'_| | _}_|_|_| | |  ̄ ̄´/ イ ' { ´| |/__{ | , ´/}/_}∧ | | | / / , rⅥィ笊 从 {∨ /ィ笊_ヽ}/、 | | / イ ∧{ 从 Vり \∨' Vり /' / ∧{ ´/イ }从lム ; \ ,ノ / \ 「あー、はいはい。 | ∧ U ∧,イ Ⅵム - - イ // 水を持ってくるから待っててください」 _ヽl\ //イ__ |////} ` ー ´「////| |////| . / |/[__}/| ,...<////∧ , |/////> 、 , <///////////\ ///////////> 、 , </////////////////}____{/////////////////> 、 //////////////////////| |////////////////////∧ {/////////////////////∧ ,'//////////////////////} |//////////////////////∧ ////////////////////////| カン!
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/222.html
1/9 【あの頃と今】(平行世界) 「今日は楽しかった」 一日中京ちゃんと一緒にいて、サークル巡りをして。 京ちゃんとスイパラに行って、あーんをして……えへへ……。 これはもうデート。間違いなくデート。 『フラグ』が建ったと言っても過言じゃないはず。むふー。 そんな気持ちでラインを送ったら……。 『今度お礼をしたいんで、照さんのことを教えてください!』 さっきまでの浮かれた気持ちが吹き飛んだ。 私のこと……? -─===‐-ミ ´. . . . . . . . . . . . 、/. . . . . . . . . . . . . . . \. . . . . . . . . . . . ト、 . . . . `、. . . . . . . . .|. . . . | \. . . . ',. . . . . . . |. . . . | \|. . .. . |. . | |. ‐/、|. . l . | -‐. |、. . .. . |. . | |. / |. . 八ノ ハ . | . .. 八. |┬─┬}/ ┬‐┬‐ . . |`ヽ}. /⌒ヽ} | | 三 | | .'. . |. { '└─┘  ̄ └‐┘ l. . | 「むぅ」人_ u j. . |i. . . .> )‐┤ イ.l 'i. . . i . _;〕ト _/| h ≦. . .| 八/ト、. . |/⌒ 、_| | | | ト、`〉、|/| \{ .,_ \| |/ ハ / ヽ > | ノ / ∧ どう返信したらいいものか。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2/9 …… … ---、...--<¨\-...、 / -- --\ \ \ // \ \ \ /´ \ .. / | | \ _| . l\__ | | 、l _ _ Ⅵ | . l_/ _l イ|\ | \ 〉| | . 八 ´ l八|  ̄ =苧芹| | |`¨Τ=苧芹 V_ノ | | | | . V_ノ l /| | | ∧ ' イ | |. 八/i .、 rっ /| | | 「それで私のところに来たわけか」 | 个 .... /| | | | | | Τ ∨| | | | l | /У り l―┴ 、 | | 斗{/-、 , -/| | /-、 ┌‐  ̄ |´ ̄ ̄/ | |--// ∧ \ | / . /// | { `ト \ l / . -=/ /´ / { ノ |二ニ=- { -=ニ二/ { / \ / /\二二ニ、∠二ニ= i | | } / / >‐〈ニニ/ニニ\ | ∧ | \__/ /. ∨ { /二ニ/¨¨゙\ニニニl/、∨| l「 ̄ ̄ ̄ `く ∨--/二ニ/ } `¨¨¨¨¨ /{ニニニニニニニ | } 厶=イ 〉 / |_ ┬―‐┬v' /__} { / `¨| |¨′ _. .  ̄ ̄ ̄ . 、 ,. ´ ヽ ,. ´ \ / , , ヽ / / / , , ヽ . , / / / | | ∨ . / / , _ _ / / i | l | / 从| /| `イ | ∧ . | / | | / ィ { /ィ-、 } ∧ | -} |-|---く , |  ̄´ | ∧ | _)雫ミ从 | _}∧ _ / }ヽ / | Ⅵ V ノ \|´_)笊雫ミ/ / / , | , | , V ノノ' イ .イ ,′ | j 从 / / /' ノ / / 「うん。菫が役にたつとは思ってないけど……」 | ,| { . _ ´ ィ ー ´ / / | /| 从 . ‘ ’ イ | / / / | / 从{_r--'´` ー 、-=≦ ∨ / / }' / || | ∧ /,' / .イ / || | / _,./ / イ /\ / ∧ { /⌒\´/ ´ ´ 、 , { . \、 ,′ / ,. ---――‐`ヽ、 / ∧ . . . ∨ /_,. .― . .´ . . .// Ⅵ | {__ , \ . . {_/-- ´ . . . . . . ./ , マ | //≧=- 〉介、______/_ / } | //> ´ ` <≧=--r-- 、  ̄, ' | | ,く ̄´ ` / /^T \ { マ〉 r つ ` < / ∧__|>´| ∧ }――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3/9 「人を頼っておいて散々な言い草だな」 「残念ながら当然」 「まぁいい。 あの金髪ヤンキー君に押し倒されて組み伏せられる計画を立てればいいんだな?」 「京ちゃんはヤンキーじゃない」むかっ 「そこ以外は否定しないんだな」 「は、恥ずかしい」 これだから菫に相談する気は無かったのに……。 「私から言えることといえば、『考えるな。体で感じろ』だな」 「意味がわからない」 「男なんてみんな狼のようなものだ。 勝負下着を履いて男の家に行けば一発だろう」 「……」 「なんだ、どうした?」 :_,. -─……─- : . ´........................................................\: :/.......................|........ト、..............................ヽ: : /....................| |...i|........| \...........|....|............:/.........../ .....|.._|_八......| \__....|............i : ̄ ̄ ̄|...|....| [ \| \|....|............|: :|...|....|┬─┬ ┬─┬ |............| |...ト..| 乂 ノ 乂 ノっ|............|: :i|...|....| |............|: 「もうやった……」 ||...|..人 , _ 人.......l..| 八Λ.....> _ . <......../|/ \|\_,ノ⌒ 〈___/ ⌒ ‐-ミ ;/ ̄ | \ ∧ / / / \; / | \ ∨_/ / ハ :/ \ Χフ / /  ̄/ Τ  ̄ ',; ;\ | 〈 ∧ 〉 | / ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4/9 「なん……だと……? 私の参考書(少女漫画)にはそう書いてあるんだが。 彼は不能なのか?」 「いつも京ちゃんの家でゴロゴロしているけど反応してくれない」 「それは女として見られていないんじゃないか?」 「うぐぐ……」 気にしていることを言う。 「なら女の子として見られればいいんじゃないか。 照の得意な料理でもなんでも見せてやればいい話だ」 「京ちゃんは私のことを料理ができないと思っている」 「は?」 「講義もサボっていると思われていた」 「そんな馬鹿な。 もうほとんど単位は取り終えているし、麻雀部だってここ最近までサボったことなんてないだろう」 「うん」 「大学生としては異常なくらい浮ついた話なんてなかったし、合コンなんかにも行ってない。 いつも通りの照をアピールしていけばそれでいいと思うんだが」 「ううん。 それはできない」 「えぇ?」 / \ / . .. . .. ... ヽ. / / . . . . . i / /;. ;ィi i i i .| | . .. |. / i | . ハ!_|.|. | i | . | / ..|. | ! '|´|_И ! i | | |./ . /! { ハ i f"| ヽ| i |-、 | .|i/ | };ハ{. Lン| ;ル'^ } | | | ノ "" j/ / | | 「私はドジで何もできない『照さん』だから」 | .、 '^リ ! | | | ハ` ! / i i |ノ |/ ヽ.__,.. 、 / / / / /! / V | / ノi! /! ノソ }ノ ,..-‐y/‐j/フ‐'" ̄\ ,...-‐'" `ー- 、 r=、´ `ir、 /\ヽ、 ||.ト、 ハ | | | ||.| |. i ゙、 | | | ||.|/!| ゙、 !.i i ||.||――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5/9 「何でわざわざそんなことを」 「……」 「それはだんまり、か。 全く、高校時代の妹さんの件もそうだが、肝心なことは話してもらえないんじゃどうしようもないぞ」 「ごめん」 「プロ入りを蹴って大学に進んだ理由だって、全部自分で抱え込んでしまっている」 「……」 「いつだって私は蚊帳の外だ。 それなのに頼られるんじゃ付き合ってられないな」 「ご、めん」 菫が怒っている。 ああ、当然だ。怒らせたのは私だ。 「だがまぁ、こんなことは慣れている」 「?」 「照の行動に困らされるのはいつものことだよ。 演じている理由は聞かない。過去を詮索しない。 『ドジでダメダメな照さん』のまま相手を惚れさせる。 これでいいんだろう?」 「菫……」 「お節介焼きなのは性分だ。 ここまで来たら恋のキューピットにでもなってやるさ」 「少し楽しんでない?」 「……自覚はある」 「ふふっ」 菫は優しいね。 「だがまぁ、一つだけ言わせてくれ」 「?」 「このザマじゃ、『ドジでダメダメな照さん』というのは間違ってないみたいだな」 「うぐぐ……」 否定できない。 菫の表情に笑顔が戻った。 私はいい友達を持った。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6/9 …… … ,.. / ヽ ´⌒> 、 / \ / | }! \⌒. / / ! | | ヽ \ /ィ | \∧ | /| |! トー― | _|VT示r ∨j/示rx/ V( 「こっちこっち!」 レ1( 弋,り 弋り {ソ V __ |/V{ ___ 从|>ー―――r―――/ / ___/ 、 V / イ7 / /――-、 \ ___/ | | ー 77 / / / ー― ノ ( | | / / / / / \| | | / / /´ ̄ ̄ ̄ / ! ∨∨ / /( _/\ /|/ ∨ / / / ⌒ヽ ー / \ / 人 〈 / / | し′  ̄ , >==≠ | /⌒ ト{_ | | |/ |/| | }! | \| {___/ /| | / / . . / / i / / . / . . ; イ / . ! ! // .. _ / . / ; イ ;ィ // / / . ! /;/´ ̄ / . / ; -‐/T77i ̄ ; -‐' / 7ナー-、_ / レ ! | ´ / . ∠ イ ___! / /ノ!ナ| // ! /. ;ヘ! ァ"7 iヾ '´,;-ァ=! ;ィ、 / / ! /; イ {ヽ|.'{ b ! h レ i ' /イ !、 // / / | ! ` ゝ ン_ ,!'_ ;ン/ / i 、ヽ、 .!/ !/ / ヽ i , , , , , , , i / / iヽヽ 「そんなに急がなくても大丈夫だよ」 / / / ゙、_| | | /_ノ . ゙、 \ヽ / // ;ハ _ _ ! i 、 、 . i ヽ! ∠./‐' / / 、  ̄ /v、 ヽ 丶 .. ! / / / _,ノ ` r 、 , イ、/ ' ! /\ .、 ! / /;/ `ヽ、__;ィ | ー-`〒´-‐ ' ´ | レ' ヽ;ハノ // _,..-'´ | || !丶,、 _,... -―' ´ | || | `ー-、――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 7/9 ああ、またこの夢だ。 最近はよくこの夢を見る。 小さな頃に会った憧れのお姉さん。 「おねーちゃん遅い!」 「運動は苦手なんだ」 「そうなの?」 「うん」 「しょーがないなー! 僕は合わせてあげる!」 「ふふっ、ありがとう」 そういえばそんなこともあった。 今まではずっと『完璧なお姉さん』なんて覚えていたけれど、思い返してみれば苦手なものもあったはず。 「おねーちゃんって勉強は出来るの?」 「どうかな。 いきなりどうしたの?」 「だって、僕の名前について知っていたから」 「そうだね。 自分や家族、妹の名前を調べたことがあったんだ」 「そ、そっか」 「?」 「なんでもない!」 もしかしたら、自分のことを気になって調べたんじゃないかという、淡い期待があった。 なんでも知っているはずのお姉さんは僕が不機嫌になった理由がわからなくてオロオロしていた。 そんな風に困らせて、僕のことを考えさせて喜んでいた覚えがある。 小さな頃の、好きな人に悪戯したい精神だった。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 8/9 「ふーんだ」 「ごめんね?」 「つーん」 「どうしたら許してくれるかな?」 あくまで大人な対応を取るお姉さんにムスッとしていた。 だから困らせたくて言ったんだ。 「結婚してくれたら許してあげる」 きっとその時の僕の顔は真っ赤だったんだろう。 なんだか理由をつけてお姉さんに構ってもらいたかった。 それだけだ。 「ふふっ、君がその名前みたいに素敵な男の子になったらね」 その後の反応はどうだったっけ。 年に似合わない、とっても大人な対応をされた気がする。 「落ち着くってこと?」 「ううん、そっちじゃないよ」 そう言うと、お姉さんは僕の耳元に口を近づけて、呟いた。 僕はドキドキしていて、お姉さんが何を言ったのかなんて覚えていなかったんだ。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 9/9 …… … 携帯の連絡先をじっと見つめる。 そろそろ決着をつけるときなのかもしれない。 清澄高校が優勝した一年生の頃から、俺の心はどこにもなかったんだ。 あの時、咲に告白できなかった自分のヘタレっぷりに腹がたつ。 それで失敗していても良かったんだ。 行動できなかった俺は、男失格だ。 「やらなきゃ何も進まないよ」 ボソリと呟いた言葉は自分でも意識したものじゃない。 俺は強く目を閉じて、歯を食いしばる。 携帯のマ行から宮永を探し、連絡する。 携帯のコール音が響く。 そんなに長い時間ではなかったはずなのに、やけに長く感じた。 『もしもしー』 相手が出たことに驚いている場合じゃない。 そうだ。 デートの約束を取り付けるんだ。 続く
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/223.html
1/12 【宮永への連絡】(平行世界) 目覚ましの音が鳴る。 今日は早めにセットしておいたんだった。 いつもは周りの人に不潔と思われない程度にしかしない身支度を時間をかけて整える。 朝からシャワーを浴びて清潔にする。 昨日買ってきておいた少しお高いシャンプー。匂いは彼の好みだろうか。 シャワーを浴びたらドライヤーで乾かし、ヘアアイロンでくせ毛を治す。 軽く朝食をつまみつつ、歯を磨いて口臭にも気をつける。 万に一つでも匂いを気にされたら立ち直れる気がしない。 昨日のうちから準備しておいたお洒落な服に着替える。 新品だから値札を剥がさなきゃいけない。 服のサイズなんかが貼ってあったら台無しだ。 いらないものをバッグから取り出し、最低限のものだけ持つ。 普段は最低限で済ませる化粧もキッチリこなして、テレビの前に立つ女優の気分。 あまり匂いのキツくない香水をつけて、準備万端。 / \ / / i ヽ / / ./| | ヽ . / i | | | |ヽ . i i i ′ | i. ./| | | | i .| | .| | / | | |i |‐|‐ト |i 斗‐|┼ i .| .| |. / /|八 |八 |_.レ'.._| 八/__.}/∨}/ | | 厶イ | ヽ{{ 午不か}/ 午示下}. | | | | 弋__ソ 弋__ソ レ' | | |ハ /| | 「……」 | |ヽ} ' /´| | | | 人 _ /. .| | | /i | | ` ._ ィ i .| i. .| {/.人{ |/} 厂} ー .{ア}_l_ | i . ′ ,. -‐乂¨ ̄{¨ ¨} ¨八/}/ r<. 、 | | >、 / \\ | | // \ 緊張してうまく笑えない。 いつものようにダラけた顔でいいはず。 どうしても浮かれてしまう。 だって、京ちゃんからお誘いがあるなんて初めてだから。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2/12 「笑顔」 写真の前で笑顔の練習。 ぐぎぎ、なんてひきつった表情が映っている。 おかしいな、テレビの前だとあんなに綺麗に笑えるのに。 好きな人の前なら一番いい笑顔が見せられるなんて間違っている。 だって、緊張して笑えそうにないから。 「あっ……」 駅までの時間を考えると、今から出るのがギリギリだ。 遅刻するなんて以ての外。 ……うまくたどり着けるか自信はないけれど。 いや、そんなことはない。 私はドジじゃない。ドジな振りをしているだけ。 「行って、来ます」 家に飾ってある写真たてに声をかける。 お父さんとお母さんと咲が和解した日に撮った記念の一枚。 私にとって何よりも大切な宝物だ。 写真たてに飾って、毎日眺めている。 そこに映る私は営業スマイルなんかじゃない本物の笑顔を浮かべている。 こんな笑顔を、京ちゃんに見せられたらいいのに。 _. . ----- . ._ ,. ´ ` .、 ,. ´ \ / ヽ 、 .' , '. \ | | | ヽ | | | 、 .、 | { | },、 l  ̄ ` | | | | / { .| | .| | l .| | |_ノ 从 j | , , | | | | | ' | | | | | | | 「……」 | , / , |ィ} , | { / / | .| , / | /| , { / // イ_ |' , / | | ̄ / イ / / / ヽ \ {/、 .从 / / / / . / }/{ \{ / / / } { | | / / / | いつもの『照さん』に気持ちを切り替え、ゆっくりと外に出た。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3/12 …… … -‐──‐- . ´ `ヽ、 / / , / / /| ト、 ′ ∠._/ / i| i \ 〕 〔 |/ 八〔\ .' \ /. |∧ | ┯ ┯ V ┯ ┯∧ / j ' ∧| 乂ノ 乂ノ ∨、 |. / Ⅴ "" ノ | 「京ちゃん、おはよう」 / 入_ _ < / /| / /\ /∧ノ へ ̄ ̄/ \リイ/ / 〔′  ̄\\ r‐' \/ //\ / \ヽーヽ └─ー/─' \ 丶ー| 〉 〈 | 〈 | .〈∧/ !__/ | | | ____ ,. ´ __ `¨¨ヽ ,  ̄` / ヽ `ヽ / _ , ∨ 、 . / /,´ / | ヽ . / //' ' / ' / l| | ∨ l// / , / ' l| | | | | | | | | _/ ィ / { l |__|_{ |∧ }/ ' / l | ∧  ̄ {〃 Ⅵィ斧从 } /-}/-/、 , /-、 ∧} / , 从 Vり ∨イ ,イ斧ミ、}/ /⌒ } | ' / イ从 l ム Vり ム' ノ/}' 「照さん、おはようございます」 ´ \∧ ' ,r ' / 、 v ァ / 从/ \ `こ イ _|、 ` r ´ //∧ /| /////∧ 「 | //////////> 、 , </∧ / {///////////////> 、 , </////// ∨__∨//////////////////>、――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4/12 「駅まで迷わず来れて良かったですよ」 「京ちゃんは失礼。 そこまでで迷ったら生活できない」 「それもそうなんですが、家まで迎えに行っても良かったんですよ?」 「……」 「照さん?」 むぅ。京ちゃんは乙女心がわかってない。 「待ち合わせ、したかった」 「あっ……」 「……」 「じゃ、じゃあ行きましょうか」 「うん」 京ちゃんが顔を逸らす。 少しは意識してくれたかな? 「そういえば照さん」 「何?」 「その服、とっても似合ってます」 「本当?」 「はい。それに心なしかいい匂いが……」 「京ちゃん?」 「な、なんでもないです」 「……えへへ」 喜んでもらえたなら嬉しいな。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5/12 今更だけれど、京ちゃんはとっても格好いい。 今日はデニムにシャツから上着を羽織るというラフな格好だけど、とっても格好いい。 高身長だから何を着ても似合う。 ずるい。 「京ちゃんはずるい」 「えっ、いきなりどうしたんですか」 「なんでもない」 「なーんでご機嫌を損ねちゃったのか……」 京ちゃんが苦笑いしている。 そんな風に京ちゃんを困らせて、京ちゃんの関心が自分に向いているのが嬉しい。 好きな人に意地悪をしちゃう気持ちがわかる。 「京ちゃんも」 「ん」 「とっても似合ってるよ」 「……そ、そうですか」 京ちゃんがそっぽを向いてしまう。 格好いいなんていつも言っていることだと思うんだけれども、今日の京ちゃんは様子がおかしい。 いつも京ちゃんのことを見ているからわかるよ。 一体どうしたんだろう。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6/12 「今日はどうするの?」 「動物園でも行こうかなって思ってます」 「うん、いいよ」 「照さんは美術館とか行きます?」 「全然わからない」 「ははっ、俺もです」 「動物なら好き」 「俺もです。 実は実家でカピバラを飼っていまして、動物好きなんですよ」 京ちゃんは動物を飼っているんだ。 まだまだ知らないことがいっぱいある。 もっともっと京ちゃんのことを知っていきたい。 「やっぱり初デートは動物園か美術館かなーって考えてたんで、良かったです」 「デート?」 「デート……、ですよね?」 京ちゃんが不安そうな目でこちらを見つめてくる。 私としては京ちゃんとのデートのつもりだったけれど、京ちゃんまでそう思ってくれているとは思わなかった。 「うん。デート」 「良かったー。 じゃあ、行きましょう」 「うん」 えへへ。嬉しい。 顔がにやけるのを必死に抑える。 京ちゃんもそう思ってくれているのが本当に嬉しい。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 7/12 「照さんは動物好きですか?」 「うん。かわいい」 「どんな動物が好きなんですか?」 「えっとね。えっとね」 頭の中で浮かぶのは小動物みたいに怯える咲。 犬のように尻尾を振って懐いてくる淡。 「兎や犬」 「なんか極端ですね」 「そう? 京ちゃんはカピバラ?」 「そうっすねー。 やっぱり飼っていると愛着湧きますし、スッゲー可愛いんですよ」 カピバラの話になると興奮する京ちゃんが可愛い。 本人に言うと拗ねちゃいそうだから言わないけれど、私は満足だ。 「触ってみたい」 「あいつの毛ってめっちゃ固いんですよ。 良かったら今度触りに来ます?」 「!?」 それは京ちゃんの実家? うん。お義父さんやお義母さんに挨拶しなきゃ……。 「是非」 「じゃ、今度予定が空いた時にでも……」 そう言って京ちゃんは顔をそらす。 やっぱり、なんか雰囲気がおかしい。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 8/12 …… … 動物園を回って、外に出てからお昼ご飯を食べる。 入ったのは値段もお手頃なファミレスだ。 変に高い店じゃない方が嬉しい。 ご飯を食べている間にも京ちゃんに凝視されているのがわかって、なんだか恥ずかしい。 いつも見たいな杜撰な対応じゃない。 「京ちゃん」 「なんですか?」 でも、これを聞くのはとっても怖い。 聞いてしまえば、今の曖昧で心地よい関係がなくなってしまうことがわかっているから。 私はこの立ち位置でいい。 京ちゃんのためにいられればいい。 そう思っていたのに、聞いてしまう。 「なんか様子がおかしいよ」 言った。 言ってしまった。 言った後にすぐに後悔して顔を俯かせる。 京ちゃんはどんな顔をしているんだろうか。 案外、私の考えすぎで『何を言ってるんですか?』なんて言ってくれないかな。 「……そうですね。 俺がヘタレで、伸ばしすぎちゃいました」――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 9/12 「あなたの妹のことを考えていました」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 10/12 心臓が飛び跳ねる。 胸が締め付けられる。 唇が乾いて声が出ない。 「わ、私に妹はいない」 「せっかく仲直りしたんだから、そんなこと言っちゃダメですよ」 呆れ顔で諭すように喋る。 「と言うか、本気で誤魔化してる気だったんですか……」 「ぐぬぬ」 「……昨日初めて『照さん』に電話したんですよ。 咲から聞いた『宮永照』さんの電話番号に」 「……えっ」 「顔を覚えるのは得意な方なんで、まぁ9割は本物だとは思ってましたよ。 でも、あの時チラッと見た『宮永照』さんの印象と目の前にいる『照さん』の印象が違いすぎて、念のため」 「……」 「そうしたら、『照さん』に教えてもらった電話番号と咲から聞いた『宮永照』の電話番号が一緒だったんで、もう間違いないな、と」 「そう、なんだ」 「ごめんなさい。 頑なに隠そうとしていたから、聞かない方がいいと思っていました。 でも、どうしても聞きたいことがあったんで、調べちゃいました」 京ちゃんも震えている。 やっぱり怒っているのかな。 困惑しているのかもしれない。 京ちゃんがゆっくりと唇を開いた。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 11/12 「照さんはどうして、こんなことをしてたんですか?」 口を紡ぐ。 何も答えられない。 菫にすら話せなかった自分の浅ましさが露わになる。 それを目の前の彼に話すことがとっても辛かった。 でも、もう逃げていられない。 「京ちゃんは好きな人はいる?」 「!?」 「私には、いるよ。 京ちゃんの好きな人は、『憧れの人?』」 雰囲気が重苦しい。 もっと楽しいデートになるはずだったのに、なんて考えると目から涙が溢れそう。 こうなってしまったのは自分のせい。しっかり受け止めないと。 「それとも、咲?」 空気が固まった。 時計の針が止まった気がする。 京ちゃんが瞬きひとつしない。 「それ、は」 「私はね、京ちゃんのことが好き」――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 12/12 「だから、咲の真似をしていた」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 続く―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/183.html
1/10 654 釣りに行く(平行世界) 須賀君とお見合いしてから3週間。 「……」 ソワソワと身を揺らしながらスマホの前で待機しています。 さっきまでやっていたネトゲもネトマもやめて、パソコンをシャットダウンして待っています。 そろそろだと思うんですが……。 「き、きたっ」 スマホのバイブが鳴ったと同時に画面を見ると、そこには須賀君からのラインがきていました。 『いやー、仕事大変でさー』 『須賀君は頑張り屋さんですね』 『そんなことねーよー』 連絡先を交換した私たちは、定期的にラインをするようになりました。 ふ、ふふふ。最近声が出なくなってきましたが文字を打つだけなら問題ありません! むしろ得意分野ですから! 普段はキーボードだけで打っているように思えるかもしれませんが、パソコンをスリープにした後に布団の中でするスマホは格別ですよね。 ……もっとも、ネット上以外でスマホを使うことなんてほとんどないんですけど! 『それより和は忙しくないのか?』 『ふふふ、私は大丈夫ですよ』 「今週も何もしてないですからね……」 普段ならどもってバレバレな内容でも、文章で打つ分にはバレません! いや、ホント不味いとは思っているんですが、いかんせん狂った体内時計を直すのが大変で……。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2/10 『ハンドの試合してると体にガタが来てさー』 『もう。須賀君も若くないんですから気をつけてくださいね』 「いや、それ言ったら同年齢の私も若くないってことじゃないですか……」 『心配してくれる和やさしー!』 『ふふっ、そんなこと言っても何も出ませんよ』 『和の労りの言葉が出るじゃん!』 『そんなものでよかったらいくらでもしますから、気をつけてくださいね』 我ながら『誰だこれ……』と言わんばかりの豹変ですね。 わ、私だって高校時代に雑用をしてくれていた須賀君を労わるくらいしていましたからね!? あれ以来の私を知らない須賀君は何も変わっていない、なんて思ってくれているんでしょうか。 罪悪感で胸が痛い……。 『それじゃ、俺は寝るからー』 『はい、おやすみなさい』 相変わらず須賀君は寝るのが早いですね。 まだまだこれから……、なんて思うのは私の体内時計が狂っているからですね、はい。 ポフン、とスマホを投げ出して、そのままベッドに倒れこみます。 ,>─. .──- .ィ─-、._ __┌.、/ \/ | | ∨′ . . . ', }. ,ゝ / ト、 ∨ ゙i { / ,.! ! ! . .| .| | | ', ! ! } ',;;;;ィ゙ ヽ ! .{ { | | | 」| .| | ィ‐十ト| | } } \ / |/{ |.!.| {斤人|ヽj\| .レ゙リリル ノ ィレ′ ヽ .{',从|レィ==、 ィ==x .リ/ |」| ├┤| 沁 ノ/ ! | . .|',| 人 r─‐┐ ハ/ / | 「〜♪」 | . .| | |> , `.-- ' ,∠// /! | | . .| | . |ィ‐=_,,} ー {.__//゙ /_.| i| |... | | ! リ.| {_ __.//゙ / ヽ!| | . .| .| ! / /_,ヽ.∠ィ'/ /─=|| | . .| .| / /─'、,..ィ‐-、_,..| | |_ || | . .| .i! ../. . . . | ∨ ゙< 小. | . .| .{ ! ∨ . ヽ`>、 ∨ |. ) |. . | | { . } ! ! | .. |∧ ', . . . i. ..ノ| | リ | ../ ヾ.\__, 人 ,.イ〃.ノ/ ゝ | `ーイ / | /゙_.∠.ィ゙/ | \.|_ / ! ,ィ゙ {" ∧ \ } / ∧――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3/10 この歳になってこんな甘酸っぱい恋愛が出来るとは思いませんでした! 胸が苦しくて、ドキドキして、幸せな気持ちです。 どんな麻雀やネトゲでも味わったことのない達成感。 幸せに包まれていますね……。 こんなことなら麻雀なんてやっていないで恋愛をしていればよかったです(暴言) 世の中の女の子が恋愛に現を抜かす理由がわかります。 『将来の夢はお嫁さん』なんて思っていたのも今は昔。 気づけばニュースを見ながら炎上事件を眺めて叩く日常……。 今、私は人生で一番輝いています! そう、インターハイで優勝した時よりも輝いているんです! ただ、難点が一つ。 「さて、次はどう誤魔化しますか……」 今は私の現状を何も伝えずに、それとなーくチャットしているだけです。 知られてしまえば幻滅されることは請け合いです。 以前の醜態は『ちょっと風邪気味だった』ということでゴリ押しました。ええ、ゴリ押しましたとも。 「お料理が出来るようになって、教養を深めて……」 私の中での理想のお嫁さんを思い浮かべます。 何としても! 須賀君に悟られる前に成し遂げなければいけません! ここで須賀君を逃したら……、考えるのはやめましょう!――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4/10 とは言ったものの、今までそういうことに縁がなかった私が一人でできることなどたかが知れています。 料理が得意なのは公式設定なので問題ないのですが、私のファッションセンスが一般とかけ離れていることは自覚しています。 須賀君の好みがどうかわかりませんが、この歳であの服を着るのは些か問題があるでしょう。 「教えてくれる友達がいないんですけどね!」 残っている数少ない知り合いは喪女仲間。 転校が多く、昔ながらの友達が少ないことも影響しています。 それに関しては父も反省しているらしく、私に頭が上がりません。 まぁ、今更謝られても仕方ないんですけどね! 「こうなったら仕方ありません」 まだまだ手段はあります。 そう、私にはインターネットと言う最大の味方があります! Googleで検索してわからないことなんてありません。 それに、少し仲が良いネットの友達に聞いてみるのもアリですね。 うふふ、自分語りスレを立ててみるのも面白いかもしれません。 さて、早速パソコンをつけ直しましょう! ,. --―-- 、 r---l>' rヽ. ,-┐ | / / / ./ ! | .Y } V.// / i ! i ハ i. | iミ .}___ // | ll ムムハ |ト、 ト-レH |_,ィ个 、く /^i ハ!_!.! !トレテト ヾ` 行ヒくリノ}/ ハ 〉 / | \|_ト、トトミ込! 込! ´ リ゙TTi Y / | l | ハ ' _./ ! i i ハ l |=====、-、 // i ヽ. ー / / ! i i ハ l | | | // i / l` ┬ ' ´ | ./ ! ハ i ハ ! ! | | // ! / |____| l/ ハ i ハ ___! | 「のどっちスレを開いて、っと」- 、. | | // / ̄/'"´ _/ / リ、! i .} /. | |. | | // / / / ̄` ´ /!レ //ノ `Vハ! i | |. | | { { / / | / l.| /イ i iハ .i | |. | | X! ! ノ、 ! / / !| i {_ _ _ _ _ _|_i ハ. ! |. | | {_ V >-ミ7ヽi/ニエエ式 lハ_i_i__i_,i_ィン〈 } | |. | | シ./ { >{二}< /\、ゞ / ノ / | |. | | ノ { \___/ハ\` / 廾≠イ=0コ i | |. | | ./ ヽ. / ハ ハ ̄ , ィ' | /〈!ト' i | |. | | ,/⌒ヾ /`7 i i ハー┬ ´ / .!/ .| i |__.,!. | |二-- `/ i \_|. |_./ i! / ノ | i ./ ̄7i | |/\ _ ノ ir'⌒ i!` ー--才´^⌒)==/=.〉. i/ // | |__ ` ノ- 〈..,,__ヾi / , ィテ/ ノ ./ //______.i._リ ヽノ _  ̄ ̄ """""''''''''''''''' ‐‐‐‐‐---互互互互互互互互互互互互/l≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠//――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5/10 …… … 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka 【速報】のどっち結婚秒読み 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID sukoyan 嘘乙 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID sukoyan そんなことありえないから 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID sukoyan 何が電子の妖精だよオラァ! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 三連すこやん来たな…… 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? どこから湧いてきた 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? のどっちってここに15年くらいいるよね? もともと何歳なんだよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID sukoyan ワンチャンあるし 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? お前にはねーよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka 服ってどこで買ったら良いんですか? 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? あっ…… 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? ここで聞いている時点でお察しだこれ!?――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6/10 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka ゴスロリちっくな服しか持ってないんです 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? のどっちって15年くらいいるよね? もともと何歳なんだよ ゴスロリちっくな服しか持ってないんです 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? のどっち……、年齢は考えたほうがいいよ…… 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka わかってますから! 自覚してますから!! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID sukoyan 一度喪女道に落ちておいて復帰とか出来ないからね 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID sukoyan お前も赤土さんと同じようにしてやろうか 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? ハルちゃんの話はやめろぉ! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 嫌な事件だったね…… 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? ハルちゃん因果律から男の存在を消されたらしいな 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? さん付けするすこやんかわい……くないな別に…… 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID sukoyan なんでよ!!!!!!!!!!!! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? まぁのどっちの話を聞いてやろうぜ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 婦人服売り場にでも行けばいいんじゃないですかね(正論)――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 7/10 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? デパートの婦人服売り場に行って店員に聞け 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? お前らのどっちには優しいよな 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 煽り煽られ自演し自演バレ、そんなのどっちと15年間やってきたんだよなぁ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 苦楽を共にしてきたのどっちの春だ。応援してやろうじゃないか 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? (振られるまでがテンプレです) 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? やめーや! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? のどっち結婚おめ? 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka そ、そんな、まだ気が早いですよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 相手の男はどんな物好きやねん 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 俺はのどっちの煽り耐性が上がったことに感動してるよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? すーぐ自演してたのどっちが結婚かぁ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 感慨深いものがあるな。気分的には娘が手を離れていった感じ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 8/10 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID sukoyan どうせ釣りでしょ。私にはわかるんだから 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID sukoyan もし釣りじゃなかったら相手の男にこの掲示板のログを見せてやるんだから 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 外道だ!? 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? なんだ釣りかぁ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka 釣りじゃないです。本当に困ってるんです 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? (あれ、のどっちが可愛く見えるぞ?) 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? (気の迷いだ目を覚ませ) 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 服も化粧も相手の好みに合わせないとどうにもならんわ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? ここで聞くより店員に聞いた方がええで 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? ハシャギすぎるなよー 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka みなさんありがとうございます! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 結婚したらこのスレ来ちゃダメだからな。もう帰ってくんなよ!――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 9/10 …… … 「ううっ、みんながこんなに優しくなってくれるなんて……」 事あるごとにスレ民と会話し続けて15年。 最初はのどっち叩きスレだったところから自演擁護を始めて、気づけば単独スレで会話するようになりました。 煽りや荒らしが湧くたびに自演をしていたらみんなに笑われて、ルーターを再起動して……。 掲示板全体の『sukoya』さんの荒らしが酷すぎて、IDが変わらなくなってからは何故か雑談するスレに変わっちゃって……。 絶対に釣りだと疑われると思ったんですが、親身になって話を聞いてくれる人もいるんですね。 デパートに行って店員に話を聞く、ですね。 確かに、私の見た目も何もわからない状態ではアドバイスできないでしょう。 そう考えると、シンプルながら的を得た助言だと思います。 「勇気を出して、行きましょう!」 原村和の新しい人生はここから始まるんです! あっ、須賀和でしたね、でゅふふふふ! そうですよ! 京和こそが大正義なんです! 一番薄い本が出てます! 誰よりもキテます! 最近の永水のおっぱいお化けや妖怪さんたちなんて所詮単発じゃないですか。純愛なんてほとんどないじゃないですか! -‐…‐- ´ `` . / \ ___ . / 〈i i 〈. / / / ! | 〈i i 〉 / ∧ /| |i | | | ¨ , || /! / ∨| |i | | |i |. ′ | / |/ | 八人| |i . , | Ⅵ斗ぅ气ト ムイ≫冬ト 从/ ′ | | 乂rツ ヒrツ.ムイ | . | | ,.,.,. 、 ,.,. .′ | 「京和に勝るカップリングなしです!」 , | | 、 , , | |./ | | } iト イ | | | | j{ うr≦ | | | /| | \ {`ヽ〕iト ..,,__| | /i i i| | i i i \ } i i i i i i i i| | ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 10/10 …… … ・次の日 / , ヽ/ \ / | / / } 「.| ト、/ ‐-- / | >!ノ_ / ', ,' \ ! _//| \ 〉 ', . 7 ̄ ィ .} \/. ! ,' ∠ィ、 | | }/ // リ . | / \_| |/^リ/// / . | / | | ////, .', ,,,_ 〃 | ! ̄ /ト、 ̄´ ', . / / | ! ; 「外出する服がない……」 \ ヽ / ./ .| | / || \ / / | i| | / || \/\ / / /! i|゙ |′ || .リ / / //! . i|. | || /__./ / //=! . .|. | カン!
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/190.html
1/14 【一歩ずつ】(平行世界) 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka 今日こそ服を買います。リベンジです! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? お、おう 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? この子気合入れると絶対コケるよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 誰か止めろ。すこやんカモン 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? すこやんは焼かれたよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? すこやん新しいプロバイダーに乗り換えるまで来れないよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? これだから財力がある奴は……。何回目のプロバイダー乗り換えだ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? いなくても話題を掻っ攫うすこやんの恐ろしさよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 止める必要もないだろ。失敗したとしても経験だ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 年をとると失敗が怖くなって何もできなくなるよね 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 自分から行動できる分のどっちは成長したよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? このスレ平均年齢高そう 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? まぁのどっちと15年以上付き合ってるし…――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2/14 原村和です。 あのショッピングモールにはしばらく近寄れなくなったので、今日は違う場所でお買い物予定です。 前に外に出た時は焦りから早まっていましたが、今回は違います。 ___ -=  ̄ ̄ =- . _ / / . \ / 人 r‐ ヘ/ r─=ミ/ 〈 ノー─/ | 》-=ミ}___ 〉 / / / | . . | i \ |\ > | / . | i | | i | i i { ノj \厂ヽ ニ=- |_/ i | | i i| | i | i__i i⌒´| | /\ \ =-. | i | i ]「 ト八 | T Τ八八 Y^i ,| ⌒j゙\ \ \=- 八 i | iァテ外 \ | ァテ笊芥ハ i ル' | 八 \ \ \ =-. / \{八从 V(ソ \ V (ソ ム/ 八 . \ \ニ=- _ '⌒¨¨| i ∧ 、 /{ミx \ . \ .  ̄. | .i rj入 _ _ / /ニニ=- \ . \ 「(一歩ずつでいいんです)」 | i / |ニニ> __ ,. /ニニニニ=-. \ . \ \ , i | |ニニニニト、 ヽ _/二ニニニニニ\\ . \ \ . / ∧八二ニニニ|=‐----/ニニニニニニニ=-ヘ, \ . \ \ / / ∨ \ニニニ| /ニニニニニニ=- /⌒i \ . \ . / / ∨\\,ニ| /ニニニニ=-. / / \ \ 胸の内にあるのは、麻雀を始めた時の感覚。 最初は負け続けて、それが悔しくて勉強して、どんどん自分が強くなっていく高揚感。 あのときだって失敗ばかり。 牌譜を見返せば後から後からアラが出てくる。 それでも諦めずに続けたからこそ、『のどっち』になれた。 インターネットの騒ぎだってそうだ。 結果的にはとっても恥ずかしいことをしたという自覚はある。 でも、それをやらなければ今の私は存在しないし、こうしてアドバイスをしてくれる奇妙な縁もなかった。 失敗したっていい。 今日はとっても気楽な気持ちで外出できました。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3/14 …… … 「こ、ここがあの住民さんのハウスですか……!」 何か違う言い方だとは思いますが、勝手に口から漏れました。 先ほどはそう気楽に考えていたとはいえ、実際に服屋に着くと緊張が体を襲います。 「落ち着いて、落ち着いて……」 深呼吸、深呼吸。 正直、立ち止まって深呼吸をしているのも不審者のように見えてしまうのですが、そんなことに氣を配る必要はありません。 少し落ち着いてから服屋に突入! 体がガチガチに強張って右手と右足を同時に出して歩いてしまいました。 「いらっしゃいませー」 店員の声が響くも、他のお客さんを対応していたおかげかいきなり話しかけられることはありませんでした。 「(これで少し余裕が出来ますね)」 服屋に入れば数秒で話しかけられる、それは世間の常識らしいです。 それこそ『しばらく見させてください』と言っても、気になった商品を手にとって見ていれば二度三度話しかけられることはザラだとか。 なぜかいろんな職種の人が入り混じる私のスレ民曰く、『話しかけないってことを売りにしてた服屋や電気屋はすぐに潰れたよ』だとかなんとか。 それに話しかけに行かないと上司に死ぬほど怒られるので選択肢はないそうです。 全く、私みたいなコミュ廠には厳しい世界ですね。 通販最強です。ネット最高!!――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4/14 「(値段は結構落ち着いていますね)」 服のデザインも値段も非常に落ち着いたものが多いです。 もちろん、社会人向けなのでそこそこ値は張るのですが、スレ民曰く『高すぎず安すぎず』の服がいいそうです。 高すぎれば派手な装飾や見てわかる生地で男性を引かせる。 男性はそういう高飛車な女性を好む人が少ないだそうです。確かに、須賀君もそんな気がします。 かといって安すぎれば『自分との特別な時間はその程度のもの』と思われます。 その折り合いが難しいですね。 まぁ、男性は女性の服装に頓着がない方が多いらしいですね。 でも、女の子は服装一つでイメージが変わりますから大変ですよっ! 「(私の趣味に合うものは……ないですね……)」 小学生から大学生まで着ていた私服を思い返しますが、私の好きな服装はマイノリティだと言わざるをえません。 もちろん、こういう一般向けの服屋にはないことはわかっていますが、少し残念ですね。 全体的に見てみますが、いわゆる『今時の私くらいの女性の私服』は何を買えばいいのか全くわかりません。 「(やっぱり、最終手段を使うしかないのでしょうか)」 スレ民との相談を思い返します。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5/14 …… … 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka やっぱり店員さんに聞く必要はありますよね 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? それが一番無難だけど、のどっちはいろいろと押し付けられそうな感じあるよなー 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? これもこれもー、って言われたら拒否しないとダメよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 俺たちもよくやる最終手段があるじゃないか 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? ああ、『あのマネキンにかかってる一セットください』か…… 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? だって楽だし…… 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? お前らのどっちディスるくせに同類なのかよ! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? センス的には大安定だよね。実際に着てみたイメージもわかりやすい 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 店員とのトークも最小限で済むからつい…… 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? ちなみにのどっちのセンスってどんなん? 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka 昔はこういうの着てました→通販サイトのURL 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 絶対にダメだよ!? 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? ダメだこれ!?――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6/14 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 露出狂じゃねーか!! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? やっぱりお相手の男性逃げたほうがいいんじゃ…… 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka マイノリティだって自覚してます!!!!!!!! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 自覚してりゃいいってもんじゃねーぞ! 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? まぁ、のどっちの好みは重石をつけて海にでも投げ捨てろ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? のどっちアラサーくらいなんでしょ? 露出を控えた落ち着いた格好のほうがいいよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 相手がビッチ好きという可能性 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? そんな小さな可能性なんて考えなくていいからね 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 雑誌とか見てみれば? 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? それはオススメできない。変に幻想抱くし、よくあるようなのでいいんだよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? やっぱり店員に一声かけて試着はしなよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka わかりました 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 自分の趣味ではなく、好きな男の趣味に合わせてあげるのが恋する女の子ってもんだ … ……――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 7/14 「(やっぱり、店員さんに聞きましょう)」 私の趣味ではなく、須賀君の趣味に合わせたいんです。 そう考えれば自ずと答えは出てきました。 なんだ、簡単な話じゃないですか。 私がこれから買う服は外出用であり、『須賀君に見せたい服』なんです。 だったら自分の好みを優先させる必要はありません。. / | . i .| . . . i| | . . . . . .|! . |i . | 、 . .゙、 、 ゙、゙、 ; イ/ i ./ | i .| . . . i .| . . .i| | . . . . . . .|! .| i . i 、 . . 、 .、 . . .! . iヽ/ . . .|/ i i | | . | .| . . . i| | . . .| ! | .. |i. | .i i ゙、 . .i.;A-‐ハ .! . . . . . . ..! ___| ! .i | . | . . .i .! . . .|!.i! l | . ! . . . . ..i . .i ゙、! _/ハ ハ/ |ィ;. .,.-‐-、! /. . . . .V/i |.| . . i i i_ |、!、 . .! i !、i . . . . . .i . .i _;彡';tr=、 ヾ、"' /ヽ |' . . . . . .i . | . . . . ! i i! | .. i i . . i`iー ト-!、丶 . . . . i 、^V i_; ヽ / i . | . | . . . 、 ! i、 . .i . . . .| .i 、 .7メ'f ヾー\ . . . 、`ヾ ;;; ン ′ ノ . . ! .| . . . ヾi 、 .\ . \ .]〈 っ ; i  ̄` _,∠| | . | .|―- ヽ! .i、`゙ー-r≧ ≠ , " " / | ! . | .!//// | .| . . . . . . \! ,, ,, / i! i .i//// | .| . . .i i r== "ヽ / i . i .|//// 「す、すみません!!」 | | . i . |\ ∨__ノ) / / . i. |//// | | . .| イ | |l`ー-..、  ̄ ̄ / / . |///// |.| . | ∧ i . !i `i ー-‐ ' ,..-‐ / . .i!///// ちょっと声が上ずってしまったかもしれないですが、そんなことは考えないようにします。 「はーい。どうなされましたか?」 「あ、あの、最近ってどんな服が流行ってますか?」 女性の店員さんでよかった……。 意外なことに、一声かけてみれば言葉は出てきました。 スラスラ、なんてとても言えません。それでも、相手に意思を表示することは出来ました。 「うーん。 お客様は美人ですからなんでも似合いそうですねー」 「そ、そんなことないしゅ!」 「何かお好みとかはありますかー?」 「あっ、あの。あまり体のラインが出ないような服がいいかにゃって」 「えーっ。スタイルいいのにもったいないですね」 「(噛んだ)」 「そうですね、いくつかお持ちしますー」 や、やった。何とか話すことが出来ました!――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 8/14 「お時間はありますかー?」 「は、はい」 「それでしたら今はこういう組み合わせが流行ってますね」 「け、結構ありますね」 「これでも厳選したんですよー」 そう言ってペラペラと淀みなく組み合わせの説明や、生地の説明をする店員さんに目を丸くします。 私からみればどうやって組み合わせたらいいか全くわかりません。 かといって『押し付けられて買っちゃダメ』と教えてもらっていますし、ちゃんと考えなければ……。 「ま、迷いますね」 「あっ、もしかしてデート用ですか?」 / / | |゙ | . . | | VM、_| . | } ト、_,. | ヾ ', ./ / .! i! N . | い !/≧二]/"|´ . | . | !. ! / | | | |',/ ヽ| \ |ィ/,ゞ..、\,! / i! | | ,' / | { . ! /| 〉|-. \!" {_ rj ', リ/} . . ノ|/゙. |. i ィ .∨\"| /,ィうヽ ィ゙ ` ソ i} |/ ' |. | /.! | |ヽ {_,ィrj ', .`ー‐゙ ./ ! ! | |∨ ヽ{i ヾ, ツ | | ヽ .| \ \, `" _,,._ | {. 'j |  ̄、 ̄ _,,. - "__\ { '., ! .ハ. { ./ 〉 ./! \ .| リ`ヘ. V ./ ,ィ=、| ト、 ヽ 「!!?」. | `..、, `ー " ./ |/ \ . | i }. リ ,' / / ー, --‐' / ヽ ヽ ̄ `ヽ. / / / / / {/〉, / 〉, \ \ / / / _,.ィ={ |/. !. / /| \ \ } / / /_,,.-/ / | | . / / | | .\ \/ / /} / / / . | |_. / / .! ! .\ ヽ,. / /_,/゙ / / / | |. ` ./ ./ .| | / \ `、 「当たりですねー」 「は、はい」 「それでしたら、オススメの決め方があります」 店員さんは指を唇に当てて悪戯っぽく笑いました。 「最後は貴女が彼氏のために思ったものを買うのが一番いいですよ」 「えっ」 「こんなことを言うと店長に怒られちゃうんですけどね」 ははっ、っと屈託無く笑う店員さん。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 9/14 「失敗しないで選ぶことが重要だって、私も学びましたから」 「貴女は人が失敗して本当に辛くて死にそうな時に、自分を投げ出せる人です」 「そんな貴女が考え抜いて選んだものなら、彼氏さんは無下にしたりしませんよ」 「もし失敗しちゃっても、それは次に活かせばいいんですっ!」 「みんなそう言っているじゃないですか」――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 10/14 「ねっ、『のどっち』」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 11/14 …… … 何の所縁もない名前も知らない人との出会い。 私と違ってネット上でフェイクを入れられる人だったんですね。 「ふふっ」 今日は色々と教えてもらっちゃいました。 今度はお化粧品やバッグなんかも買いに行かないといけないですね。 ちょっと乗せられて服を多く買っちゃいましたけれど、まぁいいでしょう! この戦果をみんなに報告して、次はどうしようかな、なんて考えます。 ちょっと、楽しい。 いや とっても楽しい! 『須賀君、お疲れ様です!』 『よー、和! いつもありがとなー!』 「いえいえ。 私も今日は色々とあったので遅くなっちゃいました』 『なんだか機嫌がよさそうな予感?』 『あっ、わかっちゃいますか?』 『和が嬉しいと俺も嬉しい!(キリッ)』 『もう、チャットでそんなこと言ってもときめいたりしませんからね』――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 12/14 ,>─. .──- .ィ─-、._ __┌.、/ \/ | | ∨′ . . . ', }. ,ゝ / ト、 ∨ ゙i { / ,.! ! ! . .| .| | | ', ! ! } ',;;;;ィ゙ ヽ ! .{ { | | | 」| .| | ィ‐十ト| | } } \ / |/{ |.!.| {斤人|ヽj\| .レ゙リリル ノ ィレ′ ヽ .{',从|レィ==、 ィ==x .リ/ |」| ├┤| 沁 ノ/ ! | . .|',| 人 r─‐┐ ハ/ / | | . .| | |> , `.-- ' ,∠// /! | 「〜♪」 | . .| | . |ィ‐=_,,} ー {.__//゙ /_.| i| |... | | ! リ.| {_ __.//゙ / ヽ!| | . .| .| ! / /_,ヽ.∠ィ'/ /─=|| | . .| .| / /─'、,..ィ‐-、_,..| | |_ || | . .| .i! ../. . . . | ∨ ゙< 小. | . .| .{ ! ∨ . ヽ`>、 ∨ |. ) |. . | | { . } ! ! | .. |∧ ', . . . i. ..ノ| | リ | ../ ヾ.\__, 人 ,.イ〃.ノ/ ゝ | `ーイ / | /゙_.∠.ィ゙/ | \.|_ / ! ,ィ゙ {" ∧ \ } / ∧ 嘘です。すっごくときめいてます。 好きな人にこういうことを言われると満更でもないですね。 ※ただしイケメンに限る。 『あっ、そーだ。 和って来週の土曜日なんか予定ある?』 『特にありませんよ』 「まぁ、毎日暇ですからね」 『そっかァ……。 うーん、よしっ』. . . . . /. . . / / ヽ 、 . . 寸三ニ7 /. . / / / ! .| ゙、 ! . . 寸三} /. . //! ! ,' . .| . | ! ヽ l | . . . ゙ニ7 / . . Ll-┼┼-l、 | .!|ヽ,r|''T ーt、 ├'ヾ、 ,'. .´!.! | ∧ | l.| ! ,'| .l || | ! || | .l ! ヽ、 l{ |!| i' ヾ |! |/,'/| /|! |/|' | ./!| .,イ .i! i! l|ヽ | ┳━┳━/' / /./'┳━┳' イ /,' ,'| ノ .i! lヽl ┃//┃ /'´ ┃//┃ イ'l/ ,イリ | ‘ ━ ’ ‘ ━ ’ ' // | | ,' ´ ! . .! 「?」 L """ ' """ | | . .l ト.ヽ イ l . ∧ |ヽ|ヽ ⊿ .ィ´ ! i . . .゙、 ト、l} ` _ _ .... チ .,' λ ! . . . ト、 ゙、/ 7"/' .,' ./ / | ! . .ト、゙、 . lヽ ,'-.、_ / ./!,' .! .| . . .l ヾ. . . ゙、 \ ∧ -. _//' ! .| . ! l lヽ . . . . ヽ、 `ヽ ヽヽ |!`! | ! . | リ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 13/14 / / | | | | | l l | | | | | / / | |__ | | | | | l l /| | | | |. /// | |\ |‐\八 | | | |__,l /-|‐ リ リ | | / / - 、 | x===ミx|‐-| | `ー /x===ミノ// / ∧{ / | .八 _/ { { 刈`| | l /´{ { 刈\,_| イ /ー―‐ ..__. / / | |/ \{^ヽ 乂辷ツ八 |\| /' 乂辷ソ ノ^l/ } / . . . . . . . . . . `「⌒ .. // /| l、 ー‐ \{ | / ー‐ j/ /}/ . . . . . . . . . . . . . .| . . . . . / _,/ . ..| | \ ! j/ ′/ . | . . . . . . . . . . . . . . .| . . . . . . / . . . . { |\ハ_, ノ ,___/{ . .| . . . . . . . . . . . . . . .| . . . . .∧. / . . . . . . . ′ | . .|\圦 / j/l/. . ′ . . . . . . . . . . . . . . . ./ . . .∧. /. . . . . . . . . . ′_,ノ⌒ヽ | 、 、 _ -‐' / . / . . . . . . . . . . . . . . ./ . / . . / . /\ . . . . . . r‐ ' ´ ∨\/ ̄ )  ̄ ̄ / /. ./ . . . . . . . . . . . . . . / . / . . ./ . . 『デートしようぜ!』/ . . . . . .\ . .ノ ----- 、 ∨/ / 、 / ,/ . / . . . . . . . . . . . . . . / . / . / . . . . . . . . . . . . . / ‘, ‘, ./、 \ / /. . / . . . . . . . . . . . . . . ./ . // . . . . . . . . . . / . . . . .{ ---- 、 ‘, } / . . } ̄ \ ̄ ̄ ̄/ ̄ / .{/ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . -<⌒ . . . . . ./ . . . . ./ ‘, ‘,「l /⌒^\________/}/ . . . . . . . . . . . . . . . . . /´ \ . . . . / . . . . . .{ . . ‘, 人U{ . . . . . . .| \ / .| . . . . . . . . . . . .―‐┐ / \ . . . . . . . . } -- /\ . ノ r/ / . . . . . .| . . . \ ,/ . . . | . . . . / . . . . . . . . . . . ./ l .. / . / l .l. |! .l ヽ .', V ,ノ .. | | .. / , / | jl |. || .ト、 ト、 ハ . . j! く/⌒ ,ノ 〉 ,′ / / l /| __ | || |小、孑代汁仆|l| . || . j| . 〈 く . i / . ,' .厶rj´|l |从. | ヽ \| ∨从|l| . |L _/⌒ヽ / | . | ,'j . .j| . || l 八_」_ \ ィf乏[うメ、| 从 / ヽ.-r' L l l | l || 八,ィ圻圷、 {ト _jハ.}} ∧| . . | } ',. Ⅵ,| | .从 { {{゙ {ト、_jハ 弋jy沙 / i . レi⌒jレ'´〉 / 八 { . \ Vj沙′ ,,,,、 i . . | . | . .| 厶__/ \ .|ハ ,,,、 ' ,′ . . . | . | . .l | . . l . ヽ', /7 / l . l . .l | l . .l八 r_ヽ .イ/ / ,′l. . l | l . .l . . {丶. ,.イ|'/ / / .l . . l 「……!?!?!?!!?」 | | . .| . . ヽ . . . > .、_,. < / / ./ . . l . . l | | . .ト、 . . . \ . . .ヽ} _,../ / ./ | . . . l . . l. /´} | . lト、\ . \__」 _/ . ′.. . . .∧ | . . . . .l . . l ,x‐く ̄∨ . | . l| \,_,>'"´ / . . . . . , ′\ . . .l . . l ,. ‐く \ ヽ ∨ | . ll. / / / . . ;/ ̄\ ヽ . .| .l. 厶ヘ、ヽ ∨ l| / / / . . .;.'′ ヽ. ∨ . . l l l ll/ / , ′ . . ,.'′ ハ . ', .l | l // / / ,.ィ゛/ ̄ ̄ ̄\ . | . .i . .l l ,′j厶ィ´ / / / / ヽ . i . . l . .l ', ハ/} 厶rヒ'7 /. / / ', / . . l . .l 厶r '´ ̄`Y´〉 ,′. / / . / . ∨ . . . l . .l / ∨ { . . / { . / . / . . . . | . .|――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 14/14 …… … 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka と言うラインがきました 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? お前ら、全力で行くぞ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? のどっちまじがんばれ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 勝負下着履いていけよ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? いいか、男を立ててやるんだぞ。オタクトークしちゃダメだぞ 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka やっぱり襲われちゃいますよね!?!?!? 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? アラサーくらいだと体の関係から入る人も多いんじゃない? 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? この子なんで嬉しそうなの。ヤリ捨てられるかもしれないから気をつけーな 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID ??? 無理やりやられちゃうかもしれないからほんと気をつけてな 名前:以下、名無しに変わりまして雀士がお送りします 投稿日: ****/**/ ** ** ** ** ID nodoka 無理やり、ですか…… / / ./ ,ィ ヽ ヽ_ / / ./ // /! |l! .lY' ) ; i くlハ //,ィ / .| リ! j l } l! |イl! ' _`Vメ、 l / __.! ./_l/__ ノ l i='ヽ ゝゝ| ;´んィ !` =j/__ノノイ /¨T ヽヽ || l 弋_丿 'んィ !.ヽ// ,' ! } } || l 、、、 弋_丿 // .,ヘ .! j/ / ̄ \ || l ' 、、、 // ./イ | | ア | || ゝ. __ // ./. ! | | リ .! || | l > ´‐-' _イ//∥| l | <. で | |l!. l_L ;ノ .ト!¨ T¨ェ //.∥ll! l | .| す ! l|-、 ヽ .l! ̄` | . .// /l!ll| .! | .! ね .! /-、 ヽ ヽ l ̄ ̄l .// / ヽ! .! ! \__/. / | >ヽ ヽ . . l l;'/// /\ .| |. / l . /ヽ ヽ ';. ヽ / ////、 \ | 人.. V } ! ヽV/'/l;;;_/ Y ..人 !. / ヽl l ! [__] / .l i/ ヽ| 続く
https://w.atwiki.jp/th_izime/pages/1381.html
699 名前が無い程度の能力 [] 2012/10/02(火) 00 08 29 ID NepSEMUk0 魔術の勉強を熱心に行ううちに、ついに平行世界旅行法を習得した小悪魔 パチュリーは、たいして小悪魔に頼らないので自由休暇制 ということで、一応ひと言断ってから旅行に出かけた ……むろん、平行世界なんて信じちゃいないパチェさん 厨二病患者の息子に付き合ってあげるお祖母ちゃんの気分なんでしょう そして1ヶ月後 パチェ「旅行は楽しかったのかしら?」(暖かい目) こぁ「それが、始末始末の毎日で、逆に疲れましたよ」 パチェ「むきゅ?」 こぁ「最初の世界の私が糞変態で。パチュリー様を拷問して笑ってるんですよ! もちろん同じことをして、ぼろ屑にしてやりましたよ。あ、悪魔は百倍返しが基本ですから!」 パチェ「……」ゾワッ こぁ「2つ目の世界では、身の程知らずの私が、大図書館を乗っ取っていました。 パチュリー様を陥れやがったようなので、悪夢と幻覚で苛んで、素っ裸にひんむいて外の世界にポイしました」 パチェ「(やばい…こいつやばい)」 こぁ「3つ目の世界では、なんかパチュリー様を無理やり監禁してました。歪んだ愛ってやつですね! というわけで、コウノトリで拘束して素敵なオブジェにしましたよ!」 こぁ「4つ目の世界では、なんか紅魔館を乗っ取ろうとしてやがったので、 なんか完全にイッちゃってる妹様の拷問用…失礼、オモチャとしてプレゼントしました」 パチェ「私の小悪魔が狂った…」ボソ こぁ「まぁ、ろくでなしの私にたくさん出会いましたよ。もちろん全員拷m…お仕置きして、 しっかり叩きのめしておきました! みんな死ぬか廃人になるか発狂するか、あるいはその最中かって感じですね」 パチェ「むっきゅー! ゲホッゲホッゲッホンゲブボゴッ…… ざぐやぁぁぁぁ、ぜんぞぐのグズリど精神安定ざいいいいい!」 咲夜「はいはい、かしこまりましたー」 700 名前が無い程度の能力 [] 2012/10/02(火) 00 09 41 ID NepSEMUk0 ――3日後 永遠亭にて 優曇華「師匠、紅魔館のメイド長から手紙が届いてます」 永琳「はいはい、いつもの注文ね……フランドール用の鎮静剤と、 貧弱魔女の喘息の薬と……あら、小悪魔用の精神安定剤まで。 それと、ああ、これはいつもの……メイド長用の“アレ”ね」 優曇華「ちょ、麻薬じゃないですか」 永琳「平気平気。人体に害はないように調整してあるわ。ちょっとラリっちゃうだけよ」 ――翌日 紅魔館 小悪魔「パチュリー様に手を出す馬鹿は減ったけど、今度はお嬢様に刃向かう私が居る…… 殺さなきゃ……殺さなきゃ……呪術……生贄は、幻想入りしてきたマッハババア10体で……ぶつぶつ」 パチェ「小悪魔の精神病は……統合失調症とか? なんとかしなきゃ……ゲホッゲボッムギュブゲボッ……ウボァァッァマッハババアがまた死んでムギュッブェエレエレエレ」 フラン「お姉様ぁあああああぁぁ、遊びましょおおおおぉ! 全力で行くわよぉぉ、おもいっきり叩きのめして、踏みにじってぇえええ!」 咲夜「お嬢様ぁぁうわあああああ…!クンカクンカ!ドロワクンカクンカ! かりかりきゅんきゅんきゅういいい!」 美鈴「キ○ガイの館の門番やってたら、好敵手(とも)が離れて行くので門番やめます。お世話になりました」 レミィ「やばい当主なのに逃げたい」 レミィwww -- 名無しさん (2013-01-04 14 48 13) マッハババアって何ぞやw -- 名無しさん (2013-01-05 23 14 54) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/224.html
1/13 【あなたが好きです】(平行世界) 「なんで、そんなこと……」 「嘘じゃない。 これは本当の気持ち」 ドクンと胸が高まる。 口の中の水分がなくなったようだ。 こんなに緊張したこと、麻雀でだって経験がない。 「いつからですか」 「いつからだろう。 忘れちゃった」 これは少し嘘。 それを言うのは恥ずかしい。 「好きならなんで、咲の真似なんか」 「それは……」 少し怒ったような顔をして京ちゃんが詰め寄る。 それを聞くのは、ちょっとひどいかな。 京ちゃんだってわかっていることだよ。 「京ちゃんが、咲のことを好きだから」 自分で言って、頭をガツンと殴られた衝撃を感じた。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2/13 私はいつもお姉ちゃん。 いつだって優先されるのは妹。 そのことについて全く不満に思わない聖人なんかじゃない。 過去のことがあって、不貞腐れて、妹のことを忘れようとしたくらい。 みんなが私のことを美化する。 私は『優等生のインハイチャンピオン』なんて記号じゃない。 私だって人間だ。 姉妹喧嘩をすれば妹を優先されて不貞腐れる。 私はお菓子が好きだ。ついつい食べ過ぎてしまう。 本当は誰かに甘えるのが好きだ。 迷子になって咲と一緒に泣いてしまったこともある。 タブレットの操作だって必死に覚えた。 嫉妬だってする。 麻雀で手を抜かれた時には本気で怒った。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3/13 私のことを何も知らない貴方が眩しかった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4/13 最初は咲に関わっていたということで近づいた。 彼の人となりを知った。 とっても優しくて、エッチだけど、人を気遣う強さを持っていた。 駄々をこねて足を止めて、手を伸ばした。 貴方はやれやれと呆れながら手を取ってくれる。 いつもなら迷子にならないようにちゃんと下準備をして出かける道も、貴方が前もって調べてくれる。 私は誰もいない家で一人、仕事に行った母親と自分のために料理を作っていた。 その寂しさを埋めるように、文句を言いながらも構ってくれる。 苦手な料理だって、誰かを見捨てられない貴方は作ってくれる。 1・2年の頃は講義の時間を必死に覚えた。ドジにならないようにメモを持っていた。 今は貴方が心配してくれる。その時に講義の時間を確認するだけでいい。 いっぱい甘えて、いっぱい助けてもらった。 そんな貴方が大好き。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5/13 「私は貴方にとっての咲になりたかった」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6/13 それは叶わないことだとわかっていた。 「京ちゃんが辛いのはわかっていた」 「そんなの、照さんにわかるわけないじゃないですか。 誰にだって相談したことない」 「わかるよ」 「なんでですか」 「恋する乙女は、好きな人のことには敏感」 「……」 「京ちゃんが誰かにお世話をして、誰かのために動く。 それが当たり前になるくらいの関係の人。 ……そして、それは今いない人」 咲と話せば出てくる、貴方の思い出。 仲直りした日の思い出話。貴方の話をたくさん聞いた。 その時からずっと気になっていた。 「京ちゃんは私の中に咲を見ていた」 「そんな、ことは」 「そんな顔をしないで。 そういう風に思わせたのは私自身」 「そんなわけっ」 「自然と迷う誰かのために、見ていないと不安な誰かのために、京ちゃんが好きな咲のために」 「やめてください」 「……」 「俺はそんな大層な人間じゃない、です」 「知ってる。 私はそんな京ちゃんだから好きになった」 「なんで」 「私はこのままの関係でも良かった。 京ちゃんが咲を求めて、私は咲になりたくて、いつか京ちゃんの心の傷が癒えるその時までいられれば良かった」 「そんな自己犠牲なんてあるわけない!」 「女の子だから」 その言葉に息を飲んだのを感じた。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 7/13 「でも、これでおしまい」 「照さん?」 「私は咲の真似事をして京ちゃんの気を引きたかった。 京ちゃんも、私も、こんなことを知ったら一緒にはいられない」 震える声を無理やりしまう。 大丈夫、愛想笑いは得意だ。 「今までありがとう」 今日会った時には浮かべられなかった笑顔がすんなり出てきた。 嬉しくて楽しくて、昨日は夜眠れなくなるほどだったのに浮かべられなかった笑顔。 京ちゃんが格好良くてニコニコ笑おうと思ったのに、ニヤァなんて笑っちゃう私。 まるでこれから記者会見を受けるかのように、綺麗に笑えた。 せめて京ちゃんにとっての最後の宮永照が、笑顔で終わりますように。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 8/13 「俺の名前の意味って知ってますか」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 9/13 フラッシュバックのように何かを思い出す。 忘れてしまった何かの記憶。 思い出せそうで思い出せない。 「小さい頃、とある人に教えてもらったんです」 困惑する私に対して、京ちゃんは顔を上げる。 さっきまでの不安そうな顔をしている京ちゃんはどこにもいない。 意を決した男の子の顔。 こんな状況なのにドキッとした。 そんな顔をしないで。 諦めきれなくなる。 「『京』は京都の京。 日本の中心って意味です。 『太郎』は日本男児の名前で健康優良」 「名前……」 「『須賀』は須賀の地を指し、『落ち着く』と」 「それは……」 私だって知っている。 名前に関しては、自分や咲の名前について調べたことがある。 「照さんは言いました。 俺の隣にいると『落ち着く』って」 「……うん」 「すごく嬉しかった」 そうだ。 名は体を表す。 京ちゃんには京ちゃんの良さがある。 隣にいるだけで、とても落ち着く。 私を引っ張ってくれる、私の中心。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 10/13 「俺が好きなのは咲じゃない。 照さん。あなたが好きです」 …… えっ? 「京ちゃ……」 「またせちゃってごめんなさい。 俺はまた、あの時みたいに何も言えないままになるとこだった」 「う、うそ」 「この数ヶ月、俺の隣にいたのは咲じゃない。照さんです」 「……それは咲の真似をした私」 心が嘘をついている。 代替えでもいいと騒いでいる。 受け入れてしまえと叫んでいる。 それでも、私の中の面倒くさい部分が顔を出した。 「咲の真似をした照さんなんていませんよ、照さんは照さんです」 「そんなこと……」 「言っちゃアレですけどね。 全 っ 然 似 て な い で す っ ! !」 えっ 「まじ?」 「マジです。 咲はあんなお菓子マシーンじゃありません。 まぁ面倒くさがりなところとか、姉妹っぽいなってところはありますけど」 あれ? 「そもそも咲は俺に対してもっと辛辣です。 照さんとのデートで咲の名前をあんまり出すのもアレですが、何頼んでも嫌そうにするし」 それは照れ隠しじゃないかと、姉の感が言っている。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 11/13 「照さんは素直で、まっすぐに感情をぶつけてくれる。 『照さんが知っている咲』って、『照さんに甘える咲』なんじゃないですか?」 「あっ……」 そういえばそうだ。 咲といえば甘えん坊。 私にべったりと甘えてきてるイメージが強い。 だから私も京ちゃんに甘えていたんだ。 「あんなべったり甘えてきたりなんかしません。 俺の知っている照さんはここにいる照さんだけですよ」 「……」 顔を伏せる。 嬉しい。 「京ちゃんはすごい」 「えっ」 「そうやって人を笑顔にする」 「へへっ、どーですか」 「とっても嬉しい」 やっぱりそうだ。 こんなワガママを言っても、自分だけの理屈を言っても。 京ちゃんはブレない。 私が『咲の真似をしている』なんて言ったのに。 本当の『ありのままの私』を見ていてくれる。 ああ、やっぱりこの人が好きだ。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 12/13 「もう我慢できない」 「はいはい。 これでいいですか」 「もっと強く抱きしめて」 「む、難しいです」 「えへへ」 「照さんいい匂いがするから……」 「もっと嗅いでいいよ」 「積極的ですね……」 「京ちゃん」 「なんですかー?」 「日本の中心を照らすのは、太陽?」 「……詩的ですね。 結構本を読むんですか?」 「うん。本は大好き」 「そうですね。 照さんだけのこと、もっと知りたいです」 「うん」――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 13/13 「これからもたくさん覚えてね」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――