約 3,071,554 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2410.html
俺の日常はきっと赤の他人から見れば、まあ大変ねとか、苦労なさっているんですねとか 言われてしまうようなきわめて非日常的な状態にあるんだろうが、俺にとってはこれが楽しくて仕方がない ごくごく普通の日常であると断言できる。 宇宙人・未来人・超能力者。こんなのが得体の知れない情報爆発女を中心に闊歩している世界に 俺のようなきわめて一般的平凡スペック人間がコバンザメのようにくっついて歩いている光景は、 確かに不釣り合いと言えばその通りである。が、いったんそんな現実を受け入れてしまえば、 細かいことはもうどうでもよくなり、どうやってこの微妙に非日常を満喫するか考える毎日だ。 てなわけで、本日もハルヒ発案による不思議探索パトロール中である。 相変わらず、ハルヒの望むような変なものが見つかるわけでもなく、ほとんどSOS団という謎の集団による 食べ歩き・散策・名所巡り状態になっているが。 「にしてもだ。ハルヒが本当に変なものに遭遇を望んでいるなら、とっくに見つかっていそうだけどな」 俺は朝比奈さんをうらやましくも抱き寄せほおずりしながら歩くハルヒを尻目に言う。 それにすぐ横を歩いていた古泉は苦笑しながら、 「涼宮さんにとってそういった奇怪なものを見つけることよりも、我々と一緒に遊ぶことの方が楽しいのでしょう。 そうでなければあなたの言うとおり、今頃町中がエイリアンやUMAで溢れかえっていますよ」 確かのその通りだろうな。実際に俺もそんな物騒な連中が現れずに、こうやって遊び歩いている方が遙かに楽しい。 ハルヒ自身も未知との遭遇がなくても、現状の不思議探索パトロールで満足しきっているんだろうな。 と、古泉は珍しく胡散臭さのない屈託のない笑顔で、 「このままこの日常が続けば良いですね。僕のアルバイトもいっそのこと無くなってしまった方がいいですし」 そんなことをしみじみとつぶやく。 お前達の言うようにハルヒが世界を平然と作り替えられる能力を持った神的存在って言うなら、 この平穏な日常は永遠に続くだろうよ。ハルヒがそう望み続ける間はな…… ……この時まで俺はそう確信していた。 ◇◇◇◇ 「ちょっと公園で一休みしましょう」 そうハルヒの一声で俺たちは公園のベンチに座る。ところでハルヒさん。いくら何でもずっと朝比奈さんに抱きついたままなのは どうかと思うぞ。全くうらやまし――じゃない、少しは朝比奈さんの迷惑を考えろよな。 「いいじゃん。今日は思ったよりも寒かったからカイロが必要なのよ。う~ん、さっすがみくるちゃんは暖かいわね」 「ふえ~」 ハルヒの傍若無人の振る舞いに朝比奈さんは困り切った顔を浮かべているんだが、 ついついそんな彼女にもこうエンジェル的優美かつ華麗さを感じ取って見とれてしまう俺も相当罪深い。 アーメン。俺の男としての性を許してくれたまへ。 一方の長門は相変わらずの無表情ぶりでベンチの上にちょこんと座っている。すっかり謎の超生命体印の宇宙人というよりも 文芸部部長兼SOS団最大の功労者という肩書きが似合うようになった。そんな彼女も今日もいつも通り無表情・無口で 無害なオーラを延々と見せているところから別に変なことが背後やら水面下とかでうごめいてはいなさそうだな。 ふと、ここでハルヒと目が合ってしまった。なんてこった。俺としたことが飛んだミスを。 「ちょっとキョン。のどが乾いたからみんなにジュースを買ってきなさい。あ、当然あんたのおごりでね」 「何で俺が」 横暴極まりない俺への指令に、俺は抗議の声を上げるが、ハルヒは朝比奈さんを抱きしめたまま、 「今日も遅刻したじゃん。罰金よ罰金! ほらほらぶつくさ言わないでとっとと買ってきなさい! あ、あたしは暖かい紅茶でね♪」 満面の笑み100%を浮かべているところを見ると、全く今日もいつもの傍若無人ぶり全開だな。 いつもどおりってのも安心できると言えばそうなんだが。 俺は長門と古泉、それに朝比奈さんの要望を聞くと、近くの自販機を探し始めた。 ちなみに俺の癒しの朝比奈さんは、ごめんなさいとぺこぺこしていたが、そんなに謝る必要なんてありませんよ。 あなたがアルプスの天然水が飲みたいというなら、今すぐ新幹線に飛び乗っていくことなんておやすいご用ですぜ。 しばらくきょろきょろと見回していた俺だったが、やがて公園に乗ってはしる道路の向こう側に 自販機が並んでいるのが目に入った。俺は横断歩道の信号が青になったことを確認し、小銭を数えながらそこを渡り始める。 ――キョンっ!? 後頭部に突然ハルヒの声がぶつけられる。そのあまりに突飛な声に何事だと俺は右回り180度ターンで振り返っている途中で 気がついた。俺の鼻先30センチのところにばかでかい巨大トラックがいることに。 当然ながら空中に突如出現したわけでもなく、猛スピードで信号を無視して俺に突っ込んできている。 鈍い衝撃が俺の鼻に直撃した以降、俺は何も感じなくなった―― ◇◇◇◇ ――キョンっ――キョンっ――お願い――目を開けて―― ハルヒの声だ。何だやかましい。言われなくてもすぐに起きてやるよ…… 俺はすぐにまぶたを開こうとして気がついた。どれだけ強く力を込めて目を見開こうとしても まるでそれを拒否するかのように、強くまぶたが閉じられている。目の上の筋肉辺りは動いているようだったが、 肝心のまぶたは力を込めると逆にしまりが強まる。くっそ――どうなってやがる…… ――キョンくん……どうして……こんなことに―― 次に聞こえてきたのは朝比奈さんの声だ。耳に届く美しい言葉に俺は再度目に力を入れるが、やはり開かない。 ずっと続く闇の中、朝比奈さんのすすり声だけが俺の脳内に響く。ここで気がついたが、俺の手足も俺の意志に反して 全く動かなかった。まるで全身に釘を打ち込まれたかのように身体が硬直し、直接的な痛みよりも 動くはずの俺の身体が動かないというもどかしさに、俺は強烈ないらだちを憶えた。 しばらくして朝比奈さんのすすり泣きも聞こえてこなくなった。そのままどれだけの時間が過ぎたころだろうか。 いい加減、自分の身体が動かないことにあきらめつつあったころ、今度は言い争いが聞こえてきた。 はっきりと言葉の末尾が聞こえないが、片方が古泉の声であることはすぐにわかった。聞いたことのない男の声と 激しくやり合っているみたいだ。おい古泉、そんな声を出すなんてお前らしくないぞ。どうした? しばらく意味不明な怒声のキャッチボールが続いていたが、やがてバンという大きな音とともにそれが止まった、 ――何――やってんのよ――病人の前なのよ!? 出て行って! 出て行ってよ!―― ハルヒの声だ。すまん、ハルヒ。助かったよ。これが続いていたら俺の耳がくさっちまいそうだ。 ん? 今ハルヒはとんでもないことを言わなかったか? なんだったっけ……ま、いいか。ちょっと眠くなった。寝よう…… ――やあ、キョン―― ……ん、誰だよ。人が寝ているってのに…… ――久しぶりに顔を合わせたかと思えば、こんなことになってしまうとは、ついていないと言えば良いんだろうかね? ……うっさいな、俺は眠いんだよ。寝かしてくれ…… ――僕は君が起きているつもりで話すよ。いまさらだけどね。少しでもその意味を理解できているなら―― 俺はここで眠りに落ちた…… 一体どのくらい経ったんだろうか。眠っては起きてまた眠っての繰り返しの日々。いい加減飽きてきたんだが、 起きても指一本動かせず、目すら開かないのでどうしようもない現実だ。聞こえてくるのは耳を通してではなく 頭蓋骨を伝わってくるようなぼやけた声だけ。最初はそれを聞き取ろうと努力したんだが、どうやら俺がどうこうしても 無駄なようだ。はっきり聞こえてくるときとそうでないときの違いは、俺の意志や努力とは関係なかった。 そして、久しぶりにはっきりと聞こえた声。 ――ゴメン、キョン。全部あたしの責任よ。あたしがあの時あんたを使いっ走りにしなければよかった。 ――あたしが悪いの――――――――――――ごめんなさいっ――――本当にごめんなさい――だから目を開けて――お願い―― そんな悲しそうな声を出すなよ、ハルヒ。お前のせいじゃないに決まっているだろ? 自分をあんまり責めるなよ。 らしくなさすぎるほうが帰って俺を不安にさせるんだからさ。大体、あんなことはいつもどこかで起きているんだから―― あれ? なんだっけ? 俺、なんかとんでもない目にでも遭ったのか? なんだっけ…… それから果てしない時間が過ぎたような気がする。 もうはっきりした声も聞こえなくなり、雑音のような声らしきものが俺の脳内に拡散していく毎日。 飽きたなんて言う感覚すら通り越して、意識が麻痺しているんじゃないかと思いたくなるほどの無感状態になっていた。 寝て起きて寝て起きて寝て起きて寝て起きて――もう考えることすらうっとおしくなってきている。 ――あきらめないで。 長門の声だ。すごく久しぶりに聞いた。ちょっとうれしくなる。すまないがちょっと俺の目を開ける手伝いをしてくれないか? ――今、わたしは何もできない。 そりゃまた白状だな。SOS団の仲間だろ? ――あなたと意識レベルでの言語的会話をすることが、わたしにできる唯一できること。 なら、せっかくだ。話でも聞かせてくれ。そうだな。おとぎ話でもいいぞ。いい加減、退屈で感覚が麻痺しているんだ。 ――残念ながらわたしにはあなたの身体構造の再起動を促せるような言語刺激を持ち合わせていない。 そうか。それなら仕方がないな。そろそろ眠たくなってきたから、寝るよ。 そうだ、また退屈になったら話してくれないか? ――もうこのインタフェースであなたと会うことは二度と無いかもしれない。でも聞いて。 なんだ? ――このままでは涼宮ハルヒはこの惑星にすむ知的生命体全てからの憎しみをぶつけられる。 ――そして、世界は消滅する。 は? なんだそりゃ。そんなことがあってたまるか。 ハルヒはな、確かに行動が突飛だったりわがままだったりするが、何だかんだで常識的な奴なんだよ。 人を本気で傷つけたりとかなんてしないしな。見た目で判断するんじゃねえよ。 誰も彼もが誤解しているってなら俺が教えてやる。ハルヒって奴が本当はどんな奴って事をな…… そう思った瞬間、今までの目の拘束状態が嘘だったかのように消える。 そして、俺はゆっくりと目を開いた…… ~~その1へ~~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/24.html
『情緒クラッシャー』 「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 「食ってねぇ」 「言い逃れなんてしても無駄よ!机の上に空の容器が…」 蹴り飛ばされる机。身をすくませるハルヒ。 「食ってねぇ」 「…わかった。食べてないのね」 「あぁ。食ってない」 「…そう」 「謝れよ」 「え…」 「謝るんだよ。俺に。当然のことだろう?勝手な憶測で人を疑ったんだから」 「………」 床に手を付き頭を下げるハルヒ。 「…疑ってごめんなさい」 「…それから?」 「え?」 「さっきのは疑ったことについての謝罪だろ?二度も同じことを言わせたことについての謝罪がないじゃないか」 「…二度も同じことを言わせてごめんなさい」 「いいよ。気にしてないから。俺そういう細かいことを引きずる方じゃないんだ。ただ次からは注意してくれよな。俺はお前のことが大好きだからさ。 もう殴ったりしたくないんだよ。顔面がかぼちゃみたいになってたり、足引きずったりしてるハルヒを見るのはホント辛いんだよ。 なぁ?分かるよなハルヒ?」 「…うん」 「『うん』?」 「は、はい!」 「いい返事だ、ハルヒ。 分かったらさっさとパンツを下ろせよ。あと今週の分な」 「ひぃふぅみぃ…足りてないぞ」 「あの…そのことなんだけど…もうこれ以上…家からお金持ってくるのは…」 ゴッ 「俺は足りてないって言ったんだよ」 「………」 「当たり前だろ。家の金を取るなんて親御さんに悪いじゃないか。だからそれ以外の方法を取ってるんだろ」 「…キョン…お願い…私…限界なの…」 「あ?」 「もうキョン以外とするのイヤ…イヤなの…お願い…もう…」 「…そうか。お前は死ねって言うんだな、俺に。借金があって大変な俺に。そりゃそうだよな。好きでもない男とするのなんて誰だってイヤだよな。 俺だってイヤだよ、大好きなお前を他の奴に抱かせるのなんて。愛してるからな。ハルヒのこと。分かった。死ぬよ、死ねばいいんだろ。死ねばお前も満ぞ…」 「嘘!嘘だから!もっと…もっと私稼ぐから…我慢して…もっといっぱい…!!だからお願い…冗談でも死ぬとかそんな…!」 「そう言ってくれると信じてたよハルヒ。次の分は今日の足りてない分とペナルティー合わせて…4万追加でいいや。お前も少しは寝ないと体もたないだろ?」 「…ありがとう」 「いいって。さ。尻上げろよ。今日はあんまり時間が無いんだ。帰りに長門の家に寄らないといけないんだ。あんまり待たせると可愛そうだからな。あれでアイツさびしがりなところあるんだぜ。あー…きもちぃー♪」 「キョン…私、キョンの彼女なのよね?あ…ん…私達…付き合ってるの…よね?」 「当たり前だろ。あ、今日安全日だっけ?違った?まぁいいか。とにかく出すからなー。 あ、後、次からは焼きプリンで頼むな。今日のはあんまり好きじゃないんだわ」 「う…うぅ…」 「愛してるぜーハルヒー」 ガチャ… ハ「いやっほ~キョ…」 キ「ハルヒ、うるさいぞ、長門は今読書中なんだ、静かにしてあげなさい」 ハ「ごめんなさい…キョン、有希…今日はもう帰るね」 キ「………」 長「………」 バタン 長「………(ハルヒの奴、キョンに注意されて帰ってやんのwwwwwざまぁwwwwww)」 『右から左へ』 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 キョン「次の休みどこ行きます?」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン!?」 みくる「そうですねぇ。あ。そろそろ紅葉がキレイな季節じゃないですか?」 ハルヒ「あたしのプリン食べたでしょ!?」 古泉「なるほど。紅葉狩りというわけですね。確かに今が一番いい時期かもしれません」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?キョン!?」 長門「こうよう…」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 キョン「お。長門、紅葉を知らないのか」 ハルヒ「ちょっと!ちょっと!キョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 長門「………」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの、あたしのプリン食べたでしょ!?」 みくる「えっとぉ…冬が近付くと一部の植物がぁ…」 ハルヒ「ちょっと!あたしのプリン食べたでしょ!?」 古泉「朝比奈さん、百聞は一見に如かず。理屈よりも、連れて行って差し上げれば一目瞭然ですよ」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン、プリン食べたでしょ!?」 キョン「決まりだな。正直ボーリングだ、カラオケだって金も続かなくなってたとこだし、ちょうどいいぜ」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?食べたでしょ!?」 みくる「私、お弁当作りますねぇ」 ハルヒ「ちょっとキョン!キョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 キョン「ありがたいなぁ!さ。今日はそろそろ帰りましょうか」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン!あたしのプリン食べたで…」 バタン ハルヒ「ちょっとキョン! 咽喉が渇いたから『ドンッ!』っ!?」 キョン「何だって?」 ハルヒ「な、何するのよ! 吃驚するじゃ『ドンッ!』ひっ!?」 キョン「だから何だって?」 ハルヒ「や、やめて『ドォンッ!』よぉっ!?」 キョン「聞こえねーよ。何が言いたいんだよ、ったく」 ハルヒ「つ、机『ドン!』っひ、ぃ、『ドン!』蹴らない『ドォン!』で、よぉ……」 キョン「あー? 聞こえねーっつーの」 ハルヒ「……うぅ」 ナッパ「白菜うめぇwwww」 あたしは今いじめにあっている。 でも、そんなの中学からのことだった。 みんな馬鹿だからそうなんだって思ってた。 でも、高校に来ていじめはエスカレートしていった。 移動教室から帰ってくると机には「気違い死ね」の文字が書かれていた。 それだけじゃなくて、鞄にも「キモイ死ね」の文字。 ご丁寧にも油性のマジックで書くものだから落ちない。 水で洗っても洗っても落ちない。 部室に行く時は手で隠しながら入った。 ばれたら嫌だったから。 汚れた机を雑巾で拭くと、周りでクスクスと蔑む声が響いた。 でも、あたしのが頭もいいし、顔だっていい。 運動神経だっていいし、こんなやつら一撃で倒せる自信がある。 でも、それはできなかった。 過去に余りに腹を立てて男子を殴ってしまったことがあった。 もちろんあたしは勝った。 でも、次の日集団で来てあたしをリンチした。 ブラジャーを取られて排水溝へと投げ捨てられた。 それがどんどんエスカレートしていった。 止まる事はない延々と続けられる嫌がらせ。 耐えられなくなってあたしはキョンに相談した。 キョンは親身になって聞いてくれた。 あまりの嬉しさに、今までの孤立感、屈辱、羞恥、全てが涙に変わっていた。 その時、あたしはキョンに身体を許してしまった。 次の日、キョンは殺人的な言葉を口にしていた。 「あいつ抱いてやったよ。くせぇしきたねぇし、顔だけだな。ヤリマンだなありゃ」 取り巻きは爆笑。 あたしは人間不信に陥っていった。 誰に相談すればいいんだろう? 悪いのはあたし? あたしは一度だけ自殺を試みました。 紐で首を縛って、力いっぱい引っ張りました。 でも、死ねませんでした。 生きていることに気付いた時、あたしの目からとめどなく涙が溢れました。 今でもあたしは馬鹿な人の卑劣ないじめに耐えています。 悪いのはあたし? 馬鹿キョン馬鹿キョン! と。何度も俺の頭を叩くハルヒの手首を握って制止し、 「止めろ!」ドスの聞いた声と共に、と睨みつけた。 「いい加減にしろ! ったく、毎度毎度。俺はお前の奴隷じゃないんだぞ!」 「何よ! 何か文句あるっていうの。キョンの癖に!」 怖じもへったくれもなく睨み返してきやがる。 その目が、口の聞き方が、傲慢な態度が、全部が癪に触る。 「あんたは黙って私のいう事を聞いていれば良いの!」 「だから! 俺はお前の奴隷じゃないっつーの!」 「はん! 何よ! 文句あるの! 無いわよね! あんたは奴隷よ、奴隷!」 「――っ!」 目の前が真っ赤になった。血が上るどころか、瞬間沸騰した。 何度かこういう事はあったが、桁が違う。止める奴も居ない。 衝動は思考を陵駕する。本気で握りしめた拳は、力の限り振り切られた。 「っ!?」 イスを巻き込み、机にぶつかり、吹き飛ぶハルヒの体。 顎を殴られたうえに、頭を机にでもぶつけたのだろう。 「う、あ、あぁ……っ」 顔を両手で覆い、気持悪い呻き声を上げながら、ジタバタと床の上で跳ねる。 「……もう一回言ってみろ」 髪の毛をつかみ引き摺って、無理矢理に身体を起こす。 痛い痛い痛い……! と喚き散らす。唾を飛ばし、口の端から血を垂らし、喚く。 「な、に……」 すんのよ、とでも言いたかったのだろうか。 言葉が続く前に、顔面を机に思い切り打ちつけてやった。 「おい、聞こえないぞ。しゃきっとしろよ」 髪の毛を引っ張って顔を起こし、耳元で呟いた。 ハルヒはぼろぼろと涙をこぼしながら、鼻血を垂らしている。 俺の顔を見て「ひっ」と顔を痙攣させた。あぁ、どうやら俺が恐いらしい。 「ほらほら。もう一回言ってみろよ? 俺はお前の何だって?」 恐がらせないように、とびきりの笑顔でワンモアトライ。 「ごめ……ん、なさ……い」 ガン! 「……ご、め……な、」 ガン! 「や……め、」 ガンガンガン!!! 「……」 パクパクと口を引き攣らせている。 どうやら「ゆるして」と言っているらしい。 俺はずい分可愛くなってしまったハルヒの顔に唾を吐き、部室を出た。 ハルヒ「みんな聞いて、大ニュースよ大ニュース!!」 !...あれ?あんただれ?」 美代子「引っ越し・引っ越し・ さっさと引っ越し、シバくぞ!」 鶴屋さん「繰ーりー出せー鉄拳~♪」 みくる「ふぇ~」 長門「無理です…」 ハルヒ「ハブられた…」 キョン「あははー」 ハ「やっほーみんな」 キ「お前誰だ?」 ハ「はぁ?何言ってんのアンタ?私はハルヒよ!」 キ「お前こそ頭大丈夫か?はるひはそこに居るだろう」 は「え?呼びましたか?」 ハ「え?」 ハ「……」 ハ「ちょっちょっちょっちょっと!まってアンタ私の派生キャラじゃない!なに私の団長椅子に座ってんのよ!」 は「え?えぇ?あ、あのー」 み「どこの誰か知りませんがはるひちゃんをいじめないでくれませんか?」 キ「つーか派生キャラ?何を言っているんだこいつ?そうかキチガイだ……よし古泉コイツを職員室に連れてくぞ」 古「わかりました」 ハ「ちょっと!話なさいあんた達私が」バタン み「……よしハルヒちゃん今日はめいどさんの服着てみようか?」 は「え?またですか?」 長「…スク水巫女服もある」 は「あ、じゃあめいどさんの服をください」 み「はーいじゃあそっちでお着替えしてくださいね~」 長「スク水巫女服……」 ハルヒ「すごいことを発見したわ!」 キョン「なんだイキナリ」 ハルヒ「谷口のWAWAWAについてよ!」 キョン「ああ、アレについてね。何だ言ってみ、聞くだけ聞いてやる」 ハルヒ「いい?谷口のWAWAWA…パソコンで入力してみてよ、キーボードに注意して!」 キョン「なんでだよ」 ハルヒ「いいから!」 キョン「まったく…、w・a・w・a・w・aっと…ん?…こ、これは!?」 ハルヒ「そう!つまり谷口は突 徒 子 公 太 郎 だ っ た の よ !」 キョン「なんだそんなことかよ…」 ハルヒ「(´・ω・`)」 キョン「…ヌプ」 古泉「ひゃっ!?キョ、キョンたんのえっちぃ!」 キョン「…ドピュ」 古泉「いや~///」 長門「ヴァギナー!!!」 キョン「ちょ、直球だな小娘…」 古泉「…わ?」 長門「ノン ノン ノン 『ヴァ』」 キョン「クチュ…」 長門「ヴァギナー!!!」 古泉「ゃぁ~///」 ハルヒ「ちょっとぉ、ちょっとちょっと!なんで有希は良くて私は無視するのよぉ!?」 キョン「………」 古泉「………」 ハルヒ「なんとかいいなs 長門「ヴァギナー!!!」 ハルヒ「ちょ/// 有希うるさっ 指指すなぁ!///」 古泉「か~え~る~の~う~た~が~」 キョン「か~え~る~の~う~た~が~」 長門「き~こ~え~て~く~る~よ~」 ハルヒ「き~こ~え~て~く~る~よ~」 古泉「………」 キョン「………」 長門「………」 ハルヒ「な、なんなのよあんた達最近!!も、もう知らないんだからっ! ウワァァン。゚(つд`゚)゚。」 バタン 古泉「………」 キョン「………」 長門「……グワッ」 古泉「グワッ」 キョン「ゲロゲロゲロゲロッ」 長門「グワッ」 古泉「グワッ」 キョン「グワッ」 ハルヒ(なんなのよちくしょー!) ハルヒ「あれ?…そういえば最近みくるちゃん見ないわね…」 古泉「………プッ」 長門「………プリッ」 キョン「ひゃ~いw」 ハルヒ「な、何よ、あんた達何か知ってるの?」 古泉「or2=3 プッw」 ハルヒ「腐っ! なによ!い、言いたいことがあるならっ、て本当に臭い!!」 長門「ケアル」 キョン「長門はケアルを唱えた。でもみくるんはアンデッドだった…」 ハルヒ「な……そ、それどういう意味?」 古泉「裏切りに」 キョン「死を」 長門「巨乳に」 キョン「制裁を」 ハルヒ「ちょっと、ちょっとちょっと!あんた達みくるちゃんに何をしたのよ!?」 みくる「あの…私ならずっとここにいるんでしゅけど…」 ハルヒ「答えなさいよキョン!」 みくる「またでしゅか?また無視でしゅか?いい加減にしないと泣きましゅよ?」 ハルヒ「なんで無視するのよ!!」 みくる「せ~の、」 ハルヒ・みくる「ウワァァン。゚(つд`゚)゚。」 キョン「あ~る~日♪」 古泉「あ~る~日♪」 キョン「森の中♪」 古泉「も、もも森さんの膣内…ハァハァ」 キョン「ハルヒに♪」 古泉「電波を」 キョン「出会った♪」 古泉「受信した♪」 キョン「はぁ…」 長門「まぁそうクヨクヨすんなよ。そのうち良いことあるって、なっ?」 キョン「長門…ありがとう…俺頑張るよ!」 古泉「しょ、しょんなことより僕の替え歌どうでしゅたか?」 キョン「イェーイ!イツキたんサイコーwww」 長門「なんか涙出てきた…GJ!」 ハルヒ「………」 シンジ「泣いてるの?」 ハルヒ「な、泣いてなんかないわよ!」 キョン「わいわい」 古泉「がやがや」 長門「きゃっきゃっ」 ハルヒ「ねぇ!みんな今度の連休ぅ……」 キョン「………」 古泉「………」 長門「………」 ハルヒ「あ…ううん、なんでもない…」 キョン「わいわい」 古泉「がやがや」 長門「ざわざわ…」 ハルヒ「………グス」 獅子丸「ハルヒちゃん泣いてるの?」 ハルヒ「な、泣いてなんかっ、て誰よあんた!?」 長門「部室の蛍光灯を白熱灯にしてみた」 キョン「いいんじゃないか。部屋の雰囲気が落ち着いた気がするよ」 古泉「なんか…眠いよ…(つω-`)ゴシゴシ」 キョン「ハハハwまったく、イツキは子供だなぁw」 長門「子守り歌歌ってあげるね」 古泉「う…ん……zzZ」 長門「あら…必要なかったみたい」 キョン「そうみたいだn ハルヒ「歌なら私に任せて!!!」 キョン「!」 長門「!」 古泉「うわっ!なになに!?」 キョン「……チッ」 長門「……ちっ」 ハルヒ(あぁ…伝わる、ただの舌打ちなのに色んな感情が伝わってくるわっ! 主に『空気読めよ電波』みたいな刺々しい負の感情が……!!嬉しい、キョンが今だけは私を無視しないでいてくれてる!) 長門「涼宮アヒルの憂鬱」 ハルヒ「ガアガア、って誰がアヒルじゃい!」ビシィ キョン「おーッと、団長様のノリツッコミだッーーー!サイコーだぜウチの団長はよォッーーー!」 古泉「団長!団長!」 みくる「団長!団長!」 鶴屋さん「団長!団長!」 コンピ研部長「団長!団長!」 コンピ研ズ「団長!団長!」 長門「団長!団長!団長!!団長!!」 一同「団長!!!団長!!!たすけて団長ォーーー!!!!」 ♪~~♪~~♪~~♪~~←あの曲 ハルヒ「わ私が悪かったです!謝りますからどうか、テンションをお鎮め下さいィ~~」バッサバッサ 不思議探索当日。 ハルヒ「キョン遅いわよ罰金ね!」 ハルヒ「じゃあいくわよ、古泉君、有希!」 ハルヒ「午前は大した成果が無かったわね…午後こそ何か見つけること!」 ハルヒ「…今日も何も収穫無し、ね。じゃあ解散、また学校でね」 ハルヒ「………全員にボイコットされたからって一人芝居は寂しかったかな………」 「ハルヒ、好きだ。付き合ってくれ」 「ええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」 「なんだその驚きようは、失礼な」 「何言ってんのよ、あのね、あたしはね、あの、その、そう! つまり団内恋愛は禁止なのよ! わかった? わからなくてもだめー」 「ふふふ、そう言ってくれると思ったぜハルヒよ」 「? ?? ??? なに? なんなの??」 「というわけだ、谷口。俺の勝ちだな」 「ちぃっ、俺の告白も断らなかった涼宮がよりによってキョンの告白を断るとはな……しかたない、麻雀のツケはチャラにしてやる」 「古泉ばっかり相手にしてるとゲームの腕が落ちるんだよなー、ハルヒ、こんどはゲーム付き合ってくれよ」 「まさか、あんたたちあたしがキョンの告白を受け入れるかどうかで賭けしてたんじゃないでしょうね」 「おいキョン、ちょっとヤバイ雰囲気じゃねーか?」 「そうだな、逃げるぞ!」 「待ちなさいこのアホバカども~!!」 「あたしはただ、キョンに告白されたいなって思ってただけだったのにぃ……ぐすん」 長門「SOS団の団長は私。文句ある人は?」 ハルヒ「(´∀`)∩はいぃ~~」 キョン達「異議無し」 ハルヒ「(;´∀`)何でぇ~~?」 長門「新団長をよろしく」 キョン達「団長!団長!よろしく団長!」 ハルヒ「(;´∀`)さみしぃ~~」 キョン「あああああああ!!クッソ涼宮がっ!!ウッゼェェエエエんだよヴォケナスがあぁぁぁあ!!!!」 キョン「死ねっ!!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇええ!!!」 ハルヒ「(ヒッ!やだ、また犯されちゃう……でも、)」ビクビクッ ハルヒ「ちょっと…みんな、私を無視しないでよ……」 ハルヒ「……無視っていうか全員にボイコットされたんだけどね……部活……」 ハルヒ「ちょっと…キョン、私を無視しないでよ……」 キョン「………( ゚ ж ゚;)プルプルプル」 ハルヒ「キョン……どうして私を無視するのよぉ!」 キョン「………(((((; ゚ ж ゚ )))))ガタガタガタブガクルブルブル」 授業中にクラス一のブスの顔に髭が生えてるのを発見した時の俺のリアクション。 はるひ「みんな~次は何して遊ぶ?」 キョン「じゃあおままごとなんかどうだ?」 はるひ「いいよ~じゃあキョンくんが旦那さんで私が奥さん、いつきくんが子供でみくるちゃんはペットのポチ、有希ちゃんはタマだよ~」 古泉「なるほど、父との禁断の関係に溺れる息子の役ですね」 みくる「私はご主人様の忠実なメス犬です♪」 長門「了解、アパートの隣に済む旦那を狙う泥棒猫の役と認識」 幼子の前で何を言い出すんだこいつら はるひ「ちがうよ~へんな設定を付け足さないでよぉ」 ほら見たことか、わけが分からず泣いちゃったじゃないか 古泉「すみません軽いジョークですよ」 みくる「ごめんねはるひちゃん」 長門「謝罪する」 キョン「どうするはるひ?」 はるひ「えへへへじゃあ良いよ!みんなであそぼ」 古泉「(やはりこちらのはるひさんに着いて正解ですね)」 長門「(能力が同じならば観察しやすい方をとる)」 みくる「(しかしあちらのハルヒさんはどうします?)」 古泉「(最近能力自体が弱まっているのが観測されてるので、消滅は近いでしょう)」 長門「(ほっておくのが得策)」 みくる「(ですね)」 ハルヒ「何のつもりよ!!!早くここから出しなさいよ!!」 キョン「フン」 10日後 ハルヒ「いやぁぁぁ・・・・・はやくお家へ返してよぉぉぉ」 キョン「フヒヒヒヒ」 古泉「おい 俺にもやらせろよ」 みくる「あ、ずるい あたしが先!」
https://w.atwiki.jp/jinruisaikyou2/pages/105.html
【涼宮ハルヒ】 【作品名】ハルヒシリーズ 【ジャンル】アニメ 【名前】 涼宮ハルヒ 【属性】 世界の中心 【大きさ】人間並み 【攻撃力】一般的な体育会系女子高生並み&金属バット 【防御力】一般的な女子高生並み(体操着) 【素早さ】一般的な体育会系女子高生並み 【特殊能力】 新しい時空を生み出し、その時空に移動する。 次元断層の隙間に閉鎖空間を生み出す能力の延長線と思われる。 この新しい時空は最初の内は元の時空と繋がりが有るが、極めて入りにくい。 次元断層の隙間の閉鎖空間に入れる能力者が何人も(少なくとも7~8人)全力を振り絞り、 ようやく幻のような存在を一人送り込み、数分の伝言を届けられる程度。 長門有希も干渉を試みたが、新時空のパソコンに文字情報を送り数分間会話するのがやっとだった。 しばらくすると(長くて数時間)、本来の時空間との連結が完全に消滅し、 更にしばらくすると、本来の現実空間が閉鎖空間に変わってしまうらしい。 古泉曰く『世界の破滅』。 これによる勝ち、あるいは『優勢・封印勝ち』を狙う。 現実空間が閉鎖空間に変わるのに掛かる時間は作中の記述から推測して 長くてもせいぜい丸1日程度。現実空間側からは干渉できない。 世界から逃げられる奴なら別世界に退避してドローには持ち込めると思われる。 ……と、考えたいところだが 実際には世界は滅びていないので単なる時空生成能力である可能性がある。 【長所】 とりあえず運動能力は人並み以上。 【短所】たとえ目の前に宇宙人や未来人や異世界人や超能力者がいても気づかない可能性がある。 この能力で世界を破滅させた実績が無い。(能力を使った時点で逃亡負け) 【戦法】殴る 野球大会のやつで参戦 1スレ目 183. 格無しさん [sage] 2010/09/09(木) 22 01 53 ID gx8M74WS ミルドレッド・アヴァロン ×>仙水>カズマ:瞬殺負け ×>範馬勇次郎:早いし攻撃力高いのでボコボコ ○>朱鷺宮神依:対象時止めと上空移動+ビームがほぼ同時。ビーム負け ○>飴谷 千歳>雨霧 >二条レン=俺:先手ビーム勝ち 範馬勇次郎>ミルドレッド・アヴァロン>朱鷺宮神依 涼宮ハルヒ 運動神経が非常にいいため>鶴屋さん以上 涼宮ハルヒ>鶴屋さん>相模 正人 (金属バットの壁) .
https://w.atwiki.jp/niconamafx/pages/15.html
概要 CV 平野綾 本作のもう一人の主人公にしてメインヒロインという作品の中心人物。SOS団の団長。 世界を思い通りに歪めて空想を現実にする力を持っており、神に等しい存在。ただし本人には自覚はない(ただし無意識下では異変を感じ取っている。また彼女の深層意識は、キョン以外の3人の正体を知っている)。すなわち、彼女が世界の滅亡を本気で望むと本当に世界が滅亡してしまうため、周りにいる事情を知る者は彼女がそんなことを考えてしまわないよう、彼女の要求に素直に応じざるを得ないなど、気苦労が絶えない。 小学生の時は靴下を履かないで素足にスニーカーを履いて小学校へ通っていた。また中学生の時も私服の時は素足にスニーカーを履いていた。 みくると比べると霞んでしまうもののプロポーションも一般女子の平均を上回るようで、、作中でみくるを紹介した際にも「わたしよりでかいのよ!」と発言していたことから、バストサイズにはそこそこ自信があったと思われる。キョンからも「スレンダーだが、出るとこは出ている」と評されていた。アニメ版では実際紛うことなき巨乳として描かれている。『らき☆すた』第20話にゲスト出演した際には尋常じゃない勢いで乳揺れしまくっていた。 原作では黒目黒髪だが、アニメでは黒髪ながら茶色がかった色に変更されており、原作のイラストにもそれが反映されつつある。 性格 美少女(キョン曰く「えらく美人」)だが、その性格は唯我独尊・傍若無人・猪突猛進かつ極端な負けず嫌い。極端に言ってしまうなら傲慢かつ自己中心的。好奇心も非常に強く、思い立ったら即行動に移すタイプで、周囲の人間を振り回す。 「恋愛感情は一時の気の迷いで精神病の一種」と言う持論を持つが、その割にはキョンの過去の恋愛をやたらと気にしたり、キョンとみくるを何かと理由を付けてくっ付けない様にしている。何故かは……お察しください。 彼女を知る上で、次の2つの台詞は是非押さえておきたいところである。 「ただの人間には興味ありません。この中に、宇宙人・未来人・超能力者がいたら、あたしのところに来なさい、以上!」 「ないんだったら、作ればいいのよ!」 この二つの台詞は彼女の代名詞で、上はクラスでの自己紹介時、下は部活さがしでの台詞である。無限の好奇心と旺盛な行動力を的確に表しているといえ、特に「ただの人間には興味ありません~」は、アニメに詳しくない人でも知る人の多い、有名なものと言える。 ただし、前述の言動とは矛盾するようにも思えるが、ハルヒ自身は非常に自制心が強く、常識的な思考回路を持った人物でもある(そうでなければとっくに世界は崩壊している)。ハルヒが周囲を振り回すエキセントリックな言動を行う理由の根底には、彼女が小学六年生の時に痛感した「現実」が存在しており、そこから生まれる「憂鬱」を解消していくことが本作の真のテーマであるとも言える。 また、ハルヒも自身の能力と周囲で起きている事態を無意識に察知しているらしく、有事には団員を護る為の抑止力として自らの分身を生み出したこともある。 閉鎖空間 怒りや嫉妬などが原因でハルヒの精神状態が不安定になると発生する灰色の空間。発生する頻度や場所は一定ではなく、基本的には古泉ら「機関」の超能力者のみ空間の発生を察知し、内部に侵入することが出来る。 空間の内部は概ね現実世界と同じだが、全体的に薄暗く、生命体が存在しない。電気は一応通っているが、通信機器の類は使用不能(長門の能力でパソコン等を介して外部と連絡をとることは可能だが、僅かな時間しか続けられない)。 更に、ハルヒのストレスが溜まりすぎると、空間の内部に神人(しんじん)と呼ばれる青色の巨人が出現し、周囲の建物などを破壊し始める。この神人はハルヒのストレスが具現化したものと考えられており、破壊活動はストレス解消のためだとされている。神人の閉鎖空間内での破壊活動は現実世界には影響しないが、神人が現れた閉鎖空間は神人が存在する限り消滅せず、また閉鎖空間を放置すると範囲が拡大して最終的に現実世界と入れ替わってしまうらしい。 そのため、古泉たちは閉鎖空間の発生を未然に阻止するためにハルヒのストレスが溜まらないよう奔走しており、閉鎖空間が発生したら内部に入って神人を攻撃し、閉鎖空間ごと消滅させている。 なお、ハルヒと同じ力を持つ佐々木も閉鎖空間を発生させているが、ハルヒのものとはかなり異なっている。詳しくは彼女の項目を参照。 スピンオフ 涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 原作よりはっちゃけていて、たまに泉こなた化する。カチューシャが無くなるとポテンシャルが大幅にダウンする。原作者曰く、「こっちのハルヒの方が原作よりもハルヒらしい行動を取っている」とのこと。 にょろーんちゅるやさん 原作と違い、終始テンションが低く主役がちゅるやさんなのでSOS団のメンバーともほとんど絡まない。また無理だと思えばすぐに諦めるなど負けず嫌いな設定もない。・・・・するわよ~~。 長門有希ちゃんの消失 長編涼宮ハルヒの消失と同様に「光陽園学園」に通学している並行世界。世界を改変するような能力は有しておらず、性格も若干穏やかなので、原作とは多少印象が異なる。でも予想の斜め上を行く発言・行動はまったくもって変わっていない。 備考 pixivにおいては、涼宮ハルヒ本人以外しか描かれていないイラストにも、「涼宮ハルヒの憂鬱」タグではなく、このタグが付けられることがある。また、事実上全く本編とは関係のないスピンオフ作品集「ハルヒ性転換シリーズ」にまで、このタグが付けられることがある。こうなってしまうと1キャラクターとしての涼宮ハルヒのみを検索するには、なかなか労力を要する。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4389.html
「久しぶりにオセロでもやらないか?古泉」 古泉君がきちんと整列した真っ白い歯を輝かせ、微笑む。 「長門、この前貸してくれたあの本、思いの他面白くてさ。昨日の夜もつい遅くまで読み耽ってたぜ」 有希が膝の上に置かれた本を黙読することを中断し、ゆっくりと顔をあげる。 「いやあ、朝比奈さんの淹れたお茶は何時飲んでもおいしいなあ」 みくるちゃんがお盆を抱え、少し頬を赤らめた。 いつもと何ら変わりの無い放課後だった。 今日もこうして時間は過ぎ、日が暮れる頃にハードカバーの閉じる音がした。 下校の合図。これもごく日常的な習慣。 次々と席を立ち、帰り支度をした後に、 「それでは、皆さんお気をつけて」 まずは古泉君が、 「……また明日」 その次に有希が文芸部室を後にする。これもごく日常的な帰宅の流れだ。 「それじゃあ…着替えるから」 そしてみくるちゃんが、 「待っててくださいね、キョン君」 とはにかむ。 いつもと何ら変わりの無い放課後だった。 鮮明に刻まれた記憶。身体と車が接触する瞬間。 それはすれ違い様に肩と肩をぶつけることとまるで変わらない、ほんの一瞬の出来事。 その一瞬の間にあたしは、「嗚呼、スローモーションになんてならないじゃない」、そんなことを辛うじて考えていたような気がする。 命の終わりなど本当に呆気ない。 そうして、あたしは死んだ。今から丁度一ヶ月前の出来事だ。 けれどあの時、事故に遭ったのはあたしだけではなかった。 キョン。 一緒に事故に遭ったキョンは奇跡的に無傷だった。 あたしは死に、そしてアイツは生きている。 あたしという存在を無かったことにして。 ――涼宮ハルヒの忘却―― あたしは毎日、キョンが「あたしの存在など無かったかのように」過ごすのを傍観している。 事故の日から今日まで、誰一人あたしのことについて触れることは無かった。 不自然に置かれている団長席、教室の机。それについてすらも誰も疑念を抱かない。 忘れてしまっているのだ。キョンは勿論、みくるちゃんも有希も古泉君も、谷口も国木田も鶴屋さんも、終いには家族でさえもあたしのことを忘れている。 あたしの部屋はあたしが使用していたそのままで残っているにも関わらず、家には遺影も位牌も置かれていない。葬式だって行われた様子は無い。 あたしの生きた痕跡が残る中で、『存在が無かった』と自然に振舞っている姿は苦笑してしまうほどに不自然極まりなかった。 最初は何かの冗談だと思った。 元々あたしは死んでなんていなくて、皆があたしを忘れたフリをしているのだと。 でも事実あたしは死んでいた。何かに触れることは勿論地に足をつけることもできないし、誰に話しかけたところでそれが聴こえることは無い。 あたしはあの時事故で死んだ、それは紛れもない事実だ。 そして、あたしという存在が無かったとされているこの世界…これも事実、現実の出来事なのだ。 「……朝比奈さん、あの……」 「何?キョン君」 「あの、えっと手、繋いでもいいですか?」 「えっ、あ……えっと、どうぞ……」 「……」 「……」 「……」 「……キョン君?」 「はっ、はい?」 「ふふ……みくるでいいって、何度も言ってるじゃない」 「あ」 「それにその敬語もやめてよね」 「はい……じゃない、……わかったよ、みくる」 あたしは、手を繋いで下校する二人のすぐ後ろをつけていた。 距離にして5センチも無いだろう。時折歩くペースが乱れ身体が重なることもあるが、二人が気付くことは無い。あたしの身体はもう物理的接触を行えない。 あたしはただひたすらキョンの顔だけを見ていた。この男の頬が赤いのは夕日に照らされているせいなのか。 それとも。 『ねえキョン』 キョンは答えない。 「あさひ……みくる、明日って暇か?」 『何してんのよ』 キョンは答えない。 「そうか、よかった。どこか行かないか?」 『何忘れてんのよ』 キョンは答えない。 「映画か……そうだな、見たいものでもあるか?」 『アンタ、言ってたじゃない』 キョンは答えない。 「じゃあそれにしよう。……俺?俺は何だっていいんだ、みくると一緒なら」 『……キョン』 キョンは答えない。 「それじゃ、また明日な……」 無言で見つめあう二人。それを無言で傍観するあたし。 キョンとみくるの唇が重なると同時に、あたしの唇から自然と言葉が零れていく。 『アンタはあたしを裏切ったのよ』 軽く触れるようなキスを繰り返す二人。深くお互いを求め合う二人。 抱き合う二人。見つめ合う二人。幸せそうに微笑む二人。 次第に胸の奥底からふつふつと湧き上がる感情。 憎悪。 『……許さない』 あたしはキョンを憎んでいる。 あたしを忘れたキョンを憎んでいる。 あの言葉を忘れたキョンを憎んでいる。 ―――地獄の果てまで着いていくぜ、ハルヒ。 アンタだけが生きて幸せになるなんて、そんなの絶対に許さない。 ◇ ◇ ◇ 純愛映画デート。いかにもみくるちゃんが憧そうな王道プランだが、そんな反吐がでるようなベタな事をこの男が好むはずが無かった。 にも関わらずキョンは終始ニヤニヤと楽しそうにしていて、あたしは反吐が出そうだった。 実にくだらない。 使い古された展開ばかりのB級映画に金を払うなんて。 その程度の物で感動してしまうような安い女の涙を拭ってやるなんて。 あたしはこの間抜け面をぶん殴ってやりたい気持ちで一杯だった。 無論、それが可能なら今にも実行していたことだろう。 立ち寄った喫茶店でロイヤルミルクティーと鼻水を啜る女に、キョンはハンカチを差し出した。 「いい加減泣き止んでくれよ、みくる……」 「ふええっ、ぐすっぐすっ……ごめんなさぁああい……」 キョンは目の前のみくるちゃんを気遣いつつも、周囲に視線を配っては居心地悪そうに背筋を丸めていた。 店内の客の視線を一斉に浴びてしまうのも無理は無い。傍から見れば別れ話をしていると思うのが自然だ。 ようやくそれに気付いたみくるは、絞れる程に涙を含んだキョンのハンカチで目を懸命に擦る。 「おいおい、目が腫れるぞ」キョンは腕を伸ばしてみくるの手を掴んだ。 「うん…ぐすっ、もう平気…ごめんねキョン君…」 「謝るなって」 キョンは呆れたような声で盛大に溜め息を漏らしたが、行動とは裏腹に、愛おしそうに、大切そうにみくるちゃんを見つめていた。 嘲笑わずには居られない。 馬鹿馬鹿しいことこの上なかった。この男はみくるちゃんを愛してなんかいないし、大切に思っているわけでもないのに。 ただこの可憐でか弱い、男性の理想を具現化したような彼女を気遣う行為が気持ちいいだけ。守ってあげることで気分を良くしているだけ。 要は、自分に酔っているのだ。 自己満足。何て醜いのだろう。 この最低男。 「なあみくる……俺の家に寄って行かないか?今日は、その……親も妹も居ないし」 極めつけがこれだ。 ――この、最低男。 「えっ……キョン君の、家……?」 その言葉の意味を理解したみくるちゃんは顔を真っ赤にし俯いた。しかし拒否することはしない。それは肯定の合図だった。 「いい……のか?」 「うん……」 「そ、そうか……じゃあ……えっと……い、行こうか!」 喜びを隠せないのか、それとも照れているのか。キョンは慌しく席を立つと伝票を取った。 「あ、キョン君、私払います!」 「いいんだよ、俺に払わせてくれ」 「でも私、映画代もキョン君に払ってもらっちゃったし……」 申し訳なさそうにするみくるちゃんの頭を優しく撫でたキョンは、 「……癖なんだよな」 不思議そうに首を傾げながらそう言った。 何が癖よ。この馬鹿。 堪えきれなかった喘ぎ声と、二人分の荒い呼吸が湿った部屋に充満していた。 経験など微塵も無い。AVの類を見たことも、夜中に両親の真っ最中を目撃したことだってない。 そんなあたしが衝撃を受けるには、初めて同士のつたない行為でも充分すぎるほどだった。 苦痛に顔を歪めつつも、時々悦びの声をあげ上の男にしがみついていて。 欲望に思考を乗っ取られ、機械のように腰を振って女を打って。 なんて醜い行為なのだろうと思った。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。 それでもあたしは耳を塞ぐことも目を瞑ることもしなかった。 そうして一部始終を見届けてやったあたしは、行為を終えて余韻に浸る二人に吐き捨てた。 『……不潔よ』 「みくる」 「なあに?」 「幸せか?」 「……うん」 「そうか、よかった」 キョンはみくるちゃんの白く細い肩に優しく手を添えると、ゆっくり自分の胸に引き寄せた。 みくるちゃんは満足そうな吐息を漏らし、キョンの胸に耳を当て瞳を閉じている。 淀んだ空気の中、不意にキョンが呟いた。 「俺たち……何もおかしいことなんてしてないよな?」 酷く擦れた言葉だった。 「何……突然言い出すの?」 みくるちゃんは身体を起こそうとしているが、キョンの腕は彼女を離そうとしない。 そのままでキョンは続ける。 「これで……このままで居ていいんだよな?幸せに浸っている俺たち、何もおかしくなんてないんだよな?」 「どうしてそんなこと聞くの?」 みくるちゃんの声が不安に染まった。あたしも先程まで考えていたことなど忘れ、キョンの次の言葉を待つ。 「みくるは何もおかしいと思わないんだな?」 「えっ、うん……どうして?何がおかしいと思うの?」 「……いや……そうか、そうなんだよな」 キョンはみくるちゃんから離れると、気だるそうに上体を起こした。 「じゃあ、何でもないんだよな。きっと……」 「キョン君……?」 隣に居るみくるちゃんのことなど忘れてしまっているのか。キョンは独り言のようにポツリ、ポツリと呟く。 「これでいいんだよな?…………なぁ……」 宙を見つめるキョンに、あたしは届かぬ問いを投げかける。 『誰に話しかけてんのよ、アンタ』 キョンの瞳は、虚ろだった。 ◇ ◇ ◇ 翌日の文芸部室。 空席…つまりあたしの定位置だった団長席に腰掛けながら、いつも通りの放課後を眺めていた。 昨日のキョンの言葉で、あたしは確信した。 キョンはこの不自然さに気付き始めている。 この世界は不自然で、忘れている何か、見逃している何かがある。その何かがわからぬ自分に苛立ち、そして怯えているのだ。 ―――それが実に愉快だった。 昨日から笑いが止まらない。止められない。間抜け面が溜め息をつく度噴出しそうになるくらいだ。 全てを思い出した時、キョンの前に姿を現すことができるだろうか。……いや、この際出来なくったていい。 ただこの男がどん底に落ちてくれればいいのだ。 この男が絶望に襲われ、苦痛に顔を歪め泣き叫ぶ姿を見たいがために、今あたしはここに居る。 あたしを忘れ、無かったことにしたこの男に制裁を。 それだけがあたしの望みなのだ。 「なあ古泉」 「はい、何でしょう」 「何か違和感とか感じてないか?ここ最近」 「違和感……ですか?特に感じませんが、それはどういった違和感なのですか?」 「いや……それならそれでいいんだが、長門は?」 「……特に、何も」 「そうか。そうだよな……」 そう、それでいい。 キョン以外の人間があたしを思い出すことだけはあってはならない。 一番最初に思い出すのはキョン、アンタでなければならないのよ。 誰かに告げられた事実ではなく、アンタが自分の頭で思い出して一人苦悩するの。 それが最高のシナリオ。 下校時刻になる。 「それでは、皆さんお気をつけて」 「……また明日」 有希と古泉君が部室を後にし、文芸部室にはキョンとみくるちゃんの二人が残った。 二人っきり――といってもあたしが居るのだが――の空間で少し語らった後、「あ、もうこんな時間」とみくるちゃんが慌しく立ち上がる。 「それじゃキョン君、着替えるから外で待っててね」 「ああ」 返事をしつつも、キョンは立ち上がらない。 「えと、キョン君?」 キョンは答えずに、ポカンと口を開けた彼女を凝視している。 みくるちゃんは何かに気付いたかのようにハッとし、戸惑いながら、 「あの……昨日の今日で言うのもなんだけど……えっと、やっぱり学校だし、着替えくらいは……あの」 「……あ、いや、そういうつもりじゃないんだ、すまん……」 キョンはポリポリと頭を掻きながら立ち上がるが、やはりそこを動こうとはしない。みくるちゃんを見つめたまま立ち尽くしている。 「キョン君、やっぱり昨日から変よ……?」 「何があったの?」と心配そうに尋ねられると、キョンは意を決したかのように真面目な顔をし、 「…みくる、一つ聞いていいか?」 「えっ?」 「そのメイド服は……―――自分で用意したのか?」 あたしは、自然と口端が吊りあがるのを感じた。 「……ほえ?こ、この服のこと?」 みくるちゃんはスカートを摘み上げ自身が纏うメイド服を凝視した。 「……あれ……どうだったっけ……?えと」 「なあ、その服、自分で着たいと思ったのか?」 「えっと……ううん、そうじゃなかったような……あれ……?」 みくるちゃんは心底不思議そうに首を傾げた。 対して私は笑っていた。そう、そうよ。アンタは思い出さなくていい。 「みくるは、そのメイド服を毎日着るよう誰かに義務付けられた……なあ、違うか?」 キョンはみくるちゃんの両肩を押さえつける。 「おかしいだろ?俺やみくるだけじゃない、皆そのことを忘れてるんだ。なあ、これっておかしいと思わないか?」 「やっ……ちょっ、と」 「頼むから思い出してくれよ、みくる」 「わっ、ふっ、やめっ」 キョンはみくるちゃんの身体を激しく揺さぶりながら続ける。 「何のために毎日メイド服なんて着てるんだ?誰に言われて着るようになったんだ?なあ!」 「痛っ、痛いよ、キョン君っ……」 「なんで誰もおかしいと思わないんだ!なんで俺は思い出すことができないんだ!!俺は……俺は一体何を忘れてるんだ!?なあ、教えてくれよみくる!」 一層大きな声で怒鳴りつけると、キョンは我に返ったかのようにみくるちゃんから離れた。 「ひっ……ぐすっ……うっ……う、うっ……」 「あ……す、すまん、すまない……」 身体を震わせすすり泣くみくるちゃんにもう一度手を伸ばすも、それは弱弱しく払いのけられる。 みくるちゃんは先程の言葉とは裏腹に、泣きながらメイド装束を脱ぎ始めた。慌しく着替え終えると、乱暴に鞄を取り小走りで文芸部室を飛び出していった。 キョンはその背中を見届けた後、悪態を吐きながらパイプ椅子を思い切り蹴りつけた。 椅子と椅子が激突する音と、キョンの怒鳴り声が文芸部室に響き渡る。 『…キョン…』 その様子を傍観していたあたしは、無意識に間抜けなあだ名を呟いていた。 その声が聞こえたかのように、あたしの居る方に視線を向けるキョン。そのまま凄まじい形相でこちらに近づいてくる。 「何なんだよ!ここには誰が座っていたんだ!……俺は何で思い出せねえんだよっ!!」 キョンが机に拳を叩きつける。渇いた音と共に机が軋む。 「畜生!」 きっと10センチも無いだろう。その先に、キョンの顔があった。 こうして至近距離に居ても、キョンがあたしと目を合わすことは決して無い。 キョンが見ているのはあたしでは無く、この席に座っていた『誰か』なのだ。 こんなに近くに居るのに、キョンの荒い息はあたしにかからない。 こんなに近くに居るのに、キョンはあたしに気付かない。 こんなに近くに居るのに、キョンはあたしを思い出さない。 『……あたしはここに居るわ!キョン!!』 キョンは答えず、俯き、歯を食いしばるだけだった。 キョンが苦しんでいる姿。あたしは何よりもそれを望んでいたはず。 それなのに、どうしてかすごく気分が悪かった。 ◇ ◇ ◇ キョンが帰路についた後も、あたしは文芸部室に残った。 キョンが苦しみ、取り乱した姿が目に焼き付いて離れない。 今まで間抜けで能天気なアイツばかり見てきたのだから、アイツのあんな様子を見て動揺するのも無理は無い。 しかしあたしはこうなることを望んでいたはずだ。 今のあたしの心境は矛盾している。 どうして願いが叶ったにも関わらず、こんなにも不愉快なのだろう。 ならば、あたしはどうしたかったのだろうか。 『笑っちゃうわね。あたしは恨んでいるのよ、アイツを』 『アイツは地獄の果てまで着いて行くって誓ったのよ』 『それなのにアイツはあたしを忘れてみくるちゃんと……』 『許せるはずないじゃない』 『あんな奴苦しんで当然なのよ』 『アイツだけ幸せになるなんて……そんなの……』 あたしはアイツへの憎しみを確認するかのように独り言を呟いた。 それでもあたしの心が晴れることは無い。むしろ逆効果だった。 『あたしは…』 あたしはどうしたかったのだろう。どうなってほしかったのだろう。 何故? 今となっては思い出すこともできない。 あたしが何を望み、どうしてここに居るのか。 あたしは…何かを忘れている? そんな時だった。 もうとっくに下校時刻を過ぎた今、文芸部室のドアを開かれたのだ。 『キョン!?』 ドアを開いたのは他ならぬキョンだった。 キョンはひどく疲れていたようだった。げっそりとした顔に、腫れた赤い目。よろよろとパイプ椅子に腰をかけると、宙を見つめ呟いた。 「……思い出せないんだ……」 うわ言のように繰り返される言葉。 「忘れてしまったんだ……大切な、何かを」 『……どうして、思い出せないの?』 あたしはこの男の独り言に、無意識に返事をしていた。何となく、キョンが返答を求めていたような気がしたからだ。 当然返事は無い。キョンはそれから目を閉じたまま動かなかった。 再び訪れる沈黙。あたしはキョンの胸中を伺えず、諦めて部室の外へと視線を移した。 怪しく浮かぶ月には雲がかかり、この不自然な世界に灰色の光を降らしていた。 灰色の世界。二人きりの学校。 思い出されるのは、おかしな夢、交わしたキス―――…… ああ、 なんだ、そうか。 そうだったんだ。 『キョン……』 あたしはキョンの方へと向き直った。目を閉じている彼の頬を涙が伝っている。 キョンの頬へと手を伸ばし、それを拭おうとした。 触れられない。 もうキョンに触れることすらできない。 死んでしまったあたしには、キョンを哀しませることしかできないのだ。 『……忘れていたのは、あたしの方ね』 キョンがあたしを忘れたのは、他でもないあたしの願いだった。 彼を哀しませないためにあたしが望んでやったこと。 涼宮ハルヒという存在をを無かったことにしたのは、涼宮ハルヒ自身だったのだ。 どうしてこんな大事なことを忘れていたんだろう。 全てはキョンが好きだったから。 あたしは一番大切な気持ちを忘れてしまっていたのだ。 『……キョン』 もう触れられぬとわかっていても、あたしは何度も彼の頬を拭った。 『思い出さなくていい……もう苦しまなくていいのよ』 拭えぬ涙は止め処なく流れ続けていた。 それでもキョンは心なしか、頬を撫でられ擽ったそうにしているように見える。 キョンの体温が温度を持たぬこの手に伝わってくるような気さえしていた。 『好きよ、キョン』 もう涙すら流せないこの身体。 もう触れることすらできないこの身体。 もうキョンを哀しませることしかできない、あたしの存在。 『あたし……行くわ』 これで最後と、あたしはキョンの頬に手を添えるようにした。 そしてそっと唇を近づける。 灰色で、二人っきりの世界。 アンタはキスをして夢から覚める。 そして次に目を開けた時、アンタは完全にあたしを忘れる。 今度は痕跡も無くあたしは消えるわ。 だからもう苦しまなくていいのよ。 ごめんねキョン。 アンタは生きて……幸せになって。 好きよ。 好きよ。 大好きよ。 誰よりも愛してるわ。 だからあたしを忘れなさい。 あたしはアンタを忘れない。 アンタを好きなこの気持ちを二度と忘れない。 「……ハルヒ」 最後に、キョンのうわ言が聞こえたような気がした。 「勘違いしないでよ。あたしはアンタを彼氏にするつもりは無いわ!」 「な、なんだと?」 「その代わり、団員その1は永久名誉雑用係に昇進です!」 「……はあ?ハルヒお前、何言って……」 「だからアンタはずっと、一生、死ぬまであたしの傍に居なくちゃならないの。仕事だって今までの何倍も増えるわよっ!覚悟しなさい!」 「…………」 「……ちょっとキョン、聞いてるの?」 「ああ。地獄の果てまで着いていくぜ、ハルヒ」 終
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3475.html
プロローグ 地球上で人類を始めとする生物たちが生きていけるのは、様々な条件が偶然にも好都合に揃っているからで、そのうち何かが欠けても生きていけないのは、今更俺が言うまでもない常識以前の問題だ。 その条件の中でも最重要といえる位置にあるものの1つが太陽だろう。太陽がなければ気温も上がらず、地球はひたすら不毛の地でしかなかったと言うのは過言でも何でもない。 しかし、地球はそのありがたい太陽の周りをぐるぐる回りながら尚かつ自分でもぐるぐる回っており、しかも回る面に対し傾いて存在しているわけだからタチが悪い。 つまり、季節があり、昼夜があると言うことだ。極地は一定期間太陽の恩恵自体受けられなくなる。 12月──今の季節は冬。楕円形の公転軌道から言うと太陽に近くなっているにもかかわらず、太陽の恩恵が少ない季節だ。 まあ、こんな読み飛ばされることを前提とした誰でも知っている蘊蓄なんざどうでもいいことだが、 街がキリストの生誕に浮かれる季節の早朝6時過ぎという、太陽の登る直前──つまり最低気温が記録されるだろう時間に自転車を飛ばしている俺としては、文句の1つも言いたくなるわけだ。 寒い。夏が恋しいね。 すでに日課になってしまった早朝サイクリングも、まだ始めた頃は良かった。 俺たちの住んでいる街は、全国的に言ってもさほど寒い地域ではなく、したがって少々着込めば多少の寒さは凌げるわけだ。 しかしここ最近は頂けない。 着込んだダウンジャケット越しに冷たい空気が肌を刺す。 露出している顔はすでに痛み以外の感覚がなく、おそらく赤らんでいることは間違いない。 それでも、ここ2ヶ月続けている早朝サイクリングを止める気はない。 放課後、文芸部室に行くのが当たり前のように、毎朝俺はこの時間に自転車に乗って登校する。 別に運動部に入って朝練をやっている訳でもない。 では何故──と言われると困る。こんなに早く行く必要性は全くない。 強いて言えば、あいつが怒るからか。 そんなことを考えているうちに、第1中継点に到着した。 「キョン! おっはよ~~!!」 冬だと言うのに、笑顔とパワーは真夏なみの我らがSOS団団長、涼宮ハルヒが挨拶とともに出迎えた。 「朝早いんだからあんまり騒ぐな。近所迷惑だ」 「何よ。朝だからこそでしょ! 1日だって最初が肝心なんだから!」 相変わらずのテンションで言った後、アヒル口になって文句を言った。 「それより挨拶返しなさいよ」 ああ悪い。おはよう。 そう、俺はハルヒを迎えに行って、一緒に登校しているのだ。しかも朝早くから。 こんなことになるとは、数ヶ月前の俺なら全く思いもしていなかった。 世の中何が起こるかわからん、ということだけは身に染みていたにもかかわらず、だ。 というわけで、少しだけ回想してみよう。 ことの起こりは2ヶ月ほど前だった。 何のことはない。ハルヒが怪我をした、ということだ。 決して俺のせいではない。ハルヒが勝手に転んだだけだ。 俺は近くにはいたが、手の届くところではなかった。 それなのに、ハルヒは俺の責任と宣言したあげく、登下校の送迎を命令しやがった。 何故? Why? 結局ハルヒが俺に反論の余地をくれるはずもなく、俺はアホみたいにハルヒの足と化していた。 例によって遅刻は罰金だそうで、ハルヒに負けまいと早く行ったのが仇になり、未だにこんな早朝登校を続けている。 母親が弁当を作ってくれなくなったが、冷食と残り物を使うのを認めてくれたので、自分で冷食を放り込んだだけの弁当を用意している。 財布が厳しいからな。 ハルヒの顔は、10日ほどで治った。別に続ける必要もない。 なのに、俺は何の気の迷いかハルヒの傷が癒えてからも、続けていいかと聞いてしまったのだ。 せっかく早起きが身に付き始めたのに終わらせるのが勿体ない──というのは建前だ。 本音を言おう。 俺は結構楽しかった。 朝早くからハルヒを迎えに行き、一緒に登校して、部室で茶を飲みながらしゃべる。 ただそれだけなのに、楽しかった。 こんな時間がずっと続けばいい、本気でそう思った。 ハルヒはどうなんだ? そんな疑問もあったが、それは解消済みだ──と思う。 2週間か、もっと前か。いつもの早朝の部室で、ハルヒが突然お礼を言ってきた。 ハルヒに礼を言われるという珍しい体験をしたうえ、あろうことがハルヒは俺に ──キスしてきた。 礼、なんだそうだ。あくまでも。欧米かよ。 いや、嬉しかったさ。ハルヒが黙っていれば美少女とかそういうことじゃなくて、ハルヒ自身がキスしてくれたってこと自体が。 『お礼』じゃなければもっと嬉しかったんだけどな。 そう思った俺は例の閉鎖空間で行ったことをそのまましてやった。 セリフもそのままだ。そこ、笑うな。 恥ずかしい回想はこの辺にしておこう。 まあ、そういう訳で俺は今朝もハルヒとともに早朝の学校に向かっているわけだ。 付き合っている、という訳ではないと思う。 第一、俺たちはお互いの気持ちを口に出した訳ではない。──行動には出したが。 それに、あれから何かあったか?と聞かれると何もない。 いつも通りの俺たちであり、いつも通りのSOS団であった。 こんな中途半端な関係だが、今のところ俺はこのままでもいいと思っている。 ハルヒが側にいるしな。枯れてるとか言うなよ。 俺だって普通の男子高校生だ。そりゃいろんな欲求がないとは言わないさ。 でもな。相手はあのハルヒだぜ。急いては事をし損じるなんて生易しいもんじゃないだろ。 急いては世界が滅びる。誇張でもなんでもなくな。 今はまだゆっくりやればいい。俺は本気でそう思っていた。 結論からいうと、俺は間違っていた。 こんな悠長な思いで毎日を過ごしていたかと思うと腸が煮えくりかえるね。 これからの1週間がとても長く、あんなに苦しい物になるなんて、このときの俺は思ってもいなかった。 1.落下物 へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1083.html
第二章 俺の安らかな眠りを妨げる者は誰だ。 目覚まし時計が朝を告げる音を軽やかに鳴らす。 朝特有の倦怠感と思考の低下は、俺の1日の始まりである。 不機嫌な状態で居間へ下り、テレビを観てハッとする。 「8 45」 あれれー? 急いで洗顔を済ませ、歯を磨き、着替えて愛車にまたがる。今日は朝飯抜きだ。 「待て。」 「あ?」 振り返ると1人の男がいた。俺の全神経が集中する。この自嘲的な笑みが憎たらしい。 こいつはいつぞやの俺と朝比奈さんの邪魔をした未来人っぽい奴。 「生憎、俺は男に興味は無いのだが。」 「忠告しに来ただけだ。死にたくないなら、今日は行くな。」 「お前を信用出来ない。お前は俺の敵だろ。」 「知るか。俺の敵は朝比奈みくるだ。」 「朝比奈さんは、俺の見方だ。その敵は俺の敵でもある。」 「まあいいさ。規定事項で近日中にお前は死ぬことになっている。」 ますます嫌な事言うな。「俺はその規定事項を破る為に来た。 お前の存在が与える影響は大きい。お前は未来にとって必要な鍵だ。失うわけにはいかない。 信じる信じないはお前の勝手。俺は勝手に動く。」 そう言ってあいつは俺に背を向け、どこかへ消えた。 駅前に到着する頃には、当に9時を過ぎていた。 「あんた、遅れたら死刑だって知ってる?」 ニゲタイ。デモ、ニゲラレナイ。 目の前の鬼は、表面上は笑顔を取り繕っているが、体から放つオーラが半端じゃない。 「さぁ今日は沢山食べるわよ~♪」 あぁ、不況が続く。 古泉が小声で話し掛けてくる。顔が近い。 「長門さんに頼んで、今日はあなたと涼宮さんを離します。事態が収まるまで続けますよ。」 いつ終わるんだよ。一生はないよな。 「大丈夫。人の記憶は短いですよ。彼女も直ぐ忘るはずです。」 その後ハルヒは、飯まで食いやがった。俺の金で。 「いいじゃない。あんたも食べてるし、遅刻した罰よ。」 それは目覚ましの………もういい。悲しくなる。 さて、くじ引きの時だ。古泉によれば、長門の力で俺とハルヒを離すらしいが…… 「では、僕から。」 古泉はそう言いながらくじを引く。 「印付きです。」 「………」 無言で長門が引く 「印付き。」 そう言い終えると飲みかけのサイダーを音も無く吸い出す。 「次はあたしね♪」 ハルヒが引く 「印無しよ。」 「じゃあ、次は私が。」 朝比奈さんが引く。 くじを前に悩む顔が可愛らしい。何引いたって結果は同じさ。 「印付きです。」 朝比奈さんは柔和な顔で俺にくじを見せた。 とても和みmあれ? 今回はハルヒと一緒。確か俺はハルヒ以外と組むはずなのでは? 古泉を見ると口をあんぐりさせ、長門の方を見ている。 一方、長門はといえば無表情のままだが、どこか情緒不安定に……見えないな。 「さぁ!!行きましょう。」 太陽も引っ込むような笑顔で、ハルヒは俺の手を引っ張り、外へ出ようとする。 その姿はまるで、クリスマスイブにプレゼントを買って貰えるとはしゃぐ、子供のようだった。 俺は金が少ない。会計は古泉に任せてとんずらする事にしよう。 外へ出た俺とハルヒだが、特に行く所も無く、 「何処行くか?」 「ん~あんたの好きな所でいいわ。」 「じゃあ、ゲーセンでも行くか。」 ハルヒしばらく考えた後「いいとこ目つけたわね。そういう場所には宇宙人とかがいるのは定番だし。」 どこが定番なんだろうか。やけに上機嫌なハルヒはドカドカと道を歩み出した。 どうでも良いが、街のど真ん中で鼻歌は止めてくれ。一緒にいる俺まで恥ずかしい。 すると、急に俺の携帯が鳴りだす。古泉からのメールだった内容は… 『先ほどはよくも、逃げて頂きましたね。代償は大きいですよ。 ところで本題ですが、詳しい話は後ほどにでも 現在はお2人を後ろから監視してます。 何かあったら直ぐに駆けつけますので御安心を P.S 良いデートを。ただし、密室は避けること。』 なにが『良いデートを』だ。殴ってやりたいね。いや、殴ってやる。 まぁ密室は避けるべきだな。俺の命に関わってる事だし。 だいたいこんな事になったのもハルヒの妄想電波のせいであり…… 「何してるの?早くついてきなさいよ!」 やれやれ、死のカウントダウンが始まったようだ。 助けてくれ親愛なる仲間たちよ。 十分後、近くのゲーセンに着いた。ハルヒは真っ先に近くのゲームをし始める。 ふと、俺の携帯が呼び出しをしていることに気づく。 長門からだった。 「長門か?」 「トイレで待つ。」 俺は曖昧な返事をして電話を切り、トイレへ向かう。ハルヒに言う必要はない。 トイレの前に古泉はいた。嫌な予感がする。 にやけ面が口を開く。 「どうも。」 「説明してもらおうか。」 「それはですね…」 一呼吸おき、 「や ら n」 「古泉。お前が泣くまでッ殴るのを止めないッ。」 「何もそこまで……アッー!!」 トイレの中で古泉を張り付けにした後トイレの外で長門と朝比奈さんに会う。 「あれ?古泉くんは何処ですか…?」 今頃トイレでキリストになってますよ 「きりすと?」 首を傾げて朝比奈さんは言った。今更だが、朝比奈さんの知識は俺達とかなり異なるみたいだ。 だがしかし、未来人として、歴史を知るという事は重要ではないのか? これがゆとりの力だろう。 「簡単に言ったら救世主ですね。確か一度死んで復活したとかしないとか。」 「宗教的ですねぇ。」 宗教ですからね… 「説明する。」 キリストならもう俺が話したが? 「そちらの方をして欲しい?なら、説明する。 彼が何故救世主と崇められたのは、彼の弟子のユダの裏切りにより…」 「もう結構です。」 「……そう。」 「要点だけ言ってくれる?」 キリストの話じゃないぞ 「結論から言う。私の力が働かなかった。」 「どういう事だ?」 長門の力が働かない? 急進派の陰謀で俺を殺すためとか? 妨害電波の発生か? 四次元ポケットの故障か? 「どれも違う。これは涼宮ハルヒが求めたからである。彼女の力が私の力を上回っただけの事。」 ハルヒが望んだ? 「そうです。彼女がそう望んだのです。羨ましいですね。私もあなたと一緒にいt……ぎゃあ。」 古泉。てめぇ、いつ抜け出しやがった? 「あ、あああ朝比奈さんに助けて頂きました。」 「ふぇ…いけませんでしたか?」 そんな事御座いません。あなたの決定は俺にとって絶対ですからね。 「で、俺はどうすれば良い。」 「………特に無い。」 「ただし、付かず離れずを保って下さい。」 付かず離れず? 「涼宮さんの興味をあなたに引きすぎてもダメ、逆も同じです。」 どうして? 「つくづくあなたは鈍感ですね。本当は気づいているのでは?」 古泉の溜め息が響く。 「………のろま。」 長門まで何を。しかし、まっったく解らん。 「乙女心ですよっ。男のキョン君には、解らないんですね♪」 男の古泉が乙女心を知っているのが不思議なのだが。 朝比奈さん…そんなに嬉しそうに言わないで下さいよ。馬鹿って言われてる気分です。 「これ。」 長門は小型のチップを手渡した。 「発信機。見失っても安心。」 「では、これで。」 3人は俺に会釈(長門は一瞥)をして出て行った。 何故かは知らんが「のろま」という言葉だけ俺の耳に残る。 俺は亀ではない。 渋々ハルヒの所に戻る さて、ハルヒは何か景品を取ったらしく、 「これ、要らないからあんたに一個あげるわ。携帯にでもつけなさい」 俺はハルヒからツキノワグマのぶーさんのキーホルダーを貰った。 「変な趣味だな」 「う、うっさいわね。嫌なら返してよねっ。」 ハルヒから不機嫌オーラが出てくる。 ここは、受け取るべきだな。 「いや、有り難く頂きますよ団長さん。」 「そっ…それならいいのよ。初めから欲しいって言えこのバカ!!」 ハルヒは怒ったような、悲しいような、だけど嬉しそうな…とにかく、滅茶苦茶な表情をしていた。 本当、何が言いたいのかね。 「さぁ、次やるわよ!」 ハルヒはいつもの表情に戻るや否やクレーンゲームに興味を示した。 まぁその辺の詳しい事は割愛させて頂く。 ハルヒはまたぶーさん人形をゲットし、他のアーケードゲームに興味を示す。 勿論、俺も参加する。まぁ、その辺はどうでもいい。問題はその後だった。 とりあえず、長門達が見つかった。 ハルヒが「プリクラを撮るわよ!」とか言って中に入ろうとしたからだ。 普通、誰か居るの確認するだろ。 その後古泉が、「おや?奇遇ですね」などと抜かし、すたこらどっかに消えて行った。 「やっぱりね。」 何が「やっぱりね。」なんだ? 「今までずっとつけられてたのよ。気づかなかった?」 生憎、俺には気を探る能力や、どこぞの宇宙人が持つスカウターは持っていないからな。 「今までの全部見られてたのよ!!恥ずかしいったらありゃしない!!」 「おお、キョンと涼宮じゃないか。」 谷口がいた。変な奴に見つかったな。 「遂に2人でデートか?アツアツだねー。」 「な、何よ。冷やかしに来たの?」 ハルヒは頬を赤らめた。俺だって恥ずかしい。 「あら、その手に持っているの何?」 「あぁこれか。早急拾った………なぁ。」 「どうしたんだよ。」 谷口は俯きながら何か躊躇するような姿勢をとる。 「俺ら友達だよな。」 「は?当たり前だ。」 「涼宮は?」 「一応一緒のクラスだし、友達でもいいんじゃない?何なら下僕にしてあげてもいいのよ。」 ハルヒはニヤリと小悪魔みたいに微笑む。 「ハハハ…お前らしいや。ホント良かったよ。お前らが仲間で。」 「お前何言ってるんだ?悩み事ならh……!!?危ねぇ!!避けろハルヒ!!」 谷口の手が光る。あれはナイフだ。それがハルヒに向けられる。 「……え!?」 間に合え!! 俺はハルヒからぶーさん人形を引ったくり、ハルヒを突き飛ばす。 そしてそれを谷口へ向ける。 ナイフはぶーさん人形に突き刺さった。 「谷口ィィィ!!!てめぇ……よくもッ!!」 俺は吹っ切れた。渾身の力で谷口へ殴りかかる。 その手を誰かが止める。古泉がいた。 「いけません。」 止めるな。こいつはハルヒを……… 俺は必死に足掻く。 「彼を見て下さい。もう何も出来ません。」 谷口は自分の手を見て目を疑っていた。 「AWAWAWA……俺……何してんだ?何で……何でこんな事を………ゴメン………ゴメン。」 「落ち着いて下さい。さぁ、ここは人目につきます。外へ。」 横で呆然としていたハルヒを抱え、外へ出る。 その後ハルヒはぐったりとしていたが直ぐに眠りに落ちた。 古泉が誰かに電話をしている。どうせ機関の誰かだろう。 程なくして車が来る。森さんだった。 古泉は谷口を車に乗せる。 「わたしも行く。」 長門も車に乗り込み、車は発車する。 「何で警察じゃないんだ?」 谷口は立派な殺人未遂犯である。警察に突き出すのが当たり前だ。 「気付きません?」 「……ナイフ。」 朝比奈さんが感づいたように呟く。 「まさか谷口……」 その先は言えなかった。悲しすぎた。言うに耐えなかった。 「ええ、ご想像の通りでしょう。」 また車が来た。今度は新川さん。 「涼宮さんとどうぞ。家まで付き添ってあげて下さい。」 ハルヒを抱え、車に乗る。 「古泉。」 「何でしょうか。」 「お前の力凄いな。俺の本気が簡単に止められたのは初めてだ。」 「ふっ、知ってますか?オカマやゲイが強いのは定番なんですよ。」 不思議な名言を残し、古泉と朝比奈さんは手を振る。 「宜しいですかな?」 「お願いします。新川さん。」 車は発車する。 「キョン……」 起きたかハルヒ。 「うん……助けてくれてありがと。」 ハルヒはまだ朦朧としている。 「大丈夫だ。俺がついている。」 ハルヒは急に瞼を全開にして、赤くなる。 「そ、それって…」 「何たって俺はSOS団の雑用係だからな。」 ハルヒは機嫌を損ねたようで、俺のふくらはぎをつねる。 俺何か悪い事言った? 「目覚めたなら頭どけてくれるか?膝枕は意外に疲れるんだ。」 「……バカキョン。」 すると、俺の頬に生暖かい物体が触れた。 ミラーに写る新川さんがにやけていた。 「………お礼よ。」 「………そっか。」 あ、自転車忘れた。 第三章へ
https://w.atwiki.jp/kfrog6army6/pages/71.html
【名前】涼宮ハルヒ 【読み】すずみや はるひ 【出典】涼宮ハルヒの憂鬱 【種族】人間 【性別】女性 【声優】平野綾 【年齢】15歳 【外見】 【性格】 【口調】 一人称:私 二人称:呼び捨て、〜ちゃん 【主な能力】
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2449.html
「佐々木」 俺は言った。 「お前のしわざだったんだな」 これはあの佐々木だ。十八日以降の、SOS団(世界をおおいに見守るための佐々木の団)の団長としての、中学三年生から北高までずっと同じクラスの友人だったことになっている佐々木。 その佐々木はさらに驚いた顔をする。わけがわからないというような。 「なぜ、ここに、キョンが」 「お前こそ、なんだってここにいるのか自分で解ってんのか?」 「散歩だよ」 佐々木は微かな声を出した。目を大きく開けて俺を見つめる少女の顔で、その瞳が街灯の光を反射していた。それを見ながら俺は思う。 そうじゃない。そうじゃないんだよ、佐々木。 こいつは疲れていたのだ。ずっとずっと、俺への想いを封じ込め続けてきたことで、疲労が溜まっていたんだ。 長門が残してくれた緊急脱出プログラムで舞い戻った過去の長門の部屋で、長門は言った。 『涼宮ハルヒの時空改変能力を奪い取った彼女は、自己の望みを実現するために時空改変を行なった』 そして淡々と、 『なぜ彼女がそれを望んだかは、わたしには不明』 俺には解る。 あのときの長門には到底理解できないことだったろう。だが、今の長門なら少しは理解してくれるかもしれない。 ──それはな。感情ってヤツなんだよ。 橘京子は佐々木のことを完全に誤解してやがったな。 「佐々木さんは世界を作り替えたり、破壊しようなんて全然考えないのです」だと? そう考えて佐々木に『力』を移し変えた結果がこのざまだ。 誰だって、世界を自由にできる『力』があると自覚すれば、それを使ってみたくなるのは当然だろ? これは佐々木の望みだ。ずっと俺のそばに居続けて、そして俺に告白するようなそんな世界を、佐々木は望んだんだ。 俺の記憶だけを残して、それ以外を、自分を含めたすべてを変えてしまったのだ。 数日間俺を悩ませていた。この疑問の答えだって今なら自明だ。 ──なんでまた俺だけを元のままにしておいたのか? 答えは単純、こいつは告白に対してありのままの俺の答えが欲しかったんだろう。 すまないな、佐々木。 俺の答えはもう決まっている。 俺の居場所は、「世界をおおいに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」なんだ。「世界をおおいに見守るための佐々木の団」じゃないんだよ。 「佐々木」 俺は立ちすくむ佐々木に歩み寄った。佐々木は動かず、じっと俺を見上げている。 「何回言われても俺の答えは同じだ。元に戻してくれ。お前も元に戻ってくれ。お前の気持ちにずっと気づいてやれなかったことは本当にすまなかった。だけど、俺はお前の気持ちには答えてやれない。それでも、お前は俺の親友だ。それだけは変わらない。だから……」 佐々木の瞳が、脅えたような色を浮かべている。 「キョンくん……」 朝比奈さんが俺のシャツの裾を引いている。 「この佐々木さんには何を言ってもだめよ。だって、彼女はもう自分を作り変えているもの。この佐々木さんは、何の力もないただの……一人の、女の子だわ」 唐突に思い出す。 髪の長い佐々木。ポニーテール姿で、普段からは想像もつかないような俯いた表情で告白してきたあいつ。 佐々木を無邪気に持ち上げまくりの橘京子の笑顔。 本を読むことすらせずに窓際でただ座っている周防九曜の茫洋とした表情。 それらの様子にただひたすら皮肉をかまし続けていたあのいけ好かない野郎。 あいつらとはもう会えなくなる。正直、心残りが皆無なわけじゃないさ。だがこの世界はもともと偽りの存在だったのだ。さよならを言いそびれたのは残念だが、俺は俺のSOS団を取り戻す。決めた。 「すまん」 俺はピストル型装置を構えた。佐々木が身体を凍りつかせ、その反応にかなりの罪悪感を強いられる。しかしここに来て躊躇は無用だ。 「すぐに元に戻るはずだ。おまえが望むなら、クリパで一緒に鍋をつつこうぜ。冬の山荘にもみんなで一緒に行こう。今度はお前が名探偵をやってくれ。完璧な推理で事件を解決するスーパー名探偵ってのはどうだ、それが──、」 「キョンくん! 危な……! きゃあ!!」 朝比奈さんの叫びと同時に、俺の背中に誰かがぶつかってきた。どん、という衝撃が身体を揺らし、街灯の光を受けた俺の影も揺れた。その影に何者かの影が溶け合っている。何だ? 誰だ? 「佐々木さんを傷つけることは許しません」 首をねじって振り向いた。肩越しに女の白い顔が見えた。 橘京子。 「な……」 言葉が出なかった。脇腹に冷たい物が刺さっている。平べったい物が深々と体内に侵入している。やけに冷たい。激痛よりも違和感が勝る。なんだこれは。なんなんだ。なぜここに橘がいるんだ。 「ふふ」 笑うはずのない仮面が笑ったような微笑だった。 橘は滲むような動きで俺から離れ、俺の横腹に突き刺していた血まみれの長い刃物を引き抜いた。 それで支えを失い、俺は錐のように回転しながら地に倒れこんだ。 その俺の目の前で──佐々木が腰を抜かしたように尻餅をついていた。わななく唇が、 「橘……さん」 橘は俺の血が絡みつくアーミーナイフを挨拶するように振った。 「そうよ佐々木さん。わたしはちゃんとここにいます。あなたを脅かす物はわたしが排除します。そのためにわたしはここにいるんですから」 橘は嗤った。 「あなたがそう望んだから。そうでしょう?」 嘘だ。佐々木が望むはずはない。思い通りに鳴かない鳥はいっそ殺してしまえなんて思ったりしない。違う。俺への想いに狂ってしまった佐々木。その佐々木が改変した橘も異常なヤツになったんだ。こいつは佐々木の影役だ……。 橘は俺の上に薄い影を落とした。橘の頭上に欠けた月が見えて、すぐ翳った。 「トドメをさします。死ねばいいんです。あなたは佐々木さんを苦しめます。痛い? そうでしょうね。ゆっくり味わうといいでしょう。それがあなたの感じる人生で最後の感覚ですから」 振り上げられるゴツいナイフ。 (時系列切り替え) 朝比奈さんが走り出し、同時に長門自身も動き出した。夜風よりもすみやかに移動した長門は、一瞬後に橘の振り上げたナイフの刃をつかんでいる。橘が恐懼と憎悪のミックスボイスで叫ぶのを耳にしながら、俺も自分のもとへと向かった。 朝比奈さん(小)が泣きながら『俺』に取りすがっている。心配してくれているのは嬉しいが、そんなに揺すると早死にさせちまいますよ……。 目頭が熱くなることに、必死に『俺』に呼びかける彼女はすぐそばにいる女性に注意を払うことを忘れている。本当にありがとうと叫びたい。 「…………な……」 そう声を漏らしたのは記憶どおりの佐々木だった。心臓に微痛の走る姿だ。ポニーテールのそっちの佐々木は、尻餅をついて驚きにまみれた表情でいる。見開いた瞳が倒れ伏す『俺』から橘へ、そしてセーラー服へ移動し、最後に俺に向けられた。 「どうし……て……」 こっちの佐々木にかけるべき言葉を俺は持たない。俺がするべきこと、言うべきことは一つだった。 過去の長門が作ってくれた短針銃を拾い上げ、俺は自分を見下ろした。例のセリフを言うために俺は口を開き、記憶にある通りの言葉を投げかけた。これで合っていると思うが、だいたい似たようなセリフなら多少の違いは許容範囲だろう。 その『俺』はわずかに開いていた瞼を完全に閉じ、くたりと首を横に向けた。死んだかもしれんと思えるくらいの見事な気絶シーンだが、そろそろ止血しないとマジに死にそうだぜ。 さて、ここからは完全に俺たちの出番だ。これ以降に何が起こったのかは俺にもまだ未知なのである。 まず俺が目にしたのは、橘を止めてくれた長門の行動だ。 「…………」 長門のつかんだナイフが煌きながら砂と化す。飛び退こうとした橘だが、足が地に接着したように動かない。長門が小さな早口を述べた。 「そんな、なぜ……?」 凝然とした橘は最後まで疑問を口にしながら、やがてナイフにつられるように崩れ落ちた。眠らされたようだ。 ほぼ同時に。 「あ?……くう」 朝比奈さん(小)が『俺』に身体をつっぷすように前のめりになっている。柔らかく閉じられた目と薄く開いた唇はどう見ても寝顔であり、力の抜けた愛らしい上級生の首筋に朝比奈さんの(大)の手が軽く乗っていた。 長門が膝をついて屈み込み、ナイフでえぐられた『俺』の脇腹に手を添えた。そのおかげで間違いない。ともかく出血は収まり、『俺』の蒼白な顔が少しはまともに見えてくる。傷を治してこれたのはやはりこいつだったのか。 長門は停滞なく立ち上がると、血がついた指先をぬぐおうともせずに、手を差し出して言った。 「かして」 俺は黙って短針銃を持ち上げた。どうにも手持ちぶさたで困ってたんだ。いざとなると抵抗が勝る。どの佐々木にだってこんなもんを向けて撃ちたくはない。 淡々と銃を手にした長門は、座り込んで怯えた顔を維持しているポニーテールの佐々木へ銃口を突きつけ、あっさりと引き金を引いた。 何の音もせず、何かが発射された軌跡も見えなかったが、 「なっ……!」 佐々木は、驚愕の表情を浮かべて、そのまま固まってしまった。 「私は……なんてことを……」 その佐々木に向かって、長門は淡々と告げた。 「あなたが奪い取った時空改変能力は、涼宮ハルヒに返還した。これより、あなたが実行した世界改変をリセットする」 リセットされたら、今回のことに関する佐々木の記憶はすべて消えてるはずだ。 それが、俺と佐々木が親友であり続けるために必要なことなんだ。 (再び時系列切り替え) 白い天井が見える。自宅の俺の部屋ではない。朝か夕方か、透明感のあるオレンジ色の光が天井同様白い壁を彩っていた。 「おや」 徐々にはっきりしてくる頭に、その声は敬虔な信徒が聞く教会の鐘の音のように安らぎに満ちて聞こえた。 「やっとお目覚めですか。ずいぶん深い眠りだったようですね。お早うございますと言うべきでしょうか。夕方ですけど」 古泉一樹の、穏やかな微笑がそこにあった。 これが藤原だったら、俺は裸足で逃げ出していたに違いない。 古泉は、ここは「機関」関連の総合病院だといった。 このあと、古泉から聞いたところでは、俺は学校の階段から転げ落ちて気絶し、三日間も寝込んでいたことになっているらしい。 どうやらあの三日間の記憶が残っているのは、俺だけらしいな。まあ、その方が好都合だが。 「見舞いはお前だけか?」 ハルヒは、と言いかけてすんでのところで唇を止める。だが古泉はくすりと笑みを落とし、 「さっきから何をキョロキョロしているんです? 誰をお捜しでしょう。ご心配なく。僕たちは時間交代であなたを見舞うことにしているのです。あなたが目を開けたときに誰かが側にいるようにね」 古泉の視線が妙に気になった。エイプリルフールの嘘話をあっさり信じ込んだ友人を見て心で舌を出しているような、その目は何だ? 「いえ、あなたを羨ましく思っているだけです。羨望と言ってもいいでしょう」 この状況で言うセリフじゃないだろ。 「僕たち団員は交代制ですが、団長ともなると部下の身を案じるのも仕事のうちだそうでして。涼宮さんならずっとここにいます。三日前から、ずっとね。さらに、もう一人おりますよ。まったく羨ましい限りです」 指差された方角を俺は見た。古泉から俺のベッドを挟んで反対側。その床。 いた。 寝袋にくるまったハルヒが、口をへの字にして眠っていた。 そして、その隣の寝袋には、なぜか佐々木の寝顔もある。 「心配していたのですよ、涼宮さんも佐々木さんも。お二人の動揺ぶりと言ったら……いえ、これはまたの機会にお話ししましょう。とにかく今は、あなたが真っ先にしないといけないことがあるでしょう?」 「そうだな」 寝顔にイタズラ書き……ではない。それもまた、別の機会でいいだろう。これから何度だって来るさ、そんなチャンスはな。 俺は、二人同時に顔をつねってみた。 「「…………ぉが?」」 二人同時に呻き声をあげる。 しかし、次に叫んだのは一人だけだった。 「あ!?」 ハルヒは寝袋に入っていることを忘れていたらしい。パネ仕掛けのように起きあがろうとしてあえなく失敗、ごろんと横回転してシャクトリ虫のように蠢いていたがワタワタと這い出して、すっくと立ち上がるや否や、俺に人差し指を突きつけて叫んだ。 「キョンこらぁっ! 起きるなら起きるって言ってから起きなさいよ! こっちだってそれなりの準備があるんだからね!」 無茶言うな。だが、そんなお前の大声が現在の俺には何よりの薬だ。 「ハルヒ」 「何よっ」 「ヨダレを拭け」 唇と眉をぴくぴくさせながらハルヒは口元を慌ててぬぐい、そのまま顔をぺたぺたとなで回しながら俺を睨め付けた。 「ふむ、ところでいつまでつねったままなのかな? キョン」 ハルヒとは対照的に、振り払うどころかされるがままになっていた佐々木。 そのせいで俺の左手は佐々木の頬をつねりっぱなしになっていたのだ。 「ちょっといつまでやってんのよ!」 俺が手放すより前に、ハルヒの神速の腕によって俺の左手は振り払われた。 「おや残念」 おいおい、佐々木。何が残念だ。 ハルヒは、佐々木の発言に片眉をぴくぴくとさせていたが、やがてこう言い放った。 「佐々木さん。キョンも気が付いたし、今日はもういいわよ。後はあたしが付き添うから」 意外にも、佐々木が反論した。 「涼宮さんの方こそお疲れでしょう。後は私が付き添いますよ」 それから、二人は言い争いを始め出した。 俺としては、付き添いはいいから一人にして欲しいのだが。 そんな俺の意向は、完全に無視され、二人の言い争いは続いている。 おい、古泉。ニヤケてないで、仲裁してくれよ。 「僕の手には余りますね。三角関係に余計な首を突っ込んだら、被害を受けるのはこちらの方です」 何が三角関係だ。わけのわからないことをいうな。 「相変わらずですね、あなたは。さて、巻き添えを食らう前に、僕は失礼させていただきますよ」 おい待て。俺を見捨てる気か!? 「では、ごゆっくり」 これでも、お前は親友だと思ってたのに、なんて薄情な奴だ! 残されたのは、対照的な口調で言い争う二人の女子生徒と、俺……。 その後、この病室で何があったかは語りたくもない。 まったく、やれやれだ。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1809.html
「おい、ハルヒ」 その時、いきなりキョンに声を掛けられて、あたしは背中をぴきぴきっと引きつらせてしまった。な、ななな、何よ!? あんたまさか、ヘンな勘違いしてるんじゃないでしょうね! あ、あたしは別にそんなつもりで、こんな所にあんたを連れてきたわけじゃ…。 「実は今、朝見たテレビの占いコーナーを思い出したんだけどな。今日の風水じゃ、こっちの方角は俺にとって猛烈に運勢が悪いらしいんだ、これが」 「え、そ、そうなの?」 「できれば別方向に探索に行きたいんだが。ダメか?」 「そういう事なら、し、仕方ないわね。じゃあ…」 表面上は不服そうな顔をしてたけど、本音を言えばキョンの言葉は渡りに船で、あたしはそそくさとこの場を離れ―― ――ようとして、はた、と疑問の壁にぶち当たった。ちょっと。ちょっと待ちなさいよ、キョン。あんた、今朝はあんなやつれた顔で遅刻してきたんじゃない。朝の占いなんか見てる余裕あったわけ? そもそも、あんたってば占いとかそういう類は否定はしないけど肯定もしないってタイプだったでしょうが。まさか、あんた…。 気が付けば、あたしは奥歯を軋むくらいに噛みしめていた。くやしい、くやしいくやしい! 今は、あたしがキョンの事を気遣ってやらなきゃならないはずなのに…! それなのに、どうしてあたしがキョンに気遣われてるのよ!? 北高に入学したばかりの頃、つまらないつまらないと窓の外ばかり眺めてたあたしに、キョンは何やかやと話しかけてくれた。頬杖をついてふてくされた表情のままだったけど、あたしは内心、それがとても嬉しかった。 だから、だから今日は、あたしの番だと思ったのに…あたしはすごく張り切ってたのに! 実際にはあたしには何の手立ても無くて、逆にキョンに気遣われてる。あたしの尊厳を傷つけないように、自分の都合を押し付けるようなフリまでしちゃって…なに格好つけてるのよ、キョンのくせに! 後になって冷静に思い返すなら、あの時のあたしは、ちょっと普通じゃなかったと思う。小さな子供が親の前で格好良い所を見せようと背伸びするように、ただひたすら、キョンに自分の優位性を誇示したかったのだ。あいつの優しさに甘えてばかりの自分に我慢がならなかったのだ、と思う。 あとまあ本当に本音の事を言えば、この状況で「逃げ」を選択したキョンに、“女”として依怙地になっていたのかもしれない、けど。 ともかく、あたしが求めたのはキョンに対する逆襲手段であり…現在のこの状況、そして今朝からの出来事を鑑みた結果、あたしの頭の中で、ぺかっと何かが閃いたのだった。 そのアイデアに手段、結果推測などがパズルのようにカチカチとはまっていき、たちまちひとつの仮法案になる。あたしの脳内では『涼宮ハルヒ百人委員会』が召集されて、すぐさま“それ”が提議された。 議事堂の半円状の議席にずらりと居並ぶ、スーツ姿のあたし達。その中で、立ち上がったあたしAが腕を振り、口から泡を飛ばす。 「本当に“これ”を採択して良いのですか? あとで後悔する事にはなりませんか!?」 「正直、その可能性は否定できません。ですがもしも採択しなければ、それはそれで後悔する事になるかとわたしは思います!」 あたしAの質疑に、敢然と答えるあたしB。周囲の大多数のあたしの中からは、やんややんやと歓声と拍手。一部では天を仰ぎ失望の息を洩らすあたしや、口をアヒルみたいにしてケッとか呟いてるあたしも。 「静粛に! それではこれより決議に移ります。賛成の方は挙手を」 議長服のあたしがコンコン!と木槌を叩き、採決が始まる。その結果、賛成87票、反対5票、棄権8票で、“それ”は可決されたのだった。 「うん、決めた!」 満足できる結論に達して、あたしは大きく頷いた。自問自答の時間は、正味1分も無かったかもしれない。 ともかく、一度こうと決めたらただちにスタートするのが涼宮ハルヒ流だ。くるりと踵を返したあたしは、キョンの奴が 「ハルヒ? どうかしたのか?」 と小首を傾げた、そのシャツの胸倉を引っ掴んで、真正面からあいつを見据えてやった。制服のブレザーだったら、ネクタイを捻り上げている所ね。 「いい、キョン? 自分じゃ気付いてないんでしょうけど、あんたは今、ちょっとした心のビョーキなの。分かる?」 「はぁ? 何をいきな」 「黙って聞きなさい! だからこれから、あたしがあんたを治療してあげるって言ってんの! いい? 分かったら四の五の言うんじゃないわよ!」 「お、おい待てハルヒ、そこは…」 四の五の言うなと釘を刺したにも関わらず、ゴニョゴニョ言いかけるキョンの呟きを全く無視して、あたしは標的と定めた建物に突撃した。ほとんど拉致みたいな形だけど、仕方がない。正直、あたしは顔から火が出そうでとてもじっとしてはいられなかったし、それに、ありえないと思いつつも万が一、億が一、キョンに拒否られたらとか思ったら、その…。 えーいもう、仕方がなかったって言ってるでしょ!? キョンの奴には主体性って物がまるで無いんだし! あいつの方からあたしをリードできるだけの甲斐性があれば、あたしだってこんな強硬手段を採ったりはしないのよ、うん! そういうワケで仕方なく、キョンを引っさげたあたしは道場破りみたいな面持ちと勢いで、その建物に乗り込んだのだった。通りには他に何組かカップルがいたけど、こういう時に人目を気にしたら負けよね。じゃあなんでお前の耳や頬はこんなにも火照ってるのかって、そんな事はいちいち訊くもんじゃないわ。 結局の所、そこはあたしがこの界隈に来て最初に看板を発見した白い建物で。外壁に提げられたその看板には、 【デイタイムサービス ご休憩3時間 3200円】 といった記述がなされていたのだった。 「ふうん…これがラブホって所なんだ…」 ちょっとした感慨を込めて、あたしは呟いた。てっきりピンク色の照明なんかがギラギラ光ったりしてるのかと思ってたら、何というか普通のホテルにカラオケボックスを合体させたような感じだ。部屋の広さに比べるとベッドが結構大きくって、あとティッシュやら何やらが脇に置いてあるのが、なんだか生々しい。 「…正確にはファッションホテルだかブティックホテルだかと呼ぶべきらしいぞ」 あたしの手で部屋に放り込まれたキョンが、カーペットに膝をついた格好でげほげほ咳き込みながらそんな事を言う。まったく、役にも立たない知識だけは豊富な奴ね。 などと思ってたら、キョンの奴は下から、じろりといった感じであたしを見上げた。 「やれやれ。俺もいいかげん、団長様の行動の突飛さにも慣れてきたかと思ってたんだが。とんだ思い過ごしだったみたいだぜ。 なんだ? まさか今日の不思議パトロールは女体の神秘を探検よ!とか言うんじゃないだろうな」 困惑ぎみのキョンの表情に、あたしは少しだけ、胸がスッとするのを覚えた。もっともっと、キョンの奴を困らせてやりた…あ、いや、違う違う。今日ばかりはあたしの都合は二の次なんだったわ。 決意も新たに、あたしは両の拳を腰に当てて前に身を屈め、キョンの顔を上から覗き込んでやった。どうにかして、こいつを励ましてあげなけりゃね! 「もし『そのまさかよ!』って言ったら、あんたはどうするわけ」 「なんだって?」 「本当の事を言うと、あたし、前々からあんたの恩着せがましい所にちょっとムカついてたのよね。あたしが何か命令するたびにさ、あんた、諦め顔で『あーもー好きなようにしてくれ』とか言うじゃない。あたし、アレがいっつも気に喰わなかったのよ。 えーと、だから、その…今日はその意趣返しっていうか」 少し言葉を詰まらせながら、あたしはそう喋っていた。う~む、論理展開に若干のムリがあるかも? いやいや、ここは強気で押し通すべきよ。 「つまり! 今は、この場所でだけはいつもの逆で…あたしの事をあんたの好きなようにさせてやろう、って話なのよ。分かった!?」 そう言い切るとあたしはベッドに歩み寄って、キョンに相対するように、ぽすんと腰を下ろした。ミニスカートから伸びる足を組んで、腕組みをして…キョンをまっすぐ見るのはさすがに気恥ずかしいので、フンと顔を横に向ける。 「あんたが、女の子の秘密を知りたいって言うんなら…別に構わないって、あたしはそう言ってるのよ…」 ともかく伝えるだけの事は伝えたので、あたしはそっぽを向いたまま、キョンの出方を待っていた。 ううう、なんともこうムズ痒い気分だわ! 普段のあたしは 「キョン! そこの荷物持ってついてらっしゃい!」 「キョン! ここはあんたのオゴリだからね!」 とか命令形で話してるものだから、こういう雰囲気はどうも落ち着かない。だからって、まさか 「キョン! あたしにエッチな事してスッキリしなさい!」 なんて言えるはずも無いし。 う~、でもあたしが憂鬱だった時にキョンが話しかけてきてくれたように、あたしもキョンの奴を刺激してやる事には成功したはずだわ。ちょっと方法が過激だったかもしんないけど。でもこういうのって、いつかは誰かと経験する事で――。じゃあ、その最初の相手がキョンでも別に悪くはないかなって、あたしは思ったの。少なくとも今の所は、他の誰かとする事なんて想像できないし。 ついひねくれた物言いになっちゃったけど、さっきのセリフだって、決してウソじゃない。いつもはこき使うばっかりで、「お疲れさま」とか面と向かって言う事もなかなか出来ないから…だから今日くらい、こういう形でキョンの労をねぎらってあげたって、バチは当たらないわよ、ね? とにかく、あたしは賽を投げつけてやったわ! あんたはどう出るのよ、キョン!? …と、振ってはみたものの。正直あたしの予想では、キョンが手を出してくる可能性は30%って所かな。「もっと自分を大事にしろ」だとか、当たり障りのない逃げ口上を使ってくるのが一番確率が高い。仕方ないわね。なにしろ、キョンだし。 まあ、あたしとしては別にどっちでも構わないのよ。キョンの奴に、あたしを抱こうとするだけの覚悟があるんなら、それは嬉しい誤算だし。必死になってどうにかあたしを説得しようとするんなら、それはいつも通りのあたしとあいつの関係に戻る、っていう事だもの。 どっちにせよ、あたしがあんたの事を気に掛けてる、その気持ちだけは伝わるはずだとあたしは思っていた。だから、悪いように事が転がったりするはずがないとあたしは信じていた。でも実際には――キョンの反応は、あたしが想像し得なかったものだったのだ。 「…なあ、ハルヒ。『好奇心、猫をも殺す』って言葉、知ってるか?」 「えっ?」 「今のお前のためにあるような、外国のことわざだよ」 むくり、と身を起こしたキョンは、そうしてゆっくりあたしの方へ歩み寄ってくる。部屋の照明は薄暗くて、その表情はハッキリとは見て取れなかったけど、ただなんとなくキョンの体の周りに、うすどんよりとした空気が漂っている、ような気がした。 「キョ、キョン?」 あたしの呼びかけにも応じず、キョンは黙ったままこちらに向かって片手を差し出してきた。あたしの左頬に、キョンの右の手の平が添えられる。 いつものあたしだったら、ここはドキドキしまくりな場面だろう。心臓の鼓動をなだめるのに必死なはずだ。でも今は何か、何かが違う。ちっとも心がときめかない。どうしちゃったの、キョン? 今のあんた、何か、こわいよ…? 「先に謝っとくぞ、ハルヒ。すまん」 少し右手を引きながら、キョンがそう呟く。それからすぐに、ぱしん、という乾いた音があたしの顔のすぐ傍で起こった。 頬をはたかれたのだ、という事を理解するのに、あたしの脳は、それから数十秒の時間を要した。 痛くはない。多分、トランプやら何やらの罰ゲームでしっぺやウメボシを喰らった方が痛い。ただ、キョンに叩かれた、という事実に頭の中が真っ白になってしまっているあたしに向かって、キョンはうめくような声を絞り出していた。 「でもな? 俺にだって許しがたい事ってのはあるんだよ。いいか、これだけは言っとくぞ。俺は間違っても、お前の身体が目当てでSOS団の活動に参加してたわけじゃない!」 あたしはただ、唖然としていた。あたしを睨み据えるキョンの瞳には、確かに憎しみと哀しみの色が入り混じっていた。 「ご褒美に身体を自由にさせてやるだと? 馬の目の前にニンジンでもぶら下げたつもりかよ。そうすれば男なんか、みんな大喜びだとか思ってたのかよ!? 俺も、そんな野郎の一人だと思ってたのかよ――。ふざけんな、人を馬鹿にするのも大概にしろ!!」 いつの間にか、キョンの感情のボルテージは急上昇していた。その怒声が、あたし達のかりそめの宿の中いっぱいに響き渡る。 その後、急速に静寂が訪れて…あたしの耳には備え付けの冷蔵庫の低いブーンという駆動音だけが、ただ虚ろに届いていた。 どうして――どうしてこんな事になってしまったのか。 キョンに頬をはたかれたショックに引きずられながら、それでもあたしは、ひたすらに考え続けていた。 躁鬱病だか何だか知らないが、たかだか心の病気くらいで女の子に手を上げるような、キョンは決してそんな人間では無い。何か、何か理由があるはずなのだ。こいつがここまで激昂するワケが。その証拠に、あたしを見下ろしているキョンの表情は、ひどく悲しく、悔しそうに見える。まるで自分の尊厳を、根こそぎ踏みにじられたような…。 そこまで考えた時、あたしはさっきのキョンのセリフをもう一度思い返してみた。キョンの立場になって、もう一度その意味を考え直して――そして、やっと自分のあやまちに気が付いた。 ああ。ああ、そうか。そうだったんだ。キョンの奴は…口ではなんだかんだ言いながら、こいつはこいつなりに、SOS団の活動に誇りを抱いていたんだ…。 そうよ、あたし自身が何度もキョンに言ってたんじゃない。この不思議探索はデートじゃないのよ、真面目にやんなさい!って。 キョンの奴が大した成果を上げた事はなかったけど、それでもちゃんとSOS団の一員としての自覚は持ってたんだ。こいつはその誇りを、胸に秘めていたんだ。 なのに団長たるこのあたし自らが、午後のパトロール任務を放り出して相方をラブホに連れ込むようなマネをしたら、それは「ひどい冒涜」だと受け取られても、仕方がなかったかもしれない。ごめんね、キョン。あたしにも反省すべき点はあったわ。でも、でもね? すっくとベッドから立ち上がったあたしは、真正面から、毅然とキョンを睨み返してやった。 「『ふざけるな』ですって? 『馬鹿にするな』ですって――? それはこっちのセリフよ、キョン!!」 啖呵と共に、左手でキョンの右腕を掴み、右手をキョンの左脇の下に差し込む。そのままくるりと回転して、あいつの体を腰の上に担いだあたしは、渾身の力でキョンを前方に投げ飛ばしてやったのだった。 女子柔道部に仮入部した際に憶えた技だ。確か『大腰』だっけ? まあ技の名前なんてどうでもいいけど。とにかく、ごろんごろんと面白いくらいの勢いで投げられ、転がっていったキョンは、部屋の出入り口扉の横の壁にぶつかって、ようやく止まった。 一瞬の事で何が起きたのかまだ分かっていないのか、尻餅をついた格好で茫然自失といった顔をしてる。ふふん、いい表情ね。 「人を馬鹿にしてるのは、キョン、あんたの方でしょうが!」 「…なんだって?」 「あたしは、涼宮ハルヒはね! 明日後悔しないように、今を生きてるの! こうしたら得するだろう、こうしたら損するだろうとかじゃなくて、いま自分がどうしたいかを第一に、ひたすら前進してるの! その決断の早さに凡人のあんたがついてこられなくて、戸惑わせちゃった事は一応謝っとくわ。だけど、だけどね!」 心の中の憤りを包み隠さず、あたしはキョンの奴を大喝してやった。 「『好奇心、猫をも殺す』ですって――? そっちこそふざけないでよ! あたしが本当に、ただの好奇心であんたをホテルにまで連れ込んだと思ってんの!? 見損なうな、このバカっ!!」 さっき、キョンは『俺にも許しがたい事はある』と言った。なら、あたしの許しがたい事はまさにこれだわ。キョンの奴が、あたしの決意と覚悟をまるでないがしろにしてるって事よ! 「確かにね!? あんたとここに入って、そーゆー事しようってのは、ついさっき思いついたわよ! 後先考えてないって言われたら、否定できない部分はあるわよ! でもね! あたしだってちゃんと考えたのよ! あんたとそーゆー関係になっちゃってもいいのかって! 初めての相手が本当にあんたでいいのかって…。百万回も! それ以上も! 頭の回路がぐるぐるぐるぐる回って、しまいにはバターになるんじゃないかってくらい真剣に考え詰めたのよ! その上で、あたしはあんたと今、ここに居るのに…それなのにッ!」 さっきのお返しとばかりに、あたしは出来うる限りの鬼の形相で、キョンの奴を見下ろしてやった。もうこうなったら徹底的に糾弾よ糾弾、アストロ糾弾よ! 「あたしだって、こんな事するのはすごく恥ずかしかったのよ! でも、ちょっとしたショック療法っていうか――つまんない悩み事なんて忘れちゃうくらいの刺激を与えたら、あんたが少しは元気を取り戻すんじゃないかと思って…。他にあんたを元気づけてあげられる手段を思いつけなくって、それに、それにそもそもは、あんたがあんな事を…言ったから、だから――」 あれ? おかしいな? キョンの奴を、これでもかってくらい締め上げてやるはずだったのに。気が付くとあたしの言葉は途切れ途切れに、言ってる内容もなんだか支離滅裂になっていた。 そして、頬の上をはらはらと伝わっていく冷たい物…。これは…悔し涙? ちょっと、ダメよ! 何やってんのよ、あたし!? ここは団長としての威厳を見せつけて、キョンの誤解をねじ伏せてやるべき場面でしょ! 何を普通の女の子みたいに泣き崩れそうになってんの!? しゃんとしなさい、しゃんと! ああ、でも無理だ。元々あたしは、感情をセーブするというのが苦手なのだ。ダムが決壊したみたいに、溢れはじめた想いはもう、止められなかった。 「だからあたしは、思い切って一歩踏み出したのに! それをあんたは…男なら誰でもみたいな…言い方をして…。 あんたはただの下っ端だけど…栄えあるSOS団の、団員第1号なのに…。あたしの最初の仲間だったのに…そのあんたに、そんな…風に、思わ…てた、なんて…」 心のどこかで、あたしは、自分が勇気を出したらキョンはきっと応えてくれると信じていた。そう期待していたのだ。でも、その期待はあっけなく裏切られてしまったから、だから――。 「もう…知らない。知らないわよ、あんたの事なんて! このバカ! バカキョン! あんたなんか、一生ぐじぐじ腐ってればいいのよ!」 自分があんまりみじめで、この場にはどうしても居たたまれなくて。あたしは小走りに駆け出した。キョンの横の扉を通り抜けて、表へ飛び出した。 ううん、違う――そうしようとしたのだ、だけど。 ドアノブを回そうとしたあたしの手に、あいつの手が重なっていた。消え入りそうな微かな声で、でも確かに、あいつはこう言った。 「悪い…。すまなかった、ハルヒ…」 次のページへ