約 1,455 件
https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/39.html
1 戦艦・航空戦艦【航空戦艦「日向」「伊勢」】/六六六空母艦 【戦艦「武蔵」】/ネウロイコンプレックス破砕作戦で参戦 【戦艦「美濃」「奥羽」】/遣欧艦隊陽動支援に参加 2 大型軽巡洋艦・防空巡洋艦【指揮統制巡洋艦「能代」】/北洋護衛作戦に参加 【防空巡洋艦「綾瀬」「女鳥羽」】/北洋護衛作戦に参加 1 戦艦・航空戦艦 【航空戦艦「日向」「伊勢」】/六六六空母艦 (1945年4月、援3号作戦参加時要目) 船体全幅 34.20m 船体全長 245m 喫水線 9.4m 基準排水量 40300t 公試排水量 45500t 乗員数 1550名 兵装 四一式改45口径36cm主砲連装4基8門 三式56口径12cm高角砲連装8基16門* 保式56口径40mm高射機関砲連装24基48門 恵式60口径20mm単装機銃40門 * 艦載設備 航空機械化歩兵最大1個航空隊+二式油圧式射出機2基 機関 P W式重油専用燃焼ボイラー8基及びGE製ギヤードタービン4基4軸* 機関出力:132000馬力 最大速度 28kt以上 航続距離 18ktにて12000海里前後 第六六六航空隊最初の母艦であり、ウィッチに劣らず様々なエピソードを有する軍艦。 特色としては、他の皇国海軍大型艦艇でも実施され始めていた、マイクロ波各種電探の搭載、 新型高射兵装への換装、主砲の電動旋回化、アナログ電子式方位盤の搭載。 そして、これらへ必要な電力や速力を与えるべく、主機をリベリオン製ボイラーとタービンに換装。 同時に大出力発電機や戦闘指揮所(後のCIC)を増設するなど、枚挙に暇がない。 また、ウィッチは必ずしも海軍母艦航空隊出身者ばかりを集められず、「日向」は正規の空母でもない。 それを幾らかでも補うべく、機関・発電機区画、従来劣悪であった居住区格の拡大。 加えてある程度の長さの飛行甲板。軽金属製折り畳み射出機や大型格納庫などを搭載すべく、 全長で30m近く。基準排水量で4000t以上の拡張が見られている。 また、艦尾形状もリベリオン式のトランサムスターン形式となっており、 後に扶桑皇国で、同じく航空戦艦へ改装された「伊勢」との識別点にもなっている。 そして最大の特徴はこの軍艦の主役ともいえる、第六六六航空隊の収まる格納庫であった。 一時期考慮されたいっそ工作機械を搭載し、 兵装やストライカーを「自作」してしまうといった、暴走に近い案は流石に差し止められている。 さりながら、この部隊は些か過去に宜しくない事情を抱え、原隊や母国からの正規ルートでは補充、補給を受けにくい。 そして何よりウィッチ個々人の使用するストライカーの種類が、非常に多種多様である。 それへ対処すべく、当初想定された零式や「烈風」一個航空隊(12~16名)ならば十分以上と考えられた格納庫には、 リベリオン、オラーシャ、カールスラント、ガリア、扶桑陸海軍などの、 宮藤理論で規格統一された部位以外を整備しうる大量の機材。それらの教本を緊急印刷するための自動印刷機1台*。 そして出雲少佐、藤堂砲術長、後藤副長、松田艦長といった、 当時の「日向」幹部陣が形振り構わずかき集めた、 各種重火器と弾薬を大量に格納すべく、かなり大振りな装甲化火器弾薬庫さえ拡張された。 これらの更なる改修に艦政本部や連合艦隊、そして海軍省とていい顔をしたわけではない。 しかし本来ならば、扶桑皇国海軍の「紫電」「烈風」などの艦上戦闘ストライカーで統一すべきところを、 航空機材の他部隊への急速配備のため困難とあっては、渋々認めざるを得なかった。 また20名以上のウィッチを運用する母艦であるため、後部格納庫の一角には救難用回転翼機とその整備区画も設けられた。 一部はウィッチの居住区画(寝室、浴室、士官室)さえ圧迫して行われ「整備工場艦」とさえ渾名を頂戴した「日向」だが、 それだけにストライカー、各種航空重火器の整備能力は正規空母並みに大きなものとなった。 どちらかといえば大型ネウロイ邀撃任務を強く指向した六六六空が、最終的に十全の実力を発揮しえたのは、 癖はあれども腕は確かな整備班の実力が第一であるが、この強引なまでに拡張された整備格納庫に依るところも大きい。 そして同時に戦闘艦としての「日向」の能力も大きく拡張されている。主砲門数こそ三分の二に減らされたが、 「大和」型戦艦並みか一部はそれを凌駕するほど充実した電子装備。「針鼠」とも言われた対空火力強化。 間接防御システムと継戦能力保持に関わる居住区画環境の改善は、大正年間生まれの旧い軍艦の戦闘力を大きく改善した。 その能力が幸いし、欧州派兵や北洋護衛作戦で幾度もの激戦に巻き込まれつつも、無事に生還し続けている。 過去に幾度も事故を起こし、ついには艦種さえ変更された「日向」。そして後に同様の改装を受けた「伊勢」であるが、 ある意味では皇国海軍戦艦の中で、最も活躍できる機会と能力を与えられたのは、予想外の僥倖というべきだろう。 戦後においては国軍再編の流れの中で、静かに現役を去った。 その後は呉、佐世保鎮守府の一角で記念艦として静かに余生を過ごし、時には自治体の式典会場となっている。 注1 バーベットを有する砲塔式高角砲を搭載するため、舷側副砲は全面撤去 注2 この艦の20mm機銃はグリップトリガー式を採用していた。緊急時に取り外し、ウィッチ達に手渡すためである。 注3 「伊勢」は川崎神戸で改装され、艦本式ボイラー及びタービンを搭載している。構造は異なるが艦隊行動で支障はきたさなかった。 注4 六六六空はその特性から、技術教本が大量の必要な部隊であり、自動印刷機用電路を専用に確保した珍しい軍艦となった。 【戦艦「武蔵」】/ネウロイコンプレックス破砕作戦で参戦 (1945年4月、遣欧艦隊所属時) 船体全幅 38.90m 船体全長 270m 喫水線 10.4m 基準排水量 66500t 公試排水量 70500t 乗員数 2650名 兵装 九四式改45口径46cm半自動装填主砲3連装3基9門 三式56口径12cm高角砲連装12基24門* 保式56口径40mm高射機関砲4連装16基64門 恵式60口径20mm単装機銃40門 艦載設備 水上機6機、ないし回転翼機4機 機関 ロ号艦本式重油専用燃焼罐12基及び艦本式ギヤードタービン4基4軸 機関出力:180000馬力 最大速度 28kt 航続距離 18ktにて10000海里以上 皇国海軍最大にして最強の超弩級戦艦クラス、「大和」型戦艦二番艦。 後に遣欧艦隊の一隻として「伊勢」「日向」と行動を共にすることとなる。 リベリオンの「モンタナ」級共々、凶悪化した大型ネウロイを正面から破砕できる巨大戦艦。 火力、装甲、速力、航続距離が高いレベルで纏め、 尚かつ皇国の港湾・船渠インフラへの適合を考慮された、手堅い枯れた技術を用いた設計。 工程管理と工数減少を徹底することにより、このクラスとしては破格の4隻同時建造という偉業を成し遂げた。 二番艦「武蔵」は昭和一六年一二月にネームシップ「大和」とほぼ同時期に竣工している。 元来がポストネウロイ級戦艦(欧州に於けるネウロイ出現後に就役した戦艦)であり、 就役当初からダメージコントロール設備や対空兵装、各種システムの多重化は成し遂げられていたが、 四三年末から四四年にかけての改装で、それは更に世代の新しい、高性能なものに置き換えられた。 新型電探と戦闘指揮所増設、主砲及び高角砲の電動旋回化に伴い、副砲を全て撤去し、 そこへ指揮所とディーゼル発電機を増設するほどの徹底ぶりであった。 近接防御火力も、大口径四連装機関砲を、数基を一群として指揮する電探射撃指揮装置と共に、針鼠のように増設されている。 事実、主砲さえ対空戦闘へ転用し、新型高射火器、高射装置を縦横に活用しなければ、 戦艦といえど次々と戦闘不能に追いやられる事態が、主に欧州で多発したのだ。 それは皇国海軍に恐怖以上の衝撃を与えた。 そのため分厚いVH防弾鋼板の上には、各種蒸散金属塗装からなる、対ネウロイビーム装甲が試験的に用いられている。 これは一度きりであるが、表面の蒸散装甲が融解、蒸発することにより、船体基部に大打撃を与える可能性を減じる措置である。 飽くまで理論上の装備であり、懐疑的な見解も多かったが、 奇しくも蓬莱島ネウロイコンプレックス破壊作戦に於いて、その威力は実証された。 可能な限り迅速なペースで主要艦艇、特に艦隊を動かすのに必須の大型支援艦艇。 そして正規空母を中心に蒸散装甲改装が行われているが、そのペースは十分とは言えなかった。 戦艦「武蔵」は試験的に間に合った、幸運な事例といえる。 45年当時は連合艦隊第一戦隊第一分隊を「大和」と共に形成している。 既に遣欧艦隊への編入は、作戦発動数ヶ月前より決定されており、 優先的に現役将校、下士官兵。あるいは現役を退いてそれほどブランクのない予備役将兵を受け取り、艦の練成が進んでいる。 なお、45年春の段階で「武蔵」艦長を務めているのは、嘗て「日向」にて砲術長を務めていた藤堂彰海軍大佐である。 余談ではあるが一時期、嘗て空母「赤城」沈没という惨事を生んだ、ブリタニアの新兵器ウォーロック。 暴走により開発を凍結された筈の、その制御システムの「改良型」を戦艦「大和」に搭載。 各地のネウロイハイヴへの決戦兵器として運用するという構想が、連合軍部内では強かった。 結果としては実験艦となった軽巡「夕張」が暴走、やむなく撃沈する事件が起きて以来、沙汰止みになっている。 現在の目から見れば正気の沙汰ではないが、それだけ当時の連合軍。 特に最前線を後背に抱えるブリタニアが、ネウロハイヴ増大に深刻な危機感を抱いていた事も伺える。 【戦艦「美濃」「奥羽」】/遣欧艦隊陽動支援に参加 船体全幅 34.4m 船体全長 240.5m 喫水線 9.7m 基準排水量 40500t 公試排水量 44500t 乗員数 1450名 兵装 三年式改45口径41cm半自動装填主砲連装4基8門* 三式改二型56口径12cm自動両用砲単装12基12門* 四式56口径75mm自動速射砲連装16基32門 舷側装甲 350mm/15度 主甲板装甲 185mm 司令塔装甲 350mm 主砲装甲 457mm/200mm/250mm/200mm 機関 ロ号艦本式重油専用燃焼罐8基及び艦本式ギヤードタービン4基4軸 機関出力:132000馬力 最大速度 28kt以上 航続距離 18ktにて10000海里以上 同型艦 「美濃」「奥羽」「駿河」「相模」 注1:内筒へのクロームメッキ延命措置、旋回装置の電動化、装填の全面機力化などの改装を実施 注2:既存の三式高角砲の装填を完全自動化。半自動化方位盤との連携で、毎分20発の射撃速度を誇る 船体全幅 34.4m 船体全長 240.5m 喫水線 9.7m 基準排水量 40500t 公試排水量 44500t 乗員数 1450名 兵装 三年式改45口径41cm半自動装填主砲連装4基8門* 三式改二型56口径12cm自動両用砲単装12基12門* 四式56口径75mm自動速射砲連装16基32門 舷側装甲 350mm/15度 主甲板装甲 185mm 司令塔装甲 350mm 主砲装甲 457mm/200mm/250mm/200mm 機関 ロ号艦本式重油専用燃焼罐8基及び艦本式ギヤードタービン4基4軸 機関出力:132000馬力 最大速度 28kt以上 航続距離 18ktにて10000海里以上 同型艦 「美濃」「奥羽」「駿河」「相模」 注1:内筒へのクロームメッキ延命措置、旋回装置の電動化、装填の全面機力化などの改装を実施 注2:既存の三式高角砲の装填を完全自動化。半自動化方位盤との連携で、毎分20発の射撃速度を誇る 皇国海軍は将来の主力を、噴進艦上戦闘機や大型レシプロ戦闘機、 新型ストライカーユニットを搭載した装甲空母を主軸とした機動部隊。 そして、防空火力増強と量産性、規格化に一義を置いた、 多数の各種護衛艦で編成される海上護衛総隊と位置づけていた。 戦艦部隊を無力・無駄と見捨てたわけではないが、現状の新旧雑多な状況を再整理し、 将来的には2個戦隊8隻。精々予備1個戦隊を含め12隻もあれば十分と考えていた。 (扶桑海事変で奮闘した長門型でさえ、40年代末には予備役編入が決まっていた)。 将来の再編された戦艦部隊。その1個戦隊にはまず「大和」型戦艦4隻が決まっていた。 世界最高レベルの火力と装甲、十分な機動力、改装に伴い確保された強力な電子装備と対空火力。 将来の連合艦隊においても、まずもって必要とされる最強戦艦であった。 そしてもう1個戦隊には使い勝手の良い、比較的運用、維持費が低廉な新造戦艦が求められた。 従来その役割を果たしてきた「金剛」型戦艦は明治年間建造という古さが祟り、 最早機関を中心に近い将来、限界をきたすことは誰しも認識していた。 完成度の高い高速戦艦とはいえ、既に就役から40年経過した軍艦なのだ。 では「紀伊」型戦艦4隻はどうか。こちらは比較的就役年次が新しく、 41サンチ主砲10門の大火力と重装甲。29ノットの高速は申し分ない。 しかしながら戦闘指揮所や対空兵装の配置などにおいて、設計概念の古さから、支障を来すことも懸念された。 (そのため後々、本土近海防衛の予備部隊に回されている)。 結果として後に「美濃」型と呼ばれる、新型戦艦が設計されることとなった。 彼女に求められたのは、戦艦としての最高性能ではなく、建造費と維持費の低廉さ。 対空兵装及び戦闘指揮所、電子装備の充実であった。 そういったコンセプトを受け、長門型や紀伊型より若干太い船体は、当初より副砲を全廃。 艦の奥深くに戦闘指揮所を設け、高々とそそり立ったマストには、各種高性能電探や逆探が満載された。 装甲はVH鋼鈑とネウロイの金属剪断ビームへの対処として、合成樹脂装甲が施されている。 同時にダメージコントロールも相当に進歩してる。 当然ではあるが、4万トンを越える船体に28ktを超える速度を与える機関は、当初からシフト配置が採用された。 冶金溶接技術の進歩に伴い、「長門」型以上の大型軍艦でありながら、船体の殆どが電気溶接で組み上げられ、 ブロック構造化もの推進、建造コスト低減と余剰排水量の排除。建造期間短縮も図られた。 コスト抑制といえば「美濃」型の主砲は「天城」型4隻が空母に転用された時、余剰となった三年式41サンチ砲。 それを手直ししたものを使用してもいる。 大正年間の主砲をリサイクルして、新型艦として就役した「美濃」型戦艦は、 口さがないものからすれば「死蔵品の主砲を用いた新型戦艦『のようなもの』」と言われる事もあった。 しかしながら当初より戦闘指揮所、大出力発電装置、撃たれ強い装甲と応急設備、高度な電子装備、 全ての火器の電動旋回化を成し遂げたこの戦艦は、 性能要目以上の実用性を有する軍艦でもあった。 実際、一線部隊における運用実績も良好であり、対ネウロイ戦闘を一義とした中型戦艦として、長く活躍することになる。 なお、六六六空を含む地中海遣欧艦隊がヴェネチアハイヴ破壊のため激戦を展開するさなか、 一番艦「美濃」と二番艦「奥羽」は第二遊撃部隊に参加。地中海方面派遣部隊を陽動支援している。 2 大型軽巡洋艦・防空巡洋艦 【指揮統制巡洋艦「能代」】/北洋護衛作戦に参加 船体全幅 21.8m 船体全長 183m 喫水線 7.6m 基準排水量 11500t 全備排水量 14300t 乗員数 1100名 兵装 四一式改50口径15.2cm半自動主砲3連装2基 三式56口径12cm高角砲連装6基12門 保式56口径40mm高射機関砲4連装6基24門等 機関 ロ号艦本式重油専用燃焼罐6基及び艦本式ギヤードタービン4基4軸 機関出力:120000馬力 最大速度 31kt 航続距離 16ktにて8500海里 皇国海軍が5500t級軽巡の代替として建造した、新世代の大型軽巡「阿賀野」型。その二番艦である。 このクラスは軽量半自動化15サンチ砲、八九式12.7サンチ高角砲を各12門搭載。 ネウロイには無用の水雷を全廃。 機関のシフト配置化の実施や、就役当初から対空用電探、戦闘指揮所を備えた近代的な巡洋艦であった。 しかしながら、限定的な対空火力しか持たない水上砲戦型軽巡では、 凶悪化の一途をたどる航空型ネウロイへの対処は困難となりつつあった。 故に皇国海軍は自動装填6インチ両用砲を主戦兵装とした、 更に世代の新しい防空巡洋艦へと、巡洋艦戦力の主力をシフトしていくこととなる。 だが即座に「阿賀野」型に使い道が無くなったわけではない。 特に、本艦「能代」を初めとして4隻が改装を受けた、指揮統制巡洋艦仕様はそうである。 完全に海上護衛任務に於ける旗艦任務へ特化した、護送船団指揮に欠かせない存在となっている。 後部砲塔2基を撤去。そこへ「日向」のそれに近い、巨大な対空用電探、 高度測定電探、対水上電探、電子妨害装置等を据え付けた電子の鉄塔。 そして、そこから集められた情報を集約、処理する大がかりな戦闘指揮所が、装甲に守られて据え付けられている。 高角砲などは全て新型の三式12cm高角砲へ換装されており、40mm機関砲も相当数増設され、 同時に新型の射撃指揮電探やディーゼル発電機が増設されたのも、言うまでもない。 更にはこれらの重装備を背負い、悪化した復元性を幾らかでも改善すべく、船体はバルジにより原型よりも膨らんでいる。 当然、操舵特性は悪化し速度も低下しているが、船団護衛においては支障のない範疇として割り切られた。 改装を受けた4隻は全て、海上護衛総隊へと移管され、北部航路警戒をローテーションで実施している。 また「阿賀野」型の指揮統制巡洋艦への改修で得られたノウハウは、 次世代防空巡洋艦へ大きくフィードバックされている。連合艦隊の重巡も一部、同様の改修を受けた艦が存在する。 改修を受けた艦は「酒匂」「仁淀」「高梁」「能代」の四隻であり、 この内の「能代」が「日向」と共に大規模北洋護送船団作戦。「北」号作戦に参加することとなる。 また、同型艦「酒匂」も傷病者・児童緊急避難のための空路輸送援護支援のため、六六六空と共同作戦を行った経緯を持つ。 【防空巡洋艦「綾瀬」「女鳥羽」】/北洋護衛作戦に参加 船体全幅 20.4m 船体全長 184m 喫水線 7.7m 基準排水量 11600t 全備排水量 14700t 乗員数 980名 兵装 四式50口径15.2cm連装自動両用砲4基8門 三式56口径12cm高角砲連装6基12門 保式56口径75mm連装自動砲8基16門等 ロ号艦本式重油専用燃焼罐6基及び艦本式ギヤードタービン4基4軸 機関出力:120000馬力 最大速度 32kt 航続距離 16ktにて8500海里 実質的に「阿賀野」型軽巡の準同型艦といえる大型防空巡洋艦。 陸軍の新型陣地高射砲と、共同開発された水圧自緊・完全自動装填式15cm高角砲8門を搭載。 10000m以遠の大型航空目標に対し、トータルで8門合計毎分100発近いペースで重榴弾を撃ち込める。 近接信管が実用化されつつあったこともあり、命中精度も良好であった。 電子装備も兵装相応に近代的なものへと切り替わり、 マイクロ波射撃電探やアナログ回路併用方位盤などを、就役当初より搭載している。 但しリベリオンの「ウースター」級のように、船体を新規設計したわけではなく、性能面では遜色を見る。 反面、「阿賀野」型と同一規格の船体を流用しただけに、建造期間の大幅な短縮には成功した。 これは、オラーシャ方面より飛来する大型航空ネウロイ。 それを洋上で阻止しうる手段を、海軍が一つでも多く欲していた事情が影響している。 大規模とはいかなくとも、恒常的な爆撃を受けている扶桑皇国の危機感は非常に強かった。 今は小規模でも将来はどうなるか、知れたものではない。実際に蓬莱島へネウロイの空挺降下も行われてしまった。 そういった背景事情を受け、建造は非常に早いものとなった。 43年夏に同時起工された初期12隻は、44年冬から45年春には就役している。 大型巡洋艦の当時の建造期間としては、戦時体制へ移行しつつあることを考慮しても、特筆に値するレベルである。 一番艦「空知」は、早くも45年の年の変わり目に実戦投入されており、従来、強引に戦艦主砲で通常弾を叩きつけるか。 12サンチ高角砲とボフォース機関砲の弾幕で差し違える覚悟で阻止する以外、 艦艇としては迎撃手段の無かった大型航空ネウロイを相手に、かなりの戦果を挙げた。 事実上の戦時急造艦であり、造船所によって出来不出来のばらつきは存在するが、 海軍は概ねこのクラスの示した実績を妥当と判断。 対空誘導噴進弾実用化までの、大型駆逐艦と並ぶ主力防空艦の一つとして、更に建造を推進することを決定している。 3番艦「綾瀬」、5番艦「女鳥羽」は海上護衛総隊からの強い要求により、 急遽連合艦隊から護衛総隊へ派遣され、ヒ-88船団護衛作戦でも活躍している。 こういった実績も、今後の主力防空艦たるべしと判断される大きな要素となった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2233.html
Epilogue ひとときの幸せ 首都トリスタニアでもっとも広いブルドンネ通りをまっすぐ進んだ先に聳え立つトリステインの王宮。そこに住まう王女の居室で、包帯姿の少女が王女アンリエッタを前に自らに課せられていた任務の報告を行っていた。 「そうですか。手紙は、敵の手に……」 アンリエッタは、組んだ手の上に視線を落として呟いた。 これで、トリステインは一国にてレコン・キスタと対峙しなければならなくなる。 現状のトリステインの戦力では、苦戦は必至だろう。民に、臣下たちに苦難を強いなければならなくなった。 どう言い訳したものか。 このことを知った宰相のマザリーニの怒りを想像して、アンリエッタは身を震わせた。 ゲルマニアとの政略結婚の妨げとなるものは無いかと、幾度も問いかけられながら無いと答えてきたのだ。だというのに、この有り様。鳥の骨などと民衆に揶揄される宰相は、過去に無いほどの怒りを見せることだろう。 だが、その怒りも、痛々しい姿を晒す親友の前には些細なことに過ぎない。 頭と頬にガーゼが止められ、衣服の隙間から覗く肌を全て隠してしまうかのように、白い包帯が全身を包んでいる。水の秘薬を塗りつけられた部分からは、つんと鼻につく臭いが漂っていた。左のわきの下には、不安定な体を支えるための松葉杖もある。 それが、報告を優先したいと願ったために十分な治療を受けられなかったルイズの、今の姿なのだった。 迂闊な自身の行動が、本心から慕ってくれる大切な友人を殺しかけた。そんな事実に、アンリエッタはキリキリと締め付けられるような心の痛みを感じていた。 「極秘の任務でありながら、よくやってくださいました。ああ、わたくしが良かれと思ってつけた護衛が、まさか裏切り者だったなんて……!ごめんなさい、ルイズ。あなたを危険な目に遭わせてしまって」 その言葉に、ルイズはゆっくりと首を振った。 「いいえ、姫殿下。こうなることを理解していなかったのは、わたしのほうです。危険な任務だと分かっていながら、頼られるままに考えも無く行動を起こしてしまいました。今回のこれは、いい教訓だと思っています」 そう言って、ルイズは首から布で吊られた今もじくじくと痛む右手に視線を向ける。 任務を受けたあの日、同情を引くような言葉をかけてきたのはアンリエッタだったが、それに乗ったのはルイズだった。内戦の真っ只中だと、アンリエッタは任務を課す前に忠告をしていたのに、その意味を理解しないうちに了承し、大した覚悟も無くアルビオンに赴いたルイズは、アンリエッタを責められる立場には無い。 幸いにして、仲間に死人は出ていない。怪我をしたのも、ルイズだけだ。 そのことだけが、ルイズとアンリエッタにとって、唯一の救いだった。 「ねえ、ルイズ」 「なんでしょう、姫殿下」 部屋の窓から見える青い空を見上げたアンリエッタの呼びかけに、ルイズは同じように空を見上げて答える。 「あの人は……、ウェールズ様は行方不明、でしたわね」 「……そうです。敵の補給線を叩くために出陣して、それきり消息を絶っています」 「なら、少しくらい希望を抱いてもいいのかしら」 独り言のような言葉に口を閉じ、流れ行く雲を視線で追う。 アンリエッタがなにに期待しているのかをルイズは察したが、それについてどうこういう気は無かった。 敵の手に落ちたはずウェールズの身柄については、内戦の終焉から三日経った今でも何の情報も広がっていない。一部では決戦に赴いた王党派の指揮をとっている姿を見たという噂もあるが、前日まで城にいたルイズたちはウェールズの姿など見ていないのだから、信憑性は薄いだろう。ロサイスの軍港で連行される姿があったとか、田舎の村に潜伏していたとか、貴族派の主導者クロムウェルを暗殺しようと、シティ・オブ・サウスゴータの近隣にある森に潜んでいたという話もある。だが、どれも裏づけは無く、噂の域を出ていない。 中には、ここトリステインに難民に紛れて潜伏をしているという話まである。 アンリエッタは、そのどれかの噂が真実であって欲しいと思っているのだろう。 いつか、ウェールズが亡くなったという報告を受けるまで、そんな儚い夢を抱くのだ。 手紙の奪還に失敗した以上、レコン・キスタとの戦争は避けられない。戦いが始まれば、そんな想いに胸を焦がす時間も無くなる。 今だけは、王女は少女でいてもいいのではないか。 擦り切れるほどに読まれた手紙を思い出して、ルイズはそう思った。 少しの時間を置いて、二人は空を眺め続けた後、こほん、というアンリエッタの咳払いを合図にして向き直った。 「ルイズ・フランソワーズ。此度の任務を引き受けてくれたこと、そして、生きて戻ってくれたことに感謝いたします。本来なら、勲章や褒賞を与えるべきなのでしょうが、極秘ゆえにそれも出来ず、わたくしにはあなた方の忠誠に報いる術がありません」 悲しげに視線を落として、アンリエッタは両手を胸の前に移動させた。 「任務は失敗に終わりました。ですが、貴女方は学生の身でありながら十分に働いて下さいました。その労を労う意味を込めて、わたくしが個人の裁量で与えられる恩賞を差し上げたいと思います」 指に嵌められた指輪を抜き、アンリエッタはそれをルイズに差し出した。 それは、任務の報告に合わせて返却してばかりの、水のルビーだった。 「姫殿下、これは受け取れません。トリステインの国宝だとアルビオンで教わりました。そのようなものを、任務一つ満足にこなせない者にお与えになられるなど……」 「いいのです。始祖の秘宝であることは、わたくしも存じております。ですが、王家の一つが潰えた今、連綿と受け継がれてきた多くのものが価値を失いました。これも、その一つです」 どうか、受け取ってちょうだい。と、アンリエッタはルイズの手をとって強引に水のルビーを握らせた。 いくばくかの逡巡の後、それで姫殿下の気が納まるならと、ルイズはそれを受け取ることを了承する。 任務に失敗したのに、罰を与えられるどころか国宝を賜るなんて。 なんとも奇妙な話だと、ルイズは心の中で苦笑した。 「さあ、ルイズ。オールド・オスマンには事前に話を通してありますから、ゆっくりとお休みなさい。わたくしは、これから軍備の再編のために奔走しなければなりません。ゲルマニアとの軍事同盟が成されないのなら、トリステインは近く戦火に飲まれることになりますから」 傍らの執務机に置かれた水晶を頭に乗せた杖を手に取り、口元を引き締める王女の姿に、ルイズはかつて自身の王族としての責務に押し潰されそうになっていたアンリエッタの弱々しい印象が、見違えるほどに薄くなっているのを感じた。 「はい、姫殿下。ですが、わたしも父に手紙を書き、侵攻に備えたいと思います」 「長きに渡り王家に忠誠厚く仕えてくれたヴァリエール家に、王女として感謝いたします。でも、あなたはその体なのだから、無理はしないでね」 心配するようなアンリエッタの言葉に、ルイズは笑顔を浮かべて返した。 深くお辞儀をして、部屋の扉へ足を向ける。 その背中に、アンリエッタが声をかけた。 「ルイズ。どうか、あなただけは、わたくしの下から消えたりしないでください」 悲しみを孕んだ響きに、ルイズは振り返って軽く握った左手を胸に置いた。 酷く不恰好な敬礼。 そんな姿に、アンリエッタは子供の頃の遊びを思い出す。 子供心に憧れた、貴族らしい貴族たちの勇敢な姿。それを真似たおかしなごっこ遊びに夢中になっていた子供時代。騎士とヒロインに別れたものの、どっちがお姫様役をするのかで喧嘩をしたものだ。そのときに、当時有名だった騎士の姿を真似て敬礼の練習をしたことがあった。 ルイズは、お互いがまだかつての関係を崩していないのだと、暗に語っているのだ。 「そう、そうですね、ルイズ。わたくしの、ただ一人の親友。貴女とわたくしがあの頃の想いを忘れない限り、この絆は永遠のものなのですね」 ルイズと同じように胸元に手を当てたアンリエッタは、久しく忘れていた無邪気な笑みというものを浮かべて、照れくさそうに頬を赤くした。 「わたくし、もう少しだけ頑張ってみます。皆の期待に答えるためにも。そして、貴女の支えを無駄にしないためにも」 敬礼を解いて、アンリエッタの言葉をしっかりと心に焼き付けたルイズは、改めてお辞儀をして部屋を後にした。 閉じられた扉の向こうから聞こえてくる、高らかに気合を入れる年頃の少女の声。 それは王の責務を知らずして夢を語る、少女時代のアンリエッタの声だった。 でも、一つだけ違うことがある。 今のアンリエッタは、責任を背負っていることを自覚している。その上で、子供の頃の声を出しているのだ。 自分の目から見てもまだまだ未熟な女性だが、きっと、いい指導者になる。 そのときが来たなら、わたしは迷い無くジェームズ一世から託されたものを渡せるだろう。 トリステインの未来は、明るいものだと信じられるのだから。 「なるほど、ワルド子爵。君はどうやら、いささか疲れているようだ」 瓦礫の山の中、死体が散乱する場所の上でそう言ったのは、三十代の中ほどに入った年齢の聖職者風の男だった。 丸い帽子に、緑色のローブとマント。瞳は青く、鼻は高い鷲の嘴のような形をしていた。 貴族派の指導者、クロムウェル卿である。 小さな溜め息を交えてカールした金髪を砂埃の混じる風から帽子で隠し、足元に転がる多くの死体の一つに目を落とす。 そこにあったのは、金髪の精悍な青年。 ウェールズだった。 「君は、確かこう言ったね?シティ・オブ・サウスゴータの郊外にある丘で、暗殺者と共に行動していたウェールズを討った、と。しかし、ここはサウスゴータではなく、ニューカッスルの地だ。これは、どういうことなのかな」 後方にいた羽帽子の男が、その場に跪き、顔色を青くさせた。 確かに仕留めたはず。心臓を正確に突いたのだから、生きていたはずが無い。 記憶の中の光景と手に残る感触を思い起こして、ワルドは利き手を握り締めた。 「ふむ、返答は無しか。せっかく手に入れた手紙は血に汚れ、使い物にならなかった。不意打ちで脇腹に深手を受けたと言うが、そんな跡など、どこにもないではないか。君の怪我は、首筋と、踵にしかない。脇腹には服に穴が開いておるだけだ。血の跡は確かにあるが、ふむ、返り血のほうがしっくり来る。少なくとも、余にはそう見えるがね」 責めるような、それでいてどうでもよいような口調で語りかけるクロムウェルに、ワルドは奥歯を噛み締めて苦々しい表情を浮かべた。 まさか、鳥と間違えてグリフォンを撃つような馬鹿がいるとは、信じては貰えまい。治癒能力をもったエルフがたまたま敵の仲間にいたことや、その場にウェールズが偶然で居たことも。 敵の中に吸血鬼がいたという話だって、俄かには信じがたい事実だ。 首筋の傷は、吸血鬼の存在証明よりも、むしろ否定要素に繋がっている。屍人鬼を作ることができる吸血鬼に噛まれたというのに、無事である方がおかしいのだ。 暗殺者に、王子に、吸血鬼に、エルフ。 どこにそんな集団があるというのだ。御伽噺でもあるまいし。そんな連中が居たと聞かされても、実際に目にしていなければ自分でも馬鹿馬鹿しいと吐き捨ててしまうだろう。 アルビオン王を仕留めたことも、死体が破壊された壁の向こうに並んでいたことで、砲の直撃を受けたと判断されていた。実際に、砲弾と思われる金属の破片や、焼けた跡もあった。 王の死体の検分をすればワルドの持つレイピアによる刺殺だと証明できたはずだったが、最悪なことに、ルイズの失敗魔法が死体の状態を悪化させ、正確な判断を許さなかった。 つまり、実績の証拠が一つも無いのだ。 そのことでワルドは、クロムウェルに任務の一つも果たせない無能の烙印を押されていた。 「余は、うむ、余などという大層な言葉を使うことは許してくれたまえ。……余は、まだ僧籍に身を置いておる。司教として、迷える民を導くこともやぶさかではない。故に、言い訳があるのであれば、心を広くして耳を傾けようと思う」 真実か嘘かなど、もうどうでもいいのだろう。 心底呆れ果てたために、せめて妄言とも聞こえる真実よりも、仕方が無かったのだと思える慰めのような嘘を求めているようだった。 だが、どう言い繕っても、ワルドの評価が変わるわけではない。 このまま切り捨てるか、兵の一人として使うか、その程度の差でしかないのだ。 「さあ、どうしたね子爵。余は、あまり人を急ぎ立てるのは好きではないのだ。手間をかけさせないで欲しい」 顔を寄せ、薄く笑みを浮かべるクロムウェルを前に、ワルドは何度も心の中で悪態を吐いた。 だが、憎しみを向けるべき相手は、ここにはいない。一人は殺し、一人は蹴り飛ばし、もう一人からは逃げてきたのだから。 「怖い顔をしているな、子爵。それほど怖い顔では、神も君に目を向けられまい」 天が見放しているのだとも受け取れる言葉に、ワルドは思わず共感しそうになって肩を落とした。 自分でも、この状況の酷さを無意識に認めていたのだ。裏切りに対する罰であるかのような状況を。 それでも、捨てる神あれば拾う神あり、とでも言うのだろうか。クロムウェルたちに近づいてきた妙齢の女性が瓦礫の中に転がるウェールズに視線を向けたかと思うと、薄く笑ってクロムウェルの耳元に何かを囁いた。 ワルドに向けられていた冷たい視線が、途端に暖かさを得る。 雰囲気の変化を感じて、ワルドは顔を上げた。 「……ふむ、ふむ。なるほど。そうか、そうだったか」 女の言葉に仰々しく頷いたクロムウェルは、ワルドの肩に手を置いてニコリと笑った。 「すまなかったな、ワルド子爵。余は思い違いをしていたようだ。子爵は確かに余の望んだ命を果たしてくれたらしい」 そう言って、クロムウェルは足元のウェールズの死体に視線を向けた。 傍らに控えた女性が魔法に用いる言葉、ルーンを二言三言呟くと、ウェールズの死体が急速に縮み始める。 そこにあったのは、ちっぽけな人形だった。 「見よ、ワルド子爵。今は無き王党派は、このような人形を頭に据えて最後の決戦に臨んだようだぞ。なんとも滑稽な話ではないか。そう思わないかね?」 「決戦の朝方、唐突に土の中より大きなモグラに導かれて現れたと、生き残り傭兵が語っておりましたわ。主な指導者が失われたために、本物か偽者かどうかも確かめることなく本人として扱ったとか」 黒い衣装の妙齢の女性は、どこからか聞いてきた情報を話して人形を拾い上げた。 「スキルニル。そう呼ばれる魔法人形です。血を塗りつけると、血液の元となった人物の姿を模倣します。思考や、行動までも」 女の説明に、ワルドは奥歯を噛み鳴らす。 心臓を刺されたウェールズの代わりに、丘に居た誰かが用意したのだろう。エルフが居たことを考えれば、そういう道具があっても不思議ではないように思えた。 「しかし、偽者の皇太子は随分と頑張ってくれたものだ。千の兵で、余の軍の五分の一を見事に打ち砕くとは。まったく、予想するに難い結果となってしまった」 約五万。シティ・オブ・サウスゴータに半数を残したとはいえ、それだけの兵力を相手にして、王党派は一万を切り崩したのだ。 死者四千人、戦時復帰の見込めない重軽傷者六千人。治療中の傷病者を含めれば、二万近い数のそれが、たった千人の王党派によってもたらされた被害である。 絶対的な戦力差を前にして十倍の兵力を打ち砕いた王党派は、死して伝説となったのだ。 「さて、これは困ったぞ。トリステインとゲルマニアが軍事同盟を築くのを阻止するのは、もはや避けられん。当初はそれでも構わぬと思っていたが、軍の疲弊は無視できぬ規模となってしまった。半年は力を蓄えねば、戦争どころではない」 そう言いながらも、クロムウェルは困った表情を浮かべることなく戦場跡を眺め見た。 「はてさて、なかなかに重労働になりそうだ。ワルド子爵、少々手伝ってもらえないかね?」 「断る口は持ち合わせておりません、閣下」 ウェールズの暗殺に成功したのだと認めてもらえはしたが、やはり、印象が良くないことは確かだろう。 従順な振る舞いが必要だと、ワルドは頭を垂れた。 「それは頼もしい。しかし、なに、大したことではない。ただの死体集めだ。城の中庭にある池の傍に、ありったけの死体を集めてもらえるかね」 「……死者は病を呼びます。炎で焼くのでしょうか?」 戦場で死んだ人間の周囲で深刻な疫病が生まれることは、戦場に立つ者にとっては常識だ。 それを思っての質問だったが、クロムウェルは首をゆっくりと横に振って、背筋を冷たくするような感情の乗らない笑顔を浮かべた。 「死んでしまえば、誰もがともだちだ。ただ、それだけのことだよ」 クロムウェルの指で、深い水色を称えた指輪が光っていた。 アンリエッタとの謁見を終えたルイズは、待合室で待機していた才人たちと合流して城下に下りていた。 まだ戦争が始まるなどとは知らない人々は、大通りに露天を広げ、それぞれの商売で夕飯のパンを買うために当たり前のように働いている。行商人が荷馬車に山のような荷物を乗せて道を行くかと思えば、その正面を包みを抱えた少女が横切り、突然止められたことに驚いた馬の嘶きに紛れて、露天の主人が客に渡すつり銭を誤魔化していた。 当然のように繰り返されている日常だというのに、それが終わることを知っている身となると、なぜかその姿が呑気なものに思える。 心のどこかで、戦争が始まると知らせたほうがいいのではないか、とさえ思ってしまう。 だが、こちらから宣戦布告が出来る状況で無い以上、唐突に彼らは戦争の始まりを知ることになるのだろう。そのとき、この町の様相はどのように変わるのだろうか。 無意味な想像だとは分かっていても、ルイズはその光景を脳裏に描こうとする行為を止めることが出来なかった。 「この長い道を徒歩で移動かあ。タバサがシルフィードなら、学院まであっという間だったのになあ」 町の外にまで続く道の先に視線を向けた才人が、腕に抱えた包みを持ち直して面倒臭そうにぼやいた。 「仕方ないわよ。あの子にも事情があるんでしょうし、迷子になってたギーシュの使い魔を運んでくれただけでも感謝しておかないと」 ルイズが後ろを振り向くと、モグラなのに地上を歩いているヴェルダンデとギーシュが戯れている姿があった。 アルビオンを脱出したルイズたちとタバサが合流したのは、ラ・ロシェールから馬で走り出して二日半。トリスタニアに到着してからだった。 その時に、タバサは手紙の奪還に失敗したことを申し訳なさそうに謝り、アルビオンで偶然見つけたというヴェルダンデをギーシュに返して、シルフィードと共に止める間もなく飛んで行ってしまったのだ。 あの時のタバサとシルフィードの疲れた様子を、ルイズはよく覚えている。 「やっぱり、ついて行った方が良かったのかしら」 はあ、と溜め息を吐いて、ルイズたちの後ろを歩いていたキュルケが、遠くの空に視線を向けた。 人に頼ろうとしないどころか、一人でなにもかもを背負い込む癖がある小さな少女が、普段変わることの無い表情を暗くさせていたのだから、心配にならないはずが無い。 大丈夫かしら?ちゃんと眠っているのかしら?ご飯は食べてる?危険なことをしていないわよね?一段落したら、顔を見せてちょうだい。 などと、幼い我が子に気遣う母親のような気持ちで、キュルケは両手を胸の前で合わせる。 どうにもこうにも、タバサの姿が見えないだけで落ち着かないらしい。 「友達だからって、相手の個人的な事情にまで首を突っ込むのは下品よ。ツェルプストー」 タバサの姿を見てから、今までずっと溜め息ばかりを吐いているキュルケに、いい加減邪魔臭さを感じたルイズが咎める。 すると、キュルケは頬に手を当てて嘲笑うかのように高笑いを上げた。 「あら、友達じゃなくて親友よ、し・ん・ゆ・う!ま、友達の居ないヴァリエールには、その辺りの気持ちなんて理解できないのでしょうね」 「だ、誰が孤立してるですって!?こ、ここ、この乳デカ女!あんただって、タバサ以外の友達が本当にいるわけ!?一度も見たこと無いわよ!」 「な、馬鹿にしないでよ!そりゃあ、友達になる相手の恋人を何人かつまみ食いしたけど、友人関係が途切れたわけじゃ……、えっと、あー、……うるさいわね!いいでしょ、べつに!」 気の強さと性格の問題を指摘し合い、お互いに友人が居ないことを罵り合うという不毛な戦いの火蓋が、唐突に切って落とされた。 どうしてそんなに喧嘩っ早いのか。 一人取り残されてしまった才人は、通行人の迷惑そうな目にペコペコと頭を下げて、同属嫌悪か犬猿の仲かといった二人の少女を止めることも出来ず、自分の周囲にはまともな人間が居ないのかと思い悩むのであった。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/3890.html
395 :yukikaze:2016/09/22(木) 13 17 14 へい、お待ち。 世界の装軌装甲車カタログと、資料として印刷していたパンツァーの 該当記事の内容を転記しまくって完成した奴投下。 鋼鉄の軍馬――M113物語 国防陸軍の車両と聞いて、諸兄らが思い浮かべる車両はなんであろう。 多くの人は『戦車』と答えるかもしれない。 鋼鉄に身を包んだその塊が、まるで槍を掲げるかのように戦車砲を突出し戦場を疾駆する姿は、まさしく勇壮と言ってよく、多くの人の眼に焼き付くであろう。 またある人は『軽装甲機動車』と答えるかもしれない。 かつて刑事ドラマにも出演した事のあるこの車両は、PKO任務のみならず、国防陸軍の脚として活用されている事から、日常生活でも目の当たりにしている人は多いはずだ。 だが、今回はM113という車両について語らせてもらいたい。 M113――そう言われてもピンとくる人は少ないかもしれない。 しかし、この車両は国防陸軍においてはなくてはならない車両である。 時には戦場で、時には災害現場で、この車両は黙々と任務を遂行していった。 故に、国防陸軍の将兵は、親しみを込めてこう呼ぶのである。 『鋼鉄の軍馬』と・・・ 時代は1950年代にさかのぼる。 当時、アメリカ軍から武器供与を受けていた国防陸軍は、戦後の混乱期を脱し経済的に安定してきた1950年代末ごろから、装備の国産化を計画した。 アメリカ軍から供与されていた装備が、基本的には第二次大戦のお古であり、強力なソ連軍を相手に戦うには、陳腐化が免れなかったことによるからである。 小は自動小銃や多目的機関銃、大は戦車というように、彼らは万が一の有事の際に後れを取らぬよう、開発に尽力し、成果を上げていた。 もっとも、全てが順風満帆であったという訳ではない。むしろ問題山積みであった。 当時の日本経済は、朝鮮戦争終結後には、戦前の水準にまで回復し、そして高度経済成長期に突入していた訳だが、史実世界よりはマシとはいえ、軍事費用については抑制的であり、 しかもその予算の多くは、戦後も政治的権威を保持できた海軍に費やされていた。 逆に陸軍は、一時の総バッシング状態こそなくなったものの、政治的権威はかなり低く、 少ない予算をどうにかやりくりしている現状であった。 そのため、当時陸軍を牛耳っていた林大将は、全てを国産開発することを早々に諦めていた。 仮にすべてを国産化しようとした場合、開発費用も足りなければ取得費用も足りないのである。 上手く開発出来たとしても、予算がない為に取得費用は必然的に割高になってしまい、 碌に配備も出来ずに陳腐化という、負のスパイラルになるのが容易に想像できるのである。 故に林大将は、現時点においては、小火器と戦車以外の国産は諦め、それ以外の装備については一定数をFMSで賄い、ある程度余裕が出た時点で、ノックダウン生産からライセンス生産、最終的には国産化に進もうと計画した。 勿論、FMSにした場合「要求してもすぐに来ない」とか「開発能力が途絶える」といった問題点があるのは重々承知していたが、背に腹は代えられなかった。 『戦いとは数である』という林大将の言葉を一笑に付す愚か者は、少なくとも国防軍には存在しなかった。 かくして国防軍は、新型戦車の開発に勤しむ傍ら、同戦車に追随できるだけの装甲車として、 合衆国に対して、装軌式装甲車の供与及びFMSでの取得を希望することになる。 アメリカ側も、極東で唯一頼れる同盟国となっていた日本の軍事力強化は必要であるという認識が上層部において形成されており、日本側の要望に対しても了承を得ている。 (これは枢機卿事件における日米関係の冷却への改善が必要という認識によるもの) これにより、日本側に導入されたのがM113の眷属である。 以下、各タイプについて説明する。 396 :yukikaze:2016/09/22(木) 13 18 19 M113 M113装甲兵員輸送車は防弾アルミ板を用いて生産された最初の車両となったが、 基本的な構成はそれ以前の装甲兵員輸送車と同じく箱型車体が踏襲され、前部左に操縦手席、 右に機関室を配し、その後方中央部には車長席を設け、後部を兵員室としたレイアウトは本車において確立され、以後多くの車両がこのレイアウトを採用することになった。 縦手には後ろ開き式の専用ハッチが用意されており、このハッチ前方にはM17ペリスコープが4基設けられている。 さらにハッチには、夜間操縦用としてM19赤外線ペリスコープが装備されている。 車長にはM17ペリスコープ5基を内蔵した全周旋回式のキューポラが用意されており、キューポラには12.7mm重機関銃M2を装備するためのマウントが設けられている。 また、キューポラの後方にあたる車体上面には後ろ開き式の乗降用ハッチが配されており、車体後面には車体幅と同じ大サイズの下開き1枚式のランプドアがある。 このランプは油圧式動力で開閉を行うが、通常はランプに備えられた小ハッチが乗降に際して用いられる。 兵員室と機関室は隔壁で分けられ、左右に配された折り畳み式ベンチシートにはそれぞれ兵員5名が座ることができ、 さらに車長席の直後には分隊長席が設けられて後方を向く形で着座する。 装甲厚は前/後/上面が38.1mm、側面上部が44.5mm、側面下部が31.8mm、下面が28.58mmだが、一部装甲の薄い部分もある。 車体前部には水上浮航の際、エンジンのある前部が前トリムになることを防ぎ、また水流が車体上面に上がらないように波切り板が装着され、浮航時にはこれを前方に開いて水に入る。 また水密性を高めるために、後部のランプと小ハッチを始めとする開口部の縁にはゴム・シールが施される。 これでも車内に水が僅かではあるが侵入してくるため、車内床面に2基の排水ポンプが備えられ、操縦手の操作で車体前部左側と、後部右側に設けられている排水口から車外に排出される。 この他、寒冷地での使用を考慮して専用の追加キットが用意されており、これは兵員室右前方に排気管と一体化する形でヒーターを置き、ここから兵員室内に暖かい空気を送ると共に、右後部に配されたバッテリー・ケースにダクトを延ばして暖めるもので、必要に応じて機関室内にホット・エアを送ることもできる。 同様に兵員室内に左右2床ずつの担架を装着して、傷病兵を輸送する装甲患者搬送車への変身も可能で、この場合、兵員室内の上下に設けられた固定部にチェーンを張って担架を固定する。 機関系は車体前部右側に配された機関室にパワーパック型式で収められ、車体前面と上面に設けられた大きな点検用ハッチを開くことで簡単に整備を行うことができ、交換も短時間で済むのは大きなメリットといえる。 エンジンはクライスラー社製の75M V型8気筒液冷ガソリン・エンジン(5,912cc、215hp)を採用しており、これに伝達ギアを介してアリソン社製のTX-200-2自動変速機(前進6段/後進1段)に動力を伝え、さらにFMC社製のDS200差動装置を経由して最終減速機に伝達され、起動輪を駆動させるようになっている。 02リットル容量の燃料タンクは兵員室内左側のスポンソンの上に配され、路上最大速度は64.4km/h、路上航続距離は322kmと性能面でも従来の装甲兵員輸送車を凌駕している。 水上浮航の際は履帯を駆動して水掻きと同じ原理を使って推進力としており、この場合の速度は5.64km/hとなるが、 推進効率を上げるために走行装置の外側にはゴム製のスカートが取り付けられている。 足周りはサスペンションにトーションバーを用い、直径610mm、幅54mmの転輪5個を支え、第1、第5転輪にはショック・アブソーバーが装着されており、各アームにはゴム製のダンパーが取り付けられている。 履帯は幅381mmのシングルピン型式で、各履板には取り外し可能なゴムパッドが装着され片側64枚が標準となっている。 アメリカ陸軍では、全車両のディーゼル化が決定したため、アメリカ軍向けの生産はわずか4年であるが、諸外国向けには1968年まで続けられており、日本も供与およびFMSにより、1962年から1968年にかけて、年間40両~50両の計300両取得している。 少ないように見えるが、これは日本側もガソリンエンジンを嫌ったためであり、同車両は1980代には、A1への改修と併せて、戦闘指揮車や自走迫撃砲車、装甲回収車と言った各種支援車両としてリファインすることになる。 397 :yukikaze:2016/09/22(木) 13 18 52 M113A1 クライスラー社製の75M V型8気筒液冷ガソリン・エンジンに代えて、デトロイト・ディーゼル社製の6V-53V型6気筒液冷ディーゼル・エンジン(排気量5,221cc、出力212hp)を搭載した形式である。 M113の主力生産車両であり、日本側も1970年代にかけて同車両を1,000両近く取得している。 また、1980年代において、同車両のうち200両近くを歩兵戦闘車に改装した関係から、アメリカ陸軍がブラッドレー導入とともに不要になった車輛を、200両近くタダ当然の価格で購入している。 国防陸軍の装甲化に大きく寄与した車両であるが、近年陳腐化が進んでいる事から、程度の良い車両については、M113A3への改造が施されている。 M113A2 カンボジア紛争の戦訓により改良された形式である。 従来のM113装甲兵員輸送車では、エンジンの直上にあたる点検用ハッチの左側に冷却ファン、右側にラジエイターを備えて冷却ファンで外気を導入し、ラジエイターを経由して車外に排出するという手法を採っていたが、 それぞれの位置を逆にして、冷却ファンの回転方向を反対側に改めることでラジエイターはもちろんのこと、機関室内の暖気をも車外に強制的に排出するという方式に変わった。 併せてラジエイターを大型化して取り付け角度を10度に減じたり、冷却ファンの回転速度を増加する等の改良も図っている。 これによりオーバーヒート問題は改善され、さらに車内に外からの汚れた空気が入り難くなったというメリットも生んだ。 また、M113装甲兵員輸送車は当初対NBC能力を備えていなかったが、このM113A2装甲兵員輸送車で初めて装備が可能となった。 サスペンションは、M113装甲兵員輸送車の最も大きな問題であった不整地走行能力の改善を図ったものであり、 併せて各種装備の変更による重量の増加にも備えている。 まずトーションバーの弾性を上げて、転輪のトラベル長をそれまでの152.4mmから228.6mmと大きくすることで、 地面からの振動を抑制した。 次いで第2転輪にもショック・アブソーバーを新設し、サスペンションが柔らかくなった分ショック・アブソーバーを固めのものに改めることで、転輪上下の揺れを短時間に抑えている。 さらに誘導輪の取り付け基部が強化され、その位置も51mm上げることで地上とのクリアランスを40.6cmから43.2cmとした。 これらの改良により、M113A1E1装甲兵員輸送車の不整地での走行速度は4.8~16.1km/hほど向上を見せている。 燃料系統は、増加装甲キットで採用された車外装着型装甲燃料タンクと大差無いもので、左右合わせて360リットルを収容しており、その装甲厚は車体と同程度といわれる。 このタンクは着脱が可能で、前線において簡単に取り外しを行うことができた。 また燃料タンクは、車体後面との間にある程度の間隔を設けて装着され、火災に備えている。 しかし外部タンクの装備により重量は約405kgほど増え、全長も43.2cmほど長くなった。 最後に機関系だが、これはエンジンを出力向上型の6V-53T V型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力275hp)に換装し、変速機も前進4段/後進1段のX-200-3変速機に変更し、さらに油圧式操向機が差動装置に代わって導入された。 これにより、それまでの2本のステアリング・ブレーキ・レバーを使って操縦する方式から、単純なハンドルとブレーキ・ペダルを用いる方式に替わり、外観からは分からないものの操縦手の負担を大きく減らすことに成功している。 国防陸軍は、1982年から、同車両の取得をしているが、この時期においては、日本の経済力も大分向上した事と、 中曽根政権が、国内の防衛産業の整備育成を重視していた事から、日立製作所においてライセンス生産がされることになる。 (レーガン政権も、技術的には大したことがないレベルであるため、日本側の要望を快諾するとともに、ライセンス料金もかなりの格安にしている)1995年までの間に、800両生産されることになる。 398 :yukikaze:2016/09/22(木) 13 19 41 M113A3 度重なる改良によりM113装甲兵員輸送車が段階的に重量が増加したことへの対処として開発された形式である。 エンジンはそれまでの6V-53 V型6気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力212hp)に、ターボチャージャーを取り付けて出力の向上が図られた6V-53Tディーゼル・エンジン(出力275hp)に換装される。 併せて変速機も改良型のX-200-4変速機に換装されることになり、出力/重量比はM113A2装甲兵員輸送車の16.3hp/tから20hp/tと大きく向上して、加速性や不整地走行能力はM113A2装甲兵員輸送車を大きく上回っている。 これと共にラジエイターや冷却ファン、マフラーも新型に替わる等の改良が盛り込まれており、機関系はほぼ一新された。 これ以外の改良としては、戦場戦闘識別装置(BCIS)やAN/VVS-2操縦手用夜間視察装置、強化型位置表示記録装置(ERLRS)、 M13ガス検知フィルター・システム、M17ペリスコープ用対レーザー防御装置、軽量型GPSレーション加熱装置等の装備が導入されている。さらに戦闘室の防御力を向上させるため、内壁にはケブラー材が張られている。 また、防御力強化の為に、「P900」と呼ばれる増加装甲キットが開発されている。 このキットは、車体前面と側面に防弾アルミ板を用いた装甲セルをボルト止めするもので、空間装甲として機能し、さらに車体後面にも増加装甲板がボルト止めされている。 加えて地雷対策として床板には鋼板を装着し、車長用キューポラにはM113の武装強化型であるACAVで採用された装甲カバーと防盾もキットに含まれている。 同車両は、アメリカにおいても新造ではなく既存車両の改造という形で行われていたのだが、日本でもそれは例外ではなく陳腐化が進んでいたM113A1のうち、程度の良かった700両をA3型に1996年から15年かけて改修(これは日立に対する救済策でもあった)している。 その後、A2も改修する予定が建てられていたが、後述するA4の兼ね合いから、凍結している状態である。 M113A4 現在国防陸軍において採用が検討されている最新型である。 M113A3をベースにして、車体を延長。エンジンも三菱6SY31WA 4ストローク直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼルをデチューンしたもの(出力540hp)とし、起動輪及び誘導輪の取り付け位置の変更や、サスペンション・ジオメトリーの変更等によって、機動力の更なる向上を図っている。 また、防御についても、エンジン出力が2倍近く向上している事もあって、正面及び側面に対しては、A3よりも強固な増加装甲を取り付けることが可能になっており、特に正面装甲は、30mm徹甲弾の射撃にも、ある程度は耐えられる(複数食らうと拙いが)ようにはなっている。 ただし、費用逓減の為に、戦術インターネットを核とするデジタルC4ISR機能用装備品についてはオプション装備 となっており、これらのオプション装備品の取得に国防陸軍は頭を悩ませている。 また、開発費用や取得費用の逓減を図るため、あくまで既存のM113の枠組みから逸脱していない為、設計の古臭さが目立つことにはなる。 同車両が採用された場合、M113A2及びA3、並びにM113を母体とした各種支援車両の代替として配備される事が確定的であり、日立製作所は2,500両近い生産を見込んでいる。 399 :yukikaze:2016/09/22(木) 13 20 14 おまけ 派生型 AIFV 1970年代後半、カンボジア紛争の戦訓で採用が決定した装甲歩兵戦闘車である。 カンボジア紛争において、M113はいくつかの問題点が洗い出されており、それはA2で概ね改善されることになるのだが攻撃力と防御力の問題点はまだ未解決のままであった。 AIFV歩兵戦闘車の車体はM113装甲兵員輸送車と同じく防弾アルミ板の全溶接構造となっているが、車体側面にはFMC社が特許を持つ「スペースド・ラミネイト・アーマー」と呼ばれる増加装甲がボルト止めされており、さらに車体前部のトリム・ヴェインも同様の増加装甲を採用している。 この装甲は内部にポリウレタン・フォームを充填することで装甲の強化と浮力の確保を図ったものであり、AIFV歩兵戦闘車の特徴ともいえるものである。 車内レイアウトはベースとなったM113装甲兵員輸送車と大差無いが、車体上面中央部にはスイスのエリコン・コントラヴェス社(現ラインメタル・イタリア社)製の80口25mm機関砲KBA-B02と7.62mm機関銃を同軸装備する1名用砲塔が搭載されている。 日本が採用したのは、上記の内容他、概ねA1をA3に準じた改装を行っているものだが、FMC社との話し合いの結果、 車両の改装は日立製作所が行い、砲塔及び増加装甲については、FMC社からノックダウン生産をすることで折り合いがついている。 この結果、他国にはあったガンポートは、同車両では廃止されている。 同車両は、原則、M113A1からの改修車両であり、更に本命の87式歩兵戦闘車の繋ぎであった為に、200両程度の改修で終了しているが、87式が冷戦終結により富士教導旅団にしか配備されていなかったことから、第七師団及び各師団の偵察部隊に今なお配備されているのが現状である。 そのため、国防陸軍は、三菱が提案している機動戦闘車の歩兵戦闘車化に興味を抱いており、同車両をAIFVの後継にする事を進めている所である。 M113改 水陸両用連隊を有している2個師団用に、80年代に購入したM113A1を改修した形式であり200両程度制作された。。 内容としては、車体前後に浮力ブロックを取り付け、後部ブロックにはウォータージェットの推進器を左右に取り付けることで、水上機動力の向上に努めている。 もっとも、AAV7水陸両用兵員輸送車と比べると、水上機動力は低く、また敵陣に切り込むには武装も低いなど、国防陸軍にとっては不満も多く、同車両については、今後の着上陸作戦の方向性も踏まえながら、後継車両をどうするかで検討している所である。 400 :yukikaze:2016/09/22(木) 13 26 38 これにて投下終了。 パンツァー2012年10月号 アメリカ陸軍AFVの現状と将来 パンツァー2000年4月号 ベストセラーAPC M113シリーズ パンツァー2002年3月号 アメリカ陸軍の現用車輌 アルゴノート 世界のAFV 2011~2012 デルタ出版 世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918~2000 世界の装軌装甲車カタログ の内容を転記しまくっているだけじゃねーか(特に無印とA2)と突っ込む人多数だと思われるが だって、これ改良する余地が殆どないくらい完成されている車両だからなあ。 A4については「今の時代でこれかよ。ゴムキャタピラとか、赤外線逓減の為に動力源が電気式とか色々あるだろうが」と思われるかもしれないが『金がないんだよ。金が』で終わる。 あくまで戦場のタクシーレベルであり、貧乏神の呪いを考えれば、数を揃えることに注力するしかないだろうがと。(何気にエンジンを96式と共通化しているのも予算低減の為) 以前も激論を交わしたけど、この車両の後継を安価で作るって、無茶無理無謀レベルだと改めて理解したわ。 406 :yukikaze:2016/09/22(木) 16 39 38 M113A1の無改修が300両程度、A2が800両、A3が700両、AIFVが200両程度、M113改が200両程度 (すいません。改型も80年代に購入したA1で対応しています。記載漏れでした)ですか。 A2を80年代に購入したA1に修正 数を追記
https://w.atwiki.jp/truexxxx/pages/183.html
打々(蝶々)発止 ◆0zvBiGoI0k ◆ 外から見ただけでも分かってたが、やはり内部も広く入り組んでいる。 しのぶが抱く感想はそんなものだった。 目当ての道具は首尾よく見つけて鞄に詰めてある。 この鞄、見た目より遥かに中に物が入る。物理的にあり得ない体積で収まってしまっている。 嵩張って移動の邪魔になると思って考慮の外だった薬箱や医療器具も、まとめて持ち出す事も出来たのは収穫だろう。 鬼殺隊を支援する藤の花の家紋の家でもないのに拝借するのは行儀の良い行いとはいえないが、そもそもこの会場を設えたのがBB達であるのだから遠慮する意味はなかった。 音を消して院内を歩きながら、ひとりとなったしのぶは今後の方針を思案する。 この半日間が勝負所だ。そうしのぶは予測を立てている。 日が昇り出してから沈みゆく時間帯。鬼の身を焼き尽くす太陽がある時間。 鬼舞辻無惨を始めとした鬼が自由を奪われている今は、道中で鬼と遭遇する可能性を無くせる事で迅速に仲間との合流、情報の交換が叶う、邪魔なく状況を有利に動かすまたとない好機だ。 装備と人員が整えられれば、こちらから打って出る目も出てくる。柱といえども苦戦は免れない上弦、さらには頭目たる無惨でさえも、太陽に身を晒されれば死は免れない。 鬼にとって、太陽光とはそれほどの大敵なのだ。無惨が千年かけて克服の手段を模索し続けるほどに。 この箱庭病院に鬼の気配は感じられない。参加者の配置が悪かったのか、巡り合わせが悪かったのか、自分達が最初に足を踏み入れたらしくまったくの手つかずだ。 病院、という治療施設を先んじて押さえられたのも後に大きな利になるだろう。 戦いが激しくなれば負傷者も多くなる。動けない味方は時として重荷になってしまう。 多くの傷病者を収容、治療出来るこの施設が先に鬼に陣取られては、持久力で鬼に劣る人間は息切れしてしまう。 今後も戦いが起きて傷を負った参加者が、治療を目的に病院を目指して来る事だろう。 悠長に居を構える猶予もないが、そこに鬼が待ち受けて迎撃される、という顛末を阻止出来ただけでも十分だ。 そもそも設備を用意しているのが主催者の側、というのに不信と不満は尽きないが。 当然だが、鬼が動けなくなるといって殺し合いが一時的に停止するなどとは考えてない。そんな杜撰な設計をする主催ではあるまい。 人と人は争う。兵器があり、戦争がある。人の世の裏で活動する鬼殺隊であってもそれは知っている。 鬼のような破壊を齎し、鬼の如き残虐を犯す事がある。 鬼殺隊は人の世に極力干渉しない。鬼の存在を伝聞する事もない。 鬼殺隊を認める事は、鬼を認める事であり。 鬼の力と、鬼狩りの剣士の力を認めるという事だ。 その力に魅入られ、悪用せんとする者が少なからず現れる。だからこそ政府非公認という組織の体を崩してないのだろう。 鬼殺隊は悪鬼を滅殺するのみに殉ずる純粋な集団であるべきだと。権力に囚われてはいけないと。 此処ではその縛りも通用しない。 恐らくいるのだろう、人でありながら人を殺す者との遭遇。 恐怖に取り乱し追い詰められての行為ならいい。保護し、気を宥めて匿うつもりでいる。だがそうでない―――喜々として人を殺める徒がいたのならば。 今までとはまた別種の苦境を強いられるかもしれない。しのぶも柱の決断をせねばならなくなる刻が来る可能性がある。 現状はしのぶの理解の範疇を逸し、あまりにも不確定な要素に満ちている。 会場の地理は。主催の正体は。殺し合いの意図は。 どれも不明瞭であり情報不足。未だ生きた参加者と一人しか会えてないのは、幸運とは呼び難い。 中々に前途多難な中でひとつだけ、思案する考察がある。 道中で広斗と交わした会話の中で、しのぶは自分と広斗とで幾つか知識の齟齬がある事に気づいた。 違和感でいうならば、この舞台に足を踏み入れた時点からあった。地面から家々という街の造り。任務で赴いたどの土地とも違っている地に足を踏み入れた感覚。 BBが造り出した、血鬼術に近しい空間なのだろうとひとり解釈し、気に留める事も無かったが、この機会に思い出したのだ。 年号の差。時代の差。認識の差。両者の差を埋め合わせていくと、しのぶと広斗が生きていた時期はおよそ百年ほどの開きがあった。 つまり導かれる結論は。 BBは、この殺し合いを仕組んだ者は、違う時代を飛び越える技術を持っている。 本当に――――――本当に? 過ぎ去った日に戻る事は出来ない。盆から溢れた水が返らないように、進んだ時計の針が元に戻せる事は決して無い。 死を常に隣り合わせる鬼殺隊でなくとも、世を生きる人々なら当然に弁えている摂理だ。その摂理を、あれらは覆したというのか。 馬鹿げていると一笑に付すのは容易い。けれどそんな逃げ道を塞いでしまうほど、推察を後押しさせる符号した要素が多い。 病院内にある、しのぶが見た事のない先進的な設備の数々。 広斗が虚言を弄する人物でないのは数時間の交流でも理解している。 そして、本来ここにはいていい筈がない、確かに死を迎えた人間。 煉獄杏寿郎の名が名簿に記されているのをどう捉えたものか。六時間経った後も頭を捻るばかりだった。 だがここで時を越える技術という要素を入れると、謎の説明が綺麗についてしまう。 死んだ人間を生き返らせる。 過去と未来を行き来する。 どちらがより脅威であるのかはともかく、齎される結果は同じ。 宮本武蔵や源頼光といった名も、単に故人にあやかっただけではない可能性が出てくる。 腑に落ちて、しまうのだ。 仮の考察が膨らんで収拾がつかなくなっていく感覚がする。良くない兆候だ。 所詮は脳内だけの空想だ。碌に情報も揃ってない時点で必要以上に詮索するものではない。 専念すべきは今。死者に思いを馳せ、あり得ぬ希望に手を伸ばすなど柱にはあってはならぬ。 「鬼のいない世、ですか」 不意に口を衝いて言葉が出る。 その意味するところの大きさ、重さは、柱ならざる鬼狩り全てが理解するところにある。 鬼殺隊という組織を支えるのが文字通りの柱であり、御館様こと産屋敷の当主を大黒柱とするならば、今の言葉こそは鬼殺隊の存在する意義そのもの。 それほどの言霊なのだ。 百年の先の日本に生きる広斗は、鬼の存在を知らない。 元々鬼の認知度は著しく低い。世の大半はまったく関わらずに生活しているものだ。 出会ってないだけで、あいも変わらず鬼は人を喰らって生きている。歴史の裏で、日陰の闇で暗躍してる。そういう予想も出来る。 ああ。しかし、けれども。 みだりに問い質したくはなかった。関係が円滑に進められるまで待とうと思っていたが、一人になると。 考えてしまう。これだけはどうしても思いが止まらなくなってしまう。 鬼の討滅。鬼舞辻無惨の打倒。 胡蝶しのぶが、鬼殺隊が、願ってやまない未来が叶った道に、彼らは続いてくれているのかと―――――― 「―――――――――」 気配の察知に、瞬時に思考が引き締められた。 既にそこにあるのは不確かな未来に期待を抱く少女ではない。鬼殺隊蟲柱・胡蝶しのぶの顔が表に顕す。 研ぎ澄ました感覚が捉えたのは、生憎他の参加者ではない。少なくとも、既にその資格は喪失してるであろう。 任務の中途での限りない経験で嗅ぎ慣れた、血臭に死臭。死の気配だ。 羽音を立てず舞う蝶の如く無音の足運びで気配の先を目指す。やがて行き着いたのは入院中の患者を寝かせる病室の一室だ。 扉は開かれている。適度な緊張と弛緩に精神を留め、慎重に中に足を踏み入れる。 「……」 眼下の死体は、しのぶの予想も想像も越えない冷たい現実に仰臥していた。 首から上の本来あるべき箇所を何処かに忘れてしまった不格好なヒトガタの前で、しのぶは腰を下ろして骸を検める。 体の硬直具合からいって、死後からおよそ六時間。そして記憶が刻まれて新しい、見せしめの処刑に選ばれて犠牲者と同じ制服を見て、概ねの経緯を把握した。 悪趣味としか言いようがない玩弄に腸が煮えくり返る思いを抱く。 首から先がないのは、わざわざ体だけ此処に飛ばしたからか。殺されたのすら理不尽の極地であるのに、死体まであえて放置する辱めを受けるなど。 鬼であるかは不明だが、残酷さにかけてあのBBという少女は鬼以上だ。改めて許せないという怒りが装填されていく。 見つけるのが自分で良かった。異常馴れしていない一般人であれば、見ただけで肝が潰れかねない。 惨劇の種を摘み、死者に安寧を捧げる為にも丁重に弔ってやりたい。善逸の時と違い此処は病院だ。遺体を安置出来る部屋もあるだろう。 「これは……」 辺りを見回した目線が、室内に残されたもうひとつの異物の存在を発見した。 無造作に放り捨てられていたのは、参加者共通に支給されている謎の容量を持つ鞄だ。 蓋は、開いていた。 言い知れない不穏を感じ鞄を手に取って入ってる品を出していく。地図や名簿など基本的な物品の他、無造作に配られた道具もあった。 下部を翻すと名札が封入されている。日本語で記された四文字を、しのぶは正確に記憶した。 遠くから諍いの音が聴こえたのは丁度その時だった。 「今のは、広斗さんですかね。危ないと思ったら逃げるよう言っておいたのに、まったく」 溜め息を尽き、立ち上がる。 何フロアも隔てた先だが、柱の感覚は聞き逃さない。 同僚の水柱ほどでないが、広斗もあれでいらぬ誤解を受けそうな質をしている。別れてからいい時間が経ち、純粋に身が心配でもある。 自前のとでふたつになった鞄をひょいと持ち上げ、発つ前に一度だけ亡骸に振り返る。 「すみません、藤原さん。弔うのはもう少しだけ待ってくださいね」 たんっ、と軽やかな音をひとつ立て、しのぶの姿はかき消えた。 後にはもう、何も残らない。熱が引いていく部屋で、冷えた死体だけが転がっているだけだった。 ◆ 美術館からバイクを走らせて、目的地の箱庭病院には何事もなく辿り着いた。 襲撃もなければ、他に参加者との遭遇もない。殺し合いという現状を認識していた割には拍子抜けもいいところだ。 だが安穏とするほど腑抜けられる筈もない。窓の外を見れば街中で一際大きなマンションが完全に倒壊して姿を消し、そこかしこで火の手の煙が上がっている。 紛争地もかくやの治安の悪さを誇るリトルアジア並の規模で、事態は紛れもなく進行している。それに偶然居合わせていないというだけの事。 危機に直面しないのは幸運と呼べるが、自分が無視されて置いてけぼりにされるのは、単純に気に食わない。 さりとて闇雲に動き回るわけにもいかず、兄に繋がる手がかりもなく。雨宮広斗の気分は少しばかり斜め上だった。 しのぶは同伴していない。病院内の探索に別行動を取るとそそくさと中に入ってしまった。 明確にここに来た目的があるしのぶと違って、こちらは手持ち無沙汰だ。 はじめは適当にぶらついていたが、何もしない方がかえって苛々が溜まってくる。 これで何一つ成果がありませんでしたと言った時のしのぶの顔を想像するとなお癪だ。 雨宮の仕事は運び屋であって調達屋ではない。なのでこういう施設で目星のつく場所は限られていく。 ――――――重要なもんは普通、偉い奴が持ってるもんだろ。 そんな短絡ながら真実の一端を突いた理由で辿り着いた、変哲のない『院長室』のプレートが提げられた部屋のドアノブを握る。 鍵もかかっておらずあっさりと扉が開いた。中に入っても、そこは小綺麗にまとめられた普通の部屋だ。 とりあえず、デスクの棚に詰まった資料を引っ張り出した。 『歴代炎柱の書』『特異点記録亜種Ⅲ~下総国~』『亜人耐死実験報告書』『鬼哭指南書~著・吉備津彦命~』『アマゾン計画書』『OREジャーナル特集~失踪事件の真相~』『フラスコ計画・過負荷の部』『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE』… 重要そうな研究資料から民話集じみた古い書物、胡散臭いゴシップ記事まで、雑多に揃えられたものを数ページ適当に流し読む。 どうやら『鬼』『怪物』『不死』といった種族について調べた資料らしい。 さわりだけでも読み取れるほど、内容は突飛で、それでいていやに真実味のある書かれ方だ。 まるで本当にそれらを見て、研究してきたような。 綿密な実験結果の詳細や取得したデータが記されてるものもあり、冗談にしても手が込んでいる。 院長の趣味か。それとも、『それ』を目的にした施設なのか。 ―――鬼とか鬼殺隊とか、あいつも言ってやがったな。 さんざ専門であると言っていたのだ。彼女の方が知っている事も多いだろう。そうなればさっさと渡すに限る。 デイバッグに資料を片っ端から詰めていく。どれだけ中に入れても膨らまず重さが変わらない不思議極まる道具だが便利ではある。普段の仕事道具にしたいぐらいだ。 そんな風に別の事を考えてたからだろうか。無造作に掴んだ本と本に挟まっていた一枚の紙片が床へと滑り落ちた。 「あ?」 拾おうと屈んで厚紙を拾うが、そこに書かれた文字に広斗は疑問の声を上げた。 超常的なものは半ば受け入れていただけに、広斗に唯一馴染みのある名称だったことでかえって反応したのだ。 「なんで無名街の地図なんかがあるんだ……?」 長兄・尊龍の居所を探して訪れた地区のひとつ。この殺し合いにも呼ばれているスモーキーが率いるRUDE BOYSが守る治外法権の街だ。 「……地下か?」 構造や階層の表記を見るに、どうも地下空間の見取り図らしい。 無名街にそんな場所が存在するのも謎なら、そんなものがここに紛れ込んでるのも謎だ。 それとも逆接として、ここに意味があるのか。そういえば南部の島と切り離されたエリアにも無名街が――― 「人間・認識」 アナウンスのような抑揚のない声に、地図に向けていた顔を正面に上げる。 ここまで近くにいながら参加者の気配に気づかなかったなど一生の不覚だ。 いや、こうして目にしていてすら気配を感じてなかった。 「人間・認識」 言ってしまえば、そこにいたのは人形だ。 着物を着た童女の格好をして、手と足を四本ずつ備えた、人の形をしていても人ではないものだ。 カタカタと硬質音を鳴らして口を開閉して喋る様はテーマパークに飾られるロボットそのものだ。 差異があるとすれば、病院という場所に表れるには不釣り合いなのと、手一本につき握られた計四刀の凶器があること。 四季崎記紀の完成形変体刀が一、微刀『釵』(かんざし)。またの名を日和号。 「何だてめえ」 「即刻・斬殺」 返答はなく、命令の反芻だけが返さえた。 躊躇と容赦が最初から欠如した、機械らしい無駄のなさと無慈悲さで刀を振り下ろした。 「ッ!」 幸運だったのは、扉の間が刀を持って入るには狭すぎて一度壁を壊す工程が加わったことだろう。 人形に襲われるという、この地での初めての怪異との遭遇に面食らった広斗は間一髪で飛び退き両断を免れた。 穏当な選択肢は早速失われた。 対話の段階もすっ飛ばした問答無用の強襲。両断されて崩れ落ちるデスクを見て、広斗の選択は決定した。 コレが参加者の枠なのか別に操ってる奴がいるかの判断は後回しでいい。まずは、ぶっ壊す。 「即刻・斬殺」 迫る日和号。多腕多脚を忙しなく動かす風体はやはり異形だ。 ドスや凶器を持った相手は飽くほどに勝利してきた。銃器で武装した相手を相手取った。日本刀を携えた強敵との戦闘は心得ている。 だがしかし、腕が四本いる敵とは戦った経験だけはない。百戦錬磨の雨宮兄弟にして完全なる未知の戦法である。 広斗の眼は怯んではいなかった。拳の構えは正調に、勝機を秘めた眼だ。 人でないとしても、コレは人の形をしている。腕を動かし刀で攻撃する。なら今までの経験は役に立つ。 速さも手数も予想し得る最大値まで設定する。単騎という認識を捨て、集団を相手取ってると想定しろ。腕が四本あるなら四人の相手が一斉に斬りかかってくると思え。 狭い室内に高い身の丈、長い得物。初撃を見た時点で組み立ては出来ている。後は鍛えた格闘に託すのみ。 刀が振り下ろされるより先に間合いに勇んで飛び込む。一刀が背を掠め、間隙を埋める第二第三刀の横薙ぎを地に這うが如く屈んでかわす。最後の四刀目は始動前に肘で鍔から止めた。 瞬間、がら空きになる胴。必殺の零距離(ゼロレンジ)。こじ開けた肉薄の間合い目がけ、溜めていた体重を拳に向かわせ―――解き放つ。 「らァッ!」 人体を殴ったのとはまるで異なる打撃音が響き渡る。 鍛え上げた格闘家といえども悶絶必死の急所。最悪内蔵破裂に至るほどの会心の最大威力。 「人形殺法・春一番」 突き出された前二脚を腕で受けられたのは、人形を打ったゆえの手応えのなさから来る違和感だ。 臓器もなければ痛覚もない日和号に肝臓打ち(レバー)も意味がない。どれほど痛打を与えようとも、機能停止に至るまで行動に一切の支障は出ない。 「ちっ……」 後退する広斗は唇を噛み締める。受けた腕に走る痺れと、垂れ落ちる鮮烈な赤い水。 日和号が蹴り飛ばすと同時、手首が文字通り旋回して下がる広斗の腕を掠めたのだ。 人形なら関節動作の限界がない。そして、人形である以上、牽制やフェイントにも引っかからない。 開発者が意図したかはともかく、近接戦の巧者であるほど日和号の前には隙を晒すのだ。 「人形殺法・竜巻」 内側に入る隙も逃げ場もない、四方からの同時の斬り付け。 辺りの壁も、調度品も、構わす切り裂きながら前進する。戸棚が割れ、ガラスが四散し、砕けた鏡面が光に反射する。 鬼であればいざしらず、太陽光発電という戦国期に先進的にも程がある動力源を持つ日和号には何の障りもない。目が眩む不手際も起こさない。 だが、今回に限っては――――――それが仇となった。 「言っとくが」 今度は、余裕をもって打ち払えた。 バイザー越しの視界からは、これまでにない情報が送られてくる。さっきよりも遥かに緩慢になった動きを見切り、流して拳を叩き入れる。 反応が追いついたのはスーツにより身体能力が増幅されたからだが、複数に迫る刀を的確に捌き胴体に拳を当てたのは鍛錬の賜物。 使う気は元々なかった。 同梱された説明書を見てもビタイチ信用ならなかったし、武器を使って戦うのは自分の、兄弟の流儀に合わない。 何よりその名前とレリーフの意向がこの上なく気に食わないのが一番の理由だ。使うことはないのだと考えていた―――こうして本物の人外と会うまでは。 日和号が周囲を斬り刻んで到達する前に『変身』は完了していた。飛び散った鏡面に映ったベルトが腰に装着され、デッキをはめ込む。 黒衣だった広斗の全身は、なお黒い装甲に覆われていた。 黒い龍の力を纏う鎧―――仮面ライダーリュウガ。 九つの龍に反抗してきた男が使うには、皮肉が過ぎる力だった。 「仕掛けてきたのは、てめえが先だ。ぶっ壊されても文句言うなよ」 「人間・認識。即刻・斬殺」 敵対者の変化には目もくれず、殺人人形は命令を遂行する。 『超常』の土俵を同じくした戦いの幕が上がった。 【B-7・箱庭病院/1日目・午前】 ※院長室に各世界の『鬼』『怪物』『不死』に関連した資料があります。ただの雑誌だったり信憑性に乏しいものも。 【胡蝶しのぶ@鬼滅の刃】 [状態]:健康。 [装備]:冨岡義勇の日輪刀 [道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品1~2(毒に類する品)、ランダム支給品1~2(千花)、医薬品、医療道具多数 [思考・状況] 基本方針:鬼殺隊の同僚と合流する。 1 自分の日輪刀を探す 2 研究施設に向かいたい 3 日が暮れるまでに参加者と連携、鬼を狩る準備を整えたい 4 鬼のいない世、ですか [備考] ※9巻以降からの参戦 ※地図上のアルファベットと英数字の読み方を覚えました。 【雨宮広斗@HiGH LOW】 [状態]:片腕に刀傷 [装備]:仮面ライダーリュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2、シャドウスラッシャー400、『鬼』『怪物』『不死』の研究資料、無名街地下の地図 [思考・状況] 基本方針:??? 1 雅貴を探す。 2 とりあえずはしのぶと行動。 [備考] ※少なくともREDRAIN後からの参戦です。 ※鬼滅世界に鬼について認識しました。 ※少なくとも九龍グループがこの殺し合いとは無関係と考えています。 【日和号@刀語】 [状態]:胴体部にへこみ [装備]:刀@刀語×4 [道具]: [思考・状況] 基本方針:藤原千花以外の参加者の斬殺 1.標的・斬殺 [備考] ※OP時点で死亡した藤原千花のデイバックは、箱庭病院の一室に置き去りにされています。→胡蝶しのぶが回収しました。 【仮面ライダーリュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎】 雨宮広斗に支給。 鏡に向かってかざすことで、仮面ライダーリュウガへと変身できる。 Next 命ノゼンマイ Previous 終わりのない戦い 前話 お名前 次話 CHAIN BREAKER 雨宮広斗 砕式・降龍落とし 胡蝶しのぶ 目次へ戻る
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/1288.html
北方諸国同盟軍、南部戦線。 戦争が始まり、南部戦線の軍がリンド国境に迫ろうとしていた時には2~3日に1度くらいの頻度で 皇国軍の空からの偵察なり爆撃があったが、今は週に1度という感じで明らかに活動が鈍っている。 ポゼイユ方面の偵察部隊からの情報でも、特に砦を建築したりして防備を固めている様子も無い。 ただ漫然と、この場を確保して待機しているというのは気の緩む毎日で士気も下がる。 皇国軍のポゼイユ駐留部隊は多く見積もっても未だ1000人程度であり、動かないと不味いのではないか という不安と合わさって、これくらいなら押し切れるのではないかという楽観論からの意見が増えて来た。 “皇国軍による空襲頻度が減ったからといって、安易に進んで良いものか” という消極的意見も根強くあったが、厭きると思考が鈍感になって判断が狂うようにもなる。 「ベルグからの情報を見れば、皇国軍の主力全部隊が到着するまで楽観的に見積もっても1週間。現実には 4~5日のうちに駆け付けるでしょう。それまでにポゼイユを陥落させるのは流石に無理というものです」 ポゼイユに行って戦って皇国軍とリンド王国軍を蹴散らして部隊の再編成など行って 次の戦闘準備を整えるまでを4~5日で済ませないと成り立たないが、それは無理な話だ。 どちらにせよ、後から来る南部戦線主力軍に道を譲る為、自分たちはさらに南に拠点を移さねばならない。 さしあたってこの付近の確保という任務の一つは遂行したのだから、死に急ぐこともあるまい……。 「しかし小さな勝利でも、いや大きな勝利を望むのが無理なら尚更、どんな 小さなものでも、可能性だけでも勝利を示せねば兵達の士気が保てません」 ここで停止するというのは、相手の注意を向けさせた上での物理的損害を考えれば 悪くない作戦だったが、末端の将兵の心理的負担を考えると評価し難い側面があった。 将軍もそれは分かっていたが、徒な前進が失敗して早期に崩壊してしまうよりは良いと考えていたのだ。 北部戦線が押し上がる前に南部戦線が崩壊したらドミノ倒しのように全て崩れる。 ポゼイユも重要だが、北部戦線のスコルマード攻撃はそれとは別に重要である。 「伝令! 北部戦線のアレキス殿下からです」 天幕に入ってきた将校が差し出したのは、マルロー王太子アレキスからの命令書。 3日後にポゼイユに対して総攻撃を行えという指示だった。 皇国軍に打撃を与えるのではなく、ポゼイユに打撃を与えよという内容。 皇国軍が準備を整えてザラ公国方面に進軍を始めてからでは遅いから、 先にポゼイユとその近隣を攻撃する事で皇国軍を足止めせよというものだ。 軍事的な衝撃で皇国軍を拘束するのには限界があるが、ポゼイユが大事に なれば相当な長期間足止めできるから、そうせよという命令である。 睨み合いを続ける事での足止めという方針が事実上却下されたのだ。 しかし、ポゼイユに打撃を与えるには守備する皇国軍に幾らかの 打撃を与えるか、自軍の損害を幾らか無視して強襲するしかない。 リンド王国軍の損害から考えても、皇国軍と戦った場合の損害は計り知れない。 とすると、妨害してくる皇国軍は無視して数に任せてポゼイユに殺到するしかない。 攻撃せよという命令に沸き立つ隊長や下士官も居たが、 当の師団長は難しい表情で次の手を考える事になった。 手紙にはザラ公国軍の増援もあると書かれているが……。 「別働隊を皇国軍の正面に向かわせて陽動し、その隙に我が 本隊がポゼイユ攻略を行う事とする。作戦準備を急がせよ」 皇国軍を慌てさせ注意を向けさせるには本格的な都市攻撃しかない。 ポゼイユは幾らかの堀や市壁もあるが、全体的には城塞都市と呼べるような防御力は 無いので、市内に軍を進める難易度という点で他の都市より制し易いだろう。 一旦大軍が市内に雪崩込めば、同士討ちを警戒して膠着状態に持ち込める。 少なくとも野戦での決戦を求めるより戦術目標達成の可能性がある。 大威力の武器を多数持っている(大威力の武器しか持っていない) 皇国軍は、都市への被害を抑える為に自らの武器を封印せねばなるまい。 あくまで可能性があるというだけで、どれだけの確実性があるかは未知数だが。 本来なら10倍以上の兵員を擁する同盟軍が恐れる必要は無いが、小規模とは言え存在する皇国軍が厄介極まりない。 ポゼイユ攻略という段階になればベルグからの航空部隊も増発されるだろう。 現時点で小康状態だからといってそれが続くとは考えられない。 「やれる事をやるだけだ……。飛竜陣地をお披露目しろ!」 カーサドラルで停止中の北方諸国同盟軍が動いた。 その報せに皇国軍のベルグ本部は期待半分、不安半分であった。 大仰な宣戦布告をしてきた割に慎重を通り越して臆病にも見える 軍団が動いたのだから、何かの準備が整って満を持してという事だろうか。 しかし、とすると何を目的に軍を動かすのだろうか。 動きからすると軍を引き上げる訳では無さそうで、前進あるいは転進である。 「一直線に来るならポゼイユですが、左折して南に向かうか右折して北に向かう可能性もあります」 「それぞれの確率はどの程度と読む?」 「我々が入手している情報だけでは、何とも読めません。参謀部ではポゼイユ直行の公算が 高いと考えていますが、セソー大公国方面からの主力と合流する可能性は否定できません」 「そうなったら、北部戦線が東と南から包囲される形になるか」 「はい。ですが参謀部がその公算低しと判断する理由は、今から向かっても冬の始まりまでに 間に合わず、援軍としては機能せず単なる孤立した遊兵になる公算が高いからです」 妥当な見解であったが、面白味というか意外性が無かった。 「そも、ポゼイユとスコルマードではどちらを取られた方がリンド王国にとって痛いのか」 「それは、我が国で例えれば商業の大阪と工業の北九州のどちらの失陥が痛いかというような話かと」 「どちらも相応に痛い訳だな」 北の大都市スコルマードは広大な岩塩鉱脈がある工業都市だから、重要度を 比較するのに金融と学問の都市であるポゼイユと同じ土俵では比べられない。 皇国がスコルマードを有望視するのはリンド王国の工業化に不可欠な資源を産出するからだ。 食塩の需要は人口に比例するが、工業塩の需要は人口と関係ない。 工業化が進むほど人口に比して工業塩の需要は増えるから、有望な塩の生産地はリンド王国にとって“国家の資産”である。 神賜島での岩塩鉱開発が軌道に乗るまでは、既に開発されている大陸の岩塩を適正価格で購入したいという欲も勿論あった。 賠償金の現金部分を減額する代わりに、その分を現物で払わせる事も真剣に検討されているのだ。 リンド王国にとってどうだか知らないが、皇国にとってスコルマードは“失陥が許されざる都市”だった。 「閣下。ザラ公国軍が前進しているようです。完全に戦闘隊列で行軍中です」 「敵は全力投球か……」 「はい。マルロー王国以外で、それなりの規模で兵を出せる国は全部出しています」 こうなると、ポゼイユの北から南東にかけて大きな包囲網を作れる。 仮に薄く広く展開した鶴翼から一斉に雪崩込まれたら、兵力密度が足りずに突破される恐れがある。 というより敵が皇国軍の粉砕を目的とせず、ポゼイユへの入城を目的とするならそうなるだろう。 大砲や攻城塔が無くとも、梯子があれば市壁は突破出来る。 「結局は敵情を観察しつつ慎重にならざるを得んか。砲兵はポゼイユの 西に置くとして、歩兵と戦車だな……。敵に飛竜が居ないのがまだ救いか」 この世界に転移して以降、今まで攻める一方だった皇国軍が本格的な守勢に回るのは初めて。 主導権が取れないのがもどかしかった。 しかし数時間後、司令部にはさらに嫌な報せが届いた。 「閣下。敵軍の続報ですが、司令部偵察機による写真を解析した所、飛竜陣地が確認されました」 「飛竜陣地……3日前は無かったな?」 「はい。ですが今はあるようです」 提出された写真には長さ150m、幅30m程の更地と、併設された竜舎と 思しき建物が映っており、飛竜騎士と飛竜らしき影も5騎認められた。 3日前の同じ場所は木立が茂った藪だったが、これではまるで“一夜城”ではないか。 航空燃料や整備部品を温存する理由から偵察機の飛行密度が減っていた虚を突かれた形だ。 「飛竜の航続距離からすると、ポゼイユにも来れる訳だ」 「しかし片道しか飛べない筈です」 「竜は飛行機とは違う。少しの広場があれば離着陸出来る。 ポゼイユの近くに着陸して一晩休むという手も使えない訳では無い」 長距離の不休飛行はかなりの体力を消耗し、無理をさせれば体温も危険な程に上昇するので、 通常は飛竜基地や飛竜陣地のような保養設備の整った場所を拠点に運用されるが、 そのような場所でなければ絶対に運用が出来ない訳では無い。 寝床と水と食糧さえあるなら、1日や2日くらい竜舎でなくとも何とかなる。 大昔には敵の兵士や住民を竜の胃袋に入れる目的で攫っていた事も あるようだから“食糧は現地調達”というのも不可能ではない。 飛竜は自分の主人である騎士や普段から良く目にする仲間の騎士や厩務員を 食う事は絶対にしないが、面識がないなら友軍の兵士を食う事にも躊躇いは無い。 主人である騎士が止める事をしなければ、腹が減ったら目についた動物を食うのが飛竜である。 ただ、現代の文明国であればそんな野蛮な戦争方法は選択しないという話を ユラ神国やリンド王国、あるいは西大陸の文明諸国からも聞いていた。 短い期間であったが実際にそういう戦法を取られた事も無い。 「この写真、リンド王国軍に調査協力を仰ぎますか?」 「どうしたものかな。こんなものを今まで発見できなかったとなればとんだ間抜けだ」 「しかし情報共有はある程度必要でしょう。隠しておいて突然空襲に遭った時の方が問題が大きくなります」 「分かった……飛竜軍の参謀にも助言を求めよう。ポゼイユ方面の師団にも警告を発しておけ」 皇国軍の司令部に招致されたリンド王国軍の参謀は、写真を見て眉を顰めた。 「閣下。写真を拝見しましたが、この規模の竜舎と助走路からすると20~30騎の運用は堅いです。 現状はそこまでの数の竜は居ないようですが、細心の注意が必要でしょう……我が軍ならばそうします」 「この規模の飛竜陣地を3日で造営可能ですか?」 「全く無理とは申しませんが、優秀な飛竜陣地設営連隊でも相当な突貫作業になります」 皇国軍に比べて土木技術が劣っても、航空兵力を3日で展開可能に出来る。 これが厄介なのだ。部隊展開に要する労力が違う。 隣の芝は青いというが、この身軽さはまさに“青い芝”だった。 空中戦になれば一方的に堵殺可能だし、地上からの 対空射撃も元世界の戦闘機や爆撃機に対するよりは有効である。 が、上から覗かれる可能性がある事は、それだけで地上部隊にとってリスクだ。 ベルグの司令部は、先行してポゼイユに駐屯している捜索連隊に偵察任務を命じた。 軍団及び師団司令部からの命令を受けてリエール傭兵隊の宿舎に訪れると、 山科は殆ど待つ事も無く隊長の執務室となっている部屋に通された。 「リエール隊長、宜しいか?」 「何用でしょうか、少佐殿」 山科は同じ軍の上官と部下としての顔で話を進める。 「貴隊はポゼイユ市から東、ザラ公国方面の地理にも詳しかったな?」 「私自身はそれ程でも無いですが、詳しい者も居ます」 「よし、では我々の偵察隊に同行を命ずる」 「地理に詳しい者のみでしょうか、隊としての行動でしょうか?」 「隊として完結した戦闘行動を取れるようにしてくれ。 任務は敵の陣容確認。地図に拠ればこの辺りを進軍中だ」 山科は決して詳細とは言えない地図を広げ、指差した。 「これは、カーサドラルから2~3マシルといったところですね。 真っ直ぐこちらに向かってくるなら、道すがら鉢合わせという事も」 あまりぐずぐずしていると、ポゼイユ市が大砲の射程に入ってしまうかも知れない。 皇国軍は当初、ポゼイユの北東から東4~10マシル程度の所を前線に考えていた ようだが、そこに陣取るべき主力軍は連絡部隊を中心にちらほら来ているだけ。 待っていられなくなったか。 「偵察と同時に可能ならば一翼を迎撃し、ある程度の追撃も行う。 リエール隊の編成内容は任せるが、可能な限りの人員装備で、 作戦期間は2~3週間になる。数日内に部隊を動かせるか?」 リエール傭兵隊は既に方々で物資を買い溜めて、後は微調整のみという段階まで準備が整っていた。 今すぐ出発という無茶を言われても対応出来るように、主戦場が予想される カーサドラル方面の町には先行して物資を買い付ける協力者も手配済み。 「それならば出撃準備に2日下さい。明後日の朝までには整えましょう」 「結構だ。では連絡要員を寄越すから、明後日の午前8時、朝食後に出発してくれ」 「我々は皇国軍と合同で動くのではないのですか?」 「私は先発して陣地を張っておくので、今日中に出発する」 「なら、1時間程お待ち下さい。心当たりのある道案内を1人、お預けします」 「そうか、助かる」 夕刻。山科を含む中隊主力要員は2両の装軌装甲車と2両の装輪装甲車、4両の輸送トラックに乗り込む。 トラックのうち1両は37mm対戦車速射砲を牽引し、予備弾薬と各種物資の輸送用に宛がわれた。 少ない車両で1人でも多く運ぶ為、装甲車に跨乗する人員も居た。 リエール傭兵隊から派遣された案内役の少年アズルは副官の曹長と共に乗馬で先行する。 「北の方も忙しいようだから、ここで派遣軍全体の足は引っ張れないぞ」 決して数は多くないが、しかし“騎兵科の精鋭”である部隊が出陣した。 「どうだね、シャイアノ君?」 傭兵隊の副官として、キスカの事務作業の補佐を 任されているシャイアノは、キスカより10歳近く若い男だ。 医師と言えば腕一つで身を立てる開業医が常識の世界で、複数の医師を雇って 働かせる、皇国で言う総合病院のような“医院”を経営していた父の三男に生まれた シャイアノは、経理や衛生管理の腕を見込まれてキスカにスカウトされた。 また医師の弟子になって修行を積んだわけではないが、簡単な外科手術くらいは出来る。 幼い頃より、複数の医師から様々な医学的治験を聞かされていたため、 本人の執刀技量よりも戦場で傷病者の選別能力を期待されてキスカが雇った。 助かりそうな者を助け、手の施しようのない者は楽にさせてやるという“命の選別”係である。 机上でも戦場でも、大抵の場面で隊長であるキスカより忙しい。 「清書した目録です」 渡された紙には兵員、食糧、被服、武器弾薬、その他必要物資の目録と予算、隊員への給金が纏められていた。 「これで1000リルスに収めてくれたか。流石だな」 「ポゼイユ侯爵閣下の署名と捺印が入った契約書です。あれの威力です」 信用の無い自称傭兵団などでは、商品代金の未払いという事が起こり得るが、 ポゼイユ侯爵がパトロンであるなら、債務不履行という事にはまずならない。 故に“ツケ払い”や“先物の購入”が非常にスムーズに行った。 現金ではなく約束手形での大口取引も、ことポゼイユ領内では他の地域に比べて比較的活発に 行われていたので、そういう点で“現金でないと取引に応じない”という商人が少ないのも利点だった。 リエール傭兵隊の人員には貴族が居ない為、貴族将校が抱える“実用に適さない”輜重隊を編成せずに済む。 貴族であれば使用人が付くし、妻帯者であれば奥方のドレスなども運ばねばならない。 これら随員が戦闘においては全く無意味な人員である事は論を待たないが、 その無意味な人員の為に何十台もの馬車を占有する愚を犯さずに済む。 戦力に比して、正規軍以上に身軽なのだ。 ギルド所属の傭兵隊だと、必ずしもこうはいかない。 貴族や騎士崩れが傭兵隊長をやっている場合が多いので、正規軍以上に無駄が多かったりする。 最終的に決定されたリエール傭兵隊の編成は戦闘要員220人、後方要員(人夫)200人。 隊長用と副隊長用に乗用軍馬が2頭と予備が5頭。 1ヶ月分の食糧と弾薬。荷馬車が23台。 さらに傭兵隊の員数には含まれない“商人と女”が100人近く居る。 全くもって贅沢である。 後方部隊の比率は皇国軍の先遣隊より充実している。 “商人と女”に関しては、皇国軍将兵も一定の範囲で利用する事を同意していた。 今まで、中々上手く行かなかった“女の調達”が非常にスムーズに運んだ事で、皇国軍の士気も高い。 執務室から主要な隊員の集まる広間に行くと、皆の視線がキスカに集まる。 「姐御!」 「姐御は止めろと言っているだろう。隊長と呼べ」 「へいへい……で、いよいよ出陣ですか?」 「そう。皇国軍との合同任務だよ」 「ほう……で、今回は誰が居残るんです?」 「居残りは無し。ガチで軍隊と戦うし、前金だけでも大量に受け取ったからね。出し惜しみはしないのが我々の流儀だろ?」 ポゼイユ侯爵から賜った10リルス刻印金貨を見せるキスカの景気の良い話に、傭兵隊員から歓声が上がった。 副隊長のトゥルクと副官のシャイアノの間で何度か話し合った結果、そう決まったのだ。 「では諸君、お務めに参ろうか!」 北方諸国同盟軍の南部戦線は大きく二手に分かれて進んでいた。 レステルトートからポゼイユを一直線に目指す部隊では、遅れて 到着したザラ公国軍が前衛に入り、後衛にマルロー王国軍の1個連隊。 残りの主力軍は北と南に分かれてから迂回してポゼイユを目指していた。 皇国軍の航空偵察活動が再び活発になったので、囮として街道を進む別働隊に定数以上の 隊旗を持たせたりして実数より多く見せたりしてはいるが、偽装がばれるのも時間の問題だろう。 森林があって空からの視界が遮られる場所もあるが、全ての道程でそうではない。 ポゼイユの市壁に登れば、ほぼ一面視界を遮るものは無い。 身長の目線からなら姿を隠せる丘があっても、航空戦力からは隠れられないのは飛竜による効果と同じだ。 開けた地形での部隊の隠蔽は無理である。 偽装にも限度があり、存在しないものを存在するように見せかける事は 比較的可能でも、存在するものを存在しないように見せかけるのは難しい。 ザラ公国軍を預かる将軍は、階級上はマルロー王国軍の連隊長より上であったが、力関係は逆だった。 この場のマルロー王国軍連隊長を介して、マルロー王国軍の将軍の指揮下にあるという立場なのだ。 部隊運用の専門家として連隊長に助言するという立場での意見具申は認められるが、決定権は連隊長にある。 その為に連隊長は臨時に准将という扱いになっているが……。 「准将殿、少し急ぎ過ぎでは? 我々だけ先行しても主力がポゼイユに辿り着けねば水の泡。行軍速度を落とした方が宜しいかと」 「それはそうだが。歩みを止めれば皇国軍を釣り出せない」 「日に15マシルも進めば十分です。20マシルでは早過ぎます」 「ここの農村をキャンプにしたいのだがね」 “准将”は地図を見せ、ポゼイユから5マシルの所にある農村を指差した。 確かに都市攻撃だから、今までの戦争常識からすればそれ程変な考え でもないのだが、リンド王国軍を壊滅状態にした皇国軍が相手なのだ。 その農村だとポゼイユに展開する砲兵の射程に入ってしまう公算大。 こちらが早々に全滅して転進されては囮任務は失敗なのだ。 「キャンプはもう少しポゼイユから距離を取って下さい。 整然と退却出来る環境でないと、釣り出しに成功しても即壊滅です。 我々を無視して転進すれば背後から追撃されるという状況にせねば」 この辺りの加減が難しい。 「もう一度偵察隊を出そうと思う。皇国軍がまだポゼイユに留まっているのか、移動しているのか」 「それですと騎兵の消耗が……」 随伴する軽騎兵隊はそれ程多くなく、予備の騎馬もそうだった。 戦竜隊は居ないので胸甲騎兵が唯一の騎兵打撃力になるが、これを偵察には使い潰せない。 後方に居る飛竜隊は偵察結果を帰り際に投げ落としてくれるが、それによれば “ポゼイユの東30マシルまでは敵影なし”というもので、甚だ不足だった。 それで毎日騎兵小隊を繰り出しては恐る恐る進んでいる状況で、 その頻度も増えており、軽騎兵隊の負担が大きくなっていた。 いざ戦闘になれば、軽騎兵隊は側面掩護などにも使うから、この段階で消耗させたくない。 「奇襲されでもしたら、そちらの方が厄介ではないか?」 「……解りました。では騎兵隊を出しましょう」 しぶしぶではあるが、今のザラ公国軍はそうするしかなかった。
https://w.atwiki.jp/ssfate/pages/1463.html
No.7031 ロベルト・コッホ 前のサーヴァント:カンビュセス2世 次のサーヴァント:クリームヒルト データ 登場歴 データ ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓ ≪クラス≫:フォーリナー ┣━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┓ 【真名】:ロベルト・コッホ 【属性】:中立・中庸 ┣━━━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┳━┻━━━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┓ 【筋力】:D 【耐久】:EX 【敏捷】:D 【魔力】:B 【幸運】:C 【宝具】:A+ ┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫ __ / -―- ミx__ 〃 ´ ヾ ``丶、 {i/ -‐ ―- \ ∧ / 、 \ ヽ / ヽ / ヽ ヽ ', ′ 》 i ′ し ', ', i | | |、 | ノ ! |i / 、 |ヽ_ i | 、 _ / |∧/⌒∨ | ´ \ `.| | ト ー ノ  ̄ 7 | | ! r‐===、|\ | t===、| | 、  ̄ 〈 | ∨ { 弋ツ ヽ 弋ツ リ ヽ| | \ ,,ー 一,, i | } ゙| | 人 _′_ | ′ | / | ト . ` ´ イ| / | ヽ l > < { / ‘, ′ | ハ iノ | | ( ハ ‘, / jL -‐| |ー ' ーr ト ノ、 ‘, / /´ ! }、ー 、 一 ! レ〈 `ヽ ‘, / / |/ ` ―――‐ ´ f>く) ∨ 、 / ′ ∠ハ ゝ | \ , l _ { } | \ ' { iγ´ ヽ __ W { ヽ / j | ゝ _, ―く Y ヽ | / ' ‘, / イ / / 、|r―} (__)ィT .T ´_)┐ / ' | / / / .′ { ー―┴┴―┴‐┴一 } ‘, ヽ | ′ , イ ′、 `ト――――――― イ ' ハ | |{ /| i \ r‐ 、 へ _ノ } | |! | | | ⌒>' ーぅ f二丶ヽニ⌒丶 ! | | ∨ | | | ´ {  ̄_ ) r'、 ヽ } ヽ { | | | ∧ | 人 / ヽ _ ノ、 (\` ノ } | | / | | 、| { { `¨¨´ ゝ イ――――‐ ヽ _/―‐- ′ ′ i / | | \ V! j { / / /} / / | l ∨ ‘,、 ′ 、 / / /// / ∨ 、 ∨ \_/ \,/ ィ ' //イヽ,′ \{ ヽ∨ ,| |/ / ∨| |/ | | AA:星輝子(THE IDOLM@STER シンデレラガールズ) ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【クラススキル】 ◆領域外の生命:C++ 外なる宇宙、虚空からの降臨者。 邪神に魅入られ、権能の先触れや片鱗を身に宿して揮うもの。 ◆神性:D 外宇宙に潜む高次生命の触角となり、強い神性を帯びる。 計り知れぬ驚異。その代償は、個としての自我の消失。 フォーリナーにとって未知の領域を含んでいるため、ランクダウンしている。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【保有スキル】 ◆個体増殖:A++ 自己と完全に同一の個体を増産するスキル。 フォーリナーの肉体は無数の細菌生物によって構成されており、 どれほど砕かれようとも一粒の細菌から再増殖・復活を可能とする。 しかし、実際には全体の八割を超える細菌を失うと「ロベルト・コッホ」としての自己定義が困難となり、霊基が崩壊してしまう。 ◆医神(歪):C 本来は、医学の神としての在り方を示すスキル。 コッホは慣例に囚われない知見と発想、研鑽によって傷病の原因を見出し、治療法を確立する。 あらゆる医療行為にプラス補正がかかり、――細菌による浸蝕攻撃にはより大きな補正が加わる。 治し方を知ることは壊し方を知ることに通じ、逆もまた然り。 神の指先にかかれば生かすも殺すも思うがままである。 ◆自己改造:A+ 自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる適性。 このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。 コッホの場合、菌株としての品種改造を指す。 ◆マイクロスコープ・コスモス:A シャーレの中の宇宙の観測者。顕微鏡を通して世界を解き明かす俯瞰視点。 宇宙が人体、銀河が細菌に照応するのが本来のマクロコスモスとミクロコスモスのスケールだが、 倍率変更によって銀河から細菌までのスケールに焦準を合わせることが出来る。 姿なき細菌を発見してその病原性を証明したコッホの観察は、目に見えぬ存在にも焦準を合わせ、その性質を暴く。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ _____aaaaaaa____ ____aalbll聿lllllllllllllllll圭lllllllllllll圭a_ _ィョllllllllllllllllllllllllllllllルlllllllllllllllllllllllllll圭聿a_ ,ィ圭llllllllllllllllllll聿llll■聿ll聿■lll■l聿■llllllllll聿a ,,d圭llllllllllll゙l聿聿圭l聿下下聿)聿l聿|聿聿}|■聿l聿レ '聿l聿ll聿聿|勺!宀ヤ^- ^ - ゙゙ヾ^勺公lル广´ ~~'千l聿!゙゙;; ゙';;;;;;;; ;;;; __ ; ,,_ ’│ │ <ゝ ~~ ~~ <⊃ │l │ ‐ ヽl │ ___,,....__ │ _ l! .. _yr" `个┐1 ,,-‐ ̄^ー-, 丿 ./ 彳 .丿 ヽ, ノ’ ゙ヾl彳 ' ヽ ______u_ \ィ' ゙ヘ l’ ,aォlk「 `l|lllll聿圭"゙_ |k_, ヽ '、 _d聿l聿/ ゙lll聿ll■聿ノノ^''│ ー千レレl聿/ ゙llll聿ll聿心 彳 〕 ;;;;; lll聿lllll聿l/! 丿;. ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;  ̄ ̄ ̄ b │l ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; llllllllllヒ l"l ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;{|llllllllllll| !;;|;;;;;;;;;. ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;ノ|llllllllllll| !;;!;;;;;;;;│;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.;||ルllllllll聿| !;;|;;;;;;;;;|!l_;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;」llルllllllll聿! 1;l ;;、;;ノ心\; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|!ll圭llllllll卅 l!`;;`;;゙lll圭b \;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_;jlll圭llllllll巛 ヘ...;;;;;;゙llllllll聿 \_ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,ィllllllllllllllllll什 / ヽ-;;;;;勺llll聿l~ ヽ -........,,,,....x illllllllllllllllll圭! / \;;;llll聿l~~~~ | illllllllllllllllll圭! / AA:キノコ人(DARK SOULS) ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【宝具】 ◆『浸食菌域(ディメンション・オブ・バクテリカ)』 ランク:A 種別:対人、対都市宝具 レンジ:0~99 最大捕捉:1000人 フォーリナーの生前の実績と、邪神による干渉が混じり合い生まれた宝具。 増産した細菌の集合体(コロニー)を「自己改造」によって装甲や棘、使い魔に相当する菌株兵へと形態変化させる。 菌株兵はそれぞれフォーリナーと同等の「個体増殖」スキルを有し、また、菌株兵同士やフォーリナー自身との融合、分離が可能。 融合するたびに幸運を除くステータスが上昇していき、全てを本体に統合することで同ランクの「狂化」スキルに相当する強化が得られる。 加えて、フォーリナーそのものといえる細菌は抵抗力の弱い肉体や霊体からじわじわと蝕んでいき、 様々な状態異常と共にいずれフォーリナーの眷属として作り替えられる。 ……本体とは言うが、細菌の集合体にすぎないフォーリナーに本体というものは存在しない。 一見本体に見えるのは司令塔、頭脳体と言える存在であり、消滅しても他の細菌が代替する。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ,. ´ __________ ``丶 | -── . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ´ ,、丶``. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . `丶) ,--、 . . |/ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . / ,.' ´. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . / ( ) / _/ ̄ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . / /. . . . . . . . . . . . . . . . ;'´`` , . . . . _, '´ i i ./ / ̄_ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ( (. . . . . . . . . . . . _ _ _ _ _ _ ! . ´,_ _ . ´ . / i ̄ ̄ ̄ ̄i ./ / / `¨¨ `¨¨¨¨¨¨¨´´´´ _ _ _ ¦ . ´, / i . , '´ ̄{ {__, { , ´ ..... i . ´,〈 ̄ ̄`丶. . i i . . .乂,i⌒i\___/\/ ̄ _,. -‐……ー- _/ ... i i¦ . ´,\____ . . . 〉 i γ´ ̄`ヽ_ノ_V,_____| /. . . . .,.-‐…ァ'"´ `'<___i i¦ . ∨ / ̄__i 乂_.,、- /| /⌒\ |/. . . . .`ニ7/ \i/´´´´`゙ヽ(´ ̄`) /| ̄ ̄| /__,/. | ゝ _ノ⌒ヽ{. . . . . . . . xく / ./ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ´_ /´ ̄\ `i""i | | |( ( //⌒7 | |、__,ノ|`¨¨¨´___ `''i {. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ´_´'ー‐‐ァ< i i | _|/ ̄`YV ゝ._ノV⌒ヽ| | | / ``ヽ、-‐…………ー- _ . . . . . ´_( ){\__ ̄ ̄ ̄/. . . . . . / //| ∧,乂_ノノ⌒)| | `丶、 | ̄ __``ヽ、 ´_i i \___,i⌒i/. . . . . ./ | | | 乂_}\| l\/ | \ xく `'マ¨¨¨¨| ヽ `丶、 ヽ⌒\ |/. . . . . /\ .| |/ /⌒Y⌒Yノ |  ̄ \ ``~、、 `ヽ、| | `''-、_ }⌒ヽ)/ . . . . /\ ヽ |. /| 乂_人__ノ . | `''-、_ `ヽ、 |\____)_/ /¨ /. . . . . . /| \ | | | | / ̄ ̄ ̄ `ヽ、 \ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|\ 乂_,、イ/ ̄ ̄´"'ーー-- | / . .. . `丶 〉 |., -、 | \ /. . _ -───--、) | .. . . . . . . . . . . . / / | (_)_) ., -─- 、 /,. ''´ / ̄ ̄``'< | / . . . . . . . . ==============彡′ /⌒\_|_|」_ / . -‐…| 乂,________// ̄ ̄ ゚̄ア .| / . . . . . . . . . ./ ゚ 。 __/ /,.--- ゚, .|`| / /-─-、 ̄〈(_____| ̄V |. ./|. . | / . . . . . . . . . __ (_, -~-く,/ 乂_,| |,,ノ | 乂_、‐''゛ ̄ヽ /___| | | | | | / . . . . . . . ./ ̄ | |∧ / { ̄`'| | ̄`ヽ | { '´ ノ--/ ̄ ̄ ̄))_ | | | |/ /. . . . . . . . . . . . ./ | | |∧ 厶=---ミ \_|,.」___ノ_,| 乂_、‐''゛ / -‐'⌒\\ | |. ./. . . . . . . . . . . / /⌒ / ̄ヽ/゚;゚;゚;゚;゚;゚;゚;゚;;;\ /‐、( \\}|_ 乂_/ / ィ { 厶. \\l | {. . . . . __ / 〈 _/ ゚ ゚ ゚ ゚ ゚ ゚ __. . }// /二¨/\(___,) ( | | fひ、{┘ヽ ハ | \(______/‘, //{ ゚ ゚ ゚ ゚ / __ /〈/V./- 、} { い \ | |从| ┌\ }/ }\ } / ̄`¨¨アア¨7¨¨ア\ i /\{ ゚ ゚ / 〈 ∨/ ̄} { } { } } ,ノ | | 込、 ー' / } j/ {. . . . . / ̄. . }〈__/ ̄ ̄. .|  ̄ ̄ ̄ ̄\∧ /〈 . ./〉/ \,∧\ノY"´ | い(个-r ´ { 人人 `¨¨¨{. . . . ./ヽ/. . . . . . . . . . | }/⌒i 二二 { ) ∧ } 「ヘ | _人乂__ノ 厂厂`丶 `¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨⌒\. | // .//. / } `ー‐ 〈 V {しハ | 7 /\廴__厂)_,ノY⌒7 ー──<7⌒\\ | /{ // . | / /⌒'i \ } \ハ / { ,.-く⌒ '⌒ヽ...|....人 .\ \ }ノ /| ___∧`¨´ \廴/ 〈 //\ヽ . }し} . . / ./(___)^'ーr‐r‐く⌒ヽ.\ . | /\| |-─- __ ̄ ̄``''<〈\\//_,ノ} {_/} },,_ / /__r┴ '‐‐┴┴r‐‐く ̄....\ ノ | ̄´\ | \  ̄ ̄¨ニ- _`'< 〈__{_ノ く_} /| |¨~ ̄| |..{  ̄)///////,廴_ `'く⌒...Y ./ / ̄ ̄| /\ ニ- _~^'' 、__/ .| |__,/| |人__丿////////....\ }.......} / /. . . . . _|  ̄ヘ `ヽ、_________,/ ⌒ニ=- ._``ヽ、 | | / | | | |V________/......... {`¨}.......} ( /. . . ./\| /⌒ハ , -、 \ / /─-ミ ⌒ヽ、 \| l { | | |ー个...........................V..`ー'-<___彡ニニヘ | ‐‐‐ミ , (____) ∨ |`丶、`丶、_______,}ノ)| [\人 代__,|i........./................ ∨.............``丶、 /゙ ,| `', | | ,.‐/ |/\ \ i ̄( )>‐| |--<\__,カ..... /................__∨...............ノ⌒〉/ ハ| __,ノ,-、 | |_(__,| |\ノヽ く\. ', / | | \ /......../_/ ̄ ̄ ̄└──' ̄ ̄>r-へ |  ̄`ヽ (_)| |_) | | |) ノ廴ノ/) } ',(____,ノ´ ̄ ̄``Y/|...../ | | | \ \\_>''´. . | | ヽ| | | | | レ'⌒ヽ V(_) し/ V__ 〈_ノ-ー‐ ノヘ,|/| | \ \/⌒ ̄´∨/. . . .//⌒ヽ| \ .}| | | レ'´ . / ,. -─-< ̄ ̄`丶 \ハ \ \| ,|_/ ̄ | \ ∨__//´{___/⌒| \/ | | / . ∧/ _ _ _ __\__..) | | /~i☆へ、. .|_ノ ∧ | ̄\,.-─-ミ { /乂,,人 o ゚ 。 。\| | { // / ̄______)ノ○ ̄|_,ノ _| 〈__j〈〉| \\___‘, | /. . / ̄)ノ´乂__Y⌒Y⌒\ ゚ 。 O ゚ 。 \个-イ乂__(ニ=-| { ◯◯' |/゚ |ミ;ミ;八f^7〈〉l| l \ ∧ | // く乂__/ / ̄` .、 。 o ゚ 。 ``丶、 | (_,ノ| ∨ /| | | ◯◯o/ ̄ ̄Ⅵ ___,/ ) /∧ | {(__/| } ̄ ̄)─く \_ \゚ 。 о ゚ 。 ゚ 。 ..\| | | |/| | |ノ i i i i{ γ⌒Y⌒'く⌒\-く/ | | / ̄ ̄∨_/`丶、} } ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ ◆『逆理・神天廻す摂理の盃(ディスカバード・オールドイット)』 ランク:A+ 種別:対神秘宝具 レンジ:1~40 最大捕捉:1000人 細菌発見の功績による瘴気(ミアズマ)の否定。 周囲の魔力や呪詛を否定し、病原体となる細菌に置き換えてしまう。 生み出される細菌は大気の毒性が強いほど強化される。 神代の大気を否定すれば、一呼吸で人の命を奪うような細菌の海へと変貌するだろう。 本来であれば一つの神秘を正しく捉え、無力化するための基礎理論。 邪神はこれに着目し、悪用。最大効率でもって己という死を拡散するための改造宝具とした。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【Weapon】 ◆『浸食菌域』 宝具で生み出した細菌の集合体(コロニー)。 フォーリナーはこれを様々な形態に改造し、武器とする。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 【来歴】 ハインリヒ・ヘルマン・ロベルト・コッホ。 ドイツの医師、細菌学者。「近代細菌学の開祖」と呼ばれる。 炭疽菌、結核菌、コレラ菌の発見者であり、寒天培地やシャーレの開発者でもある。 また、感染症の病原体を証明するための基本指針となる「コッホの原則」を提唱し、感染症研究の開祖として医学の発展に貢献した。 だがある時、コッホは彼のシャーレの中に今まで見たこともない細菌を発見する。 それこそは外宇宙からの使徒。 シャーレに浮かぶ死の星々、細菌の海の奥底に在りし虚空の門までたどり着いた初めての人間を歓迎する邪神だった。 細菌とは生物である。たとえそれが埒外の脅威であろうとも、その事実は変わらない。 ならば観察を続けあるがままを解明しなければならない。 鋼鉄の理念に基づいて、コッホはその極小の侵略者を受け入れた。 死後、コッホの肉体は邪神によって分解され、同類の細菌と化したが、むしろコッホはこれをこそ望んでいた。 極小の世界にコッホ自身が入り込むことができたからである。 コッホの細菌宇宙の冒険と探求はまだはじまったばかりであった。 【能力】 歩く生物兵器。人口の多い場所でその真価を発揮し、発覚が遅れれば大惨事になる。 【性格】 細菌にその自我は分散しており、修復不可能なほどに人格が分裂してしまっている。 司令塔である頭脳体にのみ人格のようなものが見られるが安定せず、多重人格のような状態。 しかし、そのように成り果ててなお人としての矜持、コッホの英霊たりうる信念は失われていない。 医者という身の上でありながら感染拡大を認めるのは、すなわち自身を利用する邪神への反抗に他ならない。 未知なる細菌を培養し、観察し、解明する。 その果てに分裂体の内一体をワクチン化させ、思考と記憶を本体から切り離すことで対抗策にせんと構想している。 当然、その過程で深刻極まるパンデミックが巻き起こるが、それさえ乗り越え解明することを何よりも善しとする。 ――そこに嘘はない。虚飾は一切ない。本気で病を根絶し、邪神を打倒せんと欲している。 だが、善意ひとつで己を保ち続けられるほど邪神の干渉は甘くない。 コッホの正気を真に堅持させているのは魂の奥底に刻み込まれた細菌研究への情熱。 未知なる細菌を培養し、観察し、解明する。 度外れた探究心ゆえに、彼は世界という「シャーレ」で細菌を繁殖させ続ける。ただ、研究を続ける。それだけのために。 【行動方針】 .ワタシ 細菌を増やし、観察する。それは生前と何一つ変わることのない研究者としてのルーチンワークだ。 【聖杯への願い】 細菌を用いることで悪性細菌を駆逐し、病気と実際に戦うこと。 当面最大の敵は自分自身、虚空の邪神そのものである。 【TS理由】 邪神の巫女、瘴気(菌)=穢れを内包できる、また細菌を産む母体としての適正から女性の身体を模している。 本質的には無数の細菌の集合体でしかないため、記号的な意味合いが強い。 司令塔役次第でいくらでも変化しうる。 【一人称/二人称】 一人称:ぼく、オレ、私など 二人称:きみ、オマエ、貴方など 【しゃべり方の特徴】 安定しない。 話している人格によって、ヒャッハー系の荒々しい話し方だったり、オドオドした引っ込み思案な話し方だったりする。 【コンセプト】 フォーリナーのコッホ。ゴッホじゃない。 コッホジョーク…… 【使用・参考にしたステータスの出所(僕鯖・皆鯖などあれば)】 【推薦したいその他の代理AA】 長門有希(涼宮ハルヒの憂鬱) 男性として登場させるのであれば、煙(ドロヘドロ)、チョコラータ(ジョジョの奇妙な冒険/5部)、涅マユリ(BLEACH)。 生前のコッホ自身については、L(DEATH NOTE)、裁判長(逆転裁判)など。 【代理AAを選んだ理由】 菌類といえば。菌類じゃないけど。 【その他コメント】 邪神の名はハスタリク。微小たる旧支配者。感染するもの。 ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 登場歴 ◆iyJ02X80tgyMの雑談所 体験クエスト バラの輪をつくろう( 337~566) ふぇれん 第3試合 第8試合 (ライダークラスで登場)
https://w.atwiki.jp/trivia-mike/pages/3140.html
信玄は「あく!」です。 ? SNSなど予想される激戦白熱灯「M・T・S・H」の他、「A」のキャラクター人気2018.9.25 11 30サンケイWESTライフ5月1日から5月1日にかけての「平成」次号帝国の威厳新しい時代の予報は再建される前に過熱されています。 SNS(会員交換サイト)や予測調査を実施する民間企業についての議論はすでに進行中であり、転換が近づくにつれてより興奮しているように思われます第4条 中華人民共和国の諸民族は、一律に平等である。国家は、すべての少数民族の適法な権利及び利益を保障し、民族間の平等、団結及び相互援助の関係を維持し、発展させる。いずれの民族に対する差別及び抑圧も、これを禁止し、並びに民族の団結を破壊し、又は民族の分裂を引き起こす行為を禁止する。 国家は、それぞれの少数民族の特徴及び必要に基づき、少数民族地区の経済及び文化の発展を促進するように援助する。 少数民族の集居している地域では、区域自治を実施し、自治機関を設置し、自治権を行使する。いずれの民族自治地域も、すべて中華人民共和国の切り離すことのできない一部である。 いずれの民族も、自己の言語・文字を使用し、発展させる自由を有し、自己の風俗習慣を保持し、又は改革する自由を有する。 第5条 中華人民共和国は、法による治国を実行し、社会主義の法治国家を建設する。 国家は、社会主義の法秩序の統一と尊厳を守る。 すべての法律、行政法規及び地方法規は、この憲法に抵触してはならない。 すべての国家機関、武装力、政党、社会団体、企業及び事業組織は、この憲法及び法律を遵守しなければならない。この憲法及び法律に違反する一切の行為に対しては、その責任を追及しなければならない。 いかなる組織又は個人も、この憲法及び法律に優越した特権を持つことはできない。 第6条 中華人民共和国の社会主義経済制度の基礎は、生産手段の社会主義公有制、すなわち全人民所有制及び労働大衆による集団所有制である。社会主義公有制は、人が人を搾取する制度を廃絶し、各人がその能力を尽くし、労働に応じて分配するという原則を実行する。 国家は社会主義初級段階において、公有制を主体とし、多種類の所有制経済がともに発展するという基本的経済制度を堅持し、労働に応じた分配を主体とし、多種類の分配方式が併存する分配制度を堅持する。 第7条 国有経済、すなわち社会主義の全人民所有制の経済は、国民経済の中の主導的な力である。国家は、国有経済の強化及び発展を保障する。 第8条 農村集団経済組織は、家庭請負経営を基礎とし、統一と分散を結合させた二重経営体制を実施する。農村における生産、供給販売、信用及び消費等の各種形式の協同組合経済は、社会主義の労働大衆による集団所有制経済である。農村集団経済組織に参加する労働者は、法律に規定する範囲内において自留地、自留山及び家庭副業を営み、並びに自留家畜を飼養する権利を有する。 都市・鎮の手工業、工業、建築業、運輸業、商業、サービス業等の各業種における各種形態の協同組合経済は、いずれも社会主義の労働大衆による集団的所有制の経済である。 国家は、都市と農村の集団的経済組織の適法な権利及び利益を保護し、集団経済の発展を奨励し、指導し、及びこれを援助する。 第9条 鉱物資源、水域、森林、山地、草原、未墾地及び砂州その他の天然資源は、すべて国家の所有、すなわち全人民の所有に属する。ただし、法律により、集団的所有に属すると定められた森林、山地、草原、未墾地及び砂州は、この限りでない。 国家は、自然資源の合理的利用を保障し、貴重な動物及び植物を保護する。いかなる組織又は個人であれ、天然資源を不法に占有し、又は破壊することは、その手段を問わず、これを禁止する。 第10条 都市の土地は、国家の所有に属する。 農村及び都市郊外地区の土地は、法律により国家の所有に属すると定められたものを除き、集団の所有に属する。宅地、自留地及び自留山も、集団的所有に属する。 国家は公共の利益の必要のために、法律の規定にもとづき、土地を収用ないし徴用を行い、併せて補償する。 いかなる組織又は個人も、土地を不法に占有し、売買し、またはその他の形式により不法に譲り渡してはならない。土地の使用権は、法律の規定により譲り渡すことができる。+すべての土地を使用する組織又は個人は、土地を合法的に使用しなければならない。 第11条 法律に規定する範囲内の個人経済及び私営経済等の非公有制経済は、社会主義市場経済の重要な構成部分である。 国家は、個人経済、私営経済などの非公有制経済の合法的権利および利益を保護する。国は非公有制経済の発展を奨励、支持およびリードし、非公有制経済に対して法にもとづいて監督および管理を行う。 第12条 社会主義の公共財産は、神聖不可侵である。 国家は、社会主義の公共財産を保護する。いかなる組織又は個人も、国家及び集団の財産を不法に占有し、又は破壊することはその手段を問わず、これを禁止する。 第13条 公民の合法的私有財産は侵されない。 国家は、法律の規定にもとづき公民の私有財産の所有権および相続権を保護する。 国家は、公共の利益の必要性のために、法律の規定にもとづき公民の私有財産に対して収用ないし徴用をなし、併せて補償することができる。 第14条 国家は、勤労者の積極性と技術水準の向上、先進的な科学技術の普及、経済管理体制と企業経営管理制度を完備、各種形態の社会主義的責任制の実施並びに労働組織の改善を通じて、絶えず労働生産性と経済的効果を高め、社会的生産力を発展させる。 国家は、節約を励行し、浪費に反対する。 国家は、蓄積と消費を合理的に調整し、国家、集団及び個人の利益を併せて考慮し、生産の発展をふまえて、人民の物質と文化面の生活を一歩一歩改善する。 国家は、経済発展水準にみあった社会保障制度を整備、健全化させる。 第15条 国家は、社会主義の市場経済を実施する。国家は経済立法を強化し、マクロコントロールを完備する。 国家は法律に従い、いかなる組織又は個人も社会経済秩序を攪乱することを禁止する。 第16条 国有企業は、法律の定める範囲内で自主的に経営する権利を有する。 国有企業は法律の定めるところにより、職員、労働者代表大会その他の形態を通じて、民主的管理を実施する。 第17条 集団経済組織は、関係法律を遵守することを前提として、独自に経済活動を行う自主権を有する。 集団経済組織において、民主的管理を実施し、法律の定めるところにより、管理要員の選挙及び罷免並びに経営管理に関する重大な問題の決定を行う。 第18条 中華人民共和国は、外国の企業その他の経済組織又は個人が、中華人民共和国の法律の定めるところにより、中国で投資し、中国の企業又はその他の経済組織と各種形態の経済的協力を行うことを許可する。 中国領内の外国企業その他の外国経済組織及び中外合資経営企業は、すべて中華人民共和国の法律を遵守しなければならない。その適法な権利及び利益は、中華人民共和国の法律の保護を受ける。 第19条 国家は、社会主義の教育事業を振興して、全国人民の科学・文化水準を高める。 国家は、各種の学校を開設して、初等義務教育を普及させ、中等教育、職業教育及び高等教育を発展させ、かつ、就学前の教育を発展させる。 国家は、各種の教育施設を拡充して、識字率を高め、労働者、農民、国家公務員その他の勤労者に、政治、文化、科学、技術及び業務についての教育を行い、自学自習して有用な人材になることを奨励する。 国家は、集団経済組織、国の企業及び事業組織並びにその他社会の諸組織が、法律の定めるところにより、各種の教育事業に取り組むことを奨励する。 国家は、全国に通用する共通語を普及させる。 第20条 国家は、自然科学及び社会科学を発展させ、科学知識及び技術知識を普及させ、科学研究の成果並びに技術の発明及び創造を奨励する。 第21条 国家は、医療衛生事業を振興して、現代医薬と我が国の伝統医薬を発展させ、農村の集団経済組織、国家の企業及び事業組織並びに町内組織による各種医療衛生施設の開設を奨励及び支持し、大衆的な衛生活動を繰り広げて、人民の健康を保護する。 国家は、体育事業を振興して、大衆的な体育活動を繰り広げ、人民の体位を向上させる。 第22条 国家は、人民に奉仕し、社会主義に奉仕する文学・芸術事業、新聞・ラジオ・テレビ事業、出版・発行事業、図書館・博物館・文化館及びその他の文化事業を振興して、大衆的文化活動を繰り広げる。 国家は、名勝・旧跡、貴重な文化財その他重要な歴史的文化遺産を保護する。 第23条 国家は社会主義に奉仕する各種専門分野の人材を育成して、知識分子の隊列を拡大し、条件を整備して、社会主義現代化建設における彼らの役割を十分に発揮させる。 第24条 国家は、理想教育、道徳教育、文化教育及び規律・法制教育の普及を通じて、都市と農村とを問わず諸分野の大衆の間で各種の守則と公約を制定し、実施することにより、社会主義精神文明の建設を強化する。 国家は祖国を愛し、人民を愛し、労働を愛し、科学を愛し、社会主義を愛するという社会の公徳を提唱し、人民の間で愛国主義、集団主義、国際主義及び共産主義の教育を進め、弁証法的唯物論及び史的唯物論の教育を行い、資本主義、封建主義その他の腐敗した思想に反対する。 第25条 国家は、計画出産を推進して、人口の増加を経済及び社会の発展計画に適応させる。 第26条 国家は、生活環境及び生態環境を保護し、及びこれを改善し、汚染その他の公害を防止する。 国家は、植樹・造林を組織及び奨励し、樹木・森林を保護する。 第27条 すべての国家機関は、精鋭・簡素化の原則を実行し、職務責任制を実施し、職員の研修及び考課制度を実施して、絶えず執務の質及び能率を高め、官僚主義に反対する。 すべての国家機関及び国家公務員は、人民の支持に依拠して、常に人民との密接なつながりを保ち、人民の意見と提案に耳を傾け、人民の監督を受け入れ、人民のために奉仕することに努めなければならない。 第28条 国家は、社会秩序を維持保護し、国家に対する反逆及び国の安全に危害を及ぼすその他の犯罪活動を鎮圧し、社会治安に危害を及ぼし、社会主義経済を破壊し、及びその他の罪を犯す活動を制裁し、犯罪分子を懲罰し、改造する。 第29条 中華人民共和国の武装力は、人民に属する。その任務は、国防を強固にし、侵略に抵抗し、祖国を防衛し、人民の平和な労働を守り、国家建設の事業に参加し、人民のために奉仕することに努めることである。 国家は、武装力の革命化、現代化並びに正規化による建設を強化し、国防力を増強する。 第30条 中華人民共和国の行政区画の区分は、次の通りである。 全国を省、自治区及び直轄市に分ける。 省及び自治区を自治州、県、自治県及び市に分ける。 県及び自治県を郷。民族郷及び鎮に分ける。 直轄市及び比較的大きな市を区及び県に分ける。自治州を県、自治県及び市に分ける。 自治区、自治州及び自治県は、いずれも民族自治地域である。 第31条 国家は、必要のある場合は、特別行政区を設置することができる。特別行政区において実施する制度は、具体的状況に照らして、全国人民代表大会が法律でこれを定める。 第32条 中華人民共和国は、中国の領域内にある外国人の適法な権利及び利益を保護する。中国の領域内にある外国人は、中華人民共和国の法律を遵守しなければならない。 中華人民共和国は、政治的原因で避難を求める外国人に対し、庇護を受ける権利を与えることができる。 第二章 公民の基本的権利及び義務 編集 第33条 中華人民共和国の国籍を有する者は、すべて中華人民共和国の公民である。 中華人民共和国公民は、法律の前に一律に平等である。国家は、人権を尊重し、保障する。 いかなる公民も、この憲法及び法律の定める権利を享有し、同時に、この憲法及び法律の定める義務を履行しなければならない。 第34条 中華人民共和国の年齢満18歳に達した公民は、民族、種族、性別、職業、出身家庭、信仰宗教、教育程度、財産状態及び居住期間の別なく、すべて選挙権及び被選挙権を有する。ただし、法律によって選挙権及び被選挙権を剥奪された者は除く。 第35条 中華人民共和国公民は、言論、出版、集会、結社、行進及び示威の自由を有する。 第36条 中華人民共和国公民は、宗教信仰の自由を有する。 いかなる国家機関、社会団体又は個人も、公民に宗教の信仰又は不信仰を強制してはならず、宗教を信仰する公民と宗教を信仰しない公民とを差別してはならない。 国家は、正常な宗教活動を保護する。何人も、宗教を利用して、社会秩序を破壊し、公民の身体・健康を損ない、又は国家の教育制度を妨害する活動を行ってはならない。 宗教団体及び宗教事務は、外国勢力の支配を受けない。 第37条 中華人民共和国公民の人身の自由は、侵されない。 いかなる公民も、人民検察院の承認若しくは決定又は人民法院の決定のいずれかを経て、公安機関が執行するのでなければ、逮捕されない。 不法拘禁その他の方法による公民の人身の自由に対する不法な剥奪又は制限は、これを禁止する。公民の身体に対する不法な捜索は、これを禁止する。 第38条 中華人民共和国公民の人格の尊厳は、侵されない。いかなる方法によっても公民を侮辱、誹謗又は誣告陥害することは、これを禁止する。 第39条 中華人民共和国公民の住居は、侵されない。公民の住居に対する不法な捜索又は侵入は、これを禁止する。 第40条 中華人民共和国公民の通信の自由および通信の秘密は、法律の保護を受ける。国家の安全又は刑事犯罪捜査の必要上、公安機関又は検察機関が法律の定める手続きに従って通信の検査を行う場合を除き、いかなる組織又は個人であれ、その理由を問わず、公民の通信の自由及び通信の秘密を侵すことはできない。 第41条 中華人民共和国公民は、いかなる国家機関又は国家公務員に対しても、批判及び提案を行う権利を有し、いかなる国家機関又は国家公務員の違法行為及び職務怠慢に対しても、関係のの国家機関に不服申し立て、告訴又は告発をする権利を有する。但し、事実を捏造し、又は歪曲して誣告陥害をしてはならない。 公民の不服申し立て、告訴又は告発に対しては、関係の国家機関は、事実を調査し、責任を持って処理しなければならない。何人も、それを抑えつけたり、報復を加えたりしてはならない。 国家機関又は国家公務員によって公民の権利を侵害され、そのために損失を受けた者は、法律の定めるところにより、賠償を受ける権利を有する。 第42条 中華人民共和国公民は、労働の権利及び義務を有する。 国家は、各種の方途を通じて、就業の条件を作り出し、労働保護を強化し、労働条件を改善し、かつ、生産の発展を基礎として、労働報酬及び福祉待遇を引き上げていく。 労働は、労働能力を持つ全ての公民の光栄ある責務である。国有企業並びに都市及び農村の集団経済組織の勤労者は、みな国家の主人公としての態度をもって自己の労働に取り組むべきである。国家は、社会主義的労働競争を提唱し、労働模範と先進活動家を報奨する。国家は、公民が義務労働に従事することを提唱する。 国家は、就業前の公民に対して、必要な職業訓練を行う。 第43条 中華人民共和国の勤労者は、休息の権利を有する。 国家は、勤労者の休息及び休養のための施設を拡充し、職員・労働者の就業時間及び休暇制度を定める。 第44条 国家は、法律の定めるところにより、企業及び事業組織の職員・労働者並びに国家公務員について定年制を実施する。定年退職者の生活は、国家及び社会によって保障される。 第45条 中華人民共和国公民は、老齢、疾病又は労働能力喪失の場合に、国家及び社会から物質的援助を受ける権利を有する。国家は、公民がこれらの権利を享受するのに必要な社会保険、社会救済及び医療衛生事業を発展させる。 国家及び社会は、傷病軍人の生活を保障し、殉職者の遺族を救済し、軍人の家族を優待する。 国家及び社会は、盲聾唖その他身体障害の公民の仕事、生活及び教育について按排し、援助する。 第46条 中華人民共和国公民は、教育を受ける権利及び義務を有する。 国家は、青年、少年及び児童を育成して、彼らの品性、知力及び体位の全面的な発展を図る。 第47条 中華人民共和国公民は、科学研究、文学・芸術創作その他の文化活動を行う自由を有する。国家は、教育、科学、技術、文学、芸術その他の文化事業に従事する公民の、人民に有益な創造的な活動を奨励し、援助する。 第48条 中華人民共和国の婦人は、政治、経済、文化、社会、家庭その他の各生活分野で、男子と平等の権利を享有する。 国家は、婦人の権利及び利益を保護し、男女の同一労働同一報酬を実行し、婦人幹部を育成し、及び登用する。 第49条 婚姻、家族、母親及び児童は、国家の保護を受ける。 夫婦は、双方ともに計画出産を実行する義務を負う。 父母は、未成年の子女を扶養・教育する義務を負い、成年の子女は、父母を扶養・援助する義務を負う。 婚姻の自由に対する侵害を禁止し、老人、婦人及び児童に対する虐待を禁止する。 第50条 中華人民共和国は、華僑の正当な権利及び利益を保護し、帰国華僑及び国内に居住する華僑の家族の適法な権利及び利益を保護する。 第51条 中華人民共和国公民は、その自由及び権利を行使するに当たって、国家、社会及び集団の利益並びに他の公民の適法な自由及び権利を損なってはならない。 第52条 中華人民共和国公民は、国家の統一及び全国諸民族の団結を維持する義務を負う。 第53条 中華人民共和国公民は、この憲法及び法律を遵守し、国家の機密を保守し、公有財産を大切にし、労働規律を遵守し、公共の秩序を守り、並びに社会の公徳を尊重しなければならない。 第54条 中華人民共和国公民は、祖国の安全、栄誉及び利益を擁護する義務を負い、祖国の安全、栄誉及び利益を損なう行為をしてはならない。 第55条 祖国を防衛し、侵略に抵抗することは、中華人民共和国の全ての公民の神聖な責務である。 法律に従って兵役に服し、民兵組織に参加することは、中華人民共和国公民の光栄ある義務である。 第56条 中華人民共和国公民は、法律に従って納税する義務を負う。 第三章 国家機関 編集 第一節 全国人民代表大会 編集 第57条 全国人民代表大会は、最高の国家権力機関である。その常設機関は、全国人民代表大会常務委員会である。 第58条 全国人民代表大会及び全国人民代表大会常務委員会は、国家の立法権を行使する。 第59条 全国人民代表大会は省、自治区、直轄市、特別行政区、軍隊の選出する代表によって構成される。いずれの少数民族も、全て適当数の代表を持つべきである。 全国人民代表大会代表の選挙は、全国人民代表大会常務委員会がこれを主宰する。 全国人民代表大会代表の定数及びその選出方法は、法律でこれを定める。 第60条 全国人民代表大会の毎期の任期は、5年とする。 全国人民代表大会の任期満了2ヶ月前に、全国人民代表大会常務委員会は、次期全国人民代表大会の選挙を完了させなければならない。選挙を行うことのできない非常事態が生じた場合は、全国人民代表大会常務委員会は、その全構成員の3分の2以上の賛成で、選挙を延期し、当期全国人民代表大会の任期を延長することができる。非常事態の終息後1年内に、次期全国人民代表大会代表の選挙を完了させなければならない。 第61条 全国人民代表大会の会議は、毎年1回開き、全国人民代表大会常務委員会がこれを招集する。全国人民代表大会常務委員会が必要と認めた場合、又は5分の1以上の全国人民代表大会代表が提議した場合は、全国人民代表大会の会議を臨時に招集することができる。 全国人民代表大会の会議が開かれるときは、議長団が選挙されて、会議を主催する。 第62条 全国人民代表大会は、次の職権を行使する。 憲法を改正すること。 憲法の実施を監督すること。 刑事、民事、国家機構その他に関する基本的法律を制定し、及びこれを改正すること。 中華人民共和国主席及び副主席を選挙すること。 中華人民共和国主席の指名に基づいて、国務院総理を選定し、並びに国務院総理の指名に基づいて、国務院の副総理、国務委員、各部部長、各委員会主任、会計検査長及び秘書長を選定すること。 中央軍事委員会主席を選挙し、及び中央軍事委員会主席の指名に基づいて、中央軍事委員会のその他の構成員を選定すること。 最高人民法院院長を選挙すること。 最高人民検察院検察長を選挙すること。 国民経済・社会発展計画及びその執行状況の報告を、審査及び承認すること。 国家予算及びその執行状況の報告を、審査及び承認すること。 全国人民代表大会常務委員会の不適当な決定を改め、又は取り消すこと。 省、自治区及び直轄市の設置を承認すること。 特別行政区の設立及びその制度を決定すること。 戦争と平和の問題を決定すること。 最高の国家権力機関が行使すべきその他の職権 第63条 全国人民代表大会は次の各号に掲げる者を罷免する権限を有する。 中華人民共和国主席及び副主席 国務院総理、副総理、国務委員、各部部長、各委員会主任、会計検査長及び秘書長 中央軍事委員会主席及び中央軍事委員会その他の構成員 最高人民法院院長 最高人民検察院検察長 第64条 この憲法の改正は、全国人民代表大会常務委員会又は5分の1以上全国人民代表大会代表がこれを提議し、かつ、全国人民代表大会が全代表の3分の2以上の賛成によって、これを採択する。 法律その他の議案は、全国人民代表大会が全代表の過半数の賛成によって、これを採択する。 第65条 全国人民代表大会常務委員会は、次に掲げる者によって構成される。 委員長 副委員長 若干名 秘書長 委員 若干名 全国人民代表大会常務委員会の構成員の中には、適当数の少数民族代表が含まれるべきである。 全国人民代表大会は、全国人民代表大会常務委員会の構成員を選挙し、かつ、罷免する権限を有する。 全国人民代表大会常務委員会の構成員は、国家の行政機関、裁判機関及び検察機関の職務に従事してはならない。
https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/49.html
【能吏大尉の多忙な日々】 一九四四年五月一七日、一〇三〇時、ヒスパニア領内臨時野戦飛行場 「どういうことか、説明して貰おうか。大尉」 「分かりかねます、司令。ご説明は主語から明確にお願いいたします」 「上官に向かって何という・・・君が新人達に教え込んでいる言葉だ」 カールスラント空軍JG124の飛行隊長を務める、アーデルハイト・ハンマーシュミット大尉。彼女は正面でお冠の航空団司令。ウィッチ出身者ではなく、戦闘機搭乗員出身の痩身の大佐を相手に、見ようによっては小馬鹿にしてるように取られる、表情を消した顔立ちをしていた。当人は至って真面目に応じているつもりだが、それが司令の血圧を上げてしまったらしい。というより彼女自身も、唐突な呼び出しに困惑しているのだが、司令はお構いなしであった。 「『死なない程度には頑張りなさい。お偉方があなたの命より、ストライカーユニットを優先しないようにね』。この言葉は一体どういう意味だ!上官誹謗中傷と取られても、不思議ではないんだぞ!」 「言葉の通りです。ストライカーユニットは壊れても補充が効きます、しかしこれから訓練を積むべきウィッチは貴重品です」 何だ。あの言葉か・・・しかし、そこまでいきり立つほどの話かしら。 そう。司令が一言半句反芻して見せたように、彼女は非常にドライな態度でありながら、特に新米の補充ウィッチ。彼女たちが張り切りすぎないか、あるいは怯え過ぎかで墜落するリスクを、心構えと堅実な技術。双方から教え込んでいた。彼女自身、「先生」ことエディータ・ロスマン曹長(現第502統合戦闘航空団所属)から、徹底して叩き込まれたありようであった。ウィッチとは、時にストライカーを何機も乗り潰してでも、経験を積んで、一人前になっていくものだ、と。 「ああ、その通りだろうとも。これまでストライカーを5機以上。それも試作型のドーラまで含めて叩き壊してくれた君が言うと、実に説得力があるな!」 「正確には7機です。確かにその件は申し訳なく存じておりますが、既に始末書及び譴責は済んでいたかと」 「ストライカー1機で、Me209戦闘機が、一体何機購入できると思っている?一個小隊では済まない価格だ。その上、ユニットに加えて軍紀まで破壊するつもりかね!?」 「私は軍紀を犯したつもりはありません、職務怠慢や敵前逃亡も。そして何より、500時間を超えた当たりでやっと一人前になるウィッチの値段は、一体幾らなのです?」 ああ、成る程。この御仁も嘗ては戦闘機で怪異と戦ってきた分、最近台頭著しいウィッチがお嫌いなタチか。薄々伝え聞いていたが、ここまで露骨とは。しかし自分もファイターパイロットだったのならば、戦闘機よりパイロットが大切と言うことくらい、重々承知しているだろう。18の小娘に傷つけられたプライドが、それほどまでに痛むのか? まあ、確かに激戦地で何度もストライカーを壊したのは事実だが、連続出撃による部品摩耗。彼我戦力比五倍以上の状態で、被弾一発もなしに帰れと言う方が、無体な話だ。 彼女自身、軍紀を傷つけるつもりは毛頭ないし、祖国奪還の任務に疑問も抱いていない。しかし自分は18歳を過ぎて数カ月以上経過しており、じきにウィッチとしての限界も来る。隷下中隊長クラスも十分に育ったし、一生を軍に捧げるつもりなど、さらさらない。そう言う心づもりが、お堅いカールスラント空軍では、彼女を若干「変わり者」にしてしまっている部分もあったが。 「・・・・・!君に、転属命令が来ている。空軍総監部の推薦らしい」 司令は一瞬顔を引きつらせると、軽く手をわななかせた。その後に、徐に書類挟みから一枚の書面を取り出し、突き付けた。 「拝読いたします」 ハンマーシュミット大尉は司令の豹変、ヒステリーよりは、渡された命令に寧ろ面食らった。扶桑皇国海軍の艦上飛行隊への転属?何故、ヒスパニアに展開して、カールスラント本国奪還を企図した戦闘を続けている自分たちの部隊に。そもそも、私からして、陸上基地航空のウィッチだ。当然、離着艦の経験など無い。こんな戦艦とも空母ともつかない母艦へ降りろ等、死ねと言うことか? 「ご命令とあらば飛びます。しかしそれこそ、『グラーフ・ツェッペリン』搭乗予定者だったウィッチを派遣された方が、よくありませんか?」 「現在、ノイエ・カールスラントで新型母艦を建造中だ。こんな中途半端な軍艦に、貴重な離着艦技能を持つウィッチを出せるか!」 成る程ね。総監部の推薦とあるけれど、大方扶桑との関係悪化を恐れた上層部の思惑と、この司令が私を疎んじた利害が、丁度一致したところか。まあ良い、そこまでいうならストライカーを壊してでも、何とか覚えてみよう。発令権者はこの御仁だ。破損消耗した分は、しっかりと補充して貰う。全てに納得したわけではないが、ここは軍隊だ。一度、拝命してしまった命令に抗命は出来ない。 「ハンマーシュミット大尉、了解いたしました。出来れば先任中隊長に引継を行う時間を、出発時刻と手段は・・・明記されていませんが」 「輜重のトラックを回してある。輸送船はマドリードから扶桑への定期便が出ている、二日後出発のフネがある筈だ。旅券の手配はしてある、後は好きにしたまえ」 「有り難くあります」 大尉は手短に敬礼を行うと、さっさと執務室を立ち去っていった。軍紀遵守にも、過去の始末書にも、彼女の瑕疵はほとんどない。言っては何であるが、飛行隊長やウィッチとしての技量もなかなかのものだ。しかし、この司令とはどうにも相性が最悪であった。どちらも無能ではなく、最早これは完全に人間性の問題であるだけに、どうしようもなかったのかもしれない。事実、この航空団司令も「戦闘機部隊指揮官としてなら」、そこそこの人物と評価されていた。ウィッチ部隊の責任を人事上のルーチンワークとはいえ、預けられたことは、まさに彼にとっても悪夢であった。 「全く・・・・ああも小生意気な小娘風情が、ハウプトマンで飛行隊長だと?たちの悪い冗談だ。いけすかんブリタニアの大将閣下の気持ちも、今なら分かるものだ!」 「飛行隊長が転属?何の冗談ですか?」 「いや、どうもお偉いさんは真剣みたいですね。現に私のユニット武装、もうトラックに積み込み始まってるし」 いきなり降って湧いたような話に、四個中隊から編成されるJG124。その先任である、ハンマーシュミットより二つ下の中尉は目を剥いた。彼女も大尉からあれこれ、指揮官としての心得等々を叩き込まれており、最初はカチコチの新品少尉であったが、二年、三年と実戦を潜る内に、全くの現実主義者になっていた。今では大尉の右腕、余りアテにならない航空団司令よりも、主計課や高射砲兵との折衝、連携研究などで、余程頼りになる存在であった。 「どうも日頃の私の言動が、随分と嫌われたらしい。余り、表沙汰にしないようにしていたんですが」 「ショルツの奴でしょう、一度大尉の不時着事故の時、奴も重謹慎食ってますし。今から締め上げに行きましょうか?」 「抗命で2人揃って扶桑に行くことになるよ、そうなったら誰がヒヨッ子の面倒を見るんだい。今や君ら四人や中隊先任が頼り・・・逃げるようで済まないけど、本当にお願い」 ハンマーシュミットの、普段は余り見せない弱ったような顔に、先任中隊長も軽く肩をすくめた。そう、この「変わり者」の大尉は、軍隊に一生を捧げるつもりなどは毛頭ないが、少なくとも、自分が現役の間は「適当にやり」、部下を欠かさず、ウィッチとしての年限まで生き延びさせよと、心を砕いてもいた。正直なところ、飛行隊長である自分が抜けた後、若手に無体な命令を下すのを掣肘できるのは、彼女から見ても一人前になった中隊長。中隊先任士官クラス達であった。自分が扶桑へ行くことは構わないが、まだ、飛行三〇〇時間をやっと超えたばかりのものも多い、若手を残していくのは、何処か後ろ髪を引かれる部分もあった。 なお、ショルツとはJG124整備中隊の古参整備下士官である。整備兵としての腕前は良かったが、性格はお世辞にも誉められたものではない。一度、ハンマーシュミットが連続出撃の疲労から、ラロス改複数の不意打ちを食い、ストライカーに数発被弾。黒煙を吐きながら辛うじて帰り着いた際、よりにもよって破損したのが、最新のFw190Dプロトタイプ三号機「ドーラ」であった。当然、航空団司令は顔色を信号機のように変えながら激怒し、ハンマーシュミットのみならず、ドーラの専属整備を任されていたショルツさえ、重謹慎を食らったのだ。そして、彼はどちらかとういえば、非常に粘着質で根に持つタイプであった。ウィッチの間でも、腕は兎も角、性格の評判は、芳しいとはとても言える人物ではない。 「本国はマトモに、失地奪還をするつもりはあるんですかねえ・・・」 「司令も多分、ここが戦闘機航空団なら大張り切りなんでしょうけどね。残念だけど、引継を始めても良いかしら?」 「了解いたしました。でしたら指揮系統と各兵科との連携から・・・・」 結局の所、引継は一昼夜かかった。航空団司令も流石に、部隊運営に最低限必要な行為まで、阻害はしなかった。しかし積極的な協力も得られなかったし、期待も出来なかった。結局の所、彼女が中隊長や中隊先任を呼集。同じく驚いた彼女たちを何とか説得し、その上で先任中隊長を飛行隊長へ臨時昇任。整備中隊、高射砲兵、ラダール班、主計課などと折り合いを付けるのには、それほどの時間が必要であった。 とはいえ、これは寧ろ短い部類に入る。ハンマーシュミットが自らも事故を(激戦地区を飛ぶことが多い故に)何度も経験し、十数枚も始末書を書いていること。元より、リベリオンに疎開していた親族を頼って、軍に志願するまえに居住していた際、住民権を得る手続きから始まり、祖国を失った彼女の人生は、書類仕事で満ちていたのだ。彼女は元々、大ざっぱと言うには言いすぎだが、ウィッチに経験を積ませること。無駄死にさせないこと意外は、余り拘泥しない。ストライカーと武器の性能も、高性能であることに越したことはないが「飛んで撃てればいい」と、強いこだわりは見せなかった。 しかし反面で、書類仕事に長けた能吏としての、意外な一面も持ち合わせていた。このあたり、自然と若手への教育者として振る舞うことも多かったことが、能力に磨きをかけていた。 *一九四四年五月一九日〇四〇〇時、同野戦飛行場営門 「じゃあ、『大尉』。本当に申し訳ないけれど、部隊を宜しく」 「無事の凱旋を祈っています、『隊長』」 ようやく引継、再編の目処が立った拝命より概ね二日後の早朝。営門にて今や飛行隊長となった第一中隊長(兼任)。そして扶桑へ転属させられる羽目になったハンマーシュミット大尉は、言葉少なに、しかし互いに信頼しきった目元で敬礼と答礼を交わした。そう、確かに私のウィッチとしての寿命は、後一年弱。だけど、それまでに扶桑での厄介ごとを済ませ、帰ってこられる可能性が皆無ではない。 それ以上は言葉を紡ぐことなく、僅かに会釈すると、2人の大尉は。片方は営門を潜り、新たな飛行隊長として。片方は、内心に懸念を抱えつつも表情に出すことなく、ベンツL3000型四輪トラックの助手席に乗り込んだ。「願います」と、輜重隊の軍曹に頷くと、彼は黙礼して車輌を、扶桑からの輸送船が待ち受けているはずのツーロンへ、未だに宵闇明けやらぬ中を、一路走らせ始めた。 「大尉、失礼ですが」 「何でしょう?」 「大尉は・・・リベリオンからの出向なんですか?正直、そいつを見かけるのは輜重でも珍しいもんで」 道も終わり、ツーロン市街に入りかけた頃、些か表情の読めないウィッチの大尉に、まだ二十代半ば程度の軍曹が、おずおずと話しかけた。彼の視線は、大尉のガンベルトに収まった大振りな拳銃。リベリオン製M1911A1に向けられている。実際、カールスラントのウィッチが自衛用に携帯する拳銃は、ワルサーPPKからM712シュネルフォイアーに至るまで、多種多様だが、殆どは国産品だ。リベリオン製大型自動拳銃を持つものなど、殆どいない。軽く苦笑すると大尉は応じた。 「最初は家族親族共々、リベリオンに疎開してね。そこで銃器携帯許可も取った、移民のウィッチと言うだけで襲われることもありましたから」 「そりゃあ・・・また何とも。失礼しました」 「良いんですよ、空でも結構役に立ちます。ラロス程度なら一弾倉使えば落ちるんですよ?」 「そんな大砲みたいな拳銃なら、違いありませんやね」 軽く笑い声を挙げた軍曹に会わせて苦笑する。まあ、もっとも便利なのは空の上だけではない。 (あの子達に任せてあるから大丈夫だとは思うけど・・・・司令。もしも帰隊した時、新人を無駄死にさせてたら、落とし前は付けさせて貰いますよ) 埒もないことを我ながら思ったが、半ばは本気であった。アーデルハイト・ハンマーシュミットというウィッチは、指揮権をいきなり剥奪された挙げ句、部下を無駄死にさせられてまで、黙っているほど大人しい人物ではない。出来れば、この四五口径が硝煙と共に魔力付与の弾薬を吐き出すのは、ネウロイ相手だけでありますように。 基地より三時間ほどの時間をかけ、到着したヒスパニア港。ブリタニア本国を除けば、辛うじて維持されている数少ない欧州の整備された大規模港湾には、扶桑皇国の国旗。そして徴用船舶であることを示す、軍艦旗を掲げられた大型高速貨客船が停泊していた。船尾には扶桑語で大きく船名がステンシルされている。珍しいことに、デリックを用いず、ほぼ埠頭の高さそのままに、喫水を調整することで合致させた車輌用乗降口。そこからスロープを降ろし、牽引重砲と装軌牽引車。そして、弾薬や観測機材を満載したトラックが、何十台と降車し始めている。アルプス山脈という、ネウロイにとって天然の要害を有するヒスパニア方面では、弾着観測班の山岳歩兵を前進配置し、ネウロイを阻害する砲兵こそ、戦場の女神であった。 「へぇー・・・・にぎつ丸。これ、扶桑のミヤヒシ海運が使ってる最新の船舶ですよ」 「流石輜重下士官。フネには詳しくないけれど、どんな感じの貨客船かしら?」 「何でも今は軍用に改造されてますが、元はリベリオンのRORO船を真似たとか。満載で巡航二〇ノットは出るそうです・・・と、あれが出迎えじゃないですかね?」 見れば、こちらは車両用スロープではなく、にぎつ丸のタラップから、扶桑皇国陸軍の野戦将校軍衣に身を包んだ士官が下船し、足早にこちらへ向かってきた。階級を見れば中尉である。ハンマーシュミットと軍曹も手早くトラックから降りてしまうと、彼に向き合った。士官は敬礼の後、意外に流暢なカールスラント語で、話しかけてきた。 「失礼いたします。扶桑皇国陸軍船舶工兵、林丈治中尉です。JG124のアーデルハイト・ハンマーシュミット大尉で宜しいでしょうか?」 「はい、中尉。日向着任を命ぜられた、ハンマーシュミットです。どうか、宜しく」 「有り難うございます。大尉には車輌ごと、にぎつ丸に乗艦していただき、扶桑の佐世保軍港の戦艦日向へ着任していただきます」 「それはいいのですが・・・軍曹はどうするんです?」 確かに車輌ごと、いちいちデリックを使わずに乗り込めるのは便利だ。しかし、まさか余所の部隊の輜重下士官まで輸出してしまうわけにもいくまい。それに対して軍曹は、埠頭の五〇〇メートルほど外れた集積所に、その他の輜重物資と共に降ろされた車輌群を指さした。 「ああ、私でしたら。あそこに置いてあるノイエ・カールスラントから運んできたトラックの一台を、補充品として受領予定です。こいつを船内に運んだら、それで原隊へ物資共々、帰隊を命じられてます」 「そういうことでしたら」 「ええ、では軍曹。私が車輌誘導を行うので、にぎつの船内までは運転を願いたい。頼めるかな?」 「おやすいご用で」 輜重が本職の下士官、船舶工兵という物資運輸が本業の特技士官の案内。そしてにぎつ丸のRORO船そのままの構造にも助けられ、車輌甲板への移動は比較的スムーズに行えた。軍曹は、ではご武運を短く敬礼と答礼を交わすと、足早に自らが担当する車輌へと歩み去っていった。 「にぎつは元が貨客船ですので、大尉にも二等船室ですが個室があります。武器・装備は拳銃を含め、残念ながら佐世保へ到着するまで、お預かりいたしますが」 「宜しくお願いいたします」 「ああ・・・それとですが」 彼女のガンベルトを受け取った林中尉は些か困ったような、しかし悪戯っぽい笑みを浮かべた。 「失礼ながら、海軍サンよりなるたけ弾薬が共通化できる武器も、一緒に運んで欲しいと依頼されまして。ノイエ・カールスラントより我が国が購入したMG42一式を、大尉へ譲渡いたします。何、うちの陸軍が試験導入するものを、貸与する形ですので問題はありません」 「ご面倒をおかけします。BARも良い小銃ですが、本物の機銃があればそれはそれで」 「まあ、海軍サンの頼みってのもありますがね」 三十路絡みの船舶工兵中尉は、微笑を苦笑に変えながら、砕けた口調で続けた。 「私から見れば、年の離れた妹か姪くらいのお年です。それで命を張ってるんですからね。失礼ながら。船長も多少思うところがあったようで、ノイエ・カールスラントに立ち寄った際、お国から許可を頂きました。勝手かもしれませんが」 「ご厚情、心より感謝いたします」 どうやらこの、林中尉や船長は至極一般的な大人として、まだ二十歳にもならない少女に、せめてまともな武器をと思い、MG42を確保してくれたらしい。大量製造を行っている規格品の、戦時量産機銃とは言え、半ば放逐に等しい扱いを受けたウィッチに対する扱いとしては、破格の厚遇だ。後方支援国家の余裕という奴かもしれないが、今は素直に厚情に感謝したかった。林中尉は良いんですよと軽く片手を振ると、にぎつの出航時刻を伝えた。 「にぎつは後、三時間ほど物資の積み込みを行った後、ブリタニア海軍の護衛を受けて出航します。空襲の恐れは少ないでしょうが、今の内に休まれた方が良いです。海の上は面倒で・・・では」 ほどなくして年かさの船舶工兵中尉は、扶桑陸軍独特の。脱帽時の一〇度の礼を行うと、ハンマーシュミットの個室から去っていった。ふっと息を吐くと、彼女も個室の寝台に腰掛けた。全く、この数日間にいきなりの急展開で、将校らしい演技も限界だ。多少眠らせて貰おう。扶桑の陸軍が案外、話せる相手であったのはせめてもの救いだ。出来れば、着任先の扶桑海軍もそうであって欲しいものだが。 カールスラント帝国空軍大尉という職掌から、自らを解放したアーデルハイトは、個室の施錠を確認すると、軍衣の上着をハンガーに掛けて、早々に寝台で寝込んでしまった。まだ、にぎつの出航までに時間はあるが、それなら尚更早々に寝てしまおう。洋上ではブリタニアの海軍が護衛してくれるとは言え、仮に長距離型ネウロイが出てきた場合、この船が大破撃沈される可能性もある。今ならば、港に飛び込めば助かるが、洋上ならば尻に帆かけて甲板へ逃げ込み、救命ボートに命を託す羽目になる。考えたくもないが、そんな事態にも備えて、何よりここのところの雑事を忘れるために。 兵隊らしい思考の切り替えの早さで、アーデルハイトはすうすうと寝息を立てて熟睡に移った。あの船舶工兵中尉の言葉通り、ヒスパニアが貴重な外貨取得手段としている、一次産業品(農産物が殆どだ)。そして、後方での治療が必要な傷病者や連絡移動要員などを乗せたにぎつ丸は、ブリタニア海軍の護衛戦隊に守られ、ヒスパニアを出航。 多忙さ故に八時間は熟睡してしまったアーデルハイトの懸念は幸い杞憂に終わり、ネウロイの空襲を受けることもなく、無事に扶桑を一路目指すこととなる。そこで彼女は、ウィッチ嫌いのJG124とは別の意味で、大いに面食らう指揮官や部隊、後々の戦友達に顔を合わせ、大尉以上の階級と飛行隊長の経験を持つ、貴重なベテランとして。そして何より、不本意ながら、部隊が無数に巻き起こすトラブルに関する始末書。それを一手に捌く能吏として、活躍することになる。 ウィッチとしての現役年限を終え、解放されたカールスラント本土。カイザーベルク方面の女性地方公務員へ転職した彼女は、後にこのように語っている。 「よく、ウィッチと言えば華々しい武勇伝が多いですが、私にとって、あの部隊に於ける最大の敵はネウロイではなく、始末書でした。それも戦友達の・・・まあ、そのお陰で、今の仕事に随分役だってくれているんですが」 かの部隊、そしてカールスラント空軍に於いても、昼間戦闘のエースの一人である彼女をして「最大の敵」と言わしめた、第六六六航空隊の始末書が、どれほど膨大な分量であったのか。それはまた、別の話に譲りたい。兎に角、今の彼女は始末書ではなく、住民票や戸籍簿、あるいは地方税関連の書類を、過不足なくチェックし、決済し続ける、真面目だが意外に洒落の分かる公僕として、部下や市民から慕われる人生を送っているという。 *追記:ハンマーシュミット大尉名言(?)録 「人間は死んだらお仕舞だけど、機械は壊れてもいろいろ使い道があるそうよ」 「私は『英雄』じゃないの。事務屋の少佐殿の手柄のためにあなたたちを殺すのは、任務に含まれてないわ」 「軍隊でも、命は重いの。ただの負傷と違って、肩を貸して飛んであげられない」
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/55487.html
登録日:2024/01/07 (Sun) 01 01 23 更新日:2024/09/18 Wed 17 24 04NEW! 所要時間:約 8 分で読めます ▽タグ一覧 MA アイナ・サハリン アプサラス アプサラスII アプサラスIII アプサラス計画 カトキハジメ ガンダム ガンダムビルドファイターズ ギニアスの妄執が形になったようだ ギニアスの子供 ギニアス・サハリン ザク ジオン公国軍 モノアイ モビルアーマー ライバル機 ラスボス 一年戦争 何故かなかなか立たなかった項目 変態兵器 狂気の産物 移動砲台 第08MS小隊 鉄の子宮 頭上の悪魔 私の夢、受け取れぇぇぇ!! アプサラスとは、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』の登場兵器。 型式番号:無し 所属:ジオン公国軍 設計者:ギニアス・サハリン 搭乗者:アイナ・サハリン、ギニアス・サハリン ●目次 【概要】アプサラス/アプサラスII アプサラスIII 【劇中での活躍】ガンダムビルドファイターズ 【ゲーム作品での活躍】『ガンダムブレイカー3』 『SDガンダムGジェネレーションシリーズ』 『ギレンの野望シリーズ』 『スーパーロボット大戦シリーズ』 『ターゲットインサイト』 【立体化】 【概要】 ジオン公国軍ギニアス・サハリン技術少将が設計した大型強襲用モビルアーマー。 ミノフスキー・クラフトを搭載したMAアプサラスを成層圏から地球連邦軍本部ジャブローに降下させ、大出力のメガ粒子砲による一撃で壊滅的打撃を与える「アプサラス計画」のために開発。 作中ではジオン公国公王デギン・ソド・ザビ直々に承認を受け、多大な支援を受けていた事が語られている。 武装は大型メガ粒子砲のみと他MAに比べシンプルに纏まっているが、本機は高高度からの特定拠点攻撃用として開発されている。 ギニアスの旧友であるジオン公国軍将校ユーリ・ケラーネに「高価なおもちゃ」呼ばわりされるほど現実的な計画でなく、夢物語と笑われようと仕方ない突飛な内容だが、自爆したアプサラスIIの残骸を解析した地球連邦軍はシミュレーションにより実現可能という結論に至り絶句した。 ジオン公国軍制MAの例に漏れず異形の姿をし、作中では飛行検証用のアプサラス、大型メガ粒子砲と飛行能力のマッチングを検証するアプサラスII、完成形であるアプサラスIIIの3機が登場。 特徴としてメインカメラはザク頭、ミノフスキー・クラフトにより巨大ながらも飛行能力を有し、II以降は胴体中心部に並外れた火力の大型メガ粒子砲が搭載。 ギニアスはジャブロー強襲用のMAとして開発しているが、その実態は没落したサハリン家復興と自身の妄執を実現するための道具に過ぎず、妹であるテストパイロットのアイナも例外ではなかった。 名前の由来はインド神話の水の精・アプサラスから。 アプサラス/アプサラスII ミノフスキー・クラフト搭載の飛行実験機として開発した1号機。 機体底面にミノフスキー・クラフトを1基搭載し、4本の棘のようなパーツを足代わりに着陸時のバランスを取っている。 陸戦型ガンダムの倍はある全高にもかかわらず素早い飛行能力を有し、アッザムに続き重力下で単独飛行可能なMAである。 しかしテスト機として戦闘は想定しておらず、武装は一切持ち合わせていない。 陸戦型ガンダムの180mmキャノンを寄せ付けない堅牢な装甲を誇るが、ビームサーベルでは融解してしまい、アプサラス共通の弱点としてビーム兵器への耐久性の低さは残り続ける。 ただし、媒体によってはミノフスキー・クラフトによる浮上中のみ機体底面は守られている描写も存在。 開発責任者のギニアスが幼少期の事故により日常生活すら投薬や他人の支援が必要なため、信頼の置ける妹のアイナがテストパイロットを請け負っているが、あくまで民間人としての参加でジオン公国軍に所属していない。 アプサラスIIは飛行実験をクリアしたアプサラスに主目的である拠点攻撃用の武装を搭載した2号機。 胴体中心部に大型メガ粒子砲を搭載し、これをもってジャブローの防衛線を壊滅するアプサラス計画を立てていた。 メガ粒子砲とミノフスキー・クラフトの同時使用は問題なく行えるものの、ジェネレーターに不安を抱えている。 シローの見立てによると装甲に対人兵器が内蔵されているが、アイナの性格上使用されることはなかった。 アプサラスIII バカな、愛など粘膜が作り出す幻想に過ぎん! 母様も、そうやって我らを捨てたのだ!! 可哀想に、だからこんな、鉄の子宮が必要だったのね アプサラスの完成形である3号機。 一人乗りであったアプサラスIIと異なりコクピットは複座式を採用し、出撃時にはパイロットのアイナに加え設計者のギニアスも乗り込んでいる。 アプサラスで集めた実験データをフィードバックし、ミノフスキー・クラフトを2基に増設、電力不足はジェネレーターをリック・ドム3機分搭載し解消、全高はアプサラスIIとそう変わらないが全幅は大幅に伸びている。 機体底面に格納している三脚を展開する事により姿勢制御は向上し、発射角の調整や姿勢が安定。 大型メガ粒子砲の威力は一撃で山に大穴を開けるほどに強化。 更に収束率を変えることでメガ粒子を拡散させ、対MS戦にも転用可能な代物となった。 アプサラスIIと同様に実弾兵器に対しては強力無比な装甲を持つが、Iフィールド等は一切搭載されていないためビーム兵器に対しての耐久性が低く、展開中に剥き出しとなったミノフスキー・クラフトや右肩の装甲部分がジム・スナイパーのビームライフルに一撃で破壊されている。 正式なデータが残っていないため詳細は不明だが、一説にはガンダム試作3号機デンドロビウムの砲身を合わせた全長140mを抜き144mとも言われ、一年戦争どころか宇宙世紀全MAでもトップ3に入るほど超巨大サイズ。 作中でアイナがアプサラスIIIを鉄の子宮と表現したように2基のミノフスキー・クラフト部分を卵巣に見立てる事もできるデザインであり、モチーフは女性器とされている。 かつてサハリン兄妹は母親に捨てられ、ギニアスの異常なマザーコンプレックスが機体にすら反映されていた事が仄めかされており、アプサラスIIIを「我が子」とした。 終盤のギニアスは病の進行により精神を病み、開発スタッフは劇薬まで投与され完成に漕ぎ着けたが、祝賀パーティーで全員を毒殺しアプサラスを独占。 余命幾許もない自身と母親への執着、没落したサハリン家の再興という夢が歪みきり、妄執がアプサラスIIIという形を成している。 【劇中での活躍】 ジオン公国軍の承認を受けギニアスが開発に着手し、妹のアイナをパイロットとしてミノフスキー・クラフトの飛行実験を開始。 作戦行動に入っていた地球連邦軍のシロー・アマダ率いる第08MS小隊に通信を傍受され存在を察知。 サハリン家に支える忠臣ノリス・パッカードのドップを救うためカレンの陸戦型ガンダムを体当たりで行動不能にし、ミノフスキー・クラフトによる衝撃波で周囲一帯を吹き飛ばす。 しかし、死神と呼ばれた自身の悪名を乗り越えたサンダースと第08MS小隊の奮闘で撤退に追い込まれた。 飛行能力が実証されたため新たに拠点攻撃用のメガ粒子砲を搭載したアプサラスIIに改造。 射撃場への飛行ルートがコジマ大隊に察知され、08小隊が偵察任務を担当。 飛行中を捕捉した08小隊と戦闘に入り、シローの陸戦型ガンダムと交戦中にお互いの正体がかつて宇宙で出会った敵側の兵士と知る。 陸戦型ガンダムと共に雪山に不時着し、アイナが機密保持のため機体を自爆させ爆散。 残骸は地球連邦軍が回収し、シミュレーションによりジャブロー陥落可能という結論を出した。 地球連邦軍のオデッサ作戦成功によりジオン公国軍将校のユーリが各地に散るジオン兵を一箇所に集め決戦の地である宇宙に上げるべく、ギニアスが管轄するアプサラス開発基地を再集結地点とし、アプサラス計画の中止をギレン・ザビに進言し命令が下される。 しかし、ギニアスはアイナの説得すら聞き入れず命令を無視して開発を継続し、計画中止を訴えたユーリを謀殺。 最終決戦では傷病人を乗せたザンジバル級機動巡洋艦ケルゲレン出航を望むアイナの意を汲んだノリスが命をかけて時間を稼ぎ、グフフライトタイプを護衛にアプサラスIIIが出撃。 アイナの決死の行動で地球連邦軍の指揮官イーサン・ライヤー大佐に(曖昧な口約束とはいえ)一時休戦を取り付けるが、 ギニアスは独断でメガ粒子砲を発射、連邦軍の前衛部隊を薙ぎ払い壊滅させる。 脱出中のケルゲレンはジム・スナイパーに報復として撃墜され、アイナは激情に囚われかけるがそこにシローのEz-8が登場、 狂気に取り憑かれた兄と決別したアイナはシローのEz-8に収容され、共にギニアス殺害もやむなしと判断。 さらに、背後に展開していたジム・スナイパー(ケルゲレンを撃墜したのとは別の機体)のビームライフルにより右肩部分を撃ち抜かれ、さらに間髪入れずに右側のミノフスキークラフトまで破壊されて、長距離飛行が不可能となり、ここに「ジャブロー攻略の夢」は断たれる。 その後はジム・スナイパーがEz-8を狙撃した隙を突いて再起動、ジム・スナイパーのコックピットを狙撃してこれを沈黙させると、片肺飛行で浮遊し連邦軍本陣に狙いを定める。 しかしとうとうEz-8に組み付かれ、コクピットを破壊されたアプサラスIIIはメガ粒子砲で連邦軍本陣を吹き飛ばしながら火山の底へ落下し爆散。 シローとアイナはアプサラスIIIの爆発に巻き込まれ共に消息不明となったが…。 ガンダムビルドファイターズ 第7話「世界の実力」に登場。 かつて世界選手権にも出場した地上げ屋である灼熱の辰こと辰造が使用。 アプサラスIIIにプラフスキー粒子を応用したIフィールドとアッザムリーダーが追加装備されている。 イオリ・セイ レイジのビルドガンダムmk-II、ヤサカ・マオのガンダムX魔王のタッグと対戦。 マオに世界レベル扱いされるほど完成度は高く、Iフィールドでビームライフルを全く受け付けず、大型メガ粒子砲でバトルフィールドを焼け野原にしアッザムリーダーで2機共に無力化。 プラフスキー粒子を応用し復活したガンダムX魔王のハイパーサテライトキャノンと互角に撃ち合い機能停止に追い込むも、剥き出しとなった装甲内部をビルドガンダムmk-IIに攻撃され撃破された。 【ゲーム作品での活躍】 『ガンダムブレイカー3』 ボスとしてアプサラスⅡが登場。 ウイングガンダムゼロのローリングバスターライフルばりに回転して広範囲を焼き払い、駒のような回転攻撃により機体を吹き飛ばしたり上空からボディプレスを仕掛けてきたりとアニメ本編よりもアグレッシブに描写されている。 『SDガンダムGジェネレーションシリーズ』 宇宙世紀対応シリーズであれば、大抵はⅡとⅢが登場する。 が、一年戦争時代のMAということで性能は低めで、武装も大型メガ粒子砲だけなので射程の穴も多く、あまりパッとしないことが多い。 一応Ⅲなら大型メガ粒子砲が収束と拡散の二種類で武装が水増しされている場合もあるが、基本的な微妙さは変わっていない。 空は当然飛べるが、宇宙には行けたり行けなかったり。 『アドバンス』では、アプサラスの兄弟機であるグロムリン・フォズィルが登場。 アプサラス同様ギニアスが設計開発を手掛け、アプサラス計画のデータがフィードバックされている。 ビグ・ザムのコンセプトを受け継いだGジェネオリジナルのMAグロムリンを内部に格納し、武装は頭部から放たれる大型メガ粒子砲のみだが、ア・バオア・クーを一撃で消し飛ばすほど威力が上昇している。 Iフィールド、デビルガンダムのアルティメット細胞まで取り入れ、アプサラスの致命的な弱点であった防御面がカバー。 ギニアスはアプサラスIIIと同様グロムリン・フォズィルも「我が子」と称している。 『ギレンの野望シリーズ』 ⅠからⅢまで登場。 ジオン公国でイベントで開発可能になる。また正統ジオンやテム・レイ編でも開発可能。 Ⅰは武装を持たないため空に浮かぶでかい的となっている。地味に索敵能力とミノフスキー粒子散布能力を持っているためデカいルッグン偵察機として後方支援に回すのも手、耐久がルッグン10に対してアプサラスは400もあり圧倒的な耐久力を誇るがペガサス級やガンタンクの集中砲火を受けるとあっさり落ちるので油断は禁物。一応Ⅱに改造もできるが解体して資源にしてしまってもいいかも。 Ⅱは空中移動適性を持ち砲撃用のメガ粒子砲をもつ。但しAIがMAP兵器持ちを警戒して射線をかわそうとするのでなかなか砲撃できない。ここまでは犠牲なしで開発可能。 問題は最終型のⅢで、Ⅱの発展強化型なのだがこれの開発にYESを選ぶとギニアスとノリスが死亡しアイナも行方不明になってしまう。独戦ではさらに開発に待ったをかけたユーリまで犠牲になってしまう。 魅力以外は平凡なアイナはともかく、戦闘も指揮もこなせるノリスや高い指揮を持つ将官のギニアスやユーリを喪うのはあまりに割に合わない(*1)。 逆に連邦軍でプレイするとアプサラスの開発を阻止する為の対応措置を取るかの選択を強いられるが、 この場合はシローの離脱と引き換えにジオン側の有力な士官を離脱させることができる。 シロー自身パイロットとしては耐久以外は平凡だし指揮と魅力は高めとはいってももっと高いキャラがいっぱいいるので、 相手のネームドを複数使用不能にすると考えるなら悪い取引ではない。 系譜ならシローの離脱は第一部だけで二部では復帰してくれるのでこちらがほとんど損しないお得イベントである。 更には放置しておくと完成したアプサラスにジャブローを攻撃されてしまうので、殆どの場合はきっちりギニアスに夢を諦めて貰う事になるだろう。 アクシズの脅威からは新たに加わったゼーゴックがバランスブレイカー級の使い勝手の良さを発揮してしまったためさらに肩身が狭くなった。 ゼーゴックのほうはゼーゴックのほうでヴェルナー・ホルバインとの選択形式なのだが ホルバインの能力が魅力が一回り低くなったアイナ程度しかない。 ゼーゴックは宇宙でも空中でも使用可能 コストはアプサラスⅡと同程度・しかもゼーゴックはズゴックからの改造で現場でお手軽に調達できる 変形機構を利用することで空戦モードと砲撃モードを使い分けることができ、これにより相手AIの目をごまかすことができる 等など、コスト面でも地形的製でも戦いやすさでも上回るというギニアス涙目状態となってしまった。 一番泣きたいのはVery Easyスタートでもない限り見殺しにされるホルバインでは?それともギニアスやデュバルと違い自分が関わった機体が量産されて満足しながら逝くのだろうか? 『スーパーロボット大戦シリーズ』 パイロットの都合からか、多くのタイトルでアプサラスIIが味方機として入手できる。 実はスパロボ時空ではアプサラス計画の有用性が認められていることが多く、予算も多く貰えている描写が多い。アプサラスの活動範囲もラサ周辺に留まらず、念願のジャブロー攻略に参加することが殆ど。スーパーロボットも多い世界観なので分かる話だが。 そのため、ギニアスも原作と比べると狂気の度合いが弱いことがある。アイナやノリスにとってもそのほうが幸せだろう。 初登場の『64』ではいるだけ参戦ながら、アイナと共に自軍入り可能。入手が早い・改造効率が良い・攻撃力の伸びが良いと何拍子も揃った強ユニット。飛行可能な点も重宝。 武器の数が少なく移動後に使用できないという点を差し引いても強く、補強の為の強化パーツを回す意義はある。 『A』や『COMPACT2・IMPACT』においても同等の使い勝手を誇る。大出力のメガ粒子砲がMAP兵器として使える点も見逃せない。 IIIの方はボスや終盤の雑魚として登場し、IIの弱点である移動後攻撃の欠如を拡散メガ粒子砲で補っている。 さざなみ系統のスーパーロボット大戦GC・スーパーロボット大戦Operation Extendでは序盤の山場の一つであるジャブロー面にアプサラスIIIが登場し、本当に強襲計画を実現してくる。 部位が少なく無力化までが早い・武装がビームばかりで水地形には手も足も出ないなどの弱点があるものの、OEではその辺に頼れないのでなかなかの強敵として立ちはだかる。 そのGC移植版のXOではなんと合体攻撃持ち。もちろん相方はシロー搭乗のEz-8。 アムロとララァ、クリスとバーニィ、カミーユとフォウも合体してイチャつきながら敵を墜としていく本作はファイアーエムブレムのよう。ジュドーとルーとエルは修羅場ってるが。 反動でもあるまいが、その後のOEではアイナはアプサラスに乗らず顔出しすらなく退場させられる。(ララァやフォウは名前すら出ない。) 替わりにギニアスがまともな元気さで少し長生きしつつ、アプサラスIIIの予告マップ兵器で暴れてくれる。ジャブローは崩せないものの寝返られもせず、一番真っ当なアプサラス&ギニアスかもしれない。 『ターゲットインサイト』 連邦軍サイドの中盤にて出現するアプサラスⅡ迎撃任務で登場。ミッション名はズバリ『頭上の悪魔』であり、08小隊からのゲスト的な投入であることがうかがえる。 浮遊しながら拡散メガ粒子砲を放ってくるが、弾速がイマイチなので余程アクションが下手でもなければ当たる心配は無い。ただ当たると ただ問題なのがその異様なまでの耐久性と取り巻きの連中。 耐久性に関しては連邦サイドで最高峰の性能を誇り、尚且つフル改造のガンダムのビームライフルとバルカンの一斉射をもってしても中々落ちない。 一周目は精々ジム・コマンドやEz-8がやっと手元に来る辺りなので、なけなしのビーム兵器やマシンガンで文字通り銃身が焼け付くまで撃ち続ける必要がある。 取り巻きの連中は貴重な補給所を潰しに掛かり、機体によっては弾が足りなくなりむざむざ逃げるのを指を咥えて見るしか無くなるので要注意。 一定ダメージを与えると墜落などはせず撤退していく。08小隊のストーリに配慮したのたろうか? 【立体化】 巨大MAという設定上の制約からとてつもない大きさのプラモが発売された事は無いが、それでも何度か立体化はされている。 HGでは、HGジム・スナイパーの付属品として1/1200のアプサラスⅢが付いてくる。 大きさは同ジム・スナイパーのロングレンジ・ビームライフルとほぼ同じくらいだが、やたら造形が良く当時のスタッフの執念を感じる一品。 B-CLUBからは1/330のレジンキットが発売。こちらはⅡとⅢでそれぞれ発売している。 上記のものと比べてかなりスケールアップし、全長は平均的なHG本体と同サイズで奥行や横幅で勝る。 面白い…一度見てみたいと思っていたのだ、追記、修正とやらをな △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ガンダムでは珍しい、試作段階が描かれた上に完成まで辿り着いた戦略兵器だけど、舞台装置としての趣が強いよね -- 名無しさん (2024-01-07 01 09 23) こいつがちゃんと正式採用されてればジオン勝ったろうな -- 名無しさん (2024-01-07 02 23 22) ミノフスキークラフトが対応するのは卵巣ではなかろうか? -- 名無しさん (2024-01-07 04 32 20) アクションゲームだと三脚展開して割と地上に張り付きな3に比べて高高度を縦横無尽に飛び回り射角外からメガ粒子砲を雨あられとブチまけてくる2の方が大体強いのは内緒だ! -- 名無しさん (2024-01-07 06 32 41) こいつを完成させ、ビグ・ザムを量産化させ、ゼーゴックをしこたま投入すればジャブローなど余裕で壊滅させられてただろう -- 名無しさん (2024-01-07 08 59 29) 暗く重すぎる曇らせ展開で悪名高い小説版だが、小説版では「メガ粒子砲の拡散放射にこそギニアスが幼少期の事故以来真に実現したかった理由があった」「シローが映像作品を愛好していたことにより、メガ粒子砲の拡散放射を応用することにより『誰も傷付けず傷付けさせず、”遺恨を生まない”』方法でケルゲレンを負傷兵共々脱出させることに成功する」という展開になってたりもする。 -- 名無しさん (2024-01-07 09 06 44) スパロボだと水中の相手に手も足も出なくて可哀そうな機体 -- 名無しさん (2024-01-07 10 00 22) 3が完成形かつ鉄の子宮と言われてると、1や2のデカくて丸っこい形が妊娠後期というか臨月の子宮に見えてくる -- 名無しさん (2024-01-07 13 17 40) 実在の兵器だとB-29とか戦略爆撃機が近いんかねぇ。宇宙空間から突っ込んでくる爆撃兵器とか考えたくもねぇ -- 名無しさん (2024-01-07 13 20 02) Ⅱは無印ブレイカーにも出ているぞ -- 名無しさん (2024-01-07 14 11 41) 原作ではジャブロー攻撃できず ゲーム作品などでは実現してるが -- 名無しさん (2024-01-07 14 20 48) カプセルファイターだとⅠは毒饅頭なんて呼ばれてたな -- 名無しさん (2024-01-07 15 37 17) ガンダムバトルユニバースではミノフスキークラフトの部分でぶん殴るという腹筋崩壊待った無しの格闘があるwwwwwwwwww -- 名無しさん (2024-01-07 19 32 38) 小説版08小隊で世界一でっけえプロジェクターにされたアプサラスすき -- 名無しさん (2024-01-07 20 13 31) ザク頭の巨大MAアプサラス vs ガンダム頭の巨大機体デンドロビウム…レディ、ゴー!! -- 名無しさん (2024-01-07 20 37 50) ↑急ピッチで造ったライノサラスが飛び入り参加や -- 名無しさん (2024-01-07 20 54 27) 戦士たちの軌跡はアプサラス2で暴れ回ることができるぞ -- 名無しさん (2024-01-08 10 01 14) GBAのゲームギニアスがラスボスのでこいつを改良したグリムリンって出てきたな -- 名無しさん (2024-01-08 17 08 22) 2024-01-07 13 20 02 ガンダムファクトファイルか何かでは「MA版ICBM」って評されてた -- 名無しさん (2024-01-09 10 08 10) ワンダースワン版ギレンの野望だと最後まで中断せず開発支援すればギニアス、アイナ、ノリス全員生存した上でアプサラス完成させ、サハリン家復興の手回しも主人公(ガルマorマ・クベ)に約束してもらえる。 -- 名無しさん (2024-02-22 01 10 01) どう考えても山破壊がおかしすぎる200年後のMAですとか言われても信じるわ -- 名無しさん (2024-06-11 11 17 33) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/truexxxx/pages/198.html
FILE■■■■■■■■【序章・鏡面異界深話】② ◆0zvBiGoI0k 「あ、ぐ、ぁ───────────!?」 広大な自衛隊基地の敷地で、遠くに聞こえる戦闘の余波をかき消す悲鳴が上がった。 「姐切!? おいどうした!?」 「わかんねえ、急に、目が……!」 腫れた右目に手を当て、立っていられなくなった姉切が其の場に蹲る。 それまで鈍痛で済んでいたのが、急に焼きごてでも当てられたかのような熱さと痛みを訴えてきた。 走ろうとする意識が、体内の命令系統が痛みの一言で埋め尽くされ、身動きが取れない。 「……見せてくれ」 「永井、お前わかるのか?」 「ただの医者志望の高校生程度の知識だけどな!」 圭は膝を折って姐切の容態を窺う。 足踏みも言い争いしてる時間もない。せめてどういう状態になってるくらいかの情報がなければ先に進めようがない。 「……なんだよ、これ」 顔を隠す姐切の手をどかした圭が、うめきを漏らした。 亜人になって以降、人の死に様はかなり見てきたり体験したが、こんなかたちは流石に初めてだ。 腫れや化膿の症状とはまったく違う『変化』だった。 「蛇の、鱗……?」 いつの間にこうなったのか。少なくとも出会った当初はこんな目立つ形ではなかったはずだ。 姐切の眼窩の窪みを中心にして、皮膚が鱗状に角質化していた。 ささくれだった鱗が、触れてないのにかさかさと揺れ動いている。 変貌を遂げているのは皮膚だけでなく、奥の眼球もだ。いわゆる有鱗目の属する、爬虫類じみた縦長の瞳孔が圭を睨み付けている。 眼は、悶える姐切の意識を無視して、別の生き物であるかのように圭は見ていた。 それはさながら、獲物を見つけた捕食者を見る眼で。 諺のまま金縛りにかかって動けなくなる。蛇は顎を大きく開き、嚥下した圭がこなれるまでゆっくりと腹の中で溶かして─── 「傷病者ですか?」 異常な症状に対処が思いつかないまま硬直していた時を動かしたのは、突如聞こえた女の声。 赤い軍服。つかつかと靴音を鳴らす緋色の意志。呑まれかけていた圭を引き戻す程、見る者の目を奪う鮮烈な印象。 二人といない劇濃の特徴を持つ人物は、一足先に自衛隊基地で治療活動を開始していた英霊ナイチンゲールに相違なかった。 「だ……誰あんた?」 「巡回中の看護師です。それより傷を負った者がいるのですね? すぐに見せてください。一分一秒の迅速な応急手当てこそが救命措置においてもっとも重要です」 口で理念を語りながら、手はとうに実践の為の工程に着手していた。 誰に言っているかわからない発言の威に、周りの面々は後ずさりして道を譲る他なかった。 そこに傷ついた人がいるかどうか。バーサーカーとしての彼女の焦点はそこに固定されている。 工藤達の素性も、基地内に入った目的も、無視して飛ばす要項でしかない。 苦しむ姐切を介抱し、淀みのない熟練にしか出せない手つきで患部を観察する。 「これは───切除ですね。間違いありません」 どこからともなくメスを取り出して、看護師は早々にそんな結論を口にした。 「目の腫れに激しい湿疹。感染症の恐れがあります。進行具合からして患部に根深く食い込んでいる。これはもう切除する他ありません」 「おいおい、おいおいおい。いきなり切るとか何言っちゃってんのこの人。ヤバイの? そいつにかかってる呪いを解かなくちゃさ……」 冷静、かつ物騒な処置を言い出したナイチンゲールに食ってかかる工藤。 姐切の心配をしてるわけじゃない。通常の医療で収まる範囲の霊障だと教えてあげようという彼らしからぬ親切心からだ。 「呪い? 何を言っているのですか? 今はオカルトではなく医療の話をしてるのですが」 「いやだからさ、この子は、蛇女に、呪われてんの! 日本語通じてる? 海外じゃ、あーあれだメデューサとかいやわかるの?」 だがそれが逆にナイチンゲールの逆鱗に触れた。 「妄言を吐くのも大概にしなさい。呪いで人が死ぬわけないでしょう」 「は!? はああー!? なんだとこの牛乳女ぁ! 人が親切に教えてやってんのによぉ!」 「あー工藤さんストップ、今は抑えてくれここで騒いでも話がこじれちまうから!」 そして工藤も逆ギレした。 無意味な諍いで浪費してる時間は無いというのに。言い出しっぺの工藤がこのザマである。 当初の目的もすっぽり抜け落ちて、鬼の形相で拳を振りかぶって殴りかからんとする工藤を、善吉が後ろから羽交い締めにして制する。 「げ、ヤッベ……っ!」 そんな愚行を咎めるように、アスファルトを切りつけるタイヤと剣戟が敷地内に鳴り響く。 煉獄達が押し留めていた人斬り武者が、遂に抑え切れず敷地内に入ってきた音だった。 その音にナイチンゲールも首を向ける。今は点でしか見えない武者を確かに捉えて、眼光を鋭くし。 「……む、貴方がたも要救護対象でしたか。ならばここでは治療の妨げになりかねませんね。 幸いにも優秀な助手が出来たところです。手分けして両面から根治させましょう」 生を連れ去り、死を持ち運ぶ源はすなわち病である。 であれば、病から人を救う看護師が立ち向かうのは道理。 まだ救命の見込みがある者と、今すぐにでもここにいる全員を殺してのける者とを秤にかけ、速やかにトリアージをつける。 鋼の白衣が鬼という病の駆逐に戦線に加わるべく駆けて行く。 少しだが。風向きがよくなった。 想定とは違うが、助勢を得るという工藤の目論見はここに叶うことになった。 医療に通じた看護師という、これ以上なり求めていた人材にも出会えて。姉切にも治療の目処が立ってくる。 「これで……」 なんとかなるか、と誰かが漏らしたその、直後。 悲鳴にも似た高音が、全員の耳朶を叩いて揺らした。 「うお……!? なんだこの音、お前ら聞こえてる?」 「工藤さんも聞こえるんすか? なんていうか、こう、ガラスを爪で引っかいたみたいなイヤな音が……?」 「みんなに聞こえてる、のか? 鼓膜の異常だけじゃ説明がつかないぞ……」 ただの耳鳴りにしては不気味な響き。それが全員に等しく伝わってる事に困惑が広まる。 ざわ、と辺りで音がした気がした。 それは本当に錯覚だが、全員が共有した感覚だった。 耳障りな不協和音が響き続け、すぐでにも黙らせたいのに、そうすることができない。 状況は変化し、恐ろしい脅威はすぐそこまで迫り、一刻の猶予もないのに、誰も動こうとはしない。 時間が停まってしまったのかと思うほどの、それは不気味な静寂だった。音が聞こえる者だけが、世界から切り離され孤立していた。 「く、工藤さん……」 最初に気づいたのは前園だった。そして時間が再び動き出す。 慇懃さの失せた驚愕に染まった顔でひとつの場所を指さす。そこはコンビニエンスストアだ。 2エリア分の敷地を占める基地にはこうした商業施設までも設置されている。 その再現であるコンビニの壁、鏡張りになっている鏡面の中に───────いた。 「へ、蛇女…っ!」 今度ははっきりと輪郭を顕にしていた。 異端の長髪。時代錯誤な着物。頭頂に生えた二つ角。眼は血走り、脚ではなくのたうつ尾が見えている。 見れば誰もが疑わぬ蛇女そのものの姿が鏡には映っていた。 「うおおおっしゃあ! また出やがったなバケモン! ……あれ?」 突如出現したターゲットを見たことで興奮を取り戻す工藤。 デイパックから髪飾り入りの袋を取り出して再度捕獲に乗り出そうとしたが、振り向いた方角に、何故か蛇女の姿はなかった。 「いねえ、いねえぞコイツ!?、そこに映ってるのにどこにもいねえ!」 どこに目を向けても、倒れる姉切、前園達の他には無人の路地が広がるのみで、怪物は影ひとつ見当たらない。 改めて鏡を見れば、なおも変わらず怪物はそこにいて禍々しい眼で睨めつけている。 「まさかこいつ……鏡の中に……?」 誰もが有り得ないと思いつつも、思わずにはいられなかった想像を口にした、その瞬間。 ばん!と、音がした。 衝戟でコンビニ全体が震え出す。怪物が両手を壁に激しく叩きつけて生まれた音だ。 いや……工藤達からの視点ではそう見えるが、怪物は鏡像の中にしかいない。 ならば怪物側からすれば、今のは『扉』の外にいる工藤達に狂ったような動作で飛びかかろうとした動作だ。 怪物は『扉』を叩き続ける。何度も、何度も。コンビニは全体が激しく揺れ、今にも倒壊しそうだ。 それでも破れないことに業を煮やすように、怪物は手をぴたりと『扉』に張り付ける。 押し付けられた掌が指紋までもくっきりと見えるほど。 そのまま指をついと離し、しかし唯一離れず壁に垂直に立てた爪を、割れんばかりの勢いで思い切り手をずり下ろした。 「~~~~~~~~~~~!」 身の毛もよだつ、金切り声の如き音が鳴った。 それは、怪物が現れる直前に聞いたあの高音と同じ音であり、怪物が外に出ようとして『扉』を引っ掻いていた音だったのだと全員は把握した。 先程からずっと流れて、急速に密度を濃くしていった異様な空気は、ここでひとつの臨界を迎えた。 「ア─────────あああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」 「姉切!?」 耳を劈く、身が竦むほどの絶叫。 横臥していた姉切の片目が突如大きく見開かれ、そして口が壊れたように開かれて─── その蒼白な顔は一瞬にして凄まじい恐怖の色に彩られ、凄まじい悲鳴が迸り出た。 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ─────!!!」 悲鳴は終わらない。 人間が許容する肺活量をとっくに越えた声量声音はサイレンにも似て、基地内全てにくまなく行き渡っていきそうなほど深く響いた。 そのサイレンが呼び水となったのか、コンビニはおろか周囲のあらゆる建造物が土台から震動する。 鏡の中の怪物が笑う。 そして─── ◆ ───また誰もいなくなっちゃった……。 ひとり、救護室で取り残されたかぐやはぽつねんと途方に暮れていた。 かぐや以外、集まっていた同行者は既に部屋を出ていた。 義勇が婦長ことナイチンゲールに延々と質問責めされてる最中に、「ちょっと野暮用があるわ」と気づかれないようにこっそりと雅貴が部屋を抜け出し。 「巡回活動に入ります」と一通りの処置を済ませたナイチンゲールが、かぐやに細かいを指示を下した後去ってしまい。 最後に残った義勇も「鬼の気配がする。お前は残っていろ」と言葉短く早々に出てしまっていた。 ───いや、この人もいるけど。まだ眠ってるし……。 ベッドですやすやと寝息を立てている女剣士───新免武蔵を横目で見やる。 ここに担ぎ運ばれた頃は危篤寸前の重態だったが、ナイチンゲールが八方手を尽くしたおかげで、一命は取りとめていた。 今では寝言でうどんだ美少年だかと零すぐらいだ。とても腕一本を斬り落とされた後の容態とは思えない。 武蔵の名前も素性も預かり知らないかぐやだが、藤原書記並に図太い人物なんだろうなと勝手に決めつけた。煩悩の深さや、体型とかで。 先程の光景を脳裏に浮かべてかぐやの顔が青ざめる。未だ自分のデイパックで彼女のナマ腕が埋まったままだったのを思い出してしまった。 今すぐ捨ててしまいたくて仕方ないが、その為に手を突っ込んで探り当てる気にもなれずひっつけたままにしてしまっている。 持っていてと言われたがこんなのどうしろっていうのか。投げつけて餌にすれとでもいうのだろうか。 ───いけないいけない。こんな時こそルーティーンルーティーン……。無駄に消耗してはいけないわ。 心を落ち着かせつつ、かぐやの思考は緩やかに正常な方向に回り始める。 生徒会のはっちゃけた日々で行為が暴走する気が増えてきているかぐやだが、基盤は酷薄に理性を回せる人間だ。 あの暖かい生活が戻ることがない今、どうすることが求められるか、必要とされる優先事項かを測れる精神状態にある。 現況、かぐやはひとりではあるが、危険ではない。 いや……かなり危ないわと思える人は多少いるが、少なくともかぐやや白銀御行を害する相手ではないぐらいの判断はつけられている。 その思考も殺し合いに反抗するスタンスであり、かぐやの未知の知識、何より力がある点は頼りになる。 ならばかぐやが取るべき行動はひとつに絞られる。余程の事がなければ同行するのが最良。最低でもパイプは維持しておくべきだ。 自己の生存だけでなく、それが白銀御行の早期発見と保護に直結する。 故にこそ今は静養し、体力と精神の回復に努める。 疲ればかりが募る展開だった時間の中で、漸く訪れた休息だ。配分の見誤りは生死を分かつ。 今後これだけ条件で休める保証はない。パフォーマンス維持の観点からも正しい。 「……」 せわしなく足を組み替えてはそわそわと辺りに目を泳がしたりと、落ち着きがない。 すぐにでも飛び出して会長を探したい思いに囚われている。 無謀で徒労だと、そう存分に弁えた上で、それでもと逸る気持ちを、かぐやは押さえ切れてはいなかった。 そうなる理由は自分で把握できている。だからこそ厄介であった。 「ひとりぼっち……かぁ」 自分はこんなに弱い人間だっただろうか。 暴力と血の死の渦巻く世界に突然置かれれば一般人としては当然の反応だが、自分自身ではそう思い込めない。 ……本当は分かってる。始めから、自分は弱い人間だったと。 嫌われるのが恐くて、傷つけるのが恐かったから最初から遠ざけた。 臆病だから他人を嫌悪し、見下し、侮蔑し、猜疑し、排他して、そんな自分が嫌いで、けど誰もが踏み出す一歩を踏み出せない。 自分は優秀であっても強くなくて。弱さを武器にしてしまう女だった。 華やかな生活を送りながら、ずっと全てを疑いながら翳り生きていくしかない。 だからこそ、そうではない人を尊く思う。 貧しくても。恵まれなくても。腐らず、僻まず、前に進もうとする人を愛しく思う。 頭上に煌めく月ではなくて、路傍に転がる石にこそ心を照らして欲しかった。 そうなりたいと思わせてくれたのは。 いらないものとして捨てた良心(もの)を掘り出して、おっかなびっくりにでも前に進みたくなったのは。 紛れもなく疑いなく、閉じていた扉の先から光を見せてくれた───── 「……!?」 物思いトリップに耽っていた精神が、慌ただしい物音で引き戻された。 救護室の扉が開かれはしなかった。ただ扉の前を走って通り過ぎただけらしい。 「……会長?」 根拠のない妄言は、何故だか否定しきれない色が混じっていた。 どうしてそう思ったのか。ただ直前まで彼のことを考えていただけで、その妄想の延長ではないのかと自問自答する。 まさか足音だけで会長であるかを判別できるまでに極まってしまったのか?それは流石にドン引きものでは?いやその程度は容易に見極められてこそ妻ではないのか。誰が妻よ! 「……」 混乱する脳内議論をよそに、体は正直だった。 おそるおそる、念の為荷物を持って扉の外を窺い、走り去った音の方角へ向かう。 四宮の家でも流石に目にしない重厚な銃器の感触が精神を補強した。あるいは狂気を加速しているのかもしれない。 足音を出さないよう、注意を払って廊下を進む。十歩分進んだのか、それとも百なのかも曖昧になる緊張した空気が満ちていく。 そして、かぐやは見つけた。 窓はなく電灯が行き届かず仄暗くなった廊下の窪みで、肩で息を切らす後ろ姿。金の髪に、黒の制服。 「会長!」 その背格好を見間違えるはずがない。 隣立つ位置から網膜に焼き付くほど見てきた白金御行の後ろ姿だ。たとえ百万の群衆からでも見分けられる自信がある。 立ち込めていた不安はかき消えて、再会できた喜びと安心感が脳髄を包んでいく。 「よかった……無事だったんですね……! わたし、ずっと不安で……」 普段生徒会に晒している、凛としたかぐやの態度からは多少乖離した弱々しさかもしれない、とどこかで思う。 けれど、それを包み隠せるだけの余裕は今のかぐやには保てはしない。 疲弊した心身を支える拠り所だった白銀と会ったことで一時的に普段のペルソナが剥がれ、幼い面のかぐや───いわゆる(アホ)状態に以降しかけていた。 「ん…………………ああ、ああそうか。そうだよな。もうすぐ、言えるんだったよな。ならいいか、うん」 呼びかけられて振り返った白銀は、どこか上の空なままにかぐやを呆と見つめ。 「ああ。俺も、お前にずっと会いたかったよ」 「──────!」 かぐやの心臓に、稲妻が直撃したかの如き電撃と熱が走る。 顔が熱い。手汗が凄い。羞恥と多幸感がブレンドされた脳がシェイクされていく。 言葉の通り安心を確かめただけにしても、実にストレートな告白の響きに心臓の鼓動は早まるばかり。 これはもう、一日に摂取できるハッピーの量を越えてしまっている。 日々更新されていく胸キュンワードで早くもトップ3まで昇り詰めていた。 「そ、そそそうだ会長、制服もそんなにボロボロで、ひょっとして怪我をしているんですか? たいへんです急いで救護室へ行かないと!。 さっきちょうど通りがかった看護師さんから看護実習を受けましたので処方はバッチリです。疚しい気持ちなんてこれっぽっちもありませんのでさあ早く上着をこちらへ───」 「ん? ああ、大したことはない。ちょっとヘマをしただけだ。今の俺なら心配いらないさ」 「そう、ですか」 にべもなく拒否されて、ちょっとシュンとなる。 でもこんな状況でもクールさを失わないのは流石だと惚れ直す。 それにしても───今日の会長は雰囲気が違って見える。 所々擦り切れて破れた制服は、生徒会長らしい模範的な着こなし方とは違うギャップがあっていい。 長袖でわかりづらいが少し筋肉質っぽくて、ワイルドみが増している気がする。 特にいつも以上に濃くなった目の隈が素敵だった。一度徹夜したのを介抱した時よりさらに深刻になっていて、目も真っ赤に充血している。 ───ああ……やっぱり無理してるんですね。私の前だからって格好つけるなんて本当に……もう。 見た目が好みストライク過ぎて、一周回って逆にクールダウンしたかぐやの思考が落ち着きを取り戻し始めた。 会長に会えたことは心から嬉しい。 こんな非現実的な状況でもいつもの生徒会長らしく振る舞っているのにも、誇らしさと可愛らしさが同居してむず痒くなる。 けれども、それなら自分ぐらいには、少しぐらい弱気を見せてくれたっていいのに。 それぐらいの信頼関係は構築できてると思っていたのに自惚れていたのかと、我侭とわかっていても不満をこぼしたくなる。 「ああ、それに俺はとても気分がいいんだ。ようやく、お前と隣に立てる力を手に入れられたんだからな、■■」 「会長?」 違和感が生じたのは、そこが始まりだった。 会長の口調はどこか浮ついてるというか、高揚してるというか、地に足が着いてないようだった。 飲酒?まさか。ただ近似した記憶が蘇る。これと同じような振る舞いをした人物を、かぐやは知っている。 けどそれは有り得ない。会長はそんな態度を取ったことはないし、取るような人柄ではなかった。 だって、かぐやが見ている白銀の在り方は。 酒に酔い。権力に酔い。 自分で得たわけでもないものを何か見当違いをして振りかざして悦に浸る、四宮家の会合で見てきた醜い大人達、そのものだったから。 「勿論、今のままじゃまだ駄目だ。実際に■■の隣に立つにはまだ俺は強くない。恥ずかしい限りだが腹が減って仕方ないんだ。空腹なんて慣れてるのにな。 思えばそれがよくなかったんだな。強くなりたくば喰らえ。その通りだよ。人を食べるほど俺はどんどん強くなれる」 拭えぬ違和感は歪みになり、修復できぬ亀裂を生み出していく。 会長はかぐやを見ていない。 誰かがいることは見えていても、現実の目に見えてはいなかった。 男はただ、目の前のかぐやから虚像を投影して、何か自分に都合のいい独り芝居をしているに過ぎない。 「ああ、すまないな■■。だからもう少し待っていてくれ。 俺はもうすぐそっちに行く。お前の隣に立つのに相応しい、いや■■以上の男になる。誰もが俺を認めざるを得なくなり、見下せなくなる存在に」 亀裂は止まず、かぐやの信じた世界を崩落させていく。 断崖の端に立たされたに等しい恐怖に駆られたかぐやは、それでも白銀に呼びかける。 これは悪い冗談だと。藁にもすがる思いで。 「かい、ちょ?」 声は、震えていた。 恋も愛も、何も内に宿らないがらんどう。 余りに空虚で、空気が漏れただけのか細い音でしかなかった。 棒立ちする女を見て、男は愛おしそうに笑みを形作る。 獲物を前に舌舐めずりする、それは獣(ケダモノ)の貌だった。 「ほら───目の前に、ちょうどいい女(えさ)がいるんだ」 振り下ろされる狂気。 細い首が爪に裂かれて、熱い鮮血を散らす。 「ギャッ!」 その寸前。 かぐやの影から躍り出た、より濃く黒い影が爪ごと鬼を弾き飛ばす。 「え? なに?」 知覚外で起きた攻防にかぐやは追いつけない。 予想外の攻撃に落とした手荷物も気に留めず踵を返し撤退した白銀にも、潜めし影より再び消えた影にも。 「え?」 何よりも、いま自分は、誰に、何をされようとしたのか。その認識にすら届いていない。 無意識に起きた光景を拒絶し、解答の消えた疑問に硬直するしかないかぐや。 そして─── ◆ 蝶の如く舞う。 超の如く踊る。 一匹のケモノが宙で雀躍と跳び跳ねる。 クラゲアマゾンの攻撃は単調だった。 背面からの伸びる触手を飛ばし、突くか払うか搦め捕るかのいずれかをする。 速度と手数こそ脅威だが、本体の動きは亀のように鈍く、緩慢だ。思考パターンも機械的で多彩な戦術を練りもしない、ひたすら原始的な攻撃しかしてこない。 保有能力のみを評価すれば、鬼とは呼ぶべくもない、虫と呼ぶべき存在だ。 だがその速度と手数が一際図抜ければ、それは恐るべき脅威となる。 オリジナルと呼ばれるアマゾン。その危険性は溶原性細胞のみならず、個体そのものの戦闘力の高さにある。 最も完成されたアマゾンである水澤悠ですら、このアマゾンを前に一度の有効打も与えられないまま敗北したのだ。 傍に守るべき者がいた点を考慮しても、一個体が持つには危険過ぎる性能である事が覆らない。 穿通力、切断力、共に優れた触手を、見る者が羽と錯覚するほどの量を飛ばす。 それだけで十分だった。圧倒的な速度と手数。これさえ揃っていれば、敵を殲滅するのに不足するものはない。 興奮したピラニアの魚群に飲まれるようなものだ。人もアマゾンも、誰一人別け隔てなく飲み込む。穿ち、刻み、裂き、千切られるのみ。 ではその透明な殺意の射程から尽く逃れられるのは、猿(ましら)の芸当か。 いいや。宙を舞うのは尻の赤い猿に非ず。軽やかに、流麗に、翼なき身には仰ぎ見るしか許されぬ領域を我が物顔で占有するは、蝶と見紛う美体であった。 現人鬼・波裸羅、この地にて初めての本格的な闘い。 初めて見えた、少年勝次の時の戯れとは違う。 決闘を見物した、剣士武蔵の時の試しとは違う。 摘まみ食いとはいえ手心はない、ガチの気構えだった。 自らの五体を余す事なく躍動させる昂り、心に惹かれるままに振るわれる殺戮武芸。 そうして手折った花の実を全身に浴び、恍惚に破顔してみせる。 触手が捉えられぬ飛空の種は足場。 地面、塀、電柱、屋根、あらゆる障害物を足蹴にし、接地面が割れるほど力を込めて上に押し出す事で可能とした。 慶安とはまるで違う町並みにも慣れ、勝手の違う感触に煩わされもしない。 前後左右のみならず上下と移動域を増やす事で触手を散らす事で、被害を最小限に抑えていた。 そう、最小限。 初めての化粧で紅を塗りたくったように血に濡れた顔も、はだけた袴から覗く乳房や四肢に通った赤線も。 波裸羅の体は銘刀同田貫でも骨にまで届かぬほど強靭だ。この程度は軽傷。むしろ戦に相応しい化粧であるともいえよう。 にたりと、波裸羅が笑う。 今度は避けもせず、降りかかる肉の槍衾の中を恐るるに足らずと掻き分けて前進する。 如何に高速で数が多いとはいえ、こうも乱発すれば目も慣れる。 波裸羅ならばさらにその先、その身であえて受け続ける事で肌感覚で軌道を読む事まで可能になる。 檻の肉格子を抜け、遂に本体に迫り旋脚を見舞う。 「ぐふ!」 幾重に固まった触手の繭に弾かれて、波裸羅の体が吹き飛ばされた。 クラゲアマゾンに届いたのは血反吐の飛沫のみで、詰めた間合いを離され、振り出しに戻された。 「強いな、海月(くらげ)」 両腕をだらりと下ろし、血の混ざる涎を垂らして、やはり波裸羅は笑みを崩さない。 散り際に微笑まぬ者は生まれ変われないと知るような、おぞましくも狂おしい笑みだった。 「だが勃たんぞ。凶剣(まがつるぎ)を昂らせない戦いぶりで、波裸羅を殺せると思うたか!」 列挙すれば確かにクラゲアマゾンは『強い』と評価するに相応しい猛者だ。 しかしそこには華がない。慧漏(えろさ)が足りない。 色も感情も介さぬ虫相手と張り合って何になろう。純粋たる命の奪い合いにも美はあろうが、人と鬼の戦いはそうはならない。 骨肉をぶち撒け、五臓六腑を噴き出しても、波裸羅の戦いは『華』でなければならない。 「身持ちの固い赤貝の殻、そろそろこじ開けてくれようか」 破れた袴がずれていよいよ裸身間際になった懐から刀を抜き取る。 刀身の半ばが折れた日輪刀。宮本武蔵から譲り受けたそれは敵を斬る為の武器に非ず。之こそは、無双化身忍法の極意也。 クラゲアマゾン、正確無比の触手突きに波裸羅は驀進。 串刺しの再演を見せるかと思いきや、波裸羅に触手は一本足りとも届かない。 触手は伸びなかった。細く鋭利な無数の手は、波裸羅から噴き出した血が変質した蝶が絡みつき、動きを封じていた。 忍法【婆斬羅蝶】。婆斬羅とは怨身忍者の血液の中の金属成分。婆斬羅蝶とは即ち金属粉塵を一帯に充満させる技。 その意味、危険性を解する知能をアマゾンは持たず、代わるように波裸羅が己の腹に乱れ刃をねじ込んだ。 爆発。 爆散。 石造りの家々を巻き込んだ爆心地にて立つ異形は……二つ。 一つはクラゲアマゾン。婆斬羅蝶が張り付いた触手は吹き飛ばされながらも本体は健在。 そしてもう一つの影。之こそはバトルロワイアルにて初のお目見えとなる衛府の鬼の姿。 世に類なき見目形。 百鬼夜行の頂きに咲く黒薔薇(そうび)。 現人鬼なりし波裸羅が顕す、第四の怨身忍者! 「!」 咄嗟、波裸羅は『呼び声』を聞いた。 口上の最中に中断という無作法を晒してでも見逃せぬ、己を呼び寄せる声を察知した。 声の元の仔細は読み取れぬ。だが現人鬼は無数の鼓動を離れていながらに感知し、地獄の底から湧く灼熱の躍動に胸震わせた。 「この波裸羅を差し置いて催し物か! 弩(ド)許せん!!」 跳び立つ。 絶好の機会を得ていながらクラゲアマゾンを放置し震源地へ向かう。 なにせ波裸羅を直々に指名しての誘いで。これで乗らねば鬼の名が廃る。 脳に送られた信号だけで甘美なる味を見た。ならばこの鉄火場の渦中で味わうものは如何ほどのものか。 稀に見る極上の馳走に向けて波裸羅は走る。正銘の鬼と化した肉体はコンクリートの森を抜けて祭りの場所を只管目指す。 そして─── ◆ そして───『扉』が開く。 叫び声と、反響が、不協和音の二重奏をかき鳴らした時、自衛隊基地内のガラス、鏡、全ての『映すもの』が砕き割れた。 段々と薄くなっていた現実の異界の狭間の境界が、最後の一押しによって破壊される。 割れた先には何もない。幾何学的な異次元に繋がってもいなければ、常識を冒涜する怪物も出てこない。 出てきたのは、割れた鏡面の破片からだ。 大小様々なサイズに割れて四散していく破片の中から、一本の手が伸びた。 それは細長く、まるで青黴たミミズのような造形で、それ自体が意思を持ってるかのようにのたうって破片から這い出てきた。 宙に舞ったひとつずつの破片から、ひとつずつの触手。無数の破片から無数の触手が波濤の如し勢いでなだれ込む。 あらゆる区別をつけず四方八方から殺到する触手は、手当たりしだいに生きとし生けるものに絡みつき、抗えない強制力をもって引き寄せていく。 全ての破片が地面に落ちた時、自衛隊基地は無人になっていた。 人も、鬼も、どこにもいない。ただ、至る箇所に散乱するガラス片や割れた鏡が残るのみだった。 ◆ 【 異 界 領 域 展 開 】 【自衛隊基地内の全ての参加者 バトルロワイアル会場より消失】 ◆ 【???/???】 【永井圭@亜人】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2、ナノロボ入り注射器@ナノハザード [思考・状況] 基本方針:佐藤を倒す 1:使える武器や人員の確保。 2:雅や猗窩座といった鬼達を警戒。 3:波裸羅を上手く対主催側に誘導できないか。 [備考] ※File 48(10巻最終話)終了後からの参戦 ※亜人の蘇生能力に制限らしい制限がかけられていないことを知りました。 【人吉善吉@めだかボックス】 [状態]:精神的疲労(小)、全身にダメージ(大) 、頬に傷 [道具]:基本支給品一式、御行のママチャリ、佐藤のコルトガバメント(レッグホルスター付き) [思考・状況] 基本方針:殺し合いを止める。めだかちゃんに勝つ。 1:めだかと球磨川との早期の合流。もしも殺し合いに賛同するような行動をとっていれば、自分が必ず止める。 2:波裸羅に感謝すると同時に警戒。 【煉獄杏寿郎@鬼滅の刃】 [状態]:疲労(中) [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2 、煉獄杏寿郎の日輪刀@鬼滅の刃、日本刀@彼岸島、涼司の懐刀 [思考・状況] 基本方針:力なき多くの人を守る。 1:目の前の者達を守る。 2:炭治郎、禰豆子、善逸、義勇、しのぶとの合流。 3:無惨、猗窩座には要警戒。必ず討ち倒す。 4:日輪刀が欲しい。 5:雅のような鬼ではない存在の討滅手段を探す。 [備考] ※参戦時期は死亡寸前からです。 【宮本武蔵@衛府の七忍】 [状態]:ダメージ(大)、疲労(小)、頬に傷。 [道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~3、折れた嘴平伊之助の日輪刀@鬼滅の刃、武蔵の剣@衛府の七忍 [思考・状況] 基本方針:この世にまたとない命を散らせる――鬼を討つ。 1:鬼を討つ。 2:事情通の者に出会う。 3:煉獄や波裸羅から、さらに詳しく事情を聴く。 4:波裸羅に対し一騎討ちを望む。 [備考] ※参戦時期、明石全登を滅したのち。 【工藤仁@戦慄怪奇ファイル コワすぎ!】 [状態]:健康 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2、ステルスドローン@ナノハザード、口裂け女の髪(強化後)@戦慄怪奇ファイル コワすぎ! [思考・状況] 基本方針:脱出はするが、「コワすぎ」も撮るに決まってんだろ 1:化け物(禰豆子)にマッチアップする別の化け物を探す 2:ステルスドローンを回して撮影する [備考] ※参戦時期は「コワすぎ! 史上最恐の劇場版」開始前。タタリ村へ乗り込む準備中 【姐切ななせ@ラブデスター】 [状態]:呪い、目が腫れている、■■症状進行、 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2、蛇のお守り@戦慄怪奇ファイル コワすぎ!、藤の花の毒付きの苦無@鬼滅の刃 [思考・状況] 基本方針:脱出する 1:???????????? [備考] ※参戦時期はキスデスター編終了後 ※清姫のシャドウサーヴァントとの接触で呪われました ※目の腫れ方は「コワすぎ劇場版:序章」における市川のそれと酷似しています 【前園甲士@ナノハザード】 [状態]:健康 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1、ベレッタM92F@現実、青酸カリ@現実、人肉ハンバーグ@仮面ライダーアマゾンズ、ナノロボット(円城)のサンプル@ナノハザード 、圧裂弾(5/6)@仮面ライダーアマゾンズ、『顔のない王』@Fate/Grand Order、ステルスドローン@ナノハザード、トンプソン・コンテンダー@Fate/Grand Order、救急箱@現実、22口径ロングライフル弾(29/30発)、ランダム支給品0~1(累のもの、未確認) [思考・状況] 基本方針:人を殺してでも生き残る。 1:人間よりも強い『超人』を利用して禰豆子と殺し合わせる。 2:工藤・姐切を利用する [備考] ※参戦時期、未定。後続に任せます。 【源頼光@Fate/Grand Order】 [状態]:健康。中度の疲労。 [装備]:絶刀・鉋@刀語、弓矢@Fate/Grand Order 、ハーレー・ダビッドソン(雅貴)@HiGH LOW [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1 [思考・状況] 基本方針: 英霊剣豪として一切合切を粛正する。 1. カルデアのサーヴァントを排除する。 2.もう一体の鬼については状況を見て判断。 [備考] ※源頼光ではなく、英霊剣豪七番勝負のライダー・黒縄地獄としての参戦です。 【新免武蔵守藤原玄信@Fate/Grand Order】 [状態]:疲労(小)、右目に眼帯、右腕が斬られた・隻腕、血まみれ(いずれも応急処置済み) [道具]:物干し竿@Fate/Grand Order(半分斬れてる) [思考・状況] 基本方針:無空の高みに至る。藤丸立香と合流する。 1:---------- 2:強者との戦いで、あと一歩の剣の『なにか』を掴む [備考] ※参戦時期、セイバー・エンピレオ戦の最中。空位に至る前。 ※彼女が知っている藤丸立香は、というより何故かこの宮本武蔵は、『男の藤丸立香』を知る宮本武蔵である。 ※応急処置で一命は取り留めました。 【雨宮雅貴@HiGH LOW】 [状態]:疲労(中)、腕に痺れ [装備]:ハーレー・ダビッドソン VRSCDX【ナイトロッドスペシャル】@HiGH LOW、明神切村正@Fate/Grand Order [道具]:基本支給品一式、コブラのスカーフ、カップヌードル 北海道ミルクシーフー道ヌードル×数個@現実、オルタナティブ・ゼロのカードデッキ(ブランク体)、ランダム支給品0~2 [思考・状況] 基本方針:弟、仲間と一緒に生還する 1:禰豆子のもとへ義勇を連れていく 2:広斗との合流 3:中野姉妹、鑢姉妹、竃門炭治郎を探す 4:村山とスモーキーは……まあ余裕があったら探してもいいかな 5:いずれ水澤悠、竃門禰豆子と合流する 6:あのクラゲのバケモン、なんか気になるんだよな [備考] ※水澤悠と情報を交換し、数時間後に落ち会う約束をしました。落ち会う日時は、第三回目の放送後のC-7・街(悠たちと別れた場所)です。 ※鑢七花を女性だと確信しています。 【冨岡義勇@鬼滅の刃】 [状態]:疲労(小) [装備]:無毀なる湖光@FGO、 [道具]:基本支給品一式×2、木剣、ランダム支給品0~3、真っ二つの半半羽織(私物)@鬼滅の刃 [思考・状況] 基本方針:鬼舞辻無惨を討つ。鬼を切り、人を守る。 0:禰豆子と会い、人を食ったかどうかを見極める。もしも食っていれば斬り、炭治郎に伝えた後に共に切腹する。 1:鬼を斬る。 [備考] ※参戦時期、柱稽古の頃。 【四宮かぐや@かぐや様は告らせたい】 [状態]:疲れ、混乱 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2、H K MP7@仮面ライダーアマゾンズ、武蔵の右腕、フィーリング測定機@ラブデスター [思考・状況] 基本方針:私はスキを諦めない 0:え? 1:会長と会いたい。え? 2:石上を殺した犯人を許さない。 3:巌窟王さん……本当にいたのね…… 4:なんだか銃の使い方がわかった気がする [備考] 具体的な参戦時期は後続に任せます 【フローレンス・ナイチンゲール@Fate/Grand Order】 [状態]:魔力消費(大) [道具]:基本支給品一式、魔術髄液@Fate/Grand Order(9/10)、ランダム支給品0~2 [思考・状況] 基本方針:救う。殺してでも。 1:目の前の病に侵された者たちを治療する。今の優先対象は黒縄地獄。 2:傷病者を探し、救助する。 3:童磨は次に会ったなら必ず治療する。 4:『鬼化』を振り撒く元凶が、もし居るのなら─── 5:かぐやの治療は特効薬の結果を見るまで保留。エドモン・ダンテスは捕獲次第直ちに治療する。 [備考] ※参戦時期はカルデア召喚後です。 ※宝具使用時の魔力消費量が大きく増加しています。 ※円城周兎からナノロボについて簡単な説明を受けました。 ※沖田総司をカルデアに召喚された沖田総司であると認識しています。 ※情報交換により前園、権三の情報を得ました。 ※ナノロボの暴走による爆発に巻き込まれましたが、現時点では影響は不明です。 【エドモン・ダンテス@Fate/Grand Order】 [状態]:健康 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3 [思考・状況] 基本方針:復讐。脱獄。その手助け。 1:巌窟王として行動する 2:何のかんの言いつつ、かぐやに陰ながら同行し、そのピンチには駆けつける(?) 3:メルセデスの治療は避ける。 [備考] ※参戦時期、他のFate/Grand Orderのキャラとの面識、制限は後続に任せます ※ナイチンゲールから見つからないところに消えましたが、かぐやになんかあったらすぐ駆け付けられるくらいのところにはいます。 【猗窩座@鬼滅の刃】 [状態]:健康 [装備]: [道具]:基本支給品一式 [思考・状況] 基本方針: 強さを求める。 1.無惨様のために動く。 2.鬼殺隊、それに童磨か……。 3.新たな鬼(白銀)は妙に不愉快だ。 4.自衛隊入間基地に身を置き敵を迎え撃つ。 [備考] ※煉獄さんを殺した以降からの参戦です。 【白銀御行@かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~】 [状態]:鬼化、軽い飢餓、強い怒り [装備]: [道具]:可楽の羽団扇@鬼滅の刃、ランダム支給品0~2(猗窩座) [思考・状況] 基本方針:この力を振るって、■■の隣に。■■に■される、自分に。 1:無惨様の役に立つ。 2:人吉善吉、次に会ったら必ず殺す! 3:自衛隊入間基地に身を置き敵を迎え撃つ。手段は選ばない。 4:武器庫の防壁は…… [備考] ※奉心祭の準備を視野に入れるぐらいの時期。 ※無惨の血によって鬼化しました。与えられた血は比較的多量ですが下弦には及ばないぐらいです。順応すればまた違う変化があるかもしれません。 【波裸羅@衛府の七忍】 [状態]:健康、胸に傷 [装備]:派手な和服 [道具]:基本支給品一式、ナノロボ入り注射器@ナノハザード、ホログラム@ラブデスター、折れた嘴平伊之助の日輪刀@鬼滅の刃、真田の六文銭@衛府の七忍 [思考・状況] 基本方針:びぃびぃの企画には現状惹かれていないが、割と愉快になってきた。 1:自衛隊基地に急行。催し物に飛び入る。 2:勝次のことは忘れぬぞ。 3:善吉の生き方が実に愉快。 4:永井圭に興味。 5:彼岸島勢に興味。すぐ隣に雅がいるなら、会ってみようか。 [備考] ※第十四話以降からの参戦。 ※波裸羅の食料品は他の参加者と違い、桃100個が与えられています。 【C-4/1日目・昼】 【クラゲアマゾン@仮面ライダーアマゾンズ】 [状態]:ダメージ(大・回復中)、触手欠損(回復中) [道具]:無し [思考・状況] 基本方針:――千■、■ 1:邪魔する者は攻撃する。 [備考] ※九話より参戦です。 「え? なんですかこれ?」 「複数の参加者の配置と時間軸が一斉にジャンプって……ええ、まさかもう起きたんですか?」 「んー……、確かにMAP上の施設の幾つかは、彼らが居着きやすくなるスポットの条件を備えてますけど、まさかこんなに早く来るなんて予想外です。 人にしろ物にしろ、よっぽど『出る』条件が揃ってたんでしょうか? くじ箱に一本しかない大凶を一発で引き当てるようなものですよ? 逆に選ばれた人間の証ですね!」 「元々あの世界は、人の想像力を形にして産み出す土壌を持った、空想と虚構の鏡面界。彼らにとっても馴染みがいい。 抑止の対象になる『外』からの来訪者にとって、現実世界よりも顕現の制限は緩くなります。 そして、あそこからなら現実に介入するのもまた容易となる。これ以上ない『前例』がありますから」 「鏡とは境界にして繋げるもの。無限に合わせ鏡を繰り返す行為は、内と外の境界線に近づくのを意味する。 好奇心によって怪物の棲み家に足を踏み入れ、頭からバリバリと食べられるのは、物語のお約束です」 「さて今後ですが、恐らくは前例に寄った形として出て来る気でしょう。 人を襲う鏡の中の怪物。そしてそれと契約する戦士。過去の事実ごと忘れ去られた、ある正義の系譜の物語。そこに当て嵌めれば自ずと答えは出るはず。 おっと、この場合は生贄と言った方が正確ですね」 「え? 対策ですか? ……まあ、参加者の皆さんは虚数空間中でも位置情報を特定できるBBちゃん特製首輪をはめてますから、即消滅することはないでしょう。 外付けの存在証明がない限り肉体が消滅するというルールはギミック的に面白いですが、流石に乱入者の仕業で大量脱落なんてオチはゴメンです。企画の趣旨的に大NGです! でもここで主催者権限でお助けしちゃうのも、バトロワ主催系ヒロインとしての評判に傷がついちゃいそうですし……。 『やっぱりチョロインじゃないか!』『黒幕に操られるポジションから抜けられないんだね』『BBちゃんマジ劇場版三部作のメインヒロイン!』って!」 「というわけで、しばらくは経過観察としましょう。タイムスタンプは押されてますので、手段さえ見つけられれば帰還自体は可能ですし。 彼らの底力と運命力、主人公力の発揮に期待するとしましょう!」 Next 砕式・降龍落とし Previous FILE■■■■■■■■【序章・鏡面異界深話】① 前話 お名前 次話 FILE■■■■■■■■【序章・鏡面異界深話】① 工藤仁 [[]] 前園甲士 姐切ななせ 永井圭 人吉善吉 かぐや様は困らせられる~天然達の狂騒曲~ 新免武蔵守藤原玄信 フローレンス・ナイチンゲール 四宮かぐや エドモン・ダンテス 触れた指の先が運命を待ちわびている 白銀御行 FILE04「辻斬り出没!首狩り武者」 波裸羅 クラゲアマゾン [[]] 目次へ戻る