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353: 名前:雷蓮☆2011/08/19(金) 13 48 03 ~屋上~ バアンッ!! 「海馬先輩!!」 屋上にはフェンスの外で下を見下ろす、 海馬先輩の姿があった。 「っ……舞さん……みんな……」 「そんなことしないで、こっちに戻ってきてください」 「私は生きるなんて、もうできない……」 「そんなこと、誰が決めたんですか……?」 「あなたは恵まれていいですわね……。 私は小さいころから性格が悪くて、 みんなに嫌われてきた……。 親にも捨てられて、養子としてもらわれ それでまた捨てられて……」 「せんぱ……」 「変に同情してもらうより、死んでって言ってくれた方がいい」 「私、そんなこと思ってないです」 「うそ……。人間、口先では何とでも言えるわ」 「先輩から何をされても、何を言われても この気持ちは変わらないです」 「嘘って言ってるでしょ!!」 「何を根拠に言ってますか?」 「何って……」 「先輩は私の心を見すえているんですか? エスパーなんですか? 違いますよね? もし、そうだとしたら その答えは間違っていますよ?」 「だって、私はあなたにこんなヒドイことを……」 「そうですね。リハビリもしなきゃならないので、ヒドイです。 でも、そんなこと気にしてませんよ? 私は生きているんですから。 それに、あの場から逃げ出さないで救急車を呼んでくれた。 そのとき、私は先輩のこと 本当はすっごく優しい人なんだなーって思いました。 もし、本当に私のことが嫌いなら 車に引かれた私を助けるなんて到底できないですからね」 「っ……舞さん……」 「それに、土下座なんてめったにできないですよ」 「あなた!!起きていたの!?」 「そうですよ? 目は開けてませんが、耳だけは聞こえてます」 「っ……」 少しの沈黙が流れると同時に、ポツポツと雨が降り始める。 やがてそれは、大粒の雨へと変わり 闇夜をなお暗黙にさせる。 「先輩、やっぱり譲れません」 「えっ?」 「蓮は今まで会った異性の中で、一番の人です」 「っ……!!」 「たとえ、何を言われてもいじめられても。 蓮を好きって気持ちは変わらないです。 彼の一言で舞い上がったり、落ち込んだりするけど それも楽しいって思えるから。 こんな幸せ、他には絶対にないと思うんです。 だから、譲れないんです。 たとえ、それが一番仲良しの鈴音だとしても」 「っ……」 「自殺なんてしたら、本当に地獄に落ちちゃいますよ!?」 「はっ……!!っ……い」 「え……」 「生きたい!!」 「っ……!」 「舞さんみたいに、素敵な人を見つけて みんなから羨ましがられたい!!」 「なら!!なら……生きて、…生きて頑張ってください!!」 「舞……さ」 「私は先輩みたいに、鬼畜派がいても気にしません!」 「ふ…、ふふふっ……。それ、褒めてんの……?」 「ほ、ほ、褒めてます!!たぶん!!」 「ぷっ……あはははははは! 自殺なんてやーめた!! 何か、全世界の人間に羨ましがられたくなった」 「えぇ……」 「鬼畜らしく、希望はでっかく持たなきゃ」 「先輩……」 「ありがとう、舞さん。 あたし、やっぱり生きて人生楽しみたい。 舞さんみたいにいっぱい笑って、好きな人と一緒にいたい。 自殺したら、舞さんの結婚式に呼ばれなくなっちゃうし」 「そうですよー…って、えぇっ!?」 先輩はくるっと向きを変えて、 フェンスをのぼってこっち側にこようとしたとき---。 スルッ 「あっ……!!」 「海馬先輩!!」 先輩は滑って、 下へ真っ逆さまに落ちた。 「先輩!!」 「舞!!お前も行ってどうする!!」 「蓮、先輩……え……」 ヒュッ ストン なんと、下から颯斗くんが 海馬先輩を抱えて屋上へ飛んできた。 彼は本当に運動神経がはかりしれない。 脚力がハンパなかった。 「は、ははは、は颯斗くん!!?」 驚きと焦りを隠せないで、動揺していた。 「何だ?」 何食わぬ顔でこちらを見る。 先輩は気絶しているようだ。 「どどどどどどうやって!?」 「あぁ、地面を一蹴りしてここに来た」 「颯斗はスパイだからな。何でもアリだ」 「いわば、二次元で起こることもお手の物ってわけ」 蔵間くんが海馬先輩を颯斗くんから受け取り、 横抱きで屋上を後にする。 「これくらい、みんなもで普通にきるのだろう?」 「いや、できねーよ!!」 康介がツッコんた。 その後、看護師さんに見つかり 30分のお説教を受けました。 365: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 10 04 20 ~海馬side~ ~翌日~ 病室- ここ……は……? あれ……アタシ……昨日、死んだんじゃ……。 「やっと起きたんですね」 この声…… 「舞……さん……」 「同じ病室になりましたね」 彼女はそう言って、へらっと笑う。 「私……どうして生きているの……」 「颯斗くんが助けてくれたんです」 「私、あそこから落ちたのに?」 「えぇ。颯斗くんは何でもアリらしいです」 「馬鹿馬鹿しい話……」 「先輩も、自殺だなんて馬鹿馬鹿しいです」 「クスッ……確かに……」 お互いにクスクスと笑い、 病室の天井を見て息をつく。 「……舞さん、ありがとう」 私は少し微笑んで、目を閉じた。 「私、報われない自分が可愛かったの。 誰よりも不幸で、認められなくて、 孤独で可哀想な自分が……。 それが、ここまで事を大きくしてしまうなんて……。 まわりが見えていなかった。 いいえ、まわりを見ようとする心がなかった。 幼い頃、親に捨てられたときのように あんな怖い想いをしたくはなかったから……」 私は両腕を自分の顔の前でクロスさせ、 彼女に泣いていることを気づかれないようにした。 涙が抑えきれないほど、溢れてくる。 「そんな私に手を差し伸べてくれたのは、 舞さん……あなたよ……。 あなたが、暗闇の中で震えていた私を…… 温かい希望の光の中へ連れ戻してくれた……。 本当に……ありがとう……」 声が震えて、これ以上話すことはできなかった。 彼女は私の方を向かず、 天井を向いたまま--- 「先輩は怖かっただけなんです。 現実と向き合えば、何か失うことをすでに知っていたから……。 失えば、悲しみが大きいことも……。 だから先輩は私に言いましたよね? 口先では何とでも言えるって……。 私も確かにそうだと思います。 でも、言葉にしなきゃ伝わらないんです。 口では嘘も言えるし、真実も言える。 けど、口がなかったら本音も相手に自分の名前を知ってもらうことも できないんです」 その言葉に、私の心のどこかで 何かが壊れる音がした。 それはきっと、私のねじ曲がったプライが壊れた音ド。 そして心の奥で新たなものが生まれた気がした。 それはきっと、新しい自分の清らかな心。 「先輩の流した涙は、今までの中で一番綺麗な涙ですよ」 私はこの瞬間から、生まれ変わる。 さっきまでの自分にサヨナラするために。 サヨウナラ、今までの弱虫なアタシ。 コンニチワ、これからの新しいアタシ。 366: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 12 11 26 ~舞side(普通視点)~ あれから一ヶ月……。 すっかり元気を取り戻して、無事に退院することができた。 海馬先輩は私より早く、退院してすでに学園へ行っている。 ちょくちょくお見舞いに来てくれたから、全然寂しくなかった。 みんなしょっちゅう来てくれたし。 ……ある人を除いては……。 「よぉ。退院だって?」 もう荷物をまとめてある病室に、ひょこっと顔をだす彼---。 「蓮……」 「お前が学校来ねぇから、康介がうるせーんだ」 「蓮だって、充分うるさいでしょ?」 「あいつと一緒にすんな。ほら、行くぞ」 「……いい」 「はぁ? お前、まだ入院してんのかよ?」 「蓮とは一緒に行かない」 ちょっと意地悪しようと、ヘソを曲げる。 だって、お見舞いに1度しか来てくれなかったんだもん! そりゃ、用事があるから来れないんだろうけど……。 蓮は寂しくないのかなって一人で不安になって、 自分だけ一方的だったのかなとか思って……。だから、お返ししてやるの。 「蔵間くんの方がいい」 「っ……。お前、今何て……」 「私一人、ばかみたいじゃん……」 思いっきりの意地悪で、蓮を困らせようとする。 病室のベットに座っている私は、そっぽを向いて黙った。 さすがにここまで言ったら、謝ってくれるだろうと思った。ところが---。 ガタッ 「え……」 私の真っ正面に椅子を置いて、座る彼。 何がしたいのかよく分からない。 すると、いきなり蓮が自分の膝で私の膝を挟(はさ)み、逃げられないように力を入れる。 そして蓮がアクセでしていたネクタイを、 私の両手に結んで自由に動かせないようにする。 「ちょっ、蓮!?」 「……」 「蓮ってば!!これ、外して……」 「無理」 「なっ……」 「お前、俺の彼女だろ」 「えっ? そ、そうだけど……」 「なら、俺以外の男の名前なんて出すな」 「どーして?」 「どーしても」 「蓮には関係ないでしょ」 「関係あるんだよ!!」 まっすぐな瞳でみつめてくる蓮……。油断すれば吸い込まれそう。 「どうして?」 「っ……」 「蓮……?」 「っ……」 「言ってくれなきゃ分かんない」 「そんくらい気づけ!!鈍感女!!!」 突然の怒声に、肩が跳ねる。 いきなり怒られたから、さすがの私もムカッときて意地でも言わせてやろうと思った。 「何で……怒るの……」 私は頑張って涙腺をうまくコントロールし、涙を流す。 「あ、おい……」 さすがの蓮も、私が泣いて困っている。もう少し……。 「うっうぅー……」 「っわーたよ!!言うから、泣くな!!」 「ほんと……?」 「お前が俺以外の男見てたり、話してたりすると ムカッときて嫌な気分になる。 お前を俺の部屋に閉じ込めたくなっちまうんだよ。 それが怖ぇから警告してんだよ、バカ!!」 蓮は耳まで真っ赤にして、私から目をそらした。今回は私の勝ち。 「それってヤキモチ?」 「っ!!!」 私が聞いた瞬間、もっと赤くなる彼。 以前、蔵間くんに教えてもらったからこれがヤキモチだってことは分かった。 「そ、そーだよ!!かっこ悪くて悪かったな!!」 あまのじゃくの蓮が何だか可愛くって、 お見舞いにあんまり来なかったことも全部許してしまう。 私は自分で、結ばれたネクタイから両手を外し蓮を思いっきり優しく抱きしめた。 「かっこ悪くないよ? すっごく嬉しい」 「っ……!!」 「蓮がお見舞い来なくて、寂しかったから意地悪しちゃった。ごめんね?」 彼を抱きしめているから顔はよく見えないが、まだ耳は真っ赤になっている。 「……男だから、色々大変なんだよ」 「何が?」 「お前はまだ知らなくていい」 「そう?」 ガチャッ 「あー!!蓮が抜け駆けー!!」 左端君が病室に入ってきた。 「おまっ、下で待ってろっつたろ!」 「舞ぽんにやらしーことするって分かってたもんねー!!」 左端くんは私をお姫様だっこして、さっそうと逃げ出す。 「あ!!てめぇ!!」 「蓮は荷物係~!!」 「おい!!舞に触ってんじゃねぇ!!」 この後、左端くんが蓮にお仕置きされたことは言うまでもない。 それと、なぜか私も罰として一週間と離れちゃダメという 命令をくだされました。 370: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 13 21 23 ~番外編「もう二度と戻らない時間」~ 蔵間side- 「こんのぉぉぉぉぉー!!」 騒がしい教室で俺は一人、読書に専念する。 それは他の人たちにとって難しいことだとよく言うが、俺は違う。 どんな場所にいたっても冷静でいられる。 つまり、どんなに騒がしいところだろうと苛立つことはない。 「こおおおおおすけええええええーーっ!!」 ガッシャーン バリバリバリバリバリ…… パリーンッ! 「ぎいいいいやあああああああーーー……」 ……。 「ちょっとちょっと!!蓮!!」 「うるせぇ蒼太!!」 …………。 「へへっざまーみろ、蓮!!」 「てめぇ!!康介ーっ!!」 ………………ブチッ! ズドォォォォォンッ!! 「ちょーっと、静かにしてもらえない?」 「「はい……」」 俺はこんなやんちゃな二人を仕付けする。毎日こんな感じ。 「蔵間くん、おはよう」 「あ、おはよう舞ちゃん」 「ごめんね、なんかまた迷惑かけたみたいで」 「全然大丈夫だよ~。舞ちゃんのためなら!」 あと、舞ちゃんを見守ったり。たまに危ないことするしね。 舞ちゃんの言動と行動にしょっちゅう驚く。 男相手だって本当に分かっているのか、 この俺でも驚いてしまうほど。 天然で鈍感で可愛い舞ちゃんだから、かなりモテる。 蓮もそれには困りきってるけど。 371: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 14 19 44 お昼- 「おい、蔵間!!」 「……君は?」 赤い髪の毛にロングヘアー。腰まで髪が長い。 「アタシは波野目 しずほ(なみのめ しずほ)。聞き覚え、あるでしょ?」 「あぁ、もちろんさ」 今のは俺じゃない。康介だ。 「お前じゃない!!邪魔だ、羽柴康介!!」 ドカッ 「うごぉっ」 彼女のみぞおちが見事、康介に大ダメージを与えた。 「俺は君と話したことはないよね?」 「あぁ。何か不満か?」 「いいや。女の子に声をかけられるのは嬉しいけど……」 「私じゃ女の子に見えないってか?」 「そういうことじゃなくて」 「じゃあ何なんだ?」 「スカートのファスナー、開いてるよ?」 「っ……!!」 バチンッ! 「いってぇ……」 「変態野郎!!」 初めて女の子に叩かれた……。 ま、本当は痛くないんだけど。 大抵こういうときって、ありがとうとか言わないかな? 「大丈夫、蔵間くん?」 舞ちゃんが優しく俺の頬を触る。 あぁ……なんて可愛いんだろう……。 あ、蓮がすっごい剣幕でこっち見てる。 これはヤバいな。 「全然大丈夫だよ~。心配してくれてありがとうね」 「本当? なら、よかった~」 だって、ああでも言わなきゃ殺されちゃうよ……。 372: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 15 54 15 放課後- 俺はいつも帰りは寄り道をする。 俺とアイツしか知らない……いや、俺とアイツだけが知っていた場所。 商店街を抜けて外れにある小さな森。 細道を抜けると大木がある。そこを左に曲がってまっすぐ進む。 黄色い家の屋根が見えたら右に曲がって、行き止まりになったら二歩下がって左に進む。 そうすれば森を抜けて、海を一面見渡せる崖の上の花畑につく。 「また……きちゃったよ……」 俺とアイツはここで毎日語り合った。 友達の愚痴とか、噂話とか、お互いのこととか……。 「もう3年もたつのか……」 海風が髪をなびかせる。 あの日の思い出を思い起こさせるように、花の香りが胸の奥を突く。 ガサッ ふいに後ろから音がした。 ここには俺しか来ていないハズなのに……。 そうか……。俺はいつもここに来ると、背後の警戒が緩くなるんだった……。 ただただ、この場所を求めて……行けばまた、アイツが待っていてくれるようで……。 俺はゆっくりと振り返った。 「……しずほ、ちゃん?」 「うぁ……」 「どうして俺の後をついてきたの?」 「え……と」 「言わないと、ストーカーになるよ?」 「ま、待て!!そんなつもりは……」 「なら、どういうつもりで来たの? まさか、プライベートを探ってるんじゃないよね?」 「ち、違っ……」 「……俺は女の子相手なら、 何でもいい顔するわけじゃないよ」 「その、すまなかった……。お前をたまたま見つけてつい、ここまで……」 「……ま、いいや。次はないから、気をつけてね」 「あ……」 「まだ何かあるの?」 「……その……ごめん」 「……しずほちゃん、女の子らしくね」 「なっ……!!」 「ははっ……。また明日ね」 「あ、あぁ……」 俺はしずほちゃんを見送ってから、静かにため息をついた。 誰もいないことを確認し、ひっそりと言う。 「……もう戻らないのに、何やってんだよ……俺」 373: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 16 12 20 ~次の日~ 朝の教室- 俺は今日も変わらない毎日を送る。 いつものようにペースを崩さずに……。 「あ、舞ちゃんおはよ」 「蔵間くん、おはよ。えっと……恋愛小説?」 「あぁ、そうだよ。男が恋愛小説って笑えるよね」 「ううん。私はそんなことないと思う。 蔵間くんにしては珍しいねーって……」 「あぁ、そうかもしれないね。でも、これ悲恋だから」 「ハッピーエンドじゃないってこと?」 「そうだよ。俺、そういうのばっかだから」 「そうなの? あ、これオススメだよ!」 サッ 「ひまわり畑と金平糖……?」 「うん!これ、悲恋なんだけど感動するお話!」 悲恋なのに感動なんて、するのだろうか? 「読んでみてね~!」 「う、うん……」 「おい、蔵間!!まだそんなもん読んでたのか?」 「え……あぁ、ま、まぁ」 「……いいかげん、目を覚ませ」 「っ……分かってる……」 「……? 蔵間くん……?」 あれから3年たった今……。 俺はまだ引きずっている。 アイツとの思い出、笑顔、声、姿、触れた体温、感触……。 すべてこの手に、目に、頭に残っている……。 そう、俺の元カノ……。 374: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 18 44 15 ~しずほside~ 授業中- なんか、さっきの雰囲気……いつもの蔵間違かった……。 私はさきほどの蔵間の様子を、ばっちり見ていた。 あっ!それより、みーこに頼まれてたこと!! みーことは、私の親友の近藤みいこ。通称みーこ。 彼女に蔵間のことを色々探るように頼まれた。 探るっていうか、気になる人がいるかを聞き出すって言うか……。 でも、さすがにさっきの後じゃ、聞けないよね……。 「はぁー……」 「しずほっち、悩み事?」 「へ? あ、ううん!まったく、これっぽちも~」 隣の舞ちゃんが優しく声をかけてくれる。 375: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 18 47 56 「そう? 困ったことあったら、何でも言ってね」 「うん!ありがとう」 なんて優しい子……。 この学園1、モテるだけあるなぁ~。 あ……。そういえば、舞ちゃんって蔵間と仲いいよね! でも、舞ちゃんに下手に聞いても怪しまれるよね……。 私はうーんと唸り声をあげながら、悩んでいた。 378: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 19 20 59 ~お昼~ 「しず、蔵間くんに聞けた?」 話しかけてきたのは、みーこだった。 「ううん、ごめん……」 「あ、謝んないでよ!しず、悪くないし!ごめんね、ありがとう」 「うん……」 みーこは蔵間のことが好きだ。 もちろん、恋愛の方向で。 私はまだ、恋とかしたことないから分かんない。 けど、いつかそんな人ができたらいいなーとは思う。 ……女たらしの蔵間のどこがいいんだか。 私は一人、心の中でつぶやいた。 「俺って、そんな風に見えるの?」 「ぎゃっ!?」 いきなり私の顔を覗き込んできた蔵間。 しかも、私の心の中の言葉を読まれた。 「ちっ、近い!!」 ドンッ 「おっ……と」 「何でアタシの心の中が読めんだよ!!」 「顔に書いてある。それに、そっちからアツイ視線送ってきたんじゃん?」 「なっ、おまっ……!!」 だんだん顔が熱くなっていくのが手に取って分かる。 「あれ? もしかして、こういうこと言われると恥ずか……」 「いっぺん死ね!!」 私は暴言を吐いて、みーこの元へ駆け寄って行った。 「……意外とシャイなんだな」 380: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 19 33 36 ~体育の授業中~ ダメだ……。 さっきのことが頭から離れん……。 「しずー!しずってばー!」 それに、顔近くてびっくりしたよー……。 「サーブ、しずだよー!?」 あぁーもう!!なんか顔、あっついんだけど!! そりゃ夏だから、気温のせいかもしれないけど……。 だけど……。なんか、近くで見たら格好良かったんですケド……。 「しずーーーっ!」 「はっ!」 「もぉー!しずって何回も呼んだのにー」 「ご、ごめんねー!えっと、サーブは……」 「しずだよーっ」 「あ、あはは~!ごめんねー」 ダメだ!集中しないと!! 「何キンチョーしてんの?」 「だって、さっきく……え?」 「ん?」 「……」 これはおかしいと思う。 なぜなら、今日は男女合同ではない。 だから、蔵間なんてここには存在しないハズなんだが……。 「こんにちわわ~」 いるんですけどーーーーーっ!! 「こんにちわわ~じゃねーよ!!何とぼけたフリしてこっち来てんだバカ!!」 「バカはないんじゃない? だってさっきアツイ視線送られて……」 「いいから、早くあっち行け!!この変態!!」 「えー」 「えーじゃねぇ!!さっさと動け!!」 まさか、こんなタイミングでこいつに会うとは……。 さすがのアタシも、疲れてくる……。 「じゃ、気を取り直してしずのサーブからいこうか!」 蔵間はアタシの隣で構えのポーズ。 「気を取り直すな!!てか、しずゆーな!!いつからお友達になったんだよ!」 382: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 19 46 36 そんなこんなで騒がしい授業も終わり……。 私は更衣室で着替え中……。 ~更衣室~ 「仲良かったね」 「……え」 「アタシのためでしょ?」 みーこが制服に着替えながら言う。 「あ、うん!もっちろん……」 ズキンッ あれ……?なんか、胸がイタイ……。 「しずもいい人、見つかるといいね!」 「あー……うん」 383: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 19 49 42 「でも、あんま蔵間くんと仲良くしなくてもいいよ? ああいうタイプ苦手でしょ?」 「あ、そ、そうだね……」 「それじゃ、先に教室行ってるね」 タタタッ なんか心臓がイタイ……。……病気なのかな? 私はこの胸の痛みの意味をまだ知らなかった……。 384: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 20 04 32 ~教室~ 「でね~……」 教室に入ると、みーこが不良の蓮と話している。 珍しい光景なので、つい写メりたくなる。 「それで、好きな飲み物とかは?」 「レモンジュース好きだぜ、アイツ」 「本当!? それ、信じらんない!超かわいすぐる!!」 「あ、舞来た!んじゃな、じゃじゃ馬娘」 みーこのことを、じゃじゃ馬娘と呼ぶ蓮。 なんつーあだ名つけてんだ。 「おう!」 それに突っ込まないみーこも悪いが……。 「あ、そうそう!そこのヤンキー」 「なっ……!?」 お前にだけは言われたくねぇ!! 本当は言いたいけど、殺されそうだから黙っとく。 でも、左手の拳はしっかりつくってある。 こいつが不良じゃなかったら、一発お見舞いしてやるとこだ。 「蔵間はブラックコーヒーが好きだ」 私のそばで誰にも聞こえないくらいの音量で囁いた。 「え……」 「舞から言われてんだ。お前に協力するようにってな」 「なん……」 「俺はそれ以外の奴には、真実を言わない。レモンジュースはデマだ」 「えぇっ!?」 「ちゃんと伝えたからな。俺、じゃじゃ馬娘嫌いなんだよ……。じゃーな」 「ちょっ」 「どうかしたの、蓮」 「おっと!」 着替えが終わった蔵間が教室に入ってきた。 「いや、ちょっと雑談」 「絶対に嘘でしょ」 「お前……いいかげん人を信用することを覚えろよ」 「じゃあ、いいかげん人を騙すのはやめてください」 「うっ……」 「ほらほら、喧嘩しなーい!次、移動だよ!」 舞ちゃんが二人の間に入る。 「次言ったら殺す!!」 「殺したら、おいしいご飯食べれないよ?」 「俺、殺すなんて言ってねーよ!もー、おっちょこちょいだな~」 「そ? じゃ幻聴かな?」 すばらしいコントを交わして、教室から出て行く3人。 舞ちゃんのまとめ具合には、圧巻してしまう。 「舞ちゃんって……実はすごいの?」 あ、移動の準備しなきゃ! 私も3人の後を急いで追った。 君を好きになる5秒前 続き12
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416: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 10 47 15 ~蓮side~ なーにやってんんだよ、あのバカ。 俺は下駄箱の隅の影で、アイツを見ていた。 ……というより、見張っていた。 「いつものフェイスで女落とせるんじゃなかったのかよ?」 いつものフェイスとは、蔵間の涙目のこと。 アイツはそれで数々の女をいい結果でフってきた。 なのに、今回ばかりは上手くいかなかったようだ。 「蓮、女を落とせるとか言っちゃダメ」 舞は俺にデコピンする。 「いでっ」 「女の子に失礼でしょ」 ツッコむとこ、そこかよ……。 こいつのド天然ぶりにはかなわない。 「それより蔵間くん、しずちゃん追わなくていいのかな?」 「知らねぇよ。アイツも考えがあるんだろ」 「それにしては、いつもの余裕のある顔には見えないよ?」 「お前、意外と勘がいいのんじゃねぇか? 確かに……」 「そういえば、しずちゃんは!?」 「あぁ、それなら左端と颯斗が待ち伏せしてる」 「待ち伏せって……こうなることを予想してたってこと?」 「まぁ、そういうことになるんじゃないか」 いつも勘が鋭い蔵間が、こんなに近くにいる俺らにも気づかない。 ……ってことは、相当焦ってるんだろうな。 一体、アイツは何に焦ってやがんだ……? 417: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 11 44 55 ~左端side~ 屋上- 「あー。やっぱり、こうなっちゃうんだー」 俺が星光10大人物に選ばれている理由。 秘密国家機関に所属している俺ん家は、 これからの起こりうる物事も予想できる。 ……というのも、この俺自身が未来の物事を予知できるから。 小さいころからこういう力を持ってたんだ。 そして、隣にいる運動神経がはかりしれない男、黒鉄颯斗。 颯斗っちとは、小さいころからの友達。 日本のスパイだから秘密国家機関と深く関わりがある。 「どうしてここまで予想できる?」 颯斗っちがさっそく質問。 「さー? 俺もよく分かんないんだ」 「……最初から分かっていたのなら、教えてやってもよかったんじゃないのか?」 「ダメだなー、颯斗っちったらー。未来を教えてどうすんの?」 「いけないことなのか?」 「当たり前だよ。未来を教えても、起こってしまうんだ。物事ってのは」 「……まるで、それを経験したような口癖だな」 「ハハッ。経験してなきゃ、もっと楽しく生きてやってたよ」 「秘密国家機関も大変なのだな」 「お互いさまじゃないのかな」 たわいもない、けど、どこか少し切ない会話。 この世には、不平等なものがありすぎた。 「左端、本当に屋上に来るのだな?」 「もちろん、信じてよ。俺の力を。ざっとあと、5秒」 「5」 「4」 「3」 「2」 「1」 ガチャッ 「ビンゴッ!!」 「えっ」 「しずちゃんだよね? どーも」 「お、お前はっ」 「秘密国家機関、代表取り締まり役の宮前左端」 「同じく秘密国家機関、偵察代表取締役の黒鉄颯斗」 「え、な、なに」 「じゅんぽんの奴隷の、しずちゃんでしょ?」 「お前に言っておきたいことがある」 「……私は、奴隷なんかじゃないです」 「自分で断ち切ったんでしょ? 離れるのはいやなのに」 「っ……!?」 「俺に嘘は通用しないから、よろしくね」 じゅんぽん、じゅんぽんだからここまでしてあげるからね。 まだ、古傷が治っていない君のために。 一肌脱いであげようじゃないか。 さぁ、ここからは俺たちの力のみせどころだ。 418: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 12 28 13 ~しずほside~ 突然私の前に現れた、星光10大人物の二人。 ひみつこっかきかん? なんじゃそら。ふざけてんのか? 「ふざけてなんかないよ?」 左端が私の心の中を読み取ったように言う。 「なっ!?」 「あんまり時間がないのでな。手早く進ませてもらう」 颯斗は静かに言った。 「蔵間が今まで誰とも付き合わなかったのは、なんでか分かる?」 「え……」 「その顔、知りたそうで知りたくないって感じ?」 「っ……」 「蔵間は元カノがいたって知ってるかな?」 「この情報は、ごくわずかの者にしか知られていない」 二人は真剣な表情で、私に蔵間の事を教えてくれる。 「蔵間には元カノの 愛 っていう子がいた。 けど、ある日をもって星になったんだ。愛ちゃんは帰り道、 何者かに殺されバラバラにされて見つかったんだ」 「それは直視できないほどのむごさで、 見る人の心に衝撃を与えたほどだった。 それを知らされた蔵間は、ヒドく落ち込んだ。 突然のコトで頭がついていかず、夢かとも思ったらしい。 けど、それはまぎれもない現実で 棺には変わり果てた姿の彼女があった。 心にかなりの傷を負ってしまっているんだ、蔵間は」 そんな……。 そんなこと、考えられない。 あんなに元気そうな蔵間は、そんな過去を持っていたなんて‥…。 「今も……傷ついているの……?」 「まーね。結構、お似合いのカップルだったから。 でもね、最近は違うんだよねー」 「どういうこと?」 「最近は表情が明るくなった気がしない? な、颯斗?」 「あぁ。何か楽しいことでもあるのかと聞いたら、 秘密と言われたんだ。すごく気になるな……」 「……?」 「奴隷がー……可愛いとか、何とか? あ、でもしずちゃん、奴隷やめちゃったんだっけ? なら、違うのかな~? あれ~?」 「奴隷……?」 「だが、奴隷はしずほしか雇っていないと聞いたぞ? お前のことではないのか?」 「え……」 「俺さー、この前その子紹介してって言ったら 奴隷は俺の言うことしか聞かないから 会っても無駄だって言われちゃったよー。 いったい、だれなんだろーなー?」 「っ……宮前左端!黒鉄颯斗!」 「なーに?」 「なんだ?」 「私の質問に答えよ。私にも可能性はあるか?」 「……君以外に、誰がいるっていうの?」 「お前にしか成せないことだと、俺は思うがな」 考えるより先に、足が駆け出していた。 「ありがとう!」 バタンっ 屋上の階段を駆け下りて、 思いを伝えたい愛しい人の元へと飛び立つ。 届け!!私の想い!! 響け!!あの人の心に!! もう何ににも支配されない。 私は私のやり方でいかせてもらう。 早く会いたくて、会いたくて、限界を越えるくらいに走った。 419: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 12 56 18 ~沙奈・瀬奈side~ 中庭- 私たちは中庭でみーこと話し合い。 これは誰に頼まれたわけでもなく、 みーこから話を聞いてほしいと言われたから。 「私ね、しずほの本当の気持ちを聞きたいの」 「「本当の?」」 「うん。私ね、蔵間くんのことが知りたくてしずほに調べてって頼んだの」 「「……」」 「なんだけど、しずほも好きになっちゃったみたいでね。 普通は嫉妬するところなんだろうけど、 不思議と嬉しいって気持ちになってね」 私たちは首を傾げた。 「「嬉しい?」」 「そう。だって、今まで恋をしたことがないしずほに好きな人ができたって、 私にとってすっごい嬉しいことなの」 みーこは満面の笑みで話す。 「けどね、しずほは臆病だから……。私がきついこと言えば、上手くいくかなって思ってたんだけど……」 「「どうしたの?」」 「ちょっと心配になって……」 「「それなら、大丈夫じゃないかな」」 「え……」 「みいいいいいいこおおおおおおお」 ダダダダダダ… 「し、しずほ!?」 「みーこ!!聞いてくれる?」 「え?」 「私、あきらめたくないの」 「しずほ……」 「私にとって、初めての恋で最初で最後にしたいから……だからっ」 「知ってたよ」 「え……?」 「しずほが気を遣ってくれてたこと」 「みー……こ?」 「あんたが私の好きな人を奪っちゃだめって制御してたのも」 「っ……」 「嬉しかったよ。こんなにヒドいことしても、優しくしてくれた」 「みぃ……こお……」 「だから……」 ドンッ みーこはしずほの背中を強く押した。 「行ってこい!!」 それはまるで、しずほに喝を入れるようだった。 「みーこ……」 「……大好きだよ、しずほ」 「っ……!!ぅう、うちもお、うちも大好きだよ!!」 ダッ 「っ、ハッピーエンドじゃなかったら許さないからね!」 しずほは猛ダッシュで、駆けて行った。 「「……許したんだ?」」 「しずほだもん。可愛くて、許しちゃうよ」 「「これからどうすんの?」」 「また、合コンに参加する日々!」 「「懲りないね~」」 笑っているように見えた彼女の顔は、少し寂しそうだった。 427: 名前:雷蓮☆2011/09/18(日) 13 45 38 ~しずほside~ 私は学校の隅々を全速力で駆け抜けながら、 愛しい人の姿を必死で探した。 「はぁっはぁっ……、どこに、いるのっ」 どこを探しても見つからない。 「もう帰ったのかな……?」 そう思えば、足どりが重くなってしまう。 もうこの気持ちに制御などかけられないのだから。 明日まで待てる気がしない。 ときめいたあの瞬間のように、 鼓動のスピードが、ボリュームが大きくなってゆく。 「あっ、しずちゃーん!」 自分の教室の前を通りかかったときだった。 足を止めて、声の主を探す。 「舞?」 教室からひょっこり顔を出してにこっと笑う彼女。 「ごめんねー、呼び止めちゃって。これ、蔵間くんに届けてほしいんだけどー」 「え、蔵間に?」 「そうなのー、ごめんね? 何せ、蓮が急用だって言うから」 「蓮が行けばいいじゃないか」 私が呆れたように言うと、張本人が舞の後ろから出てきた。 「俺がアイツにわざわざ会う? カレカノじゃねーんだよ、俺らは」 いや、別にそれがカレカノのすることじゃなくね? 「お前、ただメンドクセーだけだろ」 「めんどくせーなんて言葉、俺の辞書には載ってないね」 「つくづくウゼェー野郎だな、お前」 蓮とアタシの間に火花がちり始める。 でも、そこに割って入った天使。 「仲良くしなきゃダメだよ!蓮も!」 「チッ」 こいつは舞のことになると、いきなり態度が急変する。 結局、この学校で一番強いのは舞なんじゃないか? 「分かったよ。届ければいいんでしょ」 「ありがとう、しずちゃん」 キュンッ あぁー、なんて可愛いんだろう!! 女のアタシでもキュンとしてしまう。 アタシは舞から一枚の手紙をポケットに入れ ゆっくりと歩き出した。 「想い、蔵間くんに伝わるといいね」 え……。 「お前、他のやつに知れてないとか思うなよ」 二人の姿が見えなくなったとき、 聞こえた舞と蓮の言葉。 このとき、初めて応援されていたのに気づく。 二人共、知ってたんだ。 心がぎゅっとなって、温かくなる。 きっとこれが愛情なのだろう。 アタシは、今の気持ちが零れないように しっかり抱きしめながらまた走り出した。 433: 名前:雷蓮☆2011/09/19(月) 11 55 49 そろそろ学校の校舎を一周する。 どこを探しても見つからない。 さきほど下駄箱を見たら、まだ靴があった。 彼はどうやら、まだ校舎にいるらしい。 「もう、どこだよ……」 そう言って曲がり角をまがろうとしたとき--- 「うわっ!?」 「っ!?」 誰かと正面衝突した。 「ってー……」 「わーお。お二人さん、大丈夫?」 「うぅ……。ご、ごめんなさい……」 ぶつかった相手は二人組の男の一人らしい。 「気をつけろ、波野目しずほ」 「はい……って、えぇっ!?」 何でアタシの名前知ってんの!? 「俺らのこと知らない奴、初めてだよ奏太ー」 奏太(かなた)……? 私のぶつかった男の名前は奏太というらしい。 「ったりめーだろ。まだ一度も演説してねーんだ」 演説? こいつ、ふざけてんのか? 「俺のこと知らないようだから教えといてやる。 次期生徒会長の須江金 奏太(すえがね かなた)だ」 ドクンッ 須江金 奏太……。 こいつは星光10大人物の5大目。 詳しいことは分からないがヤバいらしい。 「何か、怖がっちゃった感じだよ? 奏太が剣幕やっばすぎるからー」 「俺のせいにすんじゃねぇよ。おい、立てるか?」 「たっ、たてます」 すんごい嫌な奴と会ってしまった。 「あ、ついでに俺の名前も覚えてって。森 千里(もり ちさと) ってね」 「っ……!?」 星光10大人物9大目の、森 千里!? 「名前だけだと、よく女の子に思われるんだよね。 一応言っとくけど、俺は男だから」 「もう女みたいなモンだろ」 「うるせーよ、奏太ー」 そうそうたるメンツに後ずさる。 まさかこんなところで、また星光10大人物に会うとは。 「それより、蔵間のこと探してんだろ?」 「え……」 何でそんなこと知ってるの? 441: 名前:雷蓮☆2011/09/24(土) 09 34 59 「それより、蔵間のこと探してんだろ?」 「え……」 「何でそんなこと知ってるんだって顔だね~」 「千里、お前は黙ってろ」 「えーっ!奏太だけずるいよ~」 「お前はただうるさいだけだ」 「ぶーっ!!」 「蔵間は図書室にいるぞ」 「えっ……」 「アイツ、元カノがいなくなったとき、抜け殻みてぇになったんだ」 「蔵間が……?」 「そうだよ~。可哀想で、見てらんなかったよねー」 「あぁ。もうアイツの抜け殻は拝みたくねーんだ。 頼む。アイツの傍にいてやってくれ」 「っ……!」 「今のアイツには、お前が必要なんだ」 ドクンッ その言葉に、鼓動が大きく跳ねる。 ダッ 「あっ、しずほちゃん!」 「……。」 「……奏太が応援するって、珍しくない?」 「……何の事だ」 「恋の応援だよ」 「さーな。俺は腐れ縁のバカの背中、押しただけだ」 「あー。蔵間とは小さいころからの仲だったんだっけ」 「アイツにはまだ借りがあるからな。お返しだ」 「かっこつけー」 「黙れ、動く要注意人物」 442: 名前:雷蓮☆2011/09/24(土) 10 57 47 ~図書室~ ガラッ 「蔵間!!」 しん・・・ もうすぐ下校時間になるからか、 図書室には人の気配がまったくない。 バサバサッ・・・ けど、棚から本が落ちたような音がした。 「蔵間っ…!?」 タタッ…… アタシは音のした方へ走った。 ……けど、そこには誰もいなかった。 「っ……!」 いや、誰もいなかったんじゃない。 誰もいなかったように見せかけたいだけなんだ。 実際、ここに蔵間はいる。 けど、彼は姿を現してくれない。 「 く……らま?」 しん…… 「ねえ、本当にいないの?」 コト…… かすかに物音があが、彼らしき姿はどこにも見つからない。 「なんでよ……」 どうして隠れてるの? アタシと顔を合わせるのが、そんなに嫌なの? 「なんか、言ってよ……。ねえ……蔵間」 静まりかえる図書室。 時計の針が休むことなく、小さな音を立てて動く。 アタシは手の平を、ぎゅっと固めてつぶやいた。 「蔵間!!いるんだったら、出てこい!!」 ガタッ! 「ねえ!いつまでかくれんぼ、するつもりなの?」 アタシは目に涙をためて、ありったけの声を出した。 「もう鬼はやだよ!!」 そう言ったとき、 最終下校時間を告げるチャイムが鳴り響いた。 静かに、そして優しく。 まるで別れを告げるかのように、その音色はアタシの涙腺を刺激した。 そしてまた、沈黙が己が身を包み込む。 「……どうして、ここが分かったの?」 「っ……!!」 アタシの耳が焦がれていた、欲していた声。 誰にでも優しい、けどどこか悲しい声。 「俺、誰かに教えた覚えはないんだけど……」 けれど、彼の姿は見当たらない。 と思いきや、かすかに伸びた影がすぐ近くにあった。 「くら、まっ……」 「……さっきは、ごめん。その……」 「アタシこそ、意地張ってバカみたいだった。ごめんね」 「いや、俺が悪かったんだ。 あんまり俺には笑顔を見せてくれないもんだから、 嫌いなんじゃないかって思って……。 そしたら何か、モヤッとして……」 「え……?」 蔵間、それって……。 もしかして――― 「それって、嫉妬……?」 「っ……!?」 ガタッ バサバサッ…… ふと、隣で本が落ちた音がした。 タタタッ 今度こそ、見つける! 「……みーつけた」 「あっ……!」 蔵間はなぜか、焦った様子でいる。 アタシの顔を見たと思えば、くるっと後ろを向いた。 「ちょっ、なんでそっち向くの!?」 「あ、あっち行って!」 「はあ?」 蔵間は、自分の顔を覆い隠すようにして 図書室の出口を指差した。 今更、帰れっての? いい度胸してんじゃん。 「どこ指差してんの? 出口? アタシは後戻りしないよ。もう何も隠さない。ねえ、こっち向いて?」 アタシがそう言うと、 彼は少し戸惑ったが、ようやく振り向いてくれた。 443: 名前:雷蓮☆2011/09/24(土) 11 17 45 「え……」 アタシは彼の顔に驚いた。 珍しく顔が真っ赤なのである。 「蔵間……? 顔、赤いよ?」 「う、うるさい!だから嫌だったんだ」 まるで5歳児の子供のように、 顔を真っ赤にして言う。 「どうして、顔赤いの?」 「ゆ、夕日のせいだ」 なんて分かりやすい嘘。 そんなに今日の夕日は赤くないのに。 本当は嫉妬がばれて、恥ずかしいんろう。 なんとなく、分かってしまった。 「蔵間、嘘つくのはこれで終わりにして?」 「っ……」 「嫉妬、したの?」 「……、そうだけど、文句ある?」 いつもとは違う、余裕のない蔵間が可愛い。 そんな彼の表情を、今は私が独占している。 そう思うと、思わず顔が綻んでしまう。 「ふふっ」 「なっ、何笑ってんだよ!」 「だって、可愛くて……」 「うるせー」 「子供なとこも、あったんだね」 「悪かったな、子供で」 「蓮みたいに天の邪鬼」 「アイツより、俺の方が大人だよ」 「そんな変わんないってば」 「うるせえ」 「子供ー」 「黙らすぞ?」 「どうやって?」 「へえ。覚悟、できてんのか?」 「やってみてよ?」 「……上等だ」 グイッ ちゅっ…… えっ……。 それはほんの瞬間で、甘い罠だった。 「ふ……はあ」 深い、優しい口づけで私を癒す。 息ができなくなって、蔵間の胸を叩く。 けど、一瞬の隙も与えてくれない。 気絶しそうになったとき、彼はようやく離してくれた。 「っはあ、はあ……」 「お前の方が、よっぽど子供じゃない?」 どうやら。アタシはコイツを甘く見すぎていた。 「不意打ちはナシでしょ……」 「俺、卑怯だから」 そういって、意地悪く微笑んでみせる彼。 そしてまた、甘いキスを交わしたーーー。 444: 名前:雷蓮☆2011/09/24(土) 16 13 05 ~蓮side~ 図書室前の廊下- 「やーっとハッピーエンドか?」 「しっ。蓮、もう少し静かにしゃべって」 「チッ。何でこの俺がこんなこと・・・」 「おい、お前ら。何してんだ?」 「あ"?」 「へ?」 ふいに現れたのは、武塔。 こんなときにメンドくせー奴が……。 「なんだよ、ロリコン教師か」 「久しぶりの登場なのに、そんな言い方ひどい!!」 「ぶ、武塔先生!えっと、どうしたんですか?」 「どうしたんですかじゃないよ~。もうとっくに下校時刻過ぎて……」 「うるせーんだよ、いっつもテメーは。常識にとらわれ過ぎてんだよ」 教師ってモンは、いつでも校則にうるさくて嫌いだ。 「とらわれてんじゃねーよ。守らなきゃいけないルールってモンだ。 ほら、とっとと帰って勉強!」 「嫌だね。生憎、教師にツラ下げようなんざ思わねーからな」 「蓮!先生にそんな言い方……」 「何かここから動けない理由があるのか?」 「お前に教えて何になる?」 「利益の問題じゃないだろ、蓮。理由を聞かなきゃ納得できない」 「教師に教える義理はない。職員室でテストの採点してろや」 「ちょっ、蓮!先生、ごめんなさい!蓮にはあとで……」 「いいんだよ、舞さん。蓮、理由が言えないなら帰ってもらう」 「……」 「蓮」 「っせーな、分かったよ」 「うんうん」 「本当は言いたくなかったんだけどよ……」 「はいはい」 「康介が腹こわして、トイレから出てこないんだ」 「……え?」 「れ、蓮!?」 「だから言ったろ!? 俺は康介のために言わなかったんだ!」 「えっと……その……先生が悪かった」 「せ、先生!?」 ※本当の理由はそんなんじゃありません。 「分かったらとっとと行けよ!戻ってきた康介が気まずいだろ……」 この俺にかかれば、演技もお手の物だ。 こんなヘタレ教師に負けるハズがない。 ……ざまーみろ。 「そ、そうだな。なるべく早く帰るんだぞ!」 タタタッ 「……ザコが」 「蓮、あんまり大人をいじめちゃダメだよ?」 「悪いのは俺じゃねえ。いじめがいのある大人がいるのが悪いんだ」 「……。」 コツコツ…… 「生徒一人、下校させることもできないのか。あきれたな」 「さすが蓮だよね~。巧みに惑わす言葉を並べて、自由自在に人を操るなん て」 「まったく。いたずらにしか脳を使わないのかしら?」 っ……!? 「お、お前らっ!」 「蓮? この人たち、だあれ?」 そっか。舞はまだ、星光10大人物全員知らないんだった。 「あら、舞ちゃんじゃない」 最初に舞に気づいたのは、佐竹真奈。 一応女で、こいつも星光10大人物の中の一人。 「初めまして。次期生徒会書記を担当する、佐竹真奈よ」 「え、あ、はいっ!」 「そんなテンパんないで。同い年なのに」 「えっ!?」 「よく大人びて見えるらしいから、驚くのも無理ないわ。よろしくね」 「あ、え、えっと」 「真奈でいいわ」 「ま、真奈?」 「ええ。私も呼び捨てでいいかしら?」 「も、もちろん!」 「それじゃ、これからよろしくね。舞」 「うん!真奈」 ま、女同士のあいさつはこんなもんか。 唯一、舞を怖がらせるだろう人物は--- 「あ、俺!俺の名前!俺の名前も覚えてよ!」 こいつ、森 千里だ。 こいつは腹黒でドSだから、何しでかすか知れたもんじゃねえ。 「俺は森 千里って言うんだ!性別は男だからね!!」 「あ、うん!」 「次期副生徒会長なんだ !奏太より、九九を覚えるの早かったのが自慢!」 そしてこいつは、言動がバカだ。 「余計なこと口走ってんじゃねーよ!いつの話持ち出してんだ、てめー は!!」 いつもツッコミ役がこいつ、須江金 奏太。 「あれ? いたんだ、奏太ー」 「お前、死ぬ覚悟はできてんだろーな」 「もう、冗談だってばー半分。はい、奏太もあいさつ!」 「お前、後で覚えとけよ。あー……俺は須江金 奏太。 次期生徒会長になる。ま、よろしく……」 「こ、こちらこそ!」 「そして、照れ屋だよ~」 「うるせー!!お前、一回地獄に案内してやろーか!!」 「あはは~。バカだなー、生徒会長ー。冗談ですってば! 俺がいつでも変わってあげますよー?」 「お前は俺専用のイスで充分だ」 そして、こいつらをひっくるめて一言であらわすと 三バカトリオだ。 君を好きになる5秒前 続き14
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385: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 20 35 11 ~放課後~ 私は日直の仕事を済ませ、変える準備をしていた。 「迷惑だった……?」 ふと前の方から女の子の声。 「舞ちゃん?」 「さっき、余計なことしちゃったかなって思って……」 「ううん、全然」 むしろ、嬉しかったし……。 自分でも何か分かんないけど……。 「私が見てる限り、しずほちゃん、恋してると思って」 「コイ?」 このアタシがコイ? 「あ、これ秘密。みーこには内緒ね」 「え……」 「みーこより、しずほの方が似合ってるって思ってね。んじゃ、また明日」 タタタッ…… それって……アタシが蔵間に恋してるってコト!? 「そうそう、そうだよー」 「うにゃっ!?」 突然、背後から聞き覚えのあるボイス。 胸がキュンと苦しくなる。 「なーに、その不審者扱い……」 「べ、別に……」 「ヤンキーのくせに、シャイなんだね」 「シャっ……!?」 「あ、この後暇?」 「は?」 「いいから、つきあってよ」 「何言って……」 「はい、しゅっぱーつ!」 「は!? おいっ、ちょっ……!!」 言われるがままに手を引っ張られる私。 無抵抗な自分に、少し違和感を覚えた。 386: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 21 44 46 ~カフエ~ 「……ちょっと」 「ん~?」 ここは港にあるカフエ。 人が少なくて、落ち着いて休むことができる。 ってチガウ!!そーじゃない!! 「何でここにいるの!?」 ガタッ いきなり大声で立ったアタシにちょっと驚く蔵間。 「まぁまぁ、座って~」 昨日と全然態度がチガウじゃん。 ついてったらめっちゃ怒ったクセに……。 「気分屋」 「俺はそんくらいで怒んないよ~?」 ハハハッっと笑い、コーヒーを飲む。 蓮の言ったとおり、ブラックだ。 「しずちゃんがまた、ついてくるかなって思って」 「誰がしずちゃんじゃ。いっぺん地獄にご案内してやろうか?」 「それは楽しそうだね~」 えへへっとなぜか頬を染める彼。 まったく……。調子、狂いっぱなしだってば……。 てか、こんなとこみーこに見られたら…… 「もうあんたのコト、ストーカーしないから。それじゃ」 ガタッ 私は危機感を感じたため、即座にその場から去ろうとした。 ……が、 ガシッ 「っ……!?」 「食い逃げ厳禁~」 「は……?」 「俺の話、まだ途中なんだけど?」 いや、全部聞いてくとか言ってないからねーっ!! 「アタシ、用事あるんで帰ります」 「俺より大事な用事?」 「そうじゃない。ただ帰りたいか……あ」 「俺のコト、そんなに嫌いなんだ」 なえかウルウルな瞳になる彼。 まさかとは思うが……アタシが泣かせてしまった? 「い、いや!!別にそんなことはないぞ!!じょ、冗談に決まっている!」 「……本当?」 「あぁ!もちろんだ!」 何言ってんだよーーっ!! 自分で言っといてなんだけど、アタシバカなんじゃね!? 「んじゃ、今日から1習間俺の奴隷!」 「……すいません。何かすっごい幻聴聞こえたんでもう一回……」 「今日から俺の彼女!」 「いや、何か悪化してるんですけど!!?」 「ハハッ!ナイスリアクション!採用!」 「あ、ありがとうございますー。一生懸命勤めま……ってチガーウ!!」 こうして私はきょうから1週間、蔵間の奴隷(パシリ)になった。 「あ、変なコトしないから大丈夫!しずちゃんには期待しないようにしてるから」 「あーそうかい。つれない女で悪かったな、クソガキ」 「しずちゃんって言ってるとこ、ツッコまないんだ?」 「あ」 389: 名前:雷蓮☆2011/09/01(木) 18 11 55 ~3日後~ 土日の休日をはさみ、 またの学校日和がやってくる。 何よりも憂鬱だ---。 なぜなら、アタシが蔵間の奴隷になったこと知られたら 絶交の危機におちいる可能性が 大になるからである。 でも……なんか最近、そういう関係に疲れてきた。 正直、アタシって男気が強いから 女子との意見とはまったく違かったりする。 ようするに、アタシがあっさりしているから ねちねち付き合いの女子とは気が合わないということ。 それに最近のみーこの態度、冷たいし……。 きっと仲良いから嫉妬してるんだろう。 けど、アタシは嬉しくもなんともない。 蔵間への気持ちが変わってきていることに気づいたから……。 だって、会うたびに胸がキュンってなって 他の女の子と話してたりすると苦しくなっちゃう。 「これが……恋って病気……?」 そっと胸に手を当ててみる。 どんどん心臓が加速していくのが、すぐ分かった。 「心臓痛いの?」 「ぎゃっ!?」 「おはよ~」 教室にいつの間にか来ていた蔵間。 男の子の香水の匂いがする。 「お、おは、よ……」 「ん? 元気ないじゃん」 「い、いやー……」 ぎこちない私の態度に、彼はんー?っと首をかしげる。 ちょ、かわいいじゃんか!ばかやろー! 「あ!!」 「えっ!?」 「アロエじゅーす、買ってきて!」 「あ、あろえ?」 「奴隷でしょ? はい、買ってきて~」 「な、自費で買えっての!?」 「うん。何か問題でも?」 「すっごいある。とにかく、無理だか……」 「昨日、泣かせたのは誰……?」 「うっ……」 「しずちゃん、Bダーッシュ!!」 「チクショーーー!!」 こうして、私の奴隷生活24時(仮)は始まった。 391: 名前:雷蓮☆2011/09/01(木) 18 23 11 ~蔵間side~ あれっ? こんな朝早くに教室に誰かいる! 蓮とは今日、別々で来たから今はいないはず。 舞ちゃんは蓮と一緒だし。 鈴音と康介はラブラブだから、遅くくるだろうし。 ……とするとー……もしやしずちゃん? ガラッ 「おは……」 俺が教室にあいさつをしかけたとき、 しずちゃんが自分の胸に手を当てて、 何やら苦しい表情を浮かべていた。 一体どうしたというのだろう……。 「これが……恋って病気……?」 ドクンッ えっ……。 今、しずちゃん……何て言った……? これ以上のことを聞きたいと思う自分がいたけど、 その気持ちを何とか押し殺して、俺は声をかけた。 「心臓、痛いの?」 「ぎゃっ!?」 思ったより、いい反応。 これだから、しずちゃんいじりは楽しい。 素直に俺のお願い聞いて、アロエじゅーすを買ってきてくれるとことか! ……そういえば、さっき後に誰かいた気配がしたよーな……。 ……気のせい……かな? 393: 名前:雷蓮☆2011/09/01(木) 20 10 48 ~しずほside~ タタタッ くっそぉー!! アタシをいいようにパシリ扱いしやがってー!! ドンッ 「わっ、ごめんなさ……」 「はろろ~ん」 「げっ」 運悪くぶつかった相手は、宮前左端。 一応、男。 「その反応はないでしょ、しずぽん!」 「うるせぇ。しずぽんゆーな」 「しずぽっぽー!」 「ふざけてると受け取っていいんだな?」 「えへへ~っ。あ、どっか行くの?」 「え、あぁ……まぁ」 「なになに~? 運命の告白~?」 「宮前左端を半殺しにしても、罪にはならねぇよな……?」 「ちょっ、怖いよ~!殺られる前に逃げよっ」 タタタッ チッ……。道草くっちまったじゃねぇか。 おかげで、嫌なことが終わらねぇ。 「相変わらず、口のききかたが悪いな」 「うわっ!?」 ろうかの天井からぬるっと出てきた黒鉄颯斗。 「おっと、驚かせてしまったようだな。すまない」 「すまないじゃねぇよ!おまっ、どんだけ運動神経いいんだよ!」 「何をそんなに羨ましがっているのだ!そんな褒めてもおごらないわよっ!」 「一言も褒めたつもりないんですけど!? 大丈夫!? アタシの言ったこと聞こえてました!? てか、何でお母さん口調になってんだよ!!」 「あらまぁ、宮前さんじゃないのお~」 「あらま、颯斗さん!?」 「何でお前はこっちに戻ってきてんだよ!!」 颯斗にツッコミを入れている途中、 左端がまたこちらに戻ってきた。 もう疲れてきたんですけど……。 なかなか、自動販売機にたどり着けない昼下がり---。 396: 名前:雷蓮☆2011/09/02(金) 21 47 11 ~教室~ コンッ 「いてっ」 「買ってきたぞ、この野郎」 「この野郎って……」 疲れ果てて、不機嫌なアタシ。 「何か問題でも?」 「本当は朝に頼んだのに、 お昼になってから買いにいくから 猛スピードで行って当たり前だろ。 それに、寝たふりするからさー」 「だからって、アタシが実はストーカーとかいう変な噂たてんのヤメロ」 「えーっ」 「えーじゃない。もう、お前といると疲れる」 「どこに行くの?」 「疲れたから寝る。また明日ー」 スタスタ… 「……保健室?」 アタシは変な気持ちを引きずって、 常連の保健室へと向かった。 397: 名前:雷蓮☆2011/09/02(金) 22 01 41 ~保健室~ 「それじゃあ、そこのベットで休んでなさい」 「はい」 シャッ 保健室の女の先生は、 いつもアタシをベットに寝かせてくれる。 なんか常連で、いつもここにくるときは 大抵嫌なことがあったときか悩んでいるとき。 それを察しているのか、先生はあっさりと承諾する。 「……恋なんて……できないって思ってたのに」 ぽつり、口から零れたその言葉には少しの切なさも入り交じっていた。 「女はいずれ、自分の過ちに気づく。たとえどんな形であろうとも」 先生が記録のファイルを見返しながら言う。 「アイツのこと、嫌いだった」 ベットの上で、体育座りをして窓の外を見る。 「でも……最近、 アイツへの気持ちが変わってきた。 アイツとまだ一緒の時間を過ごしたいとか、 もっとアイツの事を知りたいって思う」 独り言のはずが、声がだんだん大きくなっていく。 398: 名前:雷蓮☆2011/09/03(土) 07 29 58 「しずほちゃんも恋するのね」 先生が面白いものでも見るような目でアタシを見る。 「別に……アタシは」 「も~、しずちゃんはツンデレなんだから~」 「しずちゃんゆーな!!お休み!!」 ボフッ お決まりの捨て台詞を吐いて、アタシは布団をかぶった。 恋……か。 きっとそうなんだろうな……。 アタシもいつの間にか、蔵間に恋しちゃってんだ。 いや、自分では薄々気づいてた。 なのに、気づこうとしなかっただけなのかもしれない。 「あら、みいこさんじゃない」 「すいません、ベット空いてますか? 腹痛がヒドくて……」 え……。みーこ!? 「えぇ、空いてるわよ。どーぞ」 「ありがとうございます」 どうしよう……今朝のこととか見られてたからヤバいよね……。 シャッ …… ………… 運良く、みーこは私の二つ隣で寝た。 ふぅー……。 やっと一安心したところだった。 「協力してくれるんじゃなかったの?」 ドキンッ! 大きく心臓が跳ねる。 じわじわと迫る恐怖を感じていた。 「知ってる? 嘘つきは泥棒の始まり」 ドクンッ!! 「しずほは嘘つきなのかな……?」 「やめて……」 やめてよ……。 「それとも……」 お願い、やめて……。 「泥棒かなぁ?」 「やめてよ!!」 シャッ 「しずほさん、人の傷を悪化させるなら教室に戻りなさい」 「っ……」 「ここは保健室よ。場をわきまえなさい」 「すいません」 シャッ アタシは布団の中でうずくまり、 早くみーこが出ていくのをただただ待っていた。 401: 名前:雷蓮☆2011/09/03(土) 10 26 18 ~放課後~ 「しずちゃん、下校時刻過ぎてるけど?」 「……」 「彼女なら、もう帰ったわ」 「……」 「なんかいじめられてたみたいだけど?」 「そんなんじゃないです」 「早く解決した方がいいんじゃない?」 「どうやって解決しろってんですか……。もう後戻りなんてできないのに」 「あら、恋のライバルだったの!?」 「……そーですよ」 「あらまぁ!あ、そうそう!さっき男の子があなたのカバン、持ってきてくれたわよ?」 「えっ……」 「たしかあなたの同じクラスの蔵間くん!あの子、イケメンよねぇ」 「っ……」 ダッ 「あ、ちょっと、しずちゃん!?」 アタシは蔵間に会いたくて、飛び出した。 どうしてもあの顔がみたくて、朝早くきて……。 いつも目をとじればアイツが浮かんで‥…。 アタシはアイツがいそうなところを全部探したが、見つからなかった。 来た形跡もない。 ……仕方ない、帰ろう。 下駄箱へ向かったその時だった。 「奴隷のくせに、待たせるって何様?」 「っ!!」 この声……!! 「しずちゃん、おかえりー」 「くら、ま……?」 会いたかった人にようやく会えた。 もう一度だけでいいから、あの顔が見たかった。 「ん? どうした?」 その誰にでも優しい言葉と、笑顔と、声……。 包み込んでくれるような眼差し‥…。 すべて、抱きしめたくなった……。 414: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 10 22 30 「ん? どうした?」 「か、カバン……あり、がと」 少し照れくさくなって、 素直にありがとうと言えない。 「ん? あぁ、お礼はアメちゃんでいいよ」 アメちゃん……? 私が ? を頭に浮かべていると、 彼は呆れたように 「飴のことだよ」と教えてくれた。 妙に可愛げがある蔵間に、私は少し嫉妬した。 「何か元気ないね?」 ドキッ 「そんなこと、ないって」 ハハッと微笑して、下駄箱から自分の靴をとる。 「ふーん。めずらしいね、笑うなんて」 「え……」 「いっつも仏頂面なのに、こういうときだけ笑うんだ?」 な、何が言いたいのよ……。 「それとも、こういうときだけごまかしてんの?」 何……言ってんの……。 「しずちゃんってさ、八方美人?」 「やめてよ!!」 「っ……!」 蔵間がハッとした顔で私を見た。 「あ……ごめん。取り乱したかも」 何、謝ってんの? 「あんたはいいよね。誰にでも優しくできて、人気でさ」 心の中で思ってもない言葉が、嫌味となって口から零れる。 「おまけに顔も完璧じゃん。よかったね、生まれてきて」 違う。こんなことが言いたいんじゃない。 「こういうときだけ笑う? じゃあ、いつ笑えばいいんだよ」 黙れ、私の口。お願いだから、これ以上言うな。 「八方美人? あぁ、そうかもしれないな。 アタシなんて、人の気色うかがってばっかりの弱虫女だよ」 自分で自分を傷つけた。 残ったものは、涙と切なさと虚しさと……。 「しず……ちゃん?」 聞きたくない愛しい人の声。 「アタシがあんたに近づいたのは、みーこのため。 別にあんたに好意があったんじゃない。 プライベートに首突っ込んだのも、アタシの思いじゃない。 最初から、あんたにはうんざりしてたんだよね。 だから、もう奴隷とかやめてくんない?」 どうして、こんなにヒドい言葉しか出てこないんだろう。 本当は別れたくないのに。お願い、もう何も言わないで。 私に突き刺さった刃は、深い傷を残して床に落ちた。 「……じゃあさ、しずちゃんは俺が嫌だったから笑わなかったの?」 私は自分の口を制御しきれず、話すのを許してしまった。 「そうだよ? おかげで疲れちゃった。いいかげん、やめてよ」 蔵間はきっと傷ついた。なんてこと、してくれたんだ。 「そ……か。無理させて、ごめん……」 こんなこと聞きたかったんじゃない。 アタシが望んだ結末は、こんなんじゃないでしょ? 後悔はいつも、私をどん底へ突き落とす。 そして、その場から消えたくなる。 「っ……もう、しゃべりたくないんだよ、ばか」 ダッ…… 結局結末は、アタシの一人の暴走で終わった。 415: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 10 27 15 ~蔵間side~ 「っ……もう、しゃべりたくないんだよ、ばか」 なぜかその言葉が、俺の心に刺激を与えた。 アイツはなんで、悲しそうな顔をした? 俺はどうして、追いかけないんだ? いつもの俺なら、女の子を傷つけないで終わらせるのに。 どうして、俺の心はこんなにも痛くなるんだ? 一人、床に転がったアイツの靴を見つめていた。 君を好きになる5秒前 続き13
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468: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金)14 01 10 ~舞side~ 付き合い始めて、もう半月が経つ。 蓮は最近、なぜかピリピリしていた。 せっかく久しぶりに一緒に帰っているっていうのに…。 最近は委員会の仕事とか、日直の仕事で 放課後は別々に帰っていた。 それから蓮の不機嫌は始まった。 「ねぇ、蓮…?」 「…なんだよ」 「笑ってよ」 「断る」 「じゃあ、手、繋いでいい?」 「……嫌だ」 ぎゅっ 断られたけど、めげずに私から手を繋ぐ。 「ねぇ、どうしてそんなに機嫌悪いの?」 「……」 「蓮、言ってくれなきゃ分かんないよ」 「…………」 なんとか拗ねている理由を聞こうと頑張るが、 彼は心を開いてくれない。 それどころか、私と顔を合わせてもくれない。 蔵間くんといるときは、普通にしゃべってくれるのに…。 きっと蔵間くんに説教されたくないからだろう…。 「分かった。蓮の機嫌が直るまで、帰らない」 「っ……!?」 その言葉に驚いて、蓮は私の方を振り向いた。 何か言いたそうな顔で。 「やっと見てくれた」 「っ……」 プイッ 「あ……」 せっかく顔を合わせたのに、蓮はまたそっぽを向いた。 「もしさ、最近一緒に帰れなかったことで機嫌を損ねちゃったんだったら、 ごめんね?」 「っ……」 「だから、蓮……」 「…………」 「蓮……寂しいよ……」 ぱっ 近くにいるのに遠いことが悲しくて、 私は繋いでいた手を離した。 469: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金) 14 23 00 「舞っ…!!」 ぎゅっ 「ごめんっ!その……本当にごめん!」 「れ……ん」 「恥ずかしくて、言えるようなモンじゃねぇんだよ」 「恥ずかしい?」 「あぁ。その……お前の言う通り、一緒に帰れなくてっていうことも、だし…」 「うん……」 「あと!!お前、俺がいるってのに他の男と一緒に帰っただろ!!」 「え? あ、左端くんのこと?」 「それがっ……俺にはつらいんだよ!!」 「ど、どーいう……」 ぎゅうぅぅー 蓮の抱きしめる力が強くなる。 「お前……ヤキモチって言葉、前に教えたの忘れたのかよ?」 「え……。蓮…じゃあ、ヤキモチ……」 「うっせぇ。かっこ悪いだろーが」 「蓮……」 「誰よりも近くにいて、余裕をもつ男でありたいのに……。 これじゃあただのかっこつけじゃねぇかよ……」 ぎゅぅぅー 私も蓮にされたように、お返しをする。 「ま、舞……?」 「かっこ悪くなんてないよ。私の大好きな蓮だもん。 かっこいいとかかっこ悪いとか関係ない。 ただ、蓮を好きなの!愛してるの!それ以外、何も理由はいらないでしょ?」 「舞……。やっぱり、俺……お前が好きだ」 「私もだよ、蓮」 チュッ 「んっ……」 蓮のキスは、いつも優しくて温かかった。 いつもは恥ずかしいって思うけど、 今は全然そんなこと思わない。 私も蓮をしっかりと、この両腕で、全身で受け止めたいから。 蓮を信じているから……。 「蓮、これからっも一緒だよ」 「あぁ、お前を離す気なんてないから。俺だけしか見れないようにしてやるから、覚悟しろよ?」 「ふぇっ!? んっ……ふぁ」 蓮はまた、私に深くとろけるようなキスをする。 もしかしたら、本当に蓮の本気スイッチを入れてしまったかもしれない…。 470: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金) 16 20 58 ~蔵間side~ 「蔵間ーっ!」 「ん? あぁ、しずちゃん」 「うっ…。いいかげん、その名前で呼ぶのやめてよねー」 「ははっ。やだね」 「このやろーっ。あ、それどころじゃなかった!あたし、今日用事あるから先帰るね!」 「帰るなら、俺も一緒に…」 「あたし、親戚の葬式だからさ!そのまま行かなきゃ間に合わないんだ!じゃ」 「あ、うん…」 なーんだ。 俺、一人で帰るのかー…。 寂しいなぁ……。 「兄さん!!のろのろしてないで、早く帰りますよ!!」 「あぁ!わーってるよ!!チッ」 「聞こえてますよ~」 「うるっせぇな!!早く帰ればいい話だろ!?」 「分かってるんなら、早くしてください!」 「康介ー、鈴音と帰るんじゃ…」 「今日は無理だって言った!」 「珍しい……」 「じゃなー」 どてっ 「あいでっ!」 「何もないとこで何で転んでるんですか、兄さん!!役者になりきってる暇なんてありませんよ!?」 「わざとじゃねーだろ!!今のはどー見ても!!」 ……。 苦労するね、四季くんも。 「鈴音もそろそろ帰っ……」 「っ……」 鈴音……。 初めて鈴音の切ない顔を見た。 ったく、康介の奴……。 女の子一人にして、置いていくやつがあるかよ。 俺はしずちゃんに置いてかれてるけど……。 「鈴音、また明日」 「ん? あ、蔵間。また、明日……」 「あんま落ち込むなよ」 「あぁ。ありがとう……」 つくり笑いしてまで、あいさつしなくてもいいのに。 いつもはサディスト国の旗かかげて、 大威張りしてるっていうのに……。 ま、康介もドSの鈴音を気に入ってるから問題はないけど。 471: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金) 16 52 41 帰り道、ちょっと寄り道したくなって ファミレスでパフェを食べていた。 もちろん、一人で……。 いつもはリア充の俺が、 今こうして一人でいるとリア充の奴等が憎い。 「はぁ……」 我ながら、大人げない発想だ。 ダメだ。気分転換にドリンクでも… 「こんなところでお受験対策か? 蔵間じゅん」 「げっ!!」 嫌なやつに会ってしまった。 「須江金 奏太!と、ゆかいな仲間たち…」 「ちょっと!!そんな言い方、ないんじゃないかしら?」 「お前もいたのかよ、真奈」 「失礼ね!ゆかいな仲間と絶世の美女って言ってほしいわ!」 「お前、予想外のバカだったんだな」 真奈が一番マシな奴だと思ってたけど、 やっぱりバカだったんだな。 「んじゃさー、いっそ役立たず生徒会2名と、絶世の美男ってのはどう?」 そしてこいつもバカ。 475: 名前:雷蓮☆2011/10/23(日) 13 39 00 「つーか、何でここにお前らがいんだよ」 俺がしびれをきらしながら言う。 「寂しそうにしてる蔵間くんを慰め隊がきたってのに、その顔はなんなのさ~?」 「うるせーんだよ。余計なお世話だコラ」 森 千里。こいつに絡まれると、一番やっかいだ。 「奏太!お前のお友達なんだろ。相手しろよ」 「誰がお友達だ!こいつの面倒なんて、百歩譲ってもお断りだ!」 「っていうことは、次期生徒会長の座は俺に譲るってことだね!」 「誰がそんな解釈しろっつったよ!!」 ゴンッ 奏太のチョップが垂直に千里の頭部へ。 「ぅいって~」 身構えるのが遅かった千里は、まともにそれをくらう。 「バカね。そんなことばっかりしてるから、蔵間じゅんにも甘く見られるのよ」 「おめーもだよ!!何分かったような顔してんだ!!」 真奈は奏太の蹴りをくらう。 たとえ女だろうと容赦なしの奏太。 「話は変わるんだけど、あなたの彼女は?」 「いや、話が変わりすぎだろ」 奏太のツッコミが入る。 「しずほのことか?」 「それ以外に誰がいるっていうのよ」 「腹立つ言い方しかできないのか、真奈」 さすがの俺もここでツッコミを入れなければならない。 「最寄りの警察署から連絡があってね。 最近、ここらで不審者の目撃情報が多数きていて…。 女性の一人歩きは控えるように伝えておけとのことだから、 あなたと一緒にいると思って来てみたのだけれど…。 どうやら、倦怠期のようね」 「倦怠期じゃねーよ!!普通に一緒にいなかっただけでいーだろーが!!」 佐竹 真奈の異常なボケに、正直疲れてきた。 「迎えに行ってやらないのか?」 「しずほは家族と一緒だ。俺の出る幕じゃないよ」 「親戚の葬式に出てるんじゃ、迎えに行くにも行きにくいわよねー」 「あぁ…。……って、真奈!!勝手に人の都合まで調べんな!!」 「蔵間は何かと沈黙を保つから、聞きにくいのよ。さて、学校に戻りましょ」 「人のこといじっといて、用が済めば帰んのかよ」 「さびしいでちゅか?」 「二度と面見世んな」 真奈との無駄話のおかげで、どっぷり疲れをもらった。 「蔵間じゅん。お前も、夜道には気をつけることだ」 「お前じゃねぇんだから、道に迷ったりはしねーよ」 「っ!!余計なお世話だ!!!」 「俺は寂しがり屋だから、いつでも遊びにきてちょって、さっき奏太が言ってたよ~」 「お前は何でも偽造すんじゃねぇぇぇ!!」 ツッコミ担当の奏太も、大変そうだ。 ボケが二人いたんじゃ、手が負えないだろう。 476: 名前:雷蓮☆2011/10/23(日) 14 09 29 ~鈴音side~ 学校を出て、しばらく歩いてた。 無心になって街を歩くというのは、何とも恐ろしいことだ。 「ここ……どこ?」 今、それを体験中。 アタシ、今まで何考えてここに来た!? 家に歩いてるって思ったら、何!? ここ海なんですけど!? 帰るって何!? 前世!? ザァァァァン… さざ波の音が耳を微かにくすぐる。 それでいて、どこか切なげな音。 「……もぉ、帰りたいよぉ……」 「鈴音!?」 「えっ……」 聞き覚えのある、懐かしくて、愛しくて、私が求めていたこの声…! 「こぉ…すけぇ?」 「何でこんなとこにいんだよ、お前…そんな薄着でよ。ほら、これ羽織れ」 バサッ 10月と言っても、秋の深まるころ。肌寒い日が続いている。 康介の温かさに、またじわりと涙があふれてくる。 「もぉ、ばかぁ」 一人ぼっちになって分かる、康介の大切さ。 一人ぼっちになって感じる、今までの愛しいぬくもり。 康介にわがまますぎたアタシが子どもだったんだ…。 「おいっ!? 何で泣くんだよ? っ……あぁ!ったく!」 ぎゅうっ ふいに、康介に抱きしめられる。鼓動のテンポが徐々に上がっていく。 「こ、すけぇ。ごめんね、ごめん…わがままっ、すぎた、アタシ。 いつも、自分ばっかで…うーっ…」 伝えたいことがありすぎて、うまく話せない。 ろれつがまわらない。 「っ……そんなの気にしてねぇよ。お前のそういうとこも、愛してるんだ」 「ふぇっうぅーっ……」 「だから泣くなよ。お前にはいつも、笑っててほしいんだ」 「こぉすけ、大好きだよっ。だからっ、離れないでぇっ」 「あぁ、分かってる。分かってるから、もう泣くな」 「ぐすっ、うぅー」 私は康介に抱きしめられたまま、しばらくの間泣いていた。 480: 名前:雷蓮☆2011/10/27(木) 21 45 52 ~舞sode~ 蓮と寄り道したから、家に着いたのは夜19時。 家に帰ると、違和感のあることに気づいた。 いつもは鍵がかかっているはずの玄関が開いている。 これは一体、どういうこと……? 不思議と不安より、好奇心が大きい私。 だが、油断していられない。 もしかしたら空き巣かもしれない。 ……真夜中の空き巣?? なんか、あんまり聞いたことないな。 普通、昼間とかだと思うんだけど……。 一人でそんなのんきなことを考えていると、 リビングから声がした。 「だから!!もう帰った方がいいって!!」 聞き覚えのある男の子の声。 「ですから、ご挨拶だけでもと……」 ご挨拶?? 「普通、ご挨拶ってのは家の主がいるときにするの!! 勝手に入っていいもんじゃないの!!見つかったらヤバいって!!」 この声……!! バンッ!! 私は勢いよくリビングのドアを開ける。 「うおっ!?」 「おや、来られたようですね」 「康介!四季くんまで!何でいるの!?」 そこには勝手に家に上がり込んだ康介と、四季くんの姿があった。 「改めて、ご挨拶にと……」 「不法侵入ですよ」 「けれど、今日中に終わらせたくて……」 「そういう問題じゃ……!てか、どうやって入ったんですか!?」 「企業秘密です」 「企業なんですか……?」 四季くんは私の質問を、のらりくらりと簡単にかわす。 蓮と少し、性格が似ている。……悪い意味で。 「羽柴家次期当主、羽柴康介のご挨拶に参りました。 弟の尾上 四季です」 「羽柴家? 次期当主?」 「羽柴家の後継ぎのことです」 「康介!? そんなこと聞いたことないよ!?」 「っ……あ、あぁ、まーな!かっこいいから、秘密に、しててー」 「ヘラヘラとしないでください、兄上。常に冷静でいることです」 「あ、あぁ……」 ピクッ このとき、私は康介のいつもの笑顔が偽りだと分かった。 だって……目が笑えていない。 「……かっこよくないよ」 「はい?」 四季さんが目を丸くしてこちらを見る。 「こんな康介、康介じゃない。今すぐその名前、撤回して」 「舞……」 いつもは鈍い私だけど、ずっと一緒の康介なら分かる。 すぐ状況もつかめたし、その名が嫌なのも承知。 康介が家族がらみのことで悩んでたのも、知ってるんだ。 「私は康介の相談をうけたりするから、四季くんのことも知ってるよ」 「ほぅ……。なかなかの演技力でしたね」 「康介が後継ぎになりそうってことも知ってた」 「兄上がそこまで言うとは。よほど、信頼されているようですね」 「そんな弱いもので終わる絆じゃないの。 康介とは心友なんだから」 「舞さんは部外者。何をしても無駄ですよ」 「舞!これ以上、口出しはっ……」 「不法侵入で訴えられる私の立場を甘く見ないで!!」 「……舞、その言い方、ちょっとかっこ悪い……」 「康介はだまってて!今いいとこ!」 「お前のその言葉でもう台無しだよ」 康介は私の腕を掴んだ。 「いいよ、舞」 「康介、鈴音を置いていくなんて許さないから」 「っ……!!」 「私のもう一人の心友泣かせたら、蹴るからね」 「舞……」 「先ほど、別れを告げてきたハズです。兄上、そうですよね?」 「え……?」 「四季っ!!お前っ……」 「海辺で二人寄り添い、最後の一時を過ごしましたね? 兄上はお分かりのハズ」 「別れなんて……」 「どっちにしろ、もう会えないのですからいいでしょう」 「どういうこと!? 鈴音は康介の彼女なんだよ!?」 「舞さん、鈴音さんは兄上にふさわしくないお方です。 お分かりいただけますでしょうか?」 「わかんない!!四季くんが決めないで!!」 「世間から見ても、私と同じ意見の方は多いと思いますよ?」 「どうして!?」 「王様と庶民が結婚するように、無理に近いことですから」 そう言うと、四季くんはニヤッと笑った。 481: 名前:雷蓮☆2011/10/28(金) 19 45 53 「とにかく兄上には、何が何でも後を継いでもらいます」 「康介は鈴音と一緒にいるの!!ずっとここにいるの!!」 「いいですか、舞さん。日常は突然崩れるものです」 「っ!?」 「何にでも終わりがくる、ということです」 「……」 「もう、いいでしょうか?」 「舞……、ごめん。俺……」 「嫌だ」 「え……?」 「そんなの許さない!!康介、一緒にいるって約束したんじゃないの!?」 「っ……!」 「一緒にずっといようって、鈴音と約束したんじゃないの!? 今日の鈴音、康介がいなくって寂しそうだったのに!」 「あ……」 「言葉で惑わそうったって、そうはいきませんよ」 「四季くんは黙ってて!!」 私は怒声を張り上げた。 「康介は鈴音を泣かせて楽しみたいの!?」 「っ……舞」 「うちはっ…うちはぁっ、そんな康介大っ嫌いだよ!!」 「っ!!」 いつの間にか涙があふれていた。 もう誰一人、失いたくない。 誰一人、かけちゃいけないんだ。 もう、誰かが傷つくのは見たくない。 バンッ! 突然、後ろで壁を蹴る音がした。 483: 名前:雷蓮☆2011/10/29(土) 10 24 21p 「何……やってんだ!!」 「れ、蓮!?」 振り返ると、康介たちを睨みつけている蓮がいた。 「これは……蓮さん」 「気持ち悪ぃ。さん付けすんじゃねぇよ、四季」 「これは失礼しました。……あなたも兄上を止めに?」 「んなわけねーだろ。勝手に俺の女の家に上がりやがって」 「それはあなたも一緒では?」 「てめぇみたいに初対面じゃねぇんだよ」 「そういうものなんですか」 「康介、お前……鈴音を置いてくのか?」 「っ……」 「舞を泣かした罪は後でとってもらう。 お前……鈴音なんてすぐに忘れられる存在だったのか?」 「そ、そんなんじゃ……」 「じゃあ、何なんだよ? 鈴音はお前のこと、彼氏以上に思ってるぞ。 お互いにそう思ってんじゃねぇのかよ? 鈴音の幸せを願って別れるっていうのは善じゃない。偽善だ。 お前自身の本音で行動しなきゃ、何も意味はなさないんだよ」 「っ……俺の家は元々、財閥だった。 今もその証拠が残ってる。代々の後継ぎに任命された奴は、 それをこなさなくちゃならないんだ。もう……どうしようもないんだよ……」 「……兄上。どうしてそこまで、鈴音さんを大切になさるのです? あんな女、そこら辺にいくらでも転がってるじゃないですか」 四季くんが口を開く。 どことなく、その顔が切なく見えた。 「あいつはそこら辺にいるような女じゃない。 ちょっと変わった奴だけど、一緒にいて安心する。 いつも素の俺でいられる。気をつかわないでいられるんだ。 そういう関係って、中々できるもんじゃないだろ? それに……何よりも誰よりもあいつを愛してるんだ」 「それでも、お前は手放すのか?」 「……やっぱ、無理だわ。あいつの笑顔、二度と見られなくなるのは耐えらんねぇ」 「……だってよ、鈴音」 「……え?」 「鈴音、きてるの!?」 コツ…… 「鈴……音……」 「バカ。さっき、浜辺で抱きしめてくれたみたいにぎゅっとしてよ」 「ごめん、鈴音。俺……まだお前の大切さに気づけてなかった」 「……うん」 「今日、寂しそうにしてたことも知らずに……ごめん」 「……うん、分かってる。だから、今度またしたら別れる」 「えっ!?」 「その覚悟で!いい? これは命令だから!」 「ははっ、あぁ。分かった」 そういって康介は鈴音に、小さな小包を渡した。 「……? なに、これ?」 「誓いの指輪」 「え……」 「もう鈴音を泣かせない約束。この指輪にかけて誓うよ」 「クスッ。ありがとう、康介」 ぎゅっ… 二人は強く、抱きしめあった。 そして、それを唖然と見つめる四季くん。 「……どーだ、四季。うちの康介くんの愛は」 ……え? 突然、蓮が四季くんにたずねた。 会話の切り出し方がおかしいと思うのは、私だけなのか? 「そうですね。あつすぎてヘドロが出ます。できれば、半径50センチ以内に近寄らないでほしいです」 「だろ? ま、これで不安はなくなったろ?」 「はい。ここまでいくと、もう手のつけどころがありませんし。合格です」 二人のわけの分からない会話が、私と鈴音と康介の間を飛び交う。 「お、おい、四季。どういうことだよ……?」 「すみませんね、兄上。 兄上の彼女さんへの愛を確かめろとおじに言われまして。 どうしてもときかないものですから。試してしまってすみません」 ニコッ ……ということは、 「それって嘘なんですか?」 私は目を丸くして尋ねた。 「はい、そうですよ。楽しかったですね~」 四季くんはにこにこ笑っている。 「あんなクサイ台詞、どこで覚えてきたんでしょうかね~。 最高に素晴らしかったですよ、兄上」 そう言いながらも、笑いをめちゃめちゃこらえている。 「ニコッじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!今までの嘘かよ!?」 「はい、そうです」 「てめぇ……さっきおごったファミレスの金返せぇぇぇぇぇぇ!!」 しばらく、私の家で馬鹿騒ぎが起こりました。 484: 名前:雷蓮☆2011/10/29(土) 15 45 32 ~次の日~ 「おい」 「何です? 兄上」 「何です?じゃねぇんだよ!!お前、帰るんじゃなかったのか!?」 「チケット、どこかになくしちゃいました」 「なくしちゃいましたじゃねぇ!!探せよ!!」 「面倒くさいです」 「なら自力で帰れ!!」 「まだ怒ってるんですか? そんなに毛嫌いなさらなくても……」 「お前の巧みな言葉に操られそうで怖いんだよ!」 「私はそんなのにひっかかる兄上が心配でなりません」 「嘘つけ!!お前、昨日楽しんでたじゃねぇか!!」 「面白かったんですもん」 「ですもんじゃねぇーーー!!」 雨の日の朝。 昨日のことが許せない康介がピリピリしていた。 「まぁまぁ。四季くんも悪気があったわけじゃないんだし……」 「ぜってぇ悪気満々だったよ、コイツ!!」 「兄としてその発言は見逃せませんね!弟の役目を果たしていただけですよ!」 ぎゃーぎゃーぎーぎーと騒ぎ立てる二人。 クラスのみんなが注目していた。 「なーにー? 喧嘩~?」 「喧嘩するなら俺が仲裁してやろう……」 喧嘩の噂を聞きつけて、左端くんと颯斗くんがきた。 「げっ!左端に颯斗!」 「その言い方はひどいんじゃない? せいぜいイケメンとか言ってほしいな~」 「バカだろ。お前バカなんだろ」 「バカバカ言ってないで、勉強ぐらいしたらどうなんだ? 喧嘩している奴に上位の成績はつかないからな」 「うるせーよ颯斗。てか、いいかげんお前はドアから出てこい。 いきなり天井から来られると、心臓に悪いんだよ」 「それは悪かった。何せ、日頃の習慣だからな」 「お前の習慣にドアという設置物は存在しないの!?」 「あはは~っ。颯斗っちは天然だからね~」 「俺はミネラルウォーターではない」 「別に天然水って言ってないけどね、颯斗くん!?」 「このとおり、颯斗っちは天然そのもの!」 「ダメだ。こいつといるとマジ疲れる。蔵間、交代」 「え、えぇ? 俺!?」 「なになに、弱気な康介くん?」 「左端。前から思ってたけどうざい」 「ははっ……。お前もな、チビ助」 「ん? 今、何か言った?」 「空耳じゃないかな?」 「そ」 そう言いながらも、二人の間で火花が散っていた。 485: 名前:雷蓮☆2011/10/30(日) 09 12 33 「おい、舞」 突然呼ばれたので肩をビクッとさせて反応してしまった。 「え、あぁ、どうしたの?」 声の主は蓮だった。 「今週の日曜、空いてるか?」 「ちょっと待ってねー」 私はカバンから手帳を出す。 「んとー……うん、OKだよ!」 「なら、デートにでも行くか」 「えっ!?」 「恋人同士なのに、ろくなデートもしてねぇんだ。行くだろ?」 「う、うん!」 そっか。よくよく考えたら、あんまりデートしたことなかったかも…。 「「スケベ不良」」 蓮との会話を聞いた双子が割って入ってきた。 ぎゅむっ 双子に抱きしめられた私。 「「舞をどうするつもり!?」」 必死に守る双子。 「ちょ、沙奈、瀬奈!?」 「「舞はまだ純粋な子なのに!!」」 蓮はそれを聞き、双子を睨む。 「とんだ妄想だな。俺はそんなつもりはさらさらないんだが?」 「「男はいつも野獣よ」」 「どこでそんな台詞覚えてきやがった、双子」 蓮の額に青い筋が浮かんでいる。 相当怒っているよう……。 「はいはい、双子も蓮も喧嘩しない!クラスのみんなが見てるでしょー」 「「エキストラだから気にしない」」 「はい!!エキストラとか言わない!!」 「「だって設定じゃん」」 「それもNG!!もうしゃべんな!!」 蔵間くんはまたまた仲裁役。 「「あ~あ。蓮の喧嘩もつまんな~い」」 「俺は疲れるんだけどな……」 蓮の視線の威圧にクラスのみんなが目をそらす。 双子はびくともしない。むしろ、面白がっている。 「「あー。そういえば~、生徒会の人が呼んでたよ~」」 「は?」 「「蓮だけ~」」 「何でそれを早く言わねーんだよ」 「「忘れてた~」」 「せってぇー嘘だろ。それ、いつ言われたんだ?」 「「昨日~」」 「そうか。ならいい。……って、昨日!?」 「「うん」」 「いいわかねーだろ!!もっと早く言えよ!!」 「「だから忘れて……」」 「そんなん嘘だろ!!」 「「うん」」 「やっぱそーじゃねぇか!!怒られんのは俺なんだぞ!」 「「だから面白くって~」」 「面白いとかの問題じゃねぇ!お前ら後で半殺しだ」 「「きゃーっ!」」 バタバタ… 双子は私を離してどこかへ逃げた。 「ちっ!クソッ!」 「まぁまぁ、蓮も落ち着いてー」 「あいつらのせいで、何か雑務やらされるかもしんねぇ」 「俺が後で弁解しとくから」 「ちっ!ちょっくら行ってくる」 「俺もついてくよ」 スタスタ… 「「やっと行った~」」 「二人共、あんまり蓮を怒らせないであげてね」 「「…舞は優しいなー」」 「そんなんじゃ……」 「「うちらは小悪魔だから優しくできないの!女の子は別だけどー」」 「二人共優しいよ」 「「舞にはね!」」 「ありがとう」 「「かわいい~!!」」 ぎゅむっ またまたハグされた。 双子は本当は優しい子。 みんなから愛されてるからこそ、できる悪戯ってものがある。 けっして悪質ではないし、ちゃんと後で謝るから可愛いもんだ。 君を好きになる5秒前 続き16
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タイトル 響「貴音を好きになっちゃった…」 執筆開始日時 2012/02/12 元スレURL ログ速URL 概要 響「そんなわけで春香!自分にいい方法を教えて!」 春香「へっ?い、いきなりそんなこと言われても困るよ~!」 響「お願い!どうしても貴音に振り向いてもらいたいんだ!」 春香「じゃあ… 5」 タグ ^四条貴音 ^安価 まとめサイト えすえす
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328: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 11 51 12 ~蓮side~ 委員会の仕事で戻ってきた教室に、 舞の姿はなかった。 「どこ行きやがった……?」 「あ、蓮きゅん!」 「あぁ? げっ……」 俺のことを「きゅん」とか言うこいつの名前は、 宮前左端(みやまえ さたん)。 ちなみに男。 俺と同じく、星光10大人物の一人。 「蓮きゅん!どうしたのお?」 「いっつもふざけた言葉使いやがって……」 「ひっどい!!もう、お婿にいけない!!」 「もうとっくに行けないだろ」 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」 「ハンッ。どーでもいいけどよ、舞はどこ行った?」 「んー? あぁ、舞ちゃん?」 「あぁ」 「蓮きゅんの心のなか~」 「殺されたいのかてめぇは……」 「きゃっ!襲われちゃう~」 「これ見よがしに、嬉しそうな顔すんな!!気色悪ぃ!!」 ダメだ……。 こいつと話してると、ラチがあかねぇ……。 他の奴に聞こ。 「舞ちゃんなら、海馬先輩に呼ばれたお」 「は……?」 「危ないんじゃない~? 裏門に呼び出されたらしいお」 「何で引き止めなかった……」 「双子ちゃんが探しにいったし、左端がでる幕じゃないお~」 「双子が……?」 「蓮きゅん、気をつけてね~。舞ぽんもだけど~」 こいつは本当に、どこまでもふざけやがる……。 「左端は、情報提供するだお~」 「珍しいな。お前、面倒ごと嫌いだろ?」 「舞ぽんが可愛すぎるから、左端、動くよ~」 えへっと可愛く言ってみせてる左端。 だが、実際可愛くない。 女子は大喜びだろうが、男の俺にはわかんねぇ。 左端は、可愛いくてイケメンで有名。 だが、内面は腹黒でいろんな人の「ネタ」を持っている。 いわば、情報屋。 元々、左端の家が秘密の国家機関と関わっている。 だから、学校のやつらの人生の歴史なんて すぐに調べられる。 こいつはそれで、星光10大人物になった。 だが、それを知っているのは星光10大人物のみ。 他のやつらには、何ひとつ知られていない。 「左端、海馬先輩のやってきたことに そろそろ歯止めをかけたいお」 「やってきたこと?」 「たあっっっくさんの悪行を働いてるんだもん~。許せないね~」 こいつの目が光る。 「俺らじゃあ、広範囲の仕事は無理だぞ?」 「なら、俺も参加させてもらおうか」 「あ!颯斗っち~」 「颯斗!!」 ぬらりと出てきたのは、黒鉄颯斗(くろがね はやと)。 こいつも星光10大人物の一人。 普段はクールで大人しいが、実は日本のスパイ。 他国の偵察や、怪しい組織を取り締まったりしている。 だから、左端との関わりは深く 小さいころから互いを知っている。 こいつの運動神経は、はかりきれない。 言うならば、妖怪のよう。 「俺では少しの力にしかなれぬかもしれないが、よろしく頼む」 「お前……なんつう所から来てんだよ」 「なんつう……とは? 普通に天井からだが?」 天井からぶらさがって会話してる時点で 普通じゃねぇんだよ。 「颯斗っち、今日仕事じゃなかったの?」 「香港で依頼を受けていてな。もう終わった」 「そっかぁ~。えらいえらい」 颯斗はかなりの電波系。 こいつもイケメンでかなりモテるのに、とんだ残念系。 けど、そこが可愛いという女子がいるから人気が絶えない。 「お前、教室のドアから入って来れねぇの?」 「つい、天井から入ってしまうのだ。すまぬ」 「いや、もういいや……」 星光10大人物のこいつも、 いざとなれば凄い。 ……のに、性格が残念系ばっかだ。 331: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 17 11 45 ~海馬side~ 「最悪……」 帰り道、一人つぶやく私。 何であの子に歯向かわれるの? この私が……。 でも、今回は本気よ。 蓮様は無二の完璧な人材。 私にピッタリじゃない! なのに……どうして、あの子なんか……!! 「何たくらんでるかは知らないっすけど、 舞ちゃんを傷つけるなら阻止します」 「っ……!? く、蔵間……じゅん!!?」 「今まで、先輩の悪行を黙って見てましたが……。 もうそろそろ、限界がきました。 舞ちゃんと蓮の仲を引き裂いて見てください。 俺も一応、ちゃんとした家柄なんでね。 人一人、永久追放だってできますから。 ナメないでくださいよ?」 「なっ、何が言いたい!?」 「舞ちゃんに傷一つ、またつけてみてください。 あなたのその首、ちゃんと胴体と繋がっているか 分かりませんよ? 俺だって、不良なんですからね……先輩?」 「お前っ……!!」 「恋路を邪魔する奴が、一番許せなくてな」 「殺せるのなら殺してみ……」 「先輩だからって、容赦しません」 彼はにっこり笑って、姿を消した。 「な、何だったんだ……」 しかし、本気の目だった……。 いかん。怯えてはならない!! この私、欲のためならば何だってする。 そう決めた。 揺るぎない精神が、なおかき立てる。 狂気を、欲望を、快感を……。 蔵間に警告されても、私は手に入れる。 蓮様、ただ一人を……。 332: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 17 33 22 ~舞side(普通視点)~ 翌日- 「大丈夫だ。このことは蓮には言わない」 「は……はぁ……」 今お話中の相手は、黒鉄颯斗くん。 電波系のキャラでお馴染みだ。 「左端もだお~」 この子は、宮前左端くん。 可愛いイケメンキャラでお馴染み。 個性派軍団です。もちろん、星光10大人物の。 「それで、昨日は足を踏まれたと?」 「うん……。すっごい剣幕で……」 「それは怖かったな」 「颯斗っちはわかんないでしょ、怖いって。 あのね、颯斗っちはいつも任務で しょっちゅう怖い経験してるから、 怖いっていう本当の感情が薄れてるんだお」 「え、に、任務って……?」 「とにかくだ!!舞自身の単独行動は命とりになる。 年中無休で、傍に護衛をつけなくてはな……」 「そんなのやりすぎだお、颯斗っち!! それじゃあ舞ぽんは、おちおち恋愛日記も書けないでしょ!?」 「そ、そうか……。それはすまなかった……」 「いや、私書いてないし、そんなの……」 「えぇ!?」 左端くんが驚く。 「そんな乙女チックなこと、しないよ」 「では、ダンディチックなことはするのか!?」 一体どういう会話をしたら、 ダンディチックって文字が並ぶ言葉が出るんですか!? 「あの、颯斗く……」 「「舞ちゃんは確かに危ない」」 私が混乱しているところに、 双子がようやくきてくれた。 「お、お前ら……」 「沙奈っちに瀬奈っち?」 「「最悪の場合、死だ」」 「なっ……!?」 「そこまで事態が進んでんの!?」 「「何しろ、自身が地獄に落ちてもいいと言うのだから」」 「そんなに女は怖いのか……」 「颯斗っち、これは論外だから安心して!! 女の子はもっと可愛いことして、 ふわふわしてて、もう何やっても可愛い生き物だよ!?」 二人のとんでもない会話が始まる。 「「とにかく、舞ちゃんを一人にしないで」」 「そうだな。全力を尽くそう」 「うん!!舞ぽん、俺から目を離しちゃダメだよ?」 なぜか左端君に、ウィンクされる私。 「あ、ありがと……」 正直、やりずらいです。 333: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 17 46 15 「おはよ~。昨日は大変だったらしいね」 教室から入ってきたのは、蔵間くんだった。 「な、んで…‥知ってるの?」 蓮と一番近い関係の、蔵間くんには知られたくなかったのに……。 「ちょっと昨日、見ちゃってね」 「見たって…何を」 「先輩が舞ちゃんにヒドいことしてるとこ」 「「じゅん!!」」 「じゅんぽこ、知ってたの?」 「じゅん、お前見ていたのか?」 みんなが蔵間くんに詰め寄る。 「見ていたって言うより、聞こえてきたって方が正確」 「「つまり、近くにいたってワケではないのね」」 「そう。俺、いっつも屋上で寝てるんだ。 たまたまぼーっとしてたらさ、先輩の怒声が聞こえてね」 「このこと、蓮には」 「もちろん、言わないでおくよ。 でも、蓮はもうこのこと知ってるハズ」 「え……?」 「そうだよね? 二人共」 蔵間くんの視線は、左端くんと颯斗くんにそそがれた。 「左端…くん…? 颯斗く…・・・ん?」 「あり? もうバレてたんだ?」 「すまぬ、舞。実は、薄々勘ずいていたのだ」 「左端、海馬先輩の今までしてきたこと知ってる。 だから、舞ぽんが呼ばれたときも 怪しいと思ってたんだ。 ごめんね、なんか探るようなことしちゃって」 「ううん。そんなことより、多くの人を巻き込むことはできない」 「でも、舞ぽんの危険が!!」 334: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 18 37 39 「私は大丈夫!あんまり、大事にしないで」 コツコツ… 「ここまできて、まだいい子ぶってるの?」 「っ……!?」 「海馬先輩…だお?」 「「海馬先輩!!」」 「まだ、懲りていないようね」 「何を言われようと、一歩も引くつもりはないです」 「私に足を踏まれようと、びくともしないってわけ?」 面白い子と言って、私の机を思いっきり蹴る。 ガンッ 「何するん……」 「目障りなのよ!!!早く消えなさい!!」 「っ……!!?」 「あんたみたいな貧弱な仔猫は、お呼びじゃないの!!」 「それでも、蓮が好きって気持ちは変わりません!!」 「そういうところが、一番嫌なのよ!!」 バシンッ 先輩は私の頬を思いっきり叩いた。 その生々しい音が、教室に響き渡る。 ガラッ… 運悪く教室に入ってきた蓮に気づくまで、あと5秒---。 336: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 19 24 38 「っ!!」 ふいに開いた教室のドアに気づいた蔵間くん。 先輩もびっくりして後ろを振り向く。 「れ、蓮様……」 っ……!!? れ、蓮……? 恐る恐る顔を上げると、さっきの状態を見てか ものすごい剣幕でたっている。 「な、に……してんだよ」 「蓮様!!これには理由がっ……」 「そんなの、理由になんねぇよ!!今すぐ謝れ!!」 「なっ……!? 蓮様!?」 「俺はてめぇなんかに、興味はねぇ。 けどよ、大切なやつ傷つけられんのは放っておけねぇ」 「れ…ん…」 ダメだ……。 もう、泣きそう……。 「こいつを傷つけるのも、泣かせるのも全部 この俺しか許さねぇ……。 早く謝れよ。3年だからってデカイ面してんじゃねぇぞ」 蓮は今までにないメンチをきって、 先輩を威嚇している。 さすがにみんな背筋が凍って、 話す言葉がない。 「嫌よ。私は……悪くない!!」 ダダダダッ… 「おい!!ま……」 ガシッ 私は追いかけようとする蓮の腕を、必死に掴む。 「いいよ、もう。何でもないから……」 「っ……!!お前…‥また、そうやって……俺に黙ってるのかよ!?」 「え……」 「また、そうやって迷惑かけるとか言って突き放すのかよ!?」 「そ、そんなこと……」 「なら、昨日何で俺に言ってくれなかった? どうせさっきも蓮には言うなって言ったんだろ!? 何で俺を頼ってくれないんだよ!!?」 急に怒る蓮に、私はただ黙っていた。 けど、一言一言が胸に突き刺さる。 「おい!!何とか言えよ!!舞!!」 「っ……」 「舞!!」 「っ……たいよっ」 「聞こえねぇ……。何だよ……?」 「っ……たいよ。蓮と一緒にいたいよぉっ!!」 「っ……!!」 「もっと蓮と一緒にいたい!! だけど、あの先輩は何するか分かんないんだよ!? もし、蓮に何かあったら私……私、立ち直れないよ!!」 本音が次々と口からこぼれる。 抑えられなくなってしまったこの気持ち。 大粒の涙が、溢れ出てくる。 今まで言えなかった気持ちを、制御できなくなってしまった。 「でも、できないの!!今回だけはっ!! 好きで黙ってたわけじゃないよ!! 大切だから、愛しいと思うから言えなかったの!!」 「ま……い……?」 「本当は誰よりも大好きで、愛しくて……!! この気持ちは誰にも負けない!! だからこそ、守り抜きたいのっ……。大切な蓮を……。 でも、ごめんね……。 もう、蓮の苦しむ姿……見たくないよ……」 ダッ… 「舞!!」 338: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 21 47 26p 気づいたら走り出していた。 でも、もう後には戻れなくて。 何であんなにムキになったんだろう……。 私……蓮をあんなに不安にさせてたの…知らなかった……。 私は体育館の裏側で、時間を潰すことにした。 5分後- ピロリン! 「っ……!?」 突然のメールの受信音。 びっくりして携帯を開くと… 「知らないアドレス……」 メールの内容を確認すると、それは--- “ あなたに謝りたいことがあるの。 さっき叩いてしまったこととか…。 来るか来ないかは、あなたの勝手。 星光公園の前で待ってる。 3年F組 海馬由奈 ” 答えは一つ。 星光公園に行って、すべて和解してもらおう。 私は携帯を片手に、急いで海馬先輩の待っている所へ向かった。 339: 名前:雷蓮☆2011/08/17(水) 22 03 43 星光公園- 「はぁっ、はぁっ……っ海馬…先輩……?」 星光公園の前には、先輩の姿はなかった。 「裏の入り口にいるのかな……?」 ザッ… 「あ……せんぱ……」 「全部あなたのせいよ!!」 「海馬先輩……?」 「どうしてあなたなんか!! この、いいこぶりが!!!」 「ここまできて、まだそんなこと言うんですか!?」 「当たり前でしょ!? あたしはあんたなんかクズって思うわ!!」 「ちょっと待ってくだ……」 「あなたなんか消えていなくなればいいのに!!」 ドンッ 先輩は私を強く突き飛ばした。 足を崩して、そのまま私は後方へといく。 私の後ろには、多くの車が走る道路。 「っ!!ちょっと!戻って来なさいよ!!」 「せ…んぱ……」 キィィィィィー… 嫌だ……。嫌だよ……。 まだ……蓮に、ごめんねって…… ドォンッ!! 言って……ない……の……に……。 その後の意識は、静に途絶えた。 340: 名前:雷蓮☆2011/08/18(木) 07 43 02 ~蓮side~ 「舞!!」 舞は俺の声に反応せず、 ひたすら走っていった。 「……止めないの?」 蔵間が俺に問いかける。 けど、俺は立ちつくしているだけだった。 「蓮きゅん……。こういうとき、立ちつくしてると違うよ?」 「……」 「好きな人追いかけてさ、後ろからぎゅってするんだよ?」 「蓮……。お前の愛はそれくらいしか、なかったのか?」 「……分かってる。けど、……」 「何を迷っているのだ?」 「そうだよ、蓮きゅん!!」 「蓮……、舞ちゃんは追いかけてくれるのを待ってるよ?」 「……自信がねぇ……」 「え?」 左端が俺に近寄る。 「あいつをこれから、幸せにしてやれる自信が……ねぇんだよ」 俺はうつむいて、涙を必死にこらえた。 「そうか。なら、舞は俺がもらう……」 この声は…… 「伊玖っ……!?」 「俺が幼いときから、舞といることは知ってるだろ。 なら、お前の代わりに近くにいてやれるのは 俺しかいないだろう」 「……あぁ、そうだな…」 「蓮」 「あ?」 ゴスッ 「ごはぁっ!?」 伊玖は俺の腹に、一撃を与えた。 「っつー……てんめぇっ!!」 「それが、今の舞の気持ちだ」 「っ……!!?」 「いや、もっと大きい。 あいつは、バカでどうしようもない奴だが 人を大切に思うことだけは、人並みを越えている。 毎晩、毎晩、俺に電話で お前からのメールがきただの、愛してると言われただの ノロケ話ばっかりさせられて。 あげくの果てには、デートの報告までされた。 ここまで幸せそうに話したことはないから、 ずっと聞き入っていたが……。 今のお前には、あいつを笑顔にできないんだな?」 「っ……」 「哀れだな……。 こんなにも、お前は非力だったのか。 この俺が唯一譲った男だというのに、 見込み違いだったようだ」 「っ……待てよ!!」 「何だ……? 呆れた男に用はない」 「ごめん!!」 「っ……な、何を……」 「俺、一人でずっと悩んでた。 本当に不良相手でいいのかって。 でも、今のこと聞いて安心した。 ごめん、俺が一人で甘えてただけだった。 確かに、あいつは俺よりももっと大きいもの見てた。 こんな自分が恥ずかしいって思った……。 気づかせてくれて、ありがとな」 「……役目は果たしたからな、鈴音、康介」 「は?」 がっしゃーん!! 俺は目が点になる。 ろうかから、妙な物音が聞こえた。 「伊玖ー!!それはこっちに戻ってきてからの台詞!! 今ここで言ったらバレるでしょーが!」 「伊玖ー!!お前、褒美のお菓子はナシだぞー!!」 341: 名前:雷蓮☆2011/08/18(木) 07 52 37 廊下からひょっこり顔を出したのは、 鈴音と康介…。 「おい、伊玖……どういう」 「こういうことを予測して、 俺が説得しろと鈴音と康介に頼まれていた。 お前が本気になってよかった」 「ちょ、まっ」 ピロリロリ~♪ 「蓮、電話」 蔵間が俺のカバンから取り出す。 「は? 非通知じゃねぇか。 蔵間、お前出てくれ」 「あ、うん。もしもし? はい、そうですけど……。 ……え? 今……何て……?」 ピッ 「え、おい。何だって?」 「……星光……病院から……電話」 「病院?」 「舞ちゃんが……車に引かれて重体だって」 「っ……!?」 「蓮きゅん!!早く行こう!!」 「あぁ!!」 「俺は先生に言っておこう」 颯斗が猛スピードで駆け抜ける。 それに続くとばかりに、 俺らは病院へ向かった。 342: 名前:雷蓮☆2011/08/18(木) 08 33 33 ~病院~ ガラッ 「舞!!」 舞のいる病室を開けると、 そこには海馬先輩がいた。 「てめぇっ……」 「ごめんなさい……。 まさか……本当にこんなことになるなんて……」 彼女は涙を流して、俺らに土下座した。 「もう、舞さんに手を出しません!! ですから……せめて、ここにいさせてください……。 最後のお願いです!!どうか……」 すると蔵間が俺の横で言った。 「舞ちゃんに傷をつけたら、どうなるか警告したよね?」 急に剣幕が恐ろしくなる蔵間。 「おい、くら……」 「蓮はちょっと静にしてて。 先輩、俺はもう永久追放する準備はできています」 「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」 「もし、このまま舞ちゃんが目を覚まさなかったら…… ごめんなさいで済みませんよ!!?」 「舞ぃっ!!」 後ろから鈴音が、舞が寝ているベッドに走ってきた。 舞は頭を包帯でぐるぐる巻にされて、 腕は骨折したようで動きがとれる状態ではない。 その姿を見て、泣き崩れる鈴音。 「まいいいいいー!!」 「あの姿を見て、あなたは今も舞ちゃんを憎みますか?」 「っ……!!」 「それでも、地獄に落ちることを本望と言えますか?」 「はっ……!!本当に……申し訳ありませんでした……」 「俺はっ……!!そういう理不尽な人間が、一番嫌いだ!!」 その言葉に海馬先輩は、 改めて大切なことに気づいたらしく、 顔をあげてただ泣いていた。 「舞……」 俺は愛しい人の名前を呼ぶ。 けど、返事はない。 寝息だけが聞こえてくる。 静かで、でも、苦しいような……。 鈴音は唯一無事だった舞の左手を、 自分の頬に当てて泣いていた。 双子は鈴音の向かいに座り、 舞に「大丈夫だよ」と声をかけている。 蔵間は切なげな目で、舞を見る。 康介は泣きつづける鈴音の隣で、 舞を見守っている。 俺はこの光景に、恐怖を覚えた。 もし、もし……舞が目を覚まさなかったら……。 目の前が真っ暗になる気がした。 345: 名前:雷蓮☆2011/08/18(木) 13 54 49 ~舞side(普通視点)~ 深夜2時- フワァ… 風……? 気持ちいい風だ……。 ここは……どこだろう……? 確か……車に跳ねられて……それで…… パチ…… ここは……病室……? まわりを見てみると、 いつも一緒にいるみんながいた。 でも、みんな疲れて寝ていた。 「み……んな……」 私……生きてる……。 生きてるよ、私……。 涙が絶え間なく、こぼれてくる。 「起きたのね……」 この声…… 「海馬……先輩?」 「私がバカだったみたいね。 結局、地獄が怖くなって逃げ出して……。 いいこぶりっこしてたのは、 私の方だったのかもしれない……」 「せん…‥ぱ」 「これで最後……。 もう生きるのに希望なんてない。 疲れたわ、私……。 それに……親にあわす顔がない」 ダッ…… 「せんぱっ……つー…」 先輩は、病室を出て行ってしまった。 私はまだ傷が治ってないために、 すぐには追いかけられない。 それでも、近くに置いてあった松葉杖を使って 先輩を追いかけた。 まわりにいるみんなに気づかれないように…。 346: 名前:雷蓮☆2011/08/18(木) 14 25 32 それも虚しく、 廊下でひっそり立っていた 颯斗くんに引き止められる。 「何をしているのだ、舞」 「颯斗……くん。そこを……どけて……」 「ダメだ。今のお前に、夜風は刺激が強すぎる」 「そんなこと……ないよ……」 「今、目覚めたばかりのお前を このまま屋上に連れていくと思うか?」 「っ……時間がないのっ!!」 「っ……!? 舞!!」 カッツカッツ なれない松葉杖を、必死に動かして 一歩でも多く前に進んで行く。 「舞!!いいかげんに……」 「先輩を見捨てらんないよ……」 「っ……?」 「颯斗くん……。星光10大人物なんでしょ? 私も、颯斗くんも……。 危険なことで、噂になるよりっ、 いいことの方で……噂になった方がっ…… 絶対に、居心地っ……いいよ……?」 「舞……」 「先輩、屋上に自殺……しに行った……の」 「それは本当か?」 「う……ん。早く……行かないとぉ……間に合わ……きゃっ!?」 松葉杖で歩いている途中だった。 ふいに後ろから、横抱きにされる。 「っ……れ……ん?」 「なーにやってんだ、バカ」 「蓮!!お前、寝ていたんじゃ……」 「本気で寝れるかよ。 好きな奴が生死さまよってんのによ」 「れん……」 「わーってるよ。行けばいいんだろ?」 「はぁ……。10大目のすることが分からない。 ……が、こういうことで目立つのも悪くはないな」 颯斗くんが呆れながらも、嬉しそうに言う。 「颯斗くん……」 「俺も強力させてもらおう」 「ありがとう、颯斗くん」 「「私たちも」」 「っ……!? 双……子……?」 「あたしたちもいるよ?」 「舞ー!!ふざけんな!! 勝手に死なれちゃ困る!! 誰が鈴音を止めるんだよ!!」 「り……んね、こ……すけぇ……」 「舞ぽんったら、 左端のことこれっぽっちも気にしてくれないじゃん!! もう、いじけちゃうおーーー」 「左端くん……」 「舞は相変わらず、危ないことが好きだな」 「そうなの? 俺には舞ちゃんには珍しいことだと思ってるけど?」 「舞ちゃんの悪口、許さないよ?」 「伊玖……蔵間くん、蒼太くん……」 「みんな……ありがとぉー……」 嬉しくって視界がゆがむ。 「みんな、病院嫌いだから眠れねぇんだと」 蓮がニッと笑う。 「ちょっと屋上でUNOでもしようぜー!!」 康介の一言で、みんな屋上へ向かう。 私は嬉しくて、蓮の胸の中で泣いてしまった。 君を好きになる5秒前 続き11
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仁義なき安価は腐乱の安価報告を中心に、流れ重視でまとめてあります。 そのために拾いきれなかったハイクオリティや適切なマジレスは数多く、 また、腐乱以外のプチ安価や暗黒高速雑談などは丸ごとはしょっています。 まとめで流れを把握した後は、生ログで詳細を把握してみてください。 ログ保管庫 倉庫番 ◆084PMIwk5o氏に多謝! 実に見やすく、おすすめです。 初代スレ:お兄ちゃんを好きになってしまった。。。 02スレ:【一応】お兄ちゃんを好きになったんだけど・・・【報告】 03スレ:【さぼって】お兄ちゃんを好きになったんだけど【デート】 04スレ:【親父】お兄ちゃんを好きになったんだけど【空気嫁】 05スレ:【年増女に】お兄ちゃんを好きになったんだけど【兄は渡さない】 06スレ:【腐乱に】お兄ちゃんを好きになったんだけど【ラリアット】 07スレ:【もっと愛して】お兄ちゃんを好きになった【お兄ちゃん】 08スレ:【揺れる】お兄ちゃんを好きになった【兄の想い】 09スレ:【水着着用で】お兄ちゃんを吹きになったんだけど【発熱】 10スレ:【恋も病も】お兄ちゃんを好きになったんだけど【発熱中】 11スレ:【小西】お兄ちゃんを好きになったんだけど【来日】 12スレ:【腐乱犬】お兄ちゃんを好きになったんだけど【シュタイナー】 13スレ:【そそそそそそそ】お兄ちゃんを好きになった【早漏ちゃうわ!!】 14スレ:【めざせ】お兄ちゃんを好きになったんだけど【Dカップへの道】 15スレ:【突撃指令】お兄ちゃんを好きになったんだけど【小西大佐】 16スレ:【キャン玉】お兄ちゃんを好きになったんだけど【迷子】 17スレ:【胸隠して】お兄ちゃんを好きになったんだけど【尻隠さず】 18スレ:【時よ】お兄ちゃんを好きになったんだけど【止まれ】 19スレ:【腐乱が】お兄ちゃんを好きになったんだけど【降らん】 20スレ:【腐乱】お兄ちゃんを好きになったんだけど【帰って恋】(ノートン先生注意) 21スレ:【おかえり】お兄ちゃんを好きになったんだけど【腐乱】 22スレ:【家出娘が】お兄ちゃんを好きになったんだけど【ユニタン襲う】 23スレ:【宿代】お兄ちゃんを好きになったんだけど【118円】 24スレ:【おにーちゃん】お兄ちゃんを好きになったんだけど【糖尿】 25スレ:【ケンカしても】お兄ちゃんを好きになったんだけど【大好き】 26スレ:【PC修復中】 お兄ちゃんを 好 きにな ったんだけど【兄弟仲も修復中】 27スレ:【ごめんね】お兄ちゃんを好きになったんだけど【腐乱より】 28スレ:【腐乱の気持ち】お兄ちゃんを好きになったんだけど【兄の気持ち】 29スレ:【決戦は】お兄ちゃんを好きになったんだけど【黄金週】 30スレ:【ゴメンネ】お兄ちゃんを好きになったんだけど【氏ねハゲ】 31スレ:【ヌクモリティ】お兄ちゃんを好きになったんだけど【再び】 32スレ:【パン程度で】お兄ちゃんを好きになったんだけど【泊まりだと?】 33スレ:【ホリエ】お兄ちゃんを好きになったんだけど【モン】 34スレ:【ホリエモ】お兄ちゃんを好きになったんだけど【ンー!】 35スレ:【パンは】お兄ちゃんを好きになったんだけど【ホリエモン】 36スレ:【晩飯】お兄ちゃんを好きになったんだけど【フリスク】 37スレ:【コニタンは】お兄ちゃんを好きになったんだけど【バックから】 38スレ:【Bカップが】お兄ちゃんを好きになったんだけど【こんにちわ】 39スレ:【ゴキvs腐乱】お兄ちゃんを好きになったんだけど【死闘編】 40スレ:【パンはうんこ】お兄ちゃんを好きになったんだけど【兄は王子】 41スレ:【腐乱】お兄ちゃんを好きになったんだけど【敏感】 42スレ:【今日】お兄ちゃんを好きになったんだけど【暑かったな】 43スレ:【腐乱の愛は】お兄ちゃんを好きになったんだけど【みんなのもの】 過去スレやdatの取得はこちら@にくちゃんねる datの変換はDAT2HTMLなどでどうぞ
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一言・・・ まとめの編集を放棄することになりました まとめの編集に興味のある方!経験は問いません 編集の仕事をやさしくアドバイスする先輩もいます やってみたいと言う方は↓に心意気をどうぞ とりあえずやったけど、期待しないでくれ 2ch「義兄を好きになりました@ニュー速VIP板」のまとめWikiです。 現在、VIP避難所へ移行。 パイプレも避難所への回収完了! 【パイブレ】義兄と恋におちたんだが【マターリ】 携帯用【パイブレ】義兄と恋におちたんだが【マターリ】 人物紹介… 義妹(オッパイブレード ◆8LotNR3EO6) 20歳、身長146、体重37 ちびっ子。 義理の兄に恋をするHIPHOP好き 去年親父が再婚して義母の連れ子が以前から恋心を抱いてた人だったという 漫画みたいな出会いをする。だがガチだ。 深夜抑えキレなくなってオナヌしていたところを義兄に見られてしまい、気まずい想いをして VIP板に相談。安価遂行が励みになったのか、義兄と晴れてカプールになった。 しかし、恋のライバルがその後もぞくぞく登場し、苦悩する。 必殺技はオッパイブレード(Bカプ) 義兄 オッパイブレード ◆8LotNR3EO6の義理の兄。クラブの店員?スタッフ?やってる 21歳、身長175くらい。体重わからん。天然。 歌がガチでうまい。メインじゃないがフューチャリング?とかでよくCDとかだしてる。 ライクは邦楽なら強いて言えばデブラージ 好きな色は黒と赤(下着) 何気にもてる。 店長 義妹の勤務先の店長。身長185 仕事中にPSPをやっているロクデナシ店長。 安価により、義妹に頭を叩かれ、メモリーカードを義妹に抜かれるはの カワイソな香具師。RPGが好き。 家に逝けばメイド服が用意できるらしい 安価によりパイブレに尻をなでられ、尻でスクラッチをされ、店長はその気になるが 店長が振り向いた瞬間、パイブレも振り向いて無視され店長「…(´・ω・`)」 さらに中指で肛門に貫かれ、最後帰り際に特大の一発をくらい 店長「ぐ…ふぅ…」 その場に崩れ落ちた店長。 妖刀 義妹の友達。安価により義妹にレズられる。感じやすいのか義妹のテクがすごいのか 濡れやすい。ロケット妖刀の持ち主 例のヤツ(女) 24、5くらい。身長165くらい 義兄の店の常連。義兄に好意を持っているものと思われる。 義兄の得意先の人らしく、義兄もむげに誘いを断れない。 安価により、義妹にオパーイをもみくちゃにされたこともある。 義妹の友達A(女) 二十歳、Cカップ?くらいで160センチくらい? オッパイブレードとは、妖刀ほどじゃないがかなり仲がいい。 以前に義兄に告白し、振られたが、号泣するくらいにまだ義兄を好きでいる。 義妹が義兄と付き合っていることを知ると、義妹に対し義兄争奪の宣戦布告をする。 顔はかわいい。眞鍋かをりに似ている。 義兄の友達D(男) 軍師。 大人な発言をする一面もあるが、義妹の友達Aをけしかけて 義兄争奪戦をけしかける。しかし、実はこれは「いただきマフィア」作戦で、 Aが義兄に振られたところを慰め、頂こうとしていていることが判明。
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またきみをすきになる【登録タグ ま 夕凪なくも 小説 本】 またキミを好きになる 著者:夕凪なくも 本紹介 サンプル コメント 名前 コメント