約 24,484 件
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/9860.html
427 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/10(金) 03 29 04.37 ID QlVb6JHx0 [1/2] この流れなら懺悔できる 昔ソードワールドキャンペーンを振り直し一切なしでやった時、 能力値ボーナスオール3傭兵生まれのスーパーキャラができた。 その時あるやつはオール2というちょい低めの普通のキャラだが、生まれが魔法使い その他のメンツからパーティー構成を考えると、俺とそいつでファイター2人が無難ということになったが、 実質使えないソーサラー(経験点重い)のせいでだいたい1レベルずつ成長がずれ、 能力値差とで2レベル相当の数値差があった。 その時ガキだった俺は下位互換www下位互換wwwwwwwと調子に乗っていた GMはバランス取りと空気調整に悩んでいた その次のキャンペーン同条件でやったら生命力5、筋力6だかの(クレスポマイナス1)が出来上がり、 前回の悪行のせいで死ぬほどいじられた。 キャンペーン20話で3回死んだ あの時はいろいろと相当困ったチャンだったと思う 428 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/10(金) 03 52 08.77 ID 9RSug4rz0 [4/5] 427 何歳だったんだ? 高校までなら死刑で許されるゾ スレ398
https://w.atwiki.jp/vermili/pages/430.html
発言者:ミステル・バレンタイン 対象者:アシュレイ・ホライゾン 誰もが正しい道を歩んで報われる世界を希求していたアッシュに対して告げる波乱万丈な人生を送ってその中で得た自分なりの考えを告げるミステルの言葉。 この時の本人は全く意図はしていなかったのだろうが、審判者が抱く幼稚な理想郷を否定する言葉でもある。 稀代の殺人鬼が生まれたことで転落した名家であるバレンタイン家。そうして復権のためにアドラーの機密へと手を伸ばしたが、そこで偶然彼女はかけがえの無い友人達と出会うことが出来て しかしそんな友人達の優しく暖かな日々も英雄の粛清によって終りを告げ、総てを失い孤児院へと入る事となったミステル。 そうして入った孤児院だったが、奇特な慈善家の援助によって虐待や貧困などとは無縁の温かな環境でそこで満たされる日々を送ることとなった。 そんな満たされた温かな日々の中で今度は星辰奏者としての適性があることが判明して、聖騎士へとなりと波乱万丈としかいえない人生を送ってきたミステル。 そんなミステルの境遇を聞いてアッシュもあまりに壮絶すぎて何を言っていいかわからない。周囲の都合であまりにも翻弄されすぎている 運命の玩具だなんて見ている側も痛々しくてたまらないだろうから等と「盛大なブーメラン」な感想を抱いて問いかける。 「辛いというか、歯がゆくはならなかったのか?」 そんなアッシュに対してミステルも答える。もちろん痛かったし、自分に非が無いのにどうしてこんな目にと大和様にちょっぴり文句を言った時もある。 だからアッシュのように現実的な曖昧さが嫌で生きていく上で絶対的な指針を求めようとする気持ちもわかると。しかし、その上でと続ける 「けど、明確に生きる上での善悪や優劣が決まっちゃうのもそれはそれで問題じゃない?社会的、人間的な悪徳を肯定しているわけではなくて」 「正しい道を歩めるだけで、肯定されるということもそれはそれで危険なんだと思うのよ」 「絶対不可侵の聖域なんて幻想だけで十分でしょう?手のつけられない無敵の正論は単に前進するだけで周囲の心をへし折るもの」 そうして「正しさ」以上の破壊者は存在しないと告げて、だからこそ重要なのは何事にも適した理屈と態度で当たる適当だと 人間は多様性の生き物だからこそ折れず曲がらず砕けない完全無欠のヒーローは完全無欠の正論で色んな奴らをコテンパンにしていってしまうと 大和様が気張らずに柔軟(てきとう)に作った世界だからこそ、未熟で子どもな人間達(わたしたち)は幸せに生きられたのだと信じようと 英雄の記憶を植え付けられ光に向かって飛ぶことを強要された生贄をその呪縛から解き放つかのように告げるのであった。 鳶(おれら)が鷹(光)を生み出したので注目してたが、それ以外のほとんどは同じく鳶の子。だから肩肘張らず気楽に飛べば、ぶつかっても回転して受け流して姿勢を直せばいい -- 名無しさん (2017-02-25 10 40 23) 地味にアッシュが光の生贄から抜け出すために重要な役割をさりげなく果たしていた気がする台詞 -- 名無しさん (2017-02-25 11 13 32) 因果応報は一番最初に糞眼鏡が味わうべき。 -- 名無しさん (2017-02-25 11 18 06) グランドでのお前は駄目だの大合唱がそれだったな -- 名無しさん (2017-02-25 11 18 31) 人を完璧な評価システムで裁くべきと言ってた糞眼鏡が、ゼファーやルシード等の極楽浄土の住人候補含む皆に「人間として落第点」と評価されて裁かれたからな。まさに因果応報 -- 名無しさん (2017-02-25 11 28 28) 総統やヘリオスは別格という意味で一番糞眼鏡的に最高点であろうチトセネキとか反糞眼鏡の急先鋒だしな -- 名無しさん (2017-02-25 11 31 41) 人の評価とか言って俯瞰視点で語るくせに、実は閣下しか見てないんだからあの結果は残当 -- 名無しさん (2017-02-25 11 33 29) あんだけ言っときながら総統を喜ばすための半ば建前だもん -- 名無しさん (2017-02-25 11 36 09) こういう所を見るとミステルさんって本当に良い女だよなぁと思ってしまう。アマツとキリガクレがアレな分ね -- 名無しさん (2017-02-25 15 51 46) 精神にどっしりとした安定感があるよねミステルさん -- 名無しさん (2017-02-25 15 55 10) どっしりとした安定感(おっぱい) -- 名無しさん (2017-02-25 17 22 37) 議事堂ックスとかヤるタイミングと場所が狂ってる以外は文句無しにいい女だよねミステルさん -- 名無しさん (2017-02-25 17 48 27) 完璧な因果応報は面白みがない。ただし物語の流れや、報われるべきアシュナギと裁かれるべき糞眼鏡に対してはその限りではない・・・! -- 名無しさん (2017-02-25 17 59 24) でもこれ最終的に勝ち組になれたからの意見じゃね?って思っちゃう俺は負け組だろうか? -- 名無しさん (2017-02-25 18 17 00) そう言われたらああ〜うん、まあ確かにね。私は恵まれている方ではあるから理不尽に今も喘いでいるような人がこんな世界は嫌だと思うのも無理はないとは思うわよ。あくまで私の意見だからね的な事を言いそう -- 名無しさん (2017-02-25 18 20 54) ゼファーの正しさの肯定は他人事だから言えるって意見や、「勝利とは」はあくまで個人の答え、人の考えは変わるって作中であるし、勝ち組だからそんなこと言える!と因果応報を望む負け組もその理屈で悪因悪果がやってきたら「因果応報糞くらえ!」って叫ぶだろうし。なおオルフィレウスは「知ったことか!」 -- 名無しさん (2017-02-25 18 29 58) 更に言えば今が充実してる(様に見える。実際はともかく)本編初期のアッシュ君に対してだから世間話的に話しただけで、傭兵時代の理不尽に苦しむアッシュ君には言わなかったと思うし、 -- 名無しさん (2017-02-25 18 34 59) まあ勝ち組だから言えるってのは事実上の言論封殺と同じよね。苦しみに喘いでいる状態で言ったら言ったで聖人、超人、変人だのと一般から外れた人間ってレッテル張り出すわけだし -- 名無しさん (2017-02-25 18 40 44) ミステルさんアヤさんから見るとアッシュが帝国軍人になっているのって本当に謎いよな -- 名無しさん (2017-02-25 18 45 31) やっぱ+-ゼロの中庸がナンバーワン! -- 名無しさん (2017-02-25 19 12 14) つまり某赤い外套の正義の味方か -- 名無しさん (2017-02-25 19 15 32) ↑紅茶はゼファーメンタルのまま総統閣下と同じ事が出来てしまった人だから、プラマイで考えれば中庸、なのかな? -- 名無しさん (2017-02-25 19 23 33) 凌駕「俺は何処にでもいる一般人だからな~。ナンバーワンなんてあり得ないよ」 -- 名無しさん (2017-02-25 19 28 43) ↑似たようなニュアンスを言うのが凌駕で、おまえおかしくねって思うのがプレイヤー -- 名無しさん (2017-02-26 09 55 51) ↑3紅茶はゼファーさんほどメンタル弱くはないと思うぞ -- 名無しさん (2017-03-03 09 22 58) 最近の紅茶はボブになってましたね… -- 名無しさん (2017-03-03 11 59 13) 一見するとボブなのに、台詞とか聞くと笑えない... -- 名無しさん (2017-03-08 01 05 44) 頑張った人には頑張った分だけ報われて欲しいとは思うし、悪には相応の裁きが降ってほしいとは思う。あまりこの理論には賛同できないかな自分は。正しく頑張った人達が報われるのは当たり前のことじゃないか -- 名無しさん (2019-07-23 09 30 18) その通りだとも。完璧な信賞必罰こそが世界には必要なのだ -- 名無しの審判者 (2019-07-23 11 06 11) 少なくとも悪に対する過剰な擁護をなくせば少しはマシになるんじゃね? -- 名無しさん (2020-02-24 13 02 42) 本編では極楽浄土を否定する言葉だったが、ラグナロクで更に重くなった気がする。ゼファーどころかミリィすらギガースに加担する他国から見たら悪とも取れる立場になっちゃってるし -- 名無しさん (2020-02-24 13 25 32) ギルベルトが分かりやすいが何を良しとし悪しとするか?善悪好悪は立場や状況や人によりどのような因果に対しどのような報いがふさわしいかは人によるからね。そう言う意味では完全因果応報なんてスフィアでも不可能 -- 名無しさん (2020-02-24 14 49 01) まぁ「因果応報は全自動じゃない」て言葉が有りますし -- 名無しさん (2020-05-06 01 11 59) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/tarowa/pages/484.html
因果応報―薔薇乙女 翠星石が1体出た!― ◆KKid85tGwY 少女は幸せな夢を見た。 本当に幸せで、優しくて、暖かい夢。 それは普段と何も変わらないはずの日常。 少女はチビ人間の家で自慢のスコーンを焼いていた。 いつものようにチビ苺をからかいながらスコーンを振舞う。 チビ人間も文句を言いながらスコーンを食べている。 興味無さそうに紅茶を傾けていた真紅も、時折手を出している。 のりがそれを微笑ましそうに眺めていた。 そこにチャイムの音が鳴る。 おじじの家から、蒼星石が遊びに来たのだ。 玄関で鉢合わせた金糸雀まで連れて。 真紅はそこで昨日会った水銀燈の話をする。 水銀燈と真紅は長く対立していた敵同士。 しかし真紅は、どこか愛おしそうに水銀燈の話をしていた。 おそらく水銀燈が無事に生活をしていたのが喜ばしいのだろう。 同感だと思う。 たった七人の姉妹なのだ。 憎み合い、傷付け合うようなことは哀し過ぎる。 そうなれば、こんなに楽しく皆で食事をすることもできないのだから。 そこで少女――――翠星石は眼を覚ました。 眼を覚ました先に在ったのは、硬く冷たいコンクリートの床。 翠星石はそれを冷たい眼で眺め続ける。 それは本当に幸せで優しくて暖かく、だからこそ残酷な夢だった。 眼を覚ました現実では、姉妹が居なくなっていた。 真紅。蒼星石。水銀燈。 本当に掛け替えの無い姉妹だった。 双子の姉妹として生きて来た蒼星石や、同じ家で暮らした真紅は勿論、 敵対した水銀燈だってそうだ。 ローゼンメイデンは、長い周期の眠りを繰り返しながら、 人間より長い時間を生きる。 その間、様々な人間との出会いと別れを繰り返した。 悠久の時間を、それでも擦り切れずに生きて来れたのは、 同じ運命を生きる姉妹が居たからだ。 同じ悠久の時間を支えあって生きた姉妹が居なければ、今の翠星石は居ない。 しかしその掛け替えの無い姉妹を三人も、永遠に失った。 現実は、今翠星石が身を預けるコンクリートの床のように冷たい。 夢の中で見たような暖かく幸せな時間は、二度と返って来ない。 それを否でも自覚させる。本当に残酷な夢だった。 「…………皆は……真司はどこですか?」 ようやく意識がはっきりとしだした翠星石は、周囲を見渡す。 現実にも、翠星石には仲間が居たはずだ。 今や姉妹たちと同様に掛け替えの無い仲間が。 しかし見渡しても、誰も居ない。 どこまでも冷たく余所余所しい、見慣れぬビルの中の景色が在るだけだ。 「な、なんですかここは? ……皆、どこ行っちまったですか…………」 翠星石にしてみれば、眼を覚ませば世界がすっかり様変わりしたような物。 シャドームーンと戦っていたはずなのに、その痕跡は見当たらない。 殺し合いの中でも体験しなかった、異質な不安が翠星石を襲う。 「…………皆……真司!!」 矢も盾も堪らずビルから飛び出した。 状況が掴めない。それ以上に自分以外の誰も居ないことが、翠星石を不安にさせる。 特に真司の不在は。 今の翠星石にとって一人で居ることは、余りにも冷たかった。 まるで迷子を恐れる子供のように、翠星石は一人無人の街を飛び行く。 誰一人予想もしていなかった結末へ向けて―――― ◇ 「黙って聞いてりゃ、横からしゃしゃり出てきたヤローが勝手なことばかりぬかしてんじゃねーです!!! そんな趣味の悪い銀色オバケと、手なんか組めるわけねーじゃねえですか!!」 今まさに休戦協定の契約を交わそうとしていた狭間とシャドームーンを怒鳴り付ける翠星石。 翠星石は今にも噛み付きそうな剣幕で、怒りを露にしていた。 翠星石は初め、狭間とシャドームーンの会話の意味が判らなかった。 それ以前に狭間たちが居る場所が、先刻まで自分がシャドームーンと戦っていた場所だとも判らなかった。 ライダーキックとシャドーパンチの衝突などの被害によって、周囲の地形が大きく変わっていたためである。 その場所でシャドームーンと見知らぬ男が口論している所を見掛けても、すぐには状況が掴めなかった。 翠星石は元々人見知りをする性格の上、シャドームーンへの恐怖感も存在する。 その上、会話する二人の間には、異様な緊張感が漂っていた。 そもそも翠星石が捜していたのはシャドームーンではなく、あくまで自分の仲間である。 シャドームーンに対して姿を晒す必要は無い。 翠星石は二人の会話に聞き耳を立てながら、物陰に隠れて周囲の状況を探る。 会話の内容に不穏さを感じながら見渡していると、程なく真司を発見することができた。 倒れ伏して動くこともままならない様子だが、命に別状は無いようだ。 真司の生存に対する喜び。 そしてそれ以上の怒り。 怒りの原因は真司ではない。 狭間とシャドームーンの会話の趣旨が、ようやく把握できた。 狭間はシャドームーンと協力して、V.V.と戦おうと言っているのだ。 共に共同戦線を組んでV.V.と戦う。 それは即ち、シャドームーンが自分の味方になると言うこと。 理解できた瞬間に、声を上げていた。 翠星石の抑え難い憤りは、収まりそうにない。 それほど翠星石には許しがたい話だった。 間が悪すぎる。 翠星石の出現に、狭間が持った感想がそれだった。 シャドームーンとの交渉には、翠星石の存在も含めてあらゆる要素を考慮に入れて想定をしていたつもりだった。 しかしここまでシャドームーンとの交渉が進んだ段階での翠星石の横槍は、完全に想定外。 翠星石の様子を見る限りは、簡単には納得しそうには無い。 狭間は頭脳を高速回転させて、事態への対処方法を練る。 しかしほとんどシャドームーンだけを相手にして居れば良かった先刻までと違い、上手く頭が回らない。 「……手を組むと言っても、一時的な物だ」 「一時だって無理です!! 後ろから撃たれるのがオチに決まってるです!!!」 「一旦契約を結べば、シャドームーンはそれを守る」 「どこにそんな保障があるんですか!!? そんな殊勝な奴が殺し合いに乗るわけがありません!!」 「シャドームーンは正面から、我々全員を殺す自信があった。そんな者が姦計を巡らす必要など無い」 「手を組む必要なんざ、もっとねーです!!」 「我々の安全のためだ」 「それで危険を増やすお馬鹿が居ますか!!!」 まるで取り付く島が無いと言った風情の翠星石。 シャドームーンより、よほど手強い交渉相手だ。 狭間は悪魔交渉が不得手であった頃を再び思い出す。 しかしこのまま手を拱いていては、せっかく進めていた交渉も水泡に帰す。 「…………翠星石、シャドームーンとこのまま戦えば、勝敗はともかく被害は大きい。 シャドームーンと同盟を結べば、その被害を主催者の方に押し付けられる。……どっちが合理的な手段だ?」 狭間を援護するために口を出してきたのは、意外にもC.C.だった。 C.C.は先刻まで翠星石と同行していた仲間だ。 狭間より話が通用するはずである。 そのC.C.が合理性を説く以上、翠星石の納得も得易いはずである。 「お、お前らはそいつが何をしたか知らねーから、そんなことが言えるんです……!!! そいつが何をしやがったか!! 新一にも、ミギーにも……水銀燈にも…………」 しかし実際は、納得どころか更に怒りに火を注ぐ結果となった。 小さなその身を震わせて、翠星石は抑えがたい怒りを露にする。 翠星石はかつてシャドームーンと戦った際、共に戦った仲間の泉新一とミギーを殺されている。 そして姉妹である水銀燈も、シャドームーンに身体を破壊されて、何よりその誇りを踏み躙られた。 ローゼンメイデンがローザミスティカの継承をする際は、以前の持ち主の記憶も受け継ぐ場合がある。 翠星石は水銀燈のローザミスティカを受け継いだ際に、その中でも特に強烈な印象の記憶。 シャドームーンに植え付けられた畏怖、踏み躙られたプライドの記憶があった。 水銀燈は姉妹の中でもとりわけ強くアリスになることを望んでいた。 誰よりも美しく気高い完璧な少女、アリス。それこそが水銀燈の理想だった。 しかしシャドームーンに不具とされ、その上シャドームーンの使い走りにさせられている。 それがローゼンメイデンの、とりわけ気位の高い水銀燈にとってどれほど辛いことか。 そしてこの世にたった六人の姉妹がそんな目に合わされることが、翠星石にとってどれほど辛いことか。 新一とミギーを殺し、水銀燈も踏み躙ったシャドームーン。 例え一時のことでも受け入れることはできなかった。 「……その水銀燈が、殺し合いに乗っていたことを知っているな…………」 狭間もホームページ上のプロフィールや動向から、その辺りの事情は知っている。 知っているからこそ、腑に落ちない部分も有った。 「水銀燈が枢木スザクに惚れ薬を投与して、その所為でスザクが殺し合いに乗ったことは知っているか? そのスザクが何名もの参加者を殺したことを、即ち水銀燈が何名もの参加者を殺したことはどうだ?」 「…………何が言いたいんですか?」 押し殺したような声で狭間を促す翠星石。 翠星石の意に沿わない話であることは、狭間にも察することができる。 それでも狭間にとって言わずにはいられない。 何故ならレナを殺したのはスザクである。即ち遠因となったのは水銀燈なのだから。 「その水銀燈と、お前たちは手を組んでいたはずだ。それで何故シャドームーンだけを拒絶する?」 「黙るですッ!!!」 狭間に叩きつけるような翠星石の怒り。 同時に翠星石の手から黒羽が発射される。 黒羽は狭間の足下に被弾。蒼炎を上げて爆発。 (なんだこの威力は!?) 黒羽の威力は狭間をして驚かせる物だった。 その威力から察するに、シャドームーンに匹敵し得るほどの力を翠星石が持っているからだ。 翠星石の動向欄で確認した限りでは、真司や新一と共闘してシャドームーンから敗走している。 しかし今の翠星石ならば、単独でシャドームーンを倒し得る。無論、容易ではないが。 翠星石は赤い光をオーラのごとく纏っている。 狭間の想像を超える力と、そして怒りだった。 「……あの銀色オバケより先に殺されたいですか?」 翠星石の放つ気配は怒りに留まらない、正に殺気。 今までにない翠星石の様子に、真司ですら息を呑む。 水銀燈が殺し合いに乗っていたことなど、狭間に言われなくとも百も承知している。 それほどアリスを望んでいた水銀燈でも、ローザミスティカとなって翠星石と一つになることは、 報われない戦いの中で、僅かでも救いとなったはずだ。 しかしそれで翠星石がシャドームーンと肩を並べて戦ってしまっては、 水銀燈の戦いも決意も、本当に報われない物になってしまう。 水銀燈の決意とシャドームーンの決意が、同じ重さを持ってはならない。 世界がそんなに醜い物であってはならないのだ。 「…………もう止めろ翠星石」 翠星石を制止する声は真司の物だった。 翠星石にも予想外だったらしく、呆然とした表情を向けている。 「もうこれ以上、誰かの死を望むようなことを言うな……今のお前を見ても、新一もお前の姉妹も喜ばないよ……」 真司は折れていない方の腕で、大儀そうに身体を起こしながら語る。 真司の目的は誰も死なせないことであって、シャドームーンを倒すことでも新一たちの仇を取ることでもない。 今の翠星石と真司の意思は完全に相違する物となった。 「真司まで何を言い出すですか!!」 翠星石には真司が制止するのが信じられない心地だ。 真司も翠星石同様、新一やミギーを殺された恨みを抱えているはずだ。 しかし、これではまるでシャドームーンとの共闘を望んでいるようではないか。 どうしようもない憤りに駆られる翠星石。 「……ククク、浅ましいな」 真司の代わりに返答するように口を挟んだのは、それまで沈黙を守っていたシャドームーン。 どこか呆れたような含みを持たせた薄い笑いを上げる。 「それほどまでに多勢で私一人を踏み躙って、正義を誇りたかったか。 それほどまでに私の命を贄にして、自分たちの力と団結と理想に酔いたかったか。 フッ、人とはつくづく浅ましい物だな」 シャドームーンは笑う。 目前の全てが、薄っぺらな正義をお題目にした茶番劇だと言いたげに。 「人形よ、そんなに私を殺したければ、他を当てにせず貴様一人で掛かって来たらどうだ?」 「……上等じゃないですか…………」 翠星石の殺気がシャドームーンに向かう。 かつての翠星石を知る者からすれば想像も付かないような、殺気に歪んだ形相を浮かべて。 「……てめーさえ死ねば、全部片が付く話です」 殺気と共に、翠星石の中から異様な力が漲ってくる。 暖かい夢から、眼を覚ました時以来そうだった。 まるでローザミスティカが増えたような、異様な力が翠星石の中に漲っている。 胴体を貫かれた傷も、いつの間にか回復していた。 「この力が在ればてめーなんざ、けちょんけちょんのぼろ雑巾みてーにしてやれるですよ。けっけっけ……」 急激に得た、身の丈に合わない異常な力は、時に人を歪ませる。 それはローゼンメイデンとて例外ではなかった。 身の内から湧き出る、シャドームーンをも殺せそうな力。 翠星石はそれに溺れていた。 翠星石の身体から、再び赤い光がオーラとなって表れる。 それは翠星石と世界を異にする賢者の石の光だった。 「止めろ翠星石!! 今お前たちが戦っては、例えシャドームーンを倒せても周囲の者を巻き込みかねない!!」 狭間の制止も翠星石は聞かない。 シャドームーンを憎々しげに見据える翠星石には、まるで本当に狭間の声が聞こえていないかのようだった。 TALK(話し)にならない。 即ち――翠星石はやる気だ。 翠星石の殺気を受けて立つシャドームーンも、サタンサーベルを構えた。 「シャドームーン、貴様も下らない挑発は止せ!! 翠星石はこの場から脱出する能力を持つ、唯一の参加者だ!! それがどんな能力か、ホームページのプロフィールを見れば確認できる! 翠星石を殺せば、殺し合いの打破は不可能になるのだぞ!!」 「そんな話はあの人形としろ。世紀王に歯向かう愚かさも含めてな」 狭間に平然と返答するシャドームーンも、引き下がるつもりは無いようだ。 如何なる状況でも、シャドームーンの王の自覚は揺るがない。 歯向かう者には、誰が相手でも退くことは有り得ない。 (どうする!!? ……くそっ、まさかこんな展開になるとは……) 睨み合う翠星石とシャドームーンの両方を見据えて、狭間は歯噛みする。 シャドームーンを味方につけるはずが、翠星石まで危険に晒す形となってしまった。 シャドームーンを相手には上手く進められた交渉が、翠星石を相手にした途端、精彩を欠いてしまった結果がこの状況である。 まるで他人との係わり合いを苦手とした、かつての自分に戻ったかのように。 必死に頭を巡らしても、打開策が浮かばない。 「これ、もうさあ……翠星石に付いてシャドームーンを倒すしかないんじゃない?」 横から北岡が打開策を提示する。 北岡は手に持つカードデッキを地面に割れ落ちたガラスに向ける。 その腰にVバックルが顕現。 今頃になって変身可能になるとは。 狭間は忸怩たる気持ちを抱くが、しかし今はそれどころでは無いと気持ちを切り替える。 何れにしろ、今更シャドームーンに持ち掛けた交渉をこちらから反故にすることはできない。 「私はもうシャドームーンに同盟を持ち掛けた。魔人皇の名の下にだ。 魔神皇の矜持が虚仮だったとしても、魔人皇の誇りまで偽物とするつもりは無い」 一度自分から契約を持ち掛けた相手に、まだ契約は結ばれていないからと言って、襲撃などすればそれは騙まし討ちも同然。 かつての人の上に君臨するための魔神皇ならばそれでも構わなかったかもしれないが、 人と向き合うが故の魔人皇が、卑劣極まりない騙まし討ちなど、絶対にしてはならない。 例え相手が誰であってもだ。 一度それをしてしまえば、魔人皇の名まで虚仮になってしまう。 「生真面目だねぇ……でもそれはおたくの事情であって、俺は最初から同盟だの契約だの知ったことじゃないんだよね」 「私も同様だ」 北岡に続いて、ジェレミアも無限刃を構える。 二人とも翠星石と共にシャドームーンを倒すつもりのようだ。 ジェレミアが狭間の交渉に命を預けると言ったのは本心だろうが、 狭間ですら判断に迷うこの状況では、実力で翠星石を守ろうとしても、無理もない判断だ。 こうなれば、翠星石も北岡もジェレミアも止める策は狭間には存在しない。 しかし、シャドームーンを敵として戦うこともできない。 狭間は完全に板挟みで動けない状況だった。 (……翠星石、お前何をどうしちまったんだよ) シャドームーンに殺気を向ける翠星石。 真司にとってそれは、まるで悪夢のように現実感が無かった。 殺意に身を任せる翠星石の様子は、余りにも普段のそれとは違う物だ。 真司はそこに、かつて戦った秋山蓮に抱いたような歪みを見出す。 『一つでも命を奪ったら、お前はもう、後戻りできなくなる!』 『俺はそれを望んでる……』 かつて蓮は人を殺すことで、自分を後戻りできないところまで追い詰めようとしていた。 事情は全く違うが今の翠星石から、それほどの尋常ではない気配を嗅ぎ取ったのだ。 もし、翠星石がこのまま殺意に任せて誰かを殺してしまえば、後戻りできない事態になる。 真司はそんな予感に襲われたのだ。 (…………俺が……止めないと!) 翠星石の殺意を止められるのは自分だけだ。 しかし今の翠星石を言葉で止めることは自分にはできない。 そんな想いに駆られた真司は、僅かに回復した体力を振り絞り、再び立ち上がる。 そして翠星石を目指し駆け出した。 誰一人予想もしていなかった結末へ向けて―――― 「死にやがれですっ!!!」 左手をかざす翠星石。 その左手から黒羽の連弾を発射。 先刻のそれを超える速度で、一直線にシャドームーンへ向けう。 シャドームーンも翠星石同様に左手をかざす。 その左手からシャドービームを発射。 シャドービームは直線上の黒羽を全て焼き払った。 更に射線の先に居た翠星石へ襲い掛かる。 翠星石は反射的に横へ飛び出す。 音速を超える凄まじい加速度。瞬時にしてシャドービームの射線から回避できた。 (と、とんでもねー速さですぅ!!) 翠星石は自分の持つ速さ、力に驚嘆していた。 自分の意思で飛行していると言うのに、上手く制御し切れないほどの加速度。 何故、突然自分にこんな力が沸いて来るようになったのかは判らない。 しかし今はそんなことはどうでも良かった。 自らの途轍もない能力がもたらす、経験したことも無い快感に翠星石は酔っていた。 この力が在ればシャドームーンでも難なく殺せる。 絶対に自信と共に、翠星石は薔薇の花弁をシャドームーンへ向けて飛ばした。 その射線上に影が飛び出す。 翠星石は自分でも制御しきれないほどの速度で飛行中に薔薇の花弁を発射した。 従ってシャドームーンまで到達する射線を、確実に捉えてなどいなかった。 駆け出した真司にとっても、先刻までの翠星石を遥かに上回る速度は予想できなかった。 従って自分が走る進路の安全など、確保しているはずは無かった。 二つの不測が交差する。 薔薇の花弁の射線上に飛び出した影は真司。 あるいは真司の頭部を薔薇の花弁が通り抜けたと言うべきか。 その威力も先刻より遥かに上回る花弁は、 進路上に在る真司の頬を剥ぎ取り、顎を砕き、首元まで抉り取った。 通り抜けていった花弁を、シャドームーンが横っ飛びに何なく回避する。 まるで何が起こったのか判らないという表情で立つ尽くす真司。 翠星石も何が起こったのか判らないという表情で呆然としている。 遅れたタイミングで、真司の首元から大量の血が勢い良く噴出。 真司は糸の切れた人形のごとく、崩れ落ちるように倒れた。 つかさの悲鳴が響き、北岡が短く城戸と叫ぶ。 それでようやく、起きた惨劇の意味を全員が理解した。 惨劇を起こした当人、翠星石を除いて。 首元から大量の血を噴き出し、声にならない悲鳴を上げて真司はのた打ち回る。 両手足がバタバタと何もない空間を掻く真司の様は、 人間と言うより、まるで子供の悪戯で死に瀕した昆虫のように滑稽な印象を与えた。 焦点の定まらない眼がより滑稽な印象を増している。 真司の生命は自動機械のごとく両手足を忙しなく動かしているが、その先には死しかないことは誰の眼にも見て取れた。 「ディアラハン!」 狭間は即座に回復魔法を詠唱する。 ディアラハン、単独の対象なら全ての負傷を完全回復させる魔法。 魔法は瞬時にその効果を発揮して、真司の傷を完全に塞ぎ出血を止めた。 「……!!」 真司の有様を見て、つかさは思わず息を呑んで眼を背ける。 ディアラハンの効果で傷口は塞がれたが抉り取られた喉下も、頬も、顎も欠損したままである。 出血が止まることで、真司の致命的な欠損がより露になったのだ。 もう手足を動かす力も無くなったのだろうか、 地に横たわった真司の身体は、胴体だけが脈打つように動いていた。 翠星石と狭間に生命を弄ばれたグロテスクな残骸。それが見る者が今の真司に抱く正直な印象だった。 「くそっ!」 狭間が苦々しげに吐き捨てる。 いかに高位の回復魔法とは言え、やはり制限下では致命の傷を治し切ることはできない。 真司はもう助からない。誰もがそう理解できた。 致命の傷を与えた当人、翠星石を除いて。 「え? …………な……ななな、なんでですか……? …………なんで真司がそこに居るんですか? 一体、何してやがるんですか……」 翠星石は震える声で真司に問い掛ける。 自分でも何を聞いているのかよく判ってはいない。 力無く横たわる真司は、それでも首を持ち上げて翠星石を見つめる。 そして最後の力を振り絞るように、翠星石へ手を伸ばそうとする。 瞬間、翠星石はそれに途轍もない恐ろしさを覚えた。 真司は、常に翠星石の傍らに居た。 殺し合いの恐怖。次々と人間が、そして姉妹が死んでいく過酷な状況。 それでも傍らに真司が居てくれたお陰で、翠星石はここまで来れたのだ。 常に優しく翠星石を支えていた真司。 しかし今の真司は翠星石にとって、まるで怨みを抱えて現世に現れた亡者のごとく恐ろしげにうつる。 真司が口を動かし、声にならない声で語りかけようとしている様も、 まるで自分への呪詛を吐いているように翠星石には思える。 何故そんなに怨まれなければならないのか? そんな覚えは無いはずなのに。 やがて真司の手は力無く地に落ちる。 身体中の一切の動きを止める真司。 少女を守ると誓った。 信じる正義のために戦った。 そして守ると誓った少女に殺された。 それが仮面ライダー龍騎・城戸真司の最期である。 真司はかつて劉鳳を殺している。 そして今度は劉鳳の仲間だった少女に殺された。 あるいは因果応報と言える最期であった。 しかし翠星石は真司の死に現実感が沸かない。 何故、真司が死ななくてはならないのか? あれだけ優しくて強かった真司が。 ――――本当は知っている癖に 自分の中で声がする。 しかしそんなはずが無い。 自分は真司が何故殺されたかなど、知る由も無い。 殺された? 何故殺されたと知っている? ――――誰が殺したか知っている癖に 本当は真司が誰に殺されたかを自分は知っている。 だから何故知っている? ――――翠星石が真司を殺した 嘘だ 嘘だ嘘だ そんなの嘘だ そんなことあり得ない 真紅も、蒼星石も、水銀燈もみんな翠星石を置いて死んでいってしまったのに、 この上真司まで死んでしまうなんて。 その真司の死が――――翠星石が起こしたものだなんて。 「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」 火の付いたような叫びを上げる翠星石。 翠星石自身は自分が叫んでいることも判らないほど狂乱していた。 あらゆる現実が内面で交錯していき、意識の焦点が定まらない。 やがて意識が全てホワイトアウトする。 「フッ、なんだこの様は?」 異様な叫びを上げていた翠星石、突然糸が切れたように倒れる。 その尋常では無い様を見て、シャドームーンだけが失笑を漏らす。 そしてサタンサーベルを構えた。 カシャ カシャ カシャ カシャ 「よくも世紀王を、ここまで下らない茶番に付き合わしてくれた物だ……相応の礼をせねばならんな」 「止めろ!! もう翠星石には何もできない! さっきも言ったはずだ! 脱出ができるのは翠星石だけなんだぞ!!」 「仕掛けてきたのはその人形の方だ。違うとは言わさん」 翠星石へ向かって歩き出すシャドームーン。 狭間の制止にも止まる様子は無い。 たとえ狭間でも、止めるには実力で当たるしかないだろう。 可能な限りシャドームーンを攻撃しないように。 そんな温いやり方で、シャドームーンを止めることが可能だろうか? しかし最早、躊躇しているような間もなかった。 翠星石がサタンサーベルの間合いに入った。 狭間は身を挺して翠星石を守るべく、走り出す。 その進路を、艶のある光沢を放つ水晶によって遮られた。 鏡のごとく狭間の姿をきれいに映し出す、滑らかな水晶。 そんな水晶が、まるで植物のごとくに地面から生えてきたのだ。 シャドームーンの方を見ると、同じくように眼前の水晶に阻まれている。 水晶は翠星石を取り囲むように、何本も地面から伸びている。 その一本の先端に少女が居た。 薄い紫のドレスを着込んだ少女は、その体躯の小ささから、 翠星石と同じ人形だと判る。 そして狭間はその人形に見覚えがあった。 狭間は怒りを込めて、その名を呼ぶ。 「……薔薇水晶!!」 「私は主催側……あなたたちに危害は加えません……」 そう言い放ち、薔薇水晶は水晶の取り囲まれた空間に降り立つ。 足下には翠星石が倒れていた。 薔薇水晶の目的は翠星石。 翠星石は殺しあいの脱出者となるための条件を満たした。 『首輪を解除した上で、合計十二時間以上同行した参加者を殺害する。』と言う条件を。 従って案内役である薔薇水晶が、翠星石を迎えに来たのだ。 周囲の水晶は、あくまで自分と翠星石を保護するための物。 その水晶が、一斉に粉砕する。 「「二度も私の邪魔はさせん!!」」 狭間とシャドームーンが、同時に水晶を破壊したのだ。 「私は……翠星石を迎えに来ただけ…………」 「世紀王の邪魔立てをした者の命は無い。貴様らはまだそのことを理解していなかったらしいな」 「そいつは主催者側の存在だ!! 殺す前に聞き出すことがある!」 狭間は薔薇水晶が翠星石を連れて行くのを放置するつもりは無い。 シャドームーンも薔薇水晶を放置するつもりは無い。 二人は薔薇水晶に挑みかかる。 シャドームーンがビームを放つ。 飛行して回避する薔薇水晶。 そこへ狭間が凍結魔法を放つ。 大気を凍えさせ吹雪を作り出す凍結魔法は、 範囲が拡散して回避が難しい上、敵自身を凍結させて動きを封じる効果がある。 しかし地面から水晶を伸ばして吹雪を防ぐ薔薇水晶。 薔薇水晶の飛行を阻むことはできなかった。 その進路上に刃が奔る。 「逃しはせん!」 咄嗟に手中で形成した水晶の剣で防ぐが、飛行は停止。 刃は無限刃。更に贄殿遮那。振るうはジェレミア。 ジェレミアは薔薇水晶の進路を阻むように剣で攻め立てる。 薔薇水晶は応戦するが、ジェレミアを突破できない。 背後から狭間とシャドームーンが迫る。 『薔薇水晶、翠星石は構わないから、今すぐ帰還するんだ』 それはV.V.の声だった。 周囲一帯から聞こえる幼い声は、ちょうど放送の時と同じ要領で響き渡る。 それと同時に薔薇水晶の足下に低く水晶が生える。 「逃がすなジェレミア!!」 無限刃を薔薇水晶へ向けて突き立てるジェレミア。 しかし無限刃は虚しく空を切った。 薔薇水晶は無限刃の下、絵の具を不規則に混ぜ込んだがごとき混色を表す水晶面の中へと消えて行く。 「……nのフィールドか!!」 人形である薔薇水晶は、その気配からも翠星石と同種のローゼンメイデンだと狭間には推測している。 更にそこから翠星石と同様の能力を使って、nのフィールドへ侵入したと容易に推測できた。 薔薇水晶の姿が完全に消え去り、混色から滑らかな水晶面に戻る。 「シャドーフラッシュ!」 シャドームーンから放たれるキングストーンの光。 それに照らされた滑らかな水晶面が、再び混色に戻る。 「!!? シャドームーン、貴様もnのフィールドへ侵入できるのか!?」 「nのフィールドなど知らんな。だが、キングストーンを持つ者に侵せぬ領域など存在しない」 狭間の問いを適当にあしらいながら、シャドームーンはnのフィールドの中をマイティアイで透視する。 先刻に拡張したシャドームーンの空間干渉能力。 nのフィールドとて、一種の異空間であることには変わりは無い。 マイティアイで解析した薔薇水晶のnのフィールドへの侵入能力を、その空間干渉能力で模倣した。 しかし開いたnのフィールドへの入り口の中は、マイティアイでも見通すことは不可能だった。 「シャドームーン。首輪が貴様に嵌っている以上、そこに侵入するのは自殺行為だ」 「……創世王よ!! 二度も世紀王を邪魔立てするか!」 狭間に言われるまでも無く、首輪を嵌めたままnのフィールドへ入るのが危険であることくらい、シャドームーンも弁えている。 即ち薔薇水晶の追跡は不可能。 しかしシャドームーンの怒りは収まらない。 怒りが向かう先は、殺し合いの主催者。 主催者は二度もシャドームーンを侮辱してまで、殺し合いの駒にしようとしている。 「……シャドームーン。殺しあいを主催する者は、あくまで貴様の誇りを省みないつもりらしい。 仮に貴様が殺し合いに優勝したとして、そんな連中が貴様の立場を保障してくれると思うか?」 狭間の方へ振り返るシャドームーン。 狭間はいつの間にか翠星石をその手に抱いていた。 「翠星石は私が預かる。主催者を倒すまで、私が決して貴様に手出しはさせない。貴様が契約を受け入れればの話だがな……」 「フッ、できるのか貴様の力で?」 「ならば殺し合いを続けるか? 満身創痍で消耗も激しい貴様が、他の全てを敵に回して。 それで首輪を嵌めたまま殺し合いに優勝できれば、貴様は満足か?」 狭間の言う通り、シャドームーンの消耗はかなり激しい。 仮面ライダーとの戦いで、シャドームーンは死の寸前まで追い詰められていたほどなのだ。 それでも全ての敵を殺し得る自信。否、如何なる敵も必ず殲滅する自負はある。 しかし無謀な戦いを自覚できないほど、愚かでもない。 そもそも消耗が激しくなければ、始めから狭間の話を聞くシャドームーンではない。 余裕のあった時は夜神月の説得に耳を貸さなかったように。 しかしあの時とは消耗もダメージもまるで違う。 何より、あの時には無かった主催者への強い怒りがあった。 シャドームーンを何処までも駒として扱おうとする主催者への。 「……条件がある。V.V.の裏に居る創世王には誰にも手を出させるな。私が殺す」 「……了承した。V.V.の裏に黒幕が居れば、貴様に任せる。但しこちらからも条件を追加する。 それは貴様の首輪を解除しても、独断専行することは許さない。会場脱出や主催者の拠点へ侵攻する際は、必ず我々と足並みを揃えるんだ。 主催者との戦いは、あくまで我々との歩調を合わせた共闘で行うんだ。良いな?」 狭間の条件はシャドームーンの予想の範囲内だった。 狭間の目的は、要するにシャドームーンを自分たちの脱出に利用するつもりなのだから、 シャドームーンだけが会場を脱出して、自分たちは取り残される形になるのは避けたいはずである。 狭間の思惑を全て了解しながら、シャドームーンは自らの決断を言葉にした。 「いいだろう、その命は創世王を殺すまで預けておいてやる。貴様らに失望しない内は、な」 シャドームーンから発せられた、契約の了承する言葉。 苦心の末にようやくたどり着けた成果だった。 大きな犠牲を払っての成果だった。 結果の全てを喜ぶわけにはいかないが、契約を受け入れたシャドームーンに、 狭間の方から言わなければならない言葉があった。 「改めて紹介しよう。私は貴様の盟約者、魔人皇・狭間偉出夫だ。今後ともよろしく」 【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写) 死亡】 時系列順で読む Back 因果応報―世紀王 シャドームーンが1体出た!― Next 因果応報―始まりの終わり― 投下順で読む Back 因果応報―世紀王 シャドームーンが1体出た!― Next 因果応報―始まりの終わり― 160 因果応報―世紀王 シャドームーンが1体出た!― ヴァン 160 因果応報―始まりの終わり― C.C. 翠星石 上田次郎 シャドームーン 狭間偉出雄 北岡秀一 柊つかさ ジェレミア・ゴットバルト 城戸真司 GMAE OVER 154 世界を支配する者 V.V. 160 因果応報―始まりの終わり― 159 魔人 が 生まれた 日(後編) 薔薇水晶
https://w.atwiki.jp/noah_gara/pages/290.html
もう少し言い様があると思いますが(週刊プロレス No.1001号) ―古巣の動向は気になるか? 三沢:いや全然。正直言って、もう古巣とは思ってない。 今も川田と渕サンと外人だけで頑張ってやってたら、逆に気になるのかもしれないけど、そうじゃないから。 もう俺のいた全日本とは別の団体だと思ってるから、気にも留めないですよ。 新日本との対抗戦?どうぞ、ご自由にって感じですよ。 ―馬場三回忌のドーム決定。全日に復帰した天龍が「馬場の三回忌なら、ノアにも出てくる義理がある。」と発言したコトについて。 三沢:(苦笑)馬場サンが嫌ってたコトをやってるリングに上がったら、 俺まで馬場サンに怒られちゃいますよ。 実際、ウチで多数決とっても「行きたい」って手を挙げる選手はいないでしょうね。 馬場の三回忌のドームの日ノアはファン感謝イベントやってた。全日から連れてきたファンとお祭り騒ぎを恩師の命日にね。 -- 名無しさん (2009-12-06 00 21 54) 三沢さんの三回忌までにノアは残ってるのかなw -- 名無しさん (2009-12-06 01 01 35) 三沢さんは死んで当然だww -- 名無しさん (2009-12-07 19 03 39) 自分らは「馬場さんは俺が死んだら好きにしていいと言っていた」っつって弁解してたクセに当の全日には駄目出しって意味わからんな。ウジ虫にでも生まれ変わってもう一度のたれ死ねばいいのに -- 名無しさん (2009-12-07 21 14 58) 「全日から連れてきたファン」がいわゆる後のノアヲタw今の惨状はザマねえなwwww -- 名無しさん (2009-12-07 21 24 37) 天狗も馬場さんに嫌われるだろうし怒られると思うんだが -- 名無しさん (2010-06-12 06 26 49) 馬場の三回忌には参加拒否するわりには、三沢一周忌・ノア10周年には全力で他団体頼みするノアw -- 名無しさん (2010-06-12 15 01 42) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/404.html
※ゆっくり虐待。レイプ、出産などあり。 ※人間の死者あり。 ※後味微妙ってか悪い。 ※東方キャラ登場あり。 ※そのうち改稿しようかと思っています……んー、微妙。すごく。 ※当然のように俺設定満載な感じです。 ※特に、ゆっくりの設定は思い切り俺設定です。イメージと違う場合もございますので、 ご注意ください。 「因果応報ご用心」 日暮れ間近な夏の山林に、悲鳴がこだまする。 「いやぁぁぁぁっ! おじさんっ! やめてぇぇぇぇぇっ!」 「たすけてぇー、まりさぁぁぁぁぁっ!」 「ゆっ! れいむはゆっくりしんでね!」 「むきゅぅぅぅっ! お、おいてかないでぇ~っ!」 「あがぢゃんっ! まりざのあ゛がぢゃんがぁぁぁぁっ!」 ゆっくりれいむとゆっくりまりさたちの、悲痛な叫びがこだまする。 人里もほど近いこの山林に最近やって来たゆっくりたちは、永住しようと巣作りに励ん でいたのである。 来て早々、長雨や台風で仲間が多数死ぬなどの苦難もあったが、やっと天気も良くなっ たので、雨風に負けない頑丈な巣を作ろうと、みんなで頑張っている最中に現れたのが三 人の人間。 人間たちを見たゆっくりは、ご近所さんに挨拶をしようと思い、いつも仲間にするよう に笑顔で「ゆっくりしていってね!」と言った。 三人とも男性な人間たちは、そんなゆっくりに挨拶を返すことなく、無言で行動を開始 した。 手にした棒でゆっくりを殴り弱らせて、背負った籠に入れると言う、極めて野蛮かつ原 始的な狩猟に取りかかったのである。 最初に殴られたゆっくりは、れいむ種のゆっくりで二匹の子供がいた。 殴った男が力加減を間違えたため、そのれいむは一撃で皮を破裂させられ、中身の餡子 を周囲に飛び散らせながら息絶えた。 挨拶をしても黙っている男達を咎めようとして、彼らに向かって一歩前へ出たのが間違 いだったのかも知れない。 「ゆっ! おぢざっべびゅっっっ!」 これが最後の言葉である。 自分が何故殺されたのか、その後子供たちは、家族は、仲間は、どうなるのか考える余 裕すら無い、突然訪れた生命の終わりであった。 れいむが死んだことにより、ゆっくりたちは混乱した。 頭の回転の早い者は、混乱しながらも即座に逃げ出し、何匹かは逃走に成功したが、逃 げ遅れたゆっくりたちは、殴られ捕らえられるか、その場で死ぬかの運命を押し付けられ た。 「やべでぇぇぇぇっ! ま゛りざわる゛い゛ごどしでない゛よぉぉぉぉっ!」 「うはっ! 大物だぜっ! きゃっほぉぅ!」 丸々と太った直径40センチクラスのまりさを捕らえ、思わず歓喜の声を漏らしたこの男 は、数ヶ月前までは"町のダニ"と後ろ指さされていたゴロツキだった。 強請りと贓物故買が収入源な、絵に描いたような下っ端のチンピラであったが、ゆっく りを捕らえ中身の餡子を売る事で最近は生計を立てている。 殴ると人の声で悲鳴を上げるのが楽しくて堪らない上に、ゆっくりから取れる餡子は、 捕らえて取り出す労力以上の利益をもたらすのだから、この商売はやめられない。 「む……むぎゅぅぅぅ……」 「へへっ、ちょいと小振りだが、こいつぁゆっちゅりー種だぜ! 梅紫蘇餡は高く売れる からな、ぐへへへ」 成体と幼生の中間ぐらいの、もう一ヶ月ほど生き延びられたら立派な成体となったであ ろう、ゆっちゅりーを捕獲した男は、先々月までは普通の農家であった。 このゆっくりたちとは別の、もうこの世には存在しないゆっくりたちの群れに、農地を 襲われ作物が全滅してしまったため、今年の冬を越し来年の種籾を買うため、やむなくゆ っくり狩りを繋ぎの仕事としている。 自分が生きるためとは言え、他の命を奪う行為に少なからずストレスを感じており、そ れを打ち消すためにことさら野卑に振る舞ってみせている。 「あがぢゃ! や゛べでっ、べいぶのあがぢゃぁぁぁぁんっ!」 「ふんっ! ふんっ! おらぁっ!」 餡子があまり多く取れない赤子のゆっくりを踏みつぶしながら、その母に向かって棒を 振り下ろしている男は、この三人組のリーダーと言うか先導者である。 ゆっくりが幻想郷に姿を現した頃から、男はもうこの仕事をはじめていた。たまたま見 かけたゆっくりを、むしゃくしゃしていたので殴り殺した際に、手に付いた餡子を見て思 いついたのであった。 これはカネになると思った男は、ゴロツキや食い詰め者など、人間の声の悲鳴にも竦ま ない仲間を集め、狩猟と加工を行う集団を作ったのである。 ゆっくり猟は、こんな商売がこの世にあって良いのかと思うほど儲かった。 里の指導層が、ゆっくりを"異変の前兆か一部"であると認定し、なるべく関わらないよ う人々に呼びかけ、多く出没する地域を危険区域として立ち入りを禁じたため、男たちの 商売はほぼ独占市場であった。 ゆっくりを捕らえ中身を取り出すのは、やろうと思えば子供でも簡単にできる事なのだ から、人々に多く知られてしまっては商売が成り立たない。 だから彼らは一切合切を仲間内の秘密として外部には伏せている。独占を維持するため に。 そのために、この日も"立ち入り禁止"とされている山林を狩り場に選んだのであった。 「い゛や゛ぁぁっ! どっ、どぶじで、れ゛いむだぢを、い゛いぢめるのぉぉぉぉぉっ!」 必死に逃げながら、一匹のれいむが叫んだ。 しかし、男たちは誰一人その問いに答えず、無言で狩りを続ける。 意志疎通も可能であるにもかかわらず、男たちは極力ゆっくりと会話を行わない。 こいつらが人と同じ言葉を喋る、と言うことを強く認識してしまうと、慣れた者か元か ら暴力的な者でない限り、どうしても非情になりきれなくなるからである。 獲物と情を交わすことは禁忌であった。 物言わぬ獣が相手ではなく、物言う獣が相手なのだから。 ゆっくりたちにとって辛く、狩猟者たちにとっては心躍る時間は、唐突に終わった。 がけ崩れが発生したのである。 男たちもゆっくりたちも、圧倒的な自然の災害によって、等しく死を与えられた。 目覚めたとき、男たちは三途の河に居た。 「さぁ、お客さん方、今日はもうこれで終いだよ。早く乗った乗った」 背の高い赤毛の少女が、男たちを舟に乗るよう急かす。 「お客さんもわかってんだろ、自分らが死んじまったって? ほら、河原で石積みって歳 でもないだろ? 早いとこ乗って閻魔様のお裁き受けなよ」 男たちにそう言いながら、少女は手にした大鎌の柄で、ゆっくりたちを殴っている。 「え? なんであたいがゆっくりを殴ってるかって? こいつらは話しても聞かないから ね……面倒なんで、ぶん殴って温和しくさせて舟に積むのさ」 慣れているのだろう、少女は手際良くゆっくりを気絶させて舟に放り込んでゆく。 「そうそう、あたいの名前は小野塚小町さ。ここの船頭──要するに死神をやってる…… っと、お客さんそんな顔しなさんな。死神って言っても、魂を身体から出すんじゃなくて、 あんたらみたいな魂を三途の向こうに運ぶだけの、しがない船頭さ」 話し好きなのか、小町と名乗った死神少女はやたらと口数が多い。 「まぁ、そう言うわけだよ……わかったんなら、有り金を寄越しな。隠すとためにならん よ。どうせお客さん方は、これからお裁きを受けるだけの身の上なんだから、銭なんざ持 ってたって仕方ないだろ?」 言われた通り、いつの間にか持っていた金銭を男たちは小町に渡した。 「……んっと、金額にちょいとバラつきがあるねぇ、お客さん。んー、本来なら別々に運 ぶところだが、今日はもう終いなんだから特別サービスだ。全員一緒に乗りな!」 断る理由もないので、男たちは素直に小町の指示に従った。 「いやぁ、最近ゆっくりの魂が増えちまってねぇ。いつも仕事がきついんだよね、これが。 ってーか、あんたらみたいのが面白半分に殺して回る所為なんだがねぇ……ああ、別に責 めちゃいないよ。仕事増やされた愚痴だと思っておくれよ」 船をこぎ出してからも、しきりに小町は話しかけてくる。 「ん? 面白半分に殺してなんかいないって? ああ、そっかお客さん方はゆっくりを狩 って稼いでたんだよな……うん、面白半分ってのはあたいの失言だな、すまない。けど、 まぁ面白半分だろうと生活のためだろうと、あたいの仕事が増える事にゃ変わりはないん だよ」 しんみりと語るわけでもなく、あくまで小町は明るく話す。 「ゆっくりの魂の何が面倒かって言ったらねぇ、こいつら銭をほとんど持ってないのさ。 三途の河ってのは渡し賃の多寡で距離が決まるんだよ。だから、ゆっくりどもを運ぶとき は杓子定規に規則通りの距離じゃやってけないから、ちょいと細工して距離を縮めるのさ」 別に聞いてもいないことを、次々と小町は男たちに語ってゆく。 「本当は、あたいももうちょい暇だったら、まともに話せる人間のお客さんとは、のんび り河渡りと洒落込みたいんだけどねぇ……ゆっくりどものおかげで、いつも時間食ってノ ルマがなかなか消化できないのさ……ってなわけで、終点だよ。あたいもゆっくりを運ば にゃならないから、一緒に行くよ」 男たちを舟から降ろすと、小町は手押し車にゆっくりを積み込み始めた。 「ああ、こいつかい? 袋に詰めたりするよりも、この方が早いんでね。そこに用意して おいたのさ……いまじゃ、あたいのタイタニックに次ぐ大事な商売道具だよ」 小町は手押し車の胴体を手で叩き、男たちに向かって微笑んだ。 「さぁ、閻魔様がお待ちだよ。急いだ急いだ」 そう言って、小町は男たちを急かした。 小町に追い立てられ感慨深く周りを見る余裕もなく、男たちは法廷に入った。 「映姫さ……ごほん、ヤマザナドゥ様、本日最後の被告を連れて参りました」 口調を改め、小町は法壇の上──裁判官席に座る、緑髪の少女に最敬礼をした。 「死神・小野塚小町、ご苦労。まず、ゆっくりから裁きますので、被告を並べて下さい」 威厳たっぷりに楽園の閻魔は死神に命じた。 言われた通りに小町は、手押し車からゆっくりの魂たちを一つずつ下ろし、法壇の下へ 一列に並べる。 全部で13匹のゆっくりの魂が、ずらりと並べられた。 それを見て頷いてから、閻魔は小町に対して新たな指示を下す。 「書記官が本日は早退してしまいましたので、臨時代理書記を命じます。書記席に座りな さい」 「えっ!? しょ、書記……でございますか」 裁判書記の仕事は、もっと上級の死神が行う職務であるため、小町は慌てた。 「書記です。あくまで臨時代理ですから、本職の裁量で任命できます。研修は受けていま すね。やり方はわかるはずです。頼みましたよ」 「あ……は、はいっ! 謹んで承ります」 有無を言わさない閻魔に抗えるはずもなく、小町は苦手なデスクワークを引き受けた。 「さて、ゆっくりの裁判は簡易形式を以てす、と定められておりますので、それに基づき 速やかに審議いたします」 小町が書記席に着くのを待ってから、左から右へゆっくりたちの魂を見回し、閻魔は言 った。 「当法廷では、便宜的に左より1から13まで番号にて、ゆっくりを呼ばせていただきます ……まずは1番のゆっくりれいむ!」 開廷の合図として、閻魔はガベルを振り下ろした。 「汝の判決は、ゆっくりへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 罪状については何一つ言わず、いきなり閻魔は判決を下した。 「次に2番のゆっくりまりさ! 汝の判決は、ゆっくりへの転生とする。執行は閉廷後即 時行う。以上」 同様に二番目の魂へも、速やかに判決が下された。 ──結局、13匹のゆっくりは全て「ゆっくりへの転生」と言う判決であった。 「続きまして、三人の人間の被告を裁きます。被告人は、整列して下さい」 閻魔に指示された通りに男たちも一列に並んだ。 「まずは左から──」 最初の男の、名前、年齢、性別を閻魔は口にし、 「相違ないか?」 と確認を取った。 もっとも、確認を取ったと言っても形式に過ぎない。 何故ならば死人は喋れないのだから。 そのためすぐに閻魔は次の言葉を発し、裁きを進行してゆく。 「被告人は、幼少の頃より乱暴で、親兄弟、友人知人近所の者に多大なる迷惑を掛け、ま た強請りや盗品の売買を行い、死の数ヶ月前からはゆっくりを狩り、その命を奪って餡子 を取り、その出所を伏せて販売していた──そう、あなたは少し乱暴が過ぎる」 端的に男の罪状を閻魔は並べ立てた。 「残念ながら情状酌量の余地はありません。貴方は地獄行きです」 すっぱりと小気味良いぐらいに閻魔は言い切った。 が、やや間を置いてから、 「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 かくの如き判決を下した。 「続きまして真ん中の──」 同様に次の男の、名前、年齢、性別を口にして確認を取る。 「被告人は、親に孝行を尽くし、受け継いだ農地で農業を営み、利を貪ることなく適正な 価格で作物を卸し、善良な農家として近隣からの評判も上々であり、またゆっくりによっ てやむなく転業を強いられた点は大いに酌量の余地ありと認む」 最初の男とは打って変わって、評価する言葉が続く。 「しかしながら、ゆっくりによって受けた被害以上に、ゆっくりの命を奪うことで利益を 上げた事は許し難し──そう、あなたは少し誘惑に弱すぎた」 一転して、閻魔は厳しく男の罪を糾弾する体勢に入った。 「ゆっくりによって職を変えざるを得なくなった事情は理解できますが、あなたは命を奪 って金銭を得ると言う行為に罪悪感を感じていましたね──にもかかわらず、受けた被害 以上に利益を上げました。損害の賠償分としても過大な程ほど……罪悪感を感じていたの ならば、何故ある程度で元の職に戻らなかったのでしょうか。田畑を耕し、土と共に生き るよりも、ゆっくりを捕らえて殺す方が儲かるし楽だったからですね……残念ながら、貴 方も地獄行きです」 一気に畳みかけるように閻魔は言った。 だが、ここでも先と同様に、 「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 全く同じ判決を下した。 そして最後の男の番になった。 前二者と同様の形式を済ませ、罪状の読み上げが開始される。 「被告人は、やや粗暴な点はあったものの、目上を敬い、目下を愛する、理想的な町の兄 貴分として振る舞い、また基本的に正業の範囲内で生計を立てていた点は大いに酌量の余 地ありと認む」 まず最初にプラスの評価を示すのが、正式な裁判時のスタイルのようだ。 「しかしながら、たいした理由もなくゆっくりを殺し、それによってゆっくりの命を奪っ て利益を上げる商売を思いつき、仲間を誘い組織的に行った点は許し難く──」 前と同じように、閻魔は罪の糾弾を開始する。 「その上、動物の命を奪う職にある者ならば当然すべき、奪う命への感謝と慰霊を全く行 わなかった点は言語道断──そう、貴方は少し命を軽く見過ぎた」 閻魔は厳しい判決を予感させる強い口調で言い切った。 「他の命を奪わずに生きることは不可能です。だが、命を奪うことを商売とするならば、 やらねばならない事があるのです……屠畜場には必ず慰霊碑があるのです。獣といえども 命は命、それを忘れてはいけません──貴方も地獄行きです」 教え諭すよう閻魔は言うと、やや間を置いてから、 「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 三度全く同じ判決を下した。 「これにて閉廷!」 速やかに閉廷を宣言した閻魔は、宣言通り刑の執行に取りかかった──。 そして、法廷には小町と閻魔だけが残った。 「……さて、小町」 執行作業で額に浮かんだ汗を、楽園の閻魔こと四季映姫はハンカチで拭った。 「は、はいっ!」 「なにをそんなに緊張しているのですか? 私に怒られる心当たり、やましいことがある のですね」 映姫は人の悪い笑みを浮かべた。 「すすすすすみません! あ、あたい……」 「あー……言わなくてもいいです。今回の件は不問とします」 うんざりした顔で映姫は言い、 「しかし、今度からはゆっくりの魂だけにしなさい。人間の死者については、エスコート する必要はないのですから……わかりましたね?」 しっかりと釘を刺した。 「はっ、はい! 肝に銘じます」 ゆっくりの出現で、死神も閻魔も仕事内容に変化が生じた。 その一つが、船頭担当の死神による魂のエスコートである。 通常の人間や妖怪などの魂は、基本的にわざわざ船頭が迎えに行ったりはしない。 死者は中有の道を通って、自ら三途の河を目指すのだから。 ただし、ゆっくりの魂は別である。 自ら三途の河に来るなどと言うことは、ほぼ皆無と言っても良いぐらいで、死んでもそ のままゆっくりし続けて、ほとんど動かないのである。 そのためゆっくりの魂は、船頭が機を見て回収に行く事が定められた。 また、閻魔の裁判形式も、ゆっくりに関しては罪状を告げる手間を省略し、いきなり判 決を下す略式裁判が基本と定められた。 あまりにも弱い生き物のため死ぬ数が多すぎるからである。 正式にしっかりと審判を行うための時間も人員も足りない以上、やむを得ない苦肉の策 として定められたのであった。 そして、繁殖力も旺盛で生まれる数も多いため、ゆっくりは基本的に三千回ゆっくりと して転生するまでは、自動的に死→転生判決→生を繰り返すこととされた。 地獄も拡張を必要とするほど手狭な以上ほいほいと送り込むわけには行かず、かと言っ てまともに輪廻させるためには正当な審判が必要であるため、これまた苦肉の策である。 要するに、ゆっくりに関しての問題は「先送り」され、ゆっくりへの転生が地獄行きの 代わりとしても使われている現状である。 なお、転生が三千回とされた数的根拠は、いわゆる三千世界から数だけを取っている。 他には、七回、四十九回、百回、五十六億七千万回、などの案があったが、無難なライ ンとして三千回で落ち着いたのであった。 「ところで、小町……私の判決に対して、あなたは不満を感じていますね」 詰問するような口調ではなく、優しい声で映姫は聞いた。 「いっ、いえ! そ、そそそんな滅相も……」 「閻魔に嘘はいけませんよ。ふふっ、わかってますから、この際正直に言ってご覧なさい」 子供に言って聞かせるように、あくまで優しく映姫は言った。 「あ……は、はい……あの、最初の男はともかく、後の二人の判決が……その……」 正直に言えと言われても、やはり閻魔の判決を批評するのは気が引けるようだ。 「法廷だからって緊張しなくても良いのですよ。いつも河原で私に堂々と「あはっ! さ ぼってました! えへへっ!」と言うように、すっぱり言いなさい」 「あ、いや、いくらあたいでもそんな頭悪そうに言ったこと……もとい、はい。わかりま した! 二番目の男への量刑は重すぎ、三番目の男へは軽すぎると思いましたっ!」 映姫は目を閉じ、少しの間黙考するように押し黙ってから、おもむろに口を開く。 「そう、あなたの感覚は一般的です……しかし、浅いのです。二番目の男については、罪 悪感を感じながらも続けていたと言う点が重要なのです。罪の意識がありながら、罪と知 っていながら行い続けるのは、非情に罪深い事なのですよ、小町」 反応に詰まる小町に一度視線を合わせてから、映姫は続けて、 「もしあの男がもっと生きながらえていたならば、ゆっくり狩りをやめて農業に戻り、罪 を相殺する善行を行えたかも知れません──しかし、それは仮定に過ぎないのです。生者 への裁きならば未来の仮定も考慮に入れますが、死者には未来が無いのですから、今後こ うすれば罪が軽くなる、とは言えないのですよ」 と言った。 「……な、なるほど……すみません、あたいの思慮が浅かったです」 どことなく引っかかるものも感じたが、小町は素直に認めた。 「そして、最後の男に関してですが、元々は猟師でも屠畜業でもなかったのですから、慰 霊の大切さを知らないのも、やむを得ないと私は考えたのです。勉強不足、知識不足は責 められるべき点であり、命を軽く見ていたのは事実ですが」 意味深げに映姫は一度言葉を切った。 「ゆっくりの命を弄んだのですから、地獄へ落とすよりも、三千回ほどゆっくりとして生 きさせるが最適と判断したのです──そう、同じようにゆっくりの命を弄ぶ人間や妖怪は、 今後も多く現れるでしょうからね」 言い終わると、今日の業務は終了と言った顔で、映姫は法廷を立ち去る。 小町は手元の書類をまとめ、急いでその後に従った。 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/316.html
※ゆっくり虐待。レイプ、出産などあり。 ※人間の死者あり。 ※後味微妙ってか悪い。 ※東方キャラ登場あり。 ※そのうち改稿しようかと思っています……んー、微妙。すごく。 ※当然のように俺設定満載な感じです。 ※特に、ゆっくりの設定は思い切り俺設定です。イメージと違う場合もございますので、 ご注意ください。 「因果応報ご用心」 日暮れ間近な夏の山林に、悲鳴がこだまする。 「いやぁぁぁぁっ! おじさんっ! やめてぇぇぇぇぇっ!」 「たすけてぇー、まりさぁぁぁぁぁっ!」 「ゆっ! れいむはゆっくりしんでね!」 「むきゅぅぅぅっ! お、おいてかないでぇ~っ!」 「あがぢゃんっ! まりざのあ゛がぢゃんがぁぁぁぁっ!」 ゆっくりれいむとゆっくりまりさたちの、悲痛な叫びがこだまする。 人里もほど近いこの山林に最近やって来たゆっくりたちは、永住しようと巣作りに励ん でいたのである。 来て早々、長雨や台風で仲間が多数死ぬなどの苦難もあったが、やっと天気も良くなっ たので、雨風に負けない頑丈な巣を作ろうと、みんなで頑張っている最中に現れたのが三 人の人間。 人間たちを見たゆっくりは、ご近所さんに挨拶をしようと思い、いつも仲間にするよう に笑顔で「ゆっくりしていってね!」と言った。 三人とも男性な人間たちは、そんなゆっくりに挨拶を返すことなく、無言で行動を開始 した。 手にした棒でゆっくりを殴り弱らせて、背負った籠に入れると言う、極めて野蛮かつ原 始的な狩猟に取りかかったのである。 最初に殴られたゆっくりは、れいむ種のゆっくりで二匹の子供がいた。 殴った男が力加減を間違えたため、そのれいむは一撃で皮を破裂させられ、中身の餡子 を周囲に飛び散らせながら息絶えた。 挨拶をしても黙っている男達を咎めようとして、彼らに向かって一歩前へ出たのが間違 いだったのかも知れない。 「ゆっ! おぢざっべびゅっっっ!」 これが最後の言葉である。 自分が何故殺されたのか、その後子供たちは、家族は、仲間は、どうなるのか考える余 裕すら無い、突然訪れた生命の終わりであった。 れいむが死んだことにより、ゆっくりたちは混乱した。 頭の回転の早い者は、混乱しながらも即座に逃げ出し、何匹かは逃走に成功したが、逃 げ遅れたゆっくりたちは、殴られ捕らえられるか、その場で死ぬかの運命を押し付けられ た。 「やべでぇぇぇぇっ! ま゛りざわる゛い゛ごどしでない゛よぉぉぉぉっ!」 「うはっ! 大物だぜっ! きゃっほぉぅ!」 丸々と太った直径40センチクラスのまりさを捕らえ、思わず歓喜の声を漏らしたこの男 は、数ヶ月前までは"町のダニ"と後ろ指さされていたゴロツキだった。 強請りと贓物故買が収入源な、絵に描いたような下っ端のチンピラであったが、ゆっく りを捕らえ中身の餡子を売る事で最近は生計を立てている。 殴ると人の声で悲鳴を上げるのが楽しくて堪らない上に、ゆっくりから取れる餡子は、 捕らえて取り出す労力以上の利益をもたらすのだから、この商売はやめられない。 「む……むぎゅぅぅぅ……」 「へへっ、ちょいと小振りだが、こいつぁゆっちゅりー種だぜ! 梅紫蘇餡は高く売れる からな、ぐへへへ」 成体と幼生の中間ぐらいの、もう一ヶ月ほど生き延びられたら立派な成体となったであ ろう、ゆっちゅりーを捕獲した男は、先々月までは普通の農家であった。 このゆっくりたちとは別の、もうこの世には存在しないゆっくりたちの群れに、農地を 襲われ作物が全滅してしまったため、今年の冬を越し来年の種籾を買うため、やむなくゆ っくり狩りを繋ぎの仕事としている。 自分が生きるためとは言え、他の命を奪う行為に少なからずストレスを感じており、そ れを打ち消すためにことさら野卑に振る舞ってみせている。 「あがぢゃ! や゛べでっ、べいぶのあがぢゃぁぁぁぁんっ!」 「ふんっ! ふんっ! おらぁっ!」 餡子があまり多く取れない赤子のゆっくりを踏みつぶしながら、その母に向かって棒を 振り下ろしている男は、この三人組のリーダーと言うか先導者である。 ゆっくりが幻想郷に姿を現した頃から、男はもうこの仕事をはじめていた。たまたま見 かけたゆっくりを、むしゃくしゃしていたので殴り殺した際に、手に付いた餡子を見て思 いついたのであった。 これはカネになると思った男は、ゴロツキや食い詰め者など、人間の声の悲鳴にも竦ま ない仲間を集め、狩猟と加工を行う集団を作ったのである。 ゆっくり猟は、こんな商売がこの世にあって良いのかと思うほど儲かった。 里の指導層が、ゆっくりを"異変の前兆か一部"であると認定し、なるべく関わらないよ う人々に呼びかけ、多く出没する地域を危険区域として立ち入りを禁じたため、男たちの 商売はほぼ独占市場であった。 ゆっくりを捕らえ中身を取り出すのは、やろうと思えば子供でも簡単にできる事なのだ から、人々に多く知られてしまっては商売が成り立たない。 だから彼らは一切合切を仲間内の秘密として外部には伏せている。独占を維持するため に。 そのために、この日も"立ち入り禁止"とされている山林を狩り場に選んだのであった。 「い゛や゛ぁぁっ! どっ、どぶじで、れ゛いむだぢを、い゛いぢめるのぉぉぉぉぉっ!」 必死に逃げながら、一匹のれいむが叫んだ。 しかし、男たちは誰一人その問いに答えず、無言で狩りを続ける。 意志疎通も可能であるにもかかわらず、男たちは極力ゆっくりと会話を行わない。 こいつらが人と同じ言葉を喋る、と言うことを強く認識してしまうと、慣れた者か元か ら暴力的な者でない限り、どうしても非情になりきれなくなるからである。 獲物と情を交わすことは禁忌であった。 物言わぬ獣が相手ではなく、物言う獣が相手なのだから。 ゆっくりたちにとって辛く、狩猟者たちにとっては心躍る時間は、唐突に終わった。 がけ崩れが発生したのである。 男たちもゆっくりたちも、圧倒的な自然の災害によって、等しく死を与えられた。 目覚めたとき、男たちは三途の河に居た。 「さぁ、お客さん方、今日はもうこれで終いだよ。早く乗った乗った」 背の高い赤毛の少女が、男たちを舟に乗るよう急かす。 「お客さんもわかってんだろ、自分らが死んじまったって? ほら、河原で石積みって歳 でもないだろ? 早いとこ乗って閻魔様のお裁き受けなよ」 男たちにそう言いながら、少女は手にした大鎌の柄で、ゆっくりたちを殴っている。 「え? なんであたいがゆっくりを殴ってるかって? こいつらは話しても聞かないから ね……面倒なんで、ぶん殴って温和しくさせて舟に積むのさ」 慣れているのだろう、少女は手際良くゆっくりを気絶させて舟に放り込んでゆく。 「そうそう、あたいの名前は小野塚小町さ。ここの船頭──要するに死神をやってる…… っと、お客さんそんな顔しなさんな。死神って言っても、魂を身体から出すんじゃなくて、 あんたらみたいな魂を三途の向こうに運ぶだけの、しがない船頭さ」 話し好きなのか、小町と名乗った死神少女はやたらと口数が多い。 「まぁ、そう言うわけだよ……わかったんなら、有り金を寄越しな。隠すとためにならん よ。どうせお客さん方は、これからお裁きを受けるだけの身の上なんだから、銭なんざ持 ってたって仕方ないだろ?」 言われた通り、いつの間にか持っていた金銭を男たちは小町に渡した。 「……んっと、金額にちょいとバラつきがあるねぇ、お客さん。んー、本来なら別々に運 ぶところだが、今日はもう終いなんだから特別サービスだ。全員一緒に乗りな!」 断る理由もないので、男たちは素直に小町の指示に従った。 「いやぁ、最近ゆっくりの魂が増えちまってねぇ。いつも仕事がきついんだよね、これが。 ってーか、あんたらみたいのが面白半分に殺して回る所為なんだがねぇ……ああ、別に責 めちゃいないよ。仕事増やされた愚痴だと思っておくれよ」 船をこぎ出してからも、しきりに小町は話しかけてくる。 「ん? 面白半分に殺してなんかいないって? ああ、そっかお客さん方はゆっくりを狩 って稼いでたんだよな……うん、面白半分ってのはあたいの失言だな、すまない。けど、 まぁ面白半分だろうと生活のためだろうと、あたいの仕事が増える事にゃ変わりはないん だよ」 しんみりと語るわけでもなく、あくまで小町は明るく話す。 「ゆっくりの魂の何が面倒かって言ったらねぇ、こいつら銭をほとんど持ってないのさ。 三途の河ってのは渡し賃の多寡で距離が決まるんだよ。だから、ゆっくりどもを運ぶとき は杓子定規に規則通りの距離じゃやってけないから、ちょいと細工して距離を縮めるのさ」 別に聞いてもいないことを、次々と小町は男たちに語ってゆく。 「本当は、あたいももうちょい暇だったら、まともに話せる人間のお客さんとは、のんび り河渡りと洒落込みたいんだけどねぇ……ゆっくりどものおかげで、いつも時間食ってノ ルマがなかなか消化できないのさ……ってなわけで、終点だよ。あたいもゆっくりを運ば にゃならないから、一緒に行くよ」 男たちを舟から降ろすと、小町は手押し車にゆっくりを積み込み始めた。 「ああ、こいつかい? 袋に詰めたりするよりも、この方が早いんでね。そこに用意して おいたのさ……いまじゃ、あたいのタイタニックに次ぐ大事な商売道具だよ」 小町は手押し車の胴体を手で叩き、男たちに向かって微笑んだ。 「さぁ、閻魔様がお待ちだよ。急いだ急いだ」 そう言って、小町は男たちを急かした。 小町に追い立てられ感慨深く周りを見る余裕もなく、男たちは法廷に入った。 「映姫さ……ごほん、ヤマザナドゥ様、本日最後の被告を連れて参りました」 口調を改め、小町は法壇の上──裁判官席に座る、緑髪の少女に最敬礼をした。 「死神・小野塚小町、ご苦労。まず、ゆっくりから裁きますので、被告を並べて下さい」 威厳たっぷりに楽園の閻魔は死神に命じた。 言われた通りに小町は、手押し車からゆっくりの魂たちを一つずつ下ろし、法壇の下へ 一列に並べる。 全部で13匹のゆっくりの魂が、ずらりと並べられた。 それを見て頷いてから、閻魔は小町に対して新たな指示を下す。 「書記官が本日は早退してしまいましたので、臨時代理書記を命じます。書記席に座りな さい」 「えっ!? しょ、書記……でございますか」 裁判書記の仕事は、もっと上級の死神が行う職務であるため、小町は慌てた。 「書記です。あくまで臨時代理ですから、本職の裁量で任命できます。研修は受けていま すね。やり方はわかるはずです。頼みましたよ」 「あ……は、はいっ! 謹んで承ります」 有無を言わさない閻魔に抗えるはずもなく、小町は苦手なデスクワークを引き受けた。 「さて、ゆっくりの裁判は簡易形式を以てす、と定められておりますので、それに基づき 速やかに審議いたします」 小町が書記席に着くのを待ってから、左から右へゆっくりたちの魂を見回し、閻魔は言 った。 「当法廷では、便宜的に左より1から13まで番号にて、ゆっくりを呼ばせていただきます ……まずは1番のゆっくりれいむ!」 開廷の合図として、閻魔はガベルを振り下ろした。 「汝の判決は、ゆっくりへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 罪状については何一つ言わず、いきなり閻魔は判決を下した。 「次に2番のゆっくりまりさ! 汝の判決は、ゆっくりへの転生とする。執行は閉廷後即 時行う。以上」 同様に二番目の魂へも、速やかに判決が下された。 ──結局、13匹のゆっくりは全て「ゆっくりへの転生」と言う判決であった。 「続きまして、三人の人間の被告を裁きます。被告人は、整列して下さい」 閻魔に指示された通りに男たちも一列に並んだ。 「まずは左から──」 最初の男の、名前、年齢、性別を閻魔は口にし、 「相違ないか?」 と確認を取った。 もっとも、確認を取ったと言っても形式に過ぎない。 何故ならば死人は喋れないのだから。 そのためすぐに閻魔は次の言葉を発し、裁きを進行してゆく。 「被告人は、幼少の頃より乱暴で、親兄弟、友人知人近所の者に多大なる迷惑を掛け、ま た強請りや盗品の売買を行い、死の数ヶ月前からはゆっくりを狩り、その命を奪って餡子 を取り、その出所を伏せて販売していた──そう、あなたは少し乱暴が過ぎる」 端的に男の罪状を閻魔は並べ立てた。 「残念ながら情状酌量の余地はありません。貴方は地獄行きです」 すっぱりと小気味良いぐらいに閻魔は言い切った。 が、やや間を置いてから、 「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 かくの如き判決を下した。 「続きまして真ん中の──」 同様に次の男の、名前、年齢、性別を口にして確認を取る。 「被告人は、親に孝行を尽くし、受け継いだ農地で農業を営み、利を貪ることなく適正な 価格で作物を卸し、善良な農家として近隣からの評判も上々であり、またゆっくりによっ てやむなく転業を強いられた点は大いに酌量の余地ありと認む」 最初の男とは打って変わって、評価する言葉が続く。 「しかしながら、ゆっくりによって受けた被害以上に、ゆっくりの命を奪うことで利益を 上げた事は許し難し──そう、あなたは少し誘惑に弱すぎた」 一転して、閻魔は厳しく男の罪を糾弾する体勢に入った。 「ゆっくりによって職を変えざるを得なくなった事情は理解できますが、あなたは命を奪 って金銭を得ると言う行為に罪悪感を感じていましたね──にもかかわらず、受けた被害 以上に利益を上げました。損害の賠償分としても過大な程ほど……罪悪感を感じていたの ならば、何故ある程度で元の職に戻らなかったのでしょうか。田畑を耕し、土と共に生き るよりも、ゆっくりを捕らえて殺す方が儲かるし楽だったからですね……残念ながら、貴 方も地獄行きです」 一気に畳みかけるように閻魔は言った。 だが、ここでも先と同様に、 「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 全く同じ判決を下した。 そして最後の男の番になった。 前二者と同様の形式を済ませ、罪状の読み上げが開始される。 「被告人は、やや粗暴な点はあったものの、目上を敬い、目下を愛する、理想的な町の兄 貴分として振る舞い、また基本的に正業の範囲内で生計を立てていた点は大いに酌量の余 地ありと認む」 まず最初にプラスの評価を示すのが、正式な裁判時のスタイルのようだ。 「しかしながら、たいした理由もなくゆっくりを殺し、それによってゆっくりの命を奪っ て利益を上げる商売を思いつき、仲間を誘い組織的に行った点は許し難く──」 前と同じように、閻魔は罪の糾弾を開始する。 「その上、動物の命を奪う職にある者ならば当然すべき、奪う命への感謝と慰霊を全く行 わなかった点は言語道断──そう、貴方は少し命を軽く見過ぎた」 閻魔は厳しい判決を予感させる強い口調で言い切った。 「他の命を奪わずに生きることは不可能です。だが、命を奪うことを商売とするならば、 やらねばならない事があるのです……屠畜場には必ず慰霊碑があるのです。獣といえども 命は命、それを忘れてはいけません──貴方も地獄行きです」 教え諭すよう閻魔は言うと、やや間を置いてから、 「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 三度全く同じ判決を下した。 「これにて閉廷!」 速やかに閉廷を宣言した閻魔は、宣言通り刑の執行に取りかかった──。 そして、法廷には小町と閻魔だけが残った。 「……さて、小町」 執行作業で額に浮かんだ汗を、楽園の閻魔こと四季映姫はハンカチで拭った。 「は、はいっ!」 「なにをそんなに緊張しているのですか? 私に怒られる心当たり、やましいことがある のですね」 映姫は人の悪い笑みを浮かべた。 「すすすすすみません! あ、あたい……」 「あー……言わなくてもいいです。今回の件は不問とします」 うんざりした顔で映姫は言い、 「しかし、今度からはゆっくりの魂だけにしなさい。人間の死者については、エスコート する必要はないのですから……わかりましたね?」 しっかりと釘を刺した。 「はっ、はい! 肝に銘じます」 ゆっくりの出現で、死神も閻魔も仕事内容に変化が生じた。 その一つが、船頭担当の死神による魂のエスコートである。 通常の人間や妖怪などの魂は、基本的にわざわざ船頭が迎えに行ったりはしない。 死者は中有の道を通って、自ら三途の河を目指すのだから。 ただし、ゆっくりの魂は別である。 自ら三途の河に来るなどと言うことは、ほぼ皆無と言っても良いぐらいで、死んでもそ のままゆっくりし続けて、ほとんど動かないのである。 そのためゆっくりの魂は、船頭が機を見て回収に行く事が定められた。 また、閻魔の裁判形式も、ゆっくりに関しては罪状を告げる手間を省略し、いきなり判 決を下す略式裁判が基本と定められた。 あまりにも弱い生き物のため死ぬ数が多すぎるからである。 正式にしっかりと審判を行うための時間も人員も足りない以上、やむを得ない苦肉の策 として定められたのであった。 そして、繁殖力も旺盛で生まれる数も多いため、ゆっくりは基本的に三千回ゆっくりと して転生するまでは、自動的に死→転生判決→生を繰り返すこととされた。 地獄も拡張を必要とするほど手狭な以上ほいほいと送り込むわけには行かず、かと言っ てまともに輪廻させるためには正当な審判が必要であるため、これまた苦肉の策である。 要するに、ゆっくりに関しての問題は「先送り」され、ゆっくりへの転生が地獄行きの 代わりとしても使われている現状である。 なお、転生が三千回とされた数的根拠は、いわゆる三千世界から数だけを取っている。 他には、七回、四十九回、百回、五十六億七千万回、などの案があったが、無難なライ ンとして三千回で落ち着いたのであった。 「ところで、小町……私の判決に対して、あなたは不満を感じていますね」 詰問するような口調ではなく、優しい声で映姫は聞いた。 「いっ、いえ! そ、そそそんな滅相も……」 「閻魔に嘘はいけませんよ。ふふっ、わかってますから、この際正直に言ってご覧なさい」 子供に言って聞かせるように、あくまで優しく映姫は言った。 「あ……は、はい……あの、最初の男はともかく、後の二人の判決が……その……」 正直に言えと言われても、やはり閻魔の判決を批評するのは気が引けるようだ。 「法廷だからって緊張しなくても良いのですよ。いつも河原で私に堂々と「あはっ! さ ぼってました! えへへっ!」と言うように、すっぱり言いなさい」 「あ、いや、いくらあたいでもそんな頭悪そうに言ったこと……もとい、はい。わかりま した! 二番目の男への量刑は重すぎ、三番目の男へは軽すぎると思いましたっ!」 映姫は目を閉じ、少しの間黙考するように押し黙ってから、おもむろに口を開く。 「そう、あなたの感覚は一般的です……しかし、浅いのです。二番目の男については、罪 悪感を感じながらも続けていたと言う点が重要なのです。罪の意識がありながら、罪と知 っていながら行い続けるのは、非情に罪深い事なのですよ、小町」 反応に詰まる小町に一度視線を合わせてから、映姫は続けて、 「もしあの男がもっと生きながらえていたならば、ゆっくり狩りをやめて農業に戻り、罪 を相殺する善行を行えたかも知れません──しかし、それは仮定に過ぎないのです。生者 への裁きならば未来の仮定も考慮に入れますが、死者には未来が無いのですから、今後こ うすれば罪が軽くなる、とは言えないのですよ」 と言った。 「……な、なるほど……すみません、あたいの思慮が浅かったです」 どことなく引っかかるものも感じたが、小町は素直に認めた。 「そして、最後の男に関してですが、元々は猟師でも屠畜業でもなかったのですから、慰 霊の大切さを知らないのも、やむを得ないと私は考えたのです。勉強不足、知識不足は責 められるべき点であり、命を軽く見ていたのは事実ですが」 意味深げに映姫は一度言葉を切った。 「ゆっくりの命を弄んだのですから、地獄へ落とすよりも、三千回ほどゆっくりとして生 きさせるが最適と判断したのです──そう、同じようにゆっくりの命を弄ぶ人間や妖怪は、 今後も多く現れるでしょうからね」 言い終わると、今日の業務は終了と言った顔で、映姫は法廷を立ち去る。 小町は手元の書類をまとめ、急いでその後に従った。 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/tarowa/pages/483.html
因果応報―世紀王 シャドームーンが1体出た!― ◆KKid85tGwY その独特のフォルムが見る者に愛嬌を感じさせるミニクーパー。 決して広いとは言えない車内に、四人の男女が詰め込まれていた。 運転席でハンドルを握っているのはジェレミア・ゴットバルト。 助手席で探知機を眺めているのは狭間偉出夫。 後部座席に並んで窓の外を眺めているのは北岡秀一と柊つかさ。 字義通り生きる世界から立場も性格も違う四人。 しかし今や目的を一つとして、同じ車で走っていた。 目的はローゼンメイデンの一体である翠星石。 翠星石は現在シャドームーンの脅威に晒されていると同時に、殺し合いを脱出する鍵となるかも知れない存在なのだ。 狭間たちの推測が正しければ、ローゼンメイデンが持つnのフィールドへの侵入能力こそ殺し合いを脱出する鍵となる。 従って一刻も早く救出に向かわなければならなかった。 「……そろそろ翠星石たちが近い。北岡、変身はできそうか?」 狭間に問われた北岡はゾルダのカードデッキを取り出して車の窓ガラスに映す。 しかし腰にVバックルは現出しない。 「…………無理だねぇ。この様子じゃ、変身にはまだ掛かりそうだ」 「間に合いそうにないか?」 「正確に時間を測ってるわけじゃないけど……多分、そうみたい」 肩を竦めて答える北岡自身は軽い調子だが、それを聞いた三人の様子は神妙だ。 北岡の変身する仮面ライダーゾルダの戦力は、おそらく狭間に次いで強大な物だ。 しかし北岡は先刻の戦闘でゾルダに変身している。 そのため、制限によりそれから一時間以内は変身ができないのだ。 タイミング的に見ても、目的地到着にゾルダの変身制限解除は間に合わない。 しかし前述の通り一刻も早く翠星石を救出しなければならない以上、変身制限解除を待つわけにも行かない。 即ちこのまま行けば、ゾルダ抜きでシャドームーンに立ち向かう形になる。 「……貴様自身の状態はどうなんだ?」 次に問うたのはジェレミア。 狭間は逆に問い返す。 「私がそんなに疲弊しているように見えるか?」 「貴様の魔法とやらも、無尽蔵に使える訳であるまい」 ジェレミアの言葉に狭間は目を細める。 ジェレミアは一流の戦士だ。 だから先刻見た戦いから、狭間が絶大な威力の魔法を多量に使えることは間違いないが、 それでも狭間の戦い振りから、無制限に使える物では無いことを見抜いていた。 「まだ余裕はある。……多少な」 精確に自分の状態を見抜かれて、狭間の返答も珍しく歯切れが悪い物となる。 狭間の持つ絶大な魔力は疑いようもない。 魔神アモンを使役し、神霊ズルワーンの魔力を収奪した魔界の支配者である狭間の魔力に並ぶ者は、 人魔併せて見渡しても数えるほどしかいないだろう。 それでも殺し合いの中ではその魔力にさえ制限が掛かっていたため、 普段の魔力量の半分にも満たない絶対量をしか持っていなかった。 そして仮面ライダーオーディンたちとの戦いの中で、 マハジオンガ、ブフーラ、ジオ、ザンダイン、ブフダイン、ディア、マハブフーラ、ブフ、アギラジャ、メディア、メギド、マハブフダイン、ジオ、カルムディ、ブフーラ、マハジオンガ、マハラギダイン、マハジオンガ、ザン、マハラギダイン、 これだけの魔法を使用していた。 更にランダマイザ、それも重ね掛けでジェレミアとゾルダを援護。 その上ディアラハンまでレナと鷹野に使っている。 制限下でこれだけの魔法を使用したのだ。狭間と言えどかなりの消耗は免れなった。 「オーディン倒しておいて、まだ余裕があるってだけでも大したもんだよ。 でも狭間は本調子じゃない。ゾルダも無い。これで本当にシャドームーン相手しに行くの?」 北岡の懸念はある意味当然の物と言えるだろう。 シャドームーンの戦力の高さは詳細名簿や動向を確認しただけでも、充分に推測出来る。 今のままシャドームーンとの戦闘に巻き込まれれば、下手をすれば自分たちまで全滅しかねない。 多少の時間を置けば、狭間の魔力もゾルダの変身も回復するのだ。 「翠星石が殺されてから後悔するよりマシだ」 「確かにな」 「……ま、おたくらならそう言うと思ったよ」 躊躇無く答える狭間とジェレミアに、北岡は溜め息交じりの揶揄を返す。 翠星石は正に今、シャドームーンとの戦いの只中。 次の瞬間に翠星石が殺されてもおかしくはない状況なのだ。 魔力や変身の回復を待つ猶予さえ無い。 それに狭間もジェレミアも、消耗を気に掛けて怖気づく性格ではないことを 北岡もいい加減、把握していた。 「この辺りで車を止めろ。車を隠して、ここからは歩いて様子を見ながら接近する。あくまで慎重にな」 探知機を見ていた狭間が指示を出した。 狭間の高圧的な口調に、北岡もジェレミアももうすっかり慣れていた。 別段、狭間が二人を下に見ていると言うことでは無く、単に狭間がそう言う口調の人間と言うこと。 それが判る程度には二人とも、狭間を理解し始めていた。 ちなみにつかさは、最初から特に気にもしていなかった。 戦いの場が近いことを認識し、車内の緊張感が高まる。 「……確認しておく。ここからは本当に危険だ。どれほど注意を払っても、命の保証は無い。 ……それでも行くんだな?」 ジェレミアも北岡も、つかさまでもが一切の躊躇も逡巡も無く頷く。 覚悟を決めている、と言うのもあるのだろうが、 それ以上に自分は信頼されているのだと、狭間は感じ取った。 こんな土壇場でも尚、それに心地良さを感じ入る狭間だが、 今はそれどころでは無いと、すぐに気持ちを切り替える。 そして狭間もまた、覚悟を決める。 この場の四人は勿論、レナと約束した者達も含めて、 全員が殺し合いから生還できるよう、全霊を尽くす覚悟を。 手近な民家の駐車場に、周囲から目立たないようクーパーを駐車した後、四人は下車。 全員が降りたのを確認してから、狭間が三人に向かって魔法を唱えた。 「メディラマ」 同時に四人の怪我が治って行き、体力が回復していく。 メディラマは仲間全員を同時に回復させることができる魔法。 当然、相応の魔力を消費する。 「おいおい……良いのか?」 「使う暇もなく全滅するよりマシだろ?」 北岡に言われるまでもなく、狭間としてもメディラマを使ったのは慎重な選択だった。 シャドームーンとの交戦となれば、回復魔法を使う暇すらなく仲間が殺されるかもしれない。 ここからは、ますますギリギリの選択が要求される場面になる。 四人ともがそれを感じ取り、更に緊張感を高めてる。 「では行くぞ。私が先頭で、ジェレミアが殿だ」 四人は狭間の指示通りの体制で歩き出した。 覚悟が四人を戦いに誘う。 誰一人予想もしていなかった結末へ向けて―――― ◇ 衝撃魔法を使ってヴァンを助け出した狭間は、 北岡、つかさ、ジェレミアと並び立って周囲の状況を観察する。 元は市街地だったはずのその場は、正に惨状と化していた。 居並ぶ建築物は軒並み原形を留めぬほど破壊され、道路のアスファルトは溶けて変形していた。 どんな災禍が起こればこんな状態になるのか、推測も成り立たない状況。 そして欠損した右腕をはじめ、満身創痍のシャドームーンは、 同じく満身創痍のヴァンとC.C.へ、明らかに拷問を加えようとしていた。 最早、凄絶と言う言葉でも言い尽くせぬ異常な状況。 つかさなど、状況を見ただけで青ざめている。 視認できる参加者は五名。 ヴァン。 C.C.。 城戸真司。 上田次郎。 シャドームーン。 上田以外は生きているのもやっと、と言った状態に見える。 立っているのは、見た所最も負傷の酷いシャドームーンと言う、 実に奇妙な状況だった。 翠星石の姿は確認できないが、付近で生存していることは、 探知機を使って確認できる。 死者を出す前に、間に合うことができた。 狭間たち四人はそれを素直に安堵する。 しかしC.C.と真司は、不意の遭遇に当惑している様子だった。 空気を察知した北岡は、旧知の人物に声を掛けることにした。 同じ仮面ライダーとして時に対立して、時に共闘した、 奇妙な縁の有る男、城戸真司に。 「よっ。なんだかお前と会うのもさ、随分と久しぶりな感じだよね」 「北岡……さん」 「お互い無事……って訳でも無さそうだけど、まあ命があって何よりじゃないの」 北岡にとって真司は、最も付き合いの古いライダーである。 ある意味浅倉より縁のある相手だ。 もっともライダー同士ということで何度も敵対しているため、決して良好な仲だとは言えなかったが、 殺し合いを経た今の北岡には、旧知の真司に出会えたことが妙に嬉しかった。 「オレンジ、そう言えばお前も居たか」 今度はC.C.がジェレミアに呼び掛ける。 あえてジェレミアにとって屈辱に満ちた呼び名、オレンジと。 「C.C.、貴公も無事で何よりだ」 「……なるほど、私の知っているジェレミアでは無いようだな」 しかしジェレミアの応対は極めて落ち着いた物だった。 その様子を見てC.C.は、ジェレミアが自分の敵であった者とは違っていると確認する。 そしてC.C.と真司も、狭間たち四人が敵では無いことを明確に悟った。 元々、殺し合いに乗っていると疑わしかったのは狭間一人。 その狭間も、殺し合いに乗っていると考えられる根拠は水銀燈の殺されかけたと言う証言のみ。 証言自体、状況が曖昧な上に、当の水銀燈の信用度自体が低かった物だ。 四人が味方として救援に来たのは、C.C.たちにとって僥倖と言える。 しかし四人しか居ない、と言う状態がC.C.にある懸念を起こす。 「……竜宮レナはどうした?」 狭間と北岡とジェレミアとつかさが居るのなら、状況から推測して高い確率でレナと繋がりがあったはずだ。 C.C.はそれを踏まえてレナのことを直裁に問う。 「……竜宮レナは、亡くなった」 答えたのはジェレミア。 軍人らしく厳格で沈着な、しかし明瞭な答えだった。 しかし狭間とつかさは沈痛な面持ちをしている。 それを見れば、大よその成り行きは察することができた。 まだ年若いレナは死んだ。 そして長く生き過ぎた自分が、未だ死を望んでも手に入れることができない。 どうしようもなく重苦しく理不尽な思いがC.C.を襲う。 「……次期創世王に歯向かう愚者がまだこれだけ居たか」 しかしシャドームーンがただ一言発しただけで、場の空気が一変する。 旧知と再会した喜びも、非業の死に対する哀しみも全て無に帰す王の威圧。 狭間たちがシャドームーンを見るのは始めてだ。 シャドームーンは右腕を失い、全身に傷と火傷を負っている。 深手を負っているのは明らか。 それにも関わらず絶対者としての威風に満ち満ちている。 その様を見るだけで狭間には判る。 シャドームーンは強い。 ただ戦力が高いと言う意味ではない。 どれほどの窮地に立たされても、シャドームーンはその揺ぎ無き威風で戦うだろう。 まして手負いの悪魔の危険性を、狭間はよく知っている。 「貴様がゴルゴムの世紀王・シャドームーンか。私は魔人皇・狭間偉出夫だ。お会いできて光栄、と言うべきだろうな」 それでも臆することなく狭間は並び立つ三人を両手で制し、シャドームーンへ向かって歩み出た。 「シャドームーンの相手は私に任せろ」 「おいおい、レナを説得したようにはいかないんじゃない?」 「だから違う手段で行く」 北岡は肩を竦め、 つかさは息を呑んで、 ジェレミアは薄く笑みを浮かべ、 各々やり方で、一人シャドームーンへ向かう狭間を見守る。 狭間偉出夫とシャドームーン。 二人の魔王が相対する。 「私をゴルゴムの世紀王と知っているか。もっとも、貴様らが畏れるべき真の支配者であることまでは知らないようだが」 「知っているさ。首輪で従属させられた走狗の分際で、その矜持ゆえに他の全てを敵に回した哀れで孤独な王。それが貴様だ」 翠星石を救出するために、この場へ車で移動するまでの間、 狭間の鋭敏な頭脳は様々なことに思考を巡らした。 その間にもっとも思案した事項と言えば、シャドームーンへの対処方法だろう。 シャドームーンに対して、どう対応すれば良いか? 『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページに記載されていた、プロフィールや動向から、 シャドームーンを分析して推測をする。 シャドームーンはどんな戦力を有しているか? そもそもシャドームーンは何者で、何を目的に行動しているのか? その内に気付いたのは、世紀王・シャドームーンと魔人皇・狭間偉出夫の類似性である。 魔神皇に似ていながら、魔神皇と決定的に違う存在。 それが狭間のシャドームーンに対する感想だ。 「人間ごときが図に乗るな!!」 シャドームーンの纏う空気が急激に膨張して叩き付けられた。 北岡もつかさもジェレミアも揃って、そんな錯覚を覚えるほどの威圧感。 常に冷徹な余裕を見せていたシャドームーンが、それほど激しい怒り見せる。 しかし直接怒りを叩き付けられた狭間はまるで動じていない。 「教えてやる!! 貴様らがゴルゴムの王に捧げられた贄に等しい存在だと言うことを!」 シャドームーンが殺し合いのルールに従っているのは、主催者の裏に創世王が存在するからであり、 創世王が用意した首輪によって戒められているからだ。 そこがゴルゴムの手中でなければ、シャドームーンを束縛する物など何も無い。 「王の依命に縋れば、己だけは贄で無いつもりか……ますます似ているな。かつて魔神皇を名乗った、愚かな男に」 シャドームーンを挑発するような狭間の言葉。 しかし狭間の声は、むしろ自嘲の色を帯びていた。 「只人の、学生に過ぎない男だった。多少の才知があるのを鼻に掛けて、ゆえに学校で孤立した。 しかし男は自分の孤独を周囲の責任だと逆恨みした。そして自分の通う学校を魔界に堕とした……」 狭間の語り口から、語られる人物が狭間自身であることはすぐに周知された。 シャドームーンですら。 しかし狭間の話には誤りが有る。 狭間の孤立は決して彼自身のみの責任ではない。 もっとも、狭間の学校での事情を知る者はこの場に存在しない。 誰の訂正も入らないまま、狭間の話は続く。 「自身に関係の有る者も無い者も、学校に居る全ての者を巻き込んで、だ。 そこで多くの命が弄ばれた。…………私が、弄んだ」 様子見をしていたシャドームーンが不意を狙って地を蹴る。 狭間との距離が瞬時に零となった。 人の身では反応すら許されない速さで、間合いを詰め、 そしてサタンサーベルが振り下ろされる。 「……それで魔神皇の孤独が癒されたと思うか? 逆だ。 無為に人々を苦しめた後ろめたさをごまかすために、ますます自分の王としての威勢に縋る。 そして孤独な玉座で、来るはずも無い救いを待ち続ける。そうと認められぬままに、な。 学校を魔界に堕としたことで、自らもまた地獄に堕とした。本当に愚かな男だ……」 しかし狭間は、そのシャドームーンの動きに反応できた。 それどころかサタンサーベルを、自らの日本刀で受け止める。 ゴルゴムに伝わる伝説の魔剣・サタンサーベルは、本来日本刀で受け止められるはずが無い。 しかし狭間の持つ刀もまた伝説に謳われるほどの業物中の業物。 この世に切れぬ物無しとまで謳われた名刀・斬鉄剣。 「今の貴様と似たような物だ。王の矜持に拘って、他の全てを敵に回す。その先には、破滅しかないことを知らず。 貴様の愚かさは、魔神皇の愚かさだ。かつての魔神皇として、今の魔人皇として、その愚かさを許すわけにはいかん」 「あくまでゴルゴムの世紀王を人間の王と同列に扱いたいらしいな。ならば、それこそ誤りだと思い知ることだ!」 「そうして思い知らせてどうする? 首輪で脅された殺し合いに、主催の言いなりに殺戮して優勝できれば、自分の王威を証明できるとでも思っているのか? それが愚かだと言うのだ。ザンダイン!」 狭間が両手で構える斬鉄剣とシャドームーンが片手で構えるサタンサーベルが鍔迫り合いとなる。 それでも、膂力ではシャドームーンの方が上回った。 押される狭間。 しかし狭間の詠唱と同時に、二人の間に在った大気が突如、 一塊の鎚と化してシャドームーンに打ち出される。 衝撃波はシャドームーンを押し飛ばす。 狭間が使ったのが、空気その物を自らの武器とする衝撃魔法。 先刻、サタンサーベルを弾いてヴァンを助けたのも同種の魔法である。 「自らの愚かさに気付いていないことは、魔神皇と変わらない。 ……しかし確かに貴様の言う通り、魔神皇とは違うなシャドームーン」 押し飛ばされたシャドームーンは難なく着地する。 狭間が次に使用した魔法は、ランダマイザ。 対象の能力を全般的に下げる魔法である。 仮面ライダーオーディンの能力すら奪った魔力に拠る呪いが、シャドームーンに襲い掛かる。 次の瞬間、シャドームーンを包んだのは眩い光。 自身のシャドーチャージャーから発せられた光である。 キングストーンの光・シャドーフラッシュは、敵からの特殊能力に拠る干渉を跳ね除ける力を持つ。 狭間が掛けたランダマイザですら、その効果を失った。 「……私は結局、魔神皇であることを貫けなかった。魔神皇としての矜持は虚仮でしかなかった。 貴様はただ一人で殺し合いを戦った。全てを敵に回してな」 シャドームーンは指先を狭間へ向ける。 指先から光が奔った。 キングストーンのエネルギーを破壊の光線へと変換した、シャドービーム。 狭間の前で雷鳴が鳴り、稲妻が奔る。 稲妻はシャドービームと衝突。 シャドービームは狭間へ命中する前に、爆発へ転じた。 狭間の使う雷撃魔法に迎撃されたのだ。 「右腕を失くしても、これほど追い詰められても尚、貴様は未だ世紀王の矜持を僅かも損なっていない。 おそらく殺されることになろうと、その矜持を失うことは無いだろう。 ゴルゴムの王など、私は認めるつもりは無い。しかし貴様の矜持は本物だと認めてやる。」 爆発煙が狭間の眼前を覆う。 不意に真紅が煙から飛び出した。 サタンサーベルが煙の中から突き抜けて来た。 「それを称えて――――貴様の首輪を外してやろう」 サタンサーベルは狭間の眼前で止まった。 「貴様……」 「首輪を外したかったのだろう? だから外してやると言ったんだ」 シャドームーンも、 C.C.も、 真司も、 北岡も、 ジェレミアも、 意表を衝かれて動きを止めた。 つかさは先刻から話に付いていけない様子で当惑している。 ヴァンと上田は気絶したままだ。 しかし狭間にとっては、当初から条件さえ許せば、 最も優先順位の高い戦略であり、手段だった。 「貴様が先ほどまで戦っていた者たちの中で、翠星石とC.C.だけが首輪を外していた。 なぜ彼女たちが首輪を外せたと思う? 主催者側から首輪の解除方法が開示されていたからだ。 なぜ彼女たちだけが首輪を外していると思う? 複数名の中から、限られた数だけしか首輪を解除できない方法だからだ そしてなぜ私にそれが判ると思う? 我々も知ったからだ。首輪の解除方法を。彼女たちと同じく、主催者側の開示した情報によって」 『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧してからここに至るまで、時間にしておよそ三十分弱。 狭間の頭脳には、幾重もの思考を重ねるには充分な時間だった。 nのフィールドへの侵入能力を持つ翠星石がシャドームーンと交戦している状況。 その中で最も多くの者の生還に繋がる作戦を。 「……何が目的だ?」 「貴様と契約を結びたい。内容は、大方の見当が付くんじゃないか?」 彼我の戦力。 行動目的。 所有する武器や道具。 周囲の地形。 あらゆる要素を考慮して、 あらゆる可能性を検討し、 幾重にも幾重にも思考を重ねる。 それはこの場に来ても変わらない。 シャドームーンは現在、如何なる状態か? ダメージは? 消耗は? 精神状態は? 実際の周囲の地形はどのようになっているか? あらゆる要素を観察して、 幾重にも幾重にも思考を重ねる。 何が最善手となり得るか? ここで最も重要な要素は一体何か? それは戦力でも武器でもない。 それらは重要な要素に違いないが、現状を打破するための最善手には成り得ない。 では何が現状を打破するための鍵と成り得るか? 狭間の頭脳は幾重にも幾重にも思考を重ねる。 「……フッ、まさか『協力して主催者を倒す』などと言うつもりじゃ無いだろうな」 そして導き出した答え。 しかしその最善手を取るためには、何よりも覚悟が要る。 殺し合いが始まって以来、最も重い覚悟。 シャドームーンと心中して、再び地獄に堕ちる覚悟が。 「その通りだ。よく判ってるじゃないか」 賽は投げられた。 もう引き返すことはできない。 「おい、ちょっと待て……」 「黙って見ていろ。我々の力では、もうどうしようもない状況なんだ……」 身体を起こすこともできない、真司が声だけで口を挟もうとする。 近くで倒れていたC.C.がそれを制する。 狭間の思惑はC.C.にも、まだ掴み切れないが、 シャドームーンの脅威から逃れられるかどうかは、今や狭間に掛かっていると見て間違いない。 下手な言動で邪魔になってはならない。 「…………話の雲行きは、かなり怪しいがな」 真司にとっても、 C.C.にとっても、 ヴァンにとっても、 翠星石にとっても、 上田にとっても、 シャドームーンは不倶戴天の魔王。 説得は不可能。 生かしておけば、自分たちが決して生き残ることができない存在だった。 しかし狭間にとってはどうか? 狭間はよく知っている。 悪魔とは説得ではなくTALK(交渉)する物だと。 アモンをはじめ様々な悪魔を従えて無限の塔を制し、魔界の主となった狭間にとっては、 魔王ですら交渉の対象となりうる。 もっとも狭間は悪魔との交渉を苦手としていた。 それでもシャドームーンを前にしては、なぜか不思議なほど苦手意識は鳴りを潜めていた。 「……フッ、話にならんな」 「なぜだ? こちらの意図は伝わっているはずだ。それが双方の利に適っていることも理解しているのだろう?」 「貴様は判っていないようだな、世紀王が人間と同列に殺し合いへ参加させられた意味が」 しかし狭間とてシャドームーンの全貌を知ったつもりではない。 まして相手は、恐らく全人類を敵とする極め付けの魔王。 あくまで冷静沈着な魔人皇の顔を崩さぬまま、 吐息一つ漏らさぬシャドームーンの、呼吸の際まで見逃さぬ覚悟で、 狭間は悪魔交渉に臨む。 「貴様らの全てを殺し尽くす。それができてこそ、私の矜持は満たされる」 「そうしたいなら、そうすれば良い。ではそれに私が協力することも、契約の条件に加えよう」 「……え?」 「……おい、本当に任せて大丈夫なんだろうな?」 今まで黙って見守っていたつかさと北岡も、流石に口を挟んだ。 鉄火を鳴らし戦っていた時より、遥かに不穏な空気が場を包む。 シャドームーンですら、僅かに当惑している様子だ。 「シャドームーンは狭間に任せたのだ。ならば、余計な口出しは止せ」 「何? おたくは随分余裕じゃないの」 「私もシャドームーンは狭間に任せた。それは命を預けたのも同じ」 「大した潔さだねぇ。俺はそこまで悟ってないんだけど……ま、ここは黙って引き下がりましょうか、つかさちゃん」 「う、うん……」 その中でもジェレミアはあくまで沈着なままだ。 元より主のために命を尽くす武人であるジェレミアは、必要とあらば何時でも命を投げ出す覚悟ができている。 そこまでの覚悟は決まっていない北岡とつかさだが、結局は黙って引き下がることにした。 そうできる程度には、やはり狭間を信頼していたのだ。 「……戯言でこの私を愚弄しているのならば、貴様も貴様の仲間も只では済まんぞ」 静かな声で告げるシャドームーン。 しかし先ほどより威圧感は増している。 「私は大真面目だ。何しろ命が掛かっているのだからな」 「では協力とやらの意味を説明しろ」 「主催者を倒した後も私は逃げない。そして他の参加者も逃がさないと言う意味だ。 契約の内容を順を追って説明しよう。まず我々が貴様の首輪を外す。そして協力して主催者を倒す。 その後に貴様と我々で決着を付ける。貴様と他の生き残った全員を集めて、だ」 「……それを貴様がやると言うのか? 例え脱出できる状況であっても、それに背を向けて」 「言ったはずだ、貴様を許さんと。如何なる理由があっても貴様のしたことは許されないし、貴様を生かしておけばまた違う所で犠牲者が出る。 無論それとは別に、生き残った全員を必ず貴様の敵として立たせると約束しよう。力付くでもな」 シャドームーンが自分以外の参加者全員を殺害することに拘るのは、その誇りゆえ。 一度乗ると決めた殺し合いにおいて、一人でも取りこぼしをすれば世紀王としての誇りが許さない。 ならば殺し合いのルールに拘る必要は無い。 殺し合いの外であろうと、生き残った者と戦えば良いのだから。 主催者との戦いで死ぬかも知れないが、それは生き残るのに力が及ばなかった程度の者と割り切ることはできるはずだ。 殺し合いを続けたところで、自分以外の全員を殺すことは叶わないのだから。 「貴様にとって、これ以上無い条件のはずだ。これで貴様は主催者の走狗でなく、主催を乗り越えた王となれる。 その上、我々を皆殺しにすれば、貴様は殺し合いの参加者の中でも最強者として君臨できるのだからな」 そしてシャドームーンにとって、何より好条件なのが“殺し合いを強いられてそれに従った”と言う形でなくなることだ。 このまま殺し合いに優勝して更に主催者を倒したとしても、止む無く殺し合いをさせられた事実に変わりは無い。 しかし首輪を外して主催者を倒せば、殺し合いと言う世紀王への命令を打破したことになる。 シャドームーンは徐に次の台詞を吐く。 「……力付くでも私の敵として立たせると言ったな。それはあいつらでもか?」 シャドームーンが指す先に居るのは北岡とつかさとジェレミア。 不意にシャドームーンに指されたつかさは、びくりと身体を震わせる。 北岡とジェレミアも身体を強張らせた。 狭間はそんな彼らを見据える。 「例外は無い」 そして事も無げに言い放った。 僅かにも動揺を見せない。 見せてはならない。 それが今最も肝心な交渉術だった。 他者に命懸けの戦いを強要する。 しかも殺し合いの参加者の中でも屈指の強者、シャドームーンとの戦いを。 狭間の提案は他の参加者にとって理不尽極まりない物であるはずだ。 しかし他の者からも、もう狭間の暴言に対し異論は無かった。 北岡、つかさ、ジェレミアの三人はおろか真司とC.C.もただ黙って見守っている。 全員が理解していたからだ。 尋常の手段ではシャドームーンの脅威から逃れることができない。 先送りにできるだけ僥倖。 もしその脅威を主催に向けることが可能なら、それは正に起死回生の一手であることを。 それほどシャドームーンの脅威は恐るべき物だった。 それに一人で立ち向かう狭間。 場の空気は、完全に狭間とシャドームーンに支配されていた。 「……では、どうやって首輪を解除する?」 片方の支配者、シャドームーンが問う。 王の自負を持つ者は、あくまで傲岸に要求する。 情報であれ何であれ、この世の望む全てが己の物。 意に沿わぬ者は命を奪うまで。 それが世紀王の自負。 その王の傲慢を全て受け止めて、狭間は交渉に臨んでいるのだ。 「主催者が開示したと言う情報源は、パソコンのネットワーク上に在った」 シャドームーンを相手にも、自らのペースを崩さずに話を続ける狭間。 しかし実際のところは、シャドームーンに判り易く興味を持続させるよう言葉の使い方まで気を配っていた。 細心の注意を払っても、次の瞬間には仲間の命が危険に晒される可能性がある。 それが世紀王との交渉。 狭間はジェレミアにノートパソコンを要求する。 ジェレミアは狭間の意図に察しが付いたが、黙ってノートパソコンを渡す。 狭間はシャドームーンと距離を置きながら、開いたノートパソコンのディスプレイを向けて電源を入れる。 そのノートパソコンは内部電源とデータカードに拠って、外部との接続無しに起動とインターネットの利用が可能だった。 「まず、このホームページが主催者によって開示された物である証拠を見せよう。 このホームページには幾つものページがあるが、その中に『参加者の動向』が記された欄がある。 シャドームーン、貴様の動向もな」 狭間は手馴れた様子でノートパソコンのキーを叩き、『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページのメニューを開いて行く。 開かれたのは確かに『参加者の動向』のページ。 下にスクロールしていくと、シャドームーンの欄に行き当たる。 「……どうだ、貴様ならばそこからでも内容が読めるんじゃないか?」 確かにシャドームーンのマイティアイは、距離を隔ててもノートパソコンのディスプレイに書かれた内容を読むことができた。 そこにはシャドームーンのこれまでの動向が書かれている。 「内容に間違いは無いな? それならばこの内容が書けるのは貴様自身か、我々の動向を監視しているであろう主催者側であることも判るはずだ」 実際には、これだけ多様な異能や道具が存在している殺し合いの中なら、他の参加者を監視する能力が存在する可能性がある。 それにシャドームーンの動向が主催者によって監視されているのなら、記録もされている形になるはずなのだから、 その記録さえ確認できれば誰でもこの内容を書くことはできる。 しかしどちらも蓋然性は極めて低い。 仮に他の参加者を完璧に監視する能力が存在したとしても、それは殺し合いの武器としては強力過ぎる。 主催者によって制限されるか禁止される形になるだろう。 監視記録の方は更に条件が難しい。 それは主催者側に干渉して情報を摂取する形になるからだ。 シャドームーンは馬鹿ではない。 それはこれまでの動向、その中での幾多の戦闘での実績、そしてこうして実際に話をしてみれば、 狭間には充分に察することができた。 だからこれが主催者側の用意したホームページであると考えてほぼ間違いないと察することもできるはずだ。 それだけの頭があるからこそ、交渉相手としては手強いのだが。 逆に言えば、ともかく交渉が成立するだけの相手でもあるのだ。 「…………そしてこれが、首輪の解除方法が開示されたページだ」 シャドームーンが首輪の解除方法を知ろうとしている。 それを暗い面持ちで眺めるC.C.。 C.C.がヴァンを犠牲にしてまで守ろうとした情報がシャドームーンに渡ろうとしている。 運命は何もかもC.C.にとって皮肉な方向に回っていた。 狭間がシャドームーンに見せたのは『情報』と書かれていた欄。 そこには確かに首輪の解除方法が記載されていた。 首輪を停止させる手段から、解体する手順まで詳細に。 特にシャドームーンの目を引いたのは、首輪の爆破機能停止条件の一つ。 『爆破機能の停止していない首輪が、装着者の半径二メートル以内に四個以上存在する時。』 「四人集まれば首輪の爆破機能が停止する……それならば、貴様らの手を借りるまでも無い」 首輪に手を掛けながら吐いたシャドームーンの言葉に、場の空気は一気に凍り付く。 確かにシャドームーンの腕力なら、首輪を力付くで引き千切ることも可能。 そしてこの場には首輪を嵌めた参加者が八人も居る。 理論上は首輪解除が可能なのだ。 しかし狭間は平然と言い放った。 「試してみるか?」 「…………フッ、人間の分際でつくづく良い度胸だ」 シャドームーンは首輪からあっさりと手を放す。 ホームページの記載上では、首輪の爆破機能の停止は、あくまで首輪の爆破条件の一工程に過ぎない。 停止条件を満たしても、首輪が破損した場合は爆破する危険が残っている。 そもそもこの情報を開示したと言うのは、殺し合いの主催者側。 首輪を力付くで破壊する方法が幾らでも存在することを知っている立場だ。 四人が集まっただけで、力付くで首輪を破壊できる状態にするとは考え難い。 現在のシャドームーンは理論上首輪解除が可能。だがリスクが大き過ぎた。 「…………そこに書かれた俺の動向が主催が開示した物として、首輪の解除方法までお前らが捏造した物でないと言う証拠にはならんぞ」 シャドームーンの言う通り参加者の動向情報と、首輪の解除方法はまた別の問題。 参加者の動向欄が主催者に拠って開示された情報であっても、 『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを改竄、 あるいは『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページその物を捏造した可能性は残る。 「では翠星石とC.C.はどうやって首輪を解除したんだ?」 それを指摘されても狭間が動じる必要は無い。 翠星石とC.C.の首輪解除と言う、確度の高い根拠が存在するからだ。 無論、それで疑いが完全に晴れるわけではない。 しかしそれで構わないと狭間は考える。 今、肝心なのは、シャドームーンを自分の話に上手く乗せ続けて行くこと。 シャドームーンが疑いを口にするのも、狙いはおそらく狭間に揺さぶりを掛けて反応を見るため。 しかし揺さぶりを掛けてくること自体、話にある程度は乗っている証拠。 「翠星石とC.C.に聞けば、このホームページに記載された方法で解除したと裏付けが取れる」 狭間はシャドームーンを話に乗せるために、考え付く限りあらゆる努力を尽くしてきた。 挑発をしてそのプライドを煽り、意表を衝いてペースを握り、 シャドームーンの反応を細大漏らさず観察して、それに対応していった。 かつて悪魔交渉を苦手としていた狭間。 狭間がかつて悪魔交渉を苦手としたのは、その高慢さに拠る。 そしてその高慢は、劣等感の裏返しだった。 劣等感ゆえ他者を拒絶し、対等の関係を許さなかった。 しかし今の狭間は魔神皇ならぬ魔人皇。 他者と対等に向き合える。 ゆえに本当の意味での交渉を可能とした。 ゴルゴムの世紀王を相手としてすら。 そして、狭間には例え下手な悪魔交渉であっても、それをこなして来た経験がある。 如何なることでも経験の有無の差は大きい。まして交渉ごとでは尚更だ。 何より今は仲間の命を背負って交渉に当たっている。 自分一人の命より重いものを背負っての交渉。 ゆえに全霊を尽くして、如何なる手段でも行使して交渉に当たる。 逆に言えば、狭間は今までこれほど真剣に悪魔交渉をしたことは無かった。 狭間は今始めて、悪魔交渉の醍醐味を味わっていた。 「では契約内容の詳細について……話す前に、こちらからも一つだけ条件を付けさせて貰う」 「条件など出せる立場だと思っているのか?」 「契約その物を成り立させるのに必要な条件だからな。それは、主催者を倒すまで主催陣営の者以外は誰も殺さないことだ」 狭間の方から提出される条件。 それは確かに契約の成立に必要不可欠なのは明白だ。 シャドームーンが殺人を続ければ、協力して主催者の打倒どころではなくなる。 そしてシャドームーンを相手に契約を結ぶに辺り、それをはっきりと契約内容に織り込むことは、 絶対に必要な条件だと狭間は判断した。 「殺し合いも終わっていない内から、よく言えたものだな」 「無論、正当防衛の場合は例外だ。それを踏まえて契約内容の詳細を説明する」 そこから狭間は、まるで予め契約の書面を用意してプレゼンテーションの練習を繰り返していたかのように、 契約内容の詳細を、簡潔かつ明瞭に、そして淀み無く説明していく。 狭間は契約内容を順を追って説明すると、それを箇条書きの要領で平明に提示した 内容は以下の通り。 シャドームーンは主催者を倒すまで他の参加者を殺害しない。(但し正当防衛の場合は例外とする) 狭間はシャドームーンの首輪を解除する。 シャドームーンは首輪を解除できれば他の参加者と協力して主催者と戦う。 主催者を倒した後はシャドームーンと他に生き残った全ての参加者で決着を付ける。 「……聞いての通り契約をすれば、順番から言ってまず貴様の首輪を外してやる」 「なるほどな……」 契約の内容は明らかにシャドームーンに有利な物だ。 狭間が契約のメリットを得るのは、シャドームーンの首輪を外した後。 即ち、シャドームーンがメリットを得た後になるのだから。 我ながら気前の良いことだ。と、狭間自身も思う。 しかしそれは必要なことだ。 シャドームーンは自らの命より誇りを取る。 自分以外の者の後塵を拝するような事態は絶対にしないはずだ。 そして詭弁で誑かすような真似が通用する相手でも無いだろう。 シャドームーンを相手に交渉を成立させるには、自分から可能な限り誠意を示す必要があった。 「貴様との契約……やはり話にならんな」 冷たく言い放つシャドームーン。 閃光のごとき真紅が奔る。 いつ間合いに入ってこれたのかも定かでないシャドームーンのサタンサーベルを、狭間が紙一重で回避できたのは、 相手の奇襲、急襲も想定していたため。 即座にジェレミアが無限刃を構え、北岡がカードデッキを取り出す。 こちらも危急の事態を想定していた反応の早さ。 それでも狭間は二人を手で制する。 「貴様にとってこれ以上なく良い条件だと思ったのだがな。何が不服か当ててやろうか?」 「世紀王を茶番に付き合わせた罪は重い。その累は、貴様の仲間にも及ぶと思え」 もう狭間の言葉に反応しないシャドームーン。 その佇まいは、座して下郎を圧する王のそれから、 力で敵を征圧する覇者の物へと変貌していた。 「貴様の懸念……それは、我々に命を預けることだ」 しかしシャドームーンはそこから仕掛けて来ない。 サタンサーベルを構えたまま動きを見せなかった。 そこに如何なる思惑があるのか、白銀の仮面からは何も読み取れない。 「貴様の立場に立てば、それも無理の無い話だな。 首輪を解除するためには、誰か他の者に首輪を預けなければならない。 しかし貴様は周りが全て敵なのだ。まあ自業自得だがな。 他の誰かに命を預けるような真似はできない」 シャドームーンの沈黙。 狭間にとってそれは何より雄弁に、自説の肯定を物語っていた。 ただ、シャドームーンの孤立は自業自得とは言い切れない物だ。 狭間はシャドームーンのプロフィールを見て知っている。 シャドームーンは世紀王。人類の天敵。 しかしそれは本人の意思とは無関係。 後天的に脳まで改造されて、人類と相容れぬ存在に変えられただけだと狭間は知っていた。 例えシャドームーンのどんな事情を知っていても、最終的に生かしておけないことには変わらないが。 「要するに貴様の安全が保障されれば良いんだろう?」 狭間は自らに言い聞かせる。 これは必要な手段であると。 これが最善手であると。 何の保証も無い賭けだが、成さなければならないと。 狭間にも魔人皇としての自負、シャドームーンを倒す自信は有った。 自身の絶大な魔力によって、文字通り力づくにシャドームーンを叩き潰すことは可能だろうと。 しかしそれは狭間が万全の状態であればの話だ。 現在の狭間はかなり魔力の消耗が激しい。 何より狭間がそれほどの強者であるからこそ、シャドームーンの並ならぬ力量もまたある程度は読み取れる。 その上ランダマイザが通用しなかったように魔法耐性まで存在する。 狭間とシャドームーンの天地を穿つがごとき力のぶつかり合い。 仮に勝利できるとしても、それに他の者を巻き込まない自信は無かった。 もしここで狭間とシャドームーンが戦えば、ヴァンとC.C.と真司は勿論、 狭間がここに連れ立ってきた仲間も守り切れる保証は無い。 シャドームーンを仲魔に引き入れるのは、戦力を確保する以上に、他の仲間の安全を確保する必要性に迫られての判断なのだ。 例えそれが一時的な物であっても。 可能な限り多くの者を生かして帰す。 それこそ狭間がレナと交わした約束。 『うん……皆を元の世界に返してあげて欲しいんだ……狭間さんならきっと出来るよ』 『その願い、この魔人皇――――狭間偉出夫が引き受けた 必ず他の者達と共にここを脱出し、元の世界に帰ってみせる、約束しよう』 (シャドームーンと雪代縁は除外するか、確認しておくべきだったかな……) 何れにしろもう賽は投げられた。 狭間に今更賭けを降りるつもりは無い。 それがどれほど分の悪い賭けでもだ。 「この魔人皇――――狭間偉出夫が貴様の保障になろう」 「……何だそれは?」 「貴様が首輪を外すまで私が守ってやる。あらゆる脅威から、この命を掛けてだ。何者であろうと貴様の命を脅かすことを許さない。 そして貴様の首輪は私が責任を持って外してやる」 C.C.と真司は地に倒れ付しながら、狭間とシャドームーンの交渉をどこか現実感の無い心持で聞いていた。 守ると言っているのだ。 数多の命を奪った悪逆の魔王、シャドームーンを。 シャドームーンを護衛すると言うのは、二人にとって余りに突拍子も無い提案だった。 シャドームーンのこれまでの動向を、ホームページの上でしか知らない北岡とつかさとジェレミアにはそれほどの違和感は無い。 それでもシャドームーンを護衛することのリスクは、充分に承知していた。 場の緊張感が増していく。 誰よりも緊張感に駆られているのは、護衛を言い出した狭間自身。 しかし緊張感などおくびにも出さず、狭間は力強く言葉を続ける。 「そしてもし貴様が誰かに殺されたならば、私が必ず命で以って償わせる。 主催陣営の者であろうと、他の参加者であろうと、如何なる者であっても魔人皇の全霊を以って殺す。 これは貴様が首輪を外すまで、ではない。主催者を倒すまでの話だ」 狭間の賭け。 あるいは賭けと言うのにも、余りに無謀な提案。 それは全ての参加者の敵であり、人類の敵であるシャドームーンの命を背負うと言う物。 もし参加者の誰かが、シャドームーンに危害を加えようとするならば、 その者は狭間にとっても敵となる。 あるいはシャドームーン以外の全ての者を敵となる可能性もある。 その危険性を充分に理解しながら、狭間に躊躇は無い。 悪魔と契約をするには、共に地獄に落ちる覚悟も時に必要となる。 シャドームーンと心中して共に地獄に堕ちる覚悟とは、即ちそう言う覚悟だ その狭間の覚悟を―――― 「ククク、この世紀王に契約を持ち掛けるのだからどれほど器量かと思えば。ただの愚か者か」 ――――シャドームーンは一笑に付した。 「貴様が保障だと? 貴様の口約束など何の意味がある? 守ると言われて、私が素直に信用するとでも思っていたのか?」 シャドームーンの言葉は狭間への反論ではなく、嘲笑うための物。 狭間の提案は、シャドームーンにとってそれほど無意味な物だった。 そもそも狭間の口約束を当てにできるようなら、始めから首輪を誰かに預けることが問題にならない。 他の全てを敵にしているとは、即ちそう言うことなのだ。 何者も信用に値しない以上、契約など成立するはずも無い。 「ま、結局はそうなるよねぇ……」 北岡は溜め息混じりにカードデッキを取り出した。 北岡とジェレミアと真司は諦観を、C.C.はどこか安堵を含んだ空気で、 狭間とシャドームーンの決裂を眺めていた。 今まで狭間の言動を黙って見守っていたが、シャドームーンと信頼関係が築けない以上は、 決裂は免れないことは充分に予想できた。 それはジェレミアもC.C.も同じ。 およそ契約などを結ぶためには、如何なる形であれ少なくとも相手が契約を履行すると思えるほど、 双方の間に最低限の信頼関係が存在しなければならない。 シャドームーンを相手にそんな関係が成立することこそ不可能事。 「ああ、信用できるな。私が貴様との契約を信用するようにだ。そうでなければ、ここまで話を聞く貴様ではあるまい」 誰もが決裂したと考える交渉を、尚も狭間は続けようとする。 狭間にとってはここからが正念場なのだ。 分の悪い賭けであることは最初から百も承知。 命をチップにそれへ乗っている以上、生半可な覚悟ではないのだ。 「何故なら、これは魔人皇と世紀王の名の下に結ばれる契約だからだ。世紀王の名の下に結ばれる契約なら、貴様も決して反故にはしまい?」 北岡も、ジェレミアも、つかさも、真司も、C.C.も、 狭間が何を言っているのか理解できない。 これまでも何度も意表を衝かれたが、今度は意味そのものが理解できないのだ。 狭間の言葉通りの意味だとすれば、これほど馬鹿馬鹿しい主張は無い。 シャドームーンが魔人皇であろうと何であろうと、自分以外の物の名に価値など認めないはずだ 狭間もそんなことは判っているはずなのだ。 しかし狭間は場に漂う如何なる気配も寄せ付けず、シャドームーンとの交渉を続けている。 そして当のシャドームーンは―――― 「…………フフフ。それほどまで……世紀王を愚弄するつもりか!!!!」 ――――かつてないほどの怒りを現した。 空気が恐れ戦き震撼する。 遠巻きに眺めていた北岡たちも総毛立つ。 あれほど冷徹さを貫いていたシャドームーンの中に在った、想像を絶する熱気。 「世紀王の名を、他の何かと対等に並べることが許されるとでも思ったのか!!!? ゴルゴムの王こそ、宇宙に存在する唯一絶対の真の王!!! 人間が勝手に名乗った王と同じだと……」 「同じだ!!!! 貴様も私も主催の手中に繋がれた王に過ぎん!!!」 かつてない威を放つシャドームーン。 しかし狭間もまた引けを取らぬ気迫で以って対抗する。 北岡とつかさはおろか、ジェレミアまで呆然と瞠目する。 誰もが、これほど大きく声を上げる狭間は始めて見た。 どこまで狙いなのかは不明だが、狭間もまた常軌を逸した態度で交渉に臨んでいた。 「ゴルゴムの王など私は認めない!! しかし貴様の怒りが本物であることは判る!!! それは貴様の矜持が本物だからだ!! 貴様の矜持を私は全面的に信用する!! その証として、貴様に首輪の解除方法を提示したのだ!!!」 魔神皇として君臨してきた間の習慣で、狭間は高慢な態度が身に付いていた。 常に相手を見下し、自らの余裕を演出する。 それは身に付いた習慣なので、魔人皇となった今も容易に態度は改まらないはずだった。 しかし今はそれすら振り払って、声を上げていた。 「私が何故それほど、貴様の王の矜持を理解できると思う!!? 私も人の上に君臨することを止め、魔神皇であることを捨てても尚、 唯一人で魔界の支配者にまで登り詰めた、王としての矜持を捨てきることはできなかった。だからこその『魔人皇』だ!!」 狭間にはここまでの話でシャドームーンの気を引いている自信はあった。 そしてそれを過信はしていない。 かつてない熱意を込めて、あくまで怜悧に論理を積み上げて行く。 「貴様が殺し合いに乗るのは、命が惜しいからでは無いはずだ!!! 一度敵対した者から、どんな形でも背を向けることは貴様自身の誇りが許さないからだ!!」 シャドームーンは沈黙したまま、狭間の言葉を聞いている。 その仮面からは、如何なる内面も読み取れない。 狭間にとってすらそうだ。 どれほど最大細心の注意を払っても尚、シャドームーンは読み切れない。 一瞬先の命の保障すらない賭けは未だ続いていた。 「貴様の怒りは、今この場で我々を殺したところで報われない! 殺し合いの中で首輪を嵌めたまま誰を殺した所で、そんな物は王の所業では無いからだ! 貴様の怒りが報われるためには、殺し合いを貴様の手で破壊してから我々を殺してみろ!!」 「――――ふざけやがるのも、いい加減にしろです!!!!」 全く予想外の言葉に、狭間は二の句も告げず強張る。 北岡も、ジェレミアも、つかさも、真司も、C.C.も同様だった。 皆意表を衝かれ、固まっている。 シャドームーンですら虚を衝かれ、不動の仮面を傾ける。 視線の先には緑色の衣装を着た人形・翠星石が息を荒げていた。 時系列順で読む Back 因果応報―終わりの始まり―(後編) Next 因果応報―薔薇乙女 翠星石が1体出た!― 投下順で読む Back 因果応報―終わりの始まり―(後編) Next 因果応報―薔薇乙女 翠星石が1体出た!― 160 因果応報―終わりの始まり―(後編) ヴァン 160 因果応報―薔薇乙女 翠星石が1体出た!― C.C. 城戸真司 翠星石 上田次郎 シャドームーン 狭間偉出雄 159 ひぐらしのなく頃に 北岡秀一 柊つかさ ジェレミア・ゴットバルト
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1426.html
※ゆっくり虐待。レイプ、出産などあり。 ※人間の死者あり。 ※後味微妙ってか悪い。 ※東方キャラ登場あり。 ※そのうち改稿しようかと思っています……んー、微妙。すごく。 ※当然のように俺設定満載な感じです。 ※特に、ゆっくりの設定は思い切り俺設定です。イメージと違う場合もございますので、 ご注意ください。 「因果応報ご用心」 日暮れ間近な夏の山林に、悲鳴がこだまする。 「いやぁぁぁぁっ! おじさんっ! やめてぇぇぇぇぇっ!」 「たすけてぇー、まりさぁぁぁぁぁっ!」 「ゆっ! れいむはゆっくりしんでね!」 「むきゅぅぅぅっ! お、おいてかないでぇ~っ!」 「あがぢゃんっ! まりざのあ゛がぢゃんがぁぁぁぁっ!」 ゆっくりれいむとゆっくりまりさたちの、悲痛な叫びがこだまする。 人里もほど近いこの山林に最近やって来たゆっくりたちは、永住しようと巣作りに励ん でいたのである。 来て早々、長雨や台風で仲間が多数死ぬなどの苦難もあったが、やっと天気も良くなっ たので、雨風に負けない頑丈な巣を作ろうと、みんなで頑張っている最中に現れたのが三 人の人間。 人間たちを見たゆっくりは、ご近所さんに挨拶をしようと思い、いつも仲間にするよう に笑顔で「ゆっくりしていってね!」と言った。 三人とも男性な人間たちは、そんなゆっくりに挨拶を返すことなく、無言で行動を開始 した。 手にした棒でゆっくりを殴り弱らせて、背負った籠に入れると言う、極めて野蛮かつ原 始的な狩猟に取りかかったのである。 最初に殴られたゆっくりは、れいむ種のゆっくりで二匹の子供がいた。 殴った男が力加減を間違えたため、そのれいむは一撃で皮を破裂させられ、中身の餡子 を周囲に飛び散らせながら息絶えた。 挨拶をしても黙っている男達を咎めようとして、彼らに向かって一歩前へ出たのが間違 いだったのかも知れない。 「ゆっ! おぢざっべびゅっっっ!」 これが最後の言葉である。 自分が何故殺されたのか、その後子供たちは、家族は、仲間は、どうなるのか考える余 裕すら無い、突然訪れた生命の終わりであった。 れいむが死んだことにより、ゆっくりたちは混乱した。 頭の回転の早い者は、混乱しながらも即座に逃げ出し、何匹かは逃走に成功したが、逃 げ遅れたゆっくりたちは、殴られ捕らえられるか、その場で死ぬかの運命を押し付けられ た。 「やべでぇぇぇぇっ! ま゛りざわる゛い゛ごどしでない゛よぉぉぉぉっ!」 「うはっ! 大物だぜっ! きゃっほぉぅ!」 丸々と太った直径40センチクラスのまりさを捕らえ、思わず歓喜の声を漏らしたこの男 は、数ヶ月前までは"町のダニ"と後ろ指さされていたゴロツキだった。 強請りと贓物故買が収入源な、絵に描いたような下っ端のチンピラであったが、ゆっく りを捕らえ中身の餡子を売る事で最近は生計を立てている。 殴ると人の声で悲鳴を上げるのが楽しくて堪らない上に、ゆっくりから取れる餡子は、 捕らえて取り出す労力以上の利益をもたらすのだから、この商売はやめられない。 「む……むぎゅぅぅぅ……」 「へへっ、ちょいと小振りだが、こいつぁゆっちゅりー種だぜ! 梅紫蘇餡は高く売れる からな、ぐへへへ」 成体と幼生の中間ぐらいの、もう一ヶ月ほど生き延びられたら立派な成体となったであ ろう、ゆっちゅりーを捕獲した男は、先々月までは普通の農家であった。 このゆっくりたちとは別の、もうこの世には存在しないゆっくりたちの群れに、農地を 襲われ作物が全滅してしまったため、今年の冬を越し来年の種籾を買うため、やむなくゆ っくり狩りを繋ぎの仕事としている。 自分が生きるためとは言え、他の命を奪う行為に少なからずストレスを感じており、そ れを打ち消すためにことさら野卑に振る舞ってみせている。 「あがぢゃ! や゛べでっ、べいぶのあがぢゃぁぁぁぁんっ!」 「ふんっ! ふんっ! おらぁっ!」 餡子があまり多く取れない赤子のゆっくりを踏みつぶしながら、その母に向かって棒を 振り下ろしている男は、この三人組のリーダーと言うか先導者である。 ゆっくりが幻想郷に姿を現した頃から、男はもうこの仕事をはじめていた。たまたま見 かけたゆっくりを、むしゃくしゃしていたので殴り殺した際に、手に付いた餡子を見て思 いついたのであった。 これはカネになると思った男は、ゴロツキや食い詰め者など、人間の声の悲鳴にも竦ま ない仲間を集め、狩猟と加工を行う集団を作ったのである。 ゆっくり猟は、こんな商売がこの世にあって良いのかと思うほど儲かった。 里の指導層が、ゆっくりを"異変の前兆か一部"であると認定し、なるべく関わらないよ う人々に呼びかけ、多く出没する地域を危険区域として立ち入りを禁じたため、男たちの 商売はほぼ独占市場であった。 ゆっくりを捕らえ中身を取り出すのは、やろうと思えば子供でも簡単にできる事なのだ から、人々に多く知られてしまっては商売が成り立たない。 だから彼らは一切合切を仲間内の秘密として外部には伏せている。独占を維持するため に。 そのために、この日も"立ち入り禁止"とされている山林を狩り場に選んだのであった。 「い゛や゛ぁぁっ! どっ、どぶじで、れ゛いむだぢを、い゛いぢめるのぉぉぉぉぉっ!」 必死に逃げながら、一匹のれいむが叫んだ。 しかし、男たちは誰一人その問いに答えず、無言で狩りを続ける。 意志疎通も可能であるにもかかわらず、男たちは極力ゆっくりと会話を行わない。 こいつらが人と同じ言葉を喋る、と言うことを強く認識してしまうと、慣れた者か元か ら暴力的な者でない限り、どうしても非情になりきれなくなるからである。 獲物と情を交わすことは禁忌であった。 物言わぬ獣が相手ではなく、物言う獣が相手なのだから。 ゆっくりたちにとって辛く、狩猟者たちにとっては心躍る時間は、唐突に終わった。 がけ崩れが発生したのである。 男たちもゆっくりたちも、圧倒的な自然の災害によって、等しく死を与えられた。 目覚めたとき、男たちは三途の河に居た。 「さぁ、お客さん方、今日はもうこれで終いだよ。早く乗った乗った」 背の高い赤毛の少女が、男たちを舟に乗るよう急かす。 「お客さんもわかってんだろ、自分らが死んじまったって? ほら、河原で石積みって歳 でもないだろ? 早いとこ乗って閻魔様のお裁き受けなよ」 男たちにそう言いながら、少女は手にした大鎌の柄で、ゆっくりたちを殴っている。 「え? なんであたいがゆっくりを殴ってるかって? こいつらは話しても聞かないから ね……面倒なんで、ぶん殴って温和しくさせて舟に積むのさ」 慣れているのだろう、少女は手際良くゆっくりを気絶させて舟に放り込んでゆく。 「そうそう、あたいの名前は小野塚小町さ。ここの船頭──要するに死神をやってる…… っと、お客さんそんな顔しなさんな。死神って言っても、魂を身体から出すんじゃなくて、 あんたらみたいな魂を三途の向こうに運ぶだけの、しがない船頭さ」 話し好きなのか、小町と名乗った死神少女はやたらと口数が多い。 「まぁ、そう言うわけだよ……わかったんなら、有り金を寄越しな。隠すとためにならん よ。どうせお客さん方は、これからお裁きを受けるだけの身の上なんだから、銭なんざ持 ってたって仕方ないだろ?」 言われた通り、いつの間にか持っていた金銭を男たちは小町に渡した。 「……んっと、金額にちょいとバラつきがあるねぇ、お客さん。んー、本来なら別々に運 ぶところだが、今日はもう終いなんだから特別サービスだ。全員一緒に乗りな!」 断る理由もないので、男たちは素直に小町の指示に従った。 「いやぁ、最近ゆっくりの魂が増えちまってねぇ。いつも仕事がきついんだよね、これが。 ってーか、あんたらみたいのが面白半分に殺して回る所為なんだがねぇ……ああ、別に責 めちゃいないよ。仕事増やされた愚痴だと思っておくれよ」 船をこぎ出してからも、しきりに小町は話しかけてくる。 「ん? 面白半分に殺してなんかいないって? ああ、そっかお客さん方はゆっくりを狩 って稼いでたんだよな……うん、面白半分ってのはあたいの失言だな、すまない。けど、 まぁ面白半分だろうと生活のためだろうと、あたいの仕事が増える事にゃ変わりはないん だよ」 しんみりと語るわけでもなく、あくまで小町は明るく話す。 「ゆっくりの魂の何が面倒かって言ったらねぇ、こいつら銭をほとんど持ってないのさ。 三途の河ってのは渡し賃の多寡で距離が決まるんだよ。だから、ゆっくりどもを運ぶとき は杓子定規に規則通りの距離じゃやってけないから、ちょいと細工して距離を縮めるのさ」 別に聞いてもいないことを、次々と小町は男たちに語ってゆく。 「本当は、あたいももうちょい暇だったら、まともに話せる人間のお客さんとは、のんび り河渡りと洒落込みたいんだけどねぇ……ゆっくりどものおかげで、いつも時間食ってノ ルマがなかなか消化できないのさ……ってなわけで、終点だよ。あたいもゆっくりを運ば にゃならないから、一緒に行くよ」 男たちを舟から降ろすと、小町は手押し車にゆっくりを積み込み始めた。 「ああ、こいつかい? 袋に詰めたりするよりも、この方が早いんでね。そこに用意して おいたのさ……いまじゃ、あたいのタイタニックに次ぐ大事な商売道具だよ」 小町は手押し車の胴体を手で叩き、男たちに向かって微笑んだ。 「さぁ、閻魔様がお待ちだよ。急いだ急いだ」 そう言って、小町は男たちを急かした。 小町に追い立てられ感慨深く周りを見る余裕もなく、男たちは法廷に入った。 「映姫さ……ごほん、ヤマザナドゥ様、本日最後の被告を連れて参りました」 口調を改め、小町は法壇の上──裁判官席に座る、緑髪の少女に最敬礼をした。 「死神・小野塚小町、ご苦労。まず、ゆっくりから裁きますので、被告を並べて下さい」 威厳たっぷりに楽園の閻魔は死神に命じた。 言われた通りに小町は、手押し車からゆっくりの魂たちを一つずつ下ろし、法壇の下へ 一列に並べる。 全部で13匹のゆっくりの魂が、ずらりと並べられた。 それを見て頷いてから、閻魔は小町に対して新たな指示を下す。 「書記官が本日は早退してしまいましたので、臨時代理書記を命じます。書記席に座りな さい」 「えっ!? しょ、書記……でございますか」 裁判書記の仕事は、もっと上級の死神が行う職務であるため、小町は慌てた。 「書記です。あくまで臨時代理ですから、本職の裁量で任命できます。研修は受けていま すね。やり方はわかるはずです。頼みましたよ」 「あ……は、はいっ! 謹んで承ります」 有無を言わさない閻魔に抗えるはずもなく、小町は苦手なデスクワークを引き受けた。 「さて、ゆっくりの裁判は簡易形式を以てす、と定められておりますので、それに基づき 速やかに審議いたします」 小町が書記席に着くのを待ってから、左から右へゆっくりたちの魂を見回し、閻魔は言 った。 「当法廷では、便宜的に左より1から13まで番号にて、ゆっくりを呼ばせていただきます ……まずは1番のゆっくりれいむ!」 開廷の合図として、閻魔はガベルを振り下ろした。 「汝の判決は、ゆっくりへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 罪状については何一つ言わず、いきなり閻魔は判決を下した。 「次に2番のゆっくりまりさ! 汝の判決は、ゆっくりへの転生とする。執行は閉廷後即 時行う。以上」 同様に二番目の魂へも、速やかに判決が下された。 ──結局、13匹のゆっくりは全て「ゆっくりへの転生」と言う判決であった。 「続きまして、三人の人間の被告を裁きます。被告人は、整列して下さい」 閻魔に指示された通りに男たちも一列に並んだ。 「まずは左から──」 最初の男の、名前、年齢、性別を閻魔は口にし、 「相違ないか?」 と確認を取った。 もっとも、確認を取ったと言っても形式に過ぎない。 何故ならば死人は喋れないのだから。 そのためすぐに閻魔は次の言葉を発し、裁きを進行してゆく。 「被告人は、幼少の頃より乱暴で、親兄弟、友人知人近所の者に多大なる迷惑を掛け、ま た強請りや盗品の売買を行い、死の数ヶ月前からはゆっくりを狩り、その命を奪って餡子 を取り、その出所を伏せて販売していた──そう、あなたは少し乱暴が過ぎる」 端的に男の罪状を閻魔は並べ立てた。 「残念ながら情状酌量の余地はありません。貴方は地獄行きです」 すっぱりと小気味良いぐらいに閻魔は言い切った。 が、やや間を置いてから、 「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 かくの如き判決を下した。 「続きまして真ん中の──」 同様に次の男の、名前、年齢、性別を口にして確認を取る。 「被告人は、親に孝行を尽くし、受け継いだ農地で農業を営み、利を貪ることなく適正な 価格で作物を卸し、善良な農家として近隣からの評判も上々であり、またゆっくりによっ てやむなく転業を強いられた点は大いに酌量の余地ありと認む」 最初の男とは打って変わって、評価する言葉が続く。 「しかしながら、ゆっくりによって受けた被害以上に、ゆっくりの命を奪うことで利益を 上げた事は許し難し──そう、あなたは少し誘惑に弱すぎた」 一転して、閻魔は厳しく男の罪を糾弾する体勢に入った。 「ゆっくりによって職を変えざるを得なくなった事情は理解できますが、あなたは命を奪 って金銭を得ると言う行為に罪悪感を感じていましたね──にもかかわらず、受けた被害 以上に利益を上げました。損害の賠償分としても過大な程ほど……罪悪感を感じていたの ならば、何故ある程度で元の職に戻らなかったのでしょうか。田畑を耕し、土と共に生き るよりも、ゆっくりを捕らえて殺す方が儲かるし楽だったからですね……残念ながら、貴 方も地獄行きです」 一気に畳みかけるように閻魔は言った。 だが、ここでも先と同様に、 「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 全く同じ判決を下した。 そして最後の男の番になった。 前二者と同様の形式を済ませ、罪状の読み上げが開始される。 「被告人は、やや粗暴な点はあったものの、目上を敬い、目下を愛する、理想的な町の兄 貴分として振る舞い、また基本的に正業の範囲内で生計を立てていた点は大いに酌量の余 地ありと認む」 まず最初にプラスの評価を示すのが、正式な裁判時のスタイルのようだ。 「しかしながら、たいした理由もなくゆっくりを殺し、それによってゆっくりの命を奪っ て利益を上げる商売を思いつき、仲間を誘い組織的に行った点は許し難く──」 前と同じように、閻魔は罪の糾弾を開始する。 「その上、動物の命を奪う職にある者ならば当然すべき、奪う命への感謝と慰霊を全く行 わなかった点は言語道断──そう、貴方は少し命を軽く見過ぎた」 閻魔は厳しい判決を予感させる強い口調で言い切った。 「他の命を奪わずに生きることは不可能です。だが、命を奪うことを商売とするならば、 やらねばならない事があるのです……屠畜場には必ず慰霊碑があるのです。獣といえども 命は命、それを忘れてはいけません──貴方も地獄行きです」 教え諭すよう閻魔は言うと、やや間を置いてから、 「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」 三度全く同じ判決を下した。 「これにて閉廷!」 速やかに閉廷を宣言した閻魔は、宣言通り刑の執行に取りかかった──。 そして、法廷には小町と閻魔だけが残った。 「……さて、小町」 執行作業で額に浮かんだ汗を、楽園の閻魔こと四季映姫はハンカチで拭った。 「は、はいっ!」 「なにをそんなに緊張しているのですか? 私に怒られる心当たり、やましいことがある のですね」 映姫は人の悪い笑みを浮かべた。 「すすすすすみません! あ、あたい……」 「あー……言わなくてもいいです。今回の件は不問とします」 うんざりした顔で映姫は言い、 「しかし、今度からはゆっくりの魂だけにしなさい。人間の死者については、エスコート する必要はないのですから……わかりましたね?」 しっかりと釘を刺した。 「はっ、はい! 肝に銘じます」 ゆっくりの出現で、死神も閻魔も仕事内容に変化が生じた。 その一つが、船頭担当の死神による魂のエスコートである。 通常の人間や妖怪などの魂は、基本的にわざわざ船頭が迎えに行ったりはしない。 死者は中有の道を通って、自ら三途の河を目指すのだから。 ただし、ゆっくりの魂は別である。 自ら三途の河に来るなどと言うことは、ほぼ皆無と言っても良いぐらいで、死んでもそ のままゆっくりし続けて、ほとんど動かないのである。 そのためゆっくりの魂は、船頭が機を見て回収に行く事が定められた。 また、閻魔の裁判形式も、ゆっくりに関しては罪状を告げる手間を省略し、いきなり判 決を下す略式裁判が基本と定められた。 あまりにも弱い生き物のため死ぬ数が多すぎるからである。 正式にしっかりと審判を行うための時間も人員も足りない以上、やむを得ない苦肉の策 として定められたのであった。 そして、繁殖力も旺盛で生まれる数も多いため、ゆっくりは基本的に三千回ゆっくりと して転生するまでは、自動的に死→転生判決→生を繰り返すこととされた。 地獄も拡張を必要とするほど手狭な以上ほいほいと送り込むわけには行かず、かと言っ てまともに輪廻させるためには正当な審判が必要であるため、これまた苦肉の策である。 要するに、ゆっくりに関しての問題は「先送り」され、ゆっくりへの転生が地獄行きの 代わりとしても使われている現状である。 なお、転生が三千回とされた数的根拠は、いわゆる三千世界から数だけを取っている。 他には、七回、四十九回、百回、五十六億七千万回、などの案があったが、無難なライ ンとして三千回で落ち着いたのであった。 「ところで、小町……私の判決に対して、あなたは不満を感じていますね」 詰問するような口調ではなく、優しい声で映姫は聞いた。 「いっ、いえ! そ、そそそんな滅相も……」 「閻魔に嘘はいけませんよ。ふふっ、わかってますから、この際正直に言ってご覧なさい」 子供に言って聞かせるように、あくまで優しく映姫は言った。 「あ……は、はい……あの、最初の男はともかく、後の二人の判決が……その……」 正直に言えと言われても、やはり閻魔の判決を批評するのは気が引けるようだ。 「法廷だからって緊張しなくても良いのですよ。いつも河原で私に堂々と「あはっ! さ ぼってました! えへへっ!」と言うように、すっぱり言いなさい」 「あ、いや、いくらあたいでもそんな頭悪そうに言ったこと……もとい、はい。わかりま した! 二番目の男への量刑は重すぎ、三番目の男へは軽すぎると思いましたっ!」 映姫は目を閉じ、少しの間黙考するように押し黙ってから、おもむろに口を開く。 「そう、あなたの感覚は一般的です……しかし、浅いのです。二番目の男については、罪 悪感を感じながらも続けていたと言う点が重要なのです。罪の意識がありながら、罪と知 っていながら行い続けるのは、非情に罪深い事なのですよ、小町」 反応に詰まる小町に一度視線を合わせてから、映姫は続けて、 「もしあの男がもっと生きながらえていたならば、ゆっくり狩りをやめて農業に戻り、罪 を相殺する善行を行えたかも知れません──しかし、それは仮定に過ぎないのです。生者 への裁きならば未来の仮定も考慮に入れますが、死者には未来が無いのですから、今後こ うすれば罪が軽くなる、とは言えないのですよ」 と言った。 「……な、なるほど……すみません、あたいの思慮が浅かったです」 どことなく引っかかるものも感じたが、小町は素直に認めた。 「そして、最後の男に関してですが、元々は猟師でも屠畜業でもなかったのですから、慰 霊の大切さを知らないのも、やむを得ないと私は考えたのです。勉強不足、知識不足は責 められるべき点であり、命を軽く見ていたのは事実ですが」 意味深げに映姫は一度言葉を切った。 「ゆっくりの命を弄んだのですから、地獄へ落とすよりも、三千回ほどゆっくりとして生 きさせるが最適と判断したのです──そう、同じようにゆっくりの命を弄ぶ人間や妖怪は、 今後も多く現れるでしょうからね」 言い終わると、今日の業務は終了と言った顔で、映姫は法廷を立ち去る。 小町は手元の書類をまとめ、急いでその後に従った。 続く? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/kjr13579/pages/20.html
哲学形而上学・因果応報・人権貧困・物理学生物学その他に関するよくある勘違い、格言集 真実は一つ? 「真実は一つしかない」 人の数だけある。「一つしかない」は数ある真実の一つに過ぎない。「真実は唯一つ(それを知っているのは自分)」は、精神的未熟さから派生する根源的な勘違いの一つで、その視野狭窄した価値観に陥った者はその独善が引き起こす矛盾体験つまり争いを繰り返す羽目になる。つまり「真実は一つ」という考えこそが、あらゆる争いの元 真実は人の数だけあるようだが、彼は一人で多くの真実を抱えているようだ。 言葉の定義上「真実」は一つであるはずで、一つでないと主張するなら「真実などというものは存在しない」という方が正しい。 すべては彼の個人的主観 「サイト主は虐めの原因は常に100%虐める側にあると言ってる。絶対はないということと矛盾する」 主観で理由を付けて「絶対がある」とは誰でも言えるということ。無論その内容は全てサイト主の個人的主観であり、それに賛同するかしないかは読者の自由 一方で、彼は「主観は根拠にならない」というべき主張を繰り返している。 「何であれ対外評価は尊重すべき」 評価者自身の主観・感想に過ぎないので、必ずしも常に真に受ける必要はない (「人権侵害行為(DV・虐待・虐め・差別その他犯罪)、今いじめられている人へ、家庭内暴力への対処 」より) 「残酷だから止めるべき」 何が残酷かは主観による。曖昧な基準は理由にならない (「死刑(抑止力・殺人発生のメカニズム・贖罪社会正義終身刑・厳罰化更生その他・冤罪・廃止論)」より) 人の誤りを指摘するのに「主観」を強調し、自らが指摘される場合には「主観」だからと批判を躱す。 自身の主張は個人的主観にすぎないというならば、「証拠」や「真実」などという言葉の使用は避けるべきだ。 自家撞着 「“真実は一つではない”という命題が唯一の真実なら、自家撞着する」 単語の定義範囲を柔軟に捉えれば、「万物は流転する・諸行無常」「この世に絶対はない」が当該命題自身を含まないのと同様、文意は十分汲み取れるもの。言葉を杓子定規に解釈している限り、所謂「究極的命題」は理解できない 「この世に絶対はなく全て相対、という命題自体が絶対なので自家撞着」 「諸行無常」「万物流転」や「真実の数」などと同様、いわゆる究極的命題に付き物の原理。文字を杓子定規に解釈するから矛盾して見えるだけ とのことだが…… 「全ては無意味」 思春期にありがちなニヒリズム。その全てに「無意味であるという意味がある」ので矛盾する なんとも都合のよい「自家撞着」の運用である。 絶対はある 「この世に絶対はある」 概念としてはあるが、実体としてはない。全ては相対である。上下、強弱、大小、明暗、優劣、左右、長短、寒暖、軽重、有無、是非、善悪、白黒、主観と客観、光と闇、空間と時間、悟りと煩悩、Aと非A・・・地球は二元的相対性を体験する場である 概念は全て人工物であり、普遍的に正しい価値観や判断基準はない。絶対もまた「相対-絶対」という相対概念の片割れに過ぎない 絶対零度「……」 「必然」とは 「奇跡や偶然は存在する」 この世に偶然や奇跡は存在しない。それが存在すると思っている人がいるだけである 全ては必然であり起こるべくして起こっている。そして全てには意味がある。物事の摂理・必然性を理解(解明・説明)できない者が、その言い訳の為に偶然・奇跡・理不尽・矛盾等の概念を創り出しているに過ぎない 「全ては必然、は決定論で運命論で結果論に過ぎない」 全ては必然、は「過去に学べ」という意味である。「結果論だ」は学習しないための逃げ口上 物理の話をしているのか、精神論の話をしているのか。 「真実は一つ」ではないが「全ては必然」らしい。 悪魔の証明 「人間の個体は皆必ず死ぬ。これは絶対」 死なない人もいるかも知れない。四六時中監視している訳ではないので誰にも分からない 「何も食べずに生きるのは不可能」 水のみ或いは日光のみで長年生きている人は実在する 日光のみで長年生きていると主張する人間を四六時中監視している訳ではないので実在しているか誰にも分からない。 事例により悪魔の証明を使い分ける意味不明な思考。 そもそも水のみ或いは日光のみで長年生存する事は人間の機能では不可能。それは人間ではない。 思考は現実化する 「願いは叶う」 必ずしも叶わない。例えば金持ちになりたい、という願望は「金を持ってない」という現実が無いと生まれない。つまり「金持ちになりたいなりたい」と強く願えば願うほど「今は金持ちではない、金を持ってない持ってない(だから金持ちになりたい)」という思念を強めることになる。結果願望の裏にある思考が現実化し、金を持ってない状態が長引くことになる 「思考は必ずしも現実化しない」 思考は100%現実化するので、「必ずしも現実化しない」と思えば全くその思考通りになる(必ずしも思考が現実化しない現実を、思考者当人が体験する) 「思考は必ず現実化する」と願えば願うほど「今は思考が現実化しないしない(だから現実化させたい)」という思念を強めることになる。結果願望の裏にある思考が現実化し、現実化しない状態が長引くことになる 物理の勉強 「時間は存在する」 存在しない。時間とは物体の周期的な変動から便利の為に人々が作り出した概念/道具に過ぎない その概念が時間である。 「宇宙は膨張している」「宇宙はビッグバンから生じた」 「膨張していると仮定すると観測結果との辻褄が合う」というだけで、ビッグバンは仮説の一つに過ぎない 最初の提唱者はベルギー人のカトリック司祭。聖書の記述に科学的お墨付きを与え教義・教会に権威を持たせようという意図は断じてなかった・・・とは誰にも言えない なお宇宙には始まりも終わりもなく、あるのは常に「変化」である(「始終」自体が人為的概念に過ぎない) というのも一つの仮説に過ぎない 「不確定性原理により、全ては必然とは言えない」 人間の観測できる範囲に物理的限界があるのも、また必然 不確定性原理は「人間が観測できるかどうか」ではない。 観測という行為そのものが観測対象に影響を及ぼしてしまうという問題であり、観測者が人間であろうがなかろうが原理的に観測し得ない。 「夜空が暗いのはそこに星が無いから」 人間の目の感知能力に限界があるからである 星に寿命があることと、光速が有限であるため。 数学的に言えば、観測可能な宇宙の地平線が全宇宙の星々と地球の平均距離より短いから。 彼ら自身の意図 「蜂は幼虫用の部屋を6角形に作る」 結果的に6角形になるだけで、恐らく彼ら自身は一つ一つを丸く作っているつもりである(それが最も効率的かつ丈夫) 彼ら自身の意図は聞いてません。 あなたの妄想も聞いてません。 ラマルキズム? 「いや~ん瞳がウルウルしたチワワがプルプル震えてチョ→カワイ~」 ブリーダーが故意に栄養失調状態にし代々交配したため、極端に頭部が大きく体が痩せ細り先天的に病弱な体質を持ったもの。長期間を掛けたDNA操作であり、動物虐待の一種 栄養失調状態は遺伝しません。 ワクチンでおk 「致死率が高いので感染しない方が良い」 逃げてばかりいると貧弱な体質になるので、ある程度は故意に感染し免疫力を付けた方が良い(日本人は衛生環境が良過ぎて免疫が落ちており、とある観光地で食中毒が発生した際重症化したのは日本人だけだったという例がある)。赤ん坊は動物園に連れて行くなどし、徐々に慣らすと良い それをワクチンと言います。 動物虐待 「猿回しは面白い」 猿自身にとっては面白くないことを無理矢理やらされ、ストレスや恐怖心からしばしば腕を噛むなど自傷行為が見られる。人間のエゴ、動物虐待の一種 「毛皮は本物に限る。暖かくて気持ちいい」 コスト削減と品質のために、脳天を殴打し生きたまま全身の皮を剥ぎ取っている業者もいる。動物虐待の一種 「動物園は動物虐待」 飼われている動物が苦痛を感じているならその通りだが、快適に暮らしているなら虐待とは言えない 猿自身が面白いと感じているなら猿回しは虐待ではないし、皮を剥ぎ取られている動物が快楽を感じているなら虐待とは言えない。 因果混同 「河原の石が下流ほど小さく丸いのは、流されるうちにぶつかって角が取れたから」 正しくは「小さく丸いから流された」である。転がれば、割れたり欠けたりして却って角ができる この理論では河原の石と同様の形体の石があらゆる地形に存在しなければならない。 無論そのような事実はない。 河原の丸い石は水の流れる場所、または過去にそうであった場所に存在する。 水流の影響によって角が取れるように割れたり欠けたりする。 矛盾の真実 「奇跡や偶然は存在する」 この世に偶然や奇跡は存在しない。それが存在すると思っている人がいるだけである 全ては必然であり起こるべくして起こっている。そして全てには意味がある。物事の摂理・必然性を理解(解明・説明)できない者が、その言い訳の為に偶然・奇跡・理不尽・矛盾等の概念を創り出しているに過ぎない 彼に矛盾を見いだすのは我々の責任であるらしい。
https://w.atwiki.jp/insane_tja/pages/4368.html
曲Data Lv BPM TOTAL NOTES 平均密度 Φ8 -240.5 - 1156.25 814819 5.80Notes/s5.84Notes/s 譜面構成・攻略 譜面画像