約 182,744 件
https://w.atwiki.jp/projecter/pages/1791.html
番号 MW14045 名前 “小悪魔”音羽 読み “こあくま”おとは Lv 5 スター 種別 ユニット BP 3000 SP 1000 【音羽、これを着て、お兄ちゃんを思いっきりユウワクするっ!】○他の味方1枚につき、このカードのBPを+2000。○夢(プランゾーンからプレイできる) 移動方向 ←↑→ 属性 悪魔愛知代表花嫁候補♀ ブロック アスキー・メディアワークス 作品 マリッジロワイヤル レアリティ R 約束でこのカードが出てきたら相手は涙目ものの優秀ユニット。 BP変化、SP1000、三方向移動の夢持ちとか、理不尽さすら感じる。 電撃G Sマガジン ブロックでは、このカードのようなユニットが多く収録されたが、★なしで使い勝手の一番良いユニットは、このカードだろう。
https://w.atwiki.jp/ecovip/pages/333.html
キサラギ明日で入れ替わっちゃうし、最後の挑戦してみた。 +キサラギcome on!!! ; 小悪魔の紹介状 カジュアルエプロン×2 ネコマタ(胡桃・若菜)用メイド服 毛糸の帽子×3 タイニー赤ずきん靴下 スポットライト/EXイベントチケット×2 高性能使い捨てカメラ/EXイベントチケット×1 紹介状キタ━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━!!!!!!
https://w.atwiki.jp/atgames/pages/182.html
小悪魔キッス ピンク 分類 : セルピット衣装 2009年2月ガチャピット「バレンタインストーリー」
https://w.atwiki.jp/willyllarl/pages/54.html
ステータス HP EN 移動 残機 コスト 1400 150 5 10 3000 メインスペル スペル名 威力 射程 命中 消費 属性 魔符「デビルショット」 450 2 60 7 通常 魔符「ダークライトシャワー」 350 3 65 7 通常 悪魔「デークネスブラスト」 500 2 70 15 光線 サブスペル スペル名 威力 射程 命中 消費 属性 魔符「デビルマシンガン」 400 3 50 10 通常 魔符「ダークアブソリュート」 300 3 60 4 通常 悪魔「デビルズキッス」 500 2 60 15 光線 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/atgames/pages/180.html
小悪魔キッス レッド 分類 : セルピット衣装 2009年2月ガチャピット「バレンタインストーリー」
https://w.atwiki.jp/th_sinkoutaisen/pages/871.html
小悪魔とパチュリーのサポートその3。 戦闘開始時に小悪魔がパチュリーに吸収され、パチュリーがその戦闘中大幅に強化される。 具体的な強化内容は 小悪魔の戦闘力がパチュリーに上乗せされる パチュリーの攻撃が弱→中→強と確定でコンボされる パチュリーの防御力+50 となる。 その火力は正に脅威の一言で、そこそこ戦闘力のあるパチュこあで使用すれば大抵の相手は倒せるだろう。 紅魔郷は魂の原風景によって無効化されないので、今日は厄日だわも掛けあわせれば不死軍団でも跡には何も残らない。 なお、今日は厄日だわは1枚置いておけば3発全てがEX仕様となる。 さり気なく防御力も上昇するので、文字通りパチュリーが最強になる。 Ver1.15において登場直後ほどの威力は出なくなったものの、相変わらず全東方ユニットの中で最強クラスなのは変わらない。 以前がオーバーキル気味だったこともあり、ほとんど問題なく運用することが可能だろう。 非常に強力なのは心強いが、不死だろうがなんだろうが小悪魔は確実に落ちてしまう。 間違っても無駄な犠牲にならないように気をつけよう。 尚、パチュマリ一筋を使い、厄日を使わなければノンディレクショナルレーザー→弱→中→強のコンボになる。
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/586.html
小悪魔3 ─────────────────────────────────────────────────────────── 316 「よし、これで最後、と……」 所狭しと立ち並ぶ書架を廻り廻って、手元に残った最後の一冊を、本来あるべき棚の隙間に埋めた。 これにて本日の書庫整理完了、と。 あの日の乱痴気騒ぎじみた告白劇の後、俺はこの紅魔館……と言うか、ヴワル魔法図書館で日々を過ごしている。 流石に『働いたら負けだと思ってる』などとのたまう訳にもいかず、 結局、司書二号として働く事で扶持を与えて貰う事となった。 それなりの食事にそれなりの労働。 割と人使いは荒いが煩わしい事は決して言わない鍵っ子の雇い主に、同僚は可愛い恋人。 今の自分は勝ってると思います(AA略) 回想に耽っている間に、傷んだ本の補強をしていたリトルも丁度作業を終えたらしく、ふよふよと傍らに降りて来た。 「お疲れ様でした。今日の作業は全部終了ですね」 「ん、リトルもお疲れ様。……う~~ん、今日もよく働いたなあ」 お互いの労苦をねぎらい合ったところで、重たい本を持ち歩いて凝り固まった肩を、ゆっくりと回してほぐす。 「ふふっ。ダメですよ、男の人がこれくらいで音を上げてたら」 リトルはからかうように微笑むと、俺の後ろに回って肩を揉んでくれた。 「あ~~~~~、こりゃあ気持ちいいや」 「あらあらお客さん、だいぶ凝ってますね~」 彼女の指先から加えられるこそばゆい圧力が肩口から全身に広がり、何とも心地よい脱力感が体中を巡る。 疲労と心地よさが綯い交ぜになって、何だか頭の中もボンヤリと蕩けてきた。 「う~~ん、極楽極楽。この指遣いなら、夜の高級エステティシャンにもなれるぞ」 首を彼女の方に傾げて、外の世俗に汚れた激エロ親父丸出しのセクハラ発言を放った。 「本当ですか? 何だかよく分かりませんが、ありがとうございます」 「…………」 何も識らずに無邪気に綻ぶ可憐な笑顔の眩しさに、己のどす汚れた性根が照らされ浮き彫りになる。 「わっ? ど、どうしたんですか? いきなり真っ黒な涙を流して」 「いや……どうやら、本当の悪魔は俺の胸の内に棲んでいたようだ……」 ありがとう俺の可愛いプリティーデーモン。 可愛いとプリティーが被っているが、いちいちそんな細かい事を言う奴は向日葵畑のフラワーマスターに水虫の花を咲かせてもらえばいいと思う。 涙と共に要らぬ煩悩を洗い流し、俺は0.00000000000026秒いい子になった。 「……? まあ折角褒めてくれた事ですし、もうちょっとサービスしちゃいますね」 ――ぐにぐにぐにぐに。 「おっ、おお~~~っ?」 宣言どおり、細く柔らかな十の指が、さらに優しく蠢き肩に埋まる。 「それっ、それっ」 「ああ~~、ええのぉ、ええのぉぉ~~」 甘い痺れが身体を巡り、顔中の筋肉もだらしなく弛緩しまくる。 ふと脱力しきった視線の先に、一人のメイドさんが紅茶一式を載せたトレンチを抱えて来るのが見えた。 「お疲れ様です。パチュリー様にお茶をお持ちしましたので、よかったらお二人も……ぅひゃあっ!! エ、エロ妖怪っっ!!?」 ――ガシャー――ンッ!! 「うごっっ」 メイドさんが俺の緩みきった表情を見るなり悲痛な叫びをあげ、ティーセットごとブン投げられたトレンチが顔面に炸裂した。 「はっ、早くそいつから逃げてリトルちゃん!! 犯されるわ!!」 「えっ……えっ?」 何が起こっているのか把握出来ていないリトルが、俺の肩を掴んだまま、あたふたと声を漏らす。 「ばばば馬ッ鹿野郎!!! 俺だよ俺俺!!」 「…………はい?」 素面に戻った俺の怒りの叫びに、メイドさんが素っ頓狂な声を上げた。 「……あ、ああ、貴方だったんですか…… その、あまりに弛みきった性感全開放な御顔をなされていましたので、てっきり新手の妖怪かと…… も、申し訳ありませんでした。お怪我は無いでしょうか?」 「あ~まあ大丈夫。色々引っ掛かるけど、大事無かったしもういいよ」 ――むにゅむにゅむにゅ。 メイドさんが俺に対して気を揉んでいたので、それに応えるべく背後に両手を回してリトルの尻を揉みしだいた。 「っきゃあっ!!? な、何するんですかこのエッチ妖怪・好色絶倫魔人!!」 リトルは非難交じりに俺を新種の妖怪に認定すると、素早く身を屈めて俺の両足首を掴み、 ――ぐるん……ぐるん……ぶぉんっ、ぶぉんっ、ぶぉんっっ!! 禁断のうつ伏せジャイアントスィングに移行した。(※良い子は絶対真似しないで下さい) 「うおおおおっっ!? い、意外と肉体派ああああああっっ!!?」 「スペルカードとか、使えませんからあああああぁぁっ、てぃりゃっっ!!」 すっぽー――――んっっ。 砲丸投げの容量で、俺の身体が天井をかすめ金メダル級の放物線を描いてスッ飛んだ。 「むむむむろふしいいいいぃぃっっ!!?」 幾つもの本棚の天板が眼下を流れ過ぎて行く。 着地点付近を見ると、何時の間にやら書斎から出て来ていたパチュリーがぼんやりと佇んでいた。 「よ、良かった! おおおいパチュリーっ、助けてえええええええ」 「……残念。没シュート」 彼女がそう呟いて天井からぶら下がった縄紐を一本引っ張った瞬間、 ――がばんっっ。 着地点の床が音を立てて大口を開けた。 「うっ、嘘おおおおおおおおぉぉぉぉ~~~~…………(フェードアウト)」 ………… 彼をスペシャル折檻用落とし穴に叩き込んでやり、爽やかに汗を拭った。 今頃、地下に放しておいた魔界快感巨大触手タコと死闘を繰り広げている事でしょう。 満足げに頷いていると、メイドさんが恐る恐る声をかけてきた。 「あ、あの、リトルちゃん? ……穴底に辿り着く音が聞こえなかったんだけど……」 「ええ、お気になさらずに。比較的いつも通りの事ですから」 「そ、そう……」 メイドさんが引き攣った笑みを浮かべたところで、パチュリー様がゆっくりとこちらに歩いて来た。 「お疲れ様。今日の仕事はもう終わったのね?」 「あ、はい。万事滞り無く」 「そう、それなら一緒に休憩にしましょう。 そこの貴方、悪いけどお茶をもう一度用意してきてちょうだい」 「は、はい。ただいま」 ぱたぱたと、メイドさんの慌てた様子の足音が遠ざかっていく。 ――今日も何事も無く、私の大好きな紅魔館は平和そのものでした。 ………… 「いや~、死ぬかと思ったよ」 「……毎度の事ながら、よく何事も無く帰って来れるものね……」 いやはやギャグ体質万歳。 粘液まみれになりながらも、何とか紅茶のお替りが来る頃には帰還を果たし、定例通りに書斎で三者ティータイム中な訳である。 「……ん?」 ふと、パチュリーの机の上に分厚い新約聖書が乗っかっているのが目に入った。 十二月という時節柄、そこから気になる疑問が浮かんだので、率直に口に出してみた。 「なあ、ここってクリスマスには何かしないの?」 俺の疑問に、リトルがいつもの可憐な笑顔で答えた。 「うふふ、何言ってるんですか。ここは吸血鬼の城ですよ? キリストみたいな ピー―― で ピー、ピー、ピー―― な挙句、 バキュンッ、バキュンッ!! な パオオォォォォン!! 野郎の誕生日なんて、祝う訳無いじゃないですか」 「そ、そそそそうだよね。ごごごごめんね、お、俺が馬鹿だったでしゅね」 にこやかに放送禁止残虐用語を連発するので、逆にめっちゃ怖かった。 「…………ふむ」 だが、怯え縮こまる俺を尻目に、パチュリーは顎に手を当て少し思案すると、 「……面白いかも知れないわね」 そんな事を呟いた。 「面白い?」 「ええ。……よし決めたわ。レミィに掛け合って、今年はクリスマスパーティーとやらを開いてみましょう」 「ほ、本気ですか? パチュリー様」 珍しい事にリトルが心底嫌そうに渋面を作るが、無論そんな事で動じる知識人ではない。 「本気も本気。初めての体験は何事もいい刺激を与えてくれるし、何より……嫌がるレミィの顔がとても見物だわ」 ……とてもサドい理由であった。 しかし、これだけの規模の館でのパーティーというのは、非常に魅力的なプランだと思う。 俺としては、拒否する理由は微塵も無い。 「決まりね。ところでクリスマスって、外の世界ではどういう風に祝うものなの?」 「う~ん、そうだなぁ……」 天井を見上げてしばし記憶を掘り起こしてみるが、信仰に淡白な国で育った俺の脳は、すぐに頓挫した。 俺の方にも、サンタクロースの伝承やら聖歌斉唱やらといった、普通のパーティーに毛が生えた程度の知識しかない。 「あら、しょうがないわね。それじゃ二人とも、明日は資料を集めてちょうだい。 記録の新古、図書館の内外どこから引っ張って来るかについては一切問わないわ」 「うん、了解」 「はぁい……」 俺の快諾に、リトルのいかにも渋々といった感じの返事が続いた。 ………… 「……もうっ、何で小悪魔の私がこんな……」 お勤めを終えて二人の部屋に戻ってからも、リトルはプリプリとご機嫌斜めな様子だった。 「何だ、そんなに嫌なのか?」 「う~ん……やっぱり、生理的に受け容れがたいものが……」 「そうか……」 まあ、その心情も分からなくは無いが。 俺の立場で言えば、邪神モッコス様の誕生日を盛大に祝え、と言われているようなものなのだろう。 しかし、せっかくの性夜……じゃなかった、聖夜だというのに、恋人がこんな暗い顔をしていては楽しめる筈も無い。 早急に事態を解決すべく俺は、眼前のプリチー小悪魔に性意……じゃなかった、誠意を見せつけ説得に当たる事にした。 「えっとさリトル。実は俺の育った所って、色々な宗教がチャンポンになっていて、正直信仰に疎いお国柄でさ」 「はぁ」 「クリスマスに関してもキリストの生誕を祝うって言うより、 家族や恋人、大事な人たちとの幸いな日々に感謝する、っていう意味合いが強いんだ」 もし、この幸せな日々を与えてくれているのが見た事も無い神様だと言うのなら、感謝を惜しむつもりは無いが。 「……そうなんですか……それなら私も、感謝しないといけませんね」 線の細い口元が緩く綻び、頬に淡く赤が差す。 ようやく見せてくれたいつものあたたかな笑顔に、俺のいちびりハートに火がついた。 「うん、ありがとうリトル。 ところで、以前に俺の居た所が環境破壊に悩まされてるって話はしたよな?」 「はい、覚えていますけど……それが何か?」 「実はアレ、クリスマスが原因なんだ」 「えっ?」 怪訝な顔をする彼女に分かり易く図解する為、 一日の予定を書き込む為に壁際に備え付けてある黒板の元に歩み寄り、手に取ったチョークを走らせた。 恋人たちの最終決戦 → 地球全土で一晩耐久デスマッチ → 惑星震撼 → 群発的な高速渾身前後運動により地殻変動が活性化 → 未曾有の大地震発生 → さらに前後運動と大地震の相乗効果により大気中で原子核融合が発生 → 未曾有の大メルトダウン発生 → 人類は核の炎に包まれた!! → 媚びろ~!! 媚びろ~!! おれは天才だファハハハ!! 「……とまあ、こういう訳だ」 板書を終え、軽く手を叩いてチョークの粉を落とす。 後ろを振り返ると、リトルがはらはらと悲しみの涙を流していた。 「……ぐす、可哀相に……その変態性欲は、全部核のせいだったんですね……」 何だか失礼なベクトルに同情されていた。 「分かりました! 可哀相な貴方の為にも、ぜひ成功させましょう!」 「そ、そうやね……」 色々と釈然としないが、まあやる気を出してくれたのだから良しとしよう。 俺の方も当日は彼女の解釈に応えるべく、核融合級の変態性欲を見せ付けてやらねばならないだろう。 何もかも核が悪いのであって、俺には微塵の罪悪も無く、遠慮などする必要は皆無! ――胸の内で、正義ならぬ性義が燃えていた。 ………… 翌日から宴の準備が始まり、冬の寒気にやや萎縮していた館の空気が、慌ただしくも熱く巡り始めた。 俺たちが集めてきた資料をパチュリーが吟味し、咲夜さんを通じて館の人たちに指示を飛ばす。 何処か懐かしい、お祭りじみた高揚感が心地よい。 やはりレミリアお嬢様は嫌がっていたようだが、 『敵に塩を贈る程度の事も出来ないような凡俗が主じゃあ、この館ももう長くは無いわね……』 というパチュリーの容赦無い一言が火付けになったらしく、今では俄然やる気になっているようだ。 元々が、俺を除けば有能な人たちばかりである。 大した問題も無く準備は着々と進み、界隈の関係者たちにも招待状が出された。 …………そして、当日。 誰かがあつらえたかのように小雪がまばらに散る寒空の下、 紅い悪魔の館に、信仰心など毛の先程も無いような連中が続々と集まった。 会場となる一階の大ホールに来客が集められ、宴を彩る様々な料理が、薫り豊かな湯気を立てながら続々と運び込まれる。 立食パーティーの形式を採用したので、場所を大きく取るのは料理を載せるテーブルだけだ。 紅魔館が誇る厨房の腕利きたち渾身の傑作群に、あちこちから興奮を隠し切れないため息が漏れた。 ちなみに迎える側である紅魔館の人たちは、全員いつもの制服ではなくサンタの衣装に身を包んでいる。 ちゃんと下がスカートになっている辺り、出来ておる喃 咲夜さんは……。 ……しかし何だ、初めて穿いてみたけど、スカートってのはこう股下がスースーして、その、病み付きになりそうな…… 「馬鹿っ、貴方はズボンでしょう、この倒錯的変態!!」 視察に通りかかったレミリアお嬢様にめっちゃ怒られたので、仕方なく裏に引っ込んで履き替える事にした。 ズボンに履き替えてホールに戻る道中、休憩用の控え室から、これまたサンタ衣装に身を包んだリトルとパチュリーの問答が耳に入ってきた。 一体どうしたというのだろうか。 ドアの隙間から首を突っ込んで覗いて見ると、リトルが顔を真っ赤にしながらスカートの裾を太腿の上っ面辺りで必死に押さえていた。 「あ、あの、パチュリー様。何で私のスカートだけこんなに短いんですかっ?」 「……おかしいわね。ちゃんと貴方の尺に合わせてあった筈なんだけど」 ――何を隠そう、俺の仕業である。 昨晩リトルが寝入ったのを見計らい、こっそりと彼女の衣装を弄くり回しておいたのだ。 「私、こんな恥ずかしい格好で出たくありませんよぉ……」 「何言ってるの、可愛いじゃない。……あ、ほら貴方、ちょっと来なさい」 俺の姿に気づいたパチュリーが、手招きをしてきた。 「はいはい、どうしたんだ?」 「ね、この子の格好、どう思うかしら?」 「最高じゃないか」 即答だった。 「う……」 「ほら、大事な人もこう言っている事だし、観念しなさいな」 「うう……誰の仕業だか知りませんけど、酷いです……」 涙目で恥ずかしそうにしながらモジモジと腰をくねらせる姿に、大いなる達成感が湧き上がってくる。今日もいい事をした。 「まあ、そう嘆きなさるな。あっちに比べれば幸せなもんだろう」 そう言って指差した部屋の奥の方、あちらでは美鈴が咲夜さんに必死に詰め寄っている。 これまた涙目になっている彼女は、犯罪的に瑞々しいビキニサンタの衣装に身を包んでいた。 「ちょっと咲夜さん!! 何なんですか私のこの衣装ぉぉ!!」 「何って言われてもほら、ちゃんと図書館の資料に載っていた由緒正しき衣装なんだけど」 そう言って咲夜さんは、一冊の本を目の前に掲げて、ひらひらと振ってみせた。 『爆淫露出サンタの終わり無き性夜・冥府魔道肉質煙突責めでメリークリスマス編』 「何その最悪なタイトルセンス!! って言うか何でそんな本が図書館にあるんですか!!」 ――何を隠そう、それも俺の仕業である。 しかし、厳重に隠しておいた筈のあのマル秘本を探り当てるとは、恐るべきは悪魔の犬の卓越した嗅覚…… 「もう観念なさい。こういうお祭りには、貴方みたいな鮮やかな花も必要なのよ」 「うぅ……上手い事言って誤魔化そうとしてますね……」 一部の隙も見せない、完全で瀟洒なパワー セクシャルハラスメントだった。 あの熟練の手管、俺も見習わなくては……! 「……そうですね。私、まだマシな方ですよね……」 眼前の無惨な光景に、リトルが同情のため息をついた。 「う~む……それにしても、凄いなアレは……」 美鈴がぶら下げている二つの中国製ジャンボ肉饅頭が、圧倒的な威圧感を放っている。 これが、幻想郷では非常にレアリティの高い能力だと言われている、万乳引力という奴か。 童心に還ってアホの子のように眺めていると、いきなりリトルに頬をつねられた。 「あ痛たたたっ! な、何だよ……」 「……ふんだっ、知りませんっ」 俺が抗議の声を上げると涙目で拗ねたように頬を膨らませて、ぷいっとそっぽを向いてしまった。 こ、これは……!! 「んんんんん可愛いいいいいいいいいいっっっ!!!!!」 ――がばあっっ!! 「きゃあっっ!!?」 その小さな体を抱え上げ、人波溢れる大ホールに向けて大疾走を開始する。 ――ずどどどどどどどどどどどどどどどどどっっ!!! 「おおおおいっっ、みんな見て見てええええ!!! 俺の彼女ったらヤキモチ妬いちゃってもうっ、すんげえ可愛いいいいいいいいいいいっっっ!!!!!」 「きゃあああああっ!! ちょっ、スカートが、降ろしてっ、降ろして下さいいいっっ!!!」 すれ違うメイドさんが生暖かい微笑を見せて、意味も無くクラッカーを鳴らした。 ………… 「……………………」 使い魔と部下の変態行脚から取り残され、控え室を見回してみる。 ホールの方から彼の奇声とリトルの悲鳴が轟き、部屋の中では美鈴がさめざめと無念の涙を流していた。 「…………まあ、平和で何よりだわ……」 ――この愛しき日々よ、どうか永く、永く。 どうせパーティーが始まってしまえば、いつものドンチャン騒ぎになるだろう。 そうなる前に、私は皆より一足早く、神様への感謝を済ませておく事にした。 ………… やがて滞りなく全てのセッティングは完了し、来賓も全員揃った。 乾杯の音頭をとるべく壇上に上がった、主催であるレミリアお嬢様に、まだかまだかと浮ついた視線が集まる。 お嬢様は一つ咳払いをすると、その幼き威容から、凛とした声を張り上げた。 「えー皆様、本日は厳しい寒中に関わらず我が紅魔の館にお越し頂き、誠にありがとうございます。 ……と一応言っておけ、と咲夜に言われました」 凄まじく一言余計だった。 「……それでは、赦し難き我等が怨敵の誕生日を祝しつつ、 今日この日、健やかにこの場に集う事の出来た幸いなる運命に……」 『メリー・クリスマス!!!!!』 祝っているのか呪っているのかよく分からない音頭に、ホール中に響き渡る歓声と、グラスを合わせる音が応えた。 基本的に、料理の追加を担当しなくてはならない厨房の人たちを除いて、 来賓からの用件が無い限りは、俺や下っ端の人たちも自由にパーティーに混じっても良い事になっていた。 まあ、言うなれば無礼講の一種という奴だろう。 辺りを軽く見回してみると、普段あまり関わりの無い人たちも、和やかな雰囲気で談笑出来ているようだ。 「うんうん何より。それじゃリトル、俺たちも回ろうぜ」 「はいっ。あ、でもパチュリー様は……」 「いいわよ、私は私でゆっくり楽しませてもらうから。今晩は二人で心ゆくまで堪能なさい」 「……はい、ありがとうございます……」 「うふふ、そしてパーティーの後は……うふふ……」 粘っこい微笑を浮かべると、パチュリーはボクシングのジャブのように拳を二度突き出してくる。 拳の人差し指と中指の間から、親指が突き出されていた。 「パッ、パチュリー様っっ!?」 「余計なお世話だ!! それじゃ行って来ます!!」 予期せぬ人物からの逆セクハラに二人して大ダメージを受け、慌ててリトルの手を取ってその場を離れた。 平時はセクハラする側だったので気付きもしなかったが、女性から受ける逆セクハラとは、こんなに強烈なものだったのか…… ……癖になりそうだ! 喜ばしい事に、俺のフェチズムにまた一つ引き出しが増えた。 はてさて、どうも美味しい料理というものは、人の性分を悉く剥き出しにするらしい。 「う~ん、旨いなガツガツ、こりゃあ何て料理だモグモグ」 「モグモグあああ美味しいわパクパク、ねえ咲夜ゴクゴクゴク、ありがとうあんた達最高だわムシャムシャ」 「……料理は逃げないし、まだ沢山あるからもう少し落ち着いて食べなさいな……」 最初に覗いた一角では、サバンナの飢えた野獣と化していた霊夢と魔理沙に、咲夜さんが苦笑を浮かべていた。 「迂闊に近寄らない方がいいな、アレは……」 「は、はい……」 一緒に取って食われては堪らないので、そっとその場を後にした。 その後二人でのんびりと食べ歩きを楽しんでいると、最近館内でよく目にする顔と出会った。 忙しなく彼方此方を撮影している様子だったが、俺たちに気付くとカメラを下ろし、爽やかな笑顔を見せてくれた。 「こんばんは、お二人とも。今日はお招き頂いて、ありがとうございます」 「こんばんは、文さん。楽しんで頂けてますか?」 「ええ、それはもう。鶏肉メインなのが少々微妙なところですけど、時節柄仕方が無いですよね」 そう言って微苦笑を返してくるが、それ程深刻に気にしている風でもなかった。 「それよりも皆楽しそうで、いい写真が沢山撮れそうです」 「そっか。それは何より」 「ふふ……そうだ。ね、お二人の写真も撮らせて下さいな。カップルの写真もぜひ押さえておきたいところです」 勿論断る謂われは無い。 リトルと二人並んで文の前に立つ。 「それじゃ行きますよ~~、はい、チーズ」 「憤(フン)ッッ!!!」 文の掛け声に応えて、取って置きのハンサムフェイス ポーズを決めてみせた。 『ひぃぃっっ!!?』 ――ぼふんっっ。 文とリトルの悲鳴が重なり、俺の美貌光線に耐え切れなかったカメラが煙を吹いた。 「しっ、失礼な!!」 「何で貴方が怒るんですか……」 「な、何なんですか今のモザイク必須な表情とポーズは!!……あぁ……私のカメラ……」 文が半べそ状態で沈黙したカメラを弄繰り回している隙に、リトルの手を掴みさっさとこの場を退散する事にした。 「HAHAHAごめんよ文!! 請求書は紅魔館宛にプリーズHAHAHA!!」 「えっ、ちょっ……ご、ごめんなさい文さん!!」 ばびゅー―――ん。 「に、逃げるなあああ!!」 脚を360度回転させて、懐かしのマンガ走りで遁走する。 流石の天狗の足も、このコミック力場においては我がギャグ走法に敵う筈も無かった。 ………… ある程度の時間が経ち、場の雰囲気が落ち着いてきた頃合。 「は~~いっ、皆さん、注目して下さ~~~~い!!」 咲夜さんと美鈴の二人が壇上に上がり、美鈴が持ち味の大声を張り上げた。 会場中全員の視線が、壇上のビキニ一丁のエロサンタに注がれる。 「ああっ!? い、いやその、お願いやっぱり注目しないで」 「何やってるの貴方は。ほら、しっかり仕事なさい」 羞恥に身を縮める汚れ系アイドル風味な門番に、鬼メイド長の有無を言わさぬサドい視線が容赦無く突き刺さった。 「は、はい……おほんっ。……あの、これから事前に告知していたとおりに、プレゼント交換を行います」 『おおおおぉぉぉぉ~~……』 結構楽しみにしていた人も多かったらしく、所々からざわめきが起こる。 さあ、これからもう一仕事だ。 美鈴の告知を皮切りに、入館の際に一度預かり受けていたプレゼント群を、 この時間に合わせて空けておいた中央のスペースに、俺やリトルも含めた下っ端総出で運び込む。 「えっほ、えっほ」 こうして包装されて中身が分からない状態でも様々な大きさ、形があり、なかなかに想像力を刺激してくれる。 程無く全ての荷が集められ、美鈴が再び声を張り上げた。 「それでは皆さん、そこから一つずつ受け取って、輪っかになって下さ~~~い!!」 ぞろぞろと中央に押しかけて来る人たちに、深く考えずに手近な包みを次々と渡していく。 来賓全員の手に渡ったのを確認すると、俺たちも一つずつ包みを手に取り、人垣に加わった。 やがてホールの壁際を伝う形で、一つの大きな人の輪が出来上がる。 不備が無いのを確認すると、咲夜さんが傍らのグランドピアノに腰掛けて、説明を引き継いだ。 「それでは、僭越ながら私が一曲弾かせて頂きますので、 その間、時計回りにプレゼントをどんどん廻して下さいな」 『は~~~~い』 すっかり童心に還りきった返事に満足したように柔らかく微笑むと、 咲夜さんの指先が鍵盤に沈み、軽やかなイントロを紡ぎあげる。 子供の頃によく歌った、『赤鼻のトナカイ』のメロディだった。 ――♪真っ赤なお鼻の トナカイさんは~♪ 事前に練習していた通りに、紅魔館の人々の歌声が響き渡る。 次第に紫さんや慧音さん等、この歌を知っているらしい外部の人達からも歌声が上がり始めた。 和装の輝夜姫や亡霊嬢がこの歌を諳んじる姿に盛大な違和感を覚えたが、まあそこに突っ込むのは野暮と言うものだろう。 ピアノの旋律と人々の大音声が、暖かくホールの伽藍を満たし、プレゼントの包みが一つ一つ手から手へと渡っていく。 ――♪暗い夜道は ピカピカの お前の鼻が 役に立つのさ♪ 「♪暗い夜道は テカテカの お前の××が 役に立ぶふっっ」 両隣のパチュリーとリトルに、鉄拳で両頬を挟まれた。 ――♪いつも泣いてた トナカイさんは 今宵こそはと 喜びました♪ 「――――はいっ、ストーップ!!」 一つ強く鍵盤を弾き、咲夜さんの制止の声が響く。 回り回り、元が誰の物とも分からなくなったプレゼントが各人の手に行き渡っていた。 「お疲れ様でした。今お手元に収まっている物が、皆様へのプレゼントでございます」 大きな拍手が沸き起こり、お待ちかねのスーパー開封タイムだ。 彼方此方から黄色い歓声が上がり、この面子では極めて珍しく、和気藹々としたムードに包まれる。 そんな微笑ましい情景に思わず笑みがこぼれ、さて、自分の手元に巡って来た包みに視線を落とす。 「……でけぇ……」 何だか随分と重量感溢れる箱だった。 丁重に包み紙を剥がし、そこから現れた物は…… 「……なに、それ」 隣から見ていたパチュリーが、訝しげな声を出した。 ――いかにも使い古された風情の、中華鍋。 「だっっ、誰だこれはあああっっ!!!」 「はいはい、それ私のだわ」 俺の絶叫に、紫さんが手を挙げて応えた。 「この野郎!! これプレゼントって言うより、アンタん家の粗大ゴミじゃねえか!!」 「あら失礼ね。人から貰った物に文句を付けるなんて、お里が知れてよ」 紫さんの挑発的な視線に、俺の憤怒の炎が激しく燃え上がった。 「ど許せぬ八雲紫!! いざ尋常に勝負せい!!」 人差し指を突き立てて宣戦布告、中華鍋を身構える。 「まあ勇ましい事。……言っておきますけど、今の私には誰も勝てないわよ?」 不敵に口元を笑みの形に歪めると、紫さんはプレゼントの箱から取り出したガ○ダムシールドとビームサーベルを身構えた。 「なっ!!? だ、誰があんな恐ろしい兵器を……」 「うぐっっ」 喉を詰まらせるような声が横の方から聞こえたのでそちらを覗い見ると、香霖が必死に笑いを噛み殺しているのが見えた。 ……お前か。 しかし、今はそのような事を気にしている場合でもない。 脅威の新型MSと化したニュータイプゆかりんには、針の先程の隙も見当たらなかった。 何時の間にか周りの人たちがギャラリーと成り果て、囃し立てるように歓声を送ってきており、退くに退けない状況となっている。 俺の頬を、冷たい汗が伝い落ちた。 「――助太刀しますよ、紫さん」 さらに状況を絶望的にする声が、人垣の中からかかる。 「ふ、ふふ……カメラの恨み…………」 ゆらりと歩み出てきた文の右手には、よりにもよって俺が用意したブーマーのサイン入りバットが握られていた。 幾百幾千の名投手を血祭りに上げてきた、伝説の銘刀だ。 ……これ、ちょっと洒落にならなくね? 「くっ、すまんリトル。助太刀を頼む」 「は、はいっ。及ばずながら」 慌ててリトルが自分のプレゼントの包みをごそごそと剥がす。 そこから姿を覗かせた物に、彼女の顔にパッと驚き混じりの笑みが輝いた。 「わああっ、可愛い!!」 ――いかにも乙女風味全開な、クマさんのぬいぐるみ。 「う~~~ん、ありがとうございます。こういうの、欲しかったんですよ~~」 すりすりすりすり。 目尻をとろんとろんに垂れ下げて、いかにも幸せそうにクマさんのお腹に頬擦りする姿に、 『……………………』 揃いも揃って毒気を抜かれた。 「……すまなかった、紫さん。よくよく見れば、程好く油が染み込んだ使い易そうないい鍋だ」 「……いえ、喜んで頂けて何よりだわ……」 「……カメラは、直せばいいだけの話ですよね……私も少し狭量でした」 天下泰平カタルシス万歳。 「でも、どなたが御用意してくれたんでしょうか、このクマさん」 「ああ、それ私の」 リトルの疑問に、永琳さんが手を挙げて応えた。 『嘘だッッッ!!!!!』 ――会場中の怒声が、一つに揃った。 ………… さて、プレゼント交換も終了して立食パーティーに戻り、宴もたけなわと言ったところか。 一同いい感じに酒が回り、そろそろ場のテンションが怪しい感じに盛り上がり始め、 酔い潰れて救護班送りになる人もちらほらと出始めた。 いわゆる、地獄開始という奴だ。 「おお~~いっ、芸の出来る奴はおらんかね~~」 「ふっふっふ、ここは一つ私たちが。ほら」 「あ~はいはい、しょうがないわね」 オッサンじみた魔理沙の呼び掛けに、てゐと鈴仙のイナバーズが応えて前に出た。 どいつもこいつもアルコールで真っ赤な顔をしている。 「さて皆様、ここに取り出だしたるは、タネも仕掛けも無いチョコクリームクッキーとブラッドオレンジジュース」 てゐが、手に取ったクッキーとグラスを鈴仙に渡す。 「……? コレをどうするの?」 よく分からない、という風に眉を顰める鈴仙に、てゐがチッチッ、と人差し指を振った。 「コレを同時に食べると、何と!!」 「?」 鈴仙は合点のいかない様子ながらもてゐの口上に従い、クッキーを咥え、幾度か噛んでオレンジジュースを口に含んだ。 「…………何と、雑巾のような味が!!」 「うぶうううっっ!!!」 鈴仙の頬が、風船のごとく一気に膨張した。 「アホかアンタ達っっ!!」 「だああっ、頑張れ鈴仙、ここで吐くなよ!?」 「うっ、ぐっ、ぐぐぐ……」 顔色を真紫に変えた鈴仙が、口元を必死に抑えながらこくこくと首を縦に振る。 「あーもうっ、誰か急いでバケツと砂!!」 咲夜さんの指示を受けて数名のメイドさん達が慌てて走り、 この場に残った妙に顎の尖ったメイドさん達が、外道詐欺兎を囲みスペシャルリンチに祀り上げた。 『カスッ…………ゴミッ…………クズッ…………!』 ――ドカッ、ドゴッ。 「ううっ……!」 ……ざわ………… …………ざわ…… 「……あの、ごめんなさい。何だか、私も少し気分が……」 隣から聞こえた弱々しい声に振り向くと、リトルの顔から若干血の気が引いており、いつもより肌が白く見えた。 そう言えば、彼女はあまり酒に強い方ではなかった。 場に合わせて少し無理をしていたところで、眼前の惨劇に中てられてしまったのだろう。 「おいおい、大丈夫か?」 「はい……少し休めば大丈夫です」 俺に気を遣って笑ってくれてはいるが、これはどう見ても宴の空気に浮かれていた俺の注意力散漫だろう。 どうしたものかと辺りを見回してみると、丁度いい所に丁度いい人がいた。 「お~~い、永琳さ~~~ん」 自分の家の兎がリンチにかけられるのを何故か楽しそうに観ていた永琳さんが、俺の呼び声に振り向きこちらに歩み寄って来た。 「……はいはい、どうかしたの?」 今日の彼女は黒を基調にしたシックなドレスに身を包んでおり、いつもと毛色の違う淑やかな雰囲気を見せていたが、 右手からぶら下がった一升瓶が、見事にその雰囲気をブチ壊しにしていた。 「お楽しみ中に悪い。ちょっとこの子の気分が悪いみたいなんで、診てやってくれないか?」 「どうもすみません……」 「あらら、ちょっとはしゃぎ過ぎたのね。それでは少々失礼」 永琳さんは面倒臭がる風も無く軽く微笑むと、リトルの指を取り、続いて首筋、おでこへと指の背中を当てていった。 「……ふむ。体温等に別状は無いみたいだし、アルコールさえ抜けてしまえば何の問題も無いわ。 どうせ当てにされると思って、特別性の酔い醒ましを持って来てるけど……よかったら飲む?」 「どうもすみません。それじゃ、お言葉に甘えさせて頂きます」 「よろしい。私、素直な子は好きよ」 そう冗談めかして笑うと、永琳さんは胸元のポケットから蝋紙の包みを一つ取り出し、リトルの手の平に落とした。 「ありがとうございます。それでは……」 受け渡された粉薬がリトルの喉を滑り、グラスの水で流し込まれる。 「…………わっ、凄い。一瞬でスッキリ……」 信じられない、という風にリトルが瞳をパチクリさせた。 「ふふ、永琳お姉さんの特効薬を嘗めて貰っては困るわね。 ……ただね、良薬口に苦しとはよく言ったもので、その薬にも副作用があってね……」 「え?」 「――バストが、15cm程度大きくなるの」 ――ぼよんっっっ。 「きゃああああっっ!!?」 「うおっっ」 中からガスを吹き込まれたかのように急激にリトルの胸が膨れ上がり、胸元のボタンが一つ弾けた。 「ちょっ、ちょっとこれっ、なななっ……」 慌てて両腕で胸を抱え込むように隠そうとするが、それでも服の下からまろび出る圧力を抑え切れない。 「うわあああ!! すごい、すごいよえいりんさん!! あんたてんさいだよ!!」 あまりの絶景に脳の働きの大部分を視覚に奪われ、俺の言語体系も激しく劣化してしまっていた。 「え、永琳さんっ、こんな、こんなの酷いですっ。……っ、ふえええぇぇんっ」 泣きべそをかきながら抗議の声を上げるリトルの頭をくしゃっと撫でて、永琳さんは笑った。 「あらら御免なさい、泣かないでちょうだいな。 残念ながら10分程度経てば元に戻るから、安心してちょうだい」 ……そいつは本当に残念だ。 心の中で一つ舌打ちをすると、こういう事にはまったくもって目敏い霊夢が、永琳さんに擦り寄ってきた。 「ねえ永り~~ん、私も酔っちゃったから、そのお薬ちょうだ~~い」 『……………………』 あまりに惨めなさもしさに、遠巻きに見ていた人々から哀しみの嗚咽が漏れた。 「はいはいしょうがないわね。そんな健気な巫女には、一番強力なのをプレゼント」 「あっ、ありがとう!!」 礼を言うのももどかしそうに永琳さんの手元から包みをふんだくると、一気に中身を飲み干す。 「…………あら、本当に凄いわね。スッキリ」 「その辺抜かりは無いわよ。ちなみに、一番強力なその薬の副作用はね――」 「ふ、副作用はっっ!!?」 わくわくが止まらない霊夢に、永琳さんが地獄の悪鬼のような邪悪な笑顔を浮かべた。 「――ウエストが、15cm程度大きくなるの」 ――ぶよんっっっ。 「きゃああああっっ!!?」 「うおっっ」 中から餡子を詰め込まれたかのように急激に霊夢の腹が膨れ上がり、腰紐の結び目が弾けた。 「ちょっ、ちょっとこれっ、なななっ……」 慌てて両腕で腹を押さえ付けるように隠そうとするが、それでも腹の肉からまろび出る圧力を抑え切れない。 「ぶははははっっ!! 凄い、凄いよ霊夢!! アンタ見事なドラム缶だよ!!」 あまりの寸胴ぶりに腹の働きの大部分を馬鹿笑いに奪われ、俺の腹筋も激しく崩壊寸前だった。 「えっ、永琳っっ!!! こっ、こんなの酷いブヒ」 語尾に『ブヒ』とか付けながら抗議の声を上げる霊夢の頭をくしゃっと撫でて、永琳さんは嘲笑った。 「あらら御免なさい、もっといい声で泣いてちょうだいな。 喜ばしい事に一週間程度経たないと元に戻らないから、絶望してちょうだい」 ……長っっ!! 「う、う~~~ん」 「きゃっ、れ、霊夢さん!?」 永琳さんの鬼畜極まりない宣告が精神のボーダーラインをブッ千切ってしまったらしく、 気を失って倒れこむ霊夢の体を、慌ててリトルが支えた。 「う~ん、酒と薬って怖いよね……」 「上手い事まとめたつもりかしら」 だって、何だか収拾つかなくなってきたんだもんよ…… ………… 何とか状況も落ち着きを取り戻し、再び悠々と歩いていると、とある集まりに目を奪われた。 レミリアお嬢様と魔理沙と、……あと一人、初めて見る顔があった。 あの容姿と雰囲気は、ひょっとして…… 「……なあリトル。あれって……」 「はい。レミリアお嬢様のご姉妹、フランドール様です」 「そっか、あの子が……」 何度か話に聞いてはいたが、実際目にするのは今日が初めてだ。 大きく身振り手振りを交えながらレミリアお嬢様や魔理沙に爛漫に話しかける彼女の姿は、とても……とても、楽しそうだった。 レミリアお嬢様も、普段決して俺たちの前では見せないような、深くなだらかな眼差しを妹様に向けていた。 「……行こうか。邪魔するのも悪い」 「ふふっ。そうですね」 今日は、地上に生ける人々が、日々の幸せに感謝を捧げる祭日だ。 悪魔が幸せになったところで、神様としても文句は無いだろう。 …………………… こうして比較的大した混乱も無く、無事パーティーは大成功と言っていい成果を残して終了の時を迎える事が出来た。 『お疲れ様でした。お気をつけて~~』 「こちらこそ今日はありがとう。良いお年を」 最後に残った八雲一家を見送り、これで残る役目は会場の後片付けのみ。 だが俺にはそんな事よりも、日付が変わって聖夜が終わってしまう前にやらねばならない事があった。 「……なあリトル。ちょっといいかな。大事な話があるんだ」 「えっ? でも、これから片付けが……」 「いいからいいから。俺たち二人くらい抜けたって、そう変わりは無いって」 少し強引に彼女の手を引いて、こっそりとホールを抜け出した。 ………… 「あ、パチュリー様。あの二人、何処に行ったかご存知ありませんか? もうっ、この忙しいのに……」 流石に今日は疲れたので椅子に腰掛けて休ませて貰っていると、下っ端のメイドの子が私に慌ただしく尋ねてきた。 「…………御免なさいね。二人には私から別の用事を頼んじゃったの。 申し訳無いけど、こっちの片付けはあの子達を省いて考えてちょうだい」 「そうだったんですか。……ふぅ、それならしょうがないですね。一丁頑張りますか!」 一念発起、袖を捲り上げて気合を入れると、彼女は踵を返して再び仕事の山へと挑みかかった。 ……まったく、世話の焼ける二人だこと。 最初に彼も言っていたが、クリスマスとは、常からの幸いに感謝を捧げる祝事である。 降りしきる星と波打つ雪に囲まれながら、甘く流れる神代の鐘。 友人との幸い、家族との幸い、そして…………恋人との幸い。 「……ふふ、完璧じゃないの」 ………… ホールを抜け出したそのままの勢いで、スルスルと三階の共用バルコニーまで逃げおおせた。 「……と。この辺でいいかな」 一階に住人全員が集まっているこの状況では、流石にここまで来れば誰にも見つかるまい。 地階から、修羅場の喧騒が微妙な振動をもって足元に伝わってくる。 窓から外を覗いてみると、館から漏れる灯火を深々と降りしきる粉雪が照り返し、庭の草木をほの紅く染め上げていた。 「もう……話って何ですか一体? あんまり遅れると、後で咲夜さんが怖いですよ」 「うん、それなんだけどさ。……ちょっと両手、出してくれる?」 「? ……はい…………」 キョトンと差し出された両の手の平に、ズボンのポケットから取り出した小箱を乗せた。 「メリークリスマス。俺から大切な恋人に、プレゼント」 「ええっ? そ、そんな、悪いです」 「いいから、開けてみてくれ」 「……、…………は、はい……」 らしくも無い俺の緊張が伝わったのか、彼女の細い指が、そっと神妙に小箱を開け放つ。 ――その身の半ば程を小箱に埋めた指輪のダイヤモンドルースが、室内灯の薄紅色の灯りを一筋照り返した。 「……………………」 「……………………」 「……………………あ、あの」 呆然とした表情でカクカクと俺の顔と指輪に視線を動かしながら、搾り出すような声。 「その……これ、って……」 「……うん。多分君が想像している通り」 「……っ……」 俗に言うところの、給料の三ヵ月分という奴だ。 「――ただ今より、俺から君に、今生今身のお願いがあります」 「…………はい」 大切な、俺の大切な小悪魔の少女が、背筋を伸ばし姿勢を改めて、期待のこもった眼差しで俺の言葉を待っている。 もうここまで来たら後には退けない。俺は覚悟を決めて、一つ大きく息を吸った。 「その、さ。……俺が君につけたリトルって名前に、 もうひとつ……苗字を加えて欲しいんだ」 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/naohmylist/pages/168.html
←前の月 現在のページ 次の月→ 2014年06月 2014年07月 2014年08月 計100曲 2014-07-01 (2) 機械声探偵ミリィ / エイシア 処女作 古郷 / しめへび 2014-07-02 (3) Cause Baby I Love You / みらいず 処女作 星屑アステリズム / わか 少女Yの現実逃避 / AIR田 2014-07-03 (1) 雨音逃避行 / key757 処女作 2014-07-04 (5) アイズ / 峰岡利治 レイズ / ナブナ からふね / mokemoke 僕らの存在論的観測 / 市瀬るぽ やさしいハリネズミ / しばいぬ 2014-07-05 (3) 休日のフライト / クロワッサンシカゴ ケムシ / くまま 涙の唄 / 結愛 2014-07-06 (4) nu+starlightz / うっc NONOMURA / ちまさる bbb take2 / Vader 必ずドクターが点滴を打つ理由 / ナノリータ 2014-07-07 (4) ミカヅキ / けーだっしゅ ○○○○○ / やいり 死ぬ蝉は考える。 / Haniwa 晴天*Every day* / DISPERSION flY 2014-07-08 (3) アートマン動物園 / サイオナP 月曜の海 / 青屋夏生 この声のその理由は / りねず 2014-07-09 (1) 従属ふりったー / 電ポルP 2014-07-10 (1) ツラクナクナイ / さえか 2014-07-11 (5) ラストライト / はるまきごはん 尊厳間引かれユートピア / あんやほ 冷たい灯火を / 音坂キョーヘイ Sweet heart / パピ子りん 全速力協奏曲 / Omoi 2014-07-12 (2) ロースクール無法協定 / ラスキー カリブの海賊 / なす 2014-07-13 (4) on the train / Digital itako バラ殺し / 透 とっておきの願いごと / Jirno ボーマスブルー / アンメルツP 2014-07-14 (1) 君に夢中... / 816 2014-07-15 (2) クレタポッコ / rjnk 処女作 雛菊 / Parapodisma 2014-07-16 (4) CO / 素粒子49 ポワソン・ダヴリルについて / メル Sweet Heart / u160 celestite / narry 2014-07-17 (4) rararanouta / ゆるポート アンノウンサイエンス / CROSS アネモネ / 238 ストーリー / U- 2014-07-18 (2) 白と黒の現実世界 / Fuji(141hP) 百花繚乱 / ぱるねP 2014-07-19 (4) disappear / forute カレルセツナ / retro 色彩の世界線 / ガムシロップ Ryrie / risou 2014-07-20 (4) Aquatronica 電影水族館 / D elf 箱の中の学者は言う / クロワッサンシカゴ Reflection / 空海月 たまごのこころ / 木村わいP 2014-07-21 (5) カミサマサイン / きいろ Chu★毒 / かずくんP 夢、漂う / iNOI 処女作 小悪魔なI / おくみゅう One Only / momentarily 2014-07-22 (3) 蛍火に浮かぶ真夏の幻 / 飛翔 処女作 おもちゃのあさ / さえか みやまいり / もぐもぐぽてち 2014-07-23 (1) 恋愛至上主義 / ぽにょP 2014-07-24 (3) BU-LA-LA / PIROPARU lonely / ハドウケン 雨に咲いた奇跡 / Yoshiuh 2014-07-25 (5) インターカレーション / mokemoke 盲目リンゴ / じっぷす アイロニックメタファー / 蝶々P ラストシーンに悪魔は要らない / Eight 清姫道成寺 / デッドボールP 2014-07-26 (6) 肩重い / だだ 僕らの記憶 / グラトニー 寂寞の種 / TaKU.K シナモンルーム / クロワッサンシカゴ shit / 松傘 ソコイ「ヂ」メンテナンス / におP 2014-07-27 (4) 雨降りララバイ / 緋色 玉袋を蚊に刺された / 木村わいP Ocean Rain / 空海月 八月の人へ / 軒下 2014-07-28 (1) カステラ / じたばたP 2014-07-29 (5) Skygazer / lemo_mis 奇跡*Indication / やいり ラブ イズ オノマトペ / ピノキオP 道草トリップ / ねじ式 小さな丘の木の下で / フジタダイキ(Wisteria) 2014-07-30 (3) stAR t RAin -幽霊少女と星と雨- / アラブルドアP Party Junkie (colate remix) / colate 瓦落多遊び / あな兄 2014-07-31 (4) Refugium / ラマーズP WHOLE LOTTA LOVE / アズマビ ユウコ Anti Selector / 糞田舎P 聴シ / いぬマシン 処女作
https://w.atwiki.jp/pokess-keeping/pages/17.html
小悪魔系ゴスロリ
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/584.html
小悪魔1 1スレ目 317 小悪魔の手記 ○月○日 晴れ 『パチュリー様から日記を頂きました。 これで管理カードとは違うわたしの記録がつけられます。 とりあえず今日のこの日から毎日日記をつけようと思います。』 ○月×日 曇り 『今日はある人が紅魔館に働きにきました。 男性の方で、多分人間界からの人なのでしょう。わたしが本の整理をしていたら それを手伝ってくれました。人間にしては優しい方みたいです。』 ○月△日 雨 『雨が降っても図書館の仕事は変わりません。しょっちゅう本を借りては 返さない魔理沙さんの対策を考えたり、暇つぶしをされていたメイドさんたちの 本の返却に忙しかったです。その日のあの人はパチュリー様の魔導書を 読んでいました。結局、読みきれなくて借りて行かれましたが、その時に 「やっぱり、貴重な本は二日以上借りれないな…。明日中に返すよ」 と仰いました。本を返すのは当たり前なんですけどね…。出来れば魔理沙さんにも 見習わせたいと思いました。』 ○月□日 晴れ 『今日は特に事件や事故なんかもなく普通の一日でした。 彼も仕事をスムーズに覚えていって。魔理沙さんが本を持っていこうとするのを 止めようとしたら魔法を打ち込まれてしまい、しばらくの間はお休みだそうです。』 この先一ヶ月以上の空白が存在する。 △月□日 雨 『ようやくあの人がお仕事に戻ってこれるようになりました。 やはり人間ですから、どこかしら脆いんでしょう。ですが治ってよかったと思います。 図書関係のお仕事はやっぱり人が多い方が良いですから、わたしも仕事が 減って少しは嬉しいです。それよりもパチュリー様が嬉しそうでした。 どことなく彼と話す事を…恥ずかしがっているような…そんな感じでした。 やっと日記を書くことが出来るようになりました。 最近は特に書くようなことがなくて 良かったです。』 △月×日 晴れ 『今日はあの人が体調不良でお休みでした。メイドさんたちにお休みがありませんが、 わたし達には体調不良に関してのみお休みがもらえます。だって環境が環境ですから。 いつ病気になってもおかしくありません。怪我から帰ってきてから数日で病気で欠勤 とはあの人も結構、運が悪いのかもしれません。パチュリー様も寂しそうでした。』 □月▽日 雨 『パチュリー様から衝撃の事実を聞きました。 パチュリー様はあの人が好きだって事を…。何故か聞いてから現実でないような感覚に 陥りました。あの人はいい人ですからパチュリー様が好きになるのも分かります。…けど 何と言えばいいのか、わたしの心の奥底で何かが重くなっていました。』 □月○日 晴れ 『…気付いてしまいました。 わたしは彼が好きという事を…。気付いたのはメイドの一人に、わたしの感情について 聞いた事から始まりました。彼女が言うには 「あなた、それは恋よ」 ということらしいです。呆れ気味に言われたのでちょっと困りましたが、確かに思い当たる節は いくつもあります。やっぱり、わたしは彼に恋をしたようです。』 ×月×日 晴れ 『最近あの人とパチュリー様の様子がおかしい気がしました。 多分、何かあったのでしょう。彼は今まで二週間に一度程度の失敗していたのが 一週間連続でミスするようになってしまったのです。 ある日、彼にその事を聞いてみると必死に誤魔化すという、分かりやすい答えが返ってきました。 多分、彼もパチュリー様のことが好きなんでしょう。だったら、わたしはその想いを繋げるだけです。 元気付けたらお礼を言われました。 あぁ、やっぱりわたしは彼が好きみたいです。』 ×月□日 曇り 『翌日、パチュリー様は体調が優れなかったのでお休みでした。 とりあえず作業を早々に切り上げて彼をお見舞いに向かわせました。 ……さすがに両手いっぱいに物を持っていてドアを開けられなかったので 開けるのを手伝ってあげました。 その日は閉館時間を早くしました。 わたしは自分の部屋に戻って、少しだけ泣きました。 きっとパチュリー様と彼の思いは叶ったのでしょう。 でも、わたしは彼に想いを伝える事が出来なかった。でも――』 この先は滲んでいて読めなくなっている 後日―― 「おめでとうございます。――さん」 わたしは今祝福をするために、ここに来ていました。 彼とパチュリー様の結婚式に…。 「…ありがとう。キミのおかげで俺はこうなる事が出来た」 「いえいえ、私はちょっと後押ししただけですよ。だから、こうなったのはあなた自身のおかげです」 そう、パチュリー様と…わたしの心を射止めたのは間違いなくあなたなのですから。 「…それでも、ありがとう」 この実直な性格とお礼の言葉が何よりも嬉しい。 「どういたしまして」 そう言い残して、わたしは祝福する声の渦に入っていきました。 「…さぁてパチェ、そろそろブーケを投げなさい」 結婚式で神父の役をしていたお嬢様も既に着替えて、ブーケが投げられるのを今か今かと 待っていました。 他の人たちを見ると、魔理沙さんや他の女性達もそれを待っているのか、妙に そわそわしています。 「パチュリー」 「…えぇ」 パチュリー様が両手にブーケを持って上空高く――投げました。 そのブーケは吸い込まれるようにして、わたしの手元に落ちてきました。 どうやら次は、わたしが幸せになる番のようです――。 後書き えぇ、書いている内にわたしも幻視が見えました。 それから即座に書き始めたのがこれです。 正直、稚拙で出来が悪い文章ですが想いを書き殴りました。 1スレ目 671 675-676 678-679 自分でも馬鹿みたいだ。 そんな事を考えながら、俺は、紅い館の図書館に侵入していた。 面白そうなものが沢山とあるこの館で、俺はひとつの目当てを探していた。 目当てと言っても、高価な指輪とか宝石とか、そんなに小さいものではない。 俺が目当てで潜入しているのは、たった一人の人…。 人と呼ぶのは語弊があるかもしれないが。 暗闇の中、足音を消して進む。泥棒の真似事をした日々が、 こんな時に役に立つとは思わなかったが。 「…さて、居るかな?」 あくまで気配と足音を立てずに進む。 他の人に見つかるわけにもいかないし、何よりも『彼女』に出会うには夜中のこの時間帯に こうして侵入しなければならない。 と、三つ目の本棚を曲がろうとしたとき、奥の方に微かな明かりが見えた。 どうやら『彼女』のようだ。 俺は気配を消しながら、彼女の後ろに回りこむ。 後姿からもはっきりと『彼女』と判った。 そのまま、俺は近づき後ろから彼女を抱きしめる。 「っ!?」 「静かに…」 驚きは腕の中の様子で既に判っている。腕と身体で『彼女』の体温を感じる。 『彼女』はなすがままになっている。 「あ、あの…」 『彼女』が大人しい声を上げる。 さすがに、きつく抱きしめすぎたか?腕の力を緩めると、『彼女』はゆっくりと離れていった。 「…また来たんですか?」 「あぁ、あんたに会いにね」 初めて見たのはとても遠くから、俺はその時から『彼女』に一目惚れしていたのかもしれない。 名前は知らない。『彼女』も俺の名前は知らないだろう。 初めて見かけたその日の夜から、ずっと今まで俺は夜中の屋敷に入り込み続けた。 「え、えと、早く帰られた方が良いですよ。朝にはパチュリー様も起きる頃になってしまいますから」 パチュリーとは『彼女』の主人の名前だったか。いや…そんな事は、どうでも良いかもしれない。 「あんたとは、長く居たいんだ。出来れば、朝までね」 俺の台詞に対して『彼女』の頬は赤くなった。 脈はあるか知らないけど、俺は間違いなく『彼女』のことが好きだ。 出来れば、この想いだけは『彼女』に伝えておきたかった。 「ご冗談はそこまでにして下さい。本当に取り返しがつかなくなりますよ」 「オーケー、分かった。…でもさ、明日も来るぜ?」 俺は『彼女』の頭に軽く手を置くと、侵入した経路を逆戻りしていった。 明日こそは…伝えよう、この想いを――。 その日は微かに紅い月の出る夜だった。 俺は彼女の紅い館で働く彼女の事を思い出す。 「今日こそ、だな」 ポケットの中には、ある場所から盗った…もとい、見つけた指輪が入っている。 その重さは、俺の想いの全てだ。 いつものルートを辿り、図書館に再び辿り着く。 「はぁ…」 断られたらどうしよう。なんて考えはずっと頭を巡っている。 けど、そもそも伝えないと先にも進めない。なけなしの勇気を奮い立たせる。 図書館に入って、まず最初に『彼女』の明かりを探す。 それが『彼女』を見つける目印だ。今の時間なら、間違いなく居るはずだ。 目印を探しながら、俺は誰にも勘付かれないように静かに歩く。 拍子抜けするくらい簡単に明かりは見つかった。 目当てだった『彼女』は机の上にちょこんと座っていた。 問題なのは、いつものように彼女を後ろから抱きしめる事が出来ないってとこか。 その位は仕方ないか…。俺は割り切って彼女に近づいた。 「や」 「あ…」 俺の登場に驚いたのか、『彼女』は目を瞬かせた。 これで皆勤賞か。ここに来るのを今日が最後の日にするつもりだから、皆勤賞は 欲しい所だ。 「今日は、ちょっと言いたい事があって来たんだ」 「…私も、あなたに言いたい事があります『泥棒さん』」 『泥棒』か、間違ってはいない。むしろドンピシャだ。 向こうがそんな風に呼んでくれる事も、ちょっとだけ嬉しかった。 「お話があるなら、どうぞお先に」 「あ~、先に言っていいなら…先に言うよ」 言え。言うんだ俺。今まで『泥棒』だったなら、今くらいこそこそするのを止めろ。 言ってやるんだろ?目の前の『彼女』にさ。 頭の中は軽くパニックだった。 「俺は、初めて会った時からあんたが好きだった」 「…そう、なんですか」 意外と淡白な反応だった。 「あー…っと、あんたの言いたい事って何だ?」 「言いたい事というよりは…クイズですね。 『泥棒さん』、あなたは…今までいくつの物を盗みましたか?全て挙げてください」 彼女から言われたのは、それだけの問いだった。 ある意味でそれは難題だった。俺が盗んだもの?それを全部だって? 「もし答えられなかったら?」 「あなたの返事をお断りします。あと、私の言う事でも聞いてください」 言うね。この小悪魔さんが。何を言う気なのやら。 俺の記憶だったら、挙げられるものは幾つもある。 今まで人から『盗んだ物品』。 『彼女』と話していた時の『知り合いから盗んだ話』。 幻想郷で『盗んだ名前』。 もはや俺が挙げられるのは、こんなものだ。 それでも、それだけ覚えているだけ奇跡に近い。 「…それだけですか?本当にそれだけですか?」 俺の記憶が正しければ、それが全て盗んだものだ。 幻想郷に来てから手に入れたものの、ほとんど全部に近い。 「あぁ、これが俺が盗んだ全部だ」 「…どうして」 彼女が呟く。 その声は涙声だった。 「どうして、『私の心』が無いんですか?あなたが勝手に好きになって… 私にはあなたを愛する資格が無いんですか?」 彼女は泣きながら、俺に抱きついてきた。 そうか。 彼女は愛して欲しかったし、人を愛したかったのか。 …俺はとんだ馬鹿野郎だった。 一方的に愛するだけ愛して、彼女の愛を受けようともしてなかった。 最悪だ。 「悪い」 「…ぐすっ」 泣き止むように彼女の背をぽんぽんと叩いてやる。 昔から泣いている奴を、泣き止ませるには俺はこうするしか知らなかった。 「さて、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」 男に二言は無い。 むしろ食われたら意味無いけど、それも本望だったりする。 「泥棒さん」 「…何をする覚悟も出来てるさ」 何なら切腹しても構わない。 痛いのは普通勘弁だけど、愛ゆえなのか、俺は『彼女』に対してだったら何をしてもいいという 覚悟すら出来ていた。 「…えっと、私があなたに頼む事は」 彼女は目をあっちこっちにやったりしながら、赤くなり急にそわそわし始めた。 「…その、わ、私を…」 「あんたを?」 「私を盗んでくださいっ!」 その声は図書館内に響いた。 …今、彼女は何と言った? 『私を盗んでください?』 「悪い、あまりにも意味が遠回しすぎる。いかがわしい意味にも聞こえるから、 もうちょっと…出来れば具体的に…」 「あぁ~、ごめんなさい…。えっと、私を紅魔館の外に連れて行ってください」 あぁ、何だそういう事か。 「…出た事が無いのか?」 「その…恥ずかしながら、外に出るのが怖くて」 そういう彼女は呟きながら俯いてしまった。 辛うじて赤い顔という事が分かった。 「おし、なら俺が泥棒としてあんたを連れて行ってやる。 じゃ、予告だ。『あんたを盗むぜ』」 そう言いながら、彼女を抱えた。 やはり身体に合っている分、彼女の体重は軽かった。 たとえ彼女が重くても文句は言わないけどな。 「さて、ご到着~」 俺が辿り着いたのは紅魔館の屋根だった。 とりあえず、ここからなら待っていれば、綺麗な朝日が見ることが出来る。 何でも彼女はあまりにも忙しすぎて、本当にただ一度も外に出る事が無かったそうだ。 「…わぁ」 朝日の光が広がった。 光が彼女を照らし、闇で黒ずんだ館を再び紅く戻していく。 「ありがとうございます」 「どういたしまして…こんな物も――」 手にあるのは盗んで手に入れた指輪。 「…要らないなっ!」 朝日に向かって放り投げる。妖精のいる湖に落ちていくのが見えた。 これは決心だ。 「俺さ、泥棒からは足を洗うとするよ」 「…言っていいですか?」 「何をだ?」 「えっと…私は――あなたが好きです」 この紅い館の屋根で俺と『彼女』は抱き合っていた。 1スレ目 708 「つまんねえ・・・・・・・」 近所の公園で手の中の缶コーヒーを弄りながら俺は呟いた。 いつもどおりの毎日、無感動にただ日々を過ごしていく。 今まではそれは苦でもなんでもなく、当たり前のことだった。 だが、幻想郷からこっちの世界に戻ってきて以来どうもしっくりこない。 半年ほど前、ふとしたことから俺は幻想郷という場所に気がついたらいた。 そこの紅魔館と言う場所に厄介になりながら、元の世界に戻る方法を探していた。 1ヶ月前になんとかこちらの世界に帰ってくることが出来たのだが・・・ 戻ってきてからこの一ヶ月に比べて、幻想郷での日々はいかに生を実感できていただろうか。 「いやまあ、毎日が冗談じゃなく命がけだったわけだが・・・」 紅魔館での俺にあてがわれた仕事は館にある図書館の手伝い。 最も男手が必要な仕事がそれらしかったのだが・・・ このヴワル魔法図書館、さすが魔法と名が付いてるだけのことがあり蔵書の取り扱い方がが半端じゃなく厄介で、本にかかっている呪に殺されそうになった回数も、軽く二桁は越してたように思う。 さらにこの図書館の本を狙って、ほぼ毎日といっていいほどの頻度で襲撃がおこる。 普通の魔法使い 霧雨 魔理沙 この少女以上に『嵐』という表現が当てはまる存在を俺は知らない。 彼女の襲撃の度に行われる、魔理沙と紅魔館のメイドたちがが繰り広げる弾幕戦に、単なる一般人である俺は逃げ惑うしかなく、流れ弾に当たりそうになった回数は数え切れないだろう。 というか、今こうして生きていられるのはリトル---ヴワル魔法図書館で司書をしていた---が助けてくれなければ、俺はこうして生きていられたかも怪しい。 「ああ、そういえば・・・リトルのやつ、元気にしてるかな・・・? また、何かヘマをしてなければいいけど・・・」 優秀なはずなのに何処か抜けていて、目を離していられなかった少女を思い浮かべる。 彼女の優しさに、微笑みに俺はどれだけ助けられたのだろう。 なれない環境に戸惑っていた俺を助けてくれていたのは、いつも彼女だった。 彼女が居たから俺はあの場所で生きていけたと言っても過言ではない。 ああ、なんだ・・・こっちの世界がつまらなくなったんじゃない。 此処には彼女が居ない・・・それだけなんだ。 俺は・・・あいつが・・・好きだったらしいのだから・・・・・・ 「は、ははは・・・・・・ 今さら、気が付いたって遅いだろうが・・・ もう、戻ることなんて出来やしないんだ・・・!」 俺が今此処にいるのは自分で選んで決めたことだ。 幻想郷の面々もなんだかんだ言って色々と協力してくれた。 そのおかげで俺は此処にいる。 その彼女たちの好意を無下には出来ないし、なにより・・・ 半泣きになりながらも、笑って送り出してくれたリトルに、顔向けが出来ない。 「俺は・・・馬鹿だ・・・」 言って、空を仰ぐ。 幻想郷に比べて少し淀んだ空が、何故か滲んで見えた。 手の中のコーヒーはとっくに冷めていた。 1スレ目 922 「パチュリー様、お客様ですよ」 咲夜さんは図書館の分厚い木製のドアをゆっくりと押し開くと、眼前に開けた薄闇の中に、よく通る声を飛ばした。 中から漏れてきた古い紙と皮の香りが、鼻先をかすめる。 しばらくその場で待ってみたものの、誰かが出てくるような気配は無かった。 「また本の虫にでもなってるのかな。……ここまででいいよ。ありがとう咲夜さん」 借りていた本を返しに来たという程度の用事で、これ以上多忙なメイド長の手を煩わせるのも悪い。 「そう? ごめんなさいね。後でお茶を持っていくから」 本来の仕事に戻る咲夜さんに軽く手を振って、もう通い慣れた図書館のドアをくぐった。 「♪ヴワルよいとこ一度はおいでぇ~~、貧血魔女にぃ、プリチー小悪魔ああ~♪」 我ながら失礼極まりない歌を熱唱しながら、所狭しと立ち並ぶ書架の間を悠々と闊歩する。 自慢ではないが、俺は夜雀も金を置いて泣いて逃げ出す程のド音痴だ。まさに嫌がらせには最適である。 「♪持ってかないで~、いやぁっ! やめて、やめないで~~~♪」 「……あの、ひょっとして私たちは、貴方に嫌われてるのでしょうか……」 通路の中頃、いよいよサビに入ろうかというところで、棚の上の方から悲しそうな声をかけられた。 声のした方を見上げると、この図書館の主の使い魔が、ふよふよ浮かびながら、本棚にハタキを当てていた。 「よっ、リトル、こんにちは。俺の歌にこめられた親愛の情は伝わらなかったか?」 「あんな酷い呪詛、本場の大悪魔でもなかなか使いませんよ……」 ……あんまりな言われようだった。 ちなみに、「リトル」というのは、俺が彼女を呼ぶのに勝手につけた名前である。 パチュリーとは、「あなた」←→「パチュリー様」で会話は成り立つし、 紅魔館の人々は彼女をそのまま「小悪魔」と呼んでいる為、不自由は無い……という事だったが、 そんな味の無い呼び方は色々と気に入らない、という訳で、そう呼ぶようにした。 それ以降、みんなが彼女の事を「リトル」と呼ぶようになった。大いに喜ばしい事だと思う。 「あの、ところで今日は何の御用ですか?」 リトルは、掃除の手を休めて俺の隣に降りて来た。絹糸のような紅い髪がさらりと揺れる。 「……ん、借りていた本を返しに。あと、よかったらまた何冊か貸してくれないかな?」 用件を告げて、持参した布袋を彼女に渡した。借りていた本は全てその中にまとめてある。 「はい、いいですよ。一応、確認させていただきますね」 にっこりと微笑んで、袋の中からごそごそと本を取り出し、近くの作業台に積んでいく。 楽しげに本の点検を行う彼女の横顔に、胸の中が暖かく満たされていくのを感じた。 ……幻想郷に来て以来、いつの間にかこの娘といる時間が一番心の安らぐものとなっていた。 ただ何となく、それが彼女に伝えてよい感情なのかどうか、判じかねるところがあった。 「貴方はちゃんと本を返してくれるから助かります。まったく、魔理沙さんなん、……て…………」 とある本を取り出したところで、急にリトルの体が凍りつくように固まってしまった。 「?」 何事かと彼女の手にした本を見て――俺も一瞬凍りついた。 「ああっっ!!! それは何時ぞ香霖堂でこっそりリークしてもらった、『屈辱監禁爆乳ナースの恍惚淫行盗撮女体闇市場アンソロジー十傑・ジェノサイドキッス編』!!!」 「そ、そんなタイトルを絶叫しないで下さい!! 何でこんな濃ゆい本が混ざってるんですか!」 「来客対策に挟んでカモフラージュして、そのまま忘れてたんだよ……」 「……ウチの本をそんな事に使わないで下さいよ……」 リトルが顔を真っ赤にしながら、我が愛しのエロ本を突き返してきたところに、 「……まったく騒々しいわね。何事?」 この図書館の主、パチュリー・ノーレッジがようやく姿を現した。 「ああ、こんにちは、パチュリー。実は、リトルがこの本を俺に贈ってくれるそうなんだ」 「ええっ!?」 リトルから返してもらった本を、パチュリーに手渡す。 彼女は表紙に目を走らせると、じっとりと湿った視線をリトルに向けた。 「リトル、貴方…………」 「ちちち違います! これは彼が……」 「……はいはい、分かってるわ。大方この馬鹿の悪乗りでしょう」 やれやれといった苦笑いとともに、パチュリーの手に炎がともり、男の浪漫が神火に炙られ大気に熔けた。 「わっ。あ、あの、パチュリー様? 何もそこまで……」 「あああっ、何て事を!!! この外道、アンタは魔女やない。鬼女、鬼女や!!」 滝のような涙を流し、何故か関西弁で慟哭する俺に、 「そう喚かないの。もう暫くしたら、あんな物必要なくなるわ」 パチュリーは、そんなよく分からない事を言った。 「はい?」 「ちょうどいいわ。疲れたので休憩にするから、貴方たちも付き合いなさい」 そこに、まるで計ったかのように咲夜さんが紅茶を持って来てくれた。 その後、勧められるままにティータイムの相伴に預かり、初歩の魔道書を数冊と、リトルが薦めてくれた冒険小説を一冊借りる事にした。 いつもどおり五日後に本を返す約束をして、紅魔館を後にする。 ――さらば我が相棒、『屈辱(中略)キッス編』。お前の死は、決して無駄にはしない……! 燃え立つ夕日の向こうで、今は亡き爆乳ナースが、素敵な笑顔をキメていた………… …………その後、ヴワル魔法図書館にて 「リトル、今日の仕事はもういいわ」 「え? でも、まだ結構お仕事が残ってますよ?」 「いいの、残りはメイドを何人か借りて、その娘たちに任せるわ。 それより、貴方はこれからこの本を読みなさい」 「はあ……」 生返事を返して、主から渡された、ピンク色鮮やかな本を受け取り、表紙を見る。 『恋の四十八手・春情の苛立ち編 神ホワイトサワー 慧ved!!!! 著』 ……軽い眩暈を覚えた。 さっきの彼といい、我が主といい、一体何を読んでいるのだろう…… 「あ、あの、パチュリー様。これを読んで、一体どうしろと……」 「これからその本でみっちり勉強して、そして…………さっさと彼をモノにしなさい」 「――――え゛っ」 一瞬で頭の中が真っ白になった。みるみる顔に熱が集まるのが分かる。 完全に硬直してしまった私に、パチュリー様はため息を漏らした。 「あのね……貴方、自分では巧く隠しているつもりなのでしょうけど、端から見て、残念ながら丸分かりよ。 恐らく、気づいてないのはあの朴念仁だけ」 「そ、そんなっ」 自分はそんなに分かりやすく態度に出していたのだろうか。 慌てふためく私に、パチュリー様は淡い微笑を返してきた。 「落ち着きなさい、誰も貴方を馬鹿にはしないわ。 ……そうね、彼が貴方を名前で呼んだ日から……かしら?」 「…………はい」 今でも鮮明に思い出せる。 『そうか、それなら俺は、君の事を……そうだな、リトル、と呼ぶ』 彼のその言葉を聞いた瞬間、世界が一変した。 基本的に私たち魔族は、種の名前がそのまま個それぞれの呼称に転じるのが一般的だ。 それまでの私は、自身の名が無いという事に苦しみを覚えるような事は無く、けれど名を呼ばれる喜びも知らなかった。 彼が自分だけの名を与えてくれた事で、自分に向けられる感情や自分が持つ感情を、より深く理解し、より強く感じ取れるようになった。 ……魔族として見れば、度し難い堕落なのかもしれない。 だけど、モノクロにくすんだ曖昧な世界に鮮やかな色をつけてくれた彼を私は尊敬し、そしていつからか強い恋慕を抱くようになっていた。 『……あー、ごめん。深く考えずにリトルって名付けたけど、実は結構大k』 『ななな何言ってるんですかこのエッチ!!!』 ,. -- 、 ,ヘ,´,.、 , ヽヘ ^Y ル_,ハ)ノリ^ パーン ⊂/イリ;'д‘ノi⊂彡☆))Д´) ……ついでに余計な事も思い出してしまったので、慌ててかぶりを振った。 「……でも、私……」 この紅魔館だけを見ても、私なんかよりずっと魅力的な人がたくさんいる。 きっと、もっと数え切れないくらいの素敵な人たちが、彼の周りにはいるのだろう。 ……心が重く軋み、鼻の根元がツンと痛む。この胸の疼きも、かつての自分には縁の無いものだった。 「顔を上げなさい、リトル。貴方はこの私の使い魔でしょ? 私はあまり知人の多い方じゃないけど、貴方ほど彼を強く想っている人を、少なくとも私は知らないわ。 貴方にも、十分すぎるほどに分はある。」 「本当ですか?」 敬愛する主の心強い言葉に、胸の中に明るく炎が灯るのを感じた。 「そ、そうですよね。私、頑張ります! 頑張って、きっと彼をメロメロのドロドロの××××にしてみせます!!」 「……貴方、少しずつあの馬鹿に似てきたわね…… まあ、その意気。その本でしっかり男心とやらを勉強なさい。 して欲しい事があるなら、私や咲夜に言えばいいわ。今回だけ特別に私が使われてあげる」 「ありがとうございます。でも、私……自分だけで考えて、何とかしたいです」 借り受けた本を、そっと机の上に差し戻す。 パチュリー様は、そう、と薄く笑った。 「いい気構えだわ。もう私からできる事は無いようだから、精々頑張りなさい」 少々喋りすぎたから読書に戻ると、パチュリー様は机の本に意識を移した。 私は、大好きな主に心からの礼を告げると書斎を後にした。 火の点いた心が、春色に激しく燃えていた。 「まったく。いつまでもお互い鈍いままだから、こんな似合わない世話を焼く羽目になる。 ……お似合いよ、貴方たち」 一人残された知識人は、娘を嫁に出す父親のような寂しげな面持ちで、そんな事を呟いた。 …………そして五日後。 例によって咲夜さんに図書館まで連れて行ってもらい、珍しく外出するというパチュリーとかち合った。 「今日はもう帰って来ないから、用件は全部リトルにお願い」 それだけ言って、彼女は咲夜さんを伴い、さっさとその場を後にしてしまった。 ……珍しい事もあるものだ。彼女が外出するというところを見たのは、実に今日が初めてだった。 一人、もう通い慣れた通路をすいすいと歩く。目をつぶっても平気だよヘイヘイ! ――ごつんっっ。 「ふがっ」 ……調子に乗りすぎた。だ、誰も見てないよね? 気を取り直して再び足を動かす事にする。 この少々埃を被った本の香りが、いつからか自分の家のそれよりも、心安らぐ大切なものとなっていた。 中程まで進んだところで、本の整頓をしているリトルの姿が見えた。 ……これも見慣れた光景だった筈なのに、何故か、 「よっ」 「あっ、いらっしゃい。お待ちしてましたよ」 ……何故か、今日の彼女が一際可愛らしく見えた。 「はい、これで全部ですね。今日は変な本も混じってないですし」 ……混ぜた方が良かったのだろうか。今度とっておきのマル秘鬼畜変態本で期待に応える事にしよう。 「あの、今日これからお時間は空いていますか?」 「ん? ああ、もう予定は何も無いよ」 「それなら、少しお話でもしませんか? 今日はお嬢様もご不在ですので、咲夜さんが、特別に最上階のバルコニーを貸してくれるんですって」 つくづく珍しい日だ。もちろん断る謂われは無い。 いつもは下から眺めるしかない、紅魔館からの眺めというものにも、少なからぬ興味があった。 「よかった。私も初めてだから、楽しみなんです。それじゃ、行きましょう? ほらっ」 「お、おい」 リトルがにっこりと笑って、俺の手を引いて急かす。 その白く小さな、俺のそれよりほんの少し暖かい手を、苦笑とともに握り返した。 リトルの頬に、ほのかな赤が差す。 色々おかしな日だから、俺もコレくらいはおかしくなってもいいだろう。 彼女に手を引かれて図書館を後にし、そのまま館の中を悠々と歩く。 すれ違うメイドさんたちの目が、皆子犬を可愛がる時のそれになっていたが、悪い気はしなかった。 「わあっ、すご~い」 「へえ、見事なもんだ」 思わずため息が漏れた。 最上階に設えられたバルコニーからの眺めはまさに絶景で、美しく整えられた色鮮やかな庭木を余す所無く俯瞰し、 湖の遥か彼方にけむる水平線まで、何隔てるもの無く眺める事ができる。 草木の薫りをたっぷりと孕んだ瑞々しい風が、柔らかく頬を撫でた。 「こりゃあいいや。あの図書館と同じ敷地内からの風景だとは思えない」 「あらひどい。パチュリー様が聞いたら、怒りますよ?」 朗らかな笑みがこぼれる。あんまり天気がいいから、身も心もふわふわと軽くなる。 当ても無く辺りを見回してみると、門番が草むらに大の字になって、気持ち良さそうに寝転がっているのが見えた。 よくよく思い返せば、リトルと二人きりで話をする、というのは初めてだった。 ――外の世界の事。最近館の外で起こった事。この前借りた本の事。 ――彼女のいた世界の事。以前紅魔館で起こった事。彼女の好きな小説の事。 陽気に浮かされるように、お互いの知らなかった事、知りたかった事を、貪欲に埋め合った。 終わりの無いパズルのピースを一つ一つ探しては埋めていく、「知る喜び」に満ちた幸せな作業。 好きな人の事が分からないというのは、実はとてもありがたい事なのだ。 「いつだったかしら、二十人くらいの強盗団が入った時は凄かったですよ~。 次の日地下の拷問部屋から、昼夜問わずに豚みたいな断末魔や、水風船みたいに肉が砕ける音が絶える事無く聴こえてきて……あぁ(うっとり)」 「そ、そーなのかー」 …………ホントだよ? ………… ――さて、楽しい時間とは、あっという間に過ぎていくもので。 あれだけ高らかと漂っていた太陽は、いつの間にやら西に傾き空を真っ赤に染め上げていた。 緩やかに落ちていく陽の光が、空と湖の境界を融かし、幾層もの紅い揺らぎを作る。 「…………」 少しでも近くで見ようと、椅子から腰を上げ、欄干の方へと歩いた。 ――――――きゅっ。 後を続いて歩いて来たリトルが、俺の手を握ってきた。 館を歩いてきた時とは少し違う、しっとりと包み込まれるような感触。 「綺麗だな」 「……はい」 具体的な言葉は無くても、繋いだ手から彼女の気持ちが十分すぎるくらいに沁みてくる。 元来控えめな性格の彼女が、ここまで俺の手を引いてくるのに、どれ程の勇気を絞ったのだろう。 ……あとは、男の俺がしっかり決めてやらないと。 「リトル」 「はい」 握った手に、少し力をこめる。 「もう分かってると思うけど……俺、リトルの事が好きなんだ。 ……どうか、恋人として俺と付き合って欲しい」 「…………」 自分の動悸が強く跳ねるのを心地よく感じながら、彼女の返事を待つ。 「……はい…………私も……わ、わた………し、も…………」 声が震えて、俺の手を握る力とともに、声色がどんどん弱々しくなってきていた。 ……おいおい。 「泣くなよ……」 「っ、う…………う~~~~~~~~っ」 硬く閉じたまなじりから、大粒の涙がぼろぼろとこぼれ出す。 「まったく……」 リトルの体をしっかりと抱きしめて、小さな頭を胸板に押し付けてやった。 「ほ~ら、よしよし」 ……男の身長が女より高いのは、泣きたい時に胸を貸してやる為なのだろう。 大切な人の涙を上着越しに感じながら、そんなキザな事を考えた。 「……落ち着いた?」 どれくらい経っただろうか、リトルが落ち着いたのを見計らって、そっと体を放した。 「は、はい……どうもすみません……」 「気にしない。それじゃ改めて……答え、聞かせてくれる?」 「……はい」 大きく息を吸って、吐いて……深呼吸を三回ほど繰り返して、 「私も……貴方の事をお慕いしていました。こんな私でよろしければ……どうか、よろしくお願いします」 ――俺の告白を受け入れてくれた。 「うん。ありがとう。……覚悟しとけよ? もうずっと放してやらないからな」 「はいっ、望むところです。どうか、ずっと放さないで下さいね……」 リトルの瞳が静かに閉じられる。 彼女の滑らかな髪を一房横にかき分け、そっと慈しむように、唇を重ね合わせた。 ――――わああああああああああっっっ!!!!! 「わっ」 「きゃっ」 いきなり地鳴りのような歓声が轟き、驚きに慌てて身を離す。 ……まさか。 二人して欄干から身を乗り出し、下を覗いて見ると。 「わ……」 「マジかよ……」 いつの間にか、館の周りが、紅魔館の人々で埋め尽くされていた。 「おめでとー――っっ!!!」 「お幸せにー―――――っ!!」 メイドさんや警備の人たち、果ては厨房の人たちまでが、俺たちに祝福の声を浴びせてくれた。 「お金貸して下さー―――――ーいっっ!!!!!」 「ふざけるなっっ!!!」 ――ズガンッッッ!!!!! 「ぐぎゅ」 どさくさに紛れて金貸しを要求する門番を、椅子をブン投げつける事で黙らせた。 「焼きそばはいかが~、焼きそばはいかが~」 …………出店まで出ていた。 「もう無茶苦茶ですね……」 「……ははは……」 もはや笑うしかない。 「あっ、あそこ……」 リトルの指差す方を見てみると、そこには…… 「あ、あいつら…………」 パチュリーと咲夜さん、それにレミリアお嬢様が、粘着質のめっちゃいい笑顔をしていた。 ――今日儂がここに来たるはパチュリーが指図 はかった喃 はかってくれた喃 今なら、拳とエルボーで人の頭を倍の大きさに出来る気がした。 「……まあいいや! なあリトル。応えてやろうぜ」 「えっ?……きゃあっ!!」 不意打ちで、リトルの膝下に腕を差し込み、背中を抱いて持ち上げる。 俗に言うお姫様抱っこという奴だ。野次馬連中から、一際大きな歓声が上がった。 「ちょっ、は、恥ずかしいです! お、降ろしてっ」 リトルが顔を真っ赤にして抗議するが、当然聞く耳持たない。 「ダメで~す。もう死ぬまでずっと一緒だからな、リトル」 「ぅ…………は、はい…………ずっと……ずっと、一緒です……」 俺の宣誓にリトルは顔を蕩かせ、肩越しに廻された腕にも力がこもる。 斜陽降りる中、紅の盟主の館で、人々に祝福されて。 どうしようもなく、俺は幸せだった。