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Maje箱 やど箱 再生インフェルナ 大惨事箱 無名箱 無名箱/エラキス干渉戦争の悲劇 無名箱/エラキス干渉戦争の悲劇/Un teatro olvidado 無名箱/紅茶探訪八十日間世界一周 無名箱3.5 無名箱3.5/ケンプフェルト剛力危機異伝 ↓下書き
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レークニー議会領 [#ua85d33d] 500 150 350 目次 説明 内容 #contents 英語名 Council s territory of Leykney 略称 議会領 国旗 国章 国の標語 (国の標語) 国歌 レークニー、我らは汝と共に 国花 公用語 レイリル語 首都 リョフスウォール 国家元首 アンドルー・シェフィールド議長 通貨 レークニー・ポンド 概要 [#l713041c] 国名:レークニー議会領~ 英名:Council s territory of Leykney~ 地域:セイルナシア~ 国歌:レークニー、我らは汝と共に~ 国花:~ 通貨:レークニー・ポンド~ 公用語:レイリル語~ 首都:リョフスウォール~ 政体:議会統治制~ 元首:立法評議会~ 宗教:玲国国教会(サウスウェル派パロンシュレイヒ教)~ 気候:西岸海洋性気候で冷涼湿潤。年中安定して降水がある。~ 民族:ヴィントランド系先住民の存在やドクトル・ノルトの征服もあったが、現在はレイリル系がほとんど。~ 経済:伝統的には農業国。近代に大玲帝国の結節点の一つとして商工業も発展。~ 農業:牧羊が中心。漁業も行われるが周辺海域は漁場としては豊かではない。~ 工業:レイリル王立海軍の基地がおかれていたため、造船業が発達、その関連産業が存在する。~ 鉱業:近年の調査で周辺海域における天然ガスの賦存が確認され、海上ガス田の開発が始まっている。~ サービス業:~ 軍事:陸軍は古来小規模だが独自のものを持つ。王立海軍の残した海軍を一部引き継ぎ海軍も創設された。~ 文化:独自の文化を持つが、合同王国本国内の地域差を超えるほどの独自性ではない。~ 国名 [#k128574d] レークニー議会領。レイリル王の勅許によりレイリル王の下にある限り内政に関する自治権を与えられて以来の呼称。 歴史 [#j7cedd23] セイルナシアに浮かび、比較的古くからレイリル王の下に属してきたレークニー本島とその周辺の広大な海域における小島嶼群。~ 本島にかつてヴィントランド系が一部逃げ延び、それを追ったレイリル人が小規模な入植地を形成したことからレイリル領としての歴史が始まる。~ その後ドクトル・ノルトが一時的に征服、支配者となるが、レイリル人農民の反抗からレイリル領に戻った。~ その際、レイリル王の勅許の下で独自の議会とその護衛として小規模ながら独自の陸軍連隊が成立し、以後特権的な自由と自治を謳歌。~ そのためにレイリル王に忠実でありつつも合同王国本国そのものへの統合は拒絶し、牧歌的な生活をしつつ長く平穏な歴史を歩む。~ 近代において大玲帝国が興隆すると王立海軍の要港、そして本国と大洋植民地の中継点として繁栄した。~ ロスト・セレナの衝撃の中で合同王国軍が引き上げると、残ったレーカディアン部隊は忠誠の対象として当然のように議会を選び、なし崩し的に軍事権を掌握することになった議会は周辺海域の玲領小島嶼に統合を呼びかけ、結局独立国として成立してしまった。~ しかし、自立したとしてもこの島が担うべき役割は現在でも変わることはあるまい。~ 大洋におけるレイリル流自由主義を守護せずしてこの島の安寧の保障はありえないのである。 政治 [#je3de428] 議会に権限が集中し、内閣が議会を解散する権限を持たないという、区分上は議会統治制の体制を持つ。~ この議会は近代以前に成立した身分制議会的な議会を源流として持つが、今日においては二院制に再編されている。~ なお、上院の立法評議会が「元首」扱いである(個人としての元首の役割を担う人間が必要な場合、現議長であるアンドルー・シェフィールドが務める)。 外交 [#tbd5ffaa] 国名 地域 関係 特記事項 グレートレイリル及びヴィントランド合同王国 Faildirasia 敬意 元宗主国 レコンスガーリャ共和国 Khyber 友好 相互独立保障、交換留学制度 ファン・タンペスティア・カラッサンドル連合王国 Nervil 平常 アオリィカ王国 Khyber 平常 ベロヤード王国 Diltania 平常 ルージェ王国 Saylunasia 平常 ヴューリッツァ共和国 Faildirasia 平常 コルヴナ専制公国 Saylunasia 平常 ヤード・ヴァストールヂア連邦 Diltania 平常 蓬莱人民政府 Nervil 平常 神州大陸の一部とはみていない ピシュアネーゼ王国 Saylunasia 平常 チェメニア共和国 Diltania 平常 九香共和国 Nervil 平常 ランゴ首長国 Nervil 平常 ヴォルージア・ソヴィルナ社会主義共和国 Diltania 平常 ブロンダン共和国 Diltania 平常 カリスト王国 Faildirasia 平常 ネールズハーテ独立国 Khyber 平常 地理 [#t140c528] レークニー(本島) [#sbb59f97] セイルナシアの大陸断片(断片であって大陸そのものではなく、あくまでも島である)。北島と南島の二つに分かれているが、地塊としては一体であり、隔てる海峡部も最狭部は3kmしかない。 北部群島 Northern Isles [#pa94b6a2] 北島の北側に散在する島々。伝統的なレークニー本来の牧羊地域の景観を色濃く残している。 グウィリス Gwylis ~ 北部群島のうち北島に最も近い島。干潮時には北島とつながる。 かつてヴィントランド系が逃げ延びて来た時にレークニーに到達し上陸した場所はここであったらしい。 北島 North Island [#t78acaf2] レークニー植民地の発祥地。 アレスシャー Alethshire ~ 北島の中心都市。 南島 South Island [#r237416b] 首都リョフスウォールが存在する議会領の中核地域。 リョフスウォール Lofzwall ~ ドクトル・ノルトの征服時に彼らが建てた港。 近世までは農業国であったレークニーにおいて特別抜きんでた都市というわけではなかったが、地形に恵まれた良港であったため近代に王立海軍が拠点に選んだことで商工業が発達、最大都市となってレークニーの経済の中心地となり、議会も移転して首都となった。 周辺小島嶼(離島) [#u944bacb] 本島とは別に近世以降にレイリルが入植したセイルナシアの諸島嶼植民地のうち、LSの後にレークニー議会の下に統合されたもの。 エルセリス島 Elselis [#k0347d7d] 良質な白金鉱山で知られ、古くよりプラチナラッシュに沸く中で発展してきた島。 ロスト・セレナで海外との連絡が途絶すると、鉱物資源の加工と輸出への依存、弱体な農業基盤に対する過度の人口集中の中にあったこの島は直ちに飢餓の危機に突入した。 議会領の食糧援助の中で危機は回避されたが、その過程で議会領の構成体として再編されていき、結局現在でもこの構造的問題は解決されないままである。 タレイマス Talaymouth ~ 島の主都。プラチナ・ラッシュ以後急激に発展し、白金族をはじめとする鉱物の加工と取引を中核産業とする。 住民 [#cf61f8f1] ほぼ完全にレイリル人。合同王国のオルタルスとの文化的相違はもちろん存在するものの、合同王国国内に存在する地域差を超えるものではない。~ 特にこの領域の住民をレーカディアン(レークニー人)と呼ぶこともある。 宗教 [#k273fb8c] 信仰の自由は認められているが、大多数はサウスウェル派パロンシュレイヒ教(いわゆる玲国国教会)。若干サルバトーレ教徒も存在する。~ しかしそれが敬虔なものかというとそういうことはなく、宗教行事への出席率は長らく低下の一途をたどっている。
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エラキス干渉戦争の悲劇 外伝 「Un teatro olvidado(A forgotten theatre)」 エラキス干渉戦争とは何だろうか。 その始まりはエラキスの市民革命へのセラフィナイトとクラルヴェルンの干渉だと書かれている。そして、その結末はエラキスの没落による国際秩序の再編、いわゆる「東フォルストレアの安寧」の起点とされるクラルヴェルン・セラフィナイトの協調体制の成立、その分析に使われた「産業革命」という術語の普及と工業化の広まり。そういった説明が教科書にも解説書にも書かれている。 一方で、その経過についてみれば、エラキス王党派騎兵隊を圧倒するセラフィナイト軍に始まり、東部戦線における長い塹壕戦でのクラルヴェルン兵とセラフィナイト兵の消耗について記されているだろう。毒ガスについても大抵は書かれているだろうし、物好きの本では坑道戦について書かれていることもある。 さて、何か忘れていないだろうか? これではクラルヴェルンとセラフィナイトがエラキスを舞台に戦争をしているように見えるし、大抵そのように論じられる。しかしクラルヴェルンとセラフィナイトの両国は一度も法的な交戦状態に入ったことはなかった。最終局面においてクラルヴェルンがセラフィナイトに最後通牒を出しているが、これはむしろ両国間で講和条約を結んで一まとめに外交問題を解決しようとしたと考えるのが妥当というのが通説である(ただし近年研究ではクラルヴェルン参謀部にはそのまま対セラフィナイト戦になだれ込む意思もあった可能性も指摘されている)。 しかし戦争の終結について正しく記すならば、あくまでもこの戦争はエラキス王党派の瓦解によって終わったのだ。エラキス王のフェルキスを介してのクラルヴェルン亡命と、それによるエラキス王党派の自然消滅、そしてエラキス共和派の勝利宣言。それによって戦争は終了したのである。 この結末が正しく理解されないのは、西部戦域―通例、これには東部との対比から来る「戦線」という用語が充当されるが、その性質上不適切であるため、私はあえて戦域と記す―が全く論じられないからだ。 西部戦域が全く論じられないことには理由がある。この時代の歴史を論じる上で最も重要となるのは産業革命であって、産業革命について論じる際にエラキス干渉戦争を用いるとすれば、西部戦域は全く価値を持たないからである。 しかし、エラキスの内戦というこの戦争本来の性質について理解しようとするならば、西部戦域こそがこの戦争における最も重要な局面であるはずである。 この戦争について、セラフィナイト側の軍人の自伝に有名なものが三つある。一つは北部戦線における将軍コールドロン中将のもの。二つ目は南部戦線における将軍エーレンバーグ少将のもの。三つ目は情報局のフラウンホーファー大佐(いずれも階級は当時)のものだ。 コールドロン中将のものはその苦悩に関して切々とつづられている。しかしその端々にクラルヴェルン側の資料を参照できる我々の立場から眺めても実に適切といえる戦況理解が読み取れ、これをどう評価するかによって彼の評価が左右されるところである。 エーレンバーグ少将のものでは戦争に関する記述は基本的に航空機の役割の評価に徹しており、その戦果と将来性について記している。やや過大評価しすぎるきらいはあるが、後の各国空軍に影響を与えた。 フラウンホーファー中佐のものは指揮系統の問題を記している。頑迷なコールドロンと奇抜な着想を好むエーレンバーグの間で統制に苦慮する、という話である。これは巷に広がるコールドロン無能論の原点といえる。 ここで、これから話を進める西部戦域における最も重要な将軍、アレッサンドロ・アンテノーゼ中将は自伝を記していない。それどころか彼は一冊の書籍も記したことはない。無論、軍人であればそういうタイプの人間はよくいる。しかし、教本の類も彼の名によるものはほとんど残されていない。彼はゲリラ作戦に対する掃討戦の戦術の先駆者といえる者の一人として、当時からセラフィナイト参謀本部ではよく知られていたにもかかわらず、である。これは後述するが彼自身が何も書き残してはならないと理解していたからであろうが、研究の上でこれほど困ることはない。 セラフィナイト。星に最も近い、自由なる我が祖国。 そんな我らの国は、いま戦時下にある。 エラキス革命戦争。エラキス人どもは我々とクラルヴェルンの脅威を強調して、エラキス干渉戦争と呼んでいるらしい。 …我らが、脅威か。実に結構なこと。そのとおりだ。少なくとも、私はエラキスへの脅威だ。 この戦争をどう呼ぶにせよ、我らセラフィナイトはエラキス王党派、そしてクラルヴェルン帝国と交戦状態にある。 さて、クラルヴェルンにもエラキスにも、その歴史の中で輝かしい功績を挙げた騎士たちがいる。 しかし、セラフィナイトにそんなものはない。 農民と中産市民の軽歩兵と、富裕市民の重歩兵。 それらが必死に周辺国の圧迫を押しとどめてきたのが、このセラフィナイトの千年の歴史だ。 この百年ほどのエラキス主導の「天秤政策」は、次第にセラフィナイトがクラルヴェルンやエラキスと肩を並べる大国としての地位を確立する上で好ましいことだった。 しかし、それはそこから上に出ようとする者を残りの二者が抑え込む体制。 セラフィナイトが最も弱体な、あくまでも間に合わせの駒の扱いであり続けた限りはこれはセラフィナイトにとって有利であった。 しかし我々が工業化に成功し、実際上の国力も対等となり、一方でエラキスが内乱のうちに入った現在ではそうではない。 そろそろ机をひっくり返すときだ。 騎士の時代に終止符を打とう。 セラフィナイトには長い歴史のある国民軍がいる。 クラルヴェルンにおいても国民軍の形成は順調に進みつつある。 だがエラキスにおける国民軍建設の試みは植民地の統治という困難の中で遅々として進まぬ。 長い歴史を持つエラキス植民地帝国を、過去のものとして永久に葬り去る。それができるのは今をおいてほかにない。 …クラルヴェルンか? 長い歴史の中で、クラルヴェルンとの摩擦は必ず穏やかに解決されてきた。 そのいずれにおいても歴史上一貫した親クラルヴェルン派として隠然と力を振るったのはアンゼロット記念大学の学閥。 …通時代的―つまり死ぬことなく、国家に影響力を及ぼす存在。 つまり、アンゼロット記念大学の中核にいる存在とは、恐らく…いや、それはいい。 そういうことは、SSVDに任せておけばそれでいい。自分自身がSSVDに入ることもできたが、自分はそれをしなかった。 いずれ、手を打たなければならないのだろう。だがそれは今ではない。クラルヴェルンの打倒など考えてはならない。 それを始めるべき時は、天秤が崩れ、もう一度天秤を立て直す機会を与えられた時だ。今はまだ、そのときではない。 今重要なことはたった一つ。 エラキス。五たび我らと剣を交えた、そう、われらの独立への脅威の一つ! …もしもその脅威を永久に排除でき、そしてその役割を自分が担えるのだとすれば…。 たとえわが身が永久に不名誉のうちに沈もうと、忘却のうちに消え去ろうと結構。 西部戦域。そう、戦域だ。ここは現実主義者を僭称するコールドロンや星術マニアのエーレンバーグに任せてはおけない。 こここそが、私のなすべきことをなす舞台なのだ。 「いずれあなたはこの国に害をなすでしょう」 「ほう。抗命事件かな?」 冗談めかして腰の拳銃に手をやる中将。しかしそれを無視して参謀は答える。 「…ですが、いまのこの国にはあなたが必要なのです」 「そうか」 「なんとも……思わないのですか?」 「私の心は最初から決まっている。もしも私がこの国にとって害になるなら、私は喜んでこの首を差し出そう。もしも私の国が私に死を命じるならば、私は喜んで心臓を捧げよう。もしもそれが誤解によるものであれば、私は力の限り誤解を解こうとするだろうが、それでも最期の瞬間にはいかなるときも祖国の命に従ったものとして命を捧げよう。それだけ記憶に留めてくれれば、それでよい」 「お久しぶりです。お元気そうですね、アンテノーゼ中将」 「…久しいな。君は、まだ現役で?」 「私もそろそろ身を引くことを考える歳になってしまいましたね。時に、約束どおり答え合わせを聞きに来ましたよ」 「ああ、答え合わせか…そうだな、引いておいた導火線は大体不発か。あまり、示せなかったな」 「あなたが弱音を吐くとは思いませんでした。結局、はぐらかすのかと」 「これでは弱音だって吐きたくもなるさ。いや、だが一つだけうまくいったものがある」 「何です?」 「エラキスだよ。この国の悪魔も、クラルヴェルンの悪魔も、きれいごとを言いつつ、相手と自分しか見えていないのだねえ。思ったより重いな、これは」 「は…?」 「気づかなかったことにしておいたほうがいいこともたくさんある。この世の中にはね。そして私には理解できなかったものがあるらしい」 「あなたが、理解できないもの……?」 「…愛だよ」 「あの……私は、あなたほど一途に何かを愛した者を他に知らないのですが」 「ほう?」 「この国です」 「そうか。……そうだな。定命の人間の愛のほうが、あれらの愛よりもずっと短く、故に深くなれるのかもしれないな」
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惑星ホープでの大星団ゴズマ率いるGショッカーとの戦闘の後、 スピルバンの家族を乗せてムーンベースを飛び去ったサイバトロンの 星間輸送兵スカイリンクス、同行した地球連邦軍の軍人ギリアム・イエーガー、 エクスカイザー率いるカイザーズは無事バード星へと辿り着き、ベン博士達は 銀河連邦警察の保護下となった。 通常運行によりバード星に辿り着いたが、その間宇宙警察総裁がザンギャック帝国の スパイだったり、コム長官退任後に就任したゴードン長官による事件隠蔽があったものの、 新たに銀河連邦警察長官に就任したソフィ長官による新体制の下、ベン博士達は平和に過ごしていた。 ベン博士「彼らがブレイバーズか...壮観だな」 ギリアム「はい、宇宙各地でGショッカーと戦っているフラッシュマンを はじめとするレジスタンスがブレイバーズの一員となって戦ってくれる 事になりました」 ベン博士「そうか・・・ん?噂をすればあそこにいるのはジン君達だな」 バード星の銀河連邦警察本部には星間評議会と地球連邦政府主導で結成された ブレイバーズに参加しようとする宇宙刑事に、宇宙各地のレジスタンスやサイバトロン軍が 集まっていた。その中にはエルシャンクと共に来たシーマ王女やフラッシュマン達も来ており、 その様子を見に来ていたベン博士とギリアムは、エルシャンクのいる所へとやってくる。 ジン「お久しぶりです。ギリアム少佐、ベン博士」 ギリアム「君達も、変わりがないようで何よりだ」 エルシャンクの所へとギリアム達はジン達と再会の挨拶を交わす。 ベン博士「しかし宇宙各地からこれだけの戦力が集まるとは・・・・。」 ロム「ですが、まだ宇宙にはGショッカーをはじめとして多くの勢力が蔓延り、 宇宙に生きる者達が虐げられています」 ジョウ「ああ、フリーザって野郎が率いる軍隊も、色んな星をぶっ壊し まくってるって話だ」 シーマ「最近では宇宙連合内部でも、地球人を良しとしないタカ派の 勢力が不穏な動きをしているという情報もあります」 ギリアム「...話を聞くに宇宙連合でクーデターが起きるかもしれないな」 ロミナ姫「彼らの為にも私達は今以上に力を合わせなければいけません」 ギリアムやベン博士、エクスカイザー達を交えて現在の宇宙があらゆる勢力 で入り乱れている事をエルシャンクの面々は話し、今まで以上に戦っていく事を 決意した。 ロッド・ドリル「そういえば、ギャバンが見当たらないけど、来ていないのか?」 トリプル・ジム「確か、十文字撃という方がギャバンのコードネームを受け継いだと お聞きしましたが?」 ルー「ええ。宇宙中のヒーローを率いるスペース・スクワッドの隊長ね」 サラ「私たちも、スペース・スクワッドにスカウトされたわ」 惑星ホープで共に戦った宇宙刑事ギャバンこと一乗寺烈がいない事を疑問に思った ロッドドリルは尋ねる。既に宇宙刑事は世代交代が行われ、新たに十文字撃という 地球人の青年がギャバンのコードネームを受け継いでいた。 撃はスペース・スクワッドの隊長でもあり、サラとルーもスペース・スクワッドに スカウトされた事がある。 ???「残念だが、撃は今ある任務に就いていて、この場にはいない」 ???「初代ギャバンでもある一乗寺烈さんも特命刑事の任務でいないわ」 レイナ「あなた達は...?」 舟「俺は烏丸舟。二代目宇宙刑事シャイダーとは俺のことさ!」 タミー「私は舟のパートナーの、タミーよ。よろしく!」 ギャバンについて話をしていると、2人の男女が話しかけてくる。男性の名は 烏丸舟。沢村大からコードネームとコンバットスーツを受け継いだ二代目宇宙刑事シャイダーで、 女性の名は、舟のパートナーである女宇宙刑事のタミーだった。 現れた2人は自己紹介をする。 舟「いやー、君みたいな可愛い子と知り合えて嬉しいなあ♪どう?よかったら連絡先交換しない?」 レイナ「えっえ!?」 タミー「舟ぅうう...」ゴゴゴゴッ ブルー・ジェット「おっと、レイナに手を出すのなら...」 ロッド・ドリル「俺達が黙っちゃいないぜ」 トリプル・ジム「お嬢様には指一本触れさせませんよ!」 ロム「...」(無言の圧力) 舟「冗談、冗談!ちょっと仲良くコミュニケーションを取ろうとしただけだから」 会って早々、舟に口説かれてレイナは困惑する。ナンパをする舟にタミーは嫉妬し、 ブルー・ジェット、ロッド・ドリル、トリプル・ジムの三体のマシンロボもレイナを 守ろうと前に出た。レイナの兄であるロムも無言のまま、舟を睨んでプレッシャーを かける。それらに耐えきれなくなった舟は「冗談だ」と周囲を宥めた。 そんな雰囲気の中、突如としてバード星が攻撃を受ける。 ブン「今の攻撃は!?」 エクスカイザー「あれは!」 突然の攻撃にブンは驚き、エクスカイザーは上空に指をさす。 G1メガトロン「ふはははは、バード星の者達よ!余の名は破壊大帝 メガトロンである!!この星にあるシステムXNを余に献上せよ。 さもなくばこの星を制圧する!!」 攻撃してきたのは、惑星ジャールからギリアムのXNガイストに搭載されている システムXNを狙ってやってきたG1メガトロン率いるデストロン軍団だった。 ベン博士達がムーンベースを発進してから、自分達も出撃したが、ここに 来るまでに他の勢力と偶然にも交戦していた為、大幅に遅れてしまったのだった。 ギリアム「狙いはシステムXNか!」 舟「どこでそんな情報を手に入れたかは知らないが、バード星を攻撃させたり するものか!――焼結!!」 G1メガトロン「余に立ち向かってくるか。ならばデストロン軍団アタァーック!」 ギリアム「我々もすぐに出撃だ!」 ブレイバーズ「応!」 舟はシャイダーに変身し、ブルホークに乗ってデストロン軍団へと向かう。 シャイダーが立ち向かってくる姿を見て、G1メガトロンはデストロン軍団に 攻撃の命令を下し、一方、ブレイバーズの面々もギリアムの号令で各々出撃した。 サウンドブラスター「ユケ、コンドル、ジャガー!」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「...あれが噂に聞くカセットロンか。 私を狙っているようだが、私もシステムXNもお前たちの手には落ちないぞ!」 情報参謀サウンドブラスターは部下のカセットロンを繰り出し、ゲシュペンストMKⅡで 出撃したギリアムを狙って攻撃する。ギリアムも自分とシステムXNを狙っている事を 察して、渡すまいと戦う。 サイクロナス「スウィープス、アタック!」 ブルー・ジェット「デストロンの航空兵士か。ジェット族の戦士として不足なし。 相手をしてやる!」 スカイリンクス「サイバトロン戦士として、我輩もいる事も忘れるな!」 サイクロナス率いる親衛隊「スウィープス」を相手に、ブルー・ジェットは 天空心剣により斬撃を繰り出して応戦し、スカイリンクスも援護に回った。 デバスター「ウォォォ!」 ロッド・ドリル「何てパワーだ!だけど、パワーなら負けないぞ!」 ビルドロン師団の6体が合体した巨人兵デバスターのパワーに、ロッド・ドリルは 負けそうになるが、力を振り絞りぶつかる。 ブリッツウィング「貴様も、3つの姿に変形できるみたいだが、俺の敵じゃないぜ!」 トリプル・ジム「確かに戦車や戦闘機に変形できるあなたの方がお強いでしょうが、 お嬢様を守る為、こちらも負けません!」 スポーツカーとヘリコプターに変形できるトリプルジムはデストロンの トリプルチェンジャーであるブリッツウィングと戦った。 ブレイバーズとデストロン軍団の戦いが激しくなる中、別にバード星を攻撃する者が現れた。 ダイノガイスト率いる宇宙海賊ガイスターである。 ダイノガイスト「久しぶりだな、エクスカイザー!」 エクスカイザー「ダイノガイスト!?黄泉がえっていたのか!」 自ら太陽に飛び込んだダイノガイストが目の前に現れた事にエクスカイザーは驚愕する。 ダイノガイスト「エクスカイザー、俺にシステムXNというお宝を渡してもらおう!」 ウルトラレイカー「ダイノガイストも狙っているのか!?」 エクスカイザー「あのシステムを渡す訳にはいかない。行くぞ、ダイノガイスト!!」 ダイノガイスト「ふふ、そうこなくては面白くもない。ここで決着を着けるぞ。エクスカイザー!」 システムXNを守る為、エクスカイザー達カイザーズはガイスターズと戦い始める。 バード星を舞台にブレイバーズ、デストロン軍団、ガイスターズの三つ巴の 戦いの火蓋が切って落とされた。 エクスカイザーはダイノガイストと戦う為、異次元からトレーラー型支援メカである キングローダーを呼び出す。 エクスカイザー「巨大合体!キングエクスカイザー」 キングローダーを呼び出したエクスカイザーはキングエクスカイザーへと巨大合体する。 キングエクスカイザーとなり、カイザーソードを取り出して、ダイノガイストのダイノブレードと ぶつかる。 ダイノガイスト「...グレートエクスカイザーにはならないのか?」 キングエクスカイザー「...生憎だが、ドラゴンジェットは整備中だ!」 キングエクスカイザーがグレートエクスカイザーになるには、キングローダーと同じ 支援メカであるドラゴンジェットが必要だが、現在整備中であり、呼び出す事が出来ない事を ダイノガイストに教える。 ダイノガイスト「そうか。だが、その姿でこの俺を倒せるとは思っている訳ではあるまい」 キングエクスカイザー「例えそうでも、私は宇宙警察の名において今度こそお前を逮捕する!」 ダイノガイスト「大した自信だ。俺がいない間に、どれほど強くなったのか見せてもらおう!」 キングエクスカイザーはグレートエクスカイザーになれなくても、宇宙警察として目の前の ダイノガイストに立ち向かい、ダイノガイストも、そんなエクスカイザーに本気で相手をする。 キングエクスカイザーとダイノガイストが激突する中、ダイノガイストの部下である ガイスター四将とカイザーズでも戦いが始まった。 ホーン「地球での借りを返してやるぜ!行くぞ、アーマーガイスト」 アーマー「応!」 プテラ「俺達も行くぞ、サンダーガイスト!」 サンダー「オレ、あいつらやっつける!」 ガイスター四将はエネルギーボックスを体に取り付かせると、アーマーガイストと ホーンガイストは「ホーマー」に、プテラガイストとサンダーガイストは「プテダー」へ それぞれ二体合体した。 ウルトラレイカー「もう一度、貴様達を刑務所に送ってやるぜ!」 ゴッドマックス「覚悟しろ、ガイスター!」 既に合体を済ませているウルトラレイカーとゴッドマックスは、ウルトラブレストレーザーや ゴッドスラッガー等を繰り出していく。 サイクロナス「メガトロン様、突然現れたアイツ等をどうしますか?」 G1メガトロン「捨てておけ。今は目の前の連中が先だ」 二代目シャイダー「何処を見ている!ビデオビームガン!」 G1メガトロン「フンッ!小賢しい」 ケンリュウ「ならば、天空真剣・真空竜巻」 この戦いに介入してきたガイスターに対し、サイクロナスはG1メガトロンに指示を 仰ぐと、G1メガトロンは一先ず、ガイスターは放っておいて、ブレイバーズと戦う事を 優先した。シャイダーがビデオビームガンをブルホークから撃つが、G1メガトロンは ビームを回避する。そこへケンリュウとなったロムが頭上から愛刀・剣狼を振り回して 竜巻を発生させて、G1メガトロンを巻き込んだ。 G1メガトロン「ムッ!なかなか面白い攻撃をするではないか」 ケンリュウ「流石はデストロンの破壊大帝...一筋縄ではいかないか」 だが竜巻に巻き込まれても、ビクともしないG1メガトロンに、ケンリュウは 破壊大帝の恐ろしさを感じるのであった。 アストロトレイン「XNガイストは何処だ!メガトロン様に送り届ける!」 レイナ@パワーライザー「私が相手よ!ミサイルを喰らいなさい!」 地上ではレイナとタミーがアストロトレインと、フラッシュマンの5人はスタントロン部隊と 戦っていた。XNガイストを探すアストロトレインに、レイナはパワーライザーを操縦し、 肩部に内蔵されているミサイルを放った。 アストロトレイン「むぅぅ...ミサイルぐらいで俺は止まらんぞ!」 タミー「...だったら、これはどうかしら?」 ミサイルを受けたが、それではビクともしないアストロトレインに、タミーは アストロトレインの眼を狙ってブラスターを撃った。ビームは目に命中する。 アストロトレイン「ぐぅぅ、眼が...!」 タミー「今よッ!」 レイナ@パワーライザー「天空宙心拳・蟷螂拳!」 アストロトレイン「ぐわぁ!」 眼の部分を撃たれて、アストロトレインが怯んだ隙にレイナは拳を連続で叩きつける技 「天空宙心拳・蟷螂拳」を繰り出し、アストロトレインはダウンするのであった。 タミー「やったわね!」 レイナ@パワーライザー「でも、戦いはまだ終わっていないわ。気を引き締めなくっちゃ!」 アストロトレインが倒れたので、タミーはガッツポーズを取るが、レイナは戦いがまだ終わっていないので 気を引き締めるのであった。 レッドフラッシュ「プリズムシューター!」 グリーンフラッシュ「グリーンバル!」 イエローフラッシュ「イエローバル!」 ブルーフラッシュ「プリズムボールッ!ハリケーン・ボルトッッ!!」 ピンクフラッシュ「プリズムブーツッ!ジェットキックッ!」 一方、スタントロン部隊と戦うフラッシュマンの5人は、それぞれ武器や技を 繰り出して攻撃する。 モーターマスター「ええい、ちょこまかと煩わしい!スタントロン部隊、合体だ!」 フラッシュマン5人の攻撃に怯んだ、スタントロン部隊のリーダーである参謀モーターマスターは スタントロン部隊に号令を掛けて、合体兵士メナゾールとなる。 合体したメナゾールはサイクロンガンを撃ち、アイオナイザーソードを振り上げた。 グリーンフラッシュ「合体しやがった!」 レッドフラッシュ「だが、相手をしやすくなった。皆、ローリングバルカンだ!」 フラッシュマンの4人「「「「応ッ!」」」」 合体したメナゾールに対し、フラッシュマンの5人はそれぞれのバルを合体させて、 必殺のローリングバルカンを完成させる。 フラッシュマン一同「ローリングバルカン!」 レッドフラッシュ「イエローフラッシュ!サーチ!!」 イエローフラッシュ「OK!」 レッドフラッシュ「ローリングバルカン!!」 イエローフラッシュがメナゾールをサーチした後、ローリングバルカンから5色の プリズムエネルギーを放ち、メナゾールを吹き飛ばした。 メナゾール「な...何て威力だ...」 ローリングバルカンの威力にメナゾールは倒れるのであった。ブレイバーズ、デストロン軍団、 ガイスターによる3つの陣営が混沌と争う中、ひっそりとその場から離れた者がいる事を 誰も気づかないのであった。 ホーマー、プテダーと戦っていたウルトラレイカー、ゴッドマックスの戦闘は いよいよ終盤となった。 ゴッドマックス「ゴッドソニックバスター!」 ゴッドマックスは胸の鳥の口からリング状の光波を吐き出すと、リングを投げつけて ホーマーとプテダーを拘束する。 ホーマー「う、動けねえ!」 プテダー「ちくしょう!外れねえぞ!」 ウルトラレイカー「今だッ!こいつを喰らえ!」 拘束されて身動きが取れないホーマーとプテダーにウルトラレイカーは胸部から 多数のミサイルを撃ちだす。ミサイルはホーマーとプテダーに命中し、そのダメージで 合体は解除され、元のガイスター四将に戻った。 ホーン「や...野郎!」 アーマー「合体が解けちまった!」 プテラ「くそっ!まずいぞ」 サンダー「うぅぅ...」 ウルトラレイカー「さぁ、お前達、観念しろ!」 ゴッドマックス「大人しく、罪を償え!」 ガイスター4将を捕まえようと、ウルトラレイカーとゴッドマックスは迫る。 だがそこへ、何処からかビームが放たれ、ウルトラレイカーとゴッドマックスは攻撃を受けた。 ウルトラレイカー「うわぁ!」 ゴッドマックス「今の攻撃は誰が...?」 ???「俺達さ!」 ウルトラレイカーとゴッドマックスに攻撃したのは、ファイバードの宿敵である 宇宙皇帝ドライアスの部下、シュラとゾルだった。2人はギアナ高地での最終決戦の時に 乗り込んだメカ獣、ソドムとゴモラに乗って、多数のメカ獣を引き連れて現れた。 プテラ「何で、テメエら此処にいる!」 ゾル@ゴモラ「助けてやったのに、その言い草は何だよ」 シュラ@ソドム「俺達はドライアス様からの命令で来た。もしもガイスターがXNガイストを 奪えないようであれば、手を貸してやれってな」 ホーン「余計なお世話だ!」 シュラとゾルはプテラガイストにバード星に来た理由を聞くと、主であるドライアスの 命令で来た事を話す。ホーンガイストは助けられた事にプライドが傷つけられ、憤慨する。 ダイノガイスト「フン...ドライアスめ、余計な事を」 キングエクスカイザー「暗黒皇帝ドライアス...ファイバード達、宇宙警備隊の宿敵か。 もしやXNガイストの事を教えたのは彼らなのか!」 ダイノガイスト「貴様には関係のない事だ!」 キングエクスカイザーはドライアスの部下が来た事について、XNガイストの情報を ガイスターに教えたのは彼らではないかと、ダイノガイストに問い質すが、 ダイノガイストはドライアスに助けられた事に思う所はあるものの、キングエクスカイザーとの 戦闘を続けた。 ゴッドマックス「...確かに敵は増えたが、まとめてお前達を逮捕する!」 シュラ@ソドム「此処に来たのは俺達だけだと思ったか?」 ウルトラレイカー「何?」 現れたシュラとゾラも逮捕しようと意気込むゴッドマックスに、シュラは意味深な 発言をする。 カイザーズとガイスターの戦闘に、シュラとゾルが介入してきた一方、デストロン軍団と ブレイバーズの戦闘に介入してくる者達が現れた。 ???「久しぶりだねぇ。ロム・ストールのその仲間達!」 ???「ちょっかい掛けに来たでえ!」 ケンリュウ「お前達はディオンドラにデビルサターン6!」 レイナ@パワーダイザー「それにギャンドラーの妖兵コマンダー!あなた達までバード星に来るなんて」 ロッド・ドリル「一体、どういう事だ!?」 デビルサターン6「決まっとるやろ?ワイら、ギャンドラーはドライアスはんと手を組んだんや!」 現れたのは、かつてロム達が戦った宇宙犯罪組織ギャンドラーの女幹部ディオンドラと その手下デビルサターン6、そして配下である妖兵コマンダーのキャスモドンとザリオス、 ファルゴスの軍団を引き連れていた。ギャンドラーはロム達の活躍で壊滅したが、 黄泉還り現象によってギャンドラーは復活。そしてドライアスと同盟を結んだのである。 二代目シャイダー「宇宙犯罪組織ギャンドラー...確かマクーと並ぶ宇宙犯罪組織だったか。 だったら、この宇宙刑事シャイダーが相手をしてやるぜ!」 レッドフラッシュ「貴様達に、XNガイストは渡さないぞ!」 ディオンドラ「それは、どうかしら」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「その口ぶり...まさか!?」 現れたギャンドラーの軍団に二代目シャイダーやレッドフラッシュらフラッシュマンも 身構えるが、ディオンドラの口ぶりに、ギリアムはある事態が頭に浮かんだ。 バード星・銀河連邦警察内部*** 外でドライアスの軍団やギャンドラーの介入が行われていた頃、銀河連邦警察内部にある ギャバンの電子星獣ドルやシャイダーの次元戦闘母艦バビロスの様な巨大マシンを格納している 施設にギャンドラーの妖兵コマンダー、アシュラが潜入していた。 アシュラ「ふふふ...見つけたぞ。これがXNガイストという奴だな?」 アシュラの目的は外でドライアス軍団やギャンドラーがブレイバーズを引き付けている内に 施設に格納されているXNガイストを奪取する事だった。 アシュラ「次元転移装置を積んだ、このロボットを奪取したとなれば俺はコマンダーランキング1位だ!」 ???「ほう...貴様もナンバー1を目指しているのか」 アシュラ「ああ...って誰だ!」 この作戦が成功すれば、ギャンドラーの内部で行われるコマンダーランキングで1位になれると 確信しているアシュラは1位になった自分を想像していると、背後から声を掛けられて振り返ってみると、 そこにいたのは外で戦っている筈のデストロン軍団の親衛隊「スウィープス」の1人、スカージだった。 スカージ?「ナンバー1になりたいという気持ちはよく分かる。だが、ナンバー1になるのは俺様だ!」 アシュラ「うわぁぁぁ!」 スカージから攻撃を受けてアシュラは倒れるのであった。そしてスカージはXNガイストを奪い、 外へと飛び出した。 飛び出したスカージ?は戦闘しているブレイバーズやG1メガトロン達の前に現れる。 スカージ?「手に入れたぞ!XNガイストを」 サイクロナス「スカージ!?いつの間にかいなくなったと思ったら、XNガイストを手に入れるとは よくやった!さぁ、メガトロン様に献上するのだ!」 スカージ?「献上?嫌だね。これこそ俺様の新たなボディに相応しい」 サイクロナス「何を言っているスカージ?メガトロン様に逆らうのか!」 G1メガトロン「待て、サイクロナス。貴様、スカージではないな?何者だ」 XNガイストを手に入れたスカージにサイクロナスはG1メガトロンに差し出す様に命令するが、 スカージは拒絶。スカージの様子がおかしい事に気が付いたG1メガトロンは正体を問い質す。 スカージ?「俺を忘れるとはヒドイなあ、メガトロン様...いや、メガトロン!」 その瞬間、スカージの背後に1体のトランスフォーマーの影が浮かび上がる。 その影こそ、サイクロナスの前任の航空参謀で、破壊大帝の地位を欲してG1メガトロンに 反逆したトランスフォーマー、初代スタースクリームの亡霊だった。 G1メガトロン「やはり、貴様だったか。スタースクリーム」 サイクロナス「スタースクリーム!?まさかスカージに憑りついていたのか」 スタースクリーム「その通り。俺様はそこにいるメガトロンが新破壊大帝ガルバトロンだった時、 殺された。その後、亡霊となり宇宙を彷徨っていた時、このスカージに憑りついて デストロンN0.1の座を得る機会を伺っていた。そこへXNガイストという存在を知り、 俺様の新たなボディにするべく、隙を見て手に入れたという訳だ!」 スタースクリームはスカージに憑りついていて、破壊大帝の地位を虎視眈々と狙っており、 XNガイストを自分のボディにしようとしていた事を話す。 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「待て。システムXNは今、出力がとても不安定なのだ。 ましてや私というコアを欠いた状態でシステムを起動させれば、どんな結果を巻き起こすか 分からないぞ!」 スタースクリーム「上等だ。システムを制御し、俺様はデストロンのニューリーダーに、 いや...全宇宙の支配者になってみせる!」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「イカン!奴を止めろ!」 スタースクリーム「もう遅い!」 スタースクリームはギリアムの警告を無視すると、スカージのスパークから スタースクリームの霊体が飛び出し、XNガイストのボディと一体化した。 XN・スタースクリームの誕生である。なおスカージは気絶したまま、その場で倒れた。 XN・スタースクリーム「ふはははッ!やったぞ!ついに新しいボディだ! さて...早速肩慣らしと行こうか」 XN・スタースクリームは新たなボディを得た事で高笑いし、肩慣らしをしようと システムXNを起動。瞬間的に転移を繰り返し、バード星に来ていたサイバトロンや ブレイバーズ、デストロン軍団やシュラとゾルが連れてきたメカ獣、ギャンドラーの 妖兵コマンダーを無差別に攻撃した。 スカイリンクス「仲間達が...!?」 グリーンフラッシュ「トランスフォーマー達がやられた!」 ブルーフラッシュ「あんな瞬間移動で攻撃されたら、一たまりもないぞ!」 XN・スタースクリームによってサイバトロンの仲間が倒れていく様にスカイリンクスや ショックを受け、グリーンフラッシュやブルーフラッシュも、システムXNの恐ろしさを 目の当たりにして戦慄する。 ゾル@ゴモラ「お、おい。連れてきたメカ獣がやられたぞ!」 シュラ@ソドム「こいつは予想外だ。これ以上巻き込まれない内に撤退だ!」 XN・スタースクリームにメカ獣を全滅させられたゾルとシュラを撤退して、 バード星から去った。 デビルサターン6「こんなの、聞いてまへんで!」 ディオンドラ「ちっ!私らもずらかるよ!」 シュラとゾルも撤退し、これ以上その場に留まる事は分が悪いと感じたディオンドラは 舌打ちしつつデビルサターン6に撤退の命令を下し、ギャンドラーもバード星から去るのであった。 その場に残されたのはブレイバーズとデストロン軍団、ガイスターだけとなった。 XN・スタースクリーム「すばらしい!この力されあれば、俺様は無敵だ!」 G1メガトロン「スタースクリーム...この愚か者めが!デストロン軍団、 目標をスタースクリームに変更。奴を倒せ!」 XN・スタースクリームの所業に業を煮やしたG1メガトロンはデストロン軍団に スタースクリームを攻撃するよう、命令を下す。 ダイノガイスト「エクスカイザー...今回は貴様との勝負は預ける。このダイノガイストを 虚仮にした奴に罰を与えねばならん」 キングエクスカイザー「ならば、ダイノガイスト。ここは協力して...」 ダイノガイスト「貴様と手を取り合うつもりはない。戦うのなら、勝手にしろ。 俺も勝手にやらせてもらう」 ダイノガイストもXN・スタースクリームに腹を立て、キングエクスカイザーとの 決着を諦めてXN・スタースクリームと戦う事を決めた。キングエクスカイザーは 共闘を求めるが、ダイノガイストは共闘する気は無く、単身XN・スタースクリームへ 立ち向かった。 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「...こうなっては仕方がない。これ以上悪用されない内に システムXNは、破壊する!」 ギリアムはシステムXNの悪用を防ぐべく、破壊する事を決め、ブレイバーズも XN・スタースクリームに立ち向かうのであった。 最初にXN・スタースクリームに仕掛けたのはG1メガトロン率いるデストロン軍団だった。 XN・スタースクリーム「メガトロン...ようやく貴様を破壊大帝の地位から引きずり落とす事が出来る」 G1メガトロン「スタースクリーム...本当に貴様は愚かな奴だ。死んでもなお、己の所業が無駄な事である事を 学ばんとはな」 XN・スタースクリーム「減らず口を!デストロン軍団よ!俺に従うのであれば相応しい地位を用意してやるぞ!」 サウンドブラスター「ダマレ。ワレワレガシタガウノハ、メガトロンサマ、オヒトリノミダ!」 サイクロナス「誰が貴様に従うものか!」 XN・スタースクリーム「チッ!ならば、メガトロン共、あの世へ行け!」 XN・スタースクリームはシステムXNを起動させて、近くの小惑星を転移させて、隕石の雨を 降らせて攻撃した。その攻撃はブレイバーズやガイスターにも及ぼした。 ピンクフラッシュ「隕石が降ってきた!」 レッドフラッシュ「これが、システムXNの力か...」 二代目シャイダー「こんなんじゃ、バード星がもたねえぜ!」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「早く奴を止めねば...」 ケンリュウ「ならば、行くぞ。パイル・フォーメイション!」 隕石の雨に皆が怯む中、ケンリュウはバイカンフーを呼び出して合身した。 バイカンフーはすかさず、パンチやキックを繰り出して、落ちてくる隕石を破壊していく。 レイナ@パワーダイザー「流石、兄さん!」 ロッド・ドリル「助かったぜ、ロム!」 ブルー・ジェット「今の内に攻撃だ。ロム」 バイカンフー「ああ、合わせてくれ。ジェット!」 隕石を蹴散らした後、バイカンフーとブルー・ジェットはXN・スタースクリームの前後に回ると 2人は天空真剣の抜刀術である鎌鼬を仕掛ける。 バイカンフー「天空真剣奥義・重ね鎌鼬!」 ブルー・ジェット「斬り捨て御免!」 XN・スタースクリーム「ぐぅぅぅ...なかなかやるじゃないか。だが、まだまだ負けんぞ!」 2つの鎌鼬を前後から斬りつけられ、XN・スタースクリームはダメージを負うが、 致命傷にはならず、反撃してバイカンフーとブルー・ジェットを殴りつける。 レッドフラッシュ「ロム達を援護だ!」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「グラビトン・ランチャー、シュート!」 XN・スタースクリーム「チッ!鬱陶しい奴らだ」 反撃したXN・スタースクリームに、フラッシュマンやギリアムはプリズムシューターや グラビトン・ランチャーで応戦した。 ホーン「あいつ等に獲物を横取りされてたまるか。ショルダーブレイカー!」 アーマー「ヒートスパイク!」 プテラ「プテラウィング!」 サンダー「サンダーホーン!」 XN・スタースクリーム「...小癪な!」 ブレイバーズから攻撃を受けるXN・スタースクリームにガイスター4将もそれぞれの 必殺技を畳み掛けてきた。衝撃波や高熱、強風に電撃と受け続けて、XN・スタースクリームの ダメージは蓄積されていく。 ウルトラレイカー「ガイスターに負けてなるものか!」 ゴッドマックス「ゴッドバードアタック!」 ガイスター4将に負けじとウルトラレイカー、ゴッドマックスも攻撃。ゴッドマックスは 必殺技の「ゴッドバードアタック」で突撃した。 XN・スタースクリーム「うぅ...」 キングエクスカイザー「攻撃はまだ終わりではないぞ。サンダーフラッシュ!」 ダイノガイスト「終わりだ。ダークサンダーストーム!」 XN・スタースクリーム「うわぁぁぁぁあぁ!」 これまでの攻撃で瀕死の状態となったXN・スタースクリームにトドメの一撃として、 キングエクスカイザーは必殺の「サンダーフラッシュ」で背後を斬りつけ、 ダイノガイストは正面から「ダークサンダーストーム」で黒い雷を放つ。 強力な2つの必殺技を受けて、ついにXN・スタースクリームは地に伏せた。 トリプル・ジム「やりました!スタースクリームを倒しました」 XN・スタースクリーム「お...俺は...無敵のボディを手に入れたんだ! な、なのに、何で俺が負けるんだ!?」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「それは、貴様がシステムXNを使いこなせていないからだ」 XN・スタースクリーム「...せ、せっかく黄泉還ったんだ。こんな所で終わってたまるか!」 倒れたXN・スタースクリームだが、それでも立ち上がり、最後の悪あがきと云わんばかりに システムXNの力を最大限の発揮させると、バード星に先程の隕石の雨とは比べものにならない程の 巨大な隕石を出現させた。このままでは確実にバード星は大ダメージを受ける事になる。 ゲーター「あ、あんな隕石、どないしたらええんや...(汗」 XN・スタースクリーム「ハハハハッ!全員、この星と共に滅びろ!」 隕石の出現にスターコンドルのブリッジにいるゲーターは大いに慌てる。XN・スタースクリームは 隕石を出現させた後、ボロボロのボディとなっていたが、巻き込まれないように上空へと逃げ出した。 レッドフラッシュ「ギリアム少佐。ここは我々に任せて、スタースクリームを追ってくれ」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「しかし...」 キングエクスカイザー「システムXNの事は君が決着を着けるんだ」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「分かった。後は頼む」 シーマ王女「スターコンドルで追跡します。少佐は乗って下さい!」 ゲーター「全速力で追いかけまっせ!」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「了解した。これより、スターコンドルに乗艦する」 レッドフラッシュやキングエクスカイザーから逃亡したXN・スタースクリームの追跡を 任されたギリアムは、最初は戸惑うものの、システムXNと決着を着ける為にも追跡をする事を決め、 追いかけるべくスターコンドルに乗艦。ギリアムの乗ったゲシュペンストMKⅡが乗った事を 確認すると、スターコンドルはすぐさま飛び去った。 レッドフラッシュ「俺達は一人でも多くの人々を避難させるんだ」 フラッシュマン4人「「「「応!」」」」 タミー「私たちも避難活動を手伝うわ!」 レイナ@パワーダイザー「任せて。行くわよ、ジム」 トリプル・ジム「はい。お嬢様」 スターコンドルが飛び去り、フラッシュマンやタミー、レイナ、トリプル・ジムは 隕石の脅威からバード星に住む人々を救おうと避難活動を始める。 サウンドブラスター「イカガサレマスカ?メガトロンサマ」 G1メガトロン「この星がどうなろうと余の知った事ではないが、このまま奴の 思い通りになるのは癪だ。これよりデストロン軍団は隕石の破壊を行うのだ!」 サイクロナス「ハイル・メガトロン!」 G1メガトロンはバード星がどうなろうと関係なかったが、XN・スタースクリームの 思い通りになるのが気に食わなかったので隕石の破壊を優先する事に決めた。 ダイノガイスト「...」 キングエクスカイザー「ダイノガイスト、今は一人でも多くの協力が必要なんだ。 手を貸してくれ」 ホーン「何だとッ!?」 プテラ「ダイノガイスト様、エクスカイザーの言う事なんざ無視して早くこの場を逃げましょう!」 アーマー「このままじゃ、隕石に潰されちゃいますよ!」 隕石を破壊する為に、エクスカイザーはダイノガイストに協力を要請した。ガイスター4将は この場から撤退する事をダイノガイストに提案する。 ダイノガイスト「...確かにこのままでは、この星と運命を共にする。逃げ出すのが良いのだろうな。 だが、そこにいるデストロンの破壊大帝同様、あのトランスフォーマーの思い通りにいくのは 我慢ならん。それに貴様との勝負を預けたままだしな」 キングエクスカイザー「ならば...」 ダイノガイスト「お前達、あの隕石を破壊するぞ!」 ガイスター4将「「「「えぇ~~!?」」」」 ダイノガイスト「俺に文句があるのか?」 プテラ「い、いえ。文句なんかありません!」 ホーン「おいお前ら、死ぬ気で破壊するぞ!」 アーマー「応!」 サンダー「オ、オレぶっ壊す!」 ダイノガイストは少し思案した後、エクスカイザーの協力要請を受け入れ、ガイスター4将に 隕石の破壊を命じる。ダイノガイストからの命令に、ガイスター4将は驚くが、ダイノガイストから 睨まれると、すぐに命令を実行しようと迫る隕石に向かった。 キングエクスカイザー「各々、強力な攻撃で隕石を砕く。そして砕けた破片は可能な限り破壊し、 少しでも地上への被害を食い止めるんだ」 二代目シャイダー「了解、それじゃバビロス!」 キングエクスカイザーから作戦の内容を伝えられ、シャイダーは隕石を破壊するべく、 次元戦闘母艦バビロスを呼び出す。呼び出されたバビロスは必殺ガン形態のシューティング フォーメーションとなった。 G1メガトロン「あの艦は銃に変形するのか。ならばサイクロナス、余の引き金を引くことを許す!」 サイクロナス「ハッ!」 バビロスがシューティングフォーメーションとなったのを見て、G1メガトロンもワルサーP38に変形し、 サイクロナスは、その持ち手を命じられた。 キングエクスカイザー「では、行くぞ。ギャザウェイビーム!」 ダイノガイスト「ダイノホーンブレイカー!」 二代目シャイダー「ビッグ・マグナム!」 G1メガトロン「引けぇい!」 ズギューン!バギューン!ダダダダダッ! キングエクスカイザーの号令で各機は一斉に攻撃を開始。隕石は見事砕けると、 砕けた破片は、バイカンフー達マシンロボやデストロン軍団、ガイスター4将が破壊していった。 その結果、どうにかバード星が壊滅されるのは阻止されるのであった。 バード星・上空*** ブレイバーズ、デストロン軍団、ガイスターによって隕石の衝突を防いだその頃。 遥か上空へとXN・スタースクリームは満身創痍の状態ながら逃げ延びた。 XN・スタースクリーム「くぅ...早くこの星を脱出してボディを修復しなければ...」 ???「そこまでだッ!」 XN・スタースクリーム「―!」 しかし、XN・スタースクリームの前にスターコンドルが現れ、ギリアムの乗ったゲシュペンストMKⅡが出撃する。 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「観念しろ。システムXNを引き渡すのであれば、命までは取らない」 XN・スタースクリーム「チィッ!追いついてきやがったか。せっかく手に入れた力を手放せるものか!」 G1メガトロン「何処へ行く!スタースクリーム」 ギリアムから逃れようとXN・スタースクリームは反対方向へ逃げ出そうとするが、 G1メガトロン率いるデストロン軍団が追いつき、進路を防いだ。 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「システムXNを破壊する」 G1メガトロン「貴様はここで終わりだ。喰らえッ!」 XN・スタースクリーム「メガトロォォォン!」 追い詰められたXN・スタースクリームはG1メガトロンに向けてミサイルランチャーを 撃とうとするが、それよりも速くゲシュペンストMKⅡはグラビトン・ランチャーを、 G1メガトロンは右腕の融合カノン砲を同時に放った。ボディとなったXNガイストには 自己修復機能が備わっているが、先程の戦闘でのダメージにより修復は追いつかず、 さらに2つの強力な攻撃により、ついにダメージが限界となり爆発した。 だが、突然謎の戦闘機が出現し、ロボットの姿に変わると爆発で崩れ落ちる XN・スタースクリームの上半身であり、システムXNのコア部分を回収した。 シーマ王女「なんだあのロボットは!?」 ゲーター「レーダーに引っかからず、突然現れたで!?」 スターコンドルのブリッジにいるシーマ王女もゲーターも謎のロボットの登場に 困惑する。 G1メガトロン「貴様、トランスフォーマーか?スタースクリームをどうするつもりだ」 ???「答えるつもりはない。だが、こいつは回収させてもらう」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「その上半身はシステムXNのコア部分だ。奪わせはしない!」 ???「そうはいかない。フォースチップ・イグニッション!」 G1メガトロンやギリアムは謎のトランスフォーマーが何者なのか問い質すが、謎のトランスフォーマーは 質問に答える気は無く、トランスフォーマーの力を引き出すフォースチップを左腕の盾に挿入すると、 「ブラインドアロー」という弓へと展開させ、周囲を攻撃する。 その隙を突いて、謎のトランスフォーマーは何処かへとワープして、その場から消えていた。 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「ワープして逃げたか。奴は何処に...?」 G1メガトロン「ムゥ...スタースクリームも消え、目的のシステムXNが手に入る事が 出来なくなった今、この星に用は無い。デストロン軍団、撤退だ!」 謎のトランスフォーマーとXN・スタースクリームがいなくなり、これ以上バード星にいる 理由が無くなったG1メガトロンはデストロン軍団に命令を下し、バード星から撤退した。 ゲーター「デストロンが皆、逃げはったけどよろしかったんでっか?」 シーマ「仕方がありません。戦闘の続きで、こちらにも損害が出ています。 他のブレイバーズの皆さんと合流しましょう」 ギリアム@ゲシュペンストMKⅡ「システムXNが奪われてしまった...取り戻さなければ」 デストロン軍団が撤退するが、現状追うのを断念し、シーマ王女達は他のブレイバーズと 合流する事を決める。ギリアムはシステムXNを奪われ、早く取り戻さなければと心に誓うのであった。 銀河連邦警察本部・長官室*** 合流したギリアム達はソフィ長官らに事の顛末を報告した。長官室にはベン博士、舟、 シーマ王女など主だったメンバー、長官室には入れないのでモニター越しでエクスカイザーが 参加している。なお隕石の衝突を防いだ後、ガイスター達もいつの間にか消えていた。 ベン博士「システムXNが奪われてしまうとは...。奪ったというトランスフォーマーは デストロンではないのか?」 ギリアム「いえ。どうやらデストロンとも敵対しているようでした」 ソフィ長官「ギリアム少佐の報告を聞いて、サイバトロン軍に問い合わせた所、該当する トランスフォーマーがいたわ」 ギリアムから報告を受けたソフィ長官はモニターを操作して、1体のトランスフォーマーの 画像をギリアム達に見せた。 ソフィ長官「このトランスフォーマーの名はノイズメイズ。セイバートロン星がグランドブラックホールに 飲み込まれようとした事件の時に、暗躍していた別次元にある惑星プラネットXのトランスフォーマーよ」 ソフィ長官はモニターに映っていたトランスフォーマー・ノイズメイズの説明をする。 シーマ「確かに、このトランスフォーマーだったわ」 ソフィ長官「そして恐らく、ノイズメイズにスタースクリームを回収する様命じたのは こいつよ」 ソフィ長官は更にモニターを操作すると、画面に現れたのはスタースクリームそっくりの トランスフォーマーだった。 舟「こいつはスタースクリームじゃないか。最初からノイズメイズに回収する様に指示を出していたのか?」 ソフィ長官「いえ。システムXNと一体化していたスタースクリームとは別の...グランドブラックホールの 事件で、デストロンのマスターガルバトロンに反旗を翻したスーパースタースクリームよ」 ジン「どういう事ですか?」 ソフィ長官の説明に、ジンは疑問を挟む。ノイズメイズにシステムXNの回収を指示したのは グランドブラックホールの事件の時にデストロンの真破壊大帝マスターガルバトロンを裏切った スーパースタースクリームというXN・スタースクリームとは別のトランスフォーマーである事を説明する。 舟「トランスフォーマーっていうのは、同じ名前の奴が多すぎてややこしいな」 スタースクリームの様に同じ名前のトランスフォーマーが数多くいる事に、舟は 頭を痛めるようなポーズをする。 ベン博士「とにかく、システムXNの行方は掴めているのかね?」 ソフィ長官「現在、2名のサイバトロン軍がスーパースタースクリームを追っている任務を 遂行中よ。彼らに詳細を伝えて任せるしかないわね」 ギリアム「そうですか...」 ベン博士がシステムXNの行方についてソフィ長官を訪ねると、現在スーパースタースクリームは サイバトロンの2名の兵士が行方を追っている事を話す。話を聞いて、ギリアムは少しばかり 気を落とす。 ジン「気を落とさないで下さい。ギリアム少佐」 舟「見つけて、今度こそ決着をつければいいだけですよ」 ギリアム「...そうだな。すまない、おかげで元気づけられたよ」 気を落としたギリアムにジンや舟が励まし、ギリアムは元気づけられた。 シーマ「そしてメガトロン率いるデストロンやガイスターもバード星から撤退しましたが、 その後の彼らの行方は?」 ソフィ長官「デストロンに関してはサイバトロンが行方を追っています。ガイスターに ついてはエクスカイザーから話があります」 撤退したデストロンやガイスターについてシーマ王女が質問すると、デストロンは サイバトロンが追っている事を話、ガイスターについてはエクスカイザーに話を振った。 エクスカイザー「ダイノガイスト達、ガイスターは地球へ向かっています」 ギリアム「地球へ...!」 通信越しでエクスカイザーはギリアム達にガイスターが地球へ向かっている事を話す。 何故、地球へ向かっているのかが分かったかというと、話は隕石を止めた直後に遡る。 回想*** 隕石の衝突を止め、ブレイバーズ達は束の間に喜びを感じる中、メガトロン達デストロン軍団は すぐさまXN・スタースクリームを追って空へと飛んだ。そしてダイノガイスト達ガイスターも バード星から撤退しようとしていた。 キングエクスカイザー「ダイノガイスト...!」 ダイノガイスト「エクスカイザー...俺達は地球へ向かう」 キングエクスカイザー「何だとッ!?」 ダイノガイスト「この星に来るまでに耳にしたが、地球には時空クレバスを制御する装置が 開発しているそうだな」 キングエクスカイザー「―!」 ダイノガイストはキングエクスカイザーに地球へ向かう事を宣言する。バード星に来るまでの間、 ダイノガイストは地球で時空クレバス制御装置ディオドスシステムの開発が行われている事を噂で耳にし、 システムXNが現状、手に入らないと分かった今、ディオドスシステムを狙いに定めたのであった。 ダイノガイスト「あの星こそ、俺たちの決着に相応しい場所だ。今度は万全の状態で 俺に掛かってくるが良い。さらばだ!」 キングエクスカイザー「待て、ダイノガイスト!う...」 空へ飛び立つダイノガイストとガイスター4将を追おうとするが、やはりダイノガイストとの 戦闘は、キングエクスカイザーには負担が大きく、あちこちから火花が発生し、膝をついて 倒れてしまう。そしてガイスターは空へと消えていった。 回想終了*** エクスカイザー「...詳細は以上です」 ギリアム「地球のディオドスシステムが知られてしまうとは...」 ソフィ長官「ギリアム少佐はそろそろ地球へ帰還するので、その際、エクスカイザー達 カイザーズはガイスターを追って地球へと向かって欲しいのです」 エクスカイザーからの報告を聞き終えると、ソフィ長官はギリアムの地球への帰還に同行する形で カイザーズに地球へ向かう任務を与える。 ギリアム「了解しました。地球へ帰還した際にはガイスターについてもブレイバーズに報告します」 エクスカイザー「ギリアム少佐。よろしくお願いします」 舟「俺も任務で地球へ行く事になるかもしれないが、その時はよろしく頼むぜ」 ジン「地球の事はよろしくお願いします。出来れば俺達フラッシュマンも地球へ行きたいのですが、 この広い宇宙、GショッカーやETFによって支配されている星は、まだまだ数多くあるので これからも彼らの為に戦います」 ベン博士「地球にはスピルバン達が今も戦っている。こちらは元気でやっていると伝えてくれ」 ギリアム「了解した。君たちも宇宙の方を頼む」 舟やジンから地球の事を託され、ベン博士からスピルバン達へのメッセージを頼まれた ギリアムはエクスカイザーらカイザーズと共に地球へ向かうのであった。 外宇宙・とある惑星*** ギリアムとカイザーズが地球へ向かった頃。とある無人の惑星にバード星からワープしてきた ノイズメイズと上半身だけとなったXN・スタースクリームが現れた。 XN・スタースクリーム「...こ、ここは?」 ノイズメイズ「我々のアジトだ。ここにあんたを連れてこいと言った御方が待っている」 XN・スタースクリーム「だ、誰だ?」 ???「私だ」 ノイズメイズとXN・スタースクリームの前に現れたのは、とても巨大なトランスフォーマーだった。 スーパースタースクリームである。その傍らにはノイズメイズと同じプラネットXのトランスフォーマーである情報参謀サウンドウェーブが控えていた。 スーパースタースクリーム「私の名はスーパースタースクリーム。初代メガトロンの片腕だった 初代スタースクリームのあなたに会えて光栄だ」 XN・スタースクリーム「俺と同じスタースクリームか...。助けてもらったのは ありがたいが、何が目的だ」 スーパースタースクリーム「同じスタースクリームの名を冠する者なら分かるだろう? 全宇宙を支配下に置いて君臨する事。その為にはそのシステムXNが必要だ」 スーパースタースクリームは傷ついたXN・スタースクリームに近づくと、 敬意を払うかのように話し、助けた目的を告げる。 スーパースタースクリーム「そのボロボロのボディでは、何も出来はしない。あなたには 俺が必要な筈だ」 XN・スタースクリーム「...そうだな。まずはボディを修復しなけらばならない。 その為、貴様の厄介になろう。」 スーパースタースクリーム「ああ。そしてボディが完全に修復された時には、共に栄光を掴もう」 XN・スタースクリーム「応。(待っていろ、メガトロン。必ず貴様を破壊大帝から引きずり落としてやる)」 スーパースタースクリーム「(システムXN...私の野望の為に役だってもらうぞ)」 ここに2人のスタースクリームの間に同盟が結ばれた。システムXNが彼らの手に落ちた中、 果たして、この先の戦いはどうなるのか。まだ誰も知らない...。 ○ギリアム→ゲシュペンストMk-2に乗って、デストロンやガイスターと戦う。戦闘後、地球へ帰還する。 ○ベン博士→バード星に集まったブレイバーズを出迎える。 ○二代目シャイダー→G1メガトロンと戦闘する。バビロスで隕石を破壊する。 ○タミー→アストロトレインと戦闘する。 ○ソフィ長官→カイザーズに地球へ行く任務を命じる。 ○レッドフラッシュ→スタントロン部隊と戦闘し、合体したメナゾールをローリングバルカンで倒す。 ○グリーンフラッシュ→スタントロン部隊と戦闘し、合体したメナゾールをローリングバルカンで倒す。 ○ブルーフラッシュ→スタントロン部隊と戦闘し、合体したメナゾールをローリングバルカンで倒す。 ○イエローフラッシュ→スタントロン部隊と戦闘し、合体したメナゾールをローリングバルカンで倒す。 ○ピンクフラッシュ→スタントロン部隊と戦闘し、合体したメナゾールをローリングバルカンで倒す。 ○シーマ王女→スターコンドルでXN・スタースクリームを追跡する。 ○ゲーター→スターコンドルでXN・スタースクリームを追跡する。 ○ロム→G1メガトロンと戦闘する。 ○レイナ→アストロトレインと戦闘する。 ○ブルー・ジェット→サイクロナス率いるスウィープスやXN・スタースクリームと戦闘する。 ○ロッド・ドリル→デバスターと戦闘する。 ○トリプル・ジム→ブリッツウィングと戦闘する。 ○スカイリンクス→サイクロナス率いるスウィープスと戦闘する。 ○エクスカイザー→キングエクスカイザーとなり、ダイノガイストと戦闘する。戦闘後、地球へ向かう。 ○レイカーブラザーズ→ウルトラレイカーに合体し、ガイスターと戦闘する。戦闘後、地球へ向かう。 ○マックスチーム→ゴッドマックスに合体し、ガイスターと戦闘する。戦闘後、地球へ向かう。 ○ロミナ姫→ブレイバーズとしてバード星に訪れる。 ○ジョウ→ブレイバーズとしてバード星に訪れる。 ●G1メガトロン→二代目シャイダーやロムと戦闘する。隕石を破壊した他、XN・スタースクリームを攻撃する。 ●サウンドブラスター→部下のカセットロンに命令を下して、ゲシュペンストMKⅡと戦闘する。 ●コンドル、ジャガー→ゲシュペンストMKⅡと戦闘する。 ●サイクロナス→ブルー・ジェットと戦争する。 ●スカージ→スタースクリームの亡霊に憑りつかれていた。スタースクリームが離れた後、気を失う。 ●スタントロン軍団→メナゾールに合体し、フラッシュマンと戦闘するが敗北する。 ●ビルドロン師団→デバスターに合体し、ロッド・ドリルと戦闘する。 ●アストロトレイン→レイナやタミーと戦闘する。 ●ブリッツウィング→トリプル・ジムと戦闘する。 ●初代スタースクリーム→スカージに憑りついていたが、XNガイストをボディにして XN・スタースクリームとなる。ブレイバーズとの戦闘で満身創痍の状態となるが、 ノイズメイズに助けられ、スーパースタースクリームと手を結ぶ。 ●スーパースタースクリーム→ノイズメイズに命じてXN・スタースクリームを助け、手を結ぶ。 ●ノイズメイズ→XN・スタースクリームを助ける。 ●サウンドウェーブ→スーパースタースクリームの傍に控える。 ●ダイノガイスト→キングエクスカイザーと戦闘する。XN・スタースクリームと戦闘したり 隕石を破壊する。戦闘後、地球へ逃亡する。 ●ガイスター4将→ウルトラレイカーやゴッドマックスと戦闘する。ダイノガイストに命じられ隕石を破壊し、地球へ逃亡する。 ●シュラ→ドライアスの命でガイスターを助けるが、メカ獣が全滅したので撤退する。 ●ゾル→ドライアスの命でガイスターを助けるが、メカ獣が全滅したので撤退する。 ●ディオンドラ→妖兵コマンダーを引き連れ、システムXNを狙うが撤退する。 ●デビルサターン6→妖兵コマンダーを引き連れ、システムXNを狙うが撤退する。 ●アシュラ→XNガイストを狙って、銀河連邦警察本部に潜入するが、初代スタースクリームの攻撃を受ける。 ●キャスモドン→軍団で現れるが、XNスタースクリームに倒される。 ●ザリオス→軍団で現れるが、XNスタースクリームに倒される。 ●ファルゴス→軍団で現れるが、XN・スタースクリームに倒される。 【今回の新規登場】 ○ギリアム・イェーガー少佐/アポロン/ヘリオス(バンプレストオリジナル) 地球連邦軍情報部所属の軍人。冷静沈着で義理堅い性格だが、感情的に熱くなり易く意外にノリが良い。 実はライダー大陸・ウルトラ大陸・ガンダム大陸が存在する惑星エルピスの住人で、予知能力があるため暗雲に包まれた世界の未来を憂いテロリスト組織を一つにまとめあげ、『アポロン総統』を名乗って ヒーロー達と戦った。その性急過ぎるやり方が間違っていることを自覚しながらも他の手段を探れず苦しんでいた。 最後の戦いで禁断の機動兵器XNガイストは大破し、ヘリオス要塞と運命を共にしたがコアである次元転移装置システムXNで平行世界に飛ばされてしまう。元いた世界で犯した罪を償うべく、様々な世界を彷徨う運命を背負った男。 帰るためにテスラ・ライヒ研究所でシステムXNを修復したが、シャドウミラーに目を付けられ隊長ヴィンデル・マウザーの乗機ツヴァイザーゲインに組み込まれてしまい、悪用を防ぐため、二度と帰れないことを覚悟して自らの手でシステムXNを破壊したが………。 愛機はゲシュペンストとその後継機など。等身大の敵と戦う場合はパーソナル転送システムでパワードスーツとして呼び出し搭乗している。 ○ベン博士/ドクターバイオ(時空戦士スピルバン) クリン星の天才科学者でスピルバンとヘレンの父親。生命工学の宇宙的権威だったゆえにワーラー帝国に連行され、バイオ軍団を率いる帝国の幹部、『ドクターバイオ』に洗脳・改造されてしまう。改造直前に娘ヘレンの姿を見ていたためか、姿は変わってもヘレンにだけは父親としての優しさを保ち続けていた。 反面息子スピルバンへの愛情は切捨てられ、崇拝するワーラーに盾突く不届き者として幾度も命を狙う。遂には自らバイオロイド・バイオに変身して出撃、死闘の末爆炎に消える。 後にとあるアクシデントにより元の姿に戻り、記憶を取り戻した。スピルバン達を助けようとパンドラ生命機械人に決死の覚悟でウィルス菌を注入し、活路を開いて殺された。 スピルバンがパンドラを倒したと同時に彼らは別の次元へ飛ばされ、そこの平和なクリン星に妻アンナ達と無事に生きていた。 ○烏丸舟/二代目シャイダー(宇宙刑事NEXT GENERATION) 銀河連邦警察に所属する宇宙刑事で、沢村大からシャイダーのコードネームを受け継いだ。 新世代の宇宙刑事の中では一番の年長者。捜査中にも関わらずナンパするなど軽い性格だが、 刑事としての能力は実に優秀で、公私ともにパートナーであるタミーと共に数々の事件を解決してきた。 ○タミー(宇宙刑事NEXT GENERATION) 舟の相棒である女宇宙刑事。かなり思い込みが激しい性格で、舟とコンビを組むだけでなく、プライベートでも付き合う仲。 かつて星間戦争で滅びた好戦的な種族ウトゥルッサ星人の生き残り。産まれた時に付けられる 「平和の誓いのブレスレット」をいつも腕に着けている。非常に高い戦闘能力を持っている。 ○ソフィ長官(宇宙刑事NEXT GENERATION) 新任の銀河連邦警察長官。若手時代はギャバンに師事していた。厳格な性格だが、時折茶目っ気に溢れた言動も見せる。密かにスペース・スクワッド結成を計画しており、バンの推薦で撃が単独でデカレンジャー達と接触して協力するよう仕向けて、キャプテンに相応しいかの試験をし、撃をスペース・スクワッドのキャプテンに任命した。 ○ジン/レッドフラッシュ(超新星フラッシュマン) 強い使命感を持つフラッシュマンのリーダー。3歳の時にサー・カウラーらに誘拐されたため少しだけ当時の記憶が残っている。 フラッシュ星系の母星・フラッシュ星に遭難したエイリアンハンター船が不時着したため、フラッシュ星人に育てられ彼らの科学と厳しい修行によって一人前の戦士に成長した。剣術に特に優れており、フラッシュ聖剣で戦う。 ○ダイ/グリーンフラッシュ(超新星フラッシュマン) 乳児の頃エイリアンハンターに誘拐され、フラッシュ星の衛星グリーンスターで育つ。筋力・特に腕力に優れ、拳闘技で戦い、変身前もナックルガードをはめている。プリズムカイザーから繰り出すパンチ系の技で戦う。ぶっきらぼうに思われがちだが、自然を愛し、非常に仲間思いな性格の青年である。 ○ブン/ブルーフラッシュ(超新星フラッシュマン) 乳児の頃エイリアンハンターに誘拐され、フラッシュ星の衛星ブルースターで育つ。過酷な環境で育ったためサバイバリティ能力に優れ、身軽で垂直の壁もスイスイ登ることができる。手裏剣スターダーツと全身を包み込むプリズムボールが武器。 五人の中で一番お子様な性格をしており、また女性にはめっぽう弱い。 ○サラ/イエローフラッシュ(超新星フラッシュマン) 乳児の頃エイリアンハンターに誘拐され、フラッシュ星の衛星イエロースターで育つ。 極寒世界で育ったため寒さに強く、プリズムバトンで吹雪を発生させて戦う。 五人中唯一人、実の両親を見つけることができ、母星に帰れば恋人ミランがいるという、結構幸せ者だったりする。洞察力・分析力に優れた参謀役。 ○ルー/ピンクフラッシュ(超新星フラッシュマン) 乳児の頃エイリアンハンターに誘拐され、フラッシュ星の衛星ピンクスターで育つ。 超重力世界で育ったため地球の重力程度なら何のその、空中散歩も自在である。 それを活かしたプリズムブーツで空中を浮遊するトリッキーな動きで戦う。かなりの食いしん坊だが料理を作るのは苦手である。 ○王女(副官)シーマ(電撃戦隊チェンジマン) 星王バズーに滅ぼされたアマンガ星の王女。大星団ゴズマの戦闘員に組み込まれ、ギルーク司令官の片腕として働いていた。修羅と化した間に声色も男のような声で喋っていたが、 捨て駒にされそうになりゴズマを裏切る決心をする。彼女を思いやるブーバの命を賭した行動により仮死状態とされてから本来の心と姿を取り戻した。以後はチェンジマンたちと 一緒に行動し、最後までゴズマと戦った。宇宙獣士ウーバの母乳で育った過去があるため、人間の女性と変わらない今の姿が本来のものかは不明である。 ○航海士ゲーター(電撃戦隊チェンジマン) ナビ星出身のひょうきんな宇宙人。大星団ゴズマの戦艦ゴズマードで航海士として働いていたが、母星から来た妻や息子の説得で心を痛め、二人目の子供をこの手に抱きたいという父親の一念で奮起、 ゴズマを裏切ってチェンジマンたちと一緒に戦った。何故か関西弁を喋る。 ○ロム・ストール(マシンロボ クロノスの大逆襲) クロノス星のヒューマノイドであるクロノス族族長キライ・ストールの息子にして天空宙心拳継承者。狼の紋章を持つ剣「剣狼」に選ばれた者であり、 宇宙犯罪組織ギャンドラーに謀殺された父の意志を継ぎ、ケンリュウ、バイカンフーとなってギャンドラーと戦った。兄ガルディから託された剣狼の 兄弟剣「流星」との二刀一刃で首領ガデスを倒し、レイナらと共に暗黒に支配された世界を救うべく旅立つ。 ○レイナ・ストール(マシンロボ クロノスの大逆襲) ロムの妹で同じく天空宙心拳の使い手であり、お転婆で気が強い。兄のロムに多大な信頼を寄せているためかやや甘えが抜けていない。 彼女もまた剣狼に選ばれし者であり、力を使いこなすことができる。 ○ブルー・ジェット(マシンロボ クロノスの大逆襲) クロノス星のロボット生命体・ジェット族出身で剣術の達人。天空宙心拳の派生と思われる天空真剣の使い手。性格はニヒルで渋く、 サングラスをかけているような顔をしている。「ジェーット!」の口癖でジェット戦闘機に変形する。 ○ロッド・ドリル(マシンロボ クロノスの大逆襲) クロノス星のロボット生命体・バトル族出身で天空宙心拳の使い手。ドリル戦車に変形する。 力自慢で格闘能力に優れ言動はやや幼く、ひょうきんかつ明るい性格。レイナにほのかな好意を寄せている。 ○トリプル・ジム(マシンロボ クロノスの大逆襲) クロノス星のロボット生命体・ジェット族出身でレイナの従者。ロボットからスーパーカー、ヘリコプターへと多段変形できる。 性格は真面目でやや気が弱いため、活発で活動的なレイナに振り回されがち。彼女を「レイナお嬢様」と呼ぶ。 ○星間輸送兵スカイリンクス(トランスフォーマーザ・ムービー/トランスフォーマー2010) 自称・空飛ぶ山猫。自信家であり、一人称は「我輩」。スペースシャトルからドラゴンのような形態に変形、さらに上下に分かれて始祖鳥型と山猫型に分離でき、 戦闘能力・ 知能ともにかなり高い。コンボイの遺体を復活させるため、クインテッサ星人の一人を乗せて宇宙ペスト事件解決に大活躍したことも。 ○エクスカイザー(勇者エクスカイザー) 善なるエネルギー生命体・宇宙警察カイザーズのリーダー。地球へ逃げ込んだガイスターを追って来訪、星川家の自動車に融合した。恐竜博覧会の事件で星川コウタ少年に正体を話し、 彼に通信機となるカイザーブレスを贈ってかけがえのない友人となる。異次元空間から呼び出すキングローダーと合体して「キングエクスカイザー」に、ドラゴンジェットと合体して 「ドラゴンカイザー」になれる。さらに彼らの祖先がナスカの地上絵に遺した力を得て新しいカイザーソードを手に入れ、「超巨大合体グレートエクスカイザー」に多重合体できるようになる。 ダイノガイストとの死闘及びガイスター逮捕により地球での任務を終え、コウタに別れを告げて宇宙へ帰って行った。現在はサイバトロンが用意した星川家の車と同タイプの車に融合している。 ○ブルーレイカー/ウルトラレイカー(勇者エクスカイザー) 宇宙警察カイザーズに所属する、善なるエネルギー生命体の双子の兄。地球で東海道新幹線に融合したが、そのせいで乗客を運ぶのに大忙し。お盆や正月など乗客が増える時期は何と出動できない時もあった…。 足の裏にあるローラーダッシュを駆使して身軽に素早く行動できる。弟のグリーンレイカーと息の合ったコンビネーション技を得意とし、合体して「左右合体ウルトラレイカー」になれる。地球の新幹線という乗り物を気に入り、現在はサイバトロン・トレインボットたちが用意してくれた同型ボディに融合している。 ○グリーンレイカー/ウルトラレイカー(勇者エクスカイザー) 宇宙警察カイザーズに所属する、善なるエネルギー生命体の双子の弟。地球で東北新幹線に融合したが、そのせいで乗客を運ぶのに大忙し。お盆や正月など乗客が増える時期は何と出動できない時もあった…。 足の裏にあるローラーダッシュを駆使して身軽に素早く行動できる。兄のブルーレイカーと息の合ったコンビネーション技を得意とし、合体して「左右合体ウルトラレイカー」になれる。地球の新幹線という乗り物を気に入り、現在はサイバトロン・トレインボットたちが用意してくれた同型ボディに融合している。 ○スカイマックス/ゴッドマックス(勇者エクスカイザー) 善なるエネルギー生命体・宇宙警察カイザーズに所属する、マックスチームのリーダー。地球でジェット戦闘機(所属国籍不明)に融合して空から世界中をパトロールする。飛行速度はマッハ4。 真面目で地味な性格だが、決める時は決める渋い漢。ダッシュマックス、ドリルマックスと団結して「三体合体ゴッドマックス」になれる。合体時の意志は彼のものをベースに統合される。 現在はサイバトロン・エアーボットが用意した同タイプの戦闘機に融合している。 ○ダッシュマックス/ゴッドマックス(勇者エクスカイザー) 善なるエネルギー生命体・宇宙警察カイザーズに所属する、マックスチームの一員。地球でレースカーに融合して普段はサーキットを走りレースに出場している。 とにかく走ることが大好きな飛ばし屋であり、ガイスターが事件を起すとレーサーを放り出しカッ飛んで現場に駆けつける。ゴッドマックス合体時は胴体と両腿部に変形。 現在はサイバトロンが用意した同タイプの黄色いレースカーに融合している。 ○ドリルマックス/ゴッドマックス(勇者エクスカイザー) 善なるエネルギー生命体・宇宙警察カイザーズに所属する、マックスチームの一員。 地球で戦車に融合して地中からガイスターに関する調査を行っている。ドリルが付いているが、 これは任務に合わせて彼自身がカスタマイズしたと思われる。カイザーズで一番の力持ちであり堂々たる体躯を誇っているが、同時に一番気が優しく本星には弟や妹がおり、 コウタとの別れ際一度会わせたかったと告げた。ゴッドマックスに合体する時は二つに割れて両足部分に変形する。現在はサイバトロンが用意した同タイプのドリル戦車に融合している。 ○ロミナ・ラドリオ(忍者戦士飛影) シューマ星系ラドリオ星の王女。アネックスの野望を阻むべく、伝説の忍者を探しに地球圏を訪れる。おっとりとした、淑やかな性格だが、天然ともいえる素直さで行動に躊躇いがなく、 また敵に屈しない気丈さを持ち合わせている。エルシャンクの指導者として家臣からの信頼も厚い。ジョウに好意を抱いている。 ○ジョウ・マヤ(忍者戦士飛影) 火星開拓民の少年で、幼少の頃に父と共に日本から火星に移住した。典型的な熱血タイプで口が悪く短気だが、本質的に義侠心と友情に厚い。 火星に現れたエルシャンクに首を突っ込み、黒獅子のパイロットとして選ばれ、中盤から飛影に乗り込みザブーム軍と戦った。 ●破壊大帝G1メガトロン/G1ガルバトロン/スーパーメガトロン(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/トランスフォーマーザ・ムービー/トランスフォーマー2010/ザ☆ヘッドマスターズ/リターン・オブ・コンボイ) ワルサーP38に変形するデストロンの初代破壊大帝。G1コンボイこと初代サイバトロン総司令官の永遠にして宿命のライバル。知力・体力・カリスマ性そして狡猾さにおいては右に出る者はいない。ユニクロン戦争時にコンボイとの 一騎打ちで瀕死の状態となるが、ユニクロンにより新破壊大帝ガルバトロンとして生まれ変わった。その後紆余曲折を経て行方不明となるも、帝王ダークノヴァによりスーパーメガトロン、さらにウルトラメガトロンとして復活し スターコンボイと激闘を繰り広げた。現在はダークノヴァの支配から解かれ、元の姿に忠実なボディを再構築したらしい。ここでは同名を名乗るデストロンリーダーたちと区別するためG1メガトロンと表記する。 ●情報参謀サウンドブラスター(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/トランスフォーマーザ・ムービー/トランスフォーマー2010/ザ☆ヘッドマスターズ) デストロン情報参謀サウンドウェーブが、ブロードキャストとの一騎打ちで戦死したのち、生まれ変わった姿。G1メガトロンへの忠誠心は昔から変わらず厚い右腕である。 ダブルラジカセに変形。部下のカセットロン達を使い、偵察や奇襲を行う。部下のカセットロンたちからも非常に慕われている。 ●航空参謀サイクロナス(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/トランスフォーマーザ・ムービー/トランスフォーマー2010/ザ☆ヘッドマスターズ) 反逆者スタースクリームに代わるデストロン軍団の新航空参謀。G1メガトロンがガルバトロンに再生された時、同時にユニクロンによって再生されたデストロン兵士の一人。 「我がまま意のままガルバトロン」に忠実に従い、苦労の絶えない中間管理職的立場である。 ●スウィープス参謀スカージ(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/トランスフォーマーザ・ムービー/トランスフォーマー2010/ザ☆ヘッドマスターズ) サイクロナスの率いる親衛隊「スウィープス」のリーダー。G1メガトロンがガルバトロンに再生された時、同時にユニクロンによって再生されたデストロン兵士の一人。 卑怯な性格だが、臆病でゴマすり屋である。ホバークラフト型の宇宙船に変形。 ●空中攻撃兵コンドル(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/トランスフォーマーザ・ムービー/トランスフォーマー2010/ザ☆ヘッドマスターズ) サウンドブラスターが指揮する デストロン軍団カセットロン部隊のメンバー。小型で小回りが利き、諜報・隠密・偵察活動には欠かせない万能兵士。 カセットテープからコンドル型へ変形する。 ●諜報破壊兵ジャガー(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/トランスフォーマーザ・ムービー/トランスフォーマー2010/ザ☆ヘッドマスターズ/ビーストウォーズメタルス) サウンドブラスターが指揮する デストロン軍団カセット部隊のメンバー。動物のジャガーの様な俊敏な動きと隠密性を生かした密偵活動を得意としており、同じカセットロンである コンドルと共に諜報活動で活躍する。数百年後の未来ではビースト戦士にリフォーマットされ、デストロンの秘密警察に籍を置いていたが、初代デストロン軍団への忠誠心は健在。 デストロン最高権力「トリプティコン評議会」から密命を受けて地球へ飛来。当初はサイバトロンと連携してビーストメガトロンを追い詰めたものの、ゴールドディスクに込められた 初代メガトロンのメッセージを知ると、デストロンへと寝返る。ラットルの機転により宇宙船ごと爆破されて戦死した。 ●参謀モーターマスター/メナゾール(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー2010) スタントロン軍団のリーダー。ケンワース・K100エアロダインキャブオーバーに変形する。同じくトレーラーに変形するコンボイを一方的に ライバル視し、そのコンボイに突進合戦を挑むがあっさりと負けてしまった事がある。 武器はサイクロンガンとアイオナイザーソード。「合体兵士メナゾール」となる際、胴体に変形する。 ●斥候ブレークダウン/メナゾール(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー2010) スタントロン軍団の一員。ランボルギーニ・カウンタックLP500Sに変形。機転は利くが自意識過剰な性格をしている。 ビークルモードでは自身のエンジンから振動を発生させて機械を故障させる能力があり、ロボットモードで使用する振動ライフルにも 同様の機能が備わっている。「合体兵士メナゾール」となる際、右脚に変形。 ●兵士ドラッグストライプ/メナゾール(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー2010) スタントロン軍団の一員。六輪型のレーシングカー・ディレルP34に変形。メンバーの中では自己顕示欲が強く、 勝負ごとに勝つことにこだわりを持っている。武器は重力を強めるグラビトガン「合体兵士メナゾール」になる際、右腕に変形する。 ●テロリスト ワイルドライダー/メナゾール(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー2010) スタントロン軍団の一員。フェラーリ・308に変形。メンバーの中でも特に乱暴な走りを好み、他のメンバーは彼の近くで走るのを嫌がる。 武器はブラスター。「合体兵士メナゾール」となる際、左脚に変形する。 ●兵士デッドエンド/メナゾール(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー2010) スタントロン軍団の一員。ポルシェ・928に変形。他のデストロン兵士同様空を飛べるが、そのことを卑怯と思っている。 武器はエア・コンプレッサーガン。「合体兵士メナゾール」になる際、左腕に変形する。 ●建築兵スクラッパー/デバスター(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー・ザ・ムービー/他) ビルドロン師団の一員で一応、リーダー格。ホイールローダーに変形。設計に秀でているが謙虚な性格で頭脳労働に携わっている。 ビークル後部にデバスターの胸部ウィングを取り付ける事で「ジェットウィングドーザー」となる。デバスターに合体する際、右脚に変形する。 ●輸送兵ロングハウル/デバスター(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー・ザ・ムービー/他) ビルドロン師団の一員。ダンプカーに変形。運搬担当で、建設作業などでは荷物の運搬を担うが、自分のポジションが気に入らないらしく、ダンプカーに 生まれた事を嘆いていたり、不満を口にしている。カーゴ部分にデバスターの腰アーマーを取り付ける事で「バトルミサイルダンプ」になる。 デバスターに合体する際、胴体に変形する。 ●衛生兵グレン/デバスター(超ロボット生命体トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー・ザ・ムービー/他) ビルドロン師団の一員。クレーン車に変形。精密作業が得意で、その腕前はホイルジャックからも感心されている。トランスフォーマーに使われる回路だけでなく、 それの千分の一のサイズの品も修理できる。メガトロンからも信頼があり、報告も彼が行う場合が多い。車体にデバスターの頭部ユニットを装着する事で 「ダブルキャノンクレーン」になる。デバスターに合体する際、頭部から胸部にかけての部分に変形。 ●偽装兵ミックマスター/デバスター(戦え!超ロボット生命トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー・ザ・ムービー/他) ビルドロン師団の一員。ミキサー車に変形。特殊作業担当で、車を溶かして鉄を精製する事や酸の調合が可能。 デバスターのライフルを車体に付ける事で「ビッグバズーカミキサー車」になる。デバスターに合体する際、左脚に変形。 ●採掘兵スカベンジャー/デバスター(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー・ザ・ムービー/他) ビルドロン師団の一員。装機式ショベルカーに変形。ボーンクラッシャーと同じく採掘を担当。不運の持ち主で災難に遇う事が多い。 デバスターの右腕部をドリルに換装し、ビークル形態に装着する事で「ドリルミサイルショベル」となる。 ショベルモードでのバケット部にはセンサーが内蔵されている。デバスターに合体する際、右腕に変形する。 ●破壊兵ボーンクラッシャー/デバスター(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/スクランブルシティ発動編/トランスフォーマー・ザ・ムービー/他) ビルドロン師団の一員。ブルドーザーに変形。スカベンジャーと同じく採掘を担当。メンバーの中では好戦的な性格だが、泣き言を言うスカベンジャーを叱る等、 他のメンバー同様仲間意識は強い。デバスターの左腕部をドリルに換装し、ビークル形態に装着する事で「ドリルミサイルドーザー」となる。 デバスターに合体する際、左腕に変形する。 ●輸送参謀アストロトレイン(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/トランスフォーマー・ザ・ムービー/トランスフォーマー2010/ザ☆ヘッドマスターズ) D51風の蒸気機関車とスペースシャトルの2種類のビークル変形するトリプルチェンジャーの1人。 通常はメガトロンと同じくらいの大きさだが、シャトルモードに変形すると、仲間数十人を楽に搭載できるほど巨大化する。 ただし、輸送や物資運搬の便利屋的にこき使われる不憫な場面が多く、そのせいでエネルギー不足で補給しつつ輸送、 尽きたら補給を繰り返したことを愚痴ることもあった。同じトリプルチェンジャーであるブリッツウィングと反乱を起こした事がある。 ●空陸参謀ブリッツウィング(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/トランスフォーマー・ザ・ムービー/トランスフォーマー2010/ザ☆ヘッドマスターズ) 74式戦車とMIG―25フォックスバットの2種類のビークルの形態に変形できるトリプルチェンジャーの1人。 物事を戦いに結び付けようとする癖があり、自身の戦闘での活躍を過大評価する傾向がある為、スタースクリームからは 「大ボラ吹き」と揶揄されている。同じトリプルチェンジャーであるアストロトレインと共に反乱を起こした事がある。 ●航空参謀スタースクリーム(戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー/トランスフォーマー・ザ・ムービー/トランスフォーマー2010/他) デストロンの航空参謀にして航空部隊ジェットロンの指揮官。F-15に変形し、両肩に装備されたナルビームや、ミサイル攻撃などを武器に戦う。 メガトロンに成り代わり、デストロンのニューリーダーになろうと裏切りを繰り返し続けた後、復活したガルバトロンによって処刑されてしまう。 その後、スパークは消滅せず幽体となって再登場。ガルバトロンに復讐しようとして復活するが、ガルバトロンに見つかり、宇宙の彼方まで吹き飛ばされ、以後消息は不明となる。 ●スーパースタースクリーム(トランスフォーマー ギャラクシーフォース) マスターメガトロンの右腕あるスタースクリームがチップスクエアから放出されたプライマスのスパークを吸収し、転生した姿。 他のトランスフォーマーの数倍以上の巨大なボディと、大陸一つを破壊できるほどのパワーを手に入れており、頭部には王冠をかぶっている。 フォースチップをイグニッションする事で「バーテックスキャノン」を発現した他、強固なバリアと超能力を手に入れた。 惑星ギガロニアにてマスターガルバトロンと直接対決し、互いに全力を込めた一撃のぶつかり合いの末、敗北。死んだかに見えたが、 実は生存していた事が明かされる。 ●スパイ ノイズメイズ(トランスフォーマー ギャラクシーフォース) プラネットXのトランスフォーマー。スペースファイターに変形。当初、両軍に味方する謎のトランスフォーマーとして登場。 一時期スタースクリームに協力していたが、真の目的は惑星ギガロニアへの復讐を行おうとしていた。 フォースチップを盾にイグニッションする事で「ブラインドアロー」が展開。またエンブレムがサイバトロンからデストロンに変化し、 性格は凶暴になる。自らを特命刑事と名乗ったり、メカに弱かったり、コビー達の仕掛けた罠に引っかかるなど間抜けな所がある。 ●情報参謀サウンドウェーブ(トランスフォーマー ギャラクシーフォース) プラネットXのトランスフォーマー。ステルス機に変形する。ノイズメイズの親友で当初からデストロンに加わっていた。 胸部にヘキサゴンと呼ばれる六角形の物体を収納しており、それは様々な武器となる。ヘキサゴンのキラーコンドルを使って 情報収集を行う。サウンドに関して少しうるさく、マイクを持つ時、小指を立てる癖がある。 ●ダイノガイスト(勇者エクスカイザー) 全宇宙の宝を奪うことを目論む宇宙海賊ガイスターの「御頭」。 正体はエクスカイザー達と同じく、赤い光の玉のような悪のエネルギー生命体。 カイザーズの追跡を逃れ侵入した地球にて、恐竜博覧会に展示されていた ティラノサウルス模型に融合してメカ恐竜・巨大戦闘機・ロボットという三段変形 をこなすボディを手に入れた。「宇宙一の強者」と謳われるその実力は本物であり、 エクスカイザーも超巨大合体グレートエクスカイザーになるまで全く歯が立たなかった。 部下の失敗に怒ることはあっても、過度に非道な仕打ちを行うことはなく、 他の悪の組織のように「世界征服」「全宇宙支配」といった思想は基本的にない。 月面でグレートエクスカイザーと一騎打ちを演じ、敗北後も捕縛されることを良しとせず、 自ら太陽に突入して誇り高く悪道を貫き通して散って行った。 ●プテラガイスト(勇者エクスカイザー) 三百年に渡り宇宙中を荒し回ったガイスター四将の一人、空将。 地球で恐竜博覧会に展示されていたプテラノドン模型と融合、空中戦を 得意とする。四人の中で最も頭が切れるため、ダイノガイストの作戦参謀的 存在だが、他の三人を見下し仲が悪い。どんなものでも命令通りに動く ガイスターロボに変えるエネルギーボックスを開発して戦わせる。 後にサンダーガイストと合体して『二体合体プテダー』形態で戦うようになるが、 エネルギー生命体捕獲装置で捕らえられ宇宙刑務所へ送られた。 ●ホーンガイスト(勇者エクスカイザー) 三百年に渡り宇宙中を荒し回ったガイスター四将の一人、陸将。 地球で恐竜博覧会に展示されていたトリケラトプス模型と融合、陸戦を 得意とする。粗暴で口が悪い性格のためか、プテラガイストとはとことん 馬が合わず言い争いが絶えない。地球で一番最初にエクスカイザーと戦った。 後にアーマーガイストと合体して『二体合体ホーマー』形態で戦うようになるが、 エネルギー生命体捕獲装置で捕らえられ宇宙刑務所へ送られた。 ●アーマーガイスト(勇者エクスカイザー) 三百年に渡り宇宙中を荒し回ったガイスター四将の一人、地将。 地球で恐竜博覧会に展示されていたステゴザウルス模型と融合、地中戦を 得意とする。優柔不断で日和見主義な性格で、プテラとホーンの争いを よく観察しては都合の良いほうにつく癖がある。地中を高速で堀り進める。 エネルギー生命体捕獲装置で捕らえられ宇宙刑務所へ送られた。 ●サンダーガイスト(勇者エクスカイザー) 三百年に渡り宇宙中を荒し回ったガイスター四将の一人、海将。 地球で恐竜博覧会に展示されていたブロントサウルス模型と融合、水中戦を 得意とする。四人の中で体力・パワー共に最も優れているが思考能力が 極端に鈍いため全員にバカにされている。しかし彼に対して「このボケ!」 は禁句であり、一旦暴れだすと誰にも止められない。 エネルギー生命体捕獲装置で捕らえられ宇宙刑務所へ送られた。 ●シュラ(太陽の勇者ファイバード) 宇宙皇帝ドライアスの部下。ガイスターと同様の悪のエネルギー生命体で、 地球でDr.ジャンゴが造った細身の男風のアンドロイドに融合した。 クールな狡賢い性格で作戦をそつなくこなす破壊工作のエキスパートである。 後に『ソドム』という名のロボットに搭乗してファイバード達と戦う。 ●ゾル(太陽の勇者ファイバード) 宇宙皇帝ドライアスの部下。ガイスターと同様の悪のエネルギー生命体で、 地球でDr.ジャンゴが造った大男風のアンドロイドに融合した。 見た目通りの単細胞で乱暴な性格。物事を何でも力と破壊で解決しようと するタイプのため、相棒のシュラにもバカにされている。子供が苦手。 後に『ゴモラ』という名の四足を持つロボットに搭乗してファイバード達と戦う。 ●ディオンドラ(マシンロボ クロノスの大逆襲) 犯罪組織ギャンドラーの女幹部。電磁ムチとメデューサの妖剣を武器にしている。電磁ムチ妖兵にも恐れられ、 任務に失敗した部下を打ったり、捕らえたレイナを痛めつけるのにふるった。ギルヘッドらデビルサターン6からは 「姉御」と呼ばれ、慕われている。最終決戦でロムとガルディが兄弟である事実を洩らしてしまい、ガルディの記憶を呼び覚ましてしまった事から、ガデスに見捨てられて絶望。精神崩壊を起こしてしまい、溶解液で満たされた部屋に1人取り残され、以降消息は不明となる。 ●デビルサターン6(マシンロボ クロノスの大逆襲) 「ギルヘッド」「バラバット」「デスクロウ」「グロギロン」「アイゴス」「ブルゴーダ」の6体の妖兵コマンダーが「六鬼合体」して誕生した姿。バイカンフーと互角のパワーを持つが、天空宙心拳には歯が立たない。 合体時の思考パターンは頭部を司るギルヘッドが主導権を握る為、関西弁で言葉を交わす。 ディオンドラを「姉御」と呼んで慕っている。 ●アシュラ(マシンロボ クロノスの大逆襲) ギャンドラーの妖兵コマンダー。デビルサターン6に代わり、コマンダーランキング1位の座についた事がある実力者。 相手の体の自由を奪うナットール弾を腹部から発射し、動きの取れなくなった相手を残忍な方法で破壊するのを得意とする。 性格は残忍かつ狡猾で、ロム達の奇襲作戦を逆手にとって罠を仕掛けたりした。 ●キャスモドン(マシンロボ クロノスの大逆襲) ギャンドラーの妖兵コマンダー。ダコタの町に住むクロノス族とバトル族の間に抗争を起こし、共倒れした後に鉱物資源ロムトロンをギャンドラーが独占する作戦を展開していたが、最期はバイカンフーによって倒される。後に大量生産された。 ●ザリオス(マシンロボ クロノスの大逆襲) ギャンドラー配下の妖兵コマンダー。サソリの様な外見をしており、腕の2本のハサミと足のキャタピラが特徴的。 本物のサソリの様な形態に変形も可能。 ●ファルゴス(マシンロボ クロノスの大逆襲) ギャンドラー配下の妖兵コマンダー。青紫のボディの背に羽を生やしており、 肩から発射するビームと手の爪を武器とする。
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サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん 2021年10月~21年12月 共通事項 放送時間…土曜18 56~20 00 固定スポンサー SUZUKI カーコンビニ倶楽部 ORIHIRO FUJIOH 小野薬品 Rinnai Yellow Hat 2021年10月30日 A枠 0’30”…SUZUKI、JP 郵便局、カーコンビニ倶楽部、SUNTORY B枠 0’30”…ORIHIRO、FUJIOH、小野薬品、Rinnai、Yellow Hat、KIRIN(キリンビール・PT) 2021年11月6日 A枠 0’30”…小野薬品、FUJIOH、Rinnai、DAIHATSU(PT) B枠 0’30”…Yellow Hat、SUNTORY、ORIHIRO、SUZUKI、カーコンビニ倶楽部、JP 郵便局 2021年11月13日 A枠 0’30”…FUJIOH、JP 郵便局、Rinnai、Yellow Hat B枠 0’30”…SUZUKI、小野薬品、2nd STREET Reuse Shop、カーコンビニ倶楽部、ORIHIRO、DAIHATSU(PT) 2021年12月4日 A枠 0’30”…ORIHIRO、カーコンビニ倶楽部、小野薬品、DAIHATSU(PT) B枠 0’30”…Yellow Hat、Rinnai、MAZDA、SUNTORY、FUJIOH、SUZUKI
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エレオノーラの罠について、オライリーさん的私見メモ (コメントアウト参照) 例のやつ ギョーム・オライリー 愛称 特になし(オライリーさん?) 性別 男性 容姿 謹厳実直な軍人 職業 空軍軍人 Air force commander 目的 帝国への貢献 特技 根:社交、機関、商事、航空 枝:教養、作法、心理、整備、改造、取引、法律、操舵、航法、艦砲、哨戒、通信 背景 帝国空軍士官。階級は二等大佐。家系はクレイオ系だが、母語は帝国語である。 妻のカタリナとは乗っていた飛空艇が空賊との戦いの中で撃沈されたことによって死別している。再婚するという考えはないらしく、死ぬまで一人のつもりでいる模様。 なお、既にその空賊団は彼の属する艦隊によって殲滅されており、その際の活躍によって復讐は終えたと感じている。同時に帝国は妻のための復讐の機会を与えてくれたと考えており、帝国に対して強く忠誠を誓っている。 本来は次にグレートユーク副長になる予定だったのだが、グレートユークが撃沈されてしまったため現在は一時的に飛空艇運送業者組合に人材交流と称して派遣されてきた。 年齢を重ね、次第に体力は衰えてきつつあるが、一方で仕事も出世と共に事務的なものになり、策謀なども以てして帝国への脅威を排除する道を進んでいる模様。 基本設定 名前:ギョーム・オライリー Guillaume O Reilly 種族:人類 職業:帝国空軍二等大佐 Colonel en second 性別:男性 年齢:39歳 台詞 「なるほど魔法は一見便利そうに見える。だが実のところそうでもない。あれはかゆいところには手が届かん」 「私の半分は妻のためにあり、もう半分は帝国のためにあった。…今の私はその片方だけでしかないことになるがな」 「全ての帝国臣民には無能であろうと怠惰であろうと生きる権利がある。しかし帝国の為に働こうというのであれば、有能で勤勉でなくてはならない」 設定文 帝国空軍士官の機関技師。階級は二等大佐。家系はクレイオ系だが、母語は帝国語である。 妻とは彼女の乗っていた飛空艇が空賊との戦いの中で撃沈されたことによって死別している。再婚するという考えはないらしく、死ぬまで一人のつもりでいる模様。 なお、既にその空賊団は彼の属する艦隊によって殲滅されており、その際の活躍によって復讐は終えたと感じている。同時に帝国は妻のための復讐の機会を与えてくれたと考えており、帝国に対して強く忠誠を誓っている。 本来は次にグレートユーク副長になる予定だったのだが、グレートユークが撃沈されてしまったため現在は一時的に飛空艇運送業者組合に人材交流と称して派遣されてきている。 スキル 探検家:警戒、飛空石 貴族:礼儀作法、教養、歴史、人脈 機関技師:操縦士、機関士、通信士、艦砲、効率性、予備の部品、改造 領域魔術:離れた知人に言葉を伝える (経験点4点、1枠消費、残1点) (セッション4まで) 道 機関技師の道◎ 至誠者の道(対応:帝国)● 自立者の道(初回)→策謀者の道 スキル 探検家:警戒、トラップ、飛空石 貴族:礼儀作法、教養、歴史、人脈 機関技師:操縦士、機関士、通信士、艦砲、蒸気機関、効率性、予備の部品、改造 メカ:新式無線装置、機銃、大砲 (経験点6点、残0点) (経験点3点消費、機関士取得) (経験点3点消費、蒸気機関取得)
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ウィザーズ・ブレイン巻頭四行詩 フレデリカ・ベルンカステルの詩 特異領域の特異点
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石油資源のために、石油やそれから精製される燃料を浪費して行われ、結果として石油危機を悪化させる戦争が行われているとは実に理解しがたい。 更に、バナッハ帝国の報道では核攻撃の実施が決定されたとされているが、石油の代替資源たるウランを大量に消費することになる核攻撃(厳密には、消費されるのは製造時点ではあるが)を行うことになれば、アムトウルクがその損害を復興する過程で、更なる資源が必要となることは明らかである。 付け加えて言うならば、核攻撃によりフェイルディラシア大陸を汚染する行為、そしてそれを誘発する行為は連邦に対する重大な脅威でもある。 以上のことより、連邦は両国に対し戦争の拡大の阻止と資源の浪費の抑止のため、バナッハ帝国には核攻撃の決定が行われた事実があればその中止を、アムトウルク王国には即刻の停戦を求める。 アムトウルク政府は停戦条件を既に提示しているが、停戦する前に講和の内容を決定しなければならないという必然性はなく、即時停戦を行ってから講和条件を議論してもよいのではないか? むしろ、戦争が遅れれば遅れるほど、無益な戦争のために資源を浪費したという事実をもって両国は他国との資源調達において不利な立場におかれるであろう。 なお、連邦の資源取引担当者は確かに少額ビッドを行っている。しかし、連邦の少額ビッドは、それによる落札までの時間の延長が行われない状況下で行うという指針があり、この指針のもとでは円滑な取引を阻害するという性質は著しく軽減されている。 さらに、今までに行われた連邦の少額ビッドはバナッハ帝国が少額ビッドを行った際に、実験的にその戦略を確認する目的で行われたのみである。 よって、連邦の行った少額ビッドはいたずらに落札までの時間を延長するバナッハ帝国の少額ビッドとは違ったものであると付言しておく。
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旅程表 序幕(第零話):ジャスリーさまの旅支度(べいろす) ↓(ジャスリーさま、単身鉄道でせらふぃーへ) 第一話:せらふぃーで集合、アイスクリームでも食べて出発(すたーげいざー) ↓(マーテル河下り) 第二話:くらるべるんで昼食にパスタでも(べいろす) ↓(鉄道、たぶんクロノクリア急行) 第三話:ぐりゅっくで夕食は高級レストラン、旧アレスレーヴァを見に行くもよし(すたーげいざー) ↓(地中海を船で東へ) 第四話:ロスマリン(フォールン領)でお茶(べいろす) ↓(地中海東岸を飛行船で南下) 第五話:合衆国上空で飛行船と東方入り、二人の旅はこれからだ!(すたーげいざー) ↓(大陸横断鉄道で東へ) 第六話:スターテンでお買い物(べいろす) ↓(ヨーグ海南下) 第七話前編:塔王国、ガトーに到着。ケトルポリット塔でアンゼの本さがし(すたーげいざー) 第七話中編:茶塔を訪れ茶畑見学、百茶で紅茶ついでに緑茶とかも楽しむ(べいろす) 第七話後編:ツトラウスト塔でお茶片手に天体観測(すたーげいざー) ↓(ヨーグ海を東へ) 第八話:ロフィルナでたまにはSushiもいいよね!…食あたりすると悪いからNG?(べいろす) ↓(ヨーグ海を東へ) 第九話:極東島でプランテーションティー(すたーげいざー) ↓(ナアド海をひたすら東へ) 第十話:イーゼンで結婚を祝う(べいろす) ↓(夢の中へ) 番外編:アン・ディー・フロイデの悲劇(すたーげいざー) ↓(夢から覚めて) 第十一話:リムジアで服をとっかえひっかえ(べいろす) ↓(北極海を東へ) 第十ニ話:エラキスで柑橘類を食す(すたーげいざー) ↓(アンゼの操る飛行艇で大空を翔る) 第十三話:レッチェルドルフで切手購入(べいろす) ↓(飛行) 第十四話:くらるべるんに帰還、実は一日余裕があることに気付く(すたーげいざー) ↓(飛行) 第十五話:せらふぃーで天体観測でもして終了(べいろす) ↓(たぶんクロノクリア急行) 終幕(第十六話):じゃすりーさまの厄災封じ行事(ここから先はべろたんのご随意に) 第零話・プロローグ(ジャスリーさま視点) クラルヴェルン帝国の皇帝ジャスリー・クラルヴェルンは不老にして不死の王であり、夢魔と帝国二億五千万の民を統括する、惑星ルヴァース有数の重要人物である。 しかしながら彼女は全知でも全能でも無かったし、ロボットでも聖人君子でも無かったから、海外旅行に行きたいという欲求は常に持っていた。 彼女のゆるやかな統治の下で、帝国の人間たちは知識と資本を蓄積し、産業革命を引き起こした。それによる蒸気船の出現や鉄道の発達は、世界一周旅行の現実味を徐々に増していった。 ティー・ロード条約の成立後、彼女はひとつのプランを友人に持ちかけた。地中海からティー・ロードを通り、各国のお茶を楽しみながら極東島やクルドンを経由して帰還するという世界一周旅行。 初めは渋っていた友人も、ジャスリーさまの再三の「お願い」により最後には了承した。とはいえ、ジャスリーさまとその友人との関係はいつもそういったもので、半ば様式美となりつつある。 ともかく夢遊宮にて世界旅行の準備が進められた。ジャスリーさまは護衛を引き連れて旅行することを好まなかったし、秘境探検しにいくわけでもなかったから、トランク一杯に着替えを用意して、ティー・ロード共通の小切手帳や、最低限の保存食と医薬品のみを持つだけの軽装となった。 旅券は帝国の一般市民と同じ形式のものをわざわざ用意した。訪れる予定の国々の大使館にはすでに伝えてあるから、予期せぬトラブルの際は助けになるだろう。 「留守をよろしくね。ペトロシアン。それにテリブル」 「お任せ下さい」 「行ってらっしゃいませ。お気を付けて」 セラフィナイト行きの電車のホームにて、列車窓から見送りに手を振りながら声を掛けるジャスリーさま。 宰相ペトロシアンは無表情に、テリブルドリームは心配そうな顔で見送る。テリブルはいつも何かに心配しているような悲観的な子だが、今回ばかりはテリブルを責められまい。仮にジャスリーさまの身に何かあれば帝国の存続にすら関わる。 だが帝国政府の閣僚たちも夢魔たちも、皇帝の旅行を止めることはしなかった。ジャスリーさまが旅行について語るのは数百年も前からのことだったし、嬉しそうに語る皇帝を前にしては誰も何も言えなかった。 産業革命の恩恵。石炭を燃やし湯を沸かし、その蒸気の力で車輪を回す陸蒸気が警笛を鳴らす。独特の駆動音を伴ってセラフィナイトに向かって走り出した。 ジャスリーさまはゆったりとした一等車両の席から窓外の風景を眺める。メッサーナ市街を抜けると田園風景が広がっていく。 これから待ち受ける楽しみと、おそらくは不可避であろう困難を思い浮かべながら、ジャスリーさまは最初の楽しみである友人との再会を思い描き、目を閉じた。 「待っててね、アンゼロット。今捕まえにいくから」 第一話・プロローグ(アンゼロット視点)&セラフィナイト編前編 本気ですか。 ある時、旧友―こう呼べる間柄になるまでにも紆余曲折があったがあまりにも長いのでここでは触れない―が手紙の中で世界一周旅行を提案してきたときの率直な感想だった。 この感想を抱いたアンゼロット記念大学学長の名を、“幻月の学徒”アンゼロット。 そして、初代クラルヴェルン皇帝にしてそんな旧友の名を、“夢魔姫”ジャスリー・エルツ・クラルヴェルンという。 さて、アンゼロットはそんな感想を抱いたので、返事の手紙にはそのままを記して返すことにした。 なにしろ彼女は2億5千万の上に君臨する大皇帝なのだ。その身に万一のことがあってはたまったものではないだろう。 もし旅行するとなれば、帝国の宮廷部も旅先の政府も冗談ではなく胃に穴が空くし、当時はコタン戦役の混乱でそんな場合ではなかったのだ。 しかしながら、彼女は本気だった。 いつの間にか手紙の内容は行くか行かないかからどこに行きたいかに取って代わられ、具体的な旅程の計画に取って代わられた。 そして、不思議な事にアンゼロットの書棚にはそのために必要な地図、時刻表などの資料は全て揃っていた。 …紅茶探訪世界一周。今まで明確に考えたことはなかったが、無意識的な願望にそんなものがあったのかもしれない。 出発日はルヴァ歴31年7月14日。旧友には10月1日、つまり80日後に行事があるので、予定は80日間のうちに詰め込んでいる。 平穏な時の続くことの少ないこの世界が、コタン戦役の終わりのあとの微睡に身を委ねている今のうちに。 さて、そんなアンゼロットは、今、その直前の朝はアルティチュード郊外の山にある大学付属の観測所でお茶を飲んでいる。ちょっとした研究がお茶請けだ。 この場所は風が清々しくて気分がよく、たまに来てはお茶を飲む。旅先でいろんな風を浴びる前に、この国の風を感じるのも悪くない。 ちなみに、旅行に必要な物資などは既に鞄に詰め終えており、着ている白衣は旅先では必要のないもの。 朝食は近くのベーカリーで買ってきたパンで軽めに済ませることにした。腹持ちがよくないが、むしろそのほうが都合がいい。 昼食は彼女の国で彼女の薦める料理店で、の予定となっている。東方にはおかわりは皿に少し残した状態で、が礼儀の国があるらしいが、ここは西方だ。 なにより…彼女の前で彼女の薦める料理を残し次に向かおうということが彼女に何を感じさせるか、と。 そんなことを考えるアンゼロットの傍らのテーブルではストレートで砂糖のないカーニャムのFTGFOPが馥郁たる香りを添えている。 いつもは研究の際には頭に糖分を、というわけで紅茶に砂糖を入れることにしているのだが、今は前述の理由で血糖値は抑え目にしておこう。 さて、紅茶を飲みながらのんびり研究をしていたのだが、突如後ろから声がかかる。 「マスター。お客様です」 アンゼロットはその声に一瞬口にした紅茶を吹き出しかけたが、踏みとどまりこう返す。 「ここは関係者以外立ち入り禁止のはずですけど」 「私はこの記念大学の教授ですよ?問題ありません」 その声に振り返り、声色から想像していた通りの人物と対面する。 「ミリティアは教育学部ですので理学部のここでは部外者です。そんなことより声真似するならもっと似せてくださいよ」 「よその事情はよくわからないわ。声は幻術使っていいならいくらでも似せられるけど」 「幻術と星術で勝負しますか?二度と戦うのはごめんですが。しかし早いというか、早すぎませんか?二時間後にリーゼロッテ港で待ち合わせの予定ですけど」 「何てったって楽しみでね。そんなことよりアンゼの白衣姿って新鮮ね」 「…着替えてきますよ。こんなに早く、まさかこっちまで来るとは思いませんでしたからね」 「さて。まずは世界一周の出発点にして経線の基準点、セラフィナイトです。朝食は…あれ、まだですか?」 「船内で食べてきたけど、朝早かったから間食も悪くないわ」 「間食ですか。何かセラフィナイトといえばアイス、という印象があるんですよねえ。まあとにかく紅茶とアイスの用意があります。ミリティー、用意を」 最後の呼びかけはどう考えてもここにいない人物へのものだったが、後ろからそのミリティアがティーセットを持って現れる。 「なるほど…こういう仕掛けで声真似がばれたわけね」 「あの声だと最初からわかりますよ。さて、今日の間食はアイスです。世間ではフロスティヴンのものが有名ですが、まあこれも味は保障します」 こっそりアンゼロットの皿のアイスが少な目なのは内緒だ。これはミリティアの気配り。 「お茶請けに純連盟産の小麦粉と牛乳と砂糖だけを使っているクッキーが良いって聞きましたけど」 「あれは保存が利くので帰ってきたときにお土産として渡しますよ。あとリーゼロッテの知り合いの職人が天文腕時計作成最短記録に挑むとか言ってましたから戻ってきたときにできていればそれもお土産です」 「さて、今日の旅程はどうなっているの?」 「まずはクラルヴェルンへ参りましょう。昼食はそこでパスタでしょう?あなたがどれほどのものを出してくるか、期待していますよ?」 第二話・クラルヴェルン編前編 旅行者二人を乗せた小型船が、昨年完成したばかりのマーテル運河を下る。この運河は内陸国たるセラフィナイトとの交易の促進と、レッチェルドルフとの接続のために建設されたものだ。 帝国の大地を貫く運河には、平和な田園風景と緑の木々が並ぶ。牛や馬が水を飲み、小鳥が歌い、日陰では釣り人が糸を垂らしている。はるか遠くのアディリクでは鋼鉄の機械が人間を挽きつぶし、人々は狂気と絶望の中を彷徨っているというのに。 「貴方の統治は悪くはありませんよ」 アンゼロットは自分の膝を枕にして微睡むジャスリーの髪を撫でながらそういう。 「そう? ……ウィルバーの時と一緒よ。私はただそこにいて、微笑むだけ」 夢魔姫が幻月の学徒の指を絡める。 「そういえば、アンゼの研究は進んでいるの?」 「ええ、少しずつ。ミュリエルもいますし。そういえば彼女とは面識がありませんでしたね」 「星の天使でしょう? 嫉妬しちゃうわ」 「大丈夫ですよ。貴方が心配することはありません」 「こんな風に膝枕したりしない?」 「しません。そもそもしたいと言うのは貴方くらいのものです」 「そう、安心したわ」 ふふふ。と夢魔姫が笑う。 「何が可笑しいのです?」 「あの千年は幸せだったと思って」 「今は?」 「もっと幸せ」 クラルヴェルン帝国、とりわけ地中海沿岸のボロネーゼ人の気質は、食べて寝て歌って恋すること。 陽気で美味しいものを食べ、長い昼食の後に昼寝をしてほどほどに働き、人生を楽しむこと。 「貴方みたいですね」と苦笑するアンゼロットに、ジャスリーは「ええ」とにこやかに返す。 港湾都市フェーティムのレストラン「アルゾーニ・クラルヴェルン」は、そんなボロネーゼの魂をよく理解していると夢魔姫はいう。 店内は二層になっており、上層ではガラス越しに地中海の風景を見ながら料理を楽しむことができ、下層では専用の竈でピッツァが焼かれるのをみることができる。 上層席に案内された二人が注文したコースは、地中海のパルシェン貝を使ったヴォンゴレスパゲッティと、熱々のコーンポタージュ。そして八分の一に切られ、様々な魚介類の載ったラウンドピッツァ。 アンゼロットの抱いていたささやかな心配は最初の数口で取り除かれた。 「ふむ。悪くないですね。……大変よろしい」 「良かった。心配だったの。厳しいアンゼのお眼鏡に叶うかなって」 「美食評論家ではないのですから、そんなに厳しくありませんよ」 ただこう、貴方のパスタへの偏愛はちょっと理解しかねますけど。とは言わないでおいた。 第三話・ヴォールグリュック編 ヴォールグリュック南部、ナウムヴァルデ侯爵領。そこは、世界有数の食文化地域である。 ある作家に「神に愛された」とまで言わしめたこの地域は、農産物・畜産物・水産物の全てが揃う、東フォルストレアの美食の聖地といっても過言ではない地域だろう。 さて、料理というのは旅の楽しみ中でも最も重要なものの一つ。 世界一周の旅の計画を立てる際、最初の午餐をヴォールグリュックでということは最初から決まっていた。最初のうちからそうそう重いものを食するのもどうかとはいえるが、ヴォールグリュックから次の目的地フォールン・エンパイア領ロスマリンまでは船で二日かかる。その間の食事はそれほど重いものにならないだろうから、問題はないだろう。 【紅茶探訪八十日間世界一周 Third Country ヴォールグリュック編】 そんなわけで、クラルヴェルンからヴォールグリュックまでを列車に揺られてきた二人の少女はハイゼルベッカー湖畔駅に降り立つ。 この駅は暴食王の私城と呼ばれるヴォールグリュック有数のレストランの最寄駅で、検討を重ねた結果ここが初日の午餐とするに相応しいだろうということになった。 「ようこそいらっしゃいました。ご予約のジャスリー・クラルヴェルン様、それにアンゼロット様ですね、お待ちしておりました。お席は最上階の展望席にご用意してございます」 一般客として予約は入れているため、入って名前を告げるとこう迎えられる。 しかしながら、ジャスリーさまは「ジャスリーさまを目にした者は、視界から出てから数時間経つまで、彼女がクラルヴェルン皇帝だと気付けない」という幻術を使っているため、周囲の客がざわついたりすることはない。 ちなみに、この幻術は別に暗殺の危機を回避するためなどといった政治的な理由ではなく、二人水入らずなのを邪魔されたくないという実に私的な理由のためなのだが、アンゼロットは幻術がかかっていることは気付いていてもその本当の理由には気づいていない。 …さらにちなみにを付け加えるならば、実のところ、クラルヴェルン帝国宮廷部は事前に店に「うちの皇帝がばればれな恰好で行くけど、気付かないふりをしておいてください」と連絡しているので、店員はみんな最初から気付いている。まあ、結局宮廷部の取り越し苦労で、必要のないことだったのだが。 そんな裏話はともかく席に着く。 さて、最初の料理はパン。最初の、というのは配膳の順番上の話で、料理と一緒に食するものだが、まずは味見である。 「平凡ですね」 「自信があるか、あるいは食文化の根本はパンにある、という宣言かしら」 「そうかもしれませんね。焼き立て、基本ですが確かにおいしいです」 前菜はマスの燻製。 「マスなら、セラフィナイトでも獲れるんじゃない?」 「確かにリーゼロッテあたりの店では燻製売ってますけど、やっぱり正直に言ってグリュック人のほうが魚の使い方は手馴れてますね」 次にツヴィーベルズッペ。 「オニオンスープ、ですね。セラフィナイトではチーズがかかっていることが多いんですが、私はない方が好きです」 「セラフィナイトではチーズがかかっているの?食べたことないわ」 「あれ、200年ほど前に作りに行きませんでしたっけ?」 「今でもメニューは覚えているけど、なかった気がするわね」 「じゃあ、帰りのセラフィナイトの晩餐にしましょう」 副菜、スズキの香味焼き。 「そもそも香味焼きって何なの?」 「え、…風味際立つように焼いたら香味焼きじゃないんですか?」 ちなみに、香味野菜を使って料理に香りとまろやかさを出すと香味焼きという話もあるが、香味野菜入れても香味焼きとは言わないこともある気がする。何なんだろう。わけがわからないよ。 主菜、ナウムヴァルデ・ツェンデンオクセ(牛ステーキ ナウムヴァルデ風の白いソースを添えて)。 ちなみに、焼き方はアンゼロットはレア、ジャスリーさまはウェルダンを指定した。 「きましたね、看板料理。…アンゼ、断面を見てどうしたんです?」 「いえ。…中央部が生でありながら火は通っている。…結構なことです」 「アンゼは美食評論家じゃないんじゃなかったの?」 「いえ、まあそうなんですけどね」 冷菓、イチゴ・ヨハニスベーレン(季節のシャーベット)。 「季節的には、確かにそろそろ冷たいものが食べたくなってくる時季ですね」 「アンゼが汗をかいている姿なんてみたことないけど」 「冷涼な国出身の人間のほうが、低温でも汗をかくっていいますけどね」 副菜その二、鴨のフォレストル風蒸し焼き。 さらに、貴腐ワイン「暴食王の遺産」も出てくる。相当甘い。 「…かなり甘いですね、このワイン」 「200年前の時にアンゼが持ってきたワインもこれぐらい甘くなかった?」 「ああ、アイスヴァインですね。糖度はともかく、貴腐香はあれにはありませんよ?」 「ところでフォレストル風って何なんでしょう…?」 「でも、東方にはちょっと似合わないわ」 ちなみに、二人ともフォレストルをフォルストレアのことだと思っているらしいが、実のところヴォールグリュック南部諸邦の一地域である。 そんなことより最後に、サラダ、イチゴ・ベリー類の盛り合わせ、そして食後のコーヒー。 「これで締めのようですね。まあ、山海の幸が混ざった…こういうのはヴォールグリュックに特有ですよね。良いものです。今回の旅、コーヒーを飲むのはたぶんこれで最初で最後。少しくらい、いいものです」 「エスレーヴァでももう一杯ぐらいいいんじゃない?ドミニオ・ノーヴァスはコーヒー派って聞いたわ」 「あなたが望むなら、別にいいんですけどね」 第四話・ロスマリン編 ロスマリン。 地中海西部に浮かぶ大小五つの島で構成される島々。 地中海の交易の要所に存在するこの島々は、長い歴史の中で主を転々と変え、サーペイディアの手に渡り、今は魔王国の直轄領として栄えている。 ヴォールグリュックのツァオバーヴート港から、蒸気客船に乗って数日の海路。 入港した蒸気船にタラップがかかり、乗客がぞろぞろと降りてゆく。旅行者二人は他の乗客が降りきったあとに悠々と歩き、今まさにロスマリンの地に足を踏み入れた。 【紅茶探訪八十日間世界一周 4th Country ロスマリン編】 「ここはもうエスレーヴァですよ」 「ええ、そうね……」 ジャスリーさまは感慨深く青い海と青い空、眩しい太陽、そしてロスマリン・ネレイドの建築物を見やる。 「異国に来たのね」 「ええ」 人間に混じって当然のように街を闊歩するオークやオーガーなどの亜人たち、そして海人類たち。 帝国では考えられない光景を前にして、ジャスリーさまは自分自身が夢魔という亜人であることを棚に上げながら、これでよく秩序が保てるわねと関心する。 「彼らにとってはこれが普通なのでしょう。もともと人類が外見で判断しすぎるのかもしれません。ケトルポリットはさらに凄いですよ」 「私ね、サーペイディアには少し責任を感じているの」 「魔王ドロレスですか?」 「ええ、フォールンが彼を目覚めさせなければ、この国は別の歴史を歩んできたと思うの。あの子はちょっと羽目を外しすぎるところがあるし」 「気にすることはありません。サーペイディアは他種族・他国家が乱立する紛争の絶えない地域でした。彼がいなければ統一もされず、豊かな国にもなれなかったでしょう」 「そうね……」 ジャスリーさまは魔王について悪感情を抱いてはおらず、むしろ好感を持っていたし、舞踏会では踊りを楽しんだりもした。 ただ、この国で行われている美女狩りという闇については、同じ女として複雑な気分にならざるを得なかった。 心地よい潮風にあたりながら、二人はガイドブックを片手に海底都市へと向かう。 海底にドーム状の巨大な泡が存在し、その中に地上の生物が生存できる環境と、都市が存在する。泡は水圧に押しつぶされることもなく、海人類の遙か昔よりの技術によって維持されている。 空の変わりに海が、雲の代わりに魚の群れが存在するというその光景にジャスリーさまはしきりに感嘆しながら、目的のホテルを探して都市を散策した。 かつてのロスマリン王侯の宮殿を改装したこのホテルは、美術館も付属しており、それ自体が観光名所を兼ねている。オーナーはペルスネージュ辺境伯。 少女達はホテルに迎えられると、白亜の壁に赤絨毯、クリスタルのシャンデリアの通路を経て、豪奢な客室に案内された。 「いい部屋ね。ありがとう。すこし歩いて疲れたから、ロスマリンのお茶を入れてきてくださらない? お茶請けは適当でいいわ」 「畏まりました。ご主人様」 夢魔姫はスウィートロリータのメイド服に身を包んだエステルメイドにルームサービスを指示する。メイドが小悪魔のように可愛らしく一礼して退出した後、苦笑してこう評した。 「うーん。あれはもう、別物ね」 「確かに。リリスに無理矢理メイド服を着せるとああなりそうです」 本場で飲むロスマリンティーは、帝国で手に入るものよりも透明で、香り高いものだった。 「……ふむ。香りも風味も甘いですね。私は滅多に飲みませんが」 「そうなの? 夢遊宮では 砂糖要らず といってよく飲んでいるけど」 「夢魔は甘党ですからね。まあ糖分の取りすぎは良くないですから、シュガーレスとしては最適かもしれません」 そういいながら、アンゼはお茶請けに出された小さなケーキを、これまた小さなフォークで切って口に運ぶ。 「今日はここで一泊するとして、明日はどうしたのかしら」 「海底の次は空の上です。この季節では南西からの風を利用しての飛行船が、船よりも一日早く合衆国にいけますから」 第五話・ドミニオ・ノーヴァス編 アンゼロット記念大学の附置研究所には、航空科学研究センターというものがある。 そこではまだようやく実用化したばかりの飛行機、飛行船に関する科学技術が研究されている。 さて、その記念大学の長として幻月の学徒アンゼロットは旅路のどこかで飛行船に乗ろうと考えていた。 セラフィナイト、クラルヴェルン、ヴォールグリュック、フォールン・エンパイア。 これら諸国は、どれも列強に名を連ねる工業国で、そしてどれも近接している。そのためにどの国を結ぶルートでも飛行船の利用はできる。 しかし、問題は、どれにしても運賃が高く、その飛行船の給仕の月収の数十倍という、とんでもないことになっているということだ。 故に、卓越風に乗って時間を短縮でき、乗っている時間の分だけ値段も安いフォールン→合衆国便を利用するのが一番手頃というわけだ。 【紅茶探訪八十日間世界一周 Fifth Country ドミニオ・ノーヴァス編】 飛行船での旅というのはあまり揺れることもなく、グランドピアノまである充実した設備と、至れり尽くせりだ。 …まあ、それでも運賃を考えると、これぐらいあっても当然、といえなくもない。 載せられる人数が少ないのと、まだまだ飛行技術が未発達なために超富裕層相手の商売でしか成り立たないのだろう。 そんな状態なので乗客は皆正装で着飾った者ばかりだが、彼女たち旅行者二人はその中でも遜色がない。 まあ、この二人が超大国の皇帝と世界トップクラスの大学の長であると気付けるような、魔法抵抗の高い者はそういないのだが。 果てしない雲海を切り裂いて、飛行船は緩やかに高度を落とす。 雲海を構成する層積雲の隙間からは薄明光線…いわゆる天使の梯子が降り立っている。 そんな幾重の層をなす雲を潜り抜けたその先に、高高度からではわからなかった新天地の景色がはっきりしてくる。 「このあたりの地域は世界有数のフィードロット式の大牧場地帯らしいですね。壮観です」 「ロスマリンとは違ってやっぱり乾燥しているのね」 「連盟の牧畜業は酪農主体ですから、こうはいきませんね。バーベキューでもします?」 「大陸横断鉄道の車内弁当にステーキ弁当があるって聞いたわ」 「ステーキ弁当ですか。まあ、確かにここでの食事は正確な予定を決めていませんでしたから、それも悪くないですね」 地上がさらに近づく。まもなく着陸だ。ここから先は夢魔文化圏の外。 …たぶん、多くの苦労と、それを超えるだけの発見があることだろう。 「ここから先はいわゆる東方。何が待っているのか楽しみですね」 「いろんなものが待っているとは思うけど、その中でどれだけのものがアンゼの表情を変えることになるかも楽しみだわ」 外伝・セラフィナイトの平凡な日常 または私は如何にして夢魔であることをやめてまで彼女の傍らの日々を望むようになったか 主の留守中。夢魔ピースフルドリームとミリティア・アロートのお茶会での会話。 「夢魔の幸せ? どうしたのよ藪から急に」 「うーん。ちょっと。気になりましたので」 「人間の幸せはいろいろ、生きる目的もいろいろ。それは夢魔であろうと天使であろうと変わらないと思うわ」 「それでも、貴方たちを見ているとなんらかの傾向があるとは思えます」 「そうね…。愛することと、愛されることかしら。愛は、絶望の中を彷徨う私達夢魔にとって、その暗闇を照らす唯一の希望の光。それは、ジャスリーさまを見ればわかるでしょう」 「でもマスターはもう千年以上に渡ってそれに答えていません。永遠に片思いのような気がします。それでも夢魔姫は幸せなのですか?」 「ええ、片思いでもいいの。二人分愛するから」 「では私は、夢魔失格でしょうか」 「いいえ。気づいていないの? あなたもアンゼロットを愛しているのよ」 第六話・スターテン・ヘネラール編 「せーんろはつづくよー どーこまーでーもー」 「のーをこえやまこーえー たーにーこえてー」 ジャスリーさまが調子外れに歌を口ずさむ。アンゼロットや相席した交易商たちは最初苦笑しつつ聞いていたが、曲目が変わると次第に夢魔の心地よい美声に恍惚と酔いしれた。 大陸横断鉄道は広大なエスレーヴァ大陸の大平原と大山脈と、幾多の峡谷を乗り越えて、無人の野に敷かれた鋼鉄のレールの上を走ってゆく。 地平線の彼方まで伸びる線路と、どこまでも続く大自然。 途中、バッファローの大きな群れが運行を阻害し一時ストップしてしまったが、少女達の乗った寝台列車「東方を征服せよ号」は数日の遅れがでたものの、無事にスターテン・ヘラネール領にまで到達した。 【紅茶探訪八十日間世界一周 6th Country スターテン・ヘラネール編】 摩天楼。 少女たちが辿り着いたリッテルダムを一言で表すとすれば、まさにその一語に尽きる。 数十階建てのビルが林立し、ビルの下にはアスファルトで覆われた道路に自動車が往来する。 交差点には赤黄青の電気式の信号機が、自動車の流れる時間と人の流れる時間を管理している。馬車などという前時代の乗り物はどこにもいない。 ラジオで漏れ聞いたコタン会議問題などを話しながら、旅行者二人は近代都市を散策する。 「うーん。やっぱり帝国は、十年くらい遅れているかも」 「メッサーナでは高層建築は制限されていると聞きましたが」 「ええ。私の我が儘だけど、昔からの景観を大切にしたいの。メッサーナには歴史的な建築物が一杯あるし。フェーティムやベリザンドでも同じような制限がかかっているわ」 「蒸気機関の排煙はいいのですか? フェーティムは煙の都などといわれていますが」 「うん。あれはいいの」 わけがわからないよ。 休日の女学生たちに混じってクレープを食べ歩きながら、名物である高級百貨店 ヴァン・サインコルフ に足を運ぶ。 一階。贈答品と東西の菓子のフロア。 「うさぎ饅頭。苺大福。草餅。ミラーミディアでしたっけ」 「住民投票の結果、鎖国したそうだけど、スターテンとは貿易してるのかしらね?」 「この国のことですから、掴んだ利権は絶対離さないでしょうね」 「帝国も見習いたいわ」 「それで、その饅頭買うんですか?」 「ええ。」 二階。高級衣服・ブティックのフロア。 「…どう?」 「似合っていますよ。良いところのお嬢様という感じで。まあ、あなたは何を着ても似合ってしまいますけどね。スターテン・ヘラネールのファッションは機能性重視というイメージがありますね」 「ふりふりは夢魔圏の特権なのかしら?」 「ああいう少女趣味は帝国と魔王国だけという気もしますね」 「そうね、ふりふりは着るのに時間が掛かるし、洗濯も大変だから」 「それで、その服買うんですか? 」 「ええ。」 三階。化粧品のフロア。 「化粧品なんて夢遊宮には一杯あるでしょうに」 「ブランドによって微妙に違うのよ。場や服装によっても変える必要があるの。私は行事とか会議に出席しないといけないし、これは必要なものなの」 「それで、その化粧品セット買うんですか? 」 「ええ。」 四階。ファッション雑貨と宝石装飾品のフロア。 「コタンのハンドバッグも必要なんですか?」 「ええ。」 五階。インテリアと趣味小物のフロア。 「高級羽毛枕の必要性は聞くまでもなさそうですね」 「ええ。」 九階。レストラン街。 「帝国に送る手続きをしておきました」 「有難うアンゼ。あんな分量になるなんて思わなくて」 「私はなんとなくそんな予感がしていましたよ」 そんな会話をしていると、煮込み茹でソーセージ、ブロッコリーやにんじんなどの茹で野菜、そしてチーズグラタンが運ばれてくる。 スターテン料理はバリエーションが少ないことで有名で、ウェイターにもクラルヴェルン料理を勧められたほど。しかし夢魔姫はにこやかに「貴方の国の一番美味しい料理をください」と注文した。 摩天楼の夜景を見ながら、少女達は日程の確認と塔王国への船の選定を話し合う。 二人の旅はつつがなく進む。距離にして三分の一に達しただろうか。 外伝2・43は線路―only our railway. 飛行船を降り大陸横断鉄道、はるかスターテン・ヘネラール行きの列車「東方を征服せよ号」に乗って進んでいたある日のこと。 車内販売のステーキ弁当を食べ終え、飲み物片手に車窓の外を眺める。 珍しく二人が飲んでいるのは缶コーヒーである。 「ここから先は国番号43、合衆国領でもスターテン・ヘネラールでもありませんね」 「実質、スターテンが管轄しているんじゃなかったの?」 「確かにそうですが、スターテンは鉄道の管理はしても領有はしていません。駅を降りれば無政府地帯ですよ」 「治安は悪いの?」 「そういうわけではありません。というより、人口希薄地帯ということなんでしょうね」 【紅茶探訪八十日間世界一周・外伝 Pre-6th Country 「43は線路」】 「…夢魔の幸せ、ねえ」 「ええ。こうやって缶入りの飲料を飲んでいると、いつも給仕をしているミリティアを思い出しましてね。彼女とそんな話をした覚えがあるんですよ」 「うーん…ミリティアはあなたのそばにいるだけで満足しているなら、それでいいんじゃない?」 「そうなんでしょうか?ミリティアは私に今でも仕えてくれていますが、彼女の目的は昇格だったはず。私に仕えてくれてももう応えることはできません」 「面倒を見てあげるといいんじゃない?昔もそういった気がするわ」 「そうでしたね…ですが、もう彼女はれっきとしたビショップです。これ以上上げることは…」 「何なら悪魔化してみる?アンゼも世代的には悪魔化の力があるはずだけど」 「ええ。ですが、それを彼女は望んでいないようですが」 「そうでしょうね。…しっかりと面倒をみてあげるといいわ」 ふと、ジャスリーさまはアンゼロットが黙考に入りかかっていることに気付く。旅先での気分ではない。気分を転換しよう。そう思い、ちょっと調子を外し気味に、列車の中で歌うにふさわしいとある歌を口ずさみはじめる。 第七話前編・ケトルポリット、ガトー・ケトルポリット塔 さて、今回の旅の一番の目的はタイトル通り紅茶探訪である。そのため、この国を外すことはありえないことだ。 ケトルポリット塔王国。なぜか某堕帝にはケトルポッドとか呼ばれているが。だいたいあってる。 さて、そんな塔王国は世界の茶園とでも言うべきお茶の産地であり、生産量でフォールン領極東島に迫られつつあるものの、品質においては他国の追随を許していない。 エスレーヴァ南東端に存在する、ティーロードの始点であり、ティーロード条約の提唱国でもある。 ちなみに、その軍事演習の異常なほどの活発さも国情としては特筆に値するが、それは今回はどうでもいいことだ。 【紅茶探訪八十日間世界一周 7th Country(1st Part) ケトルポリット編前編、ガトー・ケトルポリット塔】 さて、旅行者二人を乗せたスターテン発ケトルポリット行の船はガトーと呼ばれるギガ・フロートにたどり着く。 「前にも一度来たことはありますけど、こんなギガ・フロートはありませんでしたね」 「前に来たときはどんなだったの?」 「前は…確か、あの塔は高さがまだ32mで、あっちの塔はありませんでしたね」 目測なのにごく普通に正確な数字で高さを表現しているが、星術者ではよくあることらしい。まあ異伝の中はファンタジーなので、奇跡も魔法もあるわけだから仕方がない。ついでに言うと魔法の中にも星術とか幻術とか夢術とかの区分があるが、どう違うのかはわけのわからないことだ。 まあそもそも、この国は様々な亜人が多数存在している、というよりむしろ人類“も”いるというべきレベルの種族のサラダボウル(昔はるつぼって表現が多用されていたが)であるため、魔法がなかろうと十分ファンタジーだという気はするが。 「どの塔が今から行く塔なの?」 「さっき高さが32mといったあの塔ですよ。ちょっと探している本がありましてね」 ケトルポリット塔は現在では300m近くある。いったい何年前に訪れたんだろうといいたいところだが、年齢四桁の彼女たちにとってはよくあることなので、ジャスリーさまも気にしている様子はない。 書店に向かい、本を探す。この国には商書法という法律があるため、よその国では持っているだけで捕まるような本も手に入る。別に今日はそんな本に用事はないが。 手に抱える積み重なった本の山の単位からセンチが抜けようかという頃、アンゼロットはこれだけあれば十分でしょうと言い、書霊族らしい店員に読書の邪魔して申し訳ないとか言って勘定を済ませる。 「すごい量ね。どうするの?」 「こっちに来ている星術者たちに任せますよ。一応、塔の出口まで取りに来る予定になっています。まだちょっと早すぎますが…」 「お待たせしてしまったようですね、評議長。この国の職人が作った車で迎えに上がりました」 「…フィリオリならこうなりますよね。ああ、あなたは初めてでしたか。こっちは擬天使の一人のフィリオリです」 「夢魔姫、ジャスリー・クラルヴェルン陛下ですね。初めまして。評議長がいつもお世話になっているそうで」 「初めまして。擬天使を見たのは初めてですね。…研究は進んでいるようですね」 「フィリオリ。私が評議長だったのはもうかれこれ二千年は前のことですが」 「ええ、初めまして。研究は進んでいますが、やはり先は長そうですね。それと、確かに評議長だったのは二千年前のことですが、しかしアンゼと呼ぶのはそっちの彼女だけでいいでしょう。アンゼロットさま、そっちの荷物をお預かりします。本を回収するついでに送っていきますよ。どちらまで?」 「茶塔まで、ですね」 そうして三人を乗せた自動車は走り出す。ケトルポリットの自動車は単品生産で高コストだが、無茶な改装も受け付けてくれるのが魅力だ。乗り心地は上々で、とても乗りやすい。どういう発注をしたのかは知らないが、これならうちにも一台ほしいところだ。まあ、そもそも東フォルストレアでは道路より線路が先に整備されるので、買うことはたぶんないだろうが。 第七話中編・ケトルポリット、茶塔 学長と擬天使と夢魔姫を乗せた自動車が、塔の林立する奇妙な国を行く。 塔といっても、七十メートルを超える超高層建築物であり、中に都市そのものが入っている都市塔だ。その非現実的な光景に最初驚き、次にため息をつき、最後に物思いに耽るジャスリーさまであった。 「どうしたのですか?」 「いえね。こんな高い都市塔をいくつも建てられるなんて、凄い技術だなって思うの」 「嫉妬しているのですか」 「全く感じないといえば嘘になるわ。スターテンを見たとき、もっと頑張らなくちゃとおもったけど、帝国は百年経ってもこんなアーコロジーは作れないなって思うの」 「いいえ、貴方はこの世界で最高の君主です。この国は特殊な環境と経歴からできたもので、帝国が劣っているわけはありません。気にすることはありませんよ」 「そう言って貰えると助かるわ」 【紅茶探訪八十日間世界一周 7th Country(2nd Part)ケトルポリット編中編、茶塔】 茶塔と呼ばれるその塔は、他の塔と比べてもさらに風変わりな外見と機能を有している。 フィリオリに見送られ、ドールワーグの案内人に塔の中に迎えられた二人は、大量の反射鏡と導光線で照らされ、外のように明るい各階層を見学することになった。 塔の中の空中庭園といった風情の茶農園が、視界に広がる。 金属と硝子、光と水、緑と土、風と電気が集約された、ケトルポリットの聖域。 「ここが、ティーロードの終着点なのね……」 「正確には極東島がありますが、終着点と行って差し支えないでしょうね」 「素敵なところだわ」 「ええ」 ドールワーグの案内人が、片言のクラルヴェルン語とともに指し示す。 指の先にはぽつりと置かれた白い丸テーブルと、座り心地の良さそうな緩やかなカーブを描いた二つの椅子。 「どうぞ」 「ありがとう」 アンゼが引いた椅子に、ジャスリーさまはちょこんと腰掛ける。 アンゼはドールワーグが持ってきた茶器と茶筒を受け取ると、陶磁器のポットとカップにお湯を注ぎ、暖め始める。ティーセットは帝国製だった。 「どれから始めましょうか?」 「じゃあ、リーゼ」 「解りました」 リーゼの茶筒の封が切られ、金のティースプーンを使って茶葉が入れられる。ポットにお湯が入れられ、蓋が閉められた。そのまま茶葉が開き、蒸れるのを待つ至福の数分が過ぎる。 やがて茶こしで茶がらを取り除きながら、二人分の紅茶がカップに注がれた。 「どうぞ、お姫様」 「ありがとう」 今日、ここに辿り着くまでの一ヶ月以上の道のり。二人のその労に報い、疲労を癒すように、紅茶は喉に心地よく染み渡っていく。 「うん。美味しい」 「よいことです」 「世界で一番美味しい紅茶って、なんだか知ってる?」 「知っていますよ。好きな人が自分のために入れてくれる紅茶でしょう」 「ええ。だから、次は私が淹れるわ。どれが良いかしら?」 「ルーエンにしましょうか。正統派らしくミルクも入れて」 第七話後編・ケトルポリット、ツトラウスト塔 瞬く星。静かで清冽な空気。静かに闇に染まった遥か眼下の光景。 ケトルポリット塔王国のツトラウストという塔は、ただでさえツトラウスト山の山腹に位置しているにも関わらず塔王国で最も高い400mという高さを誇っている。 その塔の最上部には天文台がある。そこでは現在大型化のための改修が行われているが、その最上部への立ち入りは特に問題がないらしい。 連盟が関与したためか、なぜか屋上にはティーハウスがある。晴れていれば地上の景色も絶景だろうが、夜になっては地上の様子はうかがい知ることはできない。 まあ、それは光害が少ないという、天文台を立てるに相応しい条件ともなるのだが。 【紅茶探訪八十日間世界一周 7th Country(3rd Part) ケトルポリット編後編、ツトラウスト塔】 茶塔では紅茶は浴びるほど、あるいは飽きるほど飲んだが、あれは正統なアフタヌーンティーの作法には沿い、ついでにテイスティングも兼ねたもので、疲れをとるには不十分。夜のこの時間、ゆったりとリラックスしてアフターディナーティーとすることにした。まあ、そういう言い訳でお茶が飲みたいだけなのだが。 このティーハウスの経営者はフィリオリで、大体は適当な者に任せているらしいが、今日のこの時間帯は暇なので参加することにしたらしい。 「すぐ下の山で採れたOPにキャラメルで着香したもののミルクティーです。どうぞ。…でもアンゼロットさまとミリティーにはいつも敵わないんですよね」 「…甘ったるいですね。淹れ方の技術は…まあ、亀の甲より年の功、ですよ。あなたも長生きすれば大丈夫です」 「いまのアンゼロットさまのレベルを越えたころには二人とも年齢が五桁になるんじゃないですか?それにその理屈だとどこまでかかっても越えられません」 「まあ、ミリティーの紅茶淹れるのには私も敵わないですけどね。あれは別格です」 「…亀の甲より年の功、かあ」 「どうしました?ああ、あなたが確かにこの中で一番年長ですね」 「…そうね。でも、その分アンゼに対して優れた何かがあるかなって」 「まだダウナーな気分続けてるんですか?心配しなくてもあなたは世界一の君主だと思いますよ」 「でも昔、アンゼの大学に入ろうかって言った際、アンゼは別にそんなことしなくていいって言ってくれたじゃない。内緒で入試受けてみたら、全然わけがわからないし」 「まあなんの準備もせずに大学受験して受かったら天才ですよ。受かりたいなら…あなたが学校を出てからいつなのか、というかどこの学校を出たのか知りませんが、さすがにブランクありすぎですねえ。それに、そんなのはあなたには似合いません」 「その時もそういわれた気がするわ」 「そうでしたっけ」 「ええ」 そんな風にして、甘い香りを片手にケトルポリットの夜は更けていき、ついでに甘い香りとくつろいだ雰囲気が多少疲れを持って行った気がした。 まあ、まだ折り返し地点にたどり着いてもいないので、ここから先も疲れるようなことがたくさんあるはずだが。 第八話・ロフィルナ王国編 茶王国からロフィルナまでは蒸気船に乗って約十日の旅路。 その間、ジャスリーさまとアンゼロットは船室の中で大人しくしていなければならない。 二人にとっては些細なことだった。茶塔の市場で買い求めた大量の茶葉が、船倉の中でため込まれているのである。一銘柄につき、一缶。百を超える銘柄。百を超える茶葉の缶。 店員に勧められるまま、白茶や緑茶なども購入した。旅行中のお茶の心配は皆無だし、旅行後もしばらくはレパートリー豊富なティータイムが楽しめるだろう。 数日後のことである。 珍しい光景が船室の中で展開されていた。 ベッドの上で、アンゼロットがジャスリーさまの膝を枕にして横になっているのである。 「外洋の天気は崩れやすいとはきくけど。地中海とは大違いね」 「…そうですね」 船が揺れる。船室の調度品も音を立てて。 船室の外からは、豪雨と雷鳴がひっきりなしに聞こえてくる。 蒸気船は季節外れの嵐の中にいた。 ヨーグ海の大海原に浮かぶ小さな蒸気船は、波に翻弄される木の葉のように揺れる。 「まさか船酔いをするなんて思いもしませんでしたよ」 「ふふ。私もアンゼの弱っているところをみるのは久しぶり。可愛いわ」 「あなたの膝枕も久しぶりですね」 「私のお守りをして無理が祟ったのよ。今日は、このままお休みなさい。have a good dream」 【紅茶探訪八十日間世界一周 8th Country ロフィルナ王国編】 ロフィルナ王国は魔王国の保護下に入って随分と経過するが、政情は安定しており、独立闘争の機運も目立つほどではない。理想的な属国統治といえるだろうか。 「これは魔王国だけでなく、ロフィルナ側の政治的手腕に拠るところも大きいでしょうね」 「そうね。結局は信頼だもの。支配するものされるもの、お互いに愛がなくてはいけないわ」 「そういえば、貴方は同盟を結婚に例えていましたね。同盟は箱庭の墓場。言い得て妙ですね」 「ふふ。国家というのはね、判断力の欠如によって同盟し、忍耐力の欠如によって同盟破棄し、記憶力の欠如によって再同盟するの」 そういった政治的批評は置いておいて、旅行者二人はこの鎖国状態にあるロフィルナ王国、港湾都市トルメンタに、魔王国からの特別な計らいで入国を果たした。 事前に取り寄せていたパンフレットを頼りに、名門寿司屋に足を運ぶ。 奥の畳の座敷席に案内され、座布団に座り、名物である寿司を注文した。 彼女たちには注意しなければならないことがあった。ここロフィルナでは食事におけるマナーが大変厳しいのである。 暴食を忌むために発達したものされるが、いずれも上品さが追及され、食器の持ち方にまで作法が存在し、完食することさえもマナー違反である。 クラルヴェルンの皇帝が食事中にマナー違反で逮捕、という事態は考えたくはなかった。 「でも、クラルヴェルンの宮廷料理にもマナーはあるのでしょう」 卵の載った酢飯を、醤油をつけるかつけないか、数秒ほど判断に迷いつつ、結局つけずに食すアンゼロット。 「うーん。あるけれど、凄く寛容なの。ナイフやフォークの使う順番なんて気にしないし、手を使って食べることも許されてるわ」 ジャスリーさまはサーモンの切り身の載った料理を優雅に口に運ぶ。 「貴方に合わせて作法が作られたんじゃないですか」 「否定できないわね。でも宮廷料理なのだから、君主に合わせるのは仕方ないわ」 今度は中トロだ。アンゼロットはマグロ。 「必要があるのなら、完璧にやってみせるけれど」 「そうですね。貴方はそういう人です。フィンガーボウルの水だって飲んでしまう。あの話はAED諸国の道徳の教科書にも載っていますよ」 「覚えてるわ。あのときは、そうしなきゃいけないと思ったの。でも数十年経っても引き合いにだされるとは思わなかったわね」 「マナーはともかく。これは美味しい。ですね」 アンゼロットが美味しいという。それは海苔で巻かれた酢飯の上に、イクラの卵が置かれた料理であった。 ジャスリーさまも興味深げにイクラを食す。ぷちぷちと口の中で弾ける食感。弾けた瞬間にコクと旨み、そしてイクラ独特の甘味が広がる。そして熱い緑茶で喉を潤した後、『イクラこそがロフィルナの至宝である』という名言を残した。 第九話・極東島編 さて、満載の茶葉を消費しつつヨーグ海を東に進む二人は、次なる寄港地に降り立つ。 フォールン・エンパイア領極東島、シャスティナ・トゥール。その名の通り、はるか東にあり、セラフィナイトの裏側に位置する。 ケッペンの気候区分のひとつ(いや無名世界にケッペンはいないだろうけど)、Af…熱帯雨林気候。 これをなんと言い表すのか、私は知らない。Cでa系統なら温暖、CやDのb系統あたりなら冷涼、Dc,DdとかEなら寒冷とか言うのだが。 【紅茶探訪八十日間世界一周 9th Country 極東島編】 さて、旅行者たちは極東島シャスティナ・トゥールにたどり着いた。宿にはクラルヴェルン商館を利用することもできるだが、お忍びなので適当なホテルに泊まることにした。 荷物を部屋において、二人はのんびり散策することにする。 「極東島の名物っていったら何でしょうねえ?」 「チョコレートとかバナナとか、あと砂糖とか?」 「砂糖といえば、スイートドリームもこの島で仕入れしているんですか?」 「ええ。さっきクラルヴェルン商館の前を通り過ぎた際に見かけたけど、気付かなかったことにしたわ」 「え、気付いていたのに挨拶もしないでいいんですか?」 「まあ、忙しそうだったから」 そんなことを言い合いつつ、適当な喫茶店に入る。茶園直営とか書いているが、まあ要するに観光客向けのアピールだろう。 二人はシンシャなる白茶、極東紅種の紅茶と極東産カカオ豆・コーヒー豆のチョコ&コーヒークッキーを頼むと、話を続けた。 「スイートドリームは実業家だから。私には商売はよくわからないし」 「あなたが頼めば、たいていの人はなんでも譲ってくれそうですね。しかし白茶、でしたか?結構おいしいですね」 「二日酔いに効くらしいけど、船酔いには効くのかしら?」 「船上で塔王国産の白茶を飲んだ際には別に軽減されなかったような気がしますけどね」 「そうかもね」 いつのまにかチョコクッキーがなくなる前にコーヒークッキーがなくなっていた。どう考えてもコーヒークッキーのほうがおいしいので仕方がない。 「紅茶についてはやっぱり塔王国産のカーニャムが一番好きですね」 「そう?これも悪くないと思うけど。舌の肥えたセラフィ人は違うのかしら?」 「なあに、大体の人はこれはカーニャムのFTGFOPだっていっておけばごまかせますよ。まあ、そんなことをする人がいればSSVDに捕まるでしょうが」 第十話・イーゼンステイン王国編 世界一周。エスレーヴァからヨーグ海を越え、ナアドを北上して再びフォルストレアに至る。 ジャスリーさまとアンゼロットは長い船旅を星見とお茶と昔話とともに過ごし、フォルストレア大陸の西端、イーゼンステインに到着した。 数日前、蒸気船のラジオから、ブリュンヒルデ女王とジークフリート卿の新婚旅行出発のニュースを知ったため、お忍びということもあり、王宮には寄らない予定だった。 【紅茶探訪八十日間世界一周 10th Country イーゼンステイン王国編】 予定だったという過去形で記述したのは、二人が今王宮にいるからである。 王国海軍立港で戦乙女グリムゲルデは二人を 偶然 見つけ、客人を持て成すのは王家の義務である〜と力説したのだ。招かれては断る理由もなく、二人は王宮に。そして荷物を置くと、二人のお茶と戦乙女のイーゼン菓子でお茶会が始まる。女三人と書いて姦しいというものである。 「女の子らしくなりたい……? うーん。戦乙女らしくもないお話ですね」 「そうでしょうか?」 「そういうのにうつつを抜かすのは夢魔のお仕事ね」 「でもジャスリーさま。私だって戦乙女である前に女なのです」 むくれるグリムゲルデ。微笑むジャスリーさま。それを眺めるアンゼ。 「今の自分に不満があるというなら、イメージチェンジでもするといいかも」 「イメージチェンジ、ですか……」 「そうね、例えば……ちょっと待っていてね」 ジャスリーさまが席を立つと、アンゼロットに耳打ちする。アンゼロットは怪訝な顔をしつつも自らも立ち上がり、悪戯っぽく笑うジャスリーさまに手を引かれて部屋から出て行く。 一人残されたグリムゲルデの前に二人が戻ってきたのは十数分後のこと。 「……。凄い。可愛い」 グリムゲルデはエステルメイドの衣装を着こなしたアンゼロットに息を呑んだ。 「でしょう?」 得意げに語るジャスリーさま。 「お褒め頂き、光栄の限りです。グリムゲルデ様」 目を伏せ、優雅に一礼するアンゼ。ふりふりのエプロンドレスに、ヘッドドレスまで着用している。 少女性、儚さ、清楚さを夢魔によって引き出された、アンゼという名のお人形。 「服装を変えれば印象も変わるものよ。そして内面にすら影響を与えるの」 「はい。ジャスリーさま。とても勉強に……」 グリムゲルデの瞳に狂気が潜んでいることをジャスリーさまは気がついていたが、あえて何も言わなかった。狂っていない愛など面白くないから。 番外・アン・ディー・フロイデ編 視界が少しだけ明るくなる。 目の前には変わらぬ満月の夜空と、変わらぬ荒原。 そして、…先ほどまではいなかった、月を背にして立つ二人の少女。 その片方が何かを呟くが、意識が遠くなっていき、聞き取ることができなかった。 頭の隅にすこし疑問を感じたが、その疑問が頭を占有する前に、再び視界は闇に閉ざされる。 …こうして、またアン・ディー・フロイデの人口が一人減った。 【紅茶探訪八十日間世界一周外伝 An irrational number アン・ディー・フロイデ編】 アン・ディー・フロイデ・クロウズ。 全ての始まりにして終わりの地。ディスコードの原点。超古代文明が現代文明を遥かに凌ぐ繁栄を迎えていた地。 無数の伝承が残り、無数の呼称を有するそこは、豊富な資源の埋蔵の可能性もあるため、古来から争いが絶えなかった。 しかし現在では、体のいい演習場として、名だたる文明諸国が軍事演習を繰り返し、繰り返し、だた繰り返している。 そして、その文明国には、二人の少女の国、クラルヴェルンとセラフィナイトも含まれている。 「…これはひどいことです」 近くで多数のひどい悪夢がある。夢魔姫ジャスリー・エルツ・クラルヴェルンがそう感じたのは、イーゼンステインからリムジアへ向かう列車でのことだった。そこで、二人は今回の旅行では禁じていた、夢を介しての移動を行うことにした。 そうしてやってきたのがここ、アン・ディー・フロイデ・クロウズ。 本来なら湖の周辺ではアドミン族と呼ばれる種族が観察活動をしていて、事前に配置を知らなければ気付かれずに近づくのは簡単ではないのだが、“偶然にも”アドミン族の観察者たちからもっとも離れた湖畔にたどりついたのだ。星は運命を司るのである。 もっとも、アドミン族の感知能力はとても高いのだが、これもまた“偶然”だれも気付かない。夢魔は夢を司ることで、現実の認識も司れるのである。 そうはいっても、あまり長居をするわけにはいかないだろう。別に見つかったから何か困るわけでもないし、そうなれば打つ手はいくらでもあるが、まあ気分的な問題だ。 「弔ってあげたいところだけど、私にはどうすることもできないわ」 「私がやりますよ。月光花、学名:Helichrysum bracteatum…通俗名:麦藁菊」 少女の呟きに、満月から一筋の月光が舞い降り、その照射先、先ほどの人物の胸の上に一輪の、まるでドライフラワーのような花が咲く。 この花の原産地は東方の某国であり、アン・ディー・フロイデに咲くことはありえない。 「花言葉、常に記憶せよ。平安あれ」 月光が強くなり、先ほどの人物の姿がかききえ、一輪の花だけが残される。 彼女は花を摘み、湖の方向に投げ入れる。 「…そろそろ参りましょう。次の国はリムジア…、確か一人当たり所得でセラフィナイトと世界一を争っているんでしたっけ、観光には悪くなさそうです。…ここに寄ったせいで、少々時間に無理が来ています。早いうちに戻りましょう。少々先を急がないとあなたの国の行事が始まってしまいます」 そうして再び二人の姿がかききえる。残されたのは湖底の一輪のドライフラワーのような花だけだった。 第十一話・リムジア編 世界一周の旅もそろそろ佳境を迎える。イーゼンステインとリムジア大公国は強固な同盟関係にあり、またAED諸国の重要な一角でもある。 特に列車網は重要な軍事的連絡手段であるためか、旅の安全と順調さは今までの比ではなかった。 折良くチケットが手に入った特急列車に乗って、一日でも一時間でも遅れを取り戻そうと、暢気にティータイムに興じていた。 「そういえば、北フォルストレア鉄道の構想を聞いたことがあるわ」 「意外ですね。イーゼンステインからクラルヴェルンまで接続ですか? 途中のカラキジルが了承するとは思えませんが」 「エラキスのブルゴス総統からの手紙があったの。彼がカラキジルと折衝するみたい」 「さらに意外ですね。あの二国は水と油のような関係かと思いましたが」 「そうね。でも皇帝の私よりは、まがりなりにも市民代表の彼が交渉役に相応しいかも。イーゼンステインと帝国が列車を利用するだけでお金が落ちるのだもの。彼も必死だわ」 「なるほど…たしかに。今魔王国が建設中の海峡トンネルの開通も見通してるのかもしれませんね」 【紅茶探訪八十日間世界一周 11th Country リムジア大公国編】 リムジア大公国はエスレーヴァやヨーグ海の国々よりも、クラルヴェルンにより近い。 距離的にもだが、文化的にも。親夢魔国、というくくりに入るかは微妙なところだが、重要産業であるファッションブランドの多くが帝国に進出していることからも注目度が伺える。 「リムジアに来たからには、カリオペとアティマを見ていかないといけないわ」 リムジアでの観光目的地は、ジャスリーさまの一言で決まった。 リッテルダムを連想させる近代的な都市の路地に、ガラスのショーウィンドウが並ぶ。 ウィンドウの奥には様々な衣装で着飾ったマネキンと、装身具、小物、インテリア、あらゆる美の結晶が並ぶ。 カリオペの直営店を訪問し、年若いコーディネーターの少女店員の勧めに従って、様々な衣装を試すジャスリーさま。 「ふむ。…やっぱり貴方は永遠の女の子ということですね。服をとっかえひっかえなんて、とても数千歳の皇帝とは思えません」 「楽しく生きるためには感情は重要よ。それに私は人間の心を弄ぶ悪魔ですもの。喜怒哀楽や、母子の愛情や、暗い欲望も解らなければならないの」 「でもそれは少し、奇抜すぎないですか」 「そんな事無いわ。いえ、それが良いのかしら。ね、えーっと、メルエリエラさん」 「はい! 奇抜と言われることはカリオペでは褒め言葉です!」 ジャスリーさまはコーディネーターの少女の手をとってくるくると回る。 普段は古風なドレスなどのゆったりとした服を着ている夢魔姫だが、ここでは身体の線が強調された現代的に過ぎる衣装を基本に、シルクのドレープや繊細な宝石飾りで着飾った『黒の女王』として存在していた。 「アンゼにも服を紹介してあげて」 「かしこまりました」 「いえ、私はこの間のメイド服で十分ですから」 「ではアティマに参りましょう! メイド服も奥が深いのですよ!」 「……貴方、ここの仕事はどうするのですか」 「よくあることよ。気にしてはいけないわ」 第十二話・エラキス編 内戦で壊滅した地、エラキス。 ブルゴス総統の独裁制の下で、観光業はそれほど推奨されているわけではなく、特別な物産もない。 マイティアの大聖堂を訪れた後、二人の旅行者は早々に宿に戻り、これが最後であろう旅の計画確認をすることにした。 【紅茶探訪八十日間世界一周 12th Country エラキス編】 エラキス産のベルガモットによるフレーバーティー…いわゆるアールグレイを片手に最後の計画確認だ。 「…悪いニュースです。私たちは当初の予定通りマーテル河を遡航していくと10月2日にクラルヴェルンにつくことになります」 「災厄封じの儀式に間に合わないわね…鉄道に切り替えればどうなの?」 「エラキスの鉄道はよく乱れますし、工業化の進展の遅さ同様に列車も遅く、本数も少ないです。レッチェルドルフでの観光をあきらめるなら、間に合わないこともないですが…」 「レッチェルドルフの文具がきれいだっていうから、見てみたかったんだけど…」 「覚悟があるなら、一つだけ。レッチェルドルフでの観光をしつつ、災厄封じに間に合わせるための手はあります」 「覚悟?」 「…飛行機ですよ。飛行船よりなお早く目的地にたどり着けます。ただ、墜落のリスクはかなり大きなものです」 「アンゼがいるから、別に怖くないわ」 「…そうですか。では、記念大学の連中から飛行機を呼んでみます」 そういってアンゼロットは電話をかける。 数時間後、エラキスのとある海岸。 「私たちが乗る飛行機ってのはどんなものなの?」 「さあ…客が二人乗れて、なるべく早いもの、と指定しましたが、具体的な機のスペックは聞いていませんねえ」 とその目の前に、複座単葉の飛行艇が着水する。そのパイロットはそこから降りるとこういった。 「どうもお待たせしたようですね、マスター。頼まれていた通りの飛行機です」 「頼まれていた通りって…三座を頼んだような気がするんだけど」 「ちょうどいい機がなかったんですよ。それに、航空科学研究センターの連中が言うにはそれが一番いいのだそうです。何より、三座では私が夢魔姫様を乗せて運ぶことになってしまいますが、それでは適任とはいえません。姫様を乗せる馬車の手綱を握るのは騎士の役割と相場が決まっていますので」 「…まあいいわ。でもミリティーはどうやって帰るつもり?」 「この国の列車は乱れることもしばしばと聞きます。どれほどのものか見ながら、のんびり帰りますよ」 「上空をのんびり飛んでいて空軍が撃墜に来る、なんて可能性については?」 「外務省からエラキス、レッチェルドルフ、クラルヴェルン宛に連絡はしています。同盟国の国旗が横に書かれていれば誰も撃墜になんてこないでしょうがね。まあそもそも擬天使と空中戦をして勝てる人間などそうそういませんよ。こっちは最新鋭の機体、あっちは旧型機ならなおさらです。…ジャスリーさまも、一度マスターの飛行機捌きを見ておくといいですよ」 「ええ、そうするわ。楽しみね」 「大した楽しみはありませんよ。どうせ安全のために低空飛行です。後ろに乗ってください、行きますよ」 主が操る飛空艇が空へ向かうのを見届けたあと、ミリティア・アロートは微笑み、そして市街地へ向かった。 第十三話・レッチェルドルフ編 故郷へ。二人を乗せた飛行機、形式名Tw-II、愛称ソングオブオールは軽快なプロペラ音とともに空を駆ける。 天気は快晴。眼下に広がるのは帝国式の田園風景と、帝国式の街並み。つい二年前までは帝国の一部であったレッチェルドルフ公爵領だ。言語も通貨も同一。帝国と公国の国民は自由な往来が許されているから、帝国に戻ってきたと言ってもあながち間違いではない。 「アリーセ公爵も、帝国で過ごすことが多いと聞きましたけどね」 「独立は彼らの名誉と、帝国の財政面の都合という面が大きいわね。レッチェルドルフ家の引き受けた帝国の国債は、公国の地価総額を遙かに超えていたし」 「財政赤字にも程があるんじゃないですか」 「ちゃんと経済は回っていて、国民は潤っているから良いのよ」 【紅茶探訪八十日間世界一周 13th Country レッチェルドルフ公国編】 「紙は人類最大の発明の一つですよ」 「そうね。紙もそうだけど、文字もそう。郵便なんてシステムも」 ベルゲンシュタインの文房具店に立ち寄った二人。二人ともその仕事柄インクや万年筆には拘りがあったし、その地位に見合うほどの達筆ぶりだ。 「そういえば最近、タイプライターの手紙がきますね。貴方がキーを打つところをちょっと想像できませんが」 タイプライターの展示品を触りながら、アンゼがふと疑問を口にする。 「口述筆記よ。ソファに寝そべりながらテリブルに打たせるの。あの子は打つの速いし、楽で良いわ」 「これももう少し安くなれば普及するでしょうにね」 「事務用品や計算機の普及は大切よね。援助や投資をしたほうがいいのかしら」 「もう既にアリーセ女公が投資してそうですけどね。最近のレッチェルドルフ印紙社は電話やファクシミリだって作っていると聞きましたよ。計算機も手回し式のものであればセラフィナイトにあります。電気式のものは……実用化はまだまだでしょうね」 「視察で見たことあるわ。パンチカードを吐き出すあの大きい箱でしょう。ニックネームに私の名前を付けられてて驚いたわ」 「あのプロジェクトですか。まあ国家事業ですからね。 戦艦プリンセスジャスリー よりは遙かにましでしょう。耳を疑いましたよ」 「兵器に夢魔の名前をつかうのやめてって頼むの、結構大変だったんだから」 「よいことです。貴方の名前の船が、他国の街を砲撃するなんて想像したくありませんからね」 第十四話・クラルヴェルン編後編 レッチェルドルフを発ち、二人の旅行者を乗せたTw-IIはプロペラを回し南下する。 皇帝搭乗機である以上、時代が違えば航空管制をにぎわせたかもしれないものだが、時代が時代。 航空管制の制度自体が未発達である以上、その旅路は静かなものだ。 秋の朝早く、上空は涼しいというより寒い。下界は朝霧に覆われ、今日も変わらぬ一日を迎えようとしている。 そしてその先に霞む、八十日ぶりに見る古都にして音楽の都メッサーナの街並み、そして右手にはマーテル河の静かな流れ。 旅の終着点。本来ならセラフィナイトを起点に出発した以上、終点はセラフィナイトのはずだ。 が、時間的にもう間もなく夢魔姫として臨まねばならない儀式が始まるはず。 その儀式の意味は、アンゼロットにとっても重要なものである以上、終着点はクラルヴェルンにせざるを得なかった。 スロットルレバーを少し引く。このままマーテル運河近くのとある飛行場まで軽く一飛び。 長い旅の終わりは、もうすぐだ。 【紅茶探訪八十日間世界一周 14th(or 2nd) Country クラルヴェルン編―それはただ一つ千年続いた君主国】 「長いようで短い旅だったわね」 「そうですね。また千年ぐらい経ったらもう一度世界一周でもしてみます?」 「千年後には多分八十日どころか一週間とかからずに一周できるようになりそうね」 「百年あれば一週間かからないでしょうが、千年後なら一日で行けるかもしれません。それまでこの文明が崩壊しなければの話ですが」 二人は今回かなり平穏な時間を過ごしてきたが、その間も世界情勢は動き、時に緊張に軋む音を立てている。目下の懸案はやはりレプンコタン会議でのティーロード諸国とルヴィド=エドとの権益争いと、各地に蔓延する無政府主義・社会主義革命政権の誕生の二つだろう。 「しかし結構いろんな国を見てきましたね。政治体制もいろいろです」 「アンゼから見るとどう?いい君主とか見つけた?」 「その調子だともうあなたが最高の君主ですとも言う必要はなさそうですね。まあ私が思うにはあなたが最高の君主ですけど」 「領土の拡大だとフォールン・エンパイアの魔王には敵わないわ」 「二番手探しですか?私はヴォールグリュックのジークリット女王を推しますけどね。産業革命の立役者ですし、後世で教科書に載りそうです。魔王は確かに現状では領土を相当拡大しましたが、先行きが読めませんから。たぶん、ヨーグ海での影響力を今後も拡大し続けるだろうとは思いますが、賭けるには少々ハイリスクだと思いますね」 「リスクっていうならブリュンヒルデ女王とかどう?長く安定した統治をしているようだけど」 「彼女は確かにこれまで安定した統治を続けてきましたが、ニーベルンゲンという保護国を得たのが少々気になるところですね。ロフィルナは近代体制に適応しつつあるようでしたし、調べた限りでは首相が開明的な人物らしいですのでうまくやっていくでしょうが、ニーベルンゲンにそれができるかどうか。あそこには長命の有翼種がいるとか聞きましたが、豊富な経験は時には適応力の喪失に転化することがあります。…豊富な経験はよいことですが、ただの老害にはなりたくないですね。そういう意味では時にあなたが羨ましくなることもありますよ」 「でも北フォルストレアは彼女に任せておいても問題ないんじゃない?あとはレッチェルドルフのアリーセ女公とか」 「メルエリエラ大公を忘れていませんか?リムジアのあの軍事力…運用法次第では後世の評価にはむしろイーゼンステインより可能性があるかもしれません。今の彼女は少々天真爛漫にも程がありますし、現状ではたぶん行政府の官僚が優秀という話なんでしょうけどね。アリーセ女公は確かに金融分野の能力は相当のものですが、全体としての統治能力では少々厳しい評価を付けざるをえないと思いますね。北フォルストレア社会主義共和国というものが誕生した以上、これからのレッチェルドルフには防衛力が必要です。…彼女には、その方面では少々厳しいかもしれません。あとは…ティーロードだとケトルポリットのアーカイブ総塔主とか、スターテンのシフォン総督とかでしょうか?」 「あっちのほうの政治体制はよくわからないわ。ケトルポリットはあのいろいろな亜人たちが、スターテンは商人たちが、それぞれ自主的にまとめているという印象を感じるけど」 「よくわからないというならルヴィド=エドの政治体制のほうがよっぽど謎に包まれていますけどね。あとはコタンも、何があったのか今では検証する手立てはありませんが、あれを後世の歴史家がどう考えるか、どうなんでしょうね」 「じゃあ君主制じゃない国の元首ならだれか有能なのいないかしら?」 「そもそも共和制(注:ここでは君主制ではないという程度の意味)国家で連盟以外にまともなのがあんまりないんですよね。列強以上…いえ、準列強クラスを含めたとしても共和制国家なのはそもそも連盟しかありませんし。クルドンは悪くはないのですが、アディリク合衆国というのは彼らには荷が重すぎるとは思います」 「連盟の元首…えーと、フィールズ議長、だったっけ?確かジークリット女王即位式のときにスピーチしているのを見かけたくらいだけど、優秀なの?」 「んー…まあ選定は私の半分趣味みたいなものですからねえ。悪くはないんですけど、やはりこの世界ではリリスに鍛えられてないからか、今まで出てきた君主たちの中に混じれば霞んでしまいますね。理由についてはあまり認めたくはないですけれども。そうですね、ほかに誰もいないという意味で…いや、クルドンの前大統領あたりも確かに人気はあるのですが、少々先の読めていないあたりを見るとまあ順位付けを入れ替えるには至らないでしょう。そういうわけで、うちの議長が共和制国家最高の元首ですよ。ただほかに誰もいないってだけですけどね」 そんなことを話しているうちに飛行場が近づく。そこに降り立てば、長い旅はようやく終わる。アンゼロットはそう思ったのだが、ジャスリーさまはとんでもないことを言い出した。 「ねえ、アンゼ。このままセラフィナイトまで行って戻ってくることは不可能かしら?」 「むちゃくちゃ言ってくれますね。災厄封じに遅れますよ」 「遅れるのは何時間ほどになりそう?」 「まあ一時間ぐらいですかね。しかし…」 「最初の二時間には結構儀礼的な部分も多いわ。あとに回すことは可能じゃない?」 「…大丈夫なんですか?」 ジャスリーさまはアンゼロットに軽く押されていた操縦桿を引き戻す。それに合わせて機首が上を向き、慌ててアンゼロットは機首を水平に戻す。 「…本当に大丈夫なんでしょうね?」 「ふふ。危ないじゃないですか、とは言わないのね」 どうせ結果は最初から見えていたようなものだ。アンゼロットは何も言わず、操縦桿を回す。その動きにTw-IIが応じ、二人には緩やかに力がかかる。そうして飛行艇Tw-II Song of Allは朝日を背中に浴びながら、西へ、セラフィナイトへと向かっていった。 第十五話・セラフィナイト編後編 紅茶探訪八十日間世界一周。その長い旅の八十日目にして、ついに二人の乗った飛行機は始発点にして終着点の国家である、セラフィナイト星術者連盟に辿り着く。 帝国が千年の帝国というのであれば、セラフィナイトは千年の共和国といえる。統一の時期だけを見れば、むしろセラフィナイトの方が古いだろう。 エタブリッシェの空港管制に連絡を入れ、その誘導のもとでTw-IIは優雅に着陸する。 最初にセラフィナイトの地を踏んだのはジャスリーさま。そして程なくアンゼロットも操縦席からすとんと飛び降り、埃を払う。 【紅茶探訪八十日間世界一周 15th(or 1st) Country セラフィナイト編―それはただ一つ千年続いた共和国】 「お疲れ様」 「お疲れ様でした」 「これで、八十日間世界一周達成ね」 旅券にスタンプされた各国の出入国査証の印をお互いに見せ合い、感慨に耽る二人。 「有り難うアンゼ。この旅券と思い出は、私の宝物」 「お互い様です」 アンゼロットは腕時計を見やる。予想より悪い数字を見て顔をしかめた。 「ですが、もう時間的余裕がありません。今からとんぼ返りして、メッサーナに戻らなければ」 「アンゼ、ぎゅっとさせて?」 「はい?」 がしっ。そんな擬音が聞こえるかのようにアンゼを強く抱きしめる。 「……ここに来たいと言ったのはね、一分でも一秒でもアンゼと一緒にいたかったから」 「……」 「隣の国に居るとわかっても、別れるのは辛いわ」 「……」 「アンゼロット。愛しています。愛しているの」 「それは、知っています」 「貴方を虜にして、私だけのものにしたいの」 「貴方の虜になった私など、嫌いでしょう」 「そうかもしれないわ」 「貴方の虜にはなりません」 「そう」 「でも、私は私なりに受け止めてあげます」 一呼吸置いて、唇を交わす二人。 愛を囁き続ける夢魔姫。囁きを受け止める幻月の学徒。 この天使と悪魔の、危うい愛の均衡はもう数千年続いている。 それは二人にとっては幸福に満ち、もっとも愛しく思える関係だった。 「……もう完全に、間に合いませんね」 「いいのよ。私が存在を賭して、ディスコードの一つや二つ、なんとかしてみせる」 「貴方だけに危険を犯せられません。私も手伝いますよ。サイレスの杖もありますし」 「お帰りなさい。ジャスリーさま。アンゼロット首相」 完全なタイムオーバーに落胆する二人に、意外な声がかかる。 それはスーツを着た少女といった姿の夢魔で、ここにはいないはずの存在だった。 「ピースフル、今日は厄災封じの儀式でしょう。どうしてここにいるの?」 「儀式は明日です。本日は9月30日ですから」 「え…?」 「……忘れていました。東回り航路だから」 「日付変更線越えというオチですか? お約束ですね」 こうして、二人の旅は終着した。 訪問した国と地域は13。 道のりは蒸気船、鉄道、徒歩、飛行船、飛行機などを乗り継ぎ約4万km。 所用日数は八十日だった。
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第一幕 セラフィナイトサイド 広大な植民地帝国を擁し、その王冠が太陽の下で輝かない時などないと言われるフォルストレアの大国、エラキス。 その北部で共和派が反乱を起こしたとの知らせが入っても、フォルストレアの多くの人々はこう思っていた。 すなわち、内部にほかにも幾つもの不和を抱えていようと、本国と植民地帝国全体の忠誠はあくまで王冠の下にあり、反乱は風前の灯に過ぎない、と。 その共和派の支援要請を受け、エラキスの南で隣接している国家セラフィナイトがこの内乱に介入するとの知らせも、こう思われるにすぎなかった。 すなわち、いくら産業革命を達成し工業力でエラキスを追い越し、優れた軍事技術を持とうと、セラフィナイト軍がはるばる南からやってきて共和派の拠点となっている北部に到達したころには、その共和派は既にこの世に存在しなくなっており、あとはセラフィナイトは巨人に刃を向けた愚か者の末路を辿るだけだろう、と。 しかし…セラフィナイト軍が産業革命により発明された多くの手段を用い、瞬く間に北部の共和派との合流を果たし、共和派が本国内の勢力図を二分するようになった、その時からようやく多くの人々は産業革命の意味を理解しはじめることになったのである。 …しかし、これによりセラフィナイトは産業革命以後フォルストレアに築かれていた均衡を打ち砕き、クラルヴェルンの介入を招くことになった。多くの人々は行き着くところに行きつき、そしてこうなるだろうと思った。 すなわち、今度こそセラフィナイトと共和派の命運が尽きたときであろう、と。 そうではなかった。そう話は単純にはいかなかった。いや、いくはずがなかった。 産業革命を達成した国と達成していない国の差を理解しただけでは、産業革命がもたらしたもののすべてを理解したことにはならない。 産業革命を達成した国同士が衝突し、その工業力が真価を発揮したとき、いったいどれほどの悲劇が生まれるか。 産業革命により近代が幕を開けてはや五十年。ようやく、その時が近づきつつあった。 【エラキス干渉戦争の悲劇 第一幕 この戦争が終わったら、またお茶会を】 ルヴァ歴-27年、6月13日。エラキス国内で共和派が最初の反乱を起こし、歴史学上ではこれを以て第一次エラキス内戦の開始となる。 7月30日。セラフィナイトはエラキス内戦に際しエラキス共和派に立って介入することを表明、参戦。 9月22日。クラルヴェルンはエラキス国王派に立って介入することを表明、参戦。 9月23日。クラルヴェルン軍はエラキス東部の国境からエラキス領内へ進入、これより本格的な戦争が開始される。 「マスター、とうとうクラルヴェルンと戦争になるのですね。…これで本当にいいのですか?今ならまだ、容易に引き返せますが…」 「そうですが、しかたないですね。…この世界は、近代戦をまだ知らないのです。そして、もしも今この戦争から手を引けば、私の手に余るようになったその瞬間に再び戦火が灯る。…状況が制御できるうちに、できるだけの手を打って、厭戦感情を高め、それを戦後にクラルヴェルンとの友好ムードに転換する。…それがこの二つの工業国を激突させずに済ませる、一番無難な方法です。…少なくとも、今までに思いつけた中では」 そう言って嘆息するアンゼロットに、本を片手に調べ物をしながら耳を傾けていたミュリエルが口を挟む。 「この戦争を回避しつつクラルヴェルンとの友好を維持すること。…不可能なのですか?」 「可能です、が…。その場合、早晩工業化を達成するであろうルヴィド=エド、ヴォールグリュック、そしてエラキス。これら諸国が工業化を達成した後でも誰も近代戦を経験しないままだと、私はおろか彼女にも制御不可能な情勢になります。何より、それを実行に移すには、少々目立つ方策を取らなければなりません。…私は、最低でもあと三千年は一国を仕切る立場から離れていたいのですよ」 「…アンゼ」 「言いたいことはわかります、ミュリエル。確かにこの制御された戦争、いかに制御されているとはいえ、クラルヴェルンの騎士、エラキスの住民、セラフィナイトの軍人、彼らの中から死者を出すことになるでしょう。…しかし、あなたも知っているでしょう、あのいくつもの種族が相互に憎しみ対立しあう世界を。何より、そもそも本来この戦争は起こるべくして起こる戦争なのですから」 「確かにあの世界は悲劇でした。ですが、大きな悲劇を防ぐために小さな悲劇を、というのは…」 「大きな悲劇ではありません。そこにあるのは惨劇で、そして惨劇の代わりに今起きようとしているのは、小さな悲劇などではなく紛れもなく大きな悲劇です。…もちろん、制御不可能なゆえの奇跡に期待をかけて待つのもまた一つの手であることは間違っていませんが。ミリティー、戦況の予想の結論は?」 「既に防御陣は完成していますし、帝国軍の動員状況を見る限りでは、向こうは騎兵隊による突撃で来るでしょう。であるからして、緒戦においては連盟は安定して防御を続けるでしょう」 「そして、塹壕戦の概念を帝国軍が取り入れ、戦いが長期化の様相を呈し始めた後は、工業力で優れるクラルヴェルンが緩やかに戦線を前進させていく、ですか」 「ですね。しかし戦線が下がり山岳地帯に差し掛かれば、そこから先は再びセラフィナイトの独擅場。こうなれば、もうどちらもそこから戦線を押すことはできず、引きも進みもできなくなる。そして厭戦感情が限界に達し、エラキスの勢力が折れて介入の意義がうしなわれるなり介入の支持者がいなくなるなりして、戦争は終わる。…変わりませんね」 「戦線が山岳地帯に差し掛かって消耗戦に至る前に、参戦者すべての厭戦感情を十分に上げて、できるだけ少ない損害でこの戦争を終わらせること。…結局、これよりいいアイデアは出ませんでしたか。…とにかく、早く終わらせることですね」 「しかし、それも結構難しい話じゃないですか?渡りかけた橋を引き返せというようなものですよ」 「引き時が読めない人間をのさばらせているようでは、世界最強の彼女の称号を預けてはおけませんけどね?」 語尾を疑問形にしているが、これは実質的な反語だろう。話は終わった、とばかりにティーカップを手にとって、あとは静かなお茶会である。 クラルヴェルンサイド 「やっぱりセラフィナイトとの戦争は避けられないのかしら。……気が進まないわ」 ジャスリー皇帝は憂鬱な声で周囲の重臣たちを困惑させる。 「恐れながら、かの国のエラキス進出はフォルストレアにとっても帝国にとっても脅威となりましょう。今しばらくは天秤状態を維持するべきかと」 時の宰相が恐る恐る奏上する。皇帝の意思は常に宰相らと帝国臣民と共にあった。しかし帝国民の望みと、皇帝の望みが食い違ったとき、帝国はどちらに進めばよいのだろうか? 「帝国内ではエラキスを救援すべしとの声が日増しに高まっております。エラキス王族派からも正式に救援要請が発せられました。どうか、ご裁可を」 普段は和やかに進むはずの会議の空気が、今日はどんよりとした憂鬱な空気となっている。 沈黙がしばらく続いた後、ジャスリーさまは沈痛な面持ちで声を出した。 「裁可はするわ。将軍には帝国軍をお任せします。勝てるのでしょうね?」 「必要十分な戦力を投入し、入念な戦争計画により三週間で敵戦力を駆逐します」 将軍は威風堂々と、絶対の自信を持って答える。 「夢魔顕現祭までには凱旋できるでしょう」 「そう。将軍の言うことだから信頼しています。でも……、クルーエル」 「クルーエルドリーム、此所に」 「あの子はなんと?」 「申し上げます。『この度の戦いはセラフィナイト市民の決断である。私は彼らの決定を尊重する』以上です」 「そう……。では伝えて。『帝国の介入は帝国民自身の決断。私は彼らの決定を尊重すると』」 「畏まりました」 【エラキス干渉戦争の悲劇 クラルヴェルンside-1 黒騎士の降臨】 「陛下」 「あらピースフル。どうしたの?」 「ご機嫌ですね。御前会議の時は不機嫌だったのに」 「ええ。庭で、観光客からお花を貰ったの」 「ムラサキツユノクサですか。確かセラフィナイトの名物」 「あの国にも反戦派はいるのですって。だから話し合いで解決っていうのは、まだ捨てた物じゃないのかなって」 「…陛下」 「ほんの僅かだけど希望が持てたの。それが、なんだかとても嬉しいの」 花束から一本の花を抜き取り、ピースフルの胸ポケットに挿すジャスリーさま。 ピースフルの目には、普段圧倒的なカリスマを放つ夢魔姫が、たとえて言うなら寂しげな母親の様にも見えた。 ……。 赤の回廊を歩きながら、ピースフルは考える。 (確かに変わられたわ。あんなぬるい発言を堂々となさるなんて) (悪魔の王が人間に情を入れるなど、何の誉れになるでしょうね……) (これではアンゼロットはおろか、他の悪魔たちにも足下を救われかねないかも……) (開戦の日まであと僅か。彼女の背後には何かがいる。月と星の天使? 解らない。でも天使だからって私達の安眠を妨げて良いはずがないわ。ええ、これは 高貴なる抵抗 。エステル魂を見せてあげる) 意を決したピースフルは自室に転がり込むと、正装して部屋を出る。夢魔としての正装であり、エステルプラッテの姫王としての正装。 夢遊宮の一角、誰にも使われていない「召喚の間」の扉を硬く閉ざし、チョークで床に複雑な魔方陣を書き始める。四角形を組み合わせた八芒星は正統な開門魔術の業だ。 あらかた魔方陣を引き終わると、ピースフルは歌うように詠唱する。 「平安の夢にして、プリンセス・オブ・エステルプラッテ・エレオノーラは、いにしえの盟約に基づいてかのごとく要請する。地獄の傭兵団の地上への顕現を! エステルの民に、兵に、降臨せよ黒騎士たち! エステルの乙女を護り賜え! 約束の地ヴァルダムは汝らのもの! 来たれ、傭兵将ベロース!」 そして争乱の門は開門され、この戦役の影の主役がこの世界に顕現した。 幕間1 遠い星の光では、氷を融かすことはできないかもしれないけど 「戦争、ですか…」 「付き合わせて悪いですね、ミュリエル。何ならしばらくここには来ずに静かにしていてもいいんですよ」 「いいんです、アンゼロット。…私にもそれ以外の解を見つけられなかったから」 「…それなら、一つ頼まれてくれませんか?」 「話によりますね」 「そういうと思いました。簡単な話です。えーと…」 【エラキス干渉戦争の悲劇 Seraphinite side-Interlude1 遠い星の光では、氷を融かすことはできないかもしれないけど】 ルヴァ歴-27年9月19日、リーゼロッテ港。 当時はクロノクリア急行鉄道はまだ影も形もなく、そもそもその原型となったエスレーヴァ横断鉄道すらも通じておらず、セラフィナイトとクラルヴェルンを結ぶ山岳鉄道はあったが、当時はまだそれほど速いものではなかった。 …今日もマーテル河の静かな流れは変わらず、緊張状態にあるとはいえセラフィナイト国民がクラルヴェルンに入国することに支障はない。 結局この戦争において最後まで両国はエラキスでそれぞれ違う勢力を正統政府としてその主権を承認し、反対側の勢力による反乱の鎮圧を支援するという形式をとり、両国間で交戦状態にはならなかったため、セラフィナイトとクラルヴェルンの国境自体では緊張が続けど両軍ともにらみ合うだけだったのだが、そもそもこの時点では両国は軍事力をぶつけてすらいない。 セラフィナイトのパスポートを提示すれば、何の問題もなくクラルヴェルン行きの船に乗ることができた。 (なるほど、悪魔の魔力を悪魔の前から隠し通すことは無理でも、天使の力ならば人間にごまかせないこともない、と…) (どうしました、私のサポートが心配ですか?) 頭の中の声に割り込む声。今の状態を考えれば当然といえば当然といえるかもしれない。 (いえ、そんなことはありませんが…。…しかし、本当に隠しきれるでしょうか?) (仮に隠し切れなければ、その時は天使として接すればいいんですよ。まあ、あなたが頑張ることはありません。力を入れず、気楽に接してあげてください) (ええ、大丈夫です) 「マスター。本当に大丈夫なんですかね?確かに天使は精神生命体、それを擬することは擬天使を人間に擬するよりもたやすいですが、何なら私の学生の中でも優秀なのを持ってきますが」 「いや、ミュリエルに行ってもらうのが一番いいんですよ。この研究については、少なくともその検証がすむまではミュリエルには見せない方が、ね」 「…もしかして、例のあれですか?」 「ええ。“ヴァレフォール再生に関する簡潔な報告”」 「“ソレイユ、リュンヌ、ミュリエルの三天使の力を結集すれば、全球凍結状態からの惑星環境回復は可能”、でしたっけ」 「そう。“どこかにいる神を探して連れ戻すことに成功する前に、世界が全て死に絶える確率は99.32%。それに比して即座にこの回復活動を実行に移した場合の成功率は72%である。神を探すより自力での再生に賭けた方がよい”」 「“具体的な方策を示す。地表環境から推定して、まずはこれらの火山の活動を最大レベルにすること。次に…”」 「“…以上により、惑星環境は回復し、日射は低いものの文明活動は可能となる。”やっぱり、彼女に早く見せてあげたほうがいいんじゃないですか?」 「そうはいかないですね。“この方策を実行した場合の損害は、現在の人口の89%、人類の現財産の99.4%にのぼるだろう。その他、以下の損害が…”ミュリエルがこれをどう思うか、さて…」 「とりあえず、検証作業を始めましょうか。ミュリエルが言っていた状況の確認からでしたっけ?」 「そうですね」 クラルヴェルン領内、シャトラト山脈の麓のマーテル河沿いの小さな町で一泊。 そこから鉄道に揺られること数時間、クラルヴェルン帝国の帝都メッサーナの駅に到着。 さらに乗り換え、十数分揺られ、ようやく目的地、クラルヴェルン帝国の宮殿たる夢遊宮にたどりつく。 アンゼロットには「せっかくだから観光も兼ねるといいんじゃないですか、あそこの芸術作品は一度見る価値はあります」と聞いていたので、駅で買ったガイドブック片手に適当に歩き回り、その夢魔に支えられた文化を再確認して、落ち着くと一つ考える。 (さて…ここから先が問題ですね。どうしたものか) と、あたりを見渡せば…あっさり、目的の人物、アンゼロット曰く「世界最強の彼女」であるジャスリー・クラルヴェルン皇帝の姿を見かける。 皇帝にそうそう近づけるものではないはずだが…これこそがアンゼロットの言っていたサポートというわけだ。 しかしそんなことはどうでもよく、とにかくミュリエルはその姿を目にしたとき、戦いを好まない天使として、何を話すべきかを一瞬のうちに思いついた。 …そこで何が話されたかは、ジャスリーさまとミュリエル以外は誰も知らないことである。 第二幕 クラルヴェルンサイド 気がつくとアンゼロットは記念大学のフロアに立ちすくんでいた。 (……ここは? 夢の世界、ですか) 「その通りだ」 男の声に振り返ると、そこには全身を黒い甲冑に身を包んだ騎士が腕を組んで立っている。 「貴方は…… 戦車 ベロース……ですか」 「フッ、 輝月 アンゼロットよ。今は幻月の学徒と名乗っていたか? 最後に諸侯会議が開かれたのは千年以上前だな。久しいものだ」 「傭兵将の貴方がここにいると言うことは、あの人か誰かに喚ばれたということでしょうか?」 「そういうことだ。この度の戦役は俺がお相手しよう。その前に挨拶をしようと思ってな」 「私は貴方と戦うつもりはありませんよ。それにこの惑星では世界律により魔法の行使は禁じられています。今回の戦いは人間同士の戦いです」 「知っている。だがセラフィナイト軍に智恵を授けたものがいるように、クラルヴェルン軍にも智恵を授ける者がいなくては不公平であろう?」 「ふむ、困りましたね……」 【エラキス干渉戦争の悲劇 クラルヴェルンside-2 黒騎士の来訪】 「アンゼロット。お前の目的とは何だ?」 「目的とは?」 「召喚を受け、情勢を確認した時、俺は違和感を感じた。お前の意図が見えないのだ」 「セラフィナイトのエラキス内戦への介入。なるほど、人間の視点ではもっともらしい理由付けがある。何も知らない民達を納得させるようには できあがっている 。」 「私が戦争をするように仕向けたわけではありません、エラキスへの干渉はセラフィナイトの投票によるもの」 「誤魔化すな、真実の守護者よ。理知的なセラフィナイト人は戦争を望まない。良くて無傷で帰ってこれるだけの、悪くて毒ガスにより苦しみ悶えながら戦死するような戦場に、誰が好きこのんで行くものか」 「戦争を望む者がいたのだよ。その者の影響により世論では主戦論が勃興し、自分たちは攻撃されている、生き残るには行動しかないと繰り返し主張された。そして反対するものは愛国心が足りないと糾弾されるのだ」 「セラフィナイトの覇権の確立? 帝国との全面戦争を望んでいない様に思える。違う」 「夢魔帝国に取って変わる存在になろうと試みたのか? そのような気負いは感じられない。違う」 「天使と組んで敵対種族を駆逐する? エラキスに守護悪魔の存在は感じなかった。これも違う」 「夢魔どもに絶望を提供しようとしたのか? 夢魔姫の様子からしてそれも違う」 「お前の研究とやらの為か? お前の研究は天使に関するものであったはず。これも違う」 「俺が思いつく限りでは、お前と夢魔姫が争う理由がない」 「アンゼロットよ、お前の望む世界とは?」 「……いいでしょう。制御された破壊と、世界への近代戦の教育。それによる厭戦感情の醸成。大破壊の回避。これだけ言えば理解して頂けますか?」 「……」 「ふむ、これは、何という……」 「戦争とは野火の様なもの。制御などできぬよ。そもそも無能な為政者は制御できると確信して戦争を起こすものだ。小破壊のつもりが、大破壊の呼び水になることも起こりえる」 「貴方の仰ることは解ります。それでも、私の予測ではその確率は低いものと算出しました。これは世界にとって必要なこと。あの人は優しすぎる。大破壊には耐えられないでしょう。だから、今回はあの人には泣いて貰います」 「ククク……なるほどなるほど。解った。理解したぞ。合点がいった」 「そうですか、それはありがとうございます」 「フッ、まあそう腐るな。互いに最善を尽くそうではないか。夢魔姫と、永遠ならざる平和のために」 セラフィナイトサイド 花畑に机と椅子を並べてお茶会…などというのは、そうそう見かけない風景であるが、彼女たちにとっては日常のことだ。 アーバスノット天文台で、のんびりとお茶を楽しむ三人。牧歌的な風景で、ある意味ではこれがセラフィナイトの縮図といえるだろう。 マリー・テレーズ、フィリオリ、アーナルダ。擬天使という魔法的種族の一種に属する彼女たちは、その長たるアンゼロットの下で、クラルヴェルンの夢魔と同じように千年セラフィナイトの守護者として行動してきた。 「ふむ。どうも厄介な介入が入ってきたようだな」 「アンゼロットさまが言っていた“ポーンに紛れてキングが混じっている”っていうことですか?わたしにはどうもよくわかりませんが」 「フィリオリ。いくらなんでもその弁は世間離れが過ぎるだろう」 「そういわれてもね、テレーズ。今回の戦争におけるわたしたちの役割はこれ以上ないし」 「何を言う、フィリオリ。今回の戦争はアンゼロット様の言うように割れかけたガラス盤の上で行われるもの。如何に我らが主にして師たるアンゼロット様であれ、一人では気が疲れる。手伝えることはいくらでもあるだろう」 そういってアーナルダは机の上に描かれた国章たる星図に手をかざす。学問の門が開かれ、魔力は机に組み込まれたシステムに流し込まれる。 セラフィナイトの国章となっているこの星図には少なくとも三桁の魔法陣が重畳されている。そしてこの机は天体の運行を空中に投影する魔法装置。この世界の法則は魔法と相容れないので、あまり役に立っていないが。 とにかく魔法装置は起動し、そして紅茶の湯気を溶かし込みながら、結像が完了し、空中に映像が投影される。 【エラキス干渉戦争の悲劇 第二幕、星と月の側より 状況を再確認する簡単なお仕事】 「…チェス盤ですか?黒がもう次で詰みますけど」 「すまない、指定を間違えた。それは昨日ミリティアさまと指したときのものだ。正しい映像は…」 「え、どっちがどっちですか?」 「聞くまでもないでしょう、フィリオリ」 「それ以上言うな…。あー、これだ」 チェス盤の代わりに投影されたのは、エラキス内戦の戦況。防衛網を構築中のセラフィナイト軍とエラキス共和派、西部で体制立て直しを図るエラキス国王派、東のエラキス国境を越えてエラキス領内に進入しつつあるクラルヴェルン軍。 その南に目を向ければ、セラフィナイトとクラルヴェルンの国境線上で互いを警戒する両軍。エラキスに向かっている部隊よりもこちらの部隊の方が多く、そしてここでは両軍が攻撃することなく睨み合うだけ。このまま戦争終結までここに両軍のなるべく多くの部隊を留めて睨み合わせておければ戦禍を抑えられるだろうが、下手をしてここで撃ち合いが始まれば即座に制御不能になるからそう簡単にはいくまい。そういった可能性を最小限にとどめるのが彼女たちの今最も重要な任務で、逆にエラキス国内の戦況については一切干渉しないことにしている。 「アーナルダ、戦力分析でも始めるつもりですか?軍部にその辺は一任するのではありませんでしたっけ」 「それは確かにそうだ。そうではなく、黒騎士がなにをしようとしているのかどうもわからなくてな」 「戦士の魂は天使には理解できない、MVの時に誰かがそんなことを言っていませんでしたか」 「いや、その魂に共感し同情することはできなくとも、その論理基盤を理解することはできるでしょう」 「…フィリオリの言うことにも理はある。しかし我らに課された課題はそれほど多くない。その余裕を向ける価値はあるだろう」 「100%の予防という、少々気疲れする課題ですけどね。まあ私は賛成ですが」 「あれ、いつのまに賛成反対を表明するルールになっているんですか?いや、私も付き合いますけど」 第三幕 クラルヴェルンサイド 月明かりの下で。 軍馬に騎乗した二人の男が戦場跡を歩く。 足下には数百の帝国兵の無残な亡骸。 栄光を担う帝国騎士の銃剣騎兵団が、セラフィナイトの機関銃陣地に果敢にも突撃し、そして近代戦の洗礼を受けて倒れ伏した結果である。 両軍の初戦に於いて、帝国軍は完全にセラフィナイト軍に遅れを取った。 数ヶ月とはいえど、セラフィナイト軍はエラキス軍を相手に戦闘経験を積んでおり、その僅かな差がこれほど一方的な勝敗の明暗を分けたのだ。 「倒れた者を犠牲と思うな。盾と思え。それはお前も同じ事だ」 「は、はい……」 平然と歩く黒騎士の後ろを、帝国軍の若き兵士が追う。 「写真機の用意を。よく見ておくのだ。そして本国人やセラフィナイト人にも教えてやれ。お前達の言論が結実し、地獄の釜の口が開かれたのだと」 「この光景を公開しろと? それは彼らの名誉に反します」 「名誉には反さない。騎士の時代は終わったが、こいつらは最後の騎士として勇敢に戦った。こいつらの背には傷がない。それを伝えてやれ、ヴィルヘルム・シュタイニッツ」 【エラキス干渉戦争の悲劇 クラルヴェルンside-3 黒騎士の進撃】 エステル精鋭騎兵部隊、壊滅。 クラルヴェルン帝国軍の全軍は動揺し、セラフィナイトの攻撃に対応できないまま被害を拡大。後退に後退を重ねた。 セラフィナイト軍はこの期を逃さぬと追撃に移った。 しかし、 一人のエステル人将校が、セラフィナイト軍の前に立ち塞がった。 帝国軍大佐。 ジャスリー皇帝より煉獄のマージナイトの称号を与えられた、出身背景一切不明の無名の軍人。 傭兵将。あるいは黒騎士。 魔斧バシリコスの所持者。 後にクラルヴェルン軍制改革を行い、国軍をイーゼンステインと互角に戦いうるまでその練度を上げた、近代クラルヴェルン屈指の英雄。 ベロース・エルツ・ヴァルダムである。 「逃げるな! 等高線に沿って塹壕を掘れ!」 「敵後方を砲撃し、通信を寸断せよ!」 「前へ進め!!」 「敵の進撃を阻み、戦線を構築するのだ!」 たちまち士気と勇気を取り戻すクラルヴェルン兵。 常に高所に陣取って冷静な射撃を浴びせるエステルプラッテ兵。 思わぬ反撃に前進を停止するセラフィナイト兵。 開戦の僅か二日目にして、戦線は膠着。 かくして両軍は塹壕を掘って対峙した。 速戦即決を企画した両軍は、その目論見を違いに潰し合い、凄惨な塹壕戦に移行した。 「全砲門開け! 戦場で最も多く敵を殺すのは砲兵なのだ!」 ベロース・エルツ・ヴァルダム将軍の声が戦場に響く。自信満々な、そして矢継ぎ早に下される的確な指示の数々は、下士官や末端の兵士に圧倒的に支持された。 「全軍突撃!!」 将軍の号令に、兵士達が命を賭して危険な攻撃に移る。 塹壕から飛び出した帝国兵に、セラフィナイト陣地から濃密な射線が降り注ぐ。 戦陣を切るのはエステルプラッテ兵。 長大な塹壕には、すべての地区にセラフィナイト兵が配置されている訳ではない。 広範囲に負荷を掛けることで兵力の配置の薄いところ、つまりは脆弱地点が浮き彫りになる。 多大な損害を受けながらも、エステル兵は塹壕への脆弱点への浸透に成功した。 エステル兵は守備兵と交戦し、混乱を振りまき、通信線を寸断しつつ、更に塹壕の奥へと進む。 そして混乱したセラフィナイト陣地に、帝国軍の大部隊が襲いかかるのだ。 五日目の戦いは、激烈な戦闘の末にセラフィナイトが塹壕陣地を放棄し後退。 帝国軍は最初の戦術的勝利を得た。 勝利の報はエラキス、帝国を沸かせたが、同時に敵味方の死傷者数の数に驚愕することになる。 それは今までの戦争とは比べものにならない数であり、開戦五日目にして戦死者予測の三倍にも達していた。 セラフィナイトサイド 国名にもなっているように、セラフィナイト星術者連盟は星術、つまり天体信仰の国である。月への信仰はほかにもあるが、星への信仰は他に例がない。近代に入り、国家としては多元主義を認めるようになったが、この月と星の信仰はセラフィナイト人の価値観そのものの根底にある。 さて、月と星というのは天上を回るものだ。そのため天体信仰は天に近い場所、すなわち高所へ向かうことをよしとする傾向があり、登山が盛んに行われてきた。 しかし、近代に至り、科学技術の劇的な進歩はただ地表を登るのとは違う、高所へ向かう手段を登場させた。当初は気球、飛行船などのいわゆる軽航空機だったが、更なる技術の進歩は空気より重いものが滞空することを可能とした。 すなわち、飛行機の発明である。前述の価値観からセラフィナイト人はより高い飛行上限高度を求め、技術改良を進めた。それゆえに航空機の商業利用ではフォールン・エンパイアが先を行くなどあったが、今回の話ではそれは重要なことではない。重要なのは、セラフィナイトが飛行技術を有しており、そしてセラフィナイトが戦時に突入したということである。 さて、北部戦線においてこの戦争におけるクラルヴェルン帝国最大の英雄、傭兵将ベロースがその伝説の幕を開けつつあったころ、南部戦線においてはセラフィナイト軍は先だっての戦いで有効性が確認されたとある新兵器を本格的に投入しつつあった。いや、言葉を濁す必要もないし、流れで分かるだろうが、飛行機である。エラキス国王派との戦いにおいて国境戦の際に試験的に投入され、偵察に成果を上げたため、量産が開始されようとしていた。 …北部戦線が大変なことになっているのだから、南部戦線ではなく北部戦線に投入すべきじゃないか、という声が聞こえてきそうだが、単純に航続距離の問題である。エラキス領内でも建設工兵が仮設飛行場の建設を進めてはいたが、この時は国内の飛行場からまだ航続距離の短い飛行機で飛ぶしかなかった。そういうわけでエラキス南東部の高原地帯をのんびり飛んでいるのである。 【エラキス干渉戦争の悲劇 第三幕、星と月の側より 雲海を翔る者】 「前方に敵部隊確認、信号弾発射用意。発射!」 「いや少尉、別にいちいち口にしなくていいよ。あと発射よりもてーっとか何とかいうもんじゃないの?」 「ちょ、前を向いて操縦してください機長!」 「おっと、いやごめんごめん」 「だいたい、いまこの時も地上では戦闘が行われ、連盟軍にも死者が出ているんです。真面目にやってください」 「いやー、僕ァ本来飛行機技師だからねー、連盟のためじゃなく、飛行機の普及のためにやっているんだよ。あ、左手のほうに敵影。適当に紙に書いて投下しといて」 「はい、左手に敵影、クラルヴェルン歩兵部隊少数…ってそうじゃなくて、あくまでも今ここでは連盟軍の軍人、真面目に戦うのは義務です」 「ふうむ。義務、ねえ。オブリージュ。あっちの方では貴族社会に絡めて高貴なる義務とか言って、普及した概念らしいね」 「そうです。しかし連盟には貴賤はありません、連盟市民すべてに国家への義務が等しく課せられているんです」 「ふむ…しかしこの戦い、何のために戦っているのだ?この戦いは連盟市民に義務を課すべき戦いなのか?」 「機長が厭戦派なのは知っています。ですが、エラキスは絶対王政。連盟と相容れない体制のもとにあります。エラキス共和派の友人を助けることは必要でしょう」 「それは認める。だが我々が今相手にしているのは誰だ?敵は民を圧するエラキス国王派だけではなかったのか。クラルヴェルンは立憲主義に基づく制限君主制。連盟の敵ではない」 「彼らは連盟の敵ではありませんが、連盟の友人でもありません。農民であれ参加する連盟の政治と、実質的に貴族と資本家が帝権に代わろうとしているだけのクラルヴェルンの政治は本質的に異なります」 「彼らは緩やかに庶民まで参政権を普及させていくだろうとは思うがね…前方に敵影、歩兵及び砲兵。信号弾用意」 「信号弾用意、発射!…彼らが仮に参政権を普及させたところで、主権在君に代わりはないのです。そこは変わりません」 「…確かにな。いずれは…いや、まあいい。燃料から見て、そろそろ引き返す頃合いだ。戻るぞ」 「はい。とにかく、せめて帰りぐらいは真面目にやってくださいよ」 「善処しよう」 幕間2 カシュウ氏によるクラルヴェルンサイド 一人の兵士を紹介しよう。彼の名は、マリオ・フェルッリ。学生であった。彼は愛国的精神から 祖国クラルヴェルン帝国の戦争に進んで参加した。 3ヶ月の訓練をうけて、彼は戦争の真っ只中に飛び込んだ。かれは戦争がすぐに終わり、英雄にな れると思っていた。しかしそれはとんでもない妄想であった。彼が最前線に行く途中の病院では、 兵士のひどい叫び声と、疲労しきった軍医と赤十字の看護婦が兵士を選別し、救えるものを救っていた。 彼は何かとんでもない勘違いをしたことを心の底で感じながら、最前線に配属された。最前線という ものは、荒廃とした大地であり、塹壕という名のアリの巣のような迷宮が作られていた。この敵弾から 身を守ってくれる要塞は、実はとてつもなく不潔なものであり、敵の攻撃がなければ直ちに飛び出した い代物だった。マリオは、古参の兵士達とともにこの不潔な塹壕で敵弾と、鼠と、病気にびくびくと しながら、退屈で、しかも緊張し、神経を磨り減らす塹壕で過ごすことになった。古参の兵士たちは 言った。 「どうしてお前は学生を辞めてこんなゴミ溜めにやってきたんだ?はは、英雄になりに? とんでもない馬鹿だな。お前は」 …… セラフィナイト軍は、彼が最前線に配属されてきてから、攻撃を開始してきた。猛烈な砲撃! 連盟軍は猛烈な砲撃を1ヶ月も続けてきた。強力な塹壕を無力化するつもりなのだ。最初の砲撃は、 マリオをパニックにさせた。だが、彼は古参の兵士に殴られて正気に戻った。逃げてみろ、彼は 銃殺か、最も恐ろしい、戦場の真ん中に置き去りにされる刑に処されるのだ! だが、マリオはその刑を味わうことはなかった。2週間も砲撃を続けられると、次第に慣れてく るのだ。だが不快なことに変わりはないし、緊張するのも変わりなかった。 彼らの士気は落ちていった。兵士達の食事は「死んだロバ」と呼ばれる牛肉の缶詰(恐ろしくまずい) が続いた。トイレに行くにも注意深く匍匐前進せねばならない。もし不用意に尻を上げれば、尻に穴 が開くのだ。敵の狙撃兵によって…。その上塹壕の不衛生さから来る病気の蔓延は、士気どころか、 帝国軍部隊を消耗させた。塹壕の中の10人に一人以上は、赤痢に悩まされた。悪臭は兵士達の鼻を麻痺 させた。 … こうして、帝国軍-マリオの所属する隊はボロボロの状態になりながら、砲撃の終了を迎えた。愈愈 敵の突撃が始まるのだ。マリオたちは、てきの攻撃に備えた。周囲は静かになり、鳥のさえずりが聞こえる。 そして、敵側からホイッスルが鳴り響き、鬨の声があがる。 ピリリリリリリリー。 続いて 「チャァージ!」 この敵の合図とともに、こちらも射撃命令される。病気と砲撃により、数は減っていたが、機関銃は生きている。 「敵の顔が識別出来たら射撃開始」 なんともわかりやすい命令。何メートルになったら撃て、といわれてもわかるはずがないのだ。そして 連盟軍の兵士達が雄たけびを上げ、発砲しながら突進してくる。彼らは転びながら、叫びながら、ぐんぐんと 近づいてくる。 「撃て!」 将校の命令とともに、機関銃も、小銃も、いっせいに火を噴いた。ボロボロと連盟軍の兵士は倒れていった。 屠殺だった。いや、それは集団自殺だった。連盟軍は何かわめきながら突進してくるのだが、とにかく次々と 射殺されていった。ドミノ倒しの遊びのように、横一列に並んだ兵士達が次々と。だが、勇敢な連盟軍の兵士 たちは陣地に乗り込んでくるのだ。こちらの阻止砲火が足りなかったために。そうなると、白兵戦になる。 殴り合い、銃剣で突き刺し、突き刺され、目をえぐり首をかききり…襲い掛かるもの、わめくものを殺し、 武器を捨てるものを殺し、逃げるものを殺した。この白兵戦の中で、マリオは一人の連盟軍の兵士を殺した。 彼はその手で直接敵を殺した。初めてのことだった。 やがて、連盟軍の攻撃は失敗に終わった。帝国軍の将兵は信じられないほど勇敢に、死に物狂いで戦った。 敵はボロボロと逃げ出していく。すると今度はこちらが逆襲するばんだ。将校は無謀にも味方の損害も省みず、 部隊の情況も確認せずに突撃を命じる。このチャンスを逃してはならない。 「アッラサルト!!(突撃)」 将校の合図とともに、帝国軍の兵士達がいっせいに塹壕を飛び出した。逃げる連盟軍を射撃しながら追跡する。 追いつくことは出来ない。だが、転んだ連盟軍の兵士などには追いついた。不幸なこの連盟軍の兵士は一瞬 命乞いしたが、すぐに帝国軍の兵士に刺殺された。 逃げる連盟軍は陣地に帰り着いた。そして反撃が始まる。彼らは突撃してくる帝国軍に一斉射撃を繰り出すのだ。 今度は帝国軍がなぎ倒される番だ。マリオは次々と仲間の兵士が倒れていくのを見た。そして、次の瞬間には、 意識が消えた。 マリオ・フェルッリ兵。マニベーニャ戦線で頭部銃創をうけ戦死。彼には16人の特に親密な友人と、 パン屋を営む両親がいた。彼のこの物語は特別なものではなかった。ありふれたひとつのケースに過ぎない。 彼のような若者はみな同じような運命をたどった。事実、彼の特に親密な友人16人のうち、戦争によって 還らぬ人となったのが5人、傷病によって四肢の一部を欠損し、後遺症に苦しむものは6人にも上った。 第四幕 セラフィナイトサイド 「鉱山・油田等の資源施設への防衛はもっと強化しろ!敵資源施設の破壊は禁止だ!建設工兵の鉄道整備状況だが…」 「エラキス国王派と西部トレント市で市街戦が開始されました。敵の総数は…」 「中将、エラキス海軍(注:エラキス海軍は大部分が共和派側についた)とレッチェルドルフ艦隊が接触、戦端が開かれました!敵艦十三隻に対しエラキス海軍は…」 「敵暗号解読成功!次の攻勢はアーロン村付近から…」 「バレアス第一次防衛線突破されました!現在第二次防衛戦に後退し、部隊の再編制を…」 「ふむ…クラルヴェルンの工場稼働状況からすると、やはり…」 ルヴァ歴-26年2月14日、エタブリッシェ市にあるセラフィナイト軍総司令部。 外は静かに雪が降り積もってゆくが、司令部は今日も戦況の把握と作戦立案に全力を注いでいた。 【エラキス干渉戦争の悲劇 第四幕、星と月の側より 夢魔の提案と司令部の思惑】 「一日休戦だと?」 こう言ったのはセラフィナイト軍最高司令官、ゼーゲンホルム・フェルム・ウィッテン総軍元帥。 「はい、北部戦線において夢魔テリブルドリームが、南部戦線において夢魔スィートドリームが、それぞれ前線司令部と交渉して決定されたようです」 こう確認したのは情報局所属、ディートハルト・フラウンホーファー次官。 「北部戦線の司令部、となるとコールドロンか。あいつはいいやつだが、話を聞かないからな。決意が固いのは結構だが…。南部は…またあいつら自主休戦か。むしろいつ戦ってるんだ?クラルヴェルン国境よりも緩んでいるんじゃないのか」 エラキス南東部戦線は、エラキス・クラルヴェルン国境まですべてセラフィナイト軍が制圧しており、クラルヴェルン軍は補給線を絶つために攻撃をかけている…というか、そうクラルヴェルン上層部は指示しているのだが、クラルヴェルン地中海岸出身の兵士はなあなあで、エステルプラッテ人兵士にしてもわざわざセラフィナイト人の得意分野である山地で戦う愚を犯すことはない。そんなわけで両軍の間にいつの間にか勝手な連帯感が生じ、誰もまともに戦わなくなってしまった。せいぜい偵察機が飛び交っているだけで、それもお互いの偵察機が視界に入れば手を振りあっているらしい。北部戦線の兵士がこれを知ったらどう思うだろうか。 「どうしますか」 「クラルヴェルンの軍の通信傍受状況はどうなってる?」 「確かに一時休戦が通達されています。敵の攻勢も中止しているようです」 「ふむ…補給状況は、やはり変わらず、だよな」 「無論です。どうしますか」 「………独断専行を認めるわけにはいかんな」 「では…」 「…コールドロン。この戦争が終わったら、厳しい処分で臨む。そう伝えておけ。それと一日の休戦のうちに南部の物資をできるだけ多く北部と西部に送ってやれ」 セラフィナイトはクラルヴェルンに勝つために戦っているのではなく、エラキス国王派を排除するために戦っているのだ。クラルヴェルンとの休戦に別に問題はないのである。エラキス国王派とは休んでいられないが。 「は」 クラルヴェルンサイド アルフォンソ・ルイス・コールドロン…セラフィナイト軍エラキス北部戦線司令官。母語はエラキス語だが特にエラキスへの愛着はない。 彼の預かる軍隊の正面には、クラルヴェルン帝国の最精鋭たるエステルプラッテ兵団が展開している。キルレート1対4という馬鹿げた数字を叩き出す、セラフィナイト史上最悪の敵である。指揮官はベロース・エルツ・ヴァルダム将軍。 コールドロンは現在の状況を正確に把握しており、戦線の危機的状況を速くから認識していた。彼は戦力の増強を続け砲撃や奇襲を繰り返すエステル・エラキス軍に対抗しながら、戦力増強を上層部に具申し続けていた。 相互の塹壕を巡って強攻と逆襲が幾度も繰り返されるが、難地形と堅固な塹壕網、そして両軍の精鋭が拮抗。戦線は膠着したまま凄惨な塹壕持久戦が続いた。 相互に補給線を脅かし、不十分な補給。急造の塹壕には汚水が溜まり赤痢が次々と発症。劣悪な環境で感染症も頻発し、戦死者に加え病死者も続出。 本国行きの列車は常に傷病者で満杯となった。 だがそれでもなお、コールドロンもベロースも一歩も退くことは許されなかった。 この戦場は危うい均衡点であり、この戦線が崩れれば他の停滞している戦線にも大いに影響しうる。二人の名将は自らの戦線の重要さを理解しており、それが為戦線は動かず、しかし戦争という殺人システムは休み無く稼働し、死傷病者を大量に生産しながら、数ヶ月が経過した。 その日は朝から肌寒く、防寒着を必要としていた。 先日の砲撃戦は火砲の撃ち合いともに歩兵同士の迫撃砲が飛び交い、双方共に数百人単位の損害を出していた。 その痛みも醒めやらぬ朝。コールドロンは奇妙な報告を受ける。 それは帝国からの24時間の休戦の申し込みであった。 【エラキス干渉戦争の悲劇 クラルヴェルンside-4 顕現祭休戦】 「フィリオリ・テリブルドリーム。夢魔です。以後お見知りおきを」 帝国からやってきた休戦の軍使は、血と泥に塗れた戦場とは全く縁のなさそうな、上等な衣服を纏った少女だった。唖然とするコールドロンに物怖じせず、少女は完璧な礼をして見せた。 「アルフォンソ・ルイス・コールドロン中将です。当陣地の管理を総司令部より任されている、貴方方の敵です」 「存じております」 微笑む夢魔。外見はセラフィナイト本国にもいそうな可憐な少女。だが表情や口調、その立ち居振る舞いは確かに千年の齢を感じさせた。 「田舎出で学がないので作法については失礼。休戦提案書は読ませて頂きました。ジャスリー皇帝のサイン入りというのに驚きを禁じ得ませんが」 「はい。本提案はジャスリーさまと、全ての夢魔の意志です」 「提案の受理は私の裁量に任されている。しかし残念ながら、我々にはこれを受理する理由がない。兵士の士気にも関わる問題だ」 「そうでしょうか。貴方方も疲れていると存じます。それに私達は隣国同士。永遠に敵同士ということではありません。今この瞬間にも和平交渉は行われています。……それに」 「それに?」 「コールドロン様。貴方もこの戦いに意義を見出してはおられないのでしょう」 帝国から各戦線に提案された2月14日の休戦は、多分に宗教的な要因だった。 帝国の宗教行事である夢魔顕現祭。千年前に夢魔姫と百七の夢魔たちがこの世界に顕現したことを祝う祭。夢魔姫の美しさと栄光を称え、親が子に、恋人がその相手に、夢魔が人間に、親愛の念を込めて贈り物を贈る行事。 この年の夢魔達の贈り物は、砂糖菓子の詰め合わせではなく、兵士達への安息であった。 「あれが……夢魔」 ざわめき。 二十四時間の休戦が合意されると、テリブルドリームはセラフィナイト陣営の一部の見学を許可された。彼女が見学を希望したのは仮設病院。この世の地獄であった。 血と死と呻きと苦悶、そして絶望と悲鳴が渦巻く地獄に夢魔が降り立つ。 夢魔を見上げる亡者たちの群れ。 「軍医様」 トランクを示しながら、夢魔が美しいエステルプラッテ語で語りかける。 「モルヒネとペニシリンの差し入れを。それと、清潔な包帯も足りないと思ったので持って参りました。どうかお納めください」 軍医は憮然として頷く。そして何か望みはあるかと問うた。 「一人一人と、お話させてください」 顕現祭休戦は様々な要因が重なって実現した伝説的な出来事である。 エラキス王国派はクラルヴェルン帝国を非難し、ジャスリー皇帝が釈明に追われたとも言われる。 二年目からの顕現祭では休戦は行われず、むしろ全戦線に渡って熾烈な攻撃の応酬が交わされた。 しかしながら、顕現祭休戦とテリブルドリームの名前が、戦後の両国関係に多大な影響を与えたことには異論を挟むものはいなかった。 第五幕 クラルヴェルンサイド 「意外だな。いやそうでもないか」 「なにか御座いましたか、将軍」 「フッ、メッサーナで反戦運動が起こったのは聞いていよう」 「はい。我々の苦労も知らず、勝手な事です」 「戦費調達のためにまた増税が発表されたそうだ。もともと帝国の財政は余裕がなかったしな。起こるべくして起こったものと言えよう」 「戦いが始まってもう一年以上になります。しかし、意外とは?」 「星術者どもの士気が意外に高いということだ。国力からして、戦費による生活困窮は帝国以上であろう。先に反戦運動が起こるのはあちらだと予測していたのだがな」 「彼らが国民軍だからでしょうか?」 「さてどうかな。我々は砲撃と強攻によっていくつかの敵陣地を攻略し、星術者どもに後退を強いたが、これ以上の前進は困難だろう。オレは前線の士気崩壊より先に、内地の士気崩壊が起こり、それで戦争の決着が着くと見ている」 「ですがベロース将軍。従軍記者の受け容れや負傷者の後送を指示したのは将軍では」 「気にするな。それは向こうも同じ事」 【エラキス干渉戦争の悲劇 クラルヴェルンside-5 黒騎士の策謀】 エラキス、クラルヴェルン、セラフィナイト。 三カ国の泥沼の戦いの最中、一つの奇怪な噂が発生していた。 一万人以上のエラキス人が列車でいずこかに運ばれ、銃殺されたという噂である。 互いの陣営の軍関係者は、そのような噂はデマであると一笑に付していたが、噂が途絶える事はなかった。 そして帝国歴974年。エラキス王国の田舎町マイティアの近郊の森で、 それ は見つかった。 一万人以上の銃殺死体である。 発見したクラルヴェルン帝国軍は詳細な調査を行い、戦線近くの農村で生活していたエラキス人の遺体が、七つの穴に幾層にも渡って埋められていることを発見した。 ベロース・エルツ・ヴァルダム将軍は世界的な大事件になると考え「マイティアの森事件」として報告書を作成。これは帝国外務省に送られた。 『セラフィナイト人は虐殺者である』 マイティアの森事件の情報はラジオや新聞に載ってクラルヴェルン帝国に瞬く間に広がり、一時広がり掛けていた反戦感情は払底した。 代わりに帝国内で巻き起こった世論は『セラフィナイト、罰するべし』。 セラフィナイト政府は、マイティアの森事件を帝国の自作自演の策謀であると公式に非難。 二国間の限定戦争は、にわかに全面戦争の一歩手前の状態に直面した。 「……珍しいな。お前の方からコンタクトを取ってくるとは」 「貴方の差し金ではないのですか」 「ああ、残念ながら俺は掘り起こしただけだ。人間同士の戦争では理性が狂気を凌駕することも多々ある。お前の予測には無かった事か?」 「予定にはありません。この件についてはいずれ調べたいとは思いますが」 「事実を冷静に受け容れることだな。とはいえ、帝国や王党派側の可能性も皆無ではない。あの地点は両陣営が前進と後退を繰り返したところだ」 「解りました。あの人の様子は?」 「心配はいらぬさ」 マイティアの森事件は双方が相手側の犯行を主張。 その後の戦局の流転は調査を困難とした。 終戦後に行われた帝国と星術者連盟による合同調査では現場が何者かに処理されており、また政治的な理由により調査は不十分なまま打ち切られた。 帝国歴1033年の時点でも、マイティアの森事件の真相はいまだ明らかになってはいない。 セラフィナイトサイド アザンの山岳地帯には、一つの城塞が存在する。 SSVD本部。連盟設立以前から、この地に潜入してくる夢魔や魔族の干渉を排除し、直接民主制という奇異な体制を支え続けてきたそれは、しかし連盟政府とは独立した存在であり、政府が捜査を強制することはできない。 「以上、本事案に関する要約です。これについて捜査を要請します」 「謹啓、謹んで申し上げ奉る。我ら審問官は万一連盟軍の関与が知れた暁には、その処断も辞さぬものと知り給え。然れどなお、捜査を要請するもの也や?」 「…も、もちろんです。これは連盟軍司令部の総意としての要請です」 「…宜しい。マイティアの森事件の捜査への協力を行うもの也や」 「協力、感謝します」 【エラキス干渉戦争の悲劇 第五幕、星と月の側より 断片化した真実の中に】 そうしてSSVD主席と助手は軍情報局のフラウンホーファー次官からの依頼を受けたわけだが。 「というわけだ。マイティアの森に行くことにならァ」 「マイティアの森って、戦場まっただ中じゃないですか」 「ああ。だからこそこっちにお鉢が回ってきたんだろ。…行くぞ」 「え、マイティアまでですか?」 「先にアーバスノット天文台だな。まずは奴らを通す必要があらァ」 「…勝手に受けちゃったけど大丈夫なんでしょうかね」 「だめだったら手紙一枚軍司令部に送ればいいさ」 「で、マイティアの森事件の捜査許可ですか」 「あァ。連盟軍の依頼だが、個人的にも興味がある」 「…なるほど。どうします?アーナルダ」 「それは冗談で言っているのか、フィリオリ」 「そう苛立つこともないでしょう、アーナルダ。あ、すみませんね、ライト卿。…いいですよ。ただし、一つ条件があります」 「条件、か…。話によるな」 「単純なことです。“連盟に不利益な事実であっても、これを開示せよ”」 「…なるほど。そもそもアンゼロット卿からのお願いとして受けていた、というわけか」 「話が早くて助かります。頼みますよ」 エラキス東部の村、マイティア。ここにはエラキス国内の宗教界では有名な、そして後世では世界的に有名となる“マイティアの預言”が保管されている。 …ホワイダニットを求めるなら、これも一つだろう。いや、フーダニットのわからない状況でそれを探るのもあまり意味がない気がするが。 ウィラード・ハンティントン・ライトは黒き太刀を取り出し、魔法的な方法でマイティア大聖堂の封印を解呪し、地下室に入る。物理的な痕跡を残さないのは基本だ。 「…預言書は…そのまま残っているな」 「わざわざ預言書一冊のために戦争を起こすとは思えませんが」 「だが、戦時中に、一万人の犠牲で済むなら預言書を手に入れようと思う狂信者だって、世の中にはいるもんだ」 「それは…そうですが」 「とはいっても、この預言書は星術からも夢魔信仰からも無価値。この預言書が盗まれていれば、単純にエラキス人の犯行とわかるんだがな」 「そう甘くはいかないでしょう。それに、仮にそうだったとしても、偽装工作の恐れは考慮しなければなりません」 「まあそうだが、この預言書はこの時点ではエラキス国内でしか知れ渡っていない。この預言書を知っていれば、エラキス人の関与の可能性は高い」 「まるで未来から見ているようなメタ的な発言ですね」 「…さて、次は現場検証だな」 さて、マイティアの森である。今現在前線はそれなりに離れたところにあるらしいが、いつここが戦場になるかわかったものではない。 人払いの結界をかけ、兵士がこの場所に近づかないようにする。夢魔や黒騎士相手には無意味だが、夢魔の相手をするのは過去なんどもあったこと、黒騎士の相手をしたことはないがその時には真犯人を聞いてみるもよし、向こうが切りかかってくるならそれはそれで仕方ない、くらいに思っておくことにする。 「で、…死因は射殺か。七層にわたって埋められてはいるが、死亡後に埋めたようだな」 「少なくとも、戦場で偶然流れ弾に当たった者を処理した、という状況ではないようですね。銃創は全て胸か頭で、それ以外の部位には見られません。明確な殺意があったとみていいでしょう」 「ふむ。…この遺体は…明らかに拷問のあとがあるな」 「…?このエラキス人は、全員普段着で、軍服や捕虜としての粗衣などではありません。おそらくエラキスの一般人でしょう。なぜ拷問するんです?」 「理解しようとするな、頭痛にならァ。この状況では終戦まで身元確認もできそうにないしな」 現場検証を終え、次にマイティアの村に向かう。人影はない。この場所まで後退してきたコールドロン中将指揮下の連盟軍部隊がここは戦場になると警告し、村は離散させられたからだ。当時、特にエラキス東部では、連盟軍も帝国軍も戦場になる村を多く離散させるというのはよくあったことで、後にエラキスの戦後復興にも大きな存在を与えた。 村役場に向かうと、連盟軍が接収して一時的な司令部として利用したのか、机の上には地図などが広げられている。流石に情報を敵に流す愚はしないらしく、どうやら最初から村が持っていた瑣末な資料をおまけ程度に使い、それを残していったということらしい。最も、帝国はここに踏み込み情報の確認はしても司令部としてはここは利用しなかったらしい。 とにかく、これでは読み取れることはあまりに少なく、捜査にならないので、残留思念も含めて情報をまとめることにした。次の通りだ。 「最初は、後退してきた北部戦線の連盟軍のとある部隊がここをとりあえず拠点として、一週間半帝国軍の攻撃に耐えた」 「一週間半後、帝国軍の攻撃により陥落。一ヶ月半ほど、帝国軍はここに駐留した」 「一ヶ月半後、連盟軍は帝国の通信傍受により帝国軍が攻撃するタイミングを知り、それにあわせた作戦を練って帝国軍の攻勢を排除。帝国軍は撤退し、連盟軍はここを中心に破れた帝国の塹壕を突き進む。今回は連盟の拠点はここより前線におかれ、今このあたり一帯は共和派がとりあえず支配しているが、見ての通り実質的には誰もいない」 「帝国軍がこの事件を報告したのは帝国軍が進駐してから21日後。…広い森の中、埋められた遺体なんぞをすぐに見つけるのは無理だからそれだけの間見つからなかった、ということは説明としては通っている。だが、21日あれば帝国軍が運んで偽装工作を行うことも可能だろう。そこには塹壕を掘る重機も充分用意されているんだからな。それに、進駐した帝国軍には工兵も結構いたようだしな」 「それは状況としては連盟にも同じことが言えますし、支配期間でいえば連盟はこの一年間、ここを支配してきました。それだけあれば何とでもできます」 「ふむ…と、まずい。連盟軍が後退してくるぞ。どうやら帝国軍に敗退したらしい」 「…え!?いきなりですね。人払いの結界はどうしたんですか」 「人払いは現場にしかかかっていないから、ここでは役に立たん。戦場になって荒らされては困るが、長期間広域に張るのは無理だからな。探知結界のほうはどうせ滞在中で充分だから、広めのを張っておいたがな」 「で、どうするんですか」 「…いったん下がる。人払いの結界があるとはいえ、黒騎士や夢魔が時間をかければ解呪されるだろうが、一日二日で解呪できるつくりにはしていない。人払い結界の中に隠れるのも手だが、そのまま帝国軍が一帯を制圧して、出るのに苦労するのも困るだろ」 番外編 エラキスの残光 エラキス東部の港湾都市、バレアス。 かつてエラキス植民地帝国が大海を支配した頃の繁栄は今はなく、今日も湾特有の静かな水面が太陽の光を照らし返していた。 その海を背景に、煙を上げる街並み。 今、エラキス全土では騒乱が発生、ブルゴス総統率いる第二共和政は瓦解し、全土が無秩序状態に陥っているのだ。 その影響は例外なくこの街にも来ている。 瓦解したとはいえ第二共和政の残滓は未だ復活を目指して活動を続けており、市民との戦いは今なお繰り広げられているのだ。 【エラキス干渉戦争の悲劇 番外編、エラキスの残光 その薄明は払暁か黄昏か】 …不意に、南方から飛行船の編隊が現れる。 「我々はセラフィナイト星術者連盟軍航空部隊第二飛行隊です。連盟政府の進駐宣言に基づき、エラキス領内の治安回復のための活動を行います。速やかに武装を解除してください。皆様方の自由と安全は法と秩序に基づき保障されます。繰り返します…」 空挺作戦。…エラキス干渉戦争は、現実主義者たちからは海への出口を求める連盟とそれを脅威と感じた帝国の衝突とされている。今回の進駐でも、重要なのはエラキスではなくエラキスにある海岸だ、ということだろう。違いは、今回は連盟の進駐を帝国が黙認しているということだろうか。 あの時は共和派がバレアスを拠点として蜂起したのだったが、その時も連盟軍が来たときにはバレアスは同じように一般市民の歓迎を受けていたのを思い出す。 とにかく早々にエラキス第二共和政政府の治安機関は武装解除され、バレアス中心業務地区は連盟軍に制圧された。騒乱を繰り広げる市民たちは連盟の到着により騒乱の手を休め、街には平穏が戻った。 あとは連盟軍にとって何か急ぐ要素があるわけでもない。市内の治安機関を制圧したことで、本来の狙いである港湾地区は制圧できたも同然。エラキス市民の反発もあまり見られないことから、連盟軍は地上を進む部隊との合流までバレアスの治安維持活動に専念することとした。 さて、カルリオン社はエラキス国内のベンチャー企業の一つである。 本社はセヴェリアにあるが、エラキス最大の港湾都市であるバレアスにも支社が存在していた。 そして、偶然カルリオン社長はその日、フォールン・エンパイアから納入された機材の確認のために支社に出向いていた。 「どうするつもり?」 「どうするといわれても…どうにもならないよ。この分ではセヴェリアに戻る列車は運行できないだろうし。当分、しばらくこの街に滞在することになるんだろうなあ」 「…そうね。連盟軍がわざわざ邪魔しに来るような」 ことはないだろうし、と夢魔ソフィーヤが言う前に前兆もなくかかる声。 「失礼、ミリティア・アロートと申します。申し訳ありませんが…夢魔ソフィーヤ、カルリオン社社長ヘラルド・カルリオン。一緒に来ていただけますか?」 そう名乗る女性の背後には、好々爺然とした老人が一人。手には既に魔法の光が宿りつつあり、あとは念じるだけで学問の門が開かれるだろう。 「…わかりました」 「一体どういうつもり?」 車(一見普通の車だが、よく見たら耐爆仕様だった)に乗って、バレアス市のかつての政府の出先機関の庁舎へ。中でカルリオン社長とソフィーヤは別の部屋へ案内される。 第二応接室と書かれた部屋で、夢魔ソフィーヤと夢魔ミリティア・アロートは対峙する。 「すみませんね、マスターと記念大学の専横です」 専横とは否定的な意味を使う語彙のはず。自分に使う言葉ではない。 「それこそどういうことなの?」 「冗談ですよ。横紙破りなのは確かですけどね。あなたたちは有名ですから」 「有名?だからこの騒乱から保護するつもりだった、とでも言うの?」 「少々手荒な理由は確かにそれです。法秩序が完全に確立されていない状態ですから、致し方ありません。ですが、私たちの目的はそれより別にあります」 「…」 「あなたに話すことではなく、カルリオン社長に言うことなんですけどね。このエラキスの貧困の原因が何か…言うまでもないことでしょう」 「罪滅ぼしか何か?」 「この貧困のままのエラキスをセラフィナイトが統治するのは都合が悪いが故に、ということになっています」 「…やっぱり貴女は夢魔より擬天使のほうが向いていると思うのよね」 「褒め言葉と受け取るべきか悩みますね。とりあえず、あなたにも説明しておきましょう。この投資計画はエラキス干渉戦争以来のエラキス経済の停滞を打破するものです」 「早い話が資源権益、でしょ?」 「…連盟は資源権益に手を出しません。代わりに、このバレアスに、二つの選択を与えます。煙都か、避寒地か。…ここから先は、各方面と調整しなければならないので、今はなんとも言えません」 「でしょうね。私たちはどうなるの?」 「あなたは干渉戦争の前からこの国にいたんでしょう?であれば、好きにさせてあげてください、というのがマスターの意向ですし、私も同感です」 「自己矛盾を起こしているわ」 「夢魔とはそういうものだと聞きました」 クラルヴェルンサイド外伝 【エラキス干渉戦争の悲劇 クラルヴェルンside-5外伝 恐怖の夢のお店】 メッサーナの伝統あるショッピングモール「月の回廊」の一角に、風変わりな店がひっそりと開店していることを知るものは少ない。 店の名前は「お面屋」。ショーウィンドウには様々なお面が、それも玩具ではない、変装にも使えるような本格的なものが展示されている。一般的な市民にとって、需要の全くないこのお面屋だが、この店を必要としている人間が一定数この時代にはいた。 「いらっしゃいませ」 客の全くいない閑散とした店。壁や棚にひたすら面が飾られている店内は不気味ですらある。店の入り口に設置されていた鈴が可愛らしく鳴り、読書していた店主が客を迎える。 「……」 帽子を目深に被ったその客は押し黙って店内を見渡す。そして人間にしては儚く美しすぎる店主を見やった。 「…夢魔様」 「はい、テリブルドリームと申します。お客様」 「お任せします。顔を下さい」 「はい。それでは試着室へどうぞ。鏡は…処置のあとでよろしいでしょうか」 「はい」 客が帽子を外す。北部戦線帰りの、火炎放射器と榴弾で火傷し欠損したおぞましい顔が明らかになる。テリブルドリームは気がついた。彼の左腕は、肘から先が無い。 「お気の毒に。苦労なされたでしょう」 「はい…」 涙を堪える客を、夢魔はそっと抱きしめる。 ここは顔を失った人々が訪れる店。 夢魔は過酷な真実を覆い隠し、幸福な虚偽で世界を満たす。 第六幕 クラルヴェルンサイド エラキス干渉戦争。戦線は遅々として進まないまま、犠牲者だけを増やしていく。 二年目に入って、戦況で変わった部分としては、エラキス王党派の軍隊はもはや前線から脱落し、後方支援を主任務とするようになったこと。 クラルヴェルン帝国軍の負担は増えたが、それはエラキス共和派にも同じことが言え、戦場にはセラフィナイト連盟軍だけが残っている。 「南部戦線は本日も異状ございません。北部戦線はエステル兵団が後退。コールドロン軍を引き寄せ、後方を伺う作戦が発動しました」 夢遊宮の中庭にて宰相が皇帝に報告する。 ジャスリー・クラルヴェルン皇帝は安楽椅子にもたれ、眠るようにその報告を聞いている。 「財政は持つの?」 「かなり厳しい事になっております。増税の必要がございましょう」 「貴方に任せます。東秋津帝國やヴォールグリュックはなんと?」 「引き続き中立を堅持する模様です。両国は帝国との国境警備軍を後退させました」 「そう……」 宮廷侍従に紅茶のお代わりを頼むと、夢魔姫は再び目を閉じる。 哀しい。一体この感情はなんだろう。夢魔は人間の守護者ではない。誘惑者であり、寄生者であり、絶望を啜る悪魔である。無害を装っているのは、その方が都合が良いから。人間に契約を迫るとき、悪魔は皆優しいのだ。 戦場や後方では多くの夢魔たちが戦争の惨禍による絶望を啜っている。 家族を失った者、財産を失った者、手足を失った者、職を失った者、恨みを抱く者…… 夢魔姫と夢魔には彼らの嘆きと怨嗟の声が聞こえる。 一千年の帝国の統治は、夢魔姫に人間性を回復させたのかもしれない。 「アンゼ、貴方の望む世界とはなんなのかしら。今の私には解ってあげられない」 ジャスリーとアンゼロットの想いのすれ違った、悲しむべき時期であった。 【エラキス干渉戦争の悲劇 クラルヴェルンside-6 黒騎士の攻撃】 黒騎士や傭兵将という異名を持つベロース・エルツ・ヴァルダム将軍は、後世の歴史家から見ても奇異な存在である。 出身や経歴は一切不明。にも関わらず書類上では十年前から帝国軍に所属していることになっており、ジャスリー皇帝より直々に司令官に任命されている。 最初は見慣れぬ指揮官に戸惑っていた帝国兵たちだが、今や帝国軍にとって最重要の人物の一人である。 ベロース将軍の若き副官ヴィルヘルム・シュタイニッツは、戦後こう述懐している。 「ベロース将軍は自分の声と姿が兵士達にどのような影響を与えるかを完璧に把握した演出家でした。兵士達は将軍の一挙一挙動に注目し、その演説や命令に震え動き、勝利を確信するのです」 そんな状態であるので、一見して無謀な作戦行動すら遂行してしまう。 ベロースにとって最大の不幸は、対抗するセラフィナイト連盟軍コールドロンもまた、名将と言える存在であったこと。 ベロースは無敵であったが、コールドロンは不敗であったのだ。 しかしベロースに比べ、コールドロンの評価は芳しくない。一部では エラキスの肉屋 とあだ名されるほど。それは今戦争の被害が北部戦線に集中していた事と、後方の司令部との関係の不全による。 「コールドロン軍が第二軍と接触した。現在交戦中とのことだ。交戦中の離脱や後退が困難なのは承知の通り。エステル兵団は久しぶりにフリーハンドと成ったわけだ」 ベロース将軍は広げた地図の一部分を指し示す。 「そこで、この鉱山群を爆破する」 「はっ? アルカニス鉱山を、ですか。ここは戦術上も重要ではありませんし、できれば無傷で手に入れるべきでは」 「その通り。アルカニス鉱山はエラキスの中でも質量共に優れた鉱山だ。交通の便も良いと来ている。戦後の復興にも貢献するだろうな」 「では、爆破するのはいささか勿体ないのでは。いかに我々の兵団が広範な裁量権を持っているとはいっても……」 「我々は鉱山を破壊する。それはつまり、星術者どもの戦闘目的の一つを破壊するということだ。前に言ったな。この戦争は戦線は膠着したまま、内側から崩れると。コールドロンは最後まで戦うだろう。我々の多少の働きなど、政治家どもの手のひらの上。だから我々は、その政治家どもの利権を破壊してしまおう」 将軍の命令が各部隊に通達される。爆薬を積んだ自動車化部隊が次々に発進し、彼らは任務を果たしてくるだろう。 「フッ。お前もそう思うだろう。アンゼロット。戦争を防ぐには、政治家どもの懐を痛めなければならん。厭戦感情だけでは足りぬよ。誰にとっても損でなければな」 セラフィナイトサイド ルヴァ歴-25年1月13日、ヴォールグリュック南部、ナウムヴァルデ侯爵領。 当時、戴君共同体は国内に諸侯が乱立し、互いに相争う情勢であった。いや、現在でもそれは変わらない面もあるが。 そのナウムヴァルデ侯爵領のレストラン、暴食王の私城で好々爺然とした六十代くらいの男性と銀の髪をたなびかせる二十代くらいの女性が食事をしていた。両方とも実年齢は四桁だが言ってはいけないことである。 「どうなさいました、アーナルダ卿。突然の来訪とは驚きましたが」 「余裕だな、アドリアン・モーリス。南部でのんびり美食か」 「何を仰いますか。何度も言うように、私はこの度の戦争に関与するつもりはないのでございます。私はいつでも星術を学ぼうとする者の傍らにいるのであって、世界情勢の平安に興味はないのでございますよ。それに私は今レイズフィリークの天文台建設計画で忙しいのでございます。余裕などありませぬ」 「ふ…これといった産業もない小さな村が教育に力を入れて村おこし、その支援活動か。主がアンゼロット様でよかったな。まあいい。ヴォールグリュックの情勢を聞きに来た」 「おや、戦争の始めに聞いたのではありませんでしたかな」 「聞いた。が、少し気になる事態が発生したのでな」 「ほう…お聞きしましょう。食事も加えましてな。食後酒にはベーレンアウスレーゼのいいのを用意してございます」 「ふん。ゆとりがあって結構なことだ。酔いが回ってはかなわないのでワインは遠慮するが」 「上等な食事は考え事をするにもよいのですがね。それに酒も、酔いつぶれては困りますがほどよく嗜めばこれもまたよいのでございますよ」 「わかったわかった。そなたは無類の料理好きだったな。ワインも一杯だけなら付き合ってやるから聞け」 【エラキス干渉戦争の悲劇 第六幕、星と月の側より 美食と諸侯乱立に定評のあるヴォールグリュック】 「…ふむ。マイティアの森事件ですか」 「聞いたことがないのか?」 「聞いたことぐらいはございますが、あまり有名ではないですな。この国は今内乱中ですしな」 「ふむ。内乱の情勢は変わらず、か?」 「はい。親帝国派の王宮と独立派の西部諸侯がもめていますが、帝国に対しては双方とも中立を宣言してございます」 「それは前に聞いた時もそうだったが」 「そうでしたかな。まあ、であれば状況に変化はないということでございます」 「そうか。国際的にはこの戦争はどう思われているのだ?」 「それは前に聞かれた記憶がありますな…基本的には、産業革命時代の戦争は悲惨なものになる、と。どっちが正しいとか、そういうのはあまり聞きませんな。各国政府は同じ君主制である帝国に好意的なコメントを出していますが、まあ介入するつもりはないようですしな。庶民の間では連盟支持の声もかなり聞こえます。といっても私の活動しているレイズフィリークは連盟人が来て経済が発展しているという認識が一般的なようですので、単純には言えませんが」 「ふむ。この街ではどうだ?」 「この街ではそもそも国際情勢どころかヴォールグリュック情勢への関心も弱いようですよ。まあ、連盟人の私にとっては食材調達に相応しい場所ですね。ここなら何でもそろってありがたい話です」 「…そなたは二言目には料理の話しかできんのか?」 と、そんな会話をする二人の擬天使に念話が入る。 〈聞こえる?アーナルダ、モーリス。モーリスは別にどっちでもいい話かもしれないけど〉 (…なんだ?念話は集中を乱すから好きじゃないんだが、テレーズ) 〈緊急事態だから許して。ベロースがアルカニス鉱山を爆破したわ〉 (何だと?防衛はどうした?というか、ベロースの行動には充分注意していたのではないのか) 〈司令部も南部でクラルヴェルン軍と対峙してる部隊を一部回そうとしたみたいだけど、間に合わなかったみたい〉 「くっ、何やってんの!」 「…アーナルダ卿」 「…すまない、取り乱した」 〈アンゼロットさまがとりあえず戻ってきてって。モーリスは何なら適当にソーセージの箱詰めでも充分だけど〉 (かしこまりました)「アーナルダ卿。これをお渡ししておきましょう」 「なぜ私に渡すし!小包頼め小包!」 「…食事代、払ってもらいますよ」 「くっ、ここで食事代を出しては帰りの便に遅いものしか…いいだろう。私が持っていこう」 「お気を付けてー」 第七幕 クラルヴェルンサイド ルヴァ歴-25年、帝国歴にして975年。 こうして史上名高いベーロス六月攻勢の戦いが開始された。 その日の攻撃について、連盟軍の一兵士パウルス・モンドはこう述懐する。 「その日は小雨でしたが、長靴を履くように通達されました。敵(帝国軍)の砲撃はいつもより長く激しく、塹壕に籠もっていた自分たちも、いつ砲弾が頭上に落ちてくるのか、気が気でない状態でした。そして、自分は末端の一兵士でしたが、帝国軍の総攻撃が近いうちに始まることは容易に想像できていました」 帝国軍の初手は新たに構築した野砲陣による砲撃だった。砲撃は塹壕に隠れることでその殺傷力の多くを失うが、その日の砲撃は弾数が例日の倍に達しており、この日のために砲弾を備蓄していたことを推測させた。 そして雨が上がり、太陽がその姿を現した12時ぴったりにその異変は起きた。 「一体何が起きたのか……その時は全く解りませんでした。ただ敵の攻撃が来たと言うことと、ここは危険ということだけがわかりました」 「帝国軍は我々と戦っている合間に、一年以上もかけて地下で坑道を掘り進めていたんです。そして大量の爆薬を我々の塹壕の真下に仕込んで……、砲撃で我々が塹壕に隠れたところを、どっかん!」 帝国軍がこの坑道作戦に使用した爆薬の量はアンモナル火薬600トン。これを22個の巨大な地雷として敷設し、作動させた。 この爆発により連盟軍兵士の死者は一万人に達した。爆音は遠くアルティチュードにまで届き、セヴェリアにまで振動が到達したという。 「幸い、自分の足下の地面は爆発しませんでした。轟音で耳が聞こえなくなり、一瞬絶望しました。最初は大地震が起こったのだと思いましたが、味方の陣地で火柱が上がり、陣地が崩壊していくのをみて、敵の攻撃だと確信しました」 「直ぐに帝国軍が大挙して塹壕から飛び出してきました。自分たちの陣地は損害が少なく、機関銃で進撃の阻止を行えました。でも他の区画は次々突破され、小隊長も隣にいたラルゴやケイモス、ドアラも撃たれました。自分はもう駄目だと思って後退しました」 コールドロンは爆発の衝撃によって一時昏倒していたが、意識を回復すると即座に防戦の指揮を執る。連盟軍の複数の塹壕線のうち、損害の大きい五割を即座に放棄し、戦力を集中。「我々に退路はない!」と徹底抗戦を指示した。 「残念ながら勝負あったな、コールドロンよ。敗因は後方との連携か。それとも地盤の柔いところに布陣したことか。フッ、まあ塹壕を掘るには向いていようがな……」 黒騎士ベロースが突撃部隊の後に続いて連盟軍への陣地入りする。 「将軍、ここは未だ乱戦です。お出になるのは危険ではありませんか」 「承知している。しかし今までの苦闘に一つの区切りができるのだ。間近で指揮を執りたく思うのも当然だろう。ヴィルヘルム・シュタイニッツ」 連盟軍兵士パウルスは他の部隊と合流し、ジグザグに掘られた塹壕の中で帝国軍と交戦した。 「自分たちの区画はなんとか、第一波の撃退に成功しました。でも帝国軍は浸透戦術をとっており、抵抗の激しい区画は無視して先に進むのです。数十分後、後ろの区画が落とされ、自分たちは敵中で孤立することになってしまいました」 「自分は狙撃銃を持っていたので、少し高台に潜んで狙撃をすることになりました。そこで、信じられないものを見ました。敵の、帝国の指揮官、ベロース将軍を見つけたのです!」 前線に出る指揮官に、狙撃の危険性はつきものだ。 細心の注意を払うのは当然だが、リスクをゼロにすることはできない。 ましてや、ベロースは兵士の士気高揚の為に目立つ格好をしている。 影武者を使っているという噂もあったが。 「手が震え、心臓がバクバク鳴っている音が聞こえました。自分の一発の発砲が、危機に陥っている連盟軍を救うことができるかもしれないのです。チャンスは一度しかありません。私は慎重に慎重に狙いを付け、そして発射しました」 狙撃手から発せられた一発の銃弾。もちろん目では追えない。 弾は狙い違わずベロースの頭部に直撃した。 ……いや、直撃しようとした。 カン…! 銃弾はベロースの頭部を破壊するその手前で、見えざる壁によってはじき返された。ひしゃげた銃弾が塹壕内で音を立てて転がる。 「将軍!?」 「……なんと」 「ご無事ですか将軍、…将軍!」 「喚くな。……ククク、俺が人間だったら死んでいたな……」 「将軍、何を言っておられるのですか……?」 「悪いな、俺は盟約によって人間として参加した。今の狙撃で俺は死んでしまったようだ。以後はお前が指揮を執れ。お前は俺の下で戦ってきた。真似くらいできるだろう」 「そ、そんな事できるわけが……」 「できなければ死ぬだけだ。それは骨に身に染みて理解していよう」 副官ヴィルヘルム・シュタイニッツの前で、ベロースの姿がふっとかき消える。 「将軍? どちらへ……?」 「さあ行け、生き延びれば黒騎士の称号をやろう」 それが彼とベロースの最後の会話であった。 コールドロンと連盟軍は降伏か逃亡かの二者択一を迫られる状況にいた。 「帝国軍の攻勢が緩んだ……? ここは撤退するしかあるまい。少しでも、一人でも多くの兵士を後方へ送る。セラフィナイト本土が戦場になることはなんとしても避ける」 六月攻勢。帝国軍は連盟軍との戦いに勝利した。帝国軍はこの勝利により連盟軍の主要な陣地を占領。セラフィナイト連盟・共和派の両領域に重大な脅威を与えうることができる一方、一万人近くの捕虜を得た。本戦争のうちまれに見る大勝利と言えたが、帝国軍もまた、補いようのない人的損害を受けていた。 ベロース・エルツ・ヴァルダム将軍は混戦の中で狙撃され、戦死したと伝えられた。 セラフィナイトサイド アルフォンソ・ルイス・コールドロン中将は北部戦線における連盟軍人の代表であり、現在でも彼の評価は名将と愚将の二つの評価で分かれる。 北部戦線の兵士は最終的な帰還率が全戦線で最も低く、消費した物資は最も多く、キルレートは最も悪く。 一方で、ベロースの指揮する部隊は多くの戦闘で連盟軍に勝利しているが、コールドロン中将はベロースと対等に戦えた連盟軍唯一の指揮官でもあり、ベロース部隊以外の部隊との交戦時にはもっともよいキルレートを示したのも事実であり。 …そんな、この戦争の華であり、多くの注目を集めたコールドロン中将に比して、南部戦線における代表、オットー・エーレンバーグ少将に関する評価は良くも悪くも少ない。 彼はアンゼロット記念大学の出身で航空力学や気象学に詳しく甲種の星術者資格を持ち、暗号解読などでは情報部すらも差し置いてそのインテリぶりを存分に発揮した。新兵器、特に航空機の導入に積極的で、黎明期の航空部隊を指揮し多くの空軍戦術を編み出し、彼の指揮した航空部隊は一度も空戦に負けたことはなく、最後まで帝国軍航空部隊を寄せ付けなかった。兵卒の帰還率は国境警備にあたった部隊を除く全部隊の中で突出して高かったのも特筆に値するだろう。アルカニス鉱山防衛作戦以外に特に失敗したことはなく、その防衛作戦においても司令部が彼に防衛への支援を要請した時間から、彼の責任はあまりないとされている。 これらの観点から、コールドロン中将を愚将とする論者は彼を知将とするものもいる。 しかしながら、彼が陸戦において派手な成功を収めたことはない。また、航空機を使いこなした一方で、その航空機の生産に使われた生産力を北部戦線の陸上部隊の補給に向ければむしろよりよい戦果を出しただろうともいわれる。…これらを総合して、結局のところ彼は多くの場合凡将と評されるのが普通だ。 …そんな南部戦線の、六月のある日の出来事。 【エラキス干渉戦争の悲劇 第七幕、星と月の側より たまには南部戦線にも目を向けてあげてください】 「第二戦闘機部隊、帰還しました。敵機5機全撃墜。被撃墜2機」 「うむ、お疲れさん。被撃墜二機か…パイロットにはすまないことをしたな。もうすこし気を付けていればな…」 「あなたは神ですか…それはそうと、第一戦闘機部隊の補給が完了しましたが次の任務はどうしましょう」 「次の任務っていってもねえ…さっきのでシャドルバザールの飛行場の部隊は一掃してしまっているし、飛行場攻撃は爆撃機部隊がいまやってるからなあ…あ、そういえば、ベロースがやられたらしいね」 「え、あのベロース将軍がですか!?何があったんです?」 「いや、なんでもコールドロンと混戦を繰り広げた最中に狙撃されたらしくてな。敵さんも混乱中らしい。ま、そんな戦果をあげつつも未だに自分の混乱を立て直せずにいるあたりはコールドロンらしいが」 「へえ…それも暗号解析で得た情報ですか?」 「ああ。といっても本部の暗号解読班からもさっき同じ見解が返ってきたところだが。…で、どうやら帝国は増援を送ってきているらしい」 「増援って…中将の部隊は大丈夫なんですかね?増援を送る余裕が帝国にあったとは驚きですが」 「ま、大問題だろうな。そうだな。第一戦闘機部隊に出撃命令を出せ。適当に混乱を大混乱にしてやれ。高射砲には気を付けてな」 「はっ」 「…なんというか、思いつきじみた出撃だなあ」 「しかし以前より北部戦線への支援は本部から要請されていました。少将はそれを受諾しただけです」 「相変わらず堅いねえ。上の命令なしに動けないようじゃ、下の部隊に配属されたら死ぬぞ」 「構いません。栄誉あることです」 「………、まあいいや。なんでも、少将の言うことだとマイティアの辺りにまっすぐ向かえば増援部隊に遭遇できるんだったか」 「そうです。…気を抜かないでくださいよ」 「…いるな。数はまあそこそこ、増援っていっても地味だな。高射砲も一門だけか。ほれ、とっととうっとうしい高射砲を機関砲で掃射しろ。迎撃されるぞ」 「あ、はい。…あれは!?」 高射砲の迎撃をかわしつつ砲手の放った機関砲が高射砲を蜂の巣に変え、そして増援部隊の上を通り過ぎた瞬間、砲手は奇妙なものを目にする。 「どうかしたかいな」 「ベ、ベロース将軍…?」 「…?…。ベロースだな」 「…死んだはずでは?」 「影武者…ですかね」 「一瞬だったからよくわからん。誰かと話していたような気がするが…それも、この戦場に似合わぬ服だったな」 「私もそう見えましたが…どうしましょう」 「…この森の中では何が何だかわからん。まあいい、気のせいってことにして、とっととうっとうしい増援を掃討するぞ。…全機、攻撃を開始せよ」 終幕(第八幕) セラフィナイトサイド前編 ルヴァ歴-25年11月3日、エラキス干渉戦争…いや、正式にはエラキス内戦が終わった。 「マスター。エラキス共和派はエラキス西部の国王派抵抗勢力の排除を完了、これでエラキス全土の掌握が完了しました。エラキス内戦はこれで終結です」 ミリティアの発言に、思案顔でうなずく列席者たち。しばらくはテロなど続くだろうが、既に共和派に対抗しえるほどの力を持つ勢力はエラキス共和派以外になく、王政復古などは見込めない。植民地も次々と共和派への支持を表明している。 「…やっと、終わりましたね」 珍しく微苦笑のない表情で返すアンゼロット。感慨深げ、というよりは何か悲嘆するような声色で。ミリティアにとってもこのような声を聴いたのも五千年ぶりだろうか。 「ええ。…ですが、ここからが問題です」 「そうですね…」 【エラキス干渉戦争の悲劇 終幕―前編 星の下で】 先ほど、エラキス国内のエラキス共和派に対抗しえる勢力はエラキス共和派しかないと書いた。そう、それが残された課題。すなわち、共和派内部の路線対立。 アンゼロットは資料を手に取り、呟く。 「工業力はほぼ壊滅。疫病が蔓延。治安劣悪。特に東部地域の農村地帯では、セラフィナイトやクラルヴェルンへの人口流出著しい」 「ええ。既に連盟は難民受け入れのための体制構築を進めています。…マインフルトの鉱山会社が大規模受け入れを表明していますから、そっちは任せておいてもいいでしょう」 「何なら、採れた自然白金の一割を労働者に手渡す運動でも始めませんか?」 「それは社会主義者が言い出すでしょうけど、いくらか支援してあげてください。ミュリエルらしい活動だと思いますし。それはそうと…失敗しましたね」 「………本来の目的は、達成されました」 「そうね…第一の目的は、ね。第二の目的は、達成できそうもないですね」 「やはり、そうなりますよね…」 「エラキスの民主化。それが公に掲げた連盟の大義名分であって、私たちのしていた、導火線上での火遊びはあくまでも非公式なもの。それに…現実主義者のベロースには想像できなかったのかもしれませんが、理想は時に論理的な人間すら盲目にするもの」 「あるいは、この世界の民主主義者の孤独が理解されなかったのかもしれません」 「それもありえそうなことです」 この世界の法則の象徴たるディスコードは、のんびり民主制の下で話し合って決めている時間を与えてはくれない。この世界では、民主主義は世界法則と相容れないものなのだ。この当時はディスコードが機能していて、今は機能していないという違いはあるが、未だにその権威主義的な世界は続いている。 故に、民主主義者は常に孤独を強いられる。東フォルストレア、いやフォルストレア唯一の民主共和制国家であるセラフィナイトにとって、たった一人の同志と呼べるのがエラキス共和派だったのだ。 革命には独裁はつきもの。アンゼロットは民主主義者だったが、別にあらゆる状況の解決策として民主主義を提示するほどの原理主義者ではないし、そもそも完全に予定通りに全てが進行した場合でもエラキス国内の産業は甚大な被害を受けているだろうから、戦後しばらくは開発独裁的な手法で経済基盤の立て直しを図ることを認めるつもりだった。いや、そうしなければ綻びが生じるだろう。 だがそれは民主制への短い過渡期であることを前提としてのもの。開発独裁で資本家の懐を温め、徐々にその資本家に政治改革を実行させていって、エラキスに民主制をもたらす。現在のセラフィナイト政府はエラキス併合だの傀儡政権樹立だのを考えていたようだったが、それを阻止する方策は最初から決まっていた。ちょうど今、連盟は選挙の告示期間である。厭戦感情と戦争がもたらした悲劇への反省から、現在の与党であるセラフィナイト国民党は議席を失い、代わって社会民主党が政権の座につき、よりエラキスに自主性を委ねる…というか、戦争から目を背ける政策を採ることになるだろう。 しかしながら、ベロースとの戦闘で常に後方に押しとどめて終戦まで死守するつもりだったエラキス南部の鉱山群は破壊された。これにより連盟資本を投入させようにも投入させるべき対象となるものがなくなった。いや、もちろん鉱山は数年のうちに再建される予定なのだが、このために連盟も帝国も他国の資源を確保して対応しようという考えに傾き、現実に他国の鉱山会社はそれにこたえようとしている。そして、戦争中に建てた鉄道の容量はすでに余剰になり、高規格化への投資計画は既に多くの問題が出つつある。 ちなみに、左右に分かれつつあったエラキス共和派はのちに連盟の社会民主党の影響下で左派勢力中心になるのだが、ここではあまり関係のない話である。 「長い道になりそうですね」 「ええ。数十年くらいかかるでしょうが…しかたないですね。策を弄して世界大戦回避、なんて私たちの本来のやり方ではない指し手をしたのですから。本来の目的を達成できただけでも充分です」 「わたしからすれば、第二の目的を目指すなら擬天使本来のあり方である相互理解をとらないと手段と目的が矛盾してしまうからそもそも無理だったと思いますけどね。まあ、どうあってもできることではなかった、と」 「フィリオリのいうことも道理ですね。時に、ミリティア。…主従に基づく義務として命じます」 これは初めてのことだ。アンゼロットにミリティアが仕えて久しいが、アンゼロットは一度も主従関係をよしとしたことはない。が、ミリティアは特別驚かず、臣従の礼を以て応じる。 「何なりと。マスター」 「エラキスに向かいますよ。状況の確認をしましょう」 ついでにあなたは夢魔として、絶望の吸収も。ということは、わざわざ言及することではないと誰もが理解している。ミリティアは短く返す。 「仰せのままに」 「ではこれにて解散。夜天はあらゆる色の月と星を受け入れる」 「「「「「「夜天はあらゆる色の月と星を受け入れる」」」」」」 クラルヴェルンサイド 【エラキス干渉戦争の悲劇 クラルヴェルンside-8 夢魔たちの終戦】 帝都メッサーナと夢遊宮の空に色とりどりの花火が浮かぶ。 音楽屋の演奏が各所で奏でられ、酒樽が解放され、露天が並び人々は浮かれ騒ぐ。 街路を舞台に夢魔と復員兵がワルツを踊り、市民達は羨望と祝福の念を込めて囃し立てる。 「まるで戦争に勝利したかのような騒ぎね」 市内の喫茶店のテラスにて、ピースフルドリームがやや憮然とした表情で呟く。クルーエルドリームはロスマリン・ティーを啜ると、カップを受け皿に置いた。 「結末にご不満?」 「不満がないと言えば嘘になるわね。一年目はともかく、二年目以降は帝国が優勢。継戦すればセラフィナイトも共和派も駆逐できたのに、何も得ることなく撤退だなんて」 「天秤政策ですもの。勢力均衡を目的に派兵したのに、帝国がエラキスを併合してしまえば周辺国に 悪い子 と見なされるわ」 エラキス干渉戦争は王党派の瓦解と国王の帝国への亡命により終了した。 出兵の名分を失った帝国軍は撤退し、内戦は共和派と連盟軍が勝利。エラキス全土を手中に収めつつある。帝国は撤退はしたがセラフィナイトに対して最後通牒を通達。セラフィナイトからは即座にエラキスからの撤退声明と関係改善の申し出を得た。 こうして惑星ルヴァース初の近代戦争は終わった。 「でも天秤は崩れたわね。エラキスはもう立ち直れないかも」 「そうですね。今度は共和派同士の内乱ですか……。ソフィーヤがビショップに昇格したそうですし。もうしばらくはサイコパスゲームをしなくても良さそうです」 「結局、……天使たちは何がしたかったのかしら?」 「わかりません。天使の魂は夢魔には理解できないのかも。それでもあえて推測するとしたら」 「したら?」 「文明と社会の促進。でしょうか。戦争の為に帝国は様々な改革を余儀なくされました。労働力が足りなくなって女性も普通に働くようになりましたし、次の選挙では国民の不満を抑えるために完全な普通選挙が実施されるでしょう」 「まってよ、そんなの戦争の被害と全然釣り合わないわ。何人死んだと思っているのかしら。もう戦争はこりごりよ」 「ええそうね。もう戦争はこりごり……そう思わせることも狙いなのかも。つまりは、全ての戦争を終わらせるための戦争。あるいは戦争の惨禍を知らしめるための戦争」 「フッ、クルーエルの推測で大筋間違いではない」 「ベロース様!?」 戦死したと伝えられた男の登場に驚くクルーエル。もとより黒騎士の死など信じていなかったが。 「アンゼロットは大破壊を予見したのだ。西方ルヴィド=エドと東方クラルヴェルンの衝突と、それに伴う大破壊。フォルストレア全体がエラキスのようになることを予見した」 「政治家どもの安易な決断を防ぐ為、戦争から幻想と煌めきを奪い去る必要があった。そういうことだ」 「…黒騎士様は私達より深く洞察しておられるのですね」 「気にするな。お前達は記憶の大半を封じられている。全てを理解せよとは天使も思うまいよ」 ジャスリーさま程じゃないけれど、アンゼロットも甘いわね……。 私は貴方と同じプライムミニスターとして、国民を近代戦に放り込んだことが何度もあるわ。 為政者は安全な所にいるもの。戦争の惨禍なんて知らない。核シェルターの中から平気で戦争を起こすことができる。ジャスリーさまのように末端の兵士を思いやったり、ベロースのように前線に出たりしない。安全な所から国民を扇動し、憎悪と義務を煽るの。 それはその為政者が腐っているからじゃないわ。それが国家と国民の利益の為。 まーいーかー...... いつかセラフィナイトにお邪魔しましょ。 そして貴方の理想を見せて貰いましょう。 ジャスリーさまはいつものように、中庭の安楽椅子に座って目を閉じていた。 テーブルには飲みかけの紅茶と、編みかけのマフラー、書きかけの便箋。 宰相と将軍は戦争被害の責任を取り、職を辞した。融和論を望んでいたジャスリー皇帝は相対的に発言力が高まり、帝国民の世論と皇帝の意思はここに一致した。 来月にはセラフィナイト政府と首脳会談を行う予定があり、ジャスリー皇帝はエタブリッシェに赴く。また新たな戦争が起こるのではないかという両国民の悪夢を拭い去る、大切な会談だ。 戦後復興の協力。捕虜の交換。連盟で不足している医薬品と燃料の供給。地中海港の利用権。エラキス難民への共同対処。マイティアの森事件の共同調査。共和系政治犯への恩赦。それからそれから……。 帝国と連盟は、フォルストレアの安寧を共に守護する強固な関係で結ばれるだろう。 「ジャスリー女帝。帝国の戦死者達の魂は、貴賤なく確かに天上に」 鎧装束に身を包んだ女性がジャスリーさまに語りかける。天上の使者にして戦乙女。誇り高きイーゼンステインの女王。 「ありがとうございます、ブリュンヒルデ様。彼らの魂は報われるでしょう」 「我が王国も貴国らの戦争には注視していました。貴方方の戦いぶりは賞賛にあたるものでしたよ。戦士達の健闘は、戦争の悲劇とともに長く語り継がれるでしょう」 「恐れ入ります。ところで、帝国では軍政改革を進めています。よろしければ、北フォルストレア随一の強国であるイーゼンステイン王国の制度を参考にしたく存じます」 「歓迎致しましょう。演習を行うのも良いかも知れません。それと、我が妹ヘルムヴィーゲが帝国への滞在を希望しておりますが、宜しいでしょうか」 「はい。こちらこそ歓迎致します」 そろそろ自分も終戦祭に顔を出さないと。ジャスリーさまは書きかけの便箋に向かう。 便箋押さえとして、小さな花瓶が一つ。小さく可憐なムラサキツユノクサが飾られている。 あの日、観光客から受け取って二年以上経つにも関わらず、萎れていない。 ジャスリーさまはそれを特段不思議とは思わず、便箋にペンを走らせる。 そして書き終え、署名すると終戦祭へ向かった。 『愛しいアンゼへ 来月2日、仕事の関係でセラフィナイトに行きます。 戦争について、一杯書きたいことはあるけど、書ききれません。 だから、会ってお話しましょう。 貴方と手を繋いで、紅茶を入れましょう。 私は遙かな理想を追い求める貴方が好き。 心配してくれて、慰めてくれる貴方が好き。 我が儘を言っても微笑んでくれる貴方が好き。 夢魔の甘言に決して溺れない貴方が好き。 これからもよろしくね。 ジャスリーより』 セラフィナイトサイド後編 エラキス東部の片田舎にある小さな村、マイティア。 その外れの森の中で、月明かりを浴びながら、幻月の学徒アンゼロットと夢魔ミリティア・アロートは惨劇の現場を確認する。 二人とも言葉はない。アンゼロットは何も言わず、魔法の光で手向けの花を精製する。 次に、…それがある種最上級の無礼と知りつつも、それが彼らの最大限の望みゆえに、最高精度の魔法によりこの全てを走査する。 ミリティアは目でアンゼロットが得た結果を問う。アンゼロットは微苦笑ではなく苦渋の混じった無表情で応じる。 それは、エラキス王党派の同胞殺しの暴挙を知ったが故か。とあるクラルヴェルン人の彼女に対する背信を知ったが故か。あるいは…セラフィナイト軍人、それすなわち一般市民の愚行を知ったが故か。それとも全く異なった何かがあったのか。 ミリティアはその表情からすべてを読み取り、夢魔としての魔力を解き放つ。 それは、塵も灰もすべてを夢に変えた。そして、そこに残されたのは整った墓標と地中に丁重に埋葬された一万のエラキス人。 その墓標に刻まれたのは、自らに対する、最大限の諷意を込めた皮肉。首謀者に指示できる立場ではなかったといっても、この戦争を招いた責任は自らにもあるのだから。 これで、真実を知るのはこの首謀者たちとアンゼロットとミリティアのみ。 【エラキス干渉戦争の悲劇 終幕-後編 月の下で】 さて、二人はマイティアの宿に戻り、部屋の窓辺でミリティアの淹れた紅茶片手に静かなお茶会を始める。口火を切ったのはミリティアだった。 「…マスター。これで、戦争は終結しました」 「そうですね」 「この戦争…確かにこの時に指さなければならないものだった、というのは今でも変わりありません。そして、私たちは表向き一つの、裏向き一つの目標を掲げました」 今この時が、世界全体から見て相対的にセラフィナイトとクラルヴェルンの工業力が極大となる時期で、そしてどうせクラルヴェルンと指さなければならないなら、いずれ起こる運命にあるこの戦争に他国が介入しえる力を得る前に終わらせてしまおう、という考えは、魔法を理解している者達にとっては納得のいくものだろう。事実、それは大義名分がある戦争をも良しとしない七人の擬天使たち自身を納得させたものだったのだから。大義名分で戦いはできなくても、諦観で戦うことならできるのだ。 そして、諦めてしまえば、導火線に火をつけることは容易いことだった。いや、彼女たちはいままで全力でその火を押しとどめてきたのだから、単純にそれをやめてしまえばすむだけの話だった。 セラフィナイトは民主主義を掲げるただ一つの同志のために。クラルヴェルンは均衡の維持のために。エラキス国王派は古き血筋を後世に伝えるために。エラキス共和派は自らを縛る鎖を解き放つために。アンゼロットは変えられない痛みをせめて小さくするために。ジャスリーさまは国民の声の下にあるがために。 エラキス内部で散った火花は、瞬く間にセラフィナイト国民の世論を酸化性物質とし、クラルヴェルンで勃興しつつあった中流階級の世論という引火性物質を沸騰させ、…しかし延焼することはなかった。戦争の制御という意味では、アンゼロットは成功した。彼女にとって唯一予想外だった事態はマイティアの森事件だが、これはセラフィナイト人やクラルヴェルン人の死者数からすれば誤差にすぎないものだった。その誤差は、一瞬の助燃作用を示しはしたが、結局のところ切れかけていた燃料を払底させ、戦争の終結を予想よりも多少早めた。…いや、そう単純に切り捨てられるものでもないのだが、今となっては彼らを救う方法はない。 「近代戦に対する忌避感情の醸成という目的は、達成できました。でも…そうですね、フィリオリの言っていた通り、これは道理ですね」 「エラキスの民主化は図れなかったこと、ですね。マスター、…私はただ一人、擬天使の中であなたの訪れた世界をすべて知っています。もちろん、あなたの生まれた世界も」 「…そうでしたね」 「あなたの民主主義への思い入れ、察するところあまりあります」 アンゼロットは民主主義者だ。流石に最初にこの世界に来た際に直ちにその中世封建社会を突き崩そうと考えるほどではないが、彼女にとってこの世界が近代に入り各国で民主化が進んでいく様子を眺めることは、ささやかな…いや、彼女にとってはこの上ない楽しみの一つとなったはずだったのだ。…だったのだが、それは世界律に反する期待だった。 「…理解はありがたいですが、それを認めることは私の信条に反します」 「でしょうね…ですが、それを察したことだけ、知っていてほしいのです。もう一つ叶うのならば、共感している、とも」 あるいはそれが、ミリティアが夢魔でありながら擬天使でもあるという、魔族でも珍しい例となった理由かもしれなかった。 「ありがとう。ミリティア」 アンゼロットはそういってティーカップを傾ける。ミリティアはそれが水平に戻るのを待って、話を変えた。 「…時にマスター。この後、どうなさいますか?せっかく時が来たのに、これではあまりにも興がないでしょう」 「そうですね…まあ、彼女の国の政治改革の進展を、楽しみにしましょうか。セラフィナイトの民主主義者と、絶対ならざる民主制の下で」 そういって、アンゼロットはティーカップに二杯目の紅茶を注ぎ、角砂糖を放り込んだ。角砂糖が溶けると、アンゼロットはティーカップを傾ける。溶けた砂糖は視覚からは消えるが、その糖分が消えたわけではない。そう思うに至り、アンゼロットは久方ぶりにミリティアの見慣れた微苦笑を浮かべる。この戦争が招いた惨劇を忘れることなしに、夢魔の無理解への嘆きのみを消し去る。それは要らぬ感慨だから。ミリティアが理解してくれたなら、それで充分。彼女たちにその理解を求める必要はないのだから。言い聞かせるでもなく、胸からあふれる感情でもなく、ただ淡々とそう感じ、さて、誤解をどうやって解こうか、とミリティアと次の必要事項を協議することにする。 …そこに、とある人物が現れる。アンゼロットはこう言う。 「来ましたね」 おまけ 【エラキス干渉戦争の悲劇 おまけという名の要約】 「顧客(アンゼロット)が説明した要件」 制御された破壊と、世界への近代戦の教育。それによる厭戦感情の醸成。大破壊の回避。これだけ言えば理解して頂けますか? 「プロジェクトリーダ(ジャスリーさま)の理解」 平和主義者のはずのアンゼがエラキスに干渉を始めた。わけがわからないよ。でも均衡崩されるわけにもいかないなあ…。 「アナリスト(ピースフルドリーム)のデザイン」 擬天使(アンゼロットたち)が天使(ミュリエル)と組んで夢魔を打倒しにきている!仕方ない、こっちも黒騎士を…。→プロジェクトの書類 「プログラマ(ベロース)のコード」 戦争の制御などできぬよ。まあいい、協力してやるか。→実装された運用 「営業(帝国軍将軍)の表現、約束」 この戦争は夢魔顕現祭までに確実に勝利できます!→顧客への請求金額 「プロジェクトの書類」 ベロース召喚魔法陣。 「実装された運用」 北部戦線が地獄に。 「顧客への請求金額」 両国とも壮絶な戦費と人的資源を消耗。 「得られたサポート」 マイティアの森事件。エラキス経済は壊滅。 「顧客(アンゼロットと連盟)が本当に必要だったもの」 エラキスの民主化。とはいえ、これは連盟が公式に掲げた理由だから二度言うこともないか。帝国軍に理解してもらわなければならないのは戦争を制御する気があることだけだし。 追想 真実などない。あるのは観測者の数と等しき数の事実 月明かりに照らされるマイティアの森で。 「遅かったか」 「あなたが遅かったのではありません。あなたが私より早く到着しないように導出しただけです」 「…まあいい。これは、何だ?」 「おや、これとは?」 「…擬天使の魔法で惨劇の現場は全て隠蔽された。それはいい。俺はそれについてはお前と話をすればそれでいい。…この、夢魔と黒騎士の魔力の強烈な残滓は何だ?これほどの魔力…結界の解呪ではない。明らかに、戦況に干渉する魔法だ」 「それについては、私の説明する義務はありませんので」 「知っているのか」 「この真実を隠蔽する際に、副次的に、ね。ですが、あなたが問うべきはこの土中に眠る真実でしょう」 「悪いが、これほどの魔力、SSVDとして見逃すわけにいかねえな」 「では、どうしますか」 ライトは黒き太刀を構える。…できるだけの対魔法抵抗を付加し、アンゼロットに相対する。 「真実を、追い求める。職務だ」 「…わかりました。いいでしょう」 【エラキス干渉戦争の悲劇 外伝2解 交錯する虚実】 「この土の下に眠る真実を問う前に、まずはこの魔力について問おう」 「いいでしょう。職務規定に則り、守秘義務を課した上で、答えましょう」 「この場所にいた夢魔と黒騎士は、何をしようとしていた」 「黒騎士は単に夢魔の幻惑の傘の陰に隠れようとしただけです。夢魔は…私と同じです。土中の真実の隠蔽。帝国軍…といっても近衛兵のような儀礼部隊のようですが。それを引き連れていたようですね」 「失敗したのか」 「ええ。おそらく、この戦場で唯一、魔法を通常兵器が凌駕した例でしょうね」 「何があった」 「エーレンバーグ少将指揮下の戦闘機部隊が、偶然にもその夢魔たちを帝国軍の増援と勘違いし、攻撃をかけただけです。それを逃れようとした。規則として、悪魔と魔族はこの世界でいうところの交戦者になることを禁じられていますからね」 「戦況に干渉したのは、むしろ擬天使のほうだった、というわけか」 「なぜそのような推定を?」 「単純なことだ。戦闘機部隊が夢魔の傘に入った帝国軍に気付けるわけがないだろう。気付いたならば、何者かによる魔法的干渉があることにならァ」 「…やれやれ。ま、確かにエーレンバーグ少将は対魔法のために用意した駒ですよ。彼には自身に不利な魔法を無効化できるようにしてありましてね。使いたくはなかったんですが」 「そう言うと思った。だがおかしい。そもそも、夢魔はなぜそのタイミングで隠蔽を図った?あの時リスクを負わなくても、あとからでも手は打てたはずだ」 「私は夢魔ではありませんから実際のところはわかりません。ただ、夢魔にとってもあなたの捜査能力は脅威だったんじゃないですか?」 「第一の赤。〈私はこの事件の隠蔽以外に、この事件に関与していない〉」 「やはりか。そうだな…[この事件には魔法が使われている]」 「二十の楔で砕いたほうが手っ取り早いんじゃないですかね。私は否定も肯定もしませんが」 追想2 ある山小屋の来歴 (練習的に多少地の文を入れてみる。正直微妙) ルヴァ歴-24年1月21日。アルフォンソ・ルイス・コールドロン大将(終戦時に昇進)はこの時60歳で、彼の妻フェリシアは54歳であった。彼らの息子は…長男、次男は戦争中に死亡。長女は戦争前に結婚しており、既に家にはいない。そして、帰ってきたコールドロンと会うことはついに希望しなかった。 さて、コールドロンはエタブリッシェの家を引き払い、郊外に移ることにした。そして、ちょうどいい条件の建物があったので、その持ち主の資産家を訪れたのであるが…。 「…あの別荘を買い取りたい、ですかな」 「ええ」 「ふむ…肉屋でも開かれるのですかな?」 資産家は皮相めいた笑みを浮かべる。コールドロンは返す。 「いえ…その、孤児院を開こうかと」 「ほう」 資産家の皮相な笑みは深まる。 「提示した資金は持参しているのですかな?」 「はい。どうぞ」 「ふむ。その前に、一つ言わせていただけますかな」 「何でしょう」 「私のたった一人の息子は徴兵で北部戦線に出撃しましてね。マイティア防衛戦で帝国軍と交戦し亡くなりました。あなたはその名も知らないでしょうがな」 「お名前をお聞かせください。何か覚えているかもしれません」 「ハインケル・クレッツベルン。階級は…上等兵、とかいうものらしい」 「…申し訳ありません。存じておりません」 「ほう。クレッツベルンの名もご存知ありませんかな?」 「いえ…それは、知っています。リーゼロッテ三大銀行の一つ、クレッツベルン銀行の創業者一家。本家、なのですか?」 (資産家ははっはとさぞ愉快そうに笑みを漏らす。…それがかすかな苦いものを含んだことをコールドロンは気付いていたが、それを聞くことは不躾だろうとも察した←こういう解説いらねえ?) 「馬鹿な。本家の一人息子が最前線に出ることもあるまいな。はっはっは!もうよい。これが契約書。サインすればあなたはもう私のくだらない話を聞く必要はなくなるわけだな。さあ、サインしたまえ。無論、ここで契約せずにそのアタッシェケースを持って帰るのも自由だがね」 (無論コールドロンはクレッツベルンの名を聞いた時に連想していた。しかし、それを覚えていないということは不誠実な態度だと考えたのである。どうやら、この偏屈な資産家にはそれでよかったらしい) 「いえ、くだらなくなど…」 「世辞などよい」 (一言言うと宣言して、一言を過ぎたのだ。もう話すことはないということだろう。というより、早くサインして帰れと思っているのだろうか) コールドロンはそれ以上話そうとするのをやめ、契約書にサインし、アタッシェケースを渡した。 「確かに契約は成立した。これが鍵、そしてこれが権利書だ。持って行きたまえ」 「はい。…今日は、ありがとうございました」 「ああ。それではな。孤児院、うまくやりたまえよ」 (…それから27年…すなわち、ルヴァ歴3年。) (この辺書きかけ) 「そういうことがあったのね」 ルヴァ歴30年、陽気のうららかなある春の日。セラフィナイトとクラルヴェルンに国境の山岳地帯に位置する療養所。 …エレオノーラ療養所。 「来歴は聞かなかったのですか?」 「ただの山小屋としか聞かなかったわね。やけに設備が整っていると思ったけど。というか、むしろそんなことまであなたが知っている方が驚きよ」 「アルフォンソ・ルイス・コールドロンの戦後の話は調べれば出てくる程度には有名ですよ。本人の出した伝記は戦中のものだけなので人口に膾炙しているとはいえないですけど」 「調べれば出てくる、ね」 「マイティアの森事件のように調べてもわからないことというのも世には多いですけどね。調べればわかるというのは楽でよいことです。あれの真実は誰も知らないですからね。もちろん、私も」 (この状況でマイティアの森を引き合いに出すのがなんとも言えない。そもそもこれでは調べたと言っているようなものである。そして最後がやたら白々しい)