約 50,302 件
https://w.atwiki.jp/tkoolmvtcontest2023/pages/28.html
こちらは「ResurrectionStoryC 前編」のネタバレを含みます。
https://w.atwiki.jp/nijiuradegityou/pages/56.html
第40/41話 「議長不在の決戦 前編・後編」 議長がいない。シロッコもいない。 新年なのに明らかにメンバーが少ない中、ジェネシスがタカ派によって撃たれ、会戦の火蓋が開かれる。 議長不在でクルーゼが奮闘する中、議長の椅子に座る黒い影。 若本のサーヴァント、アナゴ。彼の大進撃は地をも揺るがし、同じ英霊のアーチャーを驚愕させる。 コスモスは感じる、己の存在意義を。そして、守るべき人々を守護する剣となるために戦う。 そして、人間の暴挙は続き、ついにはコロニーおとしまで決行され、混迷を極める地球圏。 勇者新党火鳥の陰謀が渦巻く中、今年はどうなっていくのか。そして、ディアッカ飯店を一人で直せるのか衛宮士郎。
https://w.atwiki.jp/soulreverse-zero/pages/19.html
第1章 レリクスの導き・前編 1-4クリア:遺跡探索(古びた遺跡)開放 1-8クリア:マールコット開放(レリクスのレベル上げは不可) 初回報酬合計:英霊石*16 ステージ 消費スタミナ、難易度 初回報酬 1-1 ロードと英霊と シナリオ 英霊石*1 1-2 マールコットへ続く道 スタミナ5、難易度3 英霊石*3 1-3 巫女の力 シナリオ 英霊石*1 1-4 壊された町で1 スタミナ5、難易度4 英霊石*3 1-5 壊された町で2 スタミナ5、難易度5 英霊石*3 1-6 敵となりし者 シナリオ 英霊石*1 1-7 壊された町で3 スタミナ5、難易度6 英霊石*3 1-8 巫女と巫女 シナリオ 英霊石*1
https://w.atwiki.jp/abnormal_eyebrow/pages/12.html
おじいさんと僕(前編) 僕が高校生の頃のことである。 放課後、僕はいつもの田んぼ道を自転車で駆けていた。あいつを追って。 僕は家路を急いでいた。いつものように、僕の前方には友人(?)D.kの姿が見える。DKといってもドンキーコングではない。通称カトゥー・ダイ。加藤あいとは全くの無関係である。彼は生まれながらにして世界を掴む豪脚の持ち主であった。ひとたび自転車にまたがれば、もはや彼のスピードに敵う者は皆無であった。しかし僕は来る日も来る日も彼を追った。いつか差し切ってやる、その思いだけが僕を突き動かしていた。 その日も僕の努力は報われなかった。僕はカトゥーを見失った。いつものことだ、また明日挑戦しよ・・ ん?何だあれ? 僕の目は道端に転がったひとつの物体に釘づけになった。それは紛れもなく、ひとりの、見知らぬ、おじいさんだった。サル、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、人間。その進化の最終形態としての、おじいさんだった。 「ロシアの殺し屋に追われています。かくまって」 おじいさんは僕にそう言った。 僕はあまりの突然の出来事に唖然としていた。そんな僕を見て、おじいさんは続けて言った。 「第一印象から決めてました。おねがいします」 「は、はいっ」 一生の不覚。 こうして、僕とおじいさんの奇妙な生活がはじまった。 家に着いて一息つくと、おじいさんは自己紹介を始めた。頼んでもいないのに。何だ、こいつ。 名前は「島袋スポポポポビッチ」沖縄県民とロシア人のハーフらしい。つーか、何だこいつ?ポポポ? 年齢は65。 好きな言葉は「開国してクダサイYo」 将来の夢は「沖縄にピロシキ畑を作ること」 座右の銘は「三度の飯よりピロシキ」 冷房の設定温度は常に氷点下。 宅急便は着払いに限る。 オシッコが飛び散ってズボンがぬれても隠さない。 うどんを上の口から入れて下の口から出せる。 すぐ泣く。 下痢気味の時も堂々としていられる。 穴があったら入りたい。 耳栓を鼻の穴(右)にさす。 左の鼻の穴には青春がつまっている。 そのせいで鼻呼吸ができない。 恥ずかしいと異様に顔を赤らめる。 野生の熊に襲われて2勝1敗1引き分け。 ナシゴレンって何ですか? 勝負服はチマチョゴリ。 マイブームは略奪愛。 年金失楽園。 おねしょで世界地図を描く。 野球ではライトしか守らせてもらえない。 ウォシュレットの温度も常に氷点下。 仲間を呼んで次から2回攻撃できる。 そんなおじいさんのチャームポイントは肛門のデカさだ。おじいさんは誇らしげに言った。 「私の父も母も、肛門の大きさではまわりから一目置かれていた。普通の日本人の肛門の大きさを1キャナルとするならば、沖縄県民である母は5キャナル、ロシア人である父は30キャナルの肛門の持ち主だった。そして私は5かける30で150キャナルだ」 僕は初めておじいさんに好意を覚えた。そうだ、足し算の人生なんてつまらない。人生は、掛け算なのだ!おじいさんは僕にそう教えてくれた。この瞬間、僕にとって、おじいさんは単なる進化の最終形態ではなく、かけがえのない人生の教師となった。 そして僕はおじいさんを愛し、おじいさんに愛されるようになった。おじいさんはまた僕を愛し、僕はおじいさんを愛するようになった。
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/295.html
白黒つけたい 前編 154 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2008/11/26(水) 22 45 44 ID pPMr6iAb 後編 何かずっと投下し難くかったんですが、このまま引っ込めておくのも 勿体無いので。モエがプレイしてるのはエースコンバット。ロシア語良いよね。 ≫151 爪に色気を感じたのは内緒!
https://w.atwiki.jp/ff11_gameproject/pages/333.html
と、言うわけで体育祭当日。 色々すっ飛ばしてお昼休みだ。 ましろ「遊佐君。ご希望の品だよ」 遊佐「ああ、ありがとう」 この前約束してあったブツ。 恐る恐る蓋を開ける。 中身は……地獄だった。 遊佐「ましろちゃん。この黒いのは?」 ましろ「元コロッケだよ」 元なのか。 遊佐「こっちの焦げの塊は?」 ましろ「元ハンバーグだよ」 遊佐「…………」 とりあえず、ご飯なら間違いは無いだろう。 と、判断して箸をつけてみる。 ざくっ 遊佐「ざくっ!?」 ましろ「MS-06がどうかした?」 遊佐「ご飯がざくってなったんだけど……」 ましろ「仕様です。それでは良い昼食を」 ましろは逃げ出した! 遊佐「え!? ちょっ」 って、はやっ! 遊佐「どうすっかな。これ……」 中島「どうした? 早く食わないと時間なくなるぞ?」 遊佐「あ、中島」 中島「弁当とは珍しいじゃないか」 遊佐「この前ちょっとましろちゃんに頼んでみたんだ」 中島「……死ぬ気か?」 遊佐「まさかこんな事になるなんて夢にも思いませんでした」 中島「いや、俺が言ってんのは……まあ、いい」 遊佐「ん?」 中島「とりあえず何とか処分しろよ。聖に見つかる前に」 聖「私に見つかる前に、何だ?」 遊佐「…………」 中島「…………」 嫌な空気だなぁ。はっはっは。 聖「遊佐。弁当か。うらやましいな」 遊佐「それはどうも、いるか?」 聖「作ってくれた人に失礼だろう? 全部食え」 遊佐「…………」 中島「…………」 聖「どうした? 私に遠慮するな。食え」 遊佐「何かご飯がざくってなったんだけど」 聖「芯が残ってるんだろうな。食え」 遊佐「ハンバーグが炭になってるんだけど」 聖「火を通しすぎたんだろう。食え」 遊佐「おなか壊しそうな匂いがするんだけど」 聖「真心たっぷりなんだろう。食え」 遊佐「…………」 聖「食え」 遊佐「中島! 助けてくれ!」 中島「お前の弁当だろう? 食え」 遊佐「お前まで!?」 中島「多分知らないで頼んだんだろうが、とりあえず食えよ」 遊佐「ああ! 知らなかったさ! ましろちゃんが料理下手とはな!」 中島「ちなみに年数人、その弁当で病院送りになる者が出る」 遊佐「病院かよ!?」 聖「全員私が見届けたぞ」 遊佐「お前が見てるからだろ!?」 威圧されてなければくわんだろ。コレ。 というか食えん。 聖「まあ、仕方ないな」 遊佐「何がだ」 聖「全おかず一口ずつで勘弁してやろう」 中島「聖が優しいだと!?」 聖「馬鹿者。この後のバリスタに欠員が出ては困るだろう」 中島「遊佐は病院送りになったほうが幸せなんじゃないか?」 遊佐「そんな幸せはねえよ!」 中島「まあ、お前がそういうならいいけどな」 聖「それはともかく、食え」 遊佐「分かった。一口ずつだな……」 生きて帰れますように……。 ざくっ。ぱくっ。がりがり……。 遊佐「表面意外ほとんど生米だった……」 口の中が何か粉っぽい。 すでに泣きそうなんだが。 聖「馬鹿な真似をするからだ」 遊佐「くそう……」 黒っぽい何かは炭の味しかしない。 聖「ちなみに、ましろは目玉焼きを作ろうとして水道を爆破した」 遊佐「どうやって!?」 中島「それは俺も気になるが謎だ」 卵焼きっぽい物体をかじってみる。 口の中に広がる卵の欠片は想定内。 だが……。 遊佐「苦い……すごく苦い……」 聖「塩か砂糖を重曹とでも間違えたんじゃないか?」 遊佐「解説どうも……」 中島「飯を食べながらやつれていくとか器用だよな」 うっせーよバカ。 遊佐「ところでさ」 聖「何だ?」 遊佐「ましろちゃんの魅力って、何だと思う?」 聖「は?」 遊佐「ましろちゃんがモテモテな理由だよ」 聖「ふっ、何を言い出すかと思えば・・」 遊佐「ん?」 聖「すべてに決まってるじゃないか」 ……参考にならねぇな。 中島「俺がましろちゃんがモテモテの理由を説明してやろう」 遊佐「ほう?」 中島「まずルックスだ。美人というよりカワイイという点で評価が高い」 遊佐「まあ、確かに」 中島「某評価を引用するならAAランク+だ」 遊佐「で? それだけじゃないんだよな?」 中島「もちろんだ」 遊佐「ほう」 中島「一番の理由は人当たりのよさだな」 遊佐「ほうほう」 中島「常に笑顔で成績も良く、困った人が居れば手を差し伸べ、それでいてうっかりさん」 中島「ほぼパーフェクトでありながら、欠点を持っている事によって、親しみやすさを併せ持っている」 遊佐「だから人気がある、と?」 中島「かもし出している優しいオーラが人を引き付ける要因としてもあるだろう」 遊佐「ふむふむ」 中島「何故か困った時に居てくれて癒してくれる存在。それが最初の状況だった」 遊佐「ファンクラブとか無かった頃か」 どうでもいいけどノリノリだな。中島。 中島「ある事件が起きた」 遊佐「事件?」 中島「反ましろ勢力が出来たんだ」 遊佐「というと?」 中島「まあ、女子によるねたみ集団だな。好きな人がましろちゃんを好きだったとかそんなん」 遊佐「ほうほう」 中島「そして陰湿ないじめが始まった」 遊佐「いじめか~」 中島「そして、恩がある人たちによるましろ保護集団が出来上がった」 遊佐「ほう」 中島「保護集団と反勢力との戦いは熾烈を極めた」 中島「で、聖の介入によって戦いは終結した」 遊佐「ほう、聖すごいな」 聖「それほどでもない」 中島「まあ、当事者全員しばきたおしただけだけどな」 遊佐「聖こわいな」 聖「それほどでもない」 褒めてねえよ 中島「で、いじめ集団は解体、蒸発した」 遊佐「保護集団は?」 中島「半分は目的を達したということで解体を主張した」 中島「だが、もう半分は拒否を続けた」 遊佐「?」 中島「まあ、結局解体主張してたものは保護団を離脱していった」 遊佐「じゃあ、残ったのは・・」 中島「ああ、ファンクラブとしていくつも分離して出来上がっていった」 遊佐「へぇ~」 聖「公式の親衛隊はわたししか居ないがな」 それは親衛『隊』なのか? 聖「大体こんなところだ、理解できたか?」 中島「説明したのほとんど俺だけどな」 聖「やかましいっ。埋めるぞゴルァ!」 遊佐「大体分かった」 聖「ならよし、じゃあ、弁当の続きを食え」 くそ。覚えてやがったか。 中島「あ、そろそろ時間だな。装備取りに行かないと」 聖「む、もうそんな時間か」 中島「遊佐。集合場所は覚えているよな?」 遊佐「ああ、大丈夫だ」 聖「じゃあ、後でな」 遊佐「おう」 二人を見送ってから、俺はこっそり弁当を処分した。 ………… …… 実行委員「はい。ここにある武器から好きなの選んでくださいね」 遊佐「うーい」 色々立てかけてあるな。 片手剣と盾セットに両手剣。 槍とか棍棒もある。 全部刃にカバーつけてなるべく怪我しないようにしてあるみたいだけど……。 当たったら痛いよな。これ。 実行委員「ここにない武器の使用は禁止ですから、注意してください」 遊佐「バリケードとか作っちゃダメなのかな?」 実行委員「攻撃に使わなければ別に構いませんけど、設置が間に合った例はありませんよ」 遊佐「ふぅん」 きょろきょろしてると、隅っこにダンボール箱が見つかった。 遊佐「あれも武器?」 指差して尋ねる。 実行委員「ええ、一応。ちょっと古いものであまりオススメしませんけど」 遊佐「ふむふむ」 あえてダンボール箱をがさごそしてみる。 当たって安心! ファントムタスラム12個セット 痛くない! ヒヤヒヤドカン! ボムの腕 12個セット これぞ忍者! 十字手裏剣 99個セット お土産名物 木刀 ひんやりさわやか 北極の風 1個 ……ろくなもんないな。 ほとんど投げるものばっかだし。 手裏剣は少し心揺さぶられるが、使いこなせる自信ない。 遊佐「ん?」 箱の奥の方になんかある。 遊佐「ねえ。委員さん。これ良いの?」 実行委員「え? バリスタテープ張ってあればセーフです」 実行委員さんもちょっと不安そうだけど……。 ダンボール箱から出てきた箱。 そこに堂々とあるイラスト。 銃。 怪我をしにくいゴム弾を使用! でも生き物には撃たないでね♪ デラックスカービン。弾99発付き。 遊佐「やっぱり銃は男の憧れだよね!」 等といいながら箱を開ける。 テープが張ってない事を祈る。 遊佐「テープ……張ってある……」 実行委員「あ、あはは……」 遊佐「じゃ、あの……これで……」 実行委員「はい。気をつけてくださいね」 遊佐「うん。なるべく危なくないようにします」 こんなもん使って良いのか? と良心がちょっと痛むけど、強い人多いから遠慮してられないよな。 ………… …… 登録を済ませて、中島のところに向かう。 もうみんな集まってるな。 遊佐「お待たせ~」 聖「遅い! 貴様何をとろとろしていた!」 遊佐「いや、掘り出し物を見つけて」 ましろ「掘り出し物?」 遊佐「うん。これ」 中島「おまっ、これはさすがに反則じゃね?」 遊佐「でもほら、シール張ってあるし」 聖「実行委員に確認はしたのか?」 遊佐「ああ、委員の人もちょっとびびってた」 ましろ「それはそうだろうねぇ」 杏「……そろそろ始まる。移動しないと」 遊佐「あ、ああ。そうだな」 ワイワイと校庭に集まる。 何か一瞬人の群れの一部からすごい視線が飛んできた気がする。 進行役「勇者諸君! 今日の目玉! バリスタの時間だ!」 壇上に進行役が現れ、暑苦しいまでのテンションで盛り上げ始めた。 周囲も乗りまくってる。 遊佐「乗り遅れた俺は涙目なんだが」 中島「気にするな。それより」 遊佐「なんだ?」 中島「いやな予感がする。最初は逃げの一手でいこう」 遊佐「まあ、俺はずいぶん前から嫌な予感してたが」 中島「いや、そういうんじゃ。って無駄話してる時間はないな」 珍しく真面目だな。中島。 中島「ルールは覚えてるか?」 遊佐「風船割られたら失格で退場だろ?」 中島「その通りだ。逆に言えば?」 遊佐「風船割られなければ失格にならない。退場にもならない」 中島「つまり、風船さえ割らなければ堂々と相手をど突き倒せる訳だ」 遊佐「嫌な説明だな」 中島「俺の勘だが、お前は今とてつもなく危険だ」 遊佐「え? 何で?」 中島「それを説明する時間はない。ともかく最初は逃げるぞ。どっかの教室にでも陣取ろう」 遊佐「いや、お前。そんなの勝手に決めても」 ましろ「私も賛成だな」 いつの間にかましろちゃんが隣に来てた。 遊佐「ましろちゃんまで?」 聖「私はましろについていくだけだ」 聖、お前は想像してた通りだよ。 杏「問題ない」 五分「分かったゴブ」 遊佐「はぁ、俺だけ反対してもしょうがないな。了解」 何をそんなにみんな警戒してるんだろうね。 進行役「では、5分後バリスタ開始です!」 中島「行くぞ!」 言葉とともに全力で校舎に走り出す中島。 遊佐「ちょっ。待てって!」 みんなで必死で追いかける。 中島が人ごみにまぎれて進むせいで見失わないように必死だ。 ましろ「あうっ」 躓いてこけかけるましろちゃん。 遊佐「大丈夫?」 ましろ「うん」 遊佐「早く中島を追いかけよう」 ましろちゃんの手を取って再び走り出す。 ましろ「ちょっと待って」 遊佐「何?」 ましろ「これ」 ましろちゃんから、手紙を手渡された。 中島から? 手紙「遊佐へ。とりあえず西校舎に向かえ、そこからは自分で考えろ」 どういう意味だ? とりあえず警告に従っておくか。 遊佐「分かった」 ましろちゃんに頷いて見せ、中島を除く俺たちは西校舎階段に向かった。 遊佐「なんかがらんとしてるな」 聖「まあ、西校舎は割りと遠いから、主戦場にはならないしな」 遊佐「生き残りを狙う連中くらいか」 聖「だが、主戦場で生き残ったような相手に生き残りを狙う意味はあまり無い」 遊佐「それならドサクサで強いのを潰すほうが良い。か」 聖「腕に覚えのあるやつなら、主戦場で戦うほうを好むだろうしな」 遊佐「確かに」 ましろ「何年も繰り返されてきた歴史だから、結局ここはほとんど使われなくなったんだよ」 遊佐「そうなんだ」 ひとしきり感心していると、不意にスピーカーから進行役の声が響き渡った。 進行役「それではバリスタスタートです! レッセ・アレ!」 と、同時にパーンっと景気の良い音が鳴り響いた。 五部「な、なにをするゴブ!?」 いきなり、ましろちゃんが、五部の風船を叩き割ったのだ。 ましろ「これで五部君は失格だね。退場だよ」 にこにこと微笑みながらひどい事をいう。 あの聖も驚きを隠せないようだ。 ましろ「五部君。いけないよ?」 遊佐「え? 何が?」 五部は沈黙を保っている。 ましろ「五部君はわかってるよね?」 ぎりっと歯軋りの音がした。 五部「遊佐! てめぇの命を狙ってる奴は他のクラスからも大量に投入されている!」 遊佐「へ?」 五部「てめぇを最初に殴るのは俺の予定だったが、他の奴らが俺の代わりにお前をぶちのめしてくれるぜ!」 突然の五部のキレっぷりに俺はぽかんとしていた。 というか語尾のゴブはどうした? 杏「うるさい」 五部「ゴブァ!?」 鋭いボディが五部に食い込み沈黙させた。 聖「ああ。なるほど」 ぽんっと手を打って何かに納得する聖。 聖「つまり、遊佐を抹殺したいと思ってたのは私だけではなかったようだ」 遊佐「物騒な事いうなよ」 杏「あながちそうでもない」 遊佐「杏までそういうのか」 杏「要するに、男の嫉妬」 遊佐「なんで!?」 聖「ましろに馴れ馴れしいからじゃないか?」 うっ。 馴れ馴れしいかったかなぁ。 ましろ「わたしは気にしてないよ」 ああ、にこにこと微笑んでくれるましろちゃん。 なるほど、この笑顔を独占している(ように見える)と嫉妬の一つや二つ買いそうだ。 聖「とりあえず、中島が時間稼ぎしてくれてる間に対策を練るか」 杏「彼を生贄に出したら?」 聖「それは良いアイデアだな」 俺を指差して物騒な事を言う杏。 聖も頷くんじゃない。 遊佐「勘弁してくれ。下手したら殺されるぞ」 ましろ「そうだよ。これはもうバリスタじゃないよ」 ましろちゃんが珍しくむっとした様子で言う。 聖「確かに、学校行事を私情で使うとは不届きだな」 杏「ましろに任せる」 杏が聖みたいな事言った! 聖「それに屈するのもシャクだし、ましろの意思を尊重するぞ」 遊佐「ありがとう二人とも」 聖「勘違いするな。お前の身などどうでも良い」 つめてーな。 生徒A「居たぞ!」 生徒B[逃がすな! 遊佐を捕らえろ!」 うげ、見つかった!? 聖「数が多いな。逃げるぞ」 遊佐「あ、ああ」 全力で走る。 何しろつかまったら何をされるか分からない。 ましろ「杏ちゃん」 杏「ん?」 ましろ「あのね。ごにょごにょ」 走りながら杏に耳打ちするましろちゃん。 器用だ。 杏「分かった」 こくりと頷く杏。 なんかやたら物分り良いな。 ましろ「階段のぼろう!」 遊佐「了解!」 一気に駆け上る。 二階を通過したとき、杏がそばのパイプで立ち止まり何かしている。 遊佐「杏!?」 ましろ「良いから急いで!」 遊佐「え? でも……」 せかされるままに走りながらちらりと後ろを振り返る。 パイプに毛糸?をくくりつけ反対側で杏が待機している。 ましろ「簡単なトラップだよ」 遊佐「な、なるほど」 確か、直接攻撃でなければ、基本的にオールオッケーなんだったっけ。 うしろの方で悲鳴の群れが聞こえる。 一緒に風船が割れる音も。 杏の武器は鎌だったから、あれは威圧感あるだろうなぁ。 ましろ「とりあえずこの教室に入ろう」 ましろちゃんに先導されるまま部屋に入る。 ましろ「よいしょっと」 扉のスライド部分に机を差し込んでカギ状態にするましろちゃん。 いつもからは想像できないくらい手際良いな。 ましろ「このままだとそのうち追い詰められちゃうね」 聖「そうだな……」 遊佐「中島と杏が頑張ってくれただろうから、ある程度減ったと思いたいけどね」 重い沈黙。 ましろ「そうだ」 遊佐「名案でもあった?」 ましろ「一人ずつやっつけよう」 聖「ふむ。どうやってだ?」 ましろ「まず、扉をこうする」 片方の扉をちょっとだけ開くように、机を調整するましろちゃん。 ましろ「後は入った瞬間ぽかりと」 遊佐「なるほど」 人一人が横向きで通れるギリギリだから、 よっぽどすごい人じゃないと、これは超えられまい。 聖「念のため退路も確保しておきたいところだな」 遊佐「うーん。窓からかなぁ」 こっそり窓を開けてみる。 遊佐「あ、ちょうど2階が下にある」 ましろ「ぬかりなし! だよ」 えへんと胸を張るましろちゃん。 遊佐「今日のましろちゃんはいつもの数倍すごく見えるね」 聖「確かに、私も少し驚いた」 ましろ「色々頑張って調べたんだよ」 遊佐「健気なええ子やのぅ」 うう、涙で視界が緩むぜ。 遊佐「ありがとう。ましろちゃん」 ぎゅっと手を握り感涙する俺。 聖「だから、ましろに触るなと言っている」 ハイキックが飛んできた。 遊佐「いや、すまん。感動のあまりつい」 聖「あまり調子に乗っていると裏世界で、もとい、お前を連中に差し出すからな」 遊佐「それは勘弁してくれ」 生徒C「遊佐ぁぁぁぁぁ!覚悟ぉぉぉぉ!」 ごんっ 突入してきた生徒をましろちゃんが殴り倒す。 ちなみにましろちゃんの武器はトゲトゲの付いたハンマーだ。 トゲトゲの部分は布と綿で作られてるけど、痛そうだなぁ。 ましろ「二人とも、気を抜いてると危ないよ?」 聖「ああ、すまない」 聖がいつの間にか完成していた机の牢屋に生徒を放り込む。 俺、出番ねぇな。 生徒「遊佐ぁぁぁぁぁ!死ねぇぇぇぇぇ!」 がんっ 生徒「俺たちの天使を返せぇぇぇぇぇ!」 ごんっ 生徒「お前さえいなければぁぁぁぁぁ!」 どかっ 生徒「よくもジーンをぉぉぉぉぉぉぉ!」 べしっ 生徒「ましろちゃん。らぁぁぁぁぁぁぶっ!」 どげしっ ばきばきっ ………… …… 聖「はぁはぁ。大分……。減らしたと思うんだが……」 遊佐「そう……だな……げほっ」 机で作られた牢屋の中には、20人以上の生徒がぶち込まれている。 下の方とか生きてるかちょっと不安だ。 ましろ「そろそろ……ここも危ないかもね……」 ましろちゃんもぐったりとした様子だ。 なんだかんだで俺と聖より撃墜数が多い。 まあ、俺と聖が要らない掛け合いしてたせいだが。 聖「正面からの突撃が無くなったな……」 遊佐「相手もいい加減、無駄な突撃はやめるだろ……」 ましろ「じゃあ、無駄じゃない突撃……あっ」 不意にましろちゃんが立ち上がった。 ましろ「二人とも、急いで窓閉めて!」 ましろちゃんが駆け出そうとした瞬間。窓から数人の生徒が乱入してきた。 俺たちを扇状に囲むとリーダーっぽい生徒が一歩前に出てきた なるほど、扉の外には別働隊を用意してあるわけか。 リーダー格「遊佐。見つけたぞ」 遊佐「お前ら、いい加減しつこすぎだろう……」 リーダー格「お前がしつこく抵抗するからだ」 遊佐「大体、お前ら何なんだよ?」 リーダー格「我々か?」 ふふっと笑うとリーダー格の生徒はどんっと胸を張った。 リーダー格「ましろちゃんを遠くから見守って我慢しよう友の会だ!」 遊佐「なげーよ!」 要するにファンクラブみたいなもんなのな。 リーダー格「本当は親衛隊にしたかったんだがな」 言ってちらりと聖を見る。 聖「ああ。お前は」 ぽんっと手を打って納得する聖。 本日2回目だな。 聖「親衛隊に入りたいと泣きながら頼んできた。あの鳥山か」 遊佐「知り合いなのか?」 聖「いや、知ってのとおり親衛隊は女人専用なのだが、しつこく頼んできてな。軽く泣かした」 遊佐「軽くって?」 聖「とりあえずコンボを叩き込んだ後、校庭の木に逆さ吊りにしといた」 遊佐「ひどいなオイ」 聖「翌日から、何故か鳥山はコウモリ君と呼ばれてたな」 遊佐「明らかにお前のせいだろうが」 鳥山「それを言うな!」 あ、涙目になってる。 思い出したくないんだろうなぁ。 鳥山「とにかく、遊佐を引き渡してくれれば、お前にも危害は加えない」 にもって、最初からましろちゃんに危害加えない予定なんだな。 うむ、良い心がけだ。 聖「ふむ。こういうときの返事は、そうだ。遊佐がしたな」 遊佐「ん?」 聖「だ が 断 る」 どーんっと背景に擬音を背負ってきっぱりと言い切る聖。 カッコイイよ聖。惚れそうだ。 聖「キモイからやめろ」 俺の心読むなよ。 あとキモイ言うな。 鳥山「何故だ!? お前も遊佐のことは鬱陶しく思っているはずだ!」 聖「それとこれとは別だ。お前は学校行事を汚し、私情に活用しようとした」 鳥山「バリスタでなければ問題になるからな。それがどうした?」 聖「さらに多数で以っての非道を計画した。ゆえに私はそれを許さない」 鳥山「馬鹿な奴め。では、ここで死ね」 目がこえーよおい。 遊佐「どうでもいいけど鳥山君? セリフが悪役だな」 鳥山「この日のために色々練習したからな」 む、無駄な練習を……。 聖「遊佐」 小声でこっちに呼びかける聖。 遊佐「なんだ?」 聖「私が時間を稼ぐ、その間に逃げろ」 遊佐「おいおい。外は多分まだ敵がいるぞ」 聖「幸い連中はお前の武器が何か確認していないはずだ」 遊佐「あ、そういえば」 懐に仕舞ってそれから一回も使ってなかったな。 聖「それで威嚇しながら逃げればなんとかなるだろう」 遊佐「でも、お前は?」 聖「こいつらを倒したら合流するさ」 遊佐「……分かった」 聖から男らしいまでの決意を感じ取り、俺も腹をくくる。 聖「行くぞ」 遊佐「おう」 すーっと息を吸う。 ましろ「突撃!」 遊佐「なんでましろちゃんが!?」 ついうっかりつっこみを入れてしまったが、準備していた体はすでに扉に走り出していた。 扉を制限してた机はいつの間にか解除されていた。 不思議に思いましろちゃんを見ると、にっこりと微笑んでくる。 今日のましろちゃんはすごい! 聖「とりゃああああああ!」 背中から聖の叫び声が聞こえる。 聖の決意を背に、扉から外に俺たちは躍り出た。
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/1115.html
368 三つの鎖 外伝 1 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/09(金) 23 34 37 ID 45E5IC2z 三つの鎖 外伝 誕生日のプレゼント 終わりのホームルームが終わって騒がしくなった教室を出た。 教室の外は寒い。年を明けたとはいえ、春は遠い。 学校が終わって廊下は人が多く騒がしい。受験の季節だからか、みんな重たそうな鞄を手にしている。 そんな中、人が多い廊下でも頭一つ抜けている身長の高い男の子がこっちに歩いてくる。 「幸一くん!」 私の呼び声に幸一くんは片手をあげた。 珍しい。いつもは私が幸一くんの教室に迎えに行くのに。幸一くんから私の教室に来るのは久しぶりかもしれない。 「今日はどうしたの?」 幸一くんに駆け寄りながら私は尋ねた。返事が来る前に幸一くんの両手を握る。 「そんなにお姉ちゃんと帰りたいんだ!お姉ちゃん嬉しい!」 幸一くんの顔が面白いぐらい赤くなる。初々しい反応。楽しい。 「違うよ」 恥ずかしそうにそっぽを向く幸一くん。可愛い。 「春子に相談があって」 真剣な顔で私を見る幸一くん。最近、幼さが抜けて大人の顔になってきた。 嬉しいような寂しいような複雑な気持ち。 「いいよ。じゃあお姉ちゃんの家に行こうよ」 私は幸一くんの手を握ったまま引っ張る様に歩き出した。 生徒でごった返す廊下の中をかき分けるように歩く。 歩きながら私は考えた。幸一くんの相談は多分梓ちゃんに関係すること。 梓ちゃんの誕生日が近いし、誕生日プレゼントに違いない。 「春子」 「何?」 「恥ずかしいから手を離して」 「やだ」 私は幸一くんの手をぎゅっと握った。幸一くんの手は温かった。 結局私達は家まで手をつないで帰った。 何度も手を離してって恥ずかしそうに言う幸一くんが可愛すぎる。 「先に二階に上がって」 玄関で手を離す。幸一くんがほっとした気配が伝わる。 二階に上がる幸一くんをしり目に私はキッチンに入った。キッチンにはお母さんの置き手紙があった。今日も遅くなるとのこと。 よし。今日は幸一くんと梓ちゃんと食べよう。一人で食べるのは味気ないしね。ついでに幸一くんの腕前を確認しよう。 今、加原の家の家事は幸一くんが行っている。もちろんお料理も。教えたのは私とお母さんと京子さん。既に一人前といっていいレベル。 熱い緑茶とスポーツドリンクを手に私は二階に上がった。 部屋に入ると、暖かい。幸一くんがストーブをつけてくれたようだ。昔に比べ幸一くんは本当に気がきくようになった。 私の部屋には幸一くんとシロが座っていた。気持ちよさそうに幸一くんに頭を撫でられているシロ。 「幸一くん。どうぞ」 幸一くんは礼を言ってコップを受け取り口にした。 私がコートを脱ぐのを幸一くんは手伝ってくれた。 うーむ。この辺は紳士になったかな。昔のお調子者の幸一くんからすれば大きな成長だ。 「それで、相談って?」 幸一くんは深呼吸して話しだした。 私の予想通りだった。今度の梓ちゃんのお誕生日のプレゼントは何がいいかだ。 ちなみに、今年の私の梓ちゃんへのプレゼントは手編みのマフラーを渡すつもり。既に完成している。幸一君にもおそろいのを作っていて、もうすぐ完成。 去年の幸一くんのプレゼントはケーキだった。私と幸一くんの二人で作った手作りケーキ。梓ちゃんは何も言わずに食べてくれた。 「何か考えているの?」 「一応候補はある」 私は驚いた。去年は文字通り途方に暮れて私に相談してきたのに、今年は候補があるらしい。大きな成長だと思う。 胸が締め付けられるような感覚。想像もしなかった寂しさが募る。 「候補は何かな?」 私は胸の内を表に出さないようにしながら尋ねた。 「扇子をプレゼントしようと思っている」 …聞き間違えたかな。 「もう一回言ってくれる」 「扇子をプレゼントしようと思っている」 「幸一くん正座しなさい」 幸一くんは素直に正座した。何でそこは素直なのかな。妙に姿勢がいいのが何か腹立つ。 369 三つの鎖 外伝 1 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/09(金) 23 35 49 ID 45E5IC2z シロも何故か幸一くんの隣にちょこんと座った。君は関係ないよ。 「あのね、梓ちゃんもう中学2年生だよ?年頃の女の子に扇子?まあ百歩譲ってもだよ、今は冬だよ?」 幸一くんの成長は私の勘違いだったみたい。 「何で扇子をプレゼントしようと思ったのか、お姉ちゃんに説明してくれるかな」 幸一くんは落ち着いた声で説明し始めた。 梓ちゃんが暑がりなこと、特に暖房の効いている場所ではいつも顔を手で仰いでいること、だから扇子があれば役に立つのではないかと思った、との事らしい。 幸一くんの言うとおり、梓ちゃんは暑がりだ。よく手で顔を仰いでいる。 「だから春子にいい扇子を売っているお店を聞こうと思って」 さっきのは訂正。やっぱり幸一くんは変わった。妹へのプレゼントを幸一くんなりに考えている。 それでも扇子はどうかと思うけど。 「やっぱり扇子は変かな」 不安そうな顔をする幸一くん。この表情も可愛い。 「変だよ」 落ち込む幸一くん。梓ちゃんと違って分かりやすい。シロが慰めるように幸一くんに体を摺り寄せる。 「でも、幸一君らしくていいと思うよ」 幸一くんの顔が笑顔に輝く。単純だなー。でもそんなところが可愛い。 「扇子かー。お姉ちゃんで調べてみるよ」 また後で幸一君の家でご飯を食べる約束をして、幸一くんを家に帰した。 早速、私はインターネットで調べ始めた。 何だか気分がウキウキする。自分でもその理由が分からないまま、私は調べものに没頭した。 調べ物を済ませて、私は家を出た。 幸一くんの家の玄関の扉は鍵が掛かっていた。私はピッキングツールを取り出し、ドアを開けた。結構頑丈な鍵を使っていて最初は手間取ったけど、慣れればどうという事は無い。 こっそり幸一くんの家に入り込み、驚いた幸一くんの顔を見るのが私の楽しみの一つ。 勝手知ったる幸一くんの家に入り、リビングからキッチンに向かう。リビングは暖房がついていなかった。ちょっと寒い。 こっそり覗くと、幸一くんは晩ご飯を作っていた。 無駄のない手慣れた動きで料理する幸一くん。驚かそうと思って、私はできなかった。料理する幸一くんの表情が、びっくりするぐらい真剣だったから。 料理を一通り済ませ、使った料理道具を洗い始める幸一くん。手慣れた動き。 「幸一くん」 びっくりした表情で私の方を振り向く幸一くん。さっきの大人びた表情は見る影もない。 嬉しさと、寂しさが胸に湧き上がる。 自分自身でも、何でそんな風に思ったのか分からない。 「春子?どこから入った?」 「玄関の鍵、開いてたよ」 そうだったっけ、と頬をかく幸一くん。いつもの幸一くんの仕草。 私は手を洗い、お味噌汁を一口味見した。 おいしい。男の子の作る料理にしては、濃くない。 男の子はどちらかというと濃い味付けが好きだ。幸一くんもそう。でも、これはそんなに濃くない。 「幸一くんて薄味が好みだっけ?」 「違うよ」 不思議そうに私を見る幸一くん。 「じゃあ何で薄めに作ったの?」 幸一くんは微笑んだ。 「梓は、ちょっと薄味の方が好みだから」 大人びた幸一くんの微笑み。 今まで、こんな笑顔の幸一くんを見た事ない。落ち着いた笑顔。 頬が微かに熱くなるのを感じる。 その事に気がついて、ちょっと腹が立った。 私は背伸びして幸一君の頭を撫でた。 「よくできてるよ」 幸一くんの顔が赤くなる。 「おいしいけど、出汁を煮込み過ぎかな。薄味にしたいなら、そこを気をつけた方がいいよ」 顔を赤くしたまま黙って耳を傾ける幸一くん。 その恥ずかしそうな表情はいつもの幸一くんだった。 「春子」 「なーに?」 「恥ずかしいからやめて」 「やだ」 幸一くんは顔を赤くしたまま。恥ずかしそうに視線を逸らす。 ちょっと気が晴れたかも。 370 三つの鎖 外伝 1 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/09(金) 23 37 13 ID 45E5IC2z ご飯ができたから梓ちゃんを呼びに行くことにした。階段を上り梓ちゃんの部屋の扉をノックする。返事無し。 「梓ちゃん。入るよ」 ドアを開けると、締め切られた淀んだ空気が出てきた。 梓ちゃんはベッドの上で布団にくるまって寝ていた。 白くて細い素足が布団からはみ出ている。寒くないのかな。 「梓ちゃん」 私は布団の上から梓ちゃんをそっと揺らした。 ガバッと梓ちゃんが跳ね起きた。びっくりした。 不機嫌そうに私を睨む梓ちゃん。 「梓ちゃん。晩ご飯ができたよ」 「何で春子がいるの」 すごく不機嫌そうな声。 そういえば、幸一くんの家で晩ご飯を食べるのは久しぶりな気がする。最近は受験勉強で忙しくて、幸一くんの家にお邪魔する機会自体が少なかった。 「今日はお姉ちゃんの家、誰もいないから、一緒に食べようと思って」 梓ちゃんは不機嫌そうに私を睨むけど、やがて興味を失くしたようにベッドから降りた。 すらりと伸びる白くて細い素足と腕。キャミソールに飾り気のない白い下着という格好の梓ちゃん。寒くないのかな。 そのまま梓ちゃんはホットパンツをはいて部屋を出ようとした。 「梓ちゃん。寒くないの?」 「別に」 そっけなく答える梓ちゃん。その後ろ姿はこれ以上の会話を拒絶していた。 二人で階段を下り、リビングに入る。 食卓には湯気の上るおいしそうな料理が並んでいた。 ご飯にお味噌汁、ほうれん草のおひたしにかぼちゃの煮つけ、鳥の照り焼き。 匂いが食欲を刺激する。 みんなで座って手を合わせる。 「いただきます」 「いただきます!」 「…いただきます」 三者三様にいただきますをして箸をとる。 どれもおいしい。初めて幸一くんに教えた時とは別人としか思えない腕前。 幸一くんの成長に嬉しさを感じる。 それと同時に寂しさも感じる。何で寂しく感じるのか、分からない。 幸一くんの成長は嬉しいはずなのに。何でなんだろう。 お味噌汁を口にする。おいしい。リビングに暖房がついてなくてちょっと寒いから、お味噌汁の温かさが身にしみる。 食卓をちらりと見まわす。幸一くんは静かに食べている。梓ちゃんも無言で食べている。寒そうな格好なのに、涼しげな顔。 やっと分かった。リビングに暖房がついていない理由。 梓ちゃんが暑がりだから、暖房をつけていないんだ。 無言で食べる兄妹。なんだか声をかけずらい。 「幸一くん。腕を上げたね」 「ありがとう。春子のおかげだよ」 嬉しそうに笑う幸一くん。その笑顔が眩しい。 「梓ちゃんはどう?おいしい?」 「…まあまあ」 不機嫌そうに答える梓ちゃん。 結局、会話が続かないまま晩ご飯を終えた。 梓ちゃんは何も言わず食器も片付けず席を立った。 「梓ちゃん。ご馳走さまは?」 面倒くさそうに私を見る梓ちゃん。 「…ご馳走さま」 梓ちゃんはリビングを出て行った。 幸一くんはそんな梓ちゃんに何も言わずに後片付けをはじめた。 「いいの?」 苦笑する幸一くん。 「僕も梓に苦労かけたから」 そう言って食器を洗い始める幸一くん。そんな幸一くんを不憫に感じた。 梓ちゃんと幸一くんの確執は私も知っている。確かに幸一くんは無責任な所もあった。でも、幸一くんが全て悪いわけじゃない。梓ちゃんだって、家事が嫌ならそれを言えば良かった。荒れて夜の街に繰り出す必要なんて無かった。 それなのに幸一くんは全部自分の責任と言って、梓ちゃんに尽くす。 私は腕をまくって幸一くんの隣に並んだ。 「いいよ。僕が洗うから」 371 三つの鎖 外伝 1 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/09(金) 23 38 38 ID 45E5IC2z 「お姉ちゃんも手伝うよ。おいしいご飯のお礼」 そう言って二人で食器を洗う。 大した量じゃないし、すぐに終わる。 幸一くんはお茶を入れてくれた。温かい緑茶。二人でリビングに座り、のんびりとお茶をすする。 少し寒いリビングに、温かいお茶が美味しい。 お茶をすする幸一くんの横顔を見る。幼さの少し抜けた横顔。 大人びた落ち着いた表情に、不安を感じる。 ずっと一緒にいて、ずっとそばにいたはずなのに、幸一くんが遠くに感じる。 何でだろう。幸一くんに取り残されているように感じる。 まだ私の方がお料理は上手だし、成績も私の方がいい。幸一くんに教えられる事はたくさんある。 それなのに、幸一くんに置いてきぼりにされているように感じる。 不安と同時に若干の怒りも感じる。私にそんな事を感じさせるなんて、ちょっと腹が立つ。 私はコップを置いて幸一くんの後ろから抱きついた。 「えっ!?」 びっくりしてコップを落としかける幸一くん。 慌てた表情。その表情が赤くなる。 可愛い。私は幸一くんに頬ずりする。 「な、なに?どうした?」 恥ずかしがる幸一くんの表情を見ていると、腹立ちが徐々に収まっていく。 うん。やっぱり幸一くんはこの表情が一番似合っている。 「は、離れて」 恥ずかしそうに身をよじる幸一くん。私は調子に乗ってさらに幸一くんに抱き締める。背中に胸を押し付ける。 「恥ずかしいから離れて。お願いだから」 顔を真っ赤にする幸一くん。可愛い。 幸一くんの恥ずかしそうにしている表情を見るのがすごく楽しい。 そんな幸せに浸っていると、リビングから梓ちゃんが入ってきた。 相変わらずの薄着。白くて細い手足が眩しい。お風呂上りなのか、艶のある長い髪を背中に垂らしている。 「何してるの」 不機嫌そうに私達を睨む梓ちゃん。 「どう?恥ずかしがっている幸一くん、可愛いでしょ?」 幸一くんの頬を手でなでる。恥ずかしそうに身をよじる幸一くん。可愛い。 梓ちゃんの視線がさらに不機嫌になった気がした。 無言で何かを幸一くんに投げつける梓ちゃん。幸一くんは手慣れた様子で受け取った。ブラシだ。 何も言わずにソファーに座る梓ちゃん。 幸一くんは私の腕をそっと離して、梓ちゃんの後ろに立った。 「ドライヤーは?」 「いらない」 短いやり取りの後、幸一くんは梓ちゃんの髪をとき始めた。 真剣な表情で丁寧に髪の毛をとく幸一くん。梓ちゃんは相変わらず不機嫌そうにしているけど、少しだけ気持ちよさそうにしている気がする。 その光景に、胸がもやもやする。 昔、幸一くんが私に手入れの仕方を教えて欲しいと頼んできたことがある。私は教えてあげた。練習台に髪の毛をとかしてあげた。 最初はひどかった。髪の毛は絡まるし、抜ける。 でも、すぐにうまくなった。上手に髪の毛の手入れをできるようになった。 今の幸一くんを見ても、さらに上達しているのが分かる。 幸一くんの成長が嬉しいはずなのに、胸がもやもやする。寂しさを感じる。 「これでいい?」 幸一くんの言葉に梓ちゃんは無言で立ち上がった。そのままリビングを出て行こうとする梓ちゃんを幸一くんは呼びとめた。 キッチンに向かった幸一くんは、コップを片手に戻ってきた。氷の入った琥珀色の液体。 「アイスティーでいい?」 梓ちゃんは無言で受け取り、リビングを出て行った。 「相変わらずだね」 幸一くんは苦笑した。 梓ちゃんが幸一くんをこき使うのも、今では見慣れた光景になってしまった。 「お店はいいのあった?」 幸一くんの言葉に一瞬考えてしまった。幸一君の頼みで扇子を売っているお店を調べたんだった。 「あったよ。少し遠いから、今度の休日に一緒に行こ」 「ありがとう」 柔らかい笑みを浮かべる幸一くん。 優しい落ち着いた笑顔に頬が熱くなる。その事に気がついて、自分でもよく分からないぐらい腹が立った。 372 三つの鎖 外伝 1 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/09(金) 23 41 10 ID 45E5IC2z 休日の朝、私は幸一くんが迎えに来てくれるのを家で待っていた。 もう既に準備はできている。ロングスカートにブラウス。その上にカーディガン。コートにマフラー。このマフラーは去年の誕生日に幸一くんがプレゼントしてくれた品。 そういえば、もうすぐ私の誕生日だ。梓ちゃんの誕生日のすぐ後。私の誕生日の次の日が幸一くんの誕生日だ。 ちょっと不安になる。幸一くん、私の誕生日を覚えているのかな。梓ちゃんの事ばかりだし。 そんな事を考えていると、ドアベルが鳴る。 お母さんの声が聞こえてくる。 「春子!幸一くんが来てくれたわよ!」 私は鞄を手に階段を下りた。 幸一くんが私に気がついて微笑む。 「おはよう」 恥ずかしそうな表情。きっとお母さんに何か言われたに違いない。 「お母さん。幸一くんに何か言った?」 お母さんはニッコリと笑った。 「春子をもらってやってってお願いしただけよ」 幸一くんの顔が赤くなる。 いつもの恥ずかしそうな幸一くんの表情なのに、ちょっと腹が立つ。 何でだろう。いつもの恥ずかしそうな表情なのに。 「そうだね。お姉ちゃんでよければ結婚してくれる?」 幸一くんの顔がさらに赤くなる。恥ずかしそうにそっぽを向く幸一くん。可愛い。 腹が立った理由が分かった。私以外の人が幸一くんにこの表情をさせたからだ。 自分の意外な独占欲にちょっとびっくり。 「お母さん。行ってくるね」 「幸一くん。春子をお願いね」 はい、と消えそうな声で答える幸一くんの手をとり、私達は家を出た。 外は寒い。私は幸一くんの手をぎゅっと握った。幸一くんの手は温かい。 「春子」 「なに?」 「恥ずかしいから手を離して」 私は手を離した。幸一くんがほっとした気配が伝わる。 自分の腕を幸一くんに絡ませる。腕を組んだままの状態で私は歩き出した。 「は、春子?」 恥ずかしそうな幸一くん。私に引っ張られるように歩く。 もう。男の子がリードしないといけないのに。 「幸一くん。男の子なんだからリードしないと駄目だよ」 「その、もうちょっと離れて欲しい」 「やだ」 そんなやり取りをしながら歩く。 バスに乗り、隣町のショッピングセンターに向かう。 揺れるバス。私はバランスを崩した。咄嗟に手すりを掴もうとしたけど、手が届かない。 こける。そう思った時、幸一くんが支えてくれた。 私を抱きかかえるように支える幸一くんの腕。思ったより逞しい腕に抱きしめられ、びっくりした。 いつの間にこんなに逞しくなったんだろう。 「大丈夫?」 私を見下ろす幸一くん。 「どこか痛めた?」 無言の私を見て勘違いしたのか、幸一くんは心配そうに私を見下ろす。 「うんうん。大丈夫」 そう言った次の瞬間、目的地が近い事をアナウンスが告げる。幸一くんは降車のボタンを押した。 幸一くんが先にバスを降りる。私が降りようとした時、幸一くんが手を差し出した。 「ありがとう」 私は礼を言って差し伸べられた手を握った。幸一くんに支えてもらいながらバスを降りた。 横目に幸一くんを見る。平然としている。全く恥ずかしがっていない。 手を握られたり腕を組まれたりするとあんなに恥ずかしがるのに、女の子に手を差し伸べて支えるのには何の羞恥心も感じないみたい。 私は幸一くんの手を握った。 「え?」 幸一くんが驚いた表情が赤く染まる。 「は、春子?恥ずかしいからはなして」 変な幸一くん。支える時に手を握るのは平気なのに、こうやって握られたら恥ずかしがる。 でも、そんな所も可愛い。 「春子?聞いてる?」 373 三つの鎖 外伝 1 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/09(金) 23 42 26 ID 45E5IC2z もちろん聞いている。私は手を離して、抱きしめるように幸一くんと腕を組んだ。 恥ずかしそうにそっぽを向く幸一くん。可愛い。 ショッピングセンターの中は込んでいる。家族連れやカップルも多い。 その中を歩いていると、幸一くんが驚いたような顔をした。 幸一くんの視線の先を見ると、私達と同じぐらいの年の男女が歩いていた。 男の子は見覚えがある。確か、幸一くんのお友達の田中耕平君だったと思う。 田中君は私達に気が付く事なく離れて行った。 「田中君だっけ?」 「そう。僕と同じクラスの。また知らない子と歩いてる。」 「知らない子?」 幸一くんいわく、田中君はいつも別の女の子と一緒にいるらしい。大したプレイボーイだ。 「幸一くんも色んな女の子と遊びたいの?」 頬を赤くする幸一くん。 「恥ずかしいからいいよ」 恥ずかしそうに言う幸一くんに、ちょっと腹が立った。 何で腹が立ったか、自分でもよく分からない。 でも、恥ずかしそうにする幸一くんに自分でも分からないぐらい腹が立った。 「好きな女の子でもいるの?」 私の問いに幸一君は驚いた様に私を見た。 「いないよ。僕の評判を知っているだろ?」 幸一くんの評判。成績優秀で真面目。でも、シスコンで、幼馴染の女の子がいつもそばにいる。 うーん。何も知らばい女の子からすれば、ちょっと付き合いにくいかな。 「お姉ちゃんが女の子を紹介してあげようか?」 幸一くんの顔が赤くなる。 不思議と腹が立つ。 「いいよ。今は受験だし」 そんな事を話しているうちに目的地に着いた。 和服を扱うお店。和服だけでなく、和風のアクセサリーや小物も扱っている。 当然、扇子もある。 扇子を手に取る幸一くん。 幸一くんの横顔に、胸が締め付けられる。 その横顔が、今まで見た事の無い真剣な表情だった。 ずっとそばにいたのに、私には見せた事のない表情をする幸一くん。 私の知らない間に成長している幸一くん。喜ばしいはずなのに、胸が締め付けられる。 「これどうかな?」 私に扇子を差し出す幸一くん。ぼんやりとしていた私は慌てて視線を扇子に向けた。 幸一くんの手にした扇子は、落ち着いた色合いの品の良い物だった。 梓ちゃんが手にしている姿を想像する。暑そうに扇子でぱたぱた顔をあおぐ梓ちゃんを容易に想像できる。 思った以上に似合っている。 「いいと思うよ」 「ちょっと待ってて。買ってくる」 レジに向かう幸一くん。後ろの背中が大きく見える。 胸が締め付けられるような感覚。郷愁にも似た寂しさ。 包装された扇子を鞄に入れながら幸一くんが近づいてくる。 「梓、喜んでくれるかな」 不安そうな表情の幸一くん。その表情を見て安心してしまった。 「大丈夫だよ。きっと喜んでくれるよ。幸一くんが梓ちゃんのために一生懸命選んだのだから」 私は幸一くんの手を握り締めた。 「もっと自分の選択に自信を持って」 幸一君は微笑んだ。手を握った時にする、恥ずかしそうな笑顔じゃない。落ち着いた大人びた微笑み。 「ありがとう」 その笑顔に、胸が締め付けられる。 分からない。何でなんだろう。幸一くんの落ち着いた大人びた笑顔や仕草に、理由の分からない寂しさを感じる。 「どうしたの?」 不思議そうに私を見る幸一くん。落ち着いた表情が何だか腹立つ。 私は幸一くんの腕に私の腕を絡ませた。 たちまち顔を赤くする幸一くん。 「ちょっと春子!」 幸一くんの抗議を無視して私は歩き出した。 私に引きずられるように歩く幸一くん。 374 三つの鎖 外伝 1 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/09(金) 23 44 41 ID 45E5IC2z 「せっかくだから今日は一杯遊ぼうよ」 「受験前でしょ?」 「息抜きは必要だよ」 そんな事を話しながらショッピングセンターを歩く。 シルバーアクセサリーを売っているお店を発見。 扇子じゃなくて、こういうのをプレゼントしたらいいのに。 幸一くんのお勉強のためにも見てみようかな。 「行ってみようよ」 私は幸一くんを引っ張ってお店に入った。 色々なシルバーアクセサリーがある。幸一くんも珍しそうに商品を見ている。 たくさんあるなかで、一つの指輪が目を引いた。 飾り気もないシンプルなデザインの指輪。他にも綺麗で洒落たデザインの指輪があるなかで、何でかこの指輪に注目してしまう。 横目に幸一くんを見る。幸一君は珍しそうにきょろきょろしている。 朝のお母さんとの会話を思い出す。結婚。 結婚なんて想像もつかない。まだ中学3年生だし。 一人の男の子とずっと一緒にいる。そんな男の子は、私にとって幸一くんしか考えられない。 でも、一人の男の子として愛しているかというと、そんな事は無い。 女の子としての愛じゃなくて、姉としての愛。 だから幸一くんの付き合って欲しいという告白を断った。それに、幸一くんは本気で私を好きなわけじゃなかった。 もし幸一くんが私の事を本気で好きなら、応えたいと思ったかもしれない。でも、幸一くんは単に彼女が欲しいと思っていただけだった。恋に恋していただけだった。 いつか幸一くんも結婚するのかな。 もう一度横目に幸一くんを見る。 真剣な表情でアクセサリーを見ている幸一くん。私には向けない、大人びた表情。 幸一くんが何を考えているか、分かった。分かってしまった。 梓ちゃんが喜ぶかを考えているんだ。 胸に切ないほどの寂しさが湧き上がる。 私は幸一くんの腕に抱きついた。 びっくりしたように私を見下ろす幸一くん。 幸一くんの身長、いつの間にこんなに高くなったのだろう。 私は幸一くんと腕を組みお店を出た。 引っ張られるように歩く幸一くん。 私と一緒にいるのに、梓ちゃんの事ばかり考えている幸一くんに何だか腹が立った。 梓ちゃんが幸一くんの妹なら、私は幸一くんのお姉ちゃんなのに。 幸一くんの腕に思い切り胸を押し付ける。 どうだろう。幸一くん、恥ずかしがっているかな。 「春子」 落ち着いた幸一くんの声。 振り向くと、心配そうに私を見る幸一くんの顔が近くにあった。 「どうしたの?何か春子らしくないよ」 綺麗な瞳が私を見つめる。 その顔には、羞恥も浮かんでいないし、赤くもなっていない。 あくまでも心配そうな表情が浮かんでいるだけ。 切なさに似た寂しさに、胸が締め付けられる。 「そんな事ないよ。それよりも何か食べようよ。お姉ちゃん、お腹がすいた」 誤魔化しながら私は幸一くんの腕を引っ張るように歩いた。 結局、一日遊んだ。 バスの座席でうとうとする幸一くん。 今日一日、思い切り引っ張りまわしたから、幸一くんはお疲れだ。 幸一くんの寝顔。幼さの抜けてきた男の子の顔。 今日は楽しかったけど、腹立たしく感じたこともあった。 幸一くんが梓ちゃんの事を考えているのが腹が立った。 幸一くんが私に見せた事のない表情をするのが気に食わなかった。 幸一くんが恥ずかしがらずに私を心配するのが嫌だった。 静かに眠る幸一くん。その寝顔を見ていると、変な気分になってくる。 落ち着かない、そわそわした感じ。 その事に気がついて、余計に腹が立った。 まるで私が幸一くんに恋しているみたい。 ずっと面倒を見てきた、手のかかる弟みたいな男の子。 そんな幸一くんにお姉ちゃんが恋するなんて、ありえない。 375 三つの鎖 外伝 1 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/09(金) 23 46 21 ID 45E5IC2z 私の想いを知らず、のんきに眠り続ける幸一くんを見ていると、もっと腹が立った。 幸一くんのほっぺた。柔らかそう。 小さい時は何度も幸一くんにキスした。恥ずかしがって逃げ回る幸一くんを追いかけるのが楽しかった。 でも、別に胸が高鳴る事は無かった。あくまでも子供のお遊びみたいなキスだった。 最後にキスしたのはいつだろう。 今、幸一くんに口づけしたら、胸は高鳴るのかな。 私は幸一くんのほっぺたに、そっと口づけした。 胸は高鳴らなかった。 ただ、顔が熱くなった気がした。 幸一くんと別れ、家に入る。 自分の部屋に戻り、ベッドにダイブした。 恥ずかしさと自己嫌悪に頭が爆発しそう。 私は何をしているの。 他の人がいるバスの中で、寝ている幸一くんの頬に口づけ。 自分がした事を信じられない。 頬が熱い。昔は口づけしても、恥ずかしく感じる事は無かったのに。恥ずかしがる幸一くんを見るのが楽しかったのに。 悶えていると、階段を上る音が聞こえてくる。 人間じゃない足音。 シロが扉を開けて入ってきた。 心配そうに私を見るシロ。 「シロ。おいで」 シロは私の傍にやってきた。その頭をそっと撫でる。 気持ちよさそうにするシロ。そんなシロを見ていると、だんだん気分が落ち着いてくる。 よし。今度幸一くんに会ったら思い切り頭を撫でてあげよう。 そして思い切り恥ずかしがっている幸一くんを見よう。 羞恥にうつむく幸一くんの表情。あの可愛い表情を思い出すだけで幸せな気分になれる。 そんな事を考えていると、お母さんの声が聞こえた。 「春子。ごはんよ」 「はーい」 私は部屋を出てリビングに向かった。シロも後ろをついてきた。 今日の晩ご飯はお母さんと二人。いつもは私が用意していたけど、受験で忙しくなってからはお母さんが作ってくれることが多い。 「幸一くんとのデート、どうだった?」 お母さんはニコニコしながら尋ねてきた。 「楽しかったよ。でも、あんまりデートって感じじゃ無かったよ」 どちらかというと弟の買い物に付き合ったって感じ。 幸一くんと二人で出掛けたのは今回が初めてじゃないし。今までに何回もある。 でも、今回は今までと違った。 幸一くんの成長をはっきりと感じた。 嬉しい事なのに、胸が締め付けられる感覚。よく分からない寂しさが沸き起こる。 「何かあったの?」 「幸一くん、変わったと思って」 お母さんの言葉に私は答えた。自分でもびっくりするぐらい沈んだ声だった。 「そうね。最近、落ち着いて大人っぽくなったわ。昔はお調子者だったのに」 嬉しそうにお母さんが喋る。それが何だか腹が立つ。 「まだまだ子供だよ。私から見たら、駄目な所もたくさんあるよ」 変にムキになっているのが自分でも分かった。それが余計に腹立たしい。 「幸一くん、きっと立派な男の子になるわ。今のうちにツバをつけときなさいよ」 「変な事言わないでよ」 あの幸一くんが立派な男の子?にあれだけ手間のかかった幸一くんが? 昔から幸一くんは手のかかる男の子だった。 ご両親がお仕事で忙しいせいか、いつも梓ちゃんと二人で家にいた。 小さい時の幸一くんはお兄ちゃんの使命感に溢れていて、甲斐甲斐しく梓ちゃんの世話を焼いていた。 でも、幸一くんは寂しがり屋だった。 無理もない。甘える事の出来るご両親はお仕事で忙しい。 梓ちゃんのいないところでは寂しそうにしていた。泣いていることもあった。 だから私は幸一くんの傍にいてあげた。 寂しいって泣く幸一くんを抱きしめてあげた。 泣きやむまで傍にいてあげた。 そんな幸一くんが立派な男の子になるなんて、想像もできなかった。 376 三つの鎖 外伝 1 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/09(金) 23 47 59 ID 45E5IC2z そう、想像もできなかった。 今は何となく想像できる。できてしまう。 「春子。複雑な気持ちでしょ」 「そんな事ないよ」 嘘。複雑な気持ちだ。 確かに幸一くんは成長しているけど、それは私のためじゃない。 梓ちゃんのため。 今日もそう。傍にいても、幸一くんは私を見ていない。私の事を考えていない。 幸一くんが考えているのは、梓ちゃんの事ばかり。 「梓ちゃんも、幸一くんみたいにいい方向に変わってくれたらいいのにね」 ため息をつくお母さん。 昔から、お母さんは梓ちゃんを心配していた。 気難しくて塞ぎがちな梓ちゃんを、何とかしようと色々してきた。梓ちゃんを私が通っていた合気道の稽古に連れていく事を考えたのもお母さんだ。 「今日もお昼ごはんを一緒に食べたのだけど、すごく不機嫌そうだったわ」 「梓ちゃんとお昼を食べたんだ」 「加原さんのご両親、今日もお仕事でしょ?ずっと家に一人でいるのは気が滅入ると思って」 ちょっと悪い事をしたかもしれない。 梓ちゃん、ずっと一人で家にいたんだ。 でも、いいじゃない。 幸一くんは、梓ちゃんの事を考えていたんだから。 そばにいなくても、幸一くんは梓ちゃんの事を考えている。 そばにいても、幸一くんは私の事を考えていない。 どっちが幸せか、私には分からない。 私の足元でシロがくーんと鳴いた。 下を見ると、シロと目が合う。 シロのつぶらな瞳は何も語らない。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/838.html
506 名前:未来のあなたへ11前編[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 20 51 22 ID c8Jl7Oam その日、榊優香は部活を休んだ。 理由は、昼休みの終わりごろに母親から『お願いしたいことがあるんだけど、今日早目に帰ってきてくれないかしら』という電話を受けたからである。 兄と帰れないことに若干腹も立てた優香だったが、母との仲は良好なので申し出を受けることにした。機嫌がよかったこともある。 最近の彼女はとても充実していた。愛する男を起こし、お弁当を作り、一緒に登校し、昼食を一緒にしながらいちゃつき、部活に打ち込んだ後は手を繋いで下校する。 日々エスカレートする欲求は概ねのところで受け入れられており、相手も満更ではなさそうだった。非常に良い傾向である。 このまま行き着く所まで行けるだろうと、優香にしては珍しく事態を楽観していた。 それはもしかしたら、彼女が人生に希望を抱いた初めてなのかもしれなかった。 榊優香が部活を休んだのは、そんなある日のことである。六月の最後の日、本格的な夏が始まる季節のことだった。 薄く汗をかきながら帰宅した優香を出迎えたのは、リビングでぼんやりとテレビを見る母だった。 娘に気付くと慌てたように冷たい麦茶を入れたが、特に作業中というわけでもなさそうだ。わざわざ呼び出したにしては妙な様子だった。 「ごめんね、優香ちゃん」 「いえ。それでなんですか、母さん」 優香にとって、母親は『呑気な人』というイメージがある。 馬鹿正直で騙されやすく、忘れっぽくて能天気。のんびりした言動だが突発的な事態には感情的。 総じて夫とは正反対の性格としており、母らしい母であり人間らしい人間だった。 二人の子供の内、娘の方を特に可愛がっており。優秀な娘を自慢する姿は凡百の母親と何一つとして変わりはしない。 優香としてもそれらの要素は最愛の男との遺伝を強く感じさせるものであり、概ね好意的に受け入れていた。 母の提案に娘が付き合う形で両者は時々買い物に出かけたり、良く料理を一緒に作ったりしている。問題なく良好な親子関係と言えた。 優香にとっての母親は、徹頭徹尾普通の人間である。それはほとんど合っているが、侮っていないと言えば嘘になる。 「あの……その、ね」 「なんですか」 「優香ちゃんは、その…………健太と付き合ってるの?」 「――――――」 507 名前:未来のあなたへ11前編[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 20 52 09 ID c8Jl7Oam 油断していた。 この数週間は何もかもが上手く進み、天が味方しているのではないのかと楽観していた。 世界を敵に回すと決めた少女は、あらゆる全てに気を許せないはずだった。 けれど彼女は誰もがするように日々を満喫することを、この歳になってようやく許されていた。 しかし、それを油断と称するのは酷だろう。人生で初めて訪れた祭りのようなものだ。いずれ必ず終わる時間に、踊らないのは勿体なさ過ぎる。 それでも、榊優香は即答した。 「付き合う、ですか? よく意味がわからないのですが、時々は遊んでいますよ」 「その……男女として、よ」 「は? 私と兄は正真正銘の兄妹です。そのような関係はまず有り得ないかと思いますし、ついでに言うなら兄は大して魅力的な人間でもありませんよ」 「…………」 優香は母の問いを、馬鹿げているという口調と論理で否定した。 実の兄妹である。兄は大して魅力的な人間ではない。そのどちらも事実だが、恋人には成り得ないというのは彼女が全力を以て否定しようとしている論理だった。とはいえ一般の常識で計るのなら嘘ではない。 至極当たり前に反論された榊母は、杞憂だったと納得するのではなく、更に表情を暗くした。 脇に置いてあった封筒を手繰り寄せ、内容物をテーブルの上にバサバサと広げた。今度こそ完全に、ダイニングの空気が凍り付く。 テーブルの上に広げられたものの大部分は、榊健太の写真だった。色々なところからかき集めてきたのだろう。年代も服装もバラバラだった。ただしそれだけなら問題はない。 問題は、優香はそれらに見覚えがあることだった、見覚えのないわけがない。 それらの写真をかき集めてきたのは、他でもない榊優香自身なのだから! 他にも封筒の中から出てきたのは箱状の盗聴器の写真。 それから以前に作成した行動計画書と、最悪なことに(捨てるつもりだった)収集物を納めた写真もある。 それらの現物は全て、優香の部屋で厳重に隠匿、保管してあったものだ。もちろん部屋の扉を初め、全てに錠をかけて。つまり 「あの人がね、優香ちゃんの部屋を破って、探してきたの。そういうことをしたのは謝るわ。けど、けどね」 「…………」 「優香ちゃん。貴女は本当に、健太のことが好きなの……?」 榊母の口元が引きつっている。信じられなく、信じたくもない事実を前にして。それから、はっきりとした嫌悪感によって。 両親に自分の禁忌が知られる。それは彼女のような人間にとって、最大級の破滅ともいえる事態だった。 優香は少しの間目を閉じて、全てをひっくるめて思索した。この何週間の充実感を、愛する人間と共に培った暖かさを。 それらに一体何の意味があったのか、死を前にするような人間が考えることを整理していた。 一つだけ確かなことは 今、それが、終わったということだ。 そうして榊優香の地獄が口を開ける。否。彼女は本来いるべき場所に戻ってきただけだった。 「父さんは……どうしたんですか?」 「いないわ。あの人は、その……すぐ、貴方達を引き離した方が良いって言うんだけど……」 そのための手段として離婚という結論から話し出した榊父は、コーヒーまみれになった上に盛大な平手を食らった。 端から見れば痴情の縺れだったことだろう。 榊母としてはそんな極論はくそくらえであり、それがこの単独無断会見に繋がっているのだった。 話せばわかるという、家族に対する信頼が彼女の根底にはある。 「ね、優香ちゃん。そんなの止めよう? そうすればあの人も私も、これ以上は何も言わないわ。大体、兄妹を好きになるなんておかしなことなのよ?」 「そうですね」 野良猫を撫でるような説得に、答えた優香の声音は思いの外平静だった。 目を開けた彼女が母に向ける眼差しも、声音も、表情も、普段のものと何一つとして変わりない。 優香と榊母は、それなりに仲の良い母娘だった。たまには一緒に買い物もするし、良く一緒に食事も作る。 母は娘を特別可愛がったし、娘もそれなりの親しみを母親に感じていた。 その普段通りの態度で、優香は 「ところで母さん。常々思っていたのですが。貴女は呑気な人ですね」 「え?」 攻撃に移った。 508 名前:未来のあなたへ11前編[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 20 52 37 ID c8Jl7Oam 優香がやったのは。脚を伸ばして母の座る椅子の足を甲で引っかけ、テーブルの端を掴んで思い切り前に押しつけることだった。 ズズズズッとテーブルと床がこすれて音を立てる。 対面の椅子に座る榊母は当然胸をテーブルに押しつけられ、呼吸を圧迫しながら下がろうとする。 しかし椅子は優香によって引っかけられており、移動しようとする上半身と留まろうとする下半身でモーメントが発生。 ぐらりと椅子ごと榊母は転倒した。 「きゃっ………あぐっ!」 椅子の凹凸で背中を強く打ち付けて榊母が悲鳴を上げる。 テーブルの下に転倒した榊母に向かって、優香は今度は立ち上がりながらテーブルを傾けた。 木製の中型テーブルである。重量は人間が一人でなんとか持ち上げられる程度。 とはいえそれを女子の身で自由に動かせるのは、優香が普段から体を鍛えている賜物だった。 引きつけられながら片方を持ち上げることで、テーブルが垂直に立てられようとする。 優香は引きつける腕に込める力で、天板の角度を調整した。狙うは榊母の首の位置。ギロチンのように、天板が床に立とうとする。 死の予感が榊母の脳裏を支配した。 「ひっ!」 「おや」 小さく悲鳴を上げながら、転がることでテーブルのギロチンから榊母が逃れる。 がたんとテーブルが床に立ち、勢い余って向こう側にゆっくりと倒れていく。 意外と機敏に動いた母親に感心しながら、優香はテーブルから手を離して、転がる体に対して無造作に蹴りを入れた。 脇腹に入る。柔らかい感触。 呻き声を漏らしながら、榊母は更に横転して優香に対し膝立ちになった。右の脇腹を左手で押さえている。 その表情は、痛みよりも驚愕が充ち満ちていた。 ばたんと、ひどく大きな音を立ててテーブルが床に倒れる。 「ごほっ……ゆ、優香ちゃん、なんで……!?」 「意外と痛みには強いんですね。動きも実践慣れたものですし、昔なにかやっていましたか? 私と兄の格闘趣味は貴女の影響だったのかもしれませんね」 対して優香は全く平静な表情だった。怒っているわけでも、冷酷なわけですらない。普段、娘が母に声をかける時の調子そのままだった。 ポシェットからスタンガンを取り出す様も自然なものだ。 彼女は別に、キレているわけでもハイになっているわけでもない。普段の榊優香そのままだった。 普段のままで、それなりに親しみを保つ母を切り捨てるのが榊優香という人間なのだ。彼女の中の天秤はとうの昔に定まっている。 相手が膝立ちと混乱から立ち直る前に、優香が素早く足を踏み出した。両者の距離は近い。それだけで間合いに入る。 同時に肩に向けてスタンガンを突き出す。それを、榊母は後転して間合いから逃れた。 追うように足を進める優香。狭いダイニングだ、逃げ場はない。すぐに榊母の背中が壁に付き――――その手には、途中で拾った麦茶の容器があった。 「っ」 「ふうっ!」 肩口を狙ったスタンガンの一撃を、プラスチックの容器で弾く。 盾を手にした榊母だが、そんなものはお世辞にも有効な近接武器とは言えない。しかし彼女の目的は別にあった。 蓋を開いてその中身を、二撃目を繰り出そうとしていた娘にぶちまける。ばしゃりと、麦茶がスタンガンを握る腕にまともにかかった。 高度差で顔を狙えなかった、のではない。あえて腕を狙ったのだ。 不純物の混じった水は導電体である。スイッチを入れていたなら、スタンガンの電撃が麦茶を伝って腕に感電する。 この状況下で機転を効かせた、榊母渾身の一手だった。 「惜しい」 「っ!?」 そして優香はスイッチを入れていなかった。 正確には、母が麦茶の容器を手にした瞬間に狙いを看破して切っていた。この期に及んで平静な、優香の判断力の勝利である。 スタンガンを囮にして、先程と同じ箇所に蹴りを入れる。兄のように正式に打撃を習ったわけではない、いわゆる素人の蹴りである。 それでもまともに入れば効く。「あぐっ」という嗚咽と共にうずくまった榊母を、またいで優香は後ろに回った。 母の背中に覆い被さりながら、両腕を首に回して手を組む。スリーパーホールド、あるいは裸締めが完全に極まった。 「……! ……!」 じたばたと魚のように暴れだした母親の、胴体に両足を回してロックする。十数秒で彼女は意識を失い、ぐったりと娘に寄りかかった。 脳への血流を阻害されて意識が落ちたのだ。 母親が完全に意識を失っているのを確認してから、優香は立ち上がって時計を確認した。 兄が帰ってくるまではもう少しあるが、証拠隠滅と人間一人の処理を考えるとあまり時間はない。 平静な思考のまま、彼女は作業に取りかかろうとして ふと、立ち止まって呟いた。 「終わり、か……」 509 名前:未来のあなたへ11前編[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 20 53 53 ID c8Jl7Oam 今日の優香は部活を休んだらしい。 そのことと一緒に帰れないことを謝るメールが、昼休みの終わりごろに入っていた。 妹が部活を休むなんて珍しい。なんだかんだ言ってあいつは柔道が好きだと思う。 そういう俺も、ふとした理由で始めたけれど空手は好きだ。今日も部活に打ち込んで、日が暮れかけた道を今日は一人で帰る。 ここしばらくは優香と一緒に帰っていた。それも手を繋いで帰ることが多かったから、少し寂しい……いや、正直かなり寂しい。 女の子と手を繋いで帰るだなんて長年の憧れだ。たとえそれが妹だとしても、柔らかい手の感触はドキドキした。 考えてみればおかしな話だなあと、てくてくと歩きながら考える。 普通、妹の手を握ったってドキドキなんてしないと思う。 俺が小さい女の子や母さんに触ってもドキドキしないのと同じことだ。家族なんだから。 だけど俺は優香の手を握るとドキドキする。それはつまり、妹のことを女の子として意識しているってことだ。 ……それって人間としてどうなんだろうって思う。 けど、事実は変わらない。どうやっても優香は俺にとって妹であり、同時に女の子なんだ。 そうしてきっと優香にとっても、俺は兄であり男であるんだろうと、最近気付き始めていた。 そうした上で、優香はどちらの俺も想ってくれている。 俺は…… 考えているうちに、自宅に着く。お腹がぺこぺこだ。家に入りながら、今日の晩御飯は何だろうかと大きく鼻で息を吸う。 「ただいまー……あれ?」 匂いがしない。カレーの香ばしい匂いや、味噌汁のだしの匂いや、焼き魚の焦げた匂い。そういうものが何もないんだ。 夕食の準備はできていない。そう思うしかなかった。 けど、この時間なら母さんは夕食を用意してくれているはずだし、両親が外食に行く日じゃないはずだ。それに優香はもう帰ってきているはず。 不思議に思って声をかけながら台所を覗く。 「おーい、かあさーん、ゆうかー……あ、いるじゃん」 「お帰りなさい、兄さん」 ダイニングでは妹が一人、テーブルにぽつんと肘を付けて座っていた。 何かを考えていたらしく、じっと下を向いていたけど俺の呼びかけに答えて顔を上げる。 テーブルの上には夕食も何も用意されていなくて、やけに綺麗に拭かれていた。 ちなみに優香は飾り気のない水色のワンピースに着替えている。いつものポシェットは身につけていない。 「母は出かけたみたいですよ。なんでも知人に不幸があったとかで、父もそちらに行くそうです」 あれ、母さんの車はなかっただろうか。後でちらりと確認してみると、ガレージはシャッターが閉まっていた。 一旦車を出した後に閉めたんだろう。いつもは開けっ放しにしてるくせに珍しい。 「ああ、そうなのか。じゃあ御飯どうする?」 「何か作ろうかと思いましたが、ちょうど食材もなかったので何か食べに行きましょう。食費も貰っています」 ひらりと優香が二本指で五千円札を取り出した。おお、母さん太っ腹だなあ。 「それじゃどっか食べに行くか。優香はどこがいい?」 「どこでもいいです」 どこでもいいということなので夕食はハンバーガーになった。俺はビッグマックで妹はチキンタッタセット。味は普通。 優香は少し、暗い雰囲気で。俺も釣られて黙々と食べるだけだった。普段から無口な奴ではあるんだけど、なんだろう。 何かを思い詰めているようだった。 そうして適当に夕食を済ませた後、家に帰る途中。 道端で、服の袖を引かれた。 「ん、どした優香」 「少し、そこで話しませんか」 優香が示したのは、帰り道の横にある小さな公園だった。 榊家ガレージ 「ん~~! んん~! ん~んん~!」 「ただいま」 「んん~!!」 「優香か?」 「(こくこく)」 「率直に言うとあれだ、君は呑気だったな」 「んんんー! んんー! んー!」 「幸いなのは生死のやり取りを行うまでに彼女を追い詰めてはいなかったことか。ところで二人は?」 「んんんん~~!」 「ああ、すまない。猿轡をされたままでは明瞭に発言できないな。外そう」 「ぷはっ……いいから早く解いてって言ってるのよ馬鹿旦那!!」 510 名前:未来のあなたへ11前編[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 20 55 10 ID c8Jl7Oam 夏夜の公園は静かだった。 銀灯の周りに虫がたかっているけれど、それ以外に音はない。虫が鳴くような茂みが少ないからだろうか。 月明かりに照らされて、遊具と柵がぽつりぽつりと暗闇に浮かび上がっている。俺たちはベンチに腰掛けた。 この前、優香に膝枕をしてもらった場所だ。 周囲に人気はない。隣にいる人の気配を除いて。 優香は俺にぴったりと肩を寄せるようにして座った。その距離は友人よりも家族よりも近い。 「……」 沈黙。 普段なら俺の方から軽口の一つも叩くところだけど、今の優香は何かをひどく思い詰めているようだった。 とはいえ、優香は何かを思い詰めることが多い。明晰な頭脳と責任感の強さがそうさせるんだろう。 それからもちろん、不道徳な想いをずっと抱えてきたことも、妹の自立をずっと促してきたのだと思う。 優香のことを思う。 この数週間で、優香はずっと俺のことを好きだったのだと言ってくれた。 その言葉を、今までずっと俺の知っていた優香に重ね合わせてみる。 勤勉で、文武両道で、冷静で、可愛いというよりも美人で、料理が上手くて、努力家で、年齢の割にしっかりし過ぎるほどしっかりしていて。 けれどそれは必然だった。優香は誰にも相談できない想いをずっと抱えていたのだから、全て自分で解決できるような人間になったのだ。 ぴったり、合う。優香に対して燻っていた、長年の疑問が氷解した気分だった。 けれど入れ替わりに、沸きあがってくる疑問がある。 どうして俺なんだろう、ということだ。 「……」 はっきり言えば俺は大した人間じゃない。 運動は何とか優香と同レベルだけど、勉強は完全に苦手な部類に入る。顔だって大雑把な作りだし、髪質は針金みたいにつんつんだ。 モテたことなんて生まれてこの方一度もない。 家事も母親や妹に任せきりで、自立しているとはとても言えないのんべんだらりとした性格をしている。 子供っぽいと言われるし、実際妹にも言われまくっていた。 どうして優香は、俺だったんだろう。優香なら他に、いくらでもよい男を選ぶことができるはずなのに。 俺は優香に釣り合うような人間じゃない。 それがどうしても納得できなかった。 妹が口を開く。 「……兄さん」 「うん」 「答えを」 「え……」 「答えを……ください」 優香が口にしたそれは 数週間前に約束したことだった。 『機会を下さい。私が努力する機会を。兄さんを振り向かせる機会を』 『私は今まで妹だった。兄さんの中で妹だったんです。けれどそれは不公平じゃないですか。私はずっと兄さんが好きだったのに、そんな基準で決められてはたまらない』 『だからせめて機会を下さい。女として意識してくれとは言いません。女として意識してくれるように努力します。選ぶのならば、せめてそれからにしてくれませんか』 妹ではなく女として見てもらうために 家族ではなく恋愛対象としてみてもらうために、努力する期間を要請し 朝甘えながら起こして、お弁当を作って、一緒に登校して、一緒にお昼を食べて、手を繋いで帰って。 そうした、まるでお互いが恋人のように振舞う日々が、今この瞬間に終わったのだということだった。 「え……今、なのか?」 「今、です」 わずかに優香を見下ろして、戸惑った声を上げる俺に わずかに俺を見上げて、じっと強い視線をぶつけてくる優香。 その目はこの上もなく真剣だった。 夜の公園で、ベンチで座り隣り合って、じっと見詰め合う。 ……俺はなんとなく、こうした日々がずっと続くように思っていた。 優香との新しい毎日が日常の一部に溶け込んでいって、同棲したカップルのように何もかもが今更になってから、なんとなく俺の方から切り出す、のだと予感していた。 実際そんな風になりかけていたと思う。優香も、そんな流れを望んでいたように思う。 だって優香はとてもとても楽しそうだったから。 遊園地で目一杯遊ぶ子供のように、今までずっと憧れていたことをついに満喫できる。そんな嬉しさに満ちていたのだ。 だから俺は、そんな毎日がずっと――――続くと けれどそれは幻想だったのだろうか。ただの思い込みだったのだろうか。 考えてみれば、兄妹で恋愛ごっこだなんてそれだけで歪な関係だ。ずっと続くわけがない。 だけど俺は、優香に答えるための、何の準備もしていなかった。 だから俺は、優香に答えるための、最後の疑問を。 511 名前:未来のあなたへ11前編[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 20 55 59 ID c8Jl7Oam 「優香は……なんで俺なんだ?」 しばしの沈黙。 夏夜の公園で優香と寄り添い、銀灯の下の人気がないベンチで、お互いにじっと視線を重ねる。 優香は少し、何かを思い返すように目を閉じて。ポツリと呟いた。 「私は昔から……感情の起伏の少ない人間でした」 他の人が怒ったり泣いたりするような場面でも「ふうん」と流すだけだったこと。 それは私自分自身に危害が及んでも同じことで、転んでも叩かれても怒られても、泣いた覚えはないこと。 物事に対する態度も同じで、定められた水準を淡々とこなしていくだけだったこと。 そこには達成感などなく、挫折感もありはしないこと。 喜怒哀楽、快楽と苦痛、それら全ては自分にとって動機足りえないこと。 多分自分は鈍感なのだということ。 生まれつき痛みに強いということは、けして誇れるようなものではなく。他人の痛みも実感できない人間は、容易く他人を傷つけること。 それでも自分が曲がりなりにも、不適合者として社会から逸脱しないでいられるのは兄のおかげだということ。 すぐに泣いて、すぐに怒って、すぐに笑う、兄のおかげだということ。 自分の前で、物事に対して人並みの反応をする兄がいたからこそ、自分は人並みの基準というものを学ぶことができたこと。 自分の前に、誰に対しても気を使う兄がいたからこそ、自分は痛みと倫理の価値というものを知ることができたこと。 そして何より。兄がいるからこそ、自分はこの場所にいることを望んでいること。 今、自分が、友達付き合いをするのも、勉強をするのも、学校に通うのも、息をするのも、生きているのも、全て。 自分は、自身の命自体には価値など感じていない。死に対する恐怖も、無視できる大きさにすぎない。 生よりも死を選ぶべきだと理性が判断すれば、躊躇なく実行できること。 自分が生き続けているのは、ここに兄がいるからだということ。 兄は普通の人だから、自分は物心ついてからずっと、普通の人間のフリを続けていること。 比翼連理。 「私は、私に欠けている全てを持った兄を想うことで……ようやく普通の人間になれるのだと信じています」 そうして 優香の、長い長い身の上話が終わった。まるで神様に罪を告白するように、その姿は真摯だった。 俺は 「…………」 俺は、言葉さえなかった。 優香は命を懸けている、と。そのことが何より雄弁に伝わってきてしまって。 俺のように、生きているから恋をするのではない。まるで逆だ。恋をしているから生きている。 恐ろしく鋭く、そして脆い刃のような生き方。俺の中で榊優香という人間が完全に一致した。 そして同時に抱いたのは――――恐怖、だった。 もしも俺が拒絶したら、優香はどうなってしまうのだろう。 優香は俺を選んでいるわけですらない。人生を生きる道標として、俺を組み込んでしまっている。 もしも俺が拒絶したら、優香は根元から壊れてしまうのではないのだろうか。 自分の行動に人間一人の命が左右されることに対する恐怖。 それが、俺が真っ先に抱いた感情だった。 「兄さん」 そうして、がくんと 優香が、俺の胸元に、両手ですがりついた。 俺の着たシャツが重みで絞られる。胸に当てられた優香の頭は下を向いて表情が見えない。 そのまま嗚咽するように、俺の妹は懇願した。 512 名前:未来のあなたへ11前編[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 20 56 37 ID c8Jl7Oam 「兄さん、好きです。好きです、兄さん。妹なのに好きになってごめんなさい。 けれどどうか付き合ってください。貴方が私を恋人にしてくれるなら、私はきっと全てを赦して生きていける。 こんな人間に生まれたことも、貴方の妹に生まれたことも、全て赦して生きていける。 貴方を好きになってしまった罪は、貴方を幸せにすることで償います。 ですからどうか、どうか。 兄さん、好きです、付き合ってください」 ………… ぼたり、ぼたりと水滴が俺の膝を濡らした。じんわりと布地を通して染み込んでくるそれは、間違いなく妹の涙だった。 優香は全身全霊で縋り付いていた。 もしも俺が体を外したのなら、そのまま倒れて地面にぶつかり壊れてしまいそうなほどに。 俺は…… 俺は…… 「――――ああ、わかった」 頷、いた。 「あ」 「あ、あ、あああああああああ」 「ああ、あ、ああ。にいさん」 「にいさん、にいさん――――」 優香が胸元にすがりついたまま、顔を上げる。その切れ長の瞳からは、ぼろぼろと切れ目なく涙が流れていた。 顔をくしゃくしゃにした優香の表情なんて、俺ははじめて見た。きっと優香自身を含めて、他に見た奴はいないと思う。 そのまま、魚が食いつくように優香の背が伸びる。唇に暖かい感触。 「んっ――――」 「――――!」 俺と優香は唇を合わせていた。驚いた俺の顔が、優香の瞳に映っている。そのまま妹は感極まったように瞳を閉じる。 ファーストキスはハンバーガーの味がした。 優香もきっと同じだろう。 俺もまたじっと目を閉じながら、これでいいんだと自分を言い聞かせる。 こうしてキスを交わすことで俺は確かにドキドキしている。間違いなく優香を女としても見ている。ならいいじゃないか、と。 もしも俺がここで首を振っていたら、きっと優香は壊れていた。優香を守るためにはこれしかなかった。少なくとも、今は。 だから――――優香のことが、好きじゃなくても これでいいんだと、自分に言い聞かせた。 513 名前:未来のあなたへ11前編[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 20 57 17 ID c8Jl7Oam 「んっ!」 俺が物思いに耽っていると、優香の動きが変化した。 すごい力で胸元を引き込まれ、同時に優香が首をひねった。お互いの顔が十字に交差し、こじ開けられた粘膜が更に広い面積で滑りあう。 ドラマで見る、熱烈な恋人同士の口付けの構図そのままだった。優香の鼻息が頬に当たる。 更に、ぬるりと前歯をナメクジのようなものがぬめった。優香の舌が、俺の前歯をなめているのだ。 俺はその瞬間、驚きのあまり優香の肩を突き飛ばしてしまった。吸盤が離れるような抵抗と共に、お互いの唇が離れる。 「ゆ、ゆゆゆゆゆ優香!? な、なにしてるんだっ!」 「兄さんの唾液……美味しいです」 ぺろりと優香が舌なめずりをする。その瞳はさっきとは違う意味で潤み、頬は薄く紅潮している。 欲情という、そんな表現がぴったりだった。もちろんそんな妹の姿を見るのは初めてだ。 ぜーはーと、止めていた息を再開する俺の手を、優香が掴んで恋人繋ぎをした。熱い。体温ですら上がっている。 そうしてとんでもないことを口走った。 「兄さん。ホテルに行きましょう」 「ぶっ!?」 「駅近くの繁華街にそんなところがいくつもあります。お金は私が持ちます。行きましょう、兄さん」 「ちょ、ちょちょちょちょ、ちょっと待てって優香!」 立ち上がってぐいぐいと俺を引っ張る優香に必死で抵抗する。何だこの展開は。 「どうしてですか。私と兄さんは恋人同士になったんでしょう。それなら、然るべき行為でしょう」 もちろん俺だってそういう行為に興味がないわけじゃない。でも告白が成就してすぐなんて、あまりに急ぎすぎじゃないか。 「そ、そういうのは、もっとこう、時間をかけてしていけばいいだろ? さっきの今なんて早すぎるし、もっと自分を大事にしなさい!」 「……でも、私は兄さんに迷惑をかけてばかりだから、何か恩返しをしたいんです。私の体なら自由に使っても良いし、それを私も望んでいますから」 「馬鹿、だからもっと自分を大事にしろって。時間はいくらでもあるんだからさ」 「でも……」 それからも優香はなんだかんだとごねたが、不承不承といった感じで俺の説得に折れた。やれやれだ。 俺も少しは……ごめん、かなり残念だったけど(どうせ童貞だよ)優香のことを大事にしたかったし、何より自分の気持ちが固まる時間を持ちたかった。 俺は優香のことを女の子として意識はしているけれど、まだ好きかどうかわからない。少なくとも今は優香を拒絶できなかっただけだ。 せめて自分の気持ちがはっきり優香に向いてると意識してからにしたかった。 そして、それはあまり難しいことではないという予感もあった。なにしろ優香の可愛さは俺が誰より知っているのだから。 「兄さん、私のことが好きだと……言ってください」 「……ああ、優香のことが好きだよ」 「ああ、ああ、兄さん……んっ」 優香が俺を見上げて、目を閉じる。今度は俺から、愛の囁きと共に妹と唇を重ねた。 きっといつかは上手く行くのだと思っていた。 水が流れていくように、優香との毎日はこの数週間のように続いていき、いつしか俺の気持ちもはっきり固まるのだと。 もしも体を重ねるのなら、そうなってからで十分だと。俺はそんな風に考えていた。 けれど 二人で手を繋いで、家に帰ると。出かけているはずの両親が、険しい雰囲気で待っていた。
https://w.atwiki.jp/srwoggaidenkouryaku/pages/141.html
第32話 『阿修羅の頂天(前編)』 勝利条件 敵の全滅 敗北条件 1.味方母艦の撃墜 2.フォルカの撃墜 熟練度獲得条件 2ターン以内に敵ユニットを12機以上撃墜する。 ステージデータ 初期味方 ヤルダバオト(フォルカ)/ハガネ(テツヤ)/ヒリュウ改(レフィーナ)+選択出撃15機 初期敵 ボフリィ(修羅兵)/グリモア(修羅兵)/フラウス(修羅兵) 敵増援 3PP マルディクト(アルティス) 敵データ 初期 機体名 パイロット Lv HP 最大射程(P) 獲得PP 獲得資金 数 E N H 撃破アイテム 備考 ボフリィ 修羅兵 36 7150/7800/8450 4(4) 3 1600 8 8 8 ---------- ---- グリモア 修羅兵 36 8470/9240/10010 6(3) 3 1600 8 8 8 気力↑ ---- フラウス 修羅兵 36 9680/10560/11400 4(4) 4 1800 8 8 8 ---------- ---- 増援1 機体名 パイロット Lv HP 最大射程(P) 獲得PP 獲得資金 数 E N H 撃破アイテム 備考 マルディクト アルティス 39 240000 13(7) 28 20000 1 1 1 移動後攻撃可能 分身/HP回復(小)/EN回復(大)/フルブロック/※初期気力150 戦闘前会話 味方 敵 フォルカ アルティス 2回発生 コウタ アルティス ショウコと会話 レーツェル アルティス 敵撤退情報 マルディクトを撃破すると残り全敵撤退 攻略アドバイス 初期配置の敵は前話に比べて更に強化(難E 2/N 4/H 6段階改造)されている。フラウスとグリモアは難度によっては装甲が2000を超えている為、雑魚だと思って侮る無かれ。 (ハードの場合)最奥にいるグリモア×4とフラウス×4は2EPまで動かない。そのため、熟練度獲得のためには左右のどちらか一方のボフリィにも戦力を割いたほうが恐らく楽。加速と集中か必中を持っていて強力な反撃の出来るユニットがお勧め(キョウスケ、ギリアムなど)。 どうしても熟練度を獲得したいなら、フォルカあたりともう一人適当な切り込み役に激励をかけ、ツインを組ませて特攻させるのが手早い。フォルカは気合をかけて正面突破すると反撃で4,5機落として楽にしてくれる。 左右のボフリィは移動力9のツインをそれぞれ1組配置して1EPに全部落としてもらえれば楽でしょう。中央合流は2PPから再動なり覚醒なりでどうぞ。 いずれにせよ熟練度に拘りすぎて精神や弾薬ENを消耗しすぎるとアルティス戦が辛いので、きっぱりと諦めるのもあり。 3PPにマルディクト(気力150)出現イベント。 位置は北の最奥辺りなので準備をしっかりしてから挑むこと。壁の裏側が死角になっているため、突出さえしなければ余裕を持って回復できる。 マルディクトは装甲はあまり固くない上、アルティスにはガード技能も無いので、純粋な防御面で言えば前面のアンドラスよりは撃墜しやすい。が、分身持ちで必中or直撃が毎回必要な上、攻撃力も激烈。ボスシフトには戦艦の指揮官技能も活かすこと。フルブロック持ちなので特殊武器を撃ち込む際は直撃を忘れずに。Ex-H時は、伊達に修羅の将軍ではないことを身を以って知らされる。機体をフル改造してようがバリアを張ってようが、味方機を一撃で葬り去る攻撃を繰り出してくる。HPが10000を越える機体でも、油断せずに「不屈」か「ひらめき」を使用すること。 SPモードでプレイしている場合は、ここで「気力↑」の特殊弾素材を確実に入手すること。能力ダウンLv3の特殊弾を作ることが出来るようになるので、今後は更に有利になる。 第31話『轟き、覇壊せし者』 第33話『阿修羅の頂天(後編)』
https://w.atwiki.jp/8oregon/pages/65.html
メニュー -トップページ-対戦結果-猛者リスト-オレゴン杯-オレゴンメンバーズ-オレゴン史-オレゴンレポート 第21章 決着! 前編 7回の裏 マハガドチョンの攻撃 スコア3―2 オレゴンがリード 一死満塁 バッター稲葉 カウント2―3 フルカウント 高井が投じた球は フォークボール まさにスローモーションだった ゆらゆらと揺れながら放たれたボールは ゆっくりとベース上へ向かっている気がした そして マハガドチョンが選んだ手段は… なんと見送り 取った! オレゴンはそう確信した しかし、次の瞬間 白球は砂煙を上げた ボール!!! 「ウォーーーー!!!」 場内は歓声で沸いた それもそうだろう この場面 汗の高井 汗の高井のフォークを誰が見送るであろうことか その結果四球押し出し 3―3 同点!!! なおも、一死満塁 もう後がないオレゴン 完璧にオレゴンは追い込まれた 一打サヨナラのピンチ 誰もがこのまま一気にマハガドチョンが決めると思った が、しかし 開き直ったオレゴンは、思い切り良く勝負をしかけたのだ なんと、ここで 後続の打者を併殺にしとめたのだった まさかの8回突入 互いに7回で決まると思っていただけに マハガドチョンもタンクを使いきってしまい リリーフ投入を余儀なくされたのだ ここから乱打戦! と、誰もが思いきや ここは決勝の舞台 簡単には打たせてもらえないのだ。 ダルビッシュから佐竹へとリリーフしたことにより 緩急にハマってしまったのだ。 ダルビッシュの球道になれてからの、左の軟投の緩急でタイミングをずらされ 見事に凡打の山を築いた。 その裏のマハガドチョンの攻撃 7回から上がった高井を続投させ マハガドチョンの猛攻を防ぐことに成功し とうとう両者は最終回に突入したのだ 9回表 オレゴンの攻撃 この回点を取れなければ、スコアでの優勝は無くなる。 長い試合も最終回 負けようが勝とうが、この試合で全てが決まる 勝ちたい! 強い思いはあった しかしマハガドチョンの繰り出した佐竹をどうにも捕らえきることができないの だ。 狙い球が絞り切れずに、ワンアウト、ツーアウトと追い込まれ そして 点を取れずに終わってしまったのだった。 9回裏 マハガドチョンの攻撃 一本でもHRを打たれれば終わり 一本でもタイムリーを打たれれば終わり そんな追い込まれた中 オレゴンは気迫を見せた! 投手は、高井がバテ 最後の砦となった、三橋を投入した 球威はないが、変化量はWP40辺りの投手と遜色なし! 怖いのはHRだ ヒット、アウト、ヒット、アウトと続き 二死、一、二塁 バッターは高橋由伸 ドクドク ドクドク ドクドク メニュー -トップページ-対戦結果-猛者リスト-オレゴン杯-オレゴンメンバーズ-オレゴン史-オレゴンレポート