約 160,329 件
https://w.atwiki.jp/baragakuen-highschool/pages/146.html
ギャルA「……あ~ら、みんな見て。ジャンクよ」 ギャルB「あらあら、ジャンクが来たわ」 ギャルC「よく堂々と顔が出せるわね、ジャンクのくせに」 水「……わ、私はジャンクなんかじゃ……きゃ!」 ギャルA「うるさいわよっ!」 水「わ、わたしは……」 ギャルA「あ~あ、ジャンクなんかに触っちゃった」 ギャルB「あら大変、汚れがうつっちゃうわよ」 「キャハハハハハハハ!!!」 「こらー!!」 ギャルA「の、のりお姉様!?」 のり「何をしているのあなた達!」 ギャルB「ち、違うんですのりお姉様!こ、これは…その…」 めぐ「……弁明はいらないわ。見れば判るもの」 ギャルC「め、めぐお姉様! なんで……」 みっちゃん「先生が気になったから、ではダメかしら?」 ギャルA「み、みっちゃん先生……」 ラプラス「……やれやれ。見回りに来たかいがあったというものだな」 ギャルB「ラ、ラプラス校長まで……」
https://w.atwiki.jp/baragakuen-highschool/pages/70.html
https://w.atwiki.jp/baragakuen-highschool/pages/381.html
https://w.atwiki.jp/baragakuen-highschool/pages/115.html
~休日 午前~ ジ(……ったく。翠星石の奴、自分から約束押し付けておいて遅れるってのはどういう事だ……) 翠「―――― はぁ、はぁ……お、遅くなった……ですぅ……」 ジ「おまえなぁ! こんな寒い中に二時間も人を待たせるなよ!」 翠「ご、ごめんなさい……ですぅ」 ジ(本当に反省してるのかこいつは……って、なんか普段とは違う感じがするぞ。 ……幾つか見ないアクセサリーつけてるな。他にもなんか……) 翠「……な、なにジロジロ見てる……ですか」 ジ「……お前、顔赤いな。もしかして風邪引いてるんじゃないか?」 翠「これは、ここまで走ってきたからですぅ! と、とにかく、これ以上時間を無駄にしたくないないから行くですよ!」 ジ「おい、遅れたのは僕のせいじゃな……聞いてないな、あいつ」 ~休日 午後~ ジ「…………今日は買い物の荷物持ちじゃなかったのか?」 翠「良い物が無いのだから仕方ないですぅ」 ジ「だからって園芸展や喫茶店に行っても買い物にならないだろ」 翠「憂さ晴らしですぅ! そっちも楽しんでいたのに一々文句が多いですよ!」 ジ「別に文句を言いたい訳じゃ……ただ不思議に思ったから……」 ジ(普段ならもっとやかましいのに、何を気にしているのか口数も少ないし……。 それにやっぱり、顔が赤くなるんだよなぁ。目線が合いそうになると慌てて逸らすし。 なんだかこっちまで恥ずかしくなってくる……いや、可愛いなんて思ってないぞ僕は……!) 翠「……ふ、ふん! こここ、これだから元ヒキコモリは扱いづらいのです!」 ジ「…………お前」 翠「……あ……」 ジ「扱いづらくて悪かったな……」 翠「い、今のは違う―――― 違うのです!」 ジ「違うってなにがだよ。何も違わないだろ…………もういい。今日は帰らせて貰うぞ」 翠「……ジュ、ジュン……!」 ジ「ッ! …………じゃあな」 ~休日 帰り道~ ジ「…………」 ジ(……悪口言ったのはあいつなのに…… なんであんなに辛そうな顔するんだ……卑怯だろ……!) ジ「……今日のあいつは一体何がしたかったんだよ……」 翠「…………」 ジ「!? お、お前いつの間に…………な、なんだよ」 翠「……あんな事を言いたくて、今日来たんじゃない……」 ジ「…………翠星石」 翠「傷つけたかったんじゃない…… 待ち合わせの場所に走ってた時も、色々な場所を見て回っていた間も、 今日が楽しい一日になるように願ってた……あんな別れ方をしたかったんじゃない……!」 ジ「ま、待てよ、落ち着け。僕はもういいから――」 翠「でも、でも……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」 ジ「おい! こんな所で泣くなよ、お前やっぱりおかしいぞ……!?」 翠「ごめ……う、うぅ……ぅ……」 ジ「~~~~! ああもう! 悪かった、僕が悪かったよ! だから泣くな、止めてくれ!」 翠「あ―――― !!! ……ジュ、ジュッ……か、身体! だ、抱き締めて……ッ!?」 ジ「うるさい、突っ込むな! これ以上泣いたら顔潰れるくらいまで腕を締めるぞッ!」 翠「……これじゃ、服が濡れちゃう……」 ジ「気にすんな。目の前で泣かれているよりずっとマシだ。 ……それにお前をこうしていると……」 翠「え……?」 ジ「……ああもう! なんか今日のお前を見ていると変な気分になるんだよ! ずっと僕の顔見ているくせに、目を向けるとそっぽ向いて恥ずかしがるし……! どうしていきなり―――― お前、そんな事する奴じゃなかっただろう!?」 翠「…………」 ジ「クソ、何言ってるんだ僕は……今のお前見ていると僕までおかしくなってくる…… 照れるなよ、変な期待しそうになるんだよ、このままじゃ馬鹿みたいな勘違いしそうに……!」 翠「……勘違いじゃない」 ジ「!」 翠「…………好き、だから」 ジ「……信じるぞ」 翠「うん…………んっ」 ~翌日 登校中~ ジ(……ほとんど勢いとはいえ、昨日はキスまでしてしまった……。 こ、これはあれだよな、告白だったんだよな、僕達付き合う事になったんだよな。 よ、よし……今度は僕が誘うぞ。映画のチケットも買ったし……いや、気が早かったか……!?) 翠「…………」 ジ(―――― す、翠星石……! 来たぞ、勇気を出せ、翠星石もやれた事なんだ……!) ジ「よ、よう翠星石、おはよう」 翠「…………」 ジ「……き、昨日は色々あったよな。正直僕も戸惑ってるんだけど……」 翠「……なに言ってるですか」 ジ「や、嫌だった訳じゃないんだ! 不安はあるけど後悔はしてな……え? なに言ってるって……ほら、昨日のアレだよ、アレ」 翠「……なにも無かったです」 ジ「なにも無かったって―――― お、おい、まさかお前、昨日の事無かった事にするつもりじゃ……!?」 翠「ジュン! さっきからなにを訳の分からん事をのたまっているですか!? 最初からなにも無かったのです! それ以上でもそれ以下でも右も左もないのです! それ以上昨日の話を続けたらただじゃおかねーですよ!」 ジ「そんな……あんなだったけど、昨日は本気だったんだぞ……」 翠「す、翠星石だって昨日は―――― ジュンの馬鹿ァァァッ!」 ジ「翠星石ッ…………う、嘘だろ、本当は嫌だったのか……? 僕の決意は……!?」 蒼「……ジュン……君……お、おはよう」 ジ「…………蒼星石。翠星石は昨日の夜になにかあったのか?」 蒼「ご、ごめんなさい!」 ジ「いや、いきなり謝られても……事態分からないだろうけど、お前のせいじゃないし」 蒼「う、あ、それは……そうなんだけど……そうじゃなくて……翠星石も悪くなくて……」 ジ「……はぁ。ならやっぱり先走り過ぎてたのか。チケットどうすればいいんだ……」 蒼「と、当然ジュン君だって悪くないんだ……って、チ、チケット?」 ジ「ああ、映画のチケット。翠星石を誘おうと思ってたんだけどあれじゃぁ……」 蒼「…………」 ジ「……興味あるのか? ……あー……もういいや、今週末なんだけど暇なら……」 蒼「―――― ええ!? あああ、ううう……!」 ジ「……別に無理に誘ってる訳じゃないからな。他に予定があるなら気にするな」 蒼「そうじゃないんだ! そうじゃないんだけど…… 僕は、僕は―――― うあああああああああああ……ッ!」 ジ「ど、どうした蒼星石! まるで心労で今にも倒れそうな中間管理職の悲鳴だぞ……!?」 昼休み・人気の居ない校舎の階段で J「蒼星石って、スカート短くしないんだな…何か以外…」(膝の上に蒼星石をのせてじっとスカートを見る。) 蒼「どうして?僕校則は守るよ。」 J「いや…動きやすそうなのが好きかなって思って…」 蒼「う~ん…確かに見た目は動きやすそうで元気に見えるかもしれないけど…階段で人目を気にしたり、色々大変だって… 翠星石が言ってた。」 J「ふ~ん…色々あるんだな…」 蒼「それにね…あまりに短いスカート穿いてると…すぐ先生に目を付けられるから…大変なんだよ。 僕は校則何一つ破ってないから、目も付けられず、ジュン君とこうしてどうどうといられる…」(ぽふっとJUMの胸にもたれる) J「そ…そうか…」(今何気に黒い事言わなかったか…?」 蒼「それでもジュン君は…僕にミニスカート…穿いて欲しい?」 J「い…いや別に僕は蒼星石が蒼星石らしければ別に…でもちょっと見てみたいかも…けど…」 蒼「…けど…?」(JUMの手をスカート越しに自分の足に沿わせながら) J「って…何してるんだよ。」(あぁ…我慢してたのに……やわらかい…) 蒼「べっつにぃ…僕に…ドキドキしないかな…って思って。」 J「…お前の足…誰にも見せたくないから……そのままでいいよ…」(いつの間にか自分で手を動かして、蒼星石の足を触っている) 蒼「そうだね…ジュン君は別にスカート越しに妄想しなくても、いつでも全部触れるんだもんねぇ…」(ニヤニヤ) J「な……誰が妄想なんて…」 蒼「でもしてたでしょ?まだ付き合ってないとき。そうじゃないと、この手の説明がつかないよ♪」 J「………うん。」(くっそー!!) 最初はちょっとした出来心でした。 前日の夜から翠星石はずっとその事を話し続けていて……羨ましかったんだと思います。 布団の中で計画を立てて、まずは鋏で彼女の夢を少し××しました。 髪の毛は付け毛を足して髪留めで誤魔化したんです。 それだけだとかえって目立つと思ったので、他にも有りっ丈の装飾品を身に付けて……。 瞳の色が最大のネックでしたけど、案外気付かれないものですね。 ごめんなさい。悪い事をしている自覚はあったんです。本当にありがt(ry
https://w.atwiki.jp/baragakuen-highschool/pages/482.html
4. それは、記憶の霞むような昔。でも、それはつい最近のことで。想い出は色あせることの証明のようで、イヤだと、心のどこかで思った。 『……ねえ、ジュン』 銀色の髪の彼女。彼女の好きな黒い服とのコントラストが、僕はとても好きだった。 『私は――』 ……これは、夢。終わった夢。過去。変えられない、結末のわかっている物語。 『私は、あなたのことが、大好きよ』 その、涙ながらの告白に、僕は、何と答えたのだったか――。 だから、これは、記憶の霞むような昔の話。霞んで、忘れてしまったと思うような昔。 ――終わった物語。 「……あー」 朝。目が覚める。何か夢を見ていた気がして――すごく、体がだるかった。 「起きなきゃ……」 僕は、起きて薔薇水晶を起こさなければならない。薔薇水晶はねぼすけだから、僕が起こさなければ、それこそ一日中寝てるのだ。そのかわり、僕が起こせば素直に起きてくれるけど。 「あ、れ……?」 ぐらり、と世界が揺れる。 「何で……天井が前に?」 おかしい、思考が鈍い。目が霞む。まるで、今朝見ていた夢のようだ。夢と、現が交じり合って――どっちが夢なのか、わからなくなってしまうような。 夢を、現実だと期待してしまいそうな、気分。 「――“ ”」 彼女の名前を呼んだ。最愛の彼女。銀色の髪で、眼帯をした――? あれ、違う? 銀色の髪。だけど、眼帯なんて、してたっけ? 確か、彼女は、黒い服を好んで着て。それがまるで、天使のようで―― 意識がにぶくなっていくにつれ、世界が遠くなっていく。そんな時。僕は、彼女の幻影を見た。 「――ジュンッ!?」 ああ――来てくれたのか。 「すい、ぎん、……とう」 フェード・アウト。 それは、日常だった。 「ほらぁ、ジュン、朝よぉ」 「……んあ?」 「もう、だらしないわぁ。今さら幻滅なんてしないけど、他の女の子の前でしたらドン引きよぉ?」 「こんなの、水銀橙の前でしかしない……」 「あらぁ、嬉しいこと言ってくれるじゃなぁい」 本当に、嬉しそうに優しく微笑んでくれる彼女。幼なじみだった。異性の幼なじみで、こんなに付き合いが長いのは奇跡だと、思う。しかも、毎朝起こしに来てくれるなんて。 「僕は、恵まれてるなぁ」 「そうよぉ? こんなかわいい女の子がいつも一緒に居てくれるんだもの。もっとありがたみを感じなさいよねぇ?」 「うわー、自分でかわいいとか言ってるよ」 「何よぅ。かわいく、ないの?」 そんなはずはない。いつもいつも、何度見たって彼女の顔を見飽きたことなんてない。 「……かわいい」 だけど、恋人でもない僕は、それをぶっきらぼうに言うしかない。愛をささやくなんて、照れくさくてできない。 「……ありがとう」 それに、彼女も恥ずかしがりやだった。学校のみんなは気付いてないけど。彼女は、見た目よりずっとシャイなのだ。 「見た目よりって、何よぉ?」 「心を読んだっ!?」 「うるさいわねぇ。――もうこんな時間じゃなぁい。まったく、ジュンが朝から私を口説くからぁ」 「誰も口説いてません」 「あらそうなの? ざんねぇん……」 時々、わからなくなる。彼女の本心が。幼なじみとしてそばに居てくれるのか――あるいは、女の子として、そばに居てくれるのか。 それが、僕にはわからないのだって、日常。いつもと、なんら変わりの無い、日常だった。 「…………?」 朝。目を、開く。 「ジュン……?」 いつも起こしに来てくれるジュンが居なかった。……おかしいな、と思う。私の方が先に目覚めたのなんて、ただの一度もないのに。 そうなのだ。ジュンったら、少しは寝顔を見せてくれてもいいと思うのだ。いつもいつも私ばかり寝顔を見られるのは、不公平だと思う。たまに一緒に寝た時だって、ずっと私の顔を見てるみたいだし―― 「……あれ?」 ふと、部屋に飾ってあるジュンの写真を見る。それだけなのに、胸騒ぎがした。時計を見ると、もう学校には遅刻の時間。ジュンも、寝坊? それとも、何か用事があるって言ってたっけ? 「ジュ、ン?」 無意識に問いかけていた。大好きな人。一番大好きで、絶対失いたくない人。その人のことで、胸騒ぎがするなんて―― 「――ジュンっ」 そして、私は走り出した。胸に、よくない種類の予感を抱えながら。 いつから、日常が変わったのだろう。 「ジュン、帰りましょう?」 「ああ、わかった」 ふと気付けば、自然に二人が寄り添っていた。どんな時だって。でもそれは、気付いただけで。気付く前からそうだった。 僕の隣には当たり前に水銀橙が居たし、水銀橙の隣には、当たり前に僕が居たのだ。それが当たり前だったから、意識しなかっただけのこと。 意識したきっかけは、何だっただろう。きっかけすらも覚えてないが、でも、今の変わった日常が好きだった。前と、同じ距離。だけど、きっと違う距離。 「……ねえ、ジュン、変なこと聞いていい?」 「うん?」 「――ジュンって、好きな子とか居るの?」 でも、その距離は、曖昧な距離で。名前がついていない距離だった。後一歩で、名前がつくのに。僕たちの関係に、名前がつく。 それを、僕はしなかった。別に、このままでもいいと思ったから。……嘘だ。勇気がなかった。もし、壊れてしまったらどうしようか、と思っていた。こんなにも近くに居るのに、そんなことさえ自信を持てなかった。 だから、僕は彼女の緊張した顔を見て、愛しく思う。だって、彼女だって怖いに違いないと思うから。それなのに、踏み出そうとしてくれたことを、嬉しく思う。 なら、僕の答えは、もう決まっていた。 「……えっと、水銀橙」 「え?」 「アレだ。こういうのは、やっぱり、男から言うべきで――」 本当は、もうちょっとちゃんとした場面で言いたかったな、なんて乙女チックなことを思いながら、僕は、万感の想いを込めて言う。 「君のことが、好きです。僕と、付き合ってください」 「……嘘」 「嘘じゃないけど」 「だって、唐突すぎ……」 「それは、そうだけど」 あれ? もしかして、言うタイミング、ミスった……? そう、僕が不安になった時。 「水銀――うわっ!?」 「……ホントなのね!?」 その言葉と共に、僕は、強く、抱きしめられた。ふわっと、彼女の良い匂いが鼻腔をくすぐった。かぎなれた匂い。だけど、こんなにも近くで感じたことなんて、ない。 「ホントに、私のこと好き!?」 「も、もちろん好きだ!」 「……よかったぁ」 脱力。そのまま、水銀橙は僕に寄りかかってきた。 「本当に、どんなにアプローチしても無反応なんですもの……。なんとも思われてないんじゃないかって、不安になったわぁ」 「いや、アプローチって、あれに反応するとなんだかすごいえっちな人間に思われると思って」 「なぁに? ……くすくす。そんなこと気にしてたのぉ?」 「普通、気にする」 「……これからは、別に、えっちでもいいけどね? もちろん、私限定でよぉ?」 「あー……うん」 すごい、気恥ずかしかった。このままの勢いで、死ねる。穴があったら入りたい。本当にそんな気持ちになるとは、思わなかった。 「そうだ。私、返事してなかったわよね」 そして、水銀橙は僕の顔を見る。抱きしめられたままだから、すごい近い距離。思わず、目をそらしたくなるような。 「だぁめ。目をそらさないで」 制された。本当に何でもお見通しだ。 「……私、水銀橙は」 それは、今まで見たどんな笑顔よりも眩しくて―― 「あなたのことが、大好きです」 自然と、僕はその笑顔に唇を重ねていた。 ……そして。僕たちは、恋人になった。 「……んっ。ジュンっ」 「う、ん……」 ……ひどく、体が重かった。頭の中も、ごちゃごちゃしているような気がした。 「あれ……僕」 「ジュン、大丈夫……?」 そう心配そうに聞くのは、誰だろう? ――長い、銀色の髪。ああ、彼女か。今、夢に見ていた。 「……今、君の夢を見ていた」 「え? ……私?」 「うん、恋人同士になった時の夢」 「……素敵な、夢だね」 彼女の柔らかい指が、僕の髪を梳く。とても、気持ちがよかった。 「このまま、寝てもいい?」 「もちろん。隣に、居るからね」 「うん、ありがとう――」 そして、僕は名前を呼んだ。愛しい彼女の名前。 「ありがとう、水銀橙」 「ありがとう、水銀橙」 ――え? 「……ジュン?」 私は、名前を呼ぶ。だけど、返事は返ってこない。 「違う……」 でも、私はそれでも言わなければならなかった。……もしかしたら、何かの間違いかもしれない。熱があるみたいだから、そのせいで勘違いしたのかもしれない。 だけど、だけど、私は言わなければならなかったのだ。彼は、もしかして、私の長い髪を見て、間違えたのではないか、なんて、信じられないような考えが、頭の中に浮かんだから。 それは、もしかして、もしかして――彼が、“あの人”のこと、を? 「――違うよ! ジュン! 私は、薔薇水晶だよ!」 だけど、返事は返ってこない。苦しそうな寝息が、返ってくるだけ。 そうだ。だから、落ち着け。違う。彼は、私をあの人と、勘違いしただけ。風邪でベッドで寝ているから、頭がぼーっとしているだけなんだ。 「……お願いだから、そうだと言って……っ」 怖かった。どうしようもなく怖かった。すがるように言う私に、彼が反応してくれないのが怖かった。 私は、一人でこの世界に放り出されてしまったのではないか。だから、彼が反応しない。彼が反応するのは、“あの人”だけ――。 「い、やだ……いやだよぅ」 涙が出てきた。……いつもなら、彼が抱きしめて慰めてくれる。心のどこかで。それを期待していた。だって、いつも彼は優しかったから。 だけど―― 「すい、ぎんとう」 やっと返ってきた言葉は、待ち望んだ言葉ではなく。――ただただ、残酷な言葉だった。 「薔薇水晶? 大丈夫?」 あれからしばらくして、銀姉さまが来てくれた。 「……ごめんなさい」 「いいわよぉ。かわいい妹の頼みだもの。それに、もともと来るつもりだったしね」 「……そう、なんだ?」 「ええ、朝来てみたら、ジュンが倒れているんですもの。びっくりしたわぁ」 銀姉さまは、よく朝ジュンを起こしに来るらしい。……そんなこと、私は全然知らなかった。 つらかった。ジュンは、何で教えてくれなかったのか。そしたら、私だって、早起きするように頑張ったのに。ジュンのためならば、どんなことだって出来ると思うのに。 「……大丈夫よぉ。そんなつらい顔しないでぇ。かわいそうに。ずっと泣いていたのねぇ」 銀姉さまが、優しく抱きしめてくれる。でも、違うんです。銀姉さま。私の憧れの人。小さいころから、ずっと憧れてた人。理想の人。 そんな銀姉さまだからこそ、私は、泣いていたんです。勝てないから。私では、あなたに勝つなんて、できないから。 そう思ってしまう自分が悲しかった。ジュンを、誰にも譲りたくないのに。それなのに、ただ私は怯えることしかできない。 ……そんな私を、銀姉さまは強く抱きしめてくれる。きっと、心の底から私を心配して。ジュンが大変な時に、こんな醜いことを考える私を。 「さあ、看病してあげましょう。こぉんなかわいい恋人が看病してくれるんだもの。すぐによくなるわぁ」 「……あ、の、銀姉、さま」 私は、醜い。だけど、それでも、確かめさせて。それで、安心できるかもしれないから。……それで、ますます不安になってしまうかもしれないけど。 「銀姉さまは、ジュンのこと、好きですか?」 「えぇ? なぁに、突然」 驚いた顔をしていたが、私の真剣の顔を見て、ちゃんと答えてくれた。そんな、気配りができるところも、すごく、素敵だと思う。 「んー、そりゃあ、好きよ? 幼なじみだしね」 それは、本当に、幼なじみとして――? 私は、本当は、そう聞きたかった。だけど。聞けなかった。だって。 「じゃあ……もし、ジュンが、銀姉さまのことを、好きだと言ったら、どうしますか?」 「――え?」 だって、私がそう言ったとき、一瞬だけ銀姉さまの瞳に映った期待の色を、私は見つけてしまったから。 「……おかしな、子ね。そんなこと、ジュンが言うはずないじゃなぁい……」 それは、私に言うというより、自分に言い聞かせている感じだった。……こんなに狼狽している銀姉さまを見るのは、初めてだった。 「あなたも、疲れてるのよ。少し、休みなさいな」 もちろん、銀姉さまは、私のことを心配してその言葉を言ってくれたんだろう。 だけど、私が思ったのは、とてもひどいことで。 私が居ない間に、ジュンを奪ってしまう気なのではないですか――? それは、とても、最低なことだ。……ひどく、悲しかった。私は、自分がこんなにも醜い人間だとは知らなかった。 私は、幸せな場所に居たと思ったのに。温かい、温かい場所。それは、私の勘違いだったのだろうか。こんなにもあっさりと崩れ去るものだったのだろうか。 私は――迷子になってしまった。 だから、お願いです。心の底から思う。他に、何もいらないから、どうか、この願いだけは叶えて欲しい。 ――お願いだから、もう一度その優しい声で、愛を囁いて。 あれから一週間が経った。 「…………はぁ」 私とジュンは、気まずい空気になっていた。正確には、私だけだけど。私に勇気がないから。 ジュンは、必死に私に話しかけてくれる。そのたびに、大した反応も出来ないのが、つらい。傷つけてしまっている。私のせいで。 だけど――あの言葉が、頭から離れないのだ。 『すい、ぎんとう』 ジュンが、熱にうなされた時求めたのは、私じゃなくて。私の憧れの、あの人で――。 「どうしたら、いいのかなぁ?」 「……薔薇水晶?」 「蒼星石……」 見れば、蒼星石が居た。そうか、中庭は、園芸部が管理してたのか。 「……手伝おうか?」 「いいよ。……それより、元気がないね。何かあった?」 「……うん。ちょっと、」 「ジュンくんと、喧嘩でもした?」 「……蒼星石ぃ」 「え、え、ちょっと……泣かないで? 僕でよかったら聞くから」 ……私は、蒼星石に話した。 「……ジュンくんと、水銀橙かぁ」 「私、わからない……。ごめんね……しっかりするって、言ったのに」 「ああ、それは、いいよ。……あの二人はさ、特別なんだ」 え? 私が聞き返すと、蒼星石は教えてくれた。 「阿吽の呼吸ってあるでしょう? あ、だけで、うん、と言える。言葉の要らない関係。それが、あの二人の関係なんだよ」 「ジュンと――銀姉さまが?」 「そうだよ。あの二人は、幼なじみでしょう? だからってこともないだろうけど、ジュンくんは、水銀橙が今何をしたいのかすぐにわかるし、水銀橙も、ジュンくんのことがわかる。僕は、それがすごく羨ましかったなぁ」 そんなこと、私は知らない。まったく、知らない。 「……それなのに、どうしてか、あの二人は別れちゃったんだ。誰よりも、幸せなカップルだったのに。それは、僕もどうしてか知らない」 「――え?」 イマ、ソウセイセキハ、ナンテイッタノカ。 「仲睦まじい、理想的な恋人同士だったよ。ああ、いや、薔薇水晶とジュンくんが理想的じゃないという意味ではなくてね?」 「……ジュンと、銀姉さまは、付き合ってた、の?」 「え? あ、そうか。あれは、中学の頃だから、薔薇水晶は知らないんだね。――うん、付き合ってたよ」 蒼星石の言葉が、胸をえぐる。どうして、教えてくれなかったの? いや、銀姉さまは言っていた。とても、好きな人が居るって。……そして、大好きだから、別れてしまったって。 それって、それって――銀姉さまは、今でも、ジュンのことが。 「薔薇水晶?」 「……ねえ、二人が、何で別れたか知っている人は、いる?」 「理由を? そうだな――」 蒼星石は、少し悩んで言った。 「知っているとすれば、あの二人の幼なじみの、真紅くらいだろうね」 「……はぁ」 どうも、最近薔薇水晶の態度がおかしかった。僕が、風邪で休んでからだ。その間の記憶が曖昧で、何があったかわからない。謝ろうにも、そもそも自分が何をしたのかわからなかった。 「あらぁ……元気ないわね。どうしたのぉ?」 「水銀橙……」 「悩み事? 相談のるわよぉ」 そうだ、薔薇水晶と仲のいい、水銀橙なら知っているかもしれない。それに、水銀橙なら余計な気遣いもいらないだろう。素直に、話せる。 「――薔薇水晶の、ことなんだ」 「……ああ、そうねぇ。ちょっと、最近おかしいわねぇ」 「僕のことで、何か聞いてない?」 「ごめんなさぁい。私も、避けられてるっぽいのよねぇ」 ……そうなのか。でも、真紅とか翠星石とかとは普通に話しているように思える。 「じゃあ、僕と、水銀橙だけ?」 「そうみたい、ねぇ」 二人で、ため息をつく。何で、この二人なんだろう? 「僕が風邪ひいていたとき、何かあった?」 「……あ」 水銀橙がひらめいたように言った。 「心当たりが、ないわけでもないわぁ」 「何?」 「……とりあえず、家に帰りましょう。あんまり二人で居られるのを見たら、まずいでしょう?」 「そうだな……そうしよっか」 水銀橙は、目立つ。学内でも、ファンクラブがあるくらいだ。そんな彼女が、放課後、男と二人っきりで居たら噂もたつだろう。今この状況でそれはまずい。 「ふふ……」 「どうかしたか?」 「別にぃ。ジュンと二人で帰るのも、久しぶりだなぁって思っただけよ」 「……ああ、確かにな」 でも、それは、……しょうがないこと、なんだろうに。 「……ごめんなさい。そういう意味で言ったのではないの。気にしないでぇ」 「……ああ、わかってる」 わかってるから、そんな悲しそうな顔を、しないでくれ――。 蒼星石に言われたとおり、真紅を探す。真紅は、もう帰ってしまっただろうか。 「あ、真紅!」 「……薔薇水晶? 珍しいわね、貴女が息を切らしているなんて」 真紅は、ちょうど帰り支度をしている時だった。 「それで? 何か私に用かしら?」 「ジュンと、銀姉さまのことで、聞きたいことがあるの」 「――あら、変なことを聞くのね」 今、真紅は嘘をついた。私から、視線をそらした。何か、知っている。 「どうして、あの二人は――」 「じゃあ、聞くけど、薔薇水晶。貴女はそれを知って、どうするつもりなのかしら?」 「え?」 「貴女は、今が幸せではないの? ジュンと恋人で、水銀橙と姉妹のように仲が良くて。これ以上、何を望むのかしら?」 真紅は、怒っている。いや、……私を、気遣っている? 「……知りたい。私は、それでも知りたいの」 「貴女の望むような答えはないとしても?」 「私は、何を望んでいるのかすら、今わからないから……だから、お願い、真紅」 「……そうね。貴女が知りたいというのなら、教えてあげるわ」 真紅は、目を閉じて、慈しむように言った。何を思っているのだろう。……わからない。 「さあ、薔薇水晶。貴女は何を知りたいの?」 「……ジュンと、銀姉さまは、何故別れたのか」 「――そう。そうよね。当然、知りたがるはずね」 真紅の声は、ただ、辛そうだった。 「何から話せばいいのかしら。――そうね。私たち、三人の話からになるのかしら。 私たちは、いつも一緒に行動していたわ。私と水銀橙が喧嘩をして、それをジュンが宥めて。それで、バランスが取れていた。三人が、永遠に続く幸せだと信じていた。 ……だけど、バランスは崩れたわ。ジュンと水銀橙は、付き合いだした。私を、独り残してね。……いいの。それは、もう、いいのよ。 もちろん、私は祝福したわ。内心、複雑な心境だったけれど。私のプライドと、水銀橙になら、と思う心があったから。 それからの二人は、幸せそうだった。前にも増して、息がぴったりで。一心同体なのかもしれないと、思うほど。 だから――誰も気付かなかったの。水銀橙の、危うさ。誰も知らなかったの。私だから、水銀橙は大丈夫だった。三人で居られるのは、私だったからなの。水銀橙が、心を許していた、私。 つまり、水銀橙は壊れていた。ジュンを、好きになりすぎて。その好きの方向が、人とは違う好きだった。……ただ、独占したいと思ってしまう。存在の全てを、独占したい。そう、水銀橙は思ってしまう。 よくよく考えれば、すぐにわかることだったわ。水銀橙は、私以外の女がジュンに近づくことを、ひどく拒んだわ。世界の終わりのような、拒否。それに気付いた時には、もう遅かった。 水銀橙は、もうあと一歩で戻れないところまで来ていた。……ジュンを、独り占めしようとして、監禁しようとした」 「……それ、で? 銀姉さまは?」 「ジュンは、それを受け入れたの。水銀橙が望むのであれば、と。……それが、終わり。水銀橙は、気付いた。ジュンを、傷つけてしまう。 それは、水銀橙にとって、何よりも恐ろしいことだったのでしょう。もう、ジュンなしでは生きていけないと言ってもいいくらいだったのに。ジュンのために、手放した。 それだけよ。……どこから、歯車が狂ったのかはわからない。きっと、今でも水銀橙は、ジュンのことを好きよ。間違いない。今でこそあんなだけど、当時はひどかったわ。 自惚れでなく、私が居なければ自殺していたかもしれない。……そのくらい、水銀橙はジュンを好き。いえ、愛しているのよ」 ……それは、あんまりといえばあんまりな話で。 「……だけどね、薔薇水晶。これだけは覚えておいて。ジュンが今好きなのは、私でも、水銀橙でもなく――あなたなの」 そんな強い想いを聞かされて、私に、何が出来るというのだろう――。 「それで、心当たりっていうのは?」 「……これは、他意はないの。だけど、答えてね。ジュン、最近私とのことを、薔薇水晶に話した? あるいは、私とのことを、独り言で言ったとか」 「水銀橙との、こと?」 それはつまり、あの時の、こと。 「……夢なら、見た。寝込んでいるときに」 「それかしらねぇ。ジュンが、私のことを好きって言ったらどうする、ですって。薔薇水晶が言ってたわぁ……」 「……もしかして、水銀橙。二回目起こしてくれたのは」 「私は、起こしてないわ」 ……なんて、ことだ。それは、どんなに傷つく言葉だろう。自分の好きな人に、自分ではない名前を、呼ばれる。 「何て、謝ればいいんだ……」 「あはは……ジュンも、ダメねえ。まるで、私に未練あるみたいじゃなぁい?」 その時、僕は気付かなかった。水銀橙の、声の質が変わっている事に。それは、忘れもしない。あの、壊れた、水銀橙の声で――。 だから、僕は言ってしまった。嘘ではなくて。本当に、そう思っていたから。 「……そうかもしれない。もしかしたら、本当にそうなのかもしれないなぁ」 「へぇ――そうなんだ」 ……かちり、とどこかで音がした。それは、鍵を閉める音。水銀橙が、ドアの鍵を閉めた音。 「すいぎん、とう?」 「ねえ、ジュン。ねえ、ジュン。私ねぇ。私ね? あなたのことが――」 「あなたのことが、大好きよ」 「……はぁ」 こんなにも寂しい帰り道は、今まであっただろうか。きっとない。どんな時だって、ジュンは一緒に居てくれた。……ひとりで泣いていた私と、一緒に。 『だから、言ったのに。ジュンに、期待なんてしなければいいって』 うるさい。……心のどこかが、本当にうるさいことを言う。 『まあ、なんでもいいけど。あは……じゃあ、引っ込むよ。ああ、可哀想な薔薇水晶。可哀想、可哀想――』 ……それは欠片だった。私が泣いていた時の、欠片。ジュンが居れば、決して出てくることのない。イメージは、白い。何もない、空間。 私は、それに負けるわけにはいかない。負けたくないのだ。私が好きになった人は、そんな人ではない。同情で、私と一緒に居てくれたわけではない。 まだ、不安はある。銀姉さまのことが、未だに好きなのではないかと、思う心が、ある。 だけど。それよりも、何よりも。私の中には、ジュンを愛しく想う気持ちが、ある。 ジュンを信じ、想う。私の大好きな人。ちょっといじわるで、鈍感で。みんなに優しい、ジュン。 だから、私はもう、迷子にならない。ただ、ジュンを目指してみせる。……絶対。何があっても。 私は、ジュンの家に向かった。 「落ち着け、水銀燈」 「何がぁ? 私は、落ち着いてるわぁ」 じりじりと、水銀燈が迫ってくる。何故か、狩猟者の目を連想した。追い詰められる。獲物は――僕か? 「何で、鍵を閉めたんだ?」 「えぇ? 別に、意味はないわよ。だって、すぐ開けられるじゃない」 意味がないのに、閉めた? それは、おかしい。矛盾している発言だ。……ダメだダメだ。この空気はダメだ。再現。別れの日の、再現だ。 このままじゃ、また、水銀燈が――傷ついてしまう。 「ジュン」 なのに。そうわかっているのに。身体が、動かなかった。逃げなければいけないのに。水銀燈の、匂い。懐かしい、初恋の人の、匂い。 「……だぁい好き」 唇が、重ねられた。なんて、甘い、キス。頭の芯が、とろけてしまいそうだった。 ……ダメだ。だから、それはダメだ。僕は、君のことが好きだけど。だけど、ダメだ。 「水銀燈――僕は」 「あは、ダメよ、ジュン。もう――逃がしてあげなぁい」 そして。僕は捕まってしまった。黒い、天使に。 「ジュン」 私は、呟きながら、キスをする。身体のいたるところに。首筋、頬、目、唇。胸。ジュンの身体がべたべたになってもやめない。 とても、楽しい。とても、幸せ。ジュンが、私のそばに居る。……なんで、私は離れてしまったんだっけ。思い出せない。とても、バカなことをしたものだ、と思う。 こんなにも愛しいのに。こんなにも大好きなのに。心も身体も、全て捧げたのに。 「ジュン」 ジュンの存在を犯したい。全て犯して、私のものにしてしまいたい。誰も見ないように。私のことだけを、愛してくれるように。 「……水銀燈」 「そうよぉ。私の名前は水銀燈。ねえ、もっと名前を呼んでよ。ジュン、ジュン。ジュン。大好きよ。愛してる」 「……水銀、燈」 どうして、泣くんだろう。どうして、私のことを想って泣くんだろう。ジュンの想いが伝わる。……どうしてだろう。本当に、わからない。 「ねえ、一つになりましょう。一緒に居ましょう。ずっと。ジュンと一緒なら、きっと幸せだと思うわぁ」 「僕は――」 「あなたを、犯したいの。愛したい。それに、あなたに犯されたいし、愛されたい。めちゃめちゃにしてほしいと思うし、大事にしてほしいと思う。そうしないと、ダメなの。私は、あなたを……壊してしまいそう」 だからお願いよ、ジュン抱きしめて。私を強く。痛いくらい、それこそ、壊れてしまうくらい。 「――水銀燈」 そして――ジュンは、私を抱きしめてくれた。 「あは、……嬉しいわぁ」 ジュンの身体は、温かかった。思わず、涙が溢れてしまうほどに。 「……ねえ、水銀燈。どうしてあの時、別れようって言ったんだ?」 あの時……? ああ、あの日。 私が、壊れて。ジュンのことが愛しくて愛しくてどうしようもなくて。ただただ、ジュンを自分のものにしようとした時。 『私は、あなたのことが、大好きです。……だから、お願い。もう、終わりにして。私のことを見ないで。こんな、壊れた私を、ジュンに見て欲しくないから――』 そう、確か、そう言った。心の底からイヤだった。私のせいで、ジュンが壊れちゃうなんて。どんなことよりも、イヤだった。 「あの時、僕は頷くしか出来なかったけど――」 ジュンは抱きしめた身体を離し、私の瞳を見て、言った。 「君は、壊れない。壊れてなんか、いない」 「――え?」 ……あはは、ジュンは、何を言ってるのかしら。おバカさぁん。だって、今の状況、考えてみればいいのに。私が、陵辱したのも同然なのに。 なのに――ジュンは、私のことを、想ってくれている。 「今なら言える。壊れている? 違う、それなら、どうして、僕のために別れるなんて言えるんだ。――それは、水銀燈が、僕のことを想ってくれたからだろう!? なあ、だから、頼むよ。水銀燈、思い出してくれよ。僕は、君のことが好きだ。初恋だった。今でも、そうかもしれない。……そんなことを言う資格はないけど。でも、思い出してくれ。君の、選択を。つらい、だけど、どんな選択よりも綺麗な選択を!」 「……ジュン」 「大丈夫なんだ。自分を信じられないなら、僕を信じてくれ。水銀燈が好きになってくれた、僕を信じて。絶対、どんなことがあっても――君は、壊れない」 ……あ、はは。 「……やぁだ。そんなこと、言わないでよ」 「…………」 「そんな優しいこと言われたら――何も出来なくなっちゃうじゃない。ジュンのこと、壊してやろうと思ったのに。私なしでは、生きられなくしてやろうと思ったのに」 本当に、どうして、ジュンはそんなに私を想ってくれるんだろう。それは、まるで奇跡のような、それは、まるで幻のような、信じられない優しさ。 「そんなの――水銀燈が大事だからに決まっているだろう」 「あはは……心を、読まないでよ」 ……どこで、歯車が狂ったんだろう。私は、ジュンのことが好きで、どうしようもなく、好きで。 「……ねえ、ジュン。これだけは信じてね?」 「うん」 「私はね、ジュンのことが、誰よりも、好きよ。これからも、ずっと、ずっとね――」 そして、私は、泣いた。ジュンの胸の中で。ただ、赤子のように。ジュンに包まれて――。 「……ごく」 つばを飲み込む。少し、勇気が居る。ジュンは私の家によく来るけど、私はあまり来たことがない。 私は結構人見知りする性質だから、まだ、ジュンのお姉さんには、慣れていない。ちょっと、苦手かもしれない。 「でも、頑張らなきゃ――」 「あれ……? 薔薇水晶」 「…………むぅ」 人が、意気込んでる時に、誰―― 「――ジュンっ!?」 「あはは……珍しいな、薔薇水晶が家に来るなんて」 「……ジュン?」 ジュンの様子が、いつもと違う。元気がない。……もしかして、私のことを怒っているのだろうか。愛想を、つかしてしまったのだろうか。 いや――これはきっと、 「泣いているの?」 「……ああ、うん、泣いてる」 悲しくて、悲しくて、涙を流しているんだろうと、想った。 「……悲しいことがあったんだね」 「ああ、……なあ、薔薇水晶」 「うん」 ジュンに近づいて、頭を抱えるように抱きしめる。それは、ジュンがいつも私にしてくれること。私を癒してくれる、ジュンの魔法。 「僕は、……ひどいヤツだな」 「……違うよ。ジュン」 それは、違う。何があったのか知らないけど―― 「私は、ジュンほど優しい人を、知らないよ」 「私がひとりで泣いているとき、そばに居てくれた。私が抱きしめて欲しいとき、抱きしめてくれた。私が孤独を感じたとき、癒してくれた」 それに、どれだけ助けられただろう。それを、どれだけ嬉しく想っただろう。目を閉じるだけで思い浮かべることが出来る。 ジュンと出逢ったこと。ジュンと初めて手を繋いだこと。ジュンが、初めてキスをくれたこと。全てが、私の心を潤す宝物だった。 「そんなジュンが、私は大好きなの。ジュンだから、好きなんだよ。ジュンはひどい人なんかじゃないよ。それにね、ジュン。私は、ジュンがひどい人でも、ずっと、ずっと、好きだよ」 心からの想いだった。これだけは、譲れない想い。……どうしても、伝わって欲しい想い。 「ねえ、薔薇水晶?」 「うん、なぁに?」 「少しだけ、泣かせてほしい。……そしたら、頑張る。僕は、あいつの想いを、背負うから。だから、少し、胸を貸してくれ……」 「いいよ。……私と一緒に泣こう。きっと、悲しみは、半分になるよ」 「ありがとう――」 そして、私たちは二人で泣いた。何が悲しいのか、私にはわからなかったけど。だけど、それはきっととても悲しいことで。 だから、私はジュンのために泣いた。あと――どこかの、見知らぬ誰かのためにも、泣いた。 エピローグ:サイド【水銀燈と真紅】 「水銀燈」 「……あらぁ、真紅ぅ。どうしたのぉ?」 薔薇水晶の話を聞き、私は水銀燈の部屋を訪れた。 「――ちょっと、言い忘れたことがあったの」 部屋の様子で、わかった。まるで、あの日と同じだった。……だから、私は、あの日に伝えられなかったことを、伝えようと思う。 「なぁに?」 「あなたは――壊れた子(ジャンク)なんかじゃ、ないわ」 「…………」 きょとん、とした、水銀燈の顔。 「な、何よ、その顔は。そんなリアクションをされると、恥ずかしくなるのだわ」 「……あ、あははははっ。なぁに、真紅。あなた――」 そう言った水銀燈の瞳からは―― 「あなた、私を泣かせに来たわけぇ?」 ――綺麗な、涙が零れていた。 「……ええ、それもいいわね。水銀燈を泣かせたなんて、後でからかいのネタに出来るものね」 「おあいにくさまぁ。でも、そうね。――泣いてみるのも、いいのかもしれないわね」 私は、水銀燈に近づき、何も言わずに抱きしめる。ひとりじゃないと、伝えたくて。 「――ありがとうね、真紅」 「うるさいのだわ。喧嘩の相手が居ないのは、退屈なだけよ。……早く、元気になりなさい」 きっと、大丈夫。 「ええ、……あはは、大好きよぅ、二人とも」 そう、笑うことが出来たのなら、もう水銀燈は、大丈夫だ。 エピローグ:サイド【薔薇水晶とジュン】 「……もう、大丈夫だ」 「えー」 「そこで何で不満そうな顔をするんだ……」 だって。ジュンがあたしに甘えてくるなんて、滅多にないのに。 「もっと、一緒に居たい」 「……僕も」 「というわけで、えっちしよ」 「……はい?」 唐突に思った。そうだ、そうしよう。今すぐ、ひとつになりたい。 「本気?」 「うん。ジュンと、ひとつになりたい。愛しくて、恋しくて。本当に心の底から想ったの」 「あー……」 何故かジュンは空を見上げ、これはないだろ、反則だ、とかぶつぶつ言った。……ジュンもいろいろ大変なんだろう。 「……えっと、薔薇水晶」 「うん?」 「よろしく」 「――こちらこそ、よろしく」 きっと、大丈夫。そう、きっと大丈夫だ。ジュンと私なら、乗り越えられる。それを信じさせてくれるジュンの笑顔。 「ねえ、ジュン」 「ん? ……何だよ、今すごい緊張してるんだけど」 「大好き」 「……あーもー。ホント、僕も、大好きだよ」 そんな私たち。なんて――幸せな二人。 end
https://w.atwiki.jp/baragakuen-highschool/pages/454.html
熱血!ビー魂~ラストショット~ 昼休みの屋上で初めてのキスを交わしたJUMと蒼星石。 それを覗いていた薔薇水晶は呟く。 薔「・・・あきらめないから」 (そう・・・あきらめない・・・ 例えジュンが蒼星石を好きでも・・・ あの時の・・・あの顔をしたジュンは・・・ 私だけが知ってる・・・私だけのスナイパー・・・ あの顔だけは蒼星石にも・・・誰にも渡さない・・・ また見たい・・・見つめ続けたい・・・) それは彼女にとって初めての恋だったのかもしれない。多少歪んではいても・・・ 薔薇水晶は午後の授業の間ずっと考えていた 薔(今日たくさんジュンとおしゃべりした・・・ 楽しかったし・・・ジュンも楽しそうだった・・・ でも・・・ あの顔にはならなかった・・・どうして・・・? ワイルドワイバーンがあって・・・私がいて・・・楽しいことしてるのに・・・ もっと・・・色々試してみよう・・・) 全ての授業が終わって放課後。JUMは帰り支度を済ませ、ふと蒼星石を見る。 その視線に蒼星石も気付き一瞬視線が絡まる、だが次の瞬間には二人して赤い顔で俯く。 J(キスしちゃったんだよな・・・蒼星石と・・・///////) 蒼(僕・・・あんな大胆なこと・・・///////) このテレ具合では周りに付き合っていることを打ち明けるのはまだ先になりそうだ。 「ジュン・・・」 呼ばれる声に気付き顔を上げるJUM。そこにいたのは薔薇水晶だった。 J「薔薇水晶・・・ どうした? てかごめんな、昼間勝手にいなくなって」 薔「別にいい・・・気にしてない・・・」 J「ん、でも、お詫びとワイバーンのお礼もかねて今度なんか奢るよ」 薔「あ・・・それなら・・・今日ちょっと付き合って・・・」 J「えっ? 買い物か何かか?」 薔薇水晶はコクリと頷く。 いいよ、と答えかけてJUMは少し思い止まる。 J「(昼間蒼星石に『僕だけを見て・・・』って言われたばっかなのに、そんなことしたらまずいよな・・・ もう蒼星石を傷つけるようなことはしたくないし、ここは薔薇水晶には悪いけど・・・) えっと、薔薇水晶」 蒼「僕も一緒に行っていいかな?」 いつのまにかJUM達のそばに蒼星石が来ていた。 J「蒼星石・・・?」 薔「・・・別に・・・いいけど・・・」 蒼「翠星石ごめんね、今日はちょっとジュン君と一緒に薔薇水晶に付き合うから、先に帰ってて」 翠「別にかまわないですけど・・・ あまり遅くなるんじゃないですよ?」 蒼「わかってるよ」 一人で帰る翠星石を見送る蒼星石とJUM。 J「・・・良かったのか?」 蒼「うん、翠星石にはちょっと悪かったけど・・・ (ジュン君と薔薇水晶と二人っきりにするのは嫌だし、ジュン君に断らせるのも悪いから これが一番いい方法なんだ・・・ ごめんね翠星石・・・)」 薔「それじゃ・・・行こ・・・」 こうして三人は学校を後にした。 学校を出て5分ほどたった頃JUMがたずねた。 J「で、何を買いに行くんだ?」 薔「都市伝説・・・」 J・蒼「はぁ?」 J「お前、都市伝説ハンターでもやってるのか?」 薔薇水晶はクスリと笑って答える。 薔「残念だけど違う・・・ 私が探してるのはコミックバーズ・・・」 コミックバーズ、発行部数が少なく置いてある本屋が限られるため、 目撃件数が少なく一部から都市伝説と呼ばれる漫画雑誌である。 蒼「ということは本屋だね、どこの本屋に行くの?」 薔「手当たりしだい・・・都市伝説は伊達じゃない・・・」(キラーン☆) それから3軒の本屋を回るが目的の品は一向に見つからない。 J「本当に無いんだな、都市伝説って呼ばれるのも頷けるよ・・・」 蒼「本当だね・・・」 薔「まだまだこれから・・・」 三人は更に4軒の本屋を回るがやはり見つからない。 J「ここら辺の本屋そろそろ全滅じゃないか?」 蒼「うーん、僕の知ってる本屋はもう無いや・・・」 二人を眺めつつ薔薇水晶は思う。 薔「(ずっと一緒にいるけど・・・やっぱりジュンはあの顔にならない・・・ どうすればいいんだろう・・・?)少し・・・休憩しよ・・・?」 そう言って薔薇水晶は二人を近くのゲームセンターへ誘った。 蒼「僕こういう所あまり来たこと無い・・・」 J「そっか、僕はベジータ達とたまに・・・ 薔薇水晶は?」 薔「結構・・・」 薔(ゲームをしていれば見られるかもしれない・・・) そう考えた薔薇水晶はJUMを色々なゲームに誘った。 格闘ゲーム、シューティングゲーム、パズルゲーム、どれもそこそこ上手いが薔薇水晶の見たい顔にならない。 もしかしたらと思って誘ったガンシューティングでも結果は同じだった。 薔(ダメ・・・どうして・・・? やっぱりビーバトルじゃないとダメなのかな・・・?) 薔薇水晶が考えてる横でJUMは蒼星石に話しかける。 J「ごめんな、長い時間つき合わせちゃって」 蒼「気にしないで、僕はジュン君と一緒にいられるだけで楽しいから/////」 三人はゲームセンターを後にして次の本屋に向かった。 薔「ここが最後の本屋・・・」 薔薇水晶がそう言った本屋は11軒目だった。もしここにも無かったらあきらめるしかないが・・・ 薔「あった・・・」 最後の最後に行った店で見つかる、物探しをしている時はよくある事である。 とりあえず目的の品を手に入れた三人は店を後にする。 J「良かったな、見つかって」 薔「うん・・・(でも・・・ジュンのあの顔は見れなかった・・・)」 薔薇水晶がJUMの顔を覗き込んでいたその時! バッ! 薔「?!!」 自転車に乗った男が薔薇水晶の手からカバンを取っていった。 蒼「ひったくりだ!」 急いで追いかける蒼星石。 J「蒼星石!(自転車相手じゃ、いくら蒼星石でも・・・ 仮に追いつけても蒼星石が危険だ)」 その瞬間、JUMの目つきが変わる。 バンッ! JUMは懐からワイバーンを取り出し、瞬時に撃った。 JUMの放ったショットは蒼星石を追い越し、ひったくり犯の自転車の前輪ブレーキと前輪の間に突き刺さる! ギギギィィイッィィ!! ガシャァァン!! 自転車ごと転倒するひったくり犯。 犯「くそっ!!」 ひったくり犯は転倒した自転車とカバンを置いて逃走する。 その姿を見て安心したJUMは薔薇水晶と自分のマシンに自慢げに笑いかける。 薔(あっ・・・!) そこには薔薇水晶が求めていた顔があった。 薔(ずっと見たかった・・・見続けていたかった顔・・・ やっと会えた・・・私だけのスナイパー・・・ でも・・・きっとまたすぐ消えてしまう・・・ どうせ消えてしまうなら・・・ 他の誰かに・・・蒼星石に見られる前に・・・ 自分で・・・) 薔薇水晶はJUMに顔を近づけ・・・ J「え・・・?」 その時蒼星石は倒れた自転車に追いついて、薔薇水晶のカバンを拾って振り返る。 蒼「えっ・・・!?」 振り返った蒼星石の目に映ったものは、自分以外の少女が彼とキスをしている姿だった・・・ 蒼(これは夢だよね、悪い夢・・・ だってこんな事・・・) 蒼星石は自分の目に映る光景が信じられなかった、否、信じたくなかった。 JUMに薔薇水晶が口付けをしている光景、それを見たくなくて彼女は俯いた。 突然のことに停止していたJUMの思考はやっと動き始め、JUMは薔薇水晶を引き離す。 J「――――ッ!(ど、どうなってんだ!? 何でいきなりこんなこと・・・!?)」 引き離された薔薇水晶は少し寂しそうな顔をしていた。 薔(やっぱり消えちゃった・・・ でもいい・・・自分で消したんだから・・・ 少しの間でも触れ合えたから・・・) 今の彼女はそれで満足だった。 混乱しているJUM、少し寂しげだが満足している薔薇水晶。 その二人に俯いたまま近づく蒼星石。 J「そ・・・蒼星石・・・」 なんと言えばいいのかわからないJUM。 ゆっくりと口を開く蒼星石。 蒼「・・・ハイ、今度からは気をつけなきゃダメだよ・・・」 俯いたまま薔薇水晶にカバンを差し出す。 薔「ありがと・・・」 蒼「・・・じゃ、僕帰るね、翠星石が心配してると思うし・・・」 そう言って走っていってしまう蒼星石。 J「ま、待ってくれ蒼星石!」 走っていった蒼星石を追いかけるJUM。 一人残された薔薇水晶は他の誰にも聞こえない程度の声で呟く。 薔「誰にも渡さない・・・私だけのスナイパー・・・」 彼女は微かに笑っていた・・・ JUMは必死に蒼星石を追いかけていた。 蒼星石の足はJUMよりも速いのでなかなか追いつけない、引き離されないだけマシだろうか。 追いかけっこを続けるうち蒼星石のスピードが落ちて来たので、JUMはすぐ後ろまで追いつき左手を捕まえる。 徐々にスピードを落とす二人、最終的に歩くのもやめ立ち止まる。 激しく息を切らしながらも口を開くJUM。 J「ハァ、ハァ、蒼星石・・・ ハァ、ハァ」 蒼「・・・ジュンくん・・・(こんなに息を切らせて追いかけてきてくれたんだ・・・ 嬉しい・・・でも・・・)」 J「ハァ、蒼星石・・・ ハァ、ごめんな・・・」 蒼「謝らないで・・・(ジュンくんが悪いんじゃない・・・ でも・・・)」 J「ハァ、付き合い始めたばっかだってのに・・・ ハァ、お前を悲しませるようなことしかしてない・・・」 蒼「そんなこと無いよ! ジュンくんは悪くない!(でも・・・)」 J「フゥ~、蒼星石・・・ 僕には嘘付かなくてもいいよ・・・」 蒼「!!」 J「昨日みたいに罵って構わないから、自分の中に溜め込まないでくれ・・・頼む」 蒼「うぅぅ・・・」 蒼星石はJUMに自分の顔を押し付けるようにしてつかまる。 そんな蒼星石をそっと抱くJUM。 蒼「ジュンくんのばか! ばかぁ! ジュンくんはダメなの!! 他の子に優しくしちゃダメなの!! キスなんかされちゃダメなの!! 僕だけを見てくれなきゃ嫌だよ!! ヒック、ヒック」 零れ落ちる涙・・・ J「(泣かせた・・・ 最低だな僕は・・・)ごめん・・・ダメな彼氏だな僕は・・・」 JUMはそうして蒼星石の想いを聞き続けた・・・ 泣き止んだ蒼星石はスッキリした顔をしていた。JUMはそんな蒼星石を安心した顔で見つめていた。 蒼「ごめんね・・・ワガママなことばかり言って・・・///////」 J「いいんだ、蒼星石の本心が聞けて嬉しかったよ」 JUMは蒼星石の手を握って家まで送った。 家に入る直前、立ち止まる蒼星石。 蒼「僕、目腫れてないかな?」 J「少し、腫れてるな・・・ 僕も一緒に行くよ」 蒼「えっ、でも・・・」 ピンポーン インターホンを鳴らすJUM。 翠「ハイハイ、どなたですぅ? ってJUM、と蒼星石?」 J「こんばんわ」 蒼「ただいま・・・」 翠「蒼星石を送ってくれたですか? って、蒼星石その顔どうしたです!?」 蒼「あ、あのこれは・・・」 J「僕のせいだ」 蒼「ジュン君! 違うんだ翠星石、ジュン君は悪くなくて」 翠「・・・」 パシィィィン! 翠星石の平手打ちがJUMの頬を打つ。 蒼「あっ!」 翠「蒼星石に免じてこれくらいで勘弁してやるです でも、もし今度また蒼星石を泣かせるようなら、こんなもんじゃすまないですよ」 J「ああ、肝に銘じとく(ありがとな、翠星石)」 正直JUMは誰かに殴って欲しかったのだ、蒼星石を泣かせるような最低で情けない自分を戒めるために。 J「それじゃ、僕はこれで・・・」 蒼「うん・・・おやすみなさいジュン君・・・」 翠「また明日ですぅ」 二人の家をあとにしたあと一人呟くJUM。 J「このままじゃいけないよな・・・」 彼はある決心を固めた。 次の日の朝、教室。すでにほとんどの生徒が登校している。 J「(そろそろいいかな・・・)薔薇水晶」 蒼(ジュン、君?) 薔「何・・・? ジュン・・・」 ワイバーンを差し出すJUM。 J「コイツ、やっぱり返すよ」 薔「どうして・・・?」 J「僕には受け取れないから、あと昨日みたいなことも止めてくれ」 薔「どうして・・・?」 JUMはあえて周りに聞こえるような大きな声で言った。 J「僕は蒼星石と付き合ってるからだ!」 蒼(///// じゅ、ジュンくん!) 「マジかよ」「いつの間に」「俺の蒼嬢を」「あいつー」 周りがざわつく中、薔薇水晶は冷ややかに答える。 薔「知ってる・・・ 昨日の昼休み見てたから・・・」 J「(見られてた///// いやいや、今は恥ずかしがってる場合じゃない)だったら何で!?」 薔「関係ない・・・ あの時の・・・ワイバーンを構えてる時のジュンは・・・私だけのスナイパーだから・・・」 J「何言って―――」 薔「ね・・・ジュン・・・ ビーバトルしよ・・・?」 J「ふざけるな、そんな事!」 薔「・・・蒼星石の眼って・・・綺麗だよね・・・ まるでビーダマみたい・・・ ビーダマぶつけたらどうなるかな・・・?」(クスクス) J「っ! 薔薇水晶、お前・・・! ・・・わかったよ、受けてやるよ その代わり蒼星石には手を出すな、それと僕が勝ったら僕にこだわるのもやめろ」 薔「ふふふ・・・」 その時チャイムが響いた。 梅「ほらホームルーム始めるぞ~」 J「すみません、ホームルームの宿題忘れたんで廊下に立ってます」 薔「同じく・・・」 梅「えっ? そうか・・・」 廊下に出て行く二人を心配そうに見つめる蒼星石。 蒼「ジュン君・・・」 そして半ば蚊帳の外な他の薔薇乙女達。 銀「なんだか薔薇水晶の様子がおかしいと思ってたけどぉ、こんなことになってるなんてねぇ」 真「まったくなのだわ」 翠「昨日の蒼星石もこういうことだったんですね」 金「修羅場かしら」 雛「しゅらば?」 とりあえず他の生徒を含め誰も梅岡の話を聞いていないのは確実だった。 廊下に向かい立つJUMと薔薇水晶、二人の丁度中間あたりにバスケットボールが一つ置いてある。 薔「バトルは1on1・・・ 互いにボールを打ち合って相手側のラインをボールが超えたら勝ち・・・ 自分のラインより後ろに下がったら負け・・・ 直接ボールに触れても負け・・・」 J「わかった、始めようか(めちゃくちゃパワーが重要だな、そこは連射で補うしかない)」 3・・・2・・・1・・・スタート! J「先手必勝っ!」ババババババババンッ!! JUMのショットを受けてバスケットボールは薔薇水晶のラインに向かっていく。 薔「ふふ・・・」ドユゥゥゥン! ボゴァ! なんとあれだけの連射を受けたボールが、たった一回のショットで逆転しJUMのラインへ向かっていく。 J「なっ、たった一発で!?(いや、違う、薔薇水晶が持ってるのはアイアンサイクロプスじゃない あれはバーニングアトラス! くそっ! トリプルバーストか!)」 バーニングアトラス、上から押し出すという特殊なトリガー機構を搭載することにより 力の弱い人でも強力なショットを打つことができるマシンである。 だがこのマシンの真の恐ろしさはその特殊なトリガー機構が成せる3発同時発射、トリプルバーストである。 J「くそったれ!(そういや、アイツ僕のことスナイパーって呼んでたな・・・ それでバーニングアトラスを選んだってわけか・・・)」ババババババババンッ!! 食い止めるので精一杯なJUM。 薔「・・・(まだあの顔にならない・・・なら・・・)」 薔薇水晶はマシンのトリガーに拳を叩きつけた! ドギュゥゥウン!! ボグァァ!! ハンマーショットと呼ばれるバーニングアトラス最強のショットを受けてボールはバウンドし宙を舞う。 J「そこまでやるか・・・!(落ち着け、床にあろうが空中にあろうがやることは一緒だ)」バババババンッ! 確かにやること事態は変わらないが、上下に動く分、格段に狙いにくくなったのは間違いない。 バシーン! バウンドするボール、それを見て目の色が変わるJUM。 J「(☆ 大逆転の手が見えた!)つぁ!!」バババババババババババンッ!! 超連射で向かってくる勢いを止めるJUM、だが薔薇水晶が次のハンマーショットを撃とうと腕を振りかぶっていた。 J(やべっ! アレを決められたら完全にアウトだ!)バババババババババンッ!! JUMはボールの天頂部分にショットを当てボールの落下スピードを速める。 ドギュゥゥウン!! 放たれるハンマーショット、だがそれはボールに当たることなく通り過ぎていく。 薔(ハンマーショットを防いだ・・・ さすが・・・でもまだスナイパーの顔じゃない・・・) バシーン! JUMのショットで落下速度を増したボールは高く舞い上がる。 だがそれまでショットを打ち続けていたJUMが撃つのをやめてボールを見つめている 薔(?) J(チャンスは一瞬、ここ一回きりだ・・・!) 上昇を終え自由落下を始めたボールはどんどん床へと近づいて行く。 J(・・・・・・・・・・・・ここだ!)バンッ! JUMが撃ったのはたった一発のショット、まともに当てても重いボールを動かせはしない貧弱な力・・・ だが、JUMが狙ったのはボールがバウンドする寸前のボールと床の間! ドコッ! ビーダマという楔により縦のベクトルを横に変化させるボール。 薔(!!) バシーン! バシーン! バシーン! バシーン! ボールは細かいバウンドをしながら猛スピードで薔薇水晶に向かう。 薔(すごい・・・やっぱりジュンはスナイパーだ・・・)ドギュゥゥウン!! ボグァァ!! バシーン! バシーン! バシーン! ハンマーショットが炸裂するもボールの勢いは止まらない。 薔「(ダメ・・・間に合わない・・・)あ・・・」 バシーン! ドンッ、バシン! バシン! コロコロ・・・ 薔薇水晶にぶつかるボール、勝敗は決した・・・ J「俺の勝ちだな・・・」 緊張の糸が切れて、まじめな顔を少し崩すJUM。 薔「あ・・・(あの顔だ・・・/////)」 薔薇水晶がJUMに見惚れていると・・・ 蒼「ジュンくん」 教室から蒼星石が出てきた。 J「蒼星石・・・?」 実はみんな梅岡のホームルームそっちのけで二人のバトルを見ていたのだ。 だが、蒼星石を見た途端愕然とした表情になる薔薇水晶。 薔「(ダメ・・・見ちゃダメ・・・ ジュンのあの顔は・・・ 私だけの・・・)ダメ・・・!」ドギュゥゥウン!! 蒼星石に向かってハンマーショットを撃つ薔薇水晶。 瞬時に気付いたJUMは蒼星石を自分に引き寄せ、ショットを撃つ! 薔薇水晶のショットは蒼星石からはずれ、JUMのショットは薔薇水晶の手からバーニングアトラスを弾き飛ばした。 薔「あっ・・・!」 蒼「じゅ、ジュンくん・・・?」 蒼星石は見上げたJUMの眼つきがいつもと違うことに気が付いた。怒っているのである、それも大激怒だ。 J「約束を破った上に、人を狙ってはいけないっていう最低限のルールすら無視しやがって! 僕の蒼星石にこれ以上何かする気なら、僕もただじゃおかない!! 消えろ! 今すぐ僕の前から消えろ!!」 薔「あっ・・・ぅぅ・・・」 走っていってしまう薔薇水晶。 銀「薔薇水晶!」 J「水銀燈・・・」 薔薇水晶を追いかけようとする水銀燈を呼び止めるJUM。 銀「何? 行くなって言われても行くわよ」 J「そこのバーニングアトラスと一緒にあいつに渡しておいてくれ、僕にはもう必要ないから・・・」 そう言ってワイバーンを差し出すJUM。 水銀燈は無言で受け取り、アトラスを拾ってから薔薇水晶を追いかける。 蒼「ジュンくん・・・//////」 J「蒼星石・・・?」 蒼「そろそろ離して・・・ みんなの前で恥ずかしいよ・・・//////」 J「へっ?」 気付けば自分のクラスだけでなく他のクラスの連中までJUM達を見ていた。 「二人ともアッツいねー」「ひゅーひゅー」「僕の蒼星石だってよ?」「キャー妬けるわー」 梅「桜田、先生感動したぞ お前にそんな才能があったなんて」 それに気付いたJUMは蒼星石を離し、言葉も無く赤面してしまう。 今後しばらくはからかわれるネタに不自由しないだろう・・・ その頃、薔薇水晶は屋上で一人泣いていた。 JUMのあの顔が自分だけのものでなくなった事、蒼星石にショットを向けてしまった事、 そしてJUMに剥き出しの怒りをもって拒絶された事、すべてが悲しくて涙が止まらなかった。 銀「ここにいたの・・・」 声に振り返る薔薇水晶。 薔「銀ちゃん・・・」 ゆっくりと近づく水銀燈。 銀「バカねぇ、大切な人にあんなことされたら誰だって怒るわよぉ」 薔「・・・」 銀「これジュンから頼まれたの、あなたに渡してくれって」 水銀燈はアトラスとワイバーンを差し出す。それを受け取ってまた大粒の涙をこぼす薔薇水晶。 薔「・・・もう本当に・・・私のスナイパーじゃないんだね・・・ ジュン・・・」 銀「良かったら話してくれない? どうしてこんな事をしたのか・・・」 薔薇水晶は水銀燈にこの前のサバイバルゲームからあったすべての事を話した。 銀「なるほど、そのジュンの顔を独り占めしたかったわけねぇ」 コクリと頷く薔薇水晶。 薔「でも・・・もうダメ・・・ みんなに知られちゃったし・・・ジュンは蒼星石の・・・」 銀「(これがきっとこの子の初恋だったのねぇ、初恋は実らない物だって言うけど それじゃ慰めにもならないわぁ・・・ ☆ そうだ・・・)それじゃあこう考えたら?」 薔「・・・?」 銀「薔薇水晶の好きだったスナイパーはその子の魂で、JUMに時々乗り移ってた、とか・・・」 そう言って水銀燈はワイバーンを指差す。 薔「・・・」 ワイバーンをじっと見つめる薔薇水晶。するとJUMのあの顔と同じものがちらついて見えた。 薔「!・・・」 銀「ねっ・・・」 薔「(そうなのかも・・・ そうだったら・・・今度こそは間違いなく私だけのスナイパーだ・・・) うん・・・ ありがとう銀ちゃん・・・」 今はこれでいいのだ、こんなごまかしでもこの子の失恋の痛みが少しでも和らぐのなら・・・ 水銀燈はそう強く思った・・・ 結局水銀燈と薔薇水晶は2時間目の休み時間に帰ってきた。 薔薇水晶はみんなに存分にからかわれていたJUMと蒼星石に、心から頭を下げてなんとか仲直りできた。 そしてすべての授業が終わり帰路につく薔薇乙女+JUM。 真「まったく、誰かさんのせいで教室が騒がしくてしょうがなかったわ」 翠「まったくですぅ、『僕の蒼星石』とかほざいてたバカのせいですぅ」 金「ラブラブかしら~」 雛「あつあつなの~」 言いたいほうだいな4人を尻目に赤面しつつ蒼星石に話しかけるJUM。 J「ごめんな、僕のせいで・・・」 蒼「ううん、いいよ だってあの時言ってくれたこと、嬉しかったから・・・////////」 J(////////) なんだかんだでラブラブな二人の後ろには、歩きながら真剣な眼差しでワイバーンを見つめる薔薇水晶と それを見守る水銀燈の姿があった・・・ /終わり ちょと、テストしてみた。 テスト作品に選んだ理由は蒼星石メインだったから、以上。 -- 名無しさん (2006-02-07 18 09 22) 色々書き込んでみてね☆ -- 名無しさん (2006-02-07 18 19 09) 毎度乙です。これ読みたかったんす,テスト -- 名無しさん (2006-02-07 18 27 42) ってか、このタイトルで作者納得すんのか?それが心配だ -- 名無しさん (2006-02-07 19 34 14) 作者です、熱いタイトルをありがとうございましたw -- 名無しさん (2006-02-07 19 40 44) ワイルドワイバーンでバーニングアトラスに勝つのは無理ありませんか? -- 名無しさん (2008-01-01 22 37 15) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/baragakuen-highschool/pages/136.html
水銀燈「…フフ、真紅、あなた今日は、いつもより一段とかわいいわねぇ…」 真紅「…姉さんにそう言ってもらえると嬉しい……姉さんはいつも美しいのだわ…」 水銀燈「…フフ…お風呂、もう沸いてるから先に入ってきたらぁ?」 真紅「……姉さんも一緒に…入りましょうよ…ダメ?」 水銀燈「…まったく、しょうがない子ねぇ…」 真紅「…ウフ、嬉しい…」 水銀燈「…あん…そんなに強く抱きしめると、痛いわぁ…真紅…」 真紅「…姉さん、好きよ、大好きよ…」 水銀燈「…フフ…分かってるわよぉ…私もよ、真紅…大好きよ…」 水銀燈「…湯加減はどう?…真紅」 真紅「…ええ、とってもいい気持ちよ……それにしても姉さんは胸が大きくて羨ましいわ…」 水銀燈「…フフ…真紅はいつもそれねぇ……そんなに胸大きくなりたいのぉ?」 真紅「…姉さんのような綺麗な胸ならなりたいわ…」 水銀燈「…胸が大きくなるツボを知ってるわぁ…試してあげましょうかぁ?」 真紅「…姉さんの好きにして……」 水銀燈「…フフ…かわいい胸ね…真紅…」 真紅「…姉さんたら…からかわないで…」 水銀燈「…ここをね…指でよぉく刺激するのよ…」 真紅「…!…はう」 真紅「…あ…姉さん、すごいわ…私…」 水銀燈「…フフ…黙ってなさぁい…おばかさぁん…」 真紅「…だって、……あ…あう」 水銀燈「…どお?…気持ちいいでしょう?」 真紅「…気持ちいいわ…姉さん…はぁぁ…」 水銀燈「…フフ…真紅ったら…顔が真っ赤よぉ…」 真紅「…だって…だって…恥ずかしいもの…ん…」 水銀燈「…あら、真紅…下の方も欲しがってるみたいね…」 真紅「…いや、私…恥ずかしい…」 水銀燈「…ウフ…真紅…我慢はよくないわよぉ…」 真紅「……も、もう我慢できないわ、姉さん好きよっ!大好きよ!」 水銀燈「…フフ…大声ださないのぉ…」 真紅「…だって、私…私…」 水銀燈「…わかってるわよ……私の大切なお人形さぁん…」 真紅「……姉さん…強く抱きしめて…キスして…」 水銀燈「…フフ…はい、はい……チュッ…」 真紅「…ん…っはぁ…ん…はぁはぁ…ん~…」 水銀燈「…フフ……ホントに…ん…かわいい子ね…私たち…んん…いつまでも…一緒よぉ…」 真紅「…うん…姉さん、ずっと愛してるわ…大好き…」 水銀燈「…私も愛してるわ……ほら…のぼせるから続きはベッドでしましょう……」 真紅「……うん」 了 真紅「…姉さん…気持ちよかったわ…」 水銀燈「…私もよ…久々に燃えちゃったわ…」 真紅「………姉さん…キレイだし…スタイルもいいから…いっぱい男が…言い寄ってくるでしょう?」 水銀燈「…ウフフ…何?心配してくれてるのぉ?……大丈夫よ…私には貴女というすばらしい相手がいるんだから…」 真紅「……姉さん」 水銀燈「…さ、服を着なさぁい…カゼひくわよ」 真紅「…うん」 水銀燈「…おつまみ作ってあげるから、ちょっと待ってなさいね」 真紅「…(…姉さん…優しい)」 今度こそ終わり
https://w.atwiki.jp/baragakuen-highschool/pages/479.html
駅前のスクランブル交差点に面したビルに設置された大型ディスプレイの中で、 彼女は今日も楽しげに歌っていた。 流れているのは、つい先週に出たばかりのラブソング。 生活スタイルが異なり始めた二人が、すれ違い、もつれ合いながらも ハッピーエンドに向かって駆け抜ける……という歌詞だ。 『終わらないストーリー』 ディスプレイに映る彼女に見入っていた僕の腕を、薔薇水晶が引っ張った。 薔「笹原くん。信号、変わったよ」 笹「ん……ホントだ。早く渡ろう」 僕たちは手を繋ぎながら、彼女の歌をBGMにして横断歩道を渡っていく。 今日は、久しぶりにウィンドウショッピングを愉しむ約束だった。 薔「この曲、すごく良いよね」 横断歩道を渡り終えたところで、薔薇水晶は僕の横顔を眺めながら言った。 薔「私、CD買っちゃった」 笹「ああ、僕もだ。結構、売れ行きも良いみたいだよ。オリコンチャートを 見たら、ミリオン近い数字が出てた」 薔「本当に? なんか、凄いよね。同級生にアイドル歌手が居るなんて」 笹「だよなあ。正直、ここまでメジャーになるなんて思わなかったよ」 翌日、珍しく彼女が登校していた。 笹「よお。久しぶりだな、メグ」 メ「あら。おはよう、笹原くん。会いたかったわよ、ダーリン♪」 笹「今日は来られたんだな。最近、休みがちだったから心配してたんだ」 メ「出席日数がヤバいのよ~。留年したら、どうしよっかな」 突然のスカウト。そしてデビュー。 天性の美貌と持ち前の歌唱力で瞬く間にスターとなったにも拘わらず、 メグは三ヶ月前と変わらず、至って普通の高校生然としていた。 余りにも突然の激変で、彼女自身、まだ戸惑っているのかも知れない。 メ「でも、みんな応援してくれてるし、頑張らないとね」 笹「あんまり無理するなよな」 メ「大丈夫大丈夫。笹原くんに会えて、元気が出たから」 けれど、そう呟いた彼女の横顔には、少しだけ疲れが見えた。 テレビや雑誌でメグの姿を見る回数に反比例して、登校する回数は減っていった。 そんなに仕事が忙しいのだろうか。時々、携帯のメールで連絡を取り合うけれど、 なかなか都合が付かなかった。たまには、会って話をしたい。 薔「最近、メグちゃん学校に来ないね。元気にしてるのかなぁ」 笹「うん。歌番やバラエティで見てる限りじゃ、元気そうなんだけど」 薔「この頃はメールの数も減ってるし、なんか心配だなぁ。 笹原くんは彼氏なんだから、電話で話とかしてるよね?」 笹「彼氏ったって、形ばかりの関係だよ。最近じゃ、話すどころか週末に 会うことすら出来ないんだから」 薔「そうなの……なんか寂しいね。あ、ちょっと駅前の本屋に寄って良い?」 笹「ああ、勿論」 駅前に来て、あの大型ディスプレイを見上げた僕たちは、思わず言葉を失った。 薔「ちょっと、笹原君! あれって――」 午後のワイドショーを垂れ流すディスプレイには、芸能関係のスクープが 下衆なタイトルと共に、しつこいほど繰り返し映されていた。 【大物新人アイドルと、有名若手俳優の交際疑惑】 【熱愛発覚!! 新人アイドルと――】 【深夜のお泊まりデート激写!】 それは紛れもなく、メグを誹謗するものだった。が、全てを嘘と言い切る根拠もない。 裏切られた――いや、そもそも僕なんて凡人が、彼女と釣り合う筈ないじゃないか。 悔しくて、情けなくて……僕は薔薇水晶を置いて、家まで逃げ帰った。 彼女はもう、違う世界の人間なのだと思い知らされた。 何が彼氏だよ。僕には、彼女を追い掛けるだけの能力も、ルックスも無い。 携帯に、メグからメールが届いた。 【メ】今度の土曜日に、会えないかな? 今更、会ってどうなるって言うんだろう。例のスクープについて、 言い訳を聞かされるだけじゃないのか? 惨めすぎる、そんなの。 【笹】ゴメン。都合が悪くていけない 送信しようとして、思い止まった。良い機会じゃないか。 この際、彼女と別れよう。会って、ハッキリ伝えるんだ。 了解の返事を打ち込んで、僕はメールを送信した。 薔薇学園の裏にある明伝城址公園で、僕たちは待ち合わせていた。 メ「お待たせ、笹原くん。ちょっと、遅くなっちゃった」 ベンチに座っていた僕を見て微笑み、メグは隣に腰を降ろした。 私服姿の彼女は、以前よりもずっと華やいで見えた。そりゃ当然だろう。 僕らなんかとは住む世界が違うんだ。服だって、きっとブランド物さ。 笹「別に、大して待っちゃいないさ。それより、今日はどうしたんだよ」 メ「ちょっと、ね。最近、色々と有りすぎて疲れちゃった」 笹「お忍びで息抜きってやつか」 メ「まぁね。それに、笹原くんとは最近デートしてなかったし」 デート、か。なんだか、お情けをかけられてるみたいだ。 惨めだな、まったく。 笹「デートなら、僕より相応しい奴等が居るだろ」 メグが息を呑む音が聞こえた。実際、今の彼女には最も触れられたくない話題だと思う。 けど、だからこそハッキリ言わなきゃならないんだ。 笹「最近、ワイドショーとかで騒がれまくってるだろ。そいつと――」 メ「待って! ちょっと、私の話を聞いて」 メグは強い口調で、僕の言葉を遮った。 メ「ねえ、笹原くん。まさか、あんな報道を信じてなんかないわよね?」 笹「信じるなと言われたって、ああも写真週刊誌とかで書かれてるとな。 別に、良いんじゃないか? メグはもう雲の上の人物なんだし、 派手な私生活も、芸能人のステイタスみたいなもんだろ」 メ「ばっ、バカねえ。あんなの全部、誤解なんだって」 誤解でも、何でも良い。もう、諦めはついてるんだから。 笹「あのさ……メグ。僕たち、もう別れないか」 メ「えっ――」 信じられないと、彼女の見開かれた眼が語っていた。どうして? と。 リップグロスを塗った彼女の唇が、戦慄いている。 何かを言おうとして、言葉にならない。そんな様子だった。 メ「――どうして、そんな事を言うの? 最近、殆ど会えなかったから?」 笹「言ったろ。住んでる世界が変わったんだよ。こんな関係を続けるのは、 お互い、もう無理なんだ」 メ「そんなの身勝手だわ! お互い、もっと会う時間をつくる努力すれば いいだけの話じゃないの」 笹「そりゃ、出来ることなら、そうしたいよ! けど――」 僕には、君を引き留めておくだけの力は無いんだ。 笹「もう、ダメなんだよ。僕たちは」 メ「――――っ!」 ぱんっ! メ「笹原のバカっ! あんたなんか最っ低の大バカよ! 大っ嫌い!」 メグは僕の頬を叩き、一頻り喚いて、目の前から走り去ってしまった。 胸が苦しかったけど、これで良いんだと自分を慰めた。 僕はまだ、メグのことが好きで好きで堪らない。 でも、だからこそ彼女の足枷になってはいけなかったんだ。 そう…………これで良かったのさ。 薔「どうして、メグちゃんをフッたの?」 その夜、薔薇水晶が家に訪ねてくるなり発した質問だ。 僕なりの考えを答えたら、薔薇水晶にも頬を殴られた。 薔「どうして、信じてあげられないの? メグちゃんは笹原くんのこと、大好きなんだよ?」 笹「だからって、高校生の僕が出来ることなんて、高が知れてるだろ」 薔「相談に乗って上げることくらい出来るじゃない!」 笹「話を聞いたって、解決できるかどうか分かんないだろ! もう帰ってくれよ!」 薔「ヤダ! 笹原くんがメグちゃんに謝るまで帰らないっ!」 薔薇水晶はいつになく強引だった。こんな彼女を見るのは初めてだ。 僕は彼女の気迫に圧されて、渋々ながら、メグの携帯に電話を掛けた。 笹「もしもし…………笹原だけど」 メ「――――何の用……なの?」 笹「これから、少しだけ会えないかな? 明伝公園で待ってるから」 メ「――――良いわよ。じゃあ、後でね」 笹「じゃあ、僕は出かけるからな。薔薇水晶は先に帰ってて良いよ」 薔「私も一緒に行くわ。笹原くん一人じゃあ、また喧嘩別れになりそうだから」 笹「もう、そんな事しないって」 とは言え、薔薇水晶が居てくれるのは心強かった。ついさっき別れたばかりで、 どの面下げてメグの前に立てるだろうか。一人きりじゃ、直前で尻込みした筈だ。 明伝公園に僕たちが着いた時、メグは街灯の下のベンチに座って項垂れていた。 学園では常に朗らかで、行動派だったメグ――彼女が、あんなにも憔悴しているなんて。 僕たちの接近に気付いてハッと顔を上げたメグは、 一瞬、嬉しそうな表情を浮かべ…………複雑な面持ちとなった。 メ「私に、あなた達の仲を見せ付けに来たの?」 薔「笹原くんが逃げ出さないように、見張ってるのよ」 思わず答えに窮したところに、薔薇水晶のフォローが入った。 格好悪いが、やはり一緒に来てもらって、良かったと思った。 ふぅん……と、メグは僕らを交互に見据えて、クスッと笑った。 メ「まあ、いいわ。それなら、笹原くん。どうして、私を呼びだしたの?」 笹「さっきの事、謝りたくてさ。それと、伝えたいことも有る」 メ「ヨリを戻したい……なんて虫のいい話なら、お断りよ。 私のプライドはずたずたに傷付けられたんだから」 笹「僕だって、そんな恥知らずじゃない。メグを信じるって、言いたかったんだ。 あんな写真週刊誌のゴシップ記事なんか、くそくらえだって」 メ「そう……」 メグは少し口を噤んで、溜息を吐いた。乱れた気持ちを整理するように。 そして、迷いが吹っ切れたように明るい笑顔を浮かべた。 薔薇学園で、毎日みんなを和ませてくれた、あの笑顔を――。 メ「私、アメリカに渡ろうって決めたの」 夜空の月を見上げて、メグは自分の抱負を語ってくれた。 メ「スクープだなんだと騒がれまくって、ちょっと嫌気がさしてたのよ。 良い機会だし、留学して一から出直そうって考えたの」 笹「凄いな、メグは。僕と同い年なのに、そんなにもスケールの大きい目標が あるんだから。僕なんか、何をしたいのかすら分かってない」 メ「人それぞれだもの。でもね、探し続けなければ、答えは見付けられる筈がないわ」 笹「そうだね。僕はまだ、真剣に人生と向き合ってない。甘えているんだと思う」 甘えているから、物事の本質が見えなくて、肝心な時に大切な人を傷付けてしまったんだ。 僕はメグの目を真っ直ぐに見詰めて、思いの限りを伝えた。 笹「僕には、メグみたいに天賦の才能なんかない。だけど、探し続けてみるよ。 そして、いつかメグを追い付けるだけの自信を得た時、僕はメグに伝えに行く。 今度こそ、どこまでも一緒に歩いて行こうって」 メ「ふふ……それって、いつ頃になる予定なの?」 笹「それは、その……今すぐにとは言えないけど、出来るだけ努力するから」 メ「ふぅん? まあ、気長に待つとするわ」 笑いながら、メグは右手を差し出した。 メ「暫く、お別れね。でも、忘れないで。世界の何処で歌っていようとも、 私は……不特定多数の誰かにではなく、貴方の為に歌っていることを」 忘れないよ。絶対に、忘れるもんか。 僕はメグの温もりを忘れないように、しっかりと握り締めた。 ――クリスマス 毎年恒例のメロディが満ち溢れた駅前に、僕と薔薇水晶は買い物に来ていた。 何処に行っても、ジングルベルや、山下達郎のクリスマスソングが流れている。 毎年、飽きもせず繰り返される光景。 駅前のスクランブル交差点で信号待ちをしていた時、 薔薇水晶が正面の大型ディスプレイを指差した。 薔「あっ! 笹原くん、メグちゃんが映ってるよ」 笹「本当だ。あいつ、向こうでも大人気だもんなぁ」 渡米して一ヶ月と経たず、メグは人気ロックバンド【RozenMaiden】のボーカルとして、 その名を世界中に知られる存在になっていた。あのゴシップ記事も直ぐに忘れられて、 国内でもメグの人気は回復している。 彼女は、大空を羽ばたく鳥のように、どんどん遠くへ行ってしまう―― 薔「笹原くんも大変だね。今や世界的な有名人に追い付かなきゃいけないなんて」 笹「確かに、途方もない目標だなぁ」 だけど、僕はメグと約束したんだ。必ず追い付いて、一緒に歩いて行くと。 ♪終わらないストーリー クリスマスの街に、メグの歌が流れ続ける。 毎年、飽きもせず繰り返される光景。 だけど、今年は――――少しだけ違って見えた。 おわり なんで笹原とメグが付き合ってんのっていうか笹原のバカ -- レーゼ (2008-12-27 03 03 18) ほんとアホラシ -- リーフ (2009-07-25 00 12 43) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/baragakuen-highschool/pages/106.html
雛苺「なぜローザミスティカを奪ったの!」 水銀「もうあなたに話す舌を持たないわぁ。だぁって戦う意味さえ答えられないんだもの」 雛苺「それでもヒナは薔薇乙女なのよ!!!」 水銀「それは一人前のドールの台詞よ!!とどめ!」 雛苺「やぁなの~~!!」 翠星「水銀燈のおなかを蹴っ飛ばせですぅ!」 雛苺「やぁぁぁぁ!!!」 水銀「くぅ・・・しまった・・・」 水銀「雛苺、覚えておきなさい。アリスへの道を邪魔する子はいつか必ず水銀燈に葬り去られることを」 雛苺「うゆーおはよーなのー」 真紅&翠星石「うゆーおはよーなのー」 雛苺「だ、だからヒナのマネしないで~」 蒼星石「うゆーまだ眠いのームニャムニャ」 雛苺「!」 金糸雀「うにゅーおいしいのームニャムニャ」 雛苺「!!」 水「雛苺ぉ~」 雛「URYYYY…… ……じゃなくて、うゆー。どうしたなのー?」 水(ディオ様…) ] 雛苺「ヒナのケーキ屋さんオープンなのー!」 ウィーン 雛苺「あ、しんくぅ、いらっしゃいませなのー」 真紅「…コレとアレとアレとコレとソレ頂戴!急いでるから早く!」 雛苺「…あ、はいなのー…え、えーとコレと…」 真紅「お会計ここ置いてくから」 雛苺「…は、はい…えーと…」 真紅「包装はいいから、早く!」 雛苺「…は、はいなの…」 真紅「ご苦労」 数時間後 真紅「ちょっと!頼んだの入ってなかったわよ!」 雛苺「…ひ、ごめんなさい…だって…」 真紅「じゃあ、お会計返してもらうわね、じゃ」 雛苺「…グスッ」 雛「ジュンのぼりなのー!」 J「いい加減いっつもいっつも僕に登るのやめろよな!」 翠「そうですちびちび!ジュンが嫌がってるです!」 雛「そんなことないのー。ねぇ、ジュン?」 J「い・や・だ。迷惑だ!重い!降りろ!」 雛「うぃ~・・・」 よじよじとJUMの肩から降りる雛苺。 しょんぼりと自分の席に戻る。 紅「どうして雛苺はジュンに登る事に拘るのかしら?」 巴「わたしは昔聞いたことあるけど・・・」 銀「ちょっと興味深いわねぇ?」 紅「ちょ、水銀燈!いきなり会話に割り込まないで頂戴!」 銀「何言ってるのよ真紅。今始まったばっかりじゃない。おばかさぁん」 紅「くっ!」 巴「やめなさいよ二人とも・・・教えないわよ、雛苺の話」 銀「はぁい」 紅「っふん!」 巴「桜田君は覚えてないかもしれないけど・・・」 巴はゆっくりと話し出した。 十年ほど前の話。 雛「ふんふんふ~ん♪今日のおやつはうにゅうなの~♪明日もうにゅう・今日もうにゅう♪あさってもずっとうにゅうなの~♪」 ご機嫌で歌を歌う雛苺。右手には木の枝、小石を蹴りながら歩いている。雛苺の歌はだんだんとエキサイトし始め、小石の飛距離も増していく。 雛「うにゅうな・のーーーーーーっ!!」 スカーン!と音がしそうなほど綺麗に放物線を描く小石。 雛「ふうっ、きょうのうにゅう楽しみなのー」 きゃいんっ! 雛「???何の音なの?」 音は小石の消えた塀の向こう側から聞こえた。 塀に続く門扉から一匹の犬がのそりと現れた。 中型犬位の大きさではあるが、小学校に入るか入らないかの彼女からすれば十分大きい。 犬「ぐるるるるるる・・・」 雛「ひぃっ!犬さん・・・怒ってるのなの」 犬は雛苺を警戒するようにゆっくりと近付いてくるが、雛苺は恐怖のあまり立ちすくみ、逃げる事さえ出来ない。 雛苺の持っている鼻先に犬が近付き、ゆっくりと匂いを嗅ぎ始める。 恐怖のあまり手を振ったのが小さな雛苺の大きな過ちだった。 雛「こ、こないでなのー!」 雛苺の持った枝は的確に犬の鼻面を打つ。犬は思わず首を引き、情け無い悲鳴を上げた。 その行為が犬のプライドを傷付けたのか犬は怒りの炎をともした視線で雛苺を射抜いた。 雛「に、逃げるの・・・」 初めはゆっくりと、だが恐怖に駆られて雛苺は思わず駆け出した。 雛「こ、来ないでなのーー!!」 犬「ガウガウガウガウガウ!!!」 J「ったく、ねーちゃんのやつ、傘を学校に忘れたからって取りに行かせること無いだろ。こっちはまだ小学校に入りたての一年生だぞ」 この可愛くない台詞のガキがJUM。将来の我々の敵である。なぜかって?決まってるだろう、薔薇乙女達を独り占めしているからだ! それはさて置き、JUMは学校へ忘れた傘を取って帰路についていた。 J「傘を持ってこないとおやつの苺大福は無し!だってさ。りふじんだよな、子供って」 ?「―――――!」 J「ん?」 ?「―すヶてー!なのー!」 ジュンの視線の先から何かが走ってきた。 雛「誰か助けてなのー!」 J「犬に追っかけられてるのか?・・・僕には関係ないね」 雛「あ!そこの人!助けてくださいなの!」 雛苺はすばやくJUMの後ろに回りこみ、犬と自分の間に挟む。 雛「どこの誰かは知りませんがありがとうなの。助かったの」 J「ばか、まだ助かったわけじゃないだろ!僕を巻き込むな!」 雛「うゆ~それは悪い事したの。でも、雛もピンチなの!」 犬「がるるるるるるる」 雛「ひいぃっ!」 J「く、くそ・・・」 JUMは傘を構える。 小さい頭で必死に考えた結果、雛苺を連れて逃げるのは得策ではなかった。明らかにお荷物にしかならないからだ。 JUMは覚悟を決めて犬を追い払う事にする。 犬はJUMの様子をうかがう様に一定の距離を保っている。 雛「ふゆ・・・」 緊張に耐え切れず、雛苺が泣き出す。 JUMは雛苺をなだめようと後ろを振り返ったのだが、それが大きな間違いだった。 犬(キラーン!今だ!喰らえ・絶・天狼抜刀牙!) 犬は高く跳躍し、JUMの頭に喰らい付こうと牙をむいた。 J「う、うわあーー!」 JUMは思わず傘を突き出し、手元のボタンを押した。 バンッ! 大きな音と衝撃がJUMの両手に伝わり、JUMは思わず傘を取り落とした。 目を開けたJUMの前には壊れた傘と、顎を外した犬が転がっていた。 JUMが突き出した傘に犬が思わず噛み付き、開いた傘の衝撃で犬の顎が外れたのだ。 犬「ひゃんひゃんひゃん!」 情け無い泣き声をあげて犬が去って行った。 雛「た、たすかったの・・・」 地面に尻餅をついた雛苺がほっと息を吐く。 雛「あ、あれ?立てないの・・・」 J「犬は追っ払ったんだし、もう用は無いだろ。じゃあな」 雛「ま、まってなの!ヒナ立てなくなっちゃったの・・・」 J「・・・僕も傘が壊れたし、帰るの遅くなったらねーちゃんに怒られる」 雛「うゆ・・・それなら仕方ないかもなの・・・」 J「・・・ったく、しょうがねーなー」 JUMは雛苺の前で背を向けると、その場にしゃがみ込んだ。 J「ほら、登れよ」 雛「???」 J「おんぶしてやるって言ってるんだ。ほら、早く」 雛「あ、ありがとうなのー」 JUMは雛苺を背に乗せてゆっくりと歩き出した。 銀「へぇ~、そんなことがあったの」 巴「でも、その後は小学校の学区が違うみたいで二人とも合うことは無かったんだけどね」 不思議そうな顔をする水銀燈と真紅に巴は言葉を足して説明する。 巴「中学校になって一緒の学校で、雛苺は一目でジュン君だって気付いたみたい。もっとも、ジュン君は気付いてなかったけど」 紅「全く、ジュンらしいと言うか何と言うか」 銀「じゃあ、雛苺のアレは大切な思いでなのねぇ」 雛「うゆ?三人でなに話してるのー?早く学食に行くのー!」 J「おまえな、そういう事は僕から降りてから言えよ!このままじゃ恥ずかしくて教室を出れないだろ!」 蒼「今のままでも十分恥ずかしいと思うけど・・・」 翠「いいんじゃないですか?本人が気付いて無いうちが幸せなんですから」 蒼「お?言うねー翠星石」 翠「あったりめーです!翠星石はお姉ちゃんなんですから!」 雛「みんなで学食にれっつごーなのー!」 J「いい加減降りろよー!」 雛「ヒナねぇ、ジュンの事、だーいすき!」 ~お し ま い~ 男「ちょっとお嬢さん?ウチの店で働かない?」 雛苺「うゆ?ヒナ?どんなお仕事するの?」 男「ウチはお風呂屋さんで、疲れたお客さんの背中を流して、気持ちよくさせてあげるんだ!とっても人のためになる仕事だよ!(ニヤニヤ」 雛苺「へーおもしろそうなのー」 男「それに給料もイイよ!マクドナルドの10倍はもらえるよ!(ニヤニヤ」 雛苺「すごいのー!うにゅーいっぱい食べれるのー!」 男「じゃあ住所と電話番号教えてもらえるかな?(ニヤリ」 雛苺「はいなのー!お仕事たのしみなのー♪」 ああ雛苺、君はどこへいく… 雛「ジューンっ!勉強教えて~!ね~ジュン~」 J「仕方ないなぁ…」 雛「わーいなの~wえっとね、ここが解んないんだけどね~…」 J「どれどれ…ん?このノートの端の悪戯書きはなんだ?」 雛「それは授業中に雛が描いたの~うまいでしょ~」 J「こんなの描いてないで授業に集中しろ!」
https://w.atwiki.jp/baragakuen-highschool/pages/331.html