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やる夫のポケモン > 乱菊 基本情報 特性1:影踏み 相手はポケモンの交代・逃走が不可能になる。テレポートも失敗する。 お互いが同じ特性を持っている場合、双方無効化される。 バトンタッチ、トンボ返り、ボルトチェンジ、綺麗な抜け殻、脱出ボタンによる交代は有効。 特性2:マジックガード 相手の攻撃以外で、ダメージを受けない。 ※状態異常、相手の特性や持ち物の反射ダメージ、天気、場に撒かれた技、自分の技の反動、などのダメージは無効化する。 身代わりや大爆発を使用した時、混乱で自分を攻撃した時のダメージなどは無効化できない。 ┏【種族値】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━──────────┃H P 60┃攻撃 125┃防御 60┃特攻 50┃特防 115┃素早 125 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ タイプ:ゴースト/格闘 耐性:◎=4倍 ○=2倍 △=1/2 ▼=1/4 ×=無効 ノ 炎 水 電 草 氷 格 毒 地 飛 エ 虫 岩 ゴ ド 悪 鋼 × × △ ○ ○ ▼ △ ○ 技一覧 技名 分類 タイプ 威力 命中率 範囲 効果 引っ掻く 物理 ノーマル 40 100 相手一体 なし フェイント 物理 ノーマル 30 100 相手一体 相手の守る・見切りを無効化して攻撃(優先度+2) 睨み付ける 変化 ノーマル - 100 相手全体 相手の防御を1段階下げる 影打ち 物理 ゴースト 40 100 相手一体 先制技(優先度+1) 追い討ち 物理 悪 40 100 相手一体 相手が交換すると、交換する前のポケモンに威力2倍で攻撃 挑発 変化 悪 - 100 相手一体 相手が3~5ターンの間攻撃技しか出せないようにする 不意打ち 物理 悪 80 100 相手一体 先制技(優先度+1)発動できない場合がある ※1 影分身 変化 ノーマル - - 自分 自分の回避率を1段階上昇させる 切り裂く 物理 ノーマル 70 100 相手一体 急所に当たりやすい 剣の舞 変化 ノーマル - - 自分 自分の攻撃を2段階上昇させる ハサミギロチン 物理 ノーマル - 30 相手一体 一撃必殺技 雨乞い 変化 水 - - 全体の場 天候を5ターン雨が降り続いてる状態にする 電磁波 変化 電気 - 100 相手一体 相手を麻痺状態にする シャドーボール 特殊 ゴースト 80 100 相手一体 20%の確率で相手の特防を1段階下げる 恩返し 物理 ノーマル 不定 100 相手一体 懐き度が高いと威力が上がる(最高100) 敵討ち 物理 ノーマル 70 100 相手一体 味方が瀕死になった次のターンに使うと、威力が2倍 ローキック 物理 格闘 60 100 相手一体 100%の確率で相手の素早さを1段階下げる 眠る 変化 エスパー - - 自分 自分のHPを全回復し、状態異常も回復する2ターンの間眠り状態になる。HPが満タンだと失敗する 目覚めるパワー 特殊 ノーマル ※ 100 相手一体 ポケモンの個体値によって威力とタイプが変化 火炎放射 特殊 炎 95 100 相手一体 10%の確率で相手を火傷状態にする 10万ボルト 特殊 電気 95 100 相手一体 10%の確率で相手を麻痺状態にする 冷凍ビーム 特殊 氷 95 100 相手一体 10%の確率で相手を凍らせる ギガインパクト 物理 ノーマル 150 90 相手一体 使用した次のターンは反動で動けない 守る 変化 ノーマル - - 自分 そのターン自分が受ける技を無効化する(優先度+4)連続で使用すると失敗しやすくなる フラッシュ 変化 ノーマル - 100 相手一体 相手の命中率を1段階下げる 吹雪 特殊 氷 120 70 相手全体 10%の確率で相手を凍らせる、天気が霰だと必中 泥棒 物理 悪 40 100 相手一体 持ち物をこちらが持っていないとき、相手の持ち物を奪う 大文字 特殊 炎 120 85 相手一体 10%の確率で相手を火傷状態にする 雷 特殊 電気 120 70 相手一体 30%の確率で相手を麻痺状態にする天候が雨の時は必中、晴れの時は命中が50に低下 破壊光線 特殊 ノーマル 150 90 相手一体 使用した次のターンは反動で動けない 自然の恵み 物理 ノーマル 不定 100 相手一体 持っている木の実によりタイプと威力が変化使用すると持っていた木の実は消費される 身代わり 変化 ノーマル - - 自分 自分のHPを1/4減らし、身代わりを作る 霰 変化 氷 - - 全体の場 天候を5ターン霰が降り続いている状態にする 砂嵐 変化 岩 - - 全体の場 天候を5ターン砂嵐が吹き荒れる状態にする 峰打ち 物理 ノーマル 40 100 相手一体 必ず相手のHPは1残る 瓦割り 物理 格闘 75 100 相手一体 相手の場のリフレクター・光の壁を解除してから攻撃する 空元気 物理 ノーマル 70 100 相手一体 使用者が毒・猛毒・麻痺・火傷状態の時、威力が2倍になる しっぺ返し 物理 悪 50 100 相手一体 相手の後攻になった時、威力が2倍になる 燕返し 物理 飛行 60 必中 相手一体 必ず命中する 居合い切り 物理 ノーマル 50 95 相手一体 なし 岩砕き 物理 格闘 40 100 相手一体 50%の確率で相手の防御を1段階下げる 堪える 変化 ノーマル - - 自分 瀕死になる攻撃を受けてもHPが1残る(優先度+4)連続で使用すると失敗しやすくなる リサイクル 変化 ノーマル - - 自分 自分の位置で最後に使われた持ち物を自分の持ち物にする 日本晴れ 変化 炎 - - 全体の場 天候を5ターン陽射しが強い状態にする シャドークロー 物理 ゴースト 70 100 相手一体 急所に当たりやすい 八つ当たり 物理 ノーマル 不定 100 相手一体 懐き度が低いと威力が上がる(最高100) 水の波動 特殊 水 60 100 相手一体 20%の確率で相手を混乱させる 誘惑 変化 ノーマル - 100 相手全体 相手の特攻を2段階下げる異性にのみ有効、性別不明は無効 ※1 相手が変化技を使用するか、相手に先制されたときは技は不発である。 乱菊のレベル技 Lv.1 引っかく Lv.1 フェイント Lv.4 睨みつける Lv.9 影うち Lv.12追い討ち Lv.17挑発 Lv.20不意打ち Lv.25影分身 Lv.28切り裂く Lv.33剣の舞 Lv.35ハサミギロチン Lv.38クロスチョップ Lv.41辻斬 Lv.44サイコカッター Lv.49起死回生 Lv.52鎌鼬 Lv.57先取り Lv.60滅びの歌 乱菊の現在の特徴 基本的な運用は他のデスサイズ組と同じ。 覚える技のベースはアブソル、レベル技がベースから一部ないし全て変更されている。 習得可能技一覧 習得相手 習得できる技 エド(教え技) 頭突き、のしかかり、捨て身タックル、物真似、スピードスター、夢食い、悪夢、いびき、泥かけ、凍える風、連続切り、寝言、アイアンテール、なりきり、マジックコート、叩き落とす、横取り、飛び跳ねる、不意打ち、悪の波動、思念の頭突き、イカサマ、自己暗示、岩雪崩、威張る ルイズ(卵技) 捨て身タックル、呪い(鈍い)、滅びの歌、黒い眼差し、メガホーン、バトンタッチ、マジックコート、ダメ押し、先取り、お仕置き、不意打ち、思念の頭突き、祟り目 金剛晄 クロスチョップ、カウンター、コメットパンチ、馬鹿力 ソル シャドーダイブ、聖なる剣、神秘の剣
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キャラの特徴 通常技 必殺技 超必殺技 定番コンボ 立ち回り vs対策 キャラの特徴 通常技 立小 立中 立大 屈小 屈中 屈大 J小 J中 J大 必殺技 26 426 626 28 22 超必殺技 2626 2426 6426 定番コンボ 立ち回り vs対策
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,. -‐ -─‐- 、 | | | , '__ヽ ,´,r‐- 、 ヽ | | | //´ _ヽヾ ,、 ヽヽ | | | /' l l´、ヽY// . ..| ', 'ヽ | | | ,'| |. |-‐‐-'‐ "´| 、、'、 ',} | | | ! l ハ! | _, -‐、 ヽヽ、| | | | ,ヘ// | ノz='゙ ィr'モfy、\、ゝ、_ | | | //'ソノ./ノヒゞ'`  ̄ たヽ弋、 | | | /;,くィソイ人 l. ム ト、 ヽ| ,r| | ,.、 ' ´ ヽ'j,ンノ |..l\ ー‐ ,ィ| l |.l\ ヽ ,ィl | | ,、 ' ,、r1`/ //ノメ|> 、 イ ト,|l ', | lヽ ', |/ l|.r, ! / ,、 ´l |ゞー'‐'//_ . . . . .,|! ト、_二>ヘ | }' 1..| , ' / l | / / ヾ ,/‐|| ', l 'ヽ !. ´ | .| l . ィ'|l l | / / ○´´ | ', l | | ', l / | `ー, ≦_l| l | ,、' /,' lj || l .', ! | | | , ' / | | /| |!'/ /,' ! il/ || | ',! l l ヽ , ' / | | | /| / { l l! ノl l 1 l | ヽ_,,,,/ / | | | | ,'. | | l ', ', | /,.' l | ! | /´ // / .| |. │ ', l | ト; l ヽヽ .. |.// / | l| ' / l || |. | |. │ ゞ、| |人 \ゝ'´/ / | | l l i || . /|l | |. │ | | |l\/\; ゞ'´ / | | | ハ || ../ || | |. | その美しい容姿とけしからんおっぱいとは裏腹に少々残念な人で 朽木にスパイに来た言葉くんとよく入れ替わられており 初登場の時は言葉くんの扮した偽者だった 他の朽木の面々からは言葉くんの時の方が有能なのでむしろ歓迎されており 幕間では知らぬ間に給料が上がっていてビックリしている様子が描写されている 原作では姉御肌系のイイ女らしいがこのスレでそれが発揮されるかは今のところ不明
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「-BLEACH-ブリーチ」 第224話:3vs1の戦闘!ピンチの乱菊 「3/3」 トップページ
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「-BLEACH-ブリーチ」 第224話:3vs1の戦闘!ピンチの乱菊 「2/3」 トップページ
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「-BLEACH-ブリーチ」 第224話:3vs1の戦闘!ピンチの乱菊 「1/3」 トップページ
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ノーマル 暗剣 欠片 1-3 井上織姫 2-2 佐渡泰虎 2-6 黒崎一護 3-6 石田雨竜 3-9 山田花太郎 4-9 朽木ルキア 5-9 阿散井恋次 6-9 松本乱菊 7-9 黒崎一心 8-9 涅ネム 9-9 砕蜂 10-9 班目一角 ハード 兵装 欠片 1 班目一角 5 黒崎一護・卍解 10 涅ネム 15 砕蜂 20 松本乱菊 26 綾瀬川弓親 32 浦原喜助 38 草鹿やちる EXハード 十字 欠片 1 涅ネム 2 佐渡泰虎 3 松本乱菊 4 石田雨竜 5 井上織姫 6 朽木ルキア 7 黒崎一護 8 山田花太郎 9 班目一角 10 綾瀬川弓親 11 草鹿やちる 12 阿散井恋次 13 黒崎一護 14 浦原喜助 15 松本乱菊 16 班目一角 名前
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03-394 :BLEACHスレ335:2006/06/10(土) 02 05 17 ID oErHpPS9 ※女体化で二次創作モノです。 ※ジャンプ連載BLEACHより綾瀬川弓親が「もし男装の女性だったら」という先天的女体化ネタです。 ※本スレに投下したSS(乱菊×ケイゴ)のアナザーストーリーみたいな感じですが ※向こうに投下できないので此方に置かせて頂きます。 ※乱菊&弓親(女)×ケイゴ、で女性攻めモノになります。元のお題は童貞食い。 ※途中までですが投下させてください。お邪魔します。 03-395 :BLEACHスレ335:2006/06/10(土) 02 06 48 ID oErHpPS9 「あ、出すっ、うわマジもう出る、顔かけちまうからっ!!」 「イイわよ、その代わり、たぁっぷり出して、よッ!」 見張りとして立っている体育倉庫の内側から、熱い声が聞こえてくる。 「あはッ…青臭くて、濃いわねぇ…」 妖艶な同僚の恍惚な声に、喉がこくりと鳴るのが解った。 「んンッ、おいしぃ…ふふ、いい味よ…」 ぺちゃり、と精液を啜るであろう音。 抑え隠している女の部分を、刺激された。 さてこれから本番へ入ろうか、と荒い吐息を抑える一組の男女の目の前で、倉庫の扉が開いた。 がらっ。 何事かと慌ててそちらを見て、ケイゴは驚いた表情を、 そして乱菊は一瞬目をぱちくりとさせ…すぐに楽しそうに、意地悪げに笑った。 其処に立っていたのは、全身を黒で固めた…死覇装姿の、弓親だった。 「どぉしたの弓親、義骸から出ちゃって…ていうか、義骸は?」 「ソウルキャンディ入れて見張りさせてる、から…」 僅かに赤い頬、少し上がった吐息。ケイゴがびびって逃げようとするのを、乱菊が圧し掛かって留めた。 「安心しなさいってば。この子はねー、怖ぁい隊長の厳命でこぉんなカッコしてるけど…」 「乱菊さん、言わないでよ…僕は、別にそれを受け入れてるんだし…」 ぷつり、と、弓親が首を覆い隠している橙色の布を取り外すと、声がワントーン上がった。 よく見れば、その喉元に喉仏はなく、白い肌がすらりとあるだけだった。 滑らかなアルトで喋りだす弓親に、ケイゴの目は驚きに大きく見開いていく。 03-396 :BLEACHスレ335:2006/06/10(土) 02 07 44 ID oErHpPS9 「……外に漏れるほどの声を出す、乱菊さんが悪い」 「やだちょっと、ソレってアタシのせい?」 黒装束の上着を脱ぐと、首の布と同じ橙色で固められたサラシが、姿を現した。 胸の中央で閉じられた止め具に触れ、何か呟くと、ぱちり、と外れてサラシがほどけていく。 やがて露になった二つの胸のふくらみが露になり、ケイゴは思わず言葉を零していた。 「弓親さん、アンタ、女だったのか…?え?だって制服の時喉仏あったし…」 「あれは、男の義骸を作ってもらって入っていたから…」 「あのね、この子は女人隊員禁制の隊に居たいがために男のカッコしてる健気な子なのよぉ」 「乱菊さんッ!」 袴と草履、そして足袋まで脱いでしまうと弓親の体を覆うものは何も無くなった。 乱菊よりも細く引き締まった体、そして大きくはないが張りの良さそうな胸。 適度な筋肉に彩られた、乱菊とはまた違う女の体に、ケイゴの喉がこくりと鳴った。 思わず上半身を起こして弓親のしなやかな肢体に見入るケイゴに、乱菊が悪戯な笑みを浮かべる。 「…とりゃっ!」 「うぉわっ!?」 後ろに回っていた乱菊に羽交い絞めにされ、ケイゴは思わず声を上げた。 座ったままいびつな大の字を描くケイゴの目の前に立つと、弓親は上気した赤い顔で くす、と笑みを浮かべ…じっと、先程精を吐き出したばかりのケイゴ自身を見詰めた。 目の前に全裸の女性が居たら、ソコは童貞で健全な男子高校生の性というか何というか。 一度乱菊の胸で達したにも関わらず、既にケイゴのソレは天に向かい反り立っていた。 03-397 :BLEACHスレ335:2006/06/10(土) 02 08 31 ID oErHpPS9 「…僕の体を見て、興奮したんだ?」 くに、と。弓親の足が、ケイゴ自身を軽く踏み、撫で始めた。 「っ!!?」 「ほら、もうこんな硬くして…さっき一度出したんでしょ?なのに…」 足の裏で裏筋をさすったかと思うと、親指と人差し指で器用に掴み、揉まれる。 今まで受けたことのない刺激と言葉に、劣情を感じつつ、それでもケイゴは自身を益々硬くしていた。 後ろで羽交い絞めにしている乱菊も、挑発するかのようにその乳を押し付けてくる。 「恥ずかしくないのかな、こんな…僕の足で擦られて、でも良いんだよね…?」 言葉で責められ、足でもどかしい刺激を与えられ、張り詰めていくケイゴ自身がびくっと震えた。 先走りがこぼれ、弓親の足につぅとこぼれる。 「っく、うあっ…!ちょ、弓親さんっ…!」 「良い声…ねぇ、もっと啼いてよ、ほら…僕の足と乱菊さんの胸で、感じちゃって、さ…」 ケイゴの声にサディストの部分を揺さぶられ、弓親はぞくっと背を震わせた。 足で扱き上げるだけでもぞくぞくと快感が訪れ、自分のナカが濡れていく。 先を親指で擦り、ぬりゅぬりゅっと先走りの感触を楽しんでから、 足を下ろし、裏筋をつつぅっと親指の先でなぞり上げ、ぴんっと軽く弾いた。 その度にケイゴの口からは呻き声がこぼれ、反り立った自身はびくびくと震えた。 「あはっ、凄ぉい…弓親の足がそぉんなに気持ちいいのかしらぁ?アタシの胸より?」 「いや、そんなことないですよっ…」 「ふぅん…説得力ないね。こんな、硬くして…醜いよ」 弓親の嘲るような声と冷ややかな見下す目線にケイゴが逃げようとするのを、乱菊が押さえた。 03-398 :BLEACHスレ335:2006/06/10(土) 02 09 32 ID oErHpPS9 困った顔で二人の女性の間に挟まれたケイゴは、ついに情けない声を上げた。 「も、あの、勘弁してくださいよぉ…」 「…だって。どうするぅ弓親?」 懇願とも取れるケイゴの声に、弓親の足がぴたりと止まった。 「さっきまでの鳴き声が良かったから、許してあげるよ」 すぅっと足が引かれ、僅かに先走りの糸引いた足先を、弓親はマットに擦り付けた。 しなやかな肌は興奮のせいか僅かに上気し、それが一層艶かしかった。 「さ、ってとっ」 ぐいっと、羽交い絞めにしていた乱菊に引っ張られ、ケイゴはマットの上に仰向きに倒れた。 既に二回目と思えぬほどがちがちにそそり立っているケイゴ自身に、女二人の喉が鳴る。 「もぅ充分みたいねぇ…弓親、アンタ入れる?」 「…嫌だ」 「やだって…んじゃ、アタシの指?」 「僕は女とやる趣味はないよ」 「アンタワガママねぇ…」 「乱菊さんほどじゃないと思うけど?」 「……あのぉ…」 自分を他所に全裸で言い合いを始めた女二人に、ケイゴが恐る恐る声をかけた。 振り返った乱菊がにまぁっと笑みを浮かべると、ケイゴに猫なで声で聞いた。 「そういえばアンタ、もしかして…童貞?」 03-399 :BLEACHスレ335:2006/06/10(土) 02 10 06 ID oErHpPS9 「……はい、そう、です…」 「あはっ、じゃあ丁度よかったわぁ」 しょげ返りながらそう応えたケイゴの股間に指を這わせたまま、乱菊は嬉々として笑った。 何が良かったんだろう、と訝しげに見る弓親に視線をやると。 「弓親、アンタ指で触ってもらいなさいよ」 「「は!?」」 「何よぉ、拒否るんならアタシの指か、じゃなきゃコレぶっ刺すわよぉ」 ケイゴと弓親の声がリンクするのにも構わず、乱菊はケイゴのモノを触りながらそう言った。 「そ、れ、に…アンタ、今更我慢出来んの?もぉ濡れてるクセに…」 「ッ…」 俺、一体どうなるんだろなぁ、と、それでも股間の息子は素直に反応する自分に ちょっと嫌気がさしながらケイゴがぼんやりとそう思ったとき、す、っと、 自分の上に、丁度シックスティナインの格好で跨る弓親が視界に入った。 「触るだけ…ッ、そう、君に触らせてあげるんだからね…感謝しなよ?」 耳まで真っ赤にしているのが僅かに見えた、が、それ以上に、 目の前で微かに開く、今まで写真でしか見たことの無い女の中心に、ケイゴの視線は注がれていた。 僅かに潤んでひくっと震えるソコに恐る恐る手を伸ばし、薄いその花弁を そぉっと指でなぞり、入り口をゆっくりと開いてみた。くちゅ、と音がした。 「ッ…う、あんまり、酷くしたりしたら…殺すよっ…」 「は、はいっ…」 弓親のアルトの声に叱咤され、それでもケイゴの好奇心は、指をゆるゆると入れ進めていった。
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ミッドチルダ とある地下道 「―――――――」 不気味なまでに静寂の中を、一人の少女が歩いている。 腕には鎖が絡みついており、その先には正方形の形をした箱が二つ、繋がれていた。 「―――はぁ、はぁ」 おぼつきの悪い足取りで、少女は暗闇を進んでいく。 目的も、行く先もわからない。ただひたすらに前を見ては、疲労の身体に鞭を打つ。 そして、当てもなく孤独の世界をさ迷い続けている……何時までも何時までも。 ―――新たな交錯の引き金は、この少女から始まる 魔法死神リリカルBLEACH Episoade 6『Certain holiday of six mobile divisions』 魔法世界ミッドチルダ AM 0 13 「――――――――…。」 門をくぐり抜け、光の先に見えた場所――それは、新緑の森だった。 全体的に暗い所を見ると、どうやら今は夜らしい。一護は改めて辺りを見る。 しかし、何処を見ても覆い囲むような木々が広がっているだけだった。 ――ここが、魔法の世界なのか? 一護は早速疑問をぶつける。 「オイ、本当に此処で合ってんのか?」 「…座軸は間違いないはずだが…」 そう返すルキアも、どこか自信なさげだった。 しばらくすると、今度はチャドの驚きに満ちた声が聞こえてきた。 「おい…こっちを見てみろ」 チャドが指差す方向――少し高い丘より、下から見える光景――。 ――そこに広がるのは、未来都市のような街並み。 眩い月光の下に曝け出されるその都は、どこか現世とは違うものを感じさせる。 そして中央には、巨大な塔のようなものが、幾つか聳え立つように並んでいた。 彼等は間違いなく、魔法の地ミッドチルダに来ていたのだ。 「……すっげえな」 一護が、驚き半分にそう呟いた。 「だが……現世とはどこか似ているな…街並みとか」 同じく驚いた様子で、チャドもそう言った。 「なあんだ、あたしが想像してたのとは全然違うなあ」 ちょっと残念そうに、織姫が眼下の街並みを見る。 ――何を想像してたんだろう…ちょっと気になるところではあるが、発想が宇宙レベルの織姫に、どんな答えが返ってくるかわからないのでやめとく事にした。 「…そんな事はどうでもいいはずだ」 一護達の後ろで、そんな冷めた声が聞こえた。 振り向くと、冬獅郎達が自分そっくりの人形みたいなのを取り出していた。 「それ、義骸か?」 「ああ、霊圧を遮断する特殊な奴らしいが…」 死神が現世で活動する際、周りの人達に違和感がないように動けるよう作られた、擬似的な肉体。――それが『義骸』である。 ――で、あるのだが…。 「オイ、松本…これは何だ?」 自分の仮の体を見、若干怒りで震えるような声で、乱菊に訊く冬獅郎。 見てくれはどこからどう見ても自分そっくりであるのだが、彼の問題は一緒に来ている服装だった。 今、彼の義骸の服装は、薄手の白いワイシャツに、簡素な半ズボンという出で立ち。 しかも頭には、可愛い麦わら帽子を被っていた。 ――簡単にいえば、昭和の子供が着ていそうな服をしていたのだ。 「どうです? 隊長には何が似合うか一生懸命に考えたんですよ」 しかし、本人は何の悪びれもせず、寧ろ誇るように乱菊はそう言ってのける。 ギロリ、冬獅郎は乱菊を一睨み。 「…隊長の健康管理云々は考えてくれなかったんだな、どう考えても寒いだろコレ…」 確かに、段々と冷えるこの時期、そのうえ今は夜だ、いくら寒さに強い冬獅郎でも、寒いものは寒い。 しかし、乱菊は有無を言わせなかった。 「まま、隊長 ものは試しですって ちょっとでいいから着てみてくださいよ!」 「おい! やめろ馬鹿――」 皆まで言わせず、無理やり冬獅郎を義骸の中に押し込む乱菊。 そんな二人の漫才じみたやり取りを、一護達は遠巻きに見ていた。 「なあ冬獅郎、これからどうすんだ?」 「…既に本拠地は決めてある。これからそこに向かうぞ」 重い口調でそう言う冬獅郎だが、今の格好だと威厳すら感じられなかった。 これで今の時期が夏なら、背後に『少年時代』が流れていることだろう。 正直、一護達は笑いを堪えるのに精一杯だった。 「う~ん、やっぱり虫かごとかあった方が良かったかな?」 「松本……殴っていいか?」 「…それより、斑目達はどうした?」 ふと気づいたように、辺りを見回す冬獅郎。 「あれ? そういやいねえな」 随分静かだと思ったら、あの戦闘集団十一番隊の姿が影も形も無かったのだ。 本格的にどこに行ったか探し始める一護達。 「あいつ等何してんだ!?」 「…ム……」 「こっちにもいないよ!」 「…一護…」 「そういや、白哉もいねーぞ!」 「…ちょっといいか?…」 「何だよ!? チャド」 先程から肩を叩くチャドに焦れるように、一護が振り返る。 次の瞬間、彼の口からとんでもない言葉が出てきた。 「彼等なら、『俺達は勝手にすっから後はよろしく』…とか言って此処を離れていったぞ」 「「「「「「…ハァ!!!?」」」」」」 あまりの出来事に、一護達はただただ素っ頓狂な声を上げるだけだった。 「な、何で止めねーんだよ!!?」 「と…止めようとした時には、もういなくなってた」 「ど、どうします? 隊長」 冬獅郎は、不機嫌そうに頭をガシガシと掻き毟って言った。 「…仕方ない、放っておけ」 いまさら止めようとした処で、素直に言う事を聞く輩では無いということは、それなりに長い付き合いなのでわかっている。 本音を言えば、あまり管理局の連中に事を知られるようなことは避けたいのだが、彼等ならそう易々と捕まりもしないだろう。 ――それに、大体こうなることは、行く前からすでに予想できたことでもあった。 「あいつ等なら、戦いの時にでも来るだろ」 「白哉は?」 「…あいつとは元々別行動だ」 冬獅郎はそれだけ答えると、とりあえず今いる面子の確認をした。 白哉はともかく、敵の戦力が分からない今、十一番隊の連中がいないのは少し痛い感じもするが、まあ大丈夫だろう――とりあえず今はそう思うしか無かった。 「とりあえず、一旦降りるぞ。いつまでもここにいても仕方ないからな」 一護達もそれに頷き、山を降りる。 しかし、戦いの時は、直ぐそこまで迫っていた。 翌日 機動六課 訓練場にて 「……はぁ」 今日もまた、散々としごかれた新人達。 やっとのことで、朝の訓練が一段落し、なのはからの労いの言葉が掛けられた。 「みんな、お疲れ様。――でね、実は何気に、今日の模擬戦が第二段階クリアかの見極めテストだったんだけど」 「…え?」 咄嗟のことでついていけない新人達をよそに、なのはは一緒に教えていたヴィータと、長い親友の一人、フェイト・T・ハラオウンに訊く。 「二人はどうでした?」 「――合格」 「早っ!」 「ま、こんだけミッチリやってて、問題あるようなら大変だってこった」 当たり前だ、という調子でヴィータは言った。 二人の返答に、なのはも頷く。 「私も、みんな良い線行っていると思うし、じゃあこれにて二段階終了!」 「やったーー!!」 喜びに立ち上がるスバル達。どうやら先程までの疲労などすっかり忘れてしまったようである。 「デバイスリミッターも、一段階解除するから、後でシャーリーの所へ行ってきてね」 「明日っからはセカンドモードを基本形にして訓練すっからな」 「――え、明日?」 疑問符を浮かべるキャロに、ヴィータが答える。 「ああ、訓練再開は明日からだ」 「今日は私達も、隊舎で待機する予定だし」 「みんな、入隊日からずーっと訓練漬けだったしね」 あまりに簡単に放られた言葉。それを理解するのに、少し時間がかかったが。 その意味が、ゆっくりと分かり始めたときには、皆の顔は無意識に嬉しさに満ち満ちていた。 「――ま、そんなわけで」 「今日はみんな、一日お休みです! 街にでも出かけて遊んでくるといいよ!」 「はーーーい!」 元気いっぱいの新人達の声が、六課の訓練所内に響いた。 ミッドチルダ 首都クラナガンのとある建物。 見かけこそは他に立ち並ぶビルと何ら変わりはないものの、中を覗くと中々に異様な光景が広がっていた。――少なくとも、この地の人々はそう感じるだろう。 木で造られた廊下、階段。襖の扉や畳の部屋。いわゆる和式の造りだった。 その一つ、『執務室』と描かれた部屋にて、乱菊は頭を抱え込んで何やら唸っていた。 ――悩む彼女の前には、山のような書類の数々が散乱している。 「う~~、どうしよう…」 「松本…唸る暇があったら早くやれ」 隣の一際大きい隊長机で、冬獅郎の声が飛んできた。 彼の机にも、乱菊と同じ…否、その倍はあろうかという紙の束で覆われていたが、乱菊と違ってテキパキとこなす為、その減りはすごく早い。 「そんなこと言ったって…この数はないですよ!」 「早くしないと陽が暮れるぞ」 「…わかりましたよ」 渋々一枚の書類に手をつけるが、数秒も経たないうちにまた唸り始める。さっきからずっとこれの繰り返しだった。 乱菊のこのような態度には、理由がある。 ――それは数分前のこと。 「とりあえず、これからの方針を決めるぞ」 朝に行われた、ミーティングの時だった。 「繰り返しになるが、俺達がここに来た目的は、また何か企図している藍染の足取りを、少しでも多く掴むこと。 その鍵となるのが、奴の狙っているレリックという代物、これが藍染に渡る前に俺達がいち早く回収し、そこから――ここまではいいよな?」 冬獅郎は一旦区切って、皆がついてきているかどうかを見た。 簡単に確認すると、冬獅郎はまた続ける。 「だが、ここは異世界。勝手な行動はできねぇし、『少しでも』目立つものなら管理局の連中が即動き出して来るだろう、そうなるとますますやりずらくなる」 無駄に『少しでも』、を強調して、一護を睨む冬獅郎。 この態度には、一護もカチンときたようだ。 「じゃ、これからどうすんだよ!」 声を荒げて一護は、冬獅郎に喰ってかかる。冬獅郎は、一泊間を置いてから続ける。 「とりあえず問題なのは、この辺の地理だ。知ると知らないとでは、大きな差が出る…簡単には見つからないよう、結界を張ってはいるが、この場所自体安全の保証は無いからな。――だから、お前等に最初にやってもらうのは、その辺も含めた捜査だ」 冬獅郎は、そう言って皆を見渡した。 「怪しいところ、脱出の際に逃げ口になりそうなところ、――何でもいい、それを調べてくれ。無論何か進展があったら、すぐに連絡しろ。後で報告してもらうからな。」 「さっすが隊長!!」 ここで、乱菊が自分のことのように、嬉しそうに言った。 「ここまで考えてるなんて、やっぱりできる人は違いますね!」 「…メンバーを選出するぞ」 冬獅郎は、大して取り合わずに続ける。 「ペアに分かれて、黒埼・朽木、阿散井・茶度、あと井上だ。黒埼、朽木、阿散井は、既に素性がばれているかも知れないから、特に注意を払っておけ」 「…あれ?」 おかしいぞ、というような声を上げたのは、無論乱菊だった。 「隊長、あたしは?」 「テメエと俺は待機だ――当たり前だろ」 「え…えぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」 本人にとって予想外の展開に、乱菊は戸惑いを隠せない。 早速、冬獅郎に詰め寄る乱菊。 「な…何でですか!!?」 「理由は二つある、一つは、この世界は戸魂界よりも現世に近い。なら、現世に住む黒埼達の方が、俺達が見落としそうな事に気づく可能性があるだろ。――後もう一つ」 今度は、あえて乱菊と正面から向かいあい、ギラリと見据えて言った。 「――テメエが行ったら、仕事をしねえじゃねえか!」 考えてみれば、至極当然の判断といえた。 ただでさえ行くときに、任務より『そちら』の方に現を抜かしていたのだ。そうしない方がどうかしているといえよう。 しかし、乱菊は納得がいかないようだった。 「で、でもさっき地理の把握は重要って言ったじゃないですか!? だったら人手は一人でも多い方が…」 「待機する役も重要だろうが ――安心しろ、暇つぶしの物はちゃんと用意してある」 そう言って冬獅郎は、後ろの隊長机にある書類の山を指差した。 ―――すなわち、イッツ、デスクワーク。 瞬間、乱菊の血の気が一気に引いた。 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!! な…何なんですかあの数!??」 「当然だろ、今回の任務についての報告書と確認書、それから十番隊の業務云々……まあ、あそこまで溜まったのは、いままでテメエが何かしら理由をつけてはさぼってきた所為なんだけどな。まあ自業自得という奴だ」 いい迷惑だ、と言わんばかりに冬獅郎はため息をついた。 異世界まで来ておいて、まさか見慣れた書類が出てくるとは、乱菊にとっては思いもよらないことであっただろう。 「まあ、アレが全部片付いたら、考えてやらんでもないけどな」 「た、隊長、何も今日やらなくても、明日やりますから!!」 「駄目だ テメエの『明日』は信用できねえ」 その後も、何とか自分も捜査したいことを抗議すること数十分、だが結局、冬獅郎は首を縦に振ってはくれなかった。 ――こうなったら最後の手段。 「隊長~~オ、ネ、ガ、イ♪」 遂には、色仕掛け作戦を使い始めたのだ。 この効果は、思わず一護達が赤面するほどのものではあったが、 『子供』+『長い付き合い』である冬獅郎に、通用するはずがなかった。 「いいから、や・れ」 そんなこんなで、軽く数時間が経過していた。 しかし未だに書類の山は、彼女を嘲笑うかのようにその場に鎮座している。 「隊長…もう無理ですぅ…」 「愚痴を零すぐらいだったら筆を動かせって何度も言ってるだろ!」 ただでさえ書類整備が苦手な乱菊。その上早く片付けようと逸る気持ちが全て空回りしているおかげで、どうしても集中する所は自然と書類の山の方へと言ってしまうのだった。 数分掛けて一枚仕上げては、未だに積もる書類を見て挫折に数十分―――この負の連鎖が、始まりから今までずっと続いていたのだった。 「隊長~~~」 「駄目だ」 「まだ何も言ってないじゃないですか!」 「言いたいことならわかる、仕事を名目に遊びに行きたいんだろ?」 この口論自体、もう何度目になるだろうか…。 しかし、同じ結果になるとはわかりつつも、乱菊は諦めきれないようだった。 「そんな、あたしだって、今回はあそっ…仕事の気持ちでちゃんと来ているんですよ!」 「遅えよ、今ホンネが聞こえたぞ。己の欲すら隠せない奴をどう信じろっていうんだ?」 「隊長は部下を信じるところから始まるんですよ?」 「だったらより信用されるようにもっと行動で示せ」 さらに三十分ほどの時間を要して、この口論にも決着がついた。 結局乱菊は、重い溜息と共に再び席に戻る。 そしてまた、目の前の宿敵と目を向けることとなった。 「―――隊長のケチ」 明らかに聞こえるように放られたその言葉、聞こえたか聞こえなかったか、しかし冬獅郎は先ほどの口論なんかまるで無かったかのように仕事の続きを始めていた。 乱菊も、渋々仕事に取り掛かる。 しかし、やはり同じことの繰り返し。 そして無駄に時間は流れていく。 「はぁ…………」 おもむろにつくため息。――冬獅郎の筆の動きが鈍った。 「はぁ~~~ぁ」 やるせなさそうに書類を見下ろし、またため息。――冬獅郎の筆が止まった。 「はぁ~~~あ~~~あ」 三度のため息。――冬獅郎の筆が震えだす。 「はぁ~~~~~~~あああ~~~~~~~~~あ~~~~~~あ」 今度はもはやため息ではないだろ と思えるくらいに長いため息。 ―――バキッと冬獅郎の筆が真っ二つに折れた。 「いい加減にしやがれ、ため息ばかりつきやがって!!!!!」 遂に堪忍袋の緒が切れた冬獅郎、机を思い切り叩いて乱菊に怒鳴りこんだ。 同時に、せっかく整理した書類が幾つか宙に舞い散る。 しかし、乱菊の態度は変わらない。 「だってぇ…本当にわかんないんですもん」 文字通り手を上げて降参の素振りをする乱菊。 そのあっさりとした態度に、冬獅郎は苛立ちを隠せない。 「……勝手にしろ!」 そう吐き捨て、再び仕事に戻る冬獅郎。 乱菊も、大して取り合わずにまた大きなため息をつき始める。 「はぁ…………」 ―――そんな状態が、さらに長い間続いた。 しばらくして、おもむろに冬獅郎が呟くように言った。 「……けよ」 「え、?」 「とっとと何処か行っちまえって言ってんだ!」 半ばキレ気味に冬獅郎は言い放つ。 ――瞬間、乱菊の表情がいきなりガラリと変わった。 「隊長……」 「仕事しねえで四六時中そんなウザッてぇため息ばかりしやがって…こっちまで集中できなくなっちまう…もういい、今回だけは見逃してやる。」 「た…たいちょ~~~~!!」 先程の鬱そうな顔はどこへやら、喜色満面の表情で乱菊は冬獅郎に抱きついた。 二人の背丈からして、丁度冬獅郎の顔は乱菊の神々の谷間にすっぽりと収まる形になる。 「隊長、ホントッ、大好きですよ!!」 「分かったっ…分かったから早く行け!!」 「は~~~い」 小気味良い返事をして、早速支度にとりかかる乱菊。 やっと谷間から解放された冬獅郎は、どこかやるせない表情で乱菊の机の書類を見る。 ――――今日中に終わるだろうか? 「準備完了っと」 「早っ!!!」 次に冬獅郎が乱菊を見たときには、既に万端整った彼女の姿が。 ―――この速さを髪の毛一本でもいいから仕事に回してはくれないのか? 最後に乱菊は、冬獅郎の方へ向いてニッコリ微笑んだ。 「じゃあ遊びに…じゃなかった……遊びに行ってきますね!!」 「ああ………? ってオイ!! 結局遊びに行くのが目的かぁ!!!」 冬獅郎が叫んだときには、乱菊の姿が影も形も無かった。 「……あンの野郎ォォォ!!!!!」 冬獅郎の空しい声が、部屋全体に響いた。 だが、乱菊には聞こえなかったようだ。 今の彼女の頭には、もはや『仕事』の二文字は消えていた。 「もしもし、織姫? あたしなんだけどさ、ちょっと付き合ってよ!? え、仕事? いいじゃないそんなの!」 人々が賑わう町の中で、当てもなくうろつく少女が二人。 高い街道の上で、久々の休日を満喫していたティアナが、おもむろに口を開いた。 「でもホント、こんなにのんびりするの、久しぶり」 「……だね……」 空を見つめながらそう返すスバル。同じく休みを楽しんでいる筈の彼女の瞳は、しかし心ここに非ずと言ったように虚ろだった。 その相棒の、何を聞いても上の空のような顔を見てティアナはやれやれ、と肩を竦める。 「あの子達のこと、考えてんでしょ?」 「…え!!! それは…」 「とぼけないの、何年アンタとコンビ組んでると思ってるの? それぐらいお見通しよ」 ズバリ的中されたことで大いに慌てるスバル。 ――そんな顔されたら誰だってわかるっての。ティアナは胸中でそう呟く。 「なのはさん達の手前、何とかするとか大見え切ったのはいいけど、その顔だと何にも考えて無いようね」 「……うん」 今度はしょぼくれた様にスバルは頷いた。 ティアナは、今までの人生の中でも、最も大きいだろうため息をつく。 「アンタさぁ、いい加減その場のノリとかでもの言うのやめなよね」 「別に、ノリとかそうわけじゃないけど…」 視線を再び空に上げて、そして心から思う。 ――本当にただ、仲良くなれたらと。 「できれば、このまま何も起ってなきゃいいんだけど」 そう願うスバルの知らない所で、事態は動き出す。 ――場所は変わり、研究施設。 「レリック反応を追跡していた、ドローンⅠ型6機、すべて破壊されています」 「ほう…」 モニター越しに女性と会話をするのは、白衣の男――ジェイル・スカリエッティ。 別に映し出されたガジェットの残骸を見、至極興味深そうな表情をした。 「破壊したのは局の魔導師か…それとも、アタリを引いたか?」 「確定はできませんが、どうやら後者のようです」 「すばらしい、早速追跡をかけるとしよう」 底冷えするような冷笑を湛えてそう言うスカリエッティ。 と、そこにコツコツとこちらへと来る足音が一つ。 「ねえ、Dr。それなら、アタシも出たいんだけど」 「ノーヴェ、君か?」 「駄目よノーヴェ、貴女の武装は、まだ調整中なんだし」 「今回出てきたのがアタリなら、自分の目で見てみたい」 どこかぞんざいな口調で頼む、ノーヴェと呼ばれた少女。 しかしスカリエッティは、ゆっくりと首を振った。 「別に焦らずとも、アレはいずれ必ず、ここにやってくる事になるわけだがね……まあ、落ち着いて待っていて欲しいね、いいかい?」 「……わかった」 渋々納得したかのように、ノーヴェは引き下がった。 その間にも、彼等は事も無げに話を進める。 「ドローンの出撃は、状況を見てからにしましょう。妹達の中から、適任者を選んで出します」 「ああ、頼むよ」 そう言って頷くスカリエッティの視線は、もう片方のモニターに映し出された、何者かに破壊されたガジェットの詳細の方に移っていた。 「…俺の手が必要か?」 不意に、スカリエッティの後ろから声が聞こえてきた。 ノーヴェとは違い、音も無く彼の背後を取る男。 男は、面妖な出で立ちをしていた。 全てが白く染まった様な、死覇装にも似た服を着こなし、頭部には虚の欠片と思しき物が付いている。そして精密機械を思わせるような感情の起伏が見られない顔。 その冷徹な表情で、彼は睨むように訊ねていた。 「君の出番はここじゃあ無いよ」 しかし後ろを取られにも関わらず、スカリエッティの声は平坦そのもので返した。 「『破面』の力というのが、どれ程のものか、確かに見てみたいところだが、ここで使うにはいささか早計というもの……当面君には別の場所で働いてもらうとしよう、頼むよ、ウルキオラ」 その言葉に、男――ウルキオラは特に異議を唱えることはしなかったが、いま一つ、確認するように訊く。 「別に構わないが、藍染様との契約を、忘れてはいないだろうな?」 「わかっているさ、私と君の主とは、少なからない仲でもあるのだからねえ――約束はちゃんと守るよ」 彼の謹直さに苦笑いを呈しながらも、スカリエッティは頷いた。 ―――ならいい、とそれだけ確認するとウルキオラもその場を後に去って行く。 「……後は」 そしてスカリエッティは再び視線をモニターに戻し、そこに映る高台――を感慨も無く見下ろす少女を見て呟いた。 「愛すべきもう一人の友人にも、頼んでおくとしよう」 「あ~~買った買った!」 大手を振って歩く二人の女性がいた。 道行く人が十人いれば十人、振り返ること間違いなしの美女二人が、両手に買い物袋を抱えて歩いている。 「あの…いいんですか? こんなに買っちゃって」 隣の巨乳美女、織姫が手荷物を見て恐る恐る訊くが、しかし乱菊はどうってことなさそうに返す。 「いいのよ! ちゃあんと経費から落としてきたし!」 「それ、いいんですか? 勝手に使っちゃったら日番谷君怒るんじゃ…」 「大丈夫、うちの隊長は懐が大きいから!」 にっこり微笑んで言い切る乱菊。―――冬獅郎の苦労はまだまだ絶えない。 アハハ、と織姫が苦笑いを呈しながら、何気なく道を歩いていたその時。 「……?」 ふと、何か気付いたように織姫が立ち止った。 「どうしたの織姫?」 「え、と…今何か聞こえませんでしたか?」 周りを見渡して、聞き耳を立てる織姫。 乱菊もそれに倣うが、特に怪しい音は聞こえてこない。 「別に何も―――」 カコン く低い音が、乱菊の耳にも響いた。 聞き間違いじゃない、確かに何かが…こっちに来ている。 「こっちです!!」 織姫が、角の路地裏に回った。 乱菊も織姫の後を追って角を曲がる。 次の瞬間、二人は驚きに目を見張った。 「乱菊さん…これは……」 今、織姫たちの目の前には、重度の怪我を負った、少女が倒れていた。 だが、乱菊が目を向けたのはそこだけではなかった。 「……この子…」 乱菊が彼女を介抱しながら、少女の腕に繋がれているケースを見た。 ―――それは、レリックのケースに他ならなかった。 「とにかく、隊長に報告しなきゃ」 彼女の瞳には、いつもの楽天的な表情が微塵にも消えていた。 仮本拠地内 執務室にて 「…………終わった……」 今しがた最後の生類整備を終え、やっとぐったりと机に項垂れる冬獅郎。 ―――結局、乱菊の分までやってしまった。 先刻ほどに乱菊が出て行った時は、目も当てられないほどに雑多だった副隊長机も、今や自分の机と同じように綺麗に整っている。 しかし、今広がる光景とは裏腹に、冬獅郎の心はストレスで曇りに曇っていた。 (やっぱり俺はお人好しか?) 自己嫌悪で悶絶する冬獅郎。こんな調子では本当にこれからが思いやられる。 ――もし、こんな時に何かありでもしたら。 「ん、何だ?」 それを告げるかのように突然、懐にある伝令神機から、連絡が来た。 嫌な予感がすると分かりつつも、冬獅郎は渋々電話に出る。 「――十番隊 日番谷だが」 「隊長ですか? あたしです!」 「……何だよお前か」 ただでさえ深い眉間をさらに寄せて、不機嫌を露わに訊く。 「一体今度は何があったんだ?」 「単刀直入に言います、路地裏で少女が大怪我で見つかったんです!!」 そらきた。 また新たに増えた厄介事に、冬獅郎は大きなため息を吐く。 「オイ…テメエまさか、それも俺の手が必要とか抜かすんじゃねえだろうな? それくらいの状況判断ぐらい自分でしやがれ―――」 「少女の持っていた物の中に、レリックと思しき物も見つかりました」 「!!!」 瞬間、冬獅郎の目が驚きに開かれた。 まさかこんなにむ早く見つかるとは―――。 どうやら、状況というものは、いつもやってきてほしくない時にこそ、起こってしまうものらしい。 冬獅郎は再び大きなため息をつくと、改まった声で訊き直した。 「…場所は何処だ?」 「あ、ここです! 隊長」 数分後、乱菊達の処に、えらくクールな、昭和風の少年服を着た冬獅郎が路地裏へと行き着いた。 「隊長…その服で来たんですか?」 勇気があるなあ、という目と、それはないだろう、という珍妙な目で冬獅郎を見る乱菊。 ―――どうやら自分がこれを着せたことは遥か遠い記憶の中に置いてきてしまったらしい。 「松本…テメエ後で覚えてろよ」 そう吐き捨てから、改めて織姫の結界術で治療中の少女と―――隣の鎖に巻かれたケースを見やった。 「………封印は?」 「一応、しときました」 「――そうか」 冬獅郎の視線は、レリックから再びケースへと移る。 正確には、ケースに繋がれている鎖に注目しているようだった。 「…これは……」 ――切れている鎖の先端。 冬獅郎がそこから答えを導き出すのに、そう時間はかからなかった。 「レリックはもう一つある」 「――え?」 「直ぐに動くぞ、松本、準備をしろ」 あまりの事についていけない乱菊を余所に、冬獅郎はすぐさま懐から丸い丸薬――もとい義魂丸を取り出し、口に入れた。 仮初の肉体から、彼の本来の姿が現れる。 黒い着物『死覇装』を身に纏い、さらにその上、護挺隊の頂点に立つ者のみ着用が許される『隊首羽織』そこに書かれている『十』の数字の白い羽織をなびかせ、そこに長身の愛刀を担ぐ。 同時に、先程まで不機嫌で歪んでいた顔も、威厳のあるものへと変わっていた。 「はぁ…仕方ないか」 渋々といった感じで、乱菊も冬獅郎の後に続き、義魂丸を口にする。 同じように身体から魂が引き剥がされ、冬獅郎と同じ死神装束の彼女が現れ出る。 その頃には、冬獅郎がレリックをケースから取り出し、先程までの自分の義骸に指示を出していた。 「とりあえず、お前達は拠点にまでこのレリックを届けてくれ」 冬獅郎の身体に入った義骸は、大仰な敬礼を取って答える。 「わかりました! 70%の確率で届けます!」 「100%の確率で届けろバカ!!」 多少の不安は残しながらも、冬獅郎と乱菊の義骸達は素直に指示を受け取り、速やかにその場を去って行った。冬獅郎は素早く乱菊に向き直る。 「松本、お前はまず今のこの状況を黒埼達に伝えろ。それが終わり次第、残りのレリック探索を始めるぞ」 「え~~~! 地下水の中を探し回るんですかあ?」 乱菊も開けられた地下道を見、不服そうな声を出す。 しかし、冬獅郎は有無を言わせない。 「松本、束の間の休息はもう堪能しただろ?」 その口調は、先程までの不機嫌が醸し出したようなものでは無かった。怒鳴るでもなく諭すでもない、ただただ静かで、そして重みのある声。 「こっから先はマジで取り組め―――でねえと、死ぬぞ」 「…わかってますよ」 面倒そうに返しながらも、もう彼女の瞳からは、いままでのお茶らけた感じは消えていた。 「あの、日番谷君…あたしはどうしたら…」 「お前は、そのガキをある程度治療したら保護しろ―その後は命があるまで待機だ。わかったな」 「え、でも―――」 その眼には、「自分も戦いたい」という意味が容易に察せられた。 だが危害を加えられない彼女の性分では足手まといになることは分かり切っているし、第一状況が状況、個人の我儘に付き合うほど、今は暇でも無かった。 「言ったろ、待機する役も重要だってな――だから大人しく待っていろ」 「大丈夫よ、直ぐに終わらせてくるから」 「…わかりました」 乱菊のその言葉に、織姫はただ頷くしかなかった。 そして、二人は再び地下水の入口の方に向き直る。 「準備はいいな、松本」 「何時でも」 簡素な返答――だが、それだけでお互いの準備ができたことが、長年培ってきた信頼でわかっていた。 「日番谷君、乱菊さん」 織姫は、二人が消える最後の最後まで、冬獅郎達を見送っていた。 「―――気をつけて」 「ん、ああ」 「これが終わったら、またショッピングの続きでもしようね」 二人は、それぞれ織姫にそう返すと、暗い地下水の穴の中へと消えていった。 「―――それにしてもこの子、どっから来たんだろう?」 目を覚ますまでの間、その場で治療することにした織姫は、改めて酷く傷ついた少女を見やった。着てる服や、痣だらけの身体を見ても、ただ地下水を歩いてきたにしてはおかしい位ボロボロだった。無論、レリックのケースを何故運んで来たのかも大きな疑問の一つ――なのだが……。 (…何だろう、この子…) それ以上に織姫の疑問を抱かせているのが、少女から感じる『霊圧』だった。 決して大きくは無い、むしろ小さい部類に入るくらいものではあるのだが、――どこか違う、織姫は理屈ではなく感覚でそう感じた。 死神のものでも虚のものでも無く、だが自分達ともどこかかけ離れているような…この感覚は一体……。 「ウオオオオオオオオオオオオオァァァァァァ!!!!!!」 今度は路地裏の奥で、地獄から聞こえてくるような、重く、響くような唸り声が聞こえてきた。 織姫は、一旦手を休め、恐る恐る向こう角で蠢く影を見た。 ――腕が、脚が。 人体の形相を留め得ないその姿態を見たとき、織姫の神経に戦慄が走った。 (虚だ……!! 何でここに?) 新たに湧き出る疑問。 虚は、自分に気づかず、その場から消えていく。 ―――このまま野放しにはできない。 「ゴメンね、直ぐ帰ってくるから」 織姫は少女に結界術を張ったまま、急いで虚の後を追いかけた。 角を曲がり、細道を通り、人気の無い路地裏を突き進み―――そして、見つけた。 長い時間を掛けてしまったが、漸く虚の影がその眼に視認することができた。 (せめて、これぐらいはみんなの役に立たなきゃ!!) そう意に決し、攻撃準備を整え、虚に向かって行こうとして―――不意に止めた。 「―――ガッ!!!?」 「……え?」 突然虚は、頭を抱え込んで苦しみだした。 それと同時に、虚の身体がみるみるうちに溶けだし始める。 鱗のようなもので覆われた皮膚は、不気味な音を立てながらドロドロに落ちて、その上から蒸気が立ち込める。 「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」 そして次の瞬間、原形すら留めずに、虚は字義通り蒸発して、消えた―――。 「……どうなってるの……?」 織姫は、わけがわからず、ただそこで立ち竦むだけだった。 そして、その同じ頃。 「―――あれ?」 「どうしたの、エリオ君?」 同じく束の間の休暇を楽しんでいたエリオとキャロは、ある街路地で足を止めた。 「いや、何か叫び声のようなものが聞こえたような――」 エリオは不審げに辺りを見回し、そしてすぐ角にある細道に目を向けると、そこに一目散へと駆け出した。 「あ、待ってよエリオ君!」 急いで追いかけるキャロを余所に、エリオは角を曲って、そして驚きに立ち止った。 後から来たキャロも、エリオが見ているものを見て、その理由を悟った。 道端に、不思議な光に包まれている少女が倒れていた。 「お…女の子? 怪我してる!」 「それと…何だろ、この光…?」 少女に駆け寄り、不思議に光るものにエリオが触れようとした時、それはふっと消えてしまった。 「な、何? 今の」 「と……とにかくスバルさん達に知らせないと!!」 慌てふためきながらも、少女の介護を始めるエリオとキャロ。 そんな彼等のやり取りを、頭上から遠巻きに見る小さな影が二つ。 「た…大変だ……」 さっきまで少女の、治療の担当をしていた織姫の分身体ともいえる小人――舜桜が、エリオ達と同じくらいに慌てて言った。 「とにかく、織姫さんに知らせないと…!」 時は進む、ゆっくりと。 世界は交わる、再びに。 そしてそれぞれの思いを胸に、彼等は衝突する。 ―――――――――――――――――――――――――――To be continued. 前へ 目次へ 次へ
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ミッドチルダ とある地下道 「―――――――」 不気味なまでに静寂の中を、一人の少女が歩いている。 腕には鎖が絡みついており、その先には正方形の形をした箱が二つ、繋がれていた。 「―――はぁ、はぁ」 おぼつきの悪い足取りで、少女は暗闇を進んでいく。 目的も、行く先もわからない。ただひたすらに前を見ては、疲労の身体に鞭を打つ。 そして、当てもなく孤独の世界をさ迷い続けている……何時までも何時までも。 ―――新たな交錯の引き金は、この少女から始まる 魔法死神リリカルBLEACH Episoade 6『Certain holiday of six mobile divisions』 魔法世界ミッドチルダ AM 0 13 「――――――――…。」 門をくぐり抜け、光の先に見えた場所――それは、新緑の森だった。 全体的に暗い所を見ると、どうやら今は夜らしい。一護は改めて辺りを見る。 しかし、何処を見ても覆い囲むような木々が広がっているだけだった。 ――ここが、魔法の世界なのか? 一護は早速疑問をぶつける。 「オイ、本当に此処で合ってんのか?」 「…座軸は間違いないはずだが…」 そう返すルキアも、どこか自信なさげだった。 しばらくすると、今度はチャドの驚きに満ちた声が聞こえてきた。 「おい…こっちを見てみろ」 チャドが指差す方向――少し高い丘より、下から見える光景――。 ――そこに広がるのは、未来都市のような街並み。 眩い月光の下に曝け出されるその都は、どこか現世とは違うものを感じさせる。 そして中央には、巨大な塔のようなものが、幾つか聳え立つように並んでいた。 彼等は間違いなく、魔法の地ミッドチルダに来ていたのだ。 「……すっげえな」 一護が、驚き半分にそう呟いた。 「だが……現世とはどこか似ているな…街並みとか」 同じく驚いた様子で、チャドもそう言った。 「なあんだ、あたしが想像してたのとは全然違うなあ」 ちょっと残念そうに、織姫が眼下の街並みを見る。 ――何を想像してたんだろう…ちょっと気になるところではあるが、発想が宇宙レベルの織姫に、どんな答えが返ってくるかわからないのでやめとく事にした。 「…そんな事はどうでもいいはずだ」 一護達の後ろで、そんな冷めた声が聞こえた。 振り向くと、冬獅郎達が自分そっくりの人形みたいなのを取り出していた。 「それ、義骸か?」 「ああ、霊圧を遮断する特殊な奴らしいが…」 死神が現世で活動する際、周りの人達に違和感がないように動けるよう作られた、擬似的な肉体。――それが『義骸』である。 ――で、あるのだが…。 「オイ、松本…これは何だ?」 自分の仮の体を見、若干怒りで震えるような声で、乱菊に訊く冬獅郎。 見てくれはどこからどう見ても自分そっくりであるのだが、彼の問題は一緒に来ている服装だった。 今、彼の義骸の服装は、薄手の白いワイシャツに、簡素な半ズボンという出で立ち。 しかも頭には、可愛い麦わら帽子を被っていた。 ――簡単にいえば、昭和の子供が着ていそうな服をしていたのだ。 「どうです? 隊長には何が似合うか一生懸命に考えたんですよ」 しかし、本人は何の悪びれもせず、寧ろ誇るように乱菊はそう言ってのける。 ギロリ、冬獅郎は乱菊を一睨み。 「…隊長の健康管理云々は考えてくれなかったんだな、どう考えても寒いだろコレ…」 確かに、段々と冷えるこの時期、そのうえ今は夜だ、いくら寒さに強い冬獅郎でも、寒いものは寒い。 しかし、乱菊は有無を言わせなかった。 「まま、隊長 ものは試しですって ちょっとでいいから着てみてくださいよ!」 「おい! やめろ馬鹿――」 皆まで言わせず、無理やり冬獅郎を義骸の中に押し込む乱菊。 そんな二人の漫才じみたやり取りを、一護達は遠巻きに見ていた。 「なあ冬獅郎、これからどうすんだ?」 「…既に本拠地は決めてある。これからそこに向かうぞ」 重い口調でそう言う冬獅郎だが、今の格好だと威厳すら感じられなかった。 これで今の時期が夏なら、背後に『少年時代』が流れていることだろう。 正直、一護達は笑いを堪えるのに精一杯だった。 「う~ん、やっぱり虫かごとかあった方が良かったかな?」 「松本……殴っていいか?」 「…それより、斑目達はどうした?」 ふと気づいたように、辺りを見回す冬獅郎。 「あれ? そういやいねえな」 随分静かだと思ったら、あの戦闘集団十一番隊の姿が影も形も無かったのだ。 本格的にどこに行ったか探し始める一護達。 「あいつ等何してんだ!?」 「…ム……」 「こっちにもいないよ!」 「…一護…」 「そういや、白哉もいねーぞ!」 「…ちょっといいか?…」 「何だよ!? チャド」 先程から肩を叩くチャドに焦れるように、一護が振り返る。 次の瞬間、彼の口からとんでもない言葉が出てきた。 「彼等なら、『俺達は勝手にすっから後はよろしく』…とか言って此処を離れていったぞ」 「「「「「「…ハァ!!!?」」」」」」 あまりの出来事に、一護達はただただ素っ頓狂な声を上げるだけだった。 「な、何で止めねーんだよ!!?」 「と…止めようとした時には、もういなくなってた」 「ど、どうします? 隊長」 冬獅郎は、不機嫌そうに頭をガシガシと掻き毟って言った。 「…仕方ない、放っておけ」 いまさら止めようとした処で、素直に言う事を聞く輩では無いということは、それなりに長い付き合いなのでわかっている。 本音を言えば、あまり管理局の連中に事を知られるようなことは避けたいのだが、彼等ならそう易々と捕まりもしないだろう。 ――それに、大体こうなることは、行く前からすでに予想できたことでもあった。 「あいつ等なら、戦いの時にでも来るだろ」 「白哉は?」 「…あいつとは元々別行動だ」 冬獅郎はそれだけ答えると、とりあえず今いる面子の確認をした。 白哉はともかく、敵の戦力が分からない今、十一番隊の連中がいないのは少し痛い感じもするが、まあ大丈夫だろう――とりあえず今はそう思うしか無かった。 「とりあえず、一旦降りるぞ。いつまでもここにいても仕方ないからな」 一護達もそれに頷き、山を降りる。 しかし、戦いの時は、直ぐそこまで迫っていた。 翌日 機動六課 訓練場にて 「……はぁ」 今日もまた、散々としごかれた新人達。 やっとのことで、朝の訓練が一段落し、なのはからの労いの言葉が掛けられた。 「みんな、お疲れ様。――でね、実は何気に、今日の模擬戦が第二段階クリアかの見極めテストだったんだけど」 「…え?」 咄嗟のことでついていけない新人達をよそに、なのはは一緒に教えていたヴィータと、長い親友の一人、フェイト・T・ハラオウンに訊く。 「二人はどうでした?」 「――合格」 「早っ!」 「ま、こんだけミッチリやってて、問題あるようなら大変だってこった」 当たり前だ、という調子でヴィータは言った。 二人の返答に、なのはも頷く。 「私も、みんな良い線行っていると思うし、じゃあこれにて二段階終了!」 「やったーー!!」 喜びに立ち上がるスバル達。どうやら先程までの疲労などすっかり忘れてしまったようである。 「デバイスリミッターも、一段階解除するから、後でシャーリーの所へ行ってきてね」 「明日っからはセカンドモードを基本形にして訓練すっからな」 「――え、明日?」 疑問符を浮かべるキャロに、ヴィータが答える。 「ああ、訓練再開は明日からだ」 「今日は私達も、隊舎で待機する予定だし」 「みんな、入隊日からずーっと訓練漬けだったしね」 あまりに簡単に放られた言葉。それを理解するのに、少し時間がかかったが。 その意味が、ゆっくりと分かり始めたときには、皆の顔は無意識に嬉しさに満ち満ちていた。 「――ま、そんなわけで」 「今日はみんな、一日お休みです! 街にでも出かけて遊んでくるといいよ!」 「はーーーい!」 元気いっぱいの新人達の声が、六課の訓練所内に響いた。 ミッドチルダ 首都クラナガンのとある建物。 見かけこそは他に立ち並ぶビルと何ら変わりはないものの、中を覗くと中々に異様な光景が広がっていた。――少なくとも、この地の人々はそう感じるだろう。 木で造られた廊下、階段。襖の扉や畳の部屋。いわゆる和式の造りだった。 その一つ、『執務室』と描かれた部屋にて、乱菊は頭を抱え込んで何やら唸っていた。 ――悩む彼女の前には、山のような書類の数々が散乱している。 「う~~、どうしよう…」 「松本…唸る暇があったら早くやれ」 隣の一際大きい隊長机で、冬獅郎の声が飛んできた。 彼の机にも、乱菊と同じ…否、その倍はあろうかという紙の束で覆われていたが、乱菊と違ってテキパキとこなす為、その減りはすごく早い。 「そんなこと言ったって…この数はないですよ!」 「早くしないと陽が暮れるぞ」 「…わかりましたよ」 渋々一枚の書類に手をつけるが、数秒も経たないうちにまた唸り始める。さっきからずっとこれの繰り返しだった。 乱菊のこのような態度には、理由がある。 ――それは数分前のこと。 「とりあえず、これからの方針を決めるぞ」 朝に行われた、ミーティングの時だった。 「繰り返しになるが、俺達がここに来た目的は、また何か企図している藍染の足取りを、少しでも多く掴むこと。 その鍵となるのが、奴の狙っているレリックという代物、これが藍染に渡る前に俺達がいち早く回収し、そこから――ここまではいいよな?」 冬獅郎は一旦区切って、皆がついてきているかどうかを見た。 簡単に確認すると、冬獅郎はまた続ける。 「だが、ここは異世界。勝手な行動はできねぇし、『少しでも』目立つものなら管理局の連中が即動き出して来るだろう、そうなるとますますやりずらくなる」 無駄に『少しでも』、を強調して、一護を睨む冬獅郎。 この態度には、一護もカチンときたようだ。 「じゃ、これからどうすんだよ!」 声を荒げて一護は、冬獅郎に喰ってかかる。冬獅郎は、一泊間を置いてから続ける。 「とりあえず問題なのは、この辺の地理だ。知ると知らないとでは、大きな差が出る…簡単には見つからないよう、結界を張ってはいるが、この場所自体安全の保証は無いからな。――だから、お前等に最初にやってもらうのは、その辺も含めた捜査だ」 冬獅郎は、そう言って皆を見渡した。 「怪しいところ、脱出の際に逃げ口になりそうなところ、――何でもいい、それを調べてくれ。無論何か進展があったら、すぐに連絡しろ。後で報告してもらうからな。」 「さっすが隊長!!」 ここで、乱菊が自分のことのように、嬉しそうに言った。 「ここまで考えてるなんて、やっぱりできる人は違いますね!」 「…メンバーを選出するぞ」 冬獅郎は、大して取り合わずに続ける。 「ペアに分かれて、黒埼・朽木、阿散井・茶度、あと井上だ。黒埼、朽木、阿散井は、既に素性がばれているかも知れないから、特に注意を払っておけ」 「…あれ?」 おかしいぞ、というような声を上げたのは、無論乱菊だった。 「隊長、あたしは?」 「テメエと俺は待機だ――当たり前だろ」 「え…えぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」 本人にとって予想外の展開に、乱菊は戸惑いを隠せない。 早速、冬獅郎に詰め寄る乱菊。 「な…何でですか!!?」 「理由は二つある、一つは、この世界は戸魂界よりも現世に近い。なら、現世に住む黒埼達の方が、俺達が見落としそうな事に気づく可能性があるだろ。――後もう一つ」 今度は、あえて乱菊と正面から向かいあい、ギラリと見据えて言った。 「――テメエが行ったら、仕事をしねえじゃねえか!」 考えてみれば、至極当然の判断といえた。 ただでさえ行くときに、任務より『そちら』の方に現を抜かしていたのだ。そうしない方がどうかしているといえよう。 しかし、乱菊は納得がいかないようだった。 「で、でもさっき地理の把握は重要って言ったじゃないですか!? だったら人手は一人でも多い方が…」 「待機する役も重要だろうが ――安心しろ、暇つぶしの物はちゃんと用意してある」 そう言って冬獅郎は、後ろの隊長机にある書類の山を指差した。 ―――すなわち、イッツ、デスクワーク。 瞬間、乱菊の血の気が一気に引いた。 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!! な…何なんですかあの数!??」 「当然だろ、今回の任務についての報告書と確認書、それから十番隊の業務云々……まあ、あそこまで溜まったのは、いままでテメエが何かしら理由をつけてはさぼってきた所為なんだけどな。まあ自業自得という奴だ」 いい迷惑だ、と言わんばかりに冬獅郎はため息をついた。 異世界まで来ておいて、まさか見慣れた書類が出てくるとは、乱菊にとっては思いもよらないことであっただろう。 「まあ、アレが全部片付いたら、考えてやらんでもないけどな」 「た、隊長、何も今日やらなくても、明日やりますから!!」 「駄目だ テメエの『明日』は信用できねえ」 その後も、何とか自分も捜査したいことを抗議すること数十分、だが結局、冬獅郎は首を縦に振ってはくれなかった。 ――こうなったら最後の手段。 「隊長~~オ、ネ、ガ、イ♪」 遂には、色仕掛け作戦を使い始めたのだ。 この効果は、思わず一護達が赤面するほどのものではあったが、 『子供』+『長い付き合い』である冬獅郎に、通用するはずがなかった。 「いいから、や・れ」 そんなこんなで、軽く数時間が経過していた。 しかし未だに書類の山は、彼女を嘲笑うかのようにその場に鎮座している。 「隊長…もう無理ですぅ…」 「愚痴を零すぐらいだったら筆を動かせって何度も言ってるだろ!」 ただでさえ書類整備が苦手な乱菊。その上早く片付けようと逸る気持ちが全て空回りしているおかげで、どうしても集中する所は自然と書類の山の方へと言ってしまうのだった。 数分掛けて一枚仕上げては、未だに積もる書類を見て挫折に数十分―――この負の連鎖が、始まりから今までずっと続いていたのだった。 「隊長~~~」 「駄目だ」 「まだ何も言ってないじゃないですか!」 「言いたいことならわかる、仕事を名目に遊びに行きたいんだろ?」 この口論自体、もう何度目になるだろうか…。 しかし、同じ結果になるとはわかりつつも、乱菊は諦めきれないようだった。 「そんな、あたしだって、今回はあそっ…仕事の気持ちでちゃんと来ているんですよ!」 「遅えよ、今ホンネが聞こえたぞ。己の欲すら隠せない奴をどう信じろっていうんだ?」 「隊長は部下を信じるところから始まるんですよ?」 「だったらより信用されるようにもっと行動で示せ」 さらに三十分ほどの時間を要して、この口論にも決着がついた。 結局乱菊は、重い溜息と共に再び席に戻る。 そしてまた、目の前の宿敵と目を向けることとなった。 「―――隊長のケチ」 明らかに聞こえるように放られたその言葉、聞こえたか聞こえなかったか、しかし冬獅郎は先ほどの口論なんかまるで無かったかのように仕事の続きを始めていた。 乱菊も、渋々仕事に取り掛かる。 しかし、やはり同じことの繰り返し。 そして無駄に時間は流れていく。 「はぁ…………」 おもむろにつくため息。――冬獅郎の筆の動きが鈍った。 「はぁ~~~ぁ」 やるせなさそうに書類を見下ろし、またため息。――冬獅郎の筆が止まった。 「はぁ~~~あ~~~あ」 三度のため息。――冬獅郎の筆が震えだす。 「はぁ~~~~~~~あああ~~~~~~~~~あ~~~~~~あ」 今度はもはやため息ではないだろ と思えるくらいに長いため息。 ―――バキッと冬獅郎の筆が真っ二つに折れた。 「いい加減にしやがれ、ため息ばかりつきやがって!!!!!」 遂に堪忍袋の緒が切れた冬獅郎、机を思い切り叩いて乱菊に怒鳴りこんだ。 同時に、せっかく整理した書類が幾つか宙に舞い散る。 しかし、乱菊の態度は変わらない。 「だってぇ…本当にわかんないんですもん」 文字通り手を上げて降参の素振りをする乱菊。 そのあっさりとした態度に、冬獅郎は苛立ちを隠せない。 「……勝手にしろ!」 そう吐き捨て、再び仕事に戻る冬獅郎。 乱菊も、大して取り合わずにまた大きなため息をつき始める。 「はぁ…………」 ―――そんな状態が、さらに長い間続いた。 しばらくして、おもむろに冬獅郎が呟くように言った。 「……けよ」 「え、?」 「とっとと何処か行っちまえって言ってんだ!」 半ばキレ気味に冬獅郎は言い放つ。 ――瞬間、乱菊の表情がいきなりガラリと変わった。 「隊長……」 「仕事しねえで四六時中そんなウザッてぇため息ばかりしやがって…こっちまで集中できなくなっちまう…もういい、今回だけは見逃してやる。」 「た…たいちょ~~~~!!」 先程の鬱そうな顔はどこへやら、喜色満面の表情で乱菊は冬獅郎に抱きついた。 二人の背丈からして、丁度冬獅郎の顔は乱菊の神々の谷間にすっぽりと収まる形になる。 「隊長、ホントッ、大好きですよ!!」 「分かったっ…分かったから早く行け!!」 「は~~~い」 小気味良い返事をして、早速支度にとりかかる乱菊。 やっと谷間から解放された冬獅郎は、どこかやるせない表情で乱菊の机の書類を見る。 ――――今日中に終わるだろうか? 「準備完了っと」 「早っ!!!」 次に冬獅郎が乱菊を見たときには、既に万端整った彼女の姿が。 ―――この速さを髪の毛一本でもいいから仕事に回してはくれないのか? 最後に乱菊は、冬獅郎の方へ向いてニッコリ微笑んだ。 「じゃあ遊びに…じゃなかった……遊びに行ってきますね!!」 「ああ………? ってオイ!! 結局遊びに行くのが目的かぁ!!!」 冬獅郎が叫んだときには、乱菊の姿が影も形も無かった。 「……あンの野郎ォォォ!!!!!」 冬獅郎の空しい声が、部屋全体に響いた。 だが、乱菊には聞こえなかったようだ。 今の彼女の頭には、もはや『仕事』の二文字は消えていた。 「もしもし、織姫? あたしなんだけどさ、ちょっと付き合ってよ!? え、仕事? いいじゃないそんなの!」 人々が賑わう町の中で、当てもなくうろつく少女が二人。 高い街道の上で、久々の休日を満喫していたティアナが、おもむろに口を開いた。 「でもホント、こんなにのんびりするの、久しぶり」 「……だね……」 空を見つめながらそう返すスバル。同じく休みを楽しんでいる筈の彼女の瞳は、しかし心ここに非ずと言ったように虚ろだった。 その相棒の、何を聞いても上の空のような顔を見てティアナはやれやれ、と肩を竦める。 「あの子達のこと、考えてんでしょ?」 「…え!!! それは…」 「とぼけないの、何年アンタとコンビ組んでると思ってるの? それぐらいお見通しよ」 ズバリ的中されたことで大いに慌てるスバル。 ――そんな顔されたら誰だってわかるっての。ティアナは胸中でそう呟く。 「なのはさん達の手前、何とかするとか大見え切ったのはいいけど、その顔だと何にも考えて無いようね」 「……うん」 今度はしょぼくれた様にスバルは頷いた。 ティアナは、今までの人生の中でも、最も大きいだろうため息をつく。 「アンタさぁ、いい加減その場のノリとかでもの言うのやめなよね」 「別に、ノリとかそうわけじゃないけど…」 視線を再び空に上げて、そして心から思う。 ――本当にただ、仲良くなれたらと。 「できれば、このまま何も起ってなきゃいいんだけど」 そう願うスバルの知らない所で、事態は動き出す。 ――場所は変わり、研究施設。 「レリック反応を追跡していた、ドローンⅠ型6機、すべて破壊されています」 「ほう…」 モニター越しに女性と会話をするのは、白衣の男――ジェイル・スカリエッティ。 別に映し出されたガジェットの残骸を見、至極興味深そうな表情をした。 「破壊したのは局の魔導師か…それとも、アタリを引いたか?」 「確定はできませんが、どうやら後者のようです」 「すばらしい、早速追跡をかけるとしよう」 底冷えするような冷笑を湛えてそう言うスカリエッティ。 と、そこにコツコツとこちらへと来る足音が一つ。 「ねえ、Dr。それなら、アタシも出たいんだけど」 「ノーヴェ、君か?」 「駄目よノーヴェ、貴女の武装は、まだ調整中なんだし」 「今回出てきたのがアタリなら、自分の目で見てみたい」 どこかぞんざいな口調で頼む、ノーヴェと呼ばれた少女。 しかしスカリエッティは、ゆっくりと首を振った。 「別に焦らずとも、アレはいずれ必ず、ここにやってくる事になるわけだがね……まあ、落ち着いて待っていて欲しいね、いいかい?」 「……わかった」 渋々納得したかのように、ノーヴェは引き下がった。 その間にも、彼等は事も無げに話を進める。 「ドローンの出撃は、状況を見てからにしましょう。妹達の中から、適任者を選んで出します」 「ああ、頼むよ」 そう言って頷くスカリエッティの視線は、もう片方のモニターに映し出された、何者かに破壊されたガジェットの詳細の方に移っていた。 「…俺の手が必要か?」 不意に、スカリエッティの後ろから声が聞こえてきた。 ノーヴェとは違い、音も無く彼の背後を取る男。 男は、面妖な出で立ちをしていた。 全てが白く染まった様な、死覇装にも似た服を着こなし、頭部には虚の欠片と思しき物が付いている。そして精密機械を思わせるような感情の起伏が見られない顔。 その冷徹な表情で、彼は睨むように訊ねていた。 「君の出番はここじゃあ無いよ」 しかし後ろを取られにも関わらず、スカリエッティの声は平坦そのもので返した。 「『破面』の力というのが、どれ程のものか、確かに見てみたいところだが、ここで使うにはいささか早計というもの……当面君には別の場所で働いてもらうとしよう、頼むよ、ウルキオラ」 その言葉に、男――ウルキオラは特に異議を唱えることはしなかったが、いま一つ、確認するように訊く。 「別に構わないが、藍染様との契約を、忘れてはいないだろうな?」 「わかっているさ、私と君の主とは、少なからない仲でもあるのだからねえ――約束はちゃんと守るよ」 彼の謹直さに苦笑いを呈しながらも、スカリエッティは頷いた。 ―――ならいい、とそれだけ確認するとウルキオラもその場を後に去って行く。 「……後は」 そしてスカリエッティは再び視線をモニターに戻し、そこに映る高台――を感慨も無く見下ろす少女を見て呟いた。 「愛すべきもう一人の友人にも、頼んでおくとしよう」 「あ~~買った買った!」 大手を振って歩く二人の女性がいた。 道行く人が十人いれば十人、振り返ること間違いなしの美女二人が、両手に買い物袋を抱えて歩いている。 「あの…いいんですか? こんなに買っちゃって」 隣の巨乳美女、織姫が手荷物を見て恐る恐る訊くが、しかし乱菊はどうってことなさそうに返す。 「いいのよ! ちゃあんと経費から落としてきたし!」 「それ、いいんですか? 勝手に使っちゃったら日番谷君怒るんじゃ…」 「大丈夫、うちの隊長は懐が大きいから!」 にっこり微笑んで言い切る乱菊。―――冬獅郎の苦労はまだまだ絶えない。 アハハ、と織姫が苦笑いを呈しながら、何気なく道を歩いていたその時。 「……?」 ふと、何か気付いたように織姫が立ち止った。 「どうしたの織姫?」 「え、と…今何か聞こえませんでしたか?」 周りを見渡して、聞き耳を立てる織姫。 乱菊もそれに倣うが、特に怪しい音は聞こえてこない。 「別に何も―――」 カコン く低い音が、乱菊の耳にも響いた。 聞き間違いじゃない、確かに何かが…こっちに来ている。 「こっちです!!」 織姫が、角の路地裏に回った。 乱菊も織姫の後を追って角を曲がる。 次の瞬間、二人は驚きに目を見張った。 「乱菊さん…これは……」 今、織姫たちの目の前には、重度の怪我を負った、少女が倒れていた。 だが、乱菊が目を向けたのはそこだけではなかった。 「……この子…」 乱菊が彼女を介抱しながら、少女の腕に繋がれているケースを見た。 ―――それは、レリックのケースに他ならなかった。 「とにかく、隊長に報告しなきゃ」 彼女の瞳には、いつもの楽天的な表情が微塵にも消えていた。 仮本拠地内 執務室にて 「…………終わった……」 今しがた最後の生類整備を終え、やっとぐったりと机に項垂れる冬獅郎。 ―――結局、乱菊の分までやってしまった。 先刻ほどに乱菊が出て行った時は、目も当てられないほどに雑多だった副隊長机も、今や自分の机と同じように綺麗に整っている。 しかし、今広がる光景とは裏腹に、冬獅郎の心はストレスで曇りに曇っていた。 (やっぱり俺はお人好しか?) 自己嫌悪で悶絶する冬獅郎。こんな調子では本当にこれからが思いやられる。 ――もし、こんな時に何かありでもしたら。 「ん、何だ?」 それを告げるかのように突然、懐にある伝令神機から、連絡が来た。 嫌な予感がすると分かりつつも、冬獅郎は渋々電話に出る。 「――十番隊 日番谷だが」 「隊長ですか? あたしです!」 「……何だよお前か」 ただでさえ深い眉間をさらに寄せて、不機嫌を露わに訊く。 「一体今度は何があったんだ?」 「単刀直入に言います、路地裏で少女が大怪我で見つかったんです!!」 そらきた。 また新たに増えた厄介事に、冬獅郎は大きなため息を吐く。 「オイ…テメエまさか、それも俺の手が必要とか抜かすんじゃねえだろうな? それくらいの状況判断ぐらい自分でしやがれ―――」 「少女の持っていた物の中に、レリックと思しき物も見つかりました」 「!!!」 瞬間、冬獅郎の目が驚きに開かれた。 まさかこんなにむ早く見つかるとは―――。 どうやら、状況というものは、いつもやってきてほしくない時にこそ、起こってしまうものらしい。 冬獅郎は再び大きなため息をつくと、改まった声で訊き直した。 「…場所は何処だ?」 「あ、ここです! 隊長」 数分後、乱菊達の処に、えらくクールな、昭和風の少年服を着た冬獅郎が路地裏へと行き着いた。 「隊長…その服で来たんですか?」 勇気があるなあ、という目と、それはないだろう、という珍妙な目で冬獅郎を見る乱菊。 ―――どうやら自分がこれを着せたことは遥か遠い記憶の中に置いてきてしまったらしい。 「松本…テメエ後で覚えてろよ」 そう吐き捨てから、改めて織姫の結界術で治療中の少女と―――隣の鎖に巻かれたケースを見やった。 「………封印は?」 「一応、しときました」 「――そうか」 冬獅郎の視線は、レリックから再びケースへと移る。 正確には、ケースに繋がれている鎖に注目しているようだった。 「…これは……」 ――切れている鎖の先端。 冬獅郎がそこから答えを導き出すのに、そう時間はかからなかった。 「レリックはもう一つある」 「――え?」 「直ぐに動くぞ、松本、準備をしろ」 あまりの事についていけない乱菊を余所に、冬獅郎はすぐさま懐から丸い丸薬――もとい義魂丸を取り出し、口に入れた。 仮初の肉体から、彼の本来の姿が現れる。 黒い着物『死覇装』を身に纏い、さらにその上、護挺隊の頂点に立つ者のみ着用が許される『隊首羽織』そこに書かれている『十』の数字の白い羽織をなびかせ、そこに長身の愛刀を担ぐ。 同時に、先程まで不機嫌で歪んでいた顔も、威厳のあるものへと変わっていた。 「はぁ…仕方ないか」 渋々といった感じで、乱菊も冬獅郎の後に続き、義魂丸を口にする。 同じように身体から魂が引き剥がされ、冬獅郎と同じ死神装束の彼女が現れ出る。 その頃には、冬獅郎がレリックをケースから取り出し、先程までの自分の義骸に指示を出していた。 「とりあえず、お前達は拠点にまでこのレリックを届けてくれ」 冬獅郎の身体に入った義骸は、大仰な敬礼を取って答える。 「わかりました! 70%の確率で届けます!」 「100%の確率で届けろバカ!!」 多少の不安は残しながらも、冬獅郎と乱菊の義骸達は素直に指示を受け取り、速やかにその場を去って行った。冬獅郎は素早く乱菊に向き直る。 「松本、お前はまず今のこの状況を黒埼達に伝えろ。それが終わり次第、残りのレリック探索を始めるぞ」 「え~~~! 地下水の中を探し回るんですかあ?」 乱菊も開けられた地下道を見、不服そうな声を出す。 しかし、冬獅郎は有無を言わせない。 「松本、束の間の休息はもう堪能しただろ?」 その口調は、先程までの不機嫌が醸し出したようなものでは無かった。怒鳴るでもなく諭すでもない、ただただ静かで、そして重みのある声。 「こっから先はマジで取り組め―――でねえと、死ぬぞ」 「…わかってますよ」 面倒そうに返しながらも、もう彼女の瞳からは、いままでのお茶らけた感じは消えていた。 「あの、日番谷君…あたしはどうしたら…」 「お前は、そのガキをある程度治療したら保護しろ―その後は命があるまで待機だ。わかったな」 「え、でも―――」 その眼には、「自分も戦いたい」という意味が容易に察せられた。 だが危害を加えられない彼女の性分では足手まといになることは分かり切っているし、第一状況が状況、個人の我儘に付き合うほど、今は暇でも無かった。 「言ったろ、待機する役も重要だってな――だから大人しく待っていろ」 「大丈夫よ、直ぐに終わらせてくるから」 「…わかりました」 乱菊のその言葉に、織姫はただ頷くしかなかった。 そして、二人は再び地下水の入口の方に向き直る。 「準備はいいな、松本」 「何時でも」 簡素な返答――だが、それだけでお互いの準備ができたことが、長年培ってきた信頼でわかっていた。 「日番谷君、乱菊さん」 織姫は、二人が消える最後の最後まで、冬獅郎達を見送っていた。 「―――気をつけて」 「ん、ああ」 「これが終わったら、またショッピングの続きでもしようね」 二人は、それぞれ織姫にそう返すと、暗い地下水の穴の中へと消えていった。 「―――それにしてもこの子、どっから来たんだろう?」 目を覚ますまでの間、その場で治療することにした織姫は、改めて酷く傷ついた少女を見やった。着てる服や、痣だらけの身体を見ても、ただ地下水を歩いてきたにしてはおかしい位ボロボロだった。無論、レリックのケースを何故運んで来たのかも大きな疑問の一つ――なのだが……。 (…何だろう、この子…) それ以上に織姫の疑問を抱かせているのが、少女から感じる『霊圧』だった。 決して大きくは無い、むしろ小さい部類に入るくらいものではあるのだが、――どこか違う、織姫は理屈ではなく感覚でそう感じた。 死神のものでも虚のものでも無く、だが自分達ともどこかかけ離れているような…この感覚は一体……。 「ウオオオオオオオオオオオオオァァァァァァ!!!!!!」 今度は路地裏の奥で、地獄から聞こえてくるような、重く、響くような唸り声が聞こえてきた。 織姫は、一旦手を休め、恐る恐る向こう角で蠢く影を見た。 ――腕が、脚が。 人体の形相を留め得ないその姿態を見たとき、織姫の神経に戦慄が走った。 (虚だ……!! 何でここに?) 新たに湧き出る疑問。 虚は、自分に気づかず、その場から消えていく。 ―――このまま野放しにはできない。 「ゴメンね、直ぐ帰ってくるから」 織姫は少女に結界術を張ったまま、急いで虚の後を追いかけた。 角を曲がり、細道を通り、人気の無い路地裏を突き進み―――そして、見つけた。 長い時間を掛けてしまったが、漸く虚の影がその眼に視認することができた。 (せめて、これぐらいはみんなの役に立たなきゃ!!) そう意に決し、攻撃準備を整え、虚に向かって行こうとして―――不意に止めた。 「―――ガッ!!!?」 「……え?」 突然虚は、頭を抱え込んで苦しみだした。 それと同時に、虚の身体がみるみるうちに溶けだし始める。 鱗のようなもので覆われた皮膚は、不気味な音を立てながらドロドロに落ちて、その上から蒸気が立ち込める。 「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」 そして次の瞬間、原形すら留めずに、虚は字義通り蒸発して、消えた―――。 「……どうなってるの……?」 織姫は、わけがわからず、ただそこで立ち竦むだけだった。 そして、その同じ頃。 「―――あれ?」 「どうしたの、エリオ君?」 同じく束の間の休暇を楽しんでいたエリオとキャロは、ある街路地で足を止めた。 「いや、何か叫び声のようなものが聞こえたような――」 エリオは不審げに辺りを見回し、そしてすぐ角にある細道に目を向けると、そこに一目散へと駆け出した。 「あ、待ってよエリオ君!」 急いで追いかけるキャロを余所に、エリオは角を曲って、そして驚きに立ち止った。 後から来たキャロも、エリオが見ているものを見て、その理由を悟った。 道端に、不思議な光に包まれている少女が倒れていた。 「お…女の子? 怪我してる!」 「それと…何だろ、この光…?」 少女に駆け寄り、不思議に光るものにエリオが触れようとした時、それはふっと消えてしまった。 「な、何? 今の」 「と……とにかくスバルさん達に知らせないと!!」 慌てふためきながらも、少女の介護を始めるエリオとキャロ。 そんな彼等のやり取りを、頭上から遠巻きに見る小さな影が二つ。 「た…大変だ……」 さっきまで少女の、治療の担当をしていた織姫の分身体ともいえる小人――舜桜が、エリオ達と同じくらいに慌てて言った。 「とにかく、織姫さんに知らせないと…!」 時は進む、ゆっくりと。 世界は交わる、再びに。 そしてそれぞれの思いを胸に、彼等は衝突する。 ―――――――――――――――――――――――――――To be continued. 前へ 目次へ 次へ