約 3,071,526 件
https://w.atwiki.jp/froyale/pages/59.html
【名前】涼宮ハルヒ 【出典】涼宮ハルヒの憂鬱 【種族】人間 【性別】女性 【声優】平野綾 【外見】 【性格】 【口調】 【備考】 以下、本編での活躍など +開示する 本編における動向 初登場話 死亡話 登場話数 スタンス 現在状況 キャラとの関係 キャラ名 関係 呼び方 解説 初遭遇話 [[]]
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5957.html
涼宮ハルヒの切望Ⅲ―side H― 「ありがと……ハルにゃん……みくるちゃん……」 今日もどっぷりと日が暮れている。 あの後、妹ちゃんが起きるまで部室に残っていたあたしとみくるちゃんは妹ちゃんをキョンの家まで連れて行ってあげたんだけど、なんとも妹ちゃんが「今日は泊まっていってほしい」とフリじゃない涙で型崩れしているうるうる瞳で訴えてきたものだからあたしたちも断るなんて真似は出来なかった。 そりゃそうよね。妹ちゃんは標準的な小学六年生と比べるなら明らかに幼く、まだ年齢が二桁に達していないみたいな容姿なんだから。 そんな女の子の泣き顔を無碍にできる人間がいるとしたらその人は即座に鬼畜認定よ。 とと、今、この場にはいない古泉くんのことを少し話しておかなきゃね。じゃないとまるで彼が妹ちゃんをないがしろにしたと思われちゃうし。 …… …… …… …… …… …… 妹ちゃんがあたしの腕の中で寝息を立てている。 あたしは彼女を起こさないように、いつもはキョンが座っているパイプ椅子に腰かけていた。 普段なら、その正面にはキョンとボードゲームを勤しんでいる古泉くんがいるんだけれど。 「涼宮さん、少しよろしいでしょうか?」 今日はあたしの横に、いつもの爽やかな笑顔が消えたなんとも思いつめたような表情で佇んでいる。 「何?」 「僕の知り合いに探偵事務所を営む方がおりますので、その方にも彼の捜索をお願いしようかと思うのですが」 ……妹ちゃんがここに来て、岡部が知っているっぽいところをみるともう警察も探しているでしょうね……でも日本の警察って、ネズミ取りには並々ならぬ使命感を持って励むけど、もっと重大で危険な仕事になればなるほど疎かにする傾向があるし、特に行方不明者捜索となるとあまり役に立っているイメージもないわね…… 遭難者捜索なんかいい例だわ。 見つかる時は不明者当人が自力で脱出するか遺体になってからだもん。 それなら私立探偵の方がまだ信用できるわね。だって民間なら業績を上げることに必死になるわけだから。 「ん。分かった。古泉くんはそれでお願い。実はさっき、有希も自分の知り合いに頼んでみる、って言ってたのよ」 いちおー古泉くんには有希が宇宙人だってことを今はまだ伏せておく。 だって信じられないだろうし。 「そうですか。では僕もその探偵事務所に今から、お伺いします。電話で話すよりも直に話す方が信憑性があるでしょうし、我々の必死さも伝わるでしょうからね」 「お願いよ」 「むろんです。僕も彼がいないと寂しいですから。皆さんと同じで」 言って、爽やかな笑顔が戻った古泉くんも部室を後にした。 もっとも、その笑顔には並々ならぬ決意を感じたけどね。 …… …… …… …… …… …… キョンの両親に挨拶して今日の宿泊を、あたしとキョンの両親両方に承認してもらった後、あたしたち三人はキョンの部屋への扉を開けた。 相変わらず平凡な机とベッドとほとんど漫画かラノベの本棚と洋服ダンスしかないあまり広くない飾りっけない部屋なんだけど何でだろう。どういう訳か、あたしの胸も苦しくなる。この部屋も主を失って寂しくなっているんじゃないかと錯覚を受けるから? 「じゃ、じゃあ中に入りましょう。妹ちゃん、今日もみくるちゃんと一緒に寝る?」 てことで、あたしは自分の気持ちを押し殺して努めて笑顔で問いかける。 妹ちゃんはなぜかみくるちゃんがお気に入り。 この辺りは普段エロい目でみくるちゃんをデレデレ眺めているキョンの血縁者なのかと勘繰ってしまうんだけれど。 隣でもみくるちゃんが宥めるような温かい笑顔を浮かべているんだけれど。 今日の妹ちゃんの反応はまったく違っていた。 「ハルにゃんと……ひっく……一緒がいい……」 御指名はあたしだったり。って、どうして? いつもはみくるちゃんって言うのに? 「だって……キョンくんが好きなのはハルにゃん……だから……キョンくんが好きなものと一緒にいたいし……それならキョンくんが傍にいるみたいだし……」 あの……何かサラリと重要なこと言わなかった……? 標準よりも明らかに幼いこの少女は男女と経験の違いはあれど同じ両親から生まれた云わば、同じ血肉で構成されているもう一人のキョンな訳で、言いかえればこの子はキョンの気持ちを誰よりも察してやれるってことだから…… いやまあ……妹ちゃんのことだから自覚ないんだろうけど…… って、どうしてあたしの顔が熱いのよ! だいたい今はそんなことを呑気に考えていられる状況じゃないんだから! …… …… …… う……文字通り天国から地獄って感じね…… 妹ちゃんからキョンの気持ちを聞いて一瞬、舞い上がったのに、今、現実はキョンが居ないってことを再認識した途端、テンションが180度降下したし…… その日、妹ちゃんはあたしから片時も離れることはなかった。 御呼ばれした夕飯はあたしの隣、お風呂も一緒に入ったし、今、キョンの部屋に戻ってきたときもベッドに腰掛けるあたしの膝の上に座っているし、みくるちゃんはキョンの母親が用意してくれたお客用布団の上にちょこんと可愛らしく座ってこちらを見つめている。 ちなみにみくるちゃんはキョンのほとんど使っていないことが一目瞭然の新品に限りなく近いパジャマを勝手に拝借して着ていたり。胸のサイズはともかく全体像は小柄なみくるちゃんだけに男物のだぶだぶパジャマがなんとも萌え。 え? あたしは何を着ているかって? いやその……妹ちゃんは気を使ってくれて妹ちゃんの同級生から桃色のパジャマを借りてきてくれてそれを着てるの。 ちょっと……じゃないか……結構ショックだったけどね……さすがに胸元のボタンを全部止めると苦しいんで三つある内の二つは外しているけどサイズが思った以上に合うし…… ううん……キョンの言葉に嘘はなかったか…… もうすぐ十二歳の十一歳小学六年生ってことで、他人の家に一人にさせるわけにもいかないってのも本当だった。 もうお分かりよね。 そう、あたしが着ている妹ちゃんの友達のパジャマは、先週土曜日、キョンが連れてきていたあの女の子のものなの。 名前は吉村美代子で、キョンが言った通称はミヨキチ。前にSOS団で機関誌を発行した時のキョンが自分の書いた小説に登場させた子よ。 だ、だって仕方ないじゃない……まさか制服で寝るわけにもいかないし、妹ちゃんの服は着れないし……それにYシャツ一枚は妹ちゃんの教育上、よろしくないんだもん! って、あたしは何で言い訳してるのかしら? 「ホントはね……キョンくんも一緒に行く予定だったの……」 ん? 「土曜日……おばあちゃんの家……」 ああ、それ。 「うん……だけどね……キョンくん……SOS団の活動を優先させたの……おばあちゃんの家に行くのって……一ヶ月前から決まってたのに……」 あ……! あたしが先週の土曜日に市内パトロールを開催することを決めたのは前日の金曜日。 筋としては先に約束した方に優先権があるのが当然なんだけどキョンはそれでもあたし……もとい、あたしたちの活動を優先してくれたんだ…… なんだか罪悪感が胸の内を広がっていく。 もし、キョンが家族の予定通り、土曜日に親せきの家に行く方を選んでいたとしたら? そうすればキョンが土曜日から日曜日にかけて一人になる時間はなかったわけで消息不明になるような何かが起こらなかったかもしれない…… 「ご、ごめん……」 あたしは妹ちゃんに陳謝するしかなかった。 「ううん……ハルにゃんの所為じゃないよ……それにキョンくん……ハルにゃんと話してるときとか一緒に遊んでるときって、すごく嬉しそうだし楽しそうだし……」 「そう……」 妹ちゃんの無理に繕った笑顔にますます落ち込んでいくあたし。 そんなあたしの表情をみくるちゃんはどこか物哀しげに見つめていた。 その後も妹ちゃんはキョンのことを喋り続けた。 キョンがどれだけあたしとSOS団のことを好きなのかを―― 眠気に支配されるまでずっと…… 涼宮ハルヒの切望Ⅳ―side H― 涼宮ハルヒの切望Ⅲ―side K―
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/23.html
キョン「涼宮って頭おかしいんだろ?」 鶴屋「そうね、むこういきましょ?」 ヒソヒソ ハルヒ「・・・・・・・・・・・」 電車が・・・・・・来る・・・・・・・・ あ ハルヒ「団員ども、宇宙人・未来人・異世界人・超能力者その他の不思議を見つけて来た者には 私の唇から直接唾液を与えるーーーッ」 キョン「あぶなーい『何でも溶かしそうな液』だ!」 ハルヒ「(´・ω・`)」 はるひ「………」 ハヒル「………」 八ルヒ「………」 キョン「どうしたんですか?この三人」 朝比奈「なんでも誰がハルヒさんのパチモンかでもめてるんですよ……」 キョン「別にそんなの決めなくても良いじゃん、だって三人ともちゃんとした人間じゃないか」 はるひ「お兄ちゃん」 ハヒル「キョン」 八ルヒ「キョン」 ハルヒ「キョ」 キョン「ただし本物に人権は認められない、だってキモイしwwww」 ハルヒ「………」 ハルヒが鬱病になりました キョン「ハルヒ…」 ハルヒ「うっさい!私に構わないでよ!!」 キョン「おい聞けよ!お前の事なんだよ!大事な事なんだ!これを聞いたらもう口を聞いてくれなくても良い!だから聞いてくれ」 そのキョンの真摯な瞳に私は黙ってしまった ハルヒ「………なんなのよ……」 そして彼の口からつむがれる言葉を待った キョン「授業の妨げになるから学校に来るな」 ハルヒ「………」 ハルヒ「全く、過疎ってどういうわけよ!な~にやってんねんホンマ!」 ハルヒ「そしてわが部室も今日も過疎(´・ω・`)……」 体育の授業で ハルヒ「ねえ!!!・・・誰か一緒にパス練習・・・・」 サッ・・・・・ ハルヒ「あ・・・・・・・」 鶴屋(ごめんね涼宮さん・・・・・) みくる(あいつと話したらゆるさねえかんな?) 朝倉「はい」(・・・・いじめは・・・人間の本能・・・か・・・) 長門(・・・・・・・・) 谷口「あいついつまで持つと思う?」 キョン「かけるか?三週間!」 『涼宮ハルヒの庭球』 ハルヒ「テニスするわよー!」 長門「ぶんぶん!」ナガモーン キョン「長門もう少し手加減しろよ、光速サーブ打つのは良いが全部フォルトだぞ」スパコーン みくる「いくでちゅ、『みくまるビーム』!」ミックルンルン 古泉「さながら『テニスの王女様』という感じですね、次は一人でダブルスですか」ウホホーン ハルヒ「キョン以外は上手いわね!さすが我が団員たち!…………ははは」 ↑上手いことハブられる団長 元祖いじめ ハ「わがSOS団は、文化祭で映画を撮ります!」 キ「古泉ほんとよえぇなお前。はい百円」 古「いやぁ、これでも家で研究してるんですがね」 ハ「配役はもう決めてあるのよ。まずみくるちゃんが戦うウェイトレスで未来人なの」 み「お茶ですよー」 キ「あぁどうも朝比奈さん、今日も似合ってますよ」 み「もう、キョンくんたら。お世辞が上手なんだから」 古「長門さん、何を読んでいるんですか」 長「人間失格」 ハ「それで古泉くんが少年エスパーね。初めは自分の力に気付かないのよ」 古「長門さん太宰ファンですか」 長「けっこう」 キ「あ、お茶っ葉替えましたか?」 み「あ、するどい。あたりー」 ハ「で、有希が宇宙人で古泉くんを狙ってるの」 キ「ひさびさに四人でファミレス行かないか?」 古「いいですね。……奢ってくれるんですか?」 キ「女性限定でな」 み「悪いですよー」 長「感謝する」 涼宮ハルヒの消失(いじめREMIX) キ「はい古泉負けー、100円!」 古「本当にあなたには敵いませんね。実は僕が弱いのではなくあなたが強いのではないですか?」 み「お茶ですよ~。ジャスミンティーでーす」 長「ありがとう」 キ「長門、お前も随分素直になったよな」 長「もうわたしは自分を恐れない」 古「それは喜ぶべき事態でしょうね。SOS団の絆は深まるばかりです」 み「長門さん、クリスマスの予定はありますかぁ?」 長「まだ決まっていない」 キ「じゃぁ今年も四人でクリパすっか」 古「いいですね。今年は国木田君や谷口君、鶴屋さんや部長氏、 多丸さん兄弟に新川さん森さんも呼んで派手にいきましょう」 キ「会長とか喜緑さんも巻き込んじまえ。この際だ」 み「わ~。楽しくなりそうですね!」 長「あなたの妹も忘れちゃいけない」 キ「おっと灯台元暗しだな。折角だし阪中とか中河とかも呼ぶか」 古「舞台の準備は僕におまかせください」 キ「期待してるぜ」 み「あれ、そういえば誰か忘れてませんか?」 キ「ん、誰だっけ、そういや2年前くらいまで5人だった記憶がないでもないな」 長「気のせい」 キ「そうか」 古「ですよね」 み「記憶違いでしたー、えへ」 キョン「ハルヒ好きだ付き合ってくれ」 ハルヒ「ほんと?あたしもよモチロン付き合うわ」 ガバッ(キョンがハルヒを抱きしめた) キョン「うわ!ハルヒ生臭!さんま!?」 ハルヒ「……」 ハルヒ「みくるちゃん!脱がせてあげるわ!」 みくる「わぁーやめてくだしぃー……うわ臭!くっさ!たらこ!」 ハルヒ「転校生が着たわよ!」 古泉「古泉一樹です」 ハルヒ「紹介するわ、あたしが団長の涼宮ハルヒ。こっちが団員1と2と3よ」 古泉「……なんだかここはアソコと同じにおいがします…」 ハルヒ「え?」 古泉「こいつか!団長くさ!くっさ!腐っただいず!」 ハルヒ「…………納豆?」 キョン「キメェ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ハルヒ「にょろーん(´・ω・`)」 ハルヒいじめ みくる「巨乳でも貧乳でもない凡乳乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 長門「乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 ハルヒ「……」 キョン「よりによって大晦日に全員呼び出しやがって、何の用だ?」 ハルヒ「SOS団の忘年会しましょう!」 みくる「あうう、私は鶴屋しゃん家にお呼ばりぇしてして…」 古泉「すみません、僕も知り合いの人達(機関)との忘年会がありまして」 長門「私は彼の家に呼ばれている」ギュッ キョン「おっと見せ付けるなよ有希りんwじゃあな、皆都合悪いので駄目って事で」スタスタスタ ハルヒ「そんなあ……」グスン 山根「良かったら……家に来るかい?」 ハルヒ「しねっ!」 キョン「おいハルヒ、お年玉やるぞ」 ハルヒ「何で体育館?なんでキョンは二階から話しかけてるの?」 キョン「ほーらお年だ、まッ!」ビシュッ ハルヒ「痛い!これバスケットボールじゃ(ry」 みくる「えーいお年玉でしゅ!」ポイッ ハルヒ「痛っ!えっみくるちゃ」 古泉「ふんもっふお年玉ですよー!」バシュッ ハルヒ「痛い痛い!」 長門「全力でお年玉」ズビシバキッ ハルヒ「有希まで、もういいから!皆止めてよ!」 キョン「うるせえ!ありがたく受け取っとけ!」ドガドガドガ みくる「これは楽しいでしゅ」ドガドガドガ 長門「古泉一樹の能力を少しだけ使える様にした」ドガドガドガ 古泉「これはイイお年玉ですよ、涼宮さん♪」ドガドガドガ ハルヒ「ひいぃ……///」 キョン「なぁ、ハルヒ。こんな話を聞いたことあるか?」 ハルヒ「いきなり何よ。どんな話?」」 キョン「旧校舎の一室に出る幽霊の話だ」 ハルヒ「え? 何々、何よそれ。初耳よ!」 キョン「何だ。お前が知らなんて」 ハルヒ「いいから早く教えなさいよ、何処に出るの!?」 キョン「ここだよ。文芸部室」 ハルヒ「何ですってっ!? 本当に!?」 キョン「あぁ。本当だ。……ほら、もう校舎には誰も居ないはずなのに、足音が……」 ハルヒ「……聞こえる、わね」 キョン「ほら、来たぞ」 ハルヒ「待ってましたぁ!」 用務員「……こら、お前!」 ハルヒ「って、何よ。用務員のおっさんじゃない」 用務員「いったい何をしているんだ、下校しないで」 ハルヒ「何って、部活よ。見て分からないの?」 用務員「……は?」 ハルヒ「……?」 用務員「こんな廃墟みたいな部屋で、明かりもつけずに一人で部活……だって?」 ハルヒ「………………………………」 私はいじめを受けている。残酷で酷いものを・・・ キョンと私は付き合っている。いじめを食止めようと必死だ 古泉君もみくるちゃんも有希も、私のいじめを止めようと必死だ。 嬉しかった。私にここまで親身になってくれる人がいたなんて でもいじめはエスカレートした。SOS団全員がいじめられている。 皆で部室に集まる。鍵を閉める。ここだけが安息した空間だ 「みんな御免ね・・・・・・」 私は謝る。当然だ、私のせいで皆もこんなことになっているんだ 「大丈夫だハルヒ!俺たち5人は友達だろ」 「そうですよぉ私たちも同じ痛みを知っていますから」 「大丈夫・・・気にしていない」 「僕も同じです。いつか元に戻りますよ」 私は涙がでた。とまらなかった。キョンや古泉君はボロボロだ 有希は制服にまで落書きされていてみくるちゃんは顔が腫れている。 こんな状況でも私を見捨てないてくれる人が居てくれるのは嬉しかった。 ありがとう皆・・・本当にありがとう・・・でも・・・ ・・・一週間後古泉君が死んだらしい。原因は事故死、 バイクで丹念に体を潰されて、死因はショック死になっている その通知を知った時、私は涙が流れた。御免ね古泉君・・・ そしてまた安息の場所にみんなで集まる。みんなの表情が暗い。 「御免ね・・・古泉君・・・御免ね・・・・・・」 そう言いながら私は泣く。しだいに声が大きくなっていく。 みんなは私のせいじゃないといってくれる。すごく嬉しい。 悪いのはいじめているほう。有希がそう言ってくれる。本当に嬉しい。 でもいじめは私の問題なのよ・・・それなのに・・・ キョンが抱きしめてキスをしてくれた。すこし血の味がした 私はまた泣いた。悲しさと嬉しさ。冷たい涙と暖かい涙の両方だ。 そして今日は有希の家にみんなで泊まった。 このまま時間がとまればいいと思った。でも学校に行かないといけない。 一週間後、みくるちゃんが自殺した・・・・・・ 私はまた泣いた。御免ね御免ね御免ね。 部室に行く。私は思いっきりみくるちゃんの衣装を千切る カッターでズタズタにする。そこにキョンが駆けつけた。 私のことを抱きしめて「お前のせいじゃないんだ」と言ってくれた。 私たちは一線を越えた、それも部室で・・・ キョンも、もう抱いてやることができないかもしれないから・・・ といって本番をはじめた。その時私はずっと泣いていた。 本当に御免なさい朝比奈みくる先輩・・・・・ 終わった後、私たちは有希の家に行く。嫌な予感がした ドアの鍵が閉まっていない。中を開くと血の臭いがした 有希は体中バラバラにされて居間に転がっていた。 声が出ない。自然に顔色が青くなる。体も小刻みに震える。 声も上げないまま私はその場に倒れた。御免ね・・・有希・・・・・・ 有希の首から上を抱きかかえる。私は声を上げて泣いた。 キョンも声を上げて泣いた。もう限界だ・・・そう思った 私たちは今、学校の屋上に居る。 手を強く握り合いながら。この日を心に決めた昨日 私たちは肉体を求め合い、寝るのも惜しんで繋がっていた。 キョン・・・初めてSOS団を作ったときもこんないい天気だったね。 「そうだな・・・」 キョンが弱弱しい声で答える。 私たちはもう一度手を握り締めあい、そしてキスした。 飛び降りる・・・私が落ちていこうとした時彼は手を離した。 なぜ?キョン・・・一緒に楽になるんじゃなかったの? キョンは笑っている。後ろからSOS団の面々が出てくる。 私の体は下に落ちていく。SOS団の面々は全員が笑っている。 ハハハハハハハ。私も笑いたくなってくる。 いつも通りだ・・・いつも通り私は嫌われている。いつもd・・・・・・・・・グシャ キョン「マリカ(DS)やろうぜ!!!!!」 キョン「あああああ!!落下したああああ!・・・もう、俺の負けだ・・・あ、ハルヒが・・・」 谷口「ハハハッ、やっとキョンに勝てたぜ!練習した甲斐があった!・・・あ、ハルヒが・・・」 古泉「キノコを使うタイミングを誤った!くー、勝てませんね・・・あ、ハルヒが・・・」 ハルヒ「ふふふっ、勝ったわ!やっぱり所詮キョンね!私に勝てるわけないのよ! この調子で逆転するわよっ!私にひれ伏しなさいッ!」 長門「・・・練習しても駄目だった・・・(あ、ハルヒが)」 キョン「まぁまぁ、最下位じゃないんだしさ。上位には食い込めてるだろ?次のレースを頑張れよ、 次を!」 長門「・・・ありがと」 ハルヒ「(!・・・これはキョンに優しくしてもらうチャンス!落下!)キョ、キョン・・・私も落下しちゃった・・・せっかく勝てそうだったのに」 キョン「いや今のはどう見ても不自然だろ・・・あ、素で落下しても慰める気は無いぞ。寧ろ笑う。」 長門「・・・ププッ」 谷口「・・・ハルヒ、お前、ウザいわ・・・」 古泉「好きでもない人のキノコ食いたいですか?食いたくなかったらその態度を改めてください」 ハルヒ「・・・ぐすっ」 キョン「スマブラXやろうぜ!!!!!まずはチーム戦な!」 キョン「ゼルダで」 谷口「なんだと・・・お前、ゼルダ使いだったのか・・・俺はリンクで」 キョン「ゼルダの伝説キャラktkr」 谷口「・・・」 長門「・・・オリマー」 キョン「!!!」 ハルヒ「私は・・・そうね、今日はピカチュウにするわ」 キョン「今日は・・・?お前、使い手は?」 ハルヒ「使い手?何それ?何、ずっと同じキャラ使ってて楽しいの?飽きない?バカじゃないの?」 ハルヒを除く一同「・・・」 キョン「なあ、ハルヒって初心者なんじゃね?」 谷口「使い手がいないからって初心者呼ばわりはどうかと」 長門「・・・あの台詞は私達に対する挑戦」 キョン「・・・じゃあ俺&谷口&長門VSハルヒで・・・」 ハルヒ「ちょっとー?何3人でコソコソ話てるのよ?」 キョン「いや、何でもない。ステージは?」 ハルヒ「・・・アイテムたっぷりで、滝のぼりよ!」 ハルヒを除く一同(・・・うわぁ・・・面倒くさいステージ・・・) キョン「はいはい・・・じゃあさっさと始めるぞ」 ハルヒ「え?ちょ、ちょっと・・・何で私だけ仲間外れなの?ねえ、なんでキョン達が組んで・・・」 キョン「いやー、ハルヒは強いからな!俺達3人がかりじゃないと勝てないぜ!」 ハルヒ「ふ、ふん!かかってきなさい!蹴散らしてあげる!」 ドガッ ピョーン キラキラキラリン・・・ シュシュシュッ カチャッ ピーkドウリャー! ハルヒ「・・・な、何であんたたちそんな上手いのよ!?ヒドいわ!」 キョン「かかってこいって言ったのはお前だろ」 ハルヒ「い、いやそうだけど・・・」 キョン「言い訳無用ッ!」ドゴォーン ハルヒ「あっ、あぁー・・・・」 キョン「次はタイム制だ!」 ハルヒ「・・・許さないわ・・・本気で行くわよ!ドンキーよ!」 キョン「ゼルダたんんんん」 谷口「リーンーク!リーンーク!」 長門「ひっこぬか~れて~♪たたかぁ~ってぇ~♪」 ハルヒ「食らえ!ドンキーの最強パンチを・・・え?」 キョン「残念だ・・・お前は緊急回避を使いこなせていない・・・」 谷口「その技は侮れないからな、先に潰す」 長門「紫投げ」 ハルヒ「ドラグーンゲットよ!これで勝てる!食らえ・・・?」 キョン「ヒント:緊急回避」 谷口「ドラグーンは避けるの簡単だからむしろ隙なんじゃね?」 ハルヒ「スターゲット!キョン!待ちなさい!逃げても無駄よー!」 キョン「スター状態のドンキーに追いかけられて待てと言われて止まるヤツはいないだろ」 長門「・・・」ガシッ ハルヒ「!ちょ、ちょっと!離しなさい!な、投げ!?あ、そっちは・・・うわーっ!」 ドチュゥーン・・・ ハルヒ「・・・ぐすっ」
https://w.atwiki.jp/haruhi_best/pages/18.html
涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの軌跡 「――伏せてっ!」 最初に叫んだのはハルヒだった。しかし、教室にいる誰もその意味を悟ることができず、それに従ったのは俺だけだった。 次の瞬間、教室の窓ガラスが吹き飛び、多数の赤い光球が教室中に撃ち込まれる。悲鳴すら上げる暇もなく、 呆然と突如教室目の前に現れたヘリに呆然としていたクラスメイトたちにそれが浴びせられた。 しかし、俺は床に伏せたままそれを避けるべくダンゴムシのように縮まっていたため、その先教室内がどうなったのか、 激しい判別しようのない轟音と熱気の篭もった爆風でしか俺は知ることができなかった。時折、鉄を砕いたような臭いが 鼻から肺や胃に流れ込み、猛烈な嘔吐感を誘ってくる。 「キョン!」 誰かが俺の襟首をつかみ、俺の身体を引きずり始めた。俺は轟音の中、何がどうなっているのか確認しようと 目を開けようとして、 「目は閉じて! いい!? 絶対に開けるんじゃないわよ!」 耳元に届いたのはハルヒの声だった。どうやら俺を引きずっているのはこいつらしい。目をつむった状態だったが、 今俺が引きずられている方向を推測すると、どうやら教室の外に出るつもりのようだ。 「何だ、どうなんているんだハルヒ! 教えてくれ!」 「良いから黙ってなさい! 教室から出るのが先決よ!」 ぴしゃりとハルヒの声が飛ぶ。 ほどなくして教室外に引っ張り出されたのか、手を付けている床のさわり心地が変わったのを感じた。 この時、俺のすぐそばを何かが高速で飛び去ったのに驚き、思わず軽く目を開けて―― 「…………っ!」 またすぐに閉じた。一瞬見えたのは、ガラスを失った窓ガラス、そして教室の床が赤く染まりその上には、 机や椅子の破片が散らばっていた。だが、その中には見たこともない物体も多数混じっていて…… 戻す寸前だった。その正体不明の物体がなんなのか悟ったとたん、俺の胃が溶けてなくなりそうになる。 一瞬だったというのに、まるで根性焼きか入れ墨を脳に刻まれたように、はっきりと鮮明な一枚の惨劇の写真が ずっと目を閉じても視界に焼き付き続けた。 俺はたまらず教室の方ではない方向へ顔を背けて目を開ける。別の視覚情報を脳内に新規導入しなければ、 ずっとスプラッタ映像が俺の目を支配し続けるからだ。 目を開けた先には、ハルヒのドアップがあった。それも全身血まみれで、セーラー服も半分近く血で赤く染め上げられている。 そして、すぐに俺の顔をつかむと、 「いい!? 誰だかわからないけど恐らく狙いはあたし、あるいはあんた! このままだと生徒を巻き込むだけだから、 とっととここから逃げるわよ!」 「あ、ああ……いや、あ、なんだ、そうなのか……そうなんだ。いや! それよりお前その血は……!」 「あたしのじゃない! 巻き添えになった人のものよ! あたしは何ともない――そんなことより早く移動しないと 攻撃が続けられるだけだわ!」 ハルヒは一方的に話を進めると、俺の手を取って走り始めた。一目散に教室から離れるように走り始める。 そうか。 今俺たちは襲われたんだ。 前に朝倉の襲撃を受けたのと同じように、誰かが俺かハルヒの命を狙って。 そして、その牙は俺たちだけでは収まらず、周囲にいたクラスメイトたち全てを飲み込んだ。 ………… なんてこった。昨日の古泉・朝倉のカミングアウトからハルヒの好印象まで良い感じに進んでいると思った矢先に、 信じたくないような大惨劇が起きた。俺が狙われるのなら、正直まだ救われたかも知れない。すでに経験済みだしな。 だが今回は違う。宇宙人の変態パワーによる襲撃ではなく、現代的な手法による無差別攻撃。これがショックでない奴がいるなら、 今すぐお前に全責任を押しつけてやるから出てきてくれ。 ふと俺は――何となく身を引かれるような視線を感じて、振り返った。そこには、教室の出入り口からこちらをのぞき込むように 見ている朝倉の姿があった。しかも、あのいつもの微笑みまで浮かべてやがる。 あの野郎。無事ならどうして助けてくれなかったんだ。あいつの力ならあんな攻撃楽々受け止められただろう。 いや、それは違う。長門があの15000回以上繰り返された夏の日をなぜ止めなかったのかその理由を思い出せ。 情報統合思念体――その配下にいるインターフェースの役割はハルヒの観察だ。朝倉暴走のように情報統合思念体身内の問題なら 何らかの対処を取るかも知れないが、今俺たちを襲ってきたのはどうみてもただの人間が使う攻撃ヘリである。 だったら連中は手を出さないだろう。ただの人間同士の殺し合いだと判断して。 ふと、隣の六組の前を通りかかったとき、出入り口から中が見えた。そこでは攻撃こそ受けていないが、 目の前を飛び交っている一機の攻撃ヘリの前に悲鳴を上げて右往左往する生徒たちの中で、ぽつんと読書を続ける長門の姿が。 俺は必死に心の中で叫ぶ。助けてくれ長門。お前は誰の好きにもさせないと言ってくれたじゃないか。 だから、せめて俺とハルヒ以外の無関係な人を守ってやってくれ―― しかし、その思いは届くことなく六組の中にも苛烈な銃弾が撃ち込まれ始めた。飛び散る壁や窓ガラスの破片に 俺はただひたすら目を閉じて現実逃避に努めることしかできない。 「降りるわよ!」 俺は激しい脱力感の中、階段を下りていくハルヒの手に引かれて走ることしかできなかった。 ◇◇◇◇ しばらく校舎内を走り回ったあと、俺たちは一階の校舎の隅に一旦身を隠すことにした。いい加減、俺とハルヒの息も 上がりつつあったからだ。 「一体っ……なんだってんだっ……!」 「知らないわよ、そんなことっ!」 俺はひどく動揺していた。一方のハルヒも状況がつかめないせいか、強い苛立ちを見せている。 さっきの攻撃ヘリは俺たちの姿を見失ったのか、学校周辺を飛び回っているだけで攻撃は控えているみたいだった。 四方八方からあのヘリのローターから発せられるバタバタ音だけが校舎の廊下に響き渡っている。 学校内は収拾のつかない混乱状態になっていた。正気を失って逃げまどう生徒、負傷しておぼつかない足で歩く生徒、 動かなくなった生徒を抱きかかえて助けて!と叫ぶ生徒……。中には校舎外に逃げ出そうとする生徒たちもいたが、 攻撃ヘリがそれを阻止するように飛び回っているせいか、誰も外へ逃げ出せていない。見通しの良い場所に ホイホイと出てしまえば狙い撃ちされてしまうかも知れないという恐れがある以上、うかつに出れないのだ。 俺はふと思いつく。ハルヒの能力なら、あの殺人ヘリをなんとかできるんじゃないかと。 だが、それを口にする前にハルヒは苦渋に満ちた表情で壁に拳を叩きつけた。まるで、俺の心の中を読んで、 できるならとっくにやっていると言いたげに。 そうだ。ここでハルヒが反撃なんかできるわけないんだ。この学校には沢山のインターフェースや機関のエージェントが 潜んでいる。万一、ハルヒが自らの力を使ってあの殺人ヘリと戦えば、即座にハルヒは自分の能力を自覚していると ばれてしまうだろう。そうなれば、機関はどう動くかは不明だが、情報統合思念体は即刻全人類ごと抹殺してしまう。 それでは本末転倒だ。 ハルヒの強い苛立ちは、できるのにそれを行えない矛盾の袋小路に対してのものなんだろう。ちっ、となると、 長門や朝倉は助けてくれない、ハルヒは動きを封じられたも同然になるから、一体誰に助けを求めれば良いんだ…… って、一つしかいねぇじゃねーか。この事態を未然に防ぐべき組織がある。機関だ。それを怠って古泉たちは 一体何をやっている!? 俺はすぐに携帯電話を取り出し、古泉にかけてみる。しかし、コールはするもののいつまで経ってもつながる気配はない。 こんな時に何やってんだ。いや、ひょっとして最初の攻撃に巻き込まれたんじゃないだろうな? 何度もかけてみるが、やはりつながらず。どうすりゃいいんだよ。 と、ハルヒが何かに気が付いたのは突然走り出した。あわてて俺もそれ続く。 ちょうど校舎の真ん中当たりでハルヒは立ち止まり、もう一つの校舎の前でホバリングを続けている攻撃ヘリを見つめた。 それはしばらくそのまま停止を続けていたが―― 「やめてっ!」 ハルヒの悲痛な叫びが俺の耳を貫く。その瞬間、ヘリの両サイドからミサイルのような物が発射されて、 もう一つの校舎の二階にある教室に撃ち込まれた。 強烈な爆音・爆風で俺たちのいた廊下の窓ガラスも一気に割れて飛び散り、俺たちの身体にバラバラと降り注ぐ。 襲撃者は俺たちがいない場所、つまり無関係な人間のいる場所に向かって攻撃を加えたのだ。 あまりに残酷で冷酷な敵のやり方に、俺は怒りよりも恐怖を感じる。 と、ここで俺の携帯に着信が入った。発信者は――古泉一樹となっている。 俺は即座に通話ボタンを入れ、向こうの言葉も聞かずに状況の説明を求めた。 「一体全体どうなってやがる! 襲ってきたのは何だ!? お前ら今まで何をやってきたんだよ! とっとと何とかしてくれ! このままじゃ、被害や犠牲者が増える一方だぞ!」 こっちの一方的な物言いに、古泉はしばらく黙って聞いているだけだったが、やがて、 『とにかく落ち着いてください。焦る気持ちもわかりますが、それでは有効な対策も取れません』 「落ち着けだって――うおっ!」 今度は俺たちのいる校舎三階に向けてミサイルが発射された。上階で発生した爆発の衝撃で、校舎全体が地震に 襲われたようにぐらぐらと激しく揺れる。 ええい、確かに焦っても攻撃が続くばかりか。 「どうすりゃいい!?」 『今、機関の方で対処を行っています。時期にあなたたちを襲っている者たちの排除に移る予定です。 あなたたちはしばらく見つからないように隠れていてください』 「そんなこと言っても、奴らは無差別攻撃を始めているんだぞ! 悠長なことを言っている場合じゃないんだ!」 『わかっています! しかし、それしか方法が――』 「キョン」 俺と古泉の会話に割り込む声。見れば、ハルヒがうつむいたまま肩を振わせていた。そして、俺が聞くべきかどうか 迷っていることについて古泉に確認するように指示を出す。 『何かありましたか? 問題があれば言ってください』 どうやら古泉にはハルヒの声は聞こえなかったらしい。何かあったのかと珍しく焦りの声をこちらにかけてきている。 俺は躊躇していた。 ハルヒが聞けと言うことは確かに確認しておかなければならないことだ。 だが……もし予想通りだったら。 その時、ハルヒはどう思うだろう。そして、それはどうすればいいのだろうか。 ………… また一発のミサイルがどこかに着弾したらしい。激しく校舎が揺さぶられた。ええい、迷っている場合ではない。 俺は意を決してその確認を行う。 「古泉。一つ確認したい」 『なんでしょうか?』 「襲ってきたのは機関の人間か?」 その指摘に古泉はしばらく黙ったままだったが、やがてこう言った。短く、か細い声で。 『……そうです。機関の強硬派によるものです』 古泉から言葉に、俺はがっくりと肩を落とした。機関――ハルヒが作り上げたに等しい組織がこんな無差別殺戮を行っている。 そして、それをそそのかしたのは俺だ。なら――この惨劇の責任は俺にあることになる。 ハルヒは耳では聞き取れないはずだから、何らかの超パワーで俺と古泉の通話を聞き取っていたのだろう。 機関強硬派によるものだとわかったと同時に走り出し、階段を駆け上がる。 「待てハルヒ! 待ってくれ!」 俺はすがるようにそれを追った。ハルヒがやろうとしていることはすぐにわかった。襲ってきた奴らを排除すること。 もちろん、それは自分が力を持っていることを情報統合思念体や機関に後悔することと同義であるから、 つまりはハルヒは機関――超能力者を作ることに見切りを付けたってことだ。 ――排除後に、ハルヒはこの世界をリセットする。 走りながら必死に俺は考えた。 何だ。 何を間違えたんだ。 確かに俺の世界とは多くの点で異なることがあった。 だが、それでも朝倉が暴走する可能性はあっても、機関強硬派がこんな行動に打って出る理由は何だ? ……それとも、俺の世界でもこういった事例はあってただ表面化していなかっただけなのか。 そんなわけねえ。 そんな分け合ってたまるか! だってそうだろ? 強硬派が望むように、ハルヒに強い衝撃を与えようとするならいつでもできたはずだ。 そのチャンスは多々にあった。 それが実行されなかったと言うことは、俺のいた世界と今ここの世界では大きく何かが異なっているはずだ。 何だ? それは……なんなんだ? 俺は結局ハルヒに追いつくことができず、そのまま校舎屋上に飛び出した。すでにハルヒは屋上の中心で空を見上げている。 さあ自分はここだと言っているように。 すぐに俺もハルヒの元に近づこうとするが、その前にハルヒの真正面にあの殺戮ヘリが現れる。 ローターから激しく発生する風に煽られ、俺の足は止められた。 だが、ハルヒはセーラー服と髪は激しくなびくものの、全くそれに動じていない。 やがてあの多数の生徒を殺戮した回転式の機関砲がハルヒに向けられる。ちょうどハルヒは俺に背を向ける格好になっているため どんな表情をしているのか見えない。 もうすぐハルヒは何かの力でこの攻撃ヘリと戦うのだろう。止めるしかないのだ。 どんなハリウッド的アクションが展開されるのかと思っていたが、予想に反して戦いは静かに進行した。 攻撃ヘリはハルヒに回転式機関砲を向けたまま微動だにせず、ただ浮かんでいるだけ。 ――いや違う。ハルヒは指一つ動かす気配がなかったが、攻撃ヘリの方が勝手に異音を発し始めていた。 それもエンジン音がおかしいとかではなく、金属が軋んでいくような脳髄をくすぐる嫌な音を鳴らしている。 やがて攻撃ヘリはブラックホールに吸い込まれていくように、次第に機体がつぶれ始めた。 めりめりと嫌な音とともに圧縮されていき、破片一つ飛ばすことなく、火花一つ飛ばすことなく小さくなっていく。 そのまま圧縮が続き、最後には野球のボール程度の球体までになってしまった。そこでハルヒはようやく腕を動かす。 すっと横に振った手を合図に、圧縮された攻撃ヘリは散り一つなく拡散するように消失した。 ………… さっきまで俺を覆っていたヘリの轟音が完全に消え失せ、辺りには校舎から聞こえてくる生徒たちの悲鳴・怒号が支配する。 遠くからは警察か消防かわからないが、けたたましいサイレンが鳴り響き、こちらに近づいてきていた。 終わった。何もかもが。 ハルヒはすっとうつむき加減のまま、俺のそばを通り校舎の中に戻っていく。 ちょうどその際にこう言い残して。 「……昨日言ったことは全部撤回するわ。あたしはこんなことをする連中を作りたくないし、一緒にいたくもないから。 この世界はここで終わりよ。情報統合思念体が動く前に、リセットの準備に入るわ」 ちくしょう――何でこんな事になったんだよ……! ◇◇◇◇ 「一体これはどういう事なのか説明しろ。お前のわかりにくいたとえ話は全て却下だ。簡潔にわかりやすくに言え。 でなきゃ、俺がどんな行動を取るか保証しねぇ。今は頭の血管がぶち切れる寸前なんだからな」 この惨劇後、校庭の隅で呆然としていた俺の前に現れた古泉に、俺は食って掛かっていた。 こんな状況でもいつものあのニヤケスマイルを浮かべて現れたら、即刻ぶん殴っていたが、さすがに事態は深刻らしく 表情は硬いままだったので握った拳はそのままにしておいてやる。お前の返答次第でどう動くがわからんがな。 校舎の状況は最悪だった。目で確認は俺自身が拒否しているため、喧噪の中で流れてきた話を拾った限りじゃ、 死傷者は百人単位に上っているらしく、特に俺の五組は生存している人間がほとんどいない惨状だそうだ。 朝倉は無事だったのを確認しているから全員死亡ではないだろうが、谷口や国木田もダメと見て良いだろう。 現在では警察や消防がひっきりなしに動き回り、状況把握に努めている。負傷者は多すぎるため重傷者のみ救急車で 運び出し、まだ何とかなる人間は校庭にテントを張って治療を行っている。 まさに地獄絵図だった。 あの後、ハルヒはどこかに姿を消してしまい、俺は何もできない無力感に浸りつつ校庭への避難誘導に従って 校庭に出てきていた。そこへ古泉の野郎が現れたって訳だ。 俺に胸ぐらをつかみ上げられたまま、古泉はしばらく黙っていたが、 「今回の件については申し訳ないとしかいいようがありません。強硬派の存在は機関内部では周知の事実でしたが、 このような行動を取るとは予想もしていませんでした」 「甘すぎるだろ! 危険な目的を持っているならもっと早い段階で手を打っておけばいいじゃないか!」 「状況は複雑にして微妙なんです。例えそう言った目的を持っていたとしても、うかつに動けません。 なぜなら、僕たち機関の他に情報統合思念体――TFEI端末の主流派も涼宮さんに対して観察という意味で 傍観を決め込んでいるからです。機関強硬派が例え目的を果たそうと行動を起こすと言うことは 情報統合思念体主流派と敵対の道を歩むということでもあります。そうなれば、強硬派はただでは済みません。 彼らの能力は僕らの存在などいともあっさり消せます。涼宮さんの観察の支障となると判断されればあっさりと抹消されて 終わりでしょう。そう言った考えで、強硬派もうかつに手を出すことはないと判断していました」 そうか。だから俺の世界では機関の危ない連中は手を出してこなかったってわけか。だが、ここではいともあっさり ハルヒにちょっかいを出してきた。何だ? 何が違っている? 俺はしばらく考え込んでいたが、途中で別の事に気が付く。 「待てよ。ならお前らの危険思想を持った連中が動いたって事は、情報統合思念体――朝倉たちと敵対する道を 選んだってことでいいんだよな? だが、何の保証もなく動くってのはおかしくねぇか? 何か動くきっかけがあるはずだ」 「それなんですが……」 ここで古泉は俺が冷静になりつつあると判断したのか、俺の手をふりほどき制服を整える。 そして続ける。 「まだ結論は出ていませんが、どうも情報統合思念体の一部と結託したようなんです。きっかけはわかりませんが、 何らかの情報を得て機関強硬派は動かざるを得なくなった。その理由についてはまだわかっていません。 現在、情報を精査中です」 古泉の淡々とした説明に、俺はどっと疲れを感じて地面に座り込む。校庭の方が騒がしくなったのを見ると、 どうやら保護者たちが次々と駆けつけ始めたようだ。怒号・叫び・悲鳴……この世の負の感情が怨念のように校庭を支配する。 俺の家族にはさっき無事を知らせる電話を入れているのでこれ以上の心配をかけてはいないが。 古泉は俺に視線を合わせるようにしゃがみ、 「僕が言うのもなんですが、起こってしまったことについてとやかく議論をしている余裕がない事態です。 今回の一件で機関も対応しなければならないことが発生していますので」 「ああ、とっとと危険人物どもを牢屋にでも放り込んでおいてくれ」 「それはとっくに完了済みですよ。それ以外のことです」 「……なんだと?」 嫌な予感がする。事後対処が終わっていて、次にやることと言えば……やはりハルヒのことか? 古泉は続ける。 「今回の襲撃では、TFEI端末、機関ともにその対応が行えませんでした――おっと、TFEI端末はもともと介入する気は なかったようですが。それはさておき、そんな状況でありながら誰かが機関強硬派の襲撃を撃退しています。 あなたは何か知りませんか?」 「…………」 俺は答えるべきかどうか迷ってしまう。ハルヒはもうリセットをかけるべく準備を開始すると言っていた。 なら今ここでばらしてもどっちみちかわらないだろう。だが、何の違いで今回の惨劇が発生したのかわからない状態で うかつな行動を取って取り返しの付かないことになったら…… 結局俺は首を振って、 「逃げるので精一杯だったから、よくわからん。気が付いたらいなくなっていた」 「そう……ですか」 古泉の表情はなぜか残念そうに見えた。まるでどうして本当のことを言ってくれないのかと言いたげなように。 言った方が良かったのか? それとも何かたくらんでいるのか。 俺はたまらず聞き返す。 「なんなんだ、一体。言いたいことのがあるならはっきりと言ってくれ」 「……涼宮さんのことですよ」 やっぱりそうか。 「あの状況下で、事故以外に強硬派を撃退する能力を有しているのは涼宮さん以外にいません。 そうなると、彼女が突然追いつめられた状況にショックを受け自分の力を自覚してしまったか、あるいは――」 ――古泉は憂鬱そうに目を細め、 「元から涼宮さんは自分の力を認識していたということですね」 ちっ、やっぱりそう言う結論になるわな。そうなると、すでに情報統合思念体も同じ認識を持っていて――うん? だったらとっくに地球ごと抹殺されていてもおかしくないか? あるいはハルヒがリセットするか。 俺は念のために追求しておくことにする。 「万一だ、ハルヒが力を認識するなり、元からそうだったりした場合、何の不都合が発生するんだ? おっと昨日朝倉と一緒に聞かされた話は一応理解しているつもりだ。それをふまえた上でお前らがどう動くかってことを 確認しておきたいんだが」 「その点についてですが、はっきり言って機関の方ではこのままでも一向に構いません。実際に涼宮さんが力を認識しても、 不都合のない今まで通りの世界が続いてくれればいいんですから」 「なら別に問題ないだろ」 「ですが、情報統合思念体――TFEI端末から得られた情報によれば、彼らはそれでは困るようですね。 何らかの動きを見せるようですが、僕のような末端の人間まではその内容について聞かされていません」 動きってのは、ハルヒごとこの星を吹っ飛ばすことだろうな。だが、なぜ実行に移していないのだろうか。 古泉は続ける。 「同僚からの情報によれば、どうやらその情報統合思念体の動きは機関にとって大変都合の悪いことのようでして。 僕にもその件について非常招集がかかっています」 そりゃ地球ごと抹殺しますよと言われればとんでもない騒ぎになるのは確実だからな。 古泉はすっと立ち上がると、 「では、僕は機関の方に行かなければならないので」 そう言って俺の元を立ち去ろうとする。 「ちょっと待て!」 と、俺は思わず古泉を呼び止めてしまう。どうしても言っておきたいことがある。 古泉はなんでしょうかと振り返った。 「なあ古泉。頼みがある」 「言ってください」 俺は立ち上がり、古泉の目をじっと見て、 「……ハルヒを見捨てないでくれ。頼む」 俺の言葉に、古泉はさわやかなスマイルを浮かべるだけだった。 ◇◇◇◇ 「ちょっといいかな?」 古泉と入れ替えにやってきたのは朝倉だった。俺は思わず身構えてしまった。この状況で襲われればひとたまりもないからな。 だが、朝倉はいつもの柔らかな笑みのまま、 「そんなに警戒しなくても良いよ。あなたに何かしようとは思っていないから」 「だが、ハルヒが力を自覚した、あるいは元々自覚していたかも知れないということが不都合なんだろ?」 「それはそうなんだけどね……」 ちょっと困ったようなような表情になる朝倉。 だが、次にその口から飛び出たのは予想外――いや、俺の脳みその血管をぶち切るのに十分な言葉だった。 「元々涼宮さんが認識している可能性は、情報統合思念体内部でも検討されていた事よ。でも、大勢を占める主流派は そんなことを一々確認する必要はないとして放置という選択を取っていたのよね。これに関しては他の勢力も大差ないわ。 でね、かといってそのままだと何も起こらずなぁんにも観測できないのよ。そんなのつまらないと思わない? あたしたちの目的は涼宮さんの情報創造能力を観測すること。ただ見ているだけじゃ何も変わらない。 だからね、上の人たちなんて無視して動くことにしたのよ」 あの時――ナイフで朝倉に斬りつけられたときの記憶が俺の脳裏に蘇る。あの時もそんなことを言っていた……まずい。 今すぐ走って逃げ出すべきか? 朝倉はこっちの動揺もお構いなしに続ける。 「でも残念なことに情報統合思念体の主流派はそれを許さない。そこであたし考えたのよ。昨日、機関っていう組織も 一枚岩ではないってことを言っていたじゃない。だから、その人たちに代わりに涼宮さんを襲ってもらうことにしたの」 唐突すぎる告白。俺の視界が真っ赤に染まるんじゃないかと思うほどに、頭に血が上る。 「お前が……お前がこの事態を引き起こしたってのか?」 「そうよ。でも彼らも独自の目的を持っていたのよね。あたしはあなたを殺すようにけしかけたつもりだったんだけど、 直接涼宮さんを襲うとは思っていなかったわ。そんなことをしたら涼宮さんが力を自覚しちゃうじゃない。 そうなったら観測できなくなっちゃう。まさに本末転倒よね。全く勝手なことをしてくれたおかげで大迷惑よ」 朝倉はいつもの笑みを崩さない。 この野郎。昨日偶然聞きつけた機関強硬派を利用することにしたってのか。主流派の目をごまかすために。 またそれなら長門も行動できないと考えたのだろう。 この惨劇の元凶は、昨日のたった一度の会話が原因。まさか、あれだけでここまで事態が変化するなんて思ってもいなかった。 結局は朝倉の暴走なんだが、それによって思わぬ副産物を朝倉――情報統合思念体は得てしまったことが最大の問題だ。 「今回の一件で涼宮さんは確実に自分の能力について自覚したわ。敵を倒したのは他ならぬ彼女だもの。 この時点で情報統合思念体の観測作業は終了して、強制措置に入る。これは情報統合思念体全てにおける共通意識」 「その強制措置ってのを教えてもらおうか」 知ってはいるが、念のために確認してみる。朝倉は表情一つ変えず、 「この惑星全ての知的有機生命体の排除。涼宮さんを含めてね」 やっぱりそうか。だが、なぜ俺にこんな話をしてくるんだ? とっとと実行すりゃいいだろ。 そこでさっき古泉が言っていたことを思い出す。情報統合思念体の動きは機関にとって不都合なことであると。 「あ、気が付いたかな? そう、機関がどうも情報統合思念体主流派と接触して交渉しているみたいなのよ。 彼らにとって抹殺措置は避けたいみたいだから。わたしには有機生命体の死の概念がよくわからないから、 何でそんなに必死になっているのか理解できないけどね」 「お前らと違って、俺たちは死んだら終わりなんだよ。情報なんたらで無敵の存在であるお前らとは違ってな」 俺は悪態を付く一方で希望が胸に渦巻き始める。機関の主流派はまだ諦めていない。何とかハルヒを守ろうとしているんだ。 きっとそうに違いない。ハルヒを守ることが自分たちの命を守ることにつながるって事だからな。 ふと、ここまで来て思う。朝倉は何でこんな話を俺にしているんだ? この問いかけに、朝倉はぐっと俺に顔を近づけてきて、 「実はちょっとあなたに興味があったのよ。いろいろ調べてみたんだけど、あなたはただの有機生命体に過ぎない。 でも、涼宮さんという特別な存在に見初められている。それはなぜ? どうせこれが最期になるだろうから 確認しておきたかったの」 「知らねえよ。俺は俺だとしか言いようがない」 実は異世界人だとは言わなかった。情報統合思念体が地球ごと破滅させるかどうかは、まだわからなくなってきたからな。 切り札になるかもわからないが、余計な不確定要素を作るべきではない。 と、朝倉は俺から離れ、 「そっか。残念。実はあなたが涼宮さんに何かの力を与える存在かも知れないとちょっと期待したんだけどな」 「あいにく俺はミジンコ並みに普通なんでね。残念だったな」 ここで朝倉は何かの情報をキャッチしたような顔を浮かべ、 「あ、どうやら交渉がまとまったみたい。わたしに任務終了の通達が来たわ」 そう言うのと同時に、朝倉の身体が以前長門がやった情報連結解除と同じようにさらさらと消滅していく。 俺はせめてこれからどうなるのか確認しておきたかったので、 「おい! これからどうなるのか、冥土のみやげかどうかは知らんが教えてくれても良いだろ!?」 「もうすぐわかるわよ。もうすぐね♪」 朝倉はいつもの笑みのまま消えていってしまった。 ちっ、これ以上の情報を得るのは無理だったか。しかし、機関が情報統合思念体にストップをかけているという事実は かなり大きな収穫だ。 俺はすぐに携帯電話を取り出し、ハルヒへつなぐ。 ……ハルヒ。まだ機関に絶望するのは早いぞ。古泉たちは思った以上にやってくれるかも知れないんだ。 ◇◇◇◇ ハルヒは旧館の一つの部室から呆然と外の様子を眺めていた。 外はマスコミも駆けつけてきたのか、報道のヘリを含めてますます喧噪に包まれている。 俺は携帯でここにいることを知らされ、ここにやって来た。もちろん、ハルヒにリセット中止――最悪でも様子見に してくれというために。 「で、そんなにあわててどうしたってのよ」 「中止しろ!」 「は?」 息が切れているせいで端的な発言しかできん。とにかく何でも良いから止めさせないと。 俺はぐっとハルヒの肩をつかみ、顔を寄せて、 「リセットだ! もうちょっと待ってくれ!」 「……理由は?」 半目でうさんくさそうなハルヒの表情だったが、俺は構わず続ける。 「朝倉と接触した。どうやら、情報統合思念体と機関が何かの交渉を行っているみたいなんだよ! 旨くすれば、お前が力を自覚していることがばれてもどうにかなるかもしれないぞ!」 「だから、この惨状を受け入れろって言うわけ?」 ハルヒがばっと窓から校舎の惨状を示すように指を向けた。そこには未だ回収されない動かない生徒の姿や 血まみれの廊下・教室、粉砕された校舎の一部……爆撃を受けた後の状態の学校が広がっている。 俺は手を振りながら、 「それはわかっている。こんな状態で放っておけるわけがないからな。だが、せめて機関が情報統合思念体にどういう影響を 与えるのか、その確認をした後でも十分だろ? もう少し待ってくれ、頼む!」 必死の説得。このままこの状態を続けるのは俺もはっきり言って嫌だし、リセットはむしろ望むところだ。 しかし――しかしだ。このまま終わりにしても何の成果もないのは事実。だったら、せめて機関がどう動くのかだけは 見極めておきたい。機関の主流はハルヒの平穏無事な一生にある。ならば、きっと力の自覚後も同様の状態を 維持しようとするはずなんだ。そうに決まっている。 それであれば、確認後にリセットをして今度はこの惨劇が起きないようにすれば良いだけ。答えは目の前にあると言っていい。 だが、ハルヒはなぜか納得しようとしなかった。じっと疑惑の目を俺に向け続けている。そして言う。 「まあ、あんたに言われなくてもリセットはしばらくするつもりはなかったわよ。あたしのことを知ったはずの情報統合思念体が 動きを見せないから。何でかと思えば、機関って連中が何かたくらんでいるって訳ね」 「古泉も呼び出しを受けていたし、もうすぐ何かの動きがあると思うぞ。それから――」 「……あのさ、キョン」 ハルヒはいつになく真剣――いや、まるで子供に説教するかのような目つきで俺を見つめた。 俺はその視線に自分の口が完全に塞がれた気分になる。 そして、ハルヒは言った。 「あんた、一体誰を見てそう思っているの?」 「誰って……そりゃ機関、いや古泉だな。あいつらの目的は昨日話したとおり俺の世界と同じだったから違いはないはずだ」 「でも違うわ。ここはあんたの世界とは違う」 ――ハルヒはすっと目を瞑り、俺を諭すように、 「あんたは今を見ていない。キョンが見ているのは、自分の脳内にいる古泉くんよ。その姿を見てきっとこう考えている、 こうしてくれる、そう思っている――いや、思いこんでいるだけじゃないの?」 「それは……」 ……反論できなかった。 俺は本当に古泉一樹という人間を把握しているのか? 元の世界では少なくともあいつの言動から見ても、 機関よりもSOS団を優先させるはずだ。 だが、この世界の古泉はどうだ? まだあってから数週間しか経っていないんだ―― ―――― ―――― 一瞬だっただろう。俺は何かが起こったことだけ理解できたが、それがなんなのかはさっぱりわからないまま、 床に突っ伏していた。辺りにはガラスが大量に飛び散り、部屋の中の備品はめちゃくちゃに散らかっている。 何だ? 何が起こった? すぐに俺の身体が誰かによって引き寄せられた。目の前にはハルヒのドアップが浮かぶ。 必死に何かを叫んでいるようだったが、俺の耳には何も届かなかった。それどころか、激しい頭痛とめまいが 視界を揺さぶり続け、意識を保つだけで精一杯の状況である。 ハルヒはすっと俺の額に指をつけ、眉間にしわを寄せた。何かのおまじない――いや情報操作か。 俺に対してそれを行おうとしているのか? ほどなくして、俺のめまい・頭痛が停止し聴覚も復活した。同時に、多数の花火のような爆発音が辺りに広がっていることに 気が付く。激しい断続的に続く地鳴りと揺れを感じることに、聴覚どころか感覚すら狂っていたことに気が付かされた。 俺の身体異常を一瞬にして直したのか。とんでもない奴だよ、ハルヒは。とりあえずありがとうと礼を言っておく…… 「そんなものいらない! それどころじゃない!」 ハルヒのつばが俺の顔にかかった。同時に背後の校舎の屋上が吹っ飛び、破片と爆風が俺のいる部屋に流れ込んできた。 ハルヒは俺をかばうように抱きかかえてそれから守ってくれる。 ここでようやく事態に気が付いた。また北高は何かからの攻撃を受けている。いや、爆発音の大小から考えて、 北高だけじゃない。もっと遠くも同様の爆発が起きているに違いない。 なんだってんだ! 「屋上に上がるわよ!」 そう言ってハルヒは俺の手を引いて走り出した。 旧館から校舎へ渡る途中、校舎二つのうち一つはさっきの爆発で完膚無きまで破壊されていたのが見える。 ハルヒはもう一つの校舎の屋上に向かっているのだろう。 途中通りかかった校庭では、大パニックが起きていた。逃げまどう生徒・保護者・マスコミ関係者を 警察や消防の人間が必死に逃げるように誘導していた。 だが、すでに校庭でも爆発が起きたらしく、ところどころクレーターができあがっていた。その周辺には 傷ついた人たちの姿もある。北高はこの地域では高台に位置するため、広がる街並みをある程度一望できたが、 やはりさっき感じていたとおり次々と爆発が発生して煙が立ち上っている。まるで戦争状態だった。 ハルヒはそんなことお構いなしに、校舎の階段を駆け上がった。俺はその引かれる手のままに走りながら 混乱を越えて錯乱の域に達していた。 古泉は機関の強硬派はすでに押さえ込んだかのようなことを言っていた。だったら今度の攻撃はないんだ? まだ機関強硬派の残党がいたのか? いや、いくらなんでも機関がそこまで無能だとは思わないし、 さっきの襲撃とは桁違いの規模の攻撃であることから、残党の仕業とは思えない。こんな事ができるなら 最初の攻撃時にやっているだろうからな。 屋上の扉を開け、ハルヒはそこの中心に飛び出した。体育系部活の運動もびっくりな無酸素無呼吸階段いっき登りに いい加減息の切れた俺は膝をついて肺をフル稼働させて酸素補給に努める。 一方のハルヒは少し肩で呼吸はしているが、休む気配は見せない。それどころか、すっと両手を広げて、 「全部食い止める!」 ハルヒの叫び。同時に俺から見える360度全方位の青空で無数の爆発が起きた。 もう展開について行けない。誰でも良いから今すぐ俺に状況を教えてくれ。 すぐハルヒは再度空に向かってにらみをきかせる。すると、また同じようにそこら中の空で爆発が起きる。 どうやら、ハルヒが攻撃を阻止しているらしい。ってことは、さっきからの大爆発は空から何かが飛んできているのか? 「砲撃よ! バカみたいに大量の砲弾が雨あられと降ってきているわ! 狙い先は北高だけじゃない、もうめちゃくちゃに 周辺の町全体に撃ち込まれているの!」 ハルヒの怒鳴り声と同時に、また空中爆発が大量発生した。なんてこった。本当に戦争じゃねぇか。 そんな国際法無視上等なことをやらかしているバカ野郎はどこのどいつなんだよ。 しばらくハルヒVS無差別砲撃戦が続く。俺はただオロオロするばかりで何もできない。 だが、この事態に対処できている人間なんてハルヒ以外にはいないだろう、校庭や学校周辺の人たちもパニックになって もう誰の誘導も指示も無視して四方八方に逃げている。逃げ場がどこなのかわからないのに、走らずにいられないみたいだ。 また空一面に爆発による火球が無数にできる。いかんいかん! どうすりゃいいんだ? そうだ、とにかくこの攻撃の意図はわからないが、これ以上人を巻き込むわけにはいかん。安全地帯を探して、 そこに誘導しないと。 「ハルヒ! 取り込み中だと思うが、安全な場所を探すことはできないのか!? 俺がここにいても仕方ないから、 教えてくれれば下の人たちをそっちに誘導するぞ!」 「今やっているわよ! ぎりぎりだから話しかけないで!」 また空に無数の爆発の花が開く。くそったれ、いい加減にしやがれ! どれだけの人の命を奪う気だ!? と、ここでハルヒは一瞬落胆するように、顔を下に向けた。だが、また砲弾が空に現れたのか、キッと顔をゆがめて それらを破壊する。 そして、絶望の色に染まった声で言った。 「安全地帯は……ないわ!」 「……なんだと!?」 どういうことだよ。 「北高を中心にして不可視遮断フィールドが展開されているのよ! 簡単に入ってこれるけど絶対に出れない空間、 あと外側から見ても別になにも変わっていないように見える状態になっている! 攻撃はその範囲内にくまなく加えられているわ! どこに逃げても無駄よ!」 そんな。じゃあただ黙って死ぬのを待つしかできないってのかよ。 いや待て。そんな芸当はいくら機関の超能力者でもできないはずだぞ。ならやっているのは情報統合思念体か? しかし、それにしては随分地球人類的手段を取っているように感じるが。 待て待て。そんなことを詮索している場合ではないんだ。今は何とか攻撃を避ける方法を見つけなければならない。 「だったら、攻撃の元を削げば良いんじゃないか!? 砲撃を受けているって言うなら、どこかに発射している奴らが いるって事だろ!? ならそっちを叩けばいい!」 「ええ、確かにいるわね。でも、それがどこだか教えてあげようか?」 俺の方に疲れ切った自虐的な笑みを浮かべるハルヒ。相当の疲労があるのか、顔中汗だくになり、 頬には髪の毛がまとわりついている。 「ここから数千キロ離れた砂漠地帯よ。恐らく演習場か何かでしょうね。きっと砲撃している連中もここに撃ち込んでいるとは 思っていないはずよ。SF映画のワープみたいに、砲弾だけが北高上空に転送されてきているんだから」 俺が愕然となった。数千キロ? 攻撃している連中はこの惨状を全く理解していない? 何を言っているんだ? もう訳がわからんぞ。それなら、ひたすら攻撃を防いでいることしかできねぇじゃねえか。 どうしようもなくなった俺だったが、それでも黙って指をくわえていることはできず、当てもなく周囲を見回した。 ハルヒのおかげで砲撃の着弾はなくなったが、パニックは収まらず逃げまどう群衆が見える。 ふと――完全に偶然だったが、もう一つの破壊された校舎の残骸を見ているときに、俺は人影を見た。 遠くだったのと日陰だったためただのシェルエットにしか見えなかったが、長細い筒のようなものをこちらに向けている。 とっさだった。それがなんなのかきっと普段映画の見過ぎだったのに加えて、辺り一面戦争映画モードだったのが 俺の判断を導いてくれたのだろう。ハルヒに体当たりしていた。 「――ちょっと何するのよキョ――!」 ハルヒの声の抗議は途中中断を余儀なくされた。なぜなら、体当たりのショックでハルヒの立っていた位置に 入れ替わった俺の右の二の腕辺りがちぎれ飛んだからだ。 自分の腕がなくなった瞬間、俺は痛みは全く感じなかった。全神経が麻痺し、腕に当たった猛烈な衝撃だけが身体を震わせる、 飛んでいく右腕はやたらとゆっくりと俺の後方に飛んでいった。野球の試合のウルトラスーパースロー映像みたいになめらかに。 「キョン!」 次の瞬間ハルヒが俺を抱きかかえた。同時に俺の右腕が元に戻っていることに気が付く。当然痛みも何もない。 またハルヒが治癒してくれたのか? 全く医者にでもなれば全世界の人間が救えるぞ。人口爆発は必死だけどな。 ってそんなのんきなことを考えている場合じゃねえ。 俺を助けるために、砲撃阻止を一旦中止したためか、北高一帯に無数の砲弾が降り注ぎ大地震のように校舎が揺さぶられた。 だが、憎らしいことに今やるべき事はそっちの阻止ではない。 「ハルヒ! 早く――!」 「わかってる!」 ハルヒは俺を抱えると、校舎の上を飛びはね回った。言っておくがただの喜劇でも運動でもないぞ。 俺の感覚が正しいなら、ハルヒが飛び跳ねた後1秒以内にそこに何か鋭利で高速なものが飛んで行っている。 つまり俺たちは今何者から銃撃を受けているって訳だ。 俺の体重なんて無視するかのようにハルヒは華麗にその銃撃を避け続けた。ただし、避けられているのは ハルヒの身体・洞察能力が素晴らしいだけであって、相手も的確に俺たちに銃弾を飛ばしてきている。 こいつじゃなければ全段命中は確実だろうな。 やがてハルヒは校舎と屋上の出入り口の前に移動した。続けて三発の銃弾が出入り口の壁に突き刺さりコンクリート片を 飛び散らせるが、ハルヒは動かない。どうやらここだと相手の位置から死角にはいるようだ。続いた三発の銃弾は ここから焦りを誘い移動させるための威嚇射撃だろう。相手は完璧なプロだな。それを見破るハルヒも大した奴だが。 ハルヒはさすがに体力の疲弊が激しいのか、しばらく胸を上下させて酸素補給に努めている。 その間にもまた砲撃がそこら中に加えられまくっているが、これではどうしようもない。 「とにかく、狙撃している奴の始末が先決ね……」 一旦大きく深呼吸をして、酸素補給を強制終了させたハルヒは死角からでないように辺りの様子を探る。 相手は何者なんだ? この状況でハルヒを狙って攻撃してくる以上、砲撃を行っている奴と同じ連中だろうが。 ふとハルヒはぱんと手を叩く。同時に周囲に空中モニターっぽいものが映し出された。それらには黒ずくめ――特殊部隊とか ああいう格好をした連中が10人くらい映し出されている。全員、手に銃を持ち何かの指示を出し合っていた。 手際よく無駄のないその動きは、やはりプロそのものだ。 「あっ……!」 その中の一人の顔を見て、俺は思わず声を上げてしまった。年齢の読みづらい美人女性。格好は軍隊でもあの顔だけは 変わるわけがない。森さんだった。 ハルヒはそんな俺を見逃さない。すぐに問いつめてきた。 「どうやら知っている人がいるみたいね。今はあんたの主張なんて聞いている暇はないからとっとと教えて」 「ああ、古泉の同僚って言っていた人だよ……俺の世界での話だがな。ちくしょう!」 俺は屋上の床を拳で殴りつける。 森さんは古泉と同僚、そして古泉は機関の主流派に属しているはずだ。ってことは森さんも主流派であると考えていいわけで、 彼女が襲撃に荷担していると言うことは、今無差別大規模攻撃+狙撃を行っているのは機関主流派ってことになる。 どういうわけだ。あれだけハルヒの平穏を望んでいたのに、何でこんな事をしている……! 「全部片づけてくるわ。あんなのがうろちょろしているとこっちもやりづらいから」 「…………」 俺はハルヒがその超人的な力で屋上から襲撃者に向かって飛びかかっていくのを止めるどころか、言葉一つ吐けなかった。 主流派の攻撃。機関はハルヒの排除を決断した。この事実は確定した。 ……なぜだ? なんでだ? ほどなくして、銃撃戦が階下で始まる。激しい銃声と小さな爆発音があちこちで起こり、ハルヒと機関の激しい戦いが 容易に想像できた。 砲撃は相変わらず激しく続き、街の大半が廃墟に変わろうとしている。 俺はもうするべき事も、したいことも思いつかず呆然としているだけだった。 十分程度立ったぐらいだろうか。軽い足取りで誰かが階段を駆け上がってくる音が聞こえる。ハルヒか? だが、屋上の入り口に現れたのは、黒ずくめの襲撃者一人だった。すぐに俺の姿を見つけると、手にした短銃を俺に向け 立つように声をかけてきた。 その声にも聞き覚えがある。 「新川……さんですか?」 少し老いているが力強く威圧感のある声。あの執事を演じていた新川さんのものだ。 だが、初めてあったはずの俺の問いかけに動揺一つ見せることなく、さらに立て!と叫ぶ。俺はどうすることもできず、 両手を上げて立ち上がり…… 次の瞬間、新川さんは糸の切れた人形のように床に崩れ落ちた。その背後からハルヒの姿が現れる。 その手には一人の北高制服の人間が抱えられていた。 ハルヒは新川さんをまるで粗大ゴミでも投げ捨てるように、蹴り飛ばし離れたところに追いやった。 さらに脇に抱えていた人間を俺の方にぞんざいに投げつけてくる。 「邪魔者は全部排除してきたわよ。ついでにこいつもいたから拾ってきた。言いたいことがあるなら今の内に言っておきなさい。 ついでに使えそうな情報を持っていれば聞き出しておいて。あたしはまた砲撃阻止に入るから」 「……やあどうも」 それは古泉だった。俺は自分の意思よりも先に感情でそいつの頬を思いっきりぶん殴る。 その勢いそのままに胸ぐらをつかみ上げ、 「おい! これは一体どういう事だ! 今すぐわかりやすく説明しろ! でなきゃ屋上から突き落としてやる!」 「…………」 俺の脅迫に古泉は黙ったままなぜか腕に付けている時計をちらりと見た。俺はその態度に苛立ちを募らせ、 さらに数回同じ言葉とともに、古泉の身体を揺さぶる。今更何を隠し事しようってんだ。 やがて古泉は観念したようなため息を吐いて、 「……機関は決断しました。涼宮さんの排除をね」 「なんでだ? お前らはハルヒが何の変哲もなく一生を過ごすことを望んでいたんじゃないのかよ!」 「そうです。その通りです。しかし、それは手段であって目的ではありません。目的を達成するための条件が変化した場合、 手段は変化します。当然のことだと思いますが」 「目的? ならお前らにとってハルヒは手段に過ぎない――」 俺は自分で言っていて気が付いた。そうだ。その通りだ。機関にとってはハルヒは手段でしかない。 俺の世界でもここの世界でも、機関の目的は世界の安定 ハルヒが明るい笑顔で過ごせる毎日を作ることはそのために必要だった――これは目的を実現するための手段だ。 だが、目的は変わらなかったが、ハルヒの力の自覚という状況が変化した。これにより、情報統合思念体はハルヒの排除に動く。 おっとハルヒだけではなく、この地球そのものを滅ぼすって事が重要だ。つまりハルヒの存在は、世界の安定には貢献しない。 むしろ害をなすものへと変わってしまった。なら手段は変わる。 「情報統合思念体――TFEI端末はこう言いました。涼宮さんが力を自覚した。だからこの星ごと抹消すると。 ですが、そんなことをされるのは勘弁願いたい。機関の主流派――いえ、機関全ての人間の意識は固まりました。 涼宮さんを排除して、情報統合思念体にはそれでこの星の破壊だけはやめてもらう。機関は情報統合思念体の役割の肩代わりを 申し出たんですよ」 その方法ってのがこの無差別砲撃とハルヒの暗殺か。 「ええ、その通りです。この星の抹消だけはどんな手段を使っても阻止しなければなりません。だから、機関が代わりに 涼宮さんとその影響下にある人間を抹殺するんです。幸い情報統合思念体はそれでも構わないと言ってくれたようですね。 ならば迷う必要なんてありません」 「影響のある人間……だと?」 「そうです。涼宮さんは無自覚かどうかは知りませんが、周辺の人に何らかの影響を与え続けています。 身近な例を挙げるなら、ほらちょうどここにいいサンプルがいるじゃありませんか」 古泉は両手を上げて自分をアピールした。ああ、なるほどな。ハルヒの影響を受けた人間――つまり超能力者もそれに 含まれるって訳だ。もちろん、俺の世界でいたあの中河のように、何だかしらんうちに影響を受けていた例もあるだろう。 情報統合思念体はハルヒだけに飽きたらず、そう言った人たちまで消さなきゃ気がすまんのか。 ……まさかそのために地球ごと抹殺しようとしているのか? 古泉はやれやれと手を振って、 「その通りです。もともと彼らにとって僕たち地球人類なんて大した価値を持っていないのでしょう。 逆に危険性が認められれば、一律削除が容易に可能と言うことです。そこまでする必要があるかどうかなんて考えずに、 全ての危険性を排除するために全人類の抹消を行うんです」 呆れてものも言えん。情報統合思念体ってのはそこまで冷酷非道なバカ野郎どもだったのか。 で、地球全滅だけは避けたいから、せめてハルヒ+その周辺の一般市民丸ごと虐殺で手を打ちませんか?って機関が 提案したんだな? ……もう一発ぶん殴って良いか? 「それは勘弁していただきたいですね。それにあなたは機関の決断に反発しているようですが、他に選択肢があったとでも いうつもりでしょうか? 機関は最悪の事態をさけるために、必死の思いでこの苦行を行っているんですよ?」 「こんな行為を受けいれられるほど、俺は落ちぶれちゃいないんでね……!」 古泉と俺のやり取りの間も、ハルヒは必死に砲撃を全て食い止めていた。だが、北高周辺から出れないのであれば、 こんな水際阻止を続けていても何の意味もない。ハルヒの体力もどこまで持つかわからないしな。 だが。 古泉――機関の決断とやらに、俺は反論できる材料は持っていない。あるのは世界のリセットだけだが、 それをばらすわけにも行かないのだ。そもそもそれは機関の世界の安定という目的とは明らかに乖離しているわけだし。 なら……どうすればいい? ………… ………… くそっ…… くそ、ちくしょうっ! 俺の無力さと頭の悪さを今ほど嘆いた時はない。 何も思いつかない。 逆に俺がハルヒとは何にも関わっていなかった場合、迷った上で人類全滅よりかは限定的大虐殺の方がマシだと 判断しちまいそうだ。 古泉は胸ぐらをつかんだままだった俺の腕を引き離すと、その場に力なく座り込む。 「いい加減、諦めたらどうですか? ここで仮に機関の攻撃をなんとかできたとしても、次に待っているのは 情報統合思念体による人類抹殺ですよ? どうやっても無駄なんです……何をやっても防ぎようがありません……」 完全に諦めモードか。ん、ちょっと待った。 「おい古泉。さっきハルヒの影響を受けた人間は全て抹殺って言っていたよな? それってお前も含まれるんじゃないか? それでいいのかよっ!?」 俺の指摘に古泉はすっと顔を下に向けて、 「機関からはあとで回収するって言われていたんですけどねぇ……。予定時刻はとっくに過ぎているんですが、 全くその気配はありません。これは担がれたと見るべきでしょう。僕もその抹殺対象リストにきっちり含まれていたと」 「お前……」 こいつも結局巻き込まれただけって事かよ。どっちかというと被害者か。そして―― 「あんたのやったことはいたずらに他人を巻き込んだだけだったってことよ」 ハルヒから図星を付かれる。 俺は全力で否定したくなったが、何も口が動かなかった。内心ではそうだと受け入れているからだろう。 疲れ切った足の重みに耐えきれず、俺も古泉の横に座り、 「すまねぇ……お前を巻き込じまって」 そんな俺の謝罪に古泉はその意味を理解できないようで、 「なぜあなたが謝るのでしょうか? どちらかというと僕の方があなたを巻き込んだようなものですよ?」 「違うんだ……それは違うんだよ、古泉……」 酷い脱力感。もう何もやる気がしない……なにも…… 「キョンっ!」 それを打ち破ったのはハルヒの一喝だった。見上げれば、ハルヒは仁王立ちで必死に砲撃の阻止に努めている。 そうだ。俺は何を諦めているんだ? まだ俺にはやれることがある。いや、こうなった以上、やることは一つしかない。 ハルヒによるこの時間平面のリセット。 「そうよっ! でもそれにはちょっと時間と準備がかかるわ! とてもじゃないけどこの状況じゃできそうにない。 だから一旦落ち着かせる必要があるの! だから協力して!」 「だが、何をすりゃいいんだ!?」 俺の問いかけにハルヒは、古泉の方を指差し、 「確認するけど、この攻撃は情報統合思念体と機関が協力して行っている、でいいのよね!?」 「え、ええ……そうですが……それが……?」 古泉はきょとんとした表情で答える。何をしようとしているのかわからないのだろう。当然だが。 「でもまだ何か隠している。そうよね!」 この指摘に古泉の表情が一変した。何だと? この状況下で一体古泉は何を隠しているってんだ。 ハルヒは続ける。 「こんな攻撃を続けていても、効率が悪い上に住民全部を抹殺なんて不可能だわ! だったら、これには別の意図があるってことよ! あたしの勘では、ただの陽動! 本当の攻撃手段は別にあるはずだわ! それにわざわざ外部と遮断して、さらに外側からはこの惨状が見えないようにしている! これには絶対に意図があるはず!」 「……どういうことだ、古泉!」 俺は再び古泉の胸ぐらをつかみ上げる。 もう俺の腹は決まった。ハルヒの時間平面のリセットを実行する。そのためには、これ以上の邪魔を入れるわけにはいかない。 古泉の顔は答えるべきか迷っているように見える。とにかく吐かせるしかない。 俺は何度も答えを求めて古泉に問いつめるが、一向に口を割ろうとしない。そんな中、ふと気が付く。 古泉がまだ時計を気にしていることに。迎えの予定時間は過ぎたって言うのに、今更何を…… 「そうか。この先に何かが起きるんだな? それも一瞬にしてお前らの手段を実現できる方法ってやつが!」 「……くっ」 これを指摘して、古泉はようやく勘弁したらしい。苦渋のうめきを漏らしつつ、 「考えてみてください。突然、街一つが消滅するような事態が起きれば、世界の人たちはその原因を知りたいと思いますよね?」 「ああ、そうだな」 「だから、納得できる理由が必要なんですよ。なぜこの惨劇が起きたのか、少なくても表面的な理由が」 俺は回りくどい古泉の説明に苛立ち、一発頬をぶん殴ると、 「それは何だと聞いているんだ! とっとと答えやがれ!」 「核ですよ」 古泉の回答は俺の脳内に激しくこだました。 核。核って核兵器のことだろ? あの大量破壊兵器。あれを使って町ごと吹っ飛ばす気か!? だが、ハルヒは意外と落ち着いた様子で、 「そんなことだろうと思ったわ。この砲撃はあたしを誘い出すための補強策って訳ね。この攻撃の阻止に夢中になっている間に どかんとやってしまおうと。危うく引っかかるところだったわ」 「その……通りです。冷戦崩壊に伴って行方不明になっていた核弾頭を機関の方で保管していたんですよ。 こういった事態がいつ起こっても良いように。事前砲撃は周辺から見えるわけにはいきませんからね。 そのためにTFEI端末の力を借りています。そして、核でこの周囲を一掃後、全世界には核によるテロが発生したと 発表して――それで終わりです。ああ、起爆予定時刻はあと五分後、いまさら解除は不可能ですよ? 僕はどこに仕掛けられているのかも知りませんから聞き出そうとしても無駄です。例え解除できたとしても、 次に待っているのは人類滅亡ですから余り推奨もできません。ハハハハ……」 古泉の表情は自暴自棄になっていることを伺わせた。そりゃそうだ。もうすぐ自分は死ぬんだからな。 もう何もかもぶちまけてやけくそになってしまいたいのだろう。 だが、礼を言うぞ。これでリセットのチャンスができた。 「ハルヒ! 五分でできるのか!?」 「十分よ!」 ハルヒは目を閉じて意識の集中に入る。情報操作――時間平面のリセット。現状、俺たちができることはこれしかなくなった。 古泉は状況が変わったことに感づいたのか、 「な、何をする気なんですか!? さっきも言いましたが、万一これを乗り切ったとしてもさっき言ったとおり……」 「古泉」 俺はうろたえる古泉の肩をつかんで顔を寄せる。 「まず謝る。巻き込んで済まなかった。お前をこんな目に遭わせたのは、ハルヒじゃなくて俺だ。 俺がそうハルヒにやれっていったんだからな。だから憎むなら俺を憎んでくれ」 「何を言って……」 時間がない。古泉の言葉なんて聞いている暇はないので一方的に続ける。 「その上で確認したい。お前はハルヒや俺と出会って過ごした日々はどうだった? 嫌々続けていたのか、それとも 機関の仕事だからと言う理由で無機質に付き合っていただけか?」 「……いえ。この際だから本音でしゃべらせてもらいますが――その間は自分の仕事も忘れるぐらいに楽しかったです。 いっそそのまま何も考えることなく、あなたや涼宮さんと一緒に楽しく過ごせたらなと思ったほどでした」 それだ、それが確認したかった。 同時に俺はハルヒの方へ振り返り、 「おい、ハルヒ! お前はどうだった? この数週間楽しかったか!?」 ハルヒはしばし考えたのかワンテンポ遅れて、眉をひそめたまま、 「ええ! そうよ! 久しぶりに楽しく過ごせたわ!」 そう言い返してきた。不満が篭もったようないいっぷりだったが、こないだ聞いた話から考えて本音と見て良いだろう。 俺もそうさ。SOS団のある元の世界に比べれば、1割にも満たない満足度だが、決してつまらない日々じゃなかったぞ。 再度古泉を向かって、 「約束させてくれ。絶対にこの罪滅ぼしはさせてもらう。俺の世界じゃ、お前――機関とも仲良くやっていたからな。 この世界も絶対にお前やその他もろもろがハルヒを一緒に笑って過ごせるものにしてやる。絶対の約束だ!」 俺の断言に、古泉は唖然と口を開いたまま言う。 「あなたは……一体誰なんですか?」 俺か? 俺はな…… 「俺はお前や宇宙人――情報統合思念体や未来人が一緒に仲良く共存している世界からやって来た異世界人さ」 そう宣言したとたん、ハルヒを中心に猛烈な強風が吹き始める。 いったんはさよならだ、古泉…… 世界が暗転し、俺の意識も闇へと落ちていった―― ◇◇◇◇ どのくらいの時間が経ったのだろうか。俺はひんやりとした床が方に当たっていることに気が付く。 目を開けてみれば視界に広がるのは、あの灰色の部屋、そしてどこに出もあるような教室の床。 そうか。リセットをかけてここに戻ってきたのか。ハルヒが潜伏場所にしている時間平面の狭間とやらに。 俺はゆっくりと起き上がった。 ふと気が付く。ハルヒが団長席――俺の世界ではだ――に突っ伏して眠っていることに。俺が起きたことに全く気が付かず、 可愛らしい寝息を立て眠りこけていた。あれだけの大仕事を一人でこなしていたんだから、疲れて当然か。 風邪を引くのかどうかわからんが、念のため制服の上着をハルヒの上に掛けてやった。 俺はパイプ椅子に座り考える。 結局の所、機関を作った世界は失敗に終わってしまった。これは認めなければならない。 しかし、古泉を俺たちの仲間内に引き込んだことは間違いじゃなかった。ただ時間がなかっただけで、 もっと時をかけて信頼を醸成していけば、必ず良い関係が築ける。 ――待っていろ古泉。絶対に楽しい日常が続く世界を作り上げてお前を仲間に引き入れてやるからな。 涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの軌跡
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/542.html
俺は、ハルヒの事が好きだが、告白するなんぞ出来ない…… 何故なら、俺はツンデレだと自覚している。 それなのに、いつものように生活している…… 「涼宮ハルヒの憂鬱キョンとハルヒの絆」 今の季節は夏、俺は今、学校へ行ってる所である。 谷口「よぅ!キョン!」 声掛けるな、暑苦しい 谷口「何言ってんだ?クールな口調になってるぞ」 なってない、なってない 場所変わって、教室 入ると、ハルヒがいる かなり暇なようだ 「よぅ」 ハルヒ「あ、キョン、放課後ミーティングあるからね、遅れないように!」 「はいはい」 と、言う時に岡部が来た 放課後、俺はいそいそとSOS団部室へ行った。 入る前にノックして入るのが俺のルールだ みくる「は~い、どうぞ」 我らアイドル、朝比奈みくるの声である。 う~ん、可愛い声ですね! 入ると、朝比奈さんと古泉と長門……そして、ハルヒがいた。 古泉「こんにちは」 長門「……(ゴクリ」 みくる「こんにちは、キョン君」 ハルヒ「遅い!ミーティングするわよ!」 やれやれ……挨拶無しですか、ハルヒさん いつものようにミーティングをやり、終わった。 そして、長門が本閉じた時が帰る時間になるのだ。 帰ろうと思ったのだが…… ハルヒによって呼び出された。 ハルヒ「キョン、あんたは残って……話したい事あるの」と言われた。 このまま、帰ったら死刑にされるから仕方なく了解した。 今、部室には俺とハルヒだけだ 「……」 ハルヒ「……」 「……」 ハルヒ「…ねぇ、キョン」 「何だよ」 ハルヒ「…あたしの事どう思ってるの?」 「?俺がハルヒの事どう思ってるかってか?」 ハルヒ「…うん」 唐突過ぎて呆然してしまった。 俺が、ハルヒの事どう思ってるのかって? ハルヒ「……」 「……」 ハルヒ「……」 長い沈黙である。何分経ったが分からないぐらいだった……そして、俺は沈黙を破った 「…最初は変な奴かと思った」 ハルヒ「!?」 「しかし、俺は、お前と一緒にいると楽しいと分かった」 ハルヒ「……キョン」仕方ない、ここで告白しようか……言うんだ!俺よ! 「……ハルヒ、俺はお前の事……」 キィィィィ…… な、何だ!?この耳鳴りは!? ???「やっと、見つけたね」 この声……まさか!? ???「やっと、見つけたね」 「お前はまさか……」そう、俺を2回襲い、殺そうとした………それが 「朝倉涼子!」 朝倉「当たり、流石、キョン君ね…私の事を覚えてるなんで」 「何で…何でこんな所にいるんだ!」 朝倉「私は、キョン君と涼宮さんに会いたかったの」 ハルヒ「朝倉さん、あんた、カナダへ行ったんじゃあ……」 朝倉「お久しぶり、涼宮さん……残念だけど、カナダ行ってないし……それに」 と、部室が異空間に変わった。 朝倉「私は普通の人じゃないわ」 「!?」 おぃおぃ、マジか? 朝倉がナイフ取り出したぞ…… ハルヒ「あ、朝倉さん……」 ハルヒは、呆然してるな… ま、仕方ないだろ?誰でも信じたくない出来事で呆然するのは当たり前… じゃなくで、こういう状況はどうすんだ……気付いてくれよ、長門! 朝倉「ふふふ……どうするの?」 くっ、逃げるしかないか…… おぃ、ハル…… ハルヒ「これは、どういう事?ねぇ、キョン!」 ちっ、ハルヒが混乱に陥ってるな… 「ハルヒ!逃げるぞ!」 ハルヒ「キョン!」 俺は、ハルヒの手を捕まって部室から逃げた。 とにかく、稼ぐんだ!時間を稼ぐんだ!長門! 朝倉「逃がしはしないわ」 逃げる、逃げる、とにかく逃げる…… …おかしい、階段が見当たらんぞ……これがエンドレス廊下かぃ! 笑えないな 朝倉「そう、笑えないわ」 いつの間に!? 朝倉「今度こそ、あなたを殺して、ハルヒを目覚めて貰うわ」 くっ、ここでゲームオーバーか! 朝倉「死になさい」 朝倉のナイフを俺の方へ投げる… ???「……させはしない」 この声は! 「長門!」 長門「…遅れてゴメン」 朝倉「ふふふ、まだ現れたね、有希」 長門「あなたは、私が消したはず」 朝倉「私は諦めない主義なんでね」 長門「あなたは、前より強くなった」 前より強くなった!?と言う事は、前のようには出来ないって事か!? 長門「…そう」 冗談じゃねぇ!と言う事は、この異世界から脱出するしかないのかよ! 長門「…そう」 朝倉「脱出しても無駄、私が追っかけるわ」 長門「…一つ出来る事ある」 「それは、何だ?」 長門が言ったのは、次の事である。 朝倉を無へ帰る事 つまり朝倉と闇に包まれた世界へ行けってか…… 「で、それはまだなのか?」 長門「……もう完了した」 なるほど、長門ってなかなかの策士だ。 長門「出口を開ける」 と、長門が呪文を唱えて、何も無い空間から出口が現れた。 「行くぞ、ハルヒ」 ハルヒ「う、うん」 ハルヒを出口まで連れて行く時に、突然、キョンは腕を捕まれた 朝倉「させない」 キョン「な、放せ!」朝倉「暴れても無駄よ」 ハルヒ「キョン!」 くっ…………仕方ない… 「ハルヒ!長門!出口まで走れ!行くんだ!」 ハルヒ「で、でも!」「行くんだ!」 ハルヒ「……分かった、行こ、有希!」 と、ハルヒは、長門を連れて走った… そう、それでいい… 朝倉「何をする気?」「お前を、道連れしてやる!」 朝倉「ま、まさか!?」 周りの空間が闇に染まって来る ハルヒ「キョン!何してるの、早く!」 ハルヒ、長門…脱出したな… 長門「…キョン」 寂しがるな、長門… ハルヒ「キョン!ねぇ!」 ハルヒ…今までありがとな… 「っ!ハルヒ!お前は、俺の……」 ハルヒ「キョーンッ!」 ――恋人だ 異世界の扉が閉ざされ、元の部屋に変わった。 そして、キョンは行方不明に… キョンが消えた… あたしが好きだったキョンが消えた… 「有希!キョン救えるでしょ!」 長門「…救える確率は低い」 「そ、そんな!?」 長門「彼の事は、病気という理由しておく」 「……」 長門「…ゴメン、ゴメンなさい」 「!ゆ、有希…」 泣いてる…あんな無感情だった有希が無いてる 「あ、あんたは悪くないのよ…有希、いいの、自分で責めないで…」 長門「うん…でも、ゴメンなさい」 「いいの!二人で救う事だけ考えようよ……うっ、ううっ…」 長門「……」 お互い、抱き合って泣いた…神はあたし達を見守ってるだろうか… 次の日 岡部「えー、●●●は病気で欠席だ」 クラス一同「エェーーッ!?」 ……キョン キョンの机… キョンの置き勉… …キョン 「よぉ!」 「映画、成功しよう!」 「やれやれ…」 「SOS団の事頼むぜ」 「俺、実は…ポニーテール萌えなんだ」 「ハルヒ、それ似合ってるぞ」 「ハルヒ、ハルヒ、ハルヒ……」 会いたい、キョンに会いたい… 阪中「どうしたの?ハルヒさん……泣いてるの?」 え、泣いてる? あたしが泣いてる…… 会いたい、キョンに… 授業が終わり、放課後になり ハルヒは部室へ行き、古泉やみくるに昨日の事を伝えた。 みくる「そ、そんな…キョン君が…」 古泉「キョンさんが行方不明に…」 二人も驚いてた。仕方ない事だったのよね…いえ、仕方なくない! 長門「ゴメンなさい」 「有希は悪くないのよ、全て…あの子が悪いのよ」 長門「……」 あたしは、信じてる…キョンは今どこにいるかを! それに… 「古泉君、みくるちゃん…あんた達は、やっぱり…」 古泉「…気付いてたのですか?」 みくる「そうです、私は未来人です」 そっか…有希が宇宙人だとすれば、この人達は…と思ってたけど… あの時、キョンが必死に言ってたのはこれだったのね… 「…古泉君、みくるちゃん、有希、あたしは何者なの?」 みくる「あなたは…時間を変える能力あります」 長門「こっちは、三年前…情報を爆発させたのは…あなた」 古泉「しかし、我々…『機関』では、あなたの事を「神」だと思ってる者がいます」 つまり、あたしは何者がはっきりしてないって事ね 古泉「恐らく、そうなります」 ん?と、言う事は 「あの時…そう、キョンとあたしがいた空間はもしかして?」 古泉「空間?巨人がいっぱい出て来た空間の方ですか?」 「うん、そう」 古泉「あれは、「閉鎖空間」と言われる空間なんですよ。あなたのイライラで発生した空間です… あの巨人は「神人」と呼ばれる者なのです。アレは、あなたの不機嫌で出来た者達…あなたは夢だと思ってますが、違います。」 「え!?じゃあ…アレは…夢じゃないって事?」 古泉「えぇ、そうなります」 な、ちょ…え!?うそ!?あのキスはゆ、夢じゃないの!? 古泉「何があったか知りませんか、夢ではなく現実です。あなたの不機嫌が爆発したら…ここは無くなる可能性あります」 え?あたしの不機嫌で世界が無くなる? 「それは、世界崩壊って事なの?」 古泉「…はい」 そんな!あたしは知らないまま生きてたと言う事なの… みくる「涼宮さん、あなたは知らないまま生きて欲しいと望んで来ました…まさか、この時に告白するとは思いませんでした …すみません」 「みくるちゃん…いいの、あたしは気にしてないわ」 長門「私はあなたを守る」 「ありがとう、有希…ありがとね…」 と言いながら、あたしは、ふと、窓の方へ見た… 橙色で染まってて美しかった。 キョン、今どこにいるの… ???「うっ…こは、ど…だ…さ…い…みん…会い…い…ハ……ハル……ルヒーっ!!」 ハッ!? …ゆ、夢か… あれから、一ヵ月後…あたしは元気になって通っている。 でも、家では元気じゃない… 泣いた日だってある… 「んー?何だったのかしら?あの夢…」 時々、声が途切れて、何で言ってるのか分からなかった… なのに、どこが…懐かしい感じがしたわ… 何だったのかしら? SOS団室 「やっほー、みくるちゃん!お茶!」 みくる「は、はい…ちょっと待って下さいね」 みくるちゃんのメイド姿を見ると、嫌な夢忘れられるわ… 古泉「こんにちはー、おや?ハルヒさん、今日も大丈夫ですね」 「あったり前よ!それに比べて、キョンなんか…あ…」 古泉「…すみません」 みくる「…お茶置いときますね」 「あ、うん…」 そっか、今はキョンいないんだ…あたしって、まだ思ってるんだな… 「……キョン…」 まだだ、あたしって弱くなったな…キョンがいたら、きっと笑ってしまうよね 長門「……」 古泉「おや?長門さん、顔色が悪いですよ…大丈夫ですか?」 長門「う、うん…」 みくる「本当に大丈夫なんですか?」 長門「大丈夫」 と言って、立ち上がった。 古泉「おや、帰るんですか?」 長門「…(ゴクリ」 と、有希は歩き出した途端 「…ぁ…」 ドサッ! 有希が倒れた… 「!…有希っ!有希!有希!」 みくる「有希さん!」 古泉「保険室へ行きましょう!」 保険室 「有希、どうしたのかしら?」 みくる「そうですね…」 シャッ カーテンを開く音だ。 古泉「先生から聞きましたが…長門さんは、寝不足に疲労が溜まってたんですよ」 「寝不足と…」 みくる「疲労?」 古泉「えぇ、そうです」 「な、何で…有希が?」 古泉「…ハルヒさん、心当たりありますか?」 心当たり?……まさか… 「ずっと、キョンを探してたの?」 古泉「……」 みくる「……」 有希…有希も、まだキョンの事を… 「有希…何で、何で…あたし達と相談しなかったのよ…ズルイわよ!あたしは、団長なんだからね!…うっ、うっううっ…」 みくる「ハルヒさん…」 古泉「……」 有希は、今も寝てる…優しい天使の様に …よし、決めた! 「皆!よく聞いて!」 古泉「はい?」 みくる「何ですか?」 「あたし達と一緒にキョンを探そう!きっと、どこかにいるわ!」 みくる「涼宮さん…」 古泉「これは、良い決心ですね…僕も探しましょう」 「皆、頑張ろうね!」 長門「私は…まだ諦めてない…私も探す」 と、有希は起きてた 「有希!ちゃんと寝ないとダメよ!」 長門「大丈夫…時間を早くした…もう平気」 有希… みくる「行きましょ!」 みくるちゃん… 古泉「僕も一生懸命、探しますよ」 古泉君… ???「ハルヒっ!」 「!…え?」 周りを見ると誰もいない… どういう事?あ! (???「ここは、どこだ…寒い…皆に会いたい…ハルヒ、ハルヒ、ハルヒーっ!」) あの夢、まさか…キョン!? 皆に、夢の事を話すと 古泉「夢の中にキョンさんか?」 みくる「まさか、キョン君は…今、そこにさ迷ってるって事?」 「かもしれないわ…キョンは多分…」 長門「その可能性ある」 古泉「……」 みくる「……」 「…有希、何とか出来ないの?」 長門「ある」 古泉「え?それは…まさか?」 みくる「どういう事ですか?」 「古泉君、何か分かったの?」 古泉「…閉鎖空間へ行き、欠けた場所あれば…そこが異空間の入り口です」 欠けた場所? 「はい、例えば…そこに壁があるとすれば、閉鎖空間では壁では無くなってる…と言う事です」 つまり、あった物が無いとすれば、そこが異空間への入り口って事ね 「で、どうやって行けるの?」 古泉「ご安心を、僕の出番ですから」 古泉「ここでいいでしょう」 ここは、校庭…何でこんな所に? 「って、ここで何か出来るの?」 古泉「はい…その前に、あなたに言いたい事あります」 「何?」 古泉「僕とみくるさんに、長門さんは行けません…何故なら、あの空間はあなたの物ですからね」 「……」 古泉「一人で探せますか?」 「探せるに決まってるでしょ!」 古泉「そう聞いて、安心しましたよ…さぁ、目を瞑ってください」 目を瞑る?取りあえず、言われた通りにやるしかないわね… 古泉「失礼ですか、手を貸しますよ?」 「うん」 一歩、二歩、三歩… 古泉「目を開けて下さい」 ……ここは、閉鎖空間ね 古泉「後は、頑張って下さいね」 と言い、古泉君は消えた… …さて、キョンはどこにいるのかしら 一年五組の教室… 保健室… 食堂… トイレ… 屋上… 体育館… 色々、探したけど…見つからなかった… 「ふー…ここにも無いわね…と言う事は…SOS団室だけか…」 SOS団室のある校舎へ行き、階段に登り、到着した。 ここなら…見つかるはず…お願い! と、あたしは思いながら開けた… 何にも無い… 「う、うそでしょ…どこにも無いわよ…」 ん?何か…何か変ね… ロッカー…コスプレ服…盤ゲーム…お茶入れ…ヤカン… あ、PCが無い… 「どういう事?」 よく調べると…PCがあった机の向こうに入り口あった… 「入り口から見れば無かったのに…後ろにあったなんで…」 そう、そこが異空間への入り口… 何だが、怖い…怖くで行けないよ…キョン…あたしは本当は気が弱いのよ…キョン… 「うっ…ううっ、ひっ…怖いよぉ…」 カダンッ! 「ひっ!……な、何?」 周りを見ると、床に何か落ちてた… 「…これは…」 よく見れば、キョンの鞄だった… キョンが行方不明になって以来、鞄をおばさんや妹ちゃんに返してなかったっけ… キョン… 「ん?鞄の下に何かある…」 と、鞄の下にある物を取って見ると… 一冊のノートだった… 「何で、こんな物か?…日記?」 ノートの表面にデカデカと「日記」と書かれてあった… とにかく、開いて見る ○月○日 変わった女がクラスにいた。そいつの名は涼宮ハルヒ。 しかし、可愛かったな…ポニーテールすれば物凄く可愛いよな ○月○日 ちょっと話し掛けてみた…すぐに終わっちまった… まったくよ、こんな可愛い子がいるのに勿体無くね? ○月○日 ハルヒを観察したら、分かった…こいつ、曜日ごとに髪型を変えてるな…うむ、面白い ○月○日 SOS団か…まぁ、仕方ないか… 間違った方向へ行かなきゃいいんだがね… キョン…こんな事を日記書いてたの? ○月○日 夢を見た…ハルヒとキスする夢を…うわぁ、恥ずかしい!フロイト先生が笑ってしまうぐらい恥ずかしい… でも、味が良かったな… キョン…嬉しかったの? キョン… 最後まで読もう… ふー…次のページへ行くかな… ベラ・・・ 「ん?これは…最近の」 ふと、手が止まった… ○月○日 ハルヒを見て思った…ハルヒは確かに可愛い。 怒る顔も可愛かった…だけど、ハルヒと一緒にいるだけで楽しい… だから、俺はつい嬉しくなる…ハルヒはハルヒらしく行動してくれると俺は安心する… めちゃくちゃな行動をするハルヒが好きだ。気が強いハルヒも好きだ。 俺は、素直に「好きだ」と言えない…それでも、愛してる… ハルヒ、気付いてくれるのだろうか… キョン…あたしの事をそう思ってたの!? 「キ、キョン…あぁ、会いたい!会いたいよ!…気が強いハルヒが好き?…でも、あたしは…本当は、気が弱いのよ!」 あたしは、泣いた…物凄く泣いた…会いたくでも気が弱いまま… (キョン「ハルヒ、お前は!俺の……」) !? (――恋人だ) キョンは、こう言ってたわ…あたしを恋人してくれたんだ…あたしは、頑張るよ!いつまでも気が弱いままじゃダメだよね…キョン、待ってて!) と、あたしは異空間へ入った。 暗い… 上と下が分からない… 寒い… キョン…どこにいるの… フワッ! あたしがいた暗かった異空間が、いきなり明るくなった。 「な、何なの?」 ここは、あたしが通ってた東中… そして、今いるのは、校門の辺り… 「…!!」 「……!」 校庭の辺りに声が聞こえる… あたしは、そこへ行って見た 「あ、あれは」 そう、あたしが見たのは…中学校頃のあたしと…ジョン・スミスだった。 どうやら、線引きをやってる最中だった。 どうやら、線引きが終わったようだ 「ねぇ、あんた。宇宙人、いると思う?」 「いるんじゃねーの」 「じゃあ、未来人は?」 「まあ、いてもおかしくはないな」 「超能力者なら?」 「配り歩くほどいるだろうよ」 「異世界人は?」 「それはまだ知り合ってないな」 「ふーん」 あの男…確か… 「ま、いっか」 「それ北高の制服だよね」 「まあな」 「あんた、名前は?」 「ジョン・スミス」 ジョン・スミス!?ジョン・スミス…まさか…キョン? そうか、キョンは3年前へ行ったんだ… キョン…あたしの知ってるジョン・スミスだったんだ… その後、昔のあたしとジョン・スミスが去った後、校庭へ行った。 そっか、これを書いたのは…キョンだったんだ… ありがとう、キョン… と、その時にあたしの後ろから光が放った。 「え?」 あたしは、振り向いた その光が人の姿に変わった…そして、光が消えた。 「え?あ…」 目の前にいた…あたしの会いたい人がいた… キョン「久しぶりだな、ハルヒ」 ハルヒ「キョン!」 あたしは思わずキョンへ駆け寄り、抱き付いた… 「会いたかったよ!キョン!」 キョン「スマンな、心配掛けて…」 いいの…キョンがいたから、謝らなくでいいの! 「キョン…」 キョン「…ここは、3年前の七夕だな」 「うん」 キョン「さっき、気付いたんだろ」 「うん!」 キョン「……」 ハルヒ「……」 お互い見つめ合ったまま、動かない… キョン「ハルヒ、ただいま」 ハルヒ「おかえり、キョン」 ???「あら?いい雰囲気ね」 !?あの人が来た!?学校の屋上? と、二人は学校の屋上を見る キョン「いい加減しろ…朝倉涼子!」 朝倉「あら、張り切ってるね?キョン君」 いきなり、キョンサイドへ切り替わりまーす! 朝倉「ふふふふ…どうするの?」 ハルヒ「キョン…」 あぁ、大丈夫だ!ハルヒ、俺が守ってやるさ 「朝倉!俺は思い出したぞ」 朝倉「何を?」 「長門から聞いた事ある。この異空間は自分の意思で物を変えれると聞いた! だが、それも条件あるんだろ?」 朝倉「あら、有希ってお喋りね」 「その条件はここの異空間とはピッタリらしいな?しかも、この異空間はコンピュータ世界だろ?」 朝倉「で、それがどうしたの?まさか、物を出すとか?」 「大当たりだ。普通の人でも出せるらしいよな?だったら!」 俺がイメージした通りに物が現れた…それは銃だった。 それを取って、素早く構えた。 「もぅ、お前の思い通りはさせねぇ!そして、お前を撃つ!」 朝倉「!?」 「……」 朝倉「ふふふふ、あーっはははは…この私に何か出来るというの?」 朝倉「ふふふふ…行くよ!」 と、朝倉の手からナイフが出て来た。 「くっ!」 銃で防御する俺 ハルヒ「キョン!」 「ハルヒ!お前は隠れてろ!」 ハルヒ「う、うん」 キン! 朝倉「ハルヒを逃してどうするのよ?キョン君!」 キン! 「ハルヒは俺が守る!朝倉、お前がやってる事は間違ってる!」 キンキン! 朝倉「それがどうしたのよ!私が間違ってる?それは無いわ」 キンッ! 鍔迫り合いする両者 「それは、お前のエゴだって…分かってるのか?」 朝倉「さぁ?分からないわ」 「ふざけんな!」 と、俺は弾き返した 朝倉「私は、ふざけてないわよ?」 朝倉「あなたがいる世界はつまんないでしょ?」 「つまらくはない、むしろ、楽しいさ」 朝倉「あら?我慢してるの?」 「…俺は、ハルヒがいる世界が好きだ…だが、お前が思うような世界は欲しくない」 朝倉「あら、ハルヒ、ハルヒって言うけど、そんなに好きなの?」 と、朝倉は「やれやれ」のボースをしてる。 「確かに、好きだ…あいつは気が強くでも、本当は気が弱いところがある…それでも守りたい…」 朝倉「ふーん…」 「ハルヒはハルヒだ、お前の思うようにはさせない!」 朝倉「でも、もう遅いよね…どの道、あなたが死ぬのだから」 「それはどうかな?」 朝倉「え?影?まさか!?」 朝倉は、月の方へ振り向いた 「遅かったな……長門!」 そう、月を背景して現れた 長門「情報結合の解除を申請する」 と長門が言うと、朝倉のナイフが消えた 朝倉「そ、そんなバカな…」 説明しよう!キョンは戦略を考えていたのである! 銃を出した後、長門の事を思い浮びながら戦ったと言う事だ! 時が来たら、それを実行したのがキョンの策…流石、策士は伊達じゃないぜ! 朝倉「くっ…」 朝倉は、少しよろめく 「朝倉!お前の負けだ!」 と、銃を構えた 朝倉「くっ!これが私の負けなのね…」 「朝倉!これで…終わりだぁっ!」 と、銃の引き金を引く バァン… 朝倉「あぁ…私の…ま…けね…」 朝倉は涙の泣かしながら、結晶化になり…消えた。 「…長門、ありがとな」 長門「…(ゴクリ」 …さて、ハルヒの所へ行くか… キョン…あんたの想いは分かったよ… あたしの想い…キョンの想いは繋がってたんだね… キョン「ハルヒ!」 「キョン!…戦いは終わったの?」 キョン「あぁ、終わったよ」 「……」 あれ?何で有希がここに? 長門「私は、ここから出る…後は、あなた期待」 と言って、消えた。 あぁ、CGが何かのプログラムかな? キョン「…ハルヒ、ここで言わせて貰う」 「何?キョン」 俺の想い…まだ変わってない…今なら言える! 「ハルヒ、お前の事好きだ!付き合ってくれ!」 キョンの想い…確かに受け取ったよ…あたしの想い受け取って… 「あたしも好きだよ!あんたじゃないと…ダメなんだからね…」 ハルヒ、確かにお前の想いは受け取ったよ… 「ありがとう、ハルヒ」 ハルヒ「こっちもありがとう、キョン」 「ねぇ、キョン」 「ん?何だ?ハルヒ」 「キ、キスしてくれない?」 「…あぁ、するよ」 と、お互いの唇が重なる ハルヒは可愛い。 キョンは優しい。 何かあろうと守ってみせる。 何かあっても守りたい。 そして、俺は…それぞれの想いを今、一つになる。 そして、あたしは…それぞれの想いを今、一つになるよ。 俺は、あたしは、愛されるより愛したい。 そして、生きて行きたい。 ――永遠に エピローグ あれから、一週間後…あたしは元気に通ってる。 キョンに会いたいから楽しみに通ってる。 俺は、ハルヒに会うため楽しみに通ってる。 色々あったけど…これで、恋人同士になるな… 「おぅ、ハルヒ」 「あ、キョン」 俺は守りたい奴がいるから… あたしは会いたい人がいるから… 「おはよう!」 「おはよう!」 俺たちは あたしたちは 強い絆を結ばれているから 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1037.html
俺は植物園の南側に小隊を集結させていた。とはいってももはや無事な生徒は10名しかいなかったため、 学校から補充要員として送られてきた生徒10名を加えて総勢20名となっている。 現在の状況はこうだ。植物園北側は古泉の小隊が押さえて、敵の侵入を阻止している。 エスパー戦闘経験のある古泉の度胸はとてもよく、敵の攻撃をものともせずに押さえ込んできた。 一方の南部が問題だ。鶴屋さん部隊も俺たちと同じく包囲状態になり、完全に孤立してしまっていた。 さらにここ2時間近く連絡すら取れない状態に陥っている。そのため、長門の支援砲撃ができない。 闇雲に撃ち込んで、間違って鶴屋さんたちに当たれば本末転倒だ。 それを救出するべく俺たちは森との境界線に陣取っているんだが、 向こうも南部への移動を阻止するように抵抗が激しく、鶴屋さんの救出どころか、植物園から森に侵入すらできていない。 何とか森との境界にある小さい丘に身を隠し、敵の銃撃を受けないようにしているだけである。 「ガンガン撃ち込んでくれ、長門!」 俺は膠着状態を打開するために、徹底的に砲撃をさせていた。向こうが壁を作って通さないというなら、 こっちは完膚無きまでそれを破壊しつくまでだ。しかし―― 「だめだね。まだこっちに向かってガンガン銃撃してくるよ」 「どこに潜んでいやがんだ。さっきからあれだけ撃ち込んでいるってのによ!」 国木田の言葉に俺は吐き捨てるように怒鳴った。ここに来て、砲弾を受けても効果なしなんて言うインチキを 始めやがったんじゃないだろうな? また、目前で4発の迫撃弾が着弾した。轟音と砂が顔に降りかかってきたので、あわてて頭を下げる。 「油断するとヘルメットごと頭を持って行かれるかもね」 となりで物騒なことをひょうひょうと言うのは国木田だ。どうしてこいつはこんなに度胸が据わっているんだ? 俺はずれたヘルメットをかぶり直しつつ、 「砲撃で効果がないってなら、別の方法を考えないと――ん?」 そこまで言って気がつく。先ほどの着弾以降、敵側からの銃撃がぴたりと収まっていた。 ようやくクリティカルヒットだったか? 「よし……一気に前進するぞ。ついてこい」 俺は慎重に腰をかがめながら立ち上がり、丘を登り始める。同時に小隊全員がそろそろと俺についてきたが…… 「……ぶっ!」 情けない声とともに、俺は丘の下に引きずりおろされた。だれかに服を強引に引っ張られたようだが―― 同時に丘の向こうで悲鳴が飛んできた。さらに、身体に銃弾がめり込むいやな音と血しぶきも一緒にだ。 あわてふためいた生徒たちが次々と丘の下に飛び込んでくる。 「キョン、大丈夫かい!?」 俺を丘の下に引きずりおろしたのは国木田だった。何を考えているんだと怒鳴りそうになった瞬間、 その意味を理解する。頭の上を飛び越えていく銃弾の荒らしと、丘の向こうから聞こえてくる絶望的なうめき声を聞けば、 どんなバカでも理解できるはずだ。 答えは簡単。またしても、敵の罠に引っかかったのだ。砲撃の着弾と同時に、銃撃をやめる。 やったと思った俺たちがのこのこ丘を越えてきた時点で狙い撃ち。こんな単純な手に引っかかるとはバカか俺は! 俺はそろりと丘から頭半分を出し、どうなっているのかを確認した。そこには血まみれになった生徒二人が 倒れている。一人は突っ伏したまま動かず、もう一人は痛みのあまりうめいて手をばたつかせていた。 あまりの悲惨さに思わず身を乗り出して手を出そうとするが、それを阻止すべくまた敵の銃撃が始まる。 数発が負傷した生徒に命中し、さらなる悲鳴を上げた。奴らには情ってモンがないのか!? 「助けないと!」 俺は飛び出して行こうとするが、またも国木田に制止させられる。 「冷静に! とにかく、こっちも撃ちまくって向こうの頭を下がらせるんだよ。その隙に救出するべきだね」 「く……わかった。すまんが頼む」 国木田の案を受け入れて、俺は生徒たちに一斉射撃を命じた。全員一気に立ち上がるとそこら中の茂みに向けて乱射を始める。 敵側の銃撃が収まったことも確認せずに俺は丘から身を乗り出し、負傷した生徒を丘の下に引きずりおろした。 同時に動かなかった生徒を小隊の一人が同じように引きずりおろす。 俺が助けた方は、名前も知らない女子生徒だった。全身の銃弾を浴びて、傷だらけどころかぐちゃぐちゃだ。 「ハルヒ! 負傷者だ! ひどい怪我なんだ! 誰かよこしてくれ!」 『わかった! 何人か向かわせるわ!』 無線連絡後、ハルヒ小隊の何人かが、その女子生徒を回収していった。すでに瀕死の状態だったが、 それでもまだ生きている以上、こんな弾の飛び交う場所に置いては置けなかった。 「くそっ……」 俺は丘の下で座り込み、ヘルメットを取ってため息をつく。やりきれなさすぎる。 鶴屋さんたちを助けたいがどうすることもできない。無理につっこめば、こっちの犠牲が増えるばかりだ。 救出する方が損害大では意味がない。どうすればいい? いっそ鶴屋さんたちが自力で戻るのをここで待つか? 包囲状態とはいえ、そのままでいるわけもないし、こっちに移動してきているはずだ。 だったら、それを向かえ入れた方が…… と、突然そばにいた生徒から無線機を渡される。古泉からの連絡らしい。 「なんだ古泉。今はおまえの話を聞くような気分じゃないぞ」 『それだけ言えるならまだ無事と言うことですね。安心しました』 全然安心できねえよ。あっちもこっちもめちゃくちゃで、頭がおかしくなりそうだ。 いや、普段の俺だったらとっくにおかしくなっているだろうよ。ちくしょう、一体どれだけ俺の頭の中をいじくりやがったんだ。 『それはさておき、そっちの様子はどうですか?』 「その前におまえの方を教えてくれ。聞く前にまず自分から言うもんだろうが」 自分でもそれは違うだろと自己つっこみをしてしまったが、古泉は苦笑しているような声で、 『こっちはなかなか派手な状態ですよ。北部一帯で防御戦を引いて何とか敵の植物園侵入を阻止していますが、 向こうも焦っているんでしょうか、携帯型のロケット弾ぽいものを持ち出してきました。 さっきからそれの雨あられですよ』 それでも防御線を守りきっているのか。本当にたいした奴だな。ハルヒの見る目も。 『そろそろ本題に移りましょうか。どうやら、そっちは未だに鶴屋さんのところにたどり着けていないようですね』 「ああ、腹立たしいがその通りだ。敵の抵抗が厳しい上に、砲撃が全くきかねぇ。これじゃどうしようもない。 正直、侵入はあきらめて鶴屋さんが戻ってくるのを待ったほうがいいかと考え中だ」 『それは待ちぼうけになるからやめた方が良いですよ』 なに? それはどういう意味だ? 『ここに来るまでの間に、涼宮さんと鶴屋さんの無線連絡を耳に挟みましてね、いえ、盗み聞きしたわけではありません。 すごい剣幕で話しているからいやでも耳に届いたんですよ』 ハルヒと鶴屋さんが言い争い? 全く想像ができないぞ。どういうことだ? 『完全に聞いたわけではありませんが、大体想像がつきます。鶴屋さんは、目的であったロケット弾発射地点を 制圧するまで撤退するつもりはありません。たとえ、誘い込むための罠であってもです』 「うそだろ……」 俺は唖然としてしまった。さらに古泉は続ける。 『気持ちはわからなくないですね。あなたの方は、逃げた敵の掃討だったので、 罠とわかればあっさりと撤退が可能です。実際にそうなりましたしね。しかし、鶴屋さんの方は違う。 たとえ、罠であってもここで発射地点を制圧しなければ、北高への攻撃は続行されるでしょう。 結局はまた制圧に向かうことになる。それでは同じ事の繰り返しです。ならば、どんな犠牲を払ってでもとね。 できることなら犠牲を出したくないという涼宮さんとは完全に対立するでしょう』 ハルヒは自分で何でもやりたがるタイプだ。間違っても自分の作戦で他人が死にまくっても平然としているような奴じゃない。 そんなことになるくらいなら、ハルヒ自身がやろうとするだろう。今思えば、植物園にハルヒ小隊を置くと 頑固に言い張ったのも、指揮官が前線に出るなんてという考えと、できるなら自分が戦っていたいという考えの ぎりぎりの妥協点だったかもな。 そして、鶴屋さん。正直なところ、鶴屋さんの人物像はつかみづらい。すごい人であるという認識程度だ。 今回だって包囲状態に陥ってもなお発射地点制圧をすると強弁できるなんて常人には―― 待てよ? ひょっとして鶴屋さんは最初からこれが罠であるとわかっていたのか? 『僕もそう思いますね。鶴屋さんは罠の可能性を強く疑っていたのではないでしょうか。 だからこそ、たとえ罠だとはっきりしても目的を変更するつもりはない。そう言うことでしょう。 また、あの時、罠である可能性をしてきた僕の意見に対して何も言わなかったのは、 罠であろうがなかろうが関係ないということだったのでは』 鶴屋さん……あなたって人はっ……どこまで俺たちの上を行くつもりなんですか? しかし、そうなると未だに鶴屋さんが帰還しないと言うことは、制圧もできていないと言うことだ。 『そうでしょうね。だからこそ、あなたには鶴屋さんのところへ向かってほしいんです。 救出ではなく加勢としてね』 古泉の言葉で俺の腹は決まった。何としてでもここを突破する。それしかない。だが、どうすりゃいい? 『確証はありませんが、敵の動きは涼宮さんの性格を強く意識しているように思えます。 今回の待ち伏せを考えてみてください。敵は北山公園で待ちかまえると同時に、遠距離から北高を攻撃しました。 この場合、我々にはいろいろ選択肢があります。たとえば、こちらの砲撃で徹底的に北山公園南部を砲撃する―― これは長門さんが効果が薄いと言っていましたが。また、校庭にヘリコプターもありましたから、 あれで発射地点を確認し、少数部隊でピンポイントで叩く。砲撃に耐えながら、学校に完全に立てこもって 籠城という手段もありますね。考えればもっといろいろあるかと。 しかし、涼宮さんの性格上、確実に北山公園全土制圧を一番に考えるでしょう。 やられっぱなしなんてもっとも嫌がりますし、ピンポイント攻撃だと相手が逃げ回って延々と追いかけ回すことに なりかねません』 また頭上を飛んでいく銃弾が激しくなってきた―― 『このようにたくさんの可能性がありながら、敵は誘い込んで待ち伏せという手段をとっていました。 完全にこちらの動きを読んでね。涼宮さんの性格を知っているからこそ、迷わずにその手を採用したんです。 そして、自らが決定した作戦のせいでたくさんの犠牲者を出したことになれば、 涼宮さんに与えるダメージは半端ではありません』 「ハルヒの考えを読んでいたとは限らないだろ。敵はこれだけの世界を簡単に作り出しちまうんだ。 なら、俺たちは常に監視されていて、こっちの動きが筒抜けの可能性だってある」 『ええもちろんです。しかし、たとえそうであっても敵の目的が涼宮さんであることには違いありません。 それを最優先に動いてくるはずです』 なるほどな。なら敵はロケット弾発射地点を死守したりすることよりも、ハルヒに精神的苦痛を与えることを 最優先に考えているって事か。 『話が早くて助かります。敵の動きと涼宮さんの考えと照らし合わせれば、おのずと敵の動きも読めるのではないでしょうか。 今言えることはそれくらいですが――おっと、ちょっとこっちも活気づいてきてみたいですね。 あとはお任せします。ではまた』 そこまでで通信は終了。俺はサンキュと無線を持った生徒にそれを返す。 さて、どうするか。敵は砲撃ものともせずに、俺たちの鶴屋さん小隊との合流を阻んでいる。そこまで粘る理由は? そりゃ、包囲状態にした敵――鶴屋さんたちと増援の俺たちの合流を許すわけがない。いや待て、その考えじゃダメだ。 こうやって、俺たちが何もできずにただ時間がたっていることにハルヒは相当のいらだちを覚えるはずだ。 だから、こうやって俺たちの足止めを行っている……よし、この考えで良い。 そうなると、敵はできるだけ鶴屋さんの孤立状態に陥らせることに専念するはず。では、どうする? 「……ちっ」 結局、相手の考えを読んだところで何も変わらねぇ。敵の目的と俺たちの目的が完全にぶつかっているからだ。 なら、ここからの鶴屋さんの場所に向かうのはあきらめて、数名で北山公園のすぐ南にある光陽園学院に行き、 そこから北上して行くか? いや、敵は信じられないことを平然とやっているんだ。その動きを読まれて、 すぐに防御線が築いてしまう恐れもある。 だったら目的を変更してやればいい。俺の目的は鶴屋さんへの加勢なんだから……加勢に行かない? ふざけんな。 そんなまねができてたまるか。じゃあ、いっそ南部を手当たり次第砲撃するように長門に指示するとか……鶴屋さんを殺す気か? ん、ちょっと待てよ? ハルヒは全員の植物園までの撤退を望んでいるという。だが、鶴屋さんはそれを拒否して、 未だに発射地点制圧を行っているんだ。ならそれは敵にとって想定外の事態じゃないか? 鶴屋さんの後退を阻止するのではなく、発射地点を防御しなけりゃならないからな。 でも、発射地点は敵にとってさほど重要なものではないと思える。俺たちをここに誘い込むだけの利用価値のはず。 さっさと鶴屋さんたちに破壊させて、包囲状態にでも何でも置けばいい。だが、確信を持って言えるが、 鶴屋さんたちはまだ発射地点を制圧できていない。何の証拠もないが、無線連絡が取れなくても、 あの人なら何らかの手段で俺たちにそれを伝えるはずだ。絶対に。 俺はふとあることを思いついて、無線機を取る。話す相手は朝比奈さんだ。場違いな相手じゃないかって? だが、俺たちの中で一番鶴屋さんのことを知っているのは、朝比奈さんであることに間違いないだろ? 『キョンくん! 大丈夫なんですかぁ!?』 焦りきったマイエンジェルの声に俺はいくらかの癒しパワーを受け取ってから、 「ええ。何とかまだ生きていますよ。ところでちょっとお話が」 俺は今の状況を端的に話す。俺が知りたいのは鶴屋さんならどうするのかとか、 鶴屋さんならどのくらいできるだろうとかだ。 朝比奈さんはう~んといつも以上に悩みながら、 『そうですねぇ……わたしが言えるのは鶴屋さんは本当にすごい人です。だから、そんな危ない状況でも 簡単に抜けられちゃうんじゃないかなぁって思うんです。でも、何でこんなに時間が……』 今の会話に俺は何かを感じた。どこだ? すごい人の部分か? そんなことは俺もわかっている。 簡単に抜けられちゃう……ここだ。そうだ、包囲状態でも攻撃を続ける鶴屋さんなら 植物園までの後退は簡単にできるんじゃないか? だからこそ、敵は鶴屋さんを引き留めるために 発射地点を死守する必要がある。それなら、理屈が合うってもんだ。 『でもぉ……ひょっとしたら……』 「朝比奈さん」 まだ独白のように続ける朝比奈さんの言葉を遮り、 「ありがとうございます。おかげで考えがまとまりましたよ。すごく助かりました」 『え……えっ?』 何が何やらわからない朝比奈さんがかわいらしすぎてもだえそうになるが、ここは我慢だ。それどころではないからな。 「じゃあ、また学校で会いましょう。戻ります」 『待って!』 突然、朝比奈さんからせっぱ詰まった声が飛ぶ。 『鶴屋さん……いえ、みんな無事なんですか? ここからじゃ、一体何が起きているのかさっぱりわからなくて……』 今にも泣き出しそうな――いや、もう涙ぐんでいるのかもしれない声が無線機から漏れてきた。 俺はどう答えるべきかしばし考えた後、 「大丈夫ですよ。SOS団はまだ健在です。鶴屋さんもきっとぴんぴんしていますよ』 俺は事実だけを言った。でも、谷口は死んだとは言えなかった。 朝比奈さんは俺の言葉にほっとしたのか、 『がんばってください。また学校で』 そう言って無線を終了した。すみません、朝比奈さん。 そこに国木田が丘の下に滑るように降りてきて、 「で、キョン。どうするのさ」 「今はこのままだ。しばらくしたら絶対に変化が起きる。そしたら、こっちも動くぞ」 国木田は俺の自信めいた口調に疑問符を浮かべながらも、また丘の上の方に戻っていった。 これから起きることは二つだ。まず第一に鶴屋さんが発射地点を制圧する。そうなった場合、 あらゆる手段を使ってでも、俺たちにそれを知らせてくるだろう。次に鶴屋さんたちが全滅する――考えたくもないが。 だが、この場合は敵が発射地点の防御を行わなくなることから、植物園に対する攻撃の動きが変化するはずだ。 今はどちらかが起きるのを待つ。これでいい。 ◇◇◇◇ 変化は意外に早く起きた。俺が待ち始めてから15分後、一発のロケット弾が北山公園南部から発射されたという 長門からの無線連絡が入ったのだ。同じ頃に、南部でひときわ大きい爆発音がとどろいている。 ただし、発射されたロケット弾は 『こちらは攻撃を受けていない。確認した限りでは、北山公園から東側に向けて発射された。今までとは明らかに違う』 以上、長門からの報告。もう俺は即座に確信し、ハルヒへと連絡する。 「おい、長門からの話は聞いたか?」 『聞いたわよ! これは鶴屋さんからの敵制圧の合図に違いないわ! さっすがSOS団名誉顧問だけのことはあるわね!』 「ああ、俺もそう思う。で、俺はどうすりゃいい?」 『とにかく、あんたがぼさっとしている間に向こうはけが人とかでているに違いないわ。 とっとと助けに行きなさい! 以上、命令終わり!』 やれやれポジティブ思考が復活しつつあるようだ。でも、その方がハルヒらしくて安心できるけどな。 「さてと……」 敵はしつこく俺たちに向けて銃撃を続けている。これからどうするか。ハルヒは助けに行けと言った。 なら、敵はそれを阻止するように動くのか? いや待て、それでは今までと大して変わらない。 もっとも大きな精神的ダメージを与える方法は? 俺は結論を出したとたん、笑い出しそうになった。ひょっとしたら初めて敵を出し抜けるかもしれないと思ったからな。 また、俺は無線で長門に連絡し、俺たちの動きを阻止している敵にめがけて、10発ほど砲撃を行うように指示する。 そして、数分後的確な砲撃が俺たちの目前に降り注いだ。今まで以上の轟音に俺は耳を押さえて、鼓膜を守った。 着弾音の余韻が通り過ぎると、辺りに静寂が戻ったことを【確認】する。 「また罠かな?」 国木田は警戒心を表していたが、俺はそれを無視し、一人で丘の上に立ち上がった。 「キョン! 何をやって……え?」 抗議の声を止めたところを見ると国木田も気がついたらしい。まったく弾丸は飛んでこないことに。 俺はそのまま小隊の生徒たちを待機させたまま一人じりじりと前進し、森の中に数歩はいる。砲撃のすさまじさを 表すように地面が穴だらけになっていた。しかし、敵は一人もいない。 確認完了だ。俺は右手を挙げて、小隊を前進させて森に入らせた。 ◇◇◇◇ 「やあ……キョンくんひさしぶり……でも、ダメじゃないか……敵は……」 鶴屋さんの力ない声が耳に流れ込んでくる。ほとんどかすれ声だった。だが、言おうとしていることはわかる。 同時に俺の背後ですさまじい銃撃戦が始まった。俺たちが来た道から背後を突くように、 敵が襲ってきたからだ。だが、この攻撃をわかっていた俺たちにとって、それは背後からの攻撃にはならない。 完全に迎え撃つ準備はできている。 しばらく激戦が続いたが、やがて敵は長門の砲撃を受けて下がっていった。 「すごいね、キョン。何でわかったのさ?」 「俺だって学習能力ぐらいはあるんだよ」 国木田の指摘を軽く流して、俺は周囲を見回す。鶴屋さんがいたのはやはりロケット弾発射地点だった。 すっぽりと森に穴が開いたような場所に一台のトラックが置かれている。その上には ロケット弾を載せるための鉄レールを平行に並べ柵状にした棚が乗っていた。いわゆるカチューシャロケットと言われる 多連装ロケットランチャーだ。こんなもんで俺たちを攻撃していたとはな。 敵の動きは大体読めていた。ハルヒは鶴屋さんたちを助けに行けと言った。そして、敵はすんなりと鶴屋さんのもとに 俺たちを招き入れた。理由は簡単。今度は俺たちを包囲状態にするためだ。北山公園に俺たちを誘い込んだのと 同じ手法である。ハルヒが決定して、そのせいで俺たちが大損害、となればまたまたハルヒに与えるダメージはでかいと 踏んだのだろう。だがな、甘いんだよ。そうそう何度も同じ手が通用してたまるか。 だが、予想外なことも一つだけあった。最悪なものだ。 「ふふっ……そっかぁ……キョンくんも気がついたんだねっ……」 鶴屋さんは息も絶え絶え、寄りかかるように座っている木の根元には血だまりができようとしていた。 周りにいる鶴屋さん小隊の生徒4人も不安げな表情で見つめている。 そう、鶴屋さんは銃撃を受けて今にも息絶えようとしている。くそったれ! やっとここまで来れたってのに! 「鶴屋さん! ようやく来れたんです。早く学校に戻りましょう!」 俺は鶴屋さんを背負おうと彼女の肩に手をかけるが、そばにいた鶴屋さん小隊の生徒から制止される。 衛生兵の役割を担っていた彼は、動かせない。動かせば死ぬだけと沈痛な口調で言った。 「そんな……やっと目的を果たせたんだ! 連れて帰らないと! 大体、おまえら何で指揮官を守ってねえんだよ…… ってそうじゃねえだろ! くそっ! 何言ってんだ俺は!」 あまりの言いように、自分自身に怒りが爆発する。鶴屋さんは自分の配下の生徒たちを力なく見回し、 「責めないでよ……みんな必死にやったさ。無能なのはあたし自身。結局、守れたのはたったの四人だけっさ……」 鶴屋さん小隊の人間から聞いたことだが、植物園から南部に小隊が入ってすぐに攻撃を受けたらしい。 その後、包囲状態に置かれようとしたが、先手を打った鶴屋さんが小隊をさらに3~4人に分けて、 北山公園南部一帯に散らばせた。そのため、敵はその散らばった小隊を追いかけ回し、 鶴屋さんたちはロケット弾発射地点を探し回る。まるで鬼ごっこ+缶蹴りだ。 鶴屋さんたちは空き缶=カチューシャロケットを探し続け、ついに目的を果たした。 目的を果たしたと同時に、散らばった生徒たちは植物園に戻るように指示していたらしいが、 ハルヒに確認した限りでは誰も戻ってはいない。ここにいる生徒以外は全滅したと言うことだろう。 さらに鶴屋さんまでもが…… また、俺の背後で銃撃戦が始まる。しつこい連中だ。いい加減、あきらめろ! 「キョン、このままだとまた包囲されるよ」 「んなことは言われんでもわかるさ……!」 国木田の言葉に、俺は焦燥感だけが募る。このまま鶴屋さんをおいておけるわけがない ――今までさんざん【仲間】を置き去りにしてきただろ? わかっているさそんなことは……! 「行ってほしいなっ……わざわざあたしをえさにしている敵の思惑に乗ってほしくないにょろよっ……」 「わかっています……わかっているんです……!」 どうしても踏ん切りがつかない。だが、それでもつけなければならない。 俺は絶望的な思いで言う。 「つ、鶴屋さんっ……。朝比奈さんに……朝比奈さんに伝えることは……!」 のどが悲鳴を上げるほどに力んで言葉を出しているのに、それ以上口を開くことができなかった。 でも、鶴屋さんはそれを待っていたのか、にっと笑顔を浮かべて、 「悪いけどみくるにはだまっておいてくれないかなっ……きっと気絶なんかしちゃってみんなに迷惑かけちゃうかも」 「わかりました……!」 「あと、あたしの仲間も連れて行ってっ……最期の最期までバカみたいにあたしについてきてくれた大切な仲間っさ……」 「もちろんです……!」 もうここまで来ると俺は鶴屋さんの顔を見ることすらできなかった。受け入れられない現実を拒否したいのか、 耳すら閉じたくなる。 「じゃあキョンくん!」 突然、かけられたいつもの鶴屋さんの声。俺ははっといつのまにか下がっていた頭を上げると、 普段と変わらない笑顔を浮かべ、俺の方にぐっと腕を突き出した鶴屋さんがいた。 「また学校で!」 その言葉と同時に、鶴屋さんは全身の力が抜け落ち、頭も完全にたれた。元気よくつきだしていた腕も、 力を失って地面に向かって落下する。 すいません鶴屋さん。絶対に元の世界に戻ってまたいつものように騒ぎましょう。でも、ここにいて、 果敢に戦い抜いた今のあなたのことも絶対に忘れません……! 俺は目に浮かんでいた涙をぬぐい、周りにいた鶴屋さん小隊の残りを見回す。皆一様に指揮官の死に涙していた。 これは絶対に作られた感情ではなく、本人の本来の意志によるものだと確信できるほどに悲しんでいるのがわかった。 「これから、おまえらは俺の指揮下に入る。問題ないな?」 4人とも、潤んだ目をしっかりと俺に向けて頷く。 国木田たちと敵の戦闘はますます激しくなりつつあった。もはや一刻の猶予もない。 俺は無線機を持った生徒を呼びつけ、ハルヒに連絡する。 「おいハルヒ、聞こえるか?」 『何よキョン! 鶴屋さんたちのところについたなら、早いところ戻ってきなさい! 当然、鶴屋さんたちもつれてね! 30分以内じゃないと罰金――』 「鶴屋さんは死んだ」 俺の言葉でハルヒは絶句した。叫びたいのを必死にこらえるようなうめきと、何と言って良いのかわからないという 不安定な吐息が無線から流れ込んでくる。 「いいかハルヒ。これから俺が言うことに黙って従え。いいな?」 『…………』 「いますぐ、古泉たちをつれて北高に戻れ。俺たちが戻るのを待つ必要はない」 この言葉に激高したのか、ハルヒは砲弾の着弾音以上の声で、 『バ、バカなこと言うんじゃないわよ! いい!? あんたたちが戻るまで死んでもここを死守するから! 絶対に帰ってくるのよ! 絶対絶対絶対よ! 見捨てるなんて絶対にしないから……帰ってきて! 絶対!』 「良いかよく聞けハルヒ!」 俺の怒鳴り口調にびびったのか、錯乱状態だったハルヒの口が止まる。 「冷静に聞けよ。今、俺たちはまた敵に包囲されようとしているんだ。敵の狙いは、植物園に俺たちが戻るのを阻止すること。 今おまえが俺たちを放って学校に戻るなんて、敵は頭の片隅にすらねえはずだ」 『あんたたちはどうするつもりよ! 玉砕なんて死んでも許さないんだからね!』 「俺たちはこのまま北山公園を南下して、光陽園学院前に出る。そして、学校東側から戻る。 安心しろ。絶対に学校に戻るから心配するな」 ハルヒはしばらくぶつぶつと聴き取れない抗議めいたことを言っていたようだが、やがて、 『……わ、わかったわ……絶対に帰ってきなさいよ!』 「当然だ」 話し合いがまとまったので、俺は無線を終了しようとするが、 『待ってキョン!』 ハルヒがなにやら確認したいらしい。しかし、なかなか言い出せないのか、しばらくうなったような声を上げていたが、 『鶴屋さん……鶴屋さんはどうするの……?』 「……俺の口からいわせないでくれよ。すまん」 『……ゴメン』 そこで無線が切られた。おっと一つ言うことを忘れていた。 『……なに? まだなんかあるの?』 悪い知らせと思ったのか、びくびくとした様子が手に取るようにわかった。 「すまないが、朝比奈さんには鶴屋さんのことは言わないでくれるか? 鶴屋さんからの遺言なんだ。 万一、聞かれたときは――あー、足をくじいたから近くの民家で、このばかげた戦争が終わるまで隠れているって言ってくれ」 『了解……』 そこで今度こそ無線終了。さて、 「よし、このまま南下して学校に帰るぞ! ついてこい!」 俺の空元気な声が飛んだ。 ~~その4へ~~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1629.html
ハルヒ「明日は個人的な理由によりSOS団恒例の不思議探しは中止とします! その代わりに各自日常の不思議を探してきて。どんな些細なことでも構わないわ!その些細な不思議がやがてとんでもない不思議になるかもしれないしねっ!というわけで以上っ解散!」 キョン「そんな無茶な…」 古泉「ツチノコを探して来いと言われるよりはましですよ。それに僕は日常の不思議に心当たりがありますしね…あなたには無いのですか?日常の不思議」 キョン「お前らみたいな奴らがいるのが一番の不思議だよ」 古泉「おやおやこれは手厳しい」 キョン「朝比奈さんはどうするんですか?よかったら一緒に探しませんか?」 みくる「ごめんなさいキョンくん。私も心当たりがあるんです」 キョン「そうですか…長門は?」 長門「ないこともない」 キョン「どっちだよ?」 長門「心当たりはある。ただしそれをあなた達が不思議と思うかは別の問題」 キョン「そっか、あるのか…しゃあねぇ一人で探すか…」 ハルヒ「みんなー!何してんのー?早く来ないと先帰っちゃうわよー!?」 キョン「やれやれ…」 ~発表日~ キョン「結局見つけられなかった…つか要求が曖昧すぎなんだよ!」 長門「………」 ツンツン キョン「なんだよ?」 長門「私の見つけた不思議にはあなたの協力が必要。援助を要請する」 キョン「マジか!?いや、願ったり叶ったりだよ!サンキュー長門!」 長門「お礼を言うのはこちらの方」 ガチャ ハルヒ「みんなー!不思議探してきたっ!?それじゃあ順番に発表してもらうわよ!まずは古泉くんから!」 古泉「コホン、では見てぐたさいみなさん!僕のこの天を突く勢いのテトドンを!これって不思議ですよね?」 ハルヒ「はあ?自意識過剰なんじゃないの?」 みくる「なんですかこの可愛いの?」 クスクス 長門「粗チン」 キョン「ダウトッ!!貴様の粗末な物で朝比奈さんの目を汚すな!」 ベキッ 古泉「ナアアアアアウ!!ぼ、僕のテドドンが直角に折れたっ!!」 ピクピク 古泉一樹 再起不能 ハルヒ「ふん!とんだ期待外れねっ!じゃあ次はみくるちゃんよ!」 古泉「ぼ、僕のツチノコが…ツチノコなのに…」 ピクピク ハルヒ「そこうるさいっ!負け犬はおとなしく死んでなさい!!次はみくるちゃんよ!すんごいの期待してるわ!」 みくる「ひゃい!で、では涼宮さん近くに来てください…あの、みなさんの前では少し恥ずかしいことなので…」 ハルヒ「ふーん、どれどれ?」 スタスタ みくる「じゃあそのままオッパイを直に揉んでください!」 キョン「なんですとー!」 長門「………」 ムカッ ハルヒ「な、なにあんたそういう趣味なの?」 みくる「違いますよー!これが不思議なんですぅ!いいから揉んでくだしゃい!」 ハルヒ「仕方ないわね」 モミモミ ハルヒ「あ、なんかにじんできた…」 みくる「そうです!妊娠してないのに母乳が出ちゃうんでしゅ!それが私の不思議!」 キョン「マニアック!?」 ハナヂブー ハルヒ「ふーん。で、どんなからくりなわけ?」 みくる「牛の遺伝子をインプリティングした、はっ!い、いえそれは禁則事項ですぅ」 ハルヒ「よくわからないけどイカサマなのね?ダウトッ!!有希、足腰立たなくなるくらい揉んでしまいなさい!今日は無礼講よっ!」 長門「了解した」 みくる「ひっ!」 長門「妬ましい…嫉ましい…疎ましい……」 ジリジリ みくり「い、いやあああああああ!!」 朝比奈むくる・キョン 再起不能 ハルヒ「じゃあ次は有希の番よ!」 古泉「ツチノコ…僕のツチノコ…」 みくる「もうミルク出ないでしゅぅ…そんなに強く揉んたら痛いですよぅ…」 キョン「百合…百合の花咲き乱れ…」 ハルヒ「てかなんであんたまで延びてんのよ!起きろバカキョン!」 ゴツン キョン「あいてっ」 長門「私の不思議は彼との合作」 ハルヒ「うっ、すごいマイペースね…てか二人で一つの不思議なの?それはちょっとやそっとの不思議じゃ許されないわよ?」 長門「問題ない」 ハルヒ「ふーん?凄い自信ね?で、肝心の不思議は何よ?」 長門「もう言った。私の不思議は彼との合作」 ハルヒ「どういうこと?」 キョン「さあ?」 長門「生命の神秘。処女妊娠。それが私。父親は彼」 ハルヒ「はあっ!?ど、どどどどどどういうことよ!!」 キョン「し、知らん!どういうことだ長門!?」 長門「心配無い。既に籍は入れてきたわ。あなた」 キョン「俺が聞いてるはそういうことじゃねぇ!」 ハルヒ「そうよそうよ!ちゃんと説明なさいよ!」 長門「チッ…昨夜彼の部屋に忍び込み彼の精子を確保。それを元に構成した」 キョン「ダウトッ!!」 長門「却下。あなたの子供にはかわりない」 キョン「そ、そんなこの年で所帯持ちかよ…」 キョン 再起不能 ハルヒ「そんなの納得いかないわ!」 長門「納得とは?」 ハルヒ「駄目よ…そんなの絶対駄目!」 長門「この子を降ろせと?」 ハルヒ「違うっ!そんなこと言ってるんじゃ…」 キョン「長門…いや、有希。不束か者ですがよろしくお願いします」 ハルヒ「あんたまで何言ってるのよ!そんなの絶対認めないんだからねっ!」 長門「何故?」 ハルヒ「だって…だって…私だってキョンと(夢の中で)キスしてから生理来てないんだからっ!!」 長門「!?」 キョン「な、なんだってー!…それは想像妊娠じゃないか?」 ハルヒ「違うわよ!あ、今お腹蹴った!これはもう確実に孕んでるわ!だから私もキョンと結婚する権利はあるのっ!!」 キョン「でももう籍入れちゃったみたいだし…」 ハルヒ「とにかく駄目なものは駄目ー!!」 長門「問題ない」 ハルヒ「へ?」 長門「多重婚が認められている国で籍を入れまたこの国に戻ってくればいい万事解決」 ハルヒ「え?いいの有希?」 長門「いい。私という個体はあなたにも好意を抱いている」 ハルヒ「マジで?」 長門「マジで」 ハルヒ「本当に?」 長門「本当に」 ハルヒ「指切り?」 長門「嘘ついたら針千本飲む。比喩ではなく」 ハルヒ「じゃ、じゃあ…」 こうして俺はなかば強制的にオーストラリアに連行され籍を入れさせられてしまったわけだ… ハルヒ「あなたー!早くしないと置いて行くわよー!」 キョン「うーい、今行くー」 ハルヒ「さっさとしなさいよ!今日は有希の出産予定日なんだから。遅れたらあの子に殺されるわよ?」 キョン「やれやれ…」 まぁ、優柔不断な俺にはこんな結末がお似合いなのかもな。とか思ったりして…しかし子持ちなのに未だに童貞とはどういう了見なんだ? ハルヒ「うるさいわね!特にオチも無いし締めるわよ。いい?」 キョン「どうぞ。好きにしてくれ」 谷口「はっ!ドリームか…」 谷口「長門有希や涼宮が妊娠に朝比奈先輩からは母乳か…我ながら凄い夢見ちまったな… そらユング先生もフロイト先生とケンカするわな………」 谷口「授業中に夢精しちゃった……」 クスン 国木田「谷口チャック、ってイカ臭っ!?」 キョン「お前授業中になにしてんだよ!?」 ハルヒ「なーに?谷口ったらまた授業中にナニしちゃったの?」 女子A「うわー最低…」 阪中「谷口くんは変態なのね」 女子B「いやー!今こっち見た!」 女子C「大変!B子が犯されちゃう!」 谷口「ち、違うって!これはそういうんじゃなくて…」 女子ブス「イヤアアアアアア!谷口がしゃべったわあ!」 女子デブ「妊娠しちゃううう!」 キムリン「ФжЯёнмЧЗψφДКИИ」 谷口「…………ちくしょう…」 完 注:作者さんの中では、谷口の夢の内容はエンドレスエイトの連続する夏休みの15497回目だそうです。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4430.html
第一話 「おはよう、涼宮さん。最近嫌な事件が続いてるのね」 あたしが朝教室に着くなり阪中さんが話しかけてきた。 「おはよ。なにそれ?どんな事件?」 そう返事すると少し驚いたような顔をして教えてくれた。 「知らないの?最近この辺りで女子高生が誘拐される事件が続いてるのね。犯人はまだ捕まってないし…怖いのね…」 えっ?そんな事件があったなんて全然知らなかったわ…これは気になるわね… 「涼宮さんも気をつけた方がいいのね。それじゃあまたなのね」 そう言い残し自分の席へと戻って行った。 それと入れ替わるようにキョンが教室に入ってきた。 「おう、ハルヒ。おはよう。…どうした?」 ボーッと考え事してたからだろうか、あたしの顔を覗きこむようにたずねてきた。 …って顔近いわよっ! 「キョン!大事件よ!」 さっき聞いたばかりの事件をキョンに話した。 「ああ、その事件なら俺も知ってる。昨日のニュースでもやってたしな。 嫌な話しだぜ…」 なんだ、知ってたんだ…それなら話は早い! 「いい?これは放っておけない大事件だわ!早速今日の放課後からSOS団で調査開始よ!」 あたしは椅子の上に立ち上がり、しかめっ面をしたキョンへと高らかに宣言した。 「おい、ハルヒ!バカな事言うな。警察でも探偵でもない俺達に何ができる?」 むっ…なに呆れた顔してんのよっ! 「もし事件に巻き込まれたらどうするんだ…危険な目にあうかもしれないし…俺は…嫌だぞ、ハルヒがいなくなったりするのは…」 とつぶやくのが聞こえた。 「え…それってどういう―」 「と、とにかく事件のことは警察にまかせておけよ。わかったな?」 「わ、わかったわよ…」 急に話を終わらせたキョンにしぶしぶと答えるとちょうど岡部が入ってきた。 「みんな、おはよう。ホームルーム始めるぞ。それとハンドボールはいいぞ!」 岡部の戯言が耳に入らないくらいあたしはドキドキしていた。 さっきの言葉、どういう意味だったのかな…もしかしたらキョンもあたしのこと…好き、なのかな? いつか…この大好きって気持ちをキョンに伝えたい。今週の不思議探索の時に…頑張ってみようかな… その日あたしは授業中もずっと一人でにやけていた。かなり危ない人みたいね…今日はすごくいい日だわ!記念日にしてもいいくらいに。 そんなことを考えているとあっという間に放課後になった。 「キョン!掃除なんてさっさと終わらせて部室に来なさいよ!遅れたら死刑なんだから!」 「はいはい、わかってますよ。団長様」 いつもみたいな会話をして、一人で部室に向かった。 そして勢いよく部室のドアを開いた。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「あ、涼宮さん。こんにちわー」 あたしが部室に入るとメイド服姿のみくるちゃんがお茶の準備をしようと立ち上がる。 「ヤッホー、みくるちゃん。あれ、有希と古泉くんは?」 「えっと、二人ともクラスの用事で遅れるそうです。さっき部室に来て涼宮さんに伝えておいてくださいって言ってましたよ」 温度計とにらめっこしながらみくるちゃんが答えてくれる。 「そうなの。…ん?」 机の上に置いてあるものに気づく。編みかけの…マフラーかしら。 「みくるちゃん、マフラー編んでるの?あっ、もしかして好きな男の子に?」 冗談めかして言ってみる。 「え?あぁっー、そ、それは…その…」 んー、顔を真っ赤にしたみくるちゃんも可愛いわね! 「実はキョンくんにプレゼントしようと思って…この前新しいお茶の葉をくれたからそのお礼に。このお茶がそうなんですよ」 瞬間的に思考が凍りついた。 嬉しそうな顔したみくるちゃんがあたしの机にお茶を置く。 ちょっと待って…キョンが?みくるちゃんに?いつのまに…? 自分の中で黒い嫉妬が生まれるのがわかる。 「えへへ、マフラー渡す時にキョンくんにわたしの気持ちを伝えようかなって、ふふ、そう思ってるんです」 その言葉を聞いて、さらに黒い嫉妬は叫びをあげる。 「そん……対……許……わよ」 「はい?どうしたんですか?涼宮さん?」 聞き取れなかったのだろう、みくるちゃんが側に来る。 「そんなの絶対に許さないわよっ!なによ!こんなお茶いらないわ!」 机の上に置かれたお茶を思いっきり床へ叩きつけた。 ガシャーーンと陶器が割れる音が狭い部室に響きわたる。 「な、なにするんですか!せっかくいれたお茶なのに…」 泣きそうな顔でみくるちゃんが睨んでくる。 「SOS団は団内恋愛禁止なのよ?それを…あんたは!」 自分の感情を抑えきれなくなりみくるちゃんに掴みかかる。 「しかも…キョンだなんて…絶対に認めないわ!キョンはあたしのものよ?あんたなんかよりあたしの方がずっとキョンにぴったりだわ!諦めなさい!これは団長命令よ!?」 「わ、わたしだってキョンくんのこと大好きなんです!諦めたくありません!それに…わたしの気持ちなんだから涼宮さんには関係ないじゃないですか!」 思ったより強い力で突き飛ばされあたしは尻餅をついた。 なによ…みくるちゃんのくせに! 目の前が怒りで真っ赤にそまる。 そして気がつくとあたしはみくるちゃんを思いっきり突き飛ばしていた。 「あっ…」 みくるちゃんが後ろに倒れると椅子に強く頭をぶつけ、ガンッと鈍い音がした。 しばらく苦しそうにうめいていたがやがて動かなくなる。 ハッと一気に現実に戻った私は目の前の光景を見つめた… 「み、みくるちゃん?…嘘でしょ…?目を…開けてよ…」 震える手でみくるちゃんをゆさぶる… でも…ぴくりとも動かない。 「そ…そんな…い、嫌…嫌あああああああああああああああああああああああ!」 叫び声が響き渡る。 どうして…どうしてこんな事に…どうすればいいの… その時、ノックの音がして、部室のドアが開いた。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「うー、寒い寒い。っ!おい!ハルヒ…なにやって…」 部室に入ってきたキョンが目を見開いてあたしをみつめる。 最悪…よりによってキョンが入ってくるなんて… 「なんで朝比奈さんが倒れてるんだ?なにがあったんだよ!なあ!ハルヒィ!」 大声で問い詰められて身体の震えがいっそう激しくなった。 どうしよう…このままじゃキョンに嫌われちゃう。嫌だ、嫌だ!そんなの嫌だ! 「脈がない…死んでる、のか…」 キョンがみくるちゃんの脈を確かめながらつぶやく。 「あ、あたしは悪くない…みくるちゃんがキョンの事好きだって言うから…つい…カッとなって…」 「…お前がやったのか?どんな理由があるにしろお前が朝比奈さんを殺したことには変わりないんだぞ!」 すごい顔をしながら睨んできた。 「だってだって…嫌だったもん!キョンがとられちゃうの嫌だったもん!」 必死になって言い訳を並べる…きっとあたしは泣きそうな顔してるんだろうな… もうおしまいね…二度と今までの日常には戻れないだろう。 しばらく沈黙の時間が続く。やがて、 「…ハルヒ、聞いてくれ。俺がにいい考えがある…だから安心しろ」 さっきとはうってかわって ものすごく優しい声でキョンが言った。 最初キョンの言っている事がよく理解できなかった。てっきり怒鳴られてすぐ警察につきだされると思ってたのに… 「それって…あたしを助けてくれるって、意味…?」 「そうだ…こんな時だけど…俺はハルヒが好きなんだ!だから…離れたくない!」 「あたしも…嫌。大好きなキョンと離れたくない…ずっと、ずっと一緒にいたい!」 我慢しきれず涙がこぼれる。 「絶対俺がなんとかするから。頑張って二人で乗り越えよう。な?」 そう言って優しく抱きしめてくれた。 「うん…うん。二人で…頑張る!」 あたたかいキョンの腕の中で、あたしは泣いた。 こんな状況だけどすごく幸せで嬉しかった。 だってそうでしょう?ずっと好きだった人と両想いだったことがわかったんだから。 でも、この時あたしは気付いていなかった。自分の犯した罪の重さを、そして、どんな結末が待っているのかを… --------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「とりあえず…もうすぐ長門と古泉が来るから急いで死体を隠さないとな」 キョンは辺りをみまわしながらいろんな所を探ってる。 「よし、掃除道具入に隠しておこう。後でもっとわかりにくい場所に移動させれば大丈夫だ」 キョンがみくるちゃんの死体、かばん、制服などを掃除道具入につめこみ、床にちらばった茶碗の破片を片付けた。 「これでよし…っと。ハルヒ、二人が来てもいつも通りふるまうんだぞ?」 「うん…わかった。」 私は団長机へ、キョンはいつもの場所へと座る。すると、 「いやあ、遅れてすみません。」 「……………」 相変わらず笑顔の古泉君と無言の有希が部室に入ってきた。 「おう。遅かったな。今日はどのゲームにする?」 「おや、あなたから誘ってくるなんて珍しい。そうですね、今日は―」 キョンの向かい側の椅子に座る古泉君。有希は窓辺に座って読書を始める。 私はネットサーフィンでもしようとパソコンの画面に集中する。けど、どうしても視線は掃除道具入へといってしまう。 「涼宮さん?さきほどから落ち着かない様子ですが、どうかされました?」 キョンとチェスを始めた古泉くんが聞いてくる。 「ああ、こいつ朝から体調が悪いみたいなんだ」 「そう、そうなのよ!でも平気だから気にしないで」 キョンのフォローで助かった。 「そうでしたか。ところで朝比奈さんの姿が見当たらないようですが、どこへ行かれたのでしょう。先程部室に顔を出した時にはいらっしゃったのですが」 いきなりみくるちゃんの話題が出て思わず息をのむ… 「あ…えっと…」 「朝比奈さんならお前らが来る前に用事を思い出したとかで先に帰っていったぞ」 またもキョンがフォローしてくれる。 でも、少しずつ身体が震えてきた… 「なるほど。…涼宮さん?本当に大丈夫なんですか?震えていますが…風邪ですか?無理なさらないほうが…」 心配そうな顔をした古泉くんが話しかけてくる。 「うん。そうね…今日はもう帰るわ。このまま解散にしましょ」 「おう。わかった」 「かしこまりました」 「……………了解」 それぞれに答えみんなが帰り支度を始めた時、 ガタッ…! 掃除道具入から音がした。 っ…!なんで…!こんな時に! みんなの視線がいっせいに掃除道具入へとむけられる。 気になったのか有希が立ち上がり掃除道具入の扉に手をかける。 どうしよう!まずい、まずいまずいまずい… もう、ダメだ…諦めて目をつぶった時、 「長門、中のホウキが倒れただけだろ。気にするな」 有希を止める声が聞こえた。 「………………そう」 有希はほんの少し怪訝そうな表情を浮かべたが、やがて扉から手を離した。 それを見てあたしは気づかれないように息を吐き、そのまま椅子にもたれかかった。 本当に危なかった…キョンが止めてくれなかったら今頃… 「それじゃあお先に失礼いたします」 「………お大事に」 二人が先に出て行くと部室には私とキョンだけが残った。 「ふー、なんとか誤魔化せたな。大丈夫か?ハルヒ」 「う、うん…大丈夫…ありがと」 キョンは掃除道具入を開けて中を覗きこんだ。 「死体を運べるくらい大きなバッグを探してこなきゃな。ちょっと待っててくれるか?」 そう言うとキョンは部室を出ていこうとした。 「キョン!なるべく…早く戻ってきてね」 「ああ。わかってるよ。すぐ戻るからおとなしく待ってろよ」 キョンを見送って一人になると今さらながら自分のしでかした事に頭を抱える。 これから一体どうなるんだろう… 誰にも見つからないでうまく隠せるのだろうか… 私は椅子に座ったまま目を閉じた。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/869.html
涼宮ハルヒの追憶 chapter.6 ――age 16 ハルヒは気付いていた。 でも、それを言ったらSOS団はなくなってしまうかもしれない。 そしたら、ハルヒ自身が楽しいことは行えなくなってしまう。 ハルヒはそれにも気付いていた。 そもそも、ハルヒの鋭さからいったら気付かないほうがおかしいんだ。 長門は知っていたのだろうか。 朝比奈さんも知っていたのかもしれない。 古泉だって本当は分かっていたのかもしれない。 そう、俺だけが気付いていなかった。 のんべんだらりと日々を過ごし、SOS団にそれとなく参加する。 それの繰り返し。 俺は何をしていたんだ? いいんだよな俺は? 傍観者でいていいんだよな? その夜、そんなことをベッドに入り考えた。 あまりに色々なことがありすぎて、落ち着くことができず、寝たのは明け方だった。 学校へと向かう上り坂。 最近の不眠の影響は俺の肩を上から押さえつけた。 俺の体調は最悪を超えて、すでに限界を迎えていた。 いつ倒れてもおかしくない、本当だったら一日中寝ていたいぐらいだ。 だが、家に寝ていることが一番の苦痛だってことは俺は分かっていた。 それは、俺の望む傍観者なのかもしれない。 でも、それでは一向にこの問題は解決せず、俺の目の前をちらつくんだ。 俺にはこんだけの経験を踏んで分かったことがある。 今回の事件は俺が解決することはおそらく不可能だ。 そんな俺が唯一できること。 それは、あの部室でみんなが帰ってくることを待つことだ。 そして、思いを馳せればいい。 みんなの苦しみを少しでも感じていたいんだ。 その思いの通り、俺は放課後部室へ向かった。 夕方の部室に哀愁を感じながら、パイプ椅子を取り出して、どっと座り込んだ。 後ろに飾ってある朝比奈さんの衣装達。 デフォルトのメイドさんに、映画祭の時のウェイトレス衣装や呼び込み用のカエルスーツ、 野球に出たときのナース服。 どれもすでに必要の無いものとなっていた。 その気持ちはあの時の公園に似ていた。 長門の指定席は空席のままで、目の前にはハンサムスマイル野郎もいない。 団長様も椅子にふんぞり返ってはいなかった。 でも、俺は待たないといけないんだ。 そのまま、俺は一時間ぐらいSOS団の思い出をめくっていた。 少しうつらうつらきていた頃、部室のドアが音を立てて開けられた。 ビクッと身体を震わせ、ドアの方を見た。 「ハルヒ……」 そこにはハルヒが真剣な顔をして立っていた。 春だというのに顔は汗ばんでいて、髪が顔に張り付いていた。 「キョン! 古泉君が……」 そこまで言うと、ハルヒはその場に崩れた。 古泉、お前は大丈夫だよな? どうしたんだよ? 「ハルヒ!」 俺はハルヒに急いで近寄り、ハルヒの肩をつかんだ。 「どうしたんだ! 古泉がどうしたんだよ?」 「古泉君が、怪我で、分かんないけど大怪我で病院に運ばれたって」 予想が当たってしまった。 「死ぬわけじゃないんだろ? どこの病院だ!」 「前にキョンが入院してた病院よ」 ハルヒはやけに小声で話した。 「いくぞハルヒ! 古泉のとこに行ってやらないと!」 「行きたくない」 「え?」 「行きたくない」 「なに言ってんだ! 古泉を見舞いに行かなくていいのかよ!」 「じゃあ、手つないで?」 ハルヒはうつむいたまま、俺に顔を見せようとしない。 「分かった。俺の手ぐらい貸してやる、だから古泉のところにいこう。 俺達以外の最後のSOS団団員なんだ。見守るのは団長の役目だったんじゃなかったのか?」 「うん」 「ほら、手を貸せよ」 そう言って、俺はハルヒの手を力強く引っ張った。 ハルヒの手はとても冷たかった。 「ちょっと、痛い! 強く引っ張りすぎよ!」 ハルヒは立ち上がると、俺に精一杯の笑顔を見せた。 「まったく、キョンのくせに生意気よ! 団長様が手をつないでやろうっていうのに、どういう考えなのかしら!」 と、ハルヒは笑顔から怒り顔にフェイスチェンジした。 「古泉君をお見舞いするわよ! 早く!」 そう言うとハルヒは突然走り出した。 そして、ハルヒは振り返って心からの笑顔で――そういう風に見えた――俺の手を引っ張った。 「待てよ、急に何なんだ! さっきのはなんだったんだよ」 「どうでもいいでしょそんなこと!」 そうして俺達は学校を出た。 俺とハルヒは手を繋いだまま古泉の待つ病院へと向かっている。 ひたすら無言で、春だっていうのに手が汗ばんでいた。 どこか気恥ずかしくて、手を離してしまいたがったが、 俺には手を繋いで欲しいと言ったハルヒの気持ちも少しだけ分かった。 ハルヒは怖いのだ。今、ハルヒははっきりではないが自分の能力に気付いている。 長門も朝比奈さんも消えてしまっていた(ハルヒにとっては転校と、嫌われた)。 それを自分のせいだと思っている。 そして、今回の古泉も自分が悪いんじゃないかと思っているのだろう。 不可抗力なのはハルヒも分かっているはずだ。 でも、それでも、責任を感じてしまっているのだろうか? 俺はそんなハルヒの冷たい手を温めているのが少しだけ誇らしかった。 俺は繋いでいる俺の左手を通して、ハルヒにかかる苦しさと寂しさが少しでも伝わって欲しかった。 「ねえ、キョン?」 ハルヒは俺を見つめてきた。 「なんだ?」 「古泉君は大丈夫よね? いなくなったりしないわよね?」 「不吉なことを考えんな、古泉なら大丈夫だ」 「そうよね」 そうだよ。それに、そんな暗い顔はお前には似合わねーんだよ。 どうすれば、元のハルヒに戻ってくれるんだ? 「ハルヒ、顔が暗いぞ、お前らしくもない」 「暗くなんかないわよ!」 ハルヒはムスッとした後、そのままうつむいたまま歩き続けた。 痛い。苦しい。 ハルヒは明らかに無理をしていて、それは鈍感な俺でも分かるほどだ。 「大丈夫だ」 俺が言うと、ハルヒは返事もせず黙って歩き続けた。 ハルヒは俺の手を強く握った。 病院に到着すると、俺は受付で看護婦さんに古泉のことを聞いた。 怪我は主に左足の大腿骨骨幹部(膝から上の太い骨)骨折で、 高所からの転落や高速度での自動車事故が原因で起こる重大な損傷らしい (らしいというのも、看護婦さんも原因がわからないみたいだ)。 その他にも踵骨(かかとのことだ)にヒビが入り、靭帯も損傷しているみたいだ。 運良く血管や神経の損傷は免れたみたいで後遺症が残ることはないらしい。 骨の位置を直す緊急手術はすでに行われていて、 この後は歩行のためのリハビリテーションが始まるらしい。 まあ、つまり、命に別状はなかったわけだ。 「よかった、古泉君なら大丈夫だと思ってたわ!」 ハルヒはほっと胸を撫で下ろし、やっと笑みを見せた。 「さっきまで暗い顔してたのはどこのどいつだ。 言っただろう、古泉なら大丈夫だって」 「バカキョンに言われたくないわ!」 ハルヒは満面の笑みで俺の手を引っ張った。 「行きましょう! 古泉君が待ってるわ!」 「まったく、お前は調子がいいな」 よかったよ。ハルヒが笑顔になって。 「やれやれ」 俺とハルヒは急いで古泉の寝ている病室に向かった。 「ハルヒ、すまんがもう手は離してくれないか?」 そう俺達はここまでずっと繋いだままだった。 「分かってるわよ! キョンが寂しそうだったから繋いであげていたのに! こっちの気持ちも考えて欲しいものね」 ハルヒは手を腰に当て病院だというのに怒鳴り散らした。 逆だろとは言わないでおこう。あとが怖そうだ。 看護婦さんから聞いた病室は俺がかつてお世話になったところだった。 無駄に広い病室でハルヒが一緒に寝泊りしてくれていたんだっけな。 ノックしてドアを開けた。 「古泉入るぞー」 俺はできるだけの笑顔で病室に入った。古泉の真似だ。 古泉はベットに横たわっていた。 いつもの如才のない笑みはなく、ただぼんやりと天井を見上げていた。 病室は簡素なもので、ベッドと小さなテーブルがあった。 階は最上階で、風の通りもよかった。 部屋の雰囲気は長門のそれと似ていて、無機質に感じられた。 「おい、古泉! 人が来たのになにぼーっとしてんだ!」 古泉はこちらを見ると、 「あ、お二人とも無事でしたか。よかった」 と言って、困ったような笑みを見せた。 「なにが無事でしたかだ、お前のが無事じゃねえだろうが」 「そうでしたね。当分動けそうにはありません」 「古泉君、安心して、副団長の座は帰ってくるまで誰にも明け渡さないから」 これがハルヒなりの最高の気遣いなのかもな。 「それはありがたいことです」 古泉はハルヒに微笑みかけた。ハルヒはそれに応じた。 だが、古泉の笑顔はいつもと違い、引きつっているように見えた。 「高いところから落ちたんだってな。受付の看護婦さんから聞いたよ。 『子供とホモは高いところが好き』って言うのは本当だったんだな。 都市伝説かと思っていたんだが」 重い空気を変えようとできるだけ鉄板ネタから入ることにした。 「ホモは余計です。僕は同性愛者ではありませんよ。 純粋に女性のことが好きです」 「古泉の女性の趣味って気になるな」 と俺は気にもならないことを言った。 でも、沈黙のままでいるのは苦しすぎた。 「女性の趣味ですか。そうですねえ、涼宮さんみたいな人ですかね」 「と、突然何を言い出すんだ! いるんだぞハルヒはここに!」 「みたいな人といっただけで涼宮さんではありませんよ」 古泉は少し困ったような表情を浮かべた。 「そ、そうよ! 団員同士の恋愛は硬く禁じられているのよ!」 ハルヒは腕を組みながら、顔をあさっての方向に向けて言った。 というか、なんだその反応はハルヒに恥ずかしいなんて感情あったのか? そんなことを思っていると、古泉が俺を真っすぐ見据えていることに気付いた。 「ん、どうした?」 「いえ、なんでもありません。それはそうと、涼宮さん。 一階に行ってジュースを買ってきてくれませんか? 団長に頼むのも悪いのですが、お願いします」 「えー、なんで? キョンに行かせればいいじゃん。 雑用係はキョンって決まってるのよ?」 古泉は俺と二人で話したがってる。 おそらくハルヒには話せないことなんだろう。 古泉がハルヒにお願いすることなんてありえないし、 それに古泉はさっきから俺をずっと見つめ続けていた。 「お願いします」 古泉は強く言った。ハルヒに対する初めての意見だ。 「しょ、しょうがないわね! 今回だけよ! 古泉君が怪我してるからだからね!」 「すまん、ポカリ頼む」 「ちょっと! なんであんたの分まで買ってこなきゃならないのよ!」 「お前らの分は俺がおごってやるから、それで勘弁してくれ」 「すみません、僕もポカリスウェットでお願いします」 「もう!」 俺はポケットに入っている財布から千円札を抜き出し、ハルヒに渡した。 ハルヒは俺から引きちぎるように奪って、肩を怒らせながら病室を出て行った。 「行ってくるわよ!」 「やれやれ、ジュース買いに行かせるのにどれだけかかるんだよ」 「まったくです」 古泉はデフォルトの笑顔を見せた。 「時間がありません、始めましょうか。 涼宮さんが帰ってくるまでに話し終わらなければ」 「やっぱりか。なにか話したそうだったもんな」 「やはり分かりましたか。 でも、あなたが分かったということはおそらく涼宮さんも分かったことでしょう」 「そうだろうな」 そして、古泉は天井を見つめたまま話し始めた。 「まず、あなたには謝らなければなりませんね。 部室で突然殴りかかって申し訳ありませんでした。 あの時は僕も精神的に限界だったんです」 「いや、それはいい。俺も悪かったからな。 それはそうと、お前が精神的に限界とは珍しいな何かあったのか?」 「荒川さんが亡くなられました」 古泉はそう、事務的に伝えた。 「は? 荒川さんが? どうしてなんだ?」 「理由は僕と同じです。高所からの転落です。 ……というのは半分は本当で、半分は嘘です」 「で、本当の理由はなんなんだ?」 「少し長くなりますが」 「かまわん。続けてくれ」 古泉は白い天井を見つめたまま息をふうっと吐き出すと、 ゆっくりと一語一句聞き取れるよう話した。 「閉鎖空間でのことです。 その日涼宮さんの機嫌は大変悪く、最大級の閉鎖空間が生まれました。 そうですね、大きさとしては関西全域といったところですか。 その日というのは、長門さんが消えた日のことです。 僕達『機関』のものはほとんど総出で『神人』狩りに行きました。 当初はいつも通り、アクシデントも無く無事に終わると、 おそらく全員が思っていたことでしょう。規模が大きいだけだと。 閉鎖空間内に入るとその楽観的な思考はいっぺんに吹き飛びました。 いつもの灰色の空間ではない、薄暗く、『神人』だけが光るものでした。 ただ、それだけなら予定通り『神人』を倒してしまえば終わりです。 でも、そうはいかなかったんです。 『神人』は僕らを排除するかのように、暴力性を増し、明らかに強くなっていました。 安易に飛び込んだ者は叩きつけられて、死にました。 僕の隣には荒川さんが浮かんでいました。 荒川さんの顔は見て取れるほど怒りに満ちたものでした。 そして、僕自身も怒りというか、憤怒というか、 そうですねやるせなさと無力感、突撃してはやられていく仲間たちを見続ける悔しさ。 僕達『機関』の者はいわば戦友のようなものです。 そういえば分かってもらえますか?」 古泉はここまで話すと、俺の方を見て微笑んだ。 俺は古泉の語るその話に圧倒されていた。そこには明らかな意思があったからだ。 「ああ、分かるよ」 古泉はまた天井を見つめ、続けた。頬には涙がつたっていた。 「僕は強くなった『神人』に対して恐怖を感じ、その場から動くことができませんでした。 しかし、荒川さんは仲間を助けるために飛び込んでいきました。 無常にも『神人』によって一撃で叩き落され、底の見えない暗闇へと落ちていきました。 僕はそれをただ見つめていました。もう、赤い球体の数は二、三ほどのものでした。 その直後、僕は激しい嘔吐感に襲われ、吐きました。 頭がふらふらして、そのまま意識を失いました。 そして目覚めると、この病院だったわけです」 「そうか」 「後で聞いた話によると、その時残った者は閉鎖空間内から脱出したそうです。 そして僕も助けられ、一命を取り留めたわけですね。 閉鎖空間は拡大する一方でした。 あなたと部室で会った後、僕は再び閉鎖空間に向かいました。 『神人』が弱体化していたら、という淡い期待を抱くことで自分を保ちました。 僕はあの時見た『神人』が頭の中でフラッシュバックして、僕の中に居続けました」 古泉はそこでまた息を一つふうっと吐き出した。 「それは怖かったですよ」 古泉は俺を見て笑顔を見せた。 「閉鎖空間に入ると、前回と同じ、薄暗く、どこか陰鬱とした空間が僕を包みました。 『神人』は暴走を続けていました。 ただ、あなたが見たときと違い、街があるわけではありません。 『神人』は破壊の対象がないため、街を破壊するのではなく、 空間自体を破壊しようとしていました。 あまりの既視感に僕はまた意識が朦朧としてきていました。 どうしようもありませんでした。 僕はまた意識を失っていき、深い、深い、底へと落ちていきました。 薄れゆく意識の中で、その空間に僕達とは違う存在が飛び回っていることに気付きました。 『神人』でもなく、『機関』のものでもない別の存在がね。 あれはなんだったんでしょう。 そして僕はそのまま、底の見えない暗闇と同化していきました」 「これで僕の二日間にあった出来事は終わりです」 「そうか」 「また気がついたら病院にいました。 僕は何もできませんでした。僕は無力なんです」 「古泉、お前は無力なんかじゃないぞ。 何もしないでただぼんやりとしていた俺なんかよりずっとな」 そうなんだ、古泉は守ろうとしていた。 俺は何をしていた? 長門からただ逃げて、朝比奈さんに抱きしめられても何も答えられず、 ハルヒが苦しんでいても何もしてやれない、最低の男だ。 「ありがとうございます。その一言で僕は救われます」 古泉は笑った。俺はどんな顔をしてる? 「このぐらいでいいなら何度でも言ってやるぞ」 「もういいですよ。あなたに褒められるのもこそばゆいですから」 と言って、古泉はまた笑った。 「時間が無いので、次にいきましょう。今までのは僕の話です。 これから話すことは涼宮さんのこと、そしてSOS団についてです」 「頼む、俺は知りたいんだ」 「分かりました。では今回の事件についておさらいしましょうか。 現在、涼宮さんの能力は収束に向かっています。 理由は分かりません。残った『機関』の者が調査しています。 閉鎖空間は今もって存在し、強靭な『神人』によって、 空間は指数関数的に拡大し続けています。 長門さんを始めとするTFEI端末は減少し続けています。 朝比奈さんら未来人も一斉に帰還しました。 これらから分かることは何でしょう?」 「何も分からん」 実際に分からない。なぜハルヒの能力が収束しているのかだって? 「実は昔からいろいろな疑問が生じているのですよ。 なぜ涼宮さんはあの能力を持ち、そして行使することができるのか。 そして能力の元となるエネルギーはどこから来ているのか。 前にも言いましたよね。この世界の物理法則は保たれたままだと。 物理法則で一番大事なものはなんでしょう?」 こんなの俺でも知ってる。 「質量保存の法則かな」 「そうです。この世界にあるものは保存されるという、 ごく単純な理論がすでに破綻してしまっているのです。 では、涼宮さんがどこからエネルギーを持ってきているのか。 昔から『機関』内では論争が続いていました。 ある人は涼宮ハルヒがすでに内在していたものだと言い、 またある人は涼宮ハルヒは現人神なのではないかと言いました。 そして僕はそのほとんどがくだらない、馬鹿げたものだと考えていました。 人は人である以上、神のことを考えることはできないからです。 ですが、ただ一人、そう荒川さんの意見だけが僕の心に引っかかりました。 涼宮ハルヒの能力の元はこの世界とは違う、 パラレルワールドから引き出されたものではないか? 『機関』内では無視されましたが、 僕はこの意見がとても気に入りました。 『機関』がほぼ壊滅し、そして能力が収束していっている今なら、 この荒川さんの意見が正しいものだったと僕は声を大にして言えるでしょう」 「俺にはまったく分からないが」 古泉は俺を無視して続けた。 「パラレルワールド。つまり、異世界のことです。 この世界とは時間も空間も違う存在。 これだと、全ての辻褄が合ったんですよ!」 古泉は少し興奮しながら言った。 俺は妙に『異世界』という言葉だけが気になった。 それ以外は全く理解できなかったが。 「どう辻褄が合うんだ?」 「まず、これを裏付ける証拠として、 長門さんが涼宮さんの能力が収束している理由が分かっていないのが挙げられます。 宇宙的存在であるはずのTFEI端末が分からないもの、 それはこの宇宙外の話なのではないでしょうか? 次に、朝比奈さんもそうです。 未来が分かるはずの朝比奈さんが帰らなくてはならなかったのでしょう? 帰った理由は簡単です。時間をワープすることができなりそうだったからです。 そもそも、タイムジャンプはこの時代の科学者ですら否定的な意見です。 ではなぜ、可能だったのか? 涼宮さんの能力の発現によって、 タイムジャンプが可能なほどの時間の揺らぎが生じたと考えるのが妥当でしょう。 そしてその能力が収束している、つまり時間の揺らぎは減少していったのでしょう。 そのため、緊急で帰還することを選んだのでしょう。 ここに矛盾があります。未来が分かるはずの未来人が帰ったのか。 それはこの後起きることがこの時間軸とはまた別の時間軸の出来事なのでしょう。 つまり、異世界での出来事なのではないかと」 「理屈は分からんが、 とにかくその異世界というのはハルヒが望んでいたことなのは確かだ」 「そうです。それが第三の証拠です。 未だ現れない異世界人。これも前からの疑問ですね。 でも、僕はおそらく異世界人であろう人に会いました」 「さっき言った、閉鎖空間で見たって人か」 「その通り。閉鎖空間に他人がいるのはおかしな話ですよね。 そう考えると、あれは異世界人だったとしか思えないのです」 「なんでいるんだろうな?」 「これも推測ですが、こちらの世界に来ようとしたのではないかと」 「ハルヒに会うためか?」 「わかりません。ただ、分かることが一つだけあります。 涼宮さんが能力を発するたびに、 この世界のエネルギーは増え、あちらの世界のエネルギーは減少します。 これは何を意味するでしょう?」 「なんだろうな」 「あちらの世界が不安定になる、これだけは明らかです。 今回の能力の収束はこれに由来するのではないか。 あちらの世界が不安定にならないように、涼宮ハルヒに対抗してきた。 こう考えてみてはどうでしょう。 そして、こちらの世界とあちらの世界を繋ぐもの。 それは、閉鎖空間なのではないかと。 今回の閉鎖空間は今でも拡大を続けている、史上最大のものです。 そのためあちらの世界と繋がり、異世界人がやってきたのではないかと、 そう僕は考えるわけです。以上です、長くなってすみません」 「いや、いいよ。全く分からなかったが、妙に説得力があった」 そう、俺は全く分からなかった。 だが、一生懸命に語る古泉はとても格好よく見えたし、 俺はただ相槌をうつだけだったが、なんとなく伝わった気がした。 「あ、あと一つこれは涼宮さんには言えませんが、 僕は彼女を非常に憎んでいます。 それも殺してやりたいぐらいにね。 でも、涼宮さんは悪くないんです。だから、苦しんです。 閉鎖空間は彼女の心そのものです。 そして、僕達を排除しようとしたのも、殺そうとしたのも彼女です。 僕達『機関』の戦友たちは涼宮ハルヒに殺されたんです」 古泉は俺をじっと見つめながら笑った。 俺はそれに恐怖を感じ、狂気を感じた。 静まる俺と古泉の病室に、外から女性の声が突然聞こえた。 「あの、中入っても大丈夫ですよ?」 ガランッ。 何かが落ちる音共に、人が駆けていく音が遠くなっていった。 もしかして。 「もしかして、ハルヒが聞いていたのか?」 「そうかもしれません。でも、これでいいのかもしれません」 「バカ野郎! 殺したいなんていわれて平気でいられるやつがいるか!」 「早く追いかけないんですか? 涼宮さんは僕ではなく、あなたを待っているはずですよ」 古泉は嫌な笑みを浮かべた。 「分かってるよ! くそっ! どいつもこいつもなんなんだ!」 病室のドアを開けると、角のへこんだポカリスウェットが3つ転がっていた。 みんなで飲むつもりだったんだろう。 俺はその一つを病室のテーブルに置き、 古泉に「早く直せよ。ありがとな」と言って病室を飛び出した。 病院で走るわけにもいかず、歩いてハルヒを探した。 一階まで降りると、ハルヒは自販機の横のベンチに座っていた。 顔を両手で覆っていた。 近づくと、肩を震わせ、声にならない声で泣いていた。 「聞いてたのか?」 「……うん」 ハルヒはひどく詰まった声で答えた。 「どうしよう、古泉君にも嫌われちゃった。もうSOS団は解散ね」 「そうかもな」 俺はハルヒの右側に座って、地面を見つめた。 「あたしね、あたしだけで生きていけるように、頑張っていたの。 でも、みんなと出会って、楽しくなってた。 今まで全部一人でやって生きてきたのに、みんなといるのが楽しくなってたの。 でも、でもね。あたしは大切なものができるのが怖いのよ。 大切なものはいつか別れる時来るの」 いつか別れる時が来る。 俺は自分の中で繰り返した。それは朝比奈さんが話したことでもあった。 「だから、あたしは友達なんて作らなかった。 それより一人で生きていったほうが楽だし、強くなれるもの。 その分努力もした。でも、あたしは寂しかったのかもしれない。 宇宙人とか未来人とか超能力者とか全部人ではないものを求めてた。 だって、その人たちとは別れが来ないかもしれないでしょ? 楽しいだろうなってのは本当。でも、それは表面上の理由。 あたしはまた手に入れて、また失った」 ハルヒ。言ってくれるのは嬉しいんだ。 でもな、ハルヒ。俺はまだお前を受け止める自信が無いんだ。 「あたし、古泉君に殺されるのかな? あたし、いつのまにか殺人者になってたのね」 ハルヒは泣き続けていた。ハルヒの泣き顔はとても綺麗だった。 ハルヒ。ごめん、何も言えなくて。 ハルヒ。 「バカ。お前は殺されないし、殺人者でもねーよ」 「キョンが言ったって、意味が無いわ」 確かに気休め程度のクソみたいに陳腐な言葉を並べて、 ハルヒを慰めることができるか? できねえよ。 「分かった。何も言わない。 ただ、ポカリスウェットは飲んどけ。 時間が経って冷えるとまずくなるからな」 俺がへこんだ缶を手渡すと、ハルヒは力なく受け取り、膝の上で持った。 俺はもうひとつの缶を開け、一気に飲んだ。 そして左手でハルヒの右手を取り、ゆっくりと握った。 ハルヒの右手は震えていて、ひどく冷たかった。 二十分ぐらいたっただろうか、 突然ハルヒは立ち上がり、ポカリスウェットを一気に飲み干した。 「ぷはっー!」 お前はおっさんか、というツッコミをする暇もなく、 「帰るわよ! キョン! こんなとこいても無駄だわ!」 「おい、突然どうしたんだ?」 「帰るって言ったのよ、聞こえなかったの? もう、家に帰りましょ。暗くなってきてるし」 「あ、ああ。じゃあ、帰るか」 戸惑う俺を横目にハルヒは缶用のゴミ箱に空き缶を投げ入れると、 俺の手を引っ張った。 病院を出ると、空には月だけが輝いていた。 俺達を照らすのは街灯の光と、行きかう車、建物から漏れる白い光だ。 隣にいるハルヒは泣いてすっきりしたのか、急に機嫌が良くなっていた。 SOS団でのハルヒと同じはずなのに、不自然なのはどうしてだろう? もうすぐ駅に着く。その間俺達は手を離さなかった。 無言のまま歩き、つながっている手だけをしっかりと握った。 春の夜風が心地良い。肌寒いぐらいのそよ風が頬を撫でた。 もうすこしでさよならだ。 虫達も息を潜める、そんな静かな深い夜だった。 突然、後ろから大きい足音が聞こえるまでな。 それは一瞬のことだ。 突然に後ろで人が走る音が聞こえて俺が振り返ると、 そいつはやたらと大きなナイフを胸に構え、俺たちに突進してきていた。 「※※※!※※※※※※※※※?※※※※※※※!」 訳の分からない奇声を上げながらものすごい勢いで突っ込んできた。 「危ない! ハルヒ!」 「え? なに?」 俺はハルヒを引っ張り、倒れるようにしてそいつの一撃を避けた。 なんなんだ? 俺達はいつ暗殺者に狙われるようになったんだ? 避けられた謎の暗殺者はすぐに切り返し、俺たちを見つめた。 かなり大きい男? 「※※※※※?」 訳が分からない。何語を喋ってるんだ? 俺の英語の成績ぐらい調べといてくれ。 とりあえず立ち上がらなきゃ! このままだと逃げられん! 「※※※!」 またそいつは突っ込んできた。まずい! 逃げられん! しかし、ハルヒがナイフを突き刺そうと突っ込んできた暗殺者の手をタイミングよく蹴り、 ナイフを吹き飛ばした。 そのあとハルヒは左足で暗殺者の膝辺りを蹴り、そいつは横に倒れた。 「まったく! その程度であたしを狙うなんてバカ丸出しだわ!」 ハルヒは立ち上がるとそう叫んだ。 だが、そいつもすぐに立ち上がり、背中からさらに大きなナイフ? いや、もう剣といってもいいぐらいの長さの刃物を取り出し、 ハルヒに向かって一直線に刃物を突き立てた。 まずい、近すぎる。避けきれない! ハルヒをかばおうにも間に合わず、目をつむってしまった。 目を開けると、ハルヒに突き刺そうとしたナイフを右手でつかみ、 手を血だらけにした、短髪の少女が立っていた。 「長門、だよなお前?」 そう、そこには消えたはずの長門が立っていた。 「有希なの?」 「そう」 暗殺者はガクガクと震えだし、ナイフの柄から手を離した。 「今は時間が無い。事情の説明は後」 「情報連結解除開始」 そういうと、あの日と同じようにナイフがサラサラと分解していった。 「※※※!※※※※※※!」 そいつはいきなりうめき声のようなものをあげると、長門を睨み付けた。 長門は高速で何か呪文のようなものを呟いた。 「――――パーソナルネーム―――を敵性と判定。 当該対象の有機情報連結を解除する」 「※※※※※※※※※※※※!」 「んっ!」 目の前で謎の言葉の言い合いが行われていた。 長門はその内容が分からなくて、暗殺者は何語かも分からなかった。 が、突然暗殺者は消え、俺は呆然とその様子を眺めていた。 「逃げられた」 長門は俺達のほうを振り返り、そう言った。 右手からはおびただしい量の血が流れ出ていた。 よく見ると、少し悔しそうにも見えた。 「有希!」 突然ハルヒは長門に抱きついた。 「有希! どうしたの? 転校したんじゃなかったの? 大丈夫なのその右手」 そういうとハルヒは頭のトレードマークを解いて、長門の右手首を縛った。 「これで、少しは血が止まると思うわ」 ハルヒはにっこりと笑って長門を見つめた。 「ああ、有希。ありがとう、あたしを助けてくれたのよね?」 「そう。右手の損傷もたいした事無い。今、直す」 長門はまた高速で呟くと、長門の右手は徐々に塞がっていった。 「すごい!すごい! どうやったらそんなことできるの?」 ハルヒは目を輝かせて長門を見つめている。 そんなハルヒと長門を見ている俺は無様に尻もちついたままなんだがな。 って、おい! ハルヒの前でそんなことやっちゃっていいのかよ! 「問題ない。あなたたちを守るために再構成された。 記憶も何もかも全てそのままで」 「有希!」 ハルヒはまた長門に抱きついた。 「よかった。有希が戻ってきてくれて。 でも有希は人間じゃないのね? もしかして宇宙人?」 「そう」 「当たりね。その右手首に付けてるやつはあげるわ! あたし達を守ってくれたお礼よ!」 「分かった」 ハルヒに抱きつかれてる肩越しに、長門は俺を見つめた。 「なんだ?」 「そろそろ」 「なに―――」 「キョン君ー! 涼宮さーん! 無事でしたかぁー?」 遠くから愛らしい声が聞こえた。 やれやれ、そういうことか。この団専用のエンジェルがお出ましだ! 俺は立ち上がり、手を振ってその声に答えた。 ハルヒもその声に対して大声を上げ、手を振って答えた。 朝比奈さんは息を切らしながら俺達のところにたどり着くと、 「よかったぁー。殺されちゃうかと思いましたよおぉ」 と言って、可憐な涙を拭った。 「ばかねぇー。あんなんであたしが死ぬわけ無いでしょ?」 ハルヒはそういって、朝比奈さんを抱きしめ、頭を撫でた。 顔は困ったような、嬉しさを隠せない様子だ。 「でもでもぉ。本当に危なかったんですよぉ? 長門さんが遅かったらって思うと……」 「大丈夫よ。あたしはここにいるし、キョンもあそこでぼけーっと突っ立ってるでしょ?」 いや、普通に立ってるだけだがな。まだ動悸はおさまらないが。 「みくるちゃんは未来人なのよね?」 「そうです」 って、おい! 朝比奈さんまで認めてるんだよ! 古泉の話をどこまで聞いたか分からんが、ハルヒも信用しすぎだろ。 「てことは、古泉君は超能力者ね。キョンはただの一般人ぽいし」 まあ、俺もすぐに気付いたがな。 それより聞いておかなきゃならないことがあるな。 「ところで長門、さっき襲ってきた人は何者なんだ? ここの国の人ではなさそうだったが」 俺は平然と立っている長門に尋ねた。 「この宇宙ではない宇宙から来たもの。 通俗的な用語を使用すると、異世界人にあたる。 この宇宙空間には存在しないため、我々情報統合思念体も把握できていなかった。 でも、今回対象はこの世界に突然に現れ、明らかな意思を持って行動した」 「明らか意思か」 「そう、彼の意思は『涼宮ハルヒを殺す』ことだけ」 ハルヒは朝比奈さんとじゃれあっていたのをやめ、長門の話に集中した。 「そうなんです」 朝比奈さんは唐突に割り込んだ。 「この時間軸上に存在しないはずのことだったんです。 でも、突然現れて、緊急に出動要請が出たんです。 涼宮さんの命が狙われているって。今回は光線銃の携帯も許可が下りました」 そう言って朝比奈さんは腰につけていた光線銃を取って、俺達に見せてくれた。 ハルヒはそれを興味深げに見ると、朝比奈さんから奪い、俺に打つ真似をしてきた。 あぶないからやめなさい! 子供じゃないんだから! ハルヒは銃を下げると、 「とにかく、あたしの命を狙ってる異世界人とやらがいるわけね。 そいつらは危険なの?」 長門はハルヒをじっと見つめると、 「とても危険。我々情報統合思念体でも勝てるかどうかは微妙。 でも、彼らにも弱点がある。この世界では、こちらの物理法則に従わなければならない。 これからあなたはわたしや朝比奈みくると一緒にいることを推奨する」 長門は俺の方を向くと、 「あなたも、わたしたちとともにいなければ危険」 俺もか。 「そう、文芸部の部室に泊まるのが一番安全。 あの空間はちょっとした異空間になっていて相手も攻め込みにくい」 「部室? そこで泊まるのか。ばれたらまずいんじゃないのか?」 「大丈夫、情報操作は得意」 確かにお得意だろうがな。 はあ、一般人だったはずの俺がいつのまにか暗殺者に狙われるまでになったか。 「部室でお泊りか、なんか楽しくなってきちゃった! もっといろんなもの持ち込まないと!」 ハルヒは乗り気だがな。 「わたしもいっぱい準備しなくっちゃ!」 朝比奈さんもだいぶ乗り気のようで。 そして俺は気付く。なんであの部室はあんなに生活できるまでにものが溢れていたのか、 実はこのためだったのかもしれない。なんてな、偶然だろ? 「これでSOS団も復活ね! 今日の夜から部室でお泊りよ!」 「はぁーい」 朝比奈さんの愛くるしい声が月夜に舞う時、長門は細い光を放つ街灯を見つめながら頷いた。 やれやれ、好きにしろよ。 もう。 「SOS団はやっぱりこうでなくっちゃ!」 仁王立ちするハルヒの叫び声が、肌寒い春の夜に響いた。 chapter.6 おわり。
https://w.atwiki.jp/sinnerei/pages/758.html
【作品名】涼宮ハルヒの分裂 【ジャンル】小説 【名前】涼宮ハルヒ 【属性】SOS団団長 【年齢】16歳 【長所】本人の望んだ通りのことが起きる 【短所】でもその自覚がない 【備考】『分裂』より高校2年生になったので最低でも16歳 vol.2