約 85,207 件
https://w.atwiki.jp/gon-gon/pages/379.html
#blognavi あたしIN♪ 来たら逃げるヤツがいr さっさと逃げろよ・・・・・・・・ ってか、るー逃げちゃダメでしょ(´;ω;`) ネタキャラがいない間の、一人遊び( そんな中、どんな環境でも一人遊びの上手なえるみそさn 帰ってきやがっt ネタになりたくって仕方ないクセに、筆者のせいにする9 そんな流れに、謎の合いの手をいれる夢ちゃん( さらに謎の愛合いの手( さらに┣¨Mなクッキーの合いの手( みなさまに甘く美しい世界が訪れることをお祈りしてますね^^^ 寸止めのクセに( 久々にネタ投下のジェリ子 うん、普段の服装からしてひわry そんなひわい夫婦と一緒に3-2にいってきました^^ そのPTチャでは・・・・・・・・ 物体( 乙女心がわからないヤツらと、所構わず脱ぐky( なんだかなー( 気持ちのわからない&変態仮面なPTに、王様の贈り物は・・・・・・・・ ネタSS以外、何もありませんでしt せっっかく脱いだのにっっ!( カテゴリ [あねごん] - trackback- 2011年04月11日 23 50 00 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/deadtwitter/pages/189.html
「さして面白い事も起こりませんねぇ」 後ろから見ているだけのアンナが気楽に言う。 実際に大したことは起こっていないが、決して平坦な道と言う訳ではない。 むしろ、ブーツのままで涼しい顔をして歩き回っている彼女の方が異常なのだろう。 よほど取材馴れしているのだろうか―― 「おや?」 そのアンナが、ふと足を止める。 彼女の見ている方を向くと、そこには人影があった。 「臭いますね…… 怪しい匂いがしますよ」 事実、周囲には異様な雰囲気が立ち込めていた。 まるで、この場全体の“空気”が自分たちを“歓迎”しているかのような―― 「――あら、ごきげんよう。 思ってたより遅かったですね」 その“空気”が、ぴたりと固まる。 そんな錯覚に陥るような、透き通った声が響いた。 「私は“オータム・スカイ”。 お待ちしていましたよ、サバイバーさん?」 腕にバスケットをさげたワンピースの少女が、こちらに歩み寄ってくる。 少女の見た目でありながら異質な空気を放つそれは、あなたとアンナが探していた存在に他ならなかった。 戦闘準備
https://w.atwiki.jp/hetamato/pages/110.html
漫画 :() 絵 () タグ: 補足:ワシントン 呼称: 名前だけ: 番外編,現代,文化
https://w.atwiki.jp/yurina0106/pages/3307.html
タグ 曲名お 電波 歌 KOTOKO・島宮えい子 作詞 KOTOKO 作曲 中沢伴行 作品 王立ネコミミ学園 ~あなたのための発情期♪~OP
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/5391.html
1 2 3 4 5 6 7 8 ※黒律ハーレム・純憂 2012/11/24 ◆ywLV/X/JUI http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14921/1353683842/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る おいリドル、テメェの血は何色だ、オナニーssもいい加減にしろ -- (名無しさん) 2014-01-31 03 24 00 律クズ過ぎる いるよねこういう男 まあ読み応えあったし面白かった -- (名無しさん) 2013-12-03 16 38 09 ↓ つまり梓に紙袋被せられた律が惨めな思いしながらsexするってこと? したら梓に非難の嵐だろjk -- (名無しさん) 2013-03-16 22 09 53 これの律の立場が澪か梓なら絶賛の嵐なんだろうな -- (名無しさん) 2013-03-16 21 53 17 支部でこの人の見たけど律なら何でもいい律房だからそういう人向けだろ -- (名無しさん) 2013-03-15 09 24 19 最後の部分だけ良かった -- (名無しさん) 2013-03-05 09 32 15 面白かったよ -- (名無しさん) 2013-03-04 03 09 32 律受けのハーレム物が珍しくて読んでみたが、見事にどのキャラのファンも得しない内容だな -- (名無しさん) 2013-03-03 19 51 56 律のビッチな性格のせいでHTT皆歪んでしまったんだから、もっと手酷い仕返しをされて欲しかった。 -- (名無しさん) 2013-02-20 17 06 35
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/5399.html
. 部屋に戻った律は、椅子に腰掛けて考えていた。 確かに、手を出し過ぎたかもしれない、と。 本命の澪に絞る事も頭に浮かぶが、やはり唯達の身体も捨て難かった。 一応律の脳裏には、このままの関係を続ける方法が浮かんではいた。 三人が最終的に律の提案を呑むに至った経緯を思い返せば、簡単に辿り付ける方法である。 即ち、別れ話を盾にする事で、彼女達を従わせるという方法だった。 だが流石の律とて、愛されている事を利用するこの方法に抵抗がない訳ではない。 律は溜息を吐くと、窓の外に目を遣った。 思案に暮れた脳を休めようと眺めた外だが、そこにも律を悩ませる事象が展開されていた。 空はいつの間にか曇天となっており、小粒の雨を降らせている。 心なしか、雨の勢いも徐々に増しているように感じられた。 唯達は、傘を持っていないのだ。 唯達ももう、各々の家に向かう道が別れる岐路を過ぎている事だろう。 傘を渡しに行くにしても、誰か一人しか選べない。 携帯電話で全員を呼び戻そうかとも思ったが、 先程の論争が再燃しかねない状況を作りたくはなかった。 これも、誰か一人を選べという天からの示唆だろうか。 そう考えて、律は殊の外思い詰めている自分に気付き苦笑した。 秋だから天候が変わり易いだけだ、そう現実的な解釈を胸中に言い聞かせる。 その時だった。律は自分を正当化する論理に思い当たって、思わず瞠目していた。 「そうだよ、仕方ない事なんだよ。だから私、許されてる」 律は声に出して、自分を鼓舞する。 そうして、三人とも今の関係を続けると結論付けた。 その結論に至る為に律が拠った論理とは、『女心と秋の空』という慣用句だった。 女心は秋の天候のように変わり易いのだから、 自分の心が数人の間を行き来する事は止むを得ない、と。 挙句数人と付き合う事になったとしても、 激しい変心の最中にあっては正当な行為に思えた。 天候のように人力が及ばない領域にある恋心を責める資格など、誰にもないだろう。 その自分の論理に満足した律は、表情に笑みを湛えて呟く。 「だって私は心変わりっちゃんで、日替わりっちゃん、だもん」 律は傘を誰にも渡しに行かないと決めた。三人とも付き合い続けるのだから。 彼女達が濡れようとも構わなかった。 秋の天候のような女心に翻弄されているのだから、仕方のない事だと。 * 6. 紬は律を眺めて、訊こうか訊くまいか決めかねていた。 律の不倫が明らかになってから、一週間が経つ。 それでも尚こうして紬の部屋を訪ねてくれるのだから、 本当なら自分に心が傾いていると思いたいところだ。 ただ、律が未だ唯や梓との逢瀬を重ねつつ、澪とも付き合っている事を紬は知っていた。 唯や梓は自分が優勢だと示したいのか、盛んに関係が続いていると匂わせてくる。 澪に関しても、律との学校での良好な関係から未だに交際が続いていると推知できた。 自分の部屋に来てくれた程度の事では、楽観にも安堵にも至れない。 「ね、りっちゃん。そろそろ、決まったかしら」 迷った挙句、紬は訊ねる事にした。 「ん?何が?」 分かっているくせに、と紬は思った。 それでも紬は惚けている律に、努めて柔らかく言う。 「この前言っていた、一人に絞るって話。 急かすつもりはないんだけどね、気になっちゃって」 そう言いながらも、本当は早い結果を求めている。 だが、急かして律の機嫌を損ねる事は避けたかった。 「まーだだよ。 だって、重要な話じゃん。 急いで結論を出すなんていい加減な事はしたくないから、 よーく考えて決めたいんだよ」 紬は額面のままに律の言葉を受け取れなかった。 律は誰を選ぶか決めぬまま、自分達との交際を続けているのだ。 いい加減な事をしたくないと言うのなら、 結論が出るまでは自分達との逢瀬を控えるべきだろう。 紬には律が、軽佻浮薄に言を弄しているようにしか見えない。 「そう……。でも、その熟慮する期間に、私と遊んでもいいの? 私だけじゃなく、唯ちゃんや梓ちゃん、それに……澪ちゃんとも、仲が良いみたいだけど」 「ああ、よく考えるって言っても、頭の中だけで検討する訳じゃなくってね。 実際に遊んだり話したりして受ける直感的な要素も重視しているんだよ。 唯や梓達と相変わらず仲良くしてるのも、その一環だよ」 律の言葉が自分達を試して決めるという意味に聞こえて、紬は愕然とした。 まるで乗り心地で購入する車を選ぶかのような口振りだ。 それが感情と尊厳を持った人間に向けられている事に、紬は憤りを禁じ得ない。 「そう、お試し期間っていう訳ね」 律に嫌われたくはない、それでも言葉に刺を含めずにはいられなかった。 律も皮肉を感じ取ったらしく、言葉を返す唇が尖っている。 「悪意ある言い方しなくてもいいじゃんかー、 ポイント下がっちゃうぞー? ちょっと実践を交えた、ただの検討期間だよ。 ていうかムギ達だってさ、結果がどう転んでも、 あらゆる角度からの検討と熟考が尽くされた上なら、納得いくでしょ? 皆への配慮でもあるんだよ」 紬は内心、律の言葉に共感を寄せる事ができなかった。 仮にどれ程の熟考を経た結論であれ、 自分が選ばれなかった場合に大人しく受け入れられる自信はない。 ただ、ポイントを下げるという律の言葉に抑圧され、 紬は素直な感情を口から出す事ができなかった。 「そうかもしれないわね……」 紬は曖昧な言葉で濁したつもりだったが、律は賛意と受け取ったのか満足気に頷いている。 まるで、これで解決したかのような仕草だ。 「でしょ? まー、悩ましい話はそろそろ終わりにして、さ。 私、したくなっちゃったな。だから、ね?いいでしょ? 澪や唯、梓にはないハーフの味で、恋に憂う私を癒してよ」 律は勝手に話を終わらせて、紬の身体を欲してきた。 そもそも紬は律が澪と別れる事を条件に、身体を差し出したはずだった。 それがいつの間にか無かった事にされ、紬も律の不倫に組み込まれてしまっている。 決して一途になってくれない律に対して、紬は嫌味で報復せずにはいられなかった。 「りっちゃんだって、ハーフっぽいじゃない。 そうね、りっちゃんって、フランス辺りが似合ってる感じよ。 パリにでも行けば、結構上手く人付き合いできるかも」 「まぁっ、私がおフランスっ?」 律は頬に両手を当てて、甲高い声で小さく叫んでいた。 「って、言い過ぎだよ。私、そこまで優雅かなぁ?」 今度は紬の嫌味が通じなかったらしい。 律は照れ隠しのように謙遜しているが、決して紬は優雅などという意味を込めていない。 「言い過ぎてなんかいないわ。 りっちゃんって、お料理も上手だし、西洋人形みたいな顔立ちしてるし」 紬は気付かない律に合わせて言った。 律が皮肉に気付いていないからこそ、安全圏から腹癒せができる。 それでも、本意を伝えてやりたい衝動はあった。 浮気性、と。 「えー、ムギったら、上手なんだからー」 喜ぶ律を見て、その衝動は更に高まった。 それでも律を愛しているが故、真っ向から対立して嫌われたくはない。 紬は更に深く踏み込んだ皮肉を放つ事で、衝動を胸の内へと留める。 「そう?心の底から、フランス人が喜ぶ恋も似合いそう、って思ってるわ」 「いや、私なんかじゃ似合わないよー。 でも、マノン・レスコーとか椿姫とかに憧れはあるから、ムギは慧眼かな?」 紬は律の口からフランス文学の名が上がるとは思っていなかったが、 それがマノン・レスコーである事には納得もしていた。 紬はマノン・レスコーを読んだ時、悲しみを感じつつも共感はできなかった。 小説に登場するマノンという女性が、度を超えた浮気性に思えて許せなかったのだ。 だが律は、マノンに憧れさえ抱いているらしい。 そこにも全く共感を覚える事のできない自分は、 やはり母と同じフィンランド人の血を半分は引いているという事だろう。 カトリックが多いフランスは、浮気に対して寛容な国柄として知られる。 反面、プロテスタントは浮気に対して非常に厳しい姿勢を取っている。 そしてフィンランドはそのプロテスタントが圧倒的多数を占めており、 紬の母親もその多分に漏れなかった。 その為か、紬の母親は非常に浮気や不倫を軽蔑していた。 紬も厳格な母の影響によって、浮気に対する蔑視の念は強い。 紬は改めて胸中で、神と母に浮気を許容しないと誓った。 律が相手を自分に定めるまで、もう身体を許しはしない、と。 「あら、やっぱり、そういうの好きなのね。 でも私、慧眼なんかじゃないわ」 慧眼だったのなら、澪と別れるという律の言葉など信じなかっただろう。 そうして、神や母親の教えに背くような真似にはならなかったはずだ。 だがそれもここまでだと、紬は強く強く自分に言い聞かせた。 つい先程、それを誓ったばかりだ。 「そ?ムギには、何でも見通されてるような気がするけどね。 ま、いいや。そんな事よりさ、やろーよ、やろーよ。 ムギの事、欲しーなー」 律にとっては、肉欲こそが最重要なのだろう。 それを満たす為に、律は紬を含めて数多騙してきたのだ。 紬は誓いを試されている思いで、返答を放つ。 「今は駄目、めっ、よ。 少なくとも誰か一人選ぶまでは、身体の契りを交わすべきじゃないわ。 その時まで、我慢すべきよ」 案の定、律は簡単には退かなかった。 唇を尖らせて、尚も迫ってくる。 「何さー、ケチー、いいじゃんかー。 さっきも言ったけど、これだって検討材料になるんだよ? 身体の相性だって、大事だし」 まるで試食だ、紬は憤懣を胸に滾らせて言う。 「女体がデパ地下に並んでいるんじゃないのよ? 身体は一人と決めた相手にしか、許しちゃいけないの。 何人もの相手と同時に関係を持つなんて、冒涜だわ」 「それはムギの価値観でしょ? だからムギが私とだけ関係を持てばいいよ。 それにムギ、私の事、欲しくて堪らないでしょ?」 律はそう言うと服を脱ぎ始めた。 徐々に露わとなる律の肌に呼応したように、紬の身体は意思に反して疼く。 律へと靡く自分の身体に愕然としながらも、紬は誓いを思い出して反駁する。 「堪らないなんて、そんな事、ない。 身体の関係なんて、私を選んでくれた上での話よ。 そうじゃないと、私は不倫という不徳に加担した事になっちゃうもの」 紬が言い終わる間に、下着を除いて律の身に纏うものはなくなっていた。 その扇情的な姿を見せ付ける律の顔に、不敵な笑みが浮かぶ。 「澪と付き合ってた私とあれだけヤっといて、今更何言ってるの。 別れるとか言う条件付けたところで、不徳で不埒な事に変わりはないよ。 それにムギも、私の事が欲しいんでしょ? ほーら、素直になって、ムーギッ」 紬の疼く身体を見透かしているように、律が身体を寄り添わせてきた。 側にある律の肌が、紬の誓いも理性も瀕死へと追いやってゆく。 それでも律の肌から目を逸らせない、律を突き放せない。 身体が本当に、言う事を聞いてくれない。 「だ、駄目よ。駄目なの。こんなの、いけないわ」 紬はもう律になど言い聞かせていなかった。 自分の身体へと、必死に言い聞かせていた。 勿論律には彼女への言葉として聞こえたようで、更に言葉を募らせてくる。 「愛に禁止はないよ。それは私が、身を通してムギに教えた事。 ほら、見て、ムギ。私のここ、ムギも好きだったでしょ?」 律がブラジャーを外して、胸を見せてきた。 律の言うとおり、何度何度も重ねて愛した胸だ。 可愛らしくて、蠱惑的で、美しくて、本当に好きだった。 「ここなんか、特に好きだったよね?」 律は続けて言うと、ショーツまでも脱いでしまった。 陰毛のない無防備な性器が、紬の瞳に飛び込んでくる。 桜の花弁のような優しい桃色が、律の情欲を表すように濡れていた。 それは漂ってくる甘い香りと併せて、紬を発情へと引き込んでゆく。 「で、でも……」 紬の口から、とうとう迷いが出てしまっていた。 本当に律を愛してしまっていたのだと、紬は今更ながらに思い知る。 母よりも神よりも、律が大きな存在となっていたのだと。 その事を表すように、紬の性器は既に律以上に濡れているのだ。 「これ以上はもう、チャンスなんてあげない。 いい加減、全部服着て、帰っちゃうから。 どうするの?ポイントを上げるも下げるも、ムギ次第なんだよ?」 律に耳元で囁かれた言葉が、形骸化していた誓いに対する最期の一撃となった。 ──ごめんなさい、お母様 「りっちゃんっ」 紬は決壊したように、律へと抱き付いていた。 「そうそう。それでいいんだよ。さ、ムギ。 ムギも脱ごっか?」 後はもう、律に言われるが侭だった。 紬は胸中で母と神に詫びながら、肌を晒した。 母を裏切り涜神してでも、律を拒む事などできやしない。 律に対する愛憎を胸に抱いて、紬は律に抱かれた。 * 7. 律が今日という日に来てくれた事を、梓も最初は喜んでいた。 だが、律との会話が淡々とした言葉のやり取りに終始している為、 時とともに偶然かもしれないという不安が擡げてきた。 そしてとうとう不安に耐え切れなくなった梓は、意を決して訊ねる。 「あの、ところで律先輩。 話題を変えちゃって悪いですけど、今日が何の日か、ご存知ですか?」 「んー?ポッキーの日でしょ? 何?ポッキーゲームでもやりたいの?」 律は少し考える素振りを見せた後で、指を一本立てながら返してきた。 その返答に梓は落胆して、訊ねた事を後悔した。 十一月十一日とは、律にとってはその程度の意味合いしかないのだろうか。 自然、律に向ける言葉も投げやりになる。 「いえ、もういいです。何でもありません」 「どうしたんだよ、急に拗ねちゃって。 あ……そっか。 そういえば今日、お前の誕生日か」 今更思い出されても、嬉しくはなかった。 梓は律が無手で来た事にさえ不審を感じず、 自分を選ぶという宣言こそが誕生日プレゼントなのかもしれないと期待していた。 だが実際には誕生日さえ気に留められておらず、自分が選ばれる希望は逆に遠のいてしまった。 その事も失望の反動を大きくさせている。 一方で、僅かながら安堵の気持ちもあった。 もし自分が選ばれれば、それは澪に対して表立って弓を引く事となるのだから。 澪を思うだけで、梓の顔は自然と曇った。 律と関係を持った日から、澪に対する罪悪感は変わらず梓を苦しめている。 そろそろ、この気持ちにも一区切り付けるべき時かもしれない。 律が一人を選ぶと宣してから半月が経とうとしている今、 併せて質すにはいい頃合いだろうと感じていた。 「悪かったよ。おめでとうな、あーずさっ」 浮かない顔をしている事で、梓が拗ねていると感じたのだろう。 律が機嫌を取るように言い足してきた。 梓にとって誕生日を忘れられている事は痛恨だったが、 今は謝罪よりも祝いよりも律から聞きたい事があった。 「いえ、もうその話はいいです。それよりも、です。 律先輩が誰か一人に絞るって言ってから、そろそろ半月ですけど。 この事、澪先輩には話されているんですか?」 「いや、話してないけど」 当然のように言う律を見て、梓の澪に対する罪悪感がいや増した。 澪が与り知らないまま、彼女と別れる事も含めた検討を律は行っている。 その事が澪に対して、酷く不公平で卑怯な事のようにも思えてくる。 「律先輩が行う選択に澪先輩も関係する以上、教えるべきだと思いますけど。 というか、一度律先輩の浮気を、澪先輩とも話し合うべきです。 私達と違って、澪先輩は何も知らないんですよ?」 梓の提案に、律は渋い顔を浮かべた。 「いや、言わなくていいって。 これ以上トラブルの種を増やしてどうすんの。 梓だって、澪から恨み言を言われたくないだろ? 澪にしてみれば、梓だって恋敵になるんだから」 「いえ、言われても構いません。 私は現に、澪先輩に対して酷い事をしているんですよ? その事を謝る、いいチャンスです」 ここまで愛してしまった律から身を引く事など、梓には今更できなかった。 それでも面を合わせて澪に謝罪する事で、罪悪感を多少は和らげる事ができる。 だがそれも、澪が律の浮気を知る事が前提となるのだ。 「梓は構わなくてもさ、私は構うの。 そりゃ、梓達の誰かを選べば、澪とは別れる事になるよ? でもさその場合、例えば澪と別れてから梓と付き合いました、って言えるんだよね。 浮気してました、って言うのとじゃ、 澪の受ける印象が大分違ってくるっていうのは分かるよね? それって、円満なバンド活動を続けていく為には大事だよ?」 律の身勝手な都合で、梓の思いは切り捨てられていた。 円満なバンド活動の為など、梓には言い訳としか聞こえない。 そもそも律の描く案を成立させる為には、梓達が揃って口裏を合わせる必要がある。 だが律とて、自分が捨てる相手に協力を期待してはいないだろう。 要するに、律は澪へと露見する時を先に延ばしたいだけなのだ。 恋人を一人に絞ると言った、あの時のように。 それ以前に、円満なバンド活動などもう幻想でしかない。 律が誰か一人を選んだ段階で、HTTが崩壊する事など目に見えている。 仮に澪の納得を得られたとしても、唯や紬は自分が選ばれない限り納得しないだろう。 それは梓も同様だった。 今バンド活動が外見上平穏に続いている事は、律に選ばれたい思いの一致が見せた均衡でしかない。 律が一人を選んだ時点で、それは簡単に崩れ去る。 梓は溜息を堪えて、尚も言い募る。 「それじゃ、一人気付いていない澪先輩が可哀想ですよ。 自分が知らないところで、話が進んでいくんですから。 それに、隠してた方が、バレた時の反動は大きいですよ?」 「澪に付いては、私の方が梓より詳しいよ。 安心してよ、最悪の場合でも、澪は私の方で何とかするからさ。 何だかんだ言って、澪は私に甘いんだから。 どんな事しても、きっと澪は最終的には私を許してくれる。 だったらさ、何も揉めてる今、トラブルの種増やす必要ないじゃん。 梓達との問題片付けてからでも、澪に当たるのは遅くないって」 澪の足元に付け込むような物言いに、梓は憤懣を禁じ得ない。 澪を尊敬し胸中で姉と慕う梓は、即座に律へと反発の言葉を放つ。 「それじゃ、本当に澪先輩が可哀想です。 大体、私の気持ちが無視されてるじゃないですか。 私だって、澪先輩に謝りたい……」 「大丈夫、澪は優しいから、梓の事も許してくれるよ。 ほら、妹のように可愛がってくれてるだろ? それに、バンドの継続や結束を誰よりも重視してる。 あいつは軽はずみな事はしないはずだよ」 律の言うように、澪は優しかった。 だからこそ謝りたいというのに、それは律には通用しない感覚らしい。 また、澪がバンドの継続や結束を誰よりも考えているからこそ、 彼女の知らない間にバンドが崩壊してしまう事は不憫だった。 「でも、だからといって優しさに甘えるのは」 「あーずさっ」 律に名を呼ばれて、梓は言葉を遮られた。 更に続けて、律は言う。 「もういいよ、その話は。そんなんよりさ、誕生日プレゼント、あげるよ。 私の身体、あげるね。 それだけじゃない、今日は特別に、梓の事も気持ちよくしてあげる」 梓の唇に、律の唇が被せられた。 直後には口腔へと律の舌が侵入し、発情を促すように梓の舌と絡み合ってきた。 律が唇を離した時には、梓の色欲も昂ぶっていた。 このまま話を有耶無耶にされてしまうと分かってはいたが、 それでも滾った身体は律を求めてやまない。 律もそんな梓の身体を見抜いているからこそ、性交へと切り替えたのだろう。 梓は恨みがましく言う。 「ズルいです……律先輩」 「そう?梓が喜ぶ事を提案しただけなんだけどな」 そう言いながら伸びてくる律の手を、梓は受け入れた。 梓は性感帯を弄られながら、律の手に服を脱がされてゆく。 そうして梓が裸になったところで、律は気付いたように言った。 「あ、そうだ。いい事考えた。 梓さー、要らない紙袋、ある?」 「ありますけど……」 買い物は通販が多いが、それでも実地の店舗へと足を運ぶ事はままあった。 その際に包装として使われた紙袋も、幾つかは部屋に取って置いてある。 梓はその中から一つ、律へと手渡した。 「ああいや。私に渡す必要はなかったんだけどな。 まぁでも、大きさは丁度いいかな。 ほら、被って?」 律の意図が読めず、紙袋を再度手にした梓は困惑を浮かべた。 その梓に向けて、律が自信に満ちた笑みを浮かべて説明してきた。 「いや、梓ってさー。澪に罪悪感を抱いてるじゃん? だからさ、それ軽減するの、プレゼントにしようかと思って。 髪とか似てるんだしさ、顔さえ隠せば、体型除いて澪に瓜二つだよ。 だから、澪として梓を抱いてあげる。 それなら、私は澪としているみたいになって、梓も納得できるでしょ?」 「は?」 梓は頓狂な声を上げると、信じ難い思いで律を見つめた。 どれ程残酷な事を言っているのか、分かっているのだろうか、と。 「何、その反応?嫌なの? 澪に申し訳ないとか言ってたの、梓じゃんかー。 だから私が折角考えてやったのに」 律は梓の反応が不満なのか、唇を尖らせている。 澪へ告げるよう迫った梓に対する意趣返しなのか、 それとも本当に名案だと思っているのか。 律の真意は判じかねるが、どちらにせよ首を縦に振るしかないだろう。 強硬に断って、別れ話を切り出されたくはない。 「いえ、嫌じゃありません。 思いもよらない案だったから、驚いちゃっただけで。 分かりました、やります」 梓は内心に湧く抵抗を抑えて、紙袋を被った。 「良かった、梓も喜んでくれて。ささ、俯せになってよ。 そうそう、そんな感じ。 じゃ、ヤるなー、みぃおっ」 声の聞こえた方角から察するに、律は梓の後方へと回ったのだろう。 その体勢で、梓は性器を律に弄られた。 「ふふっ、可愛いよ、澪。 いつもは私がしてもらってるけど、今日はそのお礼だよ、澪。 あはは、いつもの澪は凛々しいけど、小さくなると可愛いねー」 梓は律が必要以上に、澪の名を呼んでいるように感じた。 少なくとも自分が律と寝た時には、ここまで名前を呼ばれていない。 単なる当て付けかもしれないし、澪が相手の時には本当に名を多く呼んでいるのかもしれない。 律の意図はどうあれ、澪の名が呼ばれる度に梓の心は切り裂かれてゆく。 梓は涙を零しながらも、漏れそうになる嗚咽だけは抑えて耐えた。 紙袋を被っているおかげで、嗚咽さえ堪えれば律に涙が悟られる事はない。 「澪ー、だぁい好きっ。 ふふ、こんなに濡らしちゃって、澪ったらエッチさんだー」 梓には律に抱かれている感覚など、あまりなかった。 律は梓を通して、澪を抱いているだけなのだ。 なのに、梓の身体は敏感に反応して、体液を性器から漏出させている。 「愛してるよー、澪ー」 澪を抱いていると思っても、梓の罪悪感は消えなかった。 所詮、律が澪を抱いているつもりでも、これは梓の身体なのだから。 抱かれて悦んでいる身体は、決して澪のものではない。 ──ごめんなさい、澪先輩……澪お姉ちゃん…… 梓は律に抱かれながら、胸中でひたすら澪に詫びていた。 7
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/5396.html
* 3. 十月に入ると、律が唯と肌を重ねる頻度は減っていた。 梓とも交わるようになった影響が、そこに表れている。 そして今日も唯ではなく、梓が律の逢瀬の相手だった。 「律先輩の細い体、抱き心地が良いです」 梓に抱きすくめられて、耳元で囁かれた。 梓の部屋にあるベッドはサイズが小さい為、二人で寝れば自然と抱き合うような体勢となる。 「梓も細いじゃん」 律はそう返しながら、その代わりに肉感に欠けているとも思った。 体格が近い事もあり、梓は躍動的な性交には適している。 反面、澪に比べれば包容力の差は埋め難い。 柔らかく体温の高い唯と比べても、やはり梓の肉感は劣って感じられた。 初めて交わった時は、興奮のせいか特に気にはならなかった事だ。 だが一週間を過ぎた今は、難点として気付く事も多くなっている。 「律先輩には負けますよ。胸では少し、勝ってますけど」 梓は茶化すように笑うと、律を抱く腕に力を込めてきた。 胸や腕の肉が薄い為か、少し窮屈に感じられる。 胸も大事な要素なのかもしれない、と今更ながらに律は思った。 「梓だって、私より大きいくらいじゃ何の自慢にもならないんだかんね。 唯はやや大きめだし、澪やムギに至っては言うまでもないし」 そう返した後で、そういえば、と律は思う。 紬をまだ、試していない。 胸の大きさは澪と同程度でも、肉付きは澪以上だ。 決して太っている訳ではないが、柔らかそうで包容力を感じさせてくれる肉体である。 紬を試してみたい、という欲が律の胸裏で膨らんでゆく。 「それ言われると、返す言葉もないですけど。 でも律先輩、私を選んでくれたって事は、 胸よりも大事な要素があるって思ってくれてるんですよね。 なら、小さくっても構いません」 微笑みながら梓は言うが、律は既に胸や体格も大事な要素だと気付いていた。 今のところは梓と別れるつもりはないが、興味は既に紬へと移りつつある。 「うん、そうだね」 律は相槌を打ちながらも、頭では紬の事を考えている。 思えば、紬は他の人間よりも、自分の行動に理解を示してくれていた。 律の提案を最終的に折れて受け入れても、難色を示す事から入る澪とは違う。 紬は始めから好意的に受け止めて、甘やかしてくれる存在だったのではないか。 また、他の人間に言わないような悩みでも、自分には明け透けに打ち明けてくれている。 それら一つ一つが、自分に好意を持っている事の表れのようにも思えてきた。 「律先輩ぃー?」 不機嫌そうな声で名を呼ばれて、律は梓に目を向けた。 その梓は顔にも不機嫌を露わにしている。 「どうしたんですか?何か、上の空ですよ?」 「あー、いや、ごめん。何か今日、気が乗らなくって。 また、今度な」 律は梓の抱擁を解いて立ち上がった。 「あの、帰るんですか?セックスしたくないんなら、構いませんが。 コーヒー淹れるんで、ゆっくりしていってください。 恋人って、セックスだけの関係じゃないですし。 ああいや、まだ澪先輩に話されていないようですから、 まだ私は正式な恋人じゃありませんが」 自分の言葉を慌てて訂正した梓に倣うように、律もまた胸中で訂正していた。 お前とはセックスだけの関係だ、と。 「んー、今日はいいや」 「あ……そうですか」 梓の名残惜しそうな視線と言葉を振り切り、律はバッグを手にドアへと歩いた。 だが、ノブに手を掛けたところで、呼び止められる。 「あの、律先輩っ。一つだけ、教えて下さい。 どうして私の事、好きになってくれたんですか?」 面倒な質問だ、と律は嘆息したくなった。 答える代わりに、律は問い返してみた。 「梓はどうして?」 「私は……確保ーって、抱き締めてくれた時から、既に意識してて。 それで、段々と目が離せなくっていて……気付いたら、好きになってました。 ただ、澪先輩も尊敬してるから、表には出さなかったけど、でも」 「つまりさ、自分でも何が決定打になったか、分かってはいないんでしょ?」 長くなりそうな梓の言葉を遮って、律は続けた。 「私だってそうだよ。どうして梓が好きになったのか、よく分かってない。 好みのタイプだから、以上の事は言えないよ。 好意が恋愛感情に変わるボーダーって曖昧だし、決定的な理由がある方が稀でしょ? そんなもんだよ」 「そう、ですか……」 寂しげに呟く梓に構う事なく、律はドアを開けて室外へと出た。 . . 家に帰るとすぐ、律は携帯電話を取り出した。 紬の名を呼び出し、コールする。 コール音を四つ数えた辺りで、紬は出てくれた。 「はーい、お待たせー」 「いや、すぐに出てくれたじゃん。今ちょっと電話、大丈夫? すぐ終わるからさ」 「長電話でも大丈夫よ。どうしたの?」 「いやー、次の日曜日、二人で遊ばない? 私の家に来てよ。偶には二人で、仲良くしよ?」 唯や梓との逢瀬において、律はあまり自分の部屋を使ってこなかった。 ただ、紬に関してはその日の内に同衾まで辿り着こうと目論んでいる為、 勝手の利く自室に誘い込んだ方が都合は良い。 また、唯や梓相手の不倫に澪が勘付く素振りさえ見せない事から、警戒が緩んでもいた。 「ええ、いいわ。りっちゃんの家、皆と一緒にしか行った事ないから、楽しみね。 でも、いいの?」 「そりゃ構わないよ。遠慮せずに寛いでよ、大したもてなしはできないけど」 「いえ、そういう事じゃなくってね……」 紬の語尾が濁った。 律は問い掛けるような語調で名を呼んで、言い淀む紬を促す。 「ムギ?」 「えっと、澪ちゃんと、付き合ってるんでしょう? 他の子と、二人っきりになっていいの?」 遠慮がちな声で、紬の懸念が語られた。 「なーに言ってるんだよ、ムギ。 澪はそこまで私の事を拘束してないよ。そんなの気にしなくていいって」 律は鷹揚に振る舞ったが、内心を見透かされたようで背筋に冷たい汗が流れた。 「そう……よね。友達、だものね。 分かったわ、是非、行かせてもらうわ。 お菓子とか、作り方教えてもらいたいな、って思ってたし」 自分に言い訳するような口調で、紬はそう返してきた。 まだ胸中では、澪に対する引け目が燻っているのかもしれない。 その後ろめたさを吹き飛ばしてやるように、律は努めて明るく言う。 「わぁ、ありがと、ムギ。私も楽しみにしてるからさ。 食欲の秋なんだし、いっぱいお菓子、作ろうね」 「ええ、そうしましょうね」 律の無邪気な声に気が緩んだのか、紬が安心したように呟いた。 「うんっ。じゃ、日曜にね。あ、場所、分かるよね?」 「まだ憶えてるわ。それじゃあ、日曜日に」 「うん」 最後に相槌を入れてから、律は電話を切った。 もう既に、日曜日が待ち遠しくなっていた。 * 4. 約束していた日曜日を迎え、紬が律の家へとやって来た。 唯と梓を交互に一度ずつ回しただけの日数しか経ていないが、律にしてみれば一日千秋の思いだった。 自然、玄関へと迎えに行く足取りも軽くなった。 「わぁ、待ってたよ。早速上がってよ」 「ええ。改めて、お邪魔します」 紬はきちんと靴を揃えてから、框に足を掛けた。 「さ、こっちだよ」 律は紬を先導するように、階段を上がった。 いよいよ紬と肌を重ねられる、そう思うと心も足も急いて逸った。 「ふふ、りっちゃんたら、そんなに急いじゃって。 本当に待っててくれたのね」 振り返れば、優しく微笑んだ紬が付いて来てくれていた。 律はその手を取って、更に急かせる。 「うんっ。ムギの事、待ってたよ」 「り、りっちゃんっ」 手が触れた時、紬の頬に赤みが差した。 律は顔色の変化に気付かないよう装って、そのまま手を引いて自室へと連れ込む。 「さ、適当にベッドにでも腰掛けてよ」 ドアを閉めた律は、ベッドを指差して言う。 「そう、じゃあ、失礼して」 紬は躊躇うようにベッドを眺めてから、物静かな動作で腰を下ろした。 その隣に律も腰掛けて、身体を寄せる。 「ね、ムギ。今日は本当にありがとね。 ムギとはもっと、もーっと仲良くなりたいって、前々から思ってたんだ」 「え、ええ。私もよ」 紬の震えた声から、緊張が感じ取れた。 律には好意の表れのように思えて、更に積極的な気分になった。 「こうして密着してると、ムギって、いい匂いがするよね。 身体も柔らかいし」 「ちょ、ちょっと、りっちゃんっ」 紬が顔を朱に染めて、身体を仰け反らせた。 その身を追って、律は紬に抱き付いてシーツへと押し倒す。 「逃げないでよ、ムーギ。こういう事、興味ない?」 紬に覆い被さりながら、律は問い掛ける。 「きょ、興味ない訳じゃないけど……。 こういうのは、好きな人とやらないと」 戸惑った様子を見せる紬に、律は優しく笑い掛けた。 「じゃ、いいじゃん。だって私、ムギの事、好きだよ?」 「っ。何を言ってるのっ?」 紬が語気鋭く問い質してきたが、律は落ち着いていた。 もし本当に紬が律を拒もうと思っているのなら、この身体を跳ね除ければいいだけだ。 それが容易にできるだけの体格差が、律と紬の間にはある。 言葉とは裏腹な紬の本心が、そこに透けて見えていた。 「何って、告白。で、ムギは?ムギは私の事、嫌い? 嫌いだから、私とはこういう事したくないの?」 律は上目を紬に向けながら、甘えるような声音で問うた。 澪の譲歩を引き出す時、よく行っている仕草だ。 「嫌いな訳、ないわ。 だってりっちゃんは……私の、初恋の人なんだもん」 紬は躊躇いがちな声でそう漏らした後、顔を背けた。 よくよく見れば、その瞳は今にも落涙しそうな程に潤んでいる。 律の思っていた通り、やはり紬から好意を向けられていたのだ。 予想というよりは、願望に近い賭けだったかもしれない。 律は歓喜一入、勢い込んで言う。 「じゃ、いいじゃん。 こういうのって、好きな人とやる事なんでしょ?問題、ないよね?」 「でも、だって。りっちゃんは、澪ちゃんと付き合ってるんでしょ? だめよ、そんなの」 胸へと伸ばした律の手を捉えて、紬が頑として言った。 「澪に悪いから?」 「それもあるけど、私だって嫌なの。 浮気はいけない事よ、その相手として扱われるなんて屈辱、受けたくない。 りっちゃんの事は好きだけど、本命として愛されないのなら、 身体まではあげられないわ」 貞操に対する意識の高さに、紬の育ちの良さが表れているようだった。 ただ、それでも性欲を持った一人の人間である事に変わりはない。 育てられた後天的な淑女を説得するのではなく、内奥の先天的な女を刺激してやればいいだけだ。 律はそれを甘言で誑かす事によって実践へと移す。 「澪とはその内、別れるつもりだよ? でも、付き合いは長いし部活にも迷惑掛けたくないから、ソフトランディングしたいんだ。 時間は掛かるけど、ちゃんとムギにシフトするよ。 今はもう、澪ともご無沙汰だし。 だから、いいでしょ?ムギが本命なんだよ」 「でもっ。本当にそうなら、澪ちゃんと別れるまで待ちたいわ」 「言ったでしょ?時間が掛かるって。私、そんなに待てないよ。 ていうかムギだってさ、こうなる事、分かってたんでしょ? 約束した時の電話で、それ匂わせてたよね? 私と寝るつもりで部屋に来るみたいな事言っておいて、今更ヤりませんは酷いよ。 私、生殺しされた気分」 「ちょっ、ちょっと待ってっ。私、そんな事言ってない……」 紬は愕然とした調子で言った後、気付いたように言葉を続けた。 「もしかして、お菓子の事?お菓子作りの話を、隠語か何かだと勘違いしてるの? 違うわ、私は純粋に、りっちゃんからお菓子作りを教えてもらいたかっただけで。 あ、そうだ、お菓子。お菓子、作りましょうよ。 私、お腹空いちゃって」 身体を起こそうとした紬を抑えて、律は言う。 「そーんな見え透いたごまかし、いいからさ。 お菓子どうこうの話じゃなくて、 澪と付き合ってるのにいいのか、ってムギ訊いてきたじゃん。 そんな事を確認しておきながら、 本当にムギは私と寝るつもりは欠片もなかった、って言い張るつもりなの?」 「いや、それはっ。澪ちゃんに誤解与えないか心配で訊いただけで……。 別に、りっちゃんと契っていいのかって訊いた訳じゃなくて……」 「じゃ、私の事、生殺しにするの? 誤解与えるような事言って期待させといて、全く責任取らずに放り出すの? 酷いよ……ムギなんか、好きにならなきゃ良かった……」 律は潤ませた瞳で、紬を恨みがましく見つめた。 泣いて見せる事くらい、律にとっては造作もない。 ただ、紬には堪えたらしく、態度を軟化させてきた。 「ごめんね、りっちゃん。 りっちゃんを悲しませるつもりなんてないから、そんな事言わないで。 ちゃんと責任を取るから、だから、一つだけ、確認させて? 本当に、澪ちゃんと別れてくれるのよね? もう澪ちゃんとは、身体の契りを交わしていないのよね?」 律は偽りの涙を瞳から拭うと、小さく頷いた。 「うん。澪とは時間は掛かるけど、ちゃんと別れるよ」 「分かった、信じるわ。でも私、初めてだから。 その、あまり、上手じゃなかったらごめんね? 一応、そういう知識が無い訳じゃないんだけど……」 紬の声は震えていた。 「私だって、あまり経験がある方じゃないよ」 律は何回目になるかもう数えていない嘘を吐くと、 再び紬の横へと座して自身の服に手を掛けた。 紬も倣うように、羽織っていたカーディガンを脱いでいる。 ワンピースを着ていた律は早々に下着姿となって、未だ脱衣中の紬を見つめる。 紬は覚束ない手付きで、ブラウスのボタンを外しているところだった。 緊張が指にまで伝播しているのかもしれない。 「ムギってさ、綺麗な肌してるよね」 漸くブラウスを脱ぎ終わった紬に、律は素直な感想を漏らす。 上半身を纏うものがブラジャーだけとなった紬は、白い肌を腕で隠すようにしながら赤面した。 「りっちゃんだって、綺麗な身体してるじゃない。 細いし、羨ましいわ」 「そう?でもムギの方が、色っぽいよ。上品な色気が滲み出てる。 それでね、私、もっと、もーっと、ムギの綺麗なところ、見たいな。 ぜーんぶ晒して、私だけに見せてよ」 律が素直な欲望を漏らして促すと、紬は顔を背けながらも従ってくれた。 「もう……りっちゃん、上手なんだから」 紬はショーツを手で隠しながら、スカートをゆっくりと下ろした。 太腿を強く閉じた内股気味の姿勢と併せて、紬の性的な羞恥が赤裸々に表れている。 ショーツに添えられた手の隙間から覗く純白が、堪らなく扇情的だった。 太腿や腹部の肌も、ショーツに劣らぬ白さで律の目を引く。 「わぁ、本当に肌、綺麗だよね。ショーツも上品だし。 どっちも真っ白で、ムギの清純さを象徴しているみたいだよ」 唯や梓との爛れた関係の渦中に居るからこそ、尚更そう感じられた。 4
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/5394.html
1. 唯は軽い冗談のように、律に向けて言葉を放ってきた。 「じゃあ、私と付き合ってみる?」 実際、冗談なのだろう。 冗談の言い合いこそが日常だと、律にも分かっている。 「なーに言ってるんだよ、唯。 私には、澪が居るんだからさ」 「あはは、さっきまでその澪ちゃんの愚痴言ってたくせにー。 まーた喧嘩したんでしょ?エッチがマンネリ気味だとか指摘されてさ。 でも私となら、エッチの相性もいいかもね」 唯は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、茶化すように言ってきた。 確かに自分の返答は滑稽だと、律は唯の笑みを見つめながら思う。 今まで、当の澪に対する不満を零していたのだから。 唯の部屋で当の唯と二人きりというこの状況に、律の口も軽くなっていた。 ましてや九月も中旬に差し掛かった今、 夏休みに蓄積された澪との恋愛の話を誰かに聞いてもらいたかったのだ。 ただ、決して本音で不満を言った訳ではなく、愚痴の形を取った惚気でしかない。 悪戯っぽい笑みにも表れているように、それは唯とて承知している事だろう。 だからこそ、律は唯の言葉を冗談だと捉えているのだ。 一方で、冗談だと分かっていながらも、唯の言葉に律は考えさせられてもいた。 唯の言う通り、澪以上に相性のいい相手が居るかもしれない。 また、新しい相手と交わる事で、 惰性のようだと指摘された澪との性交を一新できるように思えた。 そう思うと澪が好きながらも、他の人間も試してみたくなる。 特に唯ならば話も合う上に、肉付きの良い肢体に惹かれる事もあった。 実際に唯と付き合ってみるのも悪くはない、その思いが律の胸裏で大きくなってゆく。 「なーんて、冗談、だよ。本気にして考え込まないでよ。 りっちゃんを盗ったりしたら、澪ちゃんに悪いしさ」 律が黙り込んでしまったので、冗談を解されていないと思ったのだろう。 唯が明るい声で冗談だと宣してきた。 だが律は、敏感に唯の言葉から見込みを読み取っていた。 澪に対する遠慮を理由に挙げているあたり、決して自分に脈がない訳ではなさそうだ、と。 「何だよー、冗談なんて酷いよー。期待しちゃったのにぃ」 律は拗ねたように言って、唯の反応を窺った。 唯は驚いたのか、口を開けて固まっている。 「えっと、期待、って?」 数秒もの間を置いて、漸く唯の口から困惑したような声が絞り出された。 「唯が私の事、好きだと思っちゃったよ。 私の事、貰ってくれるのかなって」 律は言いながら、唯の身体にしな垂れかかった。 密着した事で、唯の荒い息遣いがはっきりと感じ取れた。 「そ、そんな。だ、だって。澪ちゃんに、悪い、よ?」 唯の途切れがちな声からも、彼女の内心を見舞う動揺が察せられる。 「でも澪とは、いい加減に長いしさー。 それでマンネリだって言うなら、他の子に流れても許されると思うな。 その受け入れ先として唯が名乗りを上げて、そして抱いてくれるなら、 頼もしくって私も嬉しいし」 律は澪に対する愚痴と、唯に対する甘えで声質を使い分けて言った。 更に庇護を求めるような視線も、忘れずに添える。 「そこまで言うなら、私も悪い気はしないけど……。 私だって、りっちゃんと話すのは楽しいし、可愛いとか思っちゃってるから。 でも、一つ、約束させて?」 唯が言葉を切って、律と密着したまま目を合わせてきた。 「ん?何ー?」 無邪気に問う律に対し、唯は躊躇うように目を一瞬だけ逸らした。 だがすぐにその躊躇を断ち切ったらしい。 再び目を合わせてくると、強い語調の声で言葉を放ってきた。 「澪ちゃんとは、しっかりとケジメを付けてね? 私と付き合う以上は、必ず別れてね? 私、二番さんじゃ嫌だから」 「唯の気持ちは分かってるし、大事にしたいよ。 ただ、急に事を進めて、バンド活動に支障を出したくないからな。 別れるにしても、慎重にやらなきゃいけないんだ」 そうは言うものの、律に澪と別れるつもりなどなかった。 だから前向きに繕いつつも、言葉を濁して答える。 そして唯は律の目論見通り、前向きな部分を重視したらしい。 嬉々とした様子で律を抱きすくめ、耳元で囁いてきた。 「えへへ、嬉しいな。勿論、今すぐにとは言わないよ。 その代わり、そう遠くないうちに、必ず別れてね」 律の耳に唯の息がかかり、首筋に心地好い興奮が走る。 律は体重を更に唯へと傾けて、滾る興奮のままに急かした。 「唯ー。言葉はもう要らないから、これ以上焦らさないでよ。 私、すっかり熱くなっちゃった」 唯との約束を避けたいが為の求愛ではない。 快楽を求める身体の欲求に、素直に従っただけだった。 「ごめんね、疑うような事言っちゃって。 私もね、りっちゃんの事考えてたら、変な所が熱くなっちゃったよ。 鎮め合お?」 唯の左手が弄るような動きを伴って、律の胸へと伸びてきた。 唯の右手は早くも律のショーツへと潜り込み、荒々しい動きで陰核を探っている。 「はぁ、唯ぃ……気持ち良くって、だぁい好き……」 律も応えて、唯の胸へと顔を埋めた。 * 律と唯の関係は、一時の過ちでは終わらなかった。 その日以降も、律は唯と何度も肌を重ね合せている。 逢瀬も初めて交わった日と同じく、唯の部屋が多かった。 律は家族と同居しており、家も澪と近所である。 その点、唯の家ならば澪に見つかる恐れなどない。 家族にしても父母は家を空ける事が多く、唯と妹の憂しかいない。 そして憂は姉の情事に対して、配慮のできる人間でもあった。 自然、律の家よりも唯の家で、性行為に及ぶ事が多くなっていた。 今日もまた、交わる場所は唯の家だった。 「えへへ、二日に一回くらいは、してるよね」 唯が律の陰核に這わせていた舌を休めて、無邪気に笑いながら言ってきた。 この関係が始まってまだ二週間も経っていない事を考えれば、確かに唯の言う通りなのだろう。 その頻度の多さには驚かされるが、律は快楽に耽溺していたかった。 昂ぶっていたところで、愛撫を中断されたくはない。 自然、拗ねたような声が律の口から漏れ出る。 「それ、ヤる前も言ったじゃんかー。 折角気持ち良かったのに、止めないでよー」 言った後で律は身振りでも唯を促すように、腰を上下に揺り動かした。 「だって、何度考えても嬉しくって。 こんなにいっぱい、りっちゃんとエッチできるなんて夢みたい。 ねぇ、りっちゃん。澪ちゃんとは、こんなにいっぱいエッチはしてなかったよね?」 「うん。もっと少なかったよ」 実際には、毎夜の如く肌を重ねた日々もあった。 特に長期休暇中は連日褥を共にする事も多い。 去年の夏休みなど、二週間も澪のベッドから出ない日があった程である。 ただ、最近は唯と耽る事の方が多いのであながち嘘でもないと、 律は胸中で言い訳のように付け足した。 「でしょ?じゃ、私と澪ちゃん、どっちの方が上手?」 唯は喜びを顔に浮かべると、更に問い掛けてきた。 「唯、かなぁ」 律の語尾が濁ったせいか、不服を表すように唯の眉が顰められた。 尤も、律にとっては、これでも気を遣った方である。 澪の方が上手かもしれない、という本音を抑えているのだから。 それでも唯は澪とは違い、気楽に交わる事のできる貴重な相手だった。 澪は夏が終わりに近付いた辺りから、性交に対する不満を漏らすようになっていた。 反面、唯はほとんど無条件で律の快楽に尽くしてくれている。 そのような唯の機嫌を損ねたくない律は、急かす事で話題を逸らさせようと思った。 それは、早く快楽の続きに耽りたい、という欲望故の本音でもある。 「そんな事より、早く、早くぅ」 「そんな事じゃないよ、大事な事なのっ」 途端、唯の怒声が響いた。 驚いた律は身を縮めると、涙交じりの上目で唯を見上げて言う。 「ゆ、唯ぃー。いきなり怒鳴んないでよぉ」 「あ、ごめんね、驚いちゃったよね」 唯は忘我から返ったように謝ってから、眦を決して決意の滲んだ顔で続けていた。 「でも、りっちゃんの一番になりたいんだよ。澪ちゃんに負けたくない。 だから、私にとっては、澪ちゃんとの優劣は絶対に拘りたい部分なんだ」 唯の語勢は強く、澪に向けた並々ならぬ対抗心が伝わってくる。 律は愛されている事を喜ぶ半面、唯の愛を重く感じてもいた。 気軽に肌を合わせられる相手として、律は唯を見ているのだから。 重い精神的な繋がりよりも、軽い肉体の繋がりを求めて律は再度促す。 「唯ー、だったらさ、尚の事早く続けてよ。 焦らしてると、唯より澪の方が良かった、みたいに私の考えが変わっちゃうかもよ。 私って、柔軟な人間性してるから」 「ごめんね、りっちゃん。 生殺しにしちゃった分、りっちゃんをいっぱい、気持ちよくしてあげる」 唯は漸く律の求めに応じて、行為を再開した。 その愛撫は中断する前よりも、幾分か激しさを増している。 以前から抱いていたであろう思いを口にした事で、 対抗心が明確な形で浮き上がって唯を衝き動かしているのかもしれない。 陰核を吸い上げられながら、律は思った。 やはり唯は便利だ、と。 自分の方が明らかに多くの快楽を享受しているのに、 その事に不公平を漏らさず愛撫してくれるのだから。 だが同時に、澪の言う「マンネリ」という言葉の意味を突き付けられてもいた。 澪は性交の多様化や変化を望んで、単調だと批判した訳ではないだろう。 恐らく、律の性交に対するスタンスに不満を抱いている。 即ち、自分ばかりが快楽を味わい、 澪に対する愛撫が欠けていると指摘したかったのだ、と。 今更気付いた訳ではなく、言われ始めた当初から薄々勘付いていた事ではあった。 澪が「マンネリ」「単調」等と言う時は決まって、 満足した律が性行為を切り上げる際だったのだから。 だがこうして実例をまざまざと体験すると、 自分の身勝手さを糾弾されたような気分になる。 律に後ろめたさが芽生えかけたその時、陰核が一際強い刺激に見舞われた。 「っ……」 律は堪らず絶句を漏らした。その衝撃で、思考も後ろめたさも霧散していく。 下腹部に視線を向ければ、上目で満足気に笑む唯と視線が合った。 律の陰核が唯の口腔に含まれているので、何をされているのか視認はできない。 だが、目で見ずとも、敏感な感覚を通じて分かった。 唯が陰核を根元から歯で摘み上げ、頂上を舌先で転がしているのだ、と。 「唯ぃ……いいよぉ……」 律は切なげな吐息とともに、朧に覆われかけている思考の中で声を漏らした。 対する唯の顔に、悪戯っぽい笑みが浮かぶ。 それが律には更なる快楽を期待させる仕草に移り、胸が興奮に昂ぶった。 唯は的確に律の期待へと応えてくれた。 陰核を挟んだままの唯の歯が前後に動き、律の敏感な部分が激しく擦られる。 「っ」 律は再び絶句を漏らしたが、唯はこの程度の反応ではまだ満足していないようだった。 陰核の頂上を転がしていた舌先の動きも、更に強くさせてきたのだ。 今までの舐めまわすような動きではない。捏ね繰り回すような力強さだった。 「ひゃっ、ゆぅいぃ……はぁっ、はぁぁぁんっ」 律は堪え切れずに絶頂へと達し、身を仰け反らせて鳴いた。 それでもなお、唯の動きは止まなかった。 それどころか更に激しさを増して、快楽の余韻に更なる快楽を重ねてくる。 「ぁっ」 律は仰け反らせたままの顔を固定するように、側頭部を両手で抑え込んだ。 そうでもしていないと、意識が頭から離れていってしまいそうだった。 「ゅ、ゆぅぃー……」 口中から止め処なく溢れる涎に邪魔され、声さえ満足に出せない。 それでなくとも快楽に痙攣する身体と心では、満足に言葉を紡げやしないだろう。 実際、思考など快楽によって、意識の外へと弾き飛ばされかけている。 「ゅぁっ──」 一際大きい痙攣が身を襲い、それとともに律は再び絶頂へと突き上げられた。 連続した絶頂に脳がキャパシティの限界を迎えたのか、思考が白くなってゆく。 「ぁ、はー……」 「りっちゃん、私から離れたらヤだよ」 律は快楽に身と心が溶かされてゆく中、唯の切なげな声を聞いた気がした。 . . 性行為が終わり興奮も静まった頃、唯が申し訳なさそうに呟いた。 「澪ちゃんに、悪い事しちゃってるよね」 律は添い寝している唯の顔を見つめた。 常夜灯の黄色い小さな明かりと、カーテンから漏れる月明かり。 その二つの頼りない光源でも、唯の沈んだ顔が視認できた。 「今更なーに言ってるんだよ」 呆れが声に混ざらないように努めながら、律は言う。 つい先程まで澪に対抗心を剥き出していたとは、到底思えない。 「うん、確かに今更なんだけどね。 でも、思い返すと、楽器の事なんて何も知らなかった私にギターを教えてくれたの、 澪ちゃんなんだよね。 その澪ちゃんのカノジョを寝取るような事して、 私って恩を仇で返すような人間だったんだなぁって」 「でもさ、その澪に負けたくないって、唯はさっき言ってたよ。 もう澪に対するそういう後ろめたい感情って、吹っ切れてるんじゃないの?」 律の指摘に唯は小さく頷いてから、言葉を返してきた。 「んー、確かにね、りっちゃんの一番になりたいよ。 特に、エッチしてる時は自分でも驚くくらい、 りっちゃんを独占したくなっちゃう感じ。 でもね、エッチの興奮が冷めると、ふと思っちゃうんだ。 こんな事するなんて、澪ちゃんに酷いって。 ねぇ、りっちゃん。私、やっぱり悪い子なのかなぁ?」 律は移ろう唯の態度に、得心がいった思いだった。 察するに、唯は普段から律に対する恋情と澪に対する罪悪感を、心の中に同居させている。 性交の最中では律と交わる大きな喜びに浸され、澪に対して嫉妬してしまう。 反面、性交の直後の反動も大きく、澪に対して強い罪悪感を抱く事になる。 そういう事なのだろう。 「いや、悪くはないと思うけど。 それを言うなら、ちゃーんと私をキープしてない、澪だって悪いんだから」 律の言葉は本心でもなければ、慰めでもなかった。 唯と肉体的な関係を続けたい、という淫らな思惑しか込めていない空言だ。 それでも唯は泣き出しそうな表情を浮かべて、律の言葉に縋ってきた。 「澪ちゃんがキープしてない事に落ち度があったんなら、 澪ちゃん、私の事、許してくれるよね? 澪ちゃん、私と友達だもんね? りっちゃんをもっともっと幸せにできる私に、譲ってくれるよね? ねぇ、りっちゃん、私達、付き合い続けてもいいんだよね?」 律は首肯すると、唯の髪を優しく撫でながら言う。 「勿論だよ。澪だって、分かってくれるさ。 きっと私達を祝福してくれる。澪はそういう人間だよ」 律は唯の愛を重いと感じる事があっても、今は付き合い続けていたかった。 柔らかく肉付きが良い唯の肢体を、まだ手放したくはない。 何より、律の快楽の為に尽くしてくれる便利さは捨て難い。 加えて、憂も寛容な理解を示してくれているのだから、尚更だった。 憂は律が泊まりに来た時は、決まって精が付く料理を作ってくれている。 悪戯っぽい笑みを浮かべながら、 「スタミナ付けて、頑張って下さいね」などと冷やかしながら供する事もあった。 ここまで恵まれた交際条件を、見す見す手放したくはない。 律がそう胸中で量りながら髪を撫で続けていると、唯の表情も次第に落ち着いてきた。 やがて唯は気持ちよさそうに目を細めて、安心したような声で肯んじてきた。 「そうだよね、澪ちゃん、優しいもんね。 りっちゃんが別れを切り出しても、幸せを願って私の下に送り出してくれるよね。 私、りっちゃんの事、絶対に幸せにできるもん」 「うん、相手の為に身を引くのも、好きな相手に対する義務だからね」 だから唯も別れ話を切り出された時は、私の幸せを願って送り出してくれ、と。 律は胸中で呟いた。 「澪ちゃんなら、そう思ってくれそうだよね」 律の言葉が実は自身に向けられているとは露知らず、唯は嬉々と応じていた。 「唯だってそう思うでしょ?大丈夫だよ」 唯の反応に満足した律は仰向けになり、視線も天井へと向けた。 唯との性交が激しかったせいか、身体が疲労困憊を訴えている。 話に区切りが付いた事で、そろそろ眠りたかった。 「じゃ、夜も遅いし。そろそろ寝よっか。おやすみ、唯」 そのまま瞼を閉じようとしたが、唯の声に引き止められた。 「あ、あのね、りっちゃん。 りっちゃんは寝てていいし、りっちゃんには何もしないから。 だから、寝顔、ずっと見てていいかなぁ?」 「ん?別にいいけど」 律は了承を返したが、内心では訝しくも思っていた。 今までも律は唯よりも早く眠る事が多かった為、既に何度も寝顔を見せているはずだ。 またその際にも唯は、許可を求めた事はなかった。 なのに今更許可を求めた事が、恥じらうようなその声と併せて気にはなった。 「ありがと、りっちゃん」 ただ、律は眠気を催している事もあり、抱いた怪訝を深く追及しようとは思わなかった。 唯が礼を言ったタイミングに合わせて、律は今度こそ瞼を閉じる。 「おやすみなー、唯」 だが、そのまま眠りに落ちる事はできなかった。 隣から聞こえる唯の吐息が喘ぐように艶めかしく、律の意識が掻き乱される。 先程の怪しげな態度と併せて、律の不審は更に深まった。 律がそれでも寝ようと試みていると、 今度は水飴を咀嚼するような粘つく音まで聞こえてきた。 唯の吐息が激しさを増すに伴い、その音も大きく響いてくる。 続いて鼻を衝く、生臭く甘い匂い。 もう、異変に気付いていないよう振る舞う事は限界だった。 律が不審に押されて重い瞼を開くと、上気した唯の顔が間近にあった。 蕩けた瞳で律を見つめる唯の口から、艶めかしく熱した吐息が断続的に漏れ出ている。 そしてその口元には、涎の筋まで見えた。 「あ、はぁ。りっちゃん、寝るって言ったのにぃ……」 抗議めいた言葉を口から零して、唯は恥ずかしげに笑んだ。 その覚束ない呂律からは、唯の尋常ではない興奮が感じ取れる。 「いや、唯が妙な事してないか気になって、眠れなかったし。 息遣いとか、音とか、匂いとか」 律は言い訳のように返すと、視線で匂いの元を辿った。 唯の顔から徐々に視野を下半身へと向けてゆき、そうして下腹部に視線が至る。 そこで律の目の動きは止まった。 指が差しこまれ体液を溢れさせる、唯の性器から視線を逸らせない。 「えっと、唯。エッチしたばかりなのに、なーにやってるの?」 唯の性器を凝視したまま、律は問い掛けた。 自慰が露見しても、未だ唯の動きは止まっていない。 性器を弄る唯の指は動き続け、粘液と音と匂いを撒き散らしている。 「し足りなくて、身体が疼いちゃって。 それで、りっちゃんの顔見ながら、オナニーしちゃった。 ねぇ、りっちゃんには手を出さないから、続けていいよね? もう指、止まってくれないもん」 律ばかりが満足して性交を終え、 唯の身体には発散できなかった性欲が燻っているのだろう。 それを鎮めようともがく唯が、堪らなく可愛く思えた。 疲労故に再度の性交へと及ぶ気にはなれないが、 愛撫程度の手伝いなら労を費やしてやっても良かった。 「いーや、指止めてよ。私がしてあげるから。疲れてるから、一回だけだけど」 律が言うと、途端に唯の口から喜色露わな声が飛んできた。 「ほんとっ?ほんとに、りっちゃんがしてくれるの?」 「構わないよ。たーだし」 律は枕元の照明パネルを操作しながら、言葉を続けた。 「唯の深くまで、見せてよ」 蛍光灯から溢れる光が、唯の身体を赤裸々に剥く。 明るくなった部屋の中、唯は赤面しながらも裸体を隠さなかった。 承諾の表れなのだろう。 「う、うん。いいよ。恥ずかしいけど、りっちゃんにいっぱい、見て欲しい」 「うんっ、いっぱい見てあげる」 律は唯の身体を貪った事があまりなかった。 自身の快楽を優先するあまり、愛でる機会が少なかったのだ。 だが、自分が存分に満足した今ならば、唯の身体を堪能する事ができる。 「えへへ、こんな身体だけど、愛してね」 唯は指を性器から離して、身体を広げた。 律は開放された性器に顔を近付けて、唯に応える。 「いーや、いい身体してるよ。特にここ、フェロモンが半端ない」 律は唯の陰唇を指で広げ、その内奥を改めて見入った。 熟して爆ぜたザクロのように、襞状の肉が鮮烈な赤色を帯びている。 そして陰核は粘液に塗れて艶を放ち、蠱惑的な形相をザクロに添えていた。 陰唇の脇に揃う陰毛の黒さも、唯の果肉の赤みを際立たせている。 「やっ、そんなにまじまじ見られると恥ずかしい……けど嬉しいな、りっちゃん」 唯の羞恥と歓喜を表すように、襞はより鮮やかな赤色を浮かび上がらせた。 分泌される体液の量も増し、ベッドのシーツに染みを作っている。 「唯って淫らだね」 律は茶化すように笑うと、鼻で息を吸い込んだ。 生臭さと甘さの同居した強烈な匂いが、鼻腔から嗅覚を突き抜けて脳へと刺さる。 意識が揺さぶられる程の衝撃に、律は軽い眩暈を覚えた。 「り、りっちゃん……そ、そんな至近距離で嗅がないでよぉ」 唯は慌てたように抗議しているが、上目で顔を窺うと満更でもなさそうだった。 「どうせ部屋には唯の生々しい匂いが籠もってるんだし、同じでしょ? まぁ濃度が違うから、キックも全然違うけど」 律は更に鼻をひくつかせ、峻烈な匂いに酔う。 「りっちゃぁん、嬉しいけど、そろそろ欲しいよぅ。 弾けそうに熱くて、切なくなっちゃってる」 そう促す唯の声は切実さを帯びて、嘆願のようにも聞こえた。 「分かったよ、お待たせ」 律は唯の催促に応えて、陰核へと舌を伸ばした。 「ひゃっ、ぁ」 陰核に舌先が触れた途端、唯の口から痙攣したような声が跳ねた。 「唯って、敏感な身体してるよなー」 律はそう言う間にも刺激を継続すべく、指で唯の陰核や陰門を弄っていた。 舌と指を機動的に入れ替える事で、間断ない快感と滑らかな会話を両立させている。 「ふわぁ、りっちゃん程じゃないよぅ」 「言ったなー。こうだっ」 律は唯の陰核を口に含んで、強く吸い上げた。 唯の身体が痙攣したように震えたが、容赦せず舌による刺激も加えた。 「んっ、りっちゃ、凄……ぇあっ」 唯は快楽に喘いではいるものの、未だ絶頂へと達していない。 快楽に耐えようとでもしているのか、きつく目を閉じている。 それがまるで性的な沸騰を拒んでいるかのように、律には映った。 「なぁ、唯。イキたかったら、イッてもいいんだよ? ほら、気持ちいいんでしょ?我慢してないで、撒き散らしちゃいなよ」 律は指による愛撫へと変えて、自由になった口で促すように言う。 だが唯は薄目を律へと向けて、頑なに首を振っている。 「だ、駄目だよぅ。一回、イくまで、なんだもん。 もっと、してたいから、まだ、イっちゃ、駄目」 唯は喘いだ息を挟みながら、断続的に言葉を紡いだ。 その一途さを、律は優しげな笑みで報いてやった。 「大丈夫。今日は疲れてるけど、まーだ次の機会があるからさ。 その時にまた、いっぱいエッチしようよ」 「ほんと?また、してくれるの? でも、ねー、りっちゃん。私と澪ちゃん、どっちとの、エッチが、好き?」 唯を襲う快楽が激しいのか、呂律を回す事にさえ苦心が滲んでいる。 「唯かなぁ。まぁでも、どっちもタイプ違うじゃん? ここの凄絶なインパクトは似たようなものでもさ。 美味しいトコ取りみたいだけど、それぞれのエッチに良さがある、みたいな?」 全面的に唯だと答えてやっても良かった。 だが、あまり好意を示し過ぎると、捨てる段になって揉めかねない。 それ故に律は唯に寄った回答を返しつつも、断定的に言い切る事はしなかった。 「あ、私だけの、りっちゃんで居て、欲しいな。 ね、りっちゃん、私、髪伸ばすね。澪ちゃんみたいに、伸ばすね。 タイプが似ちゃっても、私だけを選んでくれるように、って。 私、性感帯だけの、女じゃないから」 唯は性器だけではなく、髪でも女として澪と張ろうとしていた。 この激しい対抗心は、澪と唯があまりにも異なっている事が原因のように思えた。 唯は律の交際相手である澪の要素を持たないが故に、 律から愛されている事に根拠を持てないのだろう。 いっそ初めから澪と似た者を浮気の相手とした方が、 その面倒を回避できるのではないかと律は唐突に閃いた。 「ん?いいんじゃないか?澪と髪質は違うけど、緩い感じの長髪も好きだよ? 逆に、新鮮でいいかな」 律は胸中の閃きを隠して、唯を肯定してやった。 「えへへ、好きって事は、私を選んでくれる、って事だよね? 安心して、次を期待できるよ」 律の言葉に満足したように、唯は一瞬だけ穏やかな表情を浮かべた。 直後、唯の身体が一際大きく跳ねる。 飛び散る体液を顔に浴びながら、漸く眠れると律は思った。 2
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/5397.html
「清純だなんて……。私、清純なんかじゃないわ。 今、とってもドキドキしちゃって、熱く疼いてるの」 紬の潤んだ瞳が熱を帯びて、律に注がれる。 律は柔らかく笑むと、紬の瞳を正面から受け止めて言う。 「清純だよ。そんな気持ちになるの、私に対してだけでしょ? さ、私だけに、ムギの肌、全部見せてよ」 「わ、私も見たいっ。りっちゃんの、見たいわ。 先に……駄目?」 上目で遠慮がちに問う紬に、律は身体を開いて答える。 「いいよ。まずは私から見せる。でも、ムギが脱がせて? ムギのは、私がヴェールを剥いであげるから」 「う、うん。じゃあ、りっちゃんの、見せて、もらいます」 その声同様に震える紬の腕が、律の背へと回される。 律はその直後に、背を向けるべきだったと気付いた。 手慣れていない紬には、正面からホックを外すこの体勢は敷居が高いに違いない。 実際、紬の指はブラジャーの紐を捩るばかりで、遅々としてホックを外せずにいる。 「あー、ごめん。難しいよね。上はいいや、自分で外す。 胸なら、自分でできるよ。 その代わり、下はお願いね。ちょっとそっちは、恥ずかしいから」 表情に焦燥が浮かび始めた紬に、律は助け船を出した。 同時に、初な紬に合わせて、恥じらいを演出する事も忘れなかった。 実際には、短期間で不倫を重ねた律にとって、既に羞恥心など希薄になっている。 「あ……ごめんね、りっちゃん」 見るからに落ち込んでいる紬を慰めるように、律は言う。 「気にしないでよ、ムーギ。 私の気が利かなかっただけだからさ。お詫び」 律は後ろ手にホックを外して、ブラジャーを重力のまま落下させた。 そのブラジャーが床へと落ちる前に、紬の口から息を呑む音が聞こえてきた。 「綺麗……」 布地が床に落ちて乾いた音を響かせた直後、紬が律の胸を凝視しながら惚けた声で呟いた。 「いや、こんなに小さいと、綺麗も何もないでしょ」 律は苦笑を交えて謙遜したが、内心は満更でもなかった。 大きさはともかく、形に自信がないわけではない。 紬も認めてくれたのだと、張りのある三角錐を見下ろしながら思った。 「そんな事ないわ、サイズじゃないもの。宝石は小さくても高価よ。 ……ねぇ、ちょっと、触ってもいい?」 遠慮がちに訊いてくる紬に、律は小さく笑いながら返す。 「駄目だって言うのなら、脱いだ意味がないよ。 でも、あまり焦らされると辛いから、少しだよ? どうせお互い裸になったら、触り合うんだしさ」 紬の口から、気付いたような短い声が漏れた。 「あ……それを考えると、改めて恥ずかしいわ。 でも、こんな愛おしいもの、触らずにいられないの」 紬は言い終わらぬうちに、律の乳房を両手で包み込んでいた。 言葉が終わるとそのまま律の乳房は撫で回され、優しい力で揉まれてゆく。 滾る性欲のままに律を求めてきた唯や梓と違い、慎み深い愛撫だった。 「ね、りっちゃん。この、先端部分も触っていいかしら?」 紬が揉む動きを休めて、指を律の乳首の周りで回しながら問うてきた。 律が小さく頷くと、紬の指が恐る恐るといった様子で乳首へと伸びてくる。 そうして微かに触れた途端に紬は一旦指を引っ込めて、再び触ってきた。 二度目に触れた紬は離す事なく、乳首を回すように弄ってくる。 それに対して律は呼気を荒げるだけに留められたが、 乳首を摘まれて引っ張られる段になると堪らず喘ぎ声が漏れ出ていた。 「あ、ごめんね、りっちゃん。 痛かった?つい、夢中になっちゃって」 律の声を痛み故だと思ったのか、紬が指を離して謝ってきた。 「んーん、気にしないで。感じちゃったからで、痛いとかじゃないから。 でも、感じたせいか昂ぶっちゃって、私もムギが欲しくなっちゃったな。 ね、そろそろ、私の全て、見て欲しいな」 まだ胸は刺激を欲しているが、律はその欲求に靡く事なく紬を促した。 行為が途切れたこの機を逸してしまっては、紬との性交が遠のいてしまう。 この程度の愛撫よりも深い繋がりを、律は求めているのだ。 「そうよね、少しって、約束だったものね。 じゃあ、りっちゃんの大切な部分、見せてもらうわ」 紬は律に応えて屈むと、ショーツの両端を指で掴んだ。 その段になってもまだ躊躇いがあるのか、紬は上目で律を見上げながら問い掛けてくる。 「ねぇ、本当に、いいのよね?私なんかで、いいのよね?」 「うん。私は、ムギがいいんだよ」 律が面倒がらずに肯定してやると、紬も漸く覚悟が固まったらしい。 ゆっくりと、律の腰からショーツを下ろし始めた。 だがすぐに、紬の動きは再び止まってしまった。ただ、今度は躊躇った訳ではないだろう。 それは紬の硬直した目線を追えば、知れる事だった。 眼前に開帳された律の性器に目を奪われて、動く事さえ忘れているだけなのだ、と。 「これが……りっちゃんの……綺麗……」 長引く沈黙と凝視に耐えかねた律は、声を掛けようと開口しかけた。 その時、紬の口から途切れ途切れの呟きが聞こえてきた。 赤く火照った顔同様、熱に浮かされたような口調だった。 「ありがと。それ、ムギが好きにしていいんだよ? でもその前に、その準備はちゃんとしないとね?」 律に指摘されて、紬は我に返ったようだった。 「あ、ごめんね。つい、見惚れちゃって」 紬は律の性器に目を注いだまま、太腿で止まっていたショーツを一気に下ろした。 望んでいた性器が眼前にある事で、気が急いているのだろう。 律も気持ちは同様だった。 足を片方ずつ持ち上げてショーツから外す間にも、紬を求める情欲は高まり続けている。 「これ、どこに置こうかしら?」 辺りを見回す紬の両手には、律のショーツが大切そうに包まれている。 「その辺に置いといていいよ」 律の大雑把な指示にも、紬は的確な対応を見せた。 ショーツをベッドの隅に綺麗に畳んで置き、 更に床に落ちていたブラジャーもその上に畳んで重ねてくれた。 「ありがと。ムギってさ、律儀だよね。 次はムギの大胆なところ、見てみたいな」 「分かってるわ。りっちゃんだって、全部見せてくれたんだもん。 私も、全部、見てもらうわ。見て欲しいの」 紬の手が背中へと回り、深呼吸が繰り返された。 そうした逡巡を数秒程経て、紬も思い切りが付いたらしい。 紬の瞼が強く閉じられて、ブラジャーが胸から舞い落ちる。 「りっちゃんっ」 露わになった乳房を律が目に焼き付けるよりも早く、紬が抱き付いてきた。 押し付けられているのでもう乳房は見えないが、 包まれるような柔らかい感触を通じてその大きさが伝わってくる。 自分が紬を抱き止めているはずなのに、まるで抱擁されているような感覚さえ受けた。 「こーら、ムギ。それじゃ、見えないでしょ?」 律が窘めても、紬はなかなか離れようとはしなかった。 「だ、だって。恥ずかしくって……」 「だーめ。こんなに素敵なもの持ってるんだから、 勿体ない事してないで見せてよ」 律は紬の肩を押して引き離すと、改めて乳房に見入った。 尖鋭的な傾斜で僅かに膨らむ律の胸とは違い、 紬の胸には椀を裏に返したような緩やかな傾斜が広がっている。 乳房に比して乳輪も乳首も小さく、綺麗な薄桃色だった。 「やぁ……そんなに見つめないで。恥ずかしいわ……」 律が凝視していると、紬が両腕で胸を隠してしまった。 性的な穢れのない紬には、羞恥の念が一際強いのだろう。 「こんなに綺麗な胸してるんだから、恥ずかしがってたら勿体ないよ」 律は微笑みながら、紬の乳房を指で押した。 「ぁ……」 紬の口から震えた吐息が漏れ、律の指には心地好い弾力の感触が残る。 「ふふ、ムギって敏感なんだね。それとも、胸が弱いのかな? ま、今はいいや。後で確かめさせてもらうよ。 その時は恥ずかしがらず、見せて触らせて、そして弄らせてね」 紬の身体は緊張に硬直し、額には薄っすらと汗が滲んでいる。 それは、後で、という律の言葉に紬が見せた敏感な反応だった。 いよいよ全てを見せる時が来た、と察知したのだろう。 律が指をショーツに掛けると、紬の緊張は更に顕著なものになった。 肉体が小刻みに痙攣して、大きな瞳は涙を湛えて潤んでいる。 紬の見せる一々初々しい反応に、律は澪と初めて溶け合った夜を思い出した。 思えばあの時の自分も、肌を見せる事に大きな躊躇いがあった、と。 それでも一度全てを見せてしまえば、以降は気が楽だった。 その経験則を活かして、律は紬の羞恥に頓着せずにショーツを下へと引いた。 糸を引きながらショーツが股から離れ、同時に性器が露わになった。 律は紬がそうしたように、一旦ショーツを止めて眼前の光景に眺め入る。 強烈な印象を残した澪や唯、梓とは違い、上品な性器だった。 陰毛は薄く、淡い桃色の性器がよく見える。 性器とショーツの間に引かれた糸も光を反射して、艶のある輝き放っていた。 「やっ、あまり、見ないでよぅ……」 紬の両手が伸びてきて、性器を覆い隠してしまった。 それでも律の脳裏には、すっかりと焼き付いている。 「糸を引くなんて、ムギ、相当我慢してたんだね。 いつからそんなに濡れてたの?」 律が問い掛けると、紬は羞恥に染まった顔を背けた。 「やぁ、そんな事、言わないでよぉ。 だから、見せるの恥ずかしかったのよ。 性にだらしのない淫らな女だって思われそうで」 「淫らだなんて思わないよ。そんなになっちゃうの、私に対してだけでしょ? それってさ、私にそこまで興奮してくれたって事でしょ? 嬉しいなって、私はそう思ってるんだよ。 さ、ムギ。足上げて?」 紬のショーツを足首まで下ろしてから、律は促した。 紬はすぐに応じて、足を片方ずつ上げてくれた。 「ちょっと、待っててね」 律は紬に倣ってショーツとブラジャーを綺麗に畳むと、 ベットの隅に積まれている自分の下着類と並べて置いた。 「ありがとう、りっちゃん。それで……」 靴下を残して裸となった紬は、律の先導を待つように佇んでいる。 律はそんな紬を抱き寄せると、身を重ねたままベッドへと押し倒した。 「ムギー、大好きー」 「りっちゃん、私も、んっ」 紬にみなまで言わせず、律は唇を唇で塞いだ。 そうしてお互いに舌を絡ませ合った後、どちらともなく唇を離して見つめ合う。 「夢みたい、りっちゃんと、こういう関係になれるなんて。 私ね、醜いと思うかもしれないけど、澪ちゃんに嫉妬もしていたの。 考えた事もあったわ。 眉毛を剃って、髪の毛を黒く染めてストレートパーマを当てたら、 りっちゃんも振り向いてくれるかな、って。 でも、できなかったわ」 始めは陶酔に浸っていた紬の声は、語るうちに重々しい調子を帯びていった。 律にはそれが、懺悔のようにも聞こえる。 「澪に罪悪感を覚えちゃったから? でもそれ以前に、ムギは今のままでも、十分に可愛いのに。 特に髪の毛なんか、色も綺麗だしふわふわしてて、私大好きだよ」 「ありがとう。ええ、勿論、罪悪感もあったわ。 澪ちゃんには確かに嫉妬もしていたけれど、大切な友達でもあったし。 そんな人と競い合うなんて、したくなかった。 でも、それだけじゃないの。んーん、それは決定的な理由じゃないの」 それ以外にどのような理由があるのか、律の好奇心を引いた。 早く紬と淫らな行為に耽りたいという欲求を堪えて、律は問い掛ける。 「じゃあ、決定的な理由ってなぁに?」 「この髪の毛に、あまり手を加えたくなかったから。 この髪はね、母から受け継いだものなの。 それは私が、日本人とは違う血筋を持っている証で、母との繋がりを示すもの。 母にとっては異国の地で、本当は心細いかもしれない。 そんな時に私を見て、故郷の血は繋がってるんだっていう安心感を持って欲しいの」 語る紬の目は、何処か遠くを見ているようだった。 北欧の第二の故郷に思いを馳せているのかもしれない。 律は頷きながら、そういえばハーフも初めてだ、と話とは関係のない事を考えていた。 普段は意識していない紬の希少性を、律は改めて噛み締める。 律にとっては紬の肉親よりも、肉欲に繋がる話の方が関心事だった。 そんな律の胸中に気付く事なく、紬は言葉を続けていた。 「だからね。りっちゃんが、この髪の毛を褒めてくれて、嬉しかったわ。 私にとって、もう一つのアイデンティティだったから。 皆、私を半分しか見ていない。でもりっちゃんは、もう半分の私も見てくれているのね」 紬は嬉しそうに微笑んだが、律は既に話などどうでもよくなっていた。 そもそも紬は誤解している。律は紬の事など、性の対象としか見ていないのだ。 「うん。そしてこれからは、今まで私も知らなかったムギが見たいな。 さ、もっと深く、ムギを見せてよ。 素直な欲望を、私にぶつけてよ」 律は紬の陰門の奥深くへと指を滑り込ませて、性交の開始を告げた。 慣れていない紬は挿入に痛みを覚えたのか、口から荒い息を断続的に吐き出している。 都合が良かった。 言葉を奪う事ができたのだから。 5
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/5395.html
* 2. 律が部室に入ると、既に梓が居た。 ソファに座ったまま律を見上げて、一礼と挨拶で迎えてくれた。 「こんにちは、律先輩。今日は皆さんと一緒じゃないんですね」 「うん。ていうか、来ないよ。唯は憂ちゃんのお手伝い。 で、ムギは傘下企業のイベントがあって、 それの手伝いに駆り出されてる」 律が言葉を返すと、梓は思い出したように言った。 「ああ、そういえば、憂も言ってましたね。 今日はシーツやらの寝具をクリーニングに出すから、大変だとか。 それを唯先輩も手伝うなら、嵩張っても安心でしょう。 でも、珍しいですよね、唯先輩が手伝うなんて」 梓の鋭い指摘に、律は糾弾された思いだった。 一昨日の激しい性交では、律と唯から大量の体液が溢れてベッドを汚してしまった。 その事に対する負い目もあって、唯は手伝うのだろう。 反面、同じくベッドを汚した自分は何もしていない。 「まぁ、唯も漸く姉としての自覚が出てきた、って事じゃないかな? でもムギこそ大変だろうね。誰よりも大変な事をやれ、って父親から厳命されたらしいし」 後ろめたい思いから、律は話を逸らした。 「へぇ、企業トップの一人娘なのに、ですか?」 梓は案の定、興味津々といった様子を見せている。 「いや、だからだろうね。 ムギの会社も大変で、その傘下企業には切り売りの憶測さえ飛び交ってるらしい。 だからまぁ、それ否定して士気を上げる為に、経営陣との一体感を見せたいんだってさ。 その為にも、泥に塗れて機材搬入とかの大変な仕事をやれと」 「律先輩、よく知ってますね。 ムギ先輩の会社が大変だなんて、私、初めて知りました」 そういえば、と律は思う。 紬は自分以外に、弱みを見せた事などなかった。 「ムギが言ってた。それだけ、心細いんだろうね。 日本はともかく、フィンランドの方でちょっと、いやかなり、ね」 「例のソブリン問題ですか? でもフィンランドって、ドイツやオランダみたいにその逃避先として機能してませんでしたか? 国債利回りマイナスってニュース、見た気がします」 律は意外に感じていた。 梓が音楽以外の知識を持っているとは思ってもみなかったのだ。 話が通じると分かり、自然と律の口も滑らかになる。 「へー、詳しいね。 まぁ確かに国債はそんな感じだけど、国の財政ファンダメンタルズとは違う話だよ。 そもそもソブリン問題じゃなくて、 今時よくある話だけど、アップルやグーグル、サムスンに勝てなかったって理由で、 ノキ何とかって向こうの大企業が危ないらしいんだ。 その煽りを受けて、そこと間接的にせよ繋がりのある事業が痛手を食ってるらしい」 全て紬からの受け売りだったが、梓は感心したような表情を浮かべている。 「律先輩の方こそ、詳しいじゃないですか。 学校の勉強はさっぱりなくせに、どうしちゃったんですか?」 「中野ぉ。お金になりそうな事は勉強してるのっ。 学校の勉強より、そういう勉強の方が有意義だし。 それに、学校の成績だって唯や梓より上だよ」 律は紬から聞いた話だという事は、伏せたままにしておいた。 単に自分の能力を高く見せたいだけではない。 他人の家の懐を話し過ぎてしまったのではないか、という懸念があったのだ。 口が軽い人間に見られたくなかった。 「それを言われると、耳が痛いです」 梓は耳を抑える仕草を見せた。 自然、律は慰めるように言う。 「梓だって、充分に詳しいよ。 債券利回りと価格の逆相関なんて、大人でも誤解してる人が居る分野だぞ」 「だって、律先輩とかムギ先輩とか、そんな話ばかりしてるから。 負けたくなくて、私も少し勉強したんですよ」 梓は勘違いしているようだった。 律はただ紬の話を聞いているだけで、自分からファイナンシャル・リテラシーを披歴した事はない。 そもそも律は紬の話を聞いても、理解に至らない事が多々あった。 「いや、私だってムギに比べれば全然だよ」 「確かにムギ先輩、詳しそうですよね。 あの人はそういう話に限らず、ここでは澪先輩に次いで成績もいいですけど。 ん?そういえば、澪先輩は?」 今気づいたのか、梓は律に問うてきた。 待っていたとばかりに、律は用意していた言葉で応じる。 「ん、唯もムギも居ないからさ、今日の部活は中止って伝えちゃった」 「え?でも、私聞いてないですよ? それに、律先輩だって来てます」 梓の首が訝しげに傾いた。 「ん、偶には梓と二人で練習するのもいいかなー、とか思って。 澪や唯と一緒だと、梓ってその二人ばっかりと話するもんな。 梓の事を良く知って近付くいい機会かなーって」 律は本音を混ぜて言った。 確かに律は、これを機に梓に近付こうと思っている。 だが梓が受け取るであろう意味は、律の本意と異なるに違いなかった。 律は単に、友情や仲間の延長として絆を深めたいのではない。 唯に続いて、梓も試してみたくなっていたのだ。 律は梓の外見や性格が、澪に似ていると感じる節が多々あった。 一方で、体型を始めとして異なる部分も少なからずある。 本命の澪から逸れずに新しい刺激を求める相手として、理想的に思えた。 「それを言うなら、律先輩だって人の事を言えないじゃないですか。 いっつも澪先輩にべったりです。 それで偶に離れたかと思えば、唯先輩と戯れたり、ムギ先輩と話し込んでたり」 梓はそこまで言った後で顔を朱に染め、焦ったように付け足してきた。 「って、何言わせるんですか。 ま、まぁとにかく、律先輩が私との会話を重視しているのなら、 それは間違っていない傾向だとは思います。 私だって、律先輩とはあまり話せていませんでしたから」 梓も自分との会話を望んでいると分かって、律の内心は歓喜に満ちた。 この調子ならば、近付く事も容易に思えてくる。 律は悪戯っぽい笑みを浮かべて、梓の隣に腰掛けながら言う。 「へー、梓も私と話したかったんだ?嬉しい。 いっぱい話そうなー」 「でも、話すって言っても、何を」 梓は緊張したように目を逸らした。 普段、先輩の律や唯が相手でも、遠慮なく意見を言う梓にしては珍しい態度だ。 自分から話を振った手前、律は会話を主導してやった。 「そうだなー、年頃の女子らしく、恋の話でも。 好きな人の打ち明けっこ、とかさー」 「律先輩の好きな人なんて、分かりきって」 「どうせ澪だと思ってるんでしょ?」 梓が言い終わらぬうちに、律は言葉を割り込ませた。 途端、梓の驚きに満ちた目が、律へと向けられる。 「え?違うんですか?」 「うんっ、梓が好き」 冗談めかして、律は言った。 梓の緊張を解しつつ、安全圏から反応を探ろうとの意図がある。 だが予想外にも梓は、急に戸惑ったような態度を見せてきた。 「えっと、好きっ、て……。そういう意味の、好き、なんですよね? えっと……」 言った後で、梓は顔を染めて俯いてしまった。 律の言葉は、冗談に捉えられなかったようだ。 冗談めかした態度に込めた二つの意図は、完全に空振っていた。 「えーと、梓?」 完全に予想外の事態に、律はそう声を掛ける事が精一杯だった。 次の言葉が続かない。 「律先輩っ」 どう出るべきか迷っていた律は、急に声を掛けられて驚いた。 反射的に目を向けた途端、いつの間にか顔を上げていた梓と目が合った。 自分に向けられる眦を決した表情が気になり、律は訝しげに梓の名を呼ぶ。 「梓?」 「恋の話でしたよね?つまり、そういう意味の好きなんですよね? 今更、撤回なんて許しません。 そういうのが許されない言葉だって、重く自覚してもらいます」 決然と語る梓の言葉を聞いた律は、反応を返す前に口を塞がれてしまった。 梓の唇が律の唇に重ねられ、言葉など出る余地もない。 律は唐突な行動に驚いたが、梓の唇の心地好さに抵抗する気をすぐに失くした。 もともと、梓とこういう仲になる事が狙いだったのだ。 予想よりも早まっているが、目的から逸れた訳ではない。 言葉を失う代償で目的が果たせるのなら、梓の情動に身を委ねていても構わなかった。 だが梓の情動は、言葉を奪っただけでは終わらなかった。 律の唇を割って、梓の舌が口腔に侵入してきたのだ。 瞬く間に絡め取られた律の舌へと、梓の舌の生暖かい感触が伝わってきた。 途端にうなじが総毛立つように震えて、律は思わず首を竦める。 そのような律へと追い討ちを掛けるように、梓の舌は器用に動いた。 律の舌に絡ませては解きを繰り返しながら、隈なく口内を舐めるように這い回っている。 そうして梓の執拗な舌に口内を犯し尽くされた頃、漸く律は解放された。 「ごめんなさい」 口と口の間に引かれた唾液の糸を拭おうともせず、梓が呟いた。 衝動的に唇を奪った事を悔いて謝罪したのだろうと思ったが、 どうも違うらしい事に律はすぐ気付いた。 そもそも梓の瞳は、自分を捉えてなどいないのだ。 梓の視線は律の頭上を通り越して、その後方へと向けられている。 律も梓と視点を合わせようと、首を振り向かせた。 律の目に、壁に貼られたコルクボードが飛び込んできた。 コルクボードには軽音部の活動を写した写真が、何点も画鋲によって貼り付けられている。 夏祭りに出向いた際や合宿に行った時、 ライブハウスのチルアウトスペースや何気ない部室でのティータイム。 状況も場所も様々だが、貼り付けられた写真に部員が誰かしら映っている事だけは一貫している。 田井中律、中野梓という今部室に居る自分達二人を含め、 平沢唯、琴吹紬、そして── 「澪先輩、許してください」 再び呟かれた梓の声に引き戻されるように、律は首を前へと向け直そうとした。 だが、梓の顔を見る間もないまま、律の身体はソファーに押し倒されてしまった。 それでもすぐに圧し掛かる梓を見上げて、律はその表情を窺う事ができた。 強い決意の漲った顔が目に映り、律は思わず固唾を呑んだ。 律が緊張に身を固めている間にも、梓の口からその表情に負けぬ強い言葉が放たれてゆく。 「不慣れですし、昂ぶり過ぎていますから、痛くするかもしれませんが。 声はなるべく、抑えて下さい」 自身のブレザーのボタンを外す動作と相俟って、律は梓が本気だと分かった。 「あのー、梓しゃん。ここ、部室だよ?学校、だよ?」 予想外に性急な梓に戸惑った律は、思い出させるように言った。 確かに、いずれは梓とこういう関係になりたいという思いが、 律が仕掛けた今日のアプローチに繋がっている。 だが、ここまで梓が積極的になろうとは思ってもみなかった。 「だからどうしたって言うんですか。だって、澪先輩達は、来ないんですよね? それに私、もう我慢できない」 梓の指が、律のワイシャツに伸びてきた。 だが、その手を払い除けようとは思わなかった。 強硬な態度で梓を拒んでしまえば、今後同衾する機会さえ遠ざけてしまう。 故に、柔和な姿勢で梓を諌める必要があった。 そもそも律は梓に犯されたくないのではない、場所が問題なだけだ。 その事を伝えれば、強行な手段に頼らずとも済むように思えた。 「いや、別にエッチは構わないんだけど。家に帰ってからにしない?」 既に律のワイシャツのボタンを外し始めていた梓は、その指を止めずに見返してきた。 「言ったじゃないですか、我慢できないって」 「いや、でもさ。やっぱり、学校は不味いよ。 澪達は来ないけど、誰か来たりしたら。さわちゃんとかさ。 家に帰ってからの方が」 「無理なんですよっ、見て下さいっ」 律の言葉は、室内を劈く梓の叫喚で遮られた。 そのまま間断のない動作で梓の腰が浮き、履いているスカートがたくし上げられる。 そして律が止める間もなく、ショーツさえも下ろされた。 ワイシャツのボタン一つだけ残して肌蹴た律の目に、梓の性器が飛び込んでくる。 梓の小柄な体躯からは想像できない形相に、律は息を呑んだ。 唯よりも濃い陰毛の奥に、やや黒みを帯びた陰唇が蠢いている。 それでも生々しい肉厚の陰唇である為、 黒々と茂る陰毛の中でも色褪せる事なく存在を際立たせていた。 唯が熟して爆ぜた果実ならば、梓は生臭い海産物に喩えられる。 蠕動と厚みとそして塗れた体液が相俟って、律はアワビを具体的に連想していた。 律が性器に見入って言葉を失くしているうちに、梓が続けて言う。 「もう、こんなに濡れちゃってるんです。 律先輩の……せいですよ。告白なんてするから、 毎夜々々の習慣に留めていた情欲が反射的に蘇えっちゃって、止まらないんです。 こんな疼いた状態で家まで我慢なんて、無理ですっ。 もし家に誰か居てできなかったら、考えただけで耐えられないっ」 猛る梓の声には、切なさと激しさが入り混じっていた。 もう一刻の猶予さえない、という差し迫った欲情がありありと表れている。 説得は無理そうだと感じた律は、早々に受け入れる覚悟を固めた。 強硬に拒んで今後の関係に響かせるくらいなら、 学校で行為に及ぶという危険を冒した方がまだ良かった。 自分こそ淫乱だ、と。律は胸中で苦笑する。 その淫らな仲間に梓も巻き込むべく、分かりきっている事を律は問い掛けた。 「その、毎夜毎夜の習慣って?」 「律先輩の事を想って、毎晩毎晩、ここを弄ってるんです。 弄り過ぎたせいで、こんなになっちゃいましたけど。 でも、これだって、律先輩を恋い慕う気持ちが強い証なんですっ。 絶対に今、受け取ってもらうんだから」 梓は恥じらう素振りも見せずに返答してきた。 取り繕う余裕など、何処にもないのだろう。 零れ落ちそうな梓の理性を感じ取った律は、ワイシャツの最後のボタンを自ら弾き飛ばして言う。 「分かったよ。私だって、梓に私の身体、受け取って欲しいし。 ねぇ、食べて?梓の身体も、食べさせて?」 「ええ、頂きます。律先輩も、どうぞ」 そう言ってすぐに梓は体位を変えて、律に臀部を向けてきた。 そのまま律のスカートとショーツを纏めて荒々しく下ろし、陰唇に舌を這わせてくる。 性器から押し寄せる心地好い感触に蕩けそうになりながら、 律も梓のスカートに顔を潜らせて性器に口付けた。 スカート内には饐えた匂いが籠もっているが、律の嗅覚は不快を訴えていない。 逆に、淫らな匂いとして捉え、律の快感と興奮を増幅させている。 陰唇に舌を挿し入れてみれば、塩辛さに似た味覚で口中が満たされた。 それもまた、淫らな味だと律は感じた。 「あはぁ、ごめんなさい、律先輩。 今日、体育で激しい運動したから、蒸れちゃってて匂いますよね? こんなだから、本当は家に帰ってシャワー浴びてからの方が良かったんですけど。 でも、我慢できなくって」 梓が申し訳なさそうに謝る声を、律は彼女のスカートの中で聞いた。 「んーん、梓本来の匂いって感じがして、大好き」 再び梓の匂いを鼻腔に吸い込んでから、律は答えた。 唯とはまた違う種類の雌の匂いが、律を深みに嵌めてゆく。 「私も、律先輩のここ、大好きですっ。 ピンク色のコスモスが、シナモンみたいな匂い放ってるようで。 私、自分のケバいそれが恥ずかしくなりますよ。 いいなぁ、可愛らしくって」 自分の性器を褒められた事は嬉しいが、律とてそこに劣等感が皆無という訳ではない。 律は梓の性器から口を離して、愚痴を零すように言う。 「私だって梓のここ、羨ましいよ。 成熟してるっていうか、インパクトがあるっていうか。 毛だって、ちゃんと生えてるし。 それに比べて、私のって何か幼いよね」 「幼いだなんて。さっきも言ったように、可愛い、って言うんですよ。 無駄毛だって、処理とか面倒ですよ? いや、今日まで見せる相手が居なかったから、私はサボりがちでしたけど」 梓にせよ、自身の性器に劣等感を抱えているらしい。 「ふーん、梓は梓で、苦労があるんだね。 ね、でもね、よく考えてみると、 自分の性器に不満でも相手の性器が好きなら、それでいいような気がするんだ。 だって、舐めたりできるの、相手の性器だけなんだし。 ね、だからね、お互いに好きな性器、貪り合お?」 律は腰を前後に揺らしながら言った。 淫靡な雰囲気に酔わされた律は、 既に会話よりも肌の触れ合いを求めるように仕上がっている。 「そうですね。じゃあ、遠慮なく」 梓は再び向きを変えて、今度は律に乗って顔を合わせてきた。 梓が身体の位置を微調整して性器と性器が重なり合った事で、律にもその意図が知れた。 間を置かず、律の性器に摩擦が走った。 梓の性器と自身の性器が擦れ合い、ゲル状の液体を啜るような濁った音が室内に響く。 梓の陰毛が敏感な粘膜に絡み、始めの内こそ律は痛みを覚えていた。 だがすぐに、その痛みさえ快感へと変わる。 「くすっ、律せんぱぁい、見て下さいよぅ。 貝が花びら食べてるみたいです」 梓が悪戯っぽい笑みを浮かべながら、二人の接合部を指し示してきた。 つられて目を遣ると、律の性器に覆い被さって蠕動を繰り返している梓の性器が確認できた。 それは律にとっても、梓が喩えた通りに連想できる光景だった。 「うん、私のお花、梓に食べられちゃってる」 脳が淫楽に振り回されて、律は単調な感想を零す事が精一杯だった。 「ふふっ、律先輩って、セックスの時には甘えモードになるんですね。 可愛らしいです。私だってスイッチ、入れちゃうんだから」 梓は摩擦の運動を速めながら、両サイドに束ねていた髪を解いた。 真っ直ぐな長い髪が落ちて、梓の風貌は更に澪へと近付く。 「毎晩、律先輩を想って自分を慰める時、髪を解いているんです。 髪の毛なら私だって澪先輩に負けないって、そう思っちゃって。 今だって、澪先輩に負けたくないって、思っちゃってて。 妹のように可愛がってくれた人にそんな感情抱くなんて、最低だって分かってます。 でも、どうしても律先輩に訊きたいんです。 私の髪、澪先輩と比べて遜色ないですか?」 普段の梓は澪を非常に尊敬しており、張り合う素振りなど見せた事はない。 だが、律の告白によって利害が対立する事となった今、 どうしても張り合いたい気分になったのだろう。 特に髪は澪と似ている要素であり、そして梓自身も自信を持っているのだから尚更だ。 「梓の、髪の方が、綺麗だよ」 喘ぎながらも、律は梓の自負心を擽ってやった。 この程度の言葉なら、淫らな感覚に満たされた脳でも紡げる。 そしてこの程度の言葉でも、好きな相手から掛けられれば嬉しいものだ。 その律の目論見を裏付けるように、梓の顔に満面の笑みが広がった。 「えへ、嬉しいです。今度から、ずっと、髪解いたままにしようかな」 垣間見える梓の一途な姿には、律も心を揺らされるものがあった。 尤も、澪の地位を揺るがすまでには至っていない。 それでも今は、梓に耽溺していたいと思えた。 先程、顧問の山中さわ子が訪れる恐れを口にはしたものの、 自分の提案を通す為の方便に過ぎない。 この時期、文化祭に向けた衣装作りや吹奏楽部の顧問が忙しいらしく、 名前だけ貸しているに過ぎない軽音部には滅多に姿を見せていない。 梓とてそれを織り込んでいるからこそ、 山中に対する懸念を全く見せていないのだろう。 律の方便はまるで通用していなかった事になるが、今となっては構わなかった。 すっかりと性欲に飲み込まれた今、邪魔されず性交に没頭できる事の方が重要だった。 律は絶頂へと達しつつある中、梓と交わり続けられる幸福を噛み締めていた。 3