約 333 件
https://w.atwiki.jp/tokyograil/pages/264.html
誓いの爪痕 ◆devil5UFgA 彼は悪魔でありサタンである竜、 あの古い蛇を捕らえ、 これを千年の間縛って、 底知れぬところに投げ込んでそこを閉じ、 その上に封印して、 千年の終るまでは、それが諸国の民を惑わすことのないようにした。 サタンはその後でしばらくの間、解放されなければならない。 ――――『ヨハネの黙示録』より ◆ 「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、エロイムエッサイム」 メシア教の本部、品川に在処を置く教会の地下深く。 目覚めを待ち続ける伏龍へと、悪魔くんは呪文を唱え続けていた。 「我は求め、訴えたり!」 強い意思を感じさせる声で、呪文を唱える。 ぎょろりとした目が伏龍をじっと見つめ、しかし、伏龍は微動だにしない。 百も超えるほどの失敗。 ふぅ、と息をつき、悪魔くんは座り込む。 傍らには鍛え抜かれた身体と法衣を模した、しかし、軍服を連想させる服装を着た男が佇んでいた。 彼の者の名はザイン。 此度の聖杯戦争においてライダーのサーヴァントとして召喚した英霊だ。 「アプローチを変える必要がありそうだなぁ」 「『真の赤き竜』に載せられた、エロイムエッサイムでも目覚めないとなると、そうだろうな」 「隠秘術会の大スター、ソロモン王の残した呪文でも無理となると、そうなんだろうね」 そう言いながら、悪魔くんとザインは伏龍を眺めた。 これこそがザインの宝具『封印されし半身<セト>』である。 この宝具は、サーヴァントとしての力の大前提であるにも関わらず、その真名を唱えても、眠りから覚めることはない。 悪魔くんは首をひねる。 膨大な知識と異能の知恵を持ってしても、セトの解放手段が一向に思い浮かばないのだ。 「カエル男やふくろう女、ヤモリビトのような使徒が居ればセトが眠り続ける秘密もわかるかもしれないのだが……」 「それは駄目だ、悪魔くん。 彼らは、魔術的な超秘境である奥軽井沢で、然るべき手段を持ってして、ようやく生み出せた使徒だ。 この魔都でそれだけの隠秘術を行おうと思えば、他のマスターやサーヴァントに悟られる。 使徒を作ることで生まれる可能性よりも、襲われる危険性のほうが高い」 ザインの発言に悪魔くんは頷いた。 使徒としてカエル男たちを呼び出せるのなら、すでに行っているからだ。 東京に眠る古代の魔術師を呼び出すというメリット。 その儀式を嗅ぎつけたサーヴァントの襲撃というデメリット。 この二つを考えた時は、圧倒的にデメリットが大きい。 「ヤモリビト達は大昔の魔術師だ、言ってしまえば、ライダーの他にも英霊を召喚するようなものだからなぁ。 魔力の負担は別として、聖杯戦争のシステム以外に行おうとすれば、少なくともキャスターに感付かれる」 「あらゆる準備が必要だ」 「僕たちは弱いからなぁ」 「簡易性の悪魔召喚プログラムを作れれば復活も近づくかもしれないが、あれを僕の知識だけで作るとなると…… 実物があれば、デッドコピーとしての複製も出来るだろうが」 悪魔召喚プログラムとは、並行次元において差異が生じるが、無数の術式をプログラミング言語に翻訳・圧縮してようやく稼働するものだ。 また日本神話、ギリシア神話、スラヴ神話、果てはクトゥルフ神話からなる数多の神言語をも解読するプログラムも必要となる。 大本の悪魔召喚プログラムを所有していれば複製も可能だっただろう。 しかし、ザインの記憶と悪魔くんの隠秘術だけでは、それこそ気の遠くなるほどの時間が必要だ。 「ノロノロとしているわけにはいかない、ジョーカーなる無軌道な参加者が動き始めたそうじゃないか」 「特異な人間だ。 社会的なルールや、自分だけの理論的なルールに基づいて動いているわけでもなさそうだ。 裁きを行い、東京の穢れを正すべきだが……今の僕には力が足りない」 「参加者ではないとわかっている生命を奪っている……むむむ」 悪魔くんは唸った。 許せるものではなかった。 この事件こそが悪魔くんが真に恐れる、理論だった地獄の先に迎える末法のカオス世界であった。 人が堕落し魂として墮落した先にある、理性のない世界だ。 「『神よ、どこに居られるのですか』とも言いたくなる気分だね」 「神か……」 ザインはどこか、落胆するように呟いた。 神を殺したザイン。 それは、神もまた人々のように罪に塗れていたからだ。 「悪魔くん、神というものは、人々の心の奥底に眠っているんだ」 「神は人間の心の中に居る、というのかい?」 「それだけではニュアンス的に正しくない。 まるで、神が存在しないかのようだ。 あるいは、人々が神を一から百まで生み出しているようだ」 神は存在する。 しかし、人を堕落させる悪しき神ならば正さなければいけない。 そして、人間ではない超越者とは人間の世界に必要としないものだ。 「神と呼ばれる存在は往々にして、人間の身体が住む物理世界ではなく、人間の心が住む精神世界に眠っているのだ」 「精神世界、概念的な者が跋扈する世界か」 「その奥に眠るものが、真に人々の求めるものだ。 人々が求め、訴えかける、名も無き存在。 魔術師は根源や「 」とも呼び、我々は宇宙の大いなる意思とも呼んだがね」 人の『手』が届かない存在だから、人はそこに住まう者を信仰するんだ。 避けられない災害を神と称した心理と、大きな差はない。 ザインはそう続けた。 「……ザインの信仰を取り戻せば、セトは覚醒するのかい?」 「そういった一元的なものではないだろう。元々、神霊だ。 ムーンセルと東京の聖杯に再現できなかった可能性も高い」 「それならザインのステータスが異常に低いのはおかしい」 悪魔くんは自身のサーヴァントの、不当に低すぎるステータスを持ちだした。 悪魔狩りの精鋭・テンプルナイトで歴代最強を誇ったザイン。 それが今では少々強い程度の人間ほどにしか力を発揮できない。 ならば、英霊ザインを再現するためリソースを、別のところに食われていると考えるのが自然であった。 「セトを再現するのに聖杯自身の魔力が足りない可能性は?」 「……両手の指で足りない数の英霊を再現したんだ、あり得ないわけではない」 冬木の聖杯では六騎の英霊を宿して、万能の願望器として稼働する。 そして、七騎の英霊を宿して根源へと続く『道』となる。 すなわち、聖杯自身の魔力が手に入れれば、より奇跡に近づくということだ。 サーヴァントはそのための燃料とも言える。 「聖杯に注ぐ『贄』が必要かぁ……牧師様の言うことは間違いではなかったことかな」 悪魔くんの言う牧師様とはメシア教の一員であり、悪魔くんが見るところの『マスター』であった。 「牧師……知っているよ、彼のことは」 「へぇ、ザインと同じ出自の人なんだ」 「『LAW HERO』……メシアになるべき存在として『造られた英雄』さ」 ザインは顔を伏せた、事象から目を逸らすような動きであった。 恐らく、『牧師=ロウヒーロー』も悪魔くんをマスターと気づいているだろうに、何も仕掛けてこない。 ザインが牧師の背景について詳しいのならば、何かしらの攻略の鍵となるかもしれない。 悪魔くんはザインの挙動に気づきながら、しかし、会話を続けた。 「でも、サーヴァントじゃないってんだね、嫌になる」 「そういうことになるな、厄介だよ。 彼に並ぶ存在がもう一人居ることになるし、魔力供給という意味でも非常に優秀だ」 「ずるいなぁ、そう言えば名前はなんていうんだい?」 悪魔くんはロウヒーローの名を知らない。 不思議なまでに、その『名前』に連なるものが悪魔くんのもとには届かなかった。 「……『1』と名付けられたのは『アレフ』だ。 天使たちの概念に、古代のヘブライに『0』はなかった。 だから、ないんだよ」 ザインは小さく呟いた。 「彼に、名前はないんだ」 【B-4/品川・教会地下・セト像前/1日目 深夜】 【松下一郎@悪魔くん 千年王国(全)】 [状態]健康 [令呪]残り3画 [装備] なし [道具] なし [所持金] 不明 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を手に入れ、千年王国を完成させる。 1:ザインの宝具である『封印されし半身<セト>』を目覚めさせる。 2:ジョーカーの討伐報酬は魅力的に感じています。 [備考] ※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。 ※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。 ※ロウヒーローを聖杯戦争に参加しているマスターと考えています。 【ライダー(ザイン)@真・女神転生Ⅱ】 [状態] 健康 [装備] テンプルナイトとしての装備 [道具] なし [所持金] なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を手に入れ、千年王国を完成させる。 1:自身の宝具である『封印されし半身<セト>』を目覚めさせる。 2:今の自分ではジョーカー討伐は難しいと考えています。 3:ロウヒーローに対して、複雑な感情を抱いています。 [備考] ※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。 ※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。 ※ロウヒーローを聖杯戦争に参加しているマスターと考えています。 ◆ ここは巣鴨、寂れた教会の地下深く。 神も見捨てたような教会の奥で、人々は静かに熱狂していた。 ――――Eloim, Essaim, frugativi et appelavi. 「第六天より来たりし魔王が現し世に顕現する。 この世を救わぬ神を裁き、主上は我々を導くのです」 ――――Eloim, Essaim, frugativi et appelavi. 悪魔くんが唱え続ける呪文と同意の言葉の面塗りを、激しいポップス調にして歌と化した音楽が流れる。 激しい振動を起こす音と、そこに載る電子の言霊は不思議と心を高揚させる。 集まった若者は顔に凶暴な笑みを貼り付けて、教祖の言葉を聴きながら激しく動き続ける。 「ここがガイア教か……」 ここはガイア教の本部。 悪魔へと落とされた祖神を崇める者達が集う邪教の館だ。 夜間、誰も立ち寄らぬ教会の十字架を反転させる。 すなわち、神への冒涜。 始めから逆十字である十字架と、十字架を反転させた逆十字は意味合いが異なるのだ。 そして、△と▽を重ねた六芒星の飾りを二つほど祭壇に置き、その中心に巨大な『男性器』を祀っている。 『本来ならば、山羊頭の邪神像が置かれるものだがな』 男女の境なく人々は服を脱ぎ、浴びるように酒を飲み、身体を擦り合わせるようにして踊っていた。 いわば、サバトだ。 血はまだ用意していないようだったが。 「俺はこちらのほうが好みだがな」 その邪教の儀式に足を運んだ『ふうまの御館』とキャスターのサーヴァント『加藤保憲』。 狭い会場に多くの人々が集い、息苦しさを感じる空間だった。 しかし、それがまた人々の興奮を高める。 本物の悪魔信仰者ではない、『いけないことをしている』つもりだけの若者の心をトランスさせるのだ。 往々にして、『集団』を構成する者の大多数は害のない存在だ。 公害をばらまく企業や、違法に公共事業を独占する企業だって末端は家族を愛する一般市民であるように。 『天魔波旬か、分かりやすい奴らだ。となると、敵は『あの』英霊だろうな』 「本物の神霊である可能性は?」 『低いな、聖杯戦争において神霊は呼べぬ。 もっとも、あの『魔羅』が何かしらの仮面を被って現れた可能性もなくはないが』 例えば、神霊としての平将門である加藤保憲がそうであるように、だ。 加藤は言葉にはしなかったが、ふうまもそれを理解した。 局所的な状況で神霊としての力を振るう可能性も高い、ということだ。 『果てさて、疑わしきは罰せよというが、ここを絨毯爆撃で叩きのめすのが最も好手だぞ。 サーヴァントが居なくても、信仰を集めるという彼奴らの企てを妨害できる』 「冗談はよせ、キャスター。 もしも、サーヴァントが居たとしたら、貴様が英霊同士の単騎駆けで勝てる英霊か」 『で、どうする』 「様子見だ。 本命は首に賞金の付いたジョーカーとバーサーカー、それ以外でこちらから仕掛けるメリットは薄い」 ふうまは加藤の言葉に、懐の封筒を握りしめた。 元々、この邪教の儀式を突き止めていたところにルーラーから送られてきたものだ。 この邪教がジョーカーの潜む本丸である可能性は、加藤曰く低いとのこと。 ルーラーの情報で、標的が無軌道な存在であることを察することが出来たために、その意見にふうまは同意した。 このサバトを仕掛けた主従へと同盟の申し出も僅かに考えたが、無策の接近は危険だ。 場合によっては行き当たりばったりに行動することもあるだろうが、今はもう少々、情報が欲しい。 「この信仰をお前の力にすることは?」 『露骨過ぎる、信仰とはそう単純なものではない』 「俺には単純なものにしか見えんがな」 不気味に熱狂する人々を覚めた目で見ながら、ふうまは呟いた。 狂うことすら決定権を他者に預けたようなサバトだった。 この者達は、狂っている振りをしているだけだ。 これでは、その『信仰』とやらも大したことはないだろう。 無軌道な学生が集って行う、過激なセックスサークルとなんの違いもない。 「こんなものが神事とは、神も安いものだ」 『神を己から名乗るものは、常に安っぽいものだ。 さて、敵は第六天より来たりし魔王を名乗る覇王、あるいは覚醒者を裏切った使徒』 「男性器を信仰させることで強くなれるのならば、俺も十分英霊だな」 『ハ、ハ、ハ』 嘲るように加藤が笑う。 サーヴァントとは、英霊とはそういうものではない、と、笑う。 ほとんどの英霊が、ほとんどの英霊に対して勝機を持っている。 そう言った『出来ないはずのこと』を行うのが英雄なのだ、と笑った。 「それは置いておくにしても、敵サーヴァントの正体を探ることが出来るかどうか……」 『ふむ、邪眼による強奪か?』 「そうだ。お前がこの信仰を集める者の正体を突き詰め、俺はそのスキルか宝具を奪う。 何の意味もなく、こんな集団を集めるような茶地な舞台設定を整える聖杯ならば唾を吐きかけてやるさ」 能力の詳細を知っていれば、邪眼において能力を奪うことが出来る。 ふうまは、サーヴァントの宝具、もしくはスキルを強奪しようと企んだのだ。 『無謀だな』 「俺が今のところ完全に奪えなかった能力は、『別世界との供給を常に受けていた能力』だけだ。 サーヴァントとしてこの世界で独立された能力ならば、奪える可能性は高い」 『フ、フ、フ……まあ、良いだろう』 加藤は笑った。 ふうまの行動は、限りなく無謀である。 しかし、その戦法は成功さえすれば大きな効果を上げる。 壁は大きいが、試させる価値はある。 「……大きな動きはないな」 『今は準備段階といったところか……細かい奴らだよ』 加藤は吐き捨てるように、言い放った。 ふうまは興味なさげに聴きながら、手近な女性に声をかけた。 数度言葉を交わした後、ペッティングが始まった。 この狂った振りをする人々の群れに溶け込みながら、サバトの様子を観察し続けた。 ◆ 『ちょっとちょっと……! なんかこの空気、楽しくなってきたぞ、わし! あー、いとおかし!(誤用)』 「気に入ってもらえて何よりだ……成功するかもわからんものだからな」 『楽しくなけりゃ最低だな』 「信仰とは単純なものではないが……この集まりは何かしらの利用価値はあるからな」 神代の時代から魂の不死を与えられたカインは、傍らに寄り添う従者に向かってニヒルに笑う。 カインが行ったものは、簡単な邪教の儀式だった。 血腥いものではない、大きな動きはデメリットも大きい。 「ジョーカー討伐も魅力的だが、やるべきことはやっておかなければな」 『無駄になるかもしれんことをコツコツと……大事だけどやっぱめんどいわこういうの』 ジョーカーという討伐対象のことは、二人もすでに把握していた。 しかし、勢い勇んで討伐に乗りかかるようなことはしなかった。 分かりやすい報酬が目の前に出たことで、多少のデメリットを承知で動き出す者が増えるだろう。 偵察という消極的行動に重視を置くものも多く居るはずだ。 「今はジョーカーの動きに任せるさ……減らしてくれるならば、願ったりだ」 『んで、このアホみたいなの続けるって? いや、ワシは楽しいけどさ』 二人が行ったこと。 それは悪魔崇拝者としてのNPCを利用しての、『信仰集め』であった。 そこらを歩く無軌道な若者などを集めての、『雰囲気づくり』だ。 どの時代でも現状への不満は渦巻いており、特に社会の歯車として留まっている若者は顕著だ。 そのため、『この世が上手く行かないのはこの世を成り立たせている者』の『敵対者』を祀り上げる。 すなわち、『社会の中心である富裕層』に『自分達』が取って代わるというものだ。 彼ら『若者』や『一般市民』は、ただのガス抜きとしてここに訪れている。 もちろん、立派な『宗教』として崇めているものも居るが。 「『直哉』さん」 「……ああ、アズマか。なんだ?」 「なにか、暗いですね。どうしたんですか?」 その中の一人ではあるが、『信仰』というよりはこのアンダーグラウンドの空気に魅せられた男が話しかけてくる。 カインは直哉と呼ばれている。 幾つもの名を持っている故に、すぐに対応できた。 目の前の男は、この集団の中で中核を担うことで、自分の心を満たそうとするタイプの男だ。 名は、確か『アズマ』と言っただろうか。 「そうでもないさ、いつもより機嫌が良いくらいだ」 「……珍しいですね、貴方がそんなことを口にするとは」 「教祖の頑張りのおかげだろうさ……いい具合に、人数が増えてきている」 『ネズミ入り込んでるかもしれんけどね』 信長はカイン(ここでは『直哉』としておこう)だけに聴こえる声で、ケケ、と笑ってみせる。 直哉は顔を伏せて、フフ、と笑った。 ここで敵が現れ、暴れだすのならば、それはそれで良い。 「……この集いも、大きくなりました。 これも主上のご威光と教祖様の信念、そして、貴方のバックアップのおかげでしょう」 「何よりだ……俺も神を失望する想いは同じだ。 教祖の力には幾らでもなろう」 アズマの言葉を聴きながら、直哉は目の前の男を笑ってみせた。 この男は、直哉の正体を知らない。 直哉という仮面を、直哉の全てだと思っている。 そう、アズマもまた、この『サバト』と、この『邪教』を、この『世界』を誤解しているのだ。 いわば、この無軌道で緩いサバトは撒き餌だ。 敵を呼び寄せ、その敵を人々の前で撃退してみせることで信仰を集める。 荒ぶる神ならば誰もが行う、人を犠牲にして人の信仰を集める手法だ。 「貴方に主上の加護があらんことを」 アズマは立ち去っていく。 直哉は壁にもたれかかりながら、その背中を笑った。 聖杯戦争という大局を知らず、偽りの箱庭の中で虚栄心を満たすことを目的としている。 直哉は、まるでかつての自らのようだ、と笑った。 『可愛いもんだ、あんなわかりやすく野心を燃やすとかさ。 いや、前振り0な謎沸点のハゲとか、ガッツポーズしただけで仕官先の君主が死ぬ奴とかよりはいいけどさ』 「明智光秀と松永弾正か?」 『名前も聞きたくね―! 明智も、あれも、ほんと、あの糞、ほんとさぁ……』 「松永の方は日本で初めての爆死者らしいぞ」 『絶対嘘だわ。 魔術とか普通にあるんだし、だったら爆殺ぐらいどっかで誰かしてんだろ。 ヤマトタケルとかキックして怪人爆殺させれるだろ。 あいつにそういうカッコイイ肩書あるとか、絶対嘘だわ』 格好良いかどうかは別として、信長が過去の敵に対して穏やかではない感情を抱いていることはわかった。 直哉は信長へと言葉を返した。 「裏切られるかどうかが問題ではない、ここでお前の肩書を祀り上げることで、お前の力が増すんだ。 そのために動く者は、十分に利用できる」 『いや、裏切りとかどんなもんでも糞だぞ。特に一揆はアレだからな、一番糞いのって民衆だってわかるからね』 「俺もそこは知っているさ」 直哉は、そこで初めて笑みを消した。 信長はその変化が面白く、さらに笑みを深める。 「人こそが神の驕りの象徴だ。 神が自らを模して人を作ったのならば、人は醜くて当然だ。 千年王国を遠ざけているのは悪魔ではない」 直哉は、そこで笑った。 自虐の笑みだった。 「人間が、自らの意志で千年王国を遠ざけているんだ。 神を信じるような愚か者だからな」 神に唆された人間は愚かだ。 直哉は自虐するように、そう言った。 【A-1/巣鴨・隠れガイア教教会地下・マーラ像前/1日目 深夜】 【ふうまの御館@対魔忍アサギ 決戦アリーナ】 [状態]健康 [令呪]残り3画 [装備]忍者刀、苦無 [道具]なし [所持金]不明 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を手に入れ、『ふうま』を再興し、この暗黒の世界の支配者となる。 1:ジョーカーを討伐し、報酬を手に入れる。 2:このガイア教の裏にいるサーヴァントを調べあげ、宝具・スキルを邪眼で奪い取る。 [備考] ※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。 ※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。 ※『ガイア教』という悪魔崇拝の宗教の集団に潜入できます。 ※邪眼・魔門によってストックしてある能力は不明です。 【キャスター(加藤保憲)@帝都物語】 [状態]健康 [装備]関孫六 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:大和を、『東京』を滅ぼす。 1:加藤の中にあるものは『東京』を滅ぼす、その一念だけである。 [備考] ※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。 ※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。 ※ガイア教の裏に居るサーヴァントが『第六天魔王』の呼称を持つ、もしくは親しい存在であると考えています。 【直哉(カイン)@女神異聞録デビルサバイバー】 [状態]健康 [令呪]残り3画 [装備]なし [道具]なし [所持金]不明 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を手に入れ、ベルの王ア・ベルを完成させ、唯一神を殺す。 1:試しに、『第六天魔王』の信仰を作ってみる。 2:ジョーカーの討伐についてはじっくりと様子を見る。 [備考] ※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。 ※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。 ※『ガイア教』という悪魔崇拝の宗教の集団の中核に存在しています。 【『魔人』アーチャー(織田信長)@Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚】 [状態] 健康 [装備]圧切長谷部、火縄銃 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を手に入れ、日本を危機から救う。 1:試しに神様になってみる。 2:ジョーカーの討伐とかも正直面白そうだよね。 [備考] ※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。 ※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。 ※信仰されれば強さが増すということにいまいちピンと来ていません。 008 Who is in the center it is chaos? 投下順 010 シナリオフック 007 一人×2 時系列順 010 シナリオフック BACK 登場キャラ NEXT 000 DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命 松下一郎(悪魔くん)&ライダー(ザイン) 018:遠き山に日落ちずとも -あるいは命堕ちる家路- ふうまの御館&キャスター(加藤保憲) 018:遠き山に日落ちずとも -あるいは命堕ちる家路- 直哉(カイン)&『魔人』アーチャー(織田信長) 020:寿司を食えばぶん屋が儲かる
https://w.atwiki.jp/hamhamaruswoc/pages/84.html
少女做了一個夢。那是個萬劫不復、深陷泥沼般,遭人玩弄在手掌心中但她沒有任何不滿,而是像玩偶般遭對方操弄,失去自己存在意義,被盲目利用的夢。 那是個相當冰冷的夢。 那是在虛空的一角,一如往常跟隨在泰弗里斯身後清除靈魂暗影時發生的事情。 「......稍微等一下。」泰弗里斯停下了腳步,有些警戒周圍。 「怎麼了嗎?」康特也感受到了,但他裝做沒有感覺到。 那是很有趣能量,擁有成為強大慾望行者的潛力,要不是有泰弗里斯在的話他就會獨自去會面這個有趣的靈魂讓他成為能夠取樂自己的玩具。 不,有泰弗里斯在也沒問題,說不定事情會變得更加有趣。 「我感覺到了慾望能量。」泰弗里斯環顧四週說道 「而且感覺有點危險,你就站在我後面吧。」 「既然泰弗里斯都這麼說了,那我就乖乖站在你後面當你的護盾吧。」他這樣說著,乖乖退到了後面,在少年看不見的地方露出了深思的微笑。 是怎樣的孩子呢......最近都沒遇到像樣的棋子,都感到有些無聊了呢。 鎖定了一個方向,那是個損壞的建築物所留下的斷垣殘壁,泰弗里斯謹慎的向那裡靠近,最後抬起劍向牆壁的另一方躍進。 「......」映入眼簾的是無精打采,臉上充滿淚痕、緊緊抱著自己的少女。 「妳......」泰弗里斯試探性的開口,引起了少女的注意,對方就像過往遇到的慾望行者一樣馬上就對他警戒起來,抱膝的身體更加用力的抱緊,向他的武器露出敵視的目光。意識到可能是自己的劍讓對方警惕的泰弗里斯將對著她的劍向地面垂放,緩慢的開口 「妳怎麼會在這裡?」 康特在看見少女的面容後就提高了興趣。雖然外表上看不出來,但她神色充滿悔恨,是作為慾望行者絕佳的燃料,他有預感這個少女絕對能成為上好的玩具--前提是她沒有被玩壞的話。 「......我才想問你們是誰。」少女警戒的說道 「我身上沒有任何物資,也幫不上任何忙,請你們離開吧。」 「我並不是......」 泰弗里斯正想要開口,卻被康特給蓋過 「別這麼說嘛?可愛的小姐。」 「康特......?」有些疑惑的泰弗里斯看向男人,而對方用他擅長的微笑示意讓他來解決。 「其實我們是感受到附近有倖存者而前來調查的,畢竟怪物們都喜歡新鮮的食材,這裡聚集了那麼多的怪物我們覺得很奇怪才到這裡來的,結果沒想到在這裡遇見了妳這樣可憐的小姐。」這是很有說服力的理由,雖然能不能接受見仁見智,但是做為友善的起手是想當有效果的。 「那你們還是趕快離開吧,我不會跟你們走的。」少女依然堅定的回絕了兩人,將頭埋進了雙膝中 「不知道為什麼怪物總是緊緊跟著我,在我周圍只會出現越來越多的危險而已。為了你們好,還是放我一個人吧。」 「要是我說我知道原因的話呢?」康特向前邁步,走到少女跟前 「要是我們能解決妳的煩惱的話,妳願意跟我們一起走嗎?」 「......」沉寂了半晌,她將頭抬起看向康特,眼神中仍充滿不信,但仍試探性的詢問 「為什麼要幫我?就算幫了我也沒有任何好處可拿,說不定我只是個大麻煩。」 「這個嘛......要說的話就是我們的大好人羅德跟泰弗里斯實在是放不下需要幫忙的人,所以我只好順著他們的意思去做了吧?」康特打趣的回應道,持續釋出善意 「我們是真的知道怎麼幫助妳,所以才想要帶走妳的。妳就放心吧。」 「......你們無法幫助我的,我的心願早就......」話沒說完,少女再度陷入沉默。 「妳的心願是什麼我們不得而知,但我們可以解決妳現在遇到的問題。」康特自顧自的向她解釋道 「相信妳應該是無意中被虛空吸進來的孩子吧。妳現在因為負面情緒的關係凝聚了名為『慾望能量』的力量在妳的體內,要是放任不管的話妳會變成像現在這樣襲擊妳的怪物的。」 「......」少女看向康特的眼神有些許改變了。 「我們雖然不能直接清除慾望能量,但是能夠幫助妳阻止繼續惡化變成怪物。怎麼樣,聽著還不錯吧?」 「具體來說要怎麼做?」她問。 「這個嘛......作為交換條件,妳跟我們走的話我就告訴妳怎麼樣?」康特提出了交換條件,試圖打動少女。而她的表情出現了些許動搖,但仍就是一副不太相信的模樣。 「也不是要妳相信我們,我們就只是真的想要幫助妳而已。」 「......我辦不到。」像是洩了氣的皮球,她露出了脆弱的一面 「想念的人已經不在了,我就算怎麼樣都好。所以說,放過我吧,讓我一個人呆著......就算變成怪物也沒關係。」 「哎呀呀,那還真是可憐。」康特蹲下身子和少女平視,伸出了手輕輕撫摸她的頭 「失去了心愛之物真的是非常可憐,令人心痛呢。」 「你是怎樣?想可憐我嗎?」拍掉安慰自己的手,少女不滿的說。 「怎麼會呢,我只是向可憐的小姐表達我的關懷之情而已啊。」康特笑得更深了,輕聲說道 「在虛空內誰不是這樣呢,大家都真的很可憐啊。」 「......」 「康特,我覺得這次就到此為止比較好,差不多到了該回去的時候了。」望向四周,泰弗里斯感受到周圍靈魂暗影數量變多的氣息,再不回去的話可能會拖延到回營地的時間。 「嗯......可是我還想再跟這位小姐多說幾句呢。」康特回應。 要是放過這個絕好的種子的話說不定就沒下次了。雖然說放著她自由生長也是不錯的選擇,但他覺得眼前這個少女絕對是個適合自己培育的種子。 「......剛剛說的,是真的嗎?」少女開口問道,康特內心的喜悅翻湧起來,他知道這是上鉤的暗號。 「我們沒有說謊,雖然確實不能解除,但我們可以盡全力阻止惡化。」泰弗里斯回應道,內心有些佩服康特的話術一如既往的厲害。 「沒錯,我是不會騙像妳這樣楚楚可憐的小姐的。」康特伸出手,再次邀請少女 「所以說請跟我們走吧,可憐的小姐?」 「我......」她有些猶豫的伸出手,康特起身往前將少女的手拉住,將她拉入自己懷中,再用公主抱將她抱起,讓她措手不及 「......!」 「失去的東西只要再找回來就好了。讓我們......不,讓我來陪妳重新找回失去的事物吧。」 那一刻,少女黯淡無光的雙目露出了一絲光芒,隨後又收起了那道光芒有些絕望的縮起身子。 很好,就是要這樣。康特滿意到不行,擁有希望之人墮落成為慾望行者的棋子的那瞬間才是培育的最高潮。她擁有相當高的資質,看來有一陣子都不會感到無聊了。 「那我們就這樣回去吧,泰弗里斯?」康特微笑道。 「嗯......走吧。」泰弗里斯感受到了一絲違和感,但他說不上來,最後決定當成是錯覺忽略而過。 「我可以自己走......!」少女做出了掙扎,不過完全沒用,她被牢牢的鎖在康特的懷裡。 「這次就讓我服務您吧,剛剛將您拉起來的時候都可以感受到您應該好幾天沒有進食了,體重異常的輕呢。」康特不為所動的反駁 「我想您連行走的力氣都沒剩多少吧?不然的話遇見可疑的人應該會馬上逃跑才對,而您卻是屈膝躲在一個小角落裡。」 像是被說中般,她縮起了身子,不再掙扎。 「這麼說起來,還沒詢問您叫什麼名字呢。」 「......奏。」少女--奏回應道 「叫我奏就好。」 「那麼就尊稱您為奏小姐吧。」康特說 「歡迎加入我們草坪地毯的陣營。」 --這就是那場惡夢的開端。 「......唉呀,奏小姐,您怎麼會出現在這裡呢?」名為奈夫的男子望向無聲出現在她身旁的少女,理論上現在是她的工作時間,不是應該出現在這個冷板凳的時候。 「說在看你發呆你相信嗎?」 「因為剛剛想到了初遇奏小姐的時候,有些懷念。」奈夫如實回應道,但他也看出來她是不會因為這種無聊的原因來看望自己這種人的 「您是來找路易的嗎?」 「......嗯。」她無聊的甩起腳,一提到路易的名字她毫無表情的臉頰就露出了些許笑容 「畢竟人家已經好幾天沒有看見路易先生了,想要補充一點能量也不是說不過去的嘛?」 「路易的話他剛剛說要陪靈魂行者去前線支援,應該還要等一陣子才會回來吧。奏小姐可能要等下次了。」話剛說完,奏的臉色就變的很不好看,充滿忌妒的神色,但下一秒又收起表情,只是很平穩的說這樣啊就起身離開了。 沒有那個人的地方她一刻都不想待。 靈魂行者......令人憎惡的存在,為什麼路易要和那種人一起去戰場呢?要是能多陪在她的身邊多好......不,不能這樣想天城奏。那位大人一定是有什麼要確認的事情才會離開這裡前往那種地方的。現在的她只要乖乖地等他回來就好。 沒錯,他只會注視著她。 在草坪地毯過了數周,名為奏的少女適應了這裡的生活,一改當初不信的態度變得相當親人。其中最親近的還是當初帶走她的康特,該說是整個人變的很有精神了能還是變的相當黏人了......總之算是往前了一步吧,泰弗里斯稍稍的鬆了一口氣。 「康特!」和羅德談論中奏撲向康特,向他撒嬌 「我已經幫忙分配完物資了,稍微摸摸我吧!」 「這邊還在談重要的事情呢,稍微去那邊等我一下吧。」康特輕撫她的腦袋,對她進行撫慰 「做的很棒呢,去休息吧。」 「嗯!」受到了獎賞的奏開心地離開了。 「那個少女就是你們說的快要變成慾望行者的那位吧。」羅德看著遠去的身影問,確實她的身上有變淡的慾望能量殘留,現在被控制得很好的樣子。 「是的,我也沒想到變化會這麼大。」泰弗里斯有些不可思議的望向她回應,不過他還是感覺到了某些不太對勁的地方 「就在不久前她還很謹慎的不讓任何人靠近她,但最近變的很願意親近人也變的很黏著康特了。」 「這麼說會讓我很不好意思呢,我只是稍微開導她而已。」康特一如既往的用笑容回應道 「稍微理解她之後就很容易解開心結了,就只是這樣而已。」 當然不只這樣,他還稍微做了點別的努力,讓她變成注目著自己的孩子。這一切都是為了讓她成為有趣的玩具。 「康特,你有在她身上查到什麼嗎?」羅德問。 「嗯,算是有成果吧。」康特將關於那女孩的事情道出 「因為戀人保護她死去,所以就自己踏入虛空,然後在虛空流浪很久直到我們發現她。這就是全部了。」 「原來如此。」羅德做出思考的樣子,仍有些不理解的地方 「那她怎麼會這麼親近你呢?」 「這個嘛,該說是她改變了想法還是找到了新的事物呢。」康特擺出無奈的樣貌 「因為來到這裡後幾乎都是我在照顧她的緣故吧,她似乎將我看做新的王子殿下,所以變的很黏我。」 「王子殿下......」泰弗里斯露出有些想笑的表情 「拿來套在你身上總感覺有點微妙。啊,我不是說你不行的意思。」 「泰弗里斯好過分喔,難得可能成為男主角的機會我也想試看看的說呢。」做出難過的表情,康特裝做快要哭的樣子 「平時可都是泰弗里斯做為大家的王子叱吒風雲呢,這次終於輪到我這個小人物了所以有點開心的說。」 「抱歉,我並不是要取笑你的意思。」收起笑容,泰弗里斯就像平常那樣謹慎的道歉。 見狀康特也回到平時略顯輕浮的樣子 「沒事啦,我也只是說說而已。」 「我會盡全力『照顧』她的,你們就放心將她交給我負責吧。」 看見康特朝自己這裡走來,原本在休息的奏立馬從座位上跳起來,跑向男人的方向。 「康特,你來找我了!」她乖巧的問候,而男人也用溫柔的語氣與她對話。 「是啊,剛把事情談完了。」再度輕撫少女的腦袋,他露出寵溺的模樣 「奏小姐很乖呢,每天都會像這樣乖乖的等我。」 「嗯,因為是康特的要求,所以我會乖乖聽話的!」她露出開心的表情,相當享受男人對她的寵愛。 「那麼今天也要出去逛逛嗎?」伸出手,康特像是王子邀請公主般略彎下腰邀請著奏 「我有這個榮幸嗎,奏小姐?」 將自己的手覆上男人伸出的手,奏展開笑容 「那是當然的,今天也請多指教!」 兩人就這樣牽著手前往了森林深處,幾乎沒有人發現它們的離去--除了一名金髮的少年。 「......」 等待的時間很無聊,實驗也是不斷重複一樣的事情根本沒有有趣的事情發生,她已經厭倦了不斷等待的時間,不想再等待王子殿下的降臨。 「可是他說要乖乖的......」咬破的手指頭,她無視了流血的手指,內心感到焦躁不已。她不想當個只是等待的少女,她想前往能夠接觸到那個人的地方,但自己並不想打破她與那個人的約定。 「人家去散步一下。」拋下這句話,她離開了實驗室,前往那個人可能會存在的地方--奈夫那男人所在的噴泉。 「要是發生這種事情的話......哎呀,歡迎奏小姐大駕光臨?」 聽見了熟悉的聲音,緊繃的神經馬上就鬆懈下來了,她鬆開緊握著的拳頭,張開雙手一把撲向朝思暮想的那個人懷中。 「奏小姐還是一如既往的愛撒嬌呢,這樣可永遠都長不大喔?」回抱住嬌小的少女,路易像往常那樣輕撫她的頭安撫她的情緒。 「長不大有什麼關係,只要能一直呆在路易先生的身邊人家寧願永遠都不長大。」她悶聲回應著,有些不滿的抱怨 「人家都好久沒有見到你了,不想聽到這種回應。」 「但是長不大的話就沒辦法履行我們的約定了呀?」路易回應道,輕撫過她的髮絲 「那不是妳最大的願望嗎?」 「......人家只是想要多撒嬌而已,沒有不願意的意思。」緊抱住路易,她深深吸一口氣 「人家最喜歡路易先生了。」 「嗯,我也是。」他說出這句話的臉雖然掛著微笑,但卻沒有讓人感覺到他的笑意。 送走了奏,奈夫有些好奇的詢問 「就這樣繼續騙她沒有問題嗎?」 「騙?我怎麼會用這麼低俗的手段呢?」路易仍就是那個笑容,卻透著一絲涼意 「我確實喜歡奏小姐呀,這是我最真實的心意,只是我們看待『喜歡』的角度不同而已。」 「她可是我最完美的棋子呢。」 「我看見了,你最近跟那個綠頭髮的走的很近。」金髮少年向康特搭話,而後者則是用「那又怎樣」的表情看著他。少年有些不耐煩的抓頭 「你想要做什麼?那傢伙是怎樣?你新的玩具嗎?」 「說是新的玩具,怎麼會這樣想呢?」康特仍是一如既往的笑容,金髮少年看都看膩了,康特做出思考的模樣,隨後說 「你要這樣想也不是不行,畢竟這想法也不算是錯的。我現在只是很享受成為她的王子殿下,所以想要幫助她的小角色而已。」 「你說的幫助就是每天出去逛逛的時候洗腦她這件事嗎?」少年不悅了起來,環抱住手臂 「我只是想知道你在耍什麼手段。」 「怎麼能說是洗腦呢歐文。」康特沒有生氣,只是微笑回應 「我只是教導她轉換思考模式而已,至於她要怎麼想就不是我能掌控的了。就是因為這樣人類才非常有趣不是嗎?」 「聽起來就跟狡辯沒兩樣。」歐文相當不滿康特的回應,但他並不打算做什麼,因為這與他的「樂趣」毫無關聯,他只想要重要的時候不要出什麼差錯就好了。 「我知道你在擔心什麼,完全無須擔心,這一切都在我的掌握中。」康特讓歐文放心,奏的出現只會加快計畫的進行,因為她是非常高級的種子 「你有空就和奏小姐交好看看吧,關係打好在交際中是非常重要的喔。」 歐文雖然應了聲,但心中卻沒有打算和她進行過多來往。 要說為什麼的話,那就是那女的給人的感覺相當不妙。 「......」看著歐文離去的背影康特若有所思,該說是這少年的直覺非常準還是該說是沒想到他會插足奏的事情呢,總感覺有些棘手。雖然目前的少年不會影響到他的計畫,但要是真的插手起來的話可能會變得相當麻煩。 不過,兩人都只是他計畫中的一枚棋子,現在就讓棋子們走自己想走的路就好了。畢竟最後他們都會走回自己的棋盤上的。 「手邊的事情也忙得差不多了,來去找奏小姐吧。」 「康特!」見到男人的少女相當高興,一股腦的就黏了上去,摟住他的手臂 「今天也要去逛逛嗎?」 「嗯,今天也去吧。」牽起手,兩人再度前往森林深處。 「會稍微有點難受,要是很不舒服的話就告訴我吧,畢竟讓奏小姐感到不適就不是我的本意了。」握住奏的手,康特提醒少女,同時逐漸將自己的力量透過手的連接灌入她的體內。 奏的臉隨著力量的進入變的蒼白,但仍然咬著唇不發出任何聲音忍受著不適,直到五分鐘後她開始冒出冷汗,露出無法支撐下去的表情,見狀康特停止輸入力量,等待她的臉色恢復。 「我還可以再撐一陣子的......」她發出虛弱的聲音逞強著,但臉色仍然蒼白不已。 康特放開她的手,將她落下的冷汗擦除 「今天還是到此就好,一下子大量灌入異能力是很不舒服的,像奏小姐這樣能夠撐五分鐘就已經很厲害了。而且也比上個星期接納的容量多很多,我認為這樣的努力就已經很厲害了,所以今天就這樣吧。現在就好好休息吧。」 「嗯......謝謝,我知道了。」長舒一口氣,奏的表情好了很多,康特也打算藉此詢問一些問題。 「不知道現在奏小姐可以告訴我了嗎?」康特試探性的詢問 「為什麼執著於想要力量呢?」 「這個嘛.......」奏望向天空思考了半晌,最後決定說出口 「因為我不想失去任何我珍愛的人了,我想要變的強大,就算這過程很痛苦也沒有關係。」 「而且康特你不是也沒有自保的能力嗎?所以我想說至少要成為草坪地毯裡有能力的一員。」 原來是這樣......康特思考著,這女的有相當的潛力,他並沒有看錯......要將她變成自己這邊的人才行。要是能激發她當時絕望即將成為慾望行者那樣的潛力的話她一定會成為強大的慾望行者,他幾乎能看到她成為強大棋子的未來。 「奏小姐能夠相信我嗎?」康特試探性的詢問 「畢竟我也只是個不起眼的小人物而已,所以我在想能不能獲得妳的信任呢。」 「你在說什麼呢?」奏笑了出來,像是認為男人在擔心無聊的問題般 「自從你願意幫助我成為異能力者開始,我就相信你了呀。我打從心底覺得康特你是值得相信,能夠讓我放心的人。」 「而且也要多虧你和泰弗里斯願意帶走我,所以我才能像這樣安穩的活著,不用擔心被靈魂暗影襲擊,也成功壓制了慾望能量。」奏的表情變得相當放鬆,語氣中對康特充滿感激 「你們是我的救命恩人,所以我絕對相信你們。」 「這樣啊,看來我擔心了無用的事情。」康特露出微笑,向奏伸出手 「那麼,接下來還有一點時間,奏小姐願意陪我這個小人物一起在稍微散個步嗎?」 「說什麼小人物,在奏的心中康特你已經是足以媲美王子殿下的大人物了。」少女將手覆上給予回應 「走吧,今天你想要帶我去哪裡?」 怎麼想都不對勁。 奏咬著手指,拼命壓抑存在心中的不安。 路易和靈魂行者越走越近了,這是她不能允許的。 「我永遠都喜歡奏小姐。」 騙子。 「我只會呆在奏小姐找得到的地方。」 騙子。 「就算全世界與奏小姐為敵,我也會站在奏小姐的身邊的。」 大騙子。 再度將手指給咬破,鮮血的味道進入口腔中變的鹹腥,這反而刺激了奏那敏感到不行的神經,她隨意的將血抹在黑色的洋裝上,不斷思考著要怎麼將路易的目光轉回自己的身上。 「區區靈魂行者有什麼了不起的......」妒忌使她瘋狂,無法繼續用理性去思考接下來的對策。但她還是努力將瘋狂壓抑住,試圖尋找路易最近有些冷落自己的藉口 「是這次的靈魂行者會阻礙到他的計劃所以才要靠近她吧?一定是這樣。」 如果不是這樣的話,她一定會大爆發,因為她無法忍受任何女人出現在路易的身邊,從相遇的那一刻開始,從她改變的那一刻開始,能站在路易旁邊,成為他伴侶的人就只有一個人--沒錯,就是自己,名為天城奏的女人。 「雖然對不起路易,但人家也有自己的想法。」她望向桌上散亂的文件中被她特意挑出來的一張,那是徵集探索最近在諾克小鎮張開的奇異虛空的異能力者招集單。她抓起那張紙寫上自己的名字 「人家要親自去見靈魂行者,如果有必要的話就在路易先生出手之前把她除掉。」 對不起路易,但人家是一心一意為了你好啊。 要生氣的話就生氣吧,她會接受處罰的,只要能讓自己留在他身邊的話。 在那之後就是草坪地毯所發生的大事了。 羅德失蹤、歐文帶著哈露出逃、泰弗里斯隨之消失、伊莉絲也背叛了草坪地毯、金的失控。 在一連串的打擊下,奏和康特的關係變得更加緊密,兩人跨越了無數困難,將對方視為重要之人,最後成為命運的聯繫之人。 當然--這一切都是康特棋盤上的計畫。 「最後只剩下我們了呢。」康特懷抱著奏說著,而少女的眼神也不再向過往那樣清澈,而是變的無助和絕望。 她將自己埋入康特的懷抱,惴惴不安的向康特問到 「我也會變成那樣嗎?」 「有我在的話奏小姐絕對不會變成這樣的。」給予了否定的回應 「我無論如何都會站在奏小姐這邊的。」 「謝謝你康特......」發出怯弱的聲音,奏沒注意到自己已經成為蜘蛛網上的獵物。 這樣只剩下最後一步了,讓她覺醒成為慾望行者的最後一齣戲。 燃燒的大地、無比泥濘的大地,還有再也動不了的人們。 這是康特為了奏所準備的最終舞台。為了使奏覺醒,他不斷洗腦並給予奏最缺乏的關愛,再來是只需要能夠引發她的絕望讓她覺醒的契機就好了。 「這將會是我佈置已久,最完美的一齣戲。」他說著,露出了往常的微笑。 「怎......怎麼會這樣......」望著毫無生機的大地,少女跪坐在滿是泥潭的土地上,並陷入了無限懊悔。 這一切都是她太晚到來這個野營才會發生的事情,要是她能夠再快一點的話......! 「您怎麼露出一副哭喪著臉的模樣呢?」 熟悉的聲音在耳邊響起,她轉頭向聲音的來源過去,卻看見滿身血跡的康特帶著微笑站在她的身後。無法相信的她向男人喊叫著 「為什麼會發生這種事?不是說我要是能趕上的話這裡就能夠獲救的嗎?」 「還有,為什麼康特你......!」 「啊,這不是我的血跡,請別擔心。」康特蹲下將手上的血跡往奏的臉上抹去 「這都是為了奏小姐。因為他們無論如何都不相信奏小姐能夠拯救他們所以我給予了他們應有的懲罰。」 「就算是這樣你也不能--」 「因為我喜歡奏小姐啊,為了成為你的王子殿下我什麼都願意做,即使這會使我的雙手沾滿鮮血。」康特將手指堵上奏的嘴,自顧自的解釋道 「我已經不能沒有奏小姐了,因為我已經注意到奏小姐是我的全部,是我未來不可或缺的伴侶,所以我無法原諒連這點都無法理解那些無聊人類。」 「我只剩下奏小姐了,所以請你不要離開我。」輕如羽毛的謊言隨風而出,康特將發楞的奏擁入懷中 「我哪都不會去的,我會永遠待在奏小姐找得到的地方。所以請奏小姐呆在我的身旁。」 這是孤獨的她最需要的話語,那像是惡魔般的蜜語進入她的腦中揮之不去,理應是她熟悉的溫暖懷抱現在卻感到些許的冰涼讓她無法忽視。奏有些明白了,她被玩弄在男人手中的事實;還有她無法討厭、無法逃離這個男人的懷抱的事實。 她將雙手懷抱住康特,落下了眼淚 「我......」 「只要相信我就好了,我是不會背叛您的。」康特游刃有餘的說出欺騙的話語 「我永遠喜歡奏小姐。」 在那刻,少女陷入了甜言蜜語的陷阱,在男人的指引與灌輸的欲望能量下,成為了「慾望行者」。 在那之後的事情沒有人知道,充滿不堪歷史的黑色書櫃也並未提到之後的事情,只知道成為慾望行者的天城奏「成為了康特的戀人之後消失在虛空」這件事。 「什麼?你說奏小姐跑去草坪地毯了?」路易有些訝異的說道,他從沒想過平時聽話的奏會違背自己不要接近靈魂行者的命令,擅自跑去那個地方與靈魂行者進行接觸。 「嗯,這是她要我交給路易的信上面寫的。」奈夫交出已經拆開的信紙交給路易 「已經出發了,就在今天早上。」 「真是的,這下麻煩了。」路易搔搔頭面露無奈 「我接下來的目的就是接近靈魂行者然後打算攏絡她的說。」 「反正都要去草坪地毯的話就順便帶她回來吧。」奈夫說。 「不用你提議我也會這麼做,畢竟現在讓她出場還太早了,我不能放任她亂跑不管。」 「那你就加油吧,希望不要她不會做出意料外的事情。」 「希望吧。」 另一方面的草坪地毯,綠髮少女落地於曾經熟悉到不行的地方,望著這個曾經熟悉但現在有種陌生感的區域,她幾乎沒有任何情緒,腦袋中只想著要如何計畫將靈魂行者除掉。 「初次見面,人家是出身於S.B.L實驗室,專門對靈魂暗影進行研究的奏。」她擺出路易教她的和善微笑,拉起裙擺對著出現在草坪地毯的人們打招呼 「同時,人家也是路易先生的戀人,請多指教。」 身為意志的泰弗里斯見到那張臉的瞬間就感覺到整個草坪地毯將發生前所未有的大事。 但那就是之後的故事了。 這篇會有外傳 會解釋奏取回這段記憶的原因還有奏對康特的看法 簡單來說的話就是比哈露還要更加憎惡的情感,變得比誰都更想要除掉康特,因為康特已然成為她的惡夢了 無法抹除這段經歷是奏最大的噩夢,未來她將為了這段噩夢讓康特付出代價 再來就是要說這段黑歷史真的讓奏無言以對,無法相信自己曾經受到洗腦的程度這麼嚴重而且居然連馬丁都知道這件事只是為了不刺激她所以沒有告訴她 不過現在這狀況就是這件事使奏的慾望能量增強,因為她的負面情緒嚴重影響到身為靈魂行者的部分 她到草坪地毯的故事接妮雅主線(目前還沒寫) 這個就是補充洗腦奏的由來跟她出現在草坪地毯的原因
https://w.atwiki.jp/wiki11_f36/pages/27.html
目次 不況は弱蟲經營者が原因 (H20.12.14) アメリカは自由の國か (H21.2.15, 2.22) 貧しさの原因 (H21.5.10) ならずもの國家は北朝鮮かアメリカか (H21.6.2) 鳩山由紀夫、中國皇帝により日本國王に封ぜられんと欲す (H21.8.16) まず、政権交代でなく、考へ方 (H21.8.31) 官僚の無力化 (H21.9.6) 國債は止めて、日銀から借りろ (H22.4.24) 外交音癡・日本人 (H22.7.18-25) ソニーはサムスンに抜かれたか? (H23.2.20) 電力會社を眞人間にするには (H23.3.15) 東電に藉りて商ひを論ず (H23.3.19) リンチ國家アメリカ (H23.5.2) お金のはなし (H24.12.8~H25.1.6) 資本主義の末路 (H26.11.16) 國債はお札 (H29.6.14) 不況は弱蟲經營者が原因 (H20.12.14) 今囘の不況くらゐ動きの速い不況はない。リーマンの件があつて何日か後にはトヨタが派遣を何千人か切るといふニユースが流れてゐた。その後は連鎖反応の樣に大企業がどんどん人員削減を發表しだした。 思ふに、最近はどうかすると經營責任を問はれるので、經營者が、兔に角、早め早めに何か手を打つておかうとするのではないか。努力してなんとか切拔けようとするよりも、先に手を上げておいた方が自分の責任を問はれる可能性が低いと讀んでゐるのであらう。 それが不況の傳染を速めた。 アメリカ流のコンプライアンスとかが導入された成果として、日本の經營者も骨拔きになり、己の責任を全うするよりも責任逃れのみ考へる樣になつたのか。 アメリカは自由の國か (H21.2.15, 2.22) アメリカは自由の國と言はれてゐる。しかし、本當にさうか。理念としてはさうなつてゐるかも知れぬが、實態はどうか。といふのは時々聞くが、ここで問はうとしてゐるのは、理念の上でも本當にさうなのかと云ふことである。 大統領就任の際に聖書を片手に宣誓するが、これはどう見ても、政治に宗敎を持込んでゐる。アメリカ人はこれを見て當然としてゐる。日本人にも、これは信教の自由に反すると糺彈する人は何故かゐない樣である。 憲法はどうなつてゐるか。アメリカ大使館のホームページによると、下記の樣な内容である。 アメリカ合衆國憲法 修正第一条 連邦議会は、國教を樹立し、あるいは信教上の自由な行爲を禁止する法律、または言論あるいは出版の自由を制限し、または人民が平穏に集會し、また苦痛の救済を求めるため政府に請願する権利を侵す法律を制定してはならない。 國敎を定めてはならないと云ふことと、あとは、自由を制限する法律を制定してはならないといふだけである。政治に特定の宗敎的儀式を持込んではいけないとは書いてゐない。 歐米の言ふ自由とは、もともと、さういふものである。つまり、何をしてもいいといふのではなく、あることに關しては、それをしても殺されたりはしないといふだけのものである。 信仰について言へば、キリスト敎を信仰することは人間として當然のことであることを前提として、なかには他の宗敎を信仰する人がゐても、それを止めさせはしないといふだけである。當然ながら、差別はされるかもしれないが。 ちなみに、日本國憲法には、信敎の自由だけで一条設けられてをり、下記の樣にかなり具體的な内容である。自由を保障すると謳つてはゐるが、結局、國家の介入を禁止するのが主眼である。羮に懲りて膾を吹く類ひか。 日本國憲法 第二十条 信敎の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗敎團體も、國から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。 二 何人も、宗敎上の行爲、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 三 國及びその機関は、宗敎教育その他いかなる宗敎活動もしてはならない。 歐米のいふ自由とは、上に書いた樣に、正統から外れてゐる人は昔なら彈壓されたのであるが、一應存在だけは許す樣になつたといふことである。正統はあくまでキリスト敎であり、それもアメリではプロテスタントである。他の宗敎を信仰しても命までは取られないが、差別はされる。 日本人は、何をするのも個人の自由だと思つてゐるが、歐米では社會が優先される。社會あつての個人である。他人は信用できないがゆゑに、信用できる友人との付合いを重んじ、その延長として社會の規範を尊重する。 但し、社會も、個人の精神にまで立入ることは出來ない。地獄に落ちるか天國に救はれるかは、純粹に個人の問題である。 ところで、日本人は、他人を基本的に信用してゐるがゆゑに、普段は友人も社會も特に意識はしないで暮してゐる。日本人の暮しは歐米よりも個人主義的である。 自由の國アメリカはずつとアフリカ人を奴隷としてゐた。彼らは劣等であり、また貧しい暮しをしてゐたのが、自分達のお陰で豐かになつたのだと、むしろ恩着せがましい。歐米人の常であるが。 アメリカの自由とは選ばれた自分達だけに認められるものであり、その他の劣等人や非キリスト教徒はその恩惠には与りやうがないものでもある。 アメリカの實體は選民たちの閉鎖社會である。ただ、自分達のやり方に從ふ人間は受入れ、己の社會の強化に役立てようとしてゐるだけである。 貧しさの原因 (H21.5.10) 物質的には豐かになつたが、とテレビで言つてゐた。よく聞く表現である。しかし、そもそも物質以外に豐かさがあるのか。物質的に間違ひなく昔より豐かになつた筈であるが、滿足できないものがあるので、それは物質以外の問題なのではないか、といふことであらうか。 食へない、或は食ふや食はずであれば、豐かではない。食へて、かつ、多少の餘裕があれば豐かである。それだけではないのか。 豐かといふのは、生活していく上でさうであるに越したことはないが、だから滿足といふものではない。誰でも食ふために何とか稼がうとする。それで食へる樣になれば十分である。さらに稼ぐ必要はない。ただ、先々の不安から、もう少し稼ぎたいとか貯金したいとかいふことはあり得るが。 ところが今は食ふだけで大變なのである。ちよつと氣を拔くと競爭相手に出し拔かれてしまふ。世の中がどんどん變つていくので、何かを身につけておけばそれで一生食へる譯でもなくなつた。常に稼ぐことに專心してゐないと、食つていけなくなる心配がある。いくら稼いでも安心出來ない。全く餘裕がない。それで貧しさを感じるのである。 なぜさうなつたか。原因は、今や世界がある自動運動に陷つてゐることにある。歐米は、特にアメリカは、この世を理想郷にする爲の一直線の道を進んでゐる。人間は皆そのための齒車に過ぎなくなつた。そして日本人もその一翼を擔はされてゐる。船に乘せられて絶えず櫓を漕がされる奴隷みたいなものである。ただし、本人氣がついてはゐない。知らぬ間に、仕事に追立てられ心休まらぬ生活を送らされる樣になつてしまつてゐる。明治以來、ただ植民地化を恐れて藻掻いてゐたらかうなつてしまつた。 アメリカでは、自分の救ひは自分で稼がねばならぬ。眞つ當な人間、救はれる人間は現世でも役に立つ筈であり、役に立つかどうかは金を稼げるか否かで判定される。それ以外に客觀的な評價はない。 金儲けを追求すると、結局、金融に盡きる。アメリカでは金融に皆が群がり、金融がすべてを支配してゐる。 惡貨は良貨を驅逐するで、アメリカの金儲け至上主義が、全世界を卷込んでゐる。この力には誰も抵抗出來ない。助けあひであつた「保險」も、今やビジネスに成下つた。サブプライムローンの樣な詐欺紛ひも罷り通る。 貧しさの話から結局プロテスタンティズムに行着いてしまつた。諸惡の根源はここにあるので、どうしてもさうなつてしまふ。これを打破するにはどうしたらいいのか。 ならずもの國家は北朝鮮かアメリカか (H21.6.2) 北朝鮮が核兵器を開発してゐると非難されてゐる。しかし、核を既に持つてゐる國にそんなことを言ふ資格があるのか。 アメリカは北鮮を「ならず者國家(rogue state)」と非難した。國際法に從はない國といふことだらうが、ではアメリカの核は國際法で認められてゐるのか。さうではなからう。實力で他國を默らせてゐるだけではないか。支那なども、最初は非難されたが、持つて仕舞へば、既成事實となり、アメリカも非難しなくなつた、といふことであるが、正確には、持つてゐる奴を怒らせたら怖いからアメリカも言へないだけである。 要するに、核保有國は、他國を脅しで默らせてゐるだけである。すなはち、ならず者以外の何ものでもない。 日本だつて大きな面は出來ない。アメリカの核で守られてゐるのであるから。勿論、アメリカを非難してゐる人もゐるが、自分自身が傘の下でうたた寢してゐるのを忘れてゐるのか。國としては、勿論それを認めてゐる。それでゐて、北朝鮮を非難するのは、以つてのほかではないか。これでは日本もならず者である。 國際關係は力のせめぎ合ひである。力を持たぬ者は持つ者の風下に立ちながら何とかやつて行くしかない。こんな世界で、刃向ふ國に、偉さうな顏をして「ならず者」と非難するだけで澄ましてゐるのはをかしい。何故、力で押へつけようとしないのか。さもないと核は無限に擴散していくであらう。 勿論、アメリカとしては、直接、力に頼らず、自由主義とか民主主義とかの理念の力で制覇したいのであるが。しかし、そんなものはあくまで力の前提があつての話である。 結局、アメリカもそれだけの力は持つてゐないと云ふことなのか。「力」といつても、核は簡單には使へない。となると、通常兵器での戰ひになる。海上であれば近代兵器で簡單に優位に立てる。船を沈められればおしまひである。しかし、陸上ではなかなかさうはいかない。自分の國土を脅かされれば、窮鼠猫を咬むの必死の抵抗を受ける。 これにはアメリカの「理念」も吹つ飛ばされる。アメリカは、理念があるから正義であり、神の後ろ盾により必ず勝つと信じてゐる。しかしその神は猫の神樣でしかなく、鼠にとつては惡魔に過ぎない。鼠は、惡魔に支配されまいと、とことん抵抗する。たとへ戰ひに負けても、白旗はあげず、最後まで粘る。 思ふに、正義を振り囘すからをかしくなるのではないか。外交は、單なる政治の世界に過ぎないのである。そこに理念の押しつけををするから、話がをかしくなる。他國の理念も認め、問題を政治の世界に限定すれば、相手も話を聞きやすくなるし、互いに妥協點も見出しやすからう。勿論、話し合ひの裏には、最後は力づくでもといふ脅しがある。 アメリカは、自分こそならず者であること自覺し、ならず者に徹するしかない。さもないと世界の平和を守れないであらう。 H21.6.22 追記 アメリカが、自分は正義で北朝鮮はならず者だと言ふと、言はれた方は自分達を殲滅しようとしてゐるのではないかと恐怖を感じ、益々核を持たうと頑張る樣になる。 アメリカが、俺の方が強いのだから言ふことをきけと脅せば、北朝鮮もそれなりに損得勘定して妥協もするだらう。お互いにごろつき同士であるが、單に得しようとしてゐるだけであり、皆殺しなどは考へてゐないと思ふだらう。 アメリカの理念も、立派なものかどうか知らぬが、たとへ立派だとしても、どうせ完全に實現されてはゐないのであるし、北朝鮮に理念があるかどうか知らぬが、そんなことは他人の知つたことではないので、内政には干渉せず、ただ云ふことを聞けばよしとするしかない。 歐米の理念を押しつけようとするのは、そもそも他國の文化を破壞しようとする行爲である。歐米のやり方が正しいと思ふのは勝手であるが、それのみが正しく、それ以外は間違ひであるといふのはとんでもない思ひ上がりである。まして、それを傳道するのが自分達の使命であると思つてゐるから始末に負へない。 この樣な行爲は、ヒットラーの民族殲滅と、やり方は多少異なるが、結果は全く同じことになる。命を取るより文化を破壞する方が罪は重いかもしれぬ。 鳩山由紀夫、中國皇帝により日本國王に封ぜられんと欲す (H21.8.16) 民主党の鳩山由紀夫は、朝日新聞(H21.8.15朝刊)の誤報でなければ、といふのは、こんなことがあり得るとは常識では考へられないから一應斷つておくのであるが、首相になつても靖国神社に參拜しないと、黨代表になつた時に中國政府に伝へてあるといふ。 日本の首相は中華人民共和國皇帝に封じられてゐるのか。 冗談はさておき、と言ふべきところであるが、冗談ではなく、吉田茂にしろ、小泉純一郎にしろ、歴代長期政權は皆、米國皇帝に封じられた奸臣ばかりである。奸臣と言つたのは、天皇に對して奸臣といふ意味である。田中角栄だけ、ちよつと刃向はうとしたのか。 それが最近は、中國にも二重朝貢といふ譯である。 鳩山といふ人は、政治といふものが全く分つてゐない樣である。この人だけではないが。 中國は、ジャブを入れてゐるだけなのである。そんなことで相手が怯むとは思はないが、相手から少しでも多くを引出すために、何かの足しになればと、あれやこれやとつついてゐるだけである。それを一々まともに受取つて反省してゐるから、逆に、中國の方が驚いてゐるだらう。 いや、もうずつと前からこの状態であるから、かうなることは豫測してをり、驚いてはゐないだらう。あまりにも豫想通りなので嗤ひ笑ひが止らぬといつたところか。 国際關係といふのは、弱肉強食の世界である。歴史を見れば明らかである。どれだけの民族が絶滅させられたことか。 それでも、今は、正義を貫くべく、世界は變りつつあるといふだらう。しかし、國連にしても、第二次大戰の聯合國側の組織に過ぎない。國際法といふのも、歐米の慣習を押しつけ、自分達の支配を維持しようとしてゐるだけである。國際法が正しいといふ根據はどこにもない。 正義といふのは、澤山の人間がゐれば、人間の數だけの正義がある。この世に絶對的な正義などあり樣がない。敢ていへば、人間存在自體が惡であり、國家自體が惡である。他人を押しのけることにより辛うじて生きてゐる。正義などどこにもない。 この相對の世界で、なんとか自分達が生延びられる樣にするのが、政治を擔當するものの責任である。過去の惡がどうのかうのと言ひだしたら、中國でもどこでも山ほど惡を犯してゐる。因縁をつけられたら、つけ返せばいいだけである。それが政治である。勿論、ジャブを入れながらも、あくまで友好的に交渉するのであるが。 まず、政権交代でなく、考へ方 (H21.8.31) 民主黨のキャッチフレーズは、「まず政権交代」だつた。舐めるにも程がある。 まず、基本的な考へ方があり、それに基づいた政策が要るのではないか。それがあつてこそ、政權を持たせるべきかの判斷も出來る。 子供手當てとか、こまごました人氣取り策だけで、政権交代などと、馬鹿なことを言つては困る。 昨日も今日も、テレビには鳩山代表は出てこず、幹事長などが出てきて、代表ではないからとお茶を濁してゐる。考へがあるのなら、チャンスとばかり、自分が出て來て、責任ある發言をする筈である。何も考へてないから、こそこそ逃げてゐるのであらう。 官僚の無力化 (H21.9.6) 衆議院選擧で民主黨が勝つたが、どうせ大したことが出來るとは思へない。といふのは、基本的な理念を何も表明してゐないからである。であるから、役人をちやんと支配できないであらう。 元々、日本人は政治には興味なく、幕府の役人に任せてゐた。明治になつて、ヨーロッパに倣つて議會制を導入したが、形式に過ぎない。相變らず、政治は役人が取仕切つてゐる。 ところが最近は官僚の腐敗、無能がしきりに言はれる樣になつた。 幕府の役人は原則世襲である。生活は保證されてゐた。ところが今の役人は生活の保證がない。若い間は、薄給とは言はぬが、高給ではない。年取つてからの收入の確保に目がいつてしまふ。その結果、天下り先の確保に懸命となる。肝腎の仕事が、天下り先を作るための方便となる。 會社でも、サラリーマン經營者は碌なのがゐない。自分で會社を持つてゐる經營者の方が、責任ある仕事をしてゐる。同族經營は、馴れあひになりよくないかも知れないが、世襲の經營者は基本的には惡くない。 いい加減でも、國内のことはまだ何とかなる。文句をいふ奴も多少はゐるし。しかし、外國との競爭のことになると、役人連中は殆ど頭にない樣である。その結果、色々なところで日本が劣勢になるといふ現象が起きてゐる。例へば、港も、所謂ハブ港を韓國に取られてゐる。 國としての戰略を考へるべき役人が、我身の事ばかり考へてゐる。役人の處遇も含めて考へ直す必要がある。 國債は止めて、日銀から借りろ (H22.4.24) 日本国が多額の国債を発行してゐることが問題になつてゐる。殆ど国内から借りてゐる樣なので、外国から取立てられて破綻することはなからうとも思ふが、やはり氣になる。高度成長期の樣に經濟規模がどんどん擴大して、債務負担が相対的に小さくなればいいのであるが。 結局、国債として民間から借りるからいけないので、例へば、日本銀行から借りるなどすればいいのではないか。つまり、紙幣を政府のために発行させるのである。今念頭にあるのは、江戸時代の貨幣改鑄である。金が足りないから、貨幣を澤山出した譯で、なんとお手輕なことか。政府であるからそんなことも出來るのであるが、恐らく、經濟が發展してゐたのに貨幣の流通量が足りなかつたとか、そんな事情もあつたかもしれぬ。さういへば、藩札といふのもあつたが、これもさういふ意味もあつたらう。さうでなくて金が多く發行されれば、經濟がをかしくなる筈である。 日銀から借りれば、政府内の貸借りであるから、そのうち徳政令でちゃらにすればいい。民間から借りてゐると、徳政令は出せない。 金は、物々交換の代りに、単に、人間の労働量を測る物差しとして使つてゐるだけでであるので、貸借りの當時者同士が合意してちゃらにするのは、何ら問題ない。 もちろん、政府が日銀から借りる金と、企業が銀行などから借りる金の総和が、日本の生産量以上になつては経済が破綻する。しかし、今は輸出超過で外国に売つてゐる分を国内に囘せばいいのである。 国内消費が増加すれば、税収も増加し、政府も借りる必要がなくなつて來る。 国債を止める効果のひとつは、金利を上げられることである。国債の金利が上がつては困るので、今は低金利を続けざるを得なくなつてゐる。 (金利だけは許せないとか言つた人もゐるが、人類始つて以来、金利はあるのではないか。お禮の氣持である。また、金利があるから金を貯め込まないで貸すので、經濟が囘る。金を貯め込むのは、金利を稼ぐより惡いのではないか) 金利が低いことが、経済停滞の最大の原因ではないかと、前から感じてゐる。昔は、小金があれば、年金と金利で老後は何とかなると思つてゐたのが、この低金利ではさうはいかない。それで國民は皆貯金して金を使はない。金融機関は、國内は低金利なので、外國のファンドなどを買つたりする。 經濟の目的は、金儲けではなく、生活に必要な物や用役を提供するこで、金融機關は經濟がうまく囘るための潤滑油なのであるが、金さへ儲ければいいと勘違いしてゐる。本來、金はとんとんでいいのである。アメリカ流の金儲け至上主義が入り込んで來た所爲であらうか。 ※貿易黒字 國債を止めて日銀から借りると、民間の金が餘るが、これを企業に貸せばいい。かうなれば、企業は貿易黒字を稼ぐ必要がなくなる。また、稼いだ外貨で海外進出する必要もなくなり、國内で頑張ることになつて、雇傭も増える。 貿易黒字の原因は、民間の金が國債として政府に流れてしまひ、企業が貸して貰へないことにあるような氣がする。このあたりは、にわとりと卵で、どちらが原因でどちらが結果かはつきりしないところがあるが。相互に影響しながら進展したのかもしれない。 いづれにせよ、企業は儲けないと投資が出來なくなり、儲けようとするが、国内では足りないので、海外に儲け先を求めて、貿易黒字になる。 以前は、企業は儲けなくても、とんとんで良かつた。投資は借金でしてゐた。さらに、最近は、アメリカ流が入り込み、儲けないと経営責任を問はれる。 その結果、外貨が手に入り、それを使ふため、海外に投資する。工場建設、企業買収などである。 それで、国内生産は伸びず、雇用も減る。驚いたことに、最近は、アメリカのGDPが伸びてゐるのに對して、日本は停滞してゐる。 派遣やパートの増加で、平均的には賃金も低下してゐる。 ある會社では、女性社員はずつと採用がなく、派遣ばかりになつてゐる。ただ、この春は何故か少し採用た樣である。派遣の規制を懸念したのか。 派遣の女性は、以前の正社員よりずつと熱心に働く。以前はさぼつてゐたとは言はないが。嚴しい情勢から、首にされる口實を與へない樣にと思ふのであらうか。 外交音癡・日本人 (H22.7.18-25) 何かの感覺が鈍いのを何々音癡といふことがあるが、日本の政治を見てゐると、差當り、外交音癡とでも呼びたくなる。 外交で大事なのは、国益を損ねないことである。大儲けする必要はないが、損をしては困る。歐米なら、共産黨が政権を取つても、これだけは間違ひなく追求する。日本はこんな當前のことが出來ない。 古くは、安政の不平等條約といふのがあつた。経験がなく、それが何を意味するのか分らずに言ひなりになつたのかも知れぬ。黒船の脅威もあつたかも知れぬ。また、支那の阿片戰爭の話も聞いてゐたらうが、それにしてもお粗末である。 後智慧の謗りを顧みずこんなことを言つてゐるのは、不平等を押付けられたとよく書かれてゐる樣に思ふからである。外交において、押付けられたなどと嘯いて平然としてゐるのは呑氣すぎないか。失敗は失敗として捉へ、反省すべきを反省しなければ、また同じ失敗を繰返すことになる。實際、日本の外交は、その後もずつと失敗ばかりではないか。 敗戦の處理もしかりである。ソ連の火事場泥棒に何故抵抗しないのか。アメリカ軍に占領されたのは兎も角として、主權を失つてすべてGHQの言ひなりになつたのはどう云ふことなのか。 吉田茂は氣骨ある人の樣に取沙汰されてゐるが、講和を急いで極東軍事裁判を認めたのはをかしい。義を主張せず、實利さへ取ればいいといふ考へは、外交の最も拙なるものである。そんなことをしてゐるから、利も取れなくなるのである。 歐米は大義名分を主張する。正義とか、自由とか、文明の發展とか。それは完全に嘘である譯ではない。しかし、それが自分達の利益になるから主張してゐるだけである。早い話が、文明と言つても、所詮、西歐文明を受入れさせるといふに過ぎない。西歐文明を世界標準であると無理矢理押付けようとしてゐるだけである。 小泉などは、グローバリゼーションの名の下に、アメリカの要求をすべて受入れようとした。グローバリゼーションを世界標準と文字通りに受取り、これを受入れないと、バスに乗遅れて國益を損なふと心配したのであらう。アメリカはただ自分のやり方に合せろ、さうすれば自分達が樂であると言つて來ただけなのであるが。 問題は、他人の大義名分を簡單に信じ込んで仕舞ふことである。自分達に大義がないから、何かそれらしきものを出されると、恐れ戰いて仕舞ふ。擧げ句に、胡散臭いものでも、よく分らない儘に絶對視して仕舞ふ。絶對といふ觀念がないから、安易になんでも擬似絶對化して仕舞ふ。 「議會制民主政治」が唯一絶對と思はれてゐる樣に、「グローバリゼーション」も他に選擇の余地のない、世界の流れと思つてゐる。少くとも、アメリカ人が主張する場合は、單に、アメリカ化に過ぎないのではないかと何故疑はないのか。大義名分が出てきたことに先ず喜び、それが本當に普遍的なものなのかを吟味しない。かつ、それを持出した裏に、單なるエゴイズムが隱れてゐないかと疑ふこともしない。全くのお人好しである。外交は惡と惡の戰ひであることを知らない。 惡い奴ほど、大義名分で身を固め、あなたの爲ですよと囁くのである。 大義名分といふのは、抽象的であればあるほどいい。共産主義の傳道といふ大義は、ソ連の崩壊により壊滅した。大東亞共榮圈も日本の敗戦で潰えた。具體的なものは、いつか襤褸が出る。自由とか、平等とか、或は神の國、つまりユートピアの建設とか、具體性の薄いものが好適なのである。傷がつく心配がないからである。 神を持たず、抽象的な大義名分を考へられぬ日本人はどうすればよいのか。大義など、一切顧みず、實利に專念するしかないのではないか。その結果、世界中から叩かれるかもしれぬ。その時は、ではあなたの大義は何の役に立つのですか、逆襲したらよいのである。詰るところ、ご自分の得になるだけではないのですかと。 歐米はなぜ大義を持出すか。キリスト敎の布敎といふことが、彼らの世界制覇の大義名分になつてゐる。彼らは神の國を建設するといふ義務を背負つてゐると思つてゐる。制覇、征服に過ぎないのであるが、彼らに言はせると、進んだ文明の傳道といふことになる。進んでゐるといふのも、神の國へと向つてゐるといふ認識から生れる觀念である。少しでも最終目的地に近づいてゐるといふ驕りである。キリスト教徒でない者からすれば、この世に神の國など來る筈はなく、歐米の文明が進んでゐるとも思はない。それぞれ自分のやり方で生きて行けばよいだけである。 ソニーはサムスンに抜かれたか? (H23.2.20) 「ソニーはなぜサムスンに抜かれたのか」といふ本の題名を見た。ソニーは、抜かれたのではなく、自身が落ちただけである。サムスンが何かを開發した譯ではない。ソニーが開發できなくなっただけである。 百メートル競走で日本選手はよく後半抜かれるが、相手の速度が上つてゐるのではなく、こちらが落ちてゐるだけである。フォームが惡く、足搔くから落ちるのである。 ソニーは、昔の社長がゐなくなつて、體質が變つたのであらう。先輩のすることを見て後輩はやり方を體得する。よい先輩がゐなくなると、傳統が崩壊するのは速い。作るのは時間が掛るが。 學校の運動部などもさうである。戰術を習ふのは簡單だが、基本技術を敎へるのは難しい。口では敎へられぬ。先輩のやつてゐるのを見て本人が體得するしかない。だから、チームが強くなるのには時間が掛る。しかし、弱くなり出したらあつといふ間である。 電力會社を眞人間にするには (H23.3.15) 震災の影響で東電が計画停電なるものを始めたが、それを始める際の不手際ぶりは目に餘るものがある。 いちいち数へ上げていくのも愚かであるが、ほんの細かいことをいへば、昨日14日に東電のホームページにやつと接続出來て、「週間計画停止イメージ110314n.pdf」なるファイルを入手して、初めて具體的なやり方が分つた。日替りで停電の時間帶をずらしていくと云ふことの樣である。14日の計画だけを先づ出すものだから何かをかしいのではと思ふばかりであつた。 それは兔も角、このことをあげたのは、それ自體を言はうとしたのではなく、もつと些細なことで、そのファィルが紙からスキャナーで讀取つたものであることを言ふためであつた。それを作成したソフトから直接pdfにすればもつと小さなファィルになる筈が、紙から讀取つたがために600kBもの容量になつてゐた。ただの1頁の資料がである。そんなことをするから集中したときにアクセス出來なくなるのではないか。少くともインターネットに出すファィルは極力小さくするのは當然の心掛けであらう。それがなぜこの大會社が出來ないのか。 一事が萬事で、これがあの發表の不手際に繋がつてゐる(しかし、監督してゐる筈の政府の人間が文句を云ふのは天に唾するものである)。さらに原發の不手際にも、と言つたら言ひすぎであらうか。あながち言ひすぎとも言へぬのではないか。 非常用発電設備が動かなかつたと言つてゐるが、新聞でみたところでは、津波が5mを越えてゐたために、防ぎきれずに水をかぶつたのが原因だといふ。これが本當なら、この設備は、津波を防ぐ5m程の防護壁はあつたが、建屋の中には入つておらず、雨ざらしであつたことになる。こんな大事な設備を雨ざらしにしておくといふのが分らない。いざと云ふときの命綱の樣なものであるのに、そんな粗末なことでいいと思ふ氣持が理解できない。 大分前になるが、ある發電所に行つたことがある。子供のスポーツ大會が、發電所内の立派な芝生のグランドであつたのである。發電機などを収めてゐるらしき白亞の殿堂があつたが、その外壁に足場を組んでペンキを塗り替へてゐた。ところが、すでに塗つたところと、これから塗るところの違ひが分らなかつた。よく見たら、辛うじて境目が分かつたが。多分、所定の期間がたつたので機械的に塗り替へを決めたのであらう。普通の企業なら、もう暫く延長しようとする所であると思はれる。 コストが上がつたら、國に頼んで料金を上げて貰へばいいだけなので、まともに努力をしないのである。國營なら、國の監査くらゐはあらう。民營であるから、監査も何もない。官營以上の氣樂な稼業である。 このやり方を變へない限り、電力は眞つ當な會社にはならない。社員はそれぞれ眞面目なのであらうが、全體としてみたとき、眞つ當な方向を向いてゐない。使命を果してゐない。結局、眞人間ではないのである。金は人を眞人間にする。升田幸三も、借金したお陰で名人が取れた。金に齷齪してゐない人間は遊び人である。 企業といふのはあきんどであり、あきんどと云ふのは、客に少しでもいいものを少しでも安く賣ることを使命とする。その努力をしないものは、存在理由がない。淘汰されてしかるべきである。 電力會社は、今のやり方では、努力しなくともやつて行ける。競爭を導入すればよいのであらうが、それがなかなか難しいとなれば、例へば、不成績の會社は給料を下げるなどはどうであらう。 東電に藉りて商ひを論ず (H23.3.19) 震災のせゐで東京電力は「計画停電」なるものをやつている。asahi.comによると、福島第一原發(6基計469.6万キロワット)と福島第二原發(4基計440万キロワット)がすべて使へず、これは東電が持つ全電源の14%になり、供給力は3350万キロワット程度に落ちるといふ。(http //www.asahi.com/special/10005/TKY201103170445.html 2011年3月17日19時49分)。 この記事によると、東電は4月前半までに供給力を4千万キロワット程度に引き上げる計画である。そして、”東電は「4月中にいつたん計画停電を終らせたい。夏場は相当なショート(電力不足)が予想され、再び計画停電をお願ひすることになると思ふ」と話してゐる。”とのことである。 これが責任ある人のいふ臺詞であらうか。再び計画停電をお願ひすることになるなどと、ぬけぬけと云はれては困る。さうなる可能性が高いのかもしれぬが、その前にやることはないのか。先づは停電を廻避すべく全力を盡すのではないのか。力及ばず結局お願ひすることになるかもしれぬが、それはやつてみなければ分らぬ。現時點でそんなもの言ひをするとは、話にならぬ。 商ひは、いふまでもなく、世のためである。さういふ自覺がないのではないか。 何故さうなるのか。考へてみると、東電は商ひをしてゐない。政府のお抱へである。政府のもとで言はれるが儘に事業をやつてゐるだけで、あきんどとして金儲けに精を出してはゐない。儲からなくつたら、政府に頼んで料金を上げて貰へばよい。氣樂な稼業である。 とはいへ、一應私企業なので、政府から監査を受けるわけでもない。本當に氣樂である。勿論、役人でないので、政府の一員としての自覺がある筈もない。 金儲けが大事なのである。儲けるには、買ひ手を大事にせねばならぬ。客が喜ぶ樣ないいものを安く賣らねば、儲けられず、潰れる。潰れれば、世のために盡くすことも勿論出來ぬ。ちやんと儲けて、潰れないで商ひを續けられる樣に努力する、それが大事、それで初めて眞人間になる。いい加減にやつてゐても潰れない樣な仕組では、人は墮落する。人はそれ程強くはない。金が人を叩き直す。 日本人は金儲けに血道を上げてゐると批判する人がゐるが、逆である。商ひが大事だと徹してゐないから、中途半端なをかしなことが起るのである。社會に貢献するとか、偉さうなことを言つて、それでよしとしてゐる。社會に貢献したかどうかは、いかに役に立つものを、いかに安く賣つたかで決る。しかし、自分で勝手にこれがいいものだ、役に立つものだと言つても、本當にさうなのかどうか分らない。結局、買ひ手が買ふか否かしかないのである。 勿論、絶對的によいものなどない。その時よいと思つたものが、後ではよくなかつたとか、公害をまき散らしたとか言はれる可能性はある。人間がすることは全てさうである。その時點でよいと思ふだけである。間違つたと思つたら軌道修正するだけである。 工業製品で時々感じることがあるのは、この製品を作つた人は、自分で使つてみたのだらうかといふことである。一見よささうなのであるが、實際に使ふ段になると、どうも使ひ難い。さういふ品物に結構出くはす。獨り善がりではいけないのである。金儲けに徹すれば、この樣なことはない筈である。あきんどとして己を低くし、買ふ人に滿足して貰へる樣にものを作ることが大事である。 徳川時代は、あきんどは最も下に位置してゐた。自然に己を低く出來た。四民平等になり、みんな偉くなつてしまつた。みんな低くなるべきであつたのであるが。 リンチ國家アメリカ (H23.5.2) ビン・ラディンをアメリカが殺したと言ふ。パキスタンの都市に潛んでゐたところをヘリコプターで襲撃して殺したとのことである。これはリンチではないか。容疑者かも知れぬが、裁判にかけずに殺したら、それはリンチである。堂々とやるだけ、テロよりもひどい。 ヨーロッパ流では、こつそりやる竊盜より、堂々と襲ふ強盜の方が相手に抵抗する餘地を殘してゐるだけ罪が輕いといふ。しかし、この場合、絶對に失敗しない樣に周到に準備して襲つてゐるだらうから、危險を冒してやる強盜ではなく、集團でなぶり殺しにするリンチである。 テロリストに對してリンチで應じたら、それはテロリスト以下の所業である。裁判にもかけずに堂々と襲ふとは、自らを天とする心であらう(裁判にかけさへすればいいとはいはぬが)。 キリスト敎は、絶對神を信仰してゐるとしてゐるが、實は、マリア信仰を見ても分る如く、偶像崇拝の域を出てゐない。彼らの神とは、畢竟、彼らの族長ないしは守護神である。であるからこそ、彼らは容易に自分達には神がついてゐると信じる。神の命じるが儘に行動してゐるのだと主張する。 絶對神が、特定の集團に味方すると云ふことはあり得ないことである。いや、絶對に無いとは言へぬが、あつたとしても、本人には分らぬ筈である。神の考へは人間には絶對に理解できぬ。分らぬからこそ絶對なのである。人間に分かつたら、それは相對の世界でしかない。 お金のはなし (H24.12.8~H25.1.6) 經濟の發展は、日本が世界で生延びるために必要であらうけれども、いいことだとは必ずしも思つてゐないが、景氣が停滯したままずつと回復しない。地獄の沙汰も金次第といふが、日本人は皆、閻魔大王の前で困つてしまふのではないか。不況の原因は單に金が廻らないことにあると前から思つてゐるが、實は、金の仕組を全く知らないので、「四十の手習ひ」で調べてみた。 【金は民間銀行が創る】 金は、日本では日本銀行が發行してゐる(硬貨は政府)。しかし、實は、これは實際に流通してゐる金の一割程度でしかない。有效な金の大部分は民間銀行が勝手に創つたものなのである。 有效な通貨の總量は通貨残高(money stock)または通貨供給量(money supply)などと呼ばれてゐるが、日銀によると、現在約1100兆圓となってゐる。そのうち、現金通貨(日本銀行券と補助貨幣)は80兆圓程度であり、これに民間金融機関の法定準備預金(日銀當座預金)を加えたものをマネタリーベースといふらしいが、それでも130兆圓程度である。 銀行は預金を集め、それを貸出して金利差で稼いでゐる。例へば、Aが銀行に預金し、銀行がその金をBに貸す。しかし、Bの口座に振込むだけで、現金を動かすわけではない。Bがその金をCに拂ひ、Cがそれを預金すると、銀行はそれをまたDに貸せる。これを繰返すと、實際に集めて保有してゐる金の何倍も貸せるのである。貸出し高は帳簿上の預金残高を超えないのであるが。 かうして、銀行は無から金を創造する(信用創造, money creation/credit creation)。そして、この金が經濟を囘轉させてゐる。 元々、金は紙切れでしかないが、實は、大部分は紙でさへなく、銀行の帳簿に記録されてゐるだけである。このシステムを成立たせてゐるのは「信用」である。銀行の「信用」がこの魔術を成立たせてゐる。銀行の信用と言ふが、實は借手の信用であり、借手が滅多には潰れないといふ前提で成立してゐる。 【不景気の原因は銀行の貸澁り】 景気を左右するのは金の量である。金が十分供給されてゐれば、生産と消費が噛みあひ、景気は順調に推移する。金が足りないと、企業も個人も消費が減り、その結果生産が減り、景気が落込み、それで更に消費が減少する・・・といふ惡循環に陷つて不景気になる。 金の流通量を支配してゐるのは、日本銀行券の量ではなく、民間銀行の融資量である。景気が惡くなると、借手が借りやすい樣にと金利を下げる。しかし、最近は、金利はとことん下げてゐるが、景気は一向に浮上しない。 なぜか。銀行が貸さないからである。最近、銀行もグローバリゼーションで利益重視になつたためか、海外の高金利債權に投資して、國内の低金利の貸出しは減らしてゐる。低金利が、逆に、災いしてゐるとも言へる。 昔は、「窓口指導」と稱して政府・日銀が銀行の貸付を指導してゐたらしいが、昨今はアメリカの指導でそんなことは止めさせられてゐるらしい。そこで、銀行はより有利な投資先を勝手に選んでしまふ。その結果、國内は金が不足し、景気は停滞し續ける。 昨今は、國内は先行き不透明で借手が見つからず、海外はかつて焦げつかしたのに懲り、農協など、金をもて餘してゐる金融機關もある樣である。正確には、貸澁りではなく、借り澁りなのかもしれない。 【景気浮上には銀行に代つて政府が金を創造すべき】 國内の金が足りないのが不景気の原因であるから、金の流通量を増やすしかない。民間銀行を指導するのも必要であらうが、先づは、政府・日銀がやるしかない。 日本銀行券を出せばいいのであるが、それはどうもやりにくい樣である。幕府が小判を出す樣にはいかぬらしい。そもそもお札は金融機関が日本銀行に保有している當座預金を引き出して日本銀行券を受け取ることによって發行されるとされてゐるが、そのからくりがさつぱり分らない。日本銀行が國にお札を渡せばそれでいいのであるが、それでは世間が信用しないのか。また、多額の紙幣を貰つても取扱ひに困るかもしれない。 となると、國債と云ふことになる。銀行の貨幣創造が足りないので、代りに国債といふ形で金を創造するのである。幕府が小判を作つても誰も怪しまなかつたのは、金といふ金屬そのものに価値があると誤解してゐたからであるが、實は、幕府を、といふより經濟制度を信用してゐただけである。同樣に、經濟が廻つてゐる限り、國債も怪しむべきものではない。 國債發行は問題であり、子孫につけを囘すといはれてゐるが、國民や銀行から借りるからいけないのである。信用創造にすぎないのであるから、とりあへず日銀にすべて引受けさせればよい。金を創造するのであつて、借りるのではないので、返す必要はない。利息もいらない。形式的に利息を多少付けてもいいが、日本銀行に一旦拂つて、また政府に戻させればよい。 かういふと、無制限に国債を發行してインフレになるなどと言ふ人がゐるが、戰後のどさくさの失敗を繰り返す樣な馬鹿はゐない。民間銀行に金の創出を任せておいて、しかも指導もしないから景気が変動するのであり、政府がきちんと管理すれば、現状よりは格段にいい筈である。 問題があるとすれば、國民や金融機關がこれまで国債を買つてゐたのが買へなくなり、代りの投資先を見つけなければならないことである。よく分らぬが、その分、企業などへの投資が増えれば、国債の發行が少くて済むだけかもしれぬ。 まとめると、通貨の創造を銀行に任せるこれまでのやり方では通貨の總量の制禦が出來ない。政府が責任を持つて通貨を創造する必要がある。通貨といつても、紙幣は個人對象でしかなく、銀行の金を増やさねばならないが、それには今のところ国債の發行しかない樣である。國債發行は、紙幣發行や銀行の貸出しと同じで、信用で通貨を創造する行爲であり、借金ではない。民間からの借金にせず、すべて日銀に引受けさせるべきである。本當は、国債などの形にせず、默つて日銀の政府當座預金残高を増やせばいいのである。その金を政府が使つて通貨量を増やすのである。 國債は將來世代の負擔になるとよく言はれるが、借金の形にするからさう見えるのである。本質的なのは必要な仕事をすることである。その時代、時代に必要な仕事をやればいいだけの話であり、通貨が負擔にはならない。通貨は銀行の帳簿の數字に過ぎず、何の価値もない。ただ、人に仕事をさせるためのからくりとして使はれてゐるだけである。 【創造した金で公共事業を】 そして、散々批判されているが、いはゆる公共事業をやるしかないのではないか。ただ金を増やすだけでなく、實際にものを作つたりしないと、循環効果がない。震災復興、下水道、電柱廃止(地中埋設)、道路擴幅(歩道設置)など、やることはいくらでもある。 以上の樣なことをいふと、それは古い考へ方だと非難するむきが多い。しかし、では新しい考へ方ではどうするのかと訊くと返事がない。 ちなみに 【銀行券のいはれ】 日本の貨幣は、今は日本銀行券であるが、元々は公儀(幕府)、つまり政府が自身で小判などを發行してゐた。なぜ銀行券になつたか。ヨーロッパがさうなので眞似をしたのであらう。 ヨーロッパも、元々は王などの支配者が金貨、銀貨を發行してゐたのであらうが、なぜ銀行券になつたのか。17世紀に、英國王チャールズが民間から預つてゐた金塊を取上げる事件があつてから、富豪達は金塊を金細工職人の金庫に預ける樣になつた。その際、金細工職人が預かり證(goldsmith note, noteは預かり證の意)を發行したのが銀行券(bank note)のはじまりらしい。結局、銀行券が通貨として使はれる樣になつて、銀行家が經濟を支配することとなつた。 【アメリカの憂鬱、日本の憂鬱】 イギリスではイングランド銀行やスコットランド銀行がポンドを発行してゐるが、アメリカの場合、政府の發行する国債を民間銀行が買ふ形で、民間銀行から紙幣が發行されている。 聯邦準備制度理事会(Federal Reserve Board)の管理のもと、12の聯邦準備銀行(Federal Reserve Bank)がドル紙幣を發行してゐる。一見、いかにも政府の息のかかつた制度の樣に見えるが、聯邦準備銀行は政府とは無關係の民間の銀行であり、株主は、例へば、ロスチャイルド銀行などである。アメリカは、ドル紙幣を出すために、ヨーロッパの財閥に金利を貢がねばならぬといふ譯である。 ところで、このアメリカ國債が、日本や中國政府の金庫にも貯まつてゐる。中國は元(げん)の相場を維持するための政策かもしれないが、日本の場合はアメリカの強制ではないか。勿論、アメリカを支へるためである。結果として、ドルが大量に出まはるのを助け、ドル安・円高を促進してゐるのではないか。結局、円相場の上昇で、稼いだ金をみなアメリカにお返しし、ひいてはヨーロッパに貢ぐ定めになつてゐるのか。 つけたし 人は金に支配されてゐると思ふ。必ずしも意識はしてゐないが。若い頃は食ひはぐれない樣にと夢中で稼ぎ、段々老後の金が心配になり、年取ると慾張りぢいさんになる。 世の中に絶えてお金のなかりせば 人の心はのどけからまし インドネシアのどこかに貨幣のない部族がゐて、皆で助けあつてのどかに暮してゐるといふ話を聞いたことがある。ある人類學者は、發生當初にか弱い人類が生延びたのは、部族間でも助け合つたからではないかと言つてゐる。しかし、貨幣が出來ると、私有財産制が始まり、貧富の差が出來、競爭が始まる。分業制で基本的には協力しあつてゐるのであるが、表に出てゐるのは競爭である。金が人間を變へてしまつた。 イエスは、これを憂へて、『己がために財寶を地に積むな』、『明日のことを思ひ煩ふな』と言つたが、これではしもじもは生きていけないと、カトリック敎會は、危險な聖書は讀ませず、異敎の傳統を保存した。ところが、愚直なルターが、ドイツ人の金をなぜローマに貢ぐのかと怒り、聖書のみの標語のもと、イエスに忠實たらんとした。その末裔たるアメリカ人は、救ひに選ばれてゐることを證明すべく、時は金なりと寸暇を惜しんで金儲けに專心して、地獄落ちの恐怖から逃れようとしてゐる。忠實たらんとした擧句に完全に不忠の弟子となつた。ジョン・レノンが地獄はないと歌つても效き目はない(ロンドン五輪で「イマジン」を歌つてゐたのには驚いた。イギリスも變つたのか、ただだらしなくなっただけなのか)。 ルターやカルバンは自分が救はれることを確信してゐたが、天國でローマの連中と一緒になつては堪らぬと、豫定説を稱へて地獄に叩き落さうとした。ところが、一般信徒は、自身の救ひの確信を持てず、選ばれてゐることを證明しようと、金の力にすがつた。金は有無を言はせぬ力を持つ。金がからむと、人は眞人間になる。升田幸三や藤澤秀行が名人、棋聖を取れたのも借金したお陰である。東電がだらしないも、金を稼がなくていいからで、原價が上がれば電氣代を上げて貰へばいいのでは、仕事に魂は入らぬ。修繕費を湯水の樣にかけて昨今の停電頻度では、停電の本場インド人もびつくりである。金が人を支配すること神のごとし。神と金と、どちらも人の作つたものでありながら、逆に人に君臨する。信徒達が「金縛り」にあつたのも分らぬではない。しかし、人は神とマモンの兩方に仕へることは出來ない。『富める者の神の國に入るよりは、駱駝の針の孔を通るかた反つて易し』金が彼等の神になつた。 かくして、金儲けの效率化のため、産業革命がイギリスで始まつた。また、彼等は儲けても蓄財や贅澤は出來ないため、事業に再投資するしかなく、拡大再生産がとどまるところを知らない。ここに技術主義と資本主義が揃ひ、經濟のビッグ・バンが勃發した。今や世界中を卷込んで誰も止められない。行着くところは完全に機械化された世界で、人は神のごとく孤獨に暮すのである。勿論、絶對に到達はしないのであるが、その方向に向つてゐることは間違ひないし、實際、それが正義になつてゐる。誰も目標と意識はしてゐないのであるが。 「グローバリゼーション」とはこのビッグ・バンの先兵たるアメリカに倣ふことである。その一の子分が日本であり、例へば、小泉の「改革」とはアメリカ化でしかない。ちなみに、戰後日本の「戰犯」は、先づは戰犯を認めた吉田茂で、次が小泉位か。 日本には江戸時代からのあきんどの傳統があつて、會社はすべて今日いふところのNPOであり、世の中のためにつくし、從業員を食はせさへすれば、利益など要らなかったのであるが、惡貨に驅逐されて、株主配當のための利益が目的と成下がり、擧句に最近は社長が何億円もの年俸を取つたりしてゐる。金の支配を受けるのは仕方がないが、自ら奴隷になることはない。 (H25.1.6) 以上を書いた後、自民黨が勝つて、景氣を浮揚させると喧傳してゐる。しかし、もつと堂々と金を創造して貰ひたい。国債など發行せず、默つて日銀の政府當座預金残高を増やせばいいのである。當面は国債にするにしても、民間に買はせず、すべて日銀に引受けさせるべきである。通貨は、經濟をうまく廻すために政府が責任を持つて創造し管理すべきものである。 (H25.7.21) 具體的にいふと、既に書いた樣に、国債を金利をつけて出すから將來に負債を殘すといはれるので、金利をつけるのを止めるべきである。或は、利息をつけない譯にはいかぬのなら、すべて日銀に買はせればいい。国債發行とは紙幣發行と同じなのであるから。 資本主義の末路 (H26.11.16) スキデルスキー父子といふ著者が「じゆうぶん豐かで、貧しい社會」といふ本を書いてゐるさうである。 ケインズが1928年に、百年後には經済問題は解決され、生活の必要を滿たすには僅かな労働で済むので、人々は餘暇を生活の樂しみや創造的な活動に使へる樣になると豫想したが、現實にはさうなつてゐない、それは、慾望には限りがなく、常により大きな豐かさを求めて労働に、そして成長に拍車がかかるのが資本主義の本質だからだといふ。それで、經濟學は、「稀少資源の配分問題」を扱ふ科學から脱却し、すでに十分に蓄積された富の下で、いかに善き社會を構築するかを分析する科學に移行すべきだといふ。(朝日新聞讀書欄、H26.11,16) 「經濟學は科學」とか、「十分に蓄積された富」とか氣になる言葉があるが、それはさておき、資本主義の成長が止まらないのは、より大きな豐かさを求めるからではない。ピューリタニズムが殘した金儲けによる救ひの證明といふ生き方のためである。彼らは常に金を儲けて自分が救はれる人間、一廉の人間であることを證明しなければならぬといふ魔術にかけられてゐる。そのために、アメリカ人は、生活を樂しむことより先づは眞面目に働かねばならぬといふ強迫觀念がある。 それにもまして重要なのは、金儲けをより効率的にするために、技術開發に投資することである。技術は人類のためではなく、アメリカ人の金儲けを促進するために發達した。もともとはプロテスタント國イギリスに興つたが、ピューリタンの國アメリカで爆発した。かうして、技術が金を儲けさせ、金がさらに開發を加速するといふ自動運動になり、誰も止められなくなつた。 いくら稼いでも、それで十分とは感じられない。目的は金儲けではなく、地獄に落ちないためであり、救はれるに値する眞面目な人間であることを實證するためであつて、誰もそれで十分とは言つてくれないから、際限もなく働く。豐かさとは縁のない世界である。 ところで、日本人は何故身を粉にして働くのか。百姓が、生き物に對し親身の世話をし、自然の暴威に對しても出來る限りの備へをすることで、飢ゑ死にの恐怖から逃れて來た、その傳統か。 逆に、歐米もユダヤ・キリスト敎により、日本人の樣に勤勉になつたのか。さうではなささうである。彼らの場合、競爭である。稼がねば生きられぬとか必要なだけ稼げと云ふのではなく、自分が他人より優れた人間であることを證明するために働く。他人を蹴落としても、己だけは救はれるための孤立した鬪ひである。儲けても、餘分な金は寄附することが必須であるが、金儲けのために稼いだのではないと證明するための義務である。 日本人が働くのは、食ふためであり、食へればよいのであり、詰まるところは世の中の役に立つためである。根本に助け合ひがある。孤独な鬪ひではない。 國債はお札 (H29.6.14) 經團聯名誉會長今井敬氏へのインタビューが新聞に載つてゐたが、次の樣な發顯があつた。「國債(國の借金)が膨らむ一方なら、國が潰れてしまふ」 まだそんなことを考へてゐるのか。さう言へば、安倍首相もなんとなく不安を感じてゐる樣に見える。 國債はお札を刷るのと同じである。お札の流通量は、實は、限られてゐる。だから、代りに國債を刷るのである。 世の中に流通してゐる有効な通貨の大部分は銀行が貸してゐるお金であり、それは銀行が僅かの資金を何囘も囘して貸すことにより創造したものである。 しかし、最近は銀行が貸せない。貸したいのであるが、借りたい人が少い。事業を拡大出來る見通しがないから借りる必要がないのである。その結果、銀行の創造する通貨が少くなり、世の中に金が囘らないのである。それで、景気が今ひとつ上昇しない。だから借りる人が少くなる。その惡循環に陷つてゐる。 それを断ち切るには、誰かが事業を行つて景気の起爆劑になるしかない。それは政府の役目である。 政府にその金がなければ、創造すればよい。徳川幕府が改鑄して小判を増やしたのも同じである。經濟の規模に對して流通する通貨が足りなければ、經濟は囘らない。通貨を増やすしかない。今の世では國債しかない。 國債を民間に買はせるから、國の借金になる。日本銀行に全部受けさせればいいのである。日本銀行は國と同じであるから、借金にならない。利息もつけなくていい。形式的につけてもいい。國と一體であるから問題ない。 ちなみに、アメリカのドル紙幣は國債として發行され、中央銀行が引受けてゐる。 通貨を何か實體のあるもので勝手には觸れないものと勘違ひしてゐないか。通貨は、今や單に銀行の帳簿に記録されてゐるだけのものである。人々が、それがいざとなれば價値あるものと交換できるとの約束を信じてゐるから成立つてゐるだけである。國債も同様である。ただし、日本銀行に引受けさせることが必要である。 國債も含めて、通貨を必要なだけ流通させるのが政府の役目である。