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2021年1月16日 出題者:かりんぱにぱに タイトル:「会いたくて会いたくて」 【問題】 タカフミは家のトイレに行ったら震えが止まらなくなった。 一体なぜ? 【解説】 + ... 頻尿のタカフミは旅行から家に帰るとトイレに直行した。 間に合って安心したタカフミだが、久しぶりに使う家の便座なのに暖かいことに気づいてしまった… もしかして誰かが直前まで使っていた? そう考え、恐怖に震えが止まらなくなった。 ストーカーまいちゃん「おかえり、会いたかったよタカフミ♡」 《ブラック》 配信日に戻る 前の問題 次の問題
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会いたくて-おまけ- 【投稿日 2006/01/21】 カテゴリー-現視研の日常 翌日。昼下がりの部室には、笹原と荻上、それに大野、斑目の姿があった。 皆、思い思いに自分の時間を過ごしている。そんなまったりとした空気の中、突然勢いよくドアが開かれた。 全員の視線が向けられた先にいたのは、溢れんばかりの笑顔で挨拶する春日部であった。 「ういーす!!」 心なしか肌がつやつやとしている。そんな春日部の昨日までとはまるで違うテンションと上機嫌ぶりに押されてか、 みんなそれぞれ気圧されたようにぱらぱらと挨拶を返す。 そういった空気を気にした風もなく、当の春日部はつかつかと部室内に入ると笹原へ歩み寄り、 その肩をばんばんと叩きながら喜色満面に言った。 「や! ササヤン昨日はどうもありがとね!」 「……え? あ、ああ。うん」 春日部と共に視線の集中を浴びて、困った笑いを浮かべながらとりあえず相槌を打ちつつ、 笹原は「昨日?」と記憶を掘り返していた。 昨日は荻上の機嫌を直してもらうためにかなりの労力を割いたので、他の記憶がいまいち霞んでいたのだ。 (そう言えば、部室に来る前に春日部さんと話をしたっけ) ようやく思い出したその時の会話の内容と今の春日部の様子を照合し、脳内で一定の結論を導き出す。 「…何か、うまくいったみたいだね。良かった」 「おかげさまでね。ばっちし!」 にっひっひ、と笑いながらブイサインを作る。周りの者は一体何の話かと全くついていけていない。 「お礼に今度ご飯でも奢るから」 「別に気にしなくていいのに」 苦笑しながら笹原が答える。隣から感じる荻上の視線がちくちく痛い。 (というか気のせいじゃなくて何か本当に痛い。特に荻上さんがいる側の右太ももが痛い って痛い痛い痛たたたたたたたってめちゃくちゃツマまれてるーッ!?) よく見ると、表情一つ変えずに荻上が机の下で笹原の右足をぎりぎりとつまみ上げていた。ガスコンロであれば火力が最大になるくらい捻り込んでいる。 「お、荻上さん?」 「何デスカ? 笹原さん」 冷や汗をたらしながら問う笹原に、微かな笑顔で応える荻上。目は少しも笑っていない。 (ああ、愛が痛い…) そんな二人の様子には誰も気付いた風もなく。 「で、何があったんですか? 咲さん」 みんなの疑問を代表してと言うか、我慢出来ずに大野が訊ねると、春日部は笑いながら手を振って言った。 「ああ、そんな大した事じゃないよ。ただ、昨日高坂が会いに来てくれたってだけ」 何故か斑目の眉がぴくりと動いた。そして荻上の手から笹原の足が解放された。 バレないように小さく息を吐く笹原。 大野はそれで合点がいったようで、嬉しそうに重ねて訊ねる。 「わ、良かったですね! それで今日はご機嫌なんですね。 ……あ、でも忙しいんじゃなかったんですか? 高坂さん」 「うん、何かマスターアップ? がどうとかで、締め切りが近くてかなりヤバいってさ。 すごく疲れた顔してた」 ははは、と笑う春日部の顔に昨日までの悲壮感は無い。 忙しい中、無理をしてでも自分に会いに来てくれたということで、また一つ関係が深まったのだろう。 聞いている大野もそれを感じてか、自分のことように嬉しそうな顔をしている。 そんな中、斑目と笹原は春日部の言葉から他のみんなと全く違うことを考えていた。 (……マスターアップ? プシュケでそろそろマスターアップと言えばアレか?) (高坂君、ひょっとしてアレを手がけてるのかな? すごい) どうやら二人とも新作のチェックはかかしていないようだ。知り合いが関わっているとなれば尚のことだろう。 そんな二人の妄想を余所に、大野と春日部はまだ話を続けていた。 元気になったお祝いに一緒にコスプレをしましょうとどさくさ紛れに持ちかける大野を、 何とか誤魔化そうとしている春日部。 荻上は自分に火の粉が降りかからないよう、出来るだけ関わらないよう努めている。 旗色の悪さを感じ取ってか、春日部はわざとらしく腕時計に目をやると、大きく声を上げた。 「あ! 私、そろそろ行かなきゃ」 「えー、今来たばかりじゃないですか。せっかく一緒にコスプレ出来ると思ったのに」 残念そうに俯く大野の肩をぽんと一つ叩くと、春日部は少し困ったように笑って言った。 「ほら、コーサカも頑張ってることだし、私も頑張らなきゃってね。こっちもいよいよ大詰めだし」 そう言われては大野も引き下がるしかない。 「でも卒業する時は絶対一緒にコスプレしてください」と真剣に見つめる大野に、春日部は苦笑しながら頷いた。 心の中で卒業までに何とか誤魔化す方法を考えないとな、などと考えつつ。 「何かばたばたしちゃって悪いね。それじゃ、また」 閉じられるドア。騒々しかった分だけ、それが無くなると反動で静けさを生む。 皆、何となく小さく息をついた。 「さて、俺もそろそろ戻るかな」 コンビニ弁当の残骸を片付けながら斑目が立ち上がると、軽く挨拶を交わして部室を後にする。 その横顔は相変わらず少し寂しげであった。 (ここに来るのもそろそろ潮時かな) ふとそんな思いが頭をよぎる。久しぶりに見た春日部の笑顔に、何となく胸の奥がざわついた。 何故笹原が礼を言われたのかも気になった。漠然と感じる疎外感。 (いかんね、どーも) 頭を振って気持ちを切り替える。今日は帰りにアキバへ寄ろうと決意する斑目であった。 「それじゃ、私も田中さんと待ち合わせがあるんでそろそろ」 そう言って大野が席を立つ。 「……お二人はどうされるんですか?」 思い出したように言いながら笹原と荻上の方をちらりと見やる。 その表情は、暖かく見守ってと言うか、生暖かく見定めていると言うような感じだ。 どう答えたものかと荻上が言葉を探していると、笹原が笑いながら答えた。 「あー、うん。もう少しここにいるよ。今日は特に急ぎの用事もないしね」 大野は何となく頷くと、「それでは、ごゆっくり」と言って立ち去った。 去り際の笑顔が何となく含みを感じさせる辺り、さすがは大野と言うべきか。 そして部室には笹原と荻上の二人が残された。 窓から差し込む光はまだ色を帯びず、昼と夕の間であることを示す熱を感じさせた。 笹原は伏せてあった本を手に取り、荻上は閉じていたノートを開いて再び絵を描き始める。 何となくまだ二人きりになると思うように会話が進まない。 お互いを意識するぎごちない空気が漂う中、共に会話の糸口を探す。 先に口を開いたのは荻上の方だった。 「……あ、あのっ」 「ん?」 笹原が本から荻上へ視線を移すと、荻上はノートへ顔を向けたまま手を止めて言葉を続けた。 「さっきの、その、春日部先輩の事なんですけど……」 「ああ」 その言葉だけで荻上が何を聞きたいのか伝わっていた。 いつもの癖でつい腕組みをして笹原は答えた。 「昨日さ、ここに来る前にばったり出くわしてね。ちょっと話し込んだんだ」 「はあ」 荻上の顔が笹原に向けられる。 「高坂君としばらく会ってないって言うから、それじゃ会いたいってメールしてみたらって言っただけなんだけどね。 やっぱり相手に気を遣って遠慮してたみたいで」 「遠慮……」 「ま、俺みたいなのが春日部さんにそんな偉そうなこと言うのもおかしな話だけど、 結果として上手くいったみたいで本当に良かったよ」 そう言って軽く笑った。荻上はその隣で何やら考え込んでいる。 その様子に気付いた笹原は気遣うように声を掛けた。 「荻上さん、どうかした?」 「あ、いえ」 慌ててハッと顔を上げると、笹原が心配そうに見つめていた。その目を見て荻上は少し安堵する。 そして一瞬躊躇った後、荻上は笹原の話を聞いて胸に浮かんだ疑問を口にした。 「……その、やっぱり仕事に就いてしまうと、時間が思うように取れなくなったり、 ……するんですよね」 言葉を形にするたびに、荻上の表情が少しずつ翳りを帯びていく。 まるで不安が形になって、それに蝕まれるように。 「忙しくて、会いたくても会えなくて、だんだん気持ちも擦れ違っていって、そして…」 気が付けば荻上の目には涙が浮かんでいた。 我慢しようとすればするほどそれは勢いを増し、膝の上で握りしめた手の甲へとぽつぽつ落ちていく。 「……私たちも、そうなっちゃうんでしょうか」 かすれ声で呟く荻上。その姿に笹原は狼狽していた。 いくら何度か経験した場面と言えども、やはり目の前で泣かれて慌てるなと言うほうが無理というものだ。 (ど、どうしよう。何か言わなきゃ。何か) 頭を巡らせるものの、こういう時に限って全く何も浮かばない。何とかしなければと思うほど気持ちだけが空回りする。 このまま何も出来なければ、荻上は放っておかれていることになる。 (それだけは避けないと) 必死に考えた挙げ句、何も思い浮かばなかった笹原は、黙ってそっと荻上の背を撫でた。 ゆっくりと、繰り返し。 俯いているので表情は分からないが、やがて荻上の肩の震えは次第に治まっていった。 「その……」 笹原の声に、荻上の体がぴくりと反応する。 「上手く言えないけど、俺はこれからもずっと荻上さんと一緒にいたいと思うし、 そのために出来るだけのことをしたいと思ってる」 そのまま耳まで真っ赤になりながら、背中に回した手に力を込め、荻上を胸に抱き寄せた。 「確かにまだ先のことは分からないけど、でも、分からないからこそずっと続いていくことだってあるわけで」 まるで自分に言い聞かせるように、必死に言葉を綴る。 しかし、荻上を抱き寄せたことで気力を使い果たしたのか、頭の中はオーバーヒートし、 段々自分が何を言っているのか分からなくなってきていた。 「だっ、だから、その…。えーと、何て言えばいいんだろ。と、とにかく!」 混乱した頭で最善の言葉を考えると、それをそのまま口にした。 「これからも、ずっと俺と一緒にいてくださいっ!!!!」 言い終えると同時に深く息を吐く。そして静寂。荻上は笹原の腕の中で俯いたまま何も言わない。 「……荻上さん?」 不安になった笹原が恐る恐る声を掛けると、荻上は小さく肩を振るわせた後「ぷっ」と吹き出した。 そのまま体を起こすと、くすくすと笑いながら目元の涙を拭う。 「え、えーと?」 「すみません、何か最後の笹原さんの言葉が妙におかしくて」 そう言ってまた笑った。笹原は自分が必死の思いで伝えた言葉がまるっきり効果無しだったことより、 ともかく荻上の笑顔が見られたことで、どっと脱力した。同時に荻上が解放される。 「笹原さん? 大丈夫ですか?」 「あー……、いや。大丈夫。ちょっと気が抜けただけ」 ははは、と乾いた笑いを浮かべて返す。 荻上はようやく落ち着いたのか、椅子に座り直すと笹原を見つめて言った。 「笑ったりしてすみません。でも、笹原さんが言ってくれたこと、すごく嬉しかったです」 真っ直ぐに向けられた視線と言葉を受けて、笹原は再び赤くなった。照れ隠しに何とか笑おうとしながら答える。 「あ、は、はは。そ、そう? いや、それなら良かった。本当に」 「はい」 真剣な面持ちで頷く荻上。そしてふと会話が途切れ、お互いに視線を外す切っ掛けが掴めないまま見つめ合う。 今までの会話の流れの所為か、先程まで体に触れていた所為か、何やらあらぬ考えが浮かんできてしまって狼狽する二人。 (え? え? 何? この雰囲気。イケってこと?) (笹原さん、何か、目が真剣だぁ…) 黙り込んでいるためか、心臓の音がやたら大きく聞こえる。喉が張り付いて声が出ない。 何を話せばいいかも思いつかない。そうして視線を絡ませたまま、時計の秒針だけが音を立てて回り続ける。 「お、荻上さん……」 「……あ」 二人の距離が次第に近づく。瞼を振るわせる荻上の肩をそっと手で包み、笹原が顔を寄せた。 受け入れるように目を閉じる荻上。夕刻間際の光が二人を照らす。 その影がやがて一つに重なろうとしたその時。 「こーにょにょーちわ~~」 音を立ててドアが開かれると同時に現れる芸人朽木。正に「空気を読んだ」仕事と言えよう。 次の瞬間の笹原と荻上の行動は瞬速だった。まず、ドアノブが回される音がした時点で、 二人息を合わせたように机の方へ向き直る。 そしてドアが開かれようとした時にはすでに近づいていた椅子も微妙な距離を取り戻していた。ここまででおよそ2秒。 朽木が姿を現した時、笹原と荻上はそれぞれまるで何もなかったかのように本を読み、絵を描いていた。 「や、やぁ、朽木君」 「……こんちは」 それぞれ挨拶を返す。慌てたためか、若干呼吸が乱れているのが何とも怪しさ抜群だ。 しかし、朽木はまるでそんなことには気付かず、鼻歌など歌いながらそのままいつもの席へ腰掛ける。 こっそりと安堵のため息をつく二人。 そして何故かその様子をぎりぎりと歯ぎしりしながら児文研の部室で双眼鏡越しに見つめている大野。 今にも悔し泣きせんばかりの表情で、口元のハンカチを噛みちぎらんとしている。 「くぅ~~~ちぃぃ~~~~きぃぃぃぃぃぃ~~~~~~ッ!!!!!!!」 そのあまりにも禍々しいオーラに、児文研の人達はおろか、無理矢理連れて来られた田中まで声を掛けられずにいる。 児文研の人達に断りを入れている田中の背中が物寂しい。 そしてまさか本当に生暖かく見つめられていたと言うか、覗かれていたとはつゆ知らず、 笹原と荻上の愛のメモリーは今日もこうして一日を終えるのでした。めでたしめでたし。
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【Gloln Jonedornに会いたくて】 クエスト発生者 Jonedorn Kilnkor(Irontoe Brigade) クエスト森の逆襲クリア後発生。 「どうやら君がいなかった間に、君が持っていたメモをGlolnが解読したようだ。彼のもとに行ってみるといいだろう」 「ここにある党(塔の誤字と思われます)のどこかにいるはずだ。詳しくは彼に聞いてくれ」 内容 ブッチャーブロック山脈の塔内にいるGloln Jonedorn(-386.81, 172.44, -232.29)と話す。 報酬 EXPのみ 名前 コメント
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あなたに会いたくて◆b8v2QbKrCM どうして―― 呼吸をするたびに、口の端が赤く泡立つ。 ひゅう、ひゅう、と呼気の漏れる音がする。 肺が破れたのだろうか。 もしかしたら、気管が裂けたのかもしれない。 どうしてこうなってしまったんだろう―― 痛みが薄らいでいるのは幸いか。 それとも絶望から逃避できない不幸か。 所有者を死から遠ざける二つの力が、ナインの命を引き伸ばす。 どろどろになって燃え尽きかけた蝋燭が、ほんの数秒だけ燃え続けようとするように。 私は、ただ―― 失くした右手の切断面と、左胸の大きな穴から、致命的な量の血液が溢れている。 助かるはずがない。 生きていられるわけがない。 こうして思考できていること自体が、既に奇跡なのだ。 ただ―― ナインは感覚の喪失した四肢を動かして、頭の向きを僅かに変える。 リノリウムの地平の先には、もうひとつの赤い水たまり。 潰えようとするもうひとつの命。 潰えてしまったもうひとつのいのち。 あの優しい小鳥を―― その少女は、壁にもたれて座り込んでいる。 まるで木かげで休んでいるように。 まるで木もれ日でうたた寝をしているように。 たったひとつだけ、おかしなところがあるけれど。 小鳥を―― おなかから、赤くて黒いものが、顔をだしている。 びるのカベに入っていたてつのぼうが、赤くそまってかおをだしている。 うしろからフォークでさされたみたいに、3ぼんならんで。 ミコトのおなかは、やぶれていた。 助けたかっただけなのに―― ◇ ◇ ◇ 「魔王に挑む……無謀と知っての蛮勇か?」 大戦槍の柄が棄てられる。 がらん、という鈍い音が廊下に響いた。 「さぁ? どこの誰なのかしらね」 美琴はゼロから視線を逸らさず、次弾の発射準備を整える。 彼我の距離は十数メートル。 この距離からなら狙いを過つことはありえない。 しかしゼロは、ナインの右腕を足蹴にしたままで、悠然と美琴を見据えていた。 超電磁砲の威力を目の当たりにしながら、脅威を軽んじているのか。 それとも、対抗する術を既に見出してしまったとでもいうのか。 美琴の手元で大気が炸裂する。 音を置き去りに飛翔するコインの弾丸。 僅か百分の一秒のうちに距離を削り取り、ゼロの仮面を掠めて飛び去っていく。 「どうした。牽制では私を倒せないぞ」 ゼロは微動だにせず言い放った。 動かずとも当たらない――美琴が当ててこないと分かっていた、と態度が語っている。 美琴は内心で歯噛みした。 今の一撃でゼロとナインを引き離すつもりだったのだが、完全に見抜かれていたらしい。 考えてみれば当然のことだ。 ここで直撃させるつもりがあるのなら、初撃で槍を狙う意味がない。 ゼロ自身ではなく大戦槍を撃ち抜いた時点で、殺意のなさを白状しているも同然だ。 「次は当てるわよ」 「どうだかな」 デイパックから引き抜かれる白鞘の刀。 露わになる白刃に、美琴は思わず身構える。 振り上げられる和道一文字。 それと同時に、手首の返しで握りが逆手に変えられる。 「だが――意図は汲んでやろう」 「うぐっ……!」 真下へと叩き込まれた一突きが、あろうことかナインの手首を貫通する。 響き渡る苦悶の声。 美琴は思わず身を竦め、目を逸らした。 切っ先が前腕に通る二本の骨と関節の間の肉を貫き、床にまで突き刺さっていた。 これでは刀を抜かない限り逃れることができない。 まさしく磔である。 「アンタ……!」 「まずは貴様から排除する。異存はないな」 ゼロが一歩ずつ距離を詰める。 右足を庇って身構える美琴の前に、真紅が割って入った。 庭師の鋏を片手で把持し、鋭利な先端をゼロへと振り向ける。 「美琴……近付いてきたら……」 「分かってる……」 一歩、また一歩。 ゼロが悠然と接近する。 美琴と真紅はいつでも攻撃に転じられる態勢のまま、静かにタイミングを計っていた。 残された力は少ない。 どちらが勝利するにせよ、勝負は一瞬で終わるだろう。 十二メートル。 十一メートル。 十メートル。 爆ぜる。 ゼロの足が床を打った。 床材を粉々に粉砕する威力の反作用で爆発的に加速。 離脱など許しえない速度で間合いを塗り潰す。 「来たわっ!」 真紅が鋏を振るう。 薔薇の花弁が渦を巻き、一直線にゼロを迎え撃つ。 ここは直線の廊下だ。 赤き花弁から逃れる場所などありはしない。 ゼロが翻したマントに薔薇の奔流が直撃する。 飛び散る花弁の幕に阻まれ、ゼロはその速度を大きく減じた。 「そこっ!」 間髪入れず、美琴の腕がスパークする。 指に弾かれたコインが閃光の魔弾と化し、花弁の幕の中央を撃ち抜いた。 一瞬の間を置いて、衝撃波が花弁を吹き散らす。 「――なっ!」 真紅は思わず声を漏らした。 薔薇の花弁が散ったことで開けた視界には、あるべきものが存在しなかった。 「消えた!?」 いない。 ゼロがどこにもいない。 美琴は慌てて周囲を見渡すが、廊下のどこにもゼロの姿はない。 いかに薄暗闇に黒衣が紛れるとはいえ、完全に見失うなどありえないことだ。 しかも視覚のみならず、電磁波によってすら感知されなくなっている。 廊下から完全に消え失せた―― そうとしか捉えようのない事態であった。 「――そうだ、ナイン!」 美琴の思考が混乱から立ち直る。 何のために無茶な戦いを挑んだのか、危うく忘れてしまうところだった。 敵が姿を消した今のうちに助け出すべきに決まっている。 そう思い、美琴が駆け出した瞬間、ナインが叫んだ。 「逃げて! 早く!」 何を言っているんだ、と駆け寄ろうとして、不意に気が付く。 ナインは接近するゼロの後ろにいた。 ゼロが歩いてくるときも。 ゼロが突進した瞬間も。 ゼロが薔薇のベールに阻まれていた間も。 つまり目撃しているはずなのだ。 ゼロ消失の瞬間を。 背後で轟音が鳴り響く。 爆弾が炸裂したかのような衝撃と、冷たい爆風。 コンクリートの破片に晒されながら美琴は振り返り、目撃する。 外壁を突き破り、屋内への再侵入を果たしたゼロの姿を。 そして。 掬い上げるような拳に打ち据えられた真紅を。 「――真」 あまりにも軽過ぎる真紅の身体は、それこそ紙切れも同然に吹き飛んでいく。 中庭へ通じる窓に衝突し、砕く。 「紅――」 翻る黒衣。 鉄塊の如き腕が迫る。 声が喉から出るより遥かに速い。 美琴は瞬く間に顔面を鷲掴みにされ、勢いのままに床から引き剥がされる。 ――ゴッ 白いコンクリートの壁に、赤い飛沫が散った。 線の細い手足が跳ね、そして力なく落ちる。 砕かれたガラス片が時雨のように落ちる音がした。 壁伝いに、ず、と美琴の肉体が滑る。 かすれた絵筆で赤を塗ったような跡を残して、美琴はガラクタのように崩れ落ちた。 「……終わりだ」 ゼロは踵を返し、ナインへと歩み寄る。 あまりにも呆気ない結末である。 薔薇の壁に阻まれた瞬間、ゼロは即座に転移を発動させていた。 無論、あそこまで消耗した状態では、せいぜい一メートルか二メートルの移動しかできない。 しかし、病院の外壁を越えて屋外へ退避するには、それだけで十分であった。 ナインは依然と床に伏し、顔だけをこちらに向けている。 右腕は串刺しのままで、脱出を図った形跡すらない。 だが、その眼差しはゼロに向けられていなかった。 「――フン。しぶといものだ」 再度ゼロは振り返る。 一抹の驚きが混ざった、呆れ返ったような声色。 「まだ、終わってない……!」 薄暗闇に迸る雷光。 満身創痍で疲労困憊。 鮮血乱舞で頭蓋陥没。 それでもなお立ち上がる超電磁砲。 「終わりだ。その身体で何ができる」 ゼロは美琴に近付こうとすらしなかった。 むしろ、接近する必要性を感じていないというのが正確だろうか。 それもそのはずだ。 美琴は明らかに立っているだけで精一杯なのだから。 「……アンタを、倒すことなら……できるわ……」 強がりを言いながら足を踏み出し、すぐに転びかける。 後頭部から流れた血が後ろ髪を染め、首筋を濡らして服を血まみれにしていく。 足は容易くもつれ、ゼロが破壊した壁の淵に手を突いて、どうにか転倒だけは免れる。 誰が見ても戦闘不能。 いつ昏倒してもおかしくない。 それでも少女は、漆黒の魔王をまっすぐ見据えていた。 「なんで……」 消え入りそうな声でナインが呟く。 美琴は口の端を上げ――血まみれで分かりにくいけれど――微笑んでみせた。 「……逃げないって、決めたから」 「だが結末は変わらん」 漆黒の魔王が迫り来る。 美琴は壁に穿たれた穴の縁にもたれたまま、一歩も動こうとしない。 そもそも動くような体力すら残されていなかった。 眼前に迫ったゼロの仮面を、美琴は毅然と仰ぎ見た。 「満身創痍の身体を引きずって、どこまで無様に足掻くというのだ」 「どこまで? 決まってるじゃない……」 緩く握られた拳が、ゼロの胸を軽く叩く。 それほどまでに、両者の距離は近付いていた。 「最後までよ」 魔王の輪郭が残像と化す。 間近から振り抜かれた拳が美琴の脇腹に突き刺さる。 最下部の肋骨を砕き、臓器を押し潰し、文字通り体内へめり込んでいく。 拳が振り抜かれると同時に真横へ吹き飛び、水切り石のように地面を跳ねて、駐車場を横切ってようやく停止した。 下手をすれば三度は死にうる打撃を与えてなお、ゼロは追撃を緩めようとはしない。 アスファルトに残った血の道を踏み締め、生死すら明瞭としない標的へ接敵する。 「ならば最期を与えてやろう」 ぴくりと、美琴の腕が動く。 先ほどの一撃で脊柱まで痛めたか。 上体は起き上がろうともがいているようだが、脚は全く動いていない。 時折、電流の閃光が迸り、周囲の暗闇が淡く照らされる。 「理解出来たか。魔王に楯突くことが如何に愚かなことか」 「これくらい……何よ……」 放出された電流が駐車場を囲むフェンスにも伝播する。 放電の音にかき消されるほどにか細い声で、美琴は喋り続けた。 誰に聞かせるでもない、自分自身へ向けた言葉を。 「アイツはもっと無茶して……痛い思いして……」 腕を突き、少しずつ身を起こしていく。 額の周りで幾筋もの電流が集い、弾けて消える。 「それでも止めなかった馬鹿なんだから……」 魔王の足が、起き上がらんとした美琴の胸を踏みつける。 無造作な行為でありながら、それだけで胸骨が悲鳴を上げた。 このまま力を入れて踏み抜けば、肺と心臓が破壊されて死に至るだろう。 呼吸すら苦痛でしかない地獄の中で、美琴は叫ぶように言い放った。 「だから……私が諦めるわけにはいかないのよ!」 「――むっ!」 電流が迸り、フェンスの根元が次々と千切れていく。 幅二十メートルに及ぶ鉄製のフェンスが、さながら巨大な投網の如くゼロへ襲い掛かる。 ゼロは美琴への攻撃を止め、後方へ飛び退いた。 「この程度で私を捕らえ――」 魔王の視界の外で、美琴は頭上を飛ぶフェンスに指を掛けた。 ぐんっ、と美琴の身体が跳ね起きる。 捕獲など端から思慮の外。 次の一撃こそが本命――! 「あああああああああああああああっ!!」 炸裂する閃光。 渾身の電撃が地を揺るがせ、夜の闇を打ち払う。 灼熱したアスファルトは瞬く間に融沸し、導体という導体を電流が駆け巡る。 光と音の衝撃は遥か彼方にまで押し寄せて、静寂を根こそぎ薙ぎ払う。 眩い光は病院の内部にまで及び、ナインをも飲み込んでいく。 「う……っ!」 やがて放電は終わり、間隙に夜が染み込んでくる。 ナインは眩しさのあまり瞑っていた目を開き、美琴の姿を探した。 「美琴!」 美琴は雷撃の爆心地よりも手前で、人形のような手足を投げ出して倒れ伏していた。 フェンスに引きずられて、ここまで転がってきたのだろう。 負った傷は数えることすらままならない。 あまりにも痛々しくて、ナインは目を逸らしそうになってしまう。 けれど、それはできない。 命を掛けてあの魔王に打ち勝った彼女から、視線を外すことなど―― 「――貴様の力を見誤っていたようだ――」 してはいけない、声がした。 見上げれば、そこには影。 夜景を遮る巨大な影。 どうして思い至らなかったのだろう。 ナナリーとネモがマークネモを駆るのなら。 ルルーシュ・ランペルージにも同じことができるのだと。 その名は、ガウェイン。 「そん、な……どうして……」 機械仕掛けの巨人の肩に乗り、魔王ゼロは下界を睥睨する。 雷撃からゼロを庇ったと思しきガウェインは、既に大破寸前にまで追い込まれていた。 一方、ゼロ自身が受けた損害は極めて軽微。 仮面には亀裂が入り、外套は無残に焼けているが、肉体の消耗は殆ど見られない。 絶望――絶対の、終局。 それなのに。 「どうして……立つの……?」 それなのに、美琴は立ち上がっていた。 なぜ立つのか分からない。 どうして立てるのか分からない。 肉体の機能は殆ど潰えているだろう。 確かなことがあるとすれば。 彼女は明確な意志を持って立ち上がったということだけだ。 「私は貴女を利用しようとした……。 殺そうともした……それなのに、どうして!」 「……どうして、こんな悪党を助けるの……って……?」 美琴は、あははと笑った。 もしかしたら単なる苦悶の声だったのかもしれない。 けれどナインには、明るい笑い声にしか聞こえなかった。 「それでも……死なせたくないって言うお人好しが……いるから、かな……」 かしゃん、と小さな音がした。 廊下の奥から、小さな影が歩いてくる。 暗がりの中、小さな瞳が煌いている。 「ごめんなさい。遅くなってしまったわ」 謝罪の声が廊下に響く。 真紅が歩を進めるたびに、かしゃん、と音がする。 砕けた身体の破片が音を出す。 赤い衣装の上からでも、真紅の身体の破損は容易に見て取れた。 そして真紅は、美琴の横で寄り添うように立ち止まる。 「ラッドに会ったわ……。あすかは最期まで、あの子らしく生きていたそうよ」 「……そっか」 ゼロがガウェインの肩から飛び降りる。 今まで以上の殺意を滾らせ――しかしそれを美琴達には向けていない。 それどころか、半死半生の二人など眼中にないとばかりに腕を振るった。 「ラッド・ルッソか。よもや仕留め損なっていたとはな。 どけ――貴様らと遊んでいる場合ではなくなった」 「……どかない」 美琴はポケットから一枚のコインを取り出し、ゼロへ向けた。 真紅も鋏を構え、戦意を表す。 「勝ち目はないぞ」 ゼロの言葉は恐らく正しい。 今の美琴には電撃を放つ余力すらなく、コインを撃ち出せるかどうかも怪しい。 真紅は吹き飛ばされたときにデイパックを失い、残された武器は歪んだ鋏と砕けかけた身体のみ。 庭師の鋏をゼロへ突きつけ、真紅は凛と黒き仮面を見据えた。 「貴方も大切な人を失ったのでしょう」 「黙れ……」 ゼロは歩みを止めない。 「今の貴方は、その人に胸を張って会いにいけるの?」 「……黙れ……」 仮面を鷲掴みに、砕かんばかりの力を込める。 「私達は出来るわ。最後まで私らしく生きていたと!」 「黙れと言っているッ!」 魔王が駆ける。 真紅が翔ける。 刹那の交錯の果て、白い破片が粉々に散った。 奔り抜ける漆黒の輪郭。 繰り出される超電磁砲。 音速にも満たない微弱な狙撃は、掠めることすらなく虚空を貫く。 拳の砲弾が美琴を打ち据える。 砕かれた壁の断面へ叩きつけられ、捻じ切れた鉄筋が背中へ突き刺さる。 三十センチも突き出した三本の鉄筋が、肉を穿ち、臓器を破り、腹部を裂いて貫通する。 鮮血が間欠泉のように噴き出し、すぐに収まっていく。 戦闘の終結。 完全なる決着。 その瞬間、自身に生じる一瞬の隙を、ゼロは見逃していた。 「ルルーシュ!!」 「……っ!」 咄嗟に翳した左腕が、鋭い刃に刺し貫かれる。 激痛の中、反射的に繰り出した拳が穿ったのは、ナイン・ザ・コードギアス。 地に磔られていたはずの少女が、何故かゼロの腕を貫き、ゼロの腕に貫かれていた。 「よもや自らの手を……」 ナインの右腕は、前腕部の先端付近から完全に失われていた。 串刺しという戒めから逃れるために、己の骨肉を切り落とすとは。 左胸を貫かれたまま、ナインはぽつりと言葉を零す。 「思い出した……私はネモから、頼まれたんだから……。 ……貴方が何と言おうと、関係……な……」 「泥人形への義理立てか。下らん」 ゼロはナインの胸から腕を引き抜き、騎士の刃へ手をかけた。 ずるり、と血液が糸を引く。 床に崩れ落ちたナインには目もくれず、踵を返す。 ゼロの意図に呼応するように、ガウェインが崩壊寸前の機関を稼動させ、ハドロン砲の砲口を病院へ向ける。 「もういい、跡形もなく蒸発するがいい」 ◇ ◇ ◇ ――もう、痛みすら感じない。 消えていく鼓動。 消えていく体温。 消えていく視野。 消えていく感覚。 消えていく自我。 網膜に映る光景を、脳髄が理解しない。 ナインは本能のように、綺麗な光を放つソレに手を伸ばす。 右手はもうないから、左手を。 失くしてしまった左腕の代わりを伸ばす。 ナナリーの面影。 ナナリーの記憶。 黄金の鞘。 「黄金」という色も。 「鞘」という言葉も。 ナインの中では既に意味を成していない。 ただ、それがタイセツなものだという認識だけが、軋む肉体を動かしていた。 指先が鞘の表面に触れる。 冷たさも硬さも、もう感じない。 五本の指が鞘を手元へ引き寄せる。 ナナリー……―― 鞘を手にナインは動く。 血の海を這いずるように。 だが、ナインの身体はもう動かない。 左腕だけが地蟲の如く蠢いて、ナインを引きずっていく。 生命が抜け落ちた四肢に代わって、彼女の願いを叶えるために。 ソレに触れていると、身体が楽になった。 ナナリーと一緒にいる気がするからなのかもしれないけれど。 これを渡せば――が助かる気がした。 もはや正しい現状認識すらできていない。 確かな目で見ていれば、助かる傷ではないと理解できるはずなのに。 奇跡を待つしか手段がないというのに。 ナナリー……―― 血に塗れた――の――に、鞘を乗せる。 「助けて……」 ジークフリートに小鳥を託したときのように。 物言わぬ金色の鞘に祈りを託す。 「美琴を助けて……アヴァロン……」 赤き光が全てを押し流す。 壁を、床を、天井を、硝子を。 熔かし、掻き混ぜ、焼却し、塵に帰す。 少女の血も、肉も、骨も、髪も、記憶も、願いも―― 全てが消えていく。 私は、貴女のところへ行っても、いいのかな――…… ◇ ◇ ◇ 瓦礫と化した病院を後にして、ゼロは大通りを西へ進んでいた。 ハドロン砲で一階部分を吹き飛ばされた病院は、自重に耐えることが出来なくなり、瞬く間に倒壊した。 まさしく徹底的な蹂躙、徹底的な破壊。 もはや生存者は残っていないだろう。 人形は原型を留めぬまでに破壊し、首輪も奪い取った。 女二人は致命傷を与えた上でハドロン砲の業火に投じた。 ラッド・ルッソは辛うじて息があったらしいが、倒壊に巻き込まれて絶命したに違いない。 代償として、ガウェインは量子シフトによる召喚から十分と持たずに消えてしまったのだが、 仮にもう一度呼び出したとして、あの電撃で機能停止寸前にまで追い込まれた現状では、大して役に立たないだろう。 しかし結末だけを見れば完全なる勝利と称して差し支えあるまい。 「残るは一人……」 ナナリーを死に追いやった輩のうち、既に二人までは抹殺した。 あと、一人。 異形を誅し殲滅への烽火とする。 目的はナナリーの蘇生ただひとつ。 必要とあらば、誰であろうと排除するまで。 それなのに。 ――今の貴方は、その人に胸を張って会いにいけるの? 「……戯言を!」 ゼロは苛立ちを込めて路傍の塀を殴りつけた。 魔王の強力に耐え切れず、コンクリートの塊が一瞬にして砕ける。 「私はナナリーと同じ世界を生きるつもりはない。 光に照らされた世界で生きるのは、ナナリーだけだ……」 【E-5/路上(西)/一日目 夜】 【ゼロ@コードギアス ナイトメアオブナナリー】 【状態】:左前腕に幅広の刺傷、疲労(極大)、悲壮≪ルルーシュ≫ 【装備】:なし 【道具】:基本支給品一式×6、MH5×3@ワンピース、治療器具一式、防刃ベスト@現実、電伝虫@ONE PIECE×2、 忍術免許皆伝の巻物仮免@ドラえもん、和道一文字@ONE PIECE、シゥネ・ケニャ(袋詰め)@うたわれるもの、 謎の鍵、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に、首輪×3(サカキ、土御門、真紅)、ナナリーの遺体(首輪あり)、ビニール袋に入った大量の氷 螺湮城教本@Fate/Zero、トーチの火炎放射器@BLACK LAGOON(燃料70%)、不明支給品0~1個(未確認) 【思考・状況】 1:殺し合いに優勝し、ナナリーを生き返らせる。 2:異形(ミュウツー)は見つけ次第、八つ裂きにする。 3:『○』に関しては…… 4:ギラーミンを殺して、彼の持つ技術を手に入れる。 5:自分の身体に掛けられた制限を解く手段を見つける。 6:『○』対する検証を行うためにも、首輪のサンプルを手に入れる。 7:C.C.の状態で他者に近づき、戦闘になればゼロへ戻る。 8:首輪を集めて古城跡へ戻る。 【備考】 ※ギラーミンにはタイムマシンのような技術(異なる世界や時代に介入出来るようなもの)があると思っています。 ※水銀燈から真紅、ジュン、翠星石、蒼星石、彼女の世界の事についてある程度聞きました。 ※会場がループしていると確認。半ば確信しています ※古城内にあった『○』型のくぼみには首輪が当てはまると予想しています。 ※魅音(詩音)、ロベルタの情報をサカキから、鼻の長い男の(ウソップ)の情報を土御門から聞きました。 ※C.C.との交代は問題なく行えます。 ※起動している首輪を嵌めている者はデイパックには入れないという推測を立てています。 ※北条沙都子達と情報交換しました。 ※ナイン、ラッド、ミュウツーの三人がナナリーの死に関わっていると確信しました。 ※ガウェインの制限はマークネモとほぼ同様です。 ただしハドロン砲を使用した場合は、再召喚までの時間が、一発につき二時間ずつ増加します。 ◇ ◇ ◇ 「そりゃあ最初は驚いたぜ? どうにか槍を引っこ抜いて必死に這いずってたら、窓ガラスぶち割って人形が飛んできたんだからよ」 崩落した病院の中庭で、ラッド・ルッソは饒舌に語っていた。 ハドロン砲の貫通によって芝生や植木は焼き払われたが、建物の崩壊には殆ど巻き込まれていない。 被害らしい被害といえば、破片と粉塵の嵐が吹き荒れて快適な環境ではなくなったくらいだろう。 「俺も見ての通りボロボロだったからな。あそこで殺しに来られたらヤバかったぜ」 あれから暫く時間が経ったが、ラッドの肉体は未だ傷だらけだ。 地面に突き刺さった巨大な残骸に背を預けて、どうにか座位を維持している。 時間を経てもこの有様なのだから、病院が破壊された時点での状態は筆舌に尽くしがたいものであった。 こうして生きているのも、両腕の損壊が比較的早かったため、辛うじて中庭まで移動できたからに過ぎない。 さもなければ、倒壊かハドロン砲に巻き込まれてトドメを刺されていたことだろう。 「あぁ、そうだ、アスカとかいう野郎のことを聞かれたな。そのまんま答えてやったぜ? お前らのそっくりさんを必死に追っかけてたから、間抜け面に一発ブチ込んでぶっ殺したってな!」 狂ったような笑いが中庭に響く。 しかしラッドはすぐに血を吐いて、笑い声以上の大きさで咳き込んだ。 酸素に満ちた鮮やかな赤色。肺の傷が開いたのだろう。 ラッドは肩に口を擦り付けて血を拭うと不機嫌そうに視線を投げた。 「聞いてねぇのか? 手前ぇが教えろっていうから話してやってるんだぜ? なぁ、電気女さんよぉ!」 視線の先には、瓦礫をあさる美琴の姿。 比較的平坦な中庭ではなく、崩れ去った西棟の残骸を黙々と探っている。 制服は破れ、血に汚れ、とにかく酷い有様だが、肉体の傷は不思議と影を潜めていた。 傷が消えてなくなったわけではない。 しかしどの傷口からの出血も止まっていて、行動への支障も殆ど見られなかった。 「喋る気が無いなら、勝手に語らせてもらうぜ。正直、腑に落ちねぇんだよ。 仲間の仇が目の前にいるってのに、殺そうとしやがらねぇ。手前ぇもあの人形もだ。 人形が俺を見逃したのはまだ分かる。もっとヤバイ奴が近くにいるんだからな」 そこで言葉を切る。 これ以上は語らずとも理解できるだろう。 美琴は瓦礫に両手を差し入れたまま、作業の手を止めた。 「仇はとるわ。でも……殺してなんか、あげない」 ラッドは眉を顰め、次第に破顔し、そして哄笑した。 「憎たらしいくせに自分の手は汚したくないってか! どうやって恨みを晴らそうか考えてたんで、返事も出来ませんでしたってことだな!」 今度は喀血することなく、思う存分笑い続ける。 肉体の再生がもう少し進んでいたなら、文字通り腹を抱えて笑い転げていたに違いない。 無視を決め込む美琴のことなど気にも留めず、只管に狂声を響かせる。 ――が、唐突に笑いを止めた。 訝しげに振り向く美琴を逆に無視し、何やら考え込むような顔付きになる。 そう、あの子は最期まで優しかったのね―― ラッド。貴方がどう思っても構わないけれど、私はあすかを誇りに思うわ―― 先に逝った人達に、胸を張れる生き方が出来たのだから―― 「先に逝った、ね……。さて、ルーアが惚れた俺はどんな奴だったかな」 少し時間をかけて考えよう。 どうせ、身体が治るまでは殺しもできないのだから。 「……見つけた」 美琴は急に黙り込んだラッドを放置し、瓦礫の中に腕を伸ばしていた。 ゼロと戦った場所を埋めるコンクリート塊の下から、何かを取り出そうと必死になっている。 肌が擦れ、血が滲んでも腕を引かず、それどころか更に奥へと突っ込んでいく。 美琴を救ったのは、ナインが遺した"全て遠き理想郷"の奇跡であった。 真名解放により解き放たれた真の力がハドロン砲の破壊を遮断。 その後"全て遠き理想郷"が体内へ取り込まれたことにより、重篤な傷が治癒。 今までの時間は全て再生に費やされ、意識が回復したのすらほんの少し前のことであった。 自分がどうして生きているのか、美琴は知らない。 けれど"誰かに助けられた"という実感だけは確かに覚えている。 そうでなければ、半死半生だったはずの自分が動いていられるわけがない。 だからこうして廃墟を彷徨っているのだ。 癒え切らない傷の痛みを抱え、もういない彼女達の面影を探すために。 「真紅……」 瓦礫の隙間から、腕がゆっくりと引き抜かれる。 粉塵まみれの手に握られた、二つの光り輝く宝石――ローザミスティカ。 美琴はローザミスティカを両手で大事そうに包み、胸に抱き寄せた。 混ざり合う二つの輝きは、魔的なまでに美しかった。 【真紅@ローゼンメイデン 死亡】 【ブレンヒルト・シルト@終わりのクロニクル 死亡】 【E-5/病院跡/一日目 夜】 ※病院は完全に崩壊しました。 ※美琴の電撃とガウェインのハドロン砲の影響が広範囲に伝わっています。 【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】 【状態】:疲労(極大)、全身に打撲と擦傷(中)、脇腹の切り傷(小)、左肩と右脹脛に傷(小)、後頭部挫傷(中)、 脇腹に打撲(中)、胴体に貫通傷×3(小)、全て再生中 多大な喪失感、強い決意、≪体内:全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero≫ 【装備】:薔薇の指輪@ローゼンメイデン 【道具】:基本支給品一式(水1/2消費)、基本支給品一式、不明支給品0~2個(未確認)、病院で調達した包帯や薬品類、 コイン入りの袋(装備中の物と合わせて残り90枚)、タイム虫めがね@ドラえもん、 真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン、蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、 ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS、真紅の左腕(損傷大)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本 【思考・状況】 1:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。 2:人は絶対に殺したくない。 3:自分と関わり、死んでしまった者達への自責の念。 4:上条当麻に対する感情への困惑。 5:ラッドについては……。 【備考】 ※参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。 ※会場がループしていると知りました。 ※切嗣の暗示、催眠等の魔術はもう効きません。 ※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。 ※あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。 ※危険人物などについての情報は真紅と同様。 ※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。 ※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。 ※全て遠き理想郷(アヴァロン)が体内にあることを知りません。 【ラッド・ルッソ@BACCANO!】 【状態】:四肢損傷、全身複数個所骨折(中)、内臓損傷、腹部に深い傷、毒(小)、全て再生中、不死者化 【装備】:破魔の紅薔薇(ゲイ・シャルグ)@Fate/Zero 【道具】:なし 【思考・状況】 0:方針について一旦考え直す。 1:あのギラーミンとかいう糞野郎をぶっ殺す。 2:ゼロは絶対に殺す。 【備考】 ※麦わらの男(ルフィ)、獣耳の少女(エルルゥ)、火傷顔の女(バラライカ)を殺したと思っています。 ※自分の身体の異変に気づきましたが、不死者化していることには気付いてません。 ※リヴィオとラズロの違いに気付いていません。また、ラズロ(リヴィオ)のことを不死者だと考えています。 ※ゼロのことを不死者だと思っています。 【全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero】 第四次聖杯戦争におけるセイバー(アーサー)の失われた宝具であり、召喚の触媒。 作中で登場する他の宝具とは違い、当時の地層から発掘された現物。 結局、作中ではセイバーの手に戻ることは無かった。 霊子に分解して体内に埋め込むことが可能で、セイバーの魔力を得ることで所持者に凄まじい回復力を与える。 セイバーのマスターがこの恩恵を受けると、即死級のダメージからでも即座に再生してしまうほど。 ただしダメージを無効化するわけではないため、受けた痛みは軽減されない。 真名を解放することで数百のパーツに分裂し、所有者をありとあらゆる干渉から"遮断"する。 この機能は防御というレベルではなく、この世界における最強の護りと称される。 時系列順で読む Back 砂鉄の楼閣(後編) Next 忘れてはならないもう一人 投下順で読む Back 砂鉄の楼閣(後編) Next 忘れてはならないもう一人 Back Next 砂鉄の楼閣(後編) 御坂美琴 裏表トリーズナーズ(前編) 砂鉄の楼閣(後編) 真紅 死亡 砂鉄の楼閣(後編) ラッド・ルッソ 裏表トリーズナーズ(前編) 砂鉄の楼閣(後編) ブレンヒルト・シルト 死亡 砂鉄の楼閣(後編) ゼロ 首輪物語(前編)
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あなたに会いたくて◆b8v2QbKrCM どうして―― 呼吸をするたびに、口の端が赤く泡立つ。 ひゅう、ひゅう、と呼気の漏れる音がする。 肺が破れたのだろうか。 もしかしたら、気管が裂けたのかもしれない。 どうしてこうなってしまったんだろう―― 痛みが薄らいでいるのは幸いか。 それとも絶望から逃避できない不幸か。 所有者を死から遠ざける二つの力が、ナインの命を引き伸ばす。 どろどろになって燃え尽きかけた蝋燭が、ほんの数秒だけ燃え続けようとするように。 私は、ただ―― 失くした右手の切断面と、左胸の大きな穴から、致命的な量の血液が溢れている。 助かるはずがない。 生きていられるわけがない。 こうして思考できていること自体が、既に奇跡なのだ。 ただ―― ナインは感覚の喪失した四肢を動かして、頭の向きを僅かに変える。 リノリウムの地平の先には、もうひとつの赤い水たまり。 潰えようとするもうひとつの命。 潰えてしまったもうひとつのいのち。 あの優しい小鳥を―― その少女は、壁にもたれて座り込んでいる。 まるで木かげで休んでいるように。 まるで木もれ日でうたた寝をしているように。 たったひとつだけ、おかしなところがあるけれど。 小鳥を―― おなかから、赤くて黒いものが、顔をだしている。 びるのカベに入っていたてつのぼうが、赤くそまってかおをだしている。 うしろからフォークでさされたみたいに、3ぼんならんで。 ミコトのおなかは、やぶれていた。 助けたかっただけなのに―― ◇ ◇ ◇ 「魔王に挑む……無謀と知っての蛮勇か?」 大戦槍の柄が棄てられる。 がらん、という鈍い音が廊下に響いた。 「さぁ? どこの誰なのかしらね」 美琴はゼロから視線を逸らさず、次弾の発射準備を整える。 彼我の距離は十数メートル。 この距離からなら狙いを過つことはありえない。 しかしゼロは、ナインの右腕を足蹴にしたままで、悠然と美琴を見据えていた。 超電磁砲の威力を目の当たりにしながら、脅威を軽んじているのか。 それとも、対抗する術を既に見出してしまったとでもいうのか。 美琴の手元で大気が炸裂する。 音を置き去りに飛翔するコインの弾丸。 僅か百分の一秒のうちに距離を削り取り、ゼロの仮面を掠めて飛び去っていく。 「どうした。牽制では私を倒せないぞ」 ゼロは微動だにせず言い放った。 動かずとも当たらない――美琴が当ててこないと分かっていた、と態度が語っている。 美琴は内心で歯噛みした。 今の一撃でゼロとナインを引き離すつもりだったのだが、完全に見抜かれていたらしい。 考えてみれば当然のことだ。 ここで直撃させるつもりがあるのなら、初撃で槍を狙う意味がない。 ゼロ自身ではなく大戦槍を撃ち抜いた時点で、殺意のなさを白状しているも同然だ。 「次は当てるわよ」 「どうだかな」 デイパックから引き抜かれる白鞘の刀。 露わになる白刃に、美琴は思わず身構える。 振り上げられる和道一文字。 それと同時に、手首の返しで握りが逆手に変えられる。 「だが――意図は汲んでやろう」 「うぐっ……!」 真下へと叩き込まれた一突きが、あろうことかナインの手首を貫通する。 響き渡る苦悶の声。 美琴は思わず身を竦め、目を逸らした。 切っ先が前腕に通る二本の骨と関節の間の肉を貫き、床にまで突き刺さっていた。 これでは刀を抜かない限り逃れることができない。 まさしく磔である。 「アンタ……!」 「まずは貴様から排除する。異存はないな」 ゼロが一歩ずつ距離を詰める。 右足を庇って身構える美琴の前に、真紅が割って入った。 庭師の鋏を片手で把持し、鋭利な先端をゼロへと振り向ける。 「美琴……近付いてきたら……」 「分かってる……」 一歩、また一歩。 ゼロが悠然と接近する。 美琴と真紅はいつでも攻撃に転じられる態勢のまま、静かにタイミングを計っていた。 残された力は少ない。 どちらが勝利するにせよ、勝負は一瞬で終わるだろう。 十二メートル。 十一メートル。 十メートル。 爆ぜる。 ゼロの足が床を打った。 床材を粉々に粉砕する威力の反作用で爆発的に加速。 離脱など許しえない速度で間合いを塗り潰す。 「来たわっ!」 真紅が鋏を振るう。 薔薇の花弁が渦を巻き、一直線にゼロを迎え撃つ。 ここは直線の廊下だ。 赤き花弁から逃れる場所などありはしない。 ゼロが翻したマントに薔薇の奔流が直撃する。 飛び散る花弁の幕に阻まれ、ゼロはその速度を大きく減じた。 「そこっ!」 間髪入れず、美琴の腕がスパークする。 指に弾かれたコインが閃光の魔弾と化し、花弁の幕の中央を撃ち抜いた。 一瞬の間を置いて、衝撃波が花弁を吹き散らす。 「――なっ!」 真紅は思わず声を漏らした。 薔薇の花弁が散ったことで開けた視界には、あるべきものが存在しなかった。 「消えた!?」 いない。 ゼロがどこにもいない。 美琴は慌てて周囲を見渡すが、廊下のどこにもゼロの姿はない。 いかに薄暗闇に黒衣が紛れるとはいえ、完全に見失うなどありえないことだ。 しかも視覚のみならず、電磁波によってすら感知されなくなっている。 廊下から完全に消え失せた―― そうとしか捉えようのない事態であった。 「――そうだ、ナイン!」 美琴の思考が混乱から立ち直る。 何のために無茶な戦いを挑んだのか、危うく忘れてしまうところだった。 敵が姿を消した今のうちに助け出すべきに決まっている。 そう思い、美琴が駆け出した瞬間、ナインが叫んだ。 「逃げて! 早く!」 何を言っているんだ、と駆け寄ろうとして、不意に気が付く。 ナインは接近するゼロの後ろにいた。 ゼロが歩いてくるときも。 ゼロが突進した瞬間も。 ゼロが薔薇のベールに阻まれていた間も。 つまり目撃しているはずなのだ。 ゼロ消失の瞬間を。 背後で轟音が鳴り響く。 爆弾が炸裂したかのような衝撃と、冷たい爆風。 コンクリートの破片に晒されながら美琴は振り返り、目撃する。 外壁を突き破り、屋内への再侵入を果たしたゼロの姿を。 そして。 掬い上げるような拳に打ち据えられた真紅を。 「――真」 あまりにも軽過ぎる真紅の身体は、それこそ紙切れも同然に吹き飛んでいく。 中庭へ通じる窓に衝突し、砕く。 「紅――」 翻る黒衣。 鉄塊の如き腕が迫る。 声が喉から出るより遥かに速い。 美琴は瞬く間に顔面を鷲掴みにされ、勢いのままに床から引き剥がされる。 ――ゴッ 白いコンクリートの壁に、赤い飛沫が散った。 線の細い手足が跳ね、そして力なく落ちる。 砕かれたガラス片が時雨のように落ちる音がした。 壁伝いに、ず、と美琴の肉体が滑る。 かすれた絵筆で赤を塗ったような跡を残して、美琴はガラクタのように崩れ落ちた。 「……終わりだ」 ゼロは踵を返し、ナインへと歩み寄る。 あまりにも呆気ない結末である。 薔薇の壁に阻まれた瞬間、ゼロは即座に転移を発動させていた。 無論、あそこまで消耗した状態では、せいぜい一メートルか二メートルの移動しかできない。 しかし、病院の外壁を越えて屋外へ退避するには、それだけで十分であった。 ナインは依然と床に伏し、顔だけをこちらに向けている。 右腕は串刺しのままで、脱出を図った形跡すらない。 だが、その眼差しはゼロに向けられていなかった。 「――フン。しぶといものだ」 再度ゼロは振り返る。 一抹の驚きが混ざった、呆れ返ったような声色。 「まだ、終わってない……!」 薄暗闇に迸る雷光。 満身創痍で疲労困憊。 鮮血乱舞で頭蓋陥没。 それでもなお立ち上がる超電磁砲。 「終わりだ。その身体で何ができる」 ゼロは美琴に近付こうとすらしなかった。 むしろ、接近する必要性を感じていないというのが正確だろうか。 それもそのはずだ。 美琴は明らかに立っているだけで精一杯なのだから。 「……アンタを、倒すことなら……できるわ……」 強がりを言いながら足を踏み出し、すぐに転びかける。 後頭部から流れた血が後ろ髪を染め、首筋を濡らして服を血まみれにしていく。 足は容易くもつれ、ゼロが破壊した壁の淵に手を突いて、どうにか転倒だけは免れる。 誰が見ても戦闘不能。 いつ昏倒してもおかしくない。 それでも少女は、漆黒の魔王をまっすぐ見据えていた。 「なんで……」 消え入りそうな声でナインが呟く。 美琴は口の端を上げ――血まみれで分かりにくいけれど――微笑んでみせた。 「……逃げないって、決めたから」 「だが結末は変わらん」 漆黒の魔王が迫り来る。 美琴は壁に穿たれた穴の縁にもたれたまま、一歩も動こうとしない。 そもそも動くような体力すら残されていなかった。 眼前に迫ったゼロの仮面を、美琴は毅然と仰ぎ見た。 「満身創痍の身体を引きずって、どこまで無様に足掻くというのだ」 「どこまで? 決まってるじゃない……」 緩く握られた拳が、ゼロの胸を軽く叩く。 それほどまでに、両者の距離は近付いていた。 「最後までよ」 魔王の輪郭が残像と化す。 間近から振り抜かれた拳が美琴の脇腹に突き刺さる。 最下部の肋骨を砕き、臓器を押し潰し、文字通り体内へめり込んでいく。 拳が振り抜かれると同時に真横へ吹き飛び、水切り石のように地面を跳ねて、駐車場を横切ってようやく停止した。 下手をすれば三度は死にうる打撃を与えてなお、ゼロは追撃を緩めようとはしない。 アスファルトに残った血の道を踏み締め、生死すら明瞭としない標的へ接敵する。 「ならば最期を与えてやろう」 ぴくりと、美琴の腕が動く。 先ほどの一撃で脊柱まで痛めたか。 上体は起き上がろうともがいているようだが、脚は全く動いていない。 時折、電流の閃光が迸り、周囲の暗闇が淡く照らされる。 「理解出来たか。魔王に楯突くことが如何に愚かなことか」 「これくらい……何よ……」 放出された電流が駐車場を囲むフェンスにも伝播する。 放電の音にかき消されるほどにか細い声で、美琴は喋り続けた。 誰に聞かせるでもない、自分自身へ向けた言葉を。 「アイツはもっと無茶して……痛い思いして……」 腕を突き、少しずつ身を起こしていく。 額の周りで幾筋もの電流が集い、弾けて消える。 「それでも止めなかった馬鹿なんだから……」 魔王の足が、起き上がらんとした美琴の胸を踏みつける。 無造作な行為でありながら、それだけで胸骨が悲鳴を上げた。 このまま力を入れて踏み抜けば、肺と心臓が破壊されて死に至るだろう。 呼吸すら苦痛でしかない地獄の中で、美琴は叫ぶように言い放った。 「だから……私が諦めるわけにはいかないのよ!」 「――むっ!」 電流が迸り、フェンスの根元が次々と千切れていく。 幅二十メートルに及ぶ鉄製のフェンスが、さながら巨大な投網の如くゼロへ襲い掛かる。 ゼロは美琴への攻撃を止め、後方へ飛び退いた。 「この程度で私を捕らえ――」 魔王の視界の外で、美琴は頭上を飛ぶフェンスに指を掛けた。 ぐんっ、と美琴の身体が跳ね起きる。 捕獲など端から思慮の外。 次の一撃こそが本命――! 「あああああああああああああああっ!!」 炸裂する閃光。 渾身の電撃が地を揺るがせ、夜の闇を打ち払う。 灼熱したアスファルトは瞬く間に融沸し、導体という導体を電流が駆け巡る。 光と音の衝撃は遥か彼方にまで押し寄せて、静寂を根こそぎ薙ぎ払う。 眩い光は病院の内部にまで及び、ナインをも飲み込んでいく。 「う……っ!」 やがて放電は終わり、間隙に夜が染み込んでくる。 ナインは眩しさのあまり瞑っていた目を開き、美琴の姿を探した。 「美琴!」 美琴は雷撃の爆心地よりも手前で、人形のような手足を投げ出して倒れ伏していた。 フェンスに引きずられて、ここまで転がってきたのだろう。 負った傷は数えることすらままならない。 あまりにも痛々しくて、ナインは目を逸らしそうになってしまう。 けれど、それはできない。 命を掛けてあの魔王に打ち勝った彼女から、視線を外すことなど―― 「――貴様の力を見誤っていたようだ――」 してはいけない、声がした。 見上げれば、そこには影。 夜景を遮る巨大な影。 どうして思い至らなかったのだろう。 ナナリーとネモがマークネモを駆るのなら。 ルルーシュ・ランペルージにも同じことができるのだと。 その名は、ガウェイン。 「そん、な……どうして……」 機械仕掛けの巨人の肩に乗り、魔王ゼロは下界を睥睨する。 雷撃からゼロを庇ったと思しきガウェインは、既に大破寸前にまで追い込まれていた。 一方、ゼロ自身が受けた損害は極めて軽微。 仮面には亀裂が入り、外套は無残に焼けているが、肉体の消耗は殆ど見られない。 絶望――絶対の、終局。 それなのに。 「どうして……立つの……?」 それなのに、美琴は立ち上がっていた。 なぜ立つのか分からない。 どうして立てるのか分からない。 肉体の機能は殆ど潰えているだろう。 確かなことがあるとすれば。 彼女は明確な意志を持って立ち上がったということだけだ。 「私は貴女を利用しようとした……。 殺そうともした……それなのに、どうして!」 「……どうして、こんな悪党を助けるの……って……?」 美琴は、あははと笑った。 もしかしたら単なる苦悶の声だったのかもしれない。 けれどナインには、明るい笑い声にしか聞こえなかった。 「それでも……死なせたくないって言うお人好しが……いるから、かな……」 かしゃん、と小さな音がした。 廊下の奥から、小さな影が歩いてくる。 暗がりの中、小さな瞳が煌いている。 「ごめんなさい。遅くなってしまったわ」 謝罪の声が廊下に響く。 真紅が歩を進めるたびに、かしゃん、と音がする。 砕けた身体の破片が音を出す。 赤い衣装の上からでも、真紅の身体の破損は容易に見て取れた。 そして真紅は、美琴の横で寄り添うように立ち止まる。 「ラッドに会ったわ……。あすかは最期まで、あの子らしく生きていたそうよ」 「……そっか」 ゼロがガウェインの肩から飛び降りる。 今まで以上の殺意を滾らせ――しかしそれを美琴達には向けていない。 それどころか、半死半生の二人など眼中にないとばかりに腕を振るった。 「ラッド・ルッソか。よもや仕留め損なっていたとはな。 どけ――貴様らと遊んでいる場合ではなくなった」 「……どかない」 美琴はポケットから一枚のコインを取り出し、ゼロへ向けた。 真紅も鋏を構え、戦意を表す。 「勝ち目はないぞ」 ゼロの言葉は恐らく正しい。 今の美琴には電撃を放つ余力すらなく、コインを撃ち出せるかどうかも怪しい。 真紅は吹き飛ばされたときにデイパックを失い、残された武器は歪んだ鋏と砕けかけた身体のみ。 庭師の鋏をゼロへ突きつけ、真紅は凛と黒き仮面を見据えた。 「貴方も大切な人を失ったのでしょう」 「黙れ……」 ゼロは歩みを止めない。 「今の貴方は、その人に胸を張って会いにいけるの?」 「……黙れ……」 仮面を鷲掴みに、砕かんばかりの力を込める。 「私達は出来るわ。最後まで私らしく生きていたと!」 「黙れと言っているッ!」 魔王が駆ける。 真紅が翔ける。 刹那の交錯の果て、白い破片が粉々に散った。 奔り抜ける漆黒の輪郭。 繰り出される超電磁砲。 音速にも満たない微弱な狙撃は、掠めることすらなく虚空を貫く。 拳の砲弾が美琴を打ち据える。 砕かれた壁の断面へ叩きつけられ、捻じ切れた鉄筋が背中へ突き刺さる。 三十センチも突き出した三本の鉄筋が、肉を穿ち、臓器を破り、腹部を裂いて貫通する。 鮮血が間欠泉のように噴き出し、すぐに収まっていく。 戦闘の終結。 完全なる決着。 その瞬間、自身に生じる一瞬の隙を、ゼロは見逃していた。 「ルルーシュ!!」 「……っ!」 咄嗟に翳した左腕が、鋭い刃に刺し貫かれる。 激痛の中、反射的に繰り出した拳が穿ったのは、ナイン・ザ・コードギアス。 地に磔られていたはずの少女が、何故かゼロの腕を貫き、ゼロの腕に貫かれていた。 「よもや自らの手を……」 ナインの右腕は、前腕部の先端付近から完全に失われていた。 串刺しという戒めから逃れるために、己の骨肉を切り落とすとは。 左胸を貫かれたまま、ナインはぽつりと言葉を零す。 「思い出した……私はネモから、頼まれたんだから……。 ……貴方が何と言おうと、関係……な……」 「泥人形への義理立てか。下らん」 ゼロはナインの胸から腕を引き抜き、騎士の刃へ手をかけた。 ずるり、と血液が糸を引く。 床に崩れ落ちたナインには目もくれず、踵を返す。 ゼロの意図に呼応するように、ガウェインが崩壊寸前の機関を稼動させ、ハドロン砲の砲口を病院へ向ける。 「もういい、跡形もなく蒸発するがいい」 ◇ ◇ ◇ ――もう、痛みすら感じない。 消えていく鼓動。 消えていく体温。 消えていく視野。 消えていく感覚。 消えていく自我。 網膜に映る光景を、脳髄が理解しない。 ナインは本能のように、綺麗な光を放つソレに手を伸ばす。 右手はもうないから、左手を。 失くしてしまった左腕の代わりを伸ばす。 ナナリーの面影。 ナナリーの記憶。 黄金の鞘。 「黄金」という色も。 「鞘」という言葉も。 ナインの中では既に意味を成していない。 ただ、それがタイセツなものだという認識だけが、軋む肉体を動かしていた。 指先が鞘の表面に触れる。 冷たさも硬さも、もう感じない。 五本の指が鞘を手元へ引き寄せる。 ナナリー……―― 鞘を手にナインは動く。 血の海を這いずるように。 だが、ナインの身体はもう動かない。 左腕だけが地蟲の如く蠢いて、ナインを引きずっていく。 生命が抜け落ちた四肢に代わって、彼女の願いを叶えるために。 ソレに触れていると、身体が楽になった。 ナナリーと一緒にいる気がするからなのかもしれないけれど。 これを渡せば――が助かる気がした。 もはや正しい現状認識すらできていない。 確かな目で見ていれば、助かる傷ではないと理解できるはずなのに。 奇跡を待つしか手段がないというのに。 ナナリー……―― 血に塗れた――の――に、鞘を乗せる。 「助けて……」 ジークフリートに小鳥を託したときのように。 物言わぬ金色の鞘に祈りを託す。 「美琴を助けて……アヴァロン……」 赤き光が全てを押し流す。 壁を、床を、天井を、硝子を。 熔かし、掻き混ぜ、焼却し、塵に帰す。 少女の血も、肉も、骨も、髪も、記憶も、願いも―― 全てが消えていく。 私は、貴女のところへ行っても、いいのかな――…… ◇ ◇ ◇ 瓦礫と化した病院を後にして、ゼロは大通りを西へ進んでいた。 ハドロン砲で一階部分を吹き飛ばされた病院は、自重に耐えることが出来なくなり、瞬く間に倒壊した。 まさしく徹底的な蹂躙、徹底的な破壊。 もはや生存者は残っていないだろう。 人形は原型を留めぬまでに破壊し、首輪も奪い取った。 女二人は致命傷を与えた上でハドロン砲の業火に投じた。 ラッド・ルッソは辛うじて息があったらしいが、倒壊に巻き込まれて絶命したに違いない。 代償として、ガウェインは量子シフトによる召喚から十分と持たずに消えてしまったのだが、 仮にもう一度呼び出したとして、あの電撃で機能停止寸前にまで追い込まれた現状では、大して役に立たないだろう。 しかし結末だけを見れば完全なる勝利と称して差し支えあるまい。 「残るは一人……」 ナナリーを死に追いやった輩のうち、既に二人までは抹殺した。 あと、一人。 異形を誅し殲滅への烽火とする。 目的はナナリーの蘇生ただひとつ。 必要とあらば、誰であろうと排除するまで。 それなのに。 ――今の貴方は、その人に胸を張って会いにいけるの? 「……戯言を!」 ゼロは苛立ちを込めて路傍の塀を殴りつけた。 魔王の強力に耐え切れず、コンクリートの塊が一瞬にして砕ける。 「私はナナリーと同じ世界を生きるつもりはない。 光に照らされた世界で生きるのは、ナナリーだけだ……」 【E-5/路上(西)/一日目 夜】 【ゼロ@コードギアス ナイトメアオブナナリー】 【状態】:左前腕に幅広の刺傷、疲労(極大)、悲壮≪ルルーシュ≫ 【装備】:なし 【道具】:基本支給品一式×6、MH5×3@ワンピース、治療器具一式、防刃ベスト@現実、電伝虫@ONE PIECE×2、 忍術免許皆伝の巻物仮免@ドラえもん、和道一文字@ONE PIECE、シゥネ・ケニャ(袋詰め)@うたわれるもの、 謎の鍵、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に、首輪×3(サカキ、土御門、真紅)、ナナリーの遺体(首輪あり)、ビニール袋に入った大量の氷 螺湮城教本@Fate/Zero、トーチの火炎放射器@BLACK LAGOON(燃料70%)、不明支給品0~1個(未確認) 【思考・状況】 1:殺し合いに優勝し、ナナリーを生き返らせる。 2:異形(ミュウツー)は見つけ次第、八つ裂きにする。 3:『○』に関しては…… 4:ギラーミンを殺して、彼の持つ技術を手に入れる。 5:自分の身体に掛けられた制限を解く手段を見つける。 6:『○』対する検証を行うためにも、首輪のサンプルを手に入れる。 7:C.C.の状態で他者に近づき、戦闘になればゼロへ戻る。 8:首輪を集めて古城跡へ戻る。 【備考】 ※ギラーミンにはタイムマシンのような技術(異なる世界や時代に介入出来るようなもの)があると思っています。 ※水銀燈から真紅、ジュン、翠星石、蒼星石、彼女の世界の事についてある程度聞きました。 ※会場がループしていると確認。半ば確信しています ※古城内にあった『○』型のくぼみには首輪が当てはまると予想しています。 ※魅音(詩音)、ロベルタの情報をサカキから、鼻の長い男の(ウソップ)の情報を土御門から聞きました。 ※C.C.との交代は問題なく行えます。 ※起動している首輪を嵌めている者はデイパックには入れないという推測を立てています。 ※北条沙都子達と情報交換しました。 ※ナイン、ラッド、ミュウツーの三人がナナリーの死に関わっていると確信しました。 ※ガウェインの制限はマークネモとほぼ同様です。 ただしハドロン砲を使用した場合は、再召喚までの時間が、一発につき二時間ずつ増加します。 ◇ ◇ ◇ 「そりゃあ最初は驚いたぜ? どうにか槍を引っこ抜いて必死に這いずってたら、窓ガラスぶち割って人形が飛んできたんだからよ」 崩落した病院の中庭で、ラッド・ルッソは饒舌に語っていた。 ハドロン砲の貫通によって芝生や植木は焼き払われたが、建物の崩壊には殆ど巻き込まれていない。 被害らしい被害といえば、破片と粉塵の嵐が吹き荒れて快適な環境ではなくなったくらいだろう。 「俺も見ての通りボロボロだったからな。あそこで殺しに来られたらヤバかったぜ」 あれから暫く時間が経ったが、ラッドの肉体は未だ傷だらけだ。 地面に突き刺さった巨大な残骸に背を預けて、どうにか座位を維持している。 時間を経てもこの有様なのだから、病院が破壊された時点での状態は筆舌に尽くしがたいものであった。 こうして生きているのも、両腕の損壊が比較的早かったため、辛うじて中庭まで移動できたからに過ぎない。 さもなければ、倒壊かハドロン砲に巻き込まれてトドメを刺されていたことだろう。 「あぁ、そうだ、アスカとかいう野郎のことを聞かれたな。そのまんま答えてやったぜ? お前らのそっくりさんを必死に追っかけてたから、間抜け面に一発ブチ込んでぶっ殺したってな!」 狂ったような笑いが中庭に響く。 しかしラッドはすぐに血を吐いて、笑い声以上の大きさで咳き込んだ。 酸素に満ちた鮮やかな赤色。肺の傷が開いたのだろう。 ラッドは肩に口を擦り付けて血を拭うと不機嫌そうに視線を投げた。 「聞いてねぇのか? 手前ぇが教えろっていうから話してやってるんだぜ? なぁ、電気女さんよぉ!」 視線の先には、瓦礫をあさる美琴の姿。 比較的平坦な中庭ではなく、崩れ去った西棟の残骸を黙々と探っている。 制服は破れ、血に汚れ、とにかく酷い有様だが、肉体の傷は不思議と影を潜めていた。 傷が消えてなくなったわけではない。 しかしどの傷口からの出血も止まっていて、行動への支障も殆ど見られなかった。 「喋る気が無いなら、勝手に語らせてもらうぜ。正直、腑に落ちねぇんだよ。 仲間の仇が目の前にいるってのに、殺そうとしやがらねぇ。手前ぇもあの人形もだ。 人形が俺を見逃したのはまだ分かる。もっとヤバイ奴が近くにいるんだからな」 そこで言葉を切る。 これ以上は語らずとも理解できるだろう。 美琴は瓦礫に両手を差し入れたまま、作業の手を止めた。 「仇はとるわ。でも……殺してなんか、あげない」 ラッドは眉を顰め、次第に破顔し、そして哄笑した。 「憎たらしいくせに自分の手は汚したくないってか! どうやって恨みを晴らそうか考えてたんで、返事も出来ませんでしたってことだな!」 今度は喀血することなく、思う存分笑い続ける。 肉体の再生がもう少し進んでいたなら、文字通り腹を抱えて笑い転げていたに違いない。 無視を決め込む美琴のことなど気にも留めず、只管に狂声を響かせる。 ――が、唐突に笑いを止めた。 訝しげに振り向く美琴を逆に無視し、何やら考え込むような顔付きになる。 そう、あの子は最期まで優しかったのね―― ラッド。貴方がどう思っても構わないけれど、私はあすかを誇りに思うわ―― 先に逝った人達に、胸を張れる生き方が出来たのだから―― 「先に逝った、ね……。さて、ルーアが惚れた俺はどんな奴だったかな」 少し時間をかけて考えよう。 どうせ、身体が治るまでは殺しもできないのだから。 「……見つけた」 美琴は急に黙り込んだラッドを放置し、瓦礫の中に腕を伸ばしていた。 ゼロと戦った場所を埋めるコンクリート塊の下から、何かを取り出そうと必死になっている。 肌が擦れ、血が滲んでも腕を引かず、それどころか更に奥へと突っ込んでいく。 美琴を救ったのは、ナインが遺した"全て遠き理想郷"の奇跡であった。 真名解放により解き放たれた真の力がハドロン砲の破壊を遮断。 その後"全て遠き理想郷"が体内へ取り込まれたことにより、重篤な傷が治癒。 今までの時間は全て再生に費やされ、意識が回復したのすらほんの少し前のことであった。 自分がどうして生きているのか、美琴は知らない。 けれど"誰かに助けられた"という実感だけは確かに覚えている。 そうでなければ、半死半生だったはずの自分が動いていられるわけがない。 だからこうして廃墟を彷徨っているのだ。 癒え切らない傷の痛みを抱え、もういない彼女達の面影を探すために。 「真紅……」 瓦礫の隙間から、腕がゆっくりと引き抜かれる。 粉塵まみれの手に握られた、二つの光り輝く宝石――ローザミスティカ。 美琴はローザミスティカを両手で大事そうに包み、胸に抱き寄せた。 混ざり合う二つの輝きは、魔的なまでに美しかった。 【真紅@ローゼンメイデン 死亡】 【ブレンヒルト・シルト@終わりのクロニクル 死亡】 【E-5/病院跡/一日目 夜】 ※病院は完全に崩壊しました。 ※美琴の電撃とガウェインのハドロン砲の影響が広範囲に伝わっています。 【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】 【状態】:疲労(極大)、全身に打撲と擦傷(中)、脇腹の切り傷(小)、左肩と右脹脛に傷(小)、後頭部挫傷(中)、 脇腹に打撲(中)、胴体に貫通傷×3(小)、全て再生中 多大な喪失感、強い決意、≪体内:全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero≫ 【装備】:薔薇の指輪@ローゼンメイデン 【道具】:基本支給品一式(水1/2消費)、基本支給品一式、不明支給品0~2個(未確認)、病院で調達した包帯や薬品類、 コイン入りの袋(装備中の物と合わせて残り90枚)、タイム虫めがね@ドラえもん、 真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン、蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、 ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS、真紅の左腕(損傷大)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本 【思考・状況】 1:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。 2:人は絶対に殺したくない。 3:自分と関わり、死んでしまった者達への自責の念。 4:上条当麻に対する感情への困惑。 5:ラッドについては……。 【備考】 ※参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。 ※会場がループしていると知りました。 ※切嗣の暗示、催眠等の魔術はもう効きません。 ※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。 ※あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。 ※危険人物などについての情報は真紅と同様。 ※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。 ※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。 ※全て遠き理想郷(アヴァロン)が体内にあることを知りません。 【ラッド・ルッソ@BACCANO!】 【状態】:四肢損傷、全身複数個所骨折(中)、内臓損傷、腹部に深い傷、毒(小)、全て再生中、不死者化 【装備】:破魔の紅薔薇(ゲイ・シャルグ)@Fate/Zero 【道具】:なし 【思考・状況】 0:方針について一旦考え直す。 1:あのギラーミンとかいう糞野郎をぶっ殺す。 2:ゼロは絶対に殺す。 【備考】 ※麦わらの男(ルフィ)、獣耳の少女(エルルゥ)、火傷顔の女(バラライカ)を殺したと思っています。 ※自分の身体の異変に気づきましたが、不死者化していることには気付いてません。 ※リヴィオとラズロの違いに気付いていません。また、ラズロ(リヴィオ)のことを不死者だと考えています。 ※ゼロのことを不死者だと思っています。 【全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero】 第四次聖杯戦争におけるセイバー(アーサー)の失われた宝具であり、召喚の触媒。 作中で登場する他の宝具とは違い、当時の地層から発掘された現物。 結局、作中ではセイバーの手に戻ることは無かった。 霊子に分解して体内に埋め込むことが可能で、セイバーの魔力を得ることで所持者に凄まじい回復力を与える。 セイバーのマスターがこの恩恵を受けると、即死級のダメージからでも即座に再生してしまうほど。 ただしダメージを無効化するわけではないため、受けた痛みは軽減されない。 真名を解放することで数百のパーツに分裂し、所有者をありとあらゆる干渉から"遮断"する。 この機能は防御というレベルではなく、この世界における最強の護りと称される。 時系列順で読む ルートA-1 Back 砂鉄の楼閣(後編) Next 忘れてはならないもう一人 ルートA-2 Back 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐 Next 忘れてはならないもう一人 投下順で読む ルートA-1 Back 砂鉄の楼閣(後編) Next 忘れてはならないもう一人 ルートA-2 Back 砂鉄の楼閣(後編) B-1ルート分岐 Next 忘れてはならないもう一人 Back Next 砂鉄の楼閣(後編) 御坂美琴 裏表トリーズナーズ(前編) 砂鉄の楼閣(後編) 真紅 死亡 砂鉄の楼閣(後編) ラッド・ルッソ 裏表トリーズナーズ(前編) 砂鉄の楼閣(後編) ブレンヒルト・シルト 死亡 砂鉄の楼閣(後編) ゼロ [[]]
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あいたくてすきすぎて【登録タグ あ コラーゲンボーイズ 曲 歌手音ピコ】 作詞:将星(コラーゲンボーイズ) 作曲:若G(コラーゲンボーイズ) 編曲:若G(コラーゲンボーイズ) 唄:歌手音ピコ 曲紹介 「だって君は二次元の女の子〜」 歌詞 さっきからやってる様に見えて 全くペンも動かせてない 頭ん中の回路もショート寸前 今にでもフリーズしそうだ そうだ君に会いたいからだ 恋してから何もそう出来ないんだ なんて誤魔化して今日もノート開いて そうやって言い訳するのはもうやめよう 会いたくて 会いたくて 会いたくて 好きで 好きで 好きすぎて 上の空 過ぎ去って行く季節の中で 君さえいれば他に何もいらない 代わり映えのない言葉 いつも少し冷めたような態度 ここん所そんなことばかりが 気になって今にでも投げ出しそうだ そうだ僕も分かってるんだ 諦める事もうん必要なんだ でも君がたまに見せる優しさ それに釣られてまた抜け出せない 会いたくて 会いたくて 会いたくて 好きで 好きで 好きすぎて 分かんない 本当の気持ち教えてよ 曖昧な言葉じゃもう足りない いつもその澄んだ眼差しで 僕のこと見つめているけど 何で抱きしめさせてくれないの? いつもこんなに近くにいるのに… 会いたくて 会いたくて 会いたくて 飽きもせず今日も愛を注ぐよ 画面の檻の中の君に 所詮叶わない恋感じてる 会いたくて 会いたくて 会いたくて 好きで 好きで 好きすぎて 愛してる ときめくよいつもその笑顔 だって君は「二次元の女の子」 コメント このきょくわたしはだいすきです。これからもいいきょくをつくってくださいね。 -- だれか (2011-06-19 07 57 02) すっごい好きな曲!最近毎日無限ループ -- 名無しさん (2011-06-26 16 36 12) うち、最近コラーゲンボーイズにはまってますっ!将星&若Gにギュってしてもらいたい♥ -- さあ(笑) (2011-08-29 09 11 08) にじげんかよww -- ふらん (2012-09-28 01 12 23) 曲中ではコラーゲンボーイズはVOCALOIDのキャラクターに恋をしてしまったようだが一説には歌手音ピコの恋愛に対する自問自答ともとれる。 -- ARMS (2013-08-08 06 03 40) 名前 コメント
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元スレURL 千歌「会いたくて、きちゃった」 概要 離れ離れになった千歌への手紙を書く大学生梨子だけど… タグ ^桜内梨子 ^高海千歌 ^短編 ^しんみり ^ちかりこ 名前 コメント
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作:体育祭
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タグ おっとり 曲名あ 歌 大藤史 作詞 小室みつ子 作曲 大森俊之 作品 夢見師(PS2)OP
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あなたにあいたくてあとCMがおおすぎて【登録タグ VOCALOID あ でんの子P 曲 蒼姫ラピス】 作詞:でんの子P 作曲:でんの子P 編曲:でんの子P 唄:蒼姫ラピス 曲紹介 ネタ曲投稿祭2021秋参加作。2位を獲得した。 YouTubeのASMR動画の途中で楽天カードマンが登場するような動画広告や、邪魔になるオーバーレイ広告をネタにした楽曲。 歌詞 今なら 5000ポイントプレゼント ラピカード ラピカード 年会費無料 ラピカード なんと スマフォでラクラク申込み 買って 買って 買って 買って 蒼姫ラピスのVOCALOID 買って 買って 買って 買って 蒼姫ラピス 蒼姫ラピス 蒼姫ラピスのVOCALOID あなたが去ってしまった この部屋にこびりついた思い出が痛い わがままでごめんなさい ようやく 気付いた 今更だけど わたしが願うことは たった一つだけ ・・・それは 買って 買って 買って 買って 蒼姫ラピスのVOCALOID 買って 買って 買って 買って 蒼姫ラピス 蒼姫ラピス 蒼姫ラピスのVOCALOID わたしの そばにいてくれること それだけ.. それだけを望みます もしもあなたが戻ってきてくれたら 今なら 5000ポイントプレゼント それ以上のことはないから わたしは あなたと 巡り逢うために 生まれてきたんだと信じてる 時間を戻して 私の願いを あなたに なんと スマフォでラクラク申込み コメント フォント変えててわかり易くて助かるwほんとこんな感じなんだよなつべの広告……。 -- 名無しさん (2023-07-17 03 55 17) 名前 コメント