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前ページ次ページ悪魔も泣き出す使い魔 ~古の剣~ 使い手としての力を示せ 「剣を買ってあげるわ」 虚無の曜日。学院は休日とのことで、ルイズは使い魔を連れて市街へと買い物に行っていた。 先日、決闘でギーシュを軽々と打ちのめし、キュルケの誘いにも乗らなかった使い魔の実力と忠誠の見返りとして、 褒美の一つでも与えようと考えていたルイズであったが、当の使い魔は今一つ不満気であった。 「それよりもよ」 ダンテは一旦、自分の爪先から胸元まで目線を上下に動かし、それからもう一度、ルイズを見て一言告げた。 「服」 「いるの?」 主人の返答に、使い魔は溜息をつく。 「最初にも言ったけど、俺は風呂上りの格好でコッチに連れてこられたんだぜ。いい加減寒いんだよ」 「ふーん。平気な顔してるからいっつもその格好なのかと思ってたわ。それより風呂で思い出したけど、 アンタ、学院のお風呂に勝手に入ってるんじゃないわよ」 「使い魔は風呂に入るなってか?御主人様は汚いナリの使い魔がお好みで?」 「平民のサウナがあるでしょう?入りたいならそっちに入りなさいよ!」 「チッ サウナで俺が満足するかよ。・・・まあ、メイドと入れるんなら話は別だがね」 「ちょっ!?何考えてんのよ!あのメイドと一緒にお風呂なんて絶対許さないわよ!」 話題がズレる度にルイズは声を上げ、その度に街を歩く人々からの注目を集めた。 特に、上半分何も着ていない格好でさらけ出しているガタイの良いダンテの半身は、何人もの女性の目に留まっていた。 「もう!折角私がアンタの忠誠をかってやろうってのに!」 「それなら玩具よりコートの一着でも買って欲しいね俺は」 ルイズは自分の予想が食い違っている事を段々と理解し、眉を歪めて使い魔に尋ねた。 「・・・剣、いらないの?」 「何でそんなに剣にこだわるんだ?」 顔をしかめる使い魔に、主人が答える。 「だって、昨日教室片付けてた時に、俺の剣がどうとかブツブツ言ってたじゃない」 ルイズの言動に合点がいったダンテ。しかし剣は欲しいが、特に優先するべきものでも無いため、 ここでルイズを適当にあしらって、先に述べた自分が第一に望む装備品をさっさと購入してもらうつもりだった。 「俺が今欲しいのは一着の暖かいコートと、親父が持ってた剣だよ」 「父様の剣?」 「ああ。持ってるように兄貴に言われてたんだけどな。受け取ったその日にどっか落としちまった」 「呆れたわね・・・。そんな大事なものならちゃんと管理しておきなさいよ」 使い魔の内心も露知らず、何となく事情が呑み込めたとルイズは安堵し、次に家族についてダンテに色々と聞きたくなってみた。 「それにしても、アンタみたいなのでもちゃんと家族は居るのね。ねえ、母様は?」 「死んだよ」 その場の空気が一瞬で凍りつく。 「え・・・?」 「もう、皆居なくなっちまった」 自分が尋ねた何気無い一言で、ルイズは後悔の念で押し潰されそうになった。 「・・・ごめん」 「ハハッ 急にシケた顔になるなよ。気にすんなって」 顔を伏せてダンテに謝るルイズ。 いつもの余裕の表情で振舞って見せるダンテ。ルイズにはそれが痛々しく思えた。 ルイズは何とか明るい話題に切り替えようと、それから必死に話しかけた。 「ね、ねえ、上着」 「あん?」 「い、一着くらいなら、好きなの選んでいい・・・」 それから気分を一新するつもりで、2人は貴族専用の服屋に入り、ルイズは使い魔が着る黒いシャツとパンツの上下。 そしてダンテは血の色の様な赤いコートを選んだ。お気に入りの一着が見つかった様子で、御満悦の使い魔。 「中々イカすぜ」 「ねえ、ちょっとそれ、派手過ぎない?」 使い魔のチョイスに怪訝な顔をするルイズ。 「これじゃないと落ち着かないんだよ」 「目立つのよ!見なさいよ周りを」 ルイズの言ったとおりに、真っ赤なコートを羽織ったダンテの姿は、 市街に足を踏み入れたその時以上に、周囲からの注目を集めていた。 そして正面からキュルケが走ってきた。 「ダーリーンっ!」 その姿を見て、ルイズは「げっ!」っと小さく叫ぶ。キュルケは二人に駆け寄るや否や、ダンテに接近した。 「今日はまた一段と素敵ね。真紅に包まれたその姿に、身も心も焼き尽されそうですわ」 その横からルイズが顔を真っ赤にして怒鳴り込む。 「ツェルプストー!こんな所までついて来ないでよ!」 「あらやだ、被害妄想の激しい娘ねえ。偶然よ、アンタ達に会ったのは。」 出会うや否や食って掛かるルイズに、キュルケは半ば呆れながら答える。 「この子が新しい本を買いたいって言うから、付き添いに来ただけよ」 キュルケの後ろからヨタヨタとついて来たタバサ。キュルケはタバサの頭をポンポンと撫でながらそう言った。 そのタバサの左手に持った、パンパンに腫れ上がった鞄から、新書の一部がはみ出ていた。 「でも、こんな人込みの中で出会えるなんて、やっぱり私とダーリンは惹かれ合う運命なのね」 「ちょっと!さっきからダーリンダーリンって、人の使い魔に馴れ馴れしく呼ばないでよ」 キュルケがハッとした顔になって、ダンテに尋ねる。 「あら、そう言えば、まだ御名前をお聞きしてませんでしたわね」 ルイズが代わって使い魔の名前を答えた。 「トニーよ。トニー・レッドクレイブ」 「まあ、素敵な名前ですこと」 ルイズは、ダンテがここに来た初日に彼から聞いた名前を、誇らしげな顔で声高らかに言い放った。 しかしその後すぐに、ルイズにとって聞き慣れた声が、 ルイズにとって聞き慣れない名前で、自分の横に居る使い魔を呼びながらこちらに近づいてきた。 「ミスタ・ダンテ!」 自らの名を呼ばれた使い魔が、声の主に話しかける。 「ようシエスタ。お前も今日はお出かけか?」 「はい、お暇を頂いたので。ミスタ・ダンテと皆様もご一緒で、今日はお買い物でいらっしゃいますか?」 いつものメイド服とは違う、私服姿のシエスタがルイズ達の目に飛び込んできた。怪訝な顔でルイズが使い魔に詰め寄る。 「メイドが、私が聞いたのと違う名前でアンタを呼んでるけど・・・どういう事?」 「ああ、そういやお前にはうっかり偽名を教えてたな。本名がダンテだ」 トニー・レッドクレイブは、母親と死に別れてから、その身を隠すために長年使っていた名前だそうだ。 それを聞いたルイズは、さっき話していたダンテの家族の事もあって、 怒るに怒れずダンテの顔を恨めしそうな顔で見ながら低く唸った。 「うぅ~・・・メイドには本名で、主人には偽名を教えるってどういうつもりよ」 「もう、面倒臭いからダーリンでいいわね」 「よくないわよ!」 キュルケがまとめた所で、話は本題に戻る。 「剣ねえ・・・。無駄遣いばっかしてるあなたに買える様な代物なの?大丈夫?」 「うるさいわね。金遣いの荒いツェルプストー家のアンタに心配される筋合いは無いわよ」 二つの家名を賭けた口喧嘩が始まった。 「まあ、ヴァリエール家よりは持ってるものは持ってるし、足りない分は言いなさいな。他ならぬダーリンのためだしね」 「アンタから借りるなんて、例え家が潰れたって御免だわ!」 そう言うや、ルイズは財布の中身を確認する事も無く、武器屋のある路地裏へと足を進める。 一行はそれを追いかける形で、ゾロゾロとついて行った。 薄汚い路地に入りその奥へ進むと、そこには拙い店構えに不釣合いな赤と青の派手な双剣を看板に仕立てた武器屋があった。 「珍しい剣ね」キュルケにシエスタが相槌を打つ。 「面白い形ですよね。トリステインではあまり見かけないような・・・」 どこからともなく男の声が聞こえた。 「兄者よ。客人が参られたぞ」 「うむ、ルドラよ。客人なれば持て成さなければならない」 「ッ・・・・・」 突然の声に左手に持つ鞄から手を離しそうになるタバサ。声の主を探し辺りを見回す3人。 ルイズは気づかなかったのかズンズンと店へ入ってしまった。 「あン?何やってんだお前ら?」 ダンテが看板の剣に向かって話しかけると答えが返ってくる。 「おお 我らが主よ」 「我らはこの店の店主に拾われたのだ」 「そしてその恩に酬いるため、ここでこうしておる」 「お主に再び使われる事を待ちわびながらな」 この世界に俺がいなかったらどうするつもりだったんだこの阿呆どもは。 相変わらずお喋りの絶えないアグニ&ルドラの様子にため息をつくダンテ。 「あら この剣インテリジェンスソードだったの?」 「ミスタ・ダンテのお知り合いですか?」 主を求める双剣は、ダンテに請う。 「お主が現れるのを心待ちにしておったが、ようやく逢えたという事」 「さあ、今一度我らを手に取るがよい」 それを無視してスタスタと店に入るダンテ それから少し間を置いてからキュルケとシエスタも後に続いた。 「ルドラよ。主の反応が乏しかった気がするが?」 「久方ぶりの再会なのだ。照れておるのだろう」 一方店内では 店に入るや否や開口一番に「大きくて太いの!」とルイズに怒鳴られた店主が希望の品を取り繕っていた。 「へえ。これなんかがこの店じゃあ一番大きい部類に入りますが・・・」 「どうダンテ?」 「曰く憑きが有りそうなヤツとか、厄介払いしたいのがあれば引き取ってやってもいいぜ。」 ダンテは武器屋の店主が持ってきた、煌びやかな大剣には目もくれず、店内に飾られている品々を見回しながら店主にそう答えた。 ルイズ達は首を傾げた。 愛剣リベリオンを初め、世界に二つと無い伝説の武具や呪われた装備を玩具のように取っかえ引っかえ使用していた彼である。 ここにある武器は魅力が感じられないのも加えて、自分が扱うには脆すぎるものばかりだった。 それなら常人が持つには手に余るような、憑き物の様な付加価値がついた物なら少しはマシだろう。 経験に基づいた判断である。(アイツらはできれば持って帰りたくないし・・・) 怪訝な顔をしながら店主は「へえ。・・・それでしたら」と古びた長剣を差し出した。 カタナか?長剣と言っても、父親の残したリベリオンや闇魔刀に比べればやや小振りである。 鞘から抜き出した片刃の刀身は錆びてボロボロだが、使えない事はない。鍔元には飾りの様なものがカチャカチャ音を立てていた。 耐久性は申し分無さそうだが魔力は感じられない。まあこんなモンかと思っていた矢先、 「やい!おめえ凄え腕前してやがんな!握られた感じからビンビン伝わって来るぜ!!」 右の手元から声が発せられた。どうやら剣が喋ったようだ。 「おまけに"使い手"かよ!っかぁー、こりゃおでれーた!」 「おいおいデル公。今日は何時に無く興奮してるじゃねーか」 「へえ、インテリジェンスソードなの?それ」 さっきから出てくる聞き慣れない単語だったが、 コイツらはそういう部類の剣で、この世界ではそう珍しい物でもないのだろうとダンテは納得した。 「ねえダーリン、ホントにそれでいいの?他に良いのがあれば私が・・・」 「アンタは黙ってなさい!」 剣として扱うには十分だがコイツでは魔力が開放できない。まあできなくて困るモンでもないし、いいか別に。 「ああ。お前に決めてやるよ。ただし条件が一つある」 「おう!お前ェとなら最高の相棒になれるぜ!!何でも言ってくれ!」 「喋るな」 「・・・え? ま、またまた冗談キツいぜ相棒・・ハハ」 そうデルフリンガーが言った瞬間、ダンテは剣を振り上げ、店のカウンターに柄を思い切り ガンッ!と叩き付けた。 「No! Taking!」 「・・・・・・・はい」 もう一度叩くと何も言葉を発しなくなった。 「Good」 あの2本に比べればコイツ1本の方が躾け易い。経験に基づいた判断である。 一方、店の外ではお喋りを続ける看板に、眼鏡をかけた小柄な少女が話の輪に混ざっていた。 「我はアグニ」 「我はルドラ」 「かつて封印されし塔」 「テメンニグルの門番を勤めていた」 「テメンニグル?」 「現世と魔界の狭間に存在し」 「幾多の悪魔達を封じ込めていた塔だ。」 「この世のものでは無い?」 「如何にも」 「主は其処で我らを打ち破り」 「我らの使い手と認められたのだ。」 「彼は何者?」 「魔界の長、魔帝ムンドゥスを打ち破り」 「我らと己の力を封じ込めた魔界の剣士」 「スパーダの末裔なり」 「人間ではない?」 その問いにアグニ&ルドラが答える前にルイズ達が店から出てきた。 「もう、アンタまだここに居たの?そろそろ帰るわよ」 キュルケにコクリと小さく頷くタバサ。聞こえないように「また来る」と小さく呟いた。 ダンテ達はアグニ&ルドラに「じゃあな」と手を振ってその場を後にした。 「ルドラよ。主が行ってしまったぞ」 「主を見よ兄者。剣を背負っているではないか」 「うむ、ここが武器屋なれば武器を買うのは道理だな」 二本の双剣は、自分達が置いて行かれた状況を、あまり理解している様子ではなかった。 それから時刻は二つの月が浮かび上がった頃、キュルケとタバサは飛竜に乗って、残りの3人は馬車を借りて、 其々学院へと帰路に着いた。 道中、キュルケの裾をチョンチョンとタバサが引っ張る。 「なあに?」 「あの男は危険」 「・・・どういう事?」 「わからない。でも、人間じゃないかもしれないというのは確か。」 「ふーん・・・ ま、そうだったとしても、私はダーリンを信じるわ。」 「え」 「だって!あれだけのイイ男が悪人だなんて到底思えないじゃないっ!」 「・・・重症」 一方、地上では馬車に揺られるルイズとシエスタが、お互いの肩を寄せ合って眠り、向かいに座るダンテはそれを静かに見守っていた。 「全く・・・、言った傍から無駄遣いしてるじゃねえか」 使い魔の剣が安価で手に入ったという事で、早速馬車を借りて帰ろうとする主人に、ダンテは頬杖をついてボヤいた。 スヤスヤと寝息を立てる2人は、それぞれ良いタイミングで寝言を漏らす。 「・・犬・・・メイドばっかり・・ズルいわよ・・・」 「・・・ミスタ・・・あと5分で・・焼き上がりますから・・・」 2人の寝言を聞いて苦笑するダンテ。 「何か放っておけないんだよな、コイツ等は」 便利屋として駆け出だった頃に、コンビを組んでいた相棒と、その3人娘の5人で囲んだ食卓の風景を思い出していた。 それからダンテは足を組み直して、傍らに立て掛けた剣に視線をやる。 「今度の相棒が剣とはね」 デルフリンガーは喋らない。ダンテの傍らでカタカタと震えるだけだった。 使い魔は、どこか懐かしい思いに駆られながら馬車に揺られた。 前ページ次ページ悪魔も泣き出す使い魔
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前ページ次ページ悪魔も泣き出す使い魔 ~破壊の杖~ 土くれのフーケを捜せ 朝霧に包まれる学院。シエスタを抱えるダンテの前に、見覚えのある幸薄い頭髪の教師が、早朝の広場に佇んでいた。 それからダンテに気がついた教師が、向こう側から話しかけてきた。 「やあ、君はヴァリエールに召喚された使い魔・・・であったな? 確か名前は・・」 「ダンテだ。先生に聞くんだがね、このメイドがゆっくり休めるようなベッドが、どこかに無いかい」 「ああ、ダンテ。私はコルベールだ。ここの教師を務めておる。医務室でよければ案内するぞ」 「助かるぜ。ところで、先生はこんな朝からここで一体何を?」 コルベールが指差した方角にある大きな塔には、何かが爆発したような大きな穴が開いており、 周辺の壁も含めた瓦礫が散乱した地面は穴だらけになっていた。 「昨日の晩に賊が入ったらしくてね。君の主人がそれを目撃した・・・というか、それと戦っていた者の一人だった。 という事なんだが、使い魔の君は一緒ではなかったのかね?」 「ああ、ちょっとしたパーティーでね。今帰ったところさ」 怪訝な顔でダンテを見ながら、コルベールは人づてに聞いた昨日の状況を説明した。 はじめは、ギーシュとモンモランシーが、フーケが作り出した巨大なゴーレムと対峙していたのを、 シルフィードに乗ってモット伯の屋敷から帰ってきた、ルイズ、キュルケ、タバサの3人がそれに加わったという話だ。 「やれやれ・・・次から次へと面倒事が続くな」 「ん?何の事かね?」 「コッチの事さ。それで、俺の御主人様は無事なのかい?」 「彼女等も医務室で安静にしている所なんだ。起きていればついでに、詳しい事情を彼女達から聞いてみるとしよう」 一方、医務室にあるベッドのうちの3つに、ルイズ、キュルケ、ギーシュの3人がそれぞれ床に伏せており、 割かし軽傷であるタバサとモンモランシーがその傍らに付き添っていた。 「ねえ、生きてる?」 「うん」 「ダーリン。帰ってこないわね」 「・・・うん」 医務室のベッドで一晩を共にしたルイズとキュルケの2人は、お互いが無事であるか声を掛け合っていた。 ギーシュにいたっては、全身を包帯でグルグル巻きにされて、喋ることもままならなかった。 その横にはモンモランシーが、コックリコックリと首を傾けながら座っている。ルイズ達は会話を続けた。 「それにしても、・・・とんでもない相手だったわよね」 「あんなゴーレム、今まで見たことも聞いたことも無いわよ!」 魔法学院本塔の宝物庫を荒らしていたであろう盗賊、"土くれのフーケ"が作り出したゴーレムは、ルイズ達の想像を絶するモノであった。 噂に違わぬ巨体を誇るゴーレムの頭上には、おびただしい数の蝙蝠が飛び回り、その腕から繰り出される拳は雷を帯びていた。 「やっぱりアレって・・・」 キュルケの隣で本を読んでいたタバサが口を開く。 「破壊の杖の力」 フーケの二つ名は"土くれ" 土系統の錬金を得意とするフーケが風系統の、それもスクウェアクラスをも上回る程の雷を操っていたのである。 それは盗み出した破壊の杖を使用していたからに違いない。意見の一致した3人はそう結論付けた。 それから程なくして医務室のドアが開き、シエスタを抱きかかえたダンテとコルベールが入ってきた。 「ようチビ姫。ちゃんと生きてるか?」 「ダーリン!」 「チビって誰の事よ!!」 ダンテの声に反応する二人 「ハハッ、どっちも元気そうだな」 ルイズ達の様子に安堵したダンテは、ギーシュの眠るベッドに近づくや否や、ベッドごとギーシュを蹴り飛ばした。 床に蹴り落とされ、フゴー!フゴー!と叫び声を上げるギーシュ。突然の出来事で飛び起きたモンモランシーは、ダンテに抗議した。 「ちょっと!何すんのよいきなり!?」 「急患だ」 ダンテはモンモランシーにそう短く告げると、ギーシュが眠っていたベッドにシエスタを寝かせた。 「ベ、ベッドなら・・・まだ、反対側にいくらでもあるじゃないの!」 「あん?だったら最初からそう言えってんだ。どいつもこいつも」 すかさずルイズのツッコミが入る。 「それ以前にアンタは、人の話を聞こうともしないじゃない」 最初はダンテに対して激昂していたモンモランシーだが、 目の前の男がギーシュを打ち負かした、胸を貫かれても死なないルイズの使い魔だと記憶が鮮明になるにつれて、声を小さくしていった。 それを見かねたコルベールが、穏やかな口調でダンテを論する。 「これこれ、怪我人を無下に扱ってはいかんぞ」 「チッ、しょうがねえな」 ダンテはギーシュの首根っこを掴んでズルズルと引き摺り、向かいのベッドに向けてぶっきらぼうに投げた。 ベッドに叩き落とされたギーシュは、フギー!フギー!とまたもや絶叫を上げる。 「何すんのよもう!乱暴にしないでよ!この悪魔!!」 ギーシュに駆け寄ったモンモランシーが、涙声でダンテに訴えた。 その光景を目の当たりにしていたルイズが面倒臭そうに文句を言う。 「もう、怪我人がいるんだから静かにしなさいよ」 「ハッ、そりゃ悪かったな」 コルベールがおもむろに咳払いをする。 「さて、落ち着いたところで君たちに聞かねばならないのだが」 「ミスタ・コルベール?」 「うむ、昨日の出来事だ。できうる限り憶えている事を話してほしい」 事情聴取を始めるコルベールを他所に、ダンテは医務室の扉を開けた。それをルイズが呼び止める。 「ちょっと、主人を置いて今度はどこに行くつもりよ?」 「長話は嫌いなんだよ。それに腹減って、眠くって、疲れてんだ。ちったあ休憩くらいさせろって」 ルイズはダンテの赤いコートがボロボロになっているのに気がついた。 「・・・わかったわよ、今日だけよ。特別に許してあげるわ」 「心配すんなって。眠れなくなったら子守唄でも聞かせてやるよ」 「まあ、素敵ですこと。楽しみですわ」 ウットリするキュルケの眼差しを遮るように、ルイズは使い魔に向かって枕を投げつけた。 ダンテはそれを軽くキャッチし、「ネンネしてな」と一言添えてルイズに投げ返した。 医務室を出ていったダンテは厨房に立ち寄り、 涙を絶やさぬマルトーの抱擁を避けながら朝食を貪った後、事の発端となった現場の宝物庫へと向かった。 宝物庫に保管されている品々が目に付くや、ダンテは驚愕した。 「・・・どういうこった?」 宝物庫に散りばめられていたのは、自分の事務所にあったジュークボックス、ドラムセット、 リベリオンによって左右に寸断されたビリヤード台、他にも自分が使っていたのと同じような型の2連装式ショットガンや、 事務所の外に誰かが駐車していた大型のバイクが、所狭しと保管されていた。 ダンテは壁に掛けられたショットガンを手に取り、銃身の根元を開閉しながら給弾機構を確認する。 「使えそうだな。ババアの店に置いてあったヤツが懐かしいぜ」 もう、何年も保管されていた様な埃を被っている反面、錆一つ無い新品同様の銃身に、 塗られたばかりの様なガンオイルの匂いが印象的だった。 それから宝物庫の入り口付近に落ちている、ある物が目がついた。 ショットガンを肩に担ぎながら入り口の扉前にしゃがみ込み、それを拾い上げる。 一つは女性がかけるような上品な眼鏡、もう一つは何かメッセージが書き込まれた紙切れ、それから手紙が入った封筒の様な物。 それらをポケットに仕舞い込む所で、コルベールがやって来た。 「おお、君もここへ来ていたのだな。ここは本来、立ち入りは禁じられているのだが、まあ非常の事態という事でだ・・・」 コルベールの話を遮る様にダンテが話しかけた。 「丁度良かったぜ。先生に聞きたい事があるんだけどな」 「何かね?答えられる事は何でも聞こう」 「ここにある物の大概は俺の世界の、・・・っていうか俺の事務所にあった物なんだが、こいつらは何処で拾ったんだ?」 「ここらに保管されているものは、大体が学院付近に落ちていた物なのだが。俺の世界?・・・ふむ、一体どういう事かね?」 「俺はここの人間じゃない。アンタらみたいな魔法使いなんか居ない世界から呼び出されたんだ」 「何と、そのような・・・」 それからダンテはコルベールに、自分が生まれた世界の在り方や、物心ついた頃から相手にしてきた悪魔の存在等を簡潔に説明した。 「ふーむ、悪魔か・・・。吸血鬼や、そういう類を模したガーゴイルなぞは何度か見たが、実物というのはまだ見た事が無いな。 数多の幻獣や精霊達とは全く異なる、実在する負の象徴たる者か・・・うむ、興味深いぞ!」 「ここを荒らした泥棒に会うことができたら、拝めるかもしれないぜ」 「本当かね?」 それからコルベールが目を輝かせてダンテに尋ねた。 「ところで、私は悪魔のソレよりも君のいた世界というのに興味があるのだが・・・。 メイジのいない世界で空を飛んだり火を起こしたりというのは本当なのかね?」 「ああ、コイツなんか動けば、そこらの馬より速く走れるぜ?」 ダンテはそう言いながら、誇りまみれのバイクを足で軽くノックした。 「何と!やはりそれは乗り物だったのか!それに馬より速くとな!?いや!素晴らしい!!」 最初は面白かったが、ダンテは説明すればするほど興奮気味になるコルベールが、段々と面倒になってきた。 そこへ丁度良く、宝物庫の外から話しかける老人の声が、コルベールの名を呼んだ。 「精がでるのう、ミスタ・コルベール」 「オールド・オスマン!?いや、これは・・・」 「ほっほ、よいよい。賊の件で調査に来たのであろう。経過は順調かの?」 「ええ。ミス・タバサの飛竜が追跡してくれていたお陰で、大体の位置は把握できております」 「そうかそうか。・・・ところで、ミス・ロングビルの姿が今朝から見ないのじゃが、お主は知らぬかの?」 「ミス・ロングビルですか。・・・いや、私も今日は一度も彼女と会っておりませんな」 「そのミス・貴婦人は、こんな眼鏡でも掛けてんのか?」 ダンテはポケットから、先程拾い上げた眼鏡と一枚の紙切れを、コルベール達に差し出した。 「これは・・・お主、一体これを何処で?」 「そこの入り口に落ちてたぜ。それには何て書いてあるんだい?」 その紙切れには、 「破壊の杖、確かに徴収いたしました。土くれのフーケ」 と、フーケが残す特有のメッセージ書かれていた。 「何と、やはり"土くれ"の仕業であったか!それもミス・ロングビルを拉致して・・・」 「或いは、・・・その、ミス・ロングビルが・・・」 言葉を詰らせるコルベールに代わって、ダンテが続ける。 「壁にこんなデッカイ穴を開けて、派手に逃げ出すような大泥棒ってワケかい?」 「いや、それは有りえぬよ。・・・有りえぬのだ」 つい先日に見たロングビルの笑顔が、コルベールの目の前に浮かび、自分に言い聞かせる様にそれを否定した。 そんな様子のコルベールに、ダンテは肩をすくめた。 「ま、行って確かめない事には判らない。そうだろ?」 「うむ、それもそうじゃの・・・」 そして、オスマンは意を決意して話を切り出した。 「そこでじゃ、この場をもって、お主らにフーケとミス・ロングビルの捜索を頼みたいのだが。・・・どうかのう?」 「捜索ですか・・・。それは構わないのですが、何故我々のような者に?それに、彼はミス・ヴァリエールの使い魔ですぞ?」 困惑するコルベールの前に、オスマンは 「うむ。・・・こう言うのも何じゃが、ここの学院の連中はメイジの威厳やら、貴族の誇りなどと声を荒げておるが、 実際にはフーケの討伐にも杖を掲げんような腰抜けばかりじゃからのう・・・」 コルベールは今朝の集会で、昨日の当直だったシュヴルーズを糾弾する教師達の光景を思い出した。 「そこでじゃ、まがりなりにも"炎蛇"と呼ばれる君や、伝説の使い魔殿に、この一件を頼みたいのじゃが」 「オールド・オスマン。それはまだ、仮定の話であって・・・」 「伝説?おいおい、人に黙っておいて一体何の話だ?」 その場の雰囲気を誤魔化す様にオスマンが笑う。 「ほっほっほ。それもまあ、帰ってきてから詳しく話そうじゃないか。それがお主に対する報酬、という事でどうじゃろう?」 「チッ、食えないジイサンだ・・・。さて、そうと決まれば、宝探しは後回しだ先生。とっとと泥棒退治に行こうぜ」 「よいのか?生徒達に聞いた話だと、今のフーケは決して無傷で済むような相手ではないぞ」 「構わねえよ。それに、その"破壊の杖"ってのにも興味があるしな」 ダンテはコルベール達にニヤリとして見せながら、右手に持つショットガンを、穴の開いた壁に向かって構えてみせた。 前ページ次ページ悪魔も泣き出す使い魔
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前ページ次ページMonster Database Lv77 [#l8f86756] 冥府の烏戦士 [#l7165ea6] 歴戦の海賊 [#t2e51409] コメント [#dcbcdaf3] Lv77 冥府の烏戦士 attachref レベル 77 属性 無 攻撃方式 混合 アクティブ 有 リンク 有 ペット 不可 スキル 不使用 生息地 港町郊外(空中) 回復薬 生産材料 生糸 青玉の欠片 特産物 活力のスープ 招魂牌 弾矢 装備品 ☆竜眼のチャーム その他 備考 座標例:(621 385) 歴戦の海賊 attachref レベル 77 属性 無 攻撃方式 混合 アクティブ 有 リンク 有 ペット 不可 スキル 火魔法攻撃 生息地 夜泣島南東(地上) 回復薬 生産材料 生糸 特産物 活力のスープ 招魂牌 弾矢 装備品 その他 備考 座標例:夜泣島内座標(415 536) コメント 名前
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