約 3,071,397 件
https://w.atwiki.jp/yaranaioheroine/pages/64.html
[すずみや はるひ] 登場作品:谷川流 「涼宮ハルヒシリーズ」 ◎ 彼らはDQ2でロトと賢者の末裔のようです(完) ◎ やらない夫でFFVIII(エ) ◎「R-18」やらない夫は姉たちにドキドキさせられる様です ◎ やる夫が戦国の覇者になるようです(完) ○ やらない夫は同窓会に出るようです。 ○ やる夫・オブ・アイヴァンホー(完) ○ やる夫が見張りを見張るようです(完) ○ ヤルヨミ市に花火が上がるようです(完) △ 異世界転生したから、チートではない自前の筋肉でプロレスをする(完) △ 涼宮ハルヒのあんこ(完)(R-18) △ 名探偵vs前世探偵(完) △ やらない夫とやらない子は科学捜査をするようです(完) △ やらない夫はFF7の主人公のようです(エ) △ やらない夫は星間企業で請負仕事の様です △ やらない夫はムーンセルで目覚めたようです(エ) △ やる夫の熊本奮闘記(完) ◇ 俺の屍を越えてゆけ ~新速出一族の歴史譚~(完) ◇ 旅をするために旅をするひとたち(完) ←涼水玉青 スに戻る 鈴谷→
https://w.atwiki.jp/ankasekai/pages/126.html
___ _ .ィi〔 . . . . . . . . . . . .` ..、 ./ . /二二二二\ . . . . .\ / . . . ' . . 、 . . . . .\ . . . . . . . . ヽ .ヽ 「 / . . . l .、/ \ . . . .| ヽ/ . . . . .「 ̄〉 あぁもう仕方ないわね! /V . . . . .N \ }\ .l/ lハ . . . .| ∨ ヽi . . . . . |── ──‐i| . . . ト 〉 どうせ止めても聞かないんでしょうし私も行くわ! | . . . . . |‐=== 、 ====‐ | . . . | . . | | . l . . . | 、__ u! . .从 .| | ∧ 小、 │ l | . / . . . ′ ヽ . . ≧‐┴─ ┴=≦' / ./レ /⌒マ V 才 ´ |==/ /X∨ {、__.ィv’ |i i | ./ /i/ ヽ V i i i/、 Vハ |/ /iイ } ̄ !ヾヘ i 才’ 、 \ ゝ __ノ| イ芥ト、 {\ }ーV ハ 「ー‐イ ヽ _ム / / / l l | V i i i } ' V レ | し_ノ / .| 名前 涼宮ハルヒ 原作 涼宮ハルヒの憂鬱 出演物語数 3 傭兵八雲は世界一の人気者になりたいようです レギューラーの一人として登場。 主に転移魔法を使う魔法使い。 一番の常識人のためツッコミ役。 +ネタバレ注意 ネタバレはここに書く 東京→大阪 徒歩旅行記 旅行の途中で出会った幽霊。 +ネタバレ注意 ネタバレはここに書く ソードアート・オンライン外伝 ノン・カーソル ソロで一心不乱に狩りをしていたプレイヤーとして登場 +ネタバレ注意 実は主人公達に会う以前は1階層で暴れていたギャングの元リーダー。 しかし、褒められた仲間達ではなかったが、黒幕に仲間達を殺され気に病んだ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4089.html
ゆっくりと扉を開けて俺たちは部室に戻ってきた 中ではそれぞれがそれぞれの指定席に座り、…朝比奈さんは立っているのが指定に近い感じがするのだが いつもどおりの、古泉は微笑、長門は無表情、朝比奈さんは怯えた表情をしていた …あれ?いつもどおりじゃない人間が一人いるな、たまになら見るが、朝比奈さんは何に怯えているんだ? …あぁそうか、そうだよな 朝比奈さんは俺にキスしたんだった そりゃ、ハルヒに何されるかわかったもんじゃない ま、予想どおりといったところだろうか、ハルヒが朝比奈さんの方を向いて話し掛けた 「みくるちゃん」 それは普段のハルヒからは想像しがたい優しい声だった まるで母親が自分の子供をあやすような それでも朝比奈さんはびくっとしていたがな 「ありがとう、ね」 いったい、何がありがとうなんだ? 誰か俺に説明してくれ …あとで古泉にでも聞くか それを受けた朝比奈さんは溢れんばかりの満面の笑みで元気よく 「はい!」 とだけ言った そのあとだが、恐らく今回は大体を知っていたであろう未来人・朝比奈さんが持っていたバスタオルで体を拭いたあとハルヒは朝比奈さんの、俺は古泉の持ってきていた着替えに着替え、団活を開始した この準備の良さをみると、古泉も知ってやがったな 八つ当りとは言わないが、いつもどおり、俺は古泉とのボードゲームに連勝し、長門は本を読みふけ、朝比奈さんは給仕にいそしみ、ハルヒはネットサーフィンに興じている 対戦中、何度かハルヒと目が合ったのは心にしまっておこう やはり、いつもどおり長門が本を閉じる音で部活が終わる なんかいつもどおりの一日だったな、確かに世界は急に色を変えないよな それが変わっていたら8割方ハルヒのせいだ 部室をでたあとハルヒが手を握ってきた 俺は少し慌てたがもう3人とも知っているんだろうな、と考えそのままにした 5人で歩く帰り道、いつもは先頭にいるハルヒは一番後ろの俺の横で少しはにかみながら歩いている 代わりに先頭を行くのはハードカバーを文庫本に持ちかえ、それを読みながら歩いている長門で、その後ろで古泉と朝比奈さんが談笑しながら歩いている 幸いにも雨は止み、控えめに赤い太陽が顔を出している 横を見れば顔を朱に染めたハルヒがちゃんといる 俺はハルヒに耳打ちしていた 「そっと抜け出さないか?二人で」 ハルヒは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに100Wの笑顔に戻すと大きく頷いた 長門にはバレていただろうが、いやもしかしたら全員にバレていたかもしれない 前の3人に気付かれないよう、こっそり脇道にそれた そのまま歩いて辿り着いたのは、この春休みに思い出深い、花見と、ハルヒの告白と…長門のマンションの近くの公園 桜達は、すでに花びらを落とし、早くも来たるべき夏に向けて準備をしていた しかし、抜け出してきたのはいいが、いったい何をしたらいいんだろうな とりあえず、ラブラブしたらいいんだろうが、そんな経験がない俺には何をもってラブラブというのかわからん 「おっ!キョン君にハルにゃんじゃないかっ!!」 突如後ろから聞き慣れた元気な声が聞こえる 振りむけばやはりというか鶴屋さんだった 「手なんかつないじゃって、ラブラブだね!お姉さん少し羨ましいにょろよ?」 ハルヒは照れている 顔が真っ赤だ 恐らく、冷静に観察してる俺も真っ赤だろう 「ええ、付き合うことになったんです」 それでも俺は某3倍早いMSのように赤いであろう顔に押さえ込まれないよう、できるだけ冷静を保って言葉を出す しかし、それも無駄な努力だったようで鶴屋さんは腹を抱えて大笑いしていた 「あっはっはっは!…そんな真っ赤な顔で…ぷぷ…真面目に言われてもねぇ…はっはっは…まぁ末長くお幸せに!これは鶴にゃんからの贈り物っさ!」 鶴屋さんはそう言って何かを俺の手に握らせる 「ハルにゃんを泣かせたらあたしが承知しないよ~!」 走りさりながら手を振る鶴屋さんを見送ったあと俺は手の中のものを確認した それを見た俺は苦笑する以外に選択肢はなく、覗き込んできたハルヒは顔をさらに赤くしていた 鶴屋さんはなぜ、こんなものを持ち歩いてあるのだろうか 俺はその0.03㎜の贈り物を使う日がいつ来るか考えていた
https://w.atwiki.jp/anews/pages/269.html
公式サイト→涼宮ハルヒの消失公式サイト 劇場2010 涼宮ハルヒの消失 限定版 (Amazon.co.jp限定スチールブック付き/完全生産限定版) [Blu-ray] posted with amazlet at 10.12.19 角川映画 (2010-12-18) 売り上げランキング 5 Amazon.co.jp で詳細を見る ブログ #blogsearch2 ニュース “クリスマス”アニメといえば?「東京ゴッドファーザーズ」や「School Days」、「アイカツ!」“斧”シーンも人気!「毎年見たくなる」【#クリスマスツリーの日】(アニメ!アニメ!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「涼宮ハルヒの消失」上映会が“世界改変の日”12月18日に開催 - 映画.com 【11/24の重要ニュース】史上最高のゲームは『ダクソ』/「Apex」ストアが大阪に/「ゲームマーケット2021秋」全体レポート など - 電撃オンライン 劇場版『涼宮ハルヒの消失』上映会、12・18開催決定 “世界改変の日”に実施 - 上毛新聞ニュース 名作アニメ映画「涼宮ハルヒの消失」 12月18日“世界改変の日”に1日限りの劇場上映会(よろず~ニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『らき☆すた』『涼宮ハルヒの憂鬱』などアニメ見放題も「ニコニコプレミアムDAY」初開催 - ドワンゴジェイピーnews 京アニおすすめ歴代アニメ人気ランキングベスト24!【300人にアンケート調査】 - PR TIMES “冬”に見たくなるアニメといえば? 2位「夏目友人帳」「WHITE ALBUM2」「ユーリ!!!」…ラブストーリーからスポーツものまで 【#立冬】(アニメ!アニメ!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「真に怖いのは「幽霊」か、それとも「人間」か」 ホラー漫画『生者の行進』シリーズ累計100万部突破:山陽新聞デジタル|さんデジ - 山陽新聞 「君の名は。」や「涼宮ハルヒの消失」など! 「Amazonタイムセール祭り」にてBD/DVDが特別価格となってラインナップ - GAME Watch ついにROLANDが「涼宮ハルヒ」シリーズのキャラクターにデビュー!? 『君か、君以外か。 君へ贈るローランドの言葉』刊行記念、世界を元気にする大物コラボグッズ第2弾の受注販売がスタート! - PR TIMES あなたの「ハルヒ坂」はどこですか 人生のドラマが始まる坂道の力 - 朝日新聞デジタル 読書の秋!“読書家”キャラといえば? 3位「涼宮ハルヒの憂鬱」長門有希、2位「ヒプマイ」夢野幻太郎、1位は…<21年版> - アニメ!アニメ!Anime Anime 「メイドインアビス」や「ウマ娘」など。「Amazonタイムセール祭り」にてBlu-ray&DVDがお買い得に - GAME Watch 『涼宮ハルヒ』シリーズ原作小説の挿絵イラストがアクキーに!(アニメージュプラス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース Abema(アベマ)プレミアムで見られるアニメ映画おすすめ10選【2021年8月最新版】 - BITDAYS 【投票】スピンオフ作品(外伝作品除く)人気投票 - アキバ総研 「Amazonタイムセール祭り」開催中! 「天気の子」、「氷菓」、「メイドインアビス」などBlu-ray&DVDがお買い得に - GAME Watch 涼宮ハルヒがROLANDの出版をお祝い!? 「涼宮ハルヒ」シリーズ異色のコラボ! 限定グッズ発売のほか、谷川 流&いとうのいぢによる推薦コメントも到着! - PR TIMES 「涼宮ハルヒ」シリーズとSuperGroupiesのコラボアイテムが予約開始!腕時計や財布、マフラーが登場|ゲーム情報サイト Gamer - Gamer 『涼宮ハルヒ』シリーズのコラボ腕時計、財布、マフラーが予約受付開始へ。『消失』長門のマフラーや北高制服カラーの腕時計で日常に非日常を - ニコニコニュース 『涼宮ハルヒの消失』や『メイドインアビス』『この素晴らしい世界に祝福を!』などの劇場アニメ5作品が10時間連続で一挙放送 - 超! アニメディア 人気劇場アニメを怒濤の10時間連続放送!『涼宮ハルヒの消失』『メイドインアビス』『ゴブリンスレイヤー』など一挙 | ニュース | ABEMA TIMES - AbemaTIMES 『ハチナイ』と『涼宮ハルヒの憂鬱』がコラボ!マヂカルラブリー・野田クリスタルさんが先行レビュー!! SOS団5人集結&フルボイスシナリオに絶句、描きおろしイラストも初公開 - 超! アニメディア 【京アニ】あなたが一番好きな京都アニメーションの作品はどれ?【2021年版アンケート】 | ねとらぼ調査隊 - ねとらぼ 【涼宮ハルヒ】好きなSOS団メンバーランキングTOP5! 第1位は「長門有希」に決定!【2021年最新結果】(1/2) | ねとらぼ調査隊 - ねとらぼ 『涼宮ハルヒ』名曲ランキング!ハルヒ役・平野綾が『ハレ晴れユカイ』に“SOS団の絆” - ふたまん+ 【涼宮ハルヒ】SOS団人気No.1を決めよう! あなたが一番好きな団員は誰?【アンケート実施中】 | ねとらぼ調査隊 - ねとらぼ 『涼宮ハルヒ』シリーズのオリジナルグッズが手に入るくじが「くじ引き堂」に登場!特大タペストリーやブックカバーなどがラインナップ! - 電撃ホビーウェブ 【BS11】年末年始にアニメ8作品を一挙放送! 『ガンダムNT』『Fate』特番、『涼宮ハルヒの消失』『リゼロ』OVAなど。全部観よう - ファミ通.com 「涼宮ハルヒの総選挙」人気キャラクター順位を発表、1位は”あの”キャラに!? 上位キャラクターのスペシャルな企画も進行中 - music.jpニュース \全3弾/ダウンロードパーツプレゼント実施中!<エアコミケ2 KADOKAWAブース> - PR TIMES BS11の年末年始はアニメざんまい、「涼宮ハルヒの消失」「ガンダムNT」などOA - ナタリー 深夜連続!アニメ祭り 「ハルヒ」「けいおん!」「銀魂」放送決定 - PR TIMES 「冒険でしょでしょ?」や劇伴など「涼宮ハルヒの憂鬱」関連楽曲557曲サブスク配信開始 - アニメハック 11月25日発売!『涼宮ハルヒの直観』アニメイト、ゲーマーズ、書泉の特典情報をまとめてお届け! 豪華特典がもらえる限定版セットをお見逃しなく - アニメイトタイムズ 「涼宮ハルヒの憂鬱」関連557曲がサブスク解禁! - アキバ総研 映画「涼宮ハルヒの消失」テレビ愛知で地上波初・ノーカット放送! 最新刊発売で盛り上がる今、名作をもう一度 - アニメ!アニメ!Anime Anime 映画『涼宮ハルヒの消失』テレビ愛知にて12/27に地上波初、ノーカットで放送決定 - ファミ通.com 『涼宮ハルヒの探訪』開催⭐️ 茅原実里 公式ブログ - lineblog.me 小説『涼宮ハルヒ』シリーズのエピソード別・時系列順番まとめ。『憂鬱』から『驚愕』までの既刊や、最新作『直観』のあらすじを紹介 - アニメイトタイムズ 小説『涼宮ハルヒの直観』発売に総勢100名の著名人から応援コメント!「SOS団の100人応援コメント!」第1弾が公開! - PR TIMES 『涼宮ハルヒの直観』小説カバー初公開! 表紙イラストは いとうのいぢ 描き下ろし「ハルヒ&鶴屋さん」で限定リバーシブルカバーも! 大好評予約受付中 - PR TIMES 完全新作『涼宮ハルヒの直観』表紙イラストが初公開!! - 電撃オンライン 「涼宮ハルヒの憂鬱」第9話は台詞と構図を連動させて、登場人物の「関係」と「距離… - アキバ総研 「涼宮ハルヒ」9年半ぶり新刊「涼宮ハルヒの直観」11月発売決定 - シネマトゥデイ 【ハルヒ新作】9年半ぶりの小説『涼宮ハルヒの直観』11月発売決定 - 電撃オンライン 小説『涼宮ハルヒの直観』11月25日発売! 書き下ろしエピソード「鶴屋さんの挑戦」を含む9年半ぶりの完全新作! - カドブン 涼宮ハルヒ9年半ぶり新作『涼宮ハルヒの直観』11.25発売 9.1より限定セット予約開始 - クランクイン! 【アニメ今日は何の日?】8月17日は『涼宮ハルヒの憂鬱』エンドレスエイトが発生した日! 終わらない夏休みが始まった! - アニメイトタイムズ 「涼宮ハルヒ」展、「笹の葉ラプソディ」収録巻発売から“16年後”の七夕に開催 - ナタリー 「涼宮ハルヒの憂鬱」笹の葉ラプソディ展、開催! ハルヒ「今から16年が最初のポイント」の“16年後”が今年 (2020年7月3日) - エキサイトニュース ハルヒやユーフォなど「もう一度観たい」アニメ劇場作品上映、TOHOシネマズ池袋で今日から - PHILE WEB - PHILE WEB 『涼宮ハルヒの消失』『劇場版 Free!』シリーズなど“京アニ”の劇場アニメ19作品が上映決定! (2020年7月1日) - エキサイトニュース 京アニ作品19本 7月3日開業のTOHOシネマズ池袋、アニメ映画特集上映ラインナップ発表 - アニメハック 「涼宮ハルヒの消失」など京アニのアニメ映画19作を上映、TOHOシネマズ池袋にて - ナタリー 「コードギアス」から「だんまち」「ハルヒ」まで!ABEMA特別企画“劇場版アニメ祭り”第2弾開催 - アニメ!アニメ!Anime Anime 「涼宮ハルヒ」声優陣による「#お家で全力ハレ晴レユカイ」 白石稔も踊ってみた動画公開!「セクシーでお茶吹いた」 - アニメ!アニメ!Anime Anime 『涼宮ハルヒの憂鬱』『CLANNAD AS』など名作アニメ17作品が無料配信&一挙放送! 『涼宮ハルヒの消失』の上映会も - ファミ通.com ニコニコで京アニの青春アニメ全17作公開、「中二病」最新映画はWeb初無料配信 - ナタリー 「世界が改変されてしまった」「SOS団ホームページが消えてる!」 12月18日“世界改変の日”に『涼宮ハルヒの消失』がトレンド入り(1/2) | ねとらぼ調査隊 - ねとらぼ 神前暁のデビュー20周年記念CDが登場!「God knows…」など本人厳選の楽曲収録 - ナタリー アニメ音楽界の至宝・神前 暁(こうさき・さとる)、作曲家デビュー20周年記念CDのリリースが決定! - PR TIMES 涼宮ハルヒ、化物語、らき☆すた…アニメファンの耳をくすぐる珠玉の楽曲を収録!作曲家・神前暁の作品集発売 - アニメ!アニメ!Anime Anime TVアニメ「長門有希ちゃんの消失」Blu-ray BOXが12月18日に発売決定!Blu-ray4枚+特典CD4枚の豪華仕様 - WebNewtype アニメ『長門有希ちゃんの消失』BD BOX発売が決定 - 電撃オンライン 京アニ映画を「特集上映」 「新宿ピカデリー」「MOVIX京都」で - ITmedia NEWS 冴えない毎日を輝かせる京都アニメーション作品――春日太一の木曜邦画劇場 - 文春オンライン 【筒井康隆×ハルヒ】優れたユーモアSFであり、純文学でもある『涼宮ハルヒの憂鬱』 - カドブン 『涼宮ハルヒの憂鬱』スニーカー文庫30周年感謝祭ステージレポート|平野綾さん、茅原実里さん、後藤邑子さんらが今でも印象に残っている名場面とは!? - アニメイトタイムズ 【新刊来るか?】『涼宮ハルヒ』シリーズが角川文庫から5カ月連続刊行! 2019年1月から - ロケットニュース24 9月1日21時より映画『涼宮ハルヒの消失』生放送! 『消失』を最高に楽しむための見どころまとめ - ニコニコニュース 「涼宮ハルヒの憂鬱」SOS団が スニーカー文庫30周年 に再集結! ネット騒然「3期ワンチャン!?」 - アニメ!アニメ! 「涼宮ハルヒ」2018年に“古キョン”がTwitterトレンド1位獲得! 大きなおねえさん達、大騒ぎ - アニメ!アニメ! 「涼宮ハルヒの憂鬱」NHKで全28話再放送! 「エンドレスエイト」も - アニメ!アニメ!Anime Anime 「小林さんちのメイドラゴン」が京都アニメーション&武本康弘監督でTVアニメ化! - エイガドットコム 「ハルヒ」TVアニメ10周年、劇場版も収録した集大成BD-BOX「涼宮ハルヒの大成」 - AV Watch 『涼宮ハルヒの消失』7月1日にAbemaTVにて初放送決定!本日24時『涼宮ハルヒの憂鬱』最終回放送も | ガジェット通信 GetNews - ガジェット通信 今度は長門が消えた! TVアニメ「長門有希ちゃんの消失」2015年春スタート - アニメ!アニメ!Anime Anime 『涼宮ハルヒの消失』上質なSF劇場アニメ作品 - あにぶ 「涼宮ハルヒの憂鬱」4年ぶりに再始動 新作映像を完成させる「Haruhi Hunting」スタート - アニメ!アニメ!Anime Anime 『涼宮ハルヒの消失』をベースにした大学受験英文法本が4月に刊行 - おたくま経済新聞 「涼宮ハルヒの消失」で学ぶ英文法参考書、中経出版から - - ねとらぼ 『「涼宮ハルヒの消失」で英文法が面白いほど身につく本』が4月に刊行! - PR TIMES SOS団に驚愕の新団員が登場! 「放課後ライトノベル」第44回はお待ちかねの『涼宮ハルヒの驚愕』で冒険でしょでしょ? - 4Gamer.net 平野綾インタビュー!WOWOWで「涼宮ハルヒ」劇場版&TVシリーズ4夜連続一挙放送! - PR TIMES 「涼宮ハルヒ」史上初となる全28話テレビ版&劇場版、WOWOWで一挙放送決定! - シネマトゥデイ 「トイ・ウォーズ×涼宮ハルヒの消失」コラボくじ発売。登場人物になりきろう - 4Gamer.net ただいま「トイ・ウォーズ」を「涼宮ハルヒの消失」がジャック中 - ITmedia 消失長門に続いて消失ハルヒのねんどろいどが販売開始! - ASCII.jp ソニー・マガジンズ、“涼宮ハルヒの消失” コラボの限定EXILIM - デジカメ Watch 「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門有希がコーヒーに!?言動は冷たくても、心とコーヒーはあったか~い! - シネマトゥデイ HMV ONLINEで「涼宮ハルヒの消失」発売記念フェア - ナタリー 消失ver.の長門から中学生ハルヒまで「ハルヒ」関連フィギュアまとめ - GIGAZINE 平野綾、杉田智和、茅原実里、後藤邑子、小野大輔――SOS団が集結した「涼宮ハルヒの消失」初日舞台挨拶 - ITmedia 超人気アニメ「涼宮ハルヒ」劇場版が満員立ち見での初日!平野綾4年間の集大成に感無量 - シネマトゥデイ 「涼宮ハルヒの消失」主題歌公開&舞台挨拶に主要キャスト - ナタリー 涼宮ハルヒの憂鬱 9冊横に並べて1枚絵「超パノラマカバー」 - ASCII.jp 劇場版「涼宮ハルヒの消失」テーマソングは長門有希 - ナタリー ハルヒファン待望の「涼宮ハルヒの消失」は映画に、2010年春に劇場公開予定 - GIGAZINE
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1811.html
どうしたんだろう。舌がなんだか縮こまっちゃって、うまく話せない。 「ね、ねえキョン。その、つまんない疑問なんだけど、さ」 「うん?」 こちらを見るキョンの様子がおかしい。明らかに心配そうだ。そんなに今のあたしはひどい表情をしているのか。 「こないだ、なんとなく深夜映画を見てたのよ。それがまた陳腐でチープなB級とC級の相の子っぽい、つまんない代物だったんだけど」 「ふむ、そりゃまた中途半端につまらなそーな映画だな。しかしハルヒ、あまり夜更かしが過ぎるとお肌に悪いぞ」 「うっさい、話を混ぜっ返すなっ! …でね、その映画ってのが、途中で主人公をかばってヒロインが死んじゃうのよ。でもって墓前に復讐を誓った主人公が敵の本陣に乗り込んで、クライマックスになるわけなんだけど」 べたりと汗のにじんだ手の平を握りこんで、あたしはキョンに訊ねかけた。 「もしも。もしもよキョン、あんたが言った通り映画の主人公がトラブルを乗り越えて行くべき存在なら…ヒロインが死んじゃったのって、それって主人公のせいなのかしら…?」 あたしがその質問をした途端、キョンは「あ」と小さく声を上げた。苦虫を噛み潰したような表情になって、それから、ゆっくり口を開いた。 「おい、ハルヒ。分かってるとは思うが、さっき俺が言ったのは『物語を客観的に見ればそういう考え方も出来る』って程度の話だぞ」 うん、そうよね。それは分かってる。 「脚本家やらプロデューサーやらの都合じゃヒロインが死ぬ必然性はあったかもしれないが、それは当然、主人公の意思とは無関係だ」 それも分かってる。けど。 「だいたい、自分が活躍するためにヒロインが死ぬ事を望むヒーローなんか居るかよ。もし居たとして、そいつはヒーローなんかじゃない。 だからその、何というか。要するに、俺はお前を責めるつもりであんな発言をしたわけじゃないってこった。単純にお前にトラブルを乗り越えてく覚悟があるかどうか確かめたかったっつーか、なんとなく意地悪な質問をしてみたかっただけというか。 大体ここまで人を巻き込んどいて、いまさら遠慮とかされても逆にだな」 「分かってるわよそんな事ッ! だけど…」 そう、分かってる。分かってるのよ。キョンの言い分は全て理にかなってる。こんなに声を荒げてるあたしの方が、きっとおかしいんだ。 でも。それでも! 「でもやっぱり、主人公が英雄的活躍を求めた結果として、ヒロインが死んじゃった事には変わりないじゃない!? あたしは、そんなのは嫌…。あたしのせいでキョンが居なくなるなんて、絶対に我慢ならない事なのよ!」 ああ、言ってしまった。直後に、あたしはそう思った。 それは言いたくなかったこと。認めたくなかったこと。でも言わずにはいられなかったこと。 「――北高に入って、あたしの日常はずいぶん変わったわ。毎日がとても楽しくなった。中学の頃なんかとは段違いに。 あたしはそれを、自分が頑張ったおかげだと思ってた。SOS団を作って、不思議を追い求めて。前に向かってひたすら走ってるから、だから毎日楽しいんだと思ってた。 昨日まで、ついさっきまで、そう思ってたのよ! でも、違った。本当はそうじゃなかった…」 「何が違うんだ? お前が日常を変えようと努力してたって事なら、俺が証人台に立ってやってもいいぞ? その努力の方向性が正しかったかどうかは別問題として」 この湿った雰囲気を変えようとでもしてるのだろうか、軽口っぽくそう言うキョンを、あたしは鋭く睨みつけた。 「だから、それよ! 気付いちゃったのよ、あたしは、その事に!」 「意味が分からん。いったい何に気付いたっていうんだ?」 「あんたが、あたしの背中を見ていてくれるから! だからあたしは走り続けていられるんだって事によ!」 気が付くと、あたしは深くうつむいていた。今の表情を、キョンの奴には見られたくなかったのかもしれない。 「中学の頃だって、あたしは走ってたのよ。日常を変え得る不思議を捜し求めてね。でもあたしはずっと一人で…息切れとか起こしたって、それに気付いてくれる奴は誰も居なかった…」 「…………」 「あの頃と今と、何が違うのか。 今のあたしが前だけ向いて、心地よく走り続けられるのは、それはあたしの後ろで、あたしの背中を見続けてくれる奴が居て…。もしもあたしが転んだとしても、すぐにそいつが駆け寄ってきてくれるっていう安心感の後ろ盾があるからだ――って…気付いちゃったのよ…」 喋っている間に、いつの間にか立ち上がったキョンが、すぐ前に立っていた。あたしはうつむいたままだからその表情は分からないけど、腕の動きから察するに多分、さっきぶつけた後頭部をさすっているんだろう。 「ありがたいお言葉なんだが、お前にそう殊勝な事を言われると、驚きを通り越して寒気がするんだよなあ。 ともかくハルヒよ、別にそれは俺だけの話じゃないだろ。朝比奈さんや長門や古泉、その他もろもろの人がお前を支えてくれてる。俺なんかパシリ役くらいしか務まってないぞ」 「そうよ! あんたはみくるちゃんみたいな萌えキャラでもないし、有希ほど頼りになんないし、古泉くんほどスマートでもないわ! せいぜい部室の隅に居ても構わないってくらいの存在よ!」 「やれやれ、俺はお部屋の消臭剤か」 なんで、あたしはこんなにイラついてるんだろう。どうしていちいちキョンの言葉に反応してしまうんだろう。 あたしの不愉快さは、それはもしかして…不安の裏返しなの? 「そう、あんたは特に取り柄があるわけでもない、ただ単に手近な所に居ただけの奴だったのに! そのはずなのに! でもあの春の日に、あたしの髪型の変化に気が付いたのはあんたで…その後もあたしの事を一番気に掛けてくれるのはあんたで…。 いつの間にかあたしは、あんたに見られる事を意識するようになってた…。あたしがこうしたらあんたはどんな反応するだろうって、それが一番の楽しみになってた。 あんたが変えちゃったのよ、あたしを! もうあの頃のあたしには戻れないのよ! それなのに、あんたがあんな事を言うから…」 ああ、失敗。失敗だ。 うつむいてしまったのは大失敗だった。確かに表情を見られはしないけど、にじみ出てくる涙をこらえられないんじゃ、意味がない。 「あんたが…人間なんて明日どうなってるか分からないとか言うから…。だからあたしは、こんなに不安になってるんじゃない!」 あんまり悔しくって、あたしは涙に濡れた顔を上げ、再びキョンの奴を睨み据えていた。 つい先程聞いた有希のセリフが、また胸の奥でこだまする。 『彼の言っていたのはある面での、真理』 『価値観は主に相対性によって生ずる。最初から何も無かった状態に比して、あるはずだったものをなくしてしまった時の喪失感は、絶大』 今なら、その意味が分かる。 あたしにとってあるはずのもの、そこに居てくれなければ困るもの。それは、キョンだったんだ――。 「もし…もしもあんたを失っちゃったら、きっとあたしは今のあたしのままじゃいられない…。何度も何度も後ろを振り返って、おちおち前にも進めなくなる…。 そんなの嫌! そんなのはあたしじゃない! だから、あたしは!」 こんな事を言ったら、キョンはきっとあたしの事を軽蔑するだろう。そう思いながらも、でも一度ほとばしった罪の告白は、途中で止められるものではなかった。 「あんたをここへ、ラブホへ誘ったのは、なんとか励まして元気付けたかったからっていうのは本当。 でもあたしにはあたしなりの思惑があって…。あんたが目の前に居て、あんたに触れる事が出来る内に、あんたとしておきたかった…。 あんたがあたしと一緒に居たって証拠を、心と身体に刻み込んでおきたかったのよ! 悪い!?」 はあ。 言っちゃったなあ…あたしのみっともない本音を。 キョンの奴も、さすがに愛想が尽きただろう。いつも偉そうぶってるあたしがこんな、ただの利己主義で動いてるような人間だと知ったら。 キョンの反応が恐くて、あたしはギュッと固く目を瞑って、肩を震わせる。そんなあたしの耳に、キョンの呆れたような声が届いた。 「やれやれ。男冥利に尽きるお言葉ではあるんだが、願わくばもう少し可愛げのある言い方をしてくれないもんかね」 「………は?」 「いや、訂正しとこう。可愛げのあるハルヒってのは、やっぱりどうも薄気味悪い。少し横暴なくらいがお似合いだな」 「な、なんですってぇ!?」 あたしの本気を茶化すような、あまりといえばあまりの雑言に、あたしは思わず目を剥いて、キョンの胸倉を掴み上げてしまう。 すると、キョンの奴は悪びれもせずにあたしの目を見つめ返し、子供をあやすようにポンポンとあたしの頭を叩きながら、こうささやいた。 「なあ、ハルヒ。ひとつ訊くぞ?」 「…何よ」 「お前は、俺に消えていなくなってほしいのか?」 「なっ、このバカ! 今までなに聞いてたのよ、その逆でしょ!? あたしは、あんたと…」 「だったら、つまんないこと心配すんな」 え、と顔を上げたあたしに、キョンは驚くほどキッパリと言い切ったの。 「お前が望んでる限り、俺は、ずっとお前の傍にいるはずだから」 ――まったく。 まったくもう、なんでこいつは。 普段は優柔不断の唐変木ののらくら野郎のくせに、こういう時だけは断言できたりするのだろうか。 不覚にも、ぐっと来てしまったじゃないか。 不覚、不覚! 涼宮ハルヒ一生の不覚! 気付けばあたしはキョンの胸にすがりついて、ボロボロに泣き崩れていた。さっき流した悔し涙や、不安と寂しさで流した涙とは全然違う、それは頬がヤケドしそうなくらい、熱い、熱い涙だった。 次のページへ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/6018.html
新川「涼宮ハルヒのお願い!ランキング!!」 多丸兄「今回のテーマはこちら!!」 森「本当に可愛い北校生がしりたーい!!」 多丸弟「そしてそれらの美少女たちを審査する美食家アカデミーはこちらぁっ!!」 キョン「どうも、キョンです。座右の銘はポニーテールは人類の宝です」 古泉「これはこれは……古泉です。今回はよろしくお願いしますよ、んっふ」 谷口「女の審査は任せろ!!!なんなら俺的北校美少女ランキングを公開してm」 国木田「国木田です。始めまして」 多丸弟「以上の四人の美食家アカデミーが、それぞれ10点ずつの持ち点、合計40点満点で審査してランキングを作成するぞ!!」 新川「機関のブレインたちが汗水垂らして作成した予想ランキングはこちらぁっ!!」 第一位 涼宮ハルヒ 第二位 朝比奈みくる 第三位 長門有希 第四位 鶴屋さん 第五位 喜緑江美里 第六位 朝倉涼子 第七位 阪中 佳実 森「上位三位はやっぱりSOS団が占めてるみたいね」 多丸兄「果たして一番可愛い北高生の称号は誰の手に!?それでは参りましょう!!まず第七位はこの方!!」 新川「阪中さん!!さて、美食家アカデミーたちの反応は?」 キョン「うーん……普通なんだよな」 古泉「普通ですね……」 谷口「うん、これといった特徴がねえんだよなあ……たしかに顔も可愛いし、スタイルだって悪くないんだけど……なんだかなあ」 国木田「普通に見てもかなり可愛い方だと思うけど、やっぱりこれだけ個性の多い北高生の中ではなんだか見劣りするものがあるよね。あと特徴的な口調だけど……僕的にはかなりマイナスかな。普通のしゃべった方が可愛いと思う」 多丸弟「早速美食家たちの厳しい指摘の声!!さて、開発者……もとい、美少女たちの反応は!?」 阪中「みんなひどいのね」 ハルヒ「どうどう」 みくる「ていうかなんですかぁこの企画……」 長門「普通に引く」 森「番組の内容自体に不満が集中しているぞ!」 新川「……」 多丸弟「さあ、気になる得点は!?」 キョン「7点です」古泉「5点です」谷口「4点です」国木田「6点です」 合計 22点 ハルヒ『うわぁ……厳しいわね』 みくる『涼宮さん、そんなこと言ってる場合じゃないですよう』 朝倉『谷口君にこんな点数付けられる筋合いないと思うわ』 長門『そう。あれは人類の最下層に位置する個体。採点する資格も無ければ、気にする必要も無いものと思われる』サスサス 阪中『うう……』 長門(ここで媚売っとけばシュークリームが) 新川「さて、ここまでは機関の予想通りの結果に!!続いて第六位に美食家アカデミーの選択した美少女は!?」 多丸兄「涼宮ハルヒ!!これは機関予想を大きく覆しての第六位だ!!美食家アカデミーたちの反応を見てみると?」 キョン「ハルヒか……黙っていてなおかつポニーテールにしてたらかなりいいんだけどな……でも最近髪短くしてるし騒がしいし……」 古泉「うーん……立場上言えませんでしたが、彼女あなたがいないときよく団室で放屁されるんですよ」 キョン「マジか」 古泉「えらくマジです。……そんなこともあって残念ながら僕もあまり高評価は下せませんね」 谷口「俺は一度振られた女には低評価を付ける事にしているんだ。それに性格も腐ってやがるしな」 国木田「そんな事誰も聞きたくないし、言っちゃだめだよ谷口。涼宮さんか……僕はそこまで悪いとは思わないけどな……でも、文化祭の映画のときのことキョンから聞いたんだけど、朝比奈さんにあんなことするのは良くないと思うな。でも最近はそんなことしないみたいだからそこまで悪い評価は上げられないよ」 多丸兄「世界が滅びそうな厳しいコメント!!美少女達の反応は!?」 ハルヒ『むきー!!!!』 みくる『涼宮さん落ち着いて……』 長門『正当な評価』 ハルヒ『有希!?』 長門『今のは腹話術。朝倉涼子改めまゆりんの陰謀』 朝倉『ちょっと長門さん!?まゆりんってなによ!?』 長門『ユニーク』 ハルヒ『……ともあれキョンと古泉くんにはおしおきが必要ね』 鶴屋『あははっ、キョンくんにげてー!!にょろ!!』 喜緑『なかなか厳しいようですね』 森「あまりに厳しい審査に、動揺が隠せないようだぞ!」 多丸弟「それでは気になる点数は!?」 キョン「6点です」古泉「6点です」谷口「3点です」国木田「8点です」 合計23点 ハルヒ『ぬがああああ!!!!!!!』 みくる『涼宮さん!!握りしめすぎて爪が掌に刺さって血がだくだく出てます!!危ないです!!』 長門『ユニーク』 ハルヒ『有希!?』 長門『見ざる聞かざる言わざる。まゆりんの陰謀』 朝倉『知らないわよ!?』 鶴屋『知らざるだねっ!!』 森「なんだか本人以外特に気にしてないみたいだぞ!」 ~この番組は世界の明日を作る、機関の提供でお送りしています~ CM中 キョン「………そろそろ説明してもらおうか」 古泉「なにがですか?」ニコッ キョン「とぼけんなって。あと古泉スマイルとかそういうのマジでいらないから」 古泉「んっふ、これは手厳しい」 キョン「だれの陰謀だ。ハルヒか?」 古泉「いや、今回は涼宮さんとは無関係ですよ。ついでに言うと貴方の親友の佐々木さんも無関係です」 キョン「じゃあなんでこんなことを」 古泉「分からないのかね?」キリッ キョン「え?」 古泉「そっちの方が、面白いだろう」ダイハツッ キョン「………」 古泉「いや、止めましょうって。無言で鉄パイプとか振りかぶっても面白いことなんてありませんから」 ~ここからは神人たちから世界を守る、機関の提供でお送りします~ 新川「予想一位のまさかの六位転落!!大波乱のまま続いて第五位に選ばれたのは!?」 多丸兄「朝比奈みくる!!またしても機関予想を大きく裏切る結果に!!美食家アカデミーたちは一体どのような反応を示したのか!?」 キョン「この人は……可愛らしいな。そして巨乳なんだが……」 古泉「貴方の仰りたい気持ちは理解しました……何かが足りないんですよね?」 キョン「ああ、そうだ……そして、言っちゃ悪いが影が非常に薄い。……残念だ」 谷口「俺的美的ランクで言えばAAAなんだが……たしかにキョンたちが言うとおり、何かが足りないんだよな」 国木田「すごく阪中さんとケースが似てるんだけど……やっぱりこの人の場合、お茶汲みメイドのキャラ設定とか、様々なキャラが涼宮さんによって後付けされたものだから 微妙なんじゃないかな?やっぱり個性ってものはその人自身でつけるものだし……」 多丸弟「北高のマドンナと称される朝比奈みくるの評価に意外すぎる厳しい声が!!これを受けて美少女たちの反応やいかにっ!?」 みくる『殺す。[禁則事項]で[禁則事項]して殺す』 ハルヒ『はっ!!みくるちゃんからドス黒いオーラが立ち上ってるわ!!』 長門『当然。意味のない脂肪をつけていたらだれでもこうなる』 ハルヒ『有希!?』 長門『まゆりん、いい加減にしてほしい』 まゆりん『長門さん?いい加減にしないと、今日のハンバーグあなたのだけ豆腐のやつにするわよ?』 長門『なぜあんなことをしてしまったのか自分にも理解できない。深く反省している。もうしない』 朝倉『よし』 森「どうやらSOS団の女性陣は怒ると人格が変わるようだぞ!」 新川「さて気になる点数は!?」 キョン「7点です」 古泉「6点です」 谷口「7点です」 国木田「7点です」 合計27点 みくる『でも涼宮さんより4点も上なんだぁ……ふふっ』 ハルヒ『みくるちゃん!!それどういう意味よ!?』 長門『超低空飛行な争い。ゆきりん見てられない』 ハルヒ『有希!?』 長門『まy……喜緑江美里改めわかめ星人は少し自重してほしい』 喜緑『長門さん?今なんと?』ニッコリ 長門『ご……ごめんなさい。ぶたないで。わたしの髪の毛をわかめに変えないで』ガタガタ 森「どうやらSOS団内の友情に亀裂が生じてきたようだぞ!」 多丸弟「さて!!大波乱が続くなか、お次は第四位!!ランクインしたのは……」 多丸兄「喜緑江美里!!美食家アカデミーの感想は?」 キョン「おお……喜緑さんか…!!美人だ……ただ」 古泉「ええ………この美貌には、朝比奈さんや涼宮さんとは違った何かを感じます。本当に気品があって上品そうな美人ですね……ですが」 谷口「うほっ、この人ってあの生徒会きっての美人の喜緑江美里さんじゃねえか!!お綺麗だなぁ……惚れ惚れするぜ!!……だが」 国木田「やっぱりこの人は上級生だけあって大人っぽさがあるよね。この人にも僕憧れてるんだ。ちょっとね。……けど」 キョン「わかめだ」 古泉「わかめですね」 谷口「わかめだな」 国木田「わかめだね」 喜緑『パーソナルネーム「キョン」「古泉一樹」「谷口」「国木田」の情報連結の解除を申請』 朝倉『ちょ、落ち着いてよね』 長門『そう。貴方がわかめなのはもはや避けようのない規定事項』 ハルヒ『有希!?』 長門『阪中佳実、出番がないからといってわたしにアフレコをするのは推祥できない』 阪中『はひっ!?』 鶴屋(出番がないのはわたしも同じっさ) 森「出番争いという新たな争いが起こっているようだぞ!」 新川「さて、気になる得点は!?」 キョン「8点です」 古泉「8点です」 谷口「8点です」 国木田「7点です」 合計31点 森「ついに大台の30点突破!!これに対して美少女の反応は!?」 みくる『くそワカメが。わたしの方が絶対可愛いわ』(すごいですぅ喜緑さん) 鶴屋『みくる、逆、逆』 喜緑『……まあ、わかめと言われたのは癪に障りますが、30突破は気分がいいですね』 長門『』スック トトトト 喜緑『あら、長門さん。なんですか?』 長門『TFEI最弱が』ボソッ 喜緑『』ピクッ 長門『』トトトト ペラッ 朝倉『は、は、ははは……』 阪中(帰りたいのね) 森「女の争いは恐ろしいぞ!」 新川「続いては第三位!!と、その前に……」 森「涼宮ハルヒの番外!ランキング!!」 多丸弟「ノミネートされたのはこちらのメンバーだ!!」 機関予想 第一位 佐々木 第二位 渡橋泰水 第三位 周防九曜 第四位 橘京子 多丸兄「こちらの佐々木団+αも美食家アカデミーに審査してもらおう!!」 森「本当は妹ちゃんやミヨキチちゃんもいれたかったけど、妹ちゃんはキョンくんの肉親だし、ミヨキチちゃんはあまりにも資料が無かったのでカットさせてもらったぞ!」 新川「さて番外編第四位は……この人だあっ!!!」 多丸弟「佐々木さん!!さて、美食家アカデミーたちの反応は!?」 キョン「佐々木か……可愛いんだけどなあ……なんかもうひとつ」 古泉「んふ、そうですね……非常に魅力的なんですがね」 国木田「やっぱり男性だけに僕っ娘ってキャラはいいんだけど……なんだか無理してる感じがあるよね。無理してまで個性を作っちゃいけないよ」 谷口「ああ……それに言っちゃ悪いが胸が小せえな。かなり可愛いけど」 新川「さて、気になる得点は!?」 キョン「8点です」 古泉「8点です」 谷口「8点です」 国木田「6点です」 合計30点 森「本編と同じく大波乱!!でも一発目にして30点の大台を突破したぞ!」 新川「非常にレベルの高い番外編!!続いては第三位!!選ばれたのは……」 多丸弟「周防九曜だあっ!!さあ、美食家アカデミーたちはどのような感想を抱いたのか!?」 キョン「なんだかんだ言っても九曜も可愛いよな、結構」 古泉「そうですね。彼女には彼女の魅力が多大にあります」 キョン「実は、俺踏切で襲われてアイツが微笑んだとき『耐えられたのは俺でこそだ』とか偉そうな事いってたけど正直昇天するかと思ったよ」 古泉「んふ。それは興味深い。またいつか詳しくきかせていただくといたしましょう」 谷口「す、周防さん……」 国木田「大丈夫、谷口?顔、酷い事になってるよ」 谷口「……ほっといてくれ」 新川「さて、気になる点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「9点です」 谷口「6点です」 国木田「8点です」 合計32点 森「どうやら谷口くんはいきなり振られたのが相当ショックだったみたいだぞ!」 多丸兄「さあ番外編第二位は……この人!!」 藤原「渡橋泰水!!さて、気になる美食家アカデミーたちの反応は……?」 キョン「ヤスミか……可愛かったなあ」 古泉「ええ……もう二度と会えないのが残念でなりません」 キョン「……なあ、古泉よ」 古泉「なんですか?」 キョン「どうせ幻だったんなら……一回ぐらいやってても誰にも気付かれなかったよなあ……勿論警察にも」 古泉「おやおや……まさかこのような事で貴方と考えが一致するとは思いもしませんでしたよ」 キョン「……やっぱりお前とは親友だ」 谷口「可愛いなぁ……うん。可愛い。でもちょっとムネが小さいか?」 国木田「死になよ谷口。うん、でも涼宮さんが言ってたんだけど彼女って中学生なんだって。だから胸が小さいのは当然じゃないのかなあ」 谷口「JCだって…… み な ぎ っ て き た ぜ ! ! !」 国木田「ほんと帰りなよ」 新川「さて、気になる点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「10点です」 谷口「8点です」 国木田「8点です」 合計35点 森「遂に古泉から満点が出たぞ!」 藤原「さあ!!残る第一位はこの人!!橘京子だぁっ!!!」 多丸兄「さて、美食家アカデミーたちの感想は!?」 キョン「おうふ……いやはや、朝比奈さん誘拐事件の犯人とはいえ……可愛いよなぁ」 古泉「この純真無垢な笑顔は……敵対組織ながら、かなり来るものがあります。そして仕事時にする子悪魔的笑みもまてbeautifulですぞ」 谷口「可愛いなあ……うん、このぽやーっとした感じがなんとも」 国木田「なんだか天然っぽい子だね。それもこの笑顔は作った天然じゃなくて真の天然だ。いまどき珍しい子だと思うよ」 新川「さて!!番外編第一位の点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「9点です」 谷口「9点です」 国木田「10点です」 合計37点 森「惜しくも40点には届かなかったものの、本日最高得点をマークしたぞ!」 藤原「さて、CMの後は遂に本編ベスト3の発表だ!!」 ~この番組は●<マッガーレ印の機関でお送りします~ CM中 キョン「いやー……九曜に橘。そしてヤスミに佐々木……前回の事件の女性陣は実に素晴らしい!!」 古泉「全くです。いやはや、橘さんに至ってはあの事後思わずメールアドレスと電話番号を聞き出してしまったくらいですから」ハナタカダカー キョン「古泉……威張ってるつもりかもしれんが、俺だって橘のメールアドレスくらい持ってるぜ。そしてお前のとは文字列が違う……これがどういう意味だか分かるか?」 古泉「いえ……」 キョン「古泉。俺のとお前のと、ドメインを見比べてみろ」 古泉「はいはい……貴方のは……codomo.ne.jp……僕のは……orz」 キョン「そいつはサブアドだ」 古泉「ちくしょう」 ~ここからは世界の明日を担う機関の提供でお送りします~ 新川「さて!!遂に本家第三位の発表だ!!第三位は……この人!!」 藤原「長門有希だぁっ!!」 長門『……不服』ガンガン 朝倉『ちょ、長門さん、落ち着いて』 長門『黙れまゆりん』 藤原「さあ!美食家アカデミーたちの反応は!?」 キョン「長門か……正直、消失世界での長門の微笑み、それに帰ってきた後のありがとうはかなり俺の胸にくるものがあったな」 谷口「一年の最初こそ俺的美的ランクA-に留まっていたが……キョンたちと一緒にいるようになってからは雰囲気も柔らかくなったし、普通にAAランクくらいなら上げれるレベルになってきてるぜ」 国木田「そうだね……うん、谷口の言うとおり、かなり印象が柔らかくなったと思うな。今までは少し近寄り難かったんだけど……最近は接点こそ無いにしろ、接点さえあればかなりフレンドリーになることが出来ると思う」 藤原「ここまではかなりの好評価だ……しかし、ここにきてあの男が牙をむく!!」 古泉「あのー、確かに最近……特にこの12月から春にかけてかなり近寄りやすく、人間らしくなってますが……その、彼女少し黒いような印象を受けますね。なんだか自分というものを確立して、自信が出てきたのは結構だと思うんですが……少しそれを前面に出しすぎかなといった印象を受けますね」 藤原「ここまで同調同調を繰り返し、あまり自分の意見を出さなかった古泉がまさかのダメ出し!!これを受けて女性陣は!?」 長門『パーソナルネーム「ガチホモ」の情報連結の解除を申請』 朝倉『長門さん落ち着いて……ほら!!そんなことするから阿部高和さんがいなくなっちゃったじゃない!!』 長門『うかつ』 喜緑『うふふ、偉そうなことを言っていたわりには張り合いの無い順位ですね』 長門『たった一番とはいえわたしはあなたの上。あなたにわたしを皮肉る資格は無いものと思われる』 喜緑『おや、皮肉に聞こえましたか?そんなつもりはさらさら無かったんですけど』 森「皮肉というよりは、ただの悪口だぞ!」 藤原「さて、気になる得点は!?」 キョン「9点です」 古泉「8点です」 谷口「9点です」 国木田「9点です」 合計35点 長門『あなたより4点も上』ドヤアアアアアアアアアアアアア 喜緑『くっ……』ギリッ 鶴屋『有希っこすごいねっ!!』 長門『まだ出ていないあなたが言っても嫌味にしかきこえない』 ハルヒ『それにしてもSOS団の女性陣がこんな順位までなんて……鍛えなおしよ!!』 みくる『六位が何言っても説得力ないですよう』 ハルヒ『みくるちゃん!?』 みくる『ひえー!禁則事項ですぅ!!』 阪中(わたしなんてもう面目丸つぶれなのね) 森「なんだか知らないけど殺伐としているぞ!」 藤原「さて第二位発表の前にスタジオ予想だ!!」 森「朝倉涼子と鶴屋さんのどっちが一位か、スタジオで決めて欲しいぞ!」 佐々木「ふむ……とりあえず藤原くん、こちらにもどっておいで」 藤原「ふんっ、禁則事項だ」 橘「意味が分からないのです!」 九曜「――――チーム――――佐々木は――――橘京子と―――――佐々木某――――――チーム――――藤原は――――わたしと――――――シスコン未来人――――――――」 佐々木「九曜さん説明ありがとう。ふむ……僕の順位が最下位だったのは後でキョンにじっくり訊いてみるとして……やっぱり勝つのは鶴屋お嬢さんではないかな?」 橘「きっとそうなのです!!わたしに亀さんくれたのです!!」 佐々木「橘さん……言っては悪いが、そのう……なんだかアホの子になってないかな?」 橘「気のせいなのです!!天才の指輪も持ってるのです!!雑誌で売ってたのです!!」 佐々木(うわぁ……真性のアホだこいつ) 藤原「ふん、僕は癪だがあのTFEIに賭けてやろう」 九曜「―――どう――――して――?」 藤原「ふんっ、僕は太ももが好きだからd………あ」 佐々木「…………」 橘「…………」 九曜「…………」 藤原「いっそ殺せよ」 佐々木チーム……鶴屋さん 藤原チーム……朝倉 新川「さて、どちらの予想が正しいのか!?」 藤原「運命の瞬間!!第二位は……この人だ!!」 多丸弟「鶴屋さん!!!さて、美食家アカデミーは、どのようなジャッジを下したのか!?」 キョン「おお……鶴屋さんか……この人は正真正銘の天才だ……!!そして何よりもお美しい……」 古泉「んふ。まさかこれほどまでとは……いやはや、鶴屋家もあと50年、いや70年は安泰ですね」 谷口「いや、素晴らしい。マジですごい。それしか言い表す言葉がねえな」 国木田「流石、僕の進路……いや、人生を変えた人だよ」 多丸兄「美食家アカデミーのこの高評価!!女性陣の反応は!?」 鶴屋『みんな……こんな風に思っていてくれてたなんて……お姉さん感激だよっ!!』 みくる『すごいですぅ鶴屋さん』 ハルヒ『流石はわがSOS団の名誉顧問ね!!ううん、貴女には名誉顧問なんて肩書きは生ぬるいわ!!永世最高名誉顧問に任命します!!』 鶴屋『ハルにゃん、ありがとっ!!』 長門『』シュッシュッ 朝倉『どうしたの、長門さん?』 長門『次に呼ばれる不届き者を抹殺するための特訓。まさか情報統合思念体はそのような不届き者は抱え込んでいないと思われるが、例え抱え込んでいたとしても大丈夫。その場でスタッフがおいしくいただきました』 朝倉『ぴいっ!』 森「やっぱり恐ろしいぞ!」 藤原「さて気になる点数は……これだ!!」 キョン「10点です」 古泉「10点です」 谷口「10点です」 国木田「9点です」 合計39点 新川「一見完璧を思われた高評価に国木田氏が待ったをかけた!!その理由は!?」 キョン「国木田……?どうしてお前が9点なんだ?」 国木田「違うんだよキョン……確かにあの人は天才だ。でもね……まだ高みに昇る事ができる天才なんだ」 国木田「今彼女は天才の中の頂上にいるんだ。でも、まだだ。あの人ならまだそこから新しい頂上を積み上げて作っていくことができるんだ……そして、頂上の頂上まであの人が行き着いたとき……そのときに僕は10点を付けたいんだ」 谷口「国木田……」 古泉「国木田くん……」 キョン「ものさしが……違うんだな」 国木田「……そういうこと」 鶴屋『決めた。わたし国木田くんと結婚するよっ』 みくる『ちょ、そんないきなり』 鶴屋『わはは、冗談さっ……でも、そんな風にみてくれてる人がいるって、凄く大切なことだよねっ!!』 朝倉(どうしよう、なんか……とてもじゃないけど言い表せないエラーがどんどん湧き出てきてる) 森「あまり評価が高すぎるのも考え物だぞ!」 新川「そして遂に第一位!!朝倉涼子さんだ!!!」 藤原「さて、美食家アカデミーたちの反応は?」 キョン「なんてこった…………」 古泉「この眉毛………そしてこの眉毛……」 谷口「そしてこの健康的な太もも……」 国木田「鶴屋さんとはまた違う美しさがここにある……」 キョン「……なんだろう、二回刺されたのがなんだか光栄に思えてきた」 古泉「機関の見解は大きく間違っていました……彼女こそ、真の神です。それ以外にありえません」 谷口「AAランク+なんてヤワなもんじゃねえ……こいつは、いや、このお方はAAAAAランクだ!!」 国木田「うん!非のうちどころがないよ!」 藤原「さて、点数は!!」 キョン「10点です」 古泉「10点です」 谷口「10点です」 国木田「10点です」 合計40点 新川「満点だああああ!!!本日最初の満点に女性陣の反応は!?」 ハルヒ『朝倉!!アンタ凄いわ!!本日をもってアンタをSOS団副団長に任命します!!』 朝倉『あ、ありがとう!……あれ?でも古泉くんは?』 ハルヒ『ああ……古泉くんは 13の時点でキョンの前任ポストの雑用係に降格よ』 みくる『前任……?あのぅ、キョンくんは?』 ハルヒ『奴隷に降格』 朝倉(ひどっ) 朝倉『……ていうか長門さん』 長門『なに』 朝倉『どさくさに紛れて眉毛剃ろうとするの止めてちょうだい』 長門『そう』 鶴屋『まあ何はともあれおめでとう!!』 一同『おめでとう!!(なのね)』 朝倉『うう……ありがとう!!』グスッ 森「というわけで、ランキングは以上のものとなったぞ!」 機関予想 結果 一位 涼宮ハルヒ |一位 朝倉涼子 ↑ | 二位 朝比奈みくる |二位 鶴屋さん ↑ | 三位 長門有希 |三位 長門有希 → | 四位 鶴屋さん |四位 喜緑江美里 ↑ | 五位 喜緑江美里 |五位 朝比奈みくる ↓ | 六位 朝倉涼子 |六位 涼宮ハルヒ ↓ | 七位 阪中 |七位 阪中 → シャミセン「というわけで、藤原チームの勝利ー!!!」 藤原「ふんっ当然だ」 佐々木「そういえば藤原君司会だからそりゃ当たるよね」 橘「ズルなのです!!」 九曜「―――――――ズル」 藤原「俺、泣いてもいいかな?」 森「次回の涼宮ハルヒのお願い!ランキングは!」 新川「一番強い組織をしりたーい!!」 藤原「というわけで、皆さま、また来週!!」 ~この番組は明日を守る●<ふんもっふ! 機関の提供でお送りしました~ <後日談> ~数日後~ ハルヒ「キョン!!これ焼却炉に捨ててきて!!」 キョン「へいへいただいま」 長門「古泉一樹」 古泉「はい、なんでしょう」 長門「このへんの空気が悪い。恐らく肩が凝っているせいだと思われる。早くこの辺の空気の肩を揉むことを推奨……いや、命令する」 古泉「いや……空気に肩はないかと」 長門「逆らう気?」 古泉「めっそうもございません閣下」モミモミ 長門「……なぜ空中で手を動かしているの?あなたのような変態は即刻立ち去るべき」 古泉「……了解しました」 朝倉「なるほど。こうやってお茶っ葉を蒸らすのね」 みくる「そうですよ……うまくなってきましたね」 ~部室の外~ 古泉「……しくしく」 キョン「お、どうしたんだ古泉……またアレか?」 古泉「そうですう……めそめそ」 キョン「そうか……それはそうと、国木田と鶴屋さん、付き合い始めたらしいな」 古泉「そうなんですか?それはおめでたいですね」 キョン「……お互い親友どうし、この辛い状況を乗り切っていこうぜ」 古泉「………はい!!」 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2793.html
「明日からの不思議探索だけどさ、中止にしたから」 は? 「ちょっとね……あたしが参加できなくなっちゃったから」 ほほう。 「だから、また来週に延期するわ」 なるほどなるほど。 「ごめん……」 ブツッ――ツーツーツー…… 本日は金曜の夜で、明日からは楽しい楽しい週末が始まる。当然土日併せて2連休だ。 もちろん、そんなチャンスを我らがSOS団団長殿が見逃すはずもなく、いつもの不思議探検と言う名のSOS団お遊びツアーが 開催するべくハルヒは何やら悪巧みをしていたようだったが、それを自ら中止するとはどういう風の吹き回しだ? 念のために古泉や朝比奈さんに連絡してみるが、やはり困惑の返事が返ってきた。 ま、あの一度やると決めたらまっすぐ一直線の団長様だ。土壇場でやっぱやめなんて今まで一度もなかったし、 あるとも思っていなかったら、無理もない話だが、緊急事態として臨戦態勢に入ると断言する古泉は大げさすぎやしないか? ちなみに長門はいつものどおり、そうとだけ言って変化を見せなかった。姿を見れればある程度何を考えているのかわかるが、 あいにく声だけでは長門のボディーランゲージによる感情発信をキャッチすることはできないからな。 そんなこんなで週末を迎える。 多分、俺の人生の中でも屈指に入るだろう、壮絶に多忙な二日間の始まりだった。 ◇◇◇◇ そんなわけで週末完全フリーになった俺だったが、家で寝て過ごすのももったいないと思い、 一人で街に繰り出すことにした。せっかくの団長様からのプレゼントだ。有意義に使わせてもらった方がいい。 今の内に、買っておきたい本や服もあるからな。 休日景気でごった返す路地を歩いていた俺だったが、どうも落ち着きがない自分に気がつく。 いつもいつもあの変わり者集団に囲まれていたせいか、一人で歩いていても、ちょっと大きな声が耳に届くと、 前からハルヒの命令口調の怒鳴り声が飛んできたと身体が誤動作を起こしてしまったり、黙って歩いていると、 隣から古泉がどうでもいいうさんくさい説明を始めて来るんじゃないかと変な心構えができてしまっていたり、 背後を振り返っても長門がいないことに違和感を憶え、超絶プリティな朝比奈さんの私服姿が俺の隣にいないことへの 理不尽さに腹を立てる。 「やれやれ」 俺の口からいつもの言葉が飛び出た。気がつかないうちに、俺の身体はSOS団の一部として完全にできあがってしまったらしい まるで禁煙中の禁断症状ではないか。そんなそわそわ状態に、俺は諦めて家に帰ろうかと思った瞬間だった。 「ん……?」 現在、俺は繁華街の中心部近くにある交差点で信号待ちをしていた。だが、その対向にある歩道を俺から離れるように 動いていく4人組の集団が目にとまる。 ……俺は視力はそんなに悪くないし、あの集団を見間違えるわけもない。ハルヒ・長門・朝比奈さん・古泉のSOS団-俺だ。 だが、どうしてあの4人がここにいる? そもそも不思議探索ツアーはハルヒの奴が一方的に中止を宣言したじゃないか。 その後、やっぱやる宣言の連絡は俺の携帯には届いていないし、他3名からも同様の話は来ていない。 なのに、どうしてあの4人が群れをなして街を歩いている? ホワーイ? ――ツンツン。 待てよ? 急遽再開が決まって集まったが、未だに俺に連絡が取れていないってことか? しかし、俺の携帯は電池切れにもなっていないし、電波状態は極めて良好だ。向こうからかければ確実に着信できるだろう。 ――チョンチョン。 もしかして……俺はハブられているのか? 俺なんていなくなっても、他の3人がいればいいとハルヒは思ったのか!? そんな……そんなどうして今更になって!? ――ちょっと聞いているの? くそっ……一体俺に何の不満があったってんだ。確かに、俺は宇宙人でも未来人でも超能力者なかったさ。 だがな、これでも凡人としてはMVPに選ばれるほどの働きを見せてきたはずだ。それをここにきて切り捨てるとは あんまりじゃないか。 ――どうかしたの? いや待てよ? もしかしたら、今までもこういう事はあったのかも知れない。俺だけほっぽいて4人だけで集まるというのは 結構あったんじゃないだろうな? それで……ってさっきから誰だ、俺の服を引っ張っているのは。 俺はさっきから接触してくる背後の人物へ振り返る。そこにはハルヒがいた。 「……なんだハルヒか。すまないが、今はお前に構っている暇じゃないんだ。俺は今おまえに――」 そこまで言って気がついた。俺は今誰と話している? 「何よ悩みごと? 考えるのは結構だけど、こんな人混みの中でぼーっと立っていたら変人扱いされるわよ?」 目の前で俺を諭すように言っているのは、当然ながら私服姿のSOS団団長涼宮ハルヒである。 「…………」 三点リーダ四連発な沈黙をしてしまう俺だったが、これに関しては全俺が俺に対して拍手喝采しておきたい。 なぜなら、普段ならここで「うお!」「は、ハルヒぃ!?」という間の抜けた声を上げてしまっただろうしな。 万一、そんな驚嘆を上げてしまえば、事態収拾が極めて困難なものになっただろう。 俺は必死に異常活発している心臓の鼓動を押さえにかかる。目の前のハルヒに悟られないように口の中で 数回の深呼吸を行った。 よし――もう大丈夫だな。 俺は転んでもいないのに、前進にまとわりつく違和感を払いたいのか、つい服のほこりをはたくような仕草をしながら、 「何だ、ハルヒか。驚かせるなよ」 「驚いたのはこっちの方よ。こんな路上の真ん中でなにぼーっとしてんの?」 見れば、気がつかない間に俺は横断歩道の中に足を踏み入れていた。歩行者用信号はすでに青点滅を始めており、 あと30秒も立ては俺のすぐ隣に停車している乗用車どもから激しいクラクション攻撃を仕掛けられていただろう。 俺なしSOS団の存在を確認しようと、つい身を乗り出してしまっていたらしい。 「ほらっ! こんなところにいたら轢かれるわよ。とっとと歩道まで戻りなさい」 そうハルヒは俺の腕を取ると、強引に歩道に向かって歩き出した。俺はそれに抵抗せずに黙って歩いていったが、 ハルヒの視線がこっちを向いていない隙にSOS団俺なしバージョンの姿を確認する。 幸い――幸いなことなんだろうな。とりあえず、あのもう一人のハルヒの姿はすでに人混みの中に消えてしまっていた。 そうなると、今俺の視界内にいるのは、俺の腕を引っ張っているハルヒだけとなる。 もう理解できるだろうが、ようは今俺はハルヒを二人目撃したって言うことだ。しかも、服装に違いはあれど、 顔から体型までそっくりそのままの二人をだ。 ………… ………… ………… やれやれだ。こいつは面倒なことになってきたようだぞ。 「んで、何でおまえがここにいるんだ? 不思議探索を中止にしたぐらいだからてっきり急用でも入ったのかと思ったぞ」 「……不思議探検を中止? あたし、そんなことを言った憶えないけど。そもそも今週やる予定もなかったはずよ?」 俺の問いかけに、ハルヒは予想外の答えを返してきた。なんだなんだ? あれだけ張り切って何をしようかと 黒板に向かって熱弁を振るっていたのはお前じゃないか。それを知らないとは何を言ってやがる。 だが、ハルヒがそんな嘘を言って何の得があるというのか。大体、このバカ正直路線まっしぐらな奴が あからさまな嘘をつくわけがない。 ……これは合わせておいた方がいいかもしれん。 俺は額に手を当てて、考える素振りをしてから、 「ああ、すまん。それは先週の話だったな」 「全くその歳で物忘れが激しいなんて危ないわよ? 勉強でも何でもしてたまには頭の方も活性化させて起きなさい」 えらい言われようだが、ここは我慢だ。目や顔つきを見る限り、俺の目の前にいるハルヒは不思議探索の中止を知らないと 見ていいだろう。この場合は逆にその事実を知られる方がまずい。 ってなわけで、とりあえずこのハルヒをあのハルヒ――ええいややこしい、ここにいるのは一人でいるからハルヒ(少女)で 向こうはSOS団-俺のところにいるからハルヒ(団長)と呼ぶようにする。 とにかく、このハルヒ(少女)を少しでもハルヒ(団長)から離れたところに連れて行かなければならない。 それもこのシックスセンスどころか、サウザントセンスぐらいありそうなハルヒ(少女)に悟られることなくだ。 平凡で退屈な週末が、いきなり核ミサイル搭載巨大機動兵器機動阻止クラスの特Aランク任務になったぞ。 よし、まずは何かいいわけを…… 「まあいいわ! ここであったが100年目よ! せっかくだからあたしの買い物につきあってもらうからね!」 「ちょっと待て! 俺にも用事が……」 「何よ! 団長命令よ! ほらほらとっととついてきなさいっ!」 そう言ってハルヒ(少女)は強引に俺の襟首をつかんで歩き始めた。それもハルヒ(団長)が去っていった方にである。 「待てハルヒ! そっちは……!」 「まずはあたしの用事を済ませるわっ! 安心しなさい。その後にあんたの予定にもちゃんと付き合ってあげるから」 もの凄い力で引きずるもんだから、抵抗もできやしねえ。 ここにきて一瞬、目の前にいるハルヒ(少女)は偽物なんじゃないかという疑念が生まれる……というか今更だな。 だが、今更そんな考えが浮かんだというのも、ハルヒ(少女)の身振りを見ても全く偽物には見えないという証明だろう。 同様にもう一人のハルヒ(団長)も偽物だと思えない。SOS団メンバーが偽物を見破れないわけがないからな。 仮に超宇宙的パワーで偽装しても、長門までだませるとは思わない。 結局、俺はハルヒ(少女)の行きたいところについて行くことにした。とにかく、ハルヒ(団長)とこいつを接触どころか ニアミスすらさせるわけにいかねえ。どうせろくでもないことになるに決まっている。俺が何とかするしかない。 ふと、脳裏にこんなことが過ぎる。 誰のためにせっかくの休日をそんな面倒なことに費やすんだ? ……答えは簡単さ。他でもない、ハルヒのため、俺たちSOS団のためだ。 ◇◇◇◇ まずハルヒ(少女)に連れ込まれたのは、大型のショッピングセンターだった。 その一角のコーナーで何やら買い物をあさっている。だが、ここまで連れてきたのにどういうわけだか、 俺は非常階段前で待機させられていた。おいおい、これじゃ何で俺を連れてきたのかわからんぞ。 「おっまたせー!」 ハルヒ(少女)はようやく買い物を済ませると、俺の元に戻ってきた。でかい上に厳重に密封された紙袋を抱えて。 「で、一体何を買ってきたんだ?」 「ふふん、秘密よひーみーつっ!」 そんなハルヒの(少女)笑顔は白い歯を見せて、超新星爆発クラスの輝きを放っている。 こりゃまたろくでもないことを思いついたな。ただ紙袋の大きさを見る限り、服か何かだと思われる。 そうなると朝比奈さんの新コスプレかもしれない。それなら俺も大歓迎――いや、朝比奈さんの意思を優先させて善処した考えに 達するものと申し上げておこう。 そのまま俺たちは階段を下り――当然荷物は俺が持たされる形で、ショッピングセンターから出る。 「次はどこに行くんだ? 言っておくがあまり金の持ち合わせがないから、やれることは限られているぞ」 「そうねぇ……」 ハルヒ(少女)はあごに手を当てて考え始めた。これはチャンスか? 今なら俺の要望をうまく呑ませて、 ハルヒ(団長)から離れた場所に誘導できるかも知れん。 「なあハルヒ。とくに行く当てがないなら、俺の用事を済ませたいんだが」 「用事って何よ?」 俺は深く突っ込まれて、一瞬言葉に詰まってしまうが、 「えーあー、そう――勉強、参考書を買いにここにまできていたんだよ。買っていかないとオフクロに怒られちまう」 「参考書? あんたが? ふーん、へー」 おいなんだその疑惑に満ちた視線は。俺だって勉強するときはするさ。今日は買いに来たつもりはなかったが、 最近オフクロからのプレッシャーが厳しくなってきたんで、そのかわし先として利用するのも悪くない。 ……べっべつに勉強したくないって訳じゃないんだからな! 「なにぶつぶついってんのよ。仕方ないわね。じゃあ、ちょっと離れたところに大きい書店があるから行きましょ。 この団長様がきっかりといい奴を選んであげるから、まっかせなさい」 お前に選ばせたら、変わりにUFO本や怪奇本でも買わされそうだ。 俺の危惧も無視して、ハルヒ(少女)は悠々と歩き始めた。俺はそれについて行きながら、周囲に警戒心を配る。 ハルヒ(団長)ならず、長門・朝比奈さん・古泉の姿を発見次第、すぐにルート変更を試みなければならないからな。 そんな状態を続けつつ、500メートルほど歩いた辺りで、 「ちょっと、さっきからなにきょろきょろしてんのよ」 ハルヒ(少女)が振り返って言ってきた。 なんて奴だ。さっきから俺はハルヒ(少女)のわずか後方を歩いていたので、振り返らないと俺の表情なんて わからなかったはずだ。だが、一度も振り返らずに、気配だけで俺の警戒心を悟るとは、聖人かこいつは。 「いや、あの――」 言葉に詰まってしまったせいで、俺はとんでもない失態を犯す。 「古泉たちがいたりしないか――なんて……」 言ってから気がつく。なんてやばいごまかし方をしちまったんだ。この流れではハルヒ(少女)が 古泉たちを呼ぶべく電話をかけるに違いない。そして、どうにかして接触しようとするだろう。 だが、向こうにはハルヒ(団長)がいる。ましてや、ハルヒが二人いるという状態を古泉たちが察知していなければ、 向こうも不自然な反応を示すだろう。それを見逃すハルヒ(団長)ではない。 だが、ハルヒ(少女)は、 「ふーん。あんたも古泉くんたちがいた方がいいの? でもせっかくの休日なんだから、見かけても邪魔しちゃダメよ」 ……これは予想外だった。てっきりハルヒのことだから、俺にあった時点で不思議探索をするわよっ! 全員集合! とかいう気分になりそうなものだと思っていたが。 だが。 よくよく考えてみれば、ハルヒは何かをやる――特に外出の場合は、事前に予定を立てた上で必ず告知している。 告知の仕方には大いに問題はあるが、それをやらずにいきなり休日に呼び出したりしたことはなかったはずだ。 そう言った意味ではハルヒ(少女)の返答には違和感はないと判断できるな。 しかし、ハルヒ(少女)は別の事を思いついたらしく、ぽんと手を叩くと、 「言われてみれば、今日あんたとあたしが出会う確率なんて皆無に等しかったのよね。 でも、お互い予定も知らなかったのに、ばったりとこんな人がごったがえす場所で遭遇できた。 これはすごいことだと思わない!? 確率だけで言えば、天文学的なものになるはずよ! ふふん、今日は何かあるわね! きっと宇宙人とかがあたしに接触を試みようとしているに違いないわ! よし決めた! 今日はあんたと二人で不思議探索をするわよ!」 おいおい、いくらなんでも短絡的すぎるだろ。同じ地域に住んでいるんだから、ばったり会ったって不思議はないと思うが。 「バカね! いい? この地域でこの人口密度で偶然会うなんて考えられないわ! これは絶対に何かある。 待ってなさい! 絶対に不思議なものたちからの接触を取り逃がしたりしないんだから!」 俺の参考書探しはどうするんだよ? 「あとよ、あとで! 今は一分一秒も逃せないわ。とにかく行くわよっ!」 そう言って、ハルヒ(少女)はまた俺の腕をつかんで歩き出した。やれやれ、行動力はいつもの通りだな。 二人に分裂しているなら、パワーも半減化してくれよ。 そのまま、また俺たちは繁華街の中心に向かって歩き始めたが―― ――右側を見て。 突如、俺の頭に長門の声が響いた。俺は反射的に首がそちらへ向く。 右手にはビルや商店が建ち並んでいるが、俺のいたのはちょうどその隙間のあるところだった。 人一人が歩けるぐらいの細い隙間だったが、障害物などは全くないために建物の向こう側の道路が見えた。 そして、そこに一人の影が通る。 「…………!」 俺は叫び声をぎりぎりで押さえ込んだ。 それはハルヒ(団長)だった。続いて、その後ろを長門が続いていく。ちらりと視線だけをこっちに向けているようなので、 さっきのは俺にニアミス寸前だと警告を発してくれたのだろう。助かるぜ、長門。 さて緊急事態発令だ。ワーニンワーニン。 まず現状を把握しよう。現在、俺とハルヒ(少女)が歩いているのに併走するようにハルヒ(団長)のSOS団俺なしがいる。 ただ併走しているだけなら、お互いの姿を確認できる確率は低いが、実は俺たちと向こうの道は、 この先数百メートルの場所のY字交差点で合流しているのだ。このままでは交差点で額をごっつんこすることになる。 向こうのハルヒ(団長)が止まってくれればいいが、こっちからではどうしようもない。 ならば、ハルヒ(少女)の歩みを止めるしかない。 ここからY字交差点まで目算200メートル。ハルヒ(少女)の歩く速度を考えれば、あと180秒で交差点までつくだろう。 俺は腕時計で現在時刻をチェックし、時間を計り始める。 方法としては、何がある? 適当な言い訳でハルヒに方向転換させるか? だが、あの意気揚々の調子じゃ 例えジュラルミン盾を持った機動隊の壁ですら押しのけて進みそうだ。 ――あと170秒。 なら、何か話して遅延させるというのは? いや無駄だ。Y字交差点の信号は切り替わるまで60秒ぐらいはかかるだろう。 そうなると、例えここで遅延工作を行っても最低でも60秒の遅延を行わなければ意味がない。 いや待て。信号越えて歩いていく間の時間も考慮しなければならない。そうなると――ああ、無理だ。 どのくらいの遅延を行わなければならないのか、想像もつかない。 ――あと150秒。 大体、ハルヒ(団長)がY字交差点で俺たちの道に向かってきたらどうするんだ? ここからでも、Y字交差点の人の姿は くっきりとは行かないものの、それなりに判別は可能だ。見覚えのある人間ならすぐにわかるだろう。 ――あと125秒。 ああ、ちくしょう。どうすりゃいい? いい手が思いつかない。いっそここで腹痛のフリでもしたら? 待て、騒ぎを聞きつけたハルヒ(団長)がやってきかねん。 ――あと110秒。 ――あと100秒。 ――あと90秒。 ――あと80秒。 ――あと70秒。 ダメだ。思いつかねえ。もう目の前にY字交差点が来ている。万事休すか!? ――あと60秒。 と、ちょうどまた建物の隙間の前を通り過ぎていたんだが、そこの壁に何か張り紙があることに気がつく。 幸いなことにここの隙間は向こう側に通じていなかったので、ハルヒ(団長)の姿はない。 ――あと50秒。 その張り紙に書かれていた内容に、俺はひらめく。これにかけるしかねえ……! 「おい待てハルヒ!」 俺は前を歩くハルヒに向かって、できるだけオーバーに声を上げて呼び止めた。 ただならぬ俺の口調に、ハルヒ(少女)は振り返りつつ、 「ちょ、何よ。そんな大きな声を上げて」 うまい具合に立ち止まってくれた。後は、ハルヒ(団長)から見えないようにこの路地にハルヒを連れ込めれば…… 「変な張り紙があるんだ。見てくれ」 「なによ?」 俺たちはそこに入り、張り紙を見る。 『右を見ろ』 張り紙に書かれていたのはこれだけだった。ちなみにこの場合の右というのは、隙間の奥の方を指している。 「見ろよ、何かすごく怪しくないか」 「…………」 俺が煽るように言うと、ハルヒ(少女)は真剣なまなざしで黙ったままじっとそれを見つめている。 ハルヒ(少女)はその張り紙を無造作に引きはがすと、それを太陽に好かしてみたりし始めた。 だが、とくに変わったところはない。 正直、早いところこの張り紙の内容に従って、奥まで行ってほしいわけだが、こんなときだけ変な慎重ぶりを発揮しないでくれ。 しかし、妙な素振りを見せるわけにも行かん。自重だ、がんばれ俺。 やがて、ハルヒ(少女)は張り紙を持ったまま、隙間の奥に向かって歩き出したので、俺はほっと胸をなで下ろした。 俺たちが行き止まりまで隙間を進むと、そこにも張り紙が。 『左を見ろ』 奥に向かって左手側を見ると数メートルぐらい進める隙間があった。 今度はハルヒはその張り紙をはがすと、左手に進む。そこにもやはり張り紙が。ついでになぜか薬局かなにかの店頭に 置かれていそうな空気で含むタイプの人形が置かれている。頭にマジックで藤パンとか書かれているが、何だ? 『上を見ろ』 「はっ、なるほどね」 ハルヒ(少女)はここで脇に手を当てて、得意げにため息を吐く。 何がなるほどなんだ? 「古い引っかけ――まあ、コメディよ、これは。古すぎてほこりをかぶっているぐらいにね」 「どういうことだ?」 ハルヒ(少女)は指を次の張り紙が貼られているであろう上の方を指しながら、 「右を見ろ、左を見ろ、上をみろ、でしょ? なら次に書かれているのは『ざまーみろ』に決まって――」 『今時そんなギャグをやるわけねーだろ、ボケェ』 俺とハルヒ(少女)が見た先にあった張り紙の内容だった。一瞬二人とも目が点になるが、 「ぬんがー!」 完全にこっちの動きを読まれたことにぶちきれたのか、それともあまりのくだらなさに憤ったのか、 ハルヒは目の前に置かれていた。空気の人形をボコスカ殴り始めた。ちょうどいいサウンドバックになっているようで なんとか百烈拳とか流星拳のようにパンチの雨あられをお見舞いしている。 ふと、俺の背後に人影があることに気がついた。恐らくこのくだらない仕掛けを作った人間だろう。 わざわざ二人のハルヒ遭遇を回避させてくれたんだ。敵であるとは思えない。 俺はパンチからスリーパーホールドに切り替えて、人形を締め上げるハルヒ(少女)に気がつかれないようにバックして、 その人物の前まで行く。 「こんにちは、森園生です」 って、森さんかよ。大きめのトレンチコート、その下にはネクタイ・スーツ、肩に掛かるぐらいの髪、 視線が見えないような濃いサングラスとまるで別人だ。何だか、ノートに向かって削除削除ゥ!と叫び出しそうな迫力がある。 男にしか見えん。 「事情は把握しています。すでにもう一人の涼宮ハルヒさんは別の場所に誘導しました」 「助かります」 俺は内心だけで大きくため息を吐いた。 森さんは続けて、 「古泉と連絡を取れるようにします。これを」 俺は森さんから透明のイヤホーンを渡された。簡単な説明によると、無線機らしく透明度が高いものなので、 ぱっと見た目では付けていないように見えるものらしい。中に何の機械も見えないが、もとはただのガラス細工で それに長門が何か仕掛けを施しているとのこと。長門様々だな。 「わたしはここで引き上げます。あとは隙を見て古泉たちと連絡を絶やさないでください」 森さんはそう俺に告げると、外に出て行った。 俺はすぐにイヤホンを耳に装着すると、古泉の声が聞こえてきた。 『聞こえますか? 聞こえたなら、小さな声でいいので答えてください』 (ああ、聞こえるぞ) 俺は目の前に立っている相手にも聞こえないような小声で返答する。 『よかった。とりあえず、このままにしておきます。あと、涼宮さんの現状についてはこちらでも把握しています。 何とか二人を接触させないように努力していますので、そちらもお願いします』 (了解だ。そろそろハルヒも平常心を取り戻すだろうから、話はまた後でな) 『わかりました』 とりあえず、向こう側とこっちの意思疎通はできたって訳だ。それだけでも大進歩だな。 俺はまだボカスカ暴れているハルヒを止めにかかる。 「おいハルヒ、いい加減にしておけ」 「まったくもう! 誰よ、こんなくだらない仕掛けしたのは!」 ぜいぜいと息を切らせながら、ハルヒ(少女)は最後の一発と言わんばかりに空気人形の額にデコピンをかます。 「で、さっきのは誰?」 「は?」 ハルヒ(少女)の指摘に俺は思わず間の抜けた声を上げてしまう。頭に血を上らせていたってのに、ちゃんと俺と森さんの接触を 確認していたんかい。 俺はすぐに、 「ああ、さっきの人か。おまえが奇声を上げて暴れていたいたから、見に来たんだよ。事件でもあったのかって」 「ふーん」 ハルヒ(少女)は、暴れた際に吐いたほこりを落とすように、ぱんぱんと服を叩くと、 「あーもう、下らないことで時間を喰っちゃったわ! すぐに行くわよ、時間ないんだから!」 そう言って俺たちは路地から出た。 ◇◇◇◇ 俺たちは通行量の多い道路の歩道を歩く。ハルヒはあちこちきょろきょろしながら、あいつの望むものを探していた。 一方でニアミスが近くなれば、古泉の方から連絡があるはずだから、さっきに比べれば気が楽になっていた。 おかげで余裕ができたせいか、腹が減っていたことに気がつくぐらいだ。 が。 『ちょっとまずいことになりました』 突然古泉の声が耳元で響いた。 (何かあったのか?) 『油断しました。どうやらどこかでそちらとニアミスしていたようです』 (なんだと!?) 『ですが、涼宮さんの姿を確認したわけではないようです。こちらの涼宮さんがあなたの姿を見たと』 (別にそのくらいなら大丈夫だろ。何とかごまかして……) 『それも女の子と一緒に歩いているところを見たと言っていまして』 俺の身体から一気に血の気が引いた。最悪ではないだろう。もう一人のハルヒ(少女)の存在に気がついたわけではないんだから だがはっきり言おう。俺が女連れで休日ぶらぶらしていたなんて、ハルヒ(団長・少女問わず)が聞きつけたらどうなる? ……考えたくもない事態が発生してしまったようだ。 (で、俺はどうすればいいんだ!?) 『涼宮さんの行動パターンは決まっているでしょう。すぐにあなたの携帯電話に――』 古泉の言葉が終わる前に、俺の携帯が鳴り出した。ここで着信音をマナーモードにしておいたことについては、 俺自身をほめてやりたい。おかげで、俺の前を歩くハルヒ(少女)にはそれをきがつかれなかったんだからな。 『とにかく出るしかありません。ここで納得できる理由をあなたに言わなければ、 涼宮さんは意地でもあなたを見つけ出そうとするでしょう』 ぞっとする話だ。何も知らないハルヒ(少女)を連れて、俺を追撃しているハルヒ(団長)から逃げ回る ――それもハルヒ(少女)に悟られずにだ。無理に決まっている。 (どうすりゃいいんだ!?) 古泉に返した言葉だったが、つい声量が上がってしまっていたらしい。前を歩いていたハルヒ(少女)が、 「え? 何か言った?」 と、こちらに振り返る。いかん、ごまかさなくては。 「……なんだ? 何も言ってねえぞ」 すっとぼける俺にハルヒは、じーっとジト目視線をぶつけてくる。この状態で純粋無垢な瞳を向け続けるのはきついぜ。 あと、なりっぱなしの携帯にも気がつかないでくれよ、頼むから。 数秒それが続いたが、やがてハルヒ(少女)は眉毛をつり上げて、 「全く今日のあんたは何かおかしいわよ。そわそわしているみたいだし。もっと集中して探さないと、 不思議なものたちのメッセージを見つけられないんだから。しゃきっとしなさい、しゃきっと!」 そう言ってまた俺に背を向けて歩き出した。今俺の寿命は確実に10%引きになった。労災は誰に申請すればいいんだ? 『そちらでの応答は難しいですか? そろそろ涼宮さんの忍耐力が臨界に達しそうなんですが』 (出れたらとっくに出ているさ。そっちのハルヒを少しでもなだめてくれ。こっちも何とかする) 俺は一旦通信を終了して、考え始める。 今俺がやるべき事は目の前にいるハルヒ(少女)の気づかれない状態で、ハルヒ(団長)と携帯電話で話すことだ。 さっきより難関だぞ。ハルヒの目の前で電話するという手段はないこともないが、その場合俺の話し相手がハルヒ(団長)で あることを悟られないようにする必要がある。いや、それだけじゃない。俺が話してもハルヒがさして興味を見せない相手と 電話しているように振る舞わなければならない。だが、相手もハルヒ(団長)だ。そんなオフクロと電話しているような話し方では ハルヒ(少女)はごまかせても、電話相手のハルヒ(団長)はごまかせない。 ――一旦、着信が終了したが、またすぐになり出す。古泉め、一瞬にして失敗したな。 次のプランだ。何とかハルヒ(少女)を俺の目から離れた場所に置く。姿が見えてもいい。声さえ聞こえなければ 会話内容は悟られないから、その後に勧誘電話とか妹からだったと言えばいいのだ。 問題はどうやってハルヒ(少女)を引き離すかだ……そう言えば、本気で腹が減ってきたな。 俺は空腹にピンと来る。厳しい――が、今はこれに賭けるしかない。 「なあハルヒ。腹減っていないか?」 「……そう言えばちょっと空いてきたかも」 そうハルヒ(少女)は自分の腹をさすって、空腹を確認した。よし第一ポイント通過。次。 「じゃあ、その辺りのファーストフードにでも入らないか?」 「でも、そんなことをやっている場合はないわよ。善は急げっていうでしょ? 不思議なことが逃げちゃうじゃない」 「だが、急がば回れとも言うぞ。それに腹が減っても戦はできぬともな。俺はもう腹がぺこぺこなんだよ」 ハルヒ(少女)はあごに手を当てて考え始める。ファイナルアンサー後のようなプレッシャーの中、 知らぬ間に浮かんでいた額の汗を俺はぬぐった。 やがてハルヒ(少女)はほうっとため息を吐くと、 「仕方ないわね。じゃ、どこかで腹ごしらえしましょ。あんま時間内から簡単なところですませるわよ」 そういって手近な店に向かって歩き出した。よし、第2ポイント通過。 ここで、店に入ってトイレに行くフリをすればいいという人もいるだろうが、それは甘い。 トイレのような密室空間に入ると、ハルヒ(少女)の動きがわからなくなるため、どこで聞かれているかわからないという 不安がつきまとう。さらに休日の昼時という状態のため、どこも店は混雑気味だ。トイレの待ち行列ができていた場合、 それを待たずにハルヒ(団長)の堪忍袋が切れるだろうな。 だからこその第3ポイントだ。ハルヒ(少女)が俺から見える位置で、なおかつ声の聞こえないほどの距離を取る方法。 それはすぐ目の前にある銀行のATMが鍵となる。 俺はポケットから財布を取り出すと、財布の中をのぞき、 「あ、すまんハルヒ。俺、金が足りねえ」 「は? バッカじゃないの。そんなからっぽの財布で街に出てきていたわけ?」 「家できちんと確認したつもりだったんだけどな……」 できるだけ困ったような表情を俺は取り繕う。いいか、冷静に行けよ、俺。焦ることはない。慎重にだ。 「で、どうする気? お金ないんじゃ、ご飯も食べられないわよ」 「すまんハルヒ! ちょっとだけ金かしてくれないか?」 大げさにハルヒ(少女)の前で手を合わせる。すぐ隣には銀行のATMコーナー。頼むよハルヒ(少女)。 たまには俺の望んだとおりに動いてくれ。 ハルヒ(少女)は想定外の頼み事をぶつけられたせいか、珍しくあわて気味に財布の中身を確認し出す。 すると、険しい表情で、 「そうは言っても、今日はあたしもあんまり……仕方ないわね。ちょっと降ろしてくるから、そこで待っていなさい」 そう言ってハルヒ(少女)は銀行のATMコーナーに入っていった。 よっしゃ! 完璧と言っていいほどにオールグリーンだ! あとはこっちのハルヒ(団長)を何とかして、 『くぉらぁ! キョン、何で電話に出ないのよっ! 団長をこんなに待たせるなんていい読経しているわねっ!』 臨界点突破寸前のハルヒ(団長)のすさまじい怒声が、俺の耳どころか周辺に飛び散った。 その音量に周りの人たちの視線が俺の方に一斉に集まる。 目立つわけにも行かないので、俺はATMの操作中のハルヒ(少女)の姿を確認しつつ、物陰に入る。 「いや、すまん。いろいろ取り込んでいてな……」 『取り込み中? 一緒にいた女の子と? えーえー、理由はちゃぁぁぁぁぁぁんと聞いてあげるから言いなさい。 しっかりと脳に刻み込むまで聞いてあげるから』 何がそんなに不満だというのか。別に休日に女の子と二人っきりで歩くってのは、世界各国独り身男子のあこがれだぞ。 と、ここでATMにいたハルヒ(少女)が操作を終えたようで、金を取り出しているのが目に入る。 いかん、よく考えてみれば自動が売りのATMにそんな時間がかかるわけがない。とっととハルヒ(団長)を納得させなければ…… 俺は必死に考えるが、迫るハルヒ(少女)と迫ってくるハルヒ(団長)のプレッシャーで思考回路がショート寸前だ。 ええい、なるようになれ! 「すまんハルヒ。とりあえず、誰かと会っていた訳じゃないんだ」 『じゃあ、あのすぐ隣で話していた女は誰よ?』 「えーとだな。事情を説明するとややこしくなるんだが……」 『話してみなさいよ』 視線はなくても、声だけでなんつー迫力だ。並の人間なら聞いただけで泣いて謝りかねない。普段からハルヒ眼力に 慣れていてよかったよ。 「あー、商店街を歩いていたら、突然羽の生えたような格好の女の子がぶつかってきてな。 そいつが俺の手を引いて走り始めたんだよ。何があったのか聞いてみれば、何と露天の鯛焼きを盗んできたんだと。 何で俺がそんなことに巻き込まれなきゃならんのかと思いつつも、放っておく訳にもいかないから、 手近な喫茶店に身を隠そうとしていたんだ」 ……なにも考えずにいったら、寄りにもよってとんでもない言い訳が飛び出してしまった。何を考えているんだ、俺の口。 当然ハルヒは、全く信じられないという口調で、 「はあ? あんた何いってんの。そんなの信じられるわけないじゃない。大体それって――」 ここでハルヒ(団長)は息を呑んだような声を上げると、 「はっ!? そうか! ツッコミね! ツッコミを待っているのね! そうはいかないわ、絶対にツッコんであげないんだから!」 ブツッ――ツーツーツー…… ………… ………… 何だかわからんが、変な対抗心を出してくれたらしい。そこで電話を切ってしまった。 とりあえず……乗り切ったのか? これでいいのか? 「だれと電話してたのよ」 突然、ハルヒ(少女)の声が飛んできたので、内心でうおわっと叫んだ。それでも口に出さないんだから、大したモンだぜ俺! 俺は携帯電話をしまいつつ、 「妹からだよ。ちょっといろいろあってな」 「そう」 幸いなことにハルヒはそれ以上追求することなく、ファーストフード店に向かい始めた。 やれやれ。最大の山場を越えられたようだ。 ◇◇◇◇ その後、俺とハルヒ(少女)はいつも通りに不思議探索ツアーを実施した。 公園、路地裏、排水溝とそれはもういろんなところに行ったね。ハルヒ(少女)の気まぐれで途中から古い古本屋めぐりになり、 次は怪しげな中古なんでもショップツアーとなった。 そういや、ハルヒと二人でこんなに歩き回ったのはずいぶん久しぶりだな。別にデートとかではないが、 それなりに楽しかったよ。時間を忘れるほどに。 ただ、やっぱり他の連中もいないと少々物足りなかったのも事実だったが。 その後、ハルヒ(団長)から電話がかかってくることはなかった。気になったので古泉に確認を取ってみたところ、 もうかけることはないから大丈夫とだけ言われた。ニアミスも機関のこちらの追跡体勢が整ったため、もう起きることはないとも。 ま、いろいろやってくれているみたいだから、感謝しておこうか。 ところで、ハルヒ(少女)から出任せで借りる羽目になった万札だが、トイチだと法律違反の利子を付けられたことを 記しておく。この領収書はどこに渡せばいいんだ? ◇◇◇◇ そんなこんなで日が傾きある時間になった。これで俺の超高度任務は終わりって事になる。 俺たちは帰路につくべく、駅に向かって歩いていた。 が、しかし、事態はそんなに単純ではなかったことに、古泉からの連絡で気がつかされる。 (こっちは終わったぞ。今駅に向かっている) 『ちょっと待ってください。そのまま涼宮さんを帰らせるつもりではないでしょうね?』 (そのつもりだが、何か問題でもあるのか?) 『いいですか? 今涼宮さんは二人いるんですよ? このまま家に帰らせたらどうなると思います?』 またまた俺の全身から血の気が引く。まずい、すっかりこの街内だけの話として捉えていたが、 事態が解決した訳じゃなかったんだ。このままハルヒ(団長・少女)を帰らせれば、当然家で遭遇と言うことになってしまう。 だが、どうしようもねえぞ。まさか帰らせないわけにもいかん。 そんな俺に古泉が浴びせてきた言葉は、もう冷酷非道以外の何物でなかった。 『その通りですよ。涼宮さんを家に帰らせるわけには行きません。どうにかして、この街でとどまらせる必要があります』 (無茶を言うな。そんな手があるとは思わねえぞ) 『あります。一つだけ』 ……いやな予感がするが言ってみろ。 『あなたとそちらの涼宮さんでホテルに泊まればいいんですよ。安心してください。そこそこの部屋を機関の方で用意しています』 待てい。一体どんな思考パターンを介せば、そんな結論にたどり着くんだ? どんな理由でハルヒを篭絡しろっていうのか。 無理に決まっている。却下だ却下! 『ですが、他に方法はありません』 (例えば、お前の方のハルヒを誘ってどこか合宿にでも行けばいいだろ。ちょっと怪しげなシチュエーションの館でも用意すれば、 ホイホイと乗り気になるだろうよ) 『機関の組織力が高いと言っても、涼宮さんの望む舞台を数十分で用意するのは無理です。 さっきも言いましたが、あなたが涼宮さんをホテルに連れ込むという方法しかないんですよ。 そして、こちらの涼宮さんには家に帰ってもらいます』 連れ込むとか言うな。 『失礼しました。しかし、機関の頭脳を全て費やして出せた回避方法はそれだけです』 (……だが、どうやればいいのかわからんし、ハルヒが了承すると思えん) 『大丈夫だと思いますよ。涼宮さんは団員――特にあなたについてはきっちり世話をするタイプです。 冬の一件の時、涼宮さんは寝袋を持ち込んで病室に泊まっていたことを憶えていますよね?』 (あれは事故の結果だろ) 『その事故と同じレベルの理由を涼宮さんにぶつければいいんですよ』 (……それを俺に考えろと?) 『ええ』 他人事だと思って簡単に言ってくれるな、古泉の野郎は。 しかし、他に理由がないというのも事実かも知れない。 そして、何よりこのままハルヒ(少女)を家に帰したくない――というか、ハルヒ(団長)と遭遇させたくないのは、 れっきとした俺の本心だ。 それを避けるためなら―― 「ハルヒ」 俺はふんぎりを付けて、ハルヒ(少女)に声をかける。事情を知らないハルヒは不思議そうな顔をこっちに向けてくる。 ………… ………… ………… そのまま、二人の間に沈黙が流れた。俺がなかなか口を動かせない間、ハルヒはじっと無表情で俺を見つめていた。 ええい! 時間をかけるとますます言えなくなりそうだ。なるようになれ、強行突破! 「ハルヒ。今日はお前を家には帰さない」 「は?」 俺の言葉にハルヒ(少女)は目を白黒させる。だが、そんな表情をいちいち見ている余裕はない。 「しばらく二人っきりになりたいんだ。ホテルを取ってある。さあ行こう」 「はあ!?」 そう言って、俺はハルヒ(少女)の手をつかんで、歩き出した。 なんで~どうして~俺がこんな事を~♪ 思わず自作の歌を歌いたくなる心境だ。 ……ただ、どういう訳だかハルヒは積極的ではないにしろ、俺の手を拒絶するようなことはなかった。 ◇◇◇◇ 「キョン……これは一体どういうことなのか説明してもらいましょうか……!?」 ハルヒ(少女)が俺に青ざめた顔を向けてきた。ちなみに俺の顔は真っ赤っかである。当然、怒りによってだ。 俺は少しハルヒ(少女)から離れて古泉に抗議しようと思ったが、さきに動いたのはハルヒ(少女)の方だった。 「あ・ん・たねぇぇぇぇぇぇ! きっと深い事情があるだと思って黙ってついてきたけど、こんな――こんな!」 そうわめきながら、俺を強烈に締め上げ始める。 全身が悲鳴を上げて痛みに意識が飛びそうになるが、俺はぎりぎりで保っていた。古泉をぶん殴るまでは 死んでも死にきれんからな! 不幸中の幸いと言えばいいのだろうか。ハルヒ(少女)は激怒のあまり大声でわめいているせいで、 俺が古泉と通信してもその耳に届くことはないだろう。 『何かありましたか?』 (ああ、お前をぶん殴るという重要な用事ができた) 『……よかれと思ってやったんですが……』 本気で言っているのなら、マジで半殺しの刑だ。 古泉の指示に従ってやってきたホテルは、中クラスと言ったものだったが、問題は確保されていた部屋だ。 入ってみてびっくり仰天、ベッドが一つしかないのである。 (ふざけんな。いくら何でも冗談にもほどがあるんだよ!) 『いっそのこと、そこで添い遂げていただければ、一気に事態解決するのではないかと踏んだんですが』 (何でも良いから、とっとと適当な理由をでっちあげて、別の部屋を用意しろ! もちろんベッドは二つでな!) ◇◇◇◇ そんなこんなで、ホテル側のミスという形で片づけられ、俺たちはベッドの二つある部屋に案内された。 しかし、やはりハルヒ(少女)は俺から数メートルの距離を維持していて、警戒心バリバリである。 幸い、部屋には素直に入ってくれたが。 「で、これは一体どういう事なのか、きちんと説明してくれるわよね。ここまで黙ってついてきてあげたんだから。 本当に下らない理由だったはあんたをぶん殴ってすぐ帰るわよ」 「…………」 ハルヒはベッドの上であぐらをかいて俺への追求を始めてきた。当然ながら、俺の返答は詰まってしまう。 本当のことなんて言えるわけないし、かといってハルヒ(少女)をこんなところに連れ込むような適切な理由は さっぱり思いつかん。まさか、若い男子の青春的理由なんてぶつけたら、半殺しにされたあげく帰ってしまうだろう。 「……すまないが言えないんだ」 俺の結論はこれだった。自分の気持ちを正直言う。つまり本当の理由は言えない。これが偽ることのない俺の本心。 もちろんそんな理由でハルヒは引き下がるわけもない。 「納得できないわよ。そんなんじゃ」 「言えないんだ。どうしても」 もう俺はこういうしかなかった。次第にハルヒは眉毛をつり上げ始める。「帰る」という言葉が飛び出すのは時間の問題だろう。 俺はおもむろにハルヒ’少女)の肩に両手をかけ、 「理由は言えない。俺のわがままであることは確かだ。だが――すまないが――俺と一緒に……いてくれ……!」 自然と俺の言葉に力が入った。 ハルヒ(少女)を家に帰したくない。 なぜか? 世界を守るため? そんな理由じゃない。 もしも。 もしもハルヒは自分が二人になっていることに気がつけば。 一番傷つくのはハルヒ自身だと思うから。 ……俺はそれが一番いやだったから。 それが俺の嘘偽りのない、純粋まっすぐな気持ちだ。 ハルヒは、しばらく睨みつけるように俺と目を合わせていたが、やがて観念したように、 「わかったわよっ……。理由はわからないけど、いつもぼーっとしているあんたがそこまで思い詰めているなんて 普通じゃないことは理解できたわ。いいわ、一緒に居てあげる。でも、少しでも変なことしたら許さないからね!」 安心しろ、そんな気はさらさらないからな。 ◇◇◇◇ 俺たちは二人で食事を済ませ、テレビを見たりしてだらだらと過ごしていたが、やがてハルヒはベッドに潜り込んで 眠り始めてしまった。俺はそれを確認すると、浴室まで移動し、古泉との通信を始める。 (こっちは無事に終わったぞ。そっちはどうだ?) 『こちらの涼宮さんは無事に自宅に到着しました。機関の方で確認済みです』 そうか、やれやれ。何とか今日は乗り切れたって訳だな。 (ええ、僕らは) は? 『失礼しました。何でもありません。で、今後の予定ですが後であなたにお知らせします。今の内にゆっくり休んでください』 (わかった) そこで通信終了。俺もベッドに戻る。 ハルヒはどんな夢を見ているのか、幸せそうなツラで寝息を立てていた。全くお前には本当に手間をかけさせてくれるよ。 俺は明かりを消してベッドに潜り込んだ。起きてまだ同じ状態が続くなら明日も忙しくなるだろうからな。 ふと、もう一人のハルヒ(団長)のことが脳裏に過ぎる。 あの電話以降、ハルヒ(団長)は俺に接触してこようとはしなかった。あれだけ拘っていたのも関わらずだ。 なぜだろうか? 古泉たちが俺がいなくてもいいようにうまくやったんだろうか。 その理由について、俺は夜が明ける前に知らされることになる。 ~~一日目-Bへ~~
https://w.atwiki.jp/haruhi_best/pages/23.html
涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの軌跡 ◇◇◇◇ それから一週間、俺たちはせこせこと文芸部の活動を行った。 長門はひたすら本を読み、読み終えた時点であらすじと感想を書く。そして、俺は基盤となるHPを作成しつつ、 そのあらすじ・感想をパソコン上で打ち直し、さらに案の定長門の簡潔すぎるor意味不明文字の羅列になっている感想を 現代人類が読めるようにする要約作業を行った。時間がなかったため、昼休みに集合――もともと長門は昼休みには 文芸部室にいるようになっていたが――し作業を続け、俺にいたっては、もらったHP作成フリーウェアが ある程度HTMLなる言語をかけないと思うように作れないことが発覚したため、とてもじゃないが学校内だけでは 作業が終わりそうになく、コンピ研から借りてきた電話帳50%増量みたいな分厚いHTML・CSS大全という参考書を片手に 自宅のパソコンでも延々と作成作業を続けていた。 今日も俺は昼休みに弁当箱を片手に、文芸部室へ向かおうとしていたんだが、背後から声をかけられて立ち止まる。 見れば、朝倉がいつものクラス委員スマイルで俺を手招きしていた。 俺は急ぐ足をそわそわさせながら、 「何だ? はっきり言っておくと、今めちゃくちゃ忙しいから世間話なら後にしてほしいんだが。 弁当ならさっき長門に渡しただろ?」 「そうじゃなくて一応確認しておきたくて。最近二人ともずっと旧館に閉じこもりっきりだけど、 何かやましいこととかしていないわよね?」 何だ、やましいことって。仮に相手が朝比奈さんなら何かの拍子に俺がケダモノと化ける可能性は0%ではなく、 それを必死に理性で年末ジャンボの一等当選確率よりも低いレベルまで下げることになるだろうが、 相手はあの色気ゼロの長門だぞ。言われるまでそんな考えすらなかったよ。俺が長門にいかがわしいことを する確率なんてインパール作戦が日本軍圧勝で大成功を収めるのより低い。 俺はパタパタと誤解もはなはだしいと手を振りながら、 「そんなんじゃねえよ。ただ文芸部の活動が忙しいだけだ。ちょっとまずいことになっていて、 ひょっとしたら廃部になるかもしれなくてな。すべては一週間後の職員会議で決定されるが、 それまでの間に文芸部らしい活動を見える形でアピールしないとならないんでね」 「ふーん、それでずっと授業中もずっと難しい顔して考え込んでいたのね」 朝倉はふうとため息をつく。何だ、こっそりこっちのことを監視でもしていたのか。それとも相変わらず背後で 爆睡を続けるハルヒの監視のついでに、そんな俺の姿が目に入ったのか。 ふと、俺は長門もまた授業を放棄して文芸部の活動をしているのかと不安になり、 「まさか何か不都合でも起きているのか? 長門がまた授業中もずっと読書していたりとか」 「ううん、それは大丈夫。長門さんは生徒指導以来まじめに授業を受けているわ。休み時間はずっと読書しているみたいだけど」 朝倉の回答に俺はほっと胸をなでおろした。またしても読書狂ぶりが授業放棄という行為を引き起こせば それこそ文芸部の活動に大きくマイナスとなることだろう。岡部の言っていた不良の溜まり場と化している 活動と同じ扱いをされるかも知れん。 「長門さん、文芸部だけじゃなくてちょっとしたわたしとの約束もあるのよ。でも最近そっちのほうは すっかりやる気をなくしちゃったみたいで、ぜんぜんダメ。はあ、どうしようかしら……」 よくわからんことを言い始める朝倉。約束? インターフェース同士の取り決めでもあるのか? それなら、長門が本来の役割を無視して、文芸部の活動に没頭していることになるが、あいつが数週間程度でそこまで 人間らしくなっているとは思えないな。もっとも、俺としては情報統合思念体の手先・長門有希なんかより 文芸部部長・長門有希の方がずっとしっくりくるんで、それはそれで喜ばしいことなんだが。 いつまでも親玉の操り人形のままっていうのもかわいそうだ。 続けて朝倉は、 「あと涼宮さんのことなんだけど、さすがにそろそろまずいと思うのよ。あなたの方からも何か言ってくれない? 聞いた話だと生徒指導も完全に無視して取り付く島もないらしいわ」 何とかしろといわれても困る。俺が言えることはひとつだけで、それがハルヒってやつだということぐらいだ。 放っておいても生活態度以外――特にテストについては全く問題ないだろうし。 しかし、本当になにやっているんだあいつは。そういや今日は珍しく腹をすかしているようで学食に足を運んでいるが。 そんな突き放した態度に、朝倉はほうっと疲れたようなため息をついて、 「わたしも何度か涼宮さんに言ってみたんだけど、なーんにも答えてくれないのよね。あの調子じゃ クラスのなかで完全に浮いちゃっているし、周りの人たちへの悪影響も出るから何とかしたいと思っているんだけど……」 うつむいたままの朝倉。ハルヒが朝倉を極端に警戒しているのは、情報統合思念体のインターフェースだからだろう。 うかつにしゃべってボロを出せば、冗談抜きでただでは済まない。そういうわけで朝倉がいくら言っても ハルヒがまともに相手にすることは絶対にないと断言できる。 ……そういやハルヒが朝倉を無視するのは俺の世界でも同じだったが、理由はなんだったんだろうな? 元々宇宙人~以外は話しかけるな、無駄だからとか言っていたからか? とにかくだ。 「俺が言ったって無駄だろうよ。あいつは超を何重に付けても足りないほどのマイペース主義者だ。 きっと今は学校以上に大切な何かがあるんだろうが、その内飽きてまた学校に来るようになるだろうよ」 俺がやれやれと首を振りながら言うと、 「だといいんだけど……」 困り顔のままの朝倉。おっとこれ以上議論している暇はないな。 俺は後ずさりするように朝倉から離れつつ、 「悪い。朝倉の気持ちもわからんでもないが、俺は俺でいっぱいいっぱいなんだ。すまんができることはない」 「うん。わかったわ。相談に乗ってくれてありがとう」 朝倉の返事を聞きつつ、俺は文芸部室へと走った。 「わりい、遅くなった」 俺が文芸部室に駆け込むと、すでに弁当を食べ終えて読書モードに突入していた長門がいた。 相変わらずの凄いペースで本のページをめくりまくっている。 この一週間で長門はすでに70冊目を読破していた。このペースならば、後一週間で100冊に到達できるだろう。 しかし、一日五冊以上のペースぐらいで読んでいて、なおかつ内容を全て把握しているんだから恐ろしい。 宇宙人印の記憶の書き込み性能・保持時間はとんでもないレベルだな。 俺はすでに机の上に置かれていた長門のあらすじ・感想メモを片手に持ってきていた弁当を食べつつ、 その内容をチェックしていく。以前とは違い、長門も努力してくれているのか、かなり読みやすいものを 書いてくれるようになってきていた。おかげで俺はそれをパソコンのメモ帳に書き起こす程度の作業しか発生せず、 本筋のHP作成に時間が割けるようになった。 俺は飲み込むように弁当を平らげ――すまんオフクロ――すぐにコンピ研寄贈のパソコンの前に座り、 テキストファイルに作業進捗状況を記した。そして、続いて長門のあらすじ・感想メモをだだだっと ブラインドタッチで打ち込みまくる。やれやれ、すっかりキーボード見なくても文字が打てるようになってしまったな。 ちょうど昨日自宅で作成した部分がそれなりに見栄えのあるものになってきたので、 「おい、ちょっと見てくれないか? 評価を聞いておきたいんだ」 そう言って長門にできあがった部分を見せてみた。 長門はディスプレイをのぞき込んでしばらくトップページとメインである本の紹介部分――ただし実際の感想は まだ載せてなく空っぽの状態だが――を確認していく。 やがて確認し終えたのか、ディスプレイから目を離し、 「問題なと思う。ただ微調整が必要な箇所が見受けられる――」 そう言って長門は人間的視点の癖のような話を交えながら、俺の作成したHPの微調整指示を出してきた。 俺は長門のアドバイスになるほどと頷きつつ、その通りに修正していく。 それを終えてできあがったものは、パーツは何も変わっていないのに、何倍にも見やすくわかりやすいものに 化けていた。何と言うことだ。あれだけの修正でここまで外観が変わるとは。トップページの文芸部という文字や メインコンテンツである『長門有希の100冊』へのリンクも思わず押したくなるような感じがしてくる。 とはいえ完成にはまだほど遠い状態だ。肝心の北高文芸部についての説明もないし、部員や活動内容の紹介もない。 これでは文芸部のHPじゃなくて、長門が立ち上げた個人のHP状態だ。 アドバイスを終えた長門はまた自分の席に戻って読書の再開を――と思いきやこちらに顔を向け、 「問題が発生したことを思い出した」 「ん、なんだ?」 長門が自分から問題発生というなんて珍しい。というかもの凄い問題じゃないかと身震いまでしてくる。 すっと長門は本棚の方を指差し、 「ここに置いてある本で、HPに載せることに対し適切なものは全て読み終えてしまった。図書室も大体同じ状況。 このままでは目標である100冊に到達する前に、枯渇状態に陥ってしまうのは確実」 そう淡々と言う。何と、ついにあるものを読み尽くしてしまったか。いや、実際にはまだまだ本はあるんだが、 変な専門書や参考書ばかりでこんなものの感想・あらすじを載せるのは何か違うだろう。 今までずっとフィクションで固めてきたしな。 さてさて、なら新たな供給源を探さなければならないが…… ――って他にないか。ちょうど明日は土曜日だしな。 俺は長門の方に寄って、 「なら明日市内の図書館に行ってみないか? それなりに大きいところだから、部室や図書室とは比べものにならない量の本があるぞ」 その提案に長門は珍しく即答するように大きく頷いた。そして、その目が期待にてかてか光っているように 見えたのは決して俺の錯覚ではないだろう。 ◇◇◇◇ 翌日。土曜日の午前中に俺たちはいつもの――SOS団の集合場所になっている駅前にやって来ていた。 長門のマンションまで出迎えるかとも思ったが、こっちでの集合の方が効率が良いと長門に言われてここに集合となっている。 俺が予定時刻の15分前に到着してみれば、すでに長門がいつものセーラ服姿で直立不動のまま立っていた。 「すまん、またせちまったか?」 「…………」 俺の問いかけに長門は何も答えない。むしろ、早く図書館とやらに連れて行けというオーラをむんむんと発揮していた。 そんなわけで挨拶や雑談はすっ飛ばしてとっとと目的地に向かうことにする。ここからなら、歩いてそう遠くはない。 十分程度でたどり着けるだろう。 しかし、二人で黙ったまま歩くというのもなんつーか背中がむずむずしてくる気分になるので、 歩きつつ適当な話題を振ってみることにする。 「お前、私服持っていないのか?」 「持っているが、着てくる必要性を感じなかった」 「休みの日に出かけたりしないのか?」 「その必要はない。今日のように必要性が発生した場合以外は外を出歩く意味がないと判断している」 「今、楽しいか?」 「楽しいという意味がわからないが、自らが遂行すべき事項については自分の能力の大半を費やすものを持ち合わせている」 意外と会話が成立してしまったことに驚いてしまった。そういや、俺の世界でもハルヒの不思議探索で 長門と一緒だったときに同じようなことを聞いた憶えがあったが全部無言だったっけな。 そこでふと気がつく。HP作成に夢中で長門の内面的変化までいちいち考察している暇はなかったが、 改めて見てみると、文芸部に入って以降長門は急激に変化を見せているようだ。相変わらずの無口・無表情だが 俺の長門感情探知レーダはばっちりその自己主張や感情表現の激しい変化を捉えていた。 まさか完全に人形状態だったこいつが、この数週間でここまでの変化を遂げるとは。 俺の世界の冬バージョン長門と同じレベルにまで達しているんじゃないか? それはそれでいきなり世界を 改変されてしまいそうで怖いが。 そんなやり取りをしている間に、俺たちは図書館へとたどり着く。この世界でも同じように 駅前再開発で立てられた新築の図書館だ。入ったのはSOS団の活動をさぼったときぐらいだが。 俺たちはそのまま図書館に入っていく。休日ということもあるだろうが、結構多くの人でごった返していた。 机はほとんど埋まり、ソファーも大半が占拠されている状態だ。 その様子を見回しながら、 「さて、じゃあ目的の本探しと行きますか。おもしろそうなやつを片っ端から探して来てくれ。 その間に俺が貸し出しカードを作って持って帰れるように――おい長門?」 俺が今後の予定を説明しているのを全く無視している長門に気がつく。見れば、直立不動のまま 表情こそないがもの凄い今までに感じたことのないすさまじい恍惚としたオーラを噴出させていた。 こんな長門は俺の世界でも見たことないぞ。もしかして本の山に囲まれて酔ってしまったのか? とりあえず二、三度長門の顔の前で手を振ってみるが全く反応なし。ダメだこりゃ。 今、紙パックジュースに突き刺したストローを鼻に突っ込んでも、きっとそのまま飲み干すまでこの状態を続けるぞ。 「おい長門。楽しいのは十分にわかったから、とりあえず今は目的を果たそうぜ。このまま突っ立っていたって仕方がないだろ?」 そう肩を揺さぶってみると、ようやく本世界からご帰還した様子で、辺りをきょろきょろと見回し、 「……内部エラーが多発していた。謝罪する」 そう独り言のようなことを良いながら、ふらふらと本棚の方に向かって歩き出した。あんな状態で大丈夫なのか? とにかく本選びは長門に任せておくしかないから、俺は今の内に貸し出しカードの申請をすませることにする。 近くの受付所に行き、最近読書ブームでも起きているのか数人ならんでいたためその最後尾にならんでいたんだが…… 「……ん?」 思わず驚愕の声を上げた。フロアの少し離れたところをハルヒがづかづかと歩いていくのが目にとまったからだ。 こんなところで何やっているんだあいつ? 受付の方は何やらトラブっているらしく俺の順番が回ってくるのにしばらく時間がかかりそうなため 一旦列から離脱しハルヒの姿を追いかけることにした。いい加減、ここ最近何をやっているのか確認したかったし、 文芸部員という肩書きがすっかりお似合いになってしまった長門だったので忘れかけていたが 仮にも情報統合思念体のインターフェースと一緒に図書館に来ているのだ。注意ぐらいはしておいた方がいい。 俺はハルヒの歩いていった方に向かったが、残念ながらすぐに見失ってしまった。来館している人間も多いし、 こりゃ探すのには一苦労しそうだな。 だが、意外にハルヒの再発見は早かった。本棚の隙間を縫うようにフロアの隅へと移動している。 俺はすぐにその姿を追った。やがて辞典が大量にならび、まるでここだけ閉鎖空間といわんばかりに 人一人いない過疎地域へと入る。明かりもちょうど本棚の陰に隠れてしまい、不気味な雰囲気に包まれていた。 しかし、ここに来てまたしてもハルヒの姿を見失ってしまう。 俺は本棚の間を縫うように歩いて、ハルヒの姿を探したが、 「――ぶっ!」 突然、口を抑えられ本棚の脇に引き込まれてしまった。一瞬、恐怖感で身が岩のように硬直してしまうが、 恐る恐る引き込んだ奴の姿を確認しようと振り返ってみれば、 「……静かにしてなさい」 そこにはハルヒがいた。俺の口を抑え、さらに胸元を腕でがっしりつかんで俺の身体を固定している。 口がふさがっているせいで文句も言えない状態だったが、とにかく黙っているようにと、かなり切羽詰った声を あげてくるのを聞いて抵抗するのを止めた。どうやらハルヒが抱えているという問題が今発生している真っ最中のようだ。 その状態が数分続いたが、やがてハルヒは俺の拘束状態は維持しつつ、本棚の陰から顔を出し周囲の様子を伺い始めた。 すぐに問題なしが確認できたらしくふうっとため息をつくと、ハルヒは俺を解放し、 「全く読書なんてこれっぽっちも興味のなさそうなあんたが、こんなところで何やっているのよ。 こっちもいろいろ大変なんだから図書館にくるならそう言いなさい」 無茶苦茶を言ってきやがった。大体、お前の最近の行動はさっぱり伝えられていないから、 いちいちそんなことを考えていられるか。 「で、いったい何事なんだ。いい加減そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか? 今みたいに 一歩間違えば――何があったのか知らんが、そういう事態を回避するためにも情報共有は必要だろ?」 俺の指摘にハルヒはしばらく黙ったまま考え込んでいたが、 「ダメよ。言えないわ。言ったらあんただけじゃなくて学校まで巻き込んじゃう可能性があるから」 「……なんだそりゃ」 ハルヒの言葉に、俺は驚く。うかつに口外すれば、また機関を作った世界のように学校が攻撃に さらされる可能性でもあるというのか。一体、俺の知らないところで何が起こっているんだよ。 おっとだったら今ここに長門をつれてきているのは余計にまずいことになるな。 万一、ハルヒが能力を使わなければならない事態に陥れば、真っ先に情報統合思念体に伝わる可能性がある。 「先に言っておくが、今日は長門――インターフェースといっしょにここにきているんだ。 だから、あまり派手なことは起こさないほうがいいぞ。すぐにばれるだろうからな」 「……あんた、休日にインターフェースと一緒にのこのこデート中ってわけ? 全くいいご身分ね」 むかつく言い方だが、これがハルヒだ。そういやここ一ヶ月近くろくに話もしていなかったから、 ハルヒ節が懐かしく感じてしまうよ。 「でも確かにまずいわね……ここで連中と事を構えるわけには行かないってことか……。場所移動が必要ね」 そうあごに手を当てて思案顔になるハルヒ。 だが、すぐにぴんと指を立てると、 「とにかく! 今あんたとしゃべっていること事態が危ないのよ。とりあえず、あたしは自分の目的に集中したい。 あと、今あたしとここで会ったことは忘れなさい。絶対に誰にも言わないこと。いいわね!」 そう一方的に告げると、ハルヒは図書館の出口へ小走りで向かっていった。何なんだ、一体。 だが、学校が巻き込まれる可能性がある――この言葉だけで、あの機関による大量虐殺の現場が 脳内にフラッシュして思わず俺は目頭を抑えた。ハルヒの抱えている問題が他者――俺にでさえも漏れると 同様の事態が起きるというなら、俺は静観しておいたほうがいい。あんな地獄絵図はもう二度と見たくないからな。 「……どうかしたの?」 突如かけられた声に、俺はうわあと叫びそうになるが、のど元で無理やりそいつを飲み込んだ。 見れば、どこから生えてきたのか、すぐそばに長門の姿がある。その手にはすでに数冊の本が載せられていた。 俺は何とか平静さを保ちつつ、 「ちょっとカードを作るのに時間がかかるみたいなんでな。何か掘り出し物でもないかうろついていたんだよ。 そっちはどうなんだ? 大体選び終わったのか?」 「まだ探索を継続している」 長門はそういうと本を抱えたまま、また本棚の森に入っていった。やれやれ、どうやらハルヒといっしょのところは 見られなかったみたいだな。特にやましいことがあるわけじゃないが、ハルヒが臨戦体制である以上、 その姿を見られないことに越したことはない。 その後、長門は20冊ぐらい集め、俺が作った貸し出しカードでそれらを持ち帰った。 ◇◇◇◇ 運命の職員会議まであと二日と迫った日の放課後。俺たちは最後の追い込み作業に没頭していた。 長門はすでに95冊読破し、俺のHP作成もほとんど完成している。残っているのは、長門が書いたあらすじ・感想を HPのコンテンツにアップしていくだけだ。まだネット上での公開まではしていないが。この調子なら明日には完成となるだろう。 予定よりもせっぱ詰まった状況になってしまい、世間へのアピールはほとんどできなかったが、 岡部経由でこれを教師たちへ示すことはできる。そうすれば、文芸部はきちんとした活動をしているという証明になり、 廃部の話もおじゃんになってくれるはずだ。たった二週間という短い期間だったが、それだけの価値のあるものを作れたと自負している。 とはいえ、ここ最近いろいろありすぎた俺でももうへとへとの状態だ。頭の中は授業内容を格納する領域を 破棄してHTMLの知識で埋めたし、何よりキーボードを延々と打ちまくっているおかげで、腕も痛いし肩もこった。 早いところ終わらして、マッサージか温泉にでも行きたい気分だね。 一方の長門は、全く疲労を感じさせていないどころか読めば読むほど生き生きとしてきているのがはっきりとわかる。 特に好みにあった小説に出会ったときと来たら、顔には出さないが恍惚のオーラを全身から大量放出しているのが はっきりと認識できるほどだ。本当に鼻にストローでも突っ込んでやろうか。いや冗談だけど。 そんなことをつらつらと考えつつ、ひたすらキーボードを打ち続ける。 ふと、ここで意味のわからない表現にぶち当たり、 「おい長門。これはどういう意味なんだ?」 「これは……」 そんな感じで細かい意識あわせをやっているときだった。 ……突然、文芸部室の出入り口の扉がまるでサスペンスかホラー映画のように軋んだ音を立てながら開き始める。 あまりに前触れもなく唐突だったので俺は一瞬ぎょっとしてしまうが、次に登場したものにほっと安堵――はできなかった。 そこから部室内をのぞき込むように仏頂面+半目+ジト目+への文字口と器用な顔を作り上げたハルヒが出現したのだ。 背後から不気味な迫力を持ったオーラ――長門の感情表現とはまた別物――をこちらに流れ込ましてくる。なんなんだ一体。 やがてハルヒはその表情を維持したまま、俺の方に手招きを始めた。どうやら話があるから来いということらしい。 今日も学校に来ていなかったはずだが、放課後になってわざわざセーラ服まで着込んで来たとなるとそれなりの用事だと推測できる。 やれやれ、文芸部存続大作戦の追い込み時期にやっかいごとを増やして欲しくはないんだが…… 「すまんがちょっと行ってくる。今の話の続きは後にして、読書を続けておいてくれ」 「わかった」 そう長門と言葉を交わすと、ハルヒの元へと向かった。 連れて行かれたのは、すっかり秘密の話をする場所になってしまった非常階段の踊り場だ。ここには滅多に人も来ないから ひそひそ話をするにはうってつけだしな。 「で、なんだ用って」 俺の言葉に、ハルヒはむすーっとした表情で腕を組み、 「全く人が必死に戦っていたってのに、まさか文芸部なんていう地味な部活で延々と読書していたとは思わなかったわよ。 少しは人も気持ちも考えて欲しいわね」 「無茶苦茶を言うな。大体お前が何をやっているのかさっぱり教えてくれなかったじゃねえか。 これじゃあ気の使いようもねえよ」 そう俺が抗議の声を上げる。 と、ハルヒはふうっと一息つくと、 「ま、ようやくそんな状態も終わったから良いんだけどね」 そう言って安堵の笑みを浮かべた。自己完結するのは結構だが、協力者である俺にも情報開示を求めたいね。 まあ、文芸部活動に没頭していた俺が言うのもなんだが。 俺はハルヒに視線を向け、 「いい加減、そろそろ何をやっていたのか教えて欲しいんだが」 「あたしにちょっかいかけてきた連中を残らずぶっ潰していたのよ」 その俺の問いかけに、ハルヒは一言だけ返してきた。それだと意味がわからんぞ。どういうことだ? ハルヒは理解できない俺に、憶えていないの?と言いたげな表情を見せつつ、 「前にも言ったけどさ、高校時代になるとどこからか――多分情報統合思念体のインターフェースとかからでしょうけど、 あたしの話を聞きつけた連中がちょっかい出してくるようになるのよ。そいつらを片っ端からたたきつぶしてきたってわけ」 その言葉に、俺はああと思い出した。そういや前にそんな話を聞かされた憶えがある。だが、ここの前の二つの世界―― 機関と未来人のいる世界ではそんなことはなかったが……って、ああそうだったな。 「気がついたわね。ひさびさだったからすっかり忘れていたけど、あんたに超能力者や未来人の存在にについて 教えてもらうまではいつもこんな感じだったのよ。小規模組織があっちこっちに乱立しまくって、あたしにちょっかいかけまくる。 全く鬱陶しくてたまらないわ。これだけでも、古泉くんやみくるちゃんたちの存在がありがたくなるわね」 ハルヒは疲れたというポーズなのか、自分の肩をもみほぐし始める。 俺の世界でも古泉がちらりと水面下では機関は他組織と血で血を洗う殲滅戦をやっていたとか言っていたし、 前回の未来人オンリーの世界では、朝比奈さんの属する未来人連中が自分たちに都合の悪い組織を片っ端から潰して廻っていたようだ。 そのことを考えると、超能力者・未来人の存在はこういった混乱を沈め、力の配分を行える存在と言うことになる。 やはりあの二つは、ハルヒという存在を支える上で絶対になくてはならないんだと再認識させられるな。 「俺に黙っていたのは、万一俺とお前のつながりを知られると、俺が巻き込まれたりするかも知れなかったからなのか?」 「そうよ。あんただけじゃなくて、北高生徒も巻き込まれる可能性があったからできるだけ、周囲との接触を断って あくまでもあたし個人だけで敵と戦っていたのよ。おかげで、向こうもあたしを集中的に狙ってきたわ。 前々回の無差別襲撃の二の舞はごめんだったしね」 図書館で俺が思っていたことと同じことを口にするハルヒ。やっぱり沢山の修羅場を乗り越えたハルヒでも ああいうことは慣れていないようだ。まあ、慣れてしまったら人間終わりだと思うが。 ん、そうなるともうハルヒをつけねらう連中は完全にいなくなったと考えて良いのか? その指摘にハルヒは小難しい顔つきで、 「目立って動く連中は残らず潰したし、当分の間は実力行使ができる組織はないと思って良い。でも、ああいう連中は まるでハエか蚊のように湧いてくるから、その度に対処していかないとならないけどね」 てことは、まだまだそう言った抗争は続くかも知れないって事かよ。たまらんな、そりゃ。 と、ここで文芸部活動の佳境について思い出し、 「現状についてはわかったよ。で、すまんがそろそろ部室に戻って良いか? これでもまじめに文芸部活動を やっていたから戻らないとまずいんだ。こっちも色々あって今が最大の修羅場だからな」 「本題はこれからよ」 ハルヒはそう言って俺の足を止めた。まだ何か言うことがあるのか? 続ける。 「文芸部にいた女の子、あれ情報統合思念体のインターフェースよね? あんたあの子を使って何かやった?」 「やったって何をだよ? 言っておくがやましいことなんて、これっぽっちもないからな」 俺の反応に、ハルヒは心底軽蔑したまなざしを向けてきて、 「なんでいきなりそっちの話になるのよ、このスケベ」 お前の説明不足な言い方だとそう言う意味にしかとれんぞ。もっと詳細かつわかりやすく言ってくれよ。 ハルヒはあごに手を当ててしばし思案してから、 「順を追って話すわ。はっきり言っておくけど、あたしはこの一週間憶えているだけでも三回のミスをやらかしているのよ」 「そりゃいくらお前がいろんな意味でできる人間だからといって、ノーミスで何もかもできるほど万能じゃないのはわかっているぞ」 「そうじゃなくて、致命的なミスってことよ。それこそ情報統合思念体があたしの能力自覚に気が付いても良いようなレベルのね。 でも、見てのとおり情報統合思念体はなんの行動も起こしていない。おかしいと思わない?」 その三回のミスって言うのがどの程度のものなのか具体的に教えてもらえないとわからんが、ハルヒが自分で認識できるほどの ものなら確かに奴らがハルヒが力を自覚しているってことに勘づいてもおかしくなさそうだ。しかし、今俺たちのいる世界は 夕焼けに染まってきている透き通った空が広がっているのを見ればわかるように、通常運行を続けている。確かに妙な話だな。 ハルヒはぐっと顔を俺に近づけてきて、 「でしょ? だから、あんたが一緒にいるインターフェースに何かやらかしてそれを阻止してくれたんじゃないかって思ったのよ。 あの子、どうやらあたしの監視役を負かされているみたいだし。でもその調子じゃ、本当にただ文芸活動をしていただけっぽいわね」 「悪かったな。俺は長門に何か特別なことをやった憶えはねえよ。一緒に本を読んで、文芸部のHP立ち上げに奔走していただけだ」 その俺の返答にハルヒはうーんと首をかしげる。よくわからんが、情報統合思念体が別の何かに没頭して忘れていたんじゃないか? 連中だってずっとハルヒだけを見ている訳じゃないだろ。 「まあその可能性も十分にあるんだけどね……こんなことは今回が初めてだったから、何が違うんだろって考えているのよ。 ひょっとしたら、情報統合思念体を出し抜けるヒントが隠されているかも知れないから」 ハルヒの言うとおりだ。連中の目をごまかせる手段があるなら、利用しない手はない。うまくいけば、この世界でも ずっと平穏無事に生きていけるようになるかも知れないからな。古泉や朝比奈さんがいないのはかなりさびしいが。 ここでもう一度文芸部活動が修羅場なのを思い出した俺は、 「とにかく俺は何もしていない。それは確かだ。で、そろそろ戻らないとならないんだが」 「全くすっかり気分は文芸部員ね。本来の目的を忘れていないでしょうね? まあいいわよ。特に有益な情報はなさそうだし」 腕を組んで呆れるハルヒ。おい、それは前回書道部に没頭しているお前に散々言った言葉だぞ。 そんなことを心の中で愚痴りながら、俺はそそくさと文芸部室へと戻った。 ふと、部室に戻る途中で朝倉に出くわす。見れば旧館から出てきたようだが、こいつなんか部活に入っていたっけ? 朝倉は夕日で赤く染まった顔にいつもの柔らかな笑みを浮かべて、 「あらまだいたんだ。そんなに文芸部って大変なの?」 「もうすぐ廃部かどうかの職員会議があるんでな。それまでに活動を形にして残しておく必要があるんだよ。 今はちょうどその作業の修羅場中って訳だ」 俺の返答に朝倉はふーんとだけ返してくる。 「そういや朝倉は何か部活に入っていたんだっけ? お前こそこんなところで何やっているんだ?」 「ちょっと長門さんに話があったから寄っただけよ。もう帰るわ」 そう言うと、朝倉は早足で昇降口へと向かって言った。長門に用? まさかハルヒが犯したミスってやつの件じゃないだろうな? 一瞬、人類滅亡のスイッチが入ったのではと身震いしたが、そうならとっくに実行に移されているだろうと考え直す。 俺は文芸部室まで戻ると、そこでは相変わらず読書に没頭している長門の姿があった。朝倉との話で何か変わった様子はない。 ただの世間話だったのかも知れないな。明日の弁当のメニュー確認とか。 見れば、ハルヒと話している間に一冊の本を読み終えたらしく、新たなあらすじ・感想メモがパソコンの前に置かれていた。 俺は腕まくりをしつつ、HP作成作業を再開した。 ……後で俺はこの時ハルヒの話に加えて朝倉がなんでわざわざ部室まで足を運んでいたのか、 もっと真剣に考えておけば良かったと散々後悔することになる。 ◇◇◇◇ 「ほーむぺーじ?」 「そうです。俺たち――文芸部が作ってインターネットで公開しているんです」 俺はそういいながら、HPの一部を印刷した紙を岡部に渡す。職員室からインターネットが出来るかどうかわからなかったため、 家でHPを印刷してきたおいたのだ。 文芸部の命運を決める職員会議が明日に迫る中、俺たちはようやくHPの完成にこぎつけていた。 無論、ついさっきインターネット上で公開したばかりなので、カウンターは限りなくゼロに近い状態だが。 あとは岡部経由でこの資料を職員会議で提示し、文芸部の活動実態を示すだけだ。これを見せれば、 どれだけ活動実態があるか、どんなバカが見てもわかるだろう。それを確信できるほどのものを作ったつもりだ。 「なるほど、HPか。考えたな。確かにこれだけのものを公開しているなら文芸部の活動実態は認められるかもしれない」 岡部は俺の渡した資料をぱらぱらとめくりながら言った。 「これだけのものがあれば十分でしょう? もう廃部なんて言わせませんよ」 俺はそう念を押しておく。 岡部はぱんとひざをたたくと、 「よし、お前たちの意欲はよく伝わった。あとは俺が責任を持って職員会議で伝える。ただ、この二週間の間で 先生方の間でもかなり意識が変わっている可能性もあるから、確実なことは言えない。だが、出来る限りの事はするつもりだ」 「よろしくお願いします」 俺が岡部に頭を下げると、長門もそれを真似して小さく数ミリだけ頭を前に倒すしぐさを見せた。 「やれやれ、やっと終わったな。さすがにくたびれたよ」 「…………」 すっかりこった状態が日常化した肩をもみつつ、俺たちは部室へ戻ろうと旧館の階段を歩いていた。 長門も無言・無表情のままだったが、その感情表現オーラは達成感に満ちていた。こいつも何だかんだで、 やり遂げたという実感があるのだろう。 あとは明日の職員会議に賭けるだけだ。きっといい返事が岡部から返ってくる。それだけの苦労はしたつもりだし、 これで結局廃部なんていうオチになったら、教師全員を末代まで恨んでやる。 そんなことを考えながら部室に戻った。机の上に山積みされている本、長門が書き記したメモの束、旧型ながら この二週間フル稼働してくれたパソコン……終わった達成感に身が支配されているためか、それら一つ一つを 見渡していくと思わず目頭が熱くなってしまいそうだった。やれやれ、俺らしくもないな。 その後、俺たちは部室内の片づけを始める。図書室で借りてきたものと、市内の図書館から借りてきたものを 仕分けして返却の準備をしたり、長門が書いたメモをホッチキスで閉じて保存できるようにしたりなどなど。 たまにネット上に上げられている文芸部のHP――特に『長門有希の100冊』のページを見て、ニヤニヤしていたりしたが。 その作業が終わるころにはすっかり日も傾き、部室内は夕日の明かりで真っ赤に染まっていた。 さて、本はぼちぼち返していくとして今日はこれくらいでお開きだな。 「今日はそろそろ帰ろうぜ。すべては明日の朝に決まる。後は腹をくくって待つしかない」 「わかった」 そう長門と言葉を交わすと、俺たちは帰り支度を始めた。 俺は身支度を終えると一足先に部室から出ようとして―― 「待って」 唐突に長門が俺を呼び止めた。振り返れば、帰り支度万全の状態の長門がこちらをじっと見つめている。 そして、こう言った。 「これからわたしの家に来てほしい。話したいことがある」 それを聞いた俺は、いよいよかと覚悟を決めた。おそらく自分が宇宙人であることのカミングアウトだろう。 しかし、なぜこのタイミング? 明日の文芸部の命運が決まった後でもいいと思うが…… ◇◇◇◇ 俺たちは薄暗くなりつつある道をゆっくりと歩いていた。お互いに特に話題を振ることもなく、ただ黙って足を動かしていく。 長門のマンションはすぐ目の前に迫りつつあった。 長門が自らを宇宙人であるということ。 遅かれ早かれ告白される日が来ると思っていた。長門と接触している以上、そう言う流れになるのが自然だからな。 朝比奈さん(大)的に言えば『既定事項です』ってことだ。 だが、どうしてこのタイミングなのだろうか。俺の世界では、長門は俺がハルヒに尋常ならない影響を与えていることを 知らせることと同時に、命を狙われる可能性があるから話したように思える。だが、ここ一ヶ月近く、俺とハルヒは ろくに会話すらしていない。その理由はこないだハルヒから聞いた話で把握済みだが、長門がそんなことを知っているわけもなく。 ただ、ハルヒが一昨日・昨日と普通に学校に来だしてからは、他愛のない会話とかはするようになっているが、 SOS団みたいな強烈極まりないものを作ることに荷担したりはしていない。 とまあ歩きながら考えていたが、やがて思考の袋小路にはまって止めてしまった。どのみちもう少ししたら 長門自身から話されるんだろうから、俺はそれを素直に聞くだけさ。ただし、もちろん俺が長門のトンデモ話を軽々しく 受け入れてしまったら人類滅亡フラグが立ってしまう。古泉・朝倉との同時カミングアウトの時と同じように、 できるだけ一般人かつ初耳で自然な反応をしなければならん。全くクタクタだって言うのに勘弁して欲しいね。 さて、そんなことを考えている間に長門のマンションにたどり着いた。マンション入り口のロックを解除し、 そのまま二人でエレベータに乗る。そうだ、唐突の誘いのはずなのに黙って付いてきているだけなんてであまりに素直すぎるな。 ここらでワンクッション入れておくべきだろう。 「なあ長門。いちいちお前の家まで話さないとならないことってなんだ? 別に部室なら他の誰にも話を聞かれることもないと思うが」 「……不確定要素の発生を避けるため。わたしの家ならば、それが発生する確率は限りなくゼロになる」 長門は淡々と返してきた。ただきっちりと会話が成立していることが、俺の世界、またはこの世界でも初めて長門と 接触したときとは大きな違いだ。当時のあいつなら何も答えることはなかっただろう。 程なくして、目的の階でエレベータが停止し、そこから廊下を伝って長門の部屋708号室にたどり着く。 この世界でも部屋の位置や外観なんかは変わっていないんだな。多分、部屋の中も俺の知っているあの殺風景な―― 「うわっ」 俺は玄関から長門の部屋に上がって、仰天の声を上げてしまった。てっきり何もなくてまるで広めの独房かなにかと間違えそうな 部屋だとすり込まれていたから無理もない。 部屋の中には無造作に床に置かれた本が山々――山脈と言っていい状態になっていた。収納という概念を知らないのか 本棚は一つもなく全てながら読みするベッドの枕元に置かれた漫画の山状態と化している。 これは予想外だった。俺の世界の長門も読書狂だったが、部屋の中にはSOS団結成一周年記念になっても 本がこんな状態で積み上げられてはいなかった。 ふと思う。この長門は文芸部活動ですっかり変わってしまった。もちろん、朝やって来て『ヤッホーエブリバディ?』とか 言い出しているわけではなく、いつもの無表情のままだが感情オーラどころか言葉の出し方も随分変化している。 しかし、それは俺がよく知る長門とはまた別物の文芸少女の姿だった。この一ヶ月ぐらいで長門は、俺の世界の長門を飛び越え 俺の知らない別物になってしまっていたんだ。少々文芸活動に没頭させすぎてしまったか? だが、一方でそれは決して悪いことじゃないはずだ。あの情報統合思念体のインターフェースとしてただ命令通り動く 人形状態ではなくなったと言うことなんだから。ひょっとしたら、朝倉レベルに近づきつつあるのかも知れない。 長門はしばらく俺が座るスペースを確保するべく、てきぱきと本山脈の大移動を行っていたが、やがて部屋の中心部に 平野部を作り出すとそこにちょこんと正座した。俺もそれに倣って、正面にあぐらをかいて座る。 「お茶を出そうと思ったが、この状況ではできなかった」 「ああ、それは別にかまわねえよ」 長門の言葉に、そういや以前の時はひたすらお茶をすすって長門の話を待っていたっけ、と懐かしい気分になる。 さてと。長門の急激な変化は興味深いが、今はこいつの話に集中することにしよう。 おっとただ黙っているのは不自然だな。こっちから話を振るか。 「で、学校ではできない話って言うのはなんなんだ?」 俺の言葉に、長門は色の薄い唇をゆっくりと開いた。 「涼宮ハルヒのこと。それと、わたしのこと。それをあなたに教えておく」 長門のしゃべり方が俺の世界の時と違って滑りが良いのも、文芸部活動の影響だろう。あの時感じたこいつの話し方に対する 不満は今の俺の心に浮かんでこなかった。慣れたって言うのも当然あるだろうが。 長門は続ける。言葉と同時にはき出される感情ははっきりと困ったような、または躊躇しているようなものだと受け取れた、 「うまく言語化出来ない。情報の伝達に齟齬が発生するかも知れない。でも聞いて」 それ以降の話は以前に聞かされたのとほとんど同じだった。 ――涼宮ハルヒと自分は、文字通り純粋な意味で他の大多数の普遍的人間とは異なる存在。 ――この銀河を統括する情報統合思念体によって造られた対有機生命体。 ――わたしは生み出されてからこの三年間ずっと涼宮ハルヒの監視を行い、入手した情報を情報統合思念体へ報告していた。 ――だが、ここ最近になって無視できないイレギュラー因子が発生した。それがあなた。涼宮ハルヒに多大な影響を与える可能性がある。 正直この話には違和感を憶えた。さっきも言ったが、俺とハルヒはこの一ヶ月ぐらいろくに口も聞いていない。 なのになんでそんな扱いを受けているんだ? だが、途中で話の腰を折るとボロを出しかねないと思った俺は、とりあえず長門のマシンガン説明トークに 耳を傾けて置くことにした。質問は終わってから話が終わってからした方がいい。 情報統合思念体とは。 俺の世界の時と機関を造った世界で朝倉から受けたものと全く変わらない説明が始まる。さすがに三度目となると、 聞き慣れて憶えやすくなっていた。 続いて三年前のハルヒの情報爆発について。そして、ハルヒが情報統合思念体にとって自律進化の可能性を秘めていることについて。 これも以前聞いたものと代わりがない。ただ当時との決定的な差はある。それはこの世界ではその話は ハルヒが仕掛けたディスインフォメーションだったのを知っていることだ。それを話したら長門はどんな顔をするんだろうか。 見てみたい気もするが、そんな個人的願望で世界を滅亡させてしまうわけにも行かない。 ほどなくして話が終わり、長門はビデオの静止ボタンを押したように身じろぎ一つしなくなった。 どうやらこっからは俺のターンのようだな。もちろん、最初に返すのは以前と同じ言葉だ。 「待ってくれ。正直に言おう。さっぱりわからない。SF小説を読みすぎて現実と仮想世界がごっちゃになっていないか?」 せっかくだから+αしておくことにした。そんな回答をする俺に長門は、 「信じて」 そうメガネのレンズを通して真摯なまなざしで言ってきた。その視線には何というか――どうしても 俺に理解させなければならないという意思がひしひしと感じられた。なんなんだろう。どうして俺にそこまで伝えようとする? まあ、はっきり言えば、お前の正体はしっかりと脳内に焼き印のように刻み込まれているから、 わかった信じると答えたくはなるがそうもいかん。全く面倒だな、やれやれ。 「仮にその何とか超生命体……だっけか? それとお前さんがその使い魔みたいな存在であることを信じたとしよう。 何で俺に言うんだ? どうして正体を俺に明かす?」 「あなたは涼宮ハルヒによって選ばれた。無意識・意識的にかかわらず、彼女の情報は周辺環境への 絶対的な情報として環境に及ぼす。あなたが選ばれたのは必ず理由があるはず」 長門の言葉に、俺はせっかくだから確認しておくかと思い、 「念のために――別にお前の話を信じた訳じゃないぞ? 念のためにだ。どうしてハルヒが俺を選んだと判断したんだ? いっちゃなんだが、確かにハルヒとはちょこちょと話をしている。しかし、ここ最近はろくに口もきいていない状態だったんだ。 何しろ、あいつが学校に来ないんだからな。仲良くしようもないさ。その間にこっそり会っていたとかもない。 こっちは文芸部活動でいっぱいいっぱいだったんだし。それなのに、どうしてだ?」 俺の質問に、長門は無色透明のガスでも詰まっているんじゃないかと思いたくなるほど透き通った瞳でこちらを見つめ、 「涼宮ハルヒが中学生の時、あなたとは何の接点もなかった。だが、高校入学後あなたと話しているときの涼宮ハルヒは 全く身体的緊張感、及び警戒感を持たずにいる。これは有機生命体のコミュニケーション発展過程に置いて あり得ない事象と考えられる。ならば、涼宮ハルヒの情報操作・構築・創造能力において、あなたが涼宮ハルヒの影響下に 置かれたと考えるしかない」 ……なるほどな。接点がなかったのに、突然あの気難しいハルヒがぺらぺらとしゃべっている相手、 付き合いがあったわけでもないのにそんなことになるのは不自然だ。だからハルヒが俺を選んで何らかの変態パワーで 俺をどうこうしたって考えているわけだな。接点がないのが逆に際だたせてしまうとは、その辺りをもうちょっと ハルヒとどうするか詰めておくべきだったのかも知れない。 実際には、この世界のハルヒとも結構長い付き合いになっているからだったりするだけなんだが。何だかんだで、 俺の世界のハルヒ以上に苦楽を共にしているような気がするし。苦ばっかりだけど。 ってことは――やっぱり俺は命を狙われる可能性があるってことか? 相手はやっぱり朝倉か? 長門はそんな複雑な心境を悟ることもなく、 「情報統合思念体の意識は統一されていない。インターフェースも各意識によって配置されている。中には、涼宮ハルヒへ 直接・間接的なショックを与えて情報変化を観測しようと考えているものもいる。その事実を考えれば、 涼宮ハルヒによって選ばれたあなたは、その手段として利用される恐れがある。仲間のインターフェースより その予兆ともいえる情報因子をすでに取得している」 やっぱりそうなるよな。文芸部活動だけで疲労困憊なのに、朝倉襲撃にも備えないならんのか。ん、ひょっとして 昨日朝倉が長門に会いにきていたのもそれを伝えるためだったのか? さて。こんな話をされたからと言ってホイホイと信じてしまうわけにもいかん。かといってさっさと帰るのも 長門に悪い気がする。ここはフィクション話として少し付き合ってみるか。 「わかった。信じるかどうかは後でゆっくり考えさせてくれないか? 今は文芸部存続で頭がいっぱいだからな。 それが終わってからでも遅くはないだろ?」 俺の言葉に、長門はコクリを頷いた。これでよし。後は適当に信じていないふりをしつつ、情報を聞き出すか。 「でだ。せっかくだから話だけ聞くと結構おもしろいように感じるわけだ。せっかくだからいろいろ教えてもらいたいんだが」 「何でも聞いて」 俺はオホンとわざとらしく咳払いをすると、 「とりあえずお前の役割って言うのはハルヒの監視なんだろ? でもハルヒは最近すっかり姿が見えない状態だったが、 どうやって情報把握をしていたんだ?」 「さっきも言ったとおりインターフェースはわたしだけではない。協力者もいるため、そこから情報がわたしに集められ、 精査後に情報統合思念体へと報告している」 長門の回答に俺は違和感を憶えた。ハルヒがここ最近潰して廻っていた組織とやらは、ハルヒの正体を知っているはずだ。 そうなると、どこからかそれについての情報を得ていなければならないわけで、機関も未来人もいないこの世界だと 唯一の情報入手先は長門たちインターフェースということになる。これについてはハルヒも指摘していたな。 そして、今長門はそいつらを協力者と表現し、ハルヒの情報収集に使っていたと言った。一方でハルヒは 三度致命的なミスとやらかしたと言っていたが、何でその情報が長門に伝わっていないんだ? どこかで止まってでもいるんだろうか。 俺はしばらく考えていたが、ふと部屋の中にもう一人の人間がいることに気が付く。ぎょっとして振り返れば、 あの朝倉涼子が俺たちのすぐ近くに、いつもの柔らかな笑みを浮かべて立っていた。何でこいつがここにいる? いつの間に入ってきたんだ? 朝倉はゆっくりと長門の周囲を歩き始めると、 「でも、その情報のまとめ役である長門さんが全く機能していないのよね。困っちゃう話だわ。あなたもそう思わない?」 よくわからんことを言ってきた。 だが、長門はそんな朝倉の言葉を完全に無視して、 「この状況を作り出した理由について説明を求める。今のあなたからは敵性反応が感じられる」 「あら、エラーに浸食されているのにそんなことはわかるんだ」 そう言いつつ朝倉は長門の背後に立ち、床に正座したままの長門の肩に手をかけると、 「良く自分が涼宮ハルヒの監視者であるなんて言えるわね。この一ヶ月の間、涼宮ハルヒは2978回もの不審な情報操作を 行っているのに、あなたは実に2654回それを放置した。さらに、上の方に報告した分についても95.6%は エラーとバグだらけで報告として全く成り立っていない状態。とてもじゃないけど正常動作しているとは言えないわ」 朝倉の言葉に、俺は言いしれぬ嫌な予感が全身を駆けめぐる。何か――朝倉の笑顔は変わっていないが、明確な敵意を感じる。 それに長門のさっきの言葉だとこいつは何かをしでかしたみたいだが…… 「回答になっていない。あなたはわたしのバックアップ。こちらの指示に従い、明確な回答を求める。 なぜこの部屋を情報統合思念体から遮断し、外部環境から隔離したのか」 長門の声は少し緊張しているように感じた。ちなみに俺はその数百倍はびびっている。なぜかと言えば、 気が付けば俺のいる部屋の窓・扉が全て消え失せ、完全な密室状態になっているからだ。今の長門の言葉を聞く限り、 やったのは朝倉か? 朝倉は長門から手を離し、少し離れた場所に移動した。そして、両手を広げ、 「その通り。わたしはあなたのバックアップ。でもその意味を知っている? 本体が役に立たなくなったときに 代替の役割を果たすものなのよ。だから――」 朝倉の微笑みは変わっていない。なのに、なぜかその時の笑みだけは凶悪にゆがんでいるように見えた。 ――とっさだった。俺は長門に飛びつくと、そのまま脇に抱えて部屋の隅に飛び込むように逃げ出す。 そして、その一瞬後に長門がいたところを無数の光の刃が通り過ぎた。一歩遅ければ、今頃長門の身体は ずたずたにされていただろう。 「――だからわたしはバックアップとして、役立たずのあなたを排除する。そして、以降の涼宮ハルヒの監視の主導は わたしが行うわ。情報統合思念体には長門さんが内部エラー多発で自己崩壊を起こしたと報告しておいてあげる」 続けられた朝倉の言葉に、俺の額から冷や汗が流れ落ちた。おいおい、これはどういうことだ? 朝倉が俺を殺しにかかるならまだわかるが、今は長門を殺そうとしている。しかも、長門がインターフェースとしての 役割を全く果たしていないだと? そうか、だからハルヒの致命的なミスというものも長門の親玉まで情報が行かなかったんだな。 そんな俺の疑問に朝倉が答えるはずもなく、 「わたしは長門さんと違ってただ見ているだけなんていうことはしない。積極的に動くつもりよ。 そうね、せっかくだからあなたにもこの場で死んでもらっちゃおうか? そうしたらきっと涼宮ハルヒは とんでもない情報爆発を起こすはずだしね」 ええい可愛らしい笑顔で物騒なことを言いまくるな。まさか、長門のカミングアウトと朝倉暴走のイベントが同時発生するとは 考えてもいなかったぜ。せめてハルヒにここに来ることぐらい伝えておけば良かった。 だが、そんなことを後悔している場合ではない。朝倉は両腕から無数の光の刃のようなものを発生させ、 一斉にこちらめがけて投げつけてくる。俺は必死に長門を抱きかかえたまま、じたばたとそれから逃げ出し、 ぎりぎりのところで回避する。 俺はじりじりと迫ってくる朝倉に慄きつつ、悲鳴のような声で、 「おい長門! 何とか朝倉に反撃できないのかよ! 俺が逃げ回るのも限界があるぞ!」 「できない」 「なんでだ!?」 「朝倉涼子はこの空間を情報統合思念体との相互通信を出来ないように封鎖している。これではわたしの情報操作能力は 全く使えない状態。さらにこの空間領域は完全に朝倉涼子が制御している。どうすることもできない」 抑揚のかけらもない口調だったが、そのまなざしは謝罪に満ちあふれていた。ちっ、そんな顔で見られると どうにか守ってやりたくなるじゃねえか。 だがどうする!? 「いい加減諦めてよ。どうせ結果は同じなんだからさ」 あの時と同じようなことを言いやがる朝倉。はっ、死ねといわれて死ぬやつがどこの世界にいる。 俺は必死に飛び跳ね、しゃがみ、ある時はスライディングして朝倉の攻撃をかわし続けた。自分でも良くかわしていると ほめてやりたい。だが、俺の世界で朝倉に殺されそうになったときと同じことをされたらもう終わり―― 「最初からこうしておけば良かった」 まさに噂をすれば影。朝倉はその一声で俺と長門の身体を完全に硬直させた。くっそ、指一つ動かせねえ、やっぱりこれは反則だろ。 朝倉は固定されたマネキン状態の方にゆっくりと近づきながら、右手に何かを構築し始めた。光の粒が次第に収束していき、 やがてあのトラウマになりそうな凶悪コンバットナイフへと形作られていく。 「これで惨殺死体にしてあげる。無惨になったあなたの姿を見た涼宮ハルヒはどんな情報爆発を見せてくれるのかしらね。 今からでも期待で胸がいっぱいよ」 人の死を喜ぶようになったらもう人間失格だな――って、こいつは人間じゃなかったか。ちくしょう、どうすればいい!? 俺は必死に脳の回転限界速度で思考を巡らせて何とか出来ないか考えるが、そんなことを朝倉が待ってくれるわけもない。 高々とナイフを掲げると、 「じゃあ死んで」 そう言って一気に俺に向かって飛びかかってきた―― その時。無数のコンクリートの破片が俺に降りかかってくる。それがぶつかる痛みとナイフが俺の身体に突き立てられたものと 勘違いして思わず声を上げた。 「痛ってえな、この野郎! ――あれ?」 叫びの途中で気が付いた。いつの間にやら俺の身体が動くようになっている。俺に抱きかかえられたままの長門も 身体の自由を取り戻しているみたいだった。 そして、眼前に迫っていた朝倉のナイフは俺から数センチのところで停止させられていた。その刃先を誰かが握りしめて、 俺に突き刺さるのを止めてくれたのだ。その人物は―― 「――ハルヒっ!?」 思わず驚愕の声を上げる俺。見れば、朝倉のナイフをしっかりとした格好で見事に受け止めている。力はほとんど互角なのか、 ナイフをつかむ手は微かに震え、たまにこちらに近づこうとしてくるがすぐに押し返した。だが、刃を直につかんでいるため、 それをつかんでいるハルヒの右手からはだらだらと見ているだけで痛くなりそうなほどの出血が起きていた。 学校帰りに俺をつけてきて着替えていないのか、北高のセーラ服の袖が流れる血で赤く染まっていく。 「全く……インターフェースを二人連れ込んで何をやっているのかと見に来てみれば、まさかこんな事態になっているとはね。 でも、外部から入ってくるやつなんていないと考えていたみたいね。こんな隙だらけの封鎖壁なら突入するのは簡単だったわよ」 「ど、どういうこと……!?」 状況が理解できない朝倉は、明らかに動揺していた。そりゃそうだ。情報統合思念体はハルヒは力を自覚していないと 考えているんだからな。それがばりばりの変態超パワーを使って登場したんだからびっくりもするさ。 だが、ほどなくして朝倉は結論を導き出す。 「……そっか。そうだったんだ。あなた、自分の能力を自覚していたのね」 「その通りよ。あんたたちにばれるわけにはいかなかったからずっと隠してきたけどね」 ハルヒはナイフをつかんだまま、朝倉を睨みつけていた。こいつのバカ力でも朝倉のパワーには対抗するのは 厳しいらしい。じりじりとこちらに向かってくるナイフをフェイントをかけるように少しだけ手を動かして、 再度押し戻すという行為を繰り返していた。 ここでハルヒはぐっと朝倉のほうに顔を近づけガンをつけるようににらみを強めながら、 「で、どうする気? 情報封鎖を解いて、あたしが自覚していることをあんたたちのボスに連絡する? できないわよね。そんなことをしたら独断専行で自分の本体を抹殺しようとしたことがばれるんだから」 この指摘に対して、朝倉は余裕の笑みを浮かべたまま、 「大丈夫よ。あなたが力を自覚している以上、情報統合思念体の意思はすべて一つに統一される。すなわち、あなたの抹消。 これはずっと前からの確定事項よ。今更確認や許可を取る必要もないわ」 やっぱりそうなるか。となると朝倉の目的は長門と俺の殺害から、ハルヒの抹殺に変更されことになる。 もちろんそれが完了した後、今度は地球ごと抹消するだろう。 朝倉はここでクスリと笑うと、 「ずっと隠し通してきたのに、何で出てきちゃったのかな? やっぱり彼のことが心配だった? わたしは有機生命体の死の概念はよくわからないけど、やっぱりこの男が大切なのね」 「そんなんじゃないわ」 ハルヒはナイフの刃を握る手を強めると、きっぱり言い放った。 「あたしがここに来たのはあんたを始末する絶好のチャンスだと考えたからよ!」 その言葉と同時に、ナイフの刃がまるでガラスのように木っ端微塵に砕け落ちた。それを見た朝倉は慌てて 後方数メートルの位置へ大ジャンプする。俺が始めて長門と朝倉が本当の人間ではないと認識させられたあの人間離れしたものだ。 すぐにハルヒは俺のそばに立ち、 「いい? 邪魔になるだけだから余計なことはしないで。あいつの相手はあたしがするから」 「おい、大丈夫なのか? 今まで――勝てる見込みはあるのかよ!?」 俺の問いかけ。ハルヒの顔はいつの間にか顔中に浮かび上がってきていた汗が、髪の毛を乱れさせている。 そして、こう言った。 「勝つなんて……今までだって逃げるだけで精一杯だった相手よ」 それを言い終えるや否や、朝倉のほうへもうダッシュをかける。一気に間合いを詰めて、見事な曲線を描いた蹴りを 見舞おうとするが、朝倉はあっさりとまるで発泡スチロール製の棒を受け止めたように右手のひらでそれを受け止めた。 続いてまるで蚊をはたくようにその手のひらを動かすと、ありえない衝撃が起きてハルヒの身体はあさっての方向へ 吹っ飛ばされる。だが朝倉の攻撃はそれでは終わらない。同時にあいていた左腕をかざすと、あの光沢の鋭い槍のようなものを 発生させ、それをハルヒのほうへ投げつけた。 投げつけられた衝撃そのままにハルヒは部屋の壁に激突し、しばらく痛みにこらえていたが、すぐに攻撃第二波に気がつくと、 大きく右腕を振りかざす。ハルヒの目前まで迫っていた光の槍はその一振りで粉砕されたようにさらさらと消え失せた。 今度は自分の番だと考えたのか、再度ハルヒは朝倉に向かって突進を始める。そして、大きく振り上げた拳で 朝倉を殴りつけようとするが―― 「無駄よ。有機生命体の物理接触はわたしには何の意味もないわ。異常な能力を有していても、所詮ベースは有機生命体。 それでわたしに勝てると思っている?」 朝倉の声は全く違う方向から聞こえてきた。瞬間移動でもしたのか、朝倉の姿はさっきまでいた場所から消え失せ、 ハルヒの背後に立っていた。一度殴りかかる体制に入ってしまっていた以上、ハルヒの拳は途中停止することが出来ず そのまま大きく空を切った。もちろん、それを背後からただ見ているだけの朝倉にとって、まさに隙だらけの瞬間だろう。 すっと朝倉が右腕を振り上げると、まるで床から何かが吹き出たような爆発が起き、アッパーでも食らった姿勢で ハルヒは吹っ飛ばされた。衝撃そのままに床に落下して、さらにダメージを増幅させる。 「あら今のにも耐えちゃうんだ? それならこれでどう?」 朝倉の攻撃が続く―― それ以降も、一方的な展開は続いた。朝倉の超宇宙的パワーの連続攻撃にハルヒはなすすべもなくさらされ続け、 すでにセーラ服がずたずたになり、身体中に出来た傷から出血を起こしている。さらに内臓レベルでもダメージが酷いのか、 時折かはっと口内を切っただけではあり得ないほどの量の血を口から吐きだしていた。 一方的すぎる。戦っているのではなく、これでは一方的に虐待されているようなものだ。しかし、朝倉は 別にハルヒをいたぶって遊んでいるようではないらしく、 「やるじゃない。さっきから全て致命傷を負わせているはずなのに、ぎりぎりのところで全部回避しているなんて。 どこでそんな経験と技量を手に入れたのかしらね」 そう言っていつもの柔らかな笑みを浮かべた。口の周りに付いた血を拭いつつ混濁した目になってきているハルヒとは対照的だ。 だが、それでもハルヒはまだ諦めるつもりはないと言いたげに朝倉を激しく睨みつけている。 それもそうか。朝倉にごめんなさいと言っても助けてくれるわけがないからな。まさに純粋な命をかけたやり取りが 目の前に繰り広げられている。 朝倉は右腕を光る凶器に変形させると、横殴りでハルヒの脇腹をえぐる。踏ん張る力もなくなってきたのか、 それをなすがままに受け入れてしまったハルヒは強烈な勢いで壁に叩きつけられる。そして、がくりと床に 膝を付けてしまった。しかし、気力は落ちていないとアピールしているのか、すぐに顔だけは朝倉へにらみを飛ばしている。 「いい加減諦めたら? わたしにはわからないなぁ、どうしてそこまで抵抗するの?」 「黙って殺される奴なんていないわよ……!」 朝倉ののほほんとした言葉に、殺気の篭もった声を返すハルヒ。だが、明らかにその声は普段に比べて、 しゃがれて弱々しくなってしまっている。 「でも、だんだんあなたの戦い方が解析できてきたわ。次で終わりよ」 そう言って今度は両腕を光る凶器へと変貌させた朝倉は、ゆっくりとハルヒ近づいていく。 それに対して、ハルヒはふらつく足を何とか持ち上げるように立ち上がり、次の攻撃に身構える。 その時だった。 「なーんちゃって♪ フェイントよ」 唐突に朝倉は変貌させていた腕を元に戻した。これにハルヒははっと驚愕の表情を浮かべた。 朝倉はさらに近づきながら、 「わたしの攻撃寸前に情報操作でそれを回避している。それがあなたのやり方。でも、ばれたらそこまでね。 あなたの情報操作をわたしので上書いてあげる」 高速に読み取れない言葉が朝倉の口から流れた。 ――その瞬間、目を開けていられないような閃光が俺の視界を覆った。俺は目が焼かれないぎりぎりのところで 目を強くつむり、まぶたの上からですら発光が感じられるそれが過ぎ去るのを待つ。 ほどなくして、俺の視界が暗闇へ戻った。恐る恐る目を開けると、 「ハルヒっ!」 思わず叫ぶ光景が広がっていた。長く伸びた朝倉の腕がハルヒをまるで絞首台のように首をつかんでつり上げている。 ほとんど息が出来ない状態に追い込まれているのか、ハルヒは朝倉の腕を放そうと手でそれを離そうとしている。 だが、朝倉の腕は石化したようにハルヒの喉に食い込んだまま離れる気配すらない。 「あら、身体を粉々に砕くつもりだったのに、またぎりぎりでわたしの情報操作をさらに書き換えたの? 凄いじゃない。 でもこれでも十分だわ。このままあなたをじっくりと絞め殺してあげる♪」 朝倉は珍しく感嘆の声を上げた。一方のハルヒは徐々に酸欠が酷くなってきているのか、顔は赤く染まってきて、 苦しさを紛らわせるためなのか足を激しくばたつかせていた。 このままではハルヒは確実に死んでしまう。俺は思わず長門を抱きかかえたまま立ち上がり、 「止めろ朝倉! 何でこんなことをするんだ!」 俺の叫びに朝倉はやはり表情はやわらかいまま、 「なぜって? 危険だからに決まっているじゃない。それが情報統合思念体の共通意識よ」 「どうして危険なんだ! ハルヒはお前たちに危害を加える意思なんてないんだぞ! 大体今だって お前の方が圧倒的に強いじゃないか! おかしいだろ!」 無我夢中に俺は叫び続けるが、朝倉はあっけらかんと、 「確かに涼宮ハルヒはただの有機生命体にすぎない。わたしたちのように上手く情報操作なんてできないわ。 これだけ抵抗できること自体が驚きよ。でも、そんなことは関係ないの」 ――もうハルヒの顔は赤を越えて、紫色になってきていた。これ以上は耐えられないぞ。 朝倉は続ける。 「情報統合思念体は危険な情報創造能力を有する涼宮ハルヒ、およびそれの影響下にある人間は 決して見過ごすことは出来ない。でも、それを自覚しない限りは危険でもないし、逆に有意義な観測対象になるわ。 できれば、それは避けて欲しい事態だったんだけど、自覚しちゃっていたんだからしょうがないよね」 そう言いながらさらに腕に力を込めて、 「じゃあ死んで」 さらにハルヒの顔色が――直視できないほどゆがむ。 「やめてくれぇっ!」 情けないほどの叫びをあげる俺。 やめてくれ。ハルヒを殺さないでくれ。頼む……頼むから……! ………… 「こういう光景を背後から見ているのって、結構恥ずかしくなるわね」 唐突だった。見れば、朝倉の背後にハルヒが立っていた。もちろん、今にも絞め殺されそうになっているハルヒは そのままの状態である。 これに気が付いた朝倉の表情が驚きに満ちたものへと変貌した。全く予測していなかった――いやしてやられたと 思っているに違いない。ちなみに俺は何が起きたのかさっぱりだ。 すぐに朝倉は肩の力を抜いて動こうとするが―― 「遅いわよ! 情報連結解除開始!」 朝倉に背後に立ったハルヒがぱちんと指を鳴らす。同時に首を絞められていたハルヒがつかんでいた朝倉の腕から 俺の世界で長門が朝倉を始末したときのように、さらさらと粉末状に分解されていった。 「そんな……!」 驚愕と困惑。そんな感情が入り交じった表情で、朝倉は呆然とつぶやく。 やがて、つり上げ状態だったハルヒは拘束状態を解かれそのまま床へと落下する。 朝倉は消えていく自分の身体を見ながら、 「最初からこうするつもりだったのね。ダミーを仕込んでおいて、わたしがその相手をしている間に、 情報連結の解除の準備を進める。その後に、ダミーを介して実行か。やってくれるじゃない。 有機生命体にここまでしてやれるなんてショックだなぁ。あーあ、しょせんわたしはバックアップでしかなかったか」 困ったような顔を浮かべている割には、声に深刻なものを感じなかった。死の概念について理解していないってのは 本当のことなのだろう。 ふと、俺の方に朝倉は振り返ると、 「よかったね、延命できて。でももう遅いわ。涼宮ハルヒの力の自覚は、最優先報告事項。例えわたしを消せても、 そこにいる長門さんが情報封鎖を解除後に、情報統合思念体へ報告する。それであなたたちは終わりよ。 例え長門さんがエラーで報告できなくても、他の対有機生命体コンタクト用インターフェースが報告するだけ。 どうやってもそれから逃れる方法なんてないわ」 あくまでもあのクラス委員スマイルを崩さなかった。そして、最後に一言だけ。 「涼宮さんと残り少ない時間をお幸せに。じゃあね」 そう言い残すと、完全に消え去っていった。 同時に、朝倉の背後に立っていた方のハルヒが消え失せ、さっきまで絞首刑状態だったハルヒの方が 激しく酸素を求めて咳き込み始める。 「おい大丈夫か!?」 俺は一旦長門を降ろすと、かなりダメージの大きいハルヒの元へ駆け寄った。少しでも楽になればと、背中をさすってやる。 どういうことなんだ? さっきの話だと首を絞められていたのは偽物だと思っていたが…… 「途中までホンモノだったわよ……あ、あいつをごまかすためにはあたしなんかが作る偽物じゃ…… すぐにばれる……だけだったから……!」 息切れしながら答えるハルヒに、俺は無理すんなとさらに背中をさすってやる。 何はともあれ危機は脱出できたみたいだ。一時はどうなることかと思ったが、あの朝倉すら撃退してしまうとは 全くハルヒ様々を越えて、崇め讃えたくなるよ。 ハルヒは自らの傷の手当てをすませたのか、ぼろぼろのセーラ服以外の傷を全て治し、すっと立ち上がると、 「まだよ……始末しないといけないのがもう1人いるわ」 さすがに体力までは回復していないようでだるそうな声を上げるハルヒ――ってちょっと待て! もう1人ってまさか!? ゆっくりと長門に近づいていくハルヒに、俺はあわててその前に手を広げて遮った。長門はいつの間にか 正座の姿勢になってこちらをじっと見つめている。 「待て待て! さっきの話も聞いただろ? お前の失敗が情報統合思念体にばれていないのは長門のおかげだぞ。 それにどうやら文芸部活動の影響でろくに機能できていない――つまり普通の人間と大して変わらない状態ってことで、 始末する必要なんてないはずだ!」 「状況と意味合いが違いすぎるわよ! 朝倉も言っていたじゃない、あたしの自覚についてさ。だから、報告される前に 何とかしないと手遅れになる。まだ朝倉の封鎖壁はそのままだから、ここでどうにかしても奴らには気づかれない。 やるなら今しかないのよ!」 そう言いながらハルヒは俺をどけと振り払おうとするが、必死にそれに抵抗した。冗談じゃねえ。 朝倉抹消なら諸手を挙げて賛成するが、長門にまでそんなことをするなんて論外だ。もう俺の中じゃこいつは インターフェースじゃない。文芸部の大切な一員なんだ。それをむざむざ消されてたまるか。 だが、ハルヒは俺の呼びかけに全く耳を傾けようとしない。文芸少女・長門の姿を見ていない上に、 ついさっきまで同じインターフェースである朝倉に虐殺されそうになったんだから無理もないか。 そうなると説得する先はハルヒではなくて、長門になるということだ。 俺はハルヒの肩をつかみ、 「お前の不安はよくわかっているつもりだ。だが、少しだけ俺に時間をくれないか?」 「……どうするつもりよ?」 ジト目でハルヒが返してきた。俺は長門を指差し、 「俺が長門にお前のことを報告しないよう説得してみる」 「できるわけ?」 「ああ……」 そう言いつつ、正座姿勢へと戻っていた長門の前に俺は立つ。そして、しゃがみこみ話を始める。 「災難だったな。大丈夫か?」 「このインターフェースへの外傷は確認されていない。ただ……」 ――長門は一瞬言葉に詰まりつつも、 「朝倉涼子が指摘したことは紛れもない事実。わたしは情報統合思念体との相互通信が正常に行えない状態に陥っている。 たとえこの情報封鎖状態が解かれても、今回の事実を的確に報告できる可能性は低い」 「そいつはかえって好都合だ」 俺はぐっと長門の肩をつかむと、 「頼みがある。今回の一件でお前もハルヒが自分の力を自覚していることを理解したよな? それをお前の親玉には 報告しないでほしい。できるか?」 「…………」 長門は無言のままだ。しかし、その無表情から俺はしっかりと迷いの感情を読み取っていた。俺はもう一押しだと思い、 長門の前でぐっと頭を下げ、 「すまん、頼む! でなけりゃ俺たちはお前をここでどうにかしなきゃらなくなるんだ。だが、俺は絶対にそんなことはしたくない。 まだあれだけ苦労してやり遂げた文芸部の存続の結果わかっていない状態でお前がいなくなるなんて耐えられねえ。 だからお願いだ。報告しないでくれ。そうすれば、朝倉がいなくなっただけで何もかも元通りなんだ!」 話しているうちにテンションがあがってしまい、俺は長門の両肩をつかんでいた。 長門はそんな俺をただじっと黙って見つめていた。簡単には答えは出せないのだろう。役割を放棄しろと 迫っているんだから無理もない。ある意味自分の存在を否定しろと言われているんだから。 と、ハルヒが背後から近づいてきて、 「キョン、もうすぐ朝倉の封鎖壁が崩壊を始めるわ。これ以上は待てないわよ」 「……わかっているさ!」 いらだちのこもった声で返してしまう俺。頼む長門、イエスと答えてくれ。頼む…… たぶん長門が返事をするまで数十秒程度だっただろう。しかし、その時間は俺にとっては数時間にも感じられた。 よく聞く話だが、緊張で硬直した神経が時間間隔を加速させているんだろうな。 そして、長門は答えた。少し――本当に少しだけ頭を下げるという行動で。 俺は念のために確認を取る。 「それはハルヒのことは秘密にしておくってことでいいんだな。少なくとも俺はそう受け取るし、信じる」 「その認識でかまわない。あなたの言うとおり、朝倉涼子の暴走の件以外、情報統合思念体には報告しない」 今度は言葉ではっきりと長門はイエスと答えた。思わず歓喜の声を上げてしまいそうになるが、一応平静さを保っておく。 すぐにハルヒのほうへ振り返ると、 「どうだ? これで文句ないだろ。お前のことは連中には知られないし、人類滅亡もない」 「ずいぶんあっさりと信じるのね。そんな口先だけの言葉を信じろって言うわけ? それに――」 ハルヒは視線を長門のほうへ向けると、 「いったいどう収拾をつけるつもりなのよ。大体、あたしの抹殺はあんたたちの共通認識なんでしょ? それを簡単に破れるわけ?」 その問いかけに長門はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと語り始める。 「なぜこのような判断を下すのは自分でも理解できない。わたしの内部エラー多発に関連していると推測している。 だがはっきりと言える。わたしは涼宮ハルヒの力の自覚について報告したくない。そして、その結果情報統合思念体が とる行動についても容認できない。これはわたしという個体内のみでの思考。わからない。なぜこんなことができるのか。 こんなことができてしまうのか。以前のわたしなら絶対にありえないこと」 その長門の目はすっきりと透き通ったものだった。これだけでも俺は確信できるね。長門は嘘なんて言っていない。 絶対に報告しないだろう。 長門は続けて、 「今回の話をするのももっと後でするつもりだった。だが、明日の文芸部存続の正否によってわたしの内部エラーは さらに増大するかも知れない。だから、今日しかタイミングがないと判断した」 なるほどな。昨日までは文芸部活動に忙殺され、さらに明日にはその結果が出る。今日はそのちょうど隙間ってことか。 ついでに言っておいてやる。お前がエラーと表現しているのはな、以前にも言ったが感情ってヤツなんだよ。 ほかの誰でもないお前自身が感じたことなんだ。それ自体、何ら恥じることもないし、むしろこの短期間で、 あのただボーっとしている状態からそこまで成長したことに俺は感激してしまうぐらいだ。 ハルヒはさらに続けて、 「朝倉のことはどうするつもり?」 「朝倉涼子の暴走についてはわたしの責任。それの処理をするのは当然。情報統合思念体には内部エラーで暴走し 敵性と判定後情報連結解除を行ったと報告する。あなたの関与については何も言わない」 「…………」 長門の回答にハルヒはしばらく目をつぶって考えていたが、やがて驚きの表情へと変化し、 「驚いたわ。こんなことを平然と言うインターフェースを見たのは初めてよ。あんた、いったいこの子に何をしたわけ?」 そう今度は疑惑の視線を俺にぶつけてきた。 俺は手を振りながら、 「だからこないだも言っただろう。ただ文芸部の活動をしていただけだって」 だが、その活動こそが命令以外何も動くことのできなかった長門の束縛状態を解放し、自由意志を手に入れられるきっかけを 作ったことは間違いない。やっぱり読書だよな、長門は。ああ、あとパソコンについてもそのうち教えてやるか。 俺の世界でのコンピ研との一戦以来、そっち方面にもまんざらでなくなりつつあるみたいだし。 ハルヒはやがて観念したようにため息を吐くと、 「わかったわよ。あんたたちの言うことを信じてあげる。でも言っておくけど嘘ついたりしたら本気で承知しないわよ。 どんな手段を使ってもあんたたちの親玉への報告は阻止するつもりだからね」 「その認識でかまわない。むしろ、わたしはそうしてくれることを願っている」 長門の返事。と、ハルヒはすっと長門に手を差し出すと、 「一応これからは仲間も同然だから、改めて自己紹介しておくわ。あたしは涼宮ハルヒ。あんたの名前は?」 「長門有希」 「長門……有希ね。有希って呼ぶわ。これからよろしくね」 「わかった」 長門はそう答えつつ、ハルヒの手をとった。 ……たぶん、史上初めて情報統合思念体とかかわりを持つものとハルヒがこうして友好的に手を取り合ったんだろうな。 俺はふとその光景にそんなことを考えていた。 ◇◇◇◇ やたらと長くなった長門のカミングアウト+朝倉暴走イベントが終わった後、俺とハルヒは長門のマンションを後にする。 封鎖壁を解除する瞬間、ハルヒはまだ信用し切れていないのかかなり緊張した面持ちだったが、その後長門と別れた後でも 特に世界に異常が発生した形跡はなかった。どうやら長門はしっかりと約束を守ってくれているらしい。 まあ、俺は最初から疑ってもいなかったけどな。 俺たち二人は夜と深夜の境目になりつつある時間帯の道を歩いていた。心なしか、さすがに対朝倉戦のダメージが残っている ハルヒの足取りがいつもより重く感じる。 俺はそんなハルヒを横目で見つつ、 「とりあえず礼を言っておくぞ。長門の言うことを信じてくれてありがとな」 「……別に完全に信用したわけじゃないわよ」 ハルヒは疲労感のこもった言葉を返してくる。何だまだ長門のことを疑っているのか? そんな不満を表情に出したのを読まれたのか、ハルヒは軽く首を振りつつ、 「そういうと語弊招くか。あの子――有希の言っていることは信用するわ。これでも人を見る目は鍛えてきたつもりよ。 あれは絶対に嘘やごまかしをしている目じゃなかった。あの子本心からの言葉なのは間違いないわ。でもね、 だからといって情報統合思念体に絶対に報告されないとは言い切れない。有希の意思を無視して、さっきの一件が 伝えられる可能性は否定できないわ」 「……それは……まあそうだが。でもよ、それを言い始めたらあの事態が起きた以上、長門に関係なく 起こるかもしれないって事だろ」 「そうよ。万一だけど、それに備えておく必要があるってあたしは言いたいの。しばらくはリセットをすぐ行える体制を とっておくつもりだから。いざとなったらあんたの意見なんて聞かずにとっとと実行するからそのつもりで」 ハルヒの言葉に、俺はなるほどと思った。確かに相手は宇宙規模の巨大勢力だ。どんな手段でハルヒの能力自覚を 察知するかわかったもんじゃない。しかも、それから派遣されたインターフェースの前で、はっきりとそれを証明してしまった。 何が起きても不思議じゃないってことか ふと、ハルヒは思いついたように、 「あ、そうだ。あとこれから有希の監視も含めてあたしもあんたと一緒に行動するわよ。今まではごたごた続きでできなかったけど、 しばらくはあたしにちょっかい出してくる連中もおとなしいだろうし――文芸部だっけ? あたしも入部することにするわ」 「それは一向に構わんが、下手をしたら明日廃部になるかも知れんぞ」 「それならそれで、別の部活なり同好会を立ち上げればいいじゃない。できるだけ有希のそばについていたいしね。 なんていうか――いい子だわ。朝倉みたいなインターフェースばかり見てきたから少し偏見が減ったかも」 だんだん、俺の世界の団長様に近づいてきたな。元はほとんど同一人物みたいなものだし、同じ状況になれば、 抱く感情も似通ってくるのだろう。 だが、ハルヒは今良い事を言った。廃部の場合は新たに同好会でも作れば良いということだ。なるほどな、確かに最悪の場合は その手もあるか。あっという間にそこにたどり着けるとは、さすがのポジティブ思考ぶりである。 「ところで最近の文芸部ってなんかあんたたちやたらと熱中していたみたいだけど、何をしていたわけ?」 ハルヒの質問に、俺は端的に入部した経緯・長門の読書狂ぶり・さらに廃部の危機にあることについて話してやる。 それなりに雄弁に語っていたつもりだったが、俺の話が進むに連れてハルヒは眉を次第にひそめてしかめっ面へとなるのは何でだ? 「……ずいぶん有希と仲が良いじゃない」 そりゃ怒涛の文芸部活動に打ち込んでいたからな。それなりに連帯感つーか信頼関係ぐらいは築けて来るさ。 だが、ハルヒはますます口をとんがらせそのまま黙ってしまった。何だよ一体。 結局そのまま俺たちは別れ、別々の帰宅の途についた。 涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの軌跡
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4331.html
午前中。休み時間とは名ばかりの、次の授業への移行時間かつ執行猶予時間の際。 俺は……古泉は登校しているのだろうか、長門はどうしているだろうかなどを自分の席に着いたまま黙考していた。 「どうしたんだい? あまり元気がないみたいだけど。なにか悩みでもあるの?」 国木田はこちらへと近づきつつ俺に問いかけ、俺は背後にハルヒが居ないことを確認すると、 「……悩みが多すぎるのが悩みだな。正直まいってるよ」 「ふうん。てかさ、涼宮さんも何だか元気がないみたいだね。ひょっとしてケンカした?」 普通は聞きにくいようなことを飄々と聞いてきた。国木田よ、俺とハルヒはケンカするほど仲が良いわけじゃ……。 いや、あるのか。いつも俺がボッコボコにされてるが。国木田はなおも飄々と、 「聞きにくいって? もしかして、キョンと涼宮さんのケンカは犬も食わない感じになってるの? それなら、僕がそれを聞いちゃったのは野暮だね。ごめん、謝るよ」 謝られたが、考えてみれば野暮なことはないよな。そして、 「……勝手に俺たちを夫婦にするのはよしてくれ。それより、ハルヒが元気ないって?」 あいつが? ……俺には、息巻いて不思議探索に精を出そうとしていたようにしか見えなかったが。 「キョンは気付かなかったの?」 「……俺には世界を作り変えちまいそうなほど元気に見えたがな。もしハルヒがそうだってんなら、多分、俺がまだポエムを書いてないのが原因だろう」 「おいおい、いい加減早く書いちまえよな? お前なら、いままで恋愛経験がなくても関係ねえ。涼宮とのアレコレでも書いてりゃいいじゃねえか」 谷口がどこからか沸いてきた。谷口、俺はハルヒと、それこそ人に言えないようなもんしかしてないぜ。 「それは大胆だねキョン。ここは学校だし、そういった情事的な告白は自重した方がいいんじゃない?」 俺の言葉に国木田がひどい齟齬を発生させちまった。こいつが耳年増なことを言ってるのは、人畜無害そうなツラしてるのが原因だろうか。谷口は国木田に、 「バカ言え。こいつにそんな甲斐性があったら困るってよ。ムッツリな奴ってのはそんなんじゃねえ」 「誰がムッツリだ。おいお前たち、いや、アホその一とその二。妙な勘違いしてやがると俺の怒号より先に、ジェットエンジンを積んだ地対地ハルヒミサイルがアホを感知して飛んできちまうぞ。俺はそれの巻き添えを喰らいたかないね」 「勘違い、ねえ」と声を揃える二人。もといアホ供。そのなかでも特にアホな方が、 「……しかしもう一年になるんだな。お前と涼宮が、一緒に過ごすようになってから」 ――この谷口の台詞は、まんま俺が自分の部屋のカレンダーを見て思った言葉と一緒だった。 四月。ハルヒと出会った日付に、俺が記した印。 記憶をなくしちまった異世界の俺は……その印を見て、何を思っているのだろうか。 「俺はなキョン。涼宮とお前が出会ったのは良いことだったと思ってんだ。あいつが奇行をするのは変わっちゃおらんが、中学の頃のそれとはダンチだぜ」 右手を肩の位置ほどまで掲げながら、やれやれとばかりに話す谷口。 ――俺は話の内容より、谷口の姿を改めて見たことによって一つ思い浮かんだことがあった。すぐさまそれを聞こうと、 「……そういえば谷口。お前は、ハルヒとずっと一緒のクラスだったよな?」 「ん? ああ、中一の時から現在進行形でそうだろ。なにを今更言ってんだ?」 「聞きたいことがあるんだが」 もしかして、こいつはハルヒが異世界を作っちまったヒントを知ってるんじゃないだろうかと思った俺は、「あいつさ、中学の頃から宇宙人やら諸々を探し回って、不思議なものと会いたがってたんだろ? それでさ、なにか……他に変わったことしちゃいなかったか? もしくは、あいつの悩みでも願いでもなんでもいいんだ。教えてくれ」 そうだ。異世界じゃそういったハルヒの願いは叶ってる。その世界がそんなイレギュラーな事態になってるんなら、他に……何かがあるはずなんだ。若干の期待を込めつつ聞いた俺に谷口は、 「知るか」 という端的な答えを出した。冷たい言い方に俺がすこし傷ついていると、 「中学の涼宮の行動はオールラウンドに変わってたぜ。それこそ全部が変だったもんで、それがあいつの普通になってたくらいだ。……そりゃ今でも変わんねぇが、高校に入ってから変わったもんが一つあるな」 谷口は、話の後半部分になるとニヤニヤした顔を俺へと向けて話していた。やめとけ。マジモンのアホみたいだぞ。 とは言わず、それは何だと聞き返すと、 「高校に入ってから涼宮に告白したヤツがいたんだが……涼宮は断ったらしい。中学の頃じゃ考えられねーよ。でな、東中出身のヤツらの間じゃ眠り姫伝説ってのがあったんだ」 もちろん眠り姫ってのは涼宮だ。と続けて、 「眠り姫ってのはつまるところ、涼宮が寝ぼけたこと言いながら正気の沙汰とは思えん行動ばっかやってたからさ、皮肉で付けられたあだ名だよ。そんで、あいつが目を覚ますのは、あいつにちゃんとした男が出来たときだって言われてた」 また谷口は俺をアホ面で見ながら、 「涼宮が男をとっかえひっかえしてたのは、いつまでたっても現われやしない王子様を探してたんじゃねえかって噂が立っててさ。で、あいつは眠ったまんまで王子様が誰だかわからねーから、とりあえず全員オーケーしてたんだろって話だ」 「馬鹿言え。ハルヒが王子様を探してる? あいつが全員の申し入れを受けてたのは、単に断るのがメンドーだっただけだろ」 「それは違うんじゃないかな? そっちのほうが面倒じゃん。涼宮さんなら、斬り捨て御免でサヨナラすると思うけど」 「だが……」 ……と俺は言いかけて停止した。谷口の話を聞いて、一つ不安な考えが頭をよぎっちまった。こいつらとハルヒの恋愛観について侃々諤々としてる場合じゃない。 眠り姫。 スリーピング・ビューティ。 まさか……あの、閉鎖空間から抜け出たときの行動をやれなんて言わないよな? ……俺がなんとも言えない気持ちになっていると、 「でもさ、涼宮さんはその人の告白を断ったんでしょ? じゃあ、もう涼宮さんは王子様を見つけちゃったの?」 「――なっ!」 思わず驚嘆の声を発した俺に、 「何驚いてんだよキョン? いつになく素直な反応じゃねえか」 「うん。まるで好きな人に彼氏がいたのが発覚したみたいな反応だったね」 アホがアホなことを言ってきた。こいつらにアホ言うなとは無理かもしれないと思いつつ、 「お前等がアホらしいこと言ってるからだ。あいつに男なんかいやしないし、第一、今でもハルヒは天真爛漫な行動してるじゃねえか。谷口の予測も外れてるってことだ」 そう言うと、谷口は何故か盛大に嘆息した後に、 「噂は噂だ。与太話でしかねえよ。けどな、じゃあなんで涼宮はそいつの告白を断ったと思う? 俺が言うのは業腹だが、そいつは中々の良識人だったぜ。見た目だって悪かねえ」 「そりゃSOS団があるから……」 「ああ、わかった気がするよ。谷口の言いたいこと」 俺の言葉を途中で止めた国木田は、 「涼宮さんは、今度は王子様と一緒になってキテレツな行動をやり倒してるんだね」 「そういうこった」 俺の目の前に二つのアホ面が広がった。 つまり、こいつらは俺が王子様だと言いたいらしい。なんとアホな。谷口、国木田よ。俺が王子様に見えるんなら、俺が跨っている馬はハルヒだぞ。むしろ、俺がじゃじゃ馬に乗っかってるから王子様に見えるのか? 何処をどう見たら、無残に振り回されまくりの俺の格好がそう思えるんだろうね。 俺はそんなことを考えながら二人を追っ払い、少々残念な気持ちをそのまま溜息として吐き出していた。 実を言うと俺は、谷口がこの異世界問題の解決の糸口を持ってきてくれるんじゃないかと淡い期待を抱いていたのだ。 そう。長門が世界を改変し、俺以外のみんなの記憶が消えちまった時、あいつは俺とハルヒを引き合わせるキッカケをもたらしてくれた重要人物だったからだ。そして、この谷口は―― 残念以外のなにものでもなかった。 そして昼休みになる。俺はいつものトリオでの昼食会を辞退し、文芸部室へと足を運んでいた。 理由なら沢山ある。長門の様子だって気になるし、ポエムだって書かなきゃならない。教室じゃ恋のポエムなんぞ書けるはずもないため、どうせなら部室で長門と肩を並べながら頑張るのも良いかなと考えたのだ。長門にとっても、戦友がいたほうが退屈しないで済むだろうしさ。古泉は……まあ、気にならないわけではないが来てないとしても俺にはどうしようもないことだし、そもそもあいつが学校にまで来れない理由というのがわからん。よって、俺は数ある懸案事項の中で、ポエム作成と長門についての問題を優先して選択し対応することにしたのだ。 そんな雑多なことを考えながら部室へと到着し、扉を開いた俺は…… 「うお」 室内の長門の様子を目に入れて思わず声を漏らす。 「……今日は、本読んでないのか」 長門はこちらへと振り返ることもせず、顔を窓際へと向けたまま、自分の席に閑寂と着座していた。 「長門?」 俺が呼びかけてみても、一ミリの返答すら返ってこない。 「……機関誌借りていいか?」 「…………」 沈黙を了解の合図とした俺はかつての長門を見習い、ポエムの作成に温故知新的な希望をもって小説誌を開いた。 ……が、何故か俺は自分の小説ではなく、長門の小説を読み返したいと思いながらボンヤリとページを捲っていた。 「………ん?」 長門の小説を探していた俺は、機関紙が検索を終えてパラリと閉じられたことに違和感を感じた。なぜなら、俺はあいつの小説を見つけることが出来なかったのだ。 そして何度か再検索してみるものの、一向に長門の小説は姿を見せない。 というより、ない。 それが俺の勘違いでないというのは、目次として記されている作品掲載順序と実際の順番の不一致が証明してくれている。 そう。本来ならあるべきはずの場所に、あいつの小説がポッカリと消えてしまっているのだ。 「………?」 ――なにかがおかしい。嫌な予感がする。何か……とてつもなく大きなものが俺を待っている気配が、この部室内からですら漂っている。 「長門」 もちろん返事はない。しかし、それがもちろんのことになったのはつい先程のことだ。これも、本来なら変なんだ。 「……機関誌なんだが、お前の小説は何処へ行った?」 「…………」 無言で部室の隅を指差す。俺はまるで札を貼られたキョンシーの如く何も考えず諾々とその指示に従い、長門が指差す先へと歩き出した。 「………?」 壁に突き当たった俺は、またもや沈黙と疑問符を浮かべることとなった。 ここには、円筒状のゴミ箱しか置かれていない。 行動の選択肢が一つしかなかったため、俺は何を思うわけでもなく、ゴミを漁るというあまり宜しくない行動に出た。 ……そして思わぬ収穫物を手に入れた俺は、ここで、やっと意識を取り戻すこととなる。 「――誰が……こんなことしやがった」 俺が手にしているのは……長門の小説だ。見事なまでの手際で切り取られたであろう数枚の紙の姿に、俺はそれを認めることが出来ないでいた。 いや待て。待て待て。わからん。不愉快よりも、不可解さが先に来る。 何が起きてる? いつ始まった? どうしてこうなってる? 真っ白になった頭の中で数々の疑問がひしめく中……俺は思わぬ言葉を、紛れもない長門の声で耳にする。 「わたしがやった」 ……は? なにをだよ。 「それ」 俺は手元を見る。そこにあるのは、もちろん…… 「―――長門っ!?」 質問するには不明なことが多すぎた。俺は長門を一瞥し、そして普段とは違うこいつの雰囲気を認識するやいなやすぐさま駆け寄り、あいつの肩を掴みながらあいつの名前を叫ぶ。 「……なっ……お前、どうして……」 そして長門の双眸と目を合わせた俺は……そこにあるものを感じ、狼狽を隠せずにいた。 「今のわたしには、必要ないものだったから」 そう話す長門の瞳の中には…… 何も、存在していなかった。 今つくづく思う。昨日までのこいつには、いや、初めて出会ったときだってそうだ。無感動ながらも、確かに何かが存在していたのだ。 しかし、俺の目の前にいるこの長門には……何もない。あの黒い瞳はまるで乾いた氷のようにくすみ、光を失ってしまっている。初めて俺は……こいつの姿に虚無というものを見て、例えようのない戦慄を覚えた。 何かが起きてる。それは間違いない。この長門がおかしいってのも間違いない。 じゃあ、何で……長門はおかしくなっているんだ? 《あの日》を思い出したからといって、流石にこうまでなるとは考えにくい。ってことは、なにか他の原因でこうなっちまってるんだ。考えろ。どこかに……ヒントがあったはずなんだ。 昨日は何があった。なにかおかしかったところは?(帰り際にあったな)もしかして、長門は誰かに妙なことでもされたのか?(長門が?)じゃあ誰に?(あいつはどうだ)大体、長門をこんな風にして何の得がある?(ある。あいつには)今日何かおかしなところはあったか?(あいつは来ているか?)機関誌は……(最近あいつがずっと読んでたな)。 「……ふざけるな」 これは俺の馬鹿げた思考に対する言葉だ。くそ。何考えてんだ俺は。わかってるじゃないか。 古泉が……こんなことするわけねえだろうが!(機関はどうだ?) ――いい加減にしろ。そうだ、原因を考えたところでどうなるわけじゃない。今必要なのはトルストイ的思考方法だ。 まず、現在一番優先すべきことはなんだ?(そりゃもちろん長門を元に戻すことだ)それを果たすには?(思いつかないね)じゃあどうする。(何が出来る?)俺に出来るのは……(俺に出来ないなら……) 「喜緑さん……!」 あの人なら何か知っているはずだ。確証はないが、もとよりここで俺が無為に思考を巡らせるよりは彼女に何かしら聞いてみた方が上策というものだろう。 だが、ここの長門はどうする? 下手に校舎内を引っ張って連れて歩こうものなら、ハルヒが追尾してきたりだとか俺が破廉恥な輩だという無用の心配が生徒や教師間に蔓延ってしまうかも知れん。そんなもんに構ってる暇などありゃしない。 俺が行動を決めかねていると部室の扉がガチャリと音を立て、 「……おや」 立ち尽くす俺の姿に少々驚きつつ、見慣れたハンサム顔が進入してきた。 「いえ、長門さんが心配だったのでね。僭越ながらここへやってきたわけです。お邪魔なら引き返しますが」 何も聞いちゃいないのに訪れた理由をいつものスマイルで話す古泉に、 「古泉、これ頼む! あと、長門もだ! 俺は今から喜緑さんの所に行ってくる! 理由はすぐ解るはずだ!」 「……ど、どうしたんですか?」 俺は古泉の胸元に長門の小説を押しやり、されるがままにそれを受け取った古泉は当惑しながら俺に説明を求めた。 「何がどうなってるかは知らんが、事態は風雲急を告げまくりだ! よろしく頼……」 一目散に扉へと駆け出していた俺は途中で足と言葉を止め、唖然としている古泉を見ながら、 「……古泉。俺は、お前を信じてるぜ」 たとえ『機関』が――いや、誰が長門をこうしちまったとしても……古泉は、目の前の長門を守ってくれるはずだ。 俺はそれ以上足を部室に留めることなく、一路喜緑さんの元へと駆け出した。 とは言うものの、俺が目指したのは生徒会室だった。目的地に着いた俺はすぐさまドバン!と無作法にも勢いよく扉を開き、 「……なんだキミは。ここはそちらのイカガワシイ部室と違い、ひどく真面目に学内活動に取り組んでいる場所なのだ。無礼な入室の是非は推して測るべきだと思うがね」 突然の闖入者に呆れ顔の生徒会長。少しも怯んだ様子が見受けられないのは感嘆だ。 「そういえば、機関紙の上稿の件があったな。詩集は完成したのかね? もっとも……キミのその様から鑑みるに、期日の延長でも哀願しに来たと考えるのが妥当な判断だが」 肩で息をしている俺に、会長は訝しげに言い放つ。 「……それも頼んでおきますよ」 ちゃっかりしたことを言う俺に、 「ふん。その程度の用件でわざわざ参られては、こちらが困るというものだ。期日を設定したのはそちら側だろう。そもそも今の私は、奇怪な団体に付き合ってる暇など皆目持ち合わせてはいない。この度の生徒会からの要求も実の所、便宜上の活動内容が欲しかっただけなのだ。詩集とやらはあのお祭り女が勝手に決めたことだ。今回、生徒会側はキミたちに契約不履行の罰則を何も提示してはいない。勝手に四苦八苦でも七難八苦でも起こしていたまえ」 会長があまりにも正当なことを言っているのでちょっと逆らおうと思った俺は、 「……少しばかり要求を急ぎすぎだった感は否めませんがね。せめて二学期から活動を求められれば良かったんですが」 「ふん」 いわれのない非難を受けて呆れ返ったような息を吐き、 「キミは喜緑くんの、折角の厚意を無下にするつもりかね。当初の生徒会側の申し入れを提案したのは彼女だ。……理解したのなら、早く退出したまえ。こちらは昼食をロクに摂れぬ程忙しい身なのだ」 「待ってくれ。俺はそれで来たんじゃないんだ……いや、ないんです。喜緑さんはいないんですか?」 「ほう。キミが我が生徒会秘書と謁見したいというのは何故だ」 答えてるヒマはない。いるかいないかどっちかだけ答えてくれ……という俺の質問は愚問だった。清濁併せ持つというか本来黒い会長がこの喋り方だってのは……。 「会長。どうやら彼はわたしに火急の用があるみたいです。すみません、少し席を外していて頂けないでしょうか?」 「……む。私とてヒマではないのだが。キミも良く知って……」 会長にニッコリと微笑む喜緑さん。これ以上会長が話しを続けていたらどうなるかわかったものじゃない。 「……よかろう。だが、手短に済ませたまえ」 絵に描いたような渋々とした風情で歩き去る生徒会長。生徒会活動に精力的なあの人の邪魔をするのは少々気が引けるな。 「構いません。わたしたちはここで、お弁当を食べていただけでしたから」 一転して会長に越権行為疑惑が浮上した。ちくしょう。権力を傘にきて、喜緑さんにちょっかい出してやいないだろうな。 「いえ。会長は素晴しい殿方ですよ?」 明るく言い放っているが、この人は会長の本性を知っているのだろうか。知らないとは思えないが……。 ――って、そんなどうでもいいことを考えてる場合じゃない。 「喜緑さん! あなたに聞きたいことがあるんだ! 長門の様子なんですが……」 急に笑顔のトーンを落とし、喜緑さんは悲しむ口調で、 「……はい。彼女に異変が発生しているのは知っています……その原因も」 ――よし、ビンゴ。当たりだ。原因が判明すれば、後はなんとでも対策は講じられる。 「……あいつはどうしちまったんですか? 多分、誰かに干渉されて――」 喜緑さんはゆるやかに首を横に振り、 「そうではありません。彼女は……禁を破り、死を願ってしまったんです。そして情報統合思念体からの処分を受け、現在の状態に保持されています」 「な……。あいつらが、長門を――?」 ――待て。思念体にとって長門は……世界人仮説を解明するとかいう、進化の希望だったんじゃないのか? それがあいつらの最重要目標だったはずだ。なのに、禁を破っちまったからといってホイホイとあんな状態に変えちまうのか? いや……もしかして、解明の作業には影響しないのだろうか? だがな、だからといって長門をあんな風にしちまうのは許され――って、 「ちょっと待ってください。長門が……死を願っただって? 死にたいなんぞを思ったってことですか?」 喜緑さんは視線を落としながら軽い困惑の色を顔に貼りつけ、 「……はい。長門さんのパーソナルデータが消去されていることから、それは間違いありません」 「長門のパーソナルデータが消えた? ……何となく意味は掴めるんですが、どういうことなんです?」 俺の質問に、喜緑さんはまるでカマドウマ事件をもたらした際のたじろぎ気味な雰囲気で、 「言うなれば……彼女はもう長門さんではないんです。現在の彼女は、いままでの長門さんの行動形式を思念体から暫定的に付加された、素体が一緒なだけの別人なんです。そして……」 更に沈み込み、唇を噛み締めるような様子で…… 「――もう、わたしたちが知っている長門さんが帰ってくることはありません。……彼女の中に存在する思念体は長門さんのものですが、これからどうしようとも……あの長門さんと同一のパーソナルデータが形成されることはありませんから……」 「………うそだろ」 ……喜緑さん。頼むから、そんな顔をしないでくれ……。それじゃ……。 まるで、打つ手がないみたいじゃないか……。 ――打つ手が……ない? いや……あるのか……? 「…………」 俺は揺らめく意識とおぼろになった現実感の中で、懸命に思考を成り立たせようと煩悶していた。 ……大人の朝比奈さんは言っていた。今日、長門の為に《あの日》へ飛ばなければならない、と。 だが、行ってどうなる? ――そう、そこなんだ。この現在は過去の延長なんだから、過去の空白を埋めても今が変わるわけじゃないはずだろ。 つまり……それは、長門がこうなっちまう現在を変えろってことなのか? だが、それは危険なんだ。俺たちは、歴史がどう変わるかなんて予想出来やしない。大人の朝比奈さんにいいようにされちまう可能性があるんだ。それに……。 長門が復調することは、大人の朝比奈さんにとって不利益なんじゃないか? 思念体は俺に、世界の矛盾を消して元の姿に戻さないかと提案してきた。それは、大人の朝比奈さんが消えちまうってことだ。ああ。そうだよ。そもそもが宇宙人や未来人や超能力者の上の繋がりは、純粋な利害関係で目的が一致してたから互いに敬遠していただけだ。思念体が長門を見限った今、『機関』や朝比奈さんの『未来』があいつを助けようなど考えるわけがない。 ……だが、最も頼りになる奴らは、長門を助けることに微塵の躊躇もありはしないんだ。 ――俺たち、SOS団には。 そして、今は俺の判断が一番重要な意味を持っているんだ。長門や古泉、恐らくは朝比奈さんも背後の黒幕から行動を制限されている。俺の行動如何によって、事態はあらゆる方向に進行してしまうのだ。世界の分岐点とやらがあるのなら、今が一番大事なポイントだ。 よく考えろ。俺に何が出来る? 俺の朝比奈さんに大人バージョンの彼女の存在を打ち明けてみるか……もしくは、博打だがハルヒに俺がジョンスミスだと名乗り出るかだ。危険度を考慮すれば前者だが、効果を考えるなら後者だ。どっちに………。 「………くそ」 どちらを選んだとしても、あまり良い結果が出るとは思えない。 ……それに現在俺の中では、上の奴らに向けているものとは別の怒りが大きくなり、思考することを邪魔している。 ――長門。お前は今大変な状況だが、一つ……言わせてくれ。 なにやってんだ。お前は。 死を願っただって? んなもん、願い事でも何でもねえ。お前は、死ぬほど悩んでたんだろうが。それで死にたくなったんなら、なんでこうなっちまう前に俺に言わねえんだ。いや、俺じゃなくてもよかった。ハルヒでも、朝比奈さんでも……古泉でも。そうさ、お前は一人で抱え込み過ぎるから《あの日》を起こしちまったんだろうが。……いや、それは俺が気付くべきだったよな。お前は何も悪かない。 けどな、長門。俺は誓ったんだ。お前に二度と……あんな思いはさせないと。 それはSOS団のみんなだって一緒だ。だから、俺たちはお前の悩みでも何でも共に背負って行きたいんだよ。 だが、お前がそれを教えてくれなきゃ……俺たちは、寄り添いようがなだろうが……。 長門。お前に一番必要なのはさ、自分が抱えてる悩みを仲間に伝えること――――。 ――ドクン。 ……この瞬間、俺の心臓がまるで今始めて鼓動し、その存在を知らしめるかの如く高く鳴り響いた。 「まさか……」 頭の中では、一人の少女の……笑わない仮面が笑ったような笑顔の映像が勝手にフィールインされていた。 「――喜緑さん! あいつは……朝倉はいないんですか!? いや、とにかく聞きたいことがあるんだ!」 慌てふためく俺を見ることなく、喜緑さんは視線を落としたまま、 「朝倉さんは……現在、思念体内に存在していません。彼女のパーソナルデータのバックアップも、失われています……」 「…………」 ――決まった。 俺は、行かなければならない。二度と行きたくはなかった《あの日》に。 そして俺は……二度と会いたくはなかったヤツに、今一番会いたいと感じている。 そう。朝倉は……長門の願いを、あいつの悩みを聞いているんだ。 ……《あの日》はまだ、終わっちゃいなかった――。 第三楽章・臨
https://w.atwiki.jp/my_hisuiwiki/pages/26.html
涼宮ハルヒの歌詞←