約 1,890 件
https://w.atwiki.jp/nobu-wiki/pages/291.html
争覇新目録 奥義 陰陽師 九曜紋星彩 目録 陰陽道・六 必要気合 最大気合の30% 必要アイテム 充填 1時間30分 待機 5分 ウェイト 効果時間 発動準備 使用場所 戦闘専用 効果 敵単体に対して自身の最も高い属性で強力な術を放つ 特徴 その他情報 自身の一番高い属性によってグラが変わります -- 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5736.html
※橘京子の溜息シリーズのおまけ話です 長らく沈黙を保っていた太平洋高気圧もその重い腰をようやく上げ、北から押し寄せて来る高気圧との接戦に備えて湿気を日本中にばら撒いている今日この頃。 六月の終盤からしとしと降る雨は決して強いものではないものの、何日も何日も降り注ぐものだから結果としてかなりの降水量をもたらしている。 気温が高く飽和水蒸気量が上がるっているにも関わらず湿度もそれに比例して上昇の一途を辿るものだから、汗は表皮で気液平衡となり潜熱を奪って気化しようとはせず、それどころか空気中の水分すら凝集して汗と交わっていそうな感覚が支配する。 何が言いたいのかと言うと、汗をかくだけで全く涼しくならいんだ。 じめじめむしむし。 誰が考えたのかは知らないが。的を射た表現である。 こんな天気だと言うのにハルヒのパワーは留まること知らず、年中照りつける真夏の太陽の如く俺達を蒸し焼きにしようと試みている気がしないでもない。 だが、ここ最近まではハルヒのパワーと言うのは違った意味で強烈であり、それは何が原因かと言うと例の空気読めないツインテールがあの時――橘だらけの世界になったあの時――に、お馬鹿かつお下劣なことをしでかしたおかげである。 今現在のハルヒのパワーを正とすると、あの時のハルヒのパワーは間違いなく負に傾いていた。長年ハルヒのクラスメイトとして前の席に鎮座していた俺が言うんだから間違いない。 そして、負のパワーを撒き散らしているのはもう一人。言うまでもなくハルヒの対となる存在、佐々木である。 彼女の負のパワーもハルヒと以下同文なので詳しく説明することは避けるが、結局何が言いたいのかと言うと、あのバカのせいで俺は辛酸舐められっぱなしだったってことが言いたいだけだ。 分かるか? この気持ち。 ハルヒが……いや、佐々木が……これも違うな、両方だ――が、世界を塗り替えようとしたあの一件から無事帰還した俺は暫くそのバカからの接触を断っていた……って、これは前回言った気がするので詳細はパス。 おかげで毎日毎日が凄く快適で……って、これも前回言ったな。 では何が言いたいのかというと、今回の一件にはヘタレバカ……そろそろ名前を出してあげないといじめと揶揄されかねないので仕方なく本名を口にすると、橘京子はモノノーグからエピローグに至るまでその存在は確認できないのである。 やったぜバンザイ。 楽しみにしている方がいるとは到底思えないが、何かの間違いで居たとしたら心よりおめでとうと申し上げたいと思う。 何故かって? そりゃあその方が真っ当な人生を歩めるからに決まっているからである。 つまり、今回は別の人物のお話をしたいと思う。 俺が無事改変世界から戻ってきてから最早一ヶ月以上が経ち、文月を数日過ごした日のこと。俺はハルヒに命じられて七夕の準備をするべく一人で商店街を巡って必要部材を買い込んでいた。 因みにハルヒはまた私有地から笹を伐採するために単身学校裏の竹林に乗り込み、他三人は部屋の準備に追われている。 本当は古泉に買い物を任せて部室で残る二人娘と囲まれてわいわいがやがや楽しく準備をしたかったのだが、「絶対ダメ」というハルヒの拒否反応で俺の妄想はお流れになってしまった。 で、ハルヒと笹を取りに行く勇気が無い(私有地に入るのが怖いんじゃなくて、万が一佐々木に見つかった時の方が怖い)ので、結局買出しが一番無難だという結論に達した。 買出しにするものは特別なものではない。所謂七夕の時に必要な飾りや短冊、その他諸々の文房具類。これくらいならホームセンターや文房具屋を回るだけで事足りる。 久しぶりにまともな仕事に辿り着いたな、何て心安らかにしていた。 が、甘かった。 俺の平穏な心境を尽く瓦解させる災いの元は、抜き足差し足で音も立てずすぐそこまでやってきていたのだ。 果たして当初の読みどおり、何のトラブルも無く買出しを終えた俺は再びローカル鉄道に乗って北高まで戻ろうと商店街のアーケードをくぐり抜け、コーナーを曲がった瞬間、そいつがいた。 「――――――――」 「げっ!」 と絶叫しそうになった口を両手で思いっきり塞ぎ、本能でも反射神経でも叶わぬ反応を以って電柱の影に身を潜めた。 お嬢様学校の制服に身を包んだ黒い物体は身じろぎもせず、店の看板が立ち並ぶ街灯を睨んでは不可視コヒーレント光のような横棒を放出しつづけている。 なにやってんだよ、あの野郎はよ!? 外壁と電柱の隙間から顔を覗かせる。 まるで俺の行く手を阻むかのように通りの邪魔をしているのは天蓋からきた宇宙人、周防九曜だった。 正直九曜とこんなところで会うこと自体奇蹟中の奇蹟で、もっと分かりやすい例えで言うと俺が今度の中間テストでオール90点以上を叩きだす位に在り得ないことだと言えば今の俺の気持ちの数分の一はお分かりいただけると思う。 自分で言っておいて何だか、少し虚しいな。 まあそれはともかく、九曜がそこにいる事も問題だが、あいつがいると言うことはあの空気読めない橘京子も近くにいる可能性が大なわけで。むしろこっちの方が大問題だ。 気が進むわけでもないが、あいつが居なくなるまで移動せずじっとしておいた方がいい。体中の神経がそう叫んでいるように感じたからだ。 然して俺はその場で待機することを決定した。だが、ただ待っていても部室に居る皆には状況が伝わってないわけで、とりわけハルヒに連絡を入れておかないと後で叱られる羽目になる。 制服のズボンのポケットにしまってあった携帯を取り出し、メールを開いて文章を打ち込んだ。「スマン、ちょっと遅れる」……と、送信。 因みに音声着信で無い理由は、万が一に備え、声を聞かれるのを阻止するためだ。頭いいな、俺って……あ、もう返信がきた。 『何で遅れるのよ。理由をいいなさい』 ああ、そう言えばそうだな。少し端折りすぎたか。「見つかったらまずそうな人物を見つけたんだ。今必死で身を隠しているんだ」……送信。 さらに受信。『もしかして万引きして警察に見つかりそうとか言うんじゃないでしょうね? あるいは下着ドロとか。もしそんなんだったら絶対許さないわよ』 おいおい、なんで俺が警察のご厄介にならなきゃいけないんだよ。「もっと人道的理由だ」 『何よ人道的な理由って。簡潔に述べなさい。万が一あたしが納得したら許してあげるわ。でも納得できなかったら……わかってるわよね?』 ふう、信用されてないな。仕方ない。本当のことを言ってやる。「橘京子に見つかりそうなんだ。だから身を隠してるんだ。頼むから許してくれ」 『許す』 うわあっさり承認しやがった! いや許してくれるのを期待してたんだがギャップありすぎだろ! 『だって関わりたくないもの。あんたもそうでしょ?』 まあ、確かにそうなんだがそれはそれでちょっとかわいそうな気が……あれでも一応血の通った人間なわけですし。 因みに上記の文章は俺の心の思いであってこれはハルヒに送信していない。送信したら俺と古泉の命が絶たれかねない。 『まあ、そういう理由なら仕方ないわね。許すわ。でもその代わり絶対逃げ延びることね。見つかるなんてシナリオ、あたしのシラバスの中にないから』 シラバスって……普通辞書だと思うんだが…… 『あと』 あと? 『遅刻には変わりないから、罰としてあんたのお金で皆にアイスクリームを買ってくること。以上』 …………ガクッ。 ってなわけで。 主人の帰りを待つ某忠犬か、あるいは黄色いハンカチを吊るした某家の奥さん並に九曜がその場から去るのを待ちわびた。 こうなったら根競べである。 なに、宇宙人の気まぐれであんなことしているだろうし、すぐにそこからいなくなるだろうさ。 十分経過。 九曜は目線どころか眉一つ動かす気配がない。 因みに橘の姿も現れない。 二十分経過。 最早風景と同化しているように思えた。 通行する人全てがまるで見えてないかのようにスルーしている。 三十分経過。 俺の足元に来た犬にきゃんきゃん吼えられた。 縄張りの場所だったらしい。 ああもう、いい。負けだ負けだ。 完全無欠の宇宙人にケンカを売った俺が悪かった。姿を現せばいいんだろ、ここで。 やや自暴自棄気味になりつつも、あいも変わらず吼えつづける犬に場所を譲り、ダークマター九曜の前に姿を現すことを決意した。気は進まないが仕方あるまい。 それに橘京子の姿も見られないし、ならばあいつがいないうちに過ぎ去ると言うのも一つの手である。 俺は念のためもう一度辺りを見渡し、橘京子の気配が無いことを確認した後、「よう」と声をかけた。 「何してんだ、九曜。橘との待ち合わせか?」 九曜は俺が今までそこに居たことを気付いていた風でもなくギギギという擬音がピッタリなくらい段階的に振り返り、俺を一瞥した後再び視線を上空へと移し、 「――――彼女……は……――――いな――――い――――――ひとり…………――」 なんと珍しいこともあるものよ。こちらとしては大助かりだ。 が、 「その一人っきりのお前が一体何の用があってこんなところにいるんだよ?」 そう答えると今度は油膜切れを起こした並列二気筒エンジンのようにギクシャクと腕を動かした。 「――――――あれ…………は――――なに…………――――?」 「何って、笹と短冊じゃないか。七夕の飾りだな」 商店街のイベントでよくありそうな、ちゃちいものである。町おこしやフェアの一環として商店街全店舗が飾るアレだ。 因みに「商店街七夕フェア」と題したそれは、近年客を奪われがちになっている近所の大型ショッピングモールが行う夏のバーゲンに対抗するための措置なのだろう。正直、それで勝てるとは思わないわけだが、特に関係ないのでその辺は伏せておく。 「それがどうしたんだ? 欲しいのか?」 「七――――――夕――…………――それ……は――――なに――?」 初めて疑問形で聞かれた気がする。 「この国に伝わる民族的伝承の一つさ。聞きたいか?」 「――――――――」 宇宙人の沈黙は肯定の意味と受け取れ。高校生活三年間において俺が得た経験則である。根拠は無いが、九曜は否定しなかったので聞きたいのだろう(と勝手に思い込んだ。厳密に言うと肯定もしなかったんだけどその辺は無視)。 というわけで、 「七夕というのはな、昔々あるところに織姫と彦星っていう奴らがいてな…………」 俺が知る限りの七夕伝説を語ってやることにしたのだ。 なお、俺の乏しい知識では七夕における伝承を詳細にこと細かく且つ正確に伝えることはできないであろうから、本気で興味ある方々は俺に聞くんじゃなくて長門に聞くか、あるいはウィ○ペ○ィアでも使って調べて欲しい。 「…………というわけで、織姫と彦星は一年だけ会うことを約束されたんだ。どうだ、大体分かったか?」 「――――――把握……――」 それは何より。 「――あの――――二恒星間に…………――そのような――――情事が…………あった――とは――――」 全くだ。人間の及びもつかないところで様々な恋愛模様が描かれているんだなって思う。 「――――観測…………する――――――必要が…………ある――――――」 「観測? 望遠鏡か何かで覗くのか?」 それはそれで面白そうだが如何せん一昨年くらいに(リセットされた分も含め)散々やったから俺は遠慮しておこう。 「――――違う…………直接――――――観測する……」 へ? どうやって? そう言葉を口にしようとした瞬間、ガシッと腕を捕まれた。 「今から――――行く………………」 行くって、まさか!? 「転移空間捕獲…………超光速回路ダウンロード――――了解…………プランク時間確保――――目標…………ライアα星――――ベガ…………」 およそ理解し得ない単語を連発すると、それに伴い九曜の体が黄金に光り始め―― 「スリー――――トゥ――――ワン――――ファイア!」 ――瞬間、俺と九曜の存在は地球上から消失した。 「――――つい……た――――目を…………開けて――――」 ……ん。ここは一体……俺は何をしていたんだっけ…… よろよろとする体を無理矢理起こし、意識のハッキリしない頭で現状確認を試みた。 確か九曜が『行く』って言い出して、そしたら体が光って、それから何やら叫んで、んでもって…… 「ああっ!」 思い出した。 「どこだここは」 「宇宙――――空間…………織女星の――近く…………」 通常なら『何寝言言ってんだよ、はははこいつバカじゃねえの』で済むのだが、如何せんそれだけの能力を行使するに足る実力の持ち主九曜が相手だとそんな発言を囁く俺の方が寝言にされかねない。 第一、広大な蒼穹空間に浮く俺達二人の姿が九曜の言葉に真実味をもたせている。大小様々に光る星々もまた然り。 加えて空気中とは異なり、星の光が瞬くことの無いのもポイントだ。知ってたか? 星が瞬くのは空気の揺らぎや塵埃による光の散乱が原因なんだ。だから真空中である宇宙空間では星はずっと光って見えるわけだ。 以上、ワンポイント豆知識である。たまには俺だって博識な部分を見せたい時もある。 ……いや、そういう気分なんだ今は。ちょっとした現実逃避、ってやつだな。嘘だとして済ませたいことが意と反して真実嘘偽り無しとして面前に迫ったら全人類のおよそ94.6パーセントくらいは思考回路を停止させるに違いない。 第一だな、宇宙空間に来たって事は普通息が出来ないじゃないか。お前はどうか知らんが、人間その他諸々の有機生命体は酸素がなければ生命維持活動が出来ないんだよ馬鹿野郎。 「大丈夫――――情報……改竄を――――行った…………あなたは――呼吸をしなくても…………生命活動を――――維持できる…………」 マジか!? 「マジ――で…………」 うむ、そうだったのか。取り乱してすまなかった。 しかし本当に宇宙人は便利な機能を満載してるから大したものだ。一家に一台くらいは置きたい逸材である。長門や九曜のパトロンに頼んでバックアップを増やせてもらえないかね。 「今度――――申請……してみる――――」 いや、冗談のつもりだったんだが……ま、いっか。 「それで、」俺は腕を広げて「この中のどこに織姫がいるんだ?」 「…………――――あそこ」 天の川のほとりにいる何かを指差した。あれは人影に見えるんだが……まさか俺達以外に人間がいるとでもいうのか? 「あれ人……こそ――……織姫――――」 マジでか!? パートツー! 「マジ――で…………パート――トゥー」 微妙に発音がいいのがいやらしかった。 「会いに――――行く……――――」 九曜は再び俺の腕をガッと掴み、織姫のいる方に向かって歩き出し――いや、思いっきり地面(?)を蹴った。 「うおっ! ひ、引っ張るな!」 突然且つ常識的なことで恐縮だが、宇宙空間は重力が無い。 重力が無いということは下に引っ張られることがない。上に力を作用させれば上に動くし、他の方向も同様だ。 しかも空気の抵抗も無く慣性が働くものだから、一度ある方向に力を加えたらその方向に一定速度で移動するわけだ。止まる力が加わらない限り、な。 つまり、物体は力が加わらない限り一定の速度で動き続ける。これを『等速直線運動』と言うんだ。静止している物体は速度ゼロで等速直線運動をしていると考えられるんだ。 以上、ワンポイント豆知識その二。終わり。 何が言いたいのかというと、九曜が作用した力で俺達二人は今現在かなりの高速で移動している。詳しい速度は分からないが、新幹線並みの速度は出ていると思われる。 もちろん肌身で感じるとかなり怖い。 「ちょ、九曜! もっと速度を落とせって!」 「――――無理――……――」 「無理。じゃねえ! このままだとあの人にぶつか……」 ドォオォォッォォォォッォン!!! 遅かった。 「わきゃあ~!」 俺と九曜の衝撃をモロに喰らったその人……九曜曰く「織姫様」は俺達の運動エネルギーをまともに受けて俺達以上の速度で虚空の彼方へと飛んでいき。 「きゃあーーーーああああーーーーーーぁぁぁぁーーーー…………ーーーーー」 そして見えなくなった。 因みに俺達はそのおかげで停止した。これは運動量保存の法則によるもので、ビリヤードの玉が玉にぶつかった時のことを想像してもらえれば理解できると思う。 なお、俺と九曜の体重と移動してきた速度を乗じたものが運動量で、その運動量が織姫様にすべて加わったことになる。二人分の質量の運動量を一人で受けた場合、移動する速度は俺達が飛んできたときの二倍以上になって移動することになる。 織姫様の速度が俺達以上だったのはそこから考えれば分かるよな。 これが所謂『運動量保存の法則』って奴だ。よく覚えた方がいいぞ。テストに出るから。 以上、まさかの豆知識その三とその例でした。ちゃんちゃん。 「いったいじゃないですか! なにをするんですかぁ! いきなり!」 主役がいなくなってこの先どうしようか九曜と相談している最中、意外と早いお付きになった織姫様が俺達に向かって開口一番にそう捲くし立てた。 彼女はいかにも空想上の天女が身に着けてそうな羽衣を身に纏い、栗色のツインテールを揺らしてどこかの誰かのような怒り方をした……って、 「いきなりで出てくるなこのKYがぁー!」 ベコン! 「きゃん!」 織姫様……いや、織姫様のコスプレをしていた橘京子は、俺が手にしていた七夕道具の袋の攻撃をモロに喰らって犬の鳴くような声を上げた。 「だ、誰がKYですかぁ! あたしはこれでも空気が読める方なのです!」 なら出てくるなあ! 俺がモノローグで『橘京子は今回出てきません』って自信満々に言ったんだぞ! どう責任を取る気がこの野郎! 「せ、責任って……いけませんわ。まだあたし達会ったばっかりなのにいきなりそんな……」 とりゃあ! 「へぶぐっ!!」 ビニール袋を横に一閃し、アホなことを言い出した橘の口を封じ込めた。 「い、いたたたた…………じょ、冗談なのにそんなに本気にならないでください……」 こいつの冗談はたまに本気で笑えないときがあるから困るんだ。 「ところで、どちらさまですか?」 「おい、」ガン見した俺は「さっそく笑えない冗談を言ったつもりか?」 「何のことでしょうか?」 キョトンとしたまま、まるで身に覚えが無いような口調で首を傾げた。 「じゃあお前は一体誰なんだ?」 「あたしですか? あたしは織女星の織姫ですが、それが何か?」 あくまでもシラを貫き通す気かこのやろう。 「違う――――彼女……は――――――まぎれもなく……――――織姫…………――――橘京子……とは――――構成要素が――――――異なる…………――……」」 マジですか九曜さん! どう見たって瓜二つじゃないですか! 「マジ――――だから…………信じて……――」 信じる信じないはこの際おいといて、それよりも幻滅した。 神よ。あなたは何を好き好んで伝説の織姫様を橘京子そっくりに仕立てたんだ。お遊びも程が過ぎますぞ。あんなのに願い事を言ったらまとまるものもまとまらなくなるじゃないか。いるだけではた迷惑なヘタレが何人いたところで…… 「あのー。どうかしましたか?」 ……いや、なんでもない。思わず口ごもった。 「そうですか、少々目が血走ったように見えたんですが」 ウィ、正解だ。でも本当のことを言ったら泣くだろうから敢えて黙っておくことにし、代わりと言っちゃ何だが違う話をすることにした。 「ところで、こんなところで何をやってたんですか?」 「ああ良くぞ聞いてくれました!」橘に瓜二つの織姫様はよよよと泣き崩れた。 「実は、故あって牽牛星の彦星様に会いにいけないのです。今日は年に一度会えるのを許された日ですのに……ううう……」 「飛んでいけばいいじゃないですかさっきみたいに」宇宙なんだから重力関係ないでしょうし。 「いいえ、そう言う訳にはいかないのです。ですからここで泣き崩れてたんです」 織姫様はグッと拳を握り締め、 「天の川を渡れるか渡れないかって言ったら渡る事は可能です。ですが今年、あたしが天の川を渡って彦星様に遭うのを良しとしない方達に阻まれているのです。あたしの唯一の楽しみを奪いやがって……あの腐れメス豚共め、今に見てろよ……」 なんか目が危ないんですが…… 「で、その人は誰なんですか、聞くからに女性の方だと思われますが」 そう言うと彼女はふうと溜息一つついて、 「あたしの姉……お姉さんです。二人の姉が、あたしと彦星様との仲を嫉妬してるんです。自分達が彦星様に選ばれなかったからと言って、ずっとあたしをいぢめるんです……」 はあ、さいですか。 「さいなんです。しかも今日、彦星様が主催するパーティーに自分達だけ参加して、あたしは掃除洗濯家事手伝いを押し付けて………せめてカボチャの馬車があれば、二人の監視の目を潜り抜けてパーティに参加できるんですが……およよよ……」 あのー、それは違う話のような気がするんですが…… 「気のせいです。細かいことを気にしたらこの先やっていけません」 それは何となく分かるが…… 「あっ! 噂をしたら影です! お姉さん達が来ました!」 そそくさと俺の後ろに隠れた。っていうかモロばれでしょうに。 「病は気から! です!」 あんたは今病気にかかっているのか……いや、アホの子という不治の病にかかっているのかもしれない。 やれやれ、なんで俺はこう言った輩と縁があるのかね。 等と自分の歩んできた人生に悲観していると、天の川の上流から二人の姿が現れ、俺達と対峙するかのように動きを止めた。 これが織姫曰く、二人の姉上なのだろうが……ちょっと待てい。何でこいつらがここにいるんだ? 「ふふふ、織姫さん。あたし達は今から彦星様のパーティに行ってくるわね」 「くくく、サボっちゃダメだからね」 「うう……わかりました」 内心の動揺を余所に、織姫の姉達は交互に喋り始めた。 「ちゃんと家事をこなすのよ」 「迅速且つ丁寧に家事をこなせれたら、ご褒美としてパーティーの残り物を捧げよう」 「本当ですか!? お願いします! タッパー渡しますんで大量に!」 「えー、タッパー? まじ、きもーい!」 「出来の悪い妹に至福の料理を提供する義理はヘルパーT細胞の一欠けらも無いよ!」 「それに残り物を包むなんて真似、恥ずかしくてできるわけ無いじゃない」 「タッパーを持ち込むのが許されるのは小学生までだよね!」 『キャハハハハ!!』 「…………うう、ひどい……」 ええと、どこからつっこもうかな。 七夕の伝承だったのが、本気で西洋のおとぎ話になりかけているのもかなりの高確率で突っ込めるポイントだし、それ以前にどっかで聞いたことのあるネタを使いまわしているのもすっげえ気になる。 それよりなにより、織姫様のお姉さん二人がそれぞれハルヒと佐々木にそっくりなのは一体どう言うことでしょうかね? しかし、お姉さんのいびり方には目を見張るものがあった。積年の恨みが篭っているというか、ストレス解消法の一つと言うか…… 何かこう、いじめるためだけに存在している感じだ。まるでリアルの世界のハルヒと佐々木と橘をみているようで少し怖い。 等と橋にも棒にもかからないことを考えていると、 「あら、そちらの方は?」 お姉さんの片割れ、ハルヒに似ている方が声をかけてきた。「俺? えーと、ちょっとした通りすがりです」 「あらそう」 くるりと踵を返し、もう一人の佐々木似のお姉さんと体を潜めた。 (……ちょっといい感じね、彼) (やる気のなさそうなユルキャラ系だけど、だがそれがいい) (うんうん、何だか苛めたくなっちゃうよね!) (そうそう、小難しい話をして彼が困るとこなんか見たら感じちゃう!) 「あのー」 『はいっ! 何でしょう!』 いや、何でもないですが…… 「コホン。まあ、そういうわけだから、あたし達は行くわよ。ちゃんと留守番してなさい」 「つまみ食いなんてもってのほかだよ。わかったね」 「はあ……わかりました……」 二人の姉は、織姫をいびるような口調で蔑み、足場を蹴って天の川を渡ろうとしてそこで立ち止まった。 「そうそう。忘れてたわ。そこの彼」 何でしょうか? 「よければメアド交換しません? ああ、番号も是非」 ケータイ持ってるのかおまいら! 「あああ、行ってしまいました……くやしいのです……」 二人の姿が完全に見えなくなった後、最後まで取っておいたお気に入りのスイーツを食べられてしまった橘と同じような悔恨の表情を露にした。 「ううう……彦星様のパーティーで出てくる特製スイーツはほっぺが落ちるくらい美味しいのに……あれを独り占め、いいえ、二人占めするなんて贅沢にも程があります……」 訂正。スイーツ好きな性格も一緒かよ。 「せめて……せめて、何とかばれないようにパーティーに参加できたら……あたしだって死ぬ物狂いで食べてやるのに……」 あのー、当初は彦星様に会いたいって言ってませんでしたか? まさか彦星様宅のパーティーに参加したいってのはスイーツを食べたいだけとか……この人の性格が橘京子と瓜二つと考えるならば本気でそんなことを考えかねん。 手段のために目的を見失う少女、それが橘京子なのだ。悲しいことに。 「まあまあ、今年は諦めましょう。一年間まともに暮らしていればきっと来年は参加できますって」 「一年間も我慢できませんっ! あなたは知らないからそんな無責任なことを言えるんですよ!」 いやあ知る気もなんてもともとさらさら全然これっぽちもありませんから。 「じゃあ聞いてください!」 「やだ」 ……等と断っても絶対喋りだすだろうな、この性格なら。 「人間一日一回くらい甘いものを食べなきゃ調子が悪くなるじゃないですか、あれと一緒です」 一日どことか一週間甘いものを抜いても死にはせんだろうが。そしてあなた今、『人間』って仰いませんでしたか? 「ああ、それは言葉の綾です。気にしないでください」 果たしてこの人は何者だろう。九曜と同じく宇宙人なのか? いや、橘京子の異次元同位体……って、まさかそんなわけないよな。 「ともかく! 甘いものが食べれなければあたしに取って死も同然。こうなったら天の川に飛び込んでやる!」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………あの」 何でしょうか? 「止めてくださいよ。そこは」 いやまあ、俺如きが止めたところで無駄かな、って思いまして。 「な、何と言う人畜非道の扱い! うわぁぁぁぁん! みんなであたしをいぢめるう~!」 どうすればいいんだこの場合…… 「あたしなんか要らない子なんだぁぁ~!! なんて可愛そうな娘なんでしょかぁぁぁ!!! 誰にも同情されないですぅ~! うっうっ……」 何と言うか、似たような性格の奴を知っているから可愛そうだとしても同情しきれないってのが根底にあるわけで。橘京子の性格を鑑みれば誰だってそう思うわけで…… 「……――う゛う゛う゛う゛…………――――」 く、九曜!? まさかお前泣いているのか! 「――――う゛う゛…………感動したっ!――――」 それ違う人や! 「ってか感動したのか!」 「――――あなたを……助ける…………――――」 「ふえ! ほ、本当ですか!?」 「――――本………当――」 「ありがとうございます! 全身毛だらけの黒い人!」 「――……九曜――――……周防――――九曜…………」 「九曜さんですね。覚えました!」 ああああ。やっぱりこんな展開になるわけで…… 「ところであなたのお名前は?」 ここで本名を教えてやるってのも考えたが、ここまでの流れからして絶対俺の本名は使われないだろうからしょうがなく『キョンとでも呼んでくれ』と話す羽目になった。 「キョンくんですね、これからヨロシク!」 こっちはヨロシクしたくないです。 とまあそんなわけで。 容姿だけならまだしも性格まで橘京子と瓜二つな織姫様と、何を勘違いしたのかそれに感銘を受けた周防九曜に振り回される羽目になってしまい、そこにはやっぱり災いの元が転がっていたのは言うまでもない。 「ところで、どうやって行くんですか?」 ようやっと正気に戻った(?)織姫様は不思議そうな顔をして九曜に問い掛けた。 「姉二人の監視は並外れています。いくらあたしが変装して天の川を渡ろうとしても、すぐに見破ってしまうんです」 因みに今までどんな変装をしたんだと聞いたところ、 「ええとですね、伊達眼鏡に鼻とお髭がついたアレです。ほら、宴会とかで使う奴」 なるほどなるほど、聞いた俺がバカでした。 「他にもバンダナを巻いたりとか、フルフェイスヘルメットを被ったりとか、目と鼻と口のところに穴のあいた毛糸の帽子を被ったりとか……」 「いや、もういい。黙っててくれ」 「…………」 意外と素直に黙るんだな、この人は。橘とはちょっと違う……と信じたい。 「九曜、現状は理解できたか? バレずに天の川を渡ってパーティーに参加できればいいそうだ」 「――――把握……馬車を…………出す――――シンデレラの――馬車……――出す――」 右手を虚空に上げるや否や、しゃらんという音と共に光る杖が現れた。先端が星の形をした、スターリングインフェルノにそっくりな魔法のステッキである。 「――――」 無言のまま杖を振るうと星屑が飛び散った。飛び散った星屑はやがて一箇所へと集まり、その一瞬の間にはカボチャを模した馬車……って、 「これは馬車じゃねーぞ!」 そう、九曜が出現させたのは馬車ではなかった。では何を出現させたかと言うと、それはご自分の目できっちり確かめてほしい。 カボチャの形をした客室。 御者と馬を操るための手綱。 そして、カボチャの下に張り付いた二枚の板。 一般的に、これはソリというものである。 シンデレラの馬車との違いを事細かに説明したいところだが、でっけえカボチャに二枚の板が取り付けてあるだけの、これ以上説明のしようがないくらい簡素な一品なので、まあ実際に見てくださいとしか言えない。 シンデレラのカボチャの馬車がソリになったと考えてもいいが、サンタクロースのソリにカボチャが乗っかったと考えたほうがもしかしたら理解が早いかもしれない。 「すっごいです! さすがです、九曜さん!」 「――いやあ…………それほど――――でも……あったり――――」 照れる宇宙人ほど面妖なものはない気がするが、それは感情に希薄な宇宙人の知り合いしかいない俺の経験不足が祟ってのことだろうと勝手に結論付けた。 「でも、馬車はいいんですけど、引く馬がいませんよ」 馬車じゃないから馬は必要ない……って、そんな突っ込みはナシか。 「どうするんだ九曜?」 「心配――いらない…………」 再びしゃらんと杖を翳し、今度は俺に光が集中し――えええ??? 「フンガ~!!!(なんじゃこりゃ~!!!) 「馬――じゃなくて……鹿――――だけど……大差――ない……――――わたし……は――――御者……――――」」 「完璧です! これで向かいましょう!」 「フガー!!!(何で俺が鹿なんだよぉぉぉぉ!!!)」 「あたしはカボチャさんの中に隠れてますから、上手いこと姉二人をやり過ごしてくださいね!」 「――ざっつ…………おーらい――――」 「フガガガガ!!!!!(人の話をきけぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!)」 「――ハイ――ヨー――」 「フギャー!!(痛てえーっ!!)」 「ねえ、アレ何かしら? 異様な物体がこっちに向かって走ってくるんだけど……」 「な、何かの乗り物、に、見えるんだが……しかし何とも面妖な……」 「顔、合せない方がいいわね」 「そのようだね。無視しましょう。無視無視」 (やった! 気付かずに通り抜けることができました!) カボチャの中から、織姫様の嬉しそうな声がささやかに聞こえた。 あれは気付かずにというより、力の限り無視したせいだと思われますがこれ如何に。 そうつっこみたいのだが、鹿となってしまった俺は上手く言語化できなかった。長門の気持ちが曲がりなりにも分かった瞬間でもあった。まあ、冗談だが。 「――――完璧……くくくくく…………――――」 手綱を持ったままほくそ笑む九曜の姿はとてつもなく怖いものがあった。 「――うる……さい――――黙って――――走……れ――――」 バァン! ってええええええええ!!!!!! 「着きましたぁ!」 「――――到着…………」 二人の満足そうな表情を見ればおわかりの通り、無事天の川を渡り終えた俺達一行は、牽牛星のパーティが行われると言う沿岸沿いの別宅に到着した。 今更かもしれないが、彦星様の家はとってもお金持ちらしい。本宅の他に別宅も構えているし、何より色んな人を呼んでパーティーをするくらいだからさもありなんと気付くのにはマクローリンの級数展開を解くより簡単な問題だった。 なお日本に伝わっている伝承によると、織姫は天帝の娘であり、こちらの方が金持ちのイメージがあるのだが、何故かこの橘似の織姫様はそんな気質は全く感じられず、小市民且つ凡人のオーラしか発していなかったりするのだが…… ううむ、世間は広いものよう。 余談だが、別宅到着後には九曜は魔法を解き、馬車だかソリだったものは消失し、俺も普通の人間の姿に戻ることになった。というかいつまでも鹿の姿でいようなんて思っても無い。 更に余談だが、九曜が思いっきり鞭で叩くものだから背中が痛くて堪らん。 「では早速参りましょう!」 「まて、このまま侵入したら訝しく思われるだろ。変装とかした方がいいんじゃないのか?」 「大丈夫です」と織姫。「あたしを参加させたくないのは二人の姉だけです。むしろ彦星様はあたしの参加を待ち望んでいるから、来たもん勝ちなのです! 心配に及びません!」 本当だろうかね…… 「嘘じゃありません、証拠を見せてあげましょう」 得意そうに橘……じゃなかった、織姫は別宅前で声を張り上げた。 「たのもー!」 登場破りでもする気だろうかこの人は? 彼女の甲高い声が別宅内に響き渡り、待つこと暫し。邸内があわただしく動き始めた。 『……その声はもしや織姫殿……今すぐ行きます!』 とまあこっちも織姫様に負けないくらい轟音を響かせ、そして約束どおり幾多も経たないうちに現れたのは、 「織姫殿! 一年ぶりでございます! お慕い申し上げて候!」 と、元気の良い青年は頬を朱に染めて彼女の来訪を歓迎した。 「お元気でしたか彦星様?」 「はははっ、モチのロンでございます。いくら不調を訴えていたとしても、あなたの声に勝る特効薬はありませぬ!」 「それはよかったのです。あなたが倒れられると、スイーツが食べれなくなりますから」 「私めのスイーツをそんなに喜んでくれるとは……非常にうれしゅうございます……」 「うん、頑張ってくださいね」 「ははっ!」 「美味しくなかったら帰っちゃって、もう金輪際会いませんから」 「そ、それだけはご勘弁を!」 えー、さて。 カンの良い諸兄諸姉の皆様ならばそろそろ気付かれていると思われるのだが、この彦星様、俺の知るどこかの未来人さんに瓜二つだったんですね、これが。 こっちでもパシリ的立場なのは全く変わっていない。既に死語と化しているがアッシーくんという呼称がピッタリである。 「ふふふ、嫌ならもっともっと精進なさい。それともお仕置きされたいのかしら? 往復ビンタ、いいえ、手足を縛ってヒールで踏みつけるってのもいいわね」 「ああう! それはそれでエクスタ……いや、御免被りたいと思いますので精進します!」 「はい、よろしくお願いしますね」 ……ええと、俺の知る限りこの二人ってば仲睦まじい夫婦関係にあった気がするが……なにこの師弟、いや女王様と下僕の関係は!? もしかしたら現実の藤原も結構M……これ以上は禁則に該当するので申し上げれない。残念。 「ささ、それよりも準備は出来ておりますぞ。どうぞお上がりください!」 「あらそう、それはありがとう」 じゃあ俺らもご相伴に預かるとするか。 そう思って織姫様と一緒に星で出来た別宅に入り込もうとした瞬間、「何だお前は?」と呼び止められた。 何だって言われても、人間ですとしか答えようがない。 「誰だと聞いているんだ?」 俺はこいつをここまで 「こいつって呼ぶなこの無礼者!!」 ……は? 「このお方をどなたと心得る!」 藤原を模した彦星様は偉そうに踏ん反り返り、懐から黒いキーケースを取り出した。多分、印籠の代わりなんだろう。 「恐れ多くも先の……先の……えと、何だっけ?」 詰るな、そこ。 「はて、何でしょう。別に引退するような役職やスポーツなんかやってませんし……」 『うーん……』 悩むくらいなら最初からやらないで頂きたい。 「うむ……はっ! そうだ! この方は天帝様のご令嬢なるぞ!」 「あ、そうでした! あたしったらすっかり忘れてました!」 おまいが忘れるな。 「もう、この。お茶目さんなんだから♪」 そして藤原似の彦星よ。気持ち悪いから器用にウィンクすな。 「ところで、パーティーが行われるって聞いていたんだがどんなことを祝うパーティーなんだ?」 何とか織姫様の取り成しがあったおかげで、彦星はいやいやながらも俺と九曜を別宅内へと招待してくれることになり、広間でお茶を啜りながら疑問に思っていたことを口にした。 因みに別宅とは言うものの、俺の家より広く、通されたこの広間と言うのも俺の自宅の敷地面積のゆうに三倍はあるだろう。広大すぎる宇宙空間においては微々たるものかもしれないが、日本のベッドタウンの実情から比べると非常に羨ましい。 「ああ、そういえばまだ詳しくお話していませんでしたね」 ズズズと同じく茶を啜りながら(正確には啜る音が俺よりお下品)、織姫様は事の詳細を語ってくれた。 「実は本日七月七日、あたしと彦星様の結婚を祝してパーティが開かれることになっているんです。それで、その記念にとあるものが寄贈されるそうなんです」 織姫と彦星が結婚していた事実は結構驚きだったが、そんな雰囲気を全く感じさせないところがある意味オリジナルの構成要素を模した結果と言っても過言ではない。一応伝承どおりだし、その辺はつっこまないようにして、他の事を問い質すことにする。 「そのとあるものというのは一体何なんだ?」 「実はあたしも詳細を聞いていません。確かお父様の知り合いがお作りになられたとは聞いていましたが……彦星様はご存知ですか?」 「いや。残念ながら」と彦星。「ですが僕の……こちらの別宅に寄贈されると言う話だけは聞きました」 「あら、そうだったんですか。それは初耳です」 何だか妙な話である。二人の結婚祝いであると言うのに二人が詳細を知らないとは。確かに披露されるまで夫婦に秘密にしてあると言う事も考えられるが、どうも釈然としない。二人の伝聞に差異があるのも気になる。 それより何より、二人のためのパーティなのに何故織姫様の出席が認められないのか。これはどう考えてもおかしかった。 「あ、そう言えば」織姫様はポンと手を叩いて、「その品が完成間近になってから、お父様が異様に慌てだしたのを思い出しました。よくよく考えたら二人の姉がパーティの参加を拒みだしたのもその時期でした」 「寄贈の話も、元は天帝様……織姫様のお父様に贈与するはずだったのに、いつの間にか僕のこの家へと送られることになったんです」 ふむ、なるほど。 「少なくとも、」俺は指を虚空で動かし、「その寄贈品が今回のパーティの肝だってことはわかった」 秘密にする理由、寄贈場所を突然変更した理由、姉二人が織姫様のパーティ参加を拒んだ理由。これらは全て繋がっていると見てよいだろう。 「九曜、何かわかるか?」 「――――橘…………京子――なら……間違いなく――――プッツン…………」 「は?」と俺。「どうして橘京子が出てくるんだ」 「似たり…………依ったり――――だから……――」 貯めつ眇めつ織姫様と彦星を見渡した彼女は、自分に言い聞かせるように再びダンマリモードに突入した。 九曜ならもしかして真相を知っているのかもしれないが、どうやら答える気はないらしい。自律進化の可能性を探るべく長門が累計216972日を過ごしたように、九曜もまた彼女の成すことをじっと観察する気なのかもしれない。 しかし、残念ながら織姫様は織姫様であって橘京子ではない。彼女の行動を観察したところで天蓋的な情報が得られるとは思えない。できればその辺をプッシュして事の解決に努めたいが…… 「ともかく、ここでじっと考えていても話が解決しないでしょうし、ここは一つパーティーの準備もしながら様子をうかがうって事でどうでしょうか?」 「そうだな、もし寄贈品に何らかの意味があるならその時感づくだろうし」 二人がそう言うのであれば仕方あるまい。俺は特に文句もつけず立ち上がる二人を追いかけてそのパーティーとやらの会場へと足を運ぶことにしたのだ。 パーティー会場は天の川に隣接した別宅のテラスで行うことになっており、既にパーティーに向けて準備が着々と進められていた。 テーブル、イス、クロス、司会者用のマイク、幟、その他諸々……もちろん食事の準備もバッチリである。 「こちらが本日のメニューになります」 メインテーブルの前で食器の配膳を行っていた料理長を捕まえた彦星は、彼に本日のレシピを持ってくるよう指示し、俺達に見せてくれた。 「こ、これは……合鴨の香草ソース和え、それにスズキのパイ皮包み、それにデザートはなんとザッハトルテ! ううん、たまりません!」 そして、例えではなく思いっきり腹の虫を鳴かせた織姫様は、羞恥心などどこ吹く風で涎をポタポタと垂らした。 「ふふふ、どうですか。あなたのために一生懸命作りました!」 お熱が篭った眼差しを浴びせる彦星。しかしお前が作ったわけでは無かろう。作ったのはこの家に居るお手伝いさんたちだ。 「何を言うか。確かに僕が全員分の料理を作ったわけではないが、本日のコースを決めたのは僕の裁量だし、それに織姫様の分は間違いなく僕が手作りで創り上げたものだ!」 はあ、それはご苦労様です。 「くっ、信じていないなその瞳は」 いやあ、信じる信じない以前に俺にとってはどうでもいいことなので話半分にしか聞いていなかっただけのことです。他意はありません。 「ならば食べて見るがいい! 僕の料理の腕を思い知れ!」 だーかーらー、話を聞いてくださいっ……って、やっぱり俺の思いなんて徒労に終わるんだろうな。 やはりというか何と言うか、俺の予想通り時を待たずして彦星殿は邸内にある一室――恐らく厨房だと思われる――に入っていき、暫くの後に一皿の料理を持ち出してきた。 見た目一欠けらのチョコレートケーキに見えるが…… 「こ、これがかの有名なザッハトルテ!」 なんだそれ? 「知らないんですか!? オーストリアの名門店が一子相伝で引き継いだ伝説のスイーツなのです!」 と、やたらと饒舌に語りかけた。ところで一惑星の些末な情報、一体どこで手に入れたのだろうか? まさかウィ○ペ○ィアで調べましたなんて言うんじゃないだろうな? 「いいえ、美○ん○ぼです! 富○副○長がイタイかの名作です! 子供の頃から楽しく読んでました!」 本来なら『宇宙に美○ん○ぼが売ってるんかい!』とか、『どこで手に入れたんだあんたは!』と突っ込むところだが、『彼のイタさに比べたらあなたのイタさの方が遥かに上を行っています』と冷静に突っ込めた自分を誉めてあげたい。自画自賛ものだ。 「あたしあそこまで酒癖は……いえ、なんでもないです」 どうやら酒癖はかなり悪いらしい。 「もう、そんなことはどうだっていいのです。せっかく彦星様が作ってくださったものですし、食べて見ましょうよ」 いいのか、と一応彦星様にも了承を得ることにした。こいつのことだから『織姫様に作ったものを勝手に食べるな』と叱られそうだったからである。 しかし以外にもあっさり食べてみろと承認がおりたため、俺と織姫様は同時に口の中に運び…… 「んまいっ!」 ぐうの音も出さないくらい賞賛した。 正直俺は甘ったるいものが特別好きというわけではない。出されたら食べるが、自ら進んで食べることは殆ど無い。 しかし、このザッハトルテは違った。濃厚なカカオの香りに包まれた生地が口の中で踊り、適度な甘さと苦味が食欲を増進し……いや、止めておこう。俺のつたない表現力ではこの美味しさの万分の一も伝えられない。 その辺はあの本職の新聞記者にお願いするとして、 「本当にこれ、お前……いや、あなたが作ったんですか?」 「当然だ。姫様のお気に召すように毎日修行を重ねたんだ。銀河系で一番のパティシエにお願いして指導してもらい、今では一分間に百個卵を割る事も可能になった」 すげえ……けど、そんなに自慢できる特技でない気がする。 「ふっ、これだから凡人は困る。卵の鮮度を落とさずいかに効率よく割って泡立てるかがケーキ作りの真骨頂なのだ」 いや、別に否定はしてないんだが…… 「織姫様、どうでしょうか、お味の方は?」 「あ、ひゃい、ほいひいへしゅ」 喰いながら喋るな橘京子の偽者よ。 俺がそう言うとはむはむこくんと喉の音を立てて、 「あ、失礼しました。ちょっとした癖なのもので。ええと、このザッハトルテの出来ですが、中々素晴らしいと思います。美味しくいただけましたよ」 「あ、ありがとうございます!」 「でも……」 でも? 「シグナスさんところのデネブくんの方が腕は一枚も二枚も上手ですね」 「がーん!!!」 ……あ、白目向いて気絶しちゃった。 「えーと、シグナスさんところのデネブくんってのは一体誰ですか?」 「ああ、あたしの家のお隣さんですよ。家が近かったから昔はよく遊んでいたんです。最近はお仕事が忙しいらしくてなかなか会えないんですが……あ、前に写メ撮ったんです。見ますか?」 こそこそと懐を弄った織姫様は一体あの服のどこに隠していたのだろうか、携帯電話を取り出して一緒に撮ったと言う写メを見せてくれた。 「ほら、この人」 ブロンド長髪で流し目が素敵な二枚目(念のために言っておくが、俺の記憶に無い人だった)が、織姫様と指と指を合わせてハートマークを作っている写真だった。しかもお内裏様とお雛様の格好をしている。 「そうそう、桃の節句にあわせてその衣装を着たのです。そして二人で桃のマークを作ってポーズして。楽しかったな……そう言えば彦星様ったらデネブくんが来るといっつも不機嫌な顔して……何がお嫌いなのかしら?」 そら、まあ。勘違いするわ。 天然では済まされないと思うのだが、しかしそれでも彦星は織姫を慕っているのは、一途と言うか、バカ正直と言うか……織姫様が罪悪感の欠片も無いのが根本的な要因な気がしてきたが。 やっぱりこの人、橘京子の性格とそっくりそのままである。 さてさて、真っ白に燃え尽きた彦星様をこのまま放っておいても話が進まないので、何とか正気に戻らせた後、いよいよそのパーティーが執り行われることとなった。 彦星が名士なのか、或いは織姫の父親が名士なのか(織姫が名士だという可能性は絶対に在り得ない)、会場にはそこそこたくさんの来賓が集まり、余裕を持って用意しておいたはずのイスとテーブルも埋め尽くさんばかりになっていた。 「あ、あれはタウラスのアルデバランおじさん、それにシリウス様にカノープスさん。わわ、プレアデスのむつら星大御所まで来てる!」 と驚嘆の声を上げるのは橘京子さながらの奇声を上げる織姫様だった。一体どういう人なんだと問い掛けたところ、全星連(?)の歴代総長や星座形成組合(??)のトップなど、各界の名士が目白押しだという。 更に聞くところによると、これだけ多くの名士が揃うのは前代未聞だと言う。それほどまでにして二人の結婚を祝していんだわと織姫様は嬉々としていたが、恐らくそれはノー。 結婚何周年か知らないが、記念パーティにわざわざ参加するほど皆さん暇じゃないだろうし、何より本当に祝う気持ちがあるのなら、記念パーティなどではなく結婚式に参加するはず。 結婚式の様子をきちんと聞いたわけではないが、先ほどの織姫様の言から、少なくとも結婚式に集まった人よりも今回の記念パーティに参加した人の方が多い事がわかる。 つまり、各界の名士は二人の結婚記念パーティを見に来たわけではない。もっと他に理由があるからここに来た。そう考えれば納得がいく。 しかし、一体何のために……? ヒントは、既にたくさんあった。 織姫様不在の結婚記念パーティ画策。 二人の姉の執拗なまでの参加妨害。 各界の名士の参加。 橘京子の如き織姫様と藤原の如き彦星様。 ここから導き出される結論。 ヒントを一つに集約すると、ああなるほどそう言うことだったのかと納得できる結論へと辿り着くことができる。 いや、できたはずだった。 しかし悲しいかな、その時の俺はそこまで頭が回らなかった。 関係者各位の席は既に満席となり、主賓である彦星様は一番前にある席に、そして俺と織姫様、そして既に忘れられた感のある九曜は幕の裏で身を潜めて事の成り行きを見守ることにした。 元々部外者である俺と九曜がこの場で隠れているのは当然であるが、もう一人の主賓でもある織姫様を隠したのは、彼女を出席させたくない勢力に見つかると面倒になると感じたからである。 彼女がここに居ないと鷹を括った時点で、彼らは必ずボロが出るはず。そこを掴めば今回のパーティの真相が掴めるってもんだ。 当初織姫様は「お料理が食べたいです……」と駄々をこねていたが、パーティが終わったらいくらでも食べさせてやると何とか説得してこの場に引き込ませた。 あとは、表の彦星様が上手いこと真相を聞き出してくれるかどうか…… 「……そろそろ時間となりましたので、パーティを開催致します。先ずは開会の言葉を、主催者であります天帝様より拝領したいと思います」 フッと辺りが暗くなりスポットライトのような光が中央の壇上に降り注ぐ。 (なお、『暗くなる』とか『スポットライト』とか、宇宙空間にあるまじき演出効果はどうやって醸し出しているか俺の頭脳では到底理解不能なので、気が向いたら宇宙空間まで行って彼らに聞いて欲しい) そこに現れたのは寸分の隙もなく正装を着こなした一人の壮年だった。ただあのおっちゃん、どこかで見たことあるような……あっ! (どうしましたか!?) (いや、何でもない) 言葉を濁した。 そうか……すっかり忘れていた。橘の父親が『組織』のボスだということを。 つまり、織姫様の父上である天帝は、あのぷっつん親父がキャストを演じていると言うことになり、事実そのままの姿の人がお披露目したのだ。 「皆様、本日は娘と婿殿のためにお集まりいただき……」 渋い声で鷹揚に演説するは、確かに俺の知る組織のボス……橘の親父さんにそっくりな人だった。彼が今回のパーティを引責する張本人であるわけだが、だとしたら余計娘を蔑ろにした理由が分からなくなる。 (お前、何か変なことしでかしたんじゃないだろうな? 親父さんを怒らせるようなことを) (そんなわけありません。あたしはお父様のお言いつけ通り、正直に生きています) 正直と言うよりバカ正直と言う方があってる気がする。 (なっ! それはいくらなんでも!) (いいから黙って話を聞け!) 「生憎娘の織姫は故あって今回は不在とさせていただきましたが、彼女も今回皆様にお集まり頂いたことを大変嬉しく思っている次第でございます。なお、……」 やはり、彼女を欠席にしたがっているか……だがまだ尻尾はつかめない。一体何が原因なのだろうか? そうこうしている間に開会の挨拶は終わり、続いて来賓の挨拶へと場を移し、そして聞きたくも無いうざったらしい長い話を延々と聞くことになる。舞台裏とはいえ、これはかなりきつい。 そして、更なる問題が発生。 (あのう、キョンくん、あたしおなかがすいてきましたぁ……腹の虫が治まりません……) 耳をすますと、確かに腹の音がぎゅうぎゅう鳴っているのがわかった。 (だから我慢してくださいって。パーティになったら彦星さんに取ってきてもらいましょう) (でも……でも、いい匂いをプンプンさせてお預けってのはどんな拷問よりもひどいですぅ……ああ、お肉にお魚お野菜、そして究極至高のスイーツを食べたいです……ぎゅるるるる……) 確かに話の長さにはうんざりするが、ここで外に飛び出そうものなら計画がおじゃんである。何とか踏みとどまっていただきたい。 (九曜、お前の力で織姫の腹を満タンにさせるとか、織姫を寝かせるとかできないのか?) (――――――) (九曜!?) (――――――) ええい、こんな時に限ってダンマリモード継続中かよ。 (はあ……はあ……お料理……まだかな……まだかな……) やべえ、涎垂らして目が若干トリップしている。こりゃ早めに料理を持ってきてもらわないと大変なことになる。 早く終わってくれ、来賓さんよ! 「――以上で、祝福の言葉と変えさえていただきます」 パチパチパチと疎らな拍手が終わる。やった。ようやく挨拶終わりだ。あとは乾杯の音頭のみ! 織姫様もう少しの辛抱ですから絶えてください。 (ひゃい……がんばりましゅ……) もう飢えて飢えて死にそうな顔をしている。正直変顔である。 「有難うございました。それでは乾杯の音頭……の、前に」 まだあるんかい! 「皆様にご覧頂きたいものがあります。それでは、どうぞ!」 暗がりの中、入り口のドアが開き、スポットライトが一斉に照らし出される。 映し出されたのは…… (何だ、アレは?) 残念ながら白い布が覆い被さっているため詳細は確認できない。が、俺達の身長の二倍はあろうかと言う長身と、塔のように細長く聳え立つ形状だけは把握することが出来た。 加えて、仄かに香るこれは…… (ああう! スイーツです! スイーツのかほりですぅ! 頂きますぅ!) (ちょ、外に出ちゃダメですって!) 発狂直前の織姫様が声を張り上げたところ俺が何とか制止した。 「こちらはお二人の結婚を記念して、料理研究家件フードデザイナー、ヴァーゴのスピカ様が創り上げました、特製シチセキケーキです。それでは皆様、ご覧下さい、どうぞ!」 バサッ、と音を立ててて白い布は地に落ち、代わりに現れたのは織姫と彦星、二人が仲睦まじく手を取り合う美しい彫刻のようなデザインド・ケーキであった。 色こそ白一色だが、髪の毛一本に渡るまで細かく創り上げているのが遠目からもわかった。そんじょそこらの気取ったパティシエなんかには絶対出来ない芸である。 最早これは芸術と言っていい。その手に疎い俺ですらそう感じた俺はポカンと口を開けてしばし見入っていた。 だが。 俺のこの行動が仇となった。 あまりのことについ力を緩めた俺は、とんでもない野獣を野放しにしてしまったのだ。 「皆様もご存知の通り、スピカ様は星系間宝珠にされている御仁でもあり、作るもの全てが永年文化財に指定される程の達人でもあります。今回のこの作品も、お二人の宝物として永遠に記憶されるでしょう」 パチパチパチ……と、盛大な拍手が響き渡った。 頭を下げる彦星と天帝と、そしてあっちで手を振るのは先ほど紹介に上がったスピカ様か。 いやいや、本当に素晴らしい。食品と言うレベルを超越している。惜しくらむは食べ物で作るのではなくもっと腐りも色あせもしない材質で作ってくれればそれこそ未来永劫子々孫々家宝として伝えられるのにな。 いや、食べ物でこれだけのものを作るから価値があるのかもしれないが。 そして司会者は彦星へとマイクを渡し、お返しの挨拶となる。 「こんな素晴らしいものを、わたしたち夫婦のためにありがとうございます」 ここ一番では常識人なのか、彦星様はまともな口調で皆にお礼の挨拶を述べた。 「本当に有難うございます。決してムダにすることなく全部食べます!」 対して食いしん坊の織姫は食べることしか考えてないらしい。やれやれ。だがそれも重要なことだ。せっかく作ってくれたスピカ様に対する礼儀ってものだ。ちゃんと残さず食べろよ……って、 『ええっ!!?』 皆の声が一斉に響き渡った。 あ、あいつう……何時の間にちゃっかり席を並べてるんだぁ! 「それでは、いっただっきまーす!」 ぱくっ。 ぱくぱくぱくぱくぱくむぐむぐむぐむぐもしゃもしゃもしゃ……ごっくん。 「うーん、おいひー! さいほーれすぅ!!」 あ……あ……あ…… 「ほ、ほほひはふりーふははっふひへすぅ。んんっ! ひゅるーふほひふひふひふへかひうはっふりへ……ひみるぅ~」 ああ……ああ……ああ…… 「ほうふほし、ほうふほしはへ……ふう、おなか一杯。ご馳走様でした!」 「アホかおのれはぁぁぁあ!!!!!」 ゴスッ! 九曜からふんだくったスターリングインフェルノもどきのスティックを橘目掛けて一閃、見事星の先端が彼女のこめかみにめり込んだ。 「いったーい!! 何するんですかぁ!」 「それはこっちのセリフだぁ! お前一体なんて事をしやがったんだぁ!!!」 「え? あたし達にプレゼントされたケーキを食べただけですけど……」 「作製者の許可なくたいらげるなこのKYがぁ!」 ボコン! 「いたっ! いたたたたたっ! だ、だってお腹すいてたし、もらい物だったし……」 「大概こう言うのは観賞用なんだ! 本当に食べるアホがどこにいるんだぁ!」 「え? 観賞用なんですか? でもとっても美味しかったですよ?」 「知らんわそんなことぉ! どうするんだこの空気!?」 見れば完全沈黙を貫いている一同、それに真っ白に燃え尽きているお父様こと天帝とフードデザイナースピカ様、加えて夫である彦星様。 もう完全にしらけモード突入である。 「あの……えーと、その……」 顔にひとすじの汗を垂らしたところでもう遅い。困った織姫……いやもう橘でいいや……は、えへへへと苦笑いをしつつ、こう言った。 「みなさーん、食事は腹八分目にしましょうね♪」 ――その後、二人の姉を始めとする、怒涛の集中砲火が浴びせられたのは言うまでもない。 その迷惑千万な織姫を何とかふん縛った後、俺は二人の姉に平謝りを繰り返した。パーティを無茶苦茶にしたのは織姫本人だが、間接的に俺達も関わっていたとなれば当然の報いである。 本当なら彼女の父である天帝とケーキを作ったスピカ様にも謝りを入れないといけないが、相変わらず真っ白に燃え尽きているため時を待って謝罪を入れようと思う。 「あなたたち、彼女のそそのかされてここまで送ってきたのね。うかつだったわ」 ハルヒと佐々木に似た姉二人は、以外にもあっさりと許してくれた。 「本当に申し訳ありません」 「いいえ、僕達がちゃんと説明しなかった事にも非があるんだ。まさかあの子が見ず知らずの人を手篭めに取るとは思っても見なかったからね。それに関してはこちらこそ申し訳なかったよ」 そう言って頂けるとありがたいです。 「彼女……見てくれはまあまあなんだけど、頭の中がちょっとあんな風でしてね。お父様も早く厄介払いしたかったのよ」 「折りしも天の川の対岸にお住みの彦星様が何を思ったのか彼女にぞっこんになってね。引き取ってくれるといった時のお父様の喜び様といったら……こっちまで泣けてきたよ」 うむう……苦労してるんですな、お父様並びにお二人の姉君。 「愚昧の娘を引き取ってくれたせめてもの償いにと、彦星様にプレゼントを渡すため今回パーティをすることになったんだけど、その寄贈品がケーキだったのが問題だったのよね」 「そうそう、あの子の耳に入れば我先に喰い尽くすだろうから、この事は秘密裏に動いていたの」 なるほど、だから彼女は詳細を知らなかったのか…… 「結局、パーティは無茶苦茶になったし、父も面目丸つぶれになったわね。ま、仕方ないか」 ハルヒ似の姉上は少々残念そうな顔をしながらも、何故だか楽しそうに微笑んだ。何故だろう。 「それはね、」佐々木似の姉上も希望に満ちた顔で、「あの子を上手くコントロールできそうな人を見つけたからですよ」 ほほう、それは一体誰でしょう。是非ご紹介に預かりたいものだ。身近な人物にあの性格にそっくりな人がいるから、その人の話を聞いて上手く扱えるようになりたいものである。 「いやいや、ご謙遜しなくても宜しいですよ。あなたが一番あの子を上手くコントロールできてましたから」 へ!? 「正直彦星様はあの子の言うなりでしたから、暴走を止めるほどではなかったんですよね。好き好んで接してくれるのは助かるんですが。」 は!? 「どうですか、あの子の夫になる気はありませんか?」 「っていうか結婚して下さい。お願いします」 な、何でこんな流れになるんだ!? 「結婚といっても別に一緒に住まなくてもいいですから。一年に一回だけ、牛飼として形式的に遭えば世間が納得しますから」 ぎゅ、とハルヒ似のお姉さんが俺の左腕を掴んだ。 「それ以外の364日はこちらで一緒に住みましょう」 きゅ、と佐々木似のお姉さんが俺の右腕を掴んだ。 「正直あの子より結婚が遅れたのも腹立たしかったのよね。でも彦星様はちょっと頼りなかったし」 「こうして頼りがいのある上に自分好みの殿方が現れて、本当にラッキーだよ」 「七夕の一日はあの子にあげるとして、残りの半分、一日交代であたし達のお相手をお願いしますわね」 「丁度偶数だからもめる事もないですし円満解決ですね」 「あ、でも。最初の日はどちらにしましょうか?」 「うーん、取り合いになるのも面倒ですし、初日は仲良く3(放送禁止音)にしましょう」 だめだぁ!! 毒電波を受信してやがる!! 「あ、それ名案! でもその次の日はまたどっちか決めないと……」 「ああ、それもそうですね」 「しょうがない、ずっと3(だから放送禁止音)で頑張りましょ!」 「うん、それなら公平だし、不満も無いわ。3(しつこいようだが放送禁止音)バンザイ!」 何が3(放送禁止音だってしつこいな)だぁぁぁぁ!! そんなに出来る体力無いわ!!! 「九曜! 帰る! 帰るぞ!!」 「――――ダメ……」 何で!? 「――――七夕の――――観測…………――まだ――――未完了…………」 頼むから帰らせてくれぇぇぇ!!!! こうして、俺は橘京子そっくりの織姫や藤原そっくりの彦星、その他諸々が出てくる七夕が大嫌いになりました。 めでたしめでたし……なわけないやい。 因みに九曜さんですが、彼女の調査が不完全なのに無理矢理戻ったから暫くの間溜息ばかりついて不機嫌になってしまいましたとさ。 とってつけたような纏め方ですが、めでたしめでたし……なのか? 終われ。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2477.html
プロローグ兼ねた第一話「九曜、髪をすいてみました」 第二話「タニグチシュツゲキ」 第三話「タニグチ、ゲキツイ」 第四話「九曜、死闘してみました@前編」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2583.html
「藤原くんはあまいのがお好き」や「膝の上」の続編です +++おしかけ新妻☆天蓋領域娘九曜+++ 藤原「ふー。今日は疲れたな。…ただいまー…なんてな。独りなのについ言っちまうぉおおっ!」 九曜「───おかえり───なさい───」 藤原「なぜお前がココに居る!」 九曜「───ごはんに───する?───お風呂に───する?───」 藤原「不法侵入すんじゃねぇ! ……っていうかなぜ裸エプロン…」 九曜「───…それとも───わ───た───し───?───」 藤原「どれもしない! それとそういうこと小首かしげて言うな!」 九曜「───…やさしく───して?───」 藤原「…出てけ」 +++ 藤原「…zzz…」 九曜「───…て───」 藤原「ぅう〜ん…」 九曜「───朝よ───起きて───ダーリン───」 藤原「…! 誰がダーリンだ!」 九曜「───朝ご飯───」 藤原「…昨晩追い出したはずなのになんで居るんだよ…」 九曜「───忘れてた───」 藤原「…あ?」 ちゅっ 九曜「───おはようの───キス───」 藤原「…出てけ」 +++ 藤原(ったく。これじゃ家に帰って来られないじゃねぇか。…暫くの間ホテル住まいでもするかな) 九曜「───…はい───」 藤原「…なんだ? 今週発売のnanneじゃないか」 九曜「───わたし───ハネムーンは───南紀白浜が───良いわ──」 藤原「…出てけ」 +++ 九曜「───…ダーリン───」 藤原「…ダーリンはやめろと何度言えばわかるんだ」 九曜「───……あ───な───た───?───」 藤原「それもやめろ」 九曜「──────…おまえさん…?──────……我が君…?───」 藤原「…あのなぁ…。はぁ…。あと…俺のこと呼ぶ時に小首かしげるのやめろ」 九曜「───……パンジー・藤原…───」 藤原「ちょ…! そのお笑いコンビの売れてない方の芸名みたいな呼び方はやめろ!」 九曜「───…皆───そう───呼んでる───のに…───」 藤原「皆って誰だよ!」 九曜「───…わたしの───ことは───…ハニーで───いいわ───」 藤原「…出てけ」 +++ 九曜「───…藤パン───」 藤原「やめろっての」 九曜「───…パンパン…───」 藤原「…やめろっつってんだろ」 九曜「───……パンつ…ん───?───」 藤原「…出てけ」 +++ 九曜「───晩ご飯…───」 藤原「…あ?」 九曜「───食べて───」 藤原「…ハンバーグか」(俺の好物じゃないか。どうして…) 九曜「───そう───好物で───揃えて───みた───」 藤原「…そうか」(うざいと思いながらも流されてしまう俺って…) 九曜「───ハンバーグ───ナポリタン───」 藤原(…いや、いくら追い出しても追い出してもなぜか部屋に侵入してくるこいつが悪い!) 九曜「───チャーハン───エビフライ───」 藤原(そうだ俺はもう半ば諦めているんだきっと。いや諦めるな! ここで諦めたらこいつの思うつぼだ) 九曜「───…デザートは───ダーリンの───好きな───ショートケーキ──」 藤原(しかし一体どうしたらいいものか…。っていうかこれらの組み合わせに見覚えがあるのだが…何だっけ) 九曜「───いただき───ます───」 藤原(とりあえず勿体ないので目の前の料理は食ってやるか…。食べ物に罪は無い) 九曜「───あとで───…わたしも───食べて…───」 藤原「…出てけ」 +++ 藤原「ごちそうさま。さ、ショートケーキ出せ」 九曜「───まだ───食べ終わって───いない───…にんじんが───残ってる───」 藤原「んぁ? にんじん嫌いなんだよ」 九曜「───甘い───のに…?───」 藤原「ふん、甘いものは好きだがにんじんは嫌いなんだ。いくら甘く味付けしたってにんじんはにんじんだ。にんじんグラッセなんてもんは子供騙しの出来損ないだ。騙しきれてないからタチが悪い。にんじんグラッセなんて考案したやつの顔が見てみたいもんだな」 九曜「───食べなきゃ───だめ───おおきく───なれない───」 藤原「いや、もう大きいから」 九曜「───た───べ───な───さ───い───」 藤原「い・や・だ!」 九曜「───…そう」 藤原「ふん」(口移しで食わされないように気をつけねば!) 九曜「───じゃあ───ダーリンの───ケーキは───わたしが───たべる───わ───」 藤原「てめぇ!」 ちゅっ 藤原「んんーー!!むーー!!」 九曜「───ちゃんと───食べられた───わね───」 藤原「てめぇがおかしな方法で無理矢理食わせたんだろうが!」 九曜「───エライ───エライ───」(なでなで) 藤原「…出てけ」 +++ トントントントン グツグツ シャッシャッ 藤原「zzz…」 九曜「───にんじんさん♪───さくらんぼさん♪───しいたけさん♪───」 藤原「ん……」 九曜「───ダーリンの〜♪───おべんとう───」 藤原「むにゃむにゃ…」 九曜「───隠し味は───愛情♪───」 藤原「…うう…うるせぇ…」 九曜「───わたしも───おべんとばこに───入りたいわ〜♪───」 藤原「…出てけ…むにゃむにゃ…」 +++ 九曜「───ダーリン───ネクタイ───曲がってる───」 藤原「…そうか」 ぐい 藤原「っ…! なにをする!」 九曜「───じっと───してて…───」 しゅるしゅる… 藤原「…」 九曜「───はい───できた───」 藤原「…あぁ………わ…悪いな」 九曜「───そんな…───ネクタイ───直すのは───妻の───し───ご───と───」 藤原「ふざけんな! 誰が妻だ」 九曜「───いって───らっしゃい───気を───つけて───ダーリン───」 ちゅ 藤原「…出てけ…って出るのは俺の方か」 +++ 藤原「ううーー…なんだか身体が…」 九曜「───ダーリン───?───」 藤原「うう…」 九曜「───すごい───熱…───」 藤原「…うぅ…う…」 藤原「…あぁ…冷たくてきもちいー……ん? 氷枕?」 九曜「───zzz…───ダーリン…───」 藤原「…まさかこいつ…一晩中看病してくれてたのか? 裸エプロンで……」 九曜「───zzz…───はやく───よくなって…───」 藤原(は! 何てことだ…! この黒の塊が一瞬でも天使に見えてしまうとは!) +++ 九曜「───ん…───」 藤原「…よ…よぅ」 九曜「───ダーリン───!───」 がばぁっ 藤原「うわっやめ…」 九曜「───完治の───キス───」 藤原「やめろぉっ」 ドンッ ドサッ 藤原「…!?」 九曜(ぽろぽろぽろぽろ) 藤原(…な、泣いてる…?) 九曜「───うう…───ダーリン───…ひどい───」(しくしく) 藤原(こ…今度は泣き落としか? その手には引っかからねぇぞ!) 九曜「───うぅ…───…わたし───実家に───帰らせて───頂き───ます───」(しくしく) 藤原「あぁ帰れ! 帰れ! 二度と戻ってくんじゃねぇ!」 九曜「───うう…───」(しくしく) 藤原「とっとと出てけ」 +++ 藤原「あーせいせいした」 (これで思う存分気ままな独り暮らしが堪能出来るぜ。それにしても腹減ったな。コンビニで弁当買ってくるか……) 藤原「ただいま…ってひとりなのについ言っちまうな」 (あ、洗濯しなきゃ明日の下着が……って洗濯されてる…。あれの仕業か…。ん? このシャツは何だ? あぁそうだ。ボタンが取れたからそのままにしておいたんだっけ。 …あれが付けてくれたのか………) 藤原「は! 何を考えてるんだ俺!」 (あんな塊………あんなやつなんて…………) (……やっぱちょっと寂しいかもな………なんて…な) ピンポーン 藤原「ん? こんな時間に何だ?」 九曜「───ダーリン…───」 藤原「…な!」 九曜「───やっぱり───ダーリンと───暮らし…たい───」 藤原「……おまえ…」 九曜「───……駄目…?」 藤原「…………」 (どうした俺! 何故即答しない? ダメだって言えよ、コラ!) 九曜「───それに…───」 藤原「…ん?」 九曜「───わたしの───お腹の───なかには───…赤ちゃん───が…───」 藤原「………は?」 九曜「───ダーリンの───こ───ど───も───」 藤原「いや、それおかしいって! 俺、身に覚えないんですけど!」 九曜「───…ふたりの───愛の───結晶───」 藤原「違うつってんだろ! 俺は知らん!」 九曜「───ダーリンが───寝てる───間に───いわゆる───既成事実───という───やつ───種を───採取───した───」 藤原「…! な、な、な…!」 九曜「───名前は───何に───する───?」 藤原「出てけぇえっ」 おわり。めでたしめでたし………?
https://w.atwiki.jp/77878878/pages/144.html
_ _ - ´ ,. . . . ..` ー 、 , ‐'´. . . . 、 / . . . . . . . . . . . . \ /.. . . . . . . . . . ..Y. . . .` ヽ 、. . . . . . . . . .\ /. . . . . ._. .-. .´ l. . . ヽ. . . . ..、 \. . . . . . . . \ /. . . . . . /. . . . . . . .!. . . ..ヽ. . . . ヽ ヽ. . . . . . . . ヘヽ /. . . . . . /. . /. . . . /. . !. . . . . ...',. . . . ヘ. ヘ. . . . . . !.. 、 / . . . . . . ,. . . .l. . . . . !. . ..!. . . . . . .l. . . . . i i. . . . . . !.. ヽ. /. . . . . . . .i. . . ..!. . .. . l. . . . !. . . . . . . i. . . . . .ヘ. !. . . . . |.. ヽ /. . l. . . . . . l. . . . .!. . . . . l. . .. .',. . . . . . . ',. l }. . . . . !.. ヽ ,'. . . !. . . . . . !. . ',.ヘ. . . . .l. . . . .ヘ. . . . . . !._,,; -t‐ i. . . . . l.. ヘ ,'. . . . .i. . . . . . ヘ. . x-、‐‐-!‐ 、 ヘ; ;-'_´_,,,..rzャ ,'. . . . . l. ヘ ,' . . . . . ',. . . . . . . ヽ、ヽ,xヘ'。¨゙ケ ̄ ̄ ヘr_;ソイ´/. . . . . /. ヘ !. . . . . . . ',. . . . . . . . . . . .ヽ ` ¨´ ,イ./. . . .. . . /. ヘ l. . . . . . . . .ヘ. ',. .. . . . . . ..ヽ、 ′ / |'. . . . . . . /. ; .ヘ !. . . . . . . . . .ヽ. ヘ . . . . . . . .ヘ` - _  ̄_ イ_ | . . . . . . / ; . .. ヘ.. l. . . . . . . . . . . . \ヘ. . . . . . . . ヘ r } ` / 〈 .|. . . . . . / ; . . ヘ |. . . . . . . . . . . . . . .\、. . . . . . . Y__ヽ、7イ、/-l. . . . . . / .. ; . ヘ !. . . . . . . . . . . . . . . . . , . . . . . . . '. rヘ´ 〉ッ l. . . . . ./ヽ、 .. . ; . . ヘ !. . . . . . . . . . . . . . . / ヽ. . . . . . . '. ,イT ト、. l. . . . .,' ヽ、 . . . . . ; . .ヘ !. . . . . . . . . . . . . . / ト;. . . . . . ..レ´ | i ! .Y. . . . . i |.. . . . . . . ; . .ヘ |. . . . . . . . . . . . . .. } 〈 ヽ. . . . . . ! l i l i. . . . .,' l ! . . . . . . . .. ; ..ヘ l. . . . . . . . . . . . . . . .l ,' \、. . . ..i ! i 〉ィ. . . . .∧ ! ! . . . . . . . . ; ..ヘ |. . . . . . . . . . . . . . . | ! ∧. . . . .',ヾ l ./ !. . . ..,' / l | l .. . . . . . ;. . . . ヘ !. . . . . . . . .. . . . . . . . ! '. \!. . . . l 、∨. . !. . . ,'´ ,' l l . . . . . . ; ヘ. l. . . . . . . . . .. . . . . . . .| ヘ ',. . . . ! / i. . . ,' ! ! ', . . . . . .; ヽ !. . . . . . . . . . . . . . . . . ! ヽ i. . . . l l !. . ,' ! l ヽ . . . . ; . . . . . ヽ ○━・━・━・━・━・━・━・━□━・━・━・━…━・━・━・━☆━・━・━・━・━・━・━・━◇ 【周防 九曜】 【手持ち】 -トランセル -スピアー -コカローチ・ナイト 初登場11スレ5880 モンスターを探しにバーサークの森に来ていたところ、やる夫たちと出会った。 モンスターには詳しくないのか、できる夫に強引に案内させている。 特技 : マリオRPGを1日で全クリすること 対戦後、思わせぶりな発言。やる夫かアリスのことを知っている?
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4063.html
──────第一章 九曜もバカだった ~長門編~ .
https://w.atwiki.jp/yumeato/pages/20.html
キャラクター名:九曜亜梳名 性別:女性 年齢:11 気 術 神 ルーツ:神薙使い : 9 7 11 生まれ:迫害 : 2 0 1 学年 :高校生 : 0 1 2 入学理由:闇墜ちからの救出: 2 1 0 星座:うお座 : 0 1 2 基本能力:合計 :13 10 16 装備補正:合計 : 5 5 10 能力合計: :18 15 26 HP:51 行動値:17 攻撃力:22 武器 :羅路乃鋼蛇(鋼糸):Lv10 破 :7 斬 :12 魔法:8 防具 :和装(着物) 行動値:-1 HP:±0 術式回避 斬撃力耐性 アクセ1:手袋 0 2 4 アクセ2:書物 3 3 2 (行動値:-1) アクセ3:髪飾り 2 0 4 活性化 神薙刃 対象:遠単 判定:神秘-6 威力:+6 エフェクト:SE【ホーミング】 清めの風 対象:遠列 判定:神秘±0 威力:-5 エフェクト:SE【キュア】 鋼鉄拳 対象:近単 判定:気魄-2 威力:+5 エフェクト:SE【ブレイク】 封縛糸 対象:近単 判定:術式-5 威力:+7 エフェクト:BS【捕縛】 結界糸 対象:遠列 判定:神秘-3 威力:-4 エフェクト:BS【プレッシャー】 ESP 魂鎮めの風 防具ESP 水垢離 フォースジェム □□□/□□□□/□□□ フォース 神の呪い AT 遠単 ダメージ決定ステップ使用 ダメージを+【神秘】 シーン1まで 瞬間瞑想 MN 自単 メインブプロセスに使用するヒールの威力+10 ブロッキング 判定直前 近単 命中判定直前に使用 判定Rダウン2。ラウンド1まで
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5438.html
「ただいま~…、ってうぉい! どうしたんだ九曜!?」 「----」 頼むから何か言ってくれ。 そんな実験に失敗した科学者みたいな髪の毛もどうにか頼む。 「--台-所--」 「はあ? 台所がどうかしたk……、やべええええ!」 「ふう、火は収まったか。おい九曜、雑巾持ってきてくれ」 にしてもなあ、台所で爆発とは…、昭和の漫画かよ全く。 「----」 「おお、雑巾かサンキュ…、よ~し九曜ちゃん地球のお勉強しようか。九曜ちゃんがいま持っているのはカーテンだ。しかもそこら辺の公立校にありそうな汚ったないカーテンだ。 こいつをどっから持ってきたのかとか子一時間ほど問い詰めたいことがあるが、今は雑巾のお勉強をしようか。雑巾って言うのはだな汚いもの、つまり汚れを拭くための汚ったない布だ分かったか」 「----」 俺のことをガン見、分かったのサインだな。 「それじゃあ、そのカーテンをどうにかして…」 九曜さん、何故その汚いカーテンを俺に突きつけてくるのですか? 自分で片付けるのが面倒とか? そうなのか?? 「く、九曜、言っただろ? その汚いカーテンを片付けてくれって」 「----」 「お、お~い、九曜~」 「----雑--巾」 「…………やれやれ」 あれから三十分ほど雑巾と公立校の汚いカーテンの違いについて九曜に説明した俺は今、風呂に入っている。 ちなみに九曜も一緒にだ。 九曜の奴、昔に比べたらまともに家庭生活を送れるようにはなったんだが… まだ今日みたいな事が頻繁にあるんだな… はあ~、こんな状態で子供でも出来たらどうするんだよ全く。 「----かゆい-痛い?」 「いや、ちょうどいいよ」 まあ、不器用ながらも頑張ってるってのは伝わってくるからな、俺としちゃあ嬉しい事なんだが、ただな… こうして風呂に入っている時に風呂場の鏡越しに九曜を見ると(特にそれが後ろ向きの九曜なら尚更なのだが)… 悪いが巨大なゴキブリが俺を這っているようにしか見えん! 正直初見の時は腰が抜けるかと思ったくらいだ。 もっとも、九曜としては俺に巨大ゴキブリの恐怖を味わわそうとしている気などさらさらないだろう。 しかし、だ… いや、もう止めておこう。 いくらなんでも九曜に失礼すぎるな。 それに今だって九曜は一生懸命俺の体を洗ってくれている訳だ。 感謝感謝。 ってあれこれ考えているうちに俺のサイドブレーキが… 「九曜、そろそろ…」 「----」 ガン見は分かったのサインっと。 じゃあ、二人の愛の巣へ向かいますか。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5085.html
「ただいま~…、ってうぉい! どうしたんだ九曜!?」 「----」 頼むから何か言ってくれ。 そんな実験に失敗した科学者みたいな髪の毛もどうにか頼む。 「--台-所--」 「はあ? 台所がどうかしたk……、やべええええ!」 「ふう、火は収まったか。おい九曜、雑巾持ってきてくれ」 にしてもなあ、台所で爆発とは…、昭和の漫画かよ全く。 「----」 「おお、雑巾かサンキュ…、よ~し九曜ちゃん地球のお勉強しようか。九曜ちゃんがいま持っているのはカーテンだ。しかもそこら辺の公立校にありそうな汚ったないカーテンだ。 こいつをどっから持ってきたのかとか子一時間ほど問い詰めたいことがあるが、今は雑巾のお勉強をしようか。雑巾って言うのはだな汚いもの、つまり汚れを拭くための汚ったない布だ分かったか」 「----」 俺のことをガン見、分かったのサインだな。 「それじゃあ、そのカーテンをどうにかして…」 九曜さん、何故その汚いカーテンを俺に突きつけてくるのですか? 自分で片付けるのが面倒とか? そうなのか?? 「く、九曜、言っただろ? その汚いカーテンを片付けてくれって」 「----」 「お、お~い、九曜~」 「----雑--巾」 「…………やれやれ」 あれから三十分ほど雑巾と公立校の汚いカーテンの違いについて九曜に説明した俺は今、風呂に入っている。 ちなみに九曜も一緒にだ。 九曜の奴、昔に比べたらまともに家庭生活を送れるようにはなったんだが… まだ今日みたいな事が頻繁にあるんだな… はあ~、こんな状態で子供でも出来たらどうするんだよ全く。 「----かゆい-痛い?」 「いや、ちょうどいいよ」 まあ、不器用ながらも頑張ってるってのは伝わってくるからな、俺としちゃあ嬉しい事なんだが、ただな… こうして風呂に入っている時に風呂場の鏡越しに九曜を見ると(特にそれが後ろ向きの九曜なら尚更なのだが)… 悪いが巨大なゴキブリが俺を這っているようにしか見えん! 正直初見の時は腰が抜けるかと思ったくらいだ。 もっとも、九曜としては俺に巨大ゴキブリの恐怖を味わわそうとしている気などさらさらないだろう。 しかし、だ… いや、もう止めておこう。 いくらなんでも九曜に失礼すぎるな。 それに今だって九曜は一生懸命俺の体を洗ってくれている訳だ。 感謝感謝。 ってあれこれ考えているうちに俺のサイドブレーキが… 「九曜、そろそろ…」 「----」 ガン見は分かったのサインっと。 じゃあ、二人の愛の巣へ向かいますか。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4013.html
────────プロローグ。「追加」 喜緑「か~いちょっ! うふふ、やっとこの日が来ましたね」 会長「どうした喜緑くん。何が楽しみなんだね」 喜緑「やだぁ、も~、トボケちゃって~。今日は男の子が毎年楽しみにしてるあの日じゃないですか~」 会長「いっとくがバレンタインデーは昨日だぞ」 喜緑「ええ、ですから。はい、チョコレートのような物です」 会長「『のような物』ってなんだね。今日はそういう日じゃないだろう」 喜緑「何言ってるんですか。今日は待ちに待ったバレンタインデーアフターじゃないですか」 会長「勝手に変な記念日を作って遊ぶんじゃない。 そうそう毎日あんなことがあってたまるか」 喜緑「会長ったら考え方が古いですわ。若者っぽくないです。 本当は何もない日なんてないんですよ。 昨日と今日にいったいどれだけの違いがあるというのですか? 同じ地球上にだってまだ2月14日のところはあったりするんですよ。 要するに自分の気持ちしだいで毎日が特別な一日になるんです! そうすれば毎日とても楽しくやっていけると思いませんか?」 会長「たまにそうやっていいこといって、上手くまとめようとしないでくれたまえ」 喜緑「今年は何人の犠牲者が出るんでしょうか」 会長「頼むから死人だけは出さないでくれよ」 喜緑「今年も会長はわたしからのチョコ1つしかもらえませんでしたね」 会長「どうせ君が他の子の妨害をしてるんだろう」 喜緑「あのー、会長。実はそれなんですけど」 会長「なんだね」 喜緑「たしかにわたし、いつも会長にチョコを渡す不届き者を妨害しようと心待ちにしてるんですが、 一度として会長にチョコを渡そうという女子に出会ったことがないんですが、なぜでしょう」 会長「………………知らん」 喜緑「おかしいですよね。まさか生徒会長たるものがバレンタインデーに義理チョコすらもらえないなんて」 会長「別にそんな恥ずかしいことではないだろう」 喜緑「え? まさか……え?まさか……会長って……」 会長「まさかってなんだね。私にまさかなどない」 喜緑「そうですよねー。そんなことないですよねえ。会長に限って」 会長「心配するな。きっと今日こそ下駄箱を空けたら女の子からチョコレートが」パカッ 喜緑「入ってますよね(笑)」ププ 会長「………………入ってた」 喜緑「な、なにぃぃぃぃぃぃ!!!?」 会長「……ふっふっふ。ど、どうだ。私だってモテる時はモテるんだよ」 喜緑「何かの間違いですよ。だいたいバレンタインデーの次の日にチョコを渡すバカなんていません」 会長「それは自分のしてることわかって言っているのか?」 喜緑「もしかしたらそれはギョウザかもしれませんよ! 危ないです!」 会長「いや……チョコレートだ。ちゃんとハート型の箱にラッピングしてあるし」 喜緑「誰かと間違えたんですよ。隣の下駄箱とか」 会長「ちゃんと宛名も『生徒会長さんへ』ってなってるし!」 喜緑「ということは……」 会長「う……生まれて初めて女の子にチョコをもらった!?」 喜緑「あっれー!? わたしのはノーカウントですかぁ?」 会長「う、うれしい……素直にうれしいぞこれは……ジーン」 喜緑「むぅ~……ムスー」 「──────喜んでもらえて───うれしい」 会長「だ、誰だ君は。いつからそこに?!」 「──────わたしは、右翼」 九曜「……────右翼───左翼」 喜緑「あら、過激的な名前ですわね」 九曜「間違えた──────九曜──周防」 喜緑「さっきのお名前の方が素敵ですよ」 会長「いいから君は黙っててくれないか。このプレゼントは君がくれたのかい?」 九曜「─────────そう」 会長「ふっふっふ。ほら見たまえ。私もチョコをくれる女子の一人や二人くらいいるのだよ。喜緑くん」 喜緑「ありえん(笑)」 会長「君も毎年くれるだろうが」 喜緑「だって(笑)ありえん(笑)」 会長「笑うな、ムカツクからそれ」 喜緑「会長にチョコをプレゼントしてどうするんですか(笑)なんでチョコ(笑)」 会長「……今年渡されたアレは何だったんだね?」 喜緑「うふふ。もう忘れました」 会長「食べなくてよかった……」 九曜「──生徒───会長───あなたに──────あげる。 ─────バ───レン──タイ───ン─────チ────」 会長「……なだかよく聞き取りづらい声だな」 喜緑「でもあなたねー。今日が何日だか知ってるの? 2月15日よ? バレンタインデーじゃないわよ? そこのところわかってるの? 会長はすごく迷惑そうにしてるんだけど」 会長「まずはそれを自分に言い聞かせてくれ」 九曜「────────開けて」 会長「ああ、さっそく開けてみるよ」ガサガサ 喜緑「なんでそんなに嬉しそうなんですか。らしくないですよ。鼻の下も伸びてるし」 会長「ははは。なんとでもいいたまえ」ガサガサ 九曜「──────どう?」 会長「こ、これは!」 喜緑「これがチョコなの!? う、美しい……。 なんて精巧かつ緻密な作りなの……。 ツヤ、黒さ、丸み、太さ、右に曲がっているところ、 皮のあまり具合、棒の短さ。どれをとっても本物そっくり……。 まさしくこれこそ……バレンタイン──────」 九曜「───チンコ」 会長「ふ、ふざけるなぁあ!」 喜緑「ねえ、あなた……どうして会長のチンコのことをこんなに詳しく知ってる訳?」 会長「なあ、全く同じ質問を君にしてもいいかな? 喜緑くん」 九曜「──────バレンタインデーはこれを送るのが定番だと───聞いた」 会長「誰にだよ!?」 喜緑「あ、そうだ。はい、会長。わたしからも定番のプレゼントですよー」 会長「お前かぁぁー!」 ……… …… … ついに─────────みつけた。 今回の使命は。観測対象の鍵となる存在の捕獲。 ターゲット対象は県立北高校に所属している男子生徒。 年齢は16~17歳。 性格はおとなしめで普通。 成績も至って普通。 顔もハンサムというわけでもなく、普通。 周りのみんなには名前で呼ばれるよりも通称で呼ばれることの方が多いらしい。 ただそれだけだと極めて普通の存在でしかない。 その者だけにある特徴として、情報統合思念体の作り出したアンドロイドがいつも傍らにいること。 そしてそのアンドロイドの特徴は、 女性型であること。 思考回路が極端にバカなこと。 アホなこと。 エロいこと。 使えないグズなこと。 ドジ、マヌケ、トーヘンボク。 とりあえず今のところわかるのはこれだけ。 思い出せるのはこれだけ。 あとは説明聞くのめんどくさくて覚えていない。 後半スルーしてたから忘れた。 でもたぶんあいつで間違いない。 もう一人のあの女も完璧バカだったし。 あいつマジでバカ。笑える。 地球での流行のプレゼントまで教えてくれるし。 おかげで第一次接触としてはかなりの好印象だったはず。 もうすぐ結納の準備をしなくては。 髪があそこまでワカメとは聞いてなかったけどあれが長門有希に違いない。 間違いない。絶対。 しかし地球人はわからない。 男性器型のチョコレートをもらって喜ぶとは。 きっと一ヵ月後のお返しはこの前海に行った時に岩場に張り付いていたアレかもしれない。 海には髪の毛に似た何かも生えてるし、地球は想像以上に不思議な辺鄙なところだ。 以上、報告終わり──────。 ~もし長門がバカだったら もちろん九曜もバカだった~ ─────────1。「不在」 4月……。 去年はいろいろあったが俺は無事に2年生に進級した。 その『いろいろ』については……いまさら説明するのは手間がかかる。 たっぷりある。何せ100話ある。 長すぎて俺は読み返す気が起きない。 とにかく今、俺の隣にいるこの長門っていう宇宙人が、 思ったよりもバカでガキで泣き虫で性格が悪く腹黒いということだけ覚えてもらえればいい。 他にもいろいろいるが、基本的に俺の周りはバカばかりだ。 バカっていう奴がバカだって? そうだよ、俺もバカだよコンチクショウ。 とにかく、話はそれちまったが今日はハルヒに呼び出されて久々の市内探索だ。 バカのせいで何か悪いことが起きない事を祈りながら、 俺は長門と一緒に駅前の広場へと向かっていた。 キョン「しっかし、お前よく2年になれたな。毎回テストで赤点とってなかったか」 長門「それは平気。なんとかなった」 キョン「カンニングでもしてたんじゃないのか」 長門「していない。していたとしても、それはカンニングという名の情報操作。 決して悪いことではない」 キョン「してんじゃねえか! 認めてるじゃねえか!」 長門「わたしは悪くない。悪いのはわたしにカンニングをさせてしまうほど追い込む競争社会」 キョン「そんなに追い込まれるほど勉強したことないだろ」 長門「テストの問題が悪い」 キョン「悪いのはお前の頭の方だと思うが」 長門「あんな問題で満点とれても面白くない」 キョン「そういうことはとってから言え。……ん?」 ふと、何気なく向きを変えたその瞬間、前方にこっちをずっと見ている少女が目が留まった。 一瞬何気なくスルーしてしまいそうになったが、俺は直ちに前を向き直った。 その顔は忘れもしないあの人物であった。 長門「その声は!?」 キョン「まだ何も言ってないだろ」 「ふふ、こんにちは。また会いましたね」 キョン「お前は……朝比奈さんを誘拐した女だな」 長門「そして貧乳!」 橘「ひどい言われようね。でもまあ、事実だから仕方ないんだけど」 長門「貧乳も?」 橘「そこは否定します」 長門「今度はわたしを誘拐する気? 何する気? ねえ、どんなことするの?」 橘「いいえ、しません。私はもうあなたたちからは手を引いたのです」 長門「……引いたのは貧乏くじ」 キョン「それは俺のことだ」 橘「今日はあなたに会わせたい人がいるのです」 キョン「……え? ……あっ!」 佐々木「やあ、キョン。久しぶりだね」 長門「えー、あ、あぁ~。ひ、ひさしぶりぶりー。元気してたー?」 キョン「お前の知り合いじゃねえよ。俺の中学時代の知り合いだ」 長門「……でももう知り合い」 キョン「相変わらず負けず嫌いだな」 佐々木「くっくっ、君の友達は面白いなぁ」 長門「朝比奈みくるはそんなに面白くない。無駄な脂肪がついているだけ」 橘「そうだそうだ」 佐々木「いや、君のことだよ」 キョン「えーと、こいつは長門。同じ学校の……部活仲間ってところだな」 長門「……長門有希」 佐々木「はじめまして」 長門「はじめました」 キョン「冷やし中華か」 佐々木「僕は佐々木。キョンの親友さ」 キョン「し、親友!?」 長門「親友!?」 佐々木「どうしたんだい、二人とも。そんなに驚くことかな?」 長門「……てっきり母親かと」 佐々木「僕はそんなに老けてないけど……」 キョン「ああ……コイツのボケはいちいち真に受けないでくれ」 橘「えー、コホン」 キョン「ん、なんだよ?」 橘「久しぶりの再開で喜びを分かち合うのはもういいかしら? まだ紹介したい人がいるんだけど」 キョン「どこにいるんだ?」 橘「気づかなかったかもしれないけど、すぐそこにいるわ」 キョン「え? どこだよ」 橘「ふふ、まだ気づかないようね。そこよそこ。普通の人間じゃないのよ」 キョン「だからどこにいるんだってば」 長門「バカには見えないだけ。わたしには見える」 キョン「お前に言われたくねえよ。それに本当にいないぞ。何も」 橘「って……あ、あれ……? さっきまでそこにいたのに……。九曜さーん。九曜さんどこー?」 佐々木「ああ、九曜さんならさっき『そうだ京都行こう』って言ってたよ」 橘「あ、あいつめぇ……。またあの発作かよー」 キョン「何か俺と似たような苦労を感じるな」 長門「誰のこと?」 橘「ま、まだほかにもいるのです! そう、未来人なんてのも仲間にし……」 佐々木「ああ、彼ならなんか今日は寝坊して遅刻するのが規定事項だと言ってたよ」 キョン「そこまで未来がわかってるなら防ごうとしろよ」 橘「今言った事は忘れてください」 キョン「切り替え早いな」 橘「とにかく! わたしたち3人はこの佐々木さんこそが本来の神的存在なのだと考えています」 キョン「今はお前一人しかいないけどな」 橘「うぅ……ぐす」ジワ 佐々木「泣かない泣かない」 橘「ち……ちがうもん……ぐす……組織の命令なんだもん……うぅ」 長門「泣ーかしーた。泣かしーた。せーんせーに言ってやろー」 キョン「う……ご、ごめん。言い過ぎたよ」 「こらー!」 橘「あ、藤原さん! 来てくれたんですね」 キョン「今度はお前か。誘拐未来人」 藤原「京子タンを泣かすな! 泣かしていいのは俺だけだ!」 キョン「お前はいいのか」 藤原「それも……初めての夜を俺とすごして、 最初はすごく痛かったけど俺が優しくしたから痛さよりも愛を強く感じてしまい、 横で寝息を立ててる俺を見てつい涙が出ちゃう。 そんな感じのうれし泣きだ! さあ、俺のためにドバドバと涙を流すがいい!」 橘「もう帰ってくれませんかね」 藤原「ああっ、登場していきなりその言葉! そこにしびれるあこがれるゥ」ゾクゾクゥ キョン「行こうか長門」 長門「……では参りましょうか助さんや」 橘「ま、待ってぇー。まだ話があるのにぃー!」 ─────────2。「翌日」 佐々木「ん? あ、君は……」 長門「……何?」 佐々木「やあ、偶然だね。昨日駅前で会ったよね」 長門「芸能スカウトお断り。……でもギャラがいくらかだけ聞いておく」 佐々木「残念だけど僕はそういう職業の人じゃないんだ。まだ高校2年生なもんでね」 長門「……ああ、あなたはこの前の……」 佐々木「佐々木です。キョンの親友の」 長門「チンチロリンで班長のイカサマを見破ったあの……」 佐々木「いや……僕は地下帝国で強制労働させられてなんかいないよ」 長門「知らない人に話しかけられてもついていくな、と彼に言われている」 佐々木「知らない人じゃないよ。君は昨日キョンや涼宮さんと一緒にいた子でしょ?」 長門「……わたしは生まれてから4年しか経っていない。それ以前の出来事は記憶にない」 佐々木「昨日の話だってば。えーと、たしか君の名前は……」 長門「朝比奈み…」 佐々木「長門有希さんだね」 長門「……」 佐々木「昨日駅前でキョンと僕が一緒にいたのを覚えてないかな」 長門「……思い出した」 佐々木「そうか、よかった」 長門「長門有希……それはわたしの名前……」 佐々木「そこを思い出したかぁ……。くっくっ、話が長くなりそうだね」 長門「あなたは?」 佐々木「僕の名前は佐々木」 長門「ボッキ?」 佐々木「『キ』しか合ってないんだけど。佐々木だよ」 長門「ああ、クリフトの役立たずめ……」 佐々木「それはザラキ。佐々木だよ。佐々木」 長門「焼肉でこの前食べた」 佐々木「それはハラミ。とうとう一文字も合わなくなったよ」 長門「わからない……どんな字を書くの?」 佐々木「佐藤さんとか佐賀県の佐に……」 長門「……わからない。ここに書いて」 佐々木「え~と、こうやってこう……これで『佐々木』だよ」 長門「なるほど……わかった」 佐々木「ふう、よかった」 長門「結構汚い字を書く」 佐々木「……どんな字を書くって……そこ?」 長門「……」コクリ 佐々木「キョンの苦労が窺えるなぁ」 長門「彼とはどんな関係?」 佐々木「ああ、キョンとは中学生時代からの親友さ」 長門「中学生時代はバイクを盗んで走り出していたってところまでは理解できた」 佐々木「全く理解してないね」 長門「……」コクリ 佐々木「昨日のことは思い出せる?」 長門「昨日は家で寝てた」 佐々木「いや、キョン達と駅前に来てたでしょ?」 長門「……それは起きた後のこと」 佐々木「そうだよ。起きた後僕と会ったでしょ?」 長門「彼と一緒に駅前に行って……」 佐々木「少しは思い出してくれたかい? 僕のことを」 長門「……思い出した」 佐々木「そうか。よかったよ」 長門「あなたは昨日橘京子という女の横にいた佐々木とかいう知らない人」 佐々木「知ってる人です」 長門「……なるほど。早く言えばいいのに」 佐々木「言ってたよ」 長門「もう一度名前を聞いていい?」 佐々木「もう忘れたのかい? 佐々木だよ」 長門「違う……。そうじゃなくて」 佐々木「字はこう書くんだけど?」 長門「違くて……」 佐々木「え? じゃあ何がわからないんだい長門さん」 長門「あ……それ……」 佐々木「自分の名前ですか」 長門「長門有希長門有希長門有希長門有希俺の嫁長門有希……よし、覚えた」 佐々木「くっくっ、……やっぱり君はキョンの話してたとおりの子だね」 長門「まさか……学園のアイドルとか噂されて」 佐々木「残念だけど違うね」 長門「……学園の巨乳アイドル?」 佐々木「むしろ遠くなったんじゃないかな……」 長門「……わたしもあなたのことは聞いている」 佐々木「え? キョンが何か僕のことを話していたのかい?」 長門「……気になる?」 佐々木「いや、別に気にはならないよ。 だってキョンにどう思われていようと僕は僕だ。 僕という存在は彼の言葉や気持ちによって形成されているわけではないからね。 だから何と言われていようと別にどうでもいい事さ。 たとえそれが悪口だろうと今までに築いた僕という存在は変わらない。 それは単なる一つの評価でしかないからね」 長門「……そう。じゃあ言わない」 佐々木「あぁーあ。でもちょっと待ってね。 例えばなんだけど、例えばの話ね。 ここに一つの花が咲いていたとしよう。 これを見て人は何と感じるか。 美しい花だなと感じる人もいれば、 そうでもないと感じる人もいる。 そもそも花の存在に気づかない人もいる。 そして美しい花だなと感じた人の行動もそれぞれ異なる。 美しいから家に持って帰ろうと考える人もいるかもしれないし、 かわいそうだからそっとこのままにしておこうと考えるかもしれないし、 これを売ったらいくらになるかなと考える人もいるかもしれない。 花はそこに存在していることに変わりはないし、 その形も意味合いも変化していない。 なのに同じ出来事を一つとっても感じ方は人それぞれってことさ。 他人の評価というものは結局相対的で当てにはならないのさ」 長門「……」 佐々木「まあ、悪口とかは直接言われたら僕だってさすがにムッとすることくらいあるさ。 でも影で言ってくれる分には大いに結構。 僕は傷つくことはないからね。 まあ、出来ることならそういう事実は永遠に知りたくはないことだけど。 知らなければ存在しないことと同意義だからね」 長門「……」 佐々木「それによく勘違いされるんだけど、キョンと僕が付き合ってるんじゃないかってさ。 それだけは絶対無いと言い切れるね。 だって僕はキョンのことなんてこれっぽっちもなんとも思っていないからさ。 たしかにキョンと僕は親友と呼べるほどの仲だよ。 塾の帰りも一緒だったし、学校でも一番よくしゃべっていた。 僕にとってもとても話しやすい存在だし、 彼にとってもいい話相手になれていたと思うよ。自分ではね。 そういえば塾の帰りに自転車の後ろに乗せてもらったりしてたなぁ。 そのとき暖かい背中越しでちょっとだけキョンの鼓動を感じるんだ。 いつもより少しだけ早い鼓動をね。 ああ、ごめん。話が逸れたね。くっくっ。 まあ、仲がよかったことは認めるよ。 ときどきクラスでも噂になってた仲だしね。 でもそもそも僕には恋愛感情なんていうものはないんだ。 いや、もしかしたらあると言われるかもしれないが、それは僕の精神が勘違いを起こしているだけなのさ。 恋愛感情なんてはいわば一種の精神病だよ。 僕にいわせれば未熟な精神が起こす錯覚さ。 だからもし今僕が恋愛感情を抱いていたとしても、 覚めればあとで必ず悔いるだろうし、誤りだったと気づくだろうね。 いわゆる若気の至りだと」 長門「……」 佐々木「だから別にキョンのことなんてなんとも思ってないけど、 彼が僕のことをなんていっていたのかと言うことに対しては、 正直に言うと単純な好奇心はあるよ。 いうなればなんとなく知りたいという欲求だね。 知的好奇心なんかもこういう部類に入るんじゃないかな。 単純に知りたいということ。 それはおなかが減るのとか眠くなるのと一緒で人間が本来持っている欲求さ。 だから僕は今そのことが少し気になっただけ。 別に教えてもらわなくても一向に構わないし、損得はないね。 でももし教えてもらえるなら少しだけ今の欲求不満を解消できるし、 ちょっと時間つぶしにもなるからさ。 実は今少し暇なんだよね。うん、そういえば暇だった。 そんなわけでキョンが僕のことをなんと言っていたのかな~。って聞いてみたわけさ。軽い気持ちでね。 で、どうかな?」 長門「…………彼はあなたのことを……」 佐々木「うん、キョンはなんて?」 長門「自分の気持ちに素直じゃないって」 佐々木「……ち、違うもん…」 長門「……ふ-ん」 佐々木「ほ……ほんとだよ?」 長門「……知らない人の言う事は信用できない。でもギャラだけは聞いておく」 佐々木「いい加減覚えてよ!」 ─────────3。「結集」 橘「みなさん、今日集まってもらったのは他でもありません」 藤原「おぉ、京子タンもとうとう俺と……」 橘「あなたは呼んでません。なんでここにいるんですか」 藤原「俺を呼び忘れるとか、ドジっ娘属性まで持ち合わせているなんて、 さすがは京子タンだなぁ……。全部ストライクゾーンだ」 九曜「─────ドジっ娘属性って何」 藤原「妄言だ。結婚してくれ」 九曜「──────嬉しい───婚姻届出しておくわ」 佐々木「おめでと~」 橘「わたしの名前で出さないでください。そしてこんなものビリビリポイです」ビリビリ 九曜「─────────あぁう」 藤原「ひゃぁうん」 橘「今日はこんなコントをやるために集まったのではありません。 あの涼宮ハルヒ達に、わたし達の存在を教えてやるために集まったのです」 佐々木「じゃあ今日もキョンに会えるんだね。くっくっ、楽しみだ」 九曜「──────でもいつも存在感ないって言われる──」 藤原「うらやましいぜ。そんなこと出来たら京子タンのお風呂覗き放題なんだけどな」 佐々木「いつもやってることじゃないかそれは」 藤原「まあな」 橘「ちょ、ちょっとそれ初耳なんだけど!」 藤原「話を本題に戻そうか。今は少しでも時間が惜しい」 橘「なにごまかそうとしてるのよ!」 九曜「────今日は遊びに来たのではない───橘京子あなたにはその自覚があるの?」 橘「うー、納得いかないわ……」 佐々木「まあまあ」 橘「まあいいわ。それと、九曜さんはこの前みたいに突然いなくならないでね」 九曜「シ──────ネ」 橘「なに? なんか言った?」 九曜「──────何も」 佐々木「そういえば九曜さん。この前の京都旅行はどうだったい?」 九曜「────でっか───い大仏」 佐々木「うんうん」 九曜「─────かわいい鹿はかわいい───餌───あげてきた」 佐々木「そうか。よかったねー。でもそこ奈良だよね」 九曜「─────あ─────下手こいた──」 佐々木「デデデン、デデデン、デデデン、デデデン♪」 九曜「─────────イエーイ」 橘「ちょっと佐々木さん! 話題を逸らさないで!」 佐々木「は、は~い」 九曜「オッパイピ──────」 橘「そもそもみんなこの集まりの意味がわかってるの? お互いにすごく大事な使命があるから協力し合うことにしたんでしょ?」 藤原「俺は君がいるからここにいる。ただそれだけだ」 橘「単なるストーカーでしょ」 九曜「────大事な使命────それを思い出すためにここにいる」 橘「素直に忘れたと言いなさい」 佐々木「僕はどちらかというと被害者の側なんだけどな。 別に神的存在になんてなりたくないし」 橘「また新しくキョン君のブロマイド写真を撮ってきたんだけど、見る?」 佐々木「べ、別にそういう物には興味があるわけではないけど、 君たちとは一緒にいるだけなら損ではないし楽しいからいいかな」 橘「……はぁ」 橘「なんかあなた達といるとすごく疲れる……」 藤原「そうか。じゃあ、胸でも揉んであげるよ」 橘「肩だろ!」 ─────────4。「真偽」 藤原「橘京子、お前にこの花をやろう」 橘「あら、なにかくれるの?」 藤原「パンジーだ」 橘「この前その花の花壇踏みにじってなかったですか?」 藤原「花言葉は『京子たんラブ』だ」 橘「いりません」 九曜「───はなことば……花子…鳥羽? 鳥羽…イチロー……。───地球が危ない」 藤原「2つあるから『京子たんラブ・ラブ』になるわけだ。ふんっ、規定事項だ」 橘「1つだっていりません」 九曜「地球がぁ─────」ブルブル 藤原「あ、よく見たら3つあるな。どうだ九曜。俺のパンジーは──」 九曜「───カ───────ア───ア──────ペッ」 藤原「ああ、ひどい! なんてことを! どれが俺のツバをつけた花かわからなくなるだろ!」 橘「未来に帰れ」 藤原「直訳するとバックトゥーザフューチャーか。その映画一緒に観にいこうっていう意味だな」 橘「全然違います」 藤原「今ちょうど偶然にも映画館のチケットが二枚手元にあった。 でもこのチケットの有効期限はなんと今日まで。 そして今偶然にもここにいる俺と京子たん。どうする?」 九曜「──────あいふる?」 橘「どうもしません。勝手に一人で行ってください」 藤原「えー、いいじゃん。どうせこの後暇なんでしょ?」 橘「イヤです」 藤原「いいじゃん、ちょっとくらい。キスなんて減るもんじゃないし」 橘「ちょっと! 勝手にイベントを進めないでください! そして私のフラグは永遠に立ちませんから!」 九曜「────────気になるポイント3上昇」 橘「上がってません!」 藤原「あー、かわいいなあ、もう! 逮捕しちゃうぞ!」 橘「んんっもう! 触らないで!」 九曜「──────かわいい罪。罰金最高20円」 藤原「金額までかわいい犯罪だな」 橘「10円ずつあげるから帰ってください。未来と宇宙に」 藤原「冷たいなぁ。俺たち仲間じゃないか」 九曜「───由紀恵じゃないか」 橘「あー、もうやだ! あんた達と一緒になんてやってられるもんですかー! もう知らない! 組織も抜けてやるんだからー!」 藤原「ふーん。まあ、ちなみに未来では俺と君は結ばれてるから抵抗しても無駄だぜ」 九曜「ああ─────ネタバレ自重」 橘「はぁ? 何をわけのわからないことを……」 藤原「あ、やべェ……」 橘「え……嘘でしょ?」 藤原「……あ…………うん。嘘だよ?」 九曜「あははっ冗談冗談♪ 藤原さんったらホント冗談がうまいんだからー」 橘「ねえ九曜さん。何そのしゃべり方。ちょっと気持ち悪いんだけど……」 藤原「あー、今のはなんでもない! なんでもー」 九曜「えへへ、なんでもないよっ! ねー♪」 藤原「ねー♪」 橘「ちょ、ちょっと教えなさいよ! なんでそんなことになるのよ! ねえ!」 藤原「んー、それは禁則事項だから教えられないなぁ(棒読み)」 九曜「わたし地球のことよくわっかんなーい」 橘「いじめ反対だよう……グスン」 ─────────5。「古典」 ここはとあるレストラン。 わたしは休みの日によくここに来る。 わたしは高校で生徒会長をしている。 その役職柄色々な苦労を普段から背負わされている。 部下のこと、友人のこと、クラスのこと、学校全体のこと。 もちろん受験のことや部活のことなど他の学生が抱えた悩みも普通にある。 その苦労から解き放たれるための隠れ家として、ここは最適な店だ。 ここには涼宮ハルヒとかいうバカも、長門有希とかいうバカも、 そして何よりあのうるさいバカ書記もいない。 特にあの書記が一番ウザい。今一番の悩みの種だ。 書記とは名ばかりでまともに字も書けないバカだ。 おまけに人の仕事の邪魔ばかりする。 休みの日くらいあいつに会いたくないという私の気持ちを理解できない人がいるだろうか。 店内に入り、静かに流れるBGMを背景に本を読む。 たまにはこうして癒されないと、生徒会長という仕事はこなしていけない。 そろそろ店員が注文を取りに来るころだ。 メニューはいつものあのメニュー。 この店の人気メニューである。 喜緑「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか」 会長「あ、店員さん。スパゲッティナポリタンをください」 喜緑「はい。他にご注文はございますか」 会長「ふむ。じゃあ、デザートにおいしそうな君をいただこうか。なんてね」 喜緑「うふふ、お上手ですね♪」 会長「………って何をしてるんだ君は」 喜緑「アルバイトです」 会長「それは見ればわかる」 喜緑「いつもよくこの店に会長がお忍びで来ているって聞いたもので」 会長「ついに私の隠れ家的店がなくなったか……」 喜緑「生徒会の方には内密にお願いします。生徒会役員は原則アルバイト禁止ですから」 会長「……君は私を何の会長だと思っているのかね?」 九曜「─────わたしもナポリタン」 会長「おわっ! い、いつからそこに!?」 九曜「──────大丈夫───お金は最初から持ってきていない」 会長「大丈夫じゃない! 誰が君にメシなんておごるもんか!」 喜緑「そうです。この店のスパゲッティナポリタンなんて、 まずい上に高くて味覚のおかしい人以外で注文する人なんていません」 会長「悪かったな」 九曜「──────あなたのことが───もっと知りたくて」 会長「まいったな。そう言われるのは悪い気はしないが」 九曜「────わたしの作ったあのチョコを───まさか───食べきるなんて」 会長「何を入れたんだ、おい」 喜緑「ちょっとあなた」 九曜「─────なに?」 喜緑「これ以上会長に付きまとうのはやめてもらえますか? そういうのストーカーっていうんですよ。これは犯罪行為だと自覚してください」 会長「私の行きつけの店を探し出してバイト始めた人が言わないでください」 九曜「─────この店は──────変わったお店ね」 喜緑「何がですか」 九曜「────ワカメが接客しているなんて───よほどの人手不足」 喜緑「それは喧嘩を売ってると取っていいのでしょうか」 九曜「──────きっとこれから出てくるスパゲッティもワカメ味」 喜緑「何を当たり前のことを……」 会長「当たり前じゃねえ。ナポリタンっつったの聞いてねえのかよ」 九曜「───むむ」 喜緑「まだ何かいちゃもんをつける気ですか?」 九曜「──────コーヒーにワカメが入ってる───コックを呼べ」 喜緑「失礼な! それはワカメじゃなくてわたしの髪の毛です!」 会長「もっとダメだろ!」 九曜「───────こんなに枝毛の多いものが食えるか」 会長「なくても食うな」 喜緑「わかってないわね。枝毛の方が色々と栄養価が高いって言われているのよ」 会長「言わん」 九曜「───それに値段が──高い─────もっと値引きしろ」 会長「そういうことは金持ってきてから言ってくれ」 喜緑「すみませんが当店では値引きはいたしておりません。万引きならよくしてたけど」 会長「さらりと前科をバラさないでくれ」 九曜「────ええい───責任者を呼べ」 喜緑「なぜですか?」 九曜「──────店員の対応が悪い───クビにしろ」 会長「それには同意する」 喜緑「うふふ、それは無理な相談ですわ」 九曜「────そうだんですか」 会長「さぶっ!」 喜緑「だってわたし、店員のフリしてるだけですから」 会長「店員さーん! 本当の店員さーん! こいつ早くつまみ出してくださーい!」 九曜「─────そうきたか─────ならば───戦争だ」 喜緑「わたしが追い出される前に決着をつけましょう」 会長「頼むから外でやってくれ」 九曜「─────外────そうだ。京都行こう」 会長「勝手に行ってこい」 喜緑「お土産のしびれフグ忘れないでくださいね」 会長「それはどう考えても京都のお土産ではない」 九曜「─────その前にナポリタンはまだか」 喜緑「周防さん、あなたはまだ気がつきませんか?」 九曜「────なにを────────────はっ!」 会長「は?」 九曜「───ここはとあるレストラン────人気メニューは───ナポリタン──」 会長「は? どういう意味だ?」 喜緑「うふふふ、ようやく気がついたようね」 会長「???」 九曜「──────ひとまずここは退散しておく────次は会長のお尻を頂く」 会長「おい、最後に意味のわからない捨て台詞を吐くな」 喜緑「会長も───手遅れになる前に……」 会長「え? なに、なんだよう。やめてくれよな。 ちょ、ちょっと。怖いってば。怖いよう。えーんえーん」 ─────────6。「呼称」 橘「んんっ、もう! 9時って言ったのにもう10時半! 遅いなぁ~。みんな何してるのよ~」 佐々木「やあ、ごめんごめん。すっかり遅くなってしまったよ」 橘「遅いです! 佐々木さん! 何してたんですか!」 佐々木「いやあ、夢の中でキョンが僕のことを離してくれなくてさ」 橘「……どんだけ彼のことが好きなんですか」 佐々木「違うよ。そうじゃないってば。夢の中ではいつもキョンの方から言い寄ってきてるんだよ」 橘「はいはい……。それで、後は九曜さんだけね」 藤原「お、おいおい。俺のことを忘れてもらっちゃ困るぜ」 橘「あら、いたの。呼んでもいないのに」 藤原「ずっと京子タンの後ろにいたよ。三日前から」 橘「キ、キモッ!」 佐々木「あ、九曜さん来たみたいだよ」 九曜「──────ただいま────フロム京都」 佐々木「また京都に行ってきたのかい? 相変わらず好きだね」 九曜「───これ──────食べて」 佐々木「あ、わざわざお土産買って来てくれたんだ。ありがとう」 九曜「──────名物──────牛タン」 橘「なんで京都通り越して仙台に行くかな……」 佐々木「九曜さんは宇宙人のくせに相当な方向音痴だよね」 九曜「そう──────それだけが───玉に瑕─────」 橘「それだけじゃないと思います」 藤原「他にも欠陥だらけだな」 九曜「──そんなこと──────ない」 橘「あるわよ! この前だって駅前に集まる約束だったの忘れてたじゃないの!」 九曜「─────あのときは──────考え事してた」 藤原「へー、何を?」 九曜「───男性器のことを──チンコと呼ぶか───チンポと呼ぶか」 橘「悩むなー!」 藤原「他にもチンチンって呼び方もあるぞ」 橘「お前も意見するなー!」 佐々木「チンポって呼び名の方がかなり下品に聞こえるっていう統計も出てるよ」 橘「佐々木さんは無駄知識披露しないでー!」 九曜「───ああ──あ──────どうしよう───どうしよう」 橘「好きにしなさい」 九曜「─────あなたは──────どっちが好き?」 橘「どっちも好きじゃありません」 九曜「なるほど─────チンチンって呼ぶのが好き───」 橘「違う!」 藤原「違うよねー。好きなのは俺のチンチンだけだよねー」 橘「もっと違う!」 九曜「────そう─────好きなのは───あなた自身」 藤原「あー、やっぱりー。そうなんだー。困るなぁ、でへへえ」 橘「もう無視します」 藤原「でたっ、ツンデレモード!」 佐々木「一度もデレたことないけどね」 橘「ほらー、んもう! 九曜さんのおかげでせっかくの集会が下らない話だけで終わりそうじゃない! そういうところがあなたのダメなところなのよー!」 藤原「九曜のせいだけではないけどな」 佐々木「残りは君のせいだね」 藤原「うん」 九曜「────────わかった」 橘「そう、やっとわかってくれたのね……」 九曜「───今度から──────男性器の事をチンポと呼ぶ」 橘「わかってねええ!!」 ─────────7。「映画」 キョン「よう、佐々木。どうしたんだこんなところで会うなんて。うちの高校に何か用か?」 佐々木「やあ、キョン。偶然だね。たまたまここを通りかかってね。 決してキョンが来るまでここでずっと待機していたわけではないよ。ほんとに偶然なんだ」 キョン「……そうか。お前がそう言うならそうなんだろうが……」 佐々木「そう、偶然偶然」 キョン「ところでこの前会ったときの周りの奴ら。あいつら何者なんだ」 佐々木「ああ、彼女達はね。そうだね……僕の友達ってところかな」 キョン「あんな奴らとは付き合わないほうがいいぞ。前に俺の知り合いが誘拐されかけたんだぞ」 佐々木「うーん、でもそんな悪い人たちではないよ」 キョン「じゃあ普段集まって何してるんだ?」 佐々木「昨日は男性器の呼称について活発に協議してたよ」 キョン「へ、へー……そうなんだあ(棒読み)」 佐々木「わ、悪い人たちではないんだよ? ちょっと頭が足りないくらいで……」 長門「呼んだ?」 キョン「呼んでない。それといきなり足元から現れるな気色悪い」 佐々木「やあ、長門さん。また会ったね」 長門「……誰?」 佐々木「また忘れちゃったのかい? 僕だよ僕。佐々木だよ」 長門「…………あ、あー……うん、ひ、ひさしぶりー。元気してたー? 何年ぶりだっけー?」 キョン「忘れたなコイツ」 佐々木「じゃあ、はじめましてでいいよ。僕は佐々木。キョンの中学時代からの親友さ」 長門「……そう。でもわたしは小学校以前からの彼の親友」 キョン「すぐバレる嘘をつくな」 佐々木「ところでさ、キョン。せっかく偶然にもこうして会ったんだし、 この後一緒に映画でも観にいかないか? 長門さんはこの辺に置いといて」 長門「……ガッデム」 キョン「うーん、別に行くのはいいけど、長門は一緒にいてもいいだろう? どうせなら三人で行かないか? 長門とは今日一緒に帰る約束してたしな」 佐々木「……チッ。あ、うん。そうだね。せっかくだし長門さんも一緒に行こうか? キョン「……ほんとは長門と一緒なのは嫌なのか?」 佐々木「ううん、そんなことないよ。長門さんとは趣味が合いそうだし」 長門「……そう。たしかに趣味 だ け は合いそう」 キョン「……なんか不穏な空気を感じるのは俺だけか?」 佐々木「じゃあ、何観にいこうか。そうだ、最近駅前の映画館に来たあの映画観ようか。 うん、そうしよう。あ、そうだ偶然にもその映画のチケット2枚持ってたなぁ。 これはラッキー。ラッキーだなあ。じゃあ、これは僕とキョンの分だね」 キョン「俺の意見聞いてないし準備がよすぎるぞ佐々木」 佐々木「いやあ、偶然だって。あ、長門さんは自分で買ってね。 でも長門さんは子供料金でいいから安いよ。よかったね」 長門「それを聞いて安心した」 キョン「バカにされてるんだぞお前」 佐々木「やだなぁ、深読みしすぎだよキョン。僕がそんなこと考えるはずがないじゃないか」 長門「そう。彼女はそこまで深い意味で発言していない」 キョン「まあ、長門がいいならいいけどさ」 長門「今日はその映画館が休みだということも考慮に入れていない程度の浅はかさ」 佐々木「……くっ、し、しまった」 キョン「あ、そういえば今日は休みか」 長門「仕方ない……別のチケットがあるから今日はここに行こう」 キョン「何のチケットだ?」 長門「ラブホテルの割引チケット」 キョン「帰れ」 佐々木「う、うーん3人でか……悪くないかも……」 キョン「お前も悩むな!」 ─────────8。「逆鱗」 藤原「きょ~うこちゃ~ん」 橘「やめて下さい! もう、変態!」 藤原「釣れないなぁ不二子ちゃんは」 橘「誰が峰不二子ですか! いい加減にしないと警察呼びますよ」 藤原「警察が怖くて未来人が務まるかってんだ」 橘「あ、もしもし? 今変な人に絡まれて困ってるんですが」 藤原「あはは、ほんとに電話してるし。ツンデレだなぁ」 橘「永遠にツンだけです」 藤原「わさびみたいで可愛いよ」 橘「意味がわかりません」 藤原「いつも蕎麦(そば)にはかかせないっていうじゃない。あ、うまいこと言った俺」 橘「あ、パトカーが迎えに来ましたよ。よかったですね」ウーウー 藤原「おっと、そろそろ魔法が解ける時間だ。私は帰らなくては。タラバダ! とうっ!」 橘「もう二度と来ないでくださいね~」 藤原「わかった。また来るよー」 ~~1時間後~~ 藤原「というわけで京子ちゃんってば俺にベタ惚れなんだよね」 佐々木「どこをどう捉えてもそうは見えないんだけど」 藤原「そうか? ノロケ話のつもりだったんだが」 九曜「────ケンカするほど───バカがいい」 佐々木「それを言うなら『仲がいい』でしょ。でも君の場合、 ケンカというより一方的に嫌われてるだけだと思うんだけどなあ」 藤原「そう嫉妬するなよ。いくらあいつと上手くいってないからさー」 佐々木「───ブッチン」 藤原「ん、な、なにかいけない地雷を踏んだ音がしたような気が……」 九曜「緊急事態発生─────そうだ。京都行こう」ピュー 藤原「あ、こら九曜逃げるな、おい!」 佐々木「ふーん……せっかく橘さんと仲良くなれる方法を教えてあげようと思ったのになぁ」 藤原「本当か佐々木! いや、佐々木様! やっぱ俺達の神的存在だけあって頼りになるなぁ。 かっこいいなぁ、かわいいなぁ。頭がいいなぁ。気が利くなぁ。 あ、ちなみに俺は京子ちゃんじゃなくても君でも全然OKだぜ」 佐々木「あはは、さすがに死んでもそれだけは御免だね」 藤原「そこまで嫌っすか」 佐々木「嫌というか無理だね。僕にはもう運命を共にする相手がいるし」 藤原「じゃあ、どうすれば京子ちゃんが落せるのか教えてくれないでしょうか佐々木様」 佐々木「そうだね。それにはまず七輪を用意するんだ」 藤原「ああ、あの古代式調理器具か」 佐々木「それに炭を入れて火をつける」 藤原「そうか! 焼肉だな!? 確かにうまいものを食べさせれば、 女の子は思考能力が下がるっていうしな」 佐々木「そのまま部屋を密閉する」 藤原「おお、京子ちゃんと二人きりで密閉された空間か!」 佐々木「いやいや、君だけだよ。一人でそうやるんだ」 藤原「……え? えーと、密閉するんだよね? 佐々木「そうだよ。窓も扉も全部目張りして密封するんだ」 藤原「……ねえ……それ……死なない? 一酸化炭素とかで……」 佐々木「大丈夫イメージするんだ。イメージ」 藤原「イメージ? うーん……」 ……… …… … 藤原「くっ……もうだめだ……だんだん意識が……」 ガチャン! パリーン! 橘「ちょっとアンタ! 何してんのよ!」ペシペシッ 藤原「かがみ…いや、京子ちゃんか……。なんで邪魔するんだよ……」 橘「バカ! なんで死のうなんて考えるのよ! 残されたあたしはどうなるわけ!?」 藤原「いや……俺がいると君に迷惑がかかると思ってさ…。 それに俺、君に嫌われてるみたいだし……。もういいんだ……」 橘「バカ!! バカバカバカ! この鈍感男!」 藤原「鈍感……?」 橘「あっ! そ、それはその……」 藤原「え……それってどういう……」 橘「んん……もうっ! これ以上言わせる気!? バカバカバカ!」 ~~~中略~~~ 藤原「君の瞳に乾杯……」 橘「んんっ、もう! 総統閣下様大大大大だ~い好き!」 …… … 藤原「でへへ。それいいな」 佐々木「さすがは未来人、思考回路まで前向きというか未来に向いてるね」 藤原「よし、練炭に火をつけたし、窓も全部目張りしたぜ。これで完璧だ。 後は外からお前が鍵を掛けてくれれば、京子たんが助けに来てくれるというわけだ」 佐々木「グッドラック!!」ビシッ!! 藤原「おお!」ビシッ!! ガラガラガラ ピシャン 佐々木「くっくっ。グッドナイ……」 次回につづく。藤原の人生は続くかどうかはわからない 長門