約 34,709 件
https://w.atwiki.jp/kolia/pages/1898.html
危険は形而上学の欺瞞的な性格の中にある。それは、実際には何らの知識をも与えないのに、知識であるかのような幻想を与える。我々が形而上学を排撃する理由はここにある。・・・(中略)・・・哲学の唯一の仕事は論理的分析 logical analysis である。 ~ R. カルナップ(論理実証主義に立つ哲学者集団「ウィーン学団」のリーダー的学者) 要旨■「平和憲法」「占領憲法」などのレッテル貼りに終始するのではなく、①憲法とはそもそも何か(法概念論)、②憲法の保障すべき価値は何か(法価値論)、③そうした価値を如何に実現するか(法学的方法論)、という憲法問題の課題を一つづつ分析し検証していくことが重要である。 ※本ページが難しい方は、日本国憲法改正問題(初級編)をご覧下さい。 <目次> ■1.はじめに◆1.基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学) ◆2.問題状況整理表 ■2.憲法とは何か(法概念論)◆1.憲法(constitution)の定義◇1.実質憲法(国制)と形式憲法(憲法典)の区別 ◇2.法概念論(憲法とは何か)と法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の区別 ◇3.二つの憲法概念から考える国家の在り方(伝統国家・革命国家・新興国家) ◆2.法体系の2つの捉え方◇1.ケルゼンおよび修正自然法論者による法段階説(半世紀前の法学パラダイム) ◇2.ハートによる社会的ルール説(現代の世界標準の法学パラダイム) ■3.憲法の保障すべき価値、理念・目的は何か(法価値論)◆1.法価値(=正義)一般と、「法の支配」◇1.参考ページ ◇2.「正義」「法の支配」まとめ ◆2.「立憲主義」の定義◇1.各論者による説明 ◇2.参考ページ ◆3.憲法に特有の法価値論+法解釈論 - 整理図◇1.参考ページ ■4.そうした価値、理念・目的を如何に実現するか(法学的方法論)◆1.現行憲法典の解釈論◇1.左翼的(全体主義的)解釈vs.保守的(自由主義的)解釈 ◇2.日本の代表的な憲法論 - 内容紹介・評価 ◆2.憲法典の改廃論 ◆3.憲法典改正案◇1.現在提案されている種々の改憲案 ◇2.日本国憲法の構成と、保守的スタンスから見た改正の要否 ◇3.改憲案の具体例(自民党・憲法改正草案(2012年版)+中川八洋草案) ■5.ご意見、情報提供 ■1.はじめに 憲法問題となると、たちまち「平和憲法を守れ」とか「占領憲法を破棄せよ」といった、左右両極端の立場からのイデオロギッシュなアジテーション・罵倒合戦に終始してしまう現象が頻繁に観測される。(※なお、経済問題に関しても類似した現象がしばしば観測される ⇒ ケインズvs.ハイエクから考える経済政策 参照)。 確かに、現実妥当性に目を瞑って現行憲法典の前文・第9条を厳密に文理解釈すれば、お花畑的な(つまりネガティヴな)意味で「平和憲法」と云えなくもないし、また制定過程を見ればGHQ草案をほぼそのまま翻訳した「占領憲法」と呼ばれるのも致し方ないことではあるが、ここでは、そうした扇動的・プロパガンダ的方向にばかり走り易い言説を避けて、努めて論理的・概念分析的な姿勢を守りつつ憲法問題の整理・解明を目指したい。 そのために、 1 まず、基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学)を区別して、憲法問題の位置づけを明確にし、 2 次に、基礎法学の主要3分野(①法概念論・②法価値論・③法学的方法論)各々について、実用法学の一分野である憲法学(憲法論)の課題を対応させた問題状況整理表を作成し、 3 そして、上流から順に(つまり①法概念論→②法価値論→③法学的方法論の順に)これらの課題を一つづつ分析し整理していく。 ◆1.基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学) きそほうがく【基礎法学】 ※日本語版ブリタニカ百科事典より 実用法学に対して、少なくとも直接的には法的な諸事象の純粋に理論的な認識・解明を目的とする法学。理論法学ともいう。基礎医学という用語にならって第二次世界大戦後の日本で使われるようになった。法社会学、法史学、比較法学、法哲学がこれに属する。 じつようほうがく【実用法学】 ※日本語版ブリタニカ百科事典より 司法、行政、立法などの実用目的に奉仕する法学。法解釈学と立法学がこれに属する。基礎法学と対置されるが、現代の実用法学は基礎法学の成果を積極的に活用して法の合目的的な形成と運用を図る応用科学としての性格を強めつつある。 ほうかいしゃくがく【法解釈学】 Rechtsdogmatik ※日本語版ブリタニカ百科事典より 解釈法学ともいう。実定法の規範的意味内容を体系的・合理的に解明し、裁判における法の適用に影響を与えることを目的とする実用法学。実定法を構成する文字および文章の多義的な規範的意味内容を明確かつ一義的に確定していく作業が法の解釈であるが、この作業には、①文理解釈、②論理解釈、③縮小解釈、④目的論的解釈、⑤反対解釈、⑥勿論解釈、⑦類推解釈などと呼ばれるものがある。法解釈学は古代ローマで成立して以来、現代まで法学の中心的位置を占めているが、時代の変遷によって力点の変化がみられる。自由法論以後の法解釈学は人間や社会に関する経験科学的認識を取り入れた応用科学としての性格を強めている。第二次世界大戦後の日本の法学界における「法解釈学論争」では、法解釈学の実践的性格が強調された。法解釈学は、その対象となる実定法の分野によって、憲法学、行政法学、刑法学、民法学、商法学、労働法学、国際法学、国際私法学などに分れる。 けんぽうがく【憲法学】 ※広辞苑より 法学の一部門。憲法および憲法上の諸現象を研究の対象とする学問。国法学。 ◆2.問題状況整理表 基礎法学(理論法学)の主要3分野 憲法学(応用法学)の課題 (1) 法概念論(法とは何か) 1 憲法とは何か(憲法の定義) ⇒(a)実質憲法(国制)と、(b)形式憲法(憲法典)、の区別が重要。 2 法体系の中での憲法の位置づけ ⇒①法段階説(主権者意思[命令]説・・・ケルゼン及び修正自然法論者の法理解)と、②社会的ルール説(ハートの法理解であり、ハイエクの自生的秩序論と親和的)、の区別・評価が重要 (2) 法価値論(法の保障すべき価値は何か)※正義論ともいう(*注1)※法理念論、法目的論ともいう 《1》 法価値全般 1 法価値(正義)一般と「法の支配」論 ※法価値論は、専ら、(a)実質憲法(国制)の在り方に関する分野である。⇒①左翼的・全体主義的価値観と、②保守的・自由主義的価値観、の区別・評価が重要。 2 「立憲主義」論 《2》 個別的法価値 1 主権論(憲法は特定の主権者を規定すべきか) ※主権論について詳細ページ⇒政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 2 人権論(憲法の基礎的な保護領域は何か) ※人権論について詳細ページ⇒「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 3 平和論(奴隷の平和か正戦を肯定するか) (3) 法学的方法論(法価値を如何に実現するか) 前提条件 価値論の把握 1 憲法典(形式憲法)の解釈論 ※法学的方法論は、専ら、(b)形式憲法(憲法典)の解釈・運用に関わる分野であり、具体的な条規について(2)法価値論《2》の 1 ~ 3 の課題に対応した法解釈の対立が見られる。⇒①左翼的・全体主義的解釈と、②保守的・自由主義的解釈、の区別・評価が重要。 2 憲法典(形式憲法)の改廃論 ⇒①護憲論、②改憲論、および③破棄論、の比較・評価が重要。 3 憲法典(形式憲法)案の内容評価 ⇒各々の草案について、(2)法価値論《2》の 1 ~ 3 の課題への対応方針に留意しながら個別に評価していくことが重要。 (*注1)法的な価値は、伝統的に「正義(justice)」という言葉で表現されてきたため、法価値論を正義論ともいう。 ■2.憲法とは何か(法概念論) ◆1.憲法(constitution)の定義 ◇1.実質憲法(国制)と形式憲法(憲法典)の区別 けんぽう【憲法】 constitution ※日本語版ブリタニカ百科事典より 憲法の語には、(1)およそ法ないし掟の意味と、(2)国の根本秩序に関する法規範の意味、の2義があり、聖徳太子の「十七条憲法」は(1)前者の例であるが、今日一般には(2)後者の意味で用いられる。 (2)後者の意味での憲法は、凡そ国家のあるところに存在するが(実質憲法)、近代国家の登場とともにかかる法規範を1つの法典(憲法典)として制定することが一般的となり(形式憲法)、しかもフランス人権宣言16条に謳われているように、①国民の権利を保障し、②権力分立制を定める憲法のみを憲法と観念する傾向が生まれた(近代的意味の憲法)。 1 17世紀以降この近代的憲法原理の確立過程は政治闘争の歴史であった。憲法の制定・変革という重大な憲法現象が政治そのものである。比較的安定した憲法体制にあっても、①社会的諸勢力の利害や、②階級の対立は、[1]重大な憲法解釈の対立とともに、[2]政治的・イデオロギー的対立を必然的に伴っている。 従って、憲法は (a) 政治の基本的ルールを定めるものであるとともに、 (b) 社会的諸勢力の経済的・政治的・イデオロギー的闘争によって維持・発展・変革されていく、・・・という二重の構造を持っている。 2 憲法の改正が、通常の立法手続でできるか否かにより、軟性憲法と硬性憲法との区別が生まれるが、今日ではほとんどが硬性憲法である。 近代的意味での成文の硬性憲法は、 ① 国の法規範創設の最終的源である(授権規範性)とともに、 ② 法規範創設を内容的に枠づける(制限規範性)という特性を持ち、かつ ③ 一国の法規範秩序の中で最高の形式的効力を持つ(最高法規性)。 日本国憲法98条1項は、憲法の③最高法規性を明記するが、日本国憲法が硬性憲法である(96条参照)以上当然の帰結である。今日、③最高法規性を確保するため、何らかの形で違憲審査制を導入する国が増えてきている。 なお、憲法は、①制定の権威の所在如何により、欽定・民定・協約・条約(国約)憲法の区別が、②歴史的内容により、ブルジョア憲法と社会主義憲法、あるいは、近代憲法(自由権中心の憲法)と現代憲法(社会権を導入するに至った憲法)といった区別がなされる。 なお、下位規範による憲法規範の簒奪を防止し、憲法の最高法規性を確保することを、憲法の保障という。 (⇒憲法の変動、⇒成文憲法、⇒不文憲法) 上記のように、憲法(constitution)という概念には、 ① 実質的意味の憲法 (=国制、国体法 constititional law) ⇒本質主義(essentialism)による定義 と、 ② 形式的意味の憲法 (=憲法典 constitutional code) ⇒名目主義(nominalism)による定義 の2つのレベルがあり、 両者を区別しつつ総合的に考察していく必要がある。 そして、これに対応して、憲法論にも、 ① 実質的意味の憲法論 (法価値論=憲法の保障すべき価値は何かを考察する価値論であり、それを具体化すると立法論になる) と、 ② 形式的意味の憲法論 (法解釈論=既に成文化された憲法典の解釈論) の2つの段階があり、 この両者もまた確り区別して考察していく必要がある。 ★補足説明★「実質的意味の憲法」「国体法」「国制」 たとえば「民法」という概念には、①実質的意味の民法(=民法典に限らず「総体としての民法 civil law」を指す)と、②形式的意味の民法(=民法典 civil code という具体的な法律)の二つの意味があり、また「刑法」という概念にも同じく、①実質的意味の刑法(criminal law)と、②形式的意味の刑法(=刑法典 criminal code という具体的な法律)の二つの意味がある。これらから類推されるように、当然「憲法」という概念にも、①実質的意味の憲法(constitutional law)と、②形式的意味の憲法(=憲法典 constitutional code という具体的な法律)の二つの意味があり、これらは確りと区別されて論じられるべきであるが、明治期に constitution(英語)ないし Verfassung(ドイツ語)という概念を日本に導入する際に、専ら②形式的意味の憲法(憲法典)という意味で「憲法」という言葉が用いられてしまったために、現在の日本では、憲法とは専ら②憲法典である、とする理解(すなわち、①の意味を見落とした状態での理解)が一般的となってしまっている。 これに関しては、戦前の日本では、①実質的意味の憲法(国制)を意味する言葉として、明治以前から「国体」という用語が普及していたという裏の事情がある。この「国体」という用語は、昭和初期に濫用されて右翼的イデオロギーの色彩を強く帯びてしまったことから、戦後はこの用語の使用自体がタブー視される状態となってしまい、なおさら現在の日本人が、①実質的意味の憲法、を考えることを困難にしている。(※「国体」については⇒国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書)参照) こうした①実質的意味の憲法 constitutional law を素直に翻訳すれば「国体法」となるが、ここでは主に、よりイデオロギー色の薄い「国制」という訳語を用いることとする。(※なお、アリストテレス著として伝わる『アテナイ人の国制』の英語版書名は 『The Athenian Constitution』であり、①の意味での constitution の訳語として「国制」が現時点ではやはり一番適切である。) ◇2.法概念論(憲法とは何か)と法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の区別 左派及び右派から、しばしば繰り返される「憲法の定義」として、次のようなものがある。 (1) 憲法とは、政治権力者を拘束し国民を守るための法規範であり、それに反するものは憲法ではない。 (主に左派から) (2) 憲法とは、国の歴史を踏まえた国体を成文化した法規範であり、それに反するものは憲法ではない。 (主に右派から) 確かに、正当な憲法典には、(1)および(2)のそれぞれの要素が認められるべきであるが、結論から先にいえば、それらは、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)のカテゴリーであって、「憲法の定義」すなわち①法概念論(憲法とは何か)のカテゴリーではない。 このようなカテゴリー・ミスを避ける意味でも、当ページで薦めているような、①法概念論⇒②法価値論⇒③法学的方法論、という順序を踏まえた憲法問題の検討が肝要である。 因みに、(1)政治権力者をほとんど拘束できない憲法典や、(2)自国の歴史やこれまでに培ってきた伝統的な国体を全く反映せず、むしろそれらの積極的な破壊を目的とした憲法典も、世界には幾つも存在したし、現在でも存在しており、それらを「憲法と認めない」とするのは単なる個人的な価値観の表明でしかなく、何ら憲法問題の分析・明晰化に役立たない。 それよりも先ずは「憲法」という概念を、 1 実質憲法(国制、国体法)と 2 形式憲法(憲法典)に確り区別して、この両者の関係から、(a)国家の在り方(=伝統国家/革命国家/新興国家)、(b)憲法典の在り方(保守型/革命型/創成型)を考察していく方が遥かに有意義である。 ◇3.二つの憲法概念から考える国家の在り方(伝統国家・革命国家・新興国家) ※■3.- ◆2.の整理図 で詳述するように、日本国憲法に関しては、 (1) 左翼側(主に憲法学者)は、これを「八月革命」の結果成立した革命型憲法と捉え、戦前の国制を積極的に否定・破壊する方向への解釈・運用を強く要求してきたが、 (2) 保守側(主に日本政府)は、そのようなフィクションを認めず、日本国憲法はあくまで大日本帝国憲法の改正憲法典として成立したものとして保守的解釈・運用を図ってきており、 戦後の日本では、(a)国家の在り方(=伝統国家か革命国家か)、(b)憲法典の在り方(=保守的解釈が正当かそれとも左翼的解釈が正当か)を巡って、左翼側・保守側の激しい対立が継続されてきた。 こうけんてきかいしゃく【公権的解釈】※日本語版ブリタニカ百科事典より 権限のある国家機関によって行われる法の解釈。有権解釈ともいう。これによって解釈が公定されるという点で、法学者や私人の解釈よりも重要な意味をもつ。公権的解釈には、法律によるもの(立法解釈)、行政機関によるもの(行政解釈)、裁判所によるもの(司法解釈)がある。 ※つまり、左翼的な憲法学者がどれほど「これは憲法学界の通説である(例:八月革命は憲法学界の通説であるetc.)」と唱えようと、日本政府がこれまでに表明してきた見解(例:国体は戦前/戦後で一貫しているetc.)が効力を持ったオフィシャルな解釈(=公権的解釈・有権解釈)なのだから、我々が戦後の日本を伝統国家と認め、日本国憲法を保守的に解釈することには正当な理由があるのだが、それ以外にも、下記◆2.に示すように、戦後日本の左翼的憲法学には論理面から致命的な欠陥が指摘可能である。 ◆2.法体系の2つの捉え方 ◇1.ケルゼンおよび修正自然法論者による法段階説(半世紀前の法学パラダイム) ※図が見づらい場合⇒こちら を参照 ※①宮澤俊義(ケルゼン主義者)・②芦部信喜(修正自然法論者)に代表される戦後日本の左翼的憲法学は「実定法を根拠づける“根本規範”あるいは“自然法”」を仮設ないし想定するところからその理論の総てが始まるが、そのようなア・プリオリ(先験的)な前提から始まる論説は、20世紀後半以降に英米圏で主流となった分析哲学(形而上学的な特定観念の刷り込みに終始するのではなく緻密な概念分析を重視する哲学潮流)を反映した法理学/法哲学(基礎法学)分野では、とっくの昔に排撃されており、日本でも“自然法”を想定する法理学者/法哲学者は最早、笹倉秀夫(丸山眞男門下)など一部の化石化した確信犯的な左翼しか残っていない。このように基礎法学(理論法学)分野でほぼ一掃された論説を、応用法学(実定法学)分野である憲法学で未だに前提として理論を展開し続けるのはナンセンスであるばかりか知的誠実さを疑われても仕方がない行いであり、日本の憲法学の早急な正常化が待たれる。(※なお、近年の左翼憲法論をリードし「護憲派最終防御ライン」と呼ばれている長谷部恭男は、芦部門下であるが、ハートの法概念論 を正当と認めて、芦部説にある自然法・根本規範・制憲権といった超越的概念を明確に否定するに至っている。) ◇2.ハートによる社会的ルール説(現代の世界標準の法学パラダイム) ※上記のように、ハートの法=社会的ルール説は、現実の法現象について詳細で明晰な分析モデルを提供しており、特定の価値観・政治的イデオロギーに基づく概念ピラミッドに過ぎない法=主権者意思[命令]説の法体系モデルを、その説得力において大幅に凌駕している。 ※上図について、詳細な解説は法と権利の本質に関する2つの考え方 へ。 ※このように、①法概念論(憲法とは何か)の段階で、既に左翼的憲法論はハッキリと論理破綻しているのであるが、以下更に、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の段階での 左翼的スタンス vs. 保守的スタンス 両者の憲法に求める価値(理念・目的)を対比して、寛容で価値多元的な自由主義社会を支え得る法価値は保守的スタンスのものであることを説明していく。 ■3.憲法の保障すべき価値、理念・目的は何か(法価値論) → 主として、実質憲法(国制)に関する議論領域 (1) ここでは、まず、法価値(=正義)一般について、それと密接に関連した「法の支配」理念と関連づけて整理・明晰化し、 (2) 次に、「法の支配」理念から発展した「立憲主義」理念について整理・明晰化し、 (3) さらに、憲法に特有の法価値論(①主権論、②人権論、③平和論)について、法解釈論と関連づけて整理・明晰化していく。 ※ポイントは、「正義」概念・「法の支配」理念・「立憲主義」理念や、①主権論・②人権論・③平和論に関しても、自由概念のケース(※リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜参照)と同様に、 1 保守的(自由主義的=価値多元的)スタンスによる理解と、 2 左翼的(全体主義的=価値一元的)スタンスによる理解とが、鋭く対立しているという基本構図を正しく把握することである。 ◆1.法価値(=正義)一般と、「法の支配」 ほうかちろん【法価値論】legal axiology 日本語版ブリタニカ 法的な価値について考察する研究分野。法的な価値は正義という言葉で表現されることが多いから、正義論といってもよい。 古代ギリシア以来、法哲学の主要分野をなしてきたが、最近は、①規範的倫理学と、②分析的倫理学の区別に対応して、①規範的法価値論と②分析的法価値論(メタ法価値論)とが明確に区別されるようになった。 せいぎ【正義】 広辞苑 ① [荀子(正名)]正しいすじみち、人がふみ行うべき正しい道。「-を貫く」 ② [漢書(律暦志上)]正しい意義または注解。「尚書-」 ③ (justice) (ア) 社会全体の幸福を保障する秩序を実現し維持すること。プラトンは国家の各成員がそれぞれの責務を果たし、国家全体として調和があることを正義とし、アリストテレスは能力に応じた公平な分配を正義とした。近代では社会の成員の自由と平等が正義の観念の中心となり、自由主義的民主主義社会は各人の法的な平等を実現した。 これを単に形式的なものと見るマルキシズムは、真の正義は社会主義によって初めて実現されると主張するが、現在ではイデオロギーを超えた正義が模索されている。 (イ) 社会の正義に適った行為をなしうるような個人の徳性。 せいぎ【正義】justice 日本語版ブリタニカ 人間の社会的関係において実現されるべき究極的な価値。 . 善(※注: agothos, bonum, good)と同義に用いられることもあるが、 (1) 善が、主として人間の個人的態度にかかわる道徳的な価値を指すのに対して、 (2) 正義は、人間の対他的関係の規律にかかわる法的な価値を指す。 . 正義とは何か、という問題については、古来さまざまな解答が示されてきたが、一般的な価値ないし価値基準に関する見解と同様に 1 正義を客観的な実在と考える客観主義的・絶対主義的正義論と、 2 正義を主観的な確信と考える主観主義的・相対主義的正義論とに大別できよう。 法思想の領域では、だいたいにおいて、自然法論が 1 前者に、法実証主義が 2 後者に、属する。 . 従来の正義論のうちでは、アリストテレスやキケロの見解が名高く、与えた影響も大きい。 (ア) アリストテレスは、道徳と区別される正義(特殊的正義)について、①配分的正義と、②交換的正義(平均的正義、調整的正義とも訳される)とを区別し、 ① 前者は、公民としての各人の価値・功績に応じて、名誉や財貨を配分することにおいて成立し、 ② 後者は、私人としての各人の相互交渉から生じる利害を平均・調整することにおいて成立する、とした。 (イ) キケロは、この①配分的正義と同様な内容を、「各人に彼のものを」という公式で表現した。 ほう-の-しはい【法の支配】 (rule of law) 広辞苑 イギリスの法律家コークが、国王は神と法の下にあるべきである、として、ジェームズ1世の王権を抑制して以来、「人の支配」に対抗して認められるようになった近代の政治原理。コークのいう法は、イギリスの判例法で、立法権をも抑制する点で、法治主義とは異なるが、後に法治主義と同義に用いることもある。 政治思想・政治哲学の根本的価値が「自由(freedom/liberty)」という言葉で表現されるように、 法思想・法哲学の根本的価値は「正義(justice)」という言葉で伝統的に表現されてきた。 ここで「正義」概念を概括するとともに「法の支配」理念との関係についても整理する。 ※サイズが画面に合わない場合はこちら 参照。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (with) この「正義」概念に基く法理念・法思想を、一般に「法の支配(rule of law)」と呼んでいる。 ここで「法の支配」理念について整理する。 ※サイズが画面に合わない場合はこちら をクリック願います。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (with) ◇1.参考ページ 法価値論(正義論)まとめページ 「正義」とは何か ~ 法価値論まとめ+「法の支配」との関係 「法の支配」理念のまとめページ 「法の支配(rule of law)」とは何か 「自由」概念のまとめページ リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 ◇2.「正義」「法の支配」まとめ 以上のように、「正義」概念・「法の支配」理念に関して、主に形式的・手続的正義論に依拠する 1 保守的スタンスによる理解と、実質的正義論に依拠する 2 左翼的スタンスによる理解が対立するが、1960年代以降、英米圏で主流となっている理解は明らかに 1 の側であり、それを反映して、元々は故・芦部信喜教授の門下であった長谷部恭男・東大法学部教授は近年、ドイツ法学に由来する師の論を完全に否定する次のような見解を打ち出すに至っている。 長谷部恭男『法とは何か 』(2011年刊) p.148-9 法の支配という概念もいろいろな意味で使われます。ときには、人権の保障や民主主義の実現など、あるべき政治体制が備えるべき徳目のすべてを意味する理念として用いられることもありますが、こうした濃厚な意味合いで使ってしまうと、「法の支配」を独立の議論の対象とする意味が失われます。 法の支配は人の支配と対比されます。ある特定の人(々)の恣意的な支配ではなく、法に則った支配が存在するためには、そこで言う「法」が人々の従うことの可能な法でなければなりません。そのために法が満たすべき条件として、次のようないくつかの条件が挙げられてきました。・・・(中略)・・・。こうした、法の公開性、明確性、一般性、安定性、無矛盾性、不遡及性、実行可能性などの要請が、法の支配の要請と言われるものです。 日本の憲法の教科書類を見ると、「法の支配」の名の下に、人権の保障や民主主義、権力分立など、望ましい政治体制が備えるべきあらゆる徳目が並べられていることが少なくありません。しかし、ここまで濃厚な意味で「法の支配」を理解してしまうと、法の支配を独立して検討の対象とする意味はほとんどないように思われます。・・・(中略)・・・。こうした「法の支配」ということばの使い方の背景には、善いことである以上は、そのすべてが予定調和して100パーセント実現できるはずだというバラ色の想定があるのではないでしょうか。私としては・・・限定的な意味での「法の支配」を議論の対象とする方が、学問のあり方としても生産的だし、こうした意味を前提としてもっぱら議論をしている諸外国の研究者と議論するときも、誤解が少なくて善いのではないかと考えます。 ⇒長谷部教授は憲法改正に反対する護憲論者であるが、こうした左派の憲法学者であっても、英米圏でとっくの昔に標準となった法学パラダイム(ハートの法=社会的ルール説)に基づく憲法論議に追いついていこうとするだけの学問的誠実さのある者は、「正義」概念・「法の支配」理念に関しては既に 1 保守的(自由主義的=価値多元的)スタンスによる理解が正解であることをはっきりと認めている。 これに対して、故・芦部信喜教授の憲法論の継承者である高橋和之教授を初めとする多くの左派憲法学者は残念ながら、未だに半世紀以上前(1961年のH.L.A.ハート『法の概念』刊行以前)のドイツ法学系パラダイム(法段階説・法=主権者意思説)に依拠する日本ローカルの憲法学の殻に閉じ籠ったままであるが、こうしたガラパゴス状態も長谷部教授などの貢献により今後は徐々に正常化に向かっていくものと思われる。 ※以下、「法の支配」理念から発展した「立憲主義」理念について整理します。 ◆2.「立憲主義」の定義 日本の憲法の教科書では「法の支配」の名の下に“人権の保障や民主主義、権力分立など、望ましい政治体制が備えるべきあらゆる徳目が並べられている”という上記の長谷部教授の批判は、「立憲主義」に関してもそっくりそのまま当て嵌まる。 ⇒「法の支配」の意味を限定すべきであるのと同様に、「立憲主義」という言葉の意味も限定すべきである(すなわち、下記の阪本昌成氏や長谷部恭男氏の論が正解となる)。 ◇1.各論者による説明 政治的スタンス 論者 内容 (1) 保守主義 百地章 「立憲主義とは、国家の統治が憲法にもとづいて行われることである。」(『憲法の常識 常識の憲法』p.32) (2) リベラル右派 阪本昌成 (1) 立憲主義の意義先の [1] で私は、《統治とは、国家機関を通して為す、一元的・統一的な権力支配だ》と述べた。統治は、限られたリソースを巡る利害の対立を調整しながら、その配分のあり方を権力的に決定する恒常的かつ永続的な国家作用である。この権力的、永続的な統治活動の牙を抜いて正当な枠に閉じ込めようとするにが、規範的意味での国制の役割である。統治を、流動的で恣意的な政治に委ねることなく、国制のもとに規律し安定化させる思考を「立憲主義 constitutionalism」という。近代国家が規範的意味での国制によって統制されるに至った段階のものは、「近代立憲主義国家」といわれる。これは、国家という強制の機構から各人の「自由」を擁護する、統治上のルールとしての憲法をもっている国家のことである。(『憲法1 国制クラシック』p.26) (2) 立憲主義の展開(中略)自然権の保全と権力分立という二つの要素を憲法の必須要素だと明言したのが、フランス人権宣言16条の「権利の保障が確保されておらず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法を持たない」という有名なフレーズである。この二つの要素を満たす憲法を「立憲主義的憲法」と一般にいわれることがある。つまり、《憲法とは、人権宣言と権力分立を含む成文の法文章だ》、 《この法文章は、国家樹立の際の社会契約および憲法協約を成文化したものであるから、主権者をも統制する法力をもっている》という思想である。 今日、立憲主義を想起する場合、人々の脳裏に浮かぶのは、一般にこのタイプである。が、フランス人権宣言とその16条は近代立憲主義のモデルではなく、「このタイプだ」と簡単に片付けることは正確でない。フランス的立憲主義とアメリカ的立憲主義は、憲法に関する見方を大きく異にしているのだ。 〔D〕近代立憲主義の枝分かれフランス型は、憲法をあるべき国家の最適モデルに適合させようとする理論に従って設計しようとした。なかでも、憲法を制定する力を民主的に創造するための人為的理論が最重要視された。これが、後の [39] でふれる憲法制定権力の理論である。人権も、まったく新たに創設され、最適規範に相応しい内容を人為的に持たされた。人権は、人が精神的にも物質的にも、あるべき姿となるための規範だった。こうした憲法のモデルが理論通りには運ばないと判明したときには、また別の理論に従って人為的に憲法が制定された。フランスの憲法は、何度も何度も制定されては軌道修正された。そして、結局のところ、自由の構成(constitution)に失敗したのだった。これに対してアメリカ型は、経験と伝統とを基礎とする憲法制定の道を辿った。理論的な最適規範を設計したところで、上手く定着することはない、と建国の父たちは知り尽くしていた。それと同時に、憲法制定会議を頻繁に開設して討議を繰り返すと、統治力学の振り子が大きく揺れ過ぎることも予知していた。建国の父たちは、モンテスキューが理想としていた「中庸な統治体制=混合政体」から多くを学んだ(合衆国憲法はJ. ロック(1632~1704年)の影響を受けて制定された、といわれることがあるが、これは誤診だと私は考えている)。合衆国憲法が、House of the Senates(通常、「上院」と訳される元老院=貴族政的要素+連邦制)と House of the Representatives(通常、「下院」と訳される庶民院=民主政的要素)という権力分立、さらには、大統領という「民主化された君主」を置いたのは、そのためだった。また、アメリカ建国の父たちは、人間の理性・知性の限界を知っていた。人間は、有徳の存在ではなく、権力欲に満ちており、私利を追求するにあたって公共の利益を口にすること等々を建国の父たちは知っていた。合衆国憲法は、人権保障にあたっても、“自然権を実定化する”とは考えなかった。権利章典(Bill of rights)は、歴史的・経験的に徐々に姿を現してきた人の権利を確認するものだった(*注1)。 (*注1) アメリカ合衆国憲法における権利章典について 合衆国憲法にみられる「個人の自由と権利」は、自然権思想の影響をさほど受けてはいない。そこでのカタログは、歴史的にそれまで存在してきた権益を確認したものである。『憲法2 基本権クラシック』 11頁を参照願う。 (3) 立憲主義のふたつのモデル - 法の支配か民主主義か以上のように、一言で「近代立憲主義」という場合でも、一方には純粋理論型または超越型があり、他方には経験型・伝統重視型がある。見方を換えていえば、フランス型は 民意を統治過程に統合するなかで同時に自由を作り出すための憲法構造を理論的に追究したのに対して、アメリカ型は 多元的な民意を統治過程に多元的に反映させる憲法構造を伝統のなかから発見しようとしたのだった。アメリカ型立憲主義は、《個人の権利自由を擁護するための制度的装置として権力分立制を用意する》とよくいわれる。他方、憲法の民主化を重視するフランスにあっては、議会に反映される一般意思のもとに行政と司法を置くことが、その眼目であると考えられた。J. ルソー(1712~1778年)の影響だろう。そのために、議会中心の統治が理想とされた。これに対して、合衆国憲法は、モンテスキューの理論モデルを参考としながら、民主主義を万能としない権力分立制を導入した。アメリカ憲法は、「立憲主義=法の支配=権力分立」という等式を基礎として制定されたのである。 立憲主義のモデルをアメリカに求める人物は、《立憲主義とは、法の支配と同義であり、それは民主主義の行き過ぎに歯止めをかける思想でもある》と考える傾向にある。これに対して、立憲主義モデルをフランスに求める人は、「立憲民主主義」という言葉を多用する傾向がある。後者は、「立憲」の中に権力分立と人権尊重の精神を含め、「民主主義」の中に、「国民主権」と議会政を含めているようである(民主主義の中に人権尊重を忍び込ませる論者もいる)。が、それらの一貫した関連性をそこに見て取ることは困難であるように私にはみえる(自由主義と民主主義との異同については、後の [26] でふれる)。 私は、《立憲主義とは、誰が主権者であっても、また、統治権がいかに民主的に発動されている場合であっても、主権者の意思または民主的意思を法のもとに置こうとする思想だ》と考えている。 本書が「立憲民主主義」という言葉を決して用いないのは、そのためである。(『憲法1 国制クラシック』p.31) (3) リベラル左派 長谷部恭男 近代以降の立憲主義とそれ以前の立憲主義との間には大きな断絶がある。近代立憲主義は、価値観・世界観の多元性を前提とし、さまざまな価値観・世界観を抱く人々の公平な共存をはかることを目的とする。それ以前の立憲主義は、価値観・世界観の多元性を前提としていない。むしろ、人としての正しい生き方はただ一つ、教会の教えるそれに決まっているという前提をとっていた。正しい価値観・世界観が決まっている以上、公と私を区別する必要もなければ、信仰の自由や思想の自由を認める必要もない。(長谷部恭男『憲法とは何か』p.69) ・・・近代ヨーロッパで立憲主義が成立する経験においては、宗教戦争や大航海を通じて、この世には比較不能な多様な価値観が存在すること、そして、そうした多様な価値観を抱く人々が、それにもかかえわらず公平に社会生活の便宜とコストを分かち合う社会の枠組みを構築しなければならないこと、これらが人々の共通の認識となっていったことが決定的な意味を持っている。立憲主義を理解する際には、…制度的な徴表のみにとらわれず、多様な価値観の公平な共存という、その背後にある目的に着目する必要がある。(長谷部恭男『憲法とは何か』p.71) ヨーロッパでの成立の経緯に照らしてみればわかるように、立憲主義は、多様な価値観を抱く人々が、それでも協働して、社会生活の便益とコストを公正に分かち合って生きるために必要な、基本的枠組みを定める理念である。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.178) そのためには、生活領域を公と私とに人為的に区別すること、社会全体の利益を考える公の領域には、自分が一番大切だと考える価値観は持ち込まないよう、自制することが求められる。・・・そうした自制がないかぎり、比較不能な価値観の対立は、「万人の万人に対する闘争」を引き起こす。・・・(中略)・・・。立憲主義はたしかに西欧起源の思想である。しかし、それは、多様な価値観の公正な共存を目指そうとするかぎり、地域や民族にかかわりなく、頼らざるをえない考え方である。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.178) 立憲主義にもとづく憲法・・・は、人の生きるべき道や、善い生き方について教えてくれるわけではない。それは、個々人が自ら考え、選びとるべきものである。憲法が教えるのは、多様な生き方が世の中にあるとき、どうすれば、それらの間の平和な共存関係を保つことができるかである。憲法は宗教の代わりにはならない。「人権」や「個人の尊重」もそうである。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.179) 立憲主義は現実を見るように要求する。世の中には、あなたと違う価値観を持ち、それをとても大切にして生きている人がたくさんいるのだという現実を見るように要求する。このため、立憲主義と両立しうる平和主義にも、おのずと限度がある。現実の世界でどれほど平和の実現に貢献することになるかにかかわりなく、ともかく軍備を放棄せよという考え方は、「善き生き方」を教える信仰ではありえても、立憲主義と両立しうる平和主義ではない。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.179) 「立憲主義ということばには、広狭二通りの意味がある。本書で「立憲主義」ということばが使われるときに言及されているのは、このうち狭い意味の立憲主義である。広義の立憲主義とは、政治権力あるいは国家権力を制限する思考あるいは仕組みを一般的に指す。「人の支配」ではなく「法の支配」という考え方は広義の立憲主義に含まれる。古代ギリシャや中世ヨーロッパにも立憲主義があったといわれる際に言及されているのも広義の立憲主義である。他方、狭義では、立憲主義は、近代国家の権力を制約する思想あるいは仕組みを指す。この意味の立憲主義は近代立憲主義ともいわれ、私的・社会的領域と公的・政治的領域との区別を前提として、個人の自由と公共的な政治の審議と決定とを両立させようとする考え方と密接に結びつく。二つの領域の区分は、古代や中世のヨーロッパでは知られていなかったものである。」(『憲法とは何か』p.68) (4) 左翼 芦部信喜 ※芦部は「近代立憲主義(あるいは現代立憲主義)は~という性質を持っている」とその属性を述べるものの、「立憲主義とは何か」という肝心の概念論・理念論に関しては慎重に口を閉ざしている。これは芦部の憲法論が英米圏で主流となっている「立憲主義」や「法の支配」の概念・理念理解とは実は無縁の古いドイツ系法学に依拠していることに原因がある。⇒芦部の後継者である高橋和之も同様。 (5) 中間 佐藤幸治 ※佐藤も芦部と同様に、「近代立憲主義」と「現代立憲主義」を対比して言及するものの、立憲主義そのものの概念・理念の説明はない。つまり芦部や佐藤の世代ではベースがまだドイツ系法学であったために、英米系の「立憲主義」「法の支配」といった概念・理念を英米圏の用法の通りに消化できていないのである。 ◇2.参考ページ 「立憲主義」理念のまとめページ 立憲主義とは何か ※以上で法価値全般に関わる事項の説明を終わり、憲法に特有の法価値に関する検討に移ります。 ◆3.憲法に特有の法価値論+法解釈論 - 整理図 ※サイズが画面に合わない場合はこちら をクリック願います。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (with) ◇1.参考ページ 「法の支配」と国民主権の関係 リベラル・デモクラシー、国民主権、法の支配 国民の権利・自由と人権の関係 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 芦部信喜・佐藤幸治・阪本昌成・中川八洋etc.の「国民主権論」比較と評価 政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 関連用語集 【用語集】主権論・国民主権等 ※このように、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の段階で、(1)左翼的スタンスによる理解と(2)保守的スタンスによる理解とが激しく対立するが、 寛容で自由な価値多元的な社会を保障するのは、二つの自由論の場合と同じく、(2)保守的スタンスによる理解の方である。 ※なお、ここで一つ留意事項として、上図には表記がないが、(1)(2)の他にもう一つ、(3)右翼的スタンスによる理解というものが想定可能である。この(3)右翼的スタンスは、(1)左翼的スタンスの場合と同じく全体主義的であって、寛容で自由な社会に相応しくない理解である。(この(3)右翼的スタンスと(2)保守的スタンスとの区別は、■4.-◆1.-◇2.で図解する) ■4.そうした価値、理念・目的を如何に実現するか(法学的方法論) → 主として、形式憲法(憲法典)に関する議論領域 ◆1.現行憲法典の解釈論 ◇1.左翼的(全体主義的)解釈vs.保守的(自由主義的)解釈 ※■3.- ◆2.の整理表下段(形式的憲法論の欄) を参照 ◇2.日本の代表的な憲法論 - 内容紹介・評価 日本の様々な憲法論を政治的スタンスに当て嵌めて概括すると下表のようになる。 ※サイズが画面に合わない場合はこちら をクリック願います。 政治的スタンス 代表的論者 ベースとなる思想家/思想 補足説明 詳細内容 (1) 極左 伊藤真など護憲論者 J.-J.ルソーの社会契約論からさらに、アトム的個人主義と集産主義の結合形態(=左翼的全体主義)※説明に接近 「人権」「平和」を過度に強調し絶対視する共産党・社民党・民主党左派系の法曹に多い憲法論でありイデオロギー色が濃く法理論というよりは左翼思想のプロパガンダである(左の全体主義) (2) 左翼 芦部信喜高橋和之 修正自然法論(法=主権者意思[命令]説に自然法を折衷)+J.-J.ルソーの社会契約論 宮沢俊義→芦部信喜と続く戦後日本の憲法学の最有力説であり通説※宮沢は有名なケルゼニアン(ケルゼン主義者)。芦部は自然法論者だが人権保障をア・プリオリ(先験的)な「根本規範」と位置づけており、その表面的な米国判例理論の紹介はポーズに過ぎず、実際には依然ケルゼン/ラートブルフ等ドイツ系法学の影響が強い よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) (3) リベラル左派 長谷部恭男 H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール説)を一部独自解釈※なお長谷部は社会契約論に依拠しているのか曖昧でハートの法概念論と辻褄が合うはずのハイエクの自由論は故意に無視している 近年の左派系憲法論(護憲論)をリードしている長谷部は芦部門下であるが、師のようなドイツ系法学パラダイムはもはや世界の憲法学の潮流からは通用しないことを認識しており、師の憲法論の中核である、①根本規範を頂点とした法段階説+②制憲権(憲法制定権力)説、を明確に否定して、英米系法学パラダイムへの接近を図っている。(※但しハートまでは受容しながらもハイエクを拒否している長谷部の憲法論は中途半端の誹りを免れず、これを一通り学んだ後は、より整合性のとれた阪本昌成の憲法論へと進むべきである) よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) (4) 中間 佐藤幸治 人格的自律権に限定して自然法を認める独自説+J.ロックの社会契約論 芦部説の次に有力な憲法論であり、芦部説よりも現実妥当性が高いので重宝されるが(佐藤は佐々木惣一から大石義雄へと続く京都学派憲法学の系統)、法理論としては妥協的でチグハグと呼ばざるを得ない 佐藤幸治『憲法 第三版』抜粋 (5) リベラル右派 阪本昌成、※ H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール説)+F.A.ハイエクの自由論 20世紀後半以降の分析哲学の発展を反映した英米法理論に基礎を置く憲法論であり、法理論としての完成度/説得力が最も高いが、日本では残念ながら非常に少数派 阪本昌成『憲法1 国制クラシック』 (6) 保守主義 中川八洋日本会議 E.コークの「法の支配」論+E.バークの国体論 日本会議・チャンネル桜系の憲法論も基本的にこちらに該当する。法理論というより「国民の常識」論であり、心情面からの説得力が高いが、(5)の法理論を一通り押えた上でこの立場を取らないと、いつの間にか(7)に堕する危険があるので注意。 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋 (7) 右翼・極右 いわゆる無効論者 ヘーゲルの法概念論・共同体論およびそれに類似した全体主義的論調 「伝統」「国体」などを過度に強調し絶対視して「右の全体主義」化した憲法論(左翼憲法論の裏返しであり、左翼からの転向者が嵌り易い。法理論というより右翼イデオロギーのプロパガンダ色が濃い) ※政治的スタンス5分類・8分類+円環図 -... ※サイズが合わない場合はこちら をクリック ⇒上図の詳しい説明は、政治の基礎知識、政治学の概念整理と、政治思想の対立軸 参照。 政治的スタンス毎の憲法論の違いは、①「人権」と②「国民主権」の捉え方に顕著に現れる。このうち、①「人権」に関しては、「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のためにを参照。政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価では、(2)~(6)の各々の政治的スタンスの代表的な②「国民主権」論を列記したのち、総括する。 ◆2.憲法典の改廃論 憲法典の改廃論 内容 参考ページ (1) 改憲論 ① 保守的改憲論 保守主義的・自由主義的な法価値(理念/目的)の、より確実な実現を目指す改憲論 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋 ② 左翼的改憲論 左翼的・全体主義的な法価値(理念/目的)の、より確実な実現を目指す改憲論 ③ 中間的改憲論 それほど明確なポリシーがあるわけではない(=保守主義的とも左翼的とも言い難い)が、一応は憲法9条の改正など最低限の提言内容は持つ改憲論 (2) 護憲論 ① 左翼的護憲論1(芦部信喜説準拠) 「人権」「平和」理念を絶対視して、彼らがその理念を体現すると考える現行の憲法典の絶対的維持を訴える論。しかし、■2.で説明したように、芦部説などのベースとなっている法概念理解は実際には単なる左翼イデオロギーの刷り込みでしかなく「自由で寛容な価値多元的な社会を支える憲法構想」としては完全に破綻している。 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) ② 左翼的護憲論2(長谷部恭男説準拠) 自衛隊の存在などは「憲法の変遷」があった(=条文の変化はないが、その解釈が変化したことにより合憲となった)として現状追認する一方で、現行憲法典の条文自体には「世界平和の希求」「人権価値実現の目標プログラム」など将来に向けての積極的価値を認めて、改憲に反対する論 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) ③ いわゆる真正護憲論(新無効論) この論の当否についてはネットなどで各自チェックするのが望ましい。一つ指摘事項を書くとすれば、この論のベースとなる法概念理解は、実は芦部信喜に代表される①左翼的護憲論1の法段階説(根本規範・自然法論などを強調するドイツ法学系の法概念理解)と同じ(=左翼的護憲論が「人権」「平和」を絶対視するところを、この論では彼らの考える「国体」を絶対視している、という違いがあるだけ)であり、①左翼的護憲論1と同じく、現代の法学パラダイムから全く落伍した時代遅れの論である、ということである。そのほか、この論には法的議論として様々な無理があり、一定の法学知識のある層からは全く相手にされていない が、一般向けのプロパガンダとしては中々人気のある論となっている。 国体法(不文憲法)と憲法典(成文憲法) (3) 破棄論 ① 占領憲法失効・破棄論(菅原裕説が代表的) 主権回復(1952.4.28)直後には一定の説得力と賛同者をもっていた論であったが、現在では最早現実妥当性がない無責任な論である。1950年代前半迄であれば、現行憲法を破棄・失効させ明治憲法を復活させてそのまま運用することは何とかギリギリで可能だったかも知れないが、戦後日本社会の様相を反映した複雑・多様な法制度が整備された現在では、代替案も示せずに「現行憲法を破棄・失効せよ」とだけ強弁するだけでは済まされない。 ◆3.憲法典改正案 ◇1.現在提案されている種々の改憲案 ① 中川八洋草案 保守的改憲案の代表例 ② 日本会議の提言 保守的改憲案の代表例 ③ 産経新聞案(2013年) 「国民の憲法」要綱 ④ 読売新聞案(2004年) 読売新聞社・憲法改正2004年試案 ⑤ 自民党案(2012年) 現行憲法・自民党改憲案(対照表) ⑥ 国立国会図書館編・改憲案一覧(2005年) 主な日本国憲法改正試案及び提言 ◇2.日本国憲法の構成と、保守的スタンスから見た改正の要否 憲法典の構成 保守的スタンスから見た改正の要否、改正内容 前文 抜本的な書換が必要 自虐的文言・空想的国際協調主義などの全面的排除 憲法の基本理念や解釈基準を明記する部分だが、現状は占領軍のポジション・トークに過ぎない部分が目立ち、抜本的な書換が必要である。 本文 (1) 固有規定1 1 第一章(天皇) 要検討 具体的な改正内容は慎重な検討を要する 国の在り方や国政の基本方針を明記する部分だが、文理解釈のままでは実質憲法(国制)とズレが生じるために、現状では相当に苦しい目的論的解釈が必要となっている箇所が多く、大幅な書換が必要である。 2 第ニ章(戦争の放棄) 抜本的な書換が必要 正当な戦力の保持・行使の明記etc. (2) 権利章典 1 第三章(国民の権利及び義務) 小規模な修正 普遍的人権ではなく国民の自由・権利の保障etc. 規定内容は実はかなり優秀であり、現在の基本線を外した修正は不要と思われる。 (3) 統治機構 1 第四章(国会) 小規模な修正 参議院の在り方etc. 規定内容は実はかなり優秀であり、現在の基本線を外した修正は不要と思われる。 2 第五章(内閣) 内閣権限の強化、国家安全保障の不備対応etc. 3 第六章(司法) 国民審査制度の不備対応etc. 4 第七章(財政) 5 第八章(地方自治) (4) 固有規定2 1 第九章(改正) 要検討 96条の2/3条項については賛否両論あり 要検討。 2 第十章(最高法規) 中規模の修正 人権の過度の強調の排除、最高法規性の定義再検討etc. (5) 経過規定 1 第十一章(補則) - 新たな経過規定が必要 本文ではなく附則とするのが合理的である。 ◇3.改憲案の具体例(自民党・憲法改正草案(2012年版)+中川八洋草案) 1 自民党 憲法改正草案(2012年版) (※中川八洋『国民の憲法改正 』の指摘事項を付記) 現行憲法-自民党草案-中川草案(対照表) を参照 ■5.ご意見、情報提供 ページ内容向上のためのご意見・情報提供を歓迎します。 ↓これまでの全コメントを表示する場合はここをクリック +... 保守主義的な憲法論・参考サイト http //blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/aa74d73e62cc74859dbc4e4a1a3e1f83 -- 名無しさん (2013-08-04 15 44 52) 憲法は全文変えていいよ。大日本帝国憲法を再発行で。左翼は韓国と中国に強制送還で。 - 匿名 2016-11-23 03 40 17 以下は最新コメント表示 保守主義的な憲法論・参考サイト http //blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/aa74d73e62cc74859dbc4e4a1a3e1f83 -- 名無しさん (2013-08-04 15 44 52) 憲法は全文変えていいよ。大日本帝国憲法を再発行で。左翼は韓国と中国に強制送還で。 - 匿名 2016-11-23 03 40 17 名前 ラジオボタン(各コメントの前についている○)をクリックすることで、そのコメントにレスできます。 ■左翼や売国奴を論破する!セットで読む政治理論・解説ページ 政治の基礎知識 政治学の概念整理と、政治思想の対立軸 政治思想(用語集) リベラル・デモクラシー、国民主権、法の支配 デモクラシーと衆愚制 ~ 「民主主義」信仰を打ち破る ※別題「デモクラシーの真実」 リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 ※別題「リベラリズムの真実」 保守主義とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ ナショナリズムとは何か ケインズvs.ハイエクから考える経済政策 国家解体思想(世界政府・地球市民)の正体 左派・左翼とは何か 右派・右翼とは何か 中間派に何を含めるか 「個人主義」と「集産主義」 ~ ハイエク『隷従への道』読解の手引き 最速!理論派保守☆養成プログラム 「皇国史観」と国体論~日本の保守思想を考える 日本主義とは何か ~ 日本型保守主義とナショナリズムの関係を考える 右翼・左翼の歴史 靖國神社と英霊の御心 マルクス主義と天皇制ファシズム論 丸山眞男「天皇制ファシズム論」、村上重良「国家神道論」の検証 国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書) 国体とは何か② ~ その他の論点 国体法(不文憲法)と憲法典(成文憲法) 歴史問題の基礎知識 戦後レジームの正体 「法の支配(rule of law)」とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ 立憲主義とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ 「正義」とは何か ~ 法価値論まとめ+「法の支配」との関係 正統性とは何か ~ legitimacy ・ orthodoxy の区別と、憲法の正統性問題 自然法と人権思想の関係、国体法との区別 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 日本国憲法改正問題(上級編) ※別題「憲法問題の基礎知識」 学者別《憲法理論-比較表》 政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) ブログランキング応援クリックをお願いいたします(一日一回有効)。 人気ブログランキングへ
https://w.atwiki.jp/sakura398/pages/171.html
危険は形而上学の欺瞞的な性格の中にある。それは、実際には何らの知識をも与えないのに、知識であるかのような幻想を与える。我々が形而上学を排撃する理由はここにある。・・・(中略)・・・哲学の唯一の仕事は論理的分析 logical analysis である。 ~ R. カルナップ(論理実証主義に立つ哲学者集団「ウィーン学団」のリーダー的学者) 要旨■「平和憲法」「占領憲法」などのレッテル貼りに終始するのではなく、①憲法とはそもそも何か(法概念論)、②憲法の保障すべき価値は何か(法価値論)、③そうした価値を如何に実現するか(法学的方法論)、という憲法問題の課題を一つづつ分析し検証していくことが重要である。 ※本ページが難しい方は、日本国憲法改正問題(初級編)を先ずご覧下さい。 <目次> ■1.はじめに◆1.基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学) ◆2.問題状況整理表 ■2.憲法とは何か(法概念論)◆1.憲法(constitution)の定義◇1.実質憲法(国制)と形式憲法(憲法典)の区別 ◇2.法概念論(憲法とは何か)と法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の区別 ◇3.二つの憲法概念から考える国家の在り方(伝統国家・革命国家・新興国家) ◆2.法体系の2つの捉え方◇1.ケルゼンおよび修正自然法論者による法段階説(半世紀前の法学パラダイム) ◇2.ハートによる社会的ルール説(現代の世界標準の法学パラダイム) ■3.憲法の保障すべき価値、理念・目的は何か(法価値論)◆1.法価値(=正義)一般と、「法の支配」◇1.参考ページ ◇2.「正義」「法の支配」まとめ ◆2.「立憲主義」の定義◇1.各論者による説明 ◇2.参考ページ ◆3.憲法に特有の法価値論+法解釈論 - 整理図◇1.参考ページ ■4.そうした価値、理念・目的を如何に実現するか(法学的方法論)◆1.現行憲法典の解釈論◇1.左翼的(全体主義的)解釈vs.保守的(自由主義的)解釈 ◇2.日本の代表的な憲法論 - 内容紹介・評価 ◆2.憲法典の改廃論 ◆3.憲法典改正案◇1.現在提案されている種々の改憲案 ◇2.日本国憲法の構成と、保守的スタンスから見た改正の要否 ◇3.改憲案の具体例(自民党・憲法改正草案(2012年版)+中川八洋草案) ■5.ご意見、情報提供 ■1.はじめに 憲法問題となると、たちまち「平和憲法を守れ」とか「占領憲法を破棄せよ」といった、左右両極端の立場からのイデオロギッシュなアジテーション・罵倒合戦に終始してしまう現象が頻繁に観測される。(※なお、経済問題に関しても類似した現象がしばしば観測される ⇒ ケインズvs.ハイエクから考える経済政策 参照)。 確かに、現実妥当性に目を瞑って現行憲法典の前文・第9条を厳密に文理解釈すれば、お花畑的な(つまりネガティヴな)意味で「平和憲法」と云えなくもないし、また制定過程を見ればGHQ草案をほぼそのまま翻訳した「占領憲法」と呼ばれるのも致し方ないことではあるが、ここでは、そうした扇動的・プロパガンダ的方向にばかり走り易い言説を避けて、努めて論理的・概念分析的な姿勢を守りつつ憲法問題の整理・解明を目指したい。 そのために、 1 まず、基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学)を区別して、憲法問題の位置づけを明確にし、 2 次に、基礎法学の主要3分野(①法概念論・②法価値論・③法学的方法論)各々について、実用法学の一分野である憲法学(憲法論)の課題を対応させた問題状況整理表を作成し、 3 そして、上流から順に(つまり①法概念論→②法価値論→③法学的方法論の順に)これらの課題を一つづつ分析し整理していく。 ◆1.基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学) きそほうがく【基礎法学】 ※日本語版ブリタニカ百科事典より 実用法学に対して、少なくとも直接的には法的な諸事象の純粋に理論的な認識・解明を目的とする法学。理論法学ともいう。基礎医学という用語にならって第二次世界大戦後の日本で使われるようになった。法社会学、法史学、比較法学、法哲学がこれに属する。 じつようほうがく【実用法学】 ※日本語版ブリタニカ百科事典より 司法、行政、立法などの実用目的に奉仕する法学。法解釈学と立法学がこれに属する。基礎法学と対置されるが、現代の実用法学は基礎法学の成果を積極的に活用して法の合目的的な形成と運用を図る応用科学としての性格を強めつつある。 ほうかいしゃくがく【法解釈学】 Rechtsdogmatik ※日本語版ブリタニカ百科事典より 解釈法学ともいう。実定法の規範的意味内容を体系的・合理的に解明し、裁判における法の適用に影響を与えることを目的とする実用法学。実定法を構成する文字および文章の多義的な規範的意味内容を明確かつ一義的に確定していく作業が法の解釈であるが、この作業には、①文理解釈、②論理解釈、③縮小解釈、④目的論的解釈、⑤反対解釈、⑥勿論解釈、⑦類推解釈などと呼ばれるものがある。法解釈学は古代ローマで成立して以来、現代まで法学の中心的位置を占めているが、時代の変遷によって力点の変化がみられる。自由法論以後の法解釈学は人間や社会に関する経験科学的認識を取り入れた応用科学としての性格を強めている。第二次世界大戦後の日本の法学界における「法解釈学論争」では、法解釈学の実践的性格が強調された。法解釈学は、その対象となる実定法の分野によって、憲法学、行政法学、刑法学、民法学、商法学、労働法学、国際法学、国際私法学などに分れる。 けんぽうがく【憲法学】 ※広辞苑より 法学の一部門。憲法および憲法上の諸現象を研究の対象とする学問。国法学。 ◆2.問題状況整理表 基礎法学(理論法学)の主要3分野 憲法学(応用法学)の課題 (1) 法概念論(法とは何か) 1 憲法とは何か(憲法の定義) ⇒(a)実質憲法(国制)と、(b)形式憲法(憲法典)、の区別が重要。 2 法体系の中での憲法の位置づけ ⇒①法段階説(主権者意思[命令]説・・・ケルゼン及び修正自然法論者の法理解)と、②社会的ルール説(ハートの法理解であり、ハイエクの自生的秩序論と親和的)、の区別・評価が重要 (2) 法価値論(法の保障すべき価値は何か)※正義論ともいう(*注1)※法理念論、法目的論ともいう 《1》 法価値全般 1 法価値(正義)一般と「法の支配」論 ※法価値論は、専ら、(a)実質憲法(国制)の在り方に関する分野である。⇒①左翼的・全体主義的価値観と、②保守的・自由主義的価値観、の区別・評価が重要。 2 「立憲主義」論 《2》 個別的法価値 1 主権論(憲法は特定の主権者を規定すべきか) ※主権論について詳細ページ⇒政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 2 人権論(憲法の基礎的な保護領域は何か) ※人権論について詳細ページ⇒「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 3 平和論(奴隷の平和か正戦を肯定するか) (3) 法学的方法論(法価値を如何に実現するか) 前提条件 価値論の把握 1 憲法典(形式憲法)の解釈論 ※法学的方法論は、専ら、(b)形式憲法(憲法典)の解釈・運用に関わる分野であり、具体的な条規について(2)法価値論《2》の 1 ~ 3 の課題に対応した法解釈の対立が見られる。⇒①左翼的・全体主義的解釈と、②保守的・自由主義的解釈、の区別・評価が重要。 2 憲法典(形式憲法)の改廃論 ⇒①護憲論、②改憲論、および③破棄論、の比較・評価が重要。 3 憲法典(形式憲法)案の内容評価 ⇒各々の草案について、(2)法価値論《2》の 1 ~ 3 の課題への対応方針に留意しながら個別に評価していくことが重要。 (*注1)法的な価値は、伝統的に「正義(justice)」という言葉で表現されてきたため、法価値論を正義論ともいう。 ■2.憲法とは何か(法概念論) ◆1.憲法(constitution)の定義 ◇1.実質憲法(国制)と形式憲法(憲法典)の区別 けんぽう【憲法】 constitution ※日本語版ブリタニカ百科事典より 憲法の語には、(1)およそ法ないし掟の意味と、(2)国の根本秩序に関する法規範の意味、の2義があり、聖徳太子の「十七条憲法」は(1)前者の例であるが、今日一般には(2)後者の意味で用いられる。 (2)後者の意味での憲法は、凡そ国家のあるところに存在するが(実質憲法)、近代国家の登場とともにかかる法規範を1つの法典(憲法典)として制定することが一般的となり(形式憲法)、しかもフランス人権宣言16条に謳われているように、①国民の権利を保障し、②権力分立制を定める憲法のみを憲法と観念する傾向が生まれた(近代的意味の憲法)。 1 17世紀以降この近代的憲法原理の確立過程は政治闘争の歴史であった。憲法の制定・変革という重大な憲法現象が政治そのものである。比較的安定した憲法体制にあっても、①社会的諸勢力の利害や、②階級の対立は、[1]重大な憲法解釈の対立とともに、[2]政治的・イデオロギー的対立を必然的に伴っている。 従って、憲法は (a) 政治の基本的ルールを定めるものであるとともに、 (b) 社会的諸勢力の経済的・政治的・イデオロギー的闘争によって維持・発展・変革されていく、・・・という二重の構造を持っている。 2 憲法の改正が、通常の立法手続でできるか否かにより、軟性憲法と硬性憲法との区別が生まれるが、今日ではほとんどが硬性憲法である。 近代的意味での成文の硬性憲法は、 ① 国の法規範創設の最終的源である(授権規範性)とともに、 ② 法規範創設を内容的に枠づける(制限規範性)という特性を持ち、かつ ③ 一国の法規範秩序の中で最高の形式的効力を持つ(最高法規性)。 日本国憲法98条1項は、憲法の③最高法規性を明記するが、日本国憲法が硬性憲法である(96条参照)以上当然の帰結である。今日、③最高法規性を確保するため、何らかの形で違憲審査制を導入する国が増えてきている。 なお、憲法は、①制定の権威の所在如何により、欽定・民定・協約・条約(国約)憲法の区別が、②歴史的内容により、ブルジョア憲法と社会主義憲法、あるいは、近代憲法(自由権中心の憲法)と現代憲法(社会権を導入するに至った憲法)といった区別がなされる。 なお、下位規範による憲法規範の簒奪を防止し、憲法の最高法規性を確保することを、憲法の保障という。 (⇒憲法の変動、⇒成文憲法、⇒不文憲法) 上記のように、憲法(constitution)という概念には、 ① 実質的意味の憲法 (=国制、国体法 constititional law) ⇒本質主義(essentialism)による定義 と、 ② 形式的意味の憲法 (=憲法典 constitutional code) ⇒名目主義(nominalism)による定義 の2つのレベルがあり、 両者を区別しつつ総合的に考察していく必要がある。 そして、これに対応して、憲法論にも、 ① 実質的意味の憲法論 (法価値論=憲法の保障すべき価値は何かを考察する価値論であり、それを具体化すると立法論になる) と、 ② 形式的意味の憲法論 (法解釈論=既に成文化された憲法典の解釈論) の2つの段階があり、 この両者もまた確り区別して考察していく必要がある。 ★補足説明★「実質的意味の憲法」「国体法」「国制」 たとえば「民法」という概念には、①実質的意味の民法(=民法典に限らず「総体としての民法 civil law」を指す)と、②形式的意味の民法(=民法典 civil code という具体的な法律)の二つの意味があり、また「刑法」という概念にも同じく、①実質的意味の刑法(criminal law)と、②形式的意味の刑法(=刑法典 criminal code という具体的な法律)の二つの意味がある。これらから類推されるように、当然「憲法」という概念にも、①実質的意味の憲法(constitutional law)と、②形式的意味の憲法(=憲法典 constitutional code という具体的な法律)の二つの意味があり、これらは確りと区別されて論じられるべきであるが、明治期に constitution(英語)ないし Verfassung(ドイツ語)という概念を日本に導入する際に、専ら②形式的意味の憲法(憲法典)という意味で「憲法」という言葉が用いられてしまったために、現在の日本では、憲法とは専ら②憲法典である、とする理解(すなわち、①の意味を見落とした状態での理解)が一般的となってしまっている。 これに関しては、戦前の日本では、①実質的意味の憲法(国制)を意味する言葉として、明治以前から「国体」という用語が普及していたという裏の事情がある。この「国体」という用語は、昭和初期に濫用されて右翼的イデオロギーの色彩を強く帯びてしまったことから、戦後はこの用語の使用自体がタブー視される状態となってしまい、なおさら現在の日本人が、①実質的意味の憲法、を考えることを困難にしている。(※「国体」については⇒国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書)参照) こうした①実質的意味の憲法 constitutional law を素直に翻訳すれば「国体法」となるが、ここでは主に、よりイデオロギー色の薄い「国制」という訳語を用いることとする。(※なお、アリストテレス著として伝わる『アテナイ人の国制』の英語版書名は 『The Athenian Constitution』であり、①の意味での constitution の訳語として「国制」が現時点ではやはり一番適切である。) ◇2.法概念論(憲法とは何か)と法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の区別 左派及び右派から、しばしば繰り返される「憲法の定義」として、次のようなものがある。 (1) 憲法とは、政治権力者を拘束し国民を守るための法規範であり、それに反するものは憲法ではない。 (主に左派から) (2) 憲法とは、国の歴史を踏まえた国体を成文化した法規範であり、それに反するものは憲法ではない。 (主に右派から) 確かに、正当な憲法典には、(1)および(2)のそれぞれの要素が認められるべきであるが、結論から先にいえば、それらは、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)のカテゴリーであって、「憲法の定義」すなわち①法概念論(憲法とは何か)のカテゴリーではない。 このようなカテゴリー・ミスを避ける意味でも、当ページで薦めているような、①法概念論⇒②法価値論⇒③法学的方法論、という順序を踏まえた憲法問題の検討が肝要である。 因みに、(1)政治権力者をほとんど拘束できない憲法典や、(2)自国の歴史やこれまでに培ってきた伝統的な国体を全く反映せず、むしろそれらの積極的な破壊を目的とした憲法典も、世界には幾つも存在したし、現在でも存在しており、それらを「憲法と認めない」とするのは単なる個人的な価値観の表明でしかなく、何ら憲法問題の分析・明晰化に役立たない。 それよりも先ずは「憲法」という概念を、 1 実質憲法(国制、国体法)と 2 形式憲法(憲法典)に確り区別して、この両者の関係から、(a)国家の在り方(=伝統国家/革命国家/新興国家)、(b)憲法典の在り方(保守型/革命型/創成型)を考察していく方が遥かに有意義である。 ◇3.二つの憲法概念から考える国家の在り方(伝統国家・革命国家・新興国家) ※サイズが合わない場合は こちら をクリック。 ※■3.- ◆3.の憲法論の二段構造(整理表)で詳述するように、日本国憲法に関しては、 (1) 左翼側(主に憲法学者)は、これを「八月革命」の結果成立した革命型憲法と捉え、戦前の国制を積極的に否定・破壊する方向への解釈・運用を強く要求してきたが、 (2) 保守側(主に日本政府)は、そのようなフィクションを認めず、日本国憲法はあくまで大日本帝国憲法の改正憲法典として成立したものとして保守的解釈・運用を図ってきており、 戦後の日本では、(a)国家の在り方(=伝統国家か革命国家か)、(b)憲法典の在り方(=保守的解釈が正当かそれとも左翼的解釈が正当か)を巡って、左翼側・保守側の激しい対立が継続されてきた。 こうけんてきかいしゃく【公権的解釈】※日本語版ブリタニカ百科事典より 権限のある国家機関によって行われる法の解釈。有権解釈ともいう。これによって解釈が公定されるという点で、法学者や私人の解釈よりも重要な意味をもつ。公権的解釈には、法律によるもの(立法解釈)、行政機関によるもの(行政解釈)、裁判所によるもの(司法解釈)がある。 ※つまり、左翼的な憲法学者がどれほど「これは憲法学界の通説である(例:八月革命は憲法学界の通説であるetc.)」と唱えようと、日本政府がこれまでに表明してきた見解(例:国体は戦前/戦後で一貫しているetc.)が効力を持ったオフィシャルな解釈(=公権的解釈・有権解釈)なのだから、我々が戦後の日本を伝統国家と認め、日本国憲法を保守的に解釈することには正当な理由があるのだが、それ以外にも、下記◆2.に示すように、戦後日本の左翼的憲法学には論理面から致命的な欠陥が指摘可能である。 ◆2.法体系の2つの捉え方 ◇1.ケルゼンおよび修正自然法論者による法段階説(半世紀前の法学パラダイム) ※図が見づらい場合⇒ こちら を参照 ※①宮澤俊義(ケルゼン主義者)・②芦部信喜(修正自然法論者)に代表される戦後日本の左翼的憲法学は「実定法を根拠づける“根本規範”あるいは“自然法”」を仮設ないし想定するところからその理論の総てが始まるが、そのようなア・プリオリ(先験的)な前提から始まる論説は、20世紀後半以降に英米圏で主流となった分析哲学(形而上学的な特定観念の刷り込みに終始するのではなく緻密な概念分析を重視する哲学潮流)を反映した法理学/法哲学(基礎法学)分野では、とっくの昔に排撃されており、日本でも“自然法”を想定する法理学者/法哲学者は最早、笹倉秀夫(丸山眞男門下)など一部の化石化した確信犯的な左翼しか残っていない。このように基礎法学(理論法学)分野でほぼ一掃された論説を、応用法学(実定法学)分野である憲法学で未だに前提として理論を展開し続けるのはナンセンスであるばかりか知的誠実さを疑われても仕方がない行いであり、日本の憲法学の早急な正常化が待たれる。(※なお、近年の左翼憲法論をリードし「護憲派最終防御ライン」と呼ばれている長谷部恭男は、芦部門下であるが、ハートの法概念論を正当と認めて、芦部説にある自然法・根本規範・制憲権といった超越的概念を明確に否定するに至っている。) ◇2.ハートによる社会的ルール説(現代の世界標準の法学パラダイム) ※サイズが画面に合わない場合は こちら 及び こちら をクリック願います。 ※上記のように、ハートの法=社会的ルール説は、現実の法現象について詳細で明晰な分析モデルを提供しており、特定の価値観・政治的イデオロギーに基づく概念ピラミッドに過ぎない法=主権者意思[命令]説の法体系モデルを、その説得力において大幅に凌駕している。 ※上図について、詳細な解説は法と権利の本質に関する2つの考え方へ。 ※このように、①法概念論(憲法とは何か)の段階で、既に左翼的憲法論はハッキリと論理破綻しているのであるが、以下更に、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の段階での 左翼的スタンス vs. 保守的スタンス 両者の憲法に求める価値(理念・目的)を対比して、寛容で価値多元的な自由主義社会を支え得る法価値は保守的スタンスのものであることを説明していく。 ■3.憲法の保障すべき価値、理念・目的は何か(法価値論) → 主として、実質憲法(国制)に関する議論領域 (1) ここでは、まず、法価値(=正義)一般について、それと密接に関連した「法の支配」理念と関連づけて整理・明晰化し、 (2) 次に、「法の支配」理念から発展した「立憲主義」理念について整理・明晰化し、 (3) さらに、憲法に特有の法価値論(①主権論、②人権論、③平和論)について、法解釈論と関連づけて整理・明晰化していく。 ※ポイントは、「正義」概念・「法の支配」理念・「立憲主義」理念や、①主権論・②人権論・③平和論に関しても、自由概念のケース(※リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜参照)と同様に、 1 保守的(自由主義的=価値多元的)スタンスによる理解と、 2 左翼的(全体主義的=価値一元的)スタンスによる理解とが、鋭く対立しているという基本構図を正しく把握することである。 ◆1.法価値(=正義)一般と、「法の支配」 ほうかちろん【法価値論】legal axiology 日本語版ブリタニカ 法的な価値について考察する研究分野。法的な価値は正義という言葉で表現されることが多いから、正義論といってもよい。 古代ギリシア以来、法哲学の主要分野をなしてきたが、最近は、①規範的倫理学と、②分析的倫理学の区別に対応して、①規範的法価値論と②分析的法価値論(メタ法価値論)とが明確に区別されるようになった。 せいぎ【正義】 広辞苑 ① [荀子(正名)]正しいすじみち、人がふみ行うべき正しい道。「-を貫く」 ② [漢書(律暦志上)]正しい意義または注解。「尚書-」 ③ (justice) (ア) 社会全体の幸福を保障する秩序を実現し維持すること。プラトンは国家の各成員がそれぞれの責務を果たし、国家全体として調和があることを正義とし、アリストテレスは能力に応じた公平な分配を正義とした。近代では社会の成員の自由と平等が正義の観念の中心となり、自由主義的民主主義社会は各人の法的な平等を実現した。 これを単に形式的なものと見るマルキシズムは、真の正義は社会主義によって初めて実現されると主張するが、現在ではイデオロギーを超えた正義が模索されている。 (イ) 社会の正義に適った行為をなしうるような個人の徳性。 せいぎ【正義】justice 日本語版ブリタニカ 人間の社会的関係において実現されるべき究極的な価値。 . 善(※注: agothos, bonum, good)と同義に用いられることもあるが、 (1) 善が、主として人間の個人的態度にかかわる道徳的な価値を指すのに対して、 (2) 正義は、人間の対他的関係の規律にかかわる法的な価値を指す。 . 正義とは何か、という問題については、古来さまざまな解答が示されてきたが、一般的な価値ないし価値基準に関する見解と同様に 1 正義を客観的な実在と考える客観主義的・絶対主義的正義論と、 2 正義を主観的な確信と考える主観主義的・相対主義的正義論とに大別できよう。 法思想の領域では、だいたいにおいて、自然法論が 1 前者に、法実証主義が 2 後者に、属する。 . 従来の正義論のうちでは、アリストテレスやキケロの見解が名高く、与えた影響も大きい。 (ア) アリストテレスは、道徳と区別される正義(特殊的正義)について、①配分的正義と、②交換的正義(平均的正義、調整的正義とも訳される)とを区別し、 ① 前者は、公民としての各人の価値・功績に応じて、名誉や財貨を配分することにおいて成立し、 ② 後者は、私人としての各人の相互交渉から生じる利害を平均・調整することにおいて成立する、とした。 (イ) キケロは、この①配分的正義と同様な内容を、「各人に彼のものを」という公式で表現した。 ほう-の-しはい【法の支配】 (rule of law) 広辞苑 イギリスの法律家コークが、国王は神と法の下にあるべきである、として、ジェームズ1世の王権を抑制して以来、「人の支配」に対抗して認められるようになった近代の政治原理。コークのいう法は、イギリスの判例法で、立法権をも抑制する点で、法治主義とは異なるが、後に法治主義と同義に用いることもある。 政治思想・政治哲学の根本的価値が「自由(freedom/liberty)」という言葉で表現されるように、 法思想・法哲学の根本的価値は「正義(justice)」という言葉で伝統的に表現されてきた。 ここで「正義」概念を概括するとともに「法の支配」理念との関係についても整理する。 ※サイズが合わない場合は こちら をクリック。 この「正義」概念に基く法理念・法思想を、一般に「法の支配(rule of law)」と呼んでいる。 ここで「法の支配」理念について整理する。 ※サイズが合わない場合は こちら をクリック。 ◇1.参考ページ 法価値論(正義論)まとめページ 「正義」とは何か ~ 法価値論まとめ+「法の支配」との関係 「法の支配」理念のまとめページ 「法の支配(rule of law)」とは何か 「自由」概念のまとめページ リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 ◇2.「正義」「法の支配」まとめ 以上のように、「正義」概念・「法の支配」理念に関して、主に形式的・手続的正義論に依拠する 1 保守的スタンスによる理解と、実質的正義論に依拠する 2 左翼的スタンスによる理解が対立するが、1960年代以降、英米圏で主流となっている理解は明らかに 1 の側であり、それを反映して、元々は故・芦部信喜教授の門下であった長谷部恭男・東大法学部教授は近年、ドイツ法学に由来する師の論を完全に否定する次のような見解を打ち出すに至っている。 長谷部恭男『 法とは何か 』(2011年刊) p.148-9 法の支配という概念もいろいろな意味で使われます。ときには、人権の保障や民主主義の実現など、あるべき政治体制が備えるべき徳目のすべてを意味する理念として用いられることもありますが、こうした濃厚な意味合いで使ってしまうと、「法の支配」を独立の議論の対象とする意味が失われます。 法の支配は人の支配と対比されます。ある特定の人(々)の恣意的な支配ではなく、法に則った支配が存在するためには、そこで言う「法」が人々の従うことの可能な法でなければなりません。そのために法が満たすべき条件として、次のようないくつかの条件が挙げられてきました。・・・(中略)・・・。こうした、法の公開性、明確性、一般性、安定性、無矛盾性、不遡及性、実行可能性などの要請が、法の支配の要請と言われるものです。 日本の憲法の教科書類を見ると、「法の支配」の名の下に、人権の保障や民主主義、権力分立など、望ましい政治体制が備えるべきあらゆる徳目が並べられていることが少なくありません。しかし、ここまで濃厚な意味で「法の支配」を理解してしまうと、法の支配を独立して検討の対象とする意味はほとんどないように思われます。・・・(中略)・・・。こうした「法の支配」ということばの使い方の背景には、善いことである以上は、そのすべてが予定調和して100パーセント実現できるはずだというバラ色の想定があるのではないでしょうか。私としては・・・限定的な意味での「法の支配」を議論の対象とする方が、学問のあり方としても生産的だし、こうした意味を前提としてもっぱら議論をしている諸外国の研究者と議論するときも、誤解が少なくて善いのではないかと考えます。 ⇒長谷部教授は憲法改正に反対する護憲論者であるが、こうした左派の憲法学者であっても、英米圏でとっくの昔に標準となった法学パラダイム(ハートの法=社会的ルール説)に基づく憲法論議に追いついていこうとするだけの学問的誠実さのある者は、「正義」概念・「法の支配」理念に関しては既に 1 保守的(自由主義的=価値多元的)スタンスによる理解が正解であることをはっきりと認めている。 これに対して、故・芦部信喜教授の憲法論の継承者である高橋和之教授を初めとする多くの左派憲法学者は残念ながら、未だに半世紀以上前(1961年のH.L.A.ハート『法の概念』刊行以前)のドイツ法学系パラダイム(法段階説・法=主権者意思説)に依拠する日本ローカルの憲法学の殻に閉じ籠ったままであるが、こうしたガラパゴス状態も長谷部教授などの貢献により今後は徐々に正常化に向かっていくものと思われる。 ※以下、「法の支配」理念から発展した「立憲主義」理念について整理します。 ◆2.「立憲主義」の定義 日本の憲法の教科書では「法の支配」の名の下に“人権の保障や民主主義、権力分立など、望ましい政治体制が備えるべきあらゆる徳目が並べられている”という上記の長谷部教授の批判は、「立憲主義」に関してもそっくりそのまま当て嵌まる。 ⇒「法の支配」の意味を限定すべきであるのと同様に、「立憲主義」という言葉の意味も限定すべきである(すなわち、下記の阪本昌成氏や長谷部恭男氏の論が正解となる)。 ◇1.各論者による説明 政治的スタンス 論者 内容 (1) 保守主義 百地章 「立憲主義とは、国家の統治が憲法にもとづいて行われることである。」(『憲法の常識 常識の憲法』p.32) (2) リベラル右派 阪本昌成 (1) 立憲主義の意義先の [1] で私は、《統治とは、国家機関を通して為す、一元的・統一的な権力支配だ》と述べた。統治は、限られたリソースを巡る利害の対立を調整しながら、その配分のあり方を権力的に決定する恒常的かつ永続的な国家作用である。この権力的、永続的な統治活動の牙を抜いて正当な枠に閉じ込めようとするにが、規範的意味での国制の役割である。統治を、流動的で恣意的な政治に委ねることなく、国制のもとに規律し安定化させる思考を「立憲主義 constitutionalism」という。近代国家が規範的意味での国制によって統制されるに至った段階のものは、「近代立憲主義国家」といわれる。これは、国家という強制の機構から各人の「自由」を擁護する、統治上のルールとしての憲法をもっている国家のことである。(『憲法1 国制クラシック』p.26) (2) 立憲主義の展開(中略)自然権の保全と権力分立という二つの要素を憲法の必須要素だと明言したのが、フランス人権宣言16条の「権利の保障が確保されておらず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法を持たない」という有名なフレーズである。この二つの要素を満たす憲法を「立憲主義的憲法」と一般にいわれることがある。つまり、《憲法とは、人権宣言と権力分立を含む成文の法文章だ》、 《この法文章は、国家樹立の際の社会契約および憲法協約を成文化したものであるから、主権者をも統制する法力をもっている》という思想である。 今日、立憲主義を想起する場合、人々の脳裏に浮かぶのは、一般にこのタイプである。が、フランス人権宣言とその16条は近代立憲主義のモデルではなく、「このタイプだ」と簡単に片付けることは正確でない。フランス的立憲主義とアメリカ的立憲主義は、憲法に関する見方を大きく異にしているのだ。 〔D〕近代立憲主義の枝分かれフランス型は、憲法をあるべき国家の最適モデルに適合させようとする理論に従って設計しようとした。なかでも、憲法を制定する力を民主的に創造するための人為的理論が最重要視された。これが、後の [39] でふれる憲法制定権力の理論である。人権も、まったく新たに創設され、最適規範に相応しい内容を人為的に持たされた。人権は、人が精神的にも物質的にも、あるべき姿となるための規範だった。こうした憲法のモデルが理論通りには運ばないと判明したときには、また別の理論に従って人為的に憲法が制定された。フランスの憲法は、何度も何度も制定されては軌道修正された。そして、結局のところ、自由の構成(constitution)に失敗したのだった。これに対してアメリカ型は、経験と伝統とを基礎とする憲法制定の道を辿った。理論的な最適規範を設計したところで、上手く定着することはない、と建国の父たちは知り尽くしていた。それと同時に、憲法制定会議を頻繁に開設して討議を繰り返すと、統治力学の振り子が大きく揺れ過ぎることも予知していた。建国の父たちは、モンテスキューが理想としていた「中庸な統治体制=混合政体」から多くを学んだ(合衆国憲法はJ. ロック(1632~1704年)の影響を受けて制定された、といわれることがあるが、これは誤診だと私は考えている)。合衆国憲法が、House of the Senates(通常、「上院」と訳される元老院=貴族政的要素+連邦制)と House of the Representatives(通常、「下院」と訳される庶民院=民主政的要素)という権力分立、さらには、大統領という「民主化された君主」を置いたのは、そのためだった。また、アメリカ建国の父たちは、人間の理性・知性の限界を知っていた。人間は、有徳の存在ではなく、権力欲に満ちており、私利を追求するにあたって公共の利益を口にすること等々を建国の父たちは知っていた。合衆国憲法は、人権保障にあたっても、“自然権を実定化する”とは考えなかった。権利章典(Bill of rights)は、歴史的・経験的に徐々に姿を現してきた人の権利を確認するものだった(*注1)。 (*注1) アメリカ合衆国憲法における権利章典について 合衆国憲法にみられる「個人の自由と権利」は、自然権思想の影響をさほど受けてはいない。そこでのカタログは、歴史的にそれまで存在してきた権益を確認したものである。『憲法2 基本権クラシック』 11頁を参照願う。 (3) 立憲主義のふたつのモデル - 法の支配か民主主義か以上のように、一言で「近代立憲主義」という場合でも、一方には純粋理論型または超越型があり、他方には経験型・伝統重視型がある。見方を換えていえば、フランス型は 民意を統治過程に統合するなかで同時に自由を作り出すための憲法構造を理論的に追究したのに対して、アメリカ型は 多元的な民意を統治過程に多元的に反映させる憲法構造を伝統のなかから発見しようとしたのだった。アメリカ型立憲主義は、《個人の権利自由を擁護するための制度的装置として権力分立制を用意する》とよくいわれる。他方、憲法の民主化を重視するフランスにあっては、議会に反映される一般意思のもとに行政と司法を置くことが、その眼目であると考えられた。J. ルソー(1712~1778年)の影響だろう。そのために、議会中心の統治が理想とされた。これに対して、合衆国憲法は、モンテスキューの理論モデルを参考としながら、民主主義を万能としない権力分立制を導入した。アメリカ憲法は、「立憲主義=法の支配=権力分立」という等式を基礎として制定されたのである。 立憲主義のモデルをアメリカに求める人物は、《立憲主義とは、法の支配と同義であり、それは民主主義の行き過ぎに歯止めをかける思想でもある》と考える傾向にある。これに対して、立憲主義モデルをフランスに求める人は、「立憲民主主義」という言葉を多用する傾向がある。後者は、「立憲」の中に権力分立と人権尊重の精神を含め、「民主主義」の中に、「国民主権」と議会政を含めているようである(民主主義の中に人権尊重を忍び込ませる論者もいる)。が、それらの一貫した関連性をそこに見て取ることは困難であるように私にはみえる(自由主義と民主主義との異同については、後の [26] でふれる)。 私は、《立憲主義とは、誰が主権者であっても、また、統治権がいかに民主的に発動されている場合であっても、主権者の意思または民主的意思を法のもとに置こうとする思想だ》と考えている。 本書が「立憲民主主義」という言葉を決して用いないのは、そのためである。(『憲法1 国制クラシック』p.31) (3) リベラル左派 長谷部恭男 近代以降の立憲主義とそれ以前の立憲主義との間には大きな断絶がある。近代立憲主義は、価値観・世界観の多元性を前提とし、さまざまな価値観・世界観を抱く人々の公平な共存をはかることを目的とする。それ以前の立憲主義は、価値観・世界観の多元性を前提としていない。むしろ、人としての正しい生き方はただ一つ、教会の教えるそれに決まっているという前提をとっていた。正しい価値観・世界観が決まっている以上、公と私を区別する必要もなければ、信仰の自由や思想の自由を認める必要もない。(長谷部恭男『憲法とは何か』p.69) ・・・近代ヨーロッパで立憲主義が成立する経験においては、宗教戦争や大航海を通じて、この世には比較不能な多様な価値観が存在すること、そして、そうした多様な価値観を抱く人々が、それにもかかえわらず公平に社会生活の便宜とコストを分かち合う社会の枠組みを構築しなければならないこと、これらが人々の共通の認識となっていったことが決定的な意味を持っている。立憲主義を理解する際には、…制度的な徴表のみにとらわれず、多様な価値観の公平な共存という、その背後にある目的に着目する必要がある。(長谷部恭男『憲法とは何か』p.71) ヨーロッパでの成立の経緯に照らしてみればわかるように、立憲主義は、多様な価値観を抱く人々が、それでも協働して、社会生活の便益とコストを公正に分かち合って生きるために必要な、基本的枠組みを定める理念である。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.178) そのためには、生活領域を公と私とに人為的に区別すること、社会全体の利益を考える公の領域には、自分が一番大切だと考える価値観は持ち込まないよう、自制することが求められる。・・・そうした自制がないかぎり、比較不能な価値観の対立は、「万人の万人に対する闘争」を引き起こす。・・・(中略)・・・。立憲主義はたしかに西欧起源の思想である。しかし、それは、多様な価値観の公正な共存を目指そうとするかぎり、地域や民族にかかわりなく、頼らざるをえない考え方である。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.178) 立憲主義にもとづく憲法・・・は、人の生きるべき道や、善い生き方について教えてくれるわけではない。それは、個々人が自ら考え、選びとるべきものである。憲法が教えるのは、多様な生き方が世の中にあるとき、どうすれば、それらの間の平和な共存関係を保つことができるかである。憲法は宗教の代わりにはならない。「人権」や「個人の尊重」もそうである。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.179) 立憲主義は現実を見るように要求する。世の中には、あなたと違う価値観を持ち、それをとても大切にして生きている人がたくさんいるのだという現実を見るように要求する。このため、立憲主義と両立しうる平和主義にも、おのずと限度がある。現実の世界でどれほど平和の実現に貢献することになるかにかかわりなく、ともかく軍備を放棄せよという考え方は、「善き生き方」を教える信仰ではありえても、立憲主義と両立しうる平和主義ではない。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.179) 「立憲主義ということばには、広狭二通りの意味がある。本書で「立憲主義」ということばが使われるときに言及されているのは、このうち狭い意味の立憲主義である。広義の立憲主義とは、政治権力あるいは国家権力を制限する思考あるいは仕組みを一般的に指す。「人の支配」ではなく「法の支配」という考え方は広義の立憲主義に含まれる。古代ギリシャや中世ヨーロッパにも立憲主義があったといわれる際に言及されているのも広義の立憲主義である。他方、狭義では、立憲主義は、近代国家の権力を制約する思想あるいは仕組みを指す。この意味の立憲主義は近代立憲主義ともいわれ、私的・社会的領域と公的・政治的領域との区別を前提として、個人の自由と公共的な政治の審議と決定とを両立させようとする考え方と密接に結びつく。二つの領域の区分は、古代や中世のヨーロッパでは知られていなかったものである。」(『憲法とは何か』p.68) (4) 左翼 芦部信喜 ※芦部は「近代立憲主義(あるいは現代立憲主義)は~という性質を持っている」とその属性を述べるものの、「立憲主義とは何か」という肝心の概念論・理念論に関しては慎重に口を閉ざしている。これは芦部の憲法論が英米圏で主流となっている「立憲主義」や「法の支配」の概念・理念理解とは実は無縁の古いドイツ系法学に依拠していることに原因がある。⇒芦部の後継者である高橋和之も同様。 (5) 中間 佐藤幸治 ※佐藤も芦部と同様に、「近代立憲主義」と「現代立憲主義」を対比して言及するものの、立憲主義そのものの概念・理念の説明はない。つまり芦部や佐藤の世代ではベースがまだドイツ系法学であったために、英米系の「立憲主義」「法の支配」といった概念・理念を英米圏の用法の通りに消化できていないのである。 ◇2.参考ページ 「立憲主義」理念のまとめページ 立憲主義とは何か ※以上で法価値全般に関わる事項の説明を終わり、憲法に特有の法価値に関する検討に移ります。 ◆3.憲法に特有の法価値論+法解釈論 - 整理図 ※サイズが合わない場合は こちら をクリック ◇1.参考ページ 「法の支配」と国民主権の関係 リベラル・デモクラシー、国民主権、法の支配 国民の権利・自由と人権の関係 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 芦部信喜・佐藤幸治・阪本昌成・中川八洋etc.の「国民主権論」比較と評価 政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 関連用語集 【用語集】主権論・国民主権等 ※このように、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の段階で、(1)左翼的スタンスによる理解と(2)保守的スタンスによる理解とが激しく対立するが、 寛容で自由な価値多元的な社会を保障するのは、二つの自由論の場合と同じく、(2)保守的スタンスによる理解の方である。 ※なお、ここで一つ留意事項として、上図には表記がないが、(1)(2)の他にもう一つ、(3)右翼的スタンスによる理解というものが想定可能である。この(3)右翼的スタンスは、(1)左翼的スタンスの場合と同じく全体主義的であって、寛容で自由な社会に相応しくない理解である。(この(3)右翼的スタンスと(2)保守的スタンスとの区別は、■4.-◆1.-◇2.の中段で図解する) ■4.そうした価値、理念・目的を如何に実現するか(法学的方法論) → 主として、形式憲法(憲法典)に関する議論領域 ◆1.現行憲法典の解釈論 ◇1.左翼的(全体主義的)解釈vs.保守的(自由主義的)解釈 ※■3.- ◆3.の 整理表下段(形式的憲法論の欄) を参照 ◇2.日本の代表的な憲法論 - 内容紹介・評価 日本の様々な憲法論を政治的スタンスに当て嵌めて概括すると下表のようになる。 ※サイズが画面に合わない場合は こちら をクリック願います。 政治的スタンス 代表的論者 ベースとなる思想家/思想 補足説明 詳細内容 (1) 極左 伊藤真など護憲論者 J.-J.ルソーの社会契約論からさらに、アトム的個人主義と集産主義の結合形態(=左翼的全体主義)※説明に接近 「人権」「平和」を過度に強調し絶対視する共産党・社民党・民主党左派系の法曹に多い憲法論でありイデオロギー色が濃く法理論というよりは左翼思想のプロパガンダである(左の全体主義) (2) 左翼 芦部信喜高橋和之 修正自然法論(法=主権者意思[命令]説に自然法を折衷)+J.-J.ルソーの社会契約論 宮沢俊義→芦部信喜と続く戦後日本の憲法学の最有力説であり通説※宮沢は有名なケルゼニアン(ケルゼン主義者)。芦部は自然法論者だが人権保障をア・プリオリ(先験的)な「根本規範」と位置づけており、その表面的な米国判例理論の紹介はポーズに過ぎず、実際には依然ケルゼン/ラートブルフ等ドイツ系法学の影響が強い よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) (3) リベラル左派 長谷部恭男 H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール説)を一部独自解釈※なお長谷部は社会契約論に依拠しているのか曖昧でハートの法概念論と辻褄が合うはずのハイエクの自由論は故意に無視している 近年の左派系憲法論(護憲論)をリードしている長谷部は芦部門下であるが、師のようなドイツ系法学パラダイムはもはや世界の憲法学の潮流からは通用しないことを認識しており、師の憲法論の中核である、①根本規範を頂点とした法段階説+②制憲権(憲法制定権力)説、を明確に否定して、英米系法学パラダイムへの接近を図っている。(※但しハートまでは受容しながらもハイエクを拒否している長谷部の憲法論は中途半端の誹りを免れず、これを一通り学んだ後は、より整合性のとれた阪本昌成の憲法論へと進むべきである) よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) (4) 中間 佐藤幸治 人格的自律権に限定して自然法を認める独自説+J.ロックの社会契約論 芦部説の次に有力な憲法論であり、芦部説よりも現実妥当性が高いので重宝されるが(佐藤は佐々木惣一から大石義雄へと続く京都学派憲法学の系統)、法理論としては妥協的でチグハグと呼ばざるを得ない 佐藤幸治『憲法 第三版』抜粋 (5) リベラル右派 阪本昌成、※ H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール説)+F.A.ハイエクの自由論 20世紀後半以降の分析哲学の発展を反映した英米法理論に基礎を置く憲法論であり、法理論としての完成度/説得力が最も高いが、日本では残念ながら非常に少数派 阪本昌成『憲法1 国制クラシック』 (6) 保守主義 中川八洋日本会議 E.コークの「法の支配」論+E.バークの国体論 日本会議・チャンネル桜系の憲法論も基本的にこちらに該当する。法理論というより「国民の常識」論であり、心情面からの説得力が高いが、(5)の法理論を一通り押えた上でこの立場を取らないと、いつの間にか(7)に堕する危険があるので注意。 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋 (7) 右翼・極右 いわゆる無効論者 ヘーゲルの法概念論・共同体論およびそれに類似した全体主義的論調 「伝統」「国体」などを過度に強調し絶対視して「右の全体主義」化した憲法論(左翼憲法論の裏返しであり、左翼からの転向者が嵌り易い。法理論というより右翼イデオロギーのプロパガンダ色が濃い) ※政治的スタンス5分類・8分類+円環図 -... ※サイズが合わない場合は こちら をクリック ⇒上図の詳しい説明は、政治の基礎知識、政治学の概念整理と、政治思想の対立軸 参照。 政治的スタンス毎の憲法論の違いは、①「人権」と②「国民主権」の捉え方に顕著に現れる。このうち、①「人権」に関しては、「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のためにを参照。政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価では、(2)~(6)の各々の政治的スタンスの代表的な②「国民主権」論を列記したのち、総括する。 ◆2.憲法典の改廃論 憲法典の改廃論 内容 参考ページ (1) 改憲論 ① 保守的改憲論 保守主義的・自由主義的な法価値(理念/目的)の、より確実な実現を目指す改憲論 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋 ② 左翼的改憲論 左翼的・全体主義的な法価値(理念/目的)の、より確実な実現を目指す改憲論 ③ 中間的改憲論 それほど明確なポリシーがあるわけではない(=保守主義的とも左翼的とも言い難い)が、一応は憲法9条の改正など最低限の提言内容は持つ改憲論 (2) 護憲論 ① 左翼的護憲論1(芦部信喜説準拠) 「人権」「平和」理念を絶対視して、彼らがその理念を体現すると考える現行の憲法典の絶対的維持を訴える論。しかし、■2.で説明したように、芦部説などのベースとなっている法概念理解は実際には単なる左翼イデオロギーの刷り込みでしかなく「自由で寛容な価値多元的な社会を支える憲法構想」としては完全に破綻している。 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) ② 左翼的護憲論2(長谷部恭男説準拠) 自衛隊の存在などは「憲法の変遷」があった(=条文の変化はないが、その解釈が変化したことにより合憲となった)として現状追認する一方で、現行憲法典の条文自体には「世界平和の希求」「人権価値実現の目標プログラム」など将来に向けての積極的価値を認めて、改憲に反対する論 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) ③ いわゆる真正護憲論(新無効論) この論の当否についてはネットなどで各自チェックするのが望ましい。一つ指摘事項を書くとすれば、この論のベースとなる法概念理解は、実は芦部信喜に代表される①左翼的護憲論1の法段階説(根本規範・自然法論などを強調するドイツ法学系の法概念理解)と同じ(=左翼的護憲論が「人権」「平和」を絶対視するところを、この論では彼らの考える「国体」を絶対視している、という違いがあるだけ)であり、①左翼的護憲論1と同じく、現代の法学パラダイムから全く落伍した時代遅れの論である、ということである。そのほか、この論には法的議論として様々な無理があり、 一定の法学知識のある層からは全く相手にされていない が、一般向けのプロパガンダとしては中々人気のある論となっている。 国体法(不文憲法)と憲法典(成文憲法) (3) 破棄論 ① 占領憲法失効・破棄論(菅原裕説が代表的) 主権回復(1952.4.28)直後には一定の説得力と賛同者をもっていた論であったが、現在では最早現実妥当性がない無責任な論である。1950年代前半迄であれば、現行憲法を破棄・失効させ明治憲法を復活させてそのまま運用することは何とかギリギリで可能だったかも知れないが、戦後日本社会の様相を反映した複雑・多様な法制度が整備された現在では、代替案も示せずに「現行憲法を破棄・失効せよ」とだけ強弁するだけでは済まされない。 ◆3.憲法典改正案 ◇1.現在提案されている種々の改憲案 ① 中川八洋草案 保守的改憲案の代表例 ② 日本会議の提言 保守的改憲案の代表例 ③ 産経新聞案(2013年) 「国民の憲法」要綱 ④ 読売新聞案(2004年) 読売新聞社・憲法改正2004年試案 ⑤ 自民党案(2012年) 現行憲法-自民党草案-中川草案(対照表) ⑥ 国立国会図書館編・改憲案一覧(2005年) 主な日本国憲法改正試案及び提言 ◇2.日本国憲法の構成と、保守的スタンスから見た改正の要否 憲法典の構成 保守的スタンスから見た改正の要否、改正内容 前文 抜本的な書換が必要 自虐的文言・空想的国際協調主義などの全面的排除 憲法の基本理念や解釈基準を明記する部分だが、現状は占領軍のポジション・トークに過ぎない部分が目立ち、抜本的な書換が必要である。 本文 (1) 固有規定1 1 第一章(天皇) 要検討 具体的な改正内容は慎重な検討を要する 国の在り方や国政の基本方針を明記する部分だが、文理解釈のままでは実質憲法(国制)とズレが生じるために、現状では相当に苦しい目的論的解釈が必要となっている箇所が多く、大幅な書換が必要である。 2 第ニ章(戦争の放棄) 抜本的な書換が必要 正当な戦力の保持・行使の明記etc. (2) 権利章典 1 第三章(国民の権利及び義務) 小規模な修正 普遍的人権ではなく国民の自由・権利の保障etc. 規定内容は実はかなり優秀であり、現在の基本線を外した修正は不要と思われる。 (3) 統治機構 1 第四章(国会) 小規模な修正 参議院の在り方etc. 規定内容は実はかなり優秀であり、現在の基本線を外した修正は不要と思われる。 2 第五章(内閣) 内閣権限の強化、国家安全保障の不備対応etc. 3 第六章(司法) 国民審査制度の不備対応etc. 4 第七章(財政) 5 第八章(地方自治) (4) 固有規定2 1 第九章(改正) 要検討 96条の2/3条項については賛否両論あり 要検討。 2 第十章(最高法規) 中規模の修正 人権の過度の強調の排除、最高法規性の定義再検討etc. (5) 経過規定 1 第十一章(補則) - 新たな経過規定が必要 本文ではなく附則とするのが合理的である。 ◇3.改憲案の具体例(自民党・憲法改正草案(2012年版)+中川八洋草案) 1 自民党 憲法改正草案(2012年版) (※中川八洋『 国民の憲法改正 』の指摘事項を付記) 現行憲法-自民党草案-中川草案(対照表) を参照 ■5.ご意見、情報提供 ページ内容向上のためのご意見・情報提供を歓迎します。 ↓これまでの全コメントを表示する場合はここをクリック +... 保守主義的な憲法論・参考サイト http //blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/aa74d73e62cc74859dbc4e4a1a3e1f83 -- 名無しさん (2013-08-04 15 44 52) 憲法は全文変えていいよ。大日本帝国憲法を再発行で。左翼は韓国と中国に強制送還で。 - 匿名 2016-11-23 03 40 17 以下は最新コメント表示 名前 ラジオボタン(各コメントの前についている○)をクリックすることで、そのコメントにレスできます。 ■左翼や売国奴を論破する!セットで読む政治理論・解説ページ 政治の基礎知識 政治学の概念整理と、政治思想の対立軸 政治思想(用語集) リベラル・デモクラシー、国民主権、法の支配 デモクラシーと衆愚制 ~ 「民主主義」信仰を打ち破る ※別題「デモクラシーの真実」 リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 ※別題「リベラリズムの真実」 保守主義とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ ナショナリズムとは何か ケインズvs.ハイエクから考える経済政策 国家解体思想(世界政府・地球市民)の正体 左派・左翼とは何か 右派・右翼とは何か 中間派に何を含めるか 「個人主義」と「集産主義」 ~ ハイエク『隷従への道』読解の手引き 最速!理論派保守☆養成プログラム 「皇国史観」と国体論~日本の保守思想を考える 日本主義とは何か ~ 日本型保守主義とナショナリズムの関係を考える 右翼・左翼の歴史 靖國神社と英霊の御心 マルクス主義と天皇制ファシズム論 丸山眞男「天皇制ファシズム論」、村上重良「国家神道論」の検証 国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書) 国体とは何か② ~ その他の論点 国体法(不文憲法)と憲法典(成文憲法) 歴史問題の基礎知識 戦後レジームの正体 「法の支配(rule of law)」とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ 立憲主義とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ 「正義」とは何か ~ 法価値論まとめ+「法の支配」との関係 正統性とは何か ~ legitimacy ・ orthodoxy の区別と、憲法の正統性問題 自然法と人権思想の関係、国体法との区別 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 日本国憲法改正問題(上級編) ※別題「憲法問題の基礎知識」 学者別《憲法理論-比較表》 政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) ブログランキング応援クリックをお願いいたします(一日一回有効)。 人気ブログランキングへ
https://w.atwiki.jp/kbt16s/pages/293.html
自ら『保守主義者』を名乗っているアメリカ人は、事実は自由主義者である。 ~ B.クリック(英国の政治学者)『アメリカ保守主義の奇妙な探求』(1955年) 保守主義(conservatism)の概念を総合的に考察し整理・明晰化するページ <目次> ■1.このページの目的・構成 ■2.保守主義、及び関連する諸思想◆1.保守主義・関連する諸思想の説明 ◆2.保守主義・関連する諸思想の整理図 ■3.保守主義の概念定義◆1.保守主義(conservatism)の辞書的定義 ◆2.内包と外延 ■4.保守主義の内包(=内在する属性)◆1.保守主義の核心的特色 ◆2.保守主義の一般的特質 ◆3.保守主義の価値観・思惟構造 ■5.保守主義の外延(=対象となる範囲)◆1.保守主義と自由主義の関係 ◆2.伝統保守と経済保守の架橋◇1.18世紀イギリスの自由主義思想家による「伝統保守」の説明 ◇2.保守主義=「小さな政府」なのか? ◇3.伝統保守(旧保守)と経済保守(新保守)の架橋 ~ フュージョニズムと「思いやりのある保守」 ■6.保守主義と混同されやすいが別概念として区別すべきもの◆1.保守主義とリバタリアニズムの区別◇自由至上主義(libertarianism)の辞書的定義 ◆2.保守主義とコミュニタリアニズムの区別◇共同体主義(communitarianism)の辞書的定義 ◆3.保守主義とナショナリズムの区別◇1.ナショナリズム(nationalism:国民主義、民族主義、国家主義など文脈に応じて様々に訳し分ける)の辞書的定義 ◇2.ナショナリズムの発展モデル ◆4.保守・右翼・極右の区別 ■7.日本の保守主義◆1.参考:「保守主義」という用語の使用状況 ◆2.西欧保守主義・日本の保守主義の接合上の問題点と考え方◇1.保守主義と、自由主義・個人主義・デモクラシーの関係 ◇2.保守主義と、ナショナリズムの関係 ◆3.日本主義 ◆4.革新右翼(国家社会主義者)と観念右翼(伝統保守)◇参考:アジア主義 ◆5.まとめ ■8.参考図書 ■9.ご意見、情報提供 ■1.このページの目的・構成 全く正反対の政治的信条を持つ「リバタリアン(自由至上主義者)」と「コミュニタリアン(共同体主義者)」が共に「我こそ保守主義者だ」と主張していたり、「ナショナリズム」が「保守主義」と混同されています。 あるいは、「小さな政府」こそ「真の保守」だと言う人、また「国体護持」こそ「真の保守」だという人もいます。 このページでは、そうした様々に主張されている保守主義の内実をその歴史的沿革や辞書的な概念定義から、客観的に検討し、 保守主義とは、 (1) ルソーの革命思想/デカルトに始まる設計主義的合理主義/共産主義/社会主義/ファシズム等の全体主義思想に対する対抗思想として発生したものであって、 (2) その内実は、歴史の中で育まれてきた価値多元的で寛容な自由を守ろうとするもの、即ち自由主義(左翼的リベラリズムではなく真正の自由主義)である とするのが、最も整合的な理解であることを説明していくとともに、 リバタリアニズム・コミュニタリアニズム・ナショナリズムなど保守主義に部分的に類似する諸概念について、その関係を整理・明晰化していきます。 そして最後に、以上で得られた保守主義の標準的な理解をベースとして、日本における保守主義の内実の検討に踏み込みます。 ※サイズが合わない場合はこちらをクリック ■2.保守主義、及び関連する諸思想 ◆1.保守主義・関連する諸思想の説明 ↓本文はここをクリックして表示 -... ※下記は全て、ブリタニカ百科事典(日本版)より引用(ただし※注はこちらで追記) 政治思想ないしイデオロギー 説明 関連ページ 保守主義、及び、保守主義の内実を成す概念 保守主義(conservatism) 既存の価値・制度・信条を根本的に覆そうとする理論体系が現れたときにこれに対する対抗イデオロギーとして形成される。「保守主義の宣言」とも言われる『フランス革命に関する省察』を著わしたE.バークは、人間のあらゆる制度の基礎は歴史であり、具体的な文脈のなかで長い時間をかけて培われてきたものだけが永続性を持つため、抽象的な哲学原理に基づく革命は座絶を運命づけられているとしている。バークは決して変化を拒絶しないが、それは既存のものの漸進的改良として果たされねばならないと考える。歴史的・有機的な社会秩序への人為的介入の排除とその漸進的改革が保守主義の思想的特徴であるが、これは現代のF.ハイエクやM.オークショットにもみられる考え方である。 保守主義とは何か 新保守主義(neo-conservatism) 1960年代後半以降、アメリカでリベラリズムや対抗文化の行き過ぎを批判しつつ登場してきた思想。I.クリストル、D.ベル、S.ハンティントンなどが代表的である。アメリカでは、ベトナム戦争の経験に伴う文化的混乱から若者を中心として性の自由や家族の解体といった急進的な主張がなされたが、反面、こうした潮流に強い危機意識をいだき、西欧的価値を擁護しながらアメリカの文化的同一性を再定義しようという試みも生まれた。これらは資本主義と自由の結びつきを強調し、共産主義に対する批判を共有するもので、現実の政策的提言においても連邦政府が過剰な役割を果たすことには懐疑的で、私的集団の活動の場を拡大する「小さな政府」への方向性を示唆している。このような主張を経済論として展開しているのが、新自由主義である。 自由主義(liberalism) 個人の諸自由を尊重し、封建的共同体の束縛から解放しようとした思想や運動をいう。本格的に開始されたのはルネサンスと宗教改革によって幕をあけた近代生産社会においてであり、宗教改革にみられるように、個人の内面的自由(信教の自由、良心の自由、思想の自由)を、国家・政府・カトリック・共同体などの自己以外の外在的権威の束縛・圧迫・強制などの侵害から守ろうとしたことから起こった。この内面的諸自由は、必然的に外面的自由、すなわち市民的自由として総称される参政権に象徴される政治的自由や、ギルド的諸特権や独占に反対し通商自由の拡大を求め、財産や資本の所有や運用を自由になしうる経済的自由への要求へと広がっていった。これらの諸自由の実現を求め苦闘した集団や階級が新興ブルジョアジーであったため、自由主義はしばしばそのイデオロギーであるとみられた。しかし各個人の諸自由を中核とした社会構造は、その国家形態からみれば、いわゆる消極国家・中性国家・夜警国家などに表象されるように、自由放任を生み、当然弱肉強食の現象を現出させることになり、社会的経済的に実質的な平等を求める広義の社会主義に挑戦されることになった。しかし、20世紀に出現した左右の独裁政治の実態は、自由主義が至上の価値としてきた内面的自由・政治的社会的諸自由などが、政治体制のいかんに関わらず、普遍的価値があることを容認せしめ、近代西欧社会に主として育まれてきた自由主義は再評価されている。 リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 新自由主義(neo-liberalism) (1) 1870,80年代から勃興したイギリスの理想主義運動、なかんずくT.H.グリーンが主唱した社会思想。グリーンは、道徳哲学としてはJ.ロック、J.ベンサムなどの功利主義的自由主義ではなく、カントやヘーゲルの影響を受けた観念論的・理想主義的自由主義を、社会哲学としては、自由放任主義(経済的自由主義)ではなく国家による保護干渉主義(社会政策)を主唱した。しかし決して国家専制主義や全体主義に陥らず、個人の自我の実現、個人の道徳的生活の可能な諸条件の整備に国家機能が存在するとして、自由主義の中心である個人主義を継受した。この思想はイギリス自由党の労働立法・社会政策に思想的根拠を与えた。⇒※注:こちらは正確には new liberalismであり、訳すと文字通り「新自由主義」だが、現在はこちらの意味では使用されなくなったので注意が必要。 リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 (2) 1930年代以降の全体主義国家の台頭や第二次世界大戦中から戦後にかけてのケインズ政策に反発して、再び個人の自由の尊厳を説き、政府の恣意的政策の採用を排し、法の下での自由を強調する思想。このような思想をもつW.オイケン、W.リプケ、L.ミーゼス、G.ハーバラー、F.ハイエク、L.C.ロビンズ、M.フリードマンらの多彩な人材を擁して、47年にモンペルラン・ソサエティーを結成している。恣意的・強権的権力の行使に反対する点ではかっての自由放任的自由主義と共通する面をもつため、その単なる復活と誤解されがちであるが、普遍的な法の強力な支配の必要を説き、法秩序の下での自由を強調する点で、かっての自由放任とは異なる。経済政策面でのその端的な表れは、ドイツに代表される社会的市場政策とシカゴ学派に代表される新貨幣数量説である。⇒※注:こちらが、neo-liberalism(正確に訳すと「再興自由主義」)すなわち現在使用されている意味での「新自由主義」である。 保守主義に隣接・類似するために混同されやすいが、別概念として区別すべきもの 自由至上主義(libertarianism)※注:項目なしのため、リバタリアン(libertarian)の項目で代用 福祉国家のはらむ集産主義的傾向に強い警戒を示し、国家の干渉に対して個人の不可侵の権利を擁護する自由論者。古典的自由主義と同様、リバタリアンも自由市場経済を支持するが、その論拠は自由市場が資源配分の効率性に関して卓越しているということだけではない。より重要なのは集産主義的介入(⇒コレクティビズム)が、自明の権利である個人の自然権や人権を侵害するという点である。リバタリアンの出発点は社会の理解に関する徹底的な個人主義的アプローチである。社会とは何らかの実体ではなく、自律性を権利として保障された諸個人が互いの価値の実現を目指して交流を持つ場である。経験的な意味で国家や政府による合理的計画よりも自律的な個人の活動のほうが社会的利益を最大化するというだけでなく、道徳的な意味でも個人の自律性を国家や政府の干渉によって強制的に縮小しようとするあらゆる試みは、個人の独自性を破壊し社会の目的のための手段といて扱うことになる。個人の価値の追求にはルールによる制約が課せられるべきであるが、それは各人の平等な権利を保障するというに限定されねばならない。国家や政府の役割はそこにあるのである。⇒※補注参照 中間派に何を含めるか 共同体主義(communitarianism)※注:項目なしのため、コミュニタリアン(communitarian)の項目で代用 人間存在の基盤としての「共同体」の復権を唱える一群の政治哲学者たちの総称。J.ロールズの『正義論』(1971)が政治哲学の復権に大きな影響を与え、当初その指導的立場にあったのが、ロールズに代表される福祉国家的な自由主義を主張するリベラリストと、ノージックに代表される個人の自由に対する制限を最小化しようとするリバタリアンであった。一見したところ対立するこの両陣営は「個人」の多元的対立から社会構成の原理を導出しようとする基本的枠組みでは一致している。この個人主義的な人間像・社会像に対して根本的な次元から論争に参加してきたのがコミュニタリアンである。A.マッキンタイア、M.サンデル、M.ウォルツァーらを代表とし、その主張は必ずしも一様でないが、人間的主体性を抽象的なアトム的存在の自律性としてではなく、共同体のもつ歴史・社会的なコンテクストに根付いた具体的存在として捉えようとする点では共通している。コミュニタリアンの登場の背景にはアメリカ社会が極端な個人主義の結果、公共心を衰退させ、そのことが様々な社会問題を引き起こしているという洞察がある。 中間派に何を含めるか ナショナリズム(nationalism) 民族、国家に対する個人の世俗的忠誠心を内容とする感情もしくはイデオロギー。普通、民族主義と訳されるが、国民主義あるいは国粋主義と訳されることもある。しかしこれらの訳語はいずれもナショナリズムの概念を十分に表現しているとはいえない。ナショナリズムの概念が多義的であるのは、ネーション(民族、国民)が歴史上きわめて多様な形態をたどって生成・発展してきたことに起因している。歴史的な重要概念となったのは18世紀末以後のことである。アメリカの独立とフランス革命がその端緒となったとされ、南アメリカに浸透し、19世紀にはヨーロッパ全体に広まり、ナショナリズム時代をつくりだし、20世紀に入って、アジア・アフリカで多くのナショナリズム運動が展開された。ナショナリズムはこうした諸国の独立をもたらす解放的イデオロギーではあるが、民族紛争と戦争の拡大をもたらす危険も大きい。 ナショナリズムとは何か右派・右翼とは何か ※補注:このように古典的自由主義およびその再興であるハイエクに代表される新自由主義(neo-liberalism)と、リバタリアニズム(自由至上主義)は厳密には別概念であるが、特にアメリカではliberalismが「マイルドな社会主義」を意味する言葉に変形してしまったために、ハイエク的な自由主義をも「リバタリアニズム」と呼ぶ場合がむしろ多くなっており、後述の中岡望 著『アメリカ保守革命』でも、正確には新自由主義(neo-liberalism)と呼ぶべきものをリバタリアニズムと呼称しているので注意が必要。(この場合は「リバタリアニズム」=新自由主義=経済保守 となる) ◆2.保守主義・関連する諸思想の整理図 ↓本文はここをクリックして表示 -... 保守主義 自由主義との関係 該当する概念(=外延) 隣接・類似するが別概念 対抗思想 (1) 伝統保守(真正保守主義) 古典的自由主義と親和的(バーク的保守主義) ・文化的保守・宗教保守(主として社会面に関心) ・共同体主義(コミュニタリアニズム)⇒中間に分類・ナショナリズム⇒右翼に分類 ・フランス啓蒙思想(特にルソーの思想)・デカルト的理性主義 長い歴史の中で育まれてきた伝統的権威・文化・社会制度を破壊する思想 (2) 経済保守(新保守主義) 新自由主義と親和的(ハイエク的保守主義)即ち、リベラル右派のこと ・反福祉国家/「小さな政府」派・減税主義者(主として経済面に関心) ・自由至上主義(リバタリアニズム)⇒中間に分類 ・社会主義/共産主義/ファシズム等の全体主義・リベラル左派(福祉国家/「大きな政府」派) 資本主義経済体制とそれによって担保される個人の自由を破壊する思想 ※ポリティカルコンパス右図の「親・自由主義/開かれた社会」側の「真正保守(=伝統保守)」と「真正リベラル(=リベラル右派=経済保守)」が保守主義に該当する。 ※サイズが合わない場合はこちらをクリック。 ※政治的スタンス5分類では、「親・自由主義(開かれた社会)」側の「真正保守(=伝統保守)」と「真正リベラル(=リベラル右派=経済保守)」が保守主義に該当する。 ※サイズが合わない場合はこちらをクリック ※政治的スタンス5分類・8分類について詳しくは 政治の基礎知識 参照。 ■3.保守主義の概念定義 ◆1.保守主義(conservatism)の辞書的定義 ↓本文はここをクリックして表示 -... (1) ブリタニカ・コンサイス百科事典(conservatismの項)より全文翻訳 歴史的に発展し、それゆえに継続性と安定性の明証である制度(institutions)と慣行(practices)への愛好を表す政治的態度またはイデオロギー 保守主義は近代においてフランス革命に対するリアクションとしてエドマンド・バークの著作を通じて最初に表明された。バークはフランス革命は、その理想が、その行き過ぎによって汚された(tarnished)と信じていた。 保守主義者は、変化の遂行は最小限(minimal)で漸進的(gradual)であるべきだと信じている。彼らは歴史を愛好し、理想的(idealistic)であるよりは現実的(realistic)である。 著名な保守主義政党として、英国の保守党、ドイツのキリスト教民主同盟、アメリカの共和党、日本の自由民主党がある。 (2) オックスフォード英語事典(conservativeの項)より抜粋翻訳 (政治的文脈において)自由企業・私的所有・社会に関する保守的な理念を愛好すること (3) コウビルド英語事典(conservatismの項)より全文翻訳 1 保守主義とは、変化が社会にとって為されることが必要とされる場合において、それは漸進的(gradual)に為されるべきだと信じる政治的哲学である。 2 保守主義とは、変化や新しいアイディアを受け入れることを嫌がることである。 ◆2.内包と外延 ↓本文はここをクリックして表示 -... 保守主義(conservatism)の辞書的定義を押さえたところで、次はその内包と外延を検討します。 (1) 内包(intension) 論理学で、一概念に含まれる属性。例えば「空」の内包は、「上、青色、広い」など (2) 外延(extension) 論理学で、その概念が適用される事物の範囲。例えば、金属という概念の外延は、金・銀・鉄の類 ■4.保守主義の内包(=内在する属性) ◆1.保守主義の核心的特色 ↓本文はここをクリックして表示 -... (1) (保守主義とは)常に「現状(status quo)」の中に、①「守る(conserve)べきもの」と、②「改善(improve)すべきもの」を弁別し 1 「絶対的破壊(absolute destruction)」の「軽率さ(levity)」と 2 「一切の改善を拒絶する頑迷(the obstinacy that rejects all improvement)」 を共に排除しようとするもの、であり (2) そのような「保守(preserve)」と「改革(reform)」とにあたっては 1 古い制度の有益な部分が維持され 2 「改革」によって「新しく付け加えられた」部分は、これに「適合するようにされるべきであり」 3 全体としては「遅くはあるが、しかし申し分なく持続的な進歩(a slow but well-sustained progress)」が保たれることを政治の眼目とする という所に、その顕著な特色がある。 つまり 1 「現状(status quo)」の中に常に「守る(conserve)べきもの」を見出すことを起点として政治的思惟が進行する、という思考形式と、 2 「遅くはあるが、しかし申し分なく持続的な進歩(a slow but well-sustained progress)」への政治的志向 の2つが、E.バークに代表される保守主義の核心的特色である。 この様な保守主義的政治態度は、政治情勢により「右」へ振れる場合にも、あるいは「左」に振れる場合にも、その振幅を有限化するばかりでなく比較的にいって僅少なものにする。 なぜなら、いずれの方向にせよ、過度の振れは「守るべきもの」を放棄することを意味し、また「左」へ振れすぎるときには、進歩の連続性が切れてしまうからである。 従って、バークの保守主義の哲学は、一言にして尽くせば、文字通りの「政治的安定性(political stability)」の哲学、「政治的力学」の哲学、高度の政治的「復元力(stability)」を持つ哲学に他ならない。 ◆2.保守主義の一般的特質 ↓本文はここをクリックして表示 -... (1) 思想形成の反定立(antithesis)性 保守主義は既に定立(thesis)された思想の衝撃を待って初めて、その対立者として自己の思想形成を開始する。 (2) 思想内容の他者被規定性 保守主義は、思想内容が他者によって(つまり定立された別の思想によって)方向づけられ限定される。即ちバークにおいては「アンチ・フランス啓蒙思想」「アンチ・デカルト流理性主義」であり、ハイエクやポパーにおいては「アンチ・社会主義/共産主義その他の全体主義」「アンチ・リベラリズム/福祉国家」である。 (3) 高度の状況的機動性(状況適応性) 保守主義は、それが置かれた具体的状況に密着した思考形式と実現手段を提供する。つまり保守主義は、その対抗思想のように理論が先行した思考様式ではなく、常に「現状(status quo)」を前提として歴史的継続性の中で、その内容と対応策を見出す。「イギリス人は新事態が起こるたびごとにそれを如何に利用するかを心得ている」(A.ヒットラー)即ち保守主義は、①反省的判断力による個性的状況の敏速な把握と、②政治的実践へのその巧みな活用、を本領とする。 (4) 無原則的状況主義(opportunism)との区別 保守主義は、一般に「中道(mid-roader)」あるいは「中間(centrist)」と呼ばれる「無原則主義(opportunism、便宜主義・日和見主義)」と違って一定の政治的原則/政治的価値を保持する。 (5) 貴族政治的(aristocratic)志向性 保守主義は、民衆政治(democracy)を衆愚政治(mobocracy)に陥り易いものとして警戒し敬遠する傾向がある。 ※関連ページ デモクラシーと衆愚制 ◆3.保守主義の価値観・思惟構造 ↓本文はここをクリックして表示 -... (1) 「現状(status quo)」における「保守(conserve)すべき」内容の発見可能性の肯定 保守主義は一定形態の歴史意識(但しマルクス主義的な歴史発展法則を肯定するものではなく「過去」と「現在」との継続性という意味での歴史意識)と、そうした歴史を把握する人間の能力(つまりデカルト的な普遍的理性ではなく、歴史的に形成され、個別的に存在する広義の理性)を肯定している。なぜなら保守主義は「現状(status quo)」の中に一定の「保守すべき」(即ち一定の積極的に望ましいと評価し得る)内容を見出す思想であり、それは従って人間は歴史的な経緯のうちに「保守すべき」価値内容を弁別する能力を保有することを肯定しているからである。 (2) 政治目的およびその実現手段の「既存性(existence)」の肯定 一般に政治的思惟は、①政治的目標の設定に始まり、②その適合的な実現手段を発見し、③その手段の効果的適用による目標実現によって完了する。しかし保守主義は、①この政治的思惟の起点を「現状(status quo)」における「保守すべき」内容の発見に求め、かつ、②その実現手段をも「現状」に求めている。「真の政治家というものは、常に、どうすれば自国の現存の諸材料を、最大限度に利用することになるかということを考慮するものである」(E.バーク) (3) 「申し分なく継続的な進歩(well-sustained progress)」の肯定 保守主義は「歴史の流れに順行した」政治、言い換えると慣例を活かし「現状(status quo)」を絶えず制度的ないし観念的に過去に連結していくような政治を理想とする。政治における新奇な、あるいは革新的な企図は、保守主義の歴史意識にとっては歴史の継続性に対する撹乱要因に過ぎない。 (4) 「自然的」人間性に対する「歴史的」ないし「社会的」人間性の優位 (5) 「自然的」理性に対する「歴史的」理性の優位 (6) 「抽象的悟性(abstractive understanding)」に対する「歴史的悟性(historical understanding)」の優位 「旧い先入見prejudice」と「理由のない慣習」の尊重 ■5.保守主義の外延(=対象となる範囲) ◆1.保守主義と自由主義の関係 ↓本文はここをクリックして表示 -... リベラリズムについては リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 を参照のこと。 要約すると、リベラリズムには歴史的に以下の4段階があり、このうち日本語の語感で「自由主義」に相当するのは 1 と 3 である。 リベラリズムの段階・種類・区分 時期 意味内容 1 古典的リベラリズム(classical liberalism) 16世紀~19世紀 ①個人の権利・自由の確保、②政府権力の制限、③自由市場を選好…消極国家(夜警国家) 2 ニュー・リベラリズム(new liberalism) 19世紀末~20世紀 経済的不平等・社会問題を緩和するため市場への政府介入を容認→次第に積極的介入へ(積極国家・福祉国家・管理された資本主義)社会主義に接近しているので社会自由主義(social liberalism)と呼ばれ、自由社会主義(liberal socialism)とも呼ばれた。 3 再興リベラリズム(neo-liberalism) 1970年代~ スタグフレーション解決のため自由市場を再度選好。 2 を個人主義から集産主義への妥協と批判し、個人の自由を取り戻すことを重視 4 現代リベラリズム(contemorary liberalism) 現代 ①不平等の緩和、②個人の権利の拡張、を含む社会改革を志向1970年代以降にJ.ロールズ『正義論』を中心にアメリカで始まったリベラリズムの基礎的原理の定式化を目指す思想潮流で、①ロールズ的な平等主義的・契約論的正義論を「(狭義の)リベラリズム」と呼び、②それに対抗したR.ノージックなど個人の自由の至上性を説く流れを「リバタリアニズム(自由至上主義)」(但し契約論的な構成をとる所はロールズと共通)、③また個人ではなく共同体の価値の重要性を説くM.サンデルらの流れを「コミュニタリアニズム(共同体主義)」という。 補足説明 2 ニュー・リベラリズム(new liberalism)と 4 再興リベラリズム(neo-liberalism)は共に「新自由主義」と訳されるので注意。もともと 1 古典的リベラリズムに対して修正を加えた新しいリベラリズム、という意味で、 2 ニュー・リベラリズム(訳すと「新自由主義」)が生まれたのだが、世界恐慌から第二次世界大戦の前後の時期に、経済政策においてケインズ主義が西側各国に大々的に採用された結果、 1 に代わって 2 がリベラリズムの代表的内容と見なされるようになり、 2 からnewの頭文字が落ちて、単に「リベラリズム」というと 2 ニュー・リベラリズムを指すようになった。ところが、1970年代に入るとインフレが昂進してケインズ主義に基づく経済政策が不況脱出の方途として効かなくなってしまい、市場の自律調整機能を重視する 1 の理念の復興を唱える 3 ネオ(=再興)・リベラリズムに基づく政策が1980年前後からイギリス・アメリカで採用されるようになった。そのため今度は、 3 を「新自由主義」と訳すようになった。 保守主義は、 ① 18世紀末のE.バークの時代においては、実質的に「保守すべき」内容として、 1 古典的自由主義を意味し、 伝統保守(旧保守) 対抗思想 フランス啓蒙思想(特にルソーの思想)、デカルト的理性主義(設計主義的合理主義) ② 20世紀半ば以降のF.A.ハイエクやK.R.ポパーの時代においては、実質的に「保守すべき」内容として、 3 再興(=ネオ)自由主義を意味した。 経済保守(新保守) 対抗思想 社会主義・共産主義・ファシズム等の全体主義、 2 ニュー・リベラリズム(所謂リベラリズム…福祉国家など大きな政府による実質的な個人の自由の剥奪) ⇒「保守主義の他者被規定性」の項目参照。 ◆2.伝統保守と経済保守の架橋 ↓本文はここをクリックして表示 -... ◇1.18世紀イギリスの自由主義思想家による「伝統保守」の説明 (1) D.ヒューム(スコットランド出身の英国外交官・道徳/政治哲学者、歴史家)『道徳・政治・文学に関する随想』(1742) 「英国においては到底存在する見込みはないと思われる一政体について、これ以上論議を重ねる必要はありません。我々の間ではどの党派もそれを目的としてはいないように見えます。出来るだけ我が国の古来の政体を育て発展させるようにしましょう。大変危険な新型の諸政体に対する情熱を掻き立てないようにして。」 (2) E.バーク(アイルランド出身の英国下院議員・思想家)『フランス革命の省察』(1790) 「思慮深い警戒心、綿密周到さ、気質的というよりはむしろ善悪判断から来る小心さ、これらが最も断固たる行為をする際に我々の父祖が拠り所とした指導原理の中にありました。彼らは、あの光-つまりフランス人の紳士諸君が自分たちはそれに大いに与っていると吹聴するあの光-に照らされてはいなかったために、人間とは無知で誤りやすいものである、ということを肝に銘じて行動したのでした。」 「国家と法を聖別するにあたって、まず第一に則るべき最も重要な原理の一つは、それら国家や法を一時的に、あるいは終身で保有している人々が祖先から受け取ったものや本来子孫に属するものを忘れて、あたかも自分だけが完全な主人であるかのように行為する、といったことがあってはならない、ということです。即ち、自らの社会の根源的な構造を勝手に破壊し、それによって限嗣相続の制限を解除したり相続財産を浪費したりしても、それは自分たちの権利のうちなのだ、などと思ってはならない、ということです。もしもそうしたことが行われれば、彼らは後から来る者に対して、住むべき家の代わりに廃墟を残すことになるでしょうし、彼らが自らの祖先の諸制度を殆ど尊重しなかったのだから、彼らが考え出したものもやはりそんなに尊重するには及ばないのだ、と教えるようなものでしょう。」 ◇2.保守主義=「小さな政府」なのか? 参考サイト 本当の対立点とは何か?(「保守主義」の定義) (戦争に負けた国blog様) このサイトに見るように「小さな政府」こそ保守主義だとする主張がある。 保守主義がすべからく「大きな政府」に反対する、という意味では確かにそうだが、保守主義は「経済保守(新保守=リベラル右派)」だけではない。 伝統文化・社会的価値の維持発展に主な関心を注ぐ「伝統保守(旧保守)」は、経済政策においては一般に「小さな政府」よりも中負担・中福祉(=中規模の政府)を志向する。 従って、この命題は、半分だけ正しい。 用語 説明 関連ページ 小さな政府(limited government)※注:項目なしのため、安価な政府の項目で代用※補注参照 「小さな政府」ともいう。18世紀末頃より用いられた自由主義の財政的標語で、財政規模のあまり大きくない政府をいう。ナポレオン戦争後のイギリスでは、軍事費の削減はもとより、航海法・独占特許制度の撤廃などの自由主義施策の推進と並んで一般経費の縮減が進められた。このため1870年頃まで国家財政の規模は年々減少、または漸増するにとどまり、史上ほとんど唯一の「安価な政府」が出現した。その思想的背景にあるものは、国の役割を国防・警察などに限るA.スミスの夜警国家観である。しかし、前世紀(注:19世紀)末以降イギリスを含めて経費膨張が避けがたい傾向となったことは、帝国主義の風潮に追うところが大きい。第二次世界大戦後は、福祉の充実など各経済分野での公共部門の拡大が「高価な政府」へと拍車をかけているが、1980年代アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権下では「小さな政府」への動きがみられた。その趣旨は、経済・社会政策の領域での政府の役割を削減し、市場機構と競争に多くを委ねることによって財政赤字・政府規制を改め、公営企業の民営化を促し、自立・自助の精神により資本主義経済の再活性化をはかることにあった。(⇒経費膨張の法則) ケインズvs.ハイエクから考える経済政策 ※補注:実際には「安価な政府(cheap government)」という政治・経済用語は英語圏には存在しない。(cheap government は「安っぽい・みすぼらしい政府」の意味になってしまい、用語として不適切)⇒英語に疎い日本人学者の間で使用される誤った用語と思われるが、ここでは日本語版ブリタニカ百科事典の記載内容をそのまま転記する。 ◇3.伝統保守(旧保守)と経済保守(新保守)の架橋 ~ フュージョニズムと「思いやりのある保守」 フュージョニズム(fusionism) アメリカにおいて冷戦時代に「伝統保守」と「経済保守」の融合・架橋を目指した思想的立場 ※以下は、「乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~」様blog記事中岡望『アメリカ保守革命』より抜粋 ※なお、中岡望氏は、現代アメリカの用法に従って「新自由主義(=リベラル右派=経済保守)」の意味で「リバタリアニズム」という語を使用しているので注意が必要。 戦後のアメリカ保守主義は二つの流れに収斂されていった。ひとつは伝統主義であり、もう一つはリバタリアニズムである。だが保守主義運動の中で、この二つのグループの間に直接的な接点はなかった。二つの保守主義は共通な価値観を持っていたが、必ずしも同じ理想を求めていたわけではなかった。「大きな政府」を批判する点では一致しながらも、「個人の自由」に関する考え方は大きく違っていた。伝統主義者が倫理や宗教から「個人の自由」を理解しようとしたのに対し、リバタリアンは市場という観点から理解しようとしていた。(p.40)伝統主義者は敬虔なキリスト教徒が主流を占めていたのに対し、リバタリアンの多くは宗教には比較的無関心であった。伝統主義者は伝統を重んじ、個人主義に対して批判的であったが、リバタリアンはダイナミックに変化する社会経済をイメージし、個人の自由を最大限認める個人主義の哲学を掲げていた。(p.41) しかし、思想運動としての保守主義が発展するためには、「小異を捨てて大同につく」ことが求められた。二つの流れを融合させることが必要であった。反共主義がその接着剤の役割を果たした。 保守主義の二つの流れを融合させたのが、ジャーナリスト出身の保守主義者フランク・メイヤーである。融合された保守主義思想は「フュージョニズム(融合主義)」と呼ばれた。(p.41)伝統主義が主張する人間の“美徳”の達成は・・・リバタリアンの主張する“自由な社会”があって初めて可能になると説いたのである。メイヤーは、これによって、それまで対立していた伝統主義とリバタリアニズムを保守主義革命の大義のために“融合”させたのである。(pp.43-4)フュージョニズムが反共主義によって貫かれている・・・。冷戦が深刻化し、共産主義の世界への拡大が現実のものとなりつつあった当時の状況から、全体主義に反対する伝統主義者もリバタリアンも、反共主義にはまったく異論がなかった。その結果、反共主義はアメリカの多様な保守主義の思想を結びつける役割を果たすことになる。(pp.44-5) ここまでがアメリカ保守主義革命の第一段階である。メイヤーによる“融合”によって理論武装を終えた保守主義者は、その舞台を思想の場から政治の場へと移していく。彼らは保守主義思想を単なる思想運動に留めることなく、その理念を政治の場で実現しようとした。ここから保守主義革命は第二段階に突入する。1950・60年代、タフト、ゴールドウォーターという二人の共和党政治家は保守主義の理念を政治の場で実現することに成功しなかった。しかし、その過程で、保守主義運動の本流の流れとは別に、(伝統的な孤立主義を捨てて積極的に国際政治に介入しようとする反共主義者である)「冷戦リベラル」や(人工中絶や同性愛を宗教的な倫理観に反する現象として徹底的に批判する)「クリスチャン・ライト」といったグループが保守陣営に加わり、保守主義者は共和党の一大支持基盤を形成していく。それに伴って、共和党は保守主義を奉じる政党へと変貌していく。そして、1980年、レーガン共和党政権の成立によって、ついに保守主義はその理念を政治の場で実現するチャンスを手に入れた。 思いやりのある保守主義(compassionate conservatism) ブッシュ大統領が、冷戦終結で「反共」という共通基盤を失った後の「伝統保守」と「経済保守」を架橋するために打ち出した政策コンセプトであり、さらに「思いやり(compassion)」という言葉に象徴されるように、従来は共和党の支持者獲得のターゲットとはあまりみなされなかった社会的弱者への目配りが含意されている。英キャメロン首相も、ブッシュ政権に倣いこれを自身の政策コンセプトとして採用しているほか、安倍元首相が政権当時掲げた「再チャレンジ支援構想」もこのコンセプトの影響を受けていると考えられ、21世紀型の保守主義のあり方として注目される。 ■6.保守主義と混同されやすいが別概念として区別すべきもの ここでは、保守主義(=真正の自由主義)と全体主義の間に位置するリバタリアニズム・コミュニタリアニズム及びナショナリズムについて説明し、更にナショナリズムに関連してよく問題となる保守・右翼・極右の区別について説明します。 ※サイズが合わない場合はこちらをクリック ◆1.保守主義とリバタリアニズムの区別 ↓本文はここをクリックして表示 +... ◇自由至上主義(libertarianism)の辞書的定義 (1) ブリタニカ・コンサイス百科事典(libertarianismの項)より全文翻訳 個人の自由を強調する政治思想。自由至上主義者は、各個人は、自己の行動が他人の自由を侵害しない限り、完全な行動の自由を保持すべきだと信じている。 自由至上主義者の政府に対する不信は、19世紀の無政府主義(anarchism)に起源を持つ。典型的な自由至上主義者は、所得税やその他の政府の課税ばかりでなく、社会保障(social security)や郵便サービスのような他の多くの人々が有益だと思っているプログラムにも反対する。 アメリカでは彼らの見解はしばしば伝統的な政党間の境界を横断する(例えば、自由至上主義者はほとんどの共和党支持者と同じ様に銃規制に反対するが、ほとんどの民主党支持者と同じ様に禁止薬物の合法化を支持する)。 自由至上主義者の間で愛好されている人物はヘンリー・デビット・ソローとアイン・ランドである。 (2) オックスフォード英語事典(libertarianismの項)より抜粋翻訳 市民生活に対する政府の介入を最小限のもののみとすることを唱導する極端な自由放任の政治思想。 その支持者は個人の道徳は政府の扱う事柄ではなく、それゆえ麻薬使用や売春のような異論もあるところではあるが参加者以外の誰も害さない活動は不法とされるべきではないと信じている。 自由至上主義者は無政府主義者と主張内容を共有しているが、但し自由至上主義者は一般には、より一層政治的権利と関連付けられる(主としてアメリカ)。自由至上主義は伝統的な自由を社会的正義に結びつける配慮が欠落している。 (3) コウビルド英語事典(libertarianの項)より全文翻訳 1 リバタリアンであったり、またリバタリアン的な態度の人とは、人々は自分が望むままのやり方で考えたり振る舞う自由を持つべきだという理念を信じ、また支持している人である。(= リベラル) 2 自由至上主義者とは自由至上主義の見識を持つ人である。(= リベラル) このように、正確な定義でのリバタリアニズムは、 (1) 極めて強く個人的自由の領域の拡大を希求する思想であることから「右派」の「経済保守(=リベラル右派)」に近いといえる(そのために新自由主義と混同を招いた)が、 (2) そうした姿勢は、①無政府主義(左派に近い思想と一般には考えられる)につながること、 (3) また、②政府などの公的機関の介入が最小となる社会を合理的に設計できる、としている点でデカルト以来の設計主義的合理主義(左派の根本的思想の一つ)に連なること、 から、右派・左派のどちらにも分類できない「中間派」とするのが、最も適切である。 ◆2.保守主義とコミュニタリアニズムの区別 ↓本文はここをクリックして表示 +... ◇共同体主義(communitarianism)の辞書的定義 (1) ブリタニカ・コンサイス百科事典(communitarianismの項)より全文翻訳 ①政治生活の実行、②政治制度の分析・評価、③人間のアイディンティティと安寧幸福の理解、に関する共同体(community)の重要性を強調する政治・社会思想。 共同体主義は1980-90年代に、ジョン・ロールズ等の思想家による理論的リベラリズムに対する明白な反対思想として興起した。 共同体主義者によれば、リベラリズムは非現実的なほどに原子化した抽象的個人という概念に寄りかかっており、また自由と自律といった個人的価値に余りにも重要性を置き過ぎている。 共同体主義の主要な代表者には、アミタイ・エツィオーニ、マイケル・サンデル、チャールズ・ティーラーが含まれる。 なお、集産主義を参照のこと。 (2) オックスフォード英語事典(communitarianismの項)より抜粋翻訳 1 小規模な自治的共同体に基礎を置く、社会組織に関する理論または制度。 2 共同体に対する個人の責任と、家族という単位の社会的な重要性を強調するイデオロギー・ ※コリンズ-コウビルド英語辞典には項目なし。 このように、正確な定義でのコミュニタリアニズムは、 (1) 歴史的に育まれた共同体に根付く価値観を正当に評価し維持発展させようと希求する思想であることから「右派」の「伝統保守」に近いといえる(そのために、これこそが真の保守主義であるとする誤認識を招いた)が、 (2) その姿勢は、個人の自由意志を軽視して、集産主義(左派の根本的思想の一つ)につながる傾向が強いこと から、やはり右派・左派のどちらにも分類できない「中間派」とするのが、最も適切である。 参考サイト オピニオン●保守と日本精神(細川和彦氏サイト) ※当ページ作成時に一部参考にした保守/リベラル/右翼/左翼などの政治思想の定義づけ・分類・整理を行っているサイトで、ことに共同体主義こそ真の日本的保守主義と主張する点がユニーク。 ◆3.保守主義とナショナリズムの区別 ↓本文はここをクリックして表示 -... ◇1.ナショナリズム(nationalism:国民主義、民族主義、国家主義など文脈に応じて様々に訳し分ける)の辞書的定義 (1) ブリタニカ・コンサイス百科事典(nationalismの項)より全文翻訳 自己のnation(アイデンティティを共有する人々の集合)またはcountry(地理的な意味での国家)に対する忠誠(loyalty)と献身(devotion)であり、特に他の人々の集合や個人的な利害への忠実さを上回るもの。 国民国家(nation-state)の時代以前は、ほとんど全ての人々の忠誠先は彼らの直近の地域や宗教的集団だった。 巨大な中央集権国家の登場は地方的権威を弱体化させ、日々進行する社会の世俗化は宗教的集団に対する忠誠を弱体化させた。しかしながら人々に共有される宗教は-共通の民族性・政治的遺産・歴史と共に-人々を国民主義運動(nationalist movement)へと誘い入れる要因の一つとなった。 18世紀から19世紀初めにかけての欧州の初期の国民主義運動は自由主義的(liberal)で国際的(internationalist)なものだった。しかしそれは次第に頑迷(conservative:「保守的」の意味もあるがここでは「頑迷」の意味ととる)で偏狭(parochial)なものとなっていった。 ナショナリズムは第一次世界大戦・第二次世界大戦そして近代におけるその他の多数の戦争を引き起こした主要因と考えられている。 20世紀のアフリカとアジアでは民族主義運動(nationalist movements)はしばしば植民地主義(colonialism 植民地支配)に対する反対(抵抗)を引き起こした。 ソ連邦の崩壊後、東欧と旧ソ連邦の各共和国の強烈な民族主義的感情(nationalist sentiments)は、旧ユーゴスラビア地域におけるような民族的紛争(ethnic conflict)の要因となった。 (2) オックスフォード英語事典(nationalismの項)より抜粋翻訳 1 愛国的な感情・原理・尽力(patriotic feeling, principle, or efforts) 2 他の国々(country)に対する優越性(superiority)という感情によって特徴づけられた極端な形の愛国心(an extreme form of patriotism) 3 特定の国家(country)の政治的独立の主張(advocacy) (3) コウビルド英語事典(nationalismの項)より全文翻訳 1 ナショナリズムとは自分達は歴史的にまたは文化的に、ある国家(country)の中で特定の分離された集団であると感じる人々の、政治的独立への渇望(desire for political independence)である。 2 ある個人の自己のnationに対する巨大な愛情をナショナリズムと呼ぶことが可能である。ある特定のnationは他の全てのnationより優秀であるという信条と、このナショナリズムはしばしば関連付けられるが、こうしたケースは、しばしば(話者の)不承認(不快感 disapproval)を表現するために用いられる(=jingoism 偏狭的優越主義) ◇2.ナショナリズムの発展モデル ※ナショナリズムは一般に以下の3段階で発展すると考えると理解し易い。 Ⅰ.解放的ナショナリズム(パトリオティズム) → Ⅱ.国民国家の成立 → Ⅲ.拡張的(排外的・侵略的)ナショナリズム(ジンゴイズム/ショーヴィニズム) 主に他国や他民族の抑圧に対して、①国家・国民形成を図りつつ、②政治的あるいは経済的自決(民族自決)を求める動き※政治的・経済的自決を求めることから、この段階のナショナリズムは自由主義と親和的である。 → 国家の要請に適った国民を育成するために、①統一的・画一的な国民教育の実施、②歴史・文化の共有化、③「伝統の創造」(※)といった公定ナショナリズムとでも言うべき諸政策が政府主導で実施される。※英歴史学者ホブズボームの用語で、正統性に問題のある新興国家の政府が行いがちな一種のご都合主義的な「伝統」価値の捏造 → 増大していく大衆の自尊感情の現れとしてのナショナリズム(大衆の自己崇拝、ナショナリズムの市民宗教化)。Ⅱ.の公定(=官製)ナショナリズムの結果、政府当局のコントロールが効かない状態にまで大衆の自尊感情が昂進してしまった状態。 少数エリ-トの自覚的な活動(市民型ナショナリズムcivic nationalism)として始まり、次第に参加者を拡大していく → 国民の政治参加の意欲が高まる結果、大衆デモクラシーが成立するが、次第に衆愚化していく傾向を免れない。 → 理性よりも大衆の無定見な民族感情に流され易くなり(民族型ナショナリズム ethnic nationalism)、①国内的には排外的、②対外的には侵略的傾向を強めていく結果となる。 例1 フランス革命の最初期 → フランス共和国の建設(カルノーの徴兵制etc.) → ジャコバン政権樹立以降の「革命の輸出」~ナポレオンの侵略戦争 例2 ドイツ統一運動 → ドイツ第二帝国の建設(ビスマルク時代) → ウィルヘルム2世の世界政策から第一次世界大戦へ。さらに敗戦からワイマール共和国の混迷ののちナチス政権による侵略政策の追求へ 例3 明治維新~日露戦争・不平等条約改正 → 大正デモクラシー(男子普通選挙の導入=大衆の政治参加) → 日本の場合は露骨な対外侵略の肯定という形は憚られたが、アジア諸民族と結んで白人支配を覆すという大義(=アジア主義)が利用される形で拡張的ナショナリズムが発動してしまった。 ※韓国は、Ⅱ.の行き過ぎの結果、Ⅲ.拡張的(排外的・侵略的)ナショナリズムが発動してしまった状態と解され、また中国もⅡ.を部分的ながら過激に実行した結果、Ⅲ.の歯止めが利かなくなりつつある状態と見られる。 ◆4.保守・右翼・極右の区別 ↓本文はここをクリックして表示 -... ※保守・右翼・極右をどう区別するかは定義の仕方次第だが、一応の目安として以下の基準が有効である。 内容 関連ページ 保守 国内外の全体主義(共産主義・社会主義・リベラリズムなどの集産主義)の脅威から自由を守る(=自由主義) 保守主義とは何かリベラリズムと自由主義 右翼 他国・他国民の侵略的ナショナリズムの脅威から自国・自国民を守る(=解放的ナショナリズム) 右翼・左翼の歴史ナショナリズムとは何か 極右 他国・他国民に対して侵略的ナショナリズムを発動している段階。なお極右と極左は紙一重の双生児であり、極左も当然侵略的ナショナリズムを発動している段階である。 右翼・左翼の歴史 ※サイズが合わない場合はこちらをクリック ■7.日本の保守主義 以上で、①E.バーク的保守主義(伝統保守)と、②ハイエク的保守主義(経済保守)の2大類型に基づいて、英語圏で発展した保守主義の標準概念と、関連する諸思想の位置づけを説明しました。 以下では、この標準的な保守主義の解釈をベースとして、日本の保守主義及び関連する諸思想について分類・位置づけを行います。 ※サイズが合わない場合はこちらをクリック ◆1.参考:「保守主義」という用語の使用状況 ↓本文はここをクリックして表示 -... 戦前・戦中さらに戦後も1970年代までは「保守主義」という言葉はマイナス・イメージの付きまとう言葉として日本ではこれを自称する者はほとんどいなかった。 左翼側が敵対勢力を「保守反動」とレッテルを貼って批判する場合に使用される例がほとんどであり、政治勢力としての「保守」は存在しても、政治思想としての「保守主義」を唱える者はほとんどいなかった。(明治21年に長州藩出身の軍人・政治家 鳥居小弥太が「保守中正派」と称する小政党を作り「保守」を論じていることが数少ない例外) 戦前・戦中において伝統保守的な思想的立場を表明する者の多くは、もっぱら「右翼」(とくに昭和初期には「観念右翼」ないし「精神右翼」)と他称され、また彼ら自身は後述する「日本主義」を名乗っている場合が多かった。 その後、1980年代に英サッチャー・米レーガン両保守政権が政治的・経済的に成功を収めて、「保守主義」に今度はプラス・イメージが高まり、日本でも「保守主義」を自称する者が急増し、現在に至っている。 ◆2.西欧保守主義・日本の保守主義の接合上の問題点と考え方 ◇1.保守主義と、自由主義・個人主義・デモクラシーの関係 ↓本文はここをクリックして表示 -... 《問題点》 西欧保守主義の本質は、自由主義・個人主義・デモクラシーの肯定にある。⇒ ところが、日本の「保守」論客には、自由主義・個人主義・民主主義を否定的に捉える者がかなり多いように見える。変ではないか? 【考え方】 日本の「保守」論客の批判している「自由主義」「個人主義」「民主主義」の内容をよく読むと、ルソー以降に左翼によってその意味を歪曲されてしまった「(左翼的意味の)自由主義(=リベラリズム)」「(アトム化された)個人主義」「(衆愚化した)デモクラシー(=モボクラシー)」のことであることが分かる。これは、「自由主義」「個人主義」「民主主義」という言葉が、日本でも一般的に使用されるようになった大正時代(大正デモクラシー期)には、これらの言葉は、既に西欧社会においても左翼によってその本来の意味を歪められてしまっており、日本の「保守」論客たちは、それらの政治思想・概念を、本来の意味ではなく、もっぱら歪曲された意味で理解してしまったことに原因があると思われる。ハイエクやポパー、バーリンらの真正の自由主義者(本来の自由主義者)による「左翼によって歪曲された」政治思想・概念への痛烈な(そして左翼側にとっては致命的な)批判は、第二次世界大戦中あるいはその直後にようやく日の目を見たものであり、当サイトでは、彼ら(ハイエクやポパー)の必勝の論法を是非ともマスターすることを強く推奨している。しかし、これらの左翼批判を受容していない(要するにハイエクやポパーを読んでいない)日本の「保守」論客たちは、いまだに単純な(そして残念ながら余り説得力があるようには思えない)従来どおりの紋切り型の「自由主義」「個人主義」「民主主義」批判を繰り返していると思われる。この点に関する不都合は、戦前から戦後にかけての日本の代表的な保守主義者である平泉澄博士の著作についても残念ながら当てはまることである。(平泉博士はハイエク・ポパーと同時代人であることから、バークのルソー批判までは受容していても、ハイエク・ポパーの全体主義批判までは受容できなかったことに起因)従って、結論として我々は、①日本自生の保守主義の理解のみに立脚するのではなく、②西欧保守主義の伝統にも立脚し、これを左翼・全体主義を完膚なきまでに論破する最上のツールとして是非とも活用すべきである。 (参考)「真の個人主義」と「偽の個人主義/集産主義」⇒詳細は「個人主義」と「集産主義」 ~ ハイエク『隷従への道』読解の手引きへ 真の個人主義 (→自由主義体制へ) 偽の個人主義/集産主義 (→全体主義体制へ) 主な提唱者 ソクラテス、バーク、A.スミス、ヒュームアクトン、トックヴィル、ハイエク、ポパー、オークショット プラトン、デカルト、百科全書派、ルソー、マルクス、ベンサム 制度・秩序の捉え方 自生的秩序(spontaneous order)論即ち、自由な人々の自然発生的な協力が個々人の知性が完全には理解できないほどの偉大な制度や秩序など社会的構築物を創り出すこと(A.スミスの所謂「神の見えざる手invisible hand」)を肯定し、そうした特定の人物・組織の設計に依存しない自生的秩序形成が正常に機能する仕組みを維持育成することに重点を置く立場 設計主義的合理主義(constructivist rationalism)即ち、発見できる全ての秩序は特定の個人や組織の計画的な設計の産物であるとして、個人の理性を買いかぶり、個人の理性によって意識的に設計されたものでないもの・理性にとって完全には明瞭でないものに対しては、何であれ重視しない立場。 個人と国家の捉え方 中間団体による個人の自由の保障本質的に自由な個々人によって自発的に結成され歴史的に継続・発展してきた種々の中間団体(例えば、宗教共同体・職能組織・地縁集団・血縁集団)の存在によって個人が保護され、権力(power)がこうした中間団体や個々人に広く分散されるために全能の中央集権的政府の出現は阻止され、個人の実質的な自由は保障される。 アトム化された個人の国家への隷従①各種の中間団体から切り離され原子化(アトム化 atomized)された裸の個人と、②全能の中央集権的政府が直接対峙し、政府(=国家)が全ての個人の生活の責任を負うという建前の下に社会的な絆を剥奪されて(ルソー的な意味で)「自由」となった個人は結果的に全体主義的政府に隷従する。 政治機構の捉え方 人間や制度の不完全性の前提この主義の主たる関心は、①人間が最も良い時に時折成し遂げられるかも知れないことよりも、②人間が最も悪いときに害悪を及ぼす機会を出来るだけ少なくすることにある。その体制は機能の良し悪しが、それを操作する人間を我々が見つけ得るか否かに依存しないし、全ての人間が現にあるよりも善くなることにも依存しない。従ってこの体制は、その下にある全ての人間に自由を許容することが出来、現にあるがままの人間をその多様で複雑な姿のままで(本人が利己的な動機で動くにも関わらず)社会のために役立たせ得るシステムである。 社会契約論的個人主義と「自由への強制」この主義は個人を出発点とみなし、個人が彼の特殊意思と他人の特殊意思とを形式的な契約において結合させることによって社会や国家を創ると想定する。その体制は、プラトン「哲人王」、ルソー「立法者」、ナチス「指導者」etc.の育成/出現を前提とするが、「権力は必ず腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」(アクトン)ことを免れない。この体制は自由を「善良で賢明な個人」のみに許容し、その他の人々は「自由へ強制される」。 出現する社会 開かれた社会上下にも内外にも流動性が高く、社会に常に新たな活力が導入されるために、個々人の間では所得や社会的地位や幸福度・充足度などに必然的に差異が発生しても、社会全体の経済的・文化的水準は「閉ざされた社会」に比べて圧倒的に高くなる。 閉ざされた社会社会が固定的で、指導者・エリート層と一般人民の垣根が厳格に設定される(平等を謳いながらも社会がカースト化する)傾向にあり(G.オーウエル『1984年』を見よ)、かつ悪平等の弊害として自ら努力して状況を改善しようとする動機が働かないために特に経済的・文化的に停滞してしまう。 社会の原則 「人々を平等に取り扱うこと」(=自由な社会の条件) 「人々を平等たらしめること」(=隷従の新しい形態(A.トックヴィル)) ◇2.保守主義と、ナショナリズムの関係 ↓本文はここをクリックして表示 -... 《問題点》 西欧保守主義は、ナショナリズム(=右翼思想)とは区別されるのが普通である。保守主義の代表者であるE.バーク自身が、イングランド本国ではなくその統治下にあったアイルランドの出身の政治家であり、またハイエクはオーストリアからイギリスに帰化した学者であって、彼らの思想には全体主義に対する激しい批判はあっても、ナショナリスティックな発想は一切混入していない。⇒ これに比較して、日本の「保守主義者」の唱える思想には、(1)反・全体主義の主張と、(2)ナショナリスティックな主張との区別が明瞭でなく、そのままでは英米保守主義の定義とは齟齬が生じてしまう恐れが高い。また最近は、本来の意味での保守主義とはまるで関係ない思想を唱えてるにも関わらず、その言葉のもつプラス・イメージに着目した自称「保守主義者」が続出しており、思想的な混乱が甚だしくなっている。 【考え方】 「ナショナリズム」の定義を確り押さえずに、やたらに「民族主義」という言葉を使っているケースが多いように思う。普通に祖国や自国民、自国の文化・伝統・歴史などに愛着を持つことは、西欧保守主義でも当然視されており、これを「パトリオティズム」とは表現しても、「ナショナリズム」とは通常は言わないはずである(nationalismは、①patriotism と②jingoismの両方の意味を包摂するが、現代の用法ではnationalismは、②排外的なマイナスの意味合いが強まっている)。日本の問題はむしろ、西洋であれば「保守」ではなく「ナショナリスト」「右翼」と呼ばれるべき主張を持つ人物・組織が、「右翼」という言葉にマイナス・イメージが定着しているために、文字通り「民族主義者」であるにもかかわらず「保守」と自称している者が非常に多く、その結果、「保守(アンチ全体主義)」と「右翼(ナショナリスト)」が著しく混同されている点にある。つまり、日本においては、①単に「パトリオティズム」である祖国愛を、「民族主義」と勘違いしている保守主義者②西欧保守主義の基準では、「ナショナリスト」「右翼」なのだが、「保守」を自称する者の二種類がおり、それらの者の主張内容を確り吟味し、「保守」なのか「右翼」なのか識別する必要がある。 ◆3.日本主義 ※次に、戦前・戦中に具体的に「保守主義(伝統保守)」に相当する概念・思想を表す言葉として多用された「日本主義」について解説します。 ↓本文はここをクリックして表示 -... ブリタニカ国際百科事典(ブリタニカ・ジャパン社)による説明。 にほんしゅぎ【日本主義】 明治から第二次世界大戦敗戦までにおける欧化主義・民主主義・社会主義などに反対し、日本古来の伝統や国粋を擁護しようとした思想や運動をいう。一定の思想体系をなしていたとはいえず、論者により内容が相違する。明治の支配層が推し進めた欧化主義への反発として三宅雪嶺や高山樗牛らによって唱えられ、政治的には欧米協調主義への反対、国権や対外的強硬策の強調となって現れた。大正や昭和になって日本の資本主義の高度化が階級対立を激化させ、社会主義やマルクス主義が流入すると、これら諸思想の対抗イデオロギーとして機能し、天皇を中心とする皇道や国体思想を強調した。(cf.神国思想) つまり日本主義には歴史的に見て以下の二段階がある。 ① 明治期の日本主義 政府の欧化主義に反発し、国粋主義/国権主義(特に政府の欧米協調路線に反対する攘夷主義)を主張した言論活動(政論的ジャーナリズム) 他国の侵略から自国・自民族を守る(解放的ナショナリズム)⇒即ち「右翼」思想 ② 昭和期の日本主義 皇道・国体思想を強調して、社会主義やマルクス主義の思想侵略の脅威への対抗イデオロギーとして機能した思想活動 全体主義の脅威から自国の歴史・伝統に根差した自由を守る(日本型保守主義)⇒即ち「保守」思想 ※「保守」と「右翼」の違いは ナショナリズムとは何か 参照 ※日本主義について、詳しくは 日本主義とは何か ~ 日本型保守主義とナショナリズムの関係を考える 参照 ※この「(昭和期の)日本主義者」は、観念右翼または精神右翼と他称されており、これに対して、よりナショナリスティックな政治的主張を唱える者を革新右翼または組織右翼と呼んで区別した。 ◆4.革新右翼(国家社会主義者)と観念右翼(伝統保守) ↓本文はここをクリックして表示 +... 参考図書に挙げている日本主義と東京大学―昭和期学生思想運動の系譜によれば、左翼が一掃された昭和10年代の日本には、①革新右翼と②観念右翼の二大勢力があり、国内・国外の政策を巡って激しく対立したとされる。 ※ブリタニカ国際百科事典には「観念右翼」のみ項目があり、その中に「(国家社会主義者(組織右翼)」の説明もあるので引用します(革新右翼を組織右翼とも呼んだ)。 【観念右翼】かんねん・うよく 特定の右翼党派ではなく、純粋な日本精神主義を思想や行動の原理とする諸団体。上杉慎吉をその源流とする。第二次世界大戦前の右翼運動を思想形態から分類すると、国家社会主義派(組織右翼)と日本精神主義派(観念右翼)に大別される。上杉の組織した桐花学園(1913創立)、蓑田胸喜、天野辰夫、菊池利房による興国同志会(19)、平沼騏一郎の国本社、興国同志会の流れをくむ七生社(25)などが観念右翼としてあげられる。 ※革新右翼と観念右翼の理念型(日本主義と東京大学―昭和期学生思想運動の系譜より引用) ①革新右翼 ②観念右翼 国家改造 国体明徴 高度国防国家 国民精神総動員 解釈改憲 護憲(不磨の大典) 指導者原理 臣道実践 統制経済 資本制擁護 親ソ・親独 反共・反独裁 世界史的な使命 日本史的な道統 陸軍統制派 陸軍皇道派 革新官僚 財界 無産政党 既成政党(現状維持派) 国家社会主義者 自由主義者 ※②観念右翼が「日本主義」を唱えたのに対して、①革新右翼すなわち国家社会主義者は「アジア主義」の立場を説く場合が多かった。 ※以下、関連項目をブリタニカ百科事典より引用。 ◇参考:アジア主義 【大アジア主義】だい・アジア・しゅぎPan-Asianism 欧米列強のアジア侵略に抵抗するため、アジア諸民族は日本を盟主として団結すべきであるという考え方。明治初期以来、種々の視角から展開された。植木枝盛は自由平等の原理に基づきアジア諸民族が全く平等な立場で連帯すべきことを説き、樽井藤吉や大井健太郎は、アジア諸国が欧米列強に対抗するために連合する必要があり、日本はアジア諸国の民主化を援助すべき使命があると説いた。明治20年代になると、大アジア主義は明治政府の大陸侵略政策(注)を隠蔽する役割をもつようになった。1901年に設立された黒龍会の綱領にもみられるように、その後の大アジア主義は天皇主義とともに、多くの右翼団体の主要なスローガンとされ、これに基づいて満蒙獲得を企図する政府・軍部の政策が推進された。日本人の大アジア主義的発想は、第二次世界大戦前・戦中の「大東亜共栄圏」構想を支えた。※注:ブリタニカ百科事典にも自虐史観の傾向は当然あり、上記のような「大陸侵略政策」という問題のある記述がなされている。 【大東亜共栄圏】 第二次世界大戦を背景に1940年第二次近衛内閣以降45年敗戦まで唱えられた日本の対アジア政策構想。その建設は「大東亜戦争」の目的とされた。東条英機の表現によれば、大東亜共栄圏建設の根本方針は、「帝国を核心とする道義に基づく共存共栄の秩序を確立」しようとすることにあった。しかし実際は、東アジアにおける日本の軍事的・政治的・経済的支配の正当化を試みたものに他ならなかったといえる。第一次近衛内閣当時の「東亜新秩序」は日本・満州・中国を含むものに過ぎなかったが、南進論が強まるにつれて、インド・オセアニアにいたる大東亜共栄圏構想に拡大された。大東亜省の設置と大東亜会議の開催は、このような方針の具体化に他ならない。 ◆5.まとめ ↓本文はここをクリックして表示 -... 運動の性格 ① 明治期の日本主義 政府の欧化主義に反発し、国粋主義/国権主義(特に政府の欧米協調路線に反対する攘夷主義)を主張した言論活動(政論的ジャーナリズム) 他国の侵略から自国・自民族を守る(解放的ナショナリズム) 右翼思想 当初は国粋主義的だった在野言論人の活動は、明治末・大正期に日本が大国化したのちも反骨精神は全く変わらず、今度は次第に左翼思想に理解を示す者が出てきた(左右等価気分説(※1))。更に彼らは、戦後は進歩派・市民派左翼文化人として活発に活動した(長谷川如是閑・丸山眞男etc.)。 ② 昭和期の日本主義 皇道・国体思想を強調して、社会主義やマルクス主義の思想侵略の脅威への対抗イデオロギーとして機能した思想活動 全体主義の脅威から自国の歴史・伝統に根差した自由を守る(日本型保守主義) 保守思想 日本精神主義派(観念右翼)。日本主義的教養を武器に学生・知識人の左傾化を防止し日本精神に目覚めさせると共に、革新右翼の狙う国家改造・解釈改憲・国家経済の社会主義化、更には戦争の長期化を「護憲」の立場から制止・抑制するために奔走。いざ戦争が激化すると国防のために生死を厭わず護国のために尽くした者が多い。 ③ アジア主義 アジア諸民族を白人支配から解放するという大義を掲げ、実際にも明治期の孫文を初めインドのB.ボース、フィリピンのアギナルドらの独立運動と連動しつつ遂行された日本の勢力拡張運動。 アジア諸民族の独立を支援する(排白人主義)(拡張的ナショナリズム) 極右思想 国家社会主義派(組織右翼=革新右翼)と重なる。代表的イデオローグとして5.15事件に関与した大川周明、2.26事件に連座した北一輝。革新右翼は2.26事件暴発後に勢力を急拡大し三木清など転向左翼の多数が近衛内閣のブレーン集団を形成して国策を左右した。※詳しくは 右翼・左翼の歴史 参照 ※「保守」「右翼」「極右」の違いは ナショナリズムとは何か 参照 ※1:左右等価気分説…右傾化も左傾化も既成勢力に対する反抗という意味で基本的に同じ心情に基づくものであり、状況が変化すれば左・右転換は容易とする説。 以上、説明したように、日本においても「保守主義」と「ナショナリズム」を区別することは可能であり、かつ英米保守主義との整合性という観点からもこの区別は必要と思われる。また、戦前・戦中に「日本主義」を唱えた日本型の保守主義者の系譜は、参考図書にあるとおり、実は戦後も途切れておらず、現在の日本の保守主義陣営(伝統保守の側)の中核に繋がっていることに注目すべきである。(なお、経済保守についてはこの限りでない) ※日本の保守主義に関して詳しくは、国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書)を参照下さい。 ■8.参考図書 ↓本文はここをクリックして表示 +... 『保守主義の哲学―知の巨星たちは何を語ったか (単行本)』中川八洋(著) 2004.4 刊出版社/著者からの内容紹介これまで日本には保守主義は正しく紹介されなかった! 保守主義が真に必要な今、その真髄を初めて体系的に詳解。保守の常識が覆る!アメリカを建国した保守主義の天才、ハミルトン。“法の支配”という自由の砦を大成した、コーク。フランス革命と戦った「保守主義の父」、バーク。それらの思想について、ほとんどの日本人は知ることがない。明治以降、あれほど西欧思想が流入したにもかかわらず、英米を中心とした保守主義はほとんど排除されてきた。その結果、日本人は保守主義について、あまりに無知である。保守主義者を自称するものも、保守主義とはどういう思想かを理解していない。法曹関係者ですら、“法の支配”の真の意味がわかっていない。この保守への無理解が、ひいては現在日本のあまりの非常識と混迷を招いているといっても過言ではない。では「保守主義」とは何か? それを体系的に解説したのが本書である。上記の思想家たちの他にも、トクヴィル、ヒューム、アーレント、オルテガ、ホイジンガ、ハイエクなど数多くの思想家を紹介する。いま初めて明かされる保守主義の真髄!目次第1部 保守主義の父祖たち(「米国保守主義の父」アレグザンダ・ハミルトン、「法の支配」は復権できるか―マグナ・カルタ再生とコーク卿、「保守主義の父」バーク―「バーク・ルネサンス」を日本に祈る)第2部 全体主義と戦う「真正の自由」(「隷従への道」を歩む二十一世紀日本―アーレント解題、「赤より死!」の、反ヘーゲル―カール・ポパーの哲学、平等という、自由の敵―警鐘を鳴らすトクヴィル、反撃するベルジャーエフ)第3部 「美徳ある自由社会」を創る(人間を透視したヒューム道徳哲学、「社会正義」は“亡霊”―自由の原理とハイエク政治哲学、「高貴なる自由」―永遠のバーク哲学)★ハイエクの思想を機軸に、西欧哲学の正統保守主義(真正自由主義)の系譜と、それに対立する邪悪な全体主義思想の系譜を峻別して分かり易く解説。エドマンド・バークを初めとする西欧の正統保守思想の概略をこの一冊でマスター可能。残念ながら現在は絶品であり中古本も高額なので同著者の正統の哲学 異端の思想―「人権」「平等」「民主」の禍毒で代用することを薦めます。 アメリカ保守革命中岡 望 (著) 2004.4 刊出版社/著者からの内容紹介今、世界を席巻しつつある「保守主義革命」は、アメリカで始まった。それは“アメリカ化”という形で、世界の政治、経済、文化を巻き込み、留まることのない勢いで世界の隅々まで行き渡りつつあるようにみえる。日本もその世界的な潮流の埒外に存在しているわけではない。主流だったリベラリズムと対峙しながら、最初は思想運動として始まり、やがて現実の政策へと影響力を拡大していったアメリカ保守主義の発展過程とその内実を縦横に描いた名作。目次第1章 戦後の保守主義のルネッサンス(アメリカのリベラリズムと保守主義思想、二人の保守主義思想のゴッドファーザー ほか)第2章 保守主義思想とレーガン革命(思想運動から政治運動へ、保守主義思想の政治の代弁者たち ほか)第3章 レーガン革命と冷戦後の保守主義運動(未完のレーガン革命、一九九〇年代の保守主義の思想闘争 ほか)第4章 新しいエスタブリッシュメント―ネオコンの群像(ネオコンの創始者たち、ネオコンたちの思想的変遷 ほか)第5章 ブッシュ政権と二一世紀の保守主義(ブッシュ政権の樹立と政策、ブッシュの経済政策―レーガノミックスの再現 ほか)★戦後アメリカで細々と始まった(1)ウィーバー カークによる伝統保守の思想運動と、(2)ハイエク・フリードマンらによる経済保守の思想運動の二つの流れが、メイヤー バックリーによって融和・統合され、やがてゴールドウォーター、レーガンというコミュニケーター(人気政治家)を得て遂にアメリカ政治の表舞台に立つ時がくる。そして不十分な結果に終わったレーガン革命は、クリントン政権期の試練を経て、ブッシュ子政権期に更なる前進を見せる。60年の長期に渡るアメリカ保守革命のあらましを必要十分に描きつくした好著。 日本主義的教養の時代―大学批判の古層竹内 洋 (編集), 佐藤 卓己 (編集) 2006.2刊内容(「BOOK」データベースより)戦前「護憲」の降魔剣“日本主義”を解明。「右翼」「反動」のレッテル貼りで忌避されてきた一九三〇年代“日本主義”の大学批判。マルクス主義的教養の機能的代替となった日本主義的教養の担い手たち。来るべき時代を読み解く画期的論集。目次第1章 帝大粛正運動の誕生・猛攻・蹉跌第2章 天皇機関説批判の「論理」―「官僚」批判者蓑田胸喜第3章 写生・随順・拝誦―三井甲之の思想圏第4章 英語学の日本主義―松田福松の戦前と戦後第5章 戦時期の右翼学生運動―東大小田村事件と日本学生協会第6章 日本主義的社会学の提唱―赤神良譲の学術論第7章 日本主義ジャーナリズムの曳光弾―『新聞と社会』の軌跡★未だに自虐史観どっぷりの東大・岩波系とは距離を置く京大系の学者達による昭和10年代日本の思想状況の共同研究プロジェクト全体のガイドライン的な位置づけの本。 日本主義と東京大学―昭和期学生思想運動の系譜井上 義和 (著) 2008.6刊内容(「BOOK」データベースより)国家的危機の時代における大学の使命とは何か。欧化一辺倒の東京帝国大学に学風改革を迫り、高度国防国家を標傍する政府とも命がけの思想戦を繰り広げた東大生たち。戦時体制下で宿命的に挫折した“日本主義的教養”の逆説を読み解き、日本型保守主義の可能性を探る。目次第1章 「右翼」は頭が悪かったのか―文部省データの統計的分析第2章 政治学講義と国体論の出会い―『矢部貞治日記』を中心に第3章 学風改革か自治破壊か―東大小田村事件の衝撃第4章 若き日本主義者たちの登場―一高昭信会の系譜第5章 学生思想運動の全国展開―日本学生協会の設立第6章 逆風下の思想戦―精神科学研究所の設立第7章 「観念右翼」の逆説―戦時体制下の護憲運動第8章 昭和十六年の短期戦論―違勅論と軍政批判第9章 「観念右翼」は狂信的だったのか―日本型保守主義の可能性★現代の日本会議に繋がる国民文化研究会の母体となった昭和10年代の右翼学生運動の系譜を追い、左翼が壊滅した後、国家改造を進める革新右翼(国家社会主義者・アジア主義者)と激しく対立した観念右翼(伝統保守・日本主義者)の論理と実情を具体的に論証する好著 保守主義とは何か―反フランス革命から現代日本まで宇野重規(著)、中公新書、2016年6月刊内容(中央公論新社ウェブサイトから引用)21世紀以降、保守主義者を自称する人が増えている。フランス革命による急激な進歩主義への違和感から、エドマンド・バークに端を発した保守主義は、今では新自由主義、伝統主義、復古主義など多くのイズムを包み、都合よく使われている感がある。本書は、18世紀から現代日本に至るまでの軌跡を辿り、思想的・歴史的に保守主義を明らかにする。さらには、驕りや迷走が見られる今、再定義を行い、そのあり方を問い直す。目次序章 変質する保守主義―進歩主義の衰退の中で第一章 フランス革命と闘う第二章 社会主義と闘う第三章 「大きな政府」と闘う第四章 日本の保守主義終章 二一世紀の保守主義★2016年6月に刊行された本書の著者やその推薦者によれば・・・・本書は、対フランス革命や対社会主義革命、対大きな政府など保守主義の時代による変遷をコンパクトに纏めた好著である。「「保守」を自任する人の多くは、「リベラル」や「左翼」にについて恣意的なイメージを描き、それを藁人形のようにしてたたくことで、自らの「保守」を正当化する。しかしながら、多くの場合、それは空想上の仮想敵を相手にした空回りに過ぎないようにも見える。」という著者の指摘は重く響く・・・という触れ込みであるが、実際に本書を読んでみると、「日本の保守主義についても…(中略)…アジアの植民地化など批判すべき点の方が多い」(p.212)とか「国の基本的な枠組みを維持する根幹である立憲主義の原理も、むしろ保守主義を名乗る勢力によって破壊されつつある」(p.200)という言説が散見され、結局のところ、著者のスタンスはどれだけ中立を装うとも所詮は丸山テーゼに彩られたアジア侵略史観(自虐史観)(※丸山眞男「天皇制ファシズム論」、村上重良「国家神道論」の検証参照)と戦後左翼的護憲思想(※立憲主義とは何か参照)を脱し切っておらず、もし本書に何らかの意義があるとすれば、著者と同じく未だそうしたスタンスから抜け出し切れない半可通の方が、取り敢えず批判的に「保守主義とは何か?」ということを、表面的であれ、あれこれ考えてみる第一歩になる・・・といったところでしょう。とくに本書の場合、アンチ全体主義のチャンピオンであるハイエクの著作について、その初期の著『隷属への道』だけは巻末の参考図書に挙げても、彼の本当の代表作である『自由の条件』については本編で若干の言及を加えてアリバイを作りつつも参考図書から外していたり、ハイエクの盟友ポパーの名著『開かれた社会とその敵』を完全に無視している点に明らかに欺瞞を感じる(※なぜならハイエク『自由の条件』やポパー『開かれた社会とその敵』まで読者に進まれると、読者が左翼思想がそこで完膚無きまでに論破されていることをハッキリ理解してしまう怖れが高いから)。そういう意味で、本書を読了して尚煮え切れない思いを抱いた方こそ、本サイトの左翼や売国奴を論破する!セットで読む政治理論・解説ページの各ページに進んで欲しいものである。 ■9.ご意見、情報提供 ページ内容向上のためのご意見・情報提供を歓迎します。 ↓これまでの全コメントを表示する場合はここをクリック +... 元ページ「保守主義とは何か」 どなたが編集なされたのかは存じ上げませんが、驚くほど大変よくできた解説で、円環図による思想分類には感激させられました。ありがとうございます。 -- ななし (2010-12-17 10 28 24) すばらしい!!みんなで日本を護るために『保守主義』を学習しよう -- 名無しさん (2010-12-18 15 26 59) エドマンド・バーク保守主義 - エドマンド・バーク リバイバルも参考になる。→ http //www.geocities.jp/burke_revival/ -- 名無しさん (2011-01-08 12 01 55) ↑のサイトだけではという人は 保守 - Wikipediaを参照すべき http //ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E5%AE%88 -- 名無しさん (2011-01-08 12 07 42) 「真の個人主義」と「偽の個人主義/集産主義」の、社会の原則は、「人々を平等に取り扱うこと」→「人々を同等に取り扱うこと」とすべき。 -- 名無しさん (2011-09-24 08 22 46) 「真の個人主義」に平等はないからです。 -- 名無しさん (2011-09-24 08 24 17) collectivismに産の意味はない。集団主義でいい。 -- 名無しさん (2011-09-24 08 29 28) 保守主義(conservatism)→保守主義(conservative、conservatism)とすべき。 -- 名無しさん (2011-09-24 08 32 57) 日本の保守主義に関して、国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書)を作成しました。 -- 名無しさん (2011-12-16 00 28 34) 合衆国市民(The Empire State)です。ノーランチャート知ってますか?保守主義は個人的な自由権(精神的・身体的)に消極的です。その点では全体主義との親和性があります。ロールズが全体主義とは、いくらなんでも無理がありますよ。あと、dignity of every individual、この言葉の意味がわかっていますか?このサイトの作者さんは、WyomingやUtahやRural TexasやDeep Southの閉鎖性(内に閉じた世界)を知っているのですか!?Mississippiの州の旗は今でも個人の自由を否定しているとしか思えませんよ。 -- ben (2013-01-16 18 25 08) WyomingやUtahやRural TexasやDeep Southは、保守主義の理想の土地なのでしょうか?? -- ben (2013-01-16 18 27 41) 保守思想を扱った古典を幾つか読みましょう。コメントにも見られるが、愛国は保守だとかいう馬鹿が現れる。 -- 名無しさん (2013-07-19 10 27 54) 世は保守の名を借用したナショナリストが跋扈する時代 - 名無しさん 2016-08-05 00 23 31 デモクラシーという政治への自由も、資本主義も、一度進めばもう後戻りはできない、おそらくこのサイトのような美しい過去を偲ぶ“理想的”保守の言説が世のナショナリストやファシストを“啓蒙”しているのでしょうね。 - 名無しさん 2016-08-05 00 31 42 ↑ずいぶんな言い様ですね?マルクスとかいう女のヒモが書いた破綻した経済論や国家論(あらゆる政治経済学者に論破されてるが)を未だに宗教のように盲信し自分たちを認めないものは全て愚民扱いする人達の方が余程共同体にとっては害悪ですが?挙げ句の果てに科学の発展と経済のグローバル化による貧富の差で再び科学的な世界共産革命が起きるですかw(失笑)哀れな・・・実際はトランプ氏やルペン氏に見られるように反融和反平等主義に文化・人種・経済保守主義が台頭しており地球主義的革新左派には厳しい時代になってますねw(爆) - 名無しさん 2018-02-01 22 56 24 以下は最新コメント表示 元ページ「保守主義とは何か」 どなたが編集なされたのかは存じ上げませんが、驚くほど大変よくできた解説で、円環図による思想分類には感激させられました。ありがとうございます。 -- ななし (2010-12-17 10 28 24) すばらしい!!みんなで日本を護るために『保守主義』を学習しよう -- 名無しさん (2010-12-18 15 26 59) エドマンド・バーク保守主義 - エドマンド・バーク リバイバルも参考になる。→ http //www.geocities.jp/burke_revival/ -- 名無しさん (2011-01-08 12 01 55) ↑のサイトだけではという人は 保守 - Wikipediaを参照すべき http //ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E5%AE%88 -- 名無しさん (2011-01-08 12 07 42) 「真の個人主義」と「偽の個人主義/集産主義」の、社会の原則は、「人々を平等に取り扱うこと」→「人々を同等に取り扱うこと」とすべき。 -- 名無しさん (2011-09-24 08 22 46) 「真の個人主義」に平等はないからです。 -- 名無しさん (2011-09-24 08 24 17) collectivismに産の意味はない。集団主義でいい。 -- 名無しさん (2011-09-24 08 29 28) 保守主義(conservatism)→保守主義(conservative、conservatism)とすべき。 -- 名無しさん (2011-09-24 08 32 57) 日本の保守主義に関して、国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書)を作成しました。 -- 名無しさん (2011-12-16 00 28 34) 合衆国市民(The Empire State)です。ノーランチャート知ってますか?保守主義は個人的な自由権(精神的・身体的)に消極的です。その点では全体主義との親和性があります。ロールズが全体主義とは、いくらなんでも無理がありますよ。あと、dignity of every individual、この言葉の意味がわかっていますか?このサイトの作者さんは、WyomingやUtahやRural TexasやDeep Southの閉鎖性(内に閉じた世界)を知っているのですか!?Mississippiの州の旗は今でも個人の自由を否定しているとしか思えませんよ。 -- ben (2013-01-16 18 25 08) WyomingやUtahやRural TexasやDeep Southは、保守主義の理想の土地なのでしょうか?? -- ben (2013-01-16 18 27 41) 保守思想を扱った古典を幾つか読みましょう。コメントにも見られるが、愛国は保守だとかいう馬鹿が現れる。 -- 名無しさん (2013-07-19 10 27 54) 世は保守の名を借用したナショナリストが跋扈する時代 - 名無しさん 2016-08-05 00 23 31 デモクラシーという政治への自由も、資本主義も、一度進めばもう後戻りはできない、おそらくこのサイトのような美しい過去を偲ぶ“理想的”保守の言説が世のナショナリストやファシストを“啓蒙”しているのでしょうね。 - 名無しさん 2016-08-05 00 31 42 ↑ずいぶんな言い様ですね?マルクスとかいう女のヒモが書いた破綻した経済論や国家論(あらゆる政治経済学者に論破されてるが)を未だに宗教のように盲信し自分たちを認めないものは全て愚民扱いする人達の方が余程共同体にとっては害悪ですが?挙げ句の果てに科学の発展と経済のグローバル化による貧富の差で再び科学的な世界共産革命が起きるですかw(失笑)哀れな・・・実際はトランプ氏やルペン氏に見られるように反融和反平等主義に文化・人種・経済保守主義が台頭しており地球主義的革新左派には厳しい時代になってますねw(爆) - 名無しさん 2018-02-01 22 56 24 名前 ラジオボタン(各コメントの前についている○)をクリックすることで、そのコメントにレスできます。 ■左翼や売国奴を論破する!セットで読む政治理論・解説ページ 政治の基礎知識 政治学の概念整理と、政治思想の対立軸 政治思想(用語集) リベラル・デモクラシー、国民主権、法の支配 デモクラシーと衆愚制 ~ 「民主主義」信仰を打ち破る ※別題「デモクラシーの真実」 リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 ※別題「リベラリズムの真実」 保守主義とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ ナショナリズムとは何か ケインズvs.ハイエクから考える経済政策 国家解体思想(世界政府・地球市民)の正体 左派・左翼とは何か 右派・右翼とは何か 中間派に何を含めるか 「個人主義」と「集産主義」 ~ ハイエク『隷従への道』読解の手引き 最速!理論派保守☆養成プログラム 「皇国史観」と国体論~日本の保守思想を考える 日本主義とは何か ~ 日本型保守主義とナショナリズムの関係を考える 右翼・左翼の歴史 靖國神社と英霊の御心 マルクス主義と天皇制ファシズム論 丸山眞男「天皇制ファシズム論」、村上重良「国家神道論」の検証 国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書) 国体とは何か② ~ その他の論点 国体法(不文憲法)と憲法典(成文憲法) 歴史問題の基礎知識 戦後レジームの正体 「法の支配(rule of law)」とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ 立憲主義とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ 「正義」とは何か ~ 法価値論まとめ+「法の支配」との関係 正統性とは何か ~ legitimacy ・ orthodoxy の区別と、憲法の正統性問題 自然法と人権思想の関係、国体法との区別 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 日本国憲法改正問題(上級編) ※別題「憲法問題の基礎知識」 学者別《憲法理論-比較表》 政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) ブログランキング応援クリックをお願いいたします(一日一回有効)。 人気ブログランキングへ
https://w.atwiki.jp/deserteref/pages/503.html
ウィリアム・オーデッツ(宇宙暦?年頃 - )は自由惑星同盟の民間人。原作登場人物。 略歴 2-1 前世 大親征を前に自由惑星同盟がラインハルトに弁明のために送った特使として登場。 2-2 新版 宇宙歴791年、保守的な報道姿勢で知られるNNN(ナショナル・ニュース・ネットワーク)のニュース司会者を務めている。自由の夜明け作戦におけるシドニー・シトレ宇宙軍大将とラザール・ロボス宇宙軍大将を称える際に、銀河連邦の二大名将、クリストファー・ウッド提督とミシェール・シュフラン提督を引き合いに出した。さすがにこれは軽薄の謗りを免れなかった。(11話) 宇宙歴795年には第三次ティアマト会戦で武功を挙げたクレメンス・ドーソン宇宙軍中将を称え、前世で嘲笑の対象となった「じゃがいも」のエピソードを美談に仕立て上げた。(34話) 宇宙歴796年にはニュースでミサイルを浴びて爆発した海賊船の映像を指さし、歓喜の叫びをあげた。(41話) 宇宙歴802年の第二次トリューニヒト政権で宣伝担当評議員に就任する。(99話) 宇宙歴803年2月頃にハイメ・モンターニョ宇宙軍中将の辺境住民に対する横柄な態度が問題となると、モンターニョの言動を問題視する第一辺境総軍司令官エリヤ・フィリップス上級大将に横やりを入れ、エリヤの激しい怒りを買った。(114話)
https://w.atwiki.jp/kolia/pages/1816.html
改行ズレ/画像ヌケ等で読み辛い場合は、ミラーWIKI または図解WIKI をご利用ください 危険は形而上学の欺瞞的な性格の中にある。それは、実際には何らの知識をも与えないのに、知識であるかのような幻想を与える。我々が形而上学を排撃する理由はここにある。・・・(中略)・・・哲学の唯一の仕事は論理的分析 logical analysis である。 ~ R. カルナップ(論理実証主義に立つ哲学者集団「ウィーン学団」のリーダー的学者) 要旨■「平和憲法」「占領憲法」などのレッテル貼りに終始するのではなく、①憲法とはそもそも何か(法概念論)、②憲法の保障すべき価値は何か(法価値論)、③そうした価値を如何に実現するか(法学的方法論)、という憲法問題の課題を一つづつ分析し検証していくことが重要である。 ※本ページが難しい方は、日本国憲法改正問題(初級編)を先ずご覧下さい。 <目次> ■1.はじめに◆1.基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学) ◆2.問題状況整理表 ■2.憲法とは何か(法概念論)◆1.憲法(constitution)の定義◇1.実質憲法(国制)と形式憲法(憲法典)の区別 ◇2.法概念論(憲法とは何か)と法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の区別 ◇3.二つの憲法概念から考える国家の在り方(伝統国家・革命国家・新興国家) ◆2.法体系の2つの捉え方◇1.ケルゼンおよび修正自然法論者による法段階説(半世紀前の法学パラダイム) ◇2.ハートによる社会的ルール説(現代の世界標準の法学パラダイム) ■3.憲法の保障すべき価値、理念・目的は何か(法価値論)◆1.法価値(=正義)一般と、「法の支配」◇1.参考ページ ◇2.「正義」「法の支配」まとめ ◆2.「立憲主義」の定義◇1.各論者による説明 ◇2.参考ページ ◆3.憲法に特有の法価値論+法解釈論 - 整理図◇1.参考ページ ■4.そうした価値、理念・目的を如何に実現するか(法学的方法論)◆1.現行憲法典の解釈論◇1.左翼的(全体主義的)解釈vs.保守的(自由主義的)解釈 ◇2.日本の代表的な憲法論 - 内容紹介・評価 ◆2.憲法典の改廃論 ◆3.憲法典改正案◇1.現在提案されている種々の改憲案 ◇2.日本国憲法の構成と、保守的スタンスから見た改正の要否 ◇3.改憲案の具体例(自民党・憲法改正草案(2012年版)+中川八洋草案) ■5.ご意見、情報提供 ■1.はじめに 憲法問題となると、たちまち「平和憲法を守れ」とか「占領憲法を破棄せよ」といった、左右両極端の立場からのイデオロギッシュなアジテーション・罵倒合戦に終始してしまう現象が頻繁に観測される。(※なお、経済問題に関しても類似した現象がしばしば観測される ⇒ ケインズvs.ハイエクから考える経済政策 参照)。 確かに、現実妥当性に目を瞑って現行憲法典の前文・第9条を厳密に文理解釈すれば、お花畑的な(つまりネガティヴな)意味で「平和憲法」と云えなくもないし、また制定過程を見ればGHQ草案をほぼそのまま翻訳した「占領憲法」と呼ばれるのも致し方ないことではあるが、ここでは、そうした扇動的・プロパガンダ的方向にばかり走り易い言説を避けて、努めて論理的・概念分析的な姿勢を守りつつ憲法問題の整理・解明を目指したい。 そのために、 1 まず、基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学)を区別して、憲法問題の位置づけを明確にし、 2 次に、基礎法学の主要3分野(①法概念論・②法価値論・③法学的方法論)各々について、実用法学の一分野である憲法学(憲法論)の課題を対応させた問題状況整理表を作成し、 3 そして、上流から順に(つまり①法概念論→②法価値論→③法学的方法論の順に)これらの課題を一つづつ分析し整理していく。 ◆1.基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学) きそほうがく【基礎法学】 ※日本語版ブリタニカ百科事典より 実用法学に対して、少なくとも直接的には法的な諸事象の純粋に理論的な認識・解明を目的とする法学。理論法学ともいう。基礎医学という用語にならって第二次世界大戦後の日本で使われるようになった。法社会学、法史学、比較法学、法哲学がこれに属する。 じつようほうがく【実用法学】 ※日本語版ブリタニカ百科事典より 司法、行政、立法などの実用目的に奉仕する法学。法解釈学と立法学がこれに属する。基礎法学と対置されるが、現代の実用法学は基礎法学の成果を積極的に活用して法の合目的的な形成と運用を図る応用科学としての性格を強めつつある。 ほうかいしゃくがく【法解釈学】 Rechtsdogmatik ※日本語版ブリタニカ百科事典より 解釈法学ともいう。実定法の規範的意味内容を体系的・合理的に解明し、裁判における法の適用に影響を与えることを目的とする実用法学。実定法を構成する文字および文章の多義的な規範的意味内容を明確かつ一義的に確定していく作業が法の解釈であるが、この作業には、①文理解釈、②論理解釈、③縮小解釈、④目的論的解釈、⑤反対解釈、⑥勿論解釈、⑦類推解釈などと呼ばれるものがある。法解釈学は古代ローマで成立して以来、現代まで法学の中心的位置を占めているが、時代の変遷によって力点の変化がみられる。自由法論以後の法解釈学は人間や社会に関する経験科学的認識を取り入れた応用科学としての性格を強めている。第二次世界大戦後の日本の法学界における「法解釈学論争」では、法解釈学の実践的性格が強調された。法解釈学は、その対象となる実定法の分野によって、憲法学、行政法学、刑法学、民法学、商法学、労働法学、国際法学、国際私法学などに分れる。 けんぽうがく【憲法学】 ※広辞苑より 法学の一部門。憲法および憲法上の諸現象を研究の対象とする学問。国法学。 ◆2.問題状況整理表 基礎法学(理論法学)の主要3分野 憲法学(応用法学)の課題 (1) 法概念論(法とは何か) 1 憲法とは何か(憲法の定義) ⇒(a)実質憲法(国制)と、(b)形式憲法(憲法典)、の区別が重要。 2 法体系の中での憲法の位置づけ ⇒①法段階説(主権者意思[命令]説・・・ケルゼン及び修正自然法論者の法理解)と、②社会的ルール説(ハートの法理解であり、ハイエクの自生的秩序論と親和的)、の区別・評価が重要 (2) 法価値論(法の保障すべき価値は何か)※正義論ともいう(*注1)※法理念論、法目的論ともいう 《1》 法価値全般 1 法価値(正義)一般と「法の支配」論 ※法価値論は、専ら、(a)実質憲法(国制)の在り方に関する分野である。⇒①左翼的・全体主義的価値観と、②保守的・自由主義的価値観、の区別・評価が重要。 2 「立憲主義」論 《2》 個別的法価値 1 主権論(憲法は特定の主権者を規定すべきか) ※主権論について詳細ページ⇒政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 2 人権論(憲法の基礎的な保護領域は何か) ※人権論について詳細ページ⇒「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 3 平和論(奴隷の平和か正戦を肯定するか) (3) 法学的方法論(法価値を如何に実現するか) 前提条件 価値論の把握 1 憲法典(形式憲法)の解釈論 ※法学的方法論は、専ら、(b)形式憲法(憲法典)の解釈・運用に関わる分野であり、具体的な条規について(2)法価値論《2》の 1 ~ 3 の課題に対応した法解釈の対立が見られる。⇒①左翼的・全体主義的解釈と、②保守的・自由主義的解釈、の区別・評価が重要。 2 憲法典(形式憲法)の改廃論 ⇒①護憲論、②改憲論、および③破棄論、の比較・評価が重要。 3 憲法典(形式憲法)案の内容評価 ⇒各々の草案について、(2)法価値論《2》の 1 ~ 3 の課題への対応方針に留意しながら個別に評価していくことが重要。 (*注1)法的な価値は、伝統的に「正義(justice)」という言葉で表現されてきたため、法価値論を正義論ともいう。 ■2.憲法とは何か(法概念論) ◆1.憲法(constitution)の定義 ◇1.実質憲法(国制)と形式憲法(憲法典)の区別 けんぽう【憲法】 constitution ※日本語版ブリタニカ百科事典より 憲法の語には、(1)およそ法ないし掟の意味と、(2)国の根本秩序に関する法規範の意味、の2義があり、聖徳太子の「十七条憲法」は(1)前者の例であるが、今日一般には(2)後者の意味で用いられる。 (2)後者の意味での憲法は、凡そ国家のあるところに存在するが(実質憲法)、近代国家の登場とともにかかる法規範を1つの法典(憲法典)として制定することが一般的となり(形式憲法)、しかもフランス人権宣言16条に謳われているように、①国民の権利を保障し、②権力分立制を定める憲法のみを憲法と観念する傾向が生まれた(近代的意味の憲法)。 1 17世紀以降この近代的憲法原理の確立過程は政治闘争の歴史であった。憲法の制定・変革という重大な憲法現象が政治そのものである。比較的安定した憲法体制にあっても、①社会的諸勢力の利害や、②階級の対立は、[1]重大な憲法解釈の対立とともに、[2]政治的・イデオロギー的対立を必然的に伴っている。 従って、憲法は (a) 政治の基本的ルールを定めるものであるとともに、 (b) 社会的諸勢力の経済的・政治的・イデオロギー的闘争によって維持・発展・変革されていく、・・・という二重の構造を持っている。 2 憲法の改正が、通常の立法手続でできるか否かにより、軟性憲法と硬性憲法との区別が生まれるが、今日ではほとんどが硬性憲法である。 近代的意味での成文の硬性憲法は、 ① 国の法規範創設の最終的源である(授権規範性)とともに、 ② 法規範創設を内容的に枠づける(制限規範性)という特性を持ち、かつ ③ 一国の法規範秩序の中で最高の形式的効力を持つ(最高法規性)。 日本国憲法98条1項は、憲法の③最高法規性を明記するが、日本国憲法が硬性憲法である(96条参照)以上当然の帰結である。今日、③最高法規性を確保するため、何らかの形で違憲審査制を導入する国が増えてきている。 なお、憲法は、①制定の権威の所在如何により、欽定・民定・協約・条約(国約)憲法の区別が、②歴史的内容により、ブルジョア憲法と社会主義憲法、あるいは、近代憲法(自由権中心の憲法)と現代憲法(社会権を導入するに至った憲法)といった区別がなされる。 なお、下位規範による憲法規範の簒奪を防止し、憲法の最高法規性を確保することを、憲法の保障という。 (⇒憲法の変動、⇒成文憲法、⇒不文憲法) 上記のように、憲法(constitution)という概念には、 ① 実質的意味の憲法 (=国制、国体法 constititional law) ⇒本質主義(essentialism)による定義 と、 ② 形式的意味の憲法 (=憲法典 constitutional code) ⇒名目主義(nominalism)による定義 の2つのレベルがあり、 両者を区別しつつ総合的に考察していく必要がある。 そして、これに対応して、憲法論にも、 ① 実質的意味の憲法論 (法価値論=憲法の保障すべき価値は何かを考察する価値論であり、それを具体化すると立法論になる) と、 ② 形式的意味の憲法論 (法解釈論=既に成文化された憲法典の解釈論) の2つの段階があり、 この両者もまた確り区別して考察していく必要がある。 ★補足説明★「実質的意味の憲法」「国体法」「国制」 たとえば「民法」という概念には、①実質的意味の民法(=民法典に限らず「総体としての民法 civil law」を指す)と、②形式的意味の民法(=民法典 civil code という具体的な法律)の二つの意味があり、また「刑法」という概念にも同じく、①実質的意味の刑法(criminal law)と、②形式的意味の刑法(=刑法典 criminal code という具体的な法律)の二つの意味がある。これらから類推されるように、当然「憲法」という概念にも、①実質的意味の憲法(constitutional law)と、②形式的意味の憲法(=憲法典 constitutional code という具体的な法律)の二つの意味があり、これらは確りと区別されて論じられるべきであるが、明治期に constitution(英語)ないし Verfassung(ドイツ語)という概念を日本に導入する際に、専ら②形式的意味の憲法(憲法典)という意味で「憲法」という言葉が用いられてしまったために、現在の日本では、憲法とは専ら②憲法典である、とする理解(すなわち、①の意味を見落とした状態での理解)が一般的となってしまっている。 これに関しては、戦前の日本では、①実質的意味の憲法(国制)を意味する言葉として、明治以前から「国体」という用語が普及していたという裏の事情がある。この「国体」という用語は、昭和初期に濫用されて右翼的イデオロギーの色彩を強く帯びてしまったことから、戦後はこの用語の使用自体がタブー視される状態となってしまい、なおさら現在の日本人が、①実質的意味の憲法、を考えることを困難にしている。(※「国体」については⇒国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書)参照) こうした①実質的意味の憲法 constitutional law を素直に翻訳すれば「国体法」となるが、ここでは主に、よりイデオロギー色の薄い「国制」という訳語を用いることとする。(※なお、アリストテレス著として伝わる『アテナイ人の国制』の英語版書名は 『The Athenian Constitution』であり、①の意味での constitution の訳語として「国制」が現時点ではやはり一番適切である。) ◇2.法概念論(憲法とは何か)と法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の区別 左派及び右派から、しばしば繰り返される「憲法の定義」として、次のようなものがある。 (1) 憲法とは、政治権力者を拘束し国民を守るための法規範であり、それに反するものは憲法ではない。 (主に左派から) (2) 憲法とは、国の歴史を踏まえた国体を成文化した法規範であり、それに反するものは憲法ではない。 (主に右派から) 確かに、正当な憲法典には、(1)および(2)のそれぞれの要素が認められるべきであるが、結論から先にいえば、それらは、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)のカテゴリーであって、「憲法の定義」すなわち①法概念論(憲法とは何か)のカテゴリーではない。 このようなカテゴリー・ミスを避ける意味でも、当ページで薦めているような、①法概念論⇒②法価値論⇒③法学的方法論、という順序を踏まえた憲法問題の検討が肝要である。 因みに、(1)政治権力者をほとんど拘束できない憲法典や、(2)自国の歴史やこれまでに培ってきた伝統的な国体を全く反映せず、むしろそれらの積極的な破壊を目的とした憲法典も、世界には幾つも存在したし、現在でも存在しており、それらを「憲法と認めない」とするのは単なる個人的な価値観の表明でしかなく、何ら憲法問題の分析・明晰化に役立たない。 それよりも先ずは「憲法」という概念を、 1 実質憲法(国制、国体法)と 2 形式憲法(憲法典)に確り区別して、この両者の関係から、(a)国家の在り方(=伝統国家/革命国家/新興国家)、(b)憲法典の在り方(保守型/革命型/創成型)を考察していく方が遥かに有意義である。 ◇3.二つの憲法概念から考える国家の在り方(伝統国家・革命国家・新興国家) ※サイズが合わない場合はこちら をクリック。 ※■3.- ◆3.の憲法論の二段構造(整理表)で詳述するように、日本国憲法に関しては、 (1) 左翼側(主に憲法学者)は、これを「八月革命」の結果成立した革命型憲法と捉え、戦前の国制を積極的に否定・破壊する方向への解釈・運用を強く要求してきたが、 (2) 保守側(主に日本政府)は、そのようなフィクションを認めず、日本国憲法はあくまで大日本帝国憲法の改正憲法典として成立したものとして保守的解釈・運用を図ってきており、 戦後の日本では、(a)国家の在り方(=伝統国家か革命国家か)、(b)憲法典の在り方(=保守的解釈が正当かそれとも左翼的解釈が正当か)を巡って、左翼側・保守側の激しい対立が継続されてきた。 こうけんてきかいしゃく【公権的解釈】※日本語版ブリタニカ百科事典より 権限のある国家機関によって行われる法の解釈。有権解釈ともいう。これによって解釈が公定されるという点で、法学者や私人の解釈よりも重要な意味をもつ。公権的解釈には、法律によるもの(立法解釈)、行政機関によるもの(行政解釈)、裁判所によるもの(司法解釈)がある。 ※つまり、左翼的な憲法学者がどれほど「これは憲法学界の通説である(例:八月革命は憲法学界の通説であるetc.)」と唱えようと、日本政府がこれまでに表明してきた見解(例:国体は戦前/戦後で一貫しているetc.)が効力を持ったオフィシャルな解釈(=公権的解釈・有権解釈)なのだから、我々が戦後の日本を伝統国家と認め、日本国憲法を保守的に解釈することには正当な理由があるのだが、それ以外にも、下記◆2.に示すように、戦後日本の左翼的憲法学には論理面から致命的な欠陥が指摘可能である。 ◆2.法体系の2つの捉え方 ◇1.ケルゼンおよび修正自然法論者による法段階説(半世紀前の法学パラダイム) ※図が見づらい場合⇒こちら を参照 ※①宮澤俊義(ケルゼン主義者)・②芦部信喜(修正自然法論者)に代表される戦後日本の左翼的憲法学は「実定法を根拠づける“根本規範”あるいは“自然法”」を仮設ないし想定するところからその理論の総てが始まるが、そのようなア・プリオリ(先験的)な前提から始まる論説は、20世紀後半以降に英米圏で主流となった分析哲学(形而上学的な特定観念の刷り込みに終始するのではなく緻密な概念分析を重視する哲学潮流)を反映した法理学/法哲学(基礎法学)分野では、とっくの昔に排撃されており、日本でも“自然法”を想定する法理学者/法哲学者は最早、笹倉秀夫(丸山眞男門下)など一部の化石化した確信犯的な左翼しか残っていない。このように基礎法学(理論法学)分野でほぼ一掃された論説を、応用法学(実定法学)分野である憲法学で未だに前提として理論を展開し続けるのはナンセンスであるばかりか知的誠実さを疑われても仕方がない行いであり、日本の憲法学の早急な正常化が待たれる。(※なお、近年の左翼憲法論をリードし「護憲派最終防御ライン」と呼ばれている長谷部恭男は、芦部門下であるが、ハートの法概念論を正当と認めて、芦部説にある自然法・根本規範・制憲権といった超越的概念を明確に否定するに至っている。) ◇2.ハートによる社会的ルール説(現代の世界標準の法学パラダイム) ※サイズが画面に合わない場合はこちら 及びこちら をクリック願います。 ※上記のように、ハートの法=社会的ルール説は、現実の法現象について詳細で明晰な分析モデルを提供しており、特定の価値観・政治的イデオロギーに基づく概念ピラミッドに過ぎない法=主権者意思[命令]説の法体系モデルを、その説得力において大幅に凌駕している。 ※上図について、詳細な解説は法と権利の本質に関する2つの考え方へ。 ※このように、①法概念論(憲法とは何か)の段階で、既に左翼的憲法論はハッキリと論理破綻しているのであるが、以下更に、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の段階での 左翼的スタンス vs. 保守的スタンス 両者の憲法に求める価値(理念・目的)を対比して、寛容で価値多元的な自由主義社会を支え得る法価値は保守的スタンスのものであることを説明していく。 ■3.憲法の保障すべき価値、理念・目的は何か(法価値論) → 主として、実質憲法(国制)に関する議論領域 (1) ここでは、まず、法価値(=正義)一般について、それと密接に関連した「法の支配」理念と関連づけて整理・明晰化し、 (2) 次に、「法の支配」理念から発展した「立憲主義」理念について整理・明晰化し、 (3) さらに、憲法に特有の法価値論(①主権論、②人権論、③平和論)について、法解釈論と関連づけて整理・明晰化していく。 ※ポイントは、「正義」概念・「法の支配」理念・「立憲主義」理念や、①主権論・②人権論・③平和論に関しても、自由概念のケース(※リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜参照)と同様に、 1 保守的(自由主義的=価値多元的)スタンスによる理解と、 2 左翼的(全体主義的=価値一元的)スタンスによる理解とが、鋭く対立しているという基本構図を正しく把握することである。 ◆1.法価値(=正義)一般と、「法の支配」 ほうかちろん【法価値論】legal axiology 日本語版ブリタニカ 法的な価値について考察する研究分野。法的な価値は正義という言葉で表現されることが多いから、正義論といってもよい。 古代ギリシア以来、法哲学の主要分野をなしてきたが、最近は、①規範的倫理学と、②分析的倫理学の区別に対応して、①規範的法価値論と②分析的法価値論(メタ法価値論)とが明確に区別されるようになった。 せいぎ【正義】 広辞苑 ① [荀子(正名)]正しいすじみち、人がふみ行うべき正しい道。「-を貫く」 ② [漢書(律暦志上)]正しい意義または注解。「尚書-」 ③ (justice) (ア) 社会全体の幸福を保障する秩序を実現し維持すること。プラトンは国家の各成員がそれぞれの責務を果たし、国家全体として調和があることを正義とし、アリストテレスは能力に応じた公平な分配を正義とした。近代では社会の成員の自由と平等が正義の観念の中心となり、自由主義的民主主義社会は各人の法的な平等を実現した。 これを単に形式的なものと見るマルキシズムは、真の正義は社会主義によって初めて実現されると主張するが、現在ではイデオロギーを超えた正義が模索されている。 (イ) 社会の正義に適った行為をなしうるような個人の徳性。 せいぎ【正義】justice 日本語版ブリタニカ 人間の社会的関係において実現されるべき究極的な価値。 . 善(※注: agothos, bonum, good)と同義に用いられることもあるが、 (1) 善が、主として人間の個人的態度にかかわる道徳的な価値を指すのに対して、 (2) 正義は、人間の対他的関係の規律にかかわる法的な価値を指す。 . 正義とは何か、という問題については、古来さまざまな解答が示されてきたが、一般的な価値ないし価値基準に関する見解と同様に 1 正義を客観的な実在と考える客観主義的・絶対主義的正義論と、 2 正義を主観的な確信と考える主観主義的・相対主義的正義論とに大別できよう。 法思想の領域では、だいたいにおいて、自然法論が 1 前者に、法実証主義が 2 後者に、属する。 . 従来の正義論のうちでは、アリストテレスやキケロの見解が名高く、与えた影響も大きい。 (ア) アリストテレスは、道徳と区別される正義(特殊的正義)について、①配分的正義と、②交換的正義(平均的正義、調整的正義とも訳される)とを区別し、 ① 前者は、公民としての各人の価値・功績に応じて、名誉や財貨を配分することにおいて成立し、 ② 後者は、私人としての各人の相互交渉から生じる利害を平均・調整することにおいて成立する、とした。 (イ) キケロは、この①配分的正義と同様な内容を、「各人に彼のものを」という公式で表現した。 ほう-の-しはい【法の支配】 (rule of law) 広辞苑 イギリスの法律家コークが、国王は神と法の下にあるべきである、として、ジェームズ1世の王権を抑制して以来、「人の支配」に対抗して認められるようになった近代の政治原理。コークのいう法は、イギリスの判例法で、立法権をも抑制する点で、法治主義とは異なるが、後に法治主義と同義に用いることもある。 政治思想・政治哲学の根本的価値が「自由(freedom/liberty)」という言葉で表現されるように、 法思想・法哲学の根本的価値は「正義(justice)」という言葉で伝統的に表現されてきた。 ここで「正義」概念を概括するとともに「法の支配」理念との関係についても整理する。 ※サイズが合わない場合はこちら をクリック。 この「正義」概念に基く法理念・法思想を、一般に「法の支配(rule of law)」と呼んでいる。 ここで「法の支配」理念について整理する。 ※サイズが合わない場合はこちら をクリック。 ◇1.参考ページ 法価値論(正義論)まとめページ 「正義」とは何か ~ 法価値論まとめ+「法の支配」との関係 「法の支配」理念のまとめページ 「法の支配(rule of law)」とは何か 「自由」概念のまとめページ リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 ◇2.「正義」「法の支配」まとめ 以上のように、「正義」概念・「法の支配」理念に関して、主に形式的・手続的正義論に依拠する 1 保守的スタンスによる理解と、実質的正義論に依拠する 2 左翼的スタンスによる理解が対立するが、1960年代以降、英米圏で主流となっている理解は明らかに 1 の側であり、それを反映して、元々は故・芦部信喜教授の門下であった長谷部恭男・東大法学部教授は近年、ドイツ法学に由来する師の論を完全に否定する次のような見解を打ち出すに至っている。 長谷部恭男『法とは何か 』(2011年刊) p.148-9 法の支配という概念もいろいろな意味で使われます。ときには、人権の保障や民主主義の実現など、あるべき政治体制が備えるべき徳目のすべてを意味する理念として用いられることもありますが、こうした濃厚な意味合いで使ってしまうと、「法の支配」を独立の議論の対象とする意味が失われます。 法の支配は人の支配と対比されます。ある特定の人(々)の恣意的な支配ではなく、法に則った支配が存在するためには、そこで言う「法」が人々の従うことの可能な法でなければなりません。そのために法が満たすべき条件として、次のようないくつかの条件が挙げられてきました。・・・(中略)・・・。こうした、法の公開性、明確性、一般性、安定性、無矛盾性、不遡及性、実行可能性などの要請が、法の支配の要請と言われるものです。 日本の憲法の教科書類を見ると、「法の支配」の名の下に、人権の保障や民主主義、権力分立など、望ましい政治体制が備えるべきあらゆる徳目が並べられていることが少なくありません。しかし、ここまで濃厚な意味で「法の支配」を理解してしまうと、法の支配を独立して検討の対象とする意味はほとんどないように思われます。・・・(中略)・・・。こうした「法の支配」ということばの使い方の背景には、善いことである以上は、そのすべてが予定調和して100パーセント実現できるはずだというバラ色の想定があるのではないでしょうか。私としては・・・限定的な意味での「法の支配」を議論の対象とする方が、学問のあり方としても生産的だし、こうした意味を前提としてもっぱら議論をしている諸外国の研究者と議論するときも、誤解が少なくて善いのではないかと考えます。 ⇒長谷部教授は憲法改正に反対する護憲論者であるが、こうした左派の憲法学者であっても、英米圏でとっくの昔に標準となった法学パラダイム(ハートの法=社会的ルール説)に基づく憲法論議に追いついていこうとするだけの学問的誠実さのある者は、「正義」概念・「法の支配」理念に関しては既に 1 保守的(自由主義的=価値多元的)スタンスによる理解が正解であることをはっきりと認めている。 これに対して、故・芦部信喜教授の憲法論の継承者である高橋和之教授を初めとする多くの左派憲法学者は残念ながら、未だに半世紀以上前(1961年のH.L.A.ハート『法の概念』刊行以前)のドイツ法学系パラダイム(法段階説・法=主権者意思説)に依拠する日本ローカルの憲法学の殻に閉じ籠ったままであるが、こうしたガラパゴス状態も長谷部教授などの貢献により今後は徐々に正常化に向かっていくものと思われる。 ※以下、「法の支配」理念から発展した「立憲主義」理念について整理します。 ◆2.「立憲主義」の定義 日本の憲法の教科書では「法の支配」の名の下に“人権の保障や民主主義、権力分立など、望ましい政治体制が備えるべきあらゆる徳目が並べられている”という上記の長谷部教授の批判は、「立憲主義」に関してもそっくりそのまま当て嵌まる。 ⇒「法の支配」の意味を限定すべきであるのと同様に、「立憲主義」という言葉の意味も限定すべきである(すなわち、下記の阪本昌成氏や長谷部恭男氏の論が正解となる)。 ◇1.各論者による説明 政治的スタンス 論者 内容 (1) 保守主義 百地章 「立憲主義とは、国家の統治が憲法にもとづいて行われることである。」(『憲法の常識 常識の憲法』p.32) (2) リベラル右派 阪本昌成 (1) 立憲主義の意義先の [1] で私は、《統治とは、国家機関を通して為す、一元的・統一的な権力支配だ》と述べた。統治は、限られたリソースを巡る利害の対立を調整しながら、その配分のあり方を権力的に決定する恒常的かつ永続的な国家作用である。この権力的、永続的な統治活動の牙を抜いて正当な枠に閉じ込めようとするにが、規範的意味での国制の役割である。統治を、流動的で恣意的な政治に委ねることなく、国制のもとに規律し安定化させる思考を「立憲主義 constitutionalism」という。近代国家が規範的意味での国制によって統制されるに至った段階のものは、「近代立憲主義国家」といわれる。これは、国家という強制の機構から各人の「自由」を擁護する、統治上のルールとしての憲法をもっている国家のことである。(『憲法1 国制クラシック』p.26) (2) 立憲主義の展開(中略)自然権の保全と権力分立という二つの要素を憲法の必須要素だと明言したのが、フランス人権宣言16条の「権利の保障が確保されておらず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法を持たない」という有名なフレーズである。この二つの要素を満たす憲法を「立憲主義的憲法」と一般にいわれることがある。つまり、《憲法とは、人権宣言と権力分立を含む成文の法文章だ》、 《この法文章は、国家樹立の際の社会契約および憲法協約を成文化したものであるから、主権者をも統制する法力をもっている》という思想である。 今日、立憲主義を想起する場合、人々の脳裏に浮かぶのは、一般にこのタイプである。が、フランス人権宣言とその16条は近代立憲主義のモデルではなく、「このタイプだ」と簡単に片付けることは正確でない。フランス的立憲主義とアメリカ的立憲主義は、憲法に関する見方を大きく異にしているのだ。 〔D〕近代立憲主義の枝分かれフランス型は、憲法をあるべき国家の最適モデルに適合させようとする理論に従って設計しようとした。なかでも、憲法を制定する力を民主的に創造するための人為的理論が最重要視された。これが、後の [39] でふれる憲法制定権力の理論である。人権も、まったく新たに創設され、最適規範に相応しい内容を人為的に持たされた。人権は、人が精神的にも物質的にも、あるべき姿となるための規範だった。こうした憲法のモデルが理論通りには運ばないと判明したときには、また別の理論に従って人為的に憲法が制定された。フランスの憲法は、何度も何度も制定されては軌道修正された。そして、結局のところ、自由の構成(constitution)に失敗したのだった。これに対してアメリカ型は、経験と伝統とを基礎とする憲法制定の道を辿った。理論的な最適規範を設計したところで、上手く定着することはない、と建国の父たちは知り尽くしていた。それと同時に、憲法制定会議を頻繁に開設して討議を繰り返すと、統治力学の振り子が大きく揺れ過ぎることも予知していた。建国の父たちは、モンテスキューが理想としていた「中庸な統治体制=混合政体」から多くを学んだ(合衆国憲法はJ. ロック(1632~1704年)の影響を受けて制定された、といわれることがあるが、これは誤診だと私は考えている)。合衆国憲法が、House of the Senates(通常、「上院」と訳される元老院=貴族政的要素+連邦制)と House of the Representatives(通常、「下院」と訳される庶民院=民主政的要素)という権力分立、さらには、大統領という「民主化された君主」を置いたのは、そのためだった。また、アメリカ建国の父たちは、人間の理性・知性の限界を知っていた。人間は、有徳の存在ではなく、権力欲に満ちており、私利を追求するにあたって公共の利益を口にすること等々を建国の父たちは知っていた。合衆国憲法は、人権保障にあたっても、“自然権を実定化する”とは考えなかった。権利章典(Bill of rights)は、歴史的・経験的に徐々に姿を現してきた人の権利を確認するものだった(*注1)。 (*注1) アメリカ合衆国憲法における権利章典について 合衆国憲法にみられる「個人の自由と権利」は、自然権思想の影響をさほど受けてはいない。そこでのカタログは、歴史的にそれまで存在してきた権益を確認したものである。『憲法2 基本権クラシック』 11頁を参照願う。 (3) 立憲主義のふたつのモデル - 法の支配か民主主義か以上のように、一言で「近代立憲主義」という場合でも、一方には純粋理論型または超越型があり、他方には経験型・伝統重視型がある。見方を換えていえば、フランス型は 民意を統治過程に統合するなかで同時に自由を作り出すための憲法構造を理論的に追究したのに対して、アメリカ型は 多元的な民意を統治過程に多元的に反映させる憲法構造を伝統のなかから発見しようとしたのだった。アメリカ型立憲主義は、《個人の権利自由を擁護するための制度的装置として権力分立制を用意する》とよくいわれる。他方、憲法の民主化を重視するフランスにあっては、議会に反映される一般意思のもとに行政と司法を置くことが、その眼目であると考えられた。J. ルソー(1712~1778年)の影響だろう。そのために、議会中心の統治が理想とされた。これに対して、合衆国憲法は、モンテスキューの理論モデルを参考としながら、民主主義を万能としない権力分立制を導入した。アメリカ憲法は、「立憲主義=法の支配=権力分立」という等式を基礎として制定されたのである。 立憲主義のモデルをアメリカに求める人物は、《立憲主義とは、法の支配と同義であり、それは民主主義の行き過ぎに歯止めをかける思想でもある》と考える傾向にある。これに対して、立憲主義モデルをフランスに求める人は、「立憲民主主義」という言葉を多用する傾向がある。後者は、「立憲」の中に権力分立と人権尊重の精神を含め、「民主主義」の中に、「国民主権」と議会政を含めているようである(民主主義の中に人権尊重を忍び込ませる論者もいる)。が、それらの一貫した関連性をそこに見て取ることは困難であるように私にはみえる(自由主義と民主主義との異同については、後の [26] でふれる)。 私は、《立憲主義とは、誰が主権者であっても、また、統治権がいかに民主的に発動されている場合であっても、主権者の意思または民主的意思を法のもとに置こうとする思想だ》と考えている。 本書が「立憲民主主義」という言葉を決して用いないのは、そのためである。(『憲法1 国制クラシック』p.31) (3) リベラル左派 長谷部恭男 近代以降の立憲主義とそれ以前の立憲主義との間には大きな断絶がある。近代立憲主義は、価値観・世界観の多元性を前提とし、さまざまな価値観・世界観を抱く人々の公平な共存をはかることを目的とする。それ以前の立憲主義は、価値観・世界観の多元性を前提としていない。むしろ、人としての正しい生き方はただ一つ、教会の教えるそれに決まっているという前提をとっていた。正しい価値観・世界観が決まっている以上、公と私を区別する必要もなければ、信仰の自由や思想の自由を認める必要もない。(長谷部恭男『憲法とは何か』p.69) ・・・近代ヨーロッパで立憲主義が成立する経験においては、宗教戦争や大航海を通じて、この世には比較不能な多様な価値観が存在すること、そして、そうした多様な価値観を抱く人々が、それにもかかえわらず公平に社会生活の便宜とコストを分かち合う社会の枠組みを構築しなければならないこと、これらが人々の共通の認識となっていったことが決定的な意味を持っている。立憲主義を理解する際には、…制度的な徴表のみにとらわれず、多様な価値観の公平な共存という、その背後にある目的に着目する必要がある。(長谷部恭男『憲法とは何か』p.71) ヨーロッパでの成立の経緯に照らしてみればわかるように、立憲主義は、多様な価値観を抱く人々が、それでも協働して、社会生活の便益とコストを公正に分かち合って生きるために必要な、基本的枠組みを定める理念である。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.178) そのためには、生活領域を公と私とに人為的に区別すること、社会全体の利益を考える公の領域には、自分が一番大切だと考える価値観は持ち込まないよう、自制することが求められる。・・・そうした自制がないかぎり、比較不能な価値観の対立は、「万人の万人に対する闘争」を引き起こす。・・・(中略)・・・。立憲主義はたしかに西欧起源の思想である。しかし、それは、多様な価値観の公正な共存を目指そうとするかぎり、地域や民族にかかわりなく、頼らざるをえない考え方である。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.178) 立憲主義にもとづく憲法・・・は、人の生きるべき道や、善い生き方について教えてくれるわけではない。それは、個々人が自ら考え、選びとるべきものである。憲法が教えるのは、多様な生き方が世の中にあるとき、どうすれば、それらの間の平和な共存関係を保つことができるかである。憲法は宗教の代わりにはならない。「人権」や「個人の尊重」もそうである。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.179) 立憲主義は現実を見るように要求する。世の中には、あなたと違う価値観を持ち、それをとても大切にして生きている人がたくさんいるのだという現実を見るように要求する。このため、立憲主義と両立しうる平和主義にも、おのずと限度がある。現実の世界でどれほど平和の実現に貢献することになるかにかかわりなく、ともかく軍備を放棄せよという考え方は、「善き生き方」を教える信仰ではありえても、立憲主義と両立しうる平和主義ではない。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.179) 「立憲主義ということばには、広狭二通りの意味がある。本書で「立憲主義」ということばが使われるときに言及されているのは、このうち狭い意味の立憲主義である。広義の立憲主義とは、政治権力あるいは国家権力を制限する思考あるいは仕組みを一般的に指す。「人の支配」ではなく「法の支配」という考え方は広義の立憲主義に含まれる。古代ギリシャや中世ヨーロッパにも立憲主義があったといわれる際に言及されているのも広義の立憲主義である。他方、狭義では、立憲主義は、近代国家の権力を制約する思想あるいは仕組みを指す。この意味の立憲主義は近代立憲主義ともいわれ、私的・社会的領域と公的・政治的領域との区別を前提として、個人の自由と公共的な政治の審議と決定とを両立させようとする考え方と密接に結びつく。二つの領域の区分は、古代や中世のヨーロッパでは知られていなかったものである。」(『憲法とは何か』p.68) (4) 左翼 芦部信喜 ※芦部は「近代立憲主義(あるいは現代立憲主義)は~という性質を持っている」とその属性を述べるものの、「立憲主義とは何か」という肝心の概念論・理念論に関しては慎重に口を閉ざしている。これは芦部の憲法論が英米圏で主流となっている「立憲主義」や「法の支配」の概念・理念理解とは実は無縁の古いドイツ系法学に依拠していることに原因がある。⇒芦部の後継者である高橋和之も同様。 (5) 中間 佐藤幸治 ※佐藤も芦部と同様に、「近代立憲主義」と「現代立憲主義」を対比して言及するものの、立憲主義そのものの概念・理念の説明はない。つまり芦部や佐藤の世代ではベースがまだドイツ系法学であったために、英米系の「立憲主義」「法の支配」といった概念・理念を英米圏の用法の通りに消化できていないのである。 ◇2.参考ページ 「立憲主義」理念のまとめページ 立憲主義とは何か ※以上で法価値全般に関わる事項の説明を終わり、憲法に特有の法価値に関する検討に移ります。 ◆3.憲法に特有の法価値論+法解釈論 - 整理図 ※サイズが合わない場合はこちら をクリック ◇1.参考ページ 「法の支配」と国民主権の関係 リベラル・デモクラシー、国民主権、法の支配 国民の権利・自由と人権の関係 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 芦部信喜・佐藤幸治・阪本昌成・中川八洋etc.の「国民主権論」比較と評価 政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 関連用語集 【用語集】主権論・国民主権等 ※このように、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の段階で、(1)左翼的スタンスによる理解と(2)保守的スタンスによる理解とが激しく対立するが、 寛容で自由な価値多元的な社会を保障するのは、二つの自由論の場合と同じく、(2)保守的スタンスによる理解の方である。 ※なお、ここで一つ留意事項として、上図には表記がないが、(1)(2)の他にもう一つ、(3)右翼的スタンスによる理解というものが想定可能である。この(3)右翼的スタンスは、(1)左翼的スタンスの場合と同じく全体主義的であって、寛容で自由な社会に相応しくない理解である。(この(3)右翼的スタンスと(2)保守的スタンスとの区別は、■4.-◆1.-◇2.の中段で図解する) ■4.そうした価値、理念・目的を如何に実現するか(法学的方法論) → 主として、形式憲法(憲法典)に関する議論領域 ◆1.現行憲法典の解釈論 ◇1.左翼的(全体主義的)解釈vs.保守的(自由主義的)解釈 ※■3.- ◆3.の整理表下段(形式的憲法論の欄) を参照 ◇2.日本の代表的な憲法論 - 内容紹介・評価 日本の様々な憲法論を政治的スタンスに当て嵌めて概括すると下表のようになる。 ※サイズが画面に合わない場合はこちら をクリック願います。 政治的スタンス 代表的論者 ベースとなる思想家/思想 補足説明 詳細内容 (1) 極左 伊藤真など護憲論者 J.-J.ルソーの社会契約論からさらに、アトム的個人主義と集産主義の結合形態(=左翼的全体主義)※説明に接近 「人権」「平和」を過度に強調し絶対視する共産党・社民党・民主党左派系の法曹に多い憲法論でありイデオロギー色が濃く法理論というよりは左翼思想のプロパガンダである(左の全体主義) (2) 左翼 芦部信喜高橋和之 修正自然法論(法=主権者意思[命令]説に自然法を折衷)+J.-J.ルソーの社会契約論 宮沢俊義→芦部信喜と続く戦後日本の憲法学の最有力説であり通説※宮沢は有名なケルゼニアン(ケルゼン主義者)。芦部は自然法論者だが人権保障をア・プリオリ(先験的)な「根本規範」と位置づけており、その表面的な米国判例理論の紹介はポーズに過ぎず、実際には依然ケルゼン/ラートブルフ等ドイツ系法学の影響が強い よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) (3) リベラル左派 長谷部恭男 H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール説)を一部独自解釈※なお長谷部は社会契約論に依拠しているのか曖昧でハートの法概念論と辻褄が合うはずのハイエクの自由論は故意に無視している 近年の左派系憲法論(護憲論)をリードしている長谷部は芦部門下であるが、師のようなドイツ系法学パラダイムはもはや世界の憲法学の潮流からは通用しないことを認識しており、師の憲法論の中核である、①根本規範を頂点とした法段階説+②制憲権(憲法制定権力)説、を明確に否定して、英米系法学パラダイムへの接近を図っている。(※但しハートまでは受容しながらもハイエクを拒否している長谷部の憲法論は中途半端の誹りを免れず、これを一通り学んだ後は、より整合性のとれた阪本昌成の憲法論へと進むべきである) よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) (4) 中間 佐藤幸治 人格的自律権に限定して自然法を認める独自説+J.ロックの社会契約論 芦部説の次に有力な憲法論であり、芦部説よりも現実妥当性が高いので重宝されるが(佐藤は佐々木惣一から大石義雄へと続く京都学派憲法学の系統)、法理論としては妥協的でチグハグと呼ばざるを得ない 佐藤幸治『憲法 第三版』抜粋 (5) リベラル右派 阪本昌成、※ H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール説)+F.A.ハイエクの自由論 20世紀後半以降の分析哲学の発展を反映した英米法理論に基礎を置く憲法論であり、法理論としての完成度/説得力が最も高いが、日本では残念ながら非常に少数派 阪本昌成『憲法1 国制クラシック』 (6) 保守主義 中川八洋日本会議 E.コークの「法の支配」論+E.バークの国体論 日本会議・チャンネル桜系の憲法論も基本的にこちらに該当する。法理論というより「国民の常識」論であり、心情面からの説得力が高いが、(5)の法理論を一通り押えた上でこの立場を取らないと、いつの間にか(7)に堕する危険があるので注意。 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋 (7) 右翼・極右 いわゆる無効論者 ヘーゲルの法概念論・共同体論およびそれに類似した全体主義的論調 「伝統」「国体」などを過度に強調し絶対視して「右の全体主義」化した憲法論(左翼憲法論の裏返しであり、左翼からの転向者が嵌り易い。法理論というより右翼イデオロギーのプロパガンダ色が濃い) ※政治的スタンス5分類・8分類+円環図 -... ※サイズが合わない場合はこちら をクリック ⇒上図の詳しい説明は、政治の基礎知識、政治学の概念整理と、政治思想の対立軸 参照。 政治的スタンス毎の憲法論の違いは、①「人権」と②「国民主権」の捉え方に顕著に現れる。このうち、①「人権」に関しては、「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のためにを参照。政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価では、(2)~(6)の各々の政治的スタンスの代表的な②「国民主権」論を列記したのち、総括する。 ◆2.憲法典の改廃論 憲法典の改廃論 内容 参考ページ (1) 改憲論 ① 保守的改憲論 保守主義的・自由主義的な法価値(理念/目的)の、より確実な実現を目指す改憲論 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋 ② 左翼的改憲論 左翼的・全体主義的な法価値(理念/目的)の、より確実な実現を目指す改憲論 ③ 中間的改憲論 それほど明確なポリシーがあるわけではない(=保守主義的とも左翼的とも言い難い)が、一応は憲法9条の改正など最低限の提言内容は持つ改憲論 (2) 護憲論 ① 左翼的護憲論1(芦部信喜説準拠) 「人権」「平和」理念を絶対視して、彼らがその理念を体現すると考える現行の憲法典の絶対的維持を訴える論。しかし、■2.で説明したように、芦部説などのベースとなっている法概念理解は実際には単なる左翼イデオロギーの刷り込みでしかなく「自由で寛容な価値多元的な社会を支える憲法構想」としては完全に破綻している。 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) ② 左翼的護憲論2(長谷部恭男説準拠) 自衛隊の存在などは「憲法の変遷」があった(=条文の変化はないが、その解釈が変化したことにより合憲となった)として現状追認する一方で、現行憲法典の条文自体には「世界平和の希求」「人権価値実現の目標プログラム」など将来に向けての積極的価値を認めて、改憲に反対する論 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) ③ いわゆる真正護憲論(新無効論) この論の当否についてはネットなどで各自チェックするのが望ましい。一つ指摘事項を書くとすれば、この論のベースとなる法概念理解は、実は芦部信喜に代表される①左翼的護憲論1の法段階説(根本規範・自然法論などを強調するドイツ法学系の法概念理解)と同じ(=左翼的護憲論が「人権」「平和」を絶対視するところを、この論では彼らの考える「国体」を絶対視している、という違いがあるだけ)であり、①左翼的護憲論1と同じく、現代の法学パラダイムから全く落伍した時代遅れの論である、ということである。そのほか、この論には法的議論として様々な無理があり、一定の法学知識のある層からは全く相手にされていない が、一般向けのプロパガンダとしては中々人気のある論となっている。 国体法(不文憲法)と憲法典(成文憲法) (3) 破棄論 ① 占領憲法失効・破棄論(菅原裕説が代表的) 主権回復(1952.4.28)直後には一定の説得力と賛同者をもっていた論であったが、現在では最早現実妥当性がない無責任な論である。1950年代前半迄であれば、現行憲法を破棄・失効させ明治憲法を復活させてそのまま運用することは何とかギリギリで可能だったかも知れないが、戦後日本社会の様相を反映した複雑・多様な法制度が整備された現在では、代替案も示せずに「現行憲法を破棄・失効せよ」とだけ強弁するだけでは済まされない。 ◆3.憲法典改正案 ◇1.現在提案されている種々の改憲案 ① 中川八洋草案 保守的改憲案の代表例 ② 日本会議の提言 保守的改憲案の代表例 ③ 産経新聞案(2013年) 「国民の憲法」要綱 ④ 読売新聞案(2004年) 読売新聞社・憲法改正2004年試案 ⑤ 自民党案(2012年) 現行憲法・自民党改憲案(対照表) ⑥ 国立国会図書館編・改憲案一覧(2005年) 主な日本国憲法改正試案及び提言 ◇2.日本国憲法の構成と、保守的スタンスから見た改正の要否 憲法典の構成 保守的スタンスから見た改正の要否、改正内容 前文 抜本的な書換が必要 自虐的文言・空想的国際協調主義などの全面的排除 憲法の基本理念や解釈基準を明記する部分だが、現状は占領軍のポジション・トークに過ぎない部分が目立ち、抜本的な書換が必要である。 本文 (1) 固有規定1 1 第一章(天皇) 要検討 具体的な改正内容は慎重な検討を要する 国の在り方や国政の基本方針を明記する部分だが、文理解釈のままでは実質憲法(国制)とズレが生じるために、現状では相当に苦しい目的論的解釈が必要となっている箇所が多く、大幅な書換が必要である。 2 第ニ章(戦争の放棄) 抜本的な書換が必要 正当な戦力の保持・行使の明記etc. (2) 権利章典 1 第三章(国民の権利及び義務) 小規模な修正 普遍的人権ではなく国民の自由・権利の保障etc. 規定内容は実はかなり優秀であり、現在の基本線を外した修正は不要と思われる。 (3) 統治機構 1 第四章(国会) 小規模な修正 参議院の在り方etc. 規定内容は実はかなり優秀であり、現在の基本線を外した修正は不要と思われる。 2 第五章(内閣) 内閣権限の強化、国家安全保障の不備対応etc. 3 第六章(司法) 国民審査制度の不備対応etc. 4 第七章(財政) 5 第八章(地方自治) (4) 固有規定2 1 第九章(改正) 要検討 96条の2/3条項については賛否両論あり 要検討。 2 第十章(最高法規) 中規模の修正 人権の過度の強調の排除、最高法規性の定義再検討etc. (5) 経過規定 1 第十一章(補則) - 新たな経過規定が必要 本文ではなく附則とするのが合理的である。 ◇3.改憲案の具体例(自民党・憲法改正草案(2012年版)+中川八洋草案) 1 自民党 憲法改正草案(2012年版) (※中川八洋『国民の憲法改正 』の指摘事項を付記) 現行憲法-自民党草案-中川草案(対照表) を参照 ■5.ご意見、情報提供 ページ内容向上のためのご意見・情報提供を歓迎します。 ↓これまでの全コメントを表示する場合はここをクリック +... 保守主義的な憲法論・参考サイト http //blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/aa74d73e62cc74859dbc4e4a1a3e1f83 -- 名無しさん (2013-08-04 15 44 52) 憲法は全文変えていいよ。大日本帝国憲法を再発行で。左翼は韓国と中国に強制送還で。 - 匿名 2016-11-23 03 40 17 以下は最新コメント表示 保守主義的な憲法論・参考サイト http //blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/aa74d73e62cc74859dbc4e4a1a3e1f83 -- 名無しさん (2013-08-04 15 44 52) 憲法は全文変えていいよ。大日本帝国憲法を再発行で。左翼は韓国と中国に強制送還で。 - 匿名 2016-11-23 03 40 17 名前 ラジオボタン(各コメントの前についている○)をクリックすることで、そのコメントにレスできます。 ■左翼や売国奴を論破する!セットで読む政治理論・解説ページ 政治の基礎知識 政治学の概念整理と、政治思想の対立軸 政治思想(用語集) リベラル・デモクラシー、国民主権、法の支配 デモクラシーと衆愚制 ~ 「民主主義」信仰を打ち破る ※別題「デモクラシーの真実」 リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 ※別題「リベラリズムの真実」 保守主義とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ ナショナリズムとは何か ケインズvs.ハイエクから考える経済政策 国家解体思想(世界政府・地球市民)の正体 左派・左翼とは何か 右派・右翼とは何か 中間派に何を含めるか 「個人主義」と「集産主義」 ~ ハイエク『隷従への道』読解の手引き 最速!理論派保守☆養成プログラム 「皇国史観」と国体論~日本の保守思想を考える 日本主義とは何か ~ 日本型保守主義とナショナリズムの関係を考える 右翼・左翼の歴史 靖國神社と英霊の御心 マルクス主義と天皇制ファシズム論 丸山眞男「天皇制ファシズム論」、村上重良「国家神道論」の検証 国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書) 国体とは何か② ~ その他の論点 国体法(不文憲法)と憲法典(成文憲法) 歴史問題の基礎知識 戦後レジームの正体 「法の支配(rule of law)」とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ 立憲主義とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ 「正義」とは何か ~ 法価値論まとめ+「法の支配」との関係 正統性とは何か ~ legitimacy ・ orthodoxy の区別と、憲法の正統性問題 自然法と人権思想の関係、国体法との区別 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 日本国憲法改正問題(上級編) ※別題「憲法問題の基礎知識」 学者別《憲法理論-比較表》 政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) ブログランキング応援クリックをお願いいたします(一日一回有効)。 人気ブログランキングへ
https://w.atwiki.jp/sakura398/pages/172.html
危険は形而上学の欺瞞的な性格の中にある。それは、実際には何らの知識をも与えないのに、知識であるかのような幻想を与える。我々が形而上学を排撃する理由はここにある。・・・(中略)・・・哲学の唯一の仕事は論理的分析 logical analysis である。 ~ R. カルナップ(論理実証主義に立つ哲学者集団「ウィーン学団」のリーダー的学者) 要旨■「平和憲法」「占領憲法」などのレッテル貼りに終始するのではなく、①憲法とはそもそも何か(法概念論)、②憲法の保障すべき価値は何か(法価値論)、③そうした価値を如何に実現するか(法学的方法論)、という憲法問題の課題を一つづつ分析し検証していくことが重要である。 ※本ページが難しい方は、日本国憲法改正問題(初級編)を先ずご覧下さい。 <目次> ■1.はじめに◆1.基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学) ◆2.問題状況整理表 ■2.憲法とは何か(法概念論)◆1.憲法(constitution)の定義◇1.実質憲法(国制)と形式憲法(憲法典)の区別 ◇2.法概念論(憲法とは何か)と法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の区別 ◇3.二つの憲法概念から考える国家の在り方(伝統国家・革命国家・新興国家) ◆2.法体系の2つの捉え方◇1.ケルゼンおよび修正自然法論者による法段階説(半世紀前の法学パラダイム) ◇2.ハートによる社会的ルール説(現代の世界標準の法学パラダイム) ■3.憲法の保障すべき価値、理念・目的は何か(法価値論)◆1.法価値(=正義)一般と、「法の支配」◇1.参考ページ ◇2.「正義」「法の支配」まとめ ◆2.「立憲主義」の定義◇1.各論者による説明 ◇2.参考ページ ◆3.憲法に特有の法価値論+法解釈論 - 整理図◇1.参考ページ ■4.そうした価値、理念・目的を如何に実現するか(法学的方法論)◆1.現行憲法典の解釈論◇1.左翼的(全体主義的)解釈vs.保守的(自由主義的)解釈 ◇2.日本の代表的な憲法論 - 内容紹介・評価 ◆2.憲法典の改廃論 ◆3.憲法典改正案◇1.現在提案されている種々の改憲案 ◇2.日本国憲法の構成と、保守的スタンスから見た改正の要否 ◇3.改憲案の具体例(自民党・憲法改正草案(2012年版)+中川八洋草案) ■5.ご意見、情報提供 ■1.はじめに 憲法問題となると、たちまち「平和憲法を守れ」とか「占領憲法を破棄せよ」といった、左右両極端の立場からのイデオロギッシュなアジテーション・罵倒合戦に終始してしまう現象が頻繁に観測される。(※なお、経済問題に関しても類似した現象がしばしば観測される ⇒ ケインズvs.ハイエクから考える経済政策 参照)。 確かに、現実妥当性に目を瞑って現行憲法典の前文・第9条を厳密に文理解釈すれば、お花畑的な(つまりネガティヴな)意味で「平和憲法」と云えなくもないし、また制定過程を見ればGHQ草案をほぼそのまま翻訳した「占領憲法」と呼ばれるのも致し方ないことではあるが、ここでは、そうした扇動的・プロパガンダ的方向にばかり走り易い言説を避けて、努めて論理的・概念分析的な姿勢を守りつつ憲法問題の整理・解明を目指したい。 そのために、 1 まず、基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学)を区別して、憲法問題の位置づけを明確にし、 2 次に、基礎法学の主要3分野(①法概念論・②法価値論・③法学的方法論)各々について、実用法学の一分野である憲法学(憲法論)の課題を対応させた問題状況整理表を作成し、 3 そして、上流から順に(つまり①法概念論→②法価値論→③法学的方法論の順に)これらの課題を一つづつ分析し整理していく。 ◆1.基礎法学(理論法学)と実用法学(応用法学) きそほうがく【基礎法学】 ※日本語版ブリタニカ百科事典より 実用法学に対して、少なくとも直接的には法的な諸事象の純粋に理論的な認識・解明を目的とする法学。理論法学ともいう。基礎医学という用語にならって第二次世界大戦後の日本で使われるようになった。法社会学、法史学、比較法学、法哲学がこれに属する。 じつようほうがく【実用法学】 ※日本語版ブリタニカ百科事典より 司法、行政、立法などの実用目的に奉仕する法学。法解釈学と立法学がこれに属する。基礎法学と対置されるが、現代の実用法学は基礎法学の成果を積極的に活用して法の合目的的な形成と運用を図る応用科学としての性格を強めつつある。 ほうかいしゃくがく【法解釈学】 Rechtsdogmatik ※日本語版ブリタニカ百科事典より 解釈法学ともいう。実定法の規範的意味内容を体系的・合理的に解明し、裁判における法の適用に影響を与えることを目的とする実用法学。実定法を構成する文字および文章の多義的な規範的意味内容を明確かつ一義的に確定していく作業が法の解釈であるが、この作業には、①文理解釈、②論理解釈、③縮小解釈、④目的論的解釈、⑤反対解釈、⑥勿論解釈、⑦類推解釈などと呼ばれるものがある。法解釈学は古代ローマで成立して以来、現代まで法学の中心的位置を占めているが、時代の変遷によって力点の変化がみられる。自由法論以後の法解釈学は人間や社会に関する経験科学的認識を取り入れた応用科学としての性格を強めている。第二次世界大戦後の日本の法学界における「法解釈学論争」では、法解釈学の実践的性格が強調された。法解釈学は、その対象となる実定法の分野によって、憲法学、行政法学、刑法学、民法学、商法学、労働法学、国際法学、国際私法学などに分れる。 けんぽうがく【憲法学】 ※広辞苑より 法学の一部門。憲法および憲法上の諸現象を研究の対象とする学問。国法学。 ◆2.問題状況整理表 基礎法学(理論法学)の主要3分野 憲法学(応用法学)の課題 (1) 法概念論(法とは何か) 1 憲法とは何か(憲法の定義) ⇒(a)実質憲法(国制)と、(b)形式憲法(憲法典)、の区別が重要。 2 法体系の中での憲法の位置づけ ⇒①法段階説(主権者意思[命令]説・・・ケルゼン及び修正自然法論者の法理解)と、②社会的ルール説(ハートの法理解であり、ハイエクの自生的秩序論と親和的)、の区別・評価が重要 (2) 法価値論(法の保障すべき価値は何か)※正義論ともいう(*注1)※法理念論、法目的論ともいう 《1》 法価値全般 1 法価値(正義)一般と「法の支配」論 ※法価値論は、専ら、(a)実質憲法(国制)の在り方に関する分野である。⇒①左翼的・全体主義的価値観と、②保守的・自由主義的価値観、の区別・評価が重要。 2 「立憲主義」論 《2》 個別的法価値 1 主権論(憲法は特定の主権者を規定すべきか) ※主権論について詳細ページ⇒政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 2 人権論(憲法の基礎的な保護領域は何か) ※人権論について詳細ページ⇒「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 3 平和論(奴隷の平和か正戦を肯定するか) (3) 法学的方法論(法価値を如何に実現するか) 前提条件 価値論の把握 1 憲法典(形式憲法)の解釈論 ※法学的方法論は、専ら、(b)形式憲法(憲法典)の解釈・運用に関わる分野であり、具体的な条規について(2)法価値論《2》の 1 ~ 3 の課題に対応した法解釈の対立が見られる。⇒①左翼的・全体主義的解釈と、②保守的・自由主義的解釈、の区別・評価が重要。 2 憲法典(形式憲法)の改廃論 ⇒①護憲論、②改憲論、および③破棄論、の比較・評価が重要。 3 憲法典(形式憲法)案の内容評価 ⇒各々の草案について、(2)法価値論《2》の 1 ~ 3 の課題への対応方針に留意しながら個別に評価していくことが重要。 (*注1)法的な価値は、伝統的に「正義(justice)」という言葉で表現されてきたため、法価値論を正義論ともいう。 ■2.憲法とは何か(法概念論) ◆1.憲法(constitution)の定義 ◇1.実質憲法(国制)と形式憲法(憲法典)の区別 けんぽう【憲法】 constitution ※日本語版ブリタニカ百科事典より 憲法の語には、(1)およそ法ないし掟の意味と、(2)国の根本秩序に関する法規範の意味、の2義があり、聖徳太子の「十七条憲法」は(1)前者の例であるが、今日一般には(2)後者の意味で用いられる。 (2)後者の意味での憲法は、凡そ国家のあるところに存在するが(実質憲法)、近代国家の登場とともにかかる法規範を1つの法典(憲法典)として制定することが一般的となり(形式憲法)、しかもフランス人権宣言16条に謳われているように、①国民の権利を保障し、②権力分立制を定める憲法のみを憲法と観念する傾向が生まれた(近代的意味の憲法)。 1 17世紀以降この近代的憲法原理の確立過程は政治闘争の歴史であった。憲法の制定・変革という重大な憲法現象が政治そのものである。比較的安定した憲法体制にあっても、①社会的諸勢力の利害や、②階級の対立は、[1]重大な憲法解釈の対立とともに、[2]政治的・イデオロギー的対立を必然的に伴っている。 従って、憲法は (a) 政治の基本的ルールを定めるものであるとともに、 (b) 社会的諸勢力の経済的・政治的・イデオロギー的闘争によって維持・発展・変革されていく、・・・という二重の構造を持っている。 2 憲法の改正が、通常の立法手続でできるか否かにより、軟性憲法と硬性憲法との区別が生まれるが、今日ではほとんどが硬性憲法である。 近代的意味での成文の硬性憲法は、 ① 国の法規範創設の最終的源である(授権規範性)とともに、 ② 法規範創設を内容的に枠づける(制限規範性)という特性を持ち、かつ ③ 一国の法規範秩序の中で最高の形式的効力を持つ(最高法規性)。 日本国憲法98条1項は、憲法の③最高法規性を明記するが、日本国憲法が硬性憲法である(96条参照)以上当然の帰結である。今日、③最高法規性を確保するため、何らかの形で違憲審査制を導入する国が増えてきている。 なお、憲法は、①制定の権威の所在如何により、欽定・民定・協約・条約(国約)憲法の区別が、②歴史的内容により、ブルジョア憲法と社会主義憲法、あるいは、近代憲法(自由権中心の憲法)と現代憲法(社会権を導入するに至った憲法)といった区別がなされる。 なお、下位規範による憲法規範の簒奪を防止し、憲法の最高法規性を確保することを、憲法の保障という。 (⇒憲法の変動、⇒成文憲法、⇒不文憲法) 上記のように、憲法(constitution)という概念には、 ① 実質的意味の憲法 (=国制、国体法 constititional law) ⇒本質主義(essentialism)による定義 と、 ② 形式的意味の憲法 (=憲法典 constitutional code) ⇒名目主義(nominalism)による定義 の2つのレベルがあり、 両者を区別しつつ総合的に考察していく必要がある。 そして、これに対応して、憲法論にも、 ① 実質的意味の憲法論 (法価値論=憲法の保障すべき価値は何かを考察する価値論であり、それを具体化すると立法論になる) と、 ② 形式的意味の憲法論 (法解釈論=既に成文化された憲法典の解釈論) の2つの段階があり、 この両者もまた確り区別して考察していく必要がある。 ★補足説明★「実質的意味の憲法」「国体法」「国制」 たとえば「民法」という概念には、①実質的意味の民法(=民法典に限らず「総体としての民法 civil law」を指す)と、②形式的意味の民法(=民法典 civil code という具体的な法律)の二つの意味があり、また「刑法」という概念にも同じく、①実質的意味の刑法(criminal law)と、②形式的意味の刑法(=刑法典 criminal code という具体的な法律)の二つの意味がある。これらから類推されるように、当然「憲法」という概念にも、①実質的意味の憲法(constitutional law)と、②形式的意味の憲法(=憲法典 constitutional code という具体的な法律)の二つの意味があり、これらは確りと区別されて論じられるべきであるが、明治期に constitution(英語)ないし Verfassung(ドイツ語)という概念を日本に導入する際に、専ら②形式的意味の憲法(憲法典)という意味で「憲法」という言葉が用いられてしまったために、現在の日本では、憲法とは専ら②憲法典である、とする理解(すなわち、①の意味を見落とした状態での理解)が一般的となってしまっている。 これに関しては、戦前の日本では、①実質的意味の憲法(国制)を意味する言葉として、明治以前から「国体」という用語が普及していたという裏の事情がある。この「国体」という用語は、昭和初期に濫用されて右翼的イデオロギーの色彩を強く帯びてしまったことから、戦後はこの用語の使用自体がタブー視される状態となってしまい、なおさら現在の日本人が、①実質的意味の憲法、を考えることを困難にしている。(※「国体」については⇒国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書)参照) こうした①実質的意味の憲法 constitutional law を素直に翻訳すれば「国体法」となるが、ここでは主に、よりイデオロギー色の薄い「国制」という訳語を用いることとする。(※なお、アリストテレス著として伝わる『アテナイ人の国制』の英語版書名は 『The Athenian Constitution』であり、①の意味での constitution の訳語として「国制」が現時点ではやはり一番適切である。) ◇2.法概念論(憲法とは何か)と法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の区別 左派及び右派から、しばしば繰り返される「憲法の定義」として、次のようなものがある。 (1) 憲法とは、政治権力者を拘束し国民を守るための法規範であり、それに反するものは憲法ではない。 (主に左派から) (2) 憲法とは、国の歴史を踏まえた国体を成文化した法規範であり、それに反するものは憲法ではない。 (主に右派から) 確かに、正当な憲法典には、(1)および(2)のそれぞれの要素が認められるべきであるが、結論から先にいえば、それらは、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)のカテゴリーであって、「憲法の定義」すなわち①法概念論(憲法とは何か)のカテゴリーではない。 このようなカテゴリー・ミスを避ける意味でも、当ページで薦めているような、①法概念論⇒②法価値論⇒③法学的方法論、という順序を踏まえた憲法問題の検討が肝要である。 因みに、(1)政治権力者をほとんど拘束できない憲法典や、(2)自国の歴史やこれまでに培ってきた伝統的な国体を全く反映せず、むしろそれらの積極的な破壊を目的とした憲法典も、世界には幾つも存在したし、現在でも存在しており、それらを「憲法と認めない」とするのは単なる個人的な価値観の表明でしかなく、何ら憲法問題の分析・明晰化に役立たない。 それよりも先ずは「憲法」という概念を、 1 実質憲法(国制、国体法)と 2 形式憲法(憲法典)に確り区別して、この両者の関係から、(a)国家の在り方(=伝統国家/革命国家/新興国家)、(b)憲法典の在り方(保守型/革命型/創成型)を考察していく方が遥かに有意義である。 ◇3.二つの憲法概念から考える国家の在り方(伝統国家・革命国家・新興国家) ※サイズが合わない場合は こちら をクリック。 ※■3.- ◆3.の憲法論の二段構造(整理表)で詳述するように、日本国憲法に関しては、 (1) 左翼側(主に憲法学者)は、これを「八月革命」の結果成立した革命型憲法と捉え、戦前の国制を積極的に否定・破壊する方向への解釈・運用を強く要求してきたが、 (2) 保守側(主に日本政府)は、そのようなフィクションを認めず、日本国憲法はあくまで大日本帝国憲法の改正憲法典として成立したものとして保守的解釈・運用を図ってきており、 戦後の日本では、(a)国家の在り方(=伝統国家か革命国家か)、(b)憲法典の在り方(=保守的解釈が正当かそれとも左翼的解釈が正当か)を巡って、左翼側・保守側の激しい対立が継続されてきた。 こうけんてきかいしゃく【公権的解釈】※日本語版ブリタニカ百科事典より 権限のある国家機関によって行われる法の解釈。有権解釈ともいう。これによって解釈が公定されるという点で、法学者や私人の解釈よりも重要な意味をもつ。公権的解釈には、法律によるもの(立法解釈)、行政機関によるもの(行政解釈)、裁判所によるもの(司法解釈)がある。 ※つまり、左翼的な憲法学者がどれほど「これは憲法学界の通説である(例:八月革命は憲法学界の通説であるetc.)」と唱えようと、日本政府がこれまでに表明してきた見解(例:国体は戦前/戦後で一貫しているetc.)が効力を持ったオフィシャルな解釈(=公権的解釈・有権解釈)なのだから、我々が戦後の日本を伝統国家と認め、日本国憲法を保守的に解釈することには正当な理由があるのだが、それ以外にも、下記◆2.に示すように、戦後日本の左翼的憲法学には論理面から致命的な欠陥が指摘可能である。 ◆2.法体系の2つの捉え方 ◇1.ケルゼンおよび修正自然法論者による法段階説(半世紀前の法学パラダイム) ※図が見づらい場合⇒ こちら を参照 ※①宮澤俊義(ケルゼン主義者)・②芦部信喜(修正自然法論者)に代表される戦後日本の左翼的憲法学は「実定法を根拠づける“根本規範”あるいは“自然法”」を仮設ないし想定するところからその理論の総てが始まるが、そのようなア・プリオリ(先験的)な前提から始まる論説は、20世紀後半以降に英米圏で主流となった分析哲学(形而上学的な特定観念の刷り込みに終始するのではなく緻密な概念分析を重視する哲学潮流)を反映した法理学/法哲学(基礎法学)分野では、とっくの昔に排撃されており、日本でも“自然法”を想定する法理学者/法哲学者は最早、笹倉秀夫(丸山眞男門下)など一部の化石化した確信犯的な左翼しか残っていない。このように基礎法学(理論法学)分野でほぼ一掃された論説を、応用法学(実定法学)分野である憲法学で未だに前提として理論を展開し続けるのはナンセンスであるばかりか知的誠実さを疑われても仕方がない行いであり、日本の憲法学の早急な正常化が待たれる。(※なお、近年の左翼憲法論をリードし「護憲派最終防御ライン」と呼ばれている長谷部恭男は、芦部門下であるが、ハートの法概念論を正当と認めて、芦部説にある自然法・根本規範・制憲権といった超越的概念を明確に否定するに至っている。) ◇2.ハートによる社会的ルール説(現代の世界標準の法学パラダイム) ※サイズが画面に合わない場合は こちら 及び こちら をクリック願います。 ※上記のように、ハートの法=社会的ルール説は、現実の法現象について詳細で明晰な分析モデルを提供しており、特定の価値観・政治的イデオロギーに基づく概念ピラミッドに過ぎない法=主権者意思[命令]説の法体系モデルを、その説得力において大幅に凌駕している。 ※上図について、詳細な解説は法と権利の本質に関する2つの考え方へ。 ※このように、①法概念論(憲法とは何か)の段階で、既に左翼的憲法論はハッキリと論理破綻しているのであるが、以下更に、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の段階での 左翼的スタンス vs. 保守的スタンス 両者の憲法に求める価値(理念・目的)を対比して、寛容で価値多元的な自由主義社会を支え得る法価値は保守的スタンスのものであることを説明していく。 ■3.憲法の保障すべき価値、理念・目的は何か(法価値論) → 主として、実質憲法(国制)に関する議論領域 (1) ここでは、まず、法価値(=正義)一般について、それと密接に関連した「法の支配」理念と関連づけて整理・明晰化し、 (2) 次に、「法の支配」理念から発展した「立憲主義」理念について整理・明晰化し、 (3) さらに、憲法に特有の法価値論(①主権論、②人権論、③平和論)について、法解釈論と関連づけて整理・明晰化していく。 ※ポイントは、「正義」概念・「法の支配」理念・「立憲主義」理念や、①主権論・②人権論・③平和論に関しても、自由概念のケース(※リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜参照)と同様に、 1 保守的(自由主義的=価値多元的)スタンスによる理解と、 2 左翼的(全体主義的=価値一元的)スタンスによる理解とが、鋭く対立しているという基本構図を正しく把握することである。 ◆1.法価値(=正義)一般と、「法の支配」 ほうかちろん【法価値論】legal axiology 日本語版ブリタニカ 法的な価値について考察する研究分野。法的な価値は正義という言葉で表現されることが多いから、正義論といってもよい。 古代ギリシア以来、法哲学の主要分野をなしてきたが、最近は、①規範的倫理学と、②分析的倫理学の区別に対応して、①規範的法価値論と②分析的法価値論(メタ法価値論)とが明確に区別されるようになった。 せいぎ【正義】 広辞苑 ① [荀子(正名)]正しいすじみち、人がふみ行うべき正しい道。「-を貫く」 ② [漢書(律暦志上)]正しい意義または注解。「尚書-」 ③ (justice) (ア) 社会全体の幸福を保障する秩序を実現し維持すること。プラトンは国家の各成員がそれぞれの責務を果たし、国家全体として調和があることを正義とし、アリストテレスは能力に応じた公平な分配を正義とした。近代では社会の成員の自由と平等が正義の観念の中心となり、自由主義的民主主義社会は各人の法的な平等を実現した。 これを単に形式的なものと見るマルキシズムは、真の正義は社会主義によって初めて実現されると主張するが、現在ではイデオロギーを超えた正義が模索されている。 (イ) 社会の正義に適った行為をなしうるような個人の徳性。 せいぎ【正義】justice 日本語版ブリタニカ 人間の社会的関係において実現されるべき究極的な価値。 . 善(※注: agothos, bonum, good)と同義に用いられることもあるが、 (1) 善が、主として人間の個人的態度にかかわる道徳的な価値を指すのに対して、 (2) 正義は、人間の対他的関係の規律にかかわる法的な価値を指す。 . 正義とは何か、という問題については、古来さまざまな解答が示されてきたが、一般的な価値ないし価値基準に関する見解と同様に 1 正義を客観的な実在と考える客観主義的・絶対主義的正義論と、 2 正義を主観的な確信と考える主観主義的・相対主義的正義論とに大別できよう。 法思想の領域では、だいたいにおいて、自然法論が 1 前者に、法実証主義が 2 後者に、属する。 . 従来の正義論のうちでは、アリストテレスやキケロの見解が名高く、与えた影響も大きい。 (ア) アリストテレスは、道徳と区別される正義(特殊的正義)について、①配分的正義と、②交換的正義(平均的正義、調整的正義とも訳される)とを区別し、 ① 前者は、公民としての各人の価値・功績に応じて、名誉や財貨を配分することにおいて成立し、 ② 後者は、私人としての各人の相互交渉から生じる利害を平均・調整することにおいて成立する、とした。 (イ) キケロは、この①配分的正義と同様な内容を、「各人に彼のものを」という公式で表現した。 ほう-の-しはい【法の支配】 (rule of law) 広辞苑 イギリスの法律家コークが、国王は神と法の下にあるべきである、として、ジェームズ1世の王権を抑制して以来、「人の支配」に対抗して認められるようになった近代の政治原理。コークのいう法は、イギリスの判例法で、立法権をも抑制する点で、法治主義とは異なるが、後に法治主義と同義に用いることもある。 政治思想・政治哲学の根本的価値が「自由(freedom/liberty)」という言葉で表現されるように、 法思想・法哲学の根本的価値は「正義(justice)」という言葉で伝統的に表現されてきた。 ここで「正義」概念を概括するとともに「法の支配」理念との関係についても整理する。 ※サイズが合わない場合は こちら をクリック。 この「正義」概念に基く法理念・法思想を、一般に「法の支配(rule of law)」と呼んでいる。 ここで「法の支配」理念について整理する。 ※サイズが合わない場合は こちら をクリック。 ◇1.参考ページ 法価値論(正義論)まとめページ 「正義」とは何か ~ 法価値論まとめ+「法の支配」との関係 「法の支配」理念のまとめページ 「法の支配(rule of law)」とは何か 「自由」概念のまとめページ リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 ◇2.「正義」「法の支配」まとめ 以上のように、「正義」概念・「法の支配」理念に関して、主に形式的・手続的正義論に依拠する 1 保守的スタンスによる理解と、実質的正義論に依拠する 2 左翼的スタンスによる理解が対立するが、1960年代以降、英米圏で主流となっている理解は明らかに 1 の側であり、それを反映して、元々は故・芦部信喜教授の門下であった長谷部恭男・東大法学部教授は近年、ドイツ法学に由来する師の論を完全に否定する次のような見解を打ち出すに至っている。 長谷部恭男『 法とは何か 』(2011年刊) p.148-9 法の支配という概念もいろいろな意味で使われます。ときには、人権の保障や民主主義の実現など、あるべき政治体制が備えるべき徳目のすべてを意味する理念として用いられることもありますが、こうした濃厚な意味合いで使ってしまうと、「法の支配」を独立の議論の対象とする意味が失われます。 法の支配は人の支配と対比されます。ある特定の人(々)の恣意的な支配ではなく、法に則った支配が存在するためには、そこで言う「法」が人々の従うことの可能な法でなければなりません。そのために法が満たすべき条件として、次のようないくつかの条件が挙げられてきました。・・・(中略)・・・。こうした、法の公開性、明確性、一般性、安定性、無矛盾性、不遡及性、実行可能性などの要請が、法の支配の要請と言われるものです。 日本の憲法の教科書類を見ると、「法の支配」の名の下に、人権の保障や民主主義、権力分立など、望ましい政治体制が備えるべきあらゆる徳目が並べられていることが少なくありません。しかし、ここまで濃厚な意味で「法の支配」を理解してしまうと、法の支配を独立して検討の対象とする意味はほとんどないように思われます。・・・(中略)・・・。こうした「法の支配」ということばの使い方の背景には、善いことである以上は、そのすべてが予定調和して100パーセント実現できるはずだというバラ色の想定があるのではないでしょうか。私としては・・・限定的な意味での「法の支配」を議論の対象とする方が、学問のあり方としても生産的だし、こうした意味を前提としてもっぱら議論をしている諸外国の研究者と議論するときも、誤解が少なくて善いのではないかと考えます。 ⇒長谷部教授は憲法改正に反対する護憲論者であるが、こうした左派の憲法学者であっても、英米圏でとっくの昔に標準となった法学パラダイム(ハートの法=社会的ルール説)に基づく憲法論議に追いついていこうとするだけの学問的誠実さのある者は、「正義」概念・「法の支配」理念に関しては既に 1 保守的(自由主義的=価値多元的)スタンスによる理解が正解であることをはっきりと認めている。 これに対して、故・芦部信喜教授の憲法論の継承者である高橋和之教授を初めとする多くの左派憲法学者は残念ながら、未だに半世紀以上前(1961年のH.L.A.ハート『法の概念』刊行以前)のドイツ法学系パラダイム(法段階説・法=主権者意思説)に依拠する日本ローカルの憲法学の殻に閉じ籠ったままであるが、こうしたガラパゴス状態も長谷部教授などの貢献により今後は徐々に正常化に向かっていくものと思われる。 ※以下、「法の支配」理念から発展した「立憲主義」理念について整理します。 ◆2.「立憲主義」の定義 日本の憲法の教科書では「法の支配」の名の下に“人権の保障や民主主義、権力分立など、望ましい政治体制が備えるべきあらゆる徳目が並べられている”という上記の長谷部教授の批判は、「立憲主義」に関してもそっくりそのまま当て嵌まる。 ⇒「法の支配」の意味を限定すべきであるのと同様に、「立憲主義」という言葉の意味も限定すべきである(すなわち、下記の阪本昌成氏や長谷部恭男氏の論が正解となる)。 ◇1.各論者による説明 政治的スタンス 論者 内容 (1) 保守主義 百地章 「立憲主義とは、国家の統治が憲法にもとづいて行われることである。」(『憲法の常識 常識の憲法』p.32) (2) リベラル右派 阪本昌成 (1) 立憲主義の意義先の [1] で私は、《統治とは、国家機関を通して為す、一元的・統一的な権力支配だ》と述べた。統治は、限られたリソースを巡る利害の対立を調整しながら、その配分のあり方を権力的に決定する恒常的かつ永続的な国家作用である。この権力的、永続的な統治活動の牙を抜いて正当な枠に閉じ込めようとするにが、規範的意味での国制の役割である。統治を、流動的で恣意的な政治に委ねることなく、国制のもとに規律し安定化させる思考を「立憲主義 constitutionalism」という。近代国家が規範的意味での国制によって統制されるに至った段階のものは、「近代立憲主義国家」といわれる。これは、国家という強制の機構から各人の「自由」を擁護する、統治上のルールとしての憲法をもっている国家のことである。(『憲法1 国制クラシック』p.26) (2) 立憲主義の展開(中略)自然権の保全と権力分立という二つの要素を憲法の必須要素だと明言したのが、フランス人権宣言16条の「権利の保障が確保されておらず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法を持たない」という有名なフレーズである。この二つの要素を満たす憲法を「立憲主義的憲法」と一般にいわれることがある。つまり、《憲法とは、人権宣言と権力分立を含む成文の法文章だ》、 《この法文章は、国家樹立の際の社会契約および憲法協約を成文化したものであるから、主権者をも統制する法力をもっている》という思想である。 今日、立憲主義を想起する場合、人々の脳裏に浮かぶのは、一般にこのタイプである。が、フランス人権宣言とその16条は近代立憲主義のモデルではなく、「このタイプだ」と簡単に片付けることは正確でない。フランス的立憲主義とアメリカ的立憲主義は、憲法に関する見方を大きく異にしているのだ。 〔D〕近代立憲主義の枝分かれフランス型は、憲法をあるべき国家の最適モデルに適合させようとする理論に従って設計しようとした。なかでも、憲法を制定する力を民主的に創造するための人為的理論が最重要視された。これが、後の [39] でふれる憲法制定権力の理論である。人権も、まったく新たに創設され、最適規範に相応しい内容を人為的に持たされた。人権は、人が精神的にも物質的にも、あるべき姿となるための規範だった。こうした憲法のモデルが理論通りには運ばないと判明したときには、また別の理論に従って人為的に憲法が制定された。フランスの憲法は、何度も何度も制定されては軌道修正された。そして、結局のところ、自由の構成(constitution)に失敗したのだった。これに対してアメリカ型は、経験と伝統とを基礎とする憲法制定の道を辿った。理論的な最適規範を設計したところで、上手く定着することはない、と建国の父たちは知り尽くしていた。それと同時に、憲法制定会議を頻繁に開設して討議を繰り返すと、統治力学の振り子が大きく揺れ過ぎることも予知していた。建国の父たちは、モンテスキューが理想としていた「中庸な統治体制=混合政体」から多くを学んだ(合衆国憲法はJ. ロック(1632~1704年)の影響を受けて制定された、といわれることがあるが、これは誤診だと私は考えている)。合衆国憲法が、House of the Senates(通常、「上院」と訳される元老院=貴族政的要素+連邦制)と House of the Representatives(通常、「下院」と訳される庶民院=民主政的要素)という権力分立、さらには、大統領という「民主化された君主」を置いたのは、そのためだった。また、アメリカ建国の父たちは、人間の理性・知性の限界を知っていた。人間は、有徳の存在ではなく、権力欲に満ちており、私利を追求するにあたって公共の利益を口にすること等々を建国の父たちは知っていた。合衆国憲法は、人権保障にあたっても、“自然権を実定化する”とは考えなかった。権利章典(Bill of rights)は、歴史的・経験的に徐々に姿を現してきた人の権利を確認するものだった(*注1)。 (*注1) アメリカ合衆国憲法における権利章典について 合衆国憲法にみられる「個人の自由と権利」は、自然権思想の影響をさほど受けてはいない。そこでのカタログは、歴史的にそれまで存在してきた権益を確認したものである。『憲法2 基本権クラシック』 11頁を参照願う。 (3) 立憲主義のふたつのモデル - 法の支配か民主主義か以上のように、一言で「近代立憲主義」という場合でも、一方には純粋理論型または超越型があり、他方には経験型・伝統重視型がある。見方を換えていえば、フランス型は 民意を統治過程に統合するなかで同時に自由を作り出すための憲法構造を理論的に追究したのに対して、アメリカ型は 多元的な民意を統治過程に多元的に反映させる憲法構造を伝統のなかから発見しようとしたのだった。アメリカ型立憲主義は、《個人の権利自由を擁護するための制度的装置として権力分立制を用意する》とよくいわれる。他方、憲法の民主化を重視するフランスにあっては、議会に反映される一般意思のもとに行政と司法を置くことが、その眼目であると考えられた。J. ルソー(1712~1778年)の影響だろう。そのために、議会中心の統治が理想とされた。これに対して、合衆国憲法は、モンテスキューの理論モデルを参考としながら、民主主義を万能としない権力分立制を導入した。アメリカ憲法は、「立憲主義=法の支配=権力分立」という等式を基礎として制定されたのである。 立憲主義のモデルをアメリカに求める人物は、《立憲主義とは、法の支配と同義であり、それは民主主義の行き過ぎに歯止めをかける思想でもある》と考える傾向にある。これに対して、立憲主義モデルをフランスに求める人は、「立憲民主主義」という言葉を多用する傾向がある。後者は、「立憲」の中に権力分立と人権尊重の精神を含め、「民主主義」の中に、「国民主権」と議会政を含めているようである(民主主義の中に人権尊重を忍び込ませる論者もいる)。が、それらの一貫した関連性をそこに見て取ることは困難であるように私にはみえる(自由主義と民主主義との異同については、後の [26] でふれる)。 私は、《立憲主義とは、誰が主権者であっても、また、統治権がいかに民主的に発動されている場合であっても、主権者の意思または民主的意思を法のもとに置こうとする思想だ》と考えている。 本書が「立憲民主主義」という言葉を決して用いないのは、そのためである。(『憲法1 国制クラシック』p.31) (3) リベラル左派 長谷部恭男 近代以降の立憲主義とそれ以前の立憲主義との間には大きな断絶がある。近代立憲主義は、価値観・世界観の多元性を前提とし、さまざまな価値観・世界観を抱く人々の公平な共存をはかることを目的とする。それ以前の立憲主義は、価値観・世界観の多元性を前提としていない。むしろ、人としての正しい生き方はただ一つ、教会の教えるそれに決まっているという前提をとっていた。正しい価値観・世界観が決まっている以上、公と私を区別する必要もなければ、信仰の自由や思想の自由を認める必要もない。(長谷部恭男『憲法とは何か』p.69) ・・・近代ヨーロッパで立憲主義が成立する経験においては、宗教戦争や大航海を通じて、この世には比較不能な多様な価値観が存在すること、そして、そうした多様な価値観を抱く人々が、それにもかかえわらず公平に社会生活の便宜とコストを分かち合う社会の枠組みを構築しなければならないこと、これらが人々の共通の認識となっていったことが決定的な意味を持っている。立憲主義を理解する際には、…制度的な徴表のみにとらわれず、多様な価値観の公平な共存という、その背後にある目的に着目する必要がある。(長谷部恭男『憲法とは何か』p.71) ヨーロッパでの成立の経緯に照らしてみればわかるように、立憲主義は、多様な価値観を抱く人々が、それでも協働して、社会生活の便益とコストを公正に分かち合って生きるために必要な、基本的枠組みを定める理念である。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.178) そのためには、生活領域を公と私とに人為的に区別すること、社会全体の利益を考える公の領域には、自分が一番大切だと考える価値観は持ち込まないよう、自制することが求められる。・・・そうした自制がないかぎり、比較不能な価値観の対立は、「万人の万人に対する闘争」を引き起こす。・・・(中略)・・・。立憲主義はたしかに西欧起源の思想である。しかし、それは、多様な価値観の公正な共存を目指そうとするかぎり、地域や民族にかかわりなく、頼らざるをえない考え方である。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.178) 立憲主義にもとづく憲法・・・は、人の生きるべき道や、善い生き方について教えてくれるわけではない。それは、個々人が自ら考え、選びとるべきものである。憲法が教えるのは、多様な生き方が世の中にあるとき、どうすれば、それらの間の平和な共存関係を保つことができるかである。憲法は宗教の代わりにはならない。「人権」や「個人の尊重」もそうである。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.179) 立憲主義は現実を見るように要求する。世の中には、あなたと違う価値観を持ち、それをとても大切にして生きている人がたくさんいるのだという現実を見るように要求する。このため、立憲主義と両立しうる平和主義にも、おのずと限度がある。現実の世界でどれほど平和の実現に貢献することになるかにかかわりなく、ともかく軍備を放棄せよという考え方は、「善き生き方」を教える信仰ではありえても、立憲主義と両立しうる平和主義ではない。(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』p.179) 「立憲主義ということばには、広狭二通りの意味がある。本書で「立憲主義」ということばが使われるときに言及されているのは、このうち狭い意味の立憲主義である。広義の立憲主義とは、政治権力あるいは国家権力を制限する思考あるいは仕組みを一般的に指す。「人の支配」ではなく「法の支配」という考え方は広義の立憲主義に含まれる。古代ギリシャや中世ヨーロッパにも立憲主義があったといわれる際に言及されているのも広義の立憲主義である。他方、狭義では、立憲主義は、近代国家の権力を制約する思想あるいは仕組みを指す。この意味の立憲主義は近代立憲主義ともいわれ、私的・社会的領域と公的・政治的領域との区別を前提として、個人の自由と公共的な政治の審議と決定とを両立させようとする考え方と密接に結びつく。二つの領域の区分は、古代や中世のヨーロッパでは知られていなかったものである。」(『憲法とは何か』p.68) (4) 左翼 芦部信喜 ※芦部は「近代立憲主義(あるいは現代立憲主義)は~という性質を持っている」とその属性を述べるものの、「立憲主義とは何か」という肝心の概念論・理念論に関しては慎重に口を閉ざしている。これは芦部の憲法論が英米圏で主流となっている「立憲主義」や「法の支配」の概念・理念理解とは実は無縁の古いドイツ系法学に依拠していることに原因がある。⇒芦部の後継者である高橋和之も同様。 (5) 中間 佐藤幸治 ※佐藤も芦部と同様に、「近代立憲主義」と「現代立憲主義」を対比して言及するものの、立憲主義そのものの概念・理念の説明はない。つまり芦部や佐藤の世代ではベースがまだドイツ系法学であったために、英米系の「立憲主義」「法の支配」といった概念・理念を英米圏の用法の通りに消化できていないのである。 ◇2.参考ページ 「立憲主義」理念のまとめページ 立憲主義とは何か ※以上で法価値全般に関わる事項の説明を終わり、憲法に特有の法価値に関する検討に移ります。 ◆3.憲法に特有の法価値論+法解釈論 - 整理図 ※サイズが合わない場合は こちら をクリック ◇1.参考ページ 「法の支配」と国民主権の関係 リベラル・デモクラシー、国民主権、法の支配 国民の権利・自由と人権の関係 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 芦部信喜・佐藤幸治・阪本昌成・中川八洋etc.の「国民主権論」比較と評価 政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 関連用語集 【用語集】主権論・国民主権等 ※このように、②法価値論(憲法の保障すべき価値は何か)の段階で、(1)左翼的スタンスによる理解と(2)保守的スタンスによる理解とが激しく対立するが、 寛容で自由な価値多元的な社会を保障するのは、二つの自由論の場合と同じく、(2)保守的スタンスによる理解の方である。 ※なお、ここで一つ留意事項として、上図には表記がないが、(1)(2)の他にもう一つ、(3)右翼的スタンスによる理解というものが想定可能である。この(3)右翼的スタンスは、(1)左翼的スタンスの場合と同じく全体主義的であって、寛容で自由な社会に相応しくない理解である。(この(3)右翼的スタンスと(2)保守的スタンスとの区別は、■4.-◆1.-◇2.の中段で図解する) ■4.そうした価値、理念・目的を如何に実現するか(法学的方法論) → 主として、形式憲法(憲法典)に関する議論領域 ◆1.現行憲法典の解釈論 ◇1.左翼的(全体主義的)解釈vs.保守的(自由主義的)解釈 ※■3.- ◆3.の 整理表下段(形式的憲法論の欄) を参照 ◇2.日本の代表的な憲法論 - 内容紹介・評価 日本の様々な憲法論を政治的スタンスに当て嵌めて概括すると下表のようになる。 ※サイズが画面に合わない場合は こちら をクリック願います。 政治的スタンス 代表的論者 ベースとなる思想家/思想 補足説明 詳細内容 (1) 極左 伊藤真など護憲論者 J.-J.ルソーの社会契約論からさらに、アトム的個人主義と集産主義の結合形態(=左翼的全体主義)※説明に接近 「人権」「平和」を過度に強調し絶対視する共産党・社民党・民主党左派系の法曹に多い憲法論でありイデオロギー色が濃く法理論というよりは左翼思想のプロパガンダである(左の全体主義) (2) 左翼 芦部信喜高橋和之 修正自然法論(法=主権者意思[命令]説に自然法を折衷)+J.-J.ルソーの社会契約論 宮沢俊義→芦部信喜と続く戦後日本の憲法学の最有力説であり通説※宮沢は有名なケルゼニアン(ケルゼン主義者)。芦部は自然法論者だが人権保障をア・プリオリ(先験的)な「根本規範」と位置づけており、その表面的な米国判例理論の紹介はポーズに過ぎず、実際には依然ケルゼン/ラートブルフ等ドイツ系法学の影響が強い よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) (3) リベラル左派 長谷部恭男 H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール説)を一部独自解釈※なお長谷部は社会契約論に依拠しているのか曖昧でハートの法概念論と辻褄が合うはずのハイエクの自由論は故意に無視している 近年の左派系憲法論(護憲論)をリードしている長谷部は芦部門下であるが、師のようなドイツ系法学パラダイムはもはや世界の憲法学の潮流からは通用しないことを認識しており、師の憲法論の中核である、①根本規範を頂点とした法段階説+②制憲権(憲法制定権力)説、を明確に否定して、英米系法学パラダイムへの接近を図っている。(※但しハートまでは受容しながらもハイエクを拒否している長谷部の憲法論は中途半端の誹りを免れず、これを一通り学んだ後は、より整合性のとれた阪本昌成の憲法論へと進むべきである) よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) (4) 中間 佐藤幸治 人格的自律権に限定して自然法を認める独自説+J.ロックの社会契約論 芦部説の次に有力な憲法論であり、芦部説よりも現実妥当性が高いので重宝されるが(佐藤は佐々木惣一から大石義雄へと続く京都学派憲法学の系統)、法理論としては妥協的でチグハグと呼ばざるを得ない 佐藤幸治『憲法 第三版』抜粋 (5) リベラル右派 阪本昌成、※ H.L.A.ハートの法概念論(法=社会的ルール説)+F.A.ハイエクの自由論 20世紀後半以降の分析哲学の発展を反映した英米法理論に基礎を置く憲法論であり、法理論としての完成度/説得力が最も高いが、日本では残念ながら非常に少数派 阪本昌成『憲法1 国制クラシック』 (6) 保守主義 中川八洋日本会議 E.コークの「法の支配」論+E.バークの国体論 日本会議・チャンネル桜系の憲法論も基本的にこちらに該当する。法理論というより「国民の常識」論であり、心情面からの説得力が高いが、(5)の法理論を一通り押えた上でこの立場を取らないと、いつの間にか(7)に堕する危険があるので注意。 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋 (7) 右翼・極右 いわゆる無効論者 ヘーゲルの法概念論・共同体論およびそれに類似した全体主義的論調 「伝統」「国体」などを過度に強調し絶対視して「右の全体主義」化した憲法論(左翼憲法論の裏返しであり、左翼からの転向者が嵌り易い。法理論というより右翼イデオロギーのプロパガンダ色が濃い) ※政治的スタンス5分類・8分類+円環図 -... ※サイズが合わない場合は こちら をクリック ⇒上図の詳しい説明は、政治の基礎知識、政治学の概念整理と、政治思想の対立軸 参照。 政治的スタンス毎の憲法論の違いは、①「人権」と②「国民主権」の捉え方に顕著に現れる。このうち、①「人権」に関しては、「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のためにを参照。政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価では、(2)~(6)の各々の政治的スタンスの代表的な②「国民主権」論を列記したのち、総括する。 ◆2.憲法典の改廃論 憲法典の改廃論 内容 参考ページ (1) 改憲論 ① 保守的改憲論 保守主義的・自由主義的な法価値(理念/目的)の、より確実な実現を目指す改憲論 中川八洋『国民の憲法改正』抜粋 ② 左翼的改憲論 左翼的・全体主義的な法価値(理念/目的)の、より確実な実現を目指す改憲論 ③ 中間的改憲論 それほど明確なポリシーがあるわけではない(=保守主義的とも左翼的とも言い難い)が、一応は憲法9条の改正など最低限の提言内容は持つ改憲論 (2) 護憲論 ① 左翼的護憲論1(芦部信喜説準拠) 「人権」「平和」理念を絶対視して、彼らがその理念を体現すると考える現行の憲法典の絶対的維持を訴える論。しかし、■2.で説明したように、芦部説などのベースとなっている法概念理解は実際には単なる左翼イデオロギーの刷り込みでしかなく「自由で寛容な価値多元的な社会を支える憲法構想」としては完全に破綻している。 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) ② 左翼的護憲論2(長谷部恭男説準拠) 自衛隊の存在などは「憲法の変遷」があった(=条文の変化はないが、その解釈が変化したことにより合憲となった)として現状追認する一方で、現行憲法典の条文自体には「世界平和の希求」「人権価値実現の目標プログラム」など将来に向けての積極的価値を認めて、改憲に反対する論 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) ③ いわゆる真正護憲論(新無効論) この論の当否についてはネットなどで各自チェックするのが望ましい。一つ指摘事項を書くとすれば、この論のベースとなる法概念理解は、実は芦部信喜に代表される①左翼的護憲論1の法段階説(根本規範・自然法論などを強調するドイツ法学系の法概念理解)と同じ(=左翼的護憲論が「人権」「平和」を絶対視するところを、この論では彼らの考える「国体」を絶対視している、という違いがあるだけ)であり、①左翼的護憲論1と同じく、現代の法学パラダイムから全く落伍した時代遅れの論である、ということである。そのほか、この論には法的議論として様々な無理があり、 一定の法学知識のある層からは全く相手にされていない が、一般向けのプロパガンダとしては中々人気のある論となっている。 国体法(不文憲法)と憲法典(成文憲法) (3) 破棄論 ① 占領憲法失効・破棄論(菅原裕説が代表的) 主権回復(1952.4.28)直後には一定の説得力と賛同者をもっていた論であったが、現在では最早現実妥当性がない無責任な論である。1950年代前半迄であれば、現行憲法を破棄・失効させ明治憲法を復活させてそのまま運用することは何とかギリギリで可能だったかも知れないが、戦後日本社会の様相を反映した複雑・多様な法制度が整備された現在では、代替案も示せずに「現行憲法を破棄・失効せよ」とだけ強弁するだけでは済まされない。 ◆3.憲法典改正案 ◇1.現在提案されている種々の改憲案 ① 中川八洋草案 保守的改憲案の代表例 ② 日本会議の提言 保守的改憲案の代表例 ③ 産経新聞案(2013年) 「国民の憲法」要綱 ④ 読売新聞案(2004年) 読売新聞社・憲法改正2004年試案 ⑤ 自民党案(2012年) 現行憲法-自民党草案-中川草案(対照表) ⑥ 国立国会図書館編・改憲案一覧(2005年) 主な日本国憲法改正試案及び提言 ◇2.日本国憲法の構成と、保守的スタンスから見た改正の要否 憲法典の構成 保守的スタンスから見た改正の要否、改正内容 前文 抜本的な書換が必要 自虐的文言・空想的国際協調主義などの全面的排除 憲法の基本理念や解釈基準を明記する部分だが、現状は占領軍のポジション・トークに過ぎない部分が目立ち、抜本的な書換が必要である。 本文 (1) 固有規定1 1 第一章(天皇) 要検討 具体的な改正内容は慎重な検討を要する 国の在り方や国政の基本方針を明記する部分だが、文理解釈のままでは実質憲法(国制)とズレが生じるために、現状では相当に苦しい目的論的解釈が必要となっている箇所が多く、大幅な書換が必要である。 2 第ニ章(戦争の放棄) 抜本的な書換が必要 正当な戦力の保持・行使の明記etc. (2) 権利章典 1 第三章(国民の権利及び義務) 小規模な修正 普遍的人権ではなく国民の自由・権利の保障etc. 規定内容は実はかなり優秀であり、現在の基本線を外した修正は不要と思われる。 (3) 統治機構 1 第四章(国会) 小規模な修正 参議院の在り方etc. 規定内容は実はかなり優秀であり、現在の基本線を外した修正は不要と思われる。 2 第五章(内閣) 内閣権限の強化、国家安全保障の不備対応etc. 3 第六章(司法) 国民審査制度の不備対応etc. 4 第七章(財政) 5 第八章(地方自治) (4) 固有規定2 1 第九章(改正) 要検討 96条の2/3条項については賛否両論あり 要検討。 2 第十章(最高法規) 中規模の修正 人権の過度の強調の排除、最高法規性の定義再検討etc. (5) 経過規定 1 第十一章(補則) - 新たな経過規定が必要 本文ではなく附則とするのが合理的である。 ◇3.改憲案の具体例(自民党・憲法改正草案(2012年版)+中川八洋草案) 1 自民党 憲法改正草案(2012年版) (※中川八洋『 国民の憲法改正 』の指摘事項を付記) 現行憲法-自民党草案-中川草案(対照表) を参照 ■5.ご意見、情報提供 ページ内容向上のためのご意見・情報提供を歓迎します。 ↓これまでの全コメントを表示する場合はここをクリック +... 保守主義的な憲法論・参考サイト http //blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/aa74d73e62cc74859dbc4e4a1a3e1f83 -- 名無しさん (2013-08-04 15 44 52) 憲法は全文変えていいよ。大日本帝国憲法を再発行で。左翼は韓国と中国に強制送還で。 - 匿名 2016-11-23 03 40 17 以下は最新コメント表示 保守主義的な憲法論・参考サイト http //blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/aa74d73e62cc74859dbc4e4a1a3e1f83 -- 名無しさん (2013-08-04 15 44 52) 憲法は全文変えていいよ。大日本帝国憲法を再発行で。左翼は韓国と中国に強制送還で。 - 匿名 2016-11-23 03 40 17 名前 ラジオボタン(各コメントの前についている○)をクリックすることで、そのコメントにレスできます。 ■左翼や売国奴を論破する!セットで読む政治理論・解説ページ 政治の基礎知識 政治学の概念整理と、政治思想の対立軸 政治思想(用語集) リベラル・デモクラシー、国民主権、法の支配 デモクラシーと衆愚制 ~ 「民主主義」信仰を打ち破る ※別題「デモクラシーの真実」 リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜 ※別題「リベラリズムの真実」 保守主義とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ ナショナリズムとは何か ケインズvs.ハイエクから考える経済政策 国家解体思想(世界政府・地球市民)の正体 左派・左翼とは何か 右派・右翼とは何か 中間派に何を含めるか 「個人主義」と「集産主義」 ~ ハイエク『隷従への道』読解の手引き 最速!理論派保守☆養成プログラム 「皇国史観」と国体論~日本の保守思想を考える 日本主義とは何か ~ 日本型保守主義とナショナリズムの関係を考える 右翼・左翼の歴史 靖國神社と英霊の御心 マルクス主義と天皇制ファシズム論 丸山眞男「天皇制ファシズム論」、村上重良「国家神道論」の検証 国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書) 国体とは何か② ~ その他の論点 国体法(不文憲法)と憲法典(成文憲法) 歴史問題の基礎知識 戦後レジームの正体 「法の支配(rule of law)」とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ 立憲主義とは何か ※概念/理念定義、諸説紹介 まとめ 「正義」とは何か ~ 法価値論まとめ+「法の支配」との関係 正統性とは何か ~ legitimacy ・ orthodoxy の区別と、憲法の正統性問題 自然法と人権思想の関係、国体法との区別 「国民の権利・自由」と「人権」の区別 ~ 人権イデオロギー打破のために 日本国憲法改正問題(上級編) ※別題「憲法問題の基礎知識」 学者別《憲法理論-比較表》 政治的スタンス毎の「国民主権」論比較・評価 よくわかる現代左翼の憲法論Ⅰ(芦部信喜・撃墜編) よくわかる現代左翼の憲法論Ⅱ(長谷部恭男・追討編) ブログランキング応援クリックをお願いいたします(一日一回有効)。 人気ブログランキングへ
https://w.atwiki.jp/highspeedrailway/pages/316.html
東京新都心高速0700系 0700系(ぜろななひゃくけい)は東京新都心高速の通勤型電車。 1987年より東急車輛製造にて製造された。 imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (test0700b.png) 0700系 概要 東京新都心高速としては初のボルスタレス台車を採用したが、将来的なスピードアップを想定しヨーダンパを装備した。 また、今までミッドナイトブルー単色だった腰部帯を試験的に2色とし、これは後続の4000系などに引き継がれた。 見た目こそ当時流行の軽量ステンレス車体であったが、主制御器は私鉄においては普及しつつあったVVVFインバータ制御に対し旧態依然とした界磁チョッパ制御で、行き先表示器も幕式を採用するなど保守的なイメージを持たせる車両であった。 更新工事 主制御装置を東洋電機製IGBT-VVVFインバータ制御に変更、スカートを強化品へ交換、前照灯をHID・尾灯をLED化、標識灯のLED化と窓上への移設、行先・種別表示器のフルカラーLED化、窓ガラスを熱線吸収・UVカットグリーンガラスへ交換、一部ベンチレーターの撤去・埋込、内装の大幅リニューアル等が施された。 0700系 更新車 更新車は新都心線の新系列車と同様にチェリーピンクの帯に変更されている。
https://w.atwiki.jp/tiscampaign/pages/320.html
ヨアキム・デュヴァル 性別:男 年齢:24 職業:葬儀屋→会計士 特徴+:魔法の素質4Lv、一意専心、常識、商売上手 -:やせっぽち、広場恐怖症、けちんぼ、遵法精神、ワーカホリック、足手まとい:兄妹 癖:ロマン嫌い、保守的、誇り高い 通称:ネクラマンサー 外見:黒髪黒目。痩せ気味の体躯に目の下の隈と目元までかかる前髪が陰気な印象を与える青年。黒い喪服風の制服を着用。 設定 魔術の名門、デュヴァル家の次男にしてSICの会計。 幼少の時より基礎魔術(消費1で使える多系統の魔術)を仕込まれ、学院では需要と供給のバランスを考え死霊系統を選択。 その後、アンダー・グレイブヤード社に18で就職し、葬儀屋として活躍するも終戦後の需要のバランス上、社は解散。 神機局に再就職先を探しに来た所を社長に拾われた。 労働中毒且つ商売上手で節約に目が無い。細かな支出を抑え諸経費を安く上げる事で互いに得をする商談をするのが理想。 法律には厳しいが、逆の意味で法律の抜け道を探し利益を生もうとする強かな面もある。 魔術面でも多系統の魔術を操るが、得意とする死霊魔術には有効な魔術が殆ど無いのが悩みの種である。 幼い頃に親の魔術の失敗で無限に続く(ループする)白い異空間に1日閉じ込められた事があり、今もって広場恐怖症である。 座右の銘は『勤倹力行』
https://w.atwiki.jp/poppomemo/pages/180.html
実装日 戦争 決戦 公式設定 非公式設定 登場国家 リ・ヴァル帝国 担当MS:長野聖夜 関連タグ:ロスト戦記 専制主義国家として近年クロムキャバリアで大きく力を伸ばしてきた新興国家。 かつてリィズ王国を滅ぼした。 大陸南部にある。 皇帝アロンダイト・フォン・アークライトの目的は「『殲禍炎剣』からの世界の解放」。 アロンダイトはリ・ヴァル地方の小国家を統一し、自ら皇帝となった。 アロンダイトは統治者として有能。 帝国に祖国を滅ぼされた人達が結成した『ルミナス・レジスタンス』が帝国への抗戦を続けている。 リィズ王国 担当MS:長野聖夜 関連タグ:ロスト戦記 かつてクロムキャバリアに存在した国家。 クロミキャバリアの大規模な戦乱が起きる前(100年ほど前)から存在していた。 リ・ヴァル帝国に滅ぼされたが、第一王女のリズ・レインが生き延びていた。 第三者からは「矢や保守的な傾向が強い王国」との評価。 『ルミナス・レジスタンス』のパイロット、カイトはリズの幼馴染で近衛兵。 跡地にあったプラントがオブリビオン化し、猟兵に破壊された。 ロスト共和国と交流があり、カイトにオブリビオンマシンを託したのはロスト共和国の武器商人。 ロスト共和国 担当MS:長野聖夜 関連タグ:ロスト戦記 大陸北部にある国家。 国力で言えばリ・ヴァル帝国をも超える。 かつてリィズ王国と交流があった。 考察 今後の予想
https://w.atwiki.jp/animesdvd/pages/420.html
OCN新月火ドラマ「切ないロマンス DVD」(脚本:キム・ハナ、キム・ヨンユン、演出:カン・チョル) 側は、「4月17日午後9時に第1話の放送が確定し、視聴者のもとを訪れる」と明かした。 「じれったいロマンス」は、ワンナイトスタンドで出会った2人の男女が3年後に偶然ワーカー・ホリックの気難しい本部長と、彼の会社の社員食堂の新人栄養士として再会して繰り広げられるストーリーを描いたラブコメディだ。 ソンフンは同作で業界1位グループのオーナーの一人息子でモデル顔負けのビジュアルを持つチャ・ジヌク役を務める。お父さんが変 DVDチャ・ジヌクは軽い一回きりの恋愛だけを求めるが、イ・ユミ(ジウン) に出会ってどんどん変わっていく人物だ。 ジウンは愛する人のために料理を作ったことのない、25年の人生で一度も恋愛をしたことのない新米栄養士イ・ユミ役に扮する。イ・ユミは明るい性格だが恋愛においては保守的な性格の持ち主だ。 様々なドラマでキャラクターに溶け込み、切ないロマンス DVD幅広い演技力を届けてラブコメのキングに急浮上したソンフンと、明るく愛らしい魅力を持つ演技ドル(演技のできるアイドル) ジウンのカップルとしての共演はどんなものになるか、関心が集まっている。 OCN側は「今後、ウェブ漫画、カノジョは嘘を愛しすぎてる DVDウェブ小説など様々な形で事前に検証されたコンテンツの映像化を強化していく予定だ」と明かした。