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歯の構造について
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大切なもの――SOLDIER DREAM―― ◆3OcZUGDYUo エリアD-3の喫茶店で、テーブルを三つ隣り合わせ、計七人の男女が各々顔を向かい合わせにしながら座っている。 六人全員の顔を難なく見渡せる中心の位置に赤木しげる。 そして赤木から右に向かってパピヨン、空条承太郎、綾崎ハヤテ、才賀勝、才賀エレオノール、加藤鳴海 といって赤木に戻るという順序で、彼らは座席についている。 彼らは赤木の提案で、各々の交流を深める意味を兼ねて情報交換を行うことにしていた。 赤木を除いた彼ら六人も情報交換を断る理由はない。 寧ろこの異常な事態に対処するために彼らにとっても赤木の提案は都合の良い事だったからだ。 只一人、エレオノールに対して自分を綾崎ハヤテと偽り、不安そうな表情をした勝を除いては。 そして実際には今この場には計八人居るのだがその最後の一人、泉こなたは奥のソファ席で横になり静かな寝息を立て相変わらず眠っていた。 いくらネトゲーで睡眠不足に対しての耐性が有るこなたと言えども、この殺し合いが始まって八時間以上は経過しており、 更に夜中ネトゲーに勤しんでいた所でこの舞台に連れてこられていた。 こなたが睡魔に負けるのは無理も無い。 そんな眠っているこなたを見て、少しでも情報を得たいと思っていた赤木は、 こなたを起こそうと声を掛けようとしていたがそれはパピヨンに遮られた。 パピヨンが何故赤木を止めたかはわからない。 単純にこなたからは碌に有益な情報を引き出せない事は、己の経験で知っていたからだろうか、 それとも気持ち良さそうに眠っているこなたの、睡眠の邪魔をさせたくはなかったからだろうかは解らないが。 「それでは情報交換を始めようか……俺は赤木しげる、赤木とでも呼んでくれ」 人型ホムンクルス、スタンド使い、コンバットバトラー、人形破壊者(しろがね)など様々な者が一堂に会したこの場で 天才的な雀氏ではあるものの、異能といった能力は生憎持ち合わせていない赤木が始めの言葉を放つ。 誰に名前を聞かれたわけではないが、赤木はこの情報交換の場の主導権を握るため自発的に己の名を簡略に紹介する。 「いいだろう、こっちとしても情報が多い事には越した事はない。特に隠すような情報もないからな。 俺はパピヨン。蝶サイコーな存在、『人型ホムンクルス』さ」 おどけた調子でパピヨンは赤木が自分の事を紹介したのと同じように、パピヨンは自分が あっさりとホムンクルスである事を、未だ信用に値するかどうかはわからない赤木、勝、エレオノール、鳴海に知らせる。 パピヨンにとって彼らに必要以上の情報を教えるメリットはないが、彼には何者にも負けないという絶大な自信があり、 別に自分がホムンクルスであると教えても問題がないと判断したからだ。 それに一定の情報を自ら提示する事で、情報交換を円滑に進める狙いもあった。 そう、たった今赤木がやったように。 「何だその『人型ホムンクルス』というのは? 貴様……一体何者だ!? 」 警戒心を剥き出しにしながらエレオノールがパピヨンの言葉に荒々しく噛み付く。 彼女としては勝を保護するために、どんな不安要素を抱えてはいけないという一種の焦りのような感情が心に根付いている。 更にエレオノールがパピヨンに持っている印象は、先程の問答のせいでとても良いものとは言えないせいで、 彼女は彼に対して必要以上に警戒しているからだ。 「俺は既に自分の名と身の上を話している……もう一度言うが人にものを訊ねる時はせめて自分の名くらい名乗ったらどうだ? まぁ所詮貴様に一般の良識があればの話だがな」 「ッ! この……! 」 パピヨンの挑発的な言動にエレオノールは思わず席を立ち上がり、ナイフを取り出そうとする。 そのパピヨンの言動、エレオノールの行動に驚きハヤテは心配そうにパピヨンの方を見つめ、 勝はエレオノールの行き過ぎた行動を止めようと、彼女と同じように席を立ち上がる。 ちなみに既にハヤテはいつもの執事服に着替えている。 いつまでも女装服のままではまた武藤カズキのような、悲しき勘違い野郎を生み出すかもしれないためだ。 そして承太郎はさも呆れたような表情を浮かべ、腕を組みながら両目を瞑っている。 まるで俺には関係ないと言っているかのように。 そんな承太郎のいけすかない態度に鳴海は若干の苛つきを覚えながらも、目の前で今にも戦闘を起こしそうな パピヨンとエレオノールを沈黙させるために席を立とうとする。 一方赤木は―― パン! 軽快な音が響き、赤木以外全員……いや承太郎は僅かに眼を開いただけだが、残り五人の顔が一斉にたった今 己の両の手の平を打ち合わせた赤木の方を向く。 五人分の視線を受けながら赤木は口を開く。 その味気のない表情に僅かな微笑を含ませながら。 「さて……そのくらいで止めてもらおうか? 生憎俺はお喋りがしたいわけじゃあない、情報交換……これ以上でも以下でもない事が望みなんでな」 エレオノールは依然パピヨンを睨みつけながらも再び席に座り、そのエレオノールの視線をまたも平然とパピヨンは受け流す。 事態の沈静化にほっとした勝が席に戻った時を見計らって、赤木は間髪入れずに次の言葉を発する。 「ではパピヨンの自己紹介が済んだ所で次はあんたから右回りにやってもらおうか? 出来るだけ自分の名、どのような存在かを含めてな…… 」 そう赤木は言って、承太郎に視線を向ける。 だが承太郎の表情には怒りとはいかないまでも、明らかに不満そうな色が見える。 「……気にいらねぇな」 「……何がだ? 」 承太郎の短い言葉に更に短い言葉で赤木は聞きなおす。 「自分の事は名前しか話さねぇくせに俺達には能力を含めて話せというてめーのそのあつかましさがな……」 明らかな苛つきを込めた言葉で承太郎は返答する。 別に承太郎にとっては自分のスタンド――スタープラチナの事について話すのに抵抗はない。 だが、信用が置けない人物となれば当然話は別だ。 目の前の赤木と言う男は情報交換をしようと言いながら自分の事についてろくに話はしないと来た。 承太郎に不信の念が生まれるのは無理も無い。 「ジ! ジョジョさん! ここは穏便に」 その様子に今度は承太郎の方を振り向き、ハヤテは慌てながら承太郎に言い掛ける。 ハヤテにとって情報交換など何も苦にはならない事であり、カズキの話に出たいまいち信用できないピエロの女の人が居るとは言えども 仲間が増えるのは当然嬉しい事である。 だがハヤテはそれ以上に途中で分かれてきた三千院ナギの事が心配だった。 自分たちが赤木、勝、エレオノール、鳴海と出会ったようにお嬢様とカズキが危険人物と今、この時出会い、 命の危険に晒されているかもしれない。 そう思うとこの情報収集を出来るだけ早めに切り上げて、今直ぐにでもS-5駅に戻りたかった。 そんな時に承太郎がこの場をややこしくさせるような事を言ったのでハヤテの焦りは募る。 パピヨン、勝、エレオノール、鳴海が状況を見守る中赤木は静かに承太郎の言葉に耳を傾け、やがて口を開いた。 「確かに俺は自分の名しか言っていないな……だが俺にはこれといった能力というものはない、 持ち合わせているものはせいぜい麻雀やトランプといったゲームの腕くらいだ」 自分の身の上について正直に赤木は話す。 ここで嘘をついても赤木には何もメリットはないからだ。 だが承太郎は未だ胡散臭そうな表情で赤木は見つめている。 (まぁ……完全には信用できないのは無理もない、俺だって信用しない。 だがそれゆえこのジョジョという男は仲間としてふさわしい。この警戒心はこの先生き残るには必要不可欠。 そしてこの男には……特別な力がある! ) 何故赤木には承太郎が異能を持っているかわかったのか? 答えはこれから赤木が行う質問で明らかになっていく。 「完全には信用してもらわなくても構わない……それで少し此方から質問していいか? 」 「……何だ? 」 「あんたの先程の言葉……まるで俺が何か特別な力を持っているという前提だったが何故あんたはそう思った? 」 「……それは」 思わず返答に詰まる承太郎。 確かに髪の毛は老人のように銀一色と言えども、赤木は普通の一般人のように見え、先程の承太郎の質問は何か不自然に感じる。 だがこれはあくまでも一般人から見た時に限る事だ。 スタンド使いである承太郎は思わず目の前の赤木はナギとは違いスタンド、スタンドにない何か特別な力があり、 自分のようになんらかの戦いを潜り抜けてきたと思い込んでしまった。 この異常な事態に全く慌てない冷静さ。 異様な気を発する自分やパピヨンなどを目の前にして、堂々と情報交換の場を仕切るその意思の強さ。 これら常識外れの赤木の行動をほんの短時間の間見てきたからだ。 そしてこの承太郎の一瞬の沈黙は赤木の予想を更に強めるものとなる。 「そこで俺はこう考えてみた……あんたは何か特別な力を持っている。 そしてあんたはその力を使いこのバトルロワイアルに呼び出されるまで闘っていた…… そう、一般人からみたら異常な力を当然のように感じる程長い間。だから俺が特別な力を持っていると思った。 そうでなければ――」 そこまで言って一息ついて赤木は言葉を区切る。 そして右の一指し指を承太郎を向けて勝ち誇ったように赤木は言う。 「あんたの質問は……的を射ないものとなる」 「……ちっ!」 DIO打倒のため仲間達とエジプトへの旅を経験した承太郎は、旅の道中でれっきとした異能であるスタンドを持つ敵と何度も遭遇し、 同じくスタンドを持つ仲間達とこれを撃退し、見事DIOを打ち倒した。 そんな旅の中、承太郎の周りにはいつもスタンド使いが居た。 敵も味方も関係なしにどんな時でも。 そしてその状況にいつしか確かに承太郎は慣れていった。 そう赤木の言った事は的確なものであった。 その事はたった今承太郎が思わずついた舌打ちが証明している。 「やれやれ……クレイジーな奴だぜ」 「くくく……誉め言葉として受け取っておこう」 承太郎が呆れた様子で、赤木は不敵な笑みを浮かべながら言葉を交錯させる。 その二人の様子を見て依然ハヤテは心配そうな表情で見守っている。 そしてやがて承太郎が口を開く。 「……空条承太郎。変わった特技といえばスタンドが出せるくらいだ。スタンドの事を詳しく知りてぇならパピヨンに聞きな」 あまりにも投げやりな自己紹介を行う承太郎。 そして承太郎の説明不足な自己紹介は狙ったわけではないが、彼とパピヨン以外の五人に一つ違和感を残す。 承太郎の話に出てきたスタンド。 承太郎は「詳しく知りたいのならパピヨンに聞け」と言った。 なら承太郎の話が本当ならば誰だって「パピヨンはスタンドというのを知っている、 もしくは承太郎のようにスタンドを持っている」と思うだろう。 だがパピヨンの先程の自己紹介にはスタンドという単語は存在していない。 ならば―― 「貴様!……まだ隠している事があるのか!? 」 パピヨンに疑惑の眼差しが向けられるわけだ。 そしてパピヨンに対する印象が更に悪化したエレオノールがパピヨンに問う。 また今にも先程の状況が再現されそうな勢いで。 だが承太郎、エレオノールの言葉を受けたパピヨンは何も慌てる様子は無く、只呆れたように片方の腕で頬杖をついている。 「ふぅ……やれやれ、誤解のないように言っとくが俺はその空条と一度闘った事があり、その時スタンドを見ただけだ。 逆に俺の方こそ是非スタンドの事についてもっと教えてもらいたいものだな空条?」 エレオノールの方ではなく、不気味な笑みを浮かべながら承太郎の方を向いてパピヨンは返答する。 まるで自分を無視したかのようなパピヨンの行動にエレオノールの不信感は更に高まり、 承太郎はパピヨンの意味深げな言葉に疑問を覚える。 (どういうことだ? こいつはスタンドの事について然程関心がなかったはずだが…… 今は違う! まるで目の前に極上の獲物を見つけた獰猛な獣のような眼をしてやがる…… ) 思わず自分とナギと別れた後何処かでスタンド使いと出会い、そして興味を持ったのではないか?という考えを承太郎は浮かべる。 だがパピヨンは自分達と別れた後直ぐにハヤテ達と合流したという。 それならばスタンド使いと遭遇する時間はない。 そこまで考えた所で承太郎はチラッと脇目である方向を見る。 その視線の先には……奥のソファー席で依然気持ち良さそうに寝ているこなたが居た。 (まさか……あのこなたっていう女……スタンド使いじゃねぇだろうな? ) 承太郎はこなたを日本人で高校生である事しか知らないが、彼だって日本人の高校生である。 こなたがスタンド使いであると言われてもおかしい事ではない。 先程の赤木との会話による失敗の一件もあり、そこまで自信を持てないがそうでなければ パピヨンが僅かな時間でスタンドに興味を持った事に辻褄が合わない。 実際にはパピヨンはこなたに支給されたストレイ・キャットを見た事により、スタンドに対して興味が湧いたわけだが承太郎が知る由もなく、 なにより生物と一体化したスタンドがあるとは思わなかったからだ。 そして承太郎とパピヨンが一度闘ったという新たな事実が浮き彫りになった今、二人を除いた五人に当然緊張が走る。 お世辞にも社交的とは言えない承太郎とパピヨンが闘ったという事実は、この先チームとしての連携をギクシャクしたものしていくだろう。 その懸念が彼らの頭を過ぎり、着々とこの喫茶店に不協和音が響いていく。 訪れる沈黙に貴重な時間が過ぎていく中――直ぐにその沈黙は破られる。 「詳しい事は互いの自己紹介が済んでからでいいだろう。では……次は執事服のあんたにお願いしょうか? 」 やはり赤木だった。 無論赤木にもスタンド、承太郎とパピヨンの闘争は気になることであるが、 それよりもまずは全員の自己紹介を速やかに行うべきだと彼は判断する。 当然出来るだけ時間は有効に使った方がいいからだ。 そして彼はハヤテの方を向きながら、情報交換を円滑に進ませるように誘導させる。 (……どうすればいいんだ? ) 一連の騒ぎにはあまり眼を向けず、勝は必死に焦りながら考える。 勿論自分がどう名乗ればいいか? ということである。 エレオノールに対して綾崎ハヤテと偽った事が彼の行動を束縛していた。 偽称がエレオノールにもしばれたら、只でさえ暗雲が立ち込めているこの場が一層収集がつかない事になる。 そして次に今自己紹介をしようとしている執事服を着た高校生くらいの男の人が綾崎ハヤテという可能性もあった。 もし彼の口から綾崎ハヤテという言葉が出たら……思わず勝はゴクリと唾を飲み込む。 そしてハヤテの口が勝の焦りをせせら笑うかのように動く。 「わかりました。僕の名前は――」 そこまで言ってハヤテの言葉は止まる。 何故ならハヤテから見てガラス張りの壁越しに西の方角には光の柱のようなものが、そし北の方角に一発の花火が昇っていたからだ。 ◇ ◆ ◇ 「銀さんどこいったんだろうなァ……? 」 エリアE-2の中心部に歩を進める少年が一人。 まだ幼さが残る顔とは不釣合いな筋肉という肉の鎧を身体に纏い、 徳川光成が主催した世界中の猛者達で行われる最大トーナメントで、見事優勝を飾った弱冠十七歳の少年、範馬刃牙だ。 「別に銀さんじゃなくてもいいんだけど……でも銀さん強ぇだろうしなァ……」 強き者との戦いを何よりも好む刃牙は、以前共に行動していた坂田銀時を探していた。 口では弱いと言えども刃牙は戦士の本能とでも言おうか、直感的にこの男は出来る!と 感じ、 自分に支給されたソードサムライⅩを譲り、彼との闘いを期待していた。 結局その時は半ば強引に銀時に押し切られ、闘う事は叶わなく極めて残念な結果に終わったが。 そして刃牙が闘いを希望する者はもう一人居る。 「あと零が言ってた覚悟って人も居たなァ……あの時の啖呵、凄ぇよなァ……」 依然自分の支給品として共に行動していた鞄、強化外骨格零の本来の着装者であり、徳川光成に対して宣戦布告を行った少年、葉隠覚悟だ。 零の話によると自分と似たような境遇であり、更にかなりの腕前であるという。 銀時や覚悟の戦いを想像するだけで身体の奥底から興奮が湧き上がるのを感じ、頭上に広がる蒼い空を不自然にニヤついた表情で見上げる。 だが、今刃牙にとって強き者との闘争は最優先事項ではない。 そう今刃牙の額には人体にとって紛れも無い不純物……肉の芽が存在している。 「けどさっさと死体を用意しないと……俺がぶちまけちまったDIO様の血を補充するためにもなァ」 DIO様は自分に新しい力を与えてくれると力強く言った。 そのために自分が太陽が昇っている間は外に出れないDIO様の手足となって、彼の食料である人間や死体を彼の元に持っていく事になっている。 DIO様のためにも働く事が出来て、自分が強敵と戦える可能性もあり、更には褒美として更にあのDIO様から新たな力を授けてくれる…… 言うなれば一石三鳥と言ったところか。 こんなうまい話はそうそうない。 不気味に感じる程の幸運に酔いしれながら刃牙は南下しようとするが…… その時横の方向から何か小さい音が聞こえてくるのを感じ、彼は頭をその方向に向ける。 そして数秒後彼の視界には一輪の花火が大空に舞った絵が飛び込んできた。 「へぇー……なかなか粋な事をする人も居るもんだなァ」 思わず立ち止まり刃牙は考える。 火がないところに煙はたたない。 人が居ないところには花火は昇らない。 そしてあんな自分の居場所をみすみすと知らせるような真似をするのは知能も力もない只の馬鹿、 そして……あんな事をやりそうなタイプの人間はもう一つある。 「そんなに闘いてぇなら俺が行ってやるよ……やろうぜぇ! 心が踊る闘いをさァ! 」 そう、もう一つは己の力に絶大な自信を持ち、自分から闘いの相手を求めるような相手を求めるタイプ。 刃牙は花火が見えたエリアD-2の方に向き直り、その方角にゆっくりと数歩歩み寄っていく。 そして……大地を砕くがごとくに勢い良く蹴り、歓喜の表情を浮かべながら刃牙は疾走した。 刃牙にとって何度でも貪る程甘く、それでいて何度貪っても決して飽きるという感情が涌くことがない『闘争』という果実を求めて。 ◇ ◆ ◇ エリアD-3の七人がたった今見たものは、カズキが激情のあまり衝動的に揮ったサンライトハートにより放出されたエネルギーであった。 そしてその七人と刃牙が見た花火を打ち上げたのは―― 「けっ! 流石に太陽が昇ってちゃああまりハッキリとは見えねぇなぁ」 範馬刃牙の父親であり、地上最強の生物の名を欲しいままに闘争を繰り返す男、範馬勇次郎である。 勇次郎は敵を新たな敵を求めるために、再び花火を打ち上げていた。 敵を求めて自分から各地を転々と動き回るのも良いが、それでは取るに足らない相手と遭遇する可能性も出てくる。 そう、数時間前に出会った眼鏡を掛けた闘う価値もない二人の小僧のような。 だがこの方法ならそれなりに己に自信を持った奴と会う可能性も出てくるだろう。 まぁ力もないくせに花火を打ち上げた者が助けを必要としている者と勘違いして、やって来る奴も居るかもしれないが。 そこまで考え勇次郎はペットボトルを一つ取り出す。 成人男性では二日は持たせる事が出来る程の水が入っているペットボトルを口に当て、ゴクリ、ゴクリと大きな音をたてて飲んでいき…… 遂にはペッボトルの中身には何もなくなった。 「……足りねぇなぁ」 常人では考えられないよう量の水を一気に飲み、まだ水が足りないと勇次郎は言うのだろうか? いや、もし水が足りないのならば新しいペットボトルを取り出し飲み干せばいい。 幸い勇次郎のデイパックには花山薫、津村斗貴子から奪ったためまだ同じ量のペットボトルが二本入っている。 だが勇次郎は新しいペットボトルを取り出しはせず、無造作に空のペットボトルを放り投げ叫ぶ。 「まだまだ足りねぇぞおぉぉぉぉぉ光成ぃぃぃぃぃ!!! もっとだ!もっと俺に血を! 肉を! 命を見せて見やがれぇぇぇぇぇ!!! 」 そう、勇次郎が求めるのは水というものではなく闘争。 大空に向かって勇次郎の咆哮が響き渡る。 未だ見ぬ強敵との闘争を待ち望む猛獣のように。 ◇ ◆ ◇ 後半
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幸せになりなさいよ。ビンゴ大会に花火に温泉。本日の一曲。だけどこのアルバムは。 期待を裏切らないどころか上回る上回る。褒めのプロが頻繁に使用する時間稼ぎの技である。 夜は香水をつけない。北大路欣也みたいなクドイ顔してんだろうなぁ。 早く、おっきな人間になりたいです。ちなみに僕はこれまであまり選挙に行った事がありませんでした。 なくなっちゃってた。頼んでないし。」。ついでにイロモノも物色。 ベテランや先輩の多い職場で、うまく目上の人の引き立てを受けることができたら、大出世します。 抱かれたい人が多すぎて体がもちませんわ。時間はまだ5時過ぎで、まだアニメ祭りは始まってなかったので チャンネルを色々変えていると『笑点』にヒット。ってね。俺、ファンだったんだよ~」って。
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まりさの見つけた大切なもの 21KB ※『ふたば系ゆっくりいじめ 9 ラジコンに引きずられて』のまりさサイドのお話です スレにてまりさサイドの話を書いてみてはどうか、との指摘をいただいたので書いてみま した。 「「すっきりー!」」 街の路地裏、その一角。薄暗いそこで、二匹のゆっくりがすっきりーしていた。 一匹は、ゆっくりまりさ。 もっちりしっとりとした肌。綺麗に整えられた輝く金髪。汚れ一つない漆黒の帽子に輝く 銅バッジを見るまでもなく、飼いゆっくりであることが伺えた。 一匹は、ゆっくりれいむ。 がさがさに痛んだ肌。汚れにくすんだ黒髪とりぼん。顔立ちは整っていたが、その汚れた 姿は野良に違いなかった。 まりさは好戦的な顔でぺにぺにを突き込み、れいむは泣き顔でそれを受け止めていた。 飼いゆっくりによる野良のレイプ。街ではさほど珍しくない光景だ。 まりさは事が済むと、一瞥すらせずれいむを置き立ち去ろうとした。それもまた珍しくな いこと。だが、このとき違ったのは、 「やあ! まりさ、おめでとう!」 まりさの飼い主、おにいさんがその場にいたことだ。 「ゆううっ、おにいさんっ!?」 まりさは激しく動揺した。このまりさにとって、おにいさんは大抵のわがままを聞いてく れるゆっくりとした存在だ。だが、粗相をしたときは叱られる。野良ゆっくりをレイプす ればどうなるかぐらい、まりさはわかっていた。 それなのに見つかり、あまつさえ祝福の言葉を受け、まりさはすっかり混乱してしまった。 そんなまりさをよそに、おにいさんはれいむの方へと駆け寄った。 れいむは早くもぽんぽんを大きくし始めていた。胎生型のにんっしんだ。 「やあれいむ、初めまして! 僕のまりさをこれからよろしくね! いっしょに俺の家に 来て、まりさと暮らしてくれないか?」 「な、なにいってるんだぜーっ!?」 まりさの絶叫が路地裏にこだました。 まりさの見つけた大切なもの あれよあれよという間に、本当にれいむはまりさと一緒におにいさんの家で暮らすことに なってしまった。 もちろんまりさは反対した。 「すっきりしたのはまちがいだよ!」 「まちがい? アクシデントから始まるのが恋愛ってものさ!」 「まりさはこどもをそだてるなんてできないんだぜ!」 「れいむができるさ! お互い補い合ってこそ番ってものさ!」 「まりさはれいむのことなんてなんともおもってないんだぜ!」 「何とも思わない相手を襲ったり何てしないさ! そんな事を言うまりさはツンデレって ものさ!」 埒が明かなかった。もともとゆっくりが人間相手に口論でまともに勝利することなどでき ないが、それにしてもおにいさんは強引だった。 なにより、 「このれいむは俺の大好きなまりさの子供を身籠もってるんだろう? だったら、大切に しなきゃ!」 そういう風に言われては反論はできなかった。 まりさは飼いゆっくりだ。それも甘やかされて、大抵のことは聞いてもらえるゆっくりだ。 そうでありながら、自分の分はわきまえていた。自分は所詮飼われている身、どれだけワ ガママを言っても最終的には飼い主には逆らえない。 増長しがちなゆっくりには珍しい、ちょっと変わったまりさだった。 そして、今。 二匹は部屋の中にいた。 ブランコ、滑り台、ジャンプ台などのゆっくり用の遊具にゆっくりハウス。ゆっくりでき るものに溢れたその部屋は、おにいさんにあてがわれたまりさだけのゆっくりプレイスだ った。 だが、今は二匹。 まりさの他に、れいむがいる。 レイプ、野良から飼いゆっくりへなったこと。突然連発した異常事態に疲れ切ったのか、 ゆうゆうと寝息を立てて眠っている。 家に上げられたとき、汚れは落とされた。肌の粗さまでは消えないが、もともとの顔の作 りのよさとしっとりとした黒髪。なかなかの美ゆっくりだった。 だが、まりさはゆっくりできなかった。 このれいむが自分のゆっくりを脅かす存在だと警戒していたからだ。 まりさもまた、元々は野良だった。 まりさが生まれ落ちて初めて見たもの。それは笑いながら親ゆっくりを潰す人間の姿だっ た。 自分がどうして生き残れたかわからない。人間の気まぐれか、あるいはもともと赤ゆっく りには興味がなかったのか。恐怖に震え、動くこともできないまりさは、殺されることな く、ただ取り残された。 そんなまりさが初めにしたことは、かつて親だった餡子を食べることだった。他に食べ物 はなく、食欲旺盛な赤ゆっくりに選択の余地はなかった。 「ゆっくりしていってね」 その一言を発する余裕すらなく、まりさの過酷な野良生活が始まった。 あまりにも不幸なまりさの生い立ちで、唯一幸運と言えたのは最初から人間の脅威を餡子 に刻みつけていたと言うことだろう。ゆっくりはすぐに増長し墓穴を掘るものだが、この まりさは既に自分より強大な存在を思い知っており、ゆっくりにしては珍しく謙虚にもの を考えるようになっていた。普通のゆっくりのように人間を侮ったりせず、むしろ積極的 に避けた。 他のゆっくりとの交流もやむを得ない場合でなければ避けた。ゆっくりでなければ誰でも 気づく。バカなゆっくりと共に行動することは危険を増すだけなのだ。 その注意深さにより、まりさはどうにかテニスボール大の子ゆっくりに成長するまで野良 生活を続けることができた。むろん、暮らしは楽ではなかったが、どうにか命を繋ぐこと はできていた。それだけでも奇跡的なことと言えた。 そんなある日、ゴミあさりをしていたとき。 まりさは、おにいさんにつかまってしまった。 完全に不意をつかれた。もしおにいさんが悪意を持って近づいたのなら、まりさはすぐに 逃げていたことだろう。 まりさにとって、人間は二種類。野良ゆっくりを積極的にゆっくりさせなくするものか、 全く無視するもの。おにいさんはどちらでもなかった。悪意も敵意もなく近づいてきたお にいさんには、まりさの鍛え抜いた警戒心も働かなかったのだ。 もうおしまいだと思った。 だが、まりさは潰されることなくおにいさんの家に連れてこられた。 それでも安心などできるわけがない。まりさはやけになった。 「あまあまをよこすんだぜ!」 「ひまだからおうたをきかせるんだぜ!」 「ねむいんだぜ! ふかふかをよこすんだぜ!」 思いつく限りのわがままを言った。どうせ自分は死ぬのだから。だから、今まで抑圧され ていた全てを、ゆっくりの本能を解放してしまえ、と思ったのだ。 ところが、おにいさんはまりさのわがままにこたえてくれた。 あまあまをくれた。歌を歌ってくれた。寝床を与えてくれた。 ゆっくりさせてくれた。 まりさは信じられなかった。人間がそんなことをしてくれるなんて、まったく理解不能だ った。 まりさはその注意深さと謙虚さから、自分がどんな存在であるかを正確に理解していた。 ゆっくりにしては警戒心があり、素早いという自信がある。野良生活で身につけた様々な 技術もある。だが、それらが人間に好まれることはないことを知っていた。まりさは特別 見た目が綺麗なわけでもなく、ましておにいさんに捕まったのはゴミあさりの真っ最中。 飼いゆっくりにされる理由など何処にもない。 そんなまりさの餡子脳に浮かんだのは、他のゆっくりから聞いた噂だ。 「にんげんさんはゆっくりをすごくゆっくりさせてから、ころすことがあるらしいよ!」 自分は弄ばれ、いずれ殺される――そんな疑念が消えなかった。 それでも、自分から人間の機嫌を損ねることはない。幼い日のトラウマから、元々そんな ことはできなかった。ヤケになった時のようなわがままは言わず、極力おにいさんの機嫌 を損ねないようにした。 それでも、お腹が空いたと言えばおいしいごはんをもらえ、退屈そうにしていればおもち ゃを買ってきてくれた。最低限のしつけはされたが、それぐらい厳しい野良生活で様々な 抑圧を受けてきたまりさにはなんでもないことだった。 とても、やさしくしてされた。 安全な環境。栄養たっぷりのご飯。まりさは瞬く間に成体ゆっくりへと成長していった。 外への散歩も許してくれた。おにいさんがいっしょだったが、短時間ならひとりでの散歩 も許された。 おにいさん曰く、 「まりさにつけたバッジには発信器が付いてるんだ。だから迷っても大丈夫。でも、時間 はちゃんと守るんだよ?」 まりさにはよくわからなかったが、おにいさんは言葉の通りまりさが何処にいてもすぐに 見つけた。逃げ出すのは無理なようだった。 それでも、まりさはどうにかならないかと考えた。おにいさんの住んでいる街は、まりさ が住んでいる場所とは遠く離れていた。土地勘がない。もう少し街を知れば逃げられるか も知れない。だからまりさはおにいさんを積極的に散歩へ誘い、一人歩きの時間をもらっ た。 れいむと出会ったのは、そんな時だった。 一目でわかった。目の前にいるれいむが、かつての自分と同じであることに。厳しい野良 の生活のなか、それに負けずたくましく生きていることを。 まりさは何故だか妬ましくなった。 飼いゆっくりである自分の生活の方が明らかに恵まれているはずだ。それはわかっている。 それでも、れいむが妬ましくてたまらなかった。 まりさはれいむに襲いかかった。れいむは逃げ出した。戦っても野良では飼いゆっくりに 敵わないとちゃんと知っているのだ。 れいむは野良で生きるゆっくりらしく、狡猾に逃げていった。普通の飼いゆっくりなら簡 単に撒かれてしまっただろう。だが、まりさは違った。むしろ燃えた。れいむがかつての 自分と同じ存在であるとの確信を深め、ますます妬ましくなり追いかけた。 そして。 まりさは、妬みの気持ちをレイプで叩きつけたのだった。 そして、れいむとの生活が始まった。 まりさにとってれいむは邪魔なだけの存在だった。もともと野良でも一人の時間が長かっ たまりさだ。他のゆっくりが自分のゆっくりプレイスにいるというだけで落ち着かない。 なにより、これから生まれようとする赤ゆっくりが恐ろしかった。 赤ゆっくりはかわいい。とてもゆっくりできる。 これはおよそあらゆるゆっくりに共通する認識だ。まりさもそれは知っている。だからこ そ恐ろしい。 生まれたら、おにいさんは自分より赤ゆっくりに興味を持ってしまうかも知れない。 そうしたら、自分は殺されるかも知れない。 そう思えてしまったのだ。 だからと言って、れいむを殺そうとするほどまりさは愚かでもなかった。 なぜなら、おにいさんはれいむのこともまたまりさと同じくらい大事に扱ったのだ。その れいむを殺すことは、おにいさんの機嫌を損ね自分の命を危うくするかも知れない。 だから表面上、まりさはれいむに優しくした。 そんな偽りの優しさに、しかしゆっくりの単純さゆえか。レイプされたというのに、れい むはまりさを受け入れた。 見た目は仲のいい番のようだった。 そんなある日。 「ほら、れいむ! もうすこしだぜ!」 「ゆ、ゆうう……まりさ、やっぱりむりだよぉ……」 「だいじょうぶだぜ! ほら、もう着いた! どうなんだぜ!」 「ゆあぁ~、いいながめだよ~」 まったく動かないのも良くないと、まりさは身重のれいむを部屋の遊具に連れ出した。 連れ出した先は、ゆっくり用ジャンプ台の上。そこからの眺めはいい。成体ゆっくり1. 5体分ほどの高さのそこは、人間からすれば大したことはない。だが、ゆっくりからすれ ばとてもいい眺めだ。バカとゆっくりは高いところが大好きなのだ。 れいむは先ほどまでの苦労を忘れたように、ジャンプ台からの眺めを楽しんでいる。 そんなれいむを、まりさはちょっとだけ押した。 「ゆゆっ!?」 あっさりと、れいむはジャンプ台から落ちた。 まりさの考えたシナリオは、事故による赤ゆっくりの流産。ゆっくりらしい浅知恵だが、 これでもまりさは必死に考えた結果だ。 赤ゆっくりがいなくなればとりあえずの脅威は去る。れいむとも縁が無くなり、追い出す こともできるかも知れない――そんな期待もあった。 まりさは素早くれいむが落ちる様を観察した。流産しないようなら、自分も「事故を装っ て」れいむの上に飛び降り、確実に始末するつもりだった。 だが、そこでまりさは信じられないものを見た。 落ち方からすればれいむは狙い通り、腹から着地して流産するはずだった。 それが、 「ゆううっ!」 れいむは強引に体勢をねじまげ、顔面から落ちたのだ。 「れいむーっ!」 気づけばまりさはれいむの元へと走っていた。 「だ、だいじょうぶ……?」 「ゆ……まりさ……れいむうっかりしちゃったよ……でもあかちゃんはぶじだから、あん しんしてね……」 まりさには信じられなかった。自分はれいむをレイプしたのだ。表面上は仲良くしている とは言え、きっと自分のことを心の底では憎んでおり、赤ゆっくりを邪魔者だと考えてい ると思っていた。。 それなのに。 れいむは、身を挺して赤ゆっくりを守ったのだ。 まりさは自分のしようとしていたことが急に恐ろしくなった。 その恐ろしさを加速させるものがあった。れいむの瞳だ。 迷い無く、ひたむきな瞳。痛いはずなのに、苦しいはずなのに、まったく迷い無く揺るが ない、強い瞳。そこに込められた、赤ゆっくりへの想い。 自分はこんな瞳ができるだろうか。 命に代えても守りたいと思うものがあるのだろうか。 今まで生きるだけで精一杯だった。守りたいと思うものなんて、自分の餡子の他にはなに もなかった。 だから恐ろしい。れいむのひたむきさが、恐くてたまらない。 「ぺ、ぺーろぺろしてあげるんだぜ……」 「ゆゆ~ん、まりさ。ありがとう……」 まりさがぺーろぺろすると、れいむは目を閉じてその感触に身を委ねた。 あのおそろしい瞳は見えなくなったが、まりさの中の恐怖は消えなかった。 「う、うばれるぅぅぅ……!」 「れいむ、がんばるんだぜ! げんきなあかちゃんうむんだぜ!」 やがて、れいむは出産を迎えた。 まりさはおぼうしをかまえて赤ゆっくりを受け止めようと待ちかまえる。後ろにはタオル を持ったおにいさんもいてくれる。 だが、まりさは不安だった。 おにいさんの話では、普通より出産が早すぎるというのだ。 まりさが思い浮かべるのは、自身の罪。ジャンプ台から突き落としたことが何か悪い影響 を与えてしまったのかも知れない。 「あかちゃん、ゆっくりして……ゆっくりしないで……とにかく、げんきにうまれるんだ ぜぇ……!」 不安の中、 「ゆぎぃ!」 れいむの一際高い声と共に、何かが飛んでくる。まりさは必死におぼうしで受け止めた。 おぼうしの中に、確かな感触。 おそるおそる覗き込むと、 「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!」 かわいらしい赤ゆっくりの声に迎えられた。 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! れいむ! れいむとまりさのあか ちゃん、とってもゆっくりしてるんだぜぇぇぇ!」 煌めく金髪に、可愛らしい黒のおぼうし。元気な赤まりさだった。 どうやらおにいさんの心配は杞憂だったようだ。 「うん。まりさ……よかった……あかちゃんうけとめてくれて、ありがとう……」 「れいむ、よくがんばったんだぜ! でかしたんだぜ!」 たたえあうまりさとれいむ。 それを祝福するように、赤ゆっくりは叫んだ。 「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 まりさとれいむは、赤まりさに最高のゆっくりを送るのだった。 その夜。 赤まりさはとても元気に騒ぎ、大いに食べ、そして今は眠っている。 まりさとれいむは赤まりさに寄り添い合い、眠りにつこうとしていた。 あまりにも幸せだった。 野良の時には想像もしなかった、飼いゆっくりになっても手に入らなかった、本当のゆっ くり。 安堵して、そして、急に恐ろしくなった。 愛しいれいむ。大切な赤まりさ。 だが、自分のしてきたことはどうだ。 れいむをレイプし、あまつさえ赤まりさを殺そうとさえした。 れいむは疲れたのか、目を閉じている。 だから、まりさは呟いた。罪から逃れるように、そっと。 「ごめんね、れいむ……」 「なんであやまるの、まりさ?」 「!」 れいむは起きていた。 じっとまりさを見た。 あの時見た瞳で。あの強い、ひたむきな瞳で。 まりさはもう隠せないと思った。 だから洗いざらい喋った。 れいむをレイプした理由。ジャンプ台から突き落としたこと。 自分の罪を、全て。 れいむは口を挟むことなく、じっと聞いていた。 まりさは、最後に、 「ほんとうにごめんだぜ、れいむ……まりさじゃ、おとーさんにふさわしくないぜ……」 情けなく、そんなことを言った。 そんなまりさに、れいむは、 「ぜんぶ、わかってたよ」 驚くべき事を言った。 「まりさがいらいらしてれいむをおそったのも、つきおとしたのがわざとなのも、ぜんぶ わかってたよ」 「わかってたのかぜ……! それならどうして……」 「あかちゃんができたからだよ。あかちゃんにはおとーさんとおかーさんがひつようなん だよ。いっしょにいれば、ゆっくりできるんだよ」 れいむは人間に飼われるようになった。赤ゆっくりを確実にゆっくりさせるためにはその 環境が必要だった。環境の維持にはまりさが必要だった。 そのゆっくりらしからぬ冷静な判断は、れいむ種特有の母性によるものだった。赤ゆっく りができれば、それをゆっくりさせるために全力を尽くす。時には同族を殺し、敵わぬ人 間にも立ち向かう。理屈も道理も逸脱した、狂気にも似た母性。 それがれいむ種というものであり、脆弱なゆっくりが絶滅しない理由のひとつ。 れいむの母性は、まりさの餡子を打った。 まりさは親の愛というものを知らない。れいむの異常な母性が、眩しいほどに輝いて見え た。とてつもなくゆっくりできるように思えた。 「まりさ。まりさはあやまらなくていいよ。れいむはまりさのしたことをゆるさない。お とーさんにふさわしくないなんていわせない。まりさはいいおとーさんになってつぐなっ てね! ゆっくりりかいしてね!」 「ゆっくり……りかいしたよ……!」 まりさは泣いた。哀しいのではない。それは暖かな涙だった。 そして、まりさは父として頑張った。 とは言え飼いゆっくりの身、餌はなにもしなくてももらえる。狩りは必要ない。だからま りさのできることと言えば、赤まりさと遊んだり、今まで身につけた生き残る術を伝える ぐらいだ。 それでも真剣だった。必死だった。 れいむはそんなまりさを受け入れた。 気づけば、仲睦まじい家族ができていた。 「なあ、まりさ」 れいむとおうたの練習をする赤まりさを眺めていると、おにいさんが話しかけてきた。 「お前、ゆっくりしているか?」 「うん! まりさもれいむもおちびちゃんも、すっごくゆっくりしてるんだぜ!」 「でもまりさ……お前、本当はれいむなんか連れて来たくなかったんだろう?」 「ゆゆ!?」 突然の指摘にまりさは動揺した。 なにしろ、まりさが好きだからレイプしたと勘違いしてれいむを家に連れ込んだのはおに いさんなのだ――そう、まりさの餡子脳は理解していた。 「それでも無理矢理連れてきたのは……まりさ、お前に本当に大切なものを持って欲しか ったんだ」 「たいせつな、もの……?」 「人から与えられただけのものなんて、大して価値がないんだ。俺の両親は金持ちなんだ けど、仕事ばっかりで全然家に帰ってきやしない。頼めばなんでも買ってもらえるけど、 それは本当にありがたいことなんだけど……それじゃ、本当に大切なものにならないんだ」 「ゆうう……」 「お前にはちょっと難しいか? じゃあ……なあ、まりさ。お前にはなんでも買ってやっ た。でも、たいしてうれしくはないだろう?」 言って、部屋にいくつもあるゆっくり用遊具を眺める。 「そんなことないんだぜ! おにいさんのかってくれたものはどれもとってもゆっくりで きるんだぜ!」 「でも、れいむとおちびちゃんの方がゆっくりできるだろう?」 「ゆうう……!」 まりさは反論できなかった。その通りだったからだ。 「俺にも大切なものがなかった。でも、できたんだ。それがまりさ、お前だ。お前を拾っ たのはほんの気まぐれだった。お前ときたらわがままを言ったかと思ったら急にしおらし くなるし、ちっとも思い通りにならない。そんなお前を構っているうちに、気づけばお前 のことが好きになってた。お前が俺にとって、大切なものになっていたんだ」 「おにいさん……」 「だからお前にも大切なものを持ってもらいたかった。だかられいむを連れてきた。ゆっ くりは子供ができればすごくゆっくりできるって言うし、きっとお前の大切なものになる。 そう思ったんだ」 まりさは感極まったのか、目を潤ませ声も出せない様子だった。 おにいさんはれいむに声をかけた。 「れいむ、子育て大丈夫か!」 「まかせてね! れいむはこどもをそだてるのがじょうずなんだよ!」 笑った。みんなで笑った。言葉ではなく、それがきっと答だった。 「なあ、まりさ。お前はいま幸せか? すごくゆっくりしてるか?」 「うん! すごくゆっくりしているよ!」 「そうか。きっと俺もお前と同じくらいしあわせで、ゆっくりしてるぞ」 まりさはうれしくてたまらなくなった。 だかられいむと赤まりさのところに駆け寄って、家族揃って、 「「「ゆっくりしていってね!」」」 最高のゆっくりを、おにいさんに送った。 赤まりさも子まりさと呼べるほどに大きくなり、ゆっくり一家とおにいさんはそろって散 歩へ行くことにした。 子まりさは初めての外の世界に興味津々。まりさもれいむも、久しぶりに外へでる開放感 にご機嫌だった。 「おちびちゃん、きをつけるんだよ!」 「おとーさんのおしえたこと、ちゃんとわかってる?」 「ゆっきゅりりきゃいしてるよ!」 まだ赤ちゃん言葉が抜けきらないとは言え、野良で生き抜いた二人の教育を受けたゆっく りだ。おにいさんもいることだし、危険はないだろう。 もし、危険があったとしても。まりさは命に代えてもれいむ子まりさを守るつもりだった。 かつて、野良だった頃。人間に立ち向かうゆっくり一家を何度も見た。愚かだと思った。 見捨てて逃げれば、助かるかも知れないのにと、バカにしていた。 でも、今ならその気持ちが分かった。もっともまりさは、もっと賢く立ち回る自信はあっ た。人間に立ち向かうなんて自殺行為だと知っていた。 まりさは野良の頃のように気を張っていたが、晴れた穏やかな日。特別な危険もなく、ノ ンビリと散歩は続いた。 「あ、たんぽぽさんだ!」 れいむの声に目を向ければ、道の反対側に咲く鮮やかな黄色。細かな花びらを大輪に広げ たタンポポが咲いていた。 「ゆゆ!? おきゃーしゃん、たんぽぽさんってなに?」 「おかーさんのだいすきなおはなだよ。とってもゆっくりできるんだよ♪」 れいむと子まりさの会話に、まりさは敏感に反応した。 たんぽぽ。れいむも子まりさもゆっくりできる花。 「まりさがとってきてあげるよ!」 まりさの餡子脳の中では、おにいさんの言葉が甦っていた。 ――人から与えられただけのものなんて、大して価値がない。 まりさは飼いゆっくり。れいむや子ゆっくりにあげられるのは、おにいさんからもらった ものばかりだ。 しかし、今。自分で手に入れられるものがある。大切なれいむと子まりさをゆっくりさせ られるたんぽぽ。れいむと子まりさの大切なものになってくれるかも知れない、花。 いてもたってもられなかった。 だから、気がつかなかった。 生まれてからずっと保ち続けた警戒心が、ほんのつかの間途切れて、気づけなかった。 いくつかの音がした。 ちりんちりんというベルの音。 アスファルトを擦るゴムの音。 そして、饅頭を潰すタイヤの音。 「まりさーっ!」 れいむの絶叫に、失われる感覚に、まりさは予感した。 自分が、永遠にゆっくりしてしまう、と。 まりさは自転車にひかれた。 不幸な事故だった。 自転車はおにいさんの後ろから来た。ゆっくり一家はおにいさんの前を歩いていた。 自転車に乗った人間からは、まりさ達ゆっくりはおにいさんに隠れて見えなかったのだ。 そこに、まりさはタイミング悪く飛び出した。 自転車はそのまま走り去ってしまった。転びでもしない限り、ゆっくりを轢いて止まる人 間はなかなかいない。野良なら片づけが面倒で、飼いゆっくりなら飼い主の文句が面倒だ。 それは、世間ではありふれた事故。 まりさにとってはありえない惨劇。 (……もっと、ゆっくりしたかった……) まりさは動けず、声すら出せない。自転車の轍はまりさを前後に両断していた。飛び散っ た餡子を量るまでもなく、致命傷なのは誰が見ても明らかだった。 まりさは悔しかった。 もっとゆっくりしたかった。れいむと子まりさと、ずっとゆっくりしたかった。 でも、なにより悔しいのは。 れいむと子まりさを、もうゆっくりさせてやれないことだった。 そんなときだった。ほとんど音の無くなった感覚の中、ただひとつ。れいむの叫びが届い た。 「まりさのぶんまで、おちびちゃんとふたりでずっとゆっくりするよ……!」 ――ああ、よかった。 まりさは安堵した。れいむのことを信じている。そのれいむがゆっくりするというのだか ら、子まりさは絶対にゆっくりできるハズだ。 まりさは心底安心し、そして、逝った。 その死に顔は、凄惨な死に様とは裏腹にとてもゆっくりしたものだった。 だから、知らずに済んだ。 「お前さえいなければ……!」 れいむに向けたおにいさんの冷たい言葉を。 まりさという、大切なものを失ってしまったおにいさん。その胸にぽっかり空いた穴を優 しさで埋めるのではなく憎しみで蓋をして、いつまでも癒えない虚無へのいらだちをれい むに向けたことを。 まりさは知らないまま、永遠にゆっくりした。 たった独りで産まれ、生きたまりさ。その最後は救われたように思えたが、結局独りで勝 手に未来を信じ、独りで死んだのかも知れない。 ゆっくりの死に救いなんてない。 それは本当にありふれた、なんでもないこと。 了 by触発あき 触発あきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る イイハナシダッタノニナー -- 2021-05-02 19 31 21 ああ これラジコンの話につながるのか -- 2015-10-17 18 33 02 色々と報われなくて切ない。 結構好き。 -- 2015-08-24 14 28 58 Happyend!と思いきやBadendでしたww -- 2014-09-14 14 00 19 泣けた 悲しい意味で T^T -- 2013-07-29 06 52 12 愛でも虐待も行けるがこう言うのは苦手だ -- 2013-07-21 17 05 23 飼い主の不注意だな、なんでもそうだがちゃんと見てやらないといけない 文句言ったって戻ってこないんだから・・・ 犬などのペットの場合器物破損だったかな?で賠償請求する事ができる、あくまでペットはその人の 財産という形で処理されるらしい。 -- 2012-12-10 13 33 16 悲劇だな・・・ -- 2012-09-18 21 28 57 虐待or虐殺派には、「これって虐待(殺)なの?」って思えるけど、愛で派にはこれでもキツイんだろうな~。 -- 2011-12-14 20 38 06 とりあえず、自転車に乗った人は銅ゆっくりの賠償金を払いましょう -- 2010-12-31 15 13 55 ただの逆恨みだろ。 -- 2010-12-24 17 20 44 >――人から与えられただけのものなんて、大して価値がない。 お兄さんから与えられたメッセージがかえって悲劇を起こしてしまっている。 まりさとお兄さんが、まるでベルセルクのガッツとグリフィスみたいだなあ。 しかしこのお兄さんはどうして自転車野郎を止めないんだよw -- 2010-10-04 21 03 39
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どもども!毎度こんにちは。 祝日のことなんですけど、栃木県宇都宮市内のとある保育園の同級生だった小和田さんと、北海道函館市の龍馬街道で、秋刀魚ときのこの秋の炊き込みご飯や夏野菜のヘルシーカレー、それからブランデーを堪能してきましたよ~ 有頂天なよろこびを互いに表現しあってました。 おっとー、話しが方向転換、楽しみな朝ごはんは青森県黒石市産のあたたかいご飯と、玉子焼き、それと鳴門産のわかめのお味噌汁 朝食の三冠王ですよね。 今日は7分で完食、8時30分に我がやを出発です。 駐車場に入り易いファミマに寄り道して、ソルマックを並んで購入(-_-;) 最寄りの幡屋駅まで和歌山南海観光バス、だいだい15分。駅のなかにある古めかしい自販機でジンジャーエールを買う。 朝はこれが欠かせません。。 京成電鉄 京成成田-駒井野分岐部間の電車内では、あんなことや、こんな事など様々な考えごとをする。 事務所に到着すると、胃がキリキリ痛むのを堪えながら昨日と同じくgooニュースを見てみると 多分あなたもこれ、気になるでしょ? ↓↓ 【カイロ秋山信一】軍事クーデターによるモルシ前大統領解任で、エジプトと中東諸国の外交関係に変化が起きている。モルシ氏の出身母体イスラム組織ムスリム同胞団の伸長が自国の反体制運動につながることを警戒していたアラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビア、クウェートは同胞団政権の崩壊を歓迎し、オイルマネーによる巨額援助を表明。一方、同胞団政権と友好的だったトルコとの関係は冷却化した。 UAEのアブドラ外相率いる外交団はクーデターからわずか6日後の9日にエジプトの首都カイロに入り、マンスール暫定大統領やシシ国防相と会談。クーデター後の外国政府高官による初訪問となり、暫定政権への信任を国際的に示した。さらに、「歴史的に重大な局面でエジプト国民を支えることが両国の絆を強める」として、総額30億ドル(約3000億円)の支援も表明した。 サウジアラビアとクウェートも10日までに、石油製品やガスの無償提供を含む総額90億ドルの支援を表明した。エジプトでは停電頻発や軽油不足に国民が反発しており、石油などの支援は国民の不満を軽減し暫定政権の安定化につなげる狙いがあるとみられる。 UAEは昨年以来、国内で同胞団への取り締まりを強め、体制転覆を画策した疑いでメンバーを逮捕するケースも相次いだ。同胞団を弾圧したムバラク政権と近かったサウジアラビアやクウェートも、モルシ政権とは距離を置いていた。 モルシ政権と近く数十億ドル以上の支援を行っていたカタールは、両にらみの構えだ。タミム首長は、マンスール暫定大統領の就任に祝意を表したが、カタール政府の意向を受けているとされる衛星テレビ局アルジャジーラは、同胞団のデモを中継するなど手厚い報道を続けている。 一方、クーデターに反発しているのは、イスラム政党が政権の中心であるトルコとチュニジアだ。同胞団を含む反体制派との内戦を続けているシリアのアサド政権も、関係が悪化していたモルシ政権の崩壊を歓迎している。イラクは暫定政権を支持する姿勢を示したが、モルシ政権下で関係改善を模索していたイランは軍事クーデターを非難した。 (この記事は毎日新聞から引用させて頂きました) これマジ? ここは、素直にしたがおうと思いますね。 それより、 たぶんNEXT記事は今日の夜でしょう。 ではまた次回! ほんとにこれがラストになりますんで 祝日に、突然保育園の同期だった大須田からメールがあったんです。 もう28歳と1ヶ月だよ、とか祝日に、青森県黒石市に店舗を構えている龍馬街道で秋刀魚ときのこの秋の炊き込みご飯や夏野菜のヘルシーカレーを食べたよとか、祝日に栃木県宇都宮市の量販店で買った松下電器産製のスタンド型 ミニクォーツヒーター FH-917が故障しちゃんたよ、とか本当どーでもいい話ばっかり 彼は、過去に頚椎椎間板ヘルニアや上腕骨近位端骨折などの病気を患ったことがあるので、治療の一環としての温泉に詳しんですよ。今度、池宮城さんとすすきの天然温泉か平磯温泉のどっちかに行くみたい。おすすめは平磯温泉よりかはすすきの天然温泉みたいですよ。
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略して「外タレ」3のテーマは【許し】ピーターは叔父を殺した犯人サンドマンを許す。 今日はこんな感じ。食べきれないっつの。東野みたいにチリチリとね。 難しそうな曲だけど長瀬君がんばって歌ってます。綺麗なワインレッド色のお湯。 「最近元気がなさそうだから」サンタはそういって沢山のプレゼントを届けてくれた。 本日の一曲。本日の一曲。っていうかさぁ。小説現代新人賞が300万。 その2匹のつばめ夫婦は2週間ほど前から、毎日天窓から床の間の古巣を偵察に来ているらしい。 追記。これでスリム&モデル体型になれると信じています。人生で一番大きい買い物に悩む主婦よ。 思い悩む暇もない。。そんな理由なんです。花柄のエプロンつけて作ってたな。 なんかうまく言い表せないや。