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1年10ヶ月目>>438-439から抜粋。 438 名前:名無し募集中。。。:2009/05/02(土) 22 15 32.71 O 439 名前:名無し募集中。。。:2009/05/02(土) 22 17 23.64 O 風呂から上がったら高橋が縁側に座り空を見上げていたので俺も隣に座った。 「どうした高橋、なんかあったか?」 「なんでも…ないやよ。」 「なんでもない奴がそんな顔で空見ないって。な?言ってみ。」 空を見つめていた高橋は目線を下げる。 「…自分の居場所が見つからんやよ。」 「影が薄いとかそういうのか?そんなの気にすんなって。」 「でもあーしがいなくてもこの家は生活できるんやない? 家事のガキさん、ぽけぽけの絵里、食いしん坊のさゆ、か弱いれいな、 元気な小春、黒い愛佳、ちょっと乱暴なジュンジュン、いつも笑顔のリンリン…みんな凄いやよ。」 「改めて並べると本当に凄いヤツらだな…」 「じゃああーしは何なの?家事もイマイチやし、ウマくボケれんし、いっぱいも食べれん。」 「それは難しい話だな…」 「そうやろ?だから困ってるんやよ…みんなみたいに個性が欲しい。」 目がうるむ高橋。 「よし、じゃあ別の見かたをするか。お前リーダーになる時なんていった?」 「…アットホームなモーニング娘。にするって。」 「今のモーニング娘。はアットホームか?」 「…うん。」 「ならお前の目標は叶ってるわけだ。で、それは置いといて。 もしお前がアイツらをかき消すくらいのトンでもないキャラに突然なったらどうなる? 目立てるかもしれないけど、関係がグチャグチャになってアットホームじゃ無くなるかもしれないよな?」 「うん…。」 「だから高橋は一見個性がないように見えるけど、実は今の丁度いいバランスを保つために 必要不可欠なメンバーってわけだ。お前が変なキャラになったらみんなが困るんだよ。」 「…そうやろか?」 「もちろん。365日一緒に暮らしてる俺が言うんだ。間違いないさ。」 「…そうやね。」 高橋の涙が頬を伝ったのを横目で見た俺は自然と高橋の頭をクシャクシャと撫でていた。 「そういえばお前、泣き虫だったなw」 「う、うるさいやよっ!」 名前
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1 :どうですか解説の名無しさん:2008/10/28(火) 11 25 04.07 ID gDAz6fIt (広島に)切り替えていく 2 :どうですか解説の名無しさん:2008/10/28(火) 11 26 50.25 ID 2YZ8dGrp 二岡、教室の隅でお弁当を食べる 4 :どうですか解説の名無しさん:2008/10/28(火) 11 46 32.20 ID UZ1AIkEX . 1 だが断る 5 :どうですか解説の名無しさん:2008/10/28(火) 11 49 35.86 ID kEFOW6yF 横浜行って仁志と二遊間くんじゃいなYO 6 :どうですか解説の名無しさん:2008/10/28(火) 11 49 41.15 ID +H8Re06k 残念だが当然男らしい最後といえる 7 :どうですか解説の名無しさん:2008/10/28(火) 12 03 42.46 ID pQutoTqo (移籍しちゃ)いかんのか? 8 :どうですか解説の名無しさん:2008/10/28(火) 12 06 54.79 ID r2o1mF+e いいじゃん別に モナと思い出セクスできたわけだし 9 :どうですか解説の名無しさん:2008/10/28(火) 12 07 57.89 ID FaM3Oru+ 二岡をスレタイに入れただけの野球と関係ない馴れ合い雑談スレ
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ガイザン 7C-7D jカト2,3匹 -- (Saifar) 2012-03-29 21 43 34 デル・ラゴス 5G-H ハウト -- (Saifar) 2012-03-29 21 44 51 デル・ラゴス 1F ハウト -- (Saifar) 2012-03-29 21 45 13 モーリセン 8D付近 バイカロン -- (Saifar) 2012-03-29 21 45 53 モーセリン 9D カト -- (Saifar) 2012-03-29 21 46 22 モーリセン 1D、2E、2F左上、2F真上、2G上 各ハウト -- (Saifar) 2012-03-29 21 47 44
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/居場所 美琴サイド 夏の深く吸い込まれそうな濃い青とは反対の、透きとおり澄んだ冬の淡い青空の下、いつもの自販機の前に御坂美琴はいた。 いつもの制服の上に薄手のコートとマフラーを身に付け、両手には自販機で買ったばかりの暖かいココアを持っていた。 美琴は自販機に背を預け、空を眺めながらココアをくぴくぴと可愛らしく飲みつつ物思いに耽っていた。 「どうしようかなぁ……」 呆然とも、胡乱げとも取れる、不意に口を突く小さな言葉。同時に思い浮かべるのは一人の少年。その少年の顔が安定しないのは、目まぐるしく表情が変わるからだろう。 小さな事で一喜一憂して、笑ったり怒ったり項垂れたりとくるくると変わる、まるで子供の様なその表情。 それを思い出して、美琴は小さく微笑む。 不思議だ。コートを羽織っていても服の隙間から入る風で少し寒いのに、その少年を思い浮かべるだけで、心はこんなにもあたたかい。 「好き、って言うだけなんだけどなぁ……」 今度は自分の意志でその言葉を紡ぐ。ただ、誰かに聞かれたら恥ずかしいので、小さく小さく、擦れるほど小さな声で。 自分の気持ちはこんなにもはっきりとしている。恥ずかしくて口にするのはちょっと勇気がいるけど、好きだという確かな気持ちがある。出来る事なら、独り占めしたいとわがままな気持ちもある。 後は、彼に好きだと、気持ちを伝えるだけなのに、どうしても彼を目の前にすると素直になれない。 それが自分の性格なんだろうな、と何処か他人事にも似た感じで自覚している。 彼を目の前にすると、嬉しい様な恥ずかしい様な、色んな感情が自分の中で絡まっていって、普段通りの自分を演じる事さえできない。 でも、彼に自分の気持ちを言えないのはそれだけじゃない気がする。 きっと、きっと自分は、 「臆病なんだろうなぁ……」 ココアを飲みながら、呆れを僅かに滲ませながらほうと息を吐く。 そう、きっと自分は憶病なんだ。 彼への気持ちはちょっと口にするのは気恥ずかしいけど、それでも恥じるものではないし、ある種の誇りさえある。けど、それとは別の、『逃げ』の様な気持ちがあるのも確かだ。 だって、気持ちを伝えなければ、この心地よく楽しい、遠慮も何もしなくていい、アイツと一緒にバカを出来る場所は残り続けると思うから。 しかし、今の場所よりほんの僅かでも先に進みたいと思っている自分もいるのだ。 正直、自分でもよくわからない感情だと、笑みが零れる。 そこに、不意に声がかけられる。 「よっ。こんな所で何してんだ、御坂?」 「うわひゃあ!?」 「おお!?」 横からの突然の声にびっくりして、あんまり少女らしくない悲鳴を上げる美琴に釣られ、声を掛けた方もすこし驚く。 ついでに手から何かすっぽ抜けた気がするが、今は気持ちを落ち着かせる方が先だと、美琴は自身の胸に手を当て、軽く息を吐いて気持ちを落ち着かせる。 そして声の方へ顔を向けようと振り向く。誰かはわかっている。自分が彼の声を聞き違える筈がないと妙な自信が美琴にはある。 だから、美琴はいつもの様に怒りながら振り向くのだ。素直になれない自分を、少し恨めしく思いながら。 「いきなり声かけないでよ! びっくりす――」 「あっちゃあああああああああ!?」 「――あ」 振り返った先には、熱いココアを頭から被っているウニ頭がいた。 そうか、すっぽ抜けたのはこれか。美琴は熱がっている少年の前で己の手を見ていた。 「……って、そうじゃなくて! ちょっと大丈夫!? ほらこれで拭いて!!」 妙に冷静になっていた自分を放り投げ、美琴は慌てて持っていたハンカチを手渡す。 あっという間に白のハンカチがココアの色に染まっていく。 とりあえず吹き終わった様で、美琴の目の前にはココアの甘い匂いを漂わせながら、湯気を出しているウニがいた。 「不幸だ……」 ウニもとい上条当麻はまだちょっと熱い頭をハンカチで吹きながら、いつもの言葉を呟いた。 その前で美琴は申し訳なさそうに「ご、ごめんね……」と苦笑いを浮かべながら謝っていた。 「あー、火傷するかと思った……」 「だから、ゴメンって言ってるじゃない」 まだどことなく甘い匂いを漂わせている上条の隣を、美琴が隣を歩く。ただ、2人の間には妙な隙間がある。離れてはいない。でも、近くもない。そんな隙間が。 この距離は、もどかしいけれどとても居心地のいい、美琴の秘密の癒しの空間だ。 「でさ、お前、あんな所で何してたの?」 「んー、ちょっと散歩してた」 「こんな寒いのに?」 そういう上条の恰好はもこもこのダウンジャケットを着ていた。実にあったかそうだ。でも、ココアの甘い匂いのせいであんまり羨ましくない。 「別にいいじゃない。私の勝手よ」 と、美琴はちょっと突き放す様な口調で返す。 「ま、そだけどな」 それに気にした様子も無く、上条はいつもの調子だ。 その隣では、美琴は小さな後悔の念を抱いていた。 どうして自分は素直になれないんだろう。何で、今みたいにそっけない返し方しか出来ないんだろう。もうちょっと、いや、ほんのちょっとだけでも素直になれたらいいのに。 何だかこのままでは変に考え込んでしまいそうだ。頭の中身を振り払う様に、美琴は一歩だけ近付いて上条に話しかける。 ただ、口調はいつもより僅かに固くして。体は近付けても、心を近付け過ぎないように。 「で、そういうアンタは何してたのよ?」 「洗剤とか切れてたから、ちょっと買いだしにな」 上条は手に下がっている袋を胸辺りまで持ち上げながら答える。 その袋に美琴も目をやるが、ちょっとというには些か量が多い気がしてならない。そして重そうだ。 「ちょっとっていう割には、結構な量じゃない、それ」 「上条さん家では消耗品が一気に無くなるなんて珍しくないですの事よ」 何故か胸を張る上条に、美琴は少し呆れながら返す。 「何で胸張ってんのよ……」 「おかげで貴重な一葉さんが出家しちゃいました」 「出家って……」 上条のずれた応えに美琴は呆れて苦笑いを返す。コイツ、絶対に出家の意味をわからずに使ってるわね、とその感想は口には出さない。 間違いを指摘されて慌てる上条も見てみたいが、敢えて後で指摘して恥ずかしい思いでもさせてみようかと、意地悪な思いがひょっこりと美琴の心に顔を覗かせる。 隣を歩く少女がそんな事を考えているとはつゆ知らず、上条は持ち上げた袋を下げつつ、何かを思い出したように美琴へ視線を向ける。 「なぁなぁ、お前、この後暇?」 突然の問いかけに美琴の鼓動が少し逸る。 暇かどうか聞かれるって事は、何かに誘ってくれるんだろうかと、美琴は淡いながらも期待を抱く。 「えっ、ひ、暇、だけど?」 「じゃあ、この後のタイムセールに付き合ってくれると上条さん嬉しいです!」 「……………はぁ」 まー、そんな事うだろうなーとは思ってましたよー、と美琴は淡い期待を裏切られたがっかりさを諦観の念と一緒にため息として零す。 この鈍感バカに期待するのが間違ってるんだろうけどさー、それでもなー。そんな風に聞かれちゃうと期待しちゃうじゃない、と美琴は自分の理想と現実の違いにちょっぴり寂しさを抱く。 がっくりと項垂れている美琴の隣では、上条が少しばかりうろたえながら少女の様子を見ていた。そしてまた何か思い出したのか、上条は少しだけ表情を輝かせる。 (でもま、コイツと一緒にいられるのには違いない、か……) ちょっとどころではなく色気も何もあった物じゃないが、正直なところ、上条にやたらとムード溢れる場所に連れて行ってもらっても、嬉しい以上に緊張してしまいそうだ。 上条とそういう所に行くのに憧れが無い訳じゃないが、今はまだ、こんな風に何でもない事をして過ごすのが自分には丁度いい。 ぶっちゃけ、コイツの隣にいれるならどこでもいいんだけどさ、と美琴は内心で続ける。 「ま、ヒマだし別にいいわ――」 「そういやさ、この前、何かの景品にゲコ太だっけ? 貰ったんだよ。よかったらい――」 「ゲコ太!? くれるの!? 本当に!? ありがとう!!」 「って貰う気満々ですか。いやまぁ、別にいいんだけどさ」 美琴の言葉を遮る様に言った上条の言葉を、今度は美琴が遮る。 今日一番の嬉しい出来事かもしれない、と美琴は小躍りして喜びたい気持ちを必死に抑える。 相手が上条でなければ、自分は絶対に相好を崩していただろう。いや、今も崩れそうなのを全力で抑えているのだけれど、上条に自分のそんな姿を見せるのは、なんというかまぁ、恥ずかしい。 とはいえ、これが嬉しくない訳がない。ゲコ太はただでさえ大好きな美琴だ。そこに『上条がくれた』というプレミアが付けばもう、宝物になりかねない。 「じゃあさ、近くにスーパーあるだろ? そこで待っててくれよ。ゲコ太は家にあるし、俺も着替えたいし」 「遅刻したりゲコ太忘れたりしたら超電磁砲ぶっ放すからね」 上条がタイムセールに遅れる事は無いとは思うが、一応、いつもの調子で脅しを掛けてみる。 このやり取りが自分達らしいと思うし、やらないならやらないできっと物足りなさを感じそうだ。だが、それが普通な今の関係は妙なものだと、美琴は変に達観しつつ思う。 それに、美琴がこうやってわざと上条を脅すのにはもう一つ理由がある。 「今度のタイムセールは上条さんの命が物理的にもピンチになるかも!?」 こうやって大きな態度で慌てふためく姿を見たいからだったりするのだから、自分でも性質が悪いと思わない事も無い。いやだって、なんか可愛いんだもん、コイツ。誰へでもなく美琴は内心で弁解する。 男に可愛いと使うのは変かもしれないと最初は思ったが、可愛いものは可愛いんだから仕方ないと、今では開き直っている。 「じゃ、私は先に行ってるわよー。あ、先に中に入ってるわよ」 言いながら、上条と別れて近くのスーパーへとてくてく歩いていく。 ちょっと離れてから、美琴はふと後ろを振り向く。向こうは今振り向いた所だったのか、美琴がそっちに振り返ると同時に、反対へと駆けていく。 徐々に小さくなっていく背中に、美琴は名残惜しさを感じていた。 (もうちょっと隣に居たかったかな~……) どうせすぐに会うのだからとわかってはいるのだけれど、『今』もっとそばに居たいと、ずっと一緒に居たいと心は叫んでいる。でも、そこまで踏み込むのもちょっと怖い。 今の場所が居心地がよすぎるから、それ以上を望むのはいけない気がして。だけど心は正直だ。上条と一緒に居る時は、いつもその衝動を堪えている。 (やっぱり、好きなんだなぁ、アイツの事) 重いものとは違う、優しくあたたかいため息を零しながら思う。 改めるまでも無く、気付けば自分の心の中心に居座っているアイツへの想いを、もう何度目か分からないほどに反芻する。 柔らかい笑みを浮かべながら、美琴は見えなくなった上条の背から視線を戻し、スーパーへとのんびり歩いていく。 もしかしたら、急いだアイツが追いついてきてそのまま一緒にスーパーにいけるかもしれないし、と仄かな希望を抱きつつ。 けれど結局、先に店に着いた事をちょっとがっかりした美琴だった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 時間はもう日が傾きかけて、オレンジ色に染まるころ合い。 無事、スーパーのタイムセールで勝利を収めた上条はその余韻を抱きながら歩いていた。美琴は美琴で、上条からゲコ太を貰って大変ご機嫌だ。 「いやー、よかったよかった! これで上条さん家の食事事情はしばらくは安泰です! ありがとうな、御坂」 「どういたしまして」 美琴の隣には、嬉しそうな顔を浮かべ大量の戦利品を両手に提げている上条。少し持とうかと言ったのだけれど、女の子に荷物は持たせられませんと断わられてしまった。 意外と紳士な上条の顔を、美琴は横目でチラチラと見ていた。や、じっくり見たいのだけれど、目線があったりすると恥ずかしいので。 それでも、上条のこの無邪気な笑顔はいつまで見ていても飽きない。執着のような愛着、でも暖かくなる様なこの感じ、こういうのを愛しいと言ったりするんだろうか。 「あ、あのー、御坂、サン?」 「ん、なによ?」 上条の顔が仄かに赤い。そしてなんか妙に声が近くに聞こえる。 「な、何故にそんなに顔を近づけておられるのでせう?」 「……へ?」 声の高低が微妙に安定していない上条の言葉で、美琴もようやく自分の状況を理解する。 気付けば、上条の顔は目と鼻の先。鼻と鼻とがくっ付きそうな程近くに、上条の顔が目の前にあった。 「は……は……」 落ち着け自分、これは事故だ。そうだ落ち着け。そう何度も自分に言い聞かせるが、鼓動の逸りは速くなる一方で、心に押し寄せる衝動の波は高くなるばかりだ。 顔が熱い。顔だけじゃなくて体全体が熱い。鼓動がうるさい位耳の奥で鳴っている。寒さとは違う理由で、指先が震えている。 なんとか心を落ち着かせようとはしているのだがそれも虚しく、衝動の波はいとも容易く美琴の理性を流していった。 「離れろー!!」 「えー!? 理不尽!?」 上条へと電撃を放ちこれ以上ない程物理的に引っぺがす。自分から近づいたのに。 上条は案の定、右腕でしっかりとガードしており、電撃に驚きながらも毎度の如く無傷だった。いつもいつも無傷なのもやっぱなんかムカつくと、美琴は場違いながらもちょっと思った。 ただ、上条の周りには袋の中に入っていた物が散乱しており、中々に後片付けが大変そうになっていた。 まだ体の周りでバチバチと音を立てながら、美琴は赤い顔で少しずつ息を整えていく。それと一緒に、逸った鼓動と衝動も落ち着かせていく。 その正面の上条は、ひとまず電撃を防げたことに安心し、その後に気恥ずかしそうな表情を浮かべ、所在なさげな左手で頭を少し乱暴にかいていた。 「あーもう、びっくりした~……」 胸に手を当て、呼吸と鼓動を落ち着かせながら、まだ赤い顔のまま呟く。 心臓に悪いにも程がある。好きな男が目と鼻の先に居るというのは。 「そりゃこっちのセリフだっての……」 心なしか煙を上げている右手を下ろしながら、げんなりとした調子で言う。 上条からすればたまった物ではないだろう。向こうから近づいてきて、しかも近付いてきた方から離れろと電撃付きで怒られたのだから。 「……まぁ、悪い気はしなかったけど……」 「ん? なんか言った?」 「あ、いや、何でもない。気にすんな」 上条がぽつりと何かを言ったようで、聞き返すもはぐらかされる。 キョトンと首を傾げる美琴の前では、ホッとした様子で息を吐く上条の姿。美琴の方もそんな大事な事でもないんだろうなと思い、まだぽつぽつと聞こえてくる上条の呟きも聞き流す。 そして辺りへ目をやる。辺りに買ったものが散らばっていた。まぁ、自分が原因なのでここは自分が率先してやろうと、美琴は屈んで袋の中へ詰め直していく。 「ああ、いいって。俺がやるから」 「私のせいなんだから、気にしないの」 そう言いながら美琴は黙々と散らばった商品を綺麗に袋に詰めていく。 屈んだ美琴の少し前、立っている上条は、仕方ねぇなといった態度で彼女の前に同じように屈み、一緒に袋に詰めていく。 上条と一緒に袋に詰めていると、不意に彼からの視線を感じる美琴。気になり、聞いてみる。 「どうかした?」 「いや、お前可愛いなぁと」 「っ!?」 さらりと言われた事に、ようやく平静を取り戻していた美琴の心がまたもや大荒れの模様となる。ついでに顔まで熱くなる。 言った方は言った方で、どうしたんだろうと美琴の様子を気にしていたが、つい今しがた自分が言った事に気付き、こちらも顔を赤くして盛大に慌てる。 「や、えと、無し! 今の無し! 無しでお願いします!」 「あ、えと、その、はい、わかりました……」 顔を赤くしながらの上条の大声に、借りてきた猫のように大人しくなった美琴が、可愛らしい小さな小さな声で、しかも敬語で返す。 ぽーっとした表情で、自分の手を胸の前で抱く様にする美琴。その前で真っ赤な顔で居心地の悪そうな上条。 「あーその、なんだ……、早く片付けちまおうぜ……」 「はい……」 恥ずかしそうな上条の声も何処か遠い。 何かもー、ダメだ。何がダメってレベルじゃなく、全部が全部ダメだ。頭が何も考えてくれない。さっきから『可愛い』と言う言葉が、上条の声で何度も何度も美琴の頭の中で再生されている。 赤い顔で呆けた表情のまま、美琴は黙々と袋に物を入れていくが、どう見ても適当で、先ほどまでの丁寧さは一切ない。本当にただ入れているだけ。 (可愛い……。コイツが、私に……。可愛い……) 信じられない。上条の口から可愛いと言葉が出た事ではなく、その言葉が自分に向けられた事が信じられない。 美琴は上条の事が好きだ。だから、美琴は上条の事をよく見ていた。それで、向こうは自分の事を精々が仲のいい友達程度だろうな。そう思われているのが何となくわかった。 それに気付いた時、ちょっと悲しかったけれど、それでもいいと思った。確かながらも何処か曖昧さのある、この関係がとても居心地のいいものだったから。 だから、上条が好きだという気持ちは、せめて上条にだけは秘密にしていようと思ったのだ。 だというのに、上条から出た言葉は自分が予想もしないものだった。 嬉しい。とても恥ずかしいけど、それ以上に凄く嬉しい。ゲコ太の嬉しさが霞むほど嬉しい。 あんまりにも嬉しくて、臆病な自分が勇気を持ててしまいそうではないか。 上条の事が大好きだから今の関係より前に進みたくて。でも今の関係がとても心地いいから壊れるのが怖くて。 なのに、希望があって。 (……嬉しいだけで、いいや……) だけど、美琴はその希望を優しく心の深くへしまう。淡くも、寂しげな笑みを薄らと浮かべながら。 やっぱり、どうしても怖い。希望はある。けれど希望があるからこそ、それを失った後が怖くてしょうがない。 かっこ悪い。かっこ悪い程自分は憶病だ。一歩を踏み出すのが、たった一言を言うのがこんなにも怖い。 (レベル5の第3位も、恋愛に関してはレベル0かぁ……) 自分を揶揄するように内心で呟く。 こういうのをへたれって言うのかなぁと、それだけを心の中だけで続けてから改めて袋に物を入れようとする。 が、気付けばもう落ちているものは無い。不思議に思い顔を上げれば、落ち着かない様子で立っている上条。足元には商品が詰まった袋。 「えーと……、はい」 「お、おう」 美琴も立ち上がり袋を手渡す。上条はそっぽを向いたまま受け取っていた。横顔だからよくわからないが、顔はまだ赤い。よっぽど恥ずかしかったんだろう。声も上擦っている。 もうすっかり落ち着いた美琴は、上条のその様子が何だかとても愛しく思えて、優しい笑みを浮かべて眺めていた。 (うん、やっぱり、このままがいいかな) 自分にはこれがきっと丁度いい距離なんだと、言い聞かせるように心中で呟く。 屈んでいたからか、背中や肩が凝った気がして美琴は背筋を伸ばしついでに空を仰ぐ。 夕方だったはずの空はいつの間にか曇っていて、まだ時間は遅くない筈なのに薄暗くなっていた。気温も相まって雪でも降りそうな天気だ。 美琴が空を見ている間、上条が意を決した表情で彼女を見ている事は当の本人は知らない。 「……じゃ、またね」 背筋を伸ばし終わった美琴はそう言って、上条の返事を待たずにくるっと背を向けて常盤台の寮へと歩いていく。 今日はちょっと色々あったけど、大丈夫なはずだ。また明日か、その次の日か。次にあった時にはきっと、いつも通りにバカを出来る。 また。何度でも何度でも。同じようなバカを変わらない関係でずっと。 変わらない関係に、一抹の寂しさを感じる。それを打ち消すようにポケットに手を入れて貰ったゲコ太を握る。先ほどの上条の言葉を思い返す。 嬉しいはずなのに、暖かいはずなのに、寂しさは消えずに残っている。 (ダメ。これ以上を望んじゃダメ。私には、これで十分すぎる位なんだから) 自分にそう言い聞かせるが、寂しさは募るばかり。 初めてだ。上条と別れる時にはいつも名残惜しさを感じている。だが、こうまで寂しいのは初めてだ。 上条のせいだ。絶対にそうだ。アイツが変な事言うから。先に進んでも大丈夫なんだって、思わせてくれたから。 だから、だから、私は勇気を出してもいいんですか? 「みさ……っ。……美琴!!」 「っ!」 唐突に、吠える様にも聞こえる上条の声が美琴の耳を打つ。 名前を呼ばれた事に呆気に取られながらも振り向くと、少し乱暴な素振りで歩いてくる上条の姿が。 顔は怒っている様にも恥ずかしそうにも見えたその顔が、二人の間を半分ほど過ぎた所で、沈んだ物へと変わる。 「ど、どうしたの……?」 何か気に触る事でもしただろうか。気になり美琴は自分の事を思い返す。 その間も上条は近付いてきて、目の前まで来たと思ったら、何か暖かいもので体を包まれた。 「え……?」 体の前半分が熱いくらい暖かい。背中も優しい暖かさを感じる。顔には黒い糸がチクチクと刺さる。早く大きい鼓動が二つ聞こえる。前を見ていたはずなのに、自分は少し背が反っている。 「なんで……」 上条の声がすぐ横から聞こえる。 事態に追いつけなかった頭がようやく状況を理解する。 抱きしめられている。上条に、自分が。少し痛みを覚えるほど強い力で。 「ちょ、ちょっと……!?」 十分すぎる筈なのに。上条がくれた言葉だけで十分すぎる筈なのに。だから、こんなのはいらないのに。 逃げ出そうと上条の腕の中でもがくが、力が入らない。自分の意識ではどうしようもない部分が、この場所から離れる事を拒絶している。 「なんでお前、そんな泣きそうな顔してんだよ……?」 「え……?」 そんな筈はない。確かに、上条と別れる事に寂しさを覚えたけれど、泣くなんてありえない。ちょっとだけでも隣を歩けて、ゲコ太を貰えて、可愛いって言ってもらえて、そしてこうやって腕の中に居させてくれて。幸せすぎるほどなのに。 「そ、そういうアンタの方が泣きそうな声してるじゃない……」 声が上手く出ない。今の言葉もはっきり言えたか自分でもわからない。 上条は抱きしめていた美琴を離し、彼女の肩を掴みながら力強い眼差しを湛えながら言った。 「お前が好きだからだろ」 美琴の目が大きく見開かれる。 瞳から、涙が零れてくる。 上条は美琴の顔を胸に抱きながら、照れたようなぎこちない笑みを浮かべた。 「お前が好きだから、泣きそうな顔見たくないんだよ」 ぎこちない笑みからは放たれるのは、それでも尚力強さを含んだ優しい響き。 美琴は涙を流しながら、その言葉を聞いていた。 何が起きたのか、よくわからない。 好き? 上条当麻が御坂美琴を好き? 御坂美琴が上条当麻を好きなのではなく? …………夢だ。きっとこれは夢だ。だって、こんなに涙が零れるほどの幸せなんて、夢以外にある筈がない。 誰よりも何よりもこうなる事を望んでいた。でも、そこへの一歩を踏み出すのがどうしても怖くて。だから、今のとても心地のいい場所に留まっていた。 それで十分だと思っていた。それだけでいいと思っていた。 「んーと、こんな事しといて何だけどさ、返事、聞いてもいいか?」 何かに怯えている様な、不安そうな上条の声が御坂美琴を現実へと引き戻す。 美琴の前には大好きでしょうがない少年の顔。その顔は不安そうな様相を醸し出してはいるものの、彼の優しさまでは消えていない。 好きで好きで、傍に居るだけでも十分だと思える少年は、変わらずに目の前に居る。 いいのかな。今のままで十分だと思っていた臆病な自分が、こんなにも幸せでいいのかな。 これが夢じゃないのなら、一歩先に進んでもいいのかな。 「………うん………」 一人の少女の居場所が壊れた。少年と一緒に居る事が出来るだけの、曖昧で不確かな居場所が。 少女には新しい居場所が見つかった。少年と一緒に歩くことの出来る、優しく暖かな居場所が。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/居場所
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One Night ~君の居場所~ トップ > SS置き場 ■天野遥:航空部と海洋冒険部に所属。IF世界の彼は流され系のヒロイン(笑)。 ■星河空:遥の幼馴染でSS大尉。IF世界の彼はいろいろと拗らせている。 「一晩だけ、一晩だけお願いします!」 俺は部長に深々と頭を下げた。 「しかしな、少佐‥‥」 部長の表情は苦り切っている。 無理もない。俺が頼んでいるのは相当な横紙破り‥‥下手をすると俺自身が軍法会議ものときている。 「お願いします。あいつは俺の古い友人なんです」 「友人だと!?」 部長は一瞬顔色を変えた。 「あ、いえ、小学校の頃に一度会ったきりですので、思想的には問題ありません」 「そうか。びっくりしたぞ、スパイはお前かと思った」 そう言って部長は、考え込むように視線を天井に向けた。 「‥‥わかった、一晩だけだ。明朝0800(マルハチマルマル)まで。それ以降は認めん」 「ありがとうございます!」 足早に通路を歩きながら俺は思い返していた。なぜこんなことになったかを‥‥ そのとき、管制室は大騒ぎになっていた。 「馬鹿な、まっすぐ突っ込んでくるだと!?」 「機体確認、F-35だ!」 「あの奈良で盗まれたやつか!」 「スクランブル!スクランブルだ!」 警報を聞いた俺はいつものF-14に向かって駆けだした。しかし。 「天野少佐!今回はこっちに乗ってくれ!」 「F-35?なぜだ?」 「敵がF-35なんだ。少佐の目の前で強奪されたヤツ」 「あれか!わかった、ありがとう」 「頼んだぞ!」 F-35‥‥きっとあいつ、空だ。なら、俺が出なければならない。 決着をつけるのは、今だ。俺も腹をくくった。甘いことは言っていられない。墜とすか墜とされるかだ。 シートに座った俺は、ヘルメットをかぶった。ヘルメットディスプレイが一瞬輝き、周囲の風景が映し出される。 「こちらMilky!オールグリーン、発進スタンバイOK!」 「了解Milky!Take Off!」 「Take Off!」 F-35BはF-14よりずっと滑走距離が短い。しかしそれはその分加速が強いということで、それはGの強さとしてパイロットに跳ね返ってくる。 「ぐ‥‥っ」 発進時のGを耐えきり、水平飛行に移ったとき。 「見えた!」 そこから先はよく覚えていない。 ただ、俺とF-35が一体化したかのような感覚だけが残っている。 25mm機関砲で牽制しながら背後を取り合い、そしてミサイルを発射する。 1発目と2発目のミサイルは外れた。強引にかわされたのだ。 しかし俺は、自分が墜とされるなどとはまったく思わなかった。F-35は俺の手足であるかのように反応する。俺自身がそのまま飛んでいるかのような錯覚さえ生まれていた。 急上昇して、空の撃ったミサイルをかわす。こちらも強引だ。 かわされるとは思っていなかったのだろう、空の動きが一瞬鈍る。 そこへ俺は、ミサイルを発射した。 これは当たる。 発射した瞬間に、確信した。 AIM-9X サイドワインダーが、片方の垂直尾翼をもぎ取るように命中した。 制御を失った空の機体が、揺らぎながら落ちていく。 わずかに間をおいて、パラシュートが開いた。緊急脱出装置が作動したようだ。 俺はパラシュートを追い、F-35を垂直着陸させた。 俺が駆けつけたとき、空はパラシュートのハーネスを外して立ち上がったところだった。 「やっぱりお前だったか、空」 「遥か。やはりな」 そう、俺たちは互いに、自分の相手が誰か確信していたのだ。そしてそれは、間違ってはいなかった。 「いささか月並みだが、降伏勧告をさせてもらうぞ。お前の機体は俺が墜とした。反撃の手段はもうないんだ」 「銃も向けない降伏勧告のどこが月並みなんだ」 「向けてほしいのか?」 確かに月並みなんかじゃない、珍しい光景だろう。銃も向けず、軽口を叩いて笑いながらの降伏勧告など。 「俺の銃はベレッタM92だ。お前のボディガードより威力があるぞ」 「驚いたな、そんなところまで調査済みか」 「他ならぬお前のことだからな。俺の前に立ちふさがるのはお前以外に考えられなかった」 「違いない。じゃあ、一応お約束ってことで」 俺は愛銃S W M49を抜いた。が、空には向けない。 「おい、降伏勧告なのに相手に向けないのか?」 「意味ないだろう?もう決着はついてるんだ。お前だってそう思ってるんだろう?」 「お見通しだな」 空は両手を肩まで上げた。ホールドアップではない。手のひらを上に向けた「やれやれ」のポーズ。 「とりあえず航空部基地までご案内だ」 「ああ、わかってる」 再度F-35に乗り込んで、基地に帰還。 「SS勢力のF-35を撃墜、パイロットの身柄を確保いたしました」 「よくやった、少佐。下がってよし」 「‥‥あの、すみません。SSのパイロットはこの後どうなるんでしょうか?」 「身柄を公安に引き渡す。当然のことじゃないか。何を今さら?」 「‥‥少しだけ、待っていただくことはできないでしょうか?」 こうして、冒頭につながるわけだ。 通路を進み、空が入れられている独房に到着する。 がちゃりと鍵を開けると、顔だけ中に入れた。 「ついて来い」 「お前が尋問役か?」 「そうじゃない‥‥とにかく、ついて来い。ああ、逃がすわけじゃないから」 手錠も外し、基地内の仮眠室へと連れていった。 「ここは?」 「仮眠室だ。当直明けのときなんか、ここで寝てから寮に帰ったりするんだ」 「ふぅん、いい部屋じゃないか」 「俺は士官だから個室タイプを使えるんだ。下士官以下は2段ベッドが2つの相部屋タイプだがな。で‥‥空!」 周囲を見回している空に向かって、俺はかなりの勢いで深々と頭を下げた。 「どうした?」 「頼む、空っ!SSを抜けてくれっ!」 頭を下げているため、俺には空の足しか見えない。しかし空が狼狽したことが、俺にははっきりわかった。 「無理なことを言うな。それはお前に航空部を辞めろと言ってるようなもんだぞ」 「わかってる。だがSSとして公安に引き渡されたら、学園追放は免れないだろう。だから頼む!」 「とりあえず顔を上げろ。これじゃ話もできない」 空が俺の頭を両手ではさんで引き上げる。耳が押さえつけられて痛い。 「おい、やめろよ。耳が痛いじゃないか」 「だったら大人しく頭を上げろ」 姿勢を戻した俺は、軽くため息をついた。 「せっかく同じ学園で再会できたんだ。また会えなくなるなんて俺はごめんだぞ」 「それは‥‥俺もそうだが‥‥」 「だろっ!でもそのためにはお前がSSでいちゃまずいんだ。だから抜けてくれ、頼むから!」 「だが俺は‥‥」 「頼むっ!なんなら‥‥俺を好きにしていいから!」 殴る蹴るぐらいは覚悟の上だ。他人の生き方に干渉するんだ、そのぐらいの代償は払ってみせる。 「ほう?」 空の声音に面白そうな響きが加わった。 「本当に好きにしていいんだな?」 「ああ、殴るなり蹴るなり、好きにしてくれ。抵抗はしない」 「わかった‥‥目を閉じろ」 俺はうなずくと目を閉じて、奥歯を食いしばった。パンチで来るか、キックが飛ぶか、それとも平手か。 しかし次の瞬間。 俺の唇を、何かがふさいだ。 「えっ?」 驚いて声を上げると、口の中にぬるりと入ってくるもの。 俺は思わず、飛び退っていた。 「そ、空?」 「抵抗しないと言ったじゃないか。好きにしていいんだろう?」 「そ、それは‥‥」 確かに抵抗しないとは言った。だがそれは殴られたりすることを想定していたのであって、こんな事態はまったくの予想外だ。ましてや俺たちは男同士なわけで。 俺はひどく混乱していた。 「それともあれは、嘘なのか?」 空の表情が曇る。ひどく傷つけられたような、頼りない子供のような顔。 「空‥‥お前‥‥」 「ずっと、お前に会いたかった。苦しかったときも、悲しかったときも、お前を思い出した」 「‥‥」 気づくと、俺は空に抱きしめられていた。 「あの約束が、俺の拠り所だったんだ」 もう一度唇が重なる。俺にはもう、拒否はできなかった。 唇を重ねたまま、もつれ合うようにベッドに倒れ込んだ。お互いすでに下着1枚になっている。 「お前、意外と華奢なんだな。筋肉ついてるのか?」 空はからかうように言うと、俺の腹筋に指を滑らせた。 「やめろよ、くすぐったい」 「じきにやめないでほしくなるさ」 包み込まれるように抱きしめられる。空は俺より少し背が高い。俺だって180cm弱あるのにだ。 片手で俺の頭を抱え込んだ空は、もう片手を俺の背筋にゆっくりと走らせる。その指が腰のあたりにたどり着いたとき。 「んあっ!」 電流のようなものが走り、俺の体が跳ねた。 「そうか、ここか」 空は小さく笑うと、もう一度同じところを指で撫で上げる。 「あ、ああっ!」 なんだ‥‥なんだこの感覚は。頭が痺れるような、むずむずするような。 鼓動が早くなる。息が荒くなる。体に力が入らない。 「ほら」 空が俺の腹筋を軽く引っかいた。 さっきはくすぐったいだけだったのに、今度は熱く痺れるような感覚。 「まだやめてほしいか?」 耳元でささやかれるだけで熱くなる。俺は顔を伏せ、小さく首を振った。 と、伏せた顔がすくい上げられる。目の前に空の真剣な顔。俺は思わず目を閉じた。 またキスされる。角度を変えながら、何度も。吐息を漏らすと、舌が入ってくる。 俺の舌をつんつんと突き、上顎をなでるように動く舌。 そうしている間にも空の手は動き回り、俺の背中や腕、脇を柔らかくさすっている。 「んっ!」 空の手が胸にかかった。頭の中で何かが弾ける。弾けた何かはそのまま背筋を伝って、股間まで降りてきた。 「遥、今お前がどうなってるか、わかるか?」 「どうなってるって‥‥」 「ほら」 空は俺の手を取ると、股間へ持って行った。張りつめたそれに、俺自身が驚く。 「空、俺‥‥」 「いいんだ。それでいい」 つかんだ俺の手で、そっと下着を擦る。自分の手なのに、感覚がまるで違う。 「なんで‥‥あっ」 「ほら、そのままだと出るぞ」 言いながら空は、俺の下着を脱がせた。自分の下着も脱ぎ、俺たちは完全に何も身に着けてない状態になる。 「俺はどうすればいいんだ?」 俺の質問はいささかタイミングを逸していたらしい。 「感じてろ」 空はくすっと笑うと、俺の股間を撫で上げた。 「あああっ!」 「そう、それでいい」 それから空は、俺を四つん這いにさせた。片手は前に回して俺を擦り上げ、片手は後ろからほぐしにかかる。 「よせよ、そんなとこ‥‥汚いぞ」 「お前が汚いわけないだろう」 「でも、ああっ!」 言い募ろうとしたが、空の唇が背筋をなぞる感覚に喘いでしまう。 「お前は感じてろ。そう言っただろう」 もう俺の頭は真っ白になっていた。空の指が、唇が、舌が、俺を痺れさせる。熱い、鋭い、そして‥‥甘い。 体を電極が貫いているかのように感じる。ちりちりと痺れる感覚は体中で小さな爆発を起こし、俺を振り回す。 俺は何も考えられず、ただ吐息を漏らすだけ。 やがて、下半身がぐっと抱え上げられた。 熱いものがあてがわれる。 「力を抜け」 空の声も、熱に潤んでいた。 ぐ、ぐ、と押し広げられる感覚。わずかずつ貫かれる。激痛とそれを超える熱さが襲い掛かる。 俺は枕カバーを噛み締めて、それに耐えた。 「力むな。余計につらくなるぞ」 「で、でも‥‥」 「力を抜くんだ」 俺を擦り上げる空の手が、勢いを増した。熱い、鋭い、そして‥‥甘い。 「あ、あ、あ、くうっ!」 耐えきれずに迸らせたそのとき。空が完全に俺を貫いた。 「‥‥大丈夫か?」 「だ‥‥大丈夫、だ」 「動くぞ」 「ああ‥‥あっ!」 内臓を直接擦られる。それは不思議な感覚だった。さっきまでの激痛はもうない。鈍く脈打つ重みに変わって、俺を串刺しにしている。 その鈍い重みに混ざり、鋭い快感が脳を噛む。真っ白だった頭は、スパークに埋め尽くされていた。 迸ったばかりの股間がまた立ち上がっていくのがわかる。 俺は噛み締めた枕カバーの端から喘ぎを漏らし、ゆるく首を振ることしかできなかった。 「うっ!」 「うぐっ!」 そして、俺の中で爆発が起きる。 俺と空はほぼ同時に迸らせていた。俺はベッドの上へ。空は俺の中へ。 「遥」 「なんだ?」 「俺に居場所をくれるか?」 「ああ、もちろんだ。俺がいる限り、俺がお前の居場所だ」 「‥‥ありがとう」 空はゆったりと笑った。それまでの冷笑的な、どこかひねくれたような笑いとは違う、子供のころそのままの笑顔。 俺は胸がいっぱいになり、初めて自分から空にキスしていた。
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編集する。 2021-12-08 18 47 28 (Wed) - CLANNADとは、ゲームブランド・Keyが制作したゲーム作品。またアニメ、コミック作品。 リンク内部リンク 外部リンク 出典、参考 リンク 内部リンク CLANNAD CLANNADの登場人物 外部リンク CLANNADウィキペディア TBSアニメーション 「CLANNAD AFTER STORY」公式ホームページ 編集する。 2021-12-08 18 47 28 (Wed) - 出典、参考
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女性おたくが少ない理由 しかしながら、少女マンガと少年マンガを読み比べる限り、そして周りにいる男女を観察する限り、この欲求、他者によって自分の存在を保証してもらいたいという欲求は、はるかに女性の方が強いように思われる。これは女性の方がずっと選別の目に――しかも実力本位というよりは他者に気にいられるかどうかという選別の目に――さらされ続けていることと無関係ではあるまい。中島梓が言うように女の子におタクが少ないのもそのへんの事情と関係していそうだ。女の子によっては実は、私だけのための世界をつくり、そこに閉じこもっただけでは自我は安定しないのだ。そこには常に傍らにいて、「そこはあなたのためにあけられた場所なんだよ」(石塚夢見『ピアニシモでささやいて』)という呪文を囁き続けてくれる他者が必要とされるのである。(104) 完全両性愛社会 「ねえ! まさか異性しかダメな人じゃないわよね」 「今どきまさか……、そんなヘンタイじゃないさ」(秋里和国「ルネッサンス」)(129) レズビアンコミック しかしレズビアンコミックではそう[二人が結ばれてハッピーエンドに]はならない。それは一つには、それが、「誰かに自分を肯定してほしい」という精神的な飢えは満たし得ても、異性による自己肯定のもつもう一つの機能――それがこの社会の成員としてのパスポートとなるという機能――をもたないからである。 そして一つには、それが少女マンガである以上、主人公たちも、そして読者も、責任をもった人生の選択としてレズビアンを選びとるだけの条件づけをまだされていないからである。なにしろ、 「いつか私のすべてを救ってくれる男性が現れる」 ということを信じていられる間というのが「少女」マンガの真髄なのだから。それに対し、絶望の中で、 「男は私を救ってくれない」 ということに気づいた時、人は自立するか、男には社会的保証と性の快楽のみを求めるレディースコミック的心性に移行する。(192-3) もはや性を怖れない少女たち かつて私は、性というのは女の子によってはまず一番に”怖れ”であり、少女たちが過激な性を描く時必ずといっていいほどそれを少年の姿に仮託して表現するのは、その痛みを自分から切り離してコントロールしたいからだと言った。しかし、ここには、すでにそうした操作を必要とせず、性をまっすぐに、あるいは純粋な快楽として捉えることのできる女の子が存在している。つまり女の子にとっての性はすでに、第一義的に怖れであることをやめ、それと同時に性は、否応なくその人格を深く冒してくるものではなくなってきているのである(もちろんそれが援助交際等にもつながっているともいえるが、それはまた別の議論である)。 ……そう、女であることはもはや、マイナスの記号であることをやめたのだ。近年見られるレズビアンものの繚乱は、まさしくその現実の反映であったのである。(220-1) 女が戦い、男が自問する時代 そして考えてみれば、<美少女戦士>セーラームーンが世の人気を席捲したということ自体が、そうした時代の始まりを象徴しているのかもしれない。ストレートに「愛と正義のために」闘うセーラームーンの一方で、少年ものの雄たる『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公・碇シンジは「なぜエヴァに乗るのか?」と自問自答し続けているのだから。(222) 女性総合職 第一、ちょっと過激な言い方を許してもらえれば、仮にも総合職試験に合格するような女性にとって、「たいていの男は私より無能だ」というのはそれまでの人生ですでに証明されてきていることではないのか。もし闘うべきものがあるとすればそれは、男が男であるゆえに上げ底されている男社会の結託(「女とは仕事ができない」というゆえなき排除)であって、男が男であるゆえの有能さなどではない。要は自分がやりたい仕事だから、また働かないと食べていけないから頑張っている、ただそれだけのことだろうに、と思う。(258-9) 少女マンガの社会性 少女マンガが繊細さと同時にこうした社会性を持ち始めたということは、やはり九〇年代に入っての大きな変化だったのである。(308-9) 『エヴァ』の問い 言い換えれば『新世紀エヴァンゲリオン』とは、今まで三〇年間、少女たちが問い続けてきた「私の居場所はどこにあるの?」という問いを、今では少年たちも自分に問うてみずにはいられない――そういう時代の到来の象徴でもあったのだ。そして、少女たちの「居場所」が、誰かに愛されることで確保されると感じられていたとするならば、少年たちの居場所は、社会の中での責任を引き受け、それに付随して起こってくるさまざまな問題と闘い続けていくことで確保されるのだった。そしてその「社会」こそはこれまで少女に対しては閉ざされてきたものであり、少女たちがその三〇年の闘いを通して、これまで彼女たちを拒絶し続けてきたその「社会」と闘い、「現実」と闘い、自分自身の力で自分の居場所を確保するための一歩を踏み出そうとしている、まさにその時に、一方で少年たちは、責任から降り、闘いから逃れたい、という欲望に抗しきれないでいるというわけだった。(315)