約 50,299 件
https://w.atwiki.jp/zsgt/pages/87.html
エキスプレスツールバーの組込方法(前編) 階段最上部の破断線等が記入可能となる機能を追加、先ずはコントロールパネルを開きます(参考 ボーナスツール、LTには付属しない模様) 変更と削除をクリック 暫く待ちます 機能を追加/削除(A)をクリック 機能を追加/削除ダイアログが表示されます Express Toolsをチェック 次へボタンをクリック 機能追加に際しacad.msiを検索するので配布メディアを事前に挿入し次へボタンをクリック 暫く待ちます
https://w.atwiki.jp/jyakiganmatome/pages/711.html
1.「天」の双子 前編 それは―――白薔薇が施設から出され、最初の「眼の大戦」と呼ばれる大きな戦いの少し前の話。 ―――とあるJ3実験施設―――― 「籠」のように作られた室内に、金属がぶつかり合う音や悲鳴が響く 「や、やめてっ……!」 壁際に追い詰められた少女は、手に持っていた武器を放し 眼前の『友達』に命乞いをしている 「だーめ。」 その金髪の『友達』は、一言放ってから容赦なくクローガントレットで少女を貫く 部屋から悲鳴が無くなった。 「お兄ちゃん、もう終わり?」 「終わったよ。 5924。」 『お兄ちゃん』と呼ばれた少年は、金髪の少女を「番号」で呼ぶ。 お互いの顔はとても似ており、髪の色以外はほぼ同じ外観をしている。 双子と呼ばれる類のものだ ――ここの子供に名前は無く、全てが番号で呼ばれている そもそも、何故子供達が籠で殺しあっているのか 答えは簡単だ。 『最後まで生きていたら、今日は寝ることができる』 籠の外には研究者のような服を着た男が数人、何やら頷いて二人を見ている 「このケージでは、No.5924とNo.5923が一番ですね」 「二人でコンビを組んで戦う実験体は多くいるが、コレは異常な強さだな…」 科学者風の男達は血の匂いのする籠を見ながら言った 今日も―――生きている そんなことを思いながら、双子の実験体は籠から出された 血のついた服を脱いでお互いの武器を外し合う姿は異様でしかなかった――
https://w.atwiki.jp/srpgbr/pages/327.html
side.1 XV.『Devil』~堕落と覚醒~ ――――痛ぇッ。 目が覚めた途端にこれだ。 焼け付くような痛みが嫌でも覚醒を促す。 それはまるで幽鬼のようにゆらゆらと揺れる様に起き上がる。 (考えてみりゃ、全身ボロボロだから仕方ねぇか) 己の腕、足、胸と順を追って確認し、最後に自分の左目に手を当てる。 突かれ、抉れた傷口が言葉よりもハッキリと状態を認識させる。 (…こりゃあ、使い物にはならねぇな) 左目は完全に失明した事を自覚し、ヴァイス・ボゼックは自嘲気味に嗤う。 「ハッ、俺もあの暗黒騎士殿と見た目だけなら一緒になれたって事か。 そりゃ、光栄なこったッ!」 苛立ち紛れに手近な小物を壁に叩きつける。 興奮冷めやらぬ意識とは裏腹に肉体の方はそのような行為ですら苦痛を伴い、 荒い息をつきながら彼は呻く。 「糞ッ!! あの糞餓鬼も、腐れ雑魚野郎も、あの糞女も全部いけすかねぇッ!!」 悪態をつきながらも痛みを堪えながら治療に使えそうなものを探しだす。 度数の高そうな酒で傷口を消毒し、傷ついた己の体に包帯を巻きつけていく。 ただでさえ激痛を伴う、その応急処置でさえ彼にとっては 己の恨みを忘れぬ為に体に刻み付けるための行為でしか過ぎず、 彼は己の左目に浴びせる様に酒をかける。 「ギャァアァグゥゥアァッ!! …痛ぇッ…畜生、これもそれも全部あいつらの所為で… 殺す、全員ぶち殺してやるッ!」 彼にとってのアイデンティティーは最早、他人への暴力衝動で成り立っている。 貶める、辱める、痛めつける、それらの考えが脳内を駆け巡り、 既に欠片も残されてはいない良識を更に蹂躙していく。 最後に左目を庇う様に包帯を巻き、幽鬼はむくりと起き上がる。 歩くたびに軋む体、全身を襲う苦痛。 それらを脳内麻薬が凌駕していく。 「最ッ低の気分だ、どっかで憂さを晴らさねぇとな…」 扉に身を寄せ、急かす脳と違い慎重に扉を開けて外の様子を窺う。 とても静かとは言い難い状況のようだ。 遠くで何らかの獣の咆哮が響いている。 近場でも建物が一棟倒壊しており、 今の状態では近づく気になれないのが正直な所だ。 怒りに支配されていても状況を客観的に判断し、 妥当な行動を取る事が出来る。 それが彼の長所であり、本人の気づかぬままに 彼を『小物』たらしめている所以である。 周囲を警戒し、身を隠しながら移動する そんな彼の傍を誰かが駆け抜けていった。 倒壊した建物とは別な建物から飛び出した陰はそのまま咆哮が聞こえた方に駆けていく。 見た所、相手は一人であり武器の類を身に着けていない。 舌なめずりをして後を追おうとした時に、 また別な影が同じ様に同じ場所を目指して飛び出して行くのが見えた。 これまた武器の類を身に着けてはいない。 (馬鹿が一匹、二匹…見たことはねぇが上々だ) 気づかれぬ様にゆっくりと後をつける事にする。 そんな彼の前を、 「待つッス、待つッス、待って欲しいッス~~!!」 空気の読めない怪生物が慌しく通り過ぎていった。 「……何だぁ、ありゃあ?」 side.2 XVI.『Tower』~訪れる崩壊~ 「…馬鹿だぜ、あんた」 横たえられている、最早、返事を返す事はないハミルトンにホームズは静かに語りかける。 ホームズによって腕を組みなおされたその穏やかな表情からは未練や悔恨といったものは見受けられず、 それが余計にホームズの胸を締め付ける。 「あんたらみたいな騎士道とかそういうのは俺にはわからねぇんだよ… 死んだら、元も子もねぇのによ」 ハミルトンはホームズに対して希望を見た。 だからこそ自分を礎にして、犠牲の道を切り開いたのだ。 理屈は分かっている。 認めたくないのはその理不尽さだ。 元々、ホームズは彼らの様な考え方が気に入らなかったからこそ、 水軍の将という地位さえ保証されていたものを全て投げ出して海賊に戻ったのだから。 忠義という名の自己犠牲。 大儀という名の略奪。 正義という名の下に正当化されるそれらの傲慢さ。 騎士という者には自分を省みるという事が出来ないのかと彼は考えていた。 「そんなもんで残された方はたまったもんじゃねぇんだぞ…」 だが、その覚悟を無駄にしてはいけない事も理解している。 調理場にあった大型の肉きり包丁を握り締めて、 首元に狙いを定め、振り上げる。 だが、それを振り下ろす事も無くその動きは途中で止まり、 そして、力なく座り込みハミルトンの死体を見つめる。 先程からこれの繰り返しである。 「どうすんスかぁ~? さっきからそればっかじゃないッスかぁ~」 近くにいたプリニーがじれったそうにホームズに声をかけてくる。 「うるせぇッ、黙ってろ!! 俺はお前みたいに考え無しに出来てねぇんだよ!」 半ばやつ当たり気味にプリニーを怒鳴りつけて、 ホームズはついと窓に視線を向ける。 彼の恋人であるカトリは彼の気持ちを察した事と 自らの零れ落ちる涙が後の行為の妨げにならぬように離れてくれている。 だから、窓に視線を向けた所でその姿を捉える事などは出来やしない。 だが、それとは別にもう一つホームズには懸念があった。 ルヴァイドとの一件以降、どこかに隠れてしまったマグナの事である。 疑心暗鬼と自暴自棄に陥っているマグナに今の状況を上手く説明する自信はホームズには無い。 それどころか、更に誤解してホームズたちと完全に袂を分かつ事になるかもしれない。 その時にはホームズを信用してマグナの事を頼んだラムザにもどう言ったものか、 元々、申し開き等はホームズの気性には合わず、ありのままを受け取ってもらうしかないのだろうけれど。 「…畜生、何だってこんな事になっちまったんだろうな」 頭を掻き、項垂れながらホームズは力無く呟く。 それに対して答えを返してくれるものは傍には居らず、静寂だけが拡がっていく。 その静寂を破るように不意に異音が耳を掠めた。 獣の咆哮。 それが意味するものを理解し、すぐさま窓から身を乗り出し外の様子を窺う。 遠くから微かに響くそれにホームズは焦燥に襲われる。 「カトリ!」 荷物を拾い上げ、多少、心許ないが肉きり包丁をそのまま護身用に持っていく。 飛び出す前に一度、横たわるハミルトンの遺体に振り返る。 (あんたの覚悟はきちんと受け止める、だが、今は少しばかり待っててくれ) そして、後は振り返ることなく彼は自分の守るべき者の所へ駆け出していく。 「待つッス、待つッス、待って欲しいッス~~!!」 それをまたもや、取り残されそうになったプリニーが慌てて追いかけていった。 side.3 XVII.『Star』~その希望、儚く~ それに気づいたのは偶然だったんだと思う。 やる事もなすべき事も今の俺には如何でも良くなってきてて、 机に突っ伏してただ何となく時間だけが過ぎていってた。 何かしようとしたって自分が惨めになるだけだから、 動かず。 語らず。 考えず。 傍から見たら死んでるのと変わらないような状態で ホームズ達やルヴァイド達を探そうとも思えなかった。 でも、何もしないと感覚だけは冴えていって、 自然と自分の取り巻かれている環境を まるで自分を見下ろして見ている様な感覚で捉える事が出来た。 そんな中での微かな振動。 それは窓硝子に伝わる音の反響。 今のような状態でなければ気づかなかったかもしれない それに俺は何となく耳を澄ませていた。 微かに聞こえるのは何かの吼える声。 自分が知っている限りでは、 それに該当するのはカトリが連れていた竜のゾンビだけ。 「…あの娘に何かあったのかな?」 ぼんやりとした頭のまま、 思い浮かんだ事をそのまま口に出す。 そして、卑小に口元は歪み… ざ ま ぁ み ろ 俺はあらん限りの力を込めて頭を机に叩きつける。 額が少し割れ、血が滲むがその熱い感覚が意識を覚醒させていく。 ハッキリとしたからこそ、顔を上げることも出来ずに呟く。 「…いくらなんでも最低すぎるだろ」 目頭が熱い。 涙が滲んでいるのが自分でも分かる。 今、自分は何に対してあんな事を言ったんだ? 今、自分は他人に訪れているかもしれない不幸を喜んだ。 …いや、違う。 望んだんだ。 ホームズが少しでも今の自分に近づく事を。 惨めさと悔しさで涙が零れる。 蔑まされる者の気持ちは痛いほど分かる、 自分がそうだったのだから。 だからこそ、そのような痛みを人に与えたくは無かった。 例え人からゴミと蔑まれ様とも、 ゴミにだってゴミなりの意地というものがある。 今、自分がなすべき事はなんだろう? 答えは良く分からない。 それでも、 『代わり』になる事くらいは今の俺にも出来るのだ。 間に合わないかもしれない。 間にあってもどうしようもないかもしれない。 けれど、案外、どっちでも今の俺には都合は良いのかもしれない。 このままだらだらと生き延びているよりも、 “誰かの為に”という理由があれば、 結果はどうあれ、今の状態よりマシだと思えるから。 そうすれば、あっちでアメルにも叱られないで済むかもしれないし。 そう考えていたら体は自然と動いていた。 扉を開け、吼え声が聞こえてきた方向を確認し、走り出す。 闇の中で微かに何かが動いて見えた気がしたが気にしている気にもなれない。 そうしていたら別な方向から、 「待つッス、待つッス、待って欲しいッス~~!!」 プリニーの慌てた様な声が聞こえてきて、 ホームズもやっぱり向かっているのが分かった。 当然と言えば当然だと思う。 恋人の危機に助けに行かないような奴だとは思えないから。 それでも、何で別々にいたのか?とか、何かしていたのか?とか、 疑問も少しは浮かんだんだけれど。 今はただ、同じ場所に向かってるんだなという事が何となく嫌だった。 side.4 II.『High Priestess』~知性を捨てし激情~ 石に意識を傾ける。 まずは馴らしよ。 一歩。 ―ドンッ― うふふ、いい感じよ。 じゃあ、もう一歩動いてみて。 ―ドンッー あぁ、成る程。 段々掴めて来たわ。 竜玉石から伝わる意思が、 まるで視覚を伴うかのようにアルマへと戻り、 彼女の想像した通りの動きを竜<カトリ>へと反映させていく。 今の彼女は私と精神的に繋がっているけど、 そこから感じ取れる感情の殆どは知能を感じ取れないほどの 破壊や殺戮といった動物的な衝動に近いものなのだけれど、 それでも全てが思い通りという訳でもない感じが伝わってくる。 ほんの少しだけれど、抵抗しようとする感触があり、 それが私からの命令を若干だけれど妨げている。 ただの泣き虫さんかと思ってたけど意外と意志が強いのね。 でも、駄目よ。 貴女にはラムザ兄さんの為に働いてもらうんだから。 手綱を取る為に、更に竜玉石に意思を込める。 額を冷たい汗が伝う。 本当の所は余裕なんて殆ど無いほどに制御に全神経を使わされている。 ただの獣とは違う。 荒れ狂う力の奔流は静まったかと思えば時に押し寄せ、 私の意志という鎖を引き千切って暴れだそうとする。 (何なの、この娘のこの力は?) ―対して、もう片方の腐竜は元々意思が存在もしないこともあってか、 大した苦も無く彼女の意思の通りに動かす事がほぼ出来ている。 その矛盾にアルマもカトリの異常なまでの力に困惑を覚える。 だが、それは当然と言えば当然なのだろう。 アルマには知る由も無いが、カトリが変じた竜はただの竜に非ず。 神の力を宿した聖竜ネウロンなのであるから。 本来であれば火竜石を用いた所でマムクートでもないものに 竜への変化など出来るわけもない。 火竜石に封じられた竜の魂は切欠を与えたに過ぎないのである。 本来、彼女が最初から持ちえていた神なる力への変化への。 それを人が完全に制御するのであれば人知を超えた膨大な魔力か、 あるいは世界を破滅させるほどの狂気が必要である― (…駄目、もう少し思い通りに動かすにはまだ…足りない) 視線だけを傍らに控える双竜とは別な方向に向ける。 その先に見える対峙する二つの影。 漆黒と形容してもよい厳つい鎧を着た剣士と、 その滲み出る感覚こそがまるで全てを飲み込む宵闇を連想させるような壮年の騎士。 だが、彼らの意識はこちらには向いていない。 違う。 私の事など『相手にする必要すら無い』と彼らの態度がそう物語っている。 ただの小娘よりも目の前の相手にだけ注意を向けてればいいと。 …確かに私は非力だけれど、 今は心強い『お友達』が傍に居てくれるんだから。 この娘達を実際に相手取って、 いつまでそんな態度でいられるか… でも、カトリはまだもう少し時間がかかりそう。 なら、あなたに代わりに動いてもらおうかしら? さぁ、行って! みんな、『お仕置き』してあげる。 side.5 XVIII.『Moon』~其は既に終わりし~ それは信じられない光景だった。 先程まで普通に接し、 共に行動していた他となんら変わりの無い ただの娘だったと思っていた少女が、 淡い光に包まれたかと思えば次の瞬間には天を衝くかと言うほどの 巨体を誇る竜へとその身を転じたのだから。 「カトリッ!!」 ルヴァイドは目の前で起きた光景に驚きを隠しえず。 思わず飛び出しそうになる身体を堪えて、 正面の相手へと向き直る。 相手の隻眼の男、ランスロット・タルタロスも視線だけを カトリだった竜へと向け、 ほんの少しだけ感嘆の息を漏らした。 「ほう? これは正直に驚いたな。 あの娘は古代術法に通じる者だったのか? 或いは何らかの魔具の類か?」 その言葉はカトリに向けられて放たれた言葉だろうが、 その内に秘められていたであろう苛烈なまでの殺意は 先程からただの一度もルヴァイドから離れてはいない。 その殺意がルヴァイドの足を止めた。 「飛び出さなかったのは賢明だったな。 もし貴公が“この程度”で状況を考え見れないまでに 動揺するような者であったなら、 私から意識が逸れた時点で切り伏せていたのだが」 視線をルヴァイドに戻し、 隻眼の騎士は、今、目の前で起きたことを取るに足り無い事と断じる。 「………」 それに対し黒鎧の騎士は敢えて反論をする事はせずに黙って剣を構える。 「ふむ、言葉は不要という事か。 だが、その不動の精神には敬意を払っているのだがね? それに貴公からは私と似た匂いを感じるのでね」 言葉を続けたまま、隻眼の騎士も剣を構える。 「貴公はこの享楽に乗った者を殺すという覚悟が出来ている。 私が此処で出会った者達とは大きく異なるとても重要な事だ。 その手を汚す覚悟も無き者には変革などは起こせる筈は無い。 いずれはのたれ死ぬのが覚悟無き者の定めだ」 隻眼の騎士が尚も言葉を続けようとする前に黒鎧の騎士が飛び出す。 金属音が鳴り響き、 打ち合わされた剣が火花を散らす。 互いの振るわれた斬戟を時には受け、払い、 いなされたそれらの後、 最後に大きく弾かれた互いの剣の勢いのまま 二人の黒騎士は距離を取る。 数瞬とはいえどちらもが必殺の気迫を込めて放たれた斬戟は 常人ならば精神と体力を大きく磨耗するほどのものだが、 息一つ切らす様子は黒鎧の騎士には無い。 だが、その顔に不快の色が浮かんでいる。 それは隻眼の騎士だけに向けたものではない。 彼が語る言葉に己の過去を思い出させられるから。 「黙れッ!そのように思い上がった者の末路こそ破滅でしかない。 特に俺やお前のような血塗られた者が行き着く所はな」 己の過ち。 自分が呪われるべき者である事を再認識させられる変え難い過去。 国の為、誇りの為に自身で考えもせずに罪無き者達を殺戮し、 その骸を魂を悪魔の犠牲としていた事。 「これは異な事を言うな貴公は、 まるで私の良く知る者を見ているようだ。 だが、この世に罪無き者はいない。 民衆とは何時でも自身の幸福を望み、 現状に不満を漏らすだけの豚に過ぎない。 我々はその民衆が望む統治の為に血の道を築く者だ」 その過去を抉るように隻眼の騎士の言葉がルヴァイドの胸を射抜く。 その姿がまるでマグナ達に出会う事が出来ずに 己の過ちに気づくことが出来なかった時の自分を連想させる。 「俺に誰かを導く事などは出来はしない。 俺たちが誰かの為に出来る事などはその者の為に剣を取る事だけ。 お前は傲慢すぎるッ!」 再び、二人の騎士が動き出す。 だが、それを遮るかのように闇において、 尚、影を落とす巨体が二つの影の間に割って入る。 腐汁を滴らせながら、その巨体<ドラゴンゾンビ>が雄叫びを上げる。 「あはははは! 淑女を放って置くのは騎士道に違えているのではないかしら? だから、私がお仕置きしてあげる!」 狂気染みた笑いと共にアルマに従えられた腐竜の腕が二人の騎士に向けて振るわれる。 それは例えるならば質量を持った暴風。 煽り立てられた木の葉の如く、無様に宙を漂う事になるのが本来の道理。 だが、 暴風に立ち向かうように交錯した二人の騎士。 一閃。 その後に、ミシリミシリと音を立て、 両断された腕が僅かにその巨体と腕とを繋げていた皮も その自重により千切りながら地面に落ちた。 そして、思い出したかのように切断された腕から腐汁と血を撒き散らしながら 巨体が苦悶に吼える。 「……嘘…でしょ」 信じられないといった様子のアルマには一瞥もくれず、 二人の黒騎士は同じ様な動作で剣に付いた腐汁を払う。 「邪魔をするな、娘。 …手元を狂わせる事もあるぞ?」 「お前は後だ。 お前にも聞きたい事はある」 二人の黒騎士が言葉と一瞬の殺気をアルマに向ける。 「…ヒッ!」 それはほんの一瞬の事。 だが、まるで心臓を鷲掴みにされたかのような恐怖に 身体は竦み上がり、竜玉石を取り落としそうになる。 何とかその場にへたり込むのだけは堪えたが、 震える足は満足に動く事すら儘ならない。 屈辱に紅潮する顔で少女は黒騎士を睨むが 彼らはそれを意に介した様子も無い。 場を汚された仕切り直しかの様に互いに向き直り、 剣を構えなおす。 「貴公も私と同類なのだろう? 少なくとも千は下らぬ屍を踏み越える事で その剣技を身に着けた筈だ」 挑発する隻眼の騎士を黒鎧の騎士は睨みつける。 「なればこそ、この呪われた剣技。 俺のような者ではなく明日を生きる者の為に」 黒鎧の騎士の答えを予想通りといった表情で受けとめ、 隻眼の騎士の騎士は乾いた笑いを漏らす。 「何処までも似ているな“ゼノビアの聖騎士”殿に… 僭越だが、結末も同じでは無い事を祈ろう」 地を踏みしめ、 二人の黒騎士は互いに向けて駆け出す。 どちらかに終焉を齎す為に。 another side I.『Magician』~始まりの物語~ ―エレ…やめろぉッ! いくなああぁぁ!!― ……… …………… ……………… 「うなされていた様だが…大丈夫か?」 「あぁ、ちょっと…またあの時の夢を見ていたから…」 「…そうか、もうすぐローディス本国に着くぞ」 「分かった、準備しておくよ」 「…なぁ、一ついいか?」 「エッ? 何だい?」 「お前は…あの娘の事を恨んでいるのか?」 「………」 「スマナイ、今のは忘れてくれ」 「分からない」 「………」 「恨んでいるのかも知れない、オレを残して独りで行ってしまった彼女を」 「だが…あれは…」 「分かっているよ、ああしなければオレ達は今こうして生きて話すことも出来なかっただろうさ」 「………ッ!」 「オレは…彼女のおかげで生きていられる」 「…だからと言って、お前がそれを気に病む必要は…」 「…ただ」 「…?」 「もう一度、彼女に会えるのならオレは…」 side.6 V.『Hierophant』 ~慈悲か束縛か~ 前方にうっすらと見える影が誰か特定できた時、 一瞬だけど足を止めて、そのままとんぼがえりで前の場所まで戻りたくなった。 「…そりゃ、いるのは分かってたけどさ」 自分の前を走るのがホームズだというのは端から理解していた。 ただ、その姿を実際に目にすると何となく気が引けてしまう。 向こうも俺に気がついてるのかもしれないけど、 こっちを振り返る気配は全然無い。 (何で俺があいつに気兼ねしなきゃ駄目なんだよ、俺に疚しい所なんて無いじゃないか!) 考えてみたらそうだ。 ホームズの奴は一方的にこっちを悪者にしてるけど、 それだって別に何も根拠があってやっている訳でもないし。 段々と腹が立ってきた。 そういえばホームズには一発分の貸しがある。 その分を後でお返ししてもいいかもしれない。 ……? 何か、さっきから視線を感じるんだけど? ホームズの奴は相変わらず真っ直ぐ走ってるし、 背後じゃなくて胸の下辺りから? 「…って、うわぁッ!!」 考え事をしてて全く気がつかなかったけど、 いつの間にかプリニーが俺と併走して走っていた。 感じた視線もプリニーがこっちを仰ぎ見ていたものか。 「あーーーッ!! やっぱりマグナッスよ、マグナー!!」 じろじろとこっちを見た後にプリニーが大声で前方のホームズに呼びかける。 「おい、馬鹿止めろよッ! ていうか、何で呼び捨てなんだよ!」 慌ててプリニーの口を塞ぐ。 「う~う~!」言ってるプリニーから視線を恐る恐るホームズに向けてみる。 ホームズはその足を止めて荒い息をついている。 何となく躊躇いながらホームズの傍までもがくプリニーを抱えたまま歩いて行く。 その間もホームズは俺の方を振り向こうとはしない。 傍まで寄ってホームズが大粒の汗をかいているのが見て取れた。 「……お前も…ついて来る気かよ…」 こっちを一向に見ようともせずに藪から棒にホームズが切り出してきた。 その言葉の棘に神経が逆撫でされるのが自分でも分かる。 「何だよ、俺がそっちに行っちゃ拙いのかよ!」 元々イラついていた感情のままに俺もホームズに言葉をぶつける。 「拙かねぇよ…但し、テメェの面倒はテメェでみろ」 それだけを言うと再びホームズは走り出した。 「おいッ! 何だよその言い草ッ!」 俺が声を荒げるのも無視してホームズは走り去っていく。 怒りの矛先を向ける相手がいなくなってしまい、 振り上げた拳をがむしゃらに振り落ろして、 「イデッ!!」 そういえば抱えたままだったプリニーに思いっきり当ててしまった。 「あッ! 悪い、ゴメン!」 頭を抑えてしゃがみ込むプリニーに慌てて謝る。 「~~~~~ッ!! 二発目~~!! 俺が何したんスかッ! 訴えてやるッスからね!」 シュッシュッと拳闘のように俺に向かって拳(?)を振りながらプリニーは俺を睨みつける。 「そ、それだって、元はと言えばお前が大声出すから…」 「って、あ~~~~ッ!! また、置いて行かれるッス~~~!!」 バタバタと喧しくプリニーがホームズを追いかけていく。 「大体、自分で『追いかけて来てるのがマグナか確認しろ』って言っといて、 置いて行くとか無いッス~~~!!」 エッ? 「ちょ、ちょっと待てよ…それどういう意味…」 俺の制止も空しくプリニーもまた走り去ってしまった。 一人取り残された中、頭の中は混乱している。 俺に気づいてた? なら何であんな言い方したんだ? 「…訳分かんないよ」 ホームズの真意が理解できなくて、 出口の無い迷路に迷い込んだような気分になっていた。 side.7 IV.『Emperor』 ~傲慢な責任感~ 息が荒くなっていくのが分かる。 心臓は張り裂けそうなほどに鼓動が加速し、 身体からは大粒の汗が零れる。 疲労している訳じゃない。 これは全部、俺が焦っている証拠だ。 ―何で一人にしたんだ。 ―どうしてすぐに目に付く所に置いて置かなかった。 ―お前は、又、彼女を失くしたいのか! うるせぇッ!! あいつだってガキじゃねぇんだ、 一人の女として俺の傍に居てくれる事を約束したんだ。 それを俺が汲んでやらねぇで如何するんだよ。 ―言い訳だろう? ―そうやって責任をすり替えとけば楽だもんな。 ―お前はいつも自由と言う名の責任逃れだ 糞ッたれッ! 自分の事は自分が一番分かってるよ。 だが、俺だって二度と取り零す気はねぇんだ。 目の前で何も出来ずに失うなんて、もう嫌なんだ。 頭の中で俺を攻め立てる声に反論しながら 足は止める事無く走り続ける。 「ヒィヒィ…や、やっと追いついた…ちょっと…そこら辺で休まないッスか?」 そういえばこいつの事を本気で忘れていた。 傍で(こっちは多分本気で疲れているんだろうが)荒い息を吐くプリニーと それに多分これは… 「…おい」 「ハ、ハヒッ? 何スか、休むんスか?」 そのムカつく頭に拳骨一発。 「アダッ! な、何で殴るんスかー!」 「良いから黙って言う事を聞け。 多分、俺達の後ろにマグナの奴がいる。 お前、ちょっと確かめて来い」 さっきから後ろに誰かいるのは分かっていた。 俺に対し何かを躊躇するようなその気配の主はあいつ以外考えられない。 「エーーッ!? …あ、分かったッス、 分かりましたから、その拳引っ込めてくださいッス」 そのままわたわたと逃げるようにプリニーが後方へ走っていく。 そして、それほど間もなく、 「あーーーッ!! やっぱりマグナッスよ、マグナー!!」 プリニーの喧しい声と共に分かりきっていた答えが返ってきた。 そこで初めて足を止める。 ―何を言うつもりだよ? 知らねぇよ。 俺が聞きたいくらいだ。 ―まともに取り合うとは思えないぞ? 上等。 憎まれ役は慣れてる。 自分の後ろにおずおずと近寄る気配を感じる。 「……お前も…ついて来る気かよ…」 我ながら最悪な話の振り方だと思う。 「何だよ、俺がそっちに行っちゃ拙いのかよ!」 あぁ、そうなるのは当たり前だよな。 だが、上手な声のかけ方ってやつは昔から出来ない性質(たち)なんだ。 「拙かねぇよ…但し、テメェの面倒はテメェでみろ」 そう。 多分、この先、俺は他に見向きをくれている余裕は無くなる。 正直、今の言葉は自分に言っているようなもんだ。 助けが来るとは限らない。 最悪な事態が待っているかもしれない。 その時に最後に頼りになるのは結局は自分だ。 マグナの奴がまだ何か言おうとしていたが、 悪いがもうそんな余裕は…無い。 俺は再び走り出す。 マグナに俺の言葉が伝わったかどうかは分からない。 伝わっていてほしいとは思う。 だが、 今はただ、あいつの元へ急ぐだけだ。 118 Bloody Excrement 投下順 119 arcana(中編) 121 保護者Lの献身 時系列順 119 arcana(中編) 111 夜に彷徨う マグナ 119 arcana(中編) 111 神なき世界 ホームズ 119 arcana(中編) 111 sister(前編) タルタロス 119 arcana(中編) 111 sister(前編) ルヴァイド 119 arcana(中編) 111 sister(前編) アルマ 119 arcana(中編) 111 sister(前編) カトリ 119 arcana(中編) 102 未来の記憶(前編) ヴァイス 119 arcana(中編)
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/155.html
卒業式前日・前編 【投稿日 2006/02/14】 卒業式シリーズ 「こんばんはーーーーー!!」 突然笑顔で現れた高坂に、斑目は度肝を抜かれた。 最近斑目は昼休みには部室に顔を出さず、会社が終わってから夜に来るようになっていた。 昼間に来れないのには理由があった。 笹原は卒業を目前に控え、あまり大学には来なくなっていたが、たまに部室で顔をあわせると必ず荻上さんと一緒に来る。 二人は付き合っているのだから当然なのだが、そこに自分もいるとどう考えても邪魔者、というか疎外感を感じるので、昼休みに部室に寄りづらくなったのだ。 それで今は会社帰りに寄っているのだった。未だに部室に来るのを止められないのが悲しい。 何故かまっすぐ家に帰る気にはなれないのだった。 (明日は笹原たちの卒業式だ。高坂も、…春日部さんも) これを機に部室に寄るのは終わりにしようと決めた。 …だから、せめて明日までは、ここに来ようと思ったのだ。 何をするわけでもないが、会社では広げられないエロゲー雑誌を読んだり部室にしか置いてないゲームをやったりして、小一時間ほどで帰る。 (俺は何やってんだろな) 自分でももうよく分からなくなっている。 (…なんだか最近心が重い。何をやっていても楽しくない。 でも、それを誰かに吐き出すことも出来ないまま、今日まで来てしまった。 だれも来ない部室で、いったい何がしたいんだろう。 …ま、それも明日までなんだが。) そこへ、高坂がいつもの満面の笑みで現れたので、それはもうびっくりしたのだった。 「…やあ高坂君、久しぶり」 「お久しぶりですー」 言いながら高坂はカバンを下ろし、一番奥の席(会長席)に座っている斑目の右の椅子に座る。 「…今日はどうしたん?あ、荷物取りに来たとか?」 「いえ、荷物はないですけど、なんとなくです」 「ふーん?」 「ちょっと時間があいたし、部室に来てみたくなって」 「そっか。明日で卒業だしな」 「ええ。…やっぱり寂しいもんですね」 「ふむ。まー卒業した後でも来るやつはいるけどな、俺とか(苦笑)」 「僕も来たいんですけどね、ここ居心地いいし。でも、仕事先がけっこう遠いんで。まぁ長期休暇が取れるんで、その時には顔出しに 来ますけど」 「へえ、そんなのあんの?」 「その代わり納期前は数ヶ月休みなしとかですから」 「うわ、キッツイなー。家にも帰れないとか?」 「ええ、実際すでにやりましたしね。夏に仕事入ったときに泊まりこみしたんで」 「あーあー!合宿のときか! …じゃあ仕事始めたら、春日部さんとあんまり会えなくなるんじゃないか?」 「そうですね…」 高坂は言葉を止め、少し考え込んだ。 彼なりに思うところがあるようだ。 「斑目さん」 「うん?」 「咲ちゃんのこと好きですよね?」 「ぶっ!!!」 高坂のあまりに突然な問いかけに、斑目は思わず噴いた。 「え…は?な………………えええええ!?」 「すいません、いきなり聞いたりして」 「は???え??何で知って…じゃなくて!何が?ええ!????」 パニックになり、ごまかすこともできない。 「…なんとなく、そうかなって思ってました」 (他の部員には気づかれてないのに、何で高坂は気づいてんだ!?) 焦った頭で考えてみてもさっぱり分からない。 「実は僕、斑目さんが、咲ちゃんのコスプレしたときの写真を買ったことを知ってたんです」 「ええ!?」 「斑目さんがあの後カメコに写真を頼んでいる所を聞いてしまって。…聞く気はなかったんですが」 「ああ…そうなんだ…」 今まで他の部員が気づいてないのを考えると、高坂は誰にもそれを言ってなかったのだろう。 「でも確信したのは、斑目さんの家にみんなで行ったときです」 「うっ」 …あの時のことか。 「あのとき斑目さんが必死に引き出しを守ろうとしたんで、コスプレ写真が入ってるのかと思って咲ちゃんを止めたんです」 「………………」 『きっと本当に見ないほうがいいと思うんだ』 高坂の言葉を思い出す。 確かに、春日部さんに写真のことがばれたら顔あわせづらくなってたと思うが。 …あのときにはもう、冗談やごまかしで流せる程度の気持ちじゃなかった。 そうか。だからあの時、久我山や田中の家では止めなかった春日部さんの行動を止めに入ったのか。 「でも、出てきたのはSMのDVDだった。 それで咲ちゃんのことが好きなんだってわかったんです。」 「…何で?普通それで結びつかねーじゃん…」 「だってあれ、本当の『最後の砦』じゃないですよね」 「うぐっ!」 「一番隠したいものがあんなに見つけやすいところにあるのは変だし、何より見つかった後の斑目さんの反応が、なんだかホッとし ているように見えたので」 「うーわーバレバレ…」 「だから、そこまでして隠し通したいんだな、って。本当に、咲ちゃんのことが好きなんだろうなあと」 「も、もう…、その辺でヤメテ…」 斑目は顔から火を噴きそうなほど、恥ずかしかった。 (バレてたのか…いや、写真を買ったことを知ってたんなら当然か…) 高坂の率直すぎる言葉に面食らいながら、もう認めざるを得ないと腹をくくる。 「…春日部さんには黙っててくれな。頼むから」 「…それでいいんですか?」 「え?」 「僕は言いません。でも斑目さんは言わなくていいんですか?」 斑目は驚いて高坂を見る。 高坂の顔からは何の表情も読み取れない。 「いや言っても仕方ねーし…だいたい春日部さんは」 「咲ちゃんじゃなくて斑目さんの気持ちですよ」 「そんなこと言って、引かれてもヤだしよ…」 「斑目さん」 高坂は斑目の言葉を遮って言う。 「僕は咲ちゃんを信頼してるんです」 「…………はい?」 高坂の言葉がよく分からずとまどう。 かまわず高坂は言葉を続ける。 「だからこそ、エロゲー会社に就職することを決められたし、咲ちゃんも折れてくれましたしね」 「…でもお前、春日部さんはすごく悩んだと思うぞ」 「…分かってます。でもそれは、咲ちゃんが乗り越える問題ですから」 高坂の言葉に再び驚く斑目。 こんな突き放した言い方をするとは思わなかった。 「僕は咲ちゃんのやり方を否定しないし、咲ちゃんに好きなものを強要しない。 だから咲ちゃんにもそうであって欲しいんです。」 「……それはお前のエゴじゃないか?」 それは高坂の我が儘だ。 さすがにムッとした斑目は、それを隠そうともせずに言った。 「そうですね。でもそれが僕ですから」 「…春日部さんだってそんなに強いわけじゃねぇだろ」 「そうですね。でも僕は咲ちゃんが好きだから、信じたいんです」 高坂はきっぱりと言い切った。 「それが僕の気持ちです」 「…それ、春日部さんにいってやれよ」 「ええ、昨日言いましたから」 「…ああ、そうかい」 斑目はもう苦笑いするしかなかった。春日部さんも大変だな。 「…で?俺にも言えと?春日部さんに」 高坂は黙ってこっちを見ている。表情が読めない。 「…言っていいのか?彼氏としてどうよ?…その、万が一にも…」 絶対にないと自分でもわかってて、こんなことを言ってるのが空しい。 「僕は咲ちゃんを信じてますから」 高坂は再び繰り返した。 「………そうか、わかった」 これ以上何も聞くことはない。 (言うなら明日しかないか…今晩で覚悟決めるか…) 高坂はジーパンのポケットから携帯をとりだして時間を見る。 「もうすぐかなぁ」 「…ん?何が」 「もうすぐ咲ちゃんがここにくるんですよ」 「はいぃ!?」 「あ、メールきた。今、校門の前まで来たそうです」 「えっ、ちょお、待て、え!???」 「今日僕がここ来るって言ったら、咲ちゃんも来たいって言ってたので」 (何コレ?ドッキリ? いやいやいや、高坂はそんな冗談をやる奴じゃねーし。 というかいつも全開で本気だ。 えっじゃあマジ?え?もうすぐ来るって???) 部室の外からかすかに足音が聞こえ、だんだん近づいてドアの前で止まる。 「…咲ちゃんは引いたりしませんよ」 「えっ!?」 聞き返そうとしたとき、ドアをノックする音が聞こえた。 前編 END 後編予告:斑目と春日部さんが…
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/948.html
541 三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2009/12/19(土) 01 53 19 ID XOuT2u+2 三つの鎖 9 あの日。兄さんと夏美がキスしたのを見た日。 兄さんは私を追ってこなかった。 あの後、私は部屋に引きこもっていた。兄さんが来るのをずっと待っていた。 春子がいろいろ話しかけてきたが、無視した。うるさいだけだった。 父さんと母さんは春子が説明したようだ。何も話してこなかった。なんて説明したのかは知らないし知りたいとも思わない。家の家事も春子がやってくれたようだ。 頭に浮かぶのは悪夢のような光景。兄さんと夏美のキス。恥ずかしそうに幸せそうに寄り添う二人。私が追い求めてやまない光景。そして絶対に手に入らない光景。 私が背を向ければ兄さんは追いかけてくれた。なのに。何で来てくれないの。私が背を向けるとすぐに追いかけてきてくれたのに。 夏美といる方が兄さんにとって大切なの。 全身が熱い。私はすでに汗だくだった。考えにふけっていると、ドアが控えめにノックされる。 「梓ちゃん?」 春子の声。 「入るよ」 お盆を持って春子が入ってきた。 「朝ご飯食べよ」 もう既に朝なのか。カーテンの奥はすでに明るくなっていた。春子の持つお盆にはサンドイッチと飲み物が乗っていた。 「兄さんは?」 春子は困ったような顔をした。兄さんは来てくれなかったんだ。どうして。 お盆の飲み物を見ると喉がからからなのを今さらになって自覚した。コップを手に口にすると冷たくて微かな苦みが喉を通る。アイスティー。私の好きな飲み物。兄さんはいつも冷蔵庫にアイスティーを入れてくれている。 次にサンドイッチを食べた。鳥の照り焼きが入っている。兄さんの料理と似た味。 「鳥の照り焼きを教えたのは春子だったんだ」 「そうだよ」 私の独り言に春子は答えた。兄さんの得意な料理の一つ。私の好きな兄さんの料理。 何で?何で兄さんは来てくれないの? 私に負い目を感じている兄さんはいつも私を追いかけてくれた。私が冷たくすれば必ずそばに来た。 何で今は来てくれないの? 「梓ちゃん。ちょっといいかな」 春子が話しかけてくる。憂いを含んだ悲しそうな顔で私を見つめてくる。いつもののんびりとした表情は無い。 「幸一君を縛るのはもうやめてあげようよ」 心臓がきしむ。 「何を言ってるの?縛るって何のこと?」 「幸一君の罪悪感に付け込んでいるでしょ?」 「私は何もしていない。兄さんが勝手に引け目を感じているだけよ」 春子が私を見る。表情に浮かぶ悲しみ。不快だ。 「かわいそうな梓ちゃん」 私は春子を睨みつけた。私は数ある選択肢から一番ましな方法を選んだ。その結果に同情などされたくない。 他にどんな方法があるというのか。兄さんも私も幸せになる選択なんて無い。兄さんを不幸にせず、私も不幸にならないぎりぎりの妥協。それが私の選んだ選択。 春子はそんな私を悲しそうに見つめた。春子は腕を伸ばし私の頬に触れる。温かい感触。それが余計に私をいらつかせる。 「幸一君を追っても追い切れないから、幸一君の罪悪感に付け込んで従わせた」 うるさい。 「梓ちゃんを追いかける過程で幸一君は本当に成長したよ。昔のお調子者で思慮の浅い手のかかる男の子は、今の幸一君になった」 梓が私の頬をなでる。その手にはテーピング。昨日私が痛めた手。 「全部梓ちゃんのためだよ」 「私は一度も頼んでない」 私は吐き捨てた。 「春子は関係ないでしょ。私と兄さんの兄妹の関係に口出ししないで」 「関係あるよ」 春子は悲しげに微笑んだ。 「私は幸一君と梓ちゃんのお姉ちゃんだよ」 「血のつながった私の兄弟は兄さんだけよ」 「梓ちゃんも気が付いているでしょ。幸一君は罪悪感で縛るのはもう無理だって」 春子の頬を涙が伝う。 「幸一君も薄々気が付いているよ。梓ちゃんは本当は嫌っても憎んでもいないって。幸一君を縛る罪悪感は幻だって」 「うるさい。黙って」 「かわいそうな梓ちゃん。幸一君が欲しくて、でも手に入らないならせめて傍に置くために幻の罪悪感という鎖で縛りつけて」 私の頬に当てられた春子の手が震える。 「でもね、幸一君は鎖に縛られたままで必死にもがいて、必死に努力したんだよ。梓ちゃんのために。本当に残酷だよ」 春子の涙はとめどなく流れる。涙が床に落ちる。 542 三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2009/12/19(土) 01 55 40 ID XOuT2u+2 「幸一君を束縛しても、幸一君の心は手に入らないんだよ」 「春子に私の気持ちの何が分かるの」 私の声はどうしようもなく震えていた。私は最善の方法を選んだはずなのに。 「分かるよ」 春子はまっすぐに私を見た。涙でぬれた瞳。そこに同情も憐憫も無い。あるのは悲しみだけ。 「お姉ちゃんにもよく分かるよ」 私の怒りは急速にしぼんだ。春子の言葉に同情や憐憫があれば私は爆発したに違いない。しかし、春子は同情も憐憫もしてない。悲しみだけがある。 分からない。春子がそこまで悲しむ理由が分からない。 春子は悲しげに私を見た。 「梓ちゃん。昨日幸一君は来るはずだったんだよ」 私は春子の言っていることが分からなかった。 来るはずだった? 「どういう事?」 「私が止めたの」 一瞬で私の頭は沸騰した。 春子の胸倉をつかみ足を払う。倒れた春子に馬乗りになり胸倉をつかみいつでも首を締め上げれるようにする。 「私が幸一君にメールしたの。私が話すって。今は顔を合わせない方がいいって」 春子は淡々と言った。微塵の恐怖も感じさせない落ち着いた声。それが何よりも私をいらつかせた。 「ふざけないで!何でそんな事をしたの?」 春子の胸倉をつかむ手に力がこもる。 「幸一君は梓ちゃんに誠実に話すと思う。そうなったら梓ちゃんは今私にした事と同じことしたでしょ」 私の手を春子の手が包む。テーピングの巻かれた手。私が痛みつけた手。 「弟と妹が傷つけあうのをもう見たくないの」 私は唇をかみしめた。 ふと脳裏に浮かんだ疑問。昨日、兄さんは家に戻ってこなかった。兄さんは昨日の晩どこにいたのだろう。 まさか。 「兄さんは昨日どこにいたの」 春子の顔色がわずかに変わった。 私が最後に見たとき、兄さんは夏美といた。 「夏美なのね」 春子は唇をかみしめた。 兄さんが夏美の家に泊まった。女の家に。 私は部屋を飛び出した。 「梓ちゃん待って!」 春子の声を振り切り、私は家を出た。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 私は夏美のマンションに向かった。何度か遊びに行った事があるから道は分かっている。マンションのカギはかかっていた。 外から回り込む。夏美の部屋は二階だ。私は周囲を見て誰もいないのを確認すると、排水官をつかみ手早く上った。ベランダに侵入する。 カギがかかっているのを、ガラスをたたき割り鍵を開け侵入した。 リビングから夏美の部屋に入る。ベッドはきれいに整理されていた。 ベッドの匂いを嗅ぐ。洗ったシーツの匂いに加え微かに兄さんの匂いがする。 私は風呂場の洗濯機を開けた。女ものの服や下着に加え、シーツが入っていた。 シーツをつかみ匂いを嗅ぐ。女の匂いと兄さんの匂い。シーツを広げる。白い粘り気のある液体がこびりついている。男の匂い。微かに固まった血が混じっている。 私は唇をかみしめた。 夏美。殺してやる。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ お昼休みになった。耕平が食事に誘ってくれたが僕は断った。一人でいたい気分だった。 春子と梓は学校に来ていない。 梓の事が気になる。やはり昨日話に家に戻るべきだったのではと思うけど、すぐにうち消す。今は春子を信じるしかない。 夏美ちゃんの家から直接来たので今日はお弁当は無いし食欲も無い。食事にする気にはなれない。教室はクラスメイトが多い。一人でいたかった。 屋上に行こう。僕はクラスを出た。 廊下を歩いていると、夏美ちゃんがこっちに歩いているのに気がついた。向こうも気がついて控え目に手を振るってパタパタと走ってきた。 「あの、お兄さん。お昼どうしますか?」 夏美ちゃんは恥ずかしそうにもじもじする。可愛いかも。 「お弁当が無いから屋上でのんびりしようと思っている」 覚えのある匂いが鼻孔をくすぐる。断じて言うが、女の子の匂いでは無い。嫌な予感がする。 543 三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2009/12/19(土) 01 58 36 ID XOuT2u+2 「あの、ありあわせですけど、その、お弁当を作ったんです」 恥ずかしそうに下を向く夏美ちゃん。うなじまで赤い。 「よかったら、一緒に食べませんか?」 正直に言う。僕は今すぐにでも背を向けて「グッバイ夏美ちゃん!」と言って走り去りたかった。無論、そんな失礼なことはできない。 「僕でよければ喜んで」 断腸の思いで言葉を吐きだした。夏美ちゃんの顔が喜びに輝く。 「あざーっす!さ、屋上に行きましょう」 夏美ちゃんは僕の手を握り走り出した。もう片方の手にはお弁当が揺れる。 僕の手を握る夏美ちゃんの手が温かくて柔らかい。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 屋上のベンチで並んで座る。夏美ちゃんは僕にお弁当を渡した。にこにこと嬉しそうに笑う。僕は礼を言って受け取り、蓋に手をかける。躊躇を押し殺してお弁当の蓋を開けた。 独特の香りが鼻につく。 「ありあわせですけど、どうぞ召し上がってください」 恥ずかしそうに、そして嬉しそうに夏美ちゃんが笑う。なんでそんなに嬉しそうなの。 「ありがとう。いただくね」 僕は微笑んだ。笑顔がひきつってないか心配だ。 スプーンを握る。そう。スプーンを。 僕はお弁当から一口分すくい口にした。 「どうですか?」 不安をにじませ話しかけてくる夏美ちゃん。 「おいしいよ」 嘘ではない。ただ、同じ会話をこれで三回した。昨日の夜と、今日の朝。そして今。 「よかったです」 そう言って夏美ちゃんもお弁当を開きスプーンを握った。 「私、カレーは大好きなのです」 そう。夏美ちゃんのお弁当はカレーだった。ちなみに言うと、今日の朝御飯もカレー、昨日の晩御飯もカレー。 正直つらい。僕自身料理はこるし、教えてくれた人も料理がうまいから舌はそこそこ肥えている。三食同じカレーは味覚的にも栄養的にも拷問に近い。 おいしそうに、実においしそうにカレーを食べる夏美ちゃん。 カレー自体はおいしい。でも朝昼晩カレーはもういい。 それでも僕はカレーを残さず食べた。せっかく用意してくれたのを残すわけにはいかない。 夏美ちゃんは水筒からお茶を入れてくれた。僕は礼を言って受け取った。 そのまま無言。気まずいのではなく、心地よい沈黙。 正直、こんな事をしている場合ではないと思う。梓の事が脳裏に浮かぶ。 「お兄さん」 夏美ちゃんは僕を見た。心配そうな表情。 「梓の事、ですよね」 僕は戸惑った。正直に今の気持ちを告げてもいいのだろうかと思ってしまう。 何か他の話題を。 「あの、夏美ちゃん」 夏美ちゃんは僕を見た。 「その、体は大丈夫?」 顔を赤くする夏美ちゃん。僕は馬鹿か。他の話題があるはずなのに。よりによってなんて話題を。 「えっと、その、心配してくれてありがとうございます」 太ももをもじもじする夏美ちゃん。その動きはやめて欲しい。 「まだ奥に残っている感触がありますけど、痛みはもう無いです」 「良かった」 本当のところは分からない。女の子の最初はすごく痛いって聞く。夏美ちゃんは単に気を使って言ってくれただけかもしれない。 そのまま黙る僕と夏美ちゃん。さっきとは違う気恥しい沈黙。 夏美ちゃんの様子がおかしい。顔を真っ赤にして太ももをこすり合わせる。恥ずかしそうに、切なそうにため息をつく。 「大丈夫?」 問いかけに僕を見る梓ちゃん。切なそうに僕を見上げる。 「わ、わたし、お兄さんとの、その、せ、せ、せ」 夏美ちゃんの声が羞恥に震える。 「いえ、犯されたのが」 食べたカレーを噴き出しそうになった。 「その、すごく、気持ち良かったです」 うつむく夏美ちゃん。太ももをこすり合わせる。スカートからのぞく白く細いが足が艶めかしい。 「お兄さんに犯されるのが、本当に気持ち良くて、私、今日の授業も、全然頭に入らなくて」 544 三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2009/12/19(土) 02 01 23 ID XOuT2u+2 夏美ちゃんは胸の前に両手をあて震える。恥ずかしそうにうつむく。 「私、だめなんです。そんな事考えている場合じゃないと思っても、何度も思い出しちゃって」 太ももをこすり合わせる夏美ちゃん。 「私を犯す、その、お兄さんのお、お、おちんちんの感触が、ずっと残っているんです」 顔を上げる夏美ちゃん。僕を見つめる視線に艶を感じる。 「私の膣をこする感覚が、犯される感覚が、頭を離れないんです」 夏美ちゃんは僕ににじり寄る。思わず僕はのけぞってしまい、結果的に夏美ちゃんが僕を覆いかぶさる形になった。 顔が近い。夏美ちゃんの呼吸を感じるほどに。 「後ろから犯されるのが、すごかったです」 夏美ちゃんの手が僕の頬にふれる。息も荒く震える声で卑猥な言葉を紡ぐ夏美ちゃん。 「腰をがっちりつかむお兄さんの手が、私を逃がしてくれなくて、何度も何度も犯すんです。膣をこすられる度にわたし、わたし」 太ももをすり合わせる夏美ちゃん。 「お兄さんが、私の中に出した時も、すごく熱くて、焼けるようで」 夏美ちゃんの顔が近い。僕は夏美ちゃんの肩を押さえた。 「夏美ちゃん。落ち着いて」 こんな場所でセックスするわけにはいかない。時間もあまりない。 そんなとき、夏美ちゃんの足が僕の股間にふれた。 「あっ」 夏美ちゃんがまじまじと見る。僕の股間は盛り上がっていた。 「嬉しいです。私で興奮してくれるんですね」 熱い吐息が顔にかかる。女の匂い。 「今楽にしてあげますね」 夏美ちゃんは僕のズボンのジッパーを下ろし手を入れた。ってちょっと! 「夏美ちゃん!ちょっと!」 僕の言葉と聞かず夏美ちゃんは僕の剛直を取り出した。白い指が剛直に絡みつく。 「はむ」 夏美ちゃんは僕の剛直を口にした。思わず腰が浮く。夏美ちゃんの口の中は膣とは違う熱さ。 「はむっ、れろっ」 ザラザラした夏美ちゃんの舌が僕の剛直の先端を舐める。膣をこする感覚と違う快感。 いけない。流されている。 「はむっ、ちゅるっ、ちゅっ、れろっ」 「ちょっと夏美ちゃん、うわっ」 夏美ちゃんの舌が剛直の裏筋を舐める。快感に思わず腰が引く。 「ちゅっ、おにいひゃん、はむっ、ほうへふは、ちゅっ」 上目づかいに僕を見つめる夏美ちゃんの視線は濡れていた。 夏美ちゃんの手が動きだした。僕の剛直をこする。 「ちゅっ、ちゅっ、ぺろっ、はむっ」 決して手慣れてはいない。たどたどしく動く夏美ちゃんの舌と手。それがかえって心地いい。 「はむっ、ちゅっ、んっ、おにいひゃん、なにはへへひまひた、ちゅるっ」 先走り液が出てくる。夏美ちゃんは嬉しそうに目を細めた。 ふいに脳裏に浮かぶ。僕の股間をまさぐりながらうっとりする春子。 思わず夏美ちゃんを引きはがした。剛直が空気に触れる。 「あっ」 尻もちをつく夏美ちゃん。 「あ、あの、お兄さん、その、わ、わたし」 震える夏美ちゃん。 「ご、ごめんなさい、わたし、お兄さんが、そ、そんなに嫌がってるって分からなくて、そ、その」 目に涙を浮かべ必死に言葉を紡ぐ夏美ちゃん。痛々しい姿。 僕は愚かだ。夏美ちゃんは悪くないのに。 夏美ちゃんに手を伸ばす。びくっと震える夏美ちゃん。そのまま頭にふれる。 「ごめんね。ちょっとびっくりしちゃって」 そのまま夏美ちゃんの頭をなでる。 「続きをしてくれる?」 僕はベンチに座りなおす。夏美ちゃんは安堵の息をはき、床に四つん這いになって僕の股間に顔をうずめた。 「あの、いきますね」 夏美ちゃんは硬いままの僕の剛直をつかみ、口にくわえた。再び熱い感触。 「はむっ、れろっ、ちゅっ、ちゅむっ」 舌のざらざらした感触が気持いい。 「気持いいよ」 僕は夏美ちゃんの頭をゆっくりなでた。 545 三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2009/12/19(土) 02 03 55 ID XOuT2u+2 「手も使って」 夏美ちゃんは嬉しそうにうなずく。手で僕の剛直をこする。たどたどしく動く小さい手。 「ちゅっ、じゅるっ、はむっ、じゅるっ、ちゅるっ、れろっ」 夏美ちゃんの唾液と先走り液で滑りがよくなった僕の剛直をこする感覚がすごく気持いい。 僕が夏美ちゃんの髪の毛をゆっくりとく。サラサラで柔らかい。夏美ちゃんが気持ちよさそうに目を細める。 「じゅるっ、ちゅっ、ちゅっ、んっ、じゅっ、はむっ、んっ、ちゅっ」 一生懸命たどたどしい動きの夏美ちゃん。すごい光景だ。ベンチに座った僕に四つん這いになって僕の股間に顔を埋める夏美ちゃんの頭。スカートから白い足がのぞく。太ももが悩ましげにすりあわされ、小ぶりなお尻が揺れる。 「んっ、ちゅっ、じゅる、れろっ、じゅるっ、んっ、はむ、ちゅっ」 たどたどしく動く舌と手に射精感が高まる。 「夏美ちゃん、でるっ」 剛直を口にしたまま上目ずづかいに僕を見上げる夏美ちゃん。興奮に濡れた視線。 「んっ、ちゅっ、いいでふ、じゅるっ、だひへふだはい、ちゅっ」 夏美ちゃんが動きをはげしくする。 もうだめだ。出る。 僕は思わず夏美ちゃんの頭を押さえた。そのまま射精する。 「んっ!?んんんんん!?」 苦しそうにむせぶ夏美ちゃん。射精の快感に腰が砕けそうになる。何度も精液が飛び出る感覚。 「んっ、んんんんっ、じゅっ、こくっ、んっ、ごくっ、こくっ」 喉を鳴らす夏美ちゃん。射精が終わって僕は夏美ちゃんの頭を押さえていることに気がつく。 「ご、ごめん夏美ちゃん」 手を離すが、夏美ちゃんは剛直の先端を口にしたまま離さない。 「んっ、こくっ、ごくっ」 一生懸命喉を鳴らす夏美ちゃん。 「いいよ夏美ちゃん、飲まなくても」 夏美ちゃんはかすかに首を横に振る。結局最後の一口まで飲み込んだ。夏美ちゃんはゆっくりと口を離した。 「夏美ちゃんありがとう。その、すごく気持ち良かったよ」 夏美ちゃんが嬉しそうに僕を見上げる。僕は夏美ちゃんの髪をすいた。くすぐったそうに笑う夏美ちゃん。 予鈴が鳴る。 僕たちは顔を見合わせた。夏美ちゃんは寂しそうに笑った。僕も寂しかった。 キスをして僕たちは屋上を後にした。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 次は体育だ。 夏美ちゃんと別れた僕はダッシュで着替え体育館に向かう。走りながら夏美ちゃんの事を考えてしまう。 僕は間違いなく夏美ちゃんにおぼれている。そしておぼれてもいいと思ってしまった。いつの間に僕はこんなに自制のきかない昔の自分に戻ってしまったのだろう。いや、自制がきいていないと自覚している分、昔よりもたちが悪い。 梓の事が脳裏に浮かぶ。大丈夫だろうか。 体育館で貴重品袋の口を開けた。この高校は授業中以外なら携帯を使用してもよい。財布を入れ携帯も入れようとしたとき、メールに気がつく。 メールを開く。春子からだ。 『梓ちゃんが家を飛び出しました。今探しています。学校で見たら連絡してください』 不吉な予感。梓は大丈夫だろうか。 僕と夏美ちゃんが一緒にいるのを見て走り去った梓。頭を離れない梓の言葉。 兄さんは結局私を一人にするんだ。ゆるさない。死んでしまえ。 梓。信じて欲しい。僕は二度と梓を一人にしない。 僕は自嘲した。今の僕は夏美ちゃんに夢中になっている。説得力が全く無い。 「危ない」 顔をあげた瞬間、バスケットボールが目の前にあった。 反射的に顔をひねり避ける。頬をボールがこする感覚。 「大丈夫かいな」 耕平が寄ってくる。いけない。授業中にぼんやりしている。 「大丈夫だ。すまない」 他のクラスメイトも寄ってくる。 「大丈夫か?血が出てるぞ」 体育の教師が言う。 頬を何かが伝わる感触。手の甲で拭うと、微かに血が付いていた。避けきれなかったのか。 「大した傷じゃないが一応保健室に行ってこい」 僕は大人しく頷いた。今の僕だと迷惑をかけるだけだ。 保健室に向かいながら深呼吸する。心の雑音を消す作業。自制をきかせる。 ノックをして保健室に入る。誰もいない。席を外しているようだ。僕は治療道具を勝手に拝借することにした。薬品の入っている棚に近づく。棚を調べていると、ドアが開く音がした。保健室の先生が帰ってきたのだろう。 「兄さん」 546 三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2009/12/19(土) 02 06 25 ID XOuT2u+2 僕を呼ぶ声に素早く振り向いた。聞き覚えのある声。僕を兄さんと呼ぶのは一人だけ。 梓。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 梓は幽鬼のように立ち尽くしていた。保健室のドアを閉め鍵を閉める。鍵の閉まる小さな音が耳を穿つ。 立ち尽くす梓の髪はぼさぼさだった。そういえば今日も髪をといていない。 僕は体の力を抜き重心を落とす。 梓が踏み込んでくる。僕の胸倉に伸びてくる手を払う。霞んで見える速さ。 僕は一歩下がって間合いを取る。 梓は本気だ。 無言で間合いを詰める梓。 制服をつかめば破れるかもしれない。のばしてきた手をつかんで倒すしかない。 僕は梓の手をつかんだ。はずだった。 つかんだと思った瞬間、僕の手は空を切った。次の瞬間、梓は僕の胸倉を掴んでいた。 視界が反転する。背中から叩きつけられた衝撃に息が詰まる。かろうじて受け身をとった僕に梓が馬乗りになる。 梓の膝が僕の腕を抑える。はねのけようとした瞬間、梓の肘が僕の喉を突く。体重の乗った一撃。 息が詰まる。むせる僕の腕をつかむ梓。何かを僕の腕に巻きつける。 「暴れないで兄さん」 僕の肘を容赦なくねじる梓。はねのけようとすると腕に何かが引っかかる。ロープが僕の両腕を背中で巻き付けられている。 既視感。春子。 「兄さん、ほっぺた大丈夫?」 梓が僕の顔を覗き込む。梓の顔には何の感情も浮かんでいない。ただ双眸が暗い光を放つ。白い指が僕の頬の傷をなぞる。微かな痛み。 「痛そうね」 梓の指が傷口に爪を立てる。傷口を広げる白い指。 「痛い?」 そう言いながらも梓はさらに傷を抉る。頬に文字通り抉られる痛みが走る。執拗に僕の傷口を抉る白い指。あまりの痛みに額に汗が浮かぶ。 梓は無表情に僕を見下ろしていた。 「ねえ。どうなの?痛いの?」 さらに傷口を梓の指が抉る。神経を直接削られるような痛み。 僕は痛みをこらえて梓を見上げた。 「兄さんすごいわね。微動だにしないなんて」 梓は飽きたように傷口から手を離す。梓の手は僕の血にまみれていた。血に濡れた白い指をなめる梓。その仕草が妙に艶めかしい。 顔を近づけてくる梓。僕は顔をそむけた。梓は犬の様に僕の傷を舐めた。 「ぺろっ、ちゅっ、んっ」 傷口に梓の舌が這う。熱い。さらに顔をそむけようとすると、梓の両手が僕の頭をつかむ。熱い両手。 「ちゅっ、兄さん、動かないで、んっ、ぺろっ」 熱心に僕の傷を舐める梓。その姿がお昼休みの夏美ちゃんにかぶる。 「んっ、兄さん、ちゅっ、いま、ちゅっ、夏美の事、れろっ、考えたでしょ」 梓が囁く。背筋に悪寒が走る。 顔をあげ僕を見下ろす梓。強い感情を放つ瞳。 「夏美と寝たんでしょ」 梓の顔がゆがむ。 「私を追わないで」 僕は梓を下から見上げる。まっすぐに睨む梓の視線を受け止めた。 「そうだ。僕は夏美ちゃんといた」 梓が青ざめる。 「そう。本当なんだ」 「梓。何であんな事を」 梓の唇を見る。僕を押し倒しキスした唇。 「あの女が私の兄さんに手を出すからよ」 頬に痛みが走る。梓が僕の頬を力いっぱい叩いた。 「兄さんは私のものなのに」 僕は首を横にふった。 見下ろす梓の顔色が変わる。 「僕は誰のものでもない」 「兄さんは私のものよ。誰にも渡さない」 梓の指が僕の唇にふれる。そのまま僕の唇をなぞる梓の指先。ふれる白い指が熱い。 「兄さんはまた私を一人にするんだ」 「梓を一人にしない」 547 三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2009/12/19(土) 02 08 18 ID XOuT2u+2 「嘘」 梓は僕の唇から指を離す。その指をかみしめる。 「兄さんは夏美に夢中になって私を一人にする。だってそうでしょ?兄さんは夏美が好きなんだもの」 梓の目尻に涙がたまる。 「どうなの。夏美が好きなんでしょう」 涙が梓の頬を伝う。 「そうしたら私なんてどうでもいいんでしょ」 梓の涙が僕の顔に落ちる。傷口にしみる。 「確かに僕は夏美ちゃんに惹かれている。夢中になっているといってもいい」 僕の正直な気持ち。 「でも、それと梓を大切に思う事は全く別の事だ」 梓を見上げる。涙でぐちゃぐちゃになった表情は読み取れない。 「僕の妹は梓だけだ」 僕の本心。梓は涙でぐちゃぐちゃの顔を近づける。 そのままお互いの唇が触れる。 子供の時を思い出す。梓はよくキスをねだった。 梓は顔をあげた。何を考えているのか分からない無表情。悲しいのか、怒っているのか。僕には分からない。 「思い知らせてあげる」 立ち上がり梓は背を向けて走り出した。保健室のカギを開け出て行った。 僕はその背中に声をかけなかった。かける言葉が無かった。 何でこんな事をするのだろう。また家事を押し付けられるとでも思っているのだろうか。それとも、僕が梓に構う事が無くなるのを恐れているのだろうか。 昨日思いついた考えが脳裏に浮かぶ。梓は僕を独占したいと思っているのだろうか。 考えるだけでもおぞましい発想。妹が兄に懸想しているなど。 夏美ちゃんは大切な恋人で、梓は大切な妹。 梓はそれを分かってくれない。 「ロープぐらい外して欲しいな」 僕は立ち上がり、刃物を探し始めた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 私は分かってしまった。兄さんは私のものでなくなった。 兄さんは私の鎖を抜けたのだ。 ついこの前まで私を追いかけてくれたのに。私のそばにいてくれたのに。 元凶の女の顔が脳裏に浮かぶ。 思い知らせてやる。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 帰りのホームルーム。 私はぼんやりとお兄さんの事を考えていた。 お昼休みの事を思い出す。顔が熱くなる。私は何て事をしてしまたんだ。 お兄さんのを…。 唇にふれる。この口でお兄さんに…。 最後は全部飲みこんで。 あまりの事に頭が爆発しそうになる。 私はため息をついた。私ってこんなにスケベだっけ。ていうかあれだ。お兄さんと寝たときのがすご過ぎたんだ。 あの夜、お兄さんは私を抱いた。思い出すだけで体が熱くなる。 お兄さんの逞しい腕に組み伏せられ、犯される感覚。 お兄さんの腰の動きが、痛いのに快感に変わる。 お兄さんが私の中に放ち、染められる感触。 私、初めてなのに、何度もイって。イかされて。 ちょっと乱暴にされるのが良くて。 いけない。私は頭を振る。今の私はどう考えても変態です。本当にありがとうと言ってしまいたい。 「なつみー」 クラスメイトの声にびくりと体が震える。いつの間にかホームルームは終わっていた。 「梓のおにーさんが呼んでるよー」 私は飛び上るように立ち上がった。教室の入り口でお兄さんが控えめに手を挙げた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 548 三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2009/12/19(土) 02 11 54 ID XOuT2u+2 お兄さんが迎えに来てくれたという青春ヒャッホーというシチュエーションとは裏腹に、話は重かった。 帰り道を歩きながらいろいろ話をした。 梓がお兄さんに襲いかかった事、ハル先輩と話しあいの結果、私を家まで送る事にしたなどと、お兄さんは淡々と語った。 なぜ、お兄さんが私を送る理由は口にしなかったが、聞かなくても分かった。 梓が私を襲う可能性があるからだ。 信じられないという気持ちと、やっぱりという気持ちが半々だった。 「お兄さんはこの後どうするんですか?」 「梓を探す」 お兄さんは静かに答えた。お昼までは無かった頬の白いガーゼが痛々しい。 「あの、私もついていっていいですか」 私は無駄だと分かっていても尋ねずにいられなかった。 「ありがとう。でも僕と春子だけで大丈夫だよ」 お兄さんは微笑んだ。この笑顔を見ると何でもいいから力になりたいと思ってしまう。 「あの、もし梓が私に襲いかかっても、別にいいです。守って欲しいなんて言いません。足手まといなら見捨ててもらってもいいです」 私は頼みこんだ。せめて傍にいたい。 「夏美ちゃん」 お兄さんが私の頭にポンっと手を置いた。大きくて温かい手。 「夏美ちゃんに怪我をしてほしくないし、梓が夏美ちゃんを怪我させるのも望まないよ」 私は顔を赤くした。恥ずかしい。私はお兄さんの事どころか自分の事しか考えていないのに、お兄さんは私と梓の事も考えている。 恥ずかしいという気持ちと、醜い感情が私の心を渦巻く。 梓はお兄さんの妹で、私はお兄さんの恋人なのに。比べる意味なんて無いのに嫉妬してしまう。 私の頭を優しくなでるお兄さんの手。梓はずっとこの手を一人占めしてきたんだ。 お兄さんは梓の事をどう思っているのかな。梓はお兄さんの事をどう思っているのかな。 梓はお兄さんの事を嫌っていると思っていた。でも今回の事を見る限り、実はお兄さんの事を大好きなのではないだろうか。というかそれ以外考えられない。 それにそう考えるとつじつまが合う事がたくさんある。 梓はお兄さんの事をシスコンといつも罵倒していた。それなのにいつもお昼にお弁当を持ってこさせていた。そんな姿を見ているから、私たちはお兄さんの事をシスコンと思っていた。お兄さんも強く否定することはなかった。ただ苦笑するだけだ。 だからお兄さんはあまりもてない。背は高いし、細身に見えて引き締まっているし、料理もできて優しい。顔もけっこう格好いい。 それでもシスコンという評判は大きなマイナスだ。 梓はわざとそういう評判が立つように仕向けていたのではないか。お兄さんを独占するために。 私はその仮定に背筋が寒くなった。今回の梓の行動を見るに、仮定ではすまない気がする。 もしかしたら、梓はお兄さんを兄として好きなのではなくて、お兄さんの事を一人の男性として愛しているのではないだろうか。 特に昨日の梓の行動はブラコンの域をはるかに超えている。そう考えると梓に恋人がいないのも納得する。 梓はもてる。美人で、抱きしめると折れそうな細い体。何というか、見た目だけは征服欲を喚起させるような女の子だ。本人にそんな気は一切ないらしいが。 私は単にお兄さんを見て男に幻滅しているのかと思っていた。でも、もし梓がお兄さんを愛しているなら、恋人など作るはずが無い。 そして私は恐ろしい考えに行きついた。お兄さんは、梓の気持ちに気が付いているのだろうか? 今回の梓の行動は、高校からの付き合いの私でもこんな推測をしてしまうぐらいわかりやすい行動だ。ずっと一緒にいたお兄さんが気がつかないはずが無い。 「あの、お兄さん」 聞いてはいけない。 「質問したいことが、あるんです」 足を止める私たち。まだ間に合う。別の質問を。 でも、そんな事は無理だ。 「お兄さんは、梓がお兄さんの事をどう思っていると思いますか」 お兄さんは無言。 「その、梓ってもしかしたら、お兄さんの事」 一人の男性として愛しているんじゃ。 私がその言葉を紡ぐ前にお兄さんは口を開いた。 「梓は昔から寂しがり屋だった」 お兄さんの言葉が独白のよう。 「だから今回も僕がそばにいなくなると思っているんだと思う」 私を見るお兄さん。強い視線。 「僕は梓の兄で、梓は僕の大切な妹だ」 やっぱり聞くんじゃなかった。 お兄さんの言葉は、自分に言い聞かせるように聞こえた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「ここで大丈夫です」 私たちはマンションの入り口で足を止めた。 「送ってくれてありがとうございます」 549 三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2009/12/19(土) 02 13 51 ID XOuT2u+2 私はお兄さんに微笑んだ。笑顔がひきつってないか心配だ。 「夏美ちゃん」 お兄さんが私を見る。誠実な瞳。 「今回は迷惑をかけて本当にごめん」 私は目をそらしたくなった。 「夏美ちゃんが知りたい事もたくさんあると思う。申し訳ないけど、もう少しだけ時間が欲しい。僕のわがままで本当にごめん」 お兄さんは全部分かっていた。 私はバカだ。誰だって隠したいことの一つや二つある。それなのに、私のわがままで聞いても仕方が無い事を聞いて。 今、一番お兄さんを信じないといけないのは私なのに。 「お兄さん」 私はうつむきながら言った。お兄さんの顔を見られない。 「わがまま言ってすいません。私、お兄さんの事を信じています」 お兄さんは今どんな表情をしているのかな。 「ありがとう」 私は顔をあげた。お兄さんは微笑んでいた。嬉しそうでちょっと恥ずかしそうな笑顔。 見ているだけで顔が熱くなる。 「そ、それじゃさよならです!」 私は背を向けてマンションに入った。私のばか。 一気に階段を駆け上り、ドアの鍵を開ける。家に入り鍵をかけた。そのままドアを見つめる。もちろんお兄さんは見えずに、ドアが見えるだけ。 会いたいな。別れたばかりなのにそう思ってしまう。 「お兄さん。会いたいです」 ため息をついて振り向いた。 そこに梓がいた。冷めた表情で、瞳だけは激情を湛えて私を見ていた。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/hachinai_nanj/pages/2046.html
マウンド焦がす熱投 前編 最終更新日時 2024/05/23 00 24 41 このページを編集 【恒常化】2021/03/01(月) 12 00 ~ 【ボーナス期間】2021/03/01(月) 12 00 ~ 2021/04/08(木) 12 59 2022/02/21(月) 12 00 ~ 2022/03/08(火) 16 59 2022/08/09(火) 17 00 ~ 2022/08/23(火) 12 59 2023/07/01(土) 00 00 ~ 2023/07/18(火) 12 59 2024/05/22(水) 17 00 ~ 2024/06/07(金) 12 59 チャプターの時期 2年生編 7月下旬 チャプター開放条件 『?』 メイン報酬 画像 アイテム名 備考 おこづかい 【恒常】累積報酬で3000獲得できる【期間限定】累積報酬で7000獲得できるおこづかいがどんなアイテムかについては「部費・おこづかい」を参照。 絆の記憶(極) 【期間限定】累積報酬で3個獲得できる絆の結晶(極)の交換には15個必要 + 2021年3月開催時のメイン報酬 2021年3月開催時のメイン報酬 画像 アイテム名 備考 球春祭コイン【2021前半】 【期間限定】累積報酬で400枚獲得できる購買部で各種アイテムに変換できる 絆の結晶(極) 【期間限定】球春祭コイン【2021前半】の変換で2個獲得できる※このイベントだけで必要量の球春祭コインを集めることは不可能 初心者の方の優先度 【難易度】C5~B5(恒常ステージ)、E5~B1(期間限定ステージ) 【オススメ度】オススメ ボーナス期間中はおこづかいを大量に手に入れるチャンス イベント概要 本イベントのStage1~Stage4と累計報酬(~140万pt)は恒常開催。 Bonus1~Bonus4と累計報酬(150万pt~400万pt)は開催期間が限られている。 + 球春祭コイン【2021前半】について(現在は入手不可) 球春祭コイン【2021前半】について(現在は入手不可) ①本イベントを含む以下のイベントにて球春祭コイン【2021前半】:を入手 期間 入手方法 獲得枚数 3/1~4/8 メインマッチ『マウンド焦がす熱投 前編』(本イベント) 400枚 3/1~3/22 イベントマッチ『狙えホームラン!球春祭チャレンジ花&蝶』 ドロップ 3/5~4/8 メインマッチ『マウンド焦がす熱投 後編』 400枚 3/12~3/24 メインマッチ『先駆ける夏の球友』 400枚 3/15~3/29 メインマッチ『そしてまた走り出す』 400枚 3/18~4/1 メインマッチ『勇気を拾う時』 400枚 ↓ ②球春祭コイン【2021前半】:を購買部 アイテム変換で絆の結晶(極):などに変換 + 交換ラインナップ 交換ラインナップ 画像 アイテム・選手 必要数量 交換可能回数 絆の結晶(極) ×1 890 2回 絆の結晶(超) ×2 89 1回 絆の結晶(大) ×3 39 3回 絆の結晶(中) ×5 9 10回 絆の結晶(小) ×10 9 15回 ソウルストーン(花) ×3 39 5回 ソウルストーン(芽) ×15 9 10回 ソウルストーン(種) ×30 9 10回 ベアマックス(大)【各属性】 ×1 9 99回 部費 ×1000 1 ∞ イベント構成 恒常部分 ステージ名 相手評価 初回報酬 消費元気 対戦ボーナス ドロップアイテム Stage1 C5 ×1 7 +***.0% × × Stage2 B1 ×1 10 +***.0% × × Stage3 B3 ×1 +***.0% × × Stage4 B5 ×1 +***.0% × × × 期間限定部分(4/8まで) ステージ名 相手評価 初回報酬 消費元気 対戦ボーナス ドロップアイテム Bonus1 E5 ×1 5 +115.0% ×3 Bonus2 D3 ×1 7 +220.0% ×2 × × Bonus3 C3 ×1 +270.0% × ×1 Bonus4 B1 ×1 10 +460.0% ×1 × 獲得評価pt計算式 試合内容(恒常ステージ・ボーナスステージ) 評価pt 単打 二塁打 三塁打 HR 四球 盗塁 打点 猛打賞 奪三振 失点 三振 エラー 被安打 被HR 勝利 引き分け 敗北 50 100 150 300 10 50 300 300 50 -500 -25 -100 -50 -300 7000 6000 5000 (評価pt)=(試合内容の合計)×(1+対戦相手ボーナス) Q.彡(゚)(゚)「んで、どのステージがおすすめなんや?」 A.(´・ω・`)「 BonusステージがあるうちはBonusステージの8割程度は勝てるステージを繰り返し挑戦すると良いよ。 」 累積報酬 画像 名前 恒常時個数 Bonus個数 ベアマックス(大)【花】 0→11 おこづかい 3000 7000 球春祭コイン【2021前半】 400→0 絆の記憶(極) 3 コメント 名前
https://w.atwiki.jp/rikku0805/pages/174.html
カセドリア連合王国軍アマテラス~精錬の書~ 第11話 光と闇の狭間 前編 ~エスセティア大陸・始まりの大地近郊~ 張文遠と名乗った兵士が斬りかかってきた。 鈍重そうな見かけとは違い、意外と俊敏な動きだった。 しかしそれは、他の奴らが見たらの話だ。 俺達から見れば、まるでスローモーションの様にしか見えなかった。 迫ってくるヴァルディッシュの柄を掴むと、そのまま押し返した。 軽く押したつもりだったが、かなりの距離を飛んでいった。 そしてそのまま、山の岩壁にぶつかった。 岩壁にぶつかる事によって、ようやく止まったという感じだ。 張文遠は岩壁にぶつかったまま頭を垂れている。 俺は手に残っているヴァルディッシュを奴の頭の横に向かって投げた。 ヴァルディッシュは狙い違わず、奴の顔のすぐ横に突き刺さった。 これだけ力の差を見せれば、どんな馬鹿でも逃げていくだろう。 俺はそう思い、奴に背を向けた。 しかし少し歩いた所で、信じられない言葉を耳にした。 張「…待て。」 振り返ると、奴はヴァルディッシュを持って立っていた。 ……こいつは馬鹿か、それとも死にたがりなのか? ヒ「あれだけ力の差を見せ付けたのに、何故お前は立ち向かってくる? …何故だ?」 張「…俺は、スモーと約束した。 スモーが悪の道に走ろうとしたなら、俺がスモーを止めると。 スモーは魔物を統べる者、ブルーヘクサとなって世界に恐怖と闇を齎している。 俺はスモーとの約束を果たす為に、このまま退く訳にはいかんのだ!」 スモー、スモーと言うから誰かと思ったが、ブルーヘクサの名が出てようやく誰の事かわかった。 だがこの計画を止めさせるわけには行かない。 この計画に込めた俺達の思いの為にも。 ヒ「計画を止めさせるわけには行かない。 いや、例えお前がブルーの所に行っても止められない。 あいつはお前を泣きながら斬る事になるだろう。 それによってブルーに迷いが生じてもらっちゃ困る。 だからお前は、今ここで俺が倒す!」 俺は脚に力を溜め、張文遠目掛けて思い切り突進した。 張文遠も俺に対しストライクスマッシュを仕掛けてきた。 俺と張文遠は空中でぶつかった。 そして俺の勢いの方が勝っていたらしく、張文遠は弾かれた。 張「まだまだッ!」 しかし張文遠は、着地と同時に再度俺にストライクスマッシュを仕掛けてきた。 ヒ「弾けろ、インテンスファイッ!」 俺は両手に気を集中させ、それを張文遠に向けて放った。 張文遠は俺に触れる事無く弾き返され、地面に仰向けに倒れた。 再度立ち上がって俺に攻撃を仕掛けようとするが、足元がふらついている。 さすがにダメージが蓄積している様だ。 ヒ「おいおい、俺はまだ半分も力をだしてないぞ?」 張「……ッ!」 俺の言葉が気に入らないのか、張文遠は俺を睨みつけて来た。 張「武人の勝負に手加減は無用。全力で来いッ!」 ……よっぽど死にたいらしいな。 ヒ「…良いだろう。御望み通り本気を出してやろう。」 言い終わると同時に、俺は自分の気を全て右手に集中させた。 張文遠もヴァルディッシュを構えた。 しかしその構えは、今までの構えとはまったく違っていた。 あれはブルーの…。 張「のーくんでぃ…俺に力を。」 俺は右手に気を集中させたまま、張文遠に向かっていった。 張文遠はあの構えのまま、微動だにしなかった。 俺の体がヴァルディッシュの射程圏内に入った瞬間、張文遠が動いた。 それと同時に、俺も気を張文遠に向けて放った。 張「スモーキー槍術奥義・破槍ッ!」 ヒ「我気の前に平伏せ、プラナスマッシュッ!」 俺の気と張文遠のヴァルディッシュがぶつかった。 しかしぶつかると同時に、張文遠のヴァルディッシュは粉々に砕けてしまった。 そしてそのまま俺の気が張文遠を直撃した。 手応えは十分。 張文遠の体の中に俺の気が入り込んでいく。 ヒ「それなりに楽しかったぜ。安らかに……眠れ。」 言い終わると同時に、俺の気が張文遠の体の中で爆発した。 張「武に生きた我人生に一片の悔い無しッ!」 それだけ言うと、張文遠は力無くその場に倒れた。 アト「やっぱり我慢できずに殺しちゃったのかしら?」 振り返ると、アトラクナクアが立っていた。 相変わらず気配を掴みにくい奴だ。 ヒ「計画の邪魔をしなければこうなる事も無かった。 全てはこいつが招いた事だ。」 アト「…そうね。もしもここで倒さなかったら、ブルーは計画を止めていたかもね。」 アトラクナクアは俺を見て話していない。 不審に思い振り向くと、張文遠が立っていた。 そんな…馬鹿な?! アト「安心しなさい。…もう死んでるわ。」 近づいてみると、アトラクナクアの言うとおりだった。 張文遠は立ったまま息絶えていた。 ヒ「死して尚、立ち上がってくるか…。 やはりここで倒しておいて正解だったな。 もしもブルーだったら、計画の中止を言いかねない状況だ。」 ブ「たかが戦友一人の死で、この俺が計画を辞める訳がないだろう。」 何時の間にか、ブルーは俺の横に立っていた。 ヒ「本当にそうか?」 ブ「当たり前だ。それにこいつも理解していただろう。 今の俺を止められるのは…、あいつしか居ないってな。」 本拠地に戻ろうとしたが、ブルーは動かなかった。 俺がブルーを呼ぼうとするのを、アトラクナクアが制止した。 ああは言っていたが、ブルーも俺達も一人の人間に変わりはない。 俺はアトラクナクアと二人で本拠地へ戻っていった。 後編は年末までかかるかも byスモーキー
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/707.html
昨日の夜、明日の予定についてハルヒから電話があり、それによるとどうやら今日は午後三時に駅前集合らしいのだが、 昨日と同じ轍は踏むまいと一人意気込んだ俺は、二時間も前に目的地へたどり着きはや二時間近くが経過していた。 なんなんだろうね。 やることなすこと全て裏目に回っちまうのは俺がそう望んでるからなのか? だとしたら俺は相当なMだな。 いやそんなことは決してないが。 と、一人黙々と頭の中で自問自答を繰り返していると、何やらけったいなリュックを背負った団長様がようやくご登場なすった。 時計を見ると時刻はぴったり三時。 ギリギリ遅刻ではないようだが、今日はやけに時間通りだなハルヒ。 「遅刻じゃないんだからどうでもいいでしょそんなこと。それよりちゃんと昨日言った通りにしてきたの?」 「ああ、昼は抜いてきたし、ゴザも持ってきた。ほれ」 そう言って俺は手にさげてた袋を見せた。まあ昼は多少入れてきたんだがな。 「うん、いい感じね。それじゃ行くわよ」 「行くって何処に?」 「いいから。ついてくればわかるわ」 そう言ってハルヒは俺の手をとり走り出した。 多少腹に入れてきたとは言っても俺はまだ全然空腹なんだ。 そんなに早く走られたら今にも倒れちまう。 などとは口にせず、結局俺はハルヒとともにバスに乗って目的及び目的地不明の旅に出ていた。 バスの中でリュックの中身は何なんだ? とハルヒに訊いてみたものの、 「着いたらわかるわ」 と、一蹴された。一体何なんだろうね。 宇宙人を呼び出すためとか時間旅行するためとか超能力を目覚めさせるためとかそういった装置でないことを切に願う。 そんなことしなくても十分間に合ってるからな。 それに宇宙人にも時間旅行にも超能力者にももう飽き飽きしてきたところだ。 これ以上新規メンバーが増えても俺は覚えてやらんぞ。 そう思うのも俺は最近またもやけったいな問題に巻き込まれつつあるからであった。 そういった諸事情も含めて、これから目的も目的地も依然として定かでない旅をしなければならないのかと思うと俺は自然と憂鬱気分になっていた。 それが顔に出ちまったのか、ハルヒが不安そうな面もちで訊いてきた。 「もしかして今日都合悪かった?」 「いや、そういうわけじゃないんだ。ちょっと考え事をな」 「……そう」 納得したのか、ハルヒはそれだけ聞いてまた窓の外を眺め始めた。 バスにゆられること十分。ようやく目的地付近のバス停にたどり着いたようだ。 俺たちがたどり着いたそこは、なんというか普段はめったに来ない郊外であり、 ここいらにある高校生の男女二人が遊べるようなスポットと言えば小高い丘の上に造られた公園くらいなもんで、 その公園もだだっ広いだけでこれといったアトラクションは何一つないといった有り様だ。 だが、どうやらハルヒはその公園に行くつもりらしく、俺の憂鬱な気分は空腹という燃料も加わり最早どうしようもなく加速の一歩を辿るのみであった。 「ほら! もっとシャキッとしなさいよ。公園についたらすんごくおいしいご飯にありつけるわよ!」 俺が知らない内にあそこの公園の近くに何か飲食店でもできたのだろうか。 ハルヒがこんだけ絶賛しているのだからさぞかしおいしいに違いない。昼を抜いてこいという指示にも合点がいく。 少しだけ楽しみになってきた。 徒歩で移動すること約二十分、ようやく俺たちは丘の頂上である公園にたどり着いた。 そこはやはりと言っていいか、人の姿はまばらだった。 そんなことより俺はもう腹が減ってどうにかなりそうだ、さっさと飯にしようぜハルヒ。 「そうね、あたしももうお腹ペコペコだわ。それじゃ……あそこがいいわね」 と、言ってハルヒはデカデカと公園の隅に陣取っている一本の松の木まで駆けていった。 「うん、ここでいいわね……ちょっと、何ボサっと突っ立ってんの? 早くこっちに来てゴザ広げてちょうだい」 とりあえず言われるがままにした俺だが……何が何だかさっぱり分からん。 俺の昼飯は一体どこにいっちまったんだ? 「何言ってんのよ。目の前にあるでしょ」 目の前ったって……そこいらに転がってる松ぼっくりでも喰えってのか? 「もう、あんた真性のアホね。頭のネジどっかでなくしちゃったんじゃないの?」 こいつに言われると無性に腹が立つが、さっぱりなのも事実だ。俺はおとなしく教えを乞うことにした。 「ああもうアホでも何でも構わん。俺は腹が減って死にそうなんだ。早いとこ何するつもりなのか教えてくれ」 そう聞くとハルヒはニヤリと不適な笑みを浮かべながら背負ってあったリュックの中身を、 「じゃじゃーん!」 という幼稚なかけ声とともに取り出した。 なるほど、そういうことか。 確かに、『敷物』『公園』『木の下』などとこれらのキーワードから導き出される最もありきたりな解答はこれだな。 だがな、相手はあのイレギュラーの申し子ハルヒだ。 よもやこいつがそんなありきたりなことを望んではいるまいと思っていたから、 多少の予測はあったもののそれらの全ては俺の頭の中で五秒も経たないうちに虚しくなっていたのだ。 でもまあ起こっちまったもんは仕方ない。 俺は従順にもハルヒ特製手ずから弁当とやらで腹を満たすことにした。 万事に於いて万能であるこいつが作ったんだ。おそらく本当にすんごくおいしいに違いない。 ああもう御託はいいからさっさと喰おう。 俺はとりあえず俺に喰ってくれと言わんばかりにいい感じの色をかもし出している唐揚げを箸でつまみ上げ自分の口に持っていこうとした。 パクッ 「うん、自分で言うのも何だけどやっぱりおいしいわ!」 唐揚げ君は俺の口に触れることすらできずにハルヒの胃袋へと消えていった。 俺は唐揚げ君のそんな無念を晴らすべく、ハルヒに徹底的に抗議してやるつもりだったのだが……何だこいつ? ハルヒは「私を食べてはぁと」とばかりの食べごろ完熟トマトよろしく顔を真っ赤にしていた。 自分でやっといて何恥ずかしがってんだかなとは思ったものの、トマトさながらに顔を真っ赤にするハルヒは目眩がするほど可愛かった。 「な、なにジロジロ見てんのよ! あんたもさっさと食べたら? すんごくおいしいわよ」 食べようとはしたものの誰かさんによって見事に阻止されちまったんだがな。 とは言わず、空腹の絶頂にあった俺は今度こそ唐揚げ君を俺のお口に導くことに成功した。 「……」 うますぎて声も出なかった。いや、マジで。 そんな俺の沈黙に見かねたハルヒは、 「……どう? もしかして口に合わn」 俺はハルヒの言葉を遮り、 「いやそんなことはない。ハルヒ、お前この唐揚げで店開けるぞ。間違いない」 俺のオーバーなリアクションにハルヒはまた顔を赤くしながら、 「な、なにそんなに大げさに言ってんのよ! ……まあでも嬉しいわ。ほらもっと食べなさいよ。たくさん作ってきたんだから」 と、まあそんな感じの会話を混ぜつつ俺は海原雄三も舌を鳴らすであろうハルヒ弁当で腹を十分に満たした。 弁当を食べ終えた後、不思議探索か何かでもやるのかと思っていたがそうではなかった。 俺とハルヒは他愛もない世間話を繰り返すだけで、ハルヒはそれで満足しているようだった。 ただ、ときたまハルヒがもがもがしていたのは一体何だったんだろうな。 前編4
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/728.html
昨日の夜、明日の予定についてハルヒから電話があり、それによるとどうやら今日は午後三時に駅前集合らしいのだが、 昨日と同じ轍は踏むまいと一人意気込んだ俺は、二時間も前に目的地へたどり着きはや二時間近くが経過していた。 なんなんだろうね。 やることなすこと全て裏目に回っちまうのは俺がそう望んでるからなのか? だとしたら俺は相当なMだな。 いやそんなことは決してないが。 と、一人黙々と頭の中で自問自答を繰り返していると、何やらけったいなリュックを背負った団長様がようやくご登場なすった。 時計を見ると時刻はぴったり三時。 ギリギリ遅刻ではないようだが、今日はやけに時間通りだなハルヒ。 「遅刻じゃないんだからどうでもいいでしょそんなこと。それよりちゃんと昨日言った通りにしてきたの?」 「ああ、昼は抜いてきたし、ゴザも持ってきた。ほれ」 そう言って俺は手にさげてた袋を見せた。まあ昼は多少入れてきたんだがな。 「うん、いい感じね。それじゃ行くわよ」 「行くって何処に?」 「いいから。ついてくればわかるわ」 そう言ってハルヒは俺の手をとり走り出した。 多少腹に入れてきたとは言っても俺はまだ全然空腹なんだ。 そんなに早く走られたら今にも倒れちまう。 などとは口にせず、結局俺はハルヒとともにバスに乗って目的及び目的地不明の旅に出ていた。 バスの中でリュックの中身は何なんだ? とハルヒに訊いてみたものの、 「着いたらわかるわ」 と、一蹴された。一体何なんだろうね。 宇宙人を呼び出すためとか時間旅行するためとか超能力を目覚めさせるためとかそういった装置でないことを切に願う。 そんなことしなくても十分間に合ってるからな。 それに宇宙人にも時間旅行にも超能力者にももう飽き飽きしてきたところだ。 これ以上新規メンバーが増えても俺は覚えてやらんぞ。 そう思うのも俺は最近またもやけったいな問題に巻き込まれつつあるからであった。 そういった諸事情も含めて、これから目的も目的地も依然として定かでない旅をしなければならないのかと思うと俺は自然と憂鬱気分になっていた。 それが顔に出ちまったのか、ハルヒが不安そうな面もちで訊いてきた。 「もしかして今日都合悪かった?」 「いや、そういうわけじゃないんだ。ちょっと考え事をな」 「……そう」 納得したのか、ハルヒはそれだけ聞いてまた窓の外を眺め始めた。 バスにゆられること十分。ようやく目的地付近のバス停にたどり着いたようだ。 俺たちがたどり着いたそこは、なんというか普段はめったに来ない郊外であり、 ここいらにある高校生の男女二人が遊べるようなスポットと言えば小高い丘の上に造られた公園くらいなもんで、 その公園もだだっ広いだけでこれといったアトラクションは何一つないといった有り様だ。 だが、どうやらハルヒはその公園に行くつもりらしく、俺の憂鬱な気分は空腹という燃料も加わり最早どうしようもなく加速の一歩を辿るのみであった。 「ほら! もっとシャキッとしなさいよ。公園についたらすんごくおいしいご飯にありつけるわよ!」 俺が知らない内にあそこの公園の近くに何か飲食店でもできたのだろうか。 ハルヒがこんだけ絶賛しているのだからさぞかしおいしいに違いない。昼を抜いてこいという指示にも合点がいく。 少しだけ楽しみになってきた。 徒歩で移動すること約二十分、ようやく俺たちは丘の頂上である公園にたどり着いた。 そこはやはりと言っていいか、人の姿はまばらだった。 そんなことより俺はもう腹が減ってどうにかなりそうだ、さっさと飯にしようぜハルヒ。 「そうね、あたしももうお腹ペコペコだわ。それじゃ……あそこがいいわね」 と、言ってハルヒはデカデカと公園の隅に陣取っている一本の松の木まで駆けていった。 「うん、ここでいいわね……ちょっと、何ボサっと突っ立ってんの? 早くこっちに来てゴザ広げてちょうだい」 とりあえず言われるがままにした俺だが……何が何だかさっぱり分からん。 俺の昼飯は一体どこにいっちまったんだ? 「何言ってんのよ。目の前にあるでしょ」 目の前ったって……そこいらに転がってる松ぼっくりでも喰えってのか? 「もう、あんた真性のアホね。頭のネジどっかでなくしちゃったんじゃないの?」 こいつに言われると無性に腹が立つが、さっぱりなのも事実だ。俺はおとなしく教えを乞うことにした。 「ああもうアホでも何でも構わん。俺は腹が減って死にそうなんだ。早いとこ何するつもりなのか教えてくれ」 そう聞くとハルヒはニヤリと不適な笑みを浮かべながら背負ってあったリュックの中身を、 「じゃじゃーん!」 という幼稚なかけ声とともに取り出した。 なるほど、そういうことか。 確かに、『敷物』『公園』『木の下』などとこれらのキーワードから導き出される最もありきたりな解答はこれだな。 だがな、相手はあのイレギュラーの申し子ハルヒだ。 よもやこいつがそんなありきたりなことを望んではいるまいと思っていたから、 多少の予測はあったもののそれらの全ては俺の頭の中で五秒も経たないうちに虚しくなっていたのだ。 でもまあ起こっちまったもんは仕方ない。 俺は従順にもハルヒ特製手ずから弁当とやらで腹を満たすことにした。 万事に於いて万能であるこいつが作ったんだ。おそらく本当にすんごくおいしいに違いない。 ああもう御託はいいからさっさと喰おう。 俺はとりあえず俺に喰ってくれと言わんばかりにいい感じの色をかもし出している唐揚げを箸でつまみ上げ自分の口に持っていこうとした。 パクッ 「うん、自分で言うのも何だけどやっぱりおいしいわ!」 唐揚げ君は俺の口に触れることすらできずにハルヒの胃袋へと消えていった。 俺は唐揚げ君のそんな無念を晴らすべく、ハルヒに徹底的に抗議してやるつもりだったのだが……何だこいつ? ハルヒは「私を食べてはぁと」とばかりの食べごろ完熟トマトよろしく顔を真っ赤にしていた。 自分でやっといて何恥ずかしがってんだかなとは思ったものの、トマトさながらに顔を真っ赤にするハルヒは目眩がするほど可愛かった。 「な、なにジロジロ見てんのよ! あんたもさっさと食べたら? すんごくおいしいわよ」 食べようとはしたものの誰かさんによって見事に阻止されちまったんだがな。 とは言わず、空腹の絶頂にあった俺は今度こそ唐揚げ君を俺のお口に導くことに成功した。 「……」 うますぎて声も出なかった。いや、マジで。 そんな俺の沈黙に見かねたハルヒは、 「……どう? もしかして口に合わn」 俺はハルヒの言葉を遮り、 「いやそんなことはない。ハルヒ、お前この唐揚げで店開けるぞ。間違いない」 俺のオーバーなリアクションにハルヒはまた顔を赤くしながら、 「な、なにそんなに大げさに言ってんのよ! ……まあでも嬉しいわ。ほらもっと食べなさいよ。たくさん作ってきたんだから」 と、まあそんな感じの会話を混ぜつつ俺は海原雄三も舌を鳴らすであろうハルヒ弁当で腹を十分に満たした。 弁当を食べ終えた後、不思議探索か何かでもやるのかと思っていたがそうではなかった。 俺とハルヒは他愛もない世間話を繰り返すだけで、ハルヒはそれで満足しているようだった。 ただ、ときたまハルヒがもがもがしていたのは一体何だったんだろうな。 前編4
https://w.atwiki.jp/tohoranking/pages/41.html
犬走。動画 第一回 前編 東方Project関連の動画を紹介する企画。後編はこちら 【紹介動画】 2007年3月6日~5月31日に投稿された動画。前半は3月投稿の動画を紹介 【司会進行】 犬走 椛,河城 にとり,アリス・マーガトロイド 紹介された動画 1 東方タグ現最古動画 東方タグ旧最古動画 2 P 3 4 5 P 6 7 8 9 10 11 動画内で使用された動画,BGM VTR BGM1 CM BGM2 音ズレ修正版 sm1090272