約 6,170 件
https://w.atwiki.jp/sakiyuriyuri/pages/336.html
496 名無しさん@秘密の花園 [sage] 2010/03/07(日) 16 18 31 ID WmEtytFV Be 『リングアウト!』 「WMA世界タイトルマッチ。この試合が終わった後、チャンピオンベルトを巻くのは 現チャンピオン 天江衣か、挑戦者 井上純か! 実況は私、国広一、ジャッジ原村和、そして解説には特別ゲストの龍門──」 カーーーンっ! 「おーーっとゴングが鳴らされました。試合開始です」 「と…ともきーーっ!!なんでゴング鳴らしてますのっ!まだ私の紹介が終わってませんわーーっ!!」 「(まぁまぁ、とーか。落ち着いて…ねっ?)では気を取り直して。 まずは両者様子見から。先に手を出したのは井上選手。左のジャブが…当たりません!」 「あの身長差ですわ。足元をちょこまか逃げ回る衣を捕まえるのは不可能ですわね」 「今度は天江選手、お返しとばかり渾身の────」 「衣は私の従姉妹ですのよ?さぁ、世界中にあなたの力を見せて差し上げなさいっ!!」 「右ストレートが空を切ったーーーーっっ!!!!」 「…………」 「天江選手、井上選手に手が届きませんっ!透華さん、天江選手の拳が届かないのですが…」 「……お…おーーほっほっほっ…」 「(笑って誤魔化したね、とーか…)さぁ、しかし天江選手あきらめない。 必死に井上選手の回りを飛び跳ねる姿はまさしくウサギさんだっ!」 「まるで幼稚園のお遊戯ですわね」 「会場も思わずほのぼのムードです」 …ぶっ! 「おっと、どうしたことでしょう。井上選手、鼻から血を流しています。 天江選手のパンチが当たったようには見えませんでしたが…。解説の透華さん」 「おそらく飛び跳ねる衣の愛くるしさに耐えられなくなったのですわ。 純はああ見えてカワイイもの大好きですから」 「しかし井上選手、普段はそんな素振りは見せていませんが?」 「ふふ…純は隠してるつもりでも私の目は誤魔化せませんわ! 私は知っておりますのよ。毎晩、純がクマさんのぬいぐるみを抱いて寝ていることをっ!!」 「井上選手っ、恥ずかしい日常を暴露されてしまったっ!! キャラがキャラだけに試合後の周囲の視線を想像すると同情を禁じ得ませんっ!」 カンカンカンっ! 「ここで第1ラウンド終了です。では赤コーナ、チャンピオンサイドの様子はどうでしょう?」 ──赤コーナー 「どうだっ!!見ててくれたか、咲?」 「うん。がんばったね、衣ちゃん」 なでなで 「や、やめろ、なでるな~~…ふにゅう~~…」 「天江選手、何か完全に力が抜けてしまっているようですが第2ラウンドは大丈夫でしょうか?」 「セコンドが選手にダメージを与えてどうしますの…」 バンバンバンっ!バンバンバンっ!! 「なんですの、この音は?」 「これは…ジャッジの原村和ですっ!原村和が床を叩いて号泣していますっ!そしてその視線の先は… 赤コーナーだっ!!『悔しいっ!私もなでられたこと無いのにっ!私も咲さんになでられたいっ!!』 そんな魂の慟哭が聞こえてくるようです」 「嫉妬に狂った女は恐ろしいですわよ…」 「さぁ続いて青コーナー、挑戦者サイドです」 ──青コーナー 「しっかりするじぇっ!!」 「すまねぇ、やられちまった…」 「大人しくしてるじぇ。いま止血するじぇ」 「ちょ…ま、待てって。そんなに顔を近づけたら…」 「な…何を恥ずかしがってるじょ……。こ、こっちまで恥ずかしく…」 「「////」」 「こちらはこちらで、あやしい雰囲気になってまいりました」 ガンガンガンっ!ガンガンガンっ!! 「今度は何の音ですの…」 「これは…ともきーですっ!ともきーがゴングではなく机を叩いて号泣していますっ!その視線の先は… 青コーナーだっ!『悔しいっ!私よりそんなタコス臭い女がいいの?どうして私じゃダメなのっ!!』 そんな女の情念が聞こえてくるようです」 「私の紹介が終わる前にゴングを鳴らした天罰ですわ」 カーーーンっ! 「第2ラウンドが始まりました。おっと天江選手、セコンドから受けたダメージが抜けていないのか 足元がふらついているぞっ!井上選手、この機会を逃さないっ!右の拳を打ち下ろしたぁ!」 「こ、ころもーーーーっ!!」 なでなで 「井上選手、振り下ろした右手で天江選手の頭を撫でています」 「…心配したのがバカみたいですわ」 なでなで、なでなで 「…ふ…ふにゃああああぁぁぁぁ…………」バタンっ 「天江選手ダウンっ!ジャッジのカウントが始まります」 「1、4、7、9、10っ!」 カンカンカンカーン!! 「試合終了っ!あっという間の10カウントっ!…というかカウントが飛んだ気がしましたが…」 「やはり嫉妬に狂った女は恐ろしかったですわね…」 「あっ、倒れていた天江選手。目を覚ましたようです」 「咲…?そうか、私は負けたのか…」 「うん…。でも立派だったよ、衣ちゃん」 なでなで 「ふ、ふにゅ~…」ガクっ バンバンバンっ!!! 「あのセコンドは自分が敗因だと、まだ気付いていないようですわ…」 「その後ろで必死に存在をアピールしている原村和にも気づいていないようです」 「ある意味、原村和が真の敗者ですわね」 「こちらは勝者、井上選手の映像です」 「よくやったじぇっ!ほら、これ」 「おっ、サンキュ!」 ガンガンガンっ!!! 「井上選手、セコンドの片岡トレーナーから花束を渡されました。これには感極まったのか 涙が止まりません。そして、こちらも後ろで懸命に存在を主張するともきーに気付く様子もありません」 「あ…はじめっ!あれは花束ではありませんわ」 「え…?あれは…巨大なタコスですっ!井上選手の涙はタバスコに目をやられたものでしたっ! これはキツそうだっ!井上選手、悶絶っ!渡した片岡トレーナーも悶絶しています」 「衣たちまで悶絶してますわね…。どれだけ強力なタバスコを使えばこんな事態に…」 「あっ、この非常事態に原村和と沢村智紀の両者も、想い人を救出すべくリングに飛び込んで─── 悶絶しています…」 「わかりやすい三文コントですわ」 「そろそろ収拾がつかなくなってきたので、透華さんにこの試合を振り返っていただきましょう」 「やっと私の出番ですわね。まず、この試合のポイントは────」 「あっ、ここで放送時間が無くなってしまいました。それではみなさん、さようなら」 「お、お待ちなさい。まだ私が目立って────」 『この放送は── ”アメリカでも大暴走” 池田自動車 ”あなたの右目も光らせたい” フクジコンタクト ”大学受験って何だっけ?” カマボコ予備校 ”働くあなたのパートナー” ビジネスホテル東横INN ──以上の提供でお送りしました』
https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/49.html
第21話 チェインスター-リュウモンブチトウカ- 彼女の家はお金持ちで、何だって望めば与えてもらえた。 彼女の家は“お上品”な上流階級というやつで、何でもかんでも下品に欲するということは出来なかった。 何人ものメイド達に、身の回りの世話を何だってさせられる。 けれども決して、家の中でメイド達と友人のように接することは許されない。 人を買っても、麻雀部を乗っ取っても、誰も何も言ってこなかった。 だからこそ、超えちゃいけないそのラインは、常に手探りで自分で設けざるを得なかった。 傲慢に、自由に、奔放に、『金持ちのイケイケお嬢様』として生きていこうかと思った。 けれども生来の優しさで、それさえも上手く行かない。 麻雀という、ネームバリューではどうにもならない競技に出会った。 実力で目立てる快感を、教え込まれることになる。 その麻雀で、大切な友人の心を救ってあげたかった。 けれど自分には何も出来なくて。 心からの救いを与えてくれたのは、全く別の少女だった。 そんな自分だからだろうか。 本当は、皆を導く希望の星になりたかった。 でも、それになるには甘すぎて。 冷静に計算し、皆を守る力は無くて。 心の中で、膝を抱え込んでいる。 誰より輝き目立つ星になりたいと思い、スターを目指した少女。 誰かの心を照らしてあげたい、暗闇を迷った人を導いてあげたい。 そんなことを漠然と思い続けていた少女。 彼女の名は、龍門渕透華と言った。 ☆ ★ ☆ ★ ☆ 結束が、ほしかった。 それを得ることが難しい状況だとは分かっている。 でもだからこそ、結束が必要なのだと考えていた。 結束があれば、例え困難な道でも、進み続ける事ができると思っていた。 だから、結束を得るために行動をした。 行動したつもりだった。 でも結局、何一つ出来なかった。 絆一つ、作る事ができなかった。 ようやく出会えた最初の相手・池田華菜は、自分が無思慮に声をかけたせいで立ち直れずに別離するはめになった。 その原因でもあり、私の一番の罪でもあるのは、染谷まこが死亡してしまったことだ。 私は、結束を生み出すどころか、一番避けたかった犠牲を生んでしまった。 池田華菜も、未だに立ち直れたのかどうか分からない。 大切な友人であるはじめや、信頼のおけるハギヨシ。 彼女達とは、すでに結束があると思っている。 だから、合流できてすごく嬉しかった。 だけど、彼女達とは考え方に差があると、どこかで感じ取っている。 きっと、はじめやハギヨシの方が、正解に近いのだろう。 二人は、手に取ることに成功した仲間達を守るため、最善を尽くそうとしてくれている。 同時期に仲間になった片岡優希から見ても、おそらく二人の方が信用出来るのではないだろうか。 ――今の自分が冷静でなく、理想論を語っているということくらい、重々承知している。 牌効率など考えず、ただひたすら愚直なまでに役満目指して全ツッパ。 今しているのは、それなのだから。 しかし、それを辞める気はない。 振り込みを防いだ所で、出来ることなど3位のキープのみと言ったような状況。 可能な限りの大人数で手を取り脱出するという1位を狙わず、3位を維持することに意義が見い出せないのだ。 それこそ、長野県大会決勝で、池田華菜がやってみせたチーピン切りでの上がり放棄のように。 諦めずに、何より望む一番の可能性を追い求めたいのだ。 その考えが、理解を得られるとは思ってない。 きっと皆にしてみれば、自分と一番大事な人の安全を何より守りたいだろうから。 自分の安全をちょっとだけ下げ、皆で助かる―― それをするのは、決して容易いことではない。 わかってる。それでも。 はじめは、ハギヨシは、私と同じ気持ちだと信じたかった。 きっと、同じ想いを抱き、全員での生還を目指している。 そう、思い込んでいた。 けれど現実はそうではなくて。 一見冷酷に見えるほど冷静で、私の身を案じてくれていて。 決して他者をないがしろにしようというわけではないことを、理解できてしまうからこそ、 何も言えずに上手く形容できない気持ちを抱え込んでいた。 はじめ達も、間違ってはいないのだから。 だからといって、黙ってそれを受け入れるなんて出来やしない。 けれども、これはきっと、命令してやらせても、意味のないことだろうから。 はじめ達に、黙って受け入れさせることも出来ないのだ。 ならば、いっそ開き直ろう。 私や既得の仲間達は、冷静で頼りになるはじめ達が守ってくれる。 だから私は、はじめ達が弾かざるを得なかった者に手を差し伸べる役でいよう。 弾かれた人達が、手を握り返してくれる可能性を無視できないから。 そう、決めていたのに。 少しだけ、折れそうだった。 自ら武装を解除しても、自分が伸ばした手では空しか掴めなかった。 はじめもハギヨシも、無条件で信頼してくれているのだろうが、それは既得の絆あってのものだ。 その絆が作れたのも、龍門渕家という、私自身のものではない要素が大きい。 龍門渕家使用人達を除けば、人間関係の類は笑えないくらい無様な状況。 はじめが仲間にしていた片岡優希に対してもそうだ。 上手く立ち回れているとは、お世辞にも言い難い。 重荷を減らしてやることすら出来ずにいた。 原村和は、現れるだけでソレをやってのけたのに、だ。 親しい者と再会できたら救われるに決まっている、というのは一理ある。 そう考えると、誰だって、親しい者の救いになら、なることが出来るかもしれない。 福路美穂子が、池田華菜の救いになるべく別行動を選んだように。 原村和が、まだ見ぬ宮永咲を救おうとして、別離の道を選んだように。 私もそうやっていたら、はじめやハギヨシ、それにここには居ない衣や智紀。 そして――純も、救えていたかもしれない。 でも現実は、はじめ達の重荷になってしまっている。 私の想いは空回りして、はじめ達の考えを妨げるだけになっている。 それに気が付けないほど、頭が悪いわけではない。 結局のところ、私はただの無能者だったのだ。 肩書きや財産がないと何も出来ない、不自由なボンボンに過ぎなかったのだ。 ――そんなこと、とっくの昔にわかっていたのに。 何年もかけて、衣の心一つ救えなかったのだ。 認めねばなるまい。 私は、誰かの心を救える程、強い存在ではないと。 「……聞こえまして? 龍門渕透華ですわ」 だけど、それでも。 自分で決めた道だから。 心の底から願った未来に繋がっている道だから。 歩みを止めるなんてしない。 「私達は、依然ここで待っています。 銃声ももう聞こえません。皆で手を取り、どうするのか考えるべきですわ!」 多分、くだらない意地だ。 自分が自分でありたいという、そんな意地。 レールが敷かれているどころか、願うだけで眼前にレールが現れる人生。 誰より自由で、そして不自由な人生で、私はずっと思っていたのだ。 自分の力で何かを絶対成し遂げようと。 だから、最強の雀士を目指した。 アイドルを、目指した。 どれだけコネがあっても、どれだけ容姿に恵まれていても、麻雀の実力という確かなものを持っていないと、なれない夢。 目指し甲斐のある目標。 それが、日々を楽しいものにしてくれたから。 自分で敷いたレールの上に存在した“龍門渕透華”を、嘘にしてしまわぬように。 ちょっとくらい困難でも、心が折れそうに辛くても、絶対投げ出したりしない。 「……待ってますわ」 4人に戻ってから、何度目かになる呼びかけを終える。 再び静寂が訪れた。 度々呼びかけで会話が途切れるのもあり、沈黙の続く気まずい空気となっている。 「……」 いつまで、やるの。 黙ってこちらを見ているはじめやハギヨシが、そう訴えてる気がしてきて。 思わず、目を逸らしてしまう。 諦めないと決めたとは言え、そうホイホイと開き直ることは出来ない。 誰よりも自由でなくてはならない――そんな不自由にまみれた自由奔放さしか持ち合わせていなかった。 何も感じず図太く好きにやれるわけがないのだ。 この空気で普段通り振る舞うのには、あまりにエネルギーを要する。 「原村和が心配ですの?」 だけど、動かないわけにもいかなくて。 とりあえず、片岡優希を元気づけようと、隣に移動し声をかけた。 腰を下ろす様を横目で追いながら、優希が呟く。 「心配じゃないわけないじぇ……」 私と違い、生来の自由奔放さを持っていると思われる、片岡優希が。 膝を抱え、迷子の子供のように不安に満ち溢れた顔をしている。 「大丈夫、原村和は私並に頭がいいですし、そう易易と危険な目にはあいませんわ!」 「のどちゃん、頭いいけど……柔軟じゃないから……だから……」 だから、早死にしてしまう。 ――片岡優希は、そう言いたいのだろうか。 「……どうかしましたの?」 否。 確かに死という単語を口にするのを憚って言葉が消えたという可能性も0ではないが、 片岡優希の今にも泣きそうな顔からは、もっと複雑なものがあるように感じ取れた。 「…………」 「何か、言われましたの?」 さっきの別れの場面。 ライバルだからか、自然と目は原村和を追っていた。 だから、しっかり目撃している。 原村和が最後に何か耳打ちしたのを。 何を囁いていたのか、聞くのは野暮だと思ったから、聞いていなかったけど。 「……のどちゃんが……」 悩み、躊躇い、言葉を何度も飲み込んで。 片岡優希は、それから、言った。 「毒を盛られるかもしれないから、常に警戒しとけって…… 飲み水は、自分のだけ飲んどけって……」 「――――――――っ!」 言葉に詰まる。 それはきっと、悪気からくる言葉ではなかったのだろう。 ただ純粋に、残してきた友人を案じてのメッセージ。 だけどそれは、私達を信頼してくれていないことを意味している。 それが悲しくて、悔しくて。 顔に出さないようにするのに必死だった。 ここで原村和への不満と取られかねない態度をとっても、片岡優希が困るだけだ。 実際はじめもハギヨシも、ほとんどノーリアクションである。 ……もっとも、二人は原村和と同じ考えだからなのかもしれないけど。 「そこまで言うなら、いいですわ。常に私が毒見をして差し上げます」 「え……」 片岡優希がゆっくりと顔を上げる。 驚いて上げただけだろうが、それでも、ちょっとだけ心のエンジンが温まる。 「この中に毒を盛る卑劣漢なんていないことを、証明して差し上げますわっ!」 冷静に最悪の事態を想定するなら、原村和の言う通り、警戒して自分の飲み水以外は飲まないべきだ。 だが、しかし。 共用の水に毒を仕込むメリットとデメリット、毒を盛る人間が紛れ込んでいると判明してしまうデメリット―― それらを考慮するなら、『仕込むわけがない』と見るのもまた、デジタル的論理思考と言えるのではないだろうか。 「で、でも……」 片岡優希が言い淀む。 皆のことを信じたいし、実際原村和に吹き込まれるまでは毒を盛るなんて発想すらなかったのだろうけど。 1%でも可能性があると思うと、気軽に勧められないのだろう。 「大丈夫ですわ! ちょうど喉が乾きましたし、飲んでみせましてよ!」 「ちょ、透華!」 「いいからいいから」 適当に掴んだペットボトルのキャップを捻る。 あまり移動しないため、荷物の重さを気にする必要はない。 ならば開封済みのものから飲んでいった方がいいだろうという判断だ。 ……開封済みのペットボトルを増やしすぎると、管理が面倒というのもある。 私は無いとは思っているけど、きっとはじめやハギヨシは、毒物混入を疑って共用ペットボトルを監視するのだろうし。 実際すでに監視していて、ペットボトルに毒物を入れられてないと判断しているのだろう。 ハギヨシに、必死に止める様子はない。 はじめにしても、割りとあっさり引き下がった。 これで、ペットボトルの水を飲むことに障害はない。 ――はずであった。 (こ、これってもしかして……) “誰かの飲みかけペットボトル”ということを、意識するまでは。 (か、かかか間接キス、ですの!?) 顔から火が出そうになる。 今時ウブにも程があると言わないでほしい。 何せ本物の箱入り娘。 アイドル雀士を目指してはいても、枕のような黒い世界とは縁がないまま生きてきたのだ。 口と口をくっつけるなんて、父親にだってしたことがない。 記憶がないときに散々されたかもしれないが、それはあれだ、ノーカウント。 (いや、でも、女同士ではカウントされないはずっ……!) そうは思っても、意識してしまったものはどうしようもない。 普通の女子高生ならば「あ、美味しそう、一口頂戴」なんてノリで平気で回し食いをするだろう。 しかし私は「あ、美味しそう」と言った途端に新品まるっと買い与えられるお嬢様なのだ。 回し食いの経験なんてあるはずもなく、間接キスが当たり前ということにすらピンとこない。 それに、人が口をつけたものを口にするという如何ともしがたい下品で下劣な背徳感も存在していた。 (そ、そうはいっても、だってこれ、多分、きっと、おそらく、間違いなく、十中八九は原村和の……!) そして、最大の問題。 このペットボトルが、おそらくは原村和のものだということだ。 断言できる要素はないが、この水の減り具合と、“後から追加で置いた”感のある端のペットボトルだということを考慮すると、 これは原村和のペットボトルである確率が高いといえる。 別に原村和を意識しているわけではないが、一度そう思うと『違うと断言できる材料』が出るまでそう思い込んでしまって。 自分の顔がどんどん赤くなるのを感じた。 「透華……?」 原村和と間接キス。 家族であるはじめやハギヨシならともかく、永遠のライバルである原村和と間接キス!! そんな恥辱があるだろうか! というか、間接とはいえ実質キス。 キスを、恋人になってもいないライバルと、はじめてのチュウで、アイルギブユーオールマイラブ涙が出ちゃうだって女の子だもんで、とにかくもう、思考回路はショート寸前。 「や、優しくしてくださいましっ!」 テンパった末に出てきた言葉はソレだった。 だがしかし、怪訝そうな声を聞いてしまった以上、ウダウダやってる暇はない。 これ以上アホな理由で躊躇して、「やっぱり毒が入っていると疑ってるんじゃないのか」と思われたら笑い話にもならない。 兎にも角にも、グッバイキッスバージンするしかないのだ。 「んっ……」 唇にソフトにあてがう飲み口から、いくらか水が溢れ落ちる。 桃色の、リップクリームで常に艶を維持されている唇を伝い、顎から垂れ、薄い胸元や首筋へと垂れていった。 残りは喉を伝って体内へと飲み込まれる。 零れた水の冷たさが不快感をもたらすが、そこまで意識が回らない。 これが、ファーストキスの味―― 恥ずかしさやら何やらで、ほとんど味など分からなかった。 まあ、水なので、ほとんど無味なんだけど。 「…………っ」 これからもこんなことをするかと思うと緊張で吐きそう。 とか思ってたら、本当に吐き気がしてきた。 胃袋から色々と逆流してきて、思わず口を抑えこむ。 「透華……?」 心配そうなはじめに背を向け、木の影で嘔吐すべく駆け出そうとする。 しかし力が入らずに、そのまま転倒してしまった。 その拍子に、逆流してきたものがあふれだす。 どうやら人間のほっぺは、ハムスターの頬袋ほど頑張れるものじゃないらしい。 「透華!」 心配そうなはじめの声が、悲痛な叫びへと変わった。 見ると、指の隙間から溢れ出ている“ソレ”は、吐瀉物にしては綺麗な色をしていた。 マーブルでなく、綺麗な一色の色。 それは、とても綺麗な赤だった。 「こ、これどうしたら……!」 はじめの動転したような声が聞こえる。 そちらを向いて「落ち着きなさい」と言いたいのに、うまく振り向くことが出来ない。 ハギヨシはハギヨシで何やら返事をしているものと思われるが、何を言っているのだかイマイチ頭に入らなかった。 「くそっ、透華! 透華!」 視界にはじめが映る。 その顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。 ああ、ほら、そんなに泣くと、タトゥーシールが剥がれますわよ。 水に弱いのか知りませんけども。 「透華、透華ぁ……」 何も出来ずに泣きじゃくるはじめ。 ここまで弱々しいはじめは、初めて見たかもしれない。 だから、悟った。 私は、もう、ここで死ぬのだろうと。 走馬灯のように、今までの人生が頭の中で再生される。 とても楽しく、充実した人生だった。 短かったし、未練もあるし、やってないこともまだたくさんあったけど。 それでも最後に笑顔で死ねそうなくらいには、幸せな人生だった。 だけど。 「……め………………ぃ……」 ごめんなさい。 そう言わなければならない相手がたくさんいる人生だった。 奔放に生き、後悔もしてないため、きっとこういう場面じゃなきゃ謝ってなかったろうけど。 それでも、負い目はあったし、悪いと思っているから。 最後の時が近いというのに、頭は謝罪でうめつくされた。 大切な、お父様。大好きな、お母様。 たくさん我儘言ってごめんなさい。 喧嘩をすることもあったけど、お二人のこと、心底愛しておりました。 先立つ不幸をお許し下さい。 メイドの皆も、こんな馬鹿が振り回して、悪かったと思ってますわ。 私はもう帰れないけど、これからも龍門渕家に仕えてくださいまし。 お父様とお母様をよろしくお願い致しますわ。 歩。 メイドの中でも特に親しくしてくれましたわね。 いつか麻雀を叩きこむという約束、結局無しになってしまったこと、謝罪しますわ。 それに、こんなことに巻き込まれた原因が、多分私達であることも。 ハギヨシ。 貴方なら、きっと、皆を生還させてくれると信じてますわ。 衣を、皆を、頼みましたわよ。 ……最後までおんぶにだっこな主人でごめんなさい、ですわ。 智紀。 『使えない子』なんて言って、悪かったと思ってますわ。 あの時は、確かにダメだったかもしれないけど。 他の場面でたくさん助けてもらってましたのにね。 純。 何も出来なくて、本当に申し訳ないですわ。 私もすぐそっちに行く事になりますから、そっちに着いたら文句はたっぷり聞きますから。 また、麻雀でも打ちましょう。今度は対等な立場で。 衣。 大切な家族なのに、救ってあげることができなくてごめんなさい。 用意した友達だから友達じゃないだなんて、悩ませちゃってごめんなさい。 これからも見守ってますから、生きて帰って、私の分まで、心から友と笑って下さいまし。 池田華菜。 衣と友達になってくれた恩もあるのに、何もしてあげられなくてごめんなさい。 私の分も、どうか貴女は救われて。 福路美穂子が行くでしょうから、これ以上貯めこまないで下さいまし。 福路美穂子。 池田華菜を頼みましたわよ。 面倒を押し付けたこと、申し訳なく思ってますわ。 私の分も、皆を癒して下さいまし。貴女なら出来るって、信用してますわよ。 染谷まこ。 死の原因を作ってしまってごめんなさい。 にも関わらず、池田華菜を許してなんて厚かましいことを祈ってることを申し訳なく思いますわ。 そっちに行ったら、気が済むまで罵倒して下さいまし。 片岡優希。 私は何も出来ませんでしたわね。本当にごめんなさい。 貴女の先輩の死の原因でごめんなさい。 でも、貴女にも笑っていてほしいから。 どうか、これ以上誰かの死を引きずらないでほしいですわ。 原村和。 我が永遠のライバル。 悪いけど、一足先に私は引退することになりそうですわ。 決着をつけられないことが、心残りですけれど。 ――それ以上に、貴女に疑念を抱いて逝くのが心残りですわ。 だから、原村和。 私は、私が肩を並べていた、貴女を盲信して逝くことにしますわ。 これは、あのザビエルとかいう男の仕掛けた罠か何かだと。 そう思い込んで逝く事にしますから。 だから、どうか。 引き返せなくなる前に、片岡優希や宮永咲の待つ日常が遠のく前に、 正しい道に帰ってきて下さいまし。 「透華! おいていかないでよ、透華ァ!」 そして、はじめ。 謝らなくちゃいけないこと、貴女には誰よりたくさんありますわ。 半ば無理矢理連行したこと。 疑って、常に手錠を付けさせたこと。 散々振り回したこと。 今度の休日一緒に遊びに行く約束を果たせなかったこと。 ずっと一緒だと言ったのに、先に逝ってしまうこと。 大なり小なり、謝らなくてはいけないことでいっぱいなのに。 なのに。 「は…………め……」 はじめに向けて、重く動かない唇から漏れだす言葉は、謝罪の言葉ではなくて。 謝らなくてはいけないのに、伝えたいと思った言葉は『ごめんなさい』ではなくて。 「透……華……?」 わがままに付き合ってくれて。 こんな私を受け入れてくれて。 好きだとすら言ってくれて。 出会ってくれて。 その他諸々、伝えたいことがたくさんあって。 「ぁ………………と……」 思わず出てきた最期の言葉は。 誰より愛した貴女の耳には届かない。 「なに? 聞こえない、聞こえないよ透華ぁ!」 感謝の想いも伝えられぬまま、他の誰より自由で不自由な人生を、誰より輝くために駆け抜けた。 龍門渕透華と呼ばれたそんな不自由な一等星は、その光ごと、空に吸い込まれていった。 「透華ぁぁぁぁ!」 空に吸い込まれる直前まで、貴女に向かって、届くことの無い想いを紡ぐ。 謝らないこと、ふざけるなって、思うかもしれないけれど。 それでも、自然と出てきた言葉は、これだったから。 ――――ありがとう。 本当に、ありがとうございますわ。 とても大切な、私だけのメイドさん。 【龍門渕透華 死亡】 【残り24人】 第20話← 戻る →第22話 前へ キャラ追跡表 次へ 第20話 龍門淵透華 ハコテン 第20話 国広一 第22話 第20話 片岡優希 第22話 第20話 ハギヨシ 第22話
https://w.atwiki.jp/saki-anime/pages/68.html
県大会 長野県予選1日目・予選 東風戦20戦 順位 選手名 学校名 学年 得点 地区 1 片岡優希 清澄高校 1 +436 南 2 福路美穂子 風越女子高校 3 +298 南 3 加治木ゆみ 鶴賀学園高校 3 +289 北 4 国広一 龍門渕高校 2 +282 北 5 原村和 清澄高校 1 +277 南 6 沢村智紀 龍門渕高校 2 +272 北 7 竹井久 清澄高校 3 +269 南 8 井上純 龍門渕高校 2 +260 北 9 東横桃子 鶴賀学園高校 1 +253 北 10 池田華菜 風越女子高校 2 +250 南 11 吉留未春 風越女子高校 2 +245 南 12 片桐詩央 天竜女学院高校 3 +241 南 13 志波令 裾花高校 2 +237 北 14 中山栞 西原山林高校 3 +232 北 15 染谷まこ 清澄高校 2 +229 南 16 深堀純代 風越女子高校 2 +224 南 17 霧原あづみ 天竜女学院高校 3 +216 南 18 雨宮須摩子 裾花高校 2 +211 北 19 西沢心 開智実業高校 3 +208 南 20 蒲原智美 鶴賀学園高校 3 +203 北 21 市川望 城山商業高校 3 +200 北 22 文堂星夏 風越女子高校 1 +199 南 23 琴瀬川成美 杏花台高校 3 +195 北 24 宮永咲 清澄高校 1 +193 南 25 大滝桜子 千曲東高校 3 +190 北 26 田中舞 今宮女子高校 3 +188 南 27 弓野奈津美 風越女子高校 3 +187 南 28 卯月栄花 北天神高校 2 +185 北 29 南浦数絵 平滝高校 1 +183 北 30 押水由樹 高瀬川高校 2 +179 北 ※1 団体戦決勝に出場していた選手の名前は太字 ※2 2日目・本選の順位が1~50位まであることは確定なので予選通過順位は最低50位 +画像開く 長野県予選2日目・本選 半荘 午前4戦、午後6戦の計10戦 4回戦終了時 順位 選手名 学校名 学年 得点 1 福路美穂子 風越女子高校 3 +75 2 南浦数絵 平滝高校 1 +66 3 原村和 清澄高校 1 +63 4 龍門渕透華 龍門渕高校 2 +62 29 宮永咲 清澄高校 1 ±0 30 押水由樹 高瀬川高校 2 -1 8回戦終了時 順位 選手名 学校名 学年 得点 推定得点 1 福路美穂子 風越女子高校 3 +219 2 原村和 清澄高校 1 +170 3 南浦数絵 平滝高校 1 +142 4 井上純 龍門渕高校 2 +135 5 +134or133 6 竹井久 清澄高校 3 +132 7 +131~125 8 +130~124 9 沢村智紀 龍門渕高校 2 A +129~123 10 +128~122 11 東横桃子 鶴賀学園 1 B +127~121 12 宮永咲 清澄高校 1 +120 ※アルファベットは得点変移を示すため 9回戦終了時 順位 選手名 学校名 学年 得点 推定得点 1 福路美穂子 風越女子高校 3 +241 2 原村和 清澄高校 1 +182 3 南浦数絵 平滝高校 1 +161 4 龍門渕透華 龍門渕高校 2 +160~141 5 宮永咲 清澄高校 1 +140 6 加治木ゆみ 鶴賀学園 3 +139~133 7 井上純 龍門渕高校 2 +138~132 8 竹井久 清澄高校 3 +131 9 池田華菜 風越女子高校 2 +130~124 10 沢村智紀 龍門渕高校 2 A-19 得点変移で推測すると+110~104順位で推測すると+129~123なお、順位は作中通り10位 11 国広一 龍門渕高校 2 +128~122 12 東横桃子 鶴賀学園 1 B +127~121 13 吉留未春 風越女子高校 2 126以下 14 片岡優希 清澄高校 1 125以下 15 染谷まこ 清澄高校 2 124以下 16 17 18 19 蒲原智美 鶴賀学園 3 120以下 総合 順位 選手名 学校名 学年 得点 1 福路美穂子 風越女子高校 3 +236 2 原村和 清澄高校 1 +210 3 宮永咲 清澄高校 1 +162 4 竹井久 清澄高校 3 +161 5 南浦数絵 平滝高校 1 +156 順位 選手名 学校名 学年 得点 推定得点 東横桃子 鶴賀学園 1 9回戦+26 +153~147 龍門渕透華 龍門渕高校 2 9回戦-19 +141~122 沢村智紀 龍門渕高校 2 9回戦+6 +135~129 加治木ゆみ 鶴賀学園 3 9回戦-7 +132~126 井上純 龍門渕高校 2 9回戦-9 +129~123 池田華菜 風越女子高校 2 9回戦-9 +121~115 国広一 龍門渕高校 2 9回戦-10 +118~112 吉留未春 風越女子高校 2 9回戦 126以下 染谷まこ 清澄高校 2 9回戦-14 110以下 片岡優希 清澄高校 1 9回戦-18 107以下 蒲原智美 鶴賀学園 3 9回戦-17 103以下 全国大会 昨年度結果 順位 選手名 学校名 学年 地区 1 宮永照 白糸台高校 2 西東京 2 荒川憩 三箇牧高校 1 北大阪 3 辻垣内智葉 臨海女子高校 2 東東京 4 湯佐 ???高校 3 ??? 6 銘苅 真嘉比高校 1or2 沖縄 15 寺崎遊月 射水総合高校 2 富山 編集合戦が行われてるので暫定的にコメ欄設置 3位の下の空欄の行は代表ラインを示すためにあえて入れてます。消すなら代替案をお願いします。 IEだと線が細くみえるだけだし、パっと見て分かる3位ラインをハッキリしめしてなにかいみあるの 代表を示すことには意味があると思うので復元。 得点は降順に記すべきだと思う -- 名無しさん (2009-09-15 11 35 52) 編集合戦になってるのでコメ欄を有効活用しましょう -- 名無しさん (2009-09-15 12 22 37) 話し合う点は2点、代表ラインを記すべきかと、得点を昇順か降順どちらにするかです -- 名無しさん (2009-09-15 12 24 08) 同点の可能性もある マンドクセ -- 名無しさん (2009-09-17 10 05 26) はぁ -- 名無しさん (2021-02-11 22 46 26) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/1647.html
許せないのどっち(前編) ◆hANcxn7nFM 今は昔の物語。 淡い光の中、鼎に座る三つの人影があった。 ひとつは黒い神父服に身を包んだ男。 ひとつはこの世のものとも思えぬ色の髪をした少年。 ひとつは小さな、淡い雪のような少女。 周りは暁色に染まり、しかして漆黒の闇にも包まれ、だが光に溢れ輝いていた。 何度目かの問答の末、神父が差し出した紙を見て、少女はやや揺らぐ。 何故彼なのか、と少女は問う。 何故彼のような、未熟な、力の無い、中途半端な者を選ぶのか、と。 何故今更なのか、と少年は少女に問う。 既に君は聖杯と成ることを、唯一の願いとしたはずではなかったのか。 神父は言う。 必要な事だ、心配しなくていい、と続ける。 彼は君の知る彼ではないのだ、と。 少女は既に路を決めていた。 どのような犠牲も受け入れようと決めていた。 一人無為に死ぬことが出来なかった、その時に決めていた。 故に一人の未熟な魔術師の犠牲程度、受け入れられるはずであった。 実際に、少女は数回やや苦しそうに呼吸した後に、承知した。 そうして衛宮士郎は参加者となった。 少女は何故、自分がひとりで無為に死ぬようなことになったのか、などという、そんな昔の事はとうに忘れていた。 ◆ ――――――早かったのね。 ――――――あぁ、資料を取ってきただけだからね。 ――――――どんな資料かしら。 ――――――なに、遠藤が隠していたメモ書きみたいなものさ。 ――――――タイトルは"純粋種"。 ――――――彼の手にイオリアのレポートが渡っていたとは意外だったけどね。 ――――――貴方の世界の情報って、流出してばかりね。 ――――――管理が杜撰すぎて、魔術師でもある私にはとても信じられないわ。 ――――――この子にしても、貴方、元の世界では自分の同類にしか触れさせてなかったのでしょう? ――――――高度な情報化社会において、情報の流出は避けられない宿命さ。 ――――――ヴェーダに関しては、それはだって君は共犯者、だろ? ――――――そうね。それで、出掛けてまで持ってくるなんて、どんなに大事な内容だったのかしら? ――――――あぁ、これで確信出来た。 ――――――ヴェーダの推察とも一致する。 ――――――遠藤はやはり、僕に対する切り札のつもりで連れてきていたんだね。 ――――――このメモ書きにある候補者の一人であり、一時的にせよヴェーダのアクセス権を取得し、ミサカを使役した人物を。 ――――――それは? ――――――それは ◇ ディスプレイのみが光を放つ部屋の中、原村和は牌譜の検証を続けていた。 逃避である。 目の前の惨状を現実のものだと思いたくなかった。 自分のせいで巻き起こったことだと思いたくなかった。 紅蓮に染まる埠頭も、なにもかも、すべて目に入ってなかった。 ひたすらにマウスを動かしホイールを回し、左クリック。 過去の牌譜検証は数百局に至った。 時間にしてわずか数分。 脳は高速度で回転し、理解し、考察していた。 牌譜考察の他に回せるようなリソースは無いはずである。 しかし逃避してもなお、頭の中で囁いてくる声がある。 お前のせいだと。 目の前の惨状はすべて、お前のせいだと。 「違う!私のせいじゃない!アレが、アレが最善手だった!」 頭を抑える。 指が頭皮に食い込む。 乾いた涙がまた溢れ出す。 嗚咽が漏れる。 「助けてください、咲さん」 先程の対局をポイントする。 目の前に映る「みやながさき」の名前。 それを指で優しくさすりながら、ほぅ、とひと息つく。 「そうですね、咲さん。私がここで狂ってしまったら、人質のあなたの命が危うくなってしまう」 親友の命が自分の手にかかっている。 そんな自覚が原村和の精神をすんでのところで守っていた。 それにしても、と原村和は今まで検証することを本能的に拒んでいた領域に手を入れる。 それはつい先ほど、天江衣と東横桃子、そして宮永咲と臨んだ対局。 対局していた時からずっと、今にいたるまで残った違和感。 喉に引っかかった小骨のように、ちろちろと残っていた異物感。 にもかかわらず手をつけなかったのは、見れば必ず惨状が脳裏に浮かぶだろうと想像できたため。 だが意を決して開く。 予想通りというべきか、脳内に悪夢が忍び寄る。 血を抜かれ、床に伏し、瀕死の天江衣。 紅蓮に染まるエスポワール号。 おびただしいほどの悪意、そして憎悪。 次々と散っていく命。 狂おしいほどの愛を叫ぶ東横桃子。 頭を振り、現実を振り切る。 あの対局の違和感を確かめるために。 ■ 最終局、宮永咲の加カンによる嶺上開花で幕を閉じた麻雀大会。 一一一一 222677889南 ツモ:南 宮永咲は南家であったため連風牌により4符、明槓子16符 暗刻子4符 ツモ2符、副底20符。 合わせて46符、繰り上がって50符1飜1600点(天江衣、東横桃子400点、原村和800点)であった。 実に宮永咲らしい締めである。 結果、宮永咲の点数は24500点。±0で三位に終わった。 ここで問題なのは一を東横桃子からポンした際、捨てた牌が南であった事。 これこそがシコリとなって原村和の中に残っていた部分である。 通常ならばフリテンになりかけた裏目をツモで押し切った、というところ。 だが。 もし、この人間に嶺上牌が見えていたとするならば。 常ならば「そんなオカルトありえません」と返す原村和である。 しかし相手は宮永咲である。 実例は今までいくらでも見てきた。 それこそ、デジタルである自分の確率表を更新するほどに。 よって「もし見えていたならば」という仮定のもとに、この場を見てしまう。 そしてよりにもよってトータル±0。 宮永咲が最初の対局で見せた三連続±0。 さらには個人戦二日目に達成した五連続±0。 宮永咲が持つ、特殊な調整能力である。 この二つが符合し、投了以降、疑念となって頭の中に残っていた。 疑念。 即ち、「宮永咲は±0にするためにわざと嶺上開花を選んだ」ということ。 嶺上開花、ツモ和了するということは、一滴でも血液を温存しておきたい天江衣から血をむしりとるということだ。 保身の為、親友の命を削るという、身勝手極まりない悪魔のような所業である。 勿論、そうでない可能性はいくらでもある。 いつもであれば、±0を責めるだけであろう。 だが、今は命に関わることだ。 まさかそんなはずがない。 このような状況で±0を狙うためだけに親友の命を削るはずがない。 そう祈りながら、牌譜を開いた。 南四局。 南家 宮永咲 一一一22南南677889 東横桃子から一をポン、南捨て。 次巡 一一一 一22南677889 ツモ2 一を加カン。ツモ南。嶺上開花。 最悪であった。 例えば東横桃子の捨て牌、一を大明カンした場合、 一一一一 22南南677889 ツモ南 となって50符3飜、子の6400点。これが責任払いとなって東横桃子への直撃。 その場合宮永咲が29300点。 原村和の26300点、東横桃子の26000点を超えて一位となっていたはずである。 東横桃子のひとり勝ちを防ぎ、なおかつ天江衣への損害もなく、失血も200cc抑えられていた。 状況としてはこれ以上無い。 にも関わらず、宮永咲はこれをスルーして±0とした。 「何故ですか、咲さん!」 原村和の叫び声が部屋中に響いた。 ■ 『のどかちゃん?』 原村和の絶叫に答えるように、スピーカーから声が漏れた。 聞き間違いようがない、一番大事な親友の声。 「咲さん?!」 見れば先程の対局で使っていたスピーカーを落とし忘れていたようだ。 いつから聞こえていたのだろうか? 頭の中で一杯になっていた疑念を聞かれた気がして、原村和は戸惑った。 『良かった、通じたみたいだよ』 幸運なことに、というべきか。今通じたばかりのようでもある。 それにどうやら傍に人がいるらしい。 それもそうか、と原村和は思い直す。 宮永咲は自宅にPCもなく、ネット環境そのものに触れたことが無い、今時珍しい女子高生なのだ。 誰かの指南がなければネット麻雀などおぼつかないだろう。 そこまでふと考えて、原村和は今まで浮かびもしなかった疑問に思いが至った。 そもそも、何故宮永咲はこの麻雀大会に参加しているのだろう、と。 この麻雀大会自体は主催側の人間である原村和と、ノートPC所持者及び、会場内遊戯施設にいる者しか参加できない。 その為に東横桃子が参戦出来たのだ。 提案自体、宮永咲と天江衣を戦わせないために出したもの。 では、何故。 「咲さん、どうして対局に参加されたんですか?」 『え、だって衣ちゃんが危ないって聞いて』 原村和の中でちらり、と怒りの火が揺れた。 「天江さんが危険だと知りながら、点数を削るような真似をしたんですか」 『ち、違うんだよ、のどかちゃん!あれは!』 こんなことを言いたいわけじゃないのに。 口をついて出てくるのは親友への非難だけであった。 「咲さん、貴女は手加減をして、それで天江さんを危険な状態にまでして、そんな事が許されると思っているんですか?!」 『そんなことない!私は!』 許されないのはどっちだと自分にいやになりながらも、ボルテージは上がり続ける。 そのようなことをしている場合ではないことは重々承知しているにも関わらず、和の攻撃は止まらない。 「咲さん、もう手加減はしないと、あの日小指を交えて約束したのは嘘だったんですか?! 私との約束よりも、大事な何かが±0にはあるんですか?!」 『のどかちゃん、あのね?!』 「もう知りません!」 これ以上話しても辛くなるだけだと、原村和は通話を切った。 部屋に静寂が戻る。 暗い部屋の中、自己嫌悪に陥った少女が一人、そこにいた。 あんなことを言うつもりではなかったし、もっと他に話すべきことはあった。 例えばなぜ宮永咲は麻雀大会に参加できたのかとか、例えば天江衣の無事を二人で祈る事とか。 いや、ただ単に二人で話しあうことが一番したかった事のはずだ。 何故このようなことになってしまったのか。 原村和は一人頭を抱えるのみであった。 ◇ 私ディートハルト・リートはディレクター室にて映像資料を漁っていた。 端から端まで隅の隅まで、再確認。 あの黄金色の瞳をした少女の真の狙いを探し出すために。 そして映像をチェックし終えた時、なんとも言えぬ疲労感だけが残った。 頭の中の情報を整理できてないからだろう。 そう楽観的に思い直し、ぬるいコーヒーに口をつけ、椅子から立ち上がって背伸びをした。 そういえばオープニングを演出したのはだいぶ前のような気がする。 ゲネプロの途中で本番に移行した為多少の混乱はあったが、いいフィルムが撮れたと満足している。 リハーサルだからと油断していた遠藤が、龍門渕とかいう少女の首が吹き飛ぶのを見て仰天したのは中々傑作だった。 実際、あそこまで上出来だったのに破棄するのも忍びなかったのは事実。 当初はリハーサルでも本番でも、少女は爆死しない予定であった。 本番終了後に別の場所で爆死させ、その映像を合成する手はずであった。 だが、そんな臨場感のない画など、撮る価値があるのだろうか? 出来た映像を見れば一目瞭然。 アレが当然。 アレがベストの判断だったのだ。 まぁこのような無茶が通ったのも生中継でなかったからではあるのだが。 そうそう、そもそも生中継でないところにも文句をつけたものだ。 臨場感という意味では生に優るものはない。生は三割増とはよく言ったもの。 録画中継の上に合成では面白い映像など撮れるはずもないのに、よくそんなことを企画したものだ。 やはり私という専門家が付いていて良かった。 そうでなければオープニングからして、どっちらけになってしまっていただろう。 おかげでスポンサーの満足度も上々。新規参入を申し出るものも多数出てきた。 しかし、いつからなのだろう。 眼下で起こるショーに、不満を抱き始めたのは。 殺し合いは生の輝きが最も激しく観測できる、素晴らしい手法だ。 だが、あの会場に集う者たちは誰も彼も素晴らしいエンターティナー。 このような素晴らしいモノを見せてくれる者たちを、何故こんなにもあっさりと消耗してしまうのか。 疑問を抱いた。 本多忠勝最後の戦いを見せろと頭ごなしに命令してくるスポンサーや、金眼の少女に嫌気がさしてきた。 第一、始まりからして強制された仕事なのだ。 地に足が付くはずもない。 もとより自分はプロの映像屋だ。 契約であれば最後まで全うするつもりである。 だが、先方の真意が覗けぬ場合はまた別だ。 そして企画意図、主催の真意、その他もろもろが未だ鬱蒼としたモヤの向こう側にあると確信した今。 プロとして、あの金眼の少女と心中する気は毛頭ない! タバコを灰皿に押し付け、ゴミ箱に空の紙コップを投げ入れ、再び席に着く。 そう、そういえば主催者はオープニングを録画放送にすることを積極的に求めていた。 最初は台本通りに進めるためと思ったが、それにしてはアドリヴに対して寛容過ぎる。 ならば。 ならば上条当麻の幻想殺しのためか? 確かに参加者を会場のあちこちに転送したのは、魔法、いや魔術の力によるものだ。 上条当麻の幻想殺しは、魔術の力を無意識のうちに無効化する。 その為に上条当麻のみ、わざわざ会場内に小屋を置いて閉じ込めた。 証拠が残らないように爆破処理まで施したが、その為か? いや、おそらくは違う。生中継を配信すればそれで済むことだからだ。 実際、爆破のアナウンス自体はリアルタイムで行われた。 ならば編集するためか? いや、オープニングが改竄された様子は、プロの目から見ても一欠片もない。 よく見ればそこかしこでADや3カメ、セットの裏側が映り込んだりしているが、それを消した様子もない。 「訳が分からんな」 どうやらこれ以上考えても答えは出そうにない。 遠藤が生きていれば何らかの情報を引き出せたかも知れないが、今は棺の中だ。 蘇生させるとは聞いたが、それがいつになるかは検討もつかない。 要するに当てにならない。 あの死亡遊戯で、遠藤は多くのことを抱えたまま死んだ。 よりにもよって彼自身が推挙した宮永咲の手によって。 遠藤は生前あの少女をやたらと推していたが、彼の主張に比して宮永咲はあまりに地味すぎると思ったものだ。 アレではラウンドガールは務まるまい。 人の嗜好に口を出すつもりはないが、アレはない。 それともとっくに枯れてしまって、ああいう素朴な少女がいいと思えるような境地に至っていたのか。 いや、もしかすると。 遠藤はなんらかの特性を察知していたからこそ、あのモブのような少女を推挙したのか。 危害を加えようとした黒服を容赦なく撃ち殺すほどに、主催から重要視された何かがあるというのか。 いや、ただ単に人質だからという理由で保護されたのかもしれない。 現に宮永咲は二度も殺人麻雀に駆り出されているではないか。 どうにも判断材料が少ない。これでは推論を立てるのも困難だ。 頭を振る。 どうも思考が袋小路に陥っている。 ふと時計を見れば、そろそろ次の放送の打ち合わせの時間だ。 言峰神父との連絡は途絶えたままだが、どうせ放送直前にひょっこり出てくるだろう。 要項に目を通せばアドリヴでやりきってしまうのだから、打ち合わせも何も無いものだが。 まぁそのような人間の脇を固める努力というものは、やはり必要だ。 「禁書目録はどこだ」 「下層ブロック、J-27号室にいらっしゃいます」 J-27号室?宮永咲の個室ではないか! 「分かった。いや、いい。私が迎えに行く」 あのシスターが人に懐くとは珍しいこともあるものだ。それもあのパッとしない少女と、などと。 それを観察するのもまた一興か。 もしかするとあの平凡な少女との、安全なコンタクトの取り方の参考になるかも知れない。 なぁに、アシスタントを呼びに行くだけの話だ。危険なことなどあるはずもない。 ささやかな嫌な予感と共に、私はディレクター室を後にした。 ◇ ――――――衛宮士郎が死んだわ。 ――――――そのようだね。大丈夫かい? ――――――気遣ってくれるの? ――――――当然さ、君の身体に64の命が注ぎ込まれても大丈夫なようにはしてはいるが、それでもやはりギリギリ。 ――――――何らかのミスでオーバーフローを起こしたりしたら、君の宿願も私の願いもフイになってしまうからね。 ――――――ほら、また一人死んだ。ふむ、上条当麻か。 ――――――そうね。貴方も私も聖杯のことが第一だったわね。 ――――――そう、目的のためにブレることは僕たちにはない。 ――――――これが人間であれば、感情に毒されて目的を見誤るだろうけどね。 ――――――さて、また僕は出かけるとしよう。 ――――――どこへ? ――――――知りすぎた人間や、行き過ぎてしまった人間には罰を与えなくてはいけないだろう? ――――――それに ――――――禁書目録は少々痛んでしまったようだから、古いボディを捨てさせねばならないからね。 ◇ 少し前のこと。 「少しよろしいでしょうか」 部屋を訪れた白い僧衣に身を包んだ少女は、無遠慮にずかずかと部屋の中に押し入った。 返事はない。 部屋の主は部屋の中央でノートPCを前に呆然としていた。 殺風景な部屋にぽつんと、No.5とラベルの貼られたノートパソコンが、部屋の中央に置かれている。 電源コードが玄関先のコンセントから一本だけ黒く伸びていた。 ディスプレイにはGAME OVERと大きく書かれ、点数が表示されている。 「どうやら天江衣と通信しているようなので、訪ねさせていただきました」 やや気を取り直したかのように宮永咲は顔を上げてインデックスを見る。 「ごめんね、もう終わっちゃったんだ」 対局終了と同時に既にマイク付きのヘッドホンは外してある。 実際には終わらせ方も分からないので、PCは放置したままなのだが。 インデックスはモニターに目をやるが皆目検討がつかない。 やむを得ず黒服を呼びつけて動作を確認する。 聞けば音声通信機能は東横桃子、天江衣、ともにOFFになっているものの、原村和との回線は生きているという。 天江衣との通信ができないことが分かったので、このまま退散しようとも思ったインデックスではあったが、踏みとどまる。 原村和のプロフィールを不意に思い出したから。 ここにいる宮永咲の親友であることを思い出したから。 魔が差したとしかいいようがない。 ヨハネのペンによって統制されている今のインデックスに、本来そのような気まぐれが起こりようハズはない。 だが、天江衣との邂逅がわずかにその統制を乱したのか。 そもそも統制が取れているのならば、天江衣と会話しようとなどと思いもしないことだろう。 宮永咲に扱い方を教えさせながら、それにしてもとインデックスは思う。 このようにPC知識に疎すぎる人間が、どうしてネット麻雀などで来たのであろうか、と。 「うん、黒い神父さんにパソコン貰って教わった」 返答は単純極まりなく、明快であった。 ■ 通信が終わり、いつの間にか黒服も退席し、静寂にそまった部屋の中。 宮永咲は膝を抱えて落ち込むしかなかった。 「彼女はどうかされたのですか?」 原村和の反応はインデックスには理解不能であった。 傍から見ても理不尽というほかないだろう。 宮永咲は搾り出すようにして語りだす。 「わたしが衣ちゃんを、操作ミスとは言え、友達を傷つけちゃったからいけないんだ」 「友達とは、そこまで大切なものなのですか? いえ、大切なものだとしたら、なぜ原村和と友達のはずの貴方がこうまで責められるのでしょう」 インデックスの表情は訝しげだ。 理性的な行動とは思えない。 理解出来ない。 「ん?うん。のどかちゃんは大切な友達だよ。 だから、会って仲直りしなくちゃね」 精一杯の強がりなのか、宮永咲はインデックスに微笑んでみせた。 瞬間、インデックスの身体が揺らいだ。 今の彼女にとって不要な情報がまたも全身を駆け巡る。 どう考えても騙されたとしか思えない高利の借金を負わされてなお、感謝の笑顔を向ける少女の顔が。 ぎこちなく、おどおどとしながら友達にならないかと伝える少女の姿が。 そしていつしかその顔は、メガネをかけた少女の姿に変わっていく。 インデックスより遥かに背の高い少女。 自分と同じ、望まれて生まれ落ちたにも関わらず世界から祝福されない望まれない、少女。 情報が通り過ぎた。 かぶりを振る。 先程から"友達"という、バグデータのように身体を食い荒らすワードに翻弄されすぎだ。 それにこれ以上記憶が蘇ってしまっては襲いかかる激痛に、体が持たない。 でもアレくらいの痛みがどうしたというのだろう。 ■■■は右腕を切り落とされてもなお、立ち上がったではないか。 ■■■?誰だろう?思い出せない。胸の奥が苦しい。熱い。熱くて胸が燃えてしまいそうなほどに。 いつの間にか涙が流れていた。 なにが悲しいというわけでもないだろうに、インデックスの目からは涙が溢れて止まらなかった。 忘れてしまったことを忘れてしまった少女は、自分が何故このような感情に囚われるのか。 また、この感情がなんなのか、測り知ることが出来なかった。 生理現象により嗚咽が始まり、宮永咲は目の前の少女が泣いていることをようやく理解した。 泣きじゃくる少女を宥めるにはどうすればいいのかと思案に暮れる。 つい先ほどまで落ち込んでいた事など忘れていた。 だが、年下に対する態度を知らない宮永咲に出来ることといえば、ただインデックスの頭を撫でるということだけであった。 頭をなでられたその時、インデックスの前にまたも情景が流れすぎた。 白く輝き舞い落ちる無数の羽。 その中で立ち尽くす一人の少年。 頭の上に手をおいた、ツンツンの頭のその少年の名は。 インデックスを救う、ただその一点のみに邁進したその少年の名は。 その少年の名は。 一層涙を止められなくなったインデックスの姿を見て、宮永咲は最早どうしたらいいのか分からない。 進退窮まった二人の少女が途方にくれていたその時、ドアを叩くものがあった。 「インデックス。打ち合わせの時間だ。入るぞ」 ガチャリと、確認の声も待たずに入ってきたのは金髪の胡散臭い髪型と顎の持ち主。 ディートハルト・リートであった。 第三者の乱入でインデックスの平静はようやく取り戻された。 甲斐甲斐しく宮永咲がインデックスの頬に残る涙をハンカチで拭う。 そんな二者の様子を見て、ディートハルトはやれやれとため息を付いた。 子供のお守りをするためにこの部屋に来たわけではない。 此処へ来たのはある程度の覚悟を持ってのことだ。 それがこの茶番。 出鼻を挫かれるとはまさにこの事であろう。 こんな空気の場所になど長居したくもなく、もうさっさと用事を済ませて引き上げる気になっていた。 「上からの要望を盛り込んだ放送文だ。 最新の死者情報を載せているが、まだ放送まで時間がある。 だからその部分だけはあくまで参考程度に読みあわせてくれ」 完全記憶能力を持つインデックスにかかれば、こんなペラ紙一枚の台本など視野に入れるだけで十分。 だが読み合わせとなるとまた別。 彼女は本職のナレーターやアナウンサーではないのだ。 一回しか読み上げないと宣言しているのにトチってしまったら、それはそれでぶち壊しである。 だから声に出して読み返させる。 実際にはインデックスにはそのような読みあわせも必要ではない。 103000冊の魔道書、そのすべてを間違いなく諳んじれる能力も、彼女には備わっている。 一言一句、発声にいたるまで正確に表現できねば歩く魔道書としての意味が無いためだ。 ディートハルトはそれを知らない。 よってこのような無駄を強いるのだ。 宮永咲を軽く視界に入れた後に部屋を出ようとしたディートハルトの携帯端末が振動し、メールの新着を知らせる。 画面を確認したディートハルトは事もなげに告げる。 「あぁ禁書目録。いま死亡者が追加された。 上条当麻だ。書き加えておいてくれ」 「上じょう、と、う、ま かみじ ょ う と う ま」 あからさまに異常な様子を見せるインデックスに宮永咲が慌てて寄り添う。 一瞬遅く、インデックスは片膝をついて崩れ落ちた。 宮永咲は両手でインデックスの肩を揺さぶり叫ぶ。 一歩遅れてディートハルトも駆け寄る。 「インデックスさん?!大丈夫ですか!インデックスちゃん!」 「どうした、禁書目録!なにが起きた!」 面を上げたインデックスはそれまでの鉄面皮が嘘のように、顔中哀れなほどに涙で濡れ、鼻水を流していた。 「上条当麻とは、一体、誰、なのですか」 途切れ途切れに苦しそうに。 無くした物の大きさが分からないというのに、喪失感だけが巨大な事に、インデックスは明らかに狼狽していた。 少女の予想だにしない一言に、ディートハルトも宮永咲も、顔を見合わせる他ない。 三者が立ちすくむ中、部屋の扉が開き、新たな訪問者が三人現れた。 三人が三人とも全く同じ顔と姿。 ただ違うのは中央に立つ少女が金色に輝く瞳を持つことであった。 時系列順で読む Back 傷キズ泣ナ語ガタリ 螺旋眼・浅上藤乃 Next 許せないのどっち(後編) 投下順で読む Back 傷キズ泣ナ語ガタリ 螺旋眼・浅上藤乃 Next 許せないのどっち(後編) 280 疾走する超能力者のパラベラムⅣ インデックス 290 許せないのどっち(後編) 281 おわりのはじまりⅤ「「最後の挨拶」 リボンズ・アルマーク 290 許せないのどっち(後編) 281 おわりのはじまりⅤ「「最後の挨拶」 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 290 許せないのどっち(後編) 281 おわりのはじまりⅤ「「最後の挨拶」 宮永咲 290 許せないのどっち(後編) 281 おわりのはじまりⅤ「「最後の挨拶」 原村和 290 許せないのどっち(後編) 287 裏切り者、二人と一匹 ディートハルト・リート 290 許せないのどっち(後編)
https://w.atwiki.jp/marowiki001/pages/2352.html
目次 【時事】ニュース片岡優希 RSS片岡優希 口コミ片岡優希 【参考】ブックマーク 関連項目 タグ 最終更新日時 【時事】 ニュース 片岡優希 ミュージカル「四月は君の嘘」小関裕太・木村達成・生田絵梨花らの姿収めたビジュアル解禁(ステージナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「咲-Saki-」コラボカフェに咲の嶺上開花ケーキと優希のタコス、来場者特典も発表(コミックナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『ポケモン』『流星のロックマン』に「森カリオペ」さんまで! 漫画家なもり氏のリクエスト絵が一挙公開 - インサイド 【キャラ誕生日まとめ】9月10~17日生まれのキャラは? 「エヴァ」渚カヲルから「シンフォギア」立花響まで - アニメ!アニメ!Anime Anime 『咲-Saki-』のトレーディングアクリルキーホルダー、トレーディングミニ色紙、Tシャツなどの受注を開始!!アニメ・漫画のオリジナルグッズを販売する「AMNIBUS」にて - PR TIMES 「MJ」シリーズで“第14回 咲-Saki-CUP”が開催。ボイス付きの宮永 咲などが手に入る - 4Gamer.net 【咲ーsakiー】麻雀プロが咲の魅力を語ってみた。#5 - mj-news.net 実写映画『咲-Saki-』は原作ファンを納得させられるか? アニメ版との演出・キャスティング・構成の違いから読み解く - http //spice.eplus.jp/ エビ中・廣田あいかが釘宮理恵を完コピ? 実写『咲-Saki-』での演技が「くぎゅが声あててんのかと思うレベル」 (2016年12月7日) - エキサイトニュース 実写版「咲-Saki-」原村和役のスパガ浅川梨奈ら、オールキャスト一挙解禁 - コミックナタリー セガ ラッキーくじに「咲-Saki-阿知賀編」が登場、A賞はエトペンを抱いた原村和! - ASCII.jp 清澄高校麻雀部の女子部員5人組が勢揃い、テレビアニメ「咲 -Saki-」のアフレコレポート - GIGAZINE RSS 片岡優希 ミュージカル「四月は君の嘘」小関裕太・木村達成・生田絵梨花らの姿収めたビジュアル解禁(ステージナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「咲-Saki-」コラボカフェに咲の嶺上開花ケーキと優希のタコス、来場者特典も発表(コミックナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『ポケモン』『流星のロックマン』に「森カリオペ」さんまで! 漫画家なもり氏のリクエスト絵が一挙公開 - インサイド 【キャラ誕生日まとめ】9月10~17日生まれのキャラは? 「エヴァ」渚カヲルから「シンフォギア」立花響まで - アニメ!アニメ!Anime Anime 『咲-Saki-』のトレーディングアクリルキーホルダー、トレーディングミニ色紙、Tシャツなどの受注を開始!!アニメ・漫画のオリジナルグッズを販売する「AMNIBUS」にて - PR TIMES 「MJ」シリーズで“第14回 咲-Saki-CUP”が開催。ボイス付きの宮永 咲などが手に入る - 4Gamer.net 【咲ーsakiー】麻雀プロが咲の魅力を語ってみた。#5 - mj-news.net 実写映画『咲-Saki-』は原作ファンを納得させられるか? アニメ版との演出・キャスティング・構成の違いから読み解く - http //spice.eplus.jp/ エビ中・廣田あいかが釘宮理恵を完コピ? 実写『咲-Saki-』での演技が「くぎゅが声あててんのかと思うレベル」 (2016年12月7日) - エキサイトニュース 実写版「咲-Saki-」原村和役のスパガ浅川梨奈ら、オールキャスト一挙解禁 - コミックナタリー セガ ラッキーくじに「咲-Saki-阿知賀編」が登場、A賞はエトペンを抱いた原村和! - ASCII.jp 清澄高校麻雀部の女子部員5人組が勢揃い、テレビアニメ「咲 -Saki-」のアフレコレポート - GIGAZINE 口コミ 片岡優希 #bf 【参考】 ブックマーク サイト名 関連度 備考 ピクシブ百科事典 ★★ 関連項目 項目名 関連度 備考 参考/咲-Saki- ★★★★ 登場作品 参考/釘宮理恵 ★★★ キャスト タグ キャラクター 最終更新日時 2013-07-26 冒頭へ
https://w.atwiki.jp/kyoutarouherlame/pages/130.html
637 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/11/17(火) 05 22 51 ID RYZwG2vE 和「――で、お話っていったい何でしょうか?お姉さま」 照「率直に言う。原村和、咲から手を引いてくれ」 和「咲さんから手を?ふふ、お姉さまはいったい何を仰っているのでしょう?」 照「おまえが咲に対して異常なほどの好意を持っていることはわかっているんだ」 和「ふふ、異常、ですか?私はそれを愛と呼びますけどね」 照「愛・・・だと?!」 和「ええ、私の咲さんへの愛です。それが異常だと仰っるのなら、ふふ、お姉さまだって同じでしょう?」 照「何を・・・言っている?」 和「お姉さまは姉でありながら妹の咲さんを愛しておられます・・・よね?」 照「私に妹などいない、咲がいるだけだ!!!」 和「ふふ、ほらごらんなさい、今のお姉さまと私、いったい何が違うのでしょうか?」 照「原村和・・・貴様は危険だ、今ようやくわかったよ。だからさ、いい加減私を」 和「酷い言われようですね、危険なのはお姉さまの」 照「私を姉と呼ぶなぁああああ!!!!」 ガシッ 菫「やめろ、照」 照「菫?!おまえいつ・・・私の邪魔をするなぁああああ!!!」 ドスッ 照「うぐっ!!」 菫「照・・・すまない」 照「す・・・菫ぇ・・・何を」 菫「もういいんだ、おまえの気持ちはよくわかった」 和「ふふ、誰かと思えば・・・いいえ、あなたがここにいるのは当然、ですかね」 菫「ああ、照の敵は私の敵だからな」 和「だったらどうするというのですか?」 菫「原村和、ここで終わりにしょうか」 カチッ キュイイイン 和「な?!何ですかそれは・・・まさか?!」 菫「これは私に埋め込まれた反物質を用いた動力炉、今それを逆回転させた」 和「そんなっ!まさかあなたが?!いいえそれがどういうことかわかっているのですかっ?!」 菫「わかっているさ、臨界を超えると小規模のホールが発生し、私はホールへと消える・・・。原村和、おまえとな」 照「す・・・菫やめろ・・・」 和「ちっ近寄らな・・・いや・・・いやああ!!!」 ガシッ 菫「照、私は・・・ずっとおまえを・・・・・ふっ」 和「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 菫「照、咲と・・・幸せにな・・・」ニコッ キュイイイイイイイイイン 照「菫ぇええええええええ!!!!!!!」 照「ううん・・・」 菫「おい照、こんなところで寝ると風邪ひくぞ」 照「す・・・菫ぇ・・・」 菫「照・・・」 照「咲"ちゃん"・・・だろうが・・・」 菫「ああ、わかってる」 638 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/11/17(火) 07 05 31 ID DPB7lJqO 照も好きだけど菫さまも好き好き 639 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/11/17(火) 07 18 39 ID izqVNFRV ガラッ 照「うお~い、麻雀やんぞー」 菫「分かった。副会長、後は頼む」 菫「いくら部長命令とはいえ議事の最中に呼び出しをかけるのはどうかと思うのだが」 照「しょうがないだろ、人が足りないんだから」 菫「二軍の連中と打てばいい」 照「やだよ、ヘタが移る」 菫「…。せめて悪いとか済まないとかそういう言葉は無いのか」 照「悪い」 菫「誠意が無い。態度で示せ」 ちゅ 照「これでどうだ」 菫「…悪くは…無い」 640 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/11/17(火) 08 11 36 ID DPB7lJqO やべえ~照咲も良いけど照菫も良いな 早く白糸台内部の相関図を明らかにしてくれ><妄想が止まんないよ
https://w.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/488.html
◆hANcxn7nFM 氏(旧◆LJ21nQDqcs 氏) 氏が手がけた作品 話数 タイトル 登場人物 153 切り札(前編)切り札(後編) 平沢唯、秋山澪、琴吹紬、福路美穂子、明智光秀、船井譲次、遠藤勇次、インデックス、ディートハルト・リート 168 麻雀残酷物語(前編)麻雀残酷物語(後編) 伊藤開司、天江衣 181 贈る言葉 伊達政宗、平沢唯、福路美穂子、ヴァン、伊達軍の馬 194 命短し恋せよ乙女(前編)命短し恋せよ乙女(後編) 上条当麻、戦場ヶ原ひたぎ、アーチャー、C.C.、神原駿河、織田信長 208 六爪流(前編)六爪流(中編)六爪流(後編) 伊達政宗、秋山澪、平沢唯、福路美穂子、ヴァン、伊達軍の馬、バーサーカー 224 5人と1人ともう1人(前編)5人と1人ともう1人(後編) C.C.、戦場ヶ原ひたぎ、枢木スザク、レイ・ラングレン、アリー・アル・サーシェス 262 ディートハルト・リートの戸惑い ディートハルト・リート、宮永咲 266 奈落 阿良々木暦、グラハム・エーカー、衛宮士郎、福路美穂子、荒耶宗蓮 277 仮面 デュオ・マックスウェル、両儀式、平沢憂、東横桃子、ルルーシュ・ランペルージ、秋山澪、原村和、言峰綺礼 290 許せないのどっち(前編)許せないのどっち(後編) インデックス、リボンズ・アルマーク、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、宮永咲、原村和、ディートハルト・リート 登場させたキャラ 4回 福路美穂子 3回 平沢唯、秋山澪、ディートハルト・リート 2回 伊達政宗、ヴァン、伊達軍の馬、戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、インデックス、宮永咲、原村和 1回 琴吹紬、明智光秀、船井譲次、伊藤開司、天江衣、上条当麻、アーチャー、神原駿河、織田信長、バーサーカー、枢木スザク、レイ・ラングレン、アリー・アル・サーシェス、遠藤勇次、阿良々木暦、グラハム・エーカー、衛宮士郎、荒耶宗蓮、デュオ・マックスウェル、両儀式、平沢憂、東横桃子、ルルーシュ・ランペルージ、言峰綺礼、リボンズ・アルマーク、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 氏に寄せられた感想 色々な意味で住民人気が高い書き手さん。だが、戦闘描写の上手さはアニロワ3内でも屈指である。キャラクター描写の質が上がれば代表的な書き手となれる。個人的お勧め作品は『切り札』。 -- 名無しさん (2010-03-06 12 12 41) 超展開に色々な意味で定評がある書き手氏。彼が手をかけたキャラクター達がどうなるかは神のみぞ知るといったところ。戦闘パートは冗長な描写がなくなれば一定の評価はできる。最新作を読む限り、改善はしていっているようだが…。むしろリレー外での活躍に期待(?) -- 名無しさん (2010-03-29 07 21 18) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shienki/pages/470.html
798 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/01/31(日) 03 38 41 ID b8EpB6iy 畑石 さんが入室しました かじゅ さんが入室しました ステルスモモ:こんばんわっす! お待ちしてたっすよ、先輩 かじゅ:遅れてすまないな、モモ 畑石:こんばんは この子が例の後輩ちゃん? かじゅ:こ、後輩の手前もあるんだ、あまり変な事は言わないでくれよ ステルスモモ:そうっす。 あんまり先輩をからかわないで欲しいっす、清澄の部長さん 畑石:仲が宜しいことで アナタたちにはウチの和がいつもお世話になっているみたいね ステルスモモ:おっぱいさんはまだわかってないみたいっすよw かじゅ:モモがいつも連るんでいるのがあの原村和だと!? 全然性格が違うじゃないか ステルスモモ:ネットはそういうモンっす 一応、誰が誰かは言わないでおくっすよ 畑石:了解。和にも私の正体は言わないでもらえるんでしょ? ステルスモモ:こんな面白いこと喋る訳がないっすw それより先輩、どうして遅れたっすか? かじゅ:…本当なら風越の部長も参加する予定だったんだがな 畑石:彼女、機械関係が全く駄目らしいのよ。PCが上手く作動しないみたいで… かじゅ:ギリギリまで電話でやり取りしていたのだが、結局不参加になってしまったんだ ステルスモモ:そうだったっすか。 皆はもうそろそろ来る頃だと思うっす かじゅ:…誰が原村和なのか私にはさっぱりだが、彼女とは一度打ってみたかったよ 畑石:強いわよ、あの子。 それに、ネットだと結構えげつない打牌するわよ ステルスモモ:そうっすね、リアルより強引というか意地悪な打ち方する事も多いっすね かじゅ:…ほぅ、それは願ったりだ。 合宿以来、勝負らしい勝負をしてなかったからな 畑石:他の子たちも結構やるし、貴女ならきっと楽しめると思うわ 紫炎姫 さんが入室しました namber さんが入室しました のどっち さんが入室しました 紫炎姫:使えない子ノシ namber:こんばんは 遅れてすいません のどっち:おうゴミ屑ども、のどっち様が来てやったぞ 畑石:あら、グッドタイミングよ貴女たち 紫炎姫:…って何だぁ、この面子は? のどっち:あ、いつものババァじゃねぇか!! 今夜こそ狩ってやんy …あ痛 畑石:…そういう貴女も嫌いじゃないけど、口の利き方が注意した方がいいわよ♪ これは警告 namber:ええっと、かじゅさんは初めましてですよね? かじゅ:>ステルスモモ:…なぁモモ、あのnamberという者が原村和なんだろ? ステルスモモ:>かじゅ:さぁ、どうでしょうっす 幾ら先輩でも教えてあげないっすw ※ ピクドラの設定だと合宿後、各校の3年生組は連絡を取ってるそうなんで使ってみました。
https://w.atwiki.jp/narumiayumu/pages/97.html
そうだ病院に行こう。 そう思い立ったのは、つい今しがた襲われたからである。 次にいつ襲われるか分からないことを考えると、余裕のある内に包帯あたりは是非とも手に入れておきたい。 (とりあえず病院に寄ったら和を探さないとな) 自分にとっての天使・原村和。 彼女を守るイカした自分を妄想しながら、北東へと歩みを進める。 「酷いよ、京ちゃん!」 「私も探さないか、この馬鹿犬!」 幻聴が聞こえてきた。 妄想でくらいナイトと姫ごっこをやらせてくれよ…… 冗談抜きで、お前らだって出会えたら守るからさ。 一度くらい、格好付けて和のこと、守らせろよな。 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ハロー、ハロー。 こんにちは、マイスウィートハニー。 そしてようこそ、極上の絶望さん。 まさかまさか、こんなに早く出会えるとはね。 ――Hello, Ms.No Future. ☆ ★ ☆ ★ ☆ 「男ってのは悲しい生き物だ…… そこに浪漫への扉があると、つい開きたくなってしまう」 例えばそう、白く伸びた足の上、ひらひらと舞うスカートがそうだ。 男たるもの、めくってみたい衝動を持たない者などいない。 勿論通常はめくろうものなら即お縄につき臭いご飯をエブリデイ食べるはめになってしまうのでやらないが…… 「何をしても許される状況ならばっ! 扉を開こうとする者が現れてもおかしくはないっ!」 もし目の前に、完全に眠りこけた美少女がいたとしたら。 5人に1人は布切れの端を持ち上げるのではなかろうか。 重力に逆らって上を向く豊満なバストに手を添える者もいるかもしれない。 或いは、平時恋焦がれ続けたその唇を貪るか。 何にせよ、見ず知らずの女性にいきなり口づけをかました白雪姫の王子様よろしく、男は大抵獣なのだ。 「しかしオレは違うっ! 断じて違うぞぉ! 今だって、ちょっとくらい触りたい衝動があるのに、グッと堪えているんだ!」 こんなことを言ったら、軽蔑されるかもしれない。 いや、いっそ軽蔑してくれ。 所謂ジト目で俺を見てくれ。 また溜め息を吐いてくれ。 「だから、オレを信じてオレと行動しないかっ!? そうしたら、オレがケダモノから守ってやるから!」 出来ればこの手を握ってほしい。 そして微笑み、感謝の気持ちを述べて欲しい。 でも今はもう、そこまでのことは求めない。 拒絶してくれて構わないんだ。 貴方の方がよっぽどケダモノみたいですとか、そう言ってくれて構わない。 だから、だから―― 「なぁ、返事してくれよ、和ぁ……」 原村和は返事をしない。 綺麗だった瞳を恐怖の色に染めたまま、その表情を凍り付かせ、彼女は眠りについている。 白かった顔の半分は、赤い染料をぶちまけられて汚れていた。 その染料が口から出たのか鼻から出たのか、区別なんてつかないほどだ。 その柔らかそうな豊満な胸は、些かも上下していない。 二つの山の間には、引っくり返された精肉工場の屑籠のように肉片が散っている。 細身だった体から溢れる臓物は、和の受けた苦痛を象徴しているようだ。 そう、助けたかった人、原村和は、既に命を落としていた。 勝利に酔い、ヒーロー気取りでいる間に。 本当に助けなくてはならなかった大切な人は、救わなければならなかった人は、舞台を降りてしまっていたのだ。 「咲と一緒に全国行くんじゃなかったのかよっ……」 返事なんて、あるわけがない。 そんなことが分からぬほど、哀れな頭はしていなかった。 しかし同時に、割りきって先に進めるほど賢い頭もしていない。 「……ごめんな、和……」 最初はただの“ごっこ遊び”だった。 普段の日常会話を模したやりとりを、亡骸相手に繰り広げる。 そんな現実逃避から、この会話は始まっていた。 「オレ、何にも出来なくて……」 虚しく実のないごっこ遊び。 そんな遊びにも終わりは来る。 やればやるほど悲しみは積もっていき、感情を爆発させた。 今はもう、原村和が生きてる体で会話することもままならない。 現実逃避すら出来ない。 出来ることは、縋り付いて嘆き叫ぶだけ。 「お前のことっ……オレ……守りたかったのにっ……」 視界が霞む。 鼻から液体が垂れてきてるのを感じ、手の甲で鼻を拭った。 鼻水に濡れた手の甲が、テラテラと輝いている。 「……俺……」 それからどれほど泣いていただろう。 現実逃避で喋りかけていた時間を入れれば、かなりの時間だと思われた。 「守るから……」 その言語に覇気はない。 目の前の原村和の顔色同様、暗く沈んだものだった。 「咲の事、守るから」 宮永咲。 中学時代のクラスメート。 今はそれ以上の意味を持った相手である。 原村和が、誰より大切にしていた人。 片岡優希も友人として大切にしていたが、咲に対するそれは優希に対するそれの数倍はあるように思えた。 少なくとも、須賀京太郎はそう思っている。 「だから……安心してくれよ……」 絶対、守る。 それは確かに誓いだった。 心の底からの誓い。 けれどもそれは、行動には繋がらなかった。 頭では動かねばと分かっていても、すぐに立ち上がることができない。 もう少し、もう少しだけ彼女といたい。 その感情が、彼を縛り付けていた。 「なあ、和……」 話し声は、止まらない。 ☆ ★ ☆ ★ ☆ この少年には未来がある。 守る力も殺す力も無いわけではない。 目の前には、無限に広がる選択肢。 なのに彼は、未だ歩を進めずにいる。 この少女には未来がない。 どう足掻いても、何が起きてももはや何の影響もない。 見捨てても問題など生じないのだ。 けれども彼は、未だに彼女に囚われている。 彼はいつ動くのか。 彼は何か覚醒するキッカケを得られるのか。 それはまだ分からない。 分かっていることは、一点。 彼が特に守ろうとする、少年と少女の共通の親友・宮永咲は、既にこの世にいないということだ。 その真実を知ったとき、彼はどうするのだろうか。 ――Are you ready? Mr.No Future. 【G-09 /1日目 黎明】 【須賀京太郎@咲-Saki-】 【装備】:アリス・イン・ワンダーランド@武装錬金 【所持品】:支給品一式、IMI ミニウージー(32/32) 【状態】:疲労(中)、興奮(大) 【思考・行動】 1:和のためにも皆を守る(特に咲) 2:みんな無事に帰る 3:動かなきゃいけないと分かっていても、なかなか動けない Back 死神様に最期のお願いを 時系列順で読む Next [[]] Back First Fragment 投下順で読む Next いろとりどりのセカイ Back 逆境無頼キョウタロウ Easy Survivor 須賀京太郎 Next [[]]
https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/41.html
井上純(龍門渕高校2年) \ ヽ | / / \ ヽ | / / \ ヽ | / / 混 沌 と し た ロ ワ に じ ゅ ん さ ん が ! ! \ ヽ / / ‐、、 \ / _,,-'' `-、、 南の国から来ますた _,,-'' `-、、. ┌───────────┐. _,,-'' ` │ 10月 October 神無月 .│ !`ヽ │───────────│ .i⌒!───────‐ヽ、 \│ 1 2 3 4 .│ノ ノ ───────‐ \_│ 5 6 7 8 9 .10 .11 .│_/ │ .12 .13 .14 .15 .16 .17 .18 .│ _,,-''. │ .19 .20 .21 .22 .23 .24 .25 .│ `-、、 _,,-''. │ .26 .27 .28 .29 .30 .31 │ `-、、 ,'´\ /└───────────┘ /`i ! \ _,,-┐ \ ;‐、 ;‐、 / r‐-、、 / ! ゙、 `ー--<´ /  ̄| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ̄ ゙、 >-一'′ ,' y' U `ヽ/ / | | | | ヽ ヽ '´ U イ -┼ー ./ ,ヽ、 -┼─`` / | | ヽ、 ∠--、 / -─ / | | ヽ_ .\ _ノ / ヽ_. /. _/ 名前:井上純 愛称:純、ノッポ、男女 死亡時期:京太郎の死後和が罠を仕掛け終えた2時半頃、2番目の死者 殺された相手:原村和 殺した相手:なし ロワ内で深く関わった参加者:原村和 【ロワ内での行動】 オープニングで空気をやった後、本編では第04話にて登場。 早々に食料を食い尽くしながら、学校へと慎重に向かっていく。 乗ってる人間がいるだろうと慎重に移動しすぎた結果時間を食い、しかも慎重だったにも関わらず糸のトラップに足を取られてしまう。 ガラスの割れる音につられて上を見て、ようやく警報装置と悟る。 そこに現れたのは原村和。 隙だらけのこちらを襲って来なかったことと武器を糸しか持っていないこととを合わせて考え、敵対しても問題ないし恐らく乗ってはいないだろうと判断。 ひとまず和と話し合いをするために、糸を潜りぬけ理科室を目指す。 念のため和に銃を向けながら、ちまちま糸を潜る純。 窓が空いてることに気が付いた次の瞬間、喉に痛みを感じた。 矢が生えている――敵襲だ。 しかし敵の姿は見えず、一矢も報いれないまま、純は倒れてしまう。 今際の際、純は糸で固定されたボーガンを視界に捉える。 そうして彼女は、最期に自分を殺した者の正体を掴み、死んでいった。 【追悼コメント】 名前 コメント 戻る