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劇薬丹調合 名前 生産数 材料 火炎丹 4 硫黄:5 れい羊角:1 ジャコウ:4 風刃丹 4 雷鳥の羽:5 れい羊角:1 ジャコウ:4 冷命丹 4 天草:5 れい羊角:1 ジャコウ:4 雷鳴丹 4 スズラン:5 れい羊角:1 ジャコウ:4
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禁断の劇薬 (ナンバー0131) 黒・キープスペル S9/C1 あなたの場の黒のクリーチャー全てのパワーを+2する。あなたのエンドフェイズ時、このカードとあなたの場のクリーチャー全てを破壊する。 フレーバー:こいつは効きますよ。-狂気の科学者インサ 収録:第一弾リスト
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「案外すんなりと入れたな」 バッツたち3人はぼろぼろに荒れ果てた裏門から、神殿の中へと侵入していた。 「土の戦士はこの丁度反対側の場所にいるようです」 エリアの言葉を聞き、早速移動しようとした一行だったが、ここで3人のお腹が同時にぐぅ~となる。 3人はそれぞれ顔を見合わせて笑う。 さらに自分たちが今立ち止まった場所が何処なのかを知って、彼らはまた笑う。 そこには【食堂】と書いてあったのだ。 「まずは食事にしようよ…もうぼくお腹ぺこぺこだよ」 お腹を押さえてクーパーが言い、そのまま彼は食堂の中に入っていく。 「そうだな」 バッツも賛成する。 「よろしいのですか?」 エリアは少し首をかしげている。 「ここまで来ればもう大丈夫だろう、土の戦士とやらにも、まずは気分を落ち着けてから会いたい」 本当は一刻も早く、という気持ちだったが、それを押さえて、バッツも食堂の中へと入る。 ここまで緊張の連続だった、自分も一息つきたいし、クーパーを休ませてやりたい、 それに一行の中にはようやく辿りついたという安堵感もあったし、 ここまで来ればもう大丈夫という達成感もあった。 とりあえず空腹のままでは不測の事態の時に機敏に反応できない。腹が減っては戦は出来ないのだ。 それからしばらく経過し、食堂の中には美味しそうな匂いが漂いはじめている。 エリアは本来ファリスの支給品であった干し飯を鍋の中に入れると、お湯で戻し、 さらに、道々で摘んだ野草や木の実も放りこんで、リゾットを作っていく。 クーパーは待ちきれないといった様子で、厨房を眺めている。 一方のバッツは目を閉じたまま、イスにもたれて何か考えごとをしているようだ。 (ファリス…レナ…) 彼は失った仲間たちのことを考えていた。 (そういえばファリスは荒っぽいくせに薬とかにもかなり詳しかったよな) そのまま彼はファリスとの思い出を回想する。 『すごいな、これ全部薬かよ』 『俺たち海賊は生傷がつきもんだし、職業柄まっとうな医者にもかかれやしないからな、自然と詳しくなっちまった』 現実の世界では待ちきれなくなったクーパーがエリアに催促をしている。 「ねぇ、早くぅ~」 「そう急かされても、まだ味見もしていませんよ」 「だったら、僕が味見をするよ、いいでしょ、ねぇ」 「仕方ないですね、わかりました。ちょっと待ってください」 そんなやり取りを聞きながら、バッツはさらに思い出の中へと沈んでいく。 『でもよ、俺が持っているのは傷を治す薬だけじゃないぜ、こんな珍しい毒薬もあるぜ』 そう言ってファリスが見せた薬ビンの中身は、無色透明でバッツの目には水にしか見えなかった。 『だろ…ちょっと待ってな』 ファリスはそう言うと、ビンの中身をフラスコにとって熱を加える。 『どうだ…うまそうな香ばしい匂いがするだろ…知らなきゃそのまま食べてしまうぜ』 (そうそう、ちょうどこんな香ばしい…!!) バッツは慌てて立ちあがり、味見をしようとしているクーパーを止めようとするが、 しかしすでに手遅れだった、クーパーは皿に盛りつけられたリゾットをもう口にしていた。 バッツの声に振り向くクーパーだったが、毒の効果は劇的だった、 彼の身体が瞬時にして灰色になったかと思うと、もう次の瞬間には彼の身体は石になってしまっていたのだ。 石像と化したクーパーの前でバッツは己の迂闊さを深く後悔する。 こんな大事な事をここまでどうして失念していた? そうだ、この戦場にエクスデスの息がかかったものが紛れ込んでいないと誰が保証できる。 エクスデスの1派ならば、当然クリスタルのことも知っていて然りだ。 一方のエリアは何が起こったのかも理解出来ず、金魚のように口をパクパクと開閉している。 言いたいことはあれど、言葉が出てこないのだ。 (どうして?どうして?どうして?) だが、今、目の前で起こった事は紛れも無い現実だ、自分の料理を口にしたクーパーは物言わぬ冷たい石像と成り果ててしまっている。 バッツはエリアを睨みつけ、その手を剣へと伸ばす。 毒を盛られたのが自分ならば、まだ落ちついていられた、 だが、無関係なクーパーを巻き込んだことだけは絶対に許せない。 そう、バッツを突き動かしていたのは、エリアに対しての怒りだけではなく、 クーパーを守る事が出来なかったふがいない自分への怒りだった。 「油断した俺が馬鹿だった…だが、お前だけは許せない!」 そしてその言葉が終わるか終わらないかの間に、 エリアは脱兎のごとく厨房を飛び出し逃げ出していた。 もはや自分の言葉では彼を納得させることはできないだろう、 こうなったら土の戦士であるあの少年になんとかとりなしてもらうしかない。 そうする以外に自分の身の証を立てる方法は無いのだから…。 ともかくエリアは必死で逃げる。 「土の戦士というのも当然でまかせか?それとも俺の次はそいつだったのか!」 風の戦士の怒りと悲しみの叫びを背後に聞きながら… そして場面は表門へと変わる。 自慢気なテリーの声から、少し遅れて土煙の中からゆっくりとソロが姿を現す。 目をやられているのか、両目には眼帯が巻かれているのが遠めでも分かる。 「テリー…先に行っちゃだめだよ…」 ソロは足元を剣で探りながら、ふらふらと声の方に近づいていく。 導師とティファはそんな2人の様子を見ながら、小声で相談する。 「目が見えないのかな?…直してあげればもしかして仲間になってくれるかも」 一方のティファはソロの顔を見ながら首をかしげている。 「あれは…」 その時であった、廊下の曲がり角から悲鳴が聞こえたかと思うと、一人の女性が姿を現す。 さらにそれを追って戦士が剣を振りかざす。 「覚悟しろ!」 止める暇もなかった、その瞬間、戦士の剣は女の背中を見事なまでに斬り裂いていた。 女はスローモーションのように天に向かって手を伸ばし、救いを求めるようにさらに 何歩かふらふらと進むが、そのまま床へと倒れこんだ。 言葉もなく、静まり返る一同だったが、やがてテリーの叫びが均衡を破る。 「ソロ!悪い奴がいたよ!今、女の人を殺そうとしている!」 悪い奴…その言葉を聞いた途端、今まで緩慢としていたソロの動きが見違えるように機敏になる。 「テリー!そいつはどこにいる!」 「ソロの左の方にいる、そのまままっすぐ走ったらすぐだよ」 「分かった!」 ソロに続いてテリーも男の方へと駆けていく。 導師もまた男に斬られた女性が誰なのかを悟り、男を止めようと走る。 「エリアさん!」 床に倒れたエリアは血塗れになりながらも、それでも床を転がり、救いを求め導師たちの方へと手を伸ばす。 だが、バッツは非情にも剣を両手で構え、エリアへと止めの一撃を見舞おうとしていた。 「これで…終わりだ!」 その時であった、空中から鋭く舞い降りる影、 それを察知したバッツは素早く剣を持ち変えると、ジャンプ斬りをしかけたソロの剣を受けとめる。 「許さない許さない…悪い奴は一人残らず許さない…」 ソロは素早く間合いを外すと、剣を鞘に収め、息を潜めて相手の動きを読む。 一方のバッツは完全に頭に血が登ってしまっている。 「邪魔をするなぁ!」 叫びと同時に彼はソロへと斬りかかっていった。 ソロとバッツが斬り結ぶ中、放置状態のエリアの状態を遅れて到着したティファが確認する。 意識を失っている上、背中を深く斬られ、傷は首筋にまで達している、危険な状態だ。 「導師!はやく来て、でないと…」 しかし導師は、やる気まんまんといった感じで、バッツとソロの戦いをまるで隙をうかがうかのようにじっと眺めている。「何しているのよ!」 「だけどっ!この人は僕の知り合いなんだよ!…あいつ!許さない、ちくしょう!」 怒りに我を忘れている導師をティファが嗜める。 「だったら尚更じゃないの!まだ助かるかもしれないのに…あなた言ってたでしょ、自分の役目は戦う事じゃなく助けることだって!」 「でもっ!」 「戦うことは何時でも出来るわ、でも救う事は何度も出来ることじゃないのよ!」 ティファの言葉に、冷静さを取り戻したのだろう、 導師は気を取り直してエリアへと回復魔法を唱える、しかし。 「だめだ、傷は塞いだけど出血が多過ぎる…回復魔法に加えて輸血もしないと持たないよ」 「たしか医務室がこの先にあったと思う…急ごう」 テイファと導師はエリアの体をそっと持ち上げると、そのまま戦場を離脱し、医務室へと向かった。 【バッツ@魔法剣士(アビリティ:時魔法) 所持品:ブレイブブレイド 第一行動方針:エリアを倒す・ソロを倒す 第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す 基本行動方針:非好戦的だが自衛はする 最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】 【現在位置:神殿】 【テリー 所持品:なし 第一行動方針:ソロを助ける 基本行動方針:謎の剣士の敵(ティナ)を取る】 【ソロ(暗闇もしくは失明) 所持品:エンハンスソード イリーナの会員証 スーツケース核爆弾 第一行動方針:バッツを倒す 最終行動方針:デスピサロ打倒(現在もその気があるかは不明) 【現在位置:神殿】 【導師(MP50%) 所持品:天罰の杖 首輪 第一行動方針:エリアの治療 第二行動方針:ハーゴンの補佐、看病 最終行動方針:不明】 【ティファ 所持品:ボムのかけら×5 第一行動方針:エリアの治療 第二行動方針:クラウドたちを探す】 【エリア(瀕死) 所持品:ミスリルナイフ 加速装置 食料2ヶ月20日強分&毒薬 水1,5リットル×2 小型のミスリルシールド フィアーの書×7 第一行動方針:クリスタルの戦士との合流 第二行動方針:?】 【現在位置:神殿内部の医務室へ】 ※エリアは一度だけ召喚魔法『シルドラ』を行使可能 ※現在荷物は全て食堂に放置状態です 【クーパー(石化) 所持品:天空の盾 第一行動方針:? 第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す 最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】 【現在位置:神殿食堂】 (数時間後自動的に回復) ←PREV INDEX NEXT→ ←PREV エリア NEXT→ ←PREV 導師 NEXT→ ←PREV バッツ NEXT→ ←PREV ティファ NEXT→ ←PREV ソロ NEXT→ ←PREV クーパー NEXT→ ←PREV テリー NEXT→
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ドクター小石の事件カルテ4 劇薬 ~再会してはならぬ男と女…葬儀で死者が肉声告発、心臓病の薬を劇薬に変える悪魔のトリック~ 放送年 :2008 放送日 :0222 放映局 :CX 区分 :単 役名 :中原静也 出演話数: ソフト化: 備考 :◆劇中にて、チェッカーズの『涙のリクエスト』を歌う 2008 2サス CX
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属性 闇属性 最大Lv 99 初期HP 4006 最大HP 6009 レアリティ ★6 タイプ シーフ 初期攻撃力 1660 最大攻撃力 2490 初期防御力 1308 最大防御力 1962 初期スピード 1753 最大スピード 2630 +HP上限 2020 最大HP上限 8029 +攻撃力上限 500 最大攻撃力上限 2990 +防御力上限 700 最大防御力上限 2662 +スピード上限 580 最大スピード上限 3210 リーダースキル 部下の犠牲 闇属性ユニットの攻撃力を40%アップ フォーススキル1 ミッドロストパレード 闇属性のn%攻撃を12~16回連続攻撃。低確率で石化効果を付与。 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 Lv10 23 - - - - - 27 - - - ディレイターン 5 効果持続ターン - フォーススキル2 ヘルズショット 味方単体のHP25%を消費し、闇属性のn%単体攻撃。防御力無視。 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 Lv10 進化前 [絶望の鞭]ザッカーリア 218 - - - - - 257 - - - 通常進化 [痛みの贈手]ザッカーリア ディレイターン 2 効果持続ターン - 幻獣契約2 [浜辺の劇薬]ザッカーリア 特殊能力 石化耐性 / [滅殺]英雄キラー 契約素材 [渡り鳥]シーホーク(2)[三頭海獣]ヴェルデクス[怪魚]グラトレバリー[海溝の魔女]モリア 契約使用先 - 入手方法 幻獣契約1 備考 CV:逢沢 ゆりか・「ザッカーリア」登場!_http //crw.lionsfilm.co.jp/gesoten/news/detail.php?id=796 k=3 ・ [闇]ザッカーリアに新たな幻獣契約が登場!_http //crw.lionsfilm.co.jp/gesoten/news/detail.php?id=1512 k=3 資料 *初期ステータス。 コメント 名前
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属性 闇属性 最大Lv 99 初期HP 4006 最大HP 6009 レアリティ ★6 タイプ シーフ 初期攻撃力 1660 最大攻撃力 2490 初期防御力 1308 最大防御力 1962 初期スピード 1753 最大スピード 2630 +HP上限 3030 最大HP上限 9039 +攻撃力上限 750 最大攻撃力上限 3240 +防御力上限 1050 最大防御力上限 3010 +スピード上限 870 最大スピード上限 3500 リーダースキル 部下のしつけ 全てのユニットの毒を回避 フォーススキル1 サマーヒートパレード 闇属性のn%攻撃を16~20回連続攻撃。低確率石化。発動時、味方単体に5ターン猛毒を付与。 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 Lv10 26 - - - - - 30 - - - ディレイターン 3 効果持続ターン - フォーススキル2 隠し持った秘薬 味方全体のHPをn%回復。発動時、味方単体に3ターン猛毒を付与。 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 Lv10 進化前 [痛みの贈手]ザッカーリア 38 - - - - - 44 - - - 通常進化 [痛みの贈手]ザッカーリア ディレイターン 3 効果持続ターン - 幻獣契約1 [劇薬の女王]ザッカーリア 特殊能力 闘争本能[強] / 石化耐性[滅殺]英雄キラー 契約素材 [渡り鳥]シーホーク[三頭海獣]ヴェルデクス[法の軍人]ベル 契約使用先 - 入手方法 幻獣契約2 備考 CV:逢沢 ゆりか・「ザッカーリア」登場!_http //crw.lionsfilm.co.jp/gesoten/news/detail.php?id=796 k=3 ・ 2019/08/08アップデートにて追加_http //crw.lionsfilm.co.jp/gesoten/news/detail.php?id=1512 k=3 ・【イベント】『夏の浜辺と潜入捜査』_http //crw.lionsfilm.co.jp/gesoten/news/detail.php?id=1506 k=3 資料 *初期ステータス。 コメント 名前
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836 :狂愛は劇薬にも似た媚薬:2009/09/09(水) 23 00 29 ID dvUEkawO 此処はとある花街の遊郭。店の前では女達が客を取ろうと誘惑している。 そんな欲望を滾らせた眼をしている女達の中に一人、何処か冷めていて暗い眼をした花魁がいた。 彼女の名はこの花街一番と謳われる花魁“宵桜” その美しさで酔わせた男は数知れず、嫉妬で狂わせた女も数知れない。遊女の中で最上級の「極上」に位され、花街や市中で彼女を知らぬ者など皆無と噂される。 彼女のあまりの美しさや妖艶な笑みに、化け狐ではないか?と仲間内からも囁かれるほどだ。 「今日も、来ないのかしら…?」 憂いを帯びた声音で呟いて外を宵桜は眺めていた。待っているのは客ではない、待つ必要などなく高い花代を払って幾らでも望まなくてもやってくる。 「宵桜!!ご指名だ、お得意様だから怒らせるなよ」 遊郭の主人の声が聞こえ、深い溜息を吐きながら客が待つ部屋へ上って行った。 『お得意様ですって?よく言うわ、所詮金づるでしょう?』 心の中で見え透いた主人の卑しい考えにうんざりしながら、向かうしかない自分の立場にいら立ちに近い感情を、何処か他人事の様に感じていた。 そう、感情なんて煩わしい感情とうの昔に捨ててしまった。 階段を一歩一歩進む度に雑念をかき消していく様に彼女は偽りの妖艶な笑みを纏っていった。 『私が私に戻れるのは…あの人の前でだけ…』 そう思った時、足音と共に主人の声が耳に入って来た。 「こっ困るぞ勝手なこ「ふっ花代は倍払ってんだからいいだろうが」 主人ではない声…それは彼女の待ち望んでいた愛しい存在の声。階段を駆け降りる。 「烏拘さんっ今日はきてくれたのね?」 それは漆黒の着流しを着た、薄笑いを常に浮かべる女衒の烏拘だった。 「あぁ、行くぞ宵桜」 宵桜は嬉しそうに頷き、2人は文句を言う主人を無視して最奥の部屋に入ってしまった。 「くそ…まぁ金を貰ったからいい、客への言い訳が面倒だ」 ぶつぶつ呟きつつ宵桜を指名した客の元へと向かった。 宵桜と烏拘、2人の出会いは数年前―― 837 :狂愛は劇薬にも似た媚薬:2009/09/09(水) 23 01 35 ID dvUEkawO 宵桜は、幼い頃から父親に性的虐待を受けていた。母親は彼女を守るどころか自分の旦那を取られたと、暴力を振い続けた。 暫くして母親が病死すると、父親はあろう事に彼女に客を取らせていた。虐待の疵は残り、今も背中に無残な跡がある。 数年経つと客も来なくなり、今の遊郭に売られた。 その為彼女は愛情を知らず、欲しいと望みながらも諦めてしまった。 そんな中、女衒の烏拘に出会う。彼は宵桜を一目見た時に他の遊女とは違い、もう何もかも諦めきった、しかし男に媚びない眼をしている彼女に興味を持った。 「お前…他の奴らとはちがうな?」 「そうかしら?貴方変わってるわね」 問い掛けにそう返した宵桜に興味を持ち、此処に来た経緯を聞いた烏拘。彼がこの様な行動に出るのは初めてだった。 「―これが此処に来た理由。貴方に初めて話したわ…不思議ね。私は壊れているのよ、之が証」 そう言うと宵桜は着物を脱ぎ、背中を見せた。そこには数多くの残虐な行為をしてきた彼でさえ眼を背けたくなる様な疵跡が刻まれていた。 「ふふっすごいでしょ?いろんな趣味の男を毎晩相手させられてきたの」 「…成る程な。同情はしねぇさ、只お前は誰かに愛されたいんだろ?」 烏拘は淡々と言いながら宵桜にこちらを向かせ目線を合わせた。 「いらないわ…愛なんて不確かなもの」 嘲笑っている様な、悲しんでいる様な、どちらとも取れる笑顔を浮かべて呟いた宵桜に、彼は興味を持った。 『こいつが、確かな愛を知ったらどんな笑顔をする?』 それが2人の最初の出会いだった。 それから烏拘は宵桜に会いに来る様になる。彼女は疵者ではあるがその美貌ゆえ周りの遊女が嫉妬して嫌がらせをするほど客の人気を得た。 烏拘は宵桜に自分は愛されていると思わせる事にした。会って只抱くだけではなく、行為をせずに話したり頭を撫でてやったり…。 数ヵ月後、当たり前の様に頭を撫でてやると 「私…こんな気持ち初めてで解らないけど…これが愛なの?」 と、上目使いで烏拘に問い掛けた。 「そうだぜ」 そう答えると、とても幸せそうに子供の様に無邪気に笑い嬉し涙を流した。それは宵桜の見せる初めての自然な笑顔だった。 「ほぉ…そんな笑顔も出来るんだな?」 不覚にも烏拘もその笑顔に魅入られてしまい、宵桜に愛情を抱くようになった。 それから2人は密かに恋仲になり今に至る。宵桜は遊女の契りの証である小指を切り落として誓った。烏拘は身請けする事を約束した。 「もう少ししたら、身請けしてやる。潮時だろぉよ」 「嬉しい、すごく幸せよ」 抱き締めて耳元で囁く烏拘に、宵桜は無邪気な笑みを見せて優しい口付をする。 主人や他の遊女達に関係を気付かれ始めているし、身請けした後の資金も十分溜まったのでそろそろ時期が満ちた。 「愛してるぜ、宵桜」 「私もよ、烏拘さん」 長く濃厚な口付を交わしてから、名残惜しそうに部屋を後にした烏拘を宵桜はうっとりした表情で見送った。 852 :狂愛は劇薬にも似た媚薬:2009/09/10(木) 11 48 45 ID 4b72AI68 宵桜はふと、何時も肌身離さず持っている簪(かんざし)を取り出し幸せそうに眺める。 それは大切な思い出。 烏拘が用意した町娘の着物で変装し、遊郭の裏口から密かに抜出して花街から抜けた。 散策しながら彼女は初めて見る物ばかりの外界に、子供の様に純粋に笑いと愛しい彼と過す至福を感じ、終始喜んだ。 そんな中、簪屋に立ち寄ると烏拘が一つ手に取り宵桜に付けてやる。 普段遊郭で付けている様な派手な物ではなく、簪の先に藍色の玉が付いているだけ。 「お前はこれが似合う」 それは普段褒め言葉など口にしない烏拘にしたら、充分過ぎる程の褒め言葉。安い褒め言葉で言い寄る客とは比べるまでもない。 「ありがとう…」 幸せを噛み締める様に無邪気な笑みで返した。 そんな幸せな思い出と共に大切にしている簪。 もうすこしで、その思い出が日常に変わる。見付からないか不安を抱えて抜出す必要もなくなる。 「やっと…私は烏拘さんだけの物になれる」 自然に笑みが零れ、それは結婚前の幸せいっぱいの女の笑顔だった。 「烏拘さん、まだみえるかしら?」 窓辺に近付き眺めると… 「どう…して…?」 彼女が見たのは、烏拘が顔見知りの遊女と隣の遊郭に入って行く姿だった。 疑念より先に、絶望が襲った。彼の隣りにいた遊女は宵桜に嫌がらせをしていた遊女…。 宵桜は 裏口から飛びだしていた 853 簪を握りしめた 854 853 :狂愛は劇薬にも似た媚薬:2009/09/10(木) 11 50 06 ID 4b72AI68 思うより先に身体が動いていた。誰にも見付からない様に急いで飛び出し隣の遊郭に来た時、調度烏拘が出てきた。 「どうして…?私は…何…?」 「!?お前どうしっ…はぁ、勘違いしてるみたいだから言うが、俺ぁあの女をこっちの店に引き渡し「嘘…付かないで…」 顔を上げた宵桜の眼には憎悪しか最早映っていない。 烏拘の言った事は言い訳でも何でもない事実。女衒としての仕事を果たしたまでだ。 「許さない…私以外が貴方の隣りにいるのは…許さない…」 「まて宵桜!話をき」 宵桜は烏拘に口付けて言葉を遮る。次の瞬間、彼の頸に激痛が走った。 「宵…ざく……」 宵桜が首にあの、思い出の簪を刺したのだ。引き抜くと血が溢れ出てグシャリと烏拘は虚ろな目で倒れた。 「ふふっこれで烏拘さんは私だけの物」 うっとりと妖艶な表情で血濡れた口付を彼にする様はまさに、般若そのものだった…。 終 854 :狂愛は劇薬にも似た媚薬:2009/09/10(木) 11 51 05 ID 4b72AI68 簪を折れてしまう程握り締めた宵桜の眼は、深い絶望で染まった。 ふと見ると、烏拘が再び戻って来るようだった。 彼女は静かに待った、彼が部屋に来るのを…。 「よぉ…悪いな、お前に嫉妬してた遊女を隣に引き取らせてきたぜ」 「本当?うれしいわ…」 俯いて烏拘に近付き口付ける。烏拘は仕事をしてきただけだった。本気で宵桜に惚れているのだから。 「ねぇ…烏拘さんの刀見せて?」 「…?別にかまわねぇぜ?」 宵桜の雰囲気が何時もと違う事に烏拘は気付いたが、具体的に何が違うか解らない。 ともあれ要求された通り護身用に持っている日本刀を鞘から出して翳してやる。 「綺麗ね…調度いいわ」 「はぁ?何言って…」 言い終わると宵桜は彼に抱き付いた。愛しい相手を抱きしめ口付けると…、次の瞬間烏拘の手に鈍い感覚と音が伝わる。これは…? 「ふふっ愛しい貴方に貫かれて…幸せ…」 「!?宵桜!!何して「これで…貴方は…私を忘れられない…」 烏拘が刀を持っている手を引き寄せ、宵桜は自らの腹に刃を突き立てさせていた。彼の手が徐々に生温い紅に染まっていく…。 「他の…どんな女と関係を持とうが…私を忘れられない…こ…れで…烏拘さんは…私だけ…永劫…ず……と……」 唖然として只宵桜を見つめる事しか出来ない烏拘にそう呟き、最期の口付けを交わすと、彼女は力なく崩れた。 宵桜は、無邪気に…幸せそうに笑っていた…。 終
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まず劇薬の基準とはどの様なものなのでしょうか? 薬事法 - Wikipedia の 劇薬 には次のように載っています。 劇薬は医薬品の一種である。定義及び取扱いは同法44条以下が定めている。 劇性が強いものを薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が劇薬として法令で指定する。劇薬は白地に赤枠、赤字をもって、その品名及び「劇」の文字が記載されていなければならない。また、その保管に際しては、他の物と区別して貯蔵および陳列しなければならない。 具体的には、致死量が、経口投与で体重1kgあたり300mg以下、皮下注射で体重1kgあたり200mg以下のものを言う。 前述の毒物と同様、毒物及び劇物取締法により定義される劇物とは別定義である。毒物及び劇物取締法2条2項により、医薬品としての劇薬は劇物ではない。医薬用でない劇物は、「医薬用外劇物」の表示がなされる。ただしジクロルボスのように同じ有効成分でも、製剤の形態で劇薬と劇物に分かれるものもあるが、同一製剤が劇薬と劇物両方に指定されることはない。 ここで使われている「致死量」とは、その量を投与されると半数が死ぬ量のこと。半数致死用量・LD50ともいわれます。サーバリックスでは1kgあたり200mgが適用されるようです。体重50kgの人で考えてみるとサーバリックスを1回に10g接種されると、接種された人の半数が死亡することになります。 サーバリックスの添付文書 をみてみると1回分0.5mL中の成分は下の表のようになり、サーバリックス1回分の摂取量を1mgとした場合でも、この10gという量はサーバリックス1万回分の量となります。「劇薬」という指定は単なる危険が及ぶ量の基準でしかなく、その量を超えて使用することはありませんし、健康に問題のないと思われる量が使用されています。 成分 分量 有効成分 ヒトパピローマウイルス16型L1たんぱく質ウイルス様粒子 20μg ヒトパピローマウイルス18型L1たんぱく質ウイルス様粒子 20μg 添加物 3-脱アシル化-4 -モノホスホリルリピッドA 50μg 水酸化アルミニウム懸濁液(アルミニウムとして) 500μg 塩化ナトリウム(等張化剤)、リン酸ニ水素ナトリウム(緩衝剤)、pH調節剤 また、医薬品の「劇薬」に対して一般的な物質に対する「劇物」というのがありますが、 日本の劇物一覧 にたくさんの劇物がみられ、中には中学・高校の理科の実験などに使用されるものもあります。ナトリウムなどは非常に危険な物質ですが、中学・高校でナトリウムを使用した実験をしてはいけないなど聞いたことがありません。それは理科・化学の先生が「劇物」を適切な量を適切な方法で生徒に配り実験させているからです。それはサーバリックスなどの医薬品の「劇薬」にも当てはまります。しかもナトリウムの例と違うところは、生徒(素人)に「実験させている」という部分がないことです。つまり医者は「劇薬」を適切な量を適切な方法で医師または看護師が接種し、その中に患者という素人は絶対に入ってきません。最初から最後まで医師及び看護師が責任を持って取り扱っているのです。 簡単にまとめるとサーバリックスという「劇薬」は、使用量は健康に被害を与えないことを基準に考えられており、取り扱いは専門家が責任を持って行っているので殊更「劇薬」という言葉を心配する必要はないということです。
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劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw 中野四葉がこの殺し合いに連れてこられて感じたのは恐怖である。 転送されて目が覚めると、町中のベンチの上で横になっていた。 普通の女子高生である四葉。 人間が理不尽に殺されてしまう場面を初めて目撃したのだ。 街の中には人影一人見当たらない。 殺し合いのためにきっと人払いされているのだ。 つまり、会う相手は必ず殺し合いの参加者ということになる。 怖い。とりあえず何処か開いてる建物に逃げ込まなければ。 四葉は駆け回り空いた建物を探す。 「あっ……」 強面の男だ。5歳から10歳くらい年上だろうか。 怖い。信頼できない。殺されたくない。 四葉は建造物の影に隠れる。 男は追いかけようとしてきたようだが、ふと思い直したようで語りかけてくる。 「俺は加藤鳴海ってもんだ! 殺し合いには乗ってない! こんな殺し合いをさせようとする主催者にものすごくムカついている! だから殺し合いを起こさせないため、君を保護させて欲しい! 信じてくれ! どうか出てきて欲しい!」 四葉はとても直情的で優しい人だと感じた。 普段の自分と同じだ。 信頼してもきっと大丈夫なはず。 「中野……四葉です。 私も殺し合いなんて、するつもりないです……」 四葉の目には涙が溜まっていた。 「エレオノールもフェイスレスも俺の宿敵だ。話せば長くなる。 殺し合いに乗るとは限らないが、警戒はしておいたほうがいい」 「名簿に、私とその周りに載ってる5人はみんな私の家族です。 私、五つ子の姉妹なんです。姉妹全員で連れてこられてしまったみたいなんです……」 「……辛い状況なんだな。 家族同士で殺し合いをさせようとするとか、あの主催者は許せないやつだ」 「その前の上杉さんは、私達に……家庭教師をしてくれている同級生です。 みんな普通の高校生として過ごしてたはずなんです……。 どうしてこんなことに……」 二人は名簿や地図を見合い、参加者の情報交換を簡単に済ませている。 四葉の要望により、四葉の姉妹、そして上杉風太郎を探して保護する方針にする。 鳴海も知り合いには会いたいが、それなりの強さを持った人物だし何より敵対している。 全員一般人であり、殺し合いに乗らなそうである四葉の方を優先したい。 さて人を探すにしても、闇雲に会場内を歩き回っても仕方ない。 地図に書かれたいくつものランドマーク。 それらなら人が集まってくる可能性が高い。 月と街灯の明かりの中、次に行く地点を探すため街中の見通しの良い場所を探して歩く二人。 その時、遠くの交差点を通過する子供が目に入る。 眼鏡をかけた小学生の少年。何かから死に物狂いで逃げている。 「助けないと!」 四葉が少年の方に駆け出そうとする。 だが、しばらく後から追ってくるのは、少年より少し年上くらいの銃を持った子供であった。 「ああ! あの子、銃を持ってます!」 「あんな子供でも殺し合いに乗ろうっていうのか!」 「男の子が危ないです! でも私、銃なんて……。どうしたらいいんでしょう……」 「俺が止めさせる! 君はここで待っているんだ!」 「止めに行って大丈夫なんですか!? 撃たれたら大怪我していまいますよ!」 「こんな状況で錯乱してる子供や怯えてる子供を見過ごすなんて、俺は絶対に出来ねぇ! それに……!」 四葉は何をするのかと思うと、鳴海は四葉に武道の構えを見せつけてきた。 形意拳の構え、三体式だ。 「武術をやってたって言ったろ。 子供の慣れていない銃撃なんて当たるものかよ」 四葉はそれを見て、この人は達人の動きをしていると直感で理解する。 信頼して行かせてしまってもきっと大丈夫だ。 「加藤さん……, 絶対にあの二人を止めて、無事に戻ってきてください!」 「おうよ! あと俺の呼び方はナルミでいいぞ!」 鳴海は二人を追っていく。足の車輪をフル回転させて。 四葉は驚きとも困惑とも取れる表情だ。 「……ローラースケート?」 のび太はキュルルから逃げている。 身体能力で言えばキュルルのほうが上であるのだが、 重いショットガンを持ちながら走っているため速度は拮抗している。 「そうだ! さっきみんなで集まってたとき、バッグに色々入ってるって……!」 のび太は逃げながら、この状況を何とかしてくれる支給品がないか確認する。 1つ目は瓶詰めの薬だ。 細かい説明は読んでいられないが、元気が出る薬という文字が目に入る。 「これを飲めば……うわっとっと!」 のび太は薬を取り出して飲んだ。 そして急いでいたため瓶を取り落としてしまう。 落とすときに1粒くらい服に入った気がする。 「待ってよー! 良いものがあるんだよー! この瓶もおんなじような薬かな?」 年上の子は声を掛けながら後ろから追いかけてくる。 落とした瓶は拾われてしまったらしい。 攻撃しようとする意志のある呼びかけは今までないのだが、 銃撃で冷静さを欠いたのび太はそれに気づくことはない。 薬の効果は、今すぐには表れてくれないようだ。 のび太は次の支給品に頼ろうとする。 2つ目の支給品はボタンの付いた小さなカプセル。 ボタンを押すとカプセルが割れ、中から箱のようなものが出てくる。 のび太は慌てて抱え持つ。 よく見ると指が入りそうな穴がたくさん開いたトランクだ。 「わっ! 重たいぃ!」 これを抱えていてはこのまま逃げることはできない。 のび太はすぐ先の交差点を曲がる。 しかしその先は突き当りで行き止まりであった。 「待ってよー! ひゃっ!」 キュルルが躓きバランスを崩し、ショットガンの引き金を引いてしまう。 「ぎゃーーっ!」 のび太は大きく悲鳴を上げるが、銃弾はきっちりすべて躱している。 のび太の射撃の才能は、相手の銃の射線を読んで回避することにも適用されるのだ。 とはいってもショットガンを避け切るのは、普段ののび太では無理だった。 薬の効果が出始めているのだ。 しかし突き当りに追い詰められた状況では乱射されたらきっと逃げられない。もうおしまいだ。 しかしこれも薬の効果か、のび太の思考がマイナスの方からプラスの方へ変わってくる。 すなわち逃げるのが無理ならば、相手にどうにかして引いてもらうしかない。 のび太はトランクの穴に指を入れ、思いっきり引き出してみる。 中から出てきたのは大きな操り人形。どうやって収まっていたのか謎だ。 「なっ! なんだこれぇ!?」 「おおっ! すっごーい!」 キュルルは歓喜の声を挙げている。 銃は相変わらずのび太に向けたまま。 のび太はマリオネットに糸で繋がれた指を動かす。 もちろん最初はまともに動かすことは出来ない。 「あーあーあーー!!」 バランスを崩し建築物に向け倒れ込んでしまうマリオネット。 更に倒れながら鎌がのび太の方に振るわれる。 「うわっ!」 しかし普段ののび太では考えられないような反応速度で跳び鎌を躱した。 キュルルは拍手して喜んでいる。 先ほどのことで、鎌の降り方をなんとなく理解したのび太。 マリオネットを操り、キュルルを脅せそうな攻撃を出そうと必死に動かす。 その動きは奇妙なダンスのようだ。 「すごいダンス! もっと見せて!」 マリオネットはそもそもオートマータの黄金律を利用するため、 戦うための道具でありながら芸のような動きをするように作られているのだ。 そんなことなど知らない世界の住人であるキュルルが、それを見て喜ぶのも自然なことだ。 そして喜びと共にショットガンをのび太に向けてもう一発。 「ぎゃーーっ!」 のび太はもちろん射線を読み切って回避する。 だが操作しながらなので体を動かしきれず、何発かの弾が体をかすめた。 キュルルは祝砲とでもいうのか銃弾をプレゼントしているつもりだ。 照準はのび太に向けたまま。 だがキュルルが安心していられそうなのも今のうちだ。 のび太の持つ才能は3つ。 射撃の才能、昼寝の才能、そしてあやとりの才能。 マリオネットの操作もあやとりも、根本は同じ糸を手繰る行為である。 もちろん両者には共通しない部分の方が多いだろう。 だが先程の薬によりテンションが上がったことで能力の一部がカバーされる。 また、このマリオネット"ジャック・オー・ランターン"は、 のび太と同じ小学5年生である本来の持ち主、才賀勝が扱いやすいと感じた機体でもある。 そのような複数のことが、 のび太がマリオネットに触れるのを初めてにして、少しは操作できている助けになっているのだ。 不思議な動きも、でたらめに動かしているように見えながら、 無意識に実は少しずつ動かすコツをつかもうとしているのである。 「お願い! ぼくから離れて!」 徐々に動きの精度が高まるマリオネット。 鎌の一撃はどんどんキュルルに近い位置になり、寸止めに近い斬撃も飛んできている。 そして、ついに一撃がキュルルに当たってしまった。 「わっ!」 最初の一撃はかするだけに終わってしまったようだ。 キュルルは腕に切り傷を受ける。 しかしコカインの効果でハイになり、鎮痛作用も受けているため恐怖を感じず逃げようとしない。 のび太も薬の効果で判断力が下がっているのか、傷つけたことに気が付かない。 「すごい! もっともっと!」 「__やめろ!」 その様子を到着し目視した鳴海が捉えた。 「マジかよ……」 前にあるのは、カボチャのような頭をして黒いぼろ布を纏い、鎌を持った懸糸傀儡である。 まさか逃げていた少年がこのような力を秘めていたとは。 そして攻撃を受けたはずなのに、何故か逃げようとしないショットガンを持った子供。 この状況を理解できていないのか? 鳴海はショットガンよりも懸糸傀儡の危険性のほうが上だと思い、 ショットガンを持った子供をここから逃がすことを判断する。 鳴海はすぐさま懸糸傀儡から子供を引き離そうと駆けよる。 のび太は後ろから男が叫びながら駆け寄ってくることに気付く。 遠ざけたい対象が一人増えてしまったと思う。 恐怖の対象を排除しようと、マリオネットを動かすことをやめない。 そして、とうとう二撃目までキュルルに当たってしまいそうになる。 __だが斬撃は当たることがない。 鳴海が斬撃を食らう直前にキュルルを引っ張ったからだ。 鳴海はそのままキュルルをのび太の側から引きずり離す。 「とっとと逃げろてめえ! 死にてえのか!」 キュルルは操り人形のダンスをもっと見ていたい。 だが青年のあまりの気迫に押し切られる。こいつに関わるのは面倒そうだ。 「はい! 逃げますね!」 キュルルは軽いノリのまま走り去っていく。 「はぁ、理解してくれたか……」 さてこの小学生の対処はどうするか。 見てすぐにわかったのは、懸糸傀儡の動きが非常にぎこちない。 というか半分ぐちゃぐちゃだ。 懸糸傀儡を学んできたものの動作ではない。 恐らく懸糸傀儡を操る才能があったが、まだ使いこなせていないのだ。 「わー! 来ないで来ないで来ないでー!」 小学生の子供は、とても慌てて錯乱している。 怯える対象が先程の子から鳴海に入れ替わってしまったのだ。 錯乱したまま放置することはできない。新たな殺し合いの種を生んでしまう。 だがこの状態で説得できるのか。 「聞いてくれ! 絶対に君を傷つけはしない! その懸糸傀儡を動かすのをやめてくれ!」 「そんなのうそだ! みんながぼくをあぶない目にあわせようとしてくるんだ!」 さすがに今の精神状態では聞き入れてくれないようだ。 一度攻撃をやめさせて、ちゃんと心を通わせなければ。 鳴海はのび太の方へ走り寄り、懸糸傀儡を避けてのび太に触れようと考える。 しかし懸糸傀儡は鎌を振り回し半分でたらめな動きをするため、逆に隙をつかむことが出来ない。 鎌は余裕で周りのコンクリートで造られた建造物の壁を切り裂いている。 防御は不能、少しでも触れたらアウトだ。 左腕の剣で打ち合うわけにも行かない。破壊される可能性もある。 だがもう一人の子供は逃げてくれた、後はじっくり対処できる。 動きが読めない……ならばしっかりこっちを狙って攻撃させればいい。 鳴海は敢えて鎌の間合いに入らない程度に懸糸傀儡の近くまで寄ってみる。 するとでたらめな動きだが、ある程度近くの鳴海を狙うような指向性の鎌の振り方をしてきた。 やがて、鳴海はそのうちの一撃を敢えて大きな動作をして避ける。 追うようにと大振りな一撃が襲いかかる。 それが大きな隙だ。 「はっ!」 鳴海は鎌の柄を蹴り上げた。 この懸糸傀儡は少年の錯乱が解けた後には、貴重な自衛手段になるかもしれないのだ。 破壊してしまうわけにはいかない。 懸糸傀儡は鎌を取り落とす。 攻撃手段を失った縣糸傀儡を尻目に、少年の近くまで寄ることが出来た鳴海。 「おねがい! 来ないで! 来ないでーっ!」 叫ぶ少年に、鳴海は遂に腕を伸ばして触れることが出来た。 だが少年は懸糸傀儡を操作するのをやめていない。 危険を感じ、鳴海は後ろを振り返る。 懸糸傀儡が何とか鎌を拾い、鎌を投げつけ決死の一撃を当てようとしてきていた。 まずい! この攻撃を避けたら少年に鎌が当たってしまう。 二人に当たる直線上に飛んできてしまっている。 軌道は横向きに回転、地面から少し離れたところ。 二人が回避できる方法を鳴海は一瞬で考えなければならない。 鳴海は掴んだ手でのび太を上に放る。 その反動で倒れ込み、地面に体を付き姿勢を低くする。 二人の間の空間を通過していく鎌。 だが、鎌に近い側にいる鳴海の倒れ込みが少し間に合わない。 鳴海の体を斬撃が掠める。 鋭い切れ味のためか、切られた感触はあるが如何程のダメージなのかわからない。 地面に倒れ込んだ鳴海。上を向いている。 そして、仰向けの鳴海の上に、のび太がうつ伏せの形で着地する。 鳴海はそのままのび太を抱き締める。 「お願い! 助けて! 何もしないでー!」 のび太は目を閉じて手足を振るい暴れるが、鳴海は優しく抱きしめるだけだ。 やがて無駄を悟ったのか、のび太は動くのをやめる。 鳴海はそこに優しく語り掛ける。 「俺は何もしない。安心してくれ。 もう誰もお前を傷つけない」 のび太は、接触しているのに何もしてこないこと、 そしてこの優しい語りかけにより、相手が敵意を持っていないことにやっと気づく。 「気づいていたさ。 お前はさっきの子へも、俺へも、ギリギリで鎌を当てないように頑張っていた。 お前は本当はとても優しい子だ。 どうか落ち着いて、もとの自分を取り戻してくれ」 そうである、操作制度がまだ低いと言っても、 もっと懸糸傀儡を近付けて鎌を振るえば致命的な斬撃を与える可能性は高かったはずだ。 のび太は敢えてそれをしていなかったのだ。 鳴海はそのことにも気づいていた。 のび太の目から涙が溢れ出す。 「怖かったんだな。こんなところに連れてこられて、銃を持った子に追いかけられて。 今は泣いたっていいさ」 涙が次々にあふれ、鳴海の胸を濡らしてゆく。 そしてのび太は鳴海の胸の上で大声をあげて泣いた。 「良かった。君を助けられて」 泣き止んだのび太はゆっくり目を開ける。 のび太を抱き締めるさっきの青年。 顔の左側には大きな切り傷。目の付近まで切られたのか片目は閉じている。 傷からは今でも血が流れ出している。 「あ、ああ、おじさん……! ぼ、ぼくが……!」 それを聞いた鳴海は笑顔を見せて答える。 「へっ、大丈夫さ。 俺はちょっと特異体質でな、怪我をしても自然に治る力がすげー強いの。 痛ぇのさえ我慢してればすぐ治るからよ」 のび太を安心させるための言葉。 自分がしろがねであることは言わないが、強がりではなく真実だ。 「元気出しな。 お前だって、今はとても辛くても、いつかは笑ってほしいと俺は思っているぜ。 さて、逃げた子の様子も見に行かないとな……」 その時。 ショットガンを持った子供の逃げていった方向から聞こえる銃声。 「おじさん!」 「すまん! しばらくそこで待っていてくれ!」 逃げていった方向は鳴海の来た方向と同じ。 四葉は別れた場所で待っているだろうか、もしや追いかけてきているのか。 まずい、二人が鉢合わせしてしまっている可能性がある。 鳴海は全速力で駆ける。 「四葉……!」 鳴海さんと2人が向かった先からは、何かが暴れるような音がする。 人間の音だけではなく、何か機械が動いて戦っているかのようだ。 鳴海さんがどうしているか心配だ。 自分に行ってもほとんど何もできないだろうけど、ただ待っているだけなんてできない。 四葉は鳴海の向かった方へ駆け出していた。 コカインの効果が切れてきて、キュルルの思考が正常に戻ってきた。 腕の怪我が痛む。 少年に殺されかけたこと、それを青年に逃がしてもらったことを理解し始める。 今まで追っていた少年が急にこっちを襲ってきたのである。 今度はもしかしたら自分のことを、操り人形を振り回し追いかけてくるかもしれない。 何とかこの恐怖から逃れたい。 キュルルは適当なベンチに腰掛けショットガンを下に置き、 ルールブックの上にコカインを注ぎストローで再度摂取し始めた。 四葉はそれを見ていた。 先ほどの子が一人になってルールブックの上に広げた粉を吸っている。 学校の麻薬の乱用を防止する講習会で見たことがある。 名前はわからないがあれはきっとその一種だ。 よく見ると腕に血が付いている。怪我の痛みを紛らわそうというのか。 あの子が薬物中毒になってしまう。止めさせなきゃ。 先ほど少年を追っていた時に持っていた銃は見えない。 きっと鳴海が先に会って奪ってくれたんだ。 決断して四葉はキュルルに向かう。 「やめて! 絶対にそんなものに頼っちゃダメ!」 「え!?」 キュルルはここに寄って来る一人の少女に気付いた。 どうして止めようとするのか。 邪魔されたくない。ベンチの裏からショットガンを取り出す。 冷静になった状態で考えると、 先程の子はショットガンの射撃にはとても驚いて必死に逃げていたようだった。 この子にも1発撃って離れてもらおう。そうキュルルは思った。 「いやっ!」 四葉は銃をまだ持っていたことに気付き、立ち止まる。 キュルルはそれに躊躇なく発砲した。 鮮血が飛び散ってしまう。 「あ……痛い……。私の腕……」 四葉の左腕、左脇腹にショットガンの弾丸が多く命中していた。 キュルルはのび太が銃弾を躱したことから、 撃ってもそうそう当たらないものだと思っていた。 しかしそれは射撃の才能を持つのび太に関しての話であり、四葉は違う。 「あ、あ、ああああ!!」 キュルルは走って逃げだしていた。 初めて銃で人を傷つけた恐怖か、四葉に対する恐怖かはわからない。 とにかくコカインの効果が早く出て恐怖から逃れられることだけを望み、 全速力で走った。 四葉は追いかけることが出来なかった。 怪我をしたショックで座り込んでしまっていた。 自分の体から流れ出す生暖かい血液。 このまま全部流れて死んじゃうのかな、なんて考える。 でもその前に、鳴海さんに会いに行かなければ。 既に何かが暴れる音は止んでいる。 「鳴海さん……、どうか無事でいてください」 四葉がおぼつかない足取りで歩き始めると、すぐに鳴海と出会った。 銃の音を聞きつけた鳴海が、とりあえずのび太のことを置いてやってきたのだ。 「鳴海さん!」 「四葉! 大怪我じゃないか!? 大丈夫か!」 「鳴海さんもその怪我……早く手当てをしなきゃ……」 「お前の怪我の方が先だ!」 鳴海が四葉に駆け寄る。 その間にも四葉は立っていることが出来ず倒れ込んでしまった。 「ひどいなこれは……さっきの銃か……」 鳴海は四葉の怪我を詳しく確かめる。 ショットガンで撃たれたようだ。きっと先ほど逃げた子供の持っていた物だ。 「鳴海さん……私このまま死んじゃうんでしょうか……」 「バカ言うな! 弱気になるんじゃねえ!」 そう言う鳴海だが、事態の深刻さを把握していた。 即死する致命傷ではなかったようだが、内臓にもダメージが行っているだろう。 ここが病院の近くならば、救急処置できれば助かる可能性は充分あった。 だがこの場ではそうは行かない。失血死するか、止血できても内臓が機能喪失し死ぬかだ。 「あの子、私を打つ前は何かの麻薬を吸ってたんです……。 しかも撃った後もとても怯えて……きっと本心じゃないんです。 あの子に麻薬をやめさせてあげてください……」 四葉がキュルルが逃げ出したほうに首を向け指を指す。 「バカ野郎! それをするのは俺じゃなくて実際に会ったお前の役目だろ!」 こんな優しい心を持った子を絶対に死なせてはならないと思う鳴海。 こうなったら手段を選んでいられない。 四葉は姉妹や友人との記憶を思い出している。 人間が死の前に見る走馬燈ってこんなものでしょうか? なんて思ったりする。 「鳴海さん、うえすぎさ」 「言うな! 俺の血を飲んでくれ!」 しろがねの血を人間に飲ませてはいけないという掟など関係ない。 「え……? 鳴海さんの血を?」 「俺の血には怪我を治りやすくする効果がある。 俺の怪我を見てみろ。端から少し塞がりかけてるだろ。 血を飲めばその恩恵をお前も受けることができる」 詳しい説明は短い時間ではできない。 とにかく怪我が悪化しないうちに四葉の命を救うことが先だ。 四葉はさすがに人間の血を飲むことに躊躇する。 だが、すぐに決断した。 「わかりました。鳴海さんを信じます」 鳴海は四葉の口を開けさせた。 その上に血糊のついた服を絞り、血液を垂らしてゆく。 四葉は鳴海の血を啜る。 どれだけ飲めばしっかり効果があるか鳴海も四葉もわからないため、止め時がわからない。 鳴海は体に付いた血も手で擦り集め、四葉の口に移し摂取させる。 眺めてるのはなんだか気まずい雰囲気だ。 何度か繰り返すと、四葉が再び口を開く。 「ごめんなさい、私……」 「俺に謝る必要なんてないさ。 ヤク吸ってるやつを止めに行くのは正しい行動だよ。 むしろ悪いのは女の子をそのまま行かせちまった俺の方だ」 「ありがとうございます……」 言うや否や、四葉は気絶して体の力が抜けてしまう。 「おい! 四葉!」 すぐに鳴海は地面に頭を打たないよう四葉を支え、容態を確認する。 脈は落ち着いていた。しかも怪我を見ると出血がかなり治まっている。 充分効果のある量を摂取できたようだ。 言いたいことをすべて言ったため、緊張の糸が切れてしまったのだろう。 鳴海は安心して一息ついた。 「おじさん!」 先程の少年が立ち直ったのか駆け寄ってくる。 「来てくれたのか!」 「その女の子! ひどいけがだ! 手当をしてあげなきゃ!」 のび太は血塗れの二人を見ても逃げ出さない。 鳴海の精神を心から理解したからだ。 怪我をした女の子を鳴海が助けているようにちゃんと見えている。 「今は気絶している。ベッドに寝かせて手当をしたい。 幸いここは無人の街だ。 悪いがどこかの民家の扉を破ってベッドを使わせてもらいたいと思う」 「わかったよ!」 のび太はトランクから懸糸傀儡を取り出す。 「おい、お前……」 何をするのかと鳴海が思ったときには、 近くにある民家の、扉の鍵廻りを切り裂き開くようにしていた。 「おじさん! ここを使おう!」 機転の良さに驚く鳴海。 威勢良く返事をしてやる。 「おう!」 二人は民家に四葉を運び込み、ベッドに寝かせる。 血は出来る限り拭いてやった。 鳴海もシーツを裂いて包帯を作り、顔の怪我に巻いてゆく。 のび太は名簿や地図をまだ見てないようだったので、鳴海が確認するよう促す。 「自己紹介がまだだったな。 俺は加藤鳴海。ナルミとでも読んでくれ。 一応まだ18歳なんで、おじさんと呼ばれるような歳じゃないぞ」 「ご、ごめんなさい……」 「謝るほどのことじゃねえよ。無理に畏まらなくてもいいぜ」 「ありがとう。 僕はのび太。野比のび太。小学5年生。 よろしくお願いします。鳴海さん」 「おう、よろしくな」 お互いの自己紹介を済ませた鳴海は、ベッドから顔を出す四葉の方を向く。 のび太もそっちを見る。 「この子は中野四葉。俺がここにきて最初に会った子さ。 お前のような優しい心を持った子だよ」 のび太は傷ついた四葉を再び見て沈痛な気持ちになる。 それでも名簿に目を通していると、自分の知った名前を見つけることができた。 「名簿を見たんだけど……郷田武、出来杉はぼくの小学生の友達。 武はみんなの間ではジャイアンって呼ばれてる。 体が大きくて凶暴ないじめっ子だけど、優しい心も持ってる。 きっとぼくらのことを心配してるし、殺し合いに乗ったりしないと思う。 出木杉は背格好は僕とあまり変わらない。 勉強もスポーツも何でも得意な優等生。 ぼくは自分がみじめになるからちょっと苦手なんだけど、 とてもいいやつだし絶対殺し合いには乗らないと思う」 「ドラえもんは僕の友達の猫型ロボット。一緒に暮らしてる」 猫型ロボット……ロボット……まさか自動人形かと鳴海は一瞬思う。 いや、本当に自動人形とは違う機構のロボットなのかもしれない、 それに自動人形だとしても、パンタローネのように人間を守る行動を取るようになったものもいた。 先入観で計ってはいけない。 「22世紀の未来からぼくの子孫がぼくを叩き直して、未来を変えるために送ってくれたんだ。 そんなこと関係なく今は友達だけどね」 「ええ? 未来だと?」 「うん、タイムマシンで。 ドラえもんが出してくれる未来のひみつ道具のおかげで、毎日不思議な生活をしているよ」 鳴海は突拍子も無い話に理解が追いつかないが、 取り敢えず話の先を促す。 「リルルはメカトピアという遠いロボットの国からやってきたロボットの女の子。 友達になれたんだけど、メカトピアは実は地球を侵略しようとしていて、 リルルはそのスパイだったんだ。 でもリルルは地球を救うために協力してくれた。 メカトピアが地球に侵略しないように、 メカトピアの歴史を変えたからリルルは消えてしまったはずなんだけど、 きっと生まれ変わって生きているような気がしていたんだ。 ここに連れてこられてるってことはきっと生きてる。もう一度会いたいな」 「ギラーミンはコーヤコーヤ星という遠くの星を、鉱山開発で荒らすガルタイト鉱業の手先だったやつ。 手段を選ばないし、銃の腕前がすごいとっても恐ろしいやつだった。 ぼくが銃を使った決闘でなんとか勝って、その後逮捕されたはずなんだけど、 この殺し合いのために連れてこられたみたい。 なにを考えてるかわからないから気をつけたほうがいいよ」 のび太の話はここで一区切り付く。 鳴海が話す番だ。 「正直俺は状況がよくわかってない。 というか昔の記憶もないからな。 俺が目覚めたときはアメリカのゾナハ病治療施設。 来る前は死にかけていたらしいが、生命の水という薬を飲まされたおかげで生きながらえた代わりに、 しろがねとかいう自動人形と戦うことを宿命付けられた存在になっちまった。 そしてゾナハ病をばらまく元凶の自動人形達を壊しまくって世界を回ってた。 そして自動人形達の首領、フランシーヌ人形にたどり着いたが……最初は偽物だった。 そして本物にもたどり着くことができたが……失った記憶が疼いて手を掛けられなかった。 そしてあの野郎、フェイスレスの全人類にゾナハ病をばらまくという宣言。 俺はアメリカの治療施設に再び行って施設の子供と、やっと完成したゾナハ病の治療マシンを守った。 その後、汽車に乗って脱出する最中にここに連れてこられた」 「鳴海さん……。 ぼく、自動人形というのもゾナハ病というのも、フェイスレスという人もわからないよ。 でも、ぼくはタイムマシンとかドラえもんの道具の力を使って、 未来や過去に行ったり、別の星や世界に行ったこともあるんだ。 鳴海さんも、きっと僕たちとは違ったところからここに連れてこられてるんだと思う。 未来なのか別の世界なのかはわからないけれど」 これも鳴海には信じがたい発言。 だが、世界中がゾナハ病に侵されたはずなのにのび太も四葉はそのような様子がなかった。 もしかしたら、本当に自動人形が存在せずゾナハ病も存在しない世界があるのかもしれない。 「一応、それですべての説明が付くようだな。 ここは一度お前の話を信じさせてもらうぜ」 「ありがとう。わかってくれて」 「それなら名簿の知ってる名前が俺と同じ世界の存在だとすると、 フェイスレスはゾナハ病を世界に撒き散らした恐ろしい奴だ。 ゾナハ病は不治の病で、苦しみながら最後は死んでしまう病気だ。 フェイスレスは本性を表す前は、アメリカのしろがね達のリーダーという一面も持っていた。 俺も怪しいと感じる場面はあった。 だがフェイスレスと共闘したとき奴は死んだふりをして表から姿を消し潜伏したんだが、 奴の死んだと思わせるための演技と過去の話が迫真過ぎて俺は完全に騙されてた。 ここでも奴は様々な演技をして参加者を騙していくだろう。 絶対に信用しちゃだめだ。 奴の能力は1つ目は分解、触れさえすれば一瞬で機械を壊したりする。 2つ目は溶解、腕から強い酸を発射して何でも溶かしちまう。 3つ目もあるらしいが、そこまでは俺は見ることはできなかった」 ゾナハ病は更に段階があるが子供には辛すぎる話だ。 あえて言わなかった。 「才賀エレオノール……は、本物のフランシーヌ人形が俺に語った名だ。 奴がゾナハ病の元凶で、治す方法を知ってる筈だ。 だがやつは治す方法を語らない……そして会うと俺の失われた記憶が疼く。 だが俺の目的は変わらない。いずれ会わなきゃならねえ相手だ。 殺し合いに乗っているかどうか……は判断できねえ。 乗っていてくれたほうがやりやすいくらいだが……そんなこと考えちゃいけねぇな」 「うん……いつか、記憶が戻ったらいいね」 「ああ、そうだな……」 鳴海は四葉から聞いた四葉の知り合いのことも軽くのび太に話す。 詳しくは四葉が起きたら聞けばいい。 また、各々の知り合いの容姿の情報も共有した。 そして、のび太が殺し合いに関する話に戻す。 「そういえば四葉さんの怪我……いったいどうしたの?」 きっと自分を襲った銃と同じ銃による怪我だとのび太は感づいていた。 でも自分からはなかなか言い出せなかった。 「……ショットガンで撃たれたんだよ。 お前が追いかけられていたあの子、逃げ出した後に四葉と鉢合わせたらしい。 二人の詳しいやり取りは分からんが、その時に撃たれたみたいだ」 「そ、そんな……。 きっと僕が鳴海さんを引き止めてしまったせいで……」 「俺も悪かった。武器を持ったまま行かせちまったのはまずかった。 ……でも過ぎちまったことは仕方ないさ。 それに一番責めるべきなのは自分でも誰でもないだろう。 こんな状況に俺たちを追い込みやがった主催者だ。 それに四葉が言うにはその子は麻薬を吸ってたらしい。 支給品として配られたんだぜきっと」 「えっ!? 麻薬って、使うと気持ちよくなるけど体に悪くて中毒になっちゃう、 絶対に使っちゃいけないあの薬?!」 「そうだ。絶対に使っちゃいけない。 気持ち良くなる薬以外にも、一時的に集中力を高める薬や、幻覚が見えるようになる薬もある。 どんな薬かは分からんが暴れる懸糸傀儡を見て喜んでいたし、 気持ち良くなる覚醒剤やコカインの類か、幻覚剤の類だと思うぜ」 のび太は思い当たる。しばらく前に自分が飲んだ薬。 飲むととても精神も体も元気になり、立ち向かう勇気をくれたあの薬。 でもそのせいで殺し合いに乗っていない鳴海さんを傷つけてしまった。 「じつは、あの子から逃げる間に、僕もバックの中に入っていた薬を飲んだんだけど……」 「なんだって?」 「元気が出る薬って書いてあったんだ。 そのおかげでぼくは見たこともないマリオネットを動かすことが出来たけど、 鳴海さんをなかなか信じられなくて傷つけてしまったんだ……」 「ちっ、やばそうな薬だな。 まさに麻薬の類と考えて良さそうだ。 その薬はまだ有るのか?」 「それが……そういえば!」 のび太は無い、と言おうとしたが薬を服の中に落としたことを思い出し、 腰のあたりを触ったりポケットを探ったりする。 すると、カラカラ音がしてのび太の下に一つの丸薬が落ちた。 のび太はそれを拾う。 「この薬なんです。 何粒かで瓶に入ってたんだけど、逃げるのに必死で一粒飲んだあと落としちゃったんだ。 これは偶然服の中に落ちた一粒。 瓶はちゃんと見てはいないけど、ぼくを追いかけていた子が拾っているみたいなんだ……」 「なんだって!? 本当かよ!? 複数の薬を一度に使ったらどうなるかはわからねえが、ヤバそうだって想像は付くぜ!」 「そんな!? 早くその子を止めに行かなきゃ!」 「ちっ、俺だってすぐにでも行きたかったさ……。 だがよ、何が起こるか分からないこの殺し合い、三人が長く離れちまうのは危険だ。 四葉をこのまま置いて追いかけるわけには行かない」 それを聞いたのび太はポケットからカプセルを取り出した。 ボタンを押すと、トランクの姿になる。 「うおっ! カプセルの中にこんなものが入ってんのか!?」 「僕の友達のドラえもんも四次元ポケットからポケットに入らない大きなものを出せるし、 似たような作りなのかもしれないね」 「す、すげえな未来の技術っつうのは……」 鳴海はこの異常さに、さらにのび太の言う事を信じる気が増してゆく。 「このトランクにはさっきのマリオネット、ジャック・オー・ランターンが入ってる。 ぼくのバッグの中、もう一度探すとジャック・オー・ランターンの説明書きがあったんだ。 鎌で切るだけじゃなくて、ベタベタくっつく泡を出したり、 箒で飛んだりもできるらしいんだ。 使いこなせるように頑張って練習する。 危ない人が来たら、泡で動けなくしたり、飛んで逃げたりするよ。 四葉さんはぼくが守る。鳴海さんはさっきの子を追いかけて」 「確かにお前には懸糸傀儡を動かす才能がある。 だが懸糸傀儡は俺の世界で使われてるものなんだが、 本来は何年も掛けて修行していくものだと聞いているぞ。 俺の役に立ちてえのはわかるが、強がりで言うのはだめだ」 「でもきっと、あの子を放っておいたら四葉さんみたいに撃たれる人が出ちゃうかもしれない。 さっきのぼくみたいに、慌てて誰かを傷つける人も増えるかもしれない。 それなら事情を知ってる鳴海さんが止めに行ってあげて。 殺し合いを止めたいのは、鳴海さんの役に立ちたいとかそういうことじゃなくて、 今のぼくの本当の気持ちだから」 のび太の表情はさっきの錯乱していた時の物とは違い、決意を持った顔であった。 それを見た鳴海は決断する。 「わかった。さっきの子の向かったのはあっちの方角だ。 あのまま全速力で走り続けるのは無理だし、今からなら追いつけるはずだ。 これから2時間くらい追いかけて探して、ここに一緒に戻ってくるぜ。 どうしても見つからなければ、その時もここに戻ってくる。 3時間経っても戻らなければ、俺の身に何かあったか、 どうしても優先しなきゃならない用事が出来たときだ」 鳴海は四葉の方を見る。 「さっき俺は怪我が治りやすい体質だって言ったろ? それはしろがねの血の効果だ。 四葉に俺の血を舐めさせた。傷の治りが早くなる効果がある。 傷は全快しなくても、3時間経たないうちに目は覚めると思う。 その時俺が戻ってなかったら、お前と四葉でどうするか相談して決めるんだ。 戻らなかったらきっと危険なことが起きている。無理に追って来なくてもいいぜ。 もちろんお前たちの方が危なかったら、無理に留まらないでここから逃げたっていい。 そんときは俺を追いかけてくれると合流出来るが、危なそうなら違う方だっていい。 書き置きでもあればありがたいけどな」 「そうだ! 鳴海さん、これに乗っていって!」 のび太はデイパックから最後の支給品を取り出す。 トランクと同じようにカプセルに入った支給品だ。 「たぶんここじゃ狭いから……」 鳴海とのび太は家の外に出た。 ボタンを押すと、中から出てくるのはスポーツタイプのバイクだ。 「ぼくは子供だからバイクに乗れないけど、鳴海さんなら乗れるんじゃないかと思って。 それに帰りのときも、これがあれば二人で乗って早く戻ってこれるでしょ?」 「おう! ありがとよ! じゃあ俺からも贈り物だ!」 鳴海も自分のデイパックから支給品を2つ取り出す。 1つは女の子の人形、もう1つはモデルガンのような短銃だ。 女の子の人形はバッグから取り出されるとすぐに渋い顔をして、 低い声でモンスターの危険性を訴えている。 「うわっ、可愛くない人形!」 「これは魔除けの人形というらしい。 説明によると、近くにモンスターが現れると警告してくれるんだが……、 どうやら既に警告状態に入っているようだな……」 鳴海は説明文を詳しく読む。 「付記にモンスターってのは人間以外の存在を指すって書いてあるが……、 恐らく俺がしろがねだから既に反応してしまってるんだろう」 「鳴海さんはモンスターなんかじゃないよ! 優しい人間だよ!」 「へっ、ありがとうよ。こればっかりは体の問題だからよ、どうにもならんさ。 つまり人間以外の存在だからって危険とは限らんが、誰かが接近してきた目安にはなるだろうな」 うるさいので、取り敢えずのび太は人形を自分のバッグに一度仕舞う。 「こっちはトカチェフという銃だ。持つとモデルガンのようだがちゃんと撃てるらしい。 俺は体一つで戦うスタイルだし、銃は持っていてもしょうがない物だ。 さっきのお前の話を聞く限り、銃の腕には自信があるんだろ? お前ならきっと殺し合いを止めるために活用できると信じるぜ!」 「ありがとう。ぼく、頑張るよ!」 「おう! 四葉を頼んだ!」 鳴海はバイクに跨がりエンジンを回し発進させる。 「鳴海さんも頑張って! 戻ってくるって信じてるよ!」 のび太は真剣な眼差しで鳴海を見送る。 鳴海が自分を追いかけていた子を助けて戻ってきて、全員で笑い会えることを信じて。 【F-3/街 深夜】 【野比のび太@ドラえもん】 [状態]:軽傷 [装備]:ジャック・オー・ランターン@からくりサーカス [道具]:基本支給品一式、トカチェフ(弾数8/8、予備弾倉1)@PERSONA5 THE ANIMATION、魔除けの人形@魔法陣グルグル、元気が出る薬(1錠)@魔法少女育成計画 [思考・行動] 基本方針:殺し合いを阻止する 1:四葉を守る、ショットガンの子供(キュルル)を追う鳴海を待つ 2:ジャック・オー・ランターンをもっと動かせるように練習 3:友人たちが心配。いずれ会いたい ※鳴海と知り合いの情報を共有しました。 鳴海が記憶喪失のため勝については聞いていません。 ※キュルルの逃げた大まかな方向は鳴海から聞きました。 【中野四葉@五等分の花嫁】 [状態]:左腕・左脇腹にショットガンによる傷(しろがねの血の効果により治癒中)、気絶中 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1~3 [思考・行動] 基本方針:誰も殺したくない 1:気絶中 2:ショットガンの子供(キュルル)を麻薬の手から助け出したい 3:姉妹、上杉さんに会いたい ※鳴海の血を飲んだことにより、自然治癒力が上がっています。 また鳴海の記憶や技能の一部を受け取ります。 ※参戦時期は次以降にお任せします。 ※鳴海と知り合いの情報を共有しましたが、そこまで詳しくはありません。 【加藤鳴海@からくりサーカス】 [状態]:左目から左胸部にかけて縦の切り傷(治癒中) [装備]:メローネのバイク@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~1 [思考・行動] 基本方針:殺し合いを阻止する 1:ショットガンの子供(キュルル)を追う。麻薬の手から助け出したい 2:2時間追って見つからなかったらのび太、四葉の方へ戻る 3:フェイスレスの危険性を広める。遭ったら全力で倒す。 4:エレオノールは保留。遭った時は…… ※参戦時期は24話、汽車に乗り病院から脱出した後。 ※左目は血と瞼の怪我で今は見えないだけか、切り裂かれ失明しているかは不明です。 ※四葉と知り合いの情報を共有しましたが、そこまで詳しくはありません。 ※のび太と知り合いの情報を共有しました。 ※キュルルの逃げた大まかな方向は四葉から聞きました。 【キュルル@けものフレンズ2】 [状態]:腕に切り傷、恐怖、コカイン中毒 [装備]:ベネリ M3@フルメタル・パニック! [道具]:コカイン×約300g、元気が出る薬(残り8錠)@魔法少女育成計画、基本支給品一式、ランダム支給品×0~1 [思考・行動] 基本方針:おうちへ帰る 1:とにかくここから逃げる 2:眼鏡の少年(のび太)が怖い ※キュルルの逃走方向は次以降にお任せします。 ※逃走経路には切り傷による血痕があるかもしれません。 【ジャック・オー・ランターン@からくりサーカス】 フェイスレスが自分のため作成した懸糸傀儡。 記憶をダウンロードされても精神を乗っ取られなかった勝が使用することになる。 本ロワでは誰でも使えるようにと、支給品説明が操作法と機能が簡単に書かれたマニュアルにもなっている。 もちろん読んだからといって糸の操作は難しく、 才能や経験にもよるがどれだけの練習で使えるかは不明。 また、一部の性能が制限により弱体化している可能性もある。 【メローネのバイク@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】 メローネが乗っていたバイク。 詳しい車種は不明(アニメ版ではホンダのCB系のスポーツバイクに似ている)。 【魔除けの人形@魔法陣グルグル】 普段は可愛い女の子の人形なのだが、 モンスターが接近すると急に渋い顔になり低い声で接近を知らせてくれる。 あまりの可愛げのなさに驚いたククリにより破壊された。 本ロワ内では、人間以外の参加者に反応するように調整されている。 【トカチェフ@PERSONA5 THE ANIMATION】 4話で鴨志田のパレスに持ち込むために購入された、短銃のモデルガン。 モデルはおそらくトカレフTT-33。 メメントスやパレスの中では、人々が銃だと認識すれば本物の銃と認められるため、 モデルガンでも銃と認識されれば実銃と同じ威力を発揮できる。 この会場内でも基本は実銃と同じ威力を出せるが、 撃たれた相手が銃をどう認識しているかによって効果が変わる可能性はある。 弾数は8。1回分の予備弾倉がある。 時系列順で読む Back なぎさと千歌! 恐怖のバトルロワイアル!! Next 魔法少女とロボット少女 投下順で読む Back なぎさと千歌! 恐怖のバトルロワイアル!! Next 魔法少女とロボット少女 人間ってそんなものね 野比のび太 [[] 人間ってそんなものね キュルル [[] 中野四葉 [[]] 加藤鳴海 [[]]
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◇◇◇◇ ──────金曜日、姫代学園。 窓の外では日が傾き、空はぼんやり紫紺色。 色付いた葉が落ち始め、冬の足音が聞こえはじめる季節。 霞む夜空に星は見えないが、もうすぐ夜が来る。 クラス担任の久柳は皆の目を醒まさせるようにパンパンと手を叩いて注目を集めた。 『近頃は物騒なので君たちも気をつけ‥‥まぁお前たちが犯人探しをするとか、返り討ちにするとか‥‥とかナンとかそこまで物騒な事態になることは思ってはいない。が、くれぐれも危ない真似はやめるように。絶対に』 『多人数でも夜は決して出歩かない、なるべく人の多い所を通ること』 『って、いうかさっさっと家に帰れ』 今は放課後の部活動は全面的に禁止である。理由は巷を騒がせる殺人鬼のせいだ。チラッと観たテレビにも『戦慄!殺人鬼』のテロップが上がっていた。 「先生~アニメの観すぎ~~」 「そういう先生が一番危ない奴ダヨー」 「先生が先週の日曜日に職質されて逃げたって、みんな知ってるんですよ~?」 『ハイ。話はここまで、さようなら』 放課後のHR(ホーム・ルーム)は1分で終了。 ブーブーと文句を垂れながらも、寄り道はせずに真っ直ぐに家路を辿るクラスメイトたち。 いつも通りの教室。いつも通りの喧騒。 皆に軽い笑みを浮かべながら挨拶し、足早に帰路に就いた“フリ”をする。 待ちわびていた瞬間を逃したくない一心で急行する。 誰かにそこまで欲望を突き動かされたのは、生まれてはじめてのことだ。 ──────廊下。 歩くスピードをやや速める。 (早く‥‥) このままならない感情で悶々としながら誰にも気づかれないように静かに警戒しながら教室を出た。 暫くの間、女子トイレに身を潜めて、もう一度周囲を確認して歩き出した。 ──────下駄箱。 無人の廊下を緩やかな歩調で真っ直ぐに歩いているけれど、内心は既にこの廊下を一気に駆け出したかった。 心臓は激しく高鳴り、もう呼吸(いき)をすることを忘れてしまいそうだ‥‥。 (早く‥‥) ──────体育館。 途中、鉢合わせた先生たちを笑顔を振り撒いて巧く躱しながら、私が目指すのは学内第一校舎三階の生徒会室。 これでもう邪魔物はいないハズだ。 ──────問題ない予定通り。 私はガラガラと扉を開けて入った。 電気の落ちた室内。カーテンが引かれ薄暗い。 馴れた手つきで内側から私が鍵を掛けると────、 『やぁ──────遅かったじゃないか』 私が振り向くと、黒のスーツに白衣を纏ったあの彼が、 暗闇の中、テーブルを乗り越えてあの人がやって来る。 「ごめんなさい。榎波先生」 ──────彼の名前は榎波春朗(えなみ はるお)。 今年の春、姫代学園高等部に赴任してきた科学教師だ。 彼の胸の中へ女子生徒は飛び込んだ。ただ愛している恋人のように。 零れた声は静かな空間に融けてなくなる。 その背徳の口づけの味は早熟な乙女をあっけなく陥落させるほどほど甘美であった。 ◇◇◇◇ 窓の外はすっかり闇色に染まっている‥‥‥。 沈黙の落ちた暗い空間に少女のぐぐもった呻き声が空気を揺らす。 濡れた舌と舌とが触れ合い、彼の唾を呑む度に何とも淫らな音を奏でる。身体の芯が熱をもってドクン、ドクンと疼き始める。 自分のものを優しく責めぬいてくる彼にもう限界だと訴えた。 「おねがいします。先生‥‥‥今日は途中でやめないで」 濡れ光る唇と真っ赤に燃え上がる顔で肩が上下に波打つ。 更に一歩踏み出しにじり寄る。 相手は教師で自分は生徒。立場の上でも絶対に許されない。 けど、そんなことどうでもいい。 誰で、ここがどこかということすらも忘れて、 罪悪感とか、倫理観とか、そんな感情すら興奮のスパイスに転化したように、自らファスナーに手を掛けて、開いた。 その制服の襟ぐりから可愛らしい桜色のブラと、しっとりと汗ばんだ艶かしい上気肌が垣間見える。 「……もっと‥‥もっと」 『いいとも』 新鮮な酸素を求めて荒い呼吸を繰り返していた彼女の口に再びキスを落とす。 甘く粟立つ昂りに彼女はもはや寝室の自慰程度では満足できなくなっている。 灼けたような浅黒い肌。 歳は二三ぐらい。 優秀なだけではなく、見た目もかなりの美丈夫だ。 彼の容姿は、俳優だのモデルだのになれる顔だ。背も高い。 何度も自分の体を貪ってくる男の名を繰り返し呼ぶと、その気持ちと連動するようにはしたない鼻息が洩れる。 彼女の内部の何処を責めれば、気持ちいいのかどこを突けば大きな快感を得られるのか、 彼はそれを知り尽くしているかのよう。処女には到底抗えない悦楽をもって脳髄を駆け抜けていく。 背後に回った春朗が手早くシャツを脱がせ、それを使って彼女を手首を縛った。 「‥‥‥‥ハッハッ、セン‥‥セイ?‥‥つぅ!」 『あぁ、ゴメン‥‥痛かったかな?』 心配そうな声とは裏腹にギリギリと腕を捻りあげられ、あまりの痛みに悲鳴をあげる。 蕩けて鈍くなっていた思考が数瞬、クリアになる。 「痛い‥‥離して‥‥ ん 」 この意味を考えようと懸命に思考を巡らせるうちに、榎波先生の唇は一瞬のうちに離れてしまう。 先ほどの妖しい雰囲気は一切なくなり、今度はその迫力に戸惑う。 楽しい夢の時間は、氷水でも掛けられたみたいに、一気に意識が明瞭になった。 左手が強い力で下顎にかかった。 「あぅ‥‥?シェんせぇい?」 おとがいを強く圧迫され、強制的に開いてしまった口腔内へハンカチが入り込み、。 必死の懇願に耳を貸す素振りなど微塵も見せず、 彼の行動はちょっとしたつまみ食いのつもりだったものが、いつまでも続けていたいような欲望に変化した。 『──────ぁあ、もう無理だ。我慢できない』 柔らかいけれど冷たい声が歪な空間の空気を揺らす。 そして、河の流れが血に変わるように豹変した。 ──────生温かいものが頭から降りかかる。 教師はその手を掴んで彼女の頭上へ縫いとめるように一纏めにした。 ──────何処からともなく現れたナイフを使って。 「────────っ!!」 文字通りに引き裂かれる痛みに、彼女は一気に覚醒した。目を見開いて悶絶する。 「──ゥ゛ゥ゛────ゥゥッ!」 自分自身の置かれた状況を理解できず、たまらず体をバタつかせる。が、抵抗と呼べるような動きにはまるでなりはしなかった。 それどころか両手の掌を貫いた白刃は昆虫標本のように壁に縫い止め、彼女のつま先立てばギリギリ自重を、支えられるような位置に打ち込まれていた。 彼女がこのまま動かない限り、両腕は無事でいられるが、下手に動けば手首からひき千切れてしまう。 『大丈夫かい?』 労うように額と頬を撫でられるが、一層背筋を冷たいものが走り抜ける。 大丈夫?などと、優しく問われても更に恐怖は募るばかりで、答えることなど出来なかった。 『オイ‥‥コラ何か言えよ』 それだけでは終わらなかった。 春朗はことさらゆっくりとナイフの柄を捻り、雑巾を搾るような音とともに、絶叫。 「は、はっ、あ、がぁあああ────ッ」 「ゥウウ~~~~ッ!‥‥‥ッ!」 されど完全に口を塞がれている状態。 叫んでいるのどは大きな吸気の音を立てるのみだ。 この室内で起こる彼女の苦鳴、泣き声、慈悲を求める声。 生まれてはじめての必死な生の感情、いかなる凄惨な残響をも外部に一ミリとて滲ませてはいない。 「フゥッ‥‥フゥッ‥‥ッハァ‥‥ゥ」 冷たい笑みを浮かべじっと見下げるの榎波センセイに、“死”という単語が現実的な縁取りを帯びて滲んでくる。 春朗は磔られた女子生徒の顔を見て、うなじ、首筋、膨らみかけている胸、背中から尻の曲線、むきだしの太ももを見て、最後に全体像を見渡す。 豪快に襟から引き裂かれてボタンが弾け飛ぶ。超暴力的なこの男の振る舞いに果てはあるのだろうか。 まるで飢えていたかのようにまさぐる春朗の手つきは荒々しく、無防備な柔肌を不規則に変形させる。 次いで圧しかけて宙に浮いた縫いとめられた両腕が、メリメリッと軋みをあげる。 「あ゛はァッ‥‥ひぃぃ」 恐怖であれ恥辱であれ興奮には変わらない。 ここからは時間の観念すらも正常に機能していない。 興奮すれば体温は上がり、感覚は鋭く、刺激は鋭敏化する。常以上に外的刺激を拾う。 身体中から汗を吹きす。 涙と鼻汁と涎で塗りつぶされた顔で喚き散らす。 彼女はひきつけを起こしてビクビクと痙攣する少女をの股間は小水にみるみる濡れていく。 『染みができれる?あーあ、もしかして漏らしちゃった‥‥?』 愛おしげに眺めると、ニコリと笑みを浮かべる。高く通った鼻筋に少し薄めの唇が意地悪そうに歪められ 、彼女がもがけばもがくほど彼の五体に潜む野獣の血は次第に熟してくるようであった。 初恋の潤いをドロドロに濁らせ、 何もかも穢し尽くして──────それすらも体内に取り込むかのように。 恐怖と被虐。その末魔さえ一滴残らず絞り出そうとする超暴力。 バタバタと暴れる少女の動きがみるみるうちに鈍くなっていく。そして、遂に暴れなくなった。 (お願い……殺さないで……なんでもするから‥‥‥ しかし、この男のリビドーは更に熱くなる。 彼女の長い睫毛が震え、火焔のような吐息が頬をなでる。 『なんていい顔なんだろうか。もっと虐めたくなる‥‥』 狼が獲物を追うが如く崖っぷちまで追い詰めてくる。 彼女の退路は既になく、捕食されるしかない。 彼女を絶望感に閉じ込められた。 「ィヤァァ‥‥ひぃ゛ぃ゛ぁあ゛あ゛あ゛ぁ゛────ッ!」 楽しそうにそう呟いた彼はびっしょりのショーツを抜き取ると、ぬかるんだ秘壷を鉤爪のような長い指先で、割り開き、浮いたままの腿に腕を通し足をさらに開いた。 『ハハハハ、乙な匂いじゃねーの』 『どうしたの?遠慮なくヨガっていいんだぜ?』 おもむろにズボンのチャックを下ろした。 中から奴のおぞましい陰茎が現れる。それはすでに高くそそり立っていた。 彼のペニスが膣に、にちにちと挿入され、 「──────ぁああぅっ‥‥ヒィぃ」 気を失うことも許されない拷問めいた行為に虚ろに揺れる瞳から涙を流し、最期の懇願するも、榎波は無表情のまま、奥の壁目掛けて女子生徒を貫いた。 「い、ァァァあぁァァアーーーーーッ」 身をよじろうとも、苦しむに構う事無くは抽送を繰り返す。 熱い。心地良い。堪らない。 頚を掴み、渾身の力で締め上げてくる。 (もう、やめて‥‥シヌ‥‥シ──────) 『死ぬんだよ』 榎波は、繋がった状態のままで自身の熱を放つ。 絡ませた素足は死の痙攣を繰り返す。 絶頂の声にも似たと断末魔を吐血の合間に濁った声でふり搾って、角度を変えながら、男との接合を深めていく‥‥。 腹が風船の様に膨れてボコボコと蠢動し、不自由な体を目一杯痙攣させた。 あまりにも凄惨な凌辱にもう声も出せやしない。 春朗は完全に力の抜け落ちたのか細い身体を抱えながら、限界へ向けて打ち震える。 ◆◆◆◆ 出すもの出したら何もかもがもうどうでもよくなるというのが、男の良いところでも悪いところでもあるように思えた。 『──────いや、どう考えても良くはないな』 壁に描かれた血痕のヒトガタの形をしたものの側で、 『フゥ‥‥‥』 春朗は息を吐いた。 『久しぶりで楽しんじゃったよ🖤満足満足』 ────彼の能力は“深愛を抱く蒼(ハイドレンジア)”『アナベル』 ────彼女の脳細胞をシンデレラの王子様のそれと変えていた。 ────注ぎ込まれたこの魔人の媚薬が一体どのような化学反応を示したか。 ────春朗の注入する脳内物質のカクテルに彼女自身、自分の灰白質が泥々に融けてゆくのを異常と思う余裕などはなかったのだ。 まぁ、能力で一割。あとは、本人の自力なのだが‥‥。 窓の向こう。ビルの狭間の遠くからはパトカーのサイレンと赤ランプ。 『ま・た・か。どうなってんだこの町は‥‥』 殺しは俺以外で今週で四件目。ハッキリ言ってイカれている。 『こんな胸踊る日が来るとは思っても見なかった!』 正気で立つ人間など既にこの町には居ない。 居るのは、そう‥‥ケダモノだけだ────俺と同じ。地獄の深淵に立つ魔人。ただひとつだ。 『まさか、俺の同類がこんなにわんさかおいでとはな‥‥ハッ』 これからは俺も好き勝手ヤラせてもらおうかな‥‥。 口の端を吊り上げたドス黒い笑いに、持ち前の毒々しい気を総身から発散させ、まさに陽光を怖れる吸血鬼(ヴァンパイア)よろしくその魔的な翳が姿を現した。 『どうせならこの死体も罪もソイツらに押しつけて‥‥』 と、まぁ慌てず騒がずいこう。それはそれ。あと百発くらいは楽しむと思っているところだ。 俺は此処にいるぞ。他は一体どんなやつらなんだ? 考えられる魔人対策部の本格的介入までおよそ三ヶ月‥‥!それまでに死ぬのは俺か‥‥お前らか‥‥!ハハハ!! 『旨そうだなぁ‥‥』 彼は早速アイデアを三つほど思いついた。 榎波春朗は楽しそうに一本ずつ指の関節を鳴らし、両手をこすり合わせた。 『‥‥さて、まずは何がイイかな?』