約 794,664 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/331.html
欧州評議会:18歳未満の子ども・若者の参加についての閣僚委員会勧告 18歳未満の子ども・若者の参加についての加盟国に対する閣僚委員会勧告CM/Rec(2012)2 2012年3月28日、第1138回閣僚代理会合において閣僚委員会が採択。 原文:英語(PDF) 日本語訳:平野裕二 活用のためのツール子ども参加アセスメントツール(2016年3月;概要)/チャイルドフレンドリー版概要/効果測定指標の概要 耳を傾ける-行動する-変革する:欧州評議会子ども参加ハンドブック――子どものために/子どもとともに働く専門家のために(2020年10月;概要) 目次 セクションI-定義 セクションII-原則 セクションIII-措置参加権の保護 参加の促進および参加に関する情報提供 参加のための空間の創設 閣僚委員会は、閣僚委員会は、欧州評議会規程第15条bの条項に基づき、 欧州評議会の目的が、とくに共通規則の採択によって加盟国間のいっそうの統合を達成することにあることを考慮し、 子どもの権利を保護する、拘束力のある既存の欧州文書および国際文書ならびにとくに以下の文書の効果的実施を確保する必要性を考慮し、 人権および基本的自由の保護に関する欧州条約(ETS No. 5) 子どもの権利の行使に関する欧州条約(ETS No. 160) 改正欧州社会憲章(ETS No. 163) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(CETS No. 201) 子どもの養子縁組に関する欧州条約(改正)(CETS No. 202) 子どもの権利に関する国際連合条約(UNCRC) 障害のある人の権利に関する国際連合条約 以下のことを顧慮し、 子どもの権利および若者政策の分野における欧州評議会の目的 第3回欧州評議会国家元首・政府首班サミット(ワルシャワ、2005年)およびそこで表明されたUNCRCの義務を全面的に遵守する旨の誓約 欧州評議会の若者政策についての加盟国に対する閣僚委員会決議CM/Res(2008)23 1985年から2008年にかけて8回開催された欧州評議会若者担当閣僚会議の関連の結論 欧州評議会のプログラム「子どもたちのために、子どもたちとともに構築する欧州」および子ども参加の促進に関する戦略的重点 欧州評議会の閣僚委員会、議員会議および地方自治体会議が採択した子ども・若者の参加に関連する勧告およびとくに以下の勧告を想起し、 入所施設で暮らす子どもの権利に関する勧告(2005)5 若者のシティズンシップおよび公的生活への参加に関する勧告(2006)14 ポジティブな子育ての支援政策に関する勧告(2006)19 子どもを暴力から保護するための統合的国家戦略に関する勧告CM/Rec(2009)10 民主的シティズンシップ教育および人権教育に関する欧州評議会憲章についての勧告CM/Rec(2010)7 子どもにやさしい司法に関する欧州評議会閣僚委員会指針(2010年) 「自己に影響を与える決定への子どもの参加の促進」に関する議員会議勧告1864(2009) 「地方生活への若者の参加」に関する改正欧州憲章についての欧州評議会地方自治体会議勧告128 (2003) UNCRCおよびとくに以下のように規定する第12条を想起し、 「1.締約国は、自己の見解をまとめる力のある子どもに対して、その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を保障する。その際、子どもの見解が、その年齢および成熟に従い、正当に重視される。 2.この目的のため、子どもは、とくに、国内法の手続規則と一致する方法で、自己に影響を与えるいかなる司法的および行政的手続においても、直接にまたは代理人もしくは適当な団体を通じて聴聞される機会を与えられる。」[1] [1] 国連・子どもの権利委員会(2009)、意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的意見12号も参照。 以下のことを確信し、 意見を聴かれ、かつ真剣に受けとめられる権利は、すべての子ども・若者の人間の尊厳および健康的な発達にとって基本的重要性を有すること 子ども・若者の声に耳を傾け、かつその意見を年齢および成熟度にしたがって正当に重視することは、自己に影響を与えるすべての事柄において子ども・若者の最善の利益が第一次的に考慮される権利ならびに暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いから保護される権利の効果的実施にとって必要であること 子ども・若者が有している能力および子ども・若者が行ないうる貢献は、欧州社会における人権、民主主義および社会的結束を強化するためのかけがえのない資源であること 加盟国政府が以下の措置をとるよう勧告する。 1.意見を聴かれる権利、真剣に受けとめられる権利および自己に影響を与えるすべての事柄に関する意思決定に参加する権利をすべての子ども・若者が行使でき、かつその意見が年齢および成熟度にしたがって正当に重視されることを確保すること。 2.地方、広域行政圏、国および欧州の各レベルにおけるならびに市民社会との、この勧告の実施に関する知識および望ましい実践の交流を奨励すること。 3.この勧告の付属文書委掲げられた原則および措置を、自国の立法、政策および実務で考慮すること。 4.この勧告(付属文書を含む)が翻訳され、かつ、子どもおよび若者にやさしい広報手段を活用しながら、子ども・若者も含めて可能なかぎり広く普及されることを確保すること。 事務局長に対し、本機関の基準設定、協力および評価活動への子ども・若者の参加を奨励すること、ならびに、この勧告を欧州評議会の関連の運営委員会、諮問機関および協議機関ならびに条約機構および監視機構に送達し、それぞれの活動においてこの勧告を考慮するよう慫慂することを指示する。 事務局長に対し、この勧告を、欧州文化条約(ETS No. 18)の締約国であって欧州評議会加盟国ではないすべての国に送達することを指示する。 付属文書 セクションI-定義 この勧告の適用上、 「子ども・若者」とは、18歳未満のすべての者をいう。[2] 「参加」とは、個人および個人の集団が、自己の意見を自由に表明し、意見を聴かれ、かつ自己に影響を与える意思決定に貢献する権利、手段、空間および機会を有し、かつ必要な場合には支援を受けられることをいう。その際、これらの者が表明した意見はその年齢および成熟度にしたがって正当に重視されるものとする。 [2] 18歳は、欧州評議会加盟国における通常の成人年齢である。UNCRCは18歳未満の人々を子どもと定義しているものの、日常的言説では、「若者」という言葉は12歳または13歳よりも年長の人々を指して用いられることがしばしばある。また、13~17歳の人々は「子ども」ではなく「若者」と自認しているのが一般的であり、そのように呼んでほしいと考えていることが多い。統計の運用上は、国連は15~24歳の人々を若者と定義している。この定義は、UNCRCおよび他の関連の国際条約で定められた子どもの法的定義を損なうものではない。 セクションII:原則 自己の意見を自由に表明する子どもまたは若者の権利に、年齢制限はない。就学前の年齢層、学齢層および正規の教育を離れた者を含むすべての子ども・若者は、自己に影響を与えるすべての事柄に関して意見を聴かれる権利を有し、かつその意見は年齢および成熟度にしたがって正当に重視される。 子ども・若者の参加権は、人種、民族、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的もしくはその他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、障害、出生、性的指向またはその他の地位のようないかなる事由に基づく差別もなく、適用される。 子ども・若者の発達しつつある能力という概念が考慮されなければならない。子ども・若者の能力が高まるにつれて、大人は、自己に影響を与える事柄に影響力を及ぼす権利をいっそう享受するよう、子ども・若者に対して奨励するべきである。 より少ない機会しか有していない子ども・若者(脆弱な状況に置かれているまたは複合差別を含む差別の影響を受けている子ども・若者を含む)の参加を可能にするため、特段の努力が行なわれるべきである。 親・養育者は子どもの養育および発達について第一義的責任を有しており、したがって、子どもの参加権を出生時から擁護しかつ醸成するうえで基本的役割を果たす。 意味のある形でかつ真正に参加できるようにするため、子ども・若者に対し、その年齢および状況にふさわしいすべての関連情報およびセルフアドボカシーのための十分な支援が提供されるべきである。 参加が効果的で、意味のある、かつ持続可能なものとなるためには、参加が1回かぎりの出来事ではなくプロセスとして理解されなければならず、かつ、時間および資源に関する継続的コミットメントが必要とされる。 自己の意見を自由に表明する権利を行使する子ども・若者は、脅迫、報復、被害化およびプライバシー権の侵害を含む危害から保護されなければならない。 子ども・若者は常に、その参加の範囲(子ども・若者の関与の限界、参加によって生じることが期待される成果および実際の成果、ならびに、子ども・若者の意見が最終的にどのように考慮されたかを含む)について十分に知らされているべきである。 UNCRC第12条に関する一般的意見にしたがい、子ども・若者の意見が聴かれるすべてのプロセスは、透明かつ情報が豊かであり、任意であり、敬意があり、子どもたちの生活に関連しており、子どもにやさしい環境で進められ、インクルーシブ(非差別的)であり、訓練による支援があり、安全でありかつリスクへの配慮がなされ、かつ説明責任が果たされるようなものであるべきである。加盟国は、この勧告を実施するためのすべての立法上その他の措置にこれらの要件を統合するよう求められる。 セクションIII:措置 参加権の保護 子どもまたは若者の参加権を保護するため、加盟国は以下の措置をとるべきである。 子ども・若者の参加権を可能なかぎり最大限に法的に保護すること(憲法および法令における保護を含む)。 現行の法律、政策および実務において子ども・若者の意見がどの程度聴かれかつ真剣に受けとめられたかを定期的に検証するとともに、これらの検証において子ども・若者自身の評価が正当に重視されることを確保すること。 子ども・若者に対し、苦情申立てを行なうための子どもにやさしい手段ならびに司法手続および行政手続を通じた効果的な保障措置および救済措置(これらの措置を利用する際の援助および支援へのアクセスを含む)を提供するとともに、子ども・若者がこれらの機構を利用できることを確保すること。 権利侵害の被害をとくに受けやすい子ども・若者(親から分離されている者、マイノリティ集団出身者、障害のある者ならびに保健ケア施設および監護施設または矯正教育施設で暮らしている者を含む)を対象とする安全確保措置が設けられていることを確保すること。 自己に影響を与えるすべての事柄について意見を聴かれる子どもまたは若者の権利を制限する法律上の規定または実務慣行を見直し、かつ取り除くよう努めること。 子ども・若者の参加の強化に対して調整のとれたアプローチをとり、かつ意思決定・政策立案体制において参加が主流化されることを確保すること。 子どもの権利オンブズパーソン/コミッショナーのような適切な独立の人権機関がまだ存在していない場合、パリ原則 [3] にしたがってこのような機関を設置すること。 公式な場面および非公式な場面の両方で子ども・若者の参加を支援するため、十分な財源の配分および有能な人材の確保を図ること。 [3] 1993年12月29日の国連総会決議48/134。 参加の促進および参加に関する情報提供 子ども・若者の参加に関する情報の普及および知識の増進を図るため、加盟国は以下の措置をとるべきである。 一般公衆、子ども、若者、親および専門家の間で子ども・若者の参加権に関する意識を高めるための広報・教育プログラムを実施すること。 教員、弁護士、裁判官、警察、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカー、心理学者、養育従事者、矯正教育施設・刑事施設職員、保健ケア専門家、公務員、出入国管理官、宗教的指導者およびメディア従事者の間でならびに子ども・若者団体のリーダーを対象として、子ども・若者の参加に関する専門的能力の増進を図ること。可能な場合、このような能力構築活動に、子ども・若者自身が講師および専門家として関与するべきである。 子ども・若者に対し、子ども・若者の権利ならびにとくに子ども・若者の参加権、参加のために利用できる機会およびこれらの機会を活用するための支援が受けられる先に関する、その年齢および状況にふさわしい情報(文字以外の形式によるものおよびソーシャルネットワーキングメディアその他のメディアを通じてのものを含む)を提供すること。 18歳未満の子ども・若者の権利(参加権を含む)を学校カリキュラムの構成要素にすること。 子ども・若者とともに働くすべての専門家の養成カリキュラムで18歳未満の子ども・若者の権利について教えることを提案すること。 子ども・若者の意見および経験に関する理解の向上を可能にし、子ども・若者の参加を妨げる障壁およびその克服方法を特定する目的で、子ども・若者に関する調査研究、子ども・若者とともに行なう調査研究および子ども・若者による調査研究を奨励すること。 参加権の行使に関する子ども・若者の能力構築を図るため、子ども・若者の間で同世代による支援および情報ネットワークを促進すること。 参加のための空間の創設 自己に影響を与えるすべての事柄に参加するすべての子ども・若者の機会を最大化するため、加盟国は以下の措置をとるべきである。 親・養育者に対し、法律および親訓練プログラムを通じて、子ども・若者の人間の尊厳ならびに権利、気持ちおよび意見を尊重するよう奨励すること。 相互の尊重および協力を奨励する目的で、世代間対話の機会をつくり出すこと。 とくに、教育・学習実践および学校環境に影響を及ぼすための公式・非公式の手法を通じてならびに学校共同体の運営に学校児童生徒評議会を統合することを通じて、学校生活のすべての側面への、子ども・若者の積極的参加を確立すること。 たとえばインタラクティブな教育方法の活用ならびにノンフォーマル教育および非定型的学習の承認を通じて、子ども・若者の人間の尊厳を尊重し、かつ学校生活における自由な意見表明および参加を可能にするようなやり方で教育を提供すること。 団体生活、コミュニティ生活、異文化間学習、スポーツ、余暇および芸術への子ども・若者の関与を支援するとともに、アクセスしやすい非定型的な参加手法を考案するために子ども・若者と協働すること。 民主主義とシティズンシップの学習および実践のための好ましい空間として、子ども・若者が運営する非政府組織に投資すること。 地域、広域行政圏または国のレベルで、たとえば子ども・若者評議会、議会またはフォーラムのような協議機関を設置すること。 家族および子どもにサービスを提供する機関が、サービスの開発、提供および評価への子ども・若者の参加を支援することを確保すること。 子ども・若者が、メディアを通じて自由に自己表現し、かつ、対面での参加を補足する手段として情報通信技術(ICTs)を通じて安全に参加する機会を増進させるとともに、参加の原則に関する理解をメディアおよびICTsに統合すること。 子ども・若者が公的生活および民主主義機関に参加する機会(代表としての参加を含む)を増加させること。 UNCRCの第12条およびその他の関連条項の実施ならびに欧州評議会の関連文書および子どもの権利に関するその他の国際基準のモニタリングへの参加に関して、子ども・若者およびその団体を支援すること。 更新履歴:ページ作成(2021年1月7日)。/冒頭に「活用のためのツール」を追加(2023年2月3日)。/冒頭の「活用のためのツール」に関連資料へのリンクを追加(8月9日)。
https://w.atwiki.jp/sundayrowa/pages/260.html
普通の子ども ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 市街地へと歩みを進めつつ、思考を巡らせる。 朧さんに先頭を任せているので、それくらいの余裕はある。 完全に人を頼りきってしまうつもりはないが、いまは考えなければならないときだ。 前を行くおキヌさんが心配そうに振り向いているので、微笑みを返してから思考に没頭する……―― ◇ ◇ ◇ 僕のなかには、三つの記憶がある。 僕自身、すなわち才賀勝という少年の記憶。 おじいちゃんである人形破壊者(しろがね)・才賀正二の記憶。 そして――自動人形(オートマータ)の造物主・フェイスレスの記憶。 一つ目は僕が生まれた日より培ってきたものであるのに対し、二つ目と三つ目は違う。 二つ目はおじいちゃんの血を飲んだことで入手し、三つ目は僕の身体を手に入れようとしたフェイスレスによって流し込まれた。 だから僕のなかには三つの記憶がある――が、断じて三人分ではない。 おじいちゃんはしろがねとして百年以上生きてきたし、フェイスレスに至っては二百年をゆうに越える。 ただ単に、『長い』だけではない。 おじいちゃんは医者にして、懸糸傀儡制作の第一人者であり、剣術も免許皆伝の腕前で、一流企業『サイガ』のトップでもあった。 フェイスレスに至っては『賢者の石』を造り上げるほどの錬金術師であり、人形繰りの天才であり、おじいちゃんの右腕として『サイガ』の上層部に常にいて、さらにはしろがね-Oという改造人間を作り出すほど人体や工学にも精通している。 つまり――『多い』。 僕のなかにはただ三人分の記憶があるのではなく、僕という普通の子どもの記憶と、あらゆる分野に精通した人間二人の記憶がある。 医学も。 剣術も。 化学も。 工学も。 生物学も。 経営学も。 錬金術も。 言語能力も。 人形繰りも。 全部、僕のなかに『ある』。 使いこなせるかはさておき、事実として間違いなく存在している。 そんな膨大な知識をもってしても、現状は不可解だ。 朧さんやおキヌさんと話したところ、全員が『いまはいつなのか』という認識が違っていた。 二人とも、僕より過去を現在だと思っていた。 からかっているワケではないようで、また思い違いでもないらしい。 普段ならば決して考えないが、すでにある発想に至る要因は十分にあった。 刃さんが物干し竿の柄紐を解くと、空間に穴が開いた。 おキヌさんによると、美神令子というGS(ゴーストスイーパー)は時空移動能力を持つという。 朧さん曰く幽霊の気配は一つしか捉えられなかったというのに、もう死んだはずの人間が何人も名簿に記されている。 仮説――――このプログラムの参加者は、『異なる時間』から呼び出されている。 ならば、頷ける。 いろいろと納得がいく。 この仮説を口にはしていない。 認識の違いからおキヌさんと朧さんは思い至っているかもしれないものの、まだ僕から告げてはいない。 他の誰かから告げられてもいない。 それに――もし『これが真実である』のなら、『明かさないほうがいい』ことだってあるかもしれないのだから。 とにかく、考えを固めたいところだった。 『どうにかすることによって時間移動が可能である』という確証を得たい。 「…………って!?」 不意になにかに当たった。 いや、当たらなかった。通り抜けた。 「うわわっ! ちゃんと前を見てなきゃダメですよ、勝くん」 「ご、ごめんなさい」 いつの間にか、おキヌさんが足(?)を止めていたようだ。 見れば、朧さんもまた少し前で立ち止まっている。 歩み寄っていくと、朧さんは険しい表情のまま静かに口を開く。 「何者かが飛行しながら迫ってきています」 朧さんの視線の先を確認するが、なにも見当たらない。 困惑していると、十秒ほど経ってからその視線の先に人影が現れた。 「あれ? おキヌちゃんじゃない」 腰まで伸ばしたストレートの茶髪。 紫色の派手なボディコンスタイル。 整った顔立ちで、気が強そうな目つき。 さらに、いまのおキヌさんに対しての発言。 運がいい。心から、そう思った。 僕が所持していない霊に関する知識を有しており、時空移動能力を持っている。 まさしく――現時点においてもっとも会いたかった参加者の一人だった。 「なによ、ジロジロ見て。 ……でもなんか育ちがよさそうな雰囲気してるわね、賢そうな顔つきだし、もしかしてお坊っちゃまとかかしら…………」 小声でぼそぼそと言っているのが聞こえてくる。 確信した。彼女こそ、話に聞いた美神令子さんその人だ。 ◇ ◇ ◇ 「み、美神さぁ~~~ん!」 三十秒ほど目をぱちくりさせて、おキヌさんはようやく状況を認識したらしい。 「そんな大きな声出さなくても聞こえてるわよ」 「無事でよかったです~~~!」 「はいはい」 おキヌさんに勢いよく抱きつかれながら、美神さんは具合が悪そうに頬をかいた。 ぶっきらぼうな言葉に反して、どこか気恥ずかしそうな笑みを浮かべている。 「ところでおキヌちゃん、なんで幽体離脱してんのよ」 「……? いったいなにを言ってるんですか、美神さん」 「いやいや。なにって、そのままなんだけど」 「…………?」 「幽体離脱するのはいいけど、体どっかに置いてきちゃダメでしょ」 「………………?」 首を傾げすぎて、おキヌさんの首の角度が大変なことになっていた。 そのそぶりに、美神さんもまた困惑を露わにする。 もしやと思った。 こういう、認識のズレは知っている。 美神さんとおキヌさんも、お互いに『認識している現在』が違っているのかもしれない。 指摘するべきか否か。 いま、『参加者の時間軸が異なっている』可能性に触れてしまっていいのだろうか。 迷う僕とは違い、朧さんは迷わなかった。 「なるほど。お二人の時間軸も異なっているようですね」 なんの躊躇もなく、あっさりと言ってのける。 意図せず口が半開きになった僕の前で、美神さんは「あーあーあーあー」と四回ばかり声に出したのち深く頷く。 「そういうことね」 「……えっ?」 未だよく分かっていないらしいおキヌさんをよそに、美神さんは一人納得したように呟く。 「なるほどなるほど。 通りでジャンとちょっと話が合わなかったはずだわ。うむうむ」 「どういうことですか?」 「うーん、これおキヌちゃんに言っていいのかしら。 でもまあ幽霊のおキヌちゃんなら大丈夫か。うん、言っちゃおう」 美神さんも迷わなかった。 「『私の時間軸』だと、おキヌちゃんって身体手に入れてるのよね」 「はあ。でも私、三百年前に死んでるんですけど……」 「まあいろいろあったのよ」 「いろいろあったんですか」 「そうそう」 「いろいろですかー」 僕が『時間軸のズレについて触れないほうがいいかもしれない』と思った理由は、こうしてあっさりと乗り越えられた。 『言ってはいけない未来もある』と思ったのだが、完全に無視されていた。 一瞬躊躇したのを見るに、美神さんも気付いていたはずなのに…… 「っていうことは、キース・ブラックも美神さんのような能力を持っているのでしょうか」 「ほぼ間違いなくね。 他人をつれてこれる辺り、私のより使い勝手いいんじゃないかしら」 「むむむ、強敵ですね」 おキヌさんのほうも、大して気にしていないらしい。 身体手に入れるって、それ相当のことだと思うんだけどなあ…… いや、まあ置いとこう。 すんなり片づいたのなら、それに越したことはない。 なにより、いまの話題に乗っておきたい。 「あの美神さん、おキヌさんから話は聞いてます。 アナタには時間移動能力がある――とのことですが、本当でしょうか」 「ん、まあ……ね」 いままでの会話ですでに明らかだったが、あえて尋ねておいただけにすぎない。 にもかかわらず、帰ってきた返事は曖昧なものだった。 「雷くらいのエネルギーがあれば発動できるようですが、それでこの殺し合いをなかったことにするのは可能ですか?」 「無理」 またしても、美神さんは迷わなかった。 おキヌさんが目を見開いているが、僕には大した驚きがない。 朧さんも同じだったようで、平然としている。 「と、いうと」 「まず、ここに張られている結界。 地図の端だけじゃなく上も、そして下まで張られてるでしょうね。 ちょうどいまこのホウキで上昇して確認してきたんだけど、そっちから来たってことはアンタたちも見てきたの?」 「はい」 「張られてたでしょ? なんか、目には見えない壁みたいのが」 「……はい」 「それは、三次元的に物体を阻むだけの結界じゃないのよ。 四次元的、つまり時空移動さえも完全に遮ってしまっている。 だから――」 一拍置いて、美神さんは断言する。 「無理」 おキヌさんは驚き、僕と朧さんは驚かない。 「その結界を解除すれば、どうにかなりませんか?」 「うーん、それ考えてたんだけどね。まあ無理。 ここを出なきゃいけないから、結界の解除は必須だと思うのよ。 でもそれで『時空移動できるようになった! 全部なかったことにしよう!』は無理、少なくとも私には。 私は時空移動能力を受け継いでいるけれど、決して完全に使いこなせるワケじゃないのよね。 どれだけ膨大なエネルギーを集められたとしても、ちょうど過去のキース・ブラックが殺し合いを始めようとしているところに移動してー……ってのは無理」 「そう、ですか……」 驚きはない。 そう、ない。 ないはずなのに……勝手にため息がこぼれた。 多少なりとも、期待してしまっていたのだろう。 けれど、それでも――大人しくかっこつけて諦めてなんかやらない。 「では結界について、教えていただけませんか? 僕は『父親の方針』で様々な分野の知識を『まあまあ』持っているんですが、心霊関係についてはまったく知らないんです」 問いかけると、美神さんは目を丸くした。 「もっと凹むと思ってたんだけど、結構タフね。 うちの横島くんだったら、間違いなく二週は引きずるんだけど」 「そんな余裕、ありませんよ」 そう、落ち込んでいる余裕はない。頭を切り替える。 僕は普通の子どもにすぎないんだから、その分抗うんだ。 全部なかったことにするのが無理なら、いまできることをやってやる――! 「落ち込んでたら、キース・ブラックの思うつぼだもの。 一番の敵は、結界でも首輪でも殺し合いに乗った参加者でもない。 諦めようとする自分自身の弱い考えと、なにより戦わなきゃいけないんだ」 美神さんの目を見て言い切ってから、勢いよく頭を下げる。 「だから――覆っている結界を取り払う方法を教えてください」 GSとして働いている美神さんにとって、結界の知識はそうそう明かせぬものだろう。 おキヌさんの言葉通り利益優先主義であるのならば、なおさらである。 ゆえに頭を下げる。 それでもダメならば、他のなにかを考える。 そう思っていると、美神の返事より先にエンジン音が響いた。 「……ッ!?」 反射的に顔を上げると、美神さんとおキヌさんもそちらを見つめている。 朧さんだけが一人、そちらに視線をやらずにあらぬ方向を眺めている。 「警戒する必要はないですよ。 迫ってきている男が殺し合いに乗っている可能性はありません。 苛立ちこそ溢れ出していますが、殺気は漂っていませんし――それに」 エンジン音は、僕らから少し離れたところに止まった。 原付を止めると、乗っていた男性がゆっくりと歩み寄ってくる。 「なにより、彼は最速のスプリガン――ジャン・ジャックモンドですから」 長く伸ばした金色の髪を風になびかせて、ジャンさんは朧さんに鋭い視線を飛ばす。 「おいおい、なにバラしてんだよ。一応機密事項だろうが、そいつは」 「ふふ。元より、アナタは知りたければ知れというスタンスではないですか」 「はッ! 俺たちに軽々しく手ェ出したら終いだって、バカどもに知らしめてやるだけだろ」 「現状、手を出されていますけどね」 「だから分からせてやるんだろうが、あのしたり顔のキザ野郎によ」 「そう上手く行っていないようですが」 「ちッ。久々に会ったってのに見透かしたみてえな口調は変わんねーな、朧。 でもその通りさ。なにも間違っちゃいねー、ボコられっぱなしだ。だが終わっちゃいねー。生きてる以上は、あの野郎に分からせてやる。 アンタだって、言われるがままってワケじゃねーんだろ。もしそうなら、こんなガキたちがアンタと一緒にいられるはずがねえ」 言いながら、ジャンさんは朧さんから視線を外す。 辺りを見渡そうとして――ある一点でオブジェのように静止した。 「…………」 そちらでは、美神さんがおキヌさんの背後に身を隠していた。 けれどおキヌさんは幽霊であるので、まあ、うん。 美神さんの姿は、見事に透けて見えている。 それはもう完全に。まったくもって丸見えだった。 「…………」 「…………」 「…………よォ、しばらくぶりだな」 「…………あっ、バレた」 なにがあったのかは定かではないが、なにかしらがあったのが明白だった。 にもかかわらず、美神さんは素知らぬ顔で切り出す。 「悪いとは思うけど、間違ってたとは思ってないわよ。 あの状況で残ってても話がこじれるだけだったし、面倒ごとに巻き込まれるのも好きじゃないもの」 「み、美神さぁん! なにしでしたんですかあ!?」 「なにしたっていうか、なにもしなかったというか」 おどおどするおキヌさんをよそに、美神さんはしれっとしている。 少しばかり間を空けて、ジャンさんは静かに答えた。 「別に責める気もねーよ。 あんときは頭に来て怒鳴ったけど、終わったいまとなっちゃアレで正解だ」 反論を待っていたのだろうか。 意外そうに、美神さんの眉が揺れ動く。 「なによ、それ。 私にとって正解だったけど、アンタにとっちゃ違うでしょ? 怒ればいいじゃない」 「…………はッ。ンなこたねーよ。 お前が残ってたところで、あそこに転がる死体がもう一つ増えてただけだ。 あのあといろいろあって丸く収まったんだけどな、その直後に気味の悪い動く人形が現れて――」 ジャンさんは、自嘲気味に口角を吊り上げる。 「俺以外、全員殺されたんだからな」 静寂が辺りを包む。 誰一人として口を開かない。 『気味の悪い動く人形』――心当たりがある、ありすぎる。 「その人形って言うのは……」 尋ねようとして口籠もる。 特徴を聞いたところで、どうなるというのか。 それが誰なのかを知ったとして、なにになるというのか。 「安心しろよ。破片になるまでブッ壊してやった」 ぽん――と、頭を軽く叩かれる。 その手はひどく傷ついていた。 「なんだよ、美神。らしくねえじゃねえか」 「……なんでもないわよ」 「もし戻ってきたところで意味なかったって言ってんだから、気にしてんじゃねえよ」 「……別に。気になんかしてないわよ」 「そうかい」 言葉に反して、美神さんは下唇を噛み締めていた。 その理由を問うことなどできるはずもない。 「んで朧、このガキと霊はなんなんだ? こんだけやられたあとなんでな、役に立たねえヤツとつるむ気はねーぜ」 「見た目で判断するのはよくないですよ。その少年は伸びる余地があります」 「将来の話じゃなくて、いま役立ってもらいてえんだよ。 じゃなきゃ、こんだけの首輪をくれたヤツらに示しがつかねえだろ」 ジャンさんが開いたリュックサックには、いくつもの首輪が入っていた。 「そういうことでしたら問題ありません。 戦闘は発展途上ですが、工学知識のほうはすでに完成されていますよ」 「あァ?」 露骨に眉をひそめるジャンさんに、僕は向き直る。 僕自身は普通の子どもだが、僕の記憶は普通ではない。 その自負は――ある。 「錬金術と工学の知識には自信があります」 「…………本当か?」 「本当です。 現状、首輪を眺めてもなにも掴めていませんが……それでも、僕の知識がたしかなものであるという確信はあります」 何せ、その知識はフェイスレスのものであるのだから。 しろがねを操り、自動人形を操り、他にも様々な人を操った――諸悪の根元のものであるのだから。 その知識が大したことないのならば、こうはなっていない。 普通の子どもである僕が『ゲェム』を突破し続けているのは、アイツの記憶があるからなんだ。 「そうかよ。だったら役に立ってもらうぜ」 「ただ、工具や作業を行うスペースがなければ、どうにもなりませんが……」 「工具なら俺が持ってる。スペースは……まあちょっと行けばあんだろ」 言いながら、ジャンさんは原付を蔵王にしまい込む。 同行してくれるらしい。 「で、お前なんて言うんだよ」 「あっ、はい、僕は――」 そういえば、まだ名乗っていなかった。 若干しどろもどろになりつつ、ゆっくりと告げる。 「才賀勝と言います」 次の瞬間、視界が反転した。 「…………あれ?」 なにが起こったのか。 分からない。なにも、分からない。 名前を言ったと同時に、奇妙な浮遊感を味わい――いつの間にか目の前に土がある。 立ち上がろうにも立ち上がることができない。 「勝くん!」 心配そうなおキヌさんの声。 振り向くこともまたできなかった。 背中に押さえつけられている圧迫感がある。 「ジャン、アナタはなにをしているのですか?」 朧さんの声は、これまで聞いたことがない冷えきったものだった。 首が動かないため、僕の視線は地面に向けられたままである。 地上にある僕の影の上には、もう一つ影が重なっていた。 そのもう一つの影は、僅かに結われた長い髪を揺らしている。 朧さんと美神さんも髪は長いが結っておらず、おキヌさんに至っては『影ができない』。 必然――僕の上に馬乗りになっているのは、ジャンさんということになる。 「落ち着けよ。 この俺がキース・ブラックの言いなりになってるワケねーだろ」 軽口を叩くような口調とは対照的に、僕の身体にかかる力は強くなった。 腕どころか指一本動かない。 これでは『分解』で逃れることも不可能だ。 「ただ、な。 『才賀』ってヤツに痛い目見せられたあとだからな。 疑り深くなるのは仕方ねえだろ。甘いことしてらんねえって痛感したんだしな」 才賀。 その姓を持つ参加者は、僕以外に三人。 しろがねと、おじいちゃんと、アンジェリーナさん。 その誰もが殺し合いに乗るはずがない。断言できる。 「才賀正二ってジジィ知ってるか? 俺と美神は、そいつに襲われたんだけどよ」 バカな。 そんなはずがない。 おじいちゃんに限って、それはない。 しろがねのために生きてきたおじいちゃんでも、しろがねのために誰かを殺すなんて…… ――ありえない、のか? 僕がいる。 ギイさんがいる。 アンジェリーナさんがいる。 だから、いくらしろがねのためでも…… ――本当に? 「ジャン、血縁関係だからといって必ずしも同じ思想とは限らないというのは、アナタがよく知っているはずですよ」 「うるせえな。その通りだけど、違うとも限らねえだろ」 朧さんとジャンさんがなにか言っているが、ほとんど耳に入らない。 僕のなかには、おじいちゃんの記憶がある。 おじいちゃんがしろがねのために、なにをしてきたのか。 しろがね一人のために、どれだけの犠牲を生んできたのか。 知っている。よく、知っている。 ――ありえないと断言できるのか? 「もちろん……僕のおじいちゃんなんだから、よく知ってますよ」 平静を装いつつ返答すると、ジャンさんは大げさなため息を吐いた。 「まァ、この件についてはいろいろ不可解な点も多いからな。 自分の親戚が手ぇ染めたかもしれねー話とか聞きたくねーかもしんねーけど、聞いてもらうぜ」 「…………構いません」 たしかに聞きたくはない。 けど、聞かねばならない。 聞かないワケには――いかない。 ◇ ◇ ◇ 「――ってことだ」 ジャンさんの話が終わる。 終始押さえつけられていたせいで身体が痛むが、そんなことはどうでもいい。 「そういう……こと、ですか」 ジャンさんのいう『不可解』は、僕にとって『不可解』でもなんでもなかった。 つまり――いったいなにがあったのか、僕はすべてを理解した。 おそらく、間違いはない。 「断言します、ジャンさん。 最初に遭遇した才賀正二と、寺の前で会ったという才賀正二は別人です」 「――ッ、やっぱりか……!」 「寺の前にいた才賀正二が、僕のおじいちゃん・才賀正二であり――」 僅かに迷う。 が、言わねばならない。 隠しておけば信用が薄れるし、そうなればアイツの被害者が増えかねない。 「最初に遭遇した才賀正二は、僕の父・才賀貞義です。 名簿には『フェイスレス』という名で記載されている男です」 なにもかも、アイツの仕業だ。 他人に成り済ますことができるアイツならば可能だし、アイツならばやりかねない。 ここにおじいちゃんがいるのならば、むしろ率先してやるだろう。 引っ掻き回しに引っ掻き回して――そして、結果的におじいちゃんを死に追いやった。 アイツの思惑はたしかに実っていた。 知らない間に歯を噛み締めていたらしく、口のなかに血の味が染みてくる。 「……信じろってのかよ、それを」 話し終えた僕に、ジャンさんは冷たく言い放つ。 当然だろう。それはそうだ。分かり切っている。 誰が信用できるものか。こんな話を。こんな戯言を。 アレほどまでの知識を持ちながら、ただ恨みで引っ掻き回すなど。 仮初の姿とはいえ親子として接し続けた親友を、あっさりと裏切るなど。 そんな輩がいてたまるか。あっさり受け入れられてたまるものか。 「信じてください。 フェイスレスならやりますよ、間違いなく。 迷わず断言できます、だって僕のなかには……」 だから、僕は鬼札(ジョーカー)を切る。 「その、フェイスレスの記憶があるんですから。 こういう状況において、あの男がそういう行動に出ることなんて――お見通しですよ」 身体にかかる力が強くなる。 予想していた。 予想していたけど、やっぱり痛い。 痛いけど、言葉を続ける。 「僕はアイツの『器』になるべく、作られた子どもなんですよ。 身体を乗っ取り新しい身体を得るために、僕は生み出された。 僕という器に、アイツ自身を『転送(ダウンロード)』するためにッ」 ぎりぎりと、身体の軋む音がする。 痛い。本当に痛い。涙が出そうだ。 でも泣かない。ここは泣くべきときじゃない。 「そんな大それたことが簡単にできるワケがない! ダウンロードは三つ段階を踏まねばならないんだ! 第一段階で『記憶』を、第二段階で『人格』をダウンロードさせ、第三段階で『ミクスチャー』させて完了だ! でも僕は、おじいちゃんの手によってダウンロードは第一段階で済み――人格は僕自身のまま、アイツの記憶だけを手に入れたんだッ!!」 笑う。 おじいちゃんのおかげで、アイツの思惑は覆されたんだ。 だから笑う。笑ってやる。笑って語ってやる。 「…………証拠になるもんでもあんのかよ」 ほんの少し、身体にかかる力が弱くなる。 未だ信じ切れないという声色だ。 「あるよ」 ――鬼札(ジョーカー)は二枚ある。 「僕のデイパックの底に、二つ蔵王がある。 それを開けば分かるよ。全部本当なのがね」 「美神!」 「私ぃ!? 関係ないじゃない!」 「この話に信憑性があるかねーかで、あのジジィに対する礼も変わるだろ。 もし本当だったら、さんざん弄ばれたってのに、現状全然仕返しできずに掌の上にいたことになるぜ」 「まあ……ねえ」 渋々といった様子で、美神さんが近付いてくる。 僕とジャンさんの間にあるため苦心していた様子だが、どうにか蔵王を取り出したらしい。 「なによこれ」 ばさりと書物の落ちる音がする。 そちらを最初に出してくれたのなら、話は早い。 「そのファイルの十六章と十七章を開いてください。 できれば全員で目を通してくれると、話が早くて助かります。 章題は『しろがね』と『勝』です。ページ数は――」 時間をかけて思い出すまでもない。 脳ミソに刻み込まれている。 忘れられるものか。 時間が経つにつれて、みんなが言葉を失っていくのが分かる。 しようがないことだ。 ――――愛人との間に子どもを作り、不要となった様々な存在を処分するための『餌』とする。 そんな内容が記されているのだから。 「読み終わったら、もう一つの蔵王から中身を出してください」 頃合いを見計らって頼むと、ちょうどいいタイミングだったらしい。 美神さんが取り出した蓄音機を地面に置いくと、それは勝手に起動する。 『記憶の伝達が完全でなかったときのため、私はこの部屋を残しておくことにする』 この蓄音機に残された内容もまた忘れられない。 『【いまは勝】よ、この録音を聞き、私が誰か認識できるか』 淡々と再生されていく。 僕がアイツに用意された器に過ぎないという事実が、無感情に淡々と。 たっぷり五分ほど経って、蓄音機は『思い出せ』以外の言葉を発しなくなる。 そこで、美神さんは蓄音機を蹴り飛ばす。 僕がかつてやったように、完膚なきまでに破壊した。 僕の身体に籠められた力も、ほどなくして弱くなった。 「…………悪かったな」 「構いませんよ。そう簡単に信じてもらえるとは思ってませんでしたから」 立ち上がって関節を伸ばす。 身体の節々が痛むが、ゲェムが終わったときほどじゃない。 「一つ、訊かせてくれ。 どうしてあんなこと明かしたんだ。あんなもん……聞いて欲しくなんか、ねえだろ」 おかしな質問だった。 答えなど分かり切っている。 「信用してもらうためなら、なんだってしますよ。 聞いて欲しくないことを教えるくらい、大したことじゃない。 そんなことを躊躇している余裕なんかないんです。 『これはできない』だとか、『他の方法を考える』だとか、僕にはそんなこと言ってられないんです。 ここには朧さんやジャンさんみたいな強い人がいるし、美神さんみたいな専門知識を持っている人もいるし、フェイスレスはそんな人たちを手玉に取っているけれど――」 呼気を整えて、はっきりと断言する。 「僕は、普通の子どもですから」 はッ――と短く笑い、ジャンさんは髪を掻き揚げた。 「躊躇しねえ、か。 同じ考えだ。俺も――そんなことする気はねえからな」 【A-4 東部/一日目 昼】 【才賀勝】 [時間軸]:黒賀村である程度過ごしてから。 [状態]:健康 [装備]:物干し竿@YAIBA [道具]:首輪×2(おキヌ、朧)、貞義のファイル@からくりサーカス、基本支給品一式 [基本方針]:殺し合いを止める。 【おキヌ】 [時間軸]:本編にて生き返る前(美神令子の時間移動能力を知っている時期) [状態]:不健康、首輪解除 [装備]:無し [道具]:マーラの銀鏡@スプリガン、ランダム支給品0~1、基本支給品一式 [基本方針]:勝についていく。 ※幽霊です。『本人が触れたいと思うもの』以外はすり抜けます。 【朧】 [時間軸]:不明 [状態]:健康 [装備]:無し [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、水晶髑髏@スプリガン、中性子爆弾@ARMS [基本方針]:殺し合いに乗る気はない。 【美神令子】 [時間軸]:ルシオラを敵だと認識している時期。 [状態]:疲労(小)、雷撃のダメージ、すり傷。 [装備]:青き稲妻@GS美神極楽大作戦!! [道具]:ヴァジュラ@スプリガン、鍋@現実、土手鍋(説明書未読)@金剛番長、基本支給品一式、首輪(ナゾナゾ博士) [基本方針]:殺し合いには乗らない。脱出するべく首輪を調べる。アシュタロスには関わらない。 ※ジャンと少しばかり情報を交換しました。 ※植木、ユーゴーと情報をテレパスで共有しました。 【ジャン・ジャックモンド】 [時間軸]:少なくともボー死亡後。 [状態]:疲労(大) [装備]:なし [道具]:基本支給品一式×5、首輪×5(剛力、暁、パウルマン、アンゼルムス、正二) 門構@烈火の炎、翠龍晶@うしおととら、閻水@烈火の炎、対AMスーツ用特殊ライフル(弾丸:11)@スプリガン、拡声機@現実、工具@からくりサーカス あるるかん@からくりサーカス、カロリーメイト9000キロカロリー分(一箱消費)@現実、H○NDA・スーパーカブ110@現実、不明支給品1~5(確認済み) [基本方針]:殺し合いには乗らない。殺し合いに乗ったと思しき相手は、躊躇せず殺す。高槻涼に会う。 ※美神と少しばかり情報を交換しました。 【支給品紹介】 【工具一式@からくりサーカス】 白雪宮拳(剛力番長)に支給された。 フェイスレスがマリオネットや自動人形を制作する際に用いていたもの。 【貞義のファイル@からくりサーカス】 才賀勝に支給された。 才賀貞義(フェイスレス)が才賀家に残したファイルであり、彼の思惑がある程度記されている。 【貞義の遺した蓄音機@からくりサーカス】 才賀勝に支給された。 才賀貞義(フェイスレス)が才賀家地下に遺した蓄音機である。 『転送(ダウンロード)』が成功しても効果が表れない際の保険として、ダウンロード後の自分に『現在は才賀勝ではない』と自覚させるべく遺した。 ◇ ◇ ◇ 「あーらら、まーた勝くんの勝ちか。 これで、またしても『ゲェム』の連敗記録は続く――と。 「あんなフツーのガキに負けるなんて考えられない? やはり自動人形は旧式に過ぎない、Oの時代が来ている? ふ、ふふふふ……言うなァ。実際、君たちだって負け続きのクセに。 「それに、才賀勝がフツーの子どもだって? フツー、フツー、フツー、フツー……ねえ。 だいたいさァ、そもそもの話として、その『フツー』ってのはなんなのさ。 音信フツーってことかい? 一方的にだけど僕は彼と連絡を取れるし、彼の姿をこうしてリアルタイムで眺められるじゃないか。 それとも、なんだい? 文字通りに『通らない』ってことかい? 「…………この言葉遊びこそ、まさしく通らないな。 「ともかく――彼を普通のガキだと思っているのなら、それこそ君らに勝ち目はないよーん。 「勝くんは、僕の知識を持ってるんだから。 自動人形やOの構造を知っているからこそ、分解するポイントも知っている。 それに、頭だってメチャクチャいいんだぜえ。 僕には及ばないと言っても、勝くんの持つ知識にはないはずの仕掛けだって弱点をズバッと見抜いちゃう。 正二から受け継いだ『見浦流』も、自動人形殺しの日本刀『雷迅』と組み合わせることで真価を発揮している。 アレに斬られちゃあ自動人形はおしまいだし、Oだって油断していられない。 正二の血液――つまり生命の水を飲んでいるから、完全なしろがねほどじゃなくても身体能力や治癒力だって向上してるしね。 さらに、彼が使っている三種のマリオネットは、この僕が僕自身のために残した代物だ。 どれもかなりクセがあるけれど、その分だけ使いこなしたときのポテンシャルは図抜けている――そして彼は自在に操れるようになってきている。 「つまり――才賀勝は『普通の子ども』なんかじゃない」 「分かっている? はッ! ハハハハハッ! 「あー……笑わせるなよ。そういう不意打ちはズルだぜ。 君たちは、断じて分かっていない。なーんにも理解していない。 僕の言わんとしていることを、自動人形もOも揃ってこれっぽっちも読み取れていない。 「勝くんは『普通の子ども』ではないが、しかし――自分を『普通の子ども』と思っているのさ。 「よくよく考えてみろよ。 僕と正二の記憶に、けた外れの頭脳、人形繰りに剣術、さらには百八十億もの莫大な遺産。 それだけたくさんのものを持っているのに、普通――それこそ普通は、だ。 普通、自分をただのガキだと思えるか? 思えるはずがないんだよ。それこそ『普通』なら。 「でも、勝は違う。 自分を『普通の子ども』と見て、その上で油断をしない。 決して思い上がらずに、むしろ自分自身の力を過小評価している。 九割九分九厘勝てる状況でも、残りの一厘を考慮に入れることを忘れない。 「幼少期、豊かな生活をできなかったせいかもしれない。 出生の件もあり、イジメられていたせいかもしれない。 母親と祖父を早くに失ってしまったせいかもしれない。 自分が単なる器に過ぎないと知ったせいかもしれない。 僕と正二の記憶を手にしてしまったせいかもしれない。 あるいは――加藤鳴海と死に別れたせいかもしれない。 「いかなる場面においても、『もう大丈夫』だとか『勝ちは決まった』だとかそんなふうに安心してしまうことがない。 「自分を過小評価しているからこそ、多少の傷では動じない。 自分を過小評価しているからこそ、敗色濃厚でも揺らがない。 自分を過小評価しているからこそ、血みどろになろうと考える。 自分を過小評価しているからこそ、命以外のすべてを投げ出せる。 自分を過小評価しているからこそ、奇策にだって出ることができる。 自分を過小評価しているからこそ、所持する手札をすべて使い果たす。 自分を過小評価しているからこそ、恥も外聞もなく勝利に貪欲になれる。 自分を過小評価しているからこそ、自分のなかの恐怖から目を逸らさない。 自分を過小評価しているからこそ、連日連夜アレだけのトレーニングに励む。 自分を過小評価しているからこそ、自分を過大評価している君たちに――勝つ。 「これが、ヤツのもっとも恐ろしいところだ。 注意すべき点は、僕の知識ではない。正二の知識でもない。 生命の水で得た身体能力や治癒力でも、並外れた頭脳でも、類稀なる観察力でも、正二が遺した日本刀でも、僕が作った三種のマリオネットでもない。 「自分自身を『普通の子ども』と見なしている――――それこそが、才賀勝最大の武器なのさ。 「ま、君たちには分からないんだろうけどね。 いいんだよ、それで。むしろ余計なこと考えるなよ。 こんなものはゲェムなんだから、盛大にやられたほうが盛り上がるだろ? だいたい勝くんは僕のボディになるんだから、ほんとに殺してもらっちゃ困るんだよねえ」 【備考】 ※A-4東部に、貞義の遺した蓄音機@からくりサーカスが壊れた状態で転がっています。 投下順で読む 前へ:ワンダーランド2 戻る 次へ:「お前は弱いな」 時系列順で読む 前へ:ワンダーランド2 戻る 次へ:[[]] キャラを追って読む 100:100話到達記念企画、首輪の謎に迫る! おキヌ : 朧 才賀勝 102:明暗 ジャン・ジャックモンド 107:能力者CO/価値観の不一致 美神令子 ▲
https://w.atwiki.jp/nikuq-niuniu/pages/1223.html
ドマの子どもたち 依頼主 :ホウザン(西ザナラーン X13-Y14) 受注条件:レベル50~ 概要 :ベスパーベイのホウザンは、冒険者に新たな依頼があるようだ。 ホウザン 「おかげで、荷物の積み込みは、おおかた片付いたよ。 そろそろ第一陣を出発させたいんだが・・・・・・。 困ったことに、子どもたちの姿が見えなくてね。 新しい土地に興味津々なんだろうが、困ったもんだ。 探し出して、呼び戻してくれないだろうか? せがれの「ヨウザン」に声をかけてもらえば、 ほかの子どもたちの居場所も分かるだろう。」 ホウザン 「子どもたちを呼び戻してくれないか。 せがれの「ヨウザン」に声をかけてもらえば、 ほかの子どもたちの居場所も分かるだろう。」 ヨウザンと話す ヨウザン 「ねえちゃん、オレたちを迎えに来てれくたのか? ・・・・・・次は、ウルダハってところに行くのか!? でも、もう狭っくるしくて臭い船には乗りたくねえよ・・・・・・。 船じゃなくて、チョコボ・キャリッジってのに乗るの? ・・・・・・すげぇ、馬じゃなくて鳥がひく車なんだ!? オレ、はやく乗ってみたい! あ、でもオレたち今、隠れんぼしてるんだよね~。 ねえちゃんが、隠れてる3人を探して、 みんなに「出発するから父ちゃんとこに集合」って伝えてよ。 ドマでは「シュギョー」がてら、隠れんぼしてたから、 子どもはみんな、隠れるのがうまいんだぜ! ・・・・・・ねえちゃんに見つけられるかな?」 ヨウザン 「植物も、建物も、洋服も・・・・・・街のにおいも! 何もかもがドマと違うから、面白いよ!」 隠れている子どもを探す 隠れている子供 「わー、びっくりした! ・・・・・・お姉ちゃん、誰? あたしはコハル!」 コハル 「・・・・・・そろそろ出発だから、ホウザンおじさんとこに戻れって? わかった、すぐいくねー。 ・・・・・・もしかしてお姉ちゃんは、ユウギリ様の知り合い? ユウギリ様って、強くて、賢くて、優しくて、かっこいいよね? あたしの夢は、ユウギリ様のようになることなの!」 隠れている子供 「ぐはぁ、見つかった・・・・・・って姉ちゃんは誰? え、ウルダハってとこに出発するから、 呼びに来てくれたの・・・・・・? わー、どんな街なんだろう!? さっきもらった食べ物より、おいしいものあるかな!? はやく出発したいから、あたし、今すぐ戻る!」 隠れている子供 「くぅ、見つかっちまったか。 これが師匠にばれたら、大目玉だな・・・・・・。 師匠はハンランで死んじゃったけど・・・・・・。 え、出発するからホウザンさんのところへ戻れって? へー、ウルダハってとこに行くのか。 安心して眠れるところだといいな・・・・・・。」 ホウザンに報告 ホウザン 「子どもたちは全員戻ってきたよ、ありがとう。 ・・・・・・なに、隠れんぼをしていた、だって? そうか、今でもあの子らは、 ドマの日々を忘れず、修行を続けていたのか・・・・・・。 いかんいかん、ちょっと感傷的になってしまったよ。 さて、ほかの者たちは、すべて出発したことだし、 残りの私たちも・・・・・・といきたいところなんだが、 厄介な問題が起きていてね。」
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/241.html
子どもの権利委員会・一般的意見16号:企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務 後編 (企業と子どもの権利 前編より続く) VI.実施の枠組み A.立法措置、規制措置および執行措置 1.法令 53.法令は、企業の活動および操業によって子どもの権利に悪影響が生じ、または子どもの権利が侵害されないことを確保するために必要不可欠な手段である。国は、第三者によって子どもの権利が実施されるようにし、かつ、企業が子どもの権利を尊重できるようにする明確かつ予測可能な法的環境および規制環境を提供する法律を定めるよう、求められる。企業が子どもの権利を侵害しないことを確保する目的で適切かつ合理的な立法措置および規制措置をとる義務を満たすために、国は、懸念の対象となる特定の企業部門を特定する目的でデータ、証拠および調査研究の結果を収集することが必要になろう。 54.第18条第3項にしたがい、国は、働く親および養育者が子どもに対する養育責任を果たすことを援助する雇用環境を企業内で創設するべきである。このような環境としては、家族にやさしい職場方針(育児休暇を含む)の導入、母乳育児の支援および推進、良質な保育サービスへのアクセス、十分な生活水準を維持するに足る賃金の支払い、職場における差別および暴力からの保護、ならびに、職場における安心および安全などがある。 55.非効率的な税制、腐敗、および、とくに国有企業への課税および法人課税から得られた政府歳入の不適切な管理は、条約第4条にしたがって子どもの権利を充足するために利用可能な資源の制限につながる可能性がある。贈収賄・腐敗対策関連文書 [19] に基づいてすでに負っている義務に加え、国は、透明性、説明責任および公正性を確保しながら、あらゆる財源から歳入フローを獲得しかつ管理するための効果的な法令を策定しかつ実施するべきである。 [19] OECD・国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約および(または)国連・腐敗防止条約など。 56.国は、子どもの経済的搾取および危険な労働が禁止されることを確保するために条約第32条を実施するべきである。国際基準にのっとった最低就労年齢を越えており、したがって被用者として合法的に働ける一方、なおも(たとえばその子どもの健康、安全または道徳的発達にとって危険がある労働から)保護される必要があり、かつ教育、発達およびレクリエーションに対するその子どもの権利が促進されかつ保護されることを確保されなければならない子どもも存在する [20]。国は、最低就労年齢を定め、労働時間および労働条件を適切に規制し、かつ、第32条を効果的に執行するための罰則を確立しなければならない。国は、労働監察および執行のための、十分に機能する制度および能力を整備しなければならない。国はまた、児童労働に関する基本的なILO条約 [21] を双方とも批准し、かつ国内法に編入するべきである。条約第39条に基づき、国は、いずれかの形態の暴力、ネグレクト、搾取または虐待(経済的搾取を含む)を経験した子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進するためにあらゆる適当な措置をとらなければならない。 [20] 休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利(第31条)に関する一般的意見17号(2013年、近日発表)参照。 [21] 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約(1999年)および就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)。 57.国はまた、子どもの権利、健康およびビジネスに関する国際的に合意された基準(世界保健機関の「タバコの規制に関する枠組み条約」ならびに「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」および世界保健総会がその後採択した関連の決議を含む)の実施および執行も要求される。委員会は、製薬部門の活動および操業が子どもの健康に深い影響を及ぼすことを認識する。製薬会社は、既存の指針 [22] を考慮しながら、子どものための医薬品のアクセス、利用可能性、受け入れ可能性および質を高めるよう奨励されるべきである。さらに、知的財産権は医薬品の負担可能性を促進するようなやり方で適用されるべきである [23]。 [22] 医薬品へのアクセスに関する製薬会社のための人権指針(人権理事会決議15/22)。 [23] 一般的意見15号、パラ82;世界貿易機関「TRIPS協定と公衆衛生に関する宣言」(WT/MIN(01)/DEC/2)参照。 58.マスメディア産業(広告・宣伝産業を含む)は、子どもの権利に対して肯定的な影響も否定的な影響も及ぼしうる。条約第17条に基づき、国は、民間メディアを含むマスメディアに対し、子どもにとって社会的および文化的利益のある情報および資料(たとえば健康的なライフスタイルに関するもの)を普及するよう奨励する義務を負う。メディアは、情報および表現の自由に対する子どもの権利を認めつつも有害な情報(とくにポルノ的な資料、または暴力、差別および子どもの性的イメージを描写し若しくは強化する資料)から子どもを保護するため、適切に規制されなければならない。国は、マスメディアに対し、すべてのメディア報道において子どもの権利が全面的に尊重されること(暴力からの保護および差別を固定化させる描写からの保護を含む)を確保するための指針を発展させるよう、奨励するべきである。国は、視覚障害その他の機能障害を有する子どもにとってアクセス可能な形式で書籍その他の印刷物を複製することを認める、著作権上の例外を定めることが求められる。 59.子どもは、メディアを通じて伝達される宣伝および広告を真実であって偏りのないものと考える場合があり、したがって有害な製品を消費しかつ使用する可能性がある。広告および宣伝はまた、たとえば非現実的な身体イメージを描いている場合などに、子どもの自尊感情に対しても強力な影響力を持ちうる。国は、適切な規制を行なうこと、ならびに、企業に対し、行動規範を遵守し、かつ親および子どもが消費者として十分な情報に基づく決定を行なえるようにする明瞭かつ正確な製品表示および製品情報を用いるよう奨励することにより、宣伝および広告が子どもの権利に悪影響を与えないことを確保するべきである。 60.デジタルメディアは特段の懸念の対象である。多くの子どもは、インターネットの利用者であると同時に、ネットいじめ、ネットを通じての勧誘、人身取引またはインターネットを通じた性的な虐待および搾取のような暴力の被害者ともなりうるためである。企業はこのような犯罪行為に直接関与しているわけではないかもしれないが、その行動を通じてこれらの権利侵害に加担する可能性はある。たとえば、インターネット上で操業する旅行代理店によってセックス・ツーリズム活動の情報交換および計画が可能になるので、児童セックス・ツーリズムがこれらの代理店によって促進される可能性がある。児童ポルノは、インターネット企業およびクレジットカード業者によって間接的に促進されうる。国は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書上の義務を履行するとともに、子どもがリスクに対応し、かつどこに助けを求めればよいか知ることができるよう、ウェブ関連の安全に関する、年齢にふさわしい情報を子どもに提供するべきである。国は、情報通信技術産業が子どもを暴力および不適切な資料から保護するための十分な措置を発展させかつ整備するよう、当該産業との調整を図るよう求められる。 2.執行措置 61.一般的に、子どもにとってもっとも重大な問題となるのは、企業を規制する法律が実施されず、または十分に執行されないことである。効果的な実施および執行を確保するために国が採用すべき措置としては、以下を含む多くのものがある。 (a) 子どもの権利に関連する基準(健康および安全、消費者の権利、教育、環境、労働ならびに広告および宣伝に関するもの等)の監督を担当する規制機関を強化することにより、これらの機関が、苦情申立てを監視しおよび調査しならびに子どもの権利侵害に対して救済を提供しおよび執行するための十分な権限および資源を保持するようにすること。 (b) 子どもの権利と企業に関する法令を、子どもおよび企業を含む関係者に対して普及すること。 (c) 条約および企業と子どもの権利に関するその議定書〔訳者注/「条約およびその選択議定書に掲げられた企業と子どもの権利に関する規定」の意か〕、国際人権基準および関連国内法が正しく適用されることを確保し、かつ国内判例の発展を促進する目的で、裁判官および他の行政官ならびに弁護士および法律扶助の提供に従事する者の研修を実施すること。 (d) 司法的または非司法的機構を通じた効果的な救済措置を提供し、かつ司法に効果的にアクセスできるようにすること。 3.子どもの権利と企業によるデュー・ディリジェンス/相当の注意 62.企業が子どもの権利を尊重することを確保するための措置をとる義務を履行するため、国は、企業に対し、子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うよう要求するべきである。そうすることにより、企業として自社が子どもの権利に与える影響を特定し、防止しかつ緩和すること(当該企業の事業関係全体および自社の世界的操業全体においてこのような取り組みを行なうことも含む)が確保されよう [24]。操業の性質または操業の状況からして企業が子どもの権利侵害に関与しているおそれが強い場合、国は、より厳格なデュー・ディリジェンス手続および効果的な監視制度を要求するべきである。 [24] UNICEF, Save the Children and Global Compact, Children's Rights and Business Principles (2011) 参照。 63.子どもの権利に関するデュー・ディリジェンスがより一般的な人権デュー・ディリジェンス手続に包含されている場合、条約およびその選択議定書の規定が決定に影響を与えるようにすることが不可欠である。人権侵害を防止しかつ(または)是正するためのいかなる行動計画および措置においても、子どもが受ける異なる影響について特別な考慮がなされなければならない。 64.国は、国有企業に対し、子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払い、かつ自社が子どもの権利に与えた影響についての報告書(定期報告を含む)を公に送達するよう要求することにより、範を示すべきである。国は、企業が子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うことを条件とした、輸出信用機関によるもののような支援およびサービス、開発金融および投資保険を公表することが求められる。 65.大企業は、子どもの権利に関するデュー・ディリジェンスの一環として、子どもの権利への影響に対処するための自社の努力について公表することを奨励され、かつ適当なときは要求されるべきである。このような発表は、入手可能であり、有効であり、かつ諸企業間で比較可能なものであるべきであり、かつ、自社の活動によって子どもに対して引き起こされる可能性がある悪影響および現に生じた悪影響を緩和するために企業がとった措置を取り上げることが求められる。企業は、自社が製造しまたは商品化する製品およびサービスが、奴隷制または強制労働のような深刻な子どもの権利侵害をともなわないものであることを確保するためにとった措置を公表するよう要求されるべきである。報告が義務とされている場合、国は、コンプライアンスを確保するための検証・執行機構を整備することが求められる。国は、子どもの権利に関する望ましい取り組みについての基準を定め、かつそのような取り組みを認めるための手段を創設することにより、報告を支援することもできる。 B.救済措置 66.自己の権利侵害に対する効果的救済を求めるために司法制度にアクセスすることは、子どもにとって、企業が関与している場合にはしばしば困難である。子どもは法的地位を有しないことがあり、その場合には請求を行なえない。子どもおよびその家族は、自己の権利についてならびに救済を求めるために利用可能な機構および手続について知らないことが多く、または司法制度を信頼していない場合がある。国は、企業による刑事法、民事法または行政法の違反を必ずしも調査しないこともある。子どもと企業との間にはきわめて大きな力の不均衡があり、かつ、企業を相手取った訴訟にかかる費用が訴訟を不可能にするほど高いことおよび代理人弁護士を見つけるのが困難であることも多い。企業が関わる事案は法廷外で、かつ発展した判例法がないままに決着をつけられることがしばしばある。司法的先例が説得力を持つ法域の子どもおよびその家族は、結果をめぐる不確定さに鑑み、訴訟の遂行を放棄する可能性がより高い可能性がある。 67.企業の世界的操業を背景として生じた権利侵害について救済を得ることには、特段の困難が存在する。子会社等は保険に加入しておらず、または有限責任しか負っていないかもしれない。多国籍企業が別々の事業体に組織されていることにより、法的責任を明らかにして各事業体に帰することが困難である可能性もある。請求をまとめ、かつその正当性を主張する際に、異なる国々に存する情報および証拠へのアクセスが問題になることもありうる。国外の法域では法律扶助を受けることが困難な場合もあり、また域外請求を行なえないようにする目的でさまざまな法律上および手続上の障害が利用される可能性もある。 68.国は、子どもがいかなる種類の差別もなく効果的な司法機構に実際にアクセスできるよう、社会的、経済的および司法的障壁を取り除くことに焦点を当てるべきである。子どもおよびその代理人に対しては、たとえば学校カリキュラム、ユースセンターまたはコミュニティ基盤型プログラムを通じ、救済措置に関する情報が提供されるべきである。子どもおよびその代理人は独自に手続を開始することが認められるべきであり、かつ、武器の平等を確保するため、企業を相手取って訴訟を起こすにあたって法律扶助ならびに弁護士および法律扶助提供者の支援にアクセスできるべきである。集団訴訟および公益訴訟のような集団的苦情申立ての制度をまだ設けていない国は、企業の行為によって同じような影響を受けている多数の子どもにとっての裁判所へのアクセス可能性を高める手段として、これらの制度を導入するよう求められる。国は、たとえば言語もしくは障害を理由としてまたは年齢が低すぎるために司法へのアクセスを妨げる障壁に直面している子どもに対し、特別な援助を提供しなければならない場合もあろう。 69.年齢は、司法手続に全面的に参加する子どもの権利に対する障壁とされるべきではない。同様に、委員会の一般的意見12号にしたがい、民事手続および刑事手続に関与する子どもの被害者および証人のための特別な体制が発展させられるべきである。さらに、国は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針 [25] を実施するよう求められる。秘密保持およびプライバシーが尊重されなければならず、かつ、子どもに対しては、その子どもの成熟度およびその子どもが有している可能性がある発話上、言語上またはコミュニケーション上の困難を正当に重視しながら、手続のあらゆる段階において、進捗状況に関する情報が常に提供されるべきである。 [25] 経済社会理事会決議2005/20により採択されたもの。 70.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書は、国が、企業を含む法人に対しても適用される刑事法を制定するよう要求している。国は、子どもの権利の深刻な侵害(強制労働等)に関わる事案における、企業を含む法人の刑事法上の責任――または同一の抑止効果を有する他の形態の法的責任――の採用を検討するべきである。国内裁判所に対しては、裁判権に関する受け入れられた規則にしたがい、これらの深刻な権利侵害についての裁判権が認められるべきである。 71.調停、斡旋および仲裁のような非司法的機構は、子どもと企業に関わる紛争解決のための有用な代替的選択肢となりうる。これらの機構は、司法的救済に対する権利を損なうことなく利用可能とされなければならない。このような機構は、それが条約およびその選択議定書に一致しており、かつ有効性、迅速性ならびに適正手続および公正性に関する国際的な原則および基準に一致していることを条件として、司法手続と並んで重要な役割を果たしうる。企業が設置する苦情受付機構は、柔軟な、かつ時宜を得た解決策を提供できる可能性があり、かつ、時には、企業の行為について提起された懸念をこのような機構を通じて解決することが子どもの最善の利益にかなうこともあるかもしれない。このような機構は、アクセス可能性、正当性、予見可能性、公平性、権利との両立性、透明性、継続的学習および対話を含む基準 [26] にしたがったものであるべきである。いずれにしても、裁判所、または行政上の救済措置その他の手続の司法審査にはアクセスできることが求められる。 [26] 人権と多国籍企業その他の企業の問題に関する事務総長特別代表(ジョン・ラギー)報告書「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護・尊重・救済』枠組みの実施」(A/HRC/17/31)、指導原則31。 72.国は、子ども個人もしくは子どもの集団またはその代理人として行動する他の者が、企業の活動および操業との関連で国が子どもの権利を十分に尊重し、保護しかつ充足しなかった場合の救済を得られるよう、国際的および地域的人権機構(通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を含む)へのアクセスを容易にするためにあらゆる努力を行なうべきである。 C.政策措置 73.国は、子どもの権利を理解し、かつ全面的に尊重する企業文化を奨励するべきである。この目的のため、国は、条約を実施するための国家的な政策枠組みの全般的文脈に子どもの権利と企業の問題を含めるよう求められる。国は、企業が自社の企業活動の文脈において、また国境を越えて操業している場合には国外での操業、製品またはサービスおよび活動と関連した事業関係において子どもの権利を尊重することに関する政府としての期待を明示的に明らかにした指針を策定するべきである。これには、企業のあらゆる活動および操業における暴力を絶対に許さない政策の実施を含めることが求められる。国は、必要なときは、企業の責任に関する関連の取り組みの参考例を明らかにし、かつこのような取り組みを支持するよう奨励するべきである。 74.多くの状況下で経済の大きな部分を占めているのは中小企業であり、国として、これらの企業に対し、不必要な経営上の負担を回避しながら子どもの権利を尊重しかつ国内法を遵守する方法についての、容易に利用可能であり、かつこれらの企業にふさわしい指針および支援を提供することがとりわけ重要である。国はまた、より規模の大きな企業に対し、自社のバリューチェーン全体で子どもの権利を強化するために中小企業への影響力を活用するよう奨励することも求められる。 D.調整措置および監視措置 1.調整 75.条約およびその選択議定書を全面的に実施するためには、政府省庁間で、かつ地方から広域行政圏および中央に至るまでの諸段階の政府間で、部門横断型の調整が効果的に行なわれなければならない [27]。一般的に、企業政策および企業実務に直接関与している省庁は、子どもの権利を直接担当している省庁とは別に活動している。国は、企業法および企業実務を形づくる政府機関および議員が子どもの権利に関わる国の義務を知っていることを確保しなければならない。これらの政府機関および議員は、法律および政策を策定する際ならびに経済、貿易および投資に関する協定を締結する際に条約の全面的遵守を確保する備えを整えられるよう、関連の情報、研修および支援を必要とすることがあろう。国内人権機関は、子どもの権利および企業に関わっている種々の政府部局の連携を図る触媒として、重要な役割を果たしうる。 一般的意見5号、パラ37。 2.監視 76.国は、企業によって行なわれまたは助長された条約およびその選択議定書の違反(企業の世界的操業のなかで行なわれまたは助長された違反を含む)を監視する義務を負う。このような監視は、たとえば、問題を特定しかつ政策の参考とするために活用できるデータを収集すること、人権侵害を調査すること、市民社会および国内人権機関と連携すること、ならびに、自社が子どもの権利に及ぼす影響に関する企業の報告を実績評価のために活用することによって企業に公的な説明責任を負わせることを通じて、達成可能である。とくに、国内人権機関は、たとえば違反に関する苦情の受理、調査および調停、大規模な権利侵害に関する公的調査の実施、紛争状況下での調停、ならびに、条約の遵守を確保するための法律の見直しに関与することができる。必要なときは、国は、国内人権機関の立法上の権限を拡大して子どもの権利と企業の問題を含めるべきである。 77.国は、条約およびその選択議定書を実施するための国家的な戦略および行動計策を策定する際、企業の活動および操業において子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するために必要な措置への明示的言及を含めるべきである。国はまた、企業の活動および操業における条約の実施の進展を監視することも確保するよう求められる。このような監視は、子どもの権利に関する事前および事後の影響評価を通じて内部的に達成することも、議会委員会、市民社会組織、職能団体および国内人権機関のような他の機関との連携を通じて達成することも可能である。監視の一環として、企業が自分たちの権利に及ぼす影響に関する意見を子どもに直接尋ねることが求められる。若者評議会および若者議会、ソーシャルメディア、学校評議会および子ども団体のような、協議のためのさまざまな機構を活用することが可能である。 3.子どもの権利影響評価 78.すべての行政段階における企業関連の法律および政策の策定および実施において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するためには、継続的な子どもの権利影響評価が必要である。これにより、子どもおよびその権利の享受に影響を与える、企業関連のいかなる政策、法令、予算またはその他の行政決定の提案についてもその影響を予測することが可能になる [28] とともに、法律、政策およびプログラムが子どもの権利に与える影響の継続的な監視および事後評価が補完されるはずである。 [28] 一般的意見5号、パラ45。 79.子どもの権利影響評価の実施にあたっては、さまざまな方法論および実践を開発することができる。これらの方法論および実践においては、最低限、条約およびその選択議定書の枠組み、ならびに、委員会が明らかにした関連の総括所見および一般的意見が活用されなければならない。国が、企業関連の政策、立法または行政実務に関してより幅広い影響評価を実施する際には、これらの評価において、条約およびその選択議定書の一般原則が基調とされ、かつ、検討中の措置が子どもたちに及ぼす種々の影響について特別な考慮が払われることを確保するべきである [29]。 [29] 一般的意見14号、パラ99。 80.子どもの権利影響評価は、特定の企業または部門の活動によって影響を受けるすべての子どもへの影響について検討するために活用できるが、措置が一部のカテゴリーの子どもに与える異なる影響についての評価を含めてもよい。影響評価そのものを、子ども、市民社会および専門家ならびに関連の政府機関、学術的調査研究および国内外で記録された経験から得られた知見に基づいて行なうこともできる。分析の結果として、変更、代替策および改善のための勧告が行なわれるべきであり、また当該分析結果は公に利用可能とされるべきである [30]。 [30] 前掲。 81.プロセスが公平かつ独立であることを確保するため、国は、部外者を指名して評価プロセスを主導させることを検討してもよい。このような対応には重要な利益をもたらしうるものの、国は、結果について最終的に責任を負う当事者として、評価を実施する部外者が有能、誠実かつ公平であることを確保しなければならない。 E.連携措置および意識啓発措置 82.条約上の義務を負うのは国である一方、実施の作業には、企業、市民社会および子どもたち自身を含む社会のあらゆる層の関与を得る必要がある。委員会は、国が、企業にはその操業場所を問わず子どもの権利を尊重する責任があることについて、子どもにやさしく、かつ年齢にふさわしい伝達手段等も通じて(たとえば金銭感覚に関する教育の提供を通じて)、すべての子ども、親および養育者に対して情報提供および教育を行なうための包括的戦略を採択しかつ実施するよう、勧告する。条約に関する教育、研修および意識啓発は、人権の保有者としての子どもの地位を強調し、条約のすべての規定の積極的尊重を奨励し、かつ、すべての子ども(ならびに、とくに、被害を受けやすい状況および不利な状況に置かれた子ども)に対する差別的態度に異議を申立てかつこれを根絶する目的で、企業を対象としても行なわれるべきである。このような文脈において、メディアは、企業に関連する子どもの権利についての情報を子どもに提供し、かつ、子どもの権利を尊重する自社の責任に関する意識を企業の間で高めるよう、奨励されるべきである。 83.委員会は、国内人権機関が、たとえば望ましい実践のあり方に関する企業向けの指針および方針を策定して普及することにより、条約の規定に関する企業の意識啓発に関与できることを強調する。 84.市民社会は、企業操業の文脈において独立の立場から子どもの権利を促進しかつ保護するうえで、きわめて重要な役割を有している。これには、企業を監視し、かつその説明責任を問うこと、子どもが司法および救済措置にアクセスできるよう支援すること、子どもの権利影響評価に貢献すること、ならびに、子どもの権利を尊重する自社の責任に関する意識を企業の間で高めることが含まれる。国は、独立した市民社会組織、子どもおよび若者が主導する団体、学界、商工会議所、労働組合、消費者団体ならびに職能組織との効果的連携およびこれらの団体への効果的支援を含め、活発かつ鋭敏な市民社会のための条件を確保するべきである。国は、これらの団体およびその他の独立団体への干渉を控え、かつ、子どもの権利と企業に関する公的な政策およびプログラムへのこれらの団体の関与を促進するよう求められる。 VII.普及 85.委員会は、締約国が、議会に対してかつ政府全体で(企業の問題に取り組んでいる省庁および自治体/地方レベルの機関、ならびに、開発援助機関および在外公館など貿易および国外投資を担当する機関を含む)この一般的意見を広く普及するよう勧告する。この一般的意見は、国境を超えて操業している企業を含む企業ならびに中小企業およびインフォーマル部門の関係者に対しても、普及されるべきである。また、子どものためにおよび子どもとともに活動している専門家(裁判官、弁護士および法律扶助関係者、教職員、後見人、ソーシャルワーカー、公立および私立の福祉施設の職員を含む)ならびに子ども全員および市民社会に対しても、この一般的意見を配布しかつ周知することが求められる。そのためには、この一般的意見を関連の言語に翻訳すること、アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい翻案版を利用可能とすること、この一般的意見の意味合いおよび最善の実施方法について討議するためのワークショップおよびセミナーを開催すること、ならびに、関連するすべての専門家の養成および研修にこの一般的意見を編入することが必要となろう。 86.国は、委員会に対する定期的報告に、直面している課題、ならびに、企業の活動および操業との関係で子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するためにとった措置(国内的措置および適当な場合には国境を越えてとった措置の双方)についての情報を含めるべきである。 更新履歴:ページ作成(2014年3月23日)。
https://w.atwiki.jp/info_fukushima/pages/267.html
青森・山梨・長崎の甲状腺調査結果は福島県と変わらなかった [関連] 甲状腺関連のページ 「甲状腺」タグがついているページ一覧を開く はじめに 瓦礫焼却のせいで全国に広がった」というのはデマ くわしくはページの最下部で説明してます。簡単に言うと甲状腺に影響与えるのは放射性ヨウ素。その半減期8日で事故数ヶ月後でほぼ0になっていますので、瓦礫焼却で甲状腺ガンが全国に増えたということは、ありえません。 ポイント:福島県と他県の甲状腺への影響を比較するための調査 他県の甲状腺調査を行った理由は「比較」。検査機器は年々精度が高くなっているため以前発見できなかったものが見えるようになります。となると、過去と最新の調査結果を比較しても意味がありません。つまり、「見かけ上の異常が発見されやすくなる→見かけ上異常数が増えて、実際の状況がわからなくなる」という問題が生じるため、時系列を含め検査結果の条件を揃えることが疫学的に重要です。 また、放射性ヨウ素を摂取(吸入)しなかった子供たちの集団と、事故後に生まれた集団を比較することで、事故と甲状腺疾患の因果関係を解明するのに有用だと思われます。 2014年3月「他県と福島の甲状腺がん発生頻度が同程度」 2014.3.28現在の最新情報 ↓2014-03-30追加 環境省報道発表資料:甲状腺結節性疾患追跡調査事業結果(速報)http //www.env.go.jp/press/press.php?serial=17965 福島県以外の地域(青森、山梨、長崎)において、18歳以下の者を対象に甲状腺超音波検査を行った結果、56.5%の割合でA2判定の者が認められました。また、"5.1mm以上の結節又は20.1mm以上ののう胞が認められた者及びA2判定の内容であっても甲状腺の状態等から精密検査を要すると判断された者"(以下「B判定」という。)は福島県民健康管理調査では、約0.7%に認められましたが、三県調査では、約1.0%(44名)に認められました。 環境省が行った青森、山梨、長崎県で甲状腺検査を受けた4365人のうち精密検査で1人が甲状腺がんと診断された。 これによりわかったこと。 1)福島県以外でも(スクリーニングを行えば)数千人に一人程度の割合で見つかる 2)福島の甲状腺がんの増加は「スクリーニングによる見かけ上の増加」してしまう。 (=徹底的に調べたことによって原発事故の影響とは関係ないものが見つかってしまう) すでにこのような「見かけ上の増加」が起こりうることは、韓国や米国の調査等でわかっている。 甲状腺がん、福島は他県並み 環境省の比較調査 http //www.47news.jp/CN/201403/CN2014032801002318.html 環境省は28日、東京電力福島第1原発事故による福島県の子どもの健康影響を調べるため、比較対象として青森、山梨、長崎の3県の子どもの甲状腺がんの頻度を調べた結果を発表した。「対象者数が違うので単純比較はできないが、福島と発生頻度が同程度だった」としている。 環境省は2012年11月~13年3月、青森県弘前市、甲府市、長崎市の3~18歳の計4365人を対象に、甲状腺の結節(しこり)などの有無を調査。福島と同様の56・5%に当たる2468人に5ミリ以下のしこりなどが見つかったほか、44人に5・1ミリ以上のしこりなどが見つかり、2次検査が必要と診断されていた。 2014/03/28 20 24 【共同通信】 2013年3月 他県の甲状腺調査の結果は福島県と変わらなかった 2013.3.8 環境省の発表を元に各報道機関は「他県と福島県の甲状腺調査の結果はほぼ同じ」と伝えた。これは以前このサイトの別記事で予想した通りですね。 その他甲状腺についての情報はこちらから→[甲状腺についてINDEXページ] http //www47.atwiki.jp/info_fukushima/pages/44.html しこりの割合本県低く 4県の子ども甲状腺検査 福島民報 2013/03/30 http //www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2013/03/post_6779.html 環境省は29日、東京電力福島第一原発事故に伴う福島県の甲状腺検査結果と比較するため青森、山梨、長崎3県で実施した甲状腺検査の詳細結果を発表した。6~18歳の各年代で小さなしこりなどがある「A2判定」(2次検査の必要なし)の割合はいずれも50%台後半で、40%台前半~50%台前半の福島県の方が低かった。 福島テレビ「”甲状腺しこり” 福島県外で高い割合」 「福島より他県の方が甲状腺にしこりや嚢胞がある割合は高い」とのニュース報道がありました。「県外のほうが割合が高い」といっても「福島と県外で有意差がない」という意味で考えて良いと思います。同レベルの精度の機器で判断しても医師毎の判断のバラつきが生じる可能性、放射性ヨウ素以外の因子が存在する可能性もあります。また年齢分布が違うかもしれません。ですので、今のところ「福島と他県の甲状腺検査結果はどう程度」と考えて良いと思います。 ブログやTwitterでの反応 (2013.3.8の報道を受けて ダニエル・カール氏「福島県内・県外の子供達の甲状腺の嚢胞の様子は同じ」 https //twitter.com/DanielKahl/status/310019529201815552 ダニエル・カール @DanielKah もう一つのデマが「ぶっ壊れた」。NHKWeb 福島県内・県外の子供達の甲状腺の嚢胞の様子は同じ。http //bit.ly/WP6U7A つまり、福島の子供達の甲状腺は異常なし。以前オラが検索した原発事故前の関東近辺データもあるし、日本人と日系アメリカ人の比較データもある。 ブログ:福島 信夫山ネコの憂うつ「震災から2年 福島の子どもの甲状腺異常なし「反原発」はデマ攻撃をやめないと「自称報道教会(自由報道協会)」みたいにオワリだにゃ http //shinobuyamaneko.blog81.fc2.com/blog-entry-131.html その他の報道機関から 他県でも56%の甲状腺にしこり 福島の子どもとほぼ同様 http //www.47news.jp/CN/201303/CN2013030801001917.html 環境省は8日、東京電力福島第1原発事故による福島県の子どもの甲状腺への影響を確かめるため、比較対象として長崎など3県の子どもを調査した結果、計56・6%の子どもの甲状腺に小さなしこりなどが見つかったと発表した。 +... 約41%だった福島県より高い割合だが、環境省担当者は「福島とほぼ同様の結果と考えている」としている。 比較調査の対象となったのは、事故による影響が小さく、検査体制が整っている青森県弘前市、甲府市、長崎市の3~18歳の4365人。5ミリ以下の結節(しこり)や20ミリ以下ののう胞が見つかったのは56・6%に当たる2469人だった。 2013/03/08 18 24 【共同通信】 福島「割合高くない」 子どもの甲状腺検査4県比較 (福島民報 http //www.minpo.jp/news/detail/201303097078 環境省は8日、東京電力福島第一原発事故による県内の子どもの甲状腺への影響を確認するため、比較対象として実施した青森、山梨、長崎3県の甲状腺検査結果(速報)を発表した。小さなしこりなどがある「A2判定」の割合は56・6%で、41・2%だった本県の甲状腺検査結果の方が低かった。 環境省の担当者は「検査人数の違いなどを総合的に考慮すれば、ほぼ同様の結果。少なくとも福島の割合が高いとは言えず、特異な状況ではないと考えられる」としている。 +... 比較対象となったのは、原発事故による影響が小さく、本県と同じ高精度で検査できる環境が整った青森県弘前市、甲府市、長崎市の3~18歳の計4365人。 5ミリ以下のしこりや20ミリ以下の嚢胞(のうほう)が見つかった「A2判定」は56・6%に当たる2469人だった。A2判定は二次検査の必要はない。しこりや嚢胞がA2判定以上の大きさで二次検査が必要な「B判定」は44人で1・0%。0・6%だった本県の方が低かった。 県は原発事故発生時の0~18歳の子ども約36万人を対象に甲状腺検査を実施している。検査は13万3089人の集計を終了。3人が甲状腺がんと確定している。 ( 2013/03/09 09 58 カテゴリー:主要 ) 各報道機関の記事タイトル +... 2013-03-08 甲状腺の状態比較、福島は長崎などとほぼ同様 (日本経済新聞) 子どもの甲状腺検査、福島は他県と大差なし (読売新聞) 甲状腺のしこり、福島と同様傾向=青森、山梨、長崎の子ども−環境省【震災2年】 (時事通信) 甲状腺県外調査 しこりの割合、福島県と変わらず (毎日新聞) 他県でも56%の甲状腺にしこり 福島の子どもとほぼ同様 (北海道新聞) 他県でも56%の甲状腺にしこり 福島の子どもとほぼ同様 - 47NEWS さらに東京と神戸でも甲状腺調査 この他にも、東京、神戸で甲状腺調査がすでに行われていました。 東京での甲状腺検査3千人「福島の子どもの嚢胞は放射線の影響とは考えにくい」http //www47.atwiki.jp/info_fukushima/pages/210.html Togetter:神戸での小児甲状腺コントロール調査について http //togetter.com/li/413554 デマ予防的な蛇足:他県でのがれき処理が甲状腺に与えるわけがない。 中には「瓦礫処理のせいで全国に拡散した」と誤解している人もいるが、それについても説明しましょう。 1)甲状腺に影響するのは「放射性ヨウ素」 2)放射性ヨウ素の半減期は8日(二ヶ月後にはほぼゼロになっている) 結論:1,2によって、がれき処理原因での甲状腺への影響が他県に及んだ可能性はない。 ※もちろん現在のがれき処理で有意な量のセシウムが拡散し全国に健康被害を及ぼすことも考えにくい。 がれき処理については、また別途まとめる予定です。 資料 ※今回の報道の元となった資料 http //www.env.go.jp/press/press.php?serial=16419 環境省>報道発表資料> 平成25年3月8日 福島県外3県における甲状腺有所見率調査結果(速報)について(お知らせ) 環境省では、福島県が行う県民健康管理調査の甲状腺検査において、約40%の方で小さなのう胞等の所見を認めている(いわゆるA2判定)ことを踏まえ、平成24年度事業において福島県外3県の一定数の方に甲状腺検査を行っているところです。 なお、今般お知らせする結果は速報値であり、対象地域別の結果を含む詳細な調査結果は3月下旬に報告する予定です。 福島県外3県における甲状腺有所見率調査結果(速報) 1.調査の背景・目的 福島県が行う県民健康管理調査の甲状腺検査において、約40%の方に20.0mm以下の小さなのう胞等の所見が認められています。 こうした小さなのう胞等は精密検査を必要とするものではありませんが、これらの軽微な所見も記録することとした結果、かえって住民の方の不安を招いていると指摘されています。 このような大規模かつ精度の高い調査は世界初の試みであり、子どもでのう胞を認める頻度や、検査結果に生じうるばらつきについて、正確にはわかっておりません。 こうした状況の中、環境省においても、住民の皆様の理解促進に役立てることを目的に、福島県外の3県の子どもを対象に、県民健康管理調査と同様の検査を実施し、その結果の妥当性について、情報を提供することとしたものです。 2.調査の概要 (1)対象地域 ○ 青森県弘前市 ○ 山梨県甲府市 ○ 長崎県長崎市 (2)対象者 3~18歳の者 4,500名程度 (3)実施期間 平成24年11月~平成25年3月 (4)調査委託先 NPO法人日本乳腺甲状腺超音波医学会 (5)調査方法 ○ 県民健康管理調査と同等の水準の甲状腺超音波検査を対象者に実施します。 ○ 甲状腺超音波検査の結果については、県民健康管理調査と同様の基準で分類し、調査対象地域における甲状腺ののう胞等の頻度を算出します。 3.調査結果 (注) この調査で実施された甲状腺超音波検査は、スクリーニング検査であり、診断の確定を目的とした検査ではありません。 4.今後の予定 対象地域別の結果を含む詳細な調査結果については、3月下旬に公表してまいります。 連絡先 環境省総合環境政策局環境保健部 放射線健康管理担当参事官室 直通 : 03‐5521‐9248 代表 : 03‐3581‐3351 参事官 : 桐生 康生 (6375) 参事官補佐 : 廣瀬 佳恵 (6396)
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/286.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:武力紛争における子ども 一般的討議勧告一覧 参考:武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2000年):政府訳(PDF)/平野裕二訳 (第2会期、1992年) 原文:英語(PDF) ※CRC/C/10(第2会期の報告書)へのリンク。以下では、第3会期の報告書(CRC/C/16)の関連パラグラフもあわせて訳出した。 日本語訳:平野裕二 CRC/C/10(第2会期の報告書) 5.一般的討議のフォローアップ 75.行なわれたさまざまな貢献および検討された諸問題に鑑み、委員会は、その権限の枠組みのなかで、武力紛争における子どもという突出した複雑な問題に対して継続的に対応していく必要があることを認識した。したがって委員会は、この問題に立ち向かうためにとりうるさまざまな措置を構想した。 (a) より関連性の高い規定、とくに第38条および第39条の実施に関する、より具体的な指針を策定すること。 (b) 一連の勧告を起草すること。 (c) 予備的な一般的意見を検討すること。 (d) この問題の特定の側面に関する一般的研究を実現すること。 (e) 軍隊への子どもの採用年齢を18歳に引き上げる、子どもの権利条約の将来の選択議定書を予備的に起草すること。 76.これらのさまざまな措置について検討するため、委員会は、一般的討議を踏まえ、数名の委員から構成される作業部会の設置を決定し、1993年1月に予定されている委員会の次回の通常会期に最終的提案を提出する任務を委ねることとした。 77.さらに、委員会は、 締約国報告書の審査という任務を遂行するにあたり、以下のことを構想できることを強調した。 (a) 一部の締約国が行なった、18歳未満の子どもを採用しない旨の決定に関する宣言を歓迎すること。 (b) 第38条の適用に関するかぎりで、締約国の立法および実務に関する情報の必要性を強調すること。 (c) 第41条に照らし、もっとも権利の実現に資する規範が適用されているか否かについての情報を求め、またはいっそうの保護につながる規定を国レベルで採択することを奨励すること。 (d) 締約国に対し、軍隊への採用が18歳未満で認められている場合に、この状況において子どもの最善の利益がどのように第一次的に考慮されているかを検討するよう奨励すること。 (e) 締約国に対し、進展を監視する継続的プロセスのなかで、自国の管轄下にあるすべての子どもに対して子どもの権利の全面的実現を確保するためにあらゆる必要かつ適切な措置がとられてきたかどうかを検討するべきであることを強調しかつ奨励すること。 CRC/C/16(第3会期の報告書) 173.武力紛争における子どもについての一般的討議を第2会期に開催したことを受けて、委員会は、数名の委員から構成される作業部会の設置を決定し、表明されたさまざまな懸念および提案された多様な措置を踏まえて、当該討議のフォローアップとして確保されるべき対応についての提案を、委員会の第3会期で提出する任務を委ねることとした(CRC/C/10、パラ76)。 174.作業部会は、委員会に対し、この点に関してとりうる多数の措置についての検討結果(それぞれの措置にふさわしいと思われる優先度を含む)を反映した、作業部会の活動についての報告を口頭で行なった。作業部会は、この突出した現実について研究しかつ理解を深めるうえで、また作業部会の将来の活動についての重要な枠組みを確立するうえで、一般的討議が妥当性を有するものであったことをあらためて強調した。 175.委員会は、今後の措置を構想するために、とくに一般的意見または一連の勧告もしくは具体的指針の草案を検討するうえで、この問題に対して継続的に注意が払われるようにし、かつ締約国報告書の検討の経験を活かしていく必要があることを認識した。 176.委員会は、以下の措置を優先的にとることを構想した。 (a) 武力紛争が子どもによる基本的権利の享受に深刻な形で影響を及ぼしていることに鑑み、かつこの現実に対していっそうの注意を向ける目的で、条約第45条(c)に照らし、総会に対して、事務総長が武力紛争の悪影響からの子どもの保護を向上させる方法および手段についての研究を実施することを要請するよう勧告すること(本報告書の付属文書VI参照)。 (b) 委員の1名に対し、条約第38条に掲げられている年齢を18歳に引き上げる、条約の選択議定書の予備草案の作成を委託すること。この予備草案は本報告書に付属文書VIIとして掲載されている。この枠組みのなかで、委員会は、締約国に対し、第38条に掲げられている年齢を18歳に引き上げることを目的とする可能な措置をとることを検討するよう奨励した。 (c) 世界〔人権〕会議準備委員会の第4会期に提出する勧告で、武力紛争への子どもの関与の問題を取り上げること。委員会は、実のところ、総会による世界会議の暫定的議題の採択を受けて、この問題が、女性および男性が有するすべての人権(被害を受けやすい集団に属する者の人権を含む)の全面的実現における現代的傾向および新たな課題に関する議題の枠組みのなかで提起すべき、重要な論点のひとつになる可能性があると考える。 (d) 条約第39条に照らし、委員会が特定する論点のリストに、検討の対象となりうる主題として回復および再統合の問題を含めること。 (以下略) 付属文書V 武力紛争における子どもについての覚書(略) 付属文書VI 武力紛争における子ども:総会に対する勧告 1.条約第45条(c)の規定にしたがい、子どもの権利委員会は、総会が、事務総長に対し、子どもの権利に関連する特定の問題についての研究を委員会に代わって行なうよう要請することを勧告できる。 2.委員会は、1992年9月~10月に開催された第2会期で、1日を割いて「武力紛争における子ども」の問題に関する一般的討議を行なった。討議された主な論点としては、武力紛争における子どもの枠組みにおいて適用される現行の基準の妥当性および適切性、武力紛争の状況下にある子どもに効果的保護を確保するための措置、ならびに、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合の促進などがあった。第2会期に関する委員会の報告書(CRC/C/10、パラ61-77)ならびに第38回および第39回会合の議事要録(CRC/C/SR.38 and 39)に、委員会の第2会期で行なわれた諸論点についての討議の内容が反映されている。委員会は、第3会期(1993年1月11~29日)でこれらの問題についてさらに討議した。 3.委員会は、武力紛争における子どもという深刻な問題にいっそうの注意を向けるために、大規模な国際連合研究が実施されるべきであるとの結論に達した。現在の武力紛争において子どもたちが著しく苦しんでいることは明らかであり、また人道法の基準の違反がしばしば行なわれており、かつこれらの基準はあらゆる関連の状況を網羅しているわけではない。人道上のニーズを満たすために「平和の回廊」または「静穏の期間」を組織しようとする試みも、当事者によって常に歓迎されてはこなかった。したがって、これらの緊急の問題に対する国際的対応を見直し、かつその解決に対する新たなアプローチを議論することが必要である。そこで委員会は、条約第45条(c)にしたがい、総会に対して、事務総長が武力紛争の悪影響からの子どもの保護を向上させる方法および手段についての研究を実施することを要請するよう勧告する。この目的のため、事務総長として、関連の専門機関、その他の国際連合機関、非政府組織および赤十字国際委員会の協力を慫慂することも考えられる。 4.委員会は、事務総長に対し、この勧告に対する総会の注意を喚起して第48会期における検討に供するよう要請する。 付属文書VII 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書予備草案(略) 更新履歴:ページ作成(2017年2月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/231.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利 一般的討議勧告一覧 (参考)移住労働者権利委員会・一般的意見2号:不正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利(2013年) (第61会期、2012年) 原文:英語〔PDF〕 日本語訳:平野裕二 I.背景(略) II.開会会合(全体会)概要(略) III.作業部会討議概要(略) IV.勧告 56.国際的移住の状況にある子どもの権利の尊重、促進および充足に関して、国がその政策およびプログラムにおいて考慮すべき問題ならびに他の関連の主体が指針とすべき事項を明らかにする目的で、子どもの権利についての意識および議論を喚起する場を提供するというDGD〔一般的討議〕の趣旨にしたがい、委員会は、以下の勧告を支持する。これにあたり、委員会は、子どもはどのような環境にあってもまず何よりも子どもであることを強調するものである。委員会は、移住の影響を受けている子どもの権利を特定しかつこれに対応するに際して、国および関連の主体は、さまざまな態様の子ども、状況または権利を分類しまたは区別しないよう配慮しつつ、条約のすべての規定および原則に基づいたホリスティックかつ包括的なアプローチをとらなければならないことを、あらためて指摘する。国際的移住の当事者である子どもまたはその影響を直接受けているすべての子どもは、年齢、性別、民族的または国民的出身および経済的地位または在留資格の如何を問わず自己の権利を享受する資格があるのであって、このことは、子どもが自発的な移住および非自発的な移住のどちらの状況に置かれている場合にも、また保護・養育者がいるかいないか、移動中であるか何らかの形で定住しているか、在留資格を認められているか否か等の諸条件の如何を問わず、変わらない。以下の勧告は、その検討の便宜を図るため、条約の実施に関する各国の定期的報告書についての委員会の総括所見および勧告の構成にしたがって配列されている。 一般的勧告(立法、政策および調整に関するものを含む) 57.国は、条約に掲げられた権利が、子ども自身またはその親の移住に関わる地位の如何を問わず、国の管轄下にあるすべての子どもに対して保障されることを確保するとともに、これらの権利のあらゆる侵害に対応するべきである。国際的移住の状況にあるすべての子どもに関する第一義的責任は、出入国管理機関ではなく子どものケアおよび保護を担当する機関にある。 58.国は、国際的移住の当事者である子どもまたはその影響を受けている子ども全員が、年齢、経済的地位、自己または親の在留資格の如何を問わず、自発的な移住および非自発的な移住のどちらの状況に置かれている場合にも、かつ保護・養育者の有無等に関わりなく、時宜を得た形で条約の全面的保護を享受できることを確保するため、人権を基盤とする包括的な法律および政策を採択するべきである。 59.国は、移住に関連するすべての国内法ならびに地域的および(もしくは)国際的な枠組みまたは協定に条約が統合されることを確保するため、立法、政策ならびにプログラムおよび関連の研修を含む措置をとるよう、奨励される。 60.国は、空港および港のような移住者の到着/通過場所における実務が条約および国際人権基準に全面的に一致することを確保するための具体的指針を発布するよう、勧告される。 61.国に対し、移住および他のいずれかの問題に関する政策、プログラム、実務および決定が、国際的移住の影響を直接間接に受けているすべての子どもの権利、ウェルビーイングおよび発達に及ぼす影響について効果的評価を実施するとともに、条約の基本的原則が、移住政策その他の考慮事項との関連で効果的に優先されかつ意味のある形で実施されること、ならびに、移住政策および子ども保護政策のさらなる発展に〔評価の〕結果が反映されることを確保するよう、勧告されるところである。 62.国はまた、国際開発政策、移住政策および子どもの権利との連携を個別におよび集団的に強化することも、求められる。 データ収集および調査研究 63.国は、移住の状態および移住が子どもに及ぼす影響に関するデータ収集および分析を増進させかつ拡大するための具体的措置を確保するべきである。このようなデータは、とくに年齢、性別、出身国、教育歴およびその他の関連情報(移住に関わる地位、入国許可、出国許可および就労許可の発布ならびに国籍の変更など)の別に細分化することが求められる。さらに委員会は、国が、このようなデータが(とくに出入国管理当局によって)資格外移住者を害するようなまたは資格外移住者の不利益になるようなやり方で利用されないことを保障するための保護措置を確保するよう、勧告するものである。 64.国は、移住の影響を受けている世帯が、地方の統計制度およびデータシステム、ならびに、生活水準、支出および労働力に関する全国的標本調査で特定されることを確保するべきである。このようなデータおよび情報を、移住の影響を受けている子どもが科学的根拠に基づく社会政策、地方計画および予算策定プロセスの発展に包摂されることを確保するために活用することが、勧告される。また、国が、国の政策および(または)プログラムの立案に際して移住者である子どもおよび家族の意見および経験を考慮するため、これらの子どもおよび家族(とくに、脆弱な状況に置かれた子どもおよび家族)と協議することも、勧告されるところである。委員会に提出する締約国の定期報告書にこのような情報を記載することも求められる。 65.さまざまな組織からの呼びかけを認識し、かつ国際的な移住と開発に関するハイレベル対話(2013年)に鑑み、関係者は、国際的移住の文脈における子どもの権利を、移住に関する子どもの地位の如何を問わず確保するための具体的措置に関する世界的調査の実施を検討するよう、奨励される。 66.情報の監視および収集を推進するため、締約国は、自国の領域内にあって移住の影響を受けているすべての子どもに関わる条約実施の体系的評価を委員会に対する定期的報告に組みこむとともに、人権保障に責任を負う国内機関(オンブズマン、平等機関等)に対し、移住の影響を受けている子どもに対応することを具体的任務としながら条約の遵守状況の監視において鍵となる役割を果たす権限を与えるよう、求められる。 67.国は、移住者である子どもの状況を監視する責任が出身国にのみ負わされないこと、ならびに、情報およびデータが通過国および目的地国に転送され、かつこれらの国によって受領されることを確保するべきである。その際、国は、移住の際および到着時に子どもをとくに対象とする効果的なサービスを提供できるようにするため、ケースマネジメント・システムにおいて子どもの即時的および長期的ニーズを監視するための機構を確立することが求められる。 子どもの定義および18歳未満のすべての者への条約の適用 68.子どもの定義にしたがって18歳になるまで権利および保護が与えられていることを想起し、国は、16歳以上の者を含むすべての子どもに対し、かつ移住に関するその地位に関わりなく、平等な水準の保護が提供されることを確保するよう促される。 69.加えて、国は、18歳に達した子ども(とくに養護環境を離れる子ども)のために十分なフォローアップ措置、支援措置および移行措置を提供するべきである。そのための手段には、長期的な正規移住者としての地位へのアクセス、および、教育を修了し、かつ労働市場への統合を図るための合理的機会へのアクセスを確保することも含まれる。 差別の禁止 70.国は、いかなる事由に基づく差別とも闘うための十分な措置を確保するべきである。その際、外国人嫌悪、人種主義および差別と闘い、かつ、移住の影響を受けている家族の社会統合を促進するための努力を強化することが求められる。国はまた、移住者である子どもおよびその家族を暴力および差別から保護し、かつ諸権利へのアクセス、公平および尊重を促進する目的で、とくに地方レベルで、移住者に関する知識を向上させ、かつ移住者に関する否定的見方に対応するためのプログラムも実施するべきである。このような取り組みにおいては、迅速かつ効果的な救済機構ならびに言語的および文化的に適切な十分な支援措置への、移住者による公平なアクセスを確保することも求められる。 71.国は、自国の移民政策において障害のある子どもまたは親が障害者である家族の子どもが差別されないこと、および、障害を入国申請の却下事由と考えないようにすることを確保するべきである。 子どもの最善の利益 72.国は、子どもに影響を及ぼすいかなる移住手続についても、当該手続のすべての段階および当該手続に関する決定において、かつ子どもの保護に従事する専門家、司法機関および子ども自身の関与を得ながら、子どもの最善の利益に関する個別評価を実施するべきである。とくに、子どもまたはその親の収容、送還または退去強制につながるいかなる手続においても、子どもの最善の利益を第一次的に考慮することが求められる。 73.国は、自国の法律、政策および実務において、子どもの最善の利益の原則が移住に関する考慮事項、政策上の考慮事項その他の行政上の考慮事項に優先することを明確にするべきである。その際、国は、移住手続、リスクおよび権利、保健面および精神保健面での支援、法的代理および後見、面接ならびにその他の手続に関する情報が、子どもにやさしく、かつ文化的に配慮のあるやり方で利用できることを確保するよう求められる。 74.国は、子どもに影響を及ぼすいかなる移住手続についても、当該手続のすべての段階または決定において、子どもの保護に従事する専門家および司法機関の関与を得ながら、可能なかぎり最大限に、継続的かつ個別的な子どもの最善の利益評価および正式な認定手続を実施するべきである。これには、子どもまたはその親の退去強制につながるいかなる手続も含まれる。国は、法律、政策および実務において、子どもの最善の利益の原則が移住に関する考慮事項その他の行政上の考慮事項に優先することを明確にするべきである。その際、国は、移住手続、リスクおよび権利、保健面および精神保健面での支援、法的代理および後見、面接ならびにその他の手続に関する情報が、子どもにやさしく、かつ文化的に配慮のあるやり方で利用できることを確保するよう求められる。 訳者注/パラ72~74の重複は原文ママ。 意見を聴かれる子どもの権利 75.国は、自国の法律、政策、措置および実務において、移住の文脈における子どもの権利および(または)その親の権利に影響を及ぼすすべての移住手続および司法手続における適正手続が保障されることを確保するべきである。すべての子ども(親その他の法定保護者とともにいる子どもを含む)は権利を保有する個人として扱われなければならず、その子ども特有のニーズは平等にかつ個別に考慮されなければならず、またその意見は適切に聴取されなければならない。子どもは、自分自身の状況に関する決定またはその親に関する決定に対し、すべての決定が自己の最善にのっとって行なわれることを保障するための行政上および司法上の救済措置にアクセスできなければならない。 76.とくに、国は、年齢の鑑別および決定の手続、面接の実務ならびに法的手続が、子どもの権利についての十分な専門性を有する職員によって、迅速な、子どもにやさしい、学際的な、文化的に配慮のあるやり方で進められることを確保するべきである。 アイデンティティ(名前および国籍を含む)に対する権利 77.国は、すべての子どもの出生登録を確保するための措置(移住者である子どもの出生登録を妨げるいかなる法律上および実務上の要因も取り除くことを含む)を強化するとともに、国籍を付与しなければ子どもが無国籍となる場合、自国の領域内で出生した子どもに市民権を付与するべきである。 人身の自由に対する権利および収容の代替措置 78.子どもは、移住に関わる自己の地位または親の地位を理由として、犯罪者として扱われまたは懲罰的措置の対象とされるべきではない。移住に関わる自己の地位または親の地位を理由とする子どもの収容は、子どもの権利の侵害であり、かつ、子どもの最善の利益の原則に常に違反する。これを踏まえ、国は、出入国管理上の地位を理由とする子どもの収容を速やかにかつ完全に取りやめるべきである。 79.国は、子どもが、通過国および(または)目的地国に家族構成員および(または)いる場合にはこれらの者といっしょにおり、かつ、その出入国管理上の地位についての解決が図られるまでの間、収容されるのではなくコミュニティを基盤とする環境で家族として滞在できるようにする立法、政策および実務を通じて、子どもの最善の利益を、人身の自由および家族生活に対する子どもの権利とともに充足する収容の代替措置を、可能なかぎり最大限に、かつもっとも制約の度合いの少ない必要な手段を活用しながら採用するべきである。委員会の一般的意見10号(CRC/C/GC/10、2010年)を強調しつつ、国には、自由を奪われた少年の保護に関する規則(ハバナ規則)を含む、拘禁環境に関する国際基準(これらの基準は行政拘禁または非刑事的拘禁を含むあらゆる形態の拘禁に適用される)を遵守する法的義務があることが、あらためて指摘される。このような措置は慎重に立案されるべきであり、また子どもの代替的養護に関する国連指針その他の人権基準にもしたがう形で立案されるべきである。国は、収容センターから放免された子どもが支援措置および適切な代替的養護を利用できることを確保するよう求められる。 80.にもかかわらず子どもが自由を剥奪されるときは、国は、いかなる場合にも、そのような措置を、もっとも短い期間で、かつ少なくとも人権法に掲げられた拘禁に関する最低基準を満たすような条件下で課すよう促される。これには、子どもにやさしい環境の確保、子どもの親または保護者ではない成人からの分離(たとえ子どもが16歳以上であっても同様である)、子どもの保護に関する保障措置および独立の監視が含まれる。 81.受入れセンターおよび(または)これに類する他の施設から失踪しまたは行方不明になった移住者の子どもの状況に関する懸念に照らし、国は、受入れセンターの手続/施設および環境についての、条約および子どもの代替的養護に関する国連指針に全面的にしたがった具体的指針を確保するべきである。 あらゆる形態の暴力(移住の文脈におけるものを含む)からの子どもの自由 82.国は、学校およびコミュニティ環境にとくに焦点を当てながら、国際移住の影響を受けているあらゆる年齢の子どもが、移住に関する自分自身のまたはその親の地位の如何を問わず暴力から平等に保護されることを確保するため、法的拘束力がありかつジェンダーに配慮した積極的な政策、プログラムおよび行動を採択するべきである。子どもに対する暴力に関する特別報告者および国連システム内外で同特別報告者を支援する諸機関は、連携して、かつ移住の状況にある子どもたちの意見およびニーズを全面的に考慮にいれながら、国際移住の文脈において子どもが暴力の被害をとりわけ受けやすいことを調査研究および行動における優先的問題のひとつとして取り上げていくよう奨励される。 家族生活に対する権利 83.国は、移住に関する自国の政策、法律および措置において家族生活に対する子どもの権利が尊重されること、ならびに、いかなる子どもも国の作為または不作為によってその親から分離されないこと(このような分離が子どもの最善の利益にしたがって行なわれる場合を除く)を確保するべきである。このような措置には、とくに、家族再統合の申請に対して積極的、人道的かつ迅速に対応すること、可能なときは常に移住に関わる地位の正規化のための選択肢を提供すること、および、残された子どもが通過国および(または)目的地国において親と合流できる(または親が子どもと合流できる)ようにするための家族再統合政策を、移住のすべての段階でとることが含まれるべきである。 84.国は、子どもが目的地国の国民である場合、その親の収容および(または)退去強制を行わないようにするべきである。逆に、親の正規化を検討することが求められる。決定によって子どもの最善の利益が否定されないことを確保するため、子どもは、親の入国許可、在留または追放に関わる手続において意見を聴かれる権利を認められるべきであり、かつ、親の収容命令および(または)退去強制命令に対する行政上および司法上の救済措置にアクセスできるべきである。子どもの最善の利益にしたがった、収容および退去強制に代わる措置(正規化を含む)を、法律によっておよび実務を通じて確立することが求められる。 85.国は、移住に関わる地位の如何を問わず、すべての移住者を対象として経済的、社会的および文化的権利へのアクセスを確保するよう努めるべきである。国は、移住の状況にある子どもおよび家族にとくに注意を払い、かつ残された子どもおよび(または)非正規な移住状況にある子どもを包摂しながら、社会政策、子ども期政策および家族保護政策にこのことが含まれることを確保するよう、求められる。 生活水準、経済的、社会的および文化的権利の享受 86.国は、移住の状況にあるすべての子どもが、移住に関わる自己のまたは親の地位の如何に関わらず、経済的、社会的および文化的権利ならびに基礎的サービスに対して国民である子どもと平等にアクセスできることを確保するとともに、このような子どもの権利を法律で明確にするべきである。その際、国は、移住の影響を受けている子どもおよびその家族(とくに非正規な状況にある子どもおよび家族)が、とくに保健ケア、教育、長期の社会保障および社会扶助等のサービスおよび給付に効果的にアクセスすることの妨げとなる、またはこれらの子どもおよび家族を差別する法律、政策および実務の迅速な改革を図るよう、強く奨励される。サービスにアクセスしにくくなることによってもたらされるジェンダー特有の影響(セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関わる権利ならびに暴力からの安全保障など)への対応に、とくに注意が払われるべきである。国は、「残された」子どもが権利およびサービスにアクセスしようとする際に直面する困難について、市民社会および地域コミュニティと連携しながら具体的対応をとるよう求められる。サービスへのアクセスを妨げる行政的および金銭的障壁は、身元および居住を証明する代替的手段(供述証拠など)を認める等の対応を通じ、取り除くべきである。住民登録機関および公共サービス提供機関への効果的アクセスを実際上も確保するため、これらの機関を対象とした研修および指導の実施が求められる。 87.国は、住民登録機関、公共サービス提供機関および出入国管理機関の間の情報共有について、このような情報共有が子どもの最善の利益に反せず、かつ子どもまたはその家族が潜在的な危害または制裁にさらされないことを確保するため、効果的な保障措置が設けられるようにするべきである。このような保障措置は、サービス提供機関を対象として明確な指針を発布すること、および、非正規な移住の状況にある者の間でこれらの保障措置に関する意識啓発プログラムを実施すること等の手段を通じ、法律上も実際上も実施されなければならない。 88.子どもを貧困および社会的排除から保護するための政策、プログラムおよび措置には、移住の状況にある子ども(とくに、出身国に残された子ども、および、移住者である親から目的地国で生まれた子ども)も、その地位の如何に関わらず、包摂されなければならない。移住に直接間接に関係する形で人が脆弱な状況に置かれるあらゆる事態を防止し、かつこれに対応するための、国家的な社会保護制度の能力強化が図られるべきであり、また移住の影響を受けている子どもおよびその家族は、移住に関わる地位の如何に関わらず、かついかなる種類の差別もなく、出身国、通過国および目的地国における社会政策および社会プログラムの具体的重点対象集団に位置づけられるべきである。社会保護政策には、移住の状況にある家族および養育者を対象とした、これらの家族および養育者が子どもの養育責任を果たすことの便宜を図るための支援(コミュニティを基盤とする社会サービスを通じて提供されるものを含む)に関する具体的規定を含めることが求められる。これらの規定には、代替的養護を受けている子どものための特別サービスも含まれるべきであり、また移住が子どもに及ぼす心理社会的影響の緩和にも焦点が当てられるべきである。 健康に対する権利 89.国は、移住の過程、庇護を求める過程または人身取引の対象とされた過程で子どもが経験したトラウマに対応するための、十分なかつアクセスしやすい措置を確保しかつ実施するべきである。子どもの最善の利益に関する評価および認定を行なう場合も含め、すべての子どもが精神保健サービスを利用できるようにすることに、とくに配慮することが求められる。 経済的搾取からの保護 90.国は、移住に関する自国の政策および措置において、条約、ならびに、就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関第138号条約、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する同第182号条約および家事労働者の適切な仕事に関する同第189号条約が考慮されることを確保するべきである。さらに、国が、労働の文脈で、とくにインフォーマル労働および(または)季節労働の状況で生じる子どもの権利侵害を特定しかつ是正するための監視制度および通報制度の設置を検討することも、勧告されるところである。 正規のかつ安全な移住経路および安定した在留資格へのアクセス 91.国は、可能なときは常に、正規のかつ非差別的な移住経路を利用できるようにするとともに、子どもおよびその家族が、家族の結合、労働関係および社会統合等の事由を根拠として長期的な正規の移住者としての地位または在留許可にアクセスできるようにするための、恒久的なかつアクセスしやすい機構を設けるべきである。これらの正規化プログラムにおいては、移住者の社会的統合の促進および子どもの権利(家族生活に対する権利を含む)の保護が目指されるべきである。 紛争状況 92.紛争によって生じた移住の状況等においても、国には条約および国際人権基準を遵守する法的義務があることを想起し、国は、紛争状況に関わる自国の移住政策および移住手続において子どもの権利に関する十分な保障措置が設けられることを確保するべきである。 V.結論(略) 更新履歴:ページ作成(2013年2月22日)。
https://w.atwiki.jp/9darts/pages/34.html
DARTSLIVE2 設置店舗 VSPHOENIX S 設置店舗 D-1X 設置店舗 DARTSLIVE2 設置店舗 店名 住所 DARTS HIVE 郡山 福島県郡山市南2-12 POISON 福島県田村市船引町船引字五升車69-13 BAR Revival 福島県郡山市大町1-4-3 エリート16ビル4F darts bar BRONCO 福島県福島市栄町12-29 グリーンタウン栄町B1 キュースター 福島県白河市昭和町169-1 ARK 福島県白河市北堀切35 北堀切ビル3F Bar 煙 福島県郡山市大町1-4-15 第二増子ビル 3F Bar Dream 福島県二本松市本町2-196 アミューズメントバー VEGAS 福島県いわき市平字大工町11-4-2F Pub grand 福島県福島市置賜町8-19 第一清水ビル2F LOCO TRIBE 福島県福島市置賜町7-3 第一佐藤ビル4F ビリヤード アンド ダーツ シャイン 福島県福島市南町449 Blanca Darts 福島 福島県福島市御山字三本松57-1 志乃ぶ家 福島県白河市新白河3-53 プラザA STIGMA 福島県郡山市清水台2-13-29 北一ビル2F Foods Bar Rebirth 福島県西白河郡矢吹町中町4 酒井ビル2F SHOOTER Z 福島県いわき市平作町3-4-4 洋風居酒屋ブレイクショット 福島県南相馬市原町区旭町3-55 Leto 福島県相馬市中村字泉町9-2 VSPHOENIX S 設置店舗 店名 住所 ビリヤードナイス 福島県いわき市平中神谷字前河原20-1 Blanca Darts 福島 福島県福島市御山字三本松57-1 ビリヤード キュースター 福島県白河市昭和町169?1 BARCA 福島 福島県福島市置賜町7-3 第1佐勝ビル5F ショットハウス 福島県会津若松市和田1-8-2 SGB48 福島県白河市新白河1-16-1.17 SEED 福島県いわき市平上荒川桜町21-1 Leto 福島県相馬市中村字泉町9-2 ビリヤード&ダーツ SHINE 福島県福島市南町449 洋風居酒屋ブレイクショット 福島県南相馬市原町区旭町3丁目55 ARK 福島県白河市北堀切35 吉成堀切ビル3F アミューズメントバー VEGAS 福島県いわき市大工町11-4 2F STIGMA 福島県郡山市清水台2-13-29 D-1X 設置店舗 店名 住所 ショットハウス 福島県会津若松市和田1-8-2 SEED 福島県いわき市平上荒川桜町21-1 ビリヤード&ダーツ SHINE 福島県福島市南町449 アミューズメントバー VEGAS 福島県いわき市大工町11-4 2F Darts bar IZAYOI 福島県会津若松市馬場町1-23 シーセブンスビル3F Maverick 福島県郡山市駅前2-6-3 メッソビル4F RIOT the Bar 福島県福島市大町1-10 ヴァンベール大町3F SHOOTER Z 福島県いわき市平 作町3丁目4-4 pub grand 福島県福島市置賜町8-19 第一清水ビル2F
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/273.html
子どもの権利委員会・一般的意見19号:子どもの権利実現のための公共予算編成(第4条)(前編) 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 CRC/C/GC/19(2016年7月20日/原文英語) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-17)A.背景(パラ6-10) B.理論的根拠(パラ11-13) C.目的(パラ14-17) II.公共予算との関連における第4条の法的分析(パラ18-39)A.「締約国は、……措置をとる」(パラ18-20) B.「あらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置」(パラ21-24) C.「この条約において認められる権利の実施のための」(パラ25-27) D.「経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」(パラ28-34) E.「および必要な場合には、国際協力の枠組の中で」(パラ35-39) III.条約の一般原則と公共予算(パラ40-56)A.差別の禁止に対する権利(第2条)(パラ41-44) B.子どもの最善の利益(第3条)(パラ45-47) C.生命、生存および発達に対する権利(第6条)(パラ48-51) D.意見を聴かれる権利(第12条)(パラ52-56) IV.子どもの権利のための公共予算編成の原則(パラ57-63) → 子どもの権利と公共予算 後編A.有効性(パラ59) B.効率性(パラ60) C.公平性(パラ61) D.透明性(パラ62) E.持続可能性(パラ63) V.公共予算における子どもの権利の実施(パラ64-111)A.計画(パラ67-86) B.策定(パラ87-93) C.執行(パラ94-103) D.フォローアップ(パラ104-111) VI.この一般的意見の普及(パラ112-116) I.はじめに 1.子どもの権利条約第4条は以下のように規定する。 締約国は、この条約において認められる権利の実施のためのあらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置をとる。経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、および必要な場合には、国際協力の枠組の中でこれらの措置をとる。 (訳者注/国際教育法研究会訳) この一般的意見は、締約国が公共予算との関係で第4条を実施するさいに役に立つはずである。ここでは、締約国の義務を明らかにするとともに、公共予算に関わる有効な、効率的な、公平な、透明なかつ持続可能な意思決定を通じて条約上のすべての権利(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもの権利)を実現する方法についての勧告を行なっている。 2.第4条が子どものすべての権利に関連するものであり、かつ、これらのすべての権利が公共予算の影響を受け得ることに鑑み、この一般的意見は条約およびその選択議定書に適用される。この一般的意見は、公共予算がこれらの権利の実現に資することを確保するための枠組みを締約国に対して提示するものであり、また第III節では、第2条、第3条、第6条および第12条に掲げられた条約の一般原則の分析を行なっている。 3.この一般的意見で「子ども(たち)」に言及するさいには、18歳未満のすべての者(いかなるジェンダーであるかを問わない)であって、公共予算関連の決定によってその権利に直接間接の影響(肯定的影響か悪影響かを問わない)が生じる者またはその可能性がある者を含むものとする。「権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども」とは、その権利が侵害される被害をとりわけ受けやすい子どもであって、障害のある子ども、難民状況にある子ども、マイノリティ集団の子ども、貧困下で暮らしている子ども、代替的養護のもとで暮らしている子どもおよび法律に抵触した子どもを含むが、これに限られない。 4.この一般的意見では以下の定義を適用する。 (a) 「予算」には、国の歳入動員、予算配分および支出を含む。 (b) 「実施義務」とは、後掲パラ27に掲げた締約国の義務をいう。 (c) 「条約の一般原則」とは、第III節に掲げた諸原則をいう。 (d) 「予算原則」とは、第IV節に掲げた諸原則をいう。 (e) 「立法」とは、子どもの権利に関連するすべての国際条約/法、地域条約/法、国内法および国内下位法令をいう。 (f) 「政策」とは、子どもの権利に影響を与えるまたはその可能性があるすべての公的な政策、戦略、規則、指針および声明(そこに掲げられた目標、目的、指標および目指される成果を含む)をいう。 (g) 「プログラム」とは、法律および政策の目標を達成する目的で締約国が定めた枠組みのことをいう。このようなプログラムは、たとえば子どもの特定の権利、公共予算編成過程、インフラストラクチャーおよび労働力に影響を与えることにより、子どもに直接間接の影響を及ぼす可能性がある。 (h) 「国内下位」とは、広域行政圏、州、郡または自治体など、国の下位の行政段階をいう。 5.第I節では、この一般的意見の背景、理論的根拠および目的を示す。第II節では、公共予算との関連で第4条の法的分析を行なう。第III節では、このような文脈における条約の一般原則の解釈を提示する。第IV節では、公共予算編成の原則を取り上げる。第V節では、公共予算が子どもの権利の実現にどのように資するかを検討する。第VI節では、この一般的意見の普及に関する指針を示す。 A.背景 6.この一般的意見は、「実施に関する一般的措置」という概念は複雑であり、委員会は、個々の要素に関するいっそう詳細な一般的意見を適宜発表していく可能性が高いと述べた、条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を踏まえたものである [1]。また、委員会が2007年に開催した、子どもの権利のための資源に関する国の責任についての一般的討議を踏まえたものでもある。 [1] 一般的意見5号の「まえがき」参照。 7.この一般的意見は、予算に関わる原則を人権の視点から掲げた国連のいくつかの決議および報告書を参考にしたものである。これには以下のものが含まれる。 (a) 子どもの権利への投資の改善を目指す人権理事会決議28/19 [2]、および、当該決議に先立つ国連人権高等弁務官の報告書「子どもの権利への投資の改善に向けて」(Towards better investment in the rights of the child)。そこでは、子どもへの投資との関連における国内政策の役割、資源動員、透明性、説明責任、参加、配分および支出、子どもの保護制度、国際協力ならびにフォローアップについて取り上げられている。 (b) 財政政策における透明性、参加および説明責任の促進に関する総会決議67/218。同決議は、財政政策の質、効率性および有効性を向上させる必要性を強調するとともに、加盟国に対し、財政政策における透明性、参加および説明責任を増進させるための努力を強化するよう奨励している。 [2] 同決議は無投票で採択された。 8.この一般的意見の作成にあたっては、委員会が調査を通じて各国、国際連合、非政府組織、子どもたちおよび個人専門家と行なった協議、ならびに、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ・カリブ海、中東・北アフリカおよびサハラ以南のアフリカで開催された会議および地域協議も参考にした。これに加えて、オンライン調査、フォーカスグループにおける討議ならびにアジア、ヨーロッパおよびラテンアメリカで開催された地域協議を通じて行なわれた、71か国から参加した2693人の子どもたちとの世界的協議 [3] も参考にしている。この世界的協議では、年齢、ジェンダー、能力、社会経済的状況、言語、民族、就学状況、避難を余儀なくされた状況および子ども参加型の予算策定の経験という観点からさまざまな背景を有する男女の子どもから貢献が行なわれた。公共予算の決定に携われる人々に対する子どもたちのメッセージには、以下のようなものがあった。 (a) ちゃんとした計画を立ててほしい。予算では、子どもたちのすべての権利に対応するのに十分なお金が用意されるべきです。 (b) 何に投資すればいいのか、私たちにきいてくれなければ、私たちに投資することはできません。私たちはわかっているので、私たちに尋ねるべきです。 (c) 特別なニーズがある子どものことを予算に含めるのを忘れないでほしい。 (d) お金は公正に、賢く使ってほしい。私たちのお金を無駄なことに使わないでください。効率的にやって、お金を節約しましょう。 (e) 子どもたちへの投資は長期的な投資で、たくさんの成果を生み出してくれるものなので、そのことを忘れずに考えてほしい。 (f) 私たちの家族に投資することは、私たちの権利を保障する重要な方法でもあります。 (g) 汚職が絶対ないようにしてほしい。 (h) 行政に関する問題についてみんなの意見を聴いて、若くても歳をとっていても、市民全員の権利を認めてほしい。 (i) 政府には、もっと説明責任と透明性を高めてほしい。 (j) お金がどのように使われたのか、記録を公表してほしい。 (k) 予算についての情報を、子どもたち全員に、わかりやすい方法で、ソーシャルメディアなど子どもたちに人気があるメディアを通じて提供してください。 [3] Laura Lundy, Karen Orr and Chelsea Marshall, "Towards better investment in the rights of the child the views of children" (Centre for Children s Rights, Queen s University, Belfast, and Child Rights Connect Working Group on Investment in Children, 2015). 9.すべての中核的人権条約に、条約第4条と同様の規定が含まれている。したがって、これらの規定に関連して発表されてきた、公共予算について取り上げている一般的意見は、この一般的意見を補完するものとみなされるべきである [4]。 [4] たとえば、締約国の義務に関する社会権規約委員会(経済的、社会的および文化的権利に関する委員会)の一般的意見3号(1990年)を参照。 10.この一般的意見は、締約国が有する、自国の管轄内にある子どもに直接間接の影響を与える財源の管理に関わるものである。この一般的意見は、アディスアベバ行動目標(第3回開発資金国際会議、2015年)および「世界の変革:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015年)を認知する。これらのアジェンダでは、プログラム支援、セクター支援および予算支援、南南協力ならびに地域間協力など、子どもに影響を与える国際協力関連資源の国による管理について取り上げられている。委員会は、やはりこのような管理について取り上げている、「開発協力および開発計画に対する人権基盤型アプローチについての共通理解声明」(国連開発グループ、2003年)、「援助効果にかかるパリ原則:オーナーシップ、調和化、整合性確保、成果および相互説明責任」(2005年)、アクラ行動アジェンダ(2008年)および「効果的な開発協力のための釜山パートナーシップ」(2011年)を想起するものである。加えて、委員会は、公共財務管理に関して国内的、地域的および国際的に策定された基準および現在策定中である基準が、当該基準が条約の規定と矛盾しないことを条件として、この一般的意見にとって関連性を有する可能性があることも心に留める。このような基準の例を3つ挙げるとすれば、公共財務管理における有効性、効率性および公平性を強調する『公共財務管理国際ハンドブック』(The International Handbook of Public Financial Management)[5]、財政運営および説明責任を向上させるために過去、現在および将来の公共財政についての公的報告において包括性、明確性、信頼性、適時性および関連性を求める国際通貨基金の「財政の透明性に関する規範」(2014年)、および、国連貿易開発会議が2012年に採択した「責任あるソブリン融資の促進に関する原則」がある。 [5] Richard Allen, Richard Hemming and Barry Potter, eds., The International Handbook of Public Financial Management (Basingstoke, Palgrave Macmillan, 2013). B.理論的根拠 11.委員会は、締約国が、国内の法律、政策およびプログラムを再検討し、条約およびその選択議定書と一致させるようにするうえで相当の進展を達成してきたことを認める。同時に委員会は、十分な財源が責任ある、効果的な、効率的な、公平な、参加型の、透明かつ持続可能なやり方で動員され、配分されかつ支出されることがなければ、そのような法律、政策およびプログラムは実施できないことを強調するものである。 12.委員会は、委員会に提出される締約国報告書の審査、締約国代表との議論および総括所見において、予算規模が子どもの権利を実現するうえで十分かどうかについての懸念を表明してきた。委員会は、条約で要求されているとおりに国・国内下位レベル双方の予算において子どもの権利を優先的に位置づけることが、これらの権利を実現していくことのみならず、将来の経済成長、持続可能かつ包摂的な開発および社会的団結に永続的かつ肯定的な影響を与えることにも寄与することを、あらためて表明する。 13.以上のことに基づき、委員会は、締約国が、国・国内下位レベルの予算編成過程および行政制度のあらゆる段階を通じてすべての子どもの権利を考慮すべきことを強調する。予算編成過程が国によってある程度異なること、および、独自の子どもの権利予算手法を開発した国もあることは認識しながらも、この一般的意見は、すべての国に関係する4つの主要な予算段階、すなわち計画、策定、執行およびフォローアップに関わる指針を示すものである。 C.目的 14.この一般的意見の目的は、子どもの権利のための予算に関わる条約上の義務についての理解を向上させ、もってこれらの権利の実現を強化するとともに、条約およびその選択議定書の実施を増進させる目的で、予算の計画、策定、執行およびフォローアップが進められるあり方に真の変革が生じることを促進するところにある。 15.この目的は、予算編成過程全体を通じて国の各統治部門(行政府、立法府および司法府)、各段階(国および国内下位)および機構(省庁など)がとる措置に関連するものである。これらの義務は、国際協力のドナーおよび受入国にも適用される。 16.この目的は、国内人権機関、メディア、子どもたち、家族および市民社会組織など、予算編成過程に関わる他の関係者にも関連するものである。締約国は、自国の状況にふさわしい方法で、これらの関係者が予算編成過程において積極的な監視および意味のある参加を行なえるような環境を整えるよう求められる。 17.加えて、この目的は、この一般的意見の内容についての意識啓発および関連する公的職員等の能力構築との関連でも、各国にとって関連性を有する。 II.公共予算との関連における第4条の法的分析 A.「締約国は、……措置をとる」(States parties shall undertake) 18.「措置をとる」という文言は、締約国には、子どもの権利を実現するために適当な立法上、行政上その他の措置(公共予算に関連する措置を含む)をとる自国の義務を果たすか否かについての裁量権はないことを意味する。 19.したがって、公共予算の編成において何らかの役割を果たす国のすべての統治部門、段階および機構は、条約の一般原則および後掲第III節・第IV節に掲げられた予算原則に一致する方法でその職務を果たさなければならない。締約国はまた、立法府、司法府および最高監査機関が同様の対応をとれるようにするための環境も創出するべきである。 20.締約国は、あらゆる段階の行政府および立法府の予算決定担当者が、必要な情報、データおよび資源にアクセスでき、かつ子どもの権利実現のための能力構築を図れるようにするべきである。 B.「あらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置」(all appropriate legislative, administrative and other measures) 21.「あらゆる……適当な措置」をとる義務には、以下のことを確保する義務が含まれる。 (a) 子どもの権利実現のための資源動員、予算配分および支出を支える法律および政策が整備されること。 (b) 子どもの権利を増進するための適切な法律、政策、プログラムおよび予算の編成および実施を支える目的で、子どもに関する必要なデータおよび情報が収集され、生成されかつ普及されること。 (c) 承認された立法、政策、プログラムおよび予算を完全に実施するための十分な公的資源が効果的に動員され、配分されかつ活用されること。 (d) 予算が、国および国内下位のレベルにおいて、子どもの権利実現の確保につながる方法で体系的に計画され、制定され、実施されかつ説明されること。 22.措置は、それがある特定の文脈(公共予算の文脈を含む)において子どもの権利の増進に直接間接の関連性を有する場合に、適当と判断される。 23.公共予算との関連で締約国がとることを義務づけられる「立法上の……措置」には、現行法の再検討、ならびに、国・国内下位レベルで子どもの権利実現のための予算が十分大規模なものとなることを確保するための立法の策定および採択が含まれる。「行政上の……措置」には、合意に基づき制定された立法の目的にかなうプログラムの立案および実施ならびにそのための十分な予算の確保が含まれる。「その他の措置」には、たとえば、公共予算編成過程に参加するための機構および子どもの権利に関連するデータまたは政策を発展させることが含まれると考えられる。公共予算は、これらの3つのカテゴリーの措置全体にまたがるものと理解できる一方で、その他の立法上、行政上その他の措置の実現にとっても不可欠なものである。国のすべての統治部門、段階および機構が、子どもの権利の増進について責任を有する。 24.委員会は、締約国には、自国が選択する公共予算関連の措置がどのように子どもの権利の向上に結びついているかを示す義務があることを強調する。締約国は、これらの措置の結果として子どもたちのために獲得できた成果の証拠を示さなければならない。条約第4条が履行されたというためには、結果についての証拠を示さないまま、措置をとったことの証拠を示すだけでは十分ではないのである。 C.「この条約において認められる権利の実施のための」(for the implementation of the rights recognized in the present Convention) 25.「この条約において認められる権利」には、市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利が含まれる。締約国は、市民的および政治的権利については即座に実現し、かつ、経済的、社会的および文化的権利については「自国の利用可能な手段(資源)を最大限に用いることにより」実施する義務を有する。すなわち、これら〔後者〕の権利の完全な実現は必然的に漸進的に達成されざるを得ないということである(後掲第II節D参照)。 26.子どもの権利の実現のためには、公共予算編成過程の4つの段階(計画、策定、執行およびフォローアップ)のすべてに緊密な注意を払うことが必要である。条約の一般原則およびこの一般的意見で概要を示した予算原則にしたがい、締約国は、予算編成過程全体を通じて、すべての子どもの権利を考慮することが求められる。 27.予算の観点からは、「子どもの権利を実施する」とは、締約国には、自国の実施義務を遵守するようなやり方で公的資源を動員し、配分しかつ使用する義務があるということを意味する。締約国は、以下のとおり、子どものすべての権利を尊重し、保護しかつ充足しなければならない。 (a) 「尊重する」とは、締約国は子どもの権利の享受に直接間接に干渉するべきではないということを意味する。予算との関連では、国は、たとえば予算の決定において一部の集団の子どもを差別したり、または子どもによる経済的、社会的および文化的権利の享受に対応するために現に実施されているプログラムから資金を引き上げたり資源を別に振り向けたりすること(後掲パラ31に掲げる事情がある場合を除く)によって、子どもの権利の享受に干渉することは控えなければならないということである。 (b) 「保護する」とは、締約国は、条約および選択議定書で保障されている諸権利に第三者が干渉することを防止しなければならないということを意味する。公共予算の観点からは、そのような第三者に該当する可能性がある主体として、公共予算編成過程のさまざまな段階で何らかの役割を果たす可能性がある企業セクター [6] および地域的・国際的金融機関を挙げることができよう。保護する義務が含意するのは、締約国は、自国の歳入動員、予算配分および支出が第三者によって干渉されまたは阻害されないことを確保するよう努めなければならないということである。そのためには、締約国は、そのような第三者の役割を規制し、苦情申立て機構を設置し、かつこれらの第三者による人権侵害事案に体系的に介入することが必要になろう。 (c) 「充足する」ためには、締約国は、子どもの権利の完全な実現を確保するための行動をとらなければならない。締約国は以下の対応をとるべきである。(i) 子どもが自己の権利を享受できるようにし、かつそれを援助する措置をとることによって子どもの権利の促進を図ること。予算に関わる文脈では、これには、すべての子どもたちの権利を包括的かつ持続可能なやり方で増進させるために必要な資源および情報を、行政府、立法府および司法府のあらゆる段階および機構が持てるようにすることが含まれる。そのためには、国の諸機関のあいだで条約およびその選択議定書についての知識および理解を高めるための措置を整備すること、ならびに、子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する文化を醸成することが必要となる。 (ii) 国が、やむを得ない理由により、自国が利用可能な手段により自らこれらの権利を実現できない場合に、子どもの権利のための対応をとること。この義務には、子どもたちがたとえば国の異なる地域で自己の権利をどの程度行使できているかを評価しかつ監視する目的で、信頼できる、細分化されたデータおよび情報を公に入手できるようにすることが含まれる。 (iii) 予算に関わる意思決定手続およびそれが及ぼす影響について適切な教育および公衆の意識啓発が行なわれることを確保することにより、子どもの権利を促進すること。これは、予算との関連では、子どもたち、その家族および養育者と、予算関連の決定(これらの決定に影響を与える立法、政策およびプログラムを含む)についてやりとりするための十分な資金を動員し、配分しかつ使用することを意味する。締約国は、より効果的な促進が必要とされる領域を特定する目的で、さまざまな集団に関する成果を継続的に評価するべきである。 [6] 企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)参照。同一般的意見において委員会は、「国が、企業が子どもの権利侵害を引き起こしまたは助長しないようにするためにあらゆる必要な、適当な、かつ合理的な措置をとらなければならない」ことを明らかにしている(パラ28)。 D.「経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」(With regard to economic, social and cultural rights, States parties shall undertake such measures to the maximum extent of their available resources) 28.この義務にしたがい、締約国は、十分な財源を動員し、配分しかつ使用するためにあらゆる可能な措置をとらなければならない。条約およびその選択議定書上の権利の実現を前進させる政策およびプログラムに配分される資金は、最適なやり方で、かつ条約の一般原則およびこの一般的意見に掲げた予算原則にしたがって使用されるべきである。 29.委員会は、他の中核的国際人権条約における「利用可能な手段(資源)を最大限に用いること」および「漸進的実現」の概念の進展 [7] を認識するとともに、条約第4条はこの両方の概念を反映していると考える。したがって締約国は、国際法にしたがって即時的に適用される義務に影響を与えることなく、経済的、社会的および文化的権利の完全な実現を漸進的に達成する目的で、自国の利用可能な資源を最大限に用いることにより、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで、これらの権利に関する措置をとらなければならない。 [7] たとえば障害のある人の権利に関する条約第4条第2項参照。 30.「締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」とは、締約国には、すべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を充足させるための予算資源を動員し、配分しかつ使用する目的であらゆる努力を行なったことの実証を期待されているということである。委員会は、子どもの権利は相互依存的でありかつ不可分であること、および、経済的・社会的・文化的権利と市民的・政治的権利を区別するさいには注意しなければならないことを強調する。経済的・社会的・文化的権利の実現は子どもが自己の政治的・市民的権利を全面的に行使する能力にしばしば影響を与えるのであり、その逆もまた真である。 31.第4条によって締約国に課されている、利用可能な資源を「最大限に用いることにより」子どもの経済的、社会的および文化的権利を実現する義務は、締約国は経済的、社会的および文化的権利との関連で意図的な後退的措置をとるべきではないということでもある [8]。締約国は、子どもの権利の享受に関わる現行水準の低下を許すべきではない。経済危機の時期における後退的措置の検討は、他のすべての選択肢を評価し、かつ子ども(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども)への影響が最後に生じることを確保した後でなければ、行なうことができない。締約国は、そのような措置が必要であり、合理的であり、比例性を有しており、差別的でなく、かつ一時的なものであること、および、したがって影響が生じたいかなる権利も可能なかぎり早期に回復されることを実証しなければならない。締約国は、影響を受ける集団の子どもたちおよびこれらの子どもたちの状況について知悉しているその他の者が当該措置に関連する意思決定手続に参加するよう、適切な措置をとるべきである。子どもの権利によって課される即時的かつ最低限の中核的義務 [9] は、たとえ経済危機の時期であっても、いかなる後退的措置によっても損なわれてはならない。 [8] たとえば、子どもの権利のための資源に関する国の責任についての一般的討議(2007年)の勧告のパラ24および25、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)のパラ72、ならびに、社会権規約委員会の一般的意見3号のパラ9参照。 [9] 社会権規約委員会の一般的意見で明らかにされている中核的義務を参照(教育への権利に関する13号(1999年)、到達可能な最高水準の権利に関する14号(2000年)および社会保障への権利に関する19号(2007年)など)。 32.条約第44条は、締約国に対し、自国の管轄内にある子どもの権利の増進における進展を定期的に報告するよう義務づけている。利用可能な資源を最大限に用いることによる子どもの経済的、社会的および文化的権利の漸進的実現およびこれらの権利によって課される即時的義務の実現ならびに市民的および政治的権利の実現を実証するために、明確なかつ一貫した量的・質的目標および指標が活用されるべきである。締約国は、すべての子どもの権利のために資源が利用可能とされかつ最大限に使用されることを確保するための措置を定期的に見直しかつ改善するよう期待される。 33.委員会は、経済的、社会的および文化的権利を含む子どもの権利の実施のために必要な資源を獲得する手段として、国レベルおよび国内下位レベルで、説明責任が果たされる、透明な、包摂的なかつ参加型の意思決定手続が設けられることをおおいに重視するものである。 34.国の歳入動員、配分および支出における汚職および公的資源の誤った管理は、利用可能な資源を最大限に用いる義務を国家が遵守できていないことの表れである。委員会は、締約国が、腐敗の防止に関する国際連合条約にしたがい、子どもの権利に影響を与えるいかなる汚職も防止しかつ解消するための資源を配分することの重要性を強調する。 E.「および必要な場合には、国際協力の枠組の中で」(and, where needed, within the framework of international cooperation) 35.締約国は、子どもの権利を含む人権の普遍的尊重および遵守の促進に関して相互に協力する義務を有する [10]。条約およびその選択議定書に掲げられた権利を実施するために必要な資源を欠いている国には、二国間協力、地域的協力、地域間協力、世界的協力または多国間協力のいずれの形態をとるかにかかわらず、国際協力を求める義務がある。国際協力のための資源を有する締約国には、受入国における子どもの権利の実施を促進する目的でそのような協力を行なう義務がある。 [10] 国際連合憲章にしたがった諸国間の友好関係および協力についての国際法の原則に関する宣言(1970年)参照。 36.締約国は、必要なときは、子どもの権利を実現するための国際協力を求めかつ実施する目的であらゆる努力を行なったことを実証するべきである。そのような協力としては、予算編成過程における子どもの権利の実施に関連する技術的および金銭的支援(国際連合からの支援を含む)[11] も考えられる。 [11] 条約第45条参照。 37.締約国は、利用可能な資源を子どもの権利のために最大限に動員しようとする他の国の努力に協力するべきである。 38.締約国の協力戦略は、ドナーにおいても受入国においても、子どもの権利の実現に寄与するようなものであるべきであり、子ども(とくに、もっとも権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども)に悪影響を及ぼすものであってはならない。 39.締約国は、国際機関の一員として開発協力に関与するさい [12] および国際協定に調印するさいには、条約およびその選択議定書に基づく自国の義務を遵守するよう求められる。締約国は同様に、経済政策の計画および実施にあたって、子どもの権利に生じる可能性がある影響を考慮するべきである。 [12] 一般的意見5号、パラ64参照。 III.条約の一般原則と公共予算 40.条約の4つの一般原則は、子どもの権利に直接間接に関連する国のあらゆる決定および行動(公共予算を含む)の基礎となるものである。 A.差別の禁止に対する権利(第2条) 41.締約国には、「子どもまたは親もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位にかかわらず」、あらゆる種類の差別から子どもを保護する義務がある(第2条第1項)。締約国は、あらゆる行政段階において差別を防止するために行動するべきであり、予算関連の立法、政策またはプログラムにおいて、その内容面または実施面で、子どもに対する直接間接の差別を行なってはならない。 42.締約国は、十分な歳入を動員し、かつ資金の配分および使用をしかるべき形で進めることによって、立法、政策およびプログラムとの関連ですべての子どもにとって肯定的な成果を確保するための積極的措置をとるべきである。実質的平等を達成するため、締約国は、特別な措置を受ける資格を有する集団の子どもを特定するとともに、そのような措置を実施するために公共予算を使用することが求められる。 43.締約国は、差別が行なわれない環境をつくりだすとともに、国のすべての統治部門、段階および機構ならびに市民社会および企業セクターが差別を受けない子どもの権利を積極的に増進させることを確保するための措置を、資源の配分等も通じてとるべきである。 44.子どもが自己の権利を享受するという点に関わる肯定的な成果に寄与する予算を達成するためには、締約国は、関連の立法、政策およびプログラムを見直しかつ改訂し、予算の一定の部分について増額もしくは再優先化を図り、または予算の有効性、効率性および公平性を高めることにより、子どもたちの間に存在する不平等に対応することが求められる。 B.子どもの最善の利益(第3条) 45.条約第3条第1項は、子どもに関わるあらゆる行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されると定めている。締約国には、子どもに直接間接の影響を与えるすべての立法上、行政上および司法上の手続(予算を含む)においてこの原則を統合しかつ適用する義務がある [13]。子どもの最善の利益は、予算編成過程のすべての段階を通じて、かつ子どもに影響を与えるすべての予算決定において、第一次的に考慮されるべきである。 [13] 自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)、パラ6(a)参照。 46.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)で指摘したように、条約およびその選択議定書に掲げられた諸権利は、子どもの最善の利益に関する評価および判断の枠組みを示すものである。この義務は、国が、予算の配分および使用に関わる優先的課題であって相互に競合するものの比較衡量を行なうさいに、きわめて重要となる。締約国は、予算に関わる意思決定において子どもの最善の利益がどのように考慮されたか(他の考慮事項との比較衡量がどのように行なわれたかを含む)を実証できるべきである。 47.締約国は、国レベルおよび国内下位レベルで立法、政策およびプログラムがすべての子ども(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれており、特別なニーズを有しているためにその権利の実現のために人口比に照らした割合よりも多くの支出を必要としている可能性のある子ども)に与えている効果を確認する盲的で、子どもの権利影響評価 [14] を実施するべきである。子どもの権利影響評価は、予算編成過程の各段階に位置づけられるべきであり、かつ監視および評価のために行なわれている他の取り組みを補完するようなものであることが求められる。締約国が子どもの権利影響評価を実施するさいに適用する手法および実践方法はそれぞれ異なることになろうが、その枠組みを開発するさいには、条約およびその選択議定書ならびに委員会が発表した関連の総括所見および一般的意見を活用するべきである。子どもの権利影響評価のさいには、子どもたち、市民社会組織、専門家、国の統治機構および学術研究機関などの関係者の意見を参考にすることが求められる。分析の結果は、改正、これまでのものに代わる対応および改善のための勧告としてまとめられるべきであり、かつ公に利用可能とされるべきである。 [14] 一般的意見5号のパラ45ならびに一般的意見14号のパラ35および99参照。 C.生命、生存および発達に対する権利(第6条) 48.条約第6条は、すべての子どもは生命に対する固有の権利を有しており、かつ、締約国はすべての子どもの生存および発達を確保しなければならない旨、定めている。委員会は、一般的意見5号において、子どもの発達とは「ホリスティックな概念であり、子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含するものである」こと、および、「実施措置は、すべての子どもが最適な形で発達できるようにすることを目指したものでなければならない」ことを指摘している(パラ12)。 49.委員会は、子どもが成長発達の段階の違いに応じてさまざまなニーズを有することを認識する [15]。締約国は、予算決定において、さまざまな年齢の子どもたちが生存し、成長しかつ発達するために必要なあらゆる要素を考慮するべきである。締約国は、予算のうちさまざまな年齢層の子どもに影響を与える部分を可視化することにより、子どもの権利に対するコミットメントを示すよう求められる。 [15] 乳幼児期における子どもの権利の実施についての一般的意見7号(2005年)および思春期の子どもの権利についての一般的意見20号(作成中)を参照。 50.委員会は、乳幼児期の発達への投資が、自己の権利を行使する子どもの能力に肯定的影響を与え、貧困のサイクルを打破し、かつ多くの経済的リターンをもたらすことを認知する。乳幼児期の子どもに十分な投資を行なわないことは、認知的発達にとって有害になりうるとともに、すでに存在する剥奪状況、不平等および世代を超えた貧困の強化につながる可能性がある。 51.生命、生存および発達に対する権利の確保には、現在世代に属するさまざまな集団の子どもたちのための予算を考慮する必要が含まれるとともに、歳入および支出に関して多年度にまたがる持続可能な見通しを立てることによって将来の世代を考慮に入れる必要も含まれる。 D.意見を聴かれる権利(第12条) 52.条約第12条は、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明し、かつその子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見を正当に重視されるすべての子どもの権利を認めている [16]。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルで設けられた子どもの意味のある参加のための機構を通じ、子どもに影響を与える予算決定についての子どもたちの意見を恒常的に聴くべきである。これらの機構に参加する子どもたちは、自由に、かつ抑圧または冷やかしを恐れることなく発言できるべきであり、また締約国は参加者に対してフィードバックを行なうことが求められる。とくに、締約国は、意見を表明するうえで困難に直面している子どもたち(権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたちを含む)と協議を行なうべきである。 [16] 意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)も参照。 53.委員会は、「自己にとってのあらゆる関心事について意見を聴かれ、かつその意見を正当に考慮される子どもの権利の実現に投資することは、締約国が条約上負っている明確かつ即時的な法的義務」であり、そのためには「資源および訓練に対するコミットメントも必要になる」ことを想起する [17]。このことは、子どもに影響を与えるすべての決定への意味のある子ども参加を達成するための資金が用意されることを確保する締約国の責任を強調するものである。委員会は、予算決定に関わる子ども参加を保障するうえで、行政府職員、独立した子どもオンブズマン、教育機関、メディア、子ども団体を含む市民社会組織および立法府が果たす重要な役割を認識する。 [17] 一般的意見12号、パラ135参照。 54.委員会は、予算の透明性が意味のある参加の前提条件であることを認識する。透明であるとは、予算の計画、策定、執行およびフォローアップに関連して、利用者にやさしい情報が時宜を得た形で公に利用可能とされるということである。これには、量的な予算情報と、立法、政策、プログラム、予算編成過程のタイムテーブル、支出の優先順位および決定の論拠、支出額、成果ならびにサービス提供情報についての関連情報の双方が含まれる。委員会は、締約国が、意味のある参加を可能にするための、状況にふさわしい資料、機構および制度 [18] のための予算を用意し、かつこのような資料、機構および制度を整備しなければならないことを強調するものである。 [18] 条約第13条第1項参照。 55.予算編成過程への意味のある参加を可能にするために、委員会は、締約国が情報の自由のための立法および政策を整備することを確保することが重要であると強調する。これには、予算編成方針、予算案、策定された予算、中期報告書、年度末報告書および監査報告書のような重要な予算文書にアクセスする権利が含まれ、または少なくとも子どもたちおよび子どもの権利擁護者がそのようなアクセスを妨げられないことが含まれる。 56.委員会は、多くの国が、予算編成過程のさまざまな部分に子どもたちの意味のある参加を得てきた経験を有していることを認識する。委員会は、締約国に対し、そのような経験を共有し、かつ自国の状況にふさわしい優れた実践のあり方を特定するよう奨励するものである。 (子どもの権利と公共予算 後編に続く) 更新履歴:ページ作成(2016年10月27日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/160.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:親が収監されている子ども 一般的討議勧告一覧 (第58会期、2011年) 原文:英語〔PDF〕 日本語訳:平野裕二 I.背景(略) II.要旨(略) III.勧告 29.委員会は、2011年の一般的討議のすべてのパネリストおよび参加者による貴重な意見等に、評価の意とともに留意する。このような〔親が収監されている〕状況に置かれた子どもの権利の尊重、促進および充足について、国その他の関連の主体に対する政策上および実務上の指針を提供するという目的のもと、かつ一般的討議の際に行なわれた議論を考慮に入れながら、委員会は以下のことを勧告する。 拘禁に代わる措置 30.委員会は、親および主たる養育者の量刑を決定する際、可能なときは常に拘禁刑に代えて社会内処遇刑が言い渡されるべきであること(公判前および公判段階における場合も含む)を強調する。拘禁に代わる措置が利用可能とされるべきであり、かつ、当事者である子ども(たち)に対して種々の刑が及ぼす可能性のある影響を全面的に考慮しながら事案ごとの考慮に基づき適用されるべきである。 親の収監が子どもに及ぼす影響 31.委員会は、いずれかの親が収監される子どもの権利が、親の逮捕の瞬間から、手続に関与するすべての主体(法執行機関、刑務所で業務する専門家および司法機関を含む)によって、かつ手続のあらゆる段階で考慮されることを、締約国が確保するよう勧告する。 32.委員会はまた、締約国に対し、人権および子どもの権利を遵守した逮捕手続に関するもっとも望ましい実務のあり方を明らかにすることも求める。親の逮捕が子どもの面前で行なわれる場合の法執行ならびに逮捕時にその場にいなかった子どもに対する適切な情報提供および支援に関する要綱を確立しかつ実施する際には、これらの実務のあり方が基礎とされるべきである。 発達および差別の禁止に対する子どもの権利 33.委員会は、親が収監されている子どもも他の子どもと同一の権利を有していることを強調する。委員会はさらに、このような状況に置かれた子どもがスティグマから保護されることを確保するための措置がとられるよう勧告するものである。このような子どもは、自ら法律に抵触したわけではない。すべての子どもは、親とともにいる権利、ならびに、家族生活に対する権利および発達に資する社会的環境に対する権利を有している。このような文脈において、委員会は、子どもを収監されている親とともに生活させることと拘禁施設外で生活させることのどちらが子どもの最善の利益をより尊重することになるかについての決定は常に個別に行なわれるべきことを勧告するものである。 収監されている親とともに生活する子どもについて 34.委員会は、締約国が、収監されている親とともに生活する子どもに対し、十分な量および質の社会サービス(保健および教育上の便益を含む)が提供されることを確保するよう、勧告する。 親が収監されているとき施設外に残される子どもについて 35.委員会は、親の一方または双方から分離されている子どもが、子どもの最善の利益に反しないかぎり、定期的に親双方との個人的関係および直接の接触を保つ権利を尊重するという、条約に基づく締約国の義務(注2)をあらためて指摘する。 (注2)子どもの権利条約第9条3項。 プライバシーに対する権利 36.親が収監されている子どもに対して(とくにより重大な犯罪の場合に)向けられることの多いスティグマおよびこの点に関するメディアの責任を認識し、委員会は、締約国が、親が収監されている子どもの権利を全面的に遵守するプライバシー保護法を制定しかつ執行するよう、勧告する。 家族問題 収監されている親とともに生活する子どもについて 37.委員会は、締約国が、収監されている親とともに子どもを生活させることによってその子どもの最善の利益がよりよく充足される可能性がある状況を十分に考慮するよう、勧告する。その際、収監時の全般的環境、および、乳幼児期における親子の接触の特別な必要性に対する十分な考慮が全面的に顧慮されるべきである。さらに、そのような決定は、司法機関による再審査の余地を設け、かつ子どもの最善の利益を全面的に考慮しながら行なわれるべきことが勧告される。子どもは双方の親と接触する権利を有しているので、収監との関係でこのような収容が決定される場合には、拘禁施設外で生活している親および他の家族構成員との接触の便宜を締約国が図るべきことが、さらに勧告されるところである。 親が収監されているとき施設外に残される子どもについて 38.委員会は、それが子どもの最善の利益にかなうときは、子どもが定期的にその親と面会する権利を有することを強調する。このような文脈において、委員会は、面会に際して子どもの尊厳およびプライバシーに対する権利が尊重されることを確保するための措置がとられるべきことを勧告するものである。 39.委員会は、締約国に対し、収監されている親に関わる警備上の問題および政策において当事者である子どもの権利が考慮されることを確保するよう、促す。このような文脈において、委員会は、締約国が、収監されている親と定期的に面会する子どもの権利を確保するよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、可能なときは常に、そのような面会が子どもにやさしい環境で行なわれるための配慮(通学のような子どもの生活の他の要素を妨げることのない時間帯に、かつ強固な関係の構築または維持に資する長さの面会を認めることも含む)を行なうよう、勧告する。子どもと収監されている親との間に必要な情緒的絆を子どもにやさしい環境で促進する目的で、拘禁施設外での面会を許可することも検討されるべきである。 40.委員会は、締約国に対し、親が刑を言い渡されかつ収監されたときは常に、親と面会する子どもの権利を考慮するよう勧告する。その際、締約国は、親との面会および接触に対する子どもの権利を促進する目的で、可能なときは常に、収監されている親をその子どもの近くの施設に収容するよう努めるべきである。収監場所の決定の結果として相当の距離が生じる場合ならびに(または)関連の旅行費用および生活費が発生する場合、締約国は、面会に関連する旅行費用その他の費用の負担を容易にし、かつ(または)当該費用を補助するよう促される。 子どもの意見の尊重 41.委員会は、締約国および関連の主体が、子どもに影響を与えるすべての決定において意見を考慮される子どもの権利を全面的に顧慮するよう、勧告する。 代替的養護 42.親の収監またはその他の形態の刑事司法制度への関与の結果、子ども(たち)の居宅または養育者が一時的にまたは恒久的に変更される状況にあっては、委員会は、子どもの代替的養護に関する指針(注3)を参照し、かつこれにしたがうよう勧告する。 (注3)国連総会第64会期「子どもの代替的養護に関する指針」(A/RES/64/142、2010年2月24日)。右記より入手可能:http //www.unicef.org/french/videoaudio/PDFs/100407-UNGA-Res-64142.en.pdf 〔日本語訳PDF〕 資金 43.収監によって国の金銭的その他の支援の受給資格が解除される可能性があり、かつこれによって被収監者の子どもに悪影響が生じるおそれがあることを認識し、委員会は、締約国に対し、支援の解除は個別に行なわれるべきこと、および、そのような決定を行なう際には子ども(たち)の最善の利益が第一次的に考慮されるべきであることを、勧告する。 情報の共有 44.子どもは逮捕時にその場にいたかどうかに関わらず情報に対する権利を有していること、および、締約国は、子どもの最善の利益を考慮する一方で、情報または情報の共有の申請が関係者にいかなる不利な結果ももたらさないことを確保する義務を負っていることを強調し、委員会は、締約国が、親または適当なときは家族の他の構成員に対し、収監されている親の所在に関する不可欠な情報(とくに死刑が関連する状況の場合)および子どもに対して利用可能とされる支援の詳細に関する情報を提供するよう、勧告する。委員会はさらに、当該情報が、子どもにやさしい方法で、かつ必要であれば異なる言語および形式によって提供されるべきことを勧告するものである。 45.委員会は、締約国が、親が収監されている子ども(親とともに拘禁施設にいる子どもおよび親の拘禁中施設外に残されている子どもの双方)の人数の記録を収集しかつ保管するとともに、当該情報を、そのような子どもが必要とする支援の提供に役立つような形式および方法で利用可能とするよう、勧告する。 代替的連絡手段 46.収監されている親と面会する子どもの権利(上述)を補完するものとして、委員会は、締約国が、技術的に可能なかぎり、電話、ビデオ会議その他の連絡手段を通じて子どもと収監されている親との間のさらなる定期的接触を促進するとともに、これに関連する費用が法外なものとならないことを確保するよう、勧告する。 専門家の研修 47.委員会は、刑事司法手続のあらゆる段階で子どもとともに/子どものために働く専門家、および、親が収監されている子どもと接する可能性があるその他の専門家(教員およびソーシャルワーカーなど)が、親が収監されている子どもに対していかなる必要な支援も適切に提供できるようにするための研修を受けるべきことを、勧告する。 IV.結論 48.2011年の一般的討議への参加者および情報提供者に対する謝意をあらためて表明しつつ、委員会は、親が収監されている子どもに関わるあらゆる状況において上述の勧告を十分に考慮する必要があることを強調する。上述の勧告に加え、委員会はさらに、すべての締約国および関係する主体が、2010年12月21日〔ママ〕に国連総会で採択された「女性被拘禁者の処遇および罪を犯した女性のための社会内処遇措置に関する国連規則」(「バンコク規則」)(注4)を全面的に考慮しかつ遵守する必要があることを、あらためて強調するものである。 (注4)国連総会第65会期「女性被拘禁者の処遇および罪を犯した女性のための社会内処遇措置に関する国際連合規則(バンコク規則)」(2010年10月6日)。右記より入手可能:http //www.unhcr.org/refworld/docid/4dcbb0ae2.html 更新履歴:ページ作成(2012年2月21日)。