約 19,254 件
https://w.atwiki.jp/battler/pages/10023.html
26世紀へと時空移動を行ったマクロス・ストライクスとラパウディア艦隊は異次元機関破壊作戦の第1フェーズ最終目標であるマクロス・ストライクス大気圏離脱任務を完了し、26世紀の地上にはラパウディア艦隊と彼らに付き添う形で結成された日本極東国軍クーデター部隊が残されたのである。 その後、政府への攻撃をしたが政府はすでに逃げていたという・・・ バトロイ大長編・Mr・Hside第10話「ま、帰るまえの戦利品ってことで」 日本極東国首都 「カントウ」内東京エリア 22時30分 とある豪邸 アキツ「・・・見張りはすべて昏倒させた。たぶん逃亡した政府側だな。」 ハヤミ「こちらも見張りはノーキルで仕留めました。侵入はアキツさんにまかせます」 ハルミカ 早く「クイーン」を回収してとっととずらかるわよ。騒ぎを大きくしたら大変だから アキツ「へいへい・・・」 とある豪邸内 中庭 アキツ「・・・ガラ空きだな。」 23時45分 とある豪邸 6畳間の部屋 少女「・・・」 アキツ「こいつが「クイーン」か・・・たぶん対外的には国家元首扱いされているんだろうな・・・ま、悪く思うなよ。」 ガバッ・・・ゴソゴソ・・・ アキツ「あとは・・・撤収するだけだが・・・おいハヤミ」 ハヤミ どうしました? アキツ「ターゲットにしこたま発信機の反応がある。ジャミング出来るか?」 ハヤミ ・・・少々時間がかかりますが・・・ アキツ「見つかったらやばいからな。」 ハヤミ アキツ先輩らしいや 24時19分 合流地点 アキツ「・・・ここだな。」 ハヤミ「はい、ここに・・・」 ピッポシュゥゥゥゥゥ・・・ 光学迷彩を解除し、R-11B「ピースメーカー」が2機、姿をあらわす。二人はそれに乗り、起動させようとした・・・そのときであった! 警官「何をやっている!」 アキツ(げっ、この世界の警察かよ!) ハヤミ(やばいですね。この機体はパトランプとかは付いていますがこの世界の警察のデータベースにはない機体ですよ) アキツ(いちかばちかだ!強行発進するぞ!) ハヤミ(了解!) キャノビーを閉じ、エンジンを作動させる。アキツが搭乗している機体の後部座席(?)には布団でスマキにされた「10歳ぐらいの少女」が寝ていた。 機体が浮くと同時にアキツ機が無線の周波数を警察無線に切り替え(受信のみ)ると音声が聞こえた 警察無線 御所より元首が拉致された。付近の警官は警備体制を厳にされたし アキツ「・・・やばいな。このまま逃げるぞ!」 ハヤミ「了解!」 2機のR-11Bが低空(地面スレスレ!)を飛行し、逃走を開始する。それを追うのは警察車両・・・なのだが。 アキツ「・・・おいおい・・・この世界の警察は犯罪者に対しては射殺命令でもでてるのか?」 ハヤミ「僕たちが拉致した人がそれなりの位があるなら犯人である僕たちを射殺してまで奪い返したい人物ですよ!」 その警察車両は機関銃(!)を装備し、それを発砲しながら追いかけてくるのだ。 アキツ「っく!ロックオンレーザー撃ちこむぞ!」 アキツ機の背部ハードポイントに搭載されたロックロンレーザー砲のターレットが回転し、警察車両にむけロックオンレーザーを発射する 多少数が減るが・・・それでもしつこく追ってくる。 間もなく夜明けが近い。目の前は・・・川だ!ここを飛び越えて高度をあげれば逃げ切れる!2人はそう思い、機体の高度を徐々に上げる。 アキツ「あばよ!」 追っていた警察車両は川へ落下した。アキツたちはファンディアへと帰還するのであった・・・ ラパウディア艦隊 ファンディア 個室 6時50分 少女「・・・」 クルス「・・・起きないな。」 ハルミカ「起きないね。」 アキツ「まるで眠り姫だよ。」 ハヤミ「そうだね。」 シバムラ「うむ。そうだな。起きるまでそっとしておくのが一番だな」 ファンディア ハンガー ハンガーではいつもより忙しく機体整備用機材が動いている。 何時でも出れるようにはされているが、やはり毎日の整備は欠かせない。 特にR戦闘機は波動砲を搭載しているため、故障した際には戦闘力が急激に低下する。へたすれば空中分解もありえるのだ。 またハンガー脇のコンテナは主砲や艦首波動砲用の部品が詰まっている。 整備兵「しかし、コンテナの中身を見るといやでもこの艦はヴァナルカンド級宇宙巡航艦が元になってるってことを思いしらされますよ」 アキツ「ま、そうだな。・・・機体はどうなっている?」 整備兵「へへっ、各部オールコンディショングリーン。故障確率は0ですよ。」 ただでさえアキツたちの機体はつい先日オーバーホールを行ったばかりである。あちこち部品の消耗が激しく、整備兵にとってもオーバーワークだった。 アキツが眠たそうにあくびをしたときであった ハヤミ「アキツさん!」 ハヤミが走ってきた。 アキツ「どうしたハヤミ!」 ハヤミ「どうしたもこうも・・・あの子がここに向かって走って行ったんです!もしかしたら逃げる可能性が・・・」 整備兵「カタパルトハッチ閉鎖しろ!ハンガーオフィサーは緊急停止用ネット弾詰めたカールグスタフを持て!」 整備兵の一人がハヤミの言葉を聞いて大声で叫んだ。そのとき予備機で搬入されていたTL-Tが動き出したのだ! アキツ「それ借りるぞ!」 整備兵「あ・・・はい!」 アキツが緊急停止用ネット弾を詰めたカールグスタフをTL-Tに向ける。そして発射する。 ボシュッ!ばさっ! その後何発か同様に打ち込まれ、TL-Tは停止した。 ハルミカ「・・・であの子は?」 アキツ「機体止めた後コクピットから無理やり引きずり降ろしたら帰らせろとかと喚いてな・・・整備兵数人で取り押さえた瞬間泡吹いてたおれてな・・・緊張の糸が切れたんだろうな。」 ハルミカ「みすみす帰すなんてできないわ。戦いは終わったのよ・・・彼女を帰したらそのままゲリラ化した旧政府軍のリーダーになるかもしれないのよ」 日本極東国首都 「カントウ」内東京エリア 現行政府が事実上倒れた日本極東国では元首が誘拐されたというニュースが流されていた。しかし臨時政府は元首は「倒れた旧政府の操り人形」であることを公表した。 後書き どうもーラパウディア編は急ぎ足とはいえ首都攻撃作戦のところをあらすじ風にしてみましたー 予定変更として次回ラパウディアがバトロイ世界に帰還する予定です!
https://w.atwiki.jp/battler/pages/9745.html
あらすじBGM(オープニングも兼ねてます) 日本極東国軍のとある部隊が独断でマクロス・ストライクスを強襲する。そして現れたのは「ベルセルクル」という名の人型機動兵器。しかし、その性能を発揮できずベルセイン・リヒカイトのマブイエグリを食らい撃墜されたのであった・・・ バトロイ大長編Mr・Hside第5話「鋼の魂、虚空からの使者」 日本極東国首脳官邸 極秘会議室(BGM) 首脳「・・・では、すでに異次元機関は完成し、稼働テストレベル4まで行われたというわけか。MrY」 MrYと呼ばれた仮面の男性「はい、その通りでございます。後は地上局を予定地まで動かすだけでございます」 国防大臣「しかしだな、その予定地には「賊」が居るのだ。」 ピッ、ブォォォォォン・・・ MrY「これは・・・」 国防大臣の秘書「これはその「賊」の艦艇です。」 首脳「・・・では、その艦艇のスキャン結果は?」 国防大臣「はっ、この艦艇はスキャンの結果、この地球上ではほぼ建造できない兵装が多く、さらに・・・」 モニターにはソウルゲイン、VF-19A、そしてR-1、R-2、R-3の計5枚の画像が写し出される 国防大臣「これらはスキャン時に同時にスキャンされたものだが、どうやら機動兵器の類であり、これらに使われている技術すらこの地球上では今後数十年しないと完成しない技術が、特にこの重装機のメインエンジンはもはや地球上では生成できない物質が使用されており・・・」 MrY(なぜだ・・・?私はあの3体の機動兵器に見覚えがある・・・?) 国防大臣「われわれ国防庁はあの賊を宇宙人もしくは並行世界からの侵略者と断定することにした。」 首脳「ほう、なかなかいい判断ではないか。」 科学者風の男「しかし、私的にはあの3機、合体可能ではないかを思うんじゃか」 国防大臣「ほう、ドクターはなかなかいい観察眼をお持ちで」 ドクターと呼ばれた男「まぁよい。私の最高傑作であるペリュトンがあればあの機動兵器も、賊の艦艇も尻尾巻いて逃げだすだろうに。」 首脳「では、予定通り、地上局の移動を始めてくれ。」 MrY「はっ」 マクロス・ストライクス 格納庫 大空寺「しかし、R-GUNパワード、いつまであそこでオーバーホールされっぱなしっすかね」 整備員A「しょうがないだろ、パイロット自体あの作者ゲフンゲフンうちの大将が「ああ、必要になった時まで内緒な」って言うししかも機体にもご丁寧に搬入コンテナ内に貼ってあったメモに「必要になった時のために埃を被らせるな。オーバーホールしておけ」」なんて書いてあったしよぉ・・・」 啓志「しかもそのパイロット、帽子を目深にかぶってるしなぁ・・・」 整備員B「そうそう。・・・ん?」 アナウンス「コンディションイエロー発令!パイロットは搭乗機に搭乗して待機。また・・・R-GUNパワードも発進可能なまま待機。」 啓志「ようやく敵さんのお出ましか・・・」 ???「フフフ・・・」 水元「R-GUNパワードのパイロット、なんか気味悪るそー」 ライツェン「言うな」 附部砂「そーよ。」 マクロス・ストライクス 甲板 大月「・・・おい、あれは・・・」 輝水「・・・やばいな・・・」 ガチャッ 輝水「こちら甲板!敵さんの中にデカブツを確認!例の「異次元機関」絡みの物だと思われる!スクランブルの許可を!」 アマヅキ『了解!野郎ども!コンディションレッドを発令!あと、「アレ」の準備もとっとと始めろ!始めねぇとスパムレーションの油漬けを口の中にぶち込むぞ!』 輝水&大月「「・・・」」 研司「・・・怖いグスッ」 アナウンス「コンディションレッド発令!各機スクランブル発進!」 異次元機関「地上局」 上空(BGM) 水流寺「・・・デカッ!」 大空寺「え?遭遇一声目がこれ!?」 水流寺「しょうがないでしょ!あんなデカイの・・・ストライクスは無理だけど・・・最低でも全高800メートル以下の機体なら内部は余裕で動き回れるぐらいの大きさだよ!」 琉漣寺「どうするんだ?突っ込むか?」 大空寺「そうするしかないだろ!俺達が突破口を開くしかないだろ!」 啓志「その賭け、乗ったぜ。」 琉漣寺「啓志・・・」 啓志「悪くない賭けだ。どちらにしてもあのデカブツの中心部に俺達は用があるからな!待ってろよ・・・!」 ドウッ! 大空寺「お、おい!啓志・・・しゃあない!琉漣寺!水流寺!俺達も突っ込むぞ!」 水流寺「了解!」 琉漣寺「了解した!」 ゴォッ! 真由那「もう・・・行くよ!宮藤!井島!」 宮藤「はいはい・・・フォーメーションは真由那がトップ、俺がサポート、井島がバックアップでいいな?」 井島「問題ねぇぜ!」 真由那「アタァァァァァァック!」 ドウッ!ドウッ!ドウッ! 異次元機関「地上局」 内部(BGM) 真由那班 現在地:1階 第1物資搬入口 真由那「・・・敵は・・・確認できないわね。」 井島「そのようだな。しかし俺たち以外にも突入したやつはいるし・・・」 宮藤「・・・生命反応がない?」 井島「は?」 宮藤「この施設内、完璧に無人?いや、それだと移動のみか?これ・・・」 真由那「・・・たぶん宮藤の推理が正しければ、「人はいるが、それは施設の重要部分の制御のみ」で、「大半は無人」・・・?」 井島「・・・水流寺が送ったデータも見たが・・・たぶん、この施設自体が「無人制御の大型作業ロボットによる施設内の作業」で何とかなるから・・・か?」 真由那「とりあえず、先に進むわよ。ここにとどまってたら何時敵に見つかる可能性もあるだろうし。」 宮藤「了解。」 啓志班 現在地:1階 中央エレベーターホール 啓志「で、俺達はここから中心部を目指すんだが。」 陽美祢「エレベーターは動かないですの。」 宮畑「・・・どうやらこれ、起動方法はパスコード方式らしい・・・けど2階から上にもパスコードロックがかかってる。パスコード入力自体は入力機を機体で操作するか、アクセスして機体コンソールで入力するかのどちらかなんだけど・・・」 陽美祢「つまりは、1階ごとに上へ上がるにはパスコードが必要で、しかも1階から2階へは起動パスコードがそれも兼ねている・・・というわけですの?」 啓志「んで肝心の起動パスコードが見当たらない・・・か。」 宮畑「どうするのよ啓志ぃ~このまましょんぼりと帰る?」 啓志「バーロー、パスコード探すぞ。」 陽美祢「了解ですの」 大空寺班 現在地:1階 第1機材整備場 大空寺「とりあえず突入出来たが・・・ここは?」 琉漣寺「周囲は大規模の無人制御型整備器材だが・・・」 水流寺「マップスキャニング完了したよ。・・・うわっ広っ」 大空寺「まじ?・・・うわぁ・・・マジで広いって」 琉漣寺「マップスキャニングしてなきゃ100%迷うな。」 大空寺「今俺達がいるのは・・・1階!?・・・目的地は・・・5階の制御室と、B1階の動力室か・・・」 琉漣寺「しかも大半の通路は俺達が使っている機体が余裕で動き回れるほど余裕がある・・・か。しかも全階層、部屋などの配置は異なるが、ほとんど同じ構造だ・・・」 水流寺「そうなのよ。しかも機体乗ったまま上への移動手段は中央のエレベーターのみ。階段はあるけど完全に人間用・・・わざわざ降りて、ねぇ・・・」 大空寺「しかも細かい通路も人間用だし・・・重要セクションが最上階に集中してるとはいえ・・・ん?ここにもエレベーターが?」 琉漣寺「・・・2階、第1防衛兵器格納庫か・・・おそらく、ここでの整備用か・・・?しかし、起動にはパスコードを打ち込まないといかんが・・・」 大空寺「とりあえず、パスコード探そうぜ」 輝水班 現在地:2階 北テラス 輝水「正面の強行突入とはいえ、抵抗はなかったな。」 滝川「そうだな。とりあえず、内部調査だな。」 本木「そういうことだ。調査開始っと」 輝水(・・・2階にしては、やけに普通の建物の倍ぐらい大きい・・・?) 研司班 現在地:1階 大型通用口 研司「・・・まさかこんなデカイ施設が今の今までストライクスのレーダーに反応しないでここまで接近できたというのは不思議だね・・・」 雪導「たぶん、炉心部からレーダージャミング可能な何かが出ているのではないか?それともステルスか?」 雷真「ま、とりあえず調べてみるか。」 夢蒔露「そうだね。」 水元班 現在地:2階 東テラス 水元「ふう、着地成功だな。」 ライツェン「気を抜くのはまだ早いぞ。」 附部砂「そうよ。・・・R-GUNパワードのパイロット・・・名前は?」 イングラム「イングラム・・・イングラム・ブリスケンだ。」 水元「いい名前だな。」 ライツェン「・・・中へ突入するぞ。」 啓志班 現在地:1階 異次元分野研究室 (室内は機体が動き回れるスペースがないので降りてます) 啓志「・・・さーっぱりわからん。」 ズベシッ! 宮畑「ボケるな!・・・何々?「異次元連結爆弾研究資料?」・・・これって・・・」 ガサゴソ・・・ 啓志「ん?・・・「エレベーターパスコード1階・2階分※業務開始まで異次元分野研究室で保管すべし」・・・よしっ!」 陽美祢「おにいちゃん・・・これ。」 啓志「ん?・・・これは・・・「異次元機関計画」?・・・読んでみるか。」 【異次元機関計画:まず、大国の手出しの危険性が低い場所にメインとなる異次元機関を建造し、その後、本土内部に受信局となる施設を建造。それによる恒久的なエネルギーで本土全体を潤す。化石燃料等が問題となっている今日、異次元機関によるエネルギーはこの国を世界1の国に押し上げる原動力となるだろう・・・】 啓志「・・・こんなもんのせいで、俺達のいるバトロイ世界が消えそうになってるんだぞ・・・絶対に、絶対にぶっ壊してやる!」 真由那班 現在地:1階 通路 シャタタン!チュドォン! 真由那「ったく!警備用メカが稼働してるなんて!」 宮藤「ああっ!そうだな!・・・ジェットマグナム!」 ガズン!チュドォン! 井島「このままじゃまた警備メカが出てきそうだぜ!」 宮藤「井島!不吉なこと言うな!」 大空寺班 現在地:1階 警備用機材庫 大空寺「うわぁ・・・動いてる・・・」 琉漣寺「見とれるな。全部ぶっ壊すぞ。」 水流寺「ラジャ☆」 水元班 現在地:2階 中央エレベーターホール 水元「・・・で、さっき手に入れたなんかのパスコードだが、ここに対応してるのか?」 ライツェン「そうだろう。しかし、電原が入っていない・・・起動用パスコードは・・・」 イングラム「!ちょっとまて、エレベーターが起動したぞ。」 附部砂「誰が起動したの・・・?」 ピンポーン ガラッ 啓志&陽美祢&宮畑「あっ」 水元&ライツェン&イングラム&附部砂「・・・」 啓志班と水元班合流。 輝水班 現在地:2階 モニタールーム 輝水「・・・機体で操作できる仕組みか・・・」 滝川「そうだな。・・・ん?エレベーターログ?・・・「現在エレベーターは3階まで運行可能です」・・・」 本木「たぶん、運行ログじゃないか?それ?」 滝川「そうだな。」 大空寺班 現在地:1階 中央エレベーターホール 大空寺「エレベーターが稼働してるのか。いったい誰が?」 水流寺「多分・・・私たち以外に1階にいた奴かな?」 琉漣寺「とりあえず・・・今はエレベーターは5階にあるから、降りてくるまで待つか・・・」 その後、真由那班と研司班が合流し、啓志たちを待つことになったのは言うまでもない。 啓志班 現在地:5階 中央制御室 ドォン! 啓志「・・・もぬけの殻・・・か。」 輝水「啓志・・・みっけたぜ。地下へのパスコードを。」 啓志班、輝水班と合流。そのあと1階にいた大空寺班、真由那班、研司班と合流し地下へ・・・ 異次元機関「地上局」 地下 動力室 MrY「・・・遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ。」 啓志「貴様が親玉か・・・!」 MrY「・・・確かにこれを建造したのは私だ。だが親玉と決めつけるのはまだ早いな。」 水元「・・・てめぇ・・・!」 MrY「・・・さて、出会ってすぐで悪いが君たちには消えてもらおう。行け、ペリュトン!」 ベリュトン「目標確認。排除シマス」 シャタタタタタタタッ! 啓志「うわっ!でけぇ!」 輝水「俺のレーバテインが蟻だとすれば・・・あいつはクジラみたいな物か・・・!」 水元「・・・」 ライツェン「・・・どうする?」 水元「SRX、合体だ!」 附部砂「分かったわ、パターンOOC、プロテクト解除!T-LINK、フルコンタクト!念動フィールドON!」 ライツェン「トロニウムエンジン、フルドライブ!」 附部砂「各機、変形開始!!」 水元「ヴァリアブル・フォーメーション!」 (合体シーン参考映像です。文章であのシーン書くのきついってby筆者 っこれ) 水元「天下無敵のスーパーロボット!!ここに、見参!!!」 イングラム「行くぞ!ハイ・ツインランチャー発射!」 ベリュトン「!」 カァオ! 啓志「んなあほな!某ACのクイックブーストみたいに!」 宮畑「しかも効果音が某最強の尖兵だし!」 輝水(つっこみどころそれ?) マクロス・ストライクス 艦橋 アマヅキ「野郎ども!あれの準備はいいか!」 副官「準備完了です!」 アマヅキ「艦内にいる奴全員聞けっ!これより本艦はトランス・フォーメーションを行い、強行形態へ変形する!マクロス・アタックも行う!デストロイドなどは所定配置につけ!揺れるぞ!酔うなよ!」 異次元機関「地上局」 地下動力室 啓志「・・・トランスフォーメーションが始まったか・・・早めにあれをぶっこわすぞ!」 水元「なら、こいつで十分だ!行くぞイングラム!」 イングラム「フフフ・・了解!メタルジェノサイダーモード起動!」 水元「これが天下無敵の必殺砲!天上天下一撃必殺砲発射!」 イングラム「フフフ・・・デッドエンドシュート!」 ボシュゥ! ベリュトン「!」 チュドォォォォォォォォォン! 啓志「よし、脱出だ!」 異次元機関「地上局」 上空(BGM アマヅキ「野郎ども!啓志たちは確認できたか?」 レーダー手「は、突入機体全機、無事に脱出できました!」 アマヅキ「ならば話が早い!このままマクロス・アタックをかける!全速前進!」 機関士兼操舵手「アイサー!」 ゴォッ! アマヅキ「そのまま殴りつけて叩きこめ!」 砲手「あいよ!」 ガギャン!ウォーン・・・ズドドドドドドドドドドドドッ!! 異次元機関「地上局」付近 啓志「すげぇ・・・あんなでっかいのが・・・」 輝水「さすがマクロス・アタックだな。」 マクロス・ストライクス 艦橋 アマヅキ「・・・で、さっきあたしらが破壊したのは異次元機関の受信局ってわけか。となると・・・本体は宇宙・・・か。」 啓志「そうなります。」 通信士「ラパウディアが今頃陽動しているとはいえわれわれが宇宙に上がるわけですね。」 輝水「忙しくなってきそうだ・・・」 第5話完 次回予告 戦いが激化していく中、彼は動く Mr・H「ここか・・・」 そしてそこに待ち受けていたのは・・・ ???「おう、来たか。」 次回、バトロイ大長編・Mr・Hside第6話 「閑話休題―インターミッション―」お楽しみに あとがき ようやく・・・ようやく完成したぁぁぁぁぁぁ!!そして私は4月から専門学校生~っとどこかは教えない!以上!
https://w.atwiki.jp/nobita_in_pokemon/pages/41.html
前へ カイナシティ。 ドラえもんとしずかはハギ老人の船に乗り、この町に着いていた。 「キンセツシティはこの北らしいよ、早くのび太くんを迎えに行かないと」 「そうね、でもまずはデボンの社長さんから預かった荷物を届けないと」 そう話す二人を見る周りの目がなんとなく痛い。 クスノキ造船所に行ってみたが、肝心の館長はどうやら科学博物館にいるようだ。 仕方なく二人は博物館に向かった。 「いらっしゃいま……ひいっ!」 博物館の受付はドラえもんを見ると顔を引きつらせて頭を隠してしまった。 「なんだよ、失礼だな!」 憤慨するドラえもんをしずかがたしなめる。 その時、奥から数人の青装束のゴロツキがやってきた。 ゴロツキの一人がドラえもんを見て首を傾げる。 「なんだ?お前もアクア団の一員か?」 そう、ドラえもんの姿形がアクア団関係者だと勘違いされていたのだ。 当然ドラえもんは憤慨する。 「何を言ってるんだ!お前達みたいな悪党の仲間なわけないだろ!」 「なんだと!我々に逆らうのか!」 その言葉に殺気立ったアクア団員達が腰のモンスターボールに手を掛ける。 しかし彼らがそのモンスターボールを投げる事はなかった。 「まあまあ棒~~!」 ドラえもんがポケットから出した棒で団員の口をふさいでいく。 「まあまあ、まあまあ…」 「えーと、俺たちなんで怒ってたんだっけ?」 「まあいいか、さっさと次の目的地にいこうぜ」 アクア団員はそのまま去っていった。 注:鬼畜出木杉 流星の滝近辺。ハジツゲタウンからフエンタウンに向かう途中には一軒の家がある。 その家の主人はポケモントレーナーなら誰しもが使ったことのある「ポケモン預かりシステム」を作ったマユミという女性だ。 「ああ…うっ……」 その家の主人であるはずのマユミは床で腹を押さえて倒れている。 マユミの座っていた椅子には少年が一人。 その後ろには少女が影のように付き従っている。 「マユミさん、もう一度聞きます。僕に協力してくれませんか?」 少年・出木杉の問いにマユミは辛うじて口を開く。 「貴方の……そのデータ、他のトレーナーのものと何かが違う……」 出木杉は驚いたようなジェスチャーをする。 「さすがマユミさん、分かるんですね。確かにこのデータは僕がこの世界に持ち込んだ「ゲームのポケモン」のデータです」 何を言っているか分からないという顔をするマユミ。 椅子から立ち上がると、出木杉はマユミの髪を掴んで引き上げる。 「あぐっ、ううっ…」 「貴女の実力ならできるでしょう、このデータを使えるようにするだけでいいんです」 マユミはかぶりを振り、拒否を示す。 「そんなことは……したく、ない……」 注:鬼畜出木杉 出木杉はマユミの髪を離すと、机の上の書類を力一杯払い落とす。 「まったく、女ってのはなぜこうも僕に冷たいんだ!」 出木杉は火がついたように暴れ回る。 「僕は出木杉だぞ!クラス1の秀才なんだ!」 そんな出木杉の後ろから付き添いの女がそっと抱きつく。 「出木杉様は素晴らしい御方ですわ……わたしは出木杉様無しでは生きていけませんもの」 「はぁはぁ、ツツジ……軽々しく僕に触るな」 女・ツツジは恭しく出木杉から引き下がる。 出木杉は落ち着きを取り戻し、再び椅子に腰掛けた。 「仕方ありませんね、バシャーモ!」 出木杉の手の中のモンスターボールからバシャーモが現れ、マユミを抱え上げる。 ツツジがゆっくりとマユミに近づく。 「ツ、ツツジさん……ジムリーダーの貴女がなぜ……」 「マユミさんは何本入るかしら」 「な、何本って……」 ツツジの目は暗く輝き、その目に本能的な恐怖心を覚えるマユミ。 ツツジは人差し指を立てる。 「指よ、指」 自らの指を口にいれ、ゆっくりと舐めるツツジ。 「貴女の中にこの指が何本入るか試してみるわ。大丈夫、私なんか出木杉様のおかげで拳だって入るようになったわ……」 「や、やめ……」 出木杉が言葉を投げ掛ける。 「だから最初に快い返事をしてくれればよかったのに」 「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!」 その日を境にマユミの家は無人となっている。 フエンタウン。 温泉で有名なこの町にやってきたのはジャイアンとスネ夫。 ジャイアンはやってくるなり温泉に行ってしまった。 スネ夫はひとりデコボコ山道に戻る。 「ここでツチニンを進化させておかないと。そしてせっかくのマルノームだ、うまく使わせてもらうよ」 スネ夫の下剋上計画はついに仕上げの段階に向かっていた。 翌日、ジャイアンとスネ夫はフエンジムに向かった。 そのジムは温泉の蒸気でかなり高温、肥満のジャイアンは苦しそうだ。 「なんだよここ、あっついなー」 「さっさと勝って出ようよジャイアン」 「ああ、さっさとおさらばしたいな」 『ボクはお前とおさらばしたいよ、ノータリン』 スネ夫は心でそう吐き捨てた。 「アタシがフエンジムのジムリーダー、アスナだ。よろしくね!」 フエンジムの最奥ではスラリとした女性が腕を組んで待っていた。 「よーし、まずは俺様がやってやるぜ」 ジャイアンが一歩前に出る。 「お、元気のいい少年だね」 「手加減はしねえぜ、デカパイの姉ちゃん!」 「アスナだ、アスナ!(恥)」 二人はモンスターボールを放った。 アスナはドンメル、ジャイアンはヌマクローを繰り出した。 「よしヌマクロー、みずでっぽうをお見舞いしてやれ!」 水鉄砲が直撃し、その一撃でドンメルの体力は無くなった。 「あちゃー、やっぱ水タイプ相手は辛いわ」 アスナがため息を吐く。 ジムリーダーは勝つためでなく、トレーナーを試すための存在。 ゆえにジムの特色に縛られたポケモンしか持てないのだ。 アスナはマグマッグを出すが、やはりヌマクローの水鉄砲の前に手も足も出ない。 「ははーん、やっぱ俺って最強!」 ジャイアンは得意げに胸を叩く。 「言ったわね、お次はこのポケモンで!」 アスナが出したのは進化体のバクーダ。 「どうせ炎タイプだろ、水鉄砲!」 ヌマクローの水鉄砲がバクーダに直撃する。 しかしバクーダはHP、特防の高さでその攻撃に耐えたのだ。 「マグニチュード!」 バクーダがその足を地に叩きつけると大地が激しく揺れる。 「な、なんだよこれ!」 「マグニチュード8、私の運がよかったみたいね」 次の水鉄砲でなんとかバクーダを撃破したが、ヌマクローもかなりのダメージを受けている。 「最後はこいつよ、コータス!」 アスナの最後の手持ちポケモンだ。 ヌマクローは先制して水鉄砲を食らわせたが、コータスは全くダメージを受けていない。 「こ、こいつ炎タイプじゃないのかよ!」 ジャイアンが狼狽する。 スネ夫はあきれたようにそれを見ていた。 『馬鹿だなぁ、あれはコータスのまもるじゃないか。ゲームと違って画面表示がないからビビってるよ』 ジャイアンは混乱しながらも指示を出す。 「もう一回水鉄砲だ!」 その攻撃はコータスにダメージを与えたが、倒せるほどではない。 「えんまくよ!」 コータスの体から煙が発生し、その姿を隠していく。 「ちくしょう、どこにいるんだ…なんでもいい、ときかく射ちまくれ!」 しかし司令を受けるべきヌマクローはコータスにのしかかられて倒されていた。 スネ夫は心のなかで嘲り笑う。 『ヌマクローはみやぶる覚えてるじゃん、なんで使わないのアホゴリラ!ぶはははは!』 試合は結局ジャイアンの勝利で終わった。 ジャイアンの手持ちにはキャモメがいたので、ヌマクローが撃破されても優位は変わらなかったからだ。 しかし、アスナからバッジを貰ったジャイアンの顔はやり場のない怒りで歪んでいた。 続いてジム戦に挑んだスネ夫の戦いはいたって順調に進んだ。 ゴルバットの怪しい光がアスナのポケモン達を幻惑し、たまに繰り出される攻撃は影分身で回避する。 終始優勢のまま、戦いはスネ夫の勝利に終わった。 ジム戦が終わった後、ジャイアンは憎々しげにスネ夫を睨んでいた。 そしてついに切り出した。 「ようスネ夫、お前のポケモン全部よこせよ」 スネ夫は眉一つ動かさずに答えた。 「お前みたいな馬鹿にやるポケモンなんてないよ、音痴ゴリラ」 「スゥゥゥネェェェ夫ォォォォォォ!!」 ジャイアンの怒りは頂点に達し、振り上げた拳がスネ夫に振り下ろされる。 しかし、その拳は目の前に現われたポケモンにあっさり止められてしまう。 「ボクはのび太みたいに簡単にはいかないよ」 「なんだよ、こんなポケモン持ってたのか!」 「ああ、君がバカ面さげて温泉で茹で豚になってる間に加わった仲間だよ」 ジャイアンは咄嗟に間合いを取る。 「スネ夫、お前まさか俺を裏切る気だったのかよ!」 「違うね、最初からジャイアンを利用していただけだったのさ。」 スネ夫はジャイアン目がけ唾を吐きかける。 「もうお前は用無しだ!」 数分後。 「…………」 ジャイアンは焦点の定まらない視線を泳がせながら、ふらふらとフエンタウンをさ迷っていた。 スネ夫との勝負はあまりにもあっけなかった。 ジャイアンのポケモン達の攻撃はヌケニンの前には全く効果がなく、ジャイアンは完膚なきまでに叩きのめされた。 怒りに震えるジャイアンにスネ夫のゴルバットは怪しい光を浴びせ、スネ夫はそのまま姿を消したのだった。 カナシダトンネル。 スネ夫はデコボコ山道で捕獲したワンリキーに岩砕きを使わせ、コトキタウンへと向かっていた。 「急がないとジャイアンに追い付かれちゃうからな。」 裏切った以上、ジャイアンを上回る力を付けなくてはならない。 そのためには次のジム以降で使用可能になる秘伝技・波乗り、空を飛ぶを一刻も早く入手しなければならないのだ。 「あの二つを手に入れればボクの勝ちは決まりだな!」 カイナシティの海の科学博物館でクスノキ館長に荷物を渡し、ドラえもんとしずかはのび太の待つキンセツシティに向かっていた。 実は二人には気になることがあったのだ。 カイナシティのポケモンセンターでのび太とユニオン通信をしようとしたが、のび太は結局夜中になっても帰ってこなかった。 「ああ、のび太くんは無事なんだろうか。心配だ、心配だ」 「ドラちゃん、のび太さんはキンセツシティで私たちを待っているはずよ」 その言葉にドラえもんは足を止めた。 「しずかちゃん、のび太くんだよ。あののび太くんだよ……」 ドラえもんの言葉にしずかも心配になってくる。 そしてキンセツシティのポケモンセンターで心配は現実となった。 「ああ、ジョギングマン……じゃなくてノビタさんですね。数日前からここには来ておりません」 「えええええええ!」 二人は愕然とした。 それから懸命に捜索してみたがのび太の行方はわからない。 仕方なくドラえもんとしずかはとりあえず今日の宿を取ることにした。 「全く、のび太くんはただ待ってることもできないのか……」 「いったいどこに行ったのかしら」 その時、ひとりのギタリストがドラえもん達に声をかけてきた。 「あんた達かい、ジョギングマンを探してるってのは」 その男はテリーというらしい。 「実はさ、ジョギングマン……ああノビタだっけ?そいつとポケモンバトルをしたんだが、川に落ちちまってよ」 その言葉を聞いて二人は青ざめる。 「のび太くんは泳げない!まさか…」 「まさかのび太さん、死……」 しずかが口を押さえる。 しかしテリーはあっけらかんとして答えた。 「ああ、そいつは多分大丈夫だ。こっちに残された奴のケッキングが対岸から回収されたみたいだからな。」 ドラえもんは力を失って崩れ落ちる。 「のび太くん、君はどこまで心配をかけるんだ。僕は、僕は……」 めそめそと泣きだすドラえもんを見て、しずかやテリーも少しもらい泣きをしてしまった。 翌朝。 どうやらジムバッジを集めて「波乗り」という技を使わなければあの川から先に進めないらしい。 ひみつ道具を使えばいいのだが、あいにくほとんどのひみつ道具を点検に出していたので残念ながら川を渡る道具は持ち合わせが無かった。 「よし、とりあえずこの町のジムに行こう!」 「そうね、ドラちゃん!」 天気研究所。 のび太はここで寝食の場を与えてもらっていた。 研究所の所長がのび太の身の上をかわいそうに思い、そのように計らってくれたからだ。 「やったあ、ついにメノクラゲが進化したぞ!」 ケッキングに頼れない以上、メノクラゲとピー助(トロピウス)を強くしなければこの研究所から出られない。 そう、ヒマワキシティまではまだ先は長いのだ。 「おおのび太くん、ついにドククラゲに進化したかね」 「所長さん!」 のび太に声をかけたのはここの天気研究所の所長だ。 「これでかなりの戦力アップだね」 「はい、所長さんのおかげです」 所長が進化したばかりのドククラゲを見ながらのび太に語る。 「実はなノビタくん、この研究所の下の川にキバニアというポケモンがおってな……」 「キバニア……」 所長はポケットから写真を取り出す。 顔全体が口のような形をした獰猛な面構えのポケモンだ。 「君は釣り竿を持っているし、こいつをゲットしてみてはどうかね?」 のび太もここ何回かの戦いでそれなりに自信がついている。 「や、やってみるよ!」 のび太は釣り竿を担いで川へ降りていった。 「よーし、釣るぞぉ!」 のび太は威勢よく釣り竿を振った。 2時間後。 「キバニアなんか釣れないじゃないか!」 釣り竿にかかるのは薄茶色に奇妙な斑点が気持ち悪い汚らしい魚ばかり。 とりあえず一匹は捕まえておいたが、これでは自慢にもならない。 すでに日も暮れはじめているので、のび太は仕方なく研究所に帰っていった。 「な、なんだ?」 のび太が研究所の近くまでくると、その様子はあからさまにおかしかった。 見慣れない青装束の一団が研究員を拘束しながら研究所内に入っていく。 その中には所長の姿もあった。 『所長さん!』 咄嗟に飛び出そうとするのび太に気付いた所長が叫んだ。 「ノビタくん、逃げるんだ!」 その声に青装束の一団が反応し、ポチエナやグラエナを繰り出す。 向かってくるポケモン達に恐怖し、反射的に逃げてしまう。 のび太は必死で逃げた。 足が遅いはずなのに逃げ足だけは負けないのび太。 「ごめんなさい、ごめんなさい!」 その目には涙が浮かんでいた。 フエンタウン。 ジャイアンは温泉に浸かっていた。 怪しい光で混乱していたジャイアンは砂風呂で砂洗顔をしていたところを正気に戻った。 さすがに砂塗れでスネ夫を追うわけにはいかない。 「スネ夫の野郎、絶対殺してやる!」 ジャイアンは湯面を叩きながら怒り狂う。 「あら、一人で温泉?」 後ろから声がかかる。 ジャイアンが振り向くと、そこにはアスナがいた。 「でででデカパイのお姉さん!」 咄嗟に顔を背けるジャイアン、こんなところはやはり小学生だ。 「アスナだって!まぁここは混浴だから気にするなよ」 アスナは二度、三度と湯を浴びると、ジャイアンの隣に浸かった。 「あー気持ちいい~」 「そ、そうだな」 「君~、視線がイヤラシイゾ!」 胸をチラ見するジャイアンを見てケラケラと笑うアスナ。 「で、お友達はどうしたんだい?」 ジャイアンの肩がワナワナと震える。 「スネ夫は、あのやろうは俺を裏切って行っちまったんだ!」 真っ赤な顔をして怒るジャイアン。 「そっか、友達を裏切っちゃいけないね」 「次にあったらこの拳でギッタンギッタンにしてやる…」 拳を振るうジャイアンを見てアスナが優しく諭す。 「ケンカってのは良くないね、あんたはトレーナーなんだからポケモンでやっつけるんだ」 しかしジャイアンは言葉を返さない。 その態度でアスナは瞬時に理解した。今まで会ったトレーナー達にもこんな顔をするのがいた。 『負けたんだな』 アスナはそのまま言葉を続ける。 「少年、うちのジムで修業しなよ。二、三日でいいさ。」 「そんな暇ねえよ!アイツは俺より先に行っちまったんだ!」 「今また戦って勝てる自信あるかい?」 再び黙るジャイアン。 「いいか、トウカのバッジを取ったら次はヒワマキだ。ヒワマキに行くにはキンセツを通らなきゃならない」 「そこで待ち伏せて勝負しろってことか!」 「ご名答」 アスナはウインクして答えた。 ジャイアンは湯槽から立ち上がり、空を見上げた。 「よし、強くなってスネ夫をギャフンと言わせてやる!」 「がんばりな!」 ぽんとジャイアンの肩を叩くアスナ。 ジャイアンが横を向くと、そこには全裸のアスナが立っていた。 ジャイアンはあまりの光景に気絶した。 「おー、潜望鏡!子供でも立派に反応するものねぇ」 キンセツシティ。 ドラえもんとしずかはキンセツジムに挑戦していた。 しずかはこの戦いの前にマリルをゲットしているが、雷タイプの多いこのジムで使うわけにはいかない。 「こんにちは……」 ドラえもん達がジムに入ると、そこには一人の老人が座っていた。 「ようこそキンセツジムへ。ワシがリーダーのテッセンじゃ、よろしく」 「はい、よろしくお願いします!」 当初の予想どおり、しずかの戦いは辛いものになった。 最初のビリリダマはジグザグマの数度の頭突きでなんとか撃破したがソニックブームをくらい、しかも静電気で麻痺してしまった。 優しいしずかはポケモンを瀕死にしたくないので、弱ったポケモンはすぐ引っ込めてしまう。 ラクライもなんとか撃破したが、次の相手はしずかにとってかなりの強敵だ。 「いけ、レアコイル!」 テッセンが出したレアコイルは鋼タイプも所持している。 ノーマルとエスパー技主体のしずかの手持ちでは分が悪い。 「ジグザグマ、ずつきよ!」 頭突きがクリーンヒットしたがダメージが少ない。 レアコイルはジグザグマを超音波で混乱させる。 ジグザグマが自らを攻撃する様子を見て、しずかはたまらずポケモンを入れ替えた。 しずかは切り札であるキルリアに入れ替えた。 「ほっほっほ、お嬢ちゃんのエースの登場じゃの」 エスパータイプ相手なのでテッセンは余裕の言葉を返す。 「ねんりきで攻撃よ!」 キルリアの念力がレアコイルに直撃するが、その効果は薄い。 「反撃のソニックブームじゃ!」 しかしレアコイルは自らを攻撃してしまった。 そう、さっきの念力で混乱しているのだ。 次のターン、なんとかソニックブームを当てられるものの、レアコイルを倒すことができた。 「運に救われたのう、では最後…ライボルト!」 最後に現われたのはライボルト。 しかししずかには最後の切り札があった。 「キルリア、メロメロにするのよ!」 シダケタウンで貰ったメロメロの技マシンを使っていたのだ。 うっとりしているライボルトにキルリアの念力が炸裂した。 「ありがとうございます、テッセンさん」 しずかはバッジをドラえもんのと自分の二つ受け取った。 しずかの後に戦ったドラえもんはポチエナ、ヤミラミを倒され止むを得ず自らが出陣。 雷に打たれながらも空気砲を駆使してなんとか勝利したのだ。 しかしドラえもんは戦いで麻痺してしまっていた。 「そんな……ボクの死闘がダイジェストなんて……」 それは大人の事情である。 次へ
https://w.atwiki.jp/nobita_in_pokemon/pages/45.html
前へ トウカシティ。 スネ夫はトウカジムに挑戦している。 このジムのジムリーダー、センリの持つポケモンはノーマルタイプ。 その前にスネ夫は各部屋に待ち構えるトレーナーを撃破して回っていた。 最奥の部屋では一人の男が立っていた。 「私のジムへよく来たな。リーダーのセンリだ」 スネ夫がいやらしい笑みを浮かべる。 「あんたを倒せばボクはまた強くなれるんだ、早く戦おうよ」 「私を踏み台にしようというのか、できるものならやってみるがいい!」 スネ夫とセンリは互いにボールを放った。 まずはジュプトル対パッチール。 しかし、その決着はいきなりついてしまった。 「ジュプトル、リーフブレードだ!」 その一撃はパッチールをあっさり倒してしまう。 スネ夫はここのトレーナー相手にジュプトルの経験稼ぎをしていたのだ。 その戦闘力にまかせてヤルキモノ、マッスグマも苦もなく一撃で倒してしまう。 「ふふん、ボクにかなうわけないじゃん」 スネ夫は完全に調子に乗っている。 センリは苦い顔をしながら最後のポケモンを繰り出した。 センリ最後のポケモン、それは…… 「ひぃ、ジャイアン!」 ジャイアンではない、ケッキングだ。 しかしジャイアンに対して負い目のあるスネ夫はケッキングにジャイアンを重ねてしまったのだ。 「うわあああ!だずげでぇぇぇぇぇっ!」 ケッキングの巨体の前にスネ夫は腰を抜かし、その股間からは温かいものが流れ出る。 「ああ……あああ……ボクを守れ、守るんだ」 スネ夫の名を受け、ジュプトルはケッキングに襲い掛かった。 その後、放心状態のスネ夫を尻目にジュプトルはケッキングを撃破し、この戦いはスネ夫の勝ちとなる。 しかし名誉なはずのバッジ贈呈を下半身を濡らしたままで受けることになってしまったスネ夫。 「あー、まぁ何だ、気にするな少年。濡らした床は私たちで掃除しておくから」 センリの生暖かい励ましに唇を噛み締めながら去っていくスネ夫だった。 と、それだけで済むはずはない。 ジムのトレーナー全員に高飛車な態度をとっていたスネ夫は、ジムを出るまでの数部屋で倒してきたトレーナー達の好奇と蔑みを受けるのである。 113番道路。 ドラえもんとしずかは炎の抜け道を通りハジツゲタウンに行ったのだがそこにはジムはなかった。 仕方なく来た道を戻ることになった二人。 「また灰の中を通らなくちゃならないの?」 「仕方ないよ、しずかちゃん」 女の子のしずかは降りしきる灰の中を進むのは嫌らしい。 「けどさ、次のジムがあるフエンタウンには温泉があるって聞いたよ」 その言葉でお風呂大好きなしずかは顔を輝かせる。 そんな二人の周囲に突然灰混じりの突風が吹き荒れた。 「うわぁ~~」 「きゃ~~」 巻き上げられた灰の中から人間ほどの大きさがある怪鳥が姿を現す。 「ど、ドラちゃん…これもポケモンなの?」 「そ、そうみたい」 どうやらかなり気が立ってるようだ、このままでは危険かもしれない。 「ヤミラミ、ボクらを助けて!」 ドラえもんのヤミラミはナイトヘッドで攻撃する。 「当たった!」 しかしその鳥は巨体に似合わない動きで高速移動し、ヤミラミをつついてくる。 ヤミラミは敵の攻撃を見切り、ナイトヘッドで応戦する。 しかし劣勢は明らかだ。 「このっ、捕まえてやる!」 ドラえもんはモンスターボールを投げるが、かなりのダメージを受けているにも関わらずその鳥はボールから出てしまう。 よく粘ったヤミラミだが、つつく攻撃を受け続けてついに倒れてしまった。 「くっそー、こうなったらポチエナを!」 現われたポチエナの前でさらに高速で動く怪鳥。 そんな状況にも関わらずポチエナは偉そうにふんぞり返っている。 「何やってるんだ、危ないぞ!」 しかし相手のポケモンは高速で移動しながらも自らを攻撃して足を止めてしまった。 そう、進化キャンセルで育てられ続けたポチエナは威張る事を覚えていたのだ。 「ドラちゃん、これ使って!」 しずかから渡されたのは物拾いで得たハイパーボール。 「えーい!」 そのポケモンはハイパーボールに吸い込まれ、そしてボールは動きを止めた。 「やったあ、ゲットしたよ!」 「よかったわね、ドラちゃん!」 ドラえもんも新たな仲間、それはエアームド。 ドラえもんは誇らしげにボールからエアームドを出す。 エアームドはその鋭い目でドラえもんを睨み付けた。 「強そうだけど、なんか恐いや」 この出来事のすぐ後。 バトルでポチエナの進化キャンセルをし忘れ、恐いポケモンが二匹になることになるのだが…… ヒワマキシティ。 アクア団の追跡を振り切り、のび太はようやくこの町に辿り着いた。 「とりあえずユニオンルームにいかないと」 のび太はポケモンセンターに向かった。 「通信相手はシズカさんですね。ユニオンルームに入室があればお呼びします」 とりあえず受付を済ませて1階に戻る。 すると数人のトレーナーが何やら盛り上がっていた。 どうやらすぐ近くの120番道路にTVのインタビュアーが来ているらしい。 「TVに映ればドラえもん達が見てくれるかも!」 のび太は取るものもとりあえず、120番道路に向かった。 120番道路。 インタビュアーの周りには人だかりができていたが、誰もインタビューを受けようとはしない。 「インタビューを受けてくれる人、いるかな?」 インタビュアーのマリが声を上げると、のび太は我先にと手を挙げた。 「はいはい!はーい!」 「はいそこのメガネ君、とりあえずバトルよ」 「ええええええ!」 そう、インタビューの条件はポケモンバトルに勝利することだったのだ。 インタビュアーのマリとダイはレアコイルとバクオングを繰り出した。 「え?二匹?卑怯だよ!」 マリは首を傾げる。 「ダブルバトルよ、知らないの?」 「し、知らないよそんなの!」 狼狽しながらポケモンを選定するのび太。 ケッキングは言うことをきかないので、ドククラゲとトロピウスでバトルをする。 「ひ、一人で二匹も操れないよ!」 のび太が戸惑っている間にレアコイルのスパークがドククラゲに命中する。 「あわわ、とりあえずドククラゲはまきついて!」 ドククラゲがレアコイルに巻き付く。 相手のバクオングがトロピウスを踏み付けようとしている。 「ぴ、ピー助が踏まれちゃう!」 のび太の「踏まれちゃう」という悲鳴を命令と勘違いしたトロピウスはバクオングを踏み付け返した。 その後のバトルは散々だった。 のび太のドククラゲは2発目のスパークの前に倒れてしまう。 仕方なく出したケッキングはやはり動かず、結局2対1となったトロピウスはバクオングと相討ちになり倒れ、のび太は敗北した。 インタビュアーはその場を去り、のび太は一人悔しさに涙を流していた。 「ケッキングさえ使えれば勝てたのに……言うことを聞いてくれれば……」 「そうか、じゃあジムに挑戦するしかないな。」 のび太に男が声をかける。 「だ、誰?」 「私はダイゴという者だ。君のケッキングはバッジを入手しないと言うことを聞かなくなっているんだ」 「そうだったんだ……」 ダイゴはのび太に妙なスコープを手渡す。 「これがあればヒワマキジムに出没する見えない何かを見ることができる」 デボンスコープというらしい。 「これを使えばヒワマキのジムに入れるよ。じゃあ頑張りなさい」 ダイゴはその場を後にした。 夜。 どうやら今日はしずかはユニオンルームに来ないようだ。 「どうせここに足止めになるんだ、僕もジムに挑戦してみよう」 のび太はしばらくここでドククラゲとトロピウスを鍛えることにした。 「ドラえもん達に会ったとき、僕の強さを自慢してやるんだ!」 のび太にしては珍しい前向きさである。 103番道路、水上。 「くそ、もうあんな街行くもんか!」 スネ夫はジグザグマの上で顔を真っ赤にしながら頭を掻き毟っている。 トウカシティでは散々だった。 波乗り用にとりあえずジグザグマを捕獲したが、その様子を見ていたトレーナー達は口を押さえて笑っている。 「あれが失禁トレーナーだって」 「今度は波乗りで大洪水か?」 「ぷぷ、座布団一枚!」 そんな辛辣な陰口のなか、スネ夫は逃げるようにトウカから去ったのだ。 そして頭に血が上っているスネ夫はうっかりしていた。 そう、もっと慎重に動かなければならなかったのだ。 「よう、ス ネ 夫 く ん」 キンセツシティ、スネ夫は決して忘れてはならない声を聞いた。 壊れそうなほどに体を震わせながら後ろを向くと、そこには最も会ってはならない男がいた。 「や、やぁ……ジャイアン……」 『し、しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』 馬鹿なジャイアンは血気にまかせて追跡していると油断し、待ち伏せという可能性を考えていなかった。 『いや、待てよ。ボクはコイツより強かったじゃないか!なんでビビる必要があるんだ!』 スネ夫は喉の奥から振り絞るような声を出した。 「な、なんだよ、またやられに来たのか単細胞!」 しかしジャイアンは信じられないほど冷静だ。 「じゃあやろうか、ポケモンバトルを……ス ネ 夫 く ん」 スネ夫はほくそ笑む。 生身で襲われたら勝ち目はないが、ポケモンバトルなら余裕で勝てるだろう。 そうなればまた怪しい光でパープリンにしてトンズラかませばいい。 「よし、相手になってやるよジャイアン!」 スネ夫はヌケニンを繰り出した。 しかしジャイアンはこの前までのジャイアンとは違っていた。 「でてこい、バクーダ!」 巨大な獣がジャイアンの前に現われる。 「バ、バクーダだって!」 そう、ジャイアンはフエンでの特訓の際に新たな仲間ドンメルをゲットし、それを育成していたのだ。 「そ、そんなもの恐くないやい!ヌケニン、あやしいひかり!」 ヌケニンから光が発せられたが、バクーダは口をもごもごとさせて平然としている。 「かえんほうしゃを食らえ!」 バクーダの口から炎が吐き出され、ヌケニンを焼き尽くす。 「ひぃぃ、なんで怪しい光が効かないんだよ!」 ジャイアンはニヤリと笑う。 「バーカ、お前のやることは分かってるからキーの実持たせてたのさ」 バクーダの火力は圧倒的で、スネ夫が次に出したテッカニンの攻撃にも耐えて火炎放射で撃退する。 「こうなりゃゴルバットで!」 スネ夫のエースポケモン、ゴルバットはその素早さで先制し、バクーダは噛み付かれて倒されてしまう。 「はぁ、はぁ、どんなもんだ……」 しかしジャイアンは眉一つ動かさず、次のボールを投げた。 「そ、そんな……何時の間に……」 ジャイアンが出したのはヌマクローではなく進化体のラグラージ。 フエンジムは炎ポケモンが多く、必然的にレベルが上がっていたのだ。 「そのゴルバットの弱点も分かってるぜ、れいとうビーム!」 ジャイアンはカジノで火炎放射や冷凍ビームを入手し、戦力をあげていたのだ。 ゴルバットが冷凍ビームを食らって一撃で瀕死になる。 『ジャイアンめ……完全にボクの上をいっている!』 しかし、次に出すのはジュプトル。 こんなときの為に最初の選択でジャイアンに対して有利なポケモンを選んだのだ。 「ジュプトル、ジャイアンをギャフンと言わせてやれ!」 「ラグラージ、戻れ!」 スネ夫は仰天した。 あのジャイアンがポケモン入れ替えという戦術を使うとは思わなかったのだ。 「マタドガス!次はお前だ!」 ジャイアンの隠し玉、マタドガスが姿を現す。 草タイプのリーフブレードは半分の力しか発揮できない。 ジュプトルは電光石火で応戦したが、それを耐えきったマタドガスのヘドロ攻撃であえなく倒されてしまう。 『あとの戦力はマルノームしかいない』 スネ夫は最後の希望、マルノームを繰り出す。 しかし、その淡い期待はジャイアンの一言で打ち砕かれた。 「えーと、じばく」 命令を受けたマタドガスが爆発し、マルノームと相討ちになる。 呆然としたスネ夫に残されたのは秘伝用のジグザグマだけだった。 意外なことに、結局スネ夫は一回もジャイアンに殴られなかった。 ジャイアンは何も言わずにトウカのバッジと波乗りの秘伝マシンを奪って去っていった。 『わざわざ俺様の為にご苦労さん、わははは!』 ジャイアンの去りぎわの言葉がスネ夫を打ちのめした。 「ラグラージ、バクーダ、マタドガス……くそ、誰か入れ知恵しやがったのか!」 スネ夫はジャイアンが消えた方向を睨み付けた。 「待ってろよ!必ず追い付いてやるからなーっ!」 スネ夫は肝心なことを忘れている。 トウカシティに戻り、再びバッジを手に入れるということはあの恥辱と好奇の視線を浴びなければならないことを。 次へ
https://w.atwiki.jp/nobita_in_pokemon/pages/33.html
前へ ジャイアンとスネ夫はハギ老人の小屋に向かっている。 途中サン・トウカで木の実を貰っていこうとしたが、なぜか閉店していて店にも入れなかった。 トウカの森でジャイアンはナマケロをゲットし、ようやく二匹目の仲間を得た。 「ぷっ、こいつのび太みたいだぜ!」 「そうだねジャイアン、じゃあ「のびた」って名付けようよ」 話を合わせながらスネ夫は自分のポケモンを確認した。 ジュプトルにキャモメ、そしてツチニン。 『ツチニンさえ進化すれば……』 力押しのジャイアンは技の相性を覚えきっていない。 ヌケニン一匹で完封できるだろう。 『今に見ていろ、馬鹿ゴリラ!』 のび太は今まで走り込んだ成果を確認するために育て屋にいた。 「メノクラゲは12、ゴクリンは13レベル上がってるね」 「やった!すごいや!」 その時ののび太は重大な事に気付いていなかった。 トボトボと育て屋を後にするのび太。 「引き取り料、二匹で2700円だって……」 当然のび太にそんな持ち合わせもなく、引き取りできないまま店を出てきたのだ。 「ん?これからもボクが歩く毎に引き取り料が増えていくってこと?そりゃないよ~」 この歳で借金苦に襲われるとは、つくづく運のない男である。 キンセツシティでのび太がただ空を見上げていた。 「これからどうしよう……」 ふとキンセツジムを見ると、入り口に一人の少年が立っている。 えらく身なりがいいところを見ると、スネ夫みたいな金持ちの坊っちゃんなんだろう。 『今のボクとは雲泥の差だな』 そう思いながら見ているとその少年と目が合う。 「こんにちは」 「こ、こんにちは…」 その少年はミツルと名乗った。 「何かお困りのようですが、どうしたんですか?」 「それがね…」 のび太はミツルに今までの経緯を話しだした。 「つまり、川で溺れて毒ガスで気絶して、挙げ句の果てに金欠で自分のポケモンを引き取れないって事ですか。んぶ、ぶふふ…」 ミツルの口は閉じているが、口の端から息がピューピューと漏れている。 笑いを誤魔化すのに必死なのだろう。 「ぷぷぷ、の、のび太くん…だっけ。育て屋の代金、立て替えてあげるよ…ぶははは!」 ついに声を上げて笑いだすミツルにのび太はすがりつく。 「助けてくれるの!ありがとう、本当にありがとう!」 涙と鼻水混じりののび太の顔を見て、ミツルは笑いが止まらなかった。 育て屋から出て、何度も何度も礼を言いながら去っていくのび太を見て、ミツルはつぶやいた。 「ポケモントレーナーにもこんな底辺があるのか。ああはならないように僕も頑張らないと……」 結果的にキンセツジム挑戦を断念したミツルだった。 ムロタウン。 ジャイアンとスネ夫は石の洞窟でフラッシュの秘伝マシンをもらうと、その場でポケモンの育成をしていた。 ムロジムのトウキが持つマクノシタはレベル19。 最低でもそれは超えておこうという計画である。 まだフラッシュは使えないが、暗闇の中でもハシゴの近くでウロウロしていればとりあえず野生ポケモンとの遭遇は可能だ。 「おーいスネ夫、ココドラをゲットしたぜ!」 「ジャイアン、ボクもズバットを手に入れたよ!」 暗い洞窟内、二人は互いの成果を声で確認していた。 「ココドラはボスゴドラに進化するんだよな、ボスって響きが俺様らしくていいぜ!」 「そうだねジャイアン!」 そう声をかけたスネ夫、しかし頭の中はまったく別のことを考えていた。 『ジャイアンのすぐ後ろではボクのツチニンが潜んでいる。これでダブルバトル扱いになってツチニンも成長するよ』 馬鹿なジャイアンは本来の半分の経験値で満足しているに違いない。 『今のうちにボクはズバットを育成させてもらうよ。ボスゴドラなんか怪しい光で簡単に無力化できるさ』 スネ夫の下剋上計画も順調に進んでいた。 一通り鍛練を終えたジャイアンとスネ夫はムロジムに戻ってきた。 「まずはジャイアンの番だよ」 「スーネー夫ー」 「な、なんだいジャイアン?」 ジャイアンがこういう声色になるとき、次にくる言葉は大体決まっている。 「スネ夫、お前のキャモメ寄越せよ」 「えええええええ!」 「なんだよ、俺のいうことが聞けないってのか!」 こうなってしまってはもうどうにもならない。 スネ夫は諦めてジャイアンのナマケロ(のびた)とキャモメを交換した。 『肉ダルマめ、この恨み晴らさでおくべきか…』 ジムリーダーのトウキとの戦いはジャイアンの快勝だった。 キャモメの翼で打つ攻撃は次々とクリーンヒットし、相手の攻撃は猫だまし程度しか当たらなかった。 スネ夫は決め手にかけた手持ちポケモンだったが、ジャイアンのジム戦でこっそり出しておいたズバットが超音波で捨て身の活躍。 おかげでジュプトルVSマクノシタのタイマンに持ち込み、何とか勝利したのだった。 「はははっ、だらしねーなスネ夫!」 「そ、そうだね…ははは…」 ジャイアンの笑いを背に受けながら必死で唇を噛むスネ夫だった。 カナズミシティ 「なんだろう?」 「あっちのほうが騒がしいわね」 ドラえもんとしずかが野次馬を掻き分けていった先には、小さなトンネルがあった。 どうやらトンネル内で立てこもり事件が発生しているらしい。 「ドラちゃん、助けてあげましょうよ」 優しいしずかの願いを断ることもできず、ドラえもんはカナシダトンネルの中に入った。 「このポケモンがどうなってもいいってのか!」 なにやら人相の悪い男が奥で騒いでいる。 手前にいる男は被害者のようだ。 しずかと被害者が目をひきつけている間に、ドラえもんは石ころぼうしをかぶってこっそり近づく。 『いまだ!』 手元から人質、もといポケ質を奪回するとしずかが反応してキルリアを繰り出した。 「ねんりき!」 悪人の体が浮かび上がり、そのまま地面に叩きつけられた。 「痛っ!……畜生、アクア団に逆らったこといつか後悔させてやる!」 悪党は捨て台詞を吐くとすごすごと退散する。 「アクア団?ネーミングセンス悪いなぁ」 ドラえもんは石ころぼうしを脱ぐと、捕まっていたキャモメを保護した。 「いやぁ、ありがとうございます。おかげで荷物も無事でした」 被害者の男はドラえもんとしずかに礼をしたいと言いだした。 「けどのび太くんを探さなきゃ……」 「人探しですか、じゃあいいものを差し上げますよ。ささっ、早く早く」 男は二人をカナズミの大きなビルに連れてきた。 「社長がお待ちです、行きましょう」 一時間後。 デボンのビルから出てきた二人。 「なんだかんだで頼まれものをされちゃったね」 「ポケナビ貰ったし、仕方ないわよ」 ポケナビはこの地方のマップを搭載しており、トレーナー同士の通話も可能らしいのでのび太の情報を入手できるかもしれない。 「次はこのキャモメを持ち主に帰してあげましょう」 「トウカの森の手前の小屋のおじいさんのポケモンらしいよ」 キャモメの足には迷子札がついており、そこから住所が判明したのだ。 その小屋に向かうため、しずかとドラえもんはカナズミシティを後にした。 117番道路。 のび太は圧倒的な戦力で付近のトレーナーを撃破していた。 手持ちのポケモンはメノクラゲLV26、ゴクリンLV24。 道行くトレーナーはのび太と視線を合わせないように歩いている。 「ついに、ついにボクの時代が来たんだ!」 二匹の進化も間近、のび太はすっかり浮かれていた。 注:鬼畜出木杉 「こんにちは、ジム戦をしたいんですけど」 カナズミジムにひとりの少年がやってきた。 「ようこそカナズミジムへ。」 ツツジは挑戦者を出迎えた。 理知的な感じの整った顔立ちをした少年だ。 『美少年、ですね』 ツツジは素直にその容姿を誉め讃えた。 少年が集中してバトルを行ないたいというので、審判も締め出したセルフジャッジ制でのバトルとなった。 「よろしくお願いしますね」 ツツジの礼儀正しい挨拶を聞いて、少年はピクリと体を震わせた。 『緊張しているのかしら、うふふ』 ツツジは初々しいトレーナーを見て思わず微笑む。 「イシツブテで行きますわ!」 ツツジのモンスターボールから現われたイシツブテを見て、少年の様子が変わった。 「イシツブテ、イシツブテですか…くくくっ」 少年がモンスターボールを投げる。 そこから現われたものは…… 「バ、バシャーモ!」 ツツジは驚愕した。 新人の登龍門であるカナズミジムの挑戦者が使うようなレベルのポケモンではない。 「バシャーモ、にどげりだ!」 バシャーモのキックを受けたイシツブテは一撃で瀕死になってしまう。 注:鬼畜出木杉 「こんな、こんな戦いって……」 ツツジのポケモンの攻撃はほとんど通じない。 イシツブテやノズパズなど二度蹴りだけで倒せるはずなのにわざわざつつく攻撃でいたぶっている。 そして体力をギリギリまで削った上で二度蹴りで止めを刺しているのだ。 「もう、もうやめて!」 ツツジの叫びも虚しく、ノズパズも二度蹴りを受け吹き飛ばされた。 「ノズパズ…いやぁぁぁっ!」 瀕死のポケモンに駆け寄ろうとするツツジをバシャーモが小脇に抱える。 「な、何を!離してっ!」 いつの間にかそばにやってきた少年が口を開く。 「お前のその振る舞い……あの女を思い出すんだよ」 小脇に抱えられて動けないツツジのスカートを捲り上げ、ピンクの可愛らしいショーツがあらわにされる。 少年はその尻に思いっきり平手を叩きつけた。 「お仕置きだ、お仕置きだ、お仕置きだっ!」 「痛いッ、痛いいっ!」 破裂音とツツジの悲鳴が交互にこだまする。 すっかり赤くなった尻を見て、少年がツツジに声をかける。 「ふふ…僕の精通がまだ来てなくてよかったな。何をされても妊娠はしないぞ…」 「や、やめてーーーーっ!」 少年…出木杉はゆっくりとツツジのショーツをずり下ろした。 その日からツツジの姿を見たものはいない。 110番道路。 のび太は今日も近場のトレーナーを倒して金を稼いでいた。 今日3人目のバトルに勝利し勝利報酬を受け取るのび太。 「あー、ジャイアンの気持ちが分かるような気がするよ」 「ほー、俺の気持ちが分かるってのか」 「そうそう、分かる分かる……ん?」 後ろを見ると、今話題にしたばかりの忌々しい少年が子分を連れて立っていた。 しかしのび太にとってはやっと出会えた知り合いだ。 思わず涙が込み上げてくる。 「ジャイアーン、逢いたかったよぉ~~」 しかしそんなのび太を待っていたのは手荒い返礼だった。 「気持ち悪いな、コイツっ!」 ジャイアンに胸ぐらを捕まれるのび太。 「な、なにするんだよ!」 「のび太、さっきのポケモンバトルで使ってたゴクリンをスネ夫に譲ってやってくれよ……」 この世界でもコレか。 この暴力男はどこでもこんな横柄な態度なのか。 しかし、今ののび太には力がある。ポケモンという力が…… 「そんなに欲しいならポケモンバトルだ!」 数分後。 「じゃあな、のび太」 その場に残されたのはボロ雑巾となったのび太とナマケロのボール。 ポケモンに力はあってものび太自身は無力、結局力ずくで奪われてしまったのだ。 ドラえもんとしずかはハギ老人の船でムロタウンへ向かっていた。 心地よい潮風に揺られて気持ちがいい。 「しずかちゃん、届けものが終わったらカナズミに帰ろう」 ドラえもんの意見にしずかも同意する。 のび太がこっちに来ていないことは確実だからだ。 リリリリリリ… 「あら、エントリーコールね」 しずかのポケナビから声が聞こえる。 『さっきはありがとう、マキです』 カナズミの前にいたミニスカートのマキだ。 『キンセツシティでまたジョギングマンが出たんだって。眼鏡をかけた頼りない少年らしいよ』 ドラえもんとしずかは顔を見合わせる。 「まさか、のび太くん?」 「けど…キンセツシティってとても遠いわよ。人違いじゃないかしら」 しかしドラえもんには直感で分かっていた。 自分達には思いもつかないトラブルで彼はそこにいるのだと。 「とにかく、ムロタウンに着いたら連絡を取ってみよう」 117番道路。 のび太は再びジョギングを始めていた。 現状、メノクラゲだけではどうにもならない。 「だからナマケロも育てるんだ……ボクの足で!」 「くらえ、マッドショット」 ヌマクローが泥を吐き出し、ラクライに直撃する。 「むう、強いのう……」 相手の老人・テッセンは感心するようにうなずいた。 ジャイアンはキンセツシティでジム戦をしている。 ジャイアンのヌマクローは水タイプだけでなく地面タイプも所持している。 事前にマヒなおしも買っておいたので、ヌマクロー一体でも十分勝てる試合だろう。 「いやぁ、参った参った。完敗じゃ」 ジャイアンがジム戦を終え、テッセンからバッジをもらっている時にスネ夫が現われた。 「ジャイアン、岩砕きの秘伝マシン貰ってきたよ!」 「おう、お使いご苦労!」 ジャイアンはスネ夫をパシリに使ったつもりだろうが、スネ夫がそれだけの為に動いたはずはない。 ジャイアンがジム戦に没頭している間に、近場でゲットしたタネボーを育て屋に預けた。 そして金持ちであることをいいことにカジノでコインを大量買いし、影分身・冷凍ビーム・火炎放射の技マシンを入手したのだ。 影分身はすでにザバットに使用している。 『ノータリンめ、お山の大将を気取ってるんだなww』 ひたすら走り続けているのび太。 キンセツジムの前を通ると、ちょうどジム戦を終えたジャイアンやスネ夫と鉢合わせする。 「よーうのび太、何必死な顔して走ってるんだよ」 「そうそう、のび太らしくないぞ」 ジャイアンとスネ夫が冷やかす。 「う、うるさい!走ってちゃいけないのかよ!」 のび太も言い返すが、ジャイアンとスネ夫はニヤニヤと笑ったままだ。 「何がおかしいんだ!」 「だって、なぁ」 「そうだよね」 要領を得ないジャイアン達の反応に憮然としたのび太はプイとそっぽを向いて117番道路に行ってしまった。 「あははははは!」 「アイツ馬鹿だ!」 ジャイアン達は自転車に乗りながら笑っていた。 そう、のび太は自転車が貰えることを知らない。 馬鹿笑いしながら自転車を漕ぐジャイアンを尻目に、スネ夫は考えをめぐらせる。 『のび太のやつ、あれは育て屋に何か預けてるな。気を付けないと……』 のび太がナマケロに秘められた真の力…ケッキングまで進化させたらかなりの強敵になる。 スネ夫はジャイアンの命令でポケモンを交換したことを軽く後悔した。 『まったく、いらないことばかりしやがって。死ね!死ね!』 一日中走り続け、へとへとになったのび太はキンセツシティのポケモンセンターに辿り着く。 ここ数日世話になりっぱなしだったが、今日はいつもと少し違っていた。 「トレーナーのノビタさんですね。ユニオンルームでお友達がお待ちですよ」 「ユニオンルーム?」 よく分からないが、係員に言われるままに二階に案内される。 部屋のなかに通されると、そこにはなんとドラえもんとしずかがいた。 「のび太くん!」 「のび太さん!」 「あ、ああ、あ……」 のび太の目から涙があふれる。 「しずちゃん、ドラえもん!」 思わず飛び付いたが、ドラえもんの体をつかめずに手がすり抜ける。 「あ、あれ?」 「ここはユニオンルームといって、遠くの人とお話したりする部屋なんだ」 ドラえもんがのび太にも分かるように説明する。 「私たちは今ムロタウンにいるの。そっちに着くにはもう少しかかるから待っててね、のび太さん」 「わ、わかったよしずちゃん!早く来てね!」 ユニオンルームの接続が切られ、部屋にはのび太だけになった。 「とりあえず助かった……」 ドラえもんたちが助けにきてくれる! 今日は久々によく眠れそうだ。 カナシダトンネルで怪力の技マシンを回収したジャイアン達は煙突山経由でフエンタウンに向かう途中だった。 「よし、次はフエンタウンだな!」 「ジャイアンの力なら簡単にバッジ貰えるよ。」 ジャイアンに話を合わせていたスネ夫だったが、内心はかなり焦っていた。 フエンタウンのジムリーダー・アスナは炎ポケモンの使い手、スネ夫の主力であるジュプトルでは分が悪い。 『キャモメはあの馬鹿に取られちゃったし、ゴクリンじゃ力不足。ツチニンはジャイアンに見せるわけにはいかない……』 スネ夫の計画はジャイアンの傲慢なやり方のせいで微妙に狂いが生じていた。 煙突山山頂。 「なな、なんだこいつら!」 山頂には怪しげな赤服の一団が陣取っていた。 「ジャイアン、こいつらマグマ団だよ!」 その時、スネ夫の脳裏にある考えが閃いた。 「ジャイアン、こいつらやっつけて経験稼ぎしようよ!」 スネ夫の提案にジャイアンも同意する。 「よし、二人であいつらやっつけてやろうぜ!」 ジャイアンとスネ夫はこちらを威嚇しているマグマ団に向けモンスターボールを放った。 「このガキ、我々マグマ団に逆らおうというのか!」 マグマ団員達はポチエナとズバットを出して構える。 ジャイアンのボールからはヌマクローが現れ、スネ夫はズバットを繰り出した。 「よしヌマクロー、水鉄砲だ!」 「戻れ、ズバット!」 スネ夫はいきなりズバットを戻してしまう。 ジャイアンの怒声が響く。 「なにやってんだスネ夫!」 「ご、ごめんジャイアン!出ろ、ゴクリン!」 スネ夫は変わりにゴクリンを出した。 『こうやってポケモンを入れ替えれば両方育成できる。バカゴリラには1/3しか経験値が入らないぞ』 スネ夫は全対戦で何かと言い訳を付けつつポケモンを入れ替え、ついにズバットとゴクリンを進化させるまでに育成してしまった。 さすがのジャイアンも実質2対1の戦闘を強いられ、ヌマクローもキャモメも消耗しきっている。 「はぁはぁ、こいつら手強いぜ…」 「ジャイアン、後はボクに任せて。敵のリーダーはボク一人で戦うよ!」 「すまねぇスネ夫、恩に着るぜ」 ジャイアンは馬鹿正直に感謝の言葉を述べている。 『くくく、今までご苦労さん。マツブサの進化ポケは経験値たくさん持ってるからボクがいただくよ』 スネ夫はジャイアンに背を向けほくそ笑んだ。 スネ夫とマツブサの戦いはスネ夫が終始優勢だった。 攻撃力に欠けるスネ夫のパーティーだったが、ズバットをLV26まで上げてから進化させていたのが功を奏した。 「ゴルバット、あやしいひかりだ!」 怪しい光、そしてカジノで入手した影分身のおかげでターン数はかかったが勝利することができた。 「マグマ団のやつら、ジャイアンに恐れをなして逃げ帰ったよ」 スネ夫がジャイアンのもとに向かうと、ジャイアンは何か言いたそうな顔をしてこちらを睨んでいる。 『やばい、調子に乗りすぎたか!』 経験値のことはジャイアンは気付いてないだろう。 しかし目の前でスネ夫のポケモンが2体も進化したのだ。 それを黙って見ているジャイアンではないだろう。 「じ、ジャイアン!敵の親玉がこんなの持ってたよ!」 スネ夫はポケットから技マシンを取り出した。 「活躍したのはジャイアンだからジャイアンにあげるよ!」 「お、おう。当然だ!俺の活躍だからな!」 ジャイアンは笑いながらスネ夫から技マシンを奪い取る。 『ぷぷぷ、それはカイナで入手していたいちゃもんと秘密の力。どうせ使わないもんね』 得意げに技マシンを見ているジャイアンを心で嘲り笑うスネ夫だった。 ムロジム。 ドラえもんとしずかは一刻も早くのび太に会いに行きたかったが、デボンの社長からの頼まれ事を先に済ませることにした。 まずはフラッシュの技マシンを使えるようにするためにジムバッジを手に入れなければならない。 しずかのジム戦は楽勝であった。 キルリアの念力はトウキのワンリキー、アサナン、マクノシタさえも一撃で戦闘不能にする。 「さすがにキルリア相手では勝てないな。さあ、バッジは君のものだ!」 「ありがとうございます!」 しずかがバッジを受け取り、次はドラえもんの番だ。 「よーし、がんばるぞ!」 戦いは一方的だった。 格闘のエキスパートであるトウキのポケモン相手にドラえもんは蹴られ、殴られ、そして敗北した。 その日の夜。 「ご、ごめん、しずかちゃん……」 「よく頑張ったわ、ドラちゃん。今日はゆっくり寝ててね」 ポケモンセンターで治療を受けるドラえもんを残し、しずかは一人石の洞窟に向かう。 その手にはドラえもんのモンスターボールが握られていた。 「もうドラちゃんのあんな姿見てられない。私がドラちゃんのポケモンを鍛えるわ!」 次へ
https://w.atwiki.jp/nobita_in_pokemon/pages/78.html
前へ 注:鬼畜出木杉 森の中 一人の女が走っていた。 特徴的な青い装束はアクア団のものだと分かるが、一般的な形と少し違う。 彼女はアクア団幹部、イズミ。 「まさか子供相手に遅れを取るとは……」 天気研究所で会った二人の子供。 彼らの連携に思わぬ敗北をしてしまい、こうして逃走している。 『次は必ず倒してやる』 イズミはそんな事を考えていた……そう、だから注意力も散漫だったのだ。 ふいにイズミの腰に何かが巻き付く。 「きゃぁっ!」 イズミはそのまま宙に持ち上げられる。 「こ、これは……つるのムチ……」 ホウエン地方ではお目にかからない珍しい技だ。 「野生の、ポケモンじゃ…ないわね」 「ご名答」 ぱちぱちと拍手の音がする。 暗闇から現われたのは10歳くらいの少年と、ムチを出しているモンジャラ。 「子供のいたずらは相手を見てからするものよ、私は……ああうっ!」 イズミの体を締め付ける力が増す。 「その子供に負けてこんなところを逃げ回ってるのは誰なんですか?」 少年が笑う。 「貴様……アクア団の幹部に対して……」 イズミが燃えるような目をして睨み付ける。 そんなイズミを冷ややかに見つめる少年の後ろから一人の少女が現われた。 注:鬼畜出木杉 「出木杉様、お呼びでしょうか」 「ああツツジ、待ってたよ。君も一緒にここにいてくれ」 『ツツジ?行方不明になったカナズミのジムリーダーがなぜ?』 イズミはツツジと出木杉という少年の関係がさっぱり分からず困惑する。 二時間後。 イズミをムチで拘束したまま、出木杉は何もせずにただ座っていた。 ツツジは出木杉の真意が分からず、ただ待っているだけだ。 「そろそろかな」 出木杉が宙に吊られているイズミを見上げる。 「出木杉様、いったい何が……」 ツツジは怪訝そうに質問する。 「このイズミって女は高飛車でプライドが高いんだ」 そう言って笑う出木杉の目は冷たい。 「そう、君と同じタイプなんだよ、ツツジ。こういうタイプには普通に言っても何も聞いてくれない」 そう言うと出木杉はどこからかステンレス製のボールを取り出した。 「だから話を聞いてくれるようにしないと」 出木杉の言葉と手に持つ容器の関係が分からずにツツジは首を傾げる。 「イズミさーん、元気ですかー!」 出木杉が上で縛られているイズミに声をかける。 「わ、わた……しを……、はな…せぇ…」 明らかにイズミの様子が変だ。 その様子を見てツツジも出木杉のやりたいことを理解した。 『出木杉様、容赦ないですわ……素敵……』 注:鬼畜出木杉 出木杉がモンジャラに命令し、イズミを出木杉の前に差し出す。 「苦しそうですね、イズミさん。何かご希望がありましたら遠慮なくおっしゃってください」 イズミは顔を紅潮させながら小さくつぶやく。 「……ィレ…」 「聞こえませんよ」 「…トイレに……」 出木杉がニヤリと笑い、ステンレスのボールを置いた。 「はい、トイレ」 イズミの目が憤怒で染まる。 「ボクの部下になってくれたら拘束を解いてあげるよ」 「そ、そんな取引……んんっ」 イズミの思考力はすっかり低下している。 とにかくこの場を切り抜けたいがために、つい口走ってしまった。 「部下にでも何でもなるからぁっ!」 「だぁめ」 出木杉がイズミのズボンと下着をまとめて勢い良くずり下げた。 「あっあぁぁぁっ!」 極限まで敏感になった部分が外気に触れ、ついに我慢していたものが放物線を描く。 「やぁぁっ、と、とまらないっ、んんんんんーーーっ!」 「はははは、ステンレスってすごい音出すよね」 自らを制御できずにいるイズミ、その目はすでにこの場を見ていない。 「『大人のくせに』こんなところでおしっこしちゃうなんて、だらしないなぁ」 イズミはアクア団本隊と再び合流した。 その心に新たな主人を抱いて…… カナズミシティ。 ドラえもんとしずかはデボン社長にお使いの達成を報告して、デボンコーポレーションを後にした。 トウカシティでのジム戦は二人の圧勝で終わった。 しずかのサーナイト、ドラエモンのヤミラミ&エアームドはすでにセンリのポケモン達を大きく上回っていたのだ。 ハジツゲへの寄り道、物拾いによる不思議なアメの入手。 しずかに関してはスネ夫との戦いによる経験蓄積も大きい。 「がくしゅうそうち、貰っちゃったね」 「それにみんなの分のポケナビもね。これさえあれば皆と連絡が取れるわ」 一休みするためポケモンセンターに寄った二人。 ポケモンを預ける際にジョーイが思い出したように声を上げた。 「ドラエモンさんとシズカさんですね、昼にユニオンルームで待ち合わせしたいとの連絡を受けております」 二人は顔を見合わせる。 「ん?もしかしてのび太くんかな?」 「じゃあどこかの町にいるのかしら!」 時間は昼前、二人はユニオンルームに入室した。 しばらく待つと、転送による光の柱が現れる。 「よう、二人とも元気か!」 二人の前に現れたのは意外な人物。 「じ、ジャイアン!!」 ジャイアンが通信を求めてくるとは意外だ。 「そっちは……カナズミか。俺はヒワマキにいるんだ」 「ヒワマキ……」 しずかがポケナビで地図を見ると、キンセツの川を渡った先の町の様だ。 「剛さん、のび太さんを見なかった?そっちの方にいるはずなんだけど……」 ジャイアンがにやりと笑う。 「ああ、我が心の友のび太くんだろ?お前達への伝言預かってるんだ」 「ジャイアン、のび太くんに会ったのかい!」 ドラえもんの目から涙があふれる。 二度も川に落ちる不運さもアレだが、それでも野垂れ死にしていないのは不幸中の幸いだ。 「のび太はここのジムバッジをゲットして、今キンセツに向かってるはずだ。空を飛んでるからもう着いてるはずだぜ」 ドラえもんはその話を聞いて大泣きに泣いた。 「うおーんおんおん、のび太くんが、のび太くんが…そんなに立派にぃぃぃ~」 「ドラちゃん、良かったわね」 しずかまでもらい泣きしている。 「つーことで確かに伝えたぜ、俺は先に行くからな!」 その時、しずかが重要なことを思い出す。 「確かスネ夫さんがキンセツに向かってるはず……」 それを聞いたドラえもんは顔を青くする。 「そうだ、スネ夫にインネン付けられてなきゃいいけど……」 しかしジャイアンはガハハと笑って答えた。 「ああ、心配するな。のび太がスネ夫ごときに負けるわけねーよ」 ジャイアンの妙な太鼓判に、不安ながらも納得する二人。 何がジャイアンののび太に対する評価を上げたのか、ドラえもんにはさっぱり分からないのだが。 「あ、ジャイアン!これ持っていって!」 ドラえもんが転送システムでジャイアンに道具を転送する。 「んー?なんだこりゃ」 「それはポケナビ。今度からはエントリーコールで連絡を取り合おうよ」 ジャイアンはひとしきり操作の説明を受け、ユニオンルームから消えた。 「ジャイアンはああ言ってたけど……」 「やっぱり心配だわ」 二人は顔を見合わせる。 「のび太くん(さん)だからねぇ…」 二人は急いでカナズミを後にする。 キンセツシティ。 のび太が到着したとき、キンセツではとある噂が持ちきりだった。 「よう、ジョギングマン。生きていたかい!」 のび太に気付いたギタリストのテリーがやってくる。 テリーの話では、キンセツに「露出ボーイ」が現れたらしいのだ。 キンセツ都市伝説 「露出ボーイ」 前から見ても横から見ても同じ髪型をしている少年が下半身全裸で走り回る。 昔、サイクリングロードで自転車を奪われた少年の霊だと言われている 「うーん、そんな変な髪型の奴なんているの?」 のび太の疑問はもっともである。 「さあな、大方アフロヘアーだったなんてオチじゃねえの?じゃあな」 テリーと別れたのび太。 その姿を物陰から見つめるのはスネ夫だった。 「のび太のやつ、相変わらずバカ面しやがって……」 あいつのペットのドラえもんには散々な目にあわされた。 仕返しにもならないが、奴でもいじめてウサ晴らしをしてやろう。 「やい、のび太!」 聞き知った声にのび太が振り向くと、そこには懐かしい友人がいた。 「スネ夫ー!元気だった?」 再会の喜びに駆け寄り、思わず手を取ろうとしたが、そんなのび太を力一杯突き飛ばすスネ夫。 「な、なにするんだよ!」 「今ボクはすごくムシャクシャしてるんだ!のび太、お前と遊んでやるよ」 そんなスネ夫をしげしげと見つめるのび太。 「前から見ても横から見ても同じ髪型……」 スネ夫の肩がビクンと震える。 「まさか、スネ夫が露出ボーイ……なんてことはないよね」 「のび太ァッ!お前コテンパンにしてやるよォォォッ!」 スネ夫の顔が般若のようになり、懐のモンスターボールに手を掛けた。 キンセツのギャラリーがそんな二人を見物に集まる。 後にキンセツ史に語られる事となる「ジョギングマンと露出ボーイ、真昼の決闘」である。 衆人環視の中、二人はポケモンを繰り出した。 「いけ、ヌケニン!」 「頑張れ、ケッキング!」 スネ夫のヌケニンに対してのび太が出したのはケッキング。 「ケッキング、あくびだ!」 ケッキングのあくびがヌケニンの眠気を誘う。 「お、ボクの(もともとはジャイアンのだけど)ナマケロを進化させたんだな、のび太にしては上出来だけど……」 スネ夫のヌケニンは毒毒でケッキングを猛毒に侵す。 「そんな2ターンに1回しか動けない奴なんか恐くないぜ!」 次のターン、動けなくなったケッキングはヌケニンに砂をかけられてしまい、毒で体力を消耗する。 「なんだ、全然たいしたことないな」 余裕のスネ夫。 あくびの効果でヌケニンは眠ってしまったが、どうせ攻撃技は切り裂くか欲しがるが関の山だろう。 しかし、のび太のケッキングが覚えている攻撃技はただひとつ。 「ケッキング、だましうちだ!」 悪タイプ、しかも砂かけの影響を受けないだまし討ちがヌケニンにヒットする。 「な、なにいっ!」 「やった、倒したぞ!」 偶然なのか戦略なのか、とにかくヌケニンを撃破されてしまった。 スネ夫は歯噛みしながら2体目にテッカニンを出す。 ケッキングは動けないので、テッカニンは影分身で回避率を上げる。 「こいつで補助効果積んで全滅させてやるよ!」 加速で素早さが上がる。 「次は剣の舞だ!」 攻撃力まで上昇したテッカニン。 しかしまたもやのび太はスネ夫の想像を覆した。 「ケッキング、アンコール!」 「ええええええ!」 ギャラリー達も唸る。 皆は影分身後の積み技を予測したのび太の戦術に唸ったのだろう。 『いや、きりさくをアンコールして次にジュペッタだすつもりだったんだけど……』 のび太はケッキングを引っ込め、トロピウスを出した。 剣の舞を続けるテッカニンに対して空を飛んで攻撃、またもや一撃で倒してしまった。 「な、なんだこの展開は!のび太のくせに、のび太のくせに!」 スネ夫は怒り狂い、エースのゴルバットを繰り出した。 「あやしいひかりだ!」 ゴルバットの光を見たトロピウスが混乱し、自らを攻撃してしまう。 「ピー助、言うことを聞いてくれよ!」 そんなトロピウスにゴルバットのエアカッターが急所を直撃する。 トロピウスは再び自らを攻撃し、その巨体を沈めた。 「ピー助、ピー助……」 「ほら、さっさと次のポケモンを出せよ!ウスノロ!」 スネ夫の怒りはおさまらない。 のび太が次に出したのはドククラゲだ。 「のび太、色違いなんてお前にはもったいないな」 スネ夫がせせら笑う。 ドククラゲの素早さは早いが、ゴルバットを倒せる技は持っていない。 「ほら、何でもこいよ!まきつくのか?ようかいえきか?」 挑発するスネ夫にのび太が叫んだ。 「れいとうビーム!」 冷気の光線を受け、ゴルバットが凍り付く。 「ジャイアンから貰ったれいとうビームの技マシンを使ったんだ!」 「ぐぐ……ジャイアンの奴め、余計なことを!」 スネ夫の手持ちはジュカイン、マルノーム、そしてキノココ。 弱点を突かれずに戦えるのは皮肉にものび太から奪ったマルノームだけだった。 「マルノーム、お前の元主人をぎゃふんと言わせてやれ!」 冷凍ビームを耐えてのしかかり、マヒさせることに期待するしかない。 しかしのび太の偶然はスネ夫の期待を打ちのめした。 「そうだ、確かジュペッタに技マシンでサイコキネシスを覚えさせたんだっけ!」 渾身ののしかかりはジュペッタには効果がなかった…… 結局終わってみればのび太の圧勝。 「ちきしょー、覚えてろよのび太!」 スネ夫は小悪党の捨て台詞を残して去っていく。 その目にはのび太に対する怒りとは別のものが秘められていた。 「ジャイアンめ、目の前にいなくてもボクの邪魔をするのか……許せない!」 サファリゾーン。 ジャイアンは草むらで必死の捜索をしていた。 冷凍ビームを持つラグラージ、火炎放射を覚えたバクーダ。 この2体のおかげで苦もなくヒワマキのジムリーダー・ナギを倒したジャイアンはサファリゾーンに来た。 ここにはある用事があったからである。 「はぁはぁ、なんで捕まんねーんだよ……」 これで四回目の挑戦、かれこれ100個以上サファリボールを投げていることになる。 「くそっ、手強い奴だぜ。そういやゲームでもなかなか捕まらなかったっけ」 そう思い返すジャイアンの前に新たなポケモンが現れた。 「へへ…いやがったな」 大きな角、青光りする硬い外殻。 男の子の夢、甲虫王者ム…ヘラクロスである。 「おーりゃー!」 ジャイアンはサファリボールを投げるが、ヘラクロスはすぐボールから出てしまう。 「このっ!このっ!」 何度も何度も挑戦するが捕まらない。 そしてヘラクロスは去り、ジャイアンは21度目の捕獲失敗を喫した。 「ああ捕まんねえ!どうなってんだよ全く!」 休憩所でイライラしているジャイアンに他の客も生きた心地がしない。 彼は毎回ここに現れ、辺りの物に当たり散らして帰っていくのだ。 たまらずに一人の男がジャイアンにアドバイスする。「あのー、もっと近づいてボールを投げれば……」 その言葉にジャイアンはポンと手を叩く。 「そうだった、近づけばよかったんだ!」 『こんだけ挑戦してて知らなかったのかよ!』 休憩所の利用者達は呆れながらも揃って胸を撫で下ろした。 ジャイアンは再び辺りの捜索を始めた。 「やべえな、残り歩数が少ないはずだ……こうなったら!」 ジャイアンはその場で目まぐるしく動きだした。 歩数節約の方向転換、端から見ればかなり異様な動きだ。 「うおおおおおっ!」 ジャイアンの動きがさらに素早くなってくる。 右後左右左前右前後左前……まるでファミコンの隠しコマンドを打ち込む指のようにジャイアンは動く! 「!…出たか!」 そのヘラクロスは今までで最も立派な角の個体だった。 ジャイアンはふらふらしながらそのヘラクロスと対峙する。 『近づく、近づく……』 本来は気付かれないように徐々に間合いを詰めなければならないのだろうが、生憎ジャイアンにそんな器用な事はできない。 「とにかく近づけばいいんだろ!」 ジャイアンは一気に間合いを詰める。 ヘラクロスはそんなジャイアンに驚いて思わず頭を下げた。 その角は突進してくるジャイアンの腹にめりこむ。 「はうっ!……か、カウンター」 ジャイアンは薄れゆく意識のなか、ヘラクロスにサファリボールを叩きつけた。 意識を失ったジャイアンのそばでヘラクロスを収めたボールの動きが止まる。 そしてサファリゾーンのアナウンスが挑戦終了を告げたのだった。 デコボコ山道。 出木杉、ツツジ、アスナの3人はとある岩山の傍にいた。 「出木杉様はこんなところに何の用があるのかしら?」 「知らないよ。けど出木杉様がこんな場所にただ遊びにくるとは思えないし」 そんな二人の会話を遮るように出木杉のポケナビが鳴る。 「ああ、イズミさん。……そうですか、わかりました。引き続き監視をお願いします」 ポケナビを切ると、岩山をジロジロと見て歩く。 「確かここらへんに……あったあった!」 出木杉が何やら印象のようなものをかざすと、岩山が割れて大きな穴が現れた。 「な、なんなの…これ」 「出木杉様、これは一体……」 驚く二人に出木杉が説明する。。 「ここはあのマグマ団のアジトだよ」 そう、比較的目立ちやすい場所にあるアクア団アジトと違い、マグマ団アジトの場所を知る人は少ない。 「さっきイズミから連絡があってね、彼らのボスはおくりびやまにいるそうだよ」 そう、出木杉は知っていた。 おくりびやまで二つの集団があるものを強奪しようとしていることを。 「となると、次はここでフラグを立てることになるんだが……それは僕がやろうと思ってね」 何を言っているか分からないが、とにかくすごい事なのだろう。 言いようのない神秘性を感じたツツジとアスナは、うっとりとした目で出木杉を見つめる。 「じゃあ用意したアレを出してください」 ツツジとアスナは十数個のモンスターボールを放り投げた。 現われたのはゴローンの大群。 出木杉に促されて次々と洞窟に消えていく。 「そんなことしたら感付かれてしまいますわ!」 心配したツツジが訴える。 しかし出木杉は中止しようともしない。 「ツツジ、このアジトには事もあろうに野生のゴローンが徘徊してるんだよ」 出木杉はにやにやと笑いながらインカムを付ける。 このインカムで受信機を付けたゴローン達に遠隔でも命令が可能だ。 「バカな組織だよねぇ。アジトの中に味方以外のポケモンを野放しにしているんだから」 出木杉がゆっくりと息を吸い込む。 ツツジとアスナは次に発せられる言葉を想像して身震いした。 「……だいばくはつ」 中で凄まじい衝撃音が響き、入り口から砂煙が吹き出した。 「これで帰るところがなくなったマツブサは『あそこ』に行くしかない。アオギリの奴はイズミが連れてくるだろう」 キンセツシティ。 ドラえもんとしずかはのび太のいるこの町に到着していた。 早速ポケモンセンターに向かいのび太の呼び出しを頼んだが…… 「ノビタ様はこちらにはいらっしゃいませんね」 二人は心配そうに顔を見合わせる。 そんな二人に受付が思い出したように何かを探し始める。 「確か……ああ、ありました。お二人に伝言を預かっております」 「伝言だって?」 ドラえもんが驚いたのは伝言があることではない。 のび太に伝言を残すような要領の良さがあったことに驚いたのだ。 『本当にあののび太くんが?』 そんな疑問を尻目に受付が伝言を読む。 「夕方に帰る、待っててくれ。だそうです」 二人は不安だったが、とりあえず夕方まで待ってみることにした。 夕方。 センターの前で待っていると、のび太がトロピウスに乗って空から降りてきた。 「ドラえも~~ん!」 手を振るのび太に二人も応える。 「のび太くん!」 「のび太さ~~ん!」 のび太はトロピウスから飛び降りると、ドラえもんに抱きついて泣き始めた。 「うう、ドラえもん会いたかったよ……」 「よしよし、のび太くんはよく頑張ったよ」 伝言を残した要領の良さとはうって変わったのび太の様子に、ドラえもんは何となくほっとした。 センター内で3人は今までの経緯を語り合う。 「それにしても、またのび太くんがいなくなってたから心配したよ」 ドラえもんがため息を吐く。 「いったいどこにいっていたの?」 「それはねしずちゃん、トウカシティでジム戦をやっていたのさ」 「ジム戦?」 ドラえもんとしずかは顔を見合わせる。 「ほら、ここから先は波乗りの秘伝も必要になると思って取りに行ってたんだ。空を飛ぶじゃ行った町にしかいけないしね」 のび太はキンセツのテッセンからジムバッジを受け取ると、コトキタウンを経由してトウカへ行ったのだ。 「これでボクも二人と一緒に旅ができるよ!」 ドラえもんが思わず涙を流す。 「のび太くん、本当に立派になって……」 こうして3人は再会を果たし、翌日キンセツシティを旅立っていった。 119番道路。 スネ夫は朝から釣りを続けていた。 ポイントを変えながら何度も何度もチャレンジしているが、目当てのモノはちっとも釣れない。 「おっ、引いてる!」 スネ夫が竿を上げると糸の先にはまたもやキバニアが。 「くそ、ヒンバスが釣れるまで諦めないぞ!」 翌日。 あっさりヒンバス釣りを諦めたスネ夫はヒワマキシティで心地よい朝を迎えた。 「さて、やってみるか」 この町にきたスネ夫はひとつやってみたい事があった。 それはこの町で入手できるある技マシンだ。 「ジュカインはイマイチ技のタイプにバリエーションが少ないからな」 今の技はリーフブレード、高速移動、追い打ち、電光石火。 正直戦闘力が心許ないのだ。 「この目覚めるパワーを使ってみて、いいタイプの技が出ればいいんだけど……」 できれば特攻の高さを生かせる炎か電気あたりが出れば御の字だ。 早速ジュカインに使用してみる。 「めざパドラゴン……」 特攻は生かせるがあまりにも使えない。 スネ夫はガックリと肩を落とした。 ヒワマキジム。 ここのジムリーダー・ナギは飛行タイプの使い手。 草と虫タイプ主体のスネ夫にはいささか分が悪い。 「とりあえずゴルバットとマルノームでやるしかない……」 「どうしました?戦いの前に考え事かしら」 ナギがにこやかに語りかけてくる。 「やるしかない、やるしかないさ」 スネ夫はモンスターボールを構える。 「いきなさい、チルット!」 「ゴルバット、捻り潰せ!」 二人はポケモンを繰り出す。先攻はもちろんゴルバットだ。 「かみつく!」 ゴルバットがチルットに噛み付くが倒すには至らない。 「チルット、しんぴのまもりよ!」 「ちっ、チルットは捨て駒かよ」 スネ夫は舌打ちする。 「戦術、といっていただきたいわね」 ゴルバットに噛み付かれて戦闘不能になったチルットに代わり、ナギはトロピウスを繰り出す。 「ふ、ふん!そんなポケモンなんか恐くないさ!」 スネ夫がエアカッターを命令する。 風の刃がトロピウスを引き裂くが、なんとか耐えきった。 「勝負を急いでいるようですね」 正直、トロピウスでは分が悪いがナギは顔色を変えない。 「トロピウス、あまいかおりを!」 「ふん、もう一発エアカッターが当たれば終わりだよ」 スネ夫の言う通り、次のターンのエアカッターがトロピウスに止めを刺した。 「これで2体目、やっぱボクって強いな!」 そんなスネ夫にナギが語りかける。 「ポケモンバトルとはそんなに単純なものではありませんよ。レベル差をトレーナーの力で埋めることだってできるのですから……」 「次はこのポケモンです!」 ナギが出したのはペリッパー。 「ふん、またやっつけてやるよ!」 ゴルバットのエアカッターがペリッパーに命中する。 「ペリッパー、ちょうおんぱ!」 超音波がゴルバットを混乱させ、自らにダメージを与えてしまう。 「し、しまった!」 その間にいい傷薬でペリッパーの体力を回復させるナギ。 「ふん、そんな悪あがきを……」 混乱しているゴルバットだが、今の状況ならさして心配することはないだろう。 スネ夫は引き続きエアカッターを命令する。 「まもりなさい!」 運よくペリッパーのほうに放てたエアカッターも完全に防がれてしまった。 次のターンに自らを攻撃したゴルバットは、ペリッパーの翼で打たれてやられてしまう。 「そ、そんな……ゴルバットが」 「油断と満身があなたを敗北させたのですよ」 スネ夫はのび太との戦いを思い返す。 自分はグズだったのび太の成長ぶりに焦り、憤慨して我を忘れてしまった。 状態異常ポケモンの使い手としてこれは致命的だ。 「そうか、わかったよ。ボクがあいつらに負けたワケが……」 スネ夫の顔を見てナギがにっこりと微笑んだ。 その後、スネ夫は苦戦するもなんとか勝利した。 (チルタリスに対してジュカインのめざパドラゴンが役に立ったことはスネ夫の計算外だったが) ジムバッジを得てスネ夫は手持ちのポケモンを見つめる。 「対ジャイアンに特化しすぎちゃってたかな。ちょっと考えないと……」 スネ夫は自分の攻略ノートを見つめる。 草タイプ2体、虫タイプ2体、毒タイプ2体ではあまりにもバランスが悪すぎる。 この近辺でゲットできる有用な戦力は…… アブソルは出現率が低いので狙うのは得策ではない。 比較的ゲットしやすくて、即戦力になるポケモン。 「ん、こいつなら……」 コイツをゲットして、ヒワマキで…… スネ夫の脳がフル回転し、決断を下す。 「よし、まずはコイツをゲットしてやる」 スネ夫はいい釣り竿を持って120番道路に向かった。 木の実爺さんの家。 のび太達一行はここで一時の休息をしていた。 「やっぱりのび太くんは強いね」 「そりゃ僕はこの先の町からやってきたからさ!」 のび太は自慢げに語る。 「それよりもしずちゃんのマッスグマ達もすごいよ、あんなにたくさん道具を拾ってくるんだから」 のび太も旅中ではしずかのアイテムの力を借りている。 ふと疑問に思ったドラえもんはのび太に質問する。 「そういえばのび太くん、一個モンスターボール使ってないよね」 のび太は指摘されたボールを取り出す。 「これね、全然使えないポケモンなんだ」 ボールから出てきたのはヒンバス、みじめに床を跳ね回っている。 「こ、これは……なんか汚いね」 「まるでのび太さんみt……」 しずかがとんでもない毒を吐いたような気がしたが、のび太は気にせず続ける。 「ちょっとは使ってみたんだけど、全然技を覚えなくて……」 「……のび太さん、このポケモン私にくれない?」 しずかの提案にのび太は戸惑う。 こんな汚いポケモンをなぜしずかは欲しがるのだろう? さっぱり分からないが、とりあえずマッスグマの内一匹と交換することにする。 しずかはぶつぶつと「うつく……上げれ……ロスね」などと呟いていた。 ミナモシティ。 ジャイアンはこの町の片隅で隠れるように行動していた。 町に着いたジャイアンを待っていたのは手荒い歓迎だった。 「あのガキ、確か手配リストにあった……」 「そうだ、天気研究所の……」 町をぶらついていたアクア団員達に発見され、ジャイアンは追われる身となってしまう。 ミナモシティはアクア団のアジトがあることで有名な町だったのである。 「このままじゃやべえな……」 ミナモデパートの中で途方に暮れるジャイアン。 ゲームでは手持ちだけで余裕でアジトを潰せるだろうが、天気研究所のような事になってはマズい。 「誰か他の奴が来るまで待つわけにも行かないし……」 「剛田君、剛田君じゃないか!」 名前を呼ばれ不意に振り向くと、そこには見知った顔が立っていた。 「お前…出木杉じゃんか!」 出木杉はにこにことしながら再会の喜びを讃えあう。 「それにしてもお前がこんなところまで来ていたなんてな」 「ああ、カイナシティで潜水艦が奪われたんでここまでやってきたんだよ」 『そういえばそんなイベントがあったな』 出木杉はちゃんとゲームのシナリオのままに進めているようだ。 ジャイアンは今までの経緯をかくかくしかじかと説明する。 「……というわけで困ってたんだよ」 出木杉は少し考え込み、口を開いた。 「じゃあ、僕らでアクア団をやっつけよう!」 「でも出木杉、お前強いのか?」 その質問に出木杉は自らのモンスターボールを投げる。 「バシャーモ、フーディン、スターミー、それにピカチュウか……すげえな、お前!」 『お前のようなフルアタ馬鹿に分かるように編成したんだよ』 出木杉は心でそう思いながらポケモンをボールに戻す。 「よし、じゃあアクア団をぶっ飛ばしてやろうぜ!」 ガハハと笑いながら階段を下りていくジャイアン。 その様子を見ている出木杉のそばにイズミが現れた。 「あのガキ、調子にのって……」 「イズミさん、あの馬鹿に対する怒りは分かりますが、計画を忘れないように……」 冷水のような出木杉の言葉にイズミは思わず跪く。 「期待してますよ」 出木杉がイズミの額に唇を触れる。 イズミは顔を赤らめながら去っていった。 「まったく、プライドが無くなっても女は女だな」 出木杉はジャイアンの後を追った。 アクア団アジト。 「以外と攻めにくい場所にあるもんだな」 入り口が波乗りでしか入れないため侵入が難しい地形になっているのだ。 そう感心しているジャイアンの前を先行する出木杉が合図する。 『おっとと』 出木杉の指示は完璧で、敵の巡回ルートも完全に把握していた。 「すげえな出木杉!」 「結構やりこんだからね。けどここからは戦闘は避けられない。敵を瞬殺するつもりでいくよ」 二人は物陰から躍り出た。 気付いたアクア団員がサメハダーとグラエナを繰り出す。 「かみなりパンチ!」 出木杉のフーディンが矢のように飛び出し、サメハダーをパンチ一発で沈める。 「負けてられっか、バクーダ!かえんほうしゃっ!」 バクーダの吐く火炎がグラエナを焼く。 「どうだ、出木杉!…って」 ジャイアンは呆然とした。 このポケモン達の持ち主であるアクア団員が泡を吹いて倒れているのだ。 「バトルは終わったからね。ちょっと気絶してもらったよ」 「かみなりパンチかよ……すげえなそのフーディン」 「ああ、かなり鍛えてあるからね」 『ん?フーディンはかみなりパンチなんて覚えたっけ?』 ジャイアンの疑問をよそに、二人は次の部屋に向かった。 岐路で出木杉が提案する。 「とりあえず多数が侵入したと見せ掛けるように二手に別れよう」 「おうよ、じゃあ後で合流な!」 ジャイアンは奥の方に走っていく。 「さて、ボクも行動を開始しないと」 出木杉はジャイアンの向かった方向と逆に足を進める。 「なかなか手強いな……」 ジャイアンは巨大な機械のある部屋でアクア団員と睨み合いを続けていた。 ラグラージが濁流でズバットを押し流す。 「よし、これで最後だ!」 濁流に押し流され、アクア団員が貯水池に落とされる。 「ん……あれが潜水艦か!」 潜水艦の発着デッキでは出木杉がアクア団員と戦っている。 その間に潜水艦は徐々にその姿を沈めていった…… アジトの外。 「ちくしょう、逃がしちまった」 「剛田君、ここで逃げられてしまうのはゲームと同じじゃないか」 そういえばそうだ。 「なーんだ、安心した…」 安堵の言葉を述べるジャイアンの背後で爆発音がした。 アクア団アジトの岩山は数度の爆発音の後、入り口から砂煙が吹き出す。 「お、おい、こんなのゲームじゃ…なかったはず……」 『イズミがやってくれたようだ。そして僕の手の中には……』 出木杉の手にはマスターボールが握られていた。 ヒワマキシティ。 ヒワマキジムでのジム戦を終えたドラえもんとしずかは、のび太やナギも含めて四人で食事を取っていた。 「それにしても、シズカさんは強いわね」 ナギが感心する。 マッスグマ達のおかげで有り余る資金力を持っていたしずかはサーナイトに10万ボルト、マリルリに冷凍ビームを覚えさせていたのだ。 おかげで飛行タイプ対策は完璧、ジム戦も簡単に勝利することができた。 「ドラえもんさん、でしたか?貴方も強力なポケモンを持ってらっしゃったわね」 「いやぁ、えへへ」 ドラえもんはジム戦の前に120番道路でエアームドを育成中になんとアブソルをゲットしている。 ジム戦で勝利した際に得た燕返しの技マシンを使用して技にバリエーションを持たせてもみた。 「さて、今からどうしよう」 のび太の提案に皆が考え込む。 「ここからミナモの間だとサファリゾーンやおくりびやまがあるわね」 「じゃあ順番に回っていこうか。急ぐ旅でもなし」 ドラえもんの決定に皆が頷く。 「じゃあ行ってきます、ナギさん」 「頑張ってね、ノビタくん」 ナギはノビタの頭をそっと抱き寄せた。 そんなナギに黒い影が忍び寄っていることを皆は知らない。 注:鬼畜出木杉 ヒワマキジム。 のび太達を見送ったナギは一人の少年の訪問を受けていた。 「……以上がこのヒワマキジムでのジム戦ルールです」 ナギが一通り説明すると、少年は手を挙げる。 「質問ですが、ジムリーダー側からの棄権はないんですよね?」 その質問の意図が分からないが、とりあえずナギは答える。 「ええ、体調管理もトレーナーの務めですから、故意に傷つけられでもしない限りは……」 その質問を聞いて少年が手を差し伸べる。 「では、よろしくお願いします」 「よろしくお願いします、えっと……デキスギさん」 二人は対面し、軽く一礼をするとポケモンを繰り出した。 「いきなさい、チルット!」 チルットを出したナギに対し、出木杉が出したのは…… 「か、カビゴンですって……」 ホウエンには生息しないポケモンにナギが驚く。 『この子、カビゴンを持っているなんて……いったいどうやって?』 チルットの乱れ突きが炸裂するが、ほとんどダメージが通らない。 しかもカビゴンは丸くなり、さらに防御力を上げた。 「このカビゴン、強すぎる!」 しかもカビゴンは食べ残しを口に入れ、体力は完全回復してしまった。 注:鬼畜出木杉 出木杉が説明する。 「このカビゴン、レベルは高いんですが攻撃技は持ってないんですよ。戦いは長引きそうですね」 ナギは困惑する。 攻撃技を持たないポケモンでどうやって勝つというのだろう? 『相手のペースに惑わされてはいけないわ、できることをしなければ……』 ナギはチルットに歌わせ、カビゴンを眠らせる。 その間に少しでもダメージを蓄積させておこうとしたのだ。 だがカビゴンの持つ食べ残しの効果でまるで意味がない。 「あ、あなた!このようなふざけた戦い方など……ひっ!」 ナギの抗議相手である出木杉は一人の女性の胸に顔を埋めている。 「バトル中に、な、何をしているのです!」 出木杉は面倒そうに答える。 「だって、ん…時間かかりそうでしょ。これくらいいいだろ」 胸を差し出す女も答える。 「ナギ、別にいいでしょ?戦いを放棄したわけじゃないんだか、んああっ!」 出木杉の愛撫に敏感に反応した女性、ナギはその顔に見覚えがあった。 「あ、アスナ、さん……貴女いったい……」 アスナはその問いに答えず、ただ出木杉に身を委ねている。 「とにかく、今すぐそんな事はやめなさい!」 「けど戦闘中に女性の胸を揉んではいけないというルールはなかったですよね」 注:鬼畜出木杉 臆面もなくそんな屁理屈を言ってのける出木杉にナギは恐怖した。 『この子おかしい、何かおかしいわ!』 逃げようとするナギに出木杉が釘を刺す。 「まさかジムリーダーたるものが戦いを放棄するなんて事はないですよね」 ナギの足が止まる。確かに彼の破廉恥行為以外は普通のバトルだ。 相手のトレーナーに手を出したわけでもない。 「バトル自体は普通にするんですから、それから逃げるなんて事はあっちゃいけないですよねぇ」 「そ、そうだけど……」 そうか、そのために最初の質問をしたのか。 ナギにそれが分かっても、すでに遅かった。 ナギのチルットは悪あがきで自らが倒れるまで懸命に戦った。 その間、ナギはアスナの絶頂の叫びを4度も聞いている。 『やめて、やめて、そんな事は……』 目の前の出来事にすっかり現実感をなくしたナギは、それでも2体目のトロピウスを繰り出す。 「まだ2体目……」 そう、ナギは全ての手持ちが悪あがきで自滅するまであの二人の情事を見せ付けられるのだ。 「え、二人……じゃない……」 そう、出木杉の股の間にもう一人。 「つ、ツツジさん……いやあああああっ!」 注:鬼畜出木杉 それから数時間。 出木杉の体を二人の女性がただ悦ばせる。 カビゴンは技ポイントが尽きる寸前に次のカビゴンに入れ替えられ、ナギのポケモンは一度も攻撃を受けることがなかった。 「あ、ああっ、私、私……バトル中、なのに…んんっ!」 ナギは知らず知らずのうちに自らの胸元に手を差し入れていた。 アスナが荒い息を突きながら声をかける。 「ナギ、もう我慢できないんでしょ?私たちのところに来なさいよ……」 ナギは自分がいる場所が現実か夢か、そんなことすら分からなくなっていた。 ただわかるのは、自らの胸を自分で慰めていることだけ。 「いらっしゃい」 ツツジの声にふらふらと立ち上がるナギ。 『私、もう……』 魂の抜けたようなナギの胸に出木杉が顔を埋める。 「いっしょに、いこうか……」 自分だけでは得られないその快感にナギは身を委ねた。 その日からヒワマキの空を飛ぶナギは見られなくなった。 送り火山。 のび太達はしずかにせがまれてこの山にやってきた。 「確かここって幽霊が出るんだったよね……」 のび太はガクガクと震えながらドラえもんの後を付いて回っている。 『ジュペッタを手持ちにしてるのに、なんでビビッてんだろ?』 ドラえもんはそう思いながらも、久しぶりにのび太に頼られてまんざらでもなかった。 「あっちよ、あっちだわ!」 しずかが光の差すほうを指差す。 「やっと行きやがったか、あいつら。3人揃ってうだうだと……」 スネ夫はひとり、ここで捜し物をしていた。 「うーん、ジャイアンに取られてなけりゃいいけど……」 そんなスネ夫の前にヨマワルが現れる。 「ちっ、またかよ。ゴルバット!」 ゴルバットが現れ、怪しい光で混乱させる。 ヨマワルは自らとゴルバットの攻撃を受け、掻き消えるように消えてしまった。 「ちっ、ゴーストタイプだからゲットすりゃよかったかな?」 残念がるスネ夫の前でゴルバットの様子が変わっていく。 「こ……これは、まさか!」 光とともに現われたのは4枚羽のコウモリ、クロバットだ。 「や、やった!ついに進化したぞっ!」 スネ夫は喜び勇んでさらに奥に踏み入っていった。 送り火山、外観。 しずかは草むらに分け入って何かを探している。 「なかなか見つからないわね……ドラちゃん、のび太さん、手伝っ…」 「ああ、なんだか癒されるね。ドラえもん」 「うん、癒されるね。のび太くん」 二人は野生のチリーンの前で骨抜きになっている。 「仕方ないわね、私だけで探しましょ」 しずかは草むらのさらに奥に分け入る。 「ん、あれね!」 草むらから赤い尻尾が出ている。 「行きなさい、マッスグマ!」 その声に驚いた赤い尻尾の持ち主が姿を現す。 「やっぱりかわいいわ、ロコンちゃん……マッスグマ、ほしがる!」 マッスグマは最弱の攻撃でロコンを攻撃する。 レベルの差もあり、ロコンはその一撃で体力を大きく削る。 「ごめんなさいね、ハイパーボール!」 しずかの投げたボールがロコンを捕らえる。 「やったわ、ロコンちゃんゲットよ!見て、のび太さん!」 振り向くと、相変わらず二人はチリーンに癒されていた。 「しずちゃんはロコン、ドラえもんはチリーンかぁ」 送り火山でゲットした二人をのび太は羨ましそうに見ている。 そんなのび太を尻目に、しずかはロコンに飴を食べさせ、ドラえもんはただ癒されていた。 次へ
https://w.atwiki.jp/nobita_in_pokemon/pages/32.html
「くらえ、バクオングのハイパーボイス!」 「うわ、やられた!やっぱジャイアン強いや…」 ここはいつもの空き地。 土管のうえではジャイアンとスネ夫がDSを突き合わせて対戦している。 のび太はそれを恨めしそうに見ているしかなかった。 「のび太、お前もポケモン買えよ」 「ジャイアン、のび太はDSすら持ってないんだよ。ポケモンだけ買っても意味ないっしょ」 「わはは!そりゃそうだな!」 「う、うええええ~ん!」 いつもの調子で言葉責めを受け、のび太は泣きながらその場を後にした。 「ドラえもぉぉぉぉん!」 自分の部屋に入るなり、いつものごとくのび太はドラえもんに泣き付いた。 「ドラえもん、DS出してよ」 「無理無理」 ドラえもんは『またか』といった顔をする。 大方ジャイアン達にDSを自慢されたんだろう、こんなくだらない事で自慢のひみつ道具を使う気にはなれなかった。 のび太もそこは承知の上である。知恵はないが天才的な屁理屈を展開する。 「ドラえもんはボクがDSを持ってないことで仲間外れにされても平気なんだ……」 「いや、そういうことじゃなくて」 「ああ!皆はポケモンの対戦をしているのに、ボクだけ孤立して、いずれは自殺なんかも考えてしまうかもしれない!」 「それはないと思うけど……」 「ドラえもんはボクに死ねというんだね!」 のび太のいつもの調子にドラえもんはやれやれといった顔をする。 「わかったわかった、要するに皆でポケモンをやりたいんだね。」 のび太はしめしめといった顔をしながら、ドラえもんに感謝の言葉を述べる。 「じゃあ一緒にポケモンをやりたい友達をつれてきなよ」 ドラえもんの発言の意図がわからなかったが、のび太がいくら聞いても「後で説明する」の一点張り。 のび太は仕方なく家を出る。 「やっぱりしずちゃんとやりたいよな!」 のび太はしずかの家に向かった。 「しずちゃーん!」 「あら、のび太さん。どうしたの?」 玄関先でのび太は斯く斯く然々と説明した。 「ポケモンはやったことないけど、なにか面白そうね」 「そうでしょ!いこいこ!」 「出木杉さーん、のび太さんがポケモンしようって!」 奥から出てきたのは憎き恋敵、出木杉だ。おそらく二人で勉強していたのだろう。 出木杉の同行を断る理由も見つからず、のび太は仕方なく了承した。 のび太の家。 そこにはドラえもんと、招かれざる客が二人座っていた。 「ジ、ジャイアン!スネ夫!」 「いよう、なんか面白い事やるらしいじゃん」 ジェスチャーで謝罪を表明しているドラえもんにうんざりしながら、のび太は腰を下ろした。 「では……もしもボックス~!」 四次元ポケットから出したのは、いつもより大きなもしもボックス。 「ささ、みんな入って入って!」 大型のもしもボックスだが、さすがに六人だと窮屈である。 ドラえもんは受話器を取り、叫んだ。 「もしもここがポケモンのゲーム世界だったら!」 ボックスを出た一同は、のび太の部屋から見える世界が一変したのがすぐわかった。 「よし、ここから皆はライバル同士!最初にチャンピオンになった人が勝ちだよ」 「おおーっ!」 ここから皆の旅が始まったのだ。 家を出ると、そこはのどかな田舎町といった雰囲気だ。 どうやら「ミシロタウン」というらしい。 その名を聞いた瞬間、出木杉、ジャイアン、スネ夫はなにやら必死に考えを巡らせはじめたようだ。 「じゃあ皆で研究所にいこうか」 ドラえもんの先導でこの町でひときわ目立つ建物に向かうことになった。 「いやー、今オダマキ博士は留守でね。ジョギングに行ってるんじゃないかな?」 オダマキポケモン研究所の所員は申し訳なさそうに答えた。 「そうですか…じゃあ待たせてもらおっか」 「あれ?ジャイアン達がいない!」 確かにこの場にいるのはドラえもん、のび太、しずかだけだ。 「どうしたのかしら、もしかして迷子にでもなったら……」 しずかも三人を心配している。しかし、その心配はすぐに解消された。 通りの向こうからいなくなっていた三人と、恰幅のいい大人が連れ添って歩いてきたからだ。 「みんな!無事でよかった~」 のび太の安堵の言葉とは裏腹に、ジャイアンやスネ夫はニヤニヤと笑っている。 「いやぁ、この子達に助けられちゃってね。っと、自己紹介がまだだったな。私がここの所長のオダマキです」 ジャイアン達を先導してきた大人は、皆を研究所に迎え入れた。 オダマキ博士から一通りポケモントレーナーの説明を受けると、最初のパートナーとなるポケモンの選択が始まる。 しかし… 「うーん、私を助けるときに彼らがポケモンを使っちゃったからね。懐いてるようだし、この三匹は君たちに託そう」 「えええーーっ!」 驚くのび太達を尻目に、ジャイアンはミズゴロー、スネ夫はキモリ、出木杉はアチャモを受け取る。 「よし、ポケモンも貰ったし、さっさと行くぞ!」 「待ってよジャイアン!」 「ごめん!のび太くん、しずかちゃん…」 そう、彼らはゲームのシナリオを分かっているのでフラグを立てて優先的にポケモンを入手したのだ。 失意のドラえもん達にオダマキの追い打ちがかかる。 「あー、君たちに渡すポケモンがほとんど残っていないんだが……二、三日待ってくれればなんとか…」 「ええっ!そんなぁ…」 残念ながらのび太はゲーム世界でも負け組になってしまった。 ドラえもん達三人は仕方なく研究所を後にする。 ジャイアン達に先を越されてやることもないので、ドラえもん達はとなり町に向かうことにした。 ショップはとなり町にしかないので、冒険の準備くらいはしておこうと考えたのだ。 「のび太さん、大丈夫?」 ポケモンをやった事がないしずかはいたって平静だ。 その落ち着き具合がのび太をかろうじて元気づける。 「だ、大丈夫だよしずちゃん」 よくよく考えてみれば、しずかと二人で旅ができるのだ。こんなにうれしいことはない。 「よし、くよくよしても仕方がない!頑張るぞ!」 のび太は意気揚揚と草むらに踏みいった。 「あ、のび太くん草むらは…」 ドラえもんの警告もすでに遅し、のび太の眼前に現われたのは… ぐるるるるる… 「い、犬っ、犬っ!」 のび太の脳裏に下校時の忌まわしい記憶が甦る。いつも自分を追い掛けていた猛犬と同じ目をしている。 「のび太くん!」 ドラえもんは必死に四次元ポケットに手を入れる。 「あれでもない、これでもない…あった!」 ドラえもんのポケットから出されたのは網袋に入ったお菓子。 「桃太郎印のきびだんご~!」 のび太に噛み付こうと開けた犬の口にドラえもんはきび団子を投げ入れた。 瞬時に大人しくなる犬。 「た、助かった…」 のび太は腰を抜かして立ち上がれない。 しずかはポケモン図鑑で犬の事を調べる。 「このワンちゃん、ポチエナっていうのね」 のび太達は自分達のポケモンを桃太郎印のきびだんごを使って確保することにした。 先に捕まえたポチエナはドラえもんのものとなり、しずかとのび太は草むらでポケモンを捜索する。 「やったわ、ラルトスをゲットよ!」 しずかはすでにジグザクマとラルトスを入手している。 「いいなぁしずちゃん…」 最初の遭遇以来、のび太の目の前にはポケモンが現われない。 そんなこんなでとなり町、コトキタウンに着いてしまった。 「あーあ、なんでボクの前にはポケモンが出てこないんだろ」 しずかとドラえもんは捕まえたポケモンを収めるモンスターボールを買いにいっている。 自分だけ置いていかれている状況に我慢ならなくなったのび太は、ひとりで103番道路へ向かった。 「ポケモン、ポケモン、強くてかっこいいボクのポケモン…」 草むらを書き分けながら奥へ進んでいく。 不意に足元の地面がなくなった。 「うわぁっ!」 どぼーーん!! 草むらを抜けると、そこは川だった。 「だずげで、おぶっ、だずげごぼぉっ!」 カナヅチののび太の姿はすぐに水面から消え、その体はゆっくりと沈んでいった。 「のび太くーーん!」 「のび太さーーん!」 ドラえもんとしずかはかれこれ一時間以上のび太を探し回っている。 しかしその姿は見つからない。 「のび太くん、いったいどこに行っちゃったんだ……」 ドラえもんはただ途方にくれるしかなかった。 「うう……ボクは確か……」 のび太は気が付くと、ゆっくりと体を起こした。 自分は川に落ち、溺れていたはずだ。 辺りを見回すと、川岸に一匹のポケモンがいた。 2本の長い触手の先に桃太郎印のきびだんごを掴んでいる。 「君が助けてくれたのかい、ありがとう!ありがとう!」 のび太は分かっていないが、このポケモンはメノクラゲ。しかも珍種の色違いだ。 そして、この場所は103番道路対岸である。 そう、のび太はたった一人ショートカットしてしまったのだ。 ドラえもんとしずかはのび太の捜索をあきらめ、仕方なくトウカシティに向け出発した。 のび太がどこにいるかは分からないが、ゲームの世界である以上どこかのイベントで出会うはず、そう思ったからだ。 「がんばれ、ポチエナ!」 ドラえもんは野生のジグザグマと相対していた。 ジグザグマに鳴き声を使われ、思うように力を発揮できないポチエナ。 ジグザグマの体当たりがヒットし、ポチエナはよろよろになっている。 「あぶなーい!」 思わずドラえもんはポケットからショックガンを取出し、ジグザクマ目がけて光線を放っていた。 ジグザクマを撃退したドラえもんは、大事そうにモンスターボールにポチエナを収めた。 しずかはいたって順調だった。 「かわいいから」という理由でゲットしたジグザクマ3体は全て物拾いの特性を持っており、その道具を使ってラルトスの育成を進めていた。 トウカシティに着く頃には二人はのび太のことをすっかり忘れていた…… トウカの森。 出木杉はここでジャイアン達と別れた。 ここは炎タイプであるアチャモの育成場所としては申し分ない。 ここでやることは二つ、アチャモの育成とキノココのゲットだ。 「剛田くん、骨川くん、僕はただ遊ぶためにここに来たわけじゃないんだ」 そう、出木杉の目的はしずかと親密になること。 ここで苦戦するしずかを強力な出木杉のポケモンが助ける。 「きっとしずかちゃんは僕を頼ってくれる……」 のび太は途方に暮れていた。 110番道路はラクライやプラスル、マイナンなど、電気タイプのポケモンが多発する地帯なのだ。 幸い電気技を使ってくることはないが、メノクラゲは静電気によってすでに麻痺していてほとんど動けない。 「ドラえもん、助けてよ……」 とぼとぼと歩くのび太の前に現れたのは一匹の不気味な緑のポケモン。 「な、なんだこいつ…」 そのポケモンはのび太目がけガスを噴射した。 「うわっ!げほげほっ!」 のび太の呼吸が阻害され、口からは泡が吹きでる。 それはゴクリンの毒ガス。 のび太はそれを全身に浴びてしまったのだ。 そのまま、のび太は目の前が真っ暗になった。 「うーん…」 のび太が目を覚ましたところは広い和室だった。 「気が付いたかね?」 体を起こすと、その声の主が茶の間に座っていた。 「私はカラクリ大王。君が草むらで倒れていたのでうちに連れて来たんだが……」 どうやらこの親父に助けられたようだ。 「あ、ありがとうございます」 「いやいや、気にしなくていいよ。それより君のポケモンだが、どうやらモンスターボールに入っていないようだね」 「そ、そうだけど…」 きびだんごで仲間にしたが、モンスターボールは買っていない。 「ワシのモンスターボールをあげるよ。すでに入れておいたから受け取ってくれたまえ」 「あ、ありがとうございます!」 思わぬ幸運に歓喜したのび太だったが、すぐにその顔が曇る。 「あのー、ボールが2個あるんだけど…」 「あれ?君のそばで麻痺していたメノクラゲと、君の下敷きになっていたゴクリンなんだが……」 なんと毒ガスをくらって倒れた時に偶然ゴクリンの上に倒れこんだようだ。 不幸なのか幸運なのか分からないが、とにかくゴクリンをゲットしたのび太だった。 「ふふっ、こんなものかな」 出木杉はトウカの森でアチャモをワカシャモに進化するくらい育成していた。 ゲットしたキノココも順調に成長している。 これで後は、ゲームのことを何も知らないしずかが苦戦するところに颯爽と登場すればいい。 「さて、近くの虫取り少年でもいたぶるかな」 虫取り少年はたいして小遣いを持っていないが、手持ちの資金は少しでも増やしたほうがいいだろう。 「あら、出木杉さん」 「久しぶりー」 「し、しずかちゃんとドラえもん?」 出木杉が倒そうとしていた虫取り少年はすでに倒され、その小遣いはしずかが受け取っていた。 『まさか、ポケモンの事を何も知らないしずかちゃんが?』 いや、勝てるはずがない。 そうだ、ドラえもんが何か道具を使ってしずかちゃんを助けたんだ。 自分の推測に少し安堵した出木杉は、別プランを実行することにした。 「しずかちゃん、僕とバトルしないかい?」 「え、ええ。いいわよ出木杉さん」 しずかは戸惑いながらもそれを了承した。 『しずかちゃんに僕の実力を見せ付け、そして尊敬させてやる!』 出木杉はキノココのボールを投げた。 『まずは様子見だ』 キノココはメガドレインややどりぎの種を覚えている。 しずかの手持ちポケモンを確認しつつ戦うにはもってこいだ。 しかし出木杉の狙いはいきなり外れることになる。 「お願い、わたしのキルリア!」 しずかが繰り出したのは何とキルリアだった。 「キルリアだって!」 「キルリア、ねんりきよ!」 キルリアの目が怪しく光り、キノココは見えない力に吹き飛ばされる。 それっきりキノココは動かなくなった。 「な……」 ラルトスからキルリアへの進化レベルは20、キノココ程度では勝ち目がない。 「くっ…次はワカシャモだ!」 しかもアチャモからワカシャモに進化してしまったので、ワカシャモには格闘属性が付いてしまっている。 『にどげりは効かない、となると…』 「ワカシャモ、つつく攻撃!」 ワカシャモのつつくはしずかのキルリアにヒットし、その体力を大幅に削る。 「キルリア、すぐ治療してあげるわ!」 しずかはキルリアに傷薬を使っている。 しかしこの状況ではたかがHP20を回復したところで結果は見えている。 「まだまだ戦いに慣れていないようだね。とどめだ!」 しかしワカシャモは出木杉の命令も聞かずに、小刻みに震えたままその場を動けないでいる。 「ま、麻痺しているだって?」 出木杉脳がフル回転し、ある結論を叩きだす。 キノココの特性である胞子がキルリアにトレースされていたのだ。 「キルリア、ねんりきよ!」 ゲームを知らないしずかでも、当然キルリア唯一の攻撃技を使ってくる。 ワカシャモは効果抜群の念力をくらい、倒れた。 「そんな、馬鹿な……」 出木杉は敗北に打ちのめされ、膝を落とした。 その上から同情するように見つめるしずか。 「た、楽しかったわ、出木杉さん」 「しずかちゃん、これ勝利報酬だよ!」 いつの間にかやってきたドラえもんが勝手に出木杉のポケットを漁り、有り金を全部しずかに渡す。 「出木杉さんに悪いわ……少し残しておくわね」 しずかの親切心で出木杉の目の前に500円玉を残し、しずかとドラえもんは去っていった。 「くそっ!僕は出木杉だぞ!畜生、畜生っ!」 誰もいなくなった森のなかで、出木杉はひたすた地を殴り続けていた。 「あのメスブタとポンコツめ…いつか、いつか必ず復讐してやる!」 出木杉の心には暗い影が落ちていた。 「はひぃ、はひぃっ…」 のび太はひたすら走っていた。 カラクリ屋敷を出たのび太だったが、ポケモンバトルの腕前は相変わらず散々。 他のトレーナーと戦いたくないので伏し目がちにコソコソと隠れ進むしかなかった。 『このままでは強くなれない』 キンセツシティに着いたのび太は、町から出ることもできずに途方に暮れていたのだ。 しかしのび太を天は見離さなかった。 「ポケモン育て屋」 そう、戦わなくてもポケモンを育てることのできる唯一の手段があったのだ。 のび太はメノクラゲとゴクリンを育て屋に預け、育成のためにキンセツシティでひたすらジョギングをしているのだ。 「も、もうダメ、走れな~い」 元々運動が苦手なのび太だ、ジョギングも長くは続かない。 しかし頼るべきドラえもんとはぐれてしまった今、のび太にできる事は走る事だけだった。 「助けて……助けてよドラえもん……」 カナズミシティ。 ジャイアンとスネ夫はダブルバトル主体で戦い、カナズミに一番乗りしていた。 「スネ夫~ここでは何するんだっけ?」 「秘伝マシンをゲットしてカナズミジムに挑戦しないと。あそこは岩タイプ主体だから僕らなら余裕だね!」 スネ夫はメモ帳をめくりながら答えた。 「じゃあまずは秘伝マシン取りにいこうぜ!」 「あ、ジャイアン……僕はちょっと買い物してくるからジムで合流しようよ!」 ジャイアンは意気揚揚と居合い斬り親父の家に向かっていった。 スネ夫は一人、ショップにも向かわずに町を歩く。 「ふん、脳みそが筋肉でできているゴリラはおだてれば簡単にパシリになるな」 スネ夫が向かっているのはトレーナーズスクール。 「確かここには先制の爪をくれる先生がいたはずだ。」 そう、スネ夫はジャイアンの腰巾着をしながらちゃっかりアイテムを回収しているのである。 「キモリにタネマシンガンも覚えさせたし、これでリーフブレードを覚えるまでは何とかなるだろ」 ジャイアンの様子はキャモメに追わせてある。 馬鹿な行動をしようとしたらすぐ駆け付けて止めないと。 「ゴリラの世話も大変だよ」 スネ夫はいやらしい笑みを浮かべた。 カナズミジムで合流したジャイアンとスネ夫は、いよいよジムに挑戦することになった。 「たーのもー!」 ジャイアンの怒声が響く。 その奥にいたのはジムリーダー・ツツジだ。 「カナズミジムにようこ…」 「バッジよこせ!」 「対戦方式はシング…」 「うるせえ!バッジよこせよ!」 相も変わらぬ剛田理論でジムリーダーすら圧倒しているジャイアン。 有無を言わさず、いきなりミズゴロウを繰り出した。 「い、イシツブテっ!」 ツツジは怯えながらもイシツブテのボールを投げる。 「ミズゴロウ、みずでっぽうだ!」 水鉄砲の容赦ない水撃がイシツブテを襲う。 「ははん、ざまぁみろい!」 戦いは一方的だった。 ツツジの出すポケモンは水タイプのミズゴロウになすずべもなく、切り札のノズパズもいいところを見せる事無く轟沈。 ジム戦はジャイアンの圧倒的勝利で幕を閉じた。 「やった!俺様のミズゴロウが進化するぜ!」 ジャイアンのミズゴロウはヌマクローに進化を遂げたのだ。 「やったぜスネ夫!って何でお前のキモリも進化してるんだ?」 スネ夫の横にいたキモリもすっかり姿が変わっている。 「ジャイアンのかっこよさにビックリして進化しちゃったみたい」 嘘である。 スネ夫はジャイアンのバトル時にこっそりキモリを出しておいて経験値を半分いただいていたのだ、まさにコバンザメ。 フラワーショップ「サン・トウカ」 そこは三人の姉妹が経営する小さな花屋である。 世界を花いっぱいにする夢を語る長女。 じょうろでの水やりをかかさない次女。 そして旅人に種を配り姉の夢を実現させたい三女。 ある日のこと。 一人の美少年が店にやってきた。 彼は一通り店内を見渡し、長女にこう聞いたのだ。 「女の子と青いタヌキの旅人を知りませんか?」 長女はつい先日この店で仲良くなった可愛らしい女の子の事を思い出した。 この少年と知り合いなのだろうか。確かにお似合いのカップルである。 女の子の名前は確か… 「シズカちゃん…かしら」 その瞬間、少年の顔が豹変した。 「しずか、しずか、しずかしずかしずかしずかっ!」 少年のモンスターボールからキノココが出てくる。 「しびれごなだっっ!」 店内にしびれごなが充満し、三姉妹の自由を奪う。 「あのメスブタを辱める前に、まずはお前らで実験してやる!」 少年…出木杉英才は長女の体に手をかけ、布切れを引き裂いた。 その様子を見ることしかできない妹たち。瞬間的に悟り、絶望した。 「姉の次は私たちだ」と。 その日からサン・トウカは店を開けていない。 ドラえもんとしずかはカナズミシティに来ていた。 到着当日、ドラえもんはのび太の捜索を行い、しずかはトレーナーズスクールでポケモンの基礎を学んだ。 その夜、ポケモンセンター。 「やっぱりのび太くんはいないみたい」 「のび太さん、大丈夫かしら」 心配そうにするしずかにドラえもんが明日の予定を提案する。 「明日はカナズミジムに行ってみるよ。確かここのジムバッジをもらわないと先に進めないはずだから…」 「ここから先に行ったかどうか分かるのね?」 手がかりが得られるかは分からない。しかしやれることはやっておこう。 翌日、カナズミジム。 「こんにちはー!」 二人がジムに入ると、そこには一人の少女がいた。 「こんにちは、私はここのジムリーダーのツツジと申します」 「私、しずかといいます。」 「あらあら、かわいい挑戦者ね」 いつのまにか挑戦者扱いされ、話の流れがジム戦になっていく。 「あのー、実は聞きたいことが…」 「ジム戦が終わってからにいたしましょう」 しずかの問い掛けもあっさりかわされ、ジム戦が開始されてしまった。 済し崩し的に始まってしまったツツジとしずかのジム戦。 「イシツブテ、お願いします」 「ジグザグマ、頑張って!」 ツツジはイシツブテ、しずかはジグザグマを繰り出した。 『この子素人かしら。岩タイプ相手にノーマルポケモンを出すなんて』 ツツジは疑問を抱きつつも戦いに集中する。 「すなかけ!」 しずかのジグザグマはイシツブテに砂をかける。 「すなかけの一回や二回……イシツブテ、いわおとし!」 岩をぶつけられたジグザグマは戦闘不能になってしまった。 『育て方も甘い?やっぱり素人かしら』 しかししずかはツツジの予想をはるかに超えた戦術を使っていたのだ。 しずかは次々にジグザグマを繰り出し、砂かけばかりを使ってきたのだ。 「まさか、あなた……」 ツツジはその戦術を理解した。 ジムリーダーがポケモンの入れ替えが不可能なことに目を付けたしずかは、最初の一匹に砂かけを使い続けたのだ。 そして、最後に出てきたキルリアは…… 「キルリア、めいそう!」 敵の攻撃にも当たりにくい安全な状況で限界まで瞑想を積んだキルリアは一匹、また一匹とツツジのポケモンを倒していった。 「完敗だわ、しずかさん」 ツツジは勝者であるしずかにバッジを進呈する。 「ドラちゃんはジム戦しないの?」 「いやー、ボクはまだポチエナ一匹しか捕まえてないし……」 それにポチエナは過保護すぎるドラえもんの手助けのせいで全くレベルが上がっていない。 「え?この動物ってポケモンじゃないの?」 ツツジが驚きの声をあげる。 「ボクはポケモンなんかじゃ……」 と、ここまで声に出した時点でドラえもんは考えた。 かわいいポチエナを戦わせたくない。のび太の保護者代わりのドラえもんの悲しい性である。 「ボクはトレーナー兼ポケモンのドラえもんだ!」 その後、ドラえもんには悲惨な運命が待ち受けていた。 何度も岩をぶつけられ、ノズパズに体当たりをくらいながらも、最後はコエカタマリンの一撃で勝利したのだ。 「むぎゅ~」 「ドラちゃん、大丈夫?」 「だ、大丈夫大丈夫……」 結局ツツジからはのび太の有力情報を聞き出すことはできなかった。 次へ
https://w.atwiki.jp/nobita_in_pokemon/pages/34.html
次へ 《インターミッション》 ドラミです。 今お兄ちゃんやのび太さん達がどうなっているのか、おさらいしてみますね。 のび太さんは今キンセツシティ付近でお兄ちゃんやしずかさんを待ちながらジョギング中。 103番道路の川を越えちゃったせいで本来のルートを大幅にショートカットしちゃったわね。 手持ちポケモンは色違いメノクラゲLV29とスネ夫さんと無理矢理交換させられたナマケロ。 ナマケロは育て屋でかなり成長してるらしいわ。 お兄ちゃんとしずかさんはゲームとほとんど同じルートを通って今はムロタウン。 お兄ちゃんはそこで大怪我しちゃってポケモンセンターで療養中。 お兄ちゃんの手持ちはポチエナLV4。今はしずかさんが借りているわ。 しずかさんの手持ちはキルリアLV24、ジグザグマLV18、ジグザグマLV17、ジグザグマLV17、ジグザグマLV16、ジグザグマLV6 物拾いジグザグマが拾ってくる豊富なアイテムは旅の助けになっているわ。 スネ夫さんと剛さんは煙突山、次はフエンタウンに向かうらしいわ。。 今のところトップグループ、バッジも順調に獲得しているわね。 剛さんは気付いてないみたいだけど、スネ夫さんはかなりセコいやり方で剛さん以上に戦力をアップしてるみたい。 剛さんの手持ちはヌマクローLV26、スネ夫さんと交換したキャモメLV20、ココドラLV24。 ココドラを大切に育ててるようね。 スネ夫さんの手持ちはジュプトルLV25、ゴルバットLV27、ツチニンLV19、のび太さんと交換したマルノームLV26。 剛さんよりかなり戦力が高いわね。ツチニンが進化すればさらに戦力アップするわ。 そして出木杉さん。 トウカの森でしずかさんに完敗してから人が変わってしまったわ。 カナズミシティで見かけられたのを最後に消息は不明。 彼は今後どうなっちゃうのかしら…… 手持ちはバシャーモLV48、キノココLV22。 じゃあ私は未来に帰るわ、じゃあね! キンセツシティ。 のび太はただ途方に暮れていた。 「なんか全然強くなってる気がしないなぁ。しかもこいつのせいで恥をかきっぱなしだよ…」 のび太はナマケロを見ながらため息を吐いた。 さかのぼる事半日前、育て屋からナマケロを引き取ったのび太。 「ノビタさんのナマケロ……名前は「のびた」?ブフーッ!www」 育て屋のばあさんは笑いすぎて救急車で運ばれるし、せっかく引き取ったこのナマケロといったら全然動かない。 しかもあくびをしたり、物忘れが激しかったり、事あるごとに怠けている。 「ふう、勝った…」 ナマケロの力を借りる事無く、メノクラゲのみでトレーナー戦を勝利したのび太。 一応ナマケロも出してはいるが、ほとんど戦力になっていない。 勝利報酬を受け取りながら考え込むのび太。 「メノクラゲが進化するまで戦うしかない……って、なんだ?」 ナマケロの様子がおかしい。 その姿は徐々に変わっていき… 「な、ナマケロが進化したの?」 のび太、おめでとう!ナマケロはヤルキモノに進化したのだ! 「つ、強そう……やっと戦ってくれるんだね!」 ヤルキモノの強さはかなりのものだった。 技はナマケロのものを受け継いでいるが、唯一の打撃技の騙し討ちは次々とポケモンを撃破していく。 「すごいや、ボクのヤルキモノ!」 勢いに乗ってキンセツの東のトレーナーも撃破していく。 最後に対戦するのはギタリストのテリー。 ノーマルや悪の攻撃が効きにくいコイルの使い手だが、レベルの高さに任せてヤルキモノで力押しする。 そして…… 「やった、勝ったぞ!わーいわーい!」 のび太が飛び上がって喜ぶその横ではヤルキモノの体が大きくなっていく。 ナマケロの引き取り時のレベルは34、レベル35でヤルキモノに進化。 ということは… おめでとう!ヤルキモノはケッキングに進化した! いきなり巨大化したので、横にいたのび太は勢い良く体を押され、そのまますぐ横の川に落ちてしまった。 「かばごぼ、だずげごぼぼ…」 カナヅチののび太はそのまま川の底に沈んでいった。 「うーん、ここは……」 「大丈夫かい?」 釣り人がのび太を抱き起こす。 「偶然君が釣り針にひっかかってね。ボクの持っていたのがいい釣り竿だったから折れずに助けることができたよ」 ホエルコすら釣り上げるいい釣り竿、人間くらいではびくともしないのだ。 「ありがとうございます、あなたは命の恩人です!」 感激のあまり釣り人の手を握ろうとしたとき、のび太は手に持ったケッキングのボールに気付いた。 中にケッキングは入っていないようだ。 「戻れ!」 すると川の対岸から光がやってきてボールに収まった。 「ま、まさか……おじさん、キンセツシティはどっち!?」 釣り人が指差したのは川の向こう。 「そ、そんなぁ~~」 のび太は再び望まぬショートカットをしてしまった。 しかものび太はもっと重大なことに気付いていない。 ここから先ヒマワキシティまではかなり長い道程であり、それまでポケモンセンターは存在しない。 ドラえもん達との連絡もとれないのだ。 ショックを受けて崩れ落ちるのび太に釣り人は声をかける。 「いい釣り竿、いります?」 この日、のび太は初めての野宿をした。 近くになっていたオボンの実を食べて飢えを凌ぐ。 「さ、寒いや……どうしよう」 寒さと孤独に耐えかねてケッキングをボールから出してみる。 ケッキングはほんのり暖かかった。 石の洞窟。 しずかは自分のパーティーを育成しながらドラえもんのポチエナも育てていた。 しかしトレーナーとしてそんなに経験を積んだわけではない。 やっと噛み付くことができるようになったが、正直ポチエナでは頼りない。 「確かポチエナは悪タイプ、格闘タイプとは相性が良くないって習ったわ」 トレーナーズスクールでの授業を覚えているところはさすがしずかである。 「ドラちゃんに新しい友達を捕まえてあげればいいんだろうけど、どんなポケモンがいいのかしら……」 しずかはポケモンのタイプをよく知らない。 『とりあえず次会ったポケモンをドラちゃんにプレゼントしましょう』 その時、闇に輝く二つの瞳が近づいてきた。 「わぁ、きれい!」 宝石のような目を持つポケモンだ。 とりあえず捕まえるためには弱らせなくてはならない。 「キルリア、ねんりき!」 キルリアの念力は発動したはずなのに、相手のポケモンは全くダメージを受けていないようだ。 「効いてないみたい……もしかしてすごく強いポケモンなのかしら」 キルリアをひっこめて次はジグザグマを出してみる。 「ジグザグマ、ずつきで攻撃よ!」 しかし頭突きすら効果がないようだ。 ジグザグマは驚かされたが特にダメージはないようだ。 「どうすればいいの…」 このままでは弱らせることすらできない。 残るポケモンはただ一体。 「仕方ないわ、ドラちゃんのポチエナで!」 ジグザグマの代わりに現われたポチエナ。 「お願い、噛み付いて!」 ポチエナが勇猛果敢に飛び掛かり、噛み付く。 初めて相手のポケモンがよろめいた。 「効いてる、もう一回!」 敵がひるんでいる間に再び噛み付く。 「今ね、お願いモンスターボール!」 しずかが投げたボールは弱ったポケモンを吸い込み、そしてボールの振動が止む。 「捕まえた!やったわドラちゃん!」 しずかはそのポケモンの名前を図鑑でチェックする。 「んーと…あったわ。ヤミラミっていうのね」 偶然捕まえたこのヤミラミがただ一匹でトウキのポケモンを完封できる相性を持つということをしずかは知らない。 「やあ、見せてもらったよ」 洞窟の奥から拍手がこだまする。 暗闇から現われたのは一人の男…… 「おっと、まずは自己紹介を。私はダイゴだ」 偶然出会ったその男は、デボン社長からの手紙を渡す相手だった。 ムロタウン。 翌日になるとドラえもんの怪我はすっかり良くなっていた。 さすがポケモンセンター、瀕死のポケモンすら簡単に全快させる医学力は素晴らしい。 「ドラちゃん、今日こそは勝ってね!」 ドラえもんの手にはしずかが育ててくれたポチエナ、そして新しい仲間ヤミラミがいる。 「よし、行ってくるよしずかちゃん!」 しずかは徹夜でドラえもんのポケモンを育てていたので疲労がピークに達していた。 「ヤミラミを捕まえて、ダイゴさんに会って、手紙を渡して……」 そのまましずかはスースーと寝息を立てていた。 ムロジムではトウキVSドラえもんの戦いが行なわれていた。 ヤミラミは格闘とエスパーを無効化するのでトウキのポケモンは全くいいところを見せる事無く、ナイトヘッドをくらって沈んでいく。 「やった!勝ったぞ!」 トウキはやれやれといった顔をしながらドラえもんにジムバッジを渡す。 これでしずかもドラえもんも二個目のバッジを獲得したのだった。 119番道路。 「はひぃ、はひぃ」 のび太はただ一人、どうしようもない状況に陥っていた。 なぜなら現状の戦力がメノクラゲ一匹だからである。 最大の戦力であるケッキングはまるで動こうとしない。 実はのび太は気付いていなかったがナマケロの頃もほとんど動いておらず、ヤルキモノの時には勝手に暴れていただけなのだ。 そう、のび太はジムバッジを持っていない。 スネ夫から貰ったポケモンがいうことを聞かないのは当然のことである。 トレーナー達から逃げ回り、ようやく吊り橋を渡りきったが、辺りは見渡すかぎりの緑、そして頭上からは雨が降り続いていた。 『このままでは本当に死んでしまう!』 そんなのび太の眼前に巨大な影が現われる。 「わわわっ!」 長い首とシダ植物のような翼を持ったその生物はゆっくりとのび太の前を横切っていく。 その姿を見てのび太はとても懐かしいものを思い出した。 「ピー助……?」 そう、昔飼っていた首長竜のピー助だ。 「おーい、ピー助、ピー助!」 のび太の声も耳に入らないかのように悠然と歩いていく巨大生物。 のび太は咄嗟にメノクラゲを出し、命令した。 「メノクラゲ、ピー助を捕まえて!」 メノクラゲは絡み付いてその生物…トロピウスの動きを止める。 「いいぞ、このまま捕まえておくんだ……えーと……」 キンセツシティで買っておいたスーパーボールを投げる。 しかしボールはメノクラゲのほうに飛んでいってしまう。 「ああーーっ!」 ボールが直撃しようとした刹那、メノクラゲは触手でボールを邪魔そうに叩いた。 そのボールは偶然トロピウスに命中し、その巨体をボールに収める。 「やった、やったぁ!」 のび太は新しい仲間、トロピウスのピー助を入手したのだ。 手持ちポケモンが2体になった事でのび太の旅はかなり楽になった。 食糧問題もトロピウスの黄色い房を食べることで当面はしのげそうだ。 次へ
https://w.atwiki.jp/nobita_in_pokemon/pages/60.html
前へ 炎の抜け道。 「ここにもない、あそこにもない……」 ドラえもんとしずかは探し物をしていた。 ドラえもんの四次元ポケットがなくなっているのに気付いたのは煙突山出口に出たとき。 結局後戻りすることになってしまった。 野生ポケモンとの戦いも多く、しずかのキルリアはサーナイトに、マリルはマリルリに進化していた。 「ドラちゃん、またアメ玉だわ」 しずかのジグザグマやマッスグマ達もポケット探しにあたらせているが、拾ってくるのはアメ玉ばかりだ。 『しずかちゃん、また不思議なアメ貰ってる……さすがあげま(ry』 そう、不運の塊であるのび太を世間一般の父親にできたのは彼女の幸運のおかげでもある。 「あ、あったー!!」 それは大きな岩のそばにあった。 ドラえもんはポケットをパンパンとはたき、再び腹に貼りつけた。 しずかが岩をじろじろと見ている。 「この岩、動きそう」 マッスグマに命令して岩を動かす。 その奥には赤く光る石が落ちていた。 「きれい……」 抜け道内にあった技マシンはドラえもんが貰い、石はしずかのものになった。 フエンタウン。 ドラえもん達は次のジムの情報を集めていた。 「炎タイプの……ジムなのか」 ドラえもんは肩を落とした。 グラエナもエアームドも炎タイプは苦手なのだ。 ヤミラミ1体ではいささか分が悪い。 「またボクが戦わなくちゃいけないのか……」 そんなドラえもんを見たしずかは手に持った袋を差し出した。 「ドラちゃん、これを使ってちょうだい」 「しずかちゃん、これは君の不思議なアメじゃないか!使うわけにはいかないよ……」 しずかは袋をドラえもんに無理矢理握らせた。 「二人で勝って早くのび太さんを探しましょ!」 ああ、のび太くんにはもったいないほどいい子だ。 ドラえもんはしずかの優しさに感謝した。 フエンジム。 ジムリーダー・アスナの前には勇ましい顔をしたドラえもんが立っている。 「がんばって、ドラちゃん!」 「見ててね、しずかちゃーん!」 アスナが首を傾げる。 「タヌキと女の子……妙な組み合わせね?」 「ボクはタヌキじゃない、高性能なネコ型ロボットだ!」 怒ったドラえもんは試合開始の合図も待たずにボールを投げる。 ドラえもんが出したのはヤミラミだった。 「ヤミラミ、ねこだまし!」 ドラえもんの命令を受けたヤミラミは相手の目の前でネコ騙しを仕掛ける。 ひるんだマグマッグにシャドーボールが炸裂。 アスナはその戦い方に感心する。 『ふーん、そういうことね』 攻撃を食らう前に攻撃して倒す。 これならば防御は気にしなくてもいい。 『それにしても……』 このヤミラミ、強すぎる。 アスナの目の前でナイトヘッド50超のダメージを受け、コータスが沈む。 「やった!やったよしずかちゃん!」 ドラえもんはバッジを受け取って満面の笑みを浮かべている。 ドラえもんが勝利した後にジム戦を行なったしずかもマリルリの力で圧勝し、無事二人はジムバッジを入手することができたのだ。 「次はトウカシティに逆戻りみたい」 「そこでようやく波乗りができるようになるのね」 次のジムさえ越えればようやくのび太がいるキンセツ対岸に行くことができる。 けどその前に…… 「ドラちゃん、今日はここに泊まりましょ、ねっ!」 そう訴えるしずかの目線の先は……そう、温泉。 ドラえもんは不思議なアメを貰った恩もあり、しずかの望みを断れなかった。 『ごめん、のび太くん……』 《インターミッション》 おう、俺はジャイアン。ガキ大将! 俺がフエンでどんな生活をしていたか特別に教えてやるぜ 6 00 起床 爺婆だらけの温泉街、みんな起きんの早すぎんだよ! しかもラジオ体操なんか始めやがって。うるせぇ! 6 30 朝食 ご馳走かと思ったら焼鮭定食なんだぜ。 しかも病院食みたいに味付けうっすいし……肉食わせろ! 7 00~10 00 デコボコ山道で特訓 もう厳しいのなんのって、ポケモン修行でなんで俺まで山登りしなきゃならないんだよ! つーか山男、てめえ「ゴミを捨てるな」なんて言いやがるがお前自身が生ゴミみたいな匂いがすんだよ! 11 00 温泉 灰もかぶっちまうし、風呂くらいは入らないとな。 中でおしっこしちまったのは内緒だ。 12 00 昼食 また病院食かよ。爺婆みんな死ねばいいのに。 13 00~17 00 ジムで特訓 ジムの奴らとスパーリングだ。 あのジム、サウナみたいでさ。 あんな中で特訓するもんだからもう俺も激痩せダイエットしてるみたいになっちまってさ。 それよりも……デカパイ姉ちゃんの……汗で……ムンムン……ウッ! 18 00 夕食 ジムの飯はうまいんだよなぁ、肉もあるし。 汗かいた分はここで全部補充しちまったぜ。 19 00 アルバイト 働かざるもの食うべからず、なんて誰が言いだしたんだよ! 温泉宿にありがちな歌謡ショーの手伝いだってさ。 21 00 謝罪 ちょっと歌っただけじゃんか! なんで町中に謝って回らなきゃならないんだよ。 しかもジジイの心臓止まったのは俺様のせいじゃないだろ、多分。 22 00 温泉 寝る前に風呂に入るんだ。 別にデカパイ姉ちゃんがこの時間に入るから合わせてるわけじゃないぞ。 23 00 男のたしなみ 覚えたばかりなんだが、こりゃ麻薬だな……ハァハァ、ウッ! 23 30 就寝 こんな感じだったのさ。 自分を鍛えたり、ポケモン育てたり、大人の階段登ったり…… とにかくいろいろな事があって俺様はあの強さを手に入れたわけよ。 旅をしている今だって毎日の修行はやってるぜ、あと男のたしなみもな。 そのためにデカパイ姉ちゃんの下着を何枚か失敬し(ry これからは俺様の天下だぜ! 注:鬼畜出木杉 「あたしの、負けだ…」 アスナは力なく膝をついた。 その少年の力は圧倒的だった。 「アニメみたいにやってみたかったんだ」 無邪気に笑う少年の手持ちはピカチュウただ一匹。 しかしそのピカチュウは限界まで鍛えられており、10万ボルトの破壊力は次々とアスナのポケモンを撃破していったのだ。 「以外とつまらなかったなぁ、電気玉持たせなくても大丈夫だったかも」 少年は何事もなかったかのようにピカチュウをボールに戻す。 「すごいね、あんた。じゃあ勝利の証、このバッジを……」 少年は懐から別のボールを取り出す。 「バッジ?ああ、そんなものはいりませんよ」 ボールから出されたポケモンは…… 「も、モンジャラ?」 アスナは驚いた。 モンジャラはホウエンには生息しない珍しいポケモンだ。 少年は不満そうに語る。 「まだデータの実体化が完璧じゃなくてね。この程度のポケモンしか出せないのさ」 この少年は何を言っているのだろう。 しかしそれを考える時間を少年は与えてくれなかった。 「モンジャラ、つるのムチ」 モンジャラから数本の蔓がのび、アスナを拘束する。 注:鬼畜出木杉 「な、何をっ…あううっ!」 少年は拘束されたアスナの前でぺこりと挨拶をする。 「ボクは出木杉といいます。貴女を部下にスカウトしにきました」 アスナはその発言の意味がわからない。 「あたし…はジムリーダーだよ、そんなの、受けるわけないじゃない!」 出木杉は頭を抱える。 「やっぱり貴女も一回リセットしなきゃいけないみたいですね」 出木杉が指を鳴らすとモンジャラの蔓がアスナの服に滑り込み、それを力任せに引き裂いた。 「い、いやぁぁぁぁぁぁぁっ!」 他人には見られたくない場所を隠したくても四肢は拘束されて動かせない。 アスナはその裸体を出木杉の前に晒している。 「お願い、見ないで…お願い……」 泣きながら嘆願するアスナ。 「貴女は明るさが売りなんですから、笑ってもらいますよ」 モンジャラは全裸のアスナをくすぐりはじめる。 アスナは恥辱で涙を流しながらも、無理矢理笑わされ続ける。 「ふふふ、笑いながら犯されるってどんな気分なんだろう」 出木杉は形のよいその胸を見ながら冷たく笑った。 その後、アスナは人知れずその姿を消した。 119番道路。 ジャイアンは一人、道に迷っていた。 「畜生、スネ夫のやつがいないからなぁ」 道案内は主にスネ夫の役目だったため、今までは迷ったこともなかったのだ。 ジャイアンもポケモン達もすっかり疲れ果てている、そんな彼らの前方に明かりが見えた。 「おっ、あそこで休ませてもらおう」 疲れた体を奮い起こし、ジャイアンは明かりに向かって歩く。 しかし明かりを灯していた建物に近づいたジャイアンはすぐにそれが失敗だと悟った。 ジャイアンを歓迎したのは青装束の輩達からの襲撃。 「こ、こいつらはアクア団!」 そう、ゲームをプレイしていたジャイアンは知っているはずだった。 しかし旅の疲れでこのイベントの存在を失念していたのだ。 「子供のくせに我らの存在を知っているとは、貴様何者だ!」 アクア団員達のズバットとキバニアが襲い掛かってくる。 「うわぁっ!」 ジャイアンは咄嗟にバクーダとラグラージで応戦する。 しかし2体とも技を使い尽くし、できることは悪あがきくらいだ。 相手のアクア団員の後ろからは新たなアクア団員が駆け付けている。 「ま、まずいぜこりゃあ!」 ゲームとは違い、敵も物量戦でくる。 ジャイアンの不利は明らかだった。 敵ポケモン6体を倒したところでラグラージとバクーダは自らも倒れてしまう。 「くそ、コドラ!マタドガス!」 ジャイアンの次のポケモン達がアクア団の前に現れる。 コドラの突進がポチエナに炸裂し、一撃で相手を倒す。 マタドガスのヘドロ攻撃もキバニアに毒を浴びせた。 「ど、どうだ……俺様の実力……」 しかしジャイアンは状況が絶望的だと悟ることになる。 倒したはずのポケモン達が再び襲い掛かってきたのだ。 後方で彼らは元気のかけらを使い、ポケモン達を復活させている。 「そ、そんな……」 それから2時間。 ジャイアンは全ての力を出しきって戦い続けたが、ついに最後のポケモン・ペリッパーも倒されてしまった。 「はぁ、はぁ、てこずらせやがって」 アクア団員のポチエナ達がジャイアンににじり寄る。 「う……こ、こんちくしょぉぉぉぉぉっ!」 ジャイアンは最後の力を振り絞り、ポチエナ達に拳を振るう。 そんなジャイアンを手に余ると思ったアクア団員達はズバットの超音波を浴びせ、ジャイアンを無力化するのだった。 「な、なに……しやがる」 ジャイアンは目の前が真っ暗になった。 ヒワマキシティ。 のび太はいよいよヒワマキジムに挑戦することになった。 「いっ、いいいいよいよだ……」 朝の日差しを受け、のび太は一歩足を踏みだ ……せなかった。 何か見えないものが目の前を塞いでいる。 「ど、どうなってるんだ!」 のび太は右へ左へ必死に前に進もうとする。 夕方。 「あ、そうだ…ダイゴさんから貰った……」 半日かけてようやくデボンスコープの事を思い出したのび太は、そのスコープ越しに覗き込む。 「か、カメレオン?」 そのポケモンはのび太と視線が合うとそそくさと退散していった。 ヒワマキジム。 のび太は並み居るトレーナー達を打ち破り、ついにジムリーダーと対面 ……できなかった。 「な、なんだよ!この邪魔な棒は~」 行く手をさえぎる棒に挟まれて進むことも戻ることもできない。 数時間後のび太はジムのトレーナーに救出され、彼のジム初挑戦は涙のうちに終わった。 翌日。 「あー、確かそこは右から押すんだったよな」 「その後は後ろから元の位置に、だっけな」 あまりに不憫なのび太の為に、ジムのトレーナー達がそこはかとなく(いや、露骨に)アドバイスする。 そのおかげでのび太はなんとかジムの最奥まで辿り着くことができた。 のび太の前に一人の女性が立っている。 「あの人がジムリーダー?」 「いらっしゃい。私がこのジムのリーダー、飛行ポケモン使いのナギです」 のび太はぎこちなく挨拶を返した。 最初に出したポケモンはのび太がトロピウス、ナギはチルット。 「ピー助、のしかかりだ!」 トロピウスがチルットにのしかかり、チルットはマヒしてしまう。 「しんぴのまもりよ!」 チルットはマヒしながらも不思議なフィールドを展開する。 マヒしたチルットは次のターンも遅れを取り、トロピウスののしかかりで倒されてしまった。 ナギはチルットをいたわるようにボールに戻す。 「次はこれです!」 ナギが繰り出したのはトロピウス。 「お、同じポケモンだって?」 のび太はあたふたとしながらも再びのしかかりを命令する。 ナギのトロピウスも負けずにのしかかり返し、互いのHPを削っていく。 「よし、もう一回…ってあれ?」 ピー助の動きが鈍い。 「トロピウス、のしかかり!」 ナギのトロピウスが再びのしかかり、ピー助に止めを刺した。 神秘の守りで守られていたナギのトロピウスはマヒする事無く、逆にピー助をマヒさせていたのだ。 「つ、次はドククラゲだ!」 のび太が出したのはドククラゲ。 溶解液でかなりのダメージを受けたトロピウスの様子を見て、ひと目でドククラゲの強さを見抜いたナギ。 「ふきとばしなさい!」 トロピウスの吹き飛ばしが炸裂し、後退したドククラゲの代わりに現れたのは…… ビチビチ、ビチビチ 地面でみじめにはね回る火ヒンバスだった。 ナギは苦笑しながらトロピウスに命令し、ヒンバスを踏み付ける。 しかし、ヒンバスは踏まれながらもじたばたと暴れ回り、トロピウスを倒してしまった。 「やった、やったぁ!」 「……まさかヒンバスに倒されてしまうとは、私も油断したということでしょうか……」 ナギが自己嫌悪で崩れ落ちる。 ヒンバスはナギのペリッパーに一蹴され、試合は仕切り直しになる。 のび太は再びドククラゲを繰り出す。 バリアーで防御力を上げたのび太のドククラゲはしぶとく、その上超音波でペリッパーは混乱させられてしまい、自滅してしまった。 「やはりそのドククラゲが一番手強そうですね、では次はエアームドです!」 ナギのお気に入りポケモン、エアームドだ。 ナギはエアームドのエアカッターで地道にダメージを積み重ね、バブル光線で落とされた時にはドククラゲは瀕死寸前になっていた。 「よくやったわエアームド…最後はこれです!」 ナギの最後のポケモンはチルタリス。 ドククラゲより素早く動き、つばめ返しであっさりと倒してしまった。 「あわわわ……ど、どうしよう……」 のび太に選択肢は無い。なぜなら彼の手持ちは最後の1体なのだ。 「え、えーい!」 希望をこめて繰り出したポケモンはなんとジュペッタ。 (特訓中迷い込んだ)121番道路でゲットしたカゲボウズを育成したのだ。 鬼火で火傷にされ、後はのび太の必死の傷薬使用でターン数を稼がれたチルタリスはついに倒れたのだった。 「はい、これがヒワマキジムのバッジよ」 「やった!僕だけの力でバッジを手に入れたぞ!」 ナギに渡されたバッジを受け取り飛び上がって喜ぶのび太。 そこに飛び込んできた一人の男。 「ナギ君、天気研究所がアクア団に占拠されてるらしい!」 それはのび太も見知った男だった。 「だ、ダイゴさん!」 ナギとダイゴは天気研究所の見取り図や人質リストを見て何やら相談している。 のび太はそれをのぞき見していた。 人質リストに目を通すと、そこには…… 「じ、ジャイアンだって!」 そう、彼も囚われの身になっていたのだ。 「失禁小僧」「股間ポセイドン」などとあだ名まで付けられ、スネ夫の二度目のトウカジム挑戦は終わった。 スネ夫の今の手持ちはゴルバット、ジュプトル、キノココ、ヌケニン、マルノーム、ジグザグマ。 テッカニンの育成はあきらめ、キノココを集中的に育てていた。 「キノコのほうしまではまだまだ長いな……」 状態異常技を多用するスネ夫にとってキノコの胞子は非常に魅力的だ。 しかしジャイアンに確実に勝つためにはなんとしてもレベル54まで持っていきたい。 「やるとすればルネシティかチャンピオンロードあたりか……」 そう考えながらスネ夫が歩いてると、前方に見慣れた二人組が歩いてくる。 「!!」 スネ夫は咄嗟に草むらに隠れた。 『ドラえもんと……しずかちゃんか』 戦力を把握していない相手と戦うのは得策ではない。 そう考えてやり過ごそうとしていたスネ夫だったが、そうはいかなくなった。 「しずかちゃん、ヤミラミにどくどくを覚えさせようか迷ってるんだけど…」 『どくどくだって!』 実はスネ夫が今から回収に向かおうとしていたのがまさに毒毒の技マシンだった。 『まさかドラえもんのやつに先に拾われていたなんて』 こうなったら…… 「やあ、しずかちゃん!ドラえもんも一緒かい?」 スネ夫は草むらから飛び出した。 「うわぁっ!……ってスネ夫かよ」 「久しぶりね、スネ夫さん!」 無邪気にリアクションする二人を見ながらスネ夫は必死に会話展開を計算する。「実はさ、落とし物しちゃってさ。毒毒の技マシンなんだけど知らない?」 『あくまでボクのものと言い張るんだ』 「ああ、毒毒なら炎の抜け道で拾ったよ」 案の定食い付いてくるドラえもん。 「よかったら返してくれないかな、礼はするから」 『適当なアイテムと交換してしまえば……』 しかしドラえもんは首を縦に振らなかった。 「けどさ、ボクが毒毒の話をしてた時になんて随分タイミングの良い話だなぁ」 ドラえもんの目が細くなる。 スネ夫は咄嗟に目をそらした。 「スネ夫、何か隠してない?」 「……隠してないよ」 「ウソ、ついたね」 もうだめだ、コイツは完全にボクを疑ってる。 こうなりゃ強引に奪いとるまでだ。 「毒毒をよこせ!でないとひどい目にあわせるぞ!」 スネ夫はゴルバットとマルノームを繰り出す。 「あやしいひかりだ!」 ゴルバットの怪しい光がドラえもんに命中し、ドラえもんは見えない蝶々を追い掛けはじめる。 「ざまあみろ、黙って渡してればこうはならなかったのに」 スネ夫がドラえもんの四次元ポケットを漁りだす。 「スネ夫さん……」 物色に夢中になっていたスネ夫はそのあまりにも感情のない声に一瞬寒気を感じた。 「し、しずかちゃん……」 「なんでドラちゃんにこんなことしたの?」 「ひぃっ!」 スネ夫は思わず後退りした。これはヤバい。 「ご、ゴルバット、しずかちゃんにもあやし…」 「サーナイト、サイコキネシス……」 瞬時に繰り出されたサーナイトがサイコキネシスでゴルバットを一撃で倒してしまう。 「つ、強…」 スネ夫が感想をいう間もなく2発目のサイコキネシスがマルノームを襲う。 『ヤバい、マジでヤバい!』 スネ夫の手持ちはほとんど弱点エスパーである。 これだけ育成されたサーナイトが相手だと何もできずに全滅だ。 唯一エスパーに対抗できるタネボーは育て屋に入れっぱなしだ。 「ボクを、ボクを守れ!」 スネ夫は次々とポケモンを出すが、サイコキネシスの前には無力だ。 「うわああああああああっ!」 スネ夫は一目散に逃げ出した。 しかしその眼前には混乱から立ち直ったドラえもんが繰り出したグラエナが立ちふさがる。 「はぁ、はぁ、どうしてくれようか」 ドラえもんの怒りは頂点に達していた。 ドラえもんは技マシンで覚えさせたばかりの技を命令する。 「グラエナ、どろぼう!」 グラエナはまるで手品のようにスネ夫の短パンを奪い取った。 「もう一回だ!」 二度目の泥棒でブリーフも奪われ、その惨めなモノを晒け出す。 「きゃっ!スネ夫さんエッチ!」 いや、どちらかといえばドラえもんの悪趣味を責めるべきだと思うが、しずかは顔を真っ赤にしている。 「返せよ、それ返せよ!」 ドラえもんはエアームドを出し、奪い取った布切れに対し非常な命令を下す。 「エアカッターだ!」 エアームドの空気の刃が短パンとブリーフを引き裂いた。 「あああああああ!」 絶句するスネ夫の横を通り過ぎるドラえもんとしずか。 「ドラちゃん、さすがに可哀想よ……」 しずかがドラえもんの肩をゆする。 「んー、わかったよ」 ドラえもんはスネ夫のところまで戻り、毒毒の技マシンを置いた。 「欲しかったんだろ、パンツの代金だ!」 その後、キンセツに着くまでスネ夫は下半身すっぽんぽん。 サイクリングロードから見下ろされ、トレーナー達の嘲笑がそこら中から聞こえてくる。 スネ夫はただ前を隠すしかなかった。 天気研究所。 ジャイアンは縄で縛られて小部屋に監禁されていた。 ポケモン達は全員瀕死、例え縄が解けたとしても無事に脱出できるとは思えない。 「俺、殺されちまうかもな」 ジャイアンの目から涙がこぼれ落ちる。 夜。 すぐ近くの林では、ダイゴ、ナギ、のび太の3人が最後の打ち合せをしていた。 「……というわけだ、わかったかい?」 「はい、僕やってみます」 のび太が決意を込めた顔で頷く。 ナギはそんなのび太の頭をそっとその胸に抱き寄せた。 「お友達はきっと無事よ、がんばりましょう」 その暖かさで震えは止まった。 ダイゴがボールを取り出す。 「いくぞ!」 「はい!」 ダイゴとナギが一斉に林から飛び出した。 「なんか外がうるさいな」 何やら爆音が聞こえ、ジャイアンは目を覚ました。 気が付けば、部屋の前の見張りもいなくなっている。 「何か起こりやがったな」 ジャイアンは体を捩らせながら必死で縄の拘束から抜け出そうとする。 「ちくしょう、今がチャンスだってのに……」 その時、不意に扉が開かれた。 「ジャイアン!」 突然名前を呼ばれ頭を上げると、そこにはいつも見ていたあの顔があった。 「の、のび太……なのか」 「よかった、今助けるからね!」 のび太はジュペッタを呼び出し、鬼火で縄を焼く。 ジャイアンが力を入れると、縄は焼けた部分からブチブチと切れた。 「のび太、ありがとう……心の友よ!」 ジャイアンはのび太を抱き締めた。 「じ、ジャイアン……くるし……」 「おう、すまねえ!」 のび太は咳き込みながら状況を説明する。 「今1階ではダイゴさんとナギさんが戦ってる。僕達はここ2階から研究所のみんなを助けるんだ」 ゲームをプレイしているジャイアンはダイゴとナギは知っている。 あの二人なら心配ないはずだ。 「けど俺のポケモンはみんな瀕死になっちまってて……」 のび太が懐からアイテムを差し出す。 「ダイゴさんから貰ったげんきのかたまりとピーピーエイダー、一匹分だけど……」 「かたじけねえ!」 通路はそんなに広くない。 とりあえずラグラージを回復させた。 通路を進むと、1階の階段方向から駆け上がる音がする。 のび太はとっさにケッキングを繰り出し壁にした。 「ケッキング、ひたすら怠け続けろ!」 これでしばらくは後ろの心配をしなくてすむ。 「のび太、すげぇ……」 ジャイアンはのび太の的確な行動に感心していた。 「ジャイアン、ボクのポケモンは悪タイプに弱いんだ。頼むよ!」 「まかされよー!」 ラグラージの濁流が敵のポケモンを押し流す。 弱ったズバットはジュペッタのナイトヘッドで止めを刺された。 アクア団員はその勢いに押され、奥の部屋に後退する。 のび太達がそのまま進もうとすると、通路の左右からアクア団員のポケモンが襲い掛かる。 「う、うわぁ」 腰を抜かしたのび太をジャイアンが引っ張る。 「ラグラージ、れいとうビーム!」 ポチエナがビームを受けて壁に叩きつけられる。 「お、おにびだ!」 ジュペッタの鬼火がアクア団員のバンダナに火を点ける。 「あ、あちっ!あちぃっ!」 「い、今のうちに……」 ジャイアンは通路の突き当たりの扉を蹴破る。 そこには幹部らしき女の姿と天気研究所の館長がいた。 「か、館長!」 「のび太くん!」 再会に割って入る女幹部。 「我々アクア団に逆らってタダですむと思ってるの?」 ジャイアンが腕を捲る。 「お礼はたっぷりさせてもらうぜ!」 ラグラージが突進する。 女幹部はグラエナとゴルバットを繰り出した。 「ゴルバット、あやしいひかり!」 ラグラージは光を受けて混乱し、自らを攻撃してしまう。 「ジュペッタ、シャドーボール!」 のび太のジュペッタがすかさずフォローに入るが、グラエナが噛み付いてくる。 「しまった、悪タイプの攻撃だ!」 「どうしたのかしら?手応えがないんだけど……」 にやにやと笑う女幹部。 ジャイアンのラグラージが混乱しながらも濁流で攻撃し、敵2体にダメージを与える。 しかし倒す迄にはいたらない。 『なんだコイツ、ゲームより強いんじゃないか!』 ジュペッタのナイトヘッドがゴルバットを撃墜するが、グラエナの噛み付きでジュペッタも倒されてしまう。 「ふふふ、中々楽しませてくれるわ……」 女幹部はキバニアを出す。 「ドククラゲ、頼むよ!」 部屋は以外と広いのでのび太はドククラゲを繰り出すことができた。 ジャイアンのラグラージは再び自らを攻撃する。 『ちくしょう、スネ夫との戦いと何も変わってねぇ』 ジャイアンは腑甲斐なさに唇を噛む。 「ドククラゲ、バブルこうせん!」 バブル光線がグラエナに直撃し、濁流で弱っていたグラエナが倒れる。 「ちいっ、厄介な奴が!」 ドククラゲは見た目に反してなかなか素早い。 「これが私の切り札よ……」 女幹部がボールを投げる。 そこから現われたのは巨大なサメ。 「さ、サメだぁっ!」 のび太が腰を抜かす。 「やばいぞ…あいつはサメハダー、かなり攻撃力が高いんだ!」 ジャイアンが焦る。 「とりあえずキバニアをしめつけろ!」 のび太のドククラゲがキバニアを締め付ける。 しかしドククラゲ自身も鮫肌で傷を負ってしまう。 「キバニア、サメハダー、かみくだきなさい!」 ドククラゲが二匹のポケモンに噛まれ、倒される。 その隙を付き、混乱の解けたジャイアンのラグラージのマッドショットがキバニアに止めを刺した。 ケッキングを欠いているのび太は最後のモンスターボールを握り締める。 「ジャイアン、2回でいいんだ。攻撃を受けとめてくれない?」 のび太には何か作戦があるみたいだ。 不安だが、それに乗るしかない。 「仕方ねぇ、心の友の願いだからな!」 「ありがとう、出てこいピー助!」 のび太が出したのはトロピウスのピー助。 「ピー助、最強技を使うよ!」 ピー助の羽が光り輝く。 ジャイアンと女幹部は同時に叫んだ。 「ソーラービームか!」 自慢のサメハダーとはいえ、ソーラービームを食らってはひとたまりもない。 眼前には弱ったラグラージが行く手に立ちふさがっている。 『ラグラージを切り裂いて、次にトロピウスより先に攻撃して止めを刺してやる!』 サメハダーがラグラージに襲い掛かる。 「邪魔だ、退きなっ!」 「そうはいかねえ!」 しかしラグラージに攻撃を耐える体力はない。 ラグラージはサメハダーに切り裂かれた! 『すまねぇ、のび太……』 ジャイアンは心の中で謝罪する。 しかし! 「なにっ!私のサメハダーのきりさくを受けたっ……」 「ラグラージ、どうなってんだ……」 ラグラージが使った技は『まもる』。 さっきのキバニア撃破でレベルアップし、会得したのだ。 「くそっ!」 女幹部はもう一度サメハダーに切り裂くを命令する。 ラグラージはその攻撃で瀕死になるが、倒れるラグラージの後ろには光り輝くトロピウスが構えていた。 「のび太、やっちまぇぇぇっ!」 ジャイアンが叫び、のび太も叫んだ。 「ソーラービーム!」 トロピウスから凄まじい光の束が放射され、サメハダーを飲み込む。 「ちぃっ、まさかサメハダーまで……」 女幹部は館長から書類束を奪い取ると、口笛を吹いた。 窓に脚をかけ、憎々しげな目でジャイアンとのび太を睨む。 「この借りは必ず返してやるわ!」 女幹部は窓から外に飛び出した。 天気研究所を占拠していたアクア団は撤退した。 ダイゴは天気研究所での後始末をするためにそこに残り、ナギ、のび太、ジャイアンはエアームドとトロピウスで空を飛んでヒワマキに戻る。 トロピウスの背中に乗るジャイアンとのび太。 「のび太、強えな」 「結局ジャイアンに助けられちゃったけどね」 のび太は申し訳なさそうにうつむく。 「うじうじすんな、心の友よ!」 ジャイアンはのび太の背中をバンバンと叩いた。 翌日、ヒワマキシティ。 「ジャイアン、ナギさん、行ってくるよ!」 のび太はトロピウスの背中に乗っている。 昨日ジャイアンの秘伝マシンで空を飛べるようになったピー助。 これでドラえもん達と合流するつもりなのだ。 ジャイアンはこのままバッジ集めの旅を続ける。 「じゃあ、ポケモンリーグで会おうねジャイアン!」 「おう!次にあったらバトルでコテンパンにしてやるよ!」 ナギもニコニコと手を振っている。 二人の見送りを受け、トロピウスは空高く飛んでいった。 「それでは」 「また後で会おうぜ、ナギの姉ちゃん!」 ナギとジャイアンは握手をして別れた。 次へ
https://w.atwiki.jp/nobita_in_pokemon/pages/133.html
前へ サイユウシティ・ポケモンリーグ。 リーグ受付広場にいた人たちは全員床に倒れている。 どうやらマヒしているようだ。 その中を一人の少年と四人の女性が歩いていく。 「バッジを……持たぬ者が……入ることは許……」 受付のそんな警告も無視して少年達は奥に入っていく。 階段を上がると、そこには奇妙な髪型をした男が立っていた。 「いささか礼を欠いた挑戦者のようだな」 そう、彼がポケモンリーグ四天王のカゲツだ。 少年が一礼をする。 「僕は出木杉といいます」 カゲツはその面子を見て驚愕する。 「君たちは……ジムリーダーの君たちがなぜ!!」 ツツジが言い放つ。 「なぜって……私達はあなた方より強いからここにいるべきだと思いまして」 アスナが一歩踏み出す。 「とりあえずコイツは私の獲物ね」 アスナはそう言いながらバクフーンを繰り出した。 カゲツもグラエナを出して応戦する。 『炎タイプのジムリーダー、しかも手持ちはジムにいた頃と違うようだな』 苦戦は免れないが、四天王として彼らの横暴を許すわけにもいかないのだ。 しかしその思いとは裏腹に、バクフーンの大文字がグラエナの身を焦がしていく。 『フヨウ、プリム、ゲンジ……すまん、俺はダメらしい』 注:鬼畜出木杉 ポケモンリーグ、第3の間。 氷使いのプリムは敵を待ち続けていた。 不法な挑戦者の侵入報告があってから小一時間、まだここには現れない。 「カゲツさんやフヨウさんが頑張っているのかしら」 もしかしたら撃退できたのかもしれない。 リーグ四天王である我々がバッジも集められないトレーナーに負けることは有り得ないはずだ。 「ここですね、3人目がいる場所は」 現れたのは女、しかも見覚えのある顔だ。 「あなたは……カナズミのジムリーダー……」 そう、確かツツジという名だ。 その後からも次々と見覚えのある顔が現れる。 「フエンとヒワマキのジムリーダーまで……」 まるでジムリーダーの反乱のようだ。 そして最後に現れたのは少年と見知らぬ女、そして…… 『あれは、まさかっ!』 青装束の女がひきずっているのはフヨウだ。 しかしその体を包んでいた布切れは無く、健康的に焼けた肌は白い汚物で塗れ、なすがままにされてもフヨウの目は虚空を彷徨っている。 「まさか、フヨウさんを!」 プリムも女性だ、フヨウのされた酷い仕打ちは容易に推測できる。 「すいません、バトル自体は5分とかからず終わったんですが」 少年が悪怯れることもなく答える。 注:鬼畜出木杉 プリムは怒りに身を震わせた。 このかわいい顔をした少年がフヨウを一時間近く凌辱し続けたのだ。 「なんと非道な振舞い、私が成敗してくれましょう!」 イズミが笑う。 「出木杉様、なんかオバさんが怒り狂ってるよ」 「えー、オバさんにはあんまり興味ないや。勝手にやってよ」 出木杉はフヨウの股ぐらを弄びながら答える。 それを聞いたツツジがバトルの舞台に上がる。 「出木杉様、こんな年増でも遊び道具にはなりますわよ」 ツツジがバンギラスを繰り出す。 「ジムリーダーとして、いや女として恥を知りなさい!」 プリムはオニゴーリで戦いに挑む。 しかしプリムの奮戦も虚しく、ツツジの前になすすべもなかった。 岩雪崩の流れ岩に当たり、足を挫いたプリムはその場に座り込んでいる。 その目の前を少年と四人の女性が通り過ぎていく。 無残な姿で引きずられていくフヨウを、プリムはただ見過ごすしかなかった。 フヨウが引きずられた跡がカタツムリの通った後のようにぬめっている。 純潔を失った証のような跡を見ながらプリムは泣き崩れる。 「ごめんなさい、ごめんなさい、フヨウさん……」 ミクリは一人、待ち続けていた。 侵入者はおそらくルネで話題になっていたデキスギという男だろう。 マグマ団とアクア団を壊滅させた力量はおそらく四天王、そして自分すら圧倒しているだろう。 「さて、どんな少年なのか……」 その答えはすぐに分かった。 出木杉本人が人を引きつれ、この場に現れたからである。 『ゲンジ殿は敗北したか。付き添いはジムリーダー達、なのか』 彼女等の目に見覚えがある。 ミクリも女性ファンは多いからわかる、あれは憧れの人物に盲信するような目だ。 「ふ、フヨウ君…ひどい……」 引きずられてきたフヨウは散々嬲られた姿を晒している。 『悪のカリスマ、というわけか……』 「こんにちは、僕は出木杉といいます」 「ああ、噂は聞いているよ。君の友達にも会ったさ」 出木杉は「野比君かな、それとも剛田君かな?」と推測している。 「不法な挑戦とはいえ、私はチャンピオンとしてここで挑戦を受けなければならない」 「じゃあさっさと負けて帰ってくださいよ、あなたダイゴさんより弱いんだから」 前チャンピオンと比べられてミクリの心中も穏やかではない。 「そのような口を聞けなくしてやろう!」 「いけ!ホエルオー」 ミクリが繰り出したホエルオー、その威容が出木杉を威圧する。 しかし出木杉は眉一つ動かさない。 「仕方ないな、僕の本気を見せてあげますよ」 ツツジ達四人も本気の出木杉は見たことがない。 全員が見守る中、出木杉がボールを投げた。 現れたのは緑と赤のツートンカラーのポケモン。 「そ、それはポケモン……なのか!」 「デオキシスというんですよ、チャンピオンなのに知らないんですか?」 デオキシスが10万ボルトでホエルオーを一撃のもとに葬る。 「な、ホエルオーがただの一撃……」 「どうしました?次のポケモンを出してくださいよ」 ミクリはドククラゲ、ルンパッパと繰り出すがサイコキネシスの前になすすべがない。 「こいつならどうだ!」 ミクリのナマズンに対して10万ボルトで攻撃するデオキシス。 しかしナマズンには効果がない。 「相性の事すら知らないのか、反撃のじしんだ!」 地震がデオキシスを襲う。 しかし出木杉はニヤニヤと笑っている。 「何がおかしい……な、何いっ!」 デオキシスの受けた傷が治っていく。 『まさか、じこさいせいまで使えるのか……』 出木杉はわざとダメージを受け、これみよがしに自己再生を使ってみせたのだ。 その瞬間、ミクリは自分に勝機がないことを悟った。 ポケモンリーグ殿堂。 出木杉は満足気に自分の名を殿堂入りさせた。 部屋から出ると、四人の女性が膝を落としている。 「さてフラグも立てたことだし、君たちには飛んでもらうよ」 各々にいくつかの道具を渡し、彼女達はその場を去っていった。 入れ違いにマユミがやってくる。 「出木杉様、デオキシスはどうでした?」 「ああ、悪くないよ。僕が育てたあのデオキシスだ」 対ミクリ用に10万ボルトを覚えさせたが、特にその必要もなかったようだ。 「ここにいた人間は全員連れ出しました。ポケモンリーグは私達のものです」 「ああ、これで僕はチャンピオンとしてアイツらを迎えることになる」 それまでは玩具で暇をつぶそう。 玩具とは殿堂に閉じ込めてあるフヨウである。 「そうだ、もう少し玩具を増やそう。ちょっと外出してくるよ」 どこに行くかは分からないが、マユミは楽しそうに部屋を後にする出木杉を見送った。 ポケモンリーグ会場はすべての通信が寸断され、その周りは何匹ものポケモンに守護される「魔の城」と化してしまったことをドラえもん達はまだ知らない…… トクサネシティ。 前日、生死の境をさ迷っていたのび太はなんとか持ちなおした。 ドラえもんは感心する。 「それにしてもポケモン世界の医学はすごい発達してるんだなぁ」 瀕死のポケモンを5秒ほどで完治させる世界である。 病気ではない外傷は比較的簡単に完治してしまう世界なのだ。 「細胞を電子データ化して再構築する、ポケモン転送技術と同じものらしいね」 しずかは分かっていないようだが、とりあえずのび太が無事だということは分かったようだ。 面会が許可され、ドラえもんとしずかは病室に入る。 「やあ、とりあえず助かったよ」 のび太がベッドに腰掛けながら応対する。 「よかった、本当によかった」 ドラえもんは目に涙を浮かべる。 「骨折のほうは今夜の治療で完治するってさ」 ギプスをしている右腕が痛々しい。 「それにしても、誰がのび太さんをこんな目にあわせたの?」 しずかの問いに、のび太はベッドのシーツを握り締める。 「ナギさん……ナギさんにやられたんだ……」 「そんな馬鹿な!」 ドラえもんもしずかも、ナギの人柄はよく分かってるつもりだ。 しかし被害者ののび太が嘘を言うとも思えない。 「どういうことなの?」 「出木杉の奴と関係あるような事を言っていたんだけど」 ドラえもんは考えを巡らせる。 出木杉が関係あるとすれば、おそらくプレーヤーの干渉によってゲーム世界に変化が起き始めているに違いない。 「このままでは大変なことになりそうだ」 深刻なドラえもんの顔にのび太としずかも不安そうだ。 「ボクは今からもしもボックスのリセットをかけてくるよ。こんな危険な世界に皆を置いてはおけない!」 ドラえもんは病室を駆け出していった。 その日の夜。 治療により骨折を完治させたのび太と付き添いのしずかの二人の前にドラえもんが帰ってきた。 しかし、その口から出た事実は二人の想像を遥かに越えていた。 「もしもボックスが……壊されてた……」 「な、なんだってっ!」 ドラえもんが深刻な顔で告げる。 「ボックスが壊れていては元の世界に戻せないんだ」 しずかが心配そうに話に聞き入る。 「それに、もっと重要な問題があるんだ……」 「元に戻せないことより重要なことってなんなのさ!」 のび太の問いにドラえもんが重い口を開く。 「もしもボックスの事を知ってるのはボクらだけだ。ということは……」 「私たちの中に壊した犯人がいるってことなの?」 しずかの問いに頷くドラえもん。 「ボクとしずかちゃんはずっと一緒に旅をしていた。のび太くんも壊すような真似はしないだろう」 のび太がごくりと唾を飲む。 「じゃあジャイアン、スネ夫、出木杉の中の誰かが……」 三人を重い空気が支配する。 120番道路、古代塚。 一人の女がその塚の前に立っていた。 「ここが三匹目の居場所ね……」 古代塚の中央に内部への入り口がある。 それはつい最近崩され、現れたものだ。 中に入った女…ツツジは小部屋の中央に立ち、レアコイルを呼び出した。 このポケモンはツツジのものではないが、この部屋の仕掛けを解除するのに必要なものだ。 「フラッシュ!」 レアコイルが激しく光り輝くと、小部屋の奥の壁がガラガラと音を立てて崩れ落ちる。 レアコイルを従え、ぽっかりと開いた横穴を進んでいくと、大きな部屋に出た。 中央に立たずむ巨大な鋼の塊。 「封印されし伝説のポケモン、レジスチル……」 その塊の真ん中にあるいくつもの点が光り、巨大な体がゆっくりと動きだす。 ツツジは舌を出す。 「あいにく、アンタと戦うつもりはないわ」 懐から出したのはマスターボール。 「アタシの物になりなさい!」 マスターボールが放られ、レジスチルの巨体を吸い込む。 「ふふふ……これで3体の封印ポケモンは私の物……」 懐からマスターボールを取出し、放る。 現れたのはレジアイスとレジロック。 「すごい、すごいわ!」 ツツジはその威容に囲まれて、高らかに笑い続けた。 ルネシティ。 一刻も早く真実を確認しようと、ジャイアンはルネジムに挑戦していた。 出木杉も目的はポケモンリーグ制覇だろう。 サイユウに向かうためには滝登りをフィールドで使えるようにならなくてはいけない。 (この時、出木杉はリラを制覇していたのは内緒だ) しかしジャイアンの前に立ちはだかったのはジムリーダーではなく、床の氷であった。 すでに7度以上足を踏み外している。 「くそ、ここはスネ夫にやってもらったからな」 ゲームの時は氷の床の仕掛けが分からず、結局スネ夫にやらせていたのだ。 「それにしても、ここは音がよく響くなぁ」 一面が氷で覆われ、空気も冷たいので音がいい感じに響く。 ジャイアンの中の何かがふつふつと沸き上がってきた。 ジムリーダーの間では、アダンが優雅に挑戦者を待ち受けていた。 しかしその静かな時間は突然の破壊音に乱される。 ボエ~~! 「な、なんだこの音は!」 目の前の氷の床が砕け散り、下にいるトレーナー達が右往左往している。 中にはその音に頭をかき乱され、嘔吐している者もいた。 「ジムの仕掛けが持ちません!早くこの音を止めないとっ!」 アダンは仕方なく、その音の発生元の向かうことになった。 ジャイアンのハイパーボイスは止まるところを知らない。 制止を求めるトレーナー達の声もジャイアンの歌?にかき消されて聞こえていないようだ。 あわててやってきたアダンはなんとか止めさせようと説得を開始する。 「☆@◇※《彡∧?♂£℃!!!」 「▲∬√§×♀‰#ゑ$!!!」 アダンの必死の叫びもジャイアンの耳には届かない。 『こうなったら!』 アダンは優雅に身を翻し、ゆっくりと体を沈めていく。 その両手は地を掴み、背は丸くやわらかなラインを描いている。 『あ、アダン様!』 『お美しい、お美しいですぞ!』 アダンはジャイアンに土下座していた。 「歌を止めてほしかったら言ってくれればいいのによう」 ジャイアンはガハハと笑っている。 アダンは服の裾をちぎれんばかりに握り締めていた。 『アダン様が怒っておられる』 『おいたわしや、アダン様』 トレーナー達は口々にそうつぶやいた。 二人は距離をとり、互いに一礼する。 「では始めようか、華麗なるバトルを」 「よし、やってやるぜ!」 アダンはラブカスを繰り出し、ジャイアンはヘラクロスで迎え撃った。 「メガホーンだ!」 ヘラクロスの角がラブカスを一撃で仕留める。 「やはりラブカス程度では歯が立たぬか。しかしいきなり最強技とは美しくないぞ、少年」 アダンが次に繰り出したのはナマズンだ。 「そいつもメガホーンの餌食だぜ!」 ナマズンの懐に飛び込んだヘラクロスが角を振り上げたが、その攻撃は空をきる。 「外れた?」 カウンターで地震攻撃をくらい、傷を負うヘラクロス。 「メガホーンは命中率に難がある。強い技を無闇に使うものではない」 「うるさい、もう一回メガホーンだ!」 ムキになったジャイアンが再びメガホーンを指示するが、またかわされてしまう。 『じしんは効果いまいちとはいえ、こう何度も食らってはまずいぞ』 ここは確実にダメージを与えなければ。 「か、かわらわりだ!」 ヘラクロスの瓦割りがナマズンを捉えた。 「そうか、悪くない選択だ」 アダンはナマズンを眠らせて体力の回復をはかる。 「次の攻撃が耐えられないから回復かよ、意味ないな!」 ヘラクロスが眠っているナマズンに再び瓦割りを仕掛ける。 「いびきだ!」 アダンのナマズンはいびきの音でヘラクロスをひるませた。 『へ、次の一撃で終わりさ』 ヘラクロスが再び瓦割りを命中させる。 しかしナマズンはその攻撃を受けて尚、その体勢を保っていた。 「な、なにっ!」 「目測を見誤ったようだね、いびきだ!」 再びいびきを聞かされ、ヘラクロスがダウンする。 悔しがるジャイアンにアダンが語りかける。 「ポケモンバトルとはポケモンとポケモンの勝負だけではないのだよ」 ジャイアンが繰り出したラグラージがナマズンに突進し、撃破する。 「よし、当たった!」 「技の命中率の大切さがわかったようだね、結構なことだ」 アダンが3体目に出したのはトドグラーだ。 『くそ、ヘラクロスがいてくれたら……』 バクーダの岩雪崩に頼りたいところだが、水タイプでもあるトドグラーに交換の隙を突かれてはひとたまりもない。 「ラグラージ、とっしん!」 突進を受けたトドグラーは眠って体力を回復させる。 「隙あり、とっしん!」 眠り状態のまま突進を食らうトドグラー。 しかしこのポケモンもいびきをかいてラグラージにダメージを与えてきた。 再び突進を命令しようとしたジャイアンは一瞬考えを巡らせる。 『まさかコイツも二回目の攻撃を耐えるんじゃ……』 しかしジャイアンは覚悟を決めて突進を命令した。 その一撃でトドグラーは戦闘不能になる。 「よっしゃ!」 ジャイアンはこのバトルで確実に成長していた。 その後、二人の戦いは一進一退の攻防が続いた。 そしてマタドガスが大爆発でアダンのキングドラと相討ちになり、ついに戦いはジャイアンの勝利で終わったのだ。 「おめでとう、これが最後のバッジだよ」 アダンから渡されたバッジを含めて計8個、これでポケモンリーグに向かうことができる。 「ありがとうな、アダム」 「いや、私はアダンだ……」 アダンのこめかみに青筋が浮かび上がる。 「ああ、そうだっけ。じゃあな、アダンのおっさん!」 ジャイアンの去った後、アダンは凄まじい形相で氷の床を砕いていた。 『アダン様が必死で怒りを沈めているわ』 『いつでも優雅なアダン様でいてくださいませ!』 見守るトレーナーの前で「アッ」という短い声と共にアダンの姿が消える。 『落ちたわ』 『落ちたわね』 『落ちる姿まで美しかったわ』 『どんな姿も決まってますわ』 ルネシティのジムリーダー、アダン。 ダンディな彼の人気は落ちることがないのだ。 キナギシティ。 目を覚ましたスネ夫はポケモンセンターにいた。 「ボクは…………」 記憶を呼び覚ます。 出木杉がジムリーダー達を率いてアクア団とマグマ団を壊滅させた。 そしてツツジに敗れ、そこから意識が途切れている。 「目を、覚ましたようだな」 スネ夫が入り口に目をやると、そこには一人の男が立っていた。 その男は負傷しているらしく、右肩には包帯がまかれている。 「あんたは?」 「命の恩人に対し、あんた呼ばわりはないだろう。まぁ意識がなかったから仕方はないか」 どうやら彼が自分を助けてくれたらしい。 「た、助けてくれてありがとう。ボクはスネ夫」 「私はジンダイだ」 ジンダイ、その名には聞き覚えがある。 バトルフロンティアのピラミッドキングだ。 『そんな人がなぜボクを助けてくれたんだろう』 そんな疑問が頭をよぎると、それを察したジンダイが語り始める。 「新しいポケモンリーグのチャンピオンが生まれた日、トレーナー達の夢の施設であるバトルフロンティアはプレオープンしたんだ」 プレオープンには一部のトップクラスのトレーナーと、その関係者が呼ばれていた。 無論リーグチャンピオンもその例外ではない。 「だが、そのデキスギという新チャンピオンが問題だったんだ」 「出木杉だって!!」 ジンダイの言葉にスネ夫が仰天する。 最初に異変があったのはメイン施設であるバトルタワー。 最上階と連絡が取れなくなるトラブルが発生し、ほとんどの職員がその対応に追われていたのだ。 そして回線が回復したとき、最上階の映像に映し出されたのは…… 「いや、ここは子供に聞かせるべき話ではないな」 ジンダイが拳を握り締める。 出木杉を取り押さえるべく、すべてのフロンティアブレーンがバトルタワーに乗り込んだ。 しかし彼の持つポケモンはブレーンであるジンダイも存在程度しか知らない伝説のポケモンばかりだった。 「ミュウツー、ルギア、ホウオウ……あれだけのポケモンを使役するとは」 ジンダイの言葉にスネ夫が首を傾げる。 『そうだ、出木杉の奴はホウエンではゲットできないポケモンを使っている』 やはり何らかの手段で現実世界からポケモンのデータを使えるようになっているとみて間違いない。 ブレーン達は敗北し、ジンダイはフロンティアから逃げるしかなかった。 「デキスギの目的は女だったから私はなんとか逃げ延びたが、アザミやコゴミは捕らえられ、衆人の眼前で……」 そこから先をジンダイは語らなかった。 「そして落ち延びる最中に偶然、重体で波間に浮かんでいた君を拾い上げたというわけだ」 「出木杉のやつがそんな事を……」 おそらく出木杉は現実世界のポケモンデータを自由に出来る。 それはカントーやジョウトのポケモン、そして伝説のポケモンも使うことができるということだ。 「そんな出木杉がチャンピオンということは、ボクらは勝てない……」 スネ夫は悔しそうにそう呟いた。 ジンダイはそんなスネ夫の肩に手を掛ける。 「君がうわごとのように「デキスギ」と言っていたのでもしやと思ったが、やはり知り合いだったようだな」 「ああ、ボクらは同じ日に旅立った仲間なんだ」 ジンダイは棚からスネ夫の服を投げる。 「仲間が道を踏み外したなら、それを正すのもまた仲間というものだ」 「勝てないとわかっていても?」 ジンダイは自分の肩の包帯を外しながら答えた。 「どんな困難にも立ち向かう、それがポケモンマスターというものだ」 センターを出たスネ夫とジンダイは旅支度を整えた。 「これからどうすれば……」 「君の仲間は何人かね?」 スネ夫の頭に浮かんだのはいつものメンバー。 「ボクを入れて5人だよ」 「じゃあまずスネ夫君はルネシティのバッジを入手したまえ」 ジンダイがチルタリスを繰り出し、そして乗り込む。 「私は逃げ延びたフロンティアブレーンと合流し、君と君の仲間ののバックアップを行なう」 「わ、わかった。頑張ってみるよ!」 ジンダイは空高く飛び立ち、スネ夫は決意を新たにする。 「いつもみんなで大冒険を繰り返してるんだ、今回だって大丈夫さ!」 そう、ドラえもん達と一緒ならどんな困難にも立ち向かえる。 そしてスネ夫はルネに向かう前にある場所に立ち寄ることにした。 「出木杉がチャンピオンになり、そしてフロンティアがオープンした。となると……」 そう、さらなる戦力アップができるとしたらあそこしかない。 トクサネシティ。 すでにジム戦を終えているしずかやドラえもんに追い付くため、回復したのび太はトクサネジムに向かった。 二人はその間、戦力アップのための特訓を行なっている。 何匹ものマッスグマを物拾いに走らせながら、野生ポケモンと戦って自らのポケモンを鍛えていく。 ドラえもんの新戦力ホエルコはホエルオーに進化しており、その潮吹きの破壊力は凄まじい。 そしてしずかのロコンも炎の石の力でキュウコンへと進化していた。 その日の夜。 「迷ってジムリーダーまで辿り着けなかった……」 センターではいつもの様ののび太がうなだれていた。 二日目。 しずかは浅瀬の洞穴に、ドラえもんはダイビングで欠片集めをする。 ドラえもんはのび太のヒトデマンを何とかスターミーに進化させるべく、グラエナの泥棒を駆使して戦い続けた。 夕方にトレジャーハンターの小屋で待ち合わせた二人は、互いの成果を確認しあう。 「ほら、こんなにたくさんの欠片を手に入れたよ!」 うれしそうに3色の欠片をトレジャーハンターと交換するドラえもん。 「私もドラちゃんにプレゼントよ」 しずかが差し出したのは一個のモンスターボール。 しずかにマッスグマを返すついでに交換で受け取ったそれは…… 「こ、これは……ボクにそっくりだ!」 青と白の丸いポケモンはドラえもんの周りをコロコロと転がっている。 「タマザラシっていうのよ」 「ありがとう、ありがとうしずかちゃん!」 しかしドラえもんは知らない。 進化したタマザラシが凶悪な姿に変貌することを。 その夜。 「ジムリーダー直前でPP尽きた……」 やはりのび太はのび太だ、詰めが甘い。 3日目。 ドラえもんとしずかは少し遠出をすることにした。 ドラえもんはのび太の頼みで流星の滝に向かう。 しずかは「キレイハナ」というポケモンが欲しいと言っていた。 それを入手するには流星の滝のソルロックから入手できる「太陽の石」が必要らしいのだ。 「しずちゃんにプレゼントしたいんだ、頼むよドラえも~ん」 久々に頼み事をされ、ドラえもんはうれしくなって二つ返事で受けてしまった。 つくづく甘い性格である。 しずかはフエンタウンに向かった。 理由は一つ、温泉に入りたかったからだ。 注:鬼畜出木杉 フエンタウン。 しずかはここの温泉に浸かっていた。 一日に何度も入るくらいの風呂好きだ、旅で風呂にすら入れない日が多いのには我慢ならなかった。 「あー、気持ちいい!」 今日に限って利用者が誰もいない。 この温泉は混浴なので少しばかりの抵抗があるのだが、しずかも今はタオルも外して開放的になっている。 「やっぱり広い湯槽って気持ちいいわ……」 ドラちゃんのどこでもドアも修理中みたいだし、のび太の奇襲に警戒する必要もない。 手足を思いっきりのばし、しずかは温泉を満喫していた。 「どう?今日は僕らの貸し切りだよ」 男の声? しずかはとっさに体を隠し、近くに置いたタオルを探す。 『あれ、確かここにあったはずなのに』 「タオルはここだよ、しずかちゃん」 湯煙の中でタオルが宙に浮いている。 いや、なにかにぶら下がっているのだ。 「あ、あなたは出木杉さん!!」 湯煙の中から現れたのは、膨張した股間にタオルをかけている出木杉だった。 「やあ、しずかちゃん。タオルいるんだろ?」 出木杉が下半身でタオルを差し出す。 タオルの先から不気味な物が見え隠れしている。 「出木杉さんのH!変態!」 「今日は君と事を構えるつもりはないよ」 出木杉はしずかにタオルを投げる。 注:鬼畜出木杉 「ひっ!」 そのタオルは何やらべっとりと付いていて、しずかは思わずそれを投げ捨てる。 「今日は君に宣戦布告をしにきただけなんだ」 出木杉は自らの棒を弄びながら語り続ける。 「ここは所詮ゲームの世界だ。現実に戻ればいつもの生活が待っている」 「ゲームだからといって、のび太さんに怪我させていいはずはないわ!」 しずかが立ち上がるが、出木杉の黒い視線にあわてて湯槽に体を戻す。 「ああ、あれは僕の部下がかってにやったことさ」 出木杉は悪怯れもしない。 「僕の目的はただひとつ、しずかちゃん……君が僕に心底服従することなんだ」 しずかは出木杉の言葉に身を凍らせる。 「ポケモンリーグで待っているよ、あの馬鹿達も連れてきて構わない」 「何をしようっていうの!」 しずかの問いに出木杉が答えた。 「君のナイト達が僕を倒せれば君の勝ち、僕が勝てば……僕はしずかちゃんをレイプして、全てを僕のものにする。それだけさ」 しずかの顔色が蒼白になる。 「待っているのも辛いから、少し前払いだ」 出木杉はそう言うと、全裸のしずかを見ながら「スッポンポンのしずかちゃんの前で…イクッ!」と一声あげると欲望を温泉にぶちまけた。 「じゃあ、ごきげんよう」 変わり果てた出木杉を見て、しずかは恐怖で動くこともできない。 湯に漂う白い何かが、出木杉の混沌とした姿のようだった…… トクサネジム。 3日目にしてようやくジムリーダーの下に辿り着いたのび太。 相手は自分と同じくらいの子供が二人。 『ぷ、これは楽勝だな』 のび太の悪い性格である「弱いものに強い」が沸き上がってくる。 「君たちみたいなのに負ける僕じゃないよ、いけ!」 のび太はドククラゲとトロピウスを繰り出した。 「わぁ、色違いのドククラゲだ!」 バリアーを張るドククラゲに驚く二人。 のび太は有頂天になって語りはじめる。 「僕のドククラゲの特性は「ヘドロえき」」 聞かれてもいないのにのび太は特性を暴露してしまう。 「理由は大体の人が考えてることと思うけど能力を「下げられない」だけのクリアボディよりも「HP吸収で逆にダメージ」を与えられるヘドロえきの方が断然お得だからさ」 のび太の自慢は止まらない。 「そして技は、一,バブルこうせん 二,れいとうビーム 三,バリアー 四,ちょうおんぱ。 まず一のバブルこうせんだが、なみのりの方が威力高いがこれを選ばなかった理由はもちろん……」 のび太はフウとランにズビシと指を突き付ける。 「バブルこうせんのPPの多さが魅力だからさ!」 その瞬間、二人が同時に叫んだ。 「サイコキネシス!」 ネイティオとネンドールのサイコキネシスを受け轟沈するドククラゲ。 フウとランがニヤニヤと笑う。 「まさか「これで死角なし、ある意味最強のポケモン」とか思ってない?」 のび太は図星を刺されて何も返せなかった。 子供でもジムリーダー、のび太ごときが偉そうに語れる相手ではないのだ。 結局ジュペッタのナイトヘッドやケッキングの騙し討ちもあり、のび太はジムリーダーに勝利することはできた。 しかしフウとランはバッジを渡す時にさえクスクスと笑っている。 「はい、これがブフッ!このジムの…バッジ…ブフフッ」 「的外れな理論だけど…笑っちゃ…ダメだって……ンブフゥ!」 二人の子供は顔を歪めながら笑いに耐えている。 ジムを出たのび太はカンカンに怒っていた。 「なんだよ、アイツら僕に負けたくせに笑いやがって!」 しかし確かにバブル光線よりは波乗りがいいよな。 のび太は秘伝マシンを取り出した。 その様子をジムの上から見下ろすフウとラン。 「やっぱり使ったね、秘伝マシン」 「まぁあの人はそんな人だと思ってたよ」 二人は耐えきれずに大爆笑した。 ジム戦を終えたのび太がポケモンセンターに帰ってくると、ドラえもんとしずかが深刻な顔で向き合っていた。 「ジム戦、勝ったよ!」 のび太の報告にも眉一つ動かさずに黙りこくる二人。 「どうしたんだよいったい……」 ドラえもんはのび太を隣に座らせ、口を開いた。 「しずかちゃんが出木杉と会ったんだ」 「な、なんだって!」 ドラえもんとしずかは交互に語る。 出木杉がポケモンリーグのチャンピオンになったこと。 僕達に挑戦を挑んできたこと。 そしてあの出木杉が極悪人になっていたこと。 「僕らと戦うって……普通にポケモンバトルをすればいいじゃないか!」 のび太の主張にドラえもんも頷く。 「そうなんだ、バトルをするだけにしては出木杉君のやる事は手が込みすぎている」 しずかはそれを黙って聞いている。 『私が原因だなんて言えない……』 しかも正確にはしずかの貞操がかかっているのだ。 恥ずかしくてそんなことは言えない。 「私、疲れたから部屋に戻るわ。ごめんなさい、のび太さん」 出木杉との遭遇で疲れたんだと思ったのび太達はしずかを見送り、ふたたび話しはじめた。 二階の部屋に戻ろうとしたしずかは、下腹部の鈍い重さが耐えきれなくなっていた。 ストレスによるものだろうか。 「ううっ……」 うずくまるしずかに気付いたジュンサーが駆け寄る。 「大丈夫?」 「は、はい。部屋で休めば……」 その時、ジュンサーはしずかの足元に落ちた血痕に気付いた。 「原因はともかく、おめでとう」 医務室に連れられたしずかはジュンサーに不調の原因を告げられる。 いくつかの道具を手渡され、しずかは自分の部屋に帰った。 しずかはベッドの中で泣いている。 ジュンサーがいうには「過度のストレスで初潮が早まった」らしい。 ストレスの原因は出木杉。 そしてこの戦いに負ければ…… 「私、出木杉さんの子供ができちゃうのかな」 その宣告は小学生のしずかにはあまりにも重いものだった。 次の日、三人はトクサネを出ることになった。 旅立つのび太にダイゴが一匹のポケモンを渡す。 「コイツは必ず君の力になってくれる」 「ありがとうございます、ダイゴさん」 三人はダイゴに手を振りながらポケモンに乗る。 ただ、しずかだけは心から笑うことはできなかった。 注:鬼畜出木杉 トクサネを旅立った三人を出木杉は影から見ていた。 「ふふ、しずかちゃんは肝心の事は言わなかったか」 まぁそれでもいい。 いざというときにこれが発覚すれば、のび太達がどうなるか。 それを見るのも一興だ。 そして何よりの朗報は、しずかが初潮を迎えたことだ。 これで完全勝利の暁にはしずかを孕ませ、現実世界でも二人は結ばれるはずだ。 「しかし」 出木杉はひとつだけ気に食わない事があった。 今日もフウとランは退屈そうに挑戦者を待っている。 昨日の挑戦者は最高におもしろかった。 見当違いの理論を振りかざして、結局それが間違いだと認めてしまったあの少年だ。 「あの、ジムに挑戦しにきたんですが」 ワープゾーンから現れたのは一人の少年。 昨日と同じくらいの年齢だろうか? 「ジムリーダーは私たちよ」 「ダブルバトルで勝負だ!」 二人はネンドールとネイティオを繰り出した。 その少年は頭をかきながらポケモンを出す。 「まったく、この作業は面倒だなぁ」 出てきたのはデオキシスただ1体。 「な、なんなの……」 見たこともないポケモンに激しく動揺する二人。 「あいにく、今日はコイツだけしか持ち合わせがなくてね」 デオキシスのシャドーボールがネンドールを戦闘不能にする。 フウとラン、二人がかりでも勝てる相手ではなかった。 注:鬼畜出木杉 「私たちの負けね。じゃあジムバッジを……」 ランがバッジを渡そうとするが、少年はその場を動かずに黙っている。 「どうしたの?」 フウが心配そうに問い掛けると、少年が口を開いた。 「あなた達、ムカつくんですよ」 「え?」 少年がボールから出したのはベトベトン。 ベトベトンはランに襲い掛かり、溶けてランを押さえ込む。 「な、なにするんだ!」 フウが身構えると、少年はそれを制するように口を開いた。 「へたに動くと姉さんの上のベトベトンが大爆発を起こすぞ」 「た……助けて、フウ!」 少年はベトベトンから顔と腰から下だけを出しているランに近付き、語りかける。 「昨日君たちが馬鹿にした少年のことだけど」 二人はぴんときた。 あのノビタという少年のことだ。 「彼は頭は悪いが、それでも僕、出木杉英才のシナリオの中では姫を守るナイト役なんだ」 「そ、それがどうしたっていうのよ!」 口応えするランに張り手をかます出木杉。 「イタッ…!」 「お前らごときが僕達を馬鹿にするな、ということさ」 こいつは普通じゃない。 フウとランは震えが止まらなかった。 注:鬼畜出木杉 「と、いうことで」 ベトベトンがランを拘束したままフウの前にやってくる。 「弟である君がランを犯せば大爆発はしないよ」 「そ、そんな……」 二人は突然の選択に愕然とする。 「さあ、姉さんの貞操と命。どっちをとるんだい?」 フウは無言でファスナーを下ろす。 ランの命には代えられない、せめてランの顔が見えないことが救いだった。 「姉さん、ごめん」 フウは必死でその準備をしようとする。 しかしこの異常事態と姉に対する背徳感で勃つものも勃たない。 「オカズがなけりゃ勃たないってことも知らないの?のび太君を馬鹿にする資格はないな」 出木杉がランのズボンを一気にずり下ろす。 むき出しにされた姉の下半身を見て、フウのそれも元気に立ち上がる。 「姉さん、本当にごめん」 「あ、い、いやぁ…」 フウは自身をその割れ目に当てがうが、最後の一歩が踏み出せない。 出木杉が囁く。 「顔が見えないんだから、ただの尻便器だと思うんだよ」 『姉さんは便器じゃない!』 一瞬身体を強ばらせたフウの尻を、出木杉は勢いよく蹴り押した。 「えっ……」 「ああああああああぁぁぁぁぁっ!」 ランの絶望の叫びが響いた。 次へ