約 1,139 件
https://w.atwiki.jp/nekomimi-mirror/pages/407.html
犬国奇憚夢日記 外伝2 特別編2 カチャ・・・・ キリキリキリ・・・・ カチャリ 夜も更けて静まり返るロッソムの街。 赤々と燃える暖炉の火が照らす紅朱館のホール。 広々とする部屋の片隅に置かれたソファーとテーブル。 寝静まった館の中で密やかな音を立て、ユウジは一人、銃火器の整備をしていた。 「まだ起きてらしたのですか」 トントンと音を立て階段を下りてきたマサミの姿にユウジは驚いた。 「あ、起してしまいましたか。すいません」 「いえ、まだ眠っていませんでしたから」 「そうですか」 再び視線を手元へ戻したユウジはドライバーの柄を持って銃身の基線を整えている。 その鮮やかで滑らかな手捌きにマサミは見とれていた。 「心配性なもので、どうしても自分で整備しないと気が済まないんですよ」 「いやいや、その気持ちは良く分かります。私もそうですから」 出来る限り音を立てずにユウジの対面へと腰を下ろしたマサミ。 ユウジの鼻にはマサミの体から僅かに香水の香りを感じていた。 「・・・・アリス様ですね」 「えぇ。あの一件以来・・・・ どうにもちょっと」 「でしょうね。ヒトでもイヌでも。女性ならば」 「甘えるのが下手なんですよ。やはり、貴族として育てられたのでしょうね」 「人前で弱みを見せないこと・・・・ 辛いですよね」 「えぇ。そして、あの方は領主でもある」 一通り組み立てたG3を構えバランスを確かめるユウジ。 傍目に見るマサミですら惚れ惚れする、見事な構え方。 戦争映画に出てくる決めシーンの俳優のようだ。 「ユウジさん。あの、聞きにくい事ですが」 「落ちる前ですね」 「えぇ」 帆布で作ったケースに銃をしまいながら、ユウジは一つ溜息をついた。 テーブルの上に並んでいた道具が片付けられ、広間の中から金属的な音を立てるものが消え去る。 「民間の軍事会社に居ました。警備とかの仕事をしていたんですよ」 「じゃぁ、中東地域の?」 「そうですね。バグダットの西方に展開する会社でした」 「しかしなぜそのような会社に?」 「父母共に日系アメリカ人で、母は二世、父は三世でした、アメリカ国籍だったので志願して兵役に付いたのですけど、従軍中のある日に父母がニューヨークで・・・・」 「9・11」 「えぇ、そうです」 首を振りながら深い溜息をひとつついたユウジ。 その双肩には深い苦悩があったのだろう。 「当時私の家は親族が大喧嘩中でね。それに嫌気がさして私は日本の親類を頼ったのです」 「そうなんですか」 「ところが、日本に行ってみたらまぁ見事にカルチャーショックでしてね」 クックックと笑いを噛み殺すユウジ。 釣られるようにマサミも笑みを漏らす。 しかし、その後にユウジの口から出てきた言葉はマサミの笑みを凍りつかせるものだった。 「人殺しの兵隊さんが親族に居るなんて世間の良い恥さらしだから荷物をまとめて今すぐ出て行け!ってね、親戚が怒鳴り込んできたんですよ。私は何がなんだか分からなくて、あっけに取られていたんですが・・・・」 しばしの沈黙がフロアを埋めていく。 コチコチとなる時計の針音がどれ程の時間を数えたのだろうか。 痺れを切らしたようにマサミは口を開いた。 「なぜ、怒鳴り込んでこられたのでしょうか」 「さぁ、私にも分かりません。ただ、私の中では、軍隊と言うと国家の便利屋みたいな部分があると思っていたんですよ。言うなれば汚れ仕事を引き受けるポジションです。国家運営の失敗が引き起こすイザコザの尻拭いとかね。それこそ、消耗品位にしか扱われない軍隊って組織の役割をそう理解してました」 「でしょうね。正論です」 「でも、その人は違ったようです。好き好んで出かけて行って人を殺すのが趣味の人でなし・・・・。 まぁ、否定はしませんが」 ユウジは再び噛み殺して笑う。 でも、今度はマサミは笑えなかった。 「平和ボケした日本って国の現状でしょうね」 「それも私は良く分からなかったんですよ。ヘイワボケ。それってなんですか?って聞きましたもの」 「誰かの犠牲とか苦労とかの上に物は成り立ってるはずなのに、その縁の下の人に感謝する事を忘れてるんですね」 「・・・・今のマサミさんの説明でやっと分かりました。その通りです」 ユウジは鞄の中からコルクで出来た小さな箱を取り出した。 そっと蓋を開けると、中には琥珀色の液体が入ったビンが一本。 ラベルにはバラの花が描かれている。 「マサミさん、これ飲めますか?」 「えぇ、もちろん」 マサミはそっと立ち上がり、キッチンからコップを二つ用意してきた。 ユウジがその中に少しずつ注ぎ、二人してそっと手を伸ばす。 「マサミさんは向こうの世界でなにを?」 「・・・・コーヒーチェーンの店長でした」 「だからこういう場のマネジメントが出来るんですね」 「いえいえ、とてもじゃありませんが、執事なんて仕事は出来ません。真似事です」 「実は日本に行って覚えたスキルが一つあるんです。謙遜って奴です。マサミさん、あなたがしている仕事は十分立派だ」 「ありがとうございます」 カン・・・・・ そっと乾杯してグッと飲み干す。 懐かしい香りが喉を駆け抜け、焼けるような刺激が胸を焦がす。 「ウィスキーかぁ・・・・・ 3年ぶりくらいだな」 「この世界ではウィスキーがいまいちなんですよね」 「そうなんですか。これは?」 「落ち物の山の中にFeDexの大きな箱があったんですけど、その中に誰かが誰かに送ったこれがあったんですよ」 「そうなんですか」 「きっと今頃送った人は悔しがってますよ、なんせ21年の上物ですからね」 飲み干したコップへ再びウィスキーを注ぐユウジ。 マサミはもっと色々な事を聞きたかったのだが、何となくそれを聞かないほうが良いと思っていた。 なんで戦闘中だと言うのに冷静なのか。 なんで人を殺す現場なのに迷わないのか。 なんで・・・・ 「仲間と車列を護衛して空港へ向かう道すがら、過激派の爆弾テロに遭遇しましてね」 「・・・・テロですか」 「すぐ近くで仲間が吹っ飛んで、それで気が付いたらこの世界の西のほうでした」 「お一人で?」 「えぇ、そして、すぐにウサギの輸送キャラバンに拾われまして・・・・」 「・・・・災難ですね」 「えぇ、しばらくは・・・・地獄でしたね」 コップの中身をグッと飲み干してユウジは目を瞑った。 「今でも時々思い出します。昼夜問わず慰み者にされるヒトの女性の泣き声とか、完全に壊れてしまって笑い続ける人とか」 「ヒトを嬲るんですか?」 「えぇ、彼らにすれば何でもいいんですよ、穴さえあればね。そして、しっかり調教して・・・・ 高く売る。商売の基本ですね」 「・・・・その通りですね」 「しばらくして、私のチンポがね、起たなくなりまして・・・・。そしたら今度はなぶり殺しですよ。死にかける事も何度か有りました」 「でも、今生きてらっしゃる」 「蘇生と回復の魔法効果です。新人の練習材料として実験台にされました。我慢できず僅かのすきに逃げ出したら今度はネコのヒト商人に拾われましてね。接近戦闘に長けていて、おまけに軍隊経験者で体が筋肉だらけだったものですからね。ネコの商人に酷く気に入られまして・・・・」 肩をすぼめうんざり笑いをするユウジ。 その表情からは自嘲めいた蔑みが見える。 「尻の穴を随分開発されましてね、最後はホモ人形で売りに出されて、そして大きな屋敷の主に下男として雇われまして・・・・ と言うより買い取られまして」 「・・・・・・・・商品ですからね」 「その家の主がまた酷い下世話で悪趣味な男でして、その家で夜な夜な乱交パーティーをするんですが・・・・ 全部男なんですよ」 「・・・・それはまた」 「でね、館の入り口で中年のホモ男の相手をさせられましてね。おかげで見事に痔になりましたよ、ハッハッハ」 ユウジの飲み干したコップへマサミはウィスキーを注いだ。 笑いながらもどこか悲しそうなユウジの横顔がうっすらと赤くなっていた。 「あの生活が嫌で嫌で。ある日、もう一度隙を見て逃げ出したんですよ」 「ほぉ・・・・ よくご無事で」 「マサミさん、ドラゴンに会った事は?」 「ドラゴン?竜族ですか?」 「えぇ、あの使役される家畜としての竜族では無くて、高度な知識と魔法を持つ・・・・ファンタジー世界の住人のドラゴンですよ」 俄かには信じられない事を真顔で言うユウジ。 その真剣な表情は騙したり担いだりするものにはみえない。 「そんなのが・・・・ この世界には居るんですか」 「えぇ、この世界のどこかに5匹のドラゴンが居ます。不老不死の正真正銘化け物です」 コップに残っているウィスキーをその中でクルクルと回しながら、ユウジは琥珀の水面を見ていた。 「私を追ってきたネコの主や強力な魔法障壁を使えるネコの軍隊が一瞬で消滅するほどの・・・・高度な竜言語魔法を使う恐ろしい存在でした」 竜言語魔法・・・・ それって?と聞きたいマサミだが、ユウジの顔色はそんな事をさせない迫力だった。 「私は聞いたんです。元の世界へ戻る方法を。そしたらその竜は答えました。この世界の5匹の竜が残す竜灰を全部集めて、気まぐれに出現する竜族の神へ祈ってみろ。聞き届けられれば戻れるだろう。しかし・・・・『その灰はどうやって集めるのですか?』 ユウジの言葉が終わる前に話を切ったマサミ。 その声色は真剣だった。 「あの竜族の寿命は1万年だそうです。1万年経つとその体が灰のように崩れ、その中から新しい竜が出てきて、その新しい竜が記憶を受け継ぐのだと言っていました。そして、それぞれの竜が全部いっぺんに生まれ変わる事は無い・・・・と」 雲を掴むような話しにガックリとうな垂れるマサミ。 ユウジは体を半身乗り出して、うな垂れるその肩に手を伸ばす。 「マサミさん、あの街、ルカパヤンにはね、実は3匹分の竜灰があるんですよ」 「ほんとですか?」 「えぇ、そして、いつか全部集めて、そして、自分たちの世界へ帰るように準備しているんです」 「じゃぁいつか」 「えぇ。でも、最近はちょっと目的がずれてましてね」 「・・・・?」 「ヒトの国を作ろうとしています。そのために竜灰を使うのでしょう」 「あの・・・・ 竜灰とは具体的にどのようなものなんでしょうか?」 「簡単に言うと、火山灰みたいな物ですがね。その灰に願いを掛けるとその灰の竜がやってきてその願いをかなえてくれます」 「それは・・・・」 「ですが、願いの大きさに見合うだけの犠牲が・・・・ 対価が要るのです。そして、その対価は往々にしてヒトの・・・・ 命です」 ある程度は予想していたのだが、それでもはっきり言われると引いてしまう言葉。 願いをかなえる為にはそれ相応の犠牲が要る。 ただ単純に願いをかなえてくれるだけの便利な存在ではないと言う事実。 それはつまり・・・・ 「まるで・・・・ 神、そのものですね」 「えぇ。祈りを捧げ純粋に信じきる者にのみ手を差し伸べる神」 「試練ですね」 「だから、あの街を囲む多くの国や組織や集団が手出しできないのですよ。ヒトは誰かの為に美しい犠牲を捧げられる生き物ですし」 再び沈黙の時が流れ、マサミはコップのウィスキーを飲み干した。 ユウジは空いたコップにウィスキーを注いで口を閉める。 「もう少し・・・・具体的に聞いて宜しいでしょうか。嫌な記憶かと思いますが」 「・・・・えぇ、貴方も知っておくべき知識ですよ。あれは・・・・ ************************************************************************************************************************ 胸突き八丁の坂を登り始めて、もうどれ位歩いただろう。 森林限界をとうに超えたらしく、あたりはガレた岩場になっている。 殺風景な世界にあって俺の目を和ませてくれるのは、名も知らぬ高山植物たちだ。 こんな厳しい環境でも懸命に花をつけている。 俺も・・・・ もう少し、頑張るべきだったんだろうか・・・・ この不思議な世界へ来て、早くも10年が経とうとしている。 この世界の一日が、俺の知っている世界と同じであればと言う前提なのだが。 最初に拾われたウサギの家では、毎日のようにバニーガールみたいな女達の相手をさせられた。 楽しかったのは最初の1週間だけだ。後は、毎日が苦痛でしかなかった。 俺の金玉は毎日のようにこき使われた結果、血を噴射する事しか出来なくなった。 前立腺が異常を来たし排尿困難のまま中毒症状を起こした。 それでも、あのウサギの女達は俺を絞り続けた。 絞り続けてとうとう自分の足で立てなくなった日。 今度は女達が俺の背中に焼印を入れ、爪を剥ぎ、鞭で打ち続けた。 血塗れになって逃げ出し、雪原の上で遠のく意識の中を拾ってくれたのはネコの商隊だった。 助かったと思ったのだけど・・・・ そこはより一層地獄だった。 来る日も来る日も、ネコのヒト商人にケツの穴を掘られ続け、気が付けば俺のケツの穴は開きっぱなしになってしまった。 垂れ流しになってしまう俺の糞を嫌がったあの変態オヤジは、俺のケツにでっかいプラグを差し込み、鍵を掛けやがった。 腹が膨れるほど糞がたまり顔色が悪くなると、俺はあの饐えた臭いのするあのネコの商人の汚いチンポをしゃぶらされ、口の中一杯になるほどの臭い精液を飲み干さないと糞すらさせてもらえなかった。 それでもあの変態は俺のケツの穴を開発し続け、いつの間にか俺は女のように無様によがる情けない男になっていた。 ネコの国のヒト市場で売りに出された俺は、女物の服を着させられつつもチンポが丸見えの遊び道具に成り下がっていた。 あの市場で俺を買っていったネコの豪商が俺に命じたのは、あの豪商の屋敷の入り口で見知らぬ男と穴を掘りあう事だった。 俺より何年か早く落ちてきたと言う見知らぬ親父は、何人かの獣の女達を主とした後、歳を取って捨てられたと言う。 野良のヒトになっていた所を拾われてホモ開発されたらしい。 すっかり禿げ上がった頭をした、俺から見ても負け犬根性が染み付いた薄汚い男だった。 ある日、おれは僅かな隙を見て裸のまま屋敷を飛び出した。 手にしていたのは、豪商の家に遊びに来ていたほかのネコどもが俺のケツに突っ込んだ僅かなネコの硬貨だけ。 それでも、なけなしの金で服を買い、俺はここまで来た。 この峠を越えれば、ヒトの居住区があると言うカモシカの国らしい。 正直に言えば、峠を越せず死にたい気分なのだが。 はるか下の方から俺を呼ぶ声がする。いや、正確には殺してやると言う声だ。 どうせあの変態ネコの豪商だろう。俺のケツの穴を気に入ったらしい。 誰が止まる物か! 逃げ切ってやる!と意気込んで斜面を上り続けているのだが、まだ頂へは到達していない。 もはやあたりには苔や草しかない。冬場ともなれば厚く雪が降り積もるのだろう。 峰を目指す稜線に立ったとき、そこにわずかな踏み跡があるのを見つけた。 「バカな・・・・」 その踏み跡に立ち左右を見る。 右手は雲の中へ続き下へ降っている。左手は霧の中に消え、更に上り続けている。 「こっちだな」 俺は迷う事無く左手へと進んだ。 猛烈に喉が渇き、焼け付くような感触だった。 雪でもあればそれを舐めるのだが・・・・ おーい そっちへ行くなー! そっちへ行けば化け物に食い殺される! お前のほうが変態で化け物だろうに・・・・ 必死になって小走りに逃げる俺は何かにつまづいて転んだ。 足元に目をやると、そこには大きな獣の骨があった。 「嘘だろ?」 見事に噛み砕かれたその骨は牛よりも一回りは大きかった。 見なかったつもりにして歩き出すのだが、もはや俺の脚は限界だった。 霧の中に少しずつ光を感じていたのだけど、もう自分の思うようにならない両足がここまでだと俺に告げていた。 大地へと倒れこむように蹲った俺はそれでも行く先を見つめる。 あぁ、あと少しで峠なのに・・・・ 薄れて行く意識の中、俺はロスのクラブで踊っていた。 ブロンドのネーチャンたちとクァーズを飲みながら。 「ここまでか・・・・・」 「・・・・それで良いの?」 夢と現の溶け合う領域で顔を上げた俺が見た物は、まるでスイスの民族衣装でも着ているかのような少女だ。 細い手足と長い首、純白の肌にブロンドの髪、そして、青い瞳。 「・・・・君は?」 「私は誰でもない、ただの私。あなたは」 「ヒトの世界から落ちてきた不良品だ」 そこで俺の意識は途切れた。 そして、ふと気が付くと、大きな岩の上に寝転がっていて、少女が膝枕をしていた。 「気が付いた?」 「・・・・ありがとう。ここは?」 「ウェヲブリ山の山頂付近。普通のヒトは入って来れない場所よ」 「なぜ?」 「ここはこの地域を統べる龍の聖域だから。稲妻と雷鳴の主、サンダードラゴンのミンタラ」 「ミンタラ?」 「ここはカムイミンタラ。人の立ち入ってはいけない場所」 「じゃぁ、なぜ俺はここへは入れた?」 「あなたは死にかけているから。だからサンダードラゴンは許してくれたのね」 静かな口調でそっと喋るその少女の声に、俺はいつの間にか体中の力を抜いていた。 「へぇ、こりゃ驚いた。今日はついてるな」 下卑た声に驚いた俺が飛び起きると、そこにはあのネコの富豪が立っていた。 そして、金の力で連れてきたのか、猫の魔道部隊が一緒に立っていた。 「そっちの小娘はうちの娘にくれてやるとするか。おい、お前達、あのでっかいトカゲが来る前に・・・・ 勝ち誇った口調でネコの兵士に指示していた富豪だが、その声を聞いていた兵士は腰を抜かして座り込むと、皆一様に富豪を指差していた。 「おいおい、一体いくら払ったと思ってるんだ、しっかり『だまれ』 頭の中に直接響いてくる低く威厳のある声。 俺は何が起きたのかわからずキョロキョロしていたが、あの少女は俺の手を引いて岩の上に座らせるのだった。 「私の主が来ました。お座りなさい」 言われるがままに座った俺の前、例の富豪がこっちを振り返ると、兵士と同じように腰を抜かして座り込んだ。 俺は何かを直感して振り返る。するとそこには・・・・・ 『そこのネコ。我が庭で何をしている』 「そこのヒトの男を回収に来たのだ、俺の奴隷だ!文句があるか!」 ネコの富豪ですらも見上げるような巨躯の・・・・ ドラゴン。 映画に出てくるような西洋式の大きなドラゴンがそこに居た。 頭頂部には前後10mはあろうかと言うような、巨大な角が2本そびえている。 その両方の角の間にはアーク放電のスパークが弾けていた。 『今すぐ立ち去れ』 「言われなくともそうする!おい!ユウジ!帰るぞ!」 「ふざけるな!勝手に帰れ!」 「おとなしく帰れば殺しはしない、たっぷり可愛がってやるから喜んでいいぞ」 ヘラヘラと笑うそのネコが手を伸ばしてユウジの足首を掴みかけたその時だった。 『 誰 が つ れ て 行 っ て 良 い と 言 っ た の だ ! 』 頭蓋骨の中に高電圧のスパークが弾けたかと思うほどの衝撃が響き、思わず俺は頭を押さえ込んだ。 ネコの魔道兵士達も一瞬混乱をきたしたようだが、すぐさま複数の兵士が韻を踏むように詠唱を始める。 なにか高度で複雑な魔法でも使おうかと言う風なのだが、俺にはそれが理解出来ないでいた。 ただ、ふと振り返った先、頭骨を後方へ反らしたドラゴンが反動をつけて顎を下へと振り下ろした。 すると、その2本の巨大な角から夥しい数のスパークが飛び、高度な詠唱を行っていた筈のネコの兵士がまとめて黒焦げになった。 強力な魔法障壁を持つはずの魔道の鎧を着ていたはずなのだが・・・・ 「わわわわ・・・・ わかったわかった!今すぐ帰るから!!」 後ろを振り返ったネコの富豪は転びながらも走って下界へと降って行く。 霧の中に見えなくなるまで走っていったのだが、ドラゴンはその場に立ち上がって翼を広げると大きく息を吸い込んだ。 『シヅ 耳を塞げ』 「はい」 恐竜の咆哮とでも形容したくなる声でドラゴンは雄叫びを上げた。 その有り得ないほどの音量に頭の中で何かが砕け散る気がする。 俺を導いてくれた少女と共に座っていた大岩ですらビリビリと共振する程の声量。 驚愕と共に見上げた俺の目に飛び込んできたのは、そのドラゴンのブレス・・・・・・ 最初、視界が真っ白に染まり、まるで幾万ものフラッシュが焚かれたかのようだった。 しかしそれは、そのドラゴンの巨大な角から放たれる数千の稲妻が空へと向かったものだった。 大気中に放電したもの凄い量の電気が何を引き起こしたのかはわからない。 しかし、次の瞬間に目撃したのは、霧の彼方にまとめて着雷し、岩ごと解けていく山肌だった。 「電気の溶鉱炉みたいだ」 「あの熱に耐えられる物はこの世界にはありません」 呆気にとられる俺は呆然と少女を見るのだが、その少女はただ笑っていた。 「君は・・・・」 「私は龍の巫女。カムイミンタラへようこそ。主はあなたを許したようです」 「え?」 その言葉にビックリした俺は上を見上げる。 そこには大きな目をしたドラゴンが居た。 『ヒトの男よ。なぜここへきた』 「辛い毎日から逃げ出したくて」 『なぜ戦わぬ』 「敵わぬ相手ですから逃げるが得策です」 『逃げ出しても事態は変わらぬ。お前はどこへ行くのだ』 「ここを降りていくとカモシカの国と聞きました。そこにヒトの街があると」 やや腰が引け気味だけど、それでもユウジは精一杯胸を張って言い切った。 ドラゴンはまるで笑っているかのように口を半開きにして見ている。 長く伸びる下がシュルシュルと伸びてユウジの頬を撫でた。 『嘘を吐いているかどうかは汗の味で分かる』 何を言われているのか理解できない俺は、ただ見上げるしかなかった。 『この山を下りヒトの街へ行ってもお前の望みは叶わない。東へ下りてゆけ』 ドラゴンは突然羽を広げると、いずこかへ飛び去ってしまった。 少女は岩の上に座ったままほほ笑んでいる。 「君はここにいるのかい?」 「えぇ、私は竜灰の守護者ですから」 「竜灰?それはいったい」 「世界の覇者を生む魔法の粉。竜族が死に代わるときにだけ残します」 「・・・・良くわからないな」 「あなたにも一つまみあげます」 少女の手の中にはまるで風邪薬のカプセルの様な円筒形のパッケージが一つ。 俺は訳も分からずそれを受け取ると、掌に乗せシゲシゲと眺めた。 『その中身は我らの身そのものである。そなたの願いし時にそなたの居る場所でそれを開けるがよい。ただし、願いを叶えるには対価が必要だ。願いの大きさに見合う対価を用意しろ。対価が見合わねば願いは叶わない。そして、その灰は一度しか使えない。忘れるでないぞ。そなたの進む道に時と光を司る竜の導きがあらん事を』 どこからとも無くそう語りかけられた俺は驚いてそのカプセルをポケットにしまった。 「ひとつ聞きたい。ヒトの世界に戻る事は出来ないのですか?」 少女は不思議そうな顔をして俺を見ていたが、やがて目を閉じて空を見上げる。 『そなたのその願いは如何なる対価を持ってしても叶うまい。ただし、我ら5人の竜の灰を揃え竜を束ねる龍神の前に並べ対価を捧げるなら、或いは叶うやも知れぬ。私はその方法を知らぬが、我らの龍神は知っているかもしれない』 「お役に立てましたかしら?」 透明感のある声でそう囁いた少女はスッと立ち上がると、まるで羽でも生えているように後方へフッと飛んだ。 両足でジャンプしただけなのだが、軽く20mは飛んだようにも見える。 そして、右手を伸ばして行く先を指差すと、そのまま霧の中へ消えていった。 「こっちへ行けと言う事か・・・・・」 再び歩き出した俺はいつの間にか喉の渇きを忘れていた。 名も知らぬ高山植物の可憐な花が俺を見送ってくれた。 ◇◆◇ 「3昼夜歩き通したらヒトの集団と出会ったんですよ、ルカパヤンの落ち物回収チームでした。僅かなサイズの竜灰を見せたら、いきなりVIP待遇で街へ迎えられましてね。あとで聞いたら、サンダードラゴンの竜灰はやたら貴重品なんですって」 静かに笑うユウジの口調はいつものように穏やかになっていた。 悲惨な過去がヒトを丸くする事もある。 辛く厳しい現実を乗り越えたからこそ、このヒトは余裕を見せられるのだろう。 マサミは何となくそんな風に理解していた。 「辛い過去を思いださせてしまいましたね。申し訳ありません」 「いえいえ、良いんですよ。それより、いつものマサミさんらしくないですね。今日はいつにも無く弱気だ」 「ここしばらく、実はちょっと怖くなっているんです」 「と言うと?」 「私はただのコーヒー屋の店長です。ただのミリタリーオタクだし、それに、トリビアマニアですよ、でも」 「見分不相応な厚遇を受けている・・・・と」 「えぇ」 ユウジは何を思ったのか右手を上げると、白い手袋を外して素手を見せた。 人差し指と小指以外の爪が全部根元まで剥がされ、その部分が黒くなってしまっている。 手の甲には何かの魔法文言が焼印され、どす黒いシミとなって残っていた。 「私の手はこの焼印を打ったウサギの女が満足するまで、嫌でも女の体をいじるようにされてしまいました。でも、この魔法回路が力を得る事は二度と無い筈です、そのウサギをこの手で殺しましたから」 「ユウジさん・・・・」 「マサミさん、この世界にある物はすべて何かしらの意味を持っています。この世界に有るべき理由があるから生きているはずですよね。マサミさん、あなたは実に素晴らしい主に出会えた。私とは違うんですよ。あなたの主はあなたを必要としている。そして、あなたには妻も居るのでしょう? 妻も主もあなたを必要としているのなら、あなたの今している仕事は意味を成しているはずです」 ユウジは寂しそうに笑いながら空いてるコップにウィスキーを注いだ。 2つのコップにそれぞれ半分ずつも注げば、そろそろ瓶は空になる。 「ウィスキーが無くなってしまいましたね」 「えぇ、半分あなたに飲まれました。損失補てんして下さい」 「え?」 「冗談ですよ、ハッハッハ」 「・・・・いつかここでウィスキーを作ります。実はここスキャッパーはピートがたっぷりあるんです」 「それは素晴らしい!キルンを作る時は教えてください、手伝いに来ます」 「・・・・昔、北海道の余市と言う場所で」 「ニッカですね」 「えぇ、そうです。余市でウィスキーを仕込んだ事があります」 「従業員ですか?」 「いえ、体験と言う奴ですよ。とても面白かった」 「じゃぁウィスキーは大丈夫ですね」 「いやいや・・・・ あれで作れるようになったら企業は立ち行かないですよ。ここで思い出しながら研究します」 「いつか、スキャッパーの主力商品に育つと良いですね」 「えぇ」 コップを持ち上げ再びチン!と音を立て乾杯する二人。 グッと多めに口へ入れて一気に飲み干すと、胸が焼けるようだ。 「実は、カモシカの国から手紙が来たんです」 「ほう・・・・ 奥さんを帰せ・・・・ ですか?」 「いえ、なんか良く分かりませんが・・・・ と言うより私はまだ文章をちゃんと読めないんですよ」 「・・・・意外ですね。拝見できますか?」 「部屋に置いてありますので明日にでも。妻は文章を読める物ですから代わりに読んでもらいました」 「内容はどんなでしたか?」 マサミは一息ついて椅子に座りなおし、両手を左右に広げ肩を窄めた。 「おそらく、何かの自然災害に対する対処法を聞いて来ています。たぶん地震でしょう」 「地震ですか」 「えぇ。で、災害にあい、心が折れれば立ち直れない。あれも神の試練です」 「返信は書かれるのですか?」 「・・・・書くべきかどうか、正直悩んでいます」 「でも・・・・」 そこで言葉を切ったユウジ。マサミとて何を言いたいのかは分かっている。 貸し借りを作らないようにしておかないと、後でどう転ぶかわからない。 「慎重な対処が必要ですね」 「えぇ、妻を・・・・守りたいですから」 「あなたは本当に古風な人だ。まるで侍のようだ」 「侍だなんて大げさな」 「そんな事は有りませんよ。人前で弱みを見せず、妻にも主にも愚痴をこぼさず・・・・」 「時代遅れですね」 自嘲するマサミの目をジッとユウジは見てからコップを持ち上げ、乾杯するようにちょっと上へ揺すって飲む。 マサミも同じようにして口をつけた。 ユウジは視線を手元に落として、スーッと息を吸い込んだ。 何が始まるのか?と見ていたマサミ。 ユウジは静かに歌い始めた。 一日二杯の酒を飲み・・・・ 肴は特にこだわらず・・・・ 「英五・・・・」 マサミは目を閉じて呟いた。 ユウジはそっとほほ笑んで続きを歌う・・・・ マイクが来たなら 微笑んで おはこを一つ 歌うだけ 妻には涙を見せないで 子供に愚痴をきかせずに 男の嘆きはほろ酔いで 酒場の隅に置いて行く 静かな口調で歌うユウジの声に、マサミはグッと堪える顔を見せた。 顎を引き目をきつく閉じ、ひたすらに耐える顔をしたまま、それでも涙が溢れてくる。 目立たぬように はしゃがぬように 似合わぬことは 無理をせず・・・・・・・・ 人の心を 見つめつづける 時代おくれの 男になりたい・・・・ 静かに嗚咽するマサミはコップに残っていたウィスキーで、かみ殺した泣き声をグッ飲み込んだ。 「マサミさん。時には愚痴を言いましょう。時には弱音を吐きましょう。それが・・・・上手く生きて行く秘訣ですよ、きっとね」 「でも・・・・ 昔、英五の曲を良く聞きましたけど・・・・ 今夜ほど心を打った事は有りませんでした・・・・ 」 「きっとマサミさんが始めてこの曲を歌った人と同じ所に来たと言うことでしょうね」 「あれ・・・・ ユウジさん、英五は知らないんですか?」 「えぇ、同じ会社に居た日本人が良く歌っていたんですよ」 「そうなんですか」 マサミはふと立ち上がってキッチンへ消えて行った。 ややあってユウジが目を送った先に、小さな瓶を抱えてくるマサミの姿を見つける。 その瓶は陶器で出来ていて、木の栓がされていた。 「オオカミの集落で貰ったどぶろくです。飲みますか?」 「美味そうですね!」 「これは効きますよ、小鳩麦で作ったどぶろくです。酒の強いオオカミもイチコロです」 「ほぉ!ウィスキーで鍛えたヒトの肝臓とどっちが強いか勝負ですな」 ウィスキーの入っていたコップへ並々と白く濁ったどぶろくを注ぎ、二人の男がニヤニヤしながら乾杯する。 「うぉ!これは!」 「すごいでしょ?」 「ヤバイですね、美味い!」 「これを時々チビチビやって、すっかり遠くなってしまった祖国を思い出しています」 「まだ思い出しますか?」 「えぇ、本当は忘れてしまった方が楽なんでしょうけどね」 「さっきの曲を歌っていた同僚が、もう一つ良く歌っていた曲があるんですよ」 「・・・・言わなくても分かりますよ、もう」 「そうですか・・・・」 マサミはコップを持ち上げ乾杯の仕草をする。 ユウジも同じように乾杯の仕草をした。 それぞれのコップに残っていたどぶろくを一気に飲み干した二人。 「まだ飲み潰れてませんが・・・・もう寝たほうが良いですね」 「ですね、明日も大変ですよ、街の再建が」 「明日もよろしくお願いします。本当はこんな事をしに来た筈ではないのでしょうけど」 「いえいえ、それは気にしないで」 「お世話になります」 マサミは胸に手を当てて頭を下げる。 「その振る舞いは文字通り紳士の執事ですよ。あなたは十分立派な仕事をしている」 「ありがとうございます」 フッと立ち上がりコップとどぶろくの瓶を片付けるマサミ。 ユウジは銃火器とウィスキーの瓶をカバンへしまった。 階段を上がるマサミにユウジが声をかける。 「例の手紙、返信を書くなら誰かに代書させるべきでしょう」 「・・・・私が書いたわけではない。そういうアリバイですね」 「そうです」 カナが先に眠っている小さな部屋の戸をそっと開けるマサミ。 ユウジはマサミの方をポンポンと叩いて通り過ぎ、来客用の部屋へ消えて行った。 服を脱いでカナの隣へそっと横たわると、カナはフッと目を覚ましマサミの首に手を回した。 「遅かったじゃない」 「ユウジさんと話しこんでいた」 「お酒臭いよ」 マサミも手を伸ばしてカナの唇を塞ぎに行く。 「ねぇ」 「ん?」 ちょっと恥しそうな表情でカナがマサミを見ている。 「アリス様に全部出しちゃった?」 「うん、今日も・・・・凄かった」 「そう・・・・ 手を抜いてない?」 「あぁ、勿論」 「じゃぁ、今日はこのまま」 マサミの厚い胸板に顔を寄せるカナ。 ヒトの鼻にも分かるほどに香水の香りが残っている。 それは主たるアリスの匂いだった。 お気に入りの男にマーキングするように、アリスはわざと匂いを残したんだろうか・・・・ カナはふとそんな事を思いながら目を閉じる。 「かな」 「・・・・なに」 カナは顔を上げずに答えた。 「愛してる」 マサミはギュッとカナを抱きしめる。 その強い力がカナの胸を押しつぶして息を吐き出させるほどに。 「・・・・・・ありがとう」 「おやすみ」 もう一度ギュッとカナを抱きしめてマサミも目を閉じた。 静かに息をするマサミの耳にユウジの歌声が戻ってくる・・・・ 妻には涙を見せないで・・・・ 「かな、俺を許してくれるか」 「・・・・私はいつもあなたの味方だから、心配しないで」 「あぁ」 窓の外遠く、教会の鐘が深夜1時を告げていた。 カーテン越しに見える月の明かりが部屋にこぼれる。 螺旋を描いてこぼれる蒼い光に、マサミはヒトの世界の月を思い出していた。 いつかあの世界へ・・・・ 了
https://w.atwiki.jp/nekomimi-mirror/pages/393.html
犬国奇憚夢日記 第1話 「御館様、どうぞ」 「うむ…ちょっと濃いな」 「水を追いましょうか?」 「いや、氷が解けてちょうどよくなる」 ポール公は琥珀色のグラスを揺らして寝酒のウィスキーを飲んでいる。 この地方にウィスキーは無かったのだが、ヨシの父親マサミが貧しいスキャッパーに最適の輸出商品としてウィスキーを蒸留してか らと言うもの、今では紅朱舘主人ポール公から町民農民に至るまでこの命の水の美味さを語り合うようになった。 「ヨシ…お前…、妻を娶らないか?」 「はい?リサ…ですか?」 「そうだ」 「・・・・・・・・・・・・」 「あの娘に何か不服か?」 「いえ、ただ…今やっと父は母と水入らずの日々を過ごしていると思います」 「うむ…」 「しかし、私が妻を娶らば父も母も心配するでしょう。ですからせめて…」 「そうだな…うむ、わかった。…では婚礼の儀は来年の収穫祭とする」 「ありがとうございます…」 「リサがこの館に来て…もう15年近くになるか…」 「そうですね、もうそんなに…」 「ヨシ、お前も飲め」 「いえ、わたくしは…」 「えぇい!面倒なやつめ! 俺を一人で飲ませるな」 「実は…飲んだ事が無いので…」 「マサミの奴め、自分の割り当て分を全部一人で飲みおったなぁ~」 ポール公はグラス越しにヨシを見てニヤリと笑う。 悪意も屈託も無い、子供のような純粋な笑顔。 命の水を楽しむ男は皆こんな顔をする…、ヨシは経験的にそれを知っていた。 「ほれ、早くグラスを持って来い、お前の初酒だ」 「では…おはずかしながら…いただきます…」 少し口に含んでみる、とたんに鼻を突く強烈なアルコール臭と舌が痺れるような刺激。 グッと飲み干してからゲホゴホと咳き込む。 「ハハハ! ヨシ! もっとゆっくり飲め それ追い水だ」 「御館様… からいです…」 「最初はそんなもんだ ハハハ! ヨシの筆おろしだ! ハハハ!」 「そんなに笑わないで下さい!」 そういってヨシはグイッとグラスを空けた、ガツンと来る強烈な味。 しかし、ほんのりと酔い始めたヨシは段々気持ちよくなって来る。 「ところでヨシ…お前、女は抱いたか?」 「はい? いえ…まだです」 「なんだ童貞か、そりゃ困ったな。どこか夜這いにでも行って来い」 「しかし、領主様が夜這いを禁じる令を出した…」 「それは領内の話だ、ここは俺の家だ、俺が許す」 「お~やかたさ~ま~ よってますかぁ?」 「おい!ヨシ!どうしたその程度で…」 「ぼかぁまだぜんぜんよっぱらってないっすよぉ~えぇじぇんじぇんへいきれす」 「ヨシ… 水を飲め」 「ふぁい…」 ぐびっぐびっっと水を飲んで少し落ち着くヨシ、少しずつ正気に戻ってくる… 「お… お恥ずかしいところを…」 ヨシは赤くなった。 「ハハハ!よいよい、お前も私の子供のようなものだ」 「御館様…」 「ヨシ、お前はリサを娶れ、いいな、私が許す。子を成し子孫を残せ、次の世代だ」 「仰せのままに…」 「お前の父にも同じ事を言ったのだよ、子を残せ…とな」 「そうなんですか」 「そうだ…アリスのたっての願いだったからな…」 「御館様…実はリサがここへ来た事も、父とアリス様との関係も私はよく知りません」 ポール公は自分とヨシのグラスにウィスキーを注ぐとピッチャーから水を注いで水割りを作った。 氷の浮かぶグラスをカラカラと振って混ぜると立ち上がり窓の外を見る…。 「もう随分前の話だ…まずはリサの話からするとしよう、お前の妻になるのだからな」 「…はい、ぜひ、お願いします」 「懐かしいな…」 ポール公はグラスの中身を一気に飲み込むと一つ息を吐いて心を整理した。 館内を横切るスチーム暖房のパイプが祈を入れたようにカチンと音を立てなった。 *********************************************************1*********************************************************** 「で… 全部で幾らだ?」 「ですから… あの… 予約が入っておりまして…」 ポール公は右手を肩まで挙げると背後の従者に聞こえるよう小気味良くパチン!とスナップさせた。 「ヤー」 それだけ答えて従者が鞄から取り出したのは…、使い込まれて所々が黒ずんでいる木刀だった。 出会い頭の一撃で両大腿骨と腓骨を砕かれた猫の奴隷商はズリズリと這いずって逃げる努力を続けている。 しかし、もはや立てない状況ではイヌの兵士達に撃ち殺された仲間達の死体の中を後ずさりするしかなかった。 もっとも、だからといってこの地方領主であるポール・スロゥチャイムが手加減するようなイヌでは無い事を奴隷商は知っている。 かつての北伐で破壊活動を行っているテロリストの支援組織だと言ってオオカミの集落を襲い、兵士350人と逃げまどう村民2000人を皆殺しにした冷血漢…。 哀れな猫の奴隷商が知るスロゥチャイム氏の評判はそんな物だ。 物の話に尾ひれが付くことは良くある事だし、悪名しか話題に上らぬイヌの軍隊では、戦闘の現場で何が起こったのか極めてイヌ側に不利な形で外に伝わる事も実際珍しいことではない。 …実際の現場で起きた事は村民に化けたゲリラ兵の狙い澄ました待ち伏せ戦闘だった。 ポール公は次々と倒れるイヌの兵士達を率い飛び交う銃弾を恐れずに最後まで走り続け、敗走するイヌの部隊のしんがりを努める勇気ある貴族士官だった。 僅かに生き残った真実を知るイヌがポール公を評する時はこうなるのだが…。 僅か35人の村民…それも全てゲリラ兵の村民、彼らが立て篭もった村に入ったイヌの大隊は死傷率75%に達し、実に2000人近いイヌの若い兵士は散華した…。 何も知らず、情報提供者と落ち合うために笑いながら村に入っていった若い兵士達。 しかし… オオカミの国のスポークスマンが公式発表したそのニュースの内容は衝撃的だった。 僅か35名のイヌの兵士が350人以上のオオカミの兵士を一方的に攻撃し、村民2000人に殺戮の限りを尽くした。 おびただしい血が流れ川は赤く染まり、死体を一カ所に集めたイヌの兵士はゲラゲラと笑いながらその屍肉を貪り、食べ残した死体は焼かれた。 その煙は隣村からもよく見えたのだ…と。 事実とは勝者の側にのみ都合良く作られる物であり、歴史とはそれを積み重ねた虚構の集まりでしかない。 そんな事はイヌの国の国民が一番良く分かっている。 だが、この頬の肉を醜く歪ませ笑う、ブクブクと肥えた下品の固まりのような猫の奴隷商は真実を知らない。 彼は漏れ伝わるスロゥチャイム当主の話だけを真実だと思っているのだった…。 ウソも2000年言い続ければ真実になる。 どれ程イヌの名誉を傷付け誇りを踏みにじろうと、悪意を持って情報を操作し真実をねじ曲げることに些かの罪悪感が無い他種族にとって、イヌを対象にしたネガティブキャンペーンはかつてイヌの国軍に蹂躙された周辺各国国民の溜飲を下げる良い道具でしかなかった…。 怠惰なネコや自由を愛するオオカミの国の権力階級にある者にとって、そういったプロパガンダは国の タガ を絞める都合の良い道具なのだった…。 「この小さな広場があなたの墓場だ。何か言い遺す事はありますか?」 全く無表情で人の従者は木刀を構えた、しかし、恐怖に震える猫の商人がよく見れば、その木刀は仕込み刀だった。 鯉口を切って白刃を抜きはなったヒトの従者は斜に構えてキツイ三白眼をギロリと猫に向ける…。 「もう一度聞いて差し上げましょう。何か言い遺す事はありませんか?」 「ヒィィィ!!」 無様な悲鳴を上げて猫は這うしか出来なかった。 摺り足で追うヒトの従者は猫の尻尾を爪先で踏みつけると、尻尾の付け根に白刃を這わした。 「ごっ後生です!お願いですから命だけはお助けください!」 ヨダレと涙と鼻水をダラダラと流した猫が命乞いしているのだが… ポール公は妊娠してお腹の大きく張り出したヒトの女性が差し出したお茶を飲みつつ面倒臭そうに首を振って答えた。 「お前が買い集めたヒトの奴隷は命乞いしなかったか?」 ヒトの女性にティーカップを返したポール公は女性の従者を日影へと下がらせて椅子に座るよう命じた。 すぐさまイヌの兵士が薄掛けの毛布を用意してヒトの女性の背を毛布で覆う。 そろそろ臨月だというのに、ややもすればショッキングな光景なのだがヒトの女性も眉一つ動かさない…。 それどころか傍らにはヒトの男の子と女の子が一人ずつ母親に寄り添って立っている。 ヒトの女性は女の子の髪に付いたリボンを整え頭を撫でていた。 「ふぅ…」 忌々しげに息を一つ吐くとポール公は腰の太刀を抜き払って猫の奴隷商へ歩み寄っていった。 「御館様… 累代の宝剣をこの様な者の血で汚すのは如何かと存じます、凶事は手前が仕りましょう… どうか、お下がりくださいませ」 猫の奴隷商をきつく睨む三白眼が僅かに笑ったように見えたのは、生きることを諦めた猫の心の問題だろうか。 広場の石畳を逃げ回っていた猫の奴隷商は何を思ったのかどっかりと座り直すとイヌの領主を見上げて悪態を付き始めた。 「おうおう!このド腐れ外道のイヌコロ風情がいい気なもんだな!あんた猫を殺すのか?殺れるもんなら殺ってみやがれ! 俺様がフローラ様へ奴隷を届けないとここで死んだとすぐに分かるらぁ!そうすりゃ絹糸同盟でイヌの国はすぐさま灰にならぁ!地獄で眺めてやるからとっとと殺すがいい!」 ポール公はヤレヤレとでも言いたそうに腕を広げ剣をブラブラさせる。 それを見て広場を囲むイヌの兵士はゲラゲラと笑い始めた。 失笑ではない、大笑いである。 「マサミ、寸刻みでなますに刻んでやれ、そうだ、そこの台の上に逆さまにぶら下げてからゆっくり刻んでやると良い、血もろくに抜けず、じっくり死の恐怖味わえるだろ」 「ヤー マスター」 マサミと呼ばれたヒトの従者は白刃を鞘に収めると猫の奴隷商の両鎖骨を砕いた。 鈍い音が響き猫の奴隷商は無様な絶叫を上げ白い泡を吹き始める。 イヌの兵士が集まって断頭台のような八百屋の売り台へ猫の奴隷商をひっくり返した。 「さてさて皆様お立ち会い。イヌを虐げるネコの無様な最後、とくとご覧に入れましょう。おい、間抜けでうす汚いネコ野郎、貴様はイヌとヒトを虐げてきたようだが…、その虐げてきた存在に半殺しにされる気分はどうだ?うん?、なんとも無様なものだな。しかもさっきは何だ。泣いて叫んで命乞いか?ん?死ぬのが怖いか?今の今まで奴隷もイヌも散々殺してきて、今更自分は死ぬのが怖いから助けて下さいだぁ?随分な物言いじゃないか、おいクソヤロウ!聞いてるのかド腐れ外道!みんなお前に期待しているぜ!」 マサミは逆さまにぶら下がったネコの鳩尾を力一杯蹴り上げた。 ネコの奴隷商が我慢ならず胃袋の中身を吐き出して、三毛の毛並みが吐瀉物で汚らしい限りだ。 「おぉ!ネコはきれい好きだと聞いていたが、随分変わったメイクアップじゃないか、さっきより男前だぜ。うん、いい男だ」 途端に爆ぜるような笑いがわき起こる。 やんややんやの大喝采を聞いたマサミは木刀をグッと握りしめ、苦悶の表情を浮かべる奴隷商の腹回りに何発も打ち込んでやった。 グシャリという手応えがあり肋骨を数本へし折ったようだ。ヒトの従者は表情を変えず木刀の先で鼻先を払ってやった。 途端にネコの奴隷商が鼻血を出し始める。 「なんだ、今度は赤いルージュか、随分おしゃれだな。真っ赤な口紅引いて男でも誘うか?そこらの安い売女じゃあるまいし…、まさか…、お前は男に掘られて喜ぶホモだったのか?奴隷を売るのに飽きたらず男に抱かれる男娼か?そりゃ真っ赤なルージュは商売道具だわなぁ」 そのやり取りを聞くイヌの兵士も領民も、皆一様にいい気味だと笑っている…。 ひっくり返ってゲラゲラ笑う者、指を指して失笑する者。 下らないヒューマニズムや幻想の平等論などここには無い。 ここに存在するのは2000年の間、徹底的に虐げられたイヌの社会の現実と、徹底的に抑圧して楽しんできたネコ達の社会から不幸にも選ばれてしまった可愛そうな犠牲者だけだ。 かつては自分たちに征服されたネコが、今は自分たちを抑圧している。 そのねじ曲がった劣等感が吹き出したこういう凄惨なリンチのシーンは、イヌの社会に取って娯楽とも言える物に成り下がっている… 「そろそろ向こうの世界へ行く覚悟が出来たか?おめかしも済んだし良い頃合いだろ」 そう言ってマサミは再び白刃を抜きはなった。 冷たく光る白刃がスキャッパーの風に吹かれ眩いばかりの光を放っている。 「マサミ… ちょっと待て」 ポール公は何かを思いだしたようにネコの奴隷商へと歩み寄った。 ネコの表情には絶望しか浮いていない、自分はこのイヌに殺される…と、そう諦観したのだろう。 「お前を殺すとネコの国が大挙してやってくる?それはまことか?ならば実に都合が良いではないか。実に素晴らしい!闘争だよ、胸がときめく!イヌの国軍は一歩も国外に踏み出さず、ネコの国は一方的に…、一方的に攻めてくる!。クックック…イヌの国軍は国家を守るため堂々と戦争が出来る!」 新しいオモチャを手に入れた子供の輝くような目でポール公は奴隷商を見つめる。 「貴様のような下卑たネコが死ぬだけで世界は大きく変わるのだ、素晴らしいぞゴミクズネコ!イヌの国の国民は皆きっとお前に感謝するぞ!。ネコの奴隷商よ!お前の名前はなんだ?」 はぁ?と言う表情を浮かべるヒトの従者、そしてイヌの兵士達。 ポール公は意に返さず言葉を続けた。 「呪われた奴隷商にも故郷と家族があるだろう?この仕事から足を洗って大人しく国へ帰るなら…生かしてやらぬ事もないが…、私としてはお前をここでねじり殺してネコの国のイカレな女王に死体を届けてやりたい所だ。お前の安っぽいプライドで歴史は大きく動き世界は再び戦火に包まれる、ネコの国もオオカミの国も全て蹂躙してやろう。だがそれはイヌの意志ではない、お前の、おまえらの、ネコどもの安っぽいプライドで世界が変わるのだ… どうだ?意味のある人生ではないか、後世の歴史書にお前の名前が残るぞ、世界を滅ぼす戦の引き金を引いた間抜けな奴隷商としてな… クックック… だが、それを防ぐ手だてはまだ残されている、そう、お前の心掛け次第だ・・・・・どうするかね?」 あわわわわ…と言葉にならない状態だったが、マサミの打ち込んだ木刀が下腹部を直撃したまらず小便までダダ洩れになっていた。 「ネコの奴隷商よ あの馬車には14人のヒトが入っているが… どうだ、全部で100トゥンで売らないかね、ん?良い金額だと思うが…、それともあの世でのんびり髑髏でも数えるか?」 さすがにその数字を聞いてネコの奴隷商は我に返ったようだ。 「そんなはした金で売れる訳無いにゃ…」 そこまで言ったときネコの奴隷商は気が付いた。ポール公の眼差しが…さも道ばたで死を待つ哀れな生き物を見つめるかのような物だと言うことに。 ポール公は薄ら笑いさえ浮かべ家宝の宝剣を鞘に収めネコの頬を殴った。 「お前の命と世界の未来も含めて100トゥンと言ったつもりだが…」 やや前屈みになってネコの奴隷商を見下ろすと、今度は凄みのある笑いを浮かべた。 「なら100万トゥンここに積んでやろう、そして奴隷を私に売るが良い。お前は奴隷の代わりに100万トゥンを馬車に積んでスキャッパーを出る、そのボロボロの体でな…。ただな、この辺は賊が出るでなぁ…、行方不明になる他国の商隊も多いし…」 スクッと立ち上がった領主はヒトの従者に顔を向けると笑いながら言った。 「マサミ、先日も馬車に金を遺したまま商人の消えた商隊があったな」 従者もニヤリとして答えた。 「はい、確か500万セパタの金がありましたが…商人の姿は遂に見つけられませぬ」 ポール公は再びネコの奴隷商に顔を近づけボソボソと語りかける。 「ボロ布同然のお主を手当し、ネコの国との国境まで送り届けて、更に100トゥンの路銀をやるのだ。しかも、世界を救えるぞ…良い取引だとは…思わないかね?」 ネコの奴隷商は何かを思いだしたようだ…。 行方不明のネコの商人が死体になってネコの国の海辺で見つかったニュースがあった。 ネコの国の捜査機関が捜査したのだけど、ネコの商人が使っていた馬車は遂に見つからなかった…。 イヌの国に繋がる川が上流から死体を運んできたらしく、不乱臭を放ち丸々と膨らんだその死体にはイヌの爪痕があったらしい…。 イヌは本気なんだ…、奴隷商はそれに気が付いた。 「承知致しました領主様、手前の商品を喜んでお売りいたしますので、どうぞお改め下さいませ。お気に召しませぬ場合は…」 ネコの奴隷商は吐瀉物と鮮血まみれの汚らしい顔に精一杯の笑顔を浮かべた。 もちろん、逆さ吊りのまま引き吊った笑顔で。 「お代は頂きませぬ…」 ポール公は満足そうに振り返ると兵士を集めた。 「医療班は不幸にも大怪我をされた商人に手当せよ、それから主計班、ヒトに食事を摂らせ名前と年齢を聞け、あと、技術を持つ物はその能力を聞くのだ。それ以外の物はここの後片づけ、良いな、かかれ!」 一斉に動き始める統制の取れたイヌの兵士達。 ヒトの従者は道具を手入れして鞄に収めると奴隷を積んだ馬車の檻に歩み寄った。 馬車の奥で小さな女の子が泣いていた。 「お母さんはどうした?」 「ヒックヒック…死んじゃった…」 「お嬢ちゃんは幾つだ?」 「…7歳」 「そうか…」 女の子をあやしていたのは若いヒトの女性だった。 ボロキレ同然の僅かな布を布団被りしているほぼ全裸の女性。 ボロキレの隙間から見える体にはどす黒く変色した痣が残り、ほとんど開きっぱなしの口中は前歯がほぼ全部失われている。そして、下着類をつけていない陰部には膿とどす黒い血の跡が残っていた。 前歯が一本もない理由は・・・・聞くまでも無い事なのだろう。 女の子をあやす女性の左手には指が一本も残っておらず、左足は膝から下が失われていた。 遠くオオカミの地から運ばれてきたこの女性がどんな扱いを受けていたのか… 「この世界はどこまで腐っているんだ…」 両手を握りしめるマサミの拳から血が滲む。その肩にポール公が手を掛けた。 「マサミ… すまん… この世界の倣いなのだ… 許せ… と言っても…」 従者は声無く泣いた。この世界のヒトの扱いは…余りにむごい。 しかし、かつて自分の居た世界を思い出すとき、この奴隷の扱いがそれほど酷いのかどうか、考え込んでしまうときがあるのも事実だった。 他の種族がヒトを虐げるならともかく、自分の居た世界では、ヒトがヒトを虐げていた事実を忘れる事は出来なかった…。 「ポール…、どうか…可能な限りの手当を…、その分俺が…」 「よい…このスキャッパーに来る者は皆、私の家族だ、イヌもヒトも、家族だ」 ポール公は檻の扉を開けた。恐怖に泣き叫ぶ女の子を抱きかかえてポール公はあやしている。 「もう泣かなくても良いぞ、ここにいれば安全だ… 名前は何という?」 「・・・・・・りさ…」 「そうか、良い名前だ」 ポール公は馬車の檻から出てくるとアリス夫人に女の子を預けた、アリス夫人の優しい目が女の子をあやす。もう怖くないよ、大丈夫、大丈夫…と。 ポール公は再び檻にはいるとボロボロの女性を抱きかかえた、無表情の女性は感情がどこかに消し飛んでいるようだ。 檻から抱きかかえて外に出された女性は太陽を見上げている。 イヌの兵士が椅子を持って走ってきて、ポール公はそこに女性を座らせた。 「そなたの名は?」 うつろな表情の女性はボソッと呟く 「あぅぁ…」 「あや… というのか?」 女性は少しだけ頷いたようだ、左足の膝部分が化膿し死臭に近い腐臭を放っている。 どこでここまでの扱いをされたのか、それを問いただしたい衝動に駆られたものの、まずは手当が優先だった。 「マサミ」 「はっ」 「ヒトの奴隷を解放する、それぞれ適職に就けろ」 「仰せのままに」 「それから、けが人と病人の快復に最大限注力しろ」 「それは…言うまでも無く…」 「あと…」 「あと?何を??」 「あの薄汚い奴隷商の件だが…」 「はい」 「殺して森に埋めよ、馬車は焼き払え。殺し方は… お前に任せる」 マサミは一歩下がると慇懃に頭を垂れた。 「御館様の仰せのままに」 ポール公は無表情の女性にそっと自らの上着を掛けた。 落ち着きを取り戻し泣きやんだ女の子をアリス夫人から抱き戻すと頭を撫でながら紅朱舘へ歩いていく。 いつかあのネコの奴らを皆殺しにしてやる・・・・・・・ この世で一番汚い物を見るような眼差しでネコの奴隷商を睨み付け、誰に聞こえるともなくそう独り言を呟いた。 **********************************************************2********************************************************** ネコの奴隷商が『行方不明』になって3週間。 ポール公はネコの国の女王陛下へ親書をしたため送った。 親愛なるネコの王国の猊下へ、謹んで信書奉り候。 本領内にて1泊せしネコ族の奴隷商が街道脇の森にて馬車内で怪死しておりました件。 まことに遺憾ながら本領内をうろつく山賊の類の犯行と思われ候。 掛かる件のヒト奴隷も行方不明にて,まこと持って恥ずかしき事態に付き賊の討伐に全力を挙げる所存にて候。 付いてはネコの国の国境検問を堅め、国境線の見張りを厳重せしむようお願いするもの也。 以上、スキャッパー領主より恐々謹言… 慇懃無礼な文章を書くのもなかなかどうして疲れる物だとポール公は苦笑いする。 ネコの奴隷商が置いていったヒトは男が8人、女が6人。内15歳未満の男子が2人と女子が3人。7歳の女の子が最年少だった… この幼さでネコの国に行けば、裕福なネコの富豪辺りに陵辱されて責め殺されていたかも知れない…。 小児偏愛の変態揃いと噂されるネコの豪商や王侯貴族に買われていったらどうなっただろうか…。 どう頑張っても収まらぬネコの大人のイチモツが幼い少女の小さな女性器を無理矢理に引き裂いて、死ぬまでボロ雑巾のような扱いを受けたかもしれない。ヒトを殺したところで何の罪の意識もないネコも多いと聞く。 そして、むしろ殺して欲しいと思うような扱いを受けるヒトの存在をポール公は知っている。 新しいもの好きなネコが面白がって遊ぶのもどうせ最初の数週間だ。 どんなお気に入りのおもちゃだって飽きてくれば、やれ足が邪魔だのうるさい手だのと言ってねじり切ったり引きちぎってみたり…。 ズタボロになるまで攻められ体を動かす事も出来ず、部屋で糞でもしようものなら躾のなってないダメなヒトめと死ぬまで殴られるか、ニヤニヤしながら浣腸三昧で腹が破裂するまでの拷問だろう。 泣き喚いて許しを請う姿が楽しくてたまらない…、などと身も凍るようなセリフを載せたヒトの飼育雑誌がネコの国にあると言う。 尻の穴から腹が膨れるほど水を入れられアナルキャップで栓をして、ぽっこり腹が膨らんで苦しがるヒトを縛りあげ。フワフワクッションだ!などと笑っている写真が掲載されていたのを見た事もある。 棘付きのロープで全身を縛りあげ吊るされ、更に鞭で打たれ白い肌に鮮血の赤い玉を浮かべ虚ろな表情のヒト女性…。なぶり殺しに遊ぶだけ遊んで、それであっけなく死んでしまえば、その死体を片付ける不名誉な仕事はイヌの出稼ぎ労働者達…。 男の子であればまだ物好きなメスネコに拾われ、いかがわしい奉仕を強要され飼い殺しにされる可能性もあるのだろうが、女の子の扱いは凄惨としか言いようが無い。 しかし、それすら救いと感じる恐ろしい運命が待ち受けている場合もあるようだ。 ネコの国の女王に買い取られたヒトの奴隷がどうなったのかを知るものは居ない。 噂では慈悲深い女王が元の世界に送り返してるとも、或いは城の地下で秘密の研究に従事しているとも言われている。 しかし、血塗れの女王とまで呼ばれる人物が送り返すような高徳を持つ筈が無い…。 どうせ怪しげな実験でなぶり殺しにしているか、さもなくばヒト同士を闘わせ殺し合いを眺めて葡萄酒でも舐めているのが関の山だろう。 イヌの世界に落ちたヒトは運が良いのかもしれない。命拾いしたヒトの男女はスキャッパーで新たな人生を歩み出すことになる。 もっとも、このイヌの国でスキャッパー以外に落ち、そこで餓死したり病魔に倒れるヒトもまたかなりの数で居るのだが・・・・・・。 スキャッパー地方におけるヒト族の地位は、マサミの献身的な努力で他の地域では考えられないほど高い物になっている。 貧しく乏しく恵まれぬこの地方がイヌの国の中でも上位指折りの経済的実力を備えるに至ったのは、ヒトの世界からやってきたマサミの知識と、そして領主が集め保護したヒト達の努力の結晶だからだ。 厳しい寒さ、冷涼な気候、森は安いチーク材、丘は一面ピートに覆われ、丘と丘の間は底なしのボグになっている。遅い春から涼しい夏が来るこの地では小麦位しか主食になる農産物を栽培できない上にその量も決して十分とは言えない。 しかし、この世界になかった物をマサミは作り出した、彼の知識とそして執念で。なぜなら、それはマサミ自信も欲しかったから。 今ではすっかりスキャッパーの主力商品に成長した命の水。 そう、ウィスキーだ。 すっかり日の暮れた紅朱舘の一室、暖炉の火に照らされて片足の女性が手当を受けていた。 指が全て失われていた左手は内部まで壊疽をおこしており、医者はやむを得ず手首からの切断を選択した。 ろくな麻酔も無く気休めの痛み止めだけで切断に及ぶのは命の危険があった。 しかし、放っておくにもひどい怪我だ、いずれこれが元で死んでしまうだろう。 一気呵成に太刀で切り落とされたのだが、イヌの数に対してですら数の足りぬ僅かな医薬品をヒトにも構わず投薬し平癒に努力した結果、その傷口はすっかり塞がり今は右手の鏡写しな義手が付けられている。 膝の皿下で失われていた左足は化膿がひどく、大腿部中間付近より蛆虫療法を試みたのだが、案外うまく行った様で今では肉が盛り上がるほどに回復している。 骨が見えているうちに義足のソケットが取り付けられ、やや不自由ながらも歩けるようになっていた。 それもこれも、今回保護したヒトの中に歯科技工士や指物師が居たのが大きいのだが。 「さて、カナさんから採寸して作ってみましたが、合いますかどうか…」 そう言って歯科技工士が取り出したのは前歯の入れ歯だった。 無理やりに口を広げられ左右のアゴ関節が外れやすくなっている彼女の口は指一本分しか開かない。 そっと広げ上下の前歯を装着してみる。 慎重にスナップロックの位置を調整した技工士は何度か填めかえすと位置を微調整していた。 「道具が無いし材料もアレだけど…グッと咬んでみて」 女性は前歯を食いしばるのだが、入れ歯はビクともしなかった。 「有り難う御座います…、やっとまともに話が出来ます…、御館様、本当にありがとうございます」 暖炉の前で火にあたっていたポール公は笑って軽く頷くとウィスキーのお湯割りをグイッと飲んだ。 その向かいで同じく椅子に座りマサミもウィスキーを煽っている。 公式の場から一歩さがったところに来るとマサミはポール公と気楽な会話をしている事が多い。 孤独なポジションである領主にとっての本音を語り合える友人といった扱いなのだが… 「アヤ…、そなた、ヒトの世界では何をしていた」 「はい、看護士でした」 「カンゴシ?なんだそれは?」 「医師の補助をする助士だよ」マサミが横から口を開いた。 「うむ、で、そなたはヒトの出産に立ち会ったことがあるか?」 「はい、産婦人科でした」 「出産専門の医院で働いていたと言うことだ」 マサミはすかさず注釈を付ける。 ポール公はマサミとアヤを見てからアリス婦人と顔を見合わせた。 「アヤ… そなたの仕事はここスキャッパーにヒト専門の授産医療局を作ることだ、ヒトがこの世界で無事に出産出来るよう設備と制度を整えよ。その予算は私が用意する」 「はい、かしこまりました」 「うむ、そういえば…マサミ、カナはまもなくか?」 「おそらくここ数日だと思う…」 「アヤ、そなたの初仕事だ、我がスロゥチャイム家執事の4人目の子供を取り上げよ、この館内のどの部屋でも良い、そなたの仕事部屋とする。この世界ではヒトの子が産まれても死んでしまうことが多いのだ。私はそれを何とかしたい」 「はい、では明日からでも…、ただ、この足では…」 「よろしい、ではヒロ、そなたも同じ仕事とする、よいな」 「はい、かしこまりました」 ヒロと呼ばれた歯科技工士は頷いた。 「ヒト専門の医局を作る、ここに来ればヒトは助かる、そんな仕組みを作りたい」 そのやり取りをアリス夫人はジッと眺めて微笑んでいる、膝の上にはリサがスヤスヤと眠っている。 「マサミの努力が実を結びましたね…」 「ご主人様… 全てはご主人様のご配慮の賜です」 「最近は名前で呼んでくれないのね」 「ご主人様をお名前でお呼びできるのはポール公だけですから」 「マサミ、アリスはお前の主だ、従者が主の名を呼んで何が悪い、遠慮無用だ」 「ポール公のお許しも出たことですし…昔のようにアリス様と」 「えぇ、マサミ、そう呼んでね」 「それと、俺を公付けで呼ぶなよ、こんな時は気楽に呼んでくれ」 「しかし…この場には…」 ポール公は苦笑いする、マサミも笑っている。 この二人の間にある信頼関係は主従ではなく親友や相棒と言った雰囲気なのだった。 二人が笑いながらウィスキーを飲んでいるシーンは周りの人間にとって実に微笑ましいシーンでもある。 そして、皆が微笑んでいるのをポール公は満足そうに見ているのだった。 もう一度グイッとウィスキーのお湯割りを煽ってグラスを眺めていたポール公はふと何かを思いだしたようだ… 「そう言えば…アリスとマサミが出会ったときの話、私は聞いた覚えがないな」 「あれ?ポールには話ししてなかったか?」 「そう言えばアナタには話していなかったわね、私がマサミを見つけた日の事」 しばらく暖炉の火を見ていたヒロが助け船を出すようにマサミへ話を振った。 「執事殿のお話を聞かせて頂けませんか、私も聞きたいです」 アヤも話に乗った。 「執事様の努力がなければ…私は死ぬところでした、是非」 アリスの膝の上で眠るリサが「おかあさん…」と寝言を言って体の向きを変えた。 その頭を撫でながらアリスは窓の外を眺めた。星が降るように輝いている夜だった。 ■□■ 紅朱舘の一室、ポール公とアリス夫人の寝室隣にある談話室。 不意に強い風がやってきてガタガタと窓を震わせた。 ヨシは立ち上がってカーテンを閉める、これだけでスチーム暖房の暖かさは随分変わってくる。 ポール公がピッチャーの水をゴクリと飲んでフゥと一つ息を吐いた。 随分昔のような、つい最近のような話を思い出しながら、それでもなお色々と思う事があったのだろう。 領主は妻アリスなのだが、この地の維持運営はポール公の責務である。 「父は…強かったんですか?」 「まぁな、俺も半殺しにされ掛けているし…それに…」 「アーサー様の一件ですね」 「そうだ、あのドラ息子もマサミに殺され掛けた」 「すいません…」 ポール公はグッとグラスを空けると笑いながら首を振った。 「違う違う、アレはマサミが悪いのではない」 その時突然ガチャリとドアが開きアリス夫人が部屋に入ってきた。 「あら、ヨシ君と一杯ですか?」 ヨシとポール公は同時に部屋の入り口へ眼をやった。 湯上りでこざっぱりしてるアリス夫人がポール公の隣へ腰を下ろす。 「風呂上がりの妻は色っぽいだろ?ん?ヨシ…」 「…あっ、あの…、その…」 「アナタ、ヨシ君が困ってますよ、フフフ…」 「ヨシ、お前も早く妻を娶れ」 「はい、ですからそれは来年の…」 「そうだな、婚礼は来年とする」 ポール公がニヤリと笑う、アリス夫人もニコニコしている。 「だからと言ってその前に夫婦の契りを交わしてはならぬと令を出した覚えはない」 「御館様…」 「ヨシ…、この世界のヒトは皆つらい運命を背負っている、私はそれを変えたいのだ。イヌはヒトと仲良く暮らしていける。イヌにない物をヒトは持っている、そして、イヌと同じ物をヒトも持っている。勤勉で礼節を重んじ信用と信頼を大切にする、そして、自己犠牲の精神。マサミはかつてこう言ったよ。ヒトの世界でもイヌは最高のパートナーだった…と。お前はこっちの世界に来て生まれた から知らぬだろうな」 「はい…、でも、何となく分かります。ヒトはイヌと暮らしていけます」 ポール公がもう一杯水割りを作ってアリス夫人と義人にグラスを渡した。 「我がスキャッパーの地にヒトとイヌの楽園を作る、それが我が生涯の仕事だ」 「御館様、僅かですがお力添えをさせていただきます」 「うむ、頼むぞ」 3人で乾杯した命の水をヨシは初めて美味いと思った。 「ところで…アリス様」 「なに?」 「アリス様と父の出会いを教えていただけませんか」 「聞きたい?」 「はい、たった今、御館様からリサとアヤさんヒロさんのお話を伺ったばかりですが」 「マサミの事ね。長い話になるわよ、それでも良い?」 「はい、もちろんです。父がこの世界に来たときの話しを是非、アリス様から…」 アリスはもう一口飲むとグラスをテーブルに置き、ふと天井を見上げると何か見えない物をジッと見つけるようにしている。 それは薄れつつあった記憶の中の光景をゆっくりと思い出しているような、そんな感じがしていた。 「…かつて、スロゥチャイム家は西部14郡の一つ、ミール高原を所領としていました」 「ミール… 綿花と菜種の地方だな」 ポール公はグラスを煽りつつ合いの手を入れる。 「えぇそうよ。あそこに居た頃は綿花を摘む仕事を私もよくしたものだわ…」 「アリス、お前も摘んでいたのか?」 「えぇもちろん。あれはミールの女の仕事でしたから…」 **********************************************************3********************************************************** イヌの国の西部地域。ミール高原一体をかつての所領としていたスロゥチャイム家。 議会と王府と軍閥の間で続く微妙なシーソーゲームの中で、アリス・スロゥチャイムの父であるジョン・スロゥチャイム卿は国軍によるネコの国への侵攻を主張する急進派の一人だった。 既に40万余もの軍団を編成するに至ったイヌの国軍を2方面に分け、大規模な北伐と称し偽装出撃するレガード右将軍の一派に加わる筈だった。 そう、筈だったのだ。 今ではすっかり国王気取りの腰抜け大将軍と揶揄されるサリクスが余計な事さえしなければ…。 王位継承権1位の姫を娶り国王となるはずだった100戦無敗のレガード将軍が王位に就きさえすれば…。 正面戦力で劣らぬだけの実力を備えたイヌの軍団は瞬く間にネコの国を蹂躙し、国力を飛躍的に発展させ、然る後にオオカミ征伐を本格的に行い、北と南の出口を確保する。 2000年前の大いなる試みが幻に潰えた後、数多くの戦史研究家や戦略研究所が念入りに作り上げた綿密な戦闘の手引書。 これこそが最高の武器になるはずだった。 そしてイヌの国は再び発展期を向かえ、この絶望的に貧しく乏しい現状を改善する筈だった…。 そう、全ては国王の座を手に入れたいと欲する自分の欲望で、国家も国民も売る事すら憚らなかったサリクスの醜い野望さえなければ・・・・・・。 レガード将軍が幽閉された後、ジョン公は青年将校を集め軍の中で秘密結社を募った。 血気にはやる若者達はジョン公の語る夢物語に狂喜した、綿密に練り上げられたクーデター計画。 腰抜けのサリクス将軍を粛清し、穏健派一派を一掃してからレガード将軍を旗頭とし一気に侵攻する作戦。 姫を一緒に幽閉しておけば敗北時の言い訳は出来る。 クーデターだったのだから姫は無関係だ…と。 雪の舞う新年2月のある日、計画は実行に移される。 100人の青年将校が徒党を組み王都の直近へ近づき森に潜んだ。 ジョン公の登城を待って同時に侵入し一気に形成掌握を謀るはずだった。 しかし、青年将校が潜んでいる森の近くでいくら合図しても彼らは出てこない。 よもや失敗か?と訝しがるも時間の経過に抗えず登城したジョン公を待ち受けていたのは自らへの粛清だった・・・・・・・・。 何も知らぬ姫と薄ら笑いを浮かべる大将軍。 噂に聞く軍の暗部が青年将校を抹殺したのだろうか? まさか…そんな事は… 飢える国民を差し置いて馬鹿馬鹿しい都市伝説の生体兵器研究に予算を付けるはずが無い。 忠義と信頼を根本とするイヌの国民を国家が欺く訳が無い。 ジョン公は敗北を悟った。 大将軍の下した命はミール地方の召し上げと領地代え。 スロゥチャイム家所領の地域に真銀の鉱脈があるかもしれない…と、占い師が予言したのだと言うのだった。 国家直轄地指定となり所領を追われる事となったスロゥチャイム家のあたらな任地は領民との関係が極度に悪化しているレオン家の旧領地となった。 同じく急進派で北伐に出征したレオン家の嫡男ポール・レオンが従軍している間に、当主ニール・レオン伯が急死し空白地となっていたのだった… ネコの国との国境にほど近い南部スキャッパー地方を所領とする事になったスロゥチャイム家はミールの地で召抱えた従者達を連れ西部高原地帯から峠を越えてスキャッパーへと向かった。 その途中で季節外れの雪嵐に遭遇し小さな宿場町に3日も足止めされていのだが…、小さな旅籠の一室でジョン公は高熱に倒れた。 衛生環境と食糧事情の悪いイヌの国にあって寒さに負け発病する病は死に直結する。 過去何度も何度も繰り返されてきた悲劇、大規模伝染病ではない小規模な高速伝播性のウィルス疾患。 つまりインフルエンザ。 高熱にうなされる砂漠風邪、数日間の下痢と下血が続き突然死するネコ風邪。 イヌの顔がまん丸に膨らみトラと見間違えるほどリンパを病むトラオタフク。 様々な病気が繰り返しイヌの国の冬を襲って夥しい数のイヌを彼岸の彼方に送っている。 医療はあっても薬事が乏しく、そして僅かな薬品は恐ろしく高価。 しかも、その製造を行うべき原料の大半は他国からの信用供給に頼る現状。 緊急人道援助といったところでイヌの国の人口が半分になっても発動される事はないだろう。 他国へ病魔が広がらない限り、そんな事を期待するほうが間違いなのだった。 小さな宿場町に発生した重篤な病人の存在は小さな村の壊滅をもたらす疫病神かもしれない… 宿場の長は恐る恐るたった一人の娘、アリスに早急な出立を促すのだった。 「アリス様、小さな宿場を守る為…どうかご英断をお願いいたします」 悲壮な覚悟で話を切り出す村長の顔は引きつっていた。 垂れ耳が後ろへと下がり髭は震えている。 このままでは…。村民はみなそう思っていた。 「雪が収まるまで後1日だけ、お待ち願えませぬか?」 アリスは無表情でそう言った。 いや、看病に疲れきっているからなのだろう。 端正な顔立ちの貴族の娘だ。 同じ宿場に居合わせた人買いの商人達も目を見張る美貌ではあったが、今そこに居る疲れ切ったイヌの娘にその影は無い。 「では…あと1日だけ」 村長はそう言って旅籠のロビーを出て行った。深い溜息を一つついてアリスは部屋に戻る。 いっそこのままどこかで死のうか…、サリクス将軍はこうなる事を見越して父を転封したに違いない。 どす黒く渦巻く情念がグルグルと頭の中を回っている。 「お父様…」 「…アリス、私はもうダメだろう、今夜遅くにここを出立する」 「しかし!」 「よい、道中どこか森の中で私を埋めよ、国土を汚す罪を許したまえ」 「お父様…」 「アリス、苦労を掛ける…。よき夫を迎えスロゥチャイム家を再興せよ、頼むぞ」 「お父様、どうかそんな事は!」 「アリス…私の夢は潰えた…負け犬は静かに舞台から下りるのだよ」 「とうさま・・・・・」 ミールを出た時には多くの家来が付き従ったのだが、道中で路銀が乏しくなるにつれ暇を与え故郷に帰らせてきた。 何時の間にか僅か3人の従僕を連れるだけの小所帯となったスロゥチャイム家。しかし、この部屋には親子二人しか居ない。 3人の従僕ですら感染を恐れ部屋に入らなくなったのだった…。 「お父様、そんな事をおっしゃらず…」 「アリス…すまぬ」 「どうかお休みください、氷嚢の中身を替えてまいります」 アリスがそういって氷嚢を抱え部屋を出たとき、建物の外でドサリと音がした。 屋根から雪が落ちたのだろうか?と窓の外を見たアリスの視界に入ってきたのは血だらけで転がるヒトだった。 「アリス、何の音だ?」 部屋の中からジョン公が問いかけてきた、アリスはもう一度そのどこからとも無く落ちてきた モノ をシゲシゲと眺める。 「お父様、窓の外に誰かが倒れています・・・・ヒトかも知れません」 暗くてよく見えないのだが、おそらく倒れているのは人間だろう、そしてヒト族だと思うのだが。 「お嬢様!」 僅か3人の従僕がノタノタとアリスの所へやってきた。 どうしましょうか?見て見ぬフリでしょうか? それともいっそシメて食べてしまいましょうか? ヒトの肝は滋養があると言います。御館様の病も… 「おまえ達、あのヒトをこの部屋に入れなさい」 え?っと訝しがる従者をジョン公は怒鳴りつけた。 「怪我をしているであろう!、苦しむ者を救うのも貴族の役目だ!アリス、その者の手当てをせよ」 従者達はヒトを抱えて部屋に連れてきた。 どこから落ちたのかアチコチに擦れた跡が残り、左足からは血を流していた。 ブツブツと文句を言いながらも気を失っているヒトをジョン公と同じ部屋に入れたアリスはジョン公の氷嚢を代えた後でヒトの手当てを始めた。 「お父様… このヒトをどうするのですか?」 「わからぬ、ただな、見過ごすにはあまりに酷い怪我だ」 「お父様…まずは自分の体を…」 アリスはそれ以上何も言わず血を拭い、左大腿部に負った裂傷は肉を合わせ包帯を巻いた。 痛みにうなされるヒトが激痛に耐えられず目を覚ましたとき彼が見た最初の光景はベットに横たわる犬の顔と、フワフワ赤毛の垂れ耳を頭につけた美しい女性だった。 「ここは? あなたは? なぜベットに犬がいる?」 意識を取り戻したヒトは起き上がろうとしたが、大腿部の傷がそれを可能とさせなかった。 「私はアリス、まずは横になりなさい」 「アリス? アリスだって?」 「私を知っているのですか?」 「私の知る犬にアリスと言うメスが居たのだが…」 「それはヒトの世界の話ですね」 「ヒトノセカイ?」 苦痛に顔を歪めつつヒトは強引に上半身を起こした。体中が痛み呼吸が苦しい… 「ゔぅ… 肋骨が折れてるな…」 アリスはヒトも寝かせようと手を伸ばした、しかし、その前にヒトは自ら横になって腹式呼吸をしている。 シャツの上から掌を肋骨に当てて折れている所を探している。 「まずいな… 肺が…」 そう言うとヒトは目を閉じた、そして次の瞬間… 「ぐぉ!おぉぉぉぉぉ・・・・・! いてぇ!」 胸の骨を指を押した後でわき腹をグッと押し込み骨の位置を矯正した。 ヒトの口から赤い泡が出てくる。 呼吸が苦しいのかサカナのように口をパクパクさせて空気を吸い込もうとするが、どうやらうまく吸い込めないようだ…。 顔色が青くなり手が震えている、典型的な酸欠症状。 「アリス… 口から息を吹き込んでやれ… その者が死んでしまう」 「え?父様?口から…ですか?」 「そうだ!早くしろ!酸欠で死ぬぞ」 アリスは一瞬躊躇した、しかし、白目を向いて苦しんでいるヒトを見て覚悟を決めたようだ。 大きく息を吸い込んだアリスはヒトの唇に自らの唇を重ね息を吹き込んだ。 「あまり強く吹くなよ、そっとだ、ゆっくり、ゆっくり」 「ぷは! どうでしょう?」 「うむ、顔色がよくなった」 ヒューヒューと轟くような音を上げてヒトが息を吹き返した。 段々と顔に赤みが差してきて危険な状態を脱した事がアリスにもわかった。 「死ぬかと思った… ありがとう…」 「いえ、礼には及びません、これも…これは貴族の義務です」 ヒトの男の鮮血で唇を真っ赤に染めたアリスがハンカチで血を拭う。 その仕草を見ながらヒトの男は訝しげに口を開いた。 「貴族?貴族だって?」 「わがスロゥチャイム家は2000年続く名門です」 「決してそうは見えないけど…本当なの?」 アリスと落ちてきたヒトは不思議に噛み合わない話を続けている。 状況をよく掴めないヒトと、それを保護したイヌの関係はかなり微妙だ。 「ヒトの男よ そなたはどこからやってきた」 もはや半分死んでいるはずのジョン公が口を開いた。 「イヌがヒトの言葉をしゃべるってのは…イヌ好きには天国だな…」 「ヒトの世界にもイヌがいるのかね?」 「あぁ、人類1万3千年の歴史の中で既に8000年は一緒に暮らしている」 「ヒトの世界でイヌはどんな扱いをされているかね?権利は守られているか?」 「・・・・・・・・そうでもないな、俺はイヌ好きだが、イヌ嫌いには仇扱いだ」 「では、ヒトの若者よ、この世界の因果を教えよう」 「さっきからこの世界だのあっちだのと言ってるけど…ドッキリなんだろ?」 「・・・・・・・・・・・・・・無理も無いか」 ジョン公はゆっくりと上半身を起こした。 途端にゲフゴフとこもった咳をついて上身を屈めてしまう。 アリスは咄嗟に起き上がって駆け寄った。 「お父様、無理をしないで」 「アリス、私の背に枕を入れよ」 「お父様、お体を横に」 「よい、既に半分死んだ身だ、最後にこのヒトに因果を…」 二人で話をしているところへヒトが歩み寄ってきた。 「そなた…歩けるのか?」 「なんとかね… それより、あんた風邪か?」 「軽い伝染病だ、そなたに移れば死ぬかもしれんが」 「イヌのしゃべる世界に来たんだ、死んでるようなもんだろう」 「そなたは生きている、そなたはこっちに落ちてきた」 「へ?んじゃ…地獄みたいなものか?」 「地獄ではないが…ここはそなたの居た世界とは違う世界だ」 話を上手く飲み込めていないヒトの男は目をパチパチさせながら何かを考えている。 腕を組みやや俯いて・・・・自らの身に降り掛かった事の真実を探っていた。 「ひどくつらい世界って感じか?」 「その様なものだろう、ここはヒトにとってつらい世界だ」 「つらいって、そんな事言ったってさぁ、女房がいれば…って・・・・・あ!」 「どうした?」 「ここに来たのは俺だけか?…女が落ちてこなかったか?」 「そうだが?アリス、外にいたのは彼だけだったな?」 「はい、お父様」 「ほんとか?」 「あぁ、嘘はつかない」 人の顔から見る見る赤みが消えていく… 「カナァァァァァァ!!!!!!!」 突然そう絶叫してドアに走って行こうとした人はバランスを崩し倒れた、動かぬ足を強引に動かし立ち上がるとドアを開ける。 しかし、そこにはスロゥチャイム家の従者3人が顔を並べていた。もちろん、イヌなのだが…。 「俺のほかに誰も居なかったのか?」 ジョン公はドアの外に立っていたイヌへ声をかけた。 「スミス、リーナー、コール。他に人は居たか?」 「いえ、倒れていたのはこのヒトの男だけです」 「間違いないか?」 「はい、その後周辺を捜索しましたがこのカバンだけでした」 ヒトの男はその場に崩れた… 「バカな・・・・・・そんな・・・・・・・バカな・・・・・・・・嘘だろ・・・・・・・・・」 「だれか…連れ添いが居たのか?」 「あぁ…妻が…一緒に居たはずなんだが…」 「では、どこか違うところへ落ちたかもしれん」 「探す方法は無いか?」 「無い事は無い…ただ…」 「ただ…?なんだ?」 「吹雪の夜に一粒の麦を風に飛ばし、翌朝その麦を探すようなものだ」 「カナ…」 「そなたの妻は…ゴフ!」 「お父様!」「御館様!」「上様!」 ジョン卿は突然喀血して崩れた。 アリスはあわてて上半身をベットに寝かせがジョン卿の咳は止まる気配すらない。 ヒューヒューと辛そうに喉を鳴らし血を吐いている。 ヒトの男は自らの身の上に起きた事象を理解し切れていないようだ。 だが、息苦しそうなジョン卿を見ているうちに何かを思いついたようだ。 青ざめた顔を起こしベットに集まるイヌ達に声をかけた。 「それではダメだ、身を横にして血を吐かせるんだ」 崩れていたヒトはゆっくりと立ち上がりイヌの貴族に近寄った。 「私の命はもう僅かだ、ヒトの男よ。この世界に落ちてきてつらいだろうが…しっかりと生きよ、やがてそなたの生まれた世界へ戻る方法を誰かが見つけるかも知れぬ…。希望を失った者は死ぬのだ、私のように死ぬのだ、諦めが人を殺す、諦めたものから死ぬ。だから生きよ、生きて妻を捜すがよい。この世界でヒトは奴隷として生きる。しかし、希望を捨てず生きよ、さすれば… グハ!」 再び喀血して今にも死にそうなイヌだが、目はまだ生きている… 「諦めを踏破した者だけがこの世界で生きてゆける、ヒトもイヌも、全ての生き物がそうなのだ。ヒトの男よ。そなたを待ち受ける運命はつらく苦しいが、それでも生きよ。朝を迎えぬ夜は無い。やがて来る陽の光を信じて闇を歩むが良い。そなたには妻を捜す目標があるではないか。泥を啜っても生き続け目的を果たせ、さすれば道は開ける…」 「なんかすげぇ話だけど…、要するに俺達人間に生存権は無いって事?」 「その通りだ、そしてこの世界で人間とはヒト以外を指す言葉だ、ヒト族は人間のウチに入っていない。だからもう一度言おう。諦めるな、諦めが人を殺すのだよ。諦めを踏破したヒトだけが人道を踏み越える権利者となる。けっして諦めるな… そして、この世界を楽しめ」 「俺は…誠実、松田誠実。マサミと呼んでくれて良い、あなたの名を聞きたい」 「私はジョン。ジョン・スロゥチャイム。48代目スロゥチャイム家当主である、そしてこれが私の娘であるアリスだ、スロゥチャイム家の親族はこの二人になった」 「あなたの家に何が起きた?貴族といえば…」 「貴族の義務を果たし従軍した息子は皆死んだ、家督を継ぐものはアリスだけなのだ、だから婿を取らねばならぬ。イヌの名家でわがスロゥチャイムより下位の家から婿を取り家督を継がせて再興をはかりたい…」 ゴフゴフと血を吐くイヌの貴族、マサミと名乗ったヒトの男は指をこすり合わせ息を吸った。 「呼吸が苦しい病で療養してるのに空気が乾きすぎている、コップに一杯お湯を注ぎ湯気をゆっくり吸うと楽になるはずだ」 「マサミと言ったな… そなたは医師か?」 「いや、そんな高級なものじゃない。ただ、ヒトの世界にも同じ病があり、その対処法をヒトはよく知ってるだけだよ」 「それはなぜかね?」 「ヒトは…有史以来その病と闘ってきた、そしてその病で死んだヒトは軽く10億はいるはずだ。世界規模で病が吹き荒れヒトはなんども絶滅の危機と闘って来た。だからヒトは自然とその対処法を身につけた」 「10億…凄い数だな」 「俺がこっちにくる前の世界では、ヒトの総人口は60億を越えていたからね」 マサミはカバンを受け取るとチャックを開けた。中からマルチビタミン・ミネラルのサプリと滋養強壮ドリンク。そして抗生物質の入った薬を出した。 「スロゥチャイム卿、病の療養にも拘らず、しばらくまともに食事を摂っていないとお見受けしますが、どうですか?」 「さようだ、まったく食事を受け付けぬ」 「では…お嬢様、お父上にコップ一杯の白湯と洗面器一杯のお湯を用意してください。それから、そちらの方々、ドアを閉め暖炉の近くに鍋を置いて湯を沸かして。スロゥチャイム卿、私が知る限りの医療を行います。ただ、残念ですがあなたはそう長くはなさそうです…」 「あぁ、分かっているいるよ、我が生涯を終える日がすぐそこまで来ている」 湯を沸かせといわれた3人の従者が暖炉に鍋を掛け湯を沸かし始める頃、アリスがコップ一杯の白湯と洗面器を用意してきた。 「マサミさん…はい、どうぞ」 「ではスロゥチャイム卿…」 「ジョンでよい」 「ならばジョン卿、ゆっくりと洗面器から湯気を吸ってください。そしてまずはこれを飲みましょう、栄養剤です」 マサミはマルチビタミンのタブレットを10錠近く取り出して半分を砕いてお湯に溶かし、残りをジョン公の口に入れた。 途端にビタミン系のすっぱい味がジョン公の口に広がる。 味覚が麻痺しつつあるものの、強烈な味は舌を痺れさすほどでいい気付け薬の役目も兼ねているのだった。 「噛み砕いてゆっくり飲んでください」 「うむ…、苦いしすっぱいな」 「良薬は口に苦し…です。ヒトの諺です」 ジョン卿はボリボリと噛み砕き喉に落とし込んだ。 喉が焼けるように痺れるものの、久しぶりに味を感じているのは嬉しい事だ。 「うむ、いい言葉だ。ヒトにも高度な学問があるのだな」 「そうでなければ、人は月まで行けません」 「ヒトの世界ではヒトは月に行ったのか?」 「えぇ、そうですよ、月だけではなくもっと遠い星まで」 「素晴らしいな…」 マサミが次に取り出したのは銀のパックに覆われた薬だった。 直射日光と外気を完全に遮断するパッケージを破り取り出したのは白いペレット状の薬。 「さ、次はこれです、特別な薬です、4錠を一つずつ噛まずにゆっくり飲んで」 「うむ…」 「そして最後にこれを飲んでください、体を強くします」 最後に出てきたのは、いわゆる栄養ドリンクの小さなパッケージだ。 16種類の生薬が配合されたそれは効き目こそ強烈なのだが・・・・ 「…強烈な臭いだな」 「まだ蓋を開けてませんよ?」 「イヌの鼻は鋭いのだ」 「ヒトの世界の犬と同じですね」 「そうか」 ジョン公はゴクリと一口で栄養ドリンクを飲み干した。 「さぁ、あとはゆっくり寝ましょう、一晩中火を焚いて部屋を暖かくし湯気を充満させます…」 「マサミ…と申したな。私はもう間もなくだろう、だが最後に一つだけやり残した事を見つけたよ。この世界ではヒトは奴隷だ。しかし、主を持つものは多少優遇される。むやみに殺されずに済む。だから、今私に施してくれたささやかな礼だ。そなたを私の従者とする。アリス、中央にそう報告しろ。貴族の家持ち奴隷ならば、少なくともそこらの民草に弄られ死ぬ事は無い…」 ジョン卿は息を整えつつ言葉を紡いだ。 少しずつ体に吸収されている薬効を実感するには至っていないものの、適度な湿度と温度により呼吸器系の苦しさは緩和されつつあるようだ。マサミはジョン卿の言葉を反芻して確かめているのだが… 「ひどいな…そう言う事か…。あぁ、分かった、分かったよ、妻を見つけるまで、そうしよう。妻を見つけるまで俺は死ねないからな。あなたと契約しよう。ジョン・スロゥチャイム卿。あなたを私の主人とする事を私は了承する、妻を見つけて共に死ぬ日まで」 うむ…と、そう頷いたジョン公はゆっくりと目を閉じた。 先ほどまでヒューヒューと喉を鳴らしていたはずなのだが今は静かだ。 やがて薬が効き始めジョン公はゆっくりと眠りに落ちた。 **********************************************************4********************************************************** ジョン卿が眠りに落ち安定しているのを見届けマサミはソファーに腰掛ける。 その向かいには疲れきった表情のアリスが椅子に座っていた。 「お嬢様…アリスと言ったけど…」 「えぇ、そうです、アリスです。それがなにか」 アリスの表情にははっきりと警戒の色があった。 今までヒト奴隷を見た事が無いわけではない。 ただ、こんな近くで見て話をするのは初めてなのだろう。 身分階級の上下として相容れない相違があるとアリスは考えていた。 「いや…、こっちの世界がどうとかヒトの世界とか、なんかちょっと混乱してる」 「誰でも世界が変わればビックリします」 「しかし…イヌと話をするのは不思議な気分だな…」 「ヒトの世界のイヌは話をしないのですか?」 「えぇ、その通りです、それどころか2足歩行もしないし、手の指もそんなに発達していない…、だいたいそもそも…こんなにヒトの感覚で言う美人じゃない」 「そうなんですか?」 マサミは鞄を引き寄せると中から財布を取り出した。 財布の中にはつい最近まで一緒に暮らしていたイヌの写真が入っていた。 「これがヒトの世界のイヌの姿です。ムサシという名前でした」 「・・・・・・・・4本足。その名はどういう意味ですか?」 「私のいた国に実在した剣豪の名です、強そうな名前と言う事でそう名付けました。そして実はこの子の母犬がアリスというのです。素晴らしいイヌでした、賢く凛々しく明るかった。なにより、ヒトと一緒に遊ぶのが大好きでした」 「そうなんですか…。ヒトの世界のイヌは遊ぶだけなのですか?」 「いえ、そんな事はありません。盲目のヒトを先導する盲導犬、難聴のヒトの耳代わりとなる聴導犬。それ以外にも牧羊犬、作業犬、狩猟犬。そして、軍用犬」 「いろいろ仕事があるのですね」 「そうです、我々ヒト種は猿から進化したのですが…、最初に家畜化した野生の生き物がイヌでした。そして高度に品種改良と掛け合わせが行われ…、つまり、ヒトにとってイヌは違う種族の中で最も親しんだ生き物なんですよ。最良のパートナーだった」 「パートナー?」 「はい、そうです」 「…つまり、イヌはヒトが改良を加えてきた種族なんですか?」 「ヒトの世界…私の居た世界では…ですがね」 アリスはもう一度マサミの渡した写真をじっくりと眺めた。マサミと一緒に写った赤樫色の毛に覆われた大型犬の写真だ。その毛の色はアリス達赤耀種の体毛とよく似た色だった。そして長く立派に伸びた飾り毛はジョン公にも生えていて、傍目から見ると実に風格ある姿になっていた・・・・・・ そして、マサミと一緒に写るイヌはアリスから見れば・・・・ハンサムな好青年の顔立ちに見えた。 「ならば、私達はその末裔でしょう」 「え?」 「イヌの古い伝承にそうあります。遠い昔の世界、沢山の生き物の中で最初に神と暮らしたのはイヌだった…と。神はイヌの姿を変えて様々なイヌの血族が生まれた…」 「でもヒトは神ではありませんよ」 「口伝ではこう言います、神は自由に空を飛び大きな海を越え大地に穴を穿ちその中を駆け抜けた。神々の膨大な魔力が夜を昼のように照らし、闇を埋め尽くした魔力の光は世界中に光の網を掛けた。そして、丘よりも高い塔をいくつも築き、石や岩をも溶かす炎を操り、星々の輝きですらその手に掛けた。しかし、神々は些細なことから諍いを繰り返しやがて地上に不浄の太陽を作った、その不浄の太陽は神の世界を蝕み続け、神々が吐き出す呪詛の言葉は黒い怨念となって世界を覆ってしまった。やがてそれは大洪水をもたらし神の世界は終わった…と。」 マサミはうな垂れてジッと手を見ている。 「核兵器と…二酸化炭素ですね」 「それはなんですか?」 「核兵器とは全てを焼き払う小さな太陽ですよ、悪魔の炎、破壊の光です」 「それはどれ程凄い物なのですか?」 マサミは回答に困った、核兵器の威力などどうやって説明するのだ…と。 そして… 「その威力は…夏を冬に変えてしまうほどです…」 「冬?」 「えぇ、山を削り谷を埋め森や草原を一瞬で焼き払い…、大陸を引き裂き島を沈め一瞬で100万人を消し去って…そして不毛で腐敗した世界を作り出す…最悪の物でした」 それから長く沈黙が続いた。 双方とも何を言うべきか考え込んでいる。 全く異なる世界からやってきたヒトはイヌにとって神だったのだろうか?。 「ヒトの世界の話です…。ヒトは争う事ばかりしていた時代がありました。それは長い歴史の中で繰り返し繰り返し起こりました。全てを焼き払い夥しい血が流れ、人々は信じあいながら憎しみ合いました」 「それはこの世界も一緒です。イヌは世界を統一しようと世界に戦いを挑みました。そして同属であったオオカミに裏切られ、厳しい環境に押し込まれ…、そしてこの通りなのです。常に飢えて常に貧しく常に乏しい生活です」 「…ヒトは信じる神の名に於いて愛を説き、友情と説き、信じる事の大切さを説き続けました。が、それと同時に神の為、神の名誉の為、信じる神の世界を作る為、違う神を信じるヒトを滅ぼさんと争いました。ヒトは神の教えを守り人を殺す事を禁忌としましたが、神の教えで殺してもよい存在を同時に作り…そして…」 「ぎりぎりのバランスを保つ為に弱い存在を意図的に作ったのですね」 「その通りです」 「この世界ではその役目をイヌが負っています…」 「では…イヌはその境遇に甘んじているのですか?」 「そうです、そして世界はイヌを見張る事で諍いを回避しています。イヌが再び暴れると困るから、今は仲良くしていよう…。そう言う世界です」 「・・・・・・・・率直に言います、偽善と欺瞞にまみれた実に酷い世界ですね」 「え?」 「ヒトの世界の政治的な話です。仮想敵を作るなら、その仮想敵が弱体化しないように適度な支援を行うのが常識です。生かさず殺さず…ですよね。」 「…その…通りです…ね…。考えてみれば…、イヌは何度も滅びそうになって、そのたびにギリギリで回避しています…」 「生かさず…殺さず…、まったく同じ事をヒトはヒトにしていました。肌の色が違うと言うだけで、軽い気持ちでなぶり殺しにされるヒトが居たのです…。まったく同じだ」 「マサミと言いましたね」 「あぁ、そうです」 「この世界ではその位置にヒトが居ます…。つらい話ですが…、あなたの妻がもしこの世界のどこかに落ちて生きていたとしても…、メスのヒトに待ち受ける運命はあまりに過酷です…。この世界では…」 「・・・・・・・・やはり、やはりそうですか。先ほどジョン卿が言われた言葉を聞きながら、たぶんそうなんだろうと思っていました。奴隷の身分にあるなら…、それは不可避ですからね…。慰み物にされるのは世の倣い…。男は殺され女は犯される…」 「つらい話を…してしまいました。どうか許されたい…」 「お嬢様…諦めるに足る話をありがとう。しかし、それでも人は生きてきた。私は諦めず朝を待ちましょう…。朝を…」 マサミは我慢ならず崩れて泣き始めた。 太ももから血を流しているにも関わらず泣いている。 声を殺して、床を掻き毟り泣いている。 「マサミ…さん…、お願いです。スロゥチャイムに力を貸してください。その代わり、あなたの奥様を探すことに力をお貸しします。どうか…」 「…妻は身重でした。間もなく私は子供を抱く筈だったのですよ…。なんで…」 声にならない声で嗚咽し続けるマサミ…。アリスはなんと声を掛けて良いのか分からなかった。 ふと思い立ってアリスはお茶を入れた。何か飲めば少し落ち着くかもしれない。そんな気がしただけだった。 「マサミさん。お茶をどうぞ。口に合いますかしら」 「お嬢様…」 「どれほどつらくても、朝を待ちましょう…」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「スロゥチャイムは転封されました、左遷です、これから酷い所へ行きます」 「酷いところ?」 「えぇそうです。父はもう新しい任地で何かをする事は適わないでしょう」 「では、お嬢様は重責ですね」 「えぇ、ですから…どうか私に力を」 アリスは祈るような表情でマサミの目をジッと見つめた。絡み合う視線が無言の会話を続けているようだ。 これから自分がどうなるのか、その不安に押しつぶされそうなマサミは今現在最良の選択をする事が良いと判断したのだった。 「わかりました。では私の出来る範囲で…」 「ありがとう…」 マサミはおもむろにカバンを開けて薬を取り出した。 「こんどはなんですか?」 「鎮痛剤です」 「痛みますか?」 「えぇ、ちょっと…ね」 タブレットを4錠ほど口に放り込むとお茶で流し込んだ。 ズキズキとする痛みで何とか怒りを抑えているような状態だ。 シラフなら辺り構わず暴れていたかもしれない。 あまりにショッキングな事に直面すると人間の脳は真っ白になると言うが…。 「お嬢様…俺もここで寝て良いかな?」 「はい、毛布を用意しましょう」 「いや、平気です。ジョン卿の保温用に火は起きてるし湿気もある。問題ない」 「ここでは病が移る危険が…」 「大丈夫です、流行り病は熱と湿気に弱いですから」 そう言うとマサミはソファーに横になった。 折れているわき腹がズキズキと痛むが、それよりも心の痛みのほうが勝っていた。 「マサミさん…毛布を敷き寝てください、骨が折れているでしょう?」 「実は酷く痛いです、助かります」 毛布を重ねて敷き横になったマサミ。 薬の影響がジワジワと浸透し眠りに落ちてしまったようだ。 アリスはそっと歩みよるとマサミの顔をシゲシゲ眺めた。 ヒトをこれだけ間近で見たのは初めてだった。 このヒトのこの口が…私のファーストキスだ…。 これが…。 そう思うとアリスは何か急に恥ずかしくなってきた。 ヒト風情にファーストキスを自らしたと言うのが何か酷く下劣な行為に感じた。 父の診療をしてくれたとは言え、これは奴隷階級のヒトなのだ…、それを私は・・・・・ 軽くいびきをかいて寝ているヒトをたたき起こしたい衝動に駆られたが、その前にふと気が付いてしまった。 私は今夜どこで寝れば良いのだろう?と。 やむを得ずアリスは椅子の背もたれを脇に挟んで寝る姿勢に入った。 窓の外は雪。風がやみ全ての音が雪に吸い込まれていくような静かな夜。 父ジョンがいつ死ぬか分からない緊張の連続で、傍目で見ている以上にアリスの体に負担を掛けていたようだ。 いつの間にかアリスはぐっすりと眠りに落ちた。 明け方近くになってマサミが目を覚まし痛むわき腹をカバーしつつアリスを抱き上げソファーに寝かしたのだが、アリスはまったく気が付いていないようだ…。 どこか遠く、意識の届く範囲ギリギリ辺りでドサッ!と何かが落ちる音をアリスは聞いた。 それは窓の外、屋根に積もった雪が朝日に解け下に落ちた音だった。 その音はぐっすりと眠っていたアリスの眠りを覚まし活動再開を促すに十分なものだったようだ。 いつの間にかソファーの上で毛布を被って寝ていた事に未だ気が付いていないようだが… 「だからなマサミ…、貴族は常にそれを心掛けねばならない」 「はい、心得ました」 「うむ、覚えの早い者は助かる、そなたはヒトの世界で高い教育を受けたようだ」 アリスは起き上がって周囲を確認する。 昨夜までここに寝ていたはずのマサミはベットの横に座り、ジョン卿は上半身を起こしてマサミと話し込んでいる姿を見つけた。 「お父様お体は…」 「おぉアリス、目が覚めたか。ご覧の通りだ随分回復した気がする」 「そうですか…」 アリスがウルウルしつつソファーから立ち上がった。 「今、なにか食べるものを用意してきます」 「いや、それには及ばぬ。マサミがこれをくれた」 マサミが取り出したのはゼリー状の流動栄養食…、つまりウィダーなどのゼリー食品だった。 「これは完全栄養食品です、吸収が早く消化もいいです、そして体の負担が少ない」 「しかも、果物の味がして美味いな」 「最後の一つでしたが…同じようなものを私が作りましょう」 ジョン卿とマサミはすっかり主従の関係に納まっていた。 ジョン卿はまるで息子に教え諭すようにこの世界の常識や礼儀作法をマサミに説いている。 そして、貴族の家の従者として必要な知識も一緒にマサミは学んだ。 「貴族の存在などヒトの世界では既に物語の1ページになっています」 「では、少々驚くかね?」 「いえ、貴族の物語を何度も本で読みましたから、むしろ面白そうですね」 「そうか」 マサミはジョン卿の背中に手をやりベットに寝る手助けをした。 「では御館様、もうしばらくお休みください。少なくとも熱が引くまでは安静にしていないとダメです」 「うむ、世話になるな」 「御館様、主人は主人らしく振舞ってください、従者に世話になるなどと言う主人は居ません」 「そうだな、出来の悪い主人を許せ」 「仰せのままに」 笑って胸に手を当て会釈したマサミはアリスに視線を移した。 「お嬢様、朝食にしましょう」 「マサミさん、あなたは…」 「本日付けでスロゥチャイム家執事を拝命しました、さん付け不要です」 「そうですか…、では、とりあえず下の食堂へ行きましょう。父上、食事に行って参ります」 「うむ、宿の主人によろしく伝えよ。マサミ、頼んだぞ・・・」 **********************************************************5********************************************************** すっかり夜が更けてしまい紅朱舘は寝静まっている。 時折強い風が吹いて窓を鳴らすのは、すぐそこまで冬将軍が来ている事を風が知らせているのだろう。 深々と冷える夜が始まるとスキャッパーの秋は終わりを迎えるようだ。 やがて、来る日も来る日も雪が舞う季節がやってくる…。 「そんな訳でね、結局あと1日と言っていた宿を出たのは1週間後だったわ。馬に乗ってやっとの思いでたどり着いた宿を父は歩いて出て行ったの。マサミが作った食事は父の体力を随分回復したわ」 グラスの淵に目を落としアリスは遠い昔を思っている。 そこから先にも様々なエピソードがある筈なのだけど… 「結局ね、そのままこれと言ってイベントも無くすんなりとスキャッパーに到着したのよ。夏の暑い頃だったけど、実際ここは夏でも朝夕が涼しくてビックリした。そしてね、紅朱舘がとにかく酷い有様で…ヒトが入れる状況じゃなかったの。早い話がお化け屋敷状態よ、なんせオオカミの時代に完成してから1000年近く誰も住んでなかったから。父は最初の3日間を城下の宿で過ごし、その間に私とマサミと最後まで一緒に居た3人の従者が領主公室を片付けて父の最初の部屋にしたわ」 アリス夫人はどこか他人事のように話を続けた。 「そしてね、それから程なく…10月終わりくらいだったかな、秋には父もそろそろ最期を迎えそうでね、領民は誰も挨拶に来なくて困り果てて。ミールから持ってきたお金もそろそろ終わる頃で、もうウチも終わりね…って話をしたわ。その頃にポールの乳母だったって人が訪ねてきてね、スキャッパーのしきたりを教えてくれたの」 「あの…例の収穫祭のダンスの件ですね」 「そう…、マサミと踊って、程なく雪が降り始めて、年を越す事無く父が死んで…。あの冬は大変だった。次の一年は駆け足で過ぎて…、でも色々やったなぁ…。麦の秋蒔き化指導とか消雪路開削とか…。そして、2年目の春節祭の前にポールが帰ってきたのよ…」 「懐かしいな…、遅くに夜這いに行ってマサミに殺されかけた」 「そうね、あの時のマサミは本当に凄かった…。で、その秋に結婚して…。ヨシ、今日はここまでにしましょう」 「はい、アリス様、ありがとうございました」 椅子から立ち上がったポール公がグラスの残りを一気に喉へ流し込んでグラスをテーブルに置いた。 「ヨシ…夜這いに行くなら早い時間にしろよ、遅くに行くと殺されかける」 「御館様…はい、覚えておきます…。では失礼します、おやすみなさいませ」 静かにドアを閉めて部屋を後にしたヨシは音も無く廊下を駆け抜けて自室へ帰った。 ただ、初めて飲んだウィスキーがかなり効いている様でベットに潜り込むと程なく眠りに落ちた。 命の水を飲みすぎると翌日の朝がどうなるのか… ヨシはやがて経験する事になる… 第1話 了
https://w.atwiki.jp/soukokunoarterial/pages/44.html
アペンド1:天慶第二学園転入生ディスクAP1ヘタレスの迷宮 AP1周回時特典 AP1追加キャライベント進行 AP1温泉覗きイベント アペンド2:テックジャイアン特典ディスク アペンド3:水っ娘風雲児と真夏のトライアングルAP3追加エピソード ※2周目以降限定バトル攻略 AP3本編追加要素 AP3周回時(全体マップ限定)特典 パーフェクトガイドブック付属アペンドディスクver2.0追加要素 ver2.0周回時(全体マップ限定)特典 [部分編集] アペンド1:天慶第二学園転入生ディスク 創刻のアテリアル予約特典(非売品) AP1ヘタレスの迷宮 西蒼川商業区に「ヘタレスの迷宮」が登場する。 開けることによる大きなペナルティはないので、細かいことを気にしない人は利用すると良いだろう。 主な効果としては 全ての戦闘で味方リーダーのLPが1.5倍になる(イベント・特殊戦闘含む) 初心者用のアイテムが幾つか入手できる。特にへたれ盾は序盤からとてもお役立ち。性能的に序盤はもちろん、ものによっては終盤でも役立つ効果持ち。 章が進むと迷宮内にアイテムが追加される 章毎に敵からドロップする粒片が固定されているので、目的の色が有るなら稼ぎやすい マップ上にへたれカードが現れ、アイテムを入手できる(紫色のイベントカード) 戦闘がオートでもサクサク終わるのでカード経験値上げに最適 デッキカードの模様がマスコットのアナスタシアに替わると共にへたれの文字が追加されている(周回で消える)むしろ可愛くなって良いという声も(笑) AP1周回時特典 次の周回を引き継ぎありでプレイを始めたとき、一定の条件を満たすと限定フィギュアが手に入る。 この限定フィギュアは錬成素材となる。 周回直後に条件を満たしていなくても、進行中に条件を満たした時点で達成・入手となる。 入手限度は1周に一度、周回をまたげば再入手可。 つまり、対象カードを常に基準枚数分保持しておけば、周回直後に該当フィギュアを入手できる。 逆に、確保が難しいカード(レアなバトルカード・宝石など)を消費して数を減らしてしまうと、ルートによっては再達成に苦労する事も。 (情報-親睦内に条件記載有) パーティーランク30以上(限定フィギュアB:神殺しセリカ) パーティーランク25以上(限定フィギュアH:放浪剣士ユエラ) 1周目で25は頑張ればできるが、30はやや難しい。 パーティが充実する人間ルートを1周目か2周目に持ってきて、アペンドキャラを参加させれば、2周目中盤~終盤で達成できるだろう。 ちなみに裏闘技場を制覇できれば、素材購入&錬成で1周目でも余裕で達成できたりする。 BPカンスト(限定フィギュアC:姫将軍エクリア) 99999でカンスト。店内で達成した場合、店外に出てから報酬入手となるため、即買い物しないよう注意。 最初からカンストしている必要はなく、途中でも条件さえ満たせば自動的に達成となるので、いつの間にか達成しているかもしれない。 磁粒鉄蟲20所持(限定フィギュアD:魔神ナベリウス) さくさく狩れる相手でもあり、よほど無視しないかぎりある程度は溜まっているはず。 天使ルートだと本社攻略中に嫌というほど出てくる。 暗黒槍コンプ(限定フィギュアE:守護霊リタ) 闇槍ルナグレイプ・孤影の闇槍・悪魔の暗槍・冥界の魔槍・堕天使の魔槍。 EXシナリオで入手するものもあり、3周目以降。 宝石各種3個所持(限定フィギュアF:魔神アムドシアス) カードからの入手だけでは、一切売り払っていなくても貯まっていない事が多い。 裏闘技場制覇後は色粒片が買えるので、活用するべきか。 死者の闇雲20枚所持(限定フィギュアI:死神ラグスムエナ) ダメージ半減や強敵のデッキに入ってる事が多く、少々面倒。 意識して稼いでいかないと2周目最速錬成には間に合わないかもしれない。 粒片どれか30所持(限定フィギュアJ:弟木精クレール) 光燐石どれか10所持(限定フィギュアK:姉木精クレアンヌ) 1周目から一切売らなくても早々には溜まらない。 裏闘技場制覇後は素材が買えるので、活用するべきか。 鋼石20所持(限定フィギュアL:錬金術師レグナー) 問題なく溜まるだろう。一応、裏闘技場を制覇すれば店でも買える。 王女危険種2種コンプ(限定フィギュアR:暴君ブリジット) 歪秤王女ルファティ・歪秤王女ルマドラ。天使ルート1周で達成可能。 モノ危険種9種コンプ(限定フィギュアS:苦労人オクタヴィア) 共通:死歌で惑わすモノ・塵を掻き集めるモノ 天使ルート:恵みを食らうモノ・磁粒門を呼ぶモノ・磁粒を束ねるモノ(EX)・死魔を創造するモノ(EX) 悪魔ルート:磁粒祝福を受けしモノ・統合を統べるモノ 人間ルート:イキルカルモノ EX危険種もいるため、最速達成は4周目。(全ルート1周+EX危険種解放後に天使ルート) オークランド訪問10回以上(限定フィギュアQ:世話焼きコレット) 後述にもあるが、アペンドシナリオ進行中に1章途中でオークランドが出現する。 ここに10回訪れることで達成する。 単純に入る・出るを繰り返すだけでもOK。 余談になるが、オークランドのボスであるまおーさまが限定フィギュアM(野心家まおーさま)を固定ドロップし、ここで出現するオークが限定フィギュアT(魔王軍団オーク)をレアドロップする。 普通のドロップアイテム扱いなのでフール系などで複数入手可能。 まおーさまLv2(限定フィギュアN:無邪気なリリィ) まおーさまLv5(限定フィギュアO:ツンデレリリィ) まおーさまLvA(限定フィギュアP:一人前リリィ) まおーさまがパーティーに加わると報酬条件として登場する。 それぞれ、フィギュア名と同じリリィのカード素材でもあるので是非確保したい。 パートナーや○装備で育成していれば容易に達成可能。 ちなみに周回でまおーさまのクローンを出していると、まおーさま関連のAPクエストが最初から出現しているが、 APクエストが達成扱いになるのは追加キャラ加入イベで正式に加入した後から。 なので周回でクローンまおーさまのLvがAを超えていても正式加入しない限りは入手できないので、 リリィのフィギュアが必要なら漏らさず加入イベントをこなしておくように。 AP1追加キャライベント進行 2周目以降から開始される 期限付きの時限イベントなので注意1章では「キューブ粒子を5個集めよう」が始まるとフラグ消滅 ※一部の美來イベントなどを見ると自動的に1日が消費されて追加シナリオを見られなくなるので要注意。 逆に言うと、アペンドイベントを全て見ると美來のイベントが一つFailedになる。 仮に追加キャライベント優先で進める上で両立不可の親睦イベント008「美來に妹ズの思い出を聞こう」を落としたとしても 天使・人間√で妹ズ3名、及び各ヒロインの個別√への影響も無く問題なくENDまで進める事が出来る。 また008の親睦イベントを起こしても入手できるアイテムも無いため、 Failedが付くのが嫌だ等がないならば追加イベントを優先しても問題ない。 なお、1章のクリアタイミングで時間調整しようとしても2章は「必ず」月曜開始になるので意味が無い。 2章においてウィルフレド、美來のイベントは以下のようになっている。 ウィルフレド 水:夜の学校(一日経過) 木:通常イベント 金:文化祭(一日経過) 美來 水~金:「美來と里帰りをしよう」(一日経過) ※美來噴水イベント 水~金:「美來と妹ズの思い出を聞こう」(実質一日経過*2) 以上の事から 「美來と里帰りをしよう」はウィルフレドの木曜日に差し込むことで両立が可能だが、 「美來と妹ズの思い出を聞こう」は二回自宅に帰る必要がある為、両立不可能になる。 つまり3日間で2度、自宅に戻る必要があるけど日数たりねぇよ!って事。 【1章】 オークランドのオークを倒すとレアで限定フィギュアをドロップ。 このフィギュアを1つを材料に魔王軍団オークのカードを1枚錬成できるので、デッキに4枚入れたいならば フール系装備、リターナやウィルのパートナースキルでドロップ個数を増やして挑戦してみよう。 また10回以上パークに訪れること(ただ出入りするだけで可)で特典フィギュアが貰えるので、ついでに出入りすると良いだろう。 天慶第二学園(海斗)でハイシェラ様の噂 対戦台で、だの様を倒す 1日進める 職員室、学園にハイシェラ様赴任 自由行動時間に再度学園に行くとハイシェラ様出現 ハイシェラ様イベント進めていくと学園でオークランドの噂 オークランドでまおーさま倒す(複製粒子が固定で置いてあるので必要なら回収しておく) 1日進める まおーさま転入イベント 一度外に出て再度学園に入るとまおーさま出現 まおーさまが屋上に出てくるイベントまで進める 【2章】 怪物を倒した後、次の島が現れるまでの1週間に全てこなさなければならない。 文化祭は固定デッキで戦う。 幽霊の噂が出て夜の学園に行くイベント発生(水曜日) クリアすると学園にウィルさん登場(木曜日) 木工室でまおーさまイベント(金曜日)※4の前までに鳴海の「隠れた趣味」イベントをこなさないと、天使ルートの場合「鳳由物流センター」、「天慶第二学園 近郊 西部」に行けなくなるので注意 複製粒子をウィルさんに届けるとイベント進行(↑同日までにやっておく) 文化祭イベント開始。カードハンティングは、1F保健室、1F物品置き場、1F厨房、2F木工室、2F一番右の中継点に目標アイテム。戦闘回避しつつ5つ集めるまでは楽なので、面倒ならその後はウィルとハイシェラが他のチームを全部潰すのを傍観していよう。ただ、雑魚学生達はオート余裕な上に複製粒子をドロップするので、そちらが足りないなら倒しておこう。消費アイテムしか手立てがない特殊戦闘だが、問題の2チームにもガチで勝つ力は十分あり、あまり心配はいらない。ウィルを倒すと限定フィギュアG(工匠ウィルフレド)、ハイシェラを倒すと限定フィギュアA(魔神ハイシェラ)が手に入る。 【3章】 自由行動を消化していればすぐに合流・追加になる。 学園に戻ってくる場面まで進める 木工室にハイシェラ様出現 ハイシェラ様、ウィルさん、まおーさま仲間入り AP1温泉覗きイベント 温泉を覗き、成功するとCGと共にバトルカード入手。 コツは一度安全地帯であるサウナに入って様子を見る。(画面左下のSKIP FRAMEを使用して自ターンをスキップすること) 藤士郎の移動ルートを見極め、目的地から十分離れ、サウナ前に妨害する人がいなくなるを待つ。 タイミングよく飛び出して、あとは目的地に行くだけ。 1章 アカリ 2章 鴉鳥 2章 妹ズ 4章 まどか 4章 沙夜音 6章 鳴海(※悪魔ルート5章 天使ルート6章の市役所でルファディエルに話しかけるときに数日経ってから海斗からイベント) 6章 メヒーシャ(※悪魔ルート5章) 全て成功すると・・・ [部分編集] アペンド2:テックジャイアン特典ディスク テックジャイアン2012年6月号付録 「パーフェクトガイドブック付属アペンドディスク」に再録。 今から手に入れるならばこちらの方が簡単。 バトルカード3種類追加 アイテム1種類追加 バトルカードは錬成、アイテムは怪しい店で購入することができる。 [部分編集] アペンド3:水っ娘風雲児と真夏のトライアングル プレス版は2012年8月9日(木)の秋葉原電気街祭りと、コミックマーケット82で限定頒布された(セット商品の一部で単体販売なし、公式通販もなし)。 ver1.05の修正パッチが同梱されており、最新の環境でない場合は適用することを推奨している。 2012年8月28日、公式サイトほかミラーサイトで無料配信開始。 http //www.eukleia.co.jp/eushully/eu13/eu13_dl.html 『リュカティエネーと天使ヴァフマー、それぞれの追加エピソードと新カードのいわずもがな(誰得)アペンドデータ』 AP3追加エピソード ※2周目以降限定 2章以降、西蒼川商業区のNTD天慶ビル2階アダルトDVDコーナーでイベント発生。 リュカティエネーとヴァフマーをヒロインにしたエピソードが進行できる。 途中でイベント戦闘が数回あり、デッキ固定の特殊戦闘を行う。 特定の周回の中で、エピソード自体は何度でも見ることができ、2回目以降は戦闘スキップができるようになるが、周回特典同様クリア後報酬は1回限り。 「水っ娘風雲児」編 選択肢で「リュカティエネー編」を選ぶ CVはアカリ役の水霧けいとさん 2回目の上級悪魔とのバトルでは、勝つとシナリオ進行、敗北するとイベント(シーン回想)の後にゲームオーバー 一度クリアした後セーブし、もう一度エピソードを開始して、1回目の戦闘はスキップ、2回目の戦闘で自滅すればOK クリアするとバトルカード:エレナ(No.0797 過去作「めいどいんばに~」から)を入手 「真夏のトライアングル」編 選択肢で「ヴァフマー編」を選ぶ CVはシャネオルカ役の篠原ゆみさん クリアするとバトルカード:ミーナ(No.0798 過去作「めいどいんばに~」から)を入手 バトル攻略 + リュカティエネー編 一番最初の戦闘はプテテットを壁にして敵リーダーを攻撃しまくろう。水弾は攻撃力アップ用にしておこう(というかそれしか使い道がない) 2回目以降の戦闘は基本は進化系を出して雑魚を一番攻撃力の弱いやつが前衛に出るまで狩る。出たら壁になる。水弾はぶっちゃけ攻撃力アップ用ぐらいしか使い道が無いので場には絶対出さないように 水弾は壁にするのもあり。基本的には相手リーダーの前に出して攻撃をブロックしてもらう。2回目の戦闘で負けるには初っ端オートでお手軽敗北 + ヴァフマー編 基本的に敵リーダーをひたすら攻撃して他のは壁ちなみに2回目のはあれで手加減してくれているらしい AP3本編追加要素 バトルカード追加(32種) 追加エピソード中で出てきたバトルカードの錬成や、これまで出番のなかったフィギュアの一部を使った錬成などが可能になるが、一部のカードは条件を満たさないと作れない。 追加エピソードをクリアする、今回追加されたカードを錬成する、裏闘技場大会制覇などが解禁条件になっているものがある アイテムカード追加(21種) 装備15種類、消費5種類、素材1種類 素材は新マップ、装備は3種類が闘技場景品、残りの装備と消費は全て錬成で入手可能 新規クエスト追加(5種) 内容は以下のAP3周回時特典参照 新規闘技場戦闘追加(3種) 通常戦でゲーマー店員撃破+追加エピソードクリアで解禁 リュカティエネー編クリアで魂の大狩人追加 ヴァフマー編クリアで塵を掻き集めるもの追加 エピソード両方クリアで死歌で惑わすモノ追加 新規マップ追加(1種) 追加マップ「忘却の孤島」は全体マップから行くことができる 追加エピソード両方クリアが出現条件。 新しい危険種「キングプテテット」がいるほか、新素材の限定フィギュアU(魔神ディアーネ)がある キングプテテットを倒して一度マップから出るまで、このマップ中では全ての危険種・消費アイテム・奥義・戦闘スキル使用不可 AP3周回時(全体マップ限定)特典 説明どおり、全体マップで受領できる周回特典。 全体マップが開放されるのは4章(詳細は章別攻略を参照) 配下99枚所持種類30(No.0796暴君リフィア) 99枚保有している配下バトルカードを30種類以上集めるというもの。 多いように見えるが、種類は何でもいいので、姫狩りデッキなどを活用して複製しまくっているとそのうち集められる。 シナリオ後半で複製粒子などの素材が買えるようになったらキャラクターのバトルカードを錬成してもいい。 錬金術+購買の学生カード・MHI本社の自動販売機で買い漁るというのも有効。 売価カード総売価格100万(No.0794バルジア王女リン) 「売却」に分類されるカードの基本売価が100万以上になるようにする。 フィギュアや宝石は錬成である程度使用してしまうことがあるが、銅・銀・金の硬貨のほか、宝石袋・箱などはそうそう使うこともないので確実に集めたい。 一番重要なことは「絶対に売らない(カンストすれば超過分は勝手に売るようになるので、それまで待つ)」ということ。 危険種総枚数80(No.0795機工種シエラ) 「危険種」に指定されている敵を倒し、手に入れられるバトルカードを総数80枚以上にする。 ウィルをリーダーかパートナーに指定し、周回して危険種を沢山倒すというのも一つの手段だが、危険種は入手する枚数(敵)が限られている為に相当な周回を要する。 AP3で追加される融合進化した真邪鬼は、シナリオ上では危険種扱いなのだが、実際は危険種ではない。カウントされないので注意。 配下純天使総枚数800(No.0793セルノ王女ラピス) 種族が天使のみの配下バトルカードを800枚以上集める。 EXルートと悪魔ルートで大量に現れるので、片っ端から複製するといい。 どうしても足りない場合は使霊や護衛天使あたりを錬成する。 「配下99枚所持種類30」と同時進行していける。 配下純悪魔総枚数800(No.0790神官ペテレーネ) 種族が悪魔のみの配下バトルカードを800枚以上集める。 クェルインプやスゥーティ、各下級魔人は出現頻度が高いので、99枚集めるのも簡単だろう。 AP1を入れているなら魔王軍団オークを複製するのが楽で、他にも姫狩りカードを錬成するという手も使える。 どうしても足りない場合は適当な悪魔を錬成することになるが、悪魔の錬成は1体作るのに3体ぐらい素材として必要になることが多く効率が悪い。 [部分編集] パーフェクトガイドブック付属アペンドディスク 2012年11月9日にエンターブレインから発売される「創刻のアテリアル パーフェクトガイドブック」についているアペンドディスク。 (ISBN:978-4-04-728475-3 3800円+税) 適用するとVer2.0となり、番外編ストーリー、マップ、カード、クエスト、闘技場戦闘、錬成などが新たに追加される。 また、このアペンドディスクにはアペンド02、03が同梱されており、まだ導入していない場合はインストールすることができる。 http //www.eukleia.co.jp/eushully/eu13/eu13_ex.html ver2.0追加要素 番外編ストーリー「アテリアルフォースブレイド」 タイトル画面に追加されている項目「Arterial Force Blade」を選ぶ クリアで追加カードが得られるほか、追加された一部カードの錬成条件となっている + アテリアルフォースブレイド 攻略情報はガイドブックを開くのが一番。 開始時にメッセージが出る通り、初期状態は引継ぎデータが使用できる。 本編中で仲間になるキャラのカードは、そのキャラが番外編で仲間になるまで使用不可。 AP1のキャラ、ヒロイン以外のキャラは登場しないので最後まで使用不可。 それに伴い、姫狩りカードが全て使用不可になっている、ウィルを使用してのカード2枚入手などが使えないので注意。 十分な仲間が揃うまでは、過去に複製していたバトルカードの出番。 基本的に序盤、レアドロップのバトルカードを無理に狙う必要はない。 ものにもよるが、だいたい後半にはザコとして現れるので、そこで複製を狙う。 後になっても出てこないものや、危険種の取り巻きとしてしか現れないものは頑張るしかない。 敵のドロップ品はほとんどがバトルカード。 リーダーはフール系よりも強化や補助のアイテムを装備した方が無駄が少ない。 ただし、後述の麒麟メダル50個所持の周回特典を見据えて、固定戦闘だけフールに付け替えるのも有り。 + アテリアルフォースブレイド攻略 基本情報 番外編の各キャラカードはひらがなの名前となっているが、本編での漢字名と同じ扱いなので専用装備が装備可能「しゅうや」で倒した敵は複製が可能初期リーダーとして手に入る「勇者しゅうや(EU)」はMAXまで育てれば「仙崎 秀哉(SR)」と同等まで育ち、専用装備で上回れるが、「仙崎 秀哉(EU)」が純白ネクタイを装備した方が使いやすい 敵はランダムエンカウント 引継ぎデータを使った場合に使えるカードはシナリオ中に仲間になったキャラ+AP02+AP03のカードのみAP01のカードは軒並み使えない アペンド無しで手に入るカードは使える 実はザコは出る場所(地形や区画)が決まっている 特定の区画で低確率でレアが出る例:光獣精フレキシア→最初のMAPの右上3マス(少なくともこの3マスは出現率が高く、体感で5~8割程)カード自体のレア度はC~UC程度なので気にするほどでも無いが…後で普通に複製もできる 狐狸精フラミシアや盛装悪魔ニルーニャなどは複製やドロップを狙えるタイミングが極めて少ないので注意 純妖精アルキナ→職人の街ムクチの周辺の発掘の炉精が出る場所 かなり低確率の模様 ちなみにムクチの右端の森はおそらく出ない(磁粒炎鳥が出るため)ムクチ右側の縦3マスが出現確率が高い 狐狸精フラミシア→サハラ近郊の砂漠 こちらも低確率の模様,黒翼種フォノスのデッキにもいる 神速悪魔ウィンディア→フエン山5合目、および山頂。山頂の方が出やすい気がする(こいつ含めて2種類しか出ないし)魔界大陸で普通に出てくる 磁流精トリニシア→天空城2-4F 3F左下のフロアが高確率。 盛装悪魔ニルーニャ→魔王城王座の間で確認 基本的に錬金可能なため、レアなものは一度リーダーカードで出会ったあとは錬金してしまったほうが速い。 意外に見落としやすいかもしれないもの(AFBクリア後の周回ならイベントや親睦の情報を見る方が早いかも) 松明購入・『砂の街サハラ』訪問後ミナトに戻るとイベント。『ドコカノ盗賊団の根城』で綺麗なペンダントを手に入れてミナトに行くと沙夜音…もとい魔法使いさやねが加入する。加入後東大陸の海で戦闘イベント(場所的に強制) ただの「レンズ」はチカクノ遺跡の、入って左階段を降りた先のシンボル敵。 幻のレンズは『砂の街サハラ近郊の砂漠』(危険種のいるマップ)にあり、どの場所にあるかはランダム。入手後にミナトに行くとまどかが加入する。ランダムとあるが、以下の二箇所のみで見つかる 重要アイデム「松明」を購入しないと絶対に見つからない。一番左の列の上から二番目の点 危険種から↓←↓と行った点 加入後フエン山に行く途中で戦闘イベント(場所的に強制) 見逃すことはほぼ無いと思うが『フエン山5合目』の右側でなるみが加入する。天空城に行く途中で戦闘イベント(場所的に強制) 山頂に七色の鉱石があり入手後にムクチに行くとあとりが加入するフエン山に行く途中で戦闘イベント(場所的に強制) 天使の翼入手後に伝説のナンが販売される。『チカクノ遺跡B1』に時代劇BOXが出現。ザコイ団深層の左側に究極のレシピが出現。しゃねおるか撃破後に究極のレシピと至高のレシピを渡せば加入する ありさ撃破後に時代劇BOXを渡せば加入する みらい撃破後に伝説のナンを渡せば加入する 雑魚は軒並み弱いので、デッキを考えるのが面倒な人は秀哉カードを詰め込むだけで装備さえあればなんとかなる。 本編では複製しづらい敵もちらほらいるので一石二鳥。残りは好みでMSC支援兵やヘタゴル等。実は手動操作ならこれで大魔王すら倒せてしまう。 さらにさらに、開始直後にメヒーシャが仲間になることから、リーダーカードを育成しつつ麒麟メダル集めで周回なんてこともできる。なにかとおいしい。 慣れれば危険種を倒しつつ大魔王ルートで1周1時間もかからない。 + モンスターパーティ 青がレア種、赤が危険種、緑が一度しか戦えない敵、紫が複製不可能 ダンジョンの階層やフロアについては一切無視しています 西大陸 キンリン付近プテテットリーダープテテット×4、赤プテテット×4 キンリンの南東のある小島闇の大鳥湧き出るスライム×4、磁粒鳥×4、黒鳥の羽根×2 チカクノ遺跡クェルインププテテット×3、レイヤテット×3、磁粒鼠×3、磁粒鳥×3 製錬の炉精湧き出るスライム×4、プテテット×4、赤プテテット×4 磁粒鉄蟲磁粒鼠×4、闇の大鳥×4、黒鳥の羽根×2、製錬の炉精×2 ミナト付近死魔蟲青プテテット×4、磁粒蚊×4、エグゴル×4 光獣精フレキシア赤プテテット×4、レイヤテット×4、闇の大鳥×4、歪秤蝶×4 ザコイ団の根城洞光獣湧き出るスライム×4、闇の大鳥×4、歪秤蝶×4、エグゴル×4 リュカルネ青プテテット×4、磁粒鉄鼠×4、闇の大鳥×4、蟲渦獣×2、モルガノ岩種×2 トトガノ土種歪鬼×4、磁粒紙×4、磁粒ガラス片×4、リュカフラス×4 ドコカノ盗賊団の根城加熱の炉精洞光獣×4、死魔蟲×4、リュカルネ×2、モルガノ岩種×2、製錬の炉精×4 ナトルディアスレッサーデーモン×4、湧き出るスライム×4、金プテテット×2、歪秤鉄鼠×4、ゲオテット×4、モルガノ凶暴種×4、リュカディスク×4 淫魔ノワルクェルインプ×4、睡魔スゥーティ×4、湧き出るスライム×4、磁粒蚊×4、磁粒歪鬼×2、イルガノ捕食種×2 磁粒歪鬼歪鬼×4、ギルノ・エグゴル×4、捕食オイル×4、召喚炎鳥×4、リュカアース×4 黒翼種フォノス生命の殺人鬼×3、淫魔マカト×3、活力歪鬼×3、死者の闇雲×3、ユユガノ氷岩種×4、私怨の亡霊×2、死歌で惑わすモノ、リュカフレイム×3、心臓斬りの魔剣×4、上級悪魔キルラ・メリエ×2、狐狸精フラミシア、暗黒精テンペシア 東大陸 さやね加入後の海(1度のみ)ミルガノ水棲種磁粒鳥×4、闇の大鳥×4、リュカティエネー×4、召喚炎鳥×4、歪秤の鳥娘×4 あとり加入後のムクチの南の三つ又路(1度のみ)モルガノ岩種磁粒蚊×4、死魔蟲×4、トトガノ土種×4、蟲渦獣×4、阻まれし鳥竜×4、磁粒歪鬼×4、製錬の炉精×4 まどか加入後のムクチの南の三つ又路の右隣(1度のみ)召喚炎鳥湧き出るスライム×5、赤プテテット×5、青プテテット×5、召喚炎鳥×2、歪蘇兵×4、モルガノ岩種×4 草原地帯磁粒炎鳥歪秤蝶×4、死魔蟲×4、召喚炎鳥×4、ミルガノ水棲種×4 発掘の炉精水棲進化した小邪鬼×4、磁粒鉄鼠×4、リュカティエネー×4、ヒノシト×4、リュカミラー×4 砂漠地帯死者の闇雲湧き出るスライム×6、死魔蟲×4、超磁粒女×4、召喚炎鳥×4、死者の闇雲×4 オストダールスケルツディアス×10、オストディアス×4、ナトルディアス×4 ムクチ周辺純妖精アルキナ傀儡天使×4、天使ドロエル×4、トトガノ土種×4、オストダール×4、ユユガノ氷岩種×4、光獣精フレキシア×2 フエン山発掘の炉精青プテテット×4、磁粒の牛魔×4、溶岩の死魔蟲×4、製錬の炉精×4、加熱の炉精×4 睡魔ルキスクェルインプ×4、スケルツディアス×6、睡魔スゥーティ×4、オストディアス×4、吸魔×4 天魔カキア堕天使リエシェ×4、堕天使メルコル×4、クェルインプ×4、睡魔メルコラ×4、淫魔ノワル×2、製錬の炉精×4 神速悪魔ウィンディア堕天使メウーラ×4、黒騎士ナナエリ×4、金プテテット×2、闇の大鳥×4、シルガノ森種×4、活力歪鬼×4、睡魔ルキス×2、発掘の炉精×2 オストダール磁粒鉄鼠×4、闇の大鳥×4、鳥竜硬化したモノ×2、磁粒化した死魔蟲×4、歪秤の鳥娘×4、歪融の精×2、モルガノ凶暴種×2、リュカフレイム×2、リュカフロスト×2 サハラ近郊の砂漠悪魔キュアネス下級悪魔ワムナフ×4、歪融悪魔×4、黒騎士ナナエリ×4、磁粒鉄鼠×4、ギルノ・エグゴル×4、召喚炎鳥×4、リュカアース×4 純銀の炉精エグゴル×4、鳥竜硬化したモノ×4、蟲渦獣×4、死者の闇雲×4、製錬の炉精×4、死を求める骸×4、発掘の炉精×4 狐狸精フラミシア湧き出るスライム×6、磁粒鳥×4、トトガノ土種×4、ヒノシト×4、磁粒炎鳥×4、翻弄する男×4、剛炎の洞光獣×2、コトガノ超獣種×2 魔人セルヴァ天肉の殺人鬼×2、生命の殺人鬼×2、サクラミア×2、コゴナウア×2、磁粒の牛魔×2、オストダール×2、溶岩の死魔蟲×2、ユユガノ氷岩種×2、歪秤の死鳥×2、私怨の亡霊×2、冥府のテングサマ×2、リュカフレイム×2、心臓斬りの魔剣×2、悪魔キュアネス×2、上級悪魔キルラ・メリエ×2 天空城天使アラケル傀儡天使×4、護衛天使×4、天使リェシェ×4、天使ジヴェル×4、天使ティレト×4 天使リドゥリア護衛天使×4、天使リェシェ×4、天使ティレジーナ×4、天使ジヴェル×4、天使ティレト×4、天使ヴァフマー×2、権天使ハファタス×4、堕天使メルコル×4 天使ランディルア使霊×4、雷使霊×4、槍使霊×4、天使ハザム×4、霊騎ファラン×4、天使アプサエル×4、天使リセト×4 傀儡天使×4、天使リェシェ×4、天使ティレジーナ×4、天使ジヴェル×4、天使ハンブラエル×4、天使アプサエル×3、天使リセト×3 大天使ラヴィナス傀儡使霊×4、天使ハザム×4、霊騎ファラン×4、天使ヴァフマー×4、大天使エルミル、覚醒の同調者、傀儡天使ログファエル、力天使ワルフメイア、堕天使リエシェ×4、天使アラケル×4、天魔カキア×2 磁流精トリニシア槍天使×4、霊騎ファラン×4、天使マウハザ×4、エルガノ熱炎種×4、イルガノ捕食種×4、ユユガノ氷岩種×4、光獣精フレキシア×4 大天使ラデニエル使霊×4、槍使霊×4、傀儡使霊×4、護衛天使×4、天使リェシェ×4、霊騎ファラン×4、天使アプサエル×2、天使ヴァフマー×2、天使リセト×2 魔界大陸神速悪魔ウィンディア悪魔キルラウグ×4、荒ぶる吸魔×4、歪鬼×4、鳥竜硬化したモノ×4、歪蘇兵×4、歪秤の鳥娘×4、リュカディスク×4 悪魔キュアネスレッサーデーモン×4、エグゴル×4、モルガノ岩種×4、溶岩の死魔蟲×4、活力歪鬼×4、リュカフラス×4、製錬の炉精×4 上級悪魔キルラ・メリエ堕天使メウーラ×4、クェルインプ×4、歪融悪魔×2、湧き出るスライム×4、ギルノ・エグゴル×4、超磁粒女×4、歪融の精×4、心臓斬りの魔剣×4 魔王城アテリアル純銀の炉精湧き出るスライム×6、歪蘇兵×4、リュカミラー×4、リュカフレイム×4、リュカフロスト×4、製錬の炉精×4 暗黒精テンペシアクェルインプ×4、スケルツディアス×6、洞光獣×4、溶岩の死魔蟲×4、コン・エグゴル×4、生命の死魔蟲、コトガノ超獣種、加熱の炉精×4 闇魔法使いしゃねおるか金プテテット×4、レイヤテット×4、リュカルネ×4、ヒノシト×4、モルガノ凶暴種×3、ユユガノ氷岩種×2、歪秤の死鳥×2、コトガノ超獣種、製錬の炉精×4、磁流精トリニシア、純妖精アルキナ 冥府のテングサマギルノ・エグゴル×4、鳥竜硬化したモノ×4、死者の闇雲×4、歪融の鬼女×4、リュカディスク×4、淫魔ノワル×4、発掘の炉精×4、純銀の炉精×2 歪魔ありさクェルインプ×4、スケルツディアス×4、睡魔スゥーティ×4、睡魔メルコラ×4、淫魔マカト×3、サクラミア×3、吸魔を愛する睡魔、淫魔ノワル×4、悪魔キュアネス、上級悪魔キルラ・メリエ×2 睡魔ラヴァツィーネスケルツディアス×6、睡魔スゥーティ×4、睡魔メルコラ×4、荒ぶる吸魔×2、淫魔マカト×4、サクラミア×4、吸魔を愛する睡魔×2、淫魔ノワル×2、睡魔ルキス×2 死醒の主悪魔キルラウグ×3、死醒の殺人鬼×3、上級悪魔メウリエテ、死魔蟲×4、私怨の亡霊、リュカフラス×4、淫魔ノワル×3、悪魔キュアネス×2、製錬の炉精×4、加熱の炉精×3 告死悪魔ベルサール生命の殺人鬼×3、淫魔マカト×3、死魔蟲×4、殺魔のオドリコ、リュカフラス×4、睡魔ルキス×3、神速悪魔ウィンディア×2、上級悪魔キルラ・メリエ、製錬の炉精×4、加熱の炉精×3 暗黒騎士みらい黒騎士ナナエリ×3、上級悪魔メウリエテ、リュカティエネー×4、シルガノ森種×4、ミルガノ水棲種×4、MGミサ×2、心臓斬りの魔剣×3、睡魔ルキス、神速悪魔ウィンディア、上級悪魔キルラ・メリエ、製錬の炉精×4、加熱の炉精×2 悪魔メウリオーテ歪融悪魔×4、ナトルディアス×4、上級悪魔メウリエテ×2、上級悪魔ボゼナ、栄傑の黒騎士、青プテテット×4、闇の大鳥×4、活力歪鬼×4、製錬の炉精×4、加熱の炉精×2 盛装悪魔ニルーニャ睡魔スゥーティ×4、オストディアス×4、コゴナウア、超磁粒女×4、死者の闇雲×4、ユユガノ氷岩種×4、歪蘇の隊主×2、殺魔のオドリコ×2、リュカフラス×4、悪魔メウリオーテ 魔王かいと炎獄の殺人鬼×2、天肉の殺人鬼×2、死醒の殺人鬼×2、生命の殺人鬼×2、グレーターデーモン×2、死霊歪魔デールマル×2、歪鬼×4、ギルノ・エグゴル×4、超磁粒女×4、歪蘇兵×4、悪魔キュアネス、悪魔メウリオーテ 大魔王めひーしゃ堕天使リエシェ×4、堕天使メウーラ×4、睡魔スゥーティ×4、淫魔マカト、サクラミア、上級悪魔メウリエテ、王女あかり、女戦士なるみ、遊び人まどか、暗黒騎士みらい、歪魔ありさ、闇魔法使いしゃねおるか、魔法使いさやね、武道家あとり、天魔カキア、悪魔キュアネス×2、神速悪魔ウィンディア、上級悪魔キルラ・メリエ、睡魔ラヴァツィーネ、悪魔メウリオーテ + 危険種攻略 魔人セルヴァ 荒れ狂う鼓動が厄介。エリア能力なのでオルトリクスで無効化可能。 むしろオルトリクスを使う事を強く推奨する。使わなくても勝てるが血廉系と救急セットががっぽり減るので覚悟しておこうエリア制御結界を使うよりホシノヒメを使おう。後衛に置いておけばずっと無効化してくれてありがたい オルトリクスを使った場合 相手の攻撃力は18なので置く場所とHPによっては耐えられる オルトリクスを使わなかった場合 300を切った当たりでエウシュリティア☆☆装備のレベルMAXキングプテテットすら一撃で倒す攻撃力になる。 HPは完全無視で良いので装備品込みで攻撃力が最低でも11になる構成にしよう ヘタレ無しで最大が70以下のリーダーカードを使っている場合は100を切ったあたりで一撃で敗北するので注意が必要 ちなみにリーダーはEU秀哉、配下は全部秀哉のみの構成でもアイテム(救急セットと血廉系)さえ大量にあれば全部のカードを複製した上で勝てる キュアネスは2枚しか無いので2枚とも場に出てしまえば相手の手札を0に出来る 黒翼種フォノス 基本的に奥義のせいで相手の山札は常に12枚あると想定しておこう 能力のおかげでなかなか減らない しかも霊では無いので不屈の精神とかでない限り半分にされる 柏木 鳴海(EU)を主軸に攻めていく割合ダメージも半減されてしまうものの、それでも普通に殴るより早い。 スナイパーアイがあると霊族耐性・対衝撃の霞共に軽減されない。 おススメデッキの「不屈ロック」を使うのも手。序盤は出来る限りライフを削り、最期はデジタル眼鏡を装備した秀哉でトドメを刺そう。 + 魔王かいと戦 適当に戦っても勝てる…一応ラスボスなのに 全員仲間にした場合はイベント後に下記のめひーしゃ戦になる + 大魔王めひーしゃ戦 ハーレムルート限定の敵で、仲間キャラが全員敵になる(カード使用不可)。 仲間になっていないあかりも敵として現れる。 一方、かいとが加入し、リーダーしゅうや用の専用装備が入手できる。 能力でダメージが半減するうえ、攻撃対象の隣接カードも3ダメージを受けるので、長引くほど不利になる。HPが198と低く、序盤の周囲の取り巻きを早期に片付け、支配者の杖で形を整えられればゴリ押しが可能。 攻撃が13なので、装備品で補強していれば仙崎 秀哉(SR)や危険種など、コスト5クラスなら1撃くらいは耐えられる。あんぱんを大量投入すると難易度がぐっと下がる。 複製狙いをしないなら、改札の主で毒を吐き続けるなど、危険種を全面に押し出していけばいい。 正直な話、ヒロインカードを使えないという状況だけで、敵としての強さは黒翼種フォノスの方が上(能力もフォノスと同じで、あちらはHP300・攻撃22)。 追加カード リーダー、バトルカード、アイテム諸々(敵・イベント限定)含めて116種類追加 追加クエスト(6種) 下の周回特典参照。 新規闘技場戦闘追加(2種) 番外編をクリアすることで開放 変身セット アテリアルフォースブレイドクリア後に西蒼川商業区に出現 メヒーシャのみ2種類あるがハーレムエンドで終えることが必須 ver2.0周回時(全体マップ限定)特典 AP3の特典と同じく、全体マップで受領できる周回特典。 ☆☆装備合計45所持(ロイヤルクラウン) ☆☆装備を全部あわせて45個以上所持するというもの。 拾うことはないので、手持ちの材料をもとに作れそうなものを順次作っていくしかない。 麒麟メダル50所持 麒麟メダルを50個以上所持する。 周回数にもよるが意識的に全部集めていたとしても、おそらく白虎メダルが致命的に足りないと思われる。 白虎メダルを本編を周回しながら集めるなら、天使ルートが最も拾える数が多い。 短時間で終わるAFBであれば、全メダルに対し固定ドロップする敵がいるので、周×3枚の高速周回をするという手もある。 又、人間ルートであれば、それぞれのメダルに対応したレアドロップする汎用敵がいるので、ウィル・リターナペアで×5枚のレアドロップを狙うのも一つの手段。 従属の杖30所持(いかさまカード) リーダーしゅうやのレベルが上がれば番外編のショップでも買える。(まどかにレンズを渡すイベント後) 全人間配下総枚数2000(貞操帯) 全キャラのLvをZにして、親睦を消化しつつ周回するだけでも相当たまっているはず。 購買の学生カードが全部人間カードなので買い占めればノルマの25%以上クリア。 ついでにMHI本社でMSC兵も買い集めよう。 全英雄配下総枚数100(漢の赤フン) 「工匠ウィルフレド(SR-1) (複製粒子×2)」を錬成すれば簡単に達成可能。 錬成無しなら、天使ルートならメヒーシャ、人間ルートなら鳴海シナリオをクリアすると良い。 ガノエルと(AP1があるなら)ウィルのレベルをZまで育てるだけで、ノルマが半分終わっている(初期カードが「英雄」)。 配下EUランク総枚数100(ドリルアーム) ガノエルの初期カードが英雄+EUランクであるほか、ハァゲンティの初期カードもEUランク。 AP1の銭湯イベントカードも全部EUランク。 なおちゅーちゅー美來がEUかつ英雄なためこれを大量に錬成してもよい。
https://w.atwiki.jp/princess-ss/pages/49.html
「じゃ、人妻寝取りに行ってくっから!」 「……ロア様」 びしっ、と『いってきます』のポーズを決めた男に、老人は渋い顔で苦情を洩らした。 「先日申し上げましたよう、かの御仁は亡きフェリウスに手酷い虐待を受けていたとのこと。 城内の旧臣達の心象を良くする意味でも、ここはしばらくそっとしておいた方が……」 「馬ッ鹿お前、だからこそお近づきになりに行くんだろ!?」 複雑な表情で老人は主を嗜めるが、当の主は『分かってないな』とばかりに拳を固める。 「傷心の未亡人! 明るい話題で優しく近づく俺! やがて次第に深まる二人の仲! 『キャー、あんな暴力夫なんかと比べて全然カッコいいわ! ステキ! 抱いてッ!』」 「………」 気持ち悪い裏声を出す主君に対して、老人は達観したかのような目で嘆息する。 角灯の光に照らされて、元は紅かったであろう白髪と顎鬚、 そうして深い皺の刻まれた顔の、隻眼の老偉丈夫が浮かび上がった。 「…心に傷を負った女を抱くのは一苦労ですぞ? 最中に突然泣き喚きだしたり…。 好い女を抱きたいというのでしたら、こちらで八方尽くしてでも手配しますに」 「いや、だってさお前? 占領だよ占領? 征服、侵略、簒奪!」 まるで孫と祖父のように見える二人だが、実際は主君と臣下の関係なのは聞いての通り。 老人は男のお目付け役であり旧教育係――俗にいう『じい』な存在だった。 「いざそれやらかしてみた以上はさあ、やっぱり敵国の美姫とか亡国の女王とか、 きっちり自分の物にしとかないとダメだと思うんだよね、男に生まれた以上」 「…ロア様がおっしゃると、何でも俗っぽく聞こえてくるから不思議でございますな」 「いや~、それほどで 「褒めておりません」 夢見る少年の貌で熱く語る主君に対し、流されずピシャリと厳言を叩きつけた。 分かっているのだ、一朝一夕の付き合いでも無し。 女子(おなご)さえ圧される口達者、こうやって押し引き引き押し相手の調子を狂わせて、 自分の気勢に持ち込んでしまうのが目の前の若造の手管だと。 初対面の人間には『馬鹿者』『うつけ』と評を下されがちな彼の主君だが、 それが全く的を得ぬのは、少なくとも古付き合いの者達は知っている。 …目の前の若造は、しかし虎狼のようにはしこい小僧だ。 「てかここ俺の城でしょ? 『俺の城のものは俺の城のもの』ってやつじゃん?」 燃える硫黄のような瞳を見れば、誰もが同じ感想を抱くだろう。 不遜が服を着ているような男だと。 「…ロア様一人で落としたわけでもございますまい、今回の遠征の総大将はイナ様、 包囲戦の司令官はラクロ様でした。攻め滅ぼした国の財産の帰属先的に考えますに、 イナ様、ラクロ様、あとは現盟主であるクウナ様の物と考えるのが……」 「でもこの城貰ったの俺だもんねー。この城で一番偉いのも今日から俺だしさー」 「………」 それでいて子供のようにえっへんと胸を張る姿が、演技かと言えばまた違う。 ……演技じゃないからこそむしろ厄介なのだが。 本当に、誰が信じるだろうかと思う。 「ってかさー、すっごい美人なんだぜ!? しかも俺とほとんど同じ歳! これはさー、据え膳食わねば何とやら、だろ!」 …『こんなの』が今回の追討戦の一番の戦術的功労者、 三月前の野戦においては、手勢1000の重騎兵隊でもって敵陣左翼を食い破り背襲、 フェリウス本隊を挟撃からの敗走に至らしめた猛将であり、 十日前もまた脱出を図ったフェリウスを追跡、敗死に追い込んだ驍将だと。 実際に目耳に味わわなければまず信じられまい。 虎がごとく敵陣の急所に食い付き、狼がごとく浮き足立ち逃げ惑う兵を食い散らす。 蹂躙し、蹴散らし、何何百の命が千切れ飛ぶ中、今と変わらぬこの笑顔、 …『悪魔』『化け物』呼ばわりも頷けよう。 本当に(今日付けで)城主で、本当に(任領こそ小さいが)領主、 『ゼズ城および周辺三郡五街二砦の経営監督権』ならびに『千人長から小将師への昇進』、 ……この行賞が過大にならない、それだけの輝かしい大功だった。 ――それだけに、溜め息が出る。 「…わかりました。ロア様が一度言い出したら聞かないのは承知しておりますからな。 ただ一つだけじいの頼みを聞いてくれるならば、他に関してはとやかく言いますまい」 「お。今日は随分話が分かるなじい? で、なんだその頼みって」 頬杖を突き、にこにこしながら聞いてくる主君。 「……もう少し『王弟殿下』らしくしていただけませんかな?」 ――王弟殿下。 ブッとその単語に噴き出したのは、もちろん会話相手である殿下その人だった。 「で、殿下ぁ!?」 一体何がツボに入ったのか、腹まで抱えて大笑いする。 「お、王弟殿下ってお前、そんな柄 「至って真面目な話です。冗談ではなく」 しかし老爺はそんな主に対し、真剣な表情で語り始めた。 そもそも国というのは、神や聖霊の承認によって生まれるものではない。 英傑が現れ、その周囲に人が集まり、それが次第に大きくなる、 そうした上でその集団が国を自称し、周囲がそれを無視できぬほどに力が強まったならば、 初めて自他共に認める国となるのだ。 大陸統一以来の数百年間、大陸は帝国を中心とする一強皆弱にあり、 特に『蛮族』のレッテルを貼られた北夷と南夷は 国としてどころか同じ人間の同胞としてすら認められず長らく迫害の下にあった。 その中で国を自称した北夷南夷の部族も居たが、 当然帝国からは認知されず、やがて歴史の荒波へと消されていった。 だが! 長年の宿願だった山岳オルブ諸部族の連合が達成されて早40年、 帝国大包囲網と一斉侵攻の開始に伴い、国家を名乗っても良いのではないか!? 「…というわけで、名乗ったようです。ちなみに名前はオルバス連合王国だそうで」 長々とした語りを締めくくった老爺に、男はパチクリと目を瞬かせる。 「…え。…いや、ちょっと待て、全然聞いてないぞそれ? てか連合王国ってお前、 親父もクウナ兄も盟主であって王じゃないだろ。んなことほざいたらガルデガの爺共が――」 「いや、それに関しても大丈夫です」 馬鹿だが利発な彼の主君、流石に事の重大を理解したらしく動揺の声を上げるのだが、 老爺は落ち着き払った声でそれを制した。 「実は我々遠征軍が出発した後、向こうでもちょっとした政変があったようでして。 ガルデガの古老連が隠居を表明し、代わりにかのファデラ様が新しく族長となられました。 臣下としての恭順の意も示されたらしく、これで名実共に山オルブ統一も果たされたかと」 「………」 唖然とする男。 よくもまぁあっさりと言ってくれたが、しかしこれ、相当とんでもないことである。 帝国側が一括りに『南蛮』『赤鬼』と呼ぶ彼らオルブだが、実際には複数の部族の集合、 とりわけ蛮土東方山岳地帯の『山の民』と、西方砂漠地帯の『砂の民』では、 同じなのは外見だけ、気質・生活様式・文化風習、内実は全然別物というのが実際だ。 ガルデガはそんな山の民の中でも二番目の大部族。 対帝国同盟の盟主にして、山岳オルブ最大の部族であるゼティスの対抗馬で、 盟主に過ぎない彼らが強権を手にしないよう、 同盟結成後も水面下での政争や対立を繰り返し続けてきた長年の政敵達だった。 その長老連が権力の座から一掃され、代わりに男もよく知る融和派の女傑が長に就く。 …事実上の無血政変とは言え、裏で相当血生臭いことがあったのは疑いない。 「…何やってるんだよクウナ兄は」と、思わず男も呟いた。 先盟主ゼリドの次男であり七年前に現在の盟主の座についたクウナは、御歳39歳。 (男一人から固着しそうなオルブ全体のイメージの払拭のために弁明すると) 大層な優男で物腰も穏やか、父ゼリドとは正反対に武よりも文を好む温和な盟主で、 その内政手腕、何よりも稀代の文化人・教養人としての振る舞いが周囲の名望を集めている。 (でも身内である男に言わせれば、政争からロアら脳筋妹弟を守ってくれる反面、 『微笑みながら政敵の首を真綿で絞め殺す』、お腹真っ黒の性格ドS、策謀家だ) 「この政変を受け、帝国に対する宣戦布告も国家、王の名において出されたとか。 例によって帝国は無視の一点張りですが、逆に隣の砂オルブ、東の東洋諸島都市連合、 北のクラート、シシス、洋を挟んだ西大陸の三国には一様に受諾されました」 「……それ、今回の切り取りに参加してる連中全部じゃね?」 そうなのである。 「良かったですな。多数決の原理で、見事ロア様も今日から王弟殿下」 「…え。…えー? いや、つーか、タチ悪い冗だ 「だから冗談ではございません」 なのにもっと喜んでもいいはずの快挙を、まるで迷惑そうに聞くこの王弟。 「…てか、本当に寝耳に水だぞ? もっと前フリっていうか、幾ら何でも急すぎっつか」 「それはそうでしょう。何しろ私も今日の昼間に聞かされたばかりですから」 まあでも本当に、この主君にとってはそんな話、その程度のことでしかないのだった。 「今回の追討戦にガルデガの兵が数多く含まれていた関係上、 兵の動揺を防ぐために緘口令が敷かれていたというのが実際なようですな。 イナ様、ラクロ様は攻城開始の時点で既に知っていたようですが」 「ちょ、イナ姉もラクロ兄も知っててなんで俺だけ教えられてないんだよ!? 俺そんな口軽くないよ!? そんな信用ないの!?」 『大功を立てた重将なのに軽んじられた』的に憤るというよりは、 『兄貴も姉貴もなんで俺のこと仲間外れにしたの?』的にガーン!な末っ子。 「…いや、普通に『馬鹿だし教えても教えなくても大差ないだろ』とか思われたんでは?」 「ひどっ!? ひっど、酷いぞそれ! 馬鹿なのは認めるけど酷い!」 …もう少し野心、もう少し権力欲があって体面に拘る男だったならともかく、 『馬鹿なのは認めるけど酷い』とか自分で言い切っちゃう辺り、 そうやって『あー、あいつは後でいいや』的に兄姉から末弟扱いされるのだとは気がつかない。 「…あー。じゃあいいよもう。うん。…何? 王位継承権? 要らないからそれ。放棄する」 ホラこういうこと言い出すし。 「何言っとるんです、どこの世界に獲得して五分で王位継承権放棄する馬鹿がいますか」 「ココ。だって馬鹿だし。…どーせ俺は馬鹿ですよーだ」 あまつイジケてふて腐れだす。 …成人してもう三年と半にもなろうというのに、いつまで子供のつもりなのか嘆かわしい。 「…大体あれだろ? 暗殺とか毒殺とか、王族って権謀術数渦巻く蛇の巣なんだろ? 面倒なだけじゃん、どう考えても要らないだろ。むしろなんで皆王位とか欲しがんの?」 「必ずしもそうとは限りません。…というか立志伝や英雄伝記の読みすぎです」 「でもさぁ、『貴方は実は王子だったのです』とかですらなく『お前今日から王子ね』って何? この際だから建前抜きの本音で語り合いたいんだけど、」 うんざりしたように、胸を張る。 「俺のどこをどーいう風に見れば、王弟殿下なんかに見えるんだよ!!」 「どこからどう見ても王弟殿下に見えませんが、これからは見えて頂けないと困るのです!!」 ……下野し降籍し出家したところで、統治者の血の者であることに変わりはない。 継承権は捨てられても、貴血という事実は捨てられないのだ。 体面、礼節、地位というものは、政(まつりごと)を行う上で絶対に無視できぬ要素。 まるでどこぞの山賊の若頭、傭兵隊長にしか見えなくとも、今後は変わってくれないと困る。 「げー」 ……本当に、嘆かわしい。 「…つかさ、ほんとに要らないじゃん。俺兄妹の中でも末っ子だよ? 上に22人もいるんだよ? これ全員退けて王位掴むとか、普通に考えてありえねーし、やれたとしてもやんねーよ」 何故これだけの利発さを持ちつつ、権力への渇望は抱かない。 何故これだけの軍才を持ちながら、献身を厭わずして情愛に生きる。 「レダ兄とか、ラクロ兄とか、俺なんかよりもずっと相応しいのはたくさんいるし……、 そもそもクウナ兄からしてとっくに妻子持ちだし……、大体」 何故戦場ではあれほど敵を踏み躙れるのに、降りれば親を立て、兄を立て、義を立てる。 何故礼節の前の礼を知り、体面の前の体を知り、天地を弁え、人心を解し―― 「――そういう王族とかの飾りなんかなくたって、俺は俺だし、親父の子だよ」 迷いなく言い切られた何気ない語に、老爺はハッとして目頭を抑えた。 ……前言での謗りは、撤回せねばなるまい、 見る者が見さえするのなら、どう見ても山賊や傭兵には見えないのだから。 隠し切れぬ貴血の生まれ……という言い方をするのは語弊がある。 敢えて言うなら、乱世の雄の相か。 冠も、笏も、珠も帯びぬが、窓辺に腰掛け懊悩する姿は、下衆にはありえぬ品格を持つ。 誰もが振り返るような美丈夫でもなく、女と見紛うような優男でもない、 大人になりきれぬ悪戯坊主、形作る骨肉だけをなぞるなら、確かに山賊傭兵の評は真だ。 ……だが虎が虎として唯在るように、鷹が鷹として唯在るように、 言の葉の霊、野にあって粗なれど唯在るをもって貴きを為し、 その立ち振る舞い、野にあって蛮なれど唯在るをもって衆人を魅する。 畏れ敬われることはないが、誰をも惹きつけ愛されよう。 飾らぬ言葉は学無き民草にも希望を見せ、通す道理は勝利を通して正義を見せる。 重なるのは、男の祖父の姿だ。 目を閉じれば老雄の瞼にありありと浮かぶ、在りし日の旧主のその威容。 現在の包囲網の先駆けであり、山岳オルブ諸族を力で束ね上げた初代の盟主。 病にて夭折していなければ、あのフェリウスにここまで煮え湯は飲まされなかったはずだ。 そしてその転生がごとき生き写しが今、老雄の目の前に座している。 ……口惜しくてたまらない。 何故このような男が、一番最後の子と生まれたのか。 何故このほどの大器が、近衛の女兵士との間に成ったのか。 火神の末たる灼煉眼、燃え盛る硫黄の金眼を、 「ですが王弟殿下という肩書きがあれば、間違いなく女子にはモテますが」 「……う」 ……どうして『こんなの』が持っている。 「…………どうすりゃいいの? 具体的には」 ああ、釣れた、釣れちゃったよ。 「…問題だらけで何処から手をつけて良いのやら途方に暮れるほどですが、 さしあたっては振る舞いや言葉遣いを改めるのからでしょうか」 「ことばづかい?」 「……人前で鼻をほじらない」 「………」 「ズボンで拭わない!!」 今でこそ堕落した帝国も、それでも200年前、300年前は興盛の限りを尽くしていた。 権勢は領土の果てにまで及び、『蛮族』のレッテルを貼られた彼ら敗者は、 奴隷として狩られて帝国の諸都市に連行、過酷な肉体労働に使い潰されたという。 言葉は奪われ、信教は奪われ、文化風俗を奪われた。 でもそれ自体はもういい、既に遠い過去の話だし、代わりに向こうから得た物もある。 …帝国の為した功罪の一つが、実質大陸における言語の統一だ。 「まぁ確かに俺らもクラート(=北夷)も普通に帝国語話すけどさ」 …とは言え、しかしそれらの言語が均一かつ画一的に野に浸透しているわけではない。 方言、訛りとでも呼べばいいのか、例えば彼らオルブの話す帝国語は、 帝都民が嗤う所の帝国南部の『田舎言葉』を、もっと粗野にした感じである。 広大な領土の北で頻出の口語が、南では聞いたこともないなんてのはよくある話だ。 東である意味を指す語句が、西では全く逆の意味で使われることもある。 ……しかし百歩譲ってそれだけならまだいい。 それでも人は普段から心がけて、持ちうる語彙の中から使う言葉を『選ぶ』ことができる。 心優しい人間は柔らかい言葉を、粗野な人間は乱雑な言葉を。 激昂したり、進退窮まった時に飛び出す罵倒で、育ちの貴賎が分かるのはこの為で、 「…つまり『ちんこ』とか『まんこ』とか、『キチガイ』とか『ビッチ』とか言うなってこと?」 「………」 ……もう手遅れかもしれないなと、心中で匙をぶらつかせた。 どこで育て方を間違ったのだろう。 教育係として悔やんでも悔やみきれず先々代に申し訳が立たない。 …いや、散々きついこと言ってるが、本当は何処に責任があるのは分かっている。 親族親兄弟から臣下に至るまで全員が全員、 『どうせ一番権力争いからは遠い、歳の離れた末っ子だし』ということで礼を失し、 (少々手荒く)可愛がりに可愛がった、目くじら立てなかったのが悪いのだ。 下々の者らと泥んこになって転げ回り、ガキ大将やってた時点で止めるべきだったか。 怪我した虎の仔を何処からか拾って来て、飼いたいと言い出した時点で窘めれば良かった。 12歳にして初陣を迎え、その戦勝祝いですっかり部下達と意気投合、 未成年なのに酒を飲まされ、いい飲みっぷりを披露してた時点でやな予感はしてた。 成人の儀式の祝詞の最中、目を開けながら寝てるのを見た時点でもう諦めた。 夜街に出ては酒場で食事を奢り、部下を連れて娼館に入る。 『ヤバそうな安宿には近づいてないよ!』? ……そういう問題じゃねえ。 ――もっとも男に言わせれば、何も特別なことはしてないつもりなのだ。 「だ、か、ら、要らねーっつってんだろがこんバカッ!」 「だ、か、ら、要らないでは済まされんと何度申し上げれば分かりますかこの洟垂がッ!」 出来るからする、面白いからやる、有利有効だからやる、道義に沿ってるからする。 出来ないからしない、つまらないからしない、無益無駄だからしない、道義に反するからしない。 「何処の世界に女とヤってる最中も傍で部下待機させとく上司が居んだよ!?」 「だから皇帝や王侯貴族ではそれが普通なんだと何度言わせれば!」 馬鹿じゃないの?とフツーに思う。 シてる最中にまで部屋内に近衛兵と侍女置けとか、頭悪いの?とかフツーに思う。 「だって普通に変態プレイだろ! 見られて感じるとかそういう趣味ねーよ!」 むしろ気が散るし、勃たない勃たない。 そもそも二人っきりでエロムードだからこそ、色々恥ずかしい事とかも言えんのであって、 それを冷静に第三者に全部観察されてるとか、普通に嫌だ、すっごい悶絶。 「ですが閨房が古来より暗殺率No.1、男が最も無防備になる瞬間だというのは 若だって重々ご承知でしょうが! ただでさえ相手は自分が討った将の妻ですに!」 ああほら、興奮して『若』とか言い出した。 「バーカ、そんなん首の骨へし折って窓からぶん投げ決定だろ。 伊達に虎素手で殴り殺してねーよ、そもそも廊下とか城門の警備優先しろっつの」 散々『成人してもう何年~』『いい加減大人に~』と言っておいてのこの言い草、 じいだって人の事言えないだろとも思う。 「…女は魔物と言いますぞ? 間諜よりもむしろこちらが厄介かと思いますがな。 酒、毒、火…刃と腕力だけが威力にあらず、幾人の王が房中に死したとお思いか」 「…んな気概がありゃ、とっくにフェリウスの爺も死んでるはずだけどな」 「いいえ、女は分かりません」 「………」 立志伝や英雄伝記の読みすぎはそっちもだろうが、とも、言えるなら言ってやりたい。 ――何が『御身は玉体』だ、『上辺は諦めようとも内実は礼に則していただきますぞ』だ。 着替え係? 香油塗り係? 日を改めて文を贈り、花を贈って香炉を焚け? 女子供じゃあるまいし、服くらい自分で選んで着れる。 あまつ花なんて飾って香なんぞ炊いたら、それこそ娼館と変わらない。 …本当に、ちょっと幼い寡婦に夜這い仕掛けるだけだってのに、なんでこんな七面倒臭い。 死んだ部下とか上司の妻とか、身内の義姉相手なら不義密通だろうが、 幸い相手は攻め滅ぼして占領した敵国の女なのだ、世間的に何の問題があろう!(?) 「…ああ、わーった、わーったよ! 譲歩する!」 とうとう男は両手を上げて、素直に降参のポーズを取る。 「ご理解いただけま……」 「要はヤらなきゃ問題ないんだろ!? 会いに行くだけ、それならいいよな!?」 「……は」 一瞬綻びかけた老雄の顔が、皺が緩んだまま固まった。 「会いに行くだけって……どこの世界に夜女の部屋へ会いに行くだけの間男がいます」 何を馬鹿なこと言ってるんだという風に言ってやったのだが、 「いや、最初に『虐待受けてたっぽいから無体なことすんな』って言ったのお前じゃんか」 逆にお前こそ何馬鹿なこと言ってるんだという表情で返された。 「それに嫌がる女を無理矢理ってお前、普通に男も痛いだろ、絶対濡れてる方がいいだろ。 折角の歳が近い美女で、一期一会でなく時間も余ってんだ、『急がば廻れ』って知ってる?」 「…それはまあ……そうですが……」 久々に正論。 手っ取り早くて金も暇もない時に便利だけど、失敗のリスクも高いのが強姦なんだよな。 相手がドMだとか、実は両思いだったとか、そういう場合は後からの関係修復も可能だけど、 基本的には一回限りの使い捨て、高確率で心も関係も大破全壊するから困る。 (よっぽどテクに自信あるならともかく)素人にはオススメできない。 「だからまずは『お友達』からに決まってるじゃねーか。馬鹿なの? 常識的に考えようよ?」 「………」 でもなんだろう、この納得のいかなさは。 「……思いっきり抵抗されたらどうするんです。物投げられたりとか」 「そりゃお前、机の影に隠れたり、部屋の隅から優しく語りかけたりとか、臨機応変に」 「………」 猛獣か何かと勘違いしてるんじゃないかと思う。非常識なのはどっちなんだか。 「床は絨毯敷いてあるんだし、外での野宿よりは寝やすいだろ。 まずは男は怖くないってことから判って貰おうと思ってる、当面の目標は添い寝かな」 布団に入れてもらえない覚悟まで決めてるとは実に見上げた根性だ。 もう侵略した側のプライドないね。 「……『陵辱』、ナメてませんか?」 「『陵辱』って、文贈って花贈った後香炊きながら他人に見られてやるもんだったんだな」 「………」 「………」 ――なんというグダグダ。 成り上がりの野蛮人風情が、お貴族様の真似事しようとするからこうなる。 誰の目にも分かる、この二人は間違いなく聞き伝えの見様見真似。 沈黙。 やがて老従の方が諦めたように、盛大に肩を落として溜め息をついた。 「…まぁ、しかし確かにそうでしょうな。ロア様に強姦陵辱なんて出来るはずもなし」 そうして急に臣下らしくない胡乱な片目で、仕えるべき主を横目に見る。 「素人になんて無理矢理どころか、濡らしてでも挿れられないくらいですから。 そう思えば歳の程が変わらぬ美貌の『未亡人』に、ご執心なさる気持ちも判る」 「……なんだよ」 実に引っかかる言い方に、僅かに男の目つきが険しくなり、 「ですがそんな奥手で悠長だから、許婚を兄上様に寝取――」 「おい!」 初めて表情に余裕の無い、目に見て取れる怒気を表した。 どんなに余裕めいた蛮勇にも、一つくらい突かれると痛い弱みはある。 ましてやそれが、男の尊厳に関わることともなれば尚更だ。 ――『過ぎたるは尚及ばざるが如し』。 「しかし、事実は事実でしょう。 …竜雄にありて、短小にして種薄きは国傾き、長大にして種濃きは国栄えると言えども、 万事物事には限度があります。…挿れられぬのなら、まだ入る分短小の方がマシかと」 言葉の上辺こそ高尚難解だが、言っている内容は下品の極み。 「うるせーよ馬鹿。不敬罪で首ちょんぎるぞ?」 流石に本気で首を撥ねられることはないと、分かった上での暴言だったが、 それでも目に見えて不機嫌になった主上に対して、老爺や慇懃無礼に頭を下げた。 「これは失礼をば、いささか臣下の礼を失したようですな」 そうして、急に口調を一変させる。 「ではお詫びと言ってはなんですが、兵に命じて速やかに奥離れを人払いさせましょう」 「……あ?」 耳の穴かっぽじってそっぽを向いていた男が、予期せぬ言葉に振り返った。 「姫君と密会したいのでしょう? こんな時に権力濫用しなくていつ濫用しますか」 「…え、いや、権力濫用って……おお?」 突然180度反転したお目付け役の態度に、きょとんとして要領得ないらしい主君。 老従はおもむろに頭を上げると、今度は真顔でそんな主を見た。 「…というか、どうなさるつもりだったんです。平時ならともかく今占領中ですぞ? 奥離れに軟禁と言っても、かの御仁の傍には侍女や監視の兵が粛々と控えています。 本気で単身忍び込めるとでも? 二人っきりとか常識的に考えて無理ですが」 さっき『馬鹿なの? 常識的に考えようよ?』とか言われたのがよっぽど癪に障ったらしい。 『常識的に』のところをやたらと強調しつつ、主君の考え無しを指摘した。 ……この主君にしてこの臣下、この教育役にしてこの殿下。 対して男は、『えー』とか言いながらポリポリと頭を掻きながら、 「…え、いや。…昼間上がれそうなとこ目星つけといたから、バルコニー伝って窓か――」 「どこの泥棒猫ですかあんたは!」 『んー』とか言いつつのこの言い草、流石に老爺も大声を上げる。 「それにさっき言いましたよう、そもそも向こうは部屋付きの侍女が侍っとります。 どう追い払う気でしたか、向かって来られたら窓から投げ飛ばすんですか!」 ただでさえ落城直後の占領下、する側もされた側もピリピリなのだ。 「それはまぁ、こいつで適当に脅して追い払っ――」 「大騒ぎですよ! 間違いなく確実に大騒ぎですよ!!」 「……じょ、ジョーダンだって、はは」 笑顔で腰の蛮刀を掲げて見せる主君に、頭痛が込み上げるのを抑え切れない。 というか、やってただろうという確信がある。 ……本当に忍び込むまではいかないだろうが、警戒網の限界点まで接近した後、 無理だと舌打ちして引き上げるぐらいまではやってただろう。 今でこそ栄えある重騎兵隊の将師だが、 仕官後最初の三年間は、誰もが平等に通る下積みとして帝国南端の山林部に座し、 帝国の商隊や輸送隊の襲撃、野盗化した脱走帝国兵の討伐を務めていた。 (と書くと聞こえはいいが、要は国を挙げての帝国軍狙いの山賊行為だ) 家庭教師こと軍師として付き従い、将来敗走した際の生存技術の教授も兼ねて、 シビアな遊撃戦術のイロハを叩き込んだのは他でもない老雄。 可愛いからこそ実戦戦術の全て、罠の仕掛け方や痕跡の消し方、『獲物』の狩り方、 待伏・伏兵の辛さ苦しさと、それに反比例する奇襲成功時の快感等、 およそ王弟殿下が知る必要ない、山賊的な諸々を教え込んだのは彼自身だ。 「…お貸しください」 「お?」 その罪滅ぼしというわけでもないが。 「…確かにお預かりしました」 「ん」 主君の蛮刀を両手に預かる。 …剣を預け預かるという関係が、一般的な王家で何を意味するかはさて置くとして。 「夜はまだ早い。半刻ほどお待ちいただければ、お望み通りの場を仕立てましょう」 「……おー」 剣を手にうやうやしく礼した老僕は、見事にこの場を取り繕って見せた。 ……ただ、少なくとも老雄自身はそう思ったのだが、 「もう何も申しますまい。ロア様に何を言っても無駄なのは、臣とてとっくの――」 「ははーん、分かった分かった」 そう思っていたのは老雄だけだったらしい、水魚の交わりは相互いを知る。 「じい、お前てっきり俺が『強姦』しに行くと思って、必死で止めようとしてたわけか」 「……!!」 馴れ馴れしく肩に手を置かれニヤニヤ笑われれば、ギシリと隻眼を固まらせもする。 「やっさしっいなー、なんだかんだ言ってお前も女子供には甘いもんなぁ」 「べ、別にそういうわけで言っていたのではありません!」 無骨で気難しい老人なだけに、反応は素直なものではなかったが、 しかし真意を見抜いてもらえ、師として臣として嬉しい部分もありで―― 「ただ私は、ロア様には君子として道に外れぬ行動をして欲しいと、ひとえにそう……」 「はいはい分かった分かった、外れない外れない」 ――ツンデレ! ツンデレ! 「…ッ、とにかくです!」 ゴホンと咳払いし、面目を保つと、格調を引き締める。 「…ロア様はここしばらく昼夜問わずして働き詰めでしたからな、ご褒美です。 明日の早朝訓練と午前中の政務は出席しなくていいですぞ」 「……って、ええ!? じいどうしたよ? 何か悪いもんでも食ったのか!?」 別に悪い物を食べたわけではないが、とりあえずこれは当然の休暇だ。 入城より連続してのここ十日程の激務に次ぐ激務、 周囲に呆れ叱られながらも、真面目に戦後処理に挑み、それを一段落つけたのだ。 「件の御仁の取り巻きの侍女達は、明昼まで臣が何とか抑え込みましょう。 お二人で朝の林を散歩するなり、城の中を案内してもらうなり、 しっかり二人っきりしてくださいませ、どうせ手紙も詩歌も楽器もダメなのですから」 「至り尽くせりじゃねーか、どういう気の変わりようだよ?」 若くて体力が有り余ってるのはあっても、初三日のほぼ徹夜などキツかったろう。 戦陣にあっての部下の手前、遠征開始以来酒も女も弁えて久しい。 …多少の破目の外しや女遊びくらい、許して然るべき休憩だ。 「ただし城外に出るのは無しですぞ。繰り返すようですが『強引に』も絶対……」 「分かってる、だから分かってるけどさ!」 だというのにこの主君と来たら、子供のように目を輝かせて興奮し、 「メチャクチャ甘やかしてない珍しく俺のこと? 本当に仕事サボってもいいの?」 …なんてのたまうんだから、少々哀れにも思えてくる。 人の上に立つ者として、雑兵よりも尚人一倍働くのは当然とは言え、 流石に「馬鹿だ」「未熟だ」「甘えなさるな」と、少々尻を叩き過ぎたかとも思うのだ。 …否、そもそもこういう風に思ってしまう時点で、自分は主に甘いのだろうか? 「何を言いますか、これとて立派な仕事です」 ――老人にはよく分からない。 「…真面目な話、侵略する側とされる側の両頭が融和合力するに損はなしです。 城内における旧臣も、フェリウスには恐れ慄く一方かの方には同情の念が強いようですし、 これを擁護して丁重に扱い、将でなく個として友誼を深めるは緊張緩和と吸収の一手。 同時に我々が道義を持つを内外に示し、捕縛した敵諸将を下らせる一助にもなりましょう」 「うっわ前言撤回、やっぱりじいはじいだったわ。何その打算の雨霰」 「兵は詭道ですからな」 ともあれ主君の休暇と娯楽が、また仕事にも繋がるのならこれ以上幸いなこともなし。 なにせ今回の戦争は、民族やら主義やら宗教の絡んだ凄惨な殲滅戦争ではなく、 実に蛮族らしい征服戦争、自国を広げ富ますための戦争だからだ。 略奪や強姦を軍規で厳しく禁じつつ、『平民』『農民』を積極的に宣撫保護する一方、 腐敗した『貴族』や『官吏』を一掃したのは、別に勧善懲悪のためではない。 未だ帝国の領土は広大で、総合的な国力では此方が圧倒的に負けている。 真っ先に最脅威である南領の要ヴェンチサを、全戦力集中して速攻で落としたのは、 帝国の混乱を狙うのもあるが、山越え後の橋頭堡を築くためでもあった。 要塞化の予定上、戦争で痩せ衰えた畑を耕し直す必要があるし、 城砦を建設するための労働力も欲しい、その為には何よりもまず民心が要る。 故にこそ全身全霊で民草に媚び入り、糧食を分け与えてまで融和を図ってるのだ。 でないと安心して兵配置できる、前線基地領が手に入らない。 更には今後30年の帝国分割を考えた際の、安定した兵站、後方領が手に入らない。 どっかの隊が馬鹿やって略奪なんてのこそが、最も阻止するべき最悪の事態だ。 そうして、他にも問題がある。 「また、ロア様も今や一躍時の人、綺羅星の大戦果も挙げてしまいましたからな。 ここだけの話、もう一月もすれば本国、下手すると包囲網参加の諸勢力からさえ、 逆求婚や縁談の申し込みが殺到する恐れがございます」 「……もう来てるよ包囲の内から。…今まで無視ってた癖にムカつくよなー」 一躍有名になった英雄特有の、よくある問題の発生というか。 『少年と言っても差し支えない若さであのフェリウスを敗死に追い込んだ』とか、 『民と同じ目線に立って戦う先代盟主の末子』なんて噂が本人の意思無視で勝手に暴走、 ちょっとしたカリスマっぽいことになってきちゃったのだ。 ――これが身一つで乱世に覇を立てんとする稀代の野心家だったなら、 ここでニヤリとほくそ笑んだのだろうが、生憎と男はそうでない。 「ご自分でも分かってらっしゃるよう、ロア様は母方の後ろ盾がございません。 …そういうのに組み込まれたら一環の終わり、間違いなく権力争いの駒に使われます。 兄姉様方に泣く泣く斬られたくなくば、妙な縁故は作らぬに越したことはない」 「…頼むからそういう話は昼だけにしてくれよ。俺だって頭痛いんだよ」 ――どうやって二心がないことを証明しよう。 珍しく情けない声を上げる横顔は、しかし間違いなく『愛されて育った末っ子』のそれだ。 乱世の英雄の相こそ備えど、奸雄タイプというよりは忠臣タイプ、 家族へ信仰にも近い忠誠を捧げ、出自と国土を愛せるからこそ、男は強く、無欲でもある。 民に裏切られても、兵に裏切られても、 それより尚強い『血の絆』の存在を信じれるからこそ、それを拠り所に立ち上がれる。 『俺は一生中立だよ~、兄貴姉貴達一筋だよ~、叛意を持つとかとんでもないよ~』 『ホントすんません! 調子乗ってないッス! マジ兄より優れた弟なんていないッス!』 ――という自分の魂の叫びを、ビシッと表明するにはどうしたらいいか。 そんな悩みと共に男は忠臣の顔を仰ぎ…… 「いえ、その点これは本当に……よく考えてみれば本当の本当に、悪い話ではない。 『墜とした敵国の領主の寡婦に熱を上げた』、『討将の若妻との不器用な恋』。 英雄色を好む、あのフェリウスの妻を寝取ったともなれば古老共の手前面目も立ちましょうし、 何より民や兵が若いなとニヤつきそうな色話、それでいて女側の後ろ盾も実質皆無ッ!」 「うあぉっ!?」 だが直後猛然と肩を掴まれ、男は思わず勢いに息を詰まらせた。 ……鬼気迫る老僕の真顔が怖い。 「…一月、いえ三月かかっても構いませぬ。…その代わり絶対に篭絡せしめなされ!」 「ちょ」 ガクガクと肩を揺さぶられ、さしもの男も悲鳴を上げる。 「あわよくば御子も! このままでは初子もないまま20の大台に突入してしまいます!」 出たよ必殺、じいやの『早く御子の顔を見せてくだされ』モード。 「先代も先々代も16の夏には初子を設けていたというに、若と来たら…!!」 「は、話を膨らますなよ! 俺はもっと気楽に――」 「だから許婚を破瓜どころか膣断裂で大事に至らせた上寝取られたのは何処の誰かと!」 「――!!」 のうりに よみがえる ひどい とらうま。 「『処女』を選択肢に加えられないせいで、臣らがどれだけ本妻選びに苦労しているか! 出戻りは大抵しがらみか曰く付きだし、たまにまともなのがあってももう30近くだしで……」 「うるせえええええええッ!!」 『大艦巨砲主義』は漢のロマンだが、現実には『機動運用主義』に敗北した。 『万単位の大軍』もまた漢のロマンだが、これも同様に『千単位の精鋭』によく負ける。 見目の威容は無知な雑兵を圧倒し、為政者の見栄と体面こそ満たされるにせよ、 人の身に使いこなせぬなら意味がなく、身の程に余るのなら非効率の極みだ。 居ないわけではなかろうも、万軍を御せる大将器など、そうそうそこらには溢れない。 現実を知らない統治者が、ロマンに夢馳せるのは勝手だが―― ――それで悲惨を極めるのは、大抵それに付き合わされる現場の現実だ。 「叫んでも無駄です。現実と戦いなさいま――」 「そりゃ俺だってな! 誰の物にもなってない新品娘を自分の色に染め上げたいよ!」 愉しむどころか満足に事に及べる相手さえ、なかなか見つからないのは辛い話だ。 事に持ち込むまで手間隙を労し、でもいざ脱いでみたら『ごめん入らない』なのは悲しい事だ。 「たまには俺の方が主導権握りたい、経験不足な女弄んでみたいよ! 清楚で可憐で健気な同年代と、しっぽりイチャイチャ逢引しながらも語らいたいよ!」 生まれついての大王であるならば、民からの搾取にも悦を見出せようが、 生憎と男は生来が卑しい、激痛に泣き叫ぶ女を前に、剛直を維持できる程の酷薄でもない。 「でも無理なんだよ! 誰だよ『大きい事は良い事だって』一番最初に言った奴!!」 だから一刻後に自分の望みが叶うとは知らず、顔を真っ赤にして憤った。 …王族の座以上に魅力と映る愛玩動物が掌中に収まるのは、まさにその夜の話なのだが。 終
https://w.atwiki.jp/kamidori/pages/37.html
概要 情報コマンドで表示されているルートイベントに表記されたクエストはおそらく必須クエスト。 それ以外のクエストは必須ではなくクリア自体に影響はないが、仲間の加入など得られる恩恵も大きい。 クエストの出現する時期と達成までの期限が限定されたものも多いので、安易に章進行しないよう気を付ける。 ゲーム内の「情報」からいつでも確認出来るので後になってから後悔しないように注意を。 001~022 メインシナリオ 023~045 アト 水那 クレール&クレアンヌ + アト [部分編集] クエスト 分類&場所 キャラ 備考 酒場 セラウィ 『一陣の訓練地』クリア後 アースマンの生成登録 ウィルの工房 ウィル 土精召喚石のレシピ登録 アースマンの生成クリア 合成 土精召喚石を合成 アト加入 ★イベント アト ★イベント アト アトのLv6 獣剣士の闘衣のレシピ登録 不純物の除去登録 ★イベント アト 4-7章 ウィルLV12 アトLV10 同じ不純物の収集・発明登録 ウィルの工房 ウィル 5-7章 ウィルLV18 アトLV15 エミリッタルート無条件『霊木の夾雑物』のレシピ登録 同じ不純物の収集・発明クリア 合成 『霊木の夾雑物』合成後 不純物の除去クリア ★イベント アト アトが人型になり、称号『女性型土精』を獲得 ウィルの工房 エミリッタ アト 6-7章 エミリッタLV28 アトLV24 ウィルの工房 アト ★イベント アト ウィルの工房 アト ★イベント アト 酒場 レグナー アト アトの相談登録 ★イベント アト レグナーの工房 レグナー ウィルの工房 セラウィ 7-8章 エミリッタLv28 アトLv26 エミリッタルートだと6章~ アトの相談クリア ★イベント アト 『ユイドラの街郊外』へ移動し模擬戦開始模擬戦中に『アト』が『称号:訓練された土精』獲得 + 水那 [部分編集] クエスト 分類&場所 キャラ 備考 シセティカ湖の調査登録 広場 その他 『一陣の訓練地』クリア後 シセティカ湖の調査クリア 『蒼月の南湖畔』クリア 水那に会いに行こう登録 ウィルの工房 工房内 ウィルがLv5以上 水那に会いに行こうクリア 蒼月の南湖畔 Event 水那加入 ★イベント 水那 ★イベント 水那 水那Lv7 水鳥の術衣のレシピ登録 セラウィルート限定浄水の触媒炭の発明登録 領主の館 ロサナ 浄水の触媒炭の発明クリアセラウィルート限定ここまで 合成 浄水の触媒炭の合成後 シセティカ湖の浄化登録 ウィルの工房 水那 4-5章 ウィルLV14 水那LV11 セラウィルート無条件 ★イベント 水那 シセティカ湖浄化計画準備登録 領主の館 水那 4-6章 ウィルLV16 水那LV12水質浄化促進装置のレシピ登録 シセティカ湖浄化計画準備クリア 領主の館 水那 5-6章 水質浄化促進装置の合成後 20000s必要 酒場 水那 ★イベント 水那 ★イベント 水那 6-7章 2回 シセティカ湖の浄化クリア 蒼月の南湖畔 Event セラウィルート限定 酒場 その他 7章 野盗のすみかクリア後 領主の館 ロサナ この後レイシアメイルに行く 浄化機構の心臓部発明 ウィルの工房 アト 水那 浄化機構の心臓部発明クリア 合成 浄化機構の心臓部を合成後 工匠会管理地区 Event 蒼月の南湖畔 Event 酒場 ティアン 領主の館 ロサナ セラウィ 広場 その他 新型浄化機構の発明登録 町の外へ出る 新型浄化機構の発明クリア 合成 新型浄化機構の合成後 町へ出る セラウィルート限定ここまで 領主の館 ロサナ セラウィ この後レイシアメイルに行く シセティカ湖の異変調査登録 ウィルの工房 水那 7-8章 水那LV22 セラウィルート時 上記のイベントクリア後 シセティカ湖の異変調査クリアラクス・レニアと対決登録 『変事の中央湖畔』クリア ラクス・レニアと対決クリア 『怒りの氷精』クリア 水那が称号『同化した水精』獲得 + クレール&クレアンヌ [部分編集] クエスト 分類&場所 キャラ 備考 いたずら調査開始 広場 その他 1-2章『一陣の訓練地』クリア後 いたずら調査クリアユイチリの目的を調査開始 『精霊の住まう森』クリア ユイチリの目的を調査クリア 精霊の住まう森 Event 町の中 クレール クレアンヌ 町に入る→ウィルの工房→酒場→教会→闘技場→レグナーの工房→領主の館→町を出る3章でする場合 レグナーが出かけるとレグナーの工房でのイベントが帰ってくるまで出来ないので注意 ウィルの工房 クレール クレアンヌ 2-3章 クレールのお願い登録 ウィルの工房 クレール クレアンヌ 2-3章 ウィルLV8 クレールのお願いクリア霊悔の森の調査登録 精霊の住まう森 Event ウィルLV10 町に戻るとイベント ★イベント クレール 要水那 霊悔の森の調査クリアクレアンヌへ報告登録 『霊悔の森の調査』クリア クレアンヌへ報告クリア 精霊の住まう森 Event クレール印の栄養剤の発明登録 ★イベント クレール 4-6章 ウィルLV17 クレールLV12 ウィルの工房 クレール クレール印の栄養剤のレシピ登録 合成 クレール印の栄養剤 町を出る クレール クレアンヌ 5-6章 ★イベント クレール クレールLv13or14 クレール印の栄養剤の発明クリアクレアンヌの救出登録 ★イベント クレール 6章のみ ウィルLV23 クレールLV16 クレアンヌの救出クリア 『巨人族のすみか』クリア クレアンヌ加入 双子の栄養剤の発明登録 ★イベント クレアンヌ 6-8章 クレアンヌLV28 双子の栄養剤のレシピ登録 双子の栄養剤の発明 合成 双子の栄養剤 双子の栄養剤・改の発明登録 ★イベント クレール 7-終章前半 クレールLV24 クレアンヌLV30 双子の栄養剤・改の発明クリア双子の栄養剤・極の発明登録 合成 双子の栄養剤・改 双子の栄養剤・極の発明クリア 合成 双子の栄養剤・極 046~062 シャルティ メロディアーナ サエラブ&狐伯蓮 + サエラブ 狐伯蓮 [部分編集] クエスト 分類&場所 キャラ 備考 ロセアン山脈の調査開始 裏路地 その他 2-4章 ウィルLV7 ロセアン山脈の調査クリアサエラブの誤解を解く開始お酒をもってこい開始 『焔炎獣の山』クリア サエラブが親睦中になる ウィルの工房 サエラブ ★イベント サエラブ 酒場 ユエラ ★イベント サエラブ 3回 広場 ユエラ 酒場 ウィル 酒場 ティアン 2回 2000s必要 お酒をもってこいクリアお酒をもってこい2開始 焔炎獣の山 Event 酒場 ティアン 2回 5000s必要 お酒をもってこい2クリアお酒をもってこい3開始 焔炎獣の山 Event 酒場 ティアン 裏路地 サエラブ エミリッタ 3-?章 ユエラルート3章のみイベント前まで ウィルの工房 工房内 ユエラルート3章のみイベント前まで サエラブ加入 サエラブの疑惑を晴らせ開始 酒場 ティアン 4-5章 サエラブの疑惑を晴らせクリア 町に戻る 『灼熱の山岳地帯』クリア後 ★イベント サエラブ 炎剣士の闘衣のレシピ登録 サエラブの誤解を解くクリア ウィルの工房 ウィル 5-?章 酒場 ディアン 20000s必要 お酒をもってこい3クリア阿炎紅石の収集開始 焔炎獣の山 Event 阿炎紅石の収集クリア 『巨人族の鉱床』クリア 狐伯蓮が親睦中になる 酒場 狐伯蓮 悪狐への転身開始 ウィルの工房 サエラブ 狐伯蓮 7-8章 狐への転身クリア ★イベント サエラブ 『サエラブ心象領域』クリア『悪を喰らいし狐炎獣』獲得 焔の祭殿への招待開始 ★イベント 狐伯蓮 狐伯蓮加入 焔の祭殿への招待クリア 『九尾狐の神域』クリア 063~080 バラスケヴァス ガブタール エリザスレイン ラグスムエナ 081~091 エクストライベント 092~104 エウ娘イベント 105~110 アペンド 特殊錬金ディスク 111~113 アペンド ハンナさんの巡礼旅行記 114~153 アペンド パーフェクトガイドブック アペンド「パーフェクトガイド」クエストリンク サブキャラ攻略完了フラグ イベント必要レベル コメント No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 001 修理 力を失った剣の修復 ユエラ 序章 必須クエスト ユエラルート巨岩亀の生息地クリア他ルート 7章『ウィルの工房(ユエラ)』 なし 評価+140 002 発明 薄桃色の染料の発明 ティアン 200s水色・緑色・黄色の木の実x10 序章 必須クエスト 薄桃色の染料を納品 なし 評価+100 003 発明 甘い果物の香料の発明 ティアン 300s石材・粘土・木材・土x2 序章 甘い果物の香料を納品 なし 評価+100 004 発明 痩養病の薬の発明 エドラン 2,000s飾り刀 1-3章死神戦前 023・027クリアエミリッタLV5 痩養病の薬をティアンに預ける 期限の経過(10日) 評価+110 005 収集 地底湖の底にいる貝の収集 ロサナ 5,000s浮遊石x3 3章 必須クエスト 地底湖への抜け道クリア なし 評価+120 006 討伐 死神 討伐 工匠会 20,000s 3章 必須クエスト 漆黒の決戦地クリア なし 評価+130 007 回収 岩を削るノミの回収 街の男の子 良石材・良粘土・良木材・良土 3章 必須クエスト 平穏なる採取地D5到達 なし 評価+100 008 討伐 ラカの村からの討伐依頼 村人 4,000s骨董壺 5章 ユエラルート 亜種生物のすみかクリア なし 評価+120 009 発明 体質改善薬の発明 顔馴染みの店員 5,000s蜜壺 4章 エミリッタルート 体質改善薬の発明 なし 評価+120 010 発明 抑制の香水の発明 顔馴染みの店員 5,000s金魚鉢 4章 エミリッタルート 抑制の香水の発明 なし 評価+120 011 発明 娘からの贈り物 顔馴染みの店員 7,000s冷蔵の蜜壺 5章 エミリッタルート 贈答用の名酒の発明 なし 評価+120 012 発明 幸せの花嫁衣装の発明 見知らぬ客 10,000s夫婦敷き布団 6章 エミリッタルート 幸せの花嫁衣装の発明 なし 評価+120 013 調査 霊悔の森の調査 工匠会 5,000s 5章 エミリッタルート 異質の河川域クリア なし 評価+110 014 発明 茫熱病の薬の発明 村人 1,000s茶の・青い・赤い・緑の魔術糸x4 5章 セラウィルート 茫熱病の薬の発明 なし 評価+110 015 発明 茫熱病の新薬の発明 工匠会 3,000s 8章 セラウィルート 茫熱病の新薬の発明 なし 評価+120 016 発明 黴心病の薬の発明 ウィル 終章 エミリッタルート 黴心病の薬の発明 なし 評価+150 017 発明 腐沃泥の発明 ウィル 5章 セラウィルート 腐沃泥の発明 なし 評価+130 018 訪問 ラカの村からの依頼 工匠会 8,000s冥王石x2 7章 ユエラルート 迷いの鍾乳洞入り口クリア なし 評価+130 019 調査 霊悔の森の調査 漁師 100s魚の骨巨大貝の死殻 2章 必須クエスト 汚濁河川の上流地クリア なし 評価+110 020 調査 不法投棄の撲滅 工匠会 3,000s 5章 セラウィルート 近郊の不法投棄現場クリア なし 評価+120 021 調査 カレンリの水門の設置 工匠会 5,000s金星石x2 6章 セラウィルート カレンリの河川敷クリア なし 評価+130 022 奪還 カレンリの水門の奪還 工匠会 10,000s水星石x2 8章 セラウィルート カレンリの水門クリア なし 評価+140 No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 023 生成 アースマン生成 - 1-2章 土精召喚石の発明 なし 評価+100 024 除去 不純物の除去 - 4-7章 ウィルLV12 アトLV10 霊木の夾雑物の発明 なし 評価+120 025 発明 同じ不純物の収集・発明 ウィル 5-7章 ウィルLV18 アトLV15エミリッタルート無条件 霊木の夾雑物の発明 なし 評価+110 026 相談 アトの相談 アト 薪割り丸太地脈の宝珠 6-7章エミリッタLV28 アトLV24 7-8章 アトLv26ユイドラの街郊外2クリア 終章突入 評価+140 027 調査 シセティカ湖の調査 街情報 200s木枝x5弾力のある蔓x5完熟林檎x5 1-2章 蒼月の南湖畔クリア 4章突入 評価+100 028 訪問 水那に会いに行こう ウィル 1-3章 ウィルLV5 1-3章 027クリアシセティカ湖のEventマップ訪問 4章突入 評価+100 029 浄化 シセティカ湖の浄化 ウィル 3,000s 4-5章 ウィルLV14 水那LV11セラウィルート無条件 6-7章 030クリアウィルLV27水那LV17シセティカ湖のEventマップ訪問その他『工房内(水那)』イベント消化 8章突入 評価+130 030 発明 シセティカ湖浄化計画準備 ウィル 4-6章 029発生後ウィルLV16 水那LV12 5-6章 20,000s水質浄化促進装置の発明 7章突入 評価+120 031 発明 浄水の触媒炭の発明 工匠会 5,000s 4章 セラウィルート 浄水の触媒炭の発明 なし 評価+130 032 発明 浄化機構の心臓部発明 工匠会 10,000s 7章 セラウィルート 浄化機構の心臓部の発明 なし 評価+140 033 発明 新型浄化機構の発明 工匠会 20,000s赤い・青い・黄の・紫の水晶片x3 7章 セラウィルート 新型浄化機構の発明 なし 評価+150 034 調査 シセティカ湖の異変調査 ウィル 7-8章 029クリア 水那LV22セラウィルート時 033クリア 水那LV22 変事の中央湖畔クリア 終章突入 評価+110 035 討伐 ラクス・レニアと対決 ウィル 7-8章 034クリア 怒りの氷精クリア 終章突入 評価+140 036 調査 いたずら調査 街情報 200s白魔法石x5白い魔術糸x5 1-2章 精霊の住まう森クリア 4章突入 評価+100 037 調査 ユイチリの目的を調査 ウィル 1-3章 036クリア エルフ領域の森のEventマップ訪問 4章突入 評価+100 038 御願 クレールのお願い ウィル ユイチリの蜜 2-3章 ウィルLV8 ウィルLV10エルフ領域の森のEventマップ訪問 4章突入 評価+110 039 調査 霊悔の森の調査 クレール 電撃の宝珠 2-3章 038クリア 瘴気汚濁の森クリア 5章突入セラウィルートではなし 評価+110 040 訪問 クレアンヌへ報告 ウィル 2章 039クリア 7章突入 評価+100 041 発明 クレール印の栄養剤の発明 クレール 胆石・白草・鉱石x10 4-6章ウィルLV17 クレールLV12040クリア クレール印の栄養剤の発明6章ウィルLV23クレールLV16でイベント 7章突入 評価+120 042 救出 クレアンヌの救出 クレール ユイチリの甘蜜春植物の花畑 041クリア 巨人族のすみかクリア 7章突入 評価+120 043 発明 双子の栄養剤の発明 クレール 白根菜の畑 6-8章 クレアンヌLV28 双子の栄養剤の発明 終章突入 評価+120 044 発明 双子の栄養剤・改の発明 クレール 赤根菜の畑 7-終章前半 043クリアクレールLV24 クレアンヌLV30 双子の栄養剤・改の発明 なし(終章後半突入) 評価+120 045 発明 双子の栄養剤・極の発明 クレール 秋植物の紅葉畑ユイチリの甘蜜ユイチリの蜜 7-終章前半 044クリア 双子の栄養剤・極の発明 なし(終章後半突入) 評価+120 No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 046 捕縛 街に現れる魔物盗賊の捕縛 町の女性 500s月見草・香葉x3 2-4章 ウィルLV9エミリッタルート無条件 魅惑の香水の発明ユイドラの街郊外クリア 5章突入 評価+110 047 発明 豪華な首飾りの発明 シャルティ 暗黒の宝珠 046クリア3-6章 シャルティLV12 豪華な首飾りの発明 7章突入 評価+110 048 発明 豪華な指輪の発明 シャルティ 人没の鉢植え 047クリア7章 シャルティLV23 豪華な指輪の発明 終章突入 評価+120 049 訪問 シャルティ妹に会いに行く ウィル 7-8章 048クリア 睡魔姉妹の隠れ家クリア 終章突入 評価+130 050 運搬 精巧なガラス細工の運搬 ハンナ 2,000s西方光神殿の法印 2-3章 ウィルLV8 教会跡への山道クリア 4章突入 評価+110 051 発明 植物成長促進剤の発明 蒼き鎧の天使 観葉植物の鉢植え 2-3章 050クリア 植物成長促進剤の発明 4章突入 評価+110 052 約束 天使との約束 メロディアーナ 神聖の宝珠必中の腕輪飛翔の腕輪 2-3章 051クリア 8-終章前半 053クリアメロディアーナLV35 なし(終章後半突入) 評価+170 053 試練 絶壁の試練 メロディアーナ 桃羽織の衣桁 7章 メロディアーナLV25 神聖なる苦境地帯クリア 終章突入 評価+140 054 調査 ロセアン山脈の調査 町情報 500s簡素な絨毯 2-4章 ウィルLV7 焔幻獣の山クリア 5章突入 評価+110 055 試練 サエラブの誤解を解く 狐伯蓮 大しめ縄 2-4章 054クリア 5-6章 059クリアサエラブイベント消化 7章突入 評価+130 056 献上 お酒をもってこい 狐伯蓮 2-4章 054クリア 酒場で清酒を購入(2,000s)ロセアン山脈のEventマップ訪問 5章突入 評価+100 057 献上 お酒をもってこい2 狐伯蓮 2-4章 056クリア 酒場で喉殺しを購入(5,000s)ロセアン山脈のEventマップ訪問 5章突入 評価+110 058 献上 お酒をもってこい3 狐伯蓮 2-4章 057クリア 酒場でマノ刻を購入(20,000s)5-6章ロセアン山脈のEventマップ訪問 7章突入 評価+120 059 調査 サエラブの疑惑を晴らせ 町情報 1,000s青・赤魔法石x10 4-5章『酒場(ティアン)』へ行く 灼熱の山岳地帯クリア 6章突入 評価+120 060 収集 阿炎紅石の収集 狐伯蓮 赤羽織の衣桁 5-6章 058・059クリア 巨人族の鉱床クリア 7章突入 評価+130 061 試練 悪狐への転身 サエラブ 火炎の宝珠 7-8章 サエラブ心象領域クリア 終章突入 評価+110 062 訪問 焔の祭殿への招待 狐伯蓮 敷き布団・赤敷き布団・緑 7-8章 061クリア 九尾狐の神域クリア 終章突入 評価+150 No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 063 調査 エレカレンの異変の調査 工匠会 1,500s青魔宝石x5真珠石x2 4章 霊妙な地底湖クリア 6章突入 評価+110 064 調査 エレカレンの幻獣の調査 ロサナ 5,000s 4-5章 063クリア 070クリア なし 評価+140 065 探索 貝殻の代替品の調査 ウィル 5-8章 064 酒場で『遠海の海産物』を取り寄せ『闘技場』でザルメ貝の情報収集『広場』で『北方の文献』を購入(10,000s) 終章突入 評価+110 066 発明 代替品を用意しよう ウィル 5-8章 065クリア ウィルLV22 活力供給の薬の発明真納の器の発明 終章突入 評価+120 067 訪問 代替品を捧げよう ウィル 6-8章 066クリア ウィルLV24 忘却の地底空洞クリア 終章突入 評価+100 068 採取 石材を採りに行こう ウィル 6-8章 067クリア 河畔の風致遺跡クリア 終章突入 評価+110 069 発明 石用研磨剤の発明 ウィル 6-8章 068クリア 石材用の工具の発明石の研磨剤の発明 終章突入 評価+130 070 成長 祭壇完成まで ウィル 6-8章 069クリア 7-終章前半 ウィルLV35ユマ湖のEventマップ訪問 なし 評価+100 071 護衛 商隊の護衛 ガンツ 8,000s 5-6章ウィルLV20セラウィルートでは無条件 ソフ=レトルへの道クリア 7章突入 評価+130 072 討伐 雷竜討伐 工匠会 10,000s 6-7章 071クリア ウィルLV26セラウィルートでは無条件 フェマ山脈への道クリア 8章突入 評価+140 073 捜索 ガンツの捜索 工匠会 10,000s緑羽織の衣桁電撃の宝珠 6-7章 072クリアセラウィルートでは無条件 7-8章 ウィルLV30 可愛い方は条件無しセラウィルートでは両方高難易度野盗のすみかクリア 終章突入 評価+120活気の方がダンジョン高難易度&ガンツの宝x2・フールミル 074 発明 鞍作り ウィル 8-終章前半ガプタール加入ウィルLV37 セラウィルートでは無条件 雷竜の鞍の発明 なし 評価+110 075 調査 ミサンシェルの試練 ウィル 5-6章 メロディアーナLV15ユエラルートでは無条件 ウィルLV22・5,000s治癒・闘技・勇壮の水(大)x5夢幻の断崖クリア 7章突入 評価+130 076 発明 天使対策物品 考案と作成 ロサナ 10,000s豪華なベッド 6章075クリア ウィルLV28ユエラルートでは無条件 『幻惑の投擲物』x3個作成『拘束の魔導具』x3個作成 8章突入 評価+120 077 訪問 ミサンシェルへ ウィル 7章076クリア ウィルLV34ユエラルートでは無条件ユイドラの街正門前クリア ミサンシェルのEventマップ訪問 終章突入 評価+130 078 調査 新たな死神 街情報 10,000s 6-7章 ユエラLV27 追憶の郷クリア 8章突入 評価+120 079 探索 再来した死神 街情報 30,000s 6-7章 078クリア ユエラLV30 不帰の暗黒空洞クリア 8章突入 評価+130 080 訪問 死神とおでかけ ラグスムエナ 東方果実の空き箱Ⅰ東方果実の空き箱Ⅱ東方果実の空き箱Ⅲ 7-8章 079クリア ユエラLV33 狂乱の蛇行道クリア 終章突入 評価+150 ※以下は2周目以降、EXイベント発生ON時 No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 081 発明 光憐の気付け薬の発明 ウィル 2周目以降 3章◆古の鬼族遺跡◆で『精霊の燭台』を入手 光憐の気付け薬の発明 なし 評価+120 082 訪問 光憐の谷の訪問 ウィル 2周目以降 3章 081クリア ズィヒトの渓谷クリア なし 評価+170 083 討伐 グシメラ魔宮の訪問 ウィル 2周目以降 6章◆修羅の混沌遺跡◆で『漆黒の魔珠』入手自宅工房の裏庭クリア ゲファーリアの途クリアリュゲールの間クリア なし 評価+160 084 準備 新領域の立ち入り条件 ウィル 2周目以降 1章 3章で達成可ウィルLV50メロディアーナまでのサブキャラ6人が仲間にいる 立ち入り条件を満たせなくなった場合 評価+150 085 探索 新領域の探索 ウィル 2周目以降3章 084クリア 閉ざされた大罪門クリア 立ち入り条件を満たせなくなった場合 評価+150 086 準備 力を蓄え、仲間を集める ウィル 2周目以降3-終章 085クリア ウィルLV60サブキャラを全員仲間にする 立ち入り条件を満たせなくなった場合 評価+120 087 探索 魔神の遺跡の探索 ウィル 2周目以降 8-終章 086クリア ラゲンアの遺跡クリア なし 評価+160 088 発明 古の知識活用 ウィル 2周目以降 終章 087クリア 暗黒剣ザウルーラ魔法投影の羊皮紙・魔法の合成壷魔導の培養槽・手術台の5品提示酒場に他のイベントがあると表示されない場合有り所持数0の状態になってると達成できない(家具設置や販売など) なし 評価+140条件達成後酒場にイベント発生 089 討伐 アスモデウスの討伐 ウィル 2周目以降 終章 088クリア ベシュトラの封緘地クリア なし 評価+180 090 訪問 アスモデウスに会いに行く ウィル 2周目以降 終章 089クリア なし 評価+100 091 交流 裸の付き合い実施 ウィル 2周目以降 終章 090クリア 露天風呂セット設置 なし 評価+100 ※以下は2周目以降、エウ娘イベント発生ON時 No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 092 発明 全自動箒の発明 白エウ娘 5,000s裁縫台 2周目以降 1章 全自動箒の発明 なし 評価+140 093 発明 桃色の羽掃除機の発明 白エウ娘 10,000s針葉樹の鉢植え 2周目以降 1章 092クリア 桃色の羽掃除機の発明 なし 評価+160 094 発明 鉄製やかんの発明 黒エウ娘 10,000s不思議植物の鉢植え 2周目以降 1章 092クリア 鉄製やかんの発明 なし 評価+160 095 発明 鉄製バケツの発明 ナス 10,000sかわいらしい鉢植え 2周目以降 1章 092クリア 鉄製バケツの発明 なし 評価+160 096 発明 鉄製扇子の発明 メイド天使長 10,000s豪華な花の鉢植え 2周目以降 1章 092クリア 鉄製扇子の発明 なし 評価+160 097 発明 究極の洗剤の発明 白エウ娘 20,000s桃色の座布団 2周目以降 白エウ娘LV55 究極の洗剤の発明 なし 評価+160 098 発明 ナスラーメンの発明 黒エウ娘 20,000s愛の座布団 2周目以降 黒エウ娘LV55 ナスラーメンの発明 なし 評価+160 099 発明 暖かい藁の発明 ナス 20,000s藍の座布団 2周目以降 アナスタシアLV55 暖かい藁の発明 なし 評価+160 100 発明 刀剣お手入れセットの発明 メイド天使長 20,000s火の座布団 2周目以降 エウクレイアさんLV55 刀剣お手入れセットの発明 なし 評価+160 101 発明 スティアスピラの発明 白エウ娘 30,000s丸座卓 2周目以降 097クリア スティアスピラの発明 なし 評価+160 102 発明 ジデンケトルの発明 黒エウ娘 30,000s角座卓 2周目以降 098クリア ジデンケトルの発明 なし 評価+160 103 発明 バルトプルレの発明 ナス 30,000s麻雀卓 2周目以降 099クリア バルトプルレの発明 なし 評価+160 104 発明 レイルファンの発明 メイド天使長 30,000s炬燵卓 2周目以降 100クリア レイルファンの発明 なし 評価+160 ※以下は2周目以降、予約特典アペンド「特殊錬金ディスク」導入時 No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 105 調査 魔人の噂 街情報 2周目以降 2章 酒場(ティアン)でイベント消化 終章突入 評価+120 106 調査 異様な空間の調査 工匠会 20,000s 2周目以降 5章 105クリア 霊庵の歪界クリア 終章突入 評価+160 107 発明 霊器なる御杖の発明 リフィア 30,000s 2周目以降 5章 106クリア 霊器なる御杖の作成露天風呂を配置 終章突入 評価+130 108 探索 哭千陣の探索 リフィア 50,000s 2周目以降 5章 107クリア 封印すべき闇根クリア 終章突入 評価+170 109 訪問 死船の眠る海岸の訪問 ロカ 15,000s 2周目以降 3章 漂着した難破船クリア 終章突入 評価+160 110 発明 真紅の魔導鎧の発明 ロカ 30,000s 2周目以降 6章 109クリア後、ロカの手紙に返事を出している場合 真紅の魔導鎧の発明 終章突入 評価+140 ※以下は2周目以降、アペンド「ハンナさんの巡礼旅行記」導入時 No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 111 収集 商品開発への素材収集 ハンナ 1,000s治療・勇壮・闘技の水・小×5 2周目以降 2章ウィルLV10メロディアーナとハンナのイベント後教会の商品を累積5,000s以上購入 橙色の粘液×5納品(橙プテテットドロップ)精霊の住まう森・蒼月の南湖畔・◆隠秘の炎山道◆ なし 評価+120 112 護衛 絶壁の教会跡への護衛 ハンナ 5,000s西方光神殿の法印×5 2周目以降 4章教会の商品を累積10,000s以上購入111クリアメロディアーナ加入 聖天の獣山道クリア なし 評価+160 113 護衛 ミサンシェルへの護衛 ハンナ 10,000s水星・冥王・金星石×2 2周目以降 7章教会の商品を累積80,000s以上購入112クリアエリザスレイン加入 終古の聖域クリア なし 評価+180 ※以下はアペンド「パーフェクトガイドブック」導入時(導入した周回では一部のクエストしか開示されない。全てのクエストが開示されるのは導入後の次の周回より) No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 114 討伐 シセティカ湖の凶悪な魔物 街の依頼板 雇われた占い師 2周目以降3章 118クリア ◆開けた涼風西湖畔◆巨大な怪鳥の討伐 期限の経過(6日) 115 討伐 ユイドラ鉱脈の精霊種 街の依頼板 現れた占い師 3章 114クリア ◆鈍重の土砂回廊◆はぐれアースマン討伐 期限の経過(3日) 116 討伐 エルフ領域の森の巨人 街の依頼板 的中の占い師 3章 115クリア 平穏なる採取地はぐれトロウル討伐 期限の経過(6日) 117 討伐 絶壁の教会跡の飛蛇 街の依頼板 ビリビリ物干し竿 3章 116クリア ◆空色に包まれた山◆タクーシュ 期限の経過(6日) 118 修理 霊悔の森の橋の修理 街の依頼板 ぼーりんぐのたま 2周目以降 3章 「木材」「良木材」を各20個保有◆霊気漂う紫蒼の森◆でイベント 期限の経過(10日) 戻る際に経過する2日で期限超過しても失敗になるので注意 119 作成 香料の大量発注 ティアン 爆発する芸術 7章 「甘い果物の香料」50個納品 期限の経過(25日) 120 収集 三種の木の実 ティアン 紅葉の月見会場 7章 119クリア 水色、緑色、黄色の木の実を各50個納品 期限の経過(30日) 121 作成 新品の入れ替え ティアン 多機能台所 7章 120クリア 「樽」Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを各10個納品 期限の経過(30日) 122 投資 ティアンさんへ投資 ティアン おじぞうさま 7章 121クリア 100,000s投資(5回ダンジョンに入る) なし 123 投資 続・ティアンさんへ投資 ティアン ぼさつさま 7章 122クリア 500,000s投資(5回ダンジョンに入る) なし 124 投資 続々・ティアンさんへ投資 ティアン だいぶつさま 7章 123クリア 1,000,000s投資(5回ダンジョンに入る) なし 125 収集 高純度の宝石収集 ハンナ 兎ぶつかる木の根 8章 飴色、青、緑の宝石を各5個納品 期限の経過(60日) 126 収集 天使への執着 ハンナ 冷凍睡眠寝台 8章 125クリア 「天使の羽」「天使の輪」「天使魂片」各20個納品 期限の経過(60日) 127 収集 ハンナさんの商品開発 ハンナ 八位天使のポスター 8章 126クリア 「青の液」を20個納品 期限の経過(60日) 128 収集 続・ハンナさんの商品開発 ハンナ 方形の姿見 8章 127クリア 「真珠石」「水精の涙」「氷塊」「魔法の砂」各10個納品 期限の経過(60日) 129 撃退 闘技場への乱入者 ジェーン 小鳥囀る籠 終章 ジェーンH後 闘技場での勝利 期限の経過(10日)闘技場での敗北 130 作成 武具置き場の確保 ジェーン トレーニングリング黒鳥住まう大籠 終章 129クリア 鉄製の武器立てを10個納品 期限の経過(10日) 131 撃退 ジェーンからの挑戦状 ジェーン 六米四方・獣の檻小夜啼鳥の凶籠 終章 130クリア 闘技場での勝利 闘技場での敗北 132 撃退 続・ジェーンからの挑戦状 ジェーン 遊星からの飛来物体 終章 131クリア 闘技場での勝利 闘技場での敗北 No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 133 作成 女性へのプレゼント ユイドラ兵 あだるとなポスター 終章 131クリア 虹色の貝殻を5個納品 期限の経過(30日) 134 納品 新品武器の納品 ユイドラ兵 工房警備の駆動戦鬼 7章 147クリア 「ルナグレイプ」10個納品 期限の経過(25日) 135 納品 新品防具の納品 ユイドラ兵 工房警備の最終兵器 7章 134クリア 「騎士の盾」10個納品 期限の経過(25日) 136 作成 夢の魔法少女 街の女の子 客寄せマペット 8章 128クリア 「パンプキンロッド」納品 期限の経過(10日) 137 作成 あこがれの魔女 街の女の子 客寄せパペット 8章 136クリア 「魔法の箒」納品 期限の経過(10日) 138 作成 古代人形の発掘 街の男の子 筋肉男のポスター 8章 137クリア 「謎の土偶人形」「サボテンはにわ人形」各3個納品 期限の経過(20日) 139 作成 幸運の七色の糸 街の子供たち 姫狩りポスター戦女神ポスター 8章 137クリア 「七色の糸」10個納品 期限の経過(30日) 140 作成 色とりどりの生地 街の女性 耽美な姿見 7章 143クリア 茶色、青色、赤色、緑色の生地を各10枚納品 期限の経過(30日) 141 作成 工房の裏商品 街の女性 魔女語りの姿見 7章 140クリア 大きな衣装棚を納品 なし 142 発明 罠の発明 街の男性 氷塊ハンマー聳え立つ氷岩 3章 117クリア 「グレイハウンド」を100体倒した後家具「罠」を作成 なし ◆空色に包まれた山◆で湧き待ちがオススメ 143 作成 妻へのプレゼント 街の男性 ハーブの小怪巨鳥の止まり木 7章 49クリア 「光姫の首飾り」を納品 期限の経過(10日) 144 収集 巨大貝の魅力 街の商人 茶汲みの唐繰人形自動勘定装置 7章 124クリア 「巨大貝の死殻」を50個納品 期限の経過(15日) 145 作成 寒暖差への対策 街の商人 工房警備の巨石像機械仕掛けの工業旋盤 7章 144クリア 「氷姫の首飾り」「炎姫の首飾り」納品 期限の経過(20日) 146 作成 貴族への納め物 町の商人 工房警備の鉄飛兵人工太陽発生装置 7章 145クリア 「豪華な屏風」「高級な壺」「豪華な掛け軸」を各3個納品 期限の経過(20日) 147 訪問 森の活性化 クレール 東北果実の木畑巨大南瓜の畑 7章 45クリア 双子の栄養剤・極を10個作成精霊の住まう森でイベント なし 148 訓練 自身の訓練 ウィル 究極武具のレシピ 匠王 ウィルの撃破数500突破 なし 149 開拓 採掘所の開拓 ウィル 赤水晶窟への入り口青水晶窟への入り口黄水晶窟への入り口紫水晶窟への入り口 148クリア 500,000s資金投資(ダンジョンに2回入る) なし 150 開拓 魔石鉱の開拓 ウィル 魔石鉱への入り口紫魔石鉱への入り口青魔石鉱への入り口緑魔石鉱への入り口 149クリア 800,000s資金投資(ダンジョンに2回入る) なし 151 開拓 続・魔石鉱の開拓 ウィル 黒魔石鉱への入り口炎魔石鉱への入り口水魔石鉱への入り口 150クリア 1,000,000s資金投資(ダンジョンに5回入る) なし 152 開拓 水資源の開拓 ウィル 青色の池黄色の池紫色の池 151クリア 1,500,000s資金投資(ダンジョンに5回入る) なし 153 開拓 続・水資源の開拓 ウィル 緑色の池赤色の池ものとける酸の池 152クリア 2,000,000s資金投資(ダンジョンに5回入る) なし No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 アペンド「パーフェクトガイドブック」クエストリンク 討伐ルート+単独No. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 118 修理 霊悔の森の橋の修理 街の依頼板 ぼーりんぐのたま 3章 「木材」「良木材」を各20個保有◆霊気漂う紫蒼の森◆でイベント 期限の経過(10日) 戻る際に経過する2日で期限超過しても失敗になるので注意 114 討伐 シセティカ湖の凶悪な魔物 街の依頼板 雇われた占い師 2周目以降3章 118クリア ◆開けた涼風西湖畔◆巨大な怪鳥の討伐 期限の経過(6日) 115 討伐 ユイドラ鉱脈の精霊種 街の依頼板 現れた占い師 3章 114クリア ◆鈍重の土砂回廊◆はぐれアースマン討伐 期限の経過(3日) 116 討伐 エルフ領域の森の巨人 街の依頼板 的中の占い師 3章 115クリア 平穏なる採取地はぐれトロウル討伐 期限の経過(6日) 117 討伐 絶壁の教会跡の飛蛇 街の依頼板 ビリビリ物干し竿 3章 116クリア ◆空色に包まれた山◆タクーシュ 期限の経過(6日) 142 発明 罠の発明 街の男性 氷塊ハンマー聳え立つ氷岩 3章 117クリア 「グレイハウンド」を100体倒した後家具「罠」を作成 なし ◆空色に包まれた山◆で湧き待ちがオススメ ティアンルートNo. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 119 作成 香料の大量発注 ティアン 爆発する芸術 7章 「甘い果物の香料」50個 期限の経過(25日) 120 収集 三種の木の実 ティアン 紅葉の月見会場 7章 119クリア 水色、緑色、黄色の木の実を各50個 期限の経過(30日) 121 作成 新品の入れ替え ティアン 多機能台所 7章 120クリア 「樽」Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを各10個作成 期限の経過(30日) 122 投資 ティアンさんへ投資 ティアン おじぞうさま 7章 121クリア 100,000s投資(5回ダンジョンに入る、所持金100,000s以上?) なし 123 投資 続・ティアンさんへ投資 ティアン ぼさつさま 7章 122クリア 500,000s投資(5回ダンジョンに入る、所持金500,000s以上) なし 124 投資 続々・ティアンさんへ投資 ティアン だいぶつさま 7章 123クリア 1,000,000s投資(5回ダンジョンに入る、所持金1,000,000s以上) なし 144 収集 巨大貝の魅力 街の商人 茶汲みの唐繰人形自動勘定装置 7章 124クリア 「巨大貝の死殻」を50個 期限の経過(15日) 145 作成 寒暖差への対策 街の商人 工房警備の巨石像機械仕掛けの工業旋盤 7章 144クリア 「氷姫の首飾り」「炎姫の首飾り」 期限の経過(20日) 146 作成 貴族への納め物 町の商人 工房警備の鉄飛兵人工太陽発生装置 7章 145クリア 「豪華な屏風」「高級な壺」「豪華な掛け軸」を各3個 期限の経過(20日) ハンナさんルートNo. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 125 収集 高純度の宝石収集 ハンナ 兎ぶつかる木の根 8章 飴色、青、緑の宝石を各5個 期限の経過(60日) 126 収集 天使への執着 ハンナ 冷凍睡眠寝台 8章 125クリア 「天使の羽」「天使の輪」「天使魂片」各20個 期限の経過(60日) 127 収集 ハンナさんの商品開発 ハンナ 八位天使のポスター 8章 126クリア 「青の液」を20個 期限の経過(60日) 128 収集 続・ハンナさんの商品開発 ハンナ 方形の姿見 8章 127クリア 「真珠石」「水精の涙」「氷塊」「魔法の砂」各10個 期限の経過(60日) 136 作成 夢の魔法少女 街の女の子 客寄せマペット 8章 128クリア 「パンプキンロッド」 期限の経過(10日) 137 作成 あこがれの魔女 街の女の子 客寄せパペット 8章 136クリア 「魔法の箒」 期限の経過(10日) 138 作成 古代人形の発掘 街の男の子 筋肉男のポスター 8章 137クリア 「謎の土偶人形」「サボテンはにわ人形」各3個 期限の経過(20日) 139 作成 幸運の七色の糸 街の子供たち 姫狩りポスター戦女神ポスター 8章 137クリア 「七色の糸」10個 期限の経過(30日) ジェーンルートNo. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 129 撃退 闘技場への乱入者 ジェーン 小鳥囀る籠 終章 ジェーンH後 闘技場での勝利 期限の経過(10日)闘技場での敗北 130 作成 武具置き場の確保 ジェーン トレーニングリング黒鳥住まう大籠 終章 129クリア 鉄製の武器立てを10個 期限の経過(10日) 131 撃退 ジェーンからの挑戦状 ジェーン 六米四方・獣の檻小夜啼鳥の凶籠 終章 130クリア 闘技場での勝利 闘技場での敗北 132 撃退 続・ジェーンからの挑戦状 ジェーン 遊星からの飛来物体 終章 131クリア 闘技場での勝利 闘技場での敗北 133 作成 女性へのプレゼント ユイドラ兵 あだるとなポスター 終章 131クリア 虹色の貝殻を5個 期限の経過(30日) 街の男性ルートNo. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 143 作成 妻へのプレゼント 街の男性 ハーブの小怪巨鳥の止まり木 7章 49クリア 「光姫の首飾り」を作成 期限の経過(10日) 140 作成 色とりどりの生地 街の女性 耽美な姿見 7章 143クリア 茶色、青色、赤色、緑色の生地を各10枚作成 期限の経過(30日) 141 作成 工房の裏商品 街の女性 魔女語りの姿見 7章 140クリア 大きな衣装棚を作成 なし クレールルートNo. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 147 訪問 森の活性化 クレール 東北果実の木畑巨大南瓜の畑 7章 45クリア 双子の栄養剤・極を10個作成精霊の住まう森でイベント なし 134 納品 新品武器の納品 ユイドラ兵 工房警備の駆動戦鬼 7章 147クリア 「ルナグレイプ」10個 期限の経過(25日) 135 納品 新品防具の納品 ユイドラ兵 工房警備の最終兵器 7章 134クリア 「騎士の盾」10個 期限の経過(25日) ウィルルートNo. 分類 件名 依頼主 成功報酬 条件 備考 出現 成功 失敗 148 訓練 自身の訓練 ウィル 究極武具のレシピ 匠王 ウィルの撃破数500突破 なし 149 開拓 採掘所の開拓 ウィル 赤水晶窟への入り口青水晶窟への入り口黄水晶窟への入り口紫水晶窟への入り口 148クリア 500,000s資金投資後暫く様子を見る(ダンジョンに2回入る) なし 150 開拓 魔石鉱の開拓 ウィル 魔石鉱への入り口紫魔石鉱への入り口青魔石鉱への入り口緑魔石鉱への入り口 149クリア 800,000s資金投資後暫く様子を見る(ダンジョンに2回入る) なし 151 開拓 続・魔石鉱の開拓 ウィル 黒魔石鉱への入り口炎魔石鉱への入り口水魔石鉱への入り口 150クリア 1,000,000s資金投資後暫く様子を見る(ダンジョンに5回入る) なし 152 開拓 水資源の開拓 ウィル 青色の池黄色の池紫色の池 151クリア 1,500,000s資金投資後暫く様子を見る(ダンジョンに5回入る) なし 153 開拓 続・水資源の開拓 ウィル 緑色の池赤色の池ものとける酸の池 152クリア 2,000,000s資金投資後暫く様子を見る(ダンジョンに5回入る) なし サブキャラ攻略完了フラグ 下の表を満たすと、サブキャラ攻略完了フラグが立つ。 このフラグは、以下の条件になっている。 闘技場勝抜き戦 複数キャラクターのイベント(露天風呂など) 終章後半のスキル習得イベント(アト・水那・シャルティ・メロディアーナ・クレアンヌ・狐伯蓮・エリザスレイン・ラグスムエナ) 名前 条件 アト 8-終章前半 026「アトの相談」クリア後 アトLV28 自宅★イベント 水那 7-8章 035「ラクス・レニアと対決」クリア後 自宅★イベント クレール 7-終章前半 045「双子の栄養剤・極の発明」クリア シャルティ 8-終章前半 049「シャルティ妹に会いに行く」クリア後 シャルティLV25 自宅★イベント サエラブ 8-終章前半 061「悪狐への転身」クリア後 サエラブLV30 自宅★イベント メロディアーナ 8-終章前半 052「天使との約束」クリア クレアンヌ 7-終章前半 045「双子の栄養剤・極の発明」クリア 狐伯蓮 8-終章前半 062「焔の祭殿への招待」クリア後 LV34 自宅★イベント エリザスレイン 8章 エリザスレインLV38(ユエラルートは無条件) 自宅★イベント ラグスムエナ 8-終章前半 ラグスムエナLV41 自宅★イベントユエラルートでは封印された秘訣の間クリア前にこなしておくと追加イベント イベント必要レベル イベント発生時期ではなく、消滅時期を基準としたものである点に注意 名前 初期LV 3章 4章 5章 6章 7章 8章 終前半 周回後 ウィル 1 11 12 14 23 34 37 60 ユエラ 3 15 30 33 38 エミリッタ 4 5 17 28 セラヴァルウィ 4 アト 5 24 26 28 水那 6 11 12 17 22 クレール 9 16 24 シャルティ 9 12 23 25 サエラブ 10 30 メロディアーナ 12 15 25 35 クレアンヌ 26 28 30 狐伯蓮 32 34 エリザスレイン 36 38 ラグスムエナ 40 41 ミレーヌ 52 58 フィニリィ 64 70 コメント 111の条件は2周目であること教会で20万の買い物必要。最短2周目、第二章で出現確認。 - 名無しさん 2011-08-19 17 32 51 2周目 111.112は何もしないでも出現するが113は20万の買い物をしないと出現しない事を確認。 - 名無しさん 2011-08-22 04 21 18 ↑111のイベントの条件に、教会の運営資金がまだまだ足らない~と言う感じのイベントを見ることが必要(フラグ的には累積20万なので過去に一度でも累積20万以上の買い物してれば不要です。)112の条件にメロディアーナが仲間になって無いとダメ。113の条件にエリザスレインが仲間になってないとダメ。 - 名無しさん 2011-08-22 11 53 17 111は累積以外に、周回ごとで5000以上購入しないと発生しない模様。 - 名無しさん 2011-08-26 09 49 53 この周回、112発生に5000、113前のイベント発生に7万購入が必要でした。 累積リセットとかされてる? - 名無しさん 2011-08-27 15 47 47 開始時に所持金を引継しないと、イベント発生条件が異なってきます。 - 名無しさん 2011-09-06 09 49 34 その場合、111 , 112とも、5000購入が条件。 113前のHシーン発生に7万( 計8万 )購入が必要。 所持金を引き継いだ場合は、買い物無しで111~113発生を確認してます。 - 名無しさん 2011-09-06 09 51 55 具体的な金額は不明だが113は数万以上の買い物をしないと出現しないのは確か。111、112は過去の周回での買い物額次第? - 名無しさん 2011-08-28 08 39 07 112の発生条件ですが、購入額を満たしていても111クリア直後はアイコンが表示されませんでした。 - 名無しさん 2011-10-30 19 41 37 111クリア後町を出てもう一度はいるか、あるいは橙プテテットが出現する3つのエリアすべてで討伐することかもしれません(ユエラルート7章、絶壁の試験クリア後に確認)。 - 名無しさん 2011-10-30 19 45 13 127,128の収集依頼ですが、期限が60日とありますが、実際には期限はないようです。クエスト情報の一覧にも、期限は『なし』とあるため、試してみました。一応、どなたか、確認お願いします。 - 名無しさん 2011-11-11 00 37 04 ウィル匠王で撃破数500突破しても148クエ出ませんでした。他に何か条件あるんでしょうか?(アペンドはインストル済みです - 名無しさん 2011-11-17 15 58 57 クエスト121達成後、122が発生しませんでした。 122が発生した方がおられましたらご連絡下さい - 名無しさん 2011-11-19 08 14 06 アペンドを入れたその周回は一部しかクエストが発生しないみたいなので、アペンドの本格攻略は次の周からだと思います。 - 名無しさん 2011-11-19 08 50 52 自分も掲示板で↑×2と同様の質問をしたし、今後も疑問に思う人は出ると思うのでその旨追記してみた - 名無しさん 2011-11-19 20 19 19 122は、2.0最初からプレイで発生確認。 ↑ の条件には書いてないけど、所持金の不足が原因では? - 名無しさん 2011-11-20 10 17 15 所持金は480万でした。 - 名無しさん 2011-11-20 12 32 58 EX迷宮2が出てないと一部の追加クエストしかできないっぽい? - 名無しさん 2011-11-26 20 48 54 ウィル500体撃破はクエスト発生する前に達成してたら発生後になんでもいいので一体撃破すればクリア。些細かも知れんが一応。 - 名無しさん 2011-12-05 17 47 28 149~151の必要資金追加 - 名無しさん 2011-12-10 07 57 11 EX迷宮2wo - 名無しさん 2012-01-02 23 44 51 EX迷宮2をonにしないとクエストが一部しか発生しないのは - 名無しさん 2012-01-02 23 47 51 開拓 - 名無しさん 2012-09-22 13 18 22 149ってラストMAP開放後だと進行しない?投資後60日以上経過してるけど一向に完了しないんだけど。 - 名無しさん 2013-05-28 21 46 18 ダンジョンに行かないとダメな可能性あり? - 名無しさん 2013-06-01 16 32 36 124 - 名無しさん 2017-10-18 17 33 50 名前
https://w.atwiki.jp/ragadoon/pages/1459.html
『見習い君主の混沌戦線』第7回結果報告(前編) 目次 AI+「歪められた廃坑」 AJ「蒼天無き帝国」 AK「逢魔ヶ時に舞う河童」 AL「闇夜に笑う悪魔」 AM「呪言花札」 BH「大空の特攻隊」 CF「死神と蝙蝠」(別ページ) DF「教育機関の設立」(別ページ) EA「スタイルの確立」(別ページ) EB「特技の習得」(別ページ) AI+「歪められた廃坑」 (前回の結果報告) カルタキア西部の山岳地帯に出現した「廃坑の魔境」を抜けた先には、アトラタンの田舎町を思わっせるような雰囲気の「異世界の村」が投影されていた。どこまで広がっているかも分からないその魔境の混沌核を探すべく、鋼球走破隊の アルエット を中心とする第三次調査隊が結成されることになる。 魔物との戦いが前提となっていたこれまでとは異なり、「アトラタン人と大差ない外見の異世界人の村」への潜入調査ということで、今回は目立たないように少数精鋭の編成が望ましいという事情から、アルエット以外の継続参加者は潮流戦線の アイザック・ハーウッド と カリーノ・カリストラトヴァ の二人に絞られ、そこに幽幻の血盟の レオナルド を加えた四人編成での調査となった。 (よく似た景色ね。故郷の方が、活き活きとした色に満ちているけれど) 丘の上から村を眺めながら、アルエットはそんな感慨を抱きつつ、まずは廃坑内で目撃されたダークエルフ「ピロテース」に関する情報を得るため、村へと向かうことにした。アルエット自身は彼女と遭遇してはいないが、トレニア達の証言によれば、彼女は何度かアトラタン世界に投影されたことがある様子であり、彼女のことを探していた黒騎士(アシュラム?)も「アトラタン」という単語を発していたことから、自分達の今の状況をある程度理解しているように思える。 その上で、彼等は「自分達の邪魔はするな」と言っていた。邪魔さえしないならば危害は加えないとも言っていたが、ひとまず彼等の目的が分からないことには、彼等を放置しておいて良いかどうかも分からない以上、まずは彼等の動向について確認する必要があるだろう。 その傍らでは、レオナルドが遠眼鏡を用いて村の様子を確認しながら、まずは村とその周辺の地形図を作成していた。ここまでの魔境探索が難航している(第三次調査隊まで派遣されたのは、今回が初めて)ということもあり、今後の魔境浄化を見越した上で、後々に役立つかもしれない情報は可能な限り集めておこうと考えたようである。 「村の構造や建築様式もアトラタン世界と大差ないようですね」 故郷のことを思い出しながら、レオナルドがそう呟く。実際、何も知らずにうっかり紛れ込んだら、異世界だとは気付けなさそうなくらい、雰囲気は似ている。 一方、護衛として彼等に同行することになったアイザックとカリーノは、村全体の防備を遠方から確認していた。 「特に検問などは無いようですね。防壁が設置されている訳でもないですし、容易に村に入ることは出来そうです。村全体が小さな柵で覆われてはいますが、あれはおそらく、対人用ではなく、ゴブリンなどの小型の魔物を足止めするためのものでしょう」 アイザックが弓使いならではの幅広い視野を生かしてそう呟くと、金属鎧と大剣で身を固めたカリーノは淡々と状況を分析する。 「ということは、ここはおそらく、国境戦場上の村ではないのだろうな。重装備の者が警戒されそうなら、私は村の外で待機でも構わないが」 それに対しては、遠眼鏡を使っているレオナルドが答える。 「ここから見る限り、少なくとも、カリーノさんと同程度の装備の人も何人かいるようです」 「それは、この街の兵士だろう? 重武装の余所者が入ってくるのとは意味が違うと思うが」 「いえ、確証は持てませんが、彼等の立ち振舞いからして、この村の人々ではないように思えます。おそらく、それなりに魔物などの被害が発生するが故に、定期的に無頼の傭兵などを雇っているのではないでしょうか」 そんな会話を交わしつつ、彼等は周囲を警戒しながら、小高い丘を下って目の前の村へと向かって歩き始めた。 ****** 村に入った彼等は「別の大陸から渡ってきた冒険者」を装って、村人達から様々な話を聞き出すことに成功する(実際、「別の大陸」ではあるので、それも嘘ではない)。どうやら、ロードス島では武装した若者達が「冒険者」と称して各地を転々とする風習が定着しているようで、想像以上に彼等はあっさりと受け入れられた。 (あの後、人の手の入らなくなったあの村はこうなっているのかしら) アルエットが内心でそんな思いを述懐しながら、村人達から話を聞いてみたところ、この村はロードス島北東部を占めるアラニア王国の中部に位置するザクソンという村らしい。もともとは人口120人程度の小さな村だったが、数年前に起きた戦争で発生した難民を受け入れることになり、現在は森を開拓して拡張を続けている過程であるという。 「ある意味、今のカルタキアと似た状況なのかもしれませんね」 レオナルドはそう呟きながら、村の特徴や構造をメモ書きしていく。アイザックとカリーノは不意打ちを警戒して周囲に気を配るが、今のところ、彼等に対して敵対的な姿勢を見せる者の気配は感じられない。しいて言うなら、女性にしてはかなり長身のカリーノの存在感に対して、好奇とも畏怖とも取れそうな表情を見せる村人達がいる、という程度である。 そんな彼等の様子を目の当たりにしながら、アルエットは「自分達と大差ない彼等」のことを、混沌核の浄化によって消し去ることに対しての逡巡が生まれ始める。少なくとも彼等は、自分達に対して敵意を持っているようには思えない。彼等は自分が投影体であることも知らないまま、この地で平穏に暮らしている。自分が調査を進めて、この地を浄化(消滅)へと導くことに対して、アルエットの心の中で「揺らぎ」が広がり始めるが、それでも、ひとまずは今は任務のことに専念するという意志を固めた上で、ダークエルフの目撃情報について聞いて回る。 すると、村の中にいた「冒険者」の一人が、興味深い情報を彼女達に伝えた。 「ダークエルフかどうか、確証は持てないけど、夜中にそれらしい体型の女が北に向かっていくのを見た。他にも何人かの同行者はいたが、深めのフードとマントで顔を隠していたから、何者かは分からない。ただ、少なくともその一人は、歩く時の音からして、マントの下に金属鎧を着ているようだった」 おそらく、その金属鎧の人物は、黒騎士アシュラムだろう。カルタキアに残された文献によれば、彼等はロードス島の南東に存在する「マーモ帝国」の一員であり、アラニアとの関係は年代によって異なるようだが、身分を隠してアラニア内を通行しているということは、おそらく、この段階では(少なくとも)表立った友好関係ではないのだろう。逆に言えば、その正体を隠してでもアラニアに潜入する理由が、彼等の中にはあるらしい。 「この街道の北には、何があるのですか?」 書きかけの地図を片手にレオナルドがそう問いかけると、その冒険者は当初は「そんなことも知らないのか?」と言いたげな表情を浮かべるが、大陸からの渡来人であるという旨を告げると、納得した様子で説明を始める。 「このザクソンから北に2日ほど歩いた先には、ターバという名の村がある。そこがこのロードス島の最北端。まぁ、最果ての地だな。ただ、そこには大地母神マーファの大神殿がある。だから、昔から多くの巡礼者が足を運ぶ場所ではあるんだが……、少なくとも、ダークエルフがその地に向かうというのは、ちょっとキナ臭い話だよな」 このフォーセリアにおいて、一般的なエルフ族には神を信仰する風習がない。ダークエルフの場合は例外的に「暗黒神ファラリス」に帰依しているとも言われているが、ファラリスとマーファは相反する陣営の神である。ダークエルフがマーファ神殿に向かうとしたら、それは何らかの「よからぬ思惑」があると解釈するのが自然だろう。 「その大神殿以外には、特に何もないの?」 アルエットがそう問いかけると、冒険者は少し考えた上で、訥々と答え始める。 「『人間の領域』に関して言えば、他に特筆すべきことはない。ただ、この先の山岳地帯の一角にある洞窟の先には、ドワーフの連中が築いた『鉄の王国』っていう集落みたいなのがあるらしし。まぁ、俺は行ったことがないから、よく分からないけどな」 ドワーフとは、エルフと並び称される有力な妖精族である。ただ、エルフとは犬猿の仲と言われており、ましてやダークエルフは不倶戴天の敵である。そう考えると、たとえピロテース達の目的地がその鉄の王国であったとしても、キナ臭い話であることには変わりないだろう。 「あとはまぁ、氷の魔狼フェンリルとか、大地の精霊王ベヒモスとか、氷竜ブラムドとか、そういった『完全に人智を超えた次元の連中』がうようよしていると言われている。この辺り一帯は、冬になると雪が積もりやすいから『白竜山脈』なんて呼ばれたりもしてるけど、その原因は、フェンリルやブラムドにあるとも言われている。まぁ、よほどの命知らずか世間知らずでもない限り、そんな神話級の怪物達に関わろうとは思わないだろうよ」 冒険者の青年はそう語った上で、彼等の元から去っていく。彼の話を聞いただけでは、まだピロテース達の目的を絞るには情報不足だが、アイザックは「あること」を思い出す。 「そういえば、あの機械獣達の魔境の混沌核の持ち主も『竜』のような姿でしたね」 未来都市の魔境で彼が戦った雷神「シュガール」は、確かに竜のような形状の機械獣であった。アルエットもまたその戦いの時には参加していたので、はっきりと覚えている。あの時は、主戦力となる筈のタウロスが思わぬ伏兵の存在によって途中で離脱し、従騎士達主体の戦いを余儀なくされたが、それでもどうにか勝利を治めることが出来た。無論、竜と言っても世界ごとに千差万別ではあろうが、あのシュガールと同等もしくはそれ以上に強大な力を持つ竜なのであれば、魔境全体の混沌核を内包している可能性は十分に考慮すべきだろう。 「……どちらにしても、まずは北に向かってみるしかないわね」 アルエットは皆にそう告げると、三人は黙って頷く。今回は長期探索になることも最初から視野に入れているため、片道2日程度の距離なら余裕で往復出来る程度の保存食は持参している。問題は、当初の想定以上に強大な敵が待ち受けている可能性だが、他の三人が警戒心を強めていく一方で、カリーノは静かに高揚した表情を浮かべつつ、かすかに武者震いを始めていた。 ****** 冒険者から聞いた情報の通り、彼等が(野宿を挟んで)2日かけて街道を北上した結果、彼等は無事にターバの村へと辿り着く(その間もレオナルドは着実に地図を描き続けていた)。 ターバはザクソンと比べるとやや小規模で、街の各地に小さな神殿が設置されており、その意味ではアトラタンにおける「聖印教会の影響力の強い地域」に似た雰囲気を漂わせているが、そんな中、「小柄ながらも筋肉質な体型で髭をはやした男達」の姿が目立つ。よく見ると、耳も少し尖っており、明らかに「普通の人間」ではない。 「あれが、ドワーフか……。上背はないが、重心が低く、打たれ強そうな体型だ。戦場で相対したら、厄介な存在かもしれない」 戦士の本能として、カリーノがそんな彼等の体躯を値踏みするような目で眺めている一方で、アイザックは別のところに興味を示す。 「仲睦まじく連れ添っている若い男女が多いようですね」 なぜ彼がそこに興味を抱いたのか、またいつもの「コイン(もしくは他の何か)の示唆」によるものなのかは不明だが、彼のそんな疑問に対しては、事前にこの世界についての情報を調べていたアルエットが答えた。 「この世界では、大地母神の神殿で結婚式を挙げる風習があるらしいわ。多分、そのためにこの地へと巡礼に訪れた人が多いんじゃないかしら」 ちなみに、アトラタンにおいても、聖印教会の信者達は、教会で結婚式を挙げるのが一般的である。それ以外にも、それぞれの地域で祀られている土地神的な存在(その大半は異界からの投影体)の前で夫婦の愛を誓う、といった風習がある地域も少なくはないが、そういった宗教施設とは別次元での「人前式」を執り行う地域も多い。 「なるほど、こういった形での『村おこし』もあるのですね」 カルタキアの政務を取り仕切るレオナルドが感心したような表情を浮かべる(その表情の下で、彼が何を考えていたのかは不明である)。 そんな彼等に対して、村人達が語りかけてきた。 「アンタ達も、大神殿への巡礼者かい?」 村人の視点から見ると「男女二人ずつ」という組み合わせから何かを想定していたのかもしれないが、そんな憶測をあっさりとアルエットが切り捨てる。 「いえ、人探しをしているのです。この地で『素顔をフードで隠した、怪しげな風貌の者達』を見ませんでしたか?」 さすがに大地母神の信仰が厚い村で「ダークエルフ」という直接的な表現を使うのは好ましくないと判断した彼女は、ザクソンで冒険者から聞いた情報に基づいてそう問いかける。 「んー、俺は見てないけど、まぁ、怪しげな連中が来てたとしても、最高司祭であらせられるニース様のお膝元であるこの地で悪さは出来ないだろうよ。なにせ、ニース様はあの氷竜をも手懐けてしまうお方だからな」 「ほう? 竜を、手懐ける?」 「あぁ。俺も詳しいことは知らないが、ニース様はかつてこのロードス島をお救いになった六英雄の一人であり、この白竜山脈を支配する氷竜ブラムドとも盟友関係にあると言われている程のお方だ。あの方がいる限り、この地が危険に晒されることなど、ありえぬよ」 どうやら、件の氷竜ブラムドは、少なくとも今のこの地の人々にとっては、危険な存在ではないらしい。そして、こうなると「魔境の混沌核」の候補がもう一人増えることになる。 (竜をも手懐け、人々から慕われる最高司祭……、もし、その人物がこの魔境の混沌核だったら、私は……) アルエットの中で再び様々な葛藤が湧き上がる中、ひとまず彼等はザクソンの時と同様に、「大陸からの冒険者」と名乗った上で、他の村人達からも情報収集を続けていく。 すると、やがて彼等は一人のドワーフの証言へと辿り着いた。 「何日か前に、白竜山脈を徘徊する『素顔を隠した集団』を見たぞ。どこを目指していたのかは分からぬが、奴等がいたのは『氷竜』の住処の近くじゃった」 どうやら、今のアルエット達が向かうべき場所は定まったようである。 ****** ドワーフから聞いた話を元に、ターバの西に広がる白竜山脈の中でも氷竜ブラムドが住むと言われている区域へと四人は向かう。もともとターバはロードス島の中でも寒冷地域に属する気候であり、カルタキアに比べるとかなり寒いが、白竜山脈の奥地となると、より一層気温は下がる。彼等は防寒具を身にまといながら、慎重に山道を登っていく。 しかし、ドワーフが言っていた「氷竜の住処」と呼ばれる場所までの道程はかなり長い。彼等が出発したのはまだ陽が高い時間帯であったが、慣れない山道ということもあって、一日で到達するのは不可能と判断した上で、陽が落ちた頃に、彼等は野営の準備を始める。 「とりあえず、焚き火が出来るように、枯れ枝を集めましょう。少しでも暖を取らないと……」 レオナルドがそう言ったところで、おもむろにアイザックが、夜の虚空に向かって弓を構えた。 「どうしました、アイザックさ……」 レオナルドがそう言いかけた時には、アイザックは既に矢を放っていた。他の者達の目には、その軌道の先にはただの暗闇しか見えない。だが、アイザックはそれが「ただの暗闇」ではないことを瞬時に見抜いていたのである。アイザックの放った矢は、その暗闇の中で不自然に姿を消し、そして「何か」に当たったような音だけが聞こえる。この瞬間、カリーノがすぐに状況に気付いた。 「シェイドか!」 前回の洞窟の戦いにおいて、カリーノはゴブリン・シャーマンによって召喚された闇の精霊シェイドを斬り伏せている。その時と同じ存在が近付いていることを察知した彼女は、前回の状況を思い出しながら、アイザックの矢が「的中」した音が聞こえた場所へと向かって飛び上がり、その長い両腕で大剣を振り下ろす。その直前、彼女の視界は真っ暗闇の状態へと陥るが、その直後に彼女はその大剣を握っていた手から「前回同様の手応え」を感じ取り、次の瞬間、再び視界を取り戻す。どうやら今回も(既にアイザックの弓で深手を負っていたこともあり)一振りでシェイドに止めを刺すことに成功したようである。 四人がシェイドの飛んで来た方向に向けて警戒心を強めると、やがて一人の女性が姿を現す。彼等の中で彼女の姿をみたことがある者は誰もいない。だが、その細身の褐色肌と尖った耳、そして軽装鎧にレイピアという姿から、彼女が「トレニア達が出会ったダークエルフ」であろうことはすぐに予想がついた。そしておそらく、今のシェイドを召喚していたのも彼女なのだろう(ダークエルフの中にも精霊魔法を使える者がいるということは、アルエットが前回の時点で調査済みである)。 + ダークエルフ 出展 (いた、か。さて、死なない程度に探るとしよう) アルエットは内心でそう呟く。事前に仕入れた情報、および彼女と実際に戦った従騎士達の話を聞く限り、この戦力で戦って勝てる相手とは到底思えない以上、ここで積極的に彼女と関わるべきかどうかは、彼女としても判断に迷う。それに加えて、この「異世界」を消滅させてしまうことへの迷いが発生していたこともあり、精神的には様々な葛藤がある。そんな彼女達に対して、ダークエルフの方から先に語りかけた。 「お前達、何者だ? ここで何をしている?」 端的にそう問いかけられたアルエットは、意を決して答える。 「私達はアトラタンの民よ。あなたは、この世界の英雄・黒騎士アシュラム卿の側近、ピロテースで間違いない?」 これに対して、ダークエルフの女性は納得したような顔を浮かべる。 「なるほど……、閣下が遭遇したと言っていたのは、お前達か。いかにも、私はピロテース。そのことを知った上で、お前達はなぜここにいる?」 「あなた達の目的を知るため。あなた達はこの地で、何を成そうとしている?」 その問いに対して、ピロテースはレイピアを構えつつ答える。 「閣下からの忠告を聞いていなかったのか? これは『こちら側の世界』の問題だ。異世界人達が関わるべきことではない」 「当初はそうだったかもしれない。でも、この世界に投影された時点で、あなた達の問題は『こちら側』の問題でもある」 アルエットのその発言に対して、ピロテースは首をかしげる。 「投影……? お前は何を言っている?」 どうやら彼女は「投影」という原理までは理解出来ていないまま、単純に「自分達の世界」と「異世界」が廃坑を通じて繋がった状態になっている、と考えているらしい。おそらく、自分が先日の時点で廃坑内に投影されたのも、瞬間移動の魔法か何かの類いだと勘違いしているのだろう。過去に何度かアトラタンに出現したことがあるような口ぶりではあったが、それでも、この世界におけるそれなりの知識人と遭遇でもしない限りは、その現象が理解出来ないのも無理からぬ話ではある。 (さて、そうなると、彼女達は本当に「投影前から目指していた目的」の達成のためだけに動いているだけ、という可能性が高い。だとすれば、彼女達とこれ以上接することが、この調査任務において必要かどうかも怪しい……) アルエットが判断に迷っているところで、レオナルドが横から口は挟んだ。 「あなた達が探しているのは、氷竜ブラムドですか?」 「……そこまで察しているということは、さては貴様達も、宝具を狙っているのか?」 「宝具」という言葉にレオナルドは聞き覚えはない。ある程度事前に情報を調べていたアルエットも、そこまで詳しい情報を仕入れていた訳ではない以上、確信は持てない。だが、この状況から察するに、おそらく彼女達は「氷竜が持っている宝具」とやらを何らかの方法で手に入れるために来た、という可能性が高そうである。 そして、こうなるとまた新たな可能性が発生する。竜が守る程の宝具なのであれば、その宝具こそが「魔境の混沌核」なのかもしれない。もしそうならば、彼女達と最終的に対立する可能性も発生する。 「少なくとも、宝具を横取りするつもりはないわ。あなた達の世界の宝具は、私達にとって別に価値のあるものではないし。ただ、あなた達の目的が何なのか、気になっただけよ」 現状においては、そう言うしかない。彼女達が「投影」という概念を理解していない以上、迂闊に余計なことは言わない方が賢明だろう。 そして、ここで少し離れたところから、男性の声が聞こえてきた。 「ピロテース! そこに誰かいるのか!?」 レオナオルド以外の三人には、その声の主が先日洞窟で遭遇した「黒騎士」であることが分かる。そしてピロテースは、その声を聞いた上で、改めて四人に対して言い放った。 「もう一度だけ、忠告する。我等の邪魔はするな。次は無いぞ」 彼女はそう告げて、黒騎士の声がした方へ向かって去っていった。その後姿を見ながら、これまでずっと黙っていたアイザックが、ふと呟く。 「妙ですね……。あのドワーフ達が言うには、彼女達は私達よりも数日早くこの地に足を踏み入れていた筈。しかし、彼女のこの発言から察するに、まだ彼女はその氷竜のいる場所に辿り着けないまま、我々に追いつかれる程度の場所で足踏みをしている様子……」 そう言われたところで、レオナルドが地図を確認する。 「こちらの目算が間違っていなければ、明日中にはこの地図に記された場所に到着出来そうなのですが……、もしかしたら、無限回廊のような何かが発生している可能性もありますね」 実際、レオナルドは桶狭間の魔境でそういった現象を目の当たりにしている。また、小牙竜鬼の森でも似たような変異律が発生していたという報告もあった。最悪の場合、レオナルド達自身も既に、その無限回廊の中に入り込んでいる可能性もある。 「仮にそうだとしても、とにかく今は進むしかない。そうだろう?」 カリーノが皆に対してそう告げると、三人とも同意した上で、ひとまずこの晩は、予定通りに野営をおこなうことにした。 ****** 翌日。彼等はドワーフから聞いた話の通りに(レオナルドが地図を作成・確認しながら)歩を進めていくと、徐々に「強大な混沌の気配」を実感するようになる。 「この先から、何か感じますね……」 レオナルドはそう呟きつつ、遠眼鏡でその進行方向を確認すると、そこには巨大な氷をまとった「竜」の姿があった。 「おそらく、間違いないでしょう。あれが氷竜ブラムドのようです」 その声に応じて、他の者達も遠眼鏡でその姿を確認する。アルエットとアイザックにとっては、その形状は機械獣のシュガールにどこか通じるようにも見えたが、そこから感じ取れる混沌核の強さは、明らかにシャガールよりも上であった。この氷竜こそがこの魔境の混沌核であろうということを、全員が確信する。 「これは、ジーベン様達に本気を出してもらわなければ、勝てそうにない相手ですね」 アイザックがそう呟くと、アルエットも頷きつつ同意する。 「少なくとも、今の私達がこれ以上近付くのは危険ね。私達の役目はここまで。食料の問題もあるし、ここで撤退にしましょう」 彼女のその方針に対して、カリーノはやや残念そうではあったが、確かに戦略的にはそれが正しいことは彼女も理解出来るため、特に異を唱えることはしなかった。そして、レオナルドが改めて地図を元に帰還しようとするのだが、その途上、彼等の行路から少し離れた場所から、再び「聞き覚えのある声」が聞こえてくる。 「一体、どうなっている!? ここは帰らずの森か!?」 「いえ、この地はむしろドワーフの領域です。エルフの力が及んでいる筈はありません」 「ならば、ドワーフによる呪いなのか?」 「奴等にそんな力がある筈もありませぬ。可能性があるとすれば、古代王国の時代に作られた何らかの結界ではないかと」 「宝具を守っているのは、竜だけではない、ということか……。だが、私は諦めんぞ!」 その声は、間違いなく黒騎士とピロテースの声である。レオナルドはその声のする方向に向けて遠眼鏡を向けると、確かに彼等の姿が映る。その上で、しばらくそのまま彼等の動向を観察した結果、あることに気がついた。 「どうやら彼等は、幻覚を見せられているようです。無限回廊のような空間そのものを歪ませる力ではなく、純粋に方向感覚を狂わせる特殊な『変異律』が発生しているのではないかと」 ここでレオナルドは、あえて「変異律」という言葉を用いた。それはすなわち、もともとロードス島に存在していた魔法などではなく、アトラタンに魔境として投影された際に発生した現象である可能性が高いと考えたからである。その根拠は、自分達の方向感覚が一切狂わされていないからである。 「カルタキアに出現する魔境には、聖印を持った者には聞かない変異律が生み出されることがあります。おそらくは、今回もその一種なのではないかと」 レオナルドがそう語ったところで、アイザックが一つの可能性について、彼に問いかける。 「彼等の方向感覚が狂っているだけということは、たとえば私達が彼等と合流した上で先導すれば、氷竜のところまで彼等を導くことも可能、ということですか?」 「そうですね。おそらく可能でしょう。もっとも、彼等が私達の言うことを信用すれば、ですが……」 昨晩のピロテースの発言と今の彼等の会話から察するに、彼等は氷竜ブラムドから「宝具」を奪おうとしているように聞こえる。ブラムドの混沌核を浄化するためには、彼等を誘導して潰し合わせるという戦略も、確かに有用かもしれない。だが、色々な意味での不確定要素が多い以上、それが正しい選択肢なのかどうかは分からない。 「どちらにしても、それは魔境浄化部隊が考えるべきことよ。今の私達の仕事じゃないわ」 アルエットは皆にそう告げた上で、そのまま予定通りに白竜山脈から下山する。そして、再び街道を通ってザクソン経由で廃坑へと戻り、カルタキアへの帰還を果たすのであった。 ****** 帰還後のアルエットは、報告書をまとめた上で、もう一度カルタキアの書庫に残された文献を調べて、「竜」と「宝具」について確認する。はっきりとした情報までは分からなかったが、ロードス島には「五色の魔竜」が存在し、それらが一つずつ「古代の太守の秘宝」を守っているらしい。そして、黒騎士アシュラムはそのうちの一つである「支配の王笏」を求めて、各地の魔竜に戦いを挑んだという記録もある(ただし、その顛末までは記されていなかった)。 一方、ターバの大神殿の最高司祭ニースについては、明確に黒騎士アシュラムとは対立する関係にあるという。その意味では、氷竜ブラムドと戦う場合、アシュラムやピロテースを味方に出来る可能性があるのと同時に、ニースが盟友を助けるために敵に回る可能性もある、ということになる。いずれにせよ、第一次調査隊から唯一最後まで参加し続けたアルエットとしては、十分すぎる程の情報を確保することが出来たと言えよう。 (さて、これで浄化を目指せる。もっとも、私にできることは……) アルエットはそう呟きつつ、彼女自身にとっての「次の段階」へと進むための心積もりを固めようとしていた。 ☆合計達成値163(96[加算分]+67[今回分])/140 →次回「魔境浄化クエスト(BI)」発生確定、その達成値に11点加算 AJ「蒼天無き帝国」 (前回の結果報告) 「なるほど……。一般的な地球では、『昭和』は64年までしかないのか」 金剛不壊の ペドロ・メサ は、前回キリアンが入手した情報について、カルタキアの書庫でその詳細を確認していた。キリアンの証言によれば、彼が遭遇した投影体の少女、「二代目・臥龍先生」こと諸葛宮冥(しょかつのみやめい)は、自身の出身世界を「昭和70年の地球」と言っていたらしい。 地球の島国である「日本」の暦には「年号」という概念があり、君主の交替や災害の派生など、様々な出来事を契機に、それまでの暦を捨てて新たな暦へと切り替わる仕組みになっている。「昭和」の年号が用いられていた時代においては、原則として一人の君主の在位期間は年号を変えないという慣習が定着しており、その治世は64年(厳密に言えば、元年と64年は一週間程度しかないので、実質62年)で終わっているのだが、どうやら冥のいた世界においては、それが70年にも及んでいるらしい。 「一人の君主が70年も君臨し続けるということは、よほど医学が発達して寿命が長いのか、それとも、彼女の世界では年号転換の基準が違うのか……」 ちなみに、黄巾賊の少女・鄧茂(とうも)が言うには、彼女達の世界では「祖龍」という年号が使われており、彼女達にとっての「現在」は「祖龍38年」であるという。これは日本だけでなく、彼女達の住む時代においては地球全体を支配する「秦帝国」全土で用いられている年号であり、日本が秦帝国の支配下に入った時点で、日本独自の年号は廃止されたらしい。なお、祖龍以前に用いられていた年号について、携帯端末を用いて(現在は地下帝国に戻っている)鄧茂に確認してみたところ、「学校で習った気がするけど、忘れた」とのことだったので、現状において「昭和70年の地球」と「祖龍38年の地球」が同じ時間軸の存在なのかは不明である。 その上で、水行発電所の職員が語っていた「徐福」という人物についても調べてみたところ、どうやらそれは「古代の秦帝国」において最初の皇帝に仕えていた魔法師のような存在であり、彼の名前は様々な世界線の地球の記録に残されている。鄧茂が言うには、秦帝国が彼女達の時代に復活したのも徐福の力によるものであり、古代の武将の魂を復活させる技術を生み出したのも徐福らしい。その意味では、今も昔も秦帝国の中核を成す存在であることは間違いない。 一方、「臥龍先生」という人物については、今ひとつはっきりと特定は出来なかったが、それらしき存在の目星は付いた。鄧茂(およびその上官の程遠志(ていえんし))の前世における宿敵「劉備(もしくは劉玄徳)」の軍師を務めていた「諸葛亮(もしくは諸葛孔明)」という人物が、臥龍(もしくは伏龍)と呼ばれていたらしい。この人物の名は徐福以上に多くの地球の文献で言及されており、鄧茂の話によれば、現在の秦帝国の建国初期の段階においてはその諸葛亮の魂を持つ武将が中心的な役割を果たしていたが、最近になって忽然と姿を消したらしい。 「もし、栃木の『臥龍学校』を作った『初代の臥龍先生』がこの人物なのだとしたら、この魔境の中核となりうる強大な力を持つ何かが眠っている可能性は十分にありうる……」 ペドロはそう判断した上で、その諸葛亮(諸葛孔明)に関して詳しく記された『三国志演義』という書物を手に、前回鄧茂が案内してくれた道を辿って地下帝国へと向かい、そして(鄧茂から借りた地図を頼りに)単身で「臥龍学校」へと乗り込むことにした。 ****** 前回同様、黄巾賊の正装を身にまとい、栃木に降り立ったペドロは、五行エンジンで稼働する「電車」という公共交通機関を用いて、魔境内の南西端に位置する臥龍学校へと向かう。最寄り駅から更に南西へと向かう山道に入った時点で、彼はあえて黄色の頭巾を外し、ごく一般的な「地球人の旅人」のような姿となった上で、そのまま歩を進めていくと、やがて彼の目の前に、明らかに人工的に作られた水堀が現れる。その中を泳ぐ鯉達の色鮮やかな姿にペドロが興味を引かれている中、堀の向こう側から、警戒した様子の若者達が、弓を持って現れた。 「何者だ!?」 見たところ、自分と同世代か、それより少し若いくらいの年頃に見える。おそらくは「臥龍学校」の生徒なのだろうと判断した上で、ペドロは正直に応える。 「俺はペドロ・メサ。盟友のキリアン・ノイモンドに代わって、諸葛宮冥という人物に会いに来た。出来れば、彼女と話をさせてもらえないか?」 すると、彼等はキリアンの名に反応した上で、ペドロに「堀の反対側」へと回るように指示する。どうやらこの堀は「学校」を取り囲むように掘られているようで、反対側にある「橋」を通らなければ中には入れないらしい。 (なるほど、敵の侵入を防ぐための堀か。さすがは反体制勢力の拠点だけのことはある) 内心でそう呟きながら橋のある場所へと到達すると、その橋の先には木製の門が設置されており、その入口には「入徳」という文字が刻まれている。そして、彼の到着と同時にその門が開かれ、中からキリアンから聞いていた諸葛宮冥の特徴と合致する少女(下図)が姿を現すと、彼女は橋の向こう側に立つペドロに対して問いかけた。 + 諸葛宮冥 (出典:『番長学園!! 大吟醸』p.98) 「お前が、キリアンの代役かい?」 「あぁ。ペドロ・マルティネス。まだ見習いだが、一応、この世界の君主だ」 ペドロがそう言って聖印を掲げる。キリアンの報告によれば、彼女は過去に何度かこの世界に投影されたことがあり、「聖印」や「混沌」の原理をある程度理解しているという話であったが、実際に彼女はその聖印を見て、納得したような笑みを浮かべる。 「ようこそ、臥龍学校へ。アタシは諸葛宮冥。ここでは『臥龍先生』なんて呼ばれているんだが、まぁ、好きな方で呼んでくれればいいさ」 彼女はそう告げて、ペドロを学校の堀の内側へと招き入れ、そのまま敷地内を案内する。倉庫や宿舎と思しきいくつかの木造建築の周囲には、美しく整備された庭園が設置され、その一方で大根や芋などを栽培していると思しき畑なども目に入る。どうやら、この敷地内で自給自足出来るような環境が整えられているらしい。 冥の案内を聞きながらペドロは周囲に気を張り巡らせて、魔境の混沌核となりうるような存在を探ろうとするが、少なくともここまで見てきた限りにおいて、そこまで強大な混沌の気配は感じられない。そんな彼に対して冥は意味深な視線を向けながら、目の前に見えてきた茅葺屋根の建物を指差しながら声をかける。 「あれがこの学校の本校舎なんだが……、混沌核の気配は感じるかい?」 いきなり核心を突くような質問が彼女の側から出てきたことにペドロは驚き、彼女の真意がどこにあるのか判断に迷いつつも、ひとまずは素直に答える。 「いや……、他の建物と変わらない」 「そうかい。じゃあ、ついでにもう一つ、確認させてもらおうかねぇ」 彼女はそう言って、ペドロを本校舎の反対側へと案内すると、そこにはやや厳かな雰囲気が漂う建物があった。 「ここは『孔子廟』って言ってねぇ。まぁ、端的に言えば、昔の偉人を祀っている建物なんだが……、ここからは、何か感じるかい?」 「孔子廟」という建物の存在については、ペドロも鄧茂から聞かされていた。ソフィアの憶測では、それこそが「魔境全体の混沌核」の疑惑となる対象の一つであったのだが、少なくとも建物の外から見た限りにおいては、はっきりと分かる程の強大な力は感じられない。ただ、それでも他の建物とは異なる「何か」を内包しているような違和感は感じられた。 「中を見せてもらっても、いいかな?」 「あぁ、構わない。そのために来たんだろうしねぇ」 彼女がそう言ってペドロを内側へ導くと、そこには人型の木像が設置されている。おそらくはこの人物が「孔子」なのだろう。 「この木像は、かつての『古代の秦帝国』と対立した人々が信奉していた学者とも聖人とも言われている人らしくてねぇ。だからこそ、『現代の秦帝国』と戦うこの学校の生徒達にとっても精神的支柱らしいんだが……、どうだい? 何か感じるかい?」 そう問われたペドロは、改めて木像を凝視する。 「確かに、ある程度強い混沌の力は感じる。だが……」 彼はそこまで言いかけたところで、冥に視線を向ける。 「……混沌核の大きさ自体は、多分、『君』と大差ない」 「なるほどねぇ。つまり、この世界にとっての『危険度』は、せいぜいアタシと同程度、ってことか」 ニヤリと笑いながらそう答える冥に対して、ペドロは更に問いかける。 「君の目的は、何なんだ? 君は本来は『この魔境の住人』ではなく、この学校の生徒達とも関係はないのだろう?」 「あぁ、関係ないねぇ。だから正直、この魔境を浄化しようがしまいが、どうでもいいと言えばどうでもいい。ただ、なんとなく気に食わないのさ。本来はジューダスが支配している筈のこの栃木で、訳の分からない連中がデカい顔をしてるのが」 「ジューダス」という人物についてもキリアンの報告書には記されていたが、地球の様々な文献にその名を持つ人物は登場するものの、文献ごとに立場が内容が全く異なるため、特定は出来なかった。ただ、冥の語り口からして、おそらく彼女にとって「特別な存在」なのだろう。 「どうせこの世界におけるアタシ達は、いつ消えるかも分からない一時の幻のような存在。それなら、消える前に『気に入らない奴を権力の座から引きずり下ろす』という国盗り遊戯を楽しむのもまた一興、と思ったのさ」 どうやら、彼女はあくまでも「遊戯」と割り切ってこの地の争いに加わっているだけらしい。その意味では、もしこの学校内に魔境の混沌核があった場合は(彼女が目標を達成する前に「遊戯」が終わってしまう以上)彼女と対立する可能性もあったが、今のところ、その可能性は低そうである。とはいえ、混沌核の所在が分からない現状においては、完全に利害が一致しているとも断言出来ない。 そんな彼女に対して、次は何を聞き出そうかとペドロが考えていたところで、この学校の生徒の一人が現れる。 「冥様、『例の女性』が面会を求めて来訪されましたが、いかが致しましょう?」 「おぉ、もう来たのかい。これは思ったより早かったねぇ。だが、今は……」 冥は「先客」であるペドロに対して気まずそうな顔を浮かべるが、ここはペドロが譲ることにした。 「重要な客人なら、そちらを優先してもらって構わない。こちらは急ぐ話でもないしね」 「おぉ、そうかい。すまないねぇ」 「ただ、こちらもまだ聞きたいことがあるから、そちらの話が終わるまでの間、君の生徒達と話をさせてもらってもいいかな?」 「あぁ、好きにすればいいさ。アタシとは違って、お前達にとってはここが『本物の世界』だからねぇ。色々と慎重に確認しておきたいこともあるだろう」 冥はペドロにそう告げた上で、孔子廟を後にした。 ****** その後、ペドロは臥龍学校の生徒達から、様々な情報を聞き出すことに成功する。まず、この学校を設立した「本来の臥龍先生」は、年齢不詳の物静かな男性で、その正体は不明ながらも、あまりにも聡明なその智謀故に「諸葛亮の転生者」なのではないか、という噂は生徒達の間で広がっていたらしい。 だが、この世界から「蒼天」が失われた時(=カルタキアの地下に栃木が投影された時?)、「本来の臥龍先生」は消滅し、代わりに諸葛宮冥がこの地に現れたらしい。本来の臥龍先生と諸葛宮冥は年齢も性別も外見も性格も全く別人だったが、それでも生徒達はなぜか彼女から「臥龍先生と同じオーラ」を感じ取り、彼女に「二代目の臥龍先生」となることを懇願するに至った、ということらしい。 このような「入れ替わり」が発生した原因は不明だが、おそらく、この魔境が投影される際に、何らかの混沌の作用により、なぜか「本来の臥龍先生」だけがこの世界に投影されず、彼と似た因子(?)を持つ(「祖龍38年の地球」とは似て非なる世界である)「昭和70年の地球」の住人である冥が代わりに投影された、と解釈するのが自然だろう。 なお、(過去にこの世界に投影された記憶を持っている冥とは異なり)この学校の生徒達はいずれも今回の魔境が「初投影」のようで、今の自分達がどのような状況にあるのかまでは理解出来ていない。この点に関しては、説明したところで理解出来るかは分からないし、理解したことによって(冥のように割り切ることが出来ず)全てに絶望してしまう可能性もあるため、中途半端に説明しない方が無難なのかもしれない。 ただ、一方で彼等は「この世界(祖龍38年の地球)のこと」に関しては、明らかに冥よりも詳しい。そんな彼等が言うには、実はこの学校の「孔子廟」には、触れた者の体内に眠る「前世の武将の魂」を覚醒させる力を秘めているという。今、この場にいる生徒達も、何らかの武将の転生体らしいのだが、彼等はそれほど強力な武将の転生体ではなく、ペドロが持参した『三国志演義』の中にも、一瞬だけ部隊長として名前が登場する程度の者達ばかりであった。 そんな彼等の話を聞きながら、改めてペドロが木像の実態を確認しようと、彼等の許可を得た上で軽く触れてみる。すると、彼は自分の中に「何か」が入り込んでくるような感覚を覚えた。 (え……!? これは……) ペドロは慌てて手を離す。本来、アトラタン世界の住人であるペドロに、「地球の武将の魂」など宿っている筈がない。しかし、もしかしたら混沌の作用によって、「自分の魂と似た因子を持つ武将」の魂を身体に宿らせてしまうような力がこの木像に備わっている可能性はある。 生徒達の話を聞く限り、武将の魂を宿した者達は、それまでとは比べ物にならない程の力を発揮出来るようになるらしい。しかし、それが(少なくとも、この魔境内においては)混沌由来の力である以上、もしその「武将の力」を身体に宿した場合、逆に聖印の力が使えなくなってしまう可能性もある。 (もし、この力を利用するなら……、相応の覚悟が必要だろうな……) ペドロが内心でそんなことを考えているところで、孔子廟に再び冥が現れる。その傍らには、槍を持った一人の赤毛の女性の姿があった(下図)。 + 槍を持った赤毛の女性 (出典:『コード:レイヤード 拡張ルールブック ベイグランツ・ロード』p.*) 「そちらの女性は?」 ペドロが冥にそう問いかけると、冥よりも先に赤毛の女性自身が答える。 「私は九十九ことり。ムサシ・クレイドル出身の投影体だ」 彼女は淡々とした口調で、はっきりとそう言った。普通の投影体は、自分が「投影体」だということを認識出来ない。それが自覚出来ているということは、それなりに長い期間、この世界に定着し続けているか、冥のように過去に何度か投影されたことがあるか、のどちらかのパターンである可能性が高い。唐突な自己紹介に対してペドロはやや面食らいつつも、自分自身も名乗り返した上で、彼女から詳しい身の上を聞くことにした。 ことり曰く、彼女の出身世界である「ムサシ・クレイドル」とは、「昭和」や「祖龍」よりも遥か未来の時代の地球の都市らしい。彼女はその世界において「過去の英雄」の力を模倣して武装する「レイヤード」と呼ばれる特殊能力者の一人であるらしい。 彼女は数年前にこの世界に投影され、当初はアトラタンの地方領主の保護下に入ったが、隣国との紛争でその領主が戦死し、以後は流浪の傭兵として各地を転々としているらしい。そんな彼女がカルタキアを訪れたのは、この地で彼女の出身世界である「ムサシ・クレイドル」が魔境として投影されたという話を聞き、その魔境から出現する機械獣達を倒す手伝いをしようという動機だったのだが、彼女が到着した時には、その魔境は既にタウロスやアストライア達の手によって浄化されていた( 第3回BD「雷神の機械獣」 参照)。 彼女はやや落胆しつつも、機械獣による被害が最小限に押さえられたという話を聞き、ひとまずは安堵してカルタキアを去ろうとしたが、ここで、彼女の中に眠る英雄の魂が、彼女の足を止めさせた。彼女は、自身の中に眠る英雄と縁の深い投影体が、カルタキアの地下に眠っているということを、直感的に感じ取ったのである。 「私のこの槍は、三国時代の中国の英雄・呂奉先の方天画戟をモチーフとしたもの。その呂奉先の魂と共鳴する不吉な何かが、この地に眠っていることに気付いたのだ」 呂奉先(もしくは呂布)とは、ペドロが手にしている『三国志演義』の初期の段階の物語に登場する、剛勇無双の武将である。出身世界は異なるとはいえ、間違いなくこの魔境の住人達と同じ因子の持ち主である彼女が、その気配を察知したということであれば、確かに合点がいく。彼女は自力でカルタキア近辺を虱潰しに調べていく過程で(おそらくは前回の調査と今回の調査の間のタイミングで)「井戸から通じる隠し通路」の存在に気付き、自力でこの地下まで潜り込んだようである。 「この地のことは何も分からないので、まずは一通り、状況を確認させてもらった。私自身も投影体である以上、魔境だからと言って、全て浄化しなければならないとは私は考えていない。だが……、実際にこの目で見て回って、はっきりと分かった。この世界はある意味、私の住んでいた世界以上のディストピアだ」 ことりの出身世界であるムサシ・クレイドルでは人間を滅ぼそうとする機械の猛威に晒されているが、この栃木県では人間自身の手によって人間が虐げられている。このままではその猛威は地上のカルタキアにまで至る可能性もある以上、放置は出来ないと彼女は判断した。 「おそらく、この地の人々の大半は、魔境に紐付けられて投影された存在。魔境の混沌核さえ壊せば、何が起きたかも気付かぬまま消滅するだろう。出来れば無駄な苦しみを与えることなく、この悪夢から覚ましてやりたい。もっとも、覚ました後の元の世界も、結局は悪夢のままなのかもしれないが……」 「まぁ、それは元の世界の彼等自身が考えるべきことだねぇ。アタシ達が手出し出来ることじゃないし、手出しすべきことでもない」 冥がそう言って口を挟んだところで、ことりもその考えには同意した上で、改めてペドロに対して語り始める。 「カルタキアの君主がこの地下魔境を浄化する気があるなら、協力させてほしい」 「それはもちろん、俺もそのために来たのだから、異論はない。というよりも、なぜ地上にいた時点から、俺達に話をつけようとしなかったんだ?」 「理由は二つある。一つは、先程言った通り、そもそも魔境の実態を見るまでは、浄化すべきかの判断を迷っていたから。そしてもう一つは、現在のカルタキアには聖印教会の者達がいると聞いたからだ」 聖印教会の中には、投影体と協力すること自体を拒む者もいる。実際のところ、星屑十字軍に関してはそのような者達はごく一部なのであるが、それでも投影体の側からすれば、警戒せざるを得ないだろう。しかし、ペドロに関して言えば、既に冥との交渉の席に座っているという話を冥から聞かされていたため、少なくともある程度は投影体との協力に対して前向きな人物だと判断した上で、彼とであれば協力体制を築いても大丈夫だろうとことりは判断したのである。 「なるほど。そういうことなら了解した。どちらにしても魔境の混沌核の位置さえ把握出来れば、近いうちに浄化作戦に移行することになるだろうから、君達の力を借りることになると思う」 ペドロが二人の(おそらくは自分と同世代の)投影体少女に対してそう告げたところで、ペドロが鄧茂から預かっていた「携帯電話」が反応する。すぐさま通話モードに切り替えると、受話器越しに鄧茂の声が聞こてきた。 「程遠志サマの様子を探ってたら、ちょっと気になる話を聞いちまったんだよ」 鄧茂曰く、程遠志はこの地に赴任するにあたって、「太平要術書」という仙術の教本を与えられていたのだが、どうやらその書物が、蒼天を喪失して以来(この地に魔境として投影されて以来?)急激に強力な戦闘用呪物としてその力が強大化したらしい。 この話を聞かされた時点で、ペドロの中では、それが「魔境の混沌核」なのかもしれない、という考えに辿り着く。現状、孔子廟が混沌核である可能性が消えた時点で、残る有力候補は水行発電所と程遠志自身であったが、前回の潜入調査の影響で警備が強化されているため、現状では発電所への再潜入は難しい。そうなると、どちらにしても次は程遠志自身もしくはその周囲に探りを入れてみるのが妥当だろう。 ただ、鄧茂が言うには、今のところ太平要術書は「いざという時の切り札」としてどこかで厳重に保管しているようで、それがどこにあるのかは分からないらしい。つまり、その所在を明らかにするためには、程遠志を何らかの形で戦力的に追い詰めるのが最も確実と言える。 とはいえ、その戦略を選ぶのであれば、さすがにペドロ一人ではどうにもならない。ことりの戦力がどれほどかは分からないが、相手を追い詰めるほどの戦力を確保するには、出来れば他にも何人かの従騎士達を連れて改めて挑みたいところではある。 その上で、あくまで「一つの可能性」として、ペドロは鄧茂に問いかける。 「もし、新たに強力な『武将』が出現したとしたら、程遠志は焦ると思うか?」 「あぁ、そりゃあもう、全力で叩きに行くだろうな。もし、アタシ達の宿敵である関羽や張飛みたいなのが現れたら、間違いなく全ての切り札を総動員すると思う」 鄧茂からそこまでの話を聞いたペドロは、ひとまず冥とことりにも別れを告げた上で、先刻の孔子廟での「謎の力」のことを思い出しつつ、様々な選択肢を考慮に入れながら、一旦地上へと帰還するのであった。 ☆合計達成値:64(52[加算分]+12[今回分])/120 →クエスト内容および選択肢を変更した上で、次回に継続(目標値は更に上昇) AK「逢魔ヶ時に舞う河童」 (前回の結果報告) 妖狸・隠神刑部(下図)に導かれる形で派遣された「江戸の魔境」の第一次調査隊の捜査の結果、魔境の混沌核の位置は突き止められなかったが、様々な情報を入手することは出来た。 + 隠神刑部 (出典:『大江戸RPGアヤカシ』p.240) まず、魔境内には(隠神刑部が言っていた通り)現地人の姿は発見出来ず、河童以外の妖怪も見当たらない。しかも、どうやら河童達自身もその現象を不可解に感じていたようで、彼等によって人間達が神隠しにあったという訳ではなく、混沌の作用によってなぜか「江戸の街」と「河童」と「隠神刑部」だけが投影されることになっていたらしい。 ただ、当初はその状態だった江戸の魔境に、途中から新たな人間達が投影され始めた。一人は、もともと隠神刑部と同じ時代の江戸に住む憑神(ツキガミ)使いの「小梅鼓のお白」という名の町娘である(下図)。ただ、本来の彼女に憑いている筈の座敷童子はなぜか投影されず、彼女一人だけが投影される形になっていたらしい。もともと転寝師(うたたねし)という特殊な裏稼業に従事していた彼女は、自身が「異世界に投影された」という不可思議な現象をひとまず理解した上で、魔境浄化に協力する姿勢を示す。 + 小梅鼓のお白 (出典:『大江戸RPGアヤカシ』p.16) 一方、おそらく「この江戸」とは似て非なる別の異世界の江戸から投影されたと思しき人物もいた。それは「田沼意次」と名乗る金銀妖眼(ヘテロクロミア)の男装の麗人である(隠神刑部が言うには、「この江戸」に存在していた田沼意次は男性なので、明らかに別人である)。彼女は自分が異世界に転移させられたと認識しているようで、詳しい説明を聞く前に「白面」の何者かを発見し、どこかに走り去ってしまった。彼女の行動原理は不明であるが、少なくとも敵対的な姿勢は見せていなかったので、今後の状況次第では彼女とも共闘出来る可能性はあるだろう。 ただ、今回の調査隊は前回よりも更に少なく、重騎士の参加者は星屑十字軍の ユリム と、ヴァーミリオン騎士団の ユーグ・グラムウェル の二人だけである。一方で、お白が(前回のハウメアに代わって)隠神刑部の「宿主」として参加することになった。どうやら、もともと憑神使いだったこともあり、妖狸を身体に受け入れることもそこまで難しくはなかったらしい。 「前回は川で溺れちゃったけど、今回は頑張るよ!」 相変わらず仮面で素顔を隠した状態のままユーグがそう意気込む傍らで、ユリムは前回の終盤での乱戦を思い出しながら、光剣を生み出す練習を重ねている。 「彼等があくまで相撲で決着をつけるつもりなら、それに付き合うが、彼等がルールを無視するなら、こちらも全力で撃退する必要がある」 そんなユリムに対して、隠神刑部は冷ややかに呟いた。 「所詮、河童は河童じゃ。奴等が約束など守るとは思えぬ」 「それを言うなら、アンタたち狸も、あんまり変わらないと思うけどね」 宿主のお白がやや呆れ顔でそう指摘しつつ、やがて彼等は再び江戸の街へと足を踏み入れることになるのであった。 ****** 前回、ユリムと相撲を取った河童は、「おいてけ堀の川太郎」が一番強い、と言っていた。河童達にとって「相撲が強い」ということには大きな価値がある以上、その「川太郎」が河童達を束ねている可能性は十分にあるし、強大な混沌核の持ち主である可能性も十分にある。そう考えた彼等は、ひとまずその「おいてけ堀」を探すことにした。 お白もまた、投影前の時点でその「おいてけ堀」に関わる事件の調査に参加していたらしく、そんな彼女がこの地に投影されたという点から考えてみても、その「おいてけ堀」に魔境の混沌核が深く関わっている可能性は高そうである。 そんな思惑を抱きながら、江戸の魔境へと再び踏み込んだ彼等は、お白の先導に従って、まずは一軒の長屋の前へと到着する。 「私が請け負った依頼によると、一人の子供が、アヤカシの手によって、その『おいてけ堀』に連れて行かれてしまったらしくてね。その子が住んでたのが、この長屋。だから、ここからそこまで離れた場所ではないと思うんだけど……」 本来なら、街の住民への聞き込みなどを通じて調べたいところだが、人間が不在の現状ではそれも叶わないため、ひとまずは虱潰しに周囲を歩いて回るしかない。お白は町中を流れている堀の構造は概ね把握しているが、「おいてけ堀」がそれらの中のどの区画を指しているのかは分からないし、そもそも本当に「堀」なのかどうかも不明らしい。 なお、前回ユーグが堀の中へと潜水した時、どこまで潜っても底が見えない程の深さだったが、お白が知る限り、この街の堀自体はそこまで深く掘られている訳ではないため、既にこの街全体が(アヤカシの力もしくは混沌の力によって)歪められている可能性が高い。その意味では、もう一度堀に潜って水路の構造を調べてみるという手法も無くは無いが、前回ユーグが「何者か」によって足を掴まれて水底へと引きずり込まれそうになった経緯を考えれば、まずは慎重に陸上から探りに行った方が無難だろう。 あまり迂闊に手分けするのも危険なので、ひとまずは3人(+1匹)で街の各地を歩き回ってそれらしい気配を探すことにした彼等であったが、さすがに何の手掛かりもない状態ではそう簡単には見つからない。しかし、やがて陽が落ちかけ、空が青紫色に染まりつつある頃、ユリムの嗅覚が「何か」を察知する。 「この生臭い匂いは、あの時の……」 前回、河童と組み合って相撲を取ったユリムは、彼等の匂いがはっきりと嗅覚に残っている。街の郊外の一角で、あの時と似た空気をかすかに感じた彼は、その匂いのする方向へと向い、二人もそれに続く。 すると、やがて他の二人にもはっきりと分かる程度の生臭い匂いと共に、「ぎょっぎょっぎょっ」という蛙の鳴き声が聞こえてきた。 「前に河童と会った時も、蛙の声が聞こえてたよね……」 ユーグがそう呟きつつ、神経を霊感に集中させてみると、明らかにその蛙達の声の中から、強烈な混沌の気配を実感する。魔境の混沌核と思しき気配がその先にあるのではないかと判断した上で、彼等が更にその声のする方面へと向かっていくと、やがて人の背丈ほどの葦が広がった区画へと辿り着く。それらをかきわけながら更に歩を進めていった結果、彼等の目の前に「鉛色の水面が広がった堀」が現れた。明らかに強烈な生臭い匂いがもやのように周囲に漂う中、いつの間にか時雨がしとしとと降り始める。 そんな中、ユーグがその堀の近くに、何かが落ちているのを発見した。 「ん? あれは、釣り竿……?」 彼の視線の先には、確かに一本の釣り竿のようなものが転がっている。更にその近くには魚篭(びく)も転がっていた。どちらも小型の代物で、子供でも扱えそうな道具のように見える。 「もしかして、あれが行方不明の子の……」 お白がそう口にした瞬間、唐突に鉛色の堀の中から、おぞましい声が聞こえてくる。 「置いてけえ……、置いてけえ……」 不気味に響くその声に対して、三人の心に寒気が走った直後、堀の周りに生い茂った葦の中から、その声と共に一匹の河童が姿を現す(下図)。 + 河童/一般的な姿 (出典:『大江戸RPGアヤカシ』p.236) 「置いてけえ、平九郎。お前の尻子玉を置いてけえ。平九郎の尻子玉を置いてけえ」 虚ろな瞳で河童がそう呟く中、お白は「平九郎」という名前を聞いて、あることを思い出す。 「平九郎って、確か、行方不明になっている子の父親の名前だったような……」 どうやら、やはり彼女が受けた依頼と密接に関わっているようだが、ユリムやユーグにしてみれば、そちら側の事情は関係ない。ひとまずユリムは端的に河童に問いかける。 「お前が、川太郎か?」 「おぉ、そうじゃ、わしが川太郎じゃ。そういうお前は、なにものじゃ? 異人か?」 「俺はユリム。お前と相撲で勝負するために来た」 前回の傾向から、ひとまず相撲の話を持ち出して様子を見ようと考えたユリムであったが、それに対する川太郎の反応は意外なものであった。 「わしが欲しいのは平九郎の尻子玉じゃ。異人などには用はない。平九郎はどこじゃ?」 どうやら、この川太郎は特定の人間に執着している河童らしい。しかし、現状では「本来のこの江戸の人間」の姿がお白以外に投影されていない以上、この状況では交渉すら出来ない。 (さて、どうする……、「俺に勝てば平九郎を連れてくる」などと言い張ったところで、信じる保証はないし、嘘を看破されれば交渉は難しくなる。そもそも、この河童が魔境の混沌核に通じているのかどうかも分からない以上、そこまでして交渉する必要があるかどうかも……) 現状、ユリムもユーグも、この河童からはそこまで強大な混沌の力は感じない。ただ、先刻から周囲に霊感を張り巡らせていたユーグは、徐々に「嫌な気配」がこの地に満ちつつあるのを実感していた。 「あれ……? もしかして、囲まれてる……?」 ユーグがそう呟いた瞬間、彼等は自分達の周りを大量の蛙達が包囲していることに気付く。蛙と言っても、その体躯は猫や子犬にも匹敵する程の大きさで、しかも河童と同等以上の明らかに禍々しい気配を感じていた。 (あんな大きな蛙なんて、見たことないわ……) (儂も知らんぞ……。これが、この世界における「混沌」の力、ということか……) お白と隠神刑部が心の中でそんな会話を交わしている中、川太郎が彼女に語りかける。 「そこの女、転寝師じゃろ? しかも、かなり厄介な憑神を連れておるな」 「えぇ。確かに私は転寝師。でも、まだあなたを祓うと決めた訳では……」 「うるさい! そんな危険な狸を連れてる奴のことなど、信用出来るか!」 どうやら、隠神刑部は、アヤカシ達の中でもかなり強大な存在らしい。それが人間の憑神使いと手を組んでいるという状態は、河童にとっては相当な恐怖だったようで、川太郎がそう叫ぶと同時に、彼等を取り囲んでいた蛙達が一斉に襲いかかろうとする。 それに対して、妖狸が何か妖術を用いて対応しようとするが、それよりも一瞬早く、あらかじめ警戒していたユリムが聖印から光剣を生み出し、周囲の蛙達を一掃する。まだパニッシャーとして目覚めてから日が浅い彼の光剣は、通常の剣と同等(あるいはそれ以下)の威力しか持たないが、それでも、小型の魔物を相手に振るうには十分すぎる程の威力であった。 「もう一度言う。俺は相撲をしに来た。だが、そちらが応じる気がないなら、俺も『相撲の枠組の外』でお前達と戦う」 光剣を掲げながらそう言い放ったユリムに対して、川太郎は少し興味深そうな視線を向ける。 「……いいじゃろう。ならば、特別に儂の生み出した特製の土俵で迎え撃ってくれるわ!」 川太郎はそう言い返した上で、自身の背後に妖気を充満させると、やがてそこからゆっくりと「空間の歪み」が発生していく。その光景を目の当たりにして、お白が叫んだ。 「異界が現出するわ!」 彼女が言うところの「異界」とは、この世界におけるアヤカシ達が本来住んでいた世界(以下、便宜上「妖(アヤカシ)界」と呼ぶ)のことである。その中に通常の人間が紛れ込んだ場合、その精神はアヤカシ達によって惑わされ、まともな判断能力すら持てなくなってしまうことが多い。そんなアヤカシ達の世界の中でも、例外的に確固たる自我を保つことが出来る者達が、お白のような「転寝師」と呼ばれる者達であった。 (少なくとも、この妖狸と一緒にいる限り、私は大丈夫。でも、あの二人は……?) お白がそう考えてユーグとユリムに視線を向けようとした瞬間、彼等の身体から「聖印」が出現する。 「え……?」 「何!?」 二人とも、聖印を発現させようとしていた訳ではない。しかし、無意識のうちに彼等の聖印が防衛本能を発揮し、彼等の身体を光で包み込む。そして、そのまま二人は「おいてけ堀」の周辺区画の外側へと弾き飛ばされた。 「うわっ!」 「くっ!」 そんな二人の様相を目の当たりにして、妖狸も思わず叫ぶ。 「まずい! さすがに儂等だけでは危険じゃ。ここは一旦、退くぞ!」 「分かったわ!」 隠神刑部とお白も、弾き飛ばされたユリムとユーグの後を追って、その現出しつつある空間の外側へと逃げ出して行く。 「なんじゃなんじゃ、期待させおって。結局、尻尾を巻いて逃げるのか。所詮、人間も狸も、口先ばかりの卑怯者じゃの!」 吐き捨てるような川太郎のそんな声と共に、広がりかけた妖界の空間はうっすらと消えていき、川太郎と蛙達もまた姿を消していく。 だが、そんな中、弾き飛ばされながらも霊感への集中を切らさなかったユーグは、妖界の奥の方から確かな「強大な混沌の気配」を感じていた。 (あの空間の中に、確かに「魔境の混沌核」がある……) ユーグははっきりとそう確信しながらも、自身がその混沌核へと向かうことを、彼の聖印は許してはくれなかった。 ****** 「おいてけ堀」に現れた妖界が完全に消滅した後、改めて3人と1匹は現状を確認する。ユーグの認識が間違っていなければ、あの河童が生み出した妖界の中に、この魔境の中核となる混沌核が存在するらしい。つまり、この魔境を浄化するためには、妖界の中に入り込む必要があるのだが、どうやら現状ではユリムもユーグも、その内なる聖印の防衛本能によって、妖界の中には入れないようである。 「まぁ、それも無理からぬ話ではあるな。確かにアヤカシの世界に人間が入るのは危険。それをお主等の聖印とやらが邪魔をするというのも、致し方のないこと」 淡々と妖狸はそう語るが、この状況のままでは混沌核を浄化することは出来ない。そこで、この状況を打開するために、彼は「別の手段」で妖界へと彼等を導く手段を提案する。 「アヤカシの世界への扉は、儂でも開くことは出来る。そして、儂が生み出した世界から、儂に導かれる形で入り込むなら、妖気がお主達に与える圧力も弱めることが出来る。それならばおそらく、お主達の聖印が過剰反応することもなく、そのまま入れるじゃろう。ただ……」 隠神刑部は視線をそらしながら、バツが悪そうな表情を浮かべる。 「……今の儂では、それだけの力を発揮出来ぬのじゃ」 先刻、川太郎は明らかに隠神刑部のことを警戒していたようだが、それでも本来の彼の力には程遠い状況らしい。 「あの『おいてけ堀』は、おそらく奴にとっての本拠地のようなもの。故に奴はあそこから容易に異界への門を開くことが出来たが、儂が同じ要領で門を開くには、四国まで帰らなければならぬ」 「四国?」 ユーグが首を傾げたのに対し、お白が補足する。 「とっても遠いところよ。そもそも、そんな遠い場所までこの魔境(?)が繋がっているかどうかも分からないわ」 なんとなく漠然とした魔境に関する理解に基づいてお白はそう答えたが、実際、その認識で間違ってない。少なくとも、この江戸の魔境から直接繋がってはいないだろう。そのことを踏まえた上で、妖狸が話を続ける。 「じゃが、儂が本来の力を発揮出来れば、どんな場所からであろうとも、異界への扉を無理矢理こじ開けることは出来る。ただ、そのためには……、そうじゃのう……、家斉が飲んでおった『あの薬』があれば、再び儂の力を漲らせることも出来ると思うのじゃが……、果たして、まだあれが江戸城に残っておるかどうか……」 半信半疑の表情でそう呟く妖狸に対して、三人は次々に口を開く。 「可能性があるというのなら、その城に行ってみるのも一つの手だろう」 「そうだね。どうせ人が投影されてないなら、簡単に入れるだろうし」 「もし見つからなかったとしても、私の父も医者だから、もしかしたら私の家にも同じものがあるかもしれないわ。どんな薬なの?」 お白からの質問に対して、隠神刑部は短く答える。 「海狗腎じゃ」 「……かいくじん? 聞いたことない薬だけど、それってどういう……」 「別に知らんで良い。あのような珍薬を、町医者ごときが持っている筈も無かろうからな」 そんな会話を交わしつつ、ひとまず彼等は、この江戸の街の中心に存在する「江戸城」へと向かうことにした。 ****** 「へー、あれが、この世界のお城なんだー」 ユーグは遠方に見えてきた江戸城の天守閣を目の当たりにして、そんな声をこぼす。明らかに建築様式から何から、アトラタン西部や暗黒大陸北部とは全く異なるその姿を目の当たりにして、少し興奮しているようにも聞こえる。 だが、そんな呑気な気分もあまり長くは続かなかった。やがて彼等の耳に、その江戸城のある方面から聞こえてくる激しい喧騒が届いたのである。 「争いが起きているのか?」 ユリムが警戒しつつ、再び光剣を出現させる中、やがて前方から、一人の奇妙な様相の人物が現れる。それは、この世界における「武士の正装」を身にまとった、金銀妖眼の男装の麗人であった。彼女は後方を気にしながら、江戸城から遠ざかるように街道を小走りで駆けている。 「あ、田沼さーん!」 ユーグはそう叫びながら手を振る。そこにいたのは紛れもなく、以前、彼が堀で溺れかけた時に助けてくれた「田沼意次」と名乗る投影体であった(下図)。 + 田沼意次 (出典:『天下繚乱RPG』p.235) 「奴が田沼だと……? まったく、似ても似つかんな」 隠神刑部が「自分の記憶の中にいる田沼意次」を思い返しながらそう呟く中、その男装の麗人は笑顔で答えつつ、そのまま彼に近付いてくる。 「おぉ、仮面の少年。生きていたのだな。そこにいるのは、お前の仲間か?」 「うん。ユリムさんと、お白さんと、隠神刑部さんだよ」 「隠神刑部……? 貴様、『妖異』か?」 田沼が訝しげな視線を妖狸に向ける。 「『お主の世界』ではそう呼ぶのか? まぁ、おそらく『お主達の江戸』にも、儂に相当する者はおるのじゃろうよ」 やや投げやりな口調で隠神刑部がそう答えたところで、ユーグが割って入り、彼の分かる範囲での「この世界の事情」を説明する。当然、それは相当に突拍子もない話の筈なのだが、田沼はお白や隠神刑部達と同様、存外あっさりとその説明を受け入れた。 「なるほど。つまり、今の私も、そこの町娘も、狸も、『本来の世界』から生み出された模造品、ということか。そして、今のこの江戸の町そのものも、そこの町娘や狸が住んでいた世界の模造品である、と」 どうやらこの田沼意次という人物は、相当に高度な知性を持つ投影体であるらしい。おそらく、彼女がここまであっさりとこの世界の構造を理解出来た背景には、彼女の出身世界もまた「時空破断」と呼ばれる奇々怪々な現象に支配されているから、という事情もあるのだろう。 「そういえば、あの時、どうして急にいなくなっちゃったの?」 ユーグのその問いかけに対し、田沼は彼と出会った時のことを思い出しながら答える。 「あの時……? あぁ、あの時はな、『私の世界』に住む『白面の君』という妖異と思しき者の気配を察知したので、其奴を追おうとしたんだが……」 ここで、隠神刑部が声を上げる。 「白面の君、じゃと……!? それはもしや、九尾の狐のことか!?」 「おや、『そちらの世界』にも奴はいるのか。残念ながら、逃げられてしまったので、その正体までは確認出来なかった。結局、『私の世界の九尾の狐』だったのか、『そちらの世界の九尾の狐』だったのか、それとも『全く別の世界の狐』だったのかは分からん」 「ふむ……、だとすると、あの桶狭間で感じた気配と同じかどうかは確証が持てぬか……」 「桶狭間? それは一体どういう……」 彼等の会話がよく分からない方向へと向い始めたところで、ユリムが割って入った。 「先程、後ろを振り返りながら走っていたようだが、城の方で何かあったのか?」 「あぁ。実は『この江戸』に関する情報を調べるために、なんとか江戸城に潜入出来ないかと試みてみたのだが、城の周りの水路が河童達で埋め尽くされていて、近付くのも難しかった」 彼女がそう答えたところで、隠神刑部が表情を歪ませる。 「うーむ、そうなると、この数で忍び込むのは難しいな。せめて、陽動部隊と潜入部隊に分けられる程度の人数が欲しい……」 その点に関しては他の者達も同意する。その上で、隠神刑部は、潜入のためには様々な「道具」が必要になる、ということも告げた上で、ひとまず彼等は(田沼も連れ立った上で)カルタキアへと再び帰還することになった。 ☆合計達成値:53(28[加算分]+25[今回分])/120 →クエスト内容および選択肢を変更した上で、次回に継続(目標値は更に上昇) AL「闇夜に笑う悪魔」 (前回の結果報告) ここ最近になってカルタキア近辺の街道で人々を襲撃していた怪物達(オーク、ナイト・ガーゴイル、漆黒のユニコーン)は、いずれも異世界「モノカン」からの投影体であり、彼等はそれぞれに文面の異なる(しかし文体は同じ)「悪魔に関する怪文書」を手にしていた。 そこに記されていた内容をまとめると、どうやらカルタキア内を流れるフェニゴ川の上流付近に投影された異界の森林(魔境)において、月夜になると「悪魔」が出現する、ということが示唆されているようだが、その「悪魔」なるものが何を意味しているのかは分からない。 もし怪文書に書かれている内容が(少なくとも一定の)真実を含んでいるのであれば、この魔境の森の混沌核は、月夜の晩にしか現れないのかもしれない。とはいえ、昼の時点でもその魔境の森自体は存在しているため、まずは昼の時点で調べられるところまでは調べようと判断した従騎士達は、鋼球走破隊の ヘルヘイム を中心として、事前調査へと向かうことになった。 ヘルヘイムにとっては、これが実質的に初めての「指揮官」としての任務であったが、その心はどこか浮かない様子であった。 (この間はヘルが無理したせいで、兄さま達の足を引っ張ってしまった……) 数日前の北西街道での戦いにおいて、ナイト・ガーゴイルを相手に立ち回った際、自分の力を過信して一人で敵を殲滅しようとした結果、危機に陥ってしまったことを、彼女は思い返していた。実際のところは、彼女のその奮戦のおかげでガーゴイルを一箇所に集めることに成功し、結果的にタウロスによる殲滅が容易になったという側面もあるのだが、もしあの時、同僚のヨルゴが彼女を強引にその場から引き剥がしてくれなければ、タウロスの剣圧の巻き添えを食らっていた(もしくは、そもそもタウロスが本気の一撃を放てなかった)であろう。 そして、彼女を助けた直後にヨルゴが告げた「命は大事にしてよ」という言葉が、彼女の脳裏にずっと引っかかっていた。 (ヘルの役目は、前線で敵陣に対して積極的に斬り込んでいくこと。でも、それは「命を大切にすること」と矛盾してまう。じゃあ、ヘルはどうやって戦えば……) ヘルヘイムはそんな悩みを抱えつつ、与えられた地図を頼りにフェニゴ川に沿う形で南進していった結果、やがて目の前に魔境の森を発見する。彼女は他の従騎士達と共に慎重に森の中へと足を踏み入れていった。 「森の形状自体は、この世界の森とあまり変わらないですね……。とりあえずは、まとまって行動しましょう。何か怪しい気配を感じたら、すぐにヘルに教えて下さい」 今回、彼女が率いる「昼の調査隊」に加わった従騎士は数が少なく、どちらかと言えば戦闘よりも探索や隠密が得意な面々が多い。これは、おそらく夜の調査の方が危険性が高いであろうという判断から、戦闘面における主力部隊が夜組に回ったから、という事情もある。彼等は自身の歩幅を頼りに歩数から距離感を掴みつつ、慎重に森の概略図を作成しながら奥へ奥へと進んでいく。そして、その度に少しずつ混沌濃度が高まっていることを実感していた。 (やっぱり、混沌核があるといたら、森の中心部……?) ヘルヘイムや他の従騎士達がそんな憶測を抱きながら歩を進めていくと、先頭を歩いていた索敵役の重騎士の足が止まる。 「今、前方から物音がしたような……」 彼が小声でそう呟くと、ヘルヘイムは彼に代わって最前線に立つ。そして、そこから更に前方へ慎重に足を踏み出そうとした瞬間、その視線の先から何かが走り込んでくる音が聞こえてきた。 「下がって下さい!」 彼女は仲間達にそう叫びつつ、短剣を構える。その直後に彼女の瞳に映ったのは、頭に二本の角を生やし、鋭い爪と牙を有した一体の熊のような怪物(下図)が突進して来る姿であった。 + 熊のような怪物 (出典:『アドバンド・ファンタズム・アドベンチャー』p.20) 「死ね! 侵入者共!」 その熊は野太い声でそう叫びながら立ち上がり、ヘルヘイムに向かって、二本の前足の鋭い爪で襲いかかる。どうやら、この熊もまた異世界モノカンにおける「人語を解する知的生命体」の一種らしい。とはいえ、明確な殺意を向けられた以上、ヘルヘイムにとってはそれは「倒すべき怪物」であることに変わりはない。 彼女は短剣で熊の鋭爪を受け流しつつ、相手との間合いを計りながらその動きを観察しつつ、弱点を探ろうとする。 (ただの熊じゃない……、それなりに知性がある分、きちんと理にかなった戦い方をしている。しかも、さっきの突進力からして、夜組が不意打ちで遭遇したら、かなり厄介……。ここは、むしろ戦い易い昼の間に着実にヘルが……) 戦士の本能として、ヘルヘイムがそんな思考を巡らせている間に、一歩後ろにいた索敵役の従騎士が叫ぶ。 「隊長! 更に後方から足音が!」 その声に応じてヘルヘイムが耳を澄ますと、確かにこの熊の後ろの方から、先程と同じような何か(おそらくはこの熊と同種の生き物)が突進してくる音が聞こえる。しかも、明らかにそれは「複数体」の足音であった。 「やっぱり、この先が奴等の本拠地で間違いないですね! だったら、夜組に交代する前に、少しでもここで敵の数を……」 迫り来る危機を目の前にして、彼女がそう言いかけた直後、再び彼女の脳裏に、前回のヨルゴの言葉が響き渡る。 (いや〜、君みたいな人が死んだら、困る人は沢山いるからね〜。命は大事にしてよ〜) その声が聞こえた瞬間、彼女は即座に冷静さを取り返す。今のこの状況、敵の熊の数がどれだけいるかも分からない以上、戦って勝てる保証はない。少なくとも、自分を含めて何人かが命を落とす可能性はあるし、最悪、全滅するかもしれない。それでは、調査隊としての役目を果たせないまま、ただ無駄死にすることになってしまう。 (今のヘル達は、あくまで先遣隊。本命は夜組。今のヘルの役目は、皆を無事に連れ帰って、情報を夜組に伝えること……) ヘルヘイムは自分にそう言い聞かせつつ、改めて仲間達に対して叫ぶ。 「みんな! ここから全力で撤退! 殿(しんがり)は、ヘルが務めるから!」 彼女がそう叫ぶと、従騎士達は一斉にその場から逃走を始める。ヘルヘイムはそんな彼等に背を向けた状態で熊の追撃を牽制しつつ、バックステップで彼等の逃げ去る足音のする方向へと向かって少しずつ熊から遠ざかっていく。熊の攻撃をいなしながら、「倒すための剣技」ではなく、「生き残るための剣技」へと切り替えた上で、慣れない体勢ながらも熊の繰り出す爪圧に耐えつつ、森の中心部から遠ざかっていくと、やがて熊も負うのを止めたことで、どうにか戦場からの離脱に成功した。 (今はこれでいい……、これが今のヘルの役目だから……) 自分の中で、まだどこか割り切れない気持ち(闘争本能)が残っていることを実感しながらも、ひとまずは自分の心にそう言い聞かせながら、彼女は仲間達と共に、カルタキアへと無事に帰還を果たすことになる。 一方、そうしてヘルヘイム達が魔境の森から脱出していく姿を、遠目に眺めていた一人の少女の姿があった。ヴェント・アウレオの ラオリス・デルトラプス である。彼女は特に目的があった訳でもなく、何の気なしにふらっと町を出て、昔の感覚を思い出しながら野山を散歩していたところで、調査隊の姿を発見したようである。 (あの人たちがいるってことは、きっとなにかあるんだ……) ラオリスは、この魔境の森についての情報を何も知らないまま、ヘルヘイム達と入れ替わるように、一人で森の中へと足を踏み入れていくのであった。 ****** 「ヘルヘイムからの報告書によると、それなりに高い知性を持った熊達がいるらしい」 カルタキアの従騎士達の詰め所において、ヘルヘイムの同僚である鋼球走破隊の レキア・オーリルデン は、彼女が率いていた昼間の調査隊の報告書を読みながら、その場に集った「夜組」の面々に対してそう告げた。 レキアはヘルヘイムより二つ上の17歳。小柄な軽戦士タイプのヘルヘイムとは対象的に、レキアは筋骨隆々とした大柄な体躯の偉丈夫であり、(なぜか)曲者揃いの鋼球走破隊の中では珍しく、見るからに無骨で荒々しい風貌の持ち主であった。これまでに数多の戦場を渡り歩いてきた実績の持ち主であり(現在着ている鎧も過去に討ち取った敵の指揮官から奪った代物である)、このカルタキアにおいても一刻も早く武功を上げたいと考え、今回の調査隊の「夜組」への参戦を決意した。 そんなレキアが静かに闘志を燃やしている横で、その話を聞いた鋼球走破隊所属の フォーテリア・リステシオ は、愛用のカードを用いて「いつもの占術」を試みていた。 「うん……、その熊、おそらくは悪魔と深い関わりのある者だね……。それなりに知性を持つ熊なのであれば、捕らえて脅しをかけることで、悪魔に関する情報を吐かせることも出来るかもしれない。この間のユニコーンへの仕打ちを見る限り、例の『悪魔』は部下や仲間の失態を許さない気質なのだろう。恐怖で部下を縛り付けているのだとすれば、それはそれで、逆に叛心を煽りやすくもある……」 フォーテリアは淡々とした口調でそう語るが、その表情にはいつものような「達観したような余裕」は感じられず、何らかの強い衝動に駆り立てられているような、そんな雰囲気が感じられた。彼女は前回の調査時に「悪魔」という存在を示唆する文面と出会って以来、いつになく強烈な好奇心に駆り立てられているようだが、その思惑を理解出来ている者は誰もいない。 一方、前回そんなフォーテリアと共に現地調査へと赴いていた幽幻の血盟の アシーナ・マルティネス は、なぜか(誰も見覚えのない)「緑色の腕章」を付けた上で、やる気を漲らせていた。 (私の知る「あれ」と同種でなくても、「悪魔」であるというのなら猶更捨て置けません……。天使も悪魔も世界は違えど大抵は命を弄び、自分達が至上と考える者が多いものです。そんなものが私達の地に根を下そうとしている。これを認められるはずもありません。血盟の一員としてこの地を守り、「独立部隊」の一員として悪魔を滅する。それが私の仕事です!) どうやら彼女は過去に、悪魔(および天使?)と呼ばれる者達との間で、何らかの因縁があったらしい。とはいえ、それはあくまで彼女個人の問題である以上、そのことはあまり表には出さずに、ひとまずはソフィアの書庫にあった異世界モノカンに関する資料を開いて、ヘルヘイムからの情報について整理することにした。 「おそらく、その熊の怪物は、モノカンにおける『バグベアー』と呼ばれる者達でしょう。ユニコーンやガーゴイル程ではありませんが、少なくともオークよりは高い知性を持っているようなので、確かに拿捕することが出来れば、彼等の背後にいる『悪魔』についての情報を聞き出せるかもしれません。とはいえ、今回は完全に『敵の本拠地』であることを考えると、殺さずに捕らえられる程の余裕があるかどうかは分かりませんが」 その話を受けた上で、先日のオーク達との戦いに参戦していた第六投石船団の ツァイス と潮流戦線の エーギル は、あの時の状況を思い返してみる。 「確かに、あのオーク達も言葉は話していたし、捕まえれば何か情報を吐かせることは出来たかもしれない。数が多かったこともあって、そこまで余裕がなかったというか……」 「なんていうか、気付いたら敵が全滅してたんだよな」 そうなってしまったのは一部の従騎士が暴走していたことが直接的な原因だったのだが、実際のところ、捕まえたところで有益な情報を得られたかどうかは定かではない。一方、ユニコーン戦に参加していた星屑十字軍の ポレット もまた、同様に前回の戦いを思い出す。 「私達が戦ったユニコーンは瞬間移動の魔法を使っていたので、さすがに捕らえるのは難しかったです。その意味では、バグベアーがそこまでの知能がないのなら、情報を聞き出す上で『程良い相手』なのかもしれません。『悪魔』の本拠地の近くにいるなら、より重要な情報を持っているかも知れませんし」 前回から継続参加している面々がそんな言葉を交わしている一方で、今回から戦列に加わった第六投石船団の ミルシェ・ローバル と潮流戦線の ミョニム・ネクサス は「悪魔」に対する純粋な好奇心から今回の調査隊に参加していた。 「ほんとに悪魔がいるなんてびっくりだネ〜 どんな顔して、いつもうちに悪いこと囁いてるんだろうナ」 「え? どういうこと? 悪魔の声とか、日頃から聞いてるの?」 ミョニムが驚いた表情で問い質すと、ミルシェはあっけらかんとした表情で答える。 「そうだね〜、よく聞こえるヨ」 「……それって、どんな声?」 「ん〜、たとえば『夜中だけどプリン食べちゃえ』とか、あとは『たくさん飲んだけどもうちょっとお酒飲んじゃえ』とかカナ」 「…………それは、ただの『心の声』なのでは?」 二人がそんな(意味があるのか無いのか分からない)会話を交わしている一方で、彼女達と同じく今回から加わることになったヴァーミリオン騎士団の セレン は、意気揚々とした面持ちで、先刻レキアが読み上げていた報告書を、横から覗き込んでいた。 セレンは15歳の騎士見習いであるが、体格的には同世代の少年達と比べても小柄な部類であり、体格も細身であるため、見ようによっては実年齢よりも幼くも見える。しかし、彼もまたレキアと同様、自分の能力を示すための機会を求めてこの「夜組」への参加を決めた身であり、レキアにも負けない程に戦意は高まっていた。 「この森に現れた熊が何頭くらいだったか、聞いてます?」 報告書に目を通しながら、セレンはレキアにそう問いかける。少なくとも、報告書には明確な数は書かれていなかった。 「ヘルヘイムが言うには、足音から察する限り、少なくとも3〜4頭はいたらしいが、正確な数までは確認していないらしい」 「なるほど、夜になればもっと増えるかもしれないですね。楽しみだなぁ」 満面の笑みを浮かべながらそう呟くセレンに対して、レキアはどこか冷ややかな視線を向ける。セレンの表情からは、危険な怪物や悪魔が潜んでいるかもしれない今回の任務に対しての恐怖心や警戒心が微塵も感じられない。幼少期に戦争で全てを失った経験を持つレキアから見れば、そんなセレンの楽観的な態度から無鉄砲な若者特有の危うさが感じられる。とはいえ、レキアはもともと口数が多い方ではなく、そもそも所属も異なるセレンに対して助言や忠告を与える立場でもない以上、自分から彼に対して特に声をかけるようなことはしなかった。 (こいつに実力があれば生き残る。無ければ死ぬ。それだけのことだ) レキアが内心でそんなことを考えている中、セレンはその場に集った従騎士達の中に、見知った青年の姿を発見する。 「あ、アドリスさんも来てるんだ」 そう口にしたセレンの視線の先にいたのは、詰め所の隅で他の従騎士達に隠れるような姿勢で壁にもたれかかっている同僚の アドリス・テラクェイア であった。 アドリスはセレンと同じヴァーミリオン騎士団に所属する17歳の青年であり、その腰には二本の長剣が携えられている。彼もまたレキアと同様、戦争で故郷を失った後に様々な戦場を生き抜いた過去を持つ歴戦の古参兵であったのだが、彼はセレンと目が合った瞬間、セレンから遠ざかるように立ち位置を変えた。 「……相変わらず、つれない人だな」 セレンは苦笑を浮かべながら、そう呟く。アドリスはレキア以上に口数が少なく、あまり他人と積極的に絡もうとはしない。今回は調査隊のメンバーの中にかつての戦友の従騎士がいたことから、その護衛役として参加することになったのだが、そこに集まっていた者達の数は、彼の想定を遥かに上回る大所帯となっていた。 そんな状況に対して、アドリスは表面上は淡々とした面持ちのまま、内心では激しく動揺していた。 (ちょっと待て、なんで周りにロードがこんないるんだ!? しかも、よくよく見ればみんな俺と歳変わんねえじゃねえか。話しかけられたらどうすりゃいいんだよ!) 感情を表に出すことが苦手で、周囲の者達との接し方が分からない彼は、(意図的なのか無意識なのかは不明だが)近寄り難い雰囲気を漂わせながら、なるべく他人の視線の届かない立ち位置を探しつつ、誰かと目が合う度にさりげなく移動を繰り返していた。 一方、そんな彼とは反対側の部屋の隅で静かに参加者達の様相を眺めていた少女もいた。前回から引き続いてこの任務に参加している、幽幻の血盟の フィラリス・アルトア である。 (これだけ人足がいるなら、私は今回も別働隊として動くべきだな……) 彼女は内心でそう呟きつつ、先日とある経緯で入手した「特殊な生地で作られた衣服」を荷物の中に忍ばせたまま、ひっそりとその場から立ち去って行った。 ****** こうして、川上の森の魔境に向けての調査隊が出発した。彼等は前回のアシーナ&フォーテリアと同様に、月明かりと松明の光を頼りにフェニゴ川沿いに上流へと向かって歩を進めて行く。森に至るまでの道中は特に怪しげな気配と遭遇することもなく、気付いた時には川上の(森の近くに出現していた)虹が見える場所にまで到達していた。 (昼間にヘルヘイム達と遭遇したことで、警戒心が高まっていると思ったが……、森の外にまで警備兵を回す余裕はない、ということか) レキアがそんなことを考えている傍らで、セレンは不満そうな表情を浮かべる。 「退屈だなぁ。悪魔の方から仕掛けてきてくれれば楽なのに」 そんな軽口を叩くセレンに対して、レキアはそっぽを向きつつも、内心では同意していた。少なくとも敵の本拠地であろう森の中で遭遇するよりは、その前に敵の方から襲撃してくれた方が対処はしやすい。それに何より、一刻も早く敵と相見えたいという気持ちは、レキアもセレンと同様であった。 一方、アドリスはそんな彼等から距離を置きながら、腰の二本の剣のうちの片方に手をかけた状態のまま、周囲を警戒しながら慎重に進軍している。 「アドリスさん、そっちには何か……」 「……俺に話しかけるな。集中が乱れる」 同僚のセレンに対して、アドリスは短くそう答える。 (気安く話しかけるなよ! どう返していいか分からないんだよ! 同じヴァーミリオンだと言っても、俺とお前、別にそんなに親しくもないだろ!) アドリスが内心でそんな思いに悩まされているとは知らずに、セレンは不服そうな顔を浮かべる。そんなセレンに対して、近くを歩いていたポレットが(前回のことを思い出しながら)嗜めるように声をかけた。 「敵の中には瞬間移動の魔法を使う魔物もいます。今、目の前に敵らしき姿が見えないからと言って、油断してはなりません。そもそも、いつどこから現れるかも分からないのが、投影体ですから」 「なるほどね。じゃあ、ちょっとは期待してもいいのかな」 不敵な笑みを浮かべながらセレンはそう呟きつつ、自身も突剣に手をかけた状態で、周囲に対して警戒する姿勢を見せる。 なお、そんな彼等を先導するように最前列で索敵役として闇夜の中で目を光らせていたのは、ミョニムとミルシェであった。弓使いである彼女達は日頃から遠くを見ることに長けているため、今回の部隊編成においては、どちらかと言えば戦闘要員としてではなく、調査要員としての役割を担っているのだが、やがてミルシェが少し辛そうな表情を浮かべ始める。 「うーん、ちょっと目が疲れてきたネ……」 両目をこすりながら彼女がそう呟くと、後方からエーギルが声をかけた。 「じゃあ、索敵役、俺が代わろうか?」 「そうしてくれると、助かるヨ」 「まぁ、今回は俺も調査要員だからな。索敵くらいはやらないと」 エーギルがそう口にしたところで、後ろからツァイスが驚いた声を上げる。 「え? お前、護衛要員じゃなかったのか?」 今回の探索任務にあたっては、主に魔境の混沌核を探すことに重点を置く調査要員と、彼等の身の安全のために派遣された護衛要員がそれぞれ別個に募集されていた。ツァイスは当然、護衛要員としての参戦であったが、エーギルもその一人だと彼は思い込んでいたのである(なお、それは他の大半の従騎士達も同様であった)。 「あぁ、そうだよ。俺だって、調査とかも出来るもん!」 エーギルがそう答えたところで、もう一人の索敵役であるミョニムが、近くに落ちている何かを発見する。 「ん? あれって、矢だよね?」 彼女がそう言って指差した先には、一本の矢が落ちていた。よく周囲を見渡すと、同じように何本かの矢が転がっている。 「これ、普通の矢じゃないヨ」 「そうだね。これは私達が使うような普通の弓用の矢じゃない。弩の矢だ」 ミルシェとミョニムが矢を拾い上げた上でそう語る。その上で先端部分を確認してみると、明らかに何かに対して突き刺さって部分的に破損したような形跡が見られる。 その状況に対して、アシーナとフォーテリアが思案を巡らせる。 「この弩の矢自体は、カルタキアで普通に使われているものです。ということは、おそらく、誰かが投影体を相手に戦った時に放たれた矢ではないでしょうか?」 「確かに、そう考えるのが自然だね。投影体は倒せば消滅する。戦った後で矢だけが戦場に残っていたとしてもおかしくはない。ただ、だとすると一体、誰が……? 『昼組』の中に、弩使いの従騎士はいたのかな?」 フォーテリアからのこの問いに対しては、レキアが答える。 「俺が聞いている限り、ヘルヘイムが連れていた者達の中にはいなかった筈だ」 彼等がそんな会話を交わしている一方、エーギルは前回のオークとの戦いの時に、「弩を持った黒服の少女」が遊撃兵といて独自に参戦していたことを思い出す。 (そういえば、あの人、今回も最初の顔合わせの時にはいたけど、いつの間にかいなくなってたな……) はっきりとした確信のないまま、ひとまず彼等はそのまま森へと向けて進軍していく。そうして遠ざかっていく彼等の姿を、川の中から密かに見守っている者がいた。 (まさか、この「水着」がこんなに早く役に立つとはね……) 内心でそう呟きながら彼等の後ろ姿を見送っていたのは、フィラリスである。彼女はいつもの黒服を脱ぎ、特殊な水泳用の衣服を身にまとった状態で、調査隊に先んじる形でフェニゴ川を泳いで川上へと至っていたのである(なお、その水着は、ワイス達が主催する水泳訓練用に特殊な技法で開発された代物であった)。 そしてつい先刻、「夜組」の本隊が到着する前に、この川の近辺に小型の怪物達が現れたのを発見した彼女は、得意の弩で彼等を射抜き、その上で更なる敵の出現に備えて川の中に潜んでいたが、結果的に言えばそれ以降、特に敵らしい敵が現れることもなく、調査隊がこの地に到着することになったのである。 (とりあえず、彼等の退路を確保するためにも、もうしばらくはここに潜んでおくか……) 先刻ポレットが言っていた通り、この世界における投影体はいつどこに出現するかも分からない。実際、フィラリスが先刻遭遇した魔物達も、魔境の出現と同時に投影されていた者達というよりは、突発的・偶発的に出現した投影体のように見えたので、この水域の近くで再び同じような現象が発生する可能性も十分にありえると言えるだろう(もしかしたらそれは、川上の領域が魔境化したことによる弊害なのかもしれない)。 彼女はそう判断しつつも、徐々に自身の身体に「痛み」を感じ始める。これは彼女の「過去」にまつわる体質に由来する副作用のようなものであった。 「分かっては……、いたが……、ままならないな」 彼女はそう呟きつつ、ひとまず川から出た上で、背負っていた防水鞄の中から、愛用の煙管を取り出そうとするが、逡巡の末に思い留まる。彼女の鞄の中に入っている「特殊な煙草」は、今の彼女の苦しみから解放させてくれる代物ではあるが、今、それを用いるべきではない、と、彼女は必死で自分に言い聞かせていた。 ****** やがて、調査隊は無事に森へと辿り着き、昼組が作成した地図に基づいて、慎重に探索を始めていく。森の様相自体は、以前にアシーナとフォーテリアが訪れた時と大きく変わった様子もない。ただ、少しずつ森の奥へと足を踏み入れていく過程において着実に彼等は混沌濃度の高まりを感じる。昼組の報告では「見た目はごく普通の森」と記されていたが、彼等の作成した地図に従って、彼等と同じ獣道を歩いている筈なのに、徐々に木々の様相がどこか不気味な異形の様相へと変容していくのを感じる。 皆の警戒心が強まっていく中、ミョニムは「意外な方角」から何者かの気配を感じる。 「何かいる!」 彼女はそう叫びながら弓を構え、「真上」に向けて矢をつがえる。突然の彼女のその行動に皆が驚く中、アシーナが手に持っていた松明を空に掲げると、彼女達の頭上に広がる大木の枝の上に、見覚えのある少女の姿があった。 「やっほ! こんな夜中に何探してるの?」 「……ラオリスさん?」 そこにいたのは、以前に小牙竜鬼の森で共闘したラオリスの姿であった。彼女は「昼組」と入れ違いに森に入った後、独自に森の中を散策し続けていたのである。 「ちょうど今、森の中を歩き回るのも飽きて退屈してたところだから、探しものなら手伝うよ」 ラオリスはそう言いながら、するすると木から降りてくる。そんな彼女に対して、アシーナは素朴な疑問を投げかける。 「あなたは、悪魔の捜索に来たのではないのですか?」 「悪魔? なにそれ」 きょとんとした様子のラオリスに対して、アシーナが簡単に事情を説明すると、ラオリスは少し興味が湧いたような顔を浮かべる。 「へえ、悪魔かあ。首切ったら倒せるのかなあ。うーんでも足の方が楽かなあ。動きを止めちゃえば殺すことくらいは楽になると思うんだけど。その辺どうなの?」 「そもそも、今はまだ『悪魔』なる者が本当にいるのかどうかも分かりません。そう呼ばれるに値する何者かが存在することは確実と思われますが、それを含めての調査中です。とりあえず、月の下で踊り、深紅の輝きに潜む、ということを示唆した怪文書が提示されているのですが……」 アシーナがそう答えたところで、ラオリスは何かに気付いたような顔を浮かべる。 「それって、あっちの方に見える、赤く光ってる建物のこと?」 ラオリスはそう言いながら、森の奥の方を指す。皆がその彼女の指の先に視線を向けるが、多くの木々に覆われていて、それらしき建物は見えない。 「あー、ここからじゃ見えないか。この木の上からなら、見えたんだけど……」 その言葉を聞くや否や、フォーテリアが唐突に無言で木に登り始める。日頃は後方で余裕の表情を浮かべながらじっくりと戦局を伺っていることが多い彼女が、いきなりこのような突発的な行動に出たことに対して、以前から彼女と親しい関係にあるツァイスは驚いた表情を浮かべる。 「フォルテ!?」 「……確かめたいんだ、この目で……、一刻も早く……」 フォーテリアはそう呟きながら、一心不乱に木を登り上がっていく。そして、つい先刻までラオリスがいた場所まで辿り着いた時、彼女の視線の先に、月明かりに照らされるような形で赤く光る邸宅のような建物がそびえ立っていた。 「あぁ……、なんて不気味な……、まさしく悪魔の住まう館そのものじゃないか……」 感動と恍惚が入り交ざったような表情を浮かべながら、フォーテリアは小声でそう呟く。その直後、アシーナもまた彼女と同じ枝にまで登り上がってきた。彼女は目算でその「赤く光る館」までのおおよその距離を割り出しつつ、昼組の作成した地図と照らし合わせてみる。 「あの辺りまでは、昼組の方々が調査済みの筈です。それでも発見出来なかったということは、やはり、月夜にならなければ姿を現さない、特殊な構造になっているのでしょう」 「そこまで姿を隠した上で、わざわざ詩的な怪文書を提示して、私達をここまで誘導してくれた訳だ。一体、どんな歓迎会を開いてくれるんだろうねぇ」 フォーテリアはそう呟きながら、一刻も早くその「悪魔」に会いたいという衝動が、自分の中で着実に高まりつつあることを実感していた。 (とはいえ、昼組の報告書を読む限り、あの辺りにはバグベアーが出没するらしい。悪魔に会うには、まずその障害を除去しなければならない訳か。まったく、焦らしてくれるものだ……) そんな想いを抱きつつ、フォーテリアはアシーナと共に木を降り、そして仲間達と共に改めて作戦会議を始めることにした。 ****** それから数刻後。森の中心部の「赤い館」の近くで、エーギル、ミルシェ、ラオリスの三人が、物陰に隠れながら「敵」の様子を伺っていた。 (正直、月夜は好きじゃないんだけど、自分が動く分には動きやすいものだな) エーギルはそんな感慨を抱きながら、密かに耳をすませて周囲の動向に気を配る。すると、やがて「足音」のような何かが彼の耳に届いた。 「これは……、例の熊の足音かな。複数体いるけど、そのうちの一体が、俺達の気配に気付いたようで、こっちに近付きつつあるっぽい」 小声でエーギルがそう呟くと、ミルシェは彼が示した先に遠眼鏡を向ける。 「あ、うん。いるヨ。かなり大きいネ。角も二本生えてル」 その特徴は紛れもなく、ヘルヘイム達が遭遇したバグベアーであった。その報告を受けて、ラオリスが彼等の前に立つ。 「よーし、じゃあ、手筈通りに行くよ!」 彼女はそう告げた上で、あえて激しい物音を立てながら、ミルシェが遠眼鏡を向けていた方角へと走り出す。すると、ほどなくして彼女の前に一頭のバグベアーが現れた。 「あ、クマ!」 ラオリスはわざと驚いたような顔をして、のけぞりながら距離を取ろうとするが、そんな彼女に対して、すぐさまバグベアーは前足で襲いかかろうとする。しかし、既に逃げの体勢に入っていたラオリスは、即座に方向転換して、その場から走って逃げ出す。 「たいへんだー! みんなに知らせなきゃー!」 「貴様! 昼間の奴等の仲間か!」 バグベアーはそう叫びながら彼女の後を追う。そして、彼(?)のその声に応じるように、森の奥の方から更に三頭のバグベアー達が姿を現すが、ここで、彼等の足元に向かって、別の方向から「光の弾丸」が放たれる。 「なに!?」 熊達が視線をその方向へと向けると、そこに立っていたのはポレットであった。 「それ以上、彼女を追うつもりなら、次は本気で当てますよ」 実はポレットの放った聖弾には、まだそこまで強大な威力が込められている訳ではないので、直撃してもそこまで致命傷になる訳ではないのだが、熊達から見れば、見たこともない光の弾丸が間近の大地に打ち込まれたことで、本能的な危険性を彼女から感じ取る。 (後ろから狙われたら、さすがにまずい) (だが、今のは不意打ち。正面からなら避けられる) (この間合なら、俺達の踏み込みの方が早い) そう判断した三頭のバグベアー達はポレットに向かって一斉に襲いかかる。だが、その直後に彼女の背後から他の従騎士達が現れた。 「やっとボクの出番だね!」 「一番首は、俺が取る!」 「……下がっていろ!」 セレン、レキア、アドリスの三人がそう叫びつつ、それぞれ突剣、鉄球、長剣を手にして真っ先に飛び出すと、彼等と入れ替わりにポレットは後方に回って、引き続き聖弾で彼等を支援する。こうして、「最初にラオリスを追いかけた一頭」と引き剥がす形で、後続のバグベアー達は調査隊の主力部隊(護衛部隊)との戦闘へと突入していくのであった。 ****** その間に、ラオリスを追いかけていったバグベアーは、少しずつではあるが、ラオリスとの距離を縮めつつあった。 「え? 熊って、こんなに早いの!?」 明らかにそれは「ただの熊」の移動速度を凌駕していた。それに加えて、昼間から歩き通しだったことの疲労から、ラオリスの脚力がいつもに比べて落ちていたこともあり、あと一歩で追い付かれそうな距離にまで迫られていることを、彼女は聴覚で実感する。 (まずい……、でも、あと少し……、あと少しだけ逃げ切れば……) 彼女はそう願いながらも、直感的に、それが叶わないことを予感する。 (ここで背中に爪を立てられたら……、痛いんだろうな……。どうしよう、ヴァルタ……) ラオリスがそんな絶望感に飲まれそうになった直後、彼女とバグベアーの間に、一人の大柄な青年が割って入る。 「よくやった! 選手交代だ!」 そう言って彼女の背後に立ったのは、ツァイスである。彼は、ラオリスに対して振り下ろされようとしていたバグベアーの両前足を素手で掴んで、受け止める。 「ヒューマンごときが、力で俺を止められると思うか!」 「確かに、大した力だな……。俺でも抑えきれねぇ……」 ツァイスはそう呟きつつ、あえて少しずつ、足元を気にしながら、後ずさっていく。その間にラオリスは息を荒げながらその戦場から離脱し、そして「予定されていた地点」に来た時点で、ツァイスもまたバグベアーの手を離し、バックステップで距離を取る。 「逃がすか!」 バグベアーがそのままツァイスに襲いかかろうとした瞬間、バグベアーは自身の足元に突如として「何か」が絡みつくのを実感する。 「なに!?」 それは、あらかじめこの場所に設置されていた「縄」であった。物陰に隠れていたミョニムが、一気にその縄を引き抜くことで、バグベアーは後ろ足を完全に封じられる。 「よし! 成功!」 これはミョニムが考案したバグベアーの捕縛用の罠であった。バグベアーは慌ててその縄を爪で掻き切ろうとするが、即座に他の従騎士達がその周りを取り囲み、一斉に縄を投げかけて捕縛体勢へと入っていく。バグベアーはなおも暴れてそれを解こうとするが、ここで再びツァイスがその手で前足を封じ込める。 「おとなしくしな! お前には、聞きたいことがある。全部話してくれれば、命は助けてやるよ」 そんな彼の言葉に対してバグベアーはなおも抵抗しようとするが、結局、そのまま縄に巻かれて完全に身体の自由を奪われてしまう。 「作戦通り、これで情報源は確保出来たね!」 ミョニムは、後方で指揮を取っていたアシーナとフォーテリアにそう告げる。 「熊一頭を捕らえるには、やっぱり、これだけの縄と人員が必要になるんですね」 「まぁ、ただの熊じゃないからねぇ。捕縛対象を一頭に絞ったのは正解だった。あとは、本隊の皆が無事であればいいんだけど……」 フォーテリアはそう呟きつつも、内心ではそれほど心配はしていなかった。彼女が見た限り、主力部隊の従騎士達の実力を考えれば(捕縛ではなく純粋な殲滅が目標ならば)負けることはないだろうと見越していたのである。 「……さて、色々と聞かせてもらおうか。君達の主人である『悪魔』のことをね」 彼女はそう呟きつつ、(他の従騎士達からは見えない角度で)満面の笑みを浮かべながら、ゆっくりとバグベアーに近付いていった。 ****** その頃、主力部隊とバグベアー達との戦いは、やや想定外の事態に直面していた。当初、彼等の前に現れたのは三頭のバグベアーであったが、その直後に今度は館の方角から別の一団が現れる。それは、鱗のような外皮を持つ、人間よりも明らかに小柄な、剣を手にした二足歩行の異形の怪物達の集団であった + 鱗の怪物 (出典:『アドバンド・ファンタズム・アドベンチャー』p.29) 「コボルト共! 手を貸せ! 侵入者だ!」 バグベアーの一頭がそう叫ぶと、その鱗の怪物達は従騎士達に向かって襲いかかる。 「アレがコボルト?」 少し離れた場所にいたミルシェは、その呼称に対して疑念を感じる。それは以前にミルシェが参戦した浄化作戦で遭遇した「セルデシアの小牙竜鬼(コボルト)」とは全く似ても似つかない種族であった。とはいえ、投影元の世界が違う以上、全く異なる種族が同じ種族名としてアトラタンの言語に翻訳される形になったとしても、それは別段珍しい話ではない。 「とりあえず、助けに行かなきゃな!」 ミルシェの傍らにいたエーギルは、そう言って戦場へと向かう一方で、ミルシェは引き続き更なる増援に警戒する形で周囲に気を配る。 こうして、従騎士達は二種類の敵を相手に乱戦状態へと突入することになるのだが、最初に現れた三頭のバグベアー達に対しては、最初に飛び出した三人がそのまま応戦し、他の従騎士達がコボルト達と戦う形になる。コボルト達はバグベアーに比べると体格も圧倒的に小柄で、腕力もそこまで強力ではなく、振るわれる剣の圧力もそこまで強くないため、数は多いものの、従騎士達にとってそこまで脅威となる存在ではなかった。 一方、バグベアーは、この場にいる中では最も大柄なレキアをも凌ぐ体躯であり、その振り下ろされる鋭い爪は従騎士達にとっても脅威であったが、彼等は着実にその攻撃を受け流しながら、その動きを観察し、着実に勝機を探っていく。 (さすがにこの図体では、動きは鈍いな。隙はいくらでもありそうだが、さて、この分厚そうな体皮のどこを狙うべきか……) レキアがモーニングスターを構えながらバグベアーと退治しつつ、そんな考えを巡らせている中、そのすぐ隣で別の巨大な叫び声が上がる。 「ぐぁぁぁぁぁぁ!」 それは、セレンのレイピアによって左目を貫かれたバグベアーの悲鳴であった。セレンはバグベアーの強靭そうな体皮の中で、明らかに最も弱いと思われる場所に狙いを定め、そして見事にその眼球に対してレイピアを一撃で貫通させたのである。そして左目を押さえながら苦しむバグベアーに対し、セレンは続けざまにレイピアを突き刺し続け、やがてバグベアーはその身体機能を停止し、そのまま混沌の塵となって消えていく。 「よし! 一丁上がり!」 得意げにそう叫ぶセレンに対し、一番首を逃したレキアは悔しそうに舌打ちをする。 「チッ! 慎重になりすぎたか!」 レキアはモーニングスターを激しく振り回し、そのままバグベアーの爪を掻い潜りながら、その頭部に向かって鉄球を叩きつける。 「結局、どんなヤツも、頭を潰されれば終わりだろ!」 そんなレキアの思惑通りに、その一撃を受けたバグベアーもまた仰向けに倒れ、その混沌の身体はバラバラに崩壊していく。そして、セレンとレキアがそれぞれの聖印を掲げてバグベアーの混沌核を浄化している間に、残る一体もまたアドリスの長剣によって心臓を貫かれ、消滅していく。 「やりますね、アドリスさんも。まぁ、ボクの方が早かったですけど」 「……だから、戦場で俺に話しかけるな!」 そう言ってセレンが近付いてくるのを拒絶するアドリスであったが、そのアドリスの様子を見て、レキアは「あること」に気付く。 (あいつ、二刀流じゃなかったのか……?) アドリスは今回の戦いにおいて、腰に差した二本の剣のうち、片方しか使っていない。彼は戦局に応じて一刀流と二刀流を使い分ける変則的な剣士なのだが、今回は片方の剣を腰に残したまま、きっちりと敵を討ち取っていた。この局面でアドリスが一刀流で戦った理由は不明であるが、見ようによっては「あえて力を温存して戦っていた」ようにも見える。 (ヴァーミリオンの、セレンとアドリスか……) レキアが二人に対してどんな感慨を抱いていたのかは不明だが、アドリスの方は、レキアから向けられる強い視線に対して、内心では「頼むから、話しかけないでくれ」と切望していた(幸い、レキアも饒舌な気性ではなかったので、特に声をかけられることはなかった)。 そして、その間にコボルト達も、ポレットによる遠方からの聖弾と他の従騎士達の奮戦によって、あっさりと全滅する。その戦いの中で、エーギルはすっかり「護衛組」と同じように戦いに興じてしまっていた。 「あー、やっぱ調査とか、俺の柄じゃなかったかも! 楽しかったけどさ」 エーギルはそう呟きつつ、他の面々と共に、アシーナやフォーテリア達と合流すべく、ラオリスが走り去って行った方向へと向かって歩き出すのであった。 ****** 「なるほど、やっぱり、あの真っ赤な建物が『悪魔の館』なんだね」 フォーテリアは捕縛したバグベアーとの尋問を通じて、少しずつ情報を引き出していた。当初は一切の質問に対して答えようとしなかったバグベアーであったが、フォーテリアの巧みな会話誘導術によって、少しずつその内容が明らかになっていく。 このバグベアーが漏らした情報を総合すると、彼等の主である「悪魔」は、多種多様な種族を束ねる犯罪者集団の頭目であり、元の世界においても誘拐、強盗、強姦、殺人など、あらゆる悪逆非道の限りを尽くしていたらしい。そして、この世界に本拠地の館ごと投影された後も、状況はよく分からないまま、ひとまず川下に広がる町(カルタキア)の存在に気付いて、その周辺の街道を荒らし回り、そして連れ去られた多くの人々(主に女性)が、今もその館の中に軟禁されているらしい。 「つまり、いついかなる時でも『悪』を実践することこそが、『悪魔』の目的であり行動原理である、ということなのかな? 」 心の底から溢れ出る好奇心を押さえつつ、平静を装いながらフォーテリアはそう問いかけるが、バグベアーは言葉を濁す。 「分からん。あの御方の思考は誰にも理解出来ない。ただ、俺達はあの御方には逆らえない。これまで逆らってきた者達の末路を思い出すだけで、今も吐き気が……」 やはり、彼等は「悪魔」が生み出す恐怖によって心を支配されているらしい。本気で苦しそうな表情を浮かべるバグベアーに対し、フォーテリアは更に問いかける。 「別に、逆らわなくてもいいんだよ。きみ達の主人ことをわたしに話すことが、どうして逆らうことになると決めつける? わたしがきみ達の主人の敵とは限らないじゃないか。わたしはただ、話がしたいだけんだよ、きみ達の主人にね」 常識的な視点で考えれば、フォーテリアのこの言葉はあくまでも情報を聞き出すための「方便」と解釈するのが当然だろう。だが、今のフォーテリアの表情と声色からは、彼女が本気でそう思っているとしか思えない程の信憑性をバグベアーは感じていた。 「駄目だ! 言われたこと以外を告げてはならないと、俺は厳命されている。俺の判断で、勝手なことを口走ったら、俺は、俺は……」 「じゃあ、せめてこれだけでも、教えてもらえないか? きみ達の主人は、本当に『悪魔』なのか? それとも、『悪魔』と名乗っているだけの……」 フォーテリアがそこまで口にしたところで、突如、遥か遠方から一本の矢が飛び込んできた。突然のことに皆の反応が遅れる中、その矢はバグベアーの後頭部に直撃し、即座にバグベアーは息絶える。 「今のは……、一体、どこから!?」 弓使いのミョニムが困惑した声を上げる中、間近でその矢を目の当たりにしたフォーテリアは、そこに一枚の紙が結び付けられていることに気付く。湧き上がる興奮を押さえながらフォーテリアがその紙を広げると、そこには以下のような文言が記されていた。 「勇敢にして無謀なる諸君を歓迎しよう。賢明なる者は即刻帰りたまえ、悪魔と踊らんと欲する者は、我が館へ足を踏み入れるがいい。決して退屈はさせないと約束しよう」 文体は異なるが、そこに書かれている文字は、明らかに先日の「怪文書」と同じ筆跡であった。 「部下を口封じした上で、更なる挑発か。まったく、どこまで上から目線でわたし達のことを見ているんだろうねぇ……」 その手紙を持つ手を小刻みに揺らしながら、フォーテリアはそう呟く。傍目には怒りに打ち震えているように見えるだろうが、実際には、魂を揺さぶられる程の好奇心を押さえられなくなっているだけである。そんな彼女の思惑など知る由もないまま、傍らにいたアシーナは冷静に状況を分析する。 「どこから放ったのかは分かりませんが、ここまで正確に頭を射抜くだけの技術があるなら、当然、私達を不意打ちで狙うことも可能だった筈です。あえてそうしないということは、よほど侮られているのか、それとも、私達を殺してはまずい理由があるのか……」 「まぁ、どちらでもいいさ。ともかく、せっかく招待されたんだ。素直に『悪魔の館』へとお呼ばれしてみようじゃないか」 フォーテリアは他の従騎士達とあえて目を合わせないまま、そう呟きつつ、館のある方角へと向かって、やや早足で歩き始める。他の者達もやや戸惑いつつも、「魔境の混沌核を探す」というこの調査隊の目的を果たすために、彼女の後に続くことにした。 ****** その後、フォーテリア達はエーギルやレキア達と合流を果たし、そのまま「館」へと向けて歩を進めていくと、やがて彼等の目の前に、月光に照らされた真っ赤な二階建ての邸宅が姿を現す。そしてこの瞬間、従騎士達は誰もが確信に至った。 「この建物の中に、間違いなく魔境全体の混沌核が存在する」 そうとしか思えない程の強大で禍々しい気配が、その館から立ち込めている。そのあまりの不気味さから、出来ることならばすぐにでも松明の火で燃やしてしまいたくなる程の嫌悪感が漂っているが、この中に人々が閉じ込められていると聞かされた以上、そうもいかない。そして、その建物から漂う「匂い」から、一部の従騎士達は気付いた。この館を塗装している「赤」の染料が、おそらくは「血」である、ということを。 「さて、では行こうか」 フォーテリアはそう呟きながら館に足を踏み入れようとするが、そんな彼女の前にアシーナが立ちはだかる。 「駄目です! 私達の任務はあくまでも混沌核の位置の調査。もうこの館の中にあることは確信出来た筈です。ここはまず一旦帰還して、この情報を伝えて、この混沌核を浄化出来るだけの指揮官の手で、浄化部隊を組むべきです!」 「まだ完全に場所を特定出来た訳じゃないだろう? どうせなら、この館の中のどこにあるのか、確認しておいた方がいいんじゃないか? 今のわたし達には魔境の混沌核は浄化出来ないにしても、上手くいけば捕まっている人達を救出することは出来るかもしれない」 確かに、その意見にも一理ある。しかし、フォーテリアの真の目的は別のところにあった。 (この館の主は、明らかに意図的にわたし達をここまで誘導している。その上で、自分の正体のことは部下を射殺してでも隠そうとしている。もしかしてその理由は、自分の正体をわたし達自身に暴いて欲しい、と考えているからではないか?) それは、あまりにも突拍子もない仮説だが、そもそも敵のここまでの行動原理があまりにも不可解であることを考えれば、そんな可能性も確かに否定は出来ない。 (もし、そう考えているのだとしたら、わたしが『いのいちばん』に暴きたい。ただ、そのかわり、あなたの心を教えてほしい。不合理なその心、その欲求を、対話して教えて欲しい。消えてしまう前に、狩られる前に誰よりも先に出会って。わたしも、もしかしたら同じものかもしれないから……) 無論、こんな「本音」を口に出すことは出来ない。ただ、もしも「悪魔」の引き起こす不合理な行動が「悪事そのものが好きだから」という理由でおこなわれているのだとしたら、フォーテリアの中では、それは彼女自身の「本質」に近いものなのではないか、という考えから、徐々に「自分と近しいもの」として認識し始めている。だからこそ、本格的な浄化部隊が結成される前に、あわよくばこのタイミングで「悪魔」と直接対面したいと考えていたのである。 だが、そんな彼女に対して、彼女のことをよく知るツァイスやエーギルも異を唱える。 「さすがに、今の戦力では無謀すぎる。屋内戦用の準備もしていないしな」 「早く助けに行きたいのは分かるけど、ラオリス達の疲労も限界っぽいし、今回は一旦退いた方がいいんじゃない?」 彼等にそう言われたフォーテリアは、少し困ったような笑顔を浮かべる。 「そうか……、まぁ、そうだね。焦りすぎていたのかもしれない。ひとまず、今は与えられた任務を優先することにしよう」 肩をすくめながらフォーテリアはそう答えると、彼等は改めて地図上でこの館が出現した位置を確認した上で、カルタキアへの帰途に就くことになった。 なお、その帰路において、川沿いに落ちていた弩の矢の数が若干増えていたことが確認されているが、結局、それが誰の放った矢であったのか、カルタキアの公式記録には残されていない。 ☆合計達成値:180(36[加算分]+144[今回分])/100 →次回「魔境浄化クエスト(BL)」発生確定、その達成値に40点加算 AM「呪言花札」 「とりあえず、どこか人手が足りなさそうな任務はないかな」 金剛不壊の メル・アントレ は、そんなことを呟きながらカルタキアの街を散策していた。先日、《王騎の印》の発動法を習得した彼(彼女)としては、その騎乗技術を活かせる機会を求めていたのでる。 すると、彼(彼女?)の視界に、騎乗状態で街を巡視している星屑十字軍の コルム・ドハーディ の姿が映る。 「投影体のウジ虫どもは潰しても潰してもすぐに湧いて出てくる、どうしてこうもしつこいのか」 コルムは明らかに苛立った様子で、周囲に対して厳しい視線を向けながら、そう呟いていた。その様相から察するに、明らかにただの哨戒ではなく、戦場にいる時と同じような気配を漂わせている。ひとまず、メルは彼に対して声をかけてみることにした。 「なにかあったの? コルムさん」 「あぁ。ここ最近、カルタキアの内外で『小さな木札』の投影物が発見されているらしいんだ」 「木札?」 「それが混沌災害を引き起こす原因になっているらしい。だから、俺はそれを探して浄化するために、町を巡視している」 「なるほど……。それって、人手は足りてる?」 「分からない。地元の従騎士達が何人か調査に当たっているようだが、敵の数も全容も把握出来ていない以上、足りてるとも足りてないとも言えないだろう」 なお、コルムは今回の件に関して、特に他の者達と連携することもなく自発的に巡視を始めているため、自分以外に誰が関わっているのかも正確に把握してはいない。あくまでも彼の行動原理の根幹にあるのは、この町が投影体によって汚染されるのを防ぐための個人的な衝動である。 コルムは一通り説明し終えたところで再び巡視へと戻り、そして、話を聞いたメルもまた、この事件に興味を示す。 「地元の従騎士の人達が関わっているなら、まずはその人達に話を聞いてみようかな」 メルはそう呟きつつ、領主の館へと向かって歩き始めた。 ****** 「要するに、その木札の出現場所は全く特定出来ていない、ということ?」 ヴェント・アウレオの アリア・レジーナ は、領主の館の一角に設置された会議室にて、幽幻の血盟の ハル に対して、そう問いかける。 この部屋は現在、「謎の木札」に関する諸問題を解決すべく設置された対策本部として用いられている。ハルは実質的にそのまとめ役としての任務をソフィアから命じられ、アリアもまたこの事件の解決に協力すべくこの部屋を来訪し、ハルから捜査の現状について確認しようとしていたところであった。 「はい。残念ながら、まだ明確な発生源までは確認出来ていません。ただ、過去の文献から、木札の正体まではほぼ掴めています」 ハルがそう答えたところで、隣に座っていた潮流戦線の リンズ が、一冊の本を片手に、状況を説明する。彼女は、今回の混沌災害を浄化するための手掛かりを探るために、ソフィアの書庫から過去の記録が記された書物を借りて、その内容を解析していたのである。ソフィアのようなルーラーになりたいと考えて聖印を覚醒させたばかりのリンズとしては、これはこれで自身の実力を試す好機でもあった。 「どうやら、現在カルタキア市中に出現している木札は、地球から投影された『呪言花札』と呼ばれる魔法具のような存在らしいです。それらには特殊な力が封印されていて、元の世界においても、その呪言花札を中心に自然現象を捻じ曲げたり、人や動物に取り憑いて異形化をもたらしたり、『洞(うろ)』と呼ばれる異空間を作り出すこともあるとか」 更にリンズが詳しく調べたところ、呪言花札は全部で50枚存在し、そのうち「白札」と「鬼札(黒札)」以外の48枚には、それぞれ様々な花(植物)が描かれているらしい。そして、その中でも一部の特殊な札には動物や器物などの付属物が描かれており、その付属物の種類ごとに、込められている力の強さも異なるという。 そして、過去の記録によると、数十年前にもカルタキアにおいて呪言花札が次々と出現し、その一枚一枚が元の世界と同じように様々な怪奇現象や異形化を引き起こしていたが、この街の内側に魔境として出現していた「洞」を浄化することによって、どうにかそれらの出現も止まった、と記されていたらしい。 「今回の出現に際しては、今のところ、発見された呪言花札は全てソフィア様の手で浄化されており、そこまで大きな被害は発生していません。ですが、今でもまだ出現が続いていることを考えると、根本的解決のためには、それらの根幹を成している魔境としての『洞』を浄化する必要があるのでしょう。今は、散発的に出現する呪言花札を一枚ずつ浄化しつつ、その『洞』を探している、という段階です」 「……つまり、虱潰しに街中を探していくしかない、ということね」 アリアは少しうんざりしたような表情を浮かべながら、そう呟いた。もともと彼女は肉体労働に向いた気性ではないため、町中をひたすらアテもなく走り回って探し続けるという仕事は、考えただけで気が滅入る。 ちなみに、ここまで発生した呪言花札による混沌災害は、なぜか草木が奇妙な形で特殊な成長を遂げていたり、重力に逆らうような形で何かが空に舞っていたり、といった形での小規模な怪奇現象程度であり、そのような事態が発見される度にすぐさまソフィアに報告され、彼女の手によって浄化されてきた。過去の記録によれば、呪言花札の浄化に失敗した人間が札に取り憑かれて異形化したという事例もあるため、ここまでは「発見しても直接は触れずにソフィアの来訪を待つ」という方針で浄化を進めてきたようである。 ただ、現在、ソフィアはこの呪言花札とはまた別の「書庫に出現した侵入者」に関する案件にも対処する必要が発生したため、ソフィアは自分の手が間に合わない時に備えて、ひとまずハルとリンズに「自分の代役」としての花札浄化の任を委ねることにした。なぜその二人が選ばれたのかは不明だが、もしかしたら、二人の有しているメサイアとルーラーの聖印が、今回の呪言花札の浄化において相性が良い、と判断されたのかもしれない。 そして、こういった一通りの事情をリンズが説明したところで、この場に新たな来訪者が現れた。幽幻の血盟の エルダ・イルブレス である。彼女もまた今回の任務を解決すべく、情報収集に明け暮れていたのであるが、そんな中、気になる情報を入手したらしい。 「昨日から、何人か行方不明となっている人がいるそうです」 エルダは常にフルヘルムを装着しているが故に表情は見えないが、声色から察するに、少し焦燥しているようにも聞こえた。彼女が入手した情報は以下の通りである。 数日前、領主の館から程近い街の公園の一角にて、大量の白い紙片が「竜巻状の紙吹雪」として発生するという奇妙な現象が発生していた。その時はすぐさまソフィアが駆けつけて、発生源となっていた呪言花札を浄化した結果、空を舞っていた紙片は消滅し、事態は収束したのだが、その際に紙吹雪に触れた住民達の一部が、今日になって姿を消しているらしい。その中には、まだ幼い子供も含まれているという。 「行方不明になった方々の家族は皆、ここ数日、どこか様子がおかしかったと証言しています。おそらく、その時の紙吹雪に触れたことで、心を侵食されていたのでしょう。もしかしたら、もう既に街の外に出てしまっているのかもしれません。私はこれから、街の周縁から外側にかけての地域の調査に向かいたいと思います」 エルダはソフィアの従属君主ということもあり、今回の呪言花札の案件と書庫への侵入者の案件のどちらの捜査に協力すべきか迷っていたが、既に住民達(特に子供)が行方不明になっているという話が聞こえてきた以上、まずはこちらを優先せざるを得ない。とはいえ、「洞」が街の中に発生している可能性も十分にある以上、街の内側の警備をおろそかにする訳にもいかない。 この状況に際して、ハルは一瞬リンズに目配せした上で立ち上がる。 「わかりました。では、ぼくも町の外の調査に同行します。リンズさんとアリアさんには、町中の調査をお願いします」 ハルとリンズが「浄化役」として指名されている以上、調査部隊を分けるなら、この二人は別行動にした方が得策だろう。 「はい、分かりました。任せて下さい」 「仕方ないわね。頼まれてあげるわ」 リンズとアリアがそう答えたところで、また別の来客が近付いてくる足音が聞こえてきた。 「ねぇ、混沌の木札に関する調査をおこなっていると聞いたんだけど、今、人手は足りてる?」 そう言いながら扉を開いてその場に現れたのは、メルである。それに対して最初に答えたのは、アリアであった。 「足りないわ。お前も手伝いなさい」 アリアとしては自分の労力を減らすためにも、少しでも人足が欲しいと考えていたようである。 「分かった。じゃあ、協力するよ。で、今、調査はどこまで進んでる?」 「はい。実はこれから……」 メルの問いかけに対してリンズが現状を説明しつつ、彼等はそのまま手分けして呪言花札(およびそれによってもたらされる混沌災害)についての調査へと向かうことにした。 ****** 「さっきの様子から察するに、コルムさんは北側を重点的に調べてるみたいだから、僕は南側を巡回してみようかな」 メルはそう呟きつつ、自身の愛馬に跨り、街の哨戒を始める。リンズから聞いた話によると、呪言花札の出現場所の近くでは植物に異変が発生している事例が多い、という話だったので、騎乗した高い視点から、つぶさに周囲を観察することにした。 とはいえ、メルはもともとこの街の住人ではない以上、街に生えている樹木などに細かい変化が起きていても、なかなかその違いには気付きにくい。カルタキアはメルの故郷とは植物の生態系も全く異なるので、一見すると奇妙な様相に見えても、それはこの街ではごく一般的な植物、という可能性も十分に有り得る。その辺りの見極めの基準もよく分からないまま、気付いた時にはメルは街の外縁部の辺りにまで到達していた。 (もしかして、地元民のエルダさん達に町の調査をお願いした方が良かったのでは……?) そんな考えがメルの中で広がり始めたところで、彼(彼女?)の視界に、見覚えのある人物の姿が映る。それは、アビスエール騒動の際にメルの歌声を聞いて正気を取り戻した街の青年の一人であった。事件の解決後、彼はメルに対して特に深々と感謝の意を示していたため、なんとなく記憶に残っていた。名は、確か「イシュー」と称していたような気がする。 「あ、イシューさん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、この辺で……」 メルのその声に対して、イシューは一切反応しないまま、町の外に向かって歩き続けている。その様子を見て、明らかに違和感を感じったメルは、ひとまず馬を降り、近寄って改めて声をかけてみた。 「イシューさん、メルだよ。覚えてない?」 間近で声をかけているにもかかわらず、その声の存在にすら気付いていない様子で、イシューはそのまま歩き続ける。そして、至近距離で確認したことではっきりと分かったが、明らかにその表情は虚ろで、目には生気が感じられない。アビスエールの時とは真逆の意味で、精神状態が正常ではなさそうな様子である。 (これが、呪言花札の影響……? だとしたら……、あの時と同じ手段が通じるかどうかは分からないけど……) メルは意を決して、彼の耳元で、アビスエールの時と同じ歌を、彼一人だけに聞かせるつもりで超高音で歌い始める。すると、徐々に彼の表情に変化が生じ始めた。 「え……? あ…………、こ、これは……」 イシューはそう呟きながら、その場に立ち止まり、そして、真横にいたメルの存在に気付く。 「メルさん!? あれ? 今、俺はここで何を……」 「良かった。正気に戻ったみたいだね」 困惑した様子のイシューに対し、メルはそう告げつつ、彼を落ち着かせた上で話を聞き出そうとする。イシューはまだ微妙に状況を把握出来ていない様子ながらも、記憶を辿りながら訥々と語り始めた。 どうやらイシューは、先日の「紙吹雪事件」の際にその場に居合わせた人物の一人であったらしい。その時、空を舞っていた白い紙片の一部が彼の身に触れて以来、彼の心で「謎の声」をかけられているような不気味な感覚を覚えていたが、当初はその声が何を伝えようとしているのか、はっきりとは聞こえていなかった。しかし、昨晩から徐々にその声が聞き取れるようになっていったらしい。 「それは『花札を集めよ』という声だった。でも、その『花札』ってのが何なのか分からなくて、とりあえず、朝になったらソフィア様の元に相談に行こうかと思ってたんだけど、その前に段々と気が遠くなって、そこから先は……」 「覚えてない?」 「……あ、でも、なんかうっすらと、何かの気配に向かって身体が動いていたような……」 「その『気配』は、今でも感じる?」 「…………いや、今は、もう何も……」 この証言から察するに、おそらく、イシューは何者かによって精神を乗っ取られた状態で「呪言花札」もしくは「彼の心に訴えかけていた声の主」の気配に向かって歩いていたのではないか、と推測するのが妥当であろう。現状、正気に戻したことによってその気配は察知出来なくなっているようだが、放っておけば再びその「声」が彼に何かを訴えかけてくる可能性もある。 (今、この人が向かおうとしていたのは街の外側だった。ということは、エルダさん達に知らせた方がいいかも。それはそれとして、この人を放置しておくのも危険かな……) メルはそう判断した上で、ひとまず自分の愛馬にイシューを同乗させた上で、エルダ達が調査に向かっている街の外部へと向かって駆け出していった。 ****** 一方、リンズとアリアは、これまで呪言花札が発見された場所を中心に、聞き取り調査をおこなっていた。と言っても、主に街の人々に対して直接聞きに回っているのはリンズであり、アリアはその周囲の状況観察が中心である。 「お前の方が人当たりが良いのだから、聞き取り作業はお前がやりなさい」 アリアにそう言われたリンズとしては、特に反論の余地もないため、積極的に人々に話を聞いて回ったところ、呪言花札が発見された区域に関しては、ソフィアの手で浄化された後は、特に混沌の残滓などは残っていないようで、これといった異変は起きていないらしい、ということが分かる。その上で、エルダが集めてきた行方不明となっている人々についての情報も探ってみたところ、一人の女性による「とある少女の目撃証言」へと辿り着いた。 「昨日の夜、キリカちゃんの姿を見かけたのよ。夜中に一人で歩いてちゃ危ないわよ、と声をかえようとしたんだけど、いきなり姿が消えてしまってねぇ」 キリカとは、紙吹雪の一件の際に近くに居合わせた少女の一人である。年齢的には従騎士達よりも若く、日頃は一人で外を出歩くような性分でもないらしい。 「それって、どの辺りですか?」 リンズがそう問いかけると、目撃者は今立っている道の先を指差しながら説明する。 「この通りの先の一つ目の角を右に曲がった先にある廃炉の辺りよ」 「廃炉?」 「昔は焼却炉として使ってたんだけど、混沌災害が頻発したことで、今はもう廃炉になってるの。普通は、あんまり人が近付くようなところじゃないわ」 その話を横から聞いていたアリアは、地図を見ながらその場所を確認する。 「ここは、まだ呪言花札が出現していない場所のようね」 今のところ、同じ場所で呪言花札が二回出現したという報告はない。そう考えると、むしろこれは「要注意案件」としての条件を満たしているだろうと判断したアリアとリンズは、目撃者が示した廃炉へと向かう。 すると、そこには確かに「かつて焼却炉であったと思しき何か」と、その近くにそびえ立つ大木の姿があった。二人がその周囲に異変が起きていないかと調べ回っていると、アリアが大木を見上げながら、ふと呟く。 「あそこに、一枚だけ変な形の葉が生えているわね」 彼女がそう言いながら指差した先にリンズが目を向けると、確かにそこには、他の葉とは形状が異なる「歪な五芒星」のような形の葉が見える。 「確かに……、これは混沌の影響っぽいですね」 「とりあえず、上まで登って、直に見て確認すべきだわ」 アリアはそう言いながら鞄を下ろすと、その中に入っている(登攀用に使えそうな)鉤爪付きの縄を取り出す。それは、今でも豪奢な服を着て貴族令嬢の如き雰囲気を漂わせている彼女にはあまり似つかわしくない代物である。 (アリアさんも、こう見て海賊なんだな……) リンズが意外そうな表情を浮かべながらそんな感慨を抱いている中、彼女はその縄をリンズに押し付けた。 「これを使って、この木に登って調べて来なさい」 「私が、ですか?」 「当たり前でしょう。私にこの格好で木に登れと?」 この日もアリアはいつも通りの優雅なスカート姿である。確かに、誰に見られるかも分からない状態で木に登れるような姿ではない。彼女は今回の調査任務に当たって、何かあった時のためにこういった道具も持ち歩いてはいたが、自分で使うつもりは最初からなかった(これに対して、リンズはどんな状況にも対応可能なように、動きやすい作業着を身にまとっていた)。 (なるほど……、これが「人を使役する君主」としてのルーラーとしての正道か……) アリアもリンズも「支配者(ルーラー)」としての聖印の持ち主である。しかし、基本的にこれまで「人に使われる立場」であり続けたリンズと、生まれた時から支配階級として育ってきたアリアでは、やはり君主としての魂の在り方が根本的に異なっているようである。 (私も私なりの「ルーラーとしての道」を見つけないと……) リンズは内心そう思いつつ、ひとまず今は素直にアリアから鉤縄を借りて、大木の上の方の枝に引っ掛けた上で、そのまま登り始める。そして、目標となる「葉」に手が届くところまで辿り着いた時点で、改めてその葉をまじまじと見つめる。 「やっぱり、どう見ても『本来のこの木の葉っぱ』じゃない……」 リンズはそう呟きつつ、手を伸ばしてその葉に触れようとする。すると、彼女の指先がその葉に届いた瞬間、彼女の触覚が「奇妙な違和感」を彼女の魂に伝えた。 (これは……、やっぱり、混沌!?) 彼女がそう実感した直後、それまで他の葉と同じような緑色のその葉が、唐突に鮮やかな紅色へと姿を変える。 「え……!?」 何が起こったのか分からずリンズが混乱していると、その直後、唐突に大木が揺れ始めた。 「えぇっ!?」 その揺れに驚いたリンズは、バランスを崩して木から落下してし、その真下にいたアリアの頭上へと落下してしまう。しかし、ここでアリアが咄嗟の判断でリンズを抱き止めた。 「あ、ありがとうございます……」 「気をつけなさい! もし頭から落ちてたら、骨折では済まないわよ!」 なお、地上にいたアリアもまた、この「揺れ」は実感していた。どうやら、この大木の根元で「何か」が揺れているらしい。そして、抱き止められた状態のリンズが再び「葉」のあった方角を見上げると、その葉の周囲の他の葉も、同様に「歪な五芒星の形をした紅の葉」へと変貌していた。 「お前、あの葉に何をしたのです?」 「わ、私はただ、指先で触れただけで……」 リンズはそう答えながらも先刻の状況を思い返してみると、彼女の指先が葉に触れようとした瞬間、自分の中の聖印が微妙に反応していたような気もする。 (もしかして、私が無意識のうちに聖印で浄化しようとして失敗した……? それとも、聖印が私を守ろうとして拒絶反応を起こした……?) 微妙に混乱した顔をリンズが浮かべる中、徐々に地表の揺れが激しくなっていく。もともと地上側にいたアリアは、その振動の変化から、冷静に状況を推察する。 「何か来るわ!」 アリアは足元に視線を向けながらそう叫びつつ、リンズを抱えたまま、一旦大木から距離を取る。すると、大木の根元の大地を掻き分けて、巨大な尾を持った蜥蜴のような怪物が現れる(下図)。その全長は大型の獣ほどの体躯であり、全身から明らかに混沌の気配が漂っていた。 + 地中から現れた怪物 (出典:『東京鬼祓師 鴉乃杜学園奇譚 公式設定画集』p.108) その怪物の姿を見るや否や、リンズはアリアの腕から飛び降りつつ、小刀を構える。ただ、彼女は本来は弩使いであり、近接戦闘は得意ではない。そしてアリアもまた、あまり用いることのない武器である鞭を手に、怪物の出方を伺うが、怪物の方も今の状況に戸惑っている様子で、いきなり襲って来ようとはしなかった。 (この世界に投影されたばかりで、状況を把握出来ていない?) (とはいえ、どう見ても言葉が通じる相手ではないわね。一般人が通り掛かる前に、誰か白兵戦が得意な戦闘要員を呼びに行かなければ……) リンズとアリアがそう考えていたところで、唐突に馬の蹄の音が聞こえてきた。 「現れたな! 混沌のウジ虫が!」 その声と共に駆け込んできたのは、コルムである。投影体の気配を探して町を巡視していた彼は、先刻の「地震」の時点で混沌の気配を察知し、全力で現場へと急行して来たのである。 「さっさとくたばれ!」 コルムはそう叫びながら騎乗状態で怪物に向かって側面から突撃する。唐突なその衝撃に怪物は吹き飛ばされるが、空中で体勢を立て直して四つ足で着地し、そのままコルムに対して襲いかかる。それに対して、コルムは素早い手綱捌きでその攻撃を交わしつつ、応戦していく。 一方、その間にリンズは怪物との距離を取った上で武器を弩に切り替えようとするが、ここで彼女は怪物が出現した大木の(土が掘り起こされた部分の)根元から、この怪物と同等以上に強力な混沌の気配を感じる。すぐさま彼女が視線をそちらに向けると、そこに「木札のような何か」が埋まっているのを発見した。 「……あれは!」 リンズはそう叫びながら木の根元へと向かって走り出す。一方、救援を呼びに行こうとしていたアリアは、大木の隣に設置されている廃炉から不気味な気配を感じ取る。 (この気配……、まさか、また別の魔物が……?) アリアが廃炉に対して警戒した視線を向けると、そこから感じられたのは「投影体の気配」というよりは「魔境の入口」に立った時のような感覚であった。 (もしかして……、これが「洞」?) そんな予感を感じ取りながらも、アリアはその場から一歩後ずさる。本能的に「ここに近付いてはいけない」と思わせるような禍々しさが、その廃炉から広がりつつあった。 一方、大木の根元へと到達したリンズが、その場に屈み込んで根元を凝視すると、そこには確かに、現在この木に生えているのと同じような「歪な五芒星の形をした紅の葉」が描かれた木札(下図)が埋まっていた。 + 紅の葉の木札 (出典:『東京鬼祓師 鴉乃杜学園奇譚 公式設定画集』p.180) (これを私が浄化出来れば……) リンズは意を決して、聖印を掲げ、その聖印に全神経を集中させる。 (私はこの聖印の力で、人々を救う!) 改めて自身の誓いを思い出しながら、自身の魂を聖印に込めると、彼女の目の前でその札は浄化され、混沌の塵となり、その残骸を彼女の聖印が吸収していく。それと同時に、大木の葉は元の姿に戻り、そしてコルムと対峙していた怪物も一瞬にして消滅する。 「出来た……! 私の聖印でも、ソフィア様と同じように……!」 リンズが感慨に浸っている一方で、目の前の敵が消滅したコルムは、少し拍子抜けしたような表情を浮かべている。 「消えた……? 浄化されたのか?」 「おそらく、あの怪物はこの木に埋まっていた呪言花札に紐付けられて出現した投影体だったのでしょう。コルム様が怪物の目を引き付けていて下さったおかげです。ありがとうございます」 コルムに対してリンズがそう伝えると、コルムは微妙に消化不良な様子であった。 「そうか。だが、これでこの町の混沌が全て消えた訳ではないのだな?」 「えぇ……、多分、まだ他にも呪言花札がどこかに埋もれている可能性は十分に……」 「ならば、俺はこれから、それを探しに行く」 そう言って、コルムは騎乗したまま走り去っていく。一方、廃炉を注視していたアリアは、やや不可解な表情を浮かべていた。つい一瞬前まで、「不気味な異空間」が開かれるような気配が広がりつつあった筈の廃炉から、その気配が(札の浄化と同時に)一瞬にして消え去っていたのである。 (でも、やっぱり、どこか不気味な雰囲気は今も漂っているわね、この廃炉……) アリアはそう実感しつつ、ひとまずはリンズと共に領主の館へと報告に戻ることにした。 ****** 「『外』の調査は、ぼく達二人だけで大丈夫なのでしょうか? もう一人くらい、誰かに護衛役をお願いしても良いと思うのですが……」 カルタキアの街の外への調査へと向かおうとしていたハルは、外壁の近くまで来たところで、エルダにそう問いかける。 「その点に関しては、実はもう既に一人、お願いしている人がいるのです」 エルダがそう答えると、彼女の視線の先(外壁の近く)に、見知った一人の同僚が立っていることにハルは気付く。 「あら、あなたも街の外の調査に行くことになったの?」 ハルに対してそう問いかけてきたのは、彼等と同じ幽幻の血盟の ローゼル・バルテン である。彼女の姿を見た瞬間、ハルのテンションは一気に急上昇する。 「おじょ……、ローゼルさん!」 以前はローゼルの「執事」を自称し、彼女のことを「お嬢様」と呼んでいたハルであったが、先日、彼女から「自分が『理想の淑女』になるまでは『執事』ではなく『仲間』として接してほしい」と言われ、現在は名前で呼ぶように心掛けていた。とはいえ、それでもハルにとってはローゼルが今でも「特別な存在」であることには変わりない。 なお、ローゼルが今回の呪言花札に関する調査任務に就いていることはハルも聞かされていたが、具体的にどの方面で調査に当たっているのかまでは把握していなかった。エルダが言うには、先刻領主の館へと報告に向かう直前にローゼルと遭遇し、助力を依頼したらしい。 「ちょうど私の方も、調査が手詰まりになってたところだったのよ。町の外の方が、私の弓を活かせる機会も多いと思うしね」 ローゼルとしては、アーチャーの聖印に覚醒したばかりということもあり、この機に実戦経験を積んで自身の実力を高めたいという想いもあったらしい。いずれにせよ、色々な意味でこの状況はハルにとっては望ましい展開であった。 「では、参りましょう。まずは、外縁の衛兵の人達から話を……」 エルダがそう言いかけたところで、近くにいた衛兵達がザワついている声が聞こえてくる。三人がその声の方向へと視線を向けると、そこでは、街道経由でこの地に来たと思しき商隊の人々が衛兵達に何かを報告しているように見えた。よく見ると、商隊の護衛と思しき人物の背中には、ドレッド状の黒髪の男性が、意識を失った状態で背負われている。 その「意識を失った男性」の姿を見たエルダは、驚いた声を上げる。 「あれは……、リグさんでは……?」 リグとは、このカルタキアにてナユタ地方(シェンム南部)の民族料理の店を開いている料理人であり、地元民の間ではそれなりに名の知れた人物である。独特のナユタ風の装束故に目立つ存在であり、エルダもハルもローゼルも彼とは顔馴染みであるが、確かに商隊に背負われている男は、リグの風貌に酷似していた。 「確か、リグさんも今回の行方不明者の一人だったわよね?」 ローゼルがそう問いかけると、エルダは頷きつつ、すぐさま衛兵達と商隊の面々が集まっている方面へと駆け寄り、ハルとローゼルも彼女に続く。 その上で、商隊の面々から話を聞いたみたところ、どうやらこのドレッドヘアの男は、カルタキアから程近い街道の脇に、気絶した状態で倒れていたらしい。商隊の者達としては放っておくのも忍びなかったため、ひとまずこの街まで連れてきた上で、衛兵に引き渡そうとしていたところであった。 エルダがそこまでの話を聞き出したところで、今度はハルが一歩前に出る。 「容態を確認させてもらってもいいですか?」 先日、メサイアとしてのスタイルに覚醒したばかりのハルとしては、この機に自身の力を試してみたいと考えていた。彼は聖印を掲げた上で、そのリグと思しき男性の心身の状態を確認する。 (外傷はない……。そして、毒などに冒されている様子もなければ、極端な栄養失調にも見えない……。ただ、精神が極端に疲弊しているような……) ハルはそう判断した上で、ひとまず気付け薬を処方してみる。すると、その男性はあっさりと目を覚ました。 「んー……? あ、あぁ……?」 ぼんやりとした表情でそう呟く男性に対して、ハルが身を乗り出して声をかける。 「大丈夫ですか?」 「え……? し、白鴉!?」 男性は突如、大声を上げて仰け反る。彼が何を言っているのかも分からないまま戸惑うハルに対して、男性は直後に正気を取り戻したような表情を浮かべる。 「あ、あぁ、すまん。ハル君か……」 「やっぱり、リグさんですよね? 何があったんですか?」 ハルのその問いかけに対し、リグは訥々と事情を語り始める。彼もまた(イシューと同様に)昨晩から「花札を集めよ」という声が聞こえてきて、朦朧とした意識のまま、「何か」に導かれるように街の外へと出て行ったらしい。 だが、その過程で唐突に彼の前に「白い鴉」が現れて、行く手を妨害され、それでも心の声に逆らえずに強引に進もうとしたところで、意識が途絶えていたらしい。 「君のその白髪と同じような色の鴉だった。それで、目覚めた時に君の髪を見た瞬間、動揺して取り乱してしまったんだ」 なお、「白い鴉」などという生き物は、カルタキアには存在しない。それが本当に鴉だったのか、鴉に似た別の鳥だったのかは不明だが、いずれにしても投影体である可能性が高いだろう。 「その白い鴉が現れたのは、どの辺りですか?」 「うーん、正直、あんまり覚えていないんだが……、ただ、街道の近くではなかったと思う」 なお、商人達の証言によると、道端でリグを発見した際、彼の服はかなり土まみれに汚れていたらしい。この状況から察するに、おそらくは意識を失った後、何者かに引きずられる形で街道の近くまで運ばれたのではないか、というのが彼等の見解であった。 実際、リグは身体の節々に「記憶にない痛み」があると言っているため、その可能性は十分に高そうである。それに加えて精神面でも疲弊していたこともあり、ひとまず彼の身柄は衛兵達に預けた上で、三人は予定通りに外壁調査を開始することにした。 ****** 「うーん、エルダさん達、どこにいるのかな……」 エルダ達に情報を伝えるために、イシューを愛馬に同乗させた上で街の外へと出たメルであったが、さすがに「街の外」という範囲はあまりにも広すぎて、そう簡単には見つけられずにいた。 そんな中、イシューが何かに気付いたような声を上げる。 「これは……」 「どうしたの?」 「感じる……、さっきまで探していた、というか、求めていたものが、近くにあるような……」 どうやら、メルの歌で正気に戻った筈の彼の心の中に、まだ「混沌による暗示」のようなものが、かすかに残っていたらしい。 おそらく、そこに呪言花札があるのではないかと判断したメルは、イシューの感覚が指し示している場所へと向かう。すると、やがてメルの視界に、あまり見慣れない、小さな紫色の花が咲いているのを発見する。 「あれだ……、俺の中の何かが、あれを求めて……」 「イシューさんは、ここを動かないで!」 花から少し距離を取った場所で、メルはイシューと共に馬から降りた上で、イシューをその場に残し、慎重にその花へと向かって歩き始める。 (あの花は、明らかにこの辺りの地方の花じゃない。多分、異世界から投影された花。だとしたら、周囲の土の様子は……) メルが注意深く地表に視線を向けると、やや奇妙な痕跡が目に映る。 (これって、何かが引きずられていった跡……?) それが何なのかは分からないが、ひとまずメルはそのまま花に近付き、念の為、聖印を掲げた上で、その花に触れてみる。すると、直後にその周囲で「混沌核の収束」が発生し始める。 (あ……、これ、まずいかも……) 今、この場にいる従騎士はメルしかいない。混沌核の規模自体はそこまで大きくは無さそうだが、ここで敵対的な怪物が出現した場合、メルは一般人であるイシューを守りながら戦わなければならない。 「とりあえず、覚悟を決めるか!」 メルはそう自分に言い聞かせながら、馬に再び飛び乗った。 ****** ここで、少し時は遡る。エルダ、ハル、ローゼルの三人は、リグが発見された街道近辺の区域を中心として街の外の探索を続けていたが、行方不明者の気配も、呪言花札の気配も、なかなか察知出来ずにいた。 しかし、そんな中、エルダの霊感が一瞬、「何か」に反応する。 「今、あちらの方で一瞬だけ、強大な混沌の力が発動したような……」 彼女がそう呟いて指差した先にローゼルが視線を向けると、弓使いの彼女は空中に奇妙な鳥の姿を発見する(下図)。 + 奇妙な鳥 (出典:『東京鬼祓師 鴉乃杜学園奇譚 公式設定画集』p.18) 「ハルの髪の色に似た、鴉……?」 かなり遠方であるため、はっきりとは分からなかったが、ローゼルの目には、それはリグの証言にあった白鴉の特徴に合致しているように思えた。しかし、すぐにその白鴉は姿を消してしまう。 そして、ひとまず三人がその方角へと向かおうとすると、そんな彼等の前に、一人の白髪の少女が姿を現した(下図)。その風貌は極東の民族衣装のようにも見えたが、彼女の全体から漂うオーラから、明らかに投影体と思しき雰囲気が醸し出されている。 + 白髪の少女 (出典:『東京鬼祓師 鴉乃杜学園奇譚 公式設定画集』p.18) そして、彼女の傍らには(おそらく意識を失った状態の)一人の少年が、彼女に引きずられる形で連れられていた。その光景に対して三人が何かを口にする前に、先に白髪の少女の方から彼等に声をかける。 「其方等(そなたら)、北の街の住人か?」 方角的に言えば、この地から見て北側にはカルタキアが存在する。 「その通りですが、あなたは?」 エルダがそう答えると、少女はその手に引きずっていた少年を、エルダに向かって投げつけた。突然のことに驚きながらもエルダが彼を受け止めると、即座に少女は背を向ける。 「では、街まで連れて帰れ。そして、二度とこの地に近付かぬように厳命するのじゃ」 そう告げて少女はそのまま三人から遠ざかろうとするが、ローゼルが声をかける。 「待ちなさいよ! 何があったのか、説明して!」 彼女のその声に対して、白髪の少女は立ち止まりつつも、気怠そうな様子で振り返りながら聞き返す。 「聞いてどうする?」 「もし、この地に危険な混沌があるなら、浄化するわ。それが私達、君主の役目だから」 ローゼルが確固たる強い信念をその目に宿しながらそう告げると、白髪の少女は何かを思い出したような表情を浮かべる。 「君主……、そういえば、この世界では、『執行者』や『封札者』に相当する者達のことを、そう呼ぶのであったかな……」 彼女のその発言に対して、今度はハルが割って入る。 「あなたは、自分が『この世界の住人』ではないことをご存知なのですか?」 過去に「呪言花札」が出現した記録がカルタキアにある以上、その「呪言花札の存在する地球」からの投影体が以前にもこの地に出現した可能性は十分にある。その場合、その投影体には「以前に投影された時の記憶」が残っている事例が多い、という説も聞いたことがあった。 「あぁ。理屈はよく分からぬが、以前にもこの世界に迷い込んだことは何度かあるからのう。この世界のことも、うっすらと記憶に残っておるぞ。と言っても、それがいつのことだったのか、これが何度目になるのかも、はっきりとは覚えておらぬが……」 浮世離れした物腰で少女がそう語っている中、この場にいる者達全員が、少し離れた場所から聞こえてくる喧騒の存在に気付く。それは三人が向かおうとしていた方角(白髪の少女が歩いてきた方角)であった。 「しまった……、妾が離れている間に、誰かが『あの花』に触れおったな……」 白髪の少女はそう呟くと同時に、彼女の周囲に謎の光が満ちる。そして、その光に包まれた状態の中で、彼女の姿は一羽の「白鴉」へと変様していく。それは紛れもなく、先刻ローゼルが発見した奇妙な鳥の姿そのものであった。 驚く三人を無視して、白鴉はそのまま喧騒のした方向へと向かって飛び去って行く。三人もその白鴉を追おうとするが、さすがに少年を抱えている上に重装備のエルダは、どうしてもついていくのが厳しい。 (私とハルだけだと、もし怪物と遭遇した場合、応戦するのは難しい。だとしたら、敵が見えた瞬間に、私のこの矢で射抜くべきね……) ローゼルはそう判断した上で、走りながら弓の準備を始める。そして、やがて彼女はその「喧騒」の正体を視界にとらえることになる。 そこにいたのは、双頭の(しかし、いわゆる「オルトロス」とは明らかに形状が異なる)犬のような姿の怪物(下図)と、それに退治する一人の騎士のような人物の姿であった。肉眼ではその人物の顔までは確認出来なかったが、ローゼルの隣を走っていたハルが、遠眼鏡でその正体を確認する。 + 犬のような怪物 (出典:『東京鬼祓師 鴉乃杜学園奇譚 公式設定画集』p.108) 「あれは、メルさんです! 隣にいる人が誰かは、分かりませんけど……」 そのハルの声を聞きながら、ローゼルは、すぐさまその場で弓を構える。 「この距離なら、届く筈。そして、もしあの怪物の足が馬並だと仮定するなら……」 ローゼルは距離から即座に状況を判断した上で、犬型の怪物に向かって聖印の力を込めた矢を放つ。すると、見事にその一矢は怪物の胴体を射抜き、怪物は苦しみながらも敵意をその矢の飛んで来た方向へと向け、ローゼルに対して走り込んで来る。 「……ここに到達する前に、あと二本は打ち込める筈!」 その目算に基づき、ローゼルは立て続けに連射を仕掛けると、突進しようとしてきた怪物に正面から的中し、怪物はのたうち回りながら消滅し、そのまま混沌の欠片と化していく。 「これが、今の私の力……」 「お見事です! お……、ローゼルさん!」 ハルが隣で絶賛する中、ローゼルは自分がアーチャーとして着実に成長しつつあることを実感していた。 ****** こうして、エルダ、ハル、ローゼルの三人は、メルおよびイシューと合流を果たす。その上で、イシューはエルダが抱えている少年が「自分と一緒に紙吹雪事件の場に居合わせた少年」であるという旨を告げた。 そして、改めて彼等が謎の「紫色の花」を調べようとしたところで、上空から白鴉が降り立ち、再び「白髪の少女」の姿へと変わる。初対面のメルとイシューがその様相に驚くのをよそに、彼女はローゼルに問いかけた。 「たかが狗児(エノコロ)とはいえ、隠人(オニ)をこうもあっさりと倒すとは。どうやら、封殺師となりうる力の持ち主のようじゃな」 「……まず、順を追って説明してくれないかしら? そもそも、あなたは何者?」 「おぉ、そうじゃったな。まぁ、話したところで、どこまで分かるかは分からぬが……」 彼女はそう前置きした上で語り始める。 「妾の名は、白(まお)。呪言花札の『番人』なのじゃが……、まず、『呪言花札』について、其方等はどこまで知っておる?」 この質問に対しては、ハルが答えた。 「50枚で一組の、強大な力が封じ込められた地球の魔法具のようなものだと聞いています」 「まぁ、概ねその通りじゃ。そして、その力は暴走することによって災害を引き起こすこともあるが、その力を制御して自分の力とすることが出来る者達もおる。その意味では、この世界における『混沌』とやらと近い存在なのかもしれぬ」 「なるほど……?」 そのたとえが正解なのかどうかは誰にも分からないが、白が言うには、彼女達の世界には呪言花札を初めとする様々な「カミフダ」と呼ばれる特殊な力が込められた紙片が存在しており、その力を制御した上で利用したり、封印したりする力を持つ者達のことを「封札師」、カミフダの影響で異形化・暴走した人や動物のことを「隠人」、そして、カミフダを身体に宿しながらも自我を保った者達もおり、そのような人々は「札付き」と呼ばれているらしい。 (なるほど……、カミフダが混沌だとすれば、「札付き」は邪紋使いのような存在か……。そして、混沌を操るという意味では「封札師」は魔法師のようにも聞こえるけど、それを封印する力も持っているのなら、確かに君主にも近いのかもしれない……) ハルの中でそのような形で理解が広がる中、メルは率直な疑問を投げかける。 「じゃあ、さっきの魔物は、犬がカミフダの力で『隠人』になった姿、ということ?」 「そうじゃな。より正確に言えば、『妾達の世界』で隠人化した存在が、この地に召喚された、ということになる。お前達の言葉では、それを『投影』と呼ぶのであったかな」 この語り口に対して、今度はエルダが問いかけた。 「あなたは、この世界のことをどこまでご存知なのですか?」 「詳しくは知らぬ。ただ、我等とは異なる世界に、一時的に魂が迷い込んでいるだけだと考えることにしておる。それ以上のことは、考えたところで分からぬからな」 「まぁ、それは、そうでしょうね……」 実際、厳密な「投影」の原理までは、エルダ達も正確に分かっている訳ではない。この世界全体を統括する魔法師協会ですら、どこまで正確な情報を把握しているかは謎である。 「ただ、妾の記憶が間違いでなければ、この世界においても『呪言花札』は放っておくと様々な災害をもたらすようじゃ。いわば、闇を引き起こす触媒のような存在となっておる。違うか?」 「その通りよ。だから、浄化しなければならないの!」 ローゼルが強い口調でそう答えると、白は手に持っていた扇子で、足元にある「紫の花」を指し示す。 「ならば、浄化してみせるが良い。妾の見立てが間違いでなければ、この花の根元に、呪言花札のうちの一枚が眠っておる筈じゃ。おそらく、先程の狗児の出現も、この花が原因じゃろう」 白がそこまで言ったところで、ローゼルの後ろにいたエルダが一歩前に出て、抱えている「少年」を白に見せつけながら問いかける。 「では、あなたが『この子』を引きずっていたのは、もしや……?」 エルダとしては、子供をぞんざいに扱っていたことから、当初は(白自身も子供のような姿なのだが)白に対してあまり好意的な感情は抱いていなかったが、この状況から、おおよその見当は付きはじめていた。 「あぁ、その童が、なぜか『この花』に触れようとしておった。何の力もない子供が迂闊に触れれば、それこそ『隠人』になりかねない。だから、妾の力で眠らせた上で、ひとまず人目につきそうな道の近くにでも転がしておこうかと思ってな」 乱暴なやり方だが、確かに、そう言われればエルダも納得出来る。その上で、彼女はもう一つの案件についても確認する。 「もしかして、少し前に、別の人も同じようにこの場所に現れませんでしたか? 黒髪で、こう、独特な巻毛の……」 「おぉ、おったのう。その者も近くの道の横に転がしておいたが、無事に見つけられたか?」 「えぇ、まぁ……、見つけたのは私達ではありませんが……」 「無事に拾われたのなら、何よりじゃな。いずれにせよ、何の力も持たない輩をこの花似触れさせる訳にはいかない。じゃが……」 ここで白は、改めてローゼルに視線を向ける。 「……其方の聖印とやらの力を以ってすれば、確かに浄化も可能かもしれん」 白は先刻のローゼルの戦いぶりから、彼女に対してはそれなりの実力の持ち主であると認識していたようである。しかし、ローゼルは首を横に振った。 「私じゃない。ハルがやるわ」 「ほう?」 白が意外そうな顔を浮かべる中、ローゼルはハルの背中を押す。 「ソフィア様があなたを指名したんだから、あなたはあなたの務めを果たしなさいよ!」 「もちろんです、ローゼルさん!」 ハルは全身からやる気を漲らせた状態で、紫の花の根元を掘り起こし始める。その後ろ姿を見ながら、ローゼルは内心で祈るように呟く。 (信じてるわよ、ハル……) 彼女を初めとする周囲の従騎士達が強い視線を彼の背中に向ける中、ハルは地中に埋もれた一枚の「紫の花が描かれた札」を発見する(下図)。 + 紫の花が描かれた札 (出典:『東京鬼祓師 鴉乃杜学園奇譚 公式設定画集』p.180) そして、ハルがその木札に向かって聖印を掲げると、彼の魂に呼応するように聖印は強い輝きを放ちながら、花札を構成する混沌を分解していく。そして、気付いた時には地上にあった花も、その花が描かれていた札も、彼等の目の前から消滅していた。 「出来ました! 出来ましたよ、ローゼルさん!」 「ま……、まぁ、当然よね。これくらいはやってもらわないと、私のし……」 そこまで言いかけたところで、ローゼルは口をつぐむ。 「……なんでもないわ!」 二人がそんなやり取りを交わす様子を見ながら、白はほのかに笑みを浮かべる。 (この者達ならば、封殺者、あるいは「執行者」としての力を発動出来るやもしれぬな……) 白にしてみれば、この世界の命運そのものには大して興味もないが、呪言花札の「番人」として、その暴走を止めなければならないという使命のようなものが、彼女の心を突き動かしているようである。 ****** その後、エルダが抱えていた少年は、リグ同様、ハルの手で意識を取り戻す。そして話を聞いてみたところ、彼もまたリグやイシューと同じように「花札を集めよ」という謎の声に突き動かされていたらしい。 この「謎の声」の主に関しては白も明確な心当たりはないようだが、一つの可能性として、彼等が遭遇した「紙吹雪」の正体が微弱なカミフダで、そのカミフダを生み出した何者かが、呪言花札を自身の手元に集めるために、彼等を利用しようとしたのではないか、というのが白の推測である。もともと呪言花札はカミフダの中でも極めて強大な力を持つ代物であり、その力を求める者がこの世界に投影されていたとしてもおかしくない、というのが彼女の見解であった。 ちなみに、白が(今回)カルタキアの近辺に出現したのはつい数日前であり、白鴉の姿で周囲を散策していたところで「紫の花」から呪言花札の気配を察知し、誰かが迂闊に触れることがないよう、警備を続けていたらしい。 ここまでの話を聞いた上で、メルが素朴な疑問を投げかける。 「あなたが呪言花札を回収することは、出来ないんですか?」 「ふーむ……、上手く説明出来ぬのだが、『妾一人の身』では、それが出来ぬのじゃ。一応、『元の世界』で『執行者』と共に集めた分の札については、今も妾の手元にあるのじゃがな……」 白はそう呟きながら、その独特な装束の「袖」の内側から、何枚かの「呪言花札」を取り出す。それらは、植物だけでなく、短冊や動物なども描かれていた。その色鮮やかな絵面に、ローゼルとハルは思わず身を乗り出して見入る。 「こうして見ると、綺麗な絵柄ね」 「ゲームとかにしたら、流行りそうですね」 二人がそんな感想を口にする中、エルダが白の発言の中の気になる部分に対して問いかける。 「先程の話にも出てきましたが、『執行者』というのは、何者ですか? それに、あなたは『番人』だとおっしゃいましたが、そもそも、それはどういう……」 「これ以上のことは、言っても分からぬじゃろう。妾が混沌やら投影やらの概念を理解しきれぬのと同じこと。その世界の住人の中にしか分からぬこともある。そういうものであろう?」 白のこの答えに対して、エルダは微妙にはぐらかされたような気分ではあったが、これ以上聞いても有益な話を聞けそうにはなかったので、ひとまず引き下がった上で、白と共に一旦カルタキアへと帰還することにした。 ****** エルダ達は白を伴ってカルタキアへと帰還した後、リンズやアリアとも合流した上で、互いの情報を一通り交換する(なお、コルムはその間も一人で街の巡視を続けていた)。そして、街の衛兵達とも協力して警備体制を強化した結果、行方不明だった人々の大半は街の内外で発見された。彼等はいずれも、イシューやリグと同様に「花札を集めよ」という声によって心を支配されていたようである。 だが、そんな中で一人だけ、どうしても姿を発見出来ない者がいた。街の廃炉の近くで姿を消した少女、キリカである。リンズとアリアに案内される形で、外組の面々と共に白がその廃炉のある場所へと赴くと、白は何かを確信したような表情を浮かべる。 「間違いない。ここには『洞』がある。おそらく、その童もこの洞の中にいる何者かに心を操られて、この中へと入り込んでしまったのであろう。ただ……、どうやら今は『黒札』の力で入口が閉ざされておるようじゃな……」 彼女はそう呟きつつ、従騎士達に対して、再び「手持ちの呪言花札」を見せる。 「この入口をこじあけるには、其方等の誰かが、妾の手にあるこれらの呪言花札の力を聖印で制御した上で、『封札師』と同じ力を駆使するしかない」 白が言うには、以前にこの世界に投影された時にも、同じような形で彼女から呪言花札の力を受け取った者達がいたという。ただ、その時には呪言花札を取り込むことに失敗し、暴走状態になってしまった者もいたらしい。 果たして、今のカルタキアに、この呪言花札を使いこなせる者はいるのか、その答えを知る者は、まだ誰もいない。 ☆今回の合計達成値:116/100 →次回「魔境浄化クエスト(BM)」発生確定、その達成値に8点加算 BH「大空の特攻隊」 (前回の結果報告) 「ウェーリーめ、ここまでやったのなら、最後までやりきって武功を上げれば良いものを……」 カルタキアの港に停泊する飛空船「ルルーシュ」(下図)の甲板の上で、金剛不壊の艦長ラマン(下図)は、ボソリとそう呟いた。 + 飛空船「ルルーシュ」 + ラマン カルタキア近海を(本人達にその意図があるのかどうかは不明だが)魔境化させながら周回し続けている「ドクロの飛空船」を浄化すべく、討伐部隊が編成されつつあったが、調査段階においてこの船の船長としての任務を果たしていたウェーリーの姿が、そこにはなかった。ウェーリーとしては、もう既に十分すぎるほど働いた、ということで、あとはラマン達に委ねて御役御免を申し出たらしい。 なお、他の参加者達の面々を見渡しても、あまり調査任務時の時のメンバーは参加していない。そんな中で数少ない継続参加組の一人が、第六投石船団の リズ・ウェントス である。彼女は、前回の渡航時に拿捕した飛行巨大イカを懐柔しようと、悪戦苦闘していた。 「なぁ……、頼むから、落ち着いてくれへんか? ウチ、別に取って食おうとしてる訳やあらへんねん。ちょっと力貸してくれるだけでええんや」 前回は敵のデビルフィシュミサイルを封じるための奇策として用いられたこの巨大イカを、今回は突入用の乗騎として活用しようと考えていたのだが、なかなか言うことを聞いてくれない。そんな彼女に対して、横からラマンが口を挟んだ。 「どうやら、触手の先端を触られるのを嫌がっているようだ。こちら側から鞍紐を通す形なら、どうにか受け入れてもらえるんじゃないか?」 ラマンはキャヴァリアーの中でも扱える者が珍しい《鳥獣の印》の使い手であり、動物の思考がある程度は理解出来る。彼の助言を受け入れながら、巨大イカの機嫌を取りつつ、どうにか鞍をその背中(?)に設置することに成功する。 「おぉ〜、おおきに! これでどうにか、この子ともやっていけそうやわ」 リズがラマンに対してそう告げると、ラマンは少し意外そうな顔をする。 「お前さんは弓使いだと聞いていたんだが、さすがにこの巨大イカの鞍上から弓を放つのは難しくないか?」 「うん。せやから、今回はこの子の制御に専念するつもりなんよ。敵船に突入した後は、短剣でどうにかするわ。まぁ、あんまり接近戦は得意やないけど」 リズはキャヴァリアーではないが、今回参加する従騎士達の中には、特にキャヴァリアー適正のある者もいない。それならば、比較的小柄なリズが操騎役を担うというのは、それなりに理に適った人選ではある。 「まぁ、ウェーリーが遺した兵器だからな。有効活用してもらえるのは嬉しいが、あまり無理はするなよ。もし敵の主砲を直撃したら、イカごと木っ端微塵で海の藻屑だ」 ラマンのその言葉に対してリズは、自分の中の恐怖を振り払うように言い切る。 「危険なのわかっとる。けど、誰かがやらんとアカンのなら、ウチが“やる”」 実際のところ、ラマンとしては(ウェーリーから後を託された立場上)誰も担当する者がいなければ、自分が巨大イカに乗ろうかとも考えていた。だが、リズがその役割を担ってくれるのであれば、ラマンが自由に行動出来る分、戦場での選択肢が大幅に広がる以上、彼女が決意を固めてくれたのであれば、素直に彼女に託すことにした。 一方、そんなリズの様子を、少し離れた場所から心配そうに横目で見ていたのは、ラマン直属の スーノ・ヴァレンスエラ である。彼は自身が持つ二振りの長剣のうち、「太陽の剣」を用いつつ、ここ最近はあまり用いていなかった「一刀流」の型を思い出そうと、素振りを繰り返していた。 「同じ失態はしない。それなりに対策は考えてきた」 先日の調査任務において、スーノは巨大飛空クラゲに斬り掛かった時に感電で気を失ってしまった。その時の状況を思い出しながら、今回はあえて(もう一つの長剣である)月の剣を封印して、太陽の剣だけを用いて戦う道を選んだのである。 当初はリズの様子が気になって、なかなか訓練に専念出来ずにいた彼であったが、巨大イカの調教がどうにか順調に進み始めたのを確認すると、徐々に彼の中での集中力が増していく。 (焦るな。逸るな。自分がすべきことを着実にやるしかない。己の成長だって、この任務の達成だって) 自分にそう言い聞かせながら一心不乱に剣を振る彼に対して、ラマンは満足そうな笑みを浮かべながら、心の中でエールを送る。 (頑張れよ、青少年!) ****** 「今回は『天井のない戦場』だからな。思いっきり、暴れさせてもらうぜ」 鋼球走破隊の ファニル・リンドヴルム は、そう呟きながらルルーシュへと乗り込んだ。前回は岩礁内の洞窟での戦いということもあり、今ひとつ本領を発揮しきれなかった彼女だけに、今回こそは全力でマローダーとしての力を振るおうと意気込んでいた。 そんな彼女の前に、上役であるタウロス(下図)が現れる。 + タウロス 「よぉ! お前も今回はこっちの任務に来たか」 タウロスはファニルと同じマローダーである。どちらも「戦場において、味方が少ないほうが本領を発揮する戦闘スタイル」であるが、ここはファニルが先手を打って釘を刺しに行く。 「隊長、今回は、俺に一番槍を任せちゃくれねぇか?」 戦略的に言えば、タウロスが一番最初に甲板に乗り込んで雑兵達を一掃し、残りを後続の従騎士達が倒す、という手段の方が明らかに効率が良い。実際、それが鋼球走破隊の日頃の基本戦術であったが、ファニルとしては、いつまでも隊長の「おこぼれ」だけを貰う立場で終わるつもりはない。マローダーとしての力を確立しつつある今こそ、その実力を発揮する機会を奪われたくはなかった。 これに対して、タウロスは笑顔で答える。 「あぁ、元からそのつもりだ。というか、今回の俺の役割は『後詰め』だからな」 「後詰め? 隊長が?」 「より正確に言えば『留守番』だな。それが、ラマンの旦那の作戦なんだとよ」 いつものタウロスなら、そのような役回りを嫌がりそうに思えるのだが、なぜか妙に納得しているように見える。ファニルにはその様子がやや不可解には思えたが、自分に先鋒を任せてもらえるのであれば、あえて詳細を追求する必要もない。 (まぁ、お偉いさん達がそう決めたんなら、俺がとやかく言う話じゃねぇな) ファニルが自分にそう言い聞かせているところで、もう一人の指揮官である潮流戦線のジーベン(下図)が姿を現す。その傍らには、彼の従属君主である カノープス・クーガー の姿もあった。 + ジーベン 「おぉ、ちょうどいいところに来た。今回はコイツを前線に投入するから、《暴風の印》に巻き込まれないように、気をつけてくれよ」 陽気な口調でタウロスがそう告げたのに対し、ジーベンはいつも通りに淡々と答える。 「その者の実力は、前回の任務で目の当たりにしている。今更言われるまでもない」 先日の岩礁の魔境において、ジーベンとカノープスはファニルと共闘しており、既に顔見知りの状態であった。ただ、そのジーベンの発言に対して、ファニルは微妙に苛立ちを覚えながら宣言する。 「俺の実力は、あの程度じゃねぇからな。今度こそ、俺の真価を見せてやる」 別にジーベンとしては侮辱するつもりで言った訳ではないのだが、ファニルとしては「あの程度」が自分の実力だと思われるのは心外だったらしい。 「そうか、期待してる。ただ、今回は俺も突入組ではない。ウチの先陣は、カノープスに任せる」 ジーベンがそう告げると、カノープスは眼鏡越しに鋭い視線をファニルに向けながら、短く呟くように告げる。 「よろしく頼む」 「あぁ。今回も、期待してるぜ」 ファニルはタウロスと同じマローダー、そしてカノープスはジーベンと同じセイバーの聖印の持ち主である。現在のカルタキアにおいては、自身の指揮官と同じスタイルの聖印へと覚醒した者は存外少ない。その意味では、この二人は(戦闘スタイル的にも、気性的にも)数少ない「指揮官の直弟子(内弟子)」であり、タウロスやジーベンから見れば「自分の代わりに自分の役割を任せられる貴重な存在」ということになる。 (負けるんじゃねーぞ、ファニル!) ファニルの背後でタウロスが熱視線を彼女に向ける一方で、ジーベンはあまり関心が無さそうな様子でその場から立ち去ろうとするが、ここで更に二人の従騎士が彼等の前に姿を現す。 「またアンタと同じ任務になったようだな、ジーベン!」 「お久しぶりです、タウロスさん」 ヴェント・アウレオの ジルベルト・チェルチ と ラルフ・ヴィットマン である。以前の任務において、ジルベルトはジーベンの、ラルフはタウロスの背中から戦い方を学び取ることで、それぞれセイバーとマローダーの聖印へと覚醒した身であり、いわば二人の「外弟子」のような存在とも言える。そして、前回の任務においては彼等もまた岩礁の魔境でファニルやカノープスと共闘した身でもあった。 「おぉ、お前らも来てくれたのか。だが、先鋒は譲らないぜ」 ファニルが牽制するようにそう告げると、ジルベルトはニヤリと笑いながら答える。 「あぁ、甲板の掃除は任せた。オレは、その隙に『内側』へと斬り込ませてもらう。アンタは狭い船内での戦いは、苦手だろう?」 前回の調査隊の報告によると、敵船の(魔境全体の)混沌核は、船首に設置された砲台にある。それを破壊するためには、船の甲板から内側に入って船首へと向かう必要があった。 「なるほど。そういうことなら、今回は競合せずに済みそうだな」 ファニルとしては、最終的な大将首や混沌核よりも、まず今回は「マローダーとしての自分の本分」をまっとうすることに専念するつもりだったので、その方針に異論はなかった。 そして、もう一人のマローダーであるラルフも、静かに闘志を燃やす。 「前回は索敵役でしたが、今回は僕も前衛として戦わせてもらいます」 指揮官達の前ということで、丁寧な口調でそう語るラルフであったが、その左目には既に猟犬の如き鋭い眼光が宿っている。ただ、彼等の場合、同じスタイルであるファニルやカノープスというよりは、むしろ同僚同士の方がより対抗意識(?)は強かったようで、隣に立っているジルベルトとの間では、どこか張り詰めた雰囲気が漂っている。 (いいぜ、バチバチしてやがるな。ウチの連中にも、もう少しこういう空気が欲しいところなんだが……) タウロスが内心でそんなことを考えているところで、ファニルがふとタウロスに問いかける。 「そういや、敵船の武装については大体情報は仕入れたって言ってたけど、敵の船員達の戦力については、何か分かってることはあるのか?」 「聞いた話によると、奴等の世界では単筒状の小型銃がそれなりに流通しているらしいから、空賊達も持ってる可能性は考慮した方がいいだろうな。それと、雷を帯びたクラゲ型の生物兵器には触れないように、とも言っていた。あとは……」 タウロスは、投影体の船員であるナリーニから聞いた話を思い出す。 「今回の討伐対象である『黒髭団』の飛空船には、『狼男』が乗っているという噂もあるらしい」 「狼男?」 「まぁ、こっちの世界で言うところのライカンスロープみたいな奴だろう。どれくらいの強敵かは分からねえけど、かなり鋭い爪で攻撃してきて、その爪で身体を引き裂かれると、『人狼病』とやらに感染してしまって、数日後には狼男になっちまうんだとよ。だから、そいつと遭遇した時は、あんまりまともにやり合わない方がいいだろうな。特に、間合いの狭い得物を使う奴は、気をつけた方がいい、とか言ってたような気がする」 実際のところ、異界の病気(?)が、この世界の人間に感染するかどうかは不明であるが、逆に言えば、感染した場合に治療が可能かどうかも分からない。仮に魔境を浄化したとしても、その魔境内で感染した病気の症状が消滅するかどうかも分からない以上、確かに、そのような相手には迂闊に関わらない方が無難だろう。 とりあえず、その話を聞いた従騎士達は、もし実際に遭遇してしまった場合を想定した上で、各自が脳内で対処法を考え始める。だが、そんな中、唐突に(真剣な空気を一変させるような)「気の抜けた声」がその場に響き渡った。 「ジーベン、おまたせ〜」 その声の主は、明らかにまだ幼い風貌の、髪の短い一人の少女であった。明らかにその身の丈に合わない上着を羽織りながら、その手にはバスタードソードを思しき剣を持った状態で、ジーベンの元へと駆け寄って来る。 (え? 子供……?) (リオより小さいんじゃないか……?) ラルフとジルベルト驚いた表情を見せる中、その少女はファニルの姿を見上げながら呟いた。 「うわー、おねーさん、おっきいねー。それに、つのとか、しっぽとか、かっこいい!」 「お、おぉ……、確かに、俺は図体はデカいが……、お前、誰だ?」 ファニルにしてみれば、子供からそういった反応を示されること自体には慣れているが、大剣を手にした少女という存在との遭遇は、あまり経験がない。 「セーラだよ! ちょーりゅーせんせんのセーラ! おねーさんは?」 「俺はファニル。鋼球走破隊のファニル、なんだが……、潮流戦線?」 ファニルは目の前にいたカノープスに視線を向けると、カノープスは黙って頷く。彼女のフルネームは、 セーラ・ドルク 。潮流戦線に身を置く、12歳の少女である。幼少期に戦災孤児となり、ジーベンに拾われた身であり、外様の従騎士が大半を占める現在の潮流戦線においては数少ない、カルタキア遠征以前からの古参の団員であった(つまり、形式的にはカノープスを含めた大半の者達よりも「先輩」である)。 この世界においては、「見た目が子供にしか見えないが、特殊な力を有する人物」自体は、そこまで極端に稀有という程でもない。このカルタキアにおいては、ソフィアやレオノールなどがその典型例と言えよう。ただ、あの二人からは明らかに「子供離れしたオーラ」が漂っており、多少なりとも人物眼に優れた人物なら、彼等が「ただの子供」でないことはすぐに分かる。 しかし、このセーラに関しては、その表情や仕草も、本当に「ただの子供」にしか見えない。身長だけで言えば、同じ潮流戦線のリンズよりも上背はあるが、実年齢としてもリンズよりも4歳も幼く、まともな分別もついていないように見える。 (まぁ、最初に会った時のコリーはもっと子供だったし、それに、本当に「ただの子供」なら、あのジーベンが戦場に連れてくる訳がないよな……) ジルベルトがセーラを見ながら内心でそんなことを考えているところで、彼女と目が合う。 「おにーさんたちは?」 「あぁ、オレはヴェント・アウレオのジルベルトだ。よろしくな」 「僕はラルフ。よろしく」 二人とも、街の子供に接する時のような口調で、笑顔で自己紹介する。そんな彼等のやりとりを見ながら、タウロスはジーベンに問いかける。 「あんな小さな子を連れてきたということは、『アレ』を使わせる気か?」 「そうだ。セーラなら、心配はいらない」 彼等がそんな会話をしている中、改めてセーラがジーベンに向かって駆け寄ってくる。 「ねえ、ジーベン、ここに来れば、とりさんになれるって言ってたけど、どうすればいいの?」 「これから、使い方を教えてやる。ついて来い」 ジーベンはそう言って、セーラを連れてその場を去っていく。彼等の向かった先には、異界の飛空騎士用のグライダーが並べられていた。 ****** こうして、それぞれの思いを乗せながら、飛空船「ルルーシュ」は三度目の出港を果たすことになる。 「帆を張れ! 総員持ち場につけぇ!」 「風向きよし。進路クリアー」 「微速前進! 徐々に速度をあげ離水せよ!」 「速度よし。本船上昇します」 船員達も、これが「ルルーシュ」としての最後の出港になることを祈りながら声を掛け合い、そしてゆっくりと海上からその船体が浮かび上がっていく。なお、船長を務めることになったのは、大方の予想に反して、ラマンではなくタウロスであった。ラマンとしては、今回の戦いでは前線指揮官として行動するつもりだったため、あえて「船の指揮」はタウロスに委ねることにしたらしい。 「おぉ〜、本当に飛んでやがる。すげぇな、異界の船ってのは」 ファニルが素直にそんな呟きを口にする一方で、カノープスは黙って決戦に向けての集中力を研ぎ澄ませている。 一方、ラルフは船の進行方向を確認しながら、あることに気付いていた。 (この先に、システィナがあるんだよな……) そんな彼の表情を見て、ジルベルトは何かを察したような意味深な笑顔を浮かべつつ、語りかける。 「どうした? 何か、思うところでもあるのか?」 「いや、別に……」 ラルフはそれ以上、何も答えない。そして、実際のところ、ジルベルトもまた、視線の先にある自身の故郷のことは脳裏に浮かんでいた。 (ホームシックには早すぎる。まだ俺は、何も成し遂げちゃいない……) 彼が静かにそんな感慨に耽っている一方で、セーラはソワソワとした落ち着かない様子で、船内をバタバタと歩き周っている。そんな彼女に対して、保護者であるジーベンは静かに告げる。 「気を急くな。まだ出番は先だ」 「じゃあ、いつになったら、飛んでいい?」 セーラがワクワクした表情で問いかけるが、ジーベンはあくまでいつも通りに淡々と答える。 「敵船を発見した上で、ある程度の高度を確保してからだ」 「それって、あとどれくらい?」 「分からん。調査隊の報告がどこまで正確か、それ次第だな」 ジーベン達が受け取った報告書によると、ドクロの海賊船の航行範囲はある程度限られており、今回の出航も、彼等の予想した「出没しやすい時間および空域」を狙った上での作戦であるが、彼等も何度かルルーシュと遭遇したことで、航行パターンが変化している可能性もある以上、遭遇前の目撃情報などをそのまま鵜呑みにして良いかどうかは分からない。 だが、彼等を乗せたルルーシュがそのまま予定された空域へと向かっていくと、やがて彼等の想定以上に想定通りのタイミングで、索敵役からの報告が届く。 「ドクロの海賊船です!」 どうやら、調査隊が遺した情報と予測は、ほぼ正解だったようである。カルタキア側が用意した最高倍率の遠眼鏡の先に、確かに彼等はドクロの飛空船(下図)を発見した。 + 不気味な雰囲気を漂わせた飛空船 そして、この声が聞こえてきた時点で、リズは強い決意をその瞳に浮かべながらも、あくまで平静を装いつつ、巨大イカの元へと向かった。そこには、緊迫した表情でリズを見つめるスーノの姿もある。 「ほな、行ってくるわ」 「あぁ……。気をつけてな」 この時、既に陽は落ちかけていた。奇襲をかけるには絶好のタイミングで、リズは巨大イカと共に、静かにひっそりとルルーシュから離れていくのであった。 ****** それから数刻の間、空に月が登り始めるに至るまで、その月光を頼りに敵船との距離を測りながら、ルルーシュの船員達は慎重に舵を取り続けた。これで三度目(最初の襲撃も含めれば四度目)の遭遇戦ということもあり、彼等も敵船の動きは概ね見切っていたようで、敵船に気付かれる前に巧みな梶捌きで敵の後背へと回り込み、雷精弁を開いて敵船に対してより高度な角度を確保する。 一方で、巨大イカに乗ってルルーシュから離れたリズは、あえて高度を下げた状態から、鞍縄が敵船に見られない角度を維持しつつ、「野生の飛空イカ」を装って、ゆっくりと敵船の「下」へと潜り込む。 「お前さんなら敵船に近づいても警戒されへんはずや。よろしゅう頼むな」 イカにそう訴え続けた彼女の気持ちが届いたのか、イカは自然な動きで敵の船体の真下へと移動を完了する。ルルーシュの甲板からその様子を確認していたラマンは、自身の懐から、《小さき友の印》で小型化していた愛馬ペルーサを取り出して「本来の大きさ」へと戻した上で騎乗し、そこから更に《天騎の印》を発動して、ペルーサの背中に翼を生やす。 「さて……、まずは軽く挨拶してこようか!」 ラマンはそう宣言した上で、《影騎の印》を発動することでその身を周囲の雲の色へと溶かしながら一瞬にして空を駆け、敵船の斜め前方にまで到達したところで、《影騎の印》を解除し、そして夜空にあえて聖印の光を掲げた上で、高らかに宣言する。 「我が名はハルーシア軍『金剛不壊』艦長ラマン・アルト! 『黒髭団』団長エンリケ・エスカルバボレッハス殿、いざ尋常に一騎打ちを申し込む!」 唐突に現れた「天馬の騎士」に対して、甲板にいる空賊達は明らかに動揺した顔を浮かべる。 「な、なんだ、こいつ!?」 「羽が生えた馬、だと……!?」 どうやら彼等の世界には、このような生き物は(少なくとも一般的な生命体としては)不在らしい。困惑した空気が甲板上に広がる中、名指しで呼ばれた「黒髭」ことエンリケ(下図)が船内から姿を現す。 + 「黒髭」エンリケ (出典:『トレイダーズ! プレイヤーブック』p.52) 「天馬の騎士様か。まるで、御伽噺の英雄殿だな。やはり、我等は『おかしな世界』に迷い込んでしまっていたらしい」 煙草の煙を吹かせながら、存外落ち着いた口調でエンリケはそう語りつつ、不敵な笑みを浮かべる。 「だが、悪いな。俺達は気高い騎士様とまともにやり合えるような英雄でも魔王でも何でもない。ただの冷酷な悪党さ。ここがどんな世界であろうと、俺達は生きるための最善手を選ばせてもらう」 エンリケはそう言い放った上で片手を上げると、部下達は即座に単筒銃を取り出し、次々とラマンに向けて発砲する。しかし、ラマンは華麗な手綱捌きで天馬を駆りながら、その銃弾を全てかわしきった。 「避けた、だと……? この距離で……?」 「もう一度、申し上げる。エンリケ殿、私と剣を交えてみる気はないか?」 「くどい!」 今度はエンリケ自身も単筒銃を取り出してラマンに向けて発砲するが、またしてもラマンはそれをあっさりと避ける。騎乗時に人智を超えた俊敏性を手に入れることが可能なキャヴァリアーならではの、まさしく御伽噺の英雄のごとき所業である。 「それが海賊の流儀か。ならば仕方がない。こちらも『我等の流儀』で戦わせてもらおう」 ラマンはそう告げると、馬首を翻して彼等から距離を取る。そんな彼に対して、空賊達は更に速射砲の発射を続けようとするが、ここで唐突に、彼等の船体に、下から「何か」がぶつかった音が響いた。 「な……!?」 エンリケ達が驚いた声を上げると、次の瞬間、船体が微妙に傾き始める。 「何だ!? 何が起きた!?」 「船底に、何かが貼り付いてきたようです!」 船員の一人が、エンリケに対してそう叫ぶ。それは、ラマンの陽動に合わせて敵船の真下から急上昇した「リズを乗せた巨大イカ」であった。もともと彼等の死角である上に、彼等の注意が完全にラマンに向いていたことから、その接近に誰も気付けなかったようである。 「ようやった! そのまま、この船をひたすら揺らすんや!」 船の真下でリズは巨大イカにそう命じる一方で、敵船が混乱したのを確認したルルーシュから、飛空騎士用のグライダーが、飛び立ち始める。 それは、ジーベンに率いられた急造の空戦部隊であり、その中には、満面の笑みを浮かべながら空をかけるセーラの姿もあった。 「すごいすごい!フワフワしてるよ、ジーベン!」 もともと小柄な彼女は、風の抵抗も少なく、軽々と空を滑空する。目の前のラマン、船底の巨大イカ、そして空から舞い降りて来るグライダーという三方面からの脅威に晒された彼等は完全に混乱状態となり、船体が傾いていることで砲台もまともに使えない状態であった。 そんな中、敵船からは飛空騎士達がグライダーを装備して、空に向かって飛び立ち始める。どうやら彼等は飛空石を用いて浮力を操ることで、通常のグライダーではありえない「下から上への飛翔」も可能であるらしい。 セーラはそんな彼等を見ながら、隣を滑空しているジーベンに問いかける。 「ねえねえ! あんなにたくさん敵がいるんだから、たおしてもいいよね?」 「あぁ。とっとと片付けろ」 ジーベンにそう言われたセーラは、自身に向かって長柄のハルバードで向かって来た敵の攻撃を交わしつつ、大剣で敵のグライダーの羽を切り裂き、敵が体勢を崩したところを真上から叩き割るように大剣を振り下ろす。その一振りを直撃した敵の飛空騎士は、あっさりと混沌核ごと破壊され、塵となって消えていく。 「あははは!楽しい!もっとたたかう!」 無邪気に笑いながら彼女が空中で大剣を振るい続ける一方で、ジーベンは上空から《裂光の印》を甲板の砲台に向かって放ち、傾いた甲板の上で砲台の角度調整に向かおうとしていた船員達を牽制する。そんな彼の様子を、タウロスはルルーシュの甲板から面白そうに眺めていた。 「あんな大技を牽制用にぶっ放すとか、今回は最初から全開じゃねぇか」 タウロスとしては、自分の参戦出来ない戦場で好き勝手に彼等が戦うのは見てて複雑な心境ではあったが、とはいえ、これで作戦通り、敵は砲台をまともに使えない状態へと追い込まれたことは間違いない。 「よし! ここから一気に高度を下げつつ、接舷する!」 その号令と共に、船員達は雷精弁を締めつつ、帆の角度を調整することで、そのまま船全体が滑空するような形で敵船へと衝突する。その衝撃と同時に、まずはファニルが真っ先に敵船へと飛び移ったが、ここで彼女は、一つの誤算に気付いた。 「しまった、こいつら、甲板上で分散してやがる……」 敵を混乱させることによって、さしたる妨害もなく敵船に乗り込むことには成功したが、敵の視線が多方面の敵へと散らばりすぎていることで、乗り込んできたファニルに対して、あまり真正面から切り込もうとする者達がおらず、《暴風の印》の射程内にあまり入って来ようとしない。 だが、ここでファニルのすぐ後ろで待機していたカノープスが、すぐにその状況に気付いた上で機転を利かす。彼はファニルに続いて敵船に乗り込みつつ、あえて敵を挑発するような動きを見せながら敵を誘導しつつ、その攻撃を巧みにかわしながら、彼等をファニルのいる方向へと向けて誘導していったのである。 (これでいいか?) カノープスは目線でファニルにそう訴えると、ファニルは黙って頷き、そして敵兵達には「誘導されている」ということを気付かせないまま、カノープスが射程範囲外へと回り込んだのを確認した上で(あくまで、敵の戦略によって包囲されているような振りをしながら)大声で叫ぶ。 「へっ、有象無象がわらわらと……、邪魔くせぇからとっとと落ちな!」 彼女はそう叫ぶと同時に、《暴風の印》で一気に敵を薙ぎ払う。発動時の感触としては前とそれほど大差なかったが、明らかに前回よりも大きくの敵を相手に致命傷を与えられたことを実感する。やはり、遠慮なく全力を解き放てる屋外戦の方が、彼女の本来の領分のようである。 こうして、カノープスとファニルの連携戦術によって甲板の敵の数が半減したところで、スーノ、ジルベルト、ラルフといった面々が次々と敵船へと乗り込み、更に船底から鉤縄を使って、リズもまた突入組と合流する。そんな彼等の様子を見ながら、ルルーシュに残ったタウロスは、船員達に向けて叫んだ。 「敵船から離脱! 俺達は『俺達の仕事』の準備に取り掛かれ!」 この時点で、ルルーシュには既に戦闘要員は誰も残っていない。電撃作戦でケリを付けるために、あえて戦力の出し惜しみは避ける、というのがラマンの戦略であった。その上で敵の別働隊(もしくは突発的に出現した投影体)によってルルーシュが襲われることを防ぐために、一人で戦局を支配出来るタウロスだけを「留守番」として残すことにしたのである。 (取り越し苦労のような気はするけどな。あの嬢ちゃん達のおかげで、敵の飛空騎士達もろくに近づけそうにないし) 空中で楽しそうに敵騎士を狩り続けるセーラに対して羨ましそうな視線を向けながら、タウロスはひとまず、この空の戦場からルルーシュと共に離脱していくのであった。 ****** 一方、甲板に降り立った突撃隊は、まず敵船の「内側」へと入り込む通路を確認する。見たところ、船内へと続く階段は、前方と後方の二箇所に存在するようである。ただし、そのうち前方の階段の前には、巨大な飛行クラゲがふわふわと浮かんでいた。その存在を確認した瞬間、スーノが駆け込む。それは明らかに、前回スーノが電撃を受けたクラゲ機雷と同種であった。 「あのクラゲは、僕がやる!」 スーノは自身の「太陽の剣」に聖印の力を纏わせながら、全力でクラゲに斬りかかる。これが、彼の考案した帯電対策であった(今のスーノでは「月の剣」に自身の聖印の力を込めることが出来ないため、今回はあえて一刀流で戦うことにしたのである)。 そして、その戦術は確かに功を奏したようで、感電を完全に防ぐことは出来なかったが、斬り掛かった時の感触としては、明らかに前回よりはその衝撃を軽減出来ている。その上で、さすがに慣れない感触を持つ軟体のクラゲを一撃で斬り伏せるには至らなかったものの、確かにその一撃はクラゲに対して深い傷を与えたようには見える。 更に、そのクラゲに対して、側面から回り込んだリズが短剣を投げつけることで、クラゲの注意をそらす。 (倒す必要はない。ウチの役目は敵の目を引き付けること……) リズはそう割り切った上で、少しでもスーノの力になれるよう、今の自分に出来ることを懸命にやり遂げようとしていた。 一方、ジルベルトは、混乱した戦場の中で、団長である筈の「黒髭」ことエンリケが、後方の階段を降りて船内へと戻ろうとしている様子を発見する。 「じゃあ、そっちは任せたぜ!」 ジルベルトはスーノに対してそう叫んだ上で、後方の階段へと向かって走り出す。構造上、前の階段の方が船首には近い分、この魔境の混沌核と思しき「主砲」へと辿り着くには近道のようにも思えるが、目の前に「異界の空賊の親玉」の姿が見えた以上、ジルベルトは一人の海賊として、自分の中で湧き上がる衝動を抑えることは出来なかったようである。そして、そんな彼の傍らにいたラルフもまた、ジルベルトが一人で「危険な戦い」に赴こうとしているのを察していた。 (ジルを一人で行かせる訳にはいかない) そう考えたラルフもまた、彼の後を追って後方の階段へと向かって走り出す。そんな彼等を妨害しようとする船員達に対しては、再びカノープスとファニルが立ちはだかる。 「お前達の相手は、俺だ」 「もういっぺん、吹き飛ばしてやろうかぁ!?」 更に、そこに空からジーベン率いるグライダー部隊が舞い降りてきた。どうやら、敵の飛空騎士達を一通り討ち果たしたらしい。 「カノンー、セーラもなかまにいれてよー!」 「年上の後輩(カノープス)」に対してそう叫びながら、セーラは笑顔で戦場に割って入る。一方で、ジーベンは淡々と甲板に降り立った上で、その場に倒れていた手負いの空賊に対して、剣を突きつけながら詰問する。 「この船の飛空石がどこにあるか、教えろ」 それは、ジーベンがラマンから託された「ジーベンでなければ出来ない特殊任務」を果たすために必要な情報であった。そんな彼の恫喝に対して完全に萎縮した空賊が口を割り始めた頃、前方の階段の前では、何かが破裂する音が聞こえてくる。 皆が視線をそちらに向けると、スーノの剣撃によって、巨大飛行クラゲが混沌の欠片となって消え去っていく光景が映っていた。 「よし! 行くぞ! リズ、大丈夫か?」 「心配いらへん。まだ予備の短剣は残っとるからな」 二人はそんな言葉を交わしつつ、前方の階段を降りて、船の深層へと向かって行った。 ****** 一方、一足先に後方の階段から内側へと潜入していたジルベルトとラルフは、船内に設置されたランタンの光を頼りに、甲板の真下と思しき通路を探索していた。いつ不意打ちされても対応出来るように、ジルベルトは抜刀した状態のまま、周囲を念入りに観察している。 「全く、一人で突っ走りやがって……」 ラルフが独り言のようにそう呟くと、ジルベルトはしたり顔で応じる。 「でも、アンタはいつもついてきてくれるじゃねぇか」 「……お前一人じゃ、心配だからだよ」 「ふぅん、心配してくれるのか。優しいなアンタは」 「ほんとだよ、ったく、いっつも心配かけさせやがって!」 ラルフの声には憤りと不安がおり混ざったような彼の心境が滲み出ていたが、ジルベルトはそんな彼の心情などどこ吹く風、といった様子であった。 「ふは、悪ぃな! そういう性分だからな」 「つまり、治す気はないってことかよ」 「でも、直す必要あるか? 今後協力することも無いかもしれねぇのにさ」 ジルベルトはサラッとそう語るが、ラルフは以前の彼との会話内容が頭をよぎりつつも、あくまで真剣な表情のまま話を続ける。 「………無いかもしれないより、あるかもしれないを考えたほうがいい。とにかくお前は見てて危なっかしいんだよ!」 「そんなに頼りねぇか、オレは大丈夫だって」 「ああ、頼りない。船長や、ほかの陣営のリーダーと比べてよっっっぽどな!」 さすがに比較対象としてそのレベルの面々を持ち出されては、ジルベルトも認めざるを得ない。だが、彼の中では現状認識と信念や人生観は、あくまでも別物である。 「じゃあ、オレがアイツらよりもずっと強くなってやる、これで文句ねぇか?」 「そりゃ、いつかは越えられるかもしれねぇだろうがよ、それはいつなんだ? 越えられたとして、もっと強い敵に出会うかもしれない。だから、改めるべきだと思う」 「だったら、そいつらだって倒せるくらい強くなる。……将来のライバルにお節介かけられるほど、オレはヤワじゃねぇ」 「将来のライバル」というフレーズに対して、ラルフが何を思ったかは分からないが、ラルフはあくまで「自分の言葉」で話を続ける。 「……友人として、するべきアドバイスをしようと思っただけだ。でも……、お前はやっぱり、そういうやつだ」 「…………じゃあ、オレからもひとつアドバイスしてやる。あんま入れ込み過ぎると、後がつらいぞ」 「……!!」 言葉にならない驚愕の声を零しつつ、ラルフは複雑な感情を押し殺しながら、静かに答える。 「……そう、忠告として受け取っといてやるよ」 そして、ラルフはその言葉を口した直後、唐突に嗅覚の違和感を感じる。彼の視線の先の通路は曲がり角になっており、その角の先から確かに「異臭」を嗅ぎ取っていた。 (これは、火薬の匂い……?) 思わず足を止めたラルフであったが、それに気付かずジルベルトはそのまま前に進もうとする。 「待て、ジル! その先は……」 ラルフは咄嗟にジルベルトの肩を後ろから鷲掴みにして、強引に引き倒す。 「え……?」 ジルベルトは何をされているのか分からないまま、そのまま仰向けに倒れそうになる。しかし、彼の背中が床につくよりも先に、目の前の通路の角の先から、激しい爆音と爆煙、そして強烈な風圧が巻き起こった。次の瞬間、ジルベルトは後方へと吹き飛ばされ、そして彼等の進もうとしていた先の角の「床」と「天井」に巨大な空洞が開き、空に輝く月の光が、まだ床が残っている角の手前の床を明るく照らしている。 そして、角の先から一人の男が姿を現した。「黒髭」ことエンリケである。彼は空洞となった角の部分をひょいと飛び越え、ジルベルトの前に姿を現した。 「なんだよ、吹き飛ばしたのは小童一人か。その代償が火薬一個と床と天井ってのは、割に合わねえな」 黒髭がそう呟いた瞬間、ジルベルトは周囲を見渡す。そこにはラルフの姿がない。 (ラルが……? いや、まさか、アイツがそんな簡単に……) ジルベルトは動揺しつつ、自身の剣を握ろうとするが、ここで更なる動揺が彼を襲う。 (剣が、無い……) 先程の爆発の際に、どうやら剣を吹き飛ばされてしまったらしい。予備の武器を持っていなかったジルベルトは、完全に丸腰である。そんな彼に対して、黒髭は淡々と語りかける。 「まぁ、いい。お前、その風貌から察するに、そこそこの立場のボンボンだろう? さしずめ、あの船の出資者の一族、ってところか」 黒髭達の世界においては、飛空船は貴重な資材であるため、好事家の貴族や商人の子弟などが出資者として物見遊山に同船していることが多い。空賊達にとっては、そのような存在はまさに「カモ」そのものであり、黒髭は長年の直感から、ジルベルトが「それなりに高貴な血筋の一族」であることを見抜いていたのである。 「とりあえず、お前を人質にすれば、この状況から逆転出来そうだな」 「へっ! なめんじゃねぇぞ! オレはカルタキア一の海賊になる男だ。お前みたいな三流空賊、俺がこの手で叩きのめして、この戦いを終わりにしてやるぜ!」 ジルベルトはそう言い返しつつ、これまで間近で何度も見てきたラルフの徒手空拳の構えを思い出しながら、戦闘態勢に入る。 (アイツの戦い方はずっと見てきたんだ、多少、その場しのぎにはなるはず……!) *** 一方、その頃、爆発によって破壊された床の下に広がる「倉庫」と思しき大部屋の中に、ラルフの姿があった。彼は先刻の爆発の際に、ジルベルトを引き倒しながら強引に前に出た結果、爆風によって発生した穴の下に落ちてしまったのである。無防備な状態での落下となってしまったが、それでもどうにか咄嗟に受け身を取ったことで、身体への衝撃は最小限に抑えることが出来た。そして、空洞となった(今の彼から見たところの)天井の方面から、上述の話し声が聞こえてくる。 (今の声……、ジルだよな……?) 状況はよく分からないまでも、ひとまずジルベルトが無事であることにラルフは安堵する。その上で、彼は周囲を見渡そうとするが、この倉庫内には明かりが灯っていないため、ここに何があるかもよく分からない。天井の穴から届く月光のおかげで、ラルフの周囲が照らされている程度である。 だが、ここで再び船体が大きく傾いた。どうやら、船底に貼り付いた巨大イカが再び暴れ始めたらしい。 「おぉっと」 「あぶねぇっ」 戦闘態勢に入ろうとしていた黒髭とジルベルトのそんな声が天井方面から聞こえる中、その傾きによって入り込んでくる月光の角度が微妙に代わり、そしてラルフのいる倉庫の一角の、それまで見えなかった部分に光が照らされる。 そこには、見世物小屋が獣を閉じ込めるために作ったような木製の檻であった。だが、その中に閉じ込められているのは、無気力な様子の一人の男性だけである。 (捕虜か……? もし、この人も『こちら側の世界の住人』なら、助け出さなければ……) ラルフがそう思った次の瞬間、月光に当てられたその男の風貌が、見る見るうちに「狼」のような姿へと変わっていく(下図)。 + 狼男 (出典:『トレイダーズ! ゲームナビゲーターブック』p.42) (これが……、狼男!?) その事実に気付いた時には、狼男はその檻をあっさりと破壊して、ラルフに対して襲いかかろうとしていた。ここで、ラルフは即座に出発前にタウロスから聞いた忠告を思い出す。 (爪で引っかかれたら、俺も「人狼病」に冒される……?) タウロスは「間合いの狭い得物を使う奴は、気をつけた方がいい」と言っていたが、ラルフの得物は自分の手足しかない以上、格闘戦を仕掛けた場合、よほどの実力差がない限りは、無傷で戦いを終えるのは難しい。相性的に、素手で戦うには最悪の相手である。 (せめて、何か武器の代わりになるようなものがあれば……) そう思いながらラルフが周囲を見渡すと、そこには見覚えのある剣が転がっていた。つい先刻までジルベルが握っていた筈の長剣である。どうやら、床が破壊された時に、ラルフと一緒にこの倉庫へと落ちてきたらしい。 「……!!」 ラルフは即座にそれを拾いながら、「上」に向かって叫ぶ。 「おい! ジル、お前の借りるぞ!!!」 そして、その声は確かに「上」にいるジルベルトにも届いていた。ラルフが生きていたことへの安堵感は表に出さないまま、ジルベルトもまた叫び返す。 「あぁ、アンタにそれが扱えるならな!」 その声が聞こえたことで、ラルフもまたジルベルトの生存を改めて確信し、それまで焦燥感が漂っていた表情に、少し表余裕が生まれる。 「やってやるよ、お前の動きだけは嫌というほど見てんだからな」 ラルフはそう答えた上で、見様見真似で日頃のジルベルトと同じ構えを取りつつ、狼男を牽制しつつ、即座に状況を整理する。 (ここにこの剣があるってことは、ジルは今、素手で誰かと戦ってるってことか……? だとしたら、とっととこっちを片付けて、この剣を届けないと……) そう判断したラルフは、頭の中に思い浮べたジルベルトの動きそのものを身体に乗り移らせるような思いで、一心不乱に長剣を振るう。それに対して、狼男もまた野生の本能を掻き立てられたのか、全力でラルフに向かって飛びかかり、ラルフはその連撃を長剣を用いて必死にいなしながら、どうにか敵の弱点を探ろうと試みる。 一方、ジルベルトの方は黒髭を相手に、拳と蹴りだけでどうにか応戦していた。一方、そんな彼に対して、黒髭の方も腰に付けられた単筒や曲刀は使おうとはしなかった。 「おいおい、どうした? 黒髭さんよぉ。その腰の武器は飾りかい?」 あえて敵を挑発して隙を誘おうとするジルベルトであったが、黒髭は全く意に介していない。 「丸腰のガキ相手に武器使わなきゃならないほど、俺も落ちぶれちゃいねえよ。うっかり殺しちまったら、人質にもならねえしな」 「あんまり舐めてると、後で後悔するぜ!」 ジルベルトは口ではそう言いながらも、内心では彼の両腕から繰り出す打撃の「重さ」を深々と実感していた。 (このおっさん、立ち振舞いは三下臭いくせに、めっちゃ強えじゃねぇか!) ジルベルトもまた、ラルフそのものになりきったかのような俊敏かつ滑らかな動きで敵を翻弄してはいたが、どうしても体格差による不利は否めず、決定打を与えるには至らない。とはいえ、慣れない格闘戦であることを思えば、それでも現状においては紛れもなく大善戦であり、完全にジルベルトのことを格下と侮っていた黒髭も、徐々に苛立ち始める。 (このガキ……、勝てる訳ないと分かってるだろうに、なんで挑んできやがる……? 逃げようと思えば逃げられるだろうに……、『下に落ちた奴』を助けるためか……?) 黒髭の中でそんな疑念が湧き上がる中、唐突に船が再び激しく揺れる。だが、今度は「船底からの揺れ」ではない。船の高度が、唐突に下がり始めたのである。 「こ……、これは……、貴様等! 飛空石に何かしやがったな!」 さすがに飛空船の船長だけあって、黒髭はすぐにその事実に気付いた。そして、すぐさま彼の中で一つの仮説が組み上がる。 「そうか……、貴様等、陽動役か! 俺をここに釘付けにして、その間にこの船を……」 黒髭はそう叫びながら、踵を返して「曲がり角の向こう側」へと飛び移ろうとする。だが、その一瞬の隙を、ジルベルトは見逃さなかった。 「行かせねえよ!」 ジルベルトは跳び上がろうとした黒髭の足を膝裏から蹴り飛ばす。その結果、完全にバランスを崩した黒髭は、「床穴」の下にある倉庫へと落下する。 「なに!?」 すぐさま受け身を取って着地に成功した黒髭であったが、彼の目の前にいたのは、ラルフと、そして獣の本能のままに暴れまわる狼男の姿であった。その狼男の姿を見て、黒髭は明らかに動揺した表情を浮かべる。 「お、お前、いつの間にその姿に……、そうか、月光がここまで……」 この狼男の素性は不明だが、牢に入れられていたことから察するに、どうやら黒髭とは友好的な関係ではないらしい。黒髭の姿を見た途端、狼男の目は、彼に対してより強大な敵意を向け始める。 「くっ、貴様! 俺に歯向かう気か? い、いや、まて、お前、落ち着け、俺はお前に、ちゃんと飯もくれてやっただろう? この船で俺を襲ったところで、お前に未来はないぞ? それよりも、ちゃんと俺の言うことを聞いて……」 黒髭がそんな交渉を試みようとするが、狼男の方は全く意に介さない。そして、「上」からこの状況を見ていたジルが、身を乗り出しながらラルフに向けて手を伸ばした。 「ラル! こっちだ!」 ラルフはその声に応じて、ジルベルトの手を掴む。もともと大して高さもない倉庫だったため、ジルベルトが手を伸ばせば、長身のラルフの手を握ることは容易である。ジルベルトはそのままラルフを「上の階」まで一気に引き上げた。 「ありがとよ、こいつに助けられた」 ラルフはそう言って剣を返しつつ、疲弊した様子のジルベルトに心配そうな視線を向ける。 「大丈夫か? 素手で敵の指揮官とやり合ってたみたいだが……」 「心配無用だ!オレだって、武器がなくても、アンタがいなくてもやれんだよッ!」 ジルベルトはそう言い放つものの、さすがにこれ以上戦いを続けるだけの体力が残っていないことは自覚していた。そして、床下の倉庫では黒髭に対して狼男が襲いかかろうとしているのを確認した上で、ジルベルトは黒髭に向かって叫ぶ。 「じゃあな! もしまた次にこの世界に来たら、今度は剣で決着つけようぜ!」 そして彼はラルフと共に「爆発で発生した穴」を飛び越えて、曲がり角の先のブロックへと向かって走り出すのであった。 ****** 一方、その間にスーノとリズは、着実にこの船の「主砲」の裏側と思しき方面へと向かって歩を進めていた。その途上で何人かの空賊の船員と遭遇したが、あまり白兵能力に長けた者達ではなかったため、スーノの長剣とリズの短剣で、難なく退け続けている。そして、その過程で「この船全体に起きている異変」にも、彼等は気付いていた。 「さっきから、なんか急に高度が下がってきてるみたいやけど、ジーベンはんが上手いことやってくれはったんかな?」 「おそらく、そうだろうな。だとすれば、もう僕等も躊躇する必要はない。一刻も早く、この船の混沌核を……」 そこまで言いかけたところで、スーノはリズの様子に異変を感じる。明らかに、いつもに比べて顔色があまり良くない。そして、息が上がっているように見える。 「……どうした、リズ? 体調が悪いのか?」 「いや……、まぁ、その……、ちょっと疲れただけやから、心配せんどいて。今まで、『前』で戦かったことって、あんまりなかったから、正直ちょっとしんどいとは思うてるけど……」 それ以前の問題として、長時間に渡って巨大イカでの深夜飛行を続けたことや、そこから船の側面を這い上がって甲板に到達するまでの間に費やした体力などを考えれば、疲労困憊になっているのも当然である。 「……けどな、今はまだ、足止めるわけにはアカンのや!」 リズは気丈にそう言い放ちつつも、内心では、自分がこのままついていくことが足手まといになる、という危惧もあった。しかし、スーノは意外な言葉を口にする。 「すまない。僕が頼りないと思ったから、こうして無理してついてきてくれたんだろう?」 前回、リズの目の前で倒れてしまった時の記憶が、スーノの中に蘇る。 「ちゃうよ! スーノ君のこと頼りないなんて、全然思うてない。信じてない訳でもない。ただ、ウチがスーノ君と一緒に戦いたいから、勝手について来てるだけ……」 リズはそこまで言いかけたところで、前方から「嫌な不穏な気配」を感じる。それは、弓使いとしての彼女の本能が察知した、狙撃手の気配であった。 「そこ、誰かおるで!」 彼女はそう叫びながら、前方の通路の脇にあった扉を指差す。スーノがすぐさま視線を向けると、その扉が開いて、単筒銃を持った船員が現れた。どうやら不意打ちを狙っていたようだが、見透かされたことで意を決して飛び出したらしい。その瞬間、スーノは瞬時に思考を巡らせる。 (この間合なら、最初の一発さえ避ければ、次の一発を込めるまでの間に、敵の首を獲れる。左右にドリフトしながら距離を詰めれば、敵も狙いを定めにくい筈……) しかし、その直後にスーノの脳裏に、別の考えが思い浮かんだ。 (僕が避けたら、その弾丸はどこに行く? 今のリズに、ここから走って逃げる余力があるとは思えない。最悪の場合……) そして、彼は覚悟を決める。 「仲間ひとりも守れずに、いずれ国を守る王になどなれるものか!!」 スーノはそう叫びながら、あえて真正面から敵の単筒銃に向かって飛び込んでいく。当然、敵はスーノ目掛けて銃弾を放つが、スーノはその動きを予測した上で、太陽の剣に聖印の力を宿しつつ、飛んできた銃弾をその長剣で切り払う。 「なん……、だと……?」 君主達の中には、飛び道具や魔法であろうとも、自身の武器によって払いのける《切り払いの印》という技を発動出来る者もいる。スーノはまだその技を習得している訳ではないが、この時、彼の覚悟に応えるように、彼の聖印はその潜在能力の一部を奇跡的に発動させることに成功したのである。 その直後、スーノは目の前の海賊をあっさりと斬り捨て、そして扉の奥を見ると、怯えた様子で剣を構えた者達が数名と、そして、巨大な発射装置と思しきものを発見する。どうやら、この発射装置が主砲であり、剣を構えた者達はその砲手のようである。砲手達はスーノを相手に最後の抵抗を見せようとしているようだが、明らかに戦闘要員とは思えない程度のへっぴり腰であり、わざわざ相手をする程の者達とも思えなかった。 (彼等の視線が全員、僕の方に向いてくれている今なら……) スーノは、主砲の「外」に漂う「馴染み深い気配」の存在を察知した上で、全力で叫ぶ。 「ラマン殿! 今です! 外から、この主砲を浄化して下さい!」 その声に応じて、密かに主砲の近辺の空域で待機していたラマンが、主砲の目の前に姿を現す。いかに回避能力に優れているラマンと言えども、目の前の主砲を放たれたら、さすがに避けようがない。だからこそ、内側から潜入した者達が主砲を無力化するまでは手出しが出来ない状態だったのである。 「よくやった、スーノ!」 ラマンは砲台に対して真正面から突撃した上で、巨大な砲筒の中に自ら飛び込み、そしてその中に蠢いている混沌核を発見する。 「まったく、手こずらせてくれたものだ。だが、これで……」 ラマンは聖印を掲げ、その混沌核を一瞬にして浄化する。その結果、このドクロの飛空船も、黒髭も、狼男も、他の船員達も、混沌の粒子となって消えていく。そして当然、それは彼等だけではなく、巨大イカも、グライダーも、ナリーニをはじめとする元乗っ取り犯達も、プラネテースから召喚された全てが消滅し、魔境化していたこの海域一帯も、本来の海域へと戻る。 そして当然の如く、次の瞬間、船に乗り込んでいたジーベンや従騎士達は全員、そのまま海へと落下するのであった。 ****** 「さーて、ようやく俺達の出番だな」 大海原に浮かぶ一隻の武装船の上で、タウロスはそう叫びつつ、自身の聖印を掲げて光を周囲一帯に広げた上で、船員達にロープを海へと投げ込むように命じる。彼等を乗せている船の名は「ムスカテール」。つい先刻まで「ルルーシュ」と呼ばれていたその船は、本来の「飛空船ならざる武装船」の姿へと戻っていた。 今回の浄化作戦に際して、敵船はおそらく(「ルルーシュ」とは異なり)全くの無の状態から投影された異界の飛空船であろうという仮設の上で、「浄化後にどうやって突入者の安全を確保するのか」というのが、実質的な作戦指揮官であるラマンの最大の懸念であった。ラマン自身は《天騎の印》によって自力で空を飛ぶことが出来るが、他の者達はそうもいかない。敵船を浄化した直後に、遥か上空から海へと叩き落されるという状況は、あまりに危険である。 そこで、ラマンは敵船を浄化する前に、ジーベンには「敵船の飛空石の破壊」を、そしてタウロスには「ルルーシュの飛空状態の解除」を達成するように、それぞれ要請していた。敵船の高度を下げておいた上で、ルルーシュ改めムスカテールが落下地点近くで待機した状態であれば、すぐに救助体勢に入れる、という目算の上での戦略であり、実際、タウロスと一般船員達の尽力によって、無事に全突入者をムスカテールへと回収することに成功する。 それぞれの役目を果たした従騎士達は、帰りの船内で静かに眠りにつく一方で、指揮官三人は月夜の下でささやかな祝杯を上げる。そして、乗っ取り騒動から始まった武装船ムスカテールにとっての受難の日々はようやく終わりを告げ、翌日からは再び、カルタキアの武装船として、本来の船員達と共に海上警護の任に就くことになるのであった。 ☆合計達成値:106(11[加算分]+95[今回分])/100 →成長カウント1上昇、次回の生活支援クエスト(DG)に3点加算
https://w.atwiki.jp/p2rdj/pages/282.html
ドレイク Drake 出典 Bestiary 130ページ 貪欲で猛獣のような、本能に駆られた原始的な竜の怪物であるドレイクは、大柄な従兄弟の恐ろしい力のほんの一部を受け継ぎながらも、狡猾さは(たとえあったとしても)ほとんど持ち合わせていない。ドラゴンよりも弱く、動きが遅く、理性に傾くことは少ないが、それでもドライクは周囲の生物や居住地にとって脅威である。彼らの襲撃団(「暴徒」と呼ぶにふさわしい小さな社会集団)を結成する傾向は、彼らをますます危険なものにしている。リヴァー・ドレイクの暴徒1つがあっという間に水辺の村を滅ぼし、デザート・ドレイクが徘徊することは商隊業者にとっては疫病も同じだ。 ドレイクは、生息地や能力が多種多様であるにもかかわらず、多くの物理的特徴を共有しており、同一の主としてまとめられる。例えば、ドレイクには前腕がなく、強靭なアゴと、近接攻撃が可能な分厚い尾だけが残っている。しかし、ほとんどのドライクは接近戦を避け、頭上を飛行しながら好ましい距離から広い範囲に大打撃を与えるためにブレス攻撃の使用を好む。最後に、すべてのドレイクは先祖から伝わるドラゴンの力を小さな貯蔵器官に蓄えており、それを利用して驚異的な速度を出すことができる。 ドレイクの卵 Drake Eggs ドレイクの皮は同じような大きさの他のクリーチャーと比べて価値があるわけではない。しかしドレイクの卵は貴重品だ。強力な呪文の構成要素として使用されたり、さまざまな文化で食べられたりするが、ドレイクの卵の最も一般的な用途は、ドレイクを孵化させて育て、乗騎や護衛として使用することである。 一般的なドレイクは、5年ごとに一箇所に2~4個の卵をまとめて産む。卵は3~6週間以内に孵化するが、その間は自然環境に適した条件で飼育しなければならず、ドレイクの飼育で最も難しい側面であろう。デザート・ドレイクやジャングル・ドレイク(孵化には温暖な温度が必要)やリヴァー・ドレイク(流水に沈めなければならない)の卵は一般的に飼育者が容易に孵化させることができるが、ファイアー・ドレイクやフロスト・ドレイクの卵は孵化に極端な温度が必要であり、その環境を安全に複製することは難しい。 ドレイクの卵は硬度3、5HP、BT5である。ドレイクの卵の色は、種によってわずかしか差異がない。クリーチャーは特定の卵のドレイク種を特定するために、DC20の〈自然〉判定、または関連するDC20の〈知識〉判定に成功しなければならない。 ドレイクが孵化すると、最初に見たクリーチャーに対して刷り込みが発生する。このようにして刷り込まれたクリーチャーは、そのドレイクを訓練したり命令したりするために行う〈自然〉判定に+5のボーナスを得る。ドレイクの卵の市場価格は、地域、ドレイクの種類、購入者が考えている正確な目的によって異なるが、通常はドレイクのレベルによって決まる。ドレイクは邪悪で危険で知性のあるクリーチャーであるため、多くの社会ではドレイクの卵の取引を容認せず、それに従事する者を犯罪者としている。 孵化したドレイクの個体が完全な大きさに成長するには2年かかる。よく訓練されたドレイクは恐ろしい乗騎や護衛となり得るが、多くのドレイクの訓練士になろうとする不注意な者は、その残酷さや自信過剰、または全般的な技術不足のために、その対価として貪り食われてしまう。 関連するクリーチャー:ドレイクの生態 Drake Ecology ドレイクはドラゴンよりもはるかに早く成熟し繁殖するため、より強力な先代よりもはるかにありふれた脅威である。ドレイク同士が近くに住んでいても(同種であれば)ほとんど問題とはならず、彼らは沼地の岩場や浅い海岸の洞窟、崖の上の止まり木、必要に応じて荒野のくぼみなどに巣穴を作ることが多い。 追加の知識:ドレイク狩り Drake Hunters ドラゴン狩りの魅力は多くの冒険家にとって抗うことは難しいが、そのような仕事を成し遂げることは危険を伴う。悪徳冒険家は代わりにドレイクを狩り、ドレイクから収穫した戦利品で地元民を欺くことが知られている。 生息場所:ドレイクの生息地 Drake Locations 異なる種のドレイクは異なる気候や環境に適応しているが、多くのドレイクは巣の場所に関して同様の好みを共有しており、崖側や山頂の洞窟、ジャングルの樹冠など、上から状況を伺うことができる高い場所を探している。 財宝と報酬:ドレイクの素材 Drake Resources ドラゴンの皮が強力な鎧や武器に加工できることは冒険家なら誰でも知っているが、ドレイクの皮にはそのような本質的な価値はない。それにもかかわらず、ドレイクの鱗と角は物理的に印象的であり、教養のない購入者にとっては一見正当なものに見えるかもしれない。無節操な革職人は、ドレイクの革を使って偽のドラゴンハイドの鎧を作り、販売することが知られているので、購入を検討するものは詐欺に注意し続けるべきだ。 財宝と報酬:ドレイクの財宝 Drake Treasure ドレイクはドラゴンと同じように財宝への興味を持つが、ドラゴンのような見識ある趣味は持っていない。ドレイクの保管庫には、効果、宝飾品、宝石、道具、さらには奇妙な魔法のアイテムが1~2個入っていることは確かだが、保管庫の大部分は必ず壊れた武器、光り輝く岩、がらくたのかけら、その他の疑わしいゴミで構成されている。 追加の知識:ドレイクとドラゴン Drakes and Dragons ドレイクとドラゴンは互いに関係しているが、互いの愛はほとんど失われておらず、最も縄張り意識の強いドレイクでさえ、必要以上にドラゴンの縄張りに長く留まることを知っている。まれに、ドレイクの暴徒が組み合わさって侵入するドラゴンを攻撃することがある。特にドラゴンが若くて経験不足の場合はその傾向が強い。 関連するクリーチャー:その他のドレイク Other Drakes 以降のページに掲載されたドレイクは、存在するすべての種ではない。フォレスト・ドレイクは緑色の皮を持ち、酸の雲を吐き、温帯の森林地帯に見られる。リフト・ドレイクは、その種の中で最も強力なものの1つで、固着する腐食性の蒸気を吐き出し、破壊的な魔法の災害によって傷跡を残した悪地や地域に生息する。シー・ドレイクは世界中の海に、ラーヴァ・ドレイクは火山の割れ目に、ミスト・ドレイクは海岸線や塩湿地に、スパイア・ドレイクは岩だらけの丘に見られる。間違いなく、世界の片隅には他にも多くの種類のドレイクが潜んでいる! Bestiary 1 ジャングル・ドレイク Jungle Drake ジャングル・ドレイクは、グリーン・ドラゴンと関連があると考えられている。彼らは大きな鋭い針が放つ衰弱毒や有害な粘液を備えた危険な狩人である。羽には退化した爪が備わっており、飛行でも徒歩でもそれらを駆使してジャングルの深い木の葉の中を移動する。ジャングル・ドレイクは、群れの中で最も弱いものを追い払い、犠牲者を引きずり出して好きなように食事を済ませる速攻戦術を狙って獲物を待ち伏せすることを好む。 “知識の想起”――竜(〈秘術〉) DC 22 一般的な知識 DC 20 専門知識 DC 17 ジャングル・ドレイク Jungle Drake クリーチャー6 NE 大型 地 竜 出典 Bestiary 132ページ 知覚+13;暗視、鋭敏嗅覚(不明瞭)30フィート 言語 竜語 技能 〈運動〉+13、〈隠密〉+13、〈軽業〉+15、〈生存〉+11 【筋】+5、【敏】+3、【耐】+4、【知】-1、【判】+1、【魅】+1 AC 23;頑健+17、反応+13、意志+11 HP 90;完全耐性 病気、麻痺状態、[毒]、気絶状態 尾の巻きつけ/Twisting Tail [reaction] トリガー ジャングル・ドレイクの毒針の間合い内にいるクリーチャーが移動アクションを使用したか、移動アクションの間にそのようなマスから離れた。効果 ジャングル・ドレイクは毒針で目標に“打撃”を行う。命中したなら、ジャングル・ドレイクはそのクリーチャーのアクションを妨害する。 移動速度 20フィート、飛行50フィート;森渡り 近接 [one-action] 牙 +17[+12/+7]、ダメージ 2d10+7[刺突]、加えて捕食のつかみ 近接 [one-action] 毒針 +17[+12/+7](間合い:10フィート)、ダメージ 2d6+7[刺突]、加えてジャングル・ドレイクの毒 竜の狂乱/Draconic Frenzy [two-actions] ジャングル・ドレイクは牙による“打撃”1回と毒針による“打撃”2回を任意の順番で行う。 ジャングル・ドレイクの毒/Jungle Drake Venom (毒) セーヴィング・スロー 頑健 DC 24; 最大持続時間 6ラウンド;第1段階 1d6[毒]ダメージおよび虚弱状態1(1ラウンド)第2段階 1d6[毒]ダメージおよび虚弱状態2(1ラウンド) 捕食のつかみ/Predatory Grab つかみと同様だが、ジャングル・ドレイクのつかみは離れるように移動しても終了しない。その代わりにつかまれた状態にしたクリーチャーを運搬する。ジャングル・ドレイクはそのクリーチャーが“飛行”できない限り、つかまれた状態にしたクリーチャーと一緒に“飛行”することはできない。 スピード全開/Speed Surge [one-action] (移動) ジャングル・ドレイクは移動速度の2倍まで移動する。ジャングル・ドレイクは1日に3回までこの能力を使用できる。 毒吐き/Spit Venom [two-actions] (毒) ジャングル・ドレイクは毒を含んだ粘つく粘液を50フィートのまあで吐き出すことができる。この粘液は10フィート爆発の範囲に炸裂する。爆発の範囲内にいるクリーチャーはDC24の反応セーヴを行わねばならず、失敗するとジャングル・ドレイクの毒に晒される。ジャングル・ドレイクは1d6ラウンドの間、“毒吐き”を再使用できない。 森渡り/Woodland Stride ジャングル・ドレイクは魔法のものでない植生による移動困難地形と上級移動困難地形を無視する。 デザート・ドレイク Desert Drake デザート・ドレイクはブルー・ドラゴンの遠いいとこである。近縁種の魔法の才能と知性を持たない、この砂漠に生息するドレイクは、それにもかかわらず危険な待ち伏せ型の捕食者で、孤立した砂漠の旅行者や前哨地を食料と物資のために餌食にする。彼らは先人の真の血を受け継いでおり、電気に対する抵抗力と砂地への親近感を保っている。デザート・ドレイクの鱗の色は赤褐色から淡黄褐色や黄土色まで様々で、彼らが故郷と呼ぶ砂丘の色を模倣している。 デザート・ドレイクはドレイクの中で最も軽くて小さな部類に入るが、脆弱だと誤解してはいけない。背中で急に曲がった角と羽毛のように薄い翼は、できるだけ穴を掘りやすいように工夫されている。実際、デザート・ドレイクの強力な首は、砂やその他のゆるい岩の間をくねくねと歩くことを、歩いて行くのと同じくらい簡単にしてくれる。 “知識の想起”――竜(〈秘術〉) DC 24 一般的な知識 DC 22 専門知識 DC 19 デザート・ドレイク Desert Drake クリーチャー8 NE 大型 地 竜 出典 Bestiary 135ページ 知覚+15;暗視、鋭敏嗅覚(不明瞭)30フィート 言語 竜語 技能 〈威圧〉+13、〈運動〉+18、〈隠密〉+15、〈軽業〉+17、〈生存〉+15 【筋】+6、【敏】+3、【耐】+5、【知】-1、【判】+3、【魅】+1 AC 27;頑健+17、反応+15、意志+13 HP 135;完全耐性 麻痺状態、気絶状態;抵抗 [雷撃]16 翼逸らし/Wing Deflection [reaction] トリガー デザート・ドレイクが攻撃の目標になる。効果 デザート・ドレイクは翼を高く上げ、トリガーとなった攻撃に対するACに+2の状況ボーナスを得る。デザート・ドレイクが“飛行”中なら、この攻撃が終わった後ドラゴンは10フィート降下する。 移動速度 20フィート; 穴掘り20フィート (砂のみ)、飛行50フィート 近接 [one-action] 牙 +20[+15/+10]、ダメージ 2d12+8[刺突]、加えて1d6[雷撃] 近接 [one-action] 尾 +20[+15/+10](間合い:10フィート)、ダメージ 2d10+8[殴打]、加えて押しやり 5フィート 竜の狂乱/Draconic Frenzy [reaction] デザート・ドレイクは牙による“打撃”2回と尾による“打撃”1回を任意の順番で行う。 砂嵐のブレス/Sandstorm Breath [two-actions] (秘術、雷撃、力術) デザート・ドレイクは、帯電した砂の塊を60フィートの範囲に噴出する。この砂の塊は半径15フィート爆発の範囲に雲となって爆発する。範囲内のクリーチャーは9d6の[雷撃]ダメージを受ける(DC27の基本反応セーヴ)。雲は1d4ラウンドの間残り、内部のすべてのものに視認困難状態を与える。デザート・ドレイクは1d6ラウンドの間、“砂嵐のブレス”を再使用できない。 スピード全開/Speed Surge [one-action] (移動) デザート・ドレイクは移動速度の2倍まで移動する。ジャングル・ドレイクは1日に3回までこの能力を使用できる。 奇襲攻撃/Surprise Attacker 戦闘の最初のラウンドにおいて、まだ行動していないクリーチャーはデザート・ドレイクにとって立ちすくみ状態である。 フレイム・ドレイク Flame Drake レッド・ドラゴンの遠く離れた仲間であるフレイム・ドレイクは、ありがたいことに、より大きないとこたちの知性と野心を失っている。しかしそれに劣らず縄張り意識が強く、暴力的である。フレイム・ドレイクは火山やマグマの近くにも住んでいるが、森林や木の茂った丘などの近くに流れ込んでくることも珍しくない。鱗は通常ある程度の赤色で、羽の縁や尾の先端に沿って煙のような黒や灰色に色あせていることもある。 “知識の想起”――竜(〈秘術〉) DC 20 一般的な知識 DC 18 専門知識 DC 15 フレイム・ドレイク Flame Drake クリーチャー5 CE 大型 火炎 竜 出典 Bestiary 131ページ 知覚+12;暗視、鋭敏嗅覚(不明瞭)30フィート、煙を見通す目 言語 竜語 技能 〈運動〉+12、〈隠密〉+9、〈軽業〉+10、〈生存〉+10 【筋】+5、【敏】+1、【耐】+3、【知】-1、【判】+3、【魅】±0 煙を見通す目/Smoke Vision 煙はフレイム・ドレイクの視界を阻害しない。フレイム・ドレイクは煙による視認困難状態の影響を受けない。 AC 22;頑健+12、反応+10、意志+10 HP 75;完全耐性 [火炎]、麻痺状態、気絶状態;弱点 [氷雪]10 機会攻撃 [reaction] 牙のみ。 移動速度 20フィート、飛行50フィート 近接 [one-action] 牙 +14[+9/+4]、ダメージ 2d8+5[刺突]、加えて1d6[火炎] 近接 [one-action] 尾 +14[+9/+4](間合い:10フィート)、ダメージ 2d6+5[殴打] 竜の狂乱/Draconic Frenzy [two-actions] フレイム・ドレイクは牙による“打撃”2回と尾による“打撃”1回を任意の順番で行う。 火球のブレス/Fireball Breath [two-actions] (秘術、力術、火炎) フレイム・ドレイクは射程180フィートで半径20フィート爆発の範囲に炸裂する火球を吐き出す。爆発の範囲内にいるクリーチャーは6d6の[火炎]ダメージを受ける(DC22の基本反応セーヴ)。フレイム・ドレイクは1d6ラウンドの間、“火球のブレス”を再使用できない。 スピード全開/Speed Surge [one-action] (移動) フレイム・ドレイクは移動速度の2倍まで移動する。フレイム・ドレイクは1日に3回までこの能力を使用できる。 フロスト・ドレイク Frost Drake 彼らが生息地と呼ぶ凍える地域では、フロスト・ドレイクは非常に危険であり、遠くまで歩き回ってカリブーやオオカミ、小熊、ツンドラ地帯に住む人々などの獲物を狙う。ホワイト・ドラゴンと関わりがあるこれらのドレイクは、その性質の多くの習性と面を、その厳格ないとこと共有している。実際、ホワイト・ドラゴンがドラゴンの種類の中で最も獣じみた猛禽類であるのにも似て、フロスト・ドレイクはドレイクの中で最も堕落し、公然とした害意を持つ。また、特に横柄で、他のドレイクに比べて編隊から身を引くことが少ない。多くのフロスト・ドレイクは、単独で城全体や要塞化された町区を攻撃するなど、手段を超えた残虐行為を実行しようとする目的を果たしてきた。フロスト・ドレイクはそれ自体で多くの破壊をもたらすが、村に住む北部の人々が団結して、これらのならず者の脅威から家を守るという話はかなり一般的である。 フロスト・ドレイクの狩猟場はかなり広い。高山の永久に凍った山頂に生息するこれらのフロスト・ドレイクは、低地から獲物を奪い取るために急降下することが知られており、彼らのブレス攻撃によって凍った大地の帯が唯一の通過の痕跡として残される。霜に覆われた鱗は深いロイヤルブルーから氷のようなシアンまで様々で、時々紫色の斑点が散発的に現れる。彼らの皮はほとんどのドレイクよりも薄い。フロスト・ドレイクが凍ったブレスを吐くために息を吸い込むと、その鱗の下に氷のように青い血が見える。 “知識の想起”――竜(〈秘術〉) DC 23 一般的な知識 DC 21 専門知識 DC 18 フロスト・ドレイク Frost Drake クリーチャー7 CE 大型 氷雪 竜 出典 Bestiary 134ページ 知覚+14;暗視、鋭敏嗅覚(不明瞭)30フィート、雪の見通し 言語 竜語 技能 〈威圧〉+14、〈運動〉+17、〈隠密〉+15、〈軽業〉+15 【筋】+6、【敏】+2、【耐】+4、【知】-1、【判】+3、【魅】+1 雪の見通し/Snow Vision 雪はフロスト・ドレイクの視界を妨げない。降雪による視認困難状態を無視する。 AC 25;頑健+17、反応+15、意志+14 HP 115;完全耐性 [氷雪]、麻痺状態、気絶状態;弱点 [火炎]10 報復打撃/Retaliatory Strike [reaction] トリガー フロスト・ドレイクの尾の間合い内にいるクリーチャーが、“打撃”でフロスト・ドレイク二ダメージを与えることに成功する。効果 フロスト・ドレイクは尾で“打撃”を試みる。その“打撃”が命中したなら、追加で1d6のダメージを与える。 移動速度 20フィート、穴掘り20フィート (雪のみ)、飛行50フィート、氷の登攀20フィート 近接 [one-action] 牙 +17[+12/+7]、ダメージ 2d12+8[刺突]、加えて1d6[氷雪] 近接 [one-action] 尾 +17[+12/+7](間合い:10フィート)、ダメージ 2d10+8[殴打] 竜の狂乱/Draconic Frenzy [two-actions] フロスト・ドレイクは牙による“打撃”2回と尾による“打撃”1回を任意の順番で行う。 凍える霧のブレス/Freezing Mist Breath [two-actions] (秘術、氷雪、力術) フロスト・ドレイクは60フィートまでの距離に液体の玉を吐き出す。この玉は半径20フィート爆発の範囲に凍える霧の雲を作り出す。爆発内にいるものは8d6の[氷雪]ダメージを受ける(DC25の基本反応セーヴ)。霧は範囲内のすべての面を滑る氷の膜で覆い、2d4ラウンドの間、これらは移動困難地形となる。フロスト・ドレイクは1d6ラウンドの間、“凍える霧のブレス”を再使用できない。 氷の登攀/Ice Climb フロスト・ドレイクは記載された登攀速度で氷を“登攀”できる。フロスト・ドレイクは氷と雪による移動困難地形と上級移動困難地形の影響を受けず、氷の上を移動しても落下する危険はない。 スピード全開/Speed Surge [one-action] (移動) フロスト・ドレイクは移動速度の2倍まで移動する。フロスト・ドレイクは1日に3回までこの能力を使用できる。 リヴァー・ドレイク River Drake これらのドレイクにはきらめく鱗と滑らかなひれのような翼があり、川魚を思わせる外見をしているが、実際にはブラック・ドラゴンの遠い親戚である。ほとんどのドレイクより小さいが、リヴァー・ドレイクは川の旅行者を悩ませる能力があり、水面上と水面下で同じように家を持つ。この柔軟性により、魚やボガードからシカ、ときには客船の乗客まで、さまざまな獲物を捕らえることができる。 “知識の想起”――竜(〈秘術〉) DC 18 一般的な知識 DC 16 専門知識 DC 13 リヴァー・ドレイク River Drake クリーチャー3 NE 中型 水陸両生 水 竜 出典 Bestiary 131ページ 知覚+9;暗視、鋭敏嗅覚(不明瞭)30フィート 言語 竜語 技能 〈威圧〉+6、〈運動〉+10、〈隠密〉+9、〈軽業〉+11、〈生存〉+7 【筋】+3、【敏】+4、【耐】+2、【知】-1、【判】+2、【魅】-1 AC 19;頑健+11、反応+9、意志+7 HP 45;完全耐性 麻痺状態、気絶状態;抵抗 [強酸]10 鞭打つ尾/Tail Lash [reaction] トリガー リヴァー・ドレイクの尾の間合い内にいるクリーチャーが“打撃”あるいは技能判定を試みるアクションを行う。効果 リヴァー・ドレイクはトリガーとなったクリーチャーに、-2のペナルティを受けて尾による“打撃”を行う。命中したなら、そのクリーチャーはトリガーとなったロールに-2の状況ペナルティを受ける。 移動速度 20フィート、飛行50フィート、水泳30フィート 近接 [one-action] 牙 +12[+7/+2]、ダメージ 2d8+3[刺突] 近接 [one-action] 尾 +12[+7/+2](間合い:10フィート)、ダメージ 2d6+3[殴打] 腐食性粘液/Caustic Mucus [two-actions] (強酸、秘術、力術) リヴァー・ドレイクは50フィートまでの距離に腐食性粘液の玉を吐き出す。この玉は半径10フィート爆発の範囲に炸裂する。爆発内のクリーチャーは4d6の[強酸]ダメージを受ける(DC19の基本反応セーヴ)。セーヴに失敗したものは1d6の持続[強酸]ダメージを受け、移動速度に-5フィートの状態ペナルティを受ける。この移動速度の低下は持続[強酸]ダメージが終了すると同時に終了する。リヴァー・ドレイクは1d6ラウンドの間、腐食性粘液を再使用できない。 竜の狂乱/Draconic Frenzy [two-actions] リヴァー・ドレイクは牙による“打撃”1回と尾による“打撃”2回を任意の順番で行う。 スピード全開/Speed Surge [one-action] (移動) ジャングル・ドレイクは移動速度の2倍まで移動する。ジャングル・ドレイクは1日に3回までこの能力を使用できる。 ワイヴァーン Wyvern ワイヴァーンは毒を持つドレイクで、短気と攻撃性で知られる。15フィートほどの体長で最大1,000ポンドの重量を持つワイヴァーンは、その弾力性のある体によって、大きな獲物に鉤爪を最初にぶつけることができ、自身に大きな危険を及ぼすことはない。ワイヴァーンはその勢いを利用して標的を気絶させた後、焼けるような毒を注入したり、近くの崖の上を運んだりする。ワイヴァーンは獲物を完全な状態で巣まで運ぶ力がないため、自分で死骸を引き裂くのではなく、獲物を持ち上げて峡谷の上に落とし、その仕事を重力に任せることがはるかに多い。 ワイヴァーンは通常、獲物を愚弄したり、領有権を主張したり、貢物を要求したりすることしか話さないため、会話にはほとんど興味がない。たとえそうであっても、ワイヴァーンの多くは、特にそれらの行為が語り部によって行われた場合には、恐ろしいユーモアと暴力行為の物語を楽しむ。肉、娯楽、財宝で適切になだめられたワイヴァーンは、指示に従うことから、強力な人型生物の乗騎になることまで、さまざまな支援の提供に同意することがある。しかし、こうした取り決めが数週間以上続くことはめったになく、ワイヴァーンの誇りや悪意、横柄さに触発されて逃亡したり、仲間を裏切ったりすることさえある。ワイヴァーンのほとんどは私利私欲が強く、他人を助けることを避けるために自ら進んでしまうため、ワイヴァーンを長期間奴隷状態に追い込むことができるのは、真に残酷な者だけである。 “知識の想起”――竜(〈秘術〉) DC 22 一般的な知識 DC 20 専門知識 DC 17 ワイヴァーン Wyvern クリーチャー6 NE 大型 竜 出典 Bestiary 133ページ 知覚+13;暗視、鋭敏嗅覚(不明瞭)30フィート 言語 竜語 技能 〈運動〉+15、〈隠密〉+12、〈軽業〉+14 【筋】+5、【敏】+2、【耐】+4、【知】-2、【判】+3、【魅】±0 AC 24;頑健+16、反応+12、意志+13 HP 95;完全耐性 麻痺状態、気絶状態 機会攻撃 [reaction] 獰猛/Savage [reaction] トリガー ワイヴァーンによってつかまれた状態になっているクリーチャーが“脱出”のための技能判定に大失敗する。効果 ワイヴァーンはトリガーとなったクリーチャーに対して毒針による“打撃”を1回行う。 移動速度 20フィート、飛行60フィート 近接 [one-action] 牙 +17[+12/+7]、ダメージ 2d12+5[刺突] 近接 [one-action] 爪 +17[+12/+7]、ダメージ 2d8+5[斬撃]、加えてつかみ 近接 [one-action] 毒針 +15[+11/+7](機敏、間合い:10フィート)、ダメージ 2d6+5[刺突]、加えてワイヴァーンの毒 強力な急降下/Powerful Dive [two-actions] (移動) ワイヴァーンは飛行速度まで“飛行”する。この“飛行”は前方に20フィート以上移動し、10フィート以上降下しなければならない。この移動が自分とサイズが同じかそれより小さい敵1体以上を近接攻撃の間合いに収めて終了したなら、その敵に対して爪による“打撃”を1回行う。爪が命中したなら、フリー・アクションとして、ワイヴァーンはこの目標に自動的につかみをするか伏せ状態にするかすることができる。 痛めつける慣性/Punishing Momentum [one-action] 必要条件 ワイヴァーンが“強力な急降下”を用いてこのターンにクリーチャーをつかまれた状態にした。効果 ワイヴァーンは爪でクリーチャーを保持したまま半分の速度で“飛行”できる。移動の間、このクリーチャーもともに移動する。その上で、移動の終了にクリーチャーを落とす。その代わりに、ワイヴァーンは+2の状況ボーナスを得て、このクリーチャーに毒針による“打撃”を行うことができる。 ワイヴァーンの毒/Wyvern Poison (毒) セーヴィング・スロー 頑健 DC 22; 最大持続時間 6ラウンド;第1段階 5d6[毒]ダメージ(1ラウンド)第2段階 6d6[毒]ダメージ(1ラウンド)第3段階 8d6[毒]ダメージ(1ラウンド) 追加の知識:ワイヴァーンはドレイクか? Are Wyverns Drakes? 一般的にドレイクに分類されるが、ワイヴァーンは他のほとんどの種類のドレイクとは大きな違いを示す。学者たちは彼らの間の正確な関係について議論しているが、彼らが協調行動とお互いへの一般的な敬意を示していることに異議を唱える者はいない。 Bestiary 2 シー・ドレイク Sea Drake Long and slender, sea drakes have fins down the length of their backs and webbing between their talons, making them just as adapted for gliding through ocean waves as the skies above. More solitary than most drakes, they hunt and live alone. Although most sea drakes make their roosts high on ocean-facing cliffs, it isn't unheard of for them to dwell in underwater caves, living entirely aquatic lives. “知識の想起”――竜(〈秘術〉) DC 22 一般的な知識 DC 20 専門知識 DC 17 シー・ドレイク Sea Drake クリーチャー6 NE 大型 水陸両生 水 竜 出典 Bestiary 2 101ページ 知覚+14;暗視、鋭敏嗅覚(不明瞭)30フィート 言語 竜語 技能 〈運動〉+16、〈隠密〉+12、〈軽業〉+14 【筋】+6、【敏】+2、【耐】+4、【知】-1、【判】+2、【魅】±0 AC 24;頑健+16、反応+14、意志+12 HP 95;完全耐性 [雷撃]、麻痺状態、睡眠 Electrified Blood [reaction] (雷撃) トリガー An adjacent creature deals piercing or slashing damage to the sea drake; 効果 An arc of electricity courses through the sea drake's blood. The triggering creature takes 1d6 electricity damage. 移動速度 15フィート、飛行40フィート、水泳50フィート 近接 [one-action] 顎 +17[+12/+7]、ダメージ 2d8+9[刺突]、加えてbriny wound 近接 [one-action] 尾 +17[+13/+9](機敏、間合い:10フィート)、ダメージ 2d6+9[殴打] Ball Lightning Breath/Ball Lightning Breath [two-actions] (秘術、雷撃、力術) The sea drake spews a ball of electricity that strikes a primary target within 100フィート、dealing 7d6 electricity damage (DC 24 basic Reflex save). The lightning then arcs to up to three secondary targets within 30フィート of the primary target, striking the closest available targets first. The secondary bolts each strike one secondary target and deal the same rolled damage value as the primary bolt (DC 22 basic Reflex save). The sea drake can't use Ball Lightning Breath again for 1d6 rounds. Briny Wound/Briny Wound A sea drake's saliva carries a large quantity of salt, making its bite wounds even more painful. When a creature takes damage from a sea drake's jaws Strike, the creature must attempt a DC 24 Fortitude save; the creature is then temporarily immune to briny wound for 1 minute. 大成功 クリーチャーはなんの効果も受けない。 成功 The creature is sickened 1 . 失敗 The creature is sickened 2. 大失敗 The creature is sickened 2 and slowed 1 as long as it's sickened. 転覆/Capsize [one-action] (攻撃) The drake tries to capsize an adjacent aquatic vessel of its size or smaller. The drake must succeed at an Athleticscheck with a DC of 25 (reduced by 5 for each size smaller the vessel is than the drake) or the pilot's Sailing Lore DC, whichever is higher. 竜の狂乱/Draconic Frenzy [two-actions] The sea drake makes one jaws Strike and two tail Strikes in any order. スピード全開/Speed Surge [one-action] 頻度 three times per day; 効果 The sea drake Strides, Flies, or Swims twice. シャドウ・ドレイク Shadow Drake Shadow drakes are typically among the smallest and least powerful of their species. Most stand as tall and long as house cats and have charcoal-colored scales and membranous wings just translucent enough to pass for shadows. Attracted to shiny materials, they employ deception, teamwork, and even rudimentary traps to create opportunities to make off with ill-gotten gains. Shadow drakes have a particular fascination and admiration for umbral dragons—a notable exception to the norm for drakes and dragons. “知識の想起”――竜(〈秘術〉) DC 16 一般的な知識 DC 14 専門知識 DC 11 シャドウ・ドレイク Shadow Drake クリーチャー2 CE 超小型 竜 出典 Bestiary 2 100ページ 知覚+6;暗視、鋭敏嗅覚(不明瞭)30フィート 言語 竜語 技能 〈隠密〉+8、〈軽業〉+8、〈盗賊〉+8 【筋】+1、【敏】+4、【耐】+1、【知】-1、【判】±0、【魅】+2 光による盲目化 Shadow Blend/Shadow Blend The shadow drake's form shifts and blends reflexively with surrounding shadows. A shadow drake gains an additional reaction each round, but it can use this reaction only for Shadow Evade. Shadow Evade [reaction] トリガー A creature attacks the shadow drake while it is in an area of dim light;効果 The shadow drake further obscures its position. The attacker must succeed at a DC 11 flat check in order to affect the shadow drake、as if the drake were Hidden for the triggering attack. AC 17;頑健+7、反応+10、意志+6 HP 28;完全耐性 麻痺状態、睡眠 ;弱点 [火炎]5 移動速度 15フィート、飛行60フィート 近接 [one-action] 顎 +11[+6/+1](巧技)、ダメージ 1d10+3[刺突] 近接 [one-action] 尾 +11[+7/+3](機敏、巧技)、ダメージ 1d8+3[殴打] 竜の狂乱/Draconic Frenzy [two-actions] The shadow drake makes one bite Strike and two tail Strikes in any order. Shadow Breath/Shadow Breath [two-actions] (秘術、氷雪、力術、影) A shadow drake spits a ball of black liquid that explodes into a cloud of frigid black shadow. This attack has a range of 40フィート and explodes in a 5-foot-radius burst. Creatures within the burst take 3d6 cold damage (DC 18 basic Reflex save). The explosion of shadow also snuffs out mundane light sources the size of a torch, lantern, or smaller, and attempts to counteract magical light with a +10 counteract modifier. The shadow drake can't use Shadow Breath again for 1d6 rounds. スピード全開/Speed Surge [one-action] 頻度 three times per day; 効果 The shadow drake Strides or Flies twice.
https://w.atwiki.jp/mmo_idea/pages/115.html
▼下へ PKシステムへのコメントログ(2) ログ(1) ログ(3) で、ここからは返信をしていきますね。 >被害報告書 取りあえず現在案として出ている件については、俺としてはそれでよいかと思います。 ただ、今後、新たな罪状が加わる可能性もあるので、イメージを柔軟にしておいた方が良いかもです。 (極端な例だと、馬車でスピード違反をした時の違反切符代わりになったり。半分冗談ですけどねw) >一回の投票で、PK一回分のカルマ値が減るようなシステム なるほど、この部分のイメージが大きく違っていたようです。 俺のイメージでは、10回の投票で、PK1回分の罪が軽減されるイメージでした。(10回じゃ少ないかも?) 罪は罪ですし。 なので、殺害された被害者が許すだけじゃだめなんです。だってそりゃあ、被害者は報復したいですもの。 被害者以外の人も認めるような正当性が無いと駄目かな、と。 もしくは、被害者同士が10人とか集まって被害者の会として報復したりとか。 こうすることで、全てのPKがPKKに怯える訳ではなく、秩序を脅かすようなPKや悪質なPKなどが、市民の代表であるPKKに狙われる事になります。 >多人数で支持してカルマ値が必要以上に減る 確かに、これについてはもう少し考えておくべきかも知れません・・・が、考えなくても良いような気もしてきましたw 人望があれば、ある程度の罪も許される方が面白そうな気がしてw あとは、以前も言ったかもしれませんが、この投票権の回復速度が、ゆっくりだったら良い訳ですし。 >PKの経験値を、クエストで得る これは個人的には微妙かな、と感じています。 PKのクエストがいっぱい出ても何か変な雰囲気のゲームになっちゃいますし。 もちろん、報復依頼は別として。 この辺は、経験値の獲得システムを根本からいじる事で解決できそうな気がしますが、ページが違うのでとりあえず保留にさせてください。 -- (しゃおふぇい) 2010-01-10 23 08 50 しゃおふぇいさん 今後、新たな罪状が加わる可能性もあるので、イメージを柔軟にしておいた方が良いかもです。 そうですね。それは被害報告書 だけに限らず、今wikiにまとめてること全てが最終的な決定事項ではないと思っているので、全てにおいて柔軟な思考でいる必要があると思います。 10回の投票で、PK1回分の罪が軽減されるイメージでした。(10回じゃ少ないかも?) 全てのPKがPKKに怯える訳ではなく、秩序を脅かすようなPKや悪質なPKなどが、市民の代表であるPKKに狙われる事になります。 なるほど、そういうことでしたか~。 確かに、そのほうがバランスが良いですね! PKの経験値を、クエストで得る PKのクエストがいっぱい出ても何か変な雰囲気のゲームになっちゃいますし。 私も暗殺依頼が並ぶクエストボードは見たくないですww 私のイメージでは、「賞金首の討伐」「報復依頼」と特殊な「国家クエスト(ストーリークエスト)」を想像していました。 例えば、名声やPKの腕を見込んでとか何かの条件により発動する「暗殺依頼」をイメージしていました。 裏町に暗殺ギルドを設置して、暗殺依頼専用のクエストボードを用意する(依頼者も実行者もカルマ値が上がる)のもありだとは思いますが、ハンター協会のクエストボードに殺伐とした雰囲気は欲しくないですね~。 経験値の獲得システムについては、キャラ育成であれこれ書いてから機会を設けますね。 少々お待ちを(´Д`;A) -- (管理人) 2010-01-10 23 43 33 管理人さん お世話になります。 独りで出歩けないPC PKなクマ~には理解できないのですが、 生産系PCは何にそんなに怯えているのですか? 「レーダー」や「チャット/システム」ログの支援があれば、そう簡単にPKされることはないはずです(絶対にPKされないとはいいません。)。 安心、安全にプレイしたいというのであれば相応の準備をするはずです。 準備が足りないならともかく、全くできないというのであれば……、悲しいですね。 効率は考慮しても、安全は考慮しないのでしょうか? -- (クマ~) 2010-01-11 01 15 18 ええと、「人気投票のような物で、カルマ値を下げられるシステム」を、便宜上仮に、「赦免システム」、 「賄賂を送って犯罪をし易くするシステム」を、便宜上仮に「賄賂システム」とすると、 両システムの意味と効果を分ければ、両方実装できそうな気がしました。 まず、カルマ値が高いという状況は、悪名の高さと捉える事が出来ると思います。 なので、このカルマ値が高いと、犯罪者を中心とした「見つかってしまう範囲」が広くなるイメージです。 赦免システムはこの見つかっちゃう半径を縮める効果を持つ事になります。 次に「賄賂システム」ですが、賄賂により警備兵の勤務態度が変化したりなどして、警備兵を中心とした「索敵範囲」が縮まる事になります。 賄賂を渡す人物としては、警備兵を管理する役人などで、役人からの指示が曖昧で、見つけづらくなったり、勤怠管理が適当になり、警備兵がサボる、というイメージです。 警備兵がどこからの派遣人員か、によって効果が変わる事になり、管理人さんがイメージしていた地域ごとの差が演出できるかな、と思います。 例えば町の警察隊であれば、町長に賄賂を送る事によって、その町の警備兵全員の索敵範囲が縮まりますが、隣町の警備兵は何の変化もありません。 自治体の警備兵ではなく、どこかの警備会社の警備員だったら、課長とか部長とかに賄賂を送る事になります。 (警備会社などを用意するかは知りませんが) で、前後してしまいましたが、警備兵に気付かれるのは、「見つかっちゃう範囲」と「索敵範囲」が重なった時になります。 悪い組織の中に犯罪者が多い場合は、その町の治安自体を悪くするのが効率が良いので、お金を集めて「賄賂システム」、 特定の少人数が指名手配されたら、皆で協力して「赦免システム」、 でも、投票を集めるよりお金を集める方が簡単だから・・・やっぱり「賄賂システム」? と、使う場面を考えたり、悪知恵を働かせたり、面白そうです。 -- (しゃおふぇい) 2010-01-12 00 41 55 あ、ちなみに、既出の >税金を支払うことにより、街道上にガードが配置されていく。 という案があるので、もし警備兵の勤務態度が悪くなっても、一般市民は「警備兵の数」で対抗する術があるので、これもまた色々策略が生まれそうでワクワクします。 また、「逮捕された後の賄賂」という案が出ていますが、それは結局「保釈金」と同じ事になるので、保釈金の支払い方法として、 「当人以外からも保釈金の支払いを受け付ける」 というようにしてしまえば、混同せずに解決するのではないでしょうか? -- (しゃおふぇい) 2010-01-12 00 44 06 おっと・・・。 カルマ値=索敵範囲に影響、とした場合、以前の案の 「刑期を全うでカルマ値0」というのがおかしい事になりますね。 保釈金を払い、刑期を全うしていなくても、カルマ値が0にならないと、出所してまたすぐ捕まるという大変な事態になりますからね。 とすると、刑期を全うするメリットとして再提案ですが、「前科として記録されない」というのが良いのではないかと。 で、前科があると、カルマ値の上昇の仕方が早い、とか? 例えば、前科が1回なら、1.1倍、2回なら1.2倍・・・とか。 -- (しゃおふぇい) 2010-01-12 01 04 06 「警備員NPC~カルマ」システムにおけるPK術。 PKを行う者の選択肢は、 ·「警備員NPC~カルマ」システム上等で皆殺し。 ·「警備員NPC~カルマ」システムを避け、PKした者を特定させない。 この二つが考えられます。 一つ目は、大変勇ましく堂々としたプレイですが、刑務所に閉じ込められるなどのペナルティが考えられます。 よって、二つ目の選択肢がより多く行われるのではないかと考えられます。 PKを行う者は、システムログや検死で追跡されるので、追跡され辛い間接的手法を多用することになります。 ★MPK…NPCを利用して対象のPCを死亡状態にする。 ·戦っているNPCを支援(回復や能力向上など)。 ·戦っているPCに対しての状態異常化や能力向上支援の無効化。 ·古典的なモンスタートレインでひき殺す。 ★地形の利用…地形効果を利用して対象PCを死亡状態にする。 ·爆風などで高い所から突き落とす。 ·湖や海で溺れさせる。 などなど。 「警備員NPC~カルマ」システムに支援され、単独行動が増えるPCは、これらの間接的手法に対してどう対抗するのでしょう? どんなシステムで支援しようとも、単独で警戒していない者はただただ狩られるのみであります。 生産系PCの皆さんにも手間暇をかけて、安全、安心なプレイをしていただきましょう。 クマ~にとって、「生産系だから(PKは嫌い、触りたくもない)」と理由つけて、手間暇をかけず、安易なプレイを行うプレイヤーは憎悪の対象なのです。 -- (クマ~) 2010-01-12 16 24 48 憎悪の対象 書いている間にヒートアップしちゃいました。ごめんなさい。 PKが嫌い、得意じゃない。 無理にする必要はありません。逃げまたしょう。キルされなければ貴方の勝ちです。 人集めましょう。PKは、PKが得意な人にやって貰えばいいんです。 深夜や早朝にプレイするから人が少なくて…。 チャンスです! 人が少ないということはPKもまた少ないということです。 視界を広げる。レーダーに映らない様にする。即死しない。などの装備を揃えましょう。 レベルが低くて、装備が揃わないよ…。レーダーやシステムログを注視しましょう。兆候を捉え、早めに逃げましょう。 臆病さは正義です。 何度もいいますが、キルされなければ、貴方の勝ちです。 ほら、生き残られたでしょう。 ちょっと気をつけるだけで、PKされ辛くなるんです。 手間暇をかけて生き残りましょう。 -- (クマ~) 2010-01-12 17 53 45 私の考えたことのあるネタを書かせていただきます。 装備品はドロップしない。 アイテム欄に大事な物欄を作り。其処に入っている物はドロップしない。 あとは、海や大陸を渡って品物を運ぶと大きな利益を得られるものの。 其処には法律は無いので、PKをしても咎められない。 等です。 あと、町を守っている衛兵や、ガードは仲間を呼ぶ。です。 PKのあるゲームでは衛兵やガードはプレイヤーに比べて不自然なくらい強かったり。 逆にプレイヤーと同じ位しか実力を持たない場合は、リアルだけれど、まるっきり役に立たなかったりします。 リアルではどうしてるだろうと考えたとき、警察などは一人で犯罪者に当たらないなぁと思ったので。 プレイヤーとおなじくらいの実力にして。 召還魔法のような物で、仲間を呼ぶ、と言う感じに考えみました。 又は、2~4人一組位で巡回してると言うのも。 プログラム的にはエンカウントするまでは4人で一つのオブジェクトとして扱うか。位置と、種類だけを保持していて。 エンカウント後は4人分のガードのデータを生成するみたいな感じで行くと。サーバーにあまり負荷は掛けません。 さらにプレイヤーも知り合いプレイヤーに衛兵と同じ様な召還魔法を使えるとリアリティはアップしますし、PKにも対抗出来るかもしれません(PKに狙われると一瞬で終わることもありますが。特に姿を消すスキルを実装している場合。) プログラム的にも再利用できるので難しい物ではありません。 私はPKをするほうではありません。 しかし、PKを逆に撃退したり、逃げ切ったり。昔、敵わなかったPKを強くなってやりこめると非常に楽しいです(笑) 遠くの町までPKerの徘徊する荒野を大事な商品を抱えて移動するときは非常にドキドキしますし。 みんなで商隊を組んで荷物を運んだり、アイテムを奪った犯人の溜まり場を襲撃したりするのも連帯感を感じてわくわくしました。 ただ、これ等は絶対条件として絶妙なバランスありきだと思います。 1、PKされる側にはどうにもならないパターンを作られたり。 2、あまりの集団でPK出来たり。 3、PK側の補助魔法や治癒を掛ける人間は犯罪者にならなかったり。 犯罪者になることを避けれたり、圧倒的な力の差を生むシステムは不味いと思います。 (1はバランスを調整して、危ないスキルを排除し、パターンを作られたらそれを排除するパッチを当てないといけないと思います。 2は、私は未だに解決方法を見出せません。 3は、犯罪者を補助出来るのは犯罪者のみにしたり、犯罪者を補助すると犯罪者になったりするといいでしょうか。ただ、これだと誰も差別しない聖人というロールプレイは不可能になりますね。) -- (Ax) 2010-01-12 19 04 26 あと、アイテムに所有者IDを保持させて。 正式な取引以外でアイテムを取得するとそのIDは書きかえれない。 自分と別のIDのアイテムを正式な取引で他人に受け渡してもIDは書き換わらない。 犯罪者として捕らえられると、自分の倉庫にまで手は周り。 其処にある合致しないIDのアイテムは全て持ち主に戻される。 等も考えました。 (ただ、これは倉庫キャラを作ってそこに保存されてしまうとアウトではあります。 1アカウント1キャラにしたり。 アカウントで倉庫は共有したり。 ログインしていないのプレイヤーの倉庫でも保管場所を調査出来る様にすると少しは緩和されるかもしれません。) (また、所持個数でまとめて表示されない様なアイテム1~99個もてる様なアイテム全てにIDを振ると相当データを食うのでやめたほうがいいです。IDを振るなら品質などを所持しているようなアイテムのみになると思います。) IDではなく盗んだ物かどうかと言う正否を安定するフラグだけを持たせると言うのでも、何か出来そうです。 その場合IDに比べて相当にデータを節約できます。(IDは長さにもよりますが結構大きなデータになると思います。) PKerに狙われる側も、ドキドキして楽しめるようなシステムになると良いですね。 -- (Ax) 2010-01-12 19 22 50 >>Axさん >アイテム欄に大事な物欄を作り。其処に入っている物はドロップしない。 インベントリを何層かの入れ子構造(バッグINバッグな感じ)にして、 深い階層ほど奪われたり落としたりのリスクが減るという案は、UOで実装されていた気がします。 そういう事前の工夫が出来ると良いですね。 >2~4人一組位で巡回してる これは良いですね。 プログラムの不可に対する対策案も考えられていて、とても良いと思います。 >あまりの集団でPK出来たり これについては、特に対応策は考えなくても良いのではないでしょうか? 集団という時点でPKerは、人を集める手間や低報酬化、隠密行動がしづらいなどのリスクを支払っています。 そのリスクに対する対価として、「PKしやすい」という利点がある訳で、このバランスを崩しては、かえって公平性が失われてしまう気がします。 >PK側の補助魔法や治癒を掛ける人間は犯罪者にならなかったり。 これは本当に難しい所ですね。 なにせ、通りかかったら瀕死の人と、加害者らしき人が居て、「PK現場だ!」と思い、とっさに手助けをしたら、 実は“瀕死の人の方がPKer”で、PK失敗して返り討ちにあっている所だった、という事も、可能性としてはあり得ますしねぇ・・・。 >合致しないIDのアイテムは全て持ち主に戻される 取引画面を使わない方法で誰かから譲り受けた物だった場合や、捨ててあったものを拾った場合は、不都合が生じると思うのですが、如何でしょうか? それから、盗品が売りさばかれ、買った人はもちろん盗品と知らず買った場合、自動的に盗品が所有者に戻ったりすると不都合が生じる気もします。 なので、盗品は、被害者と加害者の直接交渉で取り返すのが良いのかな、と感じます。 そこで一つ提案ですが、内部的なIDの話ではなく、単純に「持ち物に名前を書ける」という仕組みを用意すれば良いのではないでしょうか? 誰かに譲る時や不要になって売る時は、名前欄(?)を空欄にしてロックも解除しておけば、新しい持ち主が再設定できる訳ですし。 あ、もちろん刀などの「銘」とは別のものです。 >1アカウント1キャラにしたり たしか、基本はその前提で考察していたはずです。 キャラ育成ページの上の方だったと思います。 -- (しゃおふぇい) 2010-01-12 23 19 25 結局は好みの問題になるんですけど、 管理人の求めるリアリティとして、基本は法で守られている世界を構築したいんですよね~。 ・国は法で守られているが、PKができないわけではない(&PKされないわけではない) ・無法地帯「瘴気地帯」で、自由なPKができる これらは、そういう考えでつくった案のひとつです。PKerが上手く立ち回ることもできるよう、「デメリット」だけにならないよう「メリット」も用意し、バランスを取ろうとしています。 クマ~さんが提案してくれた「警備員NPC~カルマシステムにおけるPK術」と同じ視点です。 法をかいくぐり、工夫する楽しみも演出したいな~と。 クマ~さん 生産系PCが安全、安心なプレイをするために準備しない 私もまとめにもそのようには書いてないはずで・・・どうしてこういう風に取られたのかわからず、困惑しています。 クマ~さんが言ってた「システムでなくても、プレイヤーだけでPK対策できる」ということならわかるのですが、ん~と・・・「システムで守られているから、プレイヤーが自分で工夫しようとしなくなる」ということなのかな??? システムで完全に守られているわけではないので、それとは別に準備工夫するのではないかな。 ここ数日のコメントですが、論点がずれてよくわからなかったのですが、「システムにしなくても、プレイヤーだけで十分PK対策できる」というご意見だったのでしょうか?-- (管理人) 2010-01-12 23 54 30 Axさん こんにちわ~。またご意見いただけて嬉しいです。 プレイヤーとおなじくらいの実力にして。 「PCをPKしやすいように、あらかじめ警備隊を倒しておく」ということもできるように PCと同じくらいの強さを考えていました~。 召還魔法のような物で、仲間を呼ぶ、と言う感じに考えみました。 又は、2~4人一組位で巡回してると言うのも。 私も、警備隊は数名で巡回しているイメージでした。 「召還魔法のような物で仲間を呼ぶ」というのも面白いですね。 1、PKされる側にはどうにもならないパターンを作られたり。 2、あまりの集団でPK出来たり。 3、PK側の補助魔法や治癒を掛ける人間は犯罪者にならなかったり。 犯罪者になることを避けれたり、圧倒的な力の差を生むシステムは不味いと思います。 これに関するアイデアとして、少し前に他の方からメールでご意見いただいたので、ここでご紹介しますね。 * * 以下メール転載 * * PK案の一つとしてメールさせていただきました。 コメントするのは恥ずかしいのでメールで(笑) 私はPK好きなんですが 圧倒的な戦力差で戦うことが多いという状況がいまいち楽しめないというのがあります。 wikiを見させていただいて対人戦闘する上でlv差による戦力差があまりないというのは非常にいいと思いました。 lv差以外では、1人対多人数の状況で、戦いが始まった段階で結果が決まっている状況ですね。 PKする側が、一人を多人数で狙う。 Pkerが、報復で多人数から狙われる。 という感じです。 そこで私の案は、 管理人さんがおっしゃっているリアリティという面とはかけ離れていますが、 「戦闘が始まればシステムで強制的に1vs1に、パーティーの場合、同人数での戦いになる」というものです。 ①一人が複数で狙われた場合は、1v1の戦闘を連続で行う wikiの「ターゲットメニューでPKコマンドを選択してPK開始」のシステムで例えるならば、 数人でPKを申し込むとして、PKを申し込むコマンドをした順に1v1の戦闘が始まる。 ②回復薬については大量に持ち運びは可能だが、1戦闘につき使える回復薬の数が限られている(戦闘を極端に長引かせない為、及び連続戦闘ができる) ③護衛を雇った場合は、依頼人に「自分で戦闘を受ける」か「護衛に任せる」かみたいな選択肢が出てくる 護衛が戦闘中に依頼人は逃げることができるが、護衛から離れすぎると契約が解除される。 解除後に戦闘を申し込まれたら自分で対応するしかない。 ④戦闘へ介入できるのは、mobやガードマン等のNPC これにより、狙われる側も狙う側も数の暴力ではなく、純粋な戦闘の能力差で勝敗が決まるようになります。 そんな感じの同等な戦いを楽しみたい戦闘屋からのメールでした。 -- (管理人) 2010-01-13 00 57 10 >>メールの人(紫のバラの人的なノリで) 申し込まれたら、自力か護衛かを選択できる、というのは面白いですね。 -- (しゃおふぇい) 2010-01-13 02 07 31 管理人さん メールの人さん お世話なります。 法で守られた世界…… クマ~は、法による庇護を担保するのは人(プレイヤー)であって、システム(NPC)ではないと考えています。 「警備員NPC~カルマ」システムはあまりに親切すぎると考えています。 -- (クマ~) 2010-01-13 03 44 25 クマ~さん また論点がずれているような気がします・・・。 いくら論点をずらしても、根本的なところである「国があるのに法がないことに違和感があるかないか」で食い違いがあるので、お話は平行線を辿ると思いますよ。 (といっても、クマ~さんからはっきりと「国に法がないことに違和感はない」という言葉をいただいていませんが) -- (管理人) 2010-01-13 09 13 45 管理人さん 「国に法がないことへの違和感……」 クマ~は、 国に法がある→イエス 法によりPC(キャラクター)の生命財産が保障される→イエス 法の強制力を担保するシステムを運営側が用意する→ノー クマ~は、PCの最大の戦力倍増要素は、 「集団を組み、チームプレイを行うこと。」だと考えています。 直接的にパーティーやギルドを組むだけではなく、 「A平原に入ります。」「A平原に敵侵入。」「A平原に味方殺し“クマ~”発見」など、 挨拶や連絡といった間接的なプレイも、重要なチームプレイだと考えています。 そして、それを阻害するものを嫌悪します。 クマ~は、 法を守るのは、人(プレイヤー) 法(自体)を守って行くのも、人(プレイヤー) で、あるべきだと思っています。 「警備員NPC~カルマ~刑務所」システムは、現状では手間の割に効果が薄いものだと思います。 -- (クマ~) 2010-01-13 17 52 30 警備員NPCとPCが戦闘をしたとして……。 巻き添えになったらどうするんでしょう? -- (クマ~) 2010-01-13 18 51 21 >法を守るのは、人(プレイヤー) これをシステムに盛り込むとすると。 既存のシステムは、PKKは大概において自己意思で。 大きな報酬を得られる場合は少ないので、衛兵の様に延々と町を守ったりする人は少ないと思います。 あとPK側も倒されても現実のように死んだら終わりではない。なので犯罪者も増えやすい傾向にあると思うので。 自由PKゲームは大概に置いて非常に治安は悪いから。かなりの数の衛兵も必要になると思う。 と言うことは衛兵的な事をする事によって、割の良い報酬を受け取れるシステムを構築しないといけないかもしれません。 例えば現実と同じ様に、俸給を与える立場の人間や組織を作り。 衛兵は巡回をしていると自動的に給料を貰えるや、犯罪者ネームの様な者を倒すと給料を得られる(割りは良い?)。 的になるかな。 更に、発展させて。 国等もプレイヤーに作らせるとすると。 国にとって犯罪者は排除することによって利益を得られるものにしないといけないと思います。 と言うことは。 犯罪者は資産を持つ者を狙い。 資産を持つ物は国に税を払い、治安の悪い場所からは移り住む。 国王等は自国民からの税を確保するために、税を使って衛兵増やす等はどうでしょうか。 また国王にも税を集めるメリット与えてやら無いといけないので。 集めた税を自由に使える(これはバランスを崩す可能性あり。) 税は使って国力を高める事に使える(国家間戦争で有利に立つ。) などでしょうか。 と言うアイデアを思いついてみました。 -- (Ax) 2010-01-13 22 34 36 >>Axさん >衛兵は巡回をしていると自動的に給料を貰える 俺としてはこれは、いわゆる政治システム的な物が絡むので、難しいところかな、と考えたため、深い考察はしてませんでした。 >犯罪者ネームの様な者を倒すと給料を得られる これは賞金首を倒すと報酬が得られるシステムと似てるかな、と感じました。 >国等もプレイヤーに作らせるとすると このサイトの作品的には、取りあえずは国を興すパターンは除き、 町単位でのユーザータウンを作れるようにする方向のようです。 個人的には国興しはとても興味がある所ですけど。 どちらにしても政治コンテンツがらみの案は、ハウス辺りに書きこんだ方が話が進むかもです。 -- (しゃおふぇい) 2010-01-13 23 22 41 法を守るのは、人(プレイヤー) クマ~は、プレイヤーやシステムを疑っている部分と信じている部分があります。 プレイヤーに対して、 この辺りの治安は、「貴方(プレイヤー)達にかかっている。」と任せてあげれば、ある程度の治安は守られると、信じています。 チート撲滅以外での警備員NPCの導入は、コミュニティーの発生、成長、熟成への邪魔にしかならないじゃないか。そう考えています。 “ジャンクメタル 日常”で検索をかけていただければ、雰囲気はわかってもらえると思います。 -- (クマ~) 2010-01-14 00 04 35 PKの問題点 PKがあふれてPCが出歩けなくなったゲームってあるんでしょうか? 初心者を狙ったPKは問題なんですけどねー。 そっちは考えないといけませんね。 成長するまでは心が折れやすいですからね。(成長したらいいのかよ クマ~) ぶっちゃけ、戦争って、 「戦は数だよ、兄貴。」、 「火力は正義。」 じゃないですか。 数で袋にされるのが嫌なら、それ以上の数を集めればいいんですよ。 集められないなら、散らして各個に撃破を狙うとかね。 -- (クマ~) 2010-01-17 03 08 46 管理人さん 掲示板が暗殺依頼でいっぱいになる 実際に開けてみないとわからないですが、クマ~はそんなに悲観していないのです。 多少は賑やかになるでしょうがそんなに酷いことにならないと思います。 PvPが日常で、PvPクエスト(敵PCを5人撃破しろ)があったジャンクメタルでさえ、名指しで的になったのは僅かな味方殺しを好んでやる人達でしたから。 -- (クマ~) 2010-01-17 09 37 10 あたしに言わせると、PKPKって、ビビり過ぎ。(何故か、おネエ言葉w) 管理人さん しゃおふぇいさん FEZを遊んでみて下さい。PKはいっぱいやってやられるけれど首都の掲示板には懸賞首は並んでますか? ROには、ギルド戦があってPKやってやられるけれど懸賞首はいますか? もう少しプレイヤーを信じあげてもいいんじゃないでしょうか。 -- (クマ~) 2010-01-17 10 42 17 >>クマ~さん >数で袋にされるのが嫌なら、それ以上の数を集めればいいんですよ。 >集められないなら、散らして各個に撃破を狙うとかね。 一理あると思います。あとは、各個撃破が出来るようなリアリティのあるマップ作りとかをすれば良いのかな、と。 >RO、FEZ RvR、GvG、PvPのようにコンテンツとして成り立っている物はPKとは呼ばないと思われます。 -- (しゃおふぇい) 2010-01-17 12 09 39 しゃおふぇいさん 各個撃破 そうそう簡単にさせてくれないので色々と工夫しないといけないでしょうね(言い出しっぺのクセに クマ~)。 コンテンツにあるならPKとは言わない 言葉の定義であれこれやるのは好みじゃないんですが。そうなるとこのゲームでもPKはなくなりませんか? プレイヤーはキャラクターを殺されてもそんなに気にもしないし恨みもしないのです。 -- (クマ~) 2010-01-17 13 38 31 PKクエストをPvP~RvRまで広げれば、辻切りPKはしなくていいよね~。懸賞首も戦争のドサクサに紛れてキルできれば楽だよね~。 -- (クマ~) 2010-01-17 18 00 31 クマ~さん もしかして、この企画を「戦争ゲーム」とか「冒険や生活を味付けした戦争ゲーム」と思われているのでしょうか? このサイトでは「冒険と生活をメインとし、生活の一部として戦争やPKを盛り込んだRPG」を企画しているつもりです。 ですので、戦争や闘技場での対人戦は「公式の対人戦=軍事や行事」とし、 PKは「プライベートな対人戦=犯罪行為」としてカテゴリー別けしています。 戦争で互いが合意のもと殺しあうのに懸賞首はないでしょうが、 生活や冒険をしている場合は、軍人ではなく一般市民なので、 暴行・殺害されたら、相手を賞金首に掛けるのは不思議ではないはずです。 根本的なところですれ違いがあるような気がします。 -- (管理人) 2010-01-19 02 17 27 管理人さん お世話になります。 「戦争ゲーム」と勘違いしていないか?例え、「戦争ゲーム」であっても掲示板は負の連鎖でいっぱいにならない。 その例として、PKが日常にある(あった)ゲームを引き合いに出しました。 そのように考えられるのは残念です。 -- (クマ~) 2010-01-19 03 25 41 正直に言うとクマ~には、「警備員NPC~刑務所」システムは必要性を理解できません。このような、プレイヤー間の対話や連帯を無視した、血も涙もないシステムを導入する必要性を理解できません。 このシステムは、隣に居るプレイヤーに向かって「お前は、信頼できないし、対話もできない。」と言っているに等しいと考えています。 無法者には、懸賞首システムとプレイヤー間の信頼と連帯でのぞむべきです。 クマ~は、「戦争(PK)」は力による対話だと考えています。 -- (クマ~) 2010-01-19 04 11 36 クマ~さん ああ、単に「PKの意味」に食い違いがあっただけなのかな? クマ~さんのいう「PK」とは「プレイヤーを殺害すること」で、 「戦争」「ギルド戦」「辻きり」全て含めて「PK」とされていたということですよね? ↓カテゴリーとして表記するとこんな感じかな。 ●クマ~さんのPKの認識 PK「プレイヤーを殺害すること」 ┣戦争 ┣ギルド戦 ┗辻きり(犯罪行為) ここでの「PK」とは「殺人」という意味で「犯罪行為」という認識で使っています。 ●この企画でのPKの認識 対人戦「プレイヤー同士の戦い」 ┣戦争 ┣ギルド戦 ┗PK(犯罪行為) というイメージです。 今までのすれ違いは、お互いの言葉の認識が違ったからだと思います。 こういう食い違いを防ぐためには、言葉を定義することは重要なことだと思いますね~。 ※ちなみに、認識違いやすれ違いを避けるため、「用語集~概要まとめ~」を用意しています。-- (管理人) 2010-01-19 06 30 22 管理人さん お世話になります。 言葉の定義 これまでのクマ~の発言を確認していただければ、より一般的な意味であるとご理解していただけれると思います。 無法者に対して クマ~は、実は自由に相手をキルできた方がかえってキャラクターの安全が保障されるのではないかと考えています。 無法者は仕返しされ辛い初心者や生産者を好んで狙います。 そして、仕返しされて喜ぶのはよほどの好事家ぐらいなものです。 「銃を人に向けていいのは、撃たれる覚悟がある者だけだ。」誰の言葉でしたでしょうか? -- (クマ~) 2010-01-19 08 59 26 クマ~は、お尋ねしたいのです。 生産者なプレイヤーの皆さんは、どうすればご自分が安全だと感じられるんでしょう? 十重二十重にNPCに護られればそう感じていただけるのでしょうか。 たとえ、NPCに護られても……。 「銃は私が構えよう。照準も私が定めよう。弾を弾装にいれ、遊底を引き、安全装置も私が外そう。だが、殺すのはおまえの殺意だ。」 悲しい悲しい不死の伯爵の言葉です。 -- (クマ~) 2010-01-19 09 24 11 >>クマ~さん もしや、戦争を主軸としたゲームだと思われていますか? -- (しゃおふぇい) 2010-01-19 11 06 37 しゃおふぇいさん クマ~は、警備員NPCのような自動監視網まで敷いてプレイヤーをコントロールされようとしていることに異議を唱えています。 ここまでするのであれば、(戦争やギルド戦意外では)PCに対して攻撃が無効化される、あるいは攻撃した者に跳ね返るとした方がマシなのではないかとも考えます。 重ねていいますが、貴方の提案されたシステムは、自分以外は全て敵と言っているのですよ。 私達は、自分以外のプレイヤーを便利なアイテム扱いするためにここに集まったのではないと信じています。 -- (クマ~) 2010-01-19 13 47 26 しゃおふぇいさん お世話になります。 戦争ゲーム そのようには考えていないと申し上げていたはずなのですが……。具体的に指摘していただければご説明したします。 -- (クマ~) 2010-01-19 14 20 14 クマ~さん より一般的な意味である 一般的には「町中やフィールドで合意のないままに始める対人戦」のことで辻きりのことだと思います。プレイヤーキルという語彙だけを見ると「プレイヤーを殺す行為」を指す言葉だと私も考えています。 そういう食い違いが起こらないようにこのサイトでの定義を示しているつもりです。 混乱が起こらないようにするために、他の戦争やギルド戦、闘技場と区別し、ここでは「PKは合意のないままに始める対人戦=犯罪行為」と使い分けしているのです。 このサイトで気持ちよく考察する上でのルールです。 この「PKシステム案」のページは「合意のないままに始める対人戦=犯罪行為」に関するページであり、 そのルールを守っていただけないのであれば、ずっとこのようなすれ違いが繰り返されますよ。 法を守るのは、人(プレイヤー) 法(自体)を守って行くのも、人(プレイヤー) 警備員NPCのような自動監視網まで敷いてプレイヤーをコントロールされようとしていることに異議を唱えています。 警備隊NPCについては一理あると思います。 これは案のひとつでしかありません。クマ~さんの意見もひとつの案として重要だと思います。 「警備員NPC~刑務所」システムは必要性を理解できません。 警備隊NPCは省き、プレイヤーが協力し合うにしても、法がないと社会として成り立たないと思います。 私は、しゃおふぇいさんの案にあった「プレイヤーたちが無法者を捕らえる(捕縛スキル)」があったり、「刑務所」があることは重要だと思います。 この企画するMMORPGでは、スリや詐欺、殺人などの悪人プレイもできる自由な世界ですが、法がないとなると、それは自由な世界ではなく、殺伐とした世界になるのです。 MMORPGもひとつの社会であり、そこに”人間”が居ることは同じなので、ルール等の制限が無いと悪がはびこってしまうという性質は、実社会と重なる問題なのです実社会と重なる問題なのです。 実社会でいきなり法も刑務所もなくなって、人民たちが協力し合う世界を面白い世界だと仰るなら、価値観が違うのでしょう。 同じような説明を繰り返すことになってしまいますね。 これがご理解いただけないとなると、理想も価値観も違うので、もうどうしようもありません。 また、クマ~さんが心配されている「自然なコミュニティーの発生の邪魔になるのではないか」という問題ですが「警備員NPC~刑務所」システムがそれを邪魔するシステムだとは思えません。前に、クマ~さんご自身が「現状では手間の割に効果が薄いものだと思います」と仰ってた通り、このシステムだけでは効果が薄いです。薄いから自然とコミュニティも生まれると思いますし、このシステムをうまく利用したコミュニティが生まれるのではないか、と考えています。 -- (管理人) 2010-01-19 15 24 18 管理人さん お世話になります。 法が守られない やはり、「過去あるいは(あるかもしれない)未来のPKにおびえています。」としか聞こえないんです。 貴方のゲームを遊ぶ人々は、拘束されたりMPKされないと法を守れない人ばかりなのでしょうか。 どうか少数の例外に惑わされないで下さい。 現実世界 キャラクターがPKされたとして。 現実世界の貴方に傷口はどこですか。盗られた金品は幾らですか。 -- (クマ~) 2010-01-19 17 33 50 >>クマ~さん >そのようには考えていないと申し上げていたはず あ、すみません、思ったよりログが流れていて、誤って一部ログを読み飛ばしてしまっていました。 大変失礼しました。 -- (しゃおふぇい) 2010-01-20 00 51 45 PKシステムへのコメントログ(3) PKシステムへのコメントログ(1) ▲上へ
https://w.atwiki.jp/prdj/pages/3468.html
タイランツ・グラスプ・プレイヤーズ・ガイド Tyrant’s Grasp Player’s Guide 囁きの暴君は地下の牢獄で扇動し、“囁きの道宗”の手下を使ってその魔力を誇示し、再びゴラリオン全土を脅かそうと躍起になっていた。思いのままに使える致命的で新しい魔法――世界規模の破壊を引き起こせるほどのこれは、前代未聞の力を持つ――を持つ彼が自由を取り戻すのはほぼ不可避であり、ラストウォールの監視の目からさえ逃れられるほどに速やかであるように見える。最も英雄になるはずもない存在――“囁きの道宗”の最新の犠牲者が、アヴィスタンの唯一の希望となるかもしれない! 集合 COMING TOGETHER タイランツ・グラスプ・アドヴェンチャー・パスの最初の冒険では、全てのPCがラストウォールの南西端にある小さな町、「ロスラーズ・コファー」からはじめることになっている。輝ける十字軍の英雄、エルヴィン・ロスラーにちなんで名付けられたこの街は、ベルクゼンのオークと辺境を共有しながらも800年以上存続し続けており、季節に従って近くを行き交ういくつかの部族と、平和的な交易を行っている。ラストウォールは、地域の境の確立を手助けしておりヴィジルで使用される亜麻の多くを栽培しているこの町を、小さな騎士団の駐屯地を配置し続けるだけの重要性を持っているものと考えている。この町の存在は挑戦的であるが、ロスラーズ・コファーが何百年にも亘りほぼ問題もなく存続してきたのはオークの暴力的な捻れ爪族が穏健派の他部族をこの地域から追い出し、辺境の農場を襲撃し始めるまでの話だった。こうした攻撃は最終的に捻れ爪族がar4707年にロスラーズ・コファーそのものを襲撃し、歴史的な建造物を燃やし、人口の1/4以上を虐殺し、残りの住人を散り散りにする程に過激化した。生存者のおよそ半数が季節が変わってから再建のために戻ってきたが、レッド・リーヴァーと呼ばれる縄張りを持つクリーチャーが、町から1マイル離れたサーレンレイの寺院に移ってきたのを発見したため、その教会を新たに設立された町そのものの中に移転せざるを得なくなってしまった。 ラストウォールはロスラーズ・コファーの再建に伴い、国境地帯の巡回に騎士を追加で配置した。これらの戦士たちは、捻れ爪族による新たな襲撃を何回も押し返し、捻れ爪族は最終的にその内なる不満をベルクゼンへと向けることとなった。しかし騎士の努力を持ってしても、レッド・リーヴァーをその新しい棲処から追い出すことはできなかった。それは近くの農場を略奪し、旅人を襲い続け、地元の住人はかつて教会が管理していた土地や果樹園、その他のものをただ避けるようになり、そうでなければ生活環境へと持ち去った。昨年、名高いパスファインダー協会のエージェントが寺院を調査するために到着し、大規模な戦いの末、ついにこの獣を退治した! このサーレンレイの教会はこのモンスターのいた10年の間に受けた損害を簡単に調査しただけで、今も町から活動を続けている。しかし、この突然の騒動をきっかけに、町の若者たちは冒険者やパスファインダーを夢見るようになっていった。 サーレンレイの寺院に加えて、ロスラーズ・コファーは街の墓地にある大きな墳墓、「ロスラーの墓」でも知られている。ここには、輝ける十字軍の英雄たちの遺骨が保管されている。アイオメデイとゴルムの信者が巡礼に訪れることもあり、この町は新しく来たものが硬貨を支払うことで、宿泊施設を提供してくれる。トゥロンデル川の周辺に位置するおかげで、この町は十字軍、使者、巡礼者、ラストウォールとニアマサスの間を行き交う商人などが往来する。 プレイヤー・キャラクターは、ロスラーズ・コファーの頑固な住人であるかもしれないし、国境を守るためにラストウォールから派遣された民兵かもしれないし、退去したサーレンレイ教会の関係者かもしれないし、地下墓地を訪れる巡礼者かもしれないし、上司が去った後に寺院を調査するパスファインダーかもしれないし、行商人かもしれないし、ヴィジルの役人かもしれない。少なくともキャラクターのうち1人は地元民――生まれてこの方ずっと住人か、捻れ爪以後の復興の一環としてこの地域に定住した者か――であることが望ましい。ロスラーズ・コファーやラストウォールの出身でないPCは、少なくとも囁きの暴君や囁きの道宗の遺産に強い関心を持ち、これらの凶悪な勢力が世界に与える被害を最小限に抑えたいと思っているに違いない。 本書では、世界の闇の勢力に対抗する砦だと自称するラストウォールで期待されることをプレイヤーに知ってもらうために、ラストウォールの簡単な案内を掲載している。ラストウォールと輝ける十字軍に関連する追加情報は、Pathfinder Campaign Setting Inner Sea World GuideとPathfinder Campaign Setting Cities of Golarionに掲載されている。 テーマ:サバイバル・ホラー Theme Survival Horror タイランツ・グラスプの全体的な主題はサバイバル・ホラーだ。プレイヤー・キャラクターは、特に最初の数回の冒険では、限られた資源の中で絶望的な状況に置かれていることに気付くことがよくある。タイランツ・グラスプのイベントが展開していく中で、恐ろしい悲劇が起こることが運命づけられている。状況によっては、プレイヤー・キャラクターは予想以上に早くロスラーズ・コファーから離れなければならなくなるだろう。そのため、ラストウォールやその先を旅する準備ができているキャラクターが、このアドヴェンチャー・パスには適している。 キャラクターのコツ CHARACTER TIPS タイランツ・グラスプの全体的なコンセプトは、囁きの道宗の復活とその新兵器である大量破壊兵器であり、様々なキャラクターの琴線に触れるものであろうが、君はどのようにしてたった1つの構想を選ぶだろうか、そして何がこのキャンペーンの課題や雰囲気に最も適しているだろうか? この筋書きの大半の焦点にも拘らず、挑戦の多くは個人的にして直接的だ――囁きの道宗やタル=バフォンの他の手下たちが、私的に直接PCを脅かしており、彼らの陰謀を暴いて阻止する中で、PCは勇気と頑丈な盾以外には自らを守るものが何もない状態で古代の廃墟や荒廃した場所、秘密の拠点に入り込むことになるだろう。PCは軍隊や社会秩序ではなく、自分自身や仲間の冒険者達を頼りとしなければならない。君の想像力と、過去10年間のパスファインダーRPG製品の中で示されてきた、様々な選択肢に精通しているかどうかによって、より多くの可能性が存在する。タイランツ・グラスプ・アドヴェンチャー・パスのキャラクターについての議論が必要なら、paizo.comのフォーラムにアクセスし、キャンペーンをプレイしている他の人達に質問をし、経験を共有しよう。 属性 Alignment その属性が善であれ、悪であれ、純粋に自己中心的なものであれ、ほぼすべての人がタル=バフォンと使者の軍団の支配下ではかなりの自由と安全を失うことになる。そのため、キャラクターが囁きの暴君と囁きの道宗を阻止しなければならないということに同意できる限り、タイランツ・グラスプでは必ずしも道徳や思想に縛られることはない。ラストウォールはパラディンに支配された国家であり、秩序にして善とその周辺の秩序にして中立と中立にして善が最もありふれた属性だ。市民は可能な限り教育や地域社会、国家のために公益に向かって行動し、専門知識や防備、資産が必要なとき、必要な場所に与えられるインフラによる強力な支援から利益を得ている。ラストウォールの悪人でさえも名誉を重んじる傾向があり、混沌の側面よりは秩序にして悪に傾倒している。混沌属性のキャラクターは特に嫌われているわけではないが、この境の国の秩序ある社会で居場所を見つけるのは難しい。なんとか存在するものはロスラーズ・コファーや牙森の材木駐留地のような国境の集落に流れ着き、最終的には多くのものが南下してニアマサスに移住してしまう。悪のキャラクターを作成する前に、通常通り、GMに相談すること。この選択肢は、全てのグループに適切なものではない。 アーキタイプとクラスの選択肢 Archetypes and Class Options タイランツ・グラスプ・アドヴェンチャー・パスの大部分は、断固たる悪と戦い、圧倒的な破壊に直面しながらも生き残ることを目的としている。多くの冒険では、すでに恐ろしいことが起きているという困難な状況が提示されていて、PCは生存者を慰めたり、犠牲者を癒やしたりと、その余波の中で自分たちにできることをしなければならない。全てのキャラクター・クラスがこのアドヴェンチャー・パスに適しているが、ある程度安定したインフラに依存しているキャラクター、特に都市部に特化したクラスやアーキタイプのキャラクターは、自分の技術を十分に活用するのが難しいかもしれない。また、このアドヴェンチャー・パスはかなりの移動を必要とするため、効率的な案内や道中での移動、高速移動ができる能力を持ったキャラクターは、その技術の実用的な応用を見つけることができるだろう。 ラストウォールにはパラディンが多く存在することを考えると、クレリックやウォープリーストと同様にパラディンも当然の選択肢となり得るが、そのようなキャラクターのプレイヤーは、このアドヴェンチャー・パスの中の重要な拡大する活動の多くにはこの世界の改善の為にまだマシな悪と共に活動することが要求されるがため、開かれた心で行動すべきである。パラディンの行動規範でさえ、仲間の闇の行いを抑制できる限りに於いて秩序にして善のキャラクターがより大きな善の為に悪の相棒と肩を並べて行動することを認めている事は指摘しておく価値はある。 タイランツ・グラスプに適した他のクラスには、ファイター、レンジャー、ローグ、ウィザードが挙げられる。近くにある牙森の住人であるドルイドもこの地域の特徴ではあるが、ドルイドのプレイヤーは、このキャンペーンの間に訪れる荒涼とした風景には限界を感じるかもしれない。アンデッドの敵が多いため、バード(そして心術や幻術に専門家したウィザード)はその攻撃的な魔法や歌の目標が少ないことに気付くかもしれない。しかし仲間を恐怖からより耐えやすくする能力は高く評価されるだろう。ガンスリンガーやその他の非常に特殊な装備を必要とするクラスは、特に最初の数回の冒険では、買い物をする場所を見つけるのに苦労するかもしれない。アイオメデイの修道院が国の中にいくつか存在し、武術や肉体完成を高めて悟りを開く事を奨励しているが、彼らはティエン・シア様式ではなくアヴィスタン様式の武術に注力している。基本クラスの中でも、キャヴァリアーとインクィジターはラストウォールで最も代表的なクラスだが、サモナーやウィッチも、その能力が破壊や支配に向かわない限り、平穏な生活を送ることができる。ブローラー、ハンター、インヴェスティゲーター、スレイヤーもこの国の英雄に含まれており、初代の輝ける十字軍のあとには、未だに続いている霊を扱うスピリチュアリストやミーディアムもいる。混沌によったクラス――特にバーバリアンやスカルド――は聞かれないというわけではないが、ラストウォールの際立って名誉を重んじる文化の中で強い存在感があるというわけではない。 有用なアーキタイプは以下の通り。 戦闘斥候のレンジャーUC 信仰の英雄のウォープリーストACG 弩兵のファイターAPG 十字軍戦士のクレリックUC 大胆な英雄のキャヴァリアーACG 遂行者のスレイヤーACG 神聖司令官のウォープリーストACG 信仰の守り手のパラディンAPG 天空の騎士のパラディンUC 模範のブローラーACG 悪魔祓いのインクィジターUM 墓守のスレイヤーACG 垣根の魔女のウィッチUM Knight of Arnisantのキャヴァリアー(Pathfinder Player Companion Armor Master’s Handbook) 武道家のモンクUC ファランクス兵のファイターAPG 憑かれしオラクルUM 再臨の英雄のミーディアムOA 斥候のローグAPG 盾の匠のブローラーACG 銀の歌い手のバードOA 遊撃兵のレンジャーAPG スキルニールのメイガスUC 悪霊からの守り手のシャーマンACG 降霊者のインヴェスティゲーターACG 旗手のキャヴァリアーUC 罠使いのレンジャーUM 不死者懲罰官のパラディンAPG 魔女狩り師のインクィジターUC これらの選択肢に加え、Pathfinder RPG Occult Adventuresで導入されたシュラウド騎士団は、アンデッドの脅威を追い返そうとすることを好む。 血脈、神秘、守護者 Bloodlines, Mysteries, and Patrons ほとんどのソーサラーやブラッドレイジャーはタイランツ・グラスプ・アドヴェンチャー・パスに適しているが、不浄なる次元界から与えられた血脈を持つなら、疑わしい目で見られることが多いだろう。ラストウォールのパラディン達は親の罪を子供が負う必要はないと理性的に理解している。そのため、そのようなキャラクターであっても法を守る限り、その生活に関して恐れることはなにもない。しかし、あからさまに不浄な出自や魔法に関する出自は、やはり警戒されて精査されることになる。このキャンペーンに特に適しているのは運命の子、植物APG、天上の者、忌まわしき者UM、秘術、不死の者である。このアドヴェンチャー・パスのテーマに強いつながりがあるオラクルの神秘やシャーマンの霊は戦、生命、天界、骨である。タイランツ・グラスプ・アドヴェンチャー・パスに適した守護者は祖霊UM、死UM、耐久、治癒UM、光UM、前兆UM、霊UM、力、復讐UM、判断である。 これらの選択肢は指針に過ぎない。プレイヤーはこれらの選択肢からしか選択できない、などと義務を感じる必要はない。ほとんどの血脈、神秘、霊、守護者は、囁きの道宗に対する戦いに自分の居場所を見出すことができるだろう。 使い魔と動物の相棒 Familiar and Animal Companions その特異な性質から、最初の冒険では、プレイヤー・キャラクターは従者、動物の相棒、乗騎、使い魔などから分離される。冒険のある期間の間クラス特徴を失うことは困難を伴うものだろうが、それは一時的なものであり、PCは2つ目の冒険の開始時に仲間を取り戻せるようになる。プレイヤーがこの一時的な制限を受け入れることができれば、ラストウォールには以下の使い魔が存在し、使い魔として理想的な選択をすることができる:アウル、ウィーゼル、キャット、ゴートB3、スカンクB3、squirrel(Animal Archive)、トード、ハウス・センチピードUM、バット、ピッグB3、フォックスB3、ヘッジホッグUM、ホーク、ラクーンB3、ラット、rabbit(Pathfinder Player Companion Animal Archive)、レイヴン。《上級使い魔》を探しているキャラクターであれば、テーマに合い、タイランツ・グラスプに最も適切なものを以下から見つけられるだろう:アービター・イネヴァタブルB2、カーバンクルB3、カッシシアン・エンジェルB2、シルヴァンシー・アガシオンB2、スードゥドラゴン、ノソイ・サイコポンプB4、ハービンジャー・アルコンB3。 以下の動物はラストウォールのどこでも見られるもので、キャラクターの既にいる動物の相棒が死亡した場合にもすぐに交換できるため、相棒や乗騎に適している。アックス・ビークB3、ウルフ、オーロックス、サイラシンB3、スモール・キャット(マウンテン・ライオンもしくはリンクス)、ジャイアント・ヴァルチャーB3、ジャイアント・ウィーゼルB4、ジャイアント・レイヴンB6、 スタッグ B4、ダイア・ラット、ディグモールB5、ドッグ、バード(イーグル、ファルコン、ホーク)、バジャー、ベア、ボア、ホース、ラムB2。 得意な敵と得意な地形 Favored Enemies and Favored Terrains タイランツ・グラスプ・アドヴェンチャー・パスでプレイヤーが直面するであろう敵の大部分は、囁きの暴君の軍隊の大部分を占めるアンデッドである。また、PCはタル=バフォンに仕える、生きている敵とも多く出会うことになるだろう。そこにはエルフと人間が挙げられる。その他のよくある脅威には、異形、植物、そして新しい人型生物の副種別(モルティック)がある。このキャンペーンは多様な地形を包含するが、死者とその秘密が埋もれている地下のダンジョンが最も舞台となる。その他にありふれた景色としては、都市や森林がある。また、ウースタラヴやラストウォールのなだらかな丘陵地や険しい山で過ごす時間もある。 出自 Origins キャンペーンの始まりは、10年前のオークの襲撃から着実に復興しつつある国境の町を舞台にしている。そのため、ほとんどのプレイヤー・キャラクターはもしロスラーズ・コファーの出身ではないとしても、ラストウォールの出身者である可能性が高い。彼らは聖職者、技術者、農民、癒し手、石工、街の見張り、織工などの職業に就いている。地元の産業は主に亜麻の生産、牧羊、復興、亜麻と羊毛での敷布、亜麻仁油とラノリンの販売などが中心となる。ここ数年、ベルクゼンとの国境が静かになっているにも拘らず、ヴィジルはロスラーズ・コファーに小さな防衛軍を派遣している。ロスラーズ・コファーはニアマサスとウースタラヴとの商業を引き寄せ、時折ヴァリシア人の商隊やラズミールの難民も訪れる。復興のための努力は多くの仕事を求めている人を惹きつけ、地元政府が避難民に保証と支援を提供しているのを見て、その寛大さを利用しようと決めた日和見主義者もいる。 言語 Languages 輝ける十字軍の軍勢の大部分は、元々タルドールによって提供されていた。そのため、タルドールで一般的な言語がこの地域の言語となっている。戦争と復興の両方に多くのクラゴダンのドワーフが貢献しており、人間の間でもドワーフ語もかなりありふれた言語である。同様に、ラストウォールはウースタラヴに近いことから、農耕民の多くは少なくとも多少はヴァリシア語を話し、特に呪いや保護の言葉をつぶやくために使用している。タル=バフォンの支配以前の古い遺跡では、ハリト語とオーク語が今でも見られるが、囁く暴君の支配下ではネクリル語が選ばれており、これは囁きの道宗における共通語となっている。また、アイオメデイの教会では、重要な伝文や祈りが天上語で行われることが多い。 上級クラス Prestige Classes 上級クラスを目指すことに興味のあるキャラクターには多くの選択肢がある。特に、アイオメデイやゴルムといった神々への信仰と献身を強調したものが適切である。以下の指針は、タイランツ・グラスプ・アドヴェンチャー・パスに最も適したテーマを備えている。 ストールワート・ディフェンダーAPG バトル・ヘラルドAPG ホライズン・ウォーカーAPG Evangelist(Pathfinder Campaign Setting Inner Sea Gods) Exalted(Inner Sea Gods) Knight of Ozem(Pathfinder Campaign Setting Paths of Prestige) Prophet of Kalistrade(Paths of Prestige) Sentinel(Inner Sea Gods) 種族 Races ラストウォールの人口には人間が圧倒的に多いものの、輝ける十字軍は内海地域から守備兵を連れてきたため、アヴィスタンのほぼすべての民族がこの地域の住民に含まれている。ラストウォールの人口の大半にはタルドール人の血が流れているが、タルドール人、シェリアックス人、ヴァリシア人、ケーリド人、ガルーンド人の血も受け継いでおり、タルドールから独立して以降はケレッシュ人やティエン人との交易が盛んとなったため、これらの血筋も一般的になってきた。 ドワーフやハーフリングは、特に軍人の間ではよく見かける存在だ。ノームやエルフの来訪は――主に牙森からになるが――聞かれないわけではないが、ラストウォールで最も多い人間以外の種族はハーフオークだ。この国のハーフオークの多くは国境の町の人間と遊牧民のオーク部族との間での何世代にも渡る緊張感はあるが平和的な接触の結実であるか、もしくは暗黒時代以来マインドスピン山脈に沿って居住してきた、時折人間あるいはオークをその地域の住民として迎え入れているハーフオークの自給自足の村々の結実でさえある。これらの多様な起源にも拘らず、人間の間でのオークに対する否定的な認識のために、ほとんどのハーフオークは最低でも何らかの烙印を負っているものと見られる。 珍しい種族であるが、アアシマールとダンピールはラストウォールを本拠地としており、どちらも不信感を持って扱われている――ダンピールはその不死とのつながりのために、アアシマールはその異世界の起源のために。チェンジリング、ダスクウォーカー、スキンウォーカー――その多くはウースタラヴからの移住者だ――もまた少数見られるが、一般には変わった旅人以上の存在として注目を受けるほどではない。 宗教 Religion 信仰はラストウォールの文化の礎となっている。この国のルーツは圧倒的な悪に対する宗教的な聖戦であるため、国民のほぼ全員が、日常的に一つ以上の神に敬意を表す。輝ける十字軍の74年間、そして復興期に至るまでの長い間、神々の光を呼び起こすことができるか、あるいは信仰によって勇気と忍耐力を見出すことができるかどうかが生存の鍵を握ってきた。ラストウォールの実態は神権国家ではないが、どの監視伯も一つ以上のどこかの教会と強い結びつきを持っている。 十字軍の神であり、アラズニとエイローデンの弟子でもあるアイオメデイは、ラストウォールで最も有名な神格であり、それに続くのが戦争の神ゴルムである。いずれもラストウォールの十字軍とベルクゼンのオークの仇敵の両方に人気がある。ほとんどの兵士は両方を崇拝している。アイオメデイが特に好まれており、政府の分派を除けばアイオメデイの教会が全てだ。ラストウォールでよく見られるその他の神格には、初期の十字軍が広めたタルドールの神々(アバダル、カイデン・カイリーエン、シェリン、ノルゴーバー)が挙げられる。サーレンレイ信徒はさほど一般的ではないが、輝ける十字軍の特に衛生兵の間では強力な基盤となっていた。デズナはヴァリシア人の入植者の間で重要視されており、住民の中では一般的な信仰である。多くのドワーフはトローグをはじめとするドワーフのパンテオンに敬意を表している。 多くの至高天の王の小さな教団もあり、特に復讐の天使ラガシエル(最も暴力的なパラディンの多くが従っている)やアンドレッタ(その保護を求める集落や、癒やしや平和を求める退役軍人に広まっている)が受け入れられている。 技能と特技 Skills and Feats タイランツ・グラスプのパーティは多能な技能から多くの恩恵を受けることができる。様々な〈知識〉技能は、パズルを説いたり、脅威を特定したりする上で価値あるものとなるだろう。〈知識:宗教〉と〈知識:歴史〉は最も有用であり、〈知識:次元界〉、〈知識:神秘学〉、〈知識:ダンジョン探検〉、〈知識:地理〉は全て独自の活用方法がある。冒険では、〈軽業〉、〈騎乗〉、〈登攀〉といった肉体技能を使用することができる。〈知覚〉はほとんどの冒険者に役に立つもので、〈隠密〉、〈呪文学〉、〈生存〉、〈装置無力化〉などの冒険の定番技能は全て輝く瞬間がある。 タイランツ・グラスプ・アドヴェンチャー・パスでは、様々な敵との戦闘が想定されている。そのため、戦闘技能ツリーから多くの利益を得ることができるだろう。アンデッドが一般的な要素なので、《強打》や《薙ぎ払い》のような回復力のある相手を素早く切り裂ける特技や、頑健セーヴや意志セーヴを増強する特技が役に立つだろう。《呪文越境化》(APG)の呪文修正特技は、呪文の使い手がより効果的に非実体のアンデッドと戦えるようにしてくれる。また、クレリックやパラディンがエネルギー放出能力を強化する特技も同様に役に立つだろう。 特徴 Traits 以下に示すキャンペーン特徴に加えて、Advanced Player’s Guideに掲載されるいくつかの特徴は、信仰心の強いラストウォールの住民の間でよく見られ、適切なものだ:〔生まれながらの印〕、〔回復力〕、〔神の戦士〕、〔神聖なる導管〕、〔寺院の子〕、〔戦闘熟練者〕、〔対応者〕、〔退役軍人〕、〔不屈の信仰〕、〔亡者殺し〕、〔勇敢〕、〔鎧の熟練者〕。 キャンペーン特徴 CAMPAIGN TRAITS タイランツ・グラスプ・アドヴェンチャー・パスは、プレイヤーをラストウォールからウースタラヴに向かわせ、さらに遠くの寄港地まで至らせる。キャンペーンは国境の町ロスラーズ・コファーから始まる。背景に拘らず、全てのキャラクターはアヴィスタンを征服しようとする不死者と悪の台頭を阻止することに利害関係を持っていなければならない。 プレイヤー・キャラクターはそれぞれ、キャラクター作成時に修得可能な特徴2つのうち、1つを以下のキャンペーン特徴から選択しなければならない。 〔職人〕/The Artisan:求めるものを正しく得るのに重要なのは精密さだ。君は家や花瓶から道路や帝国に至るまで、あらゆる物を作り上げるのに細心の注意を払っている。君の細部へのこだわりは、その仕事が会計士、建築家、技術者、薬草商であるかに拘らず、10年前にオークの襲撃からロスラーズ・コファーを復興する際に不可欠であることが証明されている。君の細部へのこだわりは、〈鑑定〉と〈治療〉判定に+1の特徴ボーナスを与え、これらの技能のいずれか1つはクラス技能となる。1日1回、君は通常なら1回の標準アクションの発動時間を持つ呪文を1全ラウンドかけて発動することができる。そうするなら、その呪文の有効術者レベルを1増加させる。この能力は、発動時間が1回の標準アクションでない呪文には影響を与えない。 〔法をもたらすもの〕/The Lawbringer:辺境は危険と無秩序の土地であり、人々がこれらに勇敢に立ち向かうことは歓迎されている。しかし、そのような危険を望まない人々に対しても痛みをもたらすことがあまりにも多い。君は街の警備兵やヴィジルの支援を受けた兵士の分遣隊として仕えているかもしれないし、他の人が耐えられないときに耐える、ただの心配性の農民かもしれない。その目的は、運命の残酷な気まぐれに対する防波堤として、それを必要とする人のために立ち上がることだ。君は[恐怖]に対するセーヴィング・スローに+2の特徴ボーナスを得る。君が勇気のオーラのクラス特徴を持つ場合、そのオーラによるボーナスは1増加する。君の勇気は感動的なほどだ。君が気絶したり殺されたりした場合、30フィート以内にいる味方は君の守備に奮い立たされて、即座に君のレベル+【魅力】修正値に等しい一時的HPを獲得する。この一時的HPは1分間持続する。 〔楽観主義者〕/The Optimist:物事が良くなっているという君の言葉を人々は鵜呑みにする必要はない。10年以上前のオークの占領からの街の復興は完全に終わっており、町の外にあるサーレンレイ神殿のモンスターはついに倒された。君のどうしようもない楽観主義は、ロスラーズ・コファーの住人の多くが直面している厳しい生活から逃げているように見えるが、君はその前向きな態度が共同体を活性化させていると信じている。君は[精神作用]効果に対するセーヴィング・スローに+1の特徴ボーナスを得る。加えて、君の楽観主義は伝染する。1日に【魅力】修正値(最低1)に等しい回数まで、即行アクションとして、君はこのボーナスを10フィート以内にいる仲間1人に与えることができる。このボーナスは1分間持続する。 〔異邦人〕/The Outsider:君には居場所がないが、今のところはこの辺境で十分快適に過ごしている。都会の生活を楽しむには不謹慎すぎるのか、ラストウォールの仲間意識がありふれた文化に染まるには利己的すぎるのか、あるいはその両方かもしれない。君はあまり注目されずに移動するのに慣れており、〈隠密〉と〈生存〉の判定に+1の特徴ボーナスを得る。これらの技能のいずれか1つはクラス技能となる。君は援護アクションから半分の利益(+1)しか得られないが、君は最初に正しく仕事にすることに慣れているので、他のキャラクターに援護アクションを行う際、与えるボーナスを1だけ増やすことができる。 〔悲観主義者〕/The Pessimist:君は最悪の事態を予想しており、失望したことは殆どない。君の厳しい見通しは、捻れ爪族によってロスラーズ・コファーが破壊されたことや、近くのサーレンレイの寺院から信者が追放されたこと、あるいは個人的な不幸が原因かもしれない。君はその見方のために、ラストウォールの人の中でも目立つ存在だ。最悪の結果が起きると常に信じている君は、意志セーヴィング・スローに+1の特徴ボーナスを得る。1日1回、フリー・アクションとして、君は30フィート以内にいる味方1人に、失敗したばかりのセーヴィング・スローを再ロールさせることができる。 〔奪還者〕/The Reclaimer:君は12年前のロスラーズ・コファーの破壊で大切なものを失った。家、遺産、おそらく家族さえも失ったが、魂は痛みから逃げるのではなく、痛みから癒やされるべきだ、という理由で戻ってきた。自分の人生を立て直し、その傷が他人の足を引っ張ることがなくなるよう、君は政治家、慈善活動者、癒し手、兵士として奉仕したり、守ったりしようとしている。しかし同じように失われたものが、君を無慈悲な怒りで満たしている。君の目は警戒心が強く、〈知覚〉判定に+1の特徴ボーナスを得る。加えて、君は直前のラウンド中に味方にHPダメージを与えた相手に対して、攻撃ロールとダメージ・ロールに+1の特徴ボーナスを得る。 〔詮索好き〕/The Snoop:君はロスラーズ・コファーにいる全ての人のことを多少知っている。それは君の職業によるものかもしれない。何にせよ、君は他人のことを思い出し、心を読む才能を持っている。君は〈知識:地域〉と〈知識:歴史〉の判定に+1の特徴ボーナスを得、これらはいずれもクラス技能となる。1日1回、少なくとも24時間前から知っているクリーチャーに対して〈真意看破〉もしくは〈はったり〉判定を行う際、君は1回再ロールしてより良い結果を選択できる。 〔御言葉〕/The Word:国中に信仰が溢れかえっている中では、自分のメッセージがかき消されてしまうのではないかと心配になることがある。しかしそれでもなお重要なことだ。ロスラーズ・コファーの住民はかつて慰めと慈しみを必要としていたが、君の努力のおかげでその魂を十分に癒すことができたため、君の仕事は不要になったのではないか、と君は心配している。君は長時間労働に慣れており、頑健セーヴィング・スローに+1の特徴ボーナスを得る。君の信仰心は活力に満ちており、1日1回、君はキャラクター・レベルの半分(最低1)に等しいパラディンとして、癒しの手を使用できる。君が別のクラスから癒しの手の能力を得た場合、君は1日追加で1回、癒しの手を使用できるようになる。 ラストウォール概説 LASTWALL AT A GLANCE ラストウォールはなだらかな草原、未開の森、古代の戦いの痕跡が残る土地だ。かつてはオークの砦とケーリド人の都市国家があり、タルドールの補給基地が点在していたが、AR3200年以降は囁きの暴君の支配下に置かれるようになった。オークとケーリド人の多くは圧政を受け奴隷にされた。反乱で不幸にも倒れたものは、骨が粉微塵に砕けるまで無心に奉仕するはめになった。タル=バフォンの軍勢は都市全体や記念碑を破壊し、今やダンジョンや一時的な墓といった景色が点在する埋もれた基盤だけを残した。500年後にタルドールが囁きの暴君に対抗して人員を動員したときには、何世代にも亘る闇と労苦が風景を荒廃させ、絶望的な状態になっていた。戦争はこの地に新たな傷を残した。囁きの暴君を称えるために建てられた砦や都市は敷石まで取り壊され、魔法使いの王に対抗する新たな要塞の建材として使用された。大規模な戦いは、風景に粉々になった骨と曲がった鋼鉄を飽和させ、多くの土地は未だ悪臭を放ち、作物を育てることもできないでいる。1000年が経過した今もなお、恐ろしい魔法と霊が多くの古代の戦場に取り付いている。 その恐怖にも拘らず、ラストウォールの一部は人間の手で守られており、美しく豊かな土地だ。エンカーサン湖の近くにあるため降水量が多く、夏は涼しいが冬は雪が多く厳しい。生育期が十分に長く、様々な作物を育てることができる。北部の牙森と飢餓山脈の麓の丘陵地帯によって、ラストウォールは事実上2つに分かれている。ラストウォール東部は遥かに都市化が進み開墾されており、広大な農場や牧場が牛や有名な馬を、そして交易都市ヴェルミス――古のウースタラヴ港にしてこの国の最大都市――を支えている。ラストウォール西部は手つかずの状態で、敵の多い状況に――この国の首都ヴィジルは半ばこの未開の地にあるというのは皮肉な話だが――あり、ベルクゼンのオークからの、時折死霊術のエネルギーの復活からの、そして大部分が現代の人の手の触れられていない未踏の広大な土地と森からの、襲撃を頻繁に受けている。ロスラーズ・コファー――ラストウォール西部の最南端の町――は、ほぼトゥロンデル川の恵みだけで存在しており、100マイル北にある要塞との間には、良く警備されている石造りの道と僅かな狩猟小屋以外には近代的な建築物はほとんど存在しない。このように孤立しているにも拘らず、ロスラーズ・コファーの人々は自分たちがラストウォールの住人だと思っており、国のためにできることをする。 ラストウォールの人々は心が強く、忠実な軍隊の伝統を持ち、地域社会を重視し、率直で勤勉な傾向がある。彼らが生き残るためには、地域社会の一人ひとりが自分のできる限りの仕事をするのだと信頼していることが重要で、全ての住民はすべての仕事に全力を尽くさなければ次のオークの襲撃や厳しい冬に自分の地域社会が埋没する可能性があるのだと理解している。2つの敵対的な存在に挟まれている住民は、週に何度も寺院の礼拝に参加するほどの深い信仰心を持っている。すべてのことがそうであるように、実用性を第一に捉え、やるべき仕事がある場合は礼拝を後回しにする。ほとんどの住民は春に植樹を行い、夏には武具を用いた訓練を行い、秋には最初に厳しい凍結が訪れる前に収穫を行う。長く寒い冬は休息のときであり、オークが冬の中で軍事行動を行うことはまずない。気温は氷点下で地面は固くなり、休むことなき死体もさまようことが難しい。祭事や結婚は冬の間に行われることが多いものの、その大部分は小規模な地元のイベントだ。冬の間、ラストウォールの道は熟練した旅行者にとっても苦痛になるものだからである。
https://w.atwiki.jp/ragadoon/pages/762.html
第1話(BS21)「温泉郷の怪異」( 1 / 2 / 3 / 4 ) 1.1. 姫からの手紙 旧トランガーヌ子爵領北部を占めるモラード地方の中北部に位置するビルトの村は、ブレトランドでは数少ない「温泉の湧き出る村」として有名である。現在、この地を治めているのは、フェリーニという名の、18歳の若き君主であった(下図)。 フェリーニには、姓はない。彼は貴族家出身ではなく、一兵士の立場から、戦場で功績を重ねて成り上がった「叩き上げの騎士」である。約2年前、アントリア軍の一員として、老将ジン・アクエリアスの配下の部隊長の一人としてトランガーヌ地方への電撃侵攻作戦に参加し、ビルトの村の先代領主であったスバース・ハレーを討ち取ったことで、その所領を与えられることになった。その弓の腕は、ジンの軍閥の中でも一、二位を争う実力者だと言われている。 だが、彼はこれまで戦場で戦う任務しか与えられず、一切の帝王学も学ばないまま領主となってしまったため、政務に関しては知識も興味もなく、領主としての仕事の大半は部下に任せっきりである。そんな彼の唯一の生き甲斐は、上司であるジンの孫娘フィオナ(下図)からの手紙を毎日熟読することだった。 フィオナはフェリーニよりも2歳若い16歳の貴族令嬢である。聡明にして慈悲深く、可憐にして華麗なる容貌で知られる彼女は、アントリアの若い男性貴族達の間でも極めて人気が高い。フェリーニはかつて、そんなフィオナの侍従長を務めていたこともあり、その時以来、フェリーニの中では「フィオナに気に入られること」が生き甲斐であった。いつか、自分が「フィオナに釣り合う存在」となり、彼女と結ばれることが、彼の中での一番の大望である。この世界の人々を救うことも、皇帝聖印を目指すことも、彼の中では「どうでもいいこと」であった。 そんな彼の元に、久しぶりにフィオナから手紙が届いた。心踊る気持ちを必死に隠して、部下達の目を逃れながら自室に籠もり、彼は何度も何度もその文面に目を通す。 「拝啓、フェリーニ様。あなたとは随分長い間、お会いしていませんが、お元気におすごしでしょうか? この度、私はあなたの契約魔法師のゲルハルト様のお師匠様にあたるカルディナ様と共に、ビルト村を表敬訪問させて頂くことになりました。最近、ビルト村では投影体が頻繁に出現するようになっている、ということで、おじい様は私の身を案じておりましたが、フェリーニ様とカルディナ様がいれば大丈夫だと私が説得した結果、どうにか同行を認めて頂くことが出来ることになりました。お会いできる日を楽しみにしております」 フィオナにとっては、祖父であるジンの配下の領主達の地域に表敬訪問するのは、昔から続けている公務の一つにすぎない。ただ、この手紙の中に「フィオナ姫は自分自身に会いたいと願っている」「フィオナ姫は自分のことを頼りにしている」と読み取れるフレーズが入っているのも事実である。そんな手紙を受け取ったフェリーニが、心浮かれる心境になるのも当然であろう。 ただ、この手紙にも書いてある通り、現在、ビルトの村の近辺では、投影体が出現する事態が多発していた。今のところ、その原因はまだ分かっていないが、フィオナ達がこの村に到着するのは「三日後」の予定なので、フェリーニとしてはそれまでに、彼女を迎え入れるための準備を万端に整えておく必要があった。 1.2. 兵達の喧騒 だが、そんなフェリーニの元に、部下から「面倒な知らせ」が届く。 「領主様、大変です! 兵達の間で揉め事起きてます」 「一体、どうしたんだい?」 「サラ隊とメャニア隊の連中が……」 「またアイツらか!」 フィオナ姫の接待妄想を邪魔されたことへの苛立ちから、フェリーニは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべながら、兵達の元へと向かう。 この村には、フェリーニ直属のアントリア軍の兵士達とは別に、二つの「私兵集団」が存在していた。一つは、サラという名の少女(下図)に率いられた、村の自警団である。サラは「銀猫」の異名を持つ獣人(ライカンスロープ)の邪紋使いであり、本来は貴族家の娘であったが、幼い頃に猫好きが高じて「猫化の邪紋の力」に目覚めてしまい、その力を疎んじた実家の人々から放逐され、各地を転々とした後に、この村に流れ着いた。 彼女は現在15歳だが、その外見も性格も、10歳程度にしか思えないほどに幼く見える。そんな彼女が「この村の平和は僕が守る!」と言い出したのに対して、村人達が「(邪紋の力に目覚めているとはいえ)こんな小さな子を危険に晒してはならない」と考え、自然発生的に彼女の周囲に「自警団」が結成されるに至った、という経緯であった。 一方、もう一つの私兵集団の長は、サラとは対照的に妖艶な雰囲気を醸し出す「メャニア・ターガ」という名の「リャナンシー」の投影体である。リャナンシーとは妖精界(ティル・ナ・ノーグ界)に住む女性の妖精であり、気に入った男性の「精」を吸い取る代わりに、男性に様々な「力」を授けると言われている。彼女は5年前にこの村の温泉に現れ、半裸と言っても過言ではない姿でそのまま村に居着いた結果、いつの間にか彼女の周囲にもまた(なぜか)自然発生的に多くの男性達が集まり、彼女の「親衛隊」を結成していた。 ちなみに、メャニアの歳は22歳だが、妖精族である彼女にとって、年齢がどれほどの意味を持つのかは分からない。そして、当初は、村の温泉宿で働く「女中」として、村を訪れた男性達と気まぐれに交わるだけの淫らな生活を送っていた彼女であったが、現領主であるフェリーニが赴任してからは、個人的に彼のことが気に入ったようで、親衛隊の面々と共に、なし崩し的にフェリーニの統治体制を支える武力集団の一つとしての役割を担うことになったのである。 だが、この二人の女性に率いられた部下の男達の仲は、すこぶる悪い。今日も彼等は村の広場で、大声で相手を罵り合っていた。 「あんなガキンチョのどこがいいんだ、このロリコン共が!」 「お前等こそ、あんなアバズレに騙されてんじゃねぇぞ!」 そんなくだらない喧嘩も、最近ではこの村の風物詩である。とはいえ、その喧嘩に巻き込まれて村の施設が破壊されたり、武器や防具が破損したりするのは、あまり好ましい展開ではない。何より、いざ外敵との戦いが発生した時に、友軍同士で連携が取れなくなってしまうのは、致命的な問題である。 「おい、お前等、やめろ!」 そう言って、フェリーニが止めに入ろうとするが、両軍共に聞き入れようとしない。もともと、彼等はアントリアの正規軍ではないため、領主であるフェリーニのことも、内心でどこか軽んじている風潮はある(無論、それは「領主としての仕事」を日頃からないがしろにしている彼の自業自得でもある)。 そして、更に厄介なことに、その状況を外から煽っている者もいた。 「みんなー、僕のために、もっと頑張るんだー!」 この喧騒の原因を作った張本人の片割れのサラである。彼女は、部下達が何を理由に争っているのかも、実はよく分かっていない。ただ、なんとなく「皆が自分のために頑張ってくれている」という状況が嬉しく思えているらしい。この状況で、彼等がフェリーニに言うことを聞かせるのは極めて難しい。 「ダメだな。ゲルハルトを呼ぼう」 そう言って、フェリーニは部下を伝令に出し、自身の契約魔法師であるゲルハルト・カーバイト(下図)を、この公園に呼び寄せることにした。 ゲルハルトは、24歳の時空魔法師である。彼もまた元来は貴族の家系であったが、親は戦争に敗れて全てを失い、一度は自分が君主となる道を志したものの、自身にはその才がないと分かったので、魔法師として、君主を支える道を選ぶことを選んだ結果、時空魔法の中でも特に「軍師」としての方向性に特化した「夜藍の系譜」を重点的に学ぶ道に進むことになった。「混沌」そのものに対する敵愾心は人一倍が強く、だからこそ、その「混沌」を鎮める力を持つ君主達のために人生を捧げることに、全身全霊を捧げる覚悟を胸に抱いている。 そして、フェリーニがこのビルトの領主に就任した際、彼はエーラムからフェリーニの「契約魔法師」としてこの村に派遣され、現在に至る。生真面目で仕事一筋の優秀な文官であり、フェリーニが遊び呆けた生活を送れているのも、彼がいるからこそなのである。しかし、この場に連れて来られた彼は、目の前で繰り広げられている「低レベルな喧嘩」を目の当たりにして、困惑した顔を浮かべた。 「主上、私が『その方面』の話はあまり得意ではないということは知ってるでしょう?」 彼は「仕事人間」なので、「女性の好み」に関する話は苦手分野であり、どう説得すれば彼等の心を沈められるのか、皆目見当がつかない。 「みんなが俺の言うこと聞かねーんだよ、サラが煽動してやがってさ」 そう言いながら、フェリーニが遠くで無責任に部下を煽っているサラを指差すと、もともと不機嫌であったゲルハルトが更に眉間にしわを寄せる。 「あの小娘ェ……」 「じゃあ、そういうことで、どうにか頼んだよ、ゲルハルト」 そう言って託されたゲルハルトは、一応、頑張って両軍の説得を試みるが、誰も聞いてくれそうにない。そもそも、「お堅いお役人」である彼には、「惚れ込んだ女のために命を賭ける男達」の心境など、理解出来る筈もないのである。 そしてその間に、フェリーニは当のサラを叱り付けた。 「おい、サラ! 煽ってないで、なんとかしろ!」 「あれ? もしかして、みんなが戦ってる相手は、メャニアさんのお付きの人達?」 「そうだよ!」 「じゃあ、仲間じゃないですか!」 「そうだよ! だから、早く止めろよ!」 ようやく事態を把握したサラは、両陣営の間に割り込み、自警団の面々に対して訴えかける。 「みんな、僕のためにもっと頑張ってほしいけど、仲間と争うのはやめて!」 その一言で、サラ隊はどうにか拳を収めようとしたが、メャニア隊の方はまだ納得せず、緊張した雰囲気が続いている。 「誰か、メャニアさんを呼んできてー!」 サラはそう叫んだ。部下同士は仲が悪いが、サラ自身はメャニアに対しては悪感情どころか、むしろ「頼りになるお姉さん」として好感情を抱いている。故に、トップ同士で会談すれば、こんな争いはすぐに収められるのだが、困ったことに、メャニアはこの時点では、温泉宿にて「どうしても外せない用事」に従事していたのである。 1.3. 妖精と身元保証人 「クリスティーナさん、お久しぶりです。その節は助けて頂き、ありがとうございました。いやー、ここは本当にいい村ですよね」 ビルト村の温泉宿の女中でもあるメャニアは、村を訪れた一人の女魔法師を、自身の務める宿へと案内していた。彼女の名はクリスティーナ・メレテス(下図)。アントリアの次席魔法師にして、5年前、メャニアがこの村に出現した時に、実地研修でこの村を訪れていた関係で知り合い、彼女を「無害な投影体」として認定し、この村の住人として受け入れることの安全性を保障した人物である。彼女がいなければ、メャニアは「危険な投影体」として浄化されていた可能性もあるだけに、メャニアにしてみれば、まさに「命の恩人」であった。 「そうね。私もここの温泉郷の雰囲気は気に入ってるわ」 クリスティーナは笑顔でそう答えながらも、宿屋の周囲に混沌の気配が発生していないかどうか、綿密に確認している。彼女は、この村における「危険な投影体」の出現件数増加という報を受け、アントリアの首都スウォンジフォートから、その調査のために派遣されてきたのである。だが、ここまで村の近辺の各地を調査して回ったものの、その原因は突き止められずにいた。 「この辺りは混沌濃度も低くて、投影体が頻繁に自然発生するとは考え難いのよね。この状況で本当にそんな事件が頻発しているとしたら、誰かが意図的に混沌濃度を上げているとしか思えないわ……。念のために聞くけど、この街の契約魔法師さんって専門分野が何だか、あなた知ってる?」 「時空魔法らしいです」 「うーん、じゃあ、違う、かな?」 この村の契約魔法師を犯人として疑うのは、同じアントリアの旗に集う者として、あまり望ましい発想ではない。ただ、それくらいしか可能性が思いつかないほどに、クリスティーナとしては、この状況に困惑していたのである(もっとも、彼女がその疑念を抱いたもう一つの理由としては、この村のゲルハルトを初めとするこの「モラード地方」の契約魔法師達の「出自」への偏見もあるのだが)。 「ところで、ここの温泉って、美容にはいいのかしら?」 「もちろんです。ここの温泉は美容にも健康にも良い効用があって、この湯に入った人は夢見心地の気分になって、ついつい何でも言うことを聞いてくれ……」 余計なことを言いそうになったところで、メャニアは自ら口を閉じる。現在、自分が「無害な投影体」として認定されているのは、このクリスティーナのお墨付きがあるからである。実際、メャニアには「人を傷つける能力」は殆ど備わっていない。 ただ、現実問題として、彼女が温泉宿の男性客に対して、色々な意味での「悪さ」をしていることは有名であり、彼女の存在が「村の風紀」を乱しているという声は、村人達の間からも広がっている。その一方で、彼女目当ての男性常連客も多く、村の経済的発展には寄与しているという意見もあるため、今のところは領主からも「お咎め」は出ていない。だが、もし、クリスティーナがメャニアへの「お墨付き」を取り消した場合、自分の身の安全は保障出来なくなる。その意味では、彼女としては、クリティーナの前では「無害な投影体」を演じ続けなければならないのである。 「あ、でも、ここの温泉、ヴェルノームとの新婚旅行の候補地でもあるし、その時の楽しみのためにとっておいた方がいいかもね」 「あぁ、そうなんですか、残念です〜」 「でも、なぜだか分からないけど、私の直感的に、彼とは一緒にここには来ない方が良い気もするのよね」 「えぇ〜、そんなこと言わないで下さいよ〜、大歓迎しますから〜」 メャニアにとって、クリスティーナの存在は生命線である以上、彼女の婚約者であるヴェルノームにまで対して手を出すことは、自分自身の破滅に繋がる「危険すぎる火遊び」である。そのことはメャニアも十分自覚している。ただ、理性では分かっていても、実際にヴェルノームを目の前にした時に、彼女が本能を抑えられるかどうかは、おそらくメャニア自身も分かっていない。もっとも、相変わらず微妙な国際関係が続いていることもあって、実際にこの二人の新婚旅行が実現するとしたら、随分先の話になりそうではあるのだが。 そんな中、彼女達のいる温泉宿にも、町の広場での喧騒が聞こえてくる。 「あっちで何か騒がしいみたいだけど、何があったのかしら?」 「さぁ? とりあえず、行ってみましょうか?」 こうして、ようやく二人が広場に向かうと、未だに両軍は一触即発の空気の中、睨み合いの状態が続いていた。 「あれ? 私の部隊が、一体何を?」 「お前の部隊が、またサラの部隊と喧嘩してんだよ」 フェリーニが苛立ちながらメャニアにそう告げる。 「とりあえず、何が原因か知らないけど、皆、落ち着こうね」 そう言ってメャニアが部下達を宥めると、彼等はそれまでの狂犬のような瞳から一転して、素直に彼女に従う。もはや完全に、彼女個人に飼い慣らされている様子である。 「ご迷惑をおかけしました、メャニア様」 そう言いながら、彼女の親衛隊達はおとなしく散開していく。その様子を確認しつつ、メャニアは嗜めるような口調でサラに語りかける。 「あなたも、ちゃんと自分の部下が暴走しないように、しっかり見ておかないとダメですよ」 「すみません、メャニアさん」 サラ自身は、メャニアのことは姉のように慕っている。だが、そのことが、余計に自警団の人々の「警戒心」を煽っていた。 「ダメですよ、隊長、あいつに近付いたら、痴女がうつります」 「えぇ〜、メャニアさん、いい人なのに〜」 「せめて、あと3年待って下さい」 どうやら自警団員の中では、メャニアは「未成年に近付けてはいけない存在」らしい。もっとも、それは自警団員だけでなく、村の多くの者達が似たような認識を共有していたのであるが。 1.4. 報告書と手紙 こうして、広場での喧騒がひと段落したところで、この村の筆頭文官でもあるゲルハルトは、領主の館の執務室に戻り、政務を再開する。執務室は本来、領主の仕事場の筈なのだが、基本的にフェリーニは政務に関わろうとしないため、実質的にゲルハルトの私室と化していた。 そして、この日のゲルハルトの元には、二つの「重要な書類」が届いていた。一つは、彼の部下である村の役人達からの調査報告書である。昨今の村で頻出している投影体の目撃情報に基づいて、村の近辺を調査してみた結果、村の北方に広がる山林の中から、これまで見たことのない謎の「石碑」が発見されたという。そこには「異界の文字」のような何か刻まれていたらしいのだが、一介の役人にすぎない彼等には、それが文字なのか記号なのかもよく分からない。ただ、その石碑が発見された地区は、投影体の目撃情報があった地域に近いため、そこに何らかの連関性がある可能性は十分にあるように思えた。 ひとまず、その現物を見てみないことには判断が出来ないが、一応、ゲルハルトはエーラムで異界の知識についてもある程度は学んでいるため、自分であればその文字を読むことは出来るかもしれない。仮に読めなかったとしても、その石碑およびその近辺の状況について調べてみることで、今のこの村を取り巻く投影体出没の謎を解く上での鍵になるかもしれないだろう。その意味では、この報告書は「吉報」と言っても良いかもしれない。 一方、もう一つの書類は、彼にとっては明らかに「凶報」であった。それは、彼のエーラム時代の師匠であるカルディナ・カーバイト(下図)からの手紙である。 カルディナは「裏虹色魔法師(リバース・レインボー・メイジ)」の異名を持つ教官であり、各魔法分野の「亜流」の系統を全て習得した天才魔法師として知られている。だが、彼女はその溢れる才能とは裏腹に、研究にも教育にも不熱心な「遊び人」であり、この地にゲルハルトを契約魔法師として派遣したのも、「温泉郷を訪問するための名目」を作るためであった(そして、彼以外の弟子達も、このモラード地方の観光地に赴任させられている)。 そして実際、彼女は何度もこの村を(大した用事もないのに)訪れ、すっかり温泉宿の常連客となっている。そんな彼女が、今回は(前述の通り)フェリーニの上司であるジン将軍の孫娘であるフィオナ姫を伴って、この村を訪れることにしたらしい。しかも、そのことを記したこの手紙の最後には、以下のように書き添えられていた。 「そういえばこの間、大陸の温泉街に行った時には、温泉宿には宿泊客を楽しませるための色々な歓楽施設が併設されていた。次に私が行く時までに、お前の村の宿にも、もう少し趣向をこらしておけ」 その手紙に記されていた彼女達の到着予定日は「三日後」である。たった三日で何を準備すれば良いのか、ゲルハルトは頭を抱えながらも、上記の報告書の件も含めて、ひとまずはフェリーニに一通り相談するため、彼の私室へと向かうのであった。 1.5. 行商人と学者 一方、その頃、「自警団」としての仕事に戻ったサラが、村の南方の入口へと巡回に来た時、行商人の一行が村に到着するのを目的した。その商隊を率いているのは、以前に何度もこの村を訪れたこともある、アストリッド・ユーノという名の女行商人である(下図左)。 彼女とサラは何度も面識がある。だが、この日は彼女の商隊の護衛の中に、「いつものアストリッド商隊の面々」とは異なる者達が混ざっていた(上図中列&右列)。しかも、その中の一人の「巨大盾を持った男(上図中列下)」は、サラにとって見覚えのある人物だったのである。 「あー! あの時、僕にミルクをおごってくれた人だ!」 その護衛の名はフリック。数年前、サラがこの村にたどり着く前に各地を放浪していた頃、とある村で出会った人物である。そのことを確認したサラは、思わず彼に向かって走り寄り、そのまま抱きつく。 「お前、あの時の子か!? 成長したな」 そう言って、フリックはサラの頭を撫でる。と言っても、彼の中では「8歳児が10歳児に成長した」という程度の認識なのだが。 「お兄さんも、雰囲気変わったね」 「あぁ、私も、この力に目覚めたからな」 そう言って、フリックは肩を開き、邪紋を見せる。彼は「不死(アンデッド)」の邪紋使いなのだが、以前にサラと出会った時の彼には、まだこの力は備わっていなかった。 「わぁ〜、カッコいいなぁ。僕もあるよ、それ」 そう言って、彼女は首筋を見せる。すると、そこには確かに邪紋があった。もっとも、フリックはそのことは知っていた。彼女には、数年前にフリックと出会った時点で、既にその邪紋が刻まれていたのである。 「お、なんだ? 知り合いか?」 そう言って、フリックの仲間と思しき大柄な男が首を突っ込んできた(上図中段上)。彼の名はラスティ。「竜の模倣者(レイヤー)」の邪紋使いである。 「あぁ、昔、旅先で出会った子だ。彼女も邪紋使いなんだが、彼女の邪紋は、我々のそれとは違う、『普通の邪紋』だ」 フリックがそう説明すると、サラは逆に、彼の「我々」という言葉に反応する。 「皆も持ってるの?」 そう言われた残り三人の護衛達が、それぞれの胸、左目、左手をサラに見せる。確かにそれぞれの部位には邪紋が存在し、しかもそれらの中央部には「文字のような何か」が刻まれているように見えたのだが、サラにはそれが何を意味しているのかは分からなかった(彼等四人の詳細については ブレトランド八犬伝 を参照)。 彼女達のそんなやりとりが一段落したところで、フリック達の「雇い主」であるアストリッドが、自警団長のサラに語りかける。 「エルミナさんに頼まれた物を届けに来たんだけど、彼女は今、どこにいるの?」 「たぶん、おうちで引きこもってるんじゃないかな?」 エルミナとは、この村に住む博物学者の名である(下図)。彼女の実家であるワイズウッド家は、昔からこの村に使えてきた役人の家系であり、彼女自身も聡明かつ勤勉な才女として有名で、先代領主スバースの時代から、村の人々を助けてきた。サラにとっては、自分がこの村に来て最初に仲良くなった人物であり、今も頻繁に彼女の家には出入りしている。27歳にして独身だが、温厚で知的な雰囲気の大人の女性として、サラやメャニアの取り巻きとは異なる趣向の男性層の間では、密かに人気もあるらしい。 「じゃあ、連れてってあげるよ。僕について来て」 サラはそう言って、アストリッド達をエルミナの自宅へと案内する。アストリッドの手には一冊の本が握られ、そして、護衛のラスティは巨大な四角い木箱を持って、彼女の家へと向かった。 すると、サラの予想通り、エルミナは自宅に一人で閉じこもっていた。何をしていたのかは分からないが、サラからアストリッドを連れてきたと言われて、慌てて家の外に飛び出してくる。 「ご注文の品を届けに来ましたよ」 アストリッドがそう言って、ラスティに合図をすると、彼は背負っていた巨大な木箱を下ろす。 「ありがとうございます、アストリッドさん」 そう言って彼女がその木箱の中身を確認すると、そこには、数十本の小さなガラス瓶が入っていた。その中には、薄茶色の液体が封入されている。 「これ、飲み物?」 サラが不思議そうな顔をしてそう聞くと、エルミナは優しく答える。 「そうよ。これはね、最近エーラムで流行っている『珈琲の牛乳割り』という飲み物でね。昔聞いた話によると、異界の温泉では、お風呂から出た後でこれを飲むのが、『通』の楽しみ方らしいのよ」 「わー、牛乳入ってるなら、美味しそうだねー。一本飲ませてよ」 「そうね、あなたも日頃から頑張ってるし、一本くらいはいいかな」 「わーい、毒味毒味♪」 そう言って彼女は、ガラス瓶を一つ取り出し、その蓋となっている厚紙を爪で剥がして、その瓶を口につけて一気に飲み干す。 「これ、とっても美味しいよ! 甘くて、まろやかで、とっても飲みやすい!」 「そう。じゃあ、温泉宿に導入するように、領主様に進言してみるわね」 もともと、エルミナとしてはそのつもりで購入した品である。暫定的に導入してみた上で、評判が良ければ、追加購入を領主に提案しても良いし、場合によっては、自分達で牛乳と珈琲を調達した上で、自前で提供することも視野に入れていた。 「あと、もう一つ頼まれてたのが、これね」 そう言ってアストリッドが取り出したのは、色彩豊かな表紙の冊子である。どうやらこれは、異界の魔書をアトラタンの言語に翻訳した代物らしい。エーラムで部数限定で発行されている貴重な書籍だが、エルミナが「この村のためにどうしても欲しい」と熱望して、エーラムとの付き合いの深いアストリッドが手に入れてくれた代物であるという。 ちなみに、その冊子の表紙には「じゃらん」と書かれていた。それがこの異界魔書の言語版のタイトルである。この本自体は地球産の魔書らしいのだが、地球の言語に詳しい者達に聞いても、誰もそのタイトルの意味を解析出来なかったため、やむなくそのままアトラタンの言語で同じ音になる文字をあてはめたという。 そして、この「じゃらん」は地球における様々な観光旅行情報が掲載されている書物であり、彼女が持参したこのバージョンでは、その中でも特に「温泉宿」に関する情報が詳しく掲載されているらしい。ずっと前から切望していたこの本をアストリッドから受け取ったエルミナは、さっそく中身を確認していく。 「なるほど。この『緑の台』は、この白い玉を打ち合う遊びのための物だったのね。あと、何かしらね、この白い小さな四角い石のようなものを並べてるのは」 エルミナがそう言いながら首を傾げていると、アストリッドが横から覗き込んで説明する。 「あぁ、それは『麻雀』という玩具です。詳しく知りたければ、私が遊び方をお教えしますよ。本来は異界の特殊な鉱石を用いて作るらしいのですが、木製で代用品を作ることも可能です」 エルミナは博物学者として知られてはいるが、あくまでも「小さな村の学者さん」にすぎないため、異界に関する知識となると、さすがにエーラム御用達の行商人であるアストリッドには及ばない。だからこそ、そういった足りない知識を補っていくためにも、このような書物を手に入れることを熱望していたのである。 「あと、この衣装も面白そうね」 「『浴衣』ですね。それも、地球、というよりも、地球の中でこの魔書を生み出した国で用いられている民族衣装らしいです」 そういって再びアストリッドが解説し始めると、今度は反対側からサラが(口元に「珈琲の牛乳割り」の輪っかをつけながら)覗き込みながら割って入る。 「へぇ〜、なんか着るのが楽そうだね」 どうやら彼女も、この書物に書かれた「異界の文化」に興味を持ち始めたらしい。その様子を見たエルミナは、嬉しそうな表情を浮かべながらサラに語り始める。 「こういったアイデアがあれば、この村の温泉も、もっと盛り上がるかもしれないし、どんどん領主様に提案してみてもいいかもしれないわね。もっとも、領主様もお忙しいだろうし、どこまで協力して頂けるかは分からないけど」 「領主様なら、いつもお姫様からの手紙見てニヤニヤしてるだけだから、たぶん、暇だよ。だから、今から行ってみよう!」 過去に送られてきた手紙も肌身離さず持参しているフェリーニのことを思い出しながら、サラはエルミナの手を引っ張り、彼の元へ連れて行こうとする。エルミナは最初は少し躊躇するものの、「善は急げ」という異界の言葉を思い出し、そのまま彼女に連れられて、領主の館へと向かうのであった。 1.6. 施設増築計画 「異界の温泉宿には、このような『卓球』や『麻雀』といった遊具が配置されているのが一般的なようです。いかがでしょう? これらをこの村の温泉宿にも導入してみるのいうのは?」 領主の館に到着したエルミナは、フェリーニと謁見した上で、「じゃらん」の記事の概要について説明しつつ、彼に対してそう力説する。だが、フェリーニは、そんな彼女の説明を話半分に聞き流しつつ、フィオナ姫からの手紙を何十回も読み込んでいた。 「ゲルハルト、どう思う? 俺、今、手紙読むので忙しいんだけど」 傍に立つ契約魔法師にそう告げると、彼はやや苛立ちながら答える。 「少しは仕事をして下さい、主上」 「いやー、ここら辺の政務は全部お前に任せてたから、よく分からないんだよ」 現実問題として、フェリーニに村の経営に関する判断を求めても無駄であることは、ゲルハルトも理解していた。となると、この問題は、実質的にはほぼゲルハルトの一存で決定出来る案件、ということになる。そして、先刻の師匠からの「娯楽施設を増やせ」という手紙に頭を悩ませていた彼にとっては、これは願ってもない提案であった。果たして、それが師匠の要望に沿う内容なのかどうかは分からないが、やってみる価値はありそうである。 「分かりました。やってみましょう。ただ、問題は費用ですね……」 ゲルハルトにそう言われたエルミナは、嬉しそうな表情をしながらも、なぜか微妙に視線をそらしながら答える。 「お話を聞き入れて下さり、ありがとうございます。この村の北側の山林には、木材として活用出来そうな樹木がまだ豊富にありますので、そこから伐採してけば、『卓球台』も『ラケット』も『麻雀牌』も、どうにか自力で作ることも出来るのではないかと思います。ただ、今はその地区の近辺に投影体が出没しているという問題もありまして……」 「だそうだ、ゲルハルト」 相変わらず、やる気のない態度でフェリーニはゲルハルトに告げる。 「仕方がないですね。その投影体の問題を片付けてしまわないと」 さすがに、投影体征伐ともなると、ゲルハルト一人ではどうにも出来ない。もともと、彼の習得している「夜藍の時空魔法」は、攻撃魔法などを切り捨てた流派であり、あまり戦争や魔物討伐には向かない。 すると、ここで珍しく、というよりも、ようやく、フェリーニが重い腰を上げた。 「そうだな。それでいいんじゃないかな。色々と面白い施設が増えれば、フィオナ姫も喜んでくれるだろうし。よし、やるか!」 投影体討伐ということであれば、フェリーニにとっては、むしろ本業である。そもそも、フィオナ姫を招待することになった今、まず、この村の安全を確保するためにも、投影体を成敗する必要があることは、さすがに彼にも分かっていた。 (ようやく仕事をしてくれるのか……) ゲルハルトが胸をなで下ろしている傍らで、フェリーニは、エルミナが先刻から、なぜかゲルハルトと目を合わせないようにしている様子が気になっていた。 (あいつ、エルミナに嫌われてるのかな?) 一方、そんな様子に全く気付いていないゲルハルトは、投影体討伐との関係から、もう一つの案件について思い出す。 「そういえば主上、実は最近、森の中で奇妙な石碑が発見されたという報告がありまして……」 ゲルハルトがそう言った瞬間、エルミナが一瞬、ビクッと体を震わせて反応する。それは本当に一瞬の出来事だったので、エルミナの傍らに立っていたサラも、ゲルハルトも気付かなかったが、この動きもフェリーニは見逃さなかった。射手としての才能にだけは定評がある彼は、人並み外れた眼力の持ち主でもあったのである。 「エルミナ、何か知らないか?」 彼女が何か隠しているのではないか、と考えたフェリーニがそう問いかけると、エルミナは淡々と答える。 「そうですね……、私もその石碑は見たことがありますが、何が書いてあるのかは分かりませんでしたし、特に危険な気配は感じませんでしたが……」 「そうか、じゃあ、危険はないな」 フェリーニは、あっさりとそう結論付ける。彼は眼力そのものには秀でているものの、その眼力で得た情報を有効に活用出来るだけの知性には欠けていた。 「……もう少し、考えるということをして頂けませんか?」 さすがに見かねたゲルハルトが苦言を呈す。 「だって、エルミナが言ってるんだから、信頼していいだろう」 「それはそうかもしれませんが……」 エルミナは、確かに評判の良い博物学者ではある。しかし、魔法師ではない以上、異界や投影体の問題に関しては、あくまでも素人である。それに「危険な気配」に関しても、常に蔓延しているとは限らない。エルミナが四六時中その石碑の近くを監視している訳でもない限り、この証言だけでは安全と言い切れない、とゲルハルトは考えていた。 もっとも、だからと言って、伐採作業を遅らせる訳にはいかない。ゲルハルトとしても、三日以内にその「卓球台」と「ラケット」と「麻雀牌」を作らねばならない以上、ここは「十分に警戒した上で山林へ軍を派遣する」ことを提案する。目的は「木材の伐採」と「石碑の調査」と「投影体の征伐」である。フェリーニもその方針には同意し、早速翌日から、フェリーニとゲルハルトが正規の駐留軍を率いて、サラ隊・メャニア隊と共に山林に出陣する、という方針で合意に至ることになった。 そして、何か不測の事態に陥った際の「知恵袋」として、彼等はエルミナにも同行を求めた。知識の絶対量としてはゲルハルトには及ばないが、まだゲルハルトはこの村に来て二年弱であり、この村で生まれ育ったエルミナでなければ分からないこともあるかもしれない、と言う判断である。エルミナもその旨を理解し、快くその方針に同意した。 「じゃあ、エルミナおねーさん、明日はよろしくね」 サラはそう言ってエルミナの手を取ると、エルミナは眼鏡越しに優しい笑顔で答える。 「えぇ。サラちゃん、怪我しないように気をつけてね」 「大丈夫、僕はビルトの村の自警団の団長だよ!」 「そうね。むしろ、私の方が足手まといよね」 そんなやりとりを交わしながら、二人は領主の館を後にして、それぞれの自宅へと帰って行くのであった。 1.7. 誘う女 一方、その頃、温泉宿で働いているメャニアは、ここ最近の「乾いた日々」にうんざりしていた。「危険な投影体」出現の噂が広まったことで、観光客数は減少し、彼女としては「男の精」に飢えた日々を送っていたのである。 無論、観光客がいなくても、この村の中には若い男性も沢山いる。だが、同じ男性ばかりでローテーションしていても面白くないし、あまり村の中で見境無く手を出しすぎると、村の女性達の嫉妬を買い、この村に居られなくなってしまう可能性もある。今の彼女としては、それは望ましくない。まだ彼女は「この村の中で一番気に入ってる男」の精を吸い取っていないのである。「彼」は今のところ、一人の「姫様」に夢中で、自分のことは眼中にないらしい。こんな状態のまま村を去るのは、リャナンシーとしての名折れである。 だからこそ、そんな今の自分の中の「乾き」を潤してくれるような「行きずりの男性」が現れるのを願っていたのだが、そんな彼女の前に、見るからに精力に溢れた一人の男性が現れた。アストリッドの護衛の一人、ラスティである。彼は温泉宿で女中として黙々と働いていたメャニアに対して、唐突にこう問いかける。 「なぁ、姉ちゃん。アンタもしかして、投影体か?」 そう言われたメャニアは、一瞬、ビクッと反応する。彼女は日頃は「人間」のフリをして生活しているため、初対面の男にいきなりその「正体」を見破られたことで、自分の過去の「様々な前科」も知られているのかもしれない、という恐怖感に襲われてしまったようである。 「え、えぇ。でも、私、クリスティーナ・メレテスさんに『無害な投影体』というお墨付きを貰っているものでして……」 「ほう、あの名門メレテス家の魔法師殿が」 「えぇ、ですから、私は本当にただの無害で無力な投影体なんですよ。そんな、人間に害を与えるような存在では……」 「あ、いや、別に、アンタをどうこうしようって訳じゃないんだ。俺は、投影体だから倒さなきゃいけないとか、そんなコト言ってる聖印教会の馬鹿共とは違う。ただ単に、なかなか面白い村だな、と思っただけさ。ガキンチョの邪紋使いが自警団長で、投影体が女中やってるなんてな」 ちなみに、聖印教会とは、混沌そのものを強く嫌う人々の集団であり、その中でも過激派として知られる(現在トランガーヌ南西部を支配している)日輪宣教団の人々は、人間に対して有害か否かを問わず、あらゆる投影体や邪紋使いや魔法師をも「討伐対象」と考えている。だが、さすがにそこまで極端な思想の持ち主は、ブレトランド全体を見ても多くはない。 「そうでしたか。ところで、お兄さん、ちょっと暇ですか?」 「ん? まぁ、暇っちゃあ暇だが……」 「どこかに遊びに行きませんか?」 「遊びに? とりあえず、俺は温泉に入ろうと思ってここに来たんだが、この村には何か他に面白い所でもあるのか?」 「そうですね……、『私の家』に来ませんか? 私、歌が得意なんですよ。ぜひ、あなたに聴かせたいと思いまして」 そう言って、メャニアは自分の中の「女」を剥き出しにしながら、艶かしい歌声を聴かせる。これが彼女の「男を口説き落とす常套手段」であった。その独特の声の揺らぎは男性の本能を激しく揺さぶり、大抵の男は、やがて気付いた時には、そのままメャニアの「身体」に吸い寄せられていってしまう。 だが、しばらく「ブランク」があったせいか、彼女の喉の調子は万全とは言えなかった。それでも、普通の男性であればあっさりと籠絡されてしまうほどの歌声ではあったのだが、ラスティはそのギリギリのところで、なけなしの理性で耐え忍ぶ。 「んー、でも今、俺、仕事中なんだよなぁ……。ここに来る前に一回競馬ですっちまって、エルバに散々怒られたところだし、また遊び歩いて問題を起こす訳には……」 どうやらラスティは、ここでメャニアに深くかかわると、何か本格的な『問題』を引き起こすことになりそうな、そんな気配を感じ取ったらしい。 「あぁ〜、そうなんですかぁ〜、じゃあ、また時間があったら、ぜひ来て下さい」 そう言いながら、メャニアは無念の想いでラスティを見送る。狙った男を籠絡出来なかった悔しさに満ち溢れていた彼女は、自分の中の「女の感性」を取り戻すためにも、そろそろ久しぶりに「本命」に手を出してみようかと考え、一人密かに妖しい笑みを浮かべながら、一通りの仕事を終えた後、領主の館へと向かうことにした。 1.8. 出発前夜 こうして、領主の館に到着したメャニアであったが、到着早々、フェリーニから「翌日の出陣計画」に自分が加えられていることを聞かされる。 「え〜、私は(男を漁るので)忙しいのに〜」 「俺だって、手紙読むのに忙しいんだよ〜」 そんな自堕落な姿勢の二人に対して、堪りかねたゲルハルトが一喝する。 「仕事しろ!」 日頃は穏便な口調の彼も、本気で怒った時は、相手が君主であろうと命令口調で怒鳴りつけることはある。彼はそれだけ言い放って、執務室から出て行った。 「仕方ない。ゲルハルトが怒るから、行こうか」 「そうね。新しい男を招き入れるためにも、温泉施設をリニューアルしないと」 「よし、じゃあ、楽しい温泉施設を作るぞ!」 こうして、ようやくフェリーニが本気でやる気を出したところで、ふと彼は、先刻のエルミナとの対話の時の彼女の態度を思い出した。 「そういえばあいつ、エルミナに嫌われてるのかな? なんか、目を合わせてもらえてなかったけど……」 そう呟いた彼に対して、メャニアは自身の中の「女の勘」に基づいて、一瞬で結論を出す。 「それはきっと、エルミナさんが恥ずかしがって、目を合わせられなくなってるんですよ。恋しちゃってるんですよ、きっと」 「そうか。よし、殺そう」 フェリーニは「自分以外の男の幸せ」が許せないらしい(ちなみに、メャニアも「自分以外の女性に男が惹かれること」は許せないタチである)。とはいえ、さすがにゲルハルトが死ぬと、自分の代わりに仕事をしてくれる人間がいなくなって困ることくらいはフェリーニにも分かる。そこで、ひとまず、彼の意思を確認してみようと考え、館を出て自宅に帰ろうとしていたゲルハルトを呼び止め、唐突に問いただした。 「なぁ、ゲルハルト、お前、エルミナのこと、どう思ってるの?」 「は?」 ゲルハルトは「君主を支える」という信念だけを心に生きてきた魔法師である。その支えるべき君主が、「このような人物」であることは、彼としては甚だ不本意ではあっただろうが、それでも今の彼の中では「フェリーニのために働くこと」が全てである。それ以外の人間に対して、特別な感情を抱くことはなかった。 「博識ですし、政務の手助けになって、いてくれて助かる存在ですが、何か?」 「いや、ちょっと気になっただけだよ。明日はよろしくな」 そう言ってフェリーニが私室に帰ると、そこにはメャニアがいた。彼女としては、まだこの館に来た「目的」を果たしていない。 「ねぇ、今日は誰と遊んでたの? どうせ、仕事はしてなかったんでしょ?」 「あぁ、ゲルハルトが優秀だからな」 「で、誰と遊んでたの?」 「いや、別に、自分の部屋に閉じこもってただけだよ」 「さっき、手紙がどうとか言ってたけど?」 「あぁ、なんか、誰かから手紙があって、その、混沌災害が増えてるとか何とか」 フェリーニは、自分がフィオナ姫の話を出すと、メャニアが不機嫌になることは知っている。だから、ここはひとまずそのことを隠しておいた方がいいと考えたようである。 「そう……、まぁ、いいわ。明日はよろしくね」 メャニアはやや不審に思いながらも、フェリーニの態度とこの場の空気から、今夜は「その時」ではないと感じ取ったようで、ひとまず今日のところは素直に帰ることにした。そして彼女が去ったのを確認した上で、フェリーニは改めてフィオナ姫の手紙を取り出し、満面の笑みで(通算約百回目の)読み返しを始めるのであった。 2.1. 唐突な遭遇戦 そして翌朝、フェリーニ、ゲルハルト、サラ、メャニアは、それぞれの部下を率いて、村の北部に広がる山林へ向けて出陣する。そして、エルミナも予定通りに彼等に同行して山へと向かうのであるが、サラやゲルハルトの目には、どうにも彼女の体調が思わしくないように思えた。率直に言って、寝不足のように見える。村を出て、山道に差し掛かったあたりでそのことに気付いたゲルハルトは、心配して彼女に声をかけた。 「エルミナさん、どうかされたんですか?」 そう言って、ゲルハルトが顔を近付けると、彼女は急に飛び跳ねるように彼から遠ざかる。 「え? あ、いや、その、だ、だ、大丈夫です、大丈夫です。全然平気ですから、はい、その、ご心配なく。本当に、大丈夫ですから、はい。ちょ、ちょっと読みかけの本があって、夜更かししてしまっただけですから」 「エルミナおねーさん、夜は早く寝なくちゃダメだよ」 そう言ってサラが抱きついてきたことで、少し落ち着いた様子を取り戻す彼女であったが、その傍らに立っていたフェリーニがサラを引っぺがす。 「こら、邪魔しちゃいけません」 「えー、くっついてただけなのにー」 そんなやりとりをしている中、突然、自分達の周囲の混沌濃度が急に高まっていくのをゲルハルトは感じる。彼がこの村に赴任して以来、村の近くでここまで高い混沌濃度を感じ取ったことはない。まるで、誰かが意図的に混沌濃度を引き上げているかのような「不自然な高騰」であった(ちなみに、混沌濃度を上げること自体は、エーラムで学んだ魔法師であれば誰でも出来る)。 そして、やがて彼等の前に、ティル・ナ・ノーグ界の住人であるゴブリンが出現する。毒刃を用いて人々を襲う魔物であり、単体としてはそこまで脅威ではないが、問題は「数」であった。十や二十という程度ではない。村の主力である四部隊を率いてきたフェリーニ達よりも、数としては彼等の方が多勢である。もし、彼等が部隊を率いていない状態であれば、間違いなく勝機がないレベルの大軍であった。 しかも、彼等と遭遇したこの地は、まだ村の近くであり、本来ならば投影体が出現するような領域ではない。明らかに「本来の自然率に反する不可思議な何か」がこの村の近辺で起こっていることは間違いなかった。とはいえ、現状ではその原因を確かめる術はない。というよりも、そもそも、そこまでの思考に至るだけの余裕がなかった。まず、今は目の前の彼等を駆逐することが先決だったのである。 「エルミナおねーさん、隠れてて!」 サラはそう叫ぶと同時に自らの身体を「獣化」させた。そして、その美しい銀色の毛並みをなびかせながら、自警団の者達を率いて、手近なゴブリン集団に襲いかかる。その鋭い爪牙の餌食となったゴブリン達は、激しく苦しみ、のたうち回る。更に、そこにフェリーニ率いる弓騎兵が後方から狙撃したことで、敵の一角はあっさりと消滅した。 それに対して、後方に控えていた他のゴブリン集団達は、最前線に立つサラの自警団に向かって集中攻撃を仕掛ける。彼等は、妖精族特有の、俗に「妖精の悪戯」と呼ばれる特殊な妖術を用いてサラ達を困惑させながら毒刃で斬りかかろうとするが、そこに、別の妖精による「悪戯」が介入し、彼等の毒刃は空を切る。同じティル・ナ・ノーグ界出身のメャニアの仕業であった。彼女は親衛隊に守られつつ、ひとまず相手の死角に回った上で、その妖力を用いて密かに特殊工作をしかけていたのである。 (「言葉が通じない相手」には、私の本領は発揮出来ないのよね……) 心の中で彼女はそうボヤく。本来であれば、彼女は先刻ラスティに使ったような「艶かしい声を用いた幻惑戦術」が得意なのだが、知性の低い怪物相手には通用しないのである。やがて、そんな彼女に対して、今度は別のゴブリン部隊が襲ってきたが、彼女は敵を翻弄しながらあっさりとその攻撃をかわし続け、全く傷を受けない。彼女は「敵を傷つける能力」には欠けているが、「自分が傷つかないように避ける能力」に関しては、サラにも負けていない。 こうして、ゴブリン達の攻撃をサラ隊とメャニア隊がギリギリのところでかわし続けていく一方で、サラの爪牙とフェリーニの弓が、着実に他のゴブリン達を葬っていく。一方、戦場で戦うことはあまり得意ではないゲルハルトの部隊にも別のゴブリン隊が襲いかかるが、彼等の毒刃が届く前に、ゲルハルト隊から先に(魔法を使わず)迎撃され、更にそこにフェリーニ隊の矢が浴びせられたことで、あっさりとゴブリン達の戦線が崩壊する。 生き残った僅かなゴブリン達はその場から一目散に逃亡しようとするが、後顧の憂いを無くすためにフェリーニ達は追撃を決行し、結局、最終的には全く犠牲者を出さぬまま、あっさりと勝利を収めた。 そして、全てが終わったところで、メャニアは皆の心を癒す歌を唄い始める。彼女の歌には、人(男)の心を惑わすだけでなく、癒す力も備わっていた。このような力があるからこそ、メャニアは(色々な意味で要注意人物であることは分かっていても)村における貴重な戦力として、重宝されているのである。 2.2. 学者の離脱 だが、そんなメャニアの歌が終わった時、ゲルハルトは一つの異変に気付いた。 「エルミナさんがいないぞ、どうした?」 ゴブリンとの遭遇戦が勃発した直後、サラは彼女に、物陰に隠れるように指示したが、その「物陰」からも彼女の姿が消えていたのである。だが、その場に残っていた足跡から、どうやら村の方に向かって逃げていったらしい、ということが分かった彼等は、すぐに彼女の後を追った。 そして当然のことながら、最も俊足な「獣化したサラ」が真っ先に彼女に追いつく。 「エルミナおねーさん、どこ行くの?」 「あ……、も、もう、大丈夫なの?」 「うん、もう平気だよ。まったく、恐がりなんだから」 サラは少し呆れたように笑いながらそう言うが、エルミナは怯えた様子のままであった。 「だって、私、何の力もないし……。あと、ごめん。やっぱり、私、一緒に行くのはやめた方がいいと思う」 「えぇ!? どうして!?」 「やっぱり、戦いになったら、私がいると足手まといだし……」 「そんなことないよ! いつだって僕が守るから!」 サラはそう言って翻意を促すが、それでもエルミナは意思を曲げようとはしない。 「大丈夫。私なんかよりも、ゲルハルトさんの方がよっぽど役に立つし。あの人がいるなら、私なんかがいなくても……」 「でも、ゲルハルトさんの仕事は、領主様のお守りだし」 どうやら、サラの中ではゲルハルトは「そういう位置づけ」であり、「村の物知りお姉さん」としてのエルミナの代わりが務まるとは考えられていないようである。 「あの人は、本当に凄い人だから。大丈夫よ、あの人に任せておけばね」 実際のところ、「村の物知りお姉さん」と「エーラムで森羅万象について学んだ魔法師」では、その知識量は段違いである。だが、それでも、この地に関することであれば、前者しか知らない情報もあるだろう。 とはいえ、危険な行為である以上、ここで彼女が尻込みするのは、サラにも理解は出来る。これまで一人で何度も森に足を運んでいる彼女が、このタイミングで(護衛兵もいる状態で)強硬に拒否するのかが、やや不自然にも思われ得る状況ではあったが、実際に投影体の大軍を目の当たりにした後である以上、それも仕方がないのかもしれない。 そして、最終的には、総責任者であるフェリーニがエルミナの意思を尊重して、彼女の帰還を認めた。既に村の入口付近にまで来ていたので、ここから彼女が帰還するのに特に護衛を付ける必要もないだろうと考えた彼等は、そのまま彼女を見送り、そして自分達は再び北に広がる山林へと足を踏み入れて行くことになったのである。 2.3. 木材と石碑 先刻のゴブリン達の襲撃もあり、警戒しながら少しずつ山林へと踏み込んでいったフェリーニ達であったが、その後は特に特に怪しい気配を感じることもなく、エルミナが言っていた「優良な木材」が生えている領域に到達した。 「では、皆さん、手分けして伐採して下さい」 ゲルハルトがそう指示すると、兵達はそれぞれに鋸を片手に伐採作業に入る。自ら率先して次々と効率良く木を切り倒していくサラを筆頭に、日頃は肉体労働に従事することが少ないゲルハルトやメャニアも、そしていつも不真面目なフェリーニも(姫様を楽しませるために)彼なりに頑張った結果、無事、計画していた新施設を作るために十分な木材が手に入った。 そして、まだ日が落ちるまで時間もあったので、件の石碑についても探索してみたところ、その木材を伐採した領域から少し奥に入ったところで、ゲルハルトが「それらしき石板」を発見する。それは、人間の身長の半分くらいの大きさであり、おそらくは何か文字が刻まれていたと思しき形跡はあったが、それが後から消されているような状態に見えた。そして、その石碑の近くには、その石碑を削ったと思しき粉末が広がっていた。 「どうやら、ここ数日の間に誰かによって消されたようですね……」 だが、その削り方(消し方)は粗く、ゲルハルトが神経を集中させて解析した結果、かろうじて、「そこに本来刻まれていたと思しき文字」をどうにか読み取ることに成功する。 そこに刻まれていた文字は「妖精界」の文字であり、その書式や装飾の形状から、どうやらこの石碑は「墓石」として設置されたものであること分かる。そして、その墓標に刻まれていたのは「スバース」と「ヴェロニカ」という男女の名であった。 この村において「スバース」と言えば、まず真っ先に思いつくのは、フェリーニによって殺された先代の領主のスバース・ハレーである。ゲルハルトは彼とは直接面識はないが、「民を省みぬ傲慢な暴君」であったと言われており、彼の統治時代を快く振り返る者はあまりいない(ある意味、前任者がそのような人物だったからこそ、今の「日頃は何もしない君主」に対しても、ビルトの民が特に不満に思うことなく、新たな領主として受け入れることが出来たのかもしれない)。 ちなみに、スバースには妻はいたが、その名は「ヴェロニカ」ではない。そして、家庭不和により、アントリアによる侵攻作戦の数年前に離婚したと言われている。その他に後妻や愛人がいたという話は聞いたことがないが、今ここにいるのは若い兵士達ばかりであり、スバースの若かりし日の女性関係についてまでは、誰も知る者はいなかった。 そんな中、メャニアだけは「ヴェロニカ」という名前に聞き覚えがあった。それは、「カリスマ痴女」として有名な伝説のリャナンシーの名である。 「メャニア、何か心当たりはあるのかい?」 「え、えぇ、そうね。私が聞いたことがあるヴェロニカという人は、伝説的な存在というか、その、カリスマ的に美しい女性だったと……」 とはいえ、メャニア自身も直接本人に会ったことがある訳ではない。そして、スバースと彼女が何らかの関係を結んでいたという話も、少なくともこの村に来てまだ5年程度の彼女は、聞いたことがなかった。 そして、この石碑の近辺には他に手がかりとなりそうなものが見つからないことを確認した上で、フェリーニが思い出したように提案する。 「エルミナなら、何か知ってるかもしれない。帰って聞いてみるか」 「今から帰還するというのですか、主上?」 「そうだな。せっかく手に入れた木材を使って、色々作らなきゃいけないし」 「頑張って、沢山のおと……、お客さんが沢山集まるような施設を作らなきゃ!」 メャニアはうっかり溢れそうになった本音を隠す。さすがに、一般兵士達もいる公の場で堂々と男漁りを宣言すると、また色々な軋轢を生みかねないということは、彼女も理解していた。 「しかし、まだ投影体に関する調査が不十分なのでは?」 「じゃあ、どうすればいいと思う? ゲルハルト」 ちなみに、現時点ではこの墓石の近くの混沌濃度は、さほど高くはない。無論、それはあくまで「現時点」での話であり、時間の経過か、もしくは何らかの「条件」が満たされることで一時的に高まる可能性は十分にあり得るのだが、だからと言って、「その時」が来るまでこの場で全軍で待機し続けるというのも、あまり現実的な作戦とは言えない。先刻は村の近くで投影体が出現していたことを考えれば、村の軍の主力をこの地だけに配置し続ける訳にもいかないだろう。 「この墓、掘ってみましょうか?」 メャニアが思い切ってそう提案する。ちなみに、先代領主スバースの墓は村のはずれにひっそりと建てられている以上、誰かが運んでいない限り、遺体はそちらに眠っている筈である。一方、投影体に関しては、一般的には「死と同時に消滅する」と言われている。メャニアとしては、この下に眠っているのが本当に「伝説のカリスマ痴女」なのか、興味が湧き始めていた。 とはいえ、さすがにここで「墓石」の下を暴くという行為には、やはり皆、抵抗がある。そんな中、フェリーニが思い出したように口を開いた。 「そういえば、昨日、石碑の話が出た時に、エルミナがビクッと反応してたから、もしかしたら彼女は何か知ってるかもしれない」 その話を聞いて、ゲルハルトが驚愕の表情を浮かべ、そして続けてフェリーニに対して怒号を上げる。 「どうしてそれを、もっと早く言ってくれなかったんですか!」 「いやー、ごめんごめん、忘れてた」 ともあれ、こうなるとやはり、まずはエルミナを問いただす必要がある、という結論で彼等は一致し、墓石はそのまま残した上で、ひとまず下山することになった。 2.4. 先代領主とリャナンシー こうして村に帰還した彼等であったが、さすがに全員でエルミナの所に詰問に行くのは、彼女の態度を硬化させるであろうと考え、彼女と仲の良いサラと、リャナンシーおよび妖精界に関する知識を持つメャニアの二人に向かわせることになった。本来であれば、ゲルハルトの方が適任のようにも思えたが、彼女がゲルハルトに対して警戒(?)しているような素振りを見せていたため、ここは彼女達に任せた方が無難であろうと判断したのである。 そして、サラとメャニアがエルミナの家を訪問すると、彼女は快く二人を迎え入れた。そしてメャニアは、山林で発見した石碑の件について彼女に伝えた上で、単刀直入に彼女に問いかける。 「ヴェロニカさんという方について、ご存知ですか?」 すると、彼女は少し間を開けた上で、何か思い出そうとするような素振りを見せながら、静かに答える。 「どこかで聞いたことがあるような気はしますが……」 その答えが本当なのか嘘なのか判断に迷ったメャニアは、更に直球で彼女に鋭く切り込む。 「そういえば、フェリーニ様から、昨日、この話をした時に、あなたが怯えるような素振りを見せていた、と聞いたのですが……、もしや、何かご存知なのですか?」 「……さて、どの話の時でしたっけ?」 エルミナは小首を傾げながらそう答えるが、メャニアの目には、その様子がやや挙動不審なように見えた。すると、メャニアが「次の一手」を考えている間に、先にエルミナの方から逆に切り込んできた。 「あなたは、何かご存知なのですか?」 エルミナは、メャニアがリャナンシーであることは知っている。その彼女が、このタイミングであえてメャニアにそのことを聞いてきたということは、やはり、彼女は「ヴェロニカ」の正体について知っているのかもしれない。無論、ただの深読みの可能性もあるが、ひとまずこの場で隠しても仕方がないと判断したメャニアは、素直に答える。 「私達の一族の伝説的な女性に、その名を持つ人がいる、という話を聞いたことはあります。私達はその人のことを『カリスマ痴女』と呼んでいました。その石碑に刻まれた人と、同じ人かどうかは分かりませんが」 「カリスマってことは、すごい人だったんだよね!?」 ここで、今まで黙っていたサラが、目を輝かせて興味津々な表情を浮かべるが、さすがにメャニアもそれ以上の説明は不適切だと思ったのか、苦笑いでごまかす。すると、今度はサラがエルミナに訴えかけた。 「エルミナお姉さん、お願い。その人のことが分かれば、山林の投影体のことが分かるかもしれないんだ」 そのまっすぐな瞳を目の当たりにしたエルミナは、少し迷ったような表情を浮かべつつ、サラに向かってこう告げた。 「……ごめん。サラちゃん、ちょっと、外に出てくれないかな?」 そう言われたサラは、不満そうな表情を浮かべながらも、素直に従った。大人には、大人にしか話せない事情もある、ということは、彼女も子供ながらに理解していたのである。 そして、彼女が家の外に出たのを確認した上で、エルミナは静かにメャニアにこう告げた。 「その墓石に刻まれているヴェロニカという女性は、おそらく、あなたが知っている人と同一人物です」 「では、なぜ、その人とこの村の領主が同じ石碑に?」 「ヴェロニカはかつて、この村に現れ、先代の領主様と恋仲になったと言われています」 「それって、今の私と全く同じ状況じゃないですか!」 「……やっぱり、『あなたも』そうだったんですね」 どうやら、メャニアがフェリーニを口説こうとしていることは、なんとなくエルミナにも見透かされていたようである。リャナンシーが際限なく男を求めるのは妖精としての彼女達の本能であるが、彼女のフェリーニに対する視線は、ただの本能や好奇心ではなく、本気の恋心であるようにエルミナには見えた。そしてそれは、彼女が知る「スバースとヴェロニカの物語」と似ているようにも思えたのである。 「ヴェロニカは、スバース様にだけは、本気で心を許していたようです。ただの『リャナンシーとしての遊び』ではなく」 「……彼女が亡くなった原因は?」 「諸説あります。殺されたとも言われていますし、自らこの世界を去ったとも言われています。あなたがた投影体は、何かをきっかけにこの世界から消失することもあるらしいですしね」 「その墓石と投影体との関係について、何か心当たりはありますか?」 「分かりません。私は、あの墓石の近くで投影体を見たことはないので」 彼女の言っていることが、どこまで真実なのかは分からない。ただ、少なくとも、まだ彼女が何かを隠しているようにメャニアには思えた。 「どうして、そのことを最初から言ってくれなかったんですか?」 そう問われたエルミナは、単刀直入に答える。 「こんな『大人の話』を、サラちゃんには聞かせたくなかったからです」 確かに、それはそれでもっともらしい理由ではある。ただ、果たして本当にそれだけが理由なのか、この時点ではまだメャニアには判断がつかなかった。 2.5. 混沌の「匂い」 その頃、外で待っていたサラの前に、一人の女性が現れた。アストリッドの護衛の一人であり、サラにとっては「知人(フリック)の知人」に相当する、双剣使いのエルバである。 「例の学者先生の家ってのは、こっちでいいのかい?」 「そうだよ。でも、何の用なの?」 「いや、私等も、ちょっと今、ある『使命』を背負っててね。まぁ、そう言うと、ちょっと大袈裟に聞こえるかもしれないけど、とりあえず、あの博識そうな先生に、この機会に色々聞いてみたいと思ってさ」 彼女が言うところの「使命」とは何なのか、サラは興味があったが、今はそのことについて掘り下げるべきではないように思えた。彼女の幼い頭で、これ以上ややこしい話を抱え込むのは難しいということは、彼女も本能的に分かっていたようである。 「そっか。でも、今はダメだよ」 「あぁ、先約がいるのか。なら、仕方ない。それにしても、珍しいよな、邪紋使いでありながら、学問にも精通してるなんて。私の周囲の邪紋使いは、基本的に、あまり頭は回らない奴が多いからね。私も含めて」 エルバが自嘲気味にそう言ったところで、サラは不可思議な表情を浮かべる。 「エルミナおねーさんが、邪紋使い……?」 「え!? 違うのか!? いや、まぁ、確かに、普通の邪紋使いとは、ちょっと違う気はしたんだけど、そもそも私達自体が『普通の邪紋使い』じゃないらしいからな」 怪訝そうな顔で見つめるサラに対して、エルバは少し困った顔をしながら、説明を試みる。 「私達は、話すとちょっと長くなるんだけど、混沌の『匂い』を嗅ぎ分けることが出来るんだよ。だから、邪紋を見せてもらわなくても、あんたが『邪紋使い』であることは分かったし、ここの温泉に勤めている金髪の彼女が『投影体』だってのも分かる。で、あの学者先生からも、確かに混沌の力を感じたんだ。ただ、それが投影体ほどの強い力ではなかったから、てっきり、邪紋使いなんだろうと思ってたんだが……」 「おねーさんに、そんな力が……?」 「あ、いや、確かな話じゃない。ただ、私等のこの『嗅覚』は、外れたことはないんだ。そして、私達四人は全員、あの先生から『混沌』の匂いを感じ取ってる」 いきなり見ず知らずの人にそう言われて、それをそのまま信じる道理はない。ただ、サラの直感的に、エルバが嘘を言ってるようには見えなかった。もっとも、彼女自身の勘違いという可能性もある以上、どちらにしても、そのまま信用出来る訳ではない。 「あれ? もしかして私、言っちゃいけないことを言ってた? だとしたら、このことは突っ込まない方がいい話なのかもしれないな。まぁ、とにかく、大人には色々あるんだよ」 そう言って、エルバはひとまず去って行った。サラとしては、エルミナが自分に隠し事をしているとは思いたくない。しかし、現に今、サラはエルミナの家の外に出されて、家の中ではサラに言えない「秘密の会話」がなされている。この状態では、彼女がまだ何か他にも隠しているのではないか、と疑ってしまうのも仕方がない。 そして、なかなかエルミナとメャニアの会話が終わらないことにしびれを切らした彼女は、思わず家の外から扉を叩きつつ、大声で叫んだ。 「ねーねー、おねーさん、さっき言ってた『ちじょ』ってなーにー?」 この声が聞こえたエルミナは、さすがに家の外でそんなことを言われるのも困るので、話を切り上げて、サラを中に入れる。すると、サラは訝しげな表情を浮かべながら、エルミナに問いかけた。 「おねーさん……、僕に、何か隠してる?」 「そうね、全てを話している訳ではないわ。話さない方がいいこともある。だから、その『痴女』という言葉は、もう忘れて」 彼女が言うところの「話さない方がいいこと」とは、本当にそのことだけなのか、サラもメャニアも確証は持てなかったが、ひとまず、この時点ではこれ以上は踏み込めなかった。 「……そうね、とりあえず、あと何年かしたら、あなたも分かることになるわ」 この場はエルミナに話を合わせた方がいいだろうと思ったメャニアは、そう言ってこの場を切り上げることにする。そして、サラも素直にこの場は彼女に従った。 「おねーさんが僕に何を隠していたとしても、僕はおねーさんの味方だからね」 「また、何か分かったら教えて下さい。この村の平和のためにも」 そう言って、二人は去って行く。その二人の言葉を胸に刻みつけながら、エルミナは複雑な表情を浮かべつつ、静かに扉を閉じた。 2.6. 合流と迷走 こうして、サラとメャニアがエルミナと交渉している間に、ゲルハルトとフェリーニは、来訪者の歓迎のための準備を進めていた。 ゲルハルトは、伐採してきたばかりの木材を用いて「卓球用ラケット」を作り上げる。正確な設計図は存在せず、「じゃらん」に掲載されている(写真を模写した)絵に基づいて作っているため、どこまで正しく出来ているのかは分からないが、ひとまず「握って、球を打ち返すこと」くらいは可能な状態にまで仕上げることに成功した。 一方、フェリーニはアストリッドから購入した「東洋の布」を用いて、「浴衣」を作っていた。庶民出身であるが故に、若い頃は破れた自分の服も手縫いで直すことが当然の環境で育っていた彼には、最低限度の裁縫技術が備わっていたようである。そして、自分の手製の浴衣をフィオナ姫が着る姿を妄想しながら縫い続けた結果、その思いが実ったのか、予想外の高品質の浴衣を次々と完成させていくのであった。 だが、その浴衣を最初に着たのは、フィオナでもカルディナでも無かった。エルミナの所から戻ってきたメャニアが、勝手にその完成した浴衣を拝借して、胸元を軽くはだけさせた状態で着流しながら、フェリーニとゲルハルトの前に現れたのである。だが、フェリーニがそれに対して何かを言う前に、メャニアは報告を始める。そうなると、彼等としては黙ってその話を聞く方を優先せざるを得なかった。 そして、彼女が一通り話を終えると、今度はサラが逡巡しながらも口を開く。 「アストリッドさんの護衛の人が言うには、エルミナおねーさんは、僕と同じ邪紋使いなんだって」 それを聞いたメャニアは、困惑した表情を浮かべつつ、同じ「アストリッドの護衛」の一人であったラスティが、自分のことを一目見ただけで「投影体」を見破ったことを思い出す。彼等が何者なのかは分からないが、あながちデタラメでもないように彼女には思えた。 「やっぱり、あの人はまだ何か知ってる気がするわね。後からもう一度、話を聞きに行った方がいいかも」 「エルミナおねーさんが隠しているのには何か理由があると思うから、傷つけないようにね」 一方、その話を聞いたフェリーニとしては、やはり、「彼女がゲルハルトを避けていたこと」が、どうしても気になる。 「ゲルハルト、何か知ってるか?」 そう問われたゲルハルトだったが、正直、彼としては何も思いつかない。そして、彼にとってエルミナは、貴重な「信頼出来る仕事仲間」なので、あまり深く踏み込んで、彼女との関係を悪化させたくない、という思いもある。 「ところで、墓石の文字が削られてる理由については?」 「あ、聞き忘れてた。次に行った時には聞いてみるわ」 フェリーニにそう言われたメャニアはそう答えたものの、実はそれ以前の問題として、そもそもなぜ彼女が「石碑」の話を聞いた時に怯えたような反応をしたのかについても、ごまかされたままである。これまでに集めた情報から、色々な可能性が考えられるが、それらの仮説にしても、まだ現時点ではどれも「正しい」とも「間違っている」とも確信出来ない状態であった。 「とにかく、フィオナ姫が来る前になんとかしなくちゃ」 フェリーニがそう言うと、メャニアは表情を一変させる。 「え? なにそれ? 聞いてないんだけど?」 実際、言ってない。フェリーニが珍しくやる気を出している原因が、「明後日、フィオナ姫が来るから」という理由だということを、彼女は聞かされていないのである。フェリーニとしては、このことをメャニアに話すと面倒な事態になるかもしれないと思って、あえて当日まで彼女には黙っていようと考えていたようだが、ついうっかり本音が出てしまったようである。 そして、これを聞いたメャニアは、途端にやる気を失った。彼女にとってフィオナ姫は、最大の「恋敵」なのである。 「てか、こんな時に来てもらうのはやめてもらいましょうよ。今は危険な状態だし。姫にはお帰り願いましょう」 「大丈夫だよ、森には何も出なかったじゃないか」 そう言って二人は口論を始めるが、さすがにメャニアとしても、今から姫の来場そのものを阻止するのが難しいことは分かっていた。こうなると、彼女に残された道は、全力で「二人の時間」を邪魔することである。「悪戯好きの妖精」としての彼女の真価が今、試されようとしていた。 2.7. 前日の準備 そして翌日、ひとまず「明日の接待の準備」を先に終わらせたいと考えていたフェリーニとゲルハルトは珍しく意気投合し、昼までの時間を使って、「卓球台」と「麻雀牌」も無事に完成させる。どちらも、さすがに『じゃらん』に掲載されていた「本物」に比べると、多少「いびつな形状」になってはいるが、それでも、「素人の遊び」で用いる程度であれば、十分に楽しめそうな完成度であった。 その上で、思ったより早く完成させた時間に余裕が出来たフェリーニは、「混浴用の小型浴場を作りたい」と提言するが、あっさりとゲルハルトに却下されてしまう。やむなく彼は、フィオナ姫の泊まる予定の部屋を、彼女が好きそうなファンシーな装飾で飾り立てることで、少しでも彼女が快適に過ごせる環境を整えることに従事するのであった。 一方、メャニアは姫よりも自分が優位に立つために、自分専用の「より露出度の高い浴衣」を作ろうとしたが、失敗に終わる。どうやら、妖精界の衣服と、地球の衣服では、色々と勝手が違いすぎて、やり方を間違えてしまったらしい。 そんな中、アストリッドはゲルハルトに対して、無責任に新たなアイデアを提示した。 「ねぇ、この本の一番最後に載ってる『温泉卵』ってやつ、作ったら美味しそうじゃない?」 「なるほど。確かに、この温泉郷の『目玉』となるような食べ物は必要ですね」 「『卵』だけに、ね」 そんなやりとりの後、ゲルハルトとサラが試行錯誤を重ねた結果、どうにか無事に完成する。そして、サラがその卵をエルミナの所に届けに行った。 「まぁ、これが、『じゃらん』の最後に載ってた卵なのね!」 「うん、村の新名物だよ」 そう言って胸を張るサラに対して、エルミナは申し訳なさそうな表情を浮かべる。 「本当は、こういう時に私がもっと皆の役に立てればいいんだけど、所詮、私の知識なんて、ゲルハルトさんには敵わないもんね」 そんな彼女の力無い様子を心配したサラが、元気付けるためにその卵をエルミナに差し出そうとするが、エルミナはそれを笑顔で断る。 「大丈夫。それより、ゲルハルトさんに食べさせてあげて。あの人はいつも激務で忙しいし、この村に必要なのは、私じゃなくて、あの人だから……」 「ねえ……、もしかして、ゲルハルトさんに嫉妬してるの?」 「嫉妬か……。そうなのかな? そうなのかもしれないし、むしろ、『この気持ち』が『ゲルハルトさんへの嫉妬心』だと言うのなら、そういうことにしておいた方がいいのかもしれないわね」 エルミナは、遠い目をしながら、独り言のように、自分に言い聞かせるように、そう呟いた。その様子から、サラはエルミナがゲルハルトに対して「何か特別な想い」を抱いていることを薄々察する。しかし、まだこの時点では、サラはその想いの正体について、確信は持てずにいた。 3.1. 来賓到着 そして翌日、遂にビルトの村に、フィオナとカルディナが到着した。さっそく、フェリーニがゲルハルトを伴って、満面の笑みで二人を出迎える。 「フィオナ姫、ようこそ、我が村へ。これから私が姫を極上の温泉宿にご案内させて……」 ここで、突然横から現れたメャニアが割って入ろうとする。 「フィオナ姫様、その前にお話が……」 しかし、その動きを察知していたフェリーニは、メャニアを姫に近付けさせるのを絶妙なポジショニングで阻止する。 「悪いね、メャニア、それはまた後で頼むよ」 「…………主君、あなたは色々と忙しいのでは?」 「主君? なにそれ?」 売り言葉に買い言葉とはいえ、このあまりにもヒドい言い分に、今度はゲルハルトが横から口を挟む。 「……さすがに、今の一言は看過出来ませんよ」 「大丈夫。残ってる仕事は後でちゃんと真面目にやるから」 そう言って、フェリーニはフィオナ姫を連れて温泉宿へと向かう。彼が真面目に仕事をする筈などない、ということは分かっていたゲルハルトも、来客の前でこれ以上見苦しい口論をする訳にもいかないと思い、そのまま二人を送り出す。 「今の、その、随分と艶やかな服を着ていらっしゃった方は、ご側近の方なのでしょうか?」 フィオナ姫は、不思議そうな顔をしながらそう問いかける。ちなみにメャニアの服に関しては「艶やかな服」というよりは、「ほぼ全裸の服」と言った方が適切である。 「えーっと、多分、あの人は『気にしちゃいけない人』です」 そんなやりとりをかわしつつ、二人が去って行くのを横目に見ながら、今度はカルディナが、その場に残ったゲルハルトに問いかけた。 「私の手紙は、ちゃんと届いているか?」 「はい」 「では、ちゃんと趣向を凝らした『もてなし』をしてくれるんだろうな?」 「それはもう。行商人から、異世界の文化を教えて頂き、温泉街にぴったりの娯楽を取り揃えて参りました」 「ほう、それは楽しみだ」 そう言いながら、カルディナはゲルハルトに連れられて、まずは「卓球部屋」へと案内されるのであった。 3.2. 接待開始 「フィオナ姫、こちらでございます」 そう言って、まずは彼女を(自身の手でファンシーにデコレーションした)客室へと案内しようとするフェリーニであったが、そんな二人を密かに遠方から見ていたメャニアが、妖精の力を使って妨害しようとする。だが、その目線に気付いたフェリーニは、逆に彼女に対して激しい視線で訴えかける。 (邪・魔・す・る・な!) その目力にたじろぎ、思わずメャニアはその「悪戯の手」を止める。まがりなりにも、フェリーニは「聖印」の力を持つ君主である。まだ若いながらも、本気になった時には「目力」だけで部下を従わせるだけのカリスマは持ち合わせていた。もっとも、「こういう時」くらいしか本気にならないのが問題なのだが。 * 一方、その頃、カルディナは浴衣に着替えて、ゲルハルトと卓球を楽しんでいた。 「ほうほう、なるほど。これは楽しいな」 二人とも、卓球自体が初体験なので、ひとまずは素直に「相手のいるところ」に向かって打ち合う、典型的な「温泉卓球」を堪能していた。自分が苦労して伐採し、裁断し、加工して作った卓球台とラケットで師匠が満足してくれて安堵したゲルハルトの表情も、自然に緩む。 そんな中、ゲルハルトは少し離れたところから、誰かが自分を見ているような視線を感じ取った。ラケットを振りながらチラリと一瞬そちらに目を向けると、そこからエルミナらしき気配を感じ取る。 (なぜ彼女がここに……?) その意図を全く理解出来ずに困惑したゲルハルトは、集中力を乱して空振りしてしまう。すると、カルディナはひとまず満足したようで、汗で乱れた髪をかきあげながら、動きすぎて着崩れた浴衣姿のまま、ゲルハルトに近づいてきた。 「よし、じゃあ、そろそろ一緒に風呂に入ろうか」 そう言って、カルディナはからかうような表情を浮かべながら、ゲルハルトの腕を握り、自分の胸に押し当てながら、風呂場へと向かおうとする。彼女が言うところの「一緒に風呂に」という言葉が、どのレベルの行為を意味していたのかは分からないが(ちなみに、この温泉宿に「混浴」用の浴場がないことは、カルディナも知っている)、この瞬間、遠くで「誰か」が走り去っていく音が聞こえる。しかし、この時点においてもまだ、ゲルハルトは「この状況」の意味を理解していなかった。 3.3. 隠しきれなくなった想い そんな中、偶然、この場面を目撃してしまった人物がいた。サラである。彼女は、何か自分にも出来ることはないかと思い、温泉宿の中を散策していたのである。幸か不幸か「ゲルハルトとカルディナの仲睦まじい(ように見えなくもない)姿を見て走り去ろうとするエルミナ」を目の当たりにしたサラは、すぐに彼女に追いつき、その腕を掴んで足を止めさせる。 「エルミナさん、どうしたの?」 「な、な、な、なんでもないのよ。本当に、なんでもないから」 頬を紅潮させつつ、涙目になっているエルミナの様子から、さすがに「女」としてはまだ幼いサラも、彼女の「気持ち」を理解した。 「エルミナさん、ちょっとそこで待ってて」 そう言ってサラは、カルディナによって脱衣場へ連れて行かれようとしていたゲルハルトの元へと走って行こうとする。 「ま、待って。サラちゃん、もういいの。いいのよ。私はもう、この村にいるべきじゃ……」 「大丈夫。多分、ただの勘違いだから!」 そう言って、サラは一目散にゲルハルトの後を追おうとしたが、この時、エルミナの周囲の混沌濃度が、ほのかに上がっていた。そのことにサラは気付いていたが、今はそのことよりも、まず「彼」をこの場に連れて来ることで頭が一杯であった。 「魔法使いさん、ちょっと待って下さい!」 一目散に駆けつけた彼女は、すぐに二人に追いつき、カルディナに向かってそう叫んだ。さすがに「猫の獣人」の脚力は伊達ではない。 「ん? なんだ?」 「お弟子さんを貸して下さい!」 そう言われたカルディナは、一瞬、キョトンとした表情を浮かべた上で、急にニヤけた表情になる。 「なんだ、ゲルハルト、やっぱりお前、『年上はダメ』なのか。そうかそうか、どおりで、この私がいくらからかっても、全然反応しなかった訳だ。なるほど、お前、『そっち側』だったんだな。それなら仕方ない。そういえばお前、エーラムにいた頃も、フェルガナんとこのユニスと仲が良かったっけな」 ちなみに、「ユニス」とは、ゲルハルトと同時期に生命魔法科に所属していた魔法師である。ゲルハルトから見て10歳下の少女であり、実年齢で言えば、サラよりも一つ下なのだが、外見年齢的にはサラの方が更に幼く見える。 「い、いや、違いますよ。私、別にこの子ともユニスとも何も……」 「別に構わんぞ、そこのちっこいの。こいつが気に入ったなら、煮るなり焼くなり、好きにしてくれればいい。放っといてもこいつは自分からは何もせんからな。何をしてもかまわん。親代わりの私が許す」 実際のところ、カルディナはゲルハルトの「義母」という立場でもある。ただし、実際に面と向かって弟子達から「母上」と呼ばれると、彼女は激昂する。 「いや、そういう訳じゃないんですけど……、とりあえず、借ります」 サラはそう言って、力付くでゲルハルトを連れて、エルミナの所に戻る。一応、エルミナは戸惑いながらも、その場でサラが来るのを待っていた。そして、ポカンとした顔で連れて来られたゲルハルトを目の前にして、彼女の表情は更に紅潮し、シドロモドロな態度のまま、突然、謎の「弁明」を始める。 「あ、いや、あの、ごめんなさい。本当に、本当になんでもないんです。私が勝手に想っていただけというか、その……」 エルミナは自分でも何を言っているのか分からないまま、涙目を浮かべつつ取り乱す。その様子を見たサラが、ゲルハルトを怒鳴りつけた。 「ゲルハルトさんが泣かせたんだよ!」 「はぁ!? 私が一体何を!?」 そして、彼女の周囲から、激しい混沌の気配が高まり、そして彼女の周囲に四匹の「ブラックドッグ」が出現する。彼等もまた、ゴブリンやリャナンシーと同じ妖精界の住人である。だが、人類への脅威という意味では、ゴブリンとは比べものにならぬほどに強力な存在であった。 「え? なに? 何が起きたの!?」 エルミナは、自分の周囲で起きている事態にただひたすら混乱する。そして、ブラックドッグ達の戦意は、彼等が取り囲むエルミナではなく、なぜかゲルハルトとサラに向けられていた。 * その頃、フェリーニはフィオナ姫を「浴室」へと案内しようとしていた。 「フィオナ姫、ぜひ一緒に温泉に……」 だが、そこで再びメャニアが割って入る。 「ダメですよ、フィオナ姫。あなたは『この国のみんなのもの』なのですから、特定の誰かと過度に仲良くしては、他の人々が悲しみます」 「邪魔すんじゃねーよ、お前!」 そんなやりとりを繰り返していた最中、宿の中の少し離れた場所から、フェリーニとメャニアは混沌の気配を感じ取った。 「フィオナ姫、危険な気配を感じます。ここで待っていて下さい。私が行って、鎮めて参ります」 先刻までのデレデレした表情から一変したフェリーニは、「領主の顔」になって、フィオナ姫にそう伝えた。そんな彼の表情を横目に見ながら、今度はメャニアが口を開く。 「では、私もここに残って……」 「ダメだ! お前は一緒に来て働け!」 「えぇ〜、私、戦いでは役に立ちませんよ〜」 そう言って渋るメャニアの首根っこを引っ張りながら、フェリーニはフィオナに一礼する。 「分かりました。フェリーニ様、どうかご武運を」 「すぐ戻ってきますね、姫様!」 フェリーニは笑顔でそう答えて、メャニアを伴って、その「混沌の気配」の方向へと走り去って行く。フィオナは、そんな彼等の姿を心配そうに見送るのであった。 3.4. 温泉災害 だが、彼等が到着する前に、無情にもブラックドッグの中の一匹が、ゲルハルトに向かって襲いかかっていた。魔法師である彼には、その鋭い牙を避けられるような戦闘技術などある筈もない。 「ゲルハルトさん!」 エルミナがそう叫んだのとほぼ同時に、ブラックドッグの鋭い牙はゲルハルトの身体を貫き、深手を負った彼の身体から激しい鮮血が飛び散る。 「いやー! やめてー!」 そんなエルミナの絶叫が響き渡ると、その声にブラックドッグ達は一瞬反応したような素振りを見せた上で、残りの三匹は、サラに向かって突撃した。サラは必死にその攻撃をかわそうとするも、その中の一匹の牙はかわしきれず、彼女もまた深い傷を負う。もし、同じ一撃がもう一度彼女に突き刺されば、その段階で彼女は瀕死状態に追い込まれていただろうが、獣化したサラは研ぎ澄まされた爪で敵の急所を狙いつつ、ギリギリのところで奮戦していた。 そして、ゲルハルトが自力で自分の傷を魔法で癒しつつ、なんとか応戦しようとしているところで、ようやくフェリーニとメャニアが到着する。 「おい、お前ら、やめろ! 温泉を壊すな!」 温泉宿の屋内で発生した戦闘に対して、思わずフェリーニはそう叫んだ上で、弓を放ってブラックドッグの動きを牽制しようとするが、彼等はその弓の制止を振り切って特攻してくる。 一方、メャニアは得意の歌で、皆の精神力を回復させつつ、サラの周囲にまとわりつくブラックドッグに対して、『悪戯』の力を用いてサラへの攻撃を妨害する。 そして、そのサラの周囲に結集した三体のブラックドッグに対して、フェリーニが持てる全ての聖印の力を込めて、光の矢を浴びせた結果、その圧倒的な威力の前に、三匹のうちの二匹はあっさりと消滅する。日頃は昼行灯(どころか、完全な役立たず)のフェリーニだが、弓術一つで庶民から領主の座にまで上り詰めたその実力は、誰も疑う余地もないほどに一線級であった。 そして、残った二匹うちの片方はサラの猛攻によって撃破されたものの、残りの一匹がサラやフェリーニに対して激しく襲いかかる。ゲルハルトは魔法で彼等の傷を癒しつつ、茫然自失としているエルミナに駆け寄った。 「気をしっかり持って下さい!」 その声で、ようやくエルミナは自我を取り戻す。そして、残った一匹に対しても、サラがメャニアの支援を受けて全力の一撃を叩き込んだ結果、見事に殲滅に成功する。だが、その一撃があまりにも強力すぎて、その威力は建物の床を貫き、そのまま地中深くにまで激しい衝撃波が到達した結果、その地中の奥底から突然、強烈な水流が地上に向けて吹き出てきた。 「こ、これは、新たな源泉!?」 その水流は辺り一面に広がり、温泉宿の一部は半壊状態に陥ってしまう。そんな中、ようやく事態を把握したエルミナは、激しい自責と憔悴の表情を浮かべながらも、自分の中で一つの「覚悟」を固めるのであった。 4.1. 博物学者の正体 「私は、この村の先代領主スバースと、『カリスマ痴女』と呼ばれた伝説のリャナンシー・ヴェロニカの間に生まれた娘です」 全てが終わった後、エルミナは皆の前でそう語った。彼女曰く、エルミナを産んだと同時にヴェロニカはこの世界から消滅し、当時はまだ妻帯者であったスバースは、産まれたばかりの彼女を、信頼出来る部下であったワイズウッド卿の養女として育てさせることにした。ただし、スバースは自分が彼女の父親であることは密かに伝えており、暴君と呼ばれた彼も、「本気で愛したヴェロニカの忘れ形見」であるエルミナに対してだけは、優しい声をかけることもあったという。 そしてエルミナは、戦死後は誰からも見向きもされなくなった墓中のスバースを不憫に想い、密かに墓から遺骸を掘り出し、彼女の正体を知るワイズウッド家の使用人の人々と共に、「かつてヴェロニカがこの世界に出現した場所」と言われていた山林へと移送し、自分が持っていた「母の形見」と共に、改めて埋葬したのだという。墓石の名を妖精界の文字で書いたのは、普通の人が見ても読めない状態にすることで、その存在をカモフラージュしようとしたためであった。 「黙っていたことは、本当に申し訳ございません。私は、怖かったのです。私の正体が知られた時、私の居場所がこの村から無くなってしまうことが……」 スバースの娘であることはともかく、「かつて領主を誘惑した投影体」の血を引いているエルミナは、村にとっては、少なくともメャニアと同程度には「警戒すべき対象」であることは事実だろう。そして、投影体としての力を持つが故に武官として村に貢献することも出来るメャニアに対して、エルミナにはメャニアのような力は備わっていない。その意味でも、あえて危険を背負ってまで村で抱え込むべき人材なのかどうかは、微妙なところである。 そして、ゲルハルトやメャニアが今回の調査隊に加わると聞いて、墓石をそのままにしておくと、その文字を彼等に解析されてしまい、そこから調査を進められることで、いずれ自分の正体が発覚してしまうのではないか、ということを恐れた彼女は、調査隊が出陣する前日の夜に一人で山林に赴き、自分が作った石碑の文字を自分で削り消そうとした。だが、夜の月明かりの下では「完全に消えた」と思っていたその文字も、日光の下ではゲルハルトの目を逃れることは出来なかったようである。 「結果的にこのような騒ぎを起こしてしまった以上、もう私にはここにはいる資格はありません。もちろん、咎人として裁いて頂いても結構です」 エルミナはそう言い切るが、実際のところ、彼女の周囲に投影体が出現したことは、彼女が意図的にやったことではない。そして、幸か不幸かこの村に滞在していた「エーラムの高等教員」であるカルディナと、「アントリアの次席魔法師」であるクリスティーナに「この状況」を説明した上で分析を依頼した結果、二人とも、ほぼ同じ結論を導き出した。 おそらく、エルミナの身体に流れる、「カリスマ痴女」としてのリャナンシーの血が、何らかの理由で彼女の気持ちが高揚した時に、無意識のうちに騒ぎ出し、そして妖精界の住人達を招き入れてしまっているのではないか、というのが、彼女達の見解である。実際、ヴェロニカには「雄(牡)でさえあれば、言葉が通じない相手であっても魅了するほどの痴女力があった」という伝説もある(もしかしたら、5年前にメャニアがこの村に出現したのも、彼女の「ヴェロニカの血」への本能的な憧れが引き起こした現象なのかもしれない)。 もっとも、その「気持ちの高揚」が何を契機に発動するのかは分からない。ただ、あの墓石の近くで投影体が数多く出現していた件に関しては、おそらく、エルミナがその墓石に何度も足を運び、その場で亡き両親への想いを募らせたことが、その周辺での混沌濃度を不安定にさせたのではないか、と推測出来る。 そして、もともと混沌濃度が低い筈の村の近辺、更には村の宿屋の内部において、今回のような事態を引き起こすことになった「気持ちの高揚」の正体については、彼女自身はもちろん、この場にいる大半の者達が理解していた。そう、その原因となった「張本人」以外は。 「さて、何が原因だと思う、ゲルハルト?」 「何なんでしょうね、ゲルハルトさん?」 フェリーニとメャニアが囃し立てるようにゲルハルトを問い詰めようとするが、彼自身は全く予想がつかないまま、「それ以前のレベルの逡巡」を抱え込んでいた。 彼は「混沌」そのものを嫌う。だからこそ、混沌そのものであるメャニアに対しては(それだけが原因ではないだろうが)いい印象は持っていないし、エルミナの身体に「混沌の血」が流れていると知ったことで、彼女に対して強い忌避感が生まれていることは事実である。そして、彼女をこのまま村に住まわせ続ければ、再び今回のような混沌災害が起きる可能性は十分にある。 だが、彼にとってエルミナは「仕事をしない君主」「幼すぎる自警団長」「男遊びしか頭にない女中」という、厄介者揃いのこの村における、数少ない「信頼出来る同志」なのである。ここ最近、自分に対して彼女がよそよそしい態度を取るようになっていたことは気になっていたものの、それでも、彼女ほど安心して何かを任せられる人材は、他にいない。 「今、あなたがいなくなったら、私の仕事の負担が増えすぎて、非常に困るのです。私は混沌を心の底から憎んでいますが、さすがに自分の身を犠牲にしてまで、貴重な協力者を捨ててしまうような選択は、無意味ですから」 幸いなことに、村の人々の大半は、今回の投影体騒動の原因が彼女だとは思っていない。むしろ殆どの人々は、彼女のことは「巻き込まれた被害者」だと思っている。この状況で、あえて余計な「真相」を伝える必要もない(しかも、ゲルハルト自身が、その真相の「核心部分」に気付いていない)。本音を言えば、三日間かけて準備した諸々が、あの戦いで宿屋が半壊したことで水泡に帰してしまったことに対しては、ここにいる者達にはそれぞれに想いはあるが、それについては、あの場で戦闘を引き起こしてしまった上に、必要以上の力で床を壊してしまった彼等(主にサラ)にも責任はある。 「あなたは、私が政務を遂行する上で、非常に助けになる存在です。いなくなってもらったら困ります。ですから、この一件についてあなたの罪を問うことはしません。結果的に、新しい源泉も湧いた訳ですし、長い目で見れば、これはこれで村にとっても良いことかもしれません」 「では、私はまだここに残って『あなたのために』働かせてもらって良いのですか?」 「はい、私と協力して、この村を支えて下さい」 そんな二人のやりとりを、フェリーニとメャニアは、冷ややかな目で見つめていた。 「まったく、あの鈍感魔法師め……」 「アイツ、ホントに男なんですかね?」 「なんで、あそこまで言われて気付かないんだろう?」 「むしろ、彼女はアイツのどこを好きになったんですかね?」 そんな会話を会話を交わしつつ、フェリーニは隣にいたサラに声をかける。 「サラちゃんは、あんなダメ男に引っかかっちゃダメだよ」 少なくとも、誰がどう見てもフェリーニにそんなことを言える権利は無いと思うのだが、サラの耳にはそもそも、その言葉は届いていなかった。彼女はただ、エルミナが今後もこの村に残ってくれることになって、素直に喜びの表情を浮かべていたのである。 4.2. 改築工事 その後、半壊した温泉宿に出現した「新たな源泉」は、通常の温泉水に比べて温度がやや温めであったこともあり、(「じゃらん」の記事を参考にした上で)「足湯」として利用することになった。 「みんな、せっかく湧いた新しい温泉なんだから、気持ち良く使えるようにしようね」 サラはそう言いながら、率先して「足湯」の建設に励む。さすがに、自分の手で壊してしまったことへの罪悪感は強かったようで、一刻も早くこの「失敗」の結果を有効活用出来るように頑張らねば、という使命感に燃えていた。 とはいえ、さすがに建築技術に関しては彼女は素人なので、全体の温泉宿改築の全体の指示はゲルハルトが担当し、エルミナがそれを隣で補佐していた。そんな中、再び浴衣姿のカルディナがゲルハルトの前に現れる。 「今回は色々大変だったみたいだが、結果的に『新しい湯』も見つかったみたいだし、これはこれで、次に来た時には、ぜひ堪能させてもらうことにしよう」 「そうですね、建物の建て替えとか、色々と問題は山積していますが……」 「正直、麻雀牌がふやけて使えなくなってしまったのは残念だが、お前との卓球は楽しかったし、珈琲牛乳は美味かったし、温泉卵も悪くない。この浴衣も気に入っているしな。まぁ、今回は『合格点』としておいてやろう。では、これからもよろしく頼むぞ」 そう言って、カルディナは自分とあまり身長が変わらない小柄なゲルハルトの肩を抱き寄せながら、ポンポンと軽く頭を叩く。そんな中、彼の背後で微妙に混沌濃度が高まっているような気がしなくもなかったが、「きっと気のせいだろう」と結論付けるゲルハルトであった。 4.3. 女湯にて そして、この日の夜遅くまで温泉宿の改修工事に携わったエルミナは、そのまま宿で一泊することになったため、一人、浴場へと向かう。すると、そこでは「三人の先客」が湯船に浸かっていた。ただし、眼鏡を外しているエルミナには、その姿がはっきりとは見えない。 そんな中、エルミナに対して、その先客の中の一人が問いかけた。 「なぁ、あんた、あの朴念仁のどこが良かったんだ?」 カルディナの声である。エルミナは(まだ湯船にも浸かっていないのに)激しく紅潮しながら動揺した。 「え? あ、いや、私はそんな……、ゲルハルト様に対して、特別な感情とか、そういうのは全然ありませんというか、そこまで身の程知らずなことは決して……」 「いや、別に、私はまだゲルハルトのこととは一言も言ってないぞ」 そう言われたエルミナは、耳まで真っ赤に染めたまま何も言えなくなって、黙って浴場の隅に移動し、彼女に背を向けたまま、必死に平静を保ちつつ、黙々と身体を洗い始める。今、ここで自分が気持ちを乱すと、再び危険な状態に陥るかもしれない、と考えた彼女は、必死で平静を装おうと勤めていたのだが、実際のところ「一流魔法師」が「二人」も存在するこの浴場においては、混沌濃度の上昇は簡単に鎮められるため、そこまで心配する必要も無かった。 「カルディナ先生、あまり人様の恋愛事に口出しをすべきではないですよ」 カルディナの傍にいたクリスティーナは、そう言って彼女を嗜める。年齢的にもキャリア的にもカルディナの方が格上ではあるのだが、その毅然とした態度故に、むしろ彼女の方がよほど「先生」のような風格が漂っていた。ちなみに、彼女はこの地を「新婚旅行の候補地」からは外すことにしたらしい。今回の騒動もあって、この村が「夫婦水入らずでくつろげる空間」とは思えなくなったようである。 「そうは言ってもな……、正直、あそこまで鈍感だとは思わなかったというか、さすがにちょっと呆れているんだよ。まったく、我が弟子ながら恥ずかしい。『楽しまざるは人生にあらず』ということは、何度も伝えた筈なんだがな。あいつは一体、何が楽しくて生きているんだか」 浴場の天井を見上げながら、カルディナがそうボヤく。実際、カルディナのような「遊び人」の薫陶を受けた筈のゲルハルトが、なぜあのような「堅物の仕事人間」になったのか、端から見ても疑問に思う者は多いだろう。 (むしろ、あなたを反面教師にした結果なのでは?) クリスティーナは内心そう思いながらも、さすがに目上の教員に対してそこまで言うことは出来ず、作り笑顔で聞き流す。 そして、自分の「想い人」を散々にけなされてしまったエルミナも、ここで自分が何か言い出すと、また「厄介な事態」を招きかねないと考え、必死で堪えながら肌を洗っていた。 エルミナの中でも、当初はゲルハルトのことは「仕事熱心で尊敬出来る人」という程度の位置付けでしかなかった。しかし、やがて彼のそのあまりにストイックな姿勢が、これまで彼女の周囲にいたどんな男性よりも魅力的に思えてきて、そして気付いたら、「男性」として意識するようになってしまっていたのである。しかし、自分の方が彼よりも3歳年上で、しかも彼が「混沌」を深く憎んでいるということも知っていたからこそ、「この想いは絶対に表に出してはいけない」と決めていた。しかし、そう思えば思うほど、その気持ちが高ぶっていき、そして今回のような事態を招いてしまったのである。 こうして、なんとなく「重い沈黙」が広がっていく中、その空気を変えようとしたカルディナが、おもむろに「もう一人の来訪者」に問いかける。 「時に、姫様はどうなのかな? ここの領主殿は、すっかりあんたに夢中のようだが」 誰もが気になりながらも口にしなかったことを堂々と言ってのけたカルディナに対し、エルミナもクリスティーナも内心では戦慄が走るが、フィオナは落ち着いた口調で語り始める。 「フェリーニ様は、素敵な方だと思います。あそこまで立派な力を身につけた今でも、少年のように純粋な心を失わず、いつも他の方々のために行動する、まさに騎士の鏡ですわ。実は先刻の戦いにおいても、密かにその勇姿を遠くから拝見させて頂いておりました。この村を、そして配下の方々を救うために全力で戦うその姿に、素直に感服させられた次第です」 フィナオは、高温でほんのり紅くなった頬を緩ませながら、うっとりした表情でそう語る。実際のところ、フェリーニは「他の方々」のためではなく、「姫様」のことだけを考えて行動しているのであるが、「日頃のフェリーニ」を知らないフィオナがそう勘違いしてしまうのも、仕方がないことなのかもしれない。 とはいえ、そんな「フェリーニの何十倍も純粋な心」を持つフィオナに対して、あえて「無粋な真実」を突きつける必要もないと思った三人は、そのまま黙って静かな愛想笑いを浮かべながら、それぞれに浴室を去って行くのであった。 4.4. 姫の想い そして、フィオナが浴室から上がってきたところで、この温泉宿で働く「リャナンシーの女中」が、おもむろに彼女に近づき、語りかけた。 「フィオナ姫、あなたは『変な男』につかまっちゃダメですよ。姫様は『みんなのもの』なのですからね」 そう言われたフィオナは、しばらく間を空けて「何か」に想いを巡らせた上で、「納得したような笑み」を浮かべながら語り始める。 「ご心配、ありがとうございます。ですが、私はそもそも、まだ人様に嫁げるような身ではありません。私の嫁ぎ先については、いずれお爺様が決めて下さることでしょう。それまでは、軽はずみな行動を取るつもりはありません」 メャニアとしては「あなたは、みんなのアイドルだから」という程度の意味合いの発言だったようだが、どうやらフィオナはそれを「貴族の家に生まれた以上、自分の恋愛感情よりも、国民全体の利益に繋がるような縁談を選ばなければいけない」という意味で解釈したようである(もっとも、勝手にそう解釈してくれたことは、メャニアとしては好都合なのであるが)。 そして、フィオナが言うところの「軽はずみな行動」とは、リャナンシーの感覚で語るところのそれとは大きく次元が異なる。おそらくフィオナの中では、「異性を異性として好きになること」自体も、「軽はずみな行動」の中に含まれるのであろう。そして今、彼女の中で、自分がそんな「軽はずみな行動」へと踏み込んでしまう一歩手前の所まで来てしまっていることに気付き始めていた。 「実は、お爺様は、フェリーニ様のこともその候補の一人とお考えになっていたようです。確かにあの方であれば、お爺様の後を継いでこのモラード地方を治めるにふさわしい方かもしれません。少なくとも、先ほどの戦いを拝見したところ、フェリーニ様は、私の侍従を務めていらっしゃった頃よりも、遥かに頼もしい方に成長されました。ですが……」 フィオナは、少し寂しそうな笑みを浮かべながら、自分に言い聞かせるような口調で語り続けた。 「……だからこそ、今の私には、勿体ないですよね。いずれきっと、私よりもあの方に相応しい方が現れることになると思います」 そう聞かされたメャニアは、(色々な想いを込めた)満面の笑顔で答える。 「いえいえ、そんなことはないです。というか、お姫様の方こそ、ウチの領主様なんかよりも、もっと相応しいお相手がいらっしゃいますよ」 「ありがとうございます。ところで、一つ、お願いしてもよろしいでしょうか?」 フィオナの「お願い」とは、彼女をフェリーニの私室へと案内することであった。メャニアは一瞬ためらいつつも、「今の彼女」であれば、むしろそのまま会わせた方が得策と考え、素直に領主の館へと、浴衣姿の彼女を連れて行くことを決意するのであった。 4.5. 導き出された結論 こうして、メャニアによってフェリーニの部屋に案内されたフィオナは、開口一番、フェリーニに対して深々と頭を下げる。 「この度は、大変なところにお邪魔してしまって、申し訳ございませんでした」 「いえいえ。そんなことはありませんよ。どうです? せっかく来て頂いたのですから、明日は一緒にこの街を散策しませんか?」 「そうしたいのは山々なのですが、カルディナ様はもう『次の村』に行かねばならないそうですので、私はエストに帰ろうと思います」 もともと、カルディナの同行がビルト訪問の条件だった以上、それ自体は既定路線である。 「この度の、フェリーニ様のご活躍には、本当に感服致しました。いずれお爺様に代わり、このモラード地方全体を担うに足る器の方であると、お爺様に伝えておきたいと思います」 彼女がこのような「残念な勘違い」をしてしまったのは、彼女が「政務におけるフェリーニ」のことを何も知らないからなのであるが、フェリーニは素直に喜んでその言葉を受け取る。正確に言えば、彼が本当になりたいのは「ジンの後継者」ではなく、「ジンの孫婿」なのだが、フィオナが彼のことを「前者」として推薦してくれるのであれば、それは自動的に「後者」への道が開けることであろうと彼は考えていたのである。 「それにしても、本当にお強くなられましたね。もう、私の手の届かないところにまで行ってしまった」 「いえいえ、そんなことはありませんよ。まだ若輩ですし、周囲の者達に助けられてばかりで……」 「お爺様には、ぜひ良い縁談をフェリーニ様に斡旋するよう、私の方からも頼んでおきます。お爺様は各方面の貴族家との縁も深いですし、きっとあなたに相応しいご令嬢が見つかることでしょう」 ここで、当初の思惑とは異なる方向に話が進みつつあることに気付いたフェリーニが何か言おうとした瞬間、メャニアが両者の間に割って入った割って入る。 「いえ、この方には既に『心に決めた相手』がいるので、それには及びません」 「お、おい、お前、いきなり何を……」 突然乱入して訳の分からないことを言い出すメャニアに対してフェリーニが戸惑っていると、フィオナは驚いたような、そして残念そうな顔を浮かべる。 「まぁ、そうでしたか。それは失礼致しました。では、どうかその方とお幸せに」 そう言って、フィオナは再び深々と頭を下げると、そのままくるりと後ろを向いて、部屋の外に出て行こうとする。 「待って下さい。僕はずっと前から、あなたのこ……」 「では、失礼致します」 そう言って、フィオナは足早に退室した。彼女がフェリーニの気持ちにどこまで気付いていたかは不明であるが、メャニアの言葉を素直に受け入れた彼女は、このまま彼の近くにいることで、自分の中での「彼への気持ち」が盛り上がってしまうかもしれない、と思い、あえて自ら、その想いを断つことを決意したのである。 姫が立ち去った後の部屋で呆然と立ち尽くすフェリーニは、その隣でほくそ笑むメャニアが視界に入った瞬間、彼女に向かって全身全霊の力を込めて殴りかかる。しかし、白兵戦に関しては素人である彼の拳が、ブラックドッグの攻撃をも軽々避けるほどの反射神経の持ち主であるメャニアに命中する筈もない。「最大のライバル」を遠ざけることに成功したメャニアは、そのままフェリーニを翻弄しつつ、満面の笑みを浮かべながら彼の私室から退散していく。 そしてこれから数日間、フェリーニの心は荒み続け、その皺寄せを受けていつも以上に仕事が増えることになったゲルハルトの心労は、更に山積していくことになるのであった。 【ブレトランドの遊興産業】第2話(BS22)「白球と翼」 グランクレスト@Y武