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概要 一番最初なので、かなり難易度はやさしめにしている。 元ネタ 優しさに包まれたなら(魔女の宅急便) ステージ一覧 世界の地表が乱れた 世界の地表が乱れた 城距離 3000 敵城見た目 雪玉 背景 雪 音楽 日本侵略→銀河の英雄 城体力 500000 敵構成 敵名前 倍率 城連動 出現f 出現数 再出現f 衝撃波 新.B.アイスワン 100% なし 0f 1 なし あり 野生のわんこ 200% なし 100f 10 200fごと なし リッスントゥミー 1000% なし 200f 無限 200fごと なし 寒々照り砂漠 寒々照り砂漠 城距離 4500 敵城見た目 雪玉 背景 雪 音楽 なにわの恋人 城体力 600000 敵構成 敵名前 倍率 城連動 出現f 出現数 再出現f 衝撃波 アイスワン 100% なし 0f 10 100fごと なし スカルボクサー 300% なし 100f 10 150fごと なし サァム高原 サァム高原 城距離 1000 敵城見た目 雪玉 背景 雪 音楽 民族大移動 城体力 700000 敵構成 敵名前 倍率 城連動 出現f 出現数 再出現f 衝撃波 B.壁わんこ 1000% なし 0f 1 なし あり キャベロン 1000% なし 1500f 1 なし なし 肩凝り氷 肩凝り氷 城距離 5000 敵城見た目 雪玉 背景 雪 音楽 日本侵略 城体力 800000 敵構成 敵名前 倍率 城連動 出現f 出現数 再出現f 衝撃波 オオウサ銀 300% なし 0f 無限 100fごと なし イングリッス 50% なし 50f 無限 150fごと なし メガメェメェ 50% なし 100f 無限 200fごと なし 雹リバーサイド 雹リバーサイド 城距離 6000 敵城見た目 雪玉 背景 雪 音楽 宇宙浪漫飛行 城体力 1000000 敵構成 敵名前 倍率 城連動 出現f 出現数 再出現f 衝撃波 はぐれたやつ 300% なし 100f 無限 100fごと なし タッキー 200% なし 300f 10 250fごと なし ジョン・レオン 200% 99% 0f 3 50fごと あり おまけ アイスワン(凍結) 体力 3万 攻撃力 1万 速度 5 KB 3 射程 100 単体 50%60f火傷(このレジェンドでは以降凍傷と表示します。)30f毎3000dm 攻撃発生 8f 攻撃頻度 10f お金 300 【アイスワン】(凍結) とある精霊に改造されカチカチに凍ってしまったわんこ。稀に相手を凍傷にする。 コメント 肩凝り氷好き -- アメーバ (2024-01-09 16 53 59) 名前 コメント
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1さんは1回に何枚くらい張るんですか? 1~200枚くらいだよ。 最高500枚やった事あるけど 心臓に悪いよねw でもそれも慣れだよ慣れ。 人間良くも悪くもどんな環境にも慣れられるもんなんだよね。 サクサク約定するもんなんですか? スリッペ0だとすべりまくりで約定しないよ。 指値だと刺さるけどね。 あまり多すぎると約定しないから100づつやってるよ。 戻る
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帰りのHRが終わり、放課後。 七限目の授業の途中から高くなり始めた鼓動は、今や高橋名人の連射も超えるレベルとなっている。 「田村さーん。一緒に帰ろ?」 小早川さんは朝から積極的に私に話し掛けてきている。 昨日相談しちゃって、余計な心配かけちゃったかな…… 岩崎さんも私のことを心配そうに見ている。 ダメ、岩崎さんが見ているのは小早川さんじゃないと。 「ゴメン、今日はアニ研の方で用事があって、一緒に帰れないの」 「え、少し遅くなるくらいなら待ってても……」 「いやー、部誌の原稿落としそうでさ。あ、もう時間が。ゴメン、もう行くね」 何かを言いかけた小早川さんを置いて、私は足早に教室を出る。 もちろん、書きかけの原稿なんてない。 部誌の締め切りはこう先輩に無理を言って延ばしてもらったし、 今日の集まりも欠席する連絡を入れてある。 昨日の別れ際に約束した時間、告白の返事を返す刻限が迫っている。 あてもなく校舎を歩く私。 約束の時間まであと30分。おかしくなってしまいそうな鼓動の高鳴りに、じっとしていることのできない。 ぐるぐる回る思考、高まる鼓動。少しでも押さえ込むために私は校舎の中をぐるぐる回る。 私は、彼のことが好き? 分からない。恋愛なんて自分で考えたこともなかった。 恋なんて漫画の構成要素。 時にはそれが男の人同士、女の人同士だったりするけれど、 そういった場面で恋に落ちるのは、私なんかとは違うかわいい女の子やかっこいい男の人。 私の周りでいったら小早川さんと岩崎さんのような……あ゛ーっ、だからみな×ゆたは自重しろ自分。 ともかく、あんなかわいい女の子とかっこいい人が結ばれるもの、私になんて手に届かないものだと思っていた。 でも……うっ、昨日のことを思い出すな、思い出すな自分!! 廊下を歩く速度がさらに速くなる。 学食、購買、体育館。部活へ急ぐ人たちが黙々と歩く私をどんな目で見ているかすら気が回らない。 何も考えず、とにかく手近にあった階段を登る。 そんなことよりも、どうしたらいいかが分からなくて。 今までこんなシチュなんて何度も漫画やゲームで見てきたし、自分の本でも書いてきた。 でも、私みたいなかわいくない女の子の場合なんて、どこにも載ってない。 なんで小早川さんみたいなかわいい女の子に告白しないんだろう。 どうして岩崎さんのようなきれいな人に告白しないんだろう。 どうして、私みたいな…… 「あ、田村さん。来てくれたんだね」 「ひゃぅっ!!」 突然の声にびくっと私は立ち止まる。 壁にもたれかかって笑っている彼。 周囲を見渡す。ここは特別教室棟の端っこ って……待ち合わせの場所に着いちゃったじゃないっすか!! あ゛ーっ、わたしのバカバカバカっ!! まだ決心がついていないのに…… 「それで返事、聞かせてもらえるかな」 夕日に照らされる彼の顔。 見つめていると、またも心臓がバクバクと音を立てて鳴りはじめる。 言葉が出ない。言おうと考えていた候補はいくつもあったのに、 ま、まずなんて言ったらいいんだろ。あ、こんなんじゃ変に思われちゃう。 焦れば焦るほど言葉が出てこない。 「あの……あの、私、今まで誰かと付き合うなんて考えたこともなくて、 だから、好きってのもよく分からなくて、だから昨日からずっと考えていたんです」 もう、何を言うか考えている余裕なんてない。 思いついている言葉を、心に浮かんだ言葉をそのまま吐き出す。 「昨日からずっと好きってことを考えていて、でもよく分からなくて、 で、でもっ、なんだかよく分からないんだけれども、あなたと一緒に居たいんです。 あなたと一緒にいるドキドキが気持ちいいんです。だから、そばに居させてください!!」 あぅぅっ、なんだ、この馬鹿っぽいセリフ。 思いつくままに言ってみたら、こんな感じになっちゃった。 真っ赤になった顔をあげることもできず、ぎゅっと俯く。 自分の同人誌だったら、こんなセリフを絶対に登場人物に言わせたりしないのに、 何で自分の考える言葉はうまく言えないんだろう。 絶対、彼、変な娘だと思っちゃったよなぁ…… 彼が一歩近づく感覚。 後ろに腕を回して、軽く抱きしめられる。 「僕も君と一緒にいたい。君は好きって感覚が分からないといっていたけれど、 それでも、一緒にいたいと思ってくれるなら僕には充分だ。 これから君に、もっともっと好きって感覚を教えてあげるから」 彼の顔がすっと近づく。 唇に包まれる、暖かな抱擁感。 粘膜を通して伝わってくる、相手のぬくもり、心地よさ。 それがキスだと分かったのは、彼が顔を離した後だった。 きゅっと、顔が紅潮する。唇を両手で抑えた。 「あれ……もしかしてキス、嫌だった?」 彼の言葉にふるふると首を振る。 恥ずかしくて、彼の顔を見ることもできず、俯いたままでしか喋れない。 「キス、初めてだったから」 彼はどんな顔をしているのだろう。恥ずかしくて顔をあげられない。 いまどきキスしたぐらいでこんなに真っ赤になっちゃうなんて、絶対変だよね…… 彼の手がすっと伸びて、私の眼鏡の弦を掴む。 彼の指先が私の下がった前髪をかきわける。 ぼやける視界には、彼の顔しか映らない。 「田村……いや、ひよりさん。やっぱり君は眼鏡を取ったほうがかわいいと思うよ」 顔が近づき、今度は軽くついばむようなキス。 目を閉じて、何度も繰り替えす甘い彼の感触に浸る。 「ひよりさん……」 彼の手が、肩からすっと体のラインを伝って降りてゆく。 それが更なる行為を促すものだと分かり、私は彼の名を呼ぼうとする。 緊張して、震えてうまく声が出せないけれど…… 「あ、あの……」 バツッ、といきなりの無機質な音が聞こえて、びくっと私は縮み上がった。 しばらくして屋上に取り付けられたスピーカーから音楽が流れ始める。 スピーカーのノイズに彼も驚いたのか、体が離れている。 へなへなと体の力が抜けてゆく。 下校を促すこの時間のチャイム。 私が乗らなきゃいけないバスの最終便の時間が近づいている。 「あの、もう時間が。ごめんなさ……」 謝りかけた私の唇を、彼の指がそっと抑える。 「大丈夫、僕たちにはこれからずっと時間があるから。続きは明日、ね」 同人誌でしか知らないこの続きが頭の中を一瞬で埋め尽くし、私の顔が沸騰しそうになる。 そんな私の背中をそっと押して、彼は送り出してくれる。 「校門まで送っていくよ。少しでもずっと居たいからね」 彼の差し出した手。 ぎゅっと握って、二人で階段を降りていく。 相変わらず心臓の鼓動はおさまらない。 でも、階段を上るときにはなかった幸せを抱えて、私は階段を下りてゆく。 オタク少女は恋する乙女の夢を見るか 4話 コメントフォーム 名前 コメント ひよりかわいいじゃないか… -- 名無しさん (2008-01-12 08 59 06)
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利用規約(宮城県フリー背景素材集) 自主制作(同人)ゲーム、ゲーム以外のソフトウェア、CGの背景など、形式を問わずお使いいただけます。 有償・無償、ジャンル、年齢制限に関わらず、お使いいただけます。 画像素材としての再配布は、加工した画像も含め、禁止とさせていただきます。ただし、Unityや吉里吉里などのプロジェクトデータを公開する場合は除きます。 事前、事後の報告義務はありません。 著作者の表記義務はありませんが、表記を希望される方は“東北ノゲーム”と表記してください。 必ずしも東北を舞台にする必要はありませんが、撮影した場所(仙台市の画像なら仙台市)を舞台にしていただければ本望です。 法人の方による利用は、事前にご相談ください。 素材利用の際に起こったいかなる問題に関しても、当団体は責任を負いません。
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無謀な計画/2006年06月30日/シュークリーム。 #blognavi
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無謀な計画/2006年06月21日/ピクニック。 #blognavi
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(2006年06月09日) うひゃあ。
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月末ガチャの自称・愛され系の輿水幸子ちゃんってほんとヤバイよねって話するね。 まず特訓後の誘うようなポーズと表情が完全にえっちで夜のLIVEバトルが捗っちゃうし特訓前の犬にじゃれつかれて肩がはだけちゃってるいやらしさがほんとNiceすぎる。 Niceすぎてコンボ切った。 そして極め付けはあのセリフ、「構って欲しいなら犬になってください」。 もうこれ犬になるしかなくなるよね。 犬になったら幸子ちゃんにお手!おかわり!してもらえるしちんちんもワンチャンある。ワンちゃんだけにかってやかましいわ。 幸子ちゃんとちんちんしたい。めっちゃちんちんしたい。 そういうわけで犬との撮影が終わった後の事務所でもワンちゃんごっこの余韻が忘れられず幸子ちゃんに犬のようにじゃれついちゃうのね。 幸子ちゃんがボール投げたらハッハッて舌出しながら四つん這いで取りに行ったり、幸子ちゃんに頭ワシャワシャ撫でられたり、お手!おかわり!したり、おやつにドッグフード食べさせてもらったり。(でも全然ちんちんはさせてもらえなかった) そんな和やかな雰囲気に誘われて、犬を飼ってるしぶりんとか聖來さんがぼくを一目見に事務所に立ち寄るようになるわけよ。 それにつられて他のアイドルの子もぼくにお手!したりドックフード食べさせたりと可愛がるようになって、事務所のアイドルみたいになっていったわけよ。(幸子ちゃんは自分が最初に可愛がってたのにってちょっとむくれてた) だけどそんなある日だった。 「事務所でペットを飼うことは禁止だ。すぐにその犬を連れて帰れ」 突如事務所に現れた美城専務から輿水幸子へ、冷酷な通告が出された。 「ここはプロの現場だ。居るべきはアイドルとそのプロデューサー達のみ。仕事に関係のない部外者を連れ込むな」 「そんな……だって犬を連れてきてる人なんて他にもいるじゃないですか!」 「太田優のことか。あれは言うなれば仕事道具のようなものだ。そこの犬のように事務所で遊ばせているわけではないだろう」 「で、でもふじえるさんは頭も良くて、ボクの言うことを理解して物を取ってきたり色々と手伝ってくれて……」 「それがなんだ。人手が足らないなら事務員を増やせばいいだろう。多少人の言葉が理解できる犬に人間の仕事を任せられると思うのか」 「それに、みんな癒されるって言ってますし、それに…」 「公私混同をするな。それは事務所である必要はないはずだ。とにかく、すぐに飼い主を呼んで連れて帰れ」 「う………それは………」 「……まさか迷い込んだ野良犬をそのまま住み着かせていたというのか?呆れたな。すぐに保健所に連絡して引き取ることにしよう」 「ま、待ってください!!そんな可哀想なことやめてください!!」 「……可哀想か。私からすると、同情から無責任に施しを与え続ける方が可哀想だと思うがな」 「……それじゃあ、ボクが飼い主を見つけます。それでいいですか」 「………1週間だ。それまでに見つからなければ私は保健所に連絡する。いいな?」 「はい……」 突き放すように言葉を放ち、美城専務はその場を後にした。 だが、当然ではあるが、美城専務が立ち去った後も事務所内の重い沈黙が破られることはなかった。 あてもないまま受けたふじえるの飼い主探しに、幸子の表情は不安に染まっていく。そして幸子の暗い表情を見たふじえるも、表情を心配そうに伺いながら幸子の足元をくるくると歩き回る。幸子の暗い表情の理由が自分にあると知らずに…… それから3日間、幸子は手当たり次第人を探し、ふじえるの引き取り手になってくれないか聞き回った。 案の定ではあるが、飼い主となってくれる人はなかなか見つからず、飼い主探し難航していた。当然だろう。ふじえるは大型の成犬だ。維持費がかさむ大型犬を飼ってくれる人はなかなか見つからない。しかもその中で成犬をわざわざ買いたい人が何人いるのか。 飼い主探しを通して幸子は、ペットを飼うことがどれほど責任を伴う行為か、そしてそれを自分がいかに見ないふりをしてきたのかを痛感させられた。 だがもう遅かった。 飼い主を見つけられなければふじえるは保健所に連れて行かれる。待っているのは殺処分だろう。自分が不用意に餌をやったばかりに、ふじえるは苦しみながら死んでしまう。何故こんな事になったのか、幸子は後悔から涙を流した。 その夜、幸子はある決断をした。 「…………ふじえるさん、ごめんなさい…………」 幸子はとあるロケ地の山奥で、ふじえるを捨てる事にした。 ロケの移動中に寝ているふじえるをダンボールに詰め、少しばかりのおやつと毛布の切れ端と共に、山奥の静かな林の隅に、置き去った。 これでいい、殺されるくらいなら、人目につかない場所で生きてくれた方が幸せなはずだ-- ふじえるを見捨てる罪悪感を隠すように必死に正当化を重ねながら、幸子は逃げるようにロケバスに乗り込んだ。 だがいくら言い訳を重ねても、幸子の目から涙が止まることは無かった。 その涙は自身への怒りか、ふじえるへの贖罪か、もう幸子にすら分からない。 感情がグチャグチャなまま、幸子は涙を流し続けた。 そして美城専務の定めた刻限の日、幸子は沈んだ気分が晴れないまま朝を迎えた。 もう美城専務に伝える嘘は考えてある。 飼い主が見つかったと。幸せそうに暮らしていると。 その二言、笑顔で嘘を吐けばいいだけ。 それだけをこなせばいい、簡単な仕事のはずなのに、幸子の気分は暗い澱みを拭い去れなかった。 いつもの朝日もギラついて責め立てるように眩しい。億劫に感じながらもカーテンを開いた瞬間、幸子は目を見開いた。 「ワン!ワン、ワン!!」 そこには、人里離れた山奥に捨てたはずの、ふじえるの姿があった。 どうして、どうして………どうして!! 幸子は急いで玄関を飛び出してふじえるを迎える。 幸子の姿を見つけたふじえるは、嬉しそうにキャヒヒィンと鳴きながら幸子に飛び込んだ。 飛び込んだふじえるを幸子はギュッと抱き留める。 「ふじえるさん、どうして………どうしてボクなんかのところに来たんですか……!!」 「ワン!ワンワン!」 「ボクに裏切られたのに、なんで戻って来ちゃったんですか……!」 「ワン!ワン!ワン!」 「ごめんなさい!ボクが間違ってました……!ふじえるさんの飼い主は他の誰でもありません、このボクです!!」 「ワン!!」 こうしてふじえると再会を果たした幸子は、両親を説得しふじえるを飼う許可を得た。当然生き物を飼う以上、色々と条件をつけられたが、幸子はそれを全て快諾した。 そしてその日の事務所でも 「ふじえるさんの飼い主が見つかりました。飼い主はボクです!!」 「……そうか、覚悟を決めたようだな」 「えっ、どういうことですか?」 「今度とある動物バラエティ番組で犬を飼っているアイドルの募集がかかった。うちの事務所からも何人か候補を決めているが……君も出てくれるな?」 「……はいっ!」 ペットを飼う責任、家族として迎え入れる覚悟、ふじえるを飼うことで幸子はそれらを学んだ。もう幸子とふじえるの行く手を阻むものなどいないだろう。 一人と一頭の二人三脚はここから始まるーー
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106 名前: クラッキ7 投稿日: 2007/09/06(木) 03 25 00.56 ID qkkRIpP20 クラッキ7 翌日、ニコは学校を休んだ。 誰もいない隣の席を見ると、昨日のニコの言葉を思い出してしまい、心が沈んだ。 昼休み、屋上で健一とあった。 でかい絆創膏が顔にはってあり、俺の顔の絆創膏とペアルックだなと言うと、苦笑した。 「あんた達、昨日何があったの? 喧嘩したの?」 健一の隣に座っている晶が、俺に聞いてきた。 あまり事情を知らない健一の為にも、昨日のこと、そしてニコのことを洗いざらい話した。 話が終わると、晶も健一も絶句していた。 「許せない……そんなの許せないよ……」 握りしめた手から、晶の怒りが伝わった。 「こうなったら、私が毎日ボディガードになるよ。あの子、放っておいたら、やばいかもしれない」 俺も付き合うよ、と言いかけた時、健一が口を開いた。 「やめとけ、晶」 「……なんで」 健一に却下されたことで、晶はあからさまに不満そうだった。 107 名前: クラッキ7 投稿日: 2007/09/06(木) 03 25 54.57 ID qkkRIpP20 「危ないからだよ」 いつもの飄々とした態度と比べると、今日の健一は妙に落ち着いていた。 「だからって、ニコを放っておけないよ。あんなに良い子なのに……」 「それにな、晶……よく聞け」 健一の真剣な顔に、晶はそれ以上何も言えなかった。 「いいか、俺たちがいくら守っても、ニコ自身に戦う気が無いなら無駄なんだよ。 人間、最後は結局一人だ。支えてやるのは構わんが、歩くのはそいつだ」 俺も晶も、言い返す言葉が無かった。 「松崎。ニコを支えてやるのはお前だ。俺でも晶でも無い。お前だ」 「ど、どうして」 急に自分の名前が出てきて、焦りながらも聞き返した。 「自分で答えを見つけろ。お前もニコも、ちーっとお子様だ。 そろそろ成長しなきゃいけない時期だろうしな」 俺が、ニコを支える。 兄貴を見捨てた、俺が……。 108 名前: クラッキ7 投稿日: 2007/09/06(木) 03 26 32.82 ID qkkRIpP20 それにしても……。 「健一。お前中学校の頃に口調が戻ってるぞ。昨日の喧嘩、勝ったのか?」 口を突き出し、すねたような顔で健一は言った。 「……負けた」 次の日も、ニコは学校を休んだ。 もう学校にこないのだろうかと心配になったが、その翌日はちゃんと学校へ来ていた。 ニコは女子から人気があった。 ただ席に座っているだけで、ニコの周りには必ず数人の女子が集まってくる。 彼女には人を惹きつける魅力があるのだ。 悪い方向にさえ働かなければ、それは素晴らしい才能である。 109 名前: クラッキ7 投稿日: 2007/09/06(木) 03 27 11.03 ID qkkRIpP20 隣の席から笑い声があがった。 一際うるさい女子が、恋愛について熱く語っている。 拳を振り上げての大演説を見て、ニコを含めた周りの女子がけらけらと笑う。 ニコはよく笑う。 だが、いつも泣いている。 俺が話しかけると、ちょっと気まずい感じになるが、ニコはちゃんと応えてくれた。 あの日以来、俺とニコは疎遠気味だ。 それでも俺はニコに話しかける。 だが本当に話したいことは、いつも胸の奥に眠っていた。 その日は雨だった。 窓にあたる雨粒が、弾けたりくっついたりして一筋の流れになるのを、俺はぼうっと見ていた。 この日最後の授業は現代国語で、先生の話を真面目に聞いている者は二、三人しかいない。 110 名前: クラッキ7 投稿日: 2007/09/06(木) 03 27 54.09 ID qkkRIpP20 俺は雨が嫌いだった。 サッカーの練習が筋トレメニューになるからだ。 かといって理由も無くサボる訳にはいかない。 窓から視線を外し、そっとニコの様子をうかがった。 ニコは黒板に書かれたことをちゃんとノートに書き写していた。 そのとき、机の横に下げたニコのカバンの、外側についているポケットが微かに光った。 点滅する緑色の光。 すぐに中に入っている携帯のランプだとわかった。 電話、もしくはメールが来たのだ。 ニコは、気付いていない。 あの日以来体育の時とか、ニコがかばんから離れる隙に、携帯の中を覗いていた。 市子という人物からよく電話があったりメールが来たりしているが、この人物については何も心配する必要が無かった。 おそらくニコの友達だろう。 111 名前: クラッキ7 投稿日: 2007/09/06(木) 03 28 28.30 ID qkkRIpP20 あの日以来変な奴らからメールが来ていることは無かった。 健一にボコボコにされたのが効いているらしい。 今のは果たして、誰からの着信だろうか。 放課後、携帯を取り出し中を確認するニコの姿を、横目で観察していた。 一瞬ニコの顔が曇ったのを、俺は見逃さなかった。 ニコは携帯をしまい、教室から駆け出していく。 どうやら今日の筋トレには行けそうにないな。 降りしきる雨はさらに激しさを増してきていた。 ~to be continued~
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降り止まない雨などここにはないから(前編)◆wYjszMXgAo 俺の作戦。 それを成し遂げる覚悟は既にある。 懸念していた問題点は理想に近い形でクリアした。 仲間の存在による信頼される可能性の裏づけ。 同時に心強い味方も得ることができた。 ――――さあ、はじめよう。 棗恭介の、人生最大のミッションを。 見せてやるさ。 これが、俺の選択だ。 互いの情報を開示しつつ草原から歩き続け、とりあえず休憩できそうな場所を見つけて俺たちは足を休めることにする。 ここは駅前にあった喫茶店だ。 ロータリーは広く、見晴らしがいい。 また、中世風の建物の高さもそれほどない。 ここならば襲撃されても即座に気付けるはずだ。 狙撃の可能性を考慮し、狙われにくい位置取りを定めて椅子に座る。 ……と、不意に俺の側に座る少女が呆けたような顔をして呟いた。 「……やっぱり、似てる……?」 ――――似てる? どういうことだろうか、と思ってすぐ、彼女はこちらを向いて何でもないというかのように手を振った。 曰く。 「――――似てるの、私の来た所から。 ……趣味の悪い事に」 ……成程。 彼女が何を思ったのかは俺には分からない。 気になりはするが、それ以上に関しては彼女が語らなければ知りえないし、聞き出すつもりもない。 それよりなすべき事はいくらでもある。まずはそれをこなすとしよう。 「……さて、じゃあ現状を整理するぞ、トルタ」 髪を結った少女――――トルティニタ=フィーネと目と目を合わせて俺は告げる。 現状の俺のパートナーであり、同時に後に敵になるかもしれない少女。 ……とりあえず利害の一致から信頼を得る事はできた。 問題は、ここからだ。 「まず、俺達の方針の確認からだ。肝心な事だからな、復唱できるか?」 ――――俺は、不思議な共感を彼女に抱いている。 それは俺と彼女の境遇の近さから故か。 彼女がどんな過去を抱いているのか、正確には知りはしない。 クリスという幼馴染――――どうやら、彼女の姉の恋人らしい――――に献身的に尽くしてきたということが分かっているくらいだ。 ……多分、ではあるが。 彼女の想いがどんなものかということや、その道程を知りたいという気持ちが俺のどこかにある。 それを否定してもしょうがない。 ……何故か、という問いへの答えらしきものは一応ある。 境遇の似た俺が救いを求めているからかもしれない。 あのバスの中で、今ももがき続けているだろう俺の体。 その奮闘が報われることがあるという実例に縋りたいのだろうか。 それとも、まったく別の理由なのだろうか。 ――――分かっているさ。 救済なんかを求めても、結局は何も変わらない。 俺のできる事、なすべき事は依然としてそこにあるままだ。 感傷は捨てろ。 下手に彼女に入れ込むな。 ……いつか相対する時に辛くなるだけだ。 そして、何より。 「まず殺し合いに乗っていない人たちと接触して情報交換。 で、その人たちとの交流後に会った集団には偽の情報を流して疑惑を振りまく。 その繰り返し……よね? 終盤になってはじめて私たち自身が動き始めるんだっけ」 ……彼女は頭がいい。 いずれ敵となった時、後れを取るわけにはいかないのだから。 「OK。じゃあ、例外となる場合は?」 「……私たちの探し人に会った場合には合流、保護。その仲間は機を見て排除。 そして、中盤以降になってもそれが達成できなかった場合、最も安全なチームに合流。 ……あとは、」 トルタはそこまで口にして黙り込む。 ……基本的に、いい子なんだろうな。 頭は回るし、手を汚す覚悟もある。だが、それ以上に大切な人間の不幸を考えたくない。 ……それでいいんだ。 お前は人間なんだからな。割り切れなくて当然だ。 だから、俺がそこは担おう。 ――――俺は、すでにやってはいけないことにも手を染めているのだから。 ……謙吾。 古式の事を許せとは言わないさ。 お前を打たせないためにはあれが最も効果的だが、同時に最も卑劣だとも分かってやったんだ。 ……俺はそういうことが平気でできる人間なんだよ。 常に冷徹であれ。 だから、俺は容赦なくその可能性を口にしよう。 「仮にどちらかの探し人の死亡が確認できた場合は、もう一方のサポートに徹する、だ」 強く言い切る。 うつむいていたトルタはしかし、こくんと頷くとあらためて俺の目を見据える。 いい表情だ。 しっかりと現実を考慮できている。 そして、冷静な判断力も失っていない。 「万一脱出への糸口を確保できたなら、そちらに動くのよね」 ……俺の言ったことをちゃんと覚えている。 彼女と会えたのは本当に僥倖だ。 感情を持ちながらもそれに流されず、目の前の事についてしっかり割り切って考えられる人間。 良くも悪くも俺の仲間たちにはいないタイプだ。 鈴も謙吾も、小毬も能美も三枝も西園も。 どいつもこいつも根っこじゃ自分の感情に正直な連中ばかりだからな。 理樹と真人辺りなら理屈では割り切れるかもしれないが、やはり感情がそれに納得しないだろう。 来ヶ谷は物事については割り切って考えるが、それよりも自分の趣味を優先するタイプだし。 ……ああ、会いたいな。 皆と会って、楽しく野球でもしたい。 込みあがってくる感情を押し込める。 俺はそれを切り捨てたんだ。 鈴を、一人孤独に追いやることで。 そんな泣き言を言っている暇があるなら、現状を切り抜ける方策の一つでも考えろ。 心に刻み、俺はヒュウ、と口笛を吹いて笑いかけてみせる。 「ああ。俺はツイてるな、理解力の高いパートナーと早々に会えるなんて」 「誉めても何もでないよ。……それよりも、確認の意図を教えてくれるかな?」 ……全く、容赦がないな、はは。 ――――本当に、俺とトルタは似ている。 思考の展開が、大体同じ所に行き着くなんて、な。 ……苦笑する。 敢えて笑うのではなく、自然に浮かんでくる笑いだ。 その笑いを引っ込め、真面目な顔を作る。 ……これは一番肝心な前提条件だ。 何をするに当たっても、まず念等においてもらわねばならない。 「話が早いな。まあ、以上のミッションをこなすに当たって、心がけて欲しい事が一つある」 たとえそれが酷であっても、俺たちが判断を間違える訳にはいかないんだから。 息を吸い込み、一息で告げる。 「……常に最悪の事態を考えて判断してくれ。 それこそ、……交渉相手が既にクリスを殺害していたり、あるいは人質にしていたりする可能性を、だ」 ◇ ◇ ◇ 「ちょっと、それ、……どういうことなの!?」 恭介が告げた言葉の内容に、私の感情は一気に昂る。 さすがに今のは聞いてヘラヘラしているわけにはいかない。 ……いや、分かっている。 充分ありえる事態だ。 だけどそれでも、感情は納得してくれない。 クリスが死ぬなんて事は考えたくない……! 「落ち着いてくれ、あくまで心掛けの話だ。 ……いいか、最悪の事態を想定していれば、少なくとも動揺を抑えることはできるんだ。 言い換えるなら、最悪さえ覚悟しておけば、それ以上悪い事態が起こる可能性はない」 冷静なまま告げられたその言葉を聞いて、一気に頭が冷める。 ――――そう、その通りだ。 何が起こっても冷静であるように努める。 動揺は付け入る隙だ、敵の前でそんな醜態を曝す訳には行かない。 今は目の前にいるのが味方と分かっている恭介だからまだいいんだけど、 実際の場で興奮すればろくなことにはならないはず。 恭介が言っているのはそうならない為の確認というわけか。 「……う、うん。それはそうだけど」 「あらためて言うが、俺たちは基本的に殺し合いにのっていない連中との情報交換を武器にする。 ……つまりだ。俺たちは、誰よりも殺し合いに乗っていない人間らしくする必要があるんだ。 そうでもしないと信用されない。 だから慎重に慎重を期す必要がある」 「……分かったわ」 考えてみれば当然の話。 相手がどんな『最悪』の手札を切ってきても、こちらが対抗する手段は物理的排除を除けば交渉しかないのだ。 交渉という駆け引きの場において動揺し、弱みを曝せば敗北するのは必至。 ……同時、私たちの武器である『情報』の信頼性を下げる訳にはいかないのも道理。 私たちの武器となる情報は、『私たちが殺し合いに乗っていない』からこそ信頼され、意味を成す。 私たち自身への信頼を失えば、武器の威力は激減する。 信頼を失わない為にも慎重な行動が必要とされる。 駆け引きにおける弱点を曝さない為。 そして、信頼を確保する為。 常に最悪の想定をするのは、主にその二点が理由という訳か。 「ま、そういう訳だ。 これからの俺たちは、あくまで『殺し合いに乗っていない』人間の思考を元に行動する。 だけど、それをする前にいくつか決めておきたい事があるんだ」 「……慎重を期すという事は、緊急時の取り決めについてとか? あとはこれからの具体的な行動ね」 緊急時にパニックになってもやはり私たちのやり方にとっては致命的。 そして、これからの具体的な行動の案。 それらをあらかじめ決めておくことに異論はない。 恭介の言ったとおり、慎重を期すに越したことはないんだから。 「その通り。 あの会場で起こった異常事態のとおり、ここでは何が起こってもおかしくない。 ……だけど、必ずそこに介入するものが一つある」 介入するもの? あ、そうか。 たとえこれから何が起こっても、それは全てあの言峰とか神崎とかいう人の思惑の下にあるはず。 そして、それよりもっとミクロなやり取りでも変わらないものがある。 「……人間の意志、ね」 「そうだ。逆に言えば、起こる事全てに誰かの思惑が関わっている。 例えば、『偶然』流れ弾に当たって殺されるヤツがいたとしよう。 それでも弾を発射した人間は確かに存在するんだよ、どういう意図で発射したかは別にしてもな」 「……つまり、あらかじめ会場内の人間の思考を分類しておけば、緊急事態を引き起こされても対処できるって事?」 私の言葉に恭介は頷き、腕を組む。 ……その頭の中にはどれだけ展望があるのだろう。 人を引っ張っていく力に関しては、この人はたぶん相当なものがあるような気がする。 「ある程度は、だけどな。 だけど考えておくに越したことはないさ。 これから接触する人間を選ぶ上でも考えておくべきだろ?」 ……そうか。 あらかじめ思考の分類をしておけば、緊急時だけじゃなくて、実際に誰かとの交流の際にも流用できる。 殺し合いという異常な状況下。 そんな中で人間がどんな行動を取り得るかを考えておいて損はない。 思い当たって恭介を見てみれば、にやりと笑って机の上に出したメモ帳になにやらいろいろ書き込んでいってる。 「大雑把に分ければ、大体こんなとこだろ」 そして書き終えたメモには、こんなことが書かれていた。 『1.このゲームを否定し、積極的にゲームを破壊もしくは脱出をしようとする人物。 2.このゲームを否定するが、ゲームの脱出や破壊よりも人命の保護を優先する人物。 3.とりあえずは保身を考え、殺し合いにはのらない人物。 4.ゲームをどうこうするよりも、自身の信念や趣味、大切な人間を優先する人物。 5.そもそもゲームに興味がなかったり、理解力を持ち合わせていない人物』 ……参加者の分類。 その中でも、殺し合いに乗っていないと思われる人物の思考を分類したみたい。 「ここまでが『ゲームに乗っていない人物』だ。基本的に俺達が交流するのはこの面子だな。 ちなみに、数字が少ないほど優先順位は上がる。 何か質問は?」 大体言いたい事はわかる。だけど、ちょっと聞いておきたい事もあるので素直に聞いておくことにしよう。 肝心なのは、分類することそのものではなくその後にどうするか、なんだし。 「……1と2の違いは? 分類する意味はあるの?」 「そうだな、一つづつ説明していこうか。 まず1に分類される人間たちは、殺し合いそのものをどうこうしようとしている訳だ。 ……言うまでもないが、殺人なんてしないに越したことはないんだ。 我ながら甘いと思うけどな……」 恭介はそこまで言うと、何か遠い眼をする。 ……甘い。 確かにそうかもしれない。 だけど、私もやはり出来れば殺したくなんてないし、クリスに誰かを殺させたくもない。 恭介の考えは、当然のものだ。 私は彼を擁護しようとして、……しかし口を噤むことにする。 それを言ってしまえば、覚悟に揺らぎが出そうな気がして。 そして、彼に余計な感情を抱いてしまいそうな気がして。 そんな私に気付いているのかいないのか、恭介はつらつらと言葉を連ねる。 ……本当に、この発想力というか思考の速さは素直に凄いと言える。 「何にせよ、できる限り脱出に近い人間に好印象を与えておくに越したことはない。 という訳で最優先接触対象だ。 偽の情報を与えるよりも、こいつらには本当の情報を与えておいた方がいいかもな。 場合や能力によりけりではあるが……」 ……結局明言はしなかったけど、恭介は多分できる事なら皆で脱出したいと思っているんだろう。 だけど、リアリストゆえにそんな可能性を斬って捨てている。 ……不器用だと思う。 何にせよ、私としても脱出の可能性の芽を潰すことに意味があるとは思えないので同意する。 ついでに、彼の言い分から推察できる事項を口にすることにした。 ……私が何も考えていないとは思われたくないし。 「なるほど。じゃあ、2の人間には偽の情報を与えるのね?」 「そういうことだな。 2の連中は場合によってはゲームに乗った人間を殺すのに躊躇わない奴もいるだろう。 そういった連中を減らすついでに、同士討ちさせるのを狙うんだ。 3の連中も似たようなもんだろ。 消極的な分、効果の程は期待できないけどな」 撹乱作戦のメインターゲットは、これら2・に分類される人間について。 それを把握し、次の分類の人間に目を通す。 4、5の人間たちはかなり癖のある人間たちだ。 いわゆるトリックスター的な動きをするかもしれないので、行動が読めない。 「……4や5は? かなり特殊な状況でしょう?」 「ま、それはそうなんだけどな。 それでも考えておくに越したことはないだろ。 4は……場合によるな。 利用できそうかできなさそうかで判断する。 5は論外だ。 接触するだけ時間の無駄だな」 無難だけど、現状それ以上詳しく対処を考えることも出来ないみたいだ。 むしろ対処を考えておくべきなのは、ゲームに乗った人間たちというわけか。 「了解したわ。じゃあ、次はゲームに乗った人物よね。 この人たちは交流云々よりも、緊急時のマニュアルみたいな感じかな?」 私の言葉に頷きながら、しかし恭介は顔をしかめた。 ……確かに、危険性を考えれば遭遇しないに越したことはない。 だけど、 「そいつらの情報も得る必要はあるけど、出来る限り避けたくもある。 ……難しいな、そのさじ加減は」 そう、撹乱をするためには彼らの情報を得る必要がある。 他の参加者から情報を得られればいいけど、私たちが襲撃される可能性も高い。 どうにか生き残れればいいんだけど。 私がそんな事を考えている間に恭介はやはりペンを走らせていく。 『6.ゲームに乗り、誰かを優勝させる為に積極的に殺害を行う人物。 7.ゲームに乗ったが、優勝以外の何かに興味を示す人物。 8.ゲームに乗り、自身が優勝する為に積極的に殺害を行う人物。 9.ゲームに乗ったが、脱出組の中に潜んで暗躍する人物』 「大体こんなとこか。 さっきの通り、接触の優先順位は数字が少ないほど上。 まず、6に関しては……」 「私も大体分かってきたから、確認の意味で言わせてもらってもいい? ……何もしていないみたいで嫌だし」 さっきから恭介ばっかり喋っている気がする。 私としても、少しは使えるところを見せておきたいと思う。 私も、少しは力になれるのだから。 「お? そうか、じゃあ言ってみろ」 「……6の人たちは多分、探している人たちがいるはず。 つまり交渉の余地がある。 奇襲でもされない限り、情報交換の余地はあるかな? 私たちは戦略上、人の情報を多く手に入れられるでしょうから……」 「ああ、ゲームに乗った連中の中でも扱いやすい面子だな。 尤も、情報だけ搾り取られて殺される、なんてことにならないようにしないといけないが」 恭介の肯定。 それに満足しながら、私は言葉を繋いでいく。 「……うん。 7も似たような理由で交渉は出来るけど、6に比べて確実性がないのが欠点よね。 8は問答無用だから交渉の余地なしって事かな」 7の優勝以外に興味があるっていうのは、実際ありえるどうかは考えにくいけど。 とりあえず、恭介の考えは考えておくに越したことはないってことだろう。 「そして、一番の問題が9。……俺達みたいな連中だ。 正直、ボロを出すまで手の打ち様がない。 ……だが、その分直接的な脅威は少ない。 言動や行動に注意すれば、見抜くことも不可能じゃないだろう」 「恭介、貴方が常に最悪を考えろと言った理由もそこにあるのよね」 確認を取ると、恭介は真面目な顔を更に引き締め肯定した。 私たちのような思考を持っているなら、やはり慎重を期すはず。 ジリ貧の戦いになりそうだと思う。 ……だけど、引く訳にはいかない。 クリスの命がかかってるんだから。 「ああ。だから、とりあえず誰のどんな言葉でも深読みするくらいはしてくれ。 怪しいと思ったらすぐに相談しよう」 それは同意。 ……だけど、不安要素がある。 恭介と話し合うのは問題ない。信頼できるのは分かっている。 だけど、どこかの集団と合流した時に彼との会話の中の問題になりそうな言葉を聞かれたら。 「……でも、もし集団内でそう何度も話しかけていたら不自然に思われないかな。 それに会話の内容を万一聴かれでもしたら……」 ……信頼を失ってしまう可能性もある。 そうなれば、私たちの作戦は失敗に終わる。 対策を考えなければいけない。 考え込む私と恭介。 と、不意に恭介がぽんと手を売っていたずらっぽく笑う。 「……そう、だな。 ……お、そうだ。符丁でも使うか!」 「符丁?」 ……って、なに? 「簡単に言えば暗号みたいなもんだよ。 トラトラトラで我奇襲ニ成功セリ、みたいな感じでな。 要するに、他人には分からない俺達だけが意味の分かる言葉さ。 もちろん話の流れでおかしく感じられないようなのがいいな」 言うなり、恭介は顎に手を当てて考え込む。 数十秒経っただろうか、不意に手を打ち鳴らして何故か楽しそうに告げる。 「こんな感じでどうだ? 例えば、名簿の上から10番目の人を怪しいと思ったとする。 その場合はこう言うんだ。 『10分くらいなら待てますから』 ってな」 「えーと。 ……『分』が名簿で何番目の人かで、『待つ』が怪しいと思うってこと?」 「OK。呑み込みが早くて助かる。 そんな感じで時間と動詞の組み合わせで状況を伝えられるようにすれば怪しまれにくいはずだ。 どうだ、スパイごっこみたいで楽しいだろ」 玩具を見つけた子供のような恭介の笑い方。 まるで状況にそぐわないのに、何故か自然に感じられた。 ……本来の彼はそんな感じなんだろう。 こんな状況でなければ、彼は面倒見が良くて皆を楽しいことに引きずりまわすようなリーダーに収まるに違いない。 クリスとはまた違うマイペースさに、私は何となく苦笑してしまった。 「……男の子ってそうなのかな。 良く分からないよ」 「……あ、すまん。ちょっと空気読めてなかったか」 謝る彼に、気にしていないとばかりに手を振りながら私は同意してみせた。 「……ふふ、でも、何となくそんな気もするわね」 ◇ ◇ ◇ 俺たちはしばらくいくつかの符丁を互いに考え、一通り揃った所で別の議題に移ることにした。 こればっかりに気を取られる訳にも行かないしな。 「……ま、こんなとこか」 「そうね、とりあえずこれだけあれば用は足せそうだけど。 ……でも、これはバレない様にする為の工作でしょう? 万一が起こった後の事も考えておかないといけないと思うな」 そう、その必要もある。 とはいえ、だ。 「……まあ、そうなったら俺達にできることなんて殆どないけどな」 所詮、俺たちは一般人だ。 せいぜいできることといったら、襲撃時に即座に安全圏まで逃走するくらいだろう。 「そうよね……。 一応、今のところの私たちにとって何かが起こるとしたら、二人がバラバラになることくらい? 考えたくないけど、どっちかが死んじゃったりしたらもう一方が自分の目的を果たすだけだし。 あとは、どっちかが怪我を負って動けなくなるとか……」 「……もし俺が動けなくなったら遠慮なく見捨ててくれ。 出来れば理樹や鈴の保護を頼みたいけど、さすがにそこまで迷惑はかけられないしな」 ……トルタにはトルタの、クリスを救うという目的がある。 後を託すなんて事は期待できない。 ……だからこそ、俺は万全で事に臨まなければならない。 いざという時に俺が頼れるのは、……俺だけなんだから。 そう考えていた時、不意にトルタが話しかけてくる。 「……私が動けなくなったら? 貴方はどうする?」 成程な。 ……これは取引、……いや、保険、か? どちらかが動けなくなった時への対策か。 あらかじめ協定を交わしておくつもりだろうか。 まあ、俺の答えは決まっている。 「さあ、な。出来れば協力したいけど、状況による。 ……ただ、怨まれても仕方ない選択はするかもしれない。 それは覚悟してくれ」 トルタは有能だ。 ……それ故に、命が大切とか言うつもりは今更ないが、できる限り見捨てたくはない。 考察において意見交換できる相手を失わないように努めるのは道理だろう。 ……しかし、そういう割り切りとは別の思考が脳裏に存在する。 やはり俺はトルタの事が気に入ってるんだろう。 それを否定するつもりはない。 もちろんそんな言葉は口にしない。 トルタがいざという時俺を見捨てられるようにする為だ。 だが。 「……じゃあ、私もそうするわ。 状況次第では見捨てずに協力する。 貴方の言ってるのはそういうことでしょう?」 「……まあ、そうだな」 思いもよらぬ返事に何となく照れ臭くなって鼻をかく。 ……まったく、調子が崩れるな。 とにかく話題を切り替えよう。 話を先に進めることに越したことはない。 「……で、何らかの状況でバラバラになった場合、出来ればどこかに集合したいと思うんだが」 襲撃時にバラバラに逃げれば追跡者を交わせる可能性も上がる。 集合場所を決めておけば、後々別の機会でも役に立つこともあるかもしれないしな。 「異論はないわ。私としても、協力者がいるに越したことないのは充分に分かったし。 ……そうなると、どこか目印になる場所が必要よね。 この地図の施設のどこかにする?」 「……いや、それはまずい。 地図の上の施設は目立ちすぎる。 危険な連中が襲撃をかけるにはもってこいだ。 一つ案があるんだ、聞いてくれるか?」 あからさまに目立つ施設はそれだけで居場所を知らせているようなものだ。 探索程度ならともかく、緊急時の避難場所には適さないだろう。 こうした集合場所は、地図上では分からないが、しかし分かりやすい所が望ましい。 考え、一つの案を思いつく。 ……俺たちの今後の行動範囲や交通の便を考えると、この案はかなり安全かつ使いやすいはずだ。 「……地図を見る限り、この会場には列車が走っている。 それを目印にしよう」 「駅で待ち合わせってこと? それも目立つんじゃないかな」 その通りだトルタ。駅は列車を利用しようとする人間が集まる。 だからこそ情報交換にはもってこいだが、しかし緊急時の退避場所には不向きだ。 必ず、そこに襲撃をかけようと考える人間も出てくるだろう。 そこで、こうだ。 「ああ。だからそれはない。 ……仮にはぐれた場合、はぐれた地点の最寄の線路に沿って歩き続けるんだ。 駅についたらそこから引き返す。 そうすれば、はぐれた地点近辺の路線上のどこかで会える筈だ。 もし禁止エリアにその区域が指定された場合は北回りで迂回。 あ、B-7からF-7に関しては東回りな。北回りは出来ないし」 つまり、だ。 この会場内にある駅を左からそれぞれA、B、C、Dと振ることにする。 A~B区間近辺ではぐれた場合はAとBの間を往復し続ける。B~C区間近辺ならBとCの間を。 こうすれば集合場所は特定されずに邂逅することが可能になる訳だ。 「後で詳しく言うけど、俺は基本的に列車の沿線を行動範囲にしようと考えている。 これならその範囲からもさほど離れていないし、問題なく合流できるだろ」 「……行動範囲云々はともかくとして。よくそんなにアイデアが湧くわね、恭介」 「はは、ま、いろんなムチャやってきたからな。 トルタもしかし良くついてこられるぜ、バスターズに勧誘したいくらいだよ」 まあ、俺が生きていたのなら……な。 今の俺は幽霊みたいなもんだ。 死の間際であの二人を生かすためだけにどうにか踏ん張っているだけの存在でしかない。 ……この事実を言う必要はないか。 余計な情報を与えれば、彼女の思考にも乱れが発生する。 色々な意味でそれは好ましくない。 「……恭介の仲間なら確かに会ってみたいかな」 ……仲間か。 もう、俺を受け入れてくれるかどうかは微妙だな。 特に謙吾は俺を許さないだろう。 後戻りは、出来ないんだ。 ……だから。 「俺も、クリスって奴に会ってみたいよ。トルタの大切な奴ならな」 せめて、トルタが大切な仲間に受け入れられるところを見たいとは思う。 たとえ後々、理樹たちを優勝させる為に俺が彼女たちを手にかけることになったとしても。 037 吊り天秤は大きく傾く 投下順 038 降り止まない雨などここにはないから(後編) 時系列順 016 私と貴方は似ている。 棗恭介 トルティニタ=フィーネ