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タ行 鍛冶町「ドラゴンフッド」 転生 誰も謝罪を求めない 誕生日 脱線病 盗賊ギルド 灯火 永久なる大樹 毒 杜樹 杜川語 月妙 時遊び 時渡り人キャンペ 天誅 天空遺跡 天秤が揺れて 大聖堂区 地下下水道 単発セッション 力 使い魔召喚 伝説のチョコレート トキ トイレ デーモンバスター ティレット領 ティアリナ・ウィーニ ツボる チエーロ=バンビーニ ダナデス ダエグ ダウル ダイス タンブルブルータス タイアラッド てふっぴー つざきち ぢんまい ちょこ ちょける
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実績 アンロック方法 ネクロマンサーへの道 チュートリアルを完了する 改善 イラトゥスをレベルアップする 準備万端のネクロマンサー イラトゥスに武器、鎧、指輪、アミュレット、消耗品を装備する 最初の犠牲 初めて戦闘で敗北する アイル・ビー・バック! 初めてのゲームオーバーに苦しむ! たやすいことだ! 「Cakewalk」の難易度でゲームをクリアする もっと人間に苦しみを! 「More Pain!」の難易度でゲームをクリアする 悪は常に勝利する! 「Good Always Wins」の難易度でゲームをクリアする 無敵 「Eternal Harvest」の難易度でゲームをクリアする 抽出 錬金術テーブルを使ってアイテムを作成する 焼成 錬金術テーブルを使ってマナを補充する 蒸留 錬金術テーブルを使ってアンコモン品質以上の部品を作成する(蒸留はミニオンの活力回復なので誤表記?) 変成 錬金術テーブルを使ってある種類の部品を別の種類に変成する ポーション醸造学博士号 ポーションのレシピを全てアンロックする 錬金術の達人 エンディングまでに錬金術の才能を全て取得する 魔法の達人 エンディングまでに魔法の才能を全て取得する 怒りの達人 エンディングまでに憤怒の才能を全て取得する 破壊の達人 エンディングまでに破壊の才能を全て取得する 霊的魅力 オベリスクのアップグレードを完了する 禁断の知識 図書館のアップグレードを完了する 古代の墓 発掘のアップグレードを完了する 静かな水面 死の湖のアップグレードを完了する 怒りの集中 怒りの家のアップグレードを完了する 偉大なモニュメント イラトゥスの像のアップグレードを完了する 大闘技場 闘技場のアップグレードを完了する 回復の手段 霊安室のアップグレードを完了する アンコモン戦士 アンコモン品質以上の部品で作られたミニオンを保有する レア戦士 レア品質以上の部品で作られたミニオンを保有する レジェンド戦士 レジェンド品質以上の部品で作られたミニオンを保有する 生の手術 ミニオン内の任意の部品をアップグレードする(部品の上の▲マークをクリックすると墓堀人の魂を消費してアップグレード可能) ブラッドムーン ベアウルフを作成 呪われた化け物 ミイラをアンロックする ネクロマンサーの弟子 リッチをアンロックする 盲目の怒り ヘッドハンターをアンロックする 世界の狭間の影 シェードをアンロックする 血のメイジ ヴァンパイアをアンロックする 血の精霊 ブラッドファンタズムをアンロックする 偽りの魂 ロストソウルをアンロックする 不浄な骨 ボーンゴーレムをアンロックする 血の狂気 堕ダンピールをアンロックする 野生の飢餓 グールをアンロックする 氷の侵攻 アンフローズンをアンロックする クモ恐怖症 ブラックウィドウをアンロックする ダンジョンクイーン ミストレスを倒す 鍵の番人 キーマスターを倒す 狂った天才 発明家を倒す メックブラザーズ 蒸気マシンを倒す 実験者 マッドサイエンティストを倒す 火の王 火炎術士を倒す ミイラ取りが… 賞金ハンターを倒す 怪物の災い モンスタースレイヤーを倒す 教団の長 グランドマジスターを倒す 甘い復讐 最期の戦闘で勝利する(共同墓地のボスを撃破で入手) チェーンブレイカー-1 鉱山で100体の敵を倒す 山の王-1 ドワーフのトンネルで100体の敵を倒す 傭兵の災難-1 傭兵の兵舎で100体の敵を倒す 暴かれた秘密-1 地下墓地で100体の敵を倒す 人類の悪夢-1 大聖堂で100体の敵を倒す 墓場の呼び声-1 共同墓地で100体の敵を倒す 大砲の餌食-1 戦闘で50体のミニオンを失う チェーンブレイカー-2 鉱山で250体の敵を倒す 山の王-2 ドワーフのトンネルで250体の敵を倒す 傭兵の災難-2 傭兵の兵舎で250体の敵を倒す 暴かれた秘密-2 地下墓地で250体の敵を倒す 人類の悪夢-2 大聖堂で250体の敵を倒す 墓場の呼び声-2 共同墓地で250体の敵を倒す 大砲の餌食-2 戦闘で100体のミニオンを失う チェーンブレイカー-3 鉱山で1000体の敵を倒す 山の王-3 ドワーフのトンネルで1000体の敵を倒す 傭兵の災難-3 傭兵の兵舎で1000体の敵を倒す 暴かれた秘密-3 地下墓地で1000体の敵を倒す 人類の悪夢-3 大聖堂で1000体の敵を倒す 墓場の呼び声-3 共同墓地で1000体の敵を倒す(1周で20戦闘=80体撃破で計算すると12.5周必要) 大砲の餌食-3 戦闘で250体のミニオンを失う 有名な研究者 人物図鑑で全ての敵をアンロックする
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「キリト……!」 声を上げて近づいてきたのは、彼女だった。 彼女は安堵の感情を顔に浮かべ無防備にもこちらに突っ込んでくる。 広々とした草原ではその姿が遠くからでもはっきり見えた。先のエリアと打って変わって解放感のある空の下、俺と彼女は出会ったのだ。 その時、俺は覚えた感情は果たして何と呼ぶのが正しかっただろうか。 分からない。 先のメールのときだって、呆然とする俺の中にもひどく冷めた俺が居たと言うのに。 今の俺は完全に思考を拒否してしまっていた。 そう、拒否感だ。 敢えて名を付けるのならば、恐らくそれが正しい。 「キリト!」 俺がそんな目眩のような感覚に囚われているのを余所に、彼女は勢いよく駆け寄ってきた。 途中息が上がりそうになりながらも、その顔に浮かぶ安堵の笑みは――懐かしい、記憶にあるそれだ。 「良かった……会えて」 俺の下までやってきた彼女は息を整えた後、手を取り俺を見上げた。 黒い髪が揺れ、潤んだ瞳が陽の光を反射して煌めく。手と手で触れ合った瞬間、暖かい感触が溶け込むように広がっていった。 そのどれもが記憶にしまい込んだ筈の彼女そのもので、俺は思わずうめき声を漏らしていた。 「……キリト?」 俺の様子に気付いたのか、彼女は怪訝な様子でそう問いかけてきた。 俺はしばらくなにも言えず、凍るような沈黙を経ても、 「――サチ」 そう、彼女の名を呼ぶのが限界だった。 震えてはいなかったと思う。 声というよりは、吐息のような、消え入りそうな呼びかけで、俺は彼女をサチと認めたのだ。 サチ。 かつてアインクラッドで一度はギルドを共にし、親しくし、そして俺が喪った人。 ギルド『月夜の黒猫団』の隆盛と壊滅、そしてその後の一縷の望みを掛けたクリスマスのイベントまで含めて、俺の中で決して癒えない傷となった。 二度と戻らない筈だった。だからこれはあり得ない。しかしそのあり得ないことが、こうして現実となっている。 呼びかけに含まれた複雑な思いを理解した訳ではないだろう。 しかし、サチは何かを察し、俺から手を離した。そしておずおずと後ずさりしていく。 結果数歩の距離が、俺とサチの間にはできていた。 再び静寂が訪れた。 俺も、サチも、そして隣で事情を把握できずにいるシルバー・クロウも、皆何も言うことができなかった。 「やあ」 それを破ったのは、一人の男性の声だった。 「こうも上手く会えるとはな。運がいい。サチから話は聞いていたよ」 その男は腕に巻きついた異様な拘束具を引きずり、悠然と俺たちの下にやってきた。 青い髪をした長身の男性アバター。サングラス越しに見せた視線は穏やかなものであったが、しかし突き離すような冷たさも同時に湛えている。 彼は俺と対峙するサチに寄り添うように立ち、 「本当に会えて良かったよ――キリト」 そう告げて、俺に手を差し伸べてきた。 俺は彼のことを知らない。 しかし、直観的に似ている、と思っていた。 かつての強大な壁であり、そして俺に世界の種を託し去っていた、あの男に。 ◇ オーヴァン。 そうその男は名乗った。 「本当に運が良かった。もう少し遅ければすれ違っていただろうからね」 そう言ってオーヴァンは微笑む。確かにその言葉通りだった。 ファンタジーエリアにやってきた俺とシルバー・クロウは日本エリアを目指し西進していた訳だが、話によれば彼らは今まで遺跡を探索していたらしい。 一通り探索を終えた後、次なる目的地としてここから少し南に位置する大聖堂を目指していたという。 となると、少しでもタイミングがズレていれば二つのパーティがこうして相対することはなかったことになる。 だから恐らく幸運なのだろう。これは。 「オーヴァンさんは大聖堂を知っているんですか?」 「ああ、ちょっと大聖堂という場所に心当たりがあってね。もしかして知っているところじゃないか、そう思った訳だよ。 仮にそうなら是非とも調べてみたい場所でもあるんだ」 シルバー・クロウとオーヴァンが言葉を交わしている。 先の接触を経て、俺たちと彼らは共に行くことにしていた。 当然だがサチも、そしてその同行者であったオーヴァンもまたデスゲームに乗る気はないらしい。 ならば同行を拒否する意味はない。ましてや俺とサチは顔見知りであるのだから。 「そうなんですか。じゃあとりあえず聖堂に行って、それから日本エリアに、という感じですかね」 「そうしてくれると助かる。すまないね、君たちの予定を狂わせてしまって」 「い、いやいや、僕たちこそ一緒に来てくれて助かります。ね、ねぇキリト」 シルバー・クロウの言葉に俺は「ああ」と短く答えた。 もう少し何か言うべきだったのかもしれないが、今の俺にそんな余裕はなかった。 先程から喋っているのはシルバー・クロウとオーヴァンばかりだ。 シルバー・クロウが何とか会話を取り継ごうと話題を出し、それをオーヴァンがフォローするように答える。大体そんな流れだ。 そんなことになっているのは、言うまでもなく俺とサチのせいだろう。 「…………」 サチは出会って以来ずっと黙っている。オーヴァンの影に隠れ、不安そうに俺を見ている。 今しがたの再会で、俺の様子がおかしいことに気付いたのだろう。 それが彼女を不安にさせている。そんなことは言うまでもなく分かっていた。 しかし、俺は未だに何もサチに言えていない。 どんな言葉を掛ければいいのか、俺はどうするべきなのか、全く見えなかったからだ。 しばらくすると、ぎこちなかった会話も途切れた。各人何も言わず、ただ黙々と歩いている。 シルバー・クロウも話を続けることを断念したのか、少し肩を落とし後ろを歩いている。少し無理をさせてしまった。 そんな気まずい沈黙はどれほど続いただろうか。感覚としてそれほど長くなかったようにも思う。 「見えたな」 その沈黙を破ったのは、やはりオーヴァンだった。 見上げると、そこには巨大な橋の上に築かれた巨大な建築物があった。 その荘厳な造りはなるほど確かに大聖堂、と呼ぶに相応しい。 そしてネットスラムの時と同じく、その聖堂はふっと湧いたように感じられた。やはり遠近エフェクトが強まっているのだろうか。 「グリーマ・レーヴ大聖堂。やはり……」 隣りでオーヴァンがぼそりと呟いた。 グリーマ・レーヴ大聖堂。それがこの施設の名のようだ。 「ところで調査の方だが二手に別れるというのはどうだろうか」 大聖堂に近付き、橋の上までやってきたところでオーヴァンが不意にそう提案した。 その言葉は、まるで耳元で囁かれるようにすっと頭に入ってきた。 「聖堂の中と外、パーティを分割して調査する、という訳だ。恐らくそちらの方が効率が良いだろうな。 どうだろう? 外の調査はキリトとサチにお願いしたいのだがね」 言われた途端、俺は身を固くし、そして同時にサチが肩をビクリと上げたのが見えた。 ◇ 「さっきの提案ってやっぱり……」 「ああ、キリトとサチの間に会話の場を設けた方が良いと思ってね」 ハルユキはオーヴァンと共に大聖堂におずおずと足を踏み入れていた。 そうして訪れた施設を見渡してみる。 ステンドグラス越しに淡く滲む光、がらんと広がる天井、そして奥に佇む誰も居ない台座。 大聖堂、の名の通りそこは静謐で神聖な雰囲気が広がっていた。 (何ていうか、雰囲気あるなぁ) 如何にもRPGに出てきそうな「聖なる場所」だ。聖なる剣を抜いたり、死者を蘇生したりするような感じの。 ポリゴンのクオリティは正直加速世界のそれと比べると物足りないが、それでも写実的な美しさとはまた別の独特の雰囲気がある。 (それに……三十年前でこのグラフィックは凄いよな) ハルユキはそう思った後で、ちょっと偉そうかな、と自分の考えに苦笑した。 まさか自分がこんな「未来人」的なことを考えることになるとは。 (時間移動って、やっぱり本当なんだよな。キリトだけでなく、オーヴァンさんも……) これまでの接触で分かったことを、ハルユキは彼なりに脳内で纏めてみる。 キリト。彼はA.D.2026年からの人間らしかった。それもあの「ソードアート・オンライン事件」に深く関わった人間だと言う。 彼とはこのデスゲームに来る前、一度奇妙なデュエルをしたことがある。キリトが言うにはそれは量子コンピュータの偶然の作用かもしれないとのことだった。 平行世界とか、時間流とか、よく分からないので何ともいえない。しかしこうして直に会えてしまっているのだから、信じるしかないのかもしれない。 このエリアで出会ったサチという少女アバターは、キリトと旧知の仲らしい。らしいが、どうやら複雑な関係があるらしく、キリトもサチも様子がおかしかった。 そのことを尋ねるのは、ハルユキにはできなかった。軽々と触れてはいけないような気がしたのだ。 そしてオーヴァン。 彼はA.D.2017年の人間……らしかったが、しかしどうやら事はそう単純な訳でもないようだ。 (バルムンクさんも言っていたThe World……本当の意味で別の世界ってことか) キリトの語る過去はハルユキにとっても違和感のないものだった。 無論知らないこともあったが、しかしそれは自分の無知と納得できるようなものばかりだった。 しかしオーヴァンの語った過去の話――プルート・キスやネットワーククライシスといったネット社会を揺るがすような事件を、ハルユキは全く知らなかったのだ。 キリトもそれは同様のようで、ここに到って事態は単純な時間移動という訳でないことが分かってきた。 自分を包む世界レベルの話。正直、ハルユキの理解を越えているような感じがある。 (……でも、こんなことは許しておけない。それは変わらない) 何をするかは分かっている。仲間を募ってこのデスゲームを打倒すること。それだけだ。 なら、迷うことはない筈だ。 その為にも、オーヴァンたちと出会えたのは本当に幸運だった。 二人だったパーティが、四人に増えた。この調子で仲間を増やしていくことができるのならば、ゲーム打倒も難しくないのかもしれない。 ハルユキはそんな希望を持っていた。 フォルテの戦いで、キリトの同行者――レンさんというらしい――を助けられなかった、ということへの負い目は正直未だにある。 今思い返しても胸が痛むし、キリトに申し訳ないと思ってしまう。 しかし、他でもない彼自身にその気持ちを否定され、そして短い間とはいえ一息吐けたことで幾分冷静になれていた。 つらい。が、しかし全てを背負い込んで前に進めなくのは、駄目だ。 (キリトとサチさんは上手く話を付けられるといいけど……) 共に戦う為にも、あの二人の間にあるわだかまりを解消して欲しい。 オーヴァンもそう思ったからこそ、こんな計らいをしたのだろう。 見たところキリトもサチも敵意がある訳ではない。寧ろ互いに好意を持っている。 そのあたりの機微は未だに上手く掴めないハルユキだが、それでもそれくらいは分かった。 ならば、話せば分かる筈だ。かつての親友との一件を思い出す。確執はあった。しかしそれを乗りこえ、自分たちは再び親友として絆を深めることができたのだ。 「なるほど……ここはこちらのThe Worldのものか。となると……」 オーヴァンの呟きに、ハルユキはハッとして顔を上げた。 ぼうっとしていたハルユキを尻目に、オーヴァンは大聖堂の奥で何かを調べている。 ただサボっている訳にも行かない。ハルユキは急いで彼の下へ走った。コツンコツン、と足音が広く響き渡る。 奥まで行くと、オーヴァンが誰も居ない台座をじっと見つめていた。 正確には、その台座に刻まれた奇妙な三筋の爪痕を。 「何ですか? これ」 その異様な様子にハルユキがそう疑問を呈すると、オーヴァンはゆっくりと振り向いて、 「爪痕(サイン)だよ」 「え?」 「この現象の名前だ。The Worldで幾つかのフィールドにあったグラフィック異常だ。 何なのかはよく分からない。しかし、これを名付けた人はこう思ったそうだ」 これは前兆だ、と。 オーヴァンはそう告げた。 ただならぬ様子にハルユキはごくん、と息を呑みそのサインとやらを見つめた。世界を抉り取ったようなその傷は、時節鈍く明滅しており不気味だった。 確かに何か、何か良くないことが起きそうな、そんな気にさせる爪痕だった。 「前兆……」 「そう前兆……まぁただのバグかもしれないがね。 ――それよりシルバー・クロウ」 オーヴァンはそこでハルユキに問いかける。 「教えて欲しい。先ほど君が言っていたネットスラムの少女のことを。 彼女が花を残したのは本当かい? 彼岸花……リコリスの花を」 と。 ◇ 聖堂を周りを取り囲むようにぽっかりと空いた穴――オーヴァンによれば地底湖の名残らしい――を歩き回りながら、俺は一人煩悶した。 視界の隅ではサチがこちらを伺っているのが見える。共に意識している。しているのだが、会話はなかった。 オーヴァンの提案により、サチと共に聖堂の調査をすることになった俺たちだが、相変らず気まずい沈黙が二人の間には横たわっていた。 何とかして声を掛けようと思うのだが、言葉が出ない。 無論オーヴァンの意図は分かっている。調査だの何だのは所詮口実で、とにかく俺とサチが何かしら決着を付けることを期待してるのだろう。 とはいえ、俺は未だに答えを出せずにいる。 もう喪ってしまった筈の少女、死者であるサチと、今になってこうして遭い見えたことに。 「……キリト」 沈黙に耐えかねたように、サチが口を開いた。 その顔には不安が滲んでいる。そのことに胸が痛むが、同時にきっと俺も似たような顔をしている、そう思った。 「……何だ、サチ」 それでも俺は無理やり笑ってみせてそう答えた。 するとサチもぎこちない笑みを浮かべた。 だが二人の間には距離があった。数歩程度の、しかし決して触れ合えない程の距離を置いて、俺とサチは話している。 「会えて……良かったね。いきなりこんなことに巻き込まれて、本当、困っちゃったよ」 「ああ、そうだな。俺も本当、理解ができなかった」 「うん。まぁでも……アインクラッドに閉じ込められるようになった時も、こんな感じだったよね」 拙いながらも何とか会話を続けつつ、俺はある種確信した。 今ここに居るサチは、俺の記憶の中に居る、あのサチだと。 もしかしたら俺は期待していたのだろうか。実はこのサチは、あの時のアバターを使い彼女を騙る偽物であることを。 そしてもう一つ分かったことがある。 このサチは、まだ死を知らない。話の中から見える情報を総合すると、彼女にとっての黒猫団はまだ壊滅しておらず、俺もまたそのメンバーに入ったままだ。 そんな「時間」から連れてこられたのだろう。 シルバー・クロウの一件がなければとてもじゃないが、こんなにもすんなりと時間移動を連想できなかっただろう。 逆にいえば、彼と出会いその存在を認めた以上、このサチが俺の知るサチでないと否定する根拠はなくなった、ということになる。 そこまで俺は気付いた。 何で今更――、そんなことを考えている自分に。 「ねぇキリト」 不意にサチが改まって呼びかけてきた。 ぎこちない笑みを消し、不安に揺れる瞳で俺を見据え、 「どうしたの? 何か、変だよ。様子」 その問い掛けに俺は言葉を詰まらせた。 このサチにしてみれば、確かに俺の態度は変としか言いようがないだろう。 恐らく彼女の主観では「今」はアインクラッドに囚われて半年程度経ったところの筈だ。 だが俺の主観では「今」はA.D.2026年6月だ。およそ四年のズレがあることになる。 そのズレを俺はまだこうして認識できるが、サチは全く予想付いていないだろう。 これがリアルならまだ身体的特徴の差が現れているだろうが、今の俺の身体はSAOアバター――あの時と何ら変わっていないのだ。 だがそれは表面的な事柄だけだ。 俺はこの四年で色々なことを経験した。 その差が、ズレが、こうしてサチとの隔絶を生んでいる。 「……何でもない」 俺は苦しんだ末、そんな歯切れの悪い言葉を漏らした。 嘘だ。そんなことはサチも言うまでもなく分かっていただろう。 だが、彼女は何も言わなかった。ただ切なそうに顔を俯かせただけだ。 「ごめん」 俺は力なくそう謝った。サチは「ううん」と首を振るが、その様子がより俺の胸を痛めた。 本当は何もかも言うべきなのかもしれない。このまま彼女を苦しませるくらいなら、俺が今抱えている隔絶を全てぶちまけてしまった方が良い。 そう思いはするが、しかし俺は何も言えなかった。 俺が見た四年。彼女が見れなかった四年。そのことを告げれば、きっと俺自身が持たない。 ただでさえ仲間の死を告げられたところなのだ。正直、事は俺のキャパシティを当に越してしまっている。 本音を言えば全てを投げ出してしまいとさえ思った。 「サチ」 しかし、同時にそれだけは駄目だとも思う。 俺はこうして生きている。ならば、目の前に広がる現実を見ていくしかないのだ。 そう思ったからこそ言った。待ってくれ、と。 「少し時間が欲しい。少しでいいんだ。整理する時間が欲しい」 「…………」 「必ず、説明する。だから待っていて欲しんだ。俺が、その、答えを出すのに」 その言葉にサチは沈黙の末こくん、と頷いた。 きっとまだ納得は行っていないだろう。顔をみれば、未だに彼女が不安を抱えているのが分かる。 それでも今の俺にはこれが精一杯だった。 「……行こう。クロウたちと話したい」 「うん……そうだね」 再びぎこちない笑みを浮かべつつも、俺たちは聖堂――グリーマ・レーヴだったかに向かっていく。 「なぁところであのオーヴァンっての、どんな奴なんだ。何か謎めいた感じだったけど」 「オーヴァンさんは良い人だよ。最初に私を見つけて、それからレアなアイテムをトレードしてくれて……」 途中、何とか話題を探して会話を続ける。 可能な限り昔のように――思えばあの頃も俺は隠し事をしていたのか――と思っても不自然さは残った。 しかしそれでも何とかして笑い、他愛ないことも交えて話していく。 二人の間にはまだ距離があった。俺は何とかそれを埋めたい。 できる筈だ。今は駄目でも。時間を掛ければ、きっと。 そうして大聖堂の前までやってきた。 オーヴァンはここで何かを調べたいといっていたが、一体何があるのだろうか。 ふとそれを尋ねるのを忘れていたことに気付いた。いや、もしかしたら聞いたのかもしれないが、先程の道中はサチのことで頭が一杯で、ほとんど会話を聞いて居なかった。 まぁ改めて聞けばいいか。そう思っていた時、サチが聖堂の扉を開け放った。 そして、 「え?」 ◇ ハルユキは今後の展開に希望が見えてきたことで、心躍る気分であった。 今現在彼が持っている何かしら希望となりそうな要素――ネットスラムで出会ったあの少女をことを、何とオーヴァンは知っているというのだ。 「お前の言う少女があのデータであるのなら、そうだな、もしかしたら脱出に繋がるかもしれない」 「ほ、本当ですか?」 「ああ、The Worldにまします女神……その影のようなものだ。 システムを超越する力の破片。それがGMすら管理できないようなデータであるのならば、あるいはキー・オブザトワイライトとなり得るか」 聞けばオーヴァンはネットワークを統括する調査機関のような場所に籍を置いていたらしく、この手の現象に知識もあるらしい。 そんな彼とこうして出会い、情報を共有することで新たな展望が見えた。 喪ったものもあった。けれど、着実に前に進んでいる、そんな感覚がある。 「じゃあ、このクエスト上手くやれば、GMを倒せるかもしれないってことですね」 「ああ……その可能性はある」 オーヴァンの言葉には不思議な力強さがあった。 その強さは聞く者を惹きつける。不思議な魅力がある、というべきか。 レギオンの<王>たちと似通った雰囲気がオーヴァンにはあった。 彼も元のゲームではギルドマスターをやっていたというし、トップに立つ者特有の風格、とでも言うのだろうか。 (先輩……大丈夫です。脱出の道が見えてきました) 黒雪姫。彼女もまたこのデスゲームのどこかに居る筈だ。 先程のメールにその名はなかった。なら、まだ脱落していない。 キリトと違って、脱落者リストに知った名はなかった。いやバルムンクの名はあったが、それは既に分かっていたことだ。 彼の死はどうしようもなく辛かったが、同時に黒雪姫の名がなかったことへの安堵があった。 無論黒雪姫――ブラック・ロータスはハルユキよりずっと強い。 だから大丈夫だと信じている。 自分がこうして仲間に恵まれたように、彼女も仲間を募ってGM打倒の道を進んでいるに違いない。 (だから、生き残りましょうね、先輩) この場に居ない彼女に、ハルユキは言葉を送った。 この願いはきっと届く。そう信じて。 それを―― 「しかしnoitnetni、intention……意思、か」 それを遮ったのはオーヴァンの呟きだった。 「全く因果なものを求めるな。女神の出来こそない、その残滓は。 時を越えてまでそんな役割を与えられるとは、本当に哀れなものだ。当の昔に擦り切れているだろうに」 「オーヴァンさん……?」 「なぁ、シルバー・クロウ」 オーヴァンは微笑みを浮かべ、ハルユキに近づいてきた。 その靴音が聖堂内に不気味なまでに響き渡った。 そして、ハルユキに向き合い、 「お前は真実をどう思う?」 「え……?」 「終わりを見たい……彼岸花の少女にお前はそう答えたのだろう? それがたとえどんなものでも、どんな真実がそこに待っていようと、終わりを求めると」 ハルユキは何も言えなかった。 オーヴァンの真意が掴めなず、ただその異様な雰囲気に気圧されていた。 「真実まで辿り着いたのなら、恐らくそこには終わりはある」 オーヴァンの言葉は続く。 その奥で前兆たる爪痕(サイン)が不気味に蠢いた。 「だから、この爪痕の付け方を教えてやろう、シルバー・クロウ。 それがお前の求めた――」 からん、と何かが外れる音がした。 それが、オーヴァンの腕を包み込む拘束具が外れる音だと気付いた時、ハルユキは、 「終わり、だ」 一つの真実を知った。 ◇ 「え?」 サチが短い声を漏らした。 開いた聖堂の扉――その奥に彼女は何かを見たのだ。 「あ、え……そんな……!」 震える手でサチは口元を抑えた。そして、俺の方を振り向き、驚愕を滲ませた顔を向けた。 信じられない、その時のサチの顔にはそんな思いが宿っていた。 そして、 「いや――!」 叫び声を上げ、サチは猛然と走り出した。 俺を取り残し、聖堂とは逆の方へ走っていく。すれ違いざまにサチは俺を見なかった。 ただ一人で、どこかへ逃げようとしている。 「何だ、何があったって」 呆気に取られていた俺は、急いで聖堂の中を見た。 サチは一体何を見たと言うんだ。 開けっ放しにされた扉の先。そこにあった光景は、俺の想像を絶するものだった。 「何だよ、これ……」 そこには散乱するオーヴァンのものと思しきアイテムと―― 「何だっていうんだ……!」 ――その身に三筋の爪痕を刻まれた、シルバー・クロウの倒れ伏す姿だった。 俺は急いでシルバー・クロウの下へ近寄った。とにかく急いでその身を抱え、叫ぶように呼びかけた。 そして気付いてしまった。 シルバー・クロウのメタリックなボディが、不自然なまでに軽いということに。 その身体がまるで蒸発するように薄れていくことに。 彼がもう話すこともできないということに。 それが意味することは、ただ一つ。 「何で……何で、こんな……」 俺は愕然とシルバー・クロウの身を抱えた。 何度も呼びかける。こんな筈がない。こんなことはあり得ない。そう思う為に。 しかし、シルバー・クロウの身体はどんどん軽くなっていく。 見れば足下から彼のデータが霧散していた。 「ははっ……どういうことだよ、これ」 乾いた笑い声が漏れた。 目の前で見せつけられたレンの死、無慈悲に告げられたリーファやクラインの死、そして死んだ筈のサチとのあり得ない再会。 様々な理不尽を、ここまで俺はこのゲームで見てきた。 その極めつけが、これだというのか。 俺の手の中のシルバー・クロウはどんどん軽くなっていく。 存在が消えてゆくのだ。 絶望的な面持ちでそれを眺めていると、最期に彼は何かを言った。 ――先輩。 その言葉を言った瞬間、彼のアバターは光となって消え失せた。 後に残ったのは、彼の身からドロップした幾多のアイテムと、生々しく残った三筋の爪痕だけだった。 それを見た時、「あ……」とそんな声が俺の喉から漏れた。 しばらく俺は放心状態でその場に座り込んでいた。 今度こそ、理解を越えた。そう思ったからだ。 もう全てを投げ出してしまいたい。全てから逃げ出し、このあり得ない現実を―― 「サチ」 そこで俺はハッとした。 投げ出してはならないことを。逃げ出してはならないことを。 聖堂の入り口を振り返った。遠くに広がる草原と森が垣間見えた。 サチ。彼女は、どこに行った。 「駄目だ、サチ」 闇雲に逃げ出したサチのことを思い出し、俺は立ち上がった。 彼女は逃げたのだ。俺と同じく、目の前の現実から逃げ出したくて、衝動的に全てを放り投げようとして。 そしてその「現実」の中には、俺も入っているだろう。 少なからず頼りにしていた俺が見せた不自然な態度、煮え切らない態度、それも含めサチは逃げようとした。 だから、サチはあの時俺を見なかったのだ―― 「危ない。そっちは」 そのことを理解し、俺はサチの後を追うべく大聖堂を後にした。 このままでは彼女の身が危ない。衝動的に逃げ出して一人になったところを、フォルテのようなレッドプレイヤーに遭遇すれば、どうなるかは日の目を見るより明らかだった。 何なんだ、この状況は。 走りながら俺は今自分の見た光景に反芻した。 倒れ伏すシルバー・クロウ。散乱するアイテム。刻まれた三筋の爪痕。 あれが意味することは一体何だ。大聖堂の中で何があったというのだ。 まさか――大聖堂の中でオーヴァンもシルバー・クロウも討たれたというのか。 俺は何とか思考を纏めようとするが、駄目だった。 思考全てに靄が掛かったようで、何一つクリアにならない。俺は今焦りに支配され、冷静さを失っている。 時間が、時間が欲しい。そう心の底から思った。 しかし事態は無慈悲に進行していく。 俺は一先ず全ての考えを保留にし、サチを追うことだけに専念することにした。 何一つ分からない事態の連続だが、もう二度とサチを失ってはならない。 それだけは確かだ。確かの筈だ。 その一念の下、俺はサチを追って全速力で走り続ける。 草原の向こうには、不気味に広がる森が見えた。 【シルバー・クロウ@アクセル・ワールド Delete】 【D-6/ファンタジーエリア/1日目・朝】 【サチ@ソードアート・オンライン】 [ステータス] HP100% [装備] 剣(出展不明) [アイテム] 基本支給品一式、AIDAの種子@.hack//G.U. [思考] 基本:死にたくない 1 ――――――― [備考] ※第2巻にて、キリトを頼りにするようになってからの参戦です ※オーヴァンからThe Worldに関する情報を得ました 【キリト@ソードアート・オンライン】 [ステータス]:HP45%、MP95%(+50)、疲労(大)、SAOアバター [装備]:虚空ノ幻@.hack//G.U.、蒸気式征闘衣@.hack//G.U.、小悪魔のベルト@Fate/EXTRA [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~1個(水系武器なし) [思考・状況] 基本:絶対に生き残る。デスゲームには乗らない。 0:――――――――。 1:とにかくサチを追う。それ以外のことは―― [備考] ※参戦時期は、《アンダーワールド》で目覚める直前です。 ※使用アバターに応じてスキル・アビリティ等の使用が制限されています。使用するためには該当アバターへ変更してください。 SAOアバター>ソードスキル(無属性)及びユニークスキル《二刀流》が使用可能。 ALOアバター>ソードスキル(有属性)及び魔法スキル、妖精の翅による飛行能力が使用可能。 GGOアバター>《着弾予測円(バレット・サークル)》及び《弾道予測線(バレット・ライン)》が視認可能。 ※MPはALOアバターの時のみ表示されます(装備による上昇分を除く)。またMPの消費及び回復効果も、表示されている状態でのみ有効です。 再び静寂が訪れた大聖堂の中、ゆっくりと動き出す人間が居た。 からんからん、と金属がこすれ合う音が響く。がらんとした大聖堂をそれだけが支配していた。 オーヴァン。 皆が去ってしまった大聖堂に、彼だけが残っていた。 「種は撒いた」 彼はぼそりと呟き、開け放たれた扉をじっと見据えた。 その向こう側のどこかに去っていた二人が居る。キリトとサチ、彼らは種だ。 新たな争いを生む種。彼らの存在はきっとゲームを加速させる。 それをばら撒いたのは、他でもない自分だ。 サチは元より不安定な素振りを見せていた。 そんな彼女は自分に庇護されることにより一応の安定を見せていたが、ふとした拍子に崩れてしまいそうな、そんな危うさが垣間見えていたのだ。 自分に依存していた、といってもいい。 先の仕様外エリアへの侵入の件についても、サチはオーヴァンに対し深くは聞いてこなかった。自分の知るゲームの裏技を試してみた、という自分の言葉をそのまま信じているようだった。 問題はそれを何時「種」とするかだったが、その契機は幸運にも向こうからやってきてくれた。 (キリト――お前に会えたのは本当に幸運だった) ウラインターネットからやってきたという二人組。 彼らとの接触はオーヴァンにとって非常に有意義なものであった。 シルバー・クロウがネットスラムで見たリコリス――アウラの失敗作の存在、それが求める「意思」のプログラム、そして異なる時間と世界の概念。 どの情報もこのデスゲームの裏側を埋める欠かせない欠片だった。 先のGMとの接触と併せて、早い段階でそれらを察知できたのは、幸運だったとしか言いようがない。 (いや、あるいは不運でもあるのか) もう一つの欠片。それがサチが求めていた一人のプレイヤー、キリトだ。 最初は彼との合流はサチを安定させるかと思った。しかしそうではなかった。サチを見たキリトは明らかに動揺していた。 知った仲だというのに、彼は喜びでなく驚愕の表情を浮かべていたのだ。 それを見た時、オーヴァンは悟った。 サチが先の未来で辿る筈の未来を。そしてキリトが抱える隔絶を。 (死に繋がる未来……それは新たな種だった) このデスゲームに時間の捻じれが生じていることは、転移門の仕様や脱落者リストに連ねていた一つの名から予想が付いていた。 信じがたい話ではある。しかし如何なるプロセスを経ているにせよ、何かしらズレがあると仮定すると、様々な疑問が氷解するのだ。 ならば認めるべきだ。認めて、状況を利用する術を探らなくてはならない。 その結果がこれだ。 サチの種を芽吹かせるのに、キリトの抱えた隔絶は絶好の契機となった。 見るに、サチはキリトに対し精神的に少なからず依存している。 それはアインクラッドという極限状況下故のことだったのだろうが、このデスゲームではそれは更に顕著になっているようだった。 そこでキリトが見せた拒絶の意は、彼女にしてみれば多大なショックを与えただろう。 一度は落ち着かせていた不安がぶり返す。精神の均衡が崩れる。彼女は再び不安定な状態になった。 とはいえ、それも一時的なことの筈だ。 時間さえあればキリトも歩みよることができただろう。そして告げられる真実が如何に残酷であれ、近しい仲に戻れたことは容易に想像が付く。 焦ることなく、ゆっくりと話す機会さえあれば。 だが、それでは駄目なのだ。 種は芽吹かない。争いを加速させることを当面の目標にしている以上、そのままにしておく訳にはいかない。 だから、オーヴァンは彼らに時間を与えなかった。 間を置かず新たな痛みを用意する。 情報を聞き出したシルバー・クロウをPKし、同時に自分も死んだように偽装する。 それで、彼らの種は芽吹く。元より爆発寸前だったのだ。彼らは己の理解を越えた事態に逃避する。 特にサチは、キリトという精神的支柱を見失い、加えてオーヴァンという庇護者の喪失という事態が起これば、間違いなく暴走するだろう。 既に彼女にはウイルスコアとのトレードという形でAIDAの種子を仕込んでいる。困った時に使えるもの、という言葉を添えて。 後の結果は日の目を見るより明らかだ。 キリトの方もかなり精神的にまいっているようだった。 現に今の彼は、物陰に隠れているだけだった自分の存在に全く気付く様子がなかった。ならば彼も争いの種となり得る。 何とか冷静になろうとしているようだが、無理をしているのはすぐに分かった。 時間があれば自分を取り戻すかもしれないが――果たしてそれがあるかどうか。 「これで満足か……榊」 言いつつ、彼は散らかしたアイテムを拾っていく。 元から持っていたものと、シルバー・クロウが遺したもの、そのどちらも、だ。 シルバー・クロウ。 揺るぎない強さを持っていた、彼にはここで死んでもらうことになった。 皮肉な話だ。ここに集った者の中で最も安定していた彼は、逆にそのことで死の原因を作ってしまった。 せめて彼が希望以外の負の感情を見せていれば別だった。しかし、彼は負の思いを既に克服した様子だった。 争いの種として、彼は不適格だったのだ。 「……彼が最期に見せた光、あれは……」 彼は間違いなく強かった。 オーヴァンがAIDAを解放し、一撃を喰らった後も、シルバー・クロウは決して諦めはしなかったのだ。 どころか何かを悟ったようにその手に光を灯した。その過剰光は明らかに異質だった。あれは恐らくAIDAのような、システムを超越したものの類だ。 それで彼は自分に立ち向かってきた その光に込められたものが憎しみであったのならば、あるいは種と成りえたかもしれない。 しかし、シルバー・クロウの光に宿っていたのは、そのような感情ではなかった。 もっと眩いもの。憎しみでなく、救いの意志がそこにはあった。 まるでオーヴァンに巣食うAIDAを浄化しようとでもいうように、シルバー・クロウはその過剰光を向けてきたのだ。 それを自分は踏みにじった。 元よりHPが危険域だったシルバー・クロウを屠るのは、そう難しいことではなかった。 それともあの光を受け入れていれば自分は救われたのだろうか、オーヴァンの頭にそんな仮定がもたげる。 が、すぐに打ち消した。救いなど、もはや自分は求めていない。 一瞬とはいえ戦闘したことで、オーヴァンは僅かながらダメージを追っている。 イリーガルスキル【復元の隣人】でそれを回復しつつ、オーヴァンは今後の方針を練った。 種は撒いた。彼らはもう放っておいてもいいが、もう少し様子を見るべきか。 それともシルバー・クロウから聞いたリコリスの調査に乗り出すべきか。 どちらにせよ、しばらくは忙しくなりそうだ。 GMとの関係を維持する為にも、継続して争いの種を撒いて行かなくてはならない。 同時に彼らに対抗できるような情報も適宜探っていく。時間に余裕はなかった。 一通りアイテムを回収した後、オーヴァンはグリーマ・レーヴ大聖堂を後にした。 志乃やハセヲが争いの渦に叩き込まれたように、この場は再び惨劇の舞台となった。 The Worldの女神はもうここには居ない。加護を失ったこの聖堂は、よほど災厄に好かれているらしい。 (ワイズマン……いや、八咫。ここのお前は果たして何時のお前だった) そんな聖堂を去りながら思うのは、かつての友人のことだ。 女神と世界を誰よりも愛しながら、その一方で彼らからの愛には満足できなかった哀れな少年。 さようなら八咫坊ちゃん。この場で命を落としたという彼に、オーヴァンは一人別れを告げた。 そうしてオーヴァンは一人道を行く。 たった一人で。その道が真実に繋がると信じて。 【D-6/ファンタジーエリア・大聖堂/1日目・朝】 【オーヴァン@.hack//G.U.】 [ステータス] HP90%(回復中) [装備] 銃剣・白浪 [アイテム] 不明支給品0~2、基本支給品一式 DG-Y(8/8発)@.hack//G.U.、ウイルスコア(T)@.hack//、サフラン・アーマー@アクセル・ワールド、付近をマッピングしたメモ、{マグナム2[B]、バリアブルソード[B]、ムラマサブレード[M]}@ロックマンエグゼ3 [思考] 基本:ひとまずはGMの意向に従いゲームを加速させる。並行して空間についての情報を集める。 1 利用できるものは全て利用する。 2 AIDAの種子はひとまず保留。ここぞという時のために取っておく 3 茅場晶彦の存在に興味。 4 トワイスを警戒。 5:今後の方針を検討。 [備考] ※Vol.3にて、ハセヲとの決戦(2回目)直前からの参戦です ※サチからSAOに関する情報を得ました ※榊の背後に、自分と同等かそれ以上の力を持つ黒幕がいると考えています。 また、それが茅場晶彦である可能性も、僅かながらに考えています ※ただしAIDAが関わっている場合は、裏に居るのは人間ではなくAIDAそのものだと考えています ※ウイルスの存在そのものを疑っています 057 終焉トラジコメディ 投下順に読む 059 対主催生徒会活動日誌・1ページ目(準備編) 057 終焉トラジコメディ 時系列順に読む 059 対主催生徒会活動日誌・1ページ目(準備編) 037 Confrontation;衝突 キリト 062 死地へ 037 Confrontation;衝突 シルバー・クロウ Delete 045 デバッグモード サチ 062 死地へ 045 デバッグモード オーヴァン 078 運命の出会い
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【国名候補案】 カルナ・ティルス/ [人物] カルツ 物質を司る神が降臨したとされる地 (実際は物質の元となる波動が強い土地) 鉱石が多く採れる 後にカーティル王国となる カーティル王国/ 物理体を重視する 神聖アフナトキアと長年敵対関係にある 王と騎士団が権力を持つ 血気盛んな国 神聖アフナトキア/ 精神重視の国 皇帝が権力を持つ カーティル王国とは仲が悪い ここ数代の皇帝が急に力をつけたという その陰にはフィルテルヒェンの術師の生き残りが関わっているらしい。 ヴュクサ/ 聖地に最も近い村 精神波動を感じることに長けた種族が住んでいる クルニカ・セルクル/ [人物] ネニス・C・セルクル アリファトルネ・C・セルクル ルーシェ・V・セルクル 大聖堂がある独立地帯 長年神(惑星波動)とのコンタクトを試みてきた 神の声を聞く御子を擁する大聖堂が治める地 歴代の御子の血を引く白御子と各地から選抜された黒御子それぞれが御子になる (各地から御子が集められるようになったのは14代白御子からである) 各地から御子候補や術を学びに多くの人が訪れる (初代御子は半神であったという伝説が残っている) また、規模はカーティル王国に比べて小さいが 御子や御子候補の護衛役として騎士団を有している ※13代目の御子までは事実、半神の血を引いている。 しかし、流行病※1で幾つかに分かれていた白御子の血筋が殆ど絶えてしまう。(ここで一度クルニカ・セルクルの人口は十分の一以下にまでなっている) 最後に残ったのが13代白御子ネニス・C・セルクルであるが、 流行病の流行を止める為、自らを生贄にして術を行使(法術か魔術かは不明) 流行病は収まったが初代白御子の血筋はそこで途絶えてしまった。(正確には少しであれば血を引いているものは居たが、歴代御子ほどの力を持ったものは居なかった) 当時の大聖堂の血統主義派は御子の不在により民衆が離れることを恐れ、 各地から御子候補を秘密裏に探し、ヴュクサ周辺の小さな名も無き村出身で精霊憑き(精神寄生体の特別版、詳しくは生物の欄参照)の少女アリファトルネを新たな14代白御子とした。 また、この時アリファトルネは初代御子の血筋を引いていると発表されている。(アリファトルネが初代の血を引いていないことは当時の上層部の中でも一部しか知らされていないトップシークレットであった) 精霊憑きのアリファトルネが選ばれたのは、当時半神と精霊憑きの区別がつかなかったからである。 (血統主義派は新たな半神の血筋を迎え入れたつもりであった) しかしこのゴタゴタの隙に、反対勢力の実力主義派が「御子を支える存在が必要」との名目で、血統主義派に対抗するため各地から御子候補を選抜、その結果初代黒御子にルーシェが即位した。 (実際この時代までは御子の側近や聖堂上層部の半分以上が御子の血筋であり、術の才があっても御子の血筋でなければ出世は難しかった) (また反対派の長トルエノにアリファトルネの出自がなぜか漏れており、これを秘密にするかわりにルーシェの即位を認める裏取引があった) ※1 流行病の正体は、フィルテルヒェンの実験の産物である精神体の一種であった。 ネニスが行ったのは一種の精神攻撃であり、強大な精神派によって精神体をパンクさせ、死滅させたのである。 カジオール/ キロン公国/ フィルテルヒェン/ かつて非道な実験を行っていたという国 科学技術が発展していたが、鎖国状態にあったうえ、ある日突然謎の爆発と ともに全て消し飛んでしまったため詳しいことはわかっていない。 しかし今までの発明品が多く他国に輸出されており、各地でその高い技術の痕跡をみることができる。 ヨルデガロン/ 黄泉の国に繋がっていると言われている 黒い森を抜けた先にある 人ならざる種族が住むという (実際は過去にフィルテルヒェンが実験をしていた土地であり、その実験体が生息している) アステリ/ 眷族派エルフ達の集落。納めるのは族長。 歴史を重んじる彼らが書きためた膨大な記録が補完されている。 エレフセリア公国/ 自立派エルフたちの国。公が権力を持つ。 他種族との外交を拒み、長い寿命を生かし独自の魔術体系を築き上げた。 術について #sousakusekai
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ようこそプラモ屋フリーダム パロディー店へ 「ようこそプラモ屋フリーダムへ買いたいものがあればコメントに書き込んでください。開店時間は朝7時から夜10時までです」 店長 甘楽Ⅹ 月給(毎月最終日) 8000dd 種類 値段 ボーイング747-400日本政府専用機仕様 500dd ボーイング747-400アメリカ政府専用機仕様「エアフォースワン」 600dd エアバスA380エアーフランス仕様 400dd ボーイングFA18ホ―ネット 500dd p-38ライトニング 500dd p-51Dムスタング 500dd コンコルド 600dd 熱気球 500dd C62(蒸気機関車) 500dd d51(蒸気機関車) 450dd TGV先頭車両1両&中間車両1両 800dd オリエントエクスプレス先頭車両一両&中間車両一両 800dd サンピエトロ大聖堂 500dd 注文や新品の要望はこちら… 頑張ってください -- フリーダムX (2010-11-21 16 35 18) 品物の収入や値段の編集もここの店長である甘楽さんがやってくだされば結構です -- フリーダムX (2010-11-21 19 22 20) はい支店長の甘楽Xです商品入荷いたしました 見るだけでいいのできてくだい あれここにきてるつまり見に来てるwwすみません できれば買っていただきたいのですが… -- 甘楽X (2010-11-22 09 32 03) 月給を書くと従業員募集と思われるよ~ -- はやぶさ (2010-11-22 09 33 33) それともダッシュ-400日本政府専用機仕様下さいな -- はやぶさ (2010-11-22 09 34 54) ミス それとも× それと○ -- はやぶさ (2010-11-22 09 35 30) 了解いたしましたっ‼ ビシっ‼ 会計500dになります お客さんいい買い物してますねーww -- 甘楽X (2010-11-22 09 42 10) すみませんww500ddでしたww -- 甘楽X (2010-11-22 09 43 47) なにがいい買い物だよwとりあえずありがとう。それと関係ないけどはやぶさマリンワールド従業員ならない? -- はやぶさ (2010-11-22 09 45 58) トロ大聖堂ください -- ( _ ) (2010-11-23 22 58 45) はいわかりました 500ddになります -- フリーダムXFinalversion (2010-11-24 21 58 15) 店長すんませんww -- 甘楽X (2010-11-24 22 19 09) 名前 コメント
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小悪魔はスレイベン大聖堂の低層に入り込み、重量を支えている柱にひびを入れると、貴重な書庫に火を放った。 Devils infiltrated the lower levels of Thraben Cathedral, making cracks in load-bearing pillars and setting fire to precious archives. 闇の隆盛 ちょっとした苦痛は苦になるまい。 A bit of pain never hurts. 基本セット2015 【M TG Wiki】 名前
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(BR230/05/phase:00) 神聖LS教団  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ パロロワ大陸の一角。そこには、他の国々とは異質な勢力が根を下ろしていた。 その名を、神聖LS教団と言う。 その由来は神話の時代にまで遡るというが――国家としての歴史は、思いのほか浅い。 太古の昔、数多の煩悩に迷える人々を導いたという、幼き聖女『ロリータ』。そして短きズボンの少年聖者『ショータロー』。 その2大聖者の名を冠した『LS教団』が『サブ=カル』の地に教会を築いたのは、ほんの数年前のこと。 建造当初は、周辺諸国もその存在を軽く見、いずれ戦乱に飲み込まれて消えるだろうとたかをくくっていたのだが…… 大方の予想に反し、教団は急成長。 それどころか周辺諸国をも次々と飲み込み、事実上の支配下に組み込んでゆく。 力が全てを支配するこの大陸において、「宗教による統一」を果たしていく。 もちろん、教団の拡張の過程では、数多の血が流された。戦闘にもなった。戦争と呼んで良い規模の争いもあった。 だがしかし、その度ごとに教団の勢力は増していって。 特筆すべきは、その思慮遠謀。 武勇に秀でた名将に恵まれているわけでもない。兵力に勝っているわけでもない。むしろ教団の戦力そのものは弱い方だ。 それでも、勝つ。戦わずして勝つ。戦わせずに勝つ。 策を巡らせ策を弄び、策に策を重ねて策で勝つ。 多重に仕掛けられる罠。蟻地獄の如き計略。 心の闇に精通した教団の聖職者たちは、その1人1人が大国の軍師術師にも匹敵して。 やがて、ひとつの評判が誰からともなく囁かれるようになる。 曰く――LS教団の『サディスト聖人』たちとは、出来れば事を構えたくない。 彼らと戦うことを考えただけで『鬱』になる、と。 ……そのLS教団、正確には『神聖LS教団』。 形態としては数多の都市国家群の寄せ集めであり、教団そのものは世俗の権力とは別、という「建前」になっている。 雑多な国々が雑多なまま、たった1つの信念で寄り集まっている形。多様なジャンルの寄せ集め。 ただ、実際にその国々を支配しているのは教団であり、教皇であり大司教であり枢機卿であり信者であり。 ゆえに、最近ではその勢力圏を丸ごとひっくるめ、「LS国」と簡単に呼ばれることも多い。 逆に言えば……「外」から見れば「1つの国として安定している」ように見えるほどに、その勢力の拡大は止まっていたのだ。 もちろん、外部から侵攻をかけようという者もいない。誰が好き好んで虎の尾を踏むものか。 かくして訪れた嵐の前の静けさ。しばしの平穏。あるいは、一時の停滞。 だが、そんなことがあるものか。「あの」策士たちが、「あの」サディスト聖人たちが大人しくしていられるものか。 見かけは静かでも、その内実は……! (BR230/05/phase:03) 神聖LS教団  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 煌く朝の日差しが、大聖堂のステンドグラスを美しく輝かせる。 少年少女によって構成される聖歌隊の歌声が、遠くから微かに聞こえてくる。 神聖LS教団の中心、宗教都市『ロリショタ』――無論この名も、LS教団の元となった2大聖者の名に由来する。 ロリータとショータロー、この2大聖者を崇めるこの教団では、彼らにちなんで見目麗しい少年少女を聖なるものとして扱う。 聖歌隊もそうだし……大聖堂を掃き清めている、奉仕隊もそう。 黙々と朝の掃除を続ける人影の1人1人が美少年であり美少女である。 なぜかたまに坊主頭の小僧や、栗のような頭をしたブサイクな少年が混じってたりもするが……それはともかく。 荘厳な雰囲気漂う大聖堂を、足早に歩く人物がいた。 小柄な体躯。蒼い庭師の服に蒼いシルクハット。短い髪の、パッと見には性別不詳な美少年――もしくは美少女。 正式な儀礼用の礼服こそ身に纏っていないものの、胸元の聖印の形状から司祭位に位置する聖職者であると分かる。 彼、あるいは彼女の名は、『鬼軍曹』。 かつてアニロワ国で勇名を馳せた武将であり……しかし、LS教団はあくまで表向きは宗教組織。 教義を認め洗礼を受ければ誰でも受け入れる建前であり、そこに過去の経緯や肩書きは関係ない。 ゆえに、このような「異国の英雄にして教団の高位聖職者」などという存在がありうるのだが……ま、それはともかく。 誰かを探しているかのような彼(彼女?)の背に、声をかける者があった。 「……誰か、探してるの……?」 「あ、温泉少女大司教! いえ、大司教位の方々ならどなたでも良いのですが、先ほどアニロワ国から……」 「……対外的なことなら他の人探して。専門外。」 淡々と答えたのは、何故か浴衣を身に纏った少女。 教団のトップに君臨する大司教が1人、「温泉少女」――内政に長けた神聖LS教団の柱の1人である。 彼女が得意とするのは、治水工事に農業振興、商業振興に税収の確保。治安の維持に人心の安定。 最近の特筆すべき業績としては、市民の憩いの場、兼、兵士の湯治の場として国中の温泉を整備したことが挙げられる。 自己主張は少ないながら、国家の運営に必要不可欠な才能の持ち主。 同じく内政に長けた『深淵大司教』と共に、この国には無くてはならない存在である。 そんな彼女は、鬼軍曹の慌てた様子にも興味が無い様子でつぅ、と指を指す。 「ほら……そっちにもっと適任がいるから。あの人に言って」 「おやおや、どうしたのかな、鬼軍曹氏? 何かニュースでも?」 「あっ、枢機卿殿!」 2人の視線の先には……燕尾服に丸眼鏡の少年、いや少女。太い三つ編みにされた長いお下げが揺れる。 「地獄の紳士」「派手好み」などの異名を取る枢機卿、『666』。 数多の戦いを勝ち抜いた猛将であり、呪符(スペルカード)を使いこなす術師であり、教団を率いる首脳の1人であり。 なにより、奇想天外な策を使いこなす策士であり。 言うなれば、パロロワ大陸の他国の者たちが考える「神聖LS教団」そのものを具現化したような存在だった。 外見こそまだ若く見えるものの、彼女の姿形は何年経っても変わることはなく…… 一説によれば、邪法に手を染め自らを吸血鬼と化し、永遠の若さを得ているのだという。 そんな黒い噂にまみれながらもしっかり「枢機卿」という地位を獲得しているあたりだけ見ても、只者ではない。 温泉少女はそのまま無言でその場を立ち去る。後に残されたのは鬼軍曹と枢機卿・666のみ。 鬼軍曹は、意を決して「自らが得た情報」を口にする。 「アニロワ国が……戦争を仕掛けるそうです」 「ふぅん……それはもしかして、漫画国が動いたせいかな? つい先日、ギャルゲ国に侵攻したそうだしね。 大方それは、その情報を聞いた地図……否、マスク・ザ・ドS氏が『意図して流した』情報か。 なるほど、やってくれるものだ」 何気ない呟き。 鬼軍曹とて歴戦の将だ。情報の大切さは身に染みて知っている。 だからこそ……驚く。その反応の素早さ、状況を見抜く判断の早さに驚く。 鬼軍曹はただ「戦争を仕掛ける」としか言っていない。なのに、この推測の正確さと言ったらどうだ。 さすがは知恵者揃いのLS教団。脂汗を浮かべる鬼軍曹に、枢機卿666はしかし、フッと微笑みかける。 「それで……貴方はどうするのかな」 「どうする、と言われますと?」 「このまま我が教団のために戦うのか……それとも、故郷に戻るのか。たぶん、決断できるのは今しかないよ」 「…………!」 確かに、その通り。 いざ本格的な戦争が始まってからでは、国の行き来すらも難しい。間者との疑いも受けやすくなる。 下手をすればアニロワ国と神聖LS教団がぶつかり合う可能性もある現在、決断は早めに下さねばならない。 だが……信仰と、かつての戦友との絆。どちらか1つを選べと言われても、難しい。 「まあ、我々としては『どっちでもいい』んだけどね。君が帰るというのなら、止めはしないよ」 困惑する鬼軍曹を前に、666は哂う。 どこまでも底の知れない笑顔で、笑う。 鬼軍曹は思う。 いっそ、「命令」してくれれば楽なのに。 枢機卿という立場から、司祭という立場に命令してくれれば楽なのに。 それとも、鬼軍曹など戦力外だということなのか? 居てもいなくても同じだというのか? いやひょっとして、そう思わせておいて奮起を期待している? あるいはその悩みさえも策のうちなのか。思い悩むことさえも計算のうちなのか。 そういえばアニロワ国からの便りも、別に鬼軍曹に帰還を命じるものではなかった。ただ戦争の開始を告げるだけ。 これも、狙いは同じということなのか。 なら……自分はいったい、どうすればいい? 煌く朝の日差しが、大聖堂のステンドグラスを美しく輝かせる。 少年少女によって構成される聖歌隊の歌声が、遠くから微かに聞こえてくる。 神聖LS教団の聖都・ロリショタ。 その救いの都で、鬼軍曹は1人、揺れ続ける……。 (BR230/05/phase:02) 神聖LS教団  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ [タ・バサ大聖堂における子供たちへの説法会からの抜粋] よい子のみなさん、こんにちわー! (こんにちわー!) はーい、いいお返事ですねー。 わたしは、『深淵』大司教といいま~す。 しってるひとは、こんにちわー。はじめてのひとは、はじめましてー。 きょうは、『悪魔』とよばれた、伝説上の聖人のおはなしをしたいと思います。 そう、悪魔です。悪魔ってよばれたのに、聖人なんです。おかしいですね。 でも、それには深くて悲しいわけがあるのです。 その聖人の名は、「なのはさん」といいます。 なのはさんは、もともとはどこにでもいる、優しいおんなのこでした。 けれども、あるとき……(以下略) [報告書] 『深淵』より『教皇』へ 聖人召喚の大魔法の準備、計画通りに進行中。 LS教団における、伝説の5聖女1聖者―― 「悪魔なのは」「教祖タバサ」「偽悪のエヴァ」「誤殺のトリエラ」「性悪ヴィクトリア」そして「誤解の一休」。 彼ら伝説上の聖人の召喚に成功すれば、これより始まるであろう大戦争において優位を得られるのは間違いない。 説法の場を利用し、純粋無垢なる少年少女のエネルギーを収集。 同時に、依り代たる『ミニ八卦炉』の調整も完了。 聖人『なのはさん』の召喚、秘奇蹟『全力全開ファイナルスパーク』発動、共にいつでも使用可能。 想定されるその威力は、他国の巨大兵器にも十分対抗しうるものだと思われる。 ただし現状では1発撃つのが限界とも見られ、使用に際しては慎重な判断が求められる。 引き続き説法を通じて少年少女の思念を収集し、召喚回数の増加、他聖人の召喚の準備などを進める予定。 聖人『タバサさん』の依り代となる『バルディッシュ・アサルト』の調整進行状況、現在80%……(以下略) (BR230/05/phase:01) 神聖LS教団  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ――それは、鬼軍曹司教が枢機卿666に「アニロワ国からの伝言」を伝えた朝から遡って2日前の夜のこと。 昼間は絢爛豪華な大聖堂も、陽が落ちてしまえば人を寄せ付けぬ雰囲気を醸し出し。 子供たちが大司教の「ありがたいお話」を聞くための講堂も、不気味な静けさに満ちている。 教会内に並ぶ聖人たちの像も、まるで悪夢から抜け出した怪物のような影を投げかけている。 闇。 それが、神聖LS教団の裏の面。 未来への希望に光り輝く子供たちを讃え敬う「表の顔」とは180度異なる、教団の闇の側面(ダークサイド)。 いやむしろ、この教団の実情を詳しく知る者から見れば、こちらこそが主体に見えるかもしれない。 可愛らしさと美しさの裏に潜んだ、深く冥い『闇』――それこそが、他国から恐れられるこの国の本質なのだった。 そんな、闇に覆われた大聖堂に、ふらりと入ってくる影が1つ。 女だった。 大人の、女だった。 1歩進むごとに匂い立つような大人の色気を撒き散らすその姿は、とうてい神聖LS教団に相応しき存在ではない。 これが昼間なら、少年少女からなる護衛隊につまみ出されているところだろう。 礼拝に来ること自体は拒まぬが、それ相応の格好をしてこいと叱られていたところだろう。 にも拘らず、彼女は平然と歩く。大聖堂の奥の奥、高位の聖職者にしか許されぬ領域に足を進める。 「……おや、お帰りでしたか」 「あらァん、ジェイちゃんじゃない。わざわざお出迎え?」 「たまたま私も用があっただけです。それより、その不快な格好はいい加減やめて下さい。教会が穢れます」 不愉快な表情を隠そうともせず、女に声をかけたのは大司教の1人。 JZART。ハンマーや金属バットなどの鈍器の扱いに長けた武人であり、もちろん心の闇に精通した策士でもある。 桃色のツインテールを揺らす彼女に、女はニヤリと笑って。 「そうねぇ……そろそろ元に戻そうかしらん。『トリップヘンコウ』ッ!」 女の小さな囁きと共にボンッ、と小さな煙があがって―― 煙が晴れた時、そこに居たのは黒いローブをまとった、Jと同じくらいの体躯の人物だった。 幻術、『トリップヘンコウ』。 己が正体を偽る術の中でも基本中の基本とされる術であり、それだけに、見破るのは容易ではない。 妖艶な女の姿を取っていたその人物は、そして一転して明るい声で。 「ということで……ただいま。いやー、楽しかったー♪」 「首尾はどうでしたか、『エロ師匠』……いや、『ボマー』教皇」 教皇ボマー。 一応は教団のトップであり……しかしその立場も、決して他の聖職者を支配し押さえつけるようなものではなく。 むしろ平気で教団の勢力圏外に「お忍びで」出かけ、遊んでくるような存在。 漫画国から久しぶりに帰ってきた教皇は、そして楽しそうに報告する。 「『宣教活動』のつもりもあって遊びに行ったんだけど、そっちはちょっと失敗だったかな~。 ロリコン気味な人は結構いたけど、『リアル』に手を出すなら私たちとは相容れないし。 ただね……」 ボマーは1つの目的だけのために行動することはない。 常にそこには二重、三重の意味がある。 そしてボマーが『ボマー(爆弾魔)』と呼ばれる、その一番の理由は。 「特大の『爆弾』、仕掛けてきたから。 上手くすれば、あの2国だけじゃなくて……アニロワ国あたりにも引火するかな? ドS氏あたりは、こっちの思惑が『分かっていても』乗るタチだろうしねぇ……!」 そう……策士に溢れるこの国において、教皇ボマーが最も得意とするのが『爆弾設置』。 呼吸するように爆弾を仕掛け、呼吸するように策を仕掛ける。 漫画国に身分を偽って潜入したボマーは、そして恐るべき爆弾を、言霊を仕掛けた。 曰く――雌は歳若きをもって由とする。 後から気付いても、もう遅い。『エロ師匠』と『ボマー』が同一人物と勘付いても、もう遅い。 そのときにはもう、賽は投げられているのだ。 仕掛けられた爆弾は、爆発しているのだ。 「我々LS教団は、兵力そのものは他国に比べてもやや劣る……だからこそ! 戦乱を、起こす。 他国同士で、潰しあってもらう。 そして最後には――楽してズルして頂きなのかしら~☆」 闇に覆われた絢爛豪華な大聖堂に、軽やかな笑い声が響く。 立ち並ぶ柱を間を駆け抜ける風が、幼い少女の悲鳴のような音を立てる。 ――漫画国がギャルゲ国に進行を開始したのは、その翌日のことだった。
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在カナダ日本国大使館 大使館所在地 Rideau Centreの正面Rideau.StのRideau Centre側から3番Hurdman行きに乗って約15分。ノートルダム大聖堂、National Galleryを過ぎてから右にカーブを曲がりきった交差点右側の角にある。赤い煉瓦塀の建物。門のところで身分証を提示してください。 255 Sussex Drive, Ottawa, ON, K1N 9E6 電話:613-241-8541 FAX:613-241-7415
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ローマ ローマの概要 イタリアの国歌国旗 最近のイタリア情勢及び日本・イタリア関係【外務省より】 青森&ふるかわともきの第2弾!ローマできをつけよう! ともきの第3弾~!! 青森&ともきの第4弾☆★ ♪♪♪ともきwith青森♪♪♪~第5弾~ バチカン市国(時見) サンピエトロ大聖堂 トレビ(ア?)の泉 時見といくポンペイ オリンピック開催都市イタリアトリノについて パリ パリの概要 パリ1日目 シャンゼリゼ通り もんとるまるのおか オペラ座と天井画 パリ二日目 カペー朝 ルーブル美術館 1組